ハイスクールD×D 気弱なイッセー (kue)
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Life1 悪魔に転生しちゃいました!

「よ! イッセー」

僕――――兵藤一誠は呼ばれた方向を向いた。

「あ、おはよう。松田君、元浜君」

今、僕にあいさつしてくれたのは松田君と元浜君。

この学校に入って初めて友達になってくれた友人。

変態なのが残念だけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ! ちょっと! イッセー君に変態二人組が

近寄らないでよ! 移るでしょ!」

『そうだそうだ!』

教室に入るや否や、女の子が変態二人組(元浜君、松田君)に

言葉の集中砲火を喰らわせた。

何故か、毎日2人が僕に近寄ってくるとこういうふうに

女の子たちに文句を言われる2人。

なんでだろ?

『それは相棒が女どもに人気だからだ』

「……ドライグ、皆の前で話しかけてこないで。怪しまれるでしょ」

僕の頭の中に突然、声が聞こえてきた。

今、語りかけてきたのはドライグ。

セイグリッドギアとかいうのに魂を封印された二天龍って

いうめちゃくちゃ強いドラゴンの片割れ。

「けっ! しっしっし! イッセーはこっちの領域なんだよ!」

「はぁ!? 違うわよ!イッセーくんはこのクラス

の共有財産よ! 皆の癒しマスコット君なのよ!」

『そうだそうだ!』

「ぐぅ! けっ! 覚えてやがれ!」

流石に女子の気迫と人数に押し負けしたのか、

2人は席に戻って卑猥なDVDをどうだとああだとか論議しあっていた。

僕が通っている学園は前まで女子高で僕たちよりも前の代から共学に

変わったから、女子と男子の生徒の数の比率は圧倒的に男子の方が低い。

だから、一クラスに男子は10人くらいしかいなくて残りの30人は

全員女の子な訳である。

「てな訳でイッセーくん! ここ教えて!」

「うん、良いよ」

『は~、癒される~』

……何故か皆、僕が笑うとこうやって言うんだ。なんなんだろうね。

 

 

 

 

 

 

 

「sinθの二乗+cosθの二乗=1となる」

数学の授業中、僕は聞いている様で聞いていない状態で授業を受けていた。

『相棒。授業聞かなくていいのか?』

うん、まあね。この範囲は昨日に予習済ませてるし。

『そうか…もしかしたらお前は今までの宿主の中で一番真面目君かもな』

真面目ね~…みんなよく言うけど当たり前のことをやってるだけだよ?

『当たり前のことを当たり前のようにできることが凄いんだよ』

ふ~ん……あ。

ふと、グラウンドの方を見ると綺麗な赤色の髪をした女子生徒が

体操服を着てグラウンドを走っていた。

あの人はリアス・グレモリー先輩。

字のごとく、外国の方で北欧の生まれだとか。

この学校のマドンナ的な存在で女子から絶大な人気を誇るこの学校の

本当にマドンナ。

『相棒、あいつは』

分かってるよ、悪魔なんでしょ?

そう、彼女は悪魔と呼ばれる種族に入っている。

ドライグによると天使、悪魔、堕天使っていう種族の方々がいるらしい。

悪魔というと人の魂を奪うだとかそんな怖い面があると思っていたけど

ドライグ曰く、それは僕たち人間が作ったおとぎ話の中の悪魔らしい。

でも、若干怖いのは内緒。

 

 

 

 

 

 

「ん! んん~。今日の授業も終わったよ~」

その日の放課後、僕は固まった体をほぐす様に欠伸をしながら

家へと向かって歩いていた。

『ほとんどの授業をボーっと受けていたお前が疲れるのか?』

「失敬な。キチンと聞いてるもん」

「あ、あの!」

「はい?」

突然、呼ばれて後ろを振り返るとそこにはめちゃくちゃ可愛い子がいた。

ロングの黒髪で目はパッチリしてて制服もキチンと

着こなしててもう、すんごい美人だった。

「あ、あの兵藤君だよね?」

女の子は顔を少し赤くしながら体をくねくねしていた。

「え、ええまあ」

『相棒、そいつは』

今は黙ってて!

「な、何か用かな?」

「あ、あの! 一目見たときから好きです! 付き合って下さい!」

僕はその告白を聞いて動くことができなかった。

生まれてこのかた十六年……今年で十七年! 女の子に告白されることなど

なかった僕に初めての告白!

……でも、初対面の人からの告白だからね……なんか、若干

怖いけど……こんなかわいい女の子だからいけるよね。

「よ、よろしくお願いします!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日、初デートの日。

分かれ際に互いのメールアドレスを交換し、家に帰ってきた頃に彼女から

デートのお誘いを受けた。

だから前日の夜は必死にデートプランを立てて、その日に使うお金の予算なんかを

立てたり、ネットで僕が住んでいる地域のデートスポットを検索したりして

結局、ベッドに着いたのは夜中の1時だった。

「あ~眠れなかった」

『……相棒、だからあいつは』

「またその話? もう聞きあきたよ。夕麻ちゃんが

堕天使な訳ないじゃん。むしろ天使だよ」

『……もう何もないさ。楽しむだけ楽しめ』

そう言ってドライグは深いところに潜っていった。

……なんであんなにドライグが不機嫌になるのかが分からない。

あ、夕麻ちゃんだ!

顔をあげるとその先にある公園の入り口の前に、

夕麻ちゃんがカバンを持って立っていた。

「あ、ごめんね。待たせちゃったかな」

「ううん、今私も来たところだから」

うぅ! もう最高だー!こんなシチュエーション

マンガとかでしか会えないと思ったのに!

「ど、どうかな? 服とか」

夕麻ちゃんは半袖の上に薄い上着を羽織って、膝丈くらいの

長さのスカートをはいて、ハイヒールを履いていた。

こうして見ると僕と同い年には見えない色気が彼女から出ていた。

「う、うん。似合ってるよ」

「そ、そっか……よかった」

こうして僕は彼女という存在に酔いしれながら昨日、必死に考えたデートプランに

沿って夕麻ちゃんと一緒に生まれて初めてのデートを堪能した。

途中、何回も手が触れたりして気絶しそうになったけど。

「どうだった? 夕麻ちゃん」

「うん! 楽しかったよ」

もう既に空は茜色に染まりサラリーマンの人たちがちらほらと見えていた。

お仕事お疲れ様です!

「ねえ、イッセーくん」

すると夕麻ちゃんは公園に入ると僕に可愛い声で話しかけてきた。

「ん? 何かな」

「一つお願いしても良い?」

「うん! 良いよ!」

も、もしかしてキ、キスしてとか!? や、やばい! 口臭大丈夫かな!?

「そう……なら死んで?」

『避けろ相棒!』

ドライグの怒鳴り声を聞き、反射的に一歩下がった瞬間、僕の目の前を

白く輝く何かが通り過ぎていき、前髪が数本、落ちていった。

……夕麻ちゃん?

目の前にいる彼女はさっきまでデートしていた彼女とは容姿が変わっていた。

背中には真っ黒な翼を生やし手には光り輝いている槍があった。

「あら、よくあれを避けたわね」

「な、なんで? 何で夕麻ちゃんが堕天使なの?」

「あら、知ってたの? ま、もう関係ないか」

夕麻ちゃんは僕に槍を向けると体が言うことを聞かず、そのまま

地面に力なくへたり込んでしまった。

夕麻ちゃんはそんな僕を蔑むような眼でジッと見てくる。

『相棒……なぜ逃げる』

な、何故ってあんなのに勝てっこないじゃん!

それにあの子は夕麻ちゃんなんだ! 話し合えばきっと!

『いつまでお前は妄想しているつもりだ!』

ドライグの怒鳴り声を聞き、僕は思わず肩を大きくビクつかせた。

『もう奴はお前の知っている人間じゃない! 堕天使だ!』

じゃあ! どうすれば良いの!? 僕はただの弱い人間!

向こうは堕天使だよ!? 勝てる筈ないじゃん!

『勝てるさ。俺を使え。何を恐れる必要があるんだ?

相手は一人、お前も一人。強く願え、力が欲しいと』

「……い」

「何? 遺言? 残念だけどそんな物は聞かないのよ!」

「力が欲しい!」

すると突然、僕の左腕が赤く輝きだして夕麻ちゃんの投げてきた槍が消滅した。

余りの眩しさに目を瞑っていると、輝きが徐々に消えていくのがわかり、

目をゆっくりと開けると腕には赤色の籠手が装着されていた。

「す、凄い」

『それがお前の力、赤龍帝の籠手(ブーステッドギア)だ。存分にやれ』

「な~んだ。危険因子だって聞いたから強力なものかと思えば、

ありきたりなセイグリッドギアじゃない」

これが僕のセイグリッドギア…………で、でもこれでどうやって相手と

闘えばいいんだろ。相手は遠距離からの攻撃だってできるのに……籠手じゃ

近くに寄らないと攻撃できないよ。

『Boost!』

宝玉からそんな音声が聞こえてくると、僕の中で何かがドクンと

音をたてて膨れ上がっていくような感じがした。

え!? な、何が起きたの!?

「さっさと死になさい!」

夕麻ちゃんはまた槍を投げてくるけど何故か、さっきはギリギリ

見えたくらいだったのに今は遅いくらいに感じられた。

「ごめん!」

「きゃ!」

僕は姿勢を低くして槍をかわすとその勢いのまま、

夕麻ちゃんにタックルをかまして吹き飛ばした。

「や、止めてイッセーくん!」

「っ!」

その声を聞いた瞬間、僕の全身が丸で金縛りにあったかのように

動かなくなってしまった。

今、目の前にいるのは僕の初めての恋人……できないよ。僕にはどうしても。

「ふふ、バーカ」

 

 

 

 

 

 

 

「がっ!」

『相棒!』

僕が腕を下ろした瞬間、腹部に激痛が走り、背中から地面に落ちた。

ゆっくりと手を痛みがある場所に持っていくとともに視線を向けると

光の槍が僕のお腹を貫き、地面に鮮血を撒き散らした。

「よく覚えておくといいわ。女は騙すならトコトン騙すのよ。じゃあね」

そう言って夕麻ちゃんは翼を広げ、どこかへと飛び去った。

「げほげほ! ……はは、あ、かい……な」

『しっかりしろ! 意識をしっかり保て!』

ドライグの慌てたような声が耳に入ってくるけどその声もだんだん小さくなってきた。

こんな所で死ぬのか~……まだ、母さんにも父さんにも孝行してないのにな~。

「ドライグ……今まであり……がとね。こんな僕の話し……相手に……なってくれて」

『馬鹿野郎! そんな今際のときみたいな事を言うな!

待ってろ! 今俺が辺りに悪魔がいないか』

「い、いよ。ドライ……グ、次の宿主さ……んとも仲良……くね」

『相棒!』

あ~だんだん瞼が落ちていく……生きたかったな~。いっぱいしたい事あったのに。

「……死にたくない」

 

 

 

 

 

「貴方ね、呼んだのは」

薄れゆく意識のはしに一瞬だけ誰かの声が聞こえてきた。




どうも~


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Life2 悪魔の戦い方勉強しちゃいます!

「ん~うるしゃい!」

ガシャン! という何かが粉砕する音が聞こえた。

『は~、相棒。これで何度目だ、目覚まし時計を壊したのは』

寝起きで覚醒しきっていない僕の頭の中にドライグの声が響いてくる。

「んにゅ~眠いもん~」

「イッセー! さっさと起きなさーい!」

「は~い」

母さんの声が一階から二階の僕の部屋にまで響き渡る。

ベッドから起き上がろうとするけど、いつも以上に頭が重くて

体もまるで、鉛の様に重たく感じた。

うぅ~朝はいつも辛い……なのにその辛さがいつもよりも十倍以上

きつくなってる様な……着替えよ。

「………」

『どうした相棒。固まって』

「……いや……気のせいかな?」

日光の光が当たらない位置に行ったら、一瞬、体が楽になったような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

「おっす! イッセーって……なんだなんだ? 眠そうだなこの野郎!」

「んん~おはよ、元山君、松田君」

……頭が痛い……。

家を出た時からずっと、頭痛がしてたまらなかった。

頭痛を抱えながら僕は学校に向かった。

そして教室に入るといつもの通り女子たちと松田君と元山君の戦いが始まる。

いつも通りの時間に、いつも通りの勝敗だったのに……なんでだろ。

心にぽっかりと大きな穴があいたような感じがして仕方がない。

「ねえ……あれ」

「本物よ……」

すると教室にいた何人かの生徒が廊下を見て何やらこそこそと話していた。

僕もその方向を向いてみるとそこには、赤色の髪をしたグレモリー先輩がいた。

ジッとこちらの方を向いて。

「い、今俺見つめられてるんじゃ!?」

「バーカ、お前じゃねえよ! 俺だよ!」

「何を!?」

『相棒、少し話すことがある。人気のいない所に行ってくれ』

「……分かった」

そう言って僕は教室から出て、ほとんど誰も近寄らない旧校舎に足を運んだ。

「どうかしたの? ドライグ」

『ああ、実はな。昨日のことなんだが』

「っ!」

それを聞いたとたんに僕の背筋が凍りついて体中を悪寒が走った。

血圧も下がってきてるんだろう、だんだん立ってられなくなってペタンと

床に座り込んでしまった。

『大丈夫か!?』

「う、うん。続けて」

『あ、ああ。それでだ、昨日相棒は堕天使に殺された……はずだった』

「はずだった?」

『ああ、お前が死ぬ直前にグレモリーがやってきてお前を悪魔へと転生させたんだ』

「………悪魔になっちゃった?」

『なっちゃった』

「マ、まじまじか?」

『まじまじまじか』

はい、僕! 人間卒業いたしました。

 

 

 

 

 

 

まあ、それからは普通に授業を受けて友達と駄弁って放課後になった。

悪魔になった影響なのか僕が英語を読むと英語の先生が大絶賛してくれたり

暗い所では身体能力って奴? それが格段に上がったんだ。

それと耳もよくなった。何メートルも離れたところにいる人の会話も聞こえちゃう。

そんな事を考えながら昨日、人間の僕が殺された公園とは

別のところにある公園に立ち寄ってベンチに座った。

「は~、まさか僕が悪魔とは」

『仕方があるまい。そうせねばお前は死んでいたんだ』

「今度お礼に行こうかな。悪魔にしてくれてありがとうございます?」

『それは……相棒』

「ん?……ま、また」

ふと、顔をあげるとそこには黒い翼を生やした堕天使のおっちゃんがいました。

「まさかこんな所でお前のような存在に会うとわ。お前の属している主の名を言え」

「え、えっと……あ、悪魔になりたてです」

「つまりはぐれか。なら狩ってもなにをあるまい」

そう言っておっちゃんは光の槍を一本作って僕に投げてきた。

「ひぃ!」

僕は慌ててベンチから離れるとベンチに光の槍が直撃して砂ぼこりを

たててベンチが消滅した。

「し、し、死ぬ! 絶対に死ぬ! 無理無理無理! 勝てないよ!」

「逃げる気か? これだからクズは困る」

「クズでごめんなさい!」

僕はそう叫びながら逃げようとするけどドライグにまた怒られた。

『馬鹿野郎! 俺を使え!』

「で、できないよ!」

『良いから使え!』

「何をごちゃごちゃ言っている!」

おっちゃんは新に槍を生成して僕に放ってきた。

うわぁ! またおっちゃん投げてきたし! ええいままよ!

「ブ、ブーステッドギア!」

『Boost!』

そう叫ぶと僕の腕に真っ赤な籠手が装着され音声が辺りに響き

僕の体の中で何かが膨れ上がると同時に全身から何かが発せられて、

その何かに当てられた光輝く槍が一瞬で砕け散った。

え? え? い、いったい何が起こったの?

おっちゃんもこの事態を想定していなかったのかかなり驚いた表情をしていた。

「はぁ、はぁ、はぁ……さ、さよならー!」

「待て! 逃がすものぐぁ!」

い、今がチャーンス!

何か堕天使のおっちゃんにすんごい衝撃波みたいなのが

ぶつかって動きを止めている隙に僕はもうダッシュで逃げた。

 

 

 

 

 

 

 

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ。し、死ぬかと思った」

『相棒、頼むから戦ってくれ、ぐず』

何故かドライグは泣きながら僕にそう訴えかけてきた。

「だ、だってあんな強そうな堕天使と戦ったら絶対に!

それこそ確実に死んじゃうよ!」

『そうならない様に俺がいるんだよー!』

なんだか最近ドライグの一言一言が哀愁に満ちてきている。

「あ、いたいた、兵藤君だね」

「いぎゃー!」

突然、聞こえてきた声に僕は反射的にその場から逃げてしまった。

「ちょ! まっ!……すみません、部長。逃げられてしまいました」

「ふふ、構わないわ。祐斗、見つけてくれてありがと」

そう言い紅色の髪をした女性が僕の家に近づいて

行っている事に気付きもしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも通りの時間に目覚ましのけたましい音が聞こえてきた。

「うぅ、時計」

けたましい音を止めるべく布団の中から腕をヒョイッと出してベッドの

頭のうえらへんを動かして言っている最中にかちっという音が聞こえ、

時計のアラームの音が止められた。

時間がたつとアラームは自動的に止まる……でも、今のカチっていう

音って誰かが止めたってことだよね?

恐る恐る布団から顔を出して外を見てみると―――――――。

「おはよ、イッセー。寝顔も可愛いわね」

紅の髪に惚れぼれするように綺麗な笑顔を浮かべた学校のアイドルでマドンナの

リアス・グレモリー先輩が座っていた。

…………え、えっと。

「なんでぼくの部屋に」

「イッセー! さっさとおき」

最悪なタイミングでお母さんが部屋に入ってきてしまった。

「…………」

母さんは何も言わないまま、バタンと扉を閉めて不自然くらいに音を

立てずに階段を下りていき、そして一階で何やらギャーギャ―叫び始めた。

「ふふふ、朝からにぎやかなお家ね」

嫌、にぎやかなお家にしたのは先輩が原因であります!

 

 

 

 

 

 

「いただきます」

なんだかんだいってグレモリー先輩は普通に僕の家の食卓に入っていた。

それを母さんと父さんは珍しいものでも見るかのようにジッと見つめていた。

「とても美味しいですわ、お母様」

「は、はぁ~。それはどうもありがとうございますですわ」

母さん、それは言葉じゃないよ。

「そ、そのお嬢さんはどちらさんかな? イ、イッセー」

あ、明らかに父さんが動揺している……あんなに冷静な父さんなのに。

「あ、これは失礼致しましたわ。私としたことが

自己紹介をし忘れていたなんて……グレモリー家の恥ですわ」

先輩はそうブツブツとつぶやくとお茶碗をおいて自己紹介をし始めた。

「改めまして、リアス・グレモリーです。

イッセーくんとは良い先輩後輩ですわ」

「嘘だ!」

母さん、もうそのあり得ないような事に出くわした時に

ひ●●しネタをするのはやめようよ。

どれだけハマったとしてもだよ。

まあ、それからは先輩の自己紹介をして学校に向かった。 

……一緒に。

 

 

 

 

 

 

「もう無理」

教室に着いた時には既に僕のエネルギーはきれていた。

だってしつこく皆が質問に来るから。

どうしてお姉様と一緒に登校してきたの!? とか色々な事を

一気に訊かれたから色々と疲れた。

『まあ……なんだ。おめでとう』

おめでとうじゃないよー!

『良いじゃねえか。女がいっぱいいるんだ。以前の宿主の中には

俺のドラゴンの特性を使って毎日違う女を抱いていたぞ』

僕はそんな事には興味ありません!

『……相棒は少し欲を持とうな』

すると教室の所々から黄色い声が上がってきた。

僕も気になって顔をあげてみるとそこにいたのは

学校でイケメンと名高い木場祐斗君がいた。

「やあ、部長……じゃなかった。グレモリー先輩から通達だよ。放課後、

旧校舎のオカルト研究部に来てだって」

「は、は~」

そう言い木場君は教室を去っていった。




こんにちわ~


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Life3 シスターさんとエンカウント

放課後、僕は木場君に言われたとおり旧校舎にあるオカルト研究部の前に立っていた。

でも、オカルト研究部と言えばあの美人が多く集まっている部活で入ろうとしても

特殊な審査らしきものがあるらしき、今まで誰も入部出来た者はいない。

確か今の部員の数は数人だったはず。

「入るべきか、入らないべきか」

『そこは入るべきだと思うが』

「だって入ったら絶対に何か言われるじゃん……うん、帰ろ帰ろ」

という訳で僕が帰ろうと後ろを向くけど一向に前に進めなかった。

「……兵藤先輩。帰らないでください」

「こ、小猫ちゃん。制服を引っ張らないで」

後ろを振り向くとそこにはムスッとした顔で僕の制服の裾を

掴んでいる塔城小猫ちゃんが立っていた。

毎度ながら凄い力だ。

「……さ、こちらへ」

僕はそのまま無理やり部屋に入れられて椅子に座らせられるとそこには

グレモリー先輩と木場君……後は……名前が分からない美人な先輩がいた。

「あら、あなたが兵藤君ね。私は姫島 朱乃(ひめじまあけの)ですわ」

「あ、手伝いますよ」

「あらあら、良いですのよ」

「いえ、そんな訳にはいきません」

そう言って僕は朱乃先輩のお手伝いをしているとどこからかグレモリー先輩も

部屋にやってきて全員集合となった。

 

 

 

 

「貴方は悪魔になったの。分かるかしら」

この前に聞いたドライグの話によると悪魔の世界には有能な種族の物を

イーヴィルピースと呼ばれるもので悪魔に転生させて、己の下僕として

手に入れることが一種のステータスとなっているらしい。

「は、はい。そこんところはドライグから聞いてます」

「ドライグ? 誰かしら」

グレモリー先輩はとても不思議そうな顔をしていた。

「こいつの事です」

そう言って僕は神器を発動させるとなぜかみんな驚いたような顔をした。

「イ、イッセー。なんでセイグリッドギアを使えるの?」

「え、えっと幼いころから僕とドライグは話していたんです。

でも話すだけでこの力を使うのは初めてですけどね」

「そう……まあ良いわ。これからよろしくね、私の可愛い下僕さん」

「はい! 頑張らせていただきます!」

部長は朗らかに笑みを浮かべながら僕にそう言った。

こうして僕はグレモリー先輩の下僕悪魔になりました。

「……お久しぶりです。兵藤先輩」

「ハハ、久しぶりだね。小猫ちゃん」

ちなみに小猫ちゃんとぼくは顔なじみだったりする。

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……なんでこうなるの!?」

こんばんわ、今僕は必死に自転車を漕いで契約者さんのもとに向かっています。

本当なら魔法陣を使ってバビュンと契約者さんのもとに行けるんです。

……が僕まだ悪魔になりたてのせいか、魔力がダメダメクラスしかないので

飛べなかったのでだったら自転車で行こう!

という事になって漕いでるんですが……遠すぎる。

「はぁ、はぁ……やっと着いた」

自転車をこぐこと三十分、ようやく依頼者さんのお家に着いた。

「んん!」

僕は自転車から降りて、インターホンを押すと女性の声が聞こえてきた。

『あ、新聞なら結構です』

「……って違います! 悪魔です! グレモリー先輩の悪魔です!」

「……悪魔なら飛んでくるんじゃないの?」

何故かドアを少し開けたまま小さな隙間からこっちを覗いてる。

めちゃくちゃ怖い絵面だな。

「な、なりたてなもんで」

「入って頂戴」

「お邪魔します……く、臭ぁ!」

入ったとたん、僕の鼻孔を通って凄まじい悪臭が鼻の穴に入ってきた。

な、なんだこの匂いは! っていうかこの部屋何!? 汚すぎて床が見えないよ!

廊下には大きなゴミ袋らしきものがズラッと並べられ、

居間らしき部屋に案内されるとそこはもう見るに見かねる惨状だった。

食品は食べ残したまんまで放置され、アリがわんさか集り桜吹雪の様に生ゴミ袋からは

子バエが溢れ出していた。

「ひぎゃぁぁぁぁぁ! む、む、虫ぃぃぃぃ! 虫は嫌だぁぁ!」

「うるさいわね~。ほっときなさいよ」

「嫌だぁぁぁ!」

『Boost!』

無意識のうちに神器を呼び出していた僕はBoostを一回かけて魔力を辺りに

拡散させてアリやら子バエやらどっぷり太ったゴキブリを一斉に燃やしつくした。

「うわぁぁぁぁぁぁん! 虫は嫌だぁぁ!」

「ちょ! あんた落ち着きなさいよ!」

こうして僕は契約者さんに止められてようやく落ち着いた。

「うぅ、ぐす! 片付ける」

「は?」

「こんな部屋片付けてやる!」

そう言い僕は床に散乱している洗濯物やら、ゴミやら食べカスやらを、一斉に

片付け始めた。台所に行くともう生ゴミが、何年も放置されているような悪臭を

出していたのでどうにかして、片付けると洗濯物、食器洗い、掃除から何から何まで

全部、契約者さんを無視して掃除し始めた。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ~綺麗になった!」

大体3時間程、かけて僕は契約者さんのお家を普通に住めるくらいにまで片付けた。

「……す、凄いわね」

「何でこんな汚い所に住んでるんですか?」

「……ぐす」

そう言うと、いきなり契約者さんが泣き始めた。

なんで!? 

僕が宥めて訳を聞くと今から1か月前、高校生の時から付き合っていた

彼氏が浮気をしたらしい。それも一目惚れだとか言って一方的に

別れを告げて出ていったらしい。

「それでね! 私との数年間はなんだったのって聞いたらなんていったと思う!?」

「さ、さあ~?」

契約者さんはかなり興奮気味に僕に迫ってきた。

「そんなもん知るかだよ!? 今まで尽くしてきたのに! たった

一回しか会わなかった女に私は負けたのよ! それからは何事もやる気がでなくなって」

「そんな事が……確かに、彼氏さんは悪いです」

「でしょ!? 仕方無いのよ」

僕の意見に契約者さんは開き直るけど僕は続ける。

「でも、その後はあなたが決める事です。いつまでも前の恋愛を引きづってると

本当の運命の人が見えないですよ? 失恋したならきっぱり諦める!

その別れられた彼氏が後悔するような良い女になれば良いんですよ!」

「………私もう一回頑張ってみようかな」

その後はずっと契約者さんのケアに回りました。

 

 

 

 

翌日の放課後、部室に行くと不機嫌そうな顔をした部長がいました。

「イッセー、前代未聞よ」

「え、えっと何がでしょうか?」

「契約をした後に感想を書いてもらうんだけど……まあ、聞くよりもこれを見て頂戴」

部長は机の引き出しから一枚の紙を取り出して机に置き、僕に見せてきた。

『よかった』

「これは?」

「それよりも次を見て頂戴」

部長は僕に感想の一覧の様なものを見せてくれるとその一番上に、

昨日僕が担当した契約者さんの感想があった。

『イッセーくんのお陰でふっ切ることができました! イッセーくん! 

良かったら今度家に来てね! 料理作っちゃうんだから!』

「あ、あのこれは」

「さっきの感想を書いた人と昨日あなたが担当した人は同じ人よ」

「え? ……う、嘘ですよね?」

「本当よ。契約者を復活させてどうするのよ」

部長はかなり呆れているのか大きなため息をついた。

悪魔の夜のお仕事は契約を取り、代価を貰うこと。

それが悪魔のお仕事らしく、僕がやったことは模範的な回答から見れば

ゼロ点をつけられるくらいのことらしい。

「す、すみません」

「ふふ、まあ良いわ。これからもがんばって頂戴ねイッセー」

「はい!」

部長は少し、呆れ気味に笑いながらも僕を許してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

翌日の朝、なんとか太陽が出ている日中でも、

いつも通りの力に近い状態で動けるようになった。

なんでも悪魔は太陽の光、そして聖なるものに弱いんだって。

「んん~。眠いな~」

「ひゃん!」

突然、女性の声が聞こえてきたので聞こえてきた方向を向くと

何もないところでこけているシスターさんがいた。

大事な事だからもう一回言うよ、シスターさんがいます。

「イタタタ、あ!」

風が一瞬強く吹いて被っていたヴェールが飛んで行ってしまった。

「とう!」

それを僕はジャンプしてキャッチしてシスターに近づいていった。

「あ、ありがとうございます~」

伏せていた顔が上がり、彼女の顔が僕の目に映ると僕はフリーズしてしまった。

めちゃくちゃ美人です!

どこぞの怖いヤンキーみたいにエセ金髪ではなくて純粋な金色の髪に

グリーン色の双眸が僕を射抜いていた。

逆に僕は射抜かれていた。

「あ、あの~」

「あ、だ、大丈夫!?」

「はいぃ~。えっと、ここら辺に教会ってありますか?」

「あ、うん! 教会ならあるよ、もしかして迷子?」

「はい。ここに来たばっかりで日本語もあまり上手ではなくて」

あ、そっか。

僕は悪魔だから外国の言葉でも日本語に聞こえるんだ。

「良いよ、着いて来て」

そうして僕はシスターを教会に連れていきました




どうも~


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Life4 教会に近づいたら怒られちゃった

「今後二度と教会に近づいちゃダメよ」

只今、僕は部長にお叱りのお言葉を受けています。

シスターさんをこの街にある教会に連れていった後教室へ向かうと再び

木場君に部長からの伝言を告げられ、

放課後、伝言に従って部室に行くと部長に座らされて、お説教が始まった。

「え、えっとですね。いい訳をしてもよろしいですか?」

「ええ、どうぞ。私が怒らない程度に」

そうは言うが部長のオーラはすでに怒りで染められていて

目つきも普段と比べるとかなり細いものになっていた。

「シ、シスターを」

「イッセー!」

「はいぃぃ!」

僕がいい訳をする前に部長の怒鳴り声が聞こえてきた。

「シスターを送っていたって貴方は言いたいんでしょうけども貴方はさっきまで

どこから光の槍を受けてもおかしくない状況だったのよ! 今の天使と悪魔の関係は

最悪なものになってるわ。シスターと一緒に悪魔がいたというだけで糾弾される。

……ごめんなさい、少し熱くなりすぎたわ」

「は、はい。す、すみませんでした」

ヤ、やっぱり人に怒鳴られるのは怖いよ!

「分かってくれればいいわ。イッセー」

すると真剣な表情をした朱乃さんが部屋に入ってきた。

「部長。大公から討伐の命令が来ましたわ」

 

 

 

 

 

はぐれ悪魔、そんな存在がいるらしい。

せっかく下僕にしてもらったにもかかわらず主を殺したり裏切ったりした悪魔のことを

はぐれ悪魔というんだってさ。そう言えばドライグに昔に聞いたっけ。

そんな訳で僕たちは今町のはずれにある廃屋に来ていた。

電灯も全くなく周りは真っ暗。

「うぅ、こ、怖い」

真っ暗なところが苦手な僕はガクガク震えながら小猫ちゃんの腕を掴んで歩いていた。

「……兵藤先輩。動きにくいです」

鬱陶しそうに小猫ちゃんは僕の手を離す。

「ひぃ! こ、小猫ちゃん! 腕を放さないで!」

「ふふ、イッセーくんは怖がりなんですのね」

隣から姫島先輩の優しい声が聞こえてくる。

「は、はい」

「でしたらこう言うのは」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

僕は朱乃先輩がライトを顔にあてて近寄って来たからダッシュで逃げて今度は

木場君の腕にしがみついた。

「イ、イッセーくん。重いよ」

「き、木場君しかいないんだ! お願いだから腕を離さないで!」

「……血の匂い」

いつの間にか廃屋のすぐ近くにまで来ていたようだった。

怖くてほとんど気付かなかった。

「イッセー、いい機会だから悪魔としての戦いを経験しなさい」

「え? ぼ、僕も戦うんですか?」

「当たり前じゃない。貴方はポーンなのよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

悪魔の駒(イーヴィルピース)。

悪魔はその昔、天使とのいざこざで純粋な悪魔の同胞を失いその数は激減した。

ただでさえ出生率が低い悪魔はこの事態にさっき挙げた悪魔の駒を使い僕のような

神器を宿した人間を悪魔に転生させてその数を増やそうとしている。

さらに上級悪魔が下僕を持ちお互いの駒を戦わせるという

レーティングゲームというものが流行っている。

「いやいやいや! ぼ、僕は」

「良い匂いがするぞ? 不味そうな匂いもするぞ」

「ひぃぃぃぃ! 出たぁ!」

廃屋の中に入ると声が聞こえ、ジッと目を凝らすと

向こうのほうに物凄い恰好の女性が立っていた。

その格好は上半身は裸の女性で下半身は四本の脚がうねうねしている足だった。

「はぐれ悪魔バイザー! 主の元を離れ己の欲求を満たすために

動く悪魔は万死に値するわ! グレモリー侯爵の名のもとに滅してあげる!」

部長は凛々しく、恐ろしい姿をしている悪魔に向かって言い放つ。

か、かっこいいな~。部長がお姉さまって慕われているのが分かる気がするよ。

「こざかしぃぃぃ! 小娘ごと気がぁぁぁぁぁぁぁ!」

「祐斗!」

「はい!」

部長に名前を呼ばれた木場君は持っている剣を構えた。

次の瞬間には、先程まであった場所に木場君の姿がなかった。

あ、あれ? 木場君が消えた。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

突然、バイザーが叫んだかと思うと腕を切られて血の噴水を出していた。

その足もとにはいつの間にか移動していた木場君がいる。

さらに木場君は追い打ちをかけるように

いくつかのステップを加えながら高速で移動しながらバイザーを切り刻んでいく。

「祐斗の駒はナイト、ナイトの特性はその速度よ」

その動きは徐々に速くなっていき遂には見えなくなってしまった。

「次は小猫ね。あの子の駒はルーク。ルークの特性は簡単よ」

小猫ちゃんはスタスタとバイザーの近くに歩いて行く。

「踏み潰してくれるわぁぁぁぁぁ!」

―――――ドォォン!

バイザーが小猫ちゃんをその巨大な足で踏み潰そうとするけど

小猫ちゃんは片腕だけでバイザーの攻撃を受け止めていた。

「……吹き飛ばす」

小猫ちゃんはそのまま足を一本持つとジャイアントスイングの

要領で振り回してバイザーを床に叩きつけた。

「ガッ!」

バイザーは苦しそうな苦悶の表情を浮かべ肺から息を吐きだした。

「最後は朱乃ね」

「はい、部長。あらあらどうしましょう」

姫島先輩は上品な笑顔を浮かべながらバイザーに近づいて行く。

「ぐぅぅぅぅぅ!」

バイザーは先輩を潰そうとその、巨大な蛇の胴体を叩きつけようとするが

「ふふ、しつけの悪い子にはこうですわ」

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

胴体が先輩に叩きつけられる前に雷がバイザーに直撃した。

「朱乃はクイーン、私の次に強い駒よ。彼女は雷を使うから

雷の巫女って呼ばれてるわ。後Sね」

……朱乃先輩はさっきからずっとバイザーに雷を落とし続けている。

どれだけあいつが泣き叫ぼうとも。

朱乃さんが攻撃を止めるころには既にバイザーは戦意を喪失していた。

動かなくなったバイザーの元に部長が静かに近づいて行く。

「最後に言う事は?」

「殺せ」

「そう、さよなら」

そう言ってバイザーは部長の魔力を受けて消滅した。

「あ、あの所で僕の駒はポーンですよね? 何か特性はあるんですか?」

「ポーンはねプロモーションというものがあるわ。キングを

除くすべての駒になることができるの」

なんかすごいのか凄くないのかよく分からない駒でした。

 

 

 

 

そして僕はいつもの悪魔稼業に戻っていた。

今度こそは契約を取る! と意気込みながらも

まあ、そんな都合よく行くものではなく再び僕は契約者さんを復活させてしまった。

なんでも受験に失敗した人でもう俺は駄目だとか言って首をつりかけてた。

その時は腰が砕けそうになったけど何とか保って自殺を止めた。

そこから話を聞いていったらあら不思議、もう一年頑張るよって。

僕は復活の呪文でも使えるのだろうか?

『相棒の性格上、悪魔稼業は無理だな』

「な、何を言うか! よ、よし! 今日の契約は必ず取ってやる!」

『ほほ~俺は出来ないに500だ』

「出来たら五十だかんね!」

この500とか100というのはいつもしている鍛錬の回数である。

腕立て伏せなどがあるがいつもは100回を5セットやっている。

それだけでもキツイのに500とか死ぬし。

「えっと、ここかな……空いてる」

僕はインターホンを押そうとするとギィっと音がして

ドアが半開きになっていた。

『相棒、俺を準備しておけ』

「う、うん」

『Boost!』

僕はドライグの言うとおり赤龍帝の籠手を発動させて中に入っていった。

「グ、グレモリー家の悪魔で~す。だ、誰かいませんか~」

なんだか知らないけど廊下にはろうそくが

何本も立てられてるし電気をつけようにも点かないし。もう嫌だ!帰りたいよ~!

「あ、あの~だ、誰か~……誰もいないの?」

リビングに入っても誰もいないから今日のところは帰ろう。

―――――ピチャ。

「うわぁ!……あ~びっくりした。下が濡れて……う、嘘」

僕は靴下の裏側を見てみるとそれはただの水じゃなくて赤色をしていた。

その赤色の液体はある一点から川みたいに流れててその源流を辿っていくとそこには

「あぁぁぁぁぁぁ!」

そこには壁に貼り付けられ、無残に斬りつけられたあとから

内臓らしきものが顔を出していたこの家の主であろう人物が貼り付けられていた。

余りのショッキングな光景に僕は腰を抜かしてしまった。

「んん~!? 誰ですか~!? おやおや!? 悪魔君ではあ~りませんか!」

後ろから声が聞こえてきて、振り向くとそこには

白色の髪をした神父らしき男性が立っていた。

「あ、貴方が殺したんですか?」

「ん~ザッツライト! 悪魔に頼ろうなんて人間は屑ですよ!

そんな奴はみ~んな死んじゃえば良いんですよ~!」

な、何この人! く、狂ってる! 悪魔に頼っただけで殺すだなんて。

『相棒、今は十分Boostがかかっている。あいつ程度なら倒せるさ』

む、無理だって! じゅ、銃も持ってるし!

「てな訳でバイチャ!」

「ひぃぃぃ!」

僕はもう無我夢中で急いでその場を離れると壁に穴があいた。

「んん~? おかしいですね~。何で銃声も聞こえないのに避けれんだ?

ま、いっか~殺しちゃいますからねー!」

神父は何かをポケットから取り出し、僕に向けると何もなかったところから

光が吹き出し、それがビームサーベルのような光輝く刀身をつくって、斬りかかってきた。

「わっ! わっ!」

『相棒、落ち着いて奴の剣と銃を見ろ。剣だけに集中すれば銃でやられる、良いな?』

うぅ、こんな所で死にたくないから頑張ってみるけど。

「てな訳でバイチャ!」

「ひぃ!」

僕は情けない声を出しながらギリギリでかわすと神父が銃をこっちに向けてきたから

撃たれる前に手で銃を力いっぱい払って顎を思いっきり殴りつけた。

「ごめんなさい!」

「ぐべぇ!」

―――――バコォォン!

顎を殴られた神父は数歩、後ろに後ずさった。

『やれば出来るじゃないか、やはり少し臆病な方がいい。

臆病であればある程、相手の攻撃をよく見てかわせる』

「い、今のうちに」

「ところがギッちょん!」

「あぎゃぁぁ! あ、足が!」

帰ろうとすると、あの神父に足を撃たれてしまって、

あまりの痛さに動けなくなってしまった。

「たっく、クズな悪魔の癖に調子こいてんじゃねえよ!」

「あぎゃぁ! はっ、はっ!」

神父はまるで木を切る感じで何の戸惑いもなく僕を斬ってきた。

「じゃあ、そろそろ」

「きゃー!」

女の子の悲鳴が聞こえたかと思うとそこにはシスターさんがいた。




こんばんわ~


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Life5 

「な、なんで? フ、フリード神父、これはいったい」

声のした方向を見るとそこには先日、教会まで送り届けた

金髪シスターさんがいた。

「んん~?そう言えばアーシアちゃんはビギナーですたな~。

教えてあげますよ! 目の前にいる悪魔に願いをかなえてもらおうとする 

奴らはこんなふうに皆殺さないといけないんですよ!」

白髪神父はもう死んでいるのにも関わらず平気な顔をして……いや、楽しそうな顔をして

壁に張り付けられた遺体に何発も、銃弾を撃ち込んだ。

「イ、イッセーさんがあ、悪魔?」

アーシアと呼ばれたシスターの女の子は僕の顔を見て

悲しそうな表情を浮かべていた。

……そうだよね。初めて会った人が敵対してる悪魔だって知ったら仕方ないよね……。

しかし、アーシアさんは急いで近づいてきて

手から淡い光を出して僕の傷口に光を当て始めた。

淡い光が当てられたか所の傷が徐々に治っていく。

「まさか君もセイグリッドギアを?」

「はい、傷を癒す光です」

「はぁぁぁぁぁ!? 何悪魔を治しちゃってんのかな!?」

「きゃ!」

「アーシアさん!」

あの神父はアーシアさんを壁に押し付けると銃をちらつかせて脅し始めた。

「悪魔なんざ全員殺せばいいんだよ! その悪魔を治したせいで

てめえは教会を追われたんだろうがよぉぉ!」

「悪魔にも良い人はいます!」

「いねえっつうの! たっく新人シスターが悪魔に

魅入られてるんじゃ……殺すわ」

……こ、殺す?

アーシアさんを殺す?

 

 

 

 

 

ダ、ダメだ……あんなにやさしい子が殺されていいはずがないんだ!

「じゃあ、ぐっば……ありゃりゃ? まだ立っちゃう?」

僕は震える足を何度も叩きながら白髪神父と対峙した。

やらなきゃダメなんだ……やらなきゃダメなんだ!

『Boost!』

宝玉から光が溢れ出してきてそれに伴って倍化がかけられ僕の

魔力は何倍にも膨れ上がった。

膨れ上がった魔力を感じ取った白髪神父は顔を歪めて叫び始める。

「な、なんなんすかー!? そのおっかなびっくりの魔力ちゃんの量はよー!」

「う、うわあぁぁぁぁ!」

僕は体の動くままに殴りつけるけど神父はそれを避けた。

避けられた拳はそのまま床にぶち当たって大きな穴をあけ、

家全体がぐらぐら揺れた。

『相棒落ち着け!』

「あ、はっ」

「今がチャンス!」

神父が僕に向かって何発も弾丸を撃ってきた

けど、その弾丸は僕に当たること前に突然、

現れた木場君の剣によって全て落とされた。

「私の可愛い下僕に手を触れないで頂戴」

僕の目の前に光輝く魔法陣が出現し、そこからオカルト研究部の皆がドンドン

でてきて、僕の目の前に立った。

「ぼくちゃんテンションフォルテッシもだよー!

ザクザク切り殺してやっちゃうんだからー!」

「させないよ」

「ふん!」

「ぐうぇ!」

神父の剣を木場君が真っ黒な剣で防ぐと、小猫ちゃんがとても大きなタンスを

バットの様に振り回して神父を弾き飛ばした。

「あ、あぁぁ」

「イッセー! しっかりしなさい!」

そこで僕の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

「部長、ジャンプの準備ができましたわ」

「分かったわ! 小猫! 祐斗!」

「「はい!」」

「逃がすもんですかー!」

神父は僕たちに弾丸を何発も放つけどそれらは全て小猫ちゃんが持っていた

大きなタンスによって防がれ、その次の瞬間、僕達の周りを光が包み込み

ジャンプが完了した。

「イッセーさん、また会える日に会いましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

『まあ、命に別条がなくてよかったな』

あれから、一晩開けた翌日、僕は放課後に河原で座っていた。

「ねえ、ドライグ」

『なんだ』

「僕でも強くなれるのかな?」

『……』

僕の質問にドライグは答えなかった。

「こんな弱っちい僕がドライグを宿していても宝の持ち腐れだよ」

『そんな事はない。今までの所有者の中で一番早くに俺と対話ができたのは

お前だしここまで仲が良くなったのはお前が初めてだ』

ドライグは必死にフォローしてくれてるんだけど今の僕にとってその言葉は重くのしかかった。

逆を言えば僕はそれ以外は最低ランクなんだ。強さも、魔力も。僕はジャンプができない。

理由は魔力があまりにも少なすぎるから。僕の魔力量は赤ちゃん以下だってさ。

「赤ちゃん以下の魔力しかない僕がどう足掻いたって強くなれるはずがないよ」

『………』

はは、ドライグも黙っちゃった。まあでもそれが一番正しいんだけどね。

「……痛いな、足の傷と腕の傷」

治療してくれた姫島先輩曰く、悪魔は光の力に弱くそれによる傷は

悪魔による治療では治りにくいとの事。

「私が治しましょうか?イッセーさん」

「え? ……ア、アーシアさん!?」

誰が話しかけてきたかと思うと後ろにいたのは何とアーシアさんだった。

「な、なんで」

「とにかく傷を私に見せて下さい」

そう言って僕の足の傷に手を近づけると手から淡い光がポワっと出てきて

徐々に傷を治していった。

「す、凄い。これが君のセイグリッドギアの力」

「はい。トワイライト・ヒーリングっていうみたいなんです」

「聖母の微笑みか……アルジェントさんにはぴったりじゃないかな?」

「ふふ、私は聖母じゃありませんよ」

それから僕たちはいろんなことを話し合った。

身近な事でいえば誕生日はいつだとか兄弟はいるのかだとか、

そんな事を話しているといつの間にか日が暮れ始めていた。

「もう、こんな時間か」

「そうですね……イッセーさん」

「ん? 何かな」

「私のお友達になってくれませんか?」

「……うん、良いよ。ってかもう友達だよ」

僕は手を出すとアルジェントさんも小さくて可愛い手を

出して握手をしようとした瞬間、

「あら? 生きてたの? しかも悪魔に転生だなんて最悪じゃない」




こんにちわ~。
如何でしたか?


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Life6 戦っちゃいます!

「ゆ、夕麻ちゃん」

「はぁ? もうそんな名前捨てたわよ、私の名前は

レイナーレよ。あまり悪魔と喋りたくないの」

レイナーレは僕をまるで、汚いものでも見るかのような目で見てきた。

……やっぱりもうあの彼女はいないのかな。

「レ、レイナーレ様」

アーシアさんは体を大きくふるわして僕の背中に隠れていた。

「さ、アーシア。そんな悪魔の隣にいるんじゃなくて私の

ところに戻ってきなさい。今なら何も言わないから」

僕の時とは大違いの優しい声でレイナーレはアーシアさんに近づいくる。

「な、なんでこの子を連れて行こうとするの?」

「話しかけないで頂戴。さ、アーシア。

私達の計画に貴方の神器が必要なのよ」

レイナーレとか言う堕天使はさも当然のようにアルジェントさんを道具扱いした。

「も、もう人を殺すような教会には戻りたくありません!」

「アーシア、私が優しい間に早くこっちに戻ってきなさい」

「そ、それ以上近づくな!」

『Boost!』

僕はレイナーレにセイグリッドギアを装着してけん制するけど

彼女はそれを見ると大笑いし始めた。

「アハハハハ! 教えてあげるわ!貴方のその神器は

トウワイス・クリティカルって言ってありきたりな神器なのよ!

その能力は所有者の力をたった2倍にするだけなの。その倍加する

魔力の量が膨大であればある程それは猛威だわ、でもね。

貴方みたいなカスの魔力量じゃ1が2に

変わるだけでなんにも怖くないのよ! それに」

レイナーレは僕に近づいてくると耳元で静かに呟いた。

「私を殴っちゃうの? 初めての彼女なのに。イッセーくん、怖いわ」

「っ!」

額から汗が滴り落ちてきて血がサーっと頭から下のほうに下がっていくのが鮮明に分かった。

それほど僕は彼女という存在がトラウマになり、また恐怖の種となっていた。

「さ、行きましょ。アーシア」

「……はい」

そのままアルジェントさんはレイナーレに連れていかれた。

彼女が飛び去ってから数分後、僕はようやく座ることができた。

それからは僕は蹲って泣いているのを誰にも悟られないようにするのが精一杯だった。

 

 

 

「イッセー、それ本気で言ってるの?」

「…………はい」

僕は部室に行って部長にある事を伝えていた。

今の、部室の雰囲気はいつものような明るいものじゃなく、どんよりとした暗い雰囲気だった。

「僕の命を助けていただいた恩は一生忘れません。でも、僕が近くにいれば

皆さんに迷惑をかけるお邪魔虫になります。ですから僕をグレモリー先輩の

眷属から外してください」

――――――パチィン!

っ! 頬を叩かれるのはいつ以来だろう。

グレモリー先輩の表情は見なくても分かった。

怒ってらっしゃる。

「目が覚めたかしら? それでも辞めるというの?」

「……はい」

「そう……なら、帰って頂戴。2度と私の前に姿を現さないで」

僕の答えに部長は怒気を含んだ声で僕にそう言い放った。

……聞きなれてる言葉だけど結構辛いな。

僕はもう一度先輩に頭を下げてから部室を出ていった。

これで良いんだ。僕がいれば先輩たちに迷惑がかかってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

僕は部室から出て、少し離れた壁にしゃがみ込んだ。

「ごめんね、ドライグ。前に言ってた

白との決着の前に僕死んじゃうかもしれない」

『……もう構わないさ。お前がそう決断したならばそれで良い。

俺はお前とともに長い余生を楽しく過ごしていくさ』

「ごめんね、僕が生まれて。ごめんね」

誰にも見られない様に隠れながら僕は籠手を涙で濡らしてひたすら謝り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「部長、よろしいのですか?」

「朱乃……」

イッセーくんが部室を出てからこの部屋の中は何だか変な空気になっていた。

いつもなら朱乃さんの笑い声だったり楽しそうな雰囲気なのにイッセーくんが

辞めていっただけでこんなにもムードが下がるなんて思わなかった。

「そう言えばイッセーくんが来てからこの部室は騒がしかったっけ」

「……いつまでも引きずってちゃダメだわ。今はあの事について考えましょう」

部長の一言でいつも通りの…一人抜けた会議が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~」

僕はあれから家に帰るとすぐにベッドに横になった。

母さんと父さんにはばれてないと思うんだけど。

「お帰り、今代の赤」

「うん、ただいま……っ! 痛!」

僕は急に聞こえてきた知らない人の声に驚いて思いっきり壁に頭をぶつけてしまった。

目の前にいたのはゴスロリ衣装を着て真っ黒な髪を結構な長さにまで伸ばした女の子だった。

『久しぶりだな、オーフィス』

「うん。我、ドライグに会うの久しぶり」

「だ、誰!?」

『こいつは俺とおなじ龍だ。それも俺よりも遥かに強い最強の龍。無限の存在である

ウロボロスドラゴンのオーフィスだ』

よくは分からないけどつまり、この子はドライグのお友達ってことか。

「あ、ドライグのお友達? 僕は兵藤一誠」

僕はそう解釈し、自己紹介をしてオーフィスと握手をした。

「我、オーフィス」

この子を見ているとなんだか、感情の起伏がないように思えてくる。

「で、なんでここに?」

「今の赤、歴代最弱。それを確認しにきた」

っ! 歴代最弱か……ドライグに悪いことしちゃったな。

オーフィスに言われたことを分かっていたのに僕の胸には深く突き刺さった。

「でも違った」

「え?」

オーフィスの言った言葉を僕は理解が出来なかった。

「汝、歴代最弱じゃない。歴代最強の赤になる」

な、何を言ってるのオーフィスは……僕は本当に弱いのに。

『良かったな相棒。オーフィスのお墨付きだ、てな訳で行こうぜ』

「ど、どこに」

『決まってんだろ、あのシスターを助けに行くんだよ』

「で、でも僕は弱いし」

「なら蛇を飲む」

「え? むぐぅ!」

いきなりオーフィスに口を手で押さえられたかと思うと

何かが口の中に入り喉を通り体の奥底に入っていった。

でも、体の中で何かがバチンと弾かれるような音がした。

 

 

 

 

 

「? 蛇が焼かれた」

『オーフィスの蛇を焼くほどとはな。オーフィス、お前はどう考える』

オーフィスはドライグの質問に感情の起伏を一切見せずに淡々と答えていく。

「今代の赤の魔力の量、赤子以下。でも魔力の質、異常。我を超える異質さ」

『オーフィスをも超える異質さか……これで

納得がいった。で? どうするんだ? 相棒』

ドライグが僕に聞いてきた。

僕は弱い。弱すぎて相手にもされないほど弱い……でも、

それが何もしなくていい理由にはならないよね。

「弱いとか、運が悪いとかだけで何もしなくていい

理由にはならない……ある特撮番組の名言だよ」

『行くか相棒!』

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

てな訳でアーシアさんが囚われているっていう

教会に来たんだけども……こ、怖いよー!

灯りは全くないし、風で木々が揺れる音が武器ま感じを醸し出している。

「こ、ここで合ってるんだよね?」

僕は教会の入り口であろう大きなドアの前に立ち、ドライグに訊いた。

『ああ、奴の魔力はここから感知できる』

「えっと、ひとまずこう言うのって呼び鈴を鳴らしてから入った方が」

そう言うとドライグは心底、呆れたような声を出した。

『……相棒、お前は死ぬ気なのか? どこの神父様が悪魔を正面から

笑顔で迎え入れてくれると思ってるんだ!?』

「だ、だよね~……き、緊張するな~」

『さあ、派手に行こうじゃないか!』

『Boost!』

その掛け声とともに倍加が始まり僕は扉を思いっきり殴りつけると

綺麗にピシッと裂けて吹っ飛んだ。

「ぎゃははははははは! 悪魔さん、いらっしゃ~い!」

「ひぃぃ! 開口一番撃ってきたぁぁぁぁ!」

扉が開いた瞬間、神父は狂ったように笑い声を上げながら

弾丸をこちらに向けて撃ってきた。

……あの、笑い声がなかったら今頃、蜂の巣だよ……。

「きひひひひ! まさか、一人で来るとはねー! 舐められたもんだZE♪!」

『さあ、相棒。復習の時間だ』

ドライグから教えられた事を順番に思い出していく。

「えっと、相手の攻撃をよく見る」

「Yahha!♪」

「うわっと!」

僕は神父が引き金を引くのが見えた瞬間に、姿勢を低くすると

床に弾丸がめり込んだ。

『Boost!』

今、2回目の倍加がされた。

でも、まだ足りない。あいつに勝つにはもっともっと力が必要なんだ!

「避けてばっかじゃ勝てないっすよー!」

「避けてばっかじゃない! うりゃぁぁぁ!」

「どわぁぁ!」

僕はそこにあったソファーをどうにかして持ち上げて、投げたら神父に直撃した。

悪魔になってからいろいろと身体能力が強化されているから、握力が

七十代のお婆ちゃんなみの僕でも箪笥を持ち上げることができるようになっていた。

『Boost!』

三回目の倍加……よし! 気合いを入れるんだ僕! 

アーシアさんを助けに来たんだから!

「こんのクズ悪魔がぁぁ!」

「わわわわわ!」

神父は乗っかっているソファーを聖なる光で刀身を作った刀で切断して、

蹴り飛ばすと辺りに、弾丸を乱射し始めた。

僕は慌てて姿勢を低くすると目の前の床に一発の弾丸がめり込んだ。

『戦いでいちばんしてはいけない事は錯乱だ。想像するんだ』

よ、よし!

僕は頭の中で籠手の先っぽから発射するビームを想像し、腕に力を込めると

徐々に籠手の先に球体上の魔力の塊が出来上がってきた。

『いってやれ!』

「いっけぇぇぇぇぇぇぇ!」

「なんですとぉぉぉぉ!?」

籠手から魔力を固めたものを放つと神父は、突然の攻撃に回避すらできずに

まともに直撃して、壁を突き破って教会の外に吹っ飛んでいった。

「や、やった!」

『喜んでいるところ悪いが早く行った方がいい』

「分かった!」

僕は喜ぶのを後回しにしてアーシアさんがいるところへと向かった。




こんにちわ


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Life7 ぶっ飛べぇぇぇぇ!

「こ、これって」

僕達が教会についたころには既に何者かが戦いあった痕跡が残っていた。

それもかなり真新しい。

「一体誰が」

「……急ぎましょう」

「うん、そうだね」

僕たちはひと先ず先を急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わらわらと群れてくる黒光りするGみたいにたくさんの神父が出てきたけど

どうにかして全員倒した。でも、

「ひっぐ! い、痛い。めちゃくちゃ痛い」

僕は眼から出てくる涙を拭いながら壁伝いに歩いている。

『切り傷10か所、銃痕が3か所か。まずまずだな』

いくら、二天龍の片割れの魂は宿っているセイグリッドギアを持っていても

使いこなせなくてはただの宝な持ち腐れになる。

良い例が僕だ。

「うぅ、擦り傷なのに光のせいで、痛すぎる」

『少しくらい我慢しろ。男なら泣くな』

「わ、分かってるよ。この扉の奥におわっと!」

「いらっしゃい、悪魔さん」

僕がドアを開けようとすると勝手にドアが開いて

僕は前のめりになって見事に地面とキスをしてしまった。

「ア、アーシアさん!」

壁には魔法陣か何かで拘束されて、

張り付けられたアーシアさんの姿があった。

「ふふ、まさか一人で来るなんてね。どんなトリックを使ったのかしら?」

レイナーレは僕を見下したような目つきで僕にそう聞いてくる。

「ト、トリックなんか使ってないよ」

「なら全員倒して来たっていうのかしら?」

「そうだよ」

「あははははははははは!」

するとレイナーレを筆頭に周りにいた数人の神父が一斉に笑い始めた。

「な、なんだよ」

「赤ん坊以下の魔力しかない貴方が彼らを倒す? あはは! 無理無理!」

うぅ! 言っていることが当たっているから何も言えない!

「あんたみたいな奴には……そうね~……スライムと互角じゃないの?」

レイナーレがそう言うと再び教会の中が笑いの渦に巻き込まれた。

『Boost!』

流石に今の言葉は僕でも悔しさを感じた。

悔しくて手に力を入れて握ると力が入り過ぎて血が滲んできた。

「さっさと死になさい!」

レイナーレのその言葉とともに大勢の神父たちが僕に襲いかかってきた。

でも、神父たちめがけて巨大な像が何個も投げ込まれた。

「誰よ!」

後ろを向くとそこには木場君と小猫ちゃんがいた。

「グレモリー眷属、ナイトの木場祐斗」

「……同じくルーク、塔城小猫」

「な、なんで2人が」

「まさか君が来てるとは思わなかった。部長に頼まれてね。あ、そうだ。

部長から連絡だよ、プロモーションの許可が下りたよ」

「プ、プロモーション?」

「まあ、聞くより慣れろだね。ひとまず

プロモーション、ナイトって言ってみて」

「う、うん。プ、プロモーション・ナイト!」

すると体の中で何かが変わったような感じがして、体が軽くなったような気がした。

試しにその辺を歩いてみるといつのまにか2人よりももっと離れた場所にいた。

そうか! ナイトの特性は速さ!

……つまり、あんなことが……。

僕の頭の中に某特撮ヒーローの映像が流れてくる。

ヤ、ヤバいニヤニヤが止まらない! ……流石にもろパクリは駄目だから……。

「き、緊張するな~……よし、ハイスピードタイム!」

『Start  high―speed time!』

籠手からそんな音声が辺りに響いた瞬間、

僕はナイトの特性である高速移動で近くにいた一人の神父を殴り飛ばした。

神父たちは僕の動きに全くついてこれなかったのか突然、

一人が吹き飛んだことに焦りを見せていた。

「ナイスノリだよ! ドライグ!」

『うぅ、ぐす! こうやって俺は堕ちていくんだな』

何故だかドライグの声が涙声になっていた。

「へ~。なかなかやるじゃない」

レイナーレは僕が意外と戦えるのを知ったのか驚嘆の声を出した。

「イッセーくん、ここは任せてアーシアさんを」

「うん! ドライグ! もう一回行くよドライグ!」

『Start  high―speed time!』

僕はナイトのまま高速で動いてアーシアさんへと近づいて行くけど

レイナーレは一切手を出さないまま、ニタニタとにやけながら僕を見ていた。

それは僕がアルジェントさんを救出して抱きかかえた状態でも変わらなかった。

「早く行けば? 下級悪魔さん」

レイナーレの言葉に僕は疑問を抱かざるを得なかったけど今は、

アーシアさんの方が先なのでその場を木場君達に任せて教会の外へと出た。

 

 

 

 

 

 

 

「アーシアさん! アーシアさん!」

無事に教会の外に脱出できた僕はアーシアさんを抱きかかえたまま

何度も彼女に呼びかけるけど反応は鈍かった。

呼吸もなんか弱弱しいし。

「イ……ッセーさん?」

ようやく、目を覚ましたアーシアさんの声はかなり弱弱しかった。

「ごめ……んなさい………私……もう」

アーシアさんは突然、涙を流しながら僕に謝りだした。

「な、なんで謝るのさ!」

抱きかかえているアーシアさんの体から徐々に

温もりが無くなっていくのが分かった。

僕の腕をつかんでいる腕もフルフルと震えていて僕が腕を動かしただけで

彼女の腕は地面にだらしなく落ちた。

「な、何がどうなって」

「その子はもう助からないわよ」

「レイナーレ!」

突然、後ろから声が聞こえ、そっちの方向を向くとそこにはレイナーレが立っていた。

「ねえ、見て。この肩の傷。あの騎士君に付けられた傷

なんだけどねとっても痛いわ。でもね、ほら」

彼女の指からポわっと淡い光を出すと、傷口に沿って

指を動かすと切り傷が完全に消えた。

僕は彼女の方の傷がいえた事よりも

レイナーレの手から出た光に疑問を抱いた。

「な、なんで君がアルジェントさんのセイグリッドギアを使えるの!?」

「その子のセイグリッドギアを取り出して私に移植したの」

レイナーレは自分の掌を何度も見ながら僕にそう言った。

「これも教えてあげるわ。神器を無理やり摘出された者は死に至る」

「っ!」

レイナーレは言ったことに僕は驚きを隠せずにはいられなかった。

一瞬、彼女のウソかとも思ったけどアーシアさんの状態を見ると

とても嘘を言っているようには思えなかった。

「イ……ッセーさん」

アーシアさんが必死に喉を震わして、集中して聞いていないと

聞き逃すんじゃないかと思うくらいに小さな声を出した。

「私……は……ま……だ……貴方の……友達で……すか?」

「当たり前じゃないか! ずっと! 友達だよ!」

「ふふ……よ……か……った」

そのままアーシアさんは眠るようにして瞼を閉じ、

僕の腕を必死につかんでいた手はダランと力なく地面に落ちた。

 

 

 

 

「アーシアさん? ……ねえ、アーシアさん!」

僕は何度も彼女の体をゆすって声をかけるが、僕の耳に

彼女の綺麗な声が届くことはなかった。

彼女が死んだと分かった時から僕の眼から大粒の涙がずっと流れ続けている。

止まることを知らない涙はそのまま僕の眼から落ち、アーシアさんの顔に

ぴたぴたと落ちていく。

その代りに聞きたくもない声が耳を貫いた。

「うふふふふふ! これよ! この神器さえあれば私は

あの方々から愛を受け取ることができる! シェムハザ様! アザゼル様!

うふふ! これで私の堕天使としての地位は確立したわ! あははは!」

僕は冷たくなったアーシアさんをゆっくりと床に置き、制服の

上着を彼女にかぶせてあげた。

「あはははっ!?」

『Boost!』

突然、レイナーレは高笑いを止めてまるで、恐ろしいもの

でも見ているかのような目で僕の方を見てきた。

待ってて、アーシアさん……すぐに終わらせるから。

「な、なに?」

…………許さない。

『Boost!』

「な、何? 何が起きてるの!?」

倍加されていくにつれて、地面が、柱が、窓ガラスが悲鳴を上げていた。

「アーシアさん…………アーシアさんは!」

『Boost!』

地面にいくつもの大きな穴が開いていく。

「こんなところで死んじゃいけないんだ!」

僕の叫びとともに辺りに全身から魔力が一気に放出され窓ガラスが一斉に割れ、

さらに暴風が辺りに吹き荒れ、木々が大きく揺さぶられていた。

「は、はは。なんなのよ! なんなんのよその魔力の量は!

今の貴方の魔力は上級悪魔、いや! 最上級悪魔に匹敵するほどの量じゃない!」

「許さない!」

「こんの!」

レイナーレは目の前の怪物である僕に光の槍を投げつける。

「だぁ!」

僕は籠手が装着されている腕を横に振りはらって光の槍を一撃で消した。

「そ、そんな! か、片手で!」

レイナーレは更に数を増やし、光の力を強めてて槍を僕に投げつけてくる。

「やぁ!」

籠手を向かってくる槍に向けると先の方から魔力が球体上に集められていき、

放たれると光の槍を全て飲み込んで消滅した。

今は……今だけはいつもみたいにビクビクしたらだめなんだ!

僕は気合を入れるために地面を強く蹴ると地面に大きな穴があく。

「悪魔風情がぁぁぁぁ!」

彼女は自身が持つ全身全霊の光の力を収束させ槍を生成して僕に投げてきた。

「うおぉぉ!」

僕は魔力を籠手に集めて力いっぱい殴りつけると砕け散った。

光の力が僕の皮膚を焼いていく……痛い。もう泣きたいくらいに痛いけど

今は……今は目の前だけを見るんだ!

「こ、こんなのに勝ってこないじゃない!」

そう言ってレイナーレは黒い翼を生やして

羽ばたこうとするけど僕がそうはさせなかった。

「捕まえた!」

「きゃ! 離せ!」

僕は飛びあがってレイナーレの羽根を掴むと力の限り自分側に引き寄せた。

「や、止め」

「いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

僕は獣みたいに咆哮をあげて魔力を溜めに溜めまくった籠手で殴りつけると

教会を貫通して遠くのほうにまで飛んでいった。

 




こんばんわ~


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Life8 失ったもの、失いたくないもの

『Reset』

籠手からの音声が鳴り響き、あれほどあった魔力が一瞬にして消え失せた。

「ハァ……ハァ……アーシアさん」

僕は涙を流しながらもう二度と動かないアーシアさんの頭を撫でていた。

僕が……僕がもっと勇気がれば……もっと強かったらアーシアさんは

こんな目に合わなかったのに……。

「やあ、イッセーくん。お疲……どうかしたの?」

「別に何もないよ。木場君」

僕は泣いているのを気づかれないように空元気を出して笑顔を作った。

「それでなんでイッセーはここにいるのかしら?」

教会の中から部長と朱乃先輩の2人が出てきた。

「……」

何も言えないでいる僕に救いの手を差し伸べてくれたのが小猫ちゃんだった。

僕が吹き飛ばしたレイナーレをズルズルと

向こうから荷物を持ってくる感じに引きずってきた。

「……持って来ました部長」

「でも、凄いですわ。堕天使を倒すだなんて」

姫島先輩がこの暗い雰囲気を明るくしようとしたのか僕を褒めてくれた。

「い、いや。ドライグがいてくれたお陰で勝てので。いなかったら

僕なんかあっという間に瞬殺されてますよ」

「ふふ、謙遜は時には相手を怒らせる時もありますから気を付けてくださいね?」

「は、はいぃぃぃ!」

その明るい雰囲気は一瞬にして消え失せ、姫島先輩の笑っているんだけど

怒っている微笑みの前に僕は屈した。

「話はそこまでにして朱乃」

「はい♪」

朱乃さんは魔力で水を作ると顔にビシャっとかけた。

結構古典的な起こし方なんだね。

「げほ! げほ!」

「お目覚めはいかがかしら? 堕天使レイナーレ」

「……その髪、グレモリーのものか」

「ええ、そうよ。貴方には消えてもらうわ、

堕天使さん。貴方が持っている神器を回収してだけど」

「冗談じゃないわ! この力はシェムハザ様とアザゼル様に!」

部長の言葉にレイナーレは表情を鬼のような形相に歪めて、怒鳴り散らした。

「愛のために生きるのもまた素晴らしいわ。でもあなたはあまりに汚れている」

グレモリー先輩は手をレイナーレに向けると

すると徐々に手に魔力が集まっていき紅色の魔力が集まってきた。

「助けてイッセーくん!」

「っ!」

突然、レイナーレ……ではなく、夕麻ちゃんの声が聞こえてきた。

「この悪魔が私を殺そうとしているの! 貴方のその力が

あればこんな悪魔簡単に倒せるわ! ねえ! 私はあなたのことが好きなの!」

な、なんで。なんで今になって夕麻ちゃんにもどるんだよ!

せっかく振り切れそうだったのに!

「黙りなさい。私の可愛い下僕に話しかけないで」

部長が冷たく言い放ち魔力を放とうとした瞬間――――。

「ま、待って下さい!」

僕は部長の前に立った。

僕は……やっぱり放っておけないよ。

「イ、イッセーくん」

「イッセー!? 何で止めるの!」

部長は僕の行動に驚きを隠せないでいた。

「待って下さい!少し時間を」

「貴方だけでも殺しておくわ」

 

 

 

 

 

え? なんで僕の胸に光の槍が貫通してるの?

なんで皆泣きそうな顔してるの?

なんで僕はこんなにも痛いの?ねえ、なんで?

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで

………なんで夕麻ちゃんの腕は真っ赤に染まってるの?

それを最後に僕の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イッセーくん!」

僕が堕天使の光の槍をセイグリッドギアで作った魔剣で

光の槍を消失させると、堕天使はすぐに部長の消滅の魔力を受けて消え去った。

でも、イッセーくんの怪我が消える訳でもなくただただ血が出ていた。

「朱乃、アーシアを悪魔に転生させて下僕にするわ。その間までの時間を稼いでおいて!」

「はい! 分かりましたわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

暗い、暗い、暗い。僕はそんな空間にいた。

フワフワと浮遊感が感じられる。

そして目を開けるとそこには椅子に座った何人かの人物がいた。

その大多数は男の人なんだけどそのなかに一人だけ女の人がいた。

「あ、あの貴方達は」

『こいつらは俺のもと所有者、つまりお前の先輩だ』

「うぉ! 君、そんなに大きかったの!?」

隣にはかなり大きな体をしているドライグの姿があった。

「弱い」

「え?」

急に声が聞こえたかと思うと次々に声が上がっていった。

「弱い」

「弱い」

「弱い」

全員が口をそろえて僕に向かって弱いと言ってくる。

「今回の赤と白の対決はもう既に決まったようだ。白の圧倒的な勝ちだ」

「し、白? ……あ! えっとあの白龍皇でしたっけ?」

「貴様と話す価値もない」

そう言って一人、また一人と消えていく。

でも、最後、女の人だけは消えなかった。

その人は静かに立ち上がると僕の傍にきて頬に手をあてた。

「確かに魔力の量は赤ん坊クラスね」

「うぅ、何も言い返せません」

「でも、魔力の質は歴代最高よ」

女性は優しい笑みを浮かべて僕にそう言ってくる。

「魔力の……質ですか?」

『エルシャもそう思うか』

「ええ、この子の魔力は言うならば点火剤、Boostという火で

爆発的に燃え広がり、そのキャパシティは天井知らずよ。

私も見てたけどたった数回のBoostであそこまで

魔力が増大するとは思えない」

『キャパ知らずか……相棒が欲を持たないのが功を奏したのか』

「どういう意味?」

「私が説明してあげるわ。悪魔の持つ魔力はどれだけ多く持っていても

その悪魔個人の許容量を超えればお終いよ。まあ、一つの箱だと思っていいわ。

この箱には魔力の他にも欲望、感情なんかがいっぱい入ってるの。箱以上の

物を入れれば箱から溢れ出す。でも、君は欲がないお陰で他人よりも最初の

箱の大きさがはるかに大きい。ちょっとやそっとの量の魔力じゃ満たされない」

「……え、えっとつまり」

『つまりだ。相棒は弱くないという事だ』

「で、でも僕アーシアさんを護れなかった」

今でも涙があふれ出てくる。

でも、エルシャさんがその長くてきれいな細い指で僕の涙を拭ってくれた。

「駄目じゃない。男の子が泣いちゃ。男の子は女の子を護らなきゃ」

「でも、僕に護れる力なんて」

『あるさ。俺という力がある』

「ドライグ……」

「周りなんて関係ないわ。貴方は貴方の速さとやり方で強くなっていきなさい。

どんなに惨めでも構わない。心を強く持ちなさい」

「エルシャさん……はい! 僕頑張ります!」

「はぁう!」

僕がエルシャさんに笑いかけるとなんでだかエルシャさんが

胸を押さえて顔を少し赤くしていた。

「あ、あのエルシャさん?」

「だ、大丈夫よ。ほら戻りなさい」

「はい!」

こうして僕は元の世界へと帰っていった。

 

 

 

「ドライグ……あの子は一体何なの!? 

この胸キュンは何!? あの子の笑顔は癒し製造機なの!?」

『………女の気持は分からん』

こんな会話があったなんて僕は知る由もない。

 

 

 

 

「……ここは」

目が覚めるとそこはいつもの見慣れた天井だった。

まあ、つまり僕の部屋である。

「あ、おはようございます! イッセーさん!」

「ああ、おはよう。アーシアさ……えぇぇぇぇ!?」

ちょ! ちょ! ちょ! ちょっと待って!なんでアーシアさんが!?

あの時にセイグリッドギアを抜かれて、それで。

「ふふ、実は私も悪魔に転生しました♪」

彼女がそう言うと背中に2対の黒い翼が生えた。

つまり……僕と同じ下僕?

ひと先ず僕は下に行った。

そうしたらいきなり満面の笑みの母さんに抱きつかれた。

「もう! イッセーたら! こんな可愛い子をホームステイ

で連れてくるなんて! お母さん嬉しいわ!」

はい? 何の事?

母さんの言っていることに理解が追いつかない僕を見てか、

アーシアさんが僕に耳打ちしてきた。

「実は私この家に住まわせてもらうことになりました。名目上は

ホームステイという事になっています」

あ、そう……なんだかもう色々あり過ぎて理解が追いつけないよ。

とりあえず、僕は用意されている朝食を食べることにした。




こんばんわ~


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Life9 炎は暑いよね!

「うぅ! なんでイッセーだけがモテやがるんだ!」

「きゃー! イッセーくーん!」

………これなんてフラグ? 結婚フラグ? そんなの聞いたことないよ。

ていうか、なんでみんな正装でいるんだろ……。

「駄目よイッセー。キョロキョロしちゃ」

僕があたりをキョロキョロしてると隣にいたグレモリー先輩に注意された。

「部長! これはいったい」

そう言いかけて僕はフリーズした。

……めっちゃ綺麗。

白色のウェディングドレスに紅色の髪がマッチしてて本当にきれいだった。

余りに美しさに少し見つめてしまった。

「誓いのキスを」

―――――ってあれ!?

いつの間にか神父さんの前に僕たちは移動していた。

「イッセー、何してるのほら」

グレモリー先輩がこちらを向いてその柔らかそうな唇を少し突き出して目を閉じた。

これってあれだよな? キ、キ、キ、キスってやつだよね?

じゃ、じゃあお言葉に甘えさしてもらって。

そうして僕は目をつむり近づけていき――――唇が重なった。

『むぅぅ~相棒』

最悪なものに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァ! はっ! はっ! はっ!」

ゆ、夢!? 夢にしちゃえらいリアルだった。

あのドライグの唇の……思い出したくもない感触だ。

ザラザラしていたというかヌメヌメしていたというか……

恐らくドラゴンとキスしたのは僕が初めてだろうね。

「はぁ~。夢か……あ、暑い」

変な夢の所為で大量の寝汗をかいて汗を

吸収した寝まきはビチャビチャになっていて、肌に

引っ付いてきて不快感しかなかった。

すると階段から誰かが上がってくる足音がする。

母さんみたいなドタドタトした音ではない。なぜなら母さんと父さんは

町内会のくじ引きにあたり二人で2泊3日の温泉巡りに行ったからである。

二泊三日でどこの温泉を巡るんだよってツッコミたくなるけど……まあ、とにかく

その巡りのチケットは2名様専用。てな訳で両親はそのまま行った。

残っているのは――――。

「イッセーさん!? どうかしたんですか!?」

そう、アーシアさんである。

アーシア・アルジェントさん。元シスターで今は悪魔。

聞くところによるとビショップになったらしい。

今は名目上はホームステイとして泊まっている。

「ううん、何もないよ。そろそろ行くよ。先輩は来てる?」

「はい! 30分前から!」

アーシアさん、それを早く言おうね。僕消滅させられちゃうから。

 

 

 

 

 

「ひぃ、ひぃ!も、もう無理ですぅ!」

「こら!歩かないの! ダッシュ10本増やすわよ!」

今、僕は部長さんと一緒に鍛錬をしています。

いやね、前に鍛錬はしてると言いましたよ。ええ、言いました。

でもね、部長の鍛錬はちょっとエグイ量ですよ。

だって朝から軽く20キロ近く走らされその後に

ダッシュを何10本、各種筋トレなんか

思い出したくもない数字をやらされている。

毎日が筋肉痛、まあ土台は昔からできてたみたいで

辛かったのは最初の1日だけ。

後は難なくこなせてるんだけど……部長、いきなり2倍はキツイっす。

お、鬼! 悪魔!

「イッセー、隣町のその隣町まで行きましょうか」

「もう嫌だあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

結局僕は隣町の公園まで走らされ元のゴール

地点まで往復させられたのであった。

 

 

 

 

 

 

「貴方の力は基礎が上がれば上がるほどその振り幅はさらに大きくなるわ」

「はい、98.99,100!」

「はい、お疲れ様」

今、僕は部長を背に乗せて何とか腕立て伏せ

100回を終わらせることができた。

もう腕がプルプルなんですけども。

「イッセーさーん!」

おぉ! わがオアシスが来たよ!

向こうの方から綺麗な金色の髪を揺らしてこっちにアーシアさんが走ってきた。

「休憩にしましょうか」

部長はそう言ってアーシアさんからシートを受け取ると、

公園の端っこの方に移動して、シートを引いた。

「イッセーさん! 召し上がってください!」

「うん! ……うん! 美味しいよ!」

バスケットの中から一つ、適当にサンドイッチを取って食べると

レタスのシャキシャキ感とトマトの甘酸っぱさが口に広がって

とても美味しかった。

「イッセーさん。お茶は如何ですか?」

「あ、もらうよ」

「はい!」

アーシアさんは張り切ってるな~。

そんな感じで休憩を終えた僕と部長はそのまま、

アーシアさんとともに帰宅した。

 

 

 

 

 

 

その日の晩、僕は自転車の後ろにアーシアさんを

乗せて悪魔稼業のお手伝いをしていました。

本来なら僕の研修期間は終わっているんですがアーシアさんを夜に

一人で歩かせることなんてできません! 最近、物騒だしね。

「投函!」

「オッケーです!」

「今日の分は終わりだね」

「はい!」

「じゃ、適当にサイクリングと行きましょうか」

時間も余ってるので僕はアーシアさんと一緒に

近くをサイクリングすることになった。

「えっと、ここが近所で評判のパン屋さん。

常連になるとたまにただで売ってくれる」

「へ~よくつぶれませんね!」

アーシアさんはなにげに毒舌だね。

「そんでここが神社。僕たちは入っちゃいけないとこ」

「shrineですね」

「うん、そろそろ戻ろうか」

そして僕たちは部室に戻って今日はもうやることが

ないということなので帰宅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

そして翌日、僕はいつもの通りに授業を受けて友達と駄弁って

部室に行ったら見知らぬメイド服を着て銀髪の女性がいて部員の皆が真剣な趣で座っていた。

こういう雰囲気の部屋ってとても入りにくいよね。

「アーシアとイッセーの為に言っておくわ。隣にいるのは私の家の

メイドのグレイフィアよ」

グレウフィアと呼ばれた女性は一歩前に出て頭を下げてお辞儀をした。

す、すごい。やっぱりメイドさんをしているからかお辞儀がとても綺麗だった。

「部活を始める前に皆に言っておきたい事があるの」

「部長、私が話しましょうか?」

「いえ、私からは話すわ。実は」

部長が副部長を抑えて話し始めようとした瞬間、部室の床が光り輝きだし魔法陣から

凄まじい量の炎が噴き出してきた。

「……フェニックス」

ボソッと木場君が言ったのを僕は聞き逃さなかった。

フェニックス、元七十二柱の家で炎を使い不死身の肉体を持つ一家。

レーティングゲームではその不死身の肉体で猛威をふるったという。

そしてフェニックスの涙というものがある。

これはかけたらみるみる傷が回復していくという。

そして一人の人物が炎の中から現れた。

「ふぅ~。会いに来たぜ愛しのリアス」

「ライザー」

部長さんは忌々しそうにその人を見ていた。

……ねえ、その前に炎を消してくれたらありがたいな。

めちゃくちゃ暑いです。




こんばんわ、最近数学の成績がデフレ状態であります


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Life10 戦っちゃいます!

「早速だが式の日取りを決めよう。もう場所は決めてあるんだ」

「ライザー、前にも言ったけど私は貴方とは結婚しないわ」

部長は心底鬱陶しそうな表情をしてライザーという男の手を払った。

「ぶ、部長結婚するんですか!?」

そういった途端に何故か皆の目線がきつくなって僕に注がれた。

うぅ、そんな怖い目で僕を見ないで。

「なんだこいつ?」

「兵藤一誠、私の可愛い下僕よ」

「はははははははは!」

いきなりライザーとか言う人は僕を指差しながら盛大に笑い始めた。

「おいおいリアス、正気か?こんな魔力もない奴を下僕にしたのか?

てっきり一般人化と思って一瞬、焦ったぞ」

うぅ、やっぱりそれ言われた。

『……気に食わん奴だ。相棒、ふっ飛ばしてやれ』

む、無理だって! だってあんな強そうな人に勝てるはずないし!

それに炎使うんだよ!? めちゃくちゃ熱いじゃん!

「笑わないで頂戴ライザー」

部長はかなり怒っているのか怖い表情でライザーさんを叱るけど

ライザーさんは特に何も思っていないのか、華麗にスルーしていた。

「いや~あまりにも傑作でな。こいつの駒はなんだ?」

「ポーンよ」

「はははははははははは! そうかそうか! お似合いだな!

兵士一個しか消費出来ない奴にはお似合いの駒だよ!」

ライザーという男は未だに腹を抱えて僕を笑っていた。

そして、ついに我慢できなくなったのか

部長がバン! と机をたたいて、怒りをあらわにして立ち上がった。

「イッセーを笑わないで頂戴! 貴方よりも何倍も彼の方が強いわ!」

ひぃ! 部長! ハードル上げないでくださいよ!

「くく、こいつがね~。ほら」

―――――ボォォ!

「アチ! アチチチ! 水水!」

いきなりライザーさんは僕に小さな火球を飛ばしてきた。

突然の事に、何もできずに僕は火球を腕にあたって火傷してしまった。

「イ、イッセーさん!」

「ひぃ! 熱いよ~」

アーシアさんが慌てて僕に近づいてきてトワイライトヒーリングの

癒しの光で僕の火傷を治療してくれた。

「こんな弱い奴が俺よりも強いだと? いくらリアスでも怒るぞ」

「ライザー! 貴方って人は!」

部長は手に消滅の魔力を集めてライザーって人にぶつけようとしていた。

ダメだ! 部長!

僕は慌てて近づいて部長の手を掴んでどうにかして止めた。

「イッセー! 離して!」

「駄目です! 僕なら大丈夫ですから!」

「でも!」

するとグレイフィアさんが二人の間に入って仲裁をしてくれた。

「ライザー様もおやめ下さい。フェニックス家の名に泥を塗るおつもりですか?」

「……最強のクイーンと謳われている貴方に言われたら断れませんね」

「お譲様も下僕を馬鹿にされて怒るのは構いませんが貴方は

次期グレモリ-家の当主。立場をわきまえて行動してください」

そう言われてようやく部長は手に集めていた魔力を消して手を下してくれた。

よ、良かった~。

 

 

 

 

 

 

 

てな訳で平和な話し合いにはなったんだけど話の発端は部長のお家と相手の

お家が勝手に婚姻関係を結んだことに合った。

部長はライザーさんとの結婚は断固拒否。でもライザーさんも

お家事情がどうとかで一切引く気無。

「ではお嬢様、レーティングゲームで決めたらどうですか?」

「レーティングゲーム……」

「俺は別にかまわないぜ。負ける気はしないがな」

「……言ってくれるじゃない、分かったわ。私もそうするわ」

「畏まりました。では、ゲームの開催は10日後とします」

「あ、その前に俺の可愛い下僕ちゃん達を見せてやるよ」

ライザーさんが指をパチンと鳴らすと魔法陣が輝きだして総勢、15人の

下僕さん達が全員姿を現した。しかも全員美人美女ばかり。

「リアス、お前のへなちょこポーンが俺よりも強いと

いうならば俺のポーンには勝てるよな?」

「当たり前じゃない!」

ちょ! む、無理ですって! そんなにハードルを上げないで!

世界記録を更新しちゃうから!

「そこまで言うなら、ミラ」

「はい」

ライザーさんが呼んだ女の子は棒をもった人だった。

「こいつはおれの下僕の中でも最弱だ。だがお前よりかは強いぞ」

「イッセー! やってしまいなさい!」

「だから無理ですって! あ、あんな強そうな人に

勝てるはずないじゃないですか! ライザーさんだって言ってますよ!」

「堕天使を倒した貴方なら大丈夫よ!」

僕は部長に押されてミラって言う人の前に無理やり押しだされた。

「む、無理ですって」

『相棒やってやれ!』

「余所見をするな!」

「ひぃ!」

ミラって言う人が棒を持ってこっちに向かってきたけど僕はあまりの恐さに逃げた。

逃げたと言っても部室から逃げたんじゃなくて遠くの方に逃げたって言うこと。

だってあんな棒持ってて強そうなのに勝てっこないよ。

「なに~? あの人弱~い」

「剣士を侮辱しているな」

「ぷっ! 弱すぎ」

ライザーさんの下僕さん達が口々に僕を蔑んでいく。

そりゃ仕方がないよ、僕は蔑まれるくらい弱いんだから。

「……これは俺も驚いたな。弱いというよりも虫けらか。リアス、

お前の眼も狂ってしまったのか?」

「っ!」

部長は悔しそうに歯を食いしばっていた。

……ごめんなさい、部長。僕のせいで。

その後、ライザーさん達は魔法陣で帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ライザーさんがいなくなった部室は静かだった。

皆、何やら集まって話をしてるけど僕は隅っこの方で縮こまって

恐怖で震えながら座っていた。

「イッセー」

「……すみません部長。僕、部長を恥さらしにして」

「良いのよそんな事。私の方が悪かったわ」

部長は優しく僕の頬に手をあてて撫でてくれた。

なんで? 何で部長が悪いの? 悪いのは弱い僕なのに。

「私が感情のままに貴方に行かせたのがダメだった。イッセー、

明日から私達は山に行って合宿をするわ。少しでも強くなるために。

でも、イッセー。もし、あなたが来たくないのなら来なくていいわ。

ゲームの時も戦いたくないなら闘わなくていい。なんならゲームが終わるまで

隠れてたっていい。貴方が傷つくところをもう見たくないの」

―――っ! もしかして部長、この前のレイナーレの事言ってるのかな。

そのまま部長と部員の皆は部室から出ていった。

アーシアさんは木場君が送ってくれるらしい。

部室に一人残った僕はずっと考えていた。

「……」

「イッセー、見つけた」

「オ、オーフィス。何でここに」

声がした方向を見ると窓からオーフィスが部室に入ってきた。

「イッセーが悲しんでるの感じた。だから我ここに来た」

オーフィスは僕の隣に同じように座ると頭を僕の肩に乗せてきた。

「イッセー、何かあった?」

「……うん、まあね」

「力欲しい?」

「……欲しい。欲しいけど僕には無理だよ」

「なんで?」

「僕は弱いもん」

するとオーフィスが聞いたことのある言葉を言いだした。

「弱いというだけで何もしなくていい理由にはならない……」

っ!それ、僕が言った言葉だ。

「我、この言葉好き。気にいった」

『相棒』

怖い……誰かと殴り合うのも、ライザーさんの炎を受けるのも怖い……でも、

このままじゃ部長の顔に泥を塗り続けることになっちゃう!

そんなことは絶対にあったらダメなんだ!

「うん……行くよ、でも、部長さん達のところにはいかない。

オーフィス、僕と闘ってくれる?」

「何故?」

「強くなるために」

「……分かった。我、イッセーと闘う」

 

 

 

 

 

 

そして10日間というのはあっという間に過ぎ去っていった。

この10日間、僕は食事と睡眠以外はずっとオーフィスと闘っていた。

おかげで籠手の新しい力もいくつか手に入れられた。

何回も死にかけたし何回恐怖のあまり泣きじゃくったか分からない。

いくつもの怪我が体中についた。

骨折だってしたし脱臼だってした。

でも、オーフィスの力で全部治して戦い続けた。

「イッセー、強くなった。フェニックスに負けないくらい」

「……そうだったらいいな。じゃ、行ってくるね」

「行ってらっしゃい」

僕はオーフィスと分かれて部室に行った。

 

 

 

 

 

「……アルビオン、何か用?」

『いや。次元のはざまで妙な事をしてるからヴァーリに

見つからないように見に来たらまさかオーフィスと闘っている奴がいたとはな』

「今代の赤と白、どっちも強い。歴代最強」

『ああ、そうだな。ヴァーリは既にバランスブレイカーになっている』

「それはイッセー同じ」

『だが、あいつは気づいていないようだが』

「……」

『まあ、良い。今回の戦いは一番楽しくなりそうだ』




どうも


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Life11 始まっちゃった!

僕が部室に入るとみんな驚いたような顔をしていた。

まあ、僕が来ないって思ってたんだろうね。

「え、えっと何もできないと思いますが僕も戦います。

足だけは引っ張らないようにするつもりです!」

「そう……ありがと、イッセー」

部長はこんな僕にも笑いかけてくれた。

こんなに優しい人をあんな人に渡すもんか。

絶対に勝ってやる。

そしてゲームの時間がきて魔法陣が輝き、僕たちは会場へと向かった。

 

 

 

 

 

会場に飛んだのは良いけど学校と全く一緒だった。

違うところは空の色かな。

説明によるとレプリカで使い捨ての空間だから好きにどんちゃん騒ぎしちゃっていいってさ。

そうそうな事では壊れない。どんな事をしたら壊れるのさ。

ひと先ず僕は部長から説明を受けてゲームの作戦を聞いた。

ゲームが始まり小猫ちゃんと一緒に体育館に行く。

「えっと、ひとまず小猫ちゃん。僕弱いけどよろしくね」

「……なんで先輩はそんなふうに自分を下にするんですか?」

「下になんかしてないよ。事実だよ、隠れて」

僕たちは体育館に入ってすぐに死角になる所に隠れて中の様子をうかがうと

館内に何人かの下僕さん達がいた。

その数は四人かな?遠過ぎてよく見えない。

「出てきなさいグレモリー家の下僕さん達!貴方達がここに来るのは

さっき監視してたから丸わかりなのよ!」

ありゃりゃ、ばれちゃってるみたいだね。僕は小猫ちゃんと

アイコンタクトをかわして分かれて中に入っていった。

「バラバラバラ!♪」

「ひぃ! チェ、チェーンソーとか女の子が持つものじゃないよー!」

体育館の中に入ると突然、上から声が聞こえ、驚きの余り前に飛びこむと

さっきまで僕がいた場所にチェーンソーを持った女の子二人が落ちてきた。

「行っくぞー!」

修行しても性格の根本はそう簡単に直せるはずもなく僕は逃げまどっていた。

「むぅ! 逃げるなー!」

「逃げるなー!」

「チェーンソー持って追いかけられたら普通逃げるでしょー!」

「むぅ! 逃げる、きゃぁ!」

「お、お姉ちゃん!? こ、こっちこないで!」

なんだか分からないけど2人は同時にぶつかって地面に横たわった。

『恐らく床で刃が削れ過ぎたんだろう。やるなら今だ』

よ、よし! 気合いを入れるんだ!

『Boost!』

僕はセイグリッドギアを発動して、倍加を始めた。

「むぅ! 喰らえ!」

双子の片方がチェーンソーを刀の様に振り回してきた。

よ、よく見る。相手の攻撃をよく見てかわす!

僕は振り回されたチェーンソーを姿勢を低くして避けた。

そして!

『Explosion!』

「うりゃぁぁぁぁ!」

「きゃぁ!」

相手は僕の拳をチェーンソーで防ごうとしたんだけど僕の拳が当たった

瞬間、チェーンソーが大きく大破して、吹き飛ばされて壁にぶつかって気を失った。

い、痛かったかな? 後で謝っておこう。

「こんの!」

「私もいるわよ!」

左からはチェーンソーガールが、右からは棒をもったミラっていう人が近づいてきた。

えぇぇい! こうなったら!

「えいやぁぁぁぁ!」

僕は体育館の床を全力で殴りつけて砕くとがれきが舞い上がって2人の

障害となってくれた。

するとこのゲームが始まる前に連絡用として部長から渡され、

耳につけていたイヤホンから連絡が来た。

『イッセー、小猫。朱乃の準備ができたわ。すぐにそこから離れて頂戴』

「はい! 小猫ちゃん!」

「…分かりました」

「逃げる気!? ここは重要地点なのに!」

うん、そうだね。

でも、彼女たちは今部長の作戦通りの発言を言った。

僕はチェスとかのルールは知らないけど。

僕たちが体育館の外に出た次の瞬間! 一瞬の閃光、刹那。

―――――ドォォォォォォォォォン!

体育館に轟音とともに雷が落ちた。

空には翼を生やした朱乃さんがニコニコ笑顔で浮いていた。

『ライザーフェニックス様の兵士(ポーン)三名、戦車(ルーク)一名、戦闘不能!』

「やった!」

『これで初めの作戦は完了ね。朱乃が最高の一撃を派手に決めてくれたわ。

朱乃の魔力が回復次第私とアーシアも出るわ』

部長さんとアーシアさんも出るのか。

僕たちは次の作戦に移ろうとした瞬間、

―――――ドォォンッ!

突然の爆発音に驚いて振り向くとそこには

ボロボロになった小猫ちゃんが横たわっていた。

「小猫ちゃん!」

「撃破(テイク)」

上から声が聞こえたかと思うとそこには悪魔の翼を生やしフードをかぶった人がいた。

「ふふ、何かをし終わった後が最も隙だらけなの。狩りの後だったり

子作りの後だったりね。私達は多少の駒を犠牲(サクリファイス)しようとも

何もない、けど貴方達は一つでも失えば死活問題」

「小猫ちゃん!」

正直僕はあんな奴の話なんか聞いていなかった。

「ごめ……んなさい。もっと部長達のお役に立ちたかったのに」

「そんなことないですわ。貴方は十分役に立ってくれました」

すると小猫ちゃんが淡い光に包まれて転送された。

今頃は治療ルームに行ったんだろう。

「イッセーくん。ここは任せて下さい。後で合流しましょう」

「わ、分かりました!」

僕は朱乃さんに任せて先を急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

『ライザーフェニックス様の兵士(ポーン)三名リタイア!』

三人も!? となると木場君か。

「うわぁ!」

「やあ」

「木場君か」

走っている僕をいきなり誰かが倉庫に引きずり込んだかと思うと木場君だった。

びっくりした~。

「それにしてもすごい魔力量だね。イッセーくんも特訓を?」

そう聞かれたとたん僕の目から大粒の涙があふれ出てきた。

「え、えっとイッセーくん?」

「もうあんな何度も骨折れたり抜けたりするのはごめんだよ~」

「……どんな特訓をしたんだい?」

だってだって!

オーフィスの攻撃はよく分からないものだし喰らえば即死。

僕は必死に避けたけど地面に直撃した攻撃は大きな穴を開けたし。

まるで巨大隕石が落ちてきたかのようなクレーターだったな。

「えっと運動場にいるのは?」

「うん、相手は兵士(ポーン)、戦車(ルーク)、僧侶(ビショップ)が一人づつ」

それを聞いた僕はもう帰りたくなってきた。

「ぐす! もう帰りたいよ~」

「そうはいかないよ」

「私はライザー様に仕える騎士(ナイト)のカーラマイン!」

「「ッッッッッ!」」

いきなり勇んだ女の人の声が聞こえてきたかと思うと野球部の運動場に

甲冑を着て剣を携えた女性がいた。

「もう腹の探り合いはよそうではないか!剣士なら正々堂々

正面から斬り合おうではないか!」

……絶対に僕は行かないからね!

そんな事を思っていると木場君が立ち上がったから思わずひきとめた。

「な、何してるのさ! きっと罠だよ!」

「確かにそうかもしれない……けど、

ああ言われたら剣士として黙っちゃいられなくてね」

「ぼ、僕は行かないからね!」

そう言うと木場君はにっこりと笑って倉庫から出ていった。




こんばんわ


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Life12 

「僕はリアス・グレモリーの眷属、ナイトの木場祐斗」

「お前みたいな剣士がいてくれて嬉しく思うぞ。堂々と真正面から

来るのは正気の沙汰じゃないからな」

木場君は女の人と何やら一言二言話すとお互いに剣を取り

高速で動いて斬り合いを始めた。

金属音が数回なった後、別の場所に現れ、また数回金属音が鳴った後、

違う場所に二人が現れる。

す、凄い。全く見えない。

すると、僕の視界の端にドレスを着た金髪の女の子が映った。

「あ、あのできれば邪魔は」

「悪いが彼女は戦わないよ」

倉庫から出て金髪の女の子から少し離れた場所から話しかけると

どこからともなくいきなり声が聞こえてきた。

「こっちだよ」

キョロキョロと周りを見ている僕にそんな声が掛けられ、声に従って

後ろを振り返ると顔の半分を仮面で隠した女の人が立っていた。

「やあ、お初にかかるよ。私の名はイザベラ、ルークだよ」

「あ、兵藤一誠です。ポーンやってます」

自己紹介をすると何故かイザベラさんは小さく笑みを浮かべた。

「ふふ、君は面白いね。戦場でそんなに丁寧な

あいさつをする悪魔は初めて見たよ」

いや、ま挨拶は大事だし。

「一つ聞いて良いかな?」

「あ、はい。なんですか?」

「君は本当に兵士一個しか消費していないのかい?」

「イザベラ、何を言っていますの? お兄様の婚約者様も言っていたでしょう」

いかにも私お嬢様です! みたいな恰好をした女の子からは

まったく戦意という奴を感じられない。

い、今いる場所って言うならば戦場なんだよね……な、なんかあやしい。

「レイヴェル・フェニックス様。確かにポーンとはいっていましたが

向こうは何個消費したかまでは言ってませんよ」

ん? フェニックス? ……そ、そう言えばよく見たら今回のゲームの相手も

男の人に似ているような気が……。

「き、君ってまさかあの人の妹さん?」

「そうですわ、イザベラ!」

「分かったよ。さあ、一誠君。始めようか!」

イザベラさんはいきなり僕に殴りかかってきた。

「うわっと!」

反射的に体制を後ろに反らしたからイザベラさんの初撃は

当たらなかったけど……なんだか普通のパンチと違って動きが不規則だ。

「はは! なかなか避けるのが上手だな!」

どうしよどうしよ!

こんな不規則な攻撃をされたら攻撃するタイミングが!

………ねえ、ドライグ。

『……止めてくれ相棒。これ以上特撮を真似るのは』

ね? だって僕、ドライグに頼らないとまともに戦えないからさ……

お願い! また前の時みたいにやろうよ! 僕頑張るから!

『……もう僕知らないもん!』

ドライグが壊れちゃった。

まあ、お許しも出たわけだしやっちゃいますか!

 

 

 

 

 

 

 

「は、恥ずかしいな」

「何がだい?」

「こっちの話。行くよ!

僕は意識を集中させて今までに倍加されてきた魔力が僕の全身、

特に足の方に集中的にまわした。

『Start! high―speed time!』

そして、ハイスピードタイムを発動させて

僕は動くとかなりの速さが出て消えたように見えた。

「き、消えた!?」

「イザベラ! 消えたのではなく高速で移動しているだけですわ!」

「だが彼の駒はくぅ!」

あらぬ方向から攻撃を受けたイザベラさんはグラリと体勢を崩した。

攻撃といってもタックルだけどね。

「うわぁ! 何故だ! ポーンなのに何故

ナイトの様に高速で移動できるんだ!」

……そんなに驚くことかな?

ま、良いや。止めと行くよドライグ!。

『もうどうでも良い! やってしまえ相棒!』

「喰らえ!」

「がっ!」

僕は魔力を足に集中させると赤色に輝き、イザベラさんを蹴ると

ものすごい勢いで飛んで行って壁に激突した。

『ライザーフェニックス様のルーク戦闘不能!』

「や、やった……勝てた!」

あまりの嬉しさに僕はガッツポーズをしてしまった。

喜んでいる僕に突然、熱風がぶつけられた。

後ろを振り返ってみると二人が戦っている場所を中心にして

炎の竜巻が発生していた。

「この熱風で僕らごと蒸し焼きにするつもりか……とまれ」

――――――ボォォッォォォ!

今度は風が吹き荒れ、暑い風を巻き込んで、消滅した。

「……複数のセイグリッドギア所有者か」

「いや、僕の神器はソード・バース。魔剣を作るんだ」

「魔剣を作る神器とはな」

『Boost!』

早々とケリをつけて少しでも多くの人数で部長の所に行こう!

で、でも相手は剣があるから……遠くから行くしかない!

僕は籠手に魔力を集中させて、修行で編み出した遠距離攻撃を思い出しながら、

籠手の先に超巨大な魔力弾を作り出して、カーラマインさんに放った。

「木場君! 離れて! 喰らえ! ドラゴンショット!」

僕の声を聞き、慌てて木場君はその場から消えさった。

「っ! こんなもの!」

「避けなさいカーラマイン!」

レイヴェルさんの声が響き渡ってカーラマインさんは攻撃を受け止めるのをやめ、

ナイトの特性の高速移動でその場から離れた。

―――――ドォォォォォォォォォォォォン!

「あ、避けられた!」

カーラマインさんがさっきまでいた場所に、巨大な魔力弾が直撃し、

巨大なクレーターを地面に開けていた。

「な、なんて威力だ……彼は戦力外と思っていたが……」

ふん! こっちだって修行して前よりも強くなってるもん!

「あれ? イザベラ姉さんは?」

「もしかしてやられちゃった?」

複数の声が聞こえ、その方向を向くとゾロゾロと残りの

卷属さん達が僕たちのいる運動場に集まって来ていた。

……やっば、残りの下僕悪魔さん達大集合じゃん。

今、グラウンドにいるのは僕と木場君以外はみんな敵。

「ね~ね~兵士君」

「ひゃっ! な、何!?」

突然、肩をトントンと叩かれて後ろを振り返ると卷族の一人が

僕の後ろに立っていて、屋上の方を指さしていた。

「ライザー様とね、君ん所のお姫様が一騎打ちするんだって」

指を差された方向を見てみると部長とライザーさんが

対峙しているのか屋上から炎が一瞬だけ見えた。

「ま、お兄様も意外にもリアス様が善戦するものですから高揚したんでしょう。

でも、貴方達に勝ち目はありませんわ。ニィ、リィ、シーリス。そんな雑魚やって

おしまいなさい。お兄様は絶対に勝つものです」

「にゃ」

「にゃにゃ」

獣耳を生やした二人の女の子が僕に殴りかかってきた。

部長がやられる? やられたら部長は……よ、よし! こんな時こそ

修行で生み出したこの籠手のもう一つの新たな力だ!

「木場君、セイグリッドギアを発動させて」

「よく分からないけど君を信じるよ! ソードバース!」

『Transfer!』

木場君が魔剣を地面に突き刺した瞬間に地面に籠手をぶつけ、譲渡の力を発動して、

地面から生えてくるセイグリッドギアの力を大幅に強化すると、

地面からすさまじい速度で魔剣が次々に生成され、

近くにいた卷族たちが全員、貫かれた。

うぅ……結構、見たくない光景だ。

「ガハッ! こ、これも龍の力なのか」

その一言を最後に、運動場に集まっていた相手はすべて、転移された。

「ふぅ、これでなんとか……やったね、木場く」

――――――ドォォォン!

『リアスグレモリー様のクイーン、ナイト戦闘不能!』

「え?」

僕が後ろを振り返った瞬間、爆音が聞こえるとともに血を辺りに散らしながら

目の前を飛んでいく彼の姿が見えた。

その数秒後にリタイヤを告げる放送が聞こえ、木場君は消え去った。

 

 

 

 

 

「テイク」

その言葉を呟きながら、朱乃さんと戦っていたクイーンの人が

地面に降り立った。

「ふふ、よくやりましたわ。ユーベルーナ」

「不思議そうな顔をしてるわね。なんで私がここにいるのかって。

確かに彼女は強かったわ。でも私にはこれがある」

ポケットから液体の入った小瓶を取り出した。

「フェニックスの涙!」

確かあれをかければどんな傷でも一瞬にして治療してしまうっていう

言うならばポーションみたいな液体!

「あら? ご存じだったの? そうよ、これで私は回復して彼女を討ったのよ」

「ふふ、これで残っているのは貴方と王、そして僧侶。でも僧侶は

戦闘向きではない。貴方はただの雑魚。

この勝負私たちの勝ちですわね」

……小猫ちゃんも……朱乃さんも皆やられちゃった? 

……僕がここで負けると……ぶ、部長はあの人に取られて……。

『Boost!』

何回目か分からない倍加が行われ、ドクン! と体の中で

何かが大きく、鼓動を打った。

「確かに、あなたのその魔力の振り幅とセイグリッドギアの力は

絶大なものですわ。ですが、レーティングゲームは個人戦ではなく、

団体戦ですわ。いくら、配下が強くてもキングを取られればお終い」

ぼ、僕のせいで…………また、僕のせいで……。

『お、おい相棒。落ち着け、魔力が不安定になっている』

「カーラマイン。そろそろと止めを」

「はい」

相手のクイーンの女性が杖を僕に向けて魔力を集中させていく。

ダメダメダメ! ぼ、僕がやらなきゃダメなんだ! 僕が負けたら!

「ん? ……まだ、何かやるつもりですか」

『Boost!』

「ぼ、僕がやらなきゃ」

『マズイ!』

『Release!』

「え?」

「こ、これ――――――」

そんな音声が辺りに流れた直後、僕の籠手が赤色の輝きを放ち、

その輝きはグラウンドにいた僕たちをあっという間に飲み込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――っっ!?」

私――――リアス・グレモリーがライザーと一対一をしている最中、

突然、グラウンドから空に向かって魔力の柱が立ち上り、校舎全体が……いや、

この空間自体が揺れているんじゃないかと感じるほどの強い揺れが校舎を襲った。

「うぉぉ! な、なんだ!?」

ライザーは突然のことに驚きながらもどうにか、

踏ん張って強い揺れに耐えていた。

その柱は徐々に大きさを収縮させていき、現れてから数秒程度で

光の柱は消え去った。

この魔力は……もしかして、イッセー?

『ライザーフェニックス様のクイーン一名、ビショップ一名リタイア!

リアス・グレモリー様のポーン一名リタイア!』

強い揺れが収まった直後にリタイアした者の通告が放送された。

ポーン……私のポーンはあの子だけだから……いったい、何をすれば

校舎をここまで大きく揺らしてクイーンとビショップの二人を

倒したのかしら……。

「ぶ、部長さん!」

「どうしたの……あれは」

アーシアがグラウンドの方を見てかなり驚いていたから私も

ライザーに注意しながらもグラウンドの方を見ると、そこには

とても悪魔一人で作り出せないような巨大な穴がグラウンドに空いていた。

「底が見えません」

「え、ええ……」

「たまげたな。まさか、あのガキがあの魔力でここまでの

穴をあけるとは……いや、どちらかと言えば暴走か。転生したての

悪魔にゃよく聞くが……これほどのものとはな」

転生したての悪魔はまだ、魔力の扱いが不安定なために強い精神的な不安が

発生した場合、魔力を制御しきれずに全身から放出してしまう、いわば

一種の暴走状態に陥ることが確認されている。

でも、ここまでの暴走は事例がないわ!

「ま、自滅に終わったな……リアス。そろそろ投了したらどうだ?」

……確かに今の私の実力じゃライザーには勝てない……

でも……みんなが傷つきながらも倒してくれたのに……

ここで私は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リザインするわ。ライザー」

私のリザイン宣告とともに放送から試合終了のベルが鳴り響いた。

私達の初めてのレーティングゲームは黒星となって幕を閉じた。




こんにちわ


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Life13

『相棒』

ドラ……イグ? ……ここは。

『ここは相棒の精神世界。言うならば俺が住んでいる空間だ』

そっか……僕は負けちゃったんだね。

オーフィスに鍛錬してもらったのに最後は呆気なく自滅……

ハハ……何が部長は渡さないだ……結局、僕はただ単に

無様に負けて部長をがっかりさせただけじゃないか。

『……違うな』

どういう意味?

『お前はフェニックスの卷族を三人も自らの力で打倒し、

さらに撃破にも貢献した。お前はよくやった……ただ、

自分がやらなければならないという大きな不安のために魔力が

逆流して籠手から一気に膨大な量の魔力が解放された。それだけだ』

大きい不安……はぁ。やっぱり、僕は精神的にも弱いんだね。

『この現象はお前に限ったものじゃないと思う。メンタルが弱い面は

前々から分かっていたこと……俺がお前を抑えてやれなかったのが原因だ』

違うよ。ドライグは何も悪くない……僕のメンタルが弱すぎたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケホッ……あれ?」

ドライグが話している途中で僕は現実に意識が戻り、

完全に意識を覚ました。

ここは……僕の部屋か。

「お目覚めですか?」

隣りから声が聞こえ、眼だけ動かして見てみるとそこには

メイド服を着たグレイフィアさんが正座していた。

「僕たちは……負けたんですよね?」

グレイフィアさんは僕の質問に何も言わずに首を縦に振った。

そっか……ということは今頃、部長は結婚式の真っ最中ってことだ。

「イツツツツ」

僕は痛む体をどうにかして動かしながらベッドから起き上がった。

魔力を一気に開放したせいなのか体中のあちこちが筋肉痛のようなものが

起きていて少しでも動くたびに痛みが走る。

部長…………。

僕はグレイフィアさんに頭を下げた。

「お願いです。僕を……僕を部長がいる場所まで

連れて行ってくれませんか?」

「……どうしてでしょうか」

「……部長を助けるためです」

僕はグレイフィアさんの目をジッと見ながらそう言うと、

グレイフィアさんは最初は目を見開いて驚いていたけど、

すぐに冷静な表情に変わった。

「仮にお嬢様を助けに行ったとしても何もできません。

運よくお嬢様を助けられたとしても貴方は全ての悪魔に

喧嘩を売るということになるのですよ。それでも良いのですか?」

……確かに、この結婚は純潔悪魔同士のもので生まれる子供も

純潔の悪魔……数が減っている純潔がさらに増えるということになる。

もしも、ただの転性悪魔の僕が結婚を潰せば全ての悪魔から

敵意を向けられるだろうね……。想像しただけでも気弱な僕の身体は

大きく震えてしまうくらいに恐い……でも……でも、やらなきゃいけないことの前では

恐怖心を抑えなきゃいけないこともあるんだ!

「それでも僕は行きます。全ての悪魔に喧嘩を売ってでも

僕は部長を助けます。その後のことはまたその時に考えます」

そう言うとグレイフィアさんはポケットから一枚の紙を

取り出して僕に渡してきた。

その紙をよく見てみると表と裏に魔法陣が描かれていた。

「それを使えば会場まで行くことができます」

「感謝します……アーシアさん」

彼女の名前を呼んでみるとガチャッと控え目に開けられた

ドアからアーシアさんが部屋に入ってきた。

その表情は既に覚悟を決めたものだった。

「行こうか」

僕はアーシアさんとともに魔法陣を使い、会場にまで転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひぇ~。やっぱり、壮大だね~」

僕は今、アーシアさんに傷を癒してもらいながら

大きなドアの前に立っていた。

今は音楽隊の演奏でも行われているのか綺麗なメロディが

ドアの向こうから聞こえてくる。

「アーシアさん。ありがと」

「はい……あ、あのこれを」

アーシアさんはおずおずと僕に十字架のついたネックレスと

小さな瓶に入った液体を渡してきた。

「も、もしも戦うときはそれを使って下さい。ネックレスと聖水です。

グレイフィアさんにお願いして今は聖なるオーラを抑えています。

そっか……悪魔は聖なるものが弱点……つまり、もしも

闘うことになったらこれで応戦すればいいんだ!

『相棒。聖水ならともかく、十字架はそのままでは使えんぞ』

え、そうなの!? じゃあどうやったら……。

『その腕を悪魔以外のものにする……だが、それはあくまで最終手段だ。

気づいていないとは思うがお前はバランスブレイクの域に達している』

セイグリッドギアの最終戦闘術……それがバランスブレイク。

世界のバランスをも壊しかねないもの……それが今の僕が使えるっていうの?

『ああ。オーフィスと戦ったことでセイグリッドギア自体が刺激を受けたのか、

それともお前の才能なのかは分からない。だが、お前は圧倒的な力を手に入れる』

どうして、一回目のゲームのときにそれを教えてくれなかったのさ。

『ライザーとの戦いのときに教えるはずだったんだがな……だが、

発動したとしてもまだ、未完成のバランスブレイクだ。使い勝手が

分からないだろう……そのまま戦い続け、俺が使うと判断した時は……

お前の腕を貰い、力を底上げする』

「……分かった」

僕は聖水とネックレスをポケットに突っ込み、

セイグリッドギアを発動して、倍加を始めた。

「ねえ、アーシアさん。こんな時は派手に行った方がいいよね?」

「え、えっと……注意を引くにはそうするしか」

「だね。離れてて」

僕はアーシアさんに離れてもらうように頼んで、安全圏まで

離れたのを確認して籠手の先に魔力を集め始めた。

「え、えっと誰も吹っ飛ぶドアにあたりませんように! たぁ!」

『Explision!』

魔力が爆発を起こし、巨大な魔力弾が放たれて、大きな扉を

木っ端微塵にしながら、破壊した。

ドアがなくなり、突然のことに驚いている参加者達の

目線が全て僕に注がれた。

っっ! あ、後ずさったらダメだ! 

僕は足を強く殴って一歩ずつ前に進んでいく。

一番奥にはウェディングドレスを着た部長とタキシード姿の

ライザーさんが驚いた表情でこちらを見ていた。

「ど、どうも。ぶ、部長を取り返しに来ました!」

コツコツと歩く音を会場に響かせ、若干声を上ずらせながら

徐々に二人のもとへと近づくと目の前に騎士が数人、現れた。

「そこまでだ!」

「ごめんなさい!」

――――――ドゴォ!

「ガッ!」

一言、謝罪を入れてから僕は相手が動き出すよりも早くに

相手の腹部に肘を入れると鎧が砕け、騎士さんは倒れた。

あぁぁぁ! 後で怒られないかな!? 怒られるよね!?

『まあ、その時は誠心誠意謝れ』

「てめえ」

ライザーさんはひどく怒った表情を浮かべ、僕を睨みつけてくる。

「部長を返し」

「そこまでだ」

突然の声に振り向くと、そこには部長と同じ紅色の髪を

もった男性が立っていた。

……な、なんだろ。この人からすさまじい何かを感じる。

「え、えっと貴方は」

「サーゼクス・ルシファー。魔王をやらせてもらっているよ」

「……ま、魔王様!?」

ま、まさか結婚式に魔王様が出席されているなんて……もしかして、

僕は魔王様に今ここで血祭りにあげられるんじゃ……。

「君はリアスを取り返しに来たんだね?」

「は、はい!」

「そうだね……君の戦いぶりは見ていたよ。先日のゲームも

かなり面白かった……でも、少し君たちが不利だった」

「魔王様。それはゲームが不服だったというのですか?」

ライザーさんは少々、不満げなようで魔王様にそう言うと

魔王様はニコニコと笑みを浮かべた。

「いやいや、そういう訳ではないよ。ただね、リアス達は

まだ若い。それにイッセー君は転生したてで魔力の扱いも分からない状態で

ゲームに臨んだ。それに対してライザー君は既に成熟し、何度か

ゲームを経験しているからね」

「サーゼクス。お前は結局、何がしたいのだ」

男性の野太い声が聞こえ、そっちに視線をやると

そこにも部長と同じ紅色の髪を持った男性がゴージャスな

装飾なんかを施した服を着て座っていた。

……魔王様を呼び捨てたってことは……もしかして、

この人は魔王様のご両親……つまり、部長は

魔王様の妹さん? ……なんか凄いな。

「お父様。私は彼とライザー君を戦わせたいのです。

リアスをかけて、フェニックスと伝説の龍が戦う。

これ以上の式が盛り上がるものはありません」

すると、魔王様のお父様は目を閉じ、何秒か考えて、

答えを出したのか目を開けた。

「好きにしなさい」

その一言に周りは少し、騒がしくなったけどまた静かになった。

 

「お許しも出たことだし、ライザー君と兵藤君。

是非、リアスをかけて戦ってくれたまえ。あ、そうだ。

兵藤君、君が勝てば何が欲しい?」

……つまり、それは契約ってことですか。

「何も。強いて言えば僕が勝てばリアス様を返していただき、

僕が負ければ……な、なんでもします!」

その一言に魔王様は苦笑いを浮かべて驚かれたけど、

一番驚いていたのは部長だった。

な、なんか言い方がおかしかったかな?

「わかった。では君が勝てば、リアスを。負ければ……

君の命をもらうことにしよう」

い、命!? ……こ、怖くて震えてきそうだけど勝てばいいんだ!

余裕のテストを受ける前の自信を持つんだ!

「わ、わかりました!」

そう言うと、魔王様は一瞬だけ笑みを浮かべて会場から出て行った。

その後、急遽、式はいったん中止となり正式に僕と

ライザーさんが闘うことが決まった。




こんにちは


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Life14

さて、決闘が決まったわけだけど僕はある意味決闘をしていた。

「すみませんでした!」

部員の皆がいる前で僕は再び土下座をしていた。

何故か―――――それは、僕が負ければ命をあげると言ったことに対してだった。

特別に用意された控室で部長はかなり怒っているらしく、僕は

その顔を見た瞬間に反射的に床に手をつき、土下座をしていた。

「……イッセー」

「っ!」

部長の声が聞こえ、肩をビクッと震わせた僕は恐る恐る顔をあげると

そこには泣いている部長の顔があった。

「バカ……どうして命なんかかけるのよ」

部長は泣きながら、僕を優しく抱きしめた。

……優しいな……部長は僕の為に

泣いてくれて、こんなにも心配してくれる。

「ごめんなさい…………絶対に勝ってきます。ぼ、僕だって

まだ死にたくないですもん」

「ふふ、そうね……待ってる」

部長は僕のおでこにキスをして、背中を軽く押してくれた。

……なんでだろ、今は恥ずかしいとか言う気持ちはなくて、

心の底からやる気が満ち溢れてくるよ。

僕は準備を終え、外で待っているライザーさんのもとへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました」

ライザーさんの目の前に立つとめんどくさそうな

表情を浮かべて僕の方を見てきた。

「まったく。あのまま、何もせずにいればお前も死なずには済んだのにな」

どうやらライザーさんは僕に百%勝つと思っているらしかった。

……絶対に勝つ…………部長と約束したんだ! 勝って帰ってくるって!

「そうですね。そのままのうのうと平和に

暮らせたかもしれません……でも、部長が悲しんでいるのに

僕はのうのうと暮らせません……悪いですけど、あなたには

部長を愛しているって言う感じがしないんです」

『Boost!』

「愛してもいない人と結婚するなんて僕は認めない!

結婚は二人が幸せになって初めて結婚っていうんだ!

僕は貴方を倒して部長を取り戻す! 貴方の運命は僕が決めます!」

その直後、僕は全身から内にある魔力を開放すると辺りの

地面が大きくへこんだ。

「また魔力を暴走させるのか?」

「いいえ! この力で! 僕は貴方を倒します!」

僕の感情が爆発するとともに籠手にはめられている宝玉が

さらに強く、輝きを発し始めた!

さあ、行くよドライグ! 僕に力を貸して!

『ああ、いってやれ!』

「バランスブレイク!」

『Welsh・Dragonn balance blaker!』

宝玉の輝きが最大になったと同時に籠手から音声が鳴り響き、

辺りに魔力が放出された!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光が止み、目を開けると目の前の視界は普通なんだけど、手を見てみると

赤い鎧が見えた。

『これが赤龍帝の鎧だ』

す、凄い! 体の奥底から力が満ち満ちてくる!

「ブーステッドギア・スケイルメイル!」

「そんなはったりが通用する相手か?」

ライザーさんは炎を手にともして殴りかかってくるけど

僕はその拳を片腕で掴んで止めた。

「なっ!」

「行くぞぉぉぉぉぉぉ!」

『Boost! Boost! Boost! Boost!

Boost! Boost! Boost! Boost!』

「ゴッ!」

魔力を連続で倍加させて、ひじの部分から魔力を噴射させて思いっきり

ライザーさんの顔面を殴って、殴り飛ばした。

殴り飛ばされたライザーさんはそのまま飛んでき、近くに立っていた

高い建物にぶつかって穴をあけるも、背中から炎で翼をつくって

勢いを殺し、地上に降り立った。

「ガッ! てめえ!」

「もう一回!」

僕は背中にから膨大な魔力を一気に噴出させ

飛行しながらライザーに近づき、腕を突き出して相手を殴ろうとするけど

それは避けられてしまう。

――――――ズゴォォォォォォォォ!

しかし、その拳は何もない場所を殴ったにも拘らず、

地面を大きく抉り衝撃波を辺りにばら撒いた。

「くぅ! このクソ野郎がぁ!」

「う、うおぁぁぁぁぁ!」

ライザーは炎を球状にし僕に何発も投げつけてくる

けど、僕が叫んだことで全身から発せられた魔の波動で

火球は全て一瞬にして消え去った。

足が震えながらも、僕はライザーさんに向かっていく!

「ぶっ飛べぇぇぇぇぇぇぇ!」

―――――ドゴォ!

「がはぁ!」

僕の拳がライザーさんの顔面を捉え殴り飛ばすと建物をいくつか貫通した。

「おらぁ!」

ライザーさんは炎を放出して圧し掛かっていた瓦礫を退かすと

僕に巨大な火球を何発も放ってきた。

「わわ!」

僕はそれを籠手から魔力を大量に噴出して、その勢いで

上空に避難して火球をかわした。

「喰らえ!」

僕は籠手から魔力の弾丸を何発も放つとライザーさんは大きく吹き飛ばされた。

「部長! この場でのプロモーションを

お許しください! プロモーション、ナイト!」

「舐めやがって!」

ライザーさんが炎の翼を出してものすごい速度で近づいてくるが僕は

それを上回るナイトの凄まじい速度でそれをかわした。

「ど、どこだ!?」

「キィィィィィィック!」

「がぁ!」

僕は高速で移動しながら後ろから蹴りを入れるとライザーさんは

避けられずにモロに喰らってしまいそのまま遠くのほうにまで吹っ飛んで行き、

建物に直撃した。

「くそがぁぁぁぁぁ!」

ライザーさんは叫びながら炎を全身から放出して、建物を

炎の爆発で消し飛ばした。

さらに手から小さな火球を無数に作り出していき、宙に浮かべた後に

それらを一気に僕に向かって飛ばしてくる!

「ドライグ!」

『Start! High speed time!』

バランスブレイクで魔力が数倍にも跳ね上がったおかげか以前よりも

さらに上の速度が出て、全ての火球を避けたり、鎧で弾いたりしながら

ライザーさんに向かっていく!

「だぁ!」

「がっ!」

僕の速度に付いていけなかったのか、反撃することもできずに僕の拳が

彼の腹に突き刺さり、そのまま魔力を噴射させて凄い速度で腕を振り切り、

相手を殴り飛ばした。

「ハァ……ハァ……ハァ」

『良い調子だ相棒。そのままの調子で行け!』

ドライグの激励の後、向こうの方で大爆発が起き、憤怒の表情を浮かべ、

全身から炎を噴き出しているライザーさんが僕を睨みつける。

「認めたくはねえがてめえは既に化け物以上だ! だがな! 俺は上級悪魔!

転生したての下級悪魔なんかに負けるわけにはいかないんだよ! 

主であるリアスの前で滅びやがれ!」

ライザーさんの魔力が爆発的に上がったかと思うと炎が凄まじい勢いで

彼を包み込み巨大な、まるでフェニックスの様に変貌した。

観客達は何かで皮膚を隠さないと火傷してしまうほどの熱気に襲われた。

 

 

 

 

 

「ま、まだあんな奥の手を残していたなんて」

『怖いか? 相棒』

頭の中にドライグの声が響く。

ああ、怖いさ。でも、部長が! リアス先輩がかかってんだ!

この戦いは諦められない! ドライグ! 早々にこの戦いにケリをつけたい!

ドライグ!

『……分かった』

その時、宝玉が赤色に輝きはじめ、一瞬だけ僕の腕の感覚がなくなった。

「おぉぉぉ! 炎の鳥と鳳凰と言われたこの炎で塵となれ!」

「どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

――――――ドゴォン!

お互いの顔にお互いの拳が入った。

熱い熱い熱い熱い! 痛い痛い痛い!

そんな感情がふつふつと上がってくるけど今はそんな事言ってられない!

「ぐはぁ!」

先に膝をついたのはライザーさんだった。

「くっそ、なんで俺が」

「これの所為じゃありませんかね?」

「十字架!?」

ライザーさんは僕が見せている物にかなり驚いていた。

僕が見せているのは十字架、ここに来る前にアーシアさんから

借りた奴を握りしめてライザーさんを殴りつけていた。

悪魔にとって聖なるものは害を与えるもの、十字架叱り

後もう一つもだけどね。

「確かに十字架のダメージはフェニックスでも治しきれねえ!

だがそれはお前も同じ! 悪魔であるお前が素手で持つなど愚の骨頂だ!」

「これを見ても?」

僕は籠手とは反対側の手の鎧を解除して、

ライザーさんに見せるとライザーさんはとても驚いていた。

「お、お前自分の腕を籠手に宿る龍に!」

「ええ、腕はドライグに代価として払いました」

僕の腕は人間の腕じゃなくて真っ赤な鱗で覆い尽くされている

ドラゴンの腕に変化していた。

「お前正気か!? そんな事をすれば二度と元には戻らねえんだぞ!」

「確かに二度と戻ってこない。でも……でも、こんなところで負けられないのは

貴方だけじゃないんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

――――――バキィィ!

「がはぁ!」

僕は倒れているライザーさんの首を龍の腕で掴んで籠手で殴りとばした。

「ついでにこれもです」

『Transfer!』

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

僕はライザーさんにギフトで強化した液体をかけると、ライザーさんは

悲痛な叫びをあげながら、地面にのたうち回った。

それを見た周りの観客達から悲鳴の様なものが聞こえてきた。

「聖水です。僕の同僚に元シスターがいましてね。その子から借りてきたんです。

上級悪魔なら大したことはないんですがギフトで力をあげた聖水なら効果は跳ね上がる」

「て、てめえ!」

徐々にフェニックスの特性で回復はしていくけどその速度は今までと比べて

段違いに遅くはなっていた。

彼の服はボロボロで炎も弱弱しくなっていた。

「おぉぉぉぉぉぉ!」

僕はライザーさんに殴りかかるが上級悪魔としてのプライドなのか

ライザーさんも拳をぶつけ、鎧が砕け散った!

『相棒! そろそろ限界のようだ!』

未完成のバランスブレイクじゃここまでが限界のようだね!

「おぉぉぉぉぉぉぉお!」

お互いの拳がぶつかり合い僕の鎧は拳の部分が砕け散ってライザーさんの

拳からは鮮血が触れてきた。

「おぉぉぉぉぉぉぉ!」

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」

それからはただの殴り合いだった。

どっちかが倒れればお終いのサドンデス。

そこにあるのはプライドと意地のぶつかりあいだった。

上級悪魔として僕みたいな下級悪魔に負けられないというプライドと

部長を何としてでも助けだすという僕の意地があった。

 

 

 

 

 

 

 

「うらぁぁ!」

「ぐふぅ!」

僕の拳がライザーさんの腹部に直撃して

血反吐を吐いてライザーさんが数歩下がった。

『Transfer!』

僕は、十字架にギフトを譲渡して10倍に強化させてから

龍の腕となった腕で十字架を握りしめた。

それを見たライザーさんは慌てて僕に話しかけてきた。

「ま、待て! この縁談は悪魔の未来を決定するかもしれないものなんだぞ!

それを何も知らねえお前がどうこうしていいもんじゃねえんだ!」

悪魔の未来ね……確かにそれも重要ですね。

「そうですね……未来も大切です。でも、民を犠牲にしてまで

手に入れた未来なんかロクなもんじゃない!

こんな誰も幸せにならない縁談なんか僕が潰す! 未来って言うものは

何かに頼るんじゃなくて自分の手で切り開いていくもんなんだ!」

僕は持っている全ての力を込めてライザーさんの腹部に拳を入れると

ライザーさんは血反吐を吐いて数歩だけ後ろに後ずさった。

「こ、この俺が」

そう言ってライザーさんは地面に倒れ伏した。




どうもっす


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Life15 

「はぁ……はぁ……はぁ」

動かなくなったライザーさんを見て僕はようやく勝ったんだと思えて

その場を離れて部長のもとに向かった。

するとドレスを着たライザーさんの妹さんが走って来て僕の方を睨んできた。

「も、文句があるならかかってきてください!」

「っ!」

レイヴェルさんは何も言わずにそのまま僕の横を通り過ぎて

行ってお兄さんのもとに行った。

僕は気を失いそうなくらいに悲鳴をあげている全身をどうにかして

突き動かして、ウェディングドレスを着た部長の所にたどり着けた。

「終わりましたよ、グレモリー先輩。さ、帰りましょう」

僕は危うく龍となった腕で先輩の手を取ろうとしていた。

気づいた僕は慌ててその腕を引っ込めようとするけど先輩が龍となった腕を

掴んで決して離そうとはしなかった。

「せ、先輩?」

先輩はギュッと握りしめたままだった。

……ま、いっか。

僕はそのまま部長と手を繋いだまま、

帰ろうとすると目の前に先輩のお父様が立っていた。

「……」

何も言わずにただただ僕たちを眺めているようだった。

「退いて下さい。僕は勝ちました。よって魔王様と約束した代価である

グレモリー先輩を返してもらいます」

そう言うとお父様は何も言わず目をつむり僕たちに道を開けてくれた。

そうして僕はグレイフィアさんから預かった魔法陣の裏側を使うと

そこから鷹だか鷲だか分からない鳥が出てきた。

「……グリフォン」

会場のどこかからかそんな名前が聞こえてきた。

ふむふむ、この生物はグリフォンて言うのか。

僕と部長はその背中にまたがって帰っていった。

 

 

 

 

 

 

「フェニックス卿、申し訳ない。縁談を破談させてしまって」

「いえいえ、構いますまい。我々、既に純潔の孫がおります辺りよろしいかと。

しかし、見ものでしたな。久々に興奮しましたよ」

「ええ、私もです。悪魔になって一か月もたたないうちに神器を

バランスブレイクに覚醒させ、さらにはフェニックスを倒してしまうとは」

「ええ、お互い長生きはするもんですな。所で赤がいるという事は」

「ええ、既に白も」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冥界の空は紫色何だね~。

ここに来たときは別の事に必死だったから気がつかなかったんだけど。

この空を見ているとなんだか落ち着く。

「バカね」

グレモリー先輩がさっきから僕の頬を撫でてくれている。

なんだか照れるけど落ち着く。

ようやく先輩を取り戻せたって言う感じが確認できた。

「―――――っ」

でも、僕の龍のものなった腕を見て先輩は言葉を失い、

沈痛な面持ちで僕の腕をさすってくれる。

「あ、あまり触らない方がいいですよ。気持ちが悪いでしょ?」

「全然。この腕はイッセーの腕よ。気持ち悪がるなんて以ての外だわ」

そう言って何度もさすってくれる。

「龍に代価を払えば二度と帰ってこないのよ?」

「そうみたいですね……でも、この腕を龍にしたから僕は十字架を

素手でつかむことができたんです。その結果ライザーさんにも勝てた。

そして先輩が帰ってきた。それで僕は満足です」

僕が笑って話すがやっぱりグレモリー先輩の表情は芳しくない。

「……今回は破談にできたかもしれない。でも、また婚約の話が来るかもしれないのよ?」

「その時は大丈夫です! この龍の腕とバランスブレイクを使って追い返します!

グレモリー先輩の婚約者は先輩自身が決めるって言って! ぼ、僕だってやるときは

やる男なんです!」

「……イッセー、目の上にゴミがついてるわ」

「へ? ど、どこですか?」

僕は先輩に言われて目を擦るがゴミらしきものがどこにあるのか分からなかった。

「目をつむって頂戴。私が取ってあげるから」

「あ、はい」

そのまま僕が目をつむるとその数秒後に唇に柔らかいものが当てられた。

うぇぇぇぇぇぇぇ!? こ、この感触はまさか!?

驚いて目を開けてみると目の前にはドアップのグレモリー先輩の

顔が映し出されていた。

そして唇を離すと先輩は笑顔でこういった。

「私のファーストキスよ。日本では大切な人に捧げるのよね?」

もう僕幸せ死しちゃいそう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてさてさて、無事に結婚騒動も終わり、僕は元の日常に戻ってきました。

「んん~。よく寝た」

まだ、ちょっと体に痛みが残ってるけど日常生活に

支障はないから安静にしていれば治るよね。

僕はそう考えながら一階に下りていくと、何やら母さんの

嬉しそうな声が廊下にまで聞こえてきた。

どうしたんだろ……なんだか、近年稀にみるくらいの興奮なんだけど……

もしかして、何かの懸賞に当たったのかな?

そう思いながらリビングに通じるドアを開けるとそこには

紅色の髪を持った女性――――――リアス先輩がいました。

「……ぶ、部長? 何故、僕の家に?」

「イッセー君もきましたので。もう一度言わせてもらいますわ。

これからイッセーくんのお家に住まわせていただきます

リアス・グレモリーですわ。不束者ですがよろしくお願いいたします」

「んまあ! グレモリーさんまで家にいてくれるなんてもう

イッセーの将来は安泰だわ! ねえお父さん!」

「ああ、そうだな! 孫の顔も見れるよ!」

両親は涙を流しながら喜んでいた。

まあ、僕は彼女とか女ネタは皆無だったからね。

……もしかして、アーシアさんと同じ感じでホームステイっていう

名目で部長さんも僕のお家に泊まっちゃうパターンなのかな?

「てことでお父様とお母様の許可も貰ったからこれからよろしくねイッセー」

部長は満面の笑みを浮かべて僕の方を見てきた。

……なんだか、部長の笑顔を見てるとどうでもよくなってきちゃった。

「はい! よろしくお願いします!」

これからお家が賑やかになっていくよ。




どもっす


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Life16

さて、皆さんおはようございます。

兵藤一誠です。

グレモリー先輩の結婚事件から数日が経過しました。

いや~時が経つのは早いですね~。

さて、今僕は別の意味で危機に陥っています! それは――――――。

「うぅ~イッセ~」

僕の隣では部長さんが笑みを浮かべながら

僕の腕を抱きまくら代わりに使って寝ています。

……い、良い匂いがする……じゃなくて!

「ぶ、部長。離してください」

「嫌~。私はイッセーを抱き枕にしないと寝れないの」

もうこのやり取りは何回目何だろう。

一向に離してくれません。

ていうか昨日にお断りした筈だよね? 何で入ってきてるの?

「イッセーさん! 早朝トレーニングの時間ですよ~!」

ア、アーシアさん!? こ、この状況を見られたらアーシアさんまで

部長と同じような状態に陥ってしまう!

「あ、い、今いk」

「アーシア、ちょっと待ってなさい。私とイッセーもすぐに行くから」

そういった途端にアーシアさんが部屋に入ってきちゃった。

腕に抱きついている状況が丸見え。

「ダ―――――イブ!」

もう止めてぇぇぇぇぇ!

 

 

 

 

 

 

 

『いただきま~す!』

さて、今日も一日を告げる朝食が始まりました……が

アーシアさんがさっきからふくれっ面で見えない所で抓ってきます。

め、めちゃくちゃ痛いし。

「あ、アーシアさん痛いよ」

「ふん!」

と、アーシアさんは頬をふくらまして僕とは

別の方向を向いてご飯を黙々と食べる。

うぅ、絶対さっきの所為だ。

部長が裸で僕の隣で寝てるからこうなっちゃうんだよ。

「それにしてもグレモリーさんは料理がお上手なんですね」

「いえ、日本にいる期間が長いので自然と覚えましたの。

今では和食、中華、洋食何でもいけますわ」

まあ、母さんの言うとおり本当に部長さんは料理がうますぎる。

この卵焼きも僕がうす味派であることを知ってか醤油も何もかけて

くれてないし、おみそ汁も薄味になってる。

……ってか、何で部長さんが僕の味の好みを知ってるんだ?

「あ、そうですわ。実は今日部活動の活動でイッセーの

お部屋に部員を数人連れてきてもよろしいでしょうか?」

「もう! グレモリーさんは家族みたいな

もんだから自由にしてくれていいわよ!」

母さんは本当に嬉しいのか満面の笑みを浮かべながら部長に話しかける。

「いえいえ、私は住まわせてもらっている身。そんな勝手はできませんわ」

……それはそうだとは思うんだけど何も掃除やお風呂をためたり食器を洗ったり

なんかの家事を何から何までしなくても僕は良いと思うんだけどな。

 

 

 

 

 

 

という事でその20分後に、部員の皆が僕の家に来た。

それで何故か知らないけど母さんがアルバムを持ってきた。

「いやん! もうイッセー可愛い!」

「はぁ~これがイッセーさんが幼いころの写真」

「……兵藤先輩の幼いころの写真」

「ひぃぃぃ! み、見ないでぇ!」

「……動かないでください」

皆、僕のアルバムを見てニコニコしながら写真を一枚一枚見ていた。

僕は必死に写真を取り返そうとするんだけど小猫ちゃんに

抑えつけられていて全く抵抗できない。

やっぱり戦車(ルーク)の力はものすごいもんだね。

「ねえねえ見て! これなんかイッセーがメリーゴーランドで

何が怖かったのか分からないけど泣きじゃくって係員さんに連れられてる写真なの」

母さんが指をさす写真には確かに、泣きじゃくっている僕が映っていた。

「可愛い! この泣きじゃくってる顔も癒されるわ~」

「ふふ、あ、そうだわ。イッセー、少し皆さんのお飲み物を持って来て頂戴」

「え、なんで?」

「良いから早く」

「う、うん」

妙に真剣な顔をして言うもんだから言われたとおり飲み物を取りに行った。

 

 

 

 

 

 

 

「皆さん、これからもイッセーをよろしくね」

そう言って急にイッセーくんのお母さんが頭を下げ始めた。

「あ、あのお母様?」

「昔からあの子、気が弱い性格だから色々あってなかなか友達を

作らなかったみたいなの。だからこれからもイッセーのことよろしくね」

「勿論ですわお母様」

無論、僕はイッセーくんのお友達だよ。

そう思って僕は一枚の写真をおもむろに取るとそこに映ってたものに驚愕した。

こ、これって。

この写真に写ってる物がこの戦いのトリガーだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イッセー、お茶の準備はできた?」

「あ、もう少しで終わります部長」

あれから、数日が経過し、今は昼休み、

僕達オカルト研究部は部長からの

招集を受けて部室にお茶とお菓子を準備しています。

何やらお客さんが来るらしい。

「ふぅ~できました!」

「分かったわ。イッセー、この学校に私たち以外にも悪魔がいるのは知ってるかしら?」

「あ、はい。そこら辺はドライグから聞いてます。確か生徒会長のシトリーさんですよね?」

「ええ、あ、噂をすれば」

いきなり部室のドアが開いたと思うとそこから生徒会メンバーが入ってきた。

ちなみに皆さん悪魔の方々です。

「久しぶりね、リアス」

「ええ、そうね。ソーナ」

部長は生徒会長さんと懐かしそうな表情を浮かべて握手をしていた。

へ~お二方は知り合いなんですか~。

でも、まさかこの学園に悪魔の方がオカルト研究部以外に

いたなんて驚いたな~。

「初めまして。兵藤一誠君、アーシア・アルジェントさん。

私はこの学園の生徒会長のソーナ・シトリーよ」

会長は丁寧な口調で僕たちに自己紹介をしてくれた。

生徒会長さんはこの学校で部長や副部長たちと肩を並べるほどの人気を

持っており、そのクールな眼差しに皆キャーキャー言っている。

「初めまして。僕はグレモリー先輩の下僕でポーンの兵藤一誠と申します」

「ア、アーシア・アルジェントです」

アーシアさんは少し、オドオドしながらも自己紹介をしていく。

少し、彼女は人見知りなところがあるからね。

「匙、貴方も挨拶を」

「はい、俺は匙元士郎だ」

匙という名の男の子がぶっきらぼうに僕に挨拶をしてくる。

するとアーシアさんに近づいて行ってものすごい笑顔で握手を交わした。

「よろしくねアーシアさん!」

「は、はいぃ」

アーシアさんはあまりの突然の変化に戸惑いを隠せずに

少しひきつった顔をしていた。

「で、お前……まあ、よろしく」

「あ、はい」

なんか、アーシアさんの時と比べて明らかに握手も弱弱しいというか。

すると早々と握手を切り上げると木場君のもとに行って肩を組み始めた。

 

 

 

 

 

「よう! 聞いたぞ木場! お前フェニックス家の三男を倒したんだってな!」

……僕でもなんだかとてもムカつく。

『どうだ? ここで一発でかい花火をあげるのは』

いやいや、今昼休みだし。

「いや違う」

「そう謙遜すんなって! お前は強いよな~。俺も兵士の駒四つ消費して

悪魔に転生したけどおなじ悪魔として尊敬するよ!」

う、う~ん。あんまり、いい気分はしないな。

すると生徒会のメンバーが一気にきつい視線を匙って言う人に送ると

それに気づいた匙くんが顔を引きつらせて席に戻っていった。

「匙、兵藤君に謝りなさい」

「え? な、なんでですか?」

「前に言ったはずです。私の眷属ならば恥をかかせないでください」

「え、えっと」

「匙、早く謝りなさい」

「……はい。悪かったな」

突然、会長に謝れと言われた匙君は少し、戸惑いながらも頭を下げた。

「ははは、いえ別にかまいませんよ~僕はこれっぽちも気にしてませんから~」

僕は満面の笑みを浮かべながらそう言ったと思うんだけど何故か、皆、

苦笑いを浮かべて僕のことを見ていた。

「では、私たちはこれで」

「ええ、忙しい中ありがと」

そう言って、会長さん達はオカルト研究部室から去っていった。




どもっす


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Life17 戦っちゃいます!!

皆さんこんにちわ、イッセーです。

さて、今、僕達のいる部室は重い空気が流れています。

その理由は木場君の最近の態度にありました。

僕の家で何か写真を見た後になんだかずっとどこかを眺めてたりボーっとしてたり。

そんな状態でずっといるもんだから部長さんの堪忍袋の緒が切れて今さっきまで

お説教をしていたんですが……。

「ねえ、まってよ木場君!」

お説教が終わった木場君はそそくさと帰っていったから僕は追いかけていった。

「何かなイッセーくん。用がないなら帰ってくれないかな」

木場君は普段の笑顔を一切出さずに機嫌が悪そうな表情をしていた。

「この前から変だよ! 何かあったなら話してみてよ! 友達じゃん!」

「……友達ね、悪魔には最も似合わない言葉だよ」

むぅ~友達を馬鹿にしたな~。

「……聖剣」

「っ!」

「この写真に聖剣が映ってたんだよね?」

僕は木場君に問題の写真を見せると案の定驚いたような顔をしていた。

そりゃそうだよね、知らないもんだと思ってたんだろうから。

「そして木場君が聖剣使いを人工的に作り出す計画に生き残りって言うことも知ってる」

「……どこでそれを知った」

こ、怖いよ~。なんでこうも木場君は怒ったら怖いのさ~。

「え、えっとド、ドライグに聞いたんだ」

「あ、そう……じゃあね」

そう言ってスタスタと木場君は離れていった。

む、余計に怒らせちゃったかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ~命の恩人の部長と喧嘩するなんて……恩をあだで返すにも程があるよ。

「……ん?」

雨の音とは違う音が聞こえて目の前を見るとそこには前に見た顔があった。

「やっほ~お久しぶり~クズな悪魔さん達~」

白色の髪で悪魔を殺すことを快感にしている神父、フリードがいた。

「何の用かな? 僕は今至極機嫌が悪いんだ」

「そりゃあいいね~。俺っちの聖剣とあんたの魔剣、どっちが上かやってみない?」

っ! あの剣から発せられてるオーラは!まさか!

 

 

 

 

 

 

 

 

いないな~木場君。

僕はあれから気になって木場君を探してるわけなんだけど一向に見つかんない。

「どこ行ったんだかね~………ねえ、ドライグ」

突然、ものすごいオーラがどこからか現れた。

場所が分からないのにそのオーラは僕の肌をチクチクとさしてきた。

『ああ、恐らくは聖剣を持った神父と……この感じは魔剣か』

「ってことは木場君か……行こうか。どっちらへん?」

『向こうだ』

僕はドライグの指示通りにその場所に向かうとそこには人気の少ない

場所でお互いの得物で斬り合っていた木場君と会いたくない神父がいた。

「木場君!」

僕の声に白髪神父は嫌そうな顔をして、いったん木場君から距離を取った。

「ぬふふふふ。ここはいったん退散!」

そう言うと神父は何かを地面にぶつけた。

次の瞬間にはものすごい光が僕らの目を遮った。

ま、眩しい!

輝きが消えた時には既にあの神父の姿はなかった。

「大丈夫!? 木場く……ん?」

僕の後ろにいたのは見たこともないような恐ろしい顔をした木場君だった。

「何で邪魔をしたのか? 危うく斬りかけたよ」

木場君は冷たい目で僕を見下ろすとそのまま何も言わずに帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「え? 教会側の方々がこっちに来るんですか?」

その日の晩、グレモリー先輩から明日に関する連絡を聞いていた。

「ええ、何やら私の管轄下で何かが起きてるみたいなの」

「では、それを調査しに来るんですか?」

「ええ、ただの調査だと良いんだけど」

先輩は自分の管轄下で一体何が起こっているのか不安なのか

少し暗い表情をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あくる日の放課後、僕はまたまた、お茶やらお菓子やらの準備に追われていた。

用意していたお菓子をアーシアさんが、勘違いして食べちゃったもんだから近くの

コンビニに行って和菓子を買いに来ています。

「すみません、イッセーさん」

「良いよ、僕もあんな目のつくところに置いていたのが悪かったんだし」

「うぅ~イッセーさんは優しいんですね」

そう言ってアーシアさんは顔を赤くして俯いてしまった。

「そうかな」

「あら、イッセーくんじゃない!」

急に後ろから声をかけられて振り向いたら、そこには胸に十字架をつけて

緑のメッシュを髪に入れている女性と栗色の髪の毛……うげぇ! ま、まさか!

「イ、イリナちゃん?」

「うんそうそう! 紫藤イリナ! 懐かしいな~何年ぶりだろ!」

栗色の髪を持った女の子は僕の肩に手を置いて嬉しそうに

ピョンピョンと飛び跳ねていた。

この子は紫藤イリナちゃん、僕の幼馴染の様な子。

少しの間、近くの家に住んでた子で男の子っぽかった。

でも、僕はそんな彼女が苦手である。

何故なら

「ねえねえ、特撮好きは卒業したかな?」

こんな風に僕をいじってくるからである。

そのおかげで僕は何度クラスの笑い物になったか。

「ところでなんでそんなに距離を離してるのよ」

うん、だって胸につけてる十字架からビシビシ聖なるオーラが

僕に攻撃してくるもん。

片っぽの腕は気にしないんだけど他は悪魔だから痛いのなんの。

既に涙目になっちゃってるし。

「え、えっとひとまず中に入りなよ。君達が教会からの使者さんだよね?」

 

 

 

 

 

「先日天使陣営で保管していた聖剣エクスカリバーが盗まれました」

聖剣エクスカリバーとは先の大戦で四散した破片を集めて作り直して

七つの剣に分けたんだってさ。

エクスカリバー・デストラクション、エクスカリバー・ミミック、

エクスカリバー・ラピッドリィ、エクスカリバー・ナイトメア、

エクスカリバー・トランスペアレンシー、

エクスカリバー・ルーラー、エクスカリバー・ブレッシングだっけ?

それぞれの聖剣には特殊な能力があって破壊力に優れていたり形を変えたりと

いろんな能力があるんだって。

にしてもさっきから木場君の顔がとても怖い。

「そして奪った者もすでに分かっている。グレゴリのコカビエルだ」

「コカビエル……古の戦いから生き残っている堕天使の幹部」

「上が言う事を要約して話そう。君達悪魔は一切手を出すな」

……そりゃ無理な話でしょ。

だってここグレモリー先輩の管轄だし手を出すなって言うのはね~。

「それで? 二人で堕天使から聖剣を奪うとでも言うの?」

「ああ、そうだ」

「無謀すぎるわ。貴方達死ぬ気なの?」

「そうよ」

イリナちゃんはさも当然と言わんばかりの表情で部長に言った。

聖職者……アーシアさんなどの様なシスターや教会関係の

仕事についている人たちはその地位が上がっていくごとに

信仰心が上がっていく傾向がある。

恐らく、お客さんの2人も信仰心が高く主である神の

為になら命も惜しくないという方たちだ。

だから、たとえ自分の命が危ない状況でも主が救ってくれる……そんな風に思っている。

 

 

 

 

 

 

 

それからも数個、話をしたけど何も変わらなかった。

部長は自分の管轄下である地域で起こっていることなのだから自分も

協力したいと申し出たのだが教会側は悪魔は一切、手を出すなという

見解を出しているらしく2人は部長の申し出を拒否した。

「そろそろお暇させてもらうよ」

「あら、お茶でも出そうと思ったのに」

「結構さ」

2人とも結構クールというか冷たいもんだね~。

せっかく和菓子も買って来たっていうのに……まあ、後でアーシアさん

でも誘ってミニお茶会を始めるさ。

すると二人の視線がアーシアさんに向けられた。

「……もしやとは思っていたが魔女のアーシア・アルジェントか?」

それを言われたとたんにアーシアさんは体を大きくビクつかせて震え始めた。

魔女――――――その単語は僕たちには何の変哲もない一つの単語だけど彼女からしたら

そういうふうに呼ばれた所為で人生が狂った。

「元聖女のアーシアが今は悪魔になったって聞いたら周りに

いた人はさぞ悲しむでしょうね」

こいつら、アーシアさんの何を知って言ってんだ。

そんな事を聞いていると自然と僕の腕にも力が入る。

今は人間の腕になっているドラゴンの腕もさっきからピキピキと音を立てている。

「しかし、悪魔か。まだ我らの神を信仰しているのか?」

イリナちゃんは呆れたような声音でゼノヴィアが言ったことを否定する。

「ゼノヴィア、悪魔になった彼女が信仰してる訳ないじゃない」

「いいや、彼女からは香りが感じるんだ。私はそういうのに敏感なんだ」

「……ま、まだ捨てきれないだけです」

そりゃ、そうだ。

長年信仰してきた物はそんなに簡単に捨てられるはずがない。

大切なものを捨てられないのと同じだ。

「そうか、なら私達に斬られると良い。今なら神の名のもとに断罪しよう。

罪深くとも我らの神ならば救いの手を差し伸べてくれるはずだ」

2人は布に巻かれた聖剣をアーシアさんに向けて近づいてくる。

「じゃ、私が」

「させるわけないでしょ」

アーシアさんの目の前に籠手を装着した僕と

魔剣を持った木場君が立ちはだかった。

「ほ、ほらさ。できれば剣を降ろしてくれたりなんかしてくれたら」

直後、窓ガラスが割れて木場君とイリナちゃんではないもう一人の

剣士が目の前から消えていた。

「「はぁ~」」

僕とイリナちゃんは同時にため息をつきながら外へと向かった。




こんばんわっす


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Life18 

「ガハッ!」

血反吐を吐いて木場君が倒された。

二人が戦闘を開始してから数分、最初は拮抗していた実力も

徐々に天秤が相手の方に向いていった。

「もう少し冷静になってかかってくると良い……君もやるのか」

「い、いえいえ! 僕はやりませんよ」

「そうよ、ゼノヴィア。イッセー君は切っちゃダメ」

そう言うイリナちゃんの言葉を聞いて、ゼノヴィアさんは少し驚いたような

表情をしたけど、すぐに剣に布を巻きつけた。

よ、よかった。これでいざこざはなんとか終わったよ。

「今回は私闘ということにしておこう。行くぞ、イリナ」

「オッケー。じゃ、また会おうね。イッセー君」

イリナちゃんは笑みを浮かべて腕を振りながら去っていった。

僕も思わず手を振りかけたけどすぐ近くの木場君の雰囲気に

押されてすぐに手を引っ込めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、きつ~いお叱りを受けた木場君は部長から自宅謹慎を命じられました。

まあ、そりゃそうか。今の悪魔と天使の関係は最悪クラス。

今回の戦いで戦争が起きなかっただけまし。

でも、僕はそんなのどうでも良かった。

僕の友達が苦しんでるんだ。

だから僕は部長さんには秘密裏に、ある計画を進めることにした。

「……何か用ですか? 兵藤先輩」

「ごめんね、わざわざ来てもらって。小猫ちゃん」

「……別にかまいませんが」

「で、なんで俺もここに連れてこられてるんだ?」

小猫ちゃんの隣には縄でぐるぐるに縛られた匙くんが座っていた。

彼も一応僕の計画には必要な存在……なのかな? まあ闘うことができる

人数が多ければいいし。

「ひと先ず、小猫ちゃん、匙くん、木場君、

そして僕で聖剣を破壊しようと思う」

これを言うとやっぱり予想通り2人は驚いたような顔をした。

「……でも、そうすると天使側が」

「大丈夫。その辺はちゃんと手は準備してあるよ」

そう言って僕は二人にPCの画面を見せた。

 

 

 

 

 

 

「嫌だぁぁぁぁぁぁぁ! 俺は帰るんだー!」

僕と小猫ちゃんと叫んでいる人一名の団体はある場所に向かっていた。

さっき見せた画面には掲示板にこんな記事が載っていた。

『変人発見!』

その掲示板を見た僕は間違いなくあの二人だと気付いた。

「えー、迷える子羊に天の恵みを~」

「どうか天の父に代わって哀れな私たちにお慈悲をぉぉぉぉぉぉ!」

道行く人は変なものでも見るような眼で通りざまにちらっと見ては

苦笑したり動画で撮影したりしていた。

後ろの2人も目の前の光景を見て苦笑いしていた。

ひと先ず僕は財布から降ろしてきた万札を一枚乗っけてあげた。

「おぉ! 見てゼノヴィア! ここでもお慈悲が!」

「な、なんてことだ! 信仰の匂いもしない国で慈悲を貰うとは!

「じゃあ、その慈悲をあげた僕の言う事は聞いてくれるかな?」

「もちろ……な、なんで」

僕らを見た2人は心底絶望した顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

「うん!? うまいうまい!」

「うんうん! これよ! これが故郷の味なのよ!」

……頼むから叫びながら食事をするのは辞めて、周りの視線が痛いのなんの。

彼女達は注文したメニューを食べ終わると僕たちの方向に向いた。

でも、イリナちゃんの僕を見る視線には少し、恐怖が感じられた。

「さて、なぜ私たちに接触してきた」

「簡単な話さ。交渉がしたい」

「交渉ね……話だけでも聞こう」

彼女達は渋々、僕の話を聞いてくれた。

「僕たちにも聖剣破壊の任務、手伝わせてくれないか?」

そう言うと二人は驚いたような顔をした。

そりゃ、そうだよね。

対立してる側の奴らに借りを作れば後々厄介な事になりかねない。

あの時あれをやってやったろ? だったらその時の借りを耳そろえて返せや! 

みたいな感覚。

相手に弱みを握られればその時点で戦争なんかはゲームオーバ。

さあ、どう出る?

「そうだな。一本くらいは君たちに任せてもいいかもしれない」

「ちょ、ちょっとゼノヴィア。いくらイッセーくんだと言っても悪魔なんだよ?」

「イリナ、聖剣三本とコカビエルとの戦闘を私たち二人だけで出来るとも思えない」

「だから私達は死ぬ覚悟で」

「生きて帰り、主のために再び戦う。これこそが信仰だとは思わないか?」

「っ! それはそうだけど」

ゼノヴィアっていう人が言っている事に何も言い返せないのか

イリナちゃんはバツが悪そうな表情を浮かべていた。

「それに悪魔の力は借りないさ。あくまでのドラゴンの力を借りるんだ」

そう言ってゼノヴィアさんは僕の腕を見てきた。

今は人間の腕になってるけど今の僕の腕はドラゴンの腕、そして

僕に宿っているセイグリッドギアのこと。

「じゃ、交渉成立で良いかな?」

「ああ、いいさ」

「だったらパートナーを呼ぶけどいいよね?」

「構わないさ」

そう言って僕は木場君に電話をした。

 

 

 

 

 

 

 

「話は大体分かったよ」

木場君はその後ものの数分でお店にやってきてコーヒーを飲んでいた。

……なんで木場君はこんなにもコーヒーを飲んでるのが似あうんだろ。

「まさかエクスカリバー使いに破壊を承諾されるとはね」

「やはり聖剣計画に恨みを持ってるのね? 教会と――――――エクスカリバーに」

イリナちゃんがそう言うと木場君の表情は硬いものになった。

「でもね、あれのお陰で聖剣の研究は飛躍的に上がったわ」

「研究のためなら被験者を処分していいのか?」

確かに処分はひどい。イリナちゃんも応答にかなり困っている。

するとそこにゼノヴィアさんが割り込んできた。

「その件は私達の間でも最大級に嫌悪されたものだ。その主犯格は

今では烙印を押され堕天使側だ」

「その人物の名は」

「バルパー・ガリレイ。皆殺しの大司教と呼ばれた男だ」

「……堕天使をたどっていけばその男にもたどり着けるのか」

木場君の瞳には新たな決意みたいなものが宿っていた。

さ~てとお話もここまでにして行きますか!

僕たちは店を出て目的のために動き出した。




こんばんわ~


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Life19

そして数日後、僕たちは神父の格好をして夕方歩きまわっていた。

こうしないと襲ってこないみたいだから。

「兵藤……悪かったな」

「へ? 何が」

突然の匙君からの謝罪に僕は戸惑ってしまった。

特に匙君に何か悪いことをされたわけじゃないんだけどな~。

「この前さ、俺、お前のこと正直言って見下してた。俺の方が何倍も強いって。

でも、違った。お前は部長さんのために戦って勝ったんだよな。すげえよ」

「別に僕は凄くなんかないよ。ただ部長を護りたかっただけ」

「そっか……」

会話も途絶えて静かになった瞬間、全身の穴という穴が一瞬にして

全開になるくらいの殺気がぶつけられてきた。

「神父の一団にご加護ありってね!」

狂っている神父――――――フリードが聖剣、

エクスカリバーで僕たちに斬りかかってきた。

それを僕たちはそれぞれの方向にちりじりに

分かれて神父服を脱ぎ棄ててそれぞれの武器を出した。

「ありゃ?こ れはイッセーくんではあ~りませんか!

ドラゴンパワーは上がったのかな? 手かその腕キメえし!」

「貴方にこたえる義理はない」

『Boost!』

今回僕は前線には立たない。

倍加していって木場君に力を譲渡する。

「伸びろラインよ!」

匙くんの手首辺りからトカゲの舌みたいに伸びてピタッと神父にくっついた。

な、何あれ。地味に可愛いし。

「今だ木場! 今のうちにそいつやっちまえ!」

「ありがたい!」

木場君は二本の魔剣を作り出してフリードに斬りかかるけどエクスカリバーの

力が魔剣を上回っているのかたったひと振りで魔剣が粉々に粉砕した。

「死ねぇぇぇぇ! くそ悪魔がぁぁぁぁぁ!」

「させるか!」

僕は木場君と神父の間に入ってドラゴンの腕で

聖剣の刀身を直接掴んで神父の動きを止めた。

「今だよ木場君!」

『Transfer!』

「魔剣創造(ソードバース)!」

「ちぃ! 邪魔っすよ!」

「うわぁ!」

力を譲渡された魔剣創造で作り出された魔剣が大量に神父を狙うけど

神父は僕を蹴とばしてエクスカリバーを自由に

させると横なぎに大きくふるって全てを簡単に粉砕していった。

「ほう、魔剣創造か。使い手によれば無類の力を発揮する神器だ」

どこかからか第三者の声が聞こえてきて辺りを探し回ると

上空に初老のおじさんが浮いていた。

 

 

 

 

 

 

 

「バルパーの旦那」

バルパー……この人が計画の主犯格か。

「お前がぁぁぁ!」

「木場君!」

バルパーを見た木場君はいきなり叫び出すと魔剣を作り出してバルパーに

斬りかかっていくけどフリードに邪魔をされた。

「木場君、落ち着いてよ!」

僕は神父から木場君を無理やり引き離して落ち着くように言った。

「邪魔を、するなぁぁぁぁぁ!」

その瞬間、鋭い痛みとともに視界に憎しみの色に染まった瞳の

木場君と赤色の血が舞う景色が映った。

「兵藤先輩!」

「ぐっ! な、なんで?」

「ありゃりゃ? 仲間割れかな? ま、良いや。

クズ悪魔はみ~んな消えちゃえ!」

フリードが隙だらけの僕たちに向かって光の力がこめられた銃を乱射してきた。

「小猫ちゃん!」

僕は小猫ちゃんを思いっきり押して銃の範囲外に飛ばした。

「兵藤先輩!」

「兵藤!」

その直後に僕の体に激痛が何度も走った。

余りの痛みに僕は意識を一瞬で失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「兵藤先輩!」

イッセーくんはフリードの銃を喰らって地面に倒れ伏していた。

でも、僕の意識はバルパーだけに絞られていた。

あいつが聖剣計画の主犯で僕たち、被験者の仇!

「木場ぁぁぁぁぁ!」

「―――――っ! 何をするんだ!」

僕はバルパーに斬りかかろうとした瞬間にいきなり匙くんに思いっきり殴られた。

「こっちの台詞だ! なんで兵藤を斬ったんだ!」

「今はそんなの関係ない! 目の前に仲間の仇がいるんだ!」

「お前はダチよりも目の前の敵を優先するって言うのかよ!」

「ああ、そうさ! 僕の生きている意味はあいつを殺すことなんだ!」

「ちっとは周りで心配してる奴のことも考えやがれ!」

僕はまた匙君に顔を殴られた。

「フリード、今のうちに逃げるぞ」

「オッケ~バルパーの旦那。じゃ、クズな悪魔さん達バイチャ!」

そう言ってフリードは地面に球体の様なものを投げつけると辺りに

凄まじい光量の閃光がばら撒かれ僕たちの眼は一瞬だけ機能を失った。

目が機能を取り戻した頃には既にバルパーもフリードもいなかった。

「くそ!」

僕は騎士の特性を使って高速で移動しながら二人を追いかけていった。

 

 

 

 

 

 

 

「貴方達一体何をしていたの!」

部室に部長さんの大きな声が響きました。

あれから、力が不規則になっていることを感づいた会長さんと部長さんが

やってきて血だらけで倒れている兵藤先輩を見て慌てて部室までジャンプして

アーシア先輩に治療してもらいました。

命に別条はないようですが兵藤先輩は今も眠ったままです。

「リアス、少し落ち着きなさい。怒鳴っていては聞けるものも聞けないわ」

「そうだけど!」

会長が部長に落ち着くように言いますが部長はかなり興奮していました。

「ひと先ず匙、説明を」

「はい」

それから今にも泣きそうな声で匙先輩がエクスカリバーの破壊を

部長さん達には内緒で計画した事、

ゼノヴィアさんとイリナさん達にも承諾を得たこと。

そしてフリードと戦闘になって……という風に順を追って説明をしていった。

「つまり貴方達はエクスカリバーを破壊するために行動をしていたって言うの?」

「……はい。すみませんでした」

――――――ペチン! ペチン!

「ひぃぃぃぃ! すみません会長ーーー!」

「いいや、今回は許しません。お尻千叩きです」

そう言って会長さんは手に魔力を集めて匙先輩のおしりを何度もたたきつけてました。

……痛そう。

見ているこっちも痛くなってくるほど先輩のお尻は真っ赤になってました。

「は~、全くこの子は」

その一方で部長さんは眠っている兵藤先輩の頭をなでていました。

「この子の性格を考えていればこんな事には」

部長の表情はどこか、優しそうな表情をしていた。

……やっぱり部長さんは兵藤先輩の事。

 

 

 

 

 

 

 

ひと先ず私達は兵藤先輩のお家にお邪魔していました。

ご両親には体調不良で寝ているとだけ連絡をしてその看病に

私達は来たと言って家に泊まる許可を取りました。

「……君は誰」

「我、イッセーのお友達」

兵藤先輩の部屋に入るとそこに既に先客が一名いました。

ゴスロリ衣装を着て黒い髪の毛を結構な長さにまで伸ばしている女の子です。

「えいえい」

その子はベッドで眠っている兵藤先輩の頬を軽くぺちぺちと叩いていました。

何をこの子はしているんでしょうか。

そう思った直後! 私たち全員に凄まじいプレッシャーが襲い掛かってきました。

窓の方を見るとそこには

「ヤッホ♪くそ悪魔さん達ご機嫌いかがぁ~?」

イカれている神父とバルパーガリレイ、そしてその二人に挟まれる形で

見たことのないもう一人の堕天使が肩に何かを担いでこちらの方を睨みつけてきました。

凄い殺気です……体が自然と震えてしまう……。

「土産だ」

投げられたものを部長さんがキャッチすると

それはイリナといわれている人でした。

かなりひどい怪我で呼吸も弱弱しかった。

「アーシア!」

部長の叫びにアーシアさんは慌てて動き、癒しの光を出してイリナさんを

治療しはじめ、すぐに傷が治療されていき表情も

楽になっていき呼吸も落ち着いてきました。

「何の用かしら? コカビエル」

「その紅色の髪を見るだけで反吐が出そうだ」

コカビエルはまるで汚いものでも見るかのような表情で部長を見てきました。

「今回ここに来たのはとあるパーティーに招待するためだ」

「それって?」

「お前の根城である学園で暴れるのさ! エクスカリバーの

本来の力を引きだすのにはちょうどいい場所だ。じゃあ、行くぞバルパー、フリード」

「あいあいさ!」

イカれ神父が何かを投げるとそれは

炸裂して凄まじい輝きで私たちの目を一瞬潰していきました。

「くっ! 皆! 学園に行くわよ!」

『はい!』

兵藤先輩と木場先輩がいない状態で私たちは学園に向かいました。




こんばんわ~。如何でしたか?


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Life20

「リアス先輩、この学校を結界で覆いました。よほどのことが

ない限り外には漏れる事はありません」

匙先輩が部長に現状報告をしていました。

イリナさんは先程、部長のお家に送られて大事には至らなかったとの事です。

「ただこれは被害を最小限に抑えるものです。私の下僕がコカビエルが

グラウンドで力を徐々に開放しているのを確認しています」

結界を張る作業を終え、会長が私達が集まっている

場所へと近づいてきました。

相手は聖書にも名前が出てくる堕天使の幹部、コカビエル。

その強さは恐らく今の私たちでは相手にもならないほどの強さです。

でも、この戦いに勝たなければこの町は一機に壊滅してしまいます。

「ところで、リアス先輩。兵藤の様子は」

「安心して。イッセーは無事よ、今は家で眠ってるわ」

それを聞いた匙さんはどこか安心したような表情をしましたが

部長は逆の表情をしていました。

「でも、イッセーがこの場にいないのはかなりの痛手だわ。

彼のセイグリッドギアは私たちの攻撃の要でもあり

サポートの要にもなる。厳しい戦いになりそうね」

「リアス、お兄様にはこの事は」

「言っていないわ」

「すでに魔王様に打診しましたわ」

「朱乃!」

珍しく部長さんが姫島先輩に怒っていました。

「リアス、貴方がお兄様に頼りたくないのは分かるわ。でも、この事は

既に貴方が解決できる範疇を超えているわ。それは分かってる筈よ」

「っ! ……分かったわ」

部長は少し、悔しそうな顔をして俯いた。

自分の領地のことは自分で解決する……でも、今回は私達の手に

収まるような可愛い敵ではない……魔王様に頼るしかこの戦いを

終わらせることはできないです。

「分かっていただいてうれしいですわ。ソーナ様、魔王様からの

援軍は一時間後に来るそうですわ」

「一時間……シトリー眷属の名にかけて結界を張り続けるわ」

「分かったわ。皆! 私たちはオフェンスよ!

相手はフェニックスとは段違いの強さを持つコカビエル!

確実に死戦になるだろうけど絶対に死なずに皆で学校に行くのよ!」

『はい!』

 

 

 

 

 

 

 

グラウンドに入った私達が見たのは異様な光景だった。

真ん中に四本のエクスカリバーが宙に浮いてあって魔法陣の中心には

初老の堕天使、バルパー・ガリレイの姿があった。

「あれはいったい」

「エクスカリバーを統合するのだよ」

バルパーが私たちに聞こえる様な声量で今、行っている作業を教えてきました。

自分が負けないという絶対的な自信があるのか、バルパーは

こちらに顔を向けずに作業を続けています。

「バルパー、あとどれくらいで出来上がる」

「五分もいらないさ、コカビエル」

上から声が聞こえてきて上を向くとそこには月光を浴び、宙に

椅子を構えてそこに足を組んで座っているコカビエルの姿があった。

「誰が来るんだ? サーゼクスか? セラフォルーか?」

「お兄様とレヴィアタン様に変わって私達が」

部長の声を遮るかのように風切り音が聞こえた直後に体育館があった場所に

大きな光の槍が突き刺さっていた。

砂埃が立ち込め、はっきりとは見えませんでしたが既に

体育館という建物は木端微塵に吹き飛んでいると思います。

「つまらん。余興にもならないと思うがまあ良い。

地獄から連れてきた俺のペットとでも遊んでおけ」

コカビエルが指をパチンと鳴らすと暗闇の中から何か大きなのものが

こちらに近づいてくるのが分かった。

月明かりに照らされたその姿は犬に似ているけど似て非なるもの、

何故なら首が三つもあるから。

『ギャオォォォォォォォォォォォォォォォォォンンッッッ!』

辺りに凄まじい音量の遠吠えが広がった。

祖の凄まじい音量の遠吠えによってか、学校のほとんどのガラスが

パリン! という音を立てながら一斉に砕け散った。

「ケルベロス、まさか人間界に連れて来たとでも言うの!? 朱乃!」

「はい!」

部長と朱乃さんが黒い翼を生やし宙に羽ばたいた。

『オォォォォォォォォォォォッ!』

「させません!」

宙に浮いている部長を狙って一つの首から火球が

飛ばされてきましたが朱乃さんの攻撃で凍りついた。

「喰らいなさい!」

部長の破滅の一撃が放たれると同時に首からまた火球が吐き出された。

「くぅぅぅぅ!」

力が均衡しているかと思ったけど、

もう一発火球が吐き出されて徐々に押されていた。

さらにもう一発、ケルベロスが火球を吐きだそうとしていた。

「させません!」

横から割り込んだ私は火球を吐きだそうとしている首に激しい

拳打を叩きこんだ。

「さらにもう一発差し上げますわ」

朱乃さんが空に向かって指をあげると稲光が発生してそれを

ケルベロスにぶつけると、さらにそこに部長の一撃が加わった。

それでもケルベロスは倒れずに腹部からドス黒い血を吐きだすだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『グルルルルルルルル!』

後ろから唸り声が聞こえ、全員が後ろを振り向くとそこには今、私達が

闘っているケルベロスと同種族であろうケルベロスがもう一体いた。

「な! もう一匹いたの!?」

「リアス! アーシアさんが!」

もう一匹のケルベロスの近くにアーシア先輩がいました。

あまりの恐怖で動けないのか地面にへたり込んでいました。

『ガァァァァァァァァァァァァ!』

「きゃ!」

ケルベロスが先輩に火球をぶつけようとした瞬間、首が一本切断され

あっという間に消滅してしまいました。

「加勢しに来たぞ」

そこにはエクスカリバーを担いだゼノヴィアさんの姿がありました。

そして言うな否やすぐに駆けだして首を一本なくして絶叫をあげているケルベルスの

腹をエクスカリバーで一刀両断してあっという間に倒してしまった。

そしてこちらもすぐにかたがつきそうになっていた。

「ぬぬぬぬぬぬぬ!」

「小猫! そのまま押さえて頂戴!」

部長と朱乃さんが魔力を溜めている間、私はケルベロスが逃げないように

足を抱えて抑え込んでいました。

『ギャオォォォォ!』

「うぐ!」

ケルベロスの蹴りが私に直撃し今にも、掴んでいた手が

ケルベロスの足から離れようとした瞬間!

「僕も加勢しようか!」

どこからともなく魔剣がいくつも

飛んできて、ケルベロスの両足に突き刺さり地面に固定しました。

『グガァァ! グゴァァ!』

ケルベロスは苦悶に満ちた叫び声を上げて必死に剣を抜きとろうと

しますが動けば動くほど、剣が深く突き刺さり辺りに血が舞った。

「……祐斗先輩」

「待たせてごめんね、今です、部長!」

「ええ!」

部長と朱乃さんの最高の一撃をくらってケルベロスは跡形もなく消滅しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほ~、正直予想外だぞリアス・グレモリーよ。

まさかケルベロスを二体とも倒してしまうとわな」

コカビエルはまるで、ショーを見終わった幼い子供のような感想を述べた。

「完成だ」

バルパーの声が聞こえたかと思うとエクスカリバーから凄まじい輝きが

発せられて、僕たちはあまりの眩しさに手で顔を隠した。

輝きが収まったときには四本あったエクスカリバーが一本に合体していた。

「四本のエクスカリバーが一本になったことで下の術式も完成した。

後20分もすればこの町は跡形もなく消える。解除方法は

コカビエルを倒すことだけだ」

バルパーが言ったことに卷属の皆が驚きに満ちた表情を浮かべた。

「フリード!」

「あいあいさ、ボス」

暗闇の奥から白髪の神父、フリードが歩いてきた。

「陣のエクスカリバーを使え。最後の余興だ」

「オッケオッケ~」

フリードは嬉しそうに笑みをこぼしながらエクスカリバーを握った。

「私はな。聖剣が好きなのだよ。幼いころから本を読みそれに興奮したものだ」

バルパーは昔を懐かしみながら一人、ブツブツとつぶやき始めた。

「だが、私に聖剣使いの適性がないことを知った時の絶望感は今も克明に思い出される。

私の全てが壊されたような気持だった。だが、私はあきらめなかった。そして、

気づいたのだよ。作ればいいと……」

バルパーは天を仰ぎながらニタニタと二ヤケながらさらに続ける。

「私は少年少女を使い調べた。その結果、

因子が必要な事に気付いた……だが、それらの研究対象は

聖剣を扱うほどにまで値はなかった。だから

私は結晶として因子を取り出したのだよ」

バルパーは胸元から白い結晶を取り出して僕たちに見せてきた。

あの一つの結晶を作るために何人もの被験者が殺された、と思うと

僕の奥底から沸々と怒りがあふれ出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

「バルパー・ガリレイ! お前は一体どれだけの命をもてあそんできたんだ!」

「命? はっ! 聖剣計画は貴様らの犠牲により飛躍的に向上したんだ!

むしろありがたいと思う方だろう! もうこんなものはただのゴミだ。

貴様にくれてやるよ」

そう言ってバルパーはごみを放り投げる感じで僕の足元に転がしてきた。

「皆……」

僕がその結晶をもって抱きしめた途端に、結晶が光り輝き始めた。

そして目の前には僕とおなじ被験者たちの姿が映し出された。

「み、皆! 僕はずっと思っていたんだ! 僕だけ生きていいのかって!」

『木場君、君は生きるんだ。死んだ僕たちの分も生きてくれ。

君の周りには良い友達がいるじゃないか』

辺りに皆の声が響く。

それを聞いたとたん、僕の頭の中には

片方の腕が龍になっている彼の姿が浮かんできた。

……はは、そっか……僕は

『さあ、行こう』

『一人では駄目でも』

『二人、三人なら怖くない!』

そう言えば彼もそんな事を言っていたっけ。

「行こう!」




こんばんわ!


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Life21

僕の目の前には一本の剣があった。

その剣は皆の思いが詰まった最高の剣、聖と魔が宿った剣。

「行くぞ! フリード!」

僕はナイトの特性である速さで高速移動してフリードに斬りかかった。

金属音が鳴り響いた瞬間に、

エクスカリバーの聖なるオーラが一瞬にして消え去った。

「っ!? 本家本元を超えるのかよ! そんな駄剣が!」

「その剣が真のエクスカリバーであれば勝てなかったろうね。

でも、そんなパチもんじゃ僕の同志が詰まったこの剣には勝てないよ!」

「ちぃ!」

フリードは舌打ちをして一旦距離を取った。

「伸びろぉぉぉ!」

彼のエクスカリバーが意思をもったかのようにウネウネと動き出し

何本も枝分かれして神速でこっちに向かってきた。

エクスカリバー・ミミックとエクスカリバー・ラピッドリィの効力だね。

全ての方向からの攻撃を聖魔剣をあらゆる方向に振りまわして、

全ての見えない攻撃をいとも簡単に防いだ。

殺気さえ分かれば来る場所なんてものは分かるからね。

「なんでだよ! 何で当たらねぇんだよぉぉぉ!

大昔から最強伝説を語り継がれてきたんじゃねえのぉぉぉぉぉ!?」

フリードは叫ぶ。

明らかにその顔には焦りが見えていた。

「ならこれも追加で行っちゃおうかぁ!」

剣の刀身が消えた、透過現象?

……いや、エクスカリバー・トランスペアレンシーの力か

……いくら透明になっても今の僕には通用しない!

僕は刀を右に左に動かし、透明の刀身を防ぎきると

彼の顔は驚愕の色に染まりあがっていた。

「そのままにしておけよ」

隣から明らかに不機嫌そうな顔をしたゼノヴィアが

割り込んでくると聖剣を片手に持ち右手を宙に上げた。

「ペトロ、バシレイオス、ディオニュシス、

そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ」

何かの言霊を発し始めている。

彼女は一体何をするつもりなんだ。

疑問に感じていた僕の視界で空間がゆがむ。

ゆがんだ箇所に手を入れると一本の剣が出てきた。

「我はここに開放する――――――デュランダル!!!」

デュランダル!? エクスカリバーと同じくらいに有名な聖剣だ。

「デュランダルだと!」

「貴様、エクスカリバーの使い手ではないのか!」

流石のバルパーとコカビエルも驚いていた。

「私はもともとはデュランダルの使い手だ。エクスカリバーの使い手も

兼任していたがな。さあ、フリード・セルゼン! デュランダルとエクスカリバーの

頂上決戦と行こうじゃないか!」

デュランダルは僕の聖魔剣よりも凄まじいオーラを発している!

「そんなのアリですかぁぁぁぁぁ! こんな所で

そんな設定はいらないんですよぉぉぉぉ!」

フリードは叫び散らしながら刀身を何本にも枝分かれさせて、

ゼノヴィアに向けて放つ―――――しかし

ゼノヴィアのたったひと振りで砕け散った姿を現した。

「所詮は折れた聖剣をあわせたものか、つまらん」

彼女はつまらなさそうに嘆息する。

「これで終わりだぁぁぁ!」

エクスカリバーが折れたことに驚きを隠せないでいる

フリードに僕は高速で彼に近づき聖魔剣を振りかざした。

フリードもエクスカリバーで防ごうとする。

「はぁぁぁ!」

直後、鮮血が舞うとともにエクスカリバーの折れた音がして

僕の視界にキラキラと輝く塵が舞った。

「見ていてくれたかい? 僕らの剣がエクスカリバーに勝ったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ、そんな……有り得ない……反発し合うものが合わさるなど」

フリードが倒されたのを見ていたひどく狼狽した初老の堕天使の姿が見えた。

そうだ、まだこいつがいた。

聖剣計画の主任、バルパー・ガリレイ。

こいつを倒さない限り僕の役目は終わらない。

「そうか! 分かったぞ! 先の大戦で聖と魔のバランスが

崩れているならば説明がつく!魔王だけではなく神も――――!」

バルパーが何かに気づいたような顔を浮かべ、

その内容を話そうとした瞬間、バルパーの腹部を光の槍が貫き彼は地面に倒れ伏した。

「バルパー、お前は優秀だったよ。優秀だったが故にその結論に至ってしまった。

貴様がいなくてもこの計画は進んでいたのだよ」

僕はすぐに倒れ伏した彼に近づいて確認をするが既に絶命していた。

「さて、今気付いたんだが貴様ら数は少なくないか?」

「どういう意味かしら?」

「いや、あらかじめ調べた調査では貴様の下僕の数は6人の筈だ。

だが今は5人しかいない……あぁ、そうか。奴がいないんだな、赤龍帝が」

っ!そうか、彼は今

すると、コカビエルは呆れたような調子で僕たちに話し続ける。

「だが、まああんな奴を下僕にした意味が分からんがな」

「どういう意味かしら?」

隣りから聞こえてきた部長の声は顔を見なくても怒っているのが分かった。

魔力が徐々に上がってきている。

「知ってるか? 堕天使側ではな今回の

赤龍帝には触れなくてもいいという風に決定されたのだよ」

ここまで言われたのなら流石の僕でも怒る……いや、僕だけじゃない。

皆が表情を怒りに染め上げていた。

「今回の赤龍帝は実に弱すぎる! 魔力の総量は赤子以下!

そんな奴を下僕にする意味が分からん! 私なら恥ずかしくて外も歩けんわ!」

「……な」

ブツブツと部長が何かをつぶやいている。

「……するな。……辱するな! 侮辱するな! イッセーを侮辱するなぁぁぁぁ!」

一気に部長の魔力が跳ね上がった!

こ、こんなにも怒った部長を見るのは初めてだ!

「くはははははははは! 貴様、まさか奴に惚れてるのか?

あんなクズに惚れるなど愚の骨頂だ。もう少しましな奴を

愛した方が得だぞ。自身の評価を下げる」

その一言で部長は完全にブチギれて全身から紅色のオーラを放出し始めた!

「うるさい! イッセーは! イッセーは強いんだぁぁ!」

部長の手から余りに巨大な破滅の魔力が放たれた!

で、でか過ぎる! 近くにいたら僕らまで消滅してしまいそうだ!

僕たちは慌てて部長から離れた。

「あぁぁぁ!」

「はははははは! 素晴らしい! 実にすばらしいぞ!

貴様も兄に負けず劣らずの才があるようだ!」

コカビエルは消滅の魔力を両手で押えこんだ。

あ、あの質量の消滅の魔力を素手で防ぐなんて……いや。

「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

でも、コカビエルも無事ではなかった。

抑えている手からは大量の血があふれだし、彼の衣服もところどころ裂けていた。

「雷よ!」

朱乃先輩が落雷をコカビエルに落とすがコカビエルはその黒い翼を

一回大きく羽ばたかせるだけで消し去ってしまった。

「ならば!」

ゼノヴィアさんがデュランダルでコカビエルに斬りかかっていく。

「甘いわ!」

コカビエルは空いている手から波動を発し彼女を宙に浮かせるとケリを入れた。

「がぁ!」

ゼノヴィアさんは苦悶の声をあげて蹴り飛ばされた。

「そこ!」

「僕もだ!」

「甘いわぁぁ!」

小猫ちゃんと同時に僕もコカビエルに突っ込んでいくがコカビエルから発せられた

魔力の波動で吹き飛ばされてしまった。

いつの間にか部長の放った魔力も消滅し全員が肩で息をして絶望的な表情をしていた。

「貴様たちは使える主を失ってまでよく戦うな」

コカビエルが言い始めた言葉に僕たちは理解が出来なかった。

「分からないような顔をしているな。

教えてやろう、神は死んだんだ! 先の大戦で魔王とともにな!」

僕はコカビエルが叫んだ言葉に開いた口がふさがらなかった。

魔王様はなくなられたのは聞いた……でも、まさか神まで死んでいたなんて。

「そ、そんな神はいないのか?」

僕の近くにいたゼノヴィアさんがショックを受けて地面にへたり込んだ。

今まで信仰してきた物が一気に崩れさったんだろう。

「冥土の土産だ。そろそろ死んでしまえ」

コカビエルがこっちに翼を鋭くして放ってきた。

まずい! 皆だけでも!

僕は辺りに聖魔剣をいくつも作り楯の様にするが無残にも砕かれた。

もう駄目だ!

今にも鋭くとがった漆黒の翼が僕達を貫こうとした瞬間!

「ぐおぁ! 誰だぁ!」

そう思ったときいきなりコカビエルに赤色の球体が直撃し彼を吹き飛ばした。

こ、この魔力は!

「僕の友達はやらせないよ?」

そんな声が聞こえてきた。

この声は……僕の友達の声だった。




こんばんわ!


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Life22

「……ここは」

「あ、起きた」

僕が目を覚ますと最初に視界に入った光景は天井……ではなくドアップの

オーフィスの顔だった。

「……近いよオーフィス」

僕がそう言うとオーフィスは顔を

退けてくれてようやく天井が僕の視界に入った。

「イタタタタタタ」

僕が体を起こそうとするとところどころ痛みが走った。

『やっと起きたか相棒。既に闘っているぞ』

頭の中にセイグリッドギアを通してドライグの声が聞こえてくる。

「だろうね……学校のあたりからかな? ものすごい魔力が感じられる」

この魔力は……皆だ……皆がいるんだったら僕も行かないと。

僕はベッドから起き上がって服を着替えていると

オーフィスが不思議そうにこちらを見ていた。

「イッセー」

「ん?」

「何故、出かける」

「ん~。皆が戦ってるから」

オーフィスが頭の上にいくつもの?を浮かび上がらせているのが見て取れた。

まあ、いつか君にも分かるよ、オーフィス。

仲間が戦っているのに一人、寝て休んでなんかいられないよ。

「行こうか、ドライグ!」

僕は悪魔の翼を生やし窓から飛び降りて、部長達が戦っている

学校の方面へと行こうとしたんだけど。

『……ところでだが、相棒』

「ん? 何?」

『お前、空飛べたのか?』

「………落ちるぅぅぅぅぅぅ!」

何故か、悪魔の翼を広げて必死にパタパタと羽ばたかせているのに

僕の体は少しも浮かずにそのまま地面へとまっさかさまに落下した。

「ひぎゃぁぁぁぁ!」

何で翼広げてるのに飛べないざますかぁぁぁぁ!?

「あうぅぅぅ、い、痛い」

何とかお尻から落ちたけど……割れそうだ。

『既に尻は割れてるがな』

「うるさいよ……ねえ、ドライグ。こんな事出来る?」

『………相棒、もう特撮を真似るのはやめてくれぇぇぇぇぇぇ!』

僕が頭の中で想像したことがドライグにも流れたのか、

籠手からドライグの悲痛な叫び声が聞こえてきた。

そ、そんなに叫ばなくてもいいのに。

「ね?お願い! 僕飛べないもん!」

『うぅ、もう知らん! 勝手にしろ!』

そう言いつつもドライグは僕の言うとおりに魔力で包みこんでくれた。

「さあ、行こうか!」

そのまま僕は某ライダーさんみたいに飛んでいった。

……地味に怖かったね。

 

 

 

 

 

 

 

「イ、イッセーくん!? き、傷の方は!」

「ん? ああ、大丈夫!」

僕は思いっきり木場君にサムズアップした。

だけど木場君は一切、リアクションを取ってくれず真顔で僕の事をまじまじと見ていた。

……これ結構恥ずかしいんだよ。

「ほう、貴様が」

「あ、どうも。今の赤龍帝の兵藤一誠です」

僕が堕天使さんに頭を下げて挨拶をすると心底、僕を

軽蔑している様な目つきで僕を見てきた。

「ふん! 貴様のような奴がここに何をしにきた」

「何って……貴方を倒しにです」

僕がそう言うと堕天使さんは、腹を抱えるくらいの勢いで大笑いをし始めた。

「くはははははははは! そうかそうか! 今の赤龍帝は冗談がうまいもんだな!」

辺りを見回すと学校はボロボロで後ろには傷だらけの皆がいた。

その姿を見ると沸々と僕の腹の底から怒りがわき出してくる。

「お前の運命は僕が決める!」

「やれるものならな!」

『Boost!』

「おらぁ!」

「はぁぁ!」

僕の拳とコカビエルの拳がぶつかり合い、辺りに凄まじい暴風が発生した。

……あれ? なんだろ……前よりも力が上がってる気がする!

「うりゃぁ!」

「ぐぁ!」

以前よりも力が上がっているのか、向こうのパンチが思いのほか弱く感じ、

本気の5割くらいの力で簡単にコカビエルを殴り飛ばせた。

「あ、あの本気出して下さいよ」

「っ! 貴様ぁぁぁぁぁぁぁ!」

僕の発言が癪に障ったのか堕天使さんは鬼の形相を浮かべ自らの

周辺に光の槍をいくつも浮かべた。

ひぃ! な、何か怒っちゃったし!

『Boost!』

「っ! 何だ貴様のその魔力は!」

堕天使さんはかなり驚いているのか顔を歪めて僕の方を見ていた。

「な、何って」

「あり得ん! 貴様が私の魔力量を超すなど! あり得んのだぁぁ!」

堕天使さんは光の槍を一斉に僕に向かって飛ばしてきた。

「ドラゴンショットォォォ!」

こちらに向かってくるすさまじい数の槍に向かって

倍加でたまった魔力を弾丸のように籠手から

大きめの弾を撃ちだすと思いのほかに

その魔力の弾は大きく広がり一気に槍を消し飛ばした。

その衝撃波で堕天使は大きく吹き飛ばされ地面に叩きつけられた。

「がっ!」

口から大量の血反吐を吐きだしながらも、僕を

睨みつけながら立ちあがる。

ひっ! に、睨みつけられるのはやっぱり慣れないよ。

「はぁ、はぁ、はぁ。認めん! この俺がこんな

雑魚にやられるなどあってはならんのだぁぁぁぁぁ!」

コカビエルは激昂すると魔力を徐々に増幅させていき光の力と魔力を合わせて

巨大な、オラに元気を分けてくれ! みたいな状態で作り始めた。

「で、でかい!」

『相棒、ここで避ければここら一帯を覆っている

結界は一瞬で消滅し、町も一瞬で消滅しちまうぞ』

「………仕方がない」

「イ、イッセー! いくらあなたでもあれは無理よ!」

大丈夫ですよ、部長!

「ひとまず皆さんはここから動かないでください!」

「おぉぉぉぉぉぉぉぉ! 死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

コカビエルはあまりにも大きな球をこちらに投げつけてきた。

「おぉぉぉぉ!」

僕はドラゴンの腕でその大きな球を受け止めようとした。

「はははははははははは! 片手で受け止められるものか!」

「ぬぬぬぬぬぬぬぬ!」

僕は籠手から魔力をどんどん放出していき、推進力を得て、

思いっきり地面を踏み締めて足に力を込めると魔力の球は止まった。

「バ、バカな……と、止めた……だと!?」

堕天使は自らの最大の攻撃を片腕で止められた事に驚きの声を上げた。

さあ、ここからだ!

『相棒、一か八かだぞ』

「試してガッテン! すぅぅぅぅぅっ!」

僕は深呼吸をするようにして大きく息を吸い始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

か、彼は一体何を。

「……じょ、徐々にコカビエルの放った魔力が小さくなっていく」

っ! 小猫ちゃんに言われてようやく気付いた。

コカビエルが放ったとても大きな魔力の塊からイッセー君は

魔力を吸い取り続けていた。

「で、でも光は悪魔にとって有害なはずですわ」

「イッセーは光と魔力を分けて吸収しているのよ」

徐々に球の大きさは小さくなっていき遂には完全に魔力だけが吸収され

光は別の場所に軌道をそらされて消滅した。

「う、うぷ!」

「な、何を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こ、こら暴れるな!

さっき吸収した魔力を炎をイメージして変換するんだ!

変換変換変換変換!

さっき吸収した魔力が次々と炎に変換されていき、全てが

変換されると僕は一気に深呼吸で肺に溜めた息を吐き出すようにして

口内で炎へと変換した魔力を口から放出した。

「ぶはぁぁぁぁ!」

「っ!」

口から吐き出された凄まじい火力の炎はコカビエルどころか

学校の校舎の一部をもごっそりと包み込んで大爆発した。

……や、やっば! 学校壊しちゃったよ!

「が……がはぁ」

炎に飲み込まれたはずの堕天使さんは口から血反吐を吐きながらも

未だにその傷ついた体で立っていた。

「まだ、動くんですか!」

「き、貴様なんぞに俺は負けん!」

「だったらバランスブレイクで」

バランスブレイクをしようとした瞬間、突然、体が熱く感じた。

な、なんだろ……この感じ。

なんというか……身体が喜んでいるような……心臓の鼓動も

どんどん速くなっていってるし……。

血が騒ぐ、体中の魔力が歓喜に打ち震えているように

籠手から勝手に魔力が漏れ始めた。

「これは驚いたな。予想外の展開だ」

上から声が聞こえたのでそちらの方を向くと

そこには白の装甲を纏った人物が宙に浮いていた。

「え、えっと誰?」

「……パニシングドラゴン」

木場君がボソッとその単語を呟いた。

え!? えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?

い、今上にいる人が白色の人!?

という事は僕のライバル!?

め、めちゃくちゃ強そうじゃないですかぁぁ!

「ロンギヌスの一つ、ディバイン・ディバイディング……。

既に鎧化しているという事はその姿はバランスブレイカー状態の

ディバイン・ディバイディング・スケイルメイルか。

忌々しい限りだ。邪魔立ては」

「まあ、もともとはお前を捕えに来たんだが……くふ、まさか

コカビエルともあろうものが赤龍帝にボコボコにされるとわな」

白の人は堕天使さんの話に微塵の興味もないのか

話し切る前に自分の話を割り込ませた。

「ま、良いか。敗因は堕天使の判断ミスとコカビエル、

貴様のその自信からくる驕りが敗北の原因だ。もう終われ」

『Divide!』

どこからとなくそんな音が聞こえたかと思うと

堕天使さんのオーラが少なく……いや半分になって白の人の

魔力が半分、多くなった。

「き、貴様! 俺に逆らうのか!」

突然のことにコカビエルという堕天使は慌てふためく。

『Divide!』

さらにもう半分になったコカビエルのオーラは

すでに下級クラスになっている。

す、すごい……魔力を倍にするブーステッドギアとは違って、

相手の魔力を半分にし、その半分を自らの魔力にする……これが白の力。

「逆らうも何も貴様に従ったつもりはない」

一瞬の白い閃光がしたと思うと、何かを殴りつけた音とともに

地面に倒れた音が聞こえ、そちらを見るとコカビエルが気を失っていた。

白の人はコカビエルを担ぐと僕の方を向いた。

「ふむ、君は強いのか弱いのかがよく分からないな。まあ、良い。

コカビエルを圧倒していたんだ。それなりの強さはあるという訳か。

こっちのフリードも持って帰るよ。堕天使側のミスは自ら修正する」

そう言って、寄りを着た人は白い閃光になってどっかに行ってしまった。




こんにちわ!


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Life23

「………」

今、僕はアーシアさんに治療を受けている

イッセーくんとは少し離れた場所に立っている。

皆とも少し距離を離している。

僕のせいで彼は……あそこまでの傷を負ってしまったんだ。

すると彼は治療が終わったのかこっちに近づいてきた。

「イ、イッセーくん」

「……これが聖魔剣か~。カッコいいな~」

僕が予想していた反応とは大きく違っていた。

「ねえ、これ触っても良い?」

「え、あ、うん。たぶん」

てっきり僕は彼に怒られたり殴られたりされるものばかりだと思っていた。

「お、怒らないの?」

「怒る? なんで?」

僕の質問にイッセー君は剣を触りながら心底、不思議そうな表情を浮かべた。

「だって僕は君を」

「あーあーあー! 聞こえない! ごめんねー!今、僕ノドが

悪くてさー! うおっほん! ごっほん!」

………ぷは。そんな邪魔の仕方あるの?

思わず笑っちゃったよ。

「んまあ、木場君はあの時復讐心にかられてたしね。ん」

いきなり彼は手を突き出してきた。

あ、握手かな?

僕も手を出すと彼は握手ではなくて何回か手のひらを当てて最後は強く握手をした。

「にひひ~友達だよ!」

「うん、僕たちは友達だ!」

僕は目から大粒の涙を出しながら笑顔を作った。

僕は最高の友達をもったんだね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コカビエル襲撃事件から数日後。

「こんにち……あり?」

部室に行くとそこには緑のメッシュをかけ学園の制服を着た

外人さん……まあ、ゼノヴィアさんがいたわけです。

「やあ、赤龍帝」

ゼノヴィアさんが挨拶をした瞬間、彼女の背中から

二対の真っ黒な悪魔の翼が姿を現した。

……うん、何となく感づいてはいたんだけどね。

まさか本当に悪魔に転生しちゃってたとわ。

「神がいないと知ってね。破れかぶれで悪魔に転生したんだ。

イリナは私が悪魔に転生した事を残念がってたけどね」

結局、イリナちゃんは教会にコカビエルが

盗み出したエクスカリバーの核を持ち帰って帰っちゃいました。

もう少し、彼女とも昔話に花を咲かせたかったんだけどな~。

「教会は今回の事について正式に悪魔側に打診してきたそうよ。

『堕天使の行動が不透明で不誠実のため遺憾ではあるが連絡を取りたい』って。

そして過去にバルパーを逃がしたことを謝罪してきたわ」

あくまでも遺憾なんだ。

もうこの際だから三種族ともごめんって謝っちゃえばいいのに。

謝ってみんなで平和条約かなんかを締結して、三種族仲良く暮らしていけば

これ以上悲しむ人は少なくなるのに……まあ、いくら子供の僕が

こう思っていても大人たちには届かない。

それが世の理だからね。

「そしてもう一つ。天使、悪魔、堕天使の三勢力が会合を開くそうよ。

なんでもアザゼルが話したい事があるとかでね」

その会合で平和のための一歩が踏み出されるといいんだけどね。

ま、これで下僕さんも増えたわけだしもっと強くなったわけだね!

「ふむ、赤龍帝、そしてアーシア。君たちには多大な迷惑をかけてしまった。

特にアーシアにはひどい事を言った。申し訳ない」

ゼノヴィアさんはそう言うと深々と頭を下げた。

「そ、そんな! 頭を上げてください!」

「だ、だが」

アーシアさんは慌てて彼女に頭をあげるように言うが、

ゼノヴィアさんは頭をあげようとはしなかった。

「あ、頭を上げないと叩いちゃいますよ!」

アーシアさんは最終手段としてそう言うとゼノヴィアさんは

ようやく頭を上げた。

……何か、アーシアさんめっちゃ可愛い。

「わ、私を許してくれるのか?」

「許すも何もありません! もう、

ゼノヴィアさんは私達の仲間です! ね!? イッセーさん」

「勿論だよ」

僕がそう言うとゼノヴィアさんは双眸から一筋の涙を零した。

「ありがとう……ありがとう」

ゼノヴィアさんは数分の間、涙を流しながらひたすら

『ありがとう』という言葉を連呼していた。

……木場君もバランスブレイカーになったし、雷の巫女の朱乃さん。

怪力の小猫ちゃん、回復のアーシアさん。そして、とても強い部長さん。

そしてデュランダルのゼノヴィアさん!

………うん! このメンツなら僕が戦わなくてもいいね!

皆さん頑張ってください! 応援してます!

『お前も戦うんだよ、相棒』

……はい、そうですよね。

僕は心の中でいくつもの涙を流しながら部長達の談笑に入っていった。




こんばんわ!


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Life24

「おらぁぁぁぁぁぁ! ダークワイドォォォォォォォ!」

「ぬぅ!? お、お前ズルイぞ! さっきから何回連続で使ってやがんだ!」

はい、こんばんわ皆さん。兵藤一誠です。

春に悪魔になり今は夏、ということで僕は今、契約者さんと某RPGをしています。

この人は僕の常連さんかな? なんだか最近連日この人に呼ばれるんです。

雰囲気は怖くてビクビクしていたんですが話してみるとかなり面白い人で

今では常連さんの一人です!

「おらぁぁぁぁぁぁぁ! PA! スーパーワイド3!」

「ぬぁぁぁぁぁぁぁ! また負けたぁぁぁぁ!」

ゲーム画面には僕が勝利したことを示す文字が表示され、

向こうの常連さんの画面には敗北を示す文字が表示されているだろう。

ははははははははははは! 僕にこのゲームで勝とうと思う方がおかしいのだよ!

なんたって90周以上クリアしたからね!

「たっく本当にお前は強いなぁ」

「いやいや、貴方こそお強いですよ」

僕はゲームの後片付けをしながらそう言った。

「ほい、これ今日のな」

そう言う常連さんから某特撮番組の映画の特別披露試写会のチケットを受け取った。

イヤッホォォォ! 今度の休みに行こう!

そう思いながらチケットを大事にポケットに入れた瞬間

「そんなに特撮が好きなのか? 赤龍帝」

その人の背中に漆黒の12枚の翼が姿を現し、部屋中に

漆黒の翼が舞った。

「あ、貴方は」

「ん? 俺? 俺は堕天使総督のアザゼルだ」

 

 

 

 

 

 

 

「冗談じゃないわ」

紅色の髪を揺らして部長さんは怒ってらっしゃいました。

あの堕天使の総督さんがやった事は営業妨害の当たる行為らしい。

「アザゼルはセイグリッドギアに強い興味があると聞くわ。

まさかイッセーのブーステッドギアを狙ってきたんじゃ」

「そんな事をする彼ではないよ」

ん? この声って……。

不思議に思い、聞いたことのある声がした方向を向くとそこには

部長と同じ紅色の髪を持った男性と銀髪メイド服の女性が立っていた。

「お、お兄様!」

「ぶぎゃん!」

うぅ、い、痛い!

部長はお兄さんが来た事に驚いているのか僕の頭を

机に勢いよく抑えつけて立ち上がった。

そのせいで顔面が机に激突しちゃったよ。

「楽にしていいよ」

魔王様のその一言で全員が楽な姿勢になって座った。

「今はプライベート出来ているんだがちょいとこの部室は

殺風景過ぎないかな? あたり一面が魔法陣というのも何だかね」

サーゼクス様は部室の壁を見回しながらそう呟く。

「お、お兄様なぜここに」

部長さんが怪訝そうな表情で魔王様に尋ねた。

そりゃ、いきなり魔王様が来られたらそうなっちゃうよ。

「何を言っているんだい? もうすぐ授業参観じゃないか。

私も参加しようと思ってね。妹が勉学に励むところをみたいのだよ」

と、サーゼクス様は嬉しそうに微笑みながら僕たちにそう言う。

それに反して部長は少し、ばつの悪そうな表情を浮かべた。

父さんは有給まで取って見に行くぞとか言ってな

……まあ、目的はアーシアさんだろうけどさ。

「グ、グレイフィアね? お兄様に伝えたのわ」

部長さんが少し困ったような顔で魔王様の

後ろに立っているグレイフィアさんに質問をした。

「はい。学園からのスケジュールはすべてわたくしのところに届いております」

「まあ、それもあるんだけど実は三すくみの会談をここでしようかと思ってね。

今日はその会場の下見というわけなのだよ」

それを聞いた皆はかなり驚いたような表情を浮かべた。

ここに天使、悪魔、堕天使の三勢力が集結するっていうの!?

「お兄様、今日はどうされるのですか?」

「それが困ってるんだよ、リアス」

サーゼクス様は本当に困ったような表情を浮かべて時計を見た。

もう時間帯は日付が変わろうとする時間帯だった。

魔王様を野宿させるわけにはいかないし……ここから

家が近いのは僕だし……仕方がない。

 

 

 

 

 

 

 

という訳で僕は家にサーゼクス様をお招きしました。

魔王様に野宿をさせる訳にはいかないしもうこの時間帯じゃ

宿泊施設もほとんど閉まっている。

だから、学園からも近い距離にある僕の家にお招きした。

下の階では父さんとサーゼクス様が食後の楽しい宴をしていて、

子供は部屋でマッタリとしています。

「ここは……あ、これを置き換えて置換積分すれば」

そんで今僕は勉強中です。

フェニックスの一件やコカビエルの一件などで勉強が遅れてる分を

こう言う所で取り戻しているという訳です。

まあ、そんな事はとっくに終わって今は予習だけどね。

「イッセー」

部長は寂しそうな声で僕の背中に抱きついてきた。

「な、何ですか部長」

「まだ終わらないの?」

「後もう少しです……終わった!」

「ふふふ、じゃあいっしょに寝ましょ」

部長は満面の笑みを浮かべながら僕の手を取りベッドへと向かう。

……何で部長はいつも僕と寝たがるんですか?

「失礼します、お嬢様」

すると部屋にグレイフィアさんが入ってきた。

「何かしらグレイフィア、私とイッセーは今から熱い夜を過ごすのに」

「す、過ごしませんよ!」

そんな冗談にもグレイフィアさんは表情を崩さず、床に正座して

僕たちの方をまっすぐ見てきた。

「サーゼクス様が今晩だけイッセーくんを借りたいと言っています」

「お兄様が?」

魔王様が僕を何で借りたいと思うの?

そんでまあ、魔王様も入ってきたんだけどすんごい状況になった。

部長さんは嫌々と言っていたが、結局グレイフィアさんが無理やり連れていった。

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、わが妹の君への依存度は高いね」

前に朱乃さんから聞いたことがある。

部長の依存度は日増しに増大していっているらしい。

……僕はあまり部長の期待に添えていないのになんで部長は

こんなにも僕を可愛がってくれるんだろう。

「さて、話をしようじゃないか」

「は、はい!」

「ふふふ、そんなに畏まらなくても良い」

そ、そんな事言われてもやっぱり悪魔の頂点に立つ方と一緒の部屋に

居ると緊張もしますよ。

「君はアザゼルに会ったそうだね」

「あ、はい。でもいい人でした」

「そうだろうね。彼は自分から

世界をどうこうしようとする輩ではないからね」

それから僕と魔王様は結構遅くまで喋り明かした。

 

 

 

 

 

 

 

そして数日後、授業参観が始まったわけなんだけど……僕の両親は親バカになっていた。

授業中、ずっとアーシアさんの姿をカメラに収め続け、我が息子には一度たりとも

カメラにその姿を収めはしなかった。

父さん、母さん……地味に傷つくよ。

そんなこともあったりして今は休憩時間、

廊下を歩いているとなんだか人だかりができていた。

何かの撮影会でも行われているのかと思うくらいに、パシャパシャと

カメラのフラッシュが光っていた。

「やあ、イッセーくん」

「あ、木場君。ねえ、あれなんだろ」

隣に木場君も来て僕たちは二人でその撮影会の中に入っていくと

そこには魔法少女がいた。

比喩じゃないからね、本当にそんな格好をした女性がいた。

「むむ! おぉー! 君が噂の!」

僕の方を向いたかと思うといきなり

こちらにまで走って来てキラキラした目で見られた。

な、なんなのこの人。

「おらおら! こんな所で撮影会すんな! ちれちれ!」

ここで生徒会の匙くんのお出ましだ。

「ふ~、あんたもこんな所でそんな格好しないでくれよ」

「これが私の正装だもん☆」

だもんてあんたねえ……ていうか誰かに似てるような。

すると向こうの方から会長が走ってきた。

「匙、いつも物事は簡潔に」

「あ! ソーナちゃん見っけ!」

いきなりその魔法少女は会長に抱きついていた。

あ、そういえば会長にそっくりだ。

「セラフォルーも来ていたのか」

ここでまさかの魔王様登場……てかセラフォルー?

ま、まさかこのコスプレ少女は……。

「レ、レヴィアタン様!?」

「うん! 私はセラフォルー・レヴィアタン! 魔王少女だよ☆ブイブイ♪」

そう言って横チョキをして決めポーズらしいものを決めていた。

な、何この人めっちゃフリーダムじゃん。

「むぅ~。どうしてお姉ちゃんに授業参観を知らせてくれなかったのさ~」

「そ、それは」

あの会長が珍しく狼狽されていた。

「ショックで天界に思わず攻め込もうと思っちゃったんだからね☆」

いやいや、授業参観を誘われなかったって言うだけで戦争を起こさないで。

「ねえねえサーゼクスちゃん。この子が赤龍帝の少年だよね」

「そう、彼が兵藤一誠君だ」

ま、魔王様をちゃん付けって……あ、でも魔王同士だから良いのか?

「ほう、これはレヴィアタンどの。相変わらず奇抜な格好ですな」

ここで部長さんに連れられて部長さんのお父様も登場。

な、なんだかすごい絵面だ。

「あら、おじ様☆今この格好が流行りですのよ」

流行ってません。

部長のお父様も『そうだったのか』みたいな顔をしないで。

会長に視線を移すと顔を真っ赤にして俯いていた。

まあ、そりゃそうでしょう。

「ソーナちゃん、どうしたの? お顔が真っ赤ですよ? ここは

『お姉ちゃん!』『ソーナたん!』で抱き合って百合百合な展開でもオッケーだよ!」

「うぅ! もう耐えられません!」

会長は真っ赤になった顔を手で蔽い隠しながら、

いずこへと走っていった。

「あ! 待ってよぉぉぉぉ! ソーナたぁぁぁぁぁぁん!」

目に涙を溜めながら、レヴィアタン様はフリフリの衣装を

揺らしながら会長を追いかけていってしまった。

シスコンの姉を持つ人は大変だな~ 。




こんにちわっす!


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Life25

翌日の放課後、僕たちオカルト研究部は厳重に封印されている部屋の前にいた。

以前、部長はアーシアさん以外にビショップがもう一人いると言っていた。

魔王様からの許可が出たらしくその方の封印を解くらしく悪魔になりたての僕たちも

率いて、その人物がいる部屋の前にいた。

「ひと先ずイッセー、先に入ってみて」

「あ、はい」

封印を解かれた部屋のなかに僕が入ると

中は薄暗く女の子っぽい装飾が施されていた。

「……何故に棺桶?」

部屋に入ってすぐの所に棺桶が置かれているのが見えた……これは

趣味なのか、それとも収集しているのかな?

僕はその棺桶を開けた瞬間―――――。

「ぎゃぁぁぁ!」

「ひぃぃぃ!」

いきなり聞こえてきた叫び声に僕は思いっきり腰を抜かした。

な、なんなのさー!

「出たくないぃぃぃ! 誰にも会いたくないぃぃ!」

「こ、怖すぎるだろぉぉぉぉ!」

僕はあまりの恐さでダッシュでその部屋から出ようとしたけど扉が

表から抑えられているのか開けられなかった。

「だ、誰かぁぁぁ! 助けてぇぇぇぇ!」

僕はドアを必死にドンドンと叩くが誰も反応してくれず

ドアを押しても外からカギがかけられているのか開かなかった。

「あ、貴方は誰なんですかぁぁ!」

「ぼ、僕は兵藤一誠。ポーンだよ」

「うぅ、ぼ、僕はギャスパーですぅ」

………お、女の子!? ……じゃ、ないな。

女装趣味のある男の娘だな。うん。

『イッセー、ひとまずその子を表に

出してちょうだい。鍵は開けてあるわ』

ドアを通して部長の声が僕の耳に届いた。

「あ、はい。じゃ、じゃあ行こうか」

僕が彼の手を取ろうとした瞬間、目の前が真っ白になった。

「ひぃぃ! ごめんなさい!」

ギャスパー君の声が聞こえるとすぐ近くにいた彼が少し離れた所に

立っていて、ガタガタ震えていた。

……もしかして、この子もセイグリッドギアを持っているのか。

「え、えっと何もしないからさ、とりあえずお外に行こうよ」

僕はギャスパーくんの手を取って、一緒に外に出ると部長達がいた。

「イッセーも感じたと思うけどその子は興奮すると目に映るもの

全てを一時的に停めてしまうの」

「ですが彼はまだ完全に扱いきれず時々暴発してしまうので

大公およびサーゼクス様の命でここに封印していましたの」

ふむふむ、朱乃さんと部長の説明でだんだん理解してきたぞ。

部長がこの子を下僕にしたのは良いけどセイグリッドギアの力をまだ完全に

抑えきれないから一時的に封印して隔離していたのか。

「この子はこの学園の一年生で転生前は人間とヴァンパイアのハーフよ」

 

 

 

 

 

 

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

「こら逃げるなギャスパー!」

誰もいない所でギャスパーくんがブゥゥゥゥンと音をたててオーラを出している

デュランダル使いに追いかけられていました。

部長と朱乃さん、木場君は三種族の対談の打ち合わせに行っており、小猫ちゃんと

アーシアさん、ゼノヴィアさんとでギャスパーくんを鍛えることになった。

「ギャー君、ニンニクを食べれば健康になる」

「ガーリック、ラメェェェェェェェェ」

ギャスパー君はニンニクをもった小猫ちゃんからも追いかけまわされていた。

……これ鍛錬というか拷問に近いかな? 

ていうかもう涙目を通り越して泣いてるじゃん。

「お~やってるやってる」

と、そこに生徒会メンバーの匙くんが来た。

格好はジャージに花壇用のスコップ。

「封印を解かれた下僕さんがいるって聞いてきたんだけど女の子か?」

「残念、あれは女装趣味のある男の娘だよ」

「そりゃ詐欺だ。あんな可愛いのに女装趣味は詐欺だぜ」

そう言って匙君はガっカリしながらも花壇を綺麗にし始めた。

「……あ、アザゼルさん」

「……偶然なのか必然なのか……意外と速くに気付くもんだな」

ふと、顔を後ろに向けると先日の深夜にあった時とおなじ恰好のアザゼルさんが

手にアイスを持って僕たちの後ろに立っていた。

周りのみんなはその姿を見て戦闘態勢を取った。

「ちょ、ストップ! この人は大丈夫だから!」

「……イッセーがそう言うのなら」

ゼノヴィアさんも匙くんも己の得物を下してくれた。

まだ今は堕天使さんとは敵対関係だけどすぐに武器を出すほどのことじゃ……まあ、

僕は一回会っているからこの人のことを知っているけど皆は初対面だから

戦闘態勢を取るのも仕方がないのかな。

「そこに隠れているヴァンパイア」

木の陰に隠れているギャスパーくんはアザゼルさんに

いきなり話し掛けられて肩を大きくあげて、ビクビクしていた。

「停止世界の邪眼の持ち主なんだろ? そいつは使いこなせねえと

害悪になる力だ。神器の補助用具で不足している要素を

補えばいいんだが……そう言えば悪魔は

神器の研究はあまり進んでいなかったんだったな」

ギャスパー君の顔……というよりも目を覗き込むようにして

見ているアザゼルさんにギャスパーくんはガクガク震えていた。

すると今度は匙くんの方を指さした。

「それ黒い龍脈だろ。そいつをこいつの神器に接続して余分な力を

散らせろ。そんで発動すれば暴走する危険性はぐんと下がる」

「お、俺の神器ってそんなこともできんのか?」

それを聞いたアザゼルさんは大きくため息をついてあきれ果てていた。

「これだから最近のセイグリッドギア所有者は自分

の力をろくに知ろうとしない。己の力を知らない状態で使えば

大切なものまで傷つけるぞ? ま、頑張れや若人よ」

そう言ってアイスを口に頬張りながらスタスタとどこかに行ってしまった。

「ひとまずさっきの人が言っていたこと実践してみようぜ。

その後で花壇を手伝ってもらうからな」

そう言う事で僕たちはギャスパーくんの特訓を開始した。

 

 

 

 

 

 

まあ、そんな訳で順調にギャスパーくんの特訓も進んだわけなんだけど。

「ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!」

ギャスパー君が封印されていた部屋の前で僕たちは困りに困り切っていた。

実は部長は僕とギャスパーくんで仕事をしてみなさいと言ったから

仕事をしに契約者さんのもとに行ったんだけどそこでまあ……

その契約者さんが怖かったこともありギャスパーくんは出てこなくなった。

「困ったわね。イッセーによく懐いてる様だったからイッセーとならって

考えてたんだけど……キング失格ね」

「部長、ここは僕に任せてサーゼクス様との会議に行ってきてください」

「……お願いするわ」

そう言って部長達は会議に向かいました。

さ~てと、あれをもってきますか。

僕は一度家に帰って僕の秘宝とも言える物を持ってきた。

「ギャスパーくん入るね」

「ひぃぃぃ! 入らないでぇぇぇぇ!」

ギャスパーくんの悲鳴が聞こえた瞬間に、また目の前が白くなった。

『Boost!』

僕は籠手を呼び出して倍加して、魔力を爆発させて

ギャスパーくんのセイグリッドギアの効力に反抗した。

おぉ、ドライグの言うとおりに魔力を爆発させたら対抗出来たよ!

『まあな。伊達に長い間生きているわけじゃない』

おばあちゃんの知恵袋だね!

「安心して、今の僕ならどれだけ発動させても

停まらない……かもしれないから。それと君と一緒にみたいものがあるんだ」

僕は秘宝をギャスパー君に見せると彼は少し驚いていた。

「な、なんですかこれは」

「ん? 僕が大好きな特撮番組のDVDコレクターズパックだよ。

僕の命の次に大切なお宝。一緒に見ようよ」

「ちょ!」

僕はギャスパーくんが入ってる段ボール箱の箱を開けて

テレビが見える位置に持って来て再生した。

 

 

 

 

 

 

 

『皆の絆で宇宙を掴む!』

かれこれ何時間か経ったかな?

一番新しいものから放送していってるから二時間くらいか。

ギャスパーくんもハマったのかテレビに喰いついていた。

「な、なかなか面白いです」

「でしょ?」

「……僕怖いんです」

おっと、停めないと。

僕はビデオの再生を一時停止させてギャスパーくんの話に耳を傾けた。

「僕のこの力のせいで友達も仲間も皆僕を怖がるんです」

「………」

「こんな力いらないのに! もうみんなが停まった顔は見たくないのに!」

ギャスパーくんはポロポロと目から涙を流していた。

多分、ギャスパー君はその力のせいで皆を止めたりして化け物呼ばわりされて

友達もできなかったんだろう……。

「そっか……僕もさこの神器が怖い」

「え?」

僕が自分の腕に装着されている籠手を見ながらそう言うと

ギャスパーくんは驚いたような顔をした。

「だってさ、これを使う時は誰かを傷つける時。僕は例え敵だとしても

誰かを殴りたくない。出来れば話し合いで平和に解決したいんだ……それに、

闘う相手はみんな強いから」

「イッセー先輩……」

「でも、ギャスパーくんのセイグリッドギアは実用性があるじゃん!」

それを言うとギャスパーくんは驚いたような顔をしながら何故? ていう顔をしてきた。

「だってさ! その力は時間が止められるんでしょ!?

たとえば誰かの頭の上に何かが落ちてきそうな時に

時間を止めたらさ、その人助かるじゃん!」

他にもたくさん使えそうなことを僕はたくさんの思いつく限り彼に言っていった。

「そ、そんなこと考えたこともないです」

「今はまだ使いこなせてないだけだからさ、僕と一緒に特訓して

その力を誰かを助けるために使おうよ!」

「はい!」

やっとギャスパーくんの心の底から笑った顔が見られた。




こんばんわっす。
ここで簡易アンケートです。
自分は今、イッセーがもしもグレモリー卷属ではなく、シトリー卷属だったとしたら
というものを考えているのですが……読みたいですか?
もしも、読みたいという人はぜひ、連絡くださ~い。それでは!


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Life26

次の休日、僕は朱乃さんに言われて、彼女が巫女さんを

務めている神社に向かっていました。

「いらっしゃい、イッセーくん」

と神社の入口の前に巫女服姿の朱乃さんが立っていました。

うん、巫女服姿もめちゃくちゃ可愛いです!

「さあ、行きましょうか」

「はい!」

僕は朱乃さんに連れられて中を歩いて行くこと数分、

少し離れた所に金色の翼を生やし、頭に輪っかがある青年がいた。

だ、誰? 輪っかがあるから天使なんだろうけど……。

青年は僕に気付くと笑みを浮かべながら早足でこっちに近づいてきた。

「やあ、初めまして。私はミカエル、天使の長をしております」

……何でこうも僕は大物さんとの縁が強いんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

朱乃さんの先導のもと僕とミカエルさんは神社の本殿に向かった。

本殿に入るとそこにはでかい柱が何本も立っていて本殿の中央には

大きめの剣が立てられていた。

言い表しにくいんだけどものすごい力が僕の肌を刺してきていた。

この感覚は以前にも感じた事はある。

「もしかしてあれ、聖剣ですか?」

「ええ、これはゲオギウルス……聖ジョージと言えば伝わりやすいでしょうか。

彼が持っていたドラゴンスレイヤーのアスカロンです」

龍殺し……ていうか聖剣だから僕が持ったらいけないんじゃないの?

「これには特殊な儀礼を施しています。悪魔であってもドラゴンの

力を持つ貴方ならば使うことは可能です。むしろ籠手に

同化させるといった方がよろしいでしょうか」

ミカエルさんは僕の腕を見ながらそう言った。

そんなことできるの? ドライグ。

『ああ、神器は想いにこたえる。お前がそう望めばいいだけだ』

ふ、ふ~ん。……ちょこっとだけ触ってみよ。

僕はそ~っとアスカロンの刀身に触れようとした瞬間、

「わっ!」

「ひぃぃぃ!」

「ふふふ、イッセーくんはイジリがいがありますわ」

び、びっくりした~。

いきなり朱乃さんに驚かされた所為で僕はアスカロンから飛んで離れた。

「ふふ、もうしませんわ」

「ほ、本当ですか~?」

僕はびくびくしながら、近づいていって朱乃さんが本当に手を出さないかを

確認してから籠手を呼び出して、徐々にアスカロンを同化させていった。

体の中に気持ちの悪いオーラが入ってくる。

うぅ、気持ち悪いよ~。

『我慢しろ。あと少しだ』

そしてカッと赤色の閃光を放ってアスカロンは僕の籠手と同化した。

「っともう時間ですね。そろそろ私は行くとしましょう。今回の会談で

三種族は和平を結ぶはずです。もう罪もない人たちが死ぬこともなくなります。

さっきの剣は天界側から悪魔側へのプレゼントです。それでは」

そう言ってミカエルさんは外に出て、金色の翼を羽ばたかせて空へと飛んでいった。

………空を飛んでいる時に飛行機とかに見られないかな。

僕はそんな現実的な心配をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お茶です」

「あ、ありがとうございます」

ミカエルさんがお帰りになった後、僕は朱乃さんが住んでいる

という境内の中にお邪魔させてもらっていた。

朱乃さんらしいというか部屋の中は和室で綺麗に片付いていた。

僕は前々から気になっていたことを朱乃さんに訊いてみることにした。

「あ、あの朱乃さん一ついいですか?」

「ええ、良いですよ」

「朱乃さんて悪魔ですよね?」

「ええ、そうですけど」

「ん~朱乃さんの魔力ってなんだか悪魔っぽくない

というかどことなく堕天使に似てる気が」

僕の問いに朱乃さんは表情を曇らせた。

……僕なんか聞いちゃいけないこと聞いちゃった感じ?

「……イッセーくん。貴方は堕天使をどう思っていますか?」

堕天使……その言葉を聞くとレイナーレを思い出す。

彼女は僕を殺しにきた……それだけじゃない。アーシアさんまで殺したんだ……

堕天使の全員が全員があんな性格とは思わないんだけど……。

「僕は……僕が思うにレイナーレ達のような怖い堕天使は少数だと思うんです。

ほら、人が殺人を犯すのだって少数の人間がやることですし」

そこまで言った瞬間、いきなり朱乃さんは翼を広げた。

しかし、悪魔であるはずの朱乃さんの背中には黒色の翼と

悪魔の翼ではないものが混じっていた。

……あれ? 片方の翼が悪魔の物じゃない。

「私はパラキエルという堕天使と人間のハーフであり悪魔なんです」

し、知らなかった。

だから朱乃さんが雷を使うとき、どこか違和感を抱いたわけだ。

「私はこの濁った翼が大嫌いです。だから悪魔になったのに……

生まれたのは悪魔と堕天使の翼をもったおぞましい生物」

朱乃さんは堕天使の翼を触りながら、そう言って自嘲していた。

所々、堕天使の翼には傷が付いていた。

もしかして、ひっこ抜こうとしたんじゃ。

「……それを聞いてイッセーくんはどう思います? 私は

イッセーくんとアーシアさんを一度殺した堕天使と

同じ種族。好きにはなれませんよね」

確かにレイナーレ達は恐ろしかった……でも。

「朱乃さんは朱乃さんです。レイナーレ達と同じじゃありません」

「で、でも私は堕天使の血を引いてるのよ?」

「ん~なんて言えば分からないんですけど僕は

朱乃さんのことは好きな部類ですよ? それに」

「それに?」

うぅ、結構、面向かって言うのは恥ずかしいな。

「そ、その朱乃さんはレイナーレなんか

よりも何千倍もび、美人ですよ」

そう言うといきなり朱乃さんは泣き始めた。

ぼ、僕女の子泣かせちゃった!?

しかし、朱乃さんは涙をぬぐうと微笑んだ。

「……殺し文句言われちゃいましたね」

するといきなり僕に抱きついてきた。

「ねえ、イッセーくんはリアスのこと好き?」

「………」

「ふふ、その様子からして好きみたいね」

僕が何も言わずに黙っていると朱乃さんは笑いながらそう言った。

「ち、違います! そ、その僕は!」

「ふふふ、一番は無理でしょうけど二番、三番を私は目指しますわ。

浮気って案外燃えるような気がするの」

あ、あんまり言っていることが理解できない。

すると朱乃さんは僕に耳打ちしてきた。

「ねえ、イッセーくん。一度だけで良いから朱乃って呼んでくださらない?」

「え、えぇぇ!? い、いやそんな年上の人ですし」

「一回だけで良いから、ね?」

僕を上目づかいで見てくる朱乃さんの表情はいつもの凛々しいものではなく

年相応な可愛らしい表情をしていた。

うぅ! そ、そんな潤んだ目で見られたら断るに断りきれない。

「あ、朱乃」

「ふふ、嬉しいわイッセー」

目の前にいる朱乃さんはいつもの凛々しい朱乃さんではなくて

普通の女子高校生の姫島朱乃に変わっていた。

そのまま朱乃さんは僕の頭を誘導して膝に寝かせた。

こ、これって噂に聞く膝枕じゃ!

「ふふふ、なんだかイッセー君といると幸せに感じますの」

そう言う朱乃さんの表情は満面の笑みで、雰囲気もさっきまでの暗いものとは

違って、嬉しそうな雰囲気になっていた。

「え、えっと怒られそうなのでそろそろ」

「誰が怒るのかしら? イッセー」

声の聞こえた方向を見るとそこにはかなり刺々しいオーラを

放っている怒り心頭の部長が立っていた。

「イッセー!」

「イタタタ!」

部長は横になっている僕の頬をニコニコしながらも本気の力で抓って

立ち上がらせると低く迫力のある声で訊いてきた。

「例の剣は?」

「も、もひゃいまひは」

「ミカエルは?」

「かえひはひは」

「なら帰るわよ!」

そう言って僕の頬を引っ張ったまま部長は境内から出ていきました。

「ふふ、一番候補は羨ましいですわ」

 

 

 

 

 

 

 

帰り際、部長は石で出来た階段を辺りにコッ! と何かとがったもので

叩いたときに聞こえる音をまき散らしながら早々と歩いている。

す、すごい怖いです。

誰かの足音だけで怖くなったのは部長が初めてです。

「ねえ、イッセー」

「は、はいぃぃ!」

「朱乃は朱乃なのね」

部長は悲しそうな表情で僕のそう言うが僕は

何を言っているのか理解できなかった

「私は部長、朱乃は副部長。それなのに朱乃は朱乃なのね」

「え、ええ部長は部長じゃないですか」

僕がそう言うと部長は悲しそうな表情をして何かをぶつぶつつぶやいていた。

「何が一番候補よ、私だけ遠いじゃない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の朝も僕とギャスパーくんは特訓をしていた。

内容は投げたボールを空中で停止させること。

かれこれ20回ほどやってるけど結構な確率で

成功してるし暴発もほとんどなくなった。

「ぐふぅぅぅぅ~。つ、疲れましたぁぁぁぁ~」

「んじゃちょっと休憩しよう」

僕たちは近くの太い木に凭れかかって休憩をすることにした。

「僕、強くなれてるんでしょうか」

不意にギャスパーくんが不安そうにそう呟いた。

「なれてるさ! 僕なんかよりも凄いよ!」

「そ、そうですか~えへへへ」

ギャスパーくんは前に比べてよく笑うようになった。

ひきこもりな性格はまだまだだけど、それでも以前よりも

笑うようになったし明るくはなった……まあ、相変わらず段ボール箱の

中に入っているのが好きみたいだけど。

「今日の対談はギャスパーくんは行けないからお留守番頼むね」

「はい!」

「あ、ついでにこれも渡しておくよ」

僕はポケットからある物をギャスパーくんに渡した。

「これはなんですか?」

「ん? あれからまたアザゼルさんに会ってね。まあ、何かヤバい時に

これを口に含んでかみつぶしてみて」

僕はギャスパーくんに渡した物の説明をして再び特訓を再開した。

今日の深夜に対談が始まる。




間、空いちゃいました。


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Life27

校舎内に入ると警備の人なのか、甲冑を着た悪魔の方が何人も壁沿いに

横一列に並んでいて、僕たちの姿を見るや否や全員が頭を下げた。

部長は周りの光景をもう慣れた感じでスタスタと歩いていくけど

僕とアーシアさんはなんか僕たちも頭を下げないとだめな感じがして

ずっと会釈しながら歩いていった。

やっぱり、部長は普段から召使の皆さんにこうやられているんだろうな。

歩くこと数分、皆が止まったので僕も止まると目の前には先ほどと

同じように警備の人がドアの両脇に立っていて部長の顔を見ると

すぐにドアを開いた。

「な、何これ」

ドあの中に広がっている光景は普段、見ている会議室とは

まったく違う光景が広がっていた。

床には赤いじゅうたんが轢かれ、部屋の真ん中あたりには大きい

丸テーブルが置かれ、天井にはどうやってつけたのかシャンデリアが設置されており、

それぞれ三種族のお偉いさんが中央に円卓を囲うようにに座っており、

壁に沿って会長が先に座っていた。。

「やあ、よく来てくれた。座ってくれ」

サーゼクス様に言われ僕たちは用意されていた座席に座り会議が始まるのを待った。

「よし、全員来たようだし。始めようか」

「ええ」

「俺も良いぞ」

「よし、ではこれより悪魔、天使、堕天使の三大勢力による会議を行う」

サーゼクス様のその言葉が会議が始まるきっかけとなった。

 

 

 

 

 

 

 

対談が始まってから約30分くらい経った。

さっきからシステムやらユグドラシルやらなんちゃらで

専門用語ばかりで頭がこんがらがりそうだ。

「さて、そろそろ俺たち以外に世界に影響を与えそうな

奴らに意見を聞こうか。まずは白龍皇、ヴァーリ、お前は世界をどうする」

アザゼルさんに言われて立ち上がったのは僕よりも年下の様な

風貌をした青年だった。

「俺は強い奴と闘えればいい」

アザゼルさんは納得したかのように首を縦に振った。

「だろうな。赤龍帝、お前はどうする」

不意に僕に質問をぶつけられて焦ってしまった。

「え、えぇぇ!? 僕にも聞くんですか!?」

「当たり前だ。お前は二天竜の片割れを宿しているんだ。現にお前は

コカビエルを圧倒しただろ? 報告は受けてるぜ」

それを言った瞬間、堕天使さん達のお偉いさん達と

天使さんのお偉いさん達が驚いたように少しざわめき始めた。

そのざわめきはすぐに消えたものの室内は妙な空気になっていた。

「え、い、いやでも僕は世界をどうこうできるほど強くは」

「まあ、そう言うな。俺達の考えは『今回の赤龍帝は手を出す必要は無』

それが見解だった。だがまあ、それは大きく外れたわけだ。

お前だって護りたいもんぐらいあんだろ?」

……確かにある。

部長や朱乃さん、木場君や小猫ちゃんやアーシアさん、他にも

学校の友達も全て護りたい。

「僕は別に世界をどうこうする気はありません。楽しく

オカルト研究部の皆と生きていければそれで構いません」

「んじゃ~私事になるがお前は目標はあるか?」

アザゼルさんにそう言われ僕は考えたけど目標なんかなかった。

いや、作る気はなかった。

「……ありません」

「目標があった方が強くなれるぞ」

「目標――――――」

その時、旧校舎で何度か経験したことのある感覚が全身に広がり、

僕はすぐさまセイグリッドギアを起動させて、一回だけ倍加した魔力を

爆発させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間が停止してから数分後、室内ではサーゼクス様とミカエルさんが

慎重な趣で話をされていた。

僕は今、窓の外を見ている。

窓の外にはローブを着た大勢の魔法使いの姿があった。

「イッセーくん、どうやら下僕で動けるのは君と僕とゼノヴィア、

そして部長だね。お偉いさん達はみんな動けてる」

木場君の言うとおり僕たち以外の皆は座ったまんま……

停止しているという事にすら気付かずにいるんだろう。

「そうみたいだね。でも、まさかね」

「僕も安心しきってたよ。三組織のトップが来るから何も起こらないって。

でも、その考えは甘かったね。現に来てしまった」

視線を移すと小猫ちゃん達が停止した状態でそこにいた。

まさか朱乃さんまで停止するなんて。

「ま、そう考えるのも仕方ねえさ」

アザゼルさんが僕たち二人に話しかけてきた。

妙にこの人は余裕綽々だな。

すると新校舎がグラグラと、揺れ始めた。

「攻撃を受けてんだな。いつの時代も和平を結ぼうって

時は攻撃を仕掛けてくるもんさ」

「今、この校舎全体に私とミカエルで結界を張った」

サーゼクス様の声が聞こえ、そちらを向いた。

「作戦は決まったよ。ギャスパーくんは旧校舎にいる

みたいだからね。キャスリングを使いたいんだが」

「駒は部室にあります」

キャスリング――――それは王と戦車の位置を瞬間的に入れ替えることができるもの。

確か旧校舎には最後の駒である戦車の駒が残してあるって聞いている。

こんなことを予想していたらしいけど……。

「よし、じゃあグレイフィア。私の魔力方式で何人飛ばせるかな?」

「ここでは簡易術式でしか展開できそうにありませんのでお嬢様と

後もう一方が限界かと」

「なら僕が行きます」

僕は真っ先に手をあげて名乗り出た。

「ふふ、だろうね。分かった、君とリアスに任せよう」

よっしゃ! ギャスパー君、待っててね。

すぐに助けに行くから!

「おい赤龍帝、これ持っていけ」

「兵藤一誠です」

そうは言いながらも僕はアザゼルさんが投げてきたものを受け取った。

なんだこれ?

アザゼルさんから投げられたものは指にはめるようなリングだった。

「それは神器の力を抑える力を持つ。ハーフヴァンパイアを

見つけたらそいつをはめてやれ」

「了解です」

グレイフィアさんの術式を待っている間、サーゼクス様と

アザゼルさんが話しこんでいた。

「アザゼル、神器を集めて何をしようとしていた」

「ん? ああ、備えてたんだよ。つってもお前らからの攻撃じゃねえぞ。

とある組織からの攻撃だ」

「その組織とは?」

「カオスブリゲード。簡単にいえばテロリストだ」

どの時代にもテロリストはいるもんだね~。

「そして最も厄介なのはその組織のトップだ。そいつは最強の龍だからな」

………最強の龍と言って思いつくのはあの子なんだけど……まさか、

彼女がテロリストの親玉なんて。

『そう、彼がカオスブリゲードのトップです』

突然室内に知らないところの魔法陣が展開された。

「グレイフィア! すぐに二人を飛ばすんだ!」

「はっ! 二人ともご武運を!」

そう言うことで僕らは飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法陣の光が消え、目の前に映ったのは旧校舎にある

部室で、椅子に縄で拘束されたギャスパー君とローブを着た

人たちが何人もいた。

「っ! まさかここに来るとはね!」

「悪魔が!」

僕達が飛ばされたのは普段使っている部室なんだけど今は

不気味なローブを着た魔法使いに占領されていた。

「部長! イッセー先輩!」

「良かったわ、ギャスパーが無事で」

部長はギャスパーくんの無事を確認してホッと安心していた。

「おろかね貴方達は。こんなハーフヴァンパイアを下僕にするなんてね!」

「ぎゃっ!」

っ! な! 抵抗できないギャスパーくんを一方的に殴るなんて!

既にセイグリッドギアはギャスパー君の力に対抗するために魔力を爆発させてから

ずっと起動させてあるから結構、倍加は進んでいる……。

「堕天使の領域内にこいつを放り込んで神器を暴走させれば幹部くらいは

始末できたものを。本当に貴方達はバカね」

『Boost!』

僕の怒りに反応してかは分からないけど魔力が辺りに放出され

部室がある旧校舎の壁がミシミシと軋んでいた。

「馬鹿は貴方です。ギャスパー君は道具なんかじゃないです……大切な仲間です。

ギャスパー君、僕が渡した奴は」

「口の中に」

ギャスパーくんは舌を使って僕に頬張っていた飴玉サイズの物を見せてきた。

おぉ、結構度胸があるんだね……僕だったら不審者が来たらすぐに

ビビりまくって腰が抜けちゃうんだけどね。

「じゃあ、こいつらをやっつけようか。ギャスパー君の力が必要なんだ!」

「はい!」

ギャスパーくんが僕が渡した奴をかみ砕いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

するとギャスパーくんはさっきまでいた場所にはいなかった。

時間が止まったんだ……アザゼルさんの言うとおり赤龍帝である僕の血を

ギャスパー君が飲んだら一定時間はセイグリッドギアを操れるみたいだね。

魔力を爆発させた状態の僕でもほんの一瞬だけ意識が止まった……気がする。

「ど、どこに行った!」

室内全域に視線を張り巡らせると――――――

チチチチチというコウモリの鳴き声が聞こえてきた。

次の瞬間、赤い瞳をしたコウモリが次々に魔法使いたちに襲いかかっていく!

おぉ! ギャスパー君変身できるんだ!

「クッ! 変化したのか!」

毒づく彼女達はコウモリに向けて魔法を放とうとするが足元を

何かに引っ張られ大きく体勢を崩した。

「な! か、影が!」

「吸血鬼の能力か!」

彼ばっかりに任せるわけにはいかないね!

「アスカロン!」

『Blade!』

「そして!」

『Boost!』

倍加させてからの! 今までに倍加させた分を合わせて!

『Transfer!』

アスカロンに力を譲渡すると刀身が紅色に輝き始めた。

う、うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!

こ、これってまさかあの特撮の必殺技じゃん!

うっはー! カッコいい!

『ぐすん』

ドライグのかなり上ずった声が僕の頭の中に響いて

僕までなんだか、悲しい気持ちになってしまった。

「ギャスパー君!」

『はい!』

僕が声をかけるとコウモリの赤色の瞳がさらに

怪しげな光を発して光って、魔法使いたちの時間が停止した。

「ぶっ飛べぇぇぇぇぇぇ!」

僕がアスカロンを振るうとものすごい衝撃波が放たれて魔法使いたちは

何も出来ぬまま部室の壁を突き破って飛んでいった!

……壁に穴があいちゃったけどこれは不可抗力だもんね。

「よっし!」

『やりましたね!』

辺りのたくさんのコウモリが嬉しそうに踊っていた。

「よくやったわ二人とも。さ、帰りましょう」

ギャスパーくんが元の姿に戻ったのを確認した部長は

僕達を連れて玄関から出た瞬間!

「わっ!」

「きゃっ!」

「けほっ!」

何かが地面に落下して土ぼこりを盛大に上げた。

埃が晴れるとそこにいたのはアザゼルさんだった。

「こんなところで反旗か? ヴァーリ!」

空中には白い鎧を纏ったヴァーリさんがいた。




どうもっす。
今、中間テストの勉強の休憩中ですわ。
はぁ~。中間テストはあるわ、校外学習はあるわ、公募制推薦はあるわ…
3年ってこんなに忙しかったっけ?


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Life28

「そうだよ、アザゼル」

まばゆい光を放ちながら白龍皇が一人の女性とともに

地上へと降り立ち、僕達の目の前に現れた。

す、凄い魔力を感じる……。

「もしかしてあの弱そうな彼が赤龍帝?」

「ああ、そうだよ」

するといきなり腹を抱えて笑いだした。

「アハハハハハハハ! 歴代最強の赤龍帝が現れたって聞いたけど

まさか、あんな魔力がチョビットしかない赤ん坊だったとわね!」

そっか、さっき譲渡の力で全部なくしちゃったからね……ぐすん! もう慣れたもん!

そうは思いつつも、やはり目からは涙がチョビットだけ出てくる。

「あまり笑わない方がいい。カテレア程度じゃ、倒されるぞ」

ヴァーリの言ったことにさらに、カテレアさんは大きな

笑い声を辺りに響かせた。

「はははは! あんな魔力も感じないような

子供に負けるはずがないじゃない!」

うぅ……そこまで言わなくても良いじゃないですかー!

カテレアさんは僕から隣にいるアザゼルさんに視線を移した。

「さて、アザゼル。貴方には死んでもらいます」

「おいおい馬鹿を言うな。今まだ神器についての研究が山ほどあるんだ」

「安心してください。新世界では神器などというものは作りません。

いずれは北欧のオーディン達にも動いてもらいます」

にんまりと口角をあげた後、アザゼルさんは吐き捨てる。

「それを聞いてお前らの目的にますます反吐が出そうだ。

ヴァルハラ!? アース神族!? 横合いからオーディンに掻っ攫われるつもりかよ。

というよりもな俺の楽しみを奪う奴らは……消えろ」

するとアザゼルさんがポケットから短剣を取り出した途端、

光り輝きながらその形を変化させ始めた。

カテレアさんはその輝きを見て驚きの表情で顔を染め上げた。

「アザゼル! 貴方まさか!」

「バランスブレイクっ!」

一瞬の閃光の後、そこにいた者は金色の装甲を身にまとっていた。

バサッと漆黒の12枚の翼が展開され辺りに黒い羽が散らばる。

カ、カッコいいぃぃぃぃぃぃ!

「そ、そこの少年が目をキラキラさせて貴方を見てるわよ」

「ん? あらかたカッコいいとか思ってんじゃねえの?」

僕はブンブンと音が鳴るくらいに首を縦に振った。

めっちゃかっこよすぎだろぉぉぉぉぉぉ!

ドラゴンに黒い翼が生えたみたいで超かっこいい!

ヴァーリはアザゼルさんのその姿を見て、まるで幼い子供が

面白そうなものを見つけた時のように笑い声をあげた。

「はははははは! 流石はアザゼルだ!」

「行くぜ? カテレア」

「なめるなっ!」

特大のオーラを纏ってカテレアさんがアザゼルさんに突っ込んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬の出来事だった。

2人がすれ違ったかと思うとカテレアさんの体から鮮血が吹き出し膝をつき

女性の後ろには長い距離の地面が抉れていた。

「これほどまでに差があるのね……蛇で強化したにも

拘らず……ですが、ただでは死にません!」

そう叫ぶと女性の腕が触手の様に変化してアザゼルさんの腕に巻きついた。

「あ? なんだこりゃ」

アザゼルさんは腕に巻きついているものを取ろうとしてるけど一向に取れない。

「あれは自爆用の術式よ!」

部長の言ったことに僕は驚きを隠せなかった。

自分の命が惜しくないの!?

「とにかくここから離れるわよ!」

部長が慌ててギャスパーくんの手を引き、空いている手で

僕の肩をもって離れようと走り始めた。

「あっそ」

そう言って肩をすくめながら光の槍で自分の右腕を肩から切断した。

切断され、地面にボトッと落ちた腕は塵となって消えていった。

う、うげぇ! ま、まじかよ!

「っ! 正気ですか!?」

カテレアさんもアザゼルさんの行動に驚きを隠せないでいた。

「片腕程度ならてめえにくれてやる」

刹那、カテレアさんの腹部にアザゼルさんの光の槍が貫き一瞬にして塵になって消えた。

それと同時に金色の鎧も消え去った。

「流石はアザゼルだ」

そう言いながらヴァーリはアザゼルさんの近くに歩み寄っていった。

「闘うか? 片腕でもお前とは戦えるぜ」

……え、えっと2人が戦ってくれるなら僕はお邪魔なので帰ります。

そのまま僕は帰ろうとすると……。

「どこに行く気だい? 赤龍帝」

ヴァーリの声が僕を呼びとめた。

お願いだから帰らせてよ!

君みたいな強そうな相手はめちゃくちゃ強い

アザゼルさんに頼めばいいじゃないか!

ヴァーリは失望したような表情を浮かべ、さらに続けた。

「君は本当に普通だね」

しかし、ヴァーリの顔が失望した顔から嬉しそうな表情へと変わる。

「だが、君はコカビエルを倒した。これを聞いた時、俺は歓喜に打ち震えたね。

あれほど弱いといわれている赤龍帝がコカビエルを倒したんだ。これで

ようやく俺も戦いを楽しむことができる。俺は今、全身が戦いたくて

うずうずしているよ。君だってそうだろ?」

「そ、そんな事ないですよ。僕は」

「でも、ドラゴンの腕は正直だ」

ヴァーリが僕のドラゴンの腕を指差しながらそう尋ねる。

僕もその方向に視線を向けると――――――。

「ッッッッ!」

いつの間にか封印が解けた龍の腕がまるで僕に戦えとでも言っているかのように

ぴくぴく動いていた。

それに彼の言うとおり僕の全身の血液は、沸騰するくらいに熱くなっていて

目の前の相手と戦いたくて仕方がなかった。

「さあ戦おうじゃないか赤龍帝! 己の感情を解き放て!」

「うぅぅぅぁぁぁぁぁ!」

「イッセー!?」

僕は感情に動かされるまま目の前の相手に殴りかかった。

なんだか分からないけどもう止められない!

「はぁぁぁぁぁぁ!」

向こうも拳を打ち出して来てお互いの拳が直撃した瞬間、

辺りに凄まじい衝撃波が拡散して地面を抉った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ! それで良い! さあ! 楽しもうじゃないか!」

『Boost!』

「うらぁぁぁぁぁぁぁ!」

僕はもう一発、彼にお見舞いしてやろうと振るったが彼は空に

浮かび上がりそれを避けた。

空を切った拳は地面にあたり巨大なクレーターを生みだした。

「おぉぉぉぉぉぉぉ! バランスブレイク!」

その単語を発した瞬間、籠手全体が赤色に輝きはじめ宝玉からも

凄まじい光量の光と音声が、夜の学園に響いた。

「おおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

僕の叫びとともに魔力が辺りに放出され、地面に大きな穴が開いた。

『BoostBoostBoostBoostBoost

BoostBoostBoostBoostBoost

BoostBoostBoostBoostBoost!』

僕の魔力がBoostにより増大していくにつれて、僕の近くの

地面から大きな穴が開いていき、遠くの方の地面にはヒビが入った。

ヴァーリはその光景を見て歓喜の声をあげる。

「ははははははは! やっぱり今回は当たりの

様だ! 魔力の増幅の振り幅が異常だ!」

「うらぁぁぁぁぁぁぁ!」

「っ!」

僕はヴァーリが動き出すよりも前に莫大な量の魔力を足に送り込み、

それで生み出した速度で動きだし顔の側面に

拳を打ち込み地面に直撃させた。

僕が殴った部分の鎧が砕け散って、ヴァーリの顔の側面が見えた。

「がはっ! はははははははは!」

「あははははははははははは!」

彼は殴られて痛みもあるはずなのに、高笑いを上げ始め

僕も彼につられて大笑いを始めた。

もう何が何だか分からないや。

『DividDividDividDivid

DividDividDividDivid

DividDividDividDivid!』

『BoostBoostBoostBoostBoost

BoostBoostBoostBoostBoost

BoostBoostBoostBoostBoost!』

魔力は減ったり増えたりを繰り返しながら凄まじい速度でループし始めた。

「あはははははははははははは!」

「はははははははははは!」

僕は高速で動きだしヴァーリに殴りかかるけど彼も同等の速度で動いてそれをかわした。

「見えてるんだよ!」

僕は魔力を足に流し込んで赤色に輝かせるとそのまま高速でUターンして

彼の胴体に蹴りを入れようとする――――――けど、彼も予測していたのか

真っ白な籠手から巨大な魔力の塊を撃ちだしてきた。

蹴りと魔力の球がぶつかり合い辺りは凄まじい閃光と爆風に襲われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

おいおいおい、俺はいったい何を見てるんだ?

怪獣映画でも見てるのかよ。

あいつらの攻撃がぶつかり合うたびに地面に巨大なクレーターを作り出していく。

そんな穴がもういくつも出来上がっていた。

2人は姿が消えたかと思うと別の場所に現れて殴り合いまた消えると

別の場所で殴り合う。

そんなむちゃくちゃ激しい戦闘を繰り返していた。

「イッセー! もう止めなさい! これ以上したら貴方は戻れなくなってしまう!」

俺の隣で紅髪の女性悪魔―――――リアス・グレモリーが叫んでいた。

「止めとけリアス・グレモリー。もうあいつに

お前の声は聞こえねえよ。どちらかが倒れるまで戦い続ける」

「貴方は黙ってて! イッセーは! イッセーなら私の声で止まってくれる!」

そう言うとあいつは二人が戦っている場所へと走っていった。

「あ、おい! あの馬鹿!」

俺はリアス・グレモリーを追って走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

「うぁ!」

「がはぁ!」

お互いの拳が鎧を砕き、同時に飛ばされて地面に直撃した。

もう既に僕の鎧も彼の鎧も、ボロボロで鎧の役目は果たしていなかった。

「はぁ、はぁ。君のパワーはルークにプロモーションしなければ

一般人以下だ。だがスピードはバランスブレイク状態の俺を超えている」

「はぁ、はぁ。そっちのパワーは異常に強いね。殴られるたびに意識が飛びかけるよ。

くはははははは! でも楽しいなぁぁぁぁ! こんな楽しい戦いがあるなんて

知らなかったよぉぉぉぉぉ! もっと闘おうよぉぉぉ!

ヴァーリくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!」

「ハハハハハハハハハハ! 兵藤一誠ー!」

僕らと拳がぶつかろうとした瞬間

「そこまでだよ、君たち」

僕とヴァーリはお互いに方向を真逆に変えられてまったく違う所に激突した。

慌てて振り向くとそこにはサーゼクス様がいた。

「はぁ、はぁ。サーゼクス・ルシファーか……分が悪いな。帰らせてもらおう」

彼は白い閃光となって空へと飛び去った。

「待ってよ! まだ戦いは終わってないじゃないか!」

僕は籠手からあり余った膨大な魔力を球状にして彼に撃ちだそうとしたけど

目の前を紅色の髪をした女性が壁のように立ち塞がった。

「もう止めなさい! イッセー!」

「退いて下さいよ~。楽しいんですから」

「っ! 馬鹿!」

直後、再生しかけていた顔の部分の鎧の上からたたかれた。

「貴方が学校を、皆を傷つけてどうするのよ!

これじゃあただのテロリストと一緒じゃない!」

っ! 部長……泣いてる。

「貴方はリアス・グレモリーの眷属なのよ! こんな失態は許さない!」

今まで沸騰するくらいに暑かった体中の血液が徐々にその温度を下げていった。

「すみません、部長」

この一言で今回の戦いは幕を閉じた。




こんにちわ~。皆さんお元気ですか?


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Life29

戦いが集結し、停止していた人たちも動き出し始めて後始末に追いかけまわされていた。

亡くなった魔術師さん達のご遺体を運んだり破壊された校舎(主に僕の所為)の修復や

大きな穴が大量に開いた(これも僕の所為)運動場を直したりなんかをしてくれていた。

サーゼクス様はこっちにきて手を挙げたけどアザゼルさんの腕を見て少し詰まった。

「アザゼル…そ…の腕はどうした」

「カテレアに自爆されそうだったからやったさ」

「そうか……カテレアの件に関しては悪魔側に責任がある。その傷は」

サーゼクス様が何か別の形で償うと言おうとしたのだろうけど

アザゼルさんは手をあげていらないといった。

「こっちもヴァーリに関して責任があるからな」

「……彼は裏切ったか」

サーゼクス様はどこか寂しそうな表情をしていた。

「まあ、あいつは力のみに興味を置く奴だ。この結果も

納得は出来るさ。それに」

急にアザゼルさんは僕の方をちらっと見てまたサーゼクス様に視線を戻した。

「俺たちの所にいるよりも戦いやすいんだろうよ、赤と」

あ、そっか! 堕天使側にいれば和平が邪魔になって自由に僕と闘えない。

だから彼は反旗を翻したんだ。

「そうだね」

するとサーゼクス様は笑みを浮かべながら僕の方に視線を移した。

「全く君はこの学園を破壊する気だったのかい?

僕とミカエルで結界を使って護ってたけど崩れかけたよ。二天龍が

ぶつかった時の衝撃はすごいね」

「ふふ、確かに。あの時は冷や冷やしました」

話を聞いていたのか後ろで部下と話していたミカエルさんがこっちの方にやってきた。

うぅ、あんまり覚えてない。

「このへんで私は帰ります」

「あ、ミカエルさん!」

僕は今にも天使の部下たちと飛び立とうとしているミカエルさんを慌てて止めた。

「どうしましたか? 赤龍帝の少年」

前々から思ってたことを言ってみようかな。

「アーシアとゼノヴィアはよく日頃、信徒だった時のならわしで

祈るんですがそのたびにダメージを受けるんです。それってシステムの影響ですよね?」

「ええ、それがどうかしましたか?」

「彼女たちだけでもそのシステムのダメージをなくせませんか?」

これを言うとミカエルさんは驚いたような表情をして、

傍にいる二人も驚いたような表情をしていた。

ミカエルさんは少し考えた後、にっこりと微笑み

「分かりました。二人分くらいならなんとかなるでしょう」

そう言って金色の翼をはばたかせて部下たちとともに帰っていった。

 

 

 

 

 

 

「イッセーさん!」

アーシアさんが目元を潤わせて僕に抱きついてきた。

……抱きつかれるのになんだか馴れちゃったよ。

「アーシアさん、これで祈りたい放題ですよ!」

「ありがとうございます!」

「イッセー、礼を言う」

ゼノヴィアさんも僕の所に来てお礼を言う。

「良いよ別に」

そう言って僕は笑いながら二人の頭をなでてあげた。

そしたら2人して顔を赤くして俯いちゃった。

……僕、何かした?

「お~い、お前ら集合~」

アザゼルさんが堕天使の部下さん達にそう言うと大急ぎで集まってきた。

す、すごい光景。

「俺は和平を選ぶ。今後一切は堕天使は悪魔とも天使とも争わねえ。

文句がある奴はこっから出ていけ。次に会ったときは容赦なく殺す、良いな!」

『この命が滅びるその時までアザゼル総督のためにっっ!』

この人凄いカリスマ持ってるな。

そうした後に続々と堕天使さん達が魔法陣で帰っていった。

悪魔も同様に魔法陣で帰って言ってあれほどいた人数がもう僕たちしか

居なくなって寂しい雰囲気になった。

「後始末はサーゼクスに任せる。俺は疲れた」

そう言って帰ろうとしたけど一回立ち止まってこっちを向いてこういった。

「あ、そうだ。赤龍帝、当分ここに滞在するからお前を鍛えてやる。

今のままでも十分ヴァーリとは互角以上だがそれ以上に戦わせてやる。

僧侶も同じだ。使いこなせていないレア神器を見てるのはイらつくんだ」

そう言って帰っていった。

……滞在? まさかね~

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日、僕の考えは的中した。

「つう訳でオカルト研究部の顧問になったアザゼルだ。先生と呼びやがれ」

スーツを着崩したアザゼル……先生がいた。

「どうしてあなたがここに?」

部長は呆れながら額に手を当てていた。

「セラフォルーに頼んだらこの役職だ!」

先生は着慣れていないのかスーツをあっちこっちに引っ張って笑いながら言った。

「ところでその腕は?」

「ん? ああ、これは神器研究の暇つぶしに作った

本物そっくりの超万能型の義手だ。レーザーも出るぜ」

昨日、自ら落とした腕にはパッと見たただけでは本物と見間違えてしまうほど

完成度の高い義手がつけられていた。

そんな物を暇つぶしで作る貴方が凄いよ。

「にしてもお前のあの強さには驚いたな。まさかヴァーリと

互角、いやそれ以上に戦うなんてな」

……正直あの事は思い出したくもない。

あの時の僕は僕じゃないような気がするから。

あれ以来白いものを見ると戦いたくなってくる。

「ま、もっと面白い戦いをさせてやるよ」

そう言って笑顔で先生は僕に笑いかけた。

波乱の一学期はようやく終業を迎え夏休みへと突入する。

 

 

 

 

駆王学園、一学期終了。

リアス・グレモリー卷属。

 

王:リアス・グレモリー。

 

女王:姫島朱乃

 

戦車:塔城小猫

 

騎士:木場祐斗、ゼノヴィア。

 

僧侶:ギャスパー・クラウディ、アーシア・アルジェント

 

兵士:兵藤一誠

 

 

オカルト研究部顧問:アザゼル




お久しぶりです!


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Life30

夏休み………それは学生にとって至福の期間であり、日々の学業での疲れを癒し

最高学年は迫りくる受験という敵に立ち向かうべく、力を蓄える期間。

そんな期間の初日の朝、僕は何故かベッドの上で動けないでいた。

別に金縛りになったわけじゃない。知ってる?金縛りって体は起きてるけど

頭は寝てる時に起こるんだ……まあ、そんなのは放っておいて…チラッと

隣を見るとその原因が分かった。

両隣のアーシアさんと部長さんが僕に

しっかりと抱きついてホールドしているからです。

それにしても

「良い匂いがする……」

どちらの物かは分からないけど髪の毛からいい匂いが漂ってきて僕の鼻孔を刺激してくる。

それだけで、僕の脳はフワフワ浮いているみたいな感覚になってきた……そんな状況下で

タオルケットの中で何かがモゾモゾと動いている。

確認したいんだけど昨日、一日で夏休みの宿題を終わらせたから眠くて。

「ふふ、おはようございます」

うにゃ~……この声は、朱乃さん?

「とうちゃ~く」

そんな甘い声を出して僕の胸に頬をなすりつけてきた。

「ふふ、鍛えているからか立派な胸板ですわね」

「そ、そうですか~?」

僕はもう眠たすぎます……。

「ふふ、隣でリアスが寝ている中でやるのも……燃えますわね」

する? ……一体何をするの?

そう疑問に感じていると何かが僕に近づいてくる……なんなの?

そう考えていると―――――。

「何をしているのかしら?朱乃」

……寝ぼけ眼でもはっきり見える……部長さんの後ろに憤怒のオーラが見える!

「あらあら、起きてしまいましたわ」

「な・に・をしようとしていたの?」

「ファーストキスをイッセー君に」

いつの間にか先程まで使っていた枕を、部長が全力投球で朱乃さんの顔面に当てた。

朱乃さんの顔から枕が取れると……うわぁ~朱乃さん、若干半泣きだよ。

負けじと朱乃さんも枕を部長に投げつけた!

部長の顔に2連続で枕がぶつけられた。

枕が取れるとその下には満面の笑みの部長。

「いつも朱乃はそうだわ! 私の物ばっかり手を出す!」

「あら、ちょっとくらい良いじゃないの!」

そう言い、2人は枕を投げ合い始めた!

「この家だって改築したばかりだからイッセーと一緒に居たいのよ!」

「サーゼクス様のご意向を無視する気!?」

まくら投げ戦争の始まりだ……ていうか、改築?

そう言えば、妙にベッドが広いし、めちゃくちゃ柔らかい。

というか、なんでまくら投げが出来るほど枕がある訳?

僕は不審に思って眠たいのを我慢して体を起こしてみるとそこに合ったものは

「……な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

ついこの前まで僕が使っていたベッドが何倍も大きいベッドに変わっていた!

周りを見渡すと最新式のテレビや、各種ハードがズラリと並んでいた!

僕は慌てて部屋から出て廊下を見てみると!

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

そりゃあ、もう長すぎると思うくらいの長さの廊下だった。

 

 

 

 

 

「いや~父さんも朝起きてびっくりしたよ!」

いやいや、父さん……びっくりする程度じゃ収まりきらない事だよ。

ひと先ず、2人の戦争を一時休戦させて居間に降りてみると、これまた、

ものすんごい光景になっていた。

一般的な広さだったリビングがもう、どこかのホテルかと思うくらいに広くなっていた。

まあ、ホテルはちょっと言い過ぎか。

食卓には僕と、部長、朱乃さん、両親、ゼノヴィア、アーシアが座っていた。

「リアスさんのお父様が建築関係のお仕事をしているらしくて

モデルハウスの一環でただでリフォームしてくれたのよ!」

母さんは興奮気味にそう言いながらご飯を口に運ぶ。

そんなモデルハウスの話があると思ってるのが凄いよ。

さっき、見てきたけど僕の部屋を挟んでアーシアさんと部長の部屋が位置していて

お互いの部屋を行き来できるように貫通している。

なんか、もう凄いビルになっちゃってるよ。

 

 

 

 

 

 

「冥界に帰られるんですか?」

朝食を終え部屋でまったりしている僕に部長は頷いた。

なんでも、この夏季休暇を利用して部長の実家がある冥界に帰るらしい。

ちなみに皆、ラフな格好だ。

木場君はジーパンに半そで、小猫ちゃんは可愛いワンピース……一番不思議なのが

女の物服を着ているギャスパーくんです。

普段でも女装少年なのね。

「ええ、夏休みだしね。毎年の事なのよ?」

だって、僕、部長の卷属になったのついこの間ですし。

「にしても、冥界か~」

ライザーさんの件で冥界に行ったきりだな~。

「アーシアとゼノヴィアは初めてだったわね」

「はい! まさか生きてる時に冥界に行くだなんて思っても

いませんでした! 死んだつもりで行きたいと思います!」

アーシアさんは目を輝かせてそう言う。

いやいや、僕達悪魔なんだから死んだつもりで行かなくてもいいのに。

「八月の20日くらいまでは向こうで過ごす予定よ。修行とか

その他諸々のやることは向こうでやろうと思っているの」

まあ、家にいてもやることないしね~。

「木場君とかは良いの? デートとかあるんじゃ」

「僕は向こうで修行があるからね」

木場君は笑みを浮かべながらそう言う。

……その気になれば最強の夏休みを過ごせるんだと思うけど。

「ぼ、僕はインドア派なのでイッセー先輩と一緒にビデオみたいです」

あ~あのコレクターズパックね。そう言えばまだ、見終わってなかったからね。

「良いよ、僕もみたいし」

「あら? イッセーとデートしようと思ったのに」

部長は残念そうな表情を浮かべながら僕の腕に抱きついてきた。

デ、デ、デ、デート!? 部、部長と僕がで、デートですか!?

「あ、いや別にずっと見る訳じゃないので!」

「ふふ、じゃあ、あいた時間にしましょうか」

「はい!」

やったー! 人生初のデートを経験できるぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!

「でしたら私はイッセー君と夜を一緒に過ごしますわ」

朱乃さんが僕の空いているもう片方の腕に抱きついてきた。

「だめよ」

「嫌ですわ」

僕をはさんでお姉さまwarが始まった……出来れば止めていただきたいです。

あ、アザゼル先生も到着したみたいだ。

「俺も冥界に行くぜ」

『っ!』

先生の声が聞こえた途端、皆が驚いたような表情を浮かべた。

あり?なんでみんなそんな驚いたような顔をするの?

「あ、アザゼルいつの間に」

部長が目をぱちくりさせながら先生に問う。

「ん? 普通にドアからだぞ?まだまだ修行が足りないな、

赤龍帝は……偶然かは知らないが気づいてたぜ? まあ、最強の

白と互角に戦うことはある」

いやいや、僕なんかまだまだですよ。

「まあ、ともかくだ。冥界に行ってからのスケジュールは現当主に

卷属の紹介をした後に新鋭悪魔の集会、そこから修行だ。俺は

サーゼクスと一緒に会合、あ~めんどくさ。代わりにイッセーしてくれよ」

先生は本当にめんどくさいのか僕にそんな事を言ってきた。

「いやいやいや! 先生の仕事でしょうが!」

こんなめんどくさがりな先生だけど部下の人たちには信頼されているらしく

ほぼ毎日駆王学園に、堕天使さんがやってきて「人間界にいる間のお世話を!」とか

「身辺警護を!」とか言われているらしく全部、命令で返してるみたいだけど。

僕もこの機会にヴァーリを超えるべく、修行をしないとね!

『ま、体には気をつけてな』

勿論だよ!

 

 

 

 

という訳で旅立ちの日、僕たちは何故か最寄りの駅にいました。

部長についていっていたらいつの間にかここについていたんだ。

疑問を抱く僕の先を部長と朱乃さんはなれた様にツカツカと歩いて行って

小さなエレベーターの前で止まった。

「じゃあ、イッセーとゼノヴィア、アーシア達と一緒に

先に降りるわ。優斗達は後で来て頂戴」

「はい」

降りる? ……このエレベーターは確か上にしか行かないよね? 何で降りるなの?

「何してるの、イッセー。早く行くわよ」

「あ、はい」

僕は部長に言われて中に入ると部長はポケットからカードを取り出し、

壁についてある電子パネルに当てるとピッという音が聞こえ、た瞬間!

「うぉ!」

いきなりガクンとエレベーターが下に動きだした。

 

 

 

 

「………何も言えません」

僕らがエレベーターから降りると目の前に広がっている光景は広い空間だった。

それも本当に地下なのか? と思うくらいに広々とした空間だ。

「皆が集まってから3番線に行くわよ」

皆を待つこと一分弱、全員がそろったので三番線ホームに行き、

ベンチに座って電車が来るのを待っていた。

「驚きましたか?イッセー君」

朱乃さんが微笑みながら僕の隣に座ってきた。

「はい!それはもう驚きましたよ!こんな空間があったなんて!」

「それはそうですわ。悪魔専用なんですもの」

そう言って朱乃さんは笑みを浮かべて僕の腕に抱きついてきた。

この前の三大組織に会議が終わったくらいからこうやって朱乃さんはよく、

僕の腕に抱きついてくる。

「………」

「…ぐすっ」

部長の鋭い視線と涙目のアーシアさんの悲哀に満ちた視線が僕を貫いていた。

うぅ、部長とアーシアさんの鋭い視線がチクチクしてくるよ。

そうこうしているうちに列車がやってきた。

僕たちはそれに乗り冥界へと出発した。




こんばんわ! お久しぶりです!
ようやく公募制推薦も終わり後は合否の発表を待つのみ!
てな訳で息抜きとして一時再開します!


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Life31 リアルプリンスさんとの邂逅です!

走り出して数分、列車は暗がりの道を進み冥界へと向かっている。

動力は冥界独特の燃料らしいね。

この世界にはまだ知らないことがいっぱいるから楽しいんだよね!

「でも、魔法陣で飛んでそれっきりだと思ってましたけど」

「本来はそれでもいいのですがイッセー君達、新人さん達は一度、

正規ルートで入国しないと違法入国として罰せられるんですの」

……あ、あれ? ちょっと待って。そうしたら

僕、一回違法入国しちゃってるよね?

ほら、部長の婚約会場にバビュンと魔法陣で……

もしかして、向こうに行ったらすぐに監獄行き!?

そんな心配をしていると朱乃さんが優しく微笑みながら僕に言った。

「イッセー君が前に魔法陣で行ったのはサーゼクス様の

裏技ですから特例中の特例ですの」

よ、よかった~。あっちに行って監獄行きなんて御免だよ。

「それにしてもイッセー君の手は柔らかいですね」

そう言って朱乃さんは僕の手をフニフニしてくる。

まあ、昔からよく言われてますよ。

母さんからは苦労していない手、父さんからは女の子の様な手だって云われるもん。

「……あ、あの朱乃さん?」

手をフニフニするのを止めたかと思うと今度は頬にスリスリしてきた。

それに何だか、朱乃さんの顔が徐々に赤くなって暖かくなっていくのが

皮膚から伝わってきた。

「ふふ、可愛い手ですわ。でも、この手に私は護られてる」

「朱乃? 貴方一体何をしてるの」

……髪の毛を怒りで棚引かせている部長がいつの間にか隣にいました。

あ、相変わらず怒ると怖いです。

「あら、スキンシップですわ。主から奪うのも燃えますわ」

「朱乃、いい加減に――――――」

「リアス姫。下僕とのコミュニケーションも

よろしいですが例の手続きはよろしいのですか?」

部長の怒りをさえぎって第三者がひょっこりと現れた。

ん~服装から見るにこの列車の車掌さんかな?

新人悪魔の僕たちは車掌さんが持っていた機械で情報を読み取って

あとは皆と駄弁っていた。

 

 

 

 

 

 

「コール! ロイヤルストレートフラッシュ!」

「うぅ、イッセーさん強すぎます」

列車に揺られること40分、僕はゼノヴィアとアーシアさんとでポーカーをしていた。

ちなみに、僕は30回ほどやってほぼ全部を勝っている。

「イッセー、そろそろ着くわよ」

「あ、はい」

部長に言われてトランプを片づけていると列車の速度が緩くなってガクンと前のめりになった。

あ、もしかして着いたのかな?

「みんな、降りるわよ」

僕たちは荷物を持って列車から降りる、駅のホームに降りた瞬間―――――

『リアスお嬢様! お帰りなさいませ!』

銃を持った兵たちが空に向かって発砲して楽隊が音楽を奏で始めた。

……やっぱり、どこかのお譲様はすごい待遇なんだね。

「お帰りなさいませ、お嬢様」

「ただいま、グレイフィア」

一列に並んでいる召使たちの中からグレイフィアさんがこっちに歩いてきた。

「馬車を用意しております。こちらへ」

グレイフィアさんの案内で部長、僕、アーシアさんで一台の馬車に乗って

残りのメンバーは適当に馬車に乗って部長のお家へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

馬車に揺られること、数分、巨大な城の前で馬車は停まった。

「さ、降りるわよ」

部長に言われて馬車から降りてすぐ、目の前にズラーっと横一列に

並んだ召使さん達が見えた。

そして、その奥にはお城と言っても言いすぎではないくらいに

大きな家が建っていた。

『お帰りなさいませ! リアスお嬢様!』

「ただいま、皆」

……なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁ!

こ、このでっかいお城が部長のお家で、目の前にズラーっと並んでいる

執事さんやメイドさん達、皆、部長のお家の召使さん!?

なんて規模の大きいお家なんだ。

その並んでいる列から一人の男の子が出てきて部長に近寄って来た。

「お帰りなさい! リアス姉様!」

「ただいま! ミリキャス!」

そう言って部長も愛おしそうに頬ずりをして抱きしめる。

「ぶ、部長? この子は」

「あ、ごめんなさい。この子は兄様の息子のミリキャスよ。

私の甥にあたるわ。ミリキャス、自己紹介して」

「はい! こんにちわ! ミリキャス・グレモリーです」

「あ、兵藤一誠です」

思わず敬語で接しちゃったけど……本物のプリンスが僕の目の前にいる!

ていうかサーゼクス様って子供さんいたんだ!

そう思っていると急にミリキャス様が僕に抱きついてきた。

「ん?」

「赤龍帝様! 僕、貴方の大ファンなんです!」

……魔王様の息子が僕のファンって…ま、まあ悪い気はしないけど。

『現金な奴め』

 

 

 

 

 

 

まあ、そんな感じで玄関で度肝を抜かれた僕だけど家に入るとさらに、

度肝を――――――いや、体全身を射抜かれたといってもおかしくないくらいの衝撃を受けた。

「ど、どこの国の王様の家だよ」

思わずそう言ってしまうほど豪華な家だった。

天井にはいくつものシャンデリアが付いてあり、床は大理石みたいに高価な

物を使用しているのか僕たちの姿が反射してみる。

それに、大変高価そうな絵が壁にずらりと並べられている。

「すぐにお部屋はお使えになられますが、どうなさいますか?」

グレイフィアさんが手を挙げると壁際で待機していたメイドさん達が

一歩、前に出てきた。

おぉ! 流石はグレイフィアさん!

「先に、お母様に挨拶をしたいわね」

「旦那様はただいま、外出中でございます。夕宴の際がよろしいかと」

「そうね、今は部屋で」

「あら、帰ってたのね、リアス」

部長の話をさえぎって聞こえてきた、綺麗な声。

僕はその方向に視線を向けるとそこには綺麗なドレスを着て、部長を

亜麻色の髪にしたverの女性が立っていた。

「お母様」

僕はその一言を聞いて驚いてしまった!

ま、まじで!? どう見ても僕らと同年代にしか見えないよ!

「あら、リアス。その方が兵藤一誠君ね」

「ぼ、僕の事ご存知なのですか?」

「勿論ですわ。あれほど、派手な婚約パーティーを忘れるはずがありませんもの」

うぅ、その節はご迷惑をおかけしました。

ビビる僕に部長のお母様は二コっと笑った。

「私はリアスの母、ヴェネラナ・グレモリーですわ。よろしくね、兵藤一誠君」

「は、はい!」

どこかやさしい雰囲気も感じ、厳しい雰囲気も感じられる人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「せ、赤龍帝様!」

「はい?」

突然、廊下を歩いていると後ろからミリキャス様に話しかけられた。

「あ、あのもしよろしかったらお話をよろしいですか?」

「ええ、どうぞ」

という訳で僕は僕ように充てられためちゃくちゃ広い部屋に入りボフンボフンする

ベッドの上にミリキャス様と一緒に座った。

「それで、何から話をすればよろいいでしょうか?」

「え、えっとひと先ず赤龍帝様のお名前が知りたいです!」

という訳で僕は順に名前、誕生日なんかを言っていって後は今まで戦って

きた時の気持ちだとかお話した。

魔王様の子供だからと考えてたけど話をしてみると年相応の男の子だった。




こんにちわ! 無事に合格を手にしたKueが舞い戻って来ましたよ!
ですのでこちらで掲載させて頂いている二次創作は以前同様、土日更新で行きます!
それでは!


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Life32 若手悪魔の集まりです!

「お、美味しい」

今、僕はあまりの美味しさに感動しています!

あれから、数時間くらいして部長のお父様が帰ってきてから夕食が始まった。

僕の目の前には絶対に食べきれないだろうというくらいの量の

食事が用意されています。

「あらイッセー。どこかで食べ方でも学んだの?」

「ええ、必要ないかなって思ってたんですけどまさかここで役立つとは」

ゼノヴィアさんとアーシアさんもぎこちないけど様になってるし部長や

朱乃さん、木場君なんかめちゃくちゃ優雅に食べてる。

一方、ギャスパーくんにいたっては涙目になって食べてる。

まあ、来る時もそうだけどここは悪魔が多いからひきこもりにとってはつらいよね。

「リアスの下僕の諸君、ここを我が家だと思ってゆっくりしていきたまえ」

部長のお父様は朗らかに笑いながらそう言うけど……正直思えないよ。

いやね、僕たちの住んでいる次元とは明らかに違うから緊張が取れないんだよ。

「ところで兵藤一誠君」

「は、はい! なんでしょうか!」

突然、名前を呼ばれて僕はかなりビビってしまった。

「ご両親はいかがかな?」

「あ、はい。もう元気すぎて困るくらいです」

「そうか、それは良かった」

朗らかに笑う部長のお父様。

父さんと母さんも授業参観で会って以来、また会いたいって言ってるし。

「兵藤一誠君」

「は、はい!」

再び、部長のお父様に呼ばれた。

な、なんでこうも僕は連続で呼ばれるんだ?

「今日から私の事をお義父さんと呼んでも良い」

………呼んだら、どこからかナイフが飛んで来そうな予感ですよ。

「貴方、それは早急すぎますわ。物事には順番がありますもの」

部長のお母様は旦那さんにそう言いながらも、その顔は

まんざらではないような表情をしていた。

「うむ、知っているのだが赤と紅なのだ」

赤と紅? ……もしかして僕の鎧と部長の髪色の事かな?

「一誠さんでよろしいですか?」

「あ、はい」

続けて、部長のお母様に呼ばれた。

呼ばれただけでこんなに、緊張しているのは説教される前に

名前を呼ばれる時、以来だ。

「一誠さんにはここに滞在している間、社交界におけるマナーや

紳士的な振る舞いなどを学んでもらいます」

部長のお母様がそう言った瞬間、

突然、テーブルを叩く音が聞こえ、音がした方向を向くと

部長が怒った様子で立っていた。

「お父様! お母様! 先程から私を置いて話を進めるのはどういうことでしょうか!?」

部長はテーブルを叩いて立ち上がり、異議を申し立てるがヴェネラナさんが目を細めた。

その顔には僕たちを快く迎えてくれた顔はなく母親としての

威厳が見える表情だった。

「お黙りなさい、リアス。貴方は一度フェニックス・ライザーとの婚約を

破棄しているのよ? それを許しただけでも破格の待遇と思いなさい。

お父様とサーゼクスがどれだけねまわしたと思っているの? 一部の貴族には

『我がまま娘が伝説のドラゴンを使って婚約を破棄した』とまで言われてるのよ?」

……僕がやったことって部長に迷惑かけてたんだ。

本当にあれでよかったのかな? やっぱり、人間から転生した下級悪魔の僕が邪魔をしていい、

物じゃなかったのかな?

「私はお兄様とは」

「サーゼクスとは関係ないとでも言うの? 確かに表向きはそう

なのだろうけども三大勢力が協力体制となった今、他の組織の末端にも

貴方の名前は知れ渡っている筈だわ。甘えた考えは捨てなさい」

そう言いヴェネラナさんは部長をバッサリと切り捨てた。

部長は何も言えぬまま椅子に座りなおした。

「皆さんお見苦しいところを申し訳ありませんわ。そう言う訳ですので

兵藤さんには滞在期間中、いろんなことを学んでいただきます」

「あ、あの」

「なんでしょうか」

「ア、アイスってあります?」

 

 

 

「うんめぇぇぇぇぇぇぇぇ! 冥界のアイスも美味しい!

このちょうどいい甘さ、冷たさ、そして硬すぎず

柔らかすぎず、程よい触感! もうたまんねえぇぇぇぇぇぇぇ!」

『………』

皆、何故か僕がアイスを食べているところを見てあ然としている。

あの部長の両親でさえ、驚きを隠せないでいた。

何でだろうね。

「イ、イッセーくん。も、もうよした方が」

木場君が僕の食べたアイスの量を見たのか僕にそう言ってくる。

「あ~そうだね。腹八部にしとかないと」

「……それでも八部なんだ」

木場君のそんなつぶやきが聞こえたり聞こえなかったり。

 

 

 

 

 

 

「つまり上級悪魔にとって社交界とは」

部長のご自宅に着いたその翌日から僕の勉強会は始まった。

悪魔の言葉から社交界、そして冥界の歴史……まあここまでは分かる。

僕も部長という上級悪魔に仕えてるのだから悪魔について知っておくことは必要

なのは分かるけど……何故グレモリー家の歴史まで学ぶ必要があるの?

「若様、どうか致しましたか?」

僕の教師役の悪魔さんが講義を中断して僕に話しかけてくる。

「あ、あのさっきからなんで僕は『若様』なんですか?」

「……さてグレモリー家の歴史の続きにまいりましょう」

あ、またはぐらかされた。

はぁ~、真新しいことを学ぶのは苦痛じゃないから良いんだけどさ。

それに隣にはミリキャス様もご一緒に勉強なされてるから僕もやる。

そう思い直したときに、ドアが開けられて入ってきたのは部長さんのお母さまだった。

「おばあさま!」

あ、そっか。ミリキャス様からすればおばあちゃんになっちゃうわけだ。

まあ、見た目はおばあちゃんじゃないけど……一体何年

「ひぃっ!」

突然、僕の頬にギリギリのところを万年筆が飛んで行ってドスっと

壁に突き刺さった。

「ふふふ、イッセーさん。今失礼な事を考えていなかったですか?」

僕は首が飛ぶんじゃないかと思うくらいの速度で左右に首を振った。

一瞬、殺気を見せた部長のお母様だけど僕の勉強ノートを見ると

一気に表情を優しいものに変えた。

「まあ、イッセーさんは勉学は得意で?」

「ん~とまあ、そこそこは」

「それにしては悪魔の文字がお上手ですわね。やはりサーゼクスや

グレイフィアの報告通り、一度言ったことは完璧に理解なされるのですね」

……正直僕はそんなこと思ってない。

「もう直リアスが帰ってきますわ。魔王領で恒例のしきたりがありますの」

 

 

 

 

 

 

部長が帰って来てから僕たち、グレモリー卷属は恒例のしきたりとされている

新人悪魔の集会会場へ向かっていた。

周りには人、人、人……じゃなかった。悪魔、悪魔、悪魔。

み~んな悪魔の方々だけど集まってきている。

「きゃぁぁぁぁぁぁ! リアス姫様ぁぁぁぁぁ!」

ひと目でも部長さんを見ようとものすんごい数の悪魔さんが来て黄色い声援を送っている

女性悪魔や、朱乃さんのファンの男性悪魔などが周りにたくさんいた。

「リアスの下僕になりたい悪魔はたくさんいますの」

そっか……僕もあの人たちの分まで頑張らないと。

そう言う訳で周りの人の黄色い声援を受けながら、

専用の地下鉄みたいなものに乗って揺られること5分、僕たちは集会が

行われる会場の超豪華なホテルに辿り着いた。

流石に部長のお家で耐性がついたのかそんなに驚かなかった。

そのホテルへと入り、会場がある階へと向かうエレベーターに

乗っている最中に部長がこんな事を言い出した。

「いい皆? これから何が起こっても平常心を保ち何もしないこと。

相手は将来の私たちのライバルよ、無様な格好は見せられない」

そうだよね……今から会う方々は将来ゲームで戦うかもしれない相手。

今この場で暴れたら部長の評価が下がっちゃうしね。

「ところでアイスはありますか?」

この一言で重い空気が一瞬で消えさって笑い声に変わった。

「ふふ、ええ。たくさんあるわよ」

 

 

 

 

 

 

 

「アイスゥ!」

「あ、イッセー!」

イッセーくんはエレベーターのドアが開いた途端に会場に向かっていった。

本当にイッセーくんはアイスに目がないんだね。

エレベータを降りて歩いていると向こうに複数の人影が見えた。

「サイラオーグ!」

部長はそう叫ぶと小走りで向かっていった。

「久しぶりだなリアス」

部長の声に振り向いた男性は僕よりも、何倍もの大きさの体格をして、

ワイルドさを感じさせる男性だった。

「ええ、久しぶりね。紹介するわ、彼は

サイラオーグ・バアル、私の母方の従兄弟よ」

「サイラオーグ・バアルだ」

バアル家と言えば大王家。

確か家柄では最上級に位置する家の筈だ。

「こんな通路で何をしてたの?」

「……くだらんから出てきただけだ」

サイラオーグさんはため息をつきながら部長にそう言う。

「くだらない? いったい」

突然、僕達を押しつぶすほどの魔力を感じ、皆が警戒心を最大にまで引き上げた。

……でも、この魔力は。

「まさか!」

部長は血相を変えて会場の扉を開けるとそこには今にも

飛びかかりそうなイッセーくんの姿があった。




こんばんわ!


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Life33 僕の夢です!

「アイス♪ アイス♪」

僕はルンルン気分で会場の扉を開けるとまあ、それは悲惨な状態だった。

テーブルはバキバキに粉砕され椅子はグチャグチャに砕け散っていて、

部屋の中央辺りで二人の悪魔がいがみあっていた。

一人は上品で綺麗な女性で、もう一人は体にタトゥーが

たくさんあって、高級そうな金ピカの装飾品を沢山つけている。

ライザーさんを思い出させる風貌の男性だった。

「ゼファードル、こんな所で意味のない戦いは止めては?」

「はっ! 言ってろよくそアマ、俺が個室で

一発仕込んでやるっつうのによ! これだから今でも処女なんだよ!」

あわわわわわ! 止めないと!

僕は慌てて二人の仲裁に入った。

「ストップ! こんな所で戦いなんてやめましょうよ」

「貴方誰よ。どっかいきなさい」

女性は僕の方に視線すら向けずに男性の方を睨む。

うぅ、結構冷たい人だな。

「あ、お前……あ! お前もしかして赤龍帝か」

「え、ええ」

そう言った途端にチャラい男を含めた、卷族らしき

人達全員が僕を指さしながら腹を抱えて大笑いをし始めた。

「これはけったいな話だ! 今俺の下僕達と賭けてたんだよ!

ゲームで自分の魔力すら操作できずに自滅した悪魔のクズが

こんなところに来るか来ないかってな!」

まあ、悪魔が自分の魔力を暴走させるなんて聞いたこともない話し

らしいですからね。部長も驚いていましたよ。

今ここで転生悪魔だからって言っても言い訳にしか過ぎない……ここは、

我慢しよう。

「そうですね。でも、そんなことよりもこんなところで戦い始めたら

そっちの方が悪魔にとっていけないことではないんですか?」

「けっ!」

チャラい風貌をした男性は鬱陶しそうにそう言い、女性の方は

化粧直しにでも行くのか部屋から出て行った。

あ~あ、せっかくのアイスが台無しだよ。

僕が床に毀れているアイスを片付けようと手を伸ばそうとしたとき、僕の腕を

ふんづけてくる足があった。

「なんですか?」

「今、俺はイライラしてんだよ。ちょうど良いからお前でストレス発散させろよ」

僕はサンドバックですか……第一、なんでぼくなんかが。

「嫌ですよ。こんなところで戦いません」

「闘いませんじゃなくて闘えませんだろ? かははははははははは!」

……今の言葉はいくら僕でも怒るよ。

僕はチャラい男の足を思いっきり握って、無理やり退かせた。

「あ? やんのかよ」

『止めとけ、相棒。安い兆発だ』

頭にドライグの声が聞こえてきて、さっきまで沸騰しそうだった

全身の血液が一気に冷めていった。

僕は一回、深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。

危ない危ない……部長との約束を破っちゃいそうだったよ。

僕はホッとしながらそのまま会場から出ようとした瞬間

「お前みたいな奴を下僕にした奴の顔が見たいよ。あっ!

グレモリー家の次期当主だったか? あははははははは!

まったく! 堕ちたものだな! 魔王を輩出した家がよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ? やんのかよてめえ」

『Boost!』

「さっきの言葉、撤回してください」

僕は龍の腕を伸ばし、辺りの物を目についたものから潰していき

ながら籠手を呼び出し倍加をかけた。

「はっ! そんな化け物みたいな腕で

脅してるつもりか? 甘いんだよ、お坊ちゃん」

『Boost!』

2回目の倍加がされた瞬間、目の前の人物の表情が絶望色に染まった。

「もう一度言います…………さっきの言葉を撤回してください」

「な、何なんだよその魔力は。何なんだよ! お前は転生悪魔なんだろ!?

なんで家柄がいい俺よりも魔力が多いんだよ!」

男性は僕の魔力に驚きを隠せずにいた。

このまま……このまま僕の魔力の多さに驚いてくれて、部長が来てくれるのを待とう。

「イッセー!」

その時、部長の声が聞こえ、僕はすぐさまセイグリッドギアを消して

さっきまでの倍加した魔力を元に戻した。

ふぅ……なんとか、部長の迷惑にならずに済んだ。

「はっ! 何もできねえ屑は死ね!」

僕が部長のもとへと戻ろうとした瞬間!

男性の声が聞こえ、後ろから大質量の魔力弾が迫ってきた!

やっば! 避けきれない!

「イッセー!」

部長は僕のもとに走ろうとして来る。

木場君とゼノヴィアさんもナイトの高速移動でこっちに

来るけどこの距離では間に合わないと一瞬で分かった。

僕は今にも直撃しそうな攻撃に目をつむって耐えようとする。

「すまないな、赤龍帝」

声が聞こえてきたので、目を開けると目の前に体格がよくて

野性を感じさせる男性が立っていた。

先程まで、僕を殺そうとしていた魔力弾は跡形もなく消え去っていた。

「イッセー! イッセー!」

部長は泣きながら僕に抱きついて離れようとしなかった。

「ゼファードル、貴様は上級悪魔のプライドもない屑だったのか」

「あ!? 無能が調子乗ってんじゃ」

目の前の男性に殴られたゼファードルって言う男の人が壁にぶつかって

ずるずると床に落ちた。

卷族が慌てて確認しに行くが既に気を失っていた。

「やれやれ、だからこんな会などやらずに早々と始めればいいものを」

男性は呆れながらそう呟くとスタッフを連れて来て、この部屋の

修復を命じた。

 

 

 

 

 

 

 

「私はシークヴァイラ・アガレス。大公、アガレス家の次期当主です」

あれから駆け付けたスタッフの魔力によって部屋は戻されて

軽い自己紹介が始まった。

「ごきげんよう、グレモリー家次期当主、リアス・グレモリーです」

部長はちょっと鼻声だけどいつもの部長に戻っていた。

会長、そしてさっきのサイラオーグさんが自己紹介をし終えた

ちょうどいいころに呼び出しが喰らった。

 

 

 

 

 

 

 

僕達が通された部屋は異様な雰囲気を醸し出している部屋だった。

一番高い所にお偉いさんが座っていて、その一段下に魔王様方が座られていた。

「君達六人は家柄、実力とともに申し分ない悪魔たちだ。

互いに互いを高め合い強くなって言って欲しい」

そこからそれぞれの魔王様方が僕達新人悪魔にコメントを言っていき、

魔王様達の一段上に座っている数人のお偉いさん達が各々のコメントを

言っていった。

「では、君たちの目標を言ってもらおうかな」

全員からコメントを貰うとサーゼクス様がそう言われ、次期当主人たちの目標が語られた。

魔王になる、平等な学校を作るなどなど色々な目標があった。

全員が言い終わるとサーゼクス様は少し困ったような顔をした。

「ん~時間が余ってしまったな」

「だったらだったら! 下僕ちゃん達の代表にも

目標を言ってもらおうよサーゼクスちゃん!」

……レヴィアタン様、せめて公の場くらいは普通にすればどうでしょうか。

会長は恥ずかしそうにうつむいてますよ。

「うむ、それは良いね。それでよろしいですか?」

レヴィアタン様の提案にサーゼクス様も良いと思ったのか

お偉いさんに断りを入れてからそれぞれの下僕の代表に目標を言っていくした。

まあ、ほとんどが女王さんだったんだけどね。

そして僕たちの番になって朱乃さんが立とうとした時。

「赤龍帝よ、貴様が話せ」

一人のひげたっぷりのおえらい様が僕を指名してきた。

ま、まじすかぁぁぁぁ!?

皆を見ると『イケイケ!』みたいな目をしてたし、サーゼクス様も

僕を見ていたから思いきって立った。

……のは良いんだけど頭が真っ白になって何も話せない。

お偉いさん達、魔王様方、そしてほかの新人悪魔たちの視線が僕に集中していた。

僕に目標なんか……。

そんな事を思っていると部長と目があった。

それはほんの一瞬だったけど、その一瞬で僕は目標ができた。

「……最強」

「ん?もう一度言ってくれないかい? 赤龍帝」

「最強……ですよ」

「ほう」

サーゼクス様は驚いたように小さく息をはいた。

「僕は最強になります。リアス様の目標のために、

僕が最強になって向かってくる奴らをすべて倒す」

「つまりそれは魔王も倒すという事かな?」

サーゼクス様は面白いものを見ているかのような表情で僕にそう言ってきた。

「ええ、僕が最強になる道に立つ者は全て倒す! それが目標です!」

それを言いきって座った……ところまでは記憶があるんだけど……後はほとんどない。




こんばんわ


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Life34 特訓です!

「ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」

アザゼル先生はお湯をバシャバシャ叩きながら大笑いしていた。

集会から帰ってきた僕たちは今、グレモリー家私有温泉に入っています。

「ひぃ! ひぃぃぃ! 腹が割れる!」

わ、笑いすぎだよぉぉぉ!

僕は心の中でおお泣きして現実ではお湯に鼻と目を出して後は

ブクブク言わせながら沈ませていた。

こうしないとどうにかなりそうだから。

「せ、先生。笑いすぎですよ」

木場君が止めに入るも先生は笑う事を止めようとはしなかった。

「いや~悪い悪い。魔王に喧嘩売る奴なんか初めてだからよ!

つい、ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」

「うぅぅぅぅぅ! 言わなきゃよかった!」

「それは違うぜ」

僕の言ったことにいきなり真面目モードに入った先生が異議を立ててきた。

「お前の目標はそれで良いんだよ。ていうかそれしかねえんだよ。

良いか? お前の強さはどの組織の奴らも認めるほどだ。そんな奴が

最強を目指さないでどうする」

「そ、そこまで僕は」

僕の反論にアザゼル先生はさらに続ける。

「強いんだよ、お前は。ライザー然り、コカビエル然り、ヴァーリ然り。

こいつらは上から数えた方が早いくらいに強い奴らだ。

それを倒す、または互角に戦ってんだ。もっと自信もて」

――――――――これが男子風呂でのお話。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――続いて女子風呂のお話。

……皆さん私――――小猫、よりも胸大きいです。

今、私達は温泉に入ってるのですが……正直一緒にいるのがつらいです。

私の視線にはメロンサイズのおっぱいが揺れていました。

何を食べたらあんなに大きな実が二つも実るのでしょうか。

「ねえ、アーシア」

「はい? 何ですか部長さん」

「あの時のイッセーどうだったかしら?」

「はぅぅぅぅぅぅぅ~」

部長のその言葉にアーシア先輩は顔を真っ赤にしました。

「ふふふ、アーシアさんは正直ですわね。あの時のイッセーくん、

いつもとは違って男らしかったですわ」

朱乃さんも頬を少し赤くして、笑みを浮かべていた。

そこにいる先輩は普段の先輩じゃなくて、年相応な女の子でした。

「流石はイッセーだ。私の子供を産む男だけはある」

こんなふうにいつもゼノヴィア先輩は言ってます。

なんでも悪魔になって信徒時代の制約もなくなったから女の幸せが

欲しいと言い出して何故か子供を、しかもイッセーさんとの

子供を産むという結論に至ったみたいです。

「ふふ、残念だけどイッセーの子供を産むのは私よ、

ゼノヴィア。イッセーは私のものなんだから」

……もうこんな甘ったるい空間にいたくありません。

そう言うことで私は一足先にお風呂から上がって着替えて

出るとちょうど噂の兵藤先輩に遭遇しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、小猫ちゃんも今上がったの?」

「……はい」

……あれ? 今なんかいつもよりも間隔が長くなかった?

いつもなら『……はい』なのに今日は長かった。

「あ、良かったらちょっと外で涼みに行かない?」

「………結構です」

うわーん! さっきよりも長くなったよー!

「え、えっと何か怒ってる?」

「……………………………別に」

小猫ちゃんは先ほどよりも長い間隔を開けて僕の誘いを断った。

うわーん! とうとう某女優さんみたいに振られちゃったよ――――――!

 

 

 

 

 

 

 

次の日の翌朝、全員庭に呼び出されていた。

そこにはジャージ姿で椅子に座っていろいろな資料を見ているアザゼル先生がいた。

「今から俺が言うトレーニングメニューは将来を見据えたメニューだ。

すぐに効果が出る奴もいれば長期的に見ないと出てこない奴もいる。まずはリアスからだ」

先生が初めに呼んだのは部長だった。

「お前は最初から魔力、身体能力、才能。全て高スペックの悪魔だ。

このまま普通に暮らしていてもお前は将来最上級悪魔の候補になるが

将来よりも今強くなりたい、それがお前の望みだな?」

「ええ、もう二度と負けたくないもの」

部長は強くうなづいた。

「ならこのメニューをやれ」

先生は部長に一枚の紙を渡した。

そんな感じでそれぞれにメニューが書かれた紙を渡していったんだけど

………僕は?

僕だけ最後になっても紙すらくれなかった。

「最後はイッセーだが……ああ、来た来た」

先生が空を見上げたのにつられて僕も空を見上げると雲ひとつない

快晴の空に、小さな点があった。

……何あれ?

そんな事を思っていると徐々に、小さな点が大きくなっていく。

そして凄まじい地響きを響かせながら、巨大な存在が僕の目の前に降り立った。

「ド、ドラゴン!?」

「そうだ、ドラゴンだ」

空から地面に落ちてきた点はとっても大きなドラゴンだった。

しかもめちゃくちゃ強そう。

「よくもまあ悪魔領に堂々と入ってこれたものだなアザゼル」

「サーゼクスにはお呼ばれしてきたんだぜ? タンニーン」

先生が言った目の前のドラゴンの名前に僕は聞き覚えがあった。

タンニーン……ってあのタンニーン!?

「も、もしかして元六大龍王のうちの一人だったタンニーンさん!?」

「ああ、そうだ。何だガキ俺を知ってるのか」

僕がそう言うと巨大な目がギョロッと動いて僕の方を見てきた。

『久しいな、タンニーン』

元龍王とあってドライグも懐かしそうな声を出した。

「……気のせいか? 俺は今こいつからドライグの声が聞こえてきたんだが」

籠手が勝手に現れてタンニーンさんに聞こえるように話しかけるが

タンニーンさんはキョロキョロと辺りを見回していた。

「気のせいじゃねえよタンニーン。こいつが今の赤龍帝だ。

そしてこいつがイッセー、お前の先生だ」

タンニーンさんは、僕が赤龍帝であることに驚き、僕は元龍王が

鍛錬の先生であることに驚きを隠せないでいた。

……マジでかぁぁぁぁぁぁぁぁ!?

一瞬、何故か浮遊感を感じた。

「リアス嬢、あそこに見える山を借りる」

上から野太い声が聞こえ、見上げるとそこにはとても大きな口があった。

―――――――あ、僕今口に咥えられてるんだ。

ようやく、その事実に気づくことができた。

「ええ、イッセー! 頑張ってきなさい!」

部長は笑顔で親指を立てた。

「い、嫌だぁぁぁ!」

「ええい! 少し黙っていろ!」

こうして僕はドラゴンに連れられて山ごもりの特訓が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

皆は特撮の番組を見たことがあるかな?

大きな怪獣が町を放射熱線や溶解液で破壊しながら進んでいくよね?

まあ、これは特撮って言ってるんだから特別な方法で撮影してるわけ。

今僕はそれを……実際に体験しています。

「嫌だぁぁぁぁぁぁ! 死にたくなぁぁぁぁい!」

僕は泣きながらタンニーンさんが吐いた巨大な火球を避けると地面に

巨大な穴が開いた。

「こら、避けるな! アザゼルからは俺と戦えと言われてるだろうが!」

「こんなの勝てる筈がなぁぁぁぁい!」

僕はいつものように魔力を足に流し込んで、高速で移動して大きな岩に

隠れて息を殺し、身を潜めてタンニーンさんが過ぎるのを待つ。

「ふぅ~あっち行った」

もう嫌だよぉぉぉぉ~。

ここ数日、タンニーンさんと闘ってるけど勝てる訳もないから僕はずっと逃げまどってる。

もう涙もでまくりで目が腫れて痛い。

「うぅ~嫌だ、なんで僕だけがこんな目うわぁ!」

突然、大きな岩が砕け散ってタンニーンさんが見えた。

「隠れんぼはお終いか?」

目の前にタンニーンさんの大きな口が見えてぱっくり開くと炎が集まってきた。

「※※tauhemnrkeiytrw!」

僕はそんな奇声をあげて気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

「あう?」

「起きたか」

僕が目を覚まして、体を起こすと目の前に巨大な口があった。

「ひぃぃ!」

「もう止めだ」

僕が恐怖で震えているのを見ながらタンニーンさんは残念そうな声を上げた。

え?もう止めって

「お前と闘っていても時間の無駄だ。アザゼルはお前に

期待しているようだが……どうやらあいつの思い込みらしい」

そう言って目を閉じて大きないびきをかいて寝始めた。

止めか……。

僕は憂鬱になりながらもその日は寝た。

 

 

 

 

 

 

 

「眠ったか……出て来い、アザゼル」

「ん~ばれてたか」

俺はタンニーンに言われて岩から出て、眠っているイッセーの近くに座った。

しかし、よくこの状況で安心して寝れるもんだ。

いつタンニーンが襲ってくるかも分からないのによ。

「アザゼル、俺は正直こいつには失望したぞ。お前は

こいつの何をそこまで評価しているんだ」

「ん? まあ、強いて言うならば可能性かな?」

タンニーンは俺の言っている事に驚いたような表情をしていた。

はっ! まさかこの俺がこんな事を言うなんてな。

正直俺もこいつの何に期待しているのかも分からない、

でもこいつは誰かに惹かれるものを持っている。

「可能性か……まさか、お前にそう言わせるとわな」

俺は眠っているイッセーの頭を撫でながらタンニーンとの会話をつづけていく。

「こいつは既に異常だ。ヴァーリと同じ域にある。だが、完全に

力を出し切れていない。異様なまでの恐怖心がこいつを邪魔している」

「恐怖心……ふん、そんな物ねじふせればいいものを」

「出来る奴と出来ない奴がいる。こいつは後者だ。ま、根気よく

修行してやってくれや。こいつは化けるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

夢を見ていた。

いつも通り、エルシャさんとの夢。

「だいぶ強くなったわね、イッセー」

「………」

エルシャさんはニコニコ笑いながら僕の頭を撫でて、

そう言うけど僕は俯いたまま何も言えなかった。

「ん? どうかしたの? イッセー」

「……僕は強くなんかありませんよ。相手の攻撃が怖くて

攻撃すらできない赤龍帝なんてどこにいるんですか」

「………」

僕の言う事にエルシャさんは何も言えずにいた。

隣にはドライグもいるけど彼も困っている。

「まあ、イッセーは怖がりすぎなのよ。自分に自信を持ちなさい」

エルシャさんは僕の頭を撫でてそう言うけど、僕は僕自身に自信なんて持てない。

そんな感じで数分くらいダンマリをしているとエルシャさんがこう言い始めた。

「貴方の護りたいものは何?」

え? 僕の護りたいもの………。

「護りたいものを護るには力、強さがいるわ。

それでもあなたは最強になる気なの?イッセー」

今日はその言葉を最後に夢が途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

「起きたか」

僕が体を起こすとすでに起きていたタンニーンさんが目の前にいた。

「……タンニーンさん、もう一回だけ特訓に付き合って下さい!」

僕は覚悟を決めてタンニーンさんに頭を下げてそう言うとタンニーンさんは

大きな翼を広げ、立ちあがった。

「……いいだろう。ここから先は泣くなよ!」

「はい!」

僕は籠手を出し、目の前の大きなドラゴンに戦いを挑んでいった。




おはようございます!


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Life35 黒猫さんです!

無事にアザゼル先生が提示してきた鍛錬も終了し、僕たちは鍛錬が終了した日から

数日の休暇を過ごしたある日の夕刻、

僕は学園の夏服を着てグレモリー家本邸の客間で待機していた。

女性陣は準備がかかるという事でこの場にはいなくて

木場君とギャスパーくんも用事があるとか言ってどっかに行っちゃいました。

「にしても冥界のアイスは美味しいな~」

僕がアイスを堪能していると聞きなれた声が後ろから聞こえてきた。

「よ、兵藤」

「あ、匙君」

そこには同じく夏服を着た匙君の姿があった。

匙君もところどころ包帯を巻いていて修行したんだと一瞬で分かった。

「俺、鍛えたんだぜ?」

「僕は毎日ドラゴンに後ろから火を吹かれて逃げたり

真正面から火球を受け止めたり、戦いすぎて山で落石が起きて

その落石を止めたりとかしてたよ。あ、あと」

「分かった。お前は相変わらずハードな生活をしているのは分かった」

匙君は驚きの表情を浮かべて、少し冷や汗をかきながら僕の話を中断した。

やっぱり僕の修行は他と比べてアブノーマルな物らしい。

まだ、続きがあったのに。

「ん~美味しい。食べる?」

「いや、良いよ」

僕は余っているアイスを匙君に勧めるけど匙君はそれを、断って

ボーっとどこかを見ていた。

「そう言えば匙くんって会長さんが好きなの?」

「げほっ!」

突然、僕が言ったことに匙君は咽ながら僕の方に顔を向け少し、考えるように腕をくんだ。

「な、なんで」

「いやね。君が会長の顔を見ているときの表情ってなんか……普段と違うから

そうなのかな~って思っちゃって。違うかったらごめんね?」

僕は匙君に一度謝ってから、新しいアイスを冷蔵庫に取りに行こうとした瞬間

「ちょ! ちょっと話を聞いてくれ!」

突然、肩を匙君に掴まれ僕は匙君に会場の隅っこに連れてこられた。

匙君は真剣な表情で僕を見てくる。

「女性経験の豊富な兵藤さんにぜひアドバイスを」

「僕、女性経験皆無だよ?」

そう言うと鳩が鉄砲玉を食らったような顔をした。

「い、いつも女に囲まれてるお前が?」

「うん。部長さんとかとは一緒に寝たりしたことあるけど」

「は、はははは。お、俺は……俺は」

すると匙君はヘナヘナと力なく座り込んでしまった。

「イッセーお待たせ、あら、匙君も来てたのね」

後ろを振り向くとそこにはドレスアップをした女性陣の面々がいた。

す、凄い。皆めちゃくちゃ綺麗だ。

皆、軽くお化粧もして綺麗なドレスを着こなしてる。

女の人って服装を変えるだけでこんなにも変わるんだ。

でも一つだけ問題が。

「で、なんでギャスパーくんまでドレスなの?」

「ぼ、僕もドレスを着たかったんだもん!」

いやいや、だもんじゃなくてさ。

すると軽い地響きが起きて何かが飛来したような音が聞こえた。

「タンニーン様の卷属の方々がお着きになられました」

召使さんに言われ、外に出てみるとそこにはタンニーンさん、そして

卷族らしきドラゴン達が複数いた。

「あ、タンニーンさん!」

「よ、最高の赤龍帝」

「そ、そんな~」

言葉では否定するものの嬉しくて僕は自分でもわかるくらいにニヤニヤしてしまった。

うぅ、嬉しい! そんな事言われたの初めてだ!

「背中に特殊な結界を張って髪やら服やらが乱れないようにする」

そう言われて皆がそれぞれのドラゴンの背中に乗った。

ドラゴンの鱗は硬くて、少し暖かかった。

「つかまっていろよ!」

タンニーンさんがそう言うと翼をバサッと広げ、真っ暗な空へと飛びあがり

パーティーが行われる会場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「タンニーンさんのウソつき! 高いじゃないですか!」

僕は部長に抱きしめられながら半泣きでタンニーンさんにそう言うと

タンニーンさんは少し、呆れた口調で話し始めた。

「おいおい、こんな高さで怖がってどうする。いつもよりも遥かに低空飛行だぞ」

「高いのは嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

タンニーンさんの言う低空飛行はドラゴンの立場から低空飛行であり

人から見たら、この高さは十分高いのである。

「はははははははは! お前はあらゆる

意味で最高の赤龍帝だ! お前もそう思うだろドライグ!」

『ああ、最高だ……まあ、流石に特撮を真似るのはそろそろな』

勝手に籠手が現れ、呆れ気味のドライグの声が聞こえてきた。

「ふはははははははは! 特撮を真似る赤龍帝様か!

赤龍帝よ、お前の目標はなんだ?」

「目標……最強です」

それを言うと今まで軽かったタンニーンさんの口調が真剣なものになった。

「それを目指すという事はお前は人を屍にして

越えなければならん。その勇気がお前にあるか?」

「…………」

僕はその言葉に黙ってしまった。

……誰かを屍にして強くなんてなれないよ。

「まあ今は良い。まだお前は若い。だがないずれお前は白との決着も

つけなければならん。そんな状況でも今の状態ならば確実にお前は死ぬぞ」

僕はタンニーンさんの話を心に刻みつけて会場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「あ~疲れた」

あれからパーティー会場に着いた後、部長についていきいろんな家の

あいさつ回りやらなんやらで歩き回り、今ようやく椅子に座れたところだ。

ロクにアイスも食べれていない。

アーシアさんもギャスパーくんも皆、疲れた顔をしていた。

「アーシア、ギャスパー、イッセー。みんなの分を取ってきたぞ」

「あ、ありがとう。ゼノヴィアさん」

ゼノヴィアさんはいろんなもの取りに行ってくれていた。

僕がゼノヴィアさんが持って来てくれた料理を食べようとした途端、どこからか視線を感じた。

首を振って周りを確認するとドレスを着た少女がこちらを睨んでいた。

……うぅ、あ、あの子は

ドレスを着た少女が僕を睨みながら近づいてきた。

「お、お久しぶりですわね。赤龍帝」

金髪の髪にこのお嬢様口調、以前戦ったフェニックス・ライザーの妹さんの

レイヴェル・フェニックスさんだった。

「お兄様は貴方に負けたのがショックだったのか寝込んでいますわ」

そ、そこまで僕に負けたのがショックだったの!?

僕ってどんなけ下に見られてたの、うぅ。

「赤龍帝」

「イッセーでいいよ」

「お、お名前でお呼びしてもよろしいのですか!?」

突然、レイヴェルさんは嬉しそうに声を一瞬、張り上げるがすぐに

周りの視線に気づき顔を赤くして黙った。

「で、ではイッセーさま」

「レイヴェル、旦那様のご友人がお呼びだ」

レイヴェルさんが僕に声をかけた瞬間、さらに僕たちの

元に顔を半分仮面で隠したイザベラさんがやってきた。

「分かりましたわ。それではイッセー様、また今度お茶でもいたしましょう」

そう言ってスカートのすそをつまんで少し上げてから向こうに行った。

いや~やっぱり上流階級のお譲様は上品だね~。

「やあ、久しいね」

「あ、はい」

そう思っているとイザベラさんが僕に話しかけてきた。

「君も本当に強くなったものだね。あの時の一発は

まだ記憶に新しい。私の話も有名になるかな?」

イザベラさんはニコニコと笑みを浮かべながら僕にそう言ってきた。

ライザーさんの卷属の中で一番、接しやすいな。

「赤龍帝。よい宴を」

「あ! レイヴェルさんにお茶の件はOKって言ってて下さい」

「分かった。彼女も喜ぶだろう」

そう言ってイザベラさんはレイヴェルさんのもとへと帰っていった。

さ~てと、アイスを―――――。

「にゃ~♪」

「………」

猫の声が聞こえたので、そちらを振り向くと窓から黒猫が一匹、僕の方をじーっと見ていた。

本当に目を離さずにじーっと。こんな経験は前にもある。

傷だらけの黒猫を見かけたときに一度こうやってじーっと見つめられたことがある。

その時は治療をしてあげて返してあげたけど……もしかして同じ猫かな?

いや、黒猫なんて何匹もいるしね。

………でも気になる。

黒猫は僕について来いと云わんばかりにこっちを振り返りながら歩いていった。

「行ってみるか」

僕は皆に適当に言っておいてからその猫を追いかけていった。




おはようございます! 新年あけましておめでとうございます!
センター試験まであと……二週間と二日ですか……早いものです。


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Life36

僕は会場から出て黒猫を追いかけていくと大きな森に出た……

のは良いんだけど肝心の黒猫は見失ってしまったうえに迷子になってしまった。

「あっれ~どこに行ったんだ?」

「久しぶりじゃない?」

どこからか声が聞こえてきて、そちらのほうに行くとそこには

小猫ちゃんと黒い着物に身を包んだ女性がいた。

その女性にも猫耳としっぽがあって、どことなく雰囲気が小猫ちゃんに似ていた。

「姉様」

小猫ちゃんが言った一言に僕は驚きを隠せないでいたけど、

ひとまず息を殺して2人の会話を聞いた。

「一匹の黒猫を入れるだけでお姉ちゃんの所に来てくれるなんて感動だにゃん!」

か、可愛い!

お姉さんは手を猫みたいにして可愛くしぐさをした。

やはり、猫又の女性は皆可愛いですねぇ!

「何の用ですか」

それに対して小猫ちゃんは警戒心をむき出しにしてお姉さんを睨みつけていた。

「いやあまあ野暮用なんだけどね。ここで

悪魔さんが大きな催し物を開催してると聞いたにゃん!」

お姉さんの声の調子とは裏腹に、彼女の表情は邪悪さを感じるものだった。

と、そこに一人の人物がおりたった。

 

 

 

「ハハハハハ、もしかしてこいつグレモリー卷属か?」

猿に似た人物が小猫ちゃんのお姉さんの隣に降り立つとこちらを振り向いた。

「お~い赤龍帝さん。俺っちと闘わねえか?あのヴァーリと

互角以上にやったんだろ?あいつが毎日うるさくてよ」

気づいていたんだ……仕方がない。

僕は隠れていた茂みから出て、小猫ちゃんの隣へと立った。

「俺っちの名前は美猴だ!」

姿からして孫悟空の力を受け継ぐ妖怪ってところかな?

「ところで何か御用ですか? 小猫ちゃんに」

「……兵藤先輩」

僕は小猫ちゃんを目の前の二人から護るように立った。

「ふふ、あの時連れていけなかったから今日連れていくにゃん♪」

小猫ちゃんは黒歌さんが近づいてくるたびに僕の服をギュっと握って

体全体を震わして怖がってる。

「やらせるとでも? ドライグ!」

『おう!』

僕の腕に赤色の籠手が現れた瞬間――――――あまりの重さに僕は腕を地面にぶつけてしまった。

両足も若干地面に食い込むほど、体全体が重くなっていた。

「お、重!」

すぐに体勢を立て直そうとしてもあまりの重さに一歩も

その場から動くことが出来なかった。

ど、どうなってるのドライグ!

『相棒、どうやら神器は迷っているらしい』

籠手から僕の頭の中にドライグの声が響いてきた。

『このまま行くか、はたまた別の道に行くかをだ』

「おいおい俺っち達を相手にできる……あ、出来るか。

ヴァーリが言うんだ。二対一で戦っても勝つよな?」

ど、どうしよう……こんな状況じゃまともに……。

そんな事を思っていると空から何か大きなものが地面に降り立った。

「タ、タンニーンさん!」

「よう、お前が出ていくのが見えたんでな来てみればまさかな」

タンニーンさんの姿を見た美猴珍しいものを見たような表情を浮かべ

嬉しそうにはしゃぎ出した。

「おぉ! これはこれ龍王様じゃん! 戦わなきゃ損っしょ!」

「良いだろう。格の差を見せてやる」

美猴は金色の雲に乗り、タンニーンさんは翼を羽ばたかせて空へと昇っていった。

「ん~まあ殺すにゃん♪」

その瞬間、何とも言えない感覚が僕を襲った。

「ここら一帯を結果いで覆ったにゃん♪

どれだけ叫んでも誰も助けは来ないにゃん♪」

その可愛らしい喋り方とは裏腹に小猫ちゃんのお姉さんが言っている事は

恐怖を感じさせるものだった。

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、私たちも行くにゃん♪」

突然辺りに黒い霧が発生し、僕たちを囲んできた。

「うぅ!」

「小猫ちゃん!?」

急に小猫ちゃんが口元を押さえて膝をついてしまった。

「むぅ、やっぱり赤龍帝だから効かないのかにゃん?」

や、やばいよ! 神器は動かないし体は重くていつものように高速で

動くことなんてできない!

「んじゃ行くにゃん!」

黒歌さんは魔力の弾を僕に撃ってきた。

けど、いつもなら避けれるんだけど体が重いせいで碌に動くことができず、

彼女が売ってきた魔力弾を腹部にもろに喰らった。

「兵藤先輩!」

魔力弾が直撃した僕はノーバウンドで地面に叩きつけられてしまった。

「何何~? これくらい避けてにゃん!」

さらにもう一発、僕に魔力弾が僕に襲いかかって僕は吹き飛ばされた。

「うぎゃっ!」

僕は魔力弾に吹き飛ばされて、大木に叩きつけられた。

「んもう何~?ヴァーリが言ってたことはなんだったの~?」

……クソ……いつもの状態なら……。

「もう止めてくださいお姉さま!」

そんな事を思っていると近づいてくるお姉さんを

遮るように小猫ちゃんが立ちはだかった。

「こ、小猫ちゃん!」

「貴方についていきますから兵藤先輩には手を出さないでください!」

小猫ちゃんは涙を流しながらお姉さんに懇願し、お姉さんも

満面の笑みを浮かべてそれを了承した。

「ふふ、分かったにゃん♪」

小猫ちゃんはこちらを振り向き、頭を下げた。

「兵藤先輩、ありがとうございました。部長にもよろしくお伝えください」

小猫ちゃんはそう言って黒歌さんに近づいていく。

………だ、駄目だ!

僕はもう何が何か分からないまま、重たい体をどうにかして

動かし小猫ちゃんをお姉さんの方へ、行かせまいと抱きしめた。

「ちょ! 兵藤せ」

「護るから!」

「っ!」

小猫ちゃんは突然の大声に驚いたのか肩をビクつかせた。

「小猫ちゃんを怖がらせるものは何でも壊す! 君が笑っていられるように

僕が君を護るから! だから! だから行っちゃ駄目だ!」

「……馬鹿です。先輩は」

僕の泣きながらの懇願に小猫ちゃんも泣きながら僕に抱きついてきた。

この子は卷族に必要なんだ……どこにも行かしやしない!

「あぁもう! もう少しで白音がこっちに来たのに!」

黒歌さんは怒気を含ませた声を叫び散らし、僕に魔力の弾を撃ってきた。

僕は魔力弾をはじこうとするけど、重すぎて動かせなかった。

―――――――お願い、セイグリッドギア! 動いてくれ! 僕が……僕が

この子を護るんだ! 僕の手で!

そう願った瞬間、籠手全体が紅色に輝きだして辺りが紅色の輝きで明るくなった。

 

 

 

 

 

 

 

「な、何が起きてるにゃん!?」

籠手から発せられた魔力の波動で黒歌さんが僕に放ってきた

魔力弾が消滅し籠手の宝玉が真っ赤に光り輝いていた。

そして、僕の体も軽くなり今まで以上の速さが出せそうな感じがしている。

「よく分からないけど死ぬにゃん!」

さらに、魔力弾を放とうとして来るが――――――。

「にゃにゃ!?」

僕は普段よりも少ない魔力を足に流し込んで移動すると、黒歌さんは

追いきれなかったのか驚きに顔を染めていた。

す、すごい……前よりも少ない魔力で前以上の速度が出る。

「だったら数で行くにゃん!」

そう言うと、彼女の両手から五発ほどの魔力弾が僕めがけて飛んできた。

「バランスブレイク!」

『Welsh Dragon バランスブレイカー!』

僕がそう叫ぶとともに籠手の宝玉が今まで以上に光り輝き、魔力が放出され

黒歌さんが放った魔力の弾が消滅した。

「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

僕の叫びとともに辺りに暴風が吹き荒れ、木々が大きく揺さぶられた。

「っ! 凄い魔力だにゃん♪でもでも!」

「はぁ!」

黒歌さんが放ってきた魔力弾を僕は片腕だけで別の方向へと逸らすと

黒歌さんは顔を驚きに染めた。

「にゃにゃ!?」

「集中していてくださいね。僕は」

「っ!? き、消え」

「あまりに早すぎるから。うらぁ!」

「きゃぁ!」

僕は高速で黒歌さんの後ろに移動し、裏拳を入れて黒歌さんを

殴りとばそうとするけど黒歌さんはギリギリのところで腕でガードした。

でも、衝撃まではガードできず数メートルほど後ろに吹き飛ばされた。

「はははははは! 面白いじゃないの! だったら

仙術妖術をミックスした攻撃はどうかにゃん!?」

黒歌さんはどうにかして体制を立て直すと

両手からそれぞれ違う力を放出し、さっきまで放っていた

魔力弾と同じ形にすると僕に向けて二種類の波動が飛ばしてきた。

『相棒、やってやれ』

「うん」

『Boost! Boost! Boost!』

僕は三回、倍加をかけて籠手から魔力の弾を撃ちだすといつも

以上にでかい弾が出てきて黒歌さんの攻撃を飲み込んで彼女の

顔すれすれを通って向こうの山に直撃した。

凄まじい爆音をあげるとともに大量の砂を巻き上げながら、

山が一つ消滅した。

「ハハハハハハハハハハ! 久しいな! この赤の一撃!

それこそドライグを宿した赤龍帝の攻撃だ! 見ろ! 今の一撃で

山が一瞬にして消滅したぞ! ついでに結界も消えた!」

タンニーンさんは今の攻撃を見て、歓喜の声を上げた。

『これが神器の出した答えだ。力ではなく速さを重視した

神器に変わったわけだ。まあ、攻撃も修行のお陰で格段に上がったがな』

「う、嘘! かなりの魔力を込めたのに!」

黒歌さんはさらに何度も僕に魔力弾を放ってくるけど僕はそれを

弾いたり、避けたりしながら近づいていく。

「こんの!」

「遅いよ」

僕は彼女が魔力弾を放とうとした瞬間に、

目の前に高速で移動して彼女の腕を掴んだ。

「―――――ッッッ!」

高速で移動した際の衝撃波が辺りの木々を大きく揺らした。

「二度と小猫ちゃんを連れていくとか言うな。もしも今度

同じ用事で来れば……容赦はしない」

「っ! クソガキが!」

黒歌さんは僕の腕を弾いて、離れるけどその眼には恐怖が宿っていた。

こっちも終わったからタンニーンさんの援護でも!

そう思って飛び立とうとした時、空間に穴が開いて一人の人物が出てきた。

「そこまでです。黒歌、美猴」

だ、誰あれ? 眼鏡をかけてて……あの極大に輝いてる剣って聖剣?

「お前ヴァーリの付添じゃなかったっけ?」

「そのヴァーリから言われてきたんです。あまりにも遅いんでね」

その会話を聞いている僕の隣にタンニーンさんが降りてきた。

「赤龍帝とその猫よ、あ奴には近づくなよ? あいつの持っている剣は厄介だ」

「聖王剣コールブランド。またの名をカリバーン、地上最強の剣です」

タンニーンさんと僕の話に男性が割り込んできた。

男性はもう片方の手に持っている剣を僕に見せながら説明を始めた。

「そしてこちらは最近発見された七本のエクスカリバーの中で

最強のエクスカリバー・ルーラーですよ」

っ!? 最強のエクスカリバーに地上最強の剣!?

や、やばくない!?

「敵の僕たちにそんなに話して大丈夫なの?」

僕がそう尋ねると男性は笑みを浮かべべながら首を縦に振った。

「ええ、私はあなた方の所にいる聖魔剣使いと

デュランダル使いによろしくとお伝えください」

男性がコールブランドを振るうと小さかった穴が少し大きくなり数人が

入れる大きさにまで広がり全員がそこに入って消えた。

その後、悪魔さん達が来て僕たちは保護された。




こんばんわっす


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Life37

「全く、これだから悪魔の警備は」

ブツブツ言いながらシェムハザが悪魔の警備の甘さに文句を垂れていた。

俺―――――アザゼルはさっきのさっきまでサーゼクスと酒を飲んでいたがさっきの爆音で

酒飲み大会は急遽、延期だとよ。

さっきの魔力……また新しいステージに辿り着いたか、イッセー。

「何をそんなに嬉しそうにしている、アザゼル」

俺の目の前にはでかい図体を小さくしたタンニーンが口角をニンマリと上げて座っていた。

「別に。イッセーが新しい一歩を踏み出したって言うのを聞いてな」

「当たり前だ。俺が鍛えたんだからな」

やれやれ、タンニーンもあいつに結構肩入れしてるな。

すると、俺達がいる部屋に重苦しい空気が流れ込んできた。

「やれやれ、老体を気遣う気配りもできんのか?」

「オーディン」

古ぼけた帽子をかぶり、その白いひげは今にも床につきそうなくらい長く

隻眼の爺……こりゃ、また珍客がおいでなすった。

後ろには鎧を着たヴァルキリーが待機していた。

「で? さっきの魔力はなんじゃ?」

「あぁ、俺の教え子だよ」

「兵藤一誠とか言ったかの?」

知ってんなら聞くなよクソ爺。

まあ、三大勢力が和平を組んだ今じゃ、あいつの名前はあらゆる方面に

知れ渡っているからな。オーディンの爺が知っていてもおかしくはねえか。

「お久しゅうございます。オーディン様」

そこへ、事態の収拾にあたっていたサーゼクスとレヴィアタンが戻ってきた。

サーゼクスは自分が座っていた椅子をオーディンの近くに置き、自分は

椅子には座らずに立った。

おいおい、魔王が立っているなんてどんな光景なんだ?

「全く、このくらい労われんのかの?」

そう言いながらオーディンの爺は俺の方をじっと見てくる。

けっ! 北の主神をなんで俺が労らなきゃなんねえんだよ!

「で? ゲームはどっちが勝つと思うんじゃ?」

その話かよ。まあ、仕方ねえか。

各勢力、この日の為にしこたま重役とか上役を連れてきてるからな。

シトリー卷属とグレモリー卷属の戦い……それほど見ものという訳か。

「さあな……ただ」

「ただなんじゃ?」

俺の脳裏にイッセーが若手悪魔が集まった日に言った言葉が過ぎる。

『最強』

……あいつなら最強になるかもな。

そう考えて俺はコップに入っていた酒をグビッと飲み干した。

 

 

 

 

 

生徒会の皆さんとのレーティングゲームの前日の夜、僕は

大きなお庭で一人、夜空を眺めていました。

「……明日か」

明日、匙君達との戦いが始まるんだ……きっと、前までの

匙君とは別人カと思うくらいに強くなっているに違いない。

でも、僕だって鍛錬したんだ……それに約束もした。

部長の夢を妨げるものは何であれ、全てを潰す。

「……兵藤先輩」

「小猫ちゃん?」

そう考えていると後ろから僕を呼ぶ声がしたので振り向くと、そこには

可愛い模様がいっぱい書かれている寝まきを着た小猫ちゃんが立っていた。

……うん、やっぱり小猫ちゃんは癒し系ですな!

そう思っていると小猫ちゃんが僕の膝の上に腰を下ろした。

「こ、小猫ちゃん?」

「……ありがとうございました」

突然、小猫ちゃんは僕にお礼を言ってきた。

別に僕は何も……あ、お姉さんとの事か。

「もしも兵藤先輩が止めてくれていなかったら

私は危うく部長を裏切るところでした」

……きっと、小猫ちゃんも部長の事を護りたいって思っているに違いない。

そうじゃないと先生のトレーニングに取り組むことなんかしないもん。

僕は小猫ちゃんの頭に手を乗せて、頭を撫で撫でしてあげると小猫ちゃんが

僕の胸にコテッともたれてきた。

「……明日、勝ちましょう」

「勿論」

僕たちは約束をかわした。

 

 

 

 

 

 

 

翌日、僕たちはグレモリー邸の地下にある巨大な魔法陣でスタンバイをしていた。

もうすぐ、僕達がフィールドの転送される時間帯になる。

「お姉様! 赤龍帝様! 頑張ってください!」

ミリキャス様や部長のお母様とお父様も僕達の見送りに来てくれていた。

ここにいないのはサーゼクス様とグレイフィアさんだけ。

でも、その二人はすでに会場のVip席で待っているらしい。

すると、魔法陣が一気に輝きだした。

「いってらっしゃい!」

ミリキャス様の声を聞いた瞬間に、僕たちはフィールドに転送された。

 

 

 

 

 

 

 

転送の光が収まったのを感じた僕は目を

開けるとそこは、テーブルなんかがたくさん置いてある場所だった。

レストランかとも思ったけど周りにはいろんな種類のお店があった。

本屋もあるし服屋もある。

僕たちはフロアから出ると奥を見渡すとそこには見知ったお店がいっぱいあった。

「まさか、駆王学園近くのショッピングモールなんてね」

『皆様、このたびはグレモリー家、シトリー家のレーティングゲームの

アービター役を担う事になりましたルシファー卷属のグレイフィアです』

確か前はグレモリー家の召使としてだった……今回のゲームの質は違うのかな。

『今、皆さまが転送された場所が本陣となります。そして、今回は特別ルールがございます。

詳しい事は本陣にあります資料に載ってありますのでご覧ください。

それでは、作戦時間です』

僕たちは放送が終わるとすぐに本陣に行くと確かにテーブルの上に

資料が一冊、置かれていた。

部長がそれに目を通す。

「ルールはデパートを破壊しつくさないこと。破壊した場合は

その破壊した下僕が即時失格みたいね」

ふむふむ、つまり僕はバランス・ブレイクはしない方がいいってわけですね。

バランス・ブレイクしただけで僕は周りの物を破壊しちゃうし、

朱乃さんの攻撃も屋上でしか駄目だろうし。

「後、ギャスパーの目も禁止みたいね」

ありゃりゃ、そこまで規制が入りましたか。

それから、僕たちは五分ほど話を詰めて後は自由時間になった。

「こ、これは!」

僕は辺りをぶらぶらしているとふと、ショーケースが目に入り

さらに飾られている物に全ての意識が向いた。

「あのヒーローの限定版フィギュア! こっちはDVD!」

そう、僕が大好きな特撮ヒーローの関連商品がズラーッと並べられていたのである。

目を輝かせながら見ていると後ろから誰かが僕に抱きついてきた。

「イッセー君、何をしているのかしら? あらあら、イッセー君が

大好きそうなものがたくさんありますわね」

「はい! あ~カッコいい! この質量感! まさに本物そっくりだ!」

そう本物そっくり……完全に本物じゃなくて摸したものだから本物じゃないんだよね~。

すると、朱乃さんが僕にさらに強く抱きついてきた。

「朱乃さん?」

「……今日、私はあなたの前で堕天使の力を使います」

っ! ……そうか、朱乃さん……とうとう使うんですね。

「頑張ってください」

「はい!」

朱乃さんは満面の笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

―――――定刻だ。

僕たちは集合場所に集まって開始の時を待っていた。

『開始のお時間です。このゲームは三時間のプリッツ形式です』

……短期決戦で終わらせろってことだね。

「さっき言ったとおりにお願いね。行くわよ!」

『はい!』

僕たちの気合いの入った声が辺りに響いた。




こんばんわ~


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Life38

「こ、怖い!」

僕と小猫ちゃんはフロア内から敵の本陣へと向かっている……んだけど、

通っている場所には明かりがついておらず、めちゃくちゃ怖かった。

「うぅぅ、うにゃぁ!」

歩いていると急に何かをふんづけてそのまま滑って転んでしまった。

イタタ……た、玉ねぎ!?

僕は踏んだのはよく見る玉ねぎだった。

小猫ちゃんは僕のあり様を見て苦笑いを浮かべていた。

「うぅぅぅ! この馬鹿玉ねぎ!」

僕は恥ずかしさの余り玉ねぎを蹴とばすとうまい具合につま先に

辺り、さらにうまい具合に壁に当たって天井へとぶつかった。

「どわぁ!」

「な、なんなの!?」

突然、上から何かが落ちてきた!

僕と小猫ちゃんは警戒していると

その落ちてきたものが起き上がった……って匙君!?

「何で玉ねぎが……ひょ、兵藤!」

お互いに暗いせいですぐには分からなかったけどやっぱり匙君だ!

『Boost!』

僕は籠手を発動させて、倍加を始めた。

『リアス・グレモリー様のビショップ一名。リタイア』

「――――ッッッ!?」

僕は放送の内容を聞いて驚きのあまり何も言えなかった。

まだ始ってから五分しか経ってないんだよ!?

「ギャスパーくんだな」

匙君は嬉しそうにニヤニヤと不敵な笑みを浮かべていた。

……そうか、多分会長の事だからこのショッピングモールを利用して

ギャスパーくんの苦手なガーリックがいっぱいある所に誘い込んだってわけね。

「先手必勝!」

匙君が何やら細い管の様なものを

伸ばしてきたから僕は小猫ちゃんを抱えて高速で移動して、かわした。

「速いなやっぱり」

匙君の右腕には黒い蛇が何匹もとぐろを巻いている状態だった。

……以前とは形が違う。鍛錬した成果か。

「小猫ちゃんは女の子をお願い」

「了解です」

小猫ちゃんには匙君と一緒にいた女の子を担当してもらい僕は匙君を向かい合った。

やっぱり、以前とはまるで別人だ。

「兵藤。悪いがお前を倒すぜ!」

匙君は右腕の蛇を何匹も僕に向けて飛ばしてきた。

『Boost!』

二度目の倍加が行われた瞬間、僕は足に魔力を流し込み

高速で移動しながらこっちに来る蛇を避けていく。

……この狭さならいけるね。

「逃がすか!」

僕は匙君から離れるけど、蛇が更に数を増して僕に放たれてきた。

僕はフロアの中をジグザグに動いていき、柱を一周したり

敢えて建物内の同じ個所を何度もグルグルと回りながら蛇を避けていく。

「すばしっこいな!」

さらに匙君は右腕から蛇を増やして動いている僕に直接、狙いを定めてきた。

「ありゃ? 行き止まり?」

「貰った!」

僕が行き止まりで動きを止めた瞬間、大量の蛇が僕に襲いかかってきた。

「終わりだ! 兵藤!」

匙君がそう言った瞬間、突然、大量の蛇の動きが同時に止まった……いや、

止まったんじゃなくてこれ以上前に進めなくなったと言った方が正しいかな?

 

 

 

 

 

 

「な!? どうなってんだ! 動け! 動けよぉ!」

匙君は突然、動かなくなった蛇達を必死に動かそうとしているけど

蛇達は全く動く気配を見せなかった。

「無駄だよ」

「―――――兵藤! てめえ何しやがった!」

「匙君。確かに君のセイグリッドギアの能力は厄介だよ。力を吸うからね。

でも、ここみたいに狭い場所であまり長いものを振り回さない方が良い」

「――――ッッッ!」

匙君もようやく理解したのか、辺りを見回した。

辺りには柱などにグルグルに巻きついた蛇が見えていた。

「お前、わざと蛇に攻撃をせずに周りに絡みつかせるために動きまわってたのかよ!」

「そうだよ。見たところ、もう今の数以上蛇を出すことはできないみたいだし

右腕から蛇を切り離すこともできないみたいだね」

もし、腕から切り離されるならもうとっくに切り離して動けていたはずだ。

なのに、それをしないという事は出来ないんだ。

突如、辺りに何かを殴りつける音が響いた。

不思議に思ってそちらの方を向くと匙君と一緒にいた後輩が膝をついていて、

拳を突き出している小猫ちゃんの姿があった。

……そうか……小猫ちゃんも猫又の力を。

「こんなところで」

ふと、僕の耳に匙君の声が聞こえてくる。

「こんな所で諦めれるかぁぁぁぁ!」

―――――ブチブチブチッ!

匙君は柱に絡みついて動かすことのできない

拳を無理やりに動かしながらこっちを睨みつけていた。

「兵藤! 俺はおまえを倒す! 弱いセイグリッドギアでも

ロンギヌスに対抗出来るってことを見せるんだ!」

さらに匙君の魔力が上がっていく。

休暇を過ごしている際にとある評論家の今回のゲームに関する予想を

纏めていた雑誌を読んでいた。

そこでは匙君のセイグリッドギアは弱いっていうような意味の

ことを話していた。

…………匙君。僕は弱いなんて思わないよ。

『Explosion!』

僕は今まで倍加してきた魔力を一気に爆発させて、籠手にすべて集めると

暗かった辺りが赤色の輝きを受けて明るくなった。

だから僕は全力で君を倒すんだ!

「はぁ!」

「がっ!」

僕は高速で匙君との距離を詰め、彼の腹部に全ての魔力を集めた拳を

ぶつけると、口から血反吐を吐いてダランを腕を落とした。

―――――ガシッ!

「なっ!」

「これで本当にお終いだ」

匙君は右腕で僕の籠手を掴むと、蛇が僕の籠手に絡みついて籠手に集めていた

全ての魔力が徐々に外へと放出され始めた。

ヤ、ヤバい! また魔力が暴走して―――――!

「一緒に逝こうぜ。兵藤!」

 

 

 

 

 

 

「な、なんだ!?」

立体駐車場を経由して敵の本陣へと向かっていた僕――――木場祐斗と

ゼノヴィアは突如、デパートの一角から爆音が鳴り響いたところを振り向いた。

こっちに魔力の波が向かってくる!

「こ、これは!」

真羅先輩や他のシトリー卷族の人たちも逃げようと必死になっていた!

くそ! このままじゃ僕たちまで!

突然、浮遊感を感じた。

「ゼノヴィア!」

ゼノヴィアが僕を空中に投げとばしていた。

僕は彼女も助けようと翼を羽ばたかして下に降りようとするけど

魔力がゼノヴィアやシトリー卷属を飲み込んで、大爆発を起こした!

「くそっ! ゼノヴィア! ゼノヴィアァァァ!」

僕は地面に魔剣を突き刺して、支えとしながら爆風に耐えていた。

この魔力はイッセー君の物だ! でも、なんでイッセー君の魔力がこんな所にまで!

爆風が収まり、すぐにゼノヴィアの所に向かうけど既に彼女の姿はなかった。

『リアス・グレモリー様のルーク、ナイト各一名。シトリー卷属の

ポーン、ルーク、ナイト、同じく一名ずつリタイア』

小猫ちゃんとゼノヴィアか……イッセー君は……ん?

後ろに何かが落ちてきた音が聞こえて後ろを振り向くとそこには

血だらけのイッセー君がいた。

「イッセー君!」

僕は慌てて近寄り、彼の肩を支えるけど彼は

本当にボロボロで自分で立つので精一杯な様子だった。

「ごめ……ん………僕の所為で………皆が」

イッセー君は涙を流しながらそう呟いた。

すると、彼を光が包み込み始めた。

『ルール違反により兵藤一誠様は強制的にリタイヤです』

「そっか………じゃあ、せめて」

『Transfer!』

イッセー君は僕に触れてから、籠手の力を発動して、僕にギフトをくれた。

「後は……お願い」

そう呟いた直後に、イッセー君が転送された。




おはようございます。Kueです。
アクセス数が見やすくなりましたね~。


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Life39

僕はイッセー君が転送されるのを見届けてから部長達の元へと急いだ。

さっきの放送で真羅先輩が転送されたとは言っていなかった!

つまり、あの爆発の中でも生き残っていたんだ!

僕はナイトの特性である高速移動をフルに使って部長達の元へと急いだ。

「部長!」

「祐斗!」

急ぐこと二分。僕はようやく部長達の元へたどり着いたけど部長達が

いた場所も爆発の被害をかなり受けていてデパートは大きく破損していた。

「さっきの爆発は一体」

「匙がやってくれたのでしょう」

「ソーナ!」

目の前からソーナ様とボロボロの状態の真森先輩が立っていた。

やっぱり、さっきの爆発を完全には避けきれなかったのか。

そういう僕もちょっと、服が焦げてしまった。

「彼の魔力は異常な質をしています。それを外に出せば」

そうか……だから、さっきあんなにも広範囲に爆発が起きたのか。

確かに彼の魔力は異常なほどの質だ。一回の倍加で並の上級悪魔を

超えるほどの魔力に増大する。それが外に出されれば抑える物は

何もなくなり一気に、炎のように広がる……そして、イッセー君は

まだ転生して日が浅い。それも魔力が暴走するのを手伝ったのか。

「ですが、私も想定外の威力でした。まさか、私の下僕までも

巻き込んで爆発するだなんて」

やはりソーナ会長でも彼は完全には把握することはできないのか。

その時、僕の視界に金色のオーラを纏わせてバチバチと音を立て

涙を流している朱乃さんが映った。

「彼の前でこの嫌な力を使って乗り越えようと思ったのに……許さない」

朱乃さんの掌から膨大な質量の雷が辺りに無造作に放たれ、

辺りを無差別に破壊し始めた!

「な、なんて威力!」

ソーナ会長も真羅先輩も朱乃さんの雷を避けるので精一杯で

とても僕たちの攻撃を仕掛けるなんて出来なかった。

「彼を……イッセー君を傷つけるものは私がすべて破壊する!」

さらに朱乃さんの放つ雷の威力が格段に上がった!

「朱乃! 落ち着きなさい!」

部長が止めに入るけど朱乃さんは聞こえていないのかずっと、

何を狙う訳でもなくただ、ひたすら雷を地面に落とし続けていた。

これじゃ、僕たちにまで被害が及んでしまう!

「会長!」

会長めがけて落ちてきた雷を真羅先輩が庇い、雷が直撃した。

「がっ!」

真羅先輩は煙をプスプスと出しながら地面に倒れ、

光が彼女を包み込んで転送された。

「今のはただの雷ではありませんわ。光も含んでいます」

朱乃さんは会長に手に平を向けて雷を放ち、雷が会長を貫いた!

「あ、あれは!」

でも、直撃したはずなのに会長の姿はどこにもなかった。

転送されたのか? ……いや、もしそうだとしたら放送が入るはずだ……

つまり、さっきまでいた会長は幻術か何かで本物はまだ、どこかにいるのか。

僕達を見下ろせる場所にいる可能性が高いね……どこかの屋上だったり。

僕は辺りを見渡してまだ、形を保っている建物を探すと一つだけ見つかった。

「部長。恐らく、会長はあそこにいます」

僕は剣を向けて部長に教えるとすぐに、朱乃さんが雷を撃とうと掌を向けた。

「うっ!」

でも、雷が放たれる前に部長が朱乃さんの首筋に手刀をいれて意識を刈り取った。

「こうでもしないと朱乃まで転送されかねないわ」

確かに……今の、朱乃さんは正気じゃない。

確実に彼女の頭の中にはルールという二文字は存在していない筈だ。

「行くわよ。アーシアは朱乃をお願い」

「はい!」

僕と部長はアーシアさんに朱乃さんを頼んで部長がいる場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうかしら? 私の戦略は」

僕達が屋上に辿り着くと、すぐにその声が聞こえてきた。

「ええ、お陰でプライドはボロボロね。それよりも……

イッセーのために勝つわ。評価は頭には今はないわ。ソーナ、貴方に勝つ」

2人に徐々に魔力が集まっていく。

ソーナ様は水の魔力が、部長には滅びの魔力が。

お互いに手に平を相手にかざすと魔力と魔力がぶつかり合った。

―――――ザブンッ! ザバァァァァァァァァァン!

滅びの魔力によってその分、水は消滅するがショッピングモール中から

水を集めているのか回復が早かった。

「リアス、私の水芸を見せてあげるわ」

姉であるレヴィアタン様は氷の扱いに長け、妹である会長は水の扱いに長けているのか。

こうして見ていると会長は魔力を操る事に長け、部長はパワーに長けている。

僕は何もせずにただただ、二人の戦いを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

そして決着はついた。

『ソーナ・シトリー様の投了(リザイン)を確認』

こうして僕たちは勝った。

 

 

 

 

 

 

 

僕が目を覚ましたのは治療ルームだった。

あれだけの傷を治療するのは凄いな、全く。

ゲームは僕たちの勝利で終わったらしいけど、

赤龍帝である僕を失ったことにより評価は下がっていた。

「弱いな……僕は」

「そんなことはないわ」

「部長」

いつの間にか病室に部長がいた。

「貴方は必死に戦ってくれたわ。ただ、私の戦略よりもソーナの

戦略の方が上だっただけ。私もまだまだね」

そう言って部長は悔しそうな表情をした。

確かに、会長の立てる戦略はすごかった。

ゲームは予想外な事が起こることもある。

にしても僕たちは完勝に恵まれないな~。全部辛勝って感じだよ。

「でもね、朱乃と小猫が自分の抱えている物を超えてくれたわ。

こんなに嬉しいことはないわ。イッセーのお陰よ」

部長は本当にうれしそうに笑い、僕の頬を撫でてくれた。

……やっぱり部長は綺麗だな~

そんな風に思っていると誰かが病室に入ってきた。

「中々の強さじゃな赤龍帝」

病室に入ってきた人物は帽子を被り、隻眼で白くて長いひげを蓄えていた。

それに後ろには鎧を纏った女の人も立っていた。

「どれ、一戦やってみるか?」

「駄目ですオーディン様」

僕はその一言を聞き逃さなかった。

オーディン様? ………え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?

お、オーディンてあのオーディン!?

「も、もしかして北欧のオーディン様!?」

「そうじゃよ」

な、なんで僕はこんなにもビックな方たちと出会うんだろうね。

ミカエルさま然りサーゼクス様然りアザゼル先生然り。

僕の周りにはすんごい有名な人たちがいっぱいいるよ。

「彼はまだ回復しきっていません」

「むぅ~相変わらず堅いヴァルキリーじゃて……おい、サーゼクスの妹よ」

「はい」

部長はオーディン様に呼ばれてベッドから立ち上がった。

「そ奴は味方にもなれば敵にもなりえる。心しておけよ」

そう言い残して女性と一緒に出ていかれた。

な、なんだったんだ一体。

 

 

 

 

 

 

 

 

八月も後半になり僕たちは帰ることになりました。

「また来ると良い。ここを自分の家だと思ってくれたまえ」

部長のお父様は朗らかに笑うけど正直、こんなにも大きな豪邸を

我が家と思うのは庶民には無理です。

「赤龍帝様! また来てくださいね!」

「イッセーでいいですよ、ミリキャス様」

僕らはミリキャス様と分かれて列車に乗った。

そしてその時に視界に映った光景に僕は気づいた。

サーゼクス様とグレイフィアさん、そしてミリキャス様のお姿を見て

僕はあることを確信した。

「そっか、あの方々は」

三人とも幸せそうに笑っていたのだから。

僕はそんな微笑ましい光景を目に収めてゆったりとしていた。

夏休みの宿題はこっちに来る前に終わらせたからね。

すると、いきなり小猫ちゃんが猫耳、尻尾を出して僕の膝に座ってきた。

「小猫ちゃん?」

「にゃん♪」

か、かわえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!

余りの可愛さについ、僕は小猫ちゃんをギュッと抱きしめてしまった。

 

 

 

夏休みを冥界で過ごしたことは一生の思い出に残る。

そんな風に考ながら列車からホームに降りるとアーシアさんに一人の男性が近づいてきた。

「アーシア・アルジェント……やっと会えた」

だ、誰? このめちゃくちゃ優しそうな男の方は。

「え、えっと」

困惑している彼女にやさしい男は胸を開いて深い傷を見せた。

アーシアさんはその深い傷を見て何かを思い出したような表情をした。

「あ! もしかして!」

「そうだよ! 思い出してくれたかい?」

「ディオドラ? ディオドラね?」

部長は知っているようだった。

そういえば若手悪魔の会合にこんな人いたっけ。

「あの時は忙しくて話に行けなかったんだ。アーシア」

すると急に膝まづいて手の甲にキスをした。

な、何この光景。

「僕の妻になってほしい。結婚してくれ」

はい、出た~。公開プロポーズ!

長~い秋が始まり、そして僕にとっても転機が訪れる季節になった。




こんにちわ~。感想ください~


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Life40 アーシアは渡しません!

『結婚』

某フリー百科事典曰く、愛し合っている2人が一生を共に生きる契りをかわす行為。

プロポーズ、その結婚を愛している方に一生をともにしてくれという行為。

この二つをアーシアさんはこの前に受けた。

うん、よく考えろ。

仮に……仮に! めちゃくちゃIFだけども! 

アーシアさんがあの優男のプロポーズを受けて嫁に出たら…………

『アーシア、綺麗だよ』

『あ、貴方……初めてだから優しく』

 

 

 

 

 

 

 

「そんなのはらめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

僕は大声を上げながら起き上ると、窓の外から日光が部屋に入り込んでいた。

時計を確認するけど起きる時間には少し早かった。

「はぁ、はぁ、はぁ……ゆ、夢か」

まるで殺されそうなくらいに恐怖の夢だったな。

危うく心臓が止まりかけたよ。

ふと、胸に重みがあるのに気づいた僕は視線を下におろしてみた。

「……うにゃ」

最近、住み始めた小猫ちゃんが気持ちよさそうに僕の胸で寝ていた。

しかも猫耳、尻尾をフル装備でね。

しかも眠たそうなのか目をこする時に仕草が、可愛すぎて心臓がバクバクしてる。

「にゃ~」

小猫ちゃんの猫なで声に僕は一発でノックアウトされ、ベッドに再び横たわった。

「夢で良かったよ」

僕は小猫ちゃんの頭を優しく撫でていると隣に部長が座った。

「夢にしたいわね」

いつの間にか隣にいた部長がドサっとベッドに何十枚もの封筒を置いた。

その中の一枚を開けて中身を見てみると入っていたのは何やら、チケットだった。

「食事の招待や映画のチケット、他にも大きな物が送られてきてるわ」

部長はため息をつきながら外を見ていたので僕は小猫ちゃんを抱っこして、

窓から外を見てみると確かに玄関に大きな箱がいくつも置かれていた。

「ひと先ず、学校に行くわよ」

「はい!」

荷物の件は学校が終わってからにして僕は一階へと向かった。

 

 

 

 

 

 

さて、二学期開始の今日。

長い夏休みを終えて、久しぶりに皆にあったけど特別に変わった人はいなかった。

「イッセーくん! 二コって笑って!」

「ん? どうかしたの?」

そう言われて僕は二コっと笑うと近くにいた女子生徒さんは

顔を真っ赤にしてニヤニヤ顔で『癒されるわ! 振られた

悲しみを私は乗り越え、私は今、スーパー私に覚醒したのよ!』

とか叫んで席に着いた。さっきからこればっかり。

「おい、イッセーはこっちの領域だぞ!」

「はぁ!? イッセーくんはね私たちの領域なのよ!」

まあ、こんなふうに眼鏡女子の桐生さんと、元浜君達の壮絶なバトルも懐かしく感じた。

チャイムも鳴り先生が入ってくると皆席に座った。

「よし、新学期早々だが新しい仲間を紹介する!」

先生がニコニコと笑いながらそう言うと、ガラガラとドアが開いた。

教室にやってきたのは女子生徒……なんだけど、非常に見覚えがあった。

……と、いうよりも知り合いだ。

「紫藤イリナです! よろしくね!」

まさかの展開に僕は固まってしまった。

 

 

 

 

 

 

「私たちは貴方の来校を歓迎するわ」

放課後、部室でイリナちゃんの歓迎会が始まった。

なんでもミカエルさまの命令で来たらしく主の消滅もすでに知っているらしい。

「にしても、イッセー君」

イリナちゃんはニヤニヤしながら僕に詰め寄ってくる。

うぅ、このニヤケ顔はまさか!

「まだ、特撮にはまってるのかね?」

うぅぅぅぅぅ! 別に良いじゃないか! 特撮は人類の宝なんだよ!?

そんな訳で僕たちは、楽しい歓迎会を楽しみまくった。

 

 

 

 

 

その次の放課後、イリナちゃんとゼノヴィアさんとともに

部室に入ると何やら皆、顔をしかめていた。

「どうかしたんですか?」

「実はね、次の若手悪魔の対戦相手が決まったんだけど……」

「誰なんですか? サイラオーグさん? それともアガレス様ですか?」

僕の挙げた名前に部長は首を横に振り否定した。

「相手はディオドラ・アスタロトよ」

僕は部長の口から出てきた名前にガックリとうなだれてしまった。

まさか、あの人と闘うとは。しかもこんな時期に。

 

 

 

 

 

さて、今僕たちオカルト研究部員達は部室で

みんなで若手悪魔たちのゲームの映像を見ています。

「これがサイラオーグの力ね」

相手はあのヤンキーの悪魔だったんだけどサイラオーグさんは完膚なきまでに

叩きのめして心身ともに恐怖を植え付けた。

「奴はここまでだな。あと試合後に言っていたそうだが『奴では

話しにならん。赤龍帝と戦いたいものだ』だってよ。イッセー」

サイラオーグさんとバトルか……やってみたい。

僕は心の底からそう思っていた。

ヴァーリとの時とは違う、別の戦闘欲が体中から溢れ出していた。

すると床にどこかの家の魔法陣が現れて誰かがジャンプしてきた。

「アーシア、君を迎えに来たよ」

魔法陣から出てきたのはニコニコと笑みを浮かべたディオドラさんだった。

急の来客に僕達は大急ぎでお茶やらを準備して

部長とアーシアさん、そしてディオドラさんがテーブルにお互い対面して座った。

「単刀直入に言いますね。トレードしたいんです。ビショップを」

そう言いテーブルにカタログを広げた。

………自分の下僕を商品扱いですか……。

「いやん! 僕ですか!?」

「ギャスパーくんはちょっと黙ってようね~」

僕はギャスパーくんを抱きあげて段ボール箱の中に入れると

癒されるのか表情をゆるくした。

「悪いけどそれは無理だわ。アーシアは私の大事な下僕であり妹よ」

「部長さん!」

アーシアさんはあまりの嬉しさに感動し、涙を流していた。

や、ヤバ、僕も涙腺が。

「はい、イッセーくん」

「あ、ありがとう」

僕は木場君からハンカチを貸してもらい涙をぬぐった。

「ん~。そうですか、でしたら今日のところは

退かせてもらいます。また会おう、アーシア」

そう言うとディオドラさんはアーシアさんの手の甲にキスをしようとしていた。

「ちょっと、待った」

僕は我慢できずに彼を彼女から離した。

「何かな? 薄汚いドラゴンの宿主」

「っ!」

僕が反論しようとした瞬間、アーシアさんが立ち上がって

ディオドラさんをはたいた。

「イッセーさんは優しい方です!」

殴られたディオドラさんは未だにニコニコしていた。

ここまで笑っていると何か裏がありそうで怖いな。

「だったら今度のゲームで僕は彼を倒そう。そうしたら君に僕の愛を」

「絶対に負けない!」

僕はつい面切ってそう言ってしまったけどこっちの方が分かりやすいしね。

僕達が睨んでいると先生の携帯が鳴った。

「お前ら決まったぞ。五日後だ」

ディオドラはゲームが始まる日にちを聞いてから魔法陣でジャンプして帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ずるずる、うん、美味しい!」

今、僕は美味しいと評判のラーメン屋台でラーメンを食べていた。

このラーメン屋のおっちゃんはかなりひねくれ者でなんか食材が

作ってほしいっていう声を聞かない限り作らないって言う噂のおっちゃん。

でも、その味は超絶品!

悪魔稼業のお仕事の帰りだったんだけどいい匂いがしてつい食べてしまった。

「おっちゃん! 俺もくれ!」

隣に座った人の声……どっかで聞いたことがあるような……

僕は隣に座った人物の顔を確認するとそれは見知った人物だった。

「で、出た! ……び、び、びくう!」

「美猴だ! 悟空とフュージョンしねえよ! てかここ、美味いよな」

「あ、はい。美味しいですよね」

とくに戦う理由も殺気も感じないから、僕らは仲好くラーメンを食べていた。

「じゃあ、近くにヴァーリも?」

「おう! 呼ぼうか?」

「いえ良いです。彼と会っちゃうと暴れちゃうんで」

「あいつも一緒だよ。赤いものを見ると暴れたいんだとさ」

僕らはずるずると麺を啜っていると美猴が話し始めた。

「お前達が今度、戦うディオドラだっけ? 

気をつけた方がいいぜ。おっさんもう一杯!」

美猴はいつの間にか、ラーメンを食べきっていて

おじさんにもう一杯、注文していた。

ディオドラさんの様子がおかしいのは既に皆が知っている。

確かにディオドラさんは強い悪魔らしいけど、アガレス様を圧倒するほど

強くはない悪魔らしいんだ。

「……これ奢りです」

そう言って僕は財布から千円札を2枚程出してその晩は帰った。




こんにちわ。お久しぶりです


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Life41 取材だって!

翌日の朝、僕たちは冥界にあるスタジオに来ていた。

なんでも僕たちグレモリー卷属にインタビュー企画があるらしく

全員にお話を聞きたいとオファーがあったので休みの日を利用して冥界に来ていた。

僕達がスタジオを歩いていると前からスーツを着た女性が歩いて来て

僕たちの前で立ち止まった。

「リアス・グレモリー卷属の皆さまですね?

私は第一放送の局アナをしております」

そこから担当の人に連れられ、入ったスタジオは結構な広さが

ある部屋で既に観客席にはお客さんも入っていた。

これってお客さん込みのインタビューなんだ……

そこからいくつかインタビュー時の説明を聞かされて、インタビューは始まった。

終始、部長や朱乃さんに質問が行き、二人が答えるたびに男性の

黄色い視線が飛び、木場君に質問が行くと女性の熱っぽい視線が飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様でした!」

インタビューは三十分ほどで終了し、僕達が帰ろうとした時だった。

「あの~兵藤一誠様は」

「あ、僕です」

ディレクターさんが僕の名を呼んだから僕は手を上げてその人の元に歩いていった。

「あ、貴方が兵藤さまですか。貴方にはこの後。別のスタジオでもあります」

突然、ディレクターさんに言われた僕は素っ頓狂な声を上げてしまった。

「はい? 別?」

「ええ、今冥界の子供たちの間では貴方は仮面の戦士と呼ばれて大人気なんです」

それを言われた時は一瞬、何を言っているか分からなかったけど

数秒かけて再思考してようやく理解が出来た。

………最高だあぁぁぁぁぁぁ!

僕も! 僕も! なれたんだ!

『うおぉぉぉぉぉぉぉんんっ』

心の中で歓喜の声を上げていると突然、僕の中でドライグが泣き叫び始めた。

ど、どうしたの?

『二天龍と呼ばれた俺が……赤龍帝と呼ばれ畏怖されたこの俺が』

う、うわ~まじ泣きしてるよ。

ひと先ず僕はドライグを慰めつつディレクターさんに連れられてスタジオへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「疲れた」

皆よりも、三十分ほど遅く控室に帰ってきた僕は床に寝転がった。

スタジオに入った途端に驚いたのはお客さんが幼い子供たちだったことだ。

五歳~十歳くらいのお子様がお母さんと一緒にスタジオに来ていて僕がスタジオに

入るや否や凄い歓声を送られた。

「ところでイッセー、別のスタジオで何を撮ったの?」

そう、実はインタビューの他にもあるものをスタジオで撮っていた。

「ふふ、内緒です。本放送まで秘密です」

僕はニヒヒと悪戯っぽく笑いながら言った。

「分かったわ。本放送まで待ちましょう」

部長も楽しげに期待してくれている様子だった。

―――――――コンコン。

「はい?」

僕達が帰ろうと立ったときドアが叩かれ、一人の女の子が入ってきた。

「イッセー様はいらっしゃいますか?」

「あ、レイヴェルさん。どうかしたの?」

さっきまで輝いていた表情が何故か僕と視線を合わせた途端に

不機嫌なものになり、持っていたバスケットをこちらに渡した。

「こ、この局に次兄の番組がるものですから!」

バスケットの中身を見てみるとそこには、美味しそうなケーキがいくつか並んでいた。

「おいしそ~。あ、木場君!」

僕は木場君に頼んで小さなナイフを作って

もらってケーキを一口食べるととても美味しかった。

甘さもあってイチゴの甘酸っぱさもあり生地のふんわり感も

あってめちゃくちゃ美味しかった。

「めちゃくちゃ美味しいよ! また今度作ってね!」

僕がニコニコ笑いながら彼女にそう言うと彼女は顔を真っ赤にして

嬉しそうに笑った。

「そ、そうですか……次のゲームも頑張ってください!」

そう言って嬉しそうに帰っていった。

 

 

 

 

 

 

ちなみに余談なんだけど、数日後に撮ったものが

届いて中身を見てみると僕はその中身に感動した!

きっと部長も喜んでくれるはず!

 

 

 

 

 

 

 

「プハ~」

僕はゲームが近いということもあり結構遅くまで練習をしていた。

その練習も切り上げてお風呂に入り今はジュースを飲んでリラックスしてる。

夏休み中に大豪邸になった兵藤家は凄いことになってるんだけど両親は喜んでるから良いか。

僕は空になった缶を捨てて部屋に帰ろうとすると向かいにある大広間の明かりがついていた。

少し扉が開いていたので見てみると、ゼノヴィアさんが練習用の剣をふるっていた。

「イッセーか?」

僕の気配を感じたのかゼノヴィアさんが剣を振るうのを止めてドアの方へ顔を向けてきた。

「あ、うん。お邪魔だったかな?」

「いや、丁度終わろうとしていたところだ」

ゼノヴィアさんは練習用の剣を壁に立てかけ、床に座って話し始めた。

「私は木場よりも弱いからな」

ゼノヴィアさんは表情を暗くして俯いた。

「……木場君は木場君だしゼノヴィアさんはゼノヴィアさんだよ」

それから二,三個話をしていると時間も時間なので切り上げることにした。

「ハハ、なんだかイッセーと話していると

張りつめていた物が無くなったよ。ありがと」

ゼノヴィアさんは僕の頬にキスをして部屋から出ていった。

僕は突然の事に頬をさすることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

「そろそろ時間ね」

僕たちは深夜、駆王学園に集まっていた。

アーシアさんはいつもの通りシスター服、ゼノヴィアさんは露出が

少し多めの黒い服、他の僕たちはいつもの夏服。

そして全員が魔法陣内に入ると輝き始め、転移が始まった。

するとアーシアさんが僕の手を不安そうに握ってきた。

僕は何も言わずにそのまま強く握ってあげた。

アーシアさんは誰にもあげないよ。

 

 

 

 

 

 

 

たどり着いたのはギリシャなんかにありそうな神殿がある広い場所。

だけど部員の皆は首を傾げていた。

「おかしいわね」

部長がそういったとたんに僕たちのあたりをいくつもの魔法陣が現れて

かなりの数の悪魔が転送されてきた。

「顔ぶれからみるにカオスブリゲートの旧魔王派に傾倒している者たちね」

つまりテロって訳すか。

「偽りの魔王の血筋を持つグレモリーよ、ここで死ぬが良い」

無謀な一人が早速飛びかかってきたけど僕と木場君の攻撃で一瞬で散った。

「死ぬのはお前たちだ」

「部長はやらせないよ」

部長を護るように剣をもった木場君と籠手を出した僕が立っていた。

「キャッ!」

悲鳴! アーシアさん!

アーシアさんの方向を見るけどそこにはいなかった。

「イッセーさん!」

上から聞こえてきて上を見るとそこにはディオドラに

捕まっているアーシアさんがいた。

「やあ、アーシア・アルジェントは貰」

――――――ドォォォォォォォォォン!

目の前のあいつが言いきる前にアスカロンを持ったゼノヴィアさんと

僕の魔力の弾が彼に襲いかかるけど宙を舞うようにしてかわされた。

「これだから薄汚いドラゴンは嫌いなんだ」

そう言ってどこかへと消え去った。

辺りにいる悪魔たちの手元が輝き始めた。

『Boost!』

「邪魔をするなぁぁぁぁぁぁぁ!」

「落ち着いてイッセーくん!」

「その通りじゃぞ。赤いのよ」

部員の誰でもない声に僕は驚いて、辺りを見回すと少し離れたところにオーディン様がいた。

「お、オーディン様!? 何故ここに」

「まあ、アザゼルに言われての。ゲームが

乗っ取られたんじゃ。まあここは老いぼれに任せい」

僕たちはオーディン様のお言葉に甘えて神殿に走っていった。

 

 

 

神殿の中は広大な空間だった。

ずっと奥まで続いている感じがする空間。

そして前方にはフードをかぶった女性が十人。

『やあ、君たち。よく来たね、僕は一番奥にいるからさ。

無くなったゲームの続きと行こうか。それぞれの戦いで使った駒は

僕のところに来るまで使用不能、どうだい?』

どこからともなくディオドラの声が空間に響いてきた。

「良いわ、あなたの戯言に付き合ってあげるわ!

イッセー! ギャスパー! ゼノヴィア!」

『はい!』

最初に出るのはこの三人だ。

「はい、ギャスパーくん」

「ぺろ」

僕は少し、指の腹を切って血を出すとギャスパーくんが

僕の血を舐めさせると胸がドクンと打ったのが分かった。

双眸の赤色は怪しく輝き始めていた。

「じゃあ、行こうか」

―――――ダッ!

スピードのあるルークの人がゼノヴィアさんに向かっていった。

「私には友と呼べるものがいなかった」

ゼノヴィアさんは相手の攻撃を避けながら独白を続けている。

「だが、アーシアという友人ができてからは毎日が楽しかった!

そんな友人をさらった貴様らを私は許さん! デュランダル!

私の親友を助けるべく力を貸してくれ! デュランダァァァァァル!」

ゼノヴィアさんの叫びに呼応して聖なるオーラが増大していき

何もしていない僕たちの皮膚をちくちくとさして来ていた。

「行くぞぉぉぉぉぉ!」

デュランダルとアスカロンを前でクロスした彼女は思いっきり

振るうと凄まじい衝撃波が放たれ戦車ルーク2人を巻き込み神殿の半分以上を消し去ってしまった。

………こ、怖いね。

「んじゃ、僕たちも行くよ!」

「はい!」

ギャスパーくんはコウモリに変化し、広い空間を飛び回り始めた。

「まあ、ひとまず喰らえ!」

僕はギャスパーくんに当たらないように

籠手から何発もの魔力の弾を放つと彼女達は翼を出して上に羽ばたこうとしていた。

その瞬間、彼女たちの時間と弾の時間が止まった。

コウモリの目が赤く輝いていた。

「ナイスだよ! ギャスパーくん! 止めと行くよ!」

『Expliosion!』

僕は高速で移動しながら時間を止められている彼女たち全員に拳を叩きこんでいく。

そして最後に大きな魔力の弾を放ち時間を再生させれば、後は簡単なもので連続して大爆発が起きた。




この作品はどこまでかこう……完結までって言われたら
確実にどっかで矛盾が発生する……キリが良い12までにしようかと
ただ今考え中。


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Life42

兵士八名と戦車二名を倒し、完勝した僕らは奥を進んでいると

数人の相手が待ち構えていた。

「そうね、二人のナイトは祐斗が、クイーンは私と朱乃で行くわ」

おぉ! 二大おねえさまが並んだよ!

「あらあら、私だけでも十分ですわよ」

「いくら雷光を覚えたからと言って油断は禁物よ。ダメージを受けるより

ここは二人で確実に言った方がいいわ」

朱乃さんは余裕の表情でそう言うが部長は冷静に朱乃さんに言って

半ば、無理やり2人で行くことを認めさせた。

確かに油断大敵っていう言葉があるくらいだしね。

すると小猫ちゃんが僕の服を引っ張ってきた。

「どうしたの?」

「兵藤先輩、朱乃さんをパワーアップさせる言葉があります」

僕は小猫ちゃんに耳打ちされた言葉に少々恥ずかしさがあった。

「言っちゃってください」

小猫ちゃんの真剣な表情に僕ははずかしながらも言う事にした。

「朱乃さ~ん。もしもあいつらに勝ったら僕とデートしましょう!」

その途端に魔力が凄まじいほどにまで膨れ上がった。

な、何これ。まさしく魔法の言葉だね。

「……うふふ! ハハハハハハハ! イッセーくんとデート!

その為ならばこの姫島朱乃! どんな相手でも勝ちますわ――――!」

―――――バチバチバチバチ!

おぉ! 朱乃さんの全身から雷が迸った! すごいよ!

「そ、そんな!私には言ってくれないの!?」

部長は悲しそうな表情を浮かべ僕の方を振り返る。

「ふふ、これが私とイッセーの愛よ」

朱乃さんは勝ち誇ったような表情を浮かべ、部長にそういう。

「愛!? そんな事よりも貴方今さっき呼び捨てしたでしょ!?」

朱乃さんの言ったことにイラッときたのか部長は慌てて朱乃さんの方を

振り返り言いあいを始めた。

あ、あの~お二人さん?

敵さんが怒ってらっしゃいますが。

「イッセーを呼び捨てていいのは私だけなの!」

「貴方達いつまで!」

「「うるさい!」」

部長の魔力と朱乃さんの雷光をもろに喰らったビショップとクイーン

のお二方はプスプスと煙を上げながら床に倒れ伏していた。

うん、多分もう再起不能だと思う。

2人の口論に口をはさんだが故に起こった悲劇……お悔やみ申し上げます。

でも、彼女たちの口論は収まらず!

ひと先ず彼女達はアーシアさんを救うのが先だという事に気づいて

ひとまず! ひと先ずは休戦として奥に向かった。

……正直この二人の喧嘩は戦争規模だよ。

 

 

 

ディオドラさんのナイトが待っているであろう神殿内部に入ると

そこには見たくもない奴がいた。

「フリード・セルゼン!」

そこにいたのは白髪で、狂った正義に走った神父がいた。

「やあやあ、俺ちゃんてばしっかりきっかり生きてたわけっすよ」

フリードは何やら口をもごもごさせて何かを吐きだした。

それは指だった。

「ああ、ここにいた騎士は俺ちんが食っちった。まずかったけど」

すると小猫ちゃんは鼻を押さえながらこういった。

「その人、人間辞めてます」

「たっくよー! 前の件でアザゼルからはリストラくらっちって

俺を拾ったのが禍の団でさー! 俺っちこんなのになっちったよー!」

神父の腕から化け物の腕が生え、背中にはコウモリのような大きな翼に

下半身はミノタウロスの様な下半身が生えた化け物になっていた。

「ところでさ~あいつの趣味知ってるかい? 女遊びなんだけどさ!

これがおっかなびっくりな内容でさ! そいつらの女はみ~んな熱心な

信徒やら各地の聖女さんだってさ! 下僕も全員そう! 元信徒や元シスターばっかし!」

……おい、ちょっと待てよ。そんな事言ったら

「じゃ、じゃあ、アーシアさんは」

僕の言葉にフリードが嘲笑を浮かべる。

「元をただせばアーシアちゃんが魔女になったのはディオドラのせいなんだぜ~。

ストーリーはこうだ。ある日、シスターとセ○クスをするのが好きすぎてたまらない

坊ちゃんはチョー好みのシスターちゃんを見つけちゃいましたがその子を教会から

離すのにはかなり骨が折れる。そこで神器に詳しい奴に聞くと

悪魔すら治す神器だって聞いてその坊ちゃんは自分で傷をつけて治してもらったのさー!

そんで教会に言いふらしておいだされたお譲ちゃんを拾えばエンドだじぇ!」

ちょっと、待ってよ! それじゃあ、アーシアさんは!

僕の頭の中にあの、何を考えているか分からない笑みを浮かべた

ディオドラの顔が浮かんできた。

「ディオドラァァァァァァァァァァァァァァァァ!」

『Boost!』

倍加がなされると、辺りの地面にいくつものヒビが走った!

「落ち着くんだイッセーくん。あいつはディオドラじゃない」

僕が感情のままに掴もうとするが彼の目を見て思いとどまった。

彼の眼には怒りと憎悪があったからだ。

「あのうるさい口は僕が塞ごう」

剣をもった木場君がフリードと対峙した。

「てめえの所為で俺はこんなんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

フリードが動き出した瞬間、聖魔剣を持った木場君の姿が消え、

肉を切り裂く音が聞こえ、鮮血が宙に舞った。

斬られた両手、両足は何回か回転した後、ボトッと嫌な音を

立てながら地面に落ちた。

そうだ……アーシアさんの真実を知って怒っているのは僕だけじゃないんだ。

「まだ人間だった時の方が強いかな」

「あ、あり得ね」

四肢を斬られたフリードは未だに、生きて喋っていた。

木場君はフリードの話など、耳にも入れたくないのか何の躊躇もなく

剣を頭に刺し、殺した。

 

 

 

 

フリードを倒した僕達は奥へと進んでいくと神殿の最深部に辿り着いた。

そこには大きな装置があり、その中心にはアーシアさんが貼り付けられている。

「アーシアさん!」

「やあ、ようやく来たかい」

装置の横から屈託のない笑顔を振りまくディオドラが出てきた。

何も知らなければ好印象を持ったけど今の僕には逆だった。

しかもよく見てみるとアーシアさんの目には涙の跡が見えた。

「まさか、事の顛末を話したのか」

「ああそうとも! その時の表情は最高だったよ! 君たちにも見せたかった!」

ディオドラは笑みを浮かべる……だけど、その笑みは

余りにも濁った汚い笑みだった。

「アーシアさんは君を助けたんだよ」

「ああ、そうだね。でもそれは僕のシナリオ通り」

「君のせいでアーシアさんは地獄を見たんだぞ!」

「そうだね。あの時、堕天使レイナーレに殺されたアーシアを

駒を与え転生させ目の前で殺す。そうすれば彼女は僕に落ちる

予定だったんだ。でも君が倒してくれたせいでガタくずれだ」

さっきからあのニコニコしてる顔を潰したくて仕方がない。

でも、そんな事をすれば彼女はきっと僕を怒る。

だから、僕は。

「彼女の心を支えているのは薄汚い君だ。君さえ彼女の前で

殺す、もしくは死体を見せればお終いだ」

目の前にいるこいつを!

「あ、寝とるのも良いね。もしくは泣き叫ぶ彼女を無理やり」

「うおおあぁぁぁぁぁぁ!」

『Welsh Dragon バランスブレイカー!』

僕が赤色の鎧を身に纏うと魔力の増大によって周りの地面に大きな亀裂が入ると

とともに神殿が大きく揺れた。

「お前の運命は僕が決める!」

あいつを倒す! 殺しはしない! それが彼女の望みだ!




バンバン更新していくぜ! なんたって、12巻の内容まで
書きためがあるんだから!


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Life43

「全く薄汚いバランスブレイクはさらに汚いな。

まあ、良い。蛇を飲んだ僕にしたら君など瞬殺だ」

そう言いディオドラは手をかざし、魔力弾を放とうとする。

「遅い!」

僕は彼が反応できないほどの速度で近づき、

ディオドラが魔力弾を放つ前に腹部を思いっきり鋭く打ちこんでやった。

「がはっ!」

体を九の字に曲げて顔を苦悶の表情に染め上げて、奴は血反吐を吐きながら壁に激突した。

激突した壁は大きく、凹んだ。

「瞬殺って聞こえた気がしたけど、気のせいかな?」

ディオドラは腹部を抑えながら、立ち上がるが奴の顔には先程の余裕の表情はなく焦りがあった。

「くっ! こんなことで! 僕は上級悪」

また奴が言いきる前に再び高速で移動して胸のあたりを蹴り飛ばしてやった。

多分鎖骨辺りは折れたんじゃないかな?

「がはっ! はっ! はっ!」

ディオドラは苦しそうに息をしながらも僕を睨みつけ、立ち上がった。

『相棒、お前はもう何ものにも止められん。やってやれ』

「ドライグ、カウント。プロモーション、ナイト」

『Start! High speed time!』

「君の様な下級で転生悪魔ごときにこの気高」

僕は奴が言いきる前に、高速で近づき一発蹴りを入れて

奴を空中に蹴りあげると、まるでスローモーションのような動きの遅さだった。

ドライグも何かを言ってるみたいだけど、何を言っているのか分からない。

僕はそのまま連続で、それもマシンガンの様に蹴りを何発も打ち込んでいった。

籠手から倍加する音声も聞こえてくるけどあまりに遅くて聞き取りにくかった。

僕は辺りに小さな魔力の弾をいくつもディオドラに向かうように放出して、

時間を元に戻した。

――――――ドドドドドドドドドドドド!

「がっ! ごうぇ! うげわぁあわ!」

高速移動中に蓄積されたダメージが、ようやくディオドラ本人が感じることが

出来るようになり、爆発音が何度も鳴り響いたあと彼は壁に激突するまで

吹き飛んだ。

「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

奴は叫びながら立ち上がり、無限に近い魔力の雨を僕に放ってきた。

でも僕はそんなもの気にせずに立ち止まったまま全てを受け続けた。

「なんだ? 本物の雨なの? 曲芸師にでもなるき?」

「そ、そんなバカなぁぁぁ! 僕はオーフィスから蛇を貰ったんだ!」

僕は噴射口から魔力を噴射させディオドラに近づくと

魔法壁みたいな物を目の前に展開してきた。

「邪魔」

僕は手を横なぎに振るっただけで壁は粉砕された。

そのまま僕は近づき顔面に一発、腹部に一発殴ってやった。

「ぐわっ! がはっ!」

もう一発殴ろうとすると、また魔法壁が出てきて相殺されそうになった。

「ほら見ろ! 僕の方が魔力は上なんだ! ただのパワー馬鹿の

君なんかに負けるはずが!」

『BoostBoostBoostBoostBoost

BoostBoostBoostBoostBoost

BoostBoostBoostBoostBoost!』

噴射口から凄まじい勢いで魔力が噴き出され、勢いが上がっていき

遂に魔力の壁を殴り破り、顔面を綺麗に捉え柱を何本も折りながらぶっ飛んでいった。

「自分の力を過信しすぎだよ」

 

 

 

 

 

 

 

あいつは未だに生きている

……まあ、殺しはしないって誓ったから当たり前だけど。

奴に近づいて胸倉をつかんでこう言ってやった。

「二度とアーシアに近づくな。もしも同じことを別の人にもやってみろ」

近くにあった一番ぶっとい柱をたった一発の拳で粉砕してやった。

するとディオドラは体全体をがたがたふるわせて瞳には涙を溜めていた。

僕はディオドラを離すとただ単に地面にうずくまって

ガチガチ震えるだけだった。

しかし、ディオドラに近づく存在がいた。

「イッセー、今この場で殺さなければまた近づくかもしれない」

ゼノヴィアさんだった。

彼女の目はひどく冷たく凶暴なものになっていた。

「もう十分だよ。二度としないと誓ったんだ。だよね?」

僕が奴の方を振り向くと首を縦に折れるんじゃないかと

思うくらいに激しく振った。

「んじゃ、アーシアさんを助けるかな」

僕はアーシアさんに近づいていき足枷を取ろうとする。

……あ、あれ? 取れないな。

何度か強めに枷を叩いてみるけど一切、傷などは入らなかった。

「無駄だ。それは一度限りのものだが、逆にいえば一度使えば

絶対に外れない。停止させるにはアーシアの神器を発動させるしかない」

奴は口数を少なくして淡々と話し始めた。

「結界系最強の神器である絶霧の使用者が作ったものだ」

「能力とこの結界の発動条件は」

木場君が問いただす。

「条件は僕か、ほかの関係者の起動合図、もしくは僕が倒されたら。

能力は枷につないだ者…つまりアーシアの神器を増幅しリバースすること」

僕はそれを聞いたとたんにいやな予感がしてたまらなかった。

それは木場君も同じだったみたいでまた問いただし始めた。

「効果範囲は」

「……このフィールドと観戦室にいる者たちだよ」

僕は必死に外そうとするけど一向に外れようとはしなかった。

「イッセーさん! 私ごと!」

「うるさい! 父さんも母さんもアーシアさんを

待ってるんだ! 僕は必ず君を無傷ですくってみせる!」

そう言うとアーシアさんは涙を流し始めた。

何度叩いても壊れる気配すらしなかった。

………仕方がない。

『Boost! Boost! Boost! Boost! Boost!

Boost! Boost! Boost! Boost! Boost!

Boost! Boost! Boost! Boost! Boost!

Boost! Boost! Boost! Boost! Boost!

Boost! Boost! Boost! Boost! Boost!

Boost! Boost! Boost! Boost! Boost!』

普段以上に倍加を行い、僕は彼女を拘束している結界に手を置いた。

「何をするつもりだ赤龍帝」

「……壊す」

「だからさっき」

「不可能なんか超えてやる!」

『Transfer!』

僕は譲渡の力を発動させ、今僕の中にある大量の魔力を結界に全て

与えると許容量を大きく超えたのか、結界の至る所にヒビが走り、

あっという間に砕け散った。

「バ、バカな……装置の許容はかなり大きいはずなのにそれを超えるなんて」

まあ、魔力が大きくなるのが僕の個性みたいなものだし……

でも、良かった、アーシアさんも無事だし皆も無事だ!

「みんな! 帰ろう!」

僕がそう言った後、皆が一様に笑みを浮かべて神殿の出口に

向かって歩き始めた。

アーシアさんも僕の後ろについて歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

突如、辺りを輝きが支配した。

目の視力が回復してアーシアさんがいたところを見るけど彼女はいなかった。

「アーシアさん?」

誰もいなかった。




更新はここで終了。


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Life44

僕たちは今何が起きているか分からなかった。

イッセーくんが枷を破壊してアーシアさんを助けて、治療を終えて

皆で帰ることになって……そしたらアーシアさんがいなくなった。

「ロンギヌスで創りし物、ロンギヌスで散る、か。

霧使いめ、手を抜いたな。計画の再構築が必要だ」

誰だ?

声のした方向へ視線をやるとそこには見覚えのない男性がいた。

「誰?」

部長がその男に問いただす。

「お初にお目にかかるサーゼクスの妹気味よ。私はシャルバ・ベルゼブブ。

偉大なる真の魔王、ベルゼブブの血を引くものだ。ディオドラ、私が力を

貸してやったのにも拘らずこのざまか」

「た、助けておくれシャルバ! 君の力があれば!」

ディオドラはシャルバという男に必死に助けを求めるが―――――

―――――ピッ!

シャルバの指から放たれた光が容赦なくディオドラの胸を貫き

彼は床に倒れ伏す間もなく霧となって消滅した。

やはり、アーシアさんは……

既に皆気づいているみたいだった。

ゼノヴィアさんは怒りで体を震わしている。

「さてサーゼクスの妹君よ。貴公には死んでもらう。

理由は勿論、現魔王派の血筋を絶やすためだ」

「フラシャラボラス、アスタロトそしてグレモリーを殺すのね」

「ああ、不愉快極まりないからな」

部長は激高し紅色のオーラを纏わせ怒りに体を震わしていた。

それは僕らも同じこと!

僕たちはそれぞれの得物を取り出して構えた。でも、

「アーシアさん? ねえアーシアさん」

イッセーくんがフラフラと歩きながらアーシアさんを呼んでいた。

「ほら、一緒に帰ろうよ。体育祭で一緒に二人三脚するんだしさ。

他にもやることいっぱいあるんだよ? 文化祭もあるんだ。楽しいよあれ。

皆、一緒に楽しめるんだ、母さんもお弁当作るって言ってるし、父さんなんか

有給も取るって言ってるんだよ? ねえアーシアさんどこにいったの? ねえ」

みていられなかった。

その光景を見てギャスパーくんと小猫ちゃんが嗚咽を漏らしていた。

朱乃さんも顔を反らして涙を流し、部長はイッセーくんを抱きしめていた。

僕もこみあげている物をこらえきれなかった。

「部長、アーシアさんがいないんですよ。父さんと母さんも

待ってるんですよ。先生だって待ってるんだ」

部長は彼の頬を撫でていた。

「許さん! 斬り殺してやる!」

ゼノヴィアさんが聖剣を持ちシャルバに斬りかかっていった。

「無駄だ」

シャルバは2本の聖剣を光り輝く障壁で防ぐと、

ゼノヴィアさんの腹部に魔力弾を当てて吹き飛ばした。

「………アーシアを返せ……アーシアは私の友人なんだ」

吹き飛ばされた衝撃で離してしまった、聖剣を床に這いながら取りに行っていた。

シャルバはイッセーくんに言い放った。

「下劣なる転生悪魔+汚物同然のドラゴン。全く姫君の感覚は分からない」

シャルバはイッセー君をまるで汚いものでも見るかのような目で見ながらこう言った。

「そこの赤い汚物、あの娘は死んだ。次元のはざまに送られその体は消滅した」

イッセーくんの視線がシャルバをとらえた。

その時だった。

イッセーくんの龍の腕が膨らみ、まるで巨人の腕のようになり

腕が地面に突き刺さった!

彼は、部長を押しのけ立ち上がった。

『シャルバとか言ったな……この憎悪、この殺意。誰にも止められん。

今すぐ逃げることをお勧めしよう。そうでなければ……存在は無くなる』

シャルバに警告をしたドライグはそのまま、僕たちにも警告を始めた。

『グレモリー卷属よ。今すぐここから離れろ。今の相棒は

前回の時とは違う。今のこいつには……善はない。悪だけだ。

貴様の声は聞こえないぞ』

「イ、イッセー?」

部長は彼の手を取るけど、イッセー君はそれを振り払った。

 

 

 

 

 

 

 

『貴様の大切なものを消した存在を貴様はどう思う』

許せない……許せない。でも、相手は旧魔王の血を継いでいるもの……

この場にいる皆で同時にかかっても勝てるか分からないよ。

僕は魔力はもう空っぽだし、皆だってディオドラの卷族との戦いで

魔力を消費しているんだ。

『ならば我らが力を貸そう。これを使えばお前は強くなる』

そう言われ、僕は言葉のままに黒いものを被っている彼らの

差し出す手を握り締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

彼の叫びとともに赤いオーラが彼を包み込み、

彼の魔力がいつも以上に量が凄まじいものになった。

イッセーくんの口から呪詛のごとき、呪文が紡がれていく。

それと同時に老若男女入り混じった声が聞こえてきた。

『我目覚めるはーーーーーー』

<始まったね><ああ、始まった>

『覇の理を神より奪いし二天龍なりーーーーーー』

<いつだって、そうでした><そうじゃな>

『無限を嗤い、夢幻を憂う』

<いつとて力でした><いつだって愛だった>

『我、赤き龍の覇王となりて』

<いつだって世界は破壊の選択を選ぶ!>

イッセーくんはその身に鎧を纏うが鎧の色が

赤い色とは言えないような、どす黒い色に変質していく。

背中にはドラゴンの翼が生え、口には鋭い牙が生えた小型のドラゴンになった。

『Juggernaut Draive!』

くぐもった音が響いた瞬間、凄まじい量の魔力が

辺りに放出され、イッセー君の全ての物がつぶれていく!

「ぐぎゅあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

アーシアァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」

獣の叫びにも似た咆哮をあげてイッセーくんは

四つん這いになり翼を羽ばたかせる。

空を切る音! 僕の目でも追いきれない!

「ぐぁぁ! き、貴様ぁぁぁ!」

声がした方向を向くとそこには片腕にかみついているイッセーくんがいた。

「おのれぇぇぇぇ!」

シャルバは空いている片腕で光を作り出しぶつけようとするけど、イッセーくんの

龍の腕から別の龍の腕が出てきて、その光ごとシャルバの腕を握りつぶした。

「ぐぁぁぁぁぁ!」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

絶叫を上げ、シャルバが空中へと避難しようと翼を生やした瞬間、

イッセー君はシャルバの翼を両手でつかむと引っ張り始めた。

「あぁぁぁぁぁ! や、止めろぉぉぉぉぉ!」

辺りにシャルバの悲鳴と肉がちぎれる音が響いた。

「ぐあぁぁぁ!」

「うおおぉぉぉぉぉぉぉ!」

イッセー君は翼を無理やり剥ぎとり、シャルバを蹴とばした。

剥ぎとられた翼に炎が灯り、一瞬にして、燃え尽きた。

「貴様ぁぁぁぁぁ!」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

籠手からイッセーくんの叫びとともに巨大な球状の魔力が作り出され、放たれた。

で、でか過ぎる!

「こ、こんなもの!」

シャルバは投げられたものを受け止めようとするが、シャルバの腕が

触れようとする寸前に球がいくつにも分裂しさまざまな方向から

シャルバに襲いかかった。

「ぐぁぁぁぁ!」

シャルバは全身から鮮血を噴き出して苦悶の声をあげた。

「貴様! 死ねぇぇぇぇ!」

シャルバは大質量の魔力弾をイッセーくんに向かって放った。

で、でかい!

 

 

 

 

「おぉぉぉぉぉ!」

しかし、放たれた魔力弾は避けられ、先程、龍の腕で潰された腕が今度は肩から切断された。

「ごぎゅあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

イッセーくんはシャルバから離れ、口を大きく開けて上を向くと

どす黒い色をした魔力が溜められていきそれらが徐々に増大していった。

「こんな所で死ぬわけにはいかんのだ!」

シャルバは残った足で魔法陣を描こうとするがその足が停まる。

「……停めたのか!? 私の足を!」

鎧の宝玉が赤色に輝いていた。

あれはギャスパーくんと同じ力!

『Boost! Boost!Boost! Boost! Boost!

Boost! Boost! Boost! Boost! Boost!

Boost! Boost! Boost! Boost! Boost!

Boost! Boost! Boost! Boost! Boost!

Boost! Boost! Boost! Boost! Boost!

Boost! Boost! Boost! Boost! Boost!』

『Longinus Smasher!』

神殿内にいくつものくぐもった音声が重なって鳴り響いた。

そして溜められていた魔力弾が徐々に大きくなっていく。

「部長! ここは危険です! 一旦退却しましょう!」

「嫌よ! まだイッセーが中に!」

「すみません!」

僕は部長を抱え、朱乃さんがゼノヴィアさんに肩を貸し

小猫ちゃんやギャスパーくんも後に続く。

「イッセー!」

「おのれぇぇぇぇぇぇ!」

イッセーくんの口から発射された瞬間、神殿は一瞬にして消滅した。




久しぶりに書きためを見てみたら……効果音書きすぎてた。


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Life45

僕は聖魔剣を幾重にも生成しシェルターの様にするとそのなかに卷属達を避難させて

外の様子をうかがっていた。

神殿の崩壊する音が止んだのを確認すると剣を開放し外の様子を確認する。

……完全に神殿は崩壊していた。

例のロンギヌスで創られた結界も各所が砕けていた。

その時、瓦礫を吹き飛ばして出てきたイッセーくんは神殿だった場所に立ち

上を向いた。

「アァァァァァァァァ!」

悲哀がこもった叫び声をあげていた。

我を失ってもアーシアさんを失った悲しみは失わない。

するとイッセーくんがこちらを向いた。

「っ!」

どうしてだか知らないけど――――ただ単に友人にチラッと見られただけなのに

僕は無意識のうちに聖魔剣を作り出して構えた。

その瞬間、龍の腕が聖魔剣の刀身を掴んで剣ごと僕を押し込んできた。

「うあぁぁぁおぁぁ!」

「くぅ!」

僕はそのまま投げられ、かなりの距離まで飛ばされた。

皆、突然の事に何も出来なかった。

「おぉぉぉぁぁぁぁぁぁ!」

「きゃぁ!」

「うわぁ!」

イッセーくんは辺りに魔の波動を放出して辺りにいた皆を吹き飛ばした。

「イッセー! 止めなさい! 私よ!」

「うあぁぁぁぁぁ! アーシアぁぁぁぁぁぁ!」

部長の声も耳に届かずイッセーくんは龍の腕を部長に振り上げた。

この距離じゃ間に合わない!

 

 

 

 

 

 

「何やら凄いことになっているな」

「ヴァ、ヴァーリ!」

空間に穴が開き、そこから腕が出てきてイッセー君の龍の腕を掴んだ。

現れたのは白の鎧を纏ったヴァーリだった。

「おぉぁぁぁぁ!」

「ちっ! 美猴!」

「おう!」

ヴァーリはイッセー君の攻撃を避けて、美猴に言うと

美猴抱えていたものを部長に渡した。

「ア、アーシア!」

遠くからで顔までは分からないけど金色の髪をしていたのと

部長の声でアーシアさんだと分かった。

僕も急いで皆の所に行くと確かにアーシアさんだった。

その体には傷一つ付いていなかった。

「イッセー! アーシアよ! アーシアは生きてたのよ!」

部長はイッセーくんに抱いたアーシアさんを見せた。

良かった、これで彼の暴走も。

「おあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「え? イッセー?」

イッセーくんは急に叫び声を上げだしてヴァーリ君に襲いかかった!

「ちっ! 逆効果だったようだな」

ヴァーリはイッセー君の攻撃を避けながら鬱陶しそうに舌打ちをした。

「どういう意味だよ、ヴァーリ」

「簡単な事だ。こいつは初めはあの女を失ったことで暴走し

今はこいつらを傷つけたということで暴走してるんだろう」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「くっ!」

辺りに魔力が放出されて次々に大きなクレーターが地面に空いていく!

このままじゃ全滅だ!

「ヴァーリ! あの状態はどうやったら戻るの!」

「さあな! こいつが命尽きる頃には終わっているだろうな!」

ヴァーリは部長に叫び返しながらイッセーくんが振るう龍の腕をかわしていく。

「伸びろ! 如意棒!」

「うがぁぁぁぁ!」

イッセーくんは伸びてきた棒を翼で弾いて口から大きな魔力弾を吐きだした。

「あっぶね!」

美猴は身をひるがえして魔力弾を避けると、

向こうのほうで着弾した瞬間、広範囲に爆風が広がった。

な、なんて威力だ……この空間自体が揺れている!

「どうするんだ!? ヴァーリ!」

「ひとまずこいつを止めないと俺たちも危ないからな」

『Divid!』

「うぅ! げほぉ!」

ヴァーリが白龍皇の力を使った瞬間、いきなり口から

吐瀉物を吐きだして膝をついた。

「あぁぁぁぁぁぁぁ!」

「しまっ!」

イッセーくんは動けないヴァーリに向かって口から再び魔力弾を吐きだすが

その魔力弾はヴァーリに直撃する前に別の魔力の攻撃を受け消滅した。

「これはひどい」

「おいおい、暴走なんて御免だぜ」

突然現れた二つの声。一つは普段聞いている声、そしてもう一つは僕たち悪魔の

長の声……サーゼクス様とアザゼル先生が救援に来てくれた。

「お、お兄様! イッセーが!」

「ああ、分かっている。一刻も早く彼を止めないと死んでしまう」

「おい、ヴァーリ。今のあいつに間違ってもDividはするなよ。あいつの魔力の濃さ

半端ねえから取り込んだら一瞬でキャパを超え……その様子じゃしたな」

「それを先に言ってくれ。くらくらする」

ヴァーリはまるで二日酔いの状態に陥っていた。

「にしてもこれは骨が折れるな」

「あぁぁぁぁあぁぁぁ!」

目の前には口からだらしなく涎を垂らし四つん這いになってこっちを

睨んでいる小型のドラゴンと化したイッセーがいた。

「うあぁおぉあっぉあおぁおぉあぉあお!」

イッセーが叫び出したかと思えば右足が

ドラゴンの足になって地面を踏み砕いた。

「おいおい、まさか無意識のうちに代価を払ってんのか?」

「いや、それだと力が上がるはずだが上がっていない。つまり」

「ドラゴンに飲み込まれてるってのか」

「おぎゅぁぁぁぁぁぁぁあおあぉあぁぁぁぁぁ!」

「恨まないでくれ!」

襲いかかってきたイッセーにサーゼクスは滅びの魔力をぶつけて龍の腕を消滅させた。

「うおぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!あぁぁぁぁぁ!」

「な! 消滅させた腕が!」

消滅したはずの腕がトカゲのしっぽみてえに復活しやがった!

それに伴ってか魔力の量もさっき以上に膨れ上がってやがる!

「あぁぁぁ!」

「ちっ!」

口からこれまた巨大な魔力弾を吐きだしてきたのを期に俺達は

二手に分かれてそれぞれ攻撃し始めた。

「さっさとこっちに帰って来い!」

俺は光の槍で死なない程度にイッセーに突き刺そうとするが赤い鎧に

阻まれ傷一つ付けられなかった。

「固えなおい!」

一度、離れてから何本も槍を作りイッセーに投げつけるが

鎧にある宝玉が怪しく光全ての光の槍が停止した。

「くそ! 赤龍帝のスペックはそこ知らずかよ!」

イッセーは上を向いたかと思うと口のあたりに周りから魔力が集まって来て

一つの巨大な球になっていった。

こんな所であんなもんぶっ放されたらこの空間ごと俺達まで消えるぞ!

「おいおい、勘弁してくれよ」

「うあぁ!」

イッセーの口から放たれたそれは辺りにいた奴ら全員を吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ、イタタタタ」

一瞬、イッセーくんのあたりから輝きが発せられたかと思うとその瞬間に

爆風で吹き飛ばされた僕は受け身すら取れずにそのまま地面に倒れていた。

「み、皆は!」

辺りを見回すと僕たちは紅色の魔力に包まれていて、皆無事だった。

「ふぅ、危なかった」

どうやらサーゼクス様が滅びの魔力を広範囲に広げて僕達を護ってくれたみたいだ。

「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

魔力が晴れると目の前には天に向かって咆哮を上げているイッセー君が見えた。

「いっつ~。どうすんだよヴァーリ!」

「ちっ! いつの時代も暴走は歌によって止められてきた。

だが赤龍帝なんていう歌は存在しない」

「お―――――い!」

するとどこからか声が聞こえてきた。

僕の近くに降り立ったのは天使のイリナさんだった。

何やら超巨大な荷物を持って。

「うわぁ! 聞いていたけど凄いことになってるわね」

「ああ、それでその荷物は?」

「イッセーくんを止められる道具よ!」

僕が尋ねるとイリナさんは自信満々に答えた。

それを聞いた皆はほっと安堵したような表情になっていたが

今の彼を止められるものなんてあるのか?

「そ、それは?」

「じゃじゃ――――ん! 天界中からかきよせてきたアイスクリームよ!」

袋の中身は様々な種類のアイスが入っていた。

………期待した僕が馬鹿だった。

「そんなものでいけるのか?」

アザゼル先生が若干不信感を抱いていた。

「むぅ! 信じてないわね!? イッセー君のアイスクリームに

対する愛情は凄まじいのよ!」

そう言ってイリナさんは一個アイスを部長に手渡した。

「え、えっとこれは?」

「イッセー君に食べさせてあげるのよ! さあ!」

いや、そんな自信ありげに言われても。

「……分かったわ」

部長!?

「可能性があるのならば私はそれにかける!」

部長はいたって真剣な顔でおっしゃってるけど周りにいる皆、

特にアザゼル先生とサーゼクス様、ヴァーリ、美猴は呆れてものも言えなかった。

部長は気合いを入れるとアイスとスプーンを持ってイッセー君に近づいていった。

 

 

 

 

 

「あぁぁぁぁおあぁぁぁぁぁ!」

「さあ、イッセー! 貴方の大好きなアイスよ!」

そう言ってひと口分、スプーンですくってイッセー君の口のあたりに持っていった。

「………ア……イス」

先程まで、誰の声も聞かなかったイッセー君が初めて反応した。

……まさか、アイスで反応するなんて。

「そうよ!アイスよ! まだまだいっぱいあるから安心して食べなさい!」

部長のその一言で吹っ切れたのかイッセー君はアイスを食べ始めた。

「イッセー。もう良いのよ? アーシアはちゃんと生きてるわ。

私たちも無事。だからこっちに帰ってらっしゃい」

「……ぶ……ちょ……う」

直後、イッセー君の鎧がパキンと音をたてて砕け散り元の姿に戻って

部長の膝に落ちるようにして眠った。

……アイスって凄いんだね。

恐らく、ここにいる皆がそう思ったに違いない。




こんにちわ


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Life46

「………………ん」

「イッセーさん!」

目を覚まし、体を起こすと泣いたアーシアさんが僕に抱きついてきた。

その一瞬で、今まで何が起きていたのかがフラッシュバックのように僕の頭の中を

何往復もした。

そうか……僕はみんなにかなりの迷惑を。

「お、やっと起きたか。お前が寝てた間にいろいろあったんだが……まあ、

そこら辺は帰ってから話す」

どうやら、僕が眠っていた間にいろいろとあったらしい……。

「すみません……みんなに迷惑を」

「良いの……貴方が無事で良かった」

部長の言葉を聞き、辺りを見渡すとみんな目に涙をためて

喜んでくれていた。

「アーシア」

「は、はい」

突然、呼び捨てで呼ばれたことに驚きながらもアーシアは僕の方を見てきた。

「君は僕が護る。他の奴なんかに触れさせない」

「……はい!」

綺麗な金色の髪を撫でながら、そう言うとアーシアは

眼から涙を流しながら笑みを浮かべた。

「さあ、皆! 帰るわよ!」

その一言で、皆が立ち上がって帰宅した。

その後、体育祭にもギリギリ間に合い、僕とアーシア、そして

オカルト研究会のみんなは大いに楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~疲れた。死ぬかと思ったぜい」

「そうだな。流石に魔力がばかみたいにある奴と戦うのは骨が折れる。

ところであいつはどうなった」

「ああ、聞いたところによると死にかけの状態で生きていたみたいだぜ。

ま、腕は抉れていたし、とてもじゃないけどカオス・ブリゲートのやつらを

引っ張っていくほどの求心力はもうなくなったな。それに旧魔王はもうダメだ。

核となる奴らを失い過ぎた」

「まあ、そうなるな。やつを……赤龍帝を嘗めてかかったつけが

奴らにそういう形で降り注いだだけのこと」

「でも、またあいつらお前に話を持ちかけんじゃねえの?」

「そうなったら今度こそ、活動ができなくなるように跡形もなく

消し飛ばすだけさ……ただ、その前にあいつが動きだすと思うがな」

「あ~。おれ、あいつ嫌いだ」

「奇遇だな。おれもあまり好きじゃない。頭の中に描いているものは

相当なものだが……やり方があまり気に食わない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「曹操。そろそろじゃないのか?」

「ああ、準備は整った。ジークフリート、ジャンヌ。おれたちの……人間の

底力というものを悪魔と天使に見せつけようじゃないか。いつまでも人間を

下に見ていたら痛い目に会うということを奴らに思い知らせるんだ。

この最強のセイグリッドギア……トゥルーロンギヌスを使ってな。

それと、赤龍帝にはまだ手を出さない方がいい」

「そう言うと思ってたわ。曹操」

「彼は異質だ。俺の予想じゃ彼は……今以上に化ける」



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Life47

『ふはははははははは! ついに最後だ! 赤龍帝よ!』

見るからに悪役の怪人の格好をした敵が高笑いをしていた。

『言った筈だ! 俺は悪を許さない! バランスブレイク!』

ヒーローは悪にそう言い放つとバランスブレイクをして真っ赤な鎧を

身に纏い敵に殴りかかっていった。

おぉぉぉぉぉぉぉ! こ、こんなにも完成度が高いとは!

以前テレビ局で収録した番組の本放送を見て僕は思わず、涙を流してしまった。

「ぐす! 今まで頑張ってきた甲斐があった!」

「イッセーさん! 一生ついていきます!」

僕の隣ではギャスパーくんもこの素晴らしい価値が

分かってくれているのか目をウルウルさせている。

「ギャスパーくん!」

「イッセーさん!」

「「うわぁぁぁぁぁん!」」

僕たちはおお泣きしながら抱き合った。

まあ、分かる通りこの主人公は僕――――兵藤一誠が

主人公の特撮番組が今冥界で絶賛放送中なのである。

「……始まってすぐに大人気みたいです。特撮ヒーロー『仮面の戦士、赤龍帝』」

膝上に座っている小猫ちゃんが詳しく解説してくれた。

なにげに詳しいよね、小猫ちゃん。

「……視聴率は余裕の50%越えで早速子供たちが真似してるみたいです」

大人気なのはこの前に聞いて知っている。

あらすじは伝説の龍と契約した若手悪魔の僕が悪魔に敵対する

敵を倒していくというものである。

大人から見れば単純なんだけど主な年齢層は子供たちだからね。

ちなみに著作権などそこら辺は全部グレモリー持ちである。

これでまた稼ぎ始めたとか。

『喰らえ!ドラゴンキーック!』

主人公が魔力を流し込んで赤色に輝かせた足で敵にキックを入れる。

これまた素晴らしい再限度である。

「このブーステッド・ギアの再限度はすごく高いよ」

「そりゃそうだもん。初回だけ僕で撮ったから」

『はぁぁ!?』

「お、おいイッセー。それまじか?」

先生がめちゃくちゃ真面目な顔で僕に聞いてきた。

「勿論です!夢だったんですよね~。特撮番組に出るのが」

「イッセーさん流石です!」

うんうん、ギャスパーくんはこの価値を分かってくれている。

『赤龍帝!』

そこに普通の私服を着た部長さん…の顔をCGではめ込ませた役者さんがやってきた。

もちろんメインヒロインである。

『喰らえ!』

そこに敵の攻撃が迫る!

だがしかし、高速移動で部長さん……の顔をはめ込んだ

役者さんを僕が助けた。

おぉ~!

『……覚悟しろ!』

『Accel up!』

籠手からそんな音声が流れてくるとヒーローが高速で移動して

敵をどんどん殴っていく。

敵は何もできずじまいでそのまま攻撃を喰らっていく。

「この攻撃は全部一秒間の間に行われてるっていう設定だよ」

地味に木場君も知ってるんだね。

すると顔を真っ赤にした部長がこっちにやってきた。

「アザゼル!グレイフィアから聞いたわよ!

わ、私のヒロイン案を取材チームに送ったのわ!」

「なんだよ~別に良いじゃねえか。ヒロインだぜ?しかも

サブじゃなくてメインヒロインだ。予定では最終話で

2人はめでたく結婚するっていう噂だぞ」

「け、結婚!?……な、なら仕方がないわね」

部長は上手い子と言いくるめられたのに気づかずに

一緒に大画面で鑑賞し始めた。

「にしても幼馴染が有名になるのは鼻が高いわね。ねえ、こんな

特撮ヒーローいなかった!? さあ、地●を楽しみな!」

イリナちゃんもこの特撮番組を楽しそうに鑑賞していた。

「あぁ、いたいた! 昔はよくイリナちゃんともごっこ遊びしたよね!

昔は男の子だと思ってたけど今じゃ美少女だもんね!」

僕の言葉を受けた途端にイリナちゃんは頬に手を当てて顔を真っ赤にした。

「きゅぅぅ~ん。もうイッセー君たら! その笑顔で皆を

堕としていったのね! 堕ちちゃう! 私堕天使に堕ちちゃうぅぅぅ!」

ううぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?

イリナちゃんの白い羽が黒と白、交互に点滅し始めた。

ま、まさかこれが堕転の瞬間!?

天使は悪魔のささやきなんかを聞くとこうなるらしい。

「おぉぉ~。大歓迎だぜ、ミカエルの直属の部下だしな」

「いやぁぁぁぁぁぁぁ! ボスが勧誘してくるぅぅぅぅ!

ミカエルさまお助けをぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

アザゼル先生の部下というものがそんなに嫌なのかイリナちゃんの

翼の点滅は無くなってしまった。

「イッセーさんが有名になるのは大歓迎です!」

「そうだな。我々卷属の名も広まる」

ふふふ、僕の諦めかけていた夢の一つが叶ったよ!

冥界を歩いていたら指を差されるのかな~?

あ、もしかしたらサインを申し込まれたりとか!?

ねえ、ドライグどう思う!?

『どうでもいいですよ~♪』

うわぁ! それ懐かしいネタだね! ……ってそれよりもドライグの

声がいつもよりも落ちている。

後で励ます……うん、励ます。

「イッセー君♪」

「あ、朱乃さん!?」

突然、可愛い声を発しながら朱乃さんが僕の背中にくっついてきた。

「ふふ、この前の約束覚えてます?」

……もしかしてディオドラの時の約束かな?

「ええ、デートですよね?良いですよ、行きましょう!」

「ふふ! イッセー君とデート♪!」

 

 

 

 

 

今、僕たちは町にある廃工場に来ていた。

理由はカオスブリゲードの英雄派が暴れているから。

廃工場に入ると殺意と敵意に満ちていた。

「……グレモリー卷属のものか。嗅ぎつけるのが早い」

現れたのは黒いコートを着た男性……その後ろには異形なモンスターが100ほど。

「英雄派ね?私はリアス・グレモリーよ」

「ああ知っているとも。我々の使命はこの町を救うことだ」

相変わらず英雄派の人たちは僕達をまるで汚いものを見るような眼で見てくる。

同じ人間なのにね~……あ、僕たちは悪魔か。

「部長?良いですか?」

「良いわ、ただし後ろの雑魚だけよ」

「了解!」

僕は籠手を発動させナイトにプロモーション後、いつもの高速移動で

気付かれないうちに全ての異形なモンスターを潰した。

カウントが終了と同時に全てのモンスターが地面に落ちた。

この前、ドライグにこの速度を扱える時間を決めた方が良いと

云われ、十秒ほどのカウントをつけてみた。

「な! バ、バカな!」

「何が? 僕たちを相手するならこんな事で驚かないでよ」

「ふふ、見違えたね。イッセー君」

「んじゃ行こうか。高速コンビ」

「オッケー」

僕と木場君が同時に動き出した瞬間、相手の背後にいた大量の化けものが

血を噴き出し、断末魔を上げながら次々と地面に倒れ伏していく。

「な、なんだこれは!?」

僕たちの速度に目がついてこれないらしく、相手は目の前の

状況に驚きを隠せないでいた。

「「はぁ!」」

「がっ!」

僕たちは高速で移動しながら相手に蹴りを入れ、壁にぶつけた。

蹴られた相手はその一撃で意識を失ったのか、地面に倒れ伏したまま

動かなくなってしまった。

「よし、次は」

安心するのもつかの間、僕たちの視界に光り輝く物が見えた。

「光はお任せ!」

イリナちゃんが手に光の力を収束させ、手を横に引くと

光で出来た帯のようなものが僕達を包み込み、放たれた光の槍を防いだ。

「さあ! 皆、早いとこ終わらせるわよ!」

部長のその一声で全員が一斉に相手の排除に動き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「終了~♪」

僕たちの目の前には気を失い、魔力で拘束されている人たちが倒れていた。

ものの数分で全員を片付け終わった。

しかし、その時――――――。

「ウオォォォォォォォ!」

倒した筈の敵の一人が、叫びをあげながら魔力の拘束を力づくで破り、立ち上がった。

「まだ動くのか!」

僕は高速で移動して殴りつけようと思ったけどそれよりも先に

魔法陣が展開されどこかへと消え去った。

「木場君……あの感じ」

「うん、恐らくは禁手に至ったんだろうね」

その後は色々と憶測が飛び交ったけど所詮憶測は憶測。

結論は出ずにその日はアザゼル先生に相談してみようということで終了した。




どうも、数日ぶりです。
最近、大学が楽しいんですが……朝のバスの列が長すぎて泣きます。
それでは!


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Life48

翌日のお昼休み、僕は桐生さん、アーシア、ゼノヴィアさん、

イリナちゃん達とお食事をとっていた。

今日は天気もいいから屋上で皆と食べている。

「そう言えばもうすぐ修学旅行ですね」

あ、そっか。僕もアーシアさんが言ってくれる今の今まですっかり忘れていた。

二年生の修学旅行の行先はすでに決まっているらしく昔から、ある場所へ行っている。

無論、朱乃さんも部長も去年に僕たちと同じ場所に修学旅行に行っている。

「あ、そうね~。ねえ、このメンバーで組まない?」

「ふむ、私はイッセーがいればどこの班でも構わない」

「私もです!」

「うん、そうしようか」

僕は笑顔でそう答えるけど桐生さんが何やら僕を変な目で見てきた。

「ねえ、兵藤」

「はい?」

「あんたお箸握りつぶしてるけど」

「あ、あれ?」

桐生さんに言われてお箸を持っている手を見てみると確かに

お箸を握りつぶしていた。

あ、本当だ……もしかしてあの一件の影響かな。

ディオドラの時に覇龍を発動させてからというものの僕は無意識のうちに

色々なものを壊してしまっている。

シャーペンだったり今みたいにお箸だったり。

「ハハ、ちょっと力入れすぎちゃったのかな?」

「ふ~ん。まあ、良いや。ひとまずこのメンバーで決定ね」

 

 

 

 

 

 

翌日、僕は朱乃さんとの待ち合わせ場所のコンビニ前へ向かっていた。

今日は前に言っていた朱乃さんとのデートの日である。

僕はいつもの通りジャージで行こうとしたら先生に全力で止められて

『馬鹿か! そんな格好でデートに行く男がいるか! 俺がコーディネイトしてやる!』

と言われ家じゅうのタンスを探し回ったけど全てジャージだったことに落胆していた。

うん、まあ服なんてどれも一緒だし興味無いしね。

そう言う訳で僕は従来よりも超動きやすいジャージを着た。

「えっと、朱乃さんは」

「イッセー君♪」

「あ、朱乃さん」

「正解ですわ♪」

後ろには可愛いフリルのついたワンピースを着て括っている髪の毛を

下している朱乃さんの姿があった。

か、可愛すぎるだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!

僕と同じことを思っているのか通り過ぎていく男性達は

皆、朱乃さんをチラッと見ていた。

な、何このいつもとは違うギャップは!

「ふふ、今日一日イッセー君は彼氏ですわ。イッセーって呼んでもいいかしら?」

「は、はい」

「やった♪」

ボハッ!

僕は心の中で血を吐きました。

その位、今の朱乃さんは可愛すぎる。

す、すごく可愛すぎる。

いつもはお姉さまな感じなんだけど今は年相応というか僕と同い年

ないしは年下にしか見えなかった。

「にしても浮気調査には少し多いわね」

朱乃さんがそう呟くと僕の視界の端に紅髪が見えた。

……何してるんですか部長。

「ふふ、こんなふうに腕に抱きついたらどうでしょうね」

そんな事を想っていると朱乃さんは不敵な笑みを浮かべて僕の腕に抱きついてきた。

直後! 部長が触れていた電柱にヒビが入った!

ひぃ! で、電柱が! 電柱がひび割れたぁぁぁぁぁ!

「撒いちゃいましょう!」

「ちょ! 朱乃さん!」

朱乃さんは急に僕の手をひっぱり走り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

部長達を撒いた僕たちはさっそくデートを開始した。

ブランド服のあるところに行けば「ねえねえこれどう?」とか

「可愛い?」とか言って来てもう心臓はバクバクしっぱなし。

さらに露店でクレープを買うと「おいしいね♥」とか言って可愛らしく

ほほ笑んだり腕に抱きついたりとなんだかもう僕爆発しちゃいそう。

僕たちは楽しくお話しながら歩いてきたもんだから辺りは

「宿泊○円」とか「休憩●円」とか看板がいっぱいあった。

うん、ラブホに来ちゃったね。

「朱乃さん、こっちに」

「イッセー」

「はい?」

離れようとする僕の袖を朱乃さんは可愛らしくつまんで止めた。

「イ、イッセーなら良いよ」

うっひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!

『相棒! 気を確かにもて!』

無理無理無理無理無理!もう正気保てましぇーーーーん!

僕は朱乃さんの手を取ってホテルに向かおうとした瞬間に

横から凄まじいオーラを感じて意識を取り戻した。

「真昼間から女子を抱こうとはおぬしもやるのう」

「オーディン様、何故こんな所に」

横に視線を向けるとそこにいたのは相変わらず煙管を口にくわえている

オーディン様とその護衛の女性が後ろに立っていた。

「ふぉっふぉっふぉ。まあいろいろとな」

すると後ろのスーツを着た女の人が喋りかけてきた。

「君たち学生よね?こんな時間から遊ばないで勉強なさい!」

「……オーディン様? 少しは神らしくしたらどうです?」

「ほっほっほ! まさか若造に言われるとわの!」

「わ、私を無視するなぁぁぁ!」

女性は泣きながら僕にそう言う。

「いまどきそんな堅い人はモテませんよ」

「っ!」

僕の言ったことに女性は口を大きく開けて固まってしまった。

……なんか行けないこと言っちゃった?

「うむ、若造よくいった!」

「ふん! どうせ私は色気もなくて年齢=彼氏いない歴のヴァルキリーですよ!」

そう言ってヴァルキリーさんは目に涙を浮かべ、頬をふくらましていじけだした。

こ、この人ヴァルキリーだったんだ。

そんな事を思いつつも朱乃さんの方を向くと

彼女がオーディン様の近くにいたガタイのいい人に詰め寄られていた。

「……あ、貴方は」

「朱乃、これはどういうことだ」

男性は目を見開いて怒っていて朱乃さんは心底嫌な顔をしていた。

「貴方には関係ないわ! なんでここにいるのよ!」

「今は関係ない! お前にはまだ早すぎる!」

「いや離して!」

僕は朱乃さんの腕を男性が掴んだ瞬間に籠手を呼び出し、

男性の腕を掴んだ。

「いやがってるじゃないですか」

「貴殿が赤龍帝か」

「イ、イッセー君」

朱乃さんは僕の腕に抱きつき、体を震わして目に涙をためていた。

「貴方は誰ですか」

とりあえず、籠手はなおして相手に尋ねた。

「今日はオーディン様の護衛で来ている。グレゴリ幹部のバラキエルだ」

朱乃さんのお父様でした。

 

 

 

 

 

 

「ほっほっほ! 来てやったぞい!」

オーディン様ご一行を僕達はVIPルームにお呼びしてお茶を出していた。

あれから朱乃さんの機嫌はさっきまでの機嫌とは真逆ですこぶる悪い。

「お茶ですわ、オーディン様」

「ほっほっほ! 相変わらずデカイ乳じゃのう」

オーディン様は部長の大きな胸を見て、イヤらしい目つきでそう言うと

バシィィィンン! という音が部屋中に響き渡るくらいに強く、ヴァルキリーさんが

オーディン様の頭をはたいていた。

「オーディン様! 神としてしっかりしてください! んん! 

ご紹介が遅れました。私はヴァルキリーのロスヴェイセです」

ロスヴェイセさんっていうのか……なんか色々と苦労しているんだね~。

「ところで爺少し早くねえか?」

「まあの、我が国の内情でな」

先生曰くオーディン様は日本の神々と対談をするべくこの国に来たらしく

オーディン様が日本にいる間の警護を僕達が務めることになっているらしい。

「にしても異常じゃの。ここにいる若造達は」

オーディン様は僕たちをグルっと見回してお茶を飲みながらそう言った。

「まあな。歴代最強にふさわしい赤龍帝のイッセー、聖魔剣の木場、

聖剣デュランダル使いのゼノヴィア、ハーフヴァンパイアのギャスパー、雷の巫女の

朱乃、そしてサーゼクスの妹のリアス。これほど異常なメンバーはそうそういねえよ」

「せ、先生。歴代最強は言いすぎですよ」

「そうか~?こっちではそういう見解が多いぜ?なあ、バラキエル」

「……まあ」

先生がバラキエルさんにそう尋ねるとバラキエルさんも渋々、認めていると、

言う風な感じの声音で答えた。

ぜ、絶対この人認めてないよぉぉぉぉ!

だってだって!辺りのオーラが冷え冷えしてるもん!

「んじゃ爺、楽しいところに連れてってやる!」

「ほほぉ~! 楽しみじゃわい!」

「だ、駄目です! わ、私も行きます!」

ヴァルキリーさんは必死にそう言って先生たちについていった。

ロスヴェイセさんは、あの人たちが行くところは大体は予測はついてるんだろうね~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「朱乃、お前と話し合いがしたい」

「気安く呼ばないで」

キッチンに行っていた僕は最上階に戻る途中で話し声が聞こえてきたから

物陰に隠れて2人の話を盗み聞きしていた。

「赤龍帝と逢い引きをしていたとはどういうことだ」

逢い引きってこれまた古風な言い方ですな~。

「私の勝手でしょ。貴方にとやかく言われる筋合いはないわ」

「噂を聞いている。なんでも奴は魔力を暴走させかねないと聞く。

そんな危険な輩の近くにお前を」

「黙って!」

朱乃さんは怒りのままに辺りに雷を放出しながらバラキエルさんを睨みつけた。

「彼は強い! 貴方よりも何倍も強い! 私には彼が必要なの!

また貴方は私の必要な人を奪う気!?」

「……すまない」

そう言ってバラキエルさんはどっかに行っちゃった。

あの二人に何があったんだろ。

僕は朱乃さんにばれないように、その場を後にした。 




こんばんわ!


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Life49

その翌日、僕と木場君とギャスパーくん男組はトレーニングルームで特訓をしていました。

「はぁ!」

「うらぁ!」

木場君はお得意の魔剣で僕に斬りかかってくるけど僕はアスカロンで

防いで、龍の腕で殴り飛ばそうとするけど向こうはナイトの特性の

高速移動で距離を取った。

「バランスブレイク!」

直後、木場君の放つ魔力が先ほどよりも数段濃くなり、彼が持っている刀からも

僕を殺そうとする殺気が伝わってきた。

――――っ! 来た! 木場君のバランスブレイク!

木場君は聖魔剣を作り出すと僕に斬りかかってきた。

「はぁ!」

「くっ!」

アスカロンで木場君の刀を防ぐけど、あっちの方が魔力の質が高いらしく

魔の波動なるものが僕の全身に丸で重しのように降りかかってきた。

龍殺しのアスカロンといっても流石に

龍相手じゃないとその本領は完全には発揮しきれない。

普通に聖剣としての威力もある事はあるんだけどやはり、木場君の聖魔剣の方が

切れ味も数段上だった。

「だったら!」

僕はアスカロンを籠手に戻し、魔力を徐々に上げていく。

「バランスっ!?」

『Burst』

籠手からそんな音声が聞こえてきていつもの鎧を身に纏えず、さらには

先程まであった膨大な魔力が一瞬にして消え去った。

「隙あり!」

「しまっ!」

木場君は隙だらけな僕の足を氷の聖魔剣で凍らした。

さらに、バチバチと音が聞こえ、顔を上げてみると放電している刀を

振りかぶり、いまにも地面に差し込もうとしているところだった。

―――――っ! 雷の聖魔剣で内部から感電させるつもりか!

『Boost!』

「うらぁぁ!」

僕は倍加させた籠手から魔力弾を地面に打ち込み木場君を遠くに

吹き飛ばすと同時に足の氷を砕いた。

「くっ!」

「さあ! これで止めだ!」

『Boost!』

「はぁぁぁぁぁ!」

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

僕の籠手と木場君の剣が当たる瞬間、けたましい音が鳴り響き僕たちは

当たるすんでのところで攻撃をやめた。

「そこまでです!」

どうやら時間が来たらしい。

 

 

 

 

 

 

 

「時々イッセー君の練習量にはついていけないよ」

あれから僕らは各々各自の特訓をしている。

ギャスパーくんは動き回る小型の機械を停める鍛練、木場君は剣関連。

僕は少しでもパワーをあげるべく腕を中心に鍛えている。

先生曰く僕のパワーは並以下らしいからね。

「いやいや、僕なんかパワーは木場君以下だよ」

「でも速さはナイトの僕を優に超えているよ? それに

技術だって上がってきてるじゃないか。ほら、籠手から大量の小型の

魔力弾を射出して全部操ってるじゃない」

「全部じゃないよ。それに操っている時はそれに集中しないといけないから

その間は避けることしかできないしたとえ避けていても操作がおろそかになる」

それにさっきの感覚は……。

「よっ! 話の内容もなかなか成長してきたな若人よ」

そこへ小包に包まれたものを数個、持って先生が乱入してきた。

「ほれ、女子どもの差し入れだ」

先生が小包を開けるとその中にあったものは美味しそうな具材がたくさん入った弁当だった。

「わ~美味しそう!」

ギャスパーくんは目をキラキラさせて目の前に広げられたお弁当の前に座った。

木場君もお腹が空いているのかいつもよりも機嫌が良さそうだ。

んじゃ僕も食べますか。

お弁当に手を伸ばそうとした瞬間

『壊せ』

「っ!?」

「どうした?イッセー」

突然、体をビクつかせた僕に先生が不思議そうな表情を浮かべて聞いてきた。

「い、いえ別に」

い、今のは一体。

「す、少しトイレに行ってきますね」

そう言って僕はなるべく皆から離れたところに来た。

 

 

 

 

 

『相棒』

「一体どうなってるの? 頭の中に声が」

『恐らく、覇龍を発動したことをきっかけに歴代の宿主の残留思念が

解放されてお前に近づいてきているんだろう』

「そっか……」

僕はまあ、大丈夫だろうと思ってそのまま皆に合流した。

 

 

 

 

 

 

オーディン様が日本に来日してから数日。

今日は八本足の巨大な馬のような生き物、スレイプニルの場所に僕たち

先生、ロスヴェイセさん、オーディン様が乗っていた。

他にも外には翼で空を飛び、スレイプニルの周りを囲むようにして皆がいた。

「日本のゲイシャガールは素晴らしいの~」

「オーディン様! これから日本の神々との会談です! 旅行気分はお収めください!」

「やれやれ、これだからお主は彼氏ができんのじゃ」

「ふぇえぇぇぇぇぇぇん! 私だって好きで年齢=彼氏いない歴してるんじゃないんですよ!」

オーディン様に言われたロスヴェイセさんは大きな声を上げて泣き始めてしまった。

にしても最近は疲れがたまり過ぎてる。

毎日の護衛での疲れ、そして日々の鍛錬の疲れなども蓄積されていて

僕も時折、意識が沈んでしまう。

お隣でアーシアさんは僕の肩に頭を乗せておねむだし、朱乃さんは朱乃さんで

話しかけるなオーラを出して不機嫌だし。

『ヒヒィィィィィィン!』

突然、巨大なお馬さんの鳴き声が聞こえ、僕たちは前のめりになってしまった。

ふつう、こんな急な止まり方はしないはず。こんな急な止まり方をするときは

大体目の前に、何か障害物が急に現れたって決まっている。

僕と先生は急いで外に出てみるとそこには黒いローブを着た若い男性がいた。

「やあ、諸君! 俺は北欧の悪神、ロキだ!」

まじですか、北欧の神さんが反旗を翻したんですか?

「これはこれはロキ殿。この馬車には北欧のオーディン様

が乗っているのを周知の上での行動ですか?」

「勿論だ。我らの神が他の神話体系と和議を結ぶと

ほざきだしたのでな。粛清しにきた」

「馬鹿言うのも大概にしろ」

先生の声にも怒りが見て取れた。

「ま、そう言う訳だ」

ロキが手を前にやると大きなプレッシャーが集まってきた。

今ここで放たれたら馬車の中にいるアーシア達が危ない!

「バランス」

『Burst』

籠手から音声が流れ、いつもの赤色の鎧を身に纏う事が出来なかった。

ただ、今回は魔力は失わずにすんだ。

「くそ!」

『Boost!』

「ふん!」

「チッ! 赤龍帝ごときが!」

僕はバランスブレイクを諦め、普通に倍加をして高速で近づいて殴ろうとするが

ロキは僕の拳を避けて、距離を取った。

僕は飛べないから一回殴った後、籠手から軽く魔力を噴射させて、

その憩いを使って馬車の上に戻った。

「イッセー! 何をしている! バランスブレイクをしろ!」

「させるか! 来い! 我が愛しの息子よ!」

空間から不快音が辺りに響き渡り、歪んだ空間から

出てきたのは巨大な犬……いや灰色の狼だった。

『相棒、奴とは対峙しない方がいい』

「フェンリル」

「知っていたのか。こいつの牙は神をも殺す。ま、王の血筋の物の

血をなめさせるのも糧になるであろう……やれ」

『オオオオオオオオオオォォォォォォン!』

フェンリルは大きく雄叫びをあげるとものすごい速度で部長に向かっていった。

「させるかぁぁぁぁぁぁ!」

『Boost!』

「ふん!」

フェンリルの頬のあたりを殴ったのと同時に腹部に激痛が走り、口から

血反吐を吐きだしてしまった。

「イッセー!」

「ぅ……っ」

部長に支えられながら腹部に視線を落とすと、

鎧も何も身に纏っていない生身の腹に大きな穴が開いた。

「イッセー! しっかりなさい!」

ゼノヴィアさんと小猫ちゃんが負傷した僕と部長を護るように立った。

ダメだ! 君たちじゃ殺されてしまう! もう誰かが傷つくのを見たくはないんだ!

『壊せ』

っ! また声が聞こえてきた。

先程、傷を負ったせいかいつもよりも大きく聞こえ、徐々に意識が遠のいていく。

や、やばい! 飲み込まれる!

「ぁ……ぁぁぁぁぁああああ!」

「イ、イッセー!?」

『我目覚めるは―――――――――』

「馬鹿か! 今の状態で覇龍を発動したら死んじまうぞ! イッセー!」

僕の意識に逆らい、口が勝手に全てを破壊する力――――覇龍の発動の言霊を

紡いでいく。

止めようとしても口は勝手に動いていく。

『Juggernaut』

『Half Demension!』

今にも覇龍が発動しようとした瞬間に、僕の魔力が半分になり覇龍を発動するほどの

魔力がなくなったことで、不発になりさらに何かに体が押し付けられたみたいになった。

「やれやれ危機一発というところか」

「おいおい赤龍帝! しっかりしろい!」

意識が朦朧とする中、声が聞こえた方を向くとそこにはヴァーリと金色の雲に乗った美猴が隣にいた。

「ほぅ。白龍皇か」

「初めまして悪の神、ロキ。俺は白龍皇のヴァーリだ」

「まさか、こんな所で会えるとわな……二天龍が見られて満足だ」

ロキはマントを大きく翻すとフェンリルごと空間のゆがみに身を

包み込みどこかへと消えた。

それを最後に僕の意識は堕ちた。




こんにちは。最近、一人暮らしがしたくて仕方がないです。


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Life50

僕が意識を取り戻すと馬車の中でアーシアさんの治療を受けていた。

「……アーシアさん、ありがとう」

「良かったですイッセーさん」

アーシアさんは目に涙を浮かべて喜んでくれた。

「……兵藤先輩」

「小猫ちゃんもありがと」

小猫ちゃんも僕に馬乗りになって手に気を纏い、僕自身の自己回復力を高めていてくれた。

「みんなは」

「外で話しています……白龍皇さんとも」

僕は大体の治療が済んだので小猫ちゃんの支えを借りて

外に出ると既に学校の校庭に馬車はついていた。

夜だからか人の気配は全くない。

グラウンドで何人かの集まりが見えたので近づいていくとヴァーリの声が聞こえてきた。

「赤龍帝はともかくとして、お前たちだけではロキとフェンリルは無理だ」

きっぱりと言い切ったヴァーリの意見に誰も言い返せなかった。

……今の僕の状態でも無理だよ。

するとヴァーリと目があった。

「いや、そういえばこいつは今不調か」

「イッセー! 傷はもう大丈夫なの!?」

「はい、傷は大丈夫です」

「良かった……」

部長は心配そうに言いよってくるが僕がそう言うと本当にうれしそうに笑っていた。

「赤龍帝」

「なに?」

「今ここでバランスブレイクをしてみろ」

……やっぱり、気づいていたんだ。

「おいおい、ヴァーリ。こんな所でしたら潰れちまうぞ」

「黙っていろ美猴。さあ赤龍帝、してみてくれ」

ヴァーリの言葉に部員の皆の視線が僕に集まった。

……もし、ここでバランスブレイクできなかったら今まで以上の不安を

皆に抱かせてしまう……ここは何としてでも成功させる!

「バランスブレイク!」

『Burst』

直後、全身から力が抜け、地面に膝をついてしまった。

やっぱり成功しなかった。

失敗の代償として、タダでさせ少ない魔力がさらに少なくなってしまった。

「やはりな」

「イ、イッセー? どうしたの?」

「分からないんです。この前の覇龍を発動してから全く使えないんです」

皆、僕の状態に不安そうな表情をしていた。

「さて、こいつもこんな状況だ。ここは共同戦線と行こうじゃないか」

「どういう意味かしら?」

「そのままだ。俺は今回赤龍帝と一緒に戦ってもいいと言っている」

 

 

 

 

 

 

 

その後、僕たちグレモリー卷属+イリナちゃん、シトリー卷属、アザゼル先生、

バラキエルさん……そしてヴァーリ達が僕の家に来た。

ヴァーリ達が僕の家にいるっていうのはかなり妙な感覚だ。

「さてまずはヴァーリ、俺たちと共闘する理由は」

そうだよね。まずはそれを知らないと無理だ。

「俺はただフェンリルとロキ、そいつらと闘いだけだ。美猴達も了承済みだ」

やはり、僕とは違うな。戦いの中に面白さを見出しているのがヴァーリ、

戦いのさなかでも恐怖を抱いているのが僕……宿しているものが正反対なら

性格も正反対……か。

「ヴァーリに関しては置いておく。一番の問題はイッセー、お前についてだ」

アザゼル先生の視線が貫いていたものがヴァーリから僕に移った。

「お前はこの前の覇龍発動以来、バランスブレイクが出来なくなっている。そうだな」

「……はい」

そう言うとアーシアが悲しそうな表情をした。

多分、彼女は自分の所為だと思っているに違いない。

だから僕は彼女の手をそっと握った。

「俺の推測にすぎないが恐らくお前は力を使う事に恐怖を抱いている」

「恐怖ですか?」

「ああ、以前の前は覇龍を使い暴走し仲間を傷付けた。

その時の恐怖が心の底にでもあるんだろう」

……こればっかりは自分で乗り越えていくしかないか。

「次にロキとフェンリルの対策だがそれはある奴に訊く」

「ロキとフェンリルの対策を訊く?」

部長の言葉に先生がうなづく。

「そう、あいつらに詳しい奴がいんだよ」

「誰ですか?」

「龍王の一匹、スリーピング・ドラゴンだ」

……っ。龍王か、なんでそんなのが関係してくるんだ?

「ミドガルズオルムか。あいつは俺達の声に耳を傾けるのか?」

「さあな、やってみるだけだ。タンニーンと連絡がつくまでお前らは待機。

バラキエルはちょっと来てくれ」

「了解した」

先生とバラキエルさんはそう言って大広間から出ていく。

「赤龍帝!」

突然、美猴は僕の名を呼んだ。

「屋内プール入っていいか?」

……返す言葉もない。

「痛え! いきなり叩くなよ!」

僕が呆れていると怒った表情を浮かべた部長がどこから持ってきたのか

大きめのハリセンを使って美候の頭を容赦なくたたいた。

「ここは私とイッセーの家よ。勝手な行動は許さない」

「けっ! 堅いこった。仮面の戦士のヒロインのくせに」

「なぁ!」

部長はそう言われるとまた顔を赤くした。

「俺見てるんだぜ? いつもお前が出てきて攻撃されて赤龍帝が

怒って敵を倒す。まさしくスイッチ姫だ!」

「っ! ど、どうしてくれましょうか」

……もう好きにしてくれ。

 

 

 

 

 

 

手に負えない2人を置いて僕はふと辺りを見回すと一組のやり取りが見えた。

「………」

「…にゃん♪」

黒歌と小猫ちゃん姉妹のやり取りである。

小猫ちゃんは警戒心マックスの状態を維持したまま黒歌を睨みつけ

黒歌は妖艶な笑みで小猫ちゃんを見ていた。

「……何してるんですか」

「あら、赤龍帝の少年じゃない。ふふ♪私好みのいい男になったわね」

黒歌の妖艶な笑みを見た瞬間、僕の背筋に冷たい何かが通った

僕は妖艶な笑みを浮かべてじろじろ見てくる黒歌さんの視線に耐えきれずに

何歩か後ずさった。

「ふふ♪でも気弱なのは変わらないわね……ねねね、ちょっと良い?」

黒歌はズズイッと笑みを浮かべながら僕に近づいてきた。

「な、なんですか」

「子供作ってみない?」

………は、はい? い、今何と?子供作ってみない?

子ども、子ども、子ども……な、なんじゃそりゃぁぁぁぁぁ!

「は、はぁぁ!?」

「私ねドラゴンの子が欲しいにゃん♪しかもとびっきり強いドラゴンの子供。

ヴァーリに頼んだんだけど断られちゃったの♪後はあんただけ。見たところ女性経験

ないっぽいから一から教えてあげるにゃん♪君を男にしてあげる♥」

ううぅ! こ、怖いな。

「お、お姉さまに兵藤先輩は渡しません」

すると、小猫ちゃんが僕と黒歌の間に入った。

「にゃにゃ~♪昔はお姉さまってばっかり言って頼り過ぎていた白音

が私に反旗を翻したにゃん♪」

黒歌さんは楽しそうに笑いながら僕らを交互に見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

先生が帰ってきたあと、僕たちは転移魔法陣を利用して特殊な

結界を使い、ミドガルズオルムの意識を呼び起こすことにした。

先生の召集を受けてタンニーンさんも僕たちのもとへと来てくれた。

魔法陣が輝き、大きな立体映像が出てきたんだけど……で、でか過ぎるでしょ!

立体映像はどんどん大きくなっていきその光景に匙君も口を開けて驚いていた。

『………ぐごごごごごごごごごぉぉん』

で、でかいいびきだなおい!

「たっくまだ寝てるか。起きろ!」

『……懐かしい龍の波動だぁ~。ふああぁぁぁあ~ん』

タンニーンさんよりも余裕で大きい口が大きく開けられた。

な、何でも飲み込めるんじゃないのかな。

『おぉ~タンニーンじゃん。それにアルビオンも

ファーブニルもヴリトラもいるな~。皆懐かしいな~』

………あ、あれ僕たちは?

皆、呼ばれたのに僕らだけ呼ばれてない。

「ミドガルズオルム。ドライグもいるぞ」

『えぇ~? いないよ~』

タンニーンさんの言葉でキョロキョロと辺りを見回すけど

見当たらないらしい。

何往復か目を動かした後にようやく、大きな目が僕を捕えた。

『……あれ~? この子誰~?』

それを聞いた瞬間、僕の眼から涙があふれ出てきた。

ぐす! なんで僕はこうもいじられ役なんだ!

「ミドガルズオルム、こいつがドライグの宿主だ」

『………え~嘘だ~。こんなにちっこいのが赤龍帝~?』

そこからも僕を信用してくれずに説得するのに数分かかった。

 

 

 

 

『な~んだ~。君が赤龍帝なんだ~』

「お前も苦労してるんだな赤龍帝」

「もう慣れた」

ヴァーリに慰められた僕はようやく、涙を止めることができた。

「無駄話はもう良い。聞きたいのはお前の親父と兄弟についてだ」

『う~んとダディはミョルニルでも打ち込んでドカ~んとして~。ワンワンは

魔法の鎖、グレイプニルでガシャンガシャンに動きを止めればいいよ~』

ミドガルズオルムの話を聞いているとまるで、幼い子供と話しているかのような感覚に陥る。

「それは確認済みだ。北欧では効果がないという報告を受けている」

『だったらダークエルフに聞きに行ってみなよ~。そこの長老が

ドワーフの加工品に施す魔術に詳しいからさ~』

「物知りで助かる。ありがとう」

『別に良いよ~。ね~ね~白と赤は戦わないの~?』

「今は戦わない」

ミドガルズオルムの質問に先生はそう言った。

『ふ~ん。今回はどっちが勝つかな~白かな~?赤かな~?

う~んとね~僕の予想は赤だと思うな~』

え、えぇぇ!? ぼ、僕ですか!?

『う~んと何だかわからないんだけど君弱いも~ん』

意味が分からない。というよりも文章がぐちゃぐちゃだ。

勝つと言っておきながら弱いっていうし。

『まあ、頑張ってね~ば~いば~い』

その言葉とともに大きな立体映像は徐々に、小さくなっていき

最終的に消えた。

なんだか子供っぽい龍王様だったな。




どうも~


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Life51

翌日の朝、朝食を終えた僕たちは地下の大広間に来ていた。

理由が理由なので学校には僕たちの姿を模した使い悪さんに行ってもらっている。

すると部屋のドアが開かれて、小言を呟いている先生が大広間に入ってきた。

「オーディンの爺さんからの贈り物だ。たっくあの爺!

本当に隠し持ってやがった! ミョルニルのレプリカ」

隣にいるロスヴェイセさんが持ってきたのは日曜大工なんかで使うハンマーの様なものだった。

……これがあの雷神トールが持っていたって言うハンマー?

「これをオーディン様は赤龍帝様にお貸しになられるそうです」

ロスヴェイセさんが言ったことに僕は内心、疑問を抱いていた。

今の僕はバランスブレイクが使えず、しかもいつ覇龍が発動するか分からない

不安定な状態。ミョルニルのレプリカを木場君や魔力の扱いに長けている

部長や朱乃さんに渡すなら分かるけど。

「ひとまず持ってみろ」

僕はロスヴェイセさんからハンマーを受け取るけど、

見た目と同じように重さも普通のハンマーだった。

「オーラを流してみてください」

「あ、はい」

試しにオーラを流してみるけど……あり? 何も起きないけど。

「馬鹿か、倍加させてからもて」

「あ、そっか」

僕は先生の言うとおり籠手を呼び出し倍加させてからオーラを流してみると

ハンマーが光り輝いてめちゃくちゃ大きなものになった。

……でも、見た目の割には軽い。いや、軽すぎる。

小さなボールを持っている感じだ。

「か、軽いですね」

「まあお前は純粋で馬鹿だから羽根みたいに軽いんだよ」

「むぅ! 馬鹿って言うなぁぁ!」

僕の叫びに呼応するかのようにハンマーからバチバチ! と電流が放出され、

ハンマーにものすごいプレッシャーが集まっていくのが感じられた。

「バ、バカ! ひとまず落ち着け!」

「え、あ、はい」

先生に結構なマジの声の大きさで怒鳴られてしまった。

そんなに強いものなのかな?

「危うく家ごとぶっ飛ぶととこだったぜ……ひとまず作戦の確認だ。

ロキ達が現れたらシトリー卷属で別の場所へ移す。

場所は今は使われていない採掘現場だ。滅多なことでは壊れないから存分に暴れろ。

ロキに対してはヴァーリとミョルニルを持ったイッセー。後の奴らはスレイブニルで

縛ったフェンリルをぶっ倒す。単純明快だろ?それと……匙」

「はい?」

「お前は俺と来い。ちょこっと改造してやる」

先生の表情は何かマッドなものを感じさせる笑みだった。

「匙君。その人が言うこと以上に君はつらいものを

見ると思うけど僕たちはずっと友達だ!」

「ちょっと待ってぇぇぇぇぇぇぇ! それどういう意味ぃぃぃ!?」

僕の忠告に泣き叫ぶ匙君だけど先生は彼の首根っこを掴んで転移用魔法陣を床に展開した。

「いやぁぁぁぁぁ! 会長助けてぇぇぇぇぇぇ!」

助けを求められた会長だけど、会長さんは笑みを浮かべて手を振っていた。

それを見た匙君はこの世の終わりみたいな顔をして先生と一緒にバビュンと転移した。

僕は合掌した。

 

 

 

 

 

 

匙君と先生が転移してからは各自、寛いでいた。

「ドライグ、アルビオンとは話さなくていいの?」

『別に話すことはないさ、なあ白いの』

腕に勝手に籠手が現れ皆にも、聞こえるようにドライグがアルビオンに話しかけた。

ドライグとアルビオンの話に皆、興味があるのか聞き入っていた。

『私のライバルに仮面の戦士などという奴はいない』

『ま、待ってくれ! それはこいつが言われてるだけであって!』

『黙れ、それにア、アイスクリームで覇龍を解いたというではないか。

ひどい有様で泣きたいぐらいだよ……赤いの』

既にアルビオンの声は若干上ずっていた。

『うおぉぉぉぉぉぉぉぉん! 俺だって! 俺だって!

泣きたいんだぁぁぁぁぁ!元からこいつは少し

子供っぽいとは思っていた! でもこれはないだろうがよぉぉぉぉ!』

ドライグは突然、大泣きを始めてしまった。

『いつもいつも戦いで特撮のまねをしてはしゃぐし! 晩御飯の後は

いつもアイスクリームを食べる! しかも前よりも量が増えたんだ!

お前に俺の気持ちが分かるのか!? 白いの!』

『ぐす! 二天龍と呼ばれた私たちも堕ちたものだ。ひっく!

テレビで宿敵を模した番組を見た私の気持ちもわかるか!?』

『しかも初回だけ本人が出たんだぞ!』

『『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!』』

そんな感じで2人が同時に大声をあげて泣き出した。

「そう言えばテレビを見てる時もずっとすすり泣いていたな」

あの伝説の二天龍を泣かした僕ってある意味最強?

「兵藤一誠、こういう場合の慰め方はどうするんだ?」

「えっと………そのまま泣かしときなよ」

ドラゴンの慰め方なんて知らないよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな訳でトントンと時間は過ぎていき決戦の時刻となった。

「赤龍帝」

「なに?」

「今回の戦いでバランスブレイクが使えない状態でどこまでやるのかを見せてくれ」

「……まあ、見てなよ」

そんな風にヴァーリに言い返した直後だった。

目の前の空間から不快音が鳴り響き始め、真正面からあいつらは来た。

「作戦開始だ」

ホテルの周囲を覆うように巨大な魔法陣が展開されていき、

今回の戦いの舞台となる使われていない場所へと一瞬で転移した。

「ふははははは! これはこれは! まさか二天龍がこの俺を

倒すために2人とも現れてくれるとわな」

空間の歪みからロキとフェンリルがその姿を現した。

フェンリルが一歩、歩を進めた瞬間、部長が手を挙げた。

「にゃん♪」

その瞬間、地面から数個の魔法陣が現れそこから鎖が出てきてフェンリルを縛った。

「流石部長です!」

「行くぞ、赤龍帝」

『Vanishinng dragon Blance braeker!』

ヴァーリはバランスブレイクを発動させ真っ白な鎧を身にまとっていく。

『壊せ! 目の前の物を壊せ!』

ヴァーリの白い鎧を見た瞬間、歴代所有者の声が頭に響いてきた。

「ふん!」

僕は一発、気合いを入れる意味も込めて自分の頭を殴りつけて目の前の標的に目をやった。

「行くぞ」

「ああ!」

僕たちはロキに向かって突貫していった。

「あはははははははは! みるが良い!」

空間がゆがみ灰色の体毛に長く鋭い爪を持った二頭の獣が現れた。

「そいつの名はスコルとハティだ。フェンリルの子だ。さあやれ! スコルとハティよ!」

ロキの周りから魔法陣が発動し魔術の光が幾重にも重なり帯となって僕たちに向かってきた。

僕は横に、ヴァーリは上に向かって飛んで距離を取り、僕は腰にあるミョルニルを取り出した。

「退いてろ赤龍帝」

「で、でかぁぁ!」

上から声がして、見上げるとヴァーリの籠手から巨大な魔力弾が出ており、

さらに見慣れない術式も展開されていた。

「喰らえ」

凄まじい爆音とともに地面に大きな穴があき、爆煙が辺りに立ち込めた。

あの大きさの物を直撃したんだ! 無事じゃすんでないはず!

「ふははははははははは! 流石は白龍皇だ!」

しかし、僕の予想を裏切ってロキは無傷で立ち上がった。

『Boost!』

「行くぞぉ!」

僕は高速で移動してミョルニルでロキに殴りかかるけど簡単に避けられてしまった。

 

 

 

 

「どうした赤龍帝! バランスブレイクしないのか?」

「うるさい! 喰らえ!」

僕の籠手から先程のヴァーリ程ではないけど、

それなりの大きさの魔力弾がロキに向けて放った。

「こんなもの」

しかし、ロキはそれをまるでハエか何かをはじくように

軽い動作で、しかも片手で軌道をヴァーリの方に変えた。

やっぱり、バランスブレイクしない状態の魔力弾じゃ傷を与えるどころか

相手に直撃しないか!

『Divid! Divid! Divid! Divid!』

ヴァーリは籠手の力で僕が放った魔力弾から魔力を半分ずつ吸収し、

僕の放ったものを優に超える大きさの魔力弾を生成した。

ロキもあれを喰らえば!

――――――刹那。

「がっ!」

魔力弾を放とうとしているヴァーリを

部長達が鎖で拘束していたフェンリルが後ろからその鋭い牙でヴァーリを貫いていた。

「ヴァーリィィィィィィィィィィィ!」

僕は高速で移動してヴァーリを助けようとフェンリルを殴り飛ばそうとする。

フェンリルは僕のことなど敵として認識していないのか、全く違う方向を

見て、のんびりとしていた。

「なめるなぁぁぁぁぁぁ!」

『Boost!』

倍加とともに魔力が膨れ上がり、籠手に倍加した分の魔力全てが

集められ、赤色に輝く。

「くら」

僕がフェンリルを殴り飛ばそうとした直後、フッとフェンリルの姿が消えた。

「き、きえ」

―――――刹那、腹部に激痛が走り、僕の視界に赤い血が飛び散っているのが映った。

「ぐぁっ!」

鎧も何も纏っていない生身の身体がフェンリルの鋭利な詰めに抉られ、悲鳴を上げた。

血がダラダラと流れ出てくる腹部を抑え、地面に膝をついた。

「はっ……はっ」

さらに、追い打ちをかけようと牙でヴァーリを

突き刺したまま、フェンリルはこちらに向かってくる。

「そやつはやらせんぞ!」

タンニーンさんが巨大な火球を口からフェンリルに向かって吐きだした。

す、凄い熱量と大きさだ! これなら!

『オォォォォォッォォォォォォン!』

しかし、フェンリルの遠吠えが空間ごと

タンニーンさんの大きな火球を揺らし炎をかき消した。

そして、またフェンリルの姿が消えた。

「おぉぉぉ!」

タンニーンさんの悲痛な叫びが聞こえ、そっちを向くとフェンリルの爪で抉られた

個所から真っ赤な血が大量に噴き出していた。

そ、そんな……タンニーンさんが手も足もでないなんて。

「ついでだ。こいつらも相手してやってくれ」

突然、ロキの影が伸びて、そこから何体もの体が長ぼそいドラゴンが出てきた。

しかもかなりの大きさだ!

「ミドガルズオルムまで量産していたのか!」

タンニーンさんが憎々しげに吐いた。

『オオォォォォン!』

量産されたミドガルズオルムの巨大な足が僕に向かってくる!

「に、にげ」

『破壊しろ』

逃げようとした直後に頭に頭痛とともにこれまでの宿主の怨念にも似た

声が響き、思わず足を止めてしまった。

「イッセー!」

「ぁぁぁああぁぁぁ!」

凄まじい重さの足が僕を押しつぶし、全身の骨が一瞬にして折れたのが分かった。

「許さんぞ貴様ら!」

タンニーンさんは激昂し、めちゃくちゃ大きい火球を出して数体まとめて

吹き飛ばしてくれたお陰で追撃はなかったけどもう全身がボロボロだ。

 

 

 

 

 

もう……全身の感覚がない……。

アーシアさんも他のメンバーの回復に割かれているのと、

量産型のミドガルズオルムに阻まれて僕の所にまでこれなかった。

皆、必死に戦ってるのに僕だけが地面に横たわって休憩していた。

『相棒! しっかりしろ!』

ごめんね…ドライグ……体が……。

僕はそのまま意識を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『Juggernaut Draive!』

戦場が地獄へと変わる。




こんばんわ


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Life52

「うごあぁぁぁぁぁぁ!」

突然、向こうの方から魔力の柱が立ちのぼり、辺りに凄まじい爆風が吹き荒れ、

戦っていたぼくら、果てはロキさえも動きを止め、目の前の光景に見入っていた。

「なんだ……何が起きようとしている」

ロキも異常何かが起きようとしているということは理解しているようだったけど、

その”何か”については理解していないようだった。

子フェンリルとフェンリルもその圧倒的な存在に動きを止めてそっちの方を見ていた。

でも、ぼくらは分かる。

つい、先日。似たような圧力を僕たちは感じたんだ。

「ぉぉぉあぁああああああ!」

「イ、イッセー。まさか」

遠くの方から聞き覚えのある咆哮が僕たちの耳に入ってきた

魔力の柱が消え去るとそこには血だらけのイッセー君が立っていた

「ぎゅあぁぁ!」

イッセー君が口から小さな魔力の塊を吐き出した瞬間!

その魔力は一瞬にして広範囲に展開され、量産型のミドガルズオルムを一瞬にして全て壊した。

それにより、凄まじい強さの爆風が地面を砂どころか地面を抉り、何もかもを吹き飛ばした!

「おぎゅぁぁぁぁぁぁ!」

『オォォォォォォォォォォォォォン!』

フェンリル達もイッセー君の共鳴しているかのように天に向かって吠えていた。

「な、何が起きているのだ! これは一体何なんだ!」

ロキはイッセー君の突然の変化に慌てふためいていた。

「ちっ! また使ったのか!」

『我、目覚めるは 覇の理に全てを奪われし二天龍なり

無限を妬み、夢幻を想う 我、白き龍の覇道を極め

汝を無垢の極限へと誘おう』

『Juggernaut Draive!』

言霊が籠手から発生された直後、一瞬にしてヴァーリの魔力が増大した!

「黒歌! 俺ごとこいつを予定のポイントに転移させろ!」

巨大な光の帯がフェンリルとヴァーリを包み込んでいき2人は夜の風景に溶けて消えた。

「朱乃!」

部長の悲鳴にも似た声が聞こえてきた。

よく見ると向こうの方で今にも子フェンリルに

食べられようとしている朱乃さんがいた。

今、持っている刀をのばして相手をどかそうとした瞬間! 

朱乃さんを押し出す形でバラキエルさんが割って入り、彼女の代わりに

子フェンリルの爪に貫かれた。

「と、父様?」

予想外のことに朱乃さんは目の前で血を流して倒れている自分の父親の

傍に近寄っていく。

「なぜ?」

「お前まで亡くす訳にはいかん!」

血を吐きながら、バラキエルさんはそう言った。

「おぎゅぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

『ギャァァァン!』

その時、風を切り裂き、あたりを考えずに猛スピードで突っ込んできた

イッセー君が子フェンリルの喉にかみついた。

『ギャン! ギャァァァァァン!』

何かに助けを求めるかのように子フェンリルは叫びをあげるがその叫びも

徐々に消えていき最後はバタンと倒れた。

「うぎぁゅぁぁぁぁ!」

イッセー君は血だらけの口から大きな叫び声をあげた。

「こ、こんなのイッセーじゃない! イッセー! 元に戻って! お願い!」

部長は泣きながらイッセー君に戻るように懇願し始めた。

「ぎゅぉ!」

いきなりイッセー君は背中に生えているドラゴンの翼らしきものに爪が食い込んで、

血が流れ出てくるほどに強い力で握った。

「おぎゅがががぁぁぁぁぁぁ!」

必死にもう片方の腕が翼を握っている腕を離そうとするが翼から腕が離れることはなく、

ブチブチと聞きたくない音とともに背中から血が噴き出していく。

「おぎゅあぁぁぁぁぁぁぁ!」

そして、大量の血を噴き出しながらドラゴンの翼がちぎられた瞬間! 

魔力の柱がイッセー君を中心にして空高く昇った。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

魔力が晴れると、体力を消耗し肩で息をついているイッセー君がいた。

「イ、イッセー!」

『オォォォォォォッォォン!』

もう一匹の子フェンリルが部長に今にも襲いかかろうとしていた!

部長は突然の事に何もできずにいた。

「おい、犬っころ」

『ア、アギャッ』

今迄に聞いたことのない、ひどく低いイッセー君の声が子フェンリルの動きを止めた。

「その人にかみついてみろ。どうなるか……分かってるのか?」

イッセー君は子フェンリルを睨みつけるだけで圧倒していた。

その声を聞いている僕も背筋に冷たい何かが走り、全身がまるで

凍りついたかのように動かなくなってしまっていた。

『オォォォォォォォォォン!』

子フェンリルは恐怖を振りほどき、獲物である部長をその鋭い牙で貫こうと襲いかかった。

「ふん!」

高速で移動したイッセー君の拳が子フェンリルの喉を貫いた。

そのまま喉を貫かれた子フェンリルはバタンと力なく倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バ、バカな。フェンリルの子が二頭ともこんな青二才にやられるなど」

ロキはひどく狼狽した様子でこちらを見ていた。

でも、僕はそちらではなく朱乃さん達の方を見ていた。

「私は……っ! 父様ともっと会いたかった!

父様にもっと頭をなでてもらいたかった! もっと遊んでほしかった!」

バラキエルさんはそんな朱乃さん本音の告白を聞き一言こう呟いた。

「私は……お前の事を…一日たりとも忘れたことはないよ」

バラキエルさんは穏やかな表情で彼女の頭をなでていた。

その表情は一人の父親に見えて仕方がなかった。

「……父様!」

「消えろぉぉぉぉぉ!」

ロキは二匹の自慢のペットを倒されたことに激高し、手のひらから巨大な

魔力弾を、そしてそれに付随する形で魔法陣をいくつか展開させて、そこからも

魔力弾を放った。

放たれた魔力弾は地面を抉っていき、二人へと突き進んでいく。

―――――――そして、魔力弾は二人を飲み込んだ

そこに僕という障害物が現れなければ。

「っっ! バ、バカな。き、貴様が……片手で弾くなど」

強めに叩いた魔力弾は大きく方向を逸らされ、まったく意味のない場所へと

飛んでいき、遠くの方で着弾した。

「こんなバカなことがあるかぁ!」

『オォォォォォォォォォォォォォッォン!』

ロキがもう一度、魔力弾を放とうとした瞬間! 突然、

地面に陣が展開され、そこから真っ黒な炎を纏った一匹の龍が出てきた。

その炎はロキを包み込んだ。

「な、なんだこの炎は! ち、力が抜けていく!」

黒い炎に包みこまれたロキは必死に魔法陣を展開して脱出を試みるが

魔法が発動する前に魔法陣が砕けた。

『こいつは……ヴリトラの炎か』

ドライグが籠手を通して炎を眺めていた。

「この魔力……もしかして……匙君?」

『ひょ、兵……藤か?』

籠手を通じて匙君の声が聞こえてきた。

「うんそうだよ! 意識をしっかり保って!」

『い、今俺はどうなってるんだ』

「今、君は少し力が暴走しているんだ。でも、僕が君を止めるよ」

僕がそう言うと黒い炎に包まれていたドラゴンの動きが荒々しいものから

落ち着いた動きに変わっていった。

「そう。そんな感じで徐々に落ち着こう」

『ああ……兵藤……俺が落ち着いている間にこいつに止めを刺せ』

「勿論」

「ぬおあぁぁぁ! 邪魔な炎だ!」

ロキは抜け出そうと幾重にも魔法陣を展開するが黒い炎によって

魔法陣は効力を成す前に砕け散っていった。

「終わりだ。この戦いも、そして朱乃さんの悲しみも!」

僕はミョルニルを持って、ありったけの魔力を流し込むとどんどんでかくなっていき

最終的には量産型の……名前は忘れちゃったけど大きな龍王なんか一撃で、粉砕できるくらいの

大きさにまで膨らんだ。

「これで終わりだ! ロキ!」

『Transfer!』

僕は空高く飛びあがり、さらに譲渡の力で10倍に力を引き上げ

思いっきりハンマーをロキに向かって振り下ろした!

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

ロキは幾重にも魔法陣を展開して、防御しようとするが一瞬にして重ねられた

魔法陣は砕かれていき、そして―――――ロキにハンマーが直撃した瞬間、

凄まじい威力の雷がロキに振りかかりロキは地面に叩きつけられた。

叩きつけられたロキはもう、動くことはない。

「いっちょ上がり、神様のこんがり焼き」

地面には意識を失ったロキが大きな穴に埋もれていた。

 

 

 

 

 

戦いが集結し皆の顔には疲労が見えていた。

「お疲れ匙君」

黒い炎が消え、匙君は地面に横たわっていた。

「ああ……兵藤か……お前は凄いよ……いつもこんな死ぬ気の戦いをしてんのか?」

「まあね。よく生きてるよ、僕も」

「はは、そうだな」

僕はアーシアに匙くんを任せてその場を後にした。

「イッセー! 体は!? どこか痛いところとかは!?」

「だ、大丈夫ですよ部長」

部長はひどく狼狽した様子で僕の体の状態を確かめていた。

「本当ね? 私に心配掛けたくないからとか思ってないわよね?」

「本当です!」

「そう、良かったわ」

部長は僕の元気な声に一安心したみたいだ。

「赤龍帝」

後ろを振り向くと数人に肩を支えられているバラキエルさんの姿があった。

「君は……朱乃の事が好きか?」

「ええ、嫌いなはずありません。朱乃さんは僕が護りますよ。貴方が

その命をかけて守った彼女を」

「そうか……娘をよろしく頼む」

なんだか照れ臭いな。でも、ようやくバラキエルさんにも認められたんだ……

それに朱乃さんとバラキエルさんの確執もなくなった。まだ、親子として接するには

時間がいるかもしれないけど大きな一歩だよ。

「さてと、イッセー。この土地を直すぞ」

「え?」

タンニーンさんのその声に僕はみっともない声を上げた。

「“え?” じゃない。ここにも人間が来るやもしれんからな」

結局、朝まで傷ついた体で僕は大きな穴を埋めていた。

ちなみに地面に開いていた大きな穴のほとんどはヴァーリが開けたものだったのに

彼がもういないからとの理由で僕が手伝わされた。

ヴァーリの馬鹿野郎ぉぉぉ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、部室には一人の女性の悲しみにくれる声があった。

「ふふふ、どうせ私は年齢=彼氏いない歴ですよ~だ。

はぁ~これ絶対にクビよね……うん、絶対クビだわ」

なんと、オーディン様の護衛をしていたはずの

ヴァルキリーのロスヴェイセさんが部室にいた。

曰くオーディン様が一人で勝手に帰ったかららしい。

でも、部長さんの計らいで女性教諭としてこの学園で働けるんだってさ。

「はいはい。そんなあなたには。これ」

部長さんは数枚の紙をロスヴェイセさんに見せた。

「う、嘘! 冥界の保険金ってこんなにもあるの!?」

何故か目が某忍者アニメの一人の様に小判……ゲフンゲフン! お金に変わっていた。

「さらに今なら」

「今なら!?」

「お安くいたします」

「買った!」

早! ていうか部長、キャラあんなんでしたっけ!?

そして部長はポケットから最後の悪魔の駒をロズヴェイセさんに渡した。

ロスヴェイセさんはそれを自身に取り込み背中に黒い翼を生やした。

「ということで悪魔に破れかぶれでなったロスヴェイセです!」

もとヴァルキリーさんの悪魔の誕生だ。




こんにちわ。以前も言いました通り、気弱は原作十二巻の内容までしか書きません。
それでは!


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Life53

「ふふ、可愛い」

何故、こうなった。

今、僕は保健室のベッドで横になりながら部長に頭を撫で撫でされています。

体育の時間、最近の激戦の連続で疲れが抜けきっていなかったのか

体調が芳しくなかったので保健室に来て少しベッドで休ませてもらっていた。

そして目を覚ますと今の状況、という訳である。

「ねえ、イッセー」

「はい?」

「最近はバランスブレイクの調子はどう?」

「っ!」

何度も鍛錬の時間に試しているものの一度もバランスブレイクは成功していない。

アザゼル先生曰く僕の心の深い所に恐怖が芽生えてそれが邪魔してるんだとか。

「すみません、まだできてません」

「そう……イッセー」

「はい」

「当分の間、修行は禁止ね」

「え?」

「アザゼルにも言っておくから。当分の間貴方には契約を取ってもらうわ」

部長は笑顔で僕にそういった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、僕はアーシアさんとともに部室に足を運んでいました。

「いらっしゃいイッセー君。お茶は如何?」

相変わらず美しい朱乃さんです。

まっすぐに髪を下ろしたのも良いけどポニーテールがなんだか一番

朱乃さんっぽくて良いです。

「あ、いただきます」

僕の返事で急須からお茶を淹れてくれた。

「小猫ちゃん」

「……どうも」

相変わらずぶっきらぼうというかなんというか。

まあ、これでも大分明るくなったというか。

「やあ」

出たな!わが校で最もイケメンだと言われている木場君。

大概の男子は彼に敵意を持ってるとか。

それってただの醜い嫉妬じゃない?

「全員そろったわね」

部長のその一言で定例会議が始まった。

 

 

 

 

 

 

「そう言う訳で私が監督役としてイッセーについていくわ」

夜の会議が僕の話になった。

まあ、僕はまだ契約一回も取ってないんだよね~。

すると床に青白い輝きを発している魔法陣が出現し、部室を照らした。

朱乃さんがそれに触れて何かを調べていた。

「部長、イッセーくんでも解決できそうな依頼ですわ」

「そう、じゃあ行きましょうか」

「はい!」

さあ!今度こそ僕は契約を取るんだ!

そして部長を喜ばせるんだ!

そんな決意を胸に僕は部長とともに魔法陣に乗った。

 

 

 

 

 

 

 

ジャンプした先はアパートの一室らしく、生活感あふれる部屋で

辺りには大量の戦国グッズが山ほど飾られていた。

壁には風林火山と書かれた紙が貼られており周りには行燈なんかが淡い光を発していた。

「うわ!これ凄いよ!初代忠吉じゃん!あの勝海舟が使ってたって

言われてる最上大業物の刀じゃん!うわこっちなんか虎徹だし!」

「よく知ってるのねイッセー」

「まあ、暇人何でネットサーフィンしてたら

某フリー百科事典で調べてたんですよね~」

僕は壁に飾られている刀を見ていくと、隣に鎧兜があった。

「へぇ~鎧兜まで……ん?」

一瞬、兜に穴があいているところに光がともっていたように見えたので

僕はもう一度、目の部分をよく見てみると突然、ギョロッと動いた。

「ぎゃぁぁぁ!」

「どうしたのイッセー!」

「よ、よ、よ、鎧兜が!」

真っ暗な中でいきなり鎧兜の目が前にギョロッと動いたらそりゃ誰だって叫ぶじゃん。

「あの……」

――――――ガシャン。

そんな音を響かせて鎧兜が立ちあがった。

「ひぃぃ! き、斬らないでぇぇぇ!」

僕はもう怖くて怖くて部長の背中に隠れた。

「えっと、貴方が私たちを呼んだのよね?」

「あ、はい。スーザンです」

ス、スーザン!?が、外国人な訳!?それでもこれは集め過ぎでしょうが!

「こんな姿で申し訳ありません。深夜はこうやって武装してるんです」

いやいやいや!こんな真っ暗な中でヌ~ンと鎧兜があったら

どんな極悪人でも逃げるでしょうが!

「それで私達を呼び出した理由は何でしょうか?」

部長がそう言うと鎧兜の奥からクスンクスンと鳴き声が聞こえてきた。

「大学に忘れたノートを一緒に取りに行って欲しいんです」

鎧兜着てれば大丈夫じゃないの?

そんな事を思った今日この頃です。

 

 

 

―――――――ガシャン、ガシャン。

深夜、真っ暗な街を徘徊する鎧兜。

いやいや、僕らがいるんだから鎧は外しなよ。

「おおおおおおおおん」

夜の道が怖いのか鎧兜の奥からそんな声が聞こえてくるけど貴方の方がよっぽど怖いです。

影武者みたいで怨念を晴らせねば!みたいな感じで。

「あ、ここが私が留学している大学です。ね?雰囲気があるでしょ?」

うん、貴方の方が何十倍も雰囲気がでてるんだけどね。

僕はそうツッコミたいのを我慢して大学の学内に

忘れたという大切なノートを取りに行った。

 

 

 

 

 

 

無事ノートを手にいれ僕たちはスーザンさんの自室に戻って帰り支度をしていました。

「じゃあこれで僕たちは」

家に帰ってまずは復習、予習してから赤本して、センターの過去問して。

「あ、あの」

そんな風に家に帰ってやるべきことを考えているとスーザンさんが

もじもじしながら話しかけてきました。

「もしよろしければもう一つ叶えてもらえませんか?」

え~僕は帰って

「いいわよ」

はぁ~。仕方がない、部長さんが言うならば。

「じ、実は…こ、今度同じ大学の彼にアタックしてみようと思うんです!」

ありゃりゃ、僕にはちょっとできない内容ですね~。

「ふふ、良いじゃない。私達を何をすればいいかしら?華やか演出?

それとも一気に魔力でメロメロにしちゃうとか?」

「い、いえ!わ、私の力で何とかしたいんです!」

あ、そこは悪魔に頼るんじゃなくて自分でするんだ……じゃあ、なんで僕たちに?

「じゃあ告白?」

「そ、そんなの無理ですぅ!」

鎧兜がクネクネと右に左に動く。

僕はそれを頭の中で鎧兜ではなく、乙女に自動変換して想像していた。

「じゃあ、ラブレターなんかどうです?」

僕の意見に部長もうなづいてくれた。

「わ、分かりました!か、書いてみます!」

突然、スーザンさんは毛筆セットを机の上に広げ、セットが入っていたカバンの

中から墨と墨を入れるものを取り出し、そこに水を垂らして墨をすり始めた。

いやね、スーザンさん。

今この時代を生きている人間でどこのどいつが恋文を

すずりで墨をすって小筆を持って書くのかな?

というよりも何か妙にマッチしていて合っているのが怖い。

「えっと『然したる儀にてこれ無きの条、御心安かるべく候』」

「ちょっと待ったぁぁぁぁぁ! 貴方はなんで古語で特別なようはないので

安心して下さいってかくの!? 普通は今の日本語を書くでしょうが!」

「え? 駄目なんですか?」

スーザンさんは可愛らしく首を傾げるけど鎧兜越しだからめちゃくちゃ奇妙だ。

「駄目も何も今は古語を使う人はほぼいません! あぁもう! タイムマシンで

貴方を古語を使うのが常識だった時代に送りたい!」

「それじゃあ駄目です! 日本人はサムライの子孫! 礼儀を

もって接しなければいけません!」

「そう言えばこの国でまだ侍に会ってないわね」

部長もスーザンさんの言っている事に共感したのか首を可愛く傾げた。

部長もそのパターンの人ですかぁぁぁぁぁぁぁぁ!

侍はもうとっくの昔にマゲは落として刀も捨てて商人やら

なんやらに転職しましたぁぁぁぁぁぁぁ!

「仕方がないわね。徹夜で書き方を教えてあげるわ」

言ってることはロマンチックなんだろうけど僕の近くにいるのは鎧武者。

ラブレター……というよりも恋文の書き方講座が今ここに始まった!

 

 

 

 

数日後、僕たちは公園にいました。

目の前には何かの家紋が書かれた旗を何本も立てた本陣に

鎧を着たスーザンさんが座っていました。

こっちにまでピリピリ来る殺気を放っています。

「ねえ、ママあれ何~」

「こら!見ちゃいけません!」

小さなお子様の目を隠して保護者が慌ててその場から離れた。

うん、小さい子は見ちゃだめだよ~。ロクな大人にならないからね~。

でもこんなスーザンがここまで虜になるんだ。きっとめちゃくちゃ良い人なんだよ!

イケメンかな?それとも爽やか系の人?あ!もしかして体育系の人かな?

――――――ガシャンガシャン。

「来たみたいよ」

僕は公園に来たスーザンさんの意中の人を見て地面に手をついて項垂れていた。

「一体何のために僕は今まで」

だってその人は騎士の鎧を着て手にはランスを持っていたんだから。

武士が惚れたのは騎士だってね。

しかもよく見たら頭に矢が刺さってる!

「……この手紙読ませてもらったよ……」

おいおい、頭に矢が刺さってるのはスルーですかい?

「僕ともあろう男が隙を狙われて射抜かれるなんてね」

はい?

僕は騎士の言っている事が理解できなかった。

「僕でよければ付き合って欲しい」

「堀井君!」

―――――ガシャン!

騎士の鎧と鎧兜がぶつかり合った音が辺りに響いた。

「スーザン……」

2人はガシャガシャ云わせながら抱き合った。

もうやってらんない。

結果として二人の仲を一つ上の段階に昇華させたんだけど

その過程が結果に釣り合っていないような……まあ、どうでも良いか。

 

 

 

 

 

 

その後、僕のもとに武士と騎士の中睦まじい写真が送られてきた。

あのラブラブ大合戦……じゃなくて大作戦は一応成功し代価としてランスを貰った。

たまに木場君がそれを持って遊んでる。

ちなみに新聞に落ち武者と落ち騎士がデート!? みたいな記事が出ていた。

もうこういうけいは勘弁してくれ!



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Life54

このお話は前の話とはつながっていない独立したお話と
して御覧ください。


「使い魔ですか?」

放課後、いつも通り部室で駄弁っていた僕とアーシアさんに部長は使い魔についての話を始めた。

悪魔は皆使い魔を持っているらしい。

使い魔はその主の命を忠実に聞き、相手の情報なんかを探ったり捜索するときに

使ったりするいわば、主の手足らしい。

「そう使い魔。まだ貴方とアーシアは持ってなかったからね」

部長が掌を天井に向けるとそこから手品みたいな音をたてて

部長の手元に赤いコウモリが現れた。

「この子が私の使い魔よ」

部長の髪色とおなじ色のコウモリ、それだけで高貴な雰囲気がする。

「私はこの子ですわ」

朱乃さんのは手乗りサイズの鬼だった……子鬼?

「……私はこの子です」

小猫ちゃんは胸に小さな白い猫を抱いていた。

おぉ、猫繋がりですな!

「僕のはこの子だよ」

木場君は肩に小鳥を出現させていた。

「使い魔は悪魔の手足になるものよ。追跡などにも使えるし

臨機応変に使えるの。だから貴方達も手にいれないとね」

部長は僕の頬を撫でながらそう言ってくれた。

少々恥ずかしさを感じながらも笑っていたけど床に描かれている魔法陣が輝きだし

部室内を明るく照らす。

「準備が整いましたわ部長」

「それじゃあ行きましょう」

部員の皆が魔法陣に乗った瞬間、輝きが最大になった。

 

 

 

 

 

魔法陣の光が止むとそこは見知らぬ森だった。

辺りには聞いたこともないような動物の鳴き声が反響し、不気味な感じを醸し出している。

な、なかなか怖いところだね。

「ここは悪魔が使役する使い魔が多く住みついている森よ。

ここで貴方達には手に入れてもらうわ」

そんな森があったとわ……にしても大きな木がいっぱいあるもんだな~。

「ゲットだぜ!」

「おっ!」

「きゃっ!」

な、何何!?

突然、茂みから声を張り上げて男性が現れた。

「俺はマダラタウンのザトゥージ! 使い魔マスターを目指して特訓中の悪魔だ!」

……なんだか聞いたことがある紹介文だね。

「ザトゥージさん、例の子たちを連れて来ましたわ」

と、部長が僕とアーシアを怪しげな悪魔さんに紹介した。

「へえ、さえない少年と金髪美女かい。OK! 任せな!」

さえないっていうな! これでも少しは気にしてるんだい!

「彼は使い魔に関してはプロフェッショナルよ。

彼のアドバイスを聞いて使い魔を手に入れなさい」

『はい!』

部長の言葉に僕たちは元気に返事した。

そのザトゥージさんがフレンドリーに話しかけてくる。

「どんなものをご所望だい? 強いの?弱いの? 毒持ちの?」

「いやいや、いきなり毒持ちとか僕を殺す気ですか?どんなのがお勧めですか」

僕のそんな質問にザトゥージさんはにやりと笑いながらカタログらしきものを見せてくれた。

彼が指さすのは見開きいっぱいに大きく書かれた迫力のあるドラゴンの絵だった。

……ちょっと待て、これってまさか。

 

 

「俺のお勧めはこいつだい! 龍王の一角で唯一のメス!『天魔の業龍』

ティアマット! 未だにこいつを手に入れた奴は誰もいない!」

当然でしょ! 龍王って魔王様クラスの強さを持つ龍なんだよ!?

これから使い魔を初めて手に入れようとする新人悪魔が勝てる相手じゃないよ!

ていうか、前にドライグから聞いた話じゃ龍王の中で最強の実力を

持っているって聞いたんだけど!?

「これ使い魔って言うレベルじゃないじゃん! どう見てもラスボスだよ!

ていうかラスボスが使い魔の候補って何!? 初心者狩りでも始める気!?」

「良いわね、伝説の龍同士。意気投合しそうだわ」

そう言いながら部長は朗らかに笑う。どう見ても僕じゃあ勝てないよね!?

バランスブレイクしてもこの大きな足でペッチャンコにされて、二次元の存在に

無理やりかえられちゃいますよ!

「イッセーくんなら大丈夫だよ。あの神の一角を倒したんだから」

「それとこれは関係ないよねぇぇぇぇぇぇ! いきなりクライマックスはやめて!」

僕は気持を落ち着かせ、もう一度彼に聞いた。

「こんな最初から最後までクライマックスだぜ! みたいなのは

良いですからもっと優しいレベルの奴を」

「だったらこれでい! ヒュドラ!」

ザトゥージさんが指さしたのは頭に蛇がいっぱいついていて

怖い顔をした怪物だった。どう見ても友好的には見えん。

「こいつのはく毒は主人ですら殺すくらい強いぜ!」

というか端っこに思いっきりドクロマークがついてるからね。

これは危険ですよ? 答えは聞いてない! みたいな感じだからね。

むしろ、こんな危険な魔物を使い魔に出来たならたぶん僕の評価は

結構、右肩に上がると思う。

「殴っていいですか部長。答えは聞きません」

「良いじゃない! レアなヒュドラと最強の赤龍帝! これで

鍛錬がいつも毎日どこでも出来るわよ!」

いやいや、こいつと戦ったらたぶん死者がでてしまいますよ。

「もっと優しいのを」

「あ~注文の多い子だ。だったらこれはどうだ? 世にも珍しき

電気をほっぺに溜めるプリティーな黄色い電気ネズミ! その名も」

「ドーン!」

「うぎゃん!」

僕は目の前の人が言っちゃいけないことを言う前に龍の腕で

ビンタを思いっきり食らわしてやった。

「私も可愛い使い魔が欲しいです」

「良いよ、任せて」

ザトゥージさんは頬を赤く腫らしながらもニコニコと笑みを浮かべて

アーシアさんの手を握り締めた。

 

 

 

「ここは精霊が集まる泉だ」

僕らはザトゥージさんの案内で精霊が集まると言われている泉の

近くにある林の中で息をひそめていた。

僕たちの眼前には神秘的な輝きを放ち、ここからでも水面が見えるんじゃないかと

思うくらい透明度が高い泉がある。

「この泉にはめったに人前には姿を現さないウンディーネがくるんだ」

ウンディーネと言えばマンガとかでは超絶美女の精霊さん。

しかも癒し系らしい。僕の心の恐怖も癒してくれるだろうか。

「お、来たよ!」

そこへ現れたのは水色の美しい髪と透明な羽衣を着た

 

 

 

 

巨躯の存在だった。

胸筋はある意味女性の象徴である乳房ととらえることもできなくはない。

しかし、上腕は僕の太ももよりも太くて分厚い。

太ももは巨大な大木と比べても何もおかしくないほど巨大で太い。

そして何より顔には歴戦の傷が色濃く刻まれていた。

何あの存在? 僕はあまりの現実と夢の違いに口をぱっくり大きく開けていた。

「あれがウンディーネだ」

「いやいや、あれはどう見ても水浴びをしに来た格闘家です。しかも

もう何回もタイトル防衛戦を勝利しているようなキングですよ!

我はメシアなり! ハッハハハハハハハハ! とか言ってる伝説の赤い

英雄のオリジナルボディですよ!」

「ん~。彼女たちも縄張り争いが絶えないようでね。

強さこそが掟の社会だ。だが君の言うとおり彼女はまさしく英雄だ。

打撃力に秀でた最強にふさわしい精霊だ」

うん、あの存在がオスならば僕も納得したさ。

でもね! さっき貴方言いましたよね?『彼女』って。

くだらない幻想をぶち壊す右腕を持った人よりも粉砕されましたよ!

「もう一体きましたわ」

朱乃さんの声を聞きそちらの方を振り向いてみると……

そこには最初に来た奴と似たようなウィンディーネがやってきた。

もう嫌だ。何でめちゃくちゃ強そうな精霊がでてくるわけ!?

『グオォォ!』

しかも目の前で殴り合い始めたよ!

仮に初めの一体をチャンピオン、二体目をチャレンジャーとしよう。

チャンピオンは圧倒的な力でねじ伏せようとするがチャレンジャーは

小刻みに動きながらチャンピオンの攻撃を避けていく!

おっと! ここでチャンピオンのアッパーがチャレンジャーに!

しかしチャレンジャーはひるまずキックを入れる!

「ぐす! もうこんな戦い見たくない」

「そうね、埒が明かないから次に行きましょう」

部長のその一言で僕はようやく見たくないものから離れた。

 

 

「スプライト・ドラゴン?」

僕の問いにザトゥージさんが頷く。

「そう、蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)。その名の通り青い雷を使うんだ」

ウンディーネの殴り合いの会場から移動しながらレアなドラゴン情報を聞いていた。

「そいつもめっちゃ強いんですか?」

「いや、まだ子供らしくてね。ゲットするなら今のうちだよ」

ドラゴンね~……まだ子供なら良いかな? それに僕の中にはドライグも

ある意味で飼われているからね。

「おっ! あれだよ!」

ザトゥージさんが指さす方向を見てみるとそこには大木の枝に

羽を休めている青く輝くうろこを持つ子龍がいた。

うん、確かにめっちゃ綺麗だ。

僕は試しにその子龍に近づいていくと気配に気づいたのか子龍が目を覚ました。

『ガァー』

「は?」

子龍が欠伸をするように口を大きく開けた瞬間!

「おげぎゃげやぎぇあぎぇあぎぇあぎぇがいぇがえや!」

突然、全身に電流が走って僕は全身からプスプスと煙を放ちながら地面に倒れてしまった。

絶対にマンガだったら骨まで透けてる描写の筈だ。

「あ、言い忘れてたけど外敵にしか雷を吐かず他の生物のオスが大嫌いだ」

「さ、先に言って」

「イッセーさん!」

アーシアさんは急いで僕に駆け寄って来て、全身から癒しの光を出して

その光で僕を包み込んで癒してくれる。

すると

「ど、どうしたんですか?」

何故だか子龍がアーシアさんに抱きついて甘えていた。

「スプライト・ドラゴンは心が清い者に心を開くとも言われている」

「ガー」

小龍は眠たいのか欠伸をするほどアーシアさんに心を許しているみたいだった。

「ぐすん、なんで僕は攻撃されたんだ」

「イッセーの心よりもアーシアの心が清いのね」

ぐすん、僕はアーシアさんに負けた。

まあ、心の清らかさではアーシアさんが圧勝だから仕方がないか。

 

 

 

そう言う訳でアーシアさんは朱乃さんの補助を受けながら子龍を使い魔にした。

「よろしくです。ラッセーくん」

「ラッセー?」

「はい! 雷を吐くのとイッセーさんから取りました!」

「ガー」

はぁ~僕は結局使い魔は取れずか。




まだ、パソコンが使えそうなので限界まで更新するっす!


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Life55

ある日の休日、部長の顔は非常に険しかった。

さっきから何回も同じ場所に掃除機をかけたり埃が

ないかをチェックするためにウロウロしてる。

「あ、あの部長。どうかしたんですか?」

僕が訝しげに聞くと部長は真剣な面持ちで答えてくれた。

「今日お義姉さまが来るのよ」

お義姉さま? あぁ~グレイフィアさんの事。

そう言えばグレイフィアさんは部長のお兄様であるサーゼクス様の奥方様で

ミリキャス様のお母様、つまり部長からすれば義理のお姉さんという事になる。

「今日グレイフィア様はオフを貰ったらしくこちらに来るらしいですの」

朱乃さん笑みを浮かべながらそう言う。

「へ~オフですか。つまりメイドもオフだと」

「ええ、いつもはグレモリー家に仕えるメイド。娘のリアスとは

主従関係にありますがオフになるとその時はお義姉様になるのです」

「……部長はオフのグレイフィアさんがすごく

怖いらしいんです……すごくチェックが厳しくて」

小猫ちゃんは僕のお膝に座りながらそう言った。

部長にも苦手な人はいる訳か。まあ、僕にも苦手な人はいるけどね。

「イッセー、貴方もキチンとして置いて頂戴。きっとチェックするだろうから」

「は、はぁ~」

すると来客を告げるインターホンが鳴り響いた。

お客さんは……部長の顔色で分かった。

部長は早足で下に向かう。

僕らも部長についていき玄関まで来るとそこには私服のグレイフィアさんと

紅色の鱗がある未知の生き物がいた。

「ごきげんよう皆さん」

と気品あふれる微笑を浮かべつつ丁寧なあいさつをしてくれた。

マジでセレブの人ってごきげんようって言うのか。

そしてグレイフィアさんの視線が部長に移った。

「ごきげんようリアス」

「ごきげんようお義姉さま」

部長も朗らかな笑みを浮かべるけど緊張しているのが見て取れた。

「お久しゅうございますな姫様」

……ずっと気になってたんだけどこのキリンみたいな胴体に東洋の龍みたいな

顔をしている未知の生き物はなんなの?

「おぉ、貴方が赤龍帝殿ですな。お初にお目にかかる。私はサーゼクス様に

お仕えするポーン、炎駆と申すものです」

「あ、初めまして。兵藤一誠です」

めちゃくちゃ丁寧な生き物さんだな。

「イッセー、彼はお兄様に仕える伝説上の生き物、麒麟よ。

久しぶりね、元気そうで何よりだわ」

す、凄い。サーゼクス様は伝説の生き物を卷族にしているのか!

や、やば。絶対にこの人強いじゃん。

魔王様の卷属は皆バケモノゾろいと言われているのもわかるな。

「それでは私はこれで。少しでも幸運を訪れさせれば幸いです」

そう言い赤い霧となって炎駆さんは消えていった。

 

 

 

「そうリアスが迷惑をかけてなくてよかったわ」

「い、いえ! 私はいつも助けてもらっているばかりで」

炎駆さんが帰られたあと、グレイフィアさんをVipルームにお連れしようとしたが

グレイフィアさんが部長の部屋が良いと仰り、今は部長のお部屋でお話し中です。

ちなみに今はアーシアさんとグレイフィアさんが話している。

部長も隣で朗らかに笑みを浮かべているけどどこかぎこちない。

「良いお友達、後輩に恵まれてよかったわ」

オフのグレイフィアさんは何だか怖いってみんな言っていたけど

良いお姉さんじゃないですか。

「後は……殿方だけね」

グレイフィアさんが言い放った瞬間、部屋の空気が一気にピリピリしたものに変わった。

「……いつか来るとは思ってましたが」

何々? 何で小猫ちゃん達はそんな臨戦態勢みたいな事になってるの!?

僕とゼノヴィアさん、イリナちゃんも頭の上に?マークを浮かべている。

「悪魔はただでさえ出生率が危ぶまれています。特に名家の血を絶やす

訳にはいかないのです。貴方にも次世代を担う子の親になってもらいたい。

それが私とお義父様、お義母様の願いよ」

グレイフィアさんは真剣な表情で部長に語りかけていた。

しかし、グレイフィアさんはすぐに表情を緩和させた。

「でも、私もあの一件に関わっているのよね。どうしても貴方達に

想いを乗せてしまう……それ以前に私とあの人も自由な恋愛をしたから」

「お二人のラブロマンスは悪魔の女性にとってあこがれですわ」

なんだか朱乃さんは少し興奮気味に言いよっていた。

「……劇にもなっています」

小猫ちゃんも知っているのか少し興奮していた。

ど、どんな波乱万丈な恋愛をしたんだよぉぉぉぉぉ!

 

 

 

「まあ、リアスも自由に恋愛をすれば良い」

っ! 卓の端から第三者の声が聞こえてきてそっちを向いた。

……………は、はぁ!? サーゼクス様!?

なんと卓の端にサーゼクス様がいらっしゃった。

い、いつの間に……。

「サーゼクス、貴方四大魔王の大事な会議では?」

「私はここから会議に参加しようとね。ここでのリアルタイム映像を

あちらに送れば……痛い、痛いよグレイフィア」

グレイフィアさんは不機嫌な様子でサーゼクス様の頬を引っ張っていた。

すると卓上に三つの小さな魔法陣がでてきて立体映像が送られてきた。

『……ゼクスちゃん……サーゼ…ちゃん……サーゼクスちゃん!

もう!勝手に人間界に行っちゃうんだから!』

魔法少女……いや魔王少女のレヴィアタン様が映像に映っていた。

「すまない、セラフォル―。今私は兵藤一誠君の家にいるのだよ」

『あぁ~! 本当だ! もすもすひねもす~♪赤龍帝君♪』

レヴィアタン様、それだとキャラがかぶっちゃってます。

「ごきげんようレヴィアタン様」

『やあやあ、ごきげんようリアスちゃん』

そして残りの魔法陣からも、顔と声が出てきた。

『サーゼクス、お前が会議を抜けて人間界に行くという事は事件が起きたか

面白いことが起きるかだ。後者なんだろ?』

『え~? めんどいことはやめてよね~』

僕は見知らぬ人の登場に少し、戸惑っていた。

顔は以前の若手悪魔の集会のときに見ているから若干は覚えている。

四大魔王様の残りのお二方だ。

「ああ、イッセー君にはまだ紹介していなかったね。こっちの怪しい雰囲気の

男がアジュカ・ベルゼブブだ。主に術式プログラムの最高顧問だ」

『怪しい雰囲気は悪魔的には良いんだよ。赤龍帝殿、初めてだね』

「あ、は、はい!」

や、やっべ。僕の家に四大魔王様が来ちゃってるよ! まあ、映像なんだけどね。

「そして、そちらのめんどくさそうな顔をしているのがファルビウム・アスモデウスだ」

『どうも……ファルビウムです』

ファルビウム様は頬杖をつきながら本当にめんどくさそうな

表情を浮かべて軽く自己紹介をしてくださった。

なんだかだら~んとしている人だな。

『それでサーゼクス。いったい何が起こるんだ?』

「実はリアスに例の通過儀礼をしてもらおうと思ってね」

『『『おぉっ』』』

何故かお三方がサーゼクス様の言ったことに驚いていた。

何故に?

「はうぅぅぅ……イッセー……どうしましょう」

部長は僕の腕にひっついて来て目を涙でウルワしながら僕を見つめてきた。

うぅ! そんな可愛くアーシアさんみたいにこっちを見ないでぇぇぇぇぇ!

 




久しぶりの更新ですね。


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Life56

てな訳でそんな日から数日後、僕と部長はグレモリー領のとある

山岳地帯に位置している遺跡に来ていた。

なんでだか知らないけど部長と一緒に来て良いのは僕だけらしく

他の下僕の皆は家で待機している。

「ふぅ、事を急ぎすぎてこの子に嫌われたらどうするのよ……」

何やら部長はブツブツ言ってるし……よく分からない。

「とう!」

その時謎の声が聞こえた。

見あげてみるとそこには……5色のスーツを着た人たちがいた。

「な、何者」

「我らは謎の魔王」

――――――パシン!

赤いスーツを着た人が黄色のスーツを着た方に思いっきりハリセンで叩かれていた。

は~……いったいあの方々は何をやっているんだか。

絶対にあの赤い人の中はサーゼクス様だよね?

ということはハリセンで赤を叩いた黄色はグレイフィアさんとして

……残りは魔王様方か。

「我らは魔王戦隊サタンレンジャー! 俺はリーダーのレッド!」

「同じくブルー!」

「めんどくさいけどグリーン」

「レヴィアタン……じゃなくてピンクーよ♪」

「……イエローです」

……うん、正体モロバレじゃん。

しかもブルーの人レヴィアタンて言ったよ。

流石に部長も気づいて

「サ、サタンレンジャーですって!?」

マジでこの人気づいてないよぉぉぉぉぉ!

部長は本当に気づいていないらしく、かなり驚いていた。

「部長! あの人たちは魔」

―――――ドッカァァァァァァァァァァァァァン!

「おっとすまない! どうやら魔力が暴発したようだ」

僕の顔のスレスレを通った魔力弾は地面に直撃しポッカリと大穴があいていた。

レッドォォォォォォォォォォォ!

僕を殺す気かよぉぉぉぉぉぉぉぉ!

「我らはグレモリー家に雇われたのだ! この先の三つの試練で君たちを待つ!」

「あっ! 敵発見!」

ピンクの一言に全員が魔力を一気に上昇させた。

「むぅ! 一勢攻撃だ!」

―――――――チュドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!

……かつて見たこともないほどの大規模の爆発が起り、辺りにいた

鳥やらなんやらが悲鳴をあげて一気に離れていった。

「ただの悪霊じゃないか、驚かすなよピンク」

「てへっ♪」

ピンクは可愛らしい仕草をする。

……ツッコンだら負けだよねこれ?

「我々が各試練を受け持つ! 待っているぞ! グレモリーを受け継ぐ二人よ!」

そう言ってサーゼ……レッドは素早くどこかへと消え去った。

「行きましょうイッセー!」

「……はい」

もうどうにでもなれ。

 

 

石造りの通りを超えるとひらけた部屋に辿り着いた。

そこにピンクがいた。

「まずは最初の試練として……ダンスをしてもらいます!」

よ、良かったぁぁぁぁ~。レヴィアタン様と闘えとかじゃなくて。

今の僕じゃ確実に瞬殺されちゃうからね。

そう言うとレヴィアタン様は指を鳴らして音響装置を出した。

「ほら、イッセー行くわよ!」

部長が手を出してくる。冥界で部長のお母様に習った奴だ!

僕は必死に記憶の底から踊り方を引きずりだしてきてなんとか踊り切った……

でも、まだまだ未熟なところが多かったな~。

ふと部長と目が合うと何故か部長は顔を真っ赤にした。

あらら?何故そんな反応?

「上手よイッセー。よかった……これで将来一緒に」

何故か目までウルウルにしている。

さっぱり分からない。

そして曲も終わり僕と部長はダンスを終える時の挨拶をした。

「うふふ。なんだ、心配して損しちゃった♪ さあさあ先に進んじゃって!」

ピンクに急かされ僕たちは先に進んだ。

 

 

「……や、ようこそ」

次の試練はアスモデウス様が担当なされるらしい。

傍にはメイドさんが二人待機してらっしゃる。

しかし何故か部屋にはテーブルとナイフとフォークがあった。

「えっとね、第二の試練はテーブルマナーだよ。

メイド達が君達を採点するから」

そう言われて僕らは椅子に座りナプキンを広げ食事を始めた。

………やっぱり部長は凄いな~。

難なく先に進んでいってる。

そんな感じで不安を感じながら食事を終えた。

「リアス姫様は満点でございます。兵藤さまもいくつか

減点がありましたが高得点でございます」

よ、良かった~。

「イッセー! この調子で行きましょう!」

「はい!」

僕たちは次なる試練へと通じる扉を開けてその先の道を歩き始めた。

 

 

 

 

 

最後の試練へ通じる通路の途中で僕は疑問に思っていることを部長にぶつけた。

「そう言えばサーゼクス様とグレイフィアさんの恋愛てそんなにすごいんですか?」

ずっと気になっていた。僕の家でもなんか盛り上がってたみたいだし。

「そうね……貴方も私の卷属だから知る権利はあるわね。グレイフィアとお兄様はね」

まあ、それから壮大なラブロマンスを聞かされた。

グレイフィアさんはもともと旧魔王派の御家の長女らしくて

サーゼクス様は反魔王派の英雄とも言われていたらしい。

そんな2人が派閥を超えて恋におちあったらしい。

そんで戦争が終わってから2人は愛を深めあった……。

「時々ね思うの。私はグレイフィアやお兄様に比べて劣っているんじゃないかって」

優秀な兄を持てばその弟や妹は必ずと言っていいほど比べられる。

それが部長の劣等感になっているのか。

「正直どうでもいいじゃないですか」

「え?」

「部長は部長。それ以外何ものでもありません。たとえ他人が比べようが

自分の速さで成長していけばいいじゃないですか。他人の意見なんて

ほとんど意味がないんですし」

「……イッセーは割り切っているのね。自分は自分、他人は他人」

「はい! そうしないと僕なんか精神的につぶれちゃいますから」

「そうね……行きましょう」

「はい!」

そうして僕らは歩き始めた。

「……まだ『部長』なのね」

 

 

 

 

 

「やあ」

第二試練で待っていたのはブルーことアジュカ様だった。

用意されているのは机とイス、そして答案用紙と問題プリントらしい紙が2枚。

「君たちにはグレモリー家の関する歴史や冥界の一般知識なんかを

まとめたテストを受けてもらう。さあ、着席して」

うぅ、ここで筆記テストですか。

「じゃあ、始め」

ブルーの合図とともに答案用紙を表にした。

……爵位に関する事や上級、下級、中級に関する事を織り交ぜた問題か。

僕は記憶の引き出しから必死に正解を取り出していき答案を埋めていった。

ちらっと隣を見るとすらすらと埋めていっている部長がいた。

す、すごいな。

僕は時間ギリギリまで粘った。

 

 

 

 

 

 

「はい、そこまで」

ブルーの終了の合図とともに答案用紙が回収され採点が行われた。

部長の答案だろうか?

さっきから丸ばっかりだ。

それに比べ僕の答案はいくつか×をつけているような感じがした。

「さてさて」

どうやらもう採点が終わったらしくブルーはまとめた用紙をトントンと

机で揃えていた。

「リアス・グレモリーは問題なく合格。赤龍帝君は……」

な、なんでそこで溜めるんですか――――!

めちゃくちゃ怖いじゃないですかぁぁぁぁぁ!

「君も問題なく合格だ」

「はふぅ~」

数秒間生きた心地がしなかった。

悪魔の知識は復習をする時間がなかなかなかったから不安だったんだ。

「おめでとう、これでグレモリー家の男女の儀式は終了だ。

奥にいるレッドに合格を報告してきたまえ」

ということらしいので僕と部長は奥へと進みドアを開けると

冥界の空が広がっていた。

「おめでとうございます、お二方」

イエローが前にいた。

そんでもってその後ろにレッドもいた。

「さーてと。最後の試練だ!このレッドを倒してみせよ!」

……僕は再び生きた心地がしない時間を味わうようです。



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Life57

という訳で僕は今レッドと対峙しています。

正直言うと僕、死ぬかもしれません。

今、僕が戦おうとしているのはレッド――――――その正体は魔王様であるサーゼクス様です。

「イッセーしっかりやりなさい! 貴方なら勝てるわ!」

いやいや、部長さん。貴方も正体を知ったら確実に顔を青ざめますよ。

「ところでイッセー君よ」

「はい」

ふと、サタンレッドが僕に質問をしてきた。

「君は確かバランスブレイクが出来ないと聞いているが」

「はい……ですが手加減は無用です」

『Boost!』

僕は籠手を呼び出し戦闘態勢に入った。

「ふむ、良い魔の波動だ。では私も本気で行こうか」

あちらさんは紅色のオーラを身にまとった。

「さあ、どちらが冥界のヒーローにふさわしいか決着をつけようぞ!」

「っしゃ!」

僕はレッドに向かっていった。

 

 

 

そんな感じで調子よく戦闘を開始してから10分。

「はぁ、はぁ」

「どうした! そんなものか!」

格が違いすぎる!

最高速度ではないとはいえ今まで誰も反応できなかったナイトの

速度を余裕で上回る速度で向こうは移動するしドラゴンショットを撃っても

片手で軌道を変えられるわだし。

「赤龍帝~頑張りなさいな☆」

「サーゼクス相手にバランスブレイクなしで10分耐えられる時点で

君ももう規格外だ。将来が有望だな」

「……ZZZZZZZZ……」

魔王様方(アスモデウス様除く)は応援席で応援してくれている。

だったら即興で考えた技を見せてやる!

「喰らえ!」

僕は何発も魔力弾を細かく撃ちだしていく。

「同じ攻撃は私にはきかんぞ!」

でもそれらは全て辺りに浮いてる消滅の力の球体によってかき消されていく。

今だ!

――――――ズボォォ!

「ほう」

レッドの後ろにいきなり地面からタケノコが生えるみたいにドラゴンの腕が出てきた。

龍の腕は伸ばしたり縮ませたりできるんだ!

さっきの魔力弾は意識をそっちに集中させて地面に潜り込ませた腕に

気付かせないようにするための囮だ!

これなら!

「甘い!」

「っ!」

レッドは後ろを見ずに前を見たまま足を後ろに引いてドラゴンの腕を蹴り飛ばした。

「良い考えだとは思うが少し腕に意識を集中させすぎだ」

つ、強すぎる!これが魔王の力。

『壊せ』

っ!や、やば!

「うぅが!」

「イッセー!? どうしたの!?」

『壊せ壊せ! 覇龍で奴を壊せ!』

や、ヤバい!このままじゃ意識持っていかれて暴走する!

「こんなものか!?」

突然レッドの…いやサーゼクス様の怒ったような声が聞こえてきた。

「君のリアスを想う気持ちよりも破壊欲の方が強いというのか!?」

……だよな。

――――――ドゴォォン!

僕は一発自分の顔面を殴って意識を集中させた。

「お見苦しいところすみません。これで最後です!」

『Boost!』

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

僕の感情に伴い魔力が上がっていく。

「ほう、この魔力量。四大魔王と変わらない量だ。なら私も!」

サーゼクス様の魔力も格段に上がっていく!

これが魔王の力!

「ドライグ! 今持つすべての力をドラゴンショットに乗せる!」

『おう! 任せろ!』

徐々に籠手に魔力が集まっていく。

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!フルバーストドラゴンショットォォォォォ!」

僕は今持つすべての力をつぎ込んだドラゴンショットを前方に放った!

 

 

 

「はぇ?」

「ふふ、起きた?イッセー」

僕が気が付いたら部長さんに膝枕をされている状態だった。

上半身だけ起こして周りを見てみると…全壊したコロシアムが目に映った。

『さっきのドラゴンショットでコロシアムが吹き飛んだんだ』

ドライグ……レッドは?

『全員爆発にまぎれてどっかに行ったさ。だが…あいつの強さは異常だな』

ドライグが異常って言うんだ。僕らからすれば規格外ってことなんだろうね。

「や、お疲れ様イッセー君」

「サーゼクス様」

隣にはグレイフィアさんもいる。

「そろそろ終わるころだと思ってね。二人とも合格だ」

そ、そっか……ていうかなんで僕はこれに受けさせられたわけ?

ねえ、ドライグ。

『……自分で気づくことだな』

そう言って神器の奥底に戻っちゃった。

ありり……そう言えば最近エルシャさんに会いに行ってないな……今度会いに行こう。

すると魔王様方がこちらに来ていた。

「お疲れ様☆」

「……あ~やっと終わった」

そのうちの1人…アジュカ様が僕の方をじろじろと…いや、正確には

神器の方をジロジロと見ていた。

「少し君のイーヴィルピースを見てもいいかな?」

「え、あ、はい」

僕に断りを入れたアジュカ様は僕の胸に指を突きつけて小さな魔法陣を幾重にも展開させた。

「ふむ、なかなか面白いことになっているな。ほう、これは初めて見るな」

何だかアジュカ様がニヤニヤしながら顎に手を当てて考えている。

「君の駒なんだがね、ナイトの特性に異様なほど注いでいるね。

だが、それに比べてルークの特性が異様に低い。割り振りが無茶苦茶だ」

「え、えっと」

「まあ、それが君の強さの根源でもあるんだがね。頑張りたまえ」

そう言ってアジュカ様は僕から離れられ魔法陣で転移した。

良く見るとアスモデウス様もいつの間にかいなくなっている。

「さあ屋敷で試練突破の催し物をするんだ。行こうか…あ、その前に

言わなきゃいけないことがあるね。次の相手が決まったよ」

「「っ!」」

だ、誰なんだろ。まだ戦っていないのはアガレス家とバアル家くらいか。

「その相手は?」

「サイラオーグだよ」

その答えを聞いてまたまた僕と部長の顔に戦慄が走った。

若手ナンバーワンと謳われているあのサイラオーグさんと闘えるのか。

あり?グレイフィアさんが魔法陣を展開してる。

そこから以前に乗ったグリフォンがでてきた。

「私達は先に帰るから君達はそれで帰ってくると良い」

 

 

―――――――ひゅぅぅぅ~。

強すぎず、弱すぎない強さの風が僕の顔を撫でていく。

ん~いい風だな~。

僕らはあの時みたいにグリフォンの背中にのって優雅に空中散歩をしていた。

「あの時みたいね」

「そうですね~」

部長も同じことを考えていたんですね。

「……あの時言ってくれたこと覚えてる?」

「何度でも貴方を助けに行きます」

そう言うと部長は僕の背中に抱きついてきた。

「ふふ、ずっと一緒よ。愛しのイッセー」

「……」

僕は言葉で返事はせずに部長の手を軽く握った。

 

 

 

恋……それがどんな感情なのかは僕は知らない。

経験したことがないとかじゃなくて僕は本当に知らない。

心の中にそんな感情が芽生えたことはない。

……なのに…この気持は何なんだろう。



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Life58

「将来的には悪魔の女性からヴァルキリーを輩出したいと思っています」

ロスヴェイセさんが思い描いている将来を語り終えるとお辞儀してから席に着いた。

今、僕たちグレモリー卷族は冥界の部長さんの本邸のダイニングでお茶をしている。

ようやく部長の卷族がすべてそろったのでその挨拶を言う訳である。

にしてもまあ……少ないね。

多分他の所よりかは数人くらいは少ないと思う。

そんでその主な原因は僕だよね。

僕の中に眠っている物がヤバいものだけに駒を全て消費して転生した。

うん、僕ってどこに行っても迷惑をかけるね。

その後も他愛ない会話は続いていく。

 

 

 

そして僕らが転移魔法陣で帰ろうとした時ミリキャス様が僕に近寄って来た。

「イッセーお兄様はこれからもずっとお姉さまを部長と呼ぶのですか?」

「ええ、まあ。僕と部長の関係は変わりませんからね」

………なんでだろ、前までは何ともなかったのに今は心がざわめくというか。

ふと後ろを向いてみると悲しそうな表情をした部長がこっちを見ていた。

なんで?何でそんな表情をするの?ねえ、なんで?

僕の疑問は消えることなく人間界へと帰った。

 

 

 

そして修学旅行当日。

僕たちは東京駅の新幹線のホームにいた。

見送りには部長だけが来てくれている。

「はい、これが人数分の認証よ」

部長が旅に出る僕たち二年生にあるカードを渡した。

「これが噂の?」

僕が聞くと部長が頷く。

「ええ、これが悪魔が京都を楽しむ際に必要なカードよ。

これがあれば京都の関係者にも伝わるから」

京都の名所は寺が多い。僕ら悪魔は寺とか神社とか神聖な場所には近づけないからね。

そんな事よりも気になるのがイッセーくんだ。

さっきから遠くの方をボーっと見て話に参加していなかった。

いつもなら一番に話に加わってくるのに。

部長も部長でイッセー君となんだか距離が開いてるような気が。

「まあ、3泊4日楽しんできなさい」

「「「「「はい!」」」」

こうして僕たちの修学旅行が始まった。

 

 

「………」

「ねえ、あいつどうしたのよ」

「さ、さ~。今朝からああなんです」

桐生さんの質問にアーシアさんも戸惑いを見せていた。

「イッセー、どこか具合でも悪いのか?」

「ん~」

……どうやら何かあるみたいだね。

ゼノヴィアさんに話し掛けられてもイッセー君は視線すら合わせようとしなかった。

ずっと窓の外を向いている。

……もしかして神器の中に潜り込んでいるのか?

いや、でもそうだったら反応はないはず。

 

 

 

『あら、いらっしゃ~い』

「お久しぶりです、エルシャさん」

新幹線でアーシアさん達が楽しそうに話していたから僕はセイグリッドギア

の中の歴代所有者様達に会いに来ていた。

といっても話してくれるのはいつもエルシャさんだけで後は表情すら見えない。

『ふふ、悩んでるみたいね。少年』

「悩む?僕がですか?」

『ええ』

「特に僕は悩んでなんか」

『んふふ♪お姉さんに隠したって無駄だぞ☆』

………悩み…か

ふと僕は歴代の所有者の中で年齢も体形も僕に近い人の前に行った。

『そいつはお前と同い年くらいの宿主だった。才能もありすぐに

覇龍にも目覚めた……が力におぼれ他のロンギヌスの使い手に殺された』

隣にドライグがいつの間にか立っていて目の前の所有者について話してくれた。

「白龍皇じゃなくて?」

『力に溺れれば他の神器によって殺されたりするのよ』

『それに比べエルシャもそうだがお前は力には全く溺れない。というよりも逆のパターンか?』

余りに弱すぎると勘違いしているとでも?

『んまあそのくらいがいいわよ。決しておごらない。それが

貴方の強みでもあるわ。ベルザードもそう言っているもの』

ベ、ベルザード?

僕が疑問に思っているとドライグがその人について説明してくれた。

『ベルザードは最強の赤龍帝だった。二度も白龍皇を倒したからな』

え、えぇぇ!?二、二回も倒しちゃったの!?強すぎでしょ!

『でも今回で覆るんでしょ?』

『だろうな』

いやいや、最強を目指すって言ってもあくまでレーティングゲームでの話ですから!

赤龍帝の中で最強を目指すなんて言ってませんから!

『あら、不思議そうな顔をしてるわね。最強を目指すなら

ついでに私たちも超えちゃいなさい。そしてもっと笑わせてね、少年』

 

 

目を開けたら新幹線の中だった。

かなり長い時間潜ってたのかな。

「あ、起きた?イッセー君」

「ん」

隣にはいつの間にか木場君が座っていた。

……顔が近いのは気のせいだと思いたい。そして所々から

『木場君×兵藤君!?ありかも!』とか言ってるのも気のせいだと思いたい。

「有事の際について確認しておいたくて。僕と君は別クラスだから」

「ん~」

それから有事の際の集合場所だとかを知らされているうちに駅に着いた。

 

 

 

 

「す、すげえ。俺達二年全員泊める金大丈夫なのか!?」

とまあそんな風に偶然会った元浜君がそう言っている。

まあ無理はない、僕達が宿泊するホテルのロビーは

めちゃくちゃ豪華絢爛な装飾が施されており上にはシャンデリア、

床には赤い絨毯がある。僕も最初は元浜君と同じことを思ったよ。

でもホテルの名前を見て気付いた。

サーゼクスホテル……どう見てもグレモリー家が絡んでるホテルだ。

とまあそんな訳で今僕たちは先生から注意事項を受けている。

「とまあそんな感じでいろいろ注意して遊んでこい。以上」

アザゼル先生、もう少しやる気を出して説明しましょ。

そんな訳で荷物を部屋に置きに行くべく鍵をそれぞれ受け取りに行くが

「あ、イッセーはこれだ」

何故か僕だけアザゼル先生から直接渡された。

何故に?

その理由は部屋に行ってすぐに分かった。

 

 

「………なんで僕だけ古風な和室?」

僕の目の前には8畳分くらいの広さの部屋と丸いテーブルに

敷布団、そして……だからなんでダイヤル式の昭和テレビ!?

ためしにダイヤルをまわしてみるとカラーではなく白黒の映像が映った。

しかも画質まで昭和もんだよ!白黒って今どき売ってないよ!?

まさかと思いトイレを確認すると案の定……ボットン便所だった。

いやね、昔はボットンが常識だという時代もあったさ。

今じゃおかしいだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

というか和室にボットンというチョイスはおかしいと思います!

僕は半泣きになりながら班の集合場所に行った。

 

 

 

「あ~可愛いですぅ~」

「おぉ、確かにこれは可愛いな」

「ここで買い物しても大丈夫よね?」

ついて早々、教会トリオは狐の可愛い置物に目を奪われていた。

桐生さんが急に伏見稲荷に行こうと言い出し電車でひと駅の所に来ていた。

なんというか平和で良かったよ。

僕は大きな鳥居をいくつも通り抜けて階段を上っていくと前には古ぼけた社があった。

「……京都だけに怪奇現象ってか?」

おかしすぎる。伏見山はまあまあの高さはある。

僕は数分しか上ってないのにもう前は行き止まりになっていた。

それにまだお昼というのにあたりが薄暗い。

「……京の者ではないな?」

突然の声に僕は辺りを見回した。

数は……10~20という感じか。

夏休みにタンニーンさんに追いかけられたせいで感覚が研ぎ澄まされているせいか

姿が見えなくても気配でどの程度の強さなのか、また何人いるのかが

大体分かるようになった。気を抜けば即死の世界だからね。

そして、前から何かが歩いてきた。

「……女の子?」

目の前にキラキラ光る金色の髪に巫女装束を着て獣耳がある少女がいた。

「……よそ者め!かかれ!」

な、なんでいきなり襲いかかるのぉぉぉぉ!?

僕パス持ってるよ!?

辺りから烏天狗やらなんやらの妖怪が大勢出てきた。

京都で暴れたら怒られるから本気は出せない。

僕は籠手からアスカロンを出すと刃の部分ではなく峯の部分で

相手の攻撃を弾いたり相手をはじきとばしたりしていた。

「母上を返せ!」

「何の事かな!?僕は今日ここに来たんだけど!」

「嘘をつくな!私の目はごまかしきれんのじゃ!」

あぁもう!

「何何?乱闘ゲームのリアル版?」

その時、イリナちゃんとゼノヴィアさんが来て、遅れてアーシアさんも来てくれた。

「二人とも、京都の名所だから相手の武器を破壊するくらいに」

「オッケ~」

「任せろ!」

それからはあっという間に鎮圧できた。

「っ!今の戦力では無理じゃ!一度撤退じゃ!」

少女がそう言うと風にまぎれてどこかへと消えていった。



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Life59

「あ~美味しかったし良い湯だった」

あの後、僕たちは辺りを警戒しながらも一日目に回るところは全部回り切った。

まあ桐生さんが少し不思議がってたけど。

帰ってから先生たちに報告すると二人とも困惑していた。

「何で京都で襲撃に」

まあ、そんな感じで晩御飯も終わり風呂にも入り

一日の疲れも取れ部屋に戻ろうと歩いていた。

「お~イッセー、ちょうどいいところにいたな」

「アザゼル先生」

前から先生が歩いてきた。

「俺とお前たちに召集だ」

「誰からです?」

「魔王少女だ」

 

 

先生主導のもと僕たちはレヴィアタン様が待っていると言われている料亭まで足を運んでいた。

その店に入り個室に入るとそこに着物姿のレヴィアタン様とシトリー卷属の二年生がいた。

「ハーロー。赤龍帝君、リアスちゃん達の卷属ちゃん☆」

「何でレヴィアタン様がこんな所に?」

「うんうん☆私は妖怪さん達と協力体制になるために来たのだ~☆」

そう横チョキしながらおっしゃった。

でも箸をおいてその可愛い顔を少し陰らせた。

「でもね、大変な事になってるのだ~☆」

……シリアスな雰囲気がぶち壊された。

「京都の妖怪の報告によると妖怪達の御大将の九尾が行方不明なの」

レヴィアタン様が最後に言ったことを聞いて今朝の出来事が繋がった。

……そういうことか。

「十中八九、カオス・ブリゲートだろうな」

アザゼル先生が杯から酒を入れながらそういった。

「どちらにしてもまだ公には出来ないのでは?」

「あは☆その通りなのら!」

……ん?

「ら~っく!ヘロリストさん達が次から次へと騒ぎを起こしてくれる

せいでわらしはいそらしいのら!あっはははは☆」

か、完全に酔ってらっしゃる。とは言ってもまだ軽い方か。

……ハイテンションがさらにハイテンションとか勘弁してくれ。

「ひとまずお前達は修学旅行を満喫してろ。何かあれば

俺達の方からイッセーだけでもひっこ抜いてやるから」

何故に僕だけ!?

その晩は僕たちはそのままホテルに返された。

 

 

「はっ!」

「ぬぅっと!」

翌日の朝、ホテルの屋上で僕と木場君が高速で移動しながら

木刀で斬り合っていた。

いくら修学旅行といえど毎日のサイクルを壊す訳にはいかない。

だからこうやって朝早めに起きて僕たちは特訓をしていた。

「おぉぉ!」

「くぅ!」

――――ボキィィン!

僕が振り上げた木刀を木場君が防いだら綺麗に真っ二つに折れてしまった。

「あ、折れちった」

「そこまでだね、今日は」

「だね」

キリがいいので今日はそこで切り上げた。

 

 

「じゃ、行きましょうか!」

桐生さんのその一声で二日目の旅行が始まった。

先ず僕達が向かったのは清水寺。その前に三年坂が見えてきた。

「ここは三年坂って言ってここで転ぶと三年以内に死ぬらしいわよ」

桐生さんの説明に僕は懐かしさを感じた。

母さんにそう云われて泣きじゃくりながら抱きついたっけ。

「こ、怖いですぅぅぅ」

「日本は恐ろしい術式を坂に組むのだな」

勘違いしてらっしゃる方が二名僕の腕に抱きついてきた。

うぅ、辺りの男子からの視線が痛い!

なんとか坂を登り切り大きな門が見えてきて清水寺が見えたきた。

「おぉ! ここが清水寺か! 行くぞイリナ! アーシア!」

「はい!」

「ええ!」

そう言って目をキラキラさせながら三人は清水寺に走っていった。

良く京都ではしゃげるよ……ていうかイリナちゃんも日本人だよね?

「元気ね~三人トリオ」

「だね~」

僕と桐生さんは三人トリオを見ながら、彼女達の後を追った。

 

 

 

 

「やっぱりあんた変わったわね」

「僕が?」

歩いている途中で桐生さんがそんな事を言ってきた。

「はっきりとは言えないんだけど、あんたは変わった」

うん、ドラゴンと追いかけっこして何度も死にかけました!

ってことは言えないのでどうにかしてごまかした。

そして先に行っていた3人と合流し次に向かったのは銀閣寺。

「ぎ、銀じゃない!」

ゼノヴィアさんはぐったりと項垂れていた。

まあ、そう言うだろうと思ったよ。

僕も昔はリアルに銀を塗ってるもんだと思ってたけどね。

「本来は銀を塗る予定だったらしいんだけど幕府の

財政難で無理だからとかいろいろ説があるわよ」

だね~。次に行ってみよ~。

 

 

「おぉ!今度は金だ!」

僕達が次に来たのは金閣寺だ。

ゼノヴィアさんは目をキラキラ輝かせて、金閣寺を見ていた。

目が金閣寺みたいにキラキラしてる。

ちょうどいいから写真撮って向こうに贈ろう。

僕は写メを取って向こうに送るとすぐに電話が鳴った。

「はい、兵藤です」

『あ、イッセー君ですか』

相手は朱乃さんだった。

『さっき小猫ちゃんが気になることを言っていたんですけどさっき

送ってくれた写真に狐の妖怪が何匹か映ってたガガガ…みたい…ガガガ』

「朱乃さん?電波悪いんですか?……」

……でも、よく考えたらここは外だから電波は良いはずだし、向こうもおそらく

部室なんだろうけど電波が通らない筈がない。

後ろを見てみると桐生さんが眠っていた。

そしてゼノヴィアさんが怖いくらいの表情で何かをにらんでいた。

「あ、また」

そこには狐さんがいた。

僕はすぐに籠手を出そうとするけど

「待って下さい」

「ロスヴェイセさん」

そこにはロスヴェイセさんがいた。

「アザゼル先生に言われて貴方達を連れに来たんです。

相手方の誤解が解けたので向こう側が謝罪したいと言ってきました」

 

 

僕達が連れてこられたのは異界だった。

時代劇の街並みのセットの様な感じの物が並び辺りには妖怪がたくさんいた。

その先にでかい屋敷がありその鳥居の前にアザゼル先生とレヴィアタンさまがいた。

「お、来たか」

「やっほ☆」

それと2人の他にももう一人いた。

金色の髪に巫女装束、そして獣耳。

昨日襲ってきた狐の女の子だった。

「私は表と裏の京都に住む妖怪達を束ねている者

……八坂の娘の九重と申す」

先日とは打って変わりお姫様の様な雰囲気を醸し出していた。

「先日はお主たちの事情を知らずに襲ってしまい申し訳ない」

と、謝ってもらったわけだけど……正直、皆許してるんだよね~。

「良いよ、頭をあげて」

「し、しかし」

この子は僕たち以上に気に病んでるらしい。

僕はその子のしょうしょう無理やりに頭をあげさせた。

「別に良いよ。君が謝ってくれたなら僕らは君を許すよ」

九重は顔を赤くしモジモジしながら呟いた。

「………ありがとう」

これで一件落着だ。

「流石は仮面の戦士。子供の扱いがうまいね~」

「こんなところでも布教した~☆私も『ミラクル☆レヴィアタン』をもっと布教しないとね☆」

いやいや、布教なんかしてません。

「……咎がある身で悪いのじゃが……どうか、どうか!母上を助けてほしい!」

それは幼い少女の悲痛な叫びだった。



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Life60

この京都を牛耳るボスの九尾、八坂が須弥山の帝釈天から使わされた

使者と会談するために出ていったきり帰っていないらしい。

そしてその数日後、八坂姫を警護していた烏天狗が瀕死の状態で発見され

その死に際に八坂姫が襲撃されさらわれた、そう言い残して眠られたらしい。

「…………許せない」

「落ち着けイッセー。こんな所で切れても怖がらせるだけだ」

アザゼル線背に言われ、ふと隣を見ると少し怯えたような眼をした九重がいた。

……何をしてるんだか。先生の言うとおりこんな小さい子を泣かせるなんてヒーロー失格だよ。

「ごめんね九重」

僕は九重の綺麗な金髪に手を置いて頭をなでた。

「必ず八坂姫は助けるよ」

「……どうかお願いじゃ。母上を助けるために力を貸してくれ…貸してください!」

九重は目に涙をためて僕たちに懇願してくる。

こんな小さな子すら奴らは泣かすのか! カオスブリゲード!

 

 

 

「あ~疲れた」

あの後いくつか話しあったあと僕らはホテルに帰りシトリー卷属と話し合いをした。

その結果、簡易転移魔法陣を携帯し何か起こればホテルに帰って対処、するということになった。

旅行中の戦闘は避けられそうにないか……。

僕は自分の両手を天井に挙げて見上げた。

「龍の腕と……龍が宿った神器……そして封じられた

バランスブレイク……この状態で僕は勝てるのかな?」

僕の恐怖はいまだに消えずバランスブレイクを使えなくしていた。

この状態がずっと続くのであれば……僕はこれから荷物になるだろう。

なんとしてでもサイラオーグさん達と闘う前に取り戻さないと。

もしも取り戻せないのであれば僕は……誰だろ。

突然、ドアがノックされた。

「開いてますよ~」

「イ、イッセーさん」

入ってきたのはアーシアさんだった。

寝間着の状態でいつもよりも髪の毛があっちやこっちやに向いていた。

恐らくお風呂上がりのまま走ってこの部屋に来たんだろう。

「え、えっと髪を乾かしてくれませんか?」

「うん、いいよ」

僕はアーシアさんからドライヤーと櫛を借りて彼女の

長くてきれいな金色の髪を乾かし始めた。

「痛くない?」

「はい……イッセーさんは」

「ん?」

「リアスお姉さまの事が好きなんですか?」

僕はそれを聞いてドライヤーを動かしている腕を止めた。

「な、なんで?」

「よくイッセーさんはお姉様の事見つめていますし……

何より話している時のイッセーさんの表情がとてもにこやかなんです」

………分からない。

「むぅ、先を越されたか」

「おぉ! 良い雰囲気!」

そこへイリナちゃんとゼノヴィアさんもやってきた。

「私も乾かしてくれイッセー」

「じゃあ私もー!」

という訳で僕は三人の髪の毛を順番に乾かしていくことになった。

 

 

 

 

 

 

 

翌日、九重が嵐山方面を案内してくれるというのでお言葉に甘えて

案内してもらうことにした。

「ここの景色は絶景じゃ。なんせ世界遺産じゃからな」

九重に紹介された場所の景色は本当に絶景としか言いようがなかった。

向こうではあんまりみることのできない景色だね。

庭園も見回り、僕達が次に案内されたのは法堂だった。

堂内に入り天井を見上げると上には壮大な迫力の龍の絵があった。

「どこから見てもにらんでいるように見える雲竜図じゃ!」

凄いな~東洋のドラゴンはみんなこうなの?

『まあ大体そうだな。龍王のウーロンを思い出す』

ドライグが雲龍図を見て懐かしそうな声を出した。

雲龍図は撮影禁止だから残念だけど記憶に焼き付けておきますか。

 

 

 

 

 

「ん、美味しい」

「そうじゃろ!」

いろんなところを回った僕たちは九重の勧めで湯豆腐屋で湯豆腐を食べていた。

九重は満面の笑みで僕たちのお皿にどんどん湯豆腐を入れてくる。

きっとこれが彼女のいつもの姿なんだろうな……それをあんな悲しいものにした

奴ら……後悔させてやる。

ふと、イリナちゃんと目が合うけど顔を真っ赤にして目をそらされた。

まあ昨日の今日だしね。

「あ、イッセー君」

「木場君」

木場君の班もどうやら湯豆腐を食べに来たらしい。

「お、おいもうそろそろ止めた方が」

「え~? アラレルさんはこんなていろなんれすか~?」

……どこかで聞いたことがある声だ。

後ろを振り向くとそこにはベロンベロンに酔ったロスヴェイセさんと

未だに飲もうとしている、彼女を止めようとしているアザゼル先生がいた。

何してるんだか。

 

 

 

 

 

 

「凄いことになってましたね」

「だな」

僕たちは湯豆腐で腹も膨れ今は渡月橋を歩いている。

「………」

「どうかしたのか? イッセー?」

九重が急に止まった僕を訝しげに見てくる。

……誰かに見られてる? どうやら木場君達も気づいたみたいだった。

その瞬間、何か生暖かい感触が僕たちを包んだ。

 

 

 

 

 

 

 

気がつくとそこは今の今までいた渡月橋、でも僕ら以外は誰もいなかった。

「……この霧、間違いありません。私がディオドラさんに捕まったとき

神殿の奥でこの霧に囲まれてあの装置に捕まっていたんです」

辺りには霧が立ち込めていて、一目見ただけで自然現象で見る

霧ではないという事だけは分かった。

「ディメンションロストだね」

木場君が呟きながらこっちに向かってきた。

「ロンギヌスの一つだったはずだよ。

先生やディアドラ・アスタロトも言っていたはずだよ」

そう言い木場君はその場にしゃがんで霧に触れた。

「おい大丈夫かお前ら」

上から声が聞こえたので、見上げると黒い羽を

羽ばたかしてアザゼル先生が降りてきた。

「たっく、こんなド派手にセット作りやがって」

すると霧の奥から何人もの影が見えてきた。

徐々にその影は大きさを増していき、ついには霧から人が完全に姿を現した。

「初めまして、堕天使総督殿」

話しかけてきたのは学生服らしきものの上から漢服を

きた僕と同い年くらいの青年だった。

そして肩に槍を一本、担いでいる。

「お前が英雄派を仕切っている奴か」

「いかにも。曹操と名乗っている。三国志の曹操の子孫だよ。一応はね」

「貴様一つ聞くぞ!」

九重は目の前にいる曹操に向かって、怖がりもせずに大胆にも話しかけた。

「何でしょうか幼き姫君」

「私の母上を攫ったのはお前か!」

「いかにも。貴方の母上には俺達の実験に付き合ってもらうだけだ」

曹操は悪びれた様子を見せずに、ただ単にそういった。

っ!実験だと?ふざけるなよ!

この子の中で母親がどんなに大きい存在だと思ってるんだ!

「お前ら、あの槍にだけは」

―――――ガキィィィィィィン!

先生が何か言おうとしていたけど僕は気にもせずに漢服を着た男に殴りかかった。

「報告通り少し……いやかなり血気盛んだね」

「九重の母親を返せ!」

『Boost!』

周りにいた英雄派のメンバーが一気に警戒心を上げるけど、

曹操がそれを手を上げて落ち着かせた。

「ジークフリート! レオナルド! お前達はそっちの奴らの

相手をしてくれ! 俺は赤龍帝と一戦するからさ!」

そのまま僕たちは攻撃しながら遠くのほうに行った。



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Life61

「あの馬鹿が! 人の話くらいちゃんと聞け!」

先生の声だけを聞けば怒っているように見えるけど、

表情を見る限り、とくに怒っている様子ではなかった。

曹操とやらはイッセー君に任せ、僕たちは目の前にいる相手に集中する。

「じゃあ、レオナルド。悪魔のアンチモンスターでも行こうか」

感情の起伏が少なそうな少年が何も言わずにコクリと頷くと少年の下から

不気味な影が広がっていく。

―――――――っ!

背筋を冷たい物が走った。

言い表すなら僕達悪魔が、近づいてはならない

教会に近づいた時の悪寒に似たようなものだった。

「ギュッ!」

「ギャッ!」

「ゴギャッ!」

耳障りな音を発しながら影からRPGゲームなどで出てくるようなモンスターが大量に現れた。

聞いたことがある。ロンギヌスの中の上位は次元が違う能力だと……あれは

恐らくアナイアレイション・メーカー。使用者のイメージした生き物を

作り出すことが可能な神器……気合いを入れないと殺されるね。

「説明は後だ。今はこいつを片づけるぞ!」

「「「はい!」」」

 

 

 

 

 

僕の籠手と曹操の槍がぶつかり金属音が辺りに響く。

曹操は楽しいのか、笑みを浮かべながら槍を振るうけど一度、僕から距離を取った。

「いや~もっと楽に勝てるかと思ったけどどうやら見当違いみたいだ。

他の奴が君を過剰なまでに危険視する意味がようやく分かった」

僕は曹操が話している途中でもお構いなしに殴りかかるけど曹操は

それを難なく槍でいなす。

「その速さといい魔力といい、凄いな。君をなめてかかれば死ぬのはこっちだ。

良い例がシャルバだね。彼の両腕はもう使い物にはならなかったよ」

曹操が淡々と話す事実は、僕はあまり記憶のないものだった。

シャルバを倒したのは僕じゃない僕だったからね。

『Boost!』

何度目か分からない倍加がかけられ、僕の魔力は膨大なものになっていた。

「僕を最重要危険物みたいに言わないでよ」

「いや、もう君は十分最重要危険物だ」

曹操はトントンと肩に槍を当てながらそう言った。

「なんでもヴァーリと互角以上の戦いをするみたいだしね。

僕もいつ死ぬか冷や冷やしてるよ」

「よく言うよ!」

『Boost!』

特大のドラゴンショットと曹操の槍がぶつかり合い大爆発を起こした。

 

 

 

 

 

「どわぁ!」

さっきの爆風で僕は元にいた場所まで吹き飛ばされて、地面に直撃した。

「おいイッセー! アスカロンを貸してくれ!」

「分かった!」

僕は痛みを我慢しながらも起き上がり、籠手からアスカロンを取り出して、

ゼノヴィアさんに投げると彼女は空中でうまいこと

キャッチし一気に何体ものモンスターを葬った。

「ごぎゃぁ!」

モンスターの口から光り輝く何かが僕に向かって放たれるけど

僕はそれを姿勢を低くしてかわした。

「うわっと! こ、これって光の力!?」

ちょっとヤバいな……だったら。

僕は先程のモンスターが吐いた光の力を

見てあることを思いつき、木場君に声をかける。

「木場君! 確か光を喰らう剣作れたよね!?」

「……そうか!」

木場君も気づいてくれたのか人数分作るとそれぞれに渡した。

「イリナちゃんも前衛で戦って!」

「分かったわ! このミカエルさまのAに任せて!」

イリナちゃんは翼を出しモンスターをかく乱させてから何本もの

光の槍を作り出しモンスターにぶつけて一気に葬った。

「九重ももう少し下がって」

「わ、分かった」

『Boost!』

もう、十二分に魔力は倍加されている。

「僕にしかできない桜吹雪ドラゴンショット!」

籠手から何発ものドラゴンショットが放たれ、誰が生み出したか分からない

モンスターを3体ほど、体にいくつも大きな穴を開けて、バタンと力なく地面に倒れた。

「赤龍帝は私達が!」

奥の方から武器を持った女性達が僕に突撃してくる。

女の人までカオス・ブリゲードに入ってるのか……。

「止めときなよ! 曹操クラスじゃないとまともにやりあえないよ」

白髪の少年の忠告を無視して学生服を 

着た女の子達がそれぞれの得物を持って僕に突っ込んできた。

「木場君! プロモーションするよ!」

「分かった!」

僕はナイトにプロモーションして高速で移動しそれぞれの得物を

一瞬で破壊し、背後からドラゴンショットを放った。

大きな爆音をあげて女の子達は爆風に巻き込まれ吹き飛ばされた。

良かった、誰も直撃してない。

「君は優しいね~」

「っ! 曹操!」

「何もしないよ。君と闘えただけで十分だ」

曹操は両手を上にあげて、降参の意を示していた

……闘う気がないの? それとも役目が終わったのか。

僕は警戒心をとぎらせないようにしながらも話を聞いた。

「どうやら君にはいくら下っ端を向けても無駄なようだ。

今度、上にも言っておくよ。『赤龍帝にザコをぶつけても人員の無駄』だって。

さっきも言ったが赤龍帝でもトップクラスで優しいんじゃないのかな?

さっきのも直撃させずに爆風で地面に直撃させて気を失わせたし。

それに君の指示もなかなかの物だった。よくあの光の攻撃を見た瞬間に

考えれたものだ。将来的には脅威になりそうだ」

曹操はつらつらと喋り続けていくが、僕は彼の言っていることが今一、分からなかった。

「まあ、君以外も確かに危険だが君ほどではない。見なよ、

ジークフリートで三人を相手にしてるぞ」

曹操に言われ、木場君達の方を向くと

三人の剣をジークフリートって言う人が一人でいなしていた

「堕天使の総督殿も厄介だな。そうだな、言うなら全体の危険度が

Sクラスとすれば君はSSSSだな。どうだい?こっちにきてその力を」

曹操の顔のスレスレを通ってドラゴンショットが地面に直撃し大爆発を起こした。

曹操は残念そうな顔を浮かべながらも既に分かっていたような雰囲気を

醸し出して僕を見てくる。

「答えは……分かった?」

「残念だよ……ん?」

僕らの近くに一つの魔法陣が輝きながら出現した。

……みたことがない文様だ。

そして、出てきたのは魔法使いの格好をしたかわいらしい外国の女の子だった。

「初めまして! 私はルフェイ、ルフェイ・ペンドラゴンです!

ヴァーリチームの魔法要員です!」

………なんでヴァーリの魔法使いさんが。

するとその女の子は僕を見ると目を輝かしてこちらにダッシュで来た。

え? な、何何?

「あ、あ、あの赤龍帝さんですよね!?」

「は、はい」

「私、仮面の戦士の大ファンなんです!握手してください!」

「あ、はい」

終始圧倒されながら握手をすると、とても喜んでくれた。

な、なんというか場違い感が半端ないですけど。

「何の用かな?」

「ヴァーリ様から伝言です。『邪魔はするなといった筈だ』

私たちに監視者を送ったバツです♪」

「わっ!」

突然、大地が大きく揺れ始めた。

戦いの最中だった他の人たちもあまりの大きな揺れに闘いを中断していた。

突然、目の前の地面が盛り上がったかと思えばそこから大きな何かが

地面の中から現われた!

『ゴォォォォォォォオオオン!』

「ゴグマゴグか!」

そんな中、ゴグマゴグと呼ばれている物がその太くて大きな腕を上げて、

英雄派に向かって振るう!

そのドでかい拳は渡月橋を一撃で崩し、大量の砂ぼこりが魔っていた。

……な、なんて威力なんだ。

「アハハ! どうやらヴァーリはお冠か! 伸びろ!」

曹操がそう叫ぶと槍が伸びていきゴグマゴグ……

言いにくいのでゴグ君の肩を突き刺しそのまま押し込んだ。

こ、こっちにくるぅぅぅぅぅぅぅぅ!

「うっひゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

僕はこちら側に倒れてくるゴグ君から命からがら逃げた。

巨大なゴグマグが地面に倒れた瞬間、凄まじい揺れが僕たちを襲い、

大量の砂ぼこりが舞った。

突然、僕の耳に誰かの足音が聞こえてきた。

僕は首だけを動かして辺りを見回すと近くにロスヴェイセさんが立っていた。

「ロスヴェイセさん?」

僕が話しかけても、ロスヴェイセさんはボーっとしたまま動かなかった。

そして、突然―――――。

「さっきからうるらいんれすよ~! チュド~ンとかバッキュ~ンとか!

そんな奴には全属性、全精霊、全神霊を使った北欧式フルバーストをお見舞いだ!」

ロスヴェイセさんの周りに大量の魔法陣が現れた瞬間!

凄まじい数の炎やら雷やら水やらいろんな

属性の魔法が英雄派に向かって飛んでいった。

でもそれらの攻撃は全て霧に弾かれている。

「少々乱入が多すぎたな。アザゼル殿! 俺達は今晩この京都の特異な

力場と九尾の御大将を使って二条城で一つ大きな実験をする!

是非止めに来てくれ!」

徐々に霧が辺りを包んでいった。

「全員急いで武装を解除しろ!」

僕は慌てて籠手を戻した。

 

 

気がつくとそこは何一つ変わっていない渡月橋の上だった。

「どうしたのあんたら?すんごい険しい顔してるけど」

桐生さんは僕たちの様子を怪しんできた。

「ふざけたことを言いやがって!」

先生は電柱に拳をぶつけ怒っていた。

「……母上は何もしていないのに」

僕は九重の頭をなでることしかできなかった。



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Life62

「うぅ!」

僕は今、誰もいない自室である物と闘っていた。

歴代所有者たちの『破壊しろ』という声に。

「い、嫌だ……僕は壊したくない!」

『破壊破壊破壊!』

くっ! さっきよりも大きくなってきてる!

覇龍を発動してからというもの周期的にこんな歴代所有者たちの

声が聞こえてくる。でも、前までは数日に一度とかだったのに

今ではほぼ毎日聞こえてくる。

『しっかり気を持て相棒』

「わ、分かってる」

ドライグの声が頭に響き、どうにか正気を保つ。

ドライグも少しでも負担を減らそうとしてくれているんだけど

ほとんど負担は変わらずにいた。

「おいイッセー。会議だ、入るぜ……どうした? 顔色が悪いぞ」

「い、いえ別に」

僕はなんとか気を確かに持って会議に臨んだ。

 

 

 

 

 

 

会議が終わってから数分後。

僕は集合時間にはまだ早い時間帯に集合場所に

指定されているホテルのロビーにいた。

歴代所有者の声は治まったけど汗が半端なく出てるから、風に当たりたくて

早めにロビーに来てみると僕よりも先に先生たちがいた。

「イッセー、ちょうどいい。こっち来い」

「は、はい」

僕はアザゼル先生に呼ばれ隣に座った。

前には相変わらず気持ち悪そうな表情をしているロスヴェイセさんが座っている。

「ロスヴェイセ、頼む」

「はい、ううぇ! 吐きそう」

ロスヴェイセさんは吐きそうなのを我慢しながら淡い光を

手のひらから出して、籠手にあてた。

その光が籠手に入ると頭の中でカチンという音が聞こえた。

「もしもお前が暴走したときに籠手の機能を

完全とまではいかないが制限する魔法だ」

「……気づいてらっしゃったんですね」

僕がそう言うとと先生にでこピンされた。

……地味に痛かった。

「あのな、俺はお前の先生だ。生徒一人一人の体調くらい把握している」

僕は先生の話を聞いて、少し感動を覚えた。

こんなグーダラな先生だけど、どの先生よりも僕たちの事を考えてくれている。

ふと、壁に掛けられている時計に視線を移すと針が集合時間の三分前を示していた。

僕は椅子から立ち上がって、

自動ドアの前に立つと扉が開き、その先でシトリー卷属と皆が既に待機していた。

「元ちゃん、無理しちゃダメよ」

「そうよ、元ちゃん。明日は皆で会長にお土産を買うんだから」

「分かってるよ。花戒、草下」

匙君が卷属の皆から激励を貰っているところだった。

……なんであんなに嬉しそうにしてるんだろ。

僕はそう思いつつも木場君達のもとに行った。

 

 

 

「やあ、イッセー君」

「うん……」

僕はふとゼノヴィアさんの方を向くと彼女は何か長い得物を持っていた。

こちらの視線に気づいたのか彼女がこっちにやってきた。

「さっき教会から届いた改良デュランダルだよ」

ただでさえ破壊力満点のデュランダルをさらに改良したの!?

「イッセー君」

「何? 木場君」

木場君が何やら真剣そうな顔で僕に話しかけてくる。

「部長がいない今このチームのキングは君だ」

僕は木場君の言ったことに一瞬、理解が出来なかったけど

数分遅れて僕は理解した。

「えぇ!? ちょっと待ってよ! 僕よりも木場君の方が」

僕がそういうと木場君は首を横に振った。

「昼間の戦闘でも君は指示を出してくれた。あの指示のお陰で

被害がでなかったのかもしれない。bestかbetterかは分からないけど

君の指示は僕たちを効率よく動かしてくれる」

「私たちも指示があった方が動きやすいからな」

ゼノヴィアさんも真剣な表情を浮かべて、僕の方を見てくる。

「私もイッセーさんの指示に従います!」

「私もよ!」

イリナちゃん、アーシアさんまでもが僕の方に視線を向けてくる。

…………そうだよね。いつまでも嫌なことから逃げていたら成長するものも

しなくなる。

「………分かった。僕がその役を引き受ける」

「悪い、話しすぎちまった」

僕がキングの役目を引き受けることを了承したのと同時に

匙君が謝りながらこっちに集合した。

これでオフェンスチームは皆そろったね。

「じゃあ、行こうか。二条城に」

僕達の九重のお母さんを取り戻す戦いが今始まった。

 

 

 

 

 

 

ホテルを出た僕たちはバス停に向かっていた。

バスで一気に二条城にまで行こうという訳である。

「うぅ! もう無理! おうぇうぇうぇうぇ~!」

「だ、大丈夫っすか?」

電柱にゲロってるロスヴェイセさんの背中を優しくさする匙君。

なんだか初めて会ったときはクールっていうイメージがあったけど今じゃ

全くその面影は見当たらないな。

とその時だった。突然何かが僕の背中に飛びついてきた。

「赤龍帝! 私も行くぞ!」

僕の背中に飛び乗ってきたのは九重だった。

「駄目だよ。先生にも待機だって」

「分かっている! だが私も母上を助けに行きたいんじゃ!」

と言われても……ん~怒られることは避けられそうにない。

かといって今の九重を説得できる自信もない。

仕方がない連れていくか。

僕が彼女の気持ちを尊重しようとした時だった。

あの時の生ぬるい感じが僕たちを包んだ。

 

 

 

 

 

 

気づけばそこは地下鉄のホームだった。

背中の九重が無事か、視線を背中に移すと彼女も無事だった。

「大丈夫?」

「うむ、じゃがきゃつらの技術には目を見張るものがあるの」

「そうだね。ひとまず上に行こう」

僕は襲撃を予想して籠手を呼び出して倍加を開始した。

「この籠手は綺麗な赤じゃの」

九重は興味があるのか僕の腕に現れた籠手をぺちぺちと叩いていた。

そういえばファンの子供たちにもこうやられたような気が。

すると目の前に英雄派の制服を着た男性がこちらに歩いていた。

「やあ、赤龍帝。覚えているかな?」

「……確か前にバランスブレイクに目覚めた……」

あの時、町の廃工場で戦い逃がしてしまったセイグリッドギア所有者が

僕の目の前に立ちはだかっていた。

「こんな雑魚を覚えてくれているとわな。俺達はあの時、あんたらに

ボコボコにされた。その時の悔しさなんかが俺を次の領域へと導いてくれた」

辺りにある自販機や電柱の影がウネウネ動き出し男性のもとに集結していた。

「バランスブレイクっ!」

影が地面から溢れ出してきて、男性を包み込まれ、影そのものになっていた。

……影を自由に使えるセイグリッドギアか……。

影そのものとなった男性の声が僕の耳に響いてきた。

「今のあんたはバランスブレイクが使えない。

俺は使える。勝負は決まったも同然だ!」

男性は影を身にまといこちらに向かってきた。

「うわっ!」

男性を避けようとすると地面の影が伸びて僕の足に巻きついていた。

「こんの!」

僕はアスカロンで影を切って距離を取った。

『Boost!』

「ドラゴンショット」

籠手から放った魔力弾は男性を突き抜けて消滅した。

「無駄だ! 今の俺にいかなる攻撃も効かない!」

物理攻撃は全て受け流す……アスカロンを使ってもあの人に

ダメージを与えることはできないか……光の力も人間には効果はあまりないからね。

「えい!」

男性の対策を考えていると、

肩に乗っていた九重が手のひらから小さな火球を飛ばした。

しかし、影となった男性にダメージを与えられずにそのまま消滅した。

「これはこれは可愛い攻撃だ。こんな熱量じゃ意味がないぞ」

……熱量……つまり、あの人は熱いっていうこと自体は感じているのか。

僕は男性が口にした言葉を聞いて対策が思い浮かんだ。

「九重、僕に炎を少し貸してくれる?」

「う、うむ。良いがどうするのじゃ?」

僕は彼女に耳打ちをすると彼女は快く承諾してくれた。

「うむ、分かった!行くぞ!」

僕は彼女が掌から放った小さな火球をそのまま、飲み込んだ。

熱! なかなかの火力。

『Transfer!』

僕は飲み込んだ炎に譲渡の力で十倍に強化すると、さらに魔力を

炎に次々と変換していき、小さい炎が僕の中でとてつもなく巨大なものになった。

「ぶはぁ!」

僕が口から炎を吐きだした瞬間、駅一帯を炎に包みこんだ。

「おおぉぉぉぉぉぉぉ!」

男性は凄まじい熱量で大火傷を全身に負い、

あまりの痛みに地面にのたうちまわっていた。

いくら影だとしても根本は人間の体だ。

「……龍の炎……」

「……バランスブレイクなしでこの強さなのか」

男性は体中に痛々しい火傷を負っていた。

っ! は、吐きそうだ!

僕は倒れている男性の傷を見て、吐瀉物を吐きだしそうになったのを

どうにか我慢していると、男性が体を震わせながら立とうとしていた。

「お、俺はこんな所では死なん!」

「……何故そこまでして」

「……セイグリッドギア所有者は誰しも幸せに生きれるわけではない」

ああ、知ってるさ。同僚に悲しい経験をした人がいるからね。

「気味悪がられ迫害される……そんな人生の中で俺の力を

素晴らしいと言ってくれる奴がいた」

男性の顔には笑みが浮かんでいた。

……曹操か。

「俺はそいつのために生きたいと思える奴が初めて見つけた!

それが悪いかぁぁ! 赤龍帝ッッッ!」

そして男性は遂に立ち上がりこちらに向かってくる。

僕は拳を前に繰り出して、男性を殴りとばした。

「いくら綺麗に着飾っても貴方たちのやってる事で

泣いている子がいるんだ。僕はそれを許す気はない」

男性は電柱にぶつかり気を失った。



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Life63

途中襲いかかってきたアンチモンスター達は九重に炎を借りて

一気に葬りながら進んでいくと二条城の東大手門前で皆と合流できた。

良かった、皆も無事みたいだった。

「これで揃ったね」

そんなことを言っていると目の前の大きな門が鈍い音をたてて独りでに開いた。

「どうやら向こうはこちらを招待しているらしい」

木場君は苦笑いしながらそう言った。

「行こう」

僕たちは櫓門という門をくぐった。

門をくぐりぬけ、道を進んでいきたどり着いたのは古い日本家屋が建ち並ぶ場所だった。

「やあ、バランスブレイク使いを全員無傷で

倒すなんてね。やはり君達は異常な強さだよ」

英雄派の気配を探している僕たちに声が投げかけられた。

庭園に曹操の姿を見つけた。そして家屋から構成員も何人か出てきた。

「母上!」

そのなかに九重の母親の姿もあった。

何かの魔法で意識を奪われているのか虚ろな目をしていた。

あの人が九重の御母さん……綺麗だ。でも、その美しさもあいつらのせいで台無しだ。

「さあ、実験を始めよう」

曹操が槍の石突きでトンと石床を叩いた。

「う、ううわぁぁぁぁぁぁ!」

突然、八坂姫が叫びだし巨大な金色の姿へと姿を変えた。

これが伝説の妖怪! 九尾か!

「俺達は今日ここで! 京都と九尾を使ってグレートレッドを呼び寄せる!」

曹操がそう高らかに宣言した。

「そんなことは今どうでも良いよ」

「ん?」

僕の言う事に曹操が首を傾げる。

「今、僕たちの目的は八坂姫を助け出すこと。姫を助け出したらそれで

君たちの計画は潰れる……お前達の運命は僕らが決める!」

「定められるほどよわっちくはないさ」

皆それぞれの得物を敵に向ける。

「行くぜ。ヴリトラ・プロモーション!」

匙君が叫ぶと同時に彼の全身から黒い炎が溢れ出して、

彼を包み込みその形を変えていき、巨大なヴリトラとなった。

その瞬間!

いきなり、聖なる光でできた巨大な刃が英雄派に振るわれ巨大な爆発を起こした。

隣を見れば改良されたデュランダルをすでに鞘から抜いて振った後のゼノヴィアさんがいた。

「うん、こいつをエクス・デュランダルと名付けよう。

まだまだ難しいな。目標はイッセーのドラゴンショットなんだが」

正直それは反則スタートだよ。

「だがこんなもので死ぬ奴らじゃないな」

英雄派のメンバーが無傷で立っていて、彼らの周りには薄い霧がたちこもっていた。

あれで防いだのか。

「いや~いいね♪君達はすでに上級悪魔の中堅クラス……いや

上位クラスの力を持っている」

その横でジークフリートが苦笑いしながら呟き始めた。

「古い慣習に縛られ下から迫ってくる者達が見えなかった。

シャルバはそんな事で無駄に重傷を負ったんだね」

「まあ、バカは忘れよう」

曹操が再びトンと石突きで地面を叩くと九尾が輝き始めた。

「さあ、実験を始めようか……ゲオルク!」

曹操の一言にゲオルクと呼ばれた青年が腕を突き出し辺りに膨大な数の魔法陣を呼び出した。

「北欧式、堕天使式、その他多数。かなりの強者ですね」

あのロスヴェイセさんが言うんだから彼は凄いんだろう。

でも、僕の相手は曹操……相手は最強のセイグリッドギアを持っている。

気合いを入れないと殺される。

僕は大きく深呼吸して気持ちを落ち着かせ、震える体を落ち着かせた。

「さてと、ゲオルクがやっている間に俺は赤龍帝との決着をつけよう」

「じゃあ僕は剣士二人」

「じゃあ私は天使ちゃん!」

「俺は銀髪の姉ちゃん!」

それぞれの相手が決まった。

イリナちゃんは女性と、ロスヴェイセさんはガタイが大きい男性と、

木場君とゼノヴィアさんはジークフリートと、それぞれ別の場所で戦い始めた。

辺りで刀がぶつかり合う音や爆音、さらには光の力も視界の端に見える。

匙君も九尾と戦闘を開始した。

「さあ、赤龍帝。昼間の続きだ」

『Boost!』

「アーシアさん、九重と一緒にもっと後ろに」

「は、はい!」

アーシアさんは九重の手を取り急いで僕から離れた。

お互いに睨みあって動かない。そんな時間が数分…いや、数秒かもしれない。

お互いに一気に走りだし籠手と槍をぶつけた!

「はははは! 凄いね! 魔の波動がピリピリ伝わってくる!」

「そっちの聖なる波動も凄いよ!」

僕は至近距離からドラゴンショットを放つけど曹操は首を傾けて

それらをかわすと槍を横なぎに振るってきた!

「くっ!」

籠手と槍のぶつかり合う音が辺りに響いた。

「そらそらそら!」

何連続も放ってくる突きを僕は籠手でいなしていく。

そして隙を見てドラゴンの腕を伸ばす!

「っっ! そうだ、君の両腕は武器だったっけ? でも、使っていいのかな?」

『壊せ!』

曹操と闘っていると頭に中に歴代所有者たちの怨念に満ちた声が響いてきた。

僕は頭を振って意識を目の前の敵に集中した。

 

 

 

 

 

「悪いけど君は僕の力で倒す」

「はは! やってみるといいよ!」

『Boost!』

僕の魔力は幾度もの倍加で凄まじいほどの量にまで膨れ上がっていた。

「桜吹雪!」

僕は籠手から巨大なドラゴンショットを何発も連射していった。

「当たらなければ無問題だ!」

曹操は右往左往、自由自在に動き回りドラゴンショットを避けていく。

それを僕は操作しながら追尾していく。その間にも連射は止めない。

いくつか、地面に当ててしまったけどまだ大部分は生きている。

そろそろかな?

「どうした!? もうお終いか?」

「お終いは君だ!」

「っ!」

両手を合わせると今まで放っていた小さな魔力弾が合体していき、

何個もの特大ドラゴンショットが曹操めがけて一気に向かっていった。

曹操は避けようとするけど一つ一つがあまりに大きなもので安全空間は潰れていた。

そして、凄まじい爆音と爆風が目の前から放たれた。

「ふぅ、どうだ!」

爆煙が立ち込める。

その時だった。

「痛!」

爆煙にまぎれて伸びた槍の先端が僕の方を貫いた。

ヤ……バイ……意識…が

「イッセーさん!」

 

 

 

 

 

「ハァっ………ハァッ」

アーシアさんが回復の波動を飛ばしてくれたお陰でどうにか持ちこたえれた。

でも聖なる物での傷だからそう簡単にはふさがらないので僕は先生から預かった

フェニックスの涙を取り出して傷口にかけるとすぐに傷口が塞がった。

「いや~危なかった。死にかけたのはお互い様のようだね」

僕は曹操の言ったことに驚きを隠せないでいた。

っ! し、死にかけてた!? あ、あの感覚が!?

『相棒! 考えるな! 余計恐怖が増すぞ!』

む、無理だよドライグ。か、体が震えてる!

『Reset』

そんな音声を出して籠手が消えてしまい、

あれほどあった魔力が一瞬にして消えてしまった。

「あれ? もう終わった感じ?」

「俺がこいつとすれば良かったな」

「君程度じゃあっという間に死ぬさ」

「っ! み、皆!」

傷だらけの皆が地面に放り投げられた。

皆ひどい傷だ。

『オォォォォンン!』

「っ!? さ、匙君!」

向こうには九尾の尻尾で首を絞められ苦しそうに叫んでいるヴリトラがいた。

ど、どうにかしないと! 僕はキングで! そ、それで!

えっと、この状況を打破するには! え、えっと!

いろんな策が出てきては消え、出てきては消え。その繰り返しだった。

体はさっきの死の恐怖で振るいあがっていた。

立つので精一杯なくらいだ。

その時だった。

『覇龍で奴らを潰せ!』

「あぐぁ!」

頭に中に今までの中で一番、強く怨念が聞こえてきた。

ヤ、ヤバイ! い、意識が!

「ん? なんだなんだ?」

「報告を見てなかったのか? ヘラクレス。

今彼は力をうまく制御できていないらしい」

「え~? じゃあ、強いって噂のバランスブレイク見れないの~?」

「ああぁぁぁぁぁ!」

ヤ、ヤバイ!こ、こんな所で暴走なんかできない!

僕は必死に意識を保とうとするけど余計に侵食されていく。

「んじゃもう終わりね♪」

そう言ってジークフリートとヘラクレス、ジャンヌは後ろを振り向き

怪獣ショーを呑気に眺めていた。

「おぉぉぉおぉおぉぉぉぉぉぉぉお!」

…………。

その叫びを最後に僕は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

『覇龍を使え』

『そうすれば奴らを潰せる』

歴代所有者達が僕に近づいてくる。

逃げようと思っても体は逆に彼らに近づいている。

『イッセー! そっちに行っちゃダメよ!』

エルシャさん……何が何だか分からないんですよ。

僕は彼女の声を無視して彼らに近づいていく。

一歩、また一歩歩みを進めるたびに覇龍の力が僕の中で大きくなっていく。

そして、今にも僕が彼らに合流しようとした瞬間!

誰かに抱きかかえられて後ろに持っていかれた。

『ベルザード……』

エルシャさんが呟いた。

……この人が最強の赤龍帝。

表情は若干見えるけど意識は無くなりかけている。

『イッセー、貴方は今乗り越えないといけない壁が前にあるわ』

「壁?」

『それは貴方が彼女に……リアス・グレモリーに抱いている感情を理解することよ』

「僕が……部長に抱いている感情?」

……分からない。

リアス・グレモリー――――――その名を聞くだけで僕の頭に中にあの人の笑顔が浮かんできた。

分からないよ! なんで! なんで部長の名前を出されるだけであの人の

笑顔が頭に浮かんでくるんだよ!

なんでこんなにも会いたいって思うんだよ!

僕は訳が分からず泣き出してしまった。

「分からない、分からないんです」

『……それはね、イッセー。恋っていうの』

「恋? ……僕が部長に恋をしている?」

エルシャさんに言われた瞬間、今までの部長との記憶が脳裏によぎった。

部長の笑顔、泣き顔、怒った顔、悲しそうな顔。

それら全てが僕の中で大きなものに変わっていった。

「あはははははははは!」

いきなり僕は笑いだしてしまった。

「そっか……これが恋っていう感情ですか」

僕の中にポッカリと空いていた穴に上手く、何かがはまり込んだ感じがした。

『そうよ。愛は時に大きな壁を乗り越えるカギになることだってあるわ』

エルシャさん……え!? か、体が!

エルシャさんとベルザードさんの体が徐々に光の粒子となって消え始めた。

『っ! ……そろそろ限界みたい』

ど、どういうこと!? 限界ってなんなの!?

『エルシャとベルザードの意識がもうこの神器にいられなくなったんだ』

「ねえ、なんとか伸ばせないの!?まだ僕は二人に教えてほしいことが!」

『イッセー!』

「っ!」

いきなりエルシャさんが怒鳴り声をあげた。

『いつまでも甘えないの! 私達が消えても私達の想いはその神器にあるわ!』

徐々に消えていく二人。

僕は流れてくる涙を手で拭った。

「はい! もう僕は泣きません! 貴方達を超えて最強になります!」

『うん、それで良いわ、イッセー……これは私たちからの贈り物よ』

エルシャさんは僕の手を優しく握り、優しい微笑みを浮かべて消えていった。

……体から力が溢れてくる。エルシャさん、ベルザードさんの力が僕に

勇気を与えてくれる!

「僕はもう泣かない……行こう、ドライグ。皆を助けて……帰るんだ。部長のもとに!」

『ああ、お前が最強になるまで俺は力を貸そう』

行くんだ! 最強に!




えっと、今回の話でイッセーが成長……したっぽい。


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Life64

「な、なんなのあれ」

京都の街に似せたセットからビキビキと軋む音が聞こえてくる。

『懐かしいものを感じさせてくれる。これは……俺本来の力だ』

そっか……こんなにもドライグの力は強くて優しいんだね。

『優しい? 俺がか?』

うん、君の力は温かさを感じるよ。

『……俺もどうやら相棒に侵されたらしい』

ドライグは呆れ気味な声を出すけど、まんざらでもない様子なのが感じられた。

僕が手を横に振るうと魔力の柱が消滅した。

「……覚醒したのか? これほどまでの静かな力は感じたことがない」

何か曹操が呟いてたみたいだけどどうでも良い。

……もう、僕は泣かない。今まで何かあれば泣いてきた……でも、僕は

二人を超えて最強になるんだ!

「バランスブレイク」

静かに、そして力強くその言葉を言うと鎧が僕を包み込み、

魔力によって辺りの地面が抉られていく。

「こ、この魔力の量は!」

曹操は一気に膨れ上がった僕の魔力に驚嘆していた。

木場君は………気を失ってる。

でも、もう承認の必要はない。

「プロモーション、ナイト」

僕がそう呟いた瞬間、赤色の装甲にヒビが入っていき、

そして装甲が弾け飛び格段に軽くなった。

『相棒、カウントは?』

「ん~……曹操以外を一人頭5秒で」

『了解した』

「舐めやがって!」

曹操以外の三人がブチギれて僕に向かってきた。

「馬鹿か! 死にたいのか!」

「スタート」

『Start! hyper sonic time!』

 

 

 

……は? と、停まってる!?

僕が移動を開始した途端、全ての物が停止したと思うくらいに辺りの時間が遅くなった。

目の前の三人も停止している。

まるで、ギャスパー君のセイグリッドギアが発動している空間みたいな

状態が今、起こっていた。

「いくよ」

僕は一番近くにいたジャンヌにアッパーを撃ちこみ宙にあげると、

腹部を強く蹴りとばして遠くにやった。

そして桜吹雪Verのドラゴンショットを放つけど、まるでシャボン玉のように

フワフワと浮いていた。

次の標的はヘラクレスだ。

「はぁぁ!」

僕は連続で足に魔力を流し込み赤色に輝いた蹴りを何発も

マシンガンの様に撃ち込んでいく。

「そら!」

僕は最後のとどめに全力で蹴飛ばした。

そして一旦時間を進めた。

「がはっ!」

「うげぁ! うげあ! うぎゃぁ!」

連続した爆音を立てて2人は吹き飛ばされた。

「っ! この!」

「よせ! ジークフ」

曹操の言葉はそこで切れた。

僕はアスカロンを取り出し増殖した腕を切断すると、

ジークフリートの体に次々に峯撃ちを入れていった。

「おぉぉぉぉぁぁ!」

譲渡の力を使い、アスカロンの刃を赤く輝かせ、ジークフリートの身体を

斜めに切り裂いた。

僕が斬り終えたと同時にカウントが終わったのか時間が元通りに進み始めた。

「かはっ! い、いつの間に腕を」

そう言い残してジークフリートは血反吐を吐き地面に倒れ伏した。

『これは驚いたな。まさか一秒で二人を倒しとわな』

……一秒以内に倒した僕の速度ってもう怪物級なの?

曹操は僕の方を驚いたような表情で見ていた。

「気付いたら三人とも倒されていた…こんな経験は僕が初めてだろうね」

そう言いながらも槍を僕に向けてくる。

「プロモーション、ルーク」

最強のセイグリッドギアが相手ならこっちは最強の攻撃力で勝負だ。

先程とは違い薄かった装甲が図太くなってあまりの重さに地面に足が食い込んだ。

「聞けばプロモーションというものはキングの承認で初めて行える物。

それを承認なしでやる……まるでイリーガルムーブだ」

聞いたことがある。チェスの用語で禁則だったはずだ。

「ならこの力をイリーガル・ムーブ・トリアイナとでも言おうかな」

「行くぞ! 赤龍帝!」

僕は何もしないで片腕だけで曹操の槍を受け止めていた。

その事実に曹操は顔を大きく歪めていた。

「なっ! 上級悪魔でさえ軽く消し飛ぶ威力だぞ!」

「次はビショップだ」

僕は曹操から距離を取り、ビショップにプロモーションすると

つたなすぎる魔力が底上げされ、両肩に大口径のキャノンの砲門と

背中に巨大なバックパックが出来上がった。

周囲に空間が震える音を響かせながら、莫大な量の魔力が砲門に装填されていく。

「もっとだ!」

『BoostBoostBoostBoostBoost!』

さらに倍加された魔力も装填すると、大口径のキャノンの砲門には

凄まじい大きさの魔力弾があった。

……調子乗って装填しまくったけど耐えられるかな?

僕もこの疑似空間も。

『まあ……大丈夫だろう』

「ぶっ飛べぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

「ちっ!」

曹操は舌打ちしてその場から離れると魔力弾はそのまま直進していき、

見えなくなるところまでいった瞬間! すさまじい爆音と爆風がこちらにまで

響いてきた!

じ、自分で撃っといてなんだけど凄い威力だ!

煙が晴れると空が紅色に染まり、疑似空間の壁は所々歪んでおり、

爆煙が晴れるとそこには何も残っていない景色があった。そこはただの更地。

「疑似空間の壁が歪むほどの威力! あんなもの受ければ灰すら残らないぞ!」

曹操が驚愕の声音を出していた。

「やはり君は危険すぎる。ここで始末しよう」

槍の先端に聖なる光が集まっていく。

だったら僕も全力で行く!

「プロモーション、ルーク」

キャノンが光になって消えて装甲が凄まじく重くなった。

「おぉぉぉぉぉぉ!」

『BoostBoostBoostBoost!』

倍加された魔力が全て僕の右腕の拳に集中していく。

「まだ上がるのか!? 君のキャパは天井知らずだな!」

「前にも言われたよ! 行くぞぉぉぉ!」

槍と最重の拳がぶつかり合い凄まじい輝きと爆風を発生させながら

僕らは大きく吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ。も、もう無理!」

僕の体はもうプロモーションに耐えられないくらいにズキズキと

全身に激痛が走っていた

「はぁ、はぁ。くそ、視界が合わないな。脳しんとうを起こしたな。

しかも酷いものだ。くそっ! 槍で相殺しきれなかったのが痛いな」

どうやら向こうももう戦える気力は残っていないらしく、

曹操は頭から血を流していた。

もうこっちとしても願い下げだ。

「バランスブレイクが復活しただけで驚異といえるのに

さらにその上を行く進化をするとわな。おったまげたよ」

「でももう無理だ。消費は早すぎるし久々のバランスブレイクにも

体が……ハァ、ハァ。ついて来ていないからね。明日中は筋肉痛で動けないな」

それでも僕は立ちあがった。向こうも同じ。

その直後、空間を震わす音が聞こえてくる。

「君の力に吸い寄せられたようだ」

嘘ぉぉぉぉぉぉぉ!? じゃあ僕あいつらの方棒を担いだの!?

でも次の瞬間には曹操の顔はゆがんでいた。

「いや……違う……この闘気は!」

空間から出てきたのは緑色のオーラを纏った龍だった。

「西海龍童、ウーロンっ!」

こ、これが東洋の龍。

緑色のオーラを纏い宙を泳ぐ姿はまさに幻想的だった。

そして僕の目の前に誰かが降りてきた。

「ふむ、もう規格外の波動じゃのう。まあとはこの老いぼれに任せい……

といっても骨折り損にくたびれもうけじゃな」

背丈は幼稚園児の年長くらいしかないんだけどなんだか年期を

感じる喋り方に、煙管をふかし片腕で棒の様なものを持ち――――――圧倒的なオーラがあった。

す、凄いオーラだ……オーディン様と同じくらいじゃないのか?

「ウーロン! 九尾をどうにかせい!」

『人使いが荒い爺だなおい!』

そうは言いながらもウーロンさんはヴリトらと闘っている九尾に向かっていった。

「初代孫悟空様」

「うぉ! 木場君!」

いつの間にかアーシアさんによる治療を終えた木場君が隣にいた。

「これはまずいな。初代孫悟空に赤龍帝、この化け物が二人いては

流石の俺も無理だ。一時撤退だ。ゲオルク!」

ゲオルクっていう人は僕が倒した三人を魔法陣で包むと

一か所に集めて辺りを霧で包み込み始めた。

逃げる気!? そうはさせないよ!

僕は籠手に魔力を集め野球ボールサイズに圧縮した。

「くらえ!」

僕は全力で投げた。

「こんなもの!」

彼は槍を振るって弾を打とうとする。今だ!

「なっ!」

弾がいきなり弾道を変えて彼の目に直撃した。

あ、あれ!? 曹操のお腹に当てるつもりだったのに!

「ぐあぁぁ! 赤龍帝ぇぇぇ!」

曹操は目から血を流しながら聖槍を握りしめた。

その瞬間に凄まじいほどの聖なる力が槍に集まっていった。

「止めておけ曹操! もう撤退時だ!」

ゲオルクに宥められた曹操は槍に集めていた力を散らせ、僕を睨んできた。

「……赤龍帝、また会ったとき覚えておくといい」

その言葉を最後に英雄派は消えた。



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Life65

疑似空間に残ったのは僕達と初代孫悟空様、そしてウーロンさん。

『ぶふぅ~。ヴリトラがいないと辛かった』

匙君も今は人間の姿に戻っていて九尾との戦いで負った傷を

アーシアさんの治療を受けて癒している。

でも八坂姫だけはまだ人型に戻るどころか意識すら覚ましていなかった。

「母上! 母上!」

『…………』

九重が必死に声をかけるけど一切反応がなかった。

「さてどうしたもんかいの~。仙術で邪な気を拭ってもいいが

九尾自身の魔力が少ないからの」

初代様も煙管を拭かせながらそう仰っていた。

「母上! 母上!……起きて下され」

徐々に九重の声が小さくなっていった。

「九重」

「赤龍帝……」

僕はポンと九重の頭に手を乗せた。

「諦めるの? 大好きなお母さんなんでしょ?」

「っ! ……起きて下され母上!」

僕の言葉に九重は諦めまいと母に声を投げかけていく。

「もう我儘も言いません……嫌いな魚も食べます……母上

……母上……目を覚まして下され母上!」

「……く…の…う」

一瞬、聞こえた母親の声に九重はさらに声を張り上げて姫に語りかける。

「母上! 九重はここです! また歌を歌って下され! 

また母上と一緒に都を歩きたいのです!」

……ダメだ、意識は少し戻ったけど決定的なものがないからまだ

九尾の意識が完全に回復しない……譲渡で魔力を回復させれば

九尾の意識も戻るかもしれない。

僕は籠手を出して五回、倍加をした後九尾に触れて譲渡を行うと

今まで弱かった九尾のオーラが一気に回復した。

「む。これほどの魔力があればすぐにできるぞ。離れておれ」

初代の指示に従い、僕たちはいったん九尾から離れると初代が九尾に触れると

突然、九尾の全身が淡く輝きだして、全身から薄黒い煙のようなものが

外へと吐きだされていく。

「……ここは」

黒い煙のようなものがでなくなってから数秒後、淡い輝きが

晴れるとそこには意識を完全に取り戻し、起き上がった八坂姫がいた。

「母上ぇぇぇっ!母上ぇぇぇぇっ!」

九重が涙を流しながら八坂姫に駆け寄っていった。

良かった……これで、九重はまたお母さんと一緒に楽しく…………。

「イッセーさん!」

そのまま僕は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

激闘を終えた僕たち……といってもほとんどイッセー君が

彼らを片づけたようなものだけどひと先ず終わりを迎えた。

今はホテルの屋上で治療を受けている。

「救護班! シトリー卷属とグレモリー卷属の治療が

終わり次第イッセーを治療しろ!」

あれからずっとイッセー君は眠りっぱなしで命に別条はないみたいだけど

体の傷が多く、さらに魔力の量もかなり減っていた。

匙君が担架で運ばれるのを周りの卷属達が涙を浮かべて心配そうにしていた。

「よくやったな、お前たち」

「いえ、イッセー君がいなかったら……」

正直僕と彼の間にある力の差はかなり大きく開いている。

僕が勝てなかったジークフリートだけでなくヘラクレス、ジャンヌ、そして

曹操までも彼が追い払った。

「おいアザゼル坊や」

「初代」

「あ奴は少し危険な道を歩もうとしておる」

「危険な道ですか?」

「左様。それが不幸を呼ぶか幸を呼ぶかは分からぬが危険な道じゃ。

なんせ覇の力を……いや、良いかの。ま、面倒見てやれ。行くぞ、ウーロン」

『あいよくそ爺。じゃあなドライグ!』

そう言い残して初代様とウーロンさんは飛び立っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ、最終日なのに動けない僕」

「仕方がねえだろ。お前は久々のバランスブレイクに新技まで

使って体はボロボロなんだ。本当なら一生動けないかもしれないんだぞ?」

「いくらそうだと言っても男に車いすを押される気分は……ぐす!」

僕は今体中があまりに痛くて先生に車いすを押されています。

皆にはこの事は秘密にしておくらしい。まあ、いきなり車いすに

押されていたら驚くよね。

「なら私が押してやろう!」

先生に変わり九重が車いすを押してくれるというの

だがいかんせん少し背が足りない。うん、後5年くらいは必要かもね。

「ほれ、九重。変わろう」

結局八坂姫が車いすを押してくれることになった。

うん、やっぱり女の人の方が優しく押してくれる。

「赤龍帝殿、京都を救ってくれたこと、私を助けていただいた事、感謝する」

「いえ、別に僕はそこまで大層な事してませんよ」

そう言われると若干照れ臭い。でもあの力はゲームでは使用不能になるだろう。

なんせ王の承認なしでプロモーションするんだから。

そして駅について先に駅で待っていた木場君に僕が乗っている

車いすが手渡されて新幹線の中にいれてもらった。

「赤龍帝殿!」

「イッセーでいいよ」

「イッセー! また京都に来てくれるか!?」

「うん! 勿論! 今度は部長さん達も連れてくるよ!」

僕らは笑顔で分かれた。

楽しかった修学旅行も終わり僕らは元の日常に戻った。

 

 

 

 

 

 

修学旅行から帰ってきた僕達はすぐさま、部室へと招集された。

京都での一戦はすでに、連絡されているらしく少し怒られてしまった。

「イッセー。大丈夫?」

「ええ、大丈夫ですよ」

でも、すぐにお説教は終了し皆、僕の傷を心配してくれた。

「本当に? どこか痛いところとか」

……部長さん達の距離が近すぎる!

小猫ちゃんは僕の両ひざに乗って猫又モードで仙術を使って

くれているからよしとして……部長と朱乃さん。この二人の距離が近い。

「でもこれではイッセー君の日常生活に支障が出ますわね」

それを言った途端に朱乃さんと部長がお互いに満面の笑みを

浮かべて向き合った。

……容易にアイコンタクトで伝えた内容が分かった。

『分かってるわね? 朱乃』

『ええ、勿論よリアス』

みたいな感じだと思う。

「「私がイッセーの介護をします!」」

……ですよね~。

「ちょっと朱乃! それは私の役目よ!」

「あらあら、それは私の役目ではなくって?」

「私がイッセーの身体を拭いたりするの!」

……いや、それくらいは自分でやります。異性の方に裸を見せるというのは

メチャクチャ恥ずかしいので。

「なら私はイッセーの下のお世話とやらをしよう。

桐生曰く男はあるものを定期的に出さないと狼になるらしい」

な、ならないよ! ていうか桐生さんはどんなことをゼノヴィアさんに

教えているのさ!

後、皆も『っ! その手があったか!』みたいな表情をしないでください!

「木場君! ギャスパーくん! 助けて!」

「くわばらくわばらです」

木場君は合掌しないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!

こうして僕は恥ずかしすぎて死ぬかと思うくらいに恥辱にまみれた数日を過ごす羽目になった。

 

 

 

 

 

 

「よお、サーゼクス。そっちに英雄派のデータ送ったが届いたか?」

『ああ、届いているよ。だが上位ロンギヌスを三つも所持か。

そしてバランスブレイク使いの数の上昇』

まあ、そこに着目するわな。

ただでさえヤバい上位ロンギヌスが三つともあっちにあるんだからな。

それに霧使いはすでにバランスブレイクに至っており、曹操のセイグリッドギアも

恐らく近いうちにバランスブレイクにいたるだろう。

『だがまた彼らは戦果を挙げたな』

「ああ、これであいつらの昇格は間違いないのか?」

『そう見てもいいだろう。上位陣となんら遜色ないからね』

「早速義弟自慢か?」

『これほど自慢したい義弟は初めてだよ。冥界の子供たちに人気の

ヒーローを持つ義兄はつらいね』

おいおい、それはこっちからすればただの惚気にしか聞こえないぜ?

 

 

 

「報告は以上です、ヴァーリ様」

『御苦労。よく玉龍と初代をあの空間に誘ってくれた。

兵藤一誠はどうだった? ルフェイ』

「はい! もう感動しました! 目の前で憧れの仮面の戦士に会えましたから!」

『そうか』

「それと新たな力も手に入れたみたいです」

『ああ、聞いているよ。俺ももうじき追い越されるかな?

まあ速さについてはもうあいつの方が上か』

「なんだか楽しそうですね♪」

『ああ、楽しいよ。最高に』

 

 

「ねえサイラオーグ聞いた?」

「どうしたシークヴァイラ・アガレス」

「噂の赤龍帝、新たな力に覚醒したらしいわ」

「そうか。俺も強くならないとな」

「その能力は実戦では不正に近いらしいけど」

「そんなことはどうでも良い。あの赤龍帝と拳を

ぶつけれるなら俺は何でも容認しよう」



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Life66

「出たな! ダークネスファング!」

只今僕は冥界の旧首都、ルシファードというところで仮面の

戦士のヒーローショーをしています。

今、冥界ではチビッコに仮面の戦士という特撮番組が、大ブレイクして大流行している。

なんでも、部長のお母様曰くグレモリー家の財政を担う産業にもなりえるほどの

影響力が出てきたとかでめちゃくちゃニコニコされてた。

本来ならこういう仕事は専門職の人がするんだけどサーゼクス様からお願い

されたので今に至る。

「ドラゴンキィィィィィィック!」

「「「「キィィィィィィィィック!」」」

僕が敵役にアクションをするとちびっこたちもマネをしてくれる。

まあ、嬉しいッちゃ嬉しいんだけど……は、恥ずかしすぎる!

なんせ立ち見すら出るくらいのお客さんが僕の目の前にいっぱいるのである。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ~」

僕は荒方の仕事を終え控室で休憩していた。

『続いては仮面の戦士への質問コーナーです』

「「「「「ヘルキャットちゃぁぁぁん!」」」」

オタ……げふんげふん、大きなお友達が小猫ちゃんを見て鼻息を荒く……んん! 

早く質問したいせいでかなり鼻息が荒くなっている。

「最近は歴代所有者さん達の声も聞こえないし、毎日が

楽しいし。もう僕充実してるよ~!」

『ねえ死んでくれない?』

「っ!」

そう言った直後、思い出したくない顔が僕の脳裏を駆け巡った。

あれは過去なんだ! もう過ぎ去った過去だ! 関係ナッシング!

僕はそう自分に言い聞かせながら廊下に出ると、スタッフさんと

小さなお子さんを連れた奥さまがいた。

「すみません。既に握手会の整理券の販売は終わってまして」

「そうですか……もう終わったんだって」

「嫌だよ! 仮面の戦士に会いたい!」

子供は目に涙をためて廊下で泣き叫んでいた。

……特例を作るのはいけないし……でも……。

「えっと、どうかしました?」

「あ、実は」

スタッフさん曰く、どうやらこの子はこの日のショーを楽しみにしていた

らしいんだけど寝坊をしてしまって中に入るための整理券を受け取れなかったらしい。

「ねえ、僕」

「お兄ちゃんだ~れ?」

「僕はね、仮面の戦士とお友達なんだ」

「っ! ほんと!?」

先程まで、悲しみに満ちていた目に光がともった。

「うん! 本当だよ! でもね、仮面の戦士は今がっかりしてるんだ」

「なんで?」

子供は不思議そうに首を傾げる。

「だって、君が我儘を言っちゃって誰かを困らせてるからなんだ」

「我儘?」

「うん、仮面の戦士はそんな我儘をいう子には握手してあげないぞって言ってたよ」

「ほ、本当!?」

「うん! だから、今度ヒーローショーに

来た時に一番に握手してくれるように言っておくよ!」

「うん! 分かった! 僕今度まで我慢する!」

そう言って手をひかれて親子は帰っていった。

「流石ですね、小さな子の扱いがうまいといいますか」

「そうですかね?」

僕は控室へと戻った。

『死んでくれないかな?』

控室へと戻る道中でまたあの声が聞こえて

軽い目眩がしてきた僕は、通路の壁に凭れかかった。

「あれは過去の出来事なんだ……今は部長の事が」

「あらイッセーじゃない」

「ぶ、部長!」

「……まだなのね?」

時折、部長は僕が返事すると悲しそうな表情をする。

何かあったのかな?

「イッセーお兄様!」

「ミ、ミリキャス様!」

突然、後ろから呼ばれ後ろを振り向くとミリキャス様が僕に抱きついてきた。

「ごきげんよう、イッセーさん、リアス」

通路の奥からミリキャス様と部長のお母様が僕らのところまで歩いてきた。

相変わらず綺麗なお方だよ。

「イッセーお兄様! 大変面白かったです!」

そう言って満面の笑みでそう言ってくれるミリキャス様。

まあ、ファン第一号がミリキャス様だって言っても過言ではないしね。

冥界に行ったときは必ずと言っていいほど、僕の話をお聞きになられるから。

「どうかしましたか? どこか顔色が優れないようですが」

「い、いえ! 気のせいです!」

「そうですか……一度グレモリー主催のショーを見て

おきたかったものですから。この子なんか毎日リアルタイムの

放送を見てますわよ」

うぅ! 面と向って云われるとなんだか恥ずかしいな。

「あ、ありがとうございます部長のお母様!」

すると、どこか部長は悲しそうな表情をして部長のお母様は

むっ! としたような顔になった。

「イッセーさん。部長のお母様というのはいただけませんね。

私の事はお義母様か、母上と呼ぶこと」

「し、しかし」

「しかしではありません。いずれ貴方もグレモリー家の者として

社交界に出ることになります。そこで部長のお義母様だなんて

言われるとグレモリー家全体が恥をかきますわ」

うぅ、ていうかなんで僕は社交界に……あっ! 部長の卷属悪魔だからかな?

一転して部長のお母様の顔が厳しいものになる。

 

 

 

 

 

「リアス、教えが足りないのではなくて?」

お母様に睨まれながら部長は申し訳なさそうに呟く。

「も、申し訳ありませんお母様。しかし」

「そこで『しかし』が入るだなんて……伴う男子を入れるのですから

そこをちゃんとしないでどうするの?」

そこからお母様のマシンガン説教は続いていく。

マシンガン説教を聞きながら部長は顔を真っ赤にして話を聞いていた。

「という訳です。いいですね?」

「は、はい」

うわぁ~。人ってここまで顔が赤くなるんだね~。

まるで茹でたタコだよ。

その後二、三個の話をされたあと部長のお母様とミリキャス様はお帰りになられていった。

「イッセー……帰りましょう。文化祭の準備があるわ」

「あ、はい!」

 

 

 

 

 

翌日、僕は一年生の教室前にいた。

何故かといえば、以前戦ったライザーさんの妹さんであるレイヴェルさんが

この学び舎に転校してくるだとかで、面倒を見ることになった小猫ちゃんを

見に来たわけである。

なんでも人間界のことをもっとよく知りたいらしくそれならば部長がいる

高校に転入させようとなったらしい。

まあ、部長がいれば安心だもんね。

「ねえねえ、あの人が噂の癒しの先輩?」

「うんうん、笑った顔を見て胸キュンしなかった人はいないんだとか!」

ヒソヒソと僕の噂話をしている女の子の声が聞こえてくる。

……何だか僕の噂が変なふうに流れているような気が。

まあそんなことは置いておき、僕は教室の中を見てみるとギャスパーくんは

目立たない端っこの方にいて、レイヴェルさんは質問攻めに遭っていた。

僕の予想だと『庶民の質問に答えるのも貴族の務めですわ!』

とか言ってそうな気がしたんだけど現実は真逆で『え、えっと』という風に

口ごもっていた。

やっぱり、貴族出身でもあれだけ一期になだれ込まれたらオドオドしちゃうんだね。

「あ、イッセーさん!」

僕を見つけたギャスパーくんがそう言うとともにレイヴェルさんも

どうにかして抜けてきて僕の所に来た。

「何というか大変そうだね」

「え、ええまあ」

「何なら小猫ちゃんに頼んでみなよ」

「なんですか?」

後ろから小猫ちゃんがやってきた。

ちょうどいいや。

「小猫ちゃん! レイヴェルさんが学校に慣れるまでの間お世話よろしく!」

「………先輩がそう言うなら」

小猫ちゃんは口を三角にして渋々了承してくれた。

「そう言う訳でレイヴェルさん、何か困ったら」

「……へタレ焼き鳥」

っ! な、何を言うのさぁぁぁぁぁぁぁ!

「い、今なんと?」

レイヴェルさんはこめかみをぴくぴくさせながら小猫ちゃんにもう一度聞く。

「……へタレ焼き鳥」

「あ、貴方ねえ! フェニックス家の息女たる私に!」

「…へタレ。そんなんだから先輩が手を煩わせるんだ」

「むっきぃぃぃぃ!」

レイヴェルさんの背後に炎を纏った鳥が出現し、小猫ちゃんの背後には爪が鋭い

猫が現れてお互いに睨みあいはじめた……ような雰囲気が二人の間に流れている。

ま、まあ二人も殴り合いのケンカはしないでしょう。

僕はその場を去った。



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Life67

「ん~ここに来るのは京都以来かな?」

僕は夢の中でセイグリッドギアの中に潜り込んでいた。

というかもう癖みたいなものだね。

もう、エルシャさんもベルザードさんもいないけど僕はよくここに来ていた。

『ねえ、死んでくれない?』

「っ!」

突然、後ろから声が聞こえたから慌てて振り向くけどそこには誰もいなかった。

「き、気のせいかな」

『あまり悪魔と喋りたくないの』

き、気のせいじゃない! か、彼女の声が聞こえてくる!

『私を殴っちゃうの? 初めての彼女なのに。イッセーくん、怖いわ』

止めろ!

『ねえ、死んでくれない?』

止めろ!

『ねえ、死んでくれない?』

『ねえ、死んでくれない?』

『ねえ、死んでくれない?』

『ねえ、死んでくれない?』

止めてくれ!

 

 

 

 

 

 

 

「はっ! はぁ、はぁ、はぁ」

ゆ、夢?

「……まだ1時間も経ってない」

時計を見てみるとまだベッドに横になってから一時間も経っていなかった。

隣では部長がすやすやと寝ている。恐らく文化祭の準備で疲れたんだろう。

「……寝よ」

僕はもう一度眠ろうとベッドに横になって目をつむった瞬間!

『ねえ、死んでくれない?』

『ねえ、死んでくれない?』

『ねえ、死んでくれない?』

『ねえ、死んでくれない?』

「っ!」

あの声がリピートで、しかも大音量で僕の頭の中に流れ込んできた。

「……嫌だよ」

 

 

 

 

 

 

結局、僕は一向に眠れない夜を過ごし続けた。

眠ろうとするとあの声がリピートで頭の中に流れ込んでくる。

おかげで重傷クラスの寝不足に陥ってしまった。

『壊せ』

「っ!」

「どうしたの兵藤?」

「な、何でもないよ! ちょっとトイレに行ってくるから先生に

遅れるって言っておいて! 桐生さん!」

それに加えてつい先日くらいからまた歴代所有者たちの声が聞こえてきた。

朝は何も聞こえないのに人とかを見ると聞こえてくる。

この前なんか無意識のうちにシャーペンをへし折っていたくらいだ。

『壊せ壊せ壊せ壊せ!』

嫌だ! 僕は壊したくないんだ!

僕はトイレの便座に座って必死に別の事を考えるけど今度は彼女の声が聞こえてきた。

『ねえ、死んでくれない?』

『ねえ、死んでくれない?』

『ねえ、死んでくれない?』

『ねえ、死んでくれない?』

「止めてくれ!」

僕は精神的に疲弊しきっていた。

 

 

 

 

 

 

 

「あ~あぁ、ねみ」

朝っぱらから授業すんもの疲れるな。

俺はようやく全ての授業を終えて職員室に帰るところだった。

『少しいいかアザゼル』

ファーブニルの宝玉から直接ドライグの声が聞こえてきた。

俺は人気の少ないところにまで移動してドライグの話を聞いた。

「どうした? お前から話しかけてくるだなんて」

『実はなお願いがあるんだ』

ほぉ~二天龍様の片割れにお願いされるとわな。

ただの総督だった俺も成長したもんだ。

「ああ、良いぜ」

『相棒を救ってほしい』

「?」

俺の頭に疑問符が浮かび上がった。

何故イッセーを救ってほしいんだ。

「どういう意味だ?」

『今あいつは過去のトラウマに加え、歴代所有者たちの怨念まで頭に

響いて来てここ何日もろくに眠れていない』

あ~だから、あんなに足取りが不安なものになっているのか。

『歴代所有者たちの方は俺でもなんとかできるが…』

「過去のトラウマ……レイナーレか」

報告は受けている。

ロンギヌス所有者のイッセーを危険分子にならないうちに

早く殺すように伝えられたレイナーレがハニートラップをかけた話か。

「あれの責任はすべて俺にある。俺が何とかしよう」

『ああ、すまないな。このままいけば相棒は精神的に

崩壊してしまいかねない』

「お前も変わったなドライグ」

『俺がか?』

「ああ、以前のお前なら宿主を心配はしても誰かには頼まなかったろ?」

『……俺も焼が廻ったようだ』

それはいい意味でだな。

それを最後にドライグの通信は切れた。

待ってろ、イッセー。

 

 

 

 

 

「………」

あれから……何日経った? 一週間? 5日?

曜日感覚が失われるほどにまで僕はボロボロだった。

今は自室でボーっとしているんだけど転寝はできるんだけど熟睡しようとすると

頭の中に彼女の声が響いて来て目を開けてしまう。

それの繰り返しだった。

「入るわね。大丈夫? 最近顔色が悪いけど」

「え、ええ」

どうやら最近の僕の様子に不信感を持った部長が僕の部屋に来てくれたらしい。

部長は僕の隣に座ると僕の肩に頭をコテッと軽く乗せてきた。

いつもならビックリするんだけど今は驚くことすらできないくらいに眠い。

「イッセー……聞かせて。貴方にとって私は何?」

僕にとっての部長……好きな人だ。僕にとって部長は僕が初めて恋を

した女性だ……でも、今こんな体調で言えるものじゃないよ。

「部長は部長です。それ以下でも以上でもありません」

そう言った直後、部長は今にも泣きそうな顔をして僕の顔を数秒ほど見るけど

すぐに顔を反らして僕の部屋から出ていった。

『ねえ、死んでくれない?』

『ねえ、死んでくれない?』

『ねえ、死んでくれない?』

『ねえ、死んでくれない?』

「うぅ!ああぁぁ!」

部長を追いかけようと立ち上がろうとしたときに突然、頭に激痛が走り僕は頭を抱えて蹲った。

っ! あ、頭が! 痛い!

『おいしっかりしろ相棒!』

ド、ドライグ……。

『ねえ、死んでくれない?』

『ねえ、死んでくれない?』

『ねえ、死んでくれない?』

『ねえ、死んでくれない?』

僕はそのまま気を失ってしまった。



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Life68

あれから気を失った僕はドライグがアザゼル先生に宝玉を通して

SOSを出してくれたお陰で何とか無事だった。

今、僕はアザゼル先生の肩を借りてベッドに横たわっていた。

「すみません。ご迷惑をおかけして」

「いや、もとはといえば俺の責任だ。俺の目が行きとどいていなかった」

「そんなことありませんよ。ただ僕が弱いだけです」

「……」

それからアザゼル先生は僕が寝付くまで傍にいると言って下さったけど

それは低調にお断りした。

どう見ても僕が眠れるはずがないからである。

 

 

 

 

その翌日の放課後、サイラオーグさんとのゲームについてのミーティングが行われた。

体調も完全に回復したとは言えないけど昨日よりかはまだマシな方なので

ミーティングに参加した。

「お前ら、向こうの卷属のデータは覚えたな?」

無論だ。僕たちは何度もビデオを見直して荒方の能力は頭にぶち込んだ。

でも一つだけ気になるところがある。

「……このポーンだけ戦闘に参加していませんね」

険しい表情でロスヴェイセさんがそう呟いた。

「……そいつは滅多な事がない限り向こうも使わないそうだ。

ポーンの駒を六つか七つ消費していると聞いている」

皆が同時に驚いた。

僕で八つ消費している。

つまりそ七つか八つも駒を消費するほどの潜在能力を秘めているのか、

それとも相当の実力を持っているからなのかになる。

「データがそろっていない以上最新の注意を払っていけ。特にイッセー、お前だ」

え? ぼ、僕ですか?

「お前はこの卷属内で最も力を持っていると言っても過言ではない。

恐らくあいつがポーンを使うとしたらお前にだ」

ぼ、僕に……か……こんな状態で勝てるんだろうか。

今話を聞いている最中でさえ猛烈な眠気が僕を襲っている。

何回転寝仕掛けたか…でもそのたびにあいつの声が聞こえてくる。

そのままミーティングは続けられその日の戦略なんかを伝えてくれた。

 

 

 

ミーティングも終えた放課後、僕たちは部室に残っていた。

……ふと部長を見る。

部長はミーティングで使用した資料に目を通している。

あれから一言も言葉をかわしていない。

というよりも僕の方があの人を避けているのかもしれない。

すると見覚えのある魔法陣が現れた。

「……フェニックス」

あっ! そうだ!

小猫ちゃんのつぶやきを聞いてようやく僕は思いだした。

テーブルのサイズに収まるくらいだから連絡用か。

そして魔法陣に女性の顔が映し出された瞬間、レイヴェルさんが

素っ頓狂な声を上げた。

「お母様!」

『ごきげんようレイヴェル、そして赤龍帝殿。今は学校ですよね?』

「あ、はい」

『リアスさんはいらっしゃるかしら?』

「ごきげんよう、おばさま」

『ええ、ごきげんよう。レイヴェルがそちらにホームステイさせて

いただいてるものですからせめて挨拶の一つくらいはと思いましてね』

……本当にこの人ライザーさんのお母様?

めちゃくちゃ礼儀正しいじゃん。

『レイヴェル、貴方はホームステイさせていただいている身

なのですからキチンとリアスさんをたて、迷惑をかけないでいるのよ?』

「もちろんですわ!」

『それが聞けただけで満足ですわ……あ、そう言えばイッセーさん』

突然、僕の名前が呼ばれた。

「あ、はい」

『確か貴方は最強になられるのが目標だとか』

「え、ええまあ」

『最強になるという事はいずれ上級悪魔になられるのですよね?』

……んまあそうなるかな。

「はい」

『でしたら、今はレイヴェルは私の僧侶ビショップですの。

イッセーさんが上級悪魔になられた時はぜひ!ぜひレイヴェルを卷属に』

「あ、は、はい」

余りの気迫に僕はタジタジになっていた。

『ふふふ、それでは』

そう言って魔法陣は消滅した。

 

 

 

「ねえ、イッセー」

「はい?」

……数日ぶりの部長との会話だ。

皆、周りで聞き耳を立てている。

「貴方は…私を護ってくれる?」

「はい!勿論です!部長は僕がずっと御守り致します!」

「朱乃も?小猫も?」

……どうしたんだろう部長。

「はい!勿論です!み~んな僕が護ります!」

それを言うと部長は一層悲しそうな表情をした。

な、なんで?

「ねえ、あなたにとって……私は何?」

「え? 部長は部長で僕の」

「――――――――バカッ!」

「んぎゃ!」

僕は不意に部長のビンタをもろに喰らったのと最近の寝不足の

所為でうまく力が入らないの二つが重なりこけてしまった。

「お姉様! ひどいですイッセーさん!」

え? な、なんで?

「何でもっと部長さんの事を分かってられないんですか!」

なんでアーシアさんは僕をそんな目で見るの?

ねえ、なんで?

アーシアさんはそのまま部長が走っていった方向へ向かった。

「今のはまずいよ、イッセー君」

なんで? なんで木場君まで僕を責めるの?

ねえ、なんでみんな僕をそんな目で見るの?

他の部員も部長を追いかけていった。

 

 

 

 

 

 

僕は今一人部室で横になっていた。

あれから、1時間くらい経ったけど一向に女性人達は帰ってこない。

木場君とギャスパーくんは買い出しに行ってる。

「部長……なんで」

好きなのに…なんで好きな人に僕は怒られたんだろ。

よくよく考えてみれば僕は部長が好きだ。

でもそれはあくまで僕⇒部長という構図であって

部長⇒僕という構図ができていないことだってある。

もしかして部長は僕のこと嫌い?

で、でも……部長は僕にキスもしてくれるし手もつないでくれるし……

で、でもそれはペットというか可愛い下僕に対しての愛であって。

「分からない……なんで部長は」

「男の方から見ればそうなりますわね」

「朱乃さん!」

その後ろには小猫ちゃんとアーシアさんも立っている。

『壊せ! あの者たちを覇龍で壊せ!』

っ! や、ヤバい! また暴走しそうだ!

ひと先ず僕は慌てて二人から離れようとするけど3人は僕を無理やり掴むと

ソファに押し付けた。

「アザゼル先生から聞きました。最近イッセー君はあるトラウマで苦しんでるって」

「レイナーレの事ですよね?」

っ! その名を聞いたとたんに僕の額から嫌な汗が流れてきた。

「……それに歴代所有者たちの声にも苦しんでるって」

「私達は貴方を理解しようとはしていませんでした」

すると急に朱乃さんが僕の上の服を脱がしてきた。

「今ここで龍の力を抜きますわね」

「……仙術で生命力を回復させます」

朱乃さんは横から、小猫ちゃんは前から抱きついて僕を癒し始め、アーシアさんは

ただただ僕に後ろから抱きついていた。

「時々貴方は私たちを怯えたような眼で見るんです」

「最初は気のせいだと思っていましたが段々それが多くなってきていて」

「朱乃さん、アーシアさん……あぐぁ!」

ヤ、ヤバイ!

二人に密着されてるせいかいつもよりも声が大きく聞こえてくる!

「ふ、二人とも……離れ」

「離れません」

「……私もです」

「私もです!」

な、なんで! そんな事したら3人は!

でも、3人は僕をぎゅっと掴んだまま離そうとはしなかった。

「……兵藤先輩が暴走しても私達が止めます」

「貴方がレイナーレにまだ苦しめられているというなら私達は

貴方を少しでも楽になるようにします」

「朱乃さん……小猫ちゃん……アーシアさん」

いつの間にか僕の両目からは涙が溢れ出してきていて流れていた。

「怖いんです……僕なんかが朱乃さん達みたいに美人な人と一緒

にいていいのかって! また裏切られるのが怖いんです!」

だから僕は無意識のうちに部長に近づこうとせずに遠ざかっていた。

「もう大丈夫ですよ。貴方の苦しみは私達が受け止めます」

「うあぁぁ! あぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

僕は声を大にして泣き叫んだ。

嬉しかった。

こんなにも僕の事を想ってくれるなんて。

僕はそのまま泣きつづけ、泣きに泣きつづけ数日ぶりの眠りに落ちた。




どうも、こんばんわ!
本当に……僕って上に凸の二次関数ですよ。最初は上がるけど
最後らへんは落ちる……あ、これ評価のことですよ。それでは!


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Life69

ゲーム当日の朝まで僕は爆睡していた。

皆のお陰で僕は過去のトラウマを完全に克服できてこれまでの寝不足を

無くして完全な復調を果たせた。

でも、まだ完全に復調していないことがある。

「……部長」

そう、部長との関係だ。

僕はあの日から寝てたから分からないけどたぶんまだ機嫌がよろしくないと思う。

だから僕はこの戦いが終わったら……この想いをぶつける。

フラれればその時はその時だ。

また新しい恋を見つける。

それよりも今日はあの、サイラオーグさんとの戦いだ……相手は

若手ナンバーワンと言われている相手。全力で行かないと。

「んじゃ行こうか」

僕は皆が待つところへと向かった。

 

 

 

 

 

「す、凄い。空に島が浮いてる」

僕たちは今、会場に向かうゴンドラの中で景色を堪能していた。

とりあえず冥界までいったのは良いものの途中で用意されていたリムジンに

乗り込み、ある場所まで行ってさらにそこから今のっている会場行きの

ゴンドラに乗った。

「そう言えば僕らが試合している時に英雄派が来るって事は」

「それはねえな。まあ一応警戒を最大にしているが杞憂に終わるかもしれん」

アザゼル先生は自信ありげにそう言った。

「どうしてそう言いきれますの?」

朱乃さんの言うとおりだ。

なんで先生はこうも自信ありげに言えるんだろ。

「個人的にヴァーリから連絡が来てな。『邪魔はさせない』だとさ」

あのヴァーリがね……まあ、それはそれで良いか。

ふと部長の方に視線を向ける。

部長は遠いどこかを見ているようでこっちには視線を向けようとはしなかった。

……僕、告白する前に玉砕決定かも。

そう思っているとゴンドラが動きを止めた。

どうやら着いたようだ。

「お待ちしておりましたわ」

用意されているリムジンの前でレイヴェルさんが待っていてくれた。

僕らはそれに乗り込んで車は会場を目指して発車したけど後ろから車が追ってきた。

「お前らそろそろ個別にマネージャーをつけた方がいいな。

日が経てば落ち着くだろうが冥界に来るたびにこんな事になるぞ。

この際だ、レイヴェルがイッセーのマネージャーをしろよ。

いい経験になるぞ?女からの嫉妬が多いと思うがな」

直後、朱乃さんがどこから取り出したのか大きなハリセンでアザゼル先生の

頭をたたいた。

「っ! 何すんだ朱乃!」

「うふふ、ちょっとデリケートな時期もありますんで

そういうのは控えて下さいな。ね? 部長」

部長は顔を真っ赤にして俯いた。

部長の機嫌も前と比べればだいぶマシになった。まだ会話はしてないんだけど。

そんな風に考えながらもリムジンは会場となる巨大なドームを目前としていた。

 

 

 

 

 

 

僕らが案内されたのは会場の隣にある高級高層ホテルだった。

なんか悪魔になってから豪華な所に泊まってるような。

ゲーム開始まで後六時間ほど、僕らはそれぞれの事をしていると

一人の人物が部屋に入ってきた。

「邪魔する」

ライザーさんだった。

「お兄様!」

「ライザー!」

部長もレイヴェルさんも素っ頓狂な声を上げた。

「よー、来てやったぜ。レイヴェルも元気そうだな」

そう言うとライザーさんは近くにあった椅子に座った。

確か僕に負けてから寝込んで立って聞いてたけど復調したんだ。

「今回のゲームはプロの好カードともなんら遜色ないゲームだ。

実戦とは違ってエンターテイメント性があって戸惑うだろうが気にせず闘え」

ライザーさんは朱乃さんが入れたお茶をすすりながら真面目な顔でゲームに

ついて語ってくれた。

なんというか会った時と比べてだいぶマシになったような気もしない。

というよりも荒々しさがなくなったのかな?

「……私はソーナほど戦略の組み立てが上手い訳でもないし

サイラオーグほどパワーもある訳じゃない」

いや、部長が筋肉モリモリだったら逆に怖いです。

「でも卷属には恵まれているのは分かっているの。皆を

うまく導けていない自分の力量不足が腹立たしいわ」

そんなこと思っていたんですね部長。

部長といえど一人の女の子、健気に振舞っていても中身は

不安で今にも壊れそうってわけね。

「戦略の組み立てとかは戦いの中で自然と鍛えられていく。だがな

卷属に巡り合える能力は鍛えられねえ。今の卷属が

集まったのは赤龍帝の龍の特性かもしれないがそいつと

お前が巡り合ったのはまぎれもないお前の力だ。自信を持てよリアス」

めちゃくちゃ良い事言いますね。

「それに今じゃ」

ライザーさんは僕に炎を軽く飛ばしてくるけど僕は片手でそれを払った。

「会った頃はあんなにも弱かったこいつがここまで強くなってんだ。

今やっても俺達がボロ負けしそうだ。ま、頑張れよ」

そう言ってライザーさんは部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 

ゲームの開始も押し迫ったので僕たちは入場ゲートに続く通路にいた。

あと少ししたら試合が始まる。

「みんな、勝つわよ!」

『はい!』

通路に僕らの気合のこもった声が響いたと同時に会場から凄まじい歓声が聞こえてきた。

『それでは登場してもらいましょう!東ゲートからはサイラオーグ・バアル卷属!

西口ゲートからはリアス・グレモリー卷属の登場です』

「さあ行くわよ!」

僕たちは会場へと進んだ。

最初に目に飛び込んできたのは超大型のモニター、次に陣地にある

人数分の椅子と謎の台、そして陸上競技くらいのサイズのフィールドだった。

『ごきげんよう皆さん! 今回の実況は私

元七十二柱のナウド・ガミジンがお送りいたします!』

なんかド派手な衣装をした実況さんがモニターに映し出された。

『今回のゲームをしきる審判役はリュディガー・ローゼンクロイツ!』

宙に魔法陣が現れそこから銀髪のイケメン男性が現れた。

「…元人間の転生悪魔でランキング七位」

あの人が転生悪魔の頂点に立つ人か。

『そして特別ゲストとして堕天使総督のアザゼルさんにお越しいただいております!』

画面いっぱいに映し出されたのは見知った男性。

……何をしてんだか。

『そしてもう一方! 皇帝のディハウザー・ベリアルさんです!』

っ! あ、あの人が皇帝!

モニターに映し出された人を見て僕は華がある人だなって思った。

そしてルール説明が行われた。

それぞれのチームのキングがサイコロを振り、2人が振ったサイコロの

出た目の数を合わせた駒価値を持つ下僕が出ることができる……そんな感じのルールだった。

 

 

 

『さあそれではバアル卷属VSグレモリー卷属のゲームを開始致します!』

「両チームのキングはこちらへ」

審判役に言われ部長とサイラオーグさんがダイスの置かれた陣地に立った。

『用意は良いですね? シュート!』

実況の声に合わせ2人はサイコロを振った。

モニターに出された数字は……3だった。

『出た和は合計3となります!

僕たちは作戦会議を5分間貰っている。

その間の話で決まった出場者は……木場君だった。




もうすぐこの作品も最終章だぜ!


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Life70

フィールドに立ったのはこちらが木場君、

あちらは馬に乗り兜を着こんだナイトだった。

『私は主君、サイラオーグ・バアル様に仕えるナイトが一人。

ベルーガ・フールカス! 名高き聖魔剣、木場祐斗と剣を交える機会をもらい

冥土冥利に尽きる!』

『こちらも貴殿との戦いが楽しみです』

木場君も笑みを浮かべて相手にそう返す。

なんだか初戦から凄いことになりそうだ。

『第一試合開始してください!』

そう言われた瞬間2人の姿が一瞬消えたかと思えば剣と剣がぶつかり合う音が

聞こえ、さらに地面には大きな穴や小さな穴が次々と開いていく。

2人は高速で移動しながら斬り合っている。

『我がアルトブラウの神速と互角とは!』

『ふふ、僕の同僚に神速を優に超える人がいるんだ。

早く動いてないと気付いたら倒されてるからね!』

お互い高速で移動しながら斬り合いをしていく。

でも、徐々に木場君の動きが最初と比べて遅くなっている。

多分足に負担がかかっているんだ!

『……あまり初戦では見せたくはなかったんだけどね』

お! もしかしてあれを使う気なの!?

『バランスブレイク!』

聖魔剣とは違うオーラが辺りに漂い地面から刀が生まれ、

そして甲冑を着こんだ異形を創り出していく。

その姿はまるで騎士の様だった。

『バ、バカな! ソードオブビトレイヤーではないだと!?』

『これが彼との特訓で編み出した別の可能性、

グローリィ・ドラグ・トルーパーです。これに

至るまでに何回死を覚悟したことか』

あの騎士が持っている剣は聖剣。木場君曰く、聖魔剣を作れるように

なった時からすでに聖剣も作れるようになっていたらしく、あれは

そのバランスブレイクらしい。

 

 

 

 

 

『行きますよフールカス殿!』

木場君が動くと同時に騎士団もフールカスさんに向かって進撃を開始した。

『くっ! こんな所で負けるわけにはいかん!』

フールカスさんも青い馬の腹を蹴り幻影を生み出し突撃していった!

幻影が騎士とぶつかりあい、その中をフールカスさんと木場君が駆け抜けていき、

槍と木場君の剣がぶつかり合った!

鳴り響くひと振りの金属音。

木場君とフールカスさんは高速の一閃を交えた。

一泊空け……フールカスさんが光に包まれていく。

『……見事だ』

フールカスさんはリタイヤの光に包まれ転移した。

『サイラオーグ・バアル選手のナイト一名リタイアです』

僕らは初戦を勝利でおさめた!

 

 

 

 

 

 

木場君が魔法陣で帰ってくるとともに外部からもフィールド

が見えるようになり再びダイスを振る時間がやってきた。

再び両チームのキングがダイスを振る……出た目は6と4。

『出た目の合計は10でございます!』

「手堅くいきましょう。小猫、ロスヴェイセ。お願い」

おぉ! 珍しいダブルルークだ!

今度のフィールドは神殿みたいなところだった。

相手は軽鎧に剣を携えた金髪優男、そして三メートルはある巨人だった。

『俺はナイトのリーバン・クロセル。

こっちのでかいのはガンドマ・バラム』

『第二試合開始してください!』

『……相手が相手なので最初から全力です』

小猫ちゃんは全身に闘気を纏い同時に猫耳を出し尻尾を出すが

尻尾は二つに分かれていた。

あれが特訓の末編み出した猫又モード2!

「ふん!」

小猫ちゃんの拳が巨人の顔を捕える……でも、巨人は痛みに顔をゆがめることなく

すぐさま小猫ちゃんに反撃をするが小猫ちゃんがその場から飛び退いたことで

反撃を受けることはなかった。

ルークの特性が高いんだ!

『……ぬぅぅん!』

ブゥゥゥンンと、ここからでも聞こえるくらい空気が揺れていた。

小猫ちゃんはそれを素早く避けると後衛のロスヴェイセさんが魔法攻撃を食らわす。

それを受けても巨人はほとんど無傷な状態だった!

『魔法に対する防御も高い! 最近こんな相手ばかりです』

ヘラクレスの事を言っているのかな。

直後、突然ロスヴェイセさんの姿が歪んだ。

映像の映りが悪い? いや違う! ロスヴェイセさんが地面に押し付けられている!

『隙ありだよお姉さん!』

リーバン・クロセルの両目が怪しく光っていた。

『……重力の能力』

『プラス凍らせる!』

ロスヴェイセさんの足もとが氷に包まれた。

『能力はセイグリッドギアだ。魔眼の生む枷』

「あれは彼の視界に入っていればずっと能力が発動するわ! 気をつけて!」

部長がイヤホンに向かって叫んでいた。

その横でバラムの攻撃を避けながら小猫ちゃんは仙術パンチを食らわしていた。

『分かっています! 視界を媒介にする能力は弱点も分かります!』

ロスヴェイセさんは重力で震える手元に魔法陣を展開した瞬間、魔法陣から

閃光が放たれて、辺りを包んだ。

『甘いぜ! お姉さん! 鏡よ!』

魔法陣から大きな鏡が現れた!

ロスヴェイセさんの攻撃は読まれていた?

 

 

 

 

いや違う! 鏡に当たった閃光はバラムに当たり

ロスヴェイセさんと位置が入れ替わっていた!

『小猫さん! 攻撃は通ってますか!?』

『はい、もう十分です!』

『よし! 喰らいなさいフルバースト!』

ロスヴェイセさんの前方に魔法陣が幾重にも展開され次の瞬間

お得意のフルバーストが二人に向かって放たれ大爆発を起こした。

爆煙が晴れ横たわっていたのは……クロセルだった。

え? クロセルだけ?

そう思った瞬間だった。

小猫ちゃんとロスヴェイセさんが重力にとらわれ

その隣から大きな拳が小猫ちゃんに刺さった。

『ヌゥゥゥゥン!』

……僕はその光景に瞑目した。

三人がリタイヤの光に包まれた。

『サイラオーグ・バアル選手のナイト、ルーク各一名。

リアス・グレモリー選手のルーク一名、リタイア』

 

 

「冷静だねイッセー君は」

木場君……違うよ。

「この感情は後で爆発させる。もしかしたらフィールド壊しちゃうかも」

僕は笑顔で言ったけど少し木場君の顔はひきつっていた。

両キングがダイスを振り出た目の合計は8。

僕も出られる数だ。

「俺はビショップのコリアナ・アンドレアルフスを出す」

作戦タイムに移ろうとした時だった。

サイラオーグさんが出す選手を宣言した。

『こ、これは宣言でしょうか。サイラオーグ選手理由は?』

「赤龍帝と戦いと言っているんだ」

へぇ~。面白いね、僕もやりたいな。

「……イッセー、行ってきなさい」

「…はい」

僕は転移魔法陣に乗ろうとした時だった。

「「「「赤龍帝ー!」」」」

観客席から子供たちの声援が聞こえてきた。

ふふ、ありがと。僕は魔法陣に乗り転移した。

 

 

 

転移した先はお花畑だった。

前方に相手を確認、僕と闘いという人だ。

きっと強いんだろうな……でも、今の僕はもう止まらない!

『第三試合開始してください!』

『Boost!』

「プロモーション、ナイト。あのコリアナさん」

「何かしら?」

「しっかり防御していてね。今のままじゃ……死ぬからさぁ!」

「っ!」

僕から凄まじい量の魔力が柱となって立ち上った瞬間、

コリアナさんは慌てて防御態勢を取った。

「遅い!」

「かっ、はっ!」

僕の拳がコリアナさんの腹部に突き刺さり彼女は血反吐を吐いて地面に倒れ伏した。

その直後にリタイヤの光に包まれた。

『サイラオーグ・バアル選手のビショップリタイア』

勝負は一分もたたないうちに決まった。



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Life71

「お帰り」

「ただいま」

帰ってきた僕を迎えてくれたのは木場君だった。

相変わらずのスマイルだね。

さて次のダイスだ。

部長がサイコロを振るい、数秒経った後に電子掲示板に数字が発表される……また8か。

連続では出られないから僕の出番はなしだね。

「8か……私がでよう」

今度はゼノヴィアさんが出るみたいだ。

「となると一緒に出るのは祐斗かロスヴェイセね」

「あ、あの僕が出ます。もうゲームも中盤だから何が起こるか分からないですし」

あのギャスパーくんが自分から名乗り出るなんて。

皆驚きすぎて目をぱちくりしてる。

「ええ、頑張ってきなさい!」

こうしてギャスパーくんとゼノヴィアは転移魔法陣に乗って

フィールドに向かった。

 

 

第四試合のフィールドはゴツゴツした岩がたくさんあるところだった。

『第四試合始めて下さい!』

ギャスパーくんは陣地からの部長の指示でコウモリに変化して

相手を撹乱しゼノヴィアがデュランダルで斬っていく。

でも二人とも飛ばされた斬撃をかわして杖をもった僧侶(ビショップ)が炎の

魔法をいくつも飛ばしてきた。

『させません!』

ギャスパーくんの邪眼によって炎の弾が停められた。

『ギャスパーあれをやる!』

『分かりました!』

『ラードラ! サイラオーグ様から指示が届いた! 先に剣士だ!』

『了解!』

指示が届いたのか僧侶(ビショップ)が後ろに下がり、

戦車(ルーク)が全身にオーラを纏わせる。

あのオーラどこか僕に似てるような。

そう思った次の瞬間、いきなりビショップの体が変化をはじめ、

不快音を全身から鳴り響かせながら巨大なドラゴンになった。

ギャスパーくんが必死にドラゴンをゼノヴィアから離そうとしていると

ビショップの持っていた杖が怪しく光りだしゼノヴィアさんを

包んでいき体に不気味な文様が浮かんだ。

『な、なんだこれは……デュランダルが反応しない!』

『トリック・バニッシュ。僕は人間の血も

引いていてね。最近ようやく使えるようになったのさ』

2人に容赦なくドラゴンが襲い掛かる!

ゼノヴィアさんはそのまま攻撃をまともに食らった……

かのように見えたけど小さなコウモリ達が彼女を覆い、攻撃を身代わりに受けた。

そこには誰もおらず、ギャスパーくんが彼女を岩場に避難させていた。

『すまない、ギャスパー。だが私はお荷物になりそうだ』

『そんなことありません! 僕がこの呪いを解きます!』

ギャスパー君はポシェットからチョークやらなんやらを取り出し

ゼノヴィアを中心に何かを書き始めた。

 

 

『この魔法陣にイッセー先輩のこの血をつければ解けます』

『だがギャスパー、これは』

『……その間の時間を僕が稼ぎます!』

『待てギャスパー!』

「無謀よ! 止まりなさい!」

ギャスパー君は部長やゼノヴィアさんの制止を聞かずにそのまま走っていった。

『ヴァンパイアか、剣士をどこかに隠したな?』

『お前達の運命は僕が決めます!』

……ギャスパーくん。

ドラゴンは巨大な炎を吐き、ギャスパーくんはそれに飲み込まれ絶叫した。

『うわぁぁぁぁぁあぁ!』

『ギャスパー! 無理はよせ!』

『まだいけます! うわぁぁぁぁぁぁ!』

ギャスパーくんは悪魔の翼を出しドラゴンの腕にかみついた。

『くっ! いつでも倒せるお前よりもあの剣士を倒さねばならんのだ!』

そう言いドラゴンは空いている腕でギャスパーくんを握り始めた。

『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあ!』

そのままドラゴンは放り捨てるがギャスパーくんはそれでも

相手にしがみ付いた。

『邪魔だ!』

何度、蹴られてもギャスパーくんは離そうとしなかった。

「もうやめて!」

余りの悲惨な光景にアーシアさんは顔をそむけた。

『ギャスパァァァァァァァァ!』

呪いが解けたのかゼノヴィアさんが光り輝くデュランダルを手に立ち上がり

気を失いかけている後輩を抱きかかえてエクス・デュランダルを攻撃モードに切り替えていく。

『させるか! 今度は命を代償に!』

ビショップの意識ごと時間が停まった。

画面の端で倒れているギャスパー君の目が怪しく光っていた。

やった! この土壇場で僕の血を飲まなくてもセイグリッドギアを発動できる

ようになったんだ!

『バカな!』

『消えろ!』

聖なる斬撃が相手を飲み込み大爆発を起こした。

 

 

 

 

 

 

第四試合を終え残っている卷属は僕らが七人、向こうが三人だった。

クイーンと未だに姿を見せない兵士、そして王。

そして何回目かのダイスが振られ出た目の数は9。

クイーンが出られるちょうどの数だ。

「私が行きますわ」

朱乃さん…恐らく向こうも女王の筈だ。

朱乃さんは落ち着いた表情でフィールドに転移した。

『やはり貴方が来ましたか雷光の巫女』

『不束者ですがよろしくお願いしますわ』

『第五試合始めて下さい!』

審判役の始まりの合図とともに朱乃さんが空から相手に向けて雷光を落とす!

当たったと思った雷光は歪んだ空間のなかに吸い込まれていった。

あれがアバドン家のホール。

『ここですわ!』

大質量+幾重もの雷光が相手を襲う!

皆が朱乃さんの勝利を確信した……でも穴が大きくなりさらに

複数の穴が空間に開いていて全てが吸収された。

『私の穴は複数作ることもできれば雷光から雷だけを抜くことも可能です』

ま、まさか!

『光だけお返ししましょう』

穴から光が大量に放出され朱乃さんを飲み込んだ。

 

 

 

 

 

「……ゲームは終盤よ。気を引き締めていくわよ」

部長は自分に言い聞かせるように僕らに言っていた。

朱乃さんを失って僕らは衝撃を受けていた。

でもいつまでもショックを受けている場合じゃない。

ダイスが振られ出た目の数は12。

つまりサイラオーグさんが出られる目という事になる。

「イッセー君」

木場君が僕の肩に手を置いた。

「僕とゼノヴィアとロスヴェイセさんで行く」

……そうかい。

僕が何を言っても君の決意は揺るがないみたいだね。

「祐斗! まさか、あなた」

部長も木場君の真意に気付いたのか詰め寄っていた。

「僕たちでサイラオーグさんを少しでも消耗させます」

ロスヴェイセさんもゼノヴィアさんも頷いていた。

「……また貴方達に教えられたわね。分かったわ、行ってきなさい!」

三人は魔法陣に乗り転移した。

 

 

 

3人がついたのは湖の湖畔だった。

そこに腕を組み、仁王立ちをしたサイラオーグさんが三人を待ち構えていた。

『リアスの案か?』

もう全て見透かしているようだった。

『お前たちでは俺に勝てんぞ?』

『構いません。最高の状態で』

木場君は魔剣を、ゼノヴィアさんはエクス・デュランダルを、そして

ロスヴェイセさんは宙に魔法陣をいくつか展開した。

『彼に届ける!』

『第6試合開始してください!』

刹那、サイラオーグさんの四肢に奇妙な文様が浮かび上がる。

『これは俺を拘束する枷だ。全力でいかせてもらうッ!』

枷が外れた途端、湖が激しく波打ちサイラオーグさんが立っている地面が

ベコンと大きくへこんだ。

『行くぞ!』

走り出したサイラオーグさんの姿が見えなくなる。

『させません!』

ロスヴェイセさんが縦横無尽に魔法陣を展開する!

『あっちです!』

サイラオーグさんの姿を見つけた木場君がロスヴェイセさんに聖魔剣の切っ先を

向けて居場所を教えるとロスヴェイセさんはすべての魔法陣をそちらに向けて

得意のフルバーストを放った。

その先にサイラオーグさんが現れた。

『ふんっ!』

拳を振るい空間を叩く快音とともに全ての魔法が打ち消された。

あの人の拳は魔法すら消すのか!

そのままサイラオーグさんはロスヴェイセさんとの距離を近づけていく。

『逃げ』

木場君がロスヴェイセさんに逃げるように言おうとした瞬間にサイラオーグさんの

拳がロスヴェイセさんの腹部に刺さりヴァルキリーの鎧ごと吹き飛ばした。

同時に彼女をリタイヤの光が包んでいく。

『うおぉぉぉぉぉ!』

ゼノヴィアさんが真正面からサイラオーグさんに近づいていく。

でも姿が一瞬、消えて彼女の後ろにサイラオーグさんが現れそのまま

蹴り飛ばそうとするがゼノヴィアさんは身をよじらせどうにかして

避ける。空を切った蹴りは地面を抉った。

『くっ! 木場! 全力中の全力で行くぞ!』

『勿論だよ!』

サイラオーグさんが飛び出し2人に闘気を纏わせた拳を振るう。

木場君が聖魔剣を幾重にも重ねて防御をしようとするけど一撃で

全て粉砕された。

『軟いな。その程度では俺は止められん!』

そのまま拳を動かし聖魔剣ごと木場君を殴りとばした。

『がはっ!』

聖魔剣が難なく折れた。

 

 

 

 

 

『デュランダル!』

『伝説の波動と俺の闘気、どちらが上か勝負だ!』

サイラオーグさんはさらに闘気を纏わせて、デュランダルから

溢れ出す波動に正面からぶつかった。

結果は無傷。

な、なんて拳なんだ!

『無傷か! ……バケモノだ!』

『ゼノヴィア! コンビネーション行くよ!』

二人は同時に剣をふるっていくけどサイラオーグさんは

聖魔剣、エクス・デュランダルの二振りの斬撃を最小限の行動でかわしていく。

その間に木場君は聖魔剣から聖剣に持ちかえ騎士団を呼び出した。

『行けぇぇぇぇぇ!』

木場君の声とともに騎士団がサイラオーグさんに襲いかかるが

蹴りや拳を喰らいあっけなく全ての騎士団が破壊されていく。

『数も早さもあるが……硬さが足りない』

ゼノヴィアさんの腹部に拳が、木場君の脇腹に蹴りが入り

メキメキという嫌な音が鳴った。

『ガハッ!』

二人とも血を吐いて地面に倒れ伏す。

僕の仲間達が……次々と倒されていく。

『はぁ、はぁ。まだ体は動く!』

2人は剣を持ちサイラオーグさんの前に立ちはだかった。

『まだ楽しませてくれるのか!』

『楽しませてあげますっ!』

ゼノヴィアさんがそういうなか後ろから復活(?)したロスヴェイセさんが

至近距離で無数に魔法陣を展開しフルバーストを放った!

でもなんで彼女が!?

「さっきゼノヴィアが放った聖なる斬撃に擬態と透明のエクスカリバーを

紛れ込ましておいてそれをうまくキャッチしたロスヴェイセが自分の擬態を

つくり本物は透明になって隠れていたのよ!」

部長が笑みを浮かべていた。

す、凄い! こんな戦い方を思いつくなんて!

でも僕たちの歓喜はすぐに終わった。

『流石はリアスの卷属だ。今まで死線を乗り越えてきたことはある。

なら俺も本気でお前たちを葬ろう』

サイラオーグさんが拳を後ろに引いた。

腕が盛り上がっていき力が蓄えられていく!

『ゼノヴィア! あれを』

サイラオーグさんが拳を前に突き出した瞬間、

地面がまるで地割れでも起きたかのような割れ方をして抉れていた。

『リアス・グレモリー卷属のルーク一名リタイア』

っ! う、嘘でしょ!?

僕と部長は驚愕に包まれた。

さっきの一撃でロスヴェイセさんが。

 

 

 

 

 

『こいつは掠っただけでも致命傷を負う』

もう一度、サイラオーグさんが右腕を引いた瞬間、

ゼノヴィアさんと木場君が同時に右腕に斬りかかる!

でも闘気によって聖魔剣は砕かれデュランダルは相殺されていた。

歯がみするゼノヴィアさんだけどデュランダルの柄を木場君も持った!

その瞬間、今までよりも刀身がさらに強く光り輝き右腕が切断された。

『貴様たちに右腕はくれてやろう。俺も最高の状態で戦いたんでな』

そう言うとゼノヴィアさんを宙に蹴りあげ左拳と蹴りの連打を

与えていき最後に地面に叩きつけた。

もう彼女の目に光はなかった。

木場君もそれを見て下がろうとするけど左手で顔をロックするとそのまま

叩きつけ地面を引きずっていき体を蹴りあげ浮いた木場君に拳をぶつけた!

その一撃は空気を震わすほどの一撃だった。

『はは……これで十分だ……後は親友とあの人が貴方を倒してくれる』

『リアス・グレモリー卷属のナイト二名リタイア』




この作品は曹操との決着がつくところまで描きます。


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Life72

切断された右腕に涙を使う姿を見て私は悲しみよりも安堵が大きかった。

可愛い卷属達の闘う姿を見て私の中で劇的に変わった。

さあ、終盤に入ったわ。

ふとイッセーに視線を移した時だった。

私を今まで感じたこともない殺気が襲い掛かった。

イッセーの殺気にアーシアも小さくふるえ泣いていた。

私はダイスを振るために陣地へと向かい振った。

出た数は9.こちらはイッセーを出しあっちは女王を出すでしょう。

イッセーは何も言わずに立ちあがり、転移魔法陣へと向かう。

イッセーが歩くたびに全身から溢れ出している殺気が地面に小さな亀裂を生みだす。

「行ってきますね、部長、アーシアさん」

妙に迫力のある笑顔をこぼし彼は転移した。

転位する直前の彼はの顔は憤怒の顔だった。

 

 

 

 

 

イッセーが転移したのは人気のないコロシアムの舞台上。

『兵藤一誠、妙な落ち着きを見せますね』

『そう見えてるならあなた死にますね……うん、死にます』

私には彼が落ち着いて見えてはいなかった。

「リアスお姉様……イッセーさんは」

「ええ、今にも爆発しそうなのね」

アーシアもイッセーの事をよく分かっている。

彼はぎりぎりまで爆発するのを抑えて、戦いが始まった瞬間に全てをぶつける気なんだ。

審判役が2人の間に入る。

『どう殺す? 握りつぶすとか? 魔力弾で一気に消す? それとも』

彼の独り言はあまりにも殺意に満ちていた。

『第七試合始めて下さい!』

それが告げられる。アバドンは何もせずにイッセーの動きを待つ。

『赤龍帝、バランスブレイクしなさい』

『くっくくく』

それを聞いた彼は笑っていた。

『貴方にバランスブレイクなんか使ったらどうなるか知りませんよ?』

『構いません』

『そっか……これだけ言っておきます。命乞いだけはしないでください』

イッセーが赤色の閃光に包まれていく。

直後、赤色に輝く魔力の柱が天に向かって伸び、アバドンの顔が絶望に染まっていた。

イッセーが鎧を身に纏った瞬間、凄まじい速さで魔力が倍加されていき、

周囲の地面が彼のあまりに膨大な魔力でつぶれ始めていた。

いや、フィールド自体が壊れ始めているんだわ。

『さようなら』

無情なまでの高速移動で彼女に近づき彼の拳が振るわれた。

たったそれだけで、一発拳を振るっただけでフィールドは無残に

破壊され、抉られ崩壊しかかっていた。

アバドンはあの一撃を受けていない。

『サイラオーグ・バアル卷属のクイーン一名リタイア』

モニターに苦渋の顔をしているサイラオーグが映し出された。

『俺がクイーシャを強制的にリタイアさせた。

あのままだと死んでいたからな』

イッセーは鎧を直しモニターに目を向ける。

彼は何も言葉を発しなかったけどサイラオーグは分かったみたいだった。

『……なんて目を向けてくれるっ! ……殺しをする奴の目だ!

委員会よ! もうこの男をルールで戦わせるのはあまりにも愚だ。

俺は提案しよう! 次の試合に全てを出す! 卷属も力もだ!』

数分の時間が開き実況が一方を知らせる。

『委員会はサイラオーグ選手の提案を飲みました! 次が最後の戦いです!』

観客は大きな歓声を上げた。

『だそうだ。お互いやり過ぎない程度で行こうじゃないか』

「僕は殺す気で行きます」

もう彼らを止められるものはいない。

 

 

 

『……試合を開始してください!』

数分後、サイラオーグさんと彼のポーンがフィールドに転移してきた。

それと同時に試合が始まった。

『Welsh Dragon バランスブレイカー!』

審判役の声と同時に僕はバランスブレイクを発動し鎧を纏った。

「これが歴代最高最強と呼ばれる赤龍帝の魔の波動か!」

辺りの地面が魔力で押しつぶされていき、フィールドを覆っている結界の様

なものがギシギシときしんでいる音が聞こえてきた。

サイラオーグさんは笑っていた。

「行くぞ! 赤龍帝!」

僕は籠手から凄まじい量の魔力を吹きだして推進力にし

僕はサイラオーグさんに拳を放った。

お互いの拳がそれぞれの顔面にぶつかりあった。

鎧の下なのに意識が持っていかれそうだ!

行くよドライグ!

『応!』

『BoostBoostBoostBoost

BoostBoostBoostBoost!』

増大されたパワーが拳に行きわたりインパクト時にさく裂した。

サイラオーグさんは鼻血を出し口の端から血を流していた。

「これが実戦で練りあげられた拳か!」

顔面を殴られてもなお、サイラオーグさんは笑みを浮かべていた。

このままいくよドライグ!

『ああ! 後悔の無いようにな!』

そこからは殴り合いだった。

こっちが相手を殴れば殴り返され鎧が砕け鮮血が飛ぶ。

そんな戦いが続けられた。

何度目かの拳がぶつかり合った際にいったん距離を取った僕の視界に

例の兵士が映り込んだ。

その兵士は仮面を取った瞬間、

徐々に少年の姿だった兵士は形を変えていき金色の獅子となった。

な、なんだこれは!

「こいつはもともとはレグルス・ネメアという

ロンギヌスだ。所有者が死んだときに意志を持ち俺の卷属となった」

『ゴォォォォォォォォォン!』

僕と部長の目の前に巨大な獅子が立ちはだかった。

「凄いな。めちゃくちゃ戦いたい……部長、お願いします」

「分かったわ」

僕は金色の獅子を部長に任せ、サイラオーグさんに向かっていった。

それぞれの戦いへと身を投じた。

 

 

 

「おおおぉぉぉぉ!」

何度も拳を打ちあっているうちに気付いたことがあった。

さっき木場君達が落とした右腕の攻撃が若干だけど遅くなっている!

「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!」

僕の拳とサイラオーグさんの右腕がぶつかった瞬間、僕は

内の駒をトリアイナ版ルークに変えて思いっきり殴った!

サイラオーグさんはそのまま体勢をぐらつかせた。

「おらっぁぁぁぁぁ!」

僕はサイラオーグさんが大勢をぐらつかせた瞬間に、

顎にアッパー入れ宙にあげると頭突きをかまして飛ばした。

「どうだぁ!」

「がはっ! はははは! 凄まじい攻撃だ赤龍帝!」

「きゃっ!」

喜ぶのもつかの間、部長の悲鳴が聞こえてそっちを見てみると血だらけの部長がいた。

『このままでは失血で転移されるぞ』

こいつ! わざとジワジワ部長を追い詰めていたのか! 許さない!

『BoostBoostBoostBoost

BoostBoostBoostBoost!』

「この獅子野郎がぁぁぁぁぁぁぁ!」

『うぐぅ!』

僕は怒りにまかせて獅子の顎(?)らしき箇所を思いっきり

殴りつけて部長から引き離した。

「イ、イッセー」

「部長、使って下さい」

僕は部長から預かっていたフェニックススの涙が入った小瓶を部長に渡した。

「……ごめんなさいイッセー。私はあなたの枷に」

部長は目に涙をためてフェニックススの涙を使い、傷を癒していく。

部長……泣かせたのはあの獅子か。

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

『BoostBoostBoostBoost

BoostBoostBoostBoost!』

僕の叫びとともに力がどんどん倍加させられていくに伴い

鎧から赤色の魔力が溢れ出してきている。

『な、なんだその魔力量は!』

「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

『くっ!』

僕は飛びあがってそのまま龍の腕を力いっぱいに獅子に向かって

叩きつけると魔力が付加されるが、獅子はその腕を避けた。

空を切った腕はそのまま地面をたたき割った。

 

 

『主! バランスブレイクを使いましょう!そ うしなければ勝てませぬ!』

「だ、だがあれは冥界の危機に使うと決めた力だ!」

「使え!」

僕がそう叫ぶとサイラオーグさんが驚いたようにこちらを見てきた。

「僕はあなたの全力を叩き潰す!」

「……この戦いを後にも先にも二度とない素晴らしい戦いだと気づけなかった

俺が腹立たしい! その腹立たしさもこの力でうち砕こう! バランスブレイク!」

金色の獅子が光り輝き、光となってサイラオーグさんを包みこみ、金色の

鎧を纏ったサイラオーグさんがいた。

「これが俺の全力の姿! 獅子王の剛皮だ! 行くぞ赤龍帝!」

僕とサイラオーグさんは一瞬、消えると上空で拳をぶつけあった。

その瞬間に、辺りを包んでいる結界が軋んでいる音が聞こえた。

「うおぉぉぉぉぉぉっぉぉ!」

「はあぁぁぁぁぁ!」

僕らの拳がぶつかるたびに周りに衝撃波が放出され、下の地面を抉っていく。

『壊すんだ! 覇龍で!』

ッ! こんな時に!

「ぐあぁ!」

頭の中に歴代所集者達の怨念が響いて、頭に痛みが走った。

「隙ありだ! 赤龍帝!」

「しまっ」

あまりの痛みに頭を押さえた瞬間、サイラオーグさんの拳を腹部にもろに喰らってしまい

赤色の鎧が砕け口からは大量の血反吐を吐き、地面に落ちていった。

鮮血を辺りに散らせて地面に叩きつけられた。

 

 

 

 

 

 

 

「イッセー!」

私は地面に叩きつけられたイッセーのもとへと近寄ろうとした瞬間!

「きゃっ!」

突然、イッセーがいるであろう穴からドス黒い魔の波動が放出され、

色まではっきりと見えるほど赤黒くなった魔力の柱が立ち上った。

「う……あ」

「イッセー!」

赤黒い魔力を放ちながら、血だらけのイッセーが穴から出てきた。

「ごぎゅぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁ!」

「っ!」

穴からイッセーが出てきたと思った矢先、彼の莫大な魔力がゴッソリとなくなり

彼が纏っていた鎧が赤色から徐々に赤黒くなっていく。

 



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Life73

「ごぎゅあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

『BoostBoostBoost!』

イッセーが叫び始めた途端、籠手からくぐもった音声が響き彼の魔力が倍加されていく。

こんなところで覇龍の一撃なんか放たれたら辺りを囲っている結界なんか

簡単に吹き飛んで観客にまで被害が!

『くそが! 覇龍に意識を持っていかれたのか!』

アザゼルが怒りに満ちた声で放送席から叫んでいた。

「サイラオーグ! 気をつけて! 暴走したイッセーは見境が」

「ぐあぁ!」

「ぐぅぅぅぅぅぅぅ!」

「サイラオーグ!」

いつの間にかイッセーは高速で移動して金色の鎧を纏ったサイラオーグの

右腕に噛みついていた。

「これがうわさに聞く暴走か! ふん!」

サイラオーグは腕を横に振るってイッセーを弾き飛ばすけど

イッセーは龍の翼を使って体勢を立て直した。

「おぎゅぁぁぁぁぁぁぁ! おわぁぁぁぁぁぁぁ!」

「赤龍帝が怪物になっちゃったよぉぉぉ!」

観客席から次々と子供たちの泣く声が聞こえてきた。

無理もないわ……今のイッセーは四つん這いになって口からよだれを垂らしているから。

「イッセー! 止めなさい!」

「おぎゅぁぁぁぁぁぁぁ!」

「退けリアス!」

サイラオーグは私をイッセーから退かすと彼の顔に拳を突き刺した。

凄まじい衝撃を頭に叩きこまれたからなのか、イッセーは動きを止め、

腕をだらんと垂らした。

「ぐおぉぁぁ!」

一安心しかけた瞬間、イッセーは顔に突き刺さった拳を腕で掴むと、

牙の生えた大きな口を開けてサイラオーグの拳を鎧ごと噛み砕こうとしていた。

「ふん!」

サイラオーグはどうにかして拳を口から離すことができたけど

鎧の上から噛んでいるのに牙が深く突き刺さり、血が流れていた。

「おぎゅわぁぁぁぁぁぁぁあ!」

「ま、魔力が集まっていく」

イッセーが大きく口を開けて上を向くと今まで倍加してきた魔力が

集まっていき巨大な魔力弾を生成した。

「サイラオーグ避けて! 貴方まで死んでしまうわ!」

「それは無理だ! 俺がこれを避ければ確実に結界を砕いて

後ろの観客席にまで魔力弾が飛んでいく!」

そ、そんな! なんとしてでもイッセーの意識を取り戻さなきゃ!

「イッセー! しっかりしなさい!」

「うぎゅだぁぁぁぁぁぁ!」

「きゃぁ!」

「リアス!」

私がイッセーに近づこうとするとその大きな龍の翼で弾かれて

飛ばされてしまった。

「イッセー! お願い! もう止めて!」

「あぎゃぁぁぁぁぁぁぁぉぉぉ!」

その時、突然イッセーの右腕がひとりでに動いて肩を掴んだ。

 

 

 

 

 

 

『くくく、直にこいつは覇龍の力に飲み込まれる』

『相棒! 目を覚ませ!』

『無駄だよドライグ』

暗い……何も見えないくらいの闇が僕の中に集まっていた。

目を開けているのに瞑っている時と同じくらいに暗かった。

なんだろ……体の奥底から力が湧いてくる。

『駄目だ相棒! 覇龍の力を認めるな!』

うるさいな~黙っててよ。今心地が良いんだから。

僕が目の前にいる人たちの手をつかみ取ろうとしたその時だった。

視界に光が入ってきた。

それはだんだん大きくなりモニターの様になって映像を映した。

『赤龍帝ー!』

……子供たちの泣き声?

『イッセー! お願いもう止めて!』

部長?

『イッセー! 覇龍に飲み込まれるな!』

アザゼル先生。

『皆泣いちゃダメぇぇぇぇぇぇぇ!』

この声は……ミリキャス様?

『あれは赤龍帝様の偽物なんだ!きっと本物がやってきて

偽物を倒してくれるよ!』

ミリキャス様につられて多くの子供たちが僕に声援を送ってくれる。

『頑張れぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!』

『赤龍帝ーーーー!』

そして映像はもう一度、部長を映した。

『お願い……イッセー……もう止めて……目を覚まして! お願い!』

部長が……泣いてる?

部長が泣いている顔を見た瞬間、僕は完全に正気を取り戻した。

そうだ。もうこんな力に頼っちゃいけないって決めていたのに僕は頼ろうとして

大好きな人を……リアスさんを泣かせたんだ!

『な、なんだこれは』

「お、おぉぉぉ」

徐々に僕にまとわりついていた闇が光へと変わっていく。

『ふ、ふん! 今さら何をしようが覇龍の力は追い出せん!』

追い出すんじゃない! 覇龍の力を受け入れるんだ! 反抗するから

今までのような暴走が起きたんだ!

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

『くぅ!』

僕が叫ぶとあれだけ暗かった空間が一気に破壊され光り輝く

空間に変わり僕を覆っていた覇龍の闇も光へと変わった。

「はぁ……はぁ」

『バ、バカな。あり得ない、覇龍の闇を光に変えたのか!』

歴代所有者たちは首を左右に振り、今まで暗闇だった空間が

光に満ちたことに驚きを隠せないでいた。

「僕は二度と覇龍の力を壊すために使わない! 護りたいものを護るために使う!」

『小癪な! ならば無理やりにでも』

『待て』

無理やり、覇龍の力で僕を操ろうと歴代所有者が近づいてきた瞬間、

その中の一人が声を上げた。

この人も顔は見えないけどどうやらまだ意識はあるらしい。

『お前、名前は』

「兵藤一誠」

顔を上げて声を上げた、所有者を見るけど表情は一切見えなかった。

『そうか……イッセー。俺はお前の物語が見たくなった、力を貸そう』

っ!? えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!

『な! 貴様!』

今、僕の目の前にいる所有者の言った事に他の所有者たちは動揺を隠せなかった。

力を貸すってことは覇龍の力を僕が完全に制御できるようになるかもしれない。

『初めはただ単に暴走させていただけの俺達がこうまでして執着するようになった。

それはこいつが全てを破壊する可能性があると考えたからだ。だが逆を言えば

俺達が執着するほどの可能性を秘めているということだ』

それを言うと他の所有者たちはダンマリをした。

『……僕も続きが見たい』

次々と歴代の所有者さん達が僕の近くに寄って来て、結局、

過去の歴代所有者全員が僕に近づいてきた。

「え、えっと」

『満場一致だ。お前に力をやる、覇龍の力を使う際の負担を

俺達がいくらか無くしてやる。それで恐らく寿命は削らなくなるだろう』

『でも注意しておけ小僧。覇龍の力はいつも暴走と隣り合わせじゃ』

『君の気持ちが揺らげばすぐに暴走し寿命を削る』

「はい! 分かりました!」

よ、ようするに今まで発動すれば暴走していた力を自由に扱えるようになるということ……

つまり今まで以上の力が僕の手の中に入ってくるんだ。

そう考えていると一人の所集者が僕の肩に手を置いた。

『獅子の小僧にひと泡吹かせて来い』

 

 

 

「おがぁぁぁぁぁ!」

な、何!?何が起こってるの!?

いきなりイッセーは龍の腕で自分の体に傷をつけ始めた。

その直後、彼の体に小さなひびが入っていき集まって来ていた魔力弾も消滅し消え去った。

そして次の瞬間。

「きゃっ!」

辺りに衝撃波を放ちながらガラスが砕けるかのようにイッセーは砕け散った。

「イ、イッセー?」

砕け散った後には何も残っていなかった。

「きゃ! 今度は何!?」

突然、上から何かが降ってきて辺りを大きく揺らした。

「お前の運命は俺が決める」

「イッセー!」

粉じんが晴れ、そこにいたのはいつもの彼だった。

 

 

 

 

 

『なんということでしょうか! 赤龍帝が割れたかと思うと

空から降って来ました! 赤龍帝の復活です!』

『おぉぉおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

『たっく心配掛けさせやがって』

アナウンサーのその一言で会場が一気に盛り上がった。

ふぅ……実際、本当に今回は覇龍の力に飲み込まれかけた。

「お前は色々と凄いな」

「それはありがとうございます」

『Welsh Dtagon バランスブレイカー!』

僕は赤い鎧を身にまとった。

「この力はバランスブレイク」

僕はそう呟き、赤色の鎧を消滅させると

サイラオーグさんは驚いたような表情を浮かべていた。

「何故、鎧を消した」

僕はサイラオーグさんの話を今は、無視してある力を発動した。

「我、目覚めるは 覇の理を神より奪いし二天龍なり 無限を嗤い、

夢幻を憂う 我、赤き龍の覇王と成りて 汝を紅蓮の煉獄に沈めよう」

『Juggernaut Draive!』

僕を赤黒い鎧が包みこんだ。

「寿命を減らす気か!?」

「いいえ、歴代の先輩方に力を貸してもらって

完璧に制御できるようになりました」

そう言うと僕は覇龍を納めて少し休憩した。

二つの力を連続で発動したから、その分かなり魔力を消費してしまった。

「もしも、破壊に特化した覇龍とスケールアップのバランスブレイク―――――この

二つを組み合わせたらどうなると思います」

『そんなこと可能なのかよ!?』

放送席でアザゼル先生が驚嘆の声をあげていた。

先生が驚くのも無理はないと思う。だって今まで二天龍の力を持った人たちが

バランスブレイクと覇龍の力を組み合わせたなんてのは聞いたことがないもん。

実際にドライグもかなり驚いていた。そんなことが可能なのかと。

「可能なのか?」

「可能だから言っているんです! 見せてやります!

これが赤龍帝の! 正真正銘、最後の姿だ!」

『我、目覚めるは 覇王の真理を天に掲げし、赤龍帝なり』

籠手の宝玉が紅色に輝きはじめ、先輩達の呪詛が響いてくる。

今までのような怨念がふんだんに込められた声じゃない。

『無限の希望と不滅の夢を抱いて、覇道を往く

我、紅き龍の覇王と成りて 汝を真紅に光り輝く覇道へ導こう』

さあ行きましょう先輩方! 歴史に名を刻むくらいの勢いで!

『Balanse Drive!』




ますます、イッセー君がチート化していく。
ていうか、学校がもうすぐ始まってしまう(泣)


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Life74

原作では学園祭はゲームが終わってすぐにありましたがこのお話では
ゲーム終了後、数日後に行われるという設定です。


僕の体からまるで煙のように紅色の魔力が揺らいでいおり、

空を見上げると、空を僕の紅色の魔力がまるで雲のように覆っていた。

「禁手の覇龍(バランス・ドライブ)その名の通り禁じられた覇龍の姿」

「……その鎧の色。リアスとおなじ紅だな」

サイラオーグさんは僕の体からあふれ出ている魔力を見てそう呟いた。

ああ、そうですね。僕の大好きな人とおなじ色です。

「ええ、そうですよ。この色は僕が一生をかけて守りたいと

思うくらいに大好きな人の髪の色。サイラオーグさん。僕は貴方を超える!」

「上等! こい赤龍帝!」

サイラオーグさんは僕に強大な拳を僕にぶつけてくる。

もう、何も怖がることはない。真正面から全力でぶつける!

「でやぁぁぁぁ!」

僕の拳とサイラオーグさんの大きな拳がぶつかり合うとフィールドの地面を

大きく抉るほどの衝撃波が辺りに放たれ、若干、サイラオーグさんの立ち位置が

後ろに下がった。

「凄まじい力だ!」

笑いながら振り下ろされる拳を避け、僕は空いた手で

サイラオーグさんの腹部に拳を突き刺した。

「ぐふっ!」

すぐさまサイラオーグさんは体勢を立て直して腕を横ナギに振るってくるけど

それを自慢の速度でその場から消えて、かわした。

「くっ! ど、どこだ!」

サイラオーグさんはすぐに立ち上がって僕を探すけどさっきまで

いた場所には僕はいない。

速度はトリアイナのナイトの方が断然に早いけどこの姿はそれを

補うほどの力がある!

「おらぁぁぁぁ!」

「かはっ!」

僕は空中から急降下して膝を背中にめり込ませた。

「よっと」

僕は一旦サイラオーグさんから離れるとサイラオーグさんは口から

血反吐を吐きだしながらも笑みを浮かべて立ち上がった。

「ははははは! これが赤龍帝の最強にして最高の姿か!

俺は今歓喜に震えているぞ! その姿のお前と闘えることが!」

「おおぉぉぉぉぉぉお!」

僕らは同時にかけだし拳を同時に撃ち放つと

辺りに凄まじい衝撃波が広がり地面を大きく削る。

さっきまでのダメージが残っているせいなのか、それともこの力に

僕の身体が付いていけないのか体の至る所から激痛が走る。

「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

僕らはそのままマシンガンの様にパンチを放ち続けた。

腹に、顔に拳や蹴りが入りお互いの鎧にヒビがいくつも入り

辺りには血が舞った。

『赤龍帝ーーーーーー!』

『サイラオーグゥゥッッ!』

会場にいる観客が僕らの名を叫び続けた。

何度も意識が飛びかけるけど僕はそれでも拳をうち続けた。

この戦いに勝つために。

「はぁぁ!」

僕はサイラオーグさんの放ってきた拳を足で地面に押し付け、

その衝撃で黄金の鎧が腕の部分が砕け散った。

「僕はリアスさんとともに最強を目指す。僕たちの前に立つ人たちは

全員、僕が倒す! 僕は貴方を超えていく!」

僕の拳がサイラオーグさんの顔を捕え思いっきり殴り飛ばし、結界に叩きつけた。

「ごべぇぇ! おごぼぉ!」

サイラオーグさんを殴り飛ばした直後、僕は口から大量の血反吐を吐きだした。

『そもそもこの力に相棒の体が耐えきれていない。

後、動けるのは少なく見積もって30秒もない』

「30秒あれば十分!」

向こうも体に限界が来ているのか足がガクガク震えていた。

「そろそろ終わりにしましょう。この一撃で」

「……良いだろう! 俺はお前に全ての一撃を放つ!」

サイラオーグさんを今までよりも遥かに濃い闘気が包み込んだ。

凄いな……まだこんなにも力が跳ね上がるのか。

僕だって負けてられないな! ドライグ!

『ああ!』

『BoostBoostBoostBoostBoost

BoostBoostBoostBoostBoost!』

どんどん魔力が倍加されていき、鎧から紅色のオーラが

色濃く放出されると籠手にその放出されたオーラがまとわりつき、

腕が紅色に輝く。

 

 

 

 

 

「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

数秒、沈黙が流れた直後。まるで示し合わせていたかのように僕たちは

同時に走りだしそして同時に拳をぶつけた。

フィールドの地面は抉れ、まともな地面じゃなくなっており、

最強の拳同士がぶつかり合いフィールドも今にも壊れそうだった。

「ぬうぅぅぅぅぅ!」

っ! す、すごい力だ。押されていく!

バランスドライブの影響か腕に力が入らなくなってきて

徐々に押され始めた。

あきらめちゃダメだ! ここに来るまでに倒れた皆のために!

そう思ったときだった。

「イッセー君!」

「イッセーさん!」

「イッセー!」

「イッセーさん!」

「イッセー先輩!」

「「「「「頑張れ!」」」」

いつの間にか治療室にいた皆が体を引きずって結界の外にいた。

「イッセー!」

リアスさん。

「頑張ってぇぇぇぇぇぇぇ!」

「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「ぬぅ! お、押されている!」

サイラオーグさんは勝利を確信していたのか僕が押してきたことに驚きを隠せないでいた。

「言った筈だ! 僕は貴方を倒す! そして超えていく!」

僕はサイラオーグさんの拳を横にずらし顔面に拳を叩きこんだ!

「おおぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁ!」

腕を振り切った瞬間! サイラオーグさんは吹き飛んでいき、その衝撃は結界に

衝突しても和らぐことはなく、結界が砕け散ってもサイラオーグさんは吹き飛び、

地面を何度かバウンドしてようやく止まった。

「はぁ、はぁ、はぁ」

『Reset』

そんな音声を出しながら鎧とともに籠手が消えた。

もう限界だ。魔力ももう上がらない、腕も上がらない。

でも、僕は勝―――――――。

「おおおぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

倒れた筈のサイラオーグさんは咆哮を上げながら立ち上がった!

その叫びはどこか悲哀を感じる叫びだった。

立ち上がった……だったら僕も倒れるわけにはいかない!

まだ僕には龍の腕がある! 

僕がサイラオーグさんに向かおうとした時だった。

『……赤龍帝。もういい』

獅子が目の部分から涙を流しながら僕にそう言った。

『主は……もう、少し前から気を失われている』

え? じゃ、じゃあ立ち上がったのは。

『主はそれでも楽しそうに笑っていた』

か、勝ったの…………僕は勝ったんだ!

「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

『うおぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

『サイラオーグ・バアル選手、リタイアです。この試合

リアス・グレモリーチームの勝利です!』

ようやく戦いが終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は目を覚ました……だけど目が開けられない。

「よっ! 目が覚めたかイッセー」

「……あ……せ」

「ああ、話さなくて良い。今のお前はバランスドライブの所為で

目は開けられないわ口は動かせないわっつう重傷中の重傷だからな」

……そ、そんな事が。

「分かるのですか? 赤龍帝が思っている事を」

あ、サイラオーグさんだ。あの人も目を覚ましてたんだ。

「まあな、こいつとは長い付き合いだ。つっても数カ月だがな」

数ヶ月と言っても先生にはかなりの事を教えてもらいましたから。

「二つ言う事がある。ひとつはサーゼクスからだ。お前に昇格の話が出てるぞ」

え、えぇぇぇぇぇぇ!? プ、プロモーションとかじゃなくて!?

つまり僕は下級悪魔から中級悪魔に上がるチャンスを貰ったの!?

「まあ、遅かれ早かれ来る話だ。詳細はお前が動けるようになってからな。

そんでもう一つだが……この力はもう使うな」

僕は先生に言われたことに驚きを隠せないでいた。

「今のお前にその力はでか過ぎる。器に合わない力はやがて

己を滅ぼすからな。ま、今の状態ならバランスブレイクか

覇龍のどちらかを選んで使え。あ、あと一つあったな。その状態じゃ

文化祭は厳しいな」

そ、そんなぁぁぁぁぁぁぁ! 絶対に僕は明後日までには間に合わす!

 

 

 

 

 

 

「復活ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

僕は部屋で大声をあげて手を挙げた。

隣のベッドではサイラオーグさんがコーヒーを飲みながら

あり得んといった顔で僕を見ていた。

まあ、完全復活じゃないけどね。ところどころ筋肉痛が残っている。

「そう言えば赤龍帝、リアスはどうする気だ?」

「……決まってますよ。正式に今日、告白します」

もう決まってることなんだ。僕はもう逃げない。

今日の文化祭が終わった後に部長に言う。

「そうか……まあ振られたなら慰めのコーヒーでも出してやる」

「ハハ、お願いします」




色々と原作の設定を変えています。


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Life75

「一列になってお並びくださーい!」

外からアーシアさんの気合いの入った大きな声が聞こえてくる。

外では大勢のお客さんが並んでおり、それを整列する係がウエイトレスの服を

アーシアさんだ。

今は学園祭まっただ中である。

「うがー!」

「きゃぁぁぁぁ……って兵藤君じゃない! なかなかにあってるわよ!」

……なんで皆怖がらないの?

僕たちオカルト研究部は旧校舎全部を使っていろいろしてるんだけど

その一つがお化けやしき。

その中で僕はお化け役をしているんだけど何故かみんな怖がらない。

「うがー!」

「あ、兵藤君お疲れ~」

「あ、うん。お疲れ~」

僕とその女子生徒はハイタッチした。

いや、怖がってよ。

「きゃぁぁぁぁ!」

ギャスパーくんの担当しているエリアから女子たちの叫び声が聞こえてくる。

てか何でギャスパーくんの方が叫び声が聞こえてくるの!?

僕はギャスパーくんよりも怖くないっていうこと!?

こういう風に皆怖がってくれないのである。

 

 

 

 

 

「……何してるの?」

「ん? 食べ歩きしながらの見回り」

休憩時間になり僕が廊下を歩いていると匙君が両手に

美味しそうなものをいろいろ持って見回りをしていた。

会長にばれたらまたしばかれるよね。

「にしてもお前は凄いよな。あの……なんだっけ」

「バランスドライブ。あれは先生に禁止された。

だから駒の特性をもっと伸ばしていこうと思う」

「これ以上強くなられたらもう敵なしじゃねえの? ほらよ」

「ありがとう。それはないよ、サーゼクス様の足元にも及んでないよ」

匙君はいくつか持っていた食べ物を僕に渡してくれた。

「……なあ、俺お前がいないと龍王になれないかもしれない」

匙君は悲しそうな目をしながらそう呟いた。

「この前のスクランブル・フラッグで俺達が僅差で勝ったんだけどさ。

途中で俺龍王になって暴走しちまってよ。バトル・フィールドが

ひどい状態になったんだ。評価は最悪だっていう話だ」

「……」

何も言わない方がいいのか何か励ましの言葉をかけた方がいいのか。

「ほんとお前はすげえよ。どんな事も乗り越えてんだから」

「……僕に出来て匙君ができない筈がないよ! きっと匙君もできるさ!」

「……はは、ま、頑張ってみるわ。これ、もう一本やるよ」

僕はホットドックをもう一本もらい、頬張りながら匙君と分かれた。

 

 

 

「イッセーさん!」

お店を見て回っていると前からレイヴェルさんが走ってきた。

「あ、レイヴェルさん。楽しそうだね」

レイヴェルさんは両手でチラシを持って忙しそうにしていた。

「はい! あ、あの試合は素晴らしかったですわ」

「は、はは。嬉しいよ、楽しんでね」

「はい!」

レイヴェルさんはチラシを配るべく、また忙しそうに廊下を走っていった。

なんだかレイヴェルさんも楽しそうだね。

僕も文化祭を楽しむべく、お店へと向かった。

 

 

 

 

んん~。終わったね。

外はすでに真っ暗になっており、大盛況を見せた駆王学園の学園祭は無事に終了し、

今はグラウンドで男女達がキャンプファイヤーを焚いて楽しく好きな人や恋人と

踊っているに違いない。

僕も踊りたかったけど大事な用があるから出ていない。

「あら、イッセー」

「部長……」

あの試合後から僕らの間はギクシャクしていた。

まあ、あの試合中の告白の所為だし。

おかげで冥界新聞に一面に取り上げられたよ。

『主従関係を超えた恋愛か!?』

おかげで当分は冥界を歩けないらしい。でも、部長のお母様もお父様も

喜んでくれたし、アザゼル先生にも呆れられながらも祝福された。

「ぶ、部長は踊らないんですか?」

「最後だから……ここを見ておきたかったの」

部長達三年生は今年で文化祭は最後か……。

しんみりとそう思いながら僕は部長が座っている隣に座った。

「「………」」

僕らの間に沈黙が流れた。

うぅ、心臓が半端なくドクンドクン言ってるよ!

『相棒、腹を決めろ。言うんだろ?』

そ、そうだけどさ~。

『というよりもお前は一度告白してるんだ。もう一回言うだけだろ』

……う、うん! い、言うんだ! ぼ、僕は!

「イ、イッセー?」

僕は恥ずかしさの余り顔を俯かせながら部長……リアスの手を握った。

「……リ、リアス」

「え?」

「す、好きです……あの時、言った言葉は嘘偽りじゃないです。ずっと

貴方の傍にいて、貴方を護りたいくらいに大好きです」

「――――――っ!」

言葉を詰まらせた部長。そして目から大粒の涙を流し始めた。

「……遅い。でも、嬉しいから許してあげる」

「じゃ、じゃあ」

「イッセー愛してる。誰よりも深く愛してるわ」

リアスの唇が僕に近づいてくる。

「……リアス」

「……イッセー」

僕とリアスの唇が重なった。

前みたいな感情の無いものじゃない。

愛っていう感情を感じながら僕はリアスとのキスを堪能していた。

「おめでとう! イッセー君!」

「「っ!?」」

いきなり木場君やイリナちゃんたち皆が部室に入ってきた。

「ふふ、浮気をするのも燃えますわね」

「はうぅぅ、私も頑張らないとです!」

「ふむ、私も頑張るとしよう。なあイリナ」

「わ、私に振らないでよ~!」

な、な、なんで皆がここに!

てか部長のお顔が真っ赤になられてる! す、すごい赤さだ!

「もうイッセーの馬鹿!!」

「えぇぇぇぇ!? 僕の所為ですか!?」

僕たちは笑いながら学園祭を最後まで楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

俺――――――アザゼルはシトリー領にある病院に足を運んでいた。

サイラオーグの様子を見に来たのとあの二人の見ているだけで

砂糖を口から吐き出すほどの甘々な様子を伝えにきた。

「お?」

院内の売店で花を見ている奴を見て驚いた。

「総督殿」

「打撃王じゃねえか」

サイラオーグだった。

どうやら母親の見舞いに来たらしくまだところどころ包帯はまいてはいるが

姿を見る限りでは回復しているように見える。

「あれから2人はどうなりましたか?」

「繋がったよ。見てるこっちが恥ずかしくなるくらいに初々しいカップルだぜ」

サイラオーグと病院の通路を歩きながら二人の甘甘ライフを報告していく。

少しでも目が合えば見つめあってそこからちゅっちゅするんだぜ?

見てて砂糖を吐きたくなるくらいに甘い。

「そうですか。リアスには彼がお似合いだ」

「サ、サイラオーグ様!」

と、そこに息を切らした一人の執事が走ってきた。

「どうした」

「……ミスラ様が……」

その言葉を聞きサイラオーグは慌てて病室へと駆けこんだ。

その病室に集まっていた医者達は口々に「奇跡だ」「信じられない」と漏らしていた。

ベッドには長い眠りから覚めた女性がいた。

サイラオーグは驚きのあまり、売店で買った花を床に落とし、

ベッドに近づいていった。

……ウソだろ。

「……母上、サイラオーグです。分かりますか」

「……ええ。分かりますよ」

子を撫でようとする震える手をサイラオーグがしっかり握った。

「夢の中で見ていた気がします。貴方の戦いを」

母親は静かに微笑みこう言った。

……いつでもどこでも親は子供のことを見ていると聞くがあれは迷信でも

なんでもなく真実だったのか。

「……立派になりましたね」

サイラオーグは眼から涙を流しながら母親の手を強く握った。

「まだまだです。母上、元気になったらあの家に帰りましょう」

俺がここにいるのは野暮だと思い病室を出た。

なあ、イッセー。お前は闘う奴に奇跡を起こしていくな。

八坂姫然りサイラオーグの母親然り。お前が関係した人たち全員に

何らかの形で奇跡を起こしていく。

それは部員だけじゃなかった。

本当にお前は面白いやつだ。



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Life76

「本気か? お前」

文化祭が終わってすぐのことだった。

突然、俺のプライベート用の通信魔法陣に通信が入ったかと思えば

連絡の主はあのヴァーリだった。

その連絡を聞いた時、俺―――――アザゼルは生涯しないであろう顔をしていた。

『彼……いや今は彼女か。彼女もそう望んでいる。それにさっきから

イッセーに会いたいとうるさくてね。俺としても久々にあいつに会いたいし

興味もあるからぜひ便宜を図りたくてね』

連絡用の魔法陣からオーフィスらしき声も僅かに聞こえてくる。

まあ、イッセーは悪魔になりたての頃から何かとオーフィスに遭遇していたと

は聞いている。イッセーとオーフィスの関係は友達みたいなもんだからな。

「……それだけじゃねえんだろ?」

『流石は総督殿だ。各組織からうとまれているだけの事はある』

「うっせ。で? 要はイッセーか?」

『ああ。聞いたよ、赤龍帝最強にして最高の姿。バランスドライブ』

「だがあの力は今のイッセーにはでか過ぎる」

『ま、そこら辺の事も含め、あいつに会いたいね』

 

 

 

 

 

その戦いも寝床から始まった。

やけに大きな音が聞こえると思い、目をあけるとベッドの端の方で

部……リアスと朱乃さんが言いあいをしていた。

戦の発端は朱乃さんが僕に目覚めのキスをしようとしたところがバレたことにより

第二次二大お姉さま大戦が始まった……らしい。

今、2人はベッドの上に立ちあって睨みあっている。

「朝からイッセーにキスするなんて……と言いたいけれど

昨夜はたっぷりと甘えさせてもらったから許してあげるわ」

リアスは勝者の余裕というものがあるのか、めちゃくちゃ余裕の笑みを浮かべてる。

ま、まあ昨日寝る前にめちゃくちゃ甘えてきたからね~。

だって『おやすみのキスして?』とか『抱きしめて寝て?』

とかめちゃくちゃ可愛く言うんだよ!? 

あんな目をするリアスを断れたら僕、尊敬するよ!

まあ、誰にも見せる気はないけど。

「あらあら、正妻の余裕かしら?」

「ふふ、イッセーと私は一緒なの。これは決して揺るがないわ」

リアスが言う事に僕は自分でもわかるくらいに頬を赤くしてしまう。

う、うんまあ離す気はありませんけど。

「朝ごはんよ、降りてきなさい」

リアスはそう言うと下に降りていった。

「ああ見えて彼女、少し焦ってるのよ」

朱乃さんはベッドに腰をおろしながらそう言った。

焦ってる?

「先日のゲームで彼女はイッセー君の枷になってしまった。

結果的には勝てたけど彼女の中では敗北したも同然なのよ」

「そ、そんな! 戦った相手がロンギヌスだったからですよ!」

「イッセー君はそのロンギヌス所有者にも勝利、

もしくは引き分けに終わっていますわ。私も無様に負けてしまいましたし」

朱乃さんは表情を暗くした。

彼女が戦った相手は若手悪魔のクイーンの中で一番の実力を持つとまで

言われているし、相手の能力と朱乃さんの能力の相性が最悪に近かった。

「あ、あれはただ単に相性が最悪だっただけです!」

「でもイッセー君は一撃で決めましたわよね?」

うぅ! ど、どう言えばいいんだぁぁぁぁぁぁ!

何を言えば分からなくなって混乱している僕の顔を見て朱乃さんは

笑みを浮かべて頬を撫でてくる。

「ふふ、私も強くなりますわ。イッセー君ほど強くはなれなくても

枷にならない程度まで強くなります……ふふ、アーシアさんも来た事ですしね」

「っ!?」

慌ててドアの方を向くとそこには顔を

引きつらせて無理やり笑顔を浮かべているアーシアさんがいた。

「はうぅぅう! 目覚めのキスをしようと思っていたんです!」

いやいや、流石にそれは。

「え! 嘘! 先越されてる!」

後ろからゼノヴィアさんとイリナさんも部屋を覗いていた。

「むぅ! 突撃だぁぁぁ! 皆のもの行くぞ!」

ゼノヴィアさんの合図とともに三人が僕に襲いかかってきた!

もう止めてくれぇェェェェェェェェ!

 

 

 

「イッセー! おはよう」

「はい! おはようございます!」

一階の居間に行くとリアスが満面の笑みで僕を迎えてくれた。

はぁ~朝のあの激闘の疲れはリアスの笑顔で一気に吹き飛びます!

おっ! 今日の朝ごはんは和食ですか。

テーブルを見てみると和え物や、煮物などがズラリと並んでいた。

うんうん、朝の定番メニューだよね!

「頂きます!」

美味しくご飯を頂いていると父さんが笑いながら僕に話しかけてくる。

「イッセー。今、父さんは朝が一番幸せだ」

「うん、僕も幸せだよ!」

だってリアスっていう好きな人も出来たんだから!

「ねえ、イッセー」

「何、母さん」

「孫はいつになる?」

「ゴホッ! ゴホッ!」

僕は母さんの言った事に口に含んでいた味噌汁を吹き出してしまった。

こ、子ども!? な、何言ってんだよ母さん!

「と、当分先かな? 今はリアスと過ごしたいから」

「ふふ、そう……絶対に離すんじゃないよ」

「勿論!」

母さんは僕にそう言うと今度はリアスに視線を移した。

「リアスさんにならイッセー、渡してもいいよ」

「お、叔母様」

母さんの言った事にリアスはメチャクチャ顔を赤くして俯いていた。

……これって地味に結婚はもう許しちゃってるからね~っていう事?

そういえば気になることが一つあった……若干小猫ちゃんの顔色が悪い。

「どうかしましたの? 小猫さん」

「何もない……余計な御世話」

レイヴェルさんの気遣いもいつもよりも冷たくあしらっている気がする。

大丈夫かな?

 

 

 

 

 

 

その日の晩、僕の部屋にサーゼクス様とグレイフィアさんがやってきた。

僕たちはお二方をVIPルームに招き入れて話を聞いていた。

「先日も話した通りイッセー君、木場君、朱乃君に昇格の話が出ている」

僕達は何度も敵を追い払ってきてるし、何度も悪魔の

お偉いさんとかを事前に助けているということで昇格の話が来ているらしい。

先生曰く、これまでの経歴を見てもむしろ遅すぎるほどみたい。

「お前ら三人はむしろ上級に飛び級で行ってもいいほどなんだが

上がうるさいらしくてな。特例は認めても例外は認めないらしい」

「昇格推薦おめでとう、三人とも! 貴方達は自慢の卷属だわ!」

リアスはまるで自分のことのように喜んでくれている。

……まあ、リアスが笑ってくれているから良いかな。

そう思っていると急に2人が真剣な顔して立ちあがった。

「このたびの昇格のお話、誠にありがとうございます。身に余る光栄です。

リアス・グレモリー卷属のナイトとしてありがたく受けさて頂きます」

「わたくしも身に余る光栄です。リアス・グレモリー卷属の

クイーンとしてありがたく受けさて頂きます」

「イッセー君も受けてくれるかな?」

「は、はい!」

僕も立ち上がってサーゼクス様に頭を下げた。

こうして僕たちは中級悪魔に昇格する権利を頂いた。

 

 

 

「にしてもすげえなお前は」

「ありがと」

翌日、僕は匙君と生徒会室でお菓子を食べながら駄弁っていた。

本当は会長さんに呼ばれてきたんだけど、あいにく会長さんに突然仕事が入ってしまい

会長が来るまでの間、匙君と駄弁って時間を潰している。

「もう中級悪魔への推薦きたのかよ」

「うん。なんか禍の団とかと闘ってたら来ちゃった」

僕は生徒会室に置かれている冷蔵庫からアイスを取り出して彼と喋っていた。

うん、このアイスは本当に美味しいよ。

「ていうよりも生きてる方が不思議だ」

「そんな化け物みたいに言わないでよ」

「あら兵藤君、来ていたのですね」

すると、仕事を終えたらしき会長さんがここに降臨。

匙君は慌ててお菓子を隠そうとするが速攻で見つかって

頭グリグリされた後、問題が発生したから解決して来いって言われてダッシュで向かった。

……静かだな~。

「リアスに告白したそうですね」

「はい……リア……部長から聞いたんですか?」

「ふふ、リアスで良いですよ。彼女とは昔から友人でしたから。

今では通信用の魔法陣で惚気を聞かされていますが」

あ~……恥ずかしい。

「貴方は私が出来なかったことをどんどんしていくわね」

会長は少し、表情を暗くしてポツポツと言葉を吐いていく。

「……どういう事でしょうか」

「……ライザーフェニックスを倒してまで彼女を護り。木場君の過去を

払拭し、朱乃の全てを受け入れ彼女を癒し、小猫さん、ギャスパー君の力を

大幅に上げた。リアスが抱えていたものを全部貴方が軽くしたの。

長い間、傍にいた私が出来なかったことを全てした」

……多分会長は悪魔のしきたりだから、上級悪魔の御家の問題だからとかで

手を出したくても出せなかったんだと思う。

「……逆に会長にしかできないことだってありますよ」

「私にですか?」

会長は驚いたような顔をしていた。

「はい、リアスが貴方に惚気を言うのも親友である貴方だからですよ。だって、

リアスが惚気話を会長に話すっていうことは会長に完全に心を許しているからですよ」

だって木場君や小猫ちゃんには惚気を聞かせていない。

恐らくだけど惚気を聞かされてるのは会長だけだ。

「……イッセー君。これからもリアスの事、護ってあげてください」

「はい! ずっと守っていきます!」

それが僕の……あの方のポーンでもあり恋人でもある僕の誓いだ。

 




夏休みが終わっちまう。


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Life77

「そう、ソーナとそんな事を話したの」

「はい」

その日の晩、僕とリアスは既に日課となった部屋でのお喋り会をしていた。

前なら皆も突撃してくるんだけど僕達の関係を悟ってなのか、大体は

僕とリアスの二人っきりにしてくれるようになった。まあ、たまに

突撃はしてくるけど。

「これからも護ってくれる?」

「はい、ずっとそばで護ります」

「イッセー……」

リアスはうっとりしながら僕の頬に手を置き、顔に近づいてくる。

うぅ、そんな風に見つめられると

「リアス……」

本日、何度目かも分からないキスを僕たちはした。

あ~またしちゃったよ……でも、幸せだから良いかな?

でも、僕の心の中には別の感情があった。

『もっと先に行きたい』

リアスの唇にあてるだけじゃなくてその口内に、僕の舌を入れてめちゃくちゃにしたい。

リアスの体をめちゃくちゃにしたい。

僕が彼女の口に舌を入れようとした時だった。

「「っ!」」

「イチャイチャされるのも結構ですがイッセーさん?

貴方は中級昇格試験の勉強中ですわよ?」

目の前に腰に手を当てて立っているレイヴェルさんがいた。

実はサーゼクス様からの要望でレイヴェルさんが僕のマネージャーさんになった。

レイヴェルさんは中級悪魔の昇格試験の過去の問題なんかを取り寄せてくれたり、

普段のスケジュールなどの管理を細かくしてくれている。

「そうね……イッセー! 絶対に合格するのよ!」

「勿論です!」

今回は学校の中間テストもかぶっちゃってるもんだから忙しいね。

 

 

 

 

 

 

 

「お、終わった~」

勉強にキリがついたのは深夜を回った時間帯だった。

過去問は全て悪魔の言語だから一度、レイヴェルさんに人間の言葉に訳してもらってから

問題を行うっていう工程をしていたからかなり時間がかかってしまった。

もちろん、僕も悪魔の言語は少しづつ読めるようにはなっているけどどうも

昔の言い方などは一切分からない。

じゃあ、僕も寝ますか。

僕がベッドに横になろうとした瞬間、部屋のドアが開く音がした。

……誰か入ってきたのか?

「……先輩」

「小猫ちゃん?」

ドアの方に視線を移すとドアの前に白装束姿の猫又モードの小猫ちゃんがいた。

はて? 何でこんな夜中に僕の部屋なんかに……それになんで、家の中で

猫又モードになっているんだろ。

「……先輩」

「こ、小猫ちゃん?」

小猫ちゃんはフラフラとおぼつかない足取りで僕に抱きついてきた。

まさか熱でも?

そう思い僕は彼女のおでこに手を当ててみた。

「にゃぁぁ~」

……猫の喘ぎ声聞こえた。

そういえば顔も赤いしなんだか目の色もおかしい。

「先輩……切ないです」

そう言って小猫ちゃんは僕の胸板に顔を埋める。

「え、えっと」

僕が戸惑っていると今度はリアスが入室してきた。

リアスは真剣な趣で小猫ちゃんの様子を見ると

携帯を取り出してある人物に連絡を取った。

「妖怪専門の人にちょっと見てもらいましょう」

 

 

 

 

 

 

『猫又の発情期』

小猫ちゃんはそんな周期に入ってしまったらしい。

でも、専門家によれば小猫ちゃんの体的に本能的に子孫を残そうと思うのは

まだ早すぎるらしい。

「この家に住んでいる女としてなら分からなくもありませんわ」

朱乃さん?

「今度は私の番だ。負けられないと彼女は思ったんでしょう」

……もしかして、僕とリアスの関係を見てそう思ったんじゃ。

確かに嬉しいけど……なんだか複雑な気分だよ。

「小猫の体で妊娠すれば母子ともに死んでしまう可能性がある。

イッセー、絶対に子猫と子作りするなよ?」

「勿論です!」

まあ……その……初めてはリアスって決めてるし?

 

 

 

 

次の日の朝、僕はブラブラと散歩していた。

早くに目が覚めてしまい、二度寝をしようとしてもなんだか妙に目が 

覚めてしまったから外を歩こうと思って、今に至る。

そういえばアザゼル先生曰く今日、僕たちのところにショック死してしまうくらいに

僕達が驚くものすごいビッグな訪問者が来るらしい。

「んん~にしても朝は気持ち……」

……今、通り過ぎたゴミ箱の上に体育座りをしたゴスロリ

衣装の見たことがある子がいたような。

僕は慌ててバックするとやはりそこにいたのは。

「久しい、イッセー、ドライグ」

うん、オーフィスがいたよ。

「え、えっともしかして今日の訪問者は君?」

彼女はコクリと首を縦に振る。

なるほど。僕は慣れているけど皆がオーフィスにあったらショック死しちゃうね。

えっと、ここに置いていても困るから連れていくか。

僕は彼女を抱きかかえてお家までテイクアウトすることにした。

 

 

 

 

 

「えいえい」

オーフィスはさっきから僕の頬をぺちぺちと叩いてくる。

うん……反撃したいのはやまやまなんだけどこの空気ではできそうにないんだ。

「アザゼル! これは協定違反よ!」

はい、リアスがめちゃくちゃ怒っているのです。

僕が玄関に入ったらリアスとあってしまい僕が抱えているオーフィスを見て

彼女はアザゼルに怒鳴り散らし始めたんだ。

「……アザゼル、これも協力体制のためなの?」

「ああ、もしかしたらこれ以上血を流さないで済むかもしれない」

……つまり、これ以上戦いはしなくてもいいって事!?

僕達の騒ぎを聞きつけたのか上から皆が降りて来て僕がだっこしている

オーフィスを見ると一瞬、驚いたような顔をするけどまた普通に戻った。

「お前ら驚かないのか?」

「何といいますか……イッセーさんですし」

アーシアの一言に皆が頷いた。

それはそれで悲しいような気もする。

「それで上でお茶でも出せばいいのかしら?」

すると玄関にもう一枚の魔法陣が出現した。

「にゃん☆」

「うぅ~また仮面の戦士に会えるなんて感激です!」

黒髪、黒い着物を着た小猫ちゃんの姉さんの黒歌と魔法使いの様な

出で立ちにとんがり帽子のルフェイさんが出てきた。

何故かルフェイさんは感動のあまり泣いていたけど。

「イッセー」

「ん?」

オーフィスに呼ばれて視線を下に向けた。

「遊ぶ」

 

 

 

 

 

という訳で僕は彼女たちを上のVipルームに連れていって

お茶を出しておもてなしをする。

「これで勝ち?」

「……5連続ロイヤルストレートフラッシュとかあり得ない!」

僕はオーフィス、イリナちゃんの3人でポーカーをしているんだけど

……何故かオーフィスは5回連続チェンジ無のロイヤルストレートフラッシュで

ストレート勝ちをし続けている。

つまり、引いた時点でそろっているということになる。

「まさかあの龍神様がトランプをするとわな」

アザゼル先生は興味深そうにその光景を見ていた。

部屋には異様なメンツが集まっているんだけどなんだか空気がいつもの

おちゃらけ空気と同じような感じがしていて全く緊張感はなかった。

「ドライグ……天龍辞める?」

突然、オーフィスが籠手が宿っている方の腕を見つめながらそんな事を尋ねてきた。

……はて、何のことやら。

「今の宿主……イッセーは今までとは違う。我不思議」

『俺もそうさ。なんせ覇龍を己の物にする宿主なんざこいつが初めてだ』

突然、籠手が勝手に現れ皆にも聞こえるようにドライグが話し始めた。

「覇龍は暴走。覇龍は闇そのもの……でもイッセー、

覇龍を光に変えた。我が知っている限りではありえない」

……と言われましてもいつの間にか覇龍を使えるようになっていましたしね~

『そうだろうな。俺の鎧が紅になるなんざ想像したこともない』

え~と、人間の僕には分からないドラゴンズトークですがアザゼル先生は

目を爛々とさせて興味深そうに聞いていた。

「そんな訳だ。これから数日間、こいつらを

この家に住まわせる。構わないか?」

「ええ、構わないわ。初めは警戒したけどイッセーとこんなにも

仲良しなら警戒するには値しないわ」

「そうか。悪いな、イッセー。毎度毎度、面倒事を持ってきちまって」

「構いませんよ。僕は龍ですから」

すると後ろから肩をトントンと叩かれた。

「ん?」

「あ、あの! こ、この間のバアル戦! 見ました! 

と、とても感動しました! サインください!」

……やっぱり緊張感がないね。

僕はそう思いながらも色紙にサインをした。



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Life78

中級昇格試験を翌日に迎える日の深夜、僕は廊下を歩いていると

部屋から光が漏れている事に気付いた。

「―――っ!」

「――――っ!」

中から声が聞こえてくる。

僕は隙間からそっと中を覗いてみた。

「にゃん☆ 一目で白音が発情期って分かったにゃん。あの男の

遺伝子が欲しくてたまらないにゃん?」

「姉様には関係ありません」

予想通りの猫又姉妹だった。

相変わらず小猫ちゃんは黒歌さんを警戒のまなざしで見ていた。

……ん~やっぱり美少女二人って様になるな~

「覗きはいけないにゃん☆最強さん」

…僕は真っ黒で巨大な人じゃないから。

そう思いながらも僕は白音ちゃんの部屋に入った。

「大丈夫?小猫ちゃん」

「……は、はい」

っと!いけない、つい癖で頭を撫でるところだった。

「この時期は敏感にゃん☆たとえば」

黒歌が不意に小猫ちゃんの腕を掴んで僕の方に押してきた。

「だ、大丈夫!?」

なんとか小猫ちゃんをキャッチしたものの

「……にゃぁぁ~……先輩……」

小猫ちゃんは尻尾を僕の腕に絡ませて切なそうに目元に涙をためて上目遣いをしてくる。

……やっべ、あまりに可愛すぎて鼻血が出そうだ。

「どんなに我慢していても大好きな男の肌に触れてしまえば理性は

あっという間に崩れて遺伝子が欲しくなってしまうにゃん☆」

説明は良いから何とかしてほしいなぁ~

「お姉ちゃんが猫又流の交尾を教えてあげるにゃん。ほら、この男の

首筋を舐めて味を覚えるにゃん。こうやって」

っ~~~~~~~~~~!

黒歌の舌が僕の首筋を通って言いようのない快感が僕を襲う!

「さあ、白音もやってみるにゃん」

虚ろな瞳で僕を見つめながら小猫ちゃんの舌が僕の首筋を通る!

だ、誰か助けてくれぇぇぇぇぇ!

そんな事を思っていると、何故か小猫ちゃんは一回、舐めただけで止めてしまった。

……あり? よく見ると小猫ちゃんの顔色が少し良くなってるような。

「今の白音は不安定なだけにゃん。無理はさせないでほしいの」

「……分かったよ」

ああいう不器用なお姉さんもいるもんだね~。

 

 

 

 

 

 

そしてさらに日は経ち、試験当日。

僕たちは兵藤家の地下にある転移用魔法陣に集合していた。

まずは僕達試験を受ける者たちが会場まで飛んであとからリアス達が

ホテルにジャンプするという算段だ。

「じゃあ、頑張ってね。朱乃、祐斗、イッセー」

「「「はい!」」」

「それと」

そう言い、リアスは僕の頬にキスを一つ落とした。

「ふふ、これは御守りよ」

「……あ、ありがと」

僕もリアスにキスをお礼としてした直後に、会場へジャンプした。

「ひゅ~ひゅ~。熱いところを見せちゃってよ~」

「あら、アザゼル。悔しいの?」

「……けっ!」

 

 

 

 

光が止むとそこは広い部屋だった。

転位し終えたばかりの僕たちにスーツを着た女性が近づいてきた。

「ようこそおいでなさいました。リアス・グレモリー様の卷属様ですね?

お話はうかがっております。一応、確認の物を」

えっと、確かリアスに貰ったものを見せればよかったんだっけ?

僕は係員にリアスから貰ったものを見せると係員さんは僕達を

グレモリー卷属と認識したらしく、僕たちに返した。

「ありがとうございました。では、こちらへ」

女性について行くと受付でチラホラとこっちに来ている悪魔さんが見えた。

案外、少ないんだね。

とりあえず受付で受験票を貰いレイヴェルさんの先導の元

筆記試験会場へと歩いて行く。

「イッセー君」

「何?」

「君と会えてよかった」

木場君の言った事に僕は一瞬、アイスを吹き出しかけた。

「君と出会えてなかったら僕は弱いままだった」

「……まあ、そう言わないでさ。友達なんだから」

「そうだね」

「わたくしはここまでですので。皆さん頑張ってきてください!」

僕たちは筆記試験会場に入った。

中は以前、大学見学で見た講義室と似た構造をしていた。

えっと、僕の席は012の席だったよね。

「お、おいあれまさかグレモリー卷属か?」

「ああ、雷光の巫女、聖魔剣、赤龍帝」

「あのサイラオーグ・バアルを倒した赤龍帝か!?」

僕達を見るや否やこそこそと話を始めた。

……やっぱり有名人になってたのね。

「あのアイス大好き赤龍帝か!?」

……それは御免こうむりたい二つ名だね。

そろそろ時間になるので僕たちは普段通りの気持ちで座席に座り

その数分後に試験が始まった。

 

 

 

 

 

 

「あの問題はないでしょ」

筆記試験も無事に終わり僕たちは食堂で休憩を取っていた。

もちろんアイスを補給しながらも。

「イッセー様! 追加のミニアイスですわ!」

「うわー! ありがと、レイヴェルさん!」

「マ、マネージャーとして当然ですわ!」

レイヴェルさんは顔を赤くしながら胸を張った。

うん! ミニアイスも美味しい!

「次は実技だね」

「チョー得意分野だよ」

先生曰くぶっつけ本番で良いって言ってたけどいいのかな?

「気合い十分なのは良いですがイッセー君は力を抜いてね」

はて? 何故、力を抜いてなの? ……あ、もしかして落ち着いてしろって言う事かな!?

確かに僕は緊張はしていないと思うけど見えないところで緊張していたりしている

かもしれないから力を抜いてやれってことだね。

「勿論です!」

そうこうしているうちに時間になったので僕たちはジャージに

着替えて実技試験会場へと足を運んだ。

受験者のみんなも自分なりのやり方で体を温めていた。

じゃあ、僕も体を温めよう。

僕はグラウンドを軽く二、三周すると試験官の人が

来て受験者の点呼をはじめて、胸に番号のついたシールを配り始めた。

「実技試験は至ってシンプルです。受験者同士で戦ってもらいます」

それから数分戦いに関しての説明を受けた。

ちなみに僕は四番で木場君が二十六番、朱乃さんが三十二番だった。

「では、二組ずつ行います! 一番と二番! 三番と四番は前に!」

おぉ! いきなりかぁ!

試験官に呼ばれた僕は魔力で円形に囲まれたフィールドに入った。

やっぱり、ここは普段どおり倍加をしてからのナイトの

高速移動で行こう。

僕がそう考えていると目の前に僕の相手の悪魔がやってきた。

相手も中級試験を受けるほどの強さなんだ。

気合い入れていかないと!

「よろしいですね? 尚、ポーンの方はプロモーション

していただいて結構です。では、始めてください!」

僕は始まりの合図と同時にナイトにプロモーションした。

「はっ!」

相手は手元を光らせて魔力弾を撃ってくるけど

それを高速でかわして後ろを取った。

『Boost!』

「せいやぁ!」

いつものパターンで倍加させてから籠手で殴ると相手は

会場の壁に激突しさらに会場の壁を突き破って

外まで行ったらしく、外の景色が見えた。

……えっと……や、やりすぎた?

僕は拳を前に突き出したまま静止していた。

試験官の一人がぶっ飛んでいった受験者の方へ走っていく。

「……おい、なんだあの速度は」

「全く見えなかった!」

「スピードだけじゃなくてパワーもあるのか!」

「上級悪魔の上クラスだぞ!」

「あれが悪神ロキ、サイラオーグ・バアルを倒した赤龍帝の力か!」

試験官が慌ててこっちに走って来た。

「勝者! 兵藤一誠!」

……へ? これで終わり?

僕はあっけなさを感じながらも二人のところに戻った。



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Life79

三人の実技試験が終わってから、僕はレイヴェルさんに

連絡用の魔法陣を展開してもらい先生に話をしていた。

『おーす! こっちはホテル貸し切りの飲酒中だ!』

「あ、あの。実技試験なんですが」

『圧倒的だったろ?』

「は、はい!」

僕の試合しかり木場君や、朱乃さんの試合もすぐに決まった。

『木場や朱乃は何度も死線を越えてきているんだ。それにイッセーは

いまや歴代最強の赤龍帝だぞ? 何度も地獄や死線を見てきたんだ。

既にお前達は上級悪魔の上位陣達と染色ない。特にイッセーは魔王と

同レベルと言ってもいいんじゃないのか?』

まあ、闘ってきた相手が相手だしね。

化け物揃いのヴァーリチーム、フェンリルを従えたロキ、

カオス・ブリゲートの曹操、そしてサイラオーグさん。

普通だったら死んでいるか重傷を負って病院の中でおネムになっている可能性だって高い。

そんな中を僕達は誰一人として欠けずにきた。

『全くお前の女は弾きつける運は最強だ』

「はい! リアスは最高の女性です!」

『おい、リアス。イッセーが結婚してくれだって』

「ちょ! 拡張しすぎです!」

『あ! リアスがあまりの嬉しさから気絶したぞ!』

僕は目に涙を浮かべた。

容易にリアスの今の状況が想像できるのも……まあ、幸せかな?

『まあ、戻って来い。早めの祝勝会だ』

「分かりました」

僕は連絡用魔法陣を切り、木場君とレイヴェルさん、そして朱乃さんとともに

転移用魔法陣を使ってホテルへと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

「という訳でカンパーーーイ!」

先生は高いテンションで大もりに注がれた酒を一気飲みした。

……この人、昼から何杯飲んでいるんだ。

まあ、でもホテルの美味しいご飯の前じゃ仕方がないか。

にしても美味しい!

「イッセー。あ~ん」

「あ、あ~ん」

……なんだか、リアスの機嫌がめちゃくちゃ良いような。

「お熱いなー! お2人さんわよ~!」

アザゼル先生は目に涙を浮かべてお酒をグビッと飲み干した。

なんかもう悪酔いしてるよこの人。

「はい、小猫さんも食べて下さい」

「……余計な御世話」

レイヴェルさんは具合の悪い小猫ちゃんの為に小皿に料理を

乗せて渡すけど、相変わらず小猫ちゃんはムスッとしたような表情で拒否した。

「小猫さんが良くならないとイッセーさんも心配なさりますわ」

「……分かった、食べる」

そう言われ小猫ちゃんは渋々、料理を受け取り食べ始めた。

あの二人も仲良くなったみたいだし。

あのサイラオーグ戦以降、皆。自分に向き合って強くなろうとしてる。

ギャスパーくんはグリゴリの門を自ら叩いたしロスヴェイセさんは

ヴァルハラに戻って一から魔法を鍛えなおしているらしい。

「……少しトイレに行ってきますね」

そう断ってトイレに行った。

用を足して手を洗っている最中にふと、鏡に映っている自分の顔を見た。

「……僕も強くならないと」

『これ以上か?』

「うん、まだまだ皆を守れるほど強くないしまだ歴代最強になったわけじゃない」

『……相棒は自己犠牲なところがあるから気を付けろよ』

「うん、分かっ」

鏡の前に立っていた僕を感じたことのある感覚が襲い掛かった。

こ、この感覚は! 前に京都で感じた感覚だ!

僕は慌ててみんなのところ行くと皆も同じ感覚を感じたのか慌てていた。

レストランから広いロビーに到着した僕は一瞬で標的を見つけた。

『Boost!』

「曹操!」

僕の籠手と槍がぶつかり合って火花を散らせた。

「やあ、赤龍帝。気づくのが早い」

一度、僕は距離を離して皆と合流した。

「これはこれは、お初に見える面子もいるね」

「それでこんな所に転移させた理由は何だ?」

先生が曹操に問う。

曹操の視線がオーフィスを捕えていた。

「彼女が必要なのさ。でも、今の彼女は必要ない」

曹操がそこまで言った直後、ルフェイさんの近くにいた

フェンリルの足もと魔法陣が展開された。

「長いお遊びのお陰で繋がったにゃん☆」

……となるとあいつが来るのか。

僕はその魔法陣の隣に歩いていくと予想通り僕とは相反する

存在のヴァーリが転移してきた。

「こうやって顔を合わせるのは久しいな。曹操」

「おぉ、これはこれは。まさか俺の目の前に最強の二天龍様が

現れるとは。そろそろ時間か。ゲオルク!」

「無限を喰らう時が来たか」

ローブを被った青年がロビーの後方、ロビー全体に大きな魔法陣を展開させた。

今度は何が来るんだ!?

『こ、この感じ! 俺たちに向けられたこの悪意は!』

ドライグが怯えてる?

魔法陣から頭部、胴体、十字架、翼を持った存在が出てきた。

そして、数秒が経った後に魔法陣から全身が現れた。

蛇? 鱗?……全身にはぎゅうぎゅうに締め付けた拘束具、

目にも拘束具が付けられていてその隙間から血涙が流れていた。

……ちょ、ちょっと待って! こ、これって上が堕天使で下が

ドラゴンのあいつなんじゃ!

「サ、サマエル!」

「ほ~よく知っているな赤龍帝。ハーデスから借りたんだ」

「あの骸骨爺は一体何をしてるんだ!」

先生が忌々しそうに吐き叫んだ。

そうだ。サマエルは冥府の底で封印されている存在なんだ! それなのに

なんでテロリストの曹操達が持っているんだ!

「さあ、食事の時間だ」

サマエルからものすごい速度で何かが放たれ、オーフィスを喰らった!

見、見えなかった!

「オーフィス! 返事をしろ!」

ヤバいヤバいよ! 絶対にヤバいよ!

「祐斗! 斬って!」

リアスの指令で木場君が聖魔剣を創り出して黒い塊を斬るけど

刀身だけが消えた。

「さあ、この空間で君達を倒そう。バランスブレイク」

力のある言葉が聞こえ槍が光り輝き7つの物体が曹操周りに浮いていた。

 

 

 

 

 

「気を付けろよお前ら」

先生は危険なものを見るかのような表情で曹操の周りに浮いている

7つの球体を見ていた。

「あいつのバランスブレイクは亜種だ。俺にもあの球体の力は分からねえ!」

先生でも分からないなんて。本当に神様は面倒なものを作ったよ。

おかげで今を生きる僕たちが死にそうになっているんだから。

「じゃあ、まずは」

その中の一つがゼノヴィアさんの方へ飛んでいった。

「七宝が一つ―――輪宝」

「エ、エクス・デュランダルが!」

ゼノヴィアさんはエクス・デュランダルを楯に防ぐけど、一瞬にして

刀身が砕けてしまった。

しかし、曹操の表情はあまり芳しくなかった。

「……おや? 輪宝を槍状にして飛ばしたんだけどね……ああ、そういう事か」

「探しものはこれ?」

エクス・デュランダルは間に合わなかったけど何とかゼノヴィアさんには間に合った。

「そうか。トリアイナの時間を停めるほどの速さで動いたのか」

トリアイナのナイトはほかのに比べて発現させる時間が短いからね。

僕は槍をへし折って曹操に対峙した。

「レイヴェルさんはお客さんでもあるから下がってて」

「はい」

レイヴェルさんのお母様によろしくって頼まれてるんだ。

こんな死闘に参加させやしない!

僕は猛スピードで曹操に突撃していった。

「はぁ!」

僕の拳は曹操の槍で簡単に防がれた。

「今度はこいつだ。女宝」

僕の隣を凄まじい速度で通り過ぎていった物体はリアスと朱乃さんの所へと向かった。

2人はその宝に攻撃をしようとするが―――

「弾けろっ!」

曹操の言葉で宝がはじけて2人を光が包みこんだ。

「くっ!」

「こんなもので!」

2人がまばゆい光に包まれながらも攻撃しようとするけど何も起こらなかった。

2人は何も起こらないことに不思議がっていた。

「女宝は女性の異能を完全にシャットダウンするんだ」

となると、アーシアさんの能力も封印されたら僕たちはかなりヤバい。

そうなる前に曹操を何としてでも倒さないと!

ふと、視界に黒歌とルフェイが手に魔力、魔法の光を

きらめかしてサマエルに向けているのが見えた。

防御が薄いそっちを狙うのか!

「させないよ!」

2人のもとへ浮いていた宝が向かっていく。

「ちょこざいにゃん!」

黒歌がもう片方の手で迎撃しようとする。

「馬宝――――任意の物を転移させる」

曹操がそう言った途端に2人が壁の端の方に転移した。

 

 

 

 

 

「ま、待って! そっちは!」

二人が転移した目の前にはアーシアさんがいた。

くそ! 僕が考えていたことが当たった!

「させるかぁぁぁぁ!」

僕は瞬時に駒を変えて普段のバランスブレイクの鎧の装甲を

パージして身軽になった状態で時間が停まるほどの

速度で動いてアーシアを二人から遠ざけた。

「イ、イッセーさん」

「大丈夫?」

「そ、そんなことよりも!」

「え?」

アーシアさんに言われ、下を見てみると腹部から大量の血が流れていた。

な、何これ……なんで僕のお腹からこんなにも血が。

「ガハッ!」

「イッセーさん!」

僕は血反吐を吐いて地面に倒れ伏した。

「確かにその速度は俺にも見えない。でも、移動し終わった時の

君は隙だらけでね。輪宝の槍で貫いたんだ」

僕は痛む腹部を抑えながら曹操を睨みつけた。



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Life80

「ヴァーリィィ! 覇龍でサマエルを消し飛ばす!」

「良いだろう!」

『『我目覚めるは』』

僕がそう言い放つとヴァーリも納得し、二人同時に覇龍を発動させる。

白と赤の籠手から覇龍へと導く呪詛が淡々と紡がれていく。

こいつらにだけは絶対にオーフィスは渡さない!

「ここでそれはまずいな。しかも二人だ。ゲオルク!」

『オオォォォォォォォォォォ!』

サマエルの右腕と左腕の拘束が解かれてものすごい速度で触手がこっちにくる!

僕は慌てて避けようとするけど、さっきまで

治療してくれていたアーシアさんが近くにいた。

僕が避けたらアーシアさんに直撃する!

僕はアーシアさんを巻き込むわけにはいかず、

彼女を触手が届かない範囲にまで押した。

「イ、イッセーさん!」

そのまま僕とヴァーリは触手に飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろかな?」

『オオオォォォォォォォォ!』

サマエルが叫んだ途端に黒い塊から二人が吐き出されるけど

二人の鎧は地面に打ち付けられた衝撃で粉々に砕け、床に凄まじい量の血液が散った。

「アハハハハハハハ! どうかな神の毒は!」

毒の影響を受けた二人は口から血を吐きだしながらも立ち上がろうとするけど

力が入らず、そのまま床に倒れた。

「曹操!」

アザゼル先生が黄金の鎧を身に纏って曹操に向かっていく!

「ふふ、これはどうかな?」

曹操が片目を隠していた眼帯を外すと―――その眼は黄金に輝いていた!

「な、こ、これは!」

先生の驚きの声が聞こえたので、そっちを見てみると先生の足が石化していた!

まさか、あの目はメデューサの目か!?

「赤龍帝に砕かれた目の代わりとして移植したんだ!」

槍が先生が纏っている金色の鎧を貫通して、先生の腹部に深々と聖槍が

突き刺さり口から大量の血を吐いて倒れ伏した。

「さて、残りは取るに足らぬ強さだな」

『Longinus Smasher!』

「吹き飛べぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

「なんだと!?」

突然、音声が周囲に響いたかと思えば大質量の魔力弾が

どこからともなく放たれてサマエルに直撃した!

『オオォォォォォォォォォォ!!』

叫び声を上げながらサマエルが消えていく!

それと同時に黒い塊からオーフィスが吐き出された!

「木場君オーフィスを!」

「わ、分かった!」

僕はイッセー君の言うとおりにオーフィスを回収した。

さっきの魔力弾はイッセー君がやったのか……毒を受けながらも

覇龍を発動させたら余計に体に広がるんじゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは驚いたな。まさか、神の毒を受けてなお動けるとは。

ゲオルク、力はどれだけ取れた」

「4分の3強のところで邪魔が入った」

「十分だ……だが、君は本当に異常だ。神の毒を受けてなぜ動ける?」

曹操は驚きを露わにした状態で僕に話しかけてくる。

こんな神の毒なんかよりもバランス・ドライブの方が苦痛に決まってるじゃないか!

あれ使った後は全身が筋肉痛で動けなくなるし、喋れなくなるんだぞ!

「まあ、良い。後は君さえ倒せばミッションクリアだ」

「舐めるな!」

『BoostBoostBoostBoostBoost

BoostBoostBoostBoostBoost!』

籠手からいくつもの重なった音声が鳴り響き僕の魔力がどんどん倍加されていく。

「おぉ~これは、凄まじい魔力量だ。魔王並みじゃないのか?」

「黙れぇ!」

僕は高速で動きながら曹操に拳を突き出す!

「うえあぁぁぁぁぁぁ!」

槍と籠手がぶつかり合った瞬間、ロビーの床に亀裂が入る!

その瞬間、全身を凄まじい激痛が走る。

やっぱり毒を受けた状態での覇龍は余計にドラゴンを高めるから

毒が全体に回るのが早くなる!

「喰らえ」

曹操の目の前にエクス・デュランダルを破壊した時と同じ宝が現れた。

っ! あの武器破壊の宝をまた槍にしてぶつける気か!

「二度と喰らうか!」

僕は体勢を後ろに傾けて、スレスレのところで槍をかわし曹操に殴りかかろうと

するけど何故か、曹操はにやにや笑っていた。

何がおかしいんだ!

「良いのかい避けて? 愛しの女に穴が開くぞ」

「っ!」

僕は慌てて後ろの方を見ると――――槍がリアスの方に向かっていた!

しかも、リアスは全く気付いていない!

「クソォ!」

僕は慌ててノーマルのナイトにプロモーションしてリアスの方へ動き出した!

間に合ってくれ!

 

 

 

 

 

 

 

 

不快音が鳴った瞬間、部長の目の前で大量の鮮血が宙に舞った。

まさか、部長が!

僕は慌てて近寄るけど部長はピンピンしていた。

じゃ、じゃあ誰が。

「イ、イッセー?ねえ、イッセー。起きてよ」

っ! 部長の目の前に背中にぽっかりと穴を開けたイッセー君が倒れていた。

「イヤアァァァァァァァ!」

「イッセーさん!」

アーシアさんが慌てて回復していくけど流れ出る血液の方が多かった!

「アハハハハハハハハ! これでクリアだ!」

「曹操ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

僕は聖魔剣を握り締めて、怒りのまま曹操に振り下ろすがそれはあっけなく

聖槍に阻まれると同時に聖なるオーラによって僕の剣のオーラが弱くなった。

「許さない! 僕は君を斬る!」

「聖魔剣の木場祐斗。君じゃ僕には勝てないよ」

そんな事は分かってる! でも、剣士として! イッセー君の友達として

一太刀君にいれないと気がすまない!

「よっと」

曹操が僕から距離を取るとゲオルクが近づいてきて一枚の紙切れを渡した。

「……旧魔王派どもの恩の返し方はこうなのか。ま、分かっていたがな。

ゲオルク、ヴァーリチームがした入れ替え転移は出来るか?

俺とジークフリートを替えてほしいんだ」

「一度見ただけだがやってみよう」

曹操はバランスブレイクを解いて外へ向かう。

「曹操! どこへ行く!」

ヴァーリが憤怒の形相で曹操に問う。

「帰るのさ。あ、そうそう。ここにハーデスからの命で死神達が来る。

その残りカスのオーフィスを捕まえにね。ここから抜け出せるか、

そういうゲームをしよう」

そう言ってゲオルクと曹操は外へと出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「駐車場の方に相当な数の死神が来ていました」

ルフェイさんの報告に僕たちは微妙な表情を浮かべる。

あれからアーシアさんがイッセー君を回復し続けているけど

まだ山は越えていないらしい。

サマエルの毒に輪宝の攻撃を受けてなお生きていることが不思議なくらいだ。

既に他の怪我人は完治している。

ヴァーリはサマエルの呪いの影響で別室で激痛と闘っている。

「相当最悪な状況だ。満足に戦える奴の数が少なすぎる。

それにイッセーの回復にアーシアを取られている以上俺達が不利過ぎる」

この空間は特殊なもので覆われているらしく黒歌とルフェイの2人でも

外へ逃がせるのは2人が限界らしい。

「……なら、イリナとゼノヴィア。お前たち二人で外へ行け」

「分かりました!」

ひと先ず逃がす2人は決まった。

「リアス、俺と作戦会議だ」

「……え、ええ」

部長はイッセー君の方を見て悲しそうな表情をしながらも先生についていった。



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Life81

外の様子を見てきたルフェイさん曰く、この空間は3つの装置で機能しており

その装置さえ破壊すれば良いらしい。

しかし、その装置の周りには大量の死神がそれを警護する形で群がっており、

破壊するにはまずその大量の死神をどうにかするしかないらしい。

「装置があるのは屋上、二階ホール屋上、そして駐車場です」

やはりここは三つの班に分担して行くしか。

「そのうち二つは俺が壊そう」

「ヴァーリ!」

部屋で休憩していたはずのヴァーリがフラフラと覚束ない足取りで

僕たちの集まっている部屋にまで来ていた。

「少しイライラしててね。バランスブレイク無でも破壊することくらいは簡単だ」

「……分かった。屋上と二階ホール屋上の装置は任せる。後は俺達で

駐車場の装置を壊す! いいな!」

『はい!』

さあ! 脱出作戦の開始だ!

「魔法陣の方できました」

ルフェイと黒歌が共同で準備をしていた魔法陣がようやく完成した。

「よし、ヴァーリ」

「ああ、死神ごと装置を破壊してやろう!」

白い籠手から大きな魔力弾が生成され徐々にその大きさを大きくしていく。

毒を受けた状態でここまでの力を発揮できるなんて……やっぱり、歴代最強は

伊達じゃない。

「行くぞ!」

魔力弾が撃ち出された瞬間、二つに分離してそれぞれの屋上に着弾し

凄まじい爆音が鳴り響き、僕たちがいるホテルを大きく揺らした!

す、凄い。

「装置の破壊を確認しました!」

「ゼノヴィア! イリナ! 頼んだぞ!」

先生がそういうと共に魔法陣が輝き2人は転移した。

やった、2人の転位は成功したんだ!

「じゃあ、後はあいつらをぶっ倒して装置を破壊するぞ!」

『はい!』

先生の槍で壁を砕いて僕たちは駐車場で戦争を開始した!

 

 

 

 

 

「……ん」

「イッセーさん! 良かった!」

僕が目を覚ますと涙を流したアーシアさんが抱きついてきた。

……そっか……僕、曹操に負けたんだっけ?

外からは爆発音なんかがたくさん聞こえてくる。

「今、外で皆さんが死神達と交戦しています!」

そうか……皆、闘ってるんだ……じゃあ、僕も行かないとね。

僕はベッドから起き上がろうとするとアーシアが今にも泣きそうな顔で

僕の腕を掴んできた。

「どこに行くつもりですか?」

「……皆の所に」

「駄目です! まだ、イッセーさんは動いちゃダメです!

それに呪いだってまだ体にあるんです!」

アーシアさん……心配性なんだからこの子は。

僕は泣きながら抱きついてくるアーシアさんの頭を優しく撫でてあげた。

「大丈夫。僕も戦わないと」

「どうして……ですか?」

「だって僕は仮面の戦士だから」

僕は彼女の手をゆっくり離してベッドから起き上がった。

「さあ、ドライグ行こうか」

『ああ、地獄の果てまでお前についていこう』

「地獄には行く気はない!」

僕は赤い球体になって窓の外から皆の所へと飛んでいった。

「雷光よ!」

「消し飛びなさい!」

僕の目の前では空から雷が死神に降り注ぎ、消滅の魔力で死神達が消滅していたりした。

凄い……やっぱりあの二人はお姉さまだよ。

≪お強いですね≫

空間がゆがんだかと思うとそこから一人の死神が姿を現した。

「貴方は?」

≪私はプルートと申します≫

あの伝説にも名が残っている最上級死神か!

そこら辺にいる死神よりも殺気が数ランク上だ。

≪テロリストと結託したあなた方は万死に値します!≫

プルートがリアスに襲いかかろうとした瞬間、それを邪魔する形で

赤い球体に入っている僕が2人の間に入った。

「君は誰の恋人に手を出そうとしてるのかな?」

≪おやおや、瀕死の重傷だと聞いていましたが≫

「イ、イッセー! 怪我は!?」

「はい、大丈夫です」

リアスが今にも泣きそうな表情を浮かべて僕に近寄って来る。

僕は彼女に心配をかけまいと小さなウソをついた。

さっきから全身がズキズキして痛いのなんの。でも、戦うことが

出来ないくらいじゃない。

≪ほう、あの赤龍帝と闘えるとは……しかし、今の貴方では話になりません!≫

死神が僕に鎌で斬りかかってくる。

僕はそれをドラゴンの腕で刃の部分を掴んで止めた。

……良かった。斬られてないみたい。

僕は龍の腕で死神の鎌を握りつぶした。死神の鎌は斬った対象の寿命を

削るらしいからね。でも、こんな鉄の刃で僕は斬れない!

≪なっ! わ、私の鎌が!≫

『Boost!』

「プロモーション、ルーク! ぶっ飛べぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

≪ごばぁ!≫

僕は鎌を力任せに刃の部分を砕き死神の顎……っぽい部分をルークの力で

思いっきり強く殴り飛ばしてやると骸骨にひびが入った。

「プロモーション、ビショップ! トリアイナ!」

僕の両肩に2門の巨大な砲台が付いて魔力がチャージされていく。

『BoostBoostBoostBoostBoost

BoostBoostBoostBoostBoost

BoostBoostBoostBoostBoost

BoostBoostBoostBoostBoost

BoostBoostBoostBoostBoost

BoostBoostBoostBoostBoost!』

何回倍加したか分からないけど砲台の部分の魔力弾の大きさが

大玉ころがしに使う玉と同じくらいの大きさになった。

≪ま、待て! こ、こんな所でそれを放ったら!≫

「誰が待つかぁぁぁぁぁぁ!滅びのドラゴンストリィィィィィィィィィィム!」

某カードゲームの必殺技を少しパクった技は放たれると同時に

辺りにいた凄まじい数の死神を巻き込んで大爆発を起こした。

 

 

 

 

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ……」

巨大な魔力弾を放った後の僕は呪いの影響もあり、目の前の

景色がグニャングニャンに歪んでいた。

ちょ、ちょっと魔力を注ぎ込み過ぎたかな。

「イ、イッセー! 大丈夫!?」

「目、目が回る~」

「こんの馬鹿イッセー! 俺達まで殺す気か!」

どこからかアザゼル先生の怒鳴り声が響いてくる。

他の人たちのことを考えずのドデカイ魔力弾を放ったから怒られるのは仕方が

無いけど、先生たちなら避けられると思っていたからね。

「全く君は凄いよ、イッセー君」

「そ、そう? ハハハ、嬉しいな~」

「イッセー君。そっちはアーシアさんだよ。僕はこっち」

あ、あり? とうとう幻覚を見てしまうほど疲れちゃってる?

「でも、またあれを片づけないとね」

まだ、少し景色がかすんでいるけどそれでも、霧からまた

大量の死神達が出て来るのが見えた。

2,300以上いるよこれは!

「この量の鎌を受ければ死ぬよね?」

前方からジークフリートの声が聞こえてきた。

「おい、イッセー! さっきのもう一回出来ないのか!」

「無理よアザゼル! 今、イッセーはフラフラなの!」

「せ、せめてあれがあれば」

「あれってなんだ!? そのあれがあれば出来るのか」

僕は先生の問いにコクリと首を縦に振る。

「なんだ! 教えろ」

「あ」

「あ?」

「アイス」

……何故だろ、周りの空気が一気に冷めたような気が。

で、でもアイスエネルギーを補給しないと僕動けないもん!

「アイスなんてここにはないぞ!」

「アザゼル、我持ってる」

「当たり前だろ! 持ってないのが普通……も、持ってるだと!?」

オーフィスがゴスロリ衣装のポケットから大量のミニアイスが入っていた。

その数は10や20どころか3ケタは行くんじゃないかな!?

「でかしたぞオーフィス! お前は英雄だ!」

「ま、まさか赤龍帝にアイスを食べさせる気か!?」

前方からジークフリートの驚嘆に満ちた声が聞こえてきた。

……まさか、向こうサイドにも僕にアイスを与えるということは復活の

呪文を施すみたいな感覚だって伝わっているのかな。

「よし! リアス!」

「ええ! 皆!」

リアスの一声で皆が一列に並んだ。

「はい、部長!」

「イッセー、あ~ん」

「あ~ん」

「食わせる前に叩く!」

ジークフリートが死神達を率いてこっちに突っ込んでくる。

それよりも早く、僕の口のなかにアイスが入り喉を通り胃の中に落ちた。

その瞬間、僕の中で何かがはじけた。



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Life82

「むっはぁぁぁぁぁぁぁ! 兵藤一誠! 完全復活!」

トリアイナのビショップにプロモーションして、両肩の砲台から超巨大な

先程放ったものよりも一回り大きい魔力弾が放たれた。

「この味はレモン味! レモンバズーカァァァァ!」

死神達が魔力弾によって凄まじい数が吹き飛んで行く。

「お、遅かったか!」

「ははははははは! 良いぞ良いぞ!イッセー!」

「あ~ん、と」

僕はリアスからミニアイスを貰い、倍加を連続でかけていき砲台に超巨大な

魔力弾を生成していく。

こ、この味はイチゴ味!

「ストロベリーブラスタァァァァッ!」

2門の大砲から巨大な魔力弾が次々に装填されては放たれ死神達を吹き飛ばしていく。

皆はミニアイスの包装を取り除く係りなどに分かれてバケツリレーならぬ

アイスリレーをしていた。

おぉぉぉ! 力があふれてくるぅぅぅっぅぅぅぅぅ!

『もう、どうでも良い』

ごめんね、ドライグ。

それから、当分の間は爆音が鳴りやむことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「チェックメイトだ」

ジークフリートの首に先生の槍がつきつけられる。

ペンペン草がもう二度と生えないであろうと思うくらいの焦土とかした

駐車場はすでにその面影を残してはいなかった。

後はあの装置を破壊すれば完璧に詰んだも同然だ!

ゲオルクも全力を防御に注ぎ込んでいたのか息を切らしているし装置自体も

先ほどの余波をもろに喰らっているのかバチバチと火花を散らしながら今にも

壊れそうな様子だ。

「……これが俺のライバルなのか……はぁ~」

ヴァーリは相当、僕に呆れているのか大きなため息をついていた。

『どうでもいいですよ~☆』

ドライグに関してはすでに壊れちゃってます。

「兵藤先輩」

「ん? 何? 小猫ちゃん」

急に小猫ちゃんが僕に話しかけてきた。

その表情はいたって真剣だった。

「大きくなったら……私をお嫁さんにしてください」

………はいぃぃぃぃぃぃぃぃ!?

こ、こんな所で彼女は一体何を言っているんですか!?

周りのみんなも驚いたような表情を浮かべていた。

でも、小猫ちゃんの顔は真剣なんだよね~。

僕は複雑な思いを浮かべながらも彼女の頭に手を置いた。

「ま、まあ……大きくなったら」

「はい!」

小猫ちゃんは嬉しいのか満面の笑みを浮かべた。

「……俺のライバルは戦場で逆プロポーズをされる奴なのか……はぁ~」

だから、ため息つきすぎだって! た、確かにこんな戦場でこんな物を

受け取る僕はおかしいかもしれないけどさ!

そんなほんわかとした空気が流れたこの空間に突然、快音が鳴り響く。

この音は確か空間に穴が開く時の音だ!

「久しいな赤い汚物、ヴァーリ」

空間に開いた穴から現れたのは以前、僕が覇龍でめちゃくちゃにしたらしい人だった。

「シャルバ・ベルゼブブ!」

「シャルバ、まさか独断で動いていたとは」

ジークフリート達も聞いていないのか訝しげな表情をしていた。

あの二人が驚いているということは……まさか、独断で動いているのか。

「それでここに来た理由は」

「なーに、宣戦布告だ」

ゲオルクがシャルバに問いただすとシャルバはにやりと不敵な笑みを浮かべ

マントを翻すとそこには怪物を生み出すセイグリッドギアを宿した一人の少年が立っていた。

……あれ? 確か、あの子は英雄派の子じゃ。

「何故、レオナルドがここにいるんだ!」

ジークフリートもゲオルクも驚愕の表情をしていた。

ほ、本当に何をしているんだ。

「少しお手伝いをしてもらおうとね。こうやって」

シャルバは手に魔法陣を作り出し少年に近づけた。

「うわああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

少年が絶叫を上げると影が大きく伸びていきこの駐車場跡地を余裕で

包み込むほどの大きさとなった。

確かのこの影からは怪物が出てきたはず……ここまで大きいということは!

「フハハハハハハハハハ! 現悪魔を滅ぼすほどの魔獣が今、生まれる!」

『ゴガアアァァァァァァァ!』

聞こえてきた叫び声は耳をふさがないと立っていられなくなるほどの叫びだった。

影から現れた魔獣の足もとに魔法陣が展開されていく。

「さあ、魔獣たちよ! 冥界に住む汚いごみを掃除しに行け!」

その言葉とともに魔獣は冥界へと転移した。

それと同時にジークフリート達もレオナルドを回収して霧に消えた。

「シャルバァァァァ!」

「おっと! いささか動きが遅いぞ? 汚物」

「黙れ!」

僕はシャルバに殴りかかるがシャルバは余裕の表情で攻撃を避ける。

くそ! あいつの言うとおりサマエルの毒が完全に抜き切ってない!

「貴様と闘う気はない! 私が欲しいものはあれだからな!」

シャルバがオーフィスに手を向けると拘束の魔法陣が彼女に展開され

シャルバの元に引き寄せられた。

「こいつは貰っていく! アハハハハハハハハ!」

そう言ってシャルバは飛び去っていく。

「このフィールドは限界にゃん! 今なら転移もできるにゃん!」

空間の壁に穴があき瓦礫を吸いこんでいく。

黒歌は転移魔法陣を展開する。その魔法陣に皆が集まっていく。

……確かに今帰れば僕達は助かる……でも、あいつは逃がしちゃいけないんだ!

僕は背中に龍の翼を生やした。

「イッセー !何してるの! 早く行くわよ!」

「……僕はあいつを倒します」

僕の告白に皆が度胆を脱がれたようだった。

「何言ってるのよ!」

「じゃあ、僕も!」

木場君の提案に僕は首を横に振って否定した。

「こんな所でかっこつけても意味がないのよ!?」

朱乃さんの言った事に僕は頭を横に振り、否定する。

「かっこつけてるわけではありません。ここで、あいつを倒さなきゃいけないんです」

「もう限界にゃん! これ以上は転移ができなくなるわ!」

僕の言った事に皆が何も言えずにいると、僕の肩にヴァーリの手が置かれた。

「兵藤一誠、死なずに奴を倒せ」

「……もちろん」

「イッセー!」

僕の愛してやまない女性の声が聞こえる。

彼女の表情は今にも泣きそうだった。

……そんな泣きそうな顔しないでください。

「必ず帰ってきます」

「うん……約束よ!」

そう言って皆は転移した。

僕は翼をはばたかせ空で嘲笑の笑みを浮かべる奴のもとへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

フィールドの崩壊がさらに激しくなっていく。

「ヴァーリならともかく貴様の様な汚物に追撃されるとわな。末代までの恥だ!」

はいはい、どれだけ他人を見下して自分を持ち上げてるんだ。

「どうせ貴様も腹の底では覇権を狙っているんだろ!」

「残念だけどそんなの考えたこともない……さっき子供たちも

殺すって言ったよね? それは駄目でしょ」

シャルバは僕の言い分に嘲笑う。

「当たり前だ! 偽物の王に統治されている民など存在価値はない!」

あ~そうですか。偽物の王とか真の王とかもうどうでも良い……手加減しない。

「お前の運命は僕が決める!」

「汚物に決められる運命はない!」

僕はシャルバが攻撃するよりも速く、彼の前の移動してシャルバの腹部に

拳を突き刺して、殴り飛ばすとシャルバは口から血反吐を吐いた。

「な、なんだその速度は! この私が対応できん速度などあり得ん!」

シャルバはいくつもの魔法陣を展開しロスヴェイセさんみたいに

魔法のフルバーストをぶつけてくるけどそれらは圧縮された見えない

魔力の壁が全て防いでくれた。

こんなの何の痛みも感じない……ただのボールだよ。

「バ、バカな!」

『相棒、カウントは?』

「10秒……いや、5秒で良い」

「舐めるな!」

『スタート』

ナイトにプロモーションした後に僕が動き出した瞬間、

シャルバが撃ちだした魔力は全て止まり崩壊も今だけは停まったように見えた。

このまま崩壊が停まっていればいいのに……。

そのまま僕は神速を超えた速度で近づいていきシャルバの腹部を蹴りあげる!

『BoostBoostBoostBoostBoost!』

「喰らえ!」

倍加した分の魔力を足に纏わせて紅色に輝かせ、僕はマシンガンの如く

蹴りをシャルバに入れていく。

『Ⅰ』

最後に魔力弾を一発放った。

『〇』

「うぎゃぁ! ぎゃっ!」

凄まじい衝撃がシャルバを襲い全身から血しぶきを吹かせた。

「な、何が起きた! なぜ私は血を噴き出している!」

「それに気付かないうちは僕には勝てない」

「舐めるな!」

シャルバが投げた何かが僕の肩を鎧を貫いて突き刺さった。

確かに痛いけどこんなもの、っ!

「げほっ! げぼぉ!」

突然、体中に激痛が走り目の前の景色がグニャングニャンに歪んで見えた。

「アハハハハハハ! 本来はヴァーリに使う予定だったがまあいい!

矢の先にはサマエルの血を塗ってある! 形勢逆転だ! アハハハハ!!」

な……なんでこいつが……そうか……死神がこいつに手引を……。

僕はあまりの激痛に意識が朦朧として、ホテルの屋上に落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

「がはっ!」

ホテルの屋上の床に落ちただけなのに、僕は口から大量の血反吐を吐いてしまった。

……サマエルの毒を二度も喰らったんだ…………指一本……動かせない……。

「アハハハハ! 汚物はそこで倒れている事だ!」

シャルバの笑い声が僕の耳に届く。

……クソ……。

僕の意識が落ちそうになったとき、あの人の声が頭の中に響いてきた。

『イッセー』

っ! そうだ……あの人が……リアスが待ってるんだ!……こんな所で死ねない!

僕は血反吐を吐きながらも、この両足で立ちあがった。

「オオォォォォォォォォォォォォォォォォ!」

僕は天を仰ぎ、咆哮を上げる。

「な、何故立つ! 貴様は二回も毒を喰らって何故立ちあがる!」

「死ねない……理由が……あるからだ!

我、目覚めるは 覇王の真理を天に掲げし、赤龍帝なり 無限の希望と

不滅の夢を抱いて、覇道を往く 我、紅き龍の覇王と成りて 汝を真紅に

光り輝く覇道へ導こう」

『Balanse Dorive!』

宝玉からそんな音声が辺りに響いたとたん、僕の魔力が

一瞬にして大幅に上昇し鎧の色が赤から紅へと変化し全身から紅色の魔力が

放出され、煙のように揺らぐ。

「く、紅!? 忌々しい男の髪を思い出さ」

僕は高速で移動し、シャルバの腹部に鋭くパンチを突き刺し痛む体に

鞭を打ってシャルバを殴り飛ばすが、その際の衝撃にすら耐えきれず

口から大量の血反吐を吐いた。

「げぼぉ! おうぇぇ!」

っ! か、体が……ヤ、ヤバい! でも、こいつだけは……倒すんだ!

僕は激痛を我慢し、腹部を抑えているシャルバをもう一度、殴り飛ばした。

殴られたシャルバはホテルの屋上に叩きつけられ

捕えられたままのオーフィスに這いつくばった。

「オ、オーフィス! へ、蛇を! 蛇をくれえぇ!」

「我、今蛇生み出せるほど力ない」

オーフィスの答えにシャルバは絶望しきっていた。

「残念だったね。シャルバ」

「ぐぅ!」

僕はホテルの屋上に戻り、シャルバの胸ぐらを掴んで思いっきり蹴とばした。

「子供達はこの世の宝だ! その子供たちを傷つけようとするお前を! 僕は許さない!」

『BoostBoostBoostBoostBoost!』

「喰らえぇぇぇぇぇぇぇ!」

僕の怒りの感情を乗せた紅色に輝く巨大な魔力弾がシャルバめがけて放たれた。

「どうせ貴様もサマエルの毒で消えるのだぁぁぁぁぁ!」

シャルバの断末魔が一瞬だけ聞こえたけど直後に大爆発が起き、シャルバは

魔力弾に飲み込まれて完全に消滅した。

これで……もう……。

「……帰ろうか、オーフィス」

僕はオーフィスの手を取った。



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Life83

このお話はかなり短いです。



崩壊するフィールド。僕はその中をオーフィスに肩を貸してもらう事でなんとか歩いていた。

……情けない……最初は助けに来たのに……帰りは手伝ってもらうなんて。

………息を……するのも……辛くなってきた。

……サマエルの毒の痛みも……感じなくなったてきた……あ……れ?

視界が二度三度変わったかと思えば視界に空が映った。

そうか……倒れて……。

『しっかりし    アザゼ   ドラ  で俺達を呼び戻し   』

もう、耳も……聞こえなくなってきた……うん……分かってるんだけど……体が動かない。

……帰ったらまずは……テストの反省……会かな?

………中間テストもあったな……でも……まずは。

「オー……フィ……ス。家に帰っ……て何がし……た……い?」

「我、カードしたい」

ああ……ポーカーか。

「……そ……うだね」

『しっ  ろ  !』

……体が動かせない……もう耳……も……限……み……い。

………脳裏に……綺麗な紅髪の。

「イッ ー、全   回っ る」

『そん  は知   る!だが、この   んな絶望からも

立ちあ    だ!なあ、そ   !今回も     るんだ!』

……ロスヴェイセさん……ギャスパーくん………早く会いたいな。

……アザゼル先生……木場君……朱乃さん……アーシアさん……小猫ちゃん。

『立   相 !』

……サイラオーグさん………ヴァーリ……また……闘い……たい

……リアス……僕の大好きな。

『必ず戻ってきなさい』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………大好きだ………………リアス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ドライグ。イッセー、息してない」

『ああ』

「ドライグ、泣いてる?」

『ああ、お前も泣いているぞ』

「……この液体はなに……この気持はなに」

『その液体は涙……気持は悲しいっていう気持ちだ』

「我、悲しい」

『ああ……オーフィス。今からこの男の話をする。覚えておいてほしい』

「分かった……最高の赤龍帝の話……我、覚える」

 

 

 

僕――――――木場祐斗の眼前ではイッセー君とオーフィスをこっちへ呼び戻す

儀式が行われようとしていた。

「召喚用の魔法陣が用意できた。召喚を始める」

既に魔獣たちは冥界の都市部へと進行を始めている。

それぞれの組織から部隊が派遣されているらしく既に戦闘を始めている

地域もあるらしい。

……イッセー君。今、君の力が必要なんだ! 冥界のヒーローの君が必要なんだ!

「――――――繋がったぞ!」

先生がそう叫ぶとともにファーブニルの宝玉が金色に、タンニーン様が紫色に

ヴァーリが白色に輝きはじめ魔法陣もその輝きを増していく。

余りの眩しさに手で光をさえぎる。

そして光が止んだと同時だった。

――――――カランカランカラン―――――――――

……何かが落ちてきたような音が聞こえた。

目を開くとそこにイッセー君はおらず、イーヴィル・ピースが

8つ床に転がっていた。

「……馬鹿野郎っ!……」

先生が床を叩く……僕たちはようやく理解した。

朱乃さんが力なく床に座り込み部長は茫然としている。

「……イッセーさんは……え?」

怪訝そうに窺うアーシアさん。

小猫ちゃんもレイヴェルさんも嗚咽を漏らしていた。

……卑怯だよ……イッセー君。

僕の頬を伝う涙は止まらなかった。

 

 

この日、僕たちはイッセー君を失った。




どうも~。あと少しでこのお話も終わりです。
それでは!


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Life85

中級悪魔の昇格試験から二日が経ったお昼頃。

僕――――――木場祐斗はグレモリー城のフロアの一角にいた。

グレモリー城は慌ただしくなっていた。

それはそうだろう。なぜなら都市に向かって魔獣たちが行進を始めているからだ。

フロアの一角に取り付けられている大型のモニターからは悠々と都市へと進撃している

魔獣たちの姿が映し出されていた。

各勢力から救援を受けているから現時点で最悪のシナリオだけは避けられているけど

それ以外にも問題は山積みだった。

この騒乱を期に、無理やり悪魔に転生させられたセイグリッドギアの

所有者たちが主に反旗を各地で翻したらしい。

「魔獣どもの迎撃に魔王様方の卷属が派遣されることになった」

突然の声に、後ろを振り向くとそこにいたのはライザー・フェニックスだった。

「兄貴の付き添いでな。レイヴェルの顔も見に来たが……状況が状況だ」

そうか……この人にもイッセー君の死が伝えられたのか。

オーフィスを取り返すために単身乗り込んだイッセー君……でも、

必ず帰るという約束は果たされることはなかった。

ドラゴンゲートで呼び出せたのはイーヴィルピースだけ。

ゲートからは少量のサマエルの毒が感知されたので何らかの形でシャルバに

毒を注入されたと思われる。

いくらイッセーくんでも2回も毒を入れられたら……

「痛み入ります……それで部長には」

僕の質問に暗い表情のまま首を横に振った。

「駄目だ。呼びかけても返事すらしてくれなかった。愛した男が

ああなったんだ。俺達なんかじゃ理解すらできねえよ」

コトッと、フロアの一角にあるテーブルにカップを置く音が聞こえた。

「……お茶です」

小猫ちゃんだった……でも、いつもの彼女じゃない。

小猫ちゃんはフラフラとフロアにある椅子に座った。

「良いかい、レイヴェル。とにかく元気を出すのだよ」

フロアにさらに二人の人物が来た。

レイヴェルさんとフェニックス家の次期当主である、ルヴェル氏。

氏はレイヴェルさんを励ましたあと僕を確認する。

「リアスさんのナイトだね。この状況だ、君にこれを渡しておこう」

そう言い氏はポケットから小瓶に入った液体を僕に渡してきた。

……これはフェニックスの涙か。

「これを渡すついでに妹とリアスさんの様子を見に来たのだよ。

もうすぐ私はそこの愚弟を連れて魔獣迎撃に向かう」

「……愚弟で悪かったな」

氏の言葉にライザーが口をとがらせる。

これを渡してくれたのも僕達が前線に行くことを信じてくれているからだろう。

「赤龍帝君の死でリアスさんとクイーンはひどく落ち込んでいる。

今の状況で冷静なのは君くらいだろう」

……僕も一杯一杯なんだ。

でも、僕が冷静さをなくしたら確実にこのチームは瓦解してしまう。

皆、イッセー君の死でひどく落ち込んでいる。

アーシアさんに至っては今の今までずっと泣きっぱなしだ。

 

 

 

 

 

 

皆、悲しみと闘ってる。

イリナさんとゼノヴィアはまだ、天界にいる。

彼女たちにイッセー君の死が伝えられているかは分からない。

「赤龍帝君にはレイヴェルを卷属にしてもらいたかったのだが」

イッセー君は気づいていないみたいだったけどフェニックス家の意向は大体気づいていた。

「では、私たちはそろそろ行くとしよう。行くぞ、ライザー。

これ以上、成り上がりとバカにされたくはないだろう」

「分かってますよ、兄上。じゃあ、木場祐斗。後は任せた」

ルヴァル氏とライザーはそう言い残してこの場から去っていった。

再びフロアが静寂に支配された……僕はレイヴェルさんと

小猫ちゃんの真ん中に座った。

「ようやく、心から敬愛できる殿方を見つけたのに……こんなのありませんわ!」

そう言いレイヴェルさんは顔を手で覆った。

小猫ちゃんがぼそりとつぶやく。

「私は覚悟してたよ。激戦続きでいくらイッセー先輩でも限界が来るんじゃないかって」

あの死線の連続を見れば以前から覚悟を決めているというのも仕方がない。

僕は一度、彼とどちらかが死んだ後の話をしたことがある。

「割り切りですわよ……私は小猫さんのようには強くありませんわ……っ!」

同級生からの激情を与えられた小猫ちゃんはいつもの冷静な表情を

崩して涙を浮かべながら震え始めた。

「私だって……限界だよ…っ! 先輩の馬鹿! ……大馬鹿です!」

小猫ちゃんは肩を震わせなが涙を流していく。

「木場祐斗君か」

僕も涙腺が崩れそうになり、ソファから立ち上がって歩いていると

第三者の声が聞こえ、後ろを振り向くとそこにはパラキエルさんがいた。

 

 

 

 

 

「そうか……朱乃は」

朱乃さんがいる部屋にお連れする間に今の状況を簡単にパラキエルさんに伝えた。

パラキエルさんは沈痛な面持ちをしていた。

「彼の存在がここまで大きなものだったとは」

僕は朱乃さんがいる部屋に入るとそこには明かりもつけずに真っ暗な部屋に

光を失った双眸をした朱乃さんが座っていた。

「朱乃」

「……とう……さま」

パラキエルさんは一歩前に出て娘を抱きしめた。

「話は聞いている」

「……イッセー……どうして!」

朱乃さんはパラキエルさんの胸で泣き始めた。

僕はここにいても邪魔になると感じ、部屋の外へと出ると見知った顔がいた。

「ソーナ会長、匙君」

「我々もセラフォルー・レヴィアタン様からの指令で都市部へ向かいます」

そうか、シトリー卷属にも声がかかったのか。

魔王様がたが政治的立場から動けないのでランキングに入っているランカーたちが

召集されているのだがそれでも人手が足りないらしい。

「部長は」

僕の質問に会長は首を横に振る。

「私が問いかけても無反応でした。胸に彼の駒を抱いたまま

ずっと、彼の名前を呼び続けています」

……親友である会長でも無理だったのか……。

「その代りとっておきを呼んでいます」

会長はそう言うと匙君を連れて去っていった……とっておき?

 

 

 

僕がフロアに戻ると備え付けられているモニターから中継が映っていた。

『僕、怖くない?』

『大丈夫だよ!仮面の戦士があんな奴倒してくれるもん!』

そう言う少年の手には仮面の戦士を模した人形が握られていた。

僕はその映像を見て……口を押さえてこみあげてくるものを押さえていた。

……イッセー君……聞こえてるかい?冥界の子供たちは君を待っているんだ。

だから……早く帰ってきてくれ!

「冥界の子供たちは思っている以上に強い」

「あなたは」

いつの間にか僕の隣に男が立っていた。

「リアスに会いにきた」

サイラオーグ・バアルさんだった。

会長が言っていたとっておきはこの人だったのか。

僕はサイラオーグさんを部長がいる部屋の前に案内した。

「入るぞ」

その一言だけを言って部屋に入るとベッドの上に部長はいた。

ずっと泣いていたのか目元がかなり赤くなっていた。

「リアス」

「………何よ」

部長は不機嫌な声音でサイラオーグさんの方を向いた。

……なんて恐い顔をしているんだ。

「ソーナ・シトリーから連絡を貰ってな。安心しろ、大王側には

まだあの男がどのような状況なのか漏れていない」

大王側の政治家たちにイッセー君の現況を知られるとこの戦乱の後に

どのような手を使って現政権に食ってかかるか分からない。

「……イッセー」

イッセー君への依存度が一番大きかったのは部長だ。

「堕ちたものだな、リアス」

「……なんですって?」

「たかが愛した男が消息不明になったからと言って

ここまで堕ちるか。お前はもっといい女だったはずだがな」

それを聞いた瞬間、部長はベッドから飛びあがってサイラオーグさんに殴りかかった!

しかし、その拳はサイラオーグさんによって阻まれた。

「たかがって何よ! 私にとってあの人は私の命と同じなのよ!

イッセーがいないこの世界なんてもうどうだっていいのよ!」

また涙を浮かべて表情を落とそうとするが―――――

「最強の男が愛した女はこの程度ではなかったはずだ!」

サイラオーグさんが部長に激を飛ばす。

「あの男はいついかなる時もお前の夢に殉ずる覚悟で戦ってきた!

怯えながらも何度も死線をくぐりぬけた! あの男はどんな時でも

止まりはしたが後ろには下がっていない筈だ! 前に進み続けてきた!

その最強の男が愛したお前が後ろに下がってどうする!」

サイラオーグさんが言っている事に部長はかなり驚いている様子だった。

「俺は先に前線へと行く。リアス! 戦場へ来い! 先に行って待っているぞ」



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Life85

あの激励が部長の心に何かしらの変化を促してくれる。

僕はそう確信しながらある場所へと向かっていた。

サイラオーグさんが城を出てすぐにある方が場内に姿を現したとの

報告を受けて僕はその方がいる場所へと歩を進めていた。

向かっている場所はグレモリー邸にある表立たない場所にある一室で

そこにヴァーリチームがいた。

部屋に入るとヴァーリチームの面々と僕が探していた人物―――初代孫悟空がいた。

初代はベッドで上半身だけを上げているヴァーリに仙術の気を集めた手のひらを

腹から胸、そして口へと持って行く。

「ゴボッ!」

ヴァーリの口から黒い何かが吐き出され初代はそれを透明な入れ物に入れ

上から呪札の様なものを張り付けた。

恐らく封印したんだろう。

「ふぃ~。これでひと先ずは終わりじゃな。大馬鹿の

美猴が連絡を寄こしたと思ったらまさか、アルビオンを世話するとはのう」

「うるせえ、クソ爺。で、ヴァーリは治るんかよ」

「もともと、こいつは魔力が異常じゃから大丈夫じゃろうて」

「……礼を言う、初代殿。これで戦えそうだ」

ヴァーリが敬語を使うという事は彼の中でも初代孫悟空の存在は大きいらしい。

「初代様、少しよろしいでしょうか」

「なんじゃ、聖魔剣の」

僕は疑問に思っている事を初代に尋ねていく。

「呪いを受けた際にドラゴンが生き残る時はどのような状況なのか」

仙術と妖術を極め、仏にまで神格化された斉天大聖孫悟空。

この方がサマエルの毒に触れてどのように感じたかを聞きたかった。

「この呪いにかかればまずは肉体が滅ぶ。次に魂じゃ。

魂ほどもろいもんはないじゃろうからの~。じゃが、あの赤龍帝は

一回では死ななかったらしいのう。爺にも届いておるぞ」

以前、イッセー君が編み出した破壊の覇龍とスケールアップのバランスブレイクを

組み合わせた赤龍帝、最強最高にして最終の姿――――――バランスドライブをした際に

彼は碌に喋る事すら出来なかったらしい――――――

その苦しさが呪いよりも勝っているという事なのか。

「帰ってきた駒に毒の反応はあったんかぃ?」

「いえ、ありませんでした」

僕がそう言うと初代は煙管を吹かせ、口の端を笑ました。

「―――――――てことはだ。魂はまだ無事な可能性がある。

案外あの、最強坊主がひょっこり時空のはざまのどこかで生きてるかもしれんぜ」

……そうだ! まだ、彼が死んだと決まったわけじゃない!

僕の親友が生きている可能性があるんだ!

「じゃあな。外にウーロンを待たせてるんじゃ……赤龍帝は

民衆の心をひきつけ、白龍皇は荒くれ者を引きつけ、両者ともども

歴代最強とはのう。似た者同士じゃ」

そう言って初代殿は帰っていった。

「………ヴァーリ・ルシファー。君はこれからどうするんだい?」

「……兵藤一誠の敵打ちといえばお前達は喜ぶか?」

……つまり、まだ戦う意思はあるという事か。

 

 

 

 

 

 

初代に訊きたい事を聞き終わった僕は地下から上がってきた。

初代から聞いた情報をもとにあの方に連絡を取りたいんだが―――――

「祐斗さんですね」

そう考えていると後ろから不意に呼ばれた。

後ろを振り向くとそこには髪の毛を一本にまとめて、ボディラインが

はっきりと見える戦闘スーツを着たグレイフィアさんがいた。

「グレイフィア様も前線に?」

僕がそう尋ねるとグレイフィア様は首を縦に振った。

「聖槍の手前、出られないサーゼクスに変わってジャバウオックを

迎撃に向かいます。最低でもその歩みは止めてみせます」

この人が自信を持ってそう宣言されると本当に実行しそうに感じる。

僕の剣の師匠もルシファー卷属の一人でナイトだ。

あの方の剣で断てないものなんかない。

「それとサーゼクスとアザゼル総督からの情報です。リアスに渡してもらえます?」

グレイフィア様から渡されたのは一枚のメモ用紙だった。

失礼ながらそのメモ用紙を見てみるとそこには悪魔文字で『アジュカ・ベルゼブブ』

『拠点』と走り書きされていた。

「これは?」

「アジュカ・ベルゼブブ様が拠点になさっている場所です。

そこへ赴き、彼の駒を見てもらえとの総督からの伝言です。

アジュカ様ならわずかな可能性でも拾い上げてくれるでしょう」

イーヴィルピースの制作者であるアジュカ様……僕が連絡を取りたい人だ。

「私の義弟がこの程度で消滅するはずがありませんから。

サーゼクスを倒すと宣言したものがこれで消滅すれば良い笑い話です」

イッセー君、君の義姉は優しくも厳しい人だよ。

 

 

 

 

 

深夜、僕と部長と朱乃さん、アーシアさん、小猫ちゃん、レイヴェルさんとで

僕達が住んでいる町から電車で8つほど、離れた場所にあるアジュカ様の

拠点地へと向かっていた。

廃ビルに一歩足を踏み入れる。

「……イッセーが怖がりそうな場所ね」

……部長……

「お待ちしておりました」

僕たちの前にスーツを着た女性が現れた。

「さあ、あちらのエレベーターへ。アジュカ様がお待ちです」

 

 

 

 

 

 

エレベーターで到着した屋上は広く、小さな庭園だった。

その庭園の中心にアジュカ様が座っていた。

「アジュカ様」

部長が一歩、踏み出してアジュカ様に近づこうとするとアジュカ様は

手を上げて僕達を制止させた。

「駒を見てほしいんだろう? だが、他にもお客がいてね」

暗闇で気づかなかったけど前に数人がいた。

この魔力……上級悪魔……いや、それ以上の力を持つ者もいる。

「で? 何の用かな、ジーク君」

「単刀直入に言おう。我々と」

「断る」

アジュカ様はジークフリートの話を最後まで聞かずにキッパリと断ってしまった。

「君達の事だ。同盟でも組む気だろう……それは私の趣味じゃないんだ。

私は一人で何かを細々としたいものでね。まあ、人間界で言うオタクというやつだ」

アジュカ様がそう言うと上級悪魔クラスの者たちが殺気立つ。

「だから言ったのだ! こいつとあの男は独善で冥界を支配しているだけだ!」

「今こそ滅するときぞ!」

しかし、目の前の光景を目にしてもアジュカ様は動かずに椅子に座りっぱなしだ。

「ふむ……この程度ならば立つ意味はないな。赤龍帝君のほうがもっと

濃い魔力を放っていたんだがね」

「ッッ! あんな奴以下ではない!」

一人が大質量の魔力弾をアジュカ様に撃ってきた!

「ふむ、駄目だな」

アジュカ様は手元の魔法陣を操作して魔力弾が当たる寸前で、

その弾の軌道が突然、変更され放ってきた悪魔に跳ね返された。

「――――――っ!」

絶叫する間もなく悪魔の一人が消え去った。

「貴様!」

残りの二人も負けじと魔力弾を放つが……。

「こうすることも出来る」

さらに魔法陣を操ると魔力弾の起動が変わり元の威力の何倍もの速さと

威力で放った元の主たちを貫いた!

「……流石は魔王だ」

「ふむ、君は逃げないのかい?」

ジークフリートは嫌な笑みを浮かべながら立っている。

「まだ切り札があるのでね。それでもだめなら撤退しよう」

「ふむ・・…面白そうだが君を倒すのは僕ではなく後ろに騎士君みたいだぞ」

アジュカ様は僕の戦意を感じられていたのか。

僕はそう言われ一歩踏み出す。

「祐斗?」

「部長、僕行きます」

僕は刀を一本作りだしジークフリート対峙した。



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Life87

「はぁ!」

僕は両手に聖魔剣、それにドラゴンスレイヤーの

特性を付加させたものでジークフリートに斬りかかる。

しかし、ジークフリートもその手に握る魔剣で二本の刀を受け止めていく。

「やるねぇ!」

ジークフリートはニヤニヤといらつかせる笑みを浮かべながら僕の剣をいなしていく。

「あぁぁぁぁ!」

僕は怒りに任せたまま、二本の剣を動かしジークフリートに斬りかかっていく。

こいつたちのせいで! こいつ達が起こした事件のせいでイッセー君は!

「はぁぁぁ!」

僕が力任せに振り下ろした二本の剣はジークフリートに避けられ、ビルの床に

いくつものヒビを走らせた。

「おいおい、君の剣はそんなに殺気を乗せていたかい?」

「うるさい!」

僕は足にも両手に持っているものと同じ剣を作り出し、回し蹴りの要領で

彼の脇腹へと入れようとするけど、ジークフリートはそれすらも後ろへよけた。

「ふぅ……君と遊ぶのもいいんだが……僕は忙しくてね」

そう言いながらジークフリートは来ている服の胸ポケットから

何やら注射器のようなものを取り出し、自分の首へと持っていく。

「これは旧魔王、シャルバ・ベルゼブブとの協定により作ることができた

いわばドーピング剤だ。真の魔王の血と神聖なるアイテムが合わさればどうなるか」

ニヤつきながらジークフリートは注射器の針を自らの首にさし、入っていた

液体を自らの体内へと入れ込んだ。

――――――――少しの静寂の後、変化は訪れた。

ジークフリートの背中から龍の腕が生える……しかし、それは

以前見たものとは明らかに太さが違っていた。

完全に変化を終えたジークフリートは合計六本の腕と融合した

魔剣を持った、クモのような化け物のようだった。

『カオス・ドライブ。僕たちはそう呼んでいる。さあ、始めようか! 木場祐斗!』

四本の龍の腕が撓る。

僕はそれらが振り下ろされるよりも前に、その場から離れると

そこに渦巻き状に連なったオーラと氷の柱が生じ、次元の裂け目まで出ていた。

……なんだ、あの威力は。

『魔帝剣グラム、ダインスレイヴ、ノートゥング、バルムンク、ディルヴィング。

今言った魔剣の名前は僕が今、使っているものだ。行くよ!』

ジークフリートはそう言うと、僕に凄まじい速度で近づいてきて

全ての剣を僕に振りおろしてくる。

僕は高速移動で避けるけど、グラムから放たれてくるオーラで傷ができていく。

『ハハハハハ!』

ジークフリートが笑いながら剣を振り下ろしてきたのを僕は空中へ

飛び上がって、避ける。

でも、ジークフリートに足を持たれてそのまま地面に叩きつけらられた。

「ぐぁ!」

『防御が薄い君じゃあ今の一撃でやばいんじゃないかい?』

彼の言うとおりだった。

もう骨も何本折れたか分からない……意識も朦朧としてくる。

僕はどうにかして立ち上がり、距離を取ろうとした。

『させないよ』

「凍らせたのか!」

僕は足を見てみると、凍りついていたので炎の聖魔剣を創り氷を取り払おうとする。

でも、それよりも早く僕の両足を氷の柱が貫いた。

「がっ!」

『終わりだね』

動けない僕に向かって、ジークフリートが容赦なく剣を振り下ろしてくる。

僕は幾重にも剣を重ねて防御しようとするけどまるで紙のように

全て砕かれ、腕を斬り落とされた。

「祐斗……ッ!」

腕を斬り落とされてから僕は炎の聖魔剣を片腕でふるって、取り払い、

後ろに飛んで距離をとった。

ふと、視界に部長がイッセー君の駒を何かを待ち望んでいる様子で抱いていた。

……部長……そんな顔をしてもイッセー君は来ませんよ。

もう、意識も朦朧としている。

 

 

 

 

『もしも、僕が木場君よりも先に死んだとしたら』

 

 

 

 

 

ふと、以前イッセー君と話した内容が脳裏をよぎった。

『ひどい有様だ。あんな奴がいなくなっただけでここまで堕ちてしまうのか』

あんな奴………だと。

ジークフリートの一言に徐々に、腹の底から怒りが込み上げてきた。

そして、それと同時に僕は気付かされた。

……そうか……僕たちは頼っていたんだ……最強の赤龍帝がいる……

心のどこかで戦いを勝利へと導いてくれる……そう考えていたんだ。

……何がナイトだ……僕はナイトじゃなくて……ただの、ゴミ同然だ。

『赤龍帝は無駄死にだったね。シャルバなど後で消せたものを

順番を早くし過ぎた。やはり、そこら辺のガキと同じだったんだ』

ジークフリートのその一言を聞いて僕は完全に何かが切れた。

「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

僕は何もかもを忘れて獣のように吠えた。

「彼は! イッセー君は君のような男が貶していい男じゃない!」

僕は斬りおとされた腕から溢れ出てくる血など無視して余っている

片腕に聖魔剣を呼び出す。

 

 

 

 

『リアスを………守ってほしい。そして、皆の前に立って戦ってほしい』

 

 

 

 

 

「な、なにこれ?」

視界の端に何やら紅色に輝く何かが見えたけど僕はそれを無視して彼の言葉を借りた。

「『お前の運命は僕が決める!』」

その直後、どこからともなく僕の目の前に刀身を

紅色に染めたアスカロンが地面に突き刺さった。

そうか……ありがとう、イッセー君!

『バ、バカな! アスカロンは赤龍帝が持っていたもの!

それがなぜ、今ここにあるんだ!』

僕はジークフリートなど無視して目の前に突き刺さっている

アスカロンを抜き取り、刃を彼に向けると刀身から膨大な量の

オーラが放たれ、ジークフリートの体に傷を与えていく。

『あ、ありえない! なんだそのオーラは! そんな』

すると、突然彼が持っていたすべての剣がアスカロンに同調するかのように

僕に向けて輝きを放っていた。

『バ、バカな! 魔剣が木場祐斗を認めたというのか!』

僕はアスカロンを片腕で持ち、それをゆっくりと空に向かってあげた。

『こんなこ』

彼が言葉を言いきる前に彼の複数あるうちの弐本の腕が宙を舞った。

僕はジークフリートが反応を起こす前に彼に近づき、彼をアスカロンで切り裂いた。

「……ようやく、僕も彼と同じ速度の領域に入れたみたいだ」

『くっ!』

ジークフリートは痛みに耐えながらも僕から離れようとした瞬間!

『がっ!』

突如、上空から落雷が何回もジークフリートに落とされた。

僕はまさかと思い、後ろを振り返ると堕天使と悪魔の翼を同時にはやしている

朱乃さんが宙に浮いていた。

「声が……イッセー君の声が聞こえましたの。止まらないでって」

「私もです」

近くから声が聞こえ、そちらを見ると切断された腕を持って淡い光を

発しているアーシアさんと、仙術の治療の気を送ってくれている小猫ちゃんがいた。

「イッセーさんが立ち止まるなって。もう一度、きっと会えるからって」

二人とも、泣くのを我慢して僕の治療を行ってくれていた。

「さあ、みんな!」

そこへ、部長が立つ。

「闘うわよ! 目の前の敵を滅ぼすのよ!」

……これでいいのかな……イッセー君。

 

 

 

 

 

『そ、そんなことが……駒だけになっても戦うなどそんな、うぅ!』

突然、ジークフリートが苦悶の表情を浮かべ、その動きを止めた。

魔剣のオーラがジークフリートにダメージを与えている……そうか。

そういうことか。

「魔剣達。僕を認めたというならばこっちに来るんだ……僕に従え」

そう言うとすべての剣が彼の手から離れ、僕の眼前の地面に突き刺さった。

それと同時に僕の切り落とされた腕も治療が完全に終了した。

僕はアスカロンとグラムを両手に持ち、ゆっくりとジークフリートへと歩んでいく。

『こ、こんなことが! こんな事があるかぁぁぁ!』

異常に太くなった龍の腕が僕に振るわれようとした瞬間、後ろから

部長の魔力が放たれ、四本とも消滅した。

「終わりだ!」

アスカロンとグラムの二つがジークフリートに突き刺さった。

『かっ……ぁ』

その直後、彼の体が崩壊を始めた。

『……兵藤一誠は殺しても戦うのか……くそっ……この状態では

フェニックスの涙の効力を弾いてしまう』

……だから、彼はフェニックスの涙を使わなかったのか。

『まだ、理由は分からないんだけどね』

「貴方の敗因は……イッセー君を侮辱したことだ」

もしも、あの言葉がなければ僕は今この瞬間、骸となって地面に

無様な格好で倒れていた。

『ハハハ……教会の戦士育成機関出身はロクな死に方はしない……か』

その一言を言い残してジークフリートは完全に消滅した。



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Life88

旧魔王派を退けた僕たちは、ようやく本題であるイッセー君の駒を見てもらうことが出来た。

アジュカ様がいくつかの魔法陣を展開して

駒の記録か何かを見ているようすが五分ほど続き、見終わったのか

アジュカ様は陣をすべて消して僕たちの方を向いた。

「八つの駒の中で、四つがミューステーション・ピースに変化している。

例のトリアイナと紅の鎧―――――バランス・ドライブが影響しているのだろう」

四つも変化しているなんて……本当に彼は予想外だよ。

部長が唯一、所有していたミューステーション・ピースは既に

ギャスパー君に使用したからね。

「それでほかに何か」

「うむ。結論からいえば駒の最後の記録は死ではなかったよ」

アジュカ様の言っていることにいまいち、僕たちは理解が進まなかった。

駒の最後の記録が死……ではない?

「君たちが分かるように言えば………彼はまだ、次元の狭間で生きている可能性がある」

僕たちの間に何とも言えない空気が流れた。

つまり……彼はまだ、死んでいない!

「ううぇぇぇぇぇぇぇん! イッセーさぁぁぁぁん!」

最初に感情を吐露したのはアーシアさんだった。

そして、それを皮切りに部長も、朱乃さんも小猫ちゃんも!

レイヴェルさんも! 僕も――――――泣いていた。

「よかった……彼はまだ生きてる!」

絶望しきっていた僕たちに一筋の希望の光が照らされた。

 

 

 

 

『んあ……寝てた?』

僕―――――兵頭一誠が目を覚ましたのは赤い地面の上だった。

なんか寝ていた間に夢を見ていた気がする。

ジークフリートと木場君が戦ってて、みんなに声を

かけた後にアスカロンを貸して……それとなんだっけ?

その続きを僕は忘れてしまった。

『よう、相棒。気づいたか?』

『ドライグ? 一体全体何が……な、なんじゃこりゃぁぁぁぁ!』

ドライグと話すべく、籠手のある腕を見た瞬間僕は驚いてしまった。

だって、籠手はあるのに腕はなかったもん。

『落ち着け。お前はサマエルの毒で滅びかけていたんだ。

だから、鎧にお前の魂を引っ付けている。簡単にいえばお前は今、魂だけだ』

ドライグからの説明を聞いたとしても、僕は驚きを隠せないでいた。

『じゃあ、僕は二度とアイスを食べれないの!?』

『……え? そこ?』

僕がそう言うと、なぜだかドライグのみっともない声が聞こえてきた。

『おぉぉぉぉぉぉん! アイスがぁぁぁぁ! あの甘い味! あのクリームを

二度と楽しめないなんて……はぁ……リアスにも会いたいし』

「もう直会える」

『……いつから僕の膝にいたの? オーフィス』

下から声が聞こえたから下を見ると僕の膝の部分にオーフィスが座っていた。

「あそこ、見る」

オーフィスが指さしている方向をみるとそこには、脈動している繭があった。

「あれ。我とグレートレッドの力で出来た体」

『あぁ、そうだ。相棒、反撃の狼煙を上げようか』

 

 

 

今、俺―――――アザゼルは数人のメンバーとともに冥府へと来ていた。

ここは死神どもが住む世界であり、ハーデスの住み家がある場所でもあった。

「お久しぶりです。魔王ルシファー……サーゼクスです」

ギリシャ式の神殿の中央の辺りに死神どもの長であるハーデスの姿があった。

≪コウモリとカラスの首領……そして、上位ロンギヌスが

二つとはいささか老人を相手するには多くはないか?≫

「それはさておきましょう……ハーデス様、貴方には

カオス・ブリゲートとの接点があるという疑惑があるのです」

あるもなにも俺たちが証言者だ。

クシャラボラス領でのサマエルの件、グリムリッパーどもの件。

もうすでにハーデスには逃げ場はないと思うんだがな。

≪下らんな。わしは暇ではないのだ≫

そう言ってハーデスはその場を去ろうとする。

あの野郎!

俺が追いかけようとした瞬間、サーゼクスに腕で止められた。

「ならば交換条件はいかがでしょうか? 私たちと魔獣騒動が

終結するまでの間、ずっとここにいることをお約束していただければ

私はある程度のことまではなんでもやりましょう」

その話を聞いたハーデスは動きを止めて、俺たちの方へと向いた。

≪ほう……ならば、おぬしの真の姿を見せろというのはどうだ≫

―――――っ! そうきやがったか!

俺はサーゼクスの方へと視線を移すが、何も表情を変えないサーゼクスがいた。

「いいでしょう。それでここに留まってくださるのなら安いものです」

サーゼクスは俺と、天界のジョーカーの青年に視線で後ろへ下がるように言うと

くれない色の魔力を全身から放出し始めた。

「これが私の……真の姿です」

神殿の揺れとともに紅色の魔力がサーゼクスを包み込んでいき、それに伴い

奴の意思とは無関係に滅びの魔力が放出され、グリムリッパーどもが

どんどん消滅していった。

 

 

 

そこにあったのは滅びの魔力が人の形をしたものだった。

『この姿になると滅びの魔力が意思に関係なく辺りに放出されてしまうのです。

特定の結界かフィールドを用意しなければすべてを無に帰す』

魔力も凄まじいことになっていた。

前ルシファーの十倍……まるで、イッセーを見ているようだぜ。

すると、ハーデスのもとに一人の死神が現れて、あいつに耳打ちをすると

ハーデスは近くにあった載火台の炎に手をやると、映像が映し出された。

『おらおらおら!』

映像には如意棒を振り回してグリムリッパーどもを薙ぎ払う、美候の姿や

黒歌、ルフェイの魔法攻撃なども見えた。

≪貴様ら!≫

「おい、骸骨爺。おれの生徒に手ぇ出してんじゃねえよ」

ひとまずは、ここはクリアだ。

イッセー……とっとと、帰ってこい。

 

 

 

アジュカ様からの希望の報告を受けてから僕たちはゼノヴィアと紫藤さん

、そしてロスヴェイセさんとギャスパー君たちと合流し、首都、リリスへ向かっていた。

英雄派とシトリー卷族が戦闘を開始したという報告を受けたからだ。

僕たちは急いで向かうと、目の前に集団が見えた。

「会長! 匙君!」

「おっ! グレモリー卷族じゃねえか!」

そこにいたのはヘラクレス、ジャンヌ、ゲオルクの三人だった。

よかった……みんなまだ、息はあるみたいだ。

「こいつら弱かったからお前が相手してくんない?」

ヘラクレスは血だらけの匙君を見下しながら、僕に指をさしてそう言ってきた。

……許さない!

僕がグラムを手に取り、ヘラクレスと戦闘を開始しようとしたとき誰かに

腕を掴まれた止められてしまった。

「俺がやろう」

後ろを振り返るとそこにいたのはサイラオーグさんだった。

「あ? てめえ、赤龍帝にやられたやつじゃねえか。

そんな奴がおれに勝てるわけねえだろ!」

ヘラクレスの煽りにもサイラオーグさんは一切、表情を変えずに

上着を脱ぎ棄てて対峙した。

「来い。貴様を倒そう」

「はっ! レグルスも使わねえてめえがおれに勝てるか!」

ヘラクレスはそう叫びながら走りだし、両手でサイラオーグさんの腕をつかむと

セイグリッドギアでの爆発を起こした。

「おれのセイグリッドギアは触れたところを爆発させんだ!」

体の表面だけだけどサイラオーグさんにダメージを与えた!

向こうの方でも爆煙が起きてるのが見えた! ゼノヴィアさんたちも

ジャンヌと戦闘を開始したんだ!

「ふむ……この程度か」

「ッッ! だったらこれでどうだ!?」

ヘラクレスが地面に手をつくと、連続した爆発が起こりサイラオーグさんを包み込んだ。

「アハハハハハ! 魔力が使えねえてめえが俺に勝てるなんて」

そこまでいってヘラクレスの口が止まった―――――サイラオーグさんの姿があったからだ。

体から軽度の傷を負っても、サイラオーグさんは腕を組んだまま立っていた。

「もう終わりか……これ以上は時間の無駄だな。終わらそう」

サイラオーグさんはそう呟くと、腕に力を入れて……そして。

 

 

 

 

――――――バコォォォォォォン!

「がっ!」

ヘラクレスが反応できない速度で目の前まで移動して、

彼の腹部に痛烈な一撃を加えた。

「な、なんだよこれ……」

「これはただのパンチだぞ? 赤龍帝は平気な顔をして殴りかかってきたが」

「クソがぁ!」

叫びながらヘラクレスはポケットから注射器のようなものを取り出して

自分の首筋にあてた。

カオス・ブレイクか!

「どうした? なぜ、それを打たない。それでお前が強くなろうが

俺はお前を超えていく! かかってこい!」

でも、なぜかヘラクレスは注射器を自らの首に打とうとはしなかった。

「くそがぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

ヘラクレスは目に涙をためて、注射器を捨てると拳を構えてサイラオーグさんに殴りかかった!

この場にいた全員が虚を突かれた。

「最後の最後で英雄の誇りを取り戻したが……だが!」

その直後、あたり小気味のいい音が聞こえヘラクレスが倒れ伏した。

 



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Life89

サイラオーグさんがヘラクレスを打倒して残ったのはゲオルクだけだった。

ビルの向こうでは極大の雷光と聖なるオーラが高層ビルの向こうで暴れているのが見える。

「こんな短時間で成長するのか……ッッ! グレモリー卷族は! 

となるとそこの猫又とヴァンパイアもそうなのか……末恐ろしいな」

ゲオルクは倒れているヘラクレスを一瞥しながら、二人を見ていた。

あの疑似空間での戦いから、小猫ちゃんの力が上がったわけではない。

先生曰く、これからだということらしい。

「今は亡き赤龍帝が残したものは……心か」

その一言を聞いて、ギャスパー君はあたりをキョロキョロと見まわしていた。

「あ、あのイッセー先輩は」

まだ、真相を知らないギャスパー君に部長が真実を言いかけようとしたけど

サイラオーグさんの顔を見て、口を閉じた。

「そうか、まだ知らなかったのか。教えてあげよう。

赤龍帝はすでに死んでいるのだよ。サマエルの毒でね。

彼は確かに強かったよ……だが、サマエルの毒の前では無力だったのさ」

その話を聞いていくにつれて、ギャスパー君の顔が死んでいく。

……後輩が絶望していく姿を見るのは耐え難い……でも、部長たちが

考えているのは……おそらく。

「イッセー先輩が……死んだ?」

彼の眼から一筋の涙がこぼれた瞬間、

≪死ね……≫

普段のギャスパー君からは考えられないほどの冷たい声が聞こえ、

彼の体から黒い何かが放出されてあたりの区域を全て闇に変えた。

「な、なんだこれは」

「バランスブレイクでも、魔法でも暴走でもない! これは」

魔法に詳しいはずのロスヴェイセさんとゲオルクですら

今の状況に驚きを隠せないでいた。

辺りの建造物がまるで幻想だったかのように消えていく。

≪オマエラミンナコロシテヤル!≫

闇からヒト型の何かが生み出されていき、少しづつ霧使いに近づいていく!

黒い化身となったギャスパー君が手……のようなものを突き出した。

それに反応してゲオルクも魔法陣を展開する……しかし、一瞬にして消え去った。

「くそ! こんなことが!」

ゲオルクは数々の魔法のフルバーストをギャスパー君に放つがそれら、

全てが闇に飲み込まれて消えた。

≪クッテヤル……ミンナ、ボクガクッテヤル≫

「バ、バカな!」

ゲオルクは目の前の光景に信じられないといった表情を浮かべながらも

転移魔法陣を足もとに一つ展開した。

ジャンプする気か!

しかし、ゲオルクの体に黒い炎がからみつき魔法陣が消え去った。

「させねえよ……てめえは俺のダチをやった仲間だ。逃がさねえよ!」

匙君だった。

ヴリトラの炎がゲオルクを捕まえたんだ!

「……くそ!」

そのままゲオルクは静かに闇に食われた。

 

 

 

 

全ての闇が払われ、ギャスパー君は地面に眠るように倒れ伏した。

「この子についてヴラディ家に聞かないといけないことがたくさんできたわね」

部長はギャスパー君を抱き上げ、彼の頭を撫でてそう言った。

「あれ? ゲオルクまでやられちゃった感じ?」

「っ! ジャンヌ!」

後ろから声が聞こえ、振り返るとそこには傷だらけのジャンヌが

幼い子供を抱えて立っていた。

「卑怯よ! 子供を人質に取るなんて!」

上空からゼノヴィア達が降りてきた。

「あら? これも立派な戦術よ。曹操が来るまでの間、こうやっておくわ」

くっ! なんて卑怯な!

すると、突然向こうの空が紅色に染まった。

 

 

 

 

 

「じゃあ、行こうか! オーフィス! ドライグ!」

僕は次元の狭間から出た瞬間に、龍の翼を羽ばたかせて宙を待った。

うん、新しい体も特に異状なし……ってなんじゃこりゃぁぁぁぁ!

次元の狭間から出てから気付いたけど、このでっかいドラゴンってグレートレッド!?

僕の後ろには以前、見たことのある大きな赤色のドラゴンの姿があった。

『今、気づいたのか?』

「うん……でも、それよりも今はあれかな」

僕はグレートレッドから視線を外すと、巨大な怪獣が町で暴れていた。

それに応戦している何人かの人も確認できた。

『……本気か?』

すると、驚嘆したようなドライグの声が聞こえてきた。

「どうしたの?」

『いやな、グレートレッドがあの怪獣にガン

飛ばされたからお前に力を貸すから倒せって』

ガンを飛ばす……いや、今のあいつの状況じゃ無理でしょ。

目の前で暴れている怪獣はとても、僕たちの方向を見ているようには思えない。

「つまり、偶然目が合った?」

『まあ、いいだろう。どうせ、倒さなきゃいけないんだ』

「よし! じゃあ行こう!」

すると、僕が着ている鎧から紅色の魔力があふれ出して、僕を包み込んだ。

その魔力から発せられる輝きで僕の視界が数秒ほど消え、魔力がはれて、

目の前を見るとそこには夢の光景が広がっていた。

そう……僕はあの特撮ヒーローみたいにでかくなったんだよ!

足もとに広がる町並みはジオラマにしか見えない!

『おおぉぉぉぉぉ! し、幸せだぁぁぁぁ!』

『喜んでいるところ悪いな』

すると、急にドライグの声が僕の頭に響いてきた。

『今のお前の巨大さでいつものように高速移動したらこのあたりの街はなくなるぞ』

『……ですよね~』

実は僕が高速移動をするたびに辺りにはソニックブームというものが広がっている。

その威力は僕が人間サイズだから気にしないけど、こんなにも

大きくなったりしちゃってたら確実にやばい。

「あの、もしかしてイッセーさんですか?」

『グ、グレイフィアさん!』

僕の近くで声が聞こえたからそっちの方を見ると、そこには翼を出して

空中を飛んでいるグレイフィアさんがいた。

「なぜ、そんなにも大きく」

『まあ、そこら辺……あ、そうか』

僕は会話の途中で作戦を思いついた。

『グレイフィアさん。あの怪獣を上空にあげることはできますか?』

「……そういうことですか。簡単ですよ。総司さん!」

僕が言おうとしていることを理解したグレイフィアさんは大声を上げると

地上で刀を振っていた男性がこちらを見上げた。

「ジャバオウックの足を切断してください!」

グレイフィアさんが濃密で大出力のオーラを出しながら男性に指示を飛ばした。

「わかりました!」

男性は刀を持ち、一瞬、動きを止めた。

そう思った直後にはジャバオウックとかいう怪獣の右足は綺麗に切断されていた。

す、すごい……ナイトの速度はあそこまで出せるのか。

「行きますよ一誠さん!」

痛みにのたうち回っている怪獣の下に大きな魔法陣が展開された直後、

凄まじい衝撃が生まれ、怪獣を空高く上げた。

「さあ一誠さん!」

『さ~てとドライグ』

『もう勝手にしてくれぇぇぇぇぇぇぇ!』

一瞬で理解したらしい。

『BoostBoostBoostBoostBoost!』

倍加された魔力が僕の両腕に集められていき、紅色に鎧が輝き始めた。

その光景を初めて見た時、僕もしたいと思った。生きてきて十七年。

ようやくその願いがかなえます! さあ、やりましょう!

『喰らえ!』

僕は左右の手首を十字に合わせると、そこからすさまじい威力の光線が

放たれ、一瞬にして怪獣を消滅させ空を紅色に染めた。

『チョーイイねぇぇぇぇぇぇ! サイコォォォォォォォォ!』

僕は夢のような瞬間を腕をいっぱい、伸ばして鎧の中で涙を流しながら喜んだ。

「へ?」

突然、ポン! と言う音が聞こえたかと思えば浮遊感が僕を襲った。

『ふん! あんな恥ずかしいことをした罰だ!』

「ひがぁぁぁぁぁぁ! 落ちるぅぅぅぅぅぅぅ!」

急に巨大化もバランスブレイクも解けたから僕はそのまま、一気に地面に

向かってまっさかさまに落ちて行った。

「やれやれ、締まりが悪いですね」

「グ、グレイフィアさん」

急に浮遊感が無くなったかと思うと、グレイフィアさんが僕を抱きかかえていてくれていた。

 

 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! ドライグ~機嫌を直してよぉ~」

僕は鎧の姿に戻り、龍の翼で空を飛びリアスたちがいる場所へと向かっていた。

さっきからドライグは機嫌を損ねたらしく、一言も喋ってくれない。

「イッセー、悪い。ドライグ、我同情」

オーフィスまでそう言うぅぅぅ!

『ふん! さっさと英雄派の暴動を止めるんだな!』

そう言ってドライグはおくそこへと眠ってしまった。

どうやら僕を復活させるために力を使い過ぎたらしい。

「イッセー。曹操に勝てる?」

オーフィスが僕にそう聞いてくる。

「もちろん。新必殺技もあるしね」

僕はそう答えてリアス達のもとへと向かった。




本当はあの光線には『ロンギヌウム光線!』という名前を考えていたんですが
流石にイタイのでやめました。


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Life90

「な、なによあれ」

ジャンヌが向こうの空が紅色に染まっていることに驚きを隠せないでいた。

……今だ!

僕はジャンヌの意識が別の方向へ向いている間に高速で移動してジャンヌの手から

囚われていた少年を取り返した。

「あっ!」

「形勢逆転ね」

「それはどうかな~?」

部長が勝ち誇った様子でそういった瞬間、それを否定する声が上から聞こえてきた。

最強のロンギヌスを持った少年。

「曹操!」

僕は叫びながら彼を睨みつけた。

この一連の騒動を引いていた主犯格!

「遅かったじゃない。曹」

「君はもう用済みだ」

ジャンヌが安心しきった表情で彼に近づいた瞬間、その腹部を

トウルー・ロンギヌスで貫かれ、倒れ伏した。

僕たちはその光景に言葉を失った。仲間をあんなにも簡単に殺すなんて!

「おいおい、そんな顔で見ないでくれ。要らない物を

始末するのは普通だろ? なあ、プルート」

≪その通りですね≫

曹操がつぶやいた瞬間、彼の隣の空間が

ゆがみ、そこから見覚えのある最上級死神が現れた。

流石にこの状況はちょっとキツイね。最強のセイグリッドギアに

最上級死神……流石にやばい。

「やれやれ、英雄は要らない物を

救ったからこそ英雄と言われたんじゃないのか?」

さらに上から疑問の声が聞こえ、見上げるとそこには白い鎧を着た者がいた。

「ヴァーリ……そうか、サマエルの毒から復調したんだね」

曹操は驚いたような表情を浮かべて彼を見ていた。

「あぁ、お前のおかげでイライラが頂点を超えそうだ」

≪この状況でそう言えるのはあなただけですよ。曹操、彼は私が

始末してもよろしいですね?≫

プルートの質問に曹操は勝手にしろと言わんばかりに無視した。

「お前が相手か……まあいい。赤龍帝は歴代所有者の

怨念を光に変えたらしいが俺は違う」

その瞬間、ヴァーリが纏うオーラが特大なものに変化し、あたりを震わし始めた。

「俺は力で歴代所有者どもをひれ伏した。見ろ! これがもう一つの覇龍だ!

我、目覚めるは 律の絶対を闇に堕とす白龍皇なり」

彼の宝玉から歴代所有者と思しき声が辺りに響く。

『極めるは、天龍の高み!』

『往くは、白龍の覇道なり!』

『我らは、無限を制し夢幻をも喰らう!』

そのものたちの声からは怨念のたぐいのものは感じられない……イッセー君とは

別の方法で過去の所有者たちを抑えつけたと言っていた……戦いの中でわかりあったのか?

「無限の破滅を黎明の夢を穿ちて覇道を往く 我、無垢なる龍の皇帝と成りて」

ヴァーリの鎧が徐々にその形を変えつつ、光を放つ。

『汝を白銀の幻想と魔道の極致へと従えよう!』

そこに現れたのは純白の鎧に身を包みし、異次元の存在だった。

何もしていないのにもかかわらず彼の周囲にある建造物や車などが

ぺしゃんこにつぶれていく!

「覇龍とは少し違う白銀の極覇龍。とくとその身に刻め!」

そう言い放つヴァーリにプルートは刀身が赤い鎌をヴァーリに降り落とす!

直後、何かが砕ける音が僕たちの耳に入ってきた。

≪ッ!≫

あの不気味な雰囲気を放っている鎌を一撃で破壊するなんて!

プルートもそのことに驚きを隠せないでいたがそのまま、ヴァーリに

アッパーを加えられて空中へと飛んだ。

「―――――圧縮だ!」

『compression divider!』

『Divid! Divid! Divid! 

Divid! Divid! Divid』

空中に放り投げだされたプルートの身体が縦に、横に圧縮されていく!

こんな事が起こり得るのか!?

≪こんな事が……ッ! ありえない……ッッッ!≫

「滅びの時だ」

ヴァーリが呟きながら、開いていた掌を閉じると完全にプルートは消滅した。

その直後、自動的にヴァーリの鎧が普段のバランスブレイク時の鎧に戻っていく。

ヴァーリは相当量の魔力を消費しているらしく、肩で息をしていた。

 

 

 

 

 

「俺の白銀の極覇龍は奴の禁じられた覇龍に比べて、自身に対する

負担や暴走の危険を可能な限り排除したものだ。それにより、

破壊力は奴よりも見劣りするが特殊な力を手に入れた」

そうか………負担を減らしたことで魔力の過剰なほどの消費を受け入れたんだ。

「……恐ろしいものだ、二天龍……いや、今は天龍と言った方が」

突然の破壊音に曹操を含めた僕たちの視線がそちらへと向けられた。

「お待たせ、曹操」

そこにいたのは赤色の鎧を身に纏い僕たちが待ちわびた者だった。

 

 

 

「お前……兵頭一誠か」

ヴァーリも、曹操も、サイラオーグさんも突然の僕の登場に驚きを隠せないでいた。

うふふ~驚いたかな?

「イ、イッセー?」

僕の名を呼ぶ人がいる方向へと向くとそこには僕が愛してやまない女性がいた。

僕は何も言わずに愛する女性のもとへと近づき、そのままギュッと抱きしめた。

「ただいま……リアス」

「イッセー……イッセー!」

「イッセー君!」

「イッセー先輩!」

「イッセーさん!」

アーシアさん、小猫ちゃん、朱乃さん、リアスが

涙を流しながら僕に抱きついてきた。

「そ、そんなに一斉に抱きつかれたらこけちゃいますよ」

そう言いながらも僕はこけないように両足をしっかりと地面に

つけて彼女たちを抱きしめた。

「帰ってくると信じていたぞ! 私は!」

ゼノヴィアさんは今にも泣きそうになっているのに必死に涙を

出すまいと唇をかみしめて立っていた。

「うぅ! 私は泣くもん! うわぁぁぁぁぁん!」

イリナちゃんは大声を上げながら泣き始めてしまった。

ロスヴェイセさんも眼の端に少し、涙をためていた。

すると、突然小猫ちゃんたちが僕から離れた……ありがと、みんな。

「リアス……戻ってきました」

「うん……うん!」

僕が笑みを浮かべてそう言うとリアスも笑みを浮かべ、僕の唇に自分の物をかぶせてきた。

その瞬間、彼女のポケットに入っていたであろう八個のイーヴィルピースが

ポケットから出てきて僕の体の中へと入っていき、背中に翼が生えた。

僕はそんな現象なんか無視して、リアスとキスをしながら抱きしめた。

――――――もう二度と、離しやしない。

僕は心の中でそう決意しながら、彼女から離れて曹操の方を向いた。

「これは驚いたな。まさか、お前が生きていようとは思わなかった」

「まあね……ここで死ぬわけにはいかないんだ……さあ、決着をつけよう曹操」

僕は籠手を曹操へ向けてそう言うと、みんなが僕の意思を汲んでくれたみたいで

僕から数歩後ろに後ずさった。

「我、目覚めるは 覇王の真理を天に掲げし、赤龍帝なり

無限の希望と不滅の夢を抱いて、覇道を往く 我、

紅き龍の覇王と成りて 汝を真紅に光り輝く覇道へ導こう!」

『Balance Drive!』

僕の鎧が赤色から紅色へと変化し、魔力も一瞬にして大幅に上昇した。

「良いだろう。ここで君を再び倒そう!」

「行くぞ!」

お互いが同時に動き出し、同時に槍と僕の拳が接触した。




もう少しで終わるぜ!


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Life91

「ドラゴンショット!」

僕は籠手から大質量の魔力弾を曹操めがけて放つけど、七つの宝の一つの能力を使い

魔力弾をまったく別のところへ移動させた。

「まったく、その宝は一つ一つうざいよ」

「そりゃどうも!」

曹操の目の前に一つの宝が移動してきて

その宝が槍状に変化して僕を貫こうとする。

「プロモーション・ルーク!」

僕はルークへとプロモーションを行い、片腕に魔力を大量に集めて

鎧を図太くするとそれを盾にして槍の攻撃を別の方向へそらした。

反らした槍が高層ビルをいくつも貫き、瓦礫の山へと変えた。

「ふぅ。流石に片腕では反らすのが限界みたいだ」

「両腕では防げるというのかい? アハハハハハ! 冗談がうまいことだ!」

「ありがとう!」

籠手から大質量の魔力弾を何発も曹操へぶつけるけど、それら全てが

宝の能力で別のところへと移動された。

でも、移動させる距離が徐々に曹操に近づいている……さっきほど遠くには飛ばせていない。

「これならどうかな!?」

僕は先ほどの大質量の魔力弾を籠手から凄まじい数を曹操に向けて放つと

曹操はいくつか、別の場所へ移動させたあと今度は自分が動いて魔力弾をかわした。

「ちっ! 相変わらずばかみたいに多い魔力だ! 居士宝!」

すると、曹操の前に一個、宝が移動してきて光輝くと幾つもの光輝く

ヒト型の何かが生み出された。

「行け」

そう呟くと、ヒト型の何かは僕を潰すために一斉に掛かってきた。

『BoostBoostBoost!』

「ぶっ飛びな!」

三回ほど倍加してから先ほどとは比べ物にならないくらいの大きさを誇る

魔力弾を放って、一瞬にして人型の何かを消滅させてやった。

あんなのチマチマ一体ずつつぶしていたら時間がかかるだけだ。

「ちっ! やっぱりまだ調整が必要だな。ならば、これはどうだ! 将軍宝!」

曹操が叫ぶと同時に僕に向かって宝が球状に変化したものが向かってきた。

「うおっ!」

僕は慌ててそれを避けると後ろの風景が一瞬にして変化した。

地面に直撃したであろう宝は周りにある建造物などを一瞬にして破壊しつくした。

……流石にあれを喰らったらヤバいよ。でも、中途半端にしかできていないみたい。

破壊に特化したならこの地域一帯が消滅してもおかしくないし。

「うおおぉぉ!」

後ろから殺気をかんじ、前を向いて槍を籠手で防いだ。

「兵頭一誠。君はまだ何か力を隠しているな?」

「……どうしてそれを?」

僕は至近距離で籠手から魔力弾を放つけど、曹操は宝の能力を使い

まったく別のところへ転移させた。

……確かにあの技を使うことができるほど魔力はある……でも、倒せなかったら

確実に僕は殺されて戻ってくることはできない。

「勘だよ。君からは何か別の強大な何かを感じる。最初はバランス・ドライブかと

思ったが戦っているうちに違うと分かった……いったい何を隠している」

周囲を見渡すと既に町はぼろぼろになっていた。

……この街のことも……みんなのことも考えれば……仕方がない。

「見せなよ。君が隠している力を破ってこそ俺は君に勝てたといえるからね」

「……分かった……曹操……君は必ず後悔するよ」

僕は籠手に手を置き、意識を集中させる。

「これが、奥の手だ」

すると、僕を凄まじい量の魔力が包み込んでいく。

あの人とおなじ……リアスと同じ色の魔力が僕の体から吹き出していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

徐々に僕を包んでいた紅色の魔力が晴れていく。

「な、なんだその姿は」

曹操が僕の姿に驚きを隠せないでいた。

僕は先ほどまで紅色の鎧を身にまとっていた……でも、今は違う。

まるで布のように変質した紅色の魔力が僕の衣となり、全身に巻きついていた。

それに……髪の色までもが若干茶色気味から紅色へと変色していた。

「この姿をしている間、僕は魔力を無限に使うことができる」

きっかけは会長とのゲームの時だ。匙君が僕の魔力を外に出した瞬間、

まるで炎が一気に広がるように魔力が暴発した。

そこから考えたのがこれ。魔力をある地点から少しだけ出して全身を覆い、

その最初に出た魔力のゴール地点に定めた場所から魔力を再び、体内に戻して

もう一度スタート地点から放つ。永久機関のようなものだった。

「……その代償として僕はこの姿をしている間、セイグリッドギアも

イーヴィルピースも使えない。そして発動後、僕は……二週間、

悪魔の力もセイグリッドギアの力も使えない。正真正銘、最後だよ」

曹操は僕の姿を見て体を恐怖ではなく、怒りに近い感情で震わしていた。

「そんな……そんな事があるかぁ! 俺と同じ人間だった君が!

最強のロンギヌスを従えた俺を超えるなど! そんなことがぁぁぁぁ!」

僕は紅色の魔力を右腕に集め、柄も鍔もない……刀身だけの刀を作り出し

それを握り締めて、ゆっくりと上へと向けた。

「紅に染まれ」

そのまま剣を振り下ろすと目の前が一瞬にして紅色に染まりあがり曹操の姿が見えなくなった。

 

 

 

 

 

紅色の魔力が徐々に晴れていき、紫色の空が見えてきた。

近くのビルに何かが衝突したような音が聞こえ、そちらのほうを向くと

先ほどの攻撃を喰らった曹操が地面に倒れ伏していた。

「…………」

僕はそのまま、高速で移動して曹操の近くに降り立つと曹操は

苦しそうな表情を浮かべて僕を睨みつけてくる。

「うっ! うおぇぇ!」

いきなり曹操は口から吐瀉物を吐き出した。

「な、なんだこれは……う、動けない」

「そうだろうね……今、君の体の中には僕の魔力が入っているから」

「――――ッッ! そうか……君の魔力はオーフィス以上の質だと聞く。

……その魔力は君には無害でも……他人には有毒ということか」

「そうだね……この剣は誰かを斬るための物じゃない……

誰かに魔力を分け与えるための剣だ」

徐々に僕が握っていた刀身だけの紅色の刀が消えていく。

「はッ……相変わらず……甘い赤龍帝だ……」

直後、辺りに何かが砕けた音が響き、その瞬間に全身から力が抜けて僕は

地面に膝をついてしまった。

こ、こんな時に!

「ハァ……ハァ……くそ」

「残念だったな……俺にはまだトウルースイデアがある」

そう言ってふるえる手で槍を持ち、杖代わりにして立ちあがると曹操は言霊を言い出すと

聖槍の先端が開き、そこから莫大な量の光を発し始めた。

こ、こんなところで! ……あと少しなのに!

僕が後悔している間にも曹操はトウルースイデアの言霊を言い続けていく。

しかし、徐々に発していた莫大な量の光が消えうせていき最後は完全に消え失せた。

「……そうか……神の意志は……俺の野望ではなく……兵頭一誠の

物語をみたいのか……残念だ」

曹操はそう言って地面に横になった。

ひとまず……僕の勝ちなのかな?

そのまま僕は力が抜けていき、顔から地面に落ちていった。

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様、イッセー」

しかし、完全に顔が地面に当たる寸前に何か柔らかいものに抱きかかえられ、

それと同時に聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「……リアス」

「ええ……冥界を救ってくれてありがと」

リアスに抱きかかえられながら立ち上がると、周りにサイラオーグさんや

木場君たちが集まってきていた。

「曹操、なぜ、トウルースイデアは失敗した」

どこかからかヴァーリの声も聞こえてきた。

「……トウルースイデアは亡き神の意志が関係する。この槍をもつ者の野望を吸い上げ

それに相対する者の存在の大きさによって、力を与える。……それは、相手を

破壊する絶対的な力であったり……祝福を与え、心を与えるものだ。……

だが、意志が選択したのはどれでもない……単なる静観だ」

「そうか……やはり、紅の赤龍帝を倒す権利は俺にあるようだ」

ヴァーリは楽しそうにそう言った。

その直後、曹操を見覚えのある霧が包み込み、彼の手を取り立ち上がらせた。

「ゲオルクか……」

「あぁ……曹操。俺たちは多少の計算違いはあれど

大きくは間違っていなかった―――――」

徐々にゲオルクと曹操の影が薄くなっていく……転移するのか。

「……二天龍にかかわると……ロクな目に合わない」

「……だな」

その言葉を残して二人は去って行った。

こうして、僕たちの――――――悪魔と人間との戦いが幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、無事に戦いの事後処理も終わり、久しぶりに部員の皆が

旧校舎の部室に集まっていた。

あの技を使用して以来、僕はイーヴィルピースも、セイグリッドギアも使用不可能になり、

さらに魔力は生命活動に必要な量以外、消えてしまっていた。

アザゼル先生に調べてもらったところ、魔力に関しては一週間もすれば

復調するとのことだけど、イーヴィルピース、そしてセイグリッドギアに関しては

ドライグの言うとおり二週間、もしくはそれ以上の時間がかかるらしい。

「にしても凄まじい力を得たもんだ。魔力を無限に使えるなんてよ」

「まあ、その代償は大きかったといいますか」

「まあな……さて、そんなことよりもお前たちに試験結果が返ってきたぞ」

あ……最近の激動のせいで中級悪魔試験のことをすっかり忘れてた。

「ま、予想通り全員合格だ」

「よかったぁ~」

先生のその言葉を聞いて、僕は一安心した。

「これで中級悪魔の最強の赤龍帝が誕生ってわけだ」

「おめでと! イッセー! 朱乃! 祐斗!」

満面の笑みを浮かべているリアスを見て、もう一つ、忘れていたことを思い出した。

「リアス」

「なに?」

「デートに行こう」




終わったよぉぉぉぉぉぉぉ! これで後は黒歌とウィザードだけだよぉぉぉ!
まあ、ヘタッピな文章でしたが今まで読んで下さった方! ありがとうございました!


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