ビルドダイバーMMO【完結】 (ノイラーテム)
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プロローグ

●少女の見た彗星

 雪深い国の雪深い地方、冬には閉ざされてしまう邦。

 珍しく雪の少ない季節に、少女は街に出かけることが出来た。

 彼女はそこで運命に出逢う。

 

『まるで赤い彗星じゃないか!?』

(妖精……なの?)

 アミューズメント施設のディスプレイ一杯に、赤い閃光が走る。

 ネット空間での光景をリアルタイムで映して居るらしい……。

 

『十二機のガンプラがたった三分で……』

『何でトランザムがあんなに保つんだよ!? 移動時間を含めると稼働限界なんて……うわあ!?』

(これってガンプラっていうの? 凄い……本当に彗星みたい……)

 他の妖精……ガンプラと言うらしい。

 それだって素早く動いているのに、赤い彗星は縦横無尽に空を翔け他の連中を圧倒して居た。

 

「サンドラは余ほどにガンプラ・バトルが気に入ったんだね」

 少女はキラキラした目で、いつまでもその動きを追っていた。

 父親が声を掛けるまで、瞬きすら惜しいと言うほどに見つめて居た。

 

「お父さん……。これ買おうよガンプラ、うちでもしたい!」

「ははは。流石にこれは無理だな、大き過ぎる。でもガンプラを幾つか買って造り方を教えるくらいはできるよ」

 その地方は出歩けない雪深い場所だけに、冬の愉しみにはたっぷりお金を掛ける。

 それでもアミューズメント施設に置いて有る様なモノは無理だ。GBデュエルから発展してオンライン接続で世界中の人間と対戦可能になったが、流石に家庭では難しい。

 少女も不満を口にはしているが察してはいるらしい。

 

 そう考えていたところに、思わぬ声が掛った。

 

「そうでもないぞイワノフ。あと何年かすればコンシューマー接続版が出るかもしれないということだ。愉しみにすると良いお嬢さん」

「本当なの!? オジサン!?」

 声を掛けたのは本場の日本から来たという営業マンだ。

 ミラーシェードのサングラスを付けて、奇妙な口癖を言う人物だとか。

 

「良かったなサンドラ。お前がアレクサンドラ・イワノフビッチですってちゃんと自分を紹介できるころには、きっと家でも遊べるように成る」

「それまではガンプラ作りの腕を磨いておくと良い。自分だけのガンプラを作れるように」

「うん! わたし、頑張る!」

 自分が自己紹介もしてないことに気が付かないまま、少女は飛び跳ねてプラモデルのコーナーに行ってしまった。

 暫く冬にはできないのが残念だが、春になれば遊びに来ることが出来る。ならば当面は冬の間に籠って造るのも良いだろう。

 

 そして、こんな出逢いは世界中のあちこちで起きて居たのだ。

 時間の無い者、出歩けない者、エトセトラエトセトラ。デュエルからネクサスオンラインになった時の様に、ガンプラバトルは拡がる。

 そこには企業として発展やマンネリ打破を目論みたいという良くがあったとしても、根底に在るのは愛だろう。……そんな彼らに日本の営業マンは今日も声を掛ける。

 

「羽ばたけ……ガンプラは自由だ!」

 

●二つの貌を持つ魔神

 ガンダムバトル・ネクサスオンラインにコンシューマー接続版が発売された。

 当初は低スペックで交流専用とすら呼ばれ、後にたゆまぬ企業努力によりスキル性を導入し、段階的に上限が開放されることになったが不自由さは否めない。

 そんな時期の出来事だ。

 

「おい、誰かが出撃しちまったぞ」

「ん? 小人数フォースなのに待ち合わせに参加しないのか?」

 そこは複数のフォースがレイドの募集を募る、待ち合わせルームだ。

 少人数では手に余るミッションなどに多用され、一定人数まで集まったところで簡単な会議を始めるのが通例だっだ。

 

「ああ、俺らを気にする事もなく行っちまった」

「おいおい、このシナリオは『火星の王』だぞ? 大規模フォースなら問題無いが、数人で突破するのは無理だ」

 数あるミッションの中で、彼らが挑むつもりだった『火星の王』というのは難易度の高いシナリオとして知られていた。

 

「動かしてるのがチャンピオンや、準ずる精鋭ばかりなら判らなくもないが……」

 まず問題なのが、想定される敵勢力が三種類の中からランダムで対策を立て難いこと。

 更にボスだけは相当な改造状態で待ち受けて居るのだ。動きの良いとされるアミューズメント接続版だとか、コンシューマーの王者でなければ突破が難しいと言うのも仕方あるまい。

 

「名の知れた奴か?」

「……識別用のエンブレムは要警戒と設定カラーは試験飛行。連中、このシナリオでガンプラを試す気だ!」

 今から試し切りをするから寄って来るな、NPCと勘違いするから居たら容赦なく撃つ。

 警戒識別マークが示すのは、ようするにそう言うことだ。恐ろしいことに、この高難度シナリオで新しいガンプラの設定をテストするなのだろう。

 

「どうする? 参加を見合わせるか?」

「馬鹿言え、こんなお祭りを見逃す手はねえ。特等席で見物するぞ!」

「倒しきれなかったら俺達が後を引き継ぐってか? あんまり乗らねえなぁ」

「ドロップ品だけ渡しとけばいいだろ。どうせスキルpや称号なんざテストに求めてねえよ」

 そこで待っていた連中は一斉に動き出した。

 高い難易度のシナリオなのに無謀に挑むと言うことは、そのガンプラの設定が上手くかみ合えば小人数でも突破できると言う自信に他ならない。

 レベルの差に気が付かない馬鹿ならば、警戒識別マークなど付けて居るはずはないのだから。

 

 

 先行するガンプラはガンダム・ヘビーアームズをベースとしたマシン。

 極色彩の試験飛行カラーに、ver.30とだけ更新番号が刻まれている。

 

『ミツオ。上位機体を連れてボスと戦いたくは無いわ。相手が何であれ、二機はできるだけ落として』

『ビッチ先輩は無茶を言うなぁ。……はいはい、判りましたよっと』

 ミツオと呼ばれたヘビーアームズの操り手は、頬をかきながら転送されて来た地図を眺める。

 そして幾つかの地域を分別して判断、その中の一つを占有地域として定めた。

 

『ここはオペーレーション・クレシーと行きますかね!』

 もし他のダイバーが視て居たら驚愕するか、呆れるところだろう。

 ヘビーアームズは自分だけが撃てる長射程に留まって待ち構える事は無く、相手の射程の中に侵入して行ったのだ。

 

『相手は鉄華団かよ……でもやる事は一緒さ。ヘビーアームズver.30(トランタン)、目標を殲滅する!』

 敵からの射撃が始まる中、ヘビーアームズは全てを無視して優位地形を占有。

 敵側の射程圏内であっても、それが武装の性能を最も発揮する有効射程とは限らない。逆にヘビーアームズの武装はソレを有効射程に納めて居る。

 そして全兵装を開放すると、一か所に向けて放ち始めた。

 

 火力支援機というコンセプトのマシンは数多くあるが、殲滅を目的とするならばこのヘビーアームズという機体は随一だ。

 レオパルドやバスターと言った後輩に劣るどころか、瞬間火力だけならデンドロビウムやミーティア・ユニットを付けた機体にすら匹敵する。

 

『フラウロスはクリア。フルシティは……あー、もう、これだから鉄華団相手は嫌なんだよ! お前らNPCだろうが!』

 追加・改良したモノも含めて全ての武装を遠慮なく吐き出して行った結果、目標の一つであり、コンセプトの似ているガンダム・フラウロスを粉砕。

 だがもう一つの目標である、ガンダム・グシオンリベイク・フルシティは近くに居た獅電たちが庇った事で生き残ってしまった。

 

 このシナリオではNPCにも独自ルーチンがありレイド用の追加モブは別として……、鉄華団は主要NPCの連携と判断速度が異様に強力なのである。

 着弾したら周囲が丸コゲになると判断したことで、フルシティだけでも生き残らせようと庇ったのだろう。

 

 だがしかし、そこに向けて矢の様な進軍を行うマシンが天を掛けて居る。

『そいつのトドメはクリスにやらせるわ。ミツオは残りの機体を叩いてちょうだい』

『うおっ! もう対応してるのか、流石はビッチ先輩。こいつは癖になるぜ』

 通信が入ると同時にミサイルがヘビーアームズの近くに着弾。

 接近戦を挑もうとした獅電を留まらせていた。ミツオが砲撃戦を開始した段階で予想し、倒せないと判断した瞬間に動いていたのだろう。

 ミツオは軽口を叩いた後、レイド用の追加モブを中心に殲滅を開始。残る主要NPCを全て相手取ることにする。

 

 その視線は敵にではなく、空を掛ける魔神……ガンダム・バエルに向けられていた。

 それは片手に剣を、もう片方の手にギャン用の武装付きシールドが握られている。

 

「クリス、コントロールを一部戻すわ。手負いの機体くらいは、さっさと始末して」

「了解。バルバトスが出て来る前に潰す」

 極色彩のバエルの中で男女の声がする。

 通信ではありえないクリアな声、フルダイブではなくリアルであれば他のモノも感じ取れそうな状態だった。

 

 とはえ阿頼耶識を使っての戦闘中にそんな余裕などない。

 生き残ったメインのバーニアとスラスターを吹かせてフルシティが迫り、バエルはマクギリスが見せたような超反応で蹴り落とすことに成功。

 だがそれでも怯むことなく、ハルバードを掲げて来た。

 

「流石の重装甲だな。だが、遅い」

 バエルのスラスターが軌道をS字に換えて、フルシティの脇回り込む。

 いくら高機動のバエルでもこの反応に繋ぐのは無理だ。ただし、蹴りから繋ぐ軌道マニューバーを造って居れば話は別だ。

 蹴りから繋ぐ袈裟切りの斬撃は、リアルでならばとある流派のモノだと知っている者も居たかもしれない。

 

「御苦労さまクリス。暫くこっちでやるわ」

「最後まで担当したいところだけど、ボスが出てきたら仕方無いか」

 クリスと呼ばれた男からコントーロールが失われる。

 カチャカチャとむなしく音を立てるレバーとは別に、盾から機雷が射出されて落下するフルシティに次々と着弾した。

 火を吹く機体にため息を吐きながら、奥から出て来るボス・ユニットを確認する。

 

 そいつはバルバトスをベースにメイン武装である斧を掲げ、重装甲と多量のスラスターで純粋な強化した機体だった。

 設定的にも最終戦で勝利後ということで、死んだ仲間を『阿頼耶識システム Type-E』とすることで、阿頼耶識に稼働限界が無いというまさしく魔神である(だから序盤で出て来ないのだが)。

 

『よりもよってバルバトス・ゲートキーパーか』

『ゲーティアさんと呼んだ方が良いぞ。密かにファンが付いてるからな。……ボスなのに」

 シナリオ『火星の王』はランダム要素のあるミッションだが、序盤のNPC以外にも難易度を底上げるする問題が一つあった。

 ボスのカスタムが歴代のライバル機体の中から、ランダムで選択されるのだ。

 

 その中でもバルバトス・ゲートキーパーは、The・Oのコンセプトをカスタムに持ち込んだ機体であり、超反応でカウンターを返すマシン。

 赤い彗星のキマリスなどと並んでバケモノと称され、難易度サギだと良く言われていた。

 

『ミツオ、確認だけするけど残弾は?』

『有る訳ないでしょ。そういうコンセプトの機体なんだからさ。そっちも同じなんだから判って欲しいな……』

 万能のマシンなどありはしない。

 ヘビーアームズはさっさと全弾を使い切って戦うことを前提としており、誘爆だとか重武装で移動が遅いというのを無視して居る。

 早期に全弾を撃ち尽せるからこその殲滅力であり、その後は警戒に逃げる事も格闘戦を挑む事もできた。

 

 そして今回のテスト機体であるバエルもまた、射撃武装をさっさと使い切ることで白兵戦専用にコントロールを切り替えやすくしているのだ。

 ギャンが正式採用されたら、こんなコンセプトで戦わせるつもりだったのだろうと窺わせる潔さである。

 

『クリスにコントロールを戻すわ。ここからは三人で戦いましょう。ミツオは援護に徹して』

『『了解!』』

 スラスターを吹かせて飛び込むバルバトス・ゲートキーパーに、バエルが同じく超反応で対応する。

 こんなことができるのも、このバエルが『複座式』だからだ。

 

 ビッチ先輩と呼ばれた少女が全体の管制と射撃を担当し、必要な場所に射撃と指示を出す。

 そしてクリスと呼ばれた少年が白兵戦を担当し、道場で習った剣技などを再現しながら闘っているのだ。

 もちろん誰もが複座の阿頼耶識に対応できる訳では無く、相性によって逆にコントロールが劣化する者も多い(ミツオもその一人)。

 

『シールドバッシュから切り込む』

『了解! 切り離して二刀に変更するタイミングでミツオが仕掛けてちょうだい』

『はいよっ!』

 クリスがいつも使っているバエルならば、武装が無いので盾での強打は問題無い。

 だが今回は射撃可能な盾である為に、強打した瞬間に歪み始める。

 

 左手を戻しながら右手で袈裟斬りの斬撃を浴びせつつ、歪んだ盾を切り離す作業が不自然なほどの速さで行われた。

 だが二刀目のバエルソードを抜刀する前に、ゲートキーパーは超反応でカウンターを敢行。そこにミツオのヘビーアームズが突っ込んで僅かな時間を稼ぐことにした。

 

『嘘だろ。あのタイミングで横槍入れたのに、全然効いてねェ。やっぱりコンシューマー版じゃスキル足りて無いのか』

『あっちもツイン・コントロールだからな。その辺の隙は諦めろ』

 ミツオのヘビーアームズ、ver.30(トランタン)は段階を踏んで改装し続けた自信作だ。

 十番台は弱点である白兵戦の強化、二十番台は機動戦好きのビッチと組んだこともあり高速戦闘にも対応して居る。

 そのナイフはかなりの業前であり、スキルこそ載せて無いがかなりの威力のはずだった。それを関節に決めきれないのが残念でならない。

 

『それよりも、The・Oベースのカスタマイズなら、副腕は使わないのか?』

『今使ってるだろ。ゲーティアさんはスラスターを副腕が構えることで、全方向にカウンターができるんだ』

『微調整専用の副腕に、それを使いこなすツイン・コントロ-ルね。本当に飛んでも無いわ』

 まがりなりにもバエルが殴り合えているのは、バエルが複座式で二人でコントロールしているからだ。

 視野移動に戦場の把握、武装の切り替えまで行えているが、実質的には複数人でモビルアーマーを操るのと同じペナルティを追って実行して居ると言っても良い。

 判断の齟齬やタイムラグはちゃんとあるし、メイン・コントロールはあくまで一人。さきほどの刺突を瞬間的に判断する様な特殊な動きは難しかった。

 

『どうする? 最悪……自爆で削ろうか?』

『それは最後の判断にしましょ。というか、普通に突破して来そうだから怖いわ』

『ありえるな。まがりなりにもボスだ。それも三日月とシロッコのハイブリット』

 重装甲な上に超反応で自爆の圏内から脱出。

 即座にバエルに迫る姿が容易に想像できる。実際にはシロッコみたいなニュータイプではないだろうが、三日月ベースの性格ならば瞬時に判断して突進して来るだろう。

 

 そんな折に、一つの通信が後方から飛び込んで来た。

 

『要するに手詰まりなんだろ? 俺達が手を貸そうか?』

『テスト中に悪いが時間切れだ。そこのバルバトスには借りもある。援護しよう』

 元よりこのミッションは小人数フォースが組んで戦う為のレイドである。

 他のフォースが参加して悪いルールは無く、彼らは今まで様子を見て居たのだろう。

 それがダイバーとしての義理なのか、プラモのデータ収集なのかは別にして。

 

『どうする? 一緒に倒しちゃうのも……』

『時間切れだしな、それも一種の手だが……いや。先に倒してしまっても構わないんだろ?』

 気弱になるミツオの言葉に同意しようとして、途中でクリスは意見を換えた。

 ここまで自分達だけでやったのならば、最後までやるべきだ。そう思ってバエルソードをXの字に構え直す。

 

『アハハ♪ 返信はバカメよ! 私達が勝つに決まってるでしょ、あんたらの出番なんてないわ!』

『仕方無い。後に続く人々の為に、データの一つも残しますか』

 少女は少年の判断に笑顔を浮かべると、突撃を掛けたバエルのサブ・コントールに徹する。

 それを見守っていたヘビーアームズも、ナイフを構えて脇や後ろに回り込みながら援護を始めたのだ。

 

 敗北よりも、今回のテストを無駄にしたくない。

 自分達だけでも、コンシューマー接続版でもやれることを証明したい。その思いから三人は果敢に攻撃を行っていく。

 もし力及ばずに撃破されても、進み続ける事が出来るだろう。

 

『ひゅう! 言うねェ。俺達も続くぞ!』

『突撃! 彼らの死を無駄にするな!」』

『おっそろしいことに出番がねえかもしれねえぞ! 急げ急げ』

 自分達が諦めて居た目標に挑む行為は、MMOにおいても羨ましいことだ。

 リスクを考えて時間を潰していた先着のフォースも、三人に感化されてお祭りに参加する事にした。

 見ればバルバトスの装甲が恐ろしい勢いで削れて行き、一緒に勝利を目指すどころか、最終戦闘に間にあわないのではないか……とすら思いながら。




【公式でコンシューマー接続シーンが出たので、採用開始期のまだ技術が低い時代開始。と微妙に変更しました】

以下。連載当初=家庭での接続シーンがなかったのままですので、ご理解ください。

 今回のストーリーはMMOに近い形式で、『コンシューマー接続版がある』、『スキル性が確実にある』ということをコンセプトにしています。
性能の劣るコンシューマー接続版をそのままにするのではなく、一度全員を制限して余裕を持たせ、所持したスキルによって段階的に開放して居ると言う設定ですね。
もちろん大会に関しては、強力なサーバーに招待するので、コンシューマーでもアミューズメント施設接続版に劣らないということになっています(スキルの上限は決まっていますが)。

 続きは思い付くかと気分次第で書く感じですが、短めにして書き易く・読み易くにするかと思います。


登場機体
『サザビー・チェルノボーグ』
 ファンネル・コンテナの代わりにGNドライブを複数搭載。一部は手動で、一部はオートで換装可能にしている。
当然ながら複数所持しても強くならないので、可能な限り長時間のトランザムを掛け、その後の復旧を早くすることを狙った機体。

『ガンダム・ヘビーアームズ。ver.30(トランタン)
 登場人物の一人であるミツオが操る機体で、十回ごとに他の要素を取り入れフランス語の数字を入れている。
十番台は欠点である格闘強化、二十番が機動戦闘、三十番は追加装甲(と装備の増加)。
ヘビーアームズが持つ火力殲滅機というコンセプト通りに、瞬間最大風速がおかしなレベルに達している。

『複座式バエル』
 バエルの欠点である火力を補う為に武装を追加し、重くなったのでブースターを強化しスラスターを大幅に追加。
そのせいで扱い難くなったために複座式にしたら、相性が良くないとまともに動かなくなった欠陥機である。
代わりに二人分のスキルを使用でき、視天やコントロールを交代可能。とはいえモビルアーマーと同じともいえるので、大会等には向かない。
メインダイバーであったクリスも、普段はバエルに乗って白兵戦をしているのだが、流石にマクギリス並みの超反応は無理だったらしい。

 今回のテストの理由はスキルポイントを溜めたり、大会サーバーならばアミューズメント接続版と同じ様に存分な戦いが出来るかをテスト中だった。

『バルバトス・ゲートキーパー』
 ランダムな敵勢力の、これまたランダムに強化されたボスの一体。超反応のカウンターが脅威とされる。
重装甲と多数のスラスターを持ち、副腕でそれらを微調整、更には『阿頼耶識システム Type-E』で稼働限界が存在しないと純粋強化されている。
メイン武装が斧に変更されていることもあり、ゲーティアさんと呼ぶダイバーも多い。
なお、このシナリオで出て来るボスの改造は歴代ボスのユニットを参考にしており、この機体はThe-Oをモデルにして居る。

以下、RPG/MMO風にした場合のゲームデータ的なモノです。

●ランク・スキルなどのイメージ
ランクE:初心者から特殊マニューバーを覚えるまで
ランクD:マニューバーを覚えて、スキル・アイテムに組み込んで戦えるようになるまで
ランクC:変形しての体当たりや、中途半端な変形で戦う等、自分のプラモにあった必殺技を覚えるまで
ランクB:複数の特殊マニュ-バーを利用し、もはや機体に縛られなくなってくるアルトロン・ガンダムの外見で、中はシェンロンガンダムなど)
ランクA:指導者クラス
ランクEX:名人カワグチ並み

スキルのランク
1レベル:片手射撃などペナルティを軽減できる
2レベル:主要能力+1 (命中重視のスキルならば命中)
3レベル:副能力+1   (命中重視の武器ならばダメージ)
4レベル:主要能力に更に+1(合計+2)
5レベル:副能力に更に+1(合計+2)

特殊なマニューバー:
 5レベルスキルに追加して、特殊な行動が出来る。
数値の優先目標的に、5レベルは特殊マニーバーを覚える為の段階

●武装のデータ例(ガンダムセンチネルRPGなどを流用)
・マシンガン:ダメージはサイコロ一個分(1d6)、期待値は3.5。最大五回攻撃、弾数:50
・バズーカ:ダメージはサイコロ二個+固定値6(2d6+6)。期待値は13。弾数:5
・ビームライフル:ダメージはサイコロ個(3d6)、期待値は10.5。弾数は15
・小形ミサイル:サイコロ一個+追加爆発(1d6+数)、期待値は変動。弾数はモノによる

 マシンガンは雑魚掃討用、バズーカは装甲の堅い戦艦用、ビームライフルは最強だけど対策され易い。
ミサイルは弱そうに見えるけど、追加爆発するので沢山撃つと強力(避け難い)。
他の武装としては本体設置型のカノン・滑空砲、白兵戦武器などが存在する。

●特殊なマニューバーの例
 ランクDだと1つのみ、トランザム・阿頼耶識など特殊な機体強化無ければ2つまで。
5レベル前提でミッションで入れ換える。

射撃系追加スキルの例
『撃ち切り射撃』
 残っている全ての弾を消費し、10発ごとに命中+1、ダメージ+1、回数+1回

『指切り射撃』
 命中と威力を下げて、1発撃ちが可能

『弾幕』
 残っている全ての弾を消費するが、相手の行動に合わせて、命中は低いがカウンターで撃てる

白兵系追加スキルの例:
『バッシュ/強打』
 武器のサイズに応じて純粋に威力が増える。使い易いがビームサーベルには付けれない

『ブランディッシュ/旋回』
 武器を振り回して全周に攻撃する。人間はともかくMSなので、普通のサーベルなどには付けれない

『アーマーピアス/貫通』
 相手の装甲値を半減させるが威力は増えないのでボス以外には微妙(突き武器は元もと威力高いので相殺されなくもない)
また盾専用の『盾を壊して一回だけ全て防ぐ』を無効化可能。

『ノックバック/打突』
 相手を一歩後方に下がらせる。追撃し難くなるが追撃され難くなる。ビーム兵器では行えない。

『クラッチ/拘束・体当たり』
 自分の進行方向に追随させる。押し込む以上の意味は無いが、追撃はし易くなる(ノックバックの逆)


●特殊オペレーション・ユニットの例
『教育型コンピューター』系統
 スキル数の追加。ここまでならば他のカスタムと組み合わせ易く、ドロップ品でも落ち易い。
追加マニューバーを持つが自動的なALICE、ニュータイプを狙うEXAMシステムやNT-Dなど仕様の差が違うモノが存在する。

『ゼロ・システム』
 予想行動を表示し、対抗行動を表示する。
ゲーム的には予想行動に対し先行入力が可能で、先に決めた動きを踏襲するならばボーナスが、変更するならばマイナスが掛る。

『トランザム』
 エネルギーを一気に消耗して機体性能を底上げし、高速機動が可能になる。
ゲーム的には追加行動が完全に一回分可能で、移動・マイナーアクション・メジャーアクションをそれぞれ実行、スキルも併用できる。
(この為、外から見ると何度も移動し、補助行動で能力を挙げ、何度も射撃しているようにみえる)

『阿頼耶識』
 脊髄反射の直接コントロ-ルが可能になるが、欠点も多い。特に休ませながら使用すると稼働時間がとても短くなる。
ゲーム的にはイニシアティブを無視して、移動・マイナーアクション・メジャーアクションを好きなタイミングで割り込める。
ただし欠点が多くモードの稼働時間が短い他、ビーム兵器使用不可、モビルアーマーが味方に居てはならない……。などのルールがある。


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MMO・TRPG風ルール仮置き場
基本ルール編


●ルーリング・サマリー

 

長いので後述より抜粋

・総合能力値

・主要能力値

・副能力値

・機体例:ジム

 

/総合能力値

 プラモデルの完成度で現される。

名人が原作再現でもしない限り100%になることは難しいが、全てが戦闘に直結しないので100%を目指す者は少ない。

原作イメージと合わない改造ほど能力値が下がるが、数%程度であり、原作には無い能力を持たせる方が有利である。

また後述するように5つの能力値に分かれた後、更に判定値はその5分の1であるので、数%程度は戦闘に殆ど影響しないことも原因。

例:移動に便利な飛行パーツや、遠距離攻撃に有利なファンネルなど。

多少能力値が下がるより、手段が増える方が重要と見られている。

 

/主能力値と判定値

 完成度(100%以下)は5つ能力値、構造性・機動力・運動性・操作性・イメージ再現性に振り分けられている。

初期は20%平均のままで、その5分の1が判定値。機体特性によって5%(判定値1)単位で前後している。

後述する副能力値を傾斜させて、一部を底上げし、使わない部分をを下げることも可能。

 

 この判定値を基本とし、装備の修正と、サイコロ2つ(2d6と称する)を足したモノが達成値になる。

判定値4 + 2d6 + 装備修正 = 達成値

 

/副能力値

 それぞれの能力値における、内部数値の差。

能力値ごとに副能力値が3つ存在し、カスタムすることによって5%(判定値1)単位で振り分け可能。

 

1:『構造性』

 機体の堅牢さを示す数字。耐久性、推進剤の備蓄、エネルギー保有力を示す。

唯一振り分けた数値がそのまま反映される能力値であり(よって雑魚のHPは20)、ほぼ使用しない能力値も存在する。

よくある例としては、内蔵するエネルギー兵器を撃たないのでエネルギー保有力を下げて耐久性を高めるなど。

逆に当たらなければどうということは無いとか、拠点防御用は移動しないから他を高めて居るなど。

 

2:『機動性』

 レスポンスの速さを示す数字。イニシアティブ、回避力、反応力を示す。

5分の1を使用し基準値とするが、代用が可能なので設計的に意図的な傾斜をする者も多い。

これは先手を譲って後の先を取れば良いとか、カウンターアクションなど計画しない者も多い為である。

 

3:『運動性』

 一度の行動でどの程度動くかを示す数字。白兵攻撃・白兵防御、移動力補正を示す。

5分の1を使用し基準値とするが、白兵攻撃しない機体や、防御を他で代用する者も多い。

更には移動力補正は装備品で補える為、無理には上昇させて無い者も数多く居る。

 

4:『操作性』

 詳細な操縦をどの程度可能かを示す数字。射撃命中率、精密行動力、リカバリーなどを示す。

射撃しない者や精密行動しない者には不要の能力値だが、リカバリーでシールド・ブロックや誘爆阻止を行うので必ずしも捨てて良い能力値ではない。

 

5:イメージ再現性

 どれだけ意図した通りに行動を行えるかを示す能力。思考制御、プログラミング補正、同時コントロール可能数、(ヒーローポイント)を示す。

基本的には視点ポインタとプログラムによる、特殊な反応速度のことである。

本来は機体の能力では無い物も含まれるので、この数値を重視して居ない者も多い。

 

 またオプションのヒーローポント・ルールを採用する場合は、使用するごとに、この判定値が一時的に低下します。

 

・ヒーローポイントの使用

 イメージ再現性の判定値分がそのままリソースになる。

1p使用ごとに達成値がサイコロ1つ分(1d6)増えるが、判定値そのものが使用ごとに1p低下する。

リソースが0pになったら気絶・ショートし、ガンプラバトルが一時的に行えなくなる。

この回復は完全な休息(シナリオの終了)や、ミッション中に行える交流・ファンション系の報酬などのプレゼントで回復する事もある。

(戦闘の勝利で1p回復、ボーナスのある休息行動1回分につき1p回復、イベントごとに1p回復くらいの目安です)

 

 

機体の例(未改造のNPC機)

『RGM-79 ジム』

5つの能力値は全て20%。

耐久性(HP)20、推進剤20p、内包エネルギー値20p、(ヒーローポイント4p)

回避4、装甲2p

 

基本判定値4 + 2d6 = 4+7で11前後の達成値(サイコロ2つの期待値は7なので) 

 

ビームスプレーガン(操作性/射撃命中値= 4)

命中補正+、3d6ダメージ、弾10発(内包1ごとに10補充できる)

 

ビームサーベル(運動性/白兵命中/白兵防御= 4)

命中補正+、2d6ダメージ、回数無限、武装耐久値2p(意図して狙われた場合2回で壊れる)

 

ミドルシールド(操作性/リカバリ= 4)

装甲値3 耐久値20

 リカバリ判定が相手の命中値を上回れば、まずはこちらから減る

シールドは装甲板の塊なので、武装耐久値は存在せずに単純に20ダメージまでを肩代わりする。

 




 ひとまず考えている物をここに置きます。
次のストーリー更新までに、一番上にでも移動させる予定です。
ストーリーに登場する機体・キャラ・考えついた他のルールや装備例なども同様に張った後に移動予定。

 今後は予約機能を使って午前か午後の適当な時間にストーリーUP。
夜は機体紹介思いついたやルールを張る……ようになるかもしれません。

/データ的な次回の予定
 能力値に関してはひとまず20%平均でとか適当に決めましたが
思い付けば初期クラスとか決めて、機体の原作評価に当てはめて自分で修正になるかもしれません。

アサルトガンナー:耐久値・射撃に+5%、内包エネルギー・思考制御-5%
ソードキャリバー:白兵攻撃値+5%、精密行動力-5%
デモリッション:ミサイルに……。

 など適当ですが、下げるのは機体イメージ合わなくなる事もあるので
マイナスなしでプラスだけの方が選び易いかもしれませんね。
代わりにNPCはランクによって物凄い前後する、エースとかはPCでは無理なくらいに凄いとか。


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スキル編

●ルーリング・サマリー

 

長いので後述より抜粋

・パッシブスキル

・マニューバー

自分だけの(エクストラ・マニューバー)

・スキル例

・マニューバー例

 

 これらのスキルはガンダム・センチネルRPGやアリアンロッドRPGを参考にして居ます。

 

●パッシブスキル

 熟練度を示す数値です。

ストーリーの中ではともかく、MMO風にネットRPG用・掲示板用ですので数値化しています。

狭い動きの中で慣れて行きますので、基本的には上限は低いとしています。

お互いに同レベルな環境ですので、どうやって勝つかは、プレイヤーのプレイングに寄る訳です。

 

/スキルの基本形

『該当スキル名』:武装系

1レベル目:行動ペナルティの軽減

2レベル目:メイン能力+1

3レベル目:サブ能力+1

4レベル目:メイン能力+1(累積2)

5レベル目:サブ能力+1(累積2)

 

『該当スキル名』:その他

1レベル目:補助行動がペナルティ付きで可能になる

2レベル目:能力+1

3レベル目:能力+2

4レベル目:補助行動が可能になる

5レベル目:能力+3

 

解説:

 行動ごとに某かの欠点を持って処理されている。

1レベル目の成長はそれを打ち消す物で、走りながら攻撃、片手で射撃。

そういった、いかにもペナルティが発生しそうな行動を、問題無く行動可能にする。

本体設置武器であれば『移動攻撃で命中-1』、ライフルであれば『片手での射撃で命中-1』など。これらを打ち消す。

 

 2レベル以降は武器ごとの特性によって上がる能力が違い、向上の性能差がみられる。

よって得意な能力を上げると言う意味では4レベルであれば良く、5レベル目は後述のマニューバー設置の前提段階と成る。

これはスキルpの使用量に上限がある為で、単にその装備を強くするだけならば4レベルで十分、5レベル目は『最大まで育てた』という条件をクリアするだけである為。

 

 補助行動が可能になるのは、例えば回避スキルだと障害物に隠れる動作がペナルティ付きで可能になる。

補助行動で岩影に隠れるのが本来は『障害物:回避+』3であるとするならば、これがー2を受けて即座に+1で実行になる。

1レベルでは+1程度でかつ補助行動で普通に可能なことだが、弾薬交換などを補助行動で行いたいなら貴重かもしれない。

そしてこの能力も4レベルでペナルティなしになれば十分な効果の筈なので、5レベルまで育てるのは『最大まで育てた』扱いにする為である。

 

/スキルpの入手と最大値

 成長によってスキルpは増えて行きます。

しかしながらやれることには条件があることと、プレイヤー・ランクを示す為に便宜上の目安・上限があります。

 

『初期段階』:フリー6p + クラスの推奨スキル(2p)xクラス2個分 =10p

(アサルトは射撃系1レベル・白兵系1レベル、ガンナーは射撃系2種を1レベルずつ。など)

 

『シナリオ成長』:2p + ミッションに寄る

(成長向けミッションを選択した場合は+1p。ドロップ品ミッションなども存在する)

 

『ショート・キャンペーン』:3~5シナリオ程度を連続で実行する、便宜上の名前。

『グランド・キャンペーン』:5~10シナリオ程度を連続で実行する、便宜上の名前。

 前者は『ポケットの中の戦争』や『08小隊』などの、OVA的な『短く終わったらしいエピソード』が舞台。

後者は各ガンダムのストーリー2クール分程度の物語りが舞台。

当然ながら、キャンペーンでは独自のボーナスが付く。

 

 最大値に関してはキャンペーン規模を前提に、20p入手の合計30p程度が通常の設定上限。

ただしチャンピオンシップなどの、それ以上に成長した者同士の戦いでは、40pや50pなどが上限に成る。

これはストーリー状の人物が何もかも可能なのはおかしく、後のシリーズに登場する旧キャラが育って居るのは当然だからである。

 

●マニューバー

 慣れ(スキルの上昇)では現しきれない行動・プログラム・改造などを現す言葉。

基本的には誰でも頑張れば(技術を公開してもらえば)可能な動作。

遊んでいて試して居たら可能になったモノや、改造して練習したら、コマンドを並べて余分な行動を省きプログラムしたら……。

そんな風に誰でも実行出来る行動であり、阿頼耶識やスーパーモードなど機体OSの実行なども含まれる。

スキルが継続的に能力を安定上昇させるモノであるならば、マニューバーは一時的に能力を激増させるものと言える。

基本的には白兵戦武器なら何時でも、射撃なら弾倉交換など条件次第でいつでも使えるモノの方が弱い。反対にエグザムや阿頼耶識のような時間制限・回数限定などペナルティがあるほうが強力である。

 

/マニューバー取得と

『撃ち切り射撃』:難易度(軽)の場合

 マシンガンを使用して居る者が、オート射撃でレバーを引いたままずっと撃ち続けて居た。

この行動をプログラムに入力し、『撃ち切り射撃』を覚える。

それでこのマニューバーを設定できるようになるが、マニューバーそのものの最低条件は『慣れが最大まで行っていること』=5レベルを前提とする。

これは覚えたものの、本当に有効かは熟達して居ないと確信を持てない為である。

逆に言えば慣れさえすれば誰にでも可能な行動であり、特に改造は必要ない。

 

『指切り射撃』:難易度(中)の場合

 マシンガンを使用して居る者がシングル射撃を、大型マシンガンを使用して居る者がバースト射撃を行いたいと思っていた。

何度か練習して居ると極稀に成功することがある。人によっては稀に良くあると言う者もいる。

そこで一度記録したプログラムを見直し成功例を抽出すると、『指切り射撃』を覚える。

なお、このマニューバーが不可能なプラモデルもあるが、再確認すると指が動か無い仕様であったと確認できた。

よって指が動くモデルに拳を挿し換えるか、動く様にする改造を行えるならば、全てのキットで可能である。

 

/マニューバーの有効数

 上記の様な気付きで取得は可能・設定だが、有効にするのは限界がある。

ランク上昇ごとに1つ有効化が可能で、Dランクで2つ目、Cランクで3つめという風に成る。

基本的にプレイヤーはCランクが多いので(Bは指導者的な活動が必要)、必然的に複数のマニューバーの中から3つを使い分けることに成る。

ルール的には3つをデフォルトとして、2つは初心者枠として慣れるまでは2つであり少々の矛盾・取り直しは寛容に見ることとする。

 

●マニューバーの例

『110mmマシンガン』:基本ダメージ1d6、弾50発

バースト射撃:命中+1、3発消費、ダメージ判定1回

オート射撃:命中+3、5発消費、ダメージ判定5回

 

 上記の武装で残り残弾が36発程度の状態で、『撃ち切り射撃』と『指切り射撃』を試行する物とする。

ここでは射撃値4、マシンガンレベルは5(片手射撃ペナルティ無し。命中+2・ダメージ+2)であったとする。

 

1:『撃ち切り射撃』

 全ての弾を消費して、火力の向上を図る。

10発余分に射撃するごとに、命中+1・ダメージ+1・ダメージ判定回数+1。

このダメージはミサイルの爆風と同じく、加算するダメージでありヘクス全体(白兵戦距離)に通用するダメージとして扱う。

 

 36発からまずは5発消費して、30を余分に消費。撃ち切り前提なので無駄に1発を消耗する。

命中:4(射撃値) +2(スキルレベル5分) +3(オート射撃分) +3(30発消費分) =12

ダメージ:1d6 + 2(スキルレベル5分) + 3(30発消費分)= 1d6+5。うち3ダメージは特殊ダメージ

攻撃回数:5回 + 3回(30発消費分) =8回射撃

 

最終数値:1d6+5(3)ダメージ の8回攻撃。 命中値は12+2d6の判定

 

2:『指切り射撃』

 命中-2・ダメージ-1・回数軽減のペナルティを掛けて一段階射撃回数を下げる。

 

バースト射撃をシングルに。36発の前提なので残弾は35発。

命中:4(射撃値)+2(スキルレベル5分) +1(バースト射撃分) -2(指切り射撃補正) =5

ダメージ:1d6 + 2(スキルレベル5分) -1(バースト射撃分)= 1d6+1

攻撃回数:1回(シングル射撃化)

 

最終数値:1d6+1ダメージ の1回攻撃。 命中値は5+2d6の判定

 

前ページの『RGM-79 ジム』を雑魚のまま対象に比較。

耐久性(HP)20、回避4、装甲2p、判定ALL4、ミドルシールド有り(装甲3、耐久30)

 

『撃ち切り射撃』:1d6+5(3)ダメージ の8回攻撃。 命中値は12+2d6の判定

『指切りシングル射撃』1d6+1ダメージ の1回攻撃。 命中値は5+2d6の判定

 前者は装甲を引いて、1d6+2の8回がほぼ確実に命中。おそらく一斉射で粉砕。

後者は1d6-1の1回だけなので相手の残り耐久が1~2であれば、倒せる可能性がある。

なお相手がプレイヤー製作のジムである場合、得意能力が2~3高い可能性がある。よって計算が変わる。

回避系か装甲系かによるが、『撃ち切り射撃』では倒しきれない可能性が生じ、『指切り射撃』は50%で命中、その半分の可能性でダメージが通るレベルになると推測される。

これは当て易い武器であるマシンガンの限界とも言える。

 

自分だけの(エクストラ・マニューバー)

 マニューバーや機体OSでも現しきれない表現であり、それらの集合体と言えるモノがエクストラ・マニューバー……『自分だけの技』と呼ばれる。

そのプレイヤーが行いたかった行動の延長線上にあり、具体的には状況限定ながらコンボが登録可能になったと言える。

これらはマニューバー単独と違って臨機応変に使用できないが、複数のマニューバーを同時に実行できるためボーナスと言える。

前提条件は事前のコンボ登録。各マニューバーの条件に加えて改造同士の矛盾なく、一目で判るフレーバーを持って居ること(初心者枠の矛盾は甘めに見ること)。

 

 要するに、マスターが聞いて簡単に判る様な説明であれば十分です。説得できる自信が無ければアニメから探しましょう。

機体特性やキャラ特性などにあっている、改造を行っているなど、それまでの蓄積の延長であれば問題無く採用されるでしょう。

強力過ぎるコンボが成立する可能性がありますが、それを実行させないこともプレイングですので問題ありません。

ドラマチックな演出を行う為のギミックであり、本当にバランスブレイカー級であれば、悩むよりも先に運営側が修正議論を行うべきだからです。

 

/自分だけの(エクストラ・マニューバー)の例

1『トランザムに寄る爆発的な行動力に寄る、超高速連射』

2『トランザムに寄る上昇した機体性能での、ヘッドショット』

3『とても大きな半歩先』

 

・機体OS

『トランザム』: 条件:太陽炉の設置 使用回数:イメージ再現判定値分のターン(20pの雑魚だと4回)

 1ターンに行える行動が、全て1回分増える。

すなわち移動・準備行動・攻撃が一度ずつ行え、その時に可能なマニューバーも全て実行可能。

 

『ゼロ・システム』: 条件:ゼロ・システムの設置

 次のターンの大まかな行動が判り、その行動に対して添った行動をすると全ての判定に+1。

この行動はメモしておくこと。メモと違う他の行動をすると全ての判定に-1。

 

・マニューバー

『速射』

 準備行動で射撃を行う。ただし、その射撃の命中値-2、そのターンに行う他の攻撃に-1。

 

『スナイプ』

 準備行動や攻撃を放棄して狙いを付ける毎に、命中が+2増える。

この効果は累積するが、射撃と同時に失われる。

 

『部位狙い』

 部位の大きさに応じたペナルティを負い、狙った場所を撃つことが出来る。

普通に撃っても当たる胴体・盾で-1、壊しても倒せるとは限らない頭で-6、特定武装はサイズ的にもっと下回る。

 

 1は単純に、増えた準備行動・攻撃を使って、1ターンに4回射撃します。

2は逆に準備行動と攻撃を放棄して、頭狙いのペナルティを消して射撃します。

3はそのバリエーションですが、トランザムとゼロ・システムを組み合わせることで、一気に決めるつもりで行動を指定します。

速射のペナルティを軽減しながら連射しても良いでしょうし、当て易い場所を指定することで盾で防ぎ難い攻撃にもできます。同時に発動可能なマニューバー数にもよりますが、強力な攻撃になるでしょう。

 ただし相手もプレイヤーの場合は、某かのプレイングを掛けて来るでしょう。

初見殺しを秘匿し続けるのは難しいので、読まれた場合はマニューバーを使用して長距離移動や回避を底上げする可能性があるので注意が必要です。

 

●スキル例

 スキルの数は膨大になると思われるのと、解説と一緒に載せると煩雑になるので一部の例を載せます。また複数の属性を兼ねるモノは好きな方を使えますが、開始時に登録して選択を済ませておきます。

 

『本体設置火器』:武装系

1レベル目:移動射撃の-1修正を無効化する。

2レベル目:ダメージ+1

3レベル目:射程+1

4レベル目:ダメージ+1(累積2)

5レベル目:射程+1(累積2)

 頭部のバルカン、腕部の速射砲・滑空砲、胴体のメガ粒子ビーム砲など

 

『マシンガン』:武装系

1レベル目:片手射撃の-1修正を無効化する。

2レベル目:命中+1

3レベル目:ダメージ+1

4レベル目:命中+1(累積2)

5レベル目:ダメージ+1(累積2)

 無数に弾をばらまく制圧用兵器

 

『ライフル』:武装系

1レベル目:片手射撃の-1修正を無効化する。

2レベル目:ダメージ+1

3レベル目:命中+1

4レベル目:ダメージ+1(累積2)

5レベル目:命中+1(累積2)

 安定度の高いメイン武装

 

『バズーカ』:武装系

1レベル目:片手射撃の-1修正を無効化する。

2レベル目:ダメージ+1

3レベル目:命中+1

4レベル目:ダメージ+1(累積2)

5レベル目:命中+1(累積2)

 火力重視の貫通兵器。シュツルムファストなども含む

 

『大型火器』:武装系

1レベル目:片手でも命中-2で射撃が可能になる。

2レベル目:ダメージ+1

3レベル目:ダメージ+1(累積2)

4レベル目:片手でも射撃が可能になる。

5レベル目:ダメージ+1(累積3)

 ビームスマートガンや大型マシンガンなど

 

『ミサイル・範囲兵器』:武装系

1レベル目:爆風ダメージが2発ごとに入る様になる

2レベル目:爆風ダメージ+1

3レベル目:爆風ダメージ+1(累積2)

4レベル目:爆風ダメージが1発ごとに入る様になる

5レベル目:爆風ダメージ+1(累積3)

 ミサイル系を中心とした爆熱兵器で、威力そのものより避けてもダメージが入る方が重視される

 

『サイコミュ・ファング』:武装系

1レベル目:サイコミュによる同調攻撃が可能(サイコミュ兵器同士、サイコミュ使い同士)

2レベル目:射程+1

3レベル目:射程+1(累積2)

4レベル目:サイコミュ・一般も交えて同調攻撃が可能になる(サイコミュと通常武器、サイコミュ使いと一般人)

5レベル目:射程+1(累積3)

 脳波で攻撃する兵器。火力は無いが死角から攻撃できるので避け難い

同調攻撃というのは、同じ相手への攻撃をボーナス付きで行う攻撃行動。

 

『切り・ワイドスイング』:武装系

1レベル目:両手で持つと命中+1

2レベル目:命中+1

3レベル目:ダメージ+1

4レベル目:命中+1(累積2)

5レベル目:ダメージ+1(累積2)

 振り回すようなスイングによって当てることを前提とした攻撃。メイスなどでも可能

 

『突き・ワイルドスイング』:武装系

1レベル目:両手で持つとダメージ+1

2レベル目:ダメージ+1

3レベル目:命中+1

4レベル目:ダメージ+1(累積2)

5レベル目:命中+1(累積2)

 シャープなスイングで倒す事を前提とした攻撃。メイスなどでも可能

 

『回避』:その他

1レベル目:補助行動を使わずに、-2の修正で障害物(+3~)が利用できる

2レベル目:回避+1

3レベル目:回避+1(累積2)

4レベル目:補助行動を使わずに、障害物が利用可能になる

5レベル目:回避+1(累積3)

 

『盾防御』:その他

1レベル目:回避を捨てれば、自動的に盾防御が実行可能になる

2レベル目:盾防御+1

3レベル目:盾防御+1(累積2)

4レベル目:回避-2で避けて、失敗しても盾防御が実行可能になる

5レベル目:盾防御+1(累積3)

 シールドで防ぐことで本体への直撃を防ぐ

 

『機動防御』:その他

1レベル目:誘爆修正に-1

2レベル目:部位判定+1

3レベル目:部位判定+1(累積2)

4レベル目:誘爆修正に-1(累積-2)

5レベル目:部位判定+1(累積3)

 装甲の厚い部分で受けるスキル。地味だがシールドなどで防ぎ易くなり、クリティカル・ファンブルの影響を受けにくくなる。

 

・マニューバー例

 マニューバーの数は膨大になると思われるのと、解説と一緒に載せると煩雑になるので一部の例を載せます。

 

『撃ち切り射撃』:難易度(軽)

条件:撃ち続けられる武装であること(ミサイル・ファンネルなどの様な、一旦停止する武装では不可)

 全ての弾を消費して、火力の向上を図る。

10発余分に射撃するごとに、命中+1・ダメージ+1・ダメージ判定回数+1。

このダメージはミサイルの爆風と同じく、加算するダメージでありヘクス全体(白兵戦距離)に通用するダメージとして扱う。

 

『指切り射撃』:難易度(中)

条件:撃ち続けることが前提の武装であること武装であること。指が曲げられること

 命中-2・ダメージ-1・回数軽減のペナルティを掛けて、オートをバースト・バーストをシングルへなど一段階射撃回数を下げる。

 

『速射』:難易度(軽)

条件:射撃命中がマイナスではないこと

 準備行動で射撃を行う。ただし、その射撃の命中値-2、そのターンに行う他の攻撃に-1。

 

『同期射撃』:難易度(中)

条件:火器管制AIまたはリンク装置を搭載して居ること(専用装備でも構わない)、同じダメージタイプの武装であること

 1つの武器追加ごとに命中-2の修正を受けて、同じ相手に対して攻撃を行う。

 

『スナイプ』:難易度(中)

条件:自分または相手が移動して居ないこと。センサーパーツの強化(火器画話にレドームでも良い)

 準備行動や攻撃を放棄して狙いを付ける毎に、命中が+2増える。

この効果は累積するが、射撃と同時に失われる。

 

『部位狙い』:難易度(軽)

条件:腕やバックパックなど射撃を行う部位が無事であること

 部位の大きさに応じたペナルティを負い、狙った場所を撃つことが出来る。

普通に撃っても当たる胴体・盾で-1、壊しても倒せるとは限らない頭で-6、特定武装はサイズ的にもっと下回る。

 

『フェイント』:難易度(中)

条件:余剰スラスターや白兵武器が複数あり、タイミングを変更できること

 放棄する補助行動・攻撃1回ごとに相手の回避値を-3する。武器や余剰スラスターの数までこの効果は累積する。

スナイプの白兵版であるが、制限が厳しい分だけ強力

 

『貫通/ピアス』:難易度(軽)

条件:腕や肩など白兵を行う部位が無事であること、または白兵武器が実体兵器であること

 相手本体と盾の装甲値を半減させる。また盾専用のマニューバー『シールド放棄』を無効化する。

 

『強打/バッシュ』:難易度(中)

条件:白兵武器が実体兵器であること。一部巨大ビーム兵器は実体とみなす

 武器サイズx2のダメージを追加する。

ダガーなどどのハードポイントでも携帯可能な武器でサイズ1、アックスやソードでサイズ2。

大型白兵武器など後腰または拡張系横腰以上が3、両手持ち専用で設置でき無い武器が4になる。

 

『ノックバック/打突』:難易度(中)

条件:白兵武器が実体兵器であること。武装にスラスターが付いている、あるいは移動攻撃を行っていること

 相手を一歩後方に下がらせる。追撃し難くなるが追撃され難くなる

 

『クラッチ/拘束・体当たり』:難易度(中)

条件:余剰スラスターがある、または武装にスラスターが付いている、あるいは移動攻撃を行っていること

 自分の進行方向に追随させる。押し込む以上の意味は無いが、追撃はし易くなる(ノックバックの逆)

 

『プレッシャー』難易度(高)

条件:イメージ再現判定値が6以上

 攻撃を与えた相手の消耗度を進める。エネルギー消費のターン数か、人格消費の回数を1回分消耗させること

 

『強者の風格』難易度(高)

条件:イメージ再現判定値が6以上

 そのターン、人格消費系やヒーローポイントを誰も消費でき無くする。ただし、味方も含むのでタイミングには注意する事

 

・機体OS

 OSはマニューバーの一種で、スキルレベルの制限が無く、また機体に2つまで可能。

地味でペナルティの無い物から、激しいペナルティが存在するが強力な物も存在する

 

『教育型コンピューター』

 一系統のスキルを制限を越えて設置出来る。ただし機体が大破以上で失われる可能性があり、粉砕で確実に壊れる。

 

『ALICE』

 一系統のスキルとマニューバーを制限を越えて設置出来る。

ただし機体が大破以上で失われる可能性があり、粉砕で確実に壊れる。スキルポイントと違ってマニューバーは再取得が難しいことに注意。

 

『EXAM』: 使用回数:イメージ再現判定値分のターン(20pの雑魚だと4ターン)、戦場にサイコミュがあると自動発動

 使用中は全ての修正に+2。攻撃は射程内のサイコミュを自動選択すること。

ただし使用回数に限界が来ても、サイコミュがある限り停止できないことに注意

 

『NT-D』 特殊

 サイコミュスキルが高いと、発動中に制御可能になる『EXAM』。サイコミュ・ジャックは派生形マニューバー。

(相手のサイコミュと同じ武器をプログラムしており、コントロールする画像と組み合わせると乗っ取ることが出来る。ただし、別マニューバーなので使用数に注意)

 

『ゼロ・システム』: 条件:ゼロ・システムの設置

 次のターンの大まかな行動が判り、その行動に対して添った行動をすると全ての判定に+1。

この行動はメモしておくこと。メモと違う他の行動をすると全ての判定に-1。

 

『トランザム』: 条件:太陽炉の設置 使用回数:イメージ再現判定値分のターン(20pの雑魚だと4ターン)

 1ターンに行える行動が、全て1回分増える。

すなわち移動・準備行動・攻撃が一度ずつ行え、その時に可能なマニューバーも全て実行可能。

また他のエネルギー系ターン消費の回数と使用回数を競合する

 

『阿頼耶識』: 条件:味方にモビルアーマーが居ない、ビーム兵器を搭載して居ないこと。使用回数:イメージ再現判定値回(20pの雑魚だと4回)

 使用回数を消費すると、割り込んで行動が一回追加できる。

移動でも補助行動でも攻撃でも良いので強力だが、その分だけ制限が大きい。

また他の人格消費の回数や、ヒーローポイントの使用回数と競合する

 

『疑似阿頼耶識』: 条件:味方にモビルアーマーが居ない、ビーム兵器を搭載して居ないこと。使用回数:イメージ再現判定値回(20pの雑魚だと4回)

 消耗し尽しても機体が停止しないので実質上の上位互換装備。ただしドロップ品専用なので大破以上で壊れる。




 ひとまず考えている物をここに置きます。
次のストーリー更新までに、一番上にでも移動させる予定です。
ストーリーに登場する機体・キャラ・考えついた他のルールや装備例なども同様に張った後に移動予定。

/暫定的なキャラメイク案
1:完成度100%スタートで、最大2つまでクラスを取得可能。
2:完成度を5つの能力値にまずは平均化させる
3:クラスを取得すると基礎能力値-5%の代わりに、対応する副能力値+5%、対応するスキル+2個
(基礎能力に3つの副能力があるので、実質的に改造すると能力は下がる)

4:スキル数はクラスx2 + フリーポイント6p の最大10pスタート
5:作成したガンプラに準じた装備を取得し、スキルp10以上でプログラムをいじって居ればマニューバーも最初から獲得可能
(ミッションごとに+2p~なので、直ぐに覚えると思われる)

 マニューバーは対応する装備があるかどうか、自分だけの技は説得力が全て。
ただし、どちらも便利に使えるかどうかは不明なので、プレイングが全てに勝ることに注意。
例として言えば、トランザムとゼロシステムと速射で物凄い攻撃をしても、相手が阿頼耶識で射程外に逃げると意味が無くなるなど。


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装備品編

●装備品の定格化

 MMO・TRPGですので装備品、特に武装のデータは規格化されています。

基本的にはサイズによって作成ポイントが定まっており、割り振られています。

プラモデルですので手に入れれば設置できますし、増減するのは装備位置やオプションになるでしょう。

カスタム化はそれらの割り振りを、自分好みに修正して居るとも言えます。

 

●装備サイズとハードポイント

 装備品は基本的に四つのサイズと、それを設置するハードポイントで現されます。

武装の場合は基本系の能力があり、サイズで保持ポイントが大きくなり、それを設置・所持する方法が限定されて行きます。

武器特性+サイズ修正が基本的な性能だと思えば判り易いでしょう。

 

Sサイズ(2)

 最も小さいハードポイントとそこに設置する武装で、頭・腕・横腰・足などがこれに当たります。

設置出来る武装もバルカンやハンドグレネードに小口径のビーム、装備品もスラスターや通常弾倉・プロペラントタンクなどです。

 

Mサイズ(4)

 片手持ち可能な武器や基本的な武装の大きさです。片手・肩・後腰などがこれに当たります。

設置出来る武器は多岐に渡り、マシンガンやライフルにバズーカなど多彩です。装備品も大きめで大型弾倉にブースターなどです。

 

Lサイズ(8)

 両手専用武器を前提に、バックパック設置武器や腕部そのものを改造した大型武装です。

Mサイズ武器の延長線上にはありますが、用途が絞られる為にそれほど多い物ではありません。

 

LLサイズ(?)

 繋留武器や拠点設置武器など、それを保持したまま移動できない様な武装です。

例外としてスキウレやメガライダーのような移動砲台は存在します。

 

●ハードポイントの位置

 基本的には場所が決まっており、カスタムパーツを付けて増やしたり場所修正が可能です。

例えば『バックパック除去:背中後腰を取り払って、サイズをL(8)とする』などです。

なおモビルアーマーなどはハードポイントがなく、合計値で幾つまで……となります。

 

頭:S(2)

肩:M(4)

腕:S(2)

横腰:S(2)x2:2x2

後腰:M(4)

背中:M(4):バックパックのこと

足:S(2)

手持ち:L(8)~LL(?)

内部機構:合計4

 

●武装基本系

 武装は基本系があり、それらにサイズ補正での修正値を割り振る形で産出されています。

 

・マシンガン類

・ライフル類

・バズーカ類(亜種でグレネード弾)

・ミサイル類

・ファンネル類

・クラッカー類(亜種で手持ちグレネード)

 

・マシンガン類:

 沢山の弾をばらまいて複数回攻撃する、命中性の高い武器です。

射程は手元から中距離まで延びて居ます。

雑魚の掃討や強敵への牽制攻撃には向きますが、強敵・戦艦を一撃で仕留めるような戦いには向いて居ません。

 

基礎命中:+1:複数攻撃:射程0~3:弾30:火力サイコロ1つ(1d6)

特殊:『複数発射で命中率・攻撃回数増加』

 

・ライフル類

 安定した命中力と高威力で、主力兵装を担って居ます。

射程は近距離から長距離で、白兵戦距離で攻撃するには向きません。

万能ゆえに主力兵装なのですが、逆に言えば中途半端で対策もされ易い武装に成ります。

 

基礎命中:0:射程1~4:弾10:火力サイコロ3つ(3d6)

 

・バズーカ類

 命中性は悪いものの、高い火力で戦艦などの相手を追い詰める為の武装です。

射程はライフルと同じ様なものですが貫通性が高く、重装甲相手には向いています。

バランスは悪いものの大型化しても弾しか増えないので、Sサイズ兵器を予備火器として持つ事が多い模様。

 

基礎命中:-1:射程1~4:弾2:火力サイコロ2つ(3d6)+6

 

・ミサイル類:

 複数の弾をまとめて飛ばし、更に火薬・圧縮空気・破片などで一定範囲を爆発させる武装です。

射程は中距離から遠距離で、ロングレンジを制圧する武器です。

性能は大型弾頭系と多弾頭系で違います。

 

基礎命中:0:射程2~5:弾3:火力サイコロ1つ(1d6)、追加ダメージ+1・範囲ダメージ+1

特殊:『複数発射で追加ダメージ・範囲ダメージup』

 

・ファンネル類

 脳波コントロールで制御する兵器で、火力は低いものの死角を突くことを前提としているので強力な武装です。

マニュアル操作(ゲーム的には視点ポインタ)と、予め決められたパターンの軌道を持つの二種類があります。

優秀な兵器ですが重装甲相手には効き難い装備です。

 

基礎命中:0:射程2~4:弾3:火力サイコロ2つ(2d6)

特殊:『相手の回避-3』、装備制限(内部機構でサイコミュ等を設置していること)

 

・クラッカー類(亜種で手持ちグレネード)

 主に近距離用の兵装で、火薬・圧縮空気・破片などを爆発させて範囲攻撃を行います。

予備兵装の一種ですが、その範囲と携行性は愛用する者も多い模様。

 

基礎命中:-2:射程1~2:弾1:火力サイコロ3つ(3d6)、範囲ダメージ+3

 

 

Sサイズ武器、基本サイズ2、弾倉サイズ1

『Lマシンガン』:基礎命中:+1:射程0~2:弾30:火力:1d6

『速射砲弾』:基礎命中:0:射程1~4:弾10:火力2d6

『ロケット弾』:基礎命中:-1:射程1~4:弾2:火力2d6+6

『Sミサイル』:基礎命中:0:射程2~5:弾3:火力1d6、追加ダメージ+1・範囲ダメージ+1

『ファング』:基礎命中:+1:射程2~4:弾3:火力2d6

『クラッカー』:基礎命中:-2:射程1~2:弾1:火力3d6、範囲ダメージ+3

 

Mサイズ武器、基本サイズ4、弾倉サイズ2

『マシンガン』:基礎命中:+1:射程0~3:弾50:火力:1d6

『ライフル』:基礎命中:0:射程1~4:弾15:火力3d6

『バズーカ』:基礎命中:-1:射程1~4:弾5:火力2d6+6

『Mミサイル』:基礎命中:0:射程2~5:弾4:火力2d6、追加ダメージ+2・範囲ダメージ+2

『ファンネル』:基礎命中:+1:射程2~5:弾4:火力2d6

 

Lサイズ武器、基本サイズ8、弾倉サイズ3

『大型マシンガン』:基礎命中:0:射程0~4:弾50:火力:3d6

『大型ライフル』:基礎命中:0:射程1~5:弾5:火力4d6+2

『大型バズーカ』:基礎命中:-1:射程2~5:弾5:火力2d6+10

『Lミサイル』:基礎命中:+1:射程2~5:弾2:火力4d6、追加ダメージ+4・範囲ダメージ+4

『ビット』:基礎命中:+1:射程2~5:弾6:火力3d6

『榴弾砲』:基礎命中:-3:射程4~5:弾1:火力4d6、2ヘクス範囲ダメージ+4

 

白兵武器:

アックス2d6:Sサイズ

メイス:2d6+6:Mサイズ

サーベル:3d6:Mサイズ

大型メイス:3d6+6:Lサイズ

斬艦刀:4d6:Mサイズ

 

●装甲類:

・積層装甲

 装甲板を張りつけるタイプの装甲で、耐久値が増加する

一応のハードポイント箇所を決めるが、全体的に嵩ましして、最も厚い部分であるとする

 

Sサイズ:耐久値+2

Mサイズ:耐久値+5

Lサイズ:耐久値+12

 

・硬化装甲

 装甲板を堅くするタイプの装甲で、耐久値が増加する

一応のハードポイント箇所を決めるが、全体的に嵩ましして、最も厚い部分であるとする

 

Mサイズ:装甲+1

Lサイズ:装甲+3

 

・複合装甲

 積層装甲と複合装甲のハイブリット。

 

Lサイズ:耐久値+5・装甲+2

 

●装備品

キャタピラ・ローラー:足専用:Sサイズ

地上専用の車輪・無限軌道。移動力+1

 

ブースター:Mサイズ

移動力+1

 

スラスター:Sサイズ

相手地形への進軍・離脱、難易度地形への移動時のみ、移動力+1

 

カウンターウエイト:肩・足:M・Sサイズ

地上専用。命中補正+1(0まで)

反動を抑える為の装備。

 

プロペラントタンク:Sサイズ

推進剤+10p

 

格張フレーム:肩・腰:M・Sサイズ

回避-1で、その部位のハードポイントに+2する

 

追加ジェネレーター:内部機構:1つごとに1

 2つ付けるごとにビーム兵器のダメージが+1。本体設置火器に直結すると1つごとに+1。

またはビームが装備出来ない機体が装備可能になり、あるいは特殊機構を動かす前提装備に成る。

 

 




 と言う訳で、ザっとですが装備品です。水曜日か木曜日に戦闘回予定。
いつも通り、その時には場所を移動させる予定です。

基本的には数値はトレードオフで、右をあげるか左を上げるかの差になっています。
(マシンガンとライフルの弾数補正は特殊ですが、他の弾は1p、射程・ダメージ1d6は2pくらいになっているはずです)

これにカスタムルールとか、ビームコートなど様々な装備を足して行く感じになります。
特殊な装備は追加ジェネレーターを付けてから、そこからエネルギーを引いて強化して行く感じ。
ビルドファイターズとかのRGシステムとかのイメージですね。


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ゲームの手順

●一ターンに取り得る行動

 ゲーム中に可能な行動は基本的に決まって居ます。

最初にそのターンの状況を把握し、移動し、準備し、攻撃を行って、終了。

これらを一巡行い、決着がつくまで繰り返します。

 

 以下に例外を除く、基本行動を説明していきます。

 

1:『把握フェイズ』

行動基本値 + 2d6(サイコロ2個) + スキル修正値。の結果で、先に動く順番を決めます。

 

 確認、合図のみが可能な行動です。

 (以下、『~のみ』と言う行動は、一部の装備・マニューバーを例外とします)

 

2:『移動フェイズ』

移動基本値 + 装備修正 + スキル修正値。歩ほど移動できます。

 

 基本的に移動のみしか行うことはできません。

移動は一歩分で一移動できますが、山間などの地上地形や、敵が居る地形への侵入は余分に移動コストが掛ります。

 

3:『準備フェイズ』

 様々な準備行動を一つ行います。

弾倉の交換ならば予備弾倉、障害物を利用するのならば隠れる事が可能な場所など、条件が合致するオープン・マニューバーを行うことが出来ます。

 

4:『攻撃フェイズ』

 様々な攻撃行動を行います。

通常の射撃攻撃や白兵攻撃を主体として、『連射』『二刀流』など様々なオープン・マニューバーやマニューバーが存在します。

 

・命中基本値(射撃や白兵) + 装備修正 + 2d6(サイコロ2個) + スキル修正値

・回避基本値 + 装備修正 + 障害物修正 + 2d6(サイコロ2個) + スキル修正値

 を比べあって命中するかどうかを決めます。

その後に

・ 装備ごとのダメージ値 + Xd6(X個のサイコロ数) + スキル修正値

 のダメージを与え、相手の装甲値分軽減します。

 

5:『終了フェイズ』

 様々な最終処置を行います。

ターン終了時に切れる時間制限系の装備やマニューバー、エネルギーの消費とエネルギー切れなどの確認を行います。

基本的には何かが終わる、消耗する確認のみしか行いません。

 

●例外処置としての、装備品・マニューバー

 上記の行動には、例外処置として装備品の起動やマニューバーを行うことが可能です。

 

例:

『把握フェイズ』に、マニューバー:『電撃戦』で先に行動するなど。

 

『移動フェイズ』に、オープン・マニューバー『高速移動』で直線移動を二倍の距離に(宇宙空間か飛行が前提)

 

『準備フェイズ』に、オープン・マニューバー『障害物の利用』で障害物サイズの回避修正を得る(一定サイズの障害物が必要)

 

『準備フェイズ』に、マニューバー『フェイント』で準備行動を消耗して、相手の回避-3(予備の武器、または予備のスラスターが必要)。

            マニューバー:『速射』で命中-2を受けながら攻撃など。

 

『攻撃フェイズ』に、オープン・マニューバー『連射』によって、オート射撃を行い弾丸を10発消耗するが複数回攻撃可能(バースト射撃は通常の射撃)。

 

『攻撃フェイズ』に、オープン・マニューバー『振り被り』によって、-6という大幅な命中低下の代わりに、白兵戦ダメージ+2d6。

 

●オープン・マニューバーとマニューバーの区分

 

オープン・マニューバー

 装備品や時間を掛ければ誰でも可能な事がオープン・マニューバーです。

上記の例で言えばカタパルトを使って高速移動、大きな隕石という障害物に隠れて回避修正を得るなど、状況次第で誰でも行うことが可能です。

この時、オープン・マニューバーの使用中であっても、マニューバーの使用限界には含まれませんし、マニューバーを限度一杯登録して居ても、オープン・マニューバーの行使は制限されません。

 

マニューバー

 訓練やプログラムの起動によって、特殊な補正を受けるのがマニューバーです。

マニューバーは基本的に何かを代償コストとして消費し、代わりに大きな補正を得る行為になります。

基本的に成長したキャラクターはターンに一つ、コンボとして登録されている『自分だけの技』は全て使用可能です。

 

 またマニューバーはプラモの改造に寄って、カスタム化することも可能です。

例えば普通の『二刀流』はオープン・マニュ-バーで、-6の命中低下の代わりに両手で一回ずつ攻撃になりますが

補助具とする『二刀流攻撃』はフェイントに近い命中修正+2を得る為のマニューバー、『二刀流防御』は白兵攻撃専用に対し受け+3の修正値を上げるマニューバーが存在します。

この時、『命中修正-6、両手で一回ごとの攻撃』の代わりに、『白兵命中+2』や『白兵受け+3』の修正を得て居る事になります(マニューバーを使わない事も可能です)。

こういった例を元に、マニューバーで得られる数値を別のモノに振り返ることも可能です。

 

 カスタム化が可能かどうかはゲームマスターの判断ですが、目安としては似たような行動よりも低い能力値の場合は可能と思って良いでしょう。

たとえば『フェイント』の相手の回避-3よりも、『二刀流攻撃』の白兵命中値+2の方が明らかに低い数値なので、許可はおり易くなります。

このカスタムは一見損にも見えますが、『フェイント』が準備行動または攻撃を一回無駄にする必要があるのに対して、『二刀流攻撃』は両手に一つずつ武装があれば良いので扱い易いことから、損ではないと考える事が可能です。

実際には改造に寄って複数の腕がある機体であったり、隠された武器がある機体で使用すると思われるので、メリットの方が大きくなるでしょう。

(注意が必要なのは、上昇させ難い命中回避と、上昇させやすいダメージではレートが異なることに注意してください。白兵防御が+3なのは白兵攻撃『のみ』しか防げない為です)

 

 ゲームマスターは迷った場合は気軽にOkを出した後、シナリオを崩壊させるほどの効果であった時に修正パッチを当てるくらいのスタンスで良いと思います。

修正する例としては『電撃戦』は宣言するだけで先行になるため、強過ぎる場合はエネルギー消費を付けるなり、行動にマイナスを付けることにします。

 

 パッチを当てるタイミングはミッション後ならばいつでも構いませんが、判断するタイミングは他のプレイヤーから要望があった時で良いでしょう。

これはゲームマスターはプレイヤーに勝つ為の存在ではなく、平等に扱って判定とシナリオの進行を判断する為です。

プレイヤーを苦戦させて勝利を味わって欲しいならば必要なだけ敵を増やせば良いのであり、修正値1pを巡ってプレイヤーと議論するほどで派内とも言えます。

(逆に、他のプレイヤーから強過ぎると抗議が出るのであれば、ミッション終了した後で修正を掛ければ良いでしょう)

 

●ハードポイント

 ガンプラは随所にハードポイントを持って居ます。

これは装備を固定する為のラッチが付きエネルギー供給しており、設置可能な場所があるという意味です(リアルではただのスペースですが)。

 

 基本的なハードポイントは、頭・肩・腕・横腰・後腰・足・バックパック・両手・その他に成って居ます。

このうち頭・腕・足は小さく、バックパックは取り外して後腰と共同で大きく使うことも可能です。

カスタム化してサイズを大きくすることは割りと可能ですが、切除が主な手段になるので、基本的には不可逆な改造であり耐久値が下がる傾向に成ります。

 

 設置する装備サイズの目安は、頭部バルカンや腕部速射砲に脚部スラスターなどで2、通常の手持ち火器で4、両手武器や背部専用武器で8となります。

 

 

頭:サイズ2

 頭部のハードポイントは大きさの問題で小さく、基本的にはバルカンやレーダーくらいしか詰めません。

頭とバックパックを接続したアイザックなどもありますので、似たような改造を施す事も可能です。

 

肩:サイズ4

 実際には腕の一部・胴体の一部にまで張り出して居る大きな部分です。

当然ながらあまり大きくする改造を施すと、腕が動かなくなったり命中補正にマイナスが掛ったりします。

フルアーマー・ユニコーンの重武装がその例ですが、ユニコーンのように使用後にパージできるならマイナス補正は消滅します。

また大型をバックパックに設置する場合は、砲身が邪魔する為に肩には装備出来なくなる場合があります。

 

腕:サイズ2

 腕のハードポイントも大きさの問題で小さく、基本的には速射砲やグレネードを装備する程度です。

武装と一体化した腕を造ったり、盾に格張パーツを付けてもっと大きな装備を付けることは一応可能です。

手持ち火器の命中精度に大きく関わってくるので、あまり大きくすると命中にマイナスが掛る事もあります。

(なお、通常サイズの武装を両手で持つと、命中修正+2が付きます)

 

横腰:サイズ4

 実際には前腰の一部に張り出し、スカートを付ける事も含めて大きな部分です。

ここには白兵装備を含めて取り外し可能な武装を付けたり、火器やスラスターを設置してフレキシブルな稼働をさせる事もあります。

 

後腰:サイズ4

 ここも背中の一部に張り出しスカートを付ける事も含めて大きな部分です。

予備の手持ち武装を取り外し可能な状態で設置したり、大型スラスターを設置する事があります。

またバックパックを取り外して、両手専用武装などの大きな武装を取りつけることも可能です。

 

足:サイズ2

 やはり大きさの問題で小さく、ミサイル筒やベクターノズル(突入・離脱専用スラスター)を装備する場所です。

足を取り外してホバーにしたり、四足にするなど大胆な改造も可能ですが、バランスがおかしくなって回避に問題が出る事もあります。

なお、足と腰にはカウンターウェイトやカウンターノズルを付けて、大型武器の反動を減らす様な専用装備もあります(マイナスを減らすだけ)

 

バックパック:サイズ4

 背中の大部分を使用する大きな設置個所で、取り外して後腰と連結する事も視野に入って居ます。

バックパックそのものの取り変えであるならば改造がし易く、またバックパックに取りつけるような格張を施す事も可能です(バランスが悪くなって回避が下がりますが)。

改造の中で最も扱い易い場所で、ゲームマスターからの許可も居り易い場所に成ると思われます。

当然ながらこの場所に大型火器を取りつけると、肩に装備出来なくなります(サイズ8の大型武装を設置し、肩と合一化すると考えても構いません)。

 

両手:サイズ8(または右手4、左手4)

 最も大きな武装設置部分で、当然ながら予備武装さえあれば持ち替えで簡単に変更できます。

腕と一体化した装備であれば持ち替えが不可能になる代わりにサイズ6で、両手で支えるボーナスも狙えます。

逆に武装に追加された武装(ライフルグレネード)や、盾に追加された武装(シールドミサイル)などはマイナスも無い代わりに両手で支えても命中ボーナスは入りません。

また専用の副腕を改造で付け加えれば片手でも両手で支えるボーナスをもらえる事もあります。

 

その他:サイズ4

 プログラムや胴体の残り部分など、万能であり、他の場所には設置できないOSなどを現します。

この場所に設置した場合は内部構造を改造したことに成り、逆に内部構造に何かを取りつけるとOSなどのカスタム化に許可がおり易くなります。

 

・OS:サイズ2(その他専用)

 モビルトレース・システムや阿頼耶識、教育コンピューター系(ALICEやNT-Dなどを含む)と言った原作中に登場する独特の操従補助です。

モビルトレ-ス・システムならば動作制御の追加(登録には視点ポインタや操縦PADなどを使いますが)、そしてビームの位置設定などが可能になり、更にスーパーモードなど派生する能力にも発展します。

強力なだけに万能である『その他』を多く使う他、阿頼耶識であればビーム使用不可・MAが味方に居てはいけないなどペナルティも同時に有して居ます。

 

・可変機構:サイズ4(ドロップ品の場合のみその他専用、改造により他の場所に分散可能)

 変形させパーツの位置を付け変えることで、スラスターや本体設置武装の位置を修正する事が可能です。

当然ながら改造により、自分で変形機構を組み込む事も可能になります。

 

・プログラム:サイズ1(その他専用)

 特殊な方法を繰り返し、あらかじめ登録しておく為の欄です。

例えばファンネルをオートで射撃させる場合は前方数ヘクス先という事に成りますが、視点ポインタによるマニュアルでこれを側面から射撃させたり、後方から自分の前面に牽制させたりということも可能です。

この動作を登録しておいて、いつでも使えるようにしておくということになります。

プログラムは一種類につきサイズ1なので、複数のパターンを徒黒くすることが可能です。

(マニュアル操作ならば無改造でいつでも可能な動作に限りますが、プログラム前提の動作からカスタム化は可能です)

 

・ジェネレーター強化措置:サイズ1(その他専用)

 ビーム兵器が使用できない出力のモビルスーツがビーム使用可能になります。

また特定の装備に固定すると、ビーム兵器のダメージを+2したり、スラスター(突入・離脱のみ)からブースター化(移動+1)させます。

 

・エネルギー供給装置:サイズ1(バランス低下により回避が下がっても良いならば、武装側でも良い)

 コートなどで供給ラインを接続してビーム兵器の弾薬を補充できるように成る。

本体のエネルギー1につき弾倉・エネルギーCAP1つ分(ビームスプレーガンなら15発、ビームライフルなら10発、ビームマートガンで5発ほど)。

 

・内部遮蔽装置:サイズ1なら一回、サイズ2なら3回

 その他に設置した装備を壊れない様にガードします。

具体的に言うとクリティカルが発生すると追加で壊れることがあるので、代わりに壊れてくれます。

どちらかというとオマケ的な装備ですが、カスタム化によって特定の装備だけを守ることで装置の耐久値が若干増えます。

 

●ガンプラ・シートの例(暫定)

 暫定的ですが造ってみました。

まだ未完成なので、スキルの方の修正値とか書く欄がありません。

また実際にはゲームマスターは、この改造はアリ、強過ぎる場合はパッチ必要かも。などのメモを取って居ることと思われます。

 

 

【挿絵表示】

 




 ここはこうした方が良い、良く判ら無い、こんなデータの場合はなど
御意見がありましたら感想では無く、メッセージで頂けたら反映していきます。
(アンケート的な物になってしまうので、感想では問題がある様ですので。もちろん作品に関して思った事であれば、感想欄で構いません)

 なお、この作品で造ってる独自設定や、キャラ傾向、ガンプラの改造傾向などは
フリー素材として適当に雑魚役や、こんなミッションがある。などとして使用されても構いません。
(問題も生じますので、名前そのものは変更してください)


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カスタムの仕様

●仕様の1覧

 ガンプラを組み上げた時に、装備や改造込みで決まる傾向が仕様です。

これらはガンプラの基礎能力を1応の形で決定しますが、更なる改造で修正していくことも可能です。

 

・『基礎系』4型 x 『派生形』3種

 仕様は攻撃型や機動型などの基本系があり、そこから微妙に違う派生形が存在して居ます。

攻撃系であれば癖の無いアタッカー、逆に攻撃力は高くとも欠点の大きいバーサーカーなどが存在します。

改造や装備などで派生形も含めて決定しますが、キャンペーンなどでゆっくり微調整を繰り返せば欲しい能力値に修正する事も可能でしょう。

 

・仕様の決定で得られるモノ

 改造などで派生形も含めて決まると完成度が下がり、まず5%ほど主要能力値が劣化します。

その後に強化した副能力値が2つ上昇し、パッシブスキルを2つ得ることが可能です。

(仕様を2つ選び、フリー枠に6つのスキルがあるので、パッシブスキルは合計で10になる。なおゲーム開始時の最大レベルは2)

 

以下のリストは1応のモノです。バランスがおかしかったり、表記的・世界感的により正しい表現があれば修正いたします。

(以前のキャラシートにあった、キャリバーをライトアーマーなど微妙に調整もします)

ゲームマスターは自分の判断で調整を行うことができ、プレイヤーはキャンペーンの中で修正する事が可能です。

 

攻撃系3種

解説:

 攻撃的なフォルムと多くの武器を持つガンプラで、ダメージを与えることに特化して居る。

長所が少ないが欠点も無いアタッカー、機動性を捨てより攻撃的なバーサーカー、バランス型のアサルトが存在する。

 

1:アタッカー

主要能力値の劣化:起こらない

副能力値:射撃値か白兵値のどちらかが上昇する

パッシブスキル:射撃系か白兵系の中から、スキル2種を1レベルずつ取得

 

2:バーサーカー

主要能力値の劣化:機動性

副能力値:射撃値か白兵値のどちらかが2上昇する

パッシブスキル:射撃系と白兵系の中から、スキル1種を2レベル取得

 

3:アサルト

主要能力値の劣化:再現値

副能力値:射撃値と白兵値の両方が1ずつ上昇

パッシブスキル:射撃系と白兵系の中から、スキル1種を1つずつ取得

 

射撃系3種

解説:

 安定したフォルムと射撃武器を持つガンプラで、撃ち合いを得意としている。

長所が少ないが欠点も無いガンナー、運動性を捨てより射撃が得意なスナイパー、特殊性に物を言わせたブラスターが存在する

 

1:ガンナー

主要能力値の劣化:起こらない

副能力値:射撃値が上昇する

パッシブスキル:射撃系の中から、スキル2種を1レベルずつ取得

 

2:スナイパー

主要能力値の劣化:運動性

副能力値:射撃値が2上昇する

パッシブスキル:射撃系の中から、スキル1種を2レベル取得

 

3:ブラスター

主要能力値の劣化:機動性

副能力値:射撃値とプログラムが上昇する

パッシブスキル:射撃系と再現性の中から、スキル2種を1つずつ取得

 

白兵系3種

解説:

 肩や腰が強固なフォルムで格闘用武器を持つガンプラで、近距離での戦いを得意としている。

長所が少ないが欠点も無いストライカー、操作性を捨て切り込むのが得意なウェポンマスター、耐久性も高く打撃を行うグラディエイターが存在する

パッシブスキルの取得範囲は装備の適用範囲が狭い事もあり、他よりも広い範囲で取得可能。

 

1:ストライカー

主要能力値の劣化:起こらない

副能力値:射撃値が上昇する

パッシブスキル:射撃系の中から、スキル2種を1レベルずつ取得

 

2:ウェポンマスター

主要能力値の劣化:操作性

副能力値:白兵値と先制値が上昇する

パッシブスキル:白兵系と運動性の中から、スキル2種を1レベルずつ取得

 

3:グラディエイター

主要能力値の劣化:

副能力値:白兵値と耐久値が上昇する(耐久値は5)

パッシブスキル:白兵系と防御系の中から、スキル1種を2レベル取得

 

移動系3種

解説:

 スマートなフォルムで移動系の装備を持つガンプラで、長距離を移動する事を得意としている。

長所が少ないが欠点も無いクルー、構造性を捨て軽量化に努めたライトアーマー、地味に突入した先で戦線維持を行うマリーネが存在する

 

1:クルー

主要能力値の劣化:起こらない

副能力値:移動値が上昇する

パッシブスキル:機体操作系性の中から、スキル2種を1レベルずつ取得

 

2:ライトアーマー

主要能力値の劣化:構造性

副能力値:移動値と回避値が上昇する

パッシブスキル:機体操作系の中から、スキル2種を1レベルずつ取得

 

3:マリーネ

主要能力値の劣化:再現値

副能力値:移動値と耐久値が上昇する(耐久値は5)

パッシブスキル:機体操作系と防御系の中から、スキル1種を2レベル取得

 

防御系3種

解説:

 ガッシリとした堅牢なフォルムで防御用の装備を持つガンプラで、守り抜く戦いを得意としている。

長所が少ないが欠点も無いディフェンダー、回避も装甲も高く生存性の高いサバイバー、足を止めて仲間を守るブロッカーが存在する

 

1:ディフェンダー

主要能力値の劣化:起こらない

副能力値:防御値が上昇する

パッシブスキル:防御系の中から、スキル2種を1レベルずつ取得

 

2:サバイバー

主要能力値の劣化:再現性

副能力値:防御値と回避値が上昇する

パッシブスキル:防御系の中から、スキル2種を1レベルずつ取得

 

3:ブロッカー

主要能力値の劣化:機動性

副能力値:防御値と耐久値が上昇する(耐久値は5)

パッシブスキル:防御系の中から、スキル1種を2レベル取得

 

●現時点でのパッシブ・スキルの一覧

 長くなるので、ここでは名称のみをのせます。なおゲーム開始時の最大レベルは2。

一覧の作成時日時が別の日である為、これらのスキルは増減する他、系統自体が統廃合する可能性があります。その場合は仕様の取得スキル種別も変更されます。

他のページやこれまでの欄との齟齬は、後日に修正予定ではあります。

 

射撃系スキル

・マシンガン

・ライフル

・バズーカー(シュツルムファスト含む)

・ハンドグレネード(手投げ弾)

・ミサイル

・サイコミュ(ファング含む)

 

白兵系スキル

・格闘(体当たり)

・白兵戦(突き・ダメージ系)

・白兵戦(切り・命中系)

・二刀流(二回攻撃)

・大振り(両手でのダメージ上乗せ)

 

防御系スキル

・回避

・シールド防御

・受け流し(格闘・白兵の受け)

・受け身(当たる場所のコントロール)

・機動防御(ミサイル・グレネードの爆風による範囲攻撃を防ぐ、耐爆防御)

 

機体操作系スキル

・移動補正(相手の居る場所への突入・離脱含む)

・合体変形(搭乗込み)

・装備交換(弾薬交換)

・遮蔽物の利用(回避補助)

 

再現性

・プログラム整理(数の増加。ハードポイント:『その他』が増える)

・プログラム補正(リソース系使用回数の増加。トランザムの持続時間が長くなるなど)

・ヒロイック(ヒーローポイントの増加。採用時のみ。使用回数4が増える)

・機体制御系サイコミュ(一定回数、この能力値で代用判定。)

・リラックス(リソース系の回復速度が条件付きで速くなる)

 

●オープン・マニューバーの1覧

 プレイヤーは特殊な装備や改造を繰り返した結果、基本的に3つまでのマニューバー(特殊な行動)を取得できます。

それとは別に、装備など特定の状況であれば誰でも使えるのがオープン・マニューバーです。

オープン・マニューバーは取得制限や使用制限を受けず、使用可能な状況のみですがいつでも単体であったり組み合わせて使用可能です。

 

現段階では『待機』、『高速移動』、『装備交換』、『合体変形』、『遮蔽物に隠れる』、『援護』、『庇う』の七つが存在します。

 

・イニシアティブ・フェイズ

1:『待機』

 指定した状況まで行動を遅らせます。

相手の行動に割り込める代わりに、指定した状況が起きなければ行動放棄になります。

 

・移動フェイズ

 

2:『高速移動』

 スラスターを追加した上で飛行しているか、宇宙でカタパルトを使用して居ると、移動力が2倍に成ります。

更に命中補正がマイナスの武器で攻撃されることはありません。

ただし移動方向を変更したり回避行動を取る場合は、その時点で高速移動は解除されます。

 

・準備行動フェイズ

 このフェイズに可能なことは1つですが、それ未満の行動やパッシブ・スキルで一部制限を掛けずに行うことも可能です。

(パッシブ・スキルが弱い・特徴が無い場合、調整時にパッシブ・スキルを持って居る場合のみなど。変更が入る可能性はあります)

3:『装備交換(弾薬装填)』

 装備を予備の交換し、今まで使っていた武器を予備の場所に移動させしまいます。

この行動は準備行動は1つだけの制限に含まれますが、使い終わった装備や弾薬を放棄する場合は制限に含まれず他のマニューバーを行えます。

 

4:『合体変形(搭乗)』

 専用の機構を持つ場合、合体または変形を行います。またSFSのように搭乗する事を含みます。

この行動は準備行動は1つだけの制限に含まれますが、1つの関節を曲げて簡易変形や、SFSから降りるだけの場合は制限に含まれず他のマニューバーを行えます。

(例として、ライフルを捨てながらサーベルを取り出し、更にSFSから飛び降りても他にマニューバーを行えます。もちろんライフルは高い確率で無くなってしまうでしょう)

 

5:『遮蔽物に隠れる』

 遮蔽物が存在する場合、その影に隠れてサイズによる回避修正を得ます。

この行動は準備行動は1つだけの制限に含まれますが、宇宙で大きな隕石がすれ違う・砂漠で砂嵐が起きるなどの場合は制限に含まれず他のマニューバーを行えます。

(隕石にぶつかったり、砂嵐の中で行動し続けない限りは、特に問題もおきません)

 

・行動フェイズ

6:『援護』

 射程などの制限に問題が無い場合、攻撃判定などの行動を放棄する事で、他者のフォローを行い判定に+1の修正を与えます。

PC・NPCが行動する権利からすれば微々たるモノですが、最大で2機による+2まで可能になります。

これは煩雑な処理を行うPC・NPCが行動を放棄することで、ターンの処理が楽になるボーナスになります。

 

・防御フェイズ

7:『庇う』

 まだ行動して居ないガンプラは、そのターンの行動と回避行動を放棄する事で代わりにダメージを受けることが可能です。

命中値を見た後で庇うかどうかを決定し、回避行動を飛ばしてそのままダメージを決定判定に移ります。

ただし防御用の装備がある場合は起動できます。

(I・フィールドなどスイッチだけで済む様な行動はOK。例外として両手持ち大型シールドによる防御判定も可能です)

 

注意:派生形の上位互換マニューバー

 オープン・マニューバに良く似たマニューバーが存在します。

これらは誰でも可能な事を、わざわざマニューバーで取得(取得制限に含まれる)しているので、内容的には上位互換となっています。

 

派生形:『様子を見る』

 待機の上位互換で、指定行動の判定に+1を得ます。

さらに指定した状況が起きなければ次ターンの行動判定に+2を得ます。

 

派生形:高速戦闘

 高速移動の上位互換で、曲がることが可能なほか、命中時のマイナス判定で撃てないだけでは無く、回避・防御判定がマイナスの状態で回避・防御されることもありません。

ただし1度の方向転換および行動につき、使って居ないスラスターを指定する必要があります。

 

派生形:『指揮』

 援護の上位互換で、自分1人だけ修正値が+2になり、修正値が最大で+3になります。

更に見えて居ない場所でも、音声やMAPデータ上のデータでも修正を与える事が可能になります。

(当然ながら、時間が異なるタイミングで指示だけすることは不可能です。あくまでリアルタムで指示を与えることが条件になります)

 

派生形:『カバー』

 庇うの上位互換で、普通の盾を持って防御判定または白兵武器で受けを行うことが可能です。

更に庇う対象が自分の後ろから動か無い場合は、行動を放棄せずに庇うことが可能です。

(ただし、範囲攻撃や曲射攻撃を庇うことはできませんが)

 

●オマケ

 装備のカスタマイズ用のデータです。

基本的には1部を下げて他を上昇させる、トレードオフの関係にあります。

ゲームマスターは改造方針を聞いた段階で、どの程度のデータになるのか簡単に答えてあげてください。

(威力や弾を増やして弾倉を大きくすると、当て難くなるか射程が短くなるよ。命中-1でダメージ+1と弾数+1、あるいはダメージ+2など)

 

/武器データの基本構造

Sサイズ武器:基本値 + 2p

Mサイズ武器:基本値 + 5p

Lサイズ武器:基本値 + 8p

 

・他の武器能力値を1下げるか、フリーpを使用して可能なカスタム

これらの事を逆に行うことで、ポイントを得ることも可能です(弾薬を1減らして1p、それでダメージを増やすなど)

1:ダメージを1上げる

2:特定の射程の命中を1あげる(短距離・中距離・長距離)

3:射程を1ずらす(0~2を、1~3になど)

4:弾薬を1増やす

 

・他の武器能力値を1下げるか、フリーpを使用して可能なカスタム

1:命中値を1増やす

2:射程を+1増やす(1~3を、0~3か1~4など)

3:弾薬を3増やす

 

・特殊

1:弾薬交換ができなくする:1pを得る

2:射程を0にする:2p得る

3:ビーム化する:ダメージ+1(ただし、対ビーム装甲の修正を受けてしまう)

 

注意:

 特定の命中値だけを何度も累積して下げたり、射程を0以下にして能力を上げることはできません。




 と言う訳で、暫定ですが一覧表を色々載せてみます。
予約投稿なので誤植や、同じ単語が別の場所で別の名前になったしてたらすみません。

 今はイメージを膨らませる為の物なので暫定ですが、メカニックシート、一覧表、各種の解説、データ表などが揃えば、メールや掲示板でする程度のゲームは造れそうです。

 もっともオマケの武器修正表を使って武器の精査、パッシブスキルを確定してそこからマニューバー確定など
色々と作成した後で、全部の解説・データを清書しないといけないので、完成するとしてもまだまだ先でしょうけど。
(当たり前ですが、メッセージを使ってハーメルンではやらないと思われます。口調一覧表とか外見・個性作成表とか造ると時間がいくらあっても足りないので)

 なお、これらのデータはガンダムセンチネルRPGやアリアンロッドRPGなどを参考にしております。
仲間内で作ったカスタムルールを元に、ガンプラだったら……という仮定の元に修正している感じです。
(カスタムで修正値変更とか、キャラ作成だったら許されないけれど、ガンプラだったら出来て当然など)

 このシリーズも本編とデータ表が、あと一回ずつくらいで終わる予定になります。
もっとも書いている内に筆が滑って増えたり、原作アニメが面白くて増えたりすることもあるかもしれませんが。


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本編
自分の戦い方


●勝利を目指して

 結局のところ、相討ちでバルバトスを破壊したもののバエルとヘビーアームズも破壊された。

 システム上はレイド側勝利だが、こちらは二体だけのつもりなので実質的敗北だ。

 それにバルバトスが他の機体も警戒して居たとしたら、試合でも勝負でも負けて居ると言っても良い。高難度ミッションだからというのは言い訳にはならなかった。

 

「色々試してみたけど、どうだ?」

「重い。……良くもまあ、こんな装備で振り回せたもんだ」

 黒地に臙脂色のバエルが幾つか目のシールドを取り変える。

 ギャンを中心に武装付きの盾の中から、ビーム非対応のモノを選んで試したのだ。

 

「複座式と一緒にするなよ。あのときはビッチ先輩が居たし、先輩はバイアラン・カスタムやエアリーズで射撃戦をしてた人だからな」

「判ってるよ。ただあのバルバトスの事を考えるとな」

 バルバトス・ゲートキーパーは滑空砲こそ付いているものの、基本は斧一本で戦い抜く機体だ。

 斧そのものにブースターが付いておりスイングが早く、本体のスラスターが高速で反応する為にどこから攻めてもカウンターできる。

 射撃戦が苦手とか言う以前に、有利不利と言う判断も躊躇も無視して居るバケモノだ。

 

「それこそ気にしても仕方無いだろ。ありゃチャンピオンシップで戦える出来なんだからさ」

 必殺技だとか強さには限界線と言うモノがある。

 互いに必殺技を持って居ても、持っているからこそ警戒して一撃で決着が着いたりはしない。

 相手がNPCだとしても一撃で相手の頭や胴を潰して勝つなど、ただの夢想である。

 

「逆に言えばチャンピオン級なら簡単に倒せるってことだろ?」

 だがしかし、チャンピオンシップに出場できるメンバーならば……それこそ各サーバーの代表クラスならば可能なのだ。

 それは警戒されても並みの相手ならば、ガードを掻い潜って必殺の一撃をクリーンヒットさせることができるからだ。ガードごと粉砕できる強さと言っても良い。

 

「俺の強さって、しょせんは野球で言うと甲子園出場レベルなんだよな。全国大会に出れても超高校級やプロには勝てない」

「道場や剣道で忙しかったお前が一年で今のレベルだぞ? 贅沢な悩みだと思うけどなぁ」

 コンシューマー接続版の登場で、今までアミューズメント施設に行けなかった者が参加出来るように成った。クリスもその一人で、実家が道場をしておりその縁で剣道の部活をしていたことから余裕が無かったのだ。

 

 それがガンプラバトルを始めて数カ月で、全国大会出場レベルまでメキメキと腕を上げたとも言える。しかしながらそれは、剣に適性があって体捌きや勝負勘もあったからだ。ガンプラ製作だってスキャン・データを元に地道な修正をしなければ、完成度も上がっていたとは思えない。

 それは同時に、習熟では今以上の強さが手に入らない段階であるとも言えた。

 

「……その辺のこだわりは置いておくとして、強くなるには何が必要だと思う?」

「基本的には三つしかないよ。完成度を上げる、改造して色々増やす、自分なりの闘い方を見付けて洗練する」

 話題が修練とか才能ではなく、ガンプラそのものの話題になったことでミツオは気分を変えた。

 そしてメモ帳を取り出して、画像とコメントを張りつけて行く。

 

「ガンプラの基本能力値は完成度。基礎だけなら原作に忠実で追加できる要素が多い方が、『一応は』強いことに成っている」

「そのままだとスーパーロボットになるんだっけか。今以上にするなんて俺には無理だが」

 プラモ販売を中心として原作を広める都合上、完成度が高く再現されたパーツが増える方が『基本的には』強くなる。旧キットよりも新キット、パーフェクトよりもマスターグレード。最終的にはガレージキットという風にだ。

 それでも完成度は中々100%にならず、色を付けてちょっとした加工をして、それでようやく100%間近というのが人間の限界だろう。

 

 そこに問題は無いのだが、それでは能力値が同じ場所を目指すことになってしまう。

 

「最終的には自分だけの闘い方を探すとして追加系の改造を施していくんだけど……。物語に登場してもおかしくないレベルの加工か、まったく無視の二択になるのが定番だな」

「その辺は門外漢だから、適当に頼む」

 ノリノリで話題を広げて行くミツオに対し、勝負の方が楽しいクリスとしては苦笑いを浮かべるしかない。

 ミツオは残念そうに顔をしかめると肩をすくめて、彼にしては、話題を短くまとめた。もっともクリスの腕では手足の延長だとかバックパックを拡張するとか、武器やスラスターを付ける場所を増やすような改造は無理なので最初からシンプルだと言える。

 

 

「クリスの黒騎士バエルはウヴァルの盾とカラーリングだけだよな? もしギャンの盾やマシンガンとかまでなら前者。設定無視でビーム兵器付けたら後者になる」

「それって大丈夫なのか? 思いっきり矛盾してそうだが」

 今までクリスが使っていたのは、改造が得意ではないというか造り込みを練習している段階なので、ガンダムウヴァルの盾を付けただけだ。

 この間の複座式はそもそも製作者が別だが、それでもギャンの盾や良く見かけるマシンガンなどは問題ないと思えた(自分だと当たるとも思えないが)

 

 だがオルフェンズではモビルアーマーしか使わないビーム兵器と言うのは、いかにも問題があるように思えたのだ。

 

「今のルールだと阿頼耶識は抵触するけど、取っ払えば大丈夫だよ。もっとも、ここからが重要な問題なんだけど……設定から反れると思わぬ矛盾が出て来るんだ」

「それなら最初から別の機体の方が良さそうだが……。まだ何かあるのか?」

 現行ルールでは、強力過ぎる阿頼耶識を制限する為にビーム兵器を持てないとか、味方にモビルアーマーを用意できない設定がある。

 それを何とかする為に、阿頼耶識そのものを除くと言うのは……なんとも意味が無い様な気がする。

 

「そりゃあるさ。ビーム兵器を使ったら出力が下がるってシチュエーションは沢山出て来るだろ。ザクだってそもそも使えない設定だしな」

「そういえばそうか。逆シャアのサザビーとか有名だよな」

 コンデンサーを付けたり、別ユニット化して本体出力とは別系統にしたり……細かい作業で設定矛盾を回避する必要が出てくるそうだ。

 そんな苦労をするぐらいならば、最初からビームを技の様に加工して居るGガン系にした方が早いだろう。と言うか阿頼耶識を外すくらいならばモビルトレースシステムの方が反応が早くなってしまう。つもりこれが設定を無意味に無視する場合の欠点と言うことだ。

 

「ドロップ品で設定する場合はその辺は不要だけど、あれは壊れたら終わりなんだったけか?」

「そ。だから能力値だけを視るならば、慣れないうちは極端な事はせずに、原作で登場するレベルの改造がオススメってことになる。武器とか増えた方ができる事は劇的に増えるけどな」

 ダイブMMOとして遊べる以上は、ミッションをこなしてもらったり敵を倒せばドロップ品を奪うことが偶に在る。

 そもそも初心者の子供では気軽にプラモを買うことが出来ないので、間口を広げる為にはその辺の妥協は必要なことだった。

 

 そして妥協の結果として、ドロップ品は登場世界のツールとして壊れっぱなし。

 自作・購入したパーツは、壊れても再スキャン時に注意すれば問題が無いのだ。

 (修理に関してはスキャンした位置情報が対象とされている。分解して再装着すれば修理された扱いに成り、エア・スプレーを吹いたくらいでは意味が薄い)

 

「要するに設定準拠で改造すれば良いって事だろ? バエルってどんな設定だっけ?」

「この辺のこだわりが重要なんだけど……まあいいや。バエルは最初のガンダム・フレームで、始祖アグニカが使った伝説のマシン。そしてマクギリスは特殊な戦い方を選ばなかったらしい」

 ミツオは肩をすくめて三つのポイントを書き出した。

 最初のフレームと特殊な戦い方、アグニカの伝説とマクギリスの最適解。第三の道。

 

「最初のフレームだけに基礎データ重視でパワー・機動性・堅牢さのいずれも高く、本当は幾つかのチャレンジ方向があったんだろうな。ただマクギリスはアグニカの伝説を元に、その中の一つを選び出した」

「それが真の阿頼耶識と、武蔵でも出来ない大刀二刀流か」

 折れない剣を持って、超反応で戦闘し続ける。

 それがアグニカの伝説であり、マクギリスも剣さえ折られなければ勝てたかもしれない。

 

「最適解のまま行くなら、スラスター増やして武装持たせて底上げ。あとは真バエルソードをどうにか持たせる」

「そんな所か。俺には造り難いから、厚い板から削り出す以外に思いつかんが」

 最終戦闘で折られた剣は、本当のバエルソードでは無かったらしい。

 だから真バエルソードに当たる剣をクリスが造る……のは難しいので、もっと良い材料から削り出すという作業に成る。

 ブースターや武装を増やすだけならば他のキットの余剰パーツを付けるとか、腕部ごとウヴァルに組み変えて肩に何か付けるとか出来なくはないのだが……。

 ただ、先ほどのパワーダウンの話にもつながるが、肩に妙なパーツを付けるとウイング型スラスターの邪魔になるだけなので付けられるモノは限られてしまう。

 

「第三の道は思い付いたらとして……特殊な戦い方って設定あるのか?」

「スタッフレベルの話題だから、監督の脳内だけだろうな。想像するとして……最初は名前だけ流用して、後半から流用された魔神の名前じゃないかと思う」

 そういってペインターで描き出されたのは、カエルと猫の頭を持つ老人の姿だ。光り輝いているエフェクトが何か白々しい。

 そして三方向に矢印を付け、老人の下には最適解という文字だけを付ける。

 

「元のバール神に関してはほっとこう、ビーム兵器は無視の方向で。次に老人の姿は今の最適解で、残る考慮はカエルと猫」

 輝くエフェクトを消した後、最適解の下に真バエルソードとブースター。

 そしてカエルと猫から延びる矢印の下に、目と足の絵を付けくわえていく。

 

「カエルの広視野から射撃戦、猫の静音性……は無理だから小回りからの格闘戦ってとこか」

「ならカエルは要らないか」

 目を描いた絵の下に、銃を書いてバッテンを付け加える。

 彼らのチームには飛行ユニットで射撃を続ける仲間が居るので、無理に強化する必要はないだろう。というよりも、肩にキャノンを載せても当たるイメージがしない。

 となると残るは、猫を思わせる小回りと格闘戦になる。

 

「ビッチ先輩はV2をアサルトバスターにせずに、いつものEWSを一つ目にして、他に何か付けるって言ってたしな。ならスラスター増やして格闘戦でクロー……いやパイルバンカーってとこかな」

「スラスター増やすのって面倒なんだよな……パーツの組み変えじゃ済まないし。でもチャレンジするならパイルバンカーは面白そうだな」

 相手の攻撃をかいくぐって致命的な一撃を浴びせるか、軽快な打撃と見せかけて実は重い一撃。

 悪くは無いし、貫通力のあるパイルバンカーを予備武器にするのはアリだろうと思えて来る。もし良いパ-ツが無かったとしてもナックル付きの籠手くらいは造り易いだろう。

 

「何か流用できるパーツがあればその辺を目指すとして、無理だったらシールドバッシュのままか、最初から二刀流……。駄目だ、どう考えてもマクギリスのアイデアに戻ってくる」

「だから最適解ってことさ。こうなったらもう効率よりは自分の闘い易さを優先した方が良いぜ」

 登場人物たちは無意味に設定を持っているのではない。

 ある程度の流れがあり、それに沿った形で強化や特訓を繰り返して居るのだ。

 もちろん実際にマクギリスの立場であれば、パイルバンカーなりヒートクローを作らせるのは簡単だろうが、二刀流の方が安定するので無理して特注してないとも言える。

 

「俺なりの闘い方か……」

「確かお前んちの流派って、技は一つしかないんだろ? ならそれを活かす戦法を編み出して、その為のパーツを探した方が早いんじゃね?」

 クリスの家がやっている道場は、とある流派の流れを汲む。

 正式な技は『袈裟斬り』だけで、それを最大限に発揮する為のコントール、あるいは相手の体勢を崩す為の余技しかない。

 

「俺の闘い方をまんま真似て、それをプラモならではの方法に昇華するって寸法か。なら真バエルソード一本で、蹴りと籠手と組み合わせるだけで良い。あとは動きの補正かな」

 今の剣と盾からそれほど変わらず、大太刀一刀流のスタイルへ移行。

 肩をウヴァルのものに変更して、邪魔にならないという前提で、小さく稼働出来る他のキットのパーツがあればスラスターか武装を追加。

 今のバエルソードとその鞘は、百式のようなスラスターバインダーを追加して四本足ならぬ四枚羽に変更する予定だ。

 肩とバインダーに適切なパーツが無ければ今は現状を維持しておいて、将来的な話として作成技術が上昇すれば装甲板とスラスターの埋め込みを目指すこととなった。

 

●妥協の産物と殺人的な加速

 お互いリアルでの予定があり、改造を施す時間の問題で直ぐには製作会議が再開でき無かった。

 前回の会議に続いてビッチ先輩と呼ばれた少女は不在。もっともコンシューマー版でなければ時間が取れないメンバーなので諦めはついている。

 しかし予定と大幅に変わった姿にはミツオとしても、呆れてモノが言えない。

 

「なあ、カエルの要素は入れないんじゃなかったのか? 猫要素とか元の堕天使の姿は何処に行ったんだ?」

「……壊れた(ジャンク)の中にスペリオルのブースター装着型が有ったのを思い出してな。無事なパーツを付けて見た」

 上半身こそ新品のバエルだが、下半身が凄くスペリオルだった。

 具体的に言うと殆どブースターで構成されていると言っても良い。非常に推力が増えて居て、お前は何と戦う気なのかと小一時間ほど問い詰めたくなってくる。

 キマリス・トルーパーとキャッキャウフフしながらレースでもする気なのだろうか?

 

「そこまでやって何で武装は予定通りなんだ? 軌道変更が大変だから白兵戦じゃなくて大口径火器にすべきだろ」

「最初に削り出したらソードメイスやヴァルキュリアバスターソードを持たせた方がマシという具合になって、悔しいから練習を兼ねて何本か削り出したら使わないのが惜しいんだ」

 メイン武装は見た目は割りと恰好良い大太刀だが良く見るとペライ。

 これからもと大きい板を削って今の形状にするつもりなのか、それともその部分に一枚張って厚みでも出す気なのだろうか。

 将来的にはなんとかなりそうなので及第点を出しても良いが、下半身が大型ブースターなので非常にアンバランスだ。

 というよりもジャンクパーツを無理やり繋いだだけなので、耐久性が今から不安である。

 

「ひとまずこいつで突っ込み駆けて、出せるところまでスピード出してみようと思うんだ。流石に俺だってこいつで戦い抜こうとは想わんさ」

「……空中分解しないと良いな」

 どうやら現状で可能な加速を掛けて見て、軌道変更のマニューバーを組めるかどうかのテストらしい。

 察するにまともな動きが出来なかったら、足を元に戻してスラスターの追加で済ませるようだ。

 

 最初からそれで済ませておけ、剣もソードメイスなりヴァルキュリアバスターソードで満足しろ……と言おうとして、先ほどの壊れた(ジャンク)という言葉を思い出した。

 誰しもが改造に丁度良いパーツを持っているとは限らず、残しておきたいプラモが無事な訳でもないのだ。クリスはキットを持っておらず、Sガンダムを持って居たが壊れて居たのだろう。

 

「それと、後で流用できそうなパーツの心当たりをメールしとくよ。なんだったらプロペラントから直接稼働するシュツルム・ブースターでも良いしな」

「助かるけどプロペラントから? アルパ・アジールの下部を構成してたやつか。あれの小さいやつってあったっけ?」

 そういいながら二人は実行出来るミッションを調べてみた。

 この際だからドロップ品もスキルポイントも無視して、とにかく広い空間で戦闘するものだ。

 そして可能ならば、雑魚相手よりも強敵NPCと斬り合えれば言うことは無い。

 

 そんな都合の良いチョイスはなかなか無いので、必然的にシチュエーションは限られてくる。

 超巨大な落下物を巡る攻防の、攻めるか守るかの差でしかない。

 

『ソーラーシステムの照射時間を忘れるなよ』

『……判ってる!』

 ヘビーアームズver.32(トランドゥ)がカウンターウェイト代わりのノズル・スラスターを吹かせて、強化したガトリング砲を斉射。

 彼方から飛来する大型対艦ミサイルが火花を散らしながら爆散し、その中をバエル・フロッガー『古鉄』が勢い良く飛び出して行く

 

 僅か数秒の加速で対象の居る空域へ到達し、相手の僚機からは放たれる牽制のビームカノンを大振りな起動で避ける機動に入った。

 そして過去に居た場所を掠める二条の光線が消えた後、予測位置に当たるラインへ大きな光が交差したのである。

 

『テールバインダーを一枚持って行かれた! くそっ。遠距離戦を投げてるから仕方無いが……』

(それは最初から壊れてるも同じじゃないか……。ていうか、それだけで済ませたのか)

 大型メガ・ビーム砲が掠めたのは、バエル・フロッガーの後腰に強引な取り付けをしたバインダー型のスラスターだ。

 無理やりくっつけて居た為にロクな動きができず、避けたつもりで巻き込まれたのだろう。

 

『体感以上に螺旋を描いてるから、時々調整しながら飛ぶんだ。ソレで十分に回避軌道に成る』

『了解! まずは一撃当てて見る!!』

 真バエルソードを振り被って、一足飛びに敵巨大MSに突っ込んで行く。

 ミツオの助言通りに時折スラスターを調整する事で、ビームライフルやフォールディングバズーカーを回避。

 大型メガビーム砲ごと敵本体に斬撃を浴びせた。

 

 普通なら射撃後に迎撃が間にあうタイミングだが、強烈なスラスターに任せてINレンジに突入。砲身を真二つにした後、ギリギリでクローが直撃を防ぎ留める。

 

『ちっ。デンドロビウムを侮っていた。メガビーム砲を無視していれば倒せたはずだったのに』

『相手は対要塞MSだぞ? 侮るも何も、メガビーム砲を潰せただけ恩の字だよ』

 ガンダム試作三号機デンドロビウムは対要塞MSであり、ドッキングを前提としたコアのステイメンと武装・推進機のオーキスに分かれている。

 オーキスに付属して居る装備を潰しても与えられる衝撃は少なく、ダメージは本体に入らない。ステイメンを切り裂く前に格闘にも使えるクローで防がれてしまったのだ。

 

 この辺りの攻防も経験差が出て居ると言える。

 チャンピオン級ならば最初からステイメンを潰して終わりにして居たかもしれないし、ボスを倒して終わりではなくコロニー防衛ゆえに砲身を潰して十分としていたかもしれない。

 どちらの選択肢でも良いのだが、躊躇なく決めて居れば即座に『次の行動』に移れたはずだ。

 

『切り込みながら火器を潰せるか? 分離したオーキスを放置してたらジムキャノンⅡがランチャーにしてましたとか笑えないぜ』

『そんな事が可能なのか? って、こいつはガンプラバトルだったな』

 現実であれば電子技術やプログラムが重要なのかもしれないが、ゲームゆえに可能かもしれない。漫画の中では良く見られる光景だし、技術スタッフが時間さえあれば可能にしていてもおかしくはないだろう(実際に、腕や足をニコイチ補修している例なら大会でも見られる)。

 

『やれるだけでも……やってみるさ!』

 デンドロビウムに切り込むと、今度は急場しのぎのクローではなく大型ビームサーベルで突き離される。

 ギリギリと押し込みながら電磁砲を撃ち込むが、互いに高速移動中であることに加えてレベルの問題もあって中々命中しない。

 とはいえ全体の推進力は互角の状態で、機動力(小回り)はバエル・フロッガーの方が上。何度もチャレンジする間に一つずつ装備を削って行く。

 

『ノイエ・ジールがビーム主体で苦しんだのとちょうど逆だな。相性が良いからその内に潰せると思うが、そっちはどうだ?』

『こっちもなんとかだ。不死身の第四小隊が居ない分、助かってるよ』

 攻める側はデンドロビウムとジムキャノンⅡ、そしてモブのジムカスタムが数機。

 こちらはバエル・フロッガーとヘビーアームズver.32(トランドゥ)は名前有りNPCに相性差で勝っているので、数の差を加えてもかなり有利な状況だった。

 

『それなら適当な所で最後の攻撃を仕掛けさせてもらう』

『外しても良いけど、カウンター喰らうような攻撃はすんなよ? ここから二体一は面倒だ』

 その返事は無く、真バエルソードが大型ビームサーベルごとステイメン本体を切り裂く方が先だった。ガード越しなので浅い反応が返ってくるが、今度は予想して居たこともあって即座に次の攻撃に繋ぐ。

 ステイメンが潰されかかって無理やり脱出を図ったデンドロビウムに回り込む形で、今度は本体を直撃。斜めに切り割いて勝負に決着を付けたのである。

 

 

『ここまでの推力は要らんな。普通に小回りを利かせた方が良い』

『だから最適解だって言ったろ。脚部をブースターにするなら四基にして、ネタ絵であったアグニカ砲を本当に実装するっきゃねーよ』

 アグニカ砲というのはウイング状のスラスターを大口径電磁カノン砲に見立てた物で、あのサイズのレールガンならば凄い強力だろうと窺わせるネタである。

 そのままだとバエルである意味は全くないが、Sガンダムの大型ブースター四基(足二と後腰二)があれば案外悪い設計では無いかもしれない。

 

『もう二器は壊れて残してない。それと俺の本文は白兵戦だ』

『仕方ねえなぁ。じゃあ持ってる予備パーツの交換会と、暇な時間を見繕って平積みセール品を漁りに行くか』

 お互いに都合の良いパーツを残してる訳でもないが、無い訳でもない。

 また時間こそないが予算が無い訳でもないので、時間を見付けて安売りしているプラモを探しに行くことに成った。

 腕が無いので大変だが、それはこれからの愉しみである。




 と言う訳で、今回は改造回とキャラ紹介を多少です。
第一話から地道にするのもどうかと思ったので、前回の短編からそのまま繋ぐ形になるはずでしたが。
まともな改造すると小回り効かせて戦う方が強いので、ネタとして足ブースターというのをやってみました。子供のころは残しておいた壊れたプラモのパーツを無理やりくっつけて、『俺のガンダムすげー』とかやってたのを思い出したからです。
まあ現実的に考えて見ると、バランスおかしくなるよね……とか、逆に思わぬ強化のし過ぎって起きるよね。とか思ったので。


 ここから後書きと言うより設定とかに入るので、長くなります。
本編で書いてることを繰り返してる面もあるので、無理に読まれる必要はありません。

●バエル改造案の変遷
 特殊な戦い方があるらしいけど、マッキーは使わなかったてさ。
という設定から適当に理屈を付け、二刀流はマッキーが想像した最適解で人間のスタイル。カエル・モード、猫モードが存在するけど有効では無い。としています。

デフォルト:黒地に臙脂色、ウヴァルの盾を持った騎士スタイル(開始)

前回のテスト時:複座式で二人分のスキルを使用、上手い人が造ったプラモなのでスラスターとか増加してる

物足りない

バエルの設定ってなんだ? 特殊な戦い肩? 悪魔をイメージかな?

人間・カエル・猫の造形

マッキーの二刀流、カエルモード(広い視野)、猫(小回り)

広視野と射撃戦は要らないよね。なら真バエルソ^ドだけにして、改造するとしても猫モードでモフモフだ。

スペリオルガンダムのブースター・ユニット装備型のジャンクパーツが転がっている。バエルは安い時にもう一つ買ってたな

足をブースターにしてみた。羽みたいなバインダーはブレードホルダー部分に付けるか

不格好だな、しかも上手く動かねえ……でも大太刀に時間取られて余裕が無い。カエルって設定もあったな

バエル・フロッガー『古鉄』完成!
(失敗なのは既に判っている)

 次回以降に出て来る黒騎士バエルはちゃんとまともに成る予定です。
最終的にバエルの足はノーマルのままで、ブレードホルダーをシュツルム・ブースターか適当なスラスターに変更。
メインは真バエルソード、左手に盾かパイルバンカー風の籠手が付く。
自作できるようになったら、肩がウヴァルの肩になって前スラスターか武装を追加可能なハードポイントにする。という感じです。

●ヘビーアームズver.32(トランドゥ)
 こちらはバージョン上げなので大きな修正は無し。30から32へ二つ上がる段階で
足にアイゼン(射撃用の固定爪)、カウンターウエイトかスラスターノズル(浮き上がるのを防ぐ重し)を追加して、セミ射撃形態を使用出来るように。
足を止めて戦う時は、微妙に命中率が良くなる。(追加装甲でもあるし、小さい武器も付けれなくはない)
悩んで居るのはサブアームまたは尻尾を付けてまで安定するかで、ver.33(トラントロワ)は足を止めて戦えばかなり強力な機体に仕上がる予定。

●V2?
 登場して居ないビッチ先輩が仕上げて居る機体。
アサルトパーツ・バスターパーツを付けるのではなく、独自のパーツを付ける予定。
空戦好きで大規模レイドでは空域管制も務めているので、EWSパーツで偵察・レーダー強化。もう一つを悩んで居るらしい。
登場時はお披露目するだけか、もう一つのパーツのテストをすると思われる。
(圧縮する為に、という悩みがあったんだ』と言う訳で実践テストというオチもありえますが)

●キャラ説明
 プラモの話なので簡単に。

 クリスは道場の息子で剣道部所属。運動神経は良いが時間が無かったのでこれまでガンプラバトルには参加できなかった。
プラモの腕はスキャンしてじっくり確認してようやく他人に見せられるレベルで、足を切って延ばして延長するとか言うレベルの改造は無理。
流派の中に技は『袈裟斬り』しかなく、それをいつでも使えるように、あるいは動き回り相手を蹴ってでも有利な体勢になるよう狙えと教わる。
現在使用して居るのはバエルが安売りされた時のもので、福袋に入っていたウヴァルの盾を使用。肩パーツの流用を考え中。

 ミツオは一般家庭だが遊ぶ金を調達する為にバイトするので時間が無い……ようするにどこにでもいるタイプ。
三人目という地味な名前が好かないのでトロワをイメージしヘビーアームズを使用して居る。
地味だが準備して対応可能な事を増やす意味で、色々な改造やらキットに手を出したが、最終的に武装の使い方を習熟している最中。
これはビッチ先輩と合わせて小隊規模のフォ-ス、縁のあるメンバーを含めての大隊規模のフォースでギミック面の発想が一番うまかった為である。

 ビッチ先輩はロシアの雪深い地域の人で本名の末尾がそもそもビッチ。
小学生みたいな思い付きで改造・行動してそのパートナーを探して歩くことから、はしたない女性に対するスラングのビッチと勘違いされているが……。
本人は本当に小学生なのでまったく気にして居ないし、大人の女性と見られるくらいに可愛いのだと、楽観的に考えているらしい。
空戦に憧れガンプラを始めたことから、バイアランカスタムやエアリーズなどを渡り歩き、今はV2を改造しようとしているとか。


●MMOとしての設定
・データ面
 プラモの性能は完成度で決まり、キットの差は得意分野の差である。
原作に近いほど性能が上がるので、旧キットよりも情報量の多いパーフェクトグレ-ド・マスターグレードが強いということに成る。
(性能を全く無視しても、旧キットの可動範囲よりも新キットの可動範囲の方が動きは良いし、再現された稼働パーツが多いのも確かだが)
色塗りは重要な補正なので、素組みでも色の点いている新キットは旧キットよりも最終的な補正は高い。
とはいえ限界や効率もあることから90%前後あれば十分で、それ以上は『凄い完成度だ! きっと強力なんだろうな』ということになる。

 ただし、モノが同じならば誰もが同じなので改造が必要になって来る。
ここで問題なのは無意味に取りつけたパーツは最終的に、強過ぎる能力で右往左往させられたり、バランスを取るモードにすると完全には機能しなくなってしまう(自分の下半身を焼き焦がすブースターは、下方向に曲がらないとか)。
またザクにビーム砲を持たせても射撃でき無いか本体が止まるなど、設定を無視しても大して強くならない。
これに対し必要なパーツを改造で取りつけたり、ドロップ品などで調整する事も可能だが、最終的にビーム可能な機体で始めた方が楽ということも良くある。

 もちろん有りない攻撃は奇襲になるし、愛用して居る旧設定MSをずっと使い続けたい人も多い。
また自由に改造したい人にとっては設定とかは足かせにしかならないので、多少の能力ダウンを覚悟して自由な改造を施せば、三歩進んで二歩下がる的な状況で最終的には強くなるので問題無いと言える。
加えて言うならば本体性能が数%落ちたとしても、今までになかった武装やブースターが増えて、できなかった行動を取れる方が重要だと考える人は非常に多くなる。

 最終的には設定矛盾やアンバランスを補正するシステムがあるので、矛盾は許容範囲しかないと考える人も多いし、設定準拠で行く人も多いと言うだけの話。
設定に準拠した改造で、見た目どこも原作と変わらない場合でも『あの人の解釈・造り込み・完成度……本当にすごい! きっと強いんだろうなぁ』の誤差になります。

・ドロップ品
 MMOである以上はドロップ品で、普通に装備を手に入れることが可能。また特殊な機体をもらって試す事が可能である。
それぞれに傾向のあるミッションがあり、インドシナ戦線などは武装が手に入り易いとか、史実キャンペーンだと無改造のテスト機体に乗ることが可能。

ただしドロップ品には一定の耐久値・使用回数があり、プラモデルを造った場合よりも持続面に関しては劣る設定になっている。
ドロップ品は壊れると再入手が必要だが、自作した物はパーツを外して組み直せばそれでリフレッシュ可能。
MMOとしての商売、プラモ販売としての商売上、これらは必要な妥協と言われている。子供にあれもこれも買わせるのは難しいし、外国在住の人はお金があっても手に入れるのに時間が掛るので妥協jはどうしても必要になって来る。

 よってミッションの中には
1:ドロップ品の落ち易いモノ
2:機体を試す為のモノ
3:スキルポイントをもらい易いモノ
4:スキルを組み変える為のモノ

が存在するということになる。

●修理に関して
 スキャンデータを元に位置情報カラーリングを保存して居る。
よってバラバラにできるパーツを全てばらし、改めて組み直せばオーバーホールということになる。
腕しか攻撃を受けて居ない場合は腕だけ念いりに見直せば良いし、その他パーツも一緒に調整すると、必然的にオーバーホールを受けて来た扱いに成り易い。

なお、軽度の損傷ならば修理命令だけで直る様に、オーバーホールを受けると言うミッションも一応は存在する。
当然ながらリアルに戻って組み直した方が早いので、暇潰しに会話しながら受けたり、組み直すのが面倒と言う人の為に存在して居る。


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カスタム・ミッション

●ドラマチック戦闘

 ミッションには幾つかのタイプがあり、それぞれに特性がある。

 ドロップ品が落ち易い物や新型機に乗れる物、スキルポイントが多い物にスキルの取り直しを行う物など様々。

 今回参加するインドシナ戦線ミッションは大規模戦闘を扱っている物の中でドロップ品系であったが……。飛び交った情報によればド派手なドラマチック・バトル化しているとのことだった。

 

『高台の森に多数。その先の狭い道筋にも何機か同型機』

 V2ガンダムの改造機はホバリングを掛けながら高空から戦場を見渡した。

 ウイーンと音を立てて、メガ・ビームキャノンの代わりに取り付けた望遠レンズが稼働する。

 ヴェスバーの代わりに銀色のスカートスラスターが姿勢を制御して、可能な限りブレの無い補正を行い、予備のサブレンズも動員すり合わせて画像を生み出し始めた。

 

『ジオン系MSに野戦コートを着せた軍人さんって感じ。ミツオ、こいつら何か判る?』

 送られて来た画像は、ザクやギラドーガを寸胴にしてコート状のアーマーをしている機体だ。

 全てがマシンガンと大型シールドで統一され、予備兵器としてシュツルムファストを装備して居る。ただ森に隠れ潜む機体は緑系、道に待ち構える機体はサンド・ブラウンという色彩の差があった。

 

『ゴブリン……かな? ガワだけ似せてあるだけで普通のプラモを使った改造だと思うけど』

『妖精のゴブリン? 言われてみればそんな感じね』

 寸胴に処理された姿は愛らしいと言えなくもない。

 悪戯好きの妖精だと言われればそんな気がしなくもない。

 だが実際にはそんな連中では無く、戦場系マンガが好きな戦闘マニアの集団なのだが。

 

『この場合のゴブリンというのは漫画に出て来るMSだよ。量産・修理・比断面積縮小を目的にした機体で、装備と手足をニコイチ・サンコイチする為に共通化させているんだ』

『あー。量産向きマシンってやつね。……どうする? 共闘を申し出るなり他所に行く?』

 今回の目的は三機一組で多数を相手取るテスト戦闘なのだが、絶好の地形に先客が陣取っている。補修や武装の共通化を行っているということは、量産マシン好きであると共に長期にわたる泥臭い闘いを好むということだ。

 少なくとも明け渡す気は無いだろうし、この後の『本命』を考えれば奪うほどの余裕があるとは思えなかった。

 

『今回はドラマチック・バトル化してるから敵には困らないでしょ。丘の代わりに連中を盾代わりに使わせてもらえばいいさ』

『ズルイ気もするけど……。そんなに敵が出るんだ。一年戦争が舞台じゃないみたい』

 ドラマチック・バトル化というのは、ミッションの内容がありえないレベルで大規模化していることを示す。

 テレビシリーズやOVAで偶に存在する、時代的に合わない機体やありえないほど大量の数が出て来て、後から資料やDVDで補正されてしまうアレである。

 

 基本的にはスタンピードと呼ばれるバケモノ機体が出る場合と、大海嘯と呼ばれる大軍が出てくる二パターン。

 今回は一年戦争のインドシナ戦線なので後者、ジムとザクの大軍が現れる予定である。

 

『それならあの辺が良いんじゃない? 僕のVer.32(トランドゥ)も先輩のV2も能力を活かせるし』

『そうね。入り組んでるからクリスに先行してもらいましょうか』

 配布された簡略地図を拡大して、それを元にV2が撮影した画像を組み合わせる。

 何度も同じMAPに出かけなければ手に入らない様な地図が、瞬時に手元に構成された。

 これが偵察可能な機体を空中に上げる効果であり、火力の低下と危険を考えてもリターンを得られる成果だ。

 

『了解した。NPCが居れば倒すが、PCの斥候が居たら交渉ってことでいいんだな?』

『それでお願い。もしかしたらさっきの連中の隠し玉が配置されてるかもしれないしね』

『その場合は列車砲かそれとも司令部か。陸戦型のサザビーが居たら司令部で決定な』

 銀色の肩スラスター……V2のスカートと同じモノを付けたバエルが徒歩で地上を移動する。

 その姿は悪目立ちしてマント姿の騎士に見えなくもないが、きっとマクギリスならばOKしてくれそうな雄姿でもあった。

 

『惜しいな。連中の司令部じゃなくて、俺達と同じことを考えてる連中だった。このまま提携して良いんだな?』

『良いんじゃね? 今更移動するのもなんだし、丘の連中みたいに占拠してる訳でもないんだろ』

 バエルの銀色スラスターにはサブカメラと通信機の端末が仕込んであるのか、V2のデータと同機してデータを更新。

 そこに隠れて居たバーザム・ディフェンサーやティターンズ仕様のMK-Ⅱなどが出迎えて、フレンドリーなポーズをして居るのが見えた。

 都合が良い場所と言うのはそれほどある訳でもなく、考える事も似たような物だから仕方無いとも言える。

 

『なあ。この銀色外して良いか? 今日は空飛びそうにないし周囲が『マクギリス閣下にお似合いですね』なんて恥ずかしいんだが』

『それもテスト中だから壊れるか突入するまでは勘弁してくれよ。意味が無いか判るまでが試験ですっていうやつ』

 この効果を補助して居る銀色のスラスターはミツオの考案したギミックだった。

 自分では持ってないシュツルム・ブースターを交換してもらった手前、勝手に外すわけにもいかない。

 それに銀色でド派手な部分にも、一応は意味がある。

 

『EⅢ・ファンネルの調子良さそうだもんね』

『あとはリフレクターとして機能すれば最高かな。まあ無理だったら分割するだけなんだけど……インドシナ戦線で試すのは難しいかな』

『雨が降るし、そもそもビーム兵器が少ないからな。アプサラス相手にはただの姿勢制御だ』

 サブカメラと指向性通信機(指揮官用のブレードアンテナ)を仕込んだスパイ・アイであると同時に、姿勢制御スラスターとリフレクト防御を兼ねて居る。

 空中管制を行う為に飛び続けるV2と、一同の先頭を行くバエルの機動補助を行い、データリンクと対ビームで三人を補助する機構であった。

 

 とはいえ複合機能のある装備を、一度のシチュエーションで試すのには限界がある。

 全ての結果を出し、全てに良好なデータを持ち帰るというには無理があるだろう。

 

『最後に反射射撃用のドローンとして使って見て、意味が無かったらビットとして機能を分ければ良いじゃない』

『先輩の機体なら防御としても、迷彩としても良いんでしょうけどね。こっちとしては恥ずかしさでいっぱいです』

 狙撃用のロングレンジビームライフルのみを武器とし、高空を抑えるV2カスタムにとって銀色のスカートスラスターは丁度良い装備だ。

 下から撃ち上げた時にコックピットよりも先に当たってくれるし、下からならば銀色は光を曲げて見え難くする効果もある。

 逆に地上を練り歩いて友軍(?)に囲まれたバエルカスタムにとっては、悪目立ちする以上に使い道が無い。

 

『まあまあ、そう言うなよ。……んー、今回は連邦軍が大規模化してるみたいだな。喜べ、ビームスプレーガンくらいあるかもしれん』

『コレが役に立つほど囲まれたくはないがな』

 現れた機体は陸戦ジムや陸戦ガンダムを隊長機として、悪夢の様な数で現れたジムの大集団。

 一応はマシンガンやバズーカを主兵装にして居るが、何かの違いでビーム仕様のモブが紛れこんで居ても不思議ではない。

 

 モビルスーツだけで延べ百機以上。

 これだけの数が居ればこの戦線は終わっていると思えるほどの、呆れるほどのモビルスーツがそこに居た。

 

●激闘のインドシナ戦線

 あまりの数にプレイヤー達は即座に共闘を試みた。

 最初はしない予定だった連絡網が一気に構築されていく。

 

『画像の転送に感謝する。以下、敵軍団の分析成り』

『参謀を持たない初期の三機編成。四個小隊十二機で中隊。中隊長機はRGM-79【G】と見ゆ』

 連邦軍は初期と後期で編成を変えており、初期はジオン軍を真似て三機編成だ。

 これに偵察車両や指揮車両、あるいは砲撃可能な車両に支援させて形成して居る。後期はジムキャノンなどを加えた四機で三機を圧倒し、かつMS参謀・航空参謀などを別に付ける編成になるらしい。

 

『RX-79【G】は数が少ない。大隊長機と目されるが……コジマ大隊を確認したか?』

『後方に動いて無い連中が居るけど……。陸戦ガンダムの事で良いのよね? うん、居る居る』

 形式番号で呼ばれても判らないが、部隊名くらいは流石に判る。

 陸戦ガンダムと陸戦ジム(と支援車両)だけで構成された、08小隊に登場する強襲部隊が後方に控えて居た。

 

『なあ、今回フラッグとかあったか? それとも重要拠点』

『特にはなかったと想うぞ。……となると温存してるのは遊撃用だろうな』

『狙って潰さなくて良いのは助かるけどな。……何処かにおびき寄せるか?』

 プレイヤー達の間で情報と推測が飛び交い、たちどころにNPCの戦術が判明した。

 百機弱のモビルスーツと爆撃機で押し潰し、それでも倒せなかったら精鋭部隊を集中投入する気なのだろう。

 

『守り易い所を意図的に薄く見せて、おびき寄せるしかないな』

『でも五倍か……意図的に戦うにゃちょっとキツイな』

 こちらは丘を占拠している大規模フォースが十機、クリス達を合わせて小規模フォースが十名ちょっと。

 ガンプラバトル上では能力値と火力は同レベルなので、数だけなら実に五倍以上の戦力が相手である。

 

『とはいえ向こうは通常設定だろ? ヤバイ武装は無いからやれるさ』

『空飛ばないしビームスマートガンとかないもんね。私たちが隊長機を落として行こっか?』

『いや、できれば君たちのフォースはデプロッグに専念してくれ。モビルスーツの弱点は頭ってのは変わりない』

 能力値が同レベルであっても、装備は普通にマシンガンと盾である。

 重装甲の機体はこの時代には居ないし、ジム・スナイパーを除けば長距離ビーム砲も無い。

 陸戦ガンダムの180mmカノン砲にさえ気を付ければ、空を飛ぶ機体や長距離射撃機は落とし難いのだ。

 

『頭を気にしなくて良いなら凄い助かるな。目の前の雑魚を狩る練習に成るし任せるわ』

『ちょっと、勝手に決めないでよ!』

『……上の数が多い時は援護に行くよ。俺のバエルは白兵用だし、地上をメインにさせてもらうけど』

 そんなこんなで簡単な作戦が決まり、簡易的な陣形も決まった。

 細かい所に文句は出るが、完全な作戦を決める時間も決定する権利も無いので、それなりのところで妥協案が取られる。

 

 一同は丘上の森と、対岸とも言える崖部分を中心に戦線を構築。

 その間にある道は途中からワザと防御を薄くして、敵の精鋭を呼び込むという作戦になったのだ。

 

『でもさ、なんであそこに08小隊が行くって判るの?』

『遊撃隊ってのはさ、要するに困った時に使う戦力なんだよ。今に使えば戦闘に決着が付くとか、逆に作戦は順調なのに強力な敵が出てきたら足止めに使う』

『なるほど。放置したら回り込んで来かねないから、予め全力が出せない所に誘導するのか』

 08小隊ほかコジマ大隊二十余機は精鋭部隊なので、数多くの武装と高いスキルを組み込まれているはずだ。

 戦線が膠着して居れば回り込んで挟撃を行うだろうし、こちらにチャンピオン級が居れば武装レンジを合わせて一斉砲撃で仕留めるだろう。

 だが予め狭い道に呼び込めば、豊富な武装ゆえに普通に戦うだろう全ての力を出せないだろうと判断したのだ。

 

 そうこうする内に戦線が開かれ、丘を守る大規模フォース『近藤一家』と先行ジムの集団が砲火を交える。

 あっと言う間に中隊長を示す陸戦ジム他が吹っ飛び、穴を埋めるように代わりのジムが出撃して来た。

 

『無造作に撃ってるのに良く当てるわね。私は苦労して制御してるってのに』

『予め陣地を占拠してたでしょ? きっとA地点ならパターンA、B地点ならパターンBって決めてるんだと思う』

 ビッチ先輩とミツオは軽口を叩きながら、次々にやって来るデプロッグを落として行った。

 姿勢制御されたV2がロングレンジ・ビームライフルで落とし、足のアイゼンや肩のカウンターウエイトで重身を保ったヘビーアームズが的確な射撃を加えて行く。

 下面の装甲は厚いと言う設定ではあるが、水平射撃のビームや無数に射ち込まれるガトリングは防げない。面白い様に撃ち落とされて行くのだが、これまた数にキリが無いかのようである。

 

『こっちはライフルしか武装無いから良いけど、ミツオの方は?』

『いやー大規模戦闘だと聞いてたから準備はしてるよ。でもまあ、ミサイルの方は心もとないからコジマ大隊までは使えないけどね』

 V2は狙撃用のBライフルだけなので、Eパックを大量に込んでるからそれで済む。

 これに対しヘビーアームズはいつも所持して居るE装備の実砲弾ではなく、アニメ版のビームガトリングガンを改装してチャージ式にして居た。

 これを盾付きコンテナに入れて三つ以上用意して順繰りに使う、オペレーション・ナガシノと呼ぶ補給作戦を立てて居たのだ。

 

 とはいえミサイルの方はそうもいかないし、コジマ大隊が来たら飽和攻撃をする為に使う必要があるだろう。

 それこそがヘビーアームズの真骨頂であり、使い切ったらまた白兵戦に参加する予定だった。

 

『でも今更、どうしたの?』

 何をいまさら。

 そう尋ねたミツオに対し、予想を越えた恐るべき回答が返ってくる。

 

『んとね。相手の機動戦艦が突っ込んで来るみたいなの。上にスナイパー何機かのっけて』

『ライアー大佐旗下の小隊か。そういや狙撃機が居たけど……』

 それは冗談のような光景だった。

 ホバー戦艦であるビックトレーを足場代わりに、先行生産型のジムスナイパーが数機砲台の補強として載せられていたのだ。

 

『ここで司令部ごと玉砕させるかよ……古代の戦車じゃねーんだぞ』

『原作知識に引きずられたわね。……これってどうすんのよ。温存してる攻撃を叩き込む?』

 プレイヤー知識で編成と作戦を見抜いた物の、プログラムだということを失念して居た。

 コジマ大隊が切り札として遊撃任務に着いているのは確かだが、切り札がもう一枚あって悪いということはない。

 同時に勝利条件が設定されていない以上は、司令部というモノは存在して居ないのだ。ビックトレーと言えどただの戦力に過ぎない。

 

『俺が行く。最低限スナイパーと砲を潰せば大丈夫だろう』

『クリス、あんた……』

 紛れも無い危険に対し、クリスが志願した。

 対策は思いつくが後に残す為のリソースを削るものであり、確かに白兵戦機体が単騎で止めに行くのが正解ではある。

 だからこそ止めるのも躊躇われるし、大丈夫だと言い切るには不安が残るのも確かだ。

 

『ビッチ先輩、誘導を頼む。ただ飛び込めば良いってもんじゃないんだろ?』

『……指定エリアのデプロッグを潰しながら行って。そうすれば気が付いて無い様に見えるから』

 掛けられた言葉は大丈夫だと言いきる物ではなく、役割を果たしてくれと告げるものだ。

 少なくともビックトレーはなんとかするという男に、女が出来るのは最も確実な方法を教えることだけだった。

 

『バエル・ザ・ブラックナイト。クリス・マモル、出るぞ!』

 黒地に臙脂色で染められたバエルが天を切り裂く。

 漆黒の矢と化して、指定されたエリアに居る爆撃機を次々と落として行く。

 厚い下面を越えられた機体は面白い様に落ちて行き、護衛の戦闘機が群がることで地上から見れば、小さな混戦が起きて居る様に見えたかもしれない。

 

『あれか。ホバー戦車に……スナイパーはロングレンジビームライフルか。丁度いい』

 流石にビックトレーを砲台扱いして、その護衛に盾持ちが居るならクリスとしても考慮したかもしれない。

 だがビーム仕様の射撃機であれば、今回の装備を実験するのに丁度良いとすら思えた。

 

『バエルだ! バエルが空を行くぞ』

『まるで閣下の様だ。歓呼三唱!』

『LA~LA~♪』

『ウラー!』

 黒騎士がデプロッグを置き去りにして、ビックトレー目指して急降下を掛けた。

 着地のついでにジムスナイパーに一撃、盾を持たぬがゆえに防ぎようが無く一刀で両断された。

 

『やっと一撃で倒せる様になったか。これを射撃機以外にもできるようになれば良いんだが……マクギリスじゃなくて、アグニカに例えてくれよ』

 クリスは体勢を立て直すと、もう一度袈裟斬りの体勢に持って行く。

 ただしタイミングを緩めにして、『その次』の攻撃を見極めてから飛び込んだ。

 

 あえて遅らせた為にライフルを犠牲に防がれてしまったが、パワーが足りないのでそのまま頭を潰す。

 脇から放たれるビームを肩のリフレクターで防ぎつつ、蹴りを加えてビックトレーから突き落とした。

 これで残るは二機。味方を巻き込む様な砲撃にさえ気を付ければものの数では無いだろう。

 

 役目を果たした。一騎駆けとはいかないがアニメの様に戦艦を潰せると想った……時の事だ。

 怒号の様な通信と、ホバーを吹かせて三機のゴブリンが飛び込んで来るのが見えた。

 

『そのまま走らせたら防壁に使われちまう。絶対にその場で落とせ!』

『ちっ! コジマ大隊が出て来たか』

 敵の作戦は最初から二枚看板だったのかもしれない。

 先行するビックトレーを追い掛けて、陸戦ガンダム達が進軍を開始した。

 このまま放置すれば射線を遮る壁と成り、丘を攻略する手助けになってしまうといいうことだろう。

 

 唸り声を上げるMMP-80マシンガンが落下したジムスナイパーを蜂の巣に変え、シュツルムファウトがビックトレーに突きささる。

 バエルは自分に向いているジムスナイパーを狙うのではなく、下にライフルを向けた敵に切り掛った。

 

『そのままジェットストリームアタックを掛けろ! こっちは援護する』

『手柄を横取りしてしてすまんな!』

 袈裟斬りを浴びせてライフルごと両断し、自分に向けられたビームを肩で受けれる軌道で一気に飛ぶ。

 狙うはビックトレーの銃座で地上から向かって来るジム達、エンジンに向かうゴブリンを迎撃する為のシステムそのものだ。

 ヒートホークがエンジンに叩きつけられている間、クリスは戦艦を落とすよりも、味方の作戦を守るべく獅子奮迅の戦いを繰り広げた。

 

『三方から叩きこめる位置まで引きずり込め!』

『時間が来たら全力射撃だ! 各機、遠慮するなよ。ネオ・テキサスまで吹っ飛ばしてやれ』

 ホバー戦艦が止まり、群がってくる先行ジムをあらかた片付けた頃。

 精鋭であるコジマ大隊が戦線に加わったのである。それを各フォースが迎撃し、なんとか予定の形にそれぞれの陣形を動かしつつある。

 

『勝ったか?』

『敵の半数以上が残っていて勝ったと言えるならな。……動けるか?』

『問題無い』

 おそらくは戦線が完全に膠着した扱いに成り、撃破数に応じた勝利が判定される筈だ。

 それに向けて少しでもジムを狩ろうと、倒れたゴブリンに肩を貸し、三機のパーツを融通しあって戦えるようにするのを助けた。

 

 こうしてインドシナ戦線を扱ったドラマチック・バトルは、プレイヤー側の勝利に終わったのである。




 と言う訳で、今回は大規模戦闘の練習シナリオをこなした形になります。
黒騎士バエルがほぼ完成系、V2の装備の一つを試験、ヘビーアームズは武装を試験と言う感じで、三機一組の戦術を試した感じ。

●バエル・ザ・ブラックナイト
 肩と足をウヴァルの物に変え(アスタロトでも可)、肩に追加装備を設置可能にして、ふくらはぎにスラスター。
基本的に強烈な斬撃を浴びせる為の機体で、武装は真バエルソード一本。籠手のナックルと後腰の稼働スラスターは未完成。
今回はV2の装備を肩に設置し、ビーム防御と探知補助を行っています。

●V2カスタム。EWSパーツ
 武装はロングレンジ・ビームライフルのみ(銃剣ビームサーベルで槍にはなります)、狙撃しながら空域管制する為の機体です。
肩に望遠カメラとサブカメラ、腰にスラスターとリフレクターを兼ねたEⅢ・ファンネルを装備。
EⅢは攻撃力は無い代わりに、サブカメラと圧縮通信機が付いており仲間も装備できることから、三機にデータを送信できるスパイ・アイです。
 大口径のビームスマートガンではなくロングレンジ・ビームライフルなのは、リフレクター・ドローンとして使う為に威力よりも精度を取った感じ。
もしリフレクター・ドローンが上手く機能しない場合は、スラスター機能は諦めて普通にリフレクター・ビットになる予定。
(なおEモードが戦闘力の低い空域管制機としての姿なので、もう一つのモードは戦闘を重視する予定)

●ヘビーアームズver.32(トランドゥ)
 この機体は足を止めて高い命中率で射撃することを前提に、武装と戦術を切り替えます。
今回はチャージ式のビームガトリング砲を複数用意し、コンテナに入れてそれごと盾で守りながら持ち運ぶ。
あとは次々に持ち替えて射撃する……というオペレーション・ナガシノなのですが、継続戦闘するなら電池式のバスターガンダムの方が向いているので御蔵入りの予定。

●近藤一家とゴブリンもどき
 近藤和久先生の漫画に出て来る、ザクとかギラドーガを足して寸胴にした様な機体をイメージしている。
外見はコート状の装甲で隠す為に中身は一致せず、ガレージキットと言う訳ではない。とはいえ共通化したパーツを取り変えることで二個一・三個一の補修が可能。
彼らは泥臭い戦闘を好み一致団結する体育会系。戦闘好きなので偶に出張して、海賊勢力などに名前を隠して参加して居る。

●ティターンズ・エウーゴ連合と、バーザム色違い。ほか
 MKーⅡの後継機というコンセプトで、Gディフェンサーを装備したり色違いで塗装して居る。
他にもエウーゴ・カラーのマラサイとか、ティターンズ・カラーのMk-Ⅱやバイアラン・カスタムとか居たかもしれない。


●ドラマチック・バトル化
 様々なミッションの派生形で、敵勢力が大規模戦闘化または化け物マシン化する。最初はマンネリ打破であったが、途中からネタと化して居る。
ドロスからゲルググとザクが百機くらい出撃したり、ジャブローにドムやグフが何機も降下して来るなど一回限りのネタならあり得るよね……というレベルで総数や強さが強化される。
ここでの注意事項は二つで、構成はまったく変わって無いので想ったよりも対処が可能なことと、ルーチンが変更されるので原作通りにはならないことである。
ついでに報酬が増えることと、こっそり参加して実験し易いので参加する者は意外と多い。


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野生の魔王

●野生の魔王がやって来る

 EⅢ・ファンネルの能力が中途半端だった為、機能を分割してテストをして居た。

 その調整も終盤に差し掛かった頃……。

 

『もしかして、あの時の閣下ですか?』

『閣下は止めてくれ。マクギリスじゃないんだから』

 最後にテストするのは、リフレクター・ビットを使っての曲射攻撃。

 クリスが着弾点を確認して居た時に、以前に共同戦線を張った機体から通信が入った。

 

 Gディフェンサーの改造機を装備したバーザムとティターンズ仕様のMK-Ⅱが現れた。

 よほどバエルが好きなのか、あるいはマクギリスが好きなのか閣下呼ばわりである。

 

『今日はマントの色が違うんですね』

『リフレクターがビームコート程度にしか機能しなかったからな。スラスターとしては問題無かったし、色合わせを変えて見たんだ』

 嘘でもないが本当でもない。

 リフレクターはビットサイズでなければ意味が無いのか、あるいは出力の問題なのか意味が薄かった。カメラと通信リンクは問題無かったのでサイコミュ込みで取っ払って見たのだ。

 

 予備OSにすれば阿頼耶識の稼働時間が伸びるが、クリスは相性が良い方なので載せるシステムが圧迫して居る方が辛い。

 先方を行くバエルが更に偵察機を飛ばす意味も薄いので、スラスターだけの方が良いと判断した。

 とはいえそれを説明する必要も無いので、単にシンプルにしたと伝えておく。

 

『ビームコートだけでも十分だと思いますけど、その色もお似合いですね』

『臙脂と二色のみにするか三色にするか迷ったんだけどな……。っと、何か用があるんじゃないか?』

 通信ウインドウを増やして着弾点との差を通信しつつ、ミツオ達にもこちらの通信を中継。

 そして本題を尋ねたところで、面白い答えが返って来た。

 

『おっとそうでした。上位ランカーとの戦いに興味ありませんか?』

『上位ランカー? PKというか……対戦希望に行くのか?』

『ええっと、どういったら良いのかな。ボクらもこの間の人たちに誘われたんですけれど……』

 話を総合すると前回に来た大規模フォースの連中が、上位ランカーのチームと対戦するらしい。

 

『随分と強力で大人げない機体だから、みんなでやらないかと言う話なんですよ』

『うちのフォースの連中にも聞いてみるけど、その時はよろしくな』

 沢山の人数でボコボコにしようと言う話らしく、この話には迷っているそうだ。

 バーザムとMKーⅡに乗ってる二人は前回の反応といい今回といい、美意識優先の気がみられるので気が乗らないのかもしれない。

 正直なところ上位ランカーに興味はあるが、俺も多人数で少数をいたぶるのは気が引けた。

 

 

『……で、聞いててどう想った?』

『レギュレーションの無いマッチだったら遠慮したいかなってところ?』

『同感だけど……。僕は話を持って来たのが近藤一家ってのが気に成るな』

 概ね同じ反応が返って来たが、ミツオが首を傾げたことで話の流れが切り変わった。

 何やらデータを採掘して色々とピックアップし始める。

 

『近藤一家は体育会系の戦闘好きだけど、正面から挑む事はあっても味方を募って襲い掛る連中じゃない筈なんだよね』

『昔のデータを見ると独特の構成ばかりだな。味方を募集してるようには見えん』

『罠ってこと?』

 表示されたデータには、前回見たゴブリンと巨大なTHE・Oだったり代わりにサザビーが中央に居たりする。

 フラッグ機なのだろうが、それを除けば全てが統一された機体だった。

 ゴブリンの他にも名前を隠して戦う時も、ご丁寧にシーマ機とゲルググマリーネの集団だった。

 正直な話、この連中が味方を募集しているようには見えない。

 

『どちらかと言うと競争を挑んでるんじゃないか?』

『相手は上位ランカーが居るチームなのに? かえって足を引っ張り合いそうだけど』

 競争と言うのも外れて居そうな気がしないでもない。

 超強力なNPCが現れて、それを倒すレイド戦ならば話は別だが……。よってたかって倒す競争と言うには気分が悪いし、少しばかり相手が悪すぎる。

 

『そういえばビッチ先輩。前回の戦いにサザビーは居た? THE・Oの陸戦機でも良いんだけど』

『居なかった気がするわねえ……』

 ビッチ先輩と呼ばれた少女は自分のストレージから、前回に撮影した無数の絵を取り出した。

 V2の望遠カメラの他、サブカメラであるレドームやEⅢで取った画像にもその姿は無い。

 

『嫌な予感がして来たな。……もしかしてこのフラッグ機。上位ランカーじゃないのか?』

『そうなんじゃない? 上位ランカー率いる規律の取れた集団っぽいけど』

『それか! リアルの用事で長期INできなかった奴が帰って来たんだ』

 ようするにこういうことだ。

 狙うべき上位ランカーとは、誘っている近藤一家のフラッグ機、そして戦うのは近藤一家そのものである。

 

『参加できなくて鬱憤が溜まって居て、アイデアだってたまってる。それを解消するのとお披露目というか、招待を兼ねて誘ってるんだ』

『なにそれ!? 挑発してるの? それとも馬鹿なの? 凄いアイデアがあるなら大会まで取っておけばいいんじゃない』

『先輩。……きっとこいつら、戦いたいだけなんだ』

 その考えを元に画像を見返してみると、実に愉快な軍服姿のポートレートが幾つもあった。

 わざわざプラモで野営のジオラマを造ってまで戦場の中で笑っていた。

 その姿はどう見ても、戦いを求める漢たちの姿にしか見えなかったのだ。

 

『はあ……しょうもな。で、戦うかい?』

『俺は上位ランカーと戦ってみたいな。ガチで来るにしろ、ネタで来るにしろ良い機会だ』

『反対しないけど新装備を間に合わせたいわね。E装備はハードな戦いに向いてないもの』

 視線はV2ガンダムの改造機に集まる。

 EⅢからファンネル機能を取り除くか、そのまま付けっ放しにするかは別にして殆ど完成はして居る。しかしこのEWS装備はあくまでNPCと効率良く戦うか、あるいは長期戦を戦い抜く為の構成であり、重戦闘には向いて無いのだ。

 

『リフレクターで頭を狙ったら……』

『所詮メインカメラだからな。ビームスマートガンに持ち替えるにしても、囲まれたら厳しい』

『前回で飛べるところを見せてるし……。それにあっちはあっちで地上装備だったものね。次は違う構成だと思うわ』

 V2の装備を試すには丁度良いが、それは時間とアイデアがあればの話だ。

 今のままでは苦戦が予想されるし、変更するにしても時間がないので既存パーツの付け替えくらいになるだろう。

 だがしかし、適当に変えるのであればワザワザテストをする意味が無い。

 

『先輩はEWSじゃない方の装備ってどんなイメージを持ってるんだ? 俺はミツオから聞いて参考にしたけど』

『それにマッチしたのを探すっきゃ無いね。ありえるバリエーションなら採用されなかったパーツとかで良いし』

『今の所決まってるのは、コレを使って相手をメタることかな? 相手次第で戦い方を変えようかなって』

 映し出された画像を見て、二人は『あぁ』と納得した。

 それはとても優雅な姿をしており、同時に戦場を圧倒する性能を持つモビルスーツだった。

 空中戦を好む少女がモデルとするのに相応しい機体ではあった。……問題なのは機能に見合った装備をブラッシュアップする時間が無いことだろうか。

 

●ラストバタリオン

 待ち合わせ場所である隕石群に移動した時、やはりというか近藤一家の姿は無かった。

 居たのはバーザム・ディフェンサー他、以前に出逢ったメンバーが中心に数だけは居るのようだ(改造が間に有ったのかMK-ⅡもGディフェンサー用意して居た)。

 あえて言うならば、比較的に若いダイバーばかりだろうか。

 

『この様子だと予想通りかな、ミツオ』

『そうみたいだね。僕としては何のグループで来るか、どこまで何時もの集団戦用なのかネタに走るか気になるところだけど』

 結果としてはその両方だった。

 全体でパーツと装備を共用可能なミリタリー仕様で、フラッグ機は大幅にネタに走った改造がなされている。

 いや、フラッグ機は全軍を鼓舞し相手を威圧するという意味での運用であれば、十分に実用的かもしれない。

 

『よくぞ来た。地球圏の明日を担う若者たちよ!!』

 隕石を使った基地の中央から現われたのは、巨大なモビルスーツだった。

 渋いメタルグレーを持つ巨体の周辺には、ダークブルーの機体が九機。近衛兵の様に付き従っている。

 

『今回はゼグ・シリーズで統一してるのか』

 九機のゼグ・アインはアーマーコートが追加され、何処かの親衛隊か……越冬行軍を開始する軍隊のようだった。

 武装は実体弾を基本とする第三種兵装を元に、大型マシンガンにサブマシンガンやバズーカとフル装備である。

 ここまでは予想された通り、地味で長期戦を考慮された地味なイメージのままなのだが……。

 

『見てよ中央のゼグ・ツヴァイ……。あの色の変化と肩……』

『PS装甲化にI・フィールドだと? どこまでラスボス仕様なんだ』

 中央の一機のみが大幅に歌舞いているのが特徴かもしれない。

 電力供給によって装甲の色彩が蒼へ鮮やかに変化し、プロペラントタンクがあるべき場所にはI・フィールドジェネレーターと予備電源が装備されている。

 

 武装の方も大幅な改良がなされ、頭の悪いことにメイン装備は巨大な斧槍に変更されていた。

 三日月状の刃は肉厚で、そして幅広い。

 恐ろしいことに拡散メガ粒子砲らしきモノが増量された肩に仕込まれており、サブアームへ普通にビームライフルを構えて居るのが不思議とホっとした。

 

『あっきれた。殆どフル・スクラッチじゃない』

『どうみても野生の魔王です。ありがとうございました』

『あれを倒すのも大変そうだが、回りの連中を倒しながら進むのは苦労しそうだな』

 周囲のゼグ・アインもただ居るだけでは無い。

 フル装備と言う意味では同じだが、それぞれに担当している位置によって武装が違っていた。

 大型マシンガンを露払いとしてバズーカを構えた機体が徹甲用に控え、サブマシンガンを手に構える個体が接近戦に対応して居る。

 いずれの機体も状況によって装備を変更するだろうし、中途半端な倒し方では手足や武装を共有して立ち上がって来るだろう。

 

『さあ若者たちよ! どちらが地球を守るに相応しいか勝負と行こうではないか』

 とはいえ相手の方からも向かってくるので、ボーっとして居る訳にもいかない。

 持って来られた話と微妙に違うとはいえ、上位ランカー率いるチームと戦うという意味では大きく違わないのだ。

 各フォースのメンバーも覚悟を決めたようで、動き始めていた。

 

『……ジャミトフが前線に出てきたらこんなキャラなのかな? それかガトーと足して二で割らなければ感じかもしれんが』

『ええと……ゲームか何かで解釈が増えたんだっけ』

『ギレンに近い目標だけど、増え続ける人類を憂いているから……とかいう設定だったと思う。まあダイバーがノってるだけだと思うよ』

 三人はある程度予想して居たこともあり、壁に使える小隕石に回り込んで居た。

 

 その間にも戦線は開かれているが、当然の様に状況は良くない。

 まだ序盤であると言うのに、無謀に突っ込んだ機体が落とされた他、盾ごと腕を破壊された機体も居る。

 

『やっぱり連携の差は大きいね。僕らを始めとして何機かが参加してないのも大きいけど』

『これ以上は落とされないうちに援護に行くとして、『先輩たち』はどう想う?』

 二人はV2ガンダムの胴部コックピットではなく、背部から肩に増設されたコックピットに向けて話しかけた。

 本来は複座式バエルで培った経験を活かして従来のコックピットを改造する予定だったが、時間が無いので強引に取りつけたのだ。

 

『当たり前だけど相手を一機ずつ集中砲火。ボスは短期間に攻撃を叩き込まなきゃ駄目だって、『この子』も言っているわ』

 コックピット内部のレイアウトは独特で、『ZERO-SYSTEM』と光が明滅して居る。

 そう、バスターパーツのメガビームキャノン(ビッチと呼ばれた少女のE装では望遠カメラ)の代わりに取り付けられた増設コックピットは、ウイングゼロのモノだ。

 予測能力に長けるZERO-SYSTEMを利用して、効率的でアグレッシブなフォーメーションを組み上げる為である。

 

 とはいえガンプラバトルにおけるZERO-SYSTEMは派生作品のver2.5に近く、強制力が低く未来も予測軌道線やタイミングを教えてくれる程度の物でしかない。

 このままいけば味方の行動を示すラインが、敵のラインで圧倒されるのが判るくらいだ。

 何かしら、圧倒的な火力なり攻撃力で状況を変えなければ、優位を保てるほどの能力は無い。……そう単体ならば。

 

『なら僕が分断した後、クリスが一体抑えて』

『了解した。倒せるものなら倒してしまいたいが、難しそうだしな』

 その状況を造り出す為、ヘビーアームズが莫大な火力で戦線をこじ開けた。

 そしてバエルが切り込むことで、相手の陣形を撹乱して集中して倒す敵を設定する。

 

『このまま頭を押さえるから、先輩は後詰めでお願い。他の機体と一緒にやっちゃって』

『時間が無くて弱点むき出しだから踊れないしね。残念だけどフルパワーは、また今度にするわ』

 ヘビーアームズが大型ガトリング砲を振り回して、穴を埋めようとするゼグ・アインに砲撃を振り分ける。

 装填し直したミサイルも遠慮なしに使用して、空になったハードポイントから次々に捨てて身を軽くした。

 その間にV2が盾に長い、これまた独特の盾で増設コックピットを守りながら襲撃する。

 

『このまま一機ずつ潰すわよ! あんたたちも協力して!』

『OK!』

『いいようにやられるよりはマシだな!』

 盾に取りつけたスラスターも利用して、光の翼で牽制しながら一気に前線に取りつくとビームライフルを連射し射撃戦を敢行。

 周囲に居た機体ともども、一機ずつ飽和攻撃で葬って行った。

 

『次! 荒ッポイのぶちかますから、直上には立たないでね!』

『メガ・ビームシールドじゃなくて、ハモニカ砲か! なるほどな!』

『おうよ!』

 縦長のシールドが展開し、推進力で抑えつけなければならないほどの火力が唸りを上げた。

 同時にEⅢファンネルの代わりに腰に取りつけたインコムも併用して、死角からヴェスバーで押し潰しに掛る。

 そこへ他の機体も集中攻撃を掛けて、分断された敵を次々に葬って行った。

 

 このまま行けばやれる!

 そう思うのは勝手だが、この戦場に居るのはNPCではなくPCだ。

 当然の様に残りは隊形を立て直し、ゼグ・ツヴァイを中心に逆襲に掛って来た。

 

『結構潰したつもりでしたが、元の数が違うとそうもいきませんね』

『では戦うべき相手を少し選別するとしよう。立て直せない連中は任せたぞ』

『……何!? フラッグ機が出て来た!』

 守備側である近藤一家にだけ存在するフラッグマーク、それを隠しても居ないのみならず……。

 それを潰せば即座に戦闘が終了するはずなのに、ゼグ・ツヴァイが味方から離れて突出して来たのだ。

 

『傲岸ではあるが、世界を任せるに足りるかどうか試めさせてもらおう! 受けよ、メガ粒子・グランド・ウェエエエエィィブ!』

『拡散メガ粒子砲が!?』

 ゼグ・ツヴァイの増設された肩装甲には、大型の拡散メガ粒子砲がある。

 それら二基で莫大な熱量を放出し、迂闊に近寄ろうとした機体を次々に巻き込んで行った。

 

『想ったよりも威力が低いか? やはりガンプラだし敷居値が……』

『馬鹿、次が来る避けろ!』

 大口径のメガ粒子砲扱いではあるが、火力は一定に調整されている。

 サイズで許される最大値が襲い掛るが、ちゃんと守ることが出来た機体は落とされてない。

 だがしかし、それを知っているからこそ斧槍で斬撃を浴びせ、あるいは後続のゼグ・アインが叩きのめして行く。

 

『ライフルは普通だけど、あのバルディッシュが厄介ね。直撃したら落とされちゃう』

『どう考えても俺の担当だな。なんとか押さえるからその間に取り巻きを頼む』

 そういえばロシアでは斧槍をバルディッシュって言うんだっけ……。

 そんな事を言いながらクリスのバエルが突っ込み、真バエルソードで切り込みに掛る。

 

 何故か、その脇を固めてGディフェンサーを可変させた、バーザム・ディフェンサーとスーパー・ブラックが随伴して来た。

 

『閣下。自分達が御供させていただきます』

『僕らで露払いをしますね』

『お前達……気持ちは嬉しいが、閣下は止めてくれ』

 今判った。

 こいつらきっと厨二病である。

 付いてくるならヘルムヴィーゲかキマリスにしてくれと想うあたり、クリスも立派に素質があるのだろう。

 というよりも厨二病のケがなければ、黒く染めるだけならまだしも、黒騎士などと名前は付けて居ないか。

 

『初撃はボクが止めます。後方に!』

『プラネイト・ディフェンサー? ということはそいつはメルクリウスをモデルにして居るのか』

 バーザム・ディフェンサーが付けて居るプラネイト・ディフェンサーは、フィン・ファンネルのような砲撃能力や広い結界は持たないが束ねて強力な盾にし易い。

 更にユニット一つ一つが小形であることから、フィン・ファンネルよりも持ち運び易く、壊れても代用が効き易いのだ。

 

『その通り。その相方……つまり自分のスーパー・ブラックはヴァイエイトをモデルにしております閣下』

『だから閣下は止めろと……。しかし同道には感謝する』

 Gディフェンサー全てがジェネレーターであり、ビームスマートガンの増幅器なのだろう。

 二枚に展開した強力な砲が急速なチャージを掛け、ゼグ・ヅヴァイの間に入り込もうとしたゼグ・アインに牽制。

 同時にサブアームの一つを狙い撃った。

 

『ほう……惜しいな。直接狙って居れば、潰せたかもしれんが』

『それは俺の役目だ。暫く付き合ってもらおうか』

 I・フィールドに阻まれてサブアームは損傷を受けるだけだった。

 しかしバエルが電磁砲で牽制しながら斬撃を浴びせると、PS装甲による軽減を含めても故障は避けられなかった。

 

 奇襲が不可能と見て、サブアーム潰しに掛った判断を見てゼグ・ツヴァイのダイバーは嬉しそうに笑う。

 

『カカカ、良い判断だ。しかしこんなモノを気にして戦われてもつまらんな。こうしてやるから全力で来い!』

『なっ……自分で。手加減されるのは豪腹だが、今はその挑発に乗ってやる!』

 ゼグ・ツヴァイはバエルと互角に戦う為に、残ったサブアームを自ら破壊した。

 

 しかし本質的にいえば、手加減と言うよりは駆け引きだったろう。

 一騎打ちの様相を呈したことで、バーザムやゼグ・アインを含めた三対二では無くなったのだから。

 

『我々は近づく者から対処します。御武運を』

『みんなと一緒に残りを片付けて来てくれ。それまでは押さえて見せる』

 巨大なゼグ・ツヴァイの豪腕と、ガンダム・フレームの中では最も強力とはいえバルバトスと違って強化パーツを付けて無いバエルの腕。

 一騎打ちに成ってしまった事で、その差が出始めてしまった。

 バルディッシュと真バエルソードがぶつかり合い、僅かながらにゼグ・ツヴァイが押して行く。

 

『ならば、これはどうだ!?』

『温いわ! ゼグ・ツヴァイの加速力を舐めてもらって困る!』

 バエルが機動力にモノを言わせて振り切り、再突入で勢いをつけようとする。

 しかしゼグ・ツヴァイに取り付けられた無数のスラスターが、巨体には不釣り合いな程の加速で追随してきた。

 

 クリスは心得があるのでマニューバー無しで剣を自在に操れるが、相手は上位ランカーだ。

 当然の様に無数のバリエーションの中から的確なモノを操り、寄せ付けないどころか時に圧倒して行く。

 もしかしたら、クリスの様にリアル能力で押して来る相手とも戦った事があるのかもしれない。

 

『筋は良いが未熟! これがガンプラバトルだというのを忘れてはな!』

『何っ! 勝って居る方が防御を捨てるだと!?』

 切り合いで有利な筈のゼグ・ツヴァイが、防御を捨てて逆襲に出る。

 鍔競り合いが起こると思っていたこともあり、カウンターで手痛いダメージを受けてしまった。

 こちらの攻撃も直撃してはいるが、サイズの大きさとPS装甲による軽減でダメージレースでは大幅に交代してしまう。

 

(くそっ。俺の負けか。このまま何もできずに終わるのか……。サブアームを潰しただけ、それも俺がやった訳じゃあ……?)

 クリスはダメージを庇いつつ必死に剣を操るが、機体差に加えて先ほどの様な痛烈なカウンターを警戒せねばならない事で精神的に受けに回ってしまった。

 こうなれば追い込まれるだけなのだが、その途中で奇妙なことに気が付いた。

 

(待てよ。手加減するつもりならば、サブアームに持たせたライフルを捨てるだけで良い筈だ。自分で壊す事で誘導した? 一騎打ちに? それとも他にも……)

 次第にダメージを受けて後退し、視野が戦場から自分達だけに狭まって行く。

 その中で必死に思考を巡らせて、仕掛けられた罠が何かを探っていく。

 

 クリスの腕ならば何かが可能で、それをやらせないために愚直な切り合いに持ちこんだのだ。

 

(俺が考えていたのは残るサブアームの破壊……。そうか、部位狙い! 俺とバエルならば可能な装備、その破壊を避ける為か!)

 気が付いてしまえば後は消去法である。

 真バエルソードの長さと強烈な打ちこみで破壊出来る場所にあり、壊されると後の戦闘に影響を与えるモノ!

 

『残念ながら勝負は俺の負けだ! だがこれはガンプラバトル、フォースの勝利はもらっていく!』

『ほうっ……来るか。ならば良し!』

 クリスは敵の言葉を使って、今から駆ける特攻のことを予め説明した。

 ヒントは相手からもらったようなモノであり、ガンプラバトルとしての知識と経験を鍛えられたのは確かだからだ。

 

 そして、自分とバエルならばやれると信じて最後の攻撃に打って出た。

 大きく振り被り、真バエルソードとウイングスラスターだけを直撃から守る。

 

『答え合わせだ。何を会得したか見せて見よ!』

『まだだ。まだ終わるなバエル!』

 横薙ぎの一閃が無防備になったバエルの胴を真っ二つにするが、既に斬撃の体勢に入っているので真バエルソードはそのまま振り降ろされる。

 人の戦いは死ねば終わりだが、ガンプラバトルはそうではない。最後のモーションでフォースの勝利に貢献する為、重要なパーツをもぎ取りに行く。

 

 肩に設置されたI・フィールドと、予備電源の内の一つを破壊してその動きは止まった。

 吹き飛ぶバエルの残骸に、掛けられた言葉は一つ。

 

『その覚悟は見事! 大会でいずれ相見えよう!』




 と言う訳で野生の魔王……。大人げない改造を施された、大人げない上位ランカーとの戦いの回です。
MMOだったらこういうプレイヤー主導のイベントもあるかなーと想ったのと、高額なキットを更に改造する人とか、過積載で改良する人も居るかと想った為。

●V2ガンダム。E装備 → M装備
 リフレクターが上手く機能しなかったので、ビットを随伴して機能分離。
ビームスマートガンに弾倉使った連射モードとチャージで無限に使えるモードを用意すれば完成。
ずっと優雅に高空に浮かんで、ずっと一丁の武器で戦い続ける優雅なマシンです。
 一方でM装備はゼロ・システムを使ったメタ戦術・重戦闘用。
敵が遠距離に弱ければ遠距離で、近距離が弱ければ接近してフルボッコにする為の機体。
装備は暫定バージョンですがハモニカ砲で増設コックピットを守りつつ、ライフルとヴェズバー・インコム(消えた設定の一つ)で仲間と共に飽和攻撃を掛けます。

 ガンプラバトル中のゼロ・システムの解釈としては、数ターン分の予測行動を出し最適解を表示してくれます。
その通りに動けば命中に良い修正が、無視して行動すれば悪い修正がきます。当然ながら平均値の行動を予測できるだけなので、無茶したり特殊マニューバーには対応して居ません。

●バエル・ザ・ブラックナイト
 EⅢファンネルが盛り込み過ぎて中途半端だったため、リフレクター機能とファンネル部分を削除。ただの阿頼耶識で動くスラスター兼カメラになっています。後は腕部にパイルバンカーかナックルを付ければ完成(カエルの眼・猫の爪)。
 脳波コントロールである機体制御サイコミュをサブシステムに使い、阿頼耶識に頼らないので稼働時間も延びるデータもあるのですが
併用しても他にメリットが無い為、特殊マニューバーなり他のOSの方が良いので外れて居ます。
 ガンプラバトルの解釈としては機体制御系OSを二つ載せると、他が出来なくなる感じです絵すね。

●バーザム・ディフェンサーとスーパー・ブラック
 いわゆる厨二病に掛っているのか、えらく芝居掛った二人組の機体。
プラネイト・ディフェンサーを装備したGデイフェンサーを、やや大型のバーザムが合体してタンク役。
加圧式のビームスマートガンを持ったGデイフェンサーを、スマートでやや耐久性の低いMK-Ⅱが装備してアタッカーに成る。
二機で一組であり、同時にGデイフェンサーそのものも交換可能。

●ゼグ・アイン第三種兵装・改一
 武装を実体弾の使い分けだけにして、追加でコート型のアーマーを取りつけている。手足のニコイチ・サンコイチも健在。
地道な打撃戦や長期戦を想定したモデル。

●ゼグ・ツヴァイ。消鬼(Vanish-On)
 全身にPS装甲を施し実体弾に対抗し、I・フィールドジェネレーターでビームを軽減する無敵の防御。
武装は巨大なバルディッシュで相手を叩き潰しつつ、改良したサブアームで普通のライフルやマシンガンで戦う。拡散メガ粒子砲はオマケだとか。
攻防一体のマシンであり、仲間と共に戦うことで恐るべき威力を発揮する。
 とはいえ頭の悪いカスタムであることは間違いが無く、稼働時間が短いのが最大の欠点。
バスターガンダムを参考に肩へ三つの予備電源を持ち、後部にもプロペラントを減らして予備電源を所持して居る。
どちらかといえば帰って来た上位ランカーが、鬱憤晴らしを兼ねて若いダイバーと遊ぶ為のロマン機体。


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自分だけの技

●マニューバー

「前は……しないと言う話だったが、先輩はアサルトバスターみたいにすることになったのか?」

「公式試合とかならそうなんじゃない? さすがに混戦になったらスマートガン一丁ってのはつらいっしょ」

クリスとミツオはマニューバー登録の調整を行っていた。

 ビッチ先輩と呼ばれる少女がコックピットの調整で忙しい為、代わりにV2ガンダム用に登録作業をしているのだ。

 

 マニューバー登録というのはプラモデルの稼働パターンを登録しておき、ボタン一つ・音声入力・視線ポインタなどで軌道するようにしておくものだ。

 鉄血のオルフェンズで簡単な命令コマンドを入力するように成っていたが、そのアレンジ版と言えるだろう。

 

「なら装備位置が動線に入らない様にしないと駄目か」

「切り離すタイプはショートカット版があっても良いと思うけど、基本は被らない方が良いだろうねェ。じっさい僕も追加装備案でそうしてるし」

 コンピューターが自動でやるままで登録しておいても良いが、自分で登録すれば間を置いたり強引なショートカットも可能になる。

 

 ここで面白いのは、普段は考えつかない発見や流用パターンがあるということだ。

 合体・変形する時に、パーツを切り離して再接合するのもこの一種だと言える。

 ワザと間を入れてタイミングをずらしてフェイントにするのは前者に当たり、別の装備と交換してみてまともに稼働するかどうかをテストすることもできた。

 

「というと望遠カメラとキャノン砲の類を同時に考慮してないとかか?」

 クリスは望遠カメラとレドームのセットを、バスターユニットそのものと比較してみる。

 メガ・ビームキャノン砲とスプレー・ビームポッドは強力だが、以前に戦った時の感触を考えると微妙だった。

 もちろん有力な武器なのだが、対戦相手は容易くビームキャノンを避けるレベルという前提において、EⅢによる情報共有は非常に魅力的だったのだ。

 これにゼロ・システムも加わって、情報整理までしてくれるというなら今更戻すなどありえまい。

 

「んー。それもあるけど、光の翼の稼働域を変えてもう一組、または別の翼を増やしてみるとかだね」

「武器にもなる……というのがこんなところでネックになるとはな」

 光の翼はスラスターであり武器でもある。

 プラモの稼働範囲では流石に主人公のウッソが使った様な使い方は難しいが、それでもダメージ判定があるのは確かだ。

 迂闊に追加したり稼働域を増やすと、自分自身の装備を焼きかねない。

 そしてスラスターであるがゆえに、前面に用意したり稼働範囲を変更すると軌道方向がおかしなことになってしまうのである。

 

 少なくとも追加装備で気を使うのは確かで、例えばWガンダム・ゼロカスタムの翼を併用する場合はデリケートな調整が必要になるだろう。

 光の翼のダメージ機能をカットする登録もできなくはないが、面倒なわりに攻防一体の翼を失うだけなので痛しかゆしである。

 できなくはないが、もはやソレを前提としたマシンにせざるを得ない。

 

「その辺はいいとして、珍しく地味な作業に付き合うな」

「こないだマニューバーで上手くやられたからな。自分で使うかは別にして、少し覚えて見ようと思ったんだ」

 クリスはゼグ・ツヴァイ戦の記録を投げてよこした。

 そこにはマニュアル・アクションで鋭い袈裟斬りを繰り出すバエルに対し、幾つかのマニューバを使い分けて防御して居る姿があった。

 

 武器のバルデッシュが大きく、巨体のゼグ・ツヴァイなら効率良く戦えたのもあるが……。

 全体として、白兵戦そのものはクリスが操るバエルの方が優位であった筈なのだ(PS装甲で軽減されるとは言っても)。

 

「こないだねえ……。大会でとか言ってるけど、フォースのメンバー増やすの?」

「そうそう見合ったメンバーは集まらんさ。それに、10対10ばかりが公式戦でも無い。こないだみたいな機体を狙ならば少人数戦の方がありえる」

 ここで問題になるのは、強さと性質を兼ね合わせた人間が都合良く揃うとは限らないということだ。

 強いだけなら幾らでも集まるだろうが、それだけならば普通にメンバーを募ればいい。

 コンシューマー版・アミューズメント版問わなければ、それなりに揃うことだろう。

 

 だが似たような環境にあったり、思いついた戦術・装備を共有ながら遊んで来た間柄というのはそうそう捨てがたい。

 無理に十名まで拡大すれば、今行っている連携や試みなどは今後も継続して行くことは難しいだろう。

 電子戦ならば無理にV2ではなく専用の機体で電子戦だけに専念する様に求められるだろうし、白兵機体とはいえバエルも射撃装備の充実を求められるだろう。

 

 それらのこだわりこそが個々の性格であり、フォースの性質を決めて居るのだから。

 

「まあ当面は小人数の公式戦を狙いつつ、強くなるのが先決かな。ヒントはもらったし、ひとまずは剣一本で脅威だと言われることだ」

「なら僕もバージョンを進めてより戦い抜ける機体を目指さないとな」

 そいって二人はV2ガンダムの装備例を何パターンかと、それに対応したマニューバーを登録。

 自分の機体をブラッシュアップを進めるのであった。

 

●ガンプラだからこそ

 いつもより緩い速度で飛び出すバエルをNPCのエクシアが圧倒する。

 GNソードでの大振りを始めたところを、両足と……片側のウイングスラスターだけ全力で急加速して半回転。

 斜めにすり抜けながら回り込み、GNドライブを切り捨てたようとしたが腕の一部に留まる。だが相手はNPCゆえに勝敗はそれで決着し、次の一撃でエクシアは沈黙した。

 

「前から思ってはいたけど、牛若丸みたいな戦い方になったな」

「参考にはしたが、どっちかというと京八流よりも陰流かな」

 クリスの習っている流派は、技は袈裟斬り一つ。

 後は移動してからの斬撃、あるいは蹴りを浴びせたり、防御からの一撃と……相手の動きを崩してから戦う流派だ。

 

 これまではそれをガンプラに流用して、シールドバッシュや蹴りを組み合わせて戦ってた。

 今回は移動の方を調整して、ただ真っすぐ飛ぶのではなく、山成り軌道やワンテンポずらしたり踏み込みを強くしている。

 それに合わせてこれまで重視はしていなかったマニューバーを導入しており、片足だけ吹かす様な、普通は誰もやらないような動きも取り入れて居た。

 

「しかしそれで良く相手を捉えられるな」

「思考制御のみに絞ればモビルトレースや機体制御サイコミュよりも、阿頼耶識の方がかゆいところに手が届くしな。それを使わせてもらっている」

 フェイントとして山成り軌道やテンポの変化はともかく、『誰もやらないような動き』と言うのは意味が無いから本来はやらないのだ。

 先ほどの様な奇妙な回転をしてしまったり、剣の軸線が本体に対して水平を保てないなどバランスを崩しては意味が無い。

 しかしクリスは阿頼耶識の反応速度で、斬撃だけは可能な体勢に戻すと言うアクションを入れて解決して居た。

 

 プラモデルなのだから人体の動きにこだわる必要はないし、正面同士を向きあってチャンバラする必要も無いのだ。

 そもそも宇宙での戦いでは肩と腰を一直線にして被弾面積を下げ、盾で身を隠して射撃というのは良くある話である。

 その時にすれ違いざまにサーベルで切り合う事もよくあるのに、同じ状態を意図的に起こして悪い道理は無いとも言える。

 

「とはいえこの方法だと力が入り難いから、あくまで武装や重要パーツを狙う時だけだな。あくまで突進に組み合わせた方が威力はデカイ」

「こないだのに味をしめたのか? 変なクセが付いて御師匠さんとかに怒られなきゃいいけど」

 ありえない位置に移動して、正対しないと正確に狙い難いし威力も出し難い。

 そこで相手の防御範囲(剣と盾)からはみ出る、ライフルや大型スラスターを狙う時用に定めて居た。

 

「問題無い。うちは甲冑剣術だから、元から小手や足を普通に狙うし、常態を捨て正対を捨てて攻め掛るのも技まで昇華すれば文句は言わんさ」

「ああ、そういえば。チェストーとか言う流派じゃないんだっけか」

 ノリとしてはともかく、細かい剣術の差に興味は無いのかミツオは新しい敵を出す様に設定しながら適当に頷いた。

 

 この場合に必要なのは、クリスが強くなるか、邪道に走って弱くならないか……だけだ。

 前に使っていた飛び込み様に喰らわす強烈な一撃よりも弱くなれば忠告くらいは言うかもしれないが、そうでなければ本人の自由である。

 

「それはそれとして、お前の方はどうなんだ?」

「あ、僕? まあ順調だよ」

 一方で、ヘビーアームズver.32(トランドゥ)には奇妙な装備が追加された。

 普段は大型弾倉とベルト給弾器などが取りつけているバックパックと後腰に、試作四号機ガーベラやTR-1ヘイズルの大型シュツルム・ブースターを大きくしたような……。

 簡単に言って大きな尻尾の様なモノが取り付けられていたからだ。

 

 今から行う戦闘で見られるとは言え、気にならなければ嘘である。

 

「格闘戦用に大型テイルブレードってわけでもないんだろ?」

「そりゃね。砲撃戦用のカウンターウエイトであり、これその物が巨大な大砲ってわけさ」

 尻尾状のコンテナであると同時に、サブアームやスラスターを取りつけ易くした形状だ。

 もちろんサブアームといってもそんな位置では武器をマウントできないので、あくまで大型ガトリング砲や榴弾砲を片手で保持する為。スラスターも姿勢制御である。

 

 そして一度コンテナを開けばザメルの680mmを小さくしたような、折り曲式の大砲がある。

 言いながら砲撃を開始し、こちらを目指しているユニオンフラッグの編隊へ散弾をぶちかました。

 NPCとはいえそれで全滅などはしないが、編隊を崩したところをガトリング砲とミサイルで次々に撃ち落としたのである。

 

「とにかくこないだの戦いは参考に成ったよ。どんな無茶でも欠点さえ理解していればやって悪い通りは無い」

「やっぱり影響を受けたのは俺だけじゃなかったんだな。人の事は言えんじゃないか」

 上位ランカーというか思い切りの良いデザインで刺激を受けたのか、それぞれに違う部分に影響された。

 ビッチ先輩と呼ばれた少女も同様で、片方ずつ運用するつもりだったEⅢによる把握能力とゼロ・システムを併用するらしい。

 

「そうなんだけどさ。手間が掛るのはこれからだよ。悪影響なのは間違いないから、自分の戦術にきっちり消化しないと」

「影響され過ぎて元の目標を忘れたら目も当てられんからな」

 良い面を取り入れるのは良いが、完全に染まってしまっては向こうのフォースの影響下にいるのと代わりが無くなってしまう。

 そんなことになるくらいならば、元のまま発展させてそのノリでも付き合えるメンバーを集めて強化すべきだろう。

 

「装備は当然手直しするとして、まずはマニューバーで登録可能な範囲で調整して行く感じかな」

「どうしても無理な場合に、マニュアル・コントロールを組み入れる方が良いだろうな」

 自分が扱い易いガンプラを造り、自分独自の戦術を組み入れる。

 その先はどうするか?

 

 人ではなく、ロボットでもなく。

 ガンプラだからこそ可能な動き、自分だからこそのこだわり。

 その組み合わせを独特の技にしようと思いつくのに、そう時間は掛らなかった。

 

「あとは自分だけの技を作りあげるとするか!」

 




と言う訳で、今回はガンプラの最終調整と専用の技・独自の戦術を考える会になります。
地味な話ですが、ここでやっておいて一気に仕上げる予定です。
次からは普通に戦闘モノになる予定。

以下、MMO風の解説
●マニューバー登録
 Aボタンを押したら戦闘。設定により射撃したり格闘したり。
から始まって、きりもみ旋回掛けながら射撃、ブースター吹かして白兵戦を挑む……まで様々なアクションを入力します。
地味な作業ですが格闘ゲームと違って自分で設定できる分、自由度は高くなります。

・普通の使い道
 剣を振り回すだけでも、腕をどう動かすかを何パターンか組んでると軌道を読まれ難い。サボるとデフォルト設定のままと幅広い差。

・動作チェック
 登録作業中に不可能な動きや、思わぬ設定ミスで稼働しない・ダメージを追ってしまうなどが判ります。
例えばV2ガンダムの光の翼パーツを見て、これを斧の代わりにしようと前面に持って来ると若干バックしてしまうことや、盾・ライフルが傷付く可能性も判るわけです。
またテスト中は画像処理だけで行う為、改造前のプラモでも試験的に確認する事が可能です。

・合体変形パターンの登録
 パーツを切り離して、どういう順番で、どれがどう合体しなおすか。など予め定めておくことが可能です。
もちろん、合体・変形前提のマシンは最初から登録されていますので、追加パーツを点けて居る時に設定が必要になります。ファンネル・インコムなどのオート軌道もこの作業に成ります。
逆に設定しない場合や、次のモーションに存在させずに設定すると、そのパーツを切り離すショートカットにもなります。

・マニュアルアクションとの差
 登録したマニューバーではなくマニュアルで使用した場合、レバーや視点ポインタを使用して動作を行います。

・特殊なマニューバー
 相手の盾を割りながらの剣撃やビームを射ちながら自分を動かして薙ぎ倒す等、攻撃や強力なガンプラが全力を使える時に使用可能な動きです。
本来は不要なのですが、アミューズメント接続版と違ってコンシューマー接続版はスペックが足りないので、ランクを上げて登録しなければ発動しません。

 不便になったとも言えますが、アミューズメント版では試しながら行うしかなかった動きを、登録しておくことが可能です。
例えばマシンガンの射撃でフルオートではなく一発ずつ撃つ場合、いちいちボタンを押す動作に絶妙なタイミングが必要ですが、『指切り射撃』と登録しておけばマニューバーに組み込めます。
(なお、コンシューマー版がアミューズメント版に技術革新で追いついた場合は、この登録作業は消えるのではないかと言われています)

●それぞれの機体とマニューバー

/バエル・ザ・ブラックナイト
 基本的には仲間よりも先に飛び込みながら、前衛をこなしながらデータを送る先導役。
パイルバンカーを持って居ない・造れなかったので、肉厚のソードストッパー兼小手を用意して完成。

『カエルの拡眼』肩部:EⅢスラスターとデータ通信
 姿勢制御して可能な限りクリアな画像を仲間の元に送る。
EⅢはカメラ・姿勢制御スラスター・指向性通信のブレードアンテナを仕込んだ小さな翼状パーツで、ウヴァルの肩に設置して居る。
イメージ的には、オルフェンズ外伝のアスタロト・オリジンの肩ウイングの半分くらい(ウイングスラスターに接触しない為)。

『猫の黒足』脚部:ブラックスラスター・背部:ウイングスラスターの限定稼働によるバランス変化
 真っ正直に飛ぶだけではなく、山成りだったり、緩やかに絞ってから急加速など様々なパターンを持つ。
ブラックスラスターはウヴァルの脚部を使った物。名前を点けて付けているのはクリスの気分。

『猫の黒爪』腕部:ブラッククロー
 肉厚に盛った小手で殴りつけバランスを崩してから斬撃、あるいは腕で防いでから斬撃を行う為の物。
名前を点けて付けているのはクリスの気分。

『人の技』:阿頼耶識によるバランス制御
 他のマニューバーやマニュアルによる無茶な行動から、ひとまずバランス制御して斬撃体勢に持って行くまでの動作。
基本的にその後はマニュアルで袈裟斬り。偶にフェイントでマニューバー付きの袈裟斬りに繋ぐアクションが入っている。
それらを統合して固有の技として、正対を捨て常態を捨てる、MSタイ捨流を追い求める。

/ヘビーアームズver.32(トランドゥ)
 基本的には装備した重武装を相手フォース・強敵に叩き込む攻撃役。
今回はテイル・スタビライザー兼大型榴弾砲を用意したが、大型過ぎるので別のアイテムに成る予定。

『スラスター・ノズル』肩部の後ろに設置された小形スラスター
 大型射撃武器の連射による反動を抑える為のもの。
EⅢスラスターを兼ねているが流用して居るだけなので、姿勢制御はオート。

『グランド・アイゼン』脚部増設部全体に付けられた爪
 大型射撃武器の連射による反動を抑える為のもの。
場所によって無限軌道ないし宇宙用スラスターが踵に付けられる。

『テイル・スタビライザ』後腰部(バックパックの下)の補助支
 大型武器の反動を抑え、携行武器を持つ為のサブアームにも成っている。
今回は大型榴弾砲を尻尾が変わりにして居るが、サブアームだけに成る可能性大。

『無反動砲撃モード』
 次回から登場する、全身のカウンターウエイト(宇宙ではスラスター)を持ち居た姿勢制御。
大型武器を使用しても、可能な限りブレ無い射撃態勢に半トランスフォームを行う。
変形と言うよりは、ガンダム・ヴァサーゴのアレ。

/V2ガンダム・プリマ。『オデット』と【オディール】
 基本的には全体の支援担当で、モードによって異なる介入戦術を取る。
EWS装備を山盛りにしてビームスマートガンによる狙撃を行うオデットと、様々な武器を用いてゼロ・システムによる介入で相手をメタるオデールというパーツを持つ。
中途半端になるので滅多に行わないが、双方のパーツを有して戦うアサルトバスター的な場合は単純にプリマと呼ぶ。

『共通』
光の翼、メガ・ビ-ムライフル(ビームスマートガン)、ミノフスキークラフト、肩部EⅢスラスター

『オデット・パーツ』
 空域管制・狙撃用モードで使用するパーツ。
『EWSエノク』背部から肩上
 望遠カメラとレドーム・センサーのセット。
『パラレル・ビームスマートガン』手持ち携行。ディスクレドーム・銃剣ビームサーベル・チャージケーブル有り
 元々狙撃し易い大型銃だが、ディスクレドームに加えて各種センサーとの連動で精度を上げている。
また通常のEパック弾倉で射撃する他、本体チャージしながら一発撃ちを行うケーブルを有する。

『リフレクター・ウイングビット』燕のようになった後腰スカートアーマーそのもの
 二枚のリフレクタービットに成り、攻撃手段こそ持たないものの、偵察補助・反射防御・曲射端末になる。
裏側にGNドライブが設置してあるが、エンジンを示すパーツとして使っているだけなので、トランザムは使用できない。

(オデット時専用でプリマ状態では使わない装備として、Wガンダム・ゼロカスタムの主翼を追加し、光の翼をカットする構想)

【オデット・パーツ】
 戦場介入用モードで使用するパーツ。
『Zero・Systemメタトロン』コックピット
 データリンクしながら効率の良い介入を行うシステム。
『ハモニカ砲』盾内。スラスター有り
 多連装ビームカノンを持つXデバイダーの盾。当初は即席コックピットを守る為だったが、火力・推力のバランスが良いので継続採用。
『EⅢインコム』横腰
 カメラとスラスター付きのヴェスバー。一発ごとにチャージが必要だが、多角的な砲撃が可能。
『ライフル各種』
(オディール時専用でプリマ時に使わない装備として、リアクティブ装甲のドレスアーマーを追加する構想。光の翼による機雷爆破を前提に入れるので、アクティブクロークは考慮しない)


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フォースの再出発

●御披露目と全力と

 フォース同士の戦いで最も多いのは、どうしても3対3マッチになる。

 2名でも十分な精鋭チームや逆に5名のチームが人数を絞ってと、集め易い人数だからだ。

 何が言いたいかと言えば、完成したマシンのテスト相手には事欠かないと言うことである。

 

「次の試合は地上戦みたいね。さっそく試してみましょ」

「待ってました!」

 ちょっとしたミッションに出場した3人は御目当てのMAPが空くのを待っていた。

 ミノフスキークラフトとカウンターウェイトは地上戦前提なので、宇宙用とランダムなMAPを避けて居たのである。

 

 そして地上戦を待って居たのは一チームだけではなく、ゆえにこの出逢いは偶然ではないかもしれない。互いに何戦かして経験を積もうとするからだ。

 

『あれ……。もしかしてキマリスじゃないの?』

『ヘルムヴィーゲを四足にしたのか。違和感ねーぞ、やるなあ!』

 森の中を突っ切って来る敵の前衛はランスと盾こそ所持して居るが、マッシブで肉厚なボディに二本の角を生やして居た。

 望遠レンズで撮った画像を拡大するとヘルムヴィーゲ・リンカーの特徴的な外見が映し出される。思いつく者は多い改造だが、それだけに四足の脚部は可能な限り違和感がない様にされていた。

 

『あのヘルムヴィーゲは俺がもらっていいんだろう?』

『お願いするわ。私とミツオでフルアーマー・ユニコーンとGアーマーを落とすから』

 V2ガンダムの改造機、V2プリマ『オデット』が空を翔ける。

 光の翼からダメージ設定を解除し副翼とし、Wガンダム・ゼロカスタムの主翼をメインスラスターとして地上用の専用パーツとしていた。

 肩に小さな羽型スラスターを持ち後腰に長いスカートアーマーを持つことから、機械の鳥かあるいはバレリーナの様に見える。

 

『上下から挟み込むわよ。NT-Dを使わせたくないから、ビットが使えないのは痛いけど』

『了解。なんで変形してないのか気に成るけど、爆装してるみたいだから撃ちあって見るよ』

 ヘビーアームズver.33(トラントロワ)は無限軌道で疾走しつつ、両手のツインビームガトリング改を構えた。

 設置された長方形の盾はギャプランを思わせる物だが、用途はブースターではない。

 本体を横撃から守りつつ、後腰に設置されたサブアームで支えて命中精度を高める為だ。

 

『じゃあ分断するから御馬さんよろしく』

 ビームスマートガンがGアーマーを狙撃し、回避軌道の周囲へビームガトリングが放出される。

 突出してもユニコ-ンのI・フィールドでは防ぎ切れないとみたのか、Gアーマーは大きく回避軌道を取った。

 

『どちらかといえば牛だと思うがな。任されたと言っておこう』

 バエル・ザ・ブラックナイトを地面を這う様に飛ばせ、土煙りを上げながら接近する。

 右に左にジグザグの軌道を取り、空中からの砲撃とランスから放たれるナニカを警戒しておいた。

 

「あれはドリルランスだろうな。……ダインスレイヴは撃たせん!」

 ヘルムヴィーゲはサブアームではなく手持ちでキマリス・ヴィダールのシールドを構えている。

 だがダインスレイブの予備弾が無いとは思えず、通常時ならばギリギリの距離でウイングスラスターを全開にして急加速を掛けた。

 

『バエルにダインスレイヴ効かぬは承知! ヘルムヴィーゲ・タウルスの力を見よ!』

『なんとお!』

 四足のヘルムヴィーゲも急加速を掛け、ドリルランスを回転させて飛び込んで来た。

 クリスが足のスラスターを吹かせて急上昇すると、奴も四足のスラスターを吹かせて馬首ならぬ牛首を巡らせたのである。

 

『グレイト・ギャロップ!』

 そしてドリルニーでこそないが、磨き上げられた膝装甲と頭の角で貫こうとカウンターの構えを見せていた。

 だがしかし!

 

『お互いに考えることは同じだな! ならば俺が先を行く!』

『何!? 宙返りだとお!』

 クリスは飛び越した段階で肩のEⅢスラスターを上に吹かすように設定して居た。

 当然ながら推力バランスの急変により、下へ向けて大回転。

 グルリと回転して、今度は逆向きに地面を飛行していたのだ。

 

 これにより飛びあがったヘルムヴィーゲ・タウルスのグレイト・ギャロップを回避したのだ。

 

『馬鹿め! そんな状態ではロクな攻撃も……っ』

『悪いな! お前の歩行と一緒で、想定済みなんだよ!』

 ヘルムヴィーゲ・タウルスが四足を上手く操れるのには理由がある。

 走行モ-ドとスラスターモードの両方で、いちいちマニューバーを登録して居るのだ。

 まともに動かすとバランスを壊しそうなものだが、丹念に設定し、何度も移動演習する事で機敏な行動を可能にしている。

 

 そして予め設定して居れば対処可能なのはバエルも同じこと。

 黒騎士は複数のセンサー、そして仲間との情報リンクを使って状況把握。

 そして阿頼耶識によるスラスターの微調整をマニューバーに組み入れて、変異抜刀としての斬撃を可能にして居たのだ。

 

『もらった!』

『おのれ! 目覚めよ、エスカトスデュナミス!!』

 逆袈裟ならぬ、下から上への袈裟斬りが繰り出される。

 最も無防備な腹を晒したヘルムヴィーゲ・タウルスは、突如、爆発的な加速でその場をバックステップで回避する。

 

『おのれ。俺に……俺に切り札を使わせたな。大会まで使わずにおくつもりだったものを……』

『言ってろよ。……まさかスーパーモードを隠していたとはな。四足とダインスレイヴは飾りか』

 バエルが元の姿勢を取り戻した時、ヘルムヴィーゲ・タウルスは四足から二本足に戻っていた。

 それだけではない、黄金の煌めきを見せて先ほどよりも強烈な力を見せて居たのである。

 

 四足の複雑な機動を捨て、更に限定的な能力向上を行っている。

 そして足を切り離した接合部や、各部位に隠されたビーム砲を闘気のように放って来るのだ。

 思考制御では阿頼耶識に及ばぬものの、動作でのコントロールと何よりビーム操作技術こそが、Gガンダム系のOSであるモビルトレース・システムの真骨頂だった。

 

●真の力

 一方で、他の四機も一進一退の攻防を見せて居た。

 互いに真の力を隠した上で、牽制代わりに通常状態の限界で戦い抜いていたのだ。

 

『次行くわよ! タイミングを合わせて』

『了解。残りの武装をいただいちまおうぜ先輩!』

 V2プリマ『オデット』は強力な推力に物を言わせて引き離すと、狙撃こそしないが一発ずつチャージしながら撃ち続ける。

 そしてヘビーアームズver.33(トラントロワ)が攻撃可能な位置に着いた段階で、Eパック式で連射を始めていたのだ。

 

『盾まで持って行かれちまったぜ。フルアームズも残りの武装も寂しくなったなぁ』

 フルアームズ・ユニコーンは幾つもの装備を破壊されながら、本体そのものは無事だった。

 フルアームズの鈍重さと射角の狭さを突かれたわけだが、今のところ問題無く対処して居る。

 加えて目立ったダメージはなく、デストロイ・モードを温存していることから余裕の範囲あることは間違いないだろう。

 

『それはあっちもよ。盾の御代りは必要かしら?』

『せっかく軽くなったんだし大将も絶好調みたいだから、ボク達も本気を出そうぜアネゴ』

 そしてこのRGアーマーは、輸送機であると同時にユニコーンの追加装備システムでもあったのだ。サイドに設置しているガトリング・シールドも、ユニコーンの盾、人によってはシールド・ファンネルと呼ぶ装備である。

 プリマはともかくver.33(トラントロワ)が弾薬切れを起こし始めていることを考えれば、状況はむしろ優位な筈だった。

 

『ターンXと誤解しそうだからその表現はやめなさいな。……それと口調を戻しなさい、はしたなくってよ』

『へいへい、その通りですとも(ラーサ)

 見れば地上ではヘルムヴィーゲ・タウルスが黄金の輝きを見せ始めた所だった。

 これ以上は秘匿する意味が無い、いずれ判ってしまうと理解して二人も本気を出す事にする。

 

『お姉さま、アレを使いますけどよろしいですか?』

よくってよ(ラーサ)。全力戦闘で行きましょう』

 古い英語で了解と告げあった後、ユニコーンの装甲が展開し始める。

 白い装甲から赤い輝きが漏れ、各部のパーツが熱を帯び始めた。

 

 ただし……この輝きはサイコミュの光ではない。

 

『うおぉぉ!! ヴォォォルテッッッテクス・デストロイヤー!』

 そう、最初からこの機体にNT-Dなど設定されていなかったのである。

 

『うそ、ユニコーンなのにNT-D積んでないの!?』

『全身ビーム砲って、お前……ゲーマルクかよ!』

 フルアームズ・ユニコーンから放出された赤い光が周囲を薙ぎ払っていく。

 ver.33(トラントロワ)の放ったミサイルなど、ビーム弾幕の前に無いも同然だ。

 

 武装が山盛りの状態では射角も狭く鈍重であったが、今では軽装、そしてこちらにもスーパーモードが搭載されていたのであった。

 

石破……(スーパー)

……天驚(真ユニコーン)

『『(ビーム)!!』

 通常時の射撃管制担当であるRGアーマーは、スーパーモードでは大規模ジェネレーターである。ビーム砲を溢れる闘気のように連射できるだけではなく、直結して強烈なビームマグナム以上の火力を見せつけて居た。

 

 その猛威の前に、為すすべ無いかと思われたが……。

 

『行って! リフレクター・ウイング!』

『たっ、助かったァ』

 プリマのスカートアーマーが二枚に分かれ巨大なファンネル……いやビットとして割り込んだ。

 トランザムこそできないもののGNドライブをエンジンとして設定し、補給せずとも自立稼働できるようにしておいたのだ。

 一枚が間一髪のところで間にあい、ver.33(トラントロワ)の退避をかろうじて成功させた。

 

『ちっ! だが今のでぶっ壊れちまったぞ! 無理をし過ぎたな!』

『そうでもないわよ。ビットはもう一機あるんだから』

 リフレクタービットはサイズもあって並みのビームくらいで破壊されたりはしない。

 だがビームマグナム以上の火力とあっては壊れてしまうのが通り。

 

『ハン!? もう一枚あったところで……』

『避けなさい、上よ! っ……!』

 パラレル・ビームスマートガンが放った一撃が、直上から降って来る。

 RGアーマーが回避させるのも限界があり、ユニコーンは初めての直撃が手痛い一撃になってしまった。

 

 そして動きを止めればこの機とばかり並行射撃で連射し、気を取られれば再び上から一発ずつだけだが、避け難いビームが飛ぶ。

 

『まさか反射衛星砲……?』

『どちらかといえば曲射砲撃なんだけどね。……残りの全弾もってけー!』

 回避運動を繰り返すRGアーマーの移動先に、動きを止めたver.33(トラントロワ)が射撃態勢で待ち構える。

 

 足のアイゼンを降ろし、再びサブアームでガトリングを固定した射撃モード。

 これまで危険だから使って居なかった胸部マシンカノンも全開にして、残弾を撃ち尽くす猛烈な攻撃を加えたのである。

 

『ここまでね。後は任せたわ』

『御姉さま!? ちっくしょおお!!』

 RGアーマーは暴れ馬の様な起動で振り落として、強引にユニコーンを守った。

 逝き掛けの駄賃とばかりにver.33(トラントロワ)に突っ込んで、射撃モードに入って居る為に動けないところを相討ちに持ち込んだのである。

 

『ごめん先輩。こっちも殆ど墜ちてます。やっぱ近過ぎたかぁ』

『その辺は後で検討しましょ。二対二で喋ってる余裕ないから』

 ユニコーンを振り落とした分だけ、体当たりで狙える軌道では無かったのかもしれない。

 しかしながら本体の大部分が壊され、破壊判定が下ればver.33(トラントロワ)もやがて動きを止めるだろう。

 もちろん生き残ったユニコーンが見逃すはずも無く、それまでにビームを喰らって倒されてしまう可能性の方が高い。

 

 そんな時に意外な声がヘルムヴィーゲ・タウルスから聞こえたのである。

 

『俺達の負けだ。次は必ず勝つ』

『ちょ! そんな大将、ボクならまだやれるよ!』

 むかし懐かし番長風の装束をまとったアバターが、降参(サレンダー)を申し出て来た。

 文句を付けるユニコーンのダイバーは、女性用体操服をまとっているのがやはり懐かしい。

 

『いいのか? あんたはまだ有利に戦えたろ?』

『かわりに向こうが真逆だからな。それに、オレ達の切り札は使った瞬間に片付けるべき種類のものだ。その点ではお前らの方が使い方が上手かったよ』

 ヘルムヴィーゲ・タウルスは格闘戦だけではなく、ダインスレイヴも使いこなして優位に立って居た。

 スーパーモードの能力上昇や操作性と相まって、バエルを押しこんで居た形だ。ウイングスラスターの片方が落とされ、ほぼ陸上での戦いに成っている。

 

 だがV2の方はビットが一つ潰されただけで、ダメージを受けたユニコーンよりも優位に立って居る。どっちもどっちと言った風情だが、……もし合流して二対二にせず、戦場を分けたままV2がバエルの援護に徹すれば話は変わってくる。

 ヘルムヴィーゲはそのうち狙撃され落ちるだろうが、ユニコーンがバエルを潰すよりも先とは思えないのだ(当然そうなればバエルも下がる)。

 

『勝ったの?』

『まあ一応はな、釈然とせんが今回は引き上げるか』

 勝負にもしは禁物だが、ユニコーンに気が付く前にビットを最初に飛ばして居たら……。

 あるいはユニコーンがNT-Dも同時に積んで居たら、どちらの有利にも話は変わっていたかもしれない。要するに運不運の差でしかなかった。

 

 あえて言うならばヘルムヴィーゲの四足を潰した段階で、バエルが勝負にこだわらずに二人を援護すれば良かったというところだろう。

 こうしてフォースの再出発は、なんとか白星を上げたのである。




 と言う訳で前回が改造回なので、今回は戦闘回です。
味方は前から小出しにして居る機体の完成版で、対戦相手はネタとオマージュの塊になっています。

●機体解説
/V2プリマ『オデット』
 バックパック装備で望遠カメラとレドームのEWS装備、通信共有できるカメラ、各部にスラスターを追加した空域管制仕様。
ビームスマートガン一丁で戦い抜くが、リフレクタービット二基を搭載して居るので、ビーム攻撃への高いカバーリングや曲射攻撃力を持つ。
なおゼロカスタムの翼はプリマ専用なので、光の翼でダメージを与える【オディール】パーツやアサルトバスター的な増加装備中には使用しない。

/ヘビーアームズver.33(トラントロワ)
 地上ではカウンターウエイトとアイゼン、宇宙では各部のノズル・スラスターで安定した射撃を行う火力機体。後腰にサブアームを追加したので、ゼグ・ツヴァイやバスターガンダムの様に大口径砲を持っても軸線がブレなくなった。
 全ての反動を抑える機能を使った半変形時には、大火力を発揮しても命中精度が上がる反面、動けなくなるので敵の近くで使うと大変なことに成る。

/バエル・ザ・ブラックナイト
 肩に小さな翼状のスラスターを追加したほか、足をウヴァルの物にしている。
これらのスラスターは常に全開で吹かす物ではなく、常態を捨てて特殊な体勢に移行し正対を捨て、急速に元に戻すMSタイ捨流の為に使用する。
このため大太刀で袈裟斬りにする技しか持たないが、防御し難いという特性を持つ白兵戦機。

/ヘルムヴィーゲ・タウルス
 四足のヘルムヴィーゲ・リンカーに、スーパーモード(様々な小形ビーム砲とモビル・トレース・システム)を追加したもの。
歩行・装甲・スラスターと多くのマニューバーを登録して居るので、四足でも普通に戦い抜くことができるし、余分な足を外す物も登録してある。
モビル・トレース・システムの思考制御は早い方ではないが、動作制御のオマケであり闘気のように付属させるので問題は無い。
 武装はキマリス・ヴィダールのドリルランスとシールドを使っているが、各部に研ぎ澄ませたナックルやニー状の装甲があるので格闘戦の方が得意。
イメージはガリアンの人馬兵と、黄金聖闘士のアルデバランを足したモノ。

/フルアームズ・ユニコーン
 NT-Dは搭載せず、ヘルムヴィーゲと同じ様にスーパーモード(様々な小形ビーム砲とモビル・トレース・システム)を追加したもの
こちらは四足を外す事が起動条件ではなく、装甲展開に寄る変形が起動条件。
なお火器管制をモビル・トレース・システム動作制御し、同時にRGアーマー側でも可能にすることによって、安定した射撃を行うことが出来る。
イメージはゲーマルクとGガンダムの合わせ技に見えるが、宇宙の騎士テッカマン・ブレードと、トップを狙えのガンバスター一号機(上半身)。

/RGアーマー
 ユニコーン用の追加装備であり追加ジェネレーターであり輸送機。ガトリングシールドはシ-ルド・ファンネルにも成っているし、下部にバズーカやライフルなども確保して居る。
 火器管制も行えるので本来の姿はユニコーンと合体する方が望ましいのだが、ファーストの様に合体するか、Xガンダム系の様にGファルコンの様にするか迷っているとか(どっちにもメリットあるので)。
と言う訳でイメージはGアーマーとGファルコンであり、トップを狙えのガンバスター二号機(下半身)。


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次を求めて

●反省会は駄目出しにあらず

 その日の対戦を終えて三人はミーティングを始めた。

 場所はいつもの……小規模フォースに与えられる小さな整備区画だ。

 大規模フォースで結果を出して居るチームともなれば、普通のMMOよろしく良い場所をキープすることも改造する事も出来るのだが……。

 今はこれが精一杯というところである。

 

「今回の気付きと自分なりの改善点からね」

 まずは自分のやった成功と失敗、そして自分の視点からの修正を報告し合う。

 それらを聞いてから、最後に角が立たない程度の提案と、フォースとしての話し合いになるのが定番だった。

 

 フォースの性質によってはチームとしての勝利を目指すことを重視したり、人への意見を言わない事が前提の場所もあるが……。

 三人は補い合ってパーツや戦術を考案して行くこともあり、それなりに意見を尊重しあっていた。

 

「まずは俺からな。成功面としては四次元機動は上手くいった」

 クリスがバエルで試したのは前後左右と上下の三次元に、タイミングを変化させた四つめを加えた物だ。

 どこから襲い掛るかに加えて、いつ飛び掛かってくるかまでを予想するのは難しい。白兵機体とはいえ、牽制用の射撃に加えてスラスターの追加まであるのだ。

 

「背面飛行とか相手が真似してもあまり成功しないってのも大きいな」

「そりゃねえ。誰も試したことが無いって戦術は、有効とは限らないからやらないってエライ人も言ってるし」

 次の攻撃に繋げるマニューバー、失敗しても立て直すマニューバーを登録し自分は練習して居る。だから相手が追随しても自分だけが成功する可能性は高いが……。

 

「反省点としては相手が無視した場合に意味が無い。そして、あくまで俺個人にしか役立てて無いことか」

「複雑な機動に付き合う必要はないもんね」

 良くも悪くも大勢に影響を与えない。その一言に尽きた。

 アクロバットな操縦をすると判っていれば追って行かないし、それで有利な位置に着かれると判っていても射撃戦用機が追う訳はない。

 そしてフォースとしての勝利には、足止め以上の貢献が出来る訳でもない。

 射撃機体が四方の敵を狙って牽制だけは出来るのに対し、攻撃力高めな相手の前衛相手に有利以上に意味が薄いのだ。

 

「クリスの問題は自分で判ってるみたいだから、最後に調整だけしましょ。次は私ね」

「ならビッチ先輩の所まで駒を進めますね」

 話を蒸し返さない為にアイコンを、クリスの位置からビッチ先輩と呼ばれた少女の元まで移動させる。

 クリスへのツッコミ所は自分で気が付いたため、スケジュール表を戻さないと判り易くしておくためだ。

 

「情報リンクとゼロ・システムによる空域管制自体は今のところ成功ね。ミノフスキー粒子も戦闘散布までなら指向性通信機があれば問題無いし」

 EWSと各種カメラによって早期警戒システムを造り、自分達だけが相手の情報を把握。

 それをゼロ・システムで動きを予想し、指向性通信機……いわゆる指揮官用のブレードアンテナで送信すれば安定した戦いが出来る。

 

 流石に一切の通信を途絶させる重戦闘散布だと難しくなるが、そこまでやって来る機体は今のところミラージュコロイドやハイパージャマーを前提としたステルス・チーム以外に見た事が無い。

 そういう戦術はフォース全体でやらないと意味が無いので滅多にお目に掛らないし、判って居れば戦術リンクに頼らないでいれば良いだけのことだ。

 あるいはワイヤーケーブルを使った『お肌の触れ合い回線』によって、味方だけ狙撃用にリンクするのもアリだろう。

 

「遠距離戦前提に成るけど、狙撃と曲射を使い分けれるからビームスマートガンだけで問題無し。バスターライフルは魅力だけど後が続かないものね」

 少女が操るV2は、高空から精度の高い攻撃で援護する仕様だ。

 武装そのものものが両手持ちでレドーム付きのビームスマートガンであり、ゼロ・システムやリフレクターのサポートもあってかなりの命中精度を誇った。

 高い攻撃力でも相手が避ける可能性が高いことを考えれば、避け難い狙撃仕様というのは現時点では成功と目された。

 

「後はゼロカスタムのウイングスラスターは余計だったかな? 空戦機体にまとわり付かれた時は装甲になるから便利だったけど、それだって光の翼があれば迂闊に近寄って来なかったと思うし」

 ゼロカスタムのウイングスラスターは疑似装甲にもなるし、場合によってはビームコートを塗ることもできる。

 優雅でもあるので地上戦に限り付けてはみたが、それほど有効では無かったようだ。

 

「Rジャジャのバインダーやバエルのウイングみたいに武器を……いや駄目か」

「空域管制で戦う時は俺達が近寄らせないのが基本だし、専念するという意味では光の翼の使い方を覚える方がいいかもな」

 光の翼が格闘武器ならばスキルポイントの問題で違ったのかもしれないが、実際には左右後方に自動発生するダメージである。

 ミツオが言う様に武器を仕込む事ができなくもないが、それでは戦術用途がまるで変わってしまう。

 地上専用のウイングスラスターを防御の為に稼働させることを覚えるよりは、光の翼で戦う事も前提にしたもう一つのモードの為に絞った方が良いのかもしれない。

 

「それじゃあ最後は僕だね」

 何か提案でもあるのか、ミツオは駒代わりのアイコンを進める様には言わなかった。

 彼はギミックや装備担当であり、二人も武装の提案だろうと当たりを付けて特には口を開かない。

 

「判ってたことだけどver.33(トラントロワ)に付けたサブアームその物は成功。バスターやゼグ・ツヴァイの真似してるから当然だけどね」

 ミツオのヘビーアームズは改修案として、デザインとして後発機のバスターガンダムをモデルにしたサブアームを付け両手の大型火器を安定させた。

 大量の武装を使い切って殲滅するというコンセプト上、継続戦闘や武装変更を前提としたバスターとも被らないので悪くない改修だったろう。

 

「キャノンザックを背負うパターンとどっちが有効かは微妙だけど、装備を使いきった後に機敏に動くならこっちかな」

 では何故、いままでやらなかったのかというと、他にも改修プランがあったからだ。

 バージョンを進めるごとにギミックや装備を試して居るので、サブアームを付けて完成というデザインにはして居なかったのである。

 二十番台の改修ではスラスターザックを背負って高機動にしたり、三十番台でもキャノンザックを背負って砲戦仕様にしてみたこともあったものだ。

 

「課題だった継続戦闘は近藤一家の真似して、盾にEパック付けたから多少はできる様になったと思う。本当の事を言えば実弾のままベルト給弾の方が良いんだけど」

「あれは盾に付けると誘爆が怖いとか言ってたろう。サイズも考えると継続戦闘と機動戦闘を並行するなら今のまま正解だと思うぞ」

 ツインビームガトリングに盾を付けそれをサブアームで保持を助ける様にしたのだが、盾にガトリング用のEパックを張りつけたのだ。

 弾を使い切ったらこれを挿し替える仕様だが、使うごとに軽くなるので今までと同じ路線で戦い抜ける。

 

「最後に特殊マニューバーの『静止射撃』を加えての半変形は、良い面と悪い面がクッキリでたね。あれは使い方が難しいや」

「確かにな。物凄く命中するんだが……」

 ヘビーアームズは基本的に大型武器を使っており、主武装のガトリング系以外も大型ミサイルや強力なマシンカノンを使っている。

 その為に命中精度へ大幅なマイナス補正が掛っており、全身のカウンターウエイトやアイゼン(宇宙ならばノズルスラスター)はそれを軽減する為の装備である。

 これら全てにサブアームも含めて使用しつつ、停止時のみ命中力を底上げする特殊マニューバーの『静止射撃』を使うことで恐るべき精度を誇ったのだ。

 

「止まってるって事は簡単に狙える。ワザワザ止まるって事は、それだけ必死って事だもんね」

 反面それは完全に見動きを止める。更に言えば射撃した後には即座の移動が無理な事を示して居る。

 カウンターウエイトは移動速度を妨げる程度だが、アイゼンで地面を掴みサブアームで武器を固定すれば解除まではおいそれと動けない。『静止射撃』の方も特殊マニューバと飛ばれるだけあって、移動制限が掛けられているのである。

 

「後はギミックを思い付かないと変えようがないから、僕の方からはこんなところかな」

「じゃあ最後に他へ提案するアイデアがあればと、フォースとしての話ね」

 一通りの反省会が終わったところで、次回に向けての話になる。

 

●次回へ繋げる為に

「クリスの件は自覚あるから良いとして、まず私への提案があればお願い」

 バエルに関しては白兵戦が少しずつ有利になって居ることもあり、今のまま進めようと決まっていた。

 腕に滑空砲を付けても飛び込む時にはスラスターの管理に忙しいし、下がる時は仲間の誰を援護するか見極める必要があるので撃って居る暇は無いからだ。

 よってクリスを飛ばして少女のV2への提案からに成る。

 

「まず装備案。今のままいくならだけど光の翼のダメージをカットしたまま、オデットパーツの宇宙用にHi-νのフィン・ファンネルは?」

 ミツオの案は今回あまり有効では無かったゼロカスタムの翼を外して、フィン・ファンネルによって攻防一体の能力を付加するもの。

 今は光の翼をカットしていることもあり、フィン・ファンネル用の接続パーツをそのままウイングバインダーに付け変えれば済む。

 

「なら俺は逆に翼を戻すが、リフレクタービットごとサイコミュを取り外して、予備武装を腰にという案かな。例えばバスターライフルやビームマグナム」

 逆にクリスの提案は元のダメージ設置に戻し、NT-Dやエグザム相手には使い難いサイコミュを外すと言う案だ。

 リフレクターウイングビットを造るまでは試したこともあり、以前の戦闘データと比較するだけで済む。

 

「Hi-νのアレは素敵だし全体的に能力も上がるけど……。多分、次に二人が提案する事が出来なくなるわよ?」

 四枚の翼は美しく、ビットとファンネルを使った攻防一体の戦陣はなるほど強力に見える。

 しかし問題が起きない訳でもない。全体を見渡す余裕が無くなり、狙撃だけでなく他にする余裕が無くなるのだ。

 

 最初は二人が次に用意して居る提案に気が付かなかった少女も、まずは装備案と言われたことで何を言いたいか気が付いた。

 よって悪くは無いアイデアだが、戦術面での提案を考慮すると採用は難しい。

 

「バスターライフルやビームマグナムの方はリフレクターが完成しなかったら採用したかもだけど、現時点では総対的な命中力に勝るものはないわ」

「まさに『当たらなければどうということはない!』だからねえ」

 強力な砲を持つことは空域管制を行う機体には相性が良い。

 しかしながら狙撃と曲射を使い分けた攻撃は、ビームを見て避けることが可能な相手……上級プレイヤーに対しても有効なのだ。

 大火力を使っても避けたり防いでしまう相手には、判って居ても避け難い今の攻撃の方が良いことに成る(勿論NPC相手には別だが)。

 

 リフレクタービットがある以上は外してまで予備火器を用意するほどでもないだろう。

 どうしてもと言うならば、ドダイ・ゲタの類に乗って持ち運ぶ方が早いとも言える。

 

「と言う訳で戦術面での提案なんだけど……。二人の注文って位置情報の管理で合ってるのかしら?」

「ああ。俺が『足止めを果たした時』に、どこに行けば良いかを教えてくれると助かる」

 クリスの方はヘルムヴィーゲ・タウルス戦のような、動きだけ止めれば十分な場合だ。

 流石に倒す為に追い込んで居る時だと、今の敵を放置して援護に向かった方が良いかまでは判らない。攻めあぐねていれば突破口を探す為に見渡す事もあるが、競り合っている時では難しい。

 

「僕の方は静止射撃モードの禁止タイミングがあれば……かな。狙う相手や絶好のタイミングを管理するだけなら、自分で出来るんだけど」

「その辺は自分でやってほしい所だけど……。まあ射程や移動力までは難しいか」

 ヘビーアームズが半変形して放つ静止射撃モードはそれまでとのギャップもあって強力だが、相手からも狙い易いという欠点がある。

 今使えば確実に相手を潰せる時に使う訳だが、狙いどころは判っても遠距離から狙われて居るかどうかまでは判らないのだ。

 

「クリスの方は倒した時は自分で判断してもらうとして、足止め成功後だけなら良いわ」

「そうしてもらえると助かる。こればかりは自分では判断が付かんからな」

 こちらは要望としては、それほど難しくは無い。

 対戦相手の動きと全体を眺めて、分断に成功した時に声を掛けるだけだ。

 少女は乱射するのではなく効率の良い相手を探す時が多いので、序盤に限れば忠告するのは難しくは無い。

 

「ミツオの方は変形する前に合図をちょうだい。余裕次第でなんとかしてみるから」

「こっちはハンドサイン……じゃなくてゼロ・システム上に表示するかな」

 ガンプラバトルではゼロ・システムが完全に再現できないため、あくまで攻撃方向や移動可能ラインの表示機能になる。

 そこで長射程武器の射程表示や、通常移動での接敵距離を考えて口に出す事で対応する事にした。

 

 もっとも相手の判断やマニューバーもあるので、長距離ブースターを使ったり変形して突っ込んで来たり、RGアーマーがそうした様に体当たりなどは計算外になるのだが。

 こればかりは対戦ゲームである以上は、どうしようもないと言ったところだろう。

 

「次はミツオへの提案ね」

「特になければフォースの方針で良いのか?」

「おいおい。一応は何か意見くれよ」

 とはいえ、ここまでの話し合いで大方出てしまっている。

 自覚症状があったり、他人への提案中に要望として出てしまうからだ。

 

「私の後に思いついたらで良いんじゃない? ええと……煙幕は別に気にしないんだけど、やっぱNT-Dやエグザム相手の武器が欲しいかなあ」

「なら援護にアッザム・リーダーでも使ってくれれば……」

「それはフォース全体での話でしょっ。……無ければ仕方無いけど、できれば動きや今回の装備に関して」

 なんというかミツオのヘビーアームズver.33(トラントロワ)は、少しずつ改良を重ねて居るので提案し難いのである。良くも悪くも改良済みで、大きな失敗と言えば今回試した静止射撃モードの使い道くらいだ。

 

「俺からは何も無い。というよりも確実に仕留められるアレは、むしろ羨ましいくらいだからな」

「そうねえ。私からも、むしろ戦術として組み入れるかどうかを提案するくらい」

「じゃあ今のまま使うことにして、使い方だけ習熟すれば良いって事でいいのかな? つか、フォースの方針でもありそうだけど」

 繰り返すが熟練プレイヤーや若くして上位に入るような相手は、普通にビームの攻撃を避ける。

 その意味では直撃しそうな状態で静止射撃モードを撃ち込めば、ほぼ確実に一機は倒せると言うのはメリットの方が大きいのだ。

 

 あえて言うならばV2も一緒に多角的に攻撃したり、無理やり逃げ出したところをバエルが頭を押さえるなど、連携攻撃の方が重要だろう。

 普通の相手ならばシールドごと粉砕する様な猛攻でも、チャンピオンシップに出場するフォースのエースならば、そのくらいやっても不思議ではない。

 

「まあその方向で良いんじゃないか?」

「じゃあ次は宇宙戦……はいいとして、オディ-ルパーツとの連携ね」

「僕の方は追加装備を考えてみるよ」

 こうしてフォースの方針も決まり、次なる戦いに向けて走り続けるのだった。

 

 やがて来るであろう、少人数フォース用の大会や、サバイバルマッチを目指して……。




 と言う訳で反省会というか、改良案回です。
普通のシナリオ構成だと長い連戦中にパパっと済ませるのでしょうけど、早い段階で次々にストーリーを進める為に短めの専用回を入れてしませています。
このストーリーではあくまで全国出場がやっとレベルとして、一発で改良案・最終形態案が成功しない、連携もうまく取れないと言うことを前提にしているのもあります。

 次回は戦闘回、その次にまたミーティングの予定ですが……。
もしかしたら機体やキャラを専門に書くページや、MMO風ネット小説用のデータ(メールや掲示板などでやるゲーム)のデータを時々書くかもしれません。
これは頻繁に更新した方が良さそうなのと、時々、いまどんな状態で、どんなメリット・デメリットがあるかを把握し難いからです。

●自分だけの技

使い手:クリス
『MSタイ捨流』:
 スラスターをチグハグに動かすことを登録して、自分だけがバランスの壊れた軌道を行い、最低限の体勢を戻して次に繋げる技。
攻撃であれば唯一の技である袈裟斬りに繋ぎ、防御であれば電磁砲での牽制や別の回避軌道に移行する。

 MMO風のデータ的には、相手の回避・受けや命中を下げる性質がある訳ではない。
あくまで『え、そんな無茶な移動して攻撃できるの?』という位置に移動して、弱点を晒して居る場所に攻撃するだけ。
前面に集中している状態で斜め上や後方から攻撃されれば避け難い訳で、最初から無視して移動し続ける相手などには意味は薄い。

使い手:ミツオ
『静止射撃モード』
 完全に動きを停止し、カウンターウエイトやアイゼン・サブアームなどを全て使い半変形を行う。これと同時に数ターン止まる時にのみ使える特殊マニューバーを組み合わせ、劇的な命中率向上を図る。

 MMO風のデータで言うと、大型武器のマイナス-命中値を可能な限り0まで近づけ、命中判定に補正する技の同時併用。
大型武器は元から命中にマイナス値が付いているほか、同時使用すると命中率が劇的に落ちて行く。熟練プレイヤーはこれを知って更に下げようと回避行動を取るのだが、逆手に取って『実は普通に当たる攻撃』に命中ボーナスを付けて居る訳である。

使い手:イワノフビッチ
『ゼロG機動制御』
 相手のデータを計測する能力と、相手のデータを表示する機能のコンボ。
EWSや望遠カメラ・仲間からの通信を駆使して敵の情報を丸裸にして、予測移動・命中範囲を見ながら指示を出す。
それだけのシステムに過ぎないが、戦闘中は目の前の事で集中力が下がり、かつ把握し難い常態なので味方だけが可能だと有利に立ち易い。

 MMO風のデータであれば敵データ収集スキルと、予測行動に添うとボーナスが入るシステムの組み合わせ。ファンタジーで言うとセージ(賢者)とフォーチュンテイラー(占い師)のコンボなので強力だが、相手にも意志があるので上手くいくとは限らないのが欠点。
判り易いデータを計測して居るだけなので隠し装備に気が付く訳でもなく、そのデータに過信すれば予測など覆るからである。


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ガンプラは自由だ!

●予定の変更

 ミーティングルームは最初、不景気な気配に包まれていた。

 テーブルにはとあるミッションの地図と駒が並べられ、ディスプレイには過去に挑んだ者のデータが映し出されている。

 今日この日の発表で運命が変わるまでは、非常に難しいミッションでフォースとしての連携やを訓練するつもりだったのだ。

 

「敵の数もだけどエースの数が尋常じゃない。全員相手にして居られないよ」

 そのミッションでは味方がSFSと母艦を含めて最大五に対し、相手は八百機以上でSFSや母艦を含めると千に達しかねない。

 更にエースが五人、順エースが十人以上出現する。

 

 事実上の不可能ミッションであり、嘘か誠かチャンピオンシップの上位でドリームチームを組んだら、援軍が敵に成ったという噂まである。

 機動戦士ガンダムOOで登場した三軍合同軍事演習とは、そんなシナリオであった。

 

「可能な限り避けるなら、難しい脱出コースを選ぶしかないな」

「とはいえグラハムとサージェスは必ずどっちかとガッツリ戦う必要があるんだよなぁ……」

 グラハムは技量もさることながら、順エースの集団であるオーバーフラッグスを率いてやって来る。

 サージェスは最後の最後に単独でしか出てこないが、アグリッサも含めて非常に強く設定されいる。しかも相当に疲れた状態で戦う必要があった。

 

「それなら連携の訓練も兼ねて……」

「大変大変たいへん! こんな事してる場合じゃないわ!!」

「……? ビッチ先輩、どうしました?」

 そんな事を考えて居た時、ビッチ先輩と呼ばれる少女が極めつけの情報を持って現れた。

 ログインするなり騒ぎ立て、今にも首根っこに掴みかからんばかりであった。

 

 これまでのガンプラ改造を大きく変更し、人々に間口を広める……。

 ようするに不景気な顔して不可能ミッションを考えている場合では、なくなったのである。

 

「ドロップ品のルールが変わるかもって話あったよね!? あれの続報を教えてもらったの!」

「どこ経由の情報かは置いておいて、どう変わるって話なんですか?」

「もしかしてリアル経由ですか?」

 GBNはオンラインなので妙な噂は沢山出回って居る。

 さらにリアルでの交友や、国家・地方によってはおいそれと変更でき無いので情報やアンケートが先行する事もあった。

 

その通り(ダー)! いい、良く聞きなさい!? ポイントも同時に支払えばプラスチック成形までしてくれるんだって!!」

「なん……だと」

「うそ……だろ」

 それはこれまでの常識を覆し、買ったプラモのパーツを流用せずとも良くなったということだ。

 一部だけ入れ換えに始まってジャンクパーツの流用はこれまでもあったが、まさか買わずとも良くなるとは思いもしなかった。

 これが本当ならば色んなパーツを試せるだけではなく、場合によってはパーツ取りの為では購入を躊躇われた機体を部分的に揃えることが可能になるのだ!

 

「それが本当なら嬉しいですけれど、商売的に……大丈夫なんですかね?」

「昔から海賊版や今でも偽データとかもあるし、腕利きのモデラーはパーツを自作してた……。判らなくもない話じゃないよ」

 クリスは思わず真面目に問い返し、ミツオは自分の知識を元に何とか整合性を付ける。

 海賊版で妥協するくらいならば、無課金に近い形で続けポイントで本物を手に入れる方が良いと考える者は出て来るだろう……と。

 

「そっ。どうせ自作されちゃうなら、施設限定だけど成形OKにするんだって。ポイントの消費と課金を見ながら、モノによってはちゃんと買う方が良くなるんじゃない?」

 ビッチ先輩と呼ばれた少女は、日本から遠く雪深い国に住んで居る。

 そういった地方にはいきなり話を持って行かれても困るので、どうやら先行で情報が回って来たらしい。

 

 とはいえ多少早かったというだけの話だ、明日にはネット中に拡がって居る可能性が高いだろう。

 

「と言う訳でこんな難しいミッションはまた今度にしましょ! 私達もこの御祭りに参加するわよ!」

「ドロップ品を延長する場合と、設計図とかもらえる場合で変わってくるけど……。その両方が考えられるミッションを選ぼうか」

「一番可能性の高いのはストーリーを追い掛けるキャンペーンだが……。あれは長い上に抜けられないしな」

 こうして三人は完全に路線変更を行い、パーツ取得祭りに打って出たのであった。

 

●気の早いサンタクロースたち

 案の定、噂は拡がって居た。

 良く良く考えれば一か所だけに話を通して居る訳が無く、同じ様に聞きつけた連中も居たのだろう。

 それが少数であろうとも、あっと言う間に尾ヒレを付けて広まるモノである。

 

「まだ実装する訳でも、現行ミッションで落ちると決まってもいないのによくやるよ」

「練習ならどこでも一緒だと踏んだんだろう。それに、お祭り騒ぎになると知って参加を決めた俺達が言える事じゃないがな」

 男二人は受け付けカウンターに並ぶ列を見てゲンナリした。

 フォ-スから一人ずつの制限が掛って居るのに、アバターがズラリと並んでいる。

 

「おっまたせー」

「どうでした先輩? これだけ並んでいる以上はロクな結果では無いと思いますが」

 順番待ちはいまだ続いているし、この速さで始められる以上は何らかの妥協をしたはずだ。

 とはいえ無意味なミッションを選んだとも思えず、興味が尽きることは無い。

 

「あんま並んでなかったポケ戦ミッションってことにしたわ。あとは他のフォースと予選して、勝った方が先に挑めるって寸法」

「あー。それなら勝ち負け無視して練習はできますし、良いですね」

 当然のことながら太陽炉やガンダムフレームなど人気のあるパーツや、上位機体がもらえそうなミッションほど順番待ちが多い。

 特に試験機が持ち込まれるシナリオがそうで、ガンダムシードのガンダム襲撃事件などは五機も登場することから大人気である。

 

 そんな中で『ポケットの中の戦争』を扱ったミッションは機体がアレックスやケンプファーであり、装備も地味なパーツであるために人気はそこそこだった。

 とはいえ装備品ドロップや機体奪取を扱ったミッションがそう多い訳では無く、今回は複数のフォースが予選込みで順番待ちと成って居いる。

 

「場合によってはこっちの方が良かったかもな。所詮は噂レベルだし、同じモノを求めて戦うのは愉しそうだ」

「今更そんなこと言わないの。対戦に勝って、ミッションでも練習すれば良いじゃない」

「違いない」

 こうして三人は対戦を行うことにした。

 場所はコロニー内で互いに友軍無し、不要な装備を省くなどの調整を経た上で一同は新たな戦いに臨む。

 

『バエル・ザ・ブラックナイト、クリス・マモル。出るぞ』

『ヘビーアームズver.33(トラントロワ)、目標を殲滅する!』

 最初に飛び出したクリスの黒騎士バエルは、奇襲を想定して出撃と同時に斜め上に捻りを入れた。

 ひねりながら情報を占めると、ミツオのヘビーアームズ改が無限軌道を走らせる。

 

『アレクサンドラ・イワノフビッチ・ケレンスキー。V2【オディール】、派手に舞い踊るわよ!』

 最後に飛び出したのはV2ガンダムの改造機だけが以前に試した時の装備で、V2用のマルチプル・ビームライフルとXガンダム・デバイダーのシールドを構えている。

 その出撃と同時に三機のカメラがリンクし、敵の攻撃表示をクリアに映し出していった。

 

『敵影はゲルググ系が三機で、ドム系が二機。解説の方はよろしく』

『えっとマリーネのシーマ機に、リゲルグ、高機動ゲルググ。ドムはどっちもリックドム・ツヴァイだけど……武装を見るとフュンフ系を意識してるのかな』

 予選も抽選なので機体の数が同じとは限らず、五機編成のフォースだ。

 ジグザグに突っ込んで来るものの、散開せずにひとまとまりで高速で飛び込んで来た。

 

『……あちこち改造してるけど、袖付きをイメージしてんのかしら』

『まあ全部、高機動型だと思えばいいよ。散らすつもりだけど……上手く行かなかったら後はよろしく』

 散開せずに突っ込んで来るのは、舐めて居るのかそれとも数の利で押し切る気か?

 そう思って不機嫌な少女に、相手の意図を察したミツオが宥める。

 

 そして先制攻撃とばかりに、ツインビームガトリングと無数のミサイルで火蓋を切った。

 

『S・フォーメーションを仕掛けるぞ!』

『『おお!』』

(流石に無策で突っ込んで来る訳じゃないか。まあ出来るだけなんとかするつもりだがな……)

 五機の内四機は砲口の向きを合わせると回転する様にライフルやMMP-80で猛烈な射撃を掛けた。

 次々にミサイルを叩き落とし、シーマ機と高機動ゲルググがビームコート付きのシールドでビームを受け止める。

 

『もらった!』

『それはこちらの台詞だ!』

 残ったドムが鉈のように太いヒートサーベルでヘビーアームズを狙うのを、バエルが抑え込む様に大太刀を振るう。

 すかさずスラスターを吹かしてバックを掛け、もう一度踏み込もうとしたのだが……。

 

『おっと。熱くなるのは悪い癖だよな。……まずは数を減らす!』

『何!?』

 まるで後ろにも目があるような軌道で、走り抜けながらV2と撃ちあって居る高機動ゲルググを狙った。

 もちろんガンプラだしモニターがあれば状況が判る筈だが、四機の中でも隙のある機体を狙えたのは偶然とは思え無い。

 

『まずは一つ!』

『だがしかし! ……っうおおお!?』

『ナイスアシスト! いっけーインコム!』

 バエルの剣戟を強引に盾で受け止めるが、そのせいでV2から喰らってしまった。

 一応は注意して居たつもりだが、流石に二機からの攻撃に加えてインコムによる第三の角度までは無理だ。

 

 崩れ落ちて死角が出来た所へ、ビームガトリングが間断なく撃ちこまれて行く。

 ヘビーアームズが距離を取りながら、攻撃と言うよりは動きを止める為に連射して居た。

 

『こっちも忘れちゃ困るよ。そうそう、盾を持ってる君はこっちを向くよねぇ』

『次はお前だ!』

 三機は爆炎などを含むモニター表示の限界や、死角の隙を上手く突いて攻撃して行く。

 

 途中で判断を挟む為にいつもより攻撃タイミングが襲く防がれてしまうが、最終的に誰かが倒せば良いと言う考えだ。

 今度はハモニカ砲も展開され、ミサイルと共に高密度な火力で押し込んで行った。

 

『良い感じね。三対五だからそれほど判り易くないけど、NPC相手ならもっと行けるんじゃない?』

『まだまだ遅い。それに……狙いたいのは強いPCなんだがなっ!』

『連携重視し始めたにしちゃ上出来だよ。一朝一夕にいかんって、クリスいつも行ってるだろ』

 ビームコート付きの盾を拾おうとした迂闊なドムをV2が潰し、大鉈を振るうドムをバエルが食い止める。

 データリンクとゼロ・システムでの簡易予想を併用しているとはいえ、通じて居るのはあくまで普通のプレイヤーだからだ。

 上位ランカーにはまだまだ足元にも及ばないが、連携の不備を補い始めたばかりなのだから十分な成果と言える。

 

『おのれ! せめて一機だけでも!』

『こいつ……四刀流だと!?』

『馬鹿目、一機だけと思うなよ! オレはまだ行けるんだからな!』

 なんとリゲルグは銃を捨てると腕を切り離し、クローからビームサーベルを生やしながら攻撃して来た。

 サーベル四刀流に加えて、体勢を立て直したドムが大鉈を縦横無尽に振るって行く。

 

『いいぞ、こうでなくてはな!』

『ぬかせ!』

 バエルは大鉈を踏み台にジャンプを掛け、スラスターを駆使してキリモミ回転。

 強引に四刀流の間合いを抜けながら、その二機では無く……やられたフリをしてチャンスを窺っていたシーマ機の頭を狩りに行った。

 

『うーん。ガンプラバトル版ゼロ・システムの限界ね。隠し武器は表示されないし、暫く動か無かったら無視しちゃうものね』

『あれはドーベンウルフを参考したのか、袖付きなら……じゃなくて! 援護しないと』

 悠長なことを言い始める少女に、ミツオは慌ててフォローを申し出る。

 

 とはいえこうなってしまっては、するべきことは二つに一つだ。

 

『いいけど……。あれに割って入るか、躊躇なく射撃するかの二択よ?』

『そりゃ僕らの腕じゃ難しいとは思うけど……』

 バエルはリゲルグの四刀流とドム相手に、不利ながらも果敢に反撃を行っている。

 そればかりではなく、反撃で浮遊する腕の一本を切り落とすほどの冴えを見せて居たのだ。

 到底、白兵戦がメインでは無い二人が割って入って、足手まといにならない自信は無かった。

 

 結局、隊長機でもあったリゲルグが落ちた段階で勝負が決まった。

 ドムは白兵戦オンリーで有る以上は強かったが、正面から戦えばクリスの方が微妙に上回る。

 そしてドムとバエルの自在性がバエルの側に軍配が上がっているので、思ったよりもアッサリと片が付いたのである。

 

『なあ、今回の勝因ってなんだと思う? もちろん俺らが連携慣れて来たから以外で』

『向こうが技の完成、連携の完成までで満足してたからじゃない? 最後のなんて慣れたらオールレンジ攻撃でしかないもの』

 最後の四刀流は一瞬だけは圧倒できるものの、離れてしまえばそう大した攻撃ではない。

 そして四機が連携して射撃し、残る一機が白兵戦で仕留めに行くS・フォーメーション。あれは本来、一機の強敵を葬る為の連携技だろう。

 造り出し、練習した技をそのまま使えるから使ったに過ぎない。

 

『やっぱり完成させるだけじゃ駄目みたいだね。僕らも連携の密度も白兵戦のバリエーションやら頑張らないと』

『判ってはいたが、先は長いな』

 三人が独自の技を構築しただけではそれほど有効ではなかったように、今回戦った敵フォース側もまだまだ未完成だったということだ。

 あくまで同ランクの者たちが戦い、偶然こちらが精度を上げて居たに過ぎない。

 

 強くなるには、更なる上を目指して行くほかないだろう。





 と言う訳で今回は放送で見たアレを、最初の主題にしました。
本当は砂漠で八百機相手に逃げ切る話で書いてたのですが、急遽大幅に挿し変えました。
遅くなったので朝に予約投稿。

●ガンプラ成形
 ミッションによって設計図を入手し、ポイントを支払えば成形してもらえる。
このルールが実装時した時は設計図は基本的には消えるので、ドロップ品の一種と言える。
(後に詳しいことが放送されたら、そっちが新しいバージョンで、更新されたということにしています)

『S・フォーメーション(未完成版)』
 本来は五機が竜巻の様に回転しながら、次々と同じ対象を攻撃、または全包囲へ攻撃する。
しかしながら連携不足なのと、機体の調達が間に合わずに白兵戦機体が混ざって居たので急遽変更されている。
後に装備や機体を調整して、本領を発揮する物と思われる。

『リゲルグ二重袖』
 ドーベン・ウルフを参考に、腕を切り離して四刀流ができるようになっている。
本当はオールレンジ攻撃で射撃する数・角度を増やす他、白兵・防御など色々と利用される筈だった。
要するに思いついて改造を成功させた段階で、まだまだ戦闘バリエーションの絞り込みが終わって居ない。

 なおクリスら三人と熟練度が大して変わらないのは、最初の抽選で数ではなく同レベルの相手を選んだため。


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世界のリ・ビルド

●それもまた、世界の選択である

 ドロップ品の変更ルールは驚くほどの速さで知れ渡った。

 規制や隠蔽などもなかったのは、あくまで変更点の一部でしかなかったからだろう。

 

 ……そう、ガンプラバトル・ネクサス・オンラインは大転換を迎えたのだ。

 

「まさかドロップ品どころか世界感まで変わるとは思わなかったな」

「そりゃ、一部の情報が出回っただけじゃ規制しないわけだよ。ワールドが増えた御蔭でどこのフォースも大忙しだ」

 これまでも装備品やOSなど以外にもドロップ品やミッション報酬は存在した。

 だがしかし様々なワールドが追加されたことで、大幅に比重が変わったのだ。フォース拠点としてもらえるエリアが拡大し、自分達でも調達ミッション等を出せるように成ったのも大きい。

 

「そこで相談なんだけど。これに参加して見ない?」

「ブラジル直行便探索ミッション? これって地球空洞説じゃない、なんでこんな物が競合なんて……」

 ミツオが持ってきたミッションは、とある競合ミッションの一つだ。

 軌道エレベーター建設ミッションと競い合う様に、ブラジルから日本へ繋がるのではないかと言われている大穴を捜索する。

 どちらも南米サーバーを出発点として、上下に競争を始めていた。

 

「読めて来たぞ。隠しエリアの入り口探しだな?」

「そういうこと。海洋系のミッションでバミューダー・トライアングルが見つかったって聞いてね。軌道エレベーターなら空飛ぶ島か空中要塞、これなら地下世界だと思ったんだ」

 魔の三角海域と呼ばれるシークレット・エリアが見つかったらしい。

 水泳部と呼ばれる水中系フォースが見付けたそうで、早速、彼らと仲の良い連中が中心に成って探索が始まって居た。

 

「未知のエリア探索がしたいってのは判るけど、どうして軌道エレベーターにしなかったの?」

「こっちの方がファンタジー系やターンAぽい気がしたのと、今のところ失敗続きだからエリアがもらい易いってことさ」

 軌道エレベーター建設は華やかで、空中を飛べる機体が行動し易い。

 対して地下空洞捜索は地味な上に、待ち伏せもし易いので嫌われているのも大きいのだろう。

 またダブルオー・ガンダムでの知名度もあり、絶対人数に置いて大きく上回って居た。

 

 だが逆に言えば判り易過ぎ、実入りも少ない。

 既にエレベーター周辺のエリアは予約一杯で、オフィスと整備施設程度のフォース用エリアが埋まっているらしいのだ。多少の功績を上げた所で、良い場所をもらえるとは思えない。

 

「俺は受けても構わんぞ。うちのEⅢなら探索向きだし、難しいシナリオの方が挑むには愉しいからな」

「そういうこと。装備的にも趣味的にも合ってるからさ」

「なら私もいいわよ。地下に妖精の国があるといいなぁ」

 彼らのフォースEⅢシステムはカメラを始めとした探知システムと、ゼロ・システムを使った戦術リンクだ。

 三機に加えてビットと情報共有が可能で、今まで連携訓練をしていることから適している。

 他にも同じ様なチームが居る可能性はあるが、それでも空中エリアよりはマシだろう。

 

 こうして三人は新ルールでの装備も含めて調整し、地下へと潜ることになったのである。

 

●地下の国へようこそ!

 ブラジルから出発して暫く、既にNPCの部隊は全滅して居た。

 PC側からも犠牲が出始め、中には撃破された後からログインし直して再合流を行った者まで要るくらいだ。

 

 要するに暗い地下では隠れる場所が多過ぎ、またストレスから慎重な行動が長続きし難いのである。集中力を欠いた場所からミスで壊滅し、あるいは重要なキーパーソンを潰されていたのだ。

 

『またアイザックがやられた! さっきのザク・フリッパーに続いて、だぞ。集中的にこっちの眼を狙ってんのかよ!』

『容赦ねえなあ。しっかし敵は人間サイズか、それともトラップなのかねえ』

 今回は最初から合同チームが結成されていたが、やはり状況は芳しく無い。

 

『どっちもだとは思うが、他にないとも言えないよ』

『いっそのこと飛行して一気に行くか?』

『俺が前にソレをやったら、飛び出てる岩にぶつかったよ。よほど操作と探知に自信が無けりゃ止めとけ』

 こんな感じで遅々として進まず、それゆえに撃破されたメンバーが再ログインしても間に合うレベルだったと言えるだろう。

 

 

 ただし、今日この時までは。

 それが良くある意気ごみなのか、それとも確固たる自信なのかは実力と運の両方で示す時だ。

 

『……どう思う?』

『少し抵抗が激し過ぎよね。謎の勢力なんて、悪の秘密結社じゃないんだから』

『それって正解かもよ? 案外、どこかでシークレット・ミッションでも受けれるのかもね』

 このフォースが損害を受けて居ないのは、ビットを先行させて偵察を任せられることとリフレクター機能があることだ。

 メンバーが奇襲を受けて居ないのでリカバリーが効くし、ビーム兵器での攻撃ならば落とされることは無い。

 

 そして三人はミツオがピックアップした画像を確認する。

 先行させたビットの一基が、とうとう撃ち落とされてしまった時の前後である。

 

『ここの画像を見てくれる? 明らかに何も無い所から攻撃されてる。しかも、途中で実弾に切り換えてね』

『ミラージュ・コロイドかハイパー・ジャマー? 明らかにプレイヤ-じゃない』

『こっちのビットにリフレクターがあるのは判ってそうなもんだが……。向こうも幾つかのフォースなのか?』

 咄嗟には見分け難いが、ジックリ見れば推測できなくもない。

 何も無い所というだけなら迷彩で隠して居るだけの可能性もあるが、弾を切り替えるなど他には考えられない。

 ここには脅威として配置されたNPCの他に、明確な敵対者が居るのだ。

 

『考えられる可能性は二つだね。ジャブローでもどこでも良いから地下経由で待ち伏せた。もう一つは……』

『そうか! そいつらもミッションの一環として、隠しエリアに配置されたってことだな?』

 この際、危険性だけなら誰がシークレット・ミッションを配布したかはどうでも良い。

 軌道エレベーター側にエントリーしたプレイヤーが勝利の為に邪魔して居ようが、公式が脅威として配置しようが同じことだ。

 

 だが相手の戦力がどの程度なのかの推測、そして自分達のモチベーションも変わってくる。

 前者であれば強引にでも距離を離せば、無限に追ってくることは無いだろう。後者は暫く続くのでストレスも大きいが、未確認エリアを取得できるという魅力が補ってくれる筈だ。

 

『そうと決まれば気楽な旅路ってもんよね。ジャブロー経由ならビットを先行させて一気に飛べばいいと思うけど……』

『まあ僕らならそれも可能だし、ソレで焦ってくれるとボロが出て来れればとは思う。その上で、作戦を決めてから一気に実行した方が良いと思うね』

 隠れて居る敵に限界があるのならば、ソレを見越して作戦を立てる事が出来る。

 こちらが大きく移動すれば発見される危険を覚悟して高速移動するか、諦めて後続だけを相手するかするしかないのだ。

 

『なあ。ステルスって、電子系の探知をさせないからEⅢでも直接は見抜けないってことで良いんだよな? あくまでソレ自体は』

『そうだけど。クリスがこの手のギミック話に首を突っ込むのは珍しいね』

 この手の話にクリスが加わることは珍しく、ミツオは興味が隠せないで居た。

 これが話を聞いて居なくて問い返しただけならまだしも、ステルス装備の確信を尋ねて居るのだ。

 

『何、俺も最近になって似たようなことをして、隠れることは向いて無いと悟っただけさ』

『クリスがステルス? らしくないね』

 直球勝負しかしない訳ではないが、あくまで戦闘での駆け引きとしてフェイントや奇襲攻撃も許容するだけだった。

 それがこの困った局面で、どんな提案をしてくれるのだろう。

 普段は気にしないタイプなので、面白い反応だと言える。

 

『らしくないさ。だがそれだけに、判ったこともある。……探すなら痕跡の方だ』

 ミラージュ・コロイドやハイパー・ジャマーによるステルスは、走った後の地響きやスラスターの噴射炎までは消してくれない。

 何らかのリアクションを誘発させ、ビットを潰した砲撃の様な痕跡を見付けるべきだろう。

 

『それはそうなんだけど、放水器でも持って来てもらった方が早いくらいだと思うわよ? 直ぐに用意できるかは別にして』

『そんなに手間は掛けないさ。今ここに使い損ねている機能があるからな』

 そういってバエルの腕部と腰アーマーの一部を動かし、新しく用意した籠手と腰に付けたパーツを眺める。

 そのレベルのカメラでは見えないが、黒い塗装の表面は鱗の様に刻まれているはずだった。

 

 そこにはバエルの特徴を兼ねて装備をしてみたものの、逆にスラスターの電磁砲が使えなくなってしまった程の装備があるのだ。

 ドロップ品の変更ルールが実装されるまで、試しても見なかった装備が陽の目(地下だが)を見ることに成る。

 

●猿叫

 そして提案に元付き、合同チームで簡単な作戦が立てられた。

 

『ここなら良いだろう。配置に付け』

『こっちはいつでも行けるぞ』

 まずは地形を誘い出し易い特徴のある場所まで我慢して移動。

 そこでクリスのバエル・ザ・ブラックナイト以外にも、似たようなことができる機体が実行する。何機かが一組になって敵機が返したリアクションを拾いながら、地道に叩き潰して行くというものだ。

 

『バエル・ヴオォォイス・ザ・バァービーローオオオン!』

 チキチキと唸りを立てて、バエルの籠手と腰にマウントした追加装甲が振動し始めた。

 装甲表面に塗られたという設定のナノマシンが、高周波で周囲を揺らしているのだ。

 

 そう、これはバエルが持つカエルの貌。

 それをイメージする為と武装の試験に、フラットのパーツを籠手と後腰に配置したのである。

 

『あったわよ、無反応の場所が幾つかあるの!』

『撃って、撃って! 少しくらい外れても良いからさ、とにかく撃って!』

『ヒャッホー! オレ達によくもこんな目に合わせやがって!』

 V2プリマ他、強力なカメラ機能を持った機体が効果範囲の中で揺れない場所を確認。

 ステルス機能が反応を返さないのに、後方の地形を投影している場所を見付けだしたのだ。

 

 中には感違いもあるだろうが、隠れて居る方にはそんなことは判らない。

 直撃して吹っ飛ぶ機体だけではなく、明確に攻撃された気がして飛び出してしまう奴も現れたのだ。

 

『チクショウ! 聞いてねえぞ、ソニックブラストにこんな使い方があるなんてよ!』

『元より暴徒鎮圧用だとさ。小説じゃあマイクにも成ったそうだぞ。悪く思うな!』

 デスサイズをベースにした機体が、ビームサイズを大きく延ばした。

 同時に黒塗りのテイルソードを使い、明暗を兼ね備えた戦術でバエルを攻め立てる!

 

 いかにも暗殺向きの機体だが、相手が悪い。

 バエルは急加速を掛けて斜めに上昇、大きく移動しながら慣れた手つきで袈裟斬りに大太刀を振るう。

 そして斜め掛けるの斜めで、横薙ぎにデスサイズを真っ二つにしたのだ。

 

『まだまだ! オレの戦争はまだ終わっちゃいねーぞ!』

『部隊を率いて居るのがサーシェス辺りなら退いたんだろうが……。成敗(say-bay)!』

 それでもデスサイズは動き続け、破壊判定が出る前にビームサイズを槍状に変形。

 投擲する残骸相手にバエルは最速の右向け右。回転しながら今度こそ斜めに切り裂いて撃破判定をもぎ取ったのである。

 

『サーシェスじゃなくてレナート兄弟の手合いだったか。これで終われば良いんだがな』

『まあまあ。次が出てきたら、地下世界があるってことだからね。愉しみに再戦を期待しようよ』

『そうね。そう思っておかないと、やって居られないわ』

 最後の戦いでも果敢に反撃した機体もあり、調査隊はかなりの被害を被って居た。

 ステルス部隊を撃破したものの、いまだ道半ば。

 次なる戦いと調査に備えて、一同はキャンプという名前の交代性ログアウトを行うことに成った。




 時間が微妙なので予約設定してみます。

 と言う訳で路線を変更してみました。
これまでは地道な検証しながら、どちらかといえば史実ミッションを舞台に……。と言う感じで。
今回からは、ネタに走ったミッションなどで、改良とかも伏線さえだしておけば成功することもあります。
(バエルのカエル面、パーツを作れるように成った、自分だけの技を模索中。など)
半端に装備解説と化入れたので、次回も戦闘の予定。

●バエル・ザ・ブラックナイト(完成系)
 随所にウヴァル(アスタロト)パーツを使って、広い稼働域と追加装備が可能にしている。
フラットのパーツを利用し、腕部に籠手を追加・後腰の剣留めを外してマント状の追加装甲として設置。
今回は間にあわなかったが、後は肩の小翼を同じ様なマント状パーツに形状変更し、EⅢのスラスター・カメラとして設定すれば完成である。
反面、本体設置武器が設置出来ないので、ウイングスラスターにある電磁砲は逆進用小型スラスターに変わって居る。
 発想としてはGガンダム系のスーパーモードの代用(あの金色はビームらしい)なのだが、ソニックブラストが使えたものの流石に設定できず全身のステルス機能も無理だった。
電磁砲が使えなくなった様にフラットの制限である本体武器が使えなくなるという問題も受け継ぐので、本当は良い改造ではないが、バエルの持つ『カエルの貌』やソニックブラストの持つ攻防補助能力から正式設置に至る。
 トータル・イメージ的にはターンAの時代にバエルが発掘し直され、アスタロトのパーツと二個一で修復、装備はフラットの装甲で代用と言う感じ。

全身像:黒塗りで随所に臙脂色を施した、マント付きの黒騎士姿
武器:大太刀『真バエルソード』:
肩・腕・横腰・足:ウヴァル(アスタロト・オリジン)由来
籠手・肩周辺・腰周辺の追加装甲:フラット由来


新装備 or 自分だけの技:
『バエル・ヴォイス・ザ・バビロン』
 高周波を使って周囲を揺らす行動。本来は暴徒鎮圧用。
フラットの持つソニックブラストの応用というか、元の能力。
カエルの啼き声というイメージと、猿叫から着想したものの……。何に使うのかいまいち不明だったので、御倉入りになるはずだった。

『王の長き手』
 フラットが持つステルス能力を試してみたものの、上手くいかなかった名残。
追加した装甲パーツ部分だけが消えるので、牽制で放つパンチやショルダータックルが何故か当たり易いくらい。でもソニックブラストがそれ以上に届くので、御倉入りになる可能性は高い。
(フラットのパーツを組み入れて見たものの、付けたくらいでは全身にナノマシンが広がらなかったらしい)

『猫の見えざる爪』
 ソニックブラストのこと。ただしターンA時代の非常に強力なエンジンと、オルフェンズ時代のエイハブ・リアクターの差で射程は短い。
どちらかといえば、斬撃の補助であり防御用の盾である。
次回活躍予定。

『震脚(偽)』
 ソニックブラストを腰に追加した装甲から足元に放ち、絡みついた拘束装備や泥などを排除する。
 フラットがやったように海を割るのは無理だが、踏みしめ易い様にはできる。
でも空を飛んで戦うのがデフォルトなので、御倉入りになる可能性は高い。


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地下世界にて

●修理のお時間

 探索隊は交代時ながら休憩と言う名のログアウトを行う。

 その折りには、必ずやっておかない事があった。

 

『お姫さん達、出番だぜ!』

 隊長を務める男の呼び声に答えて現れたのは、キュベレイの改造機。

 それも妙に高い位置と、低い位置に一機ずつ。合計二機のキュベレイがその白い姿を暗闇の中に晒した。

 

『をーほっほっほほ!』

 一機はズルズルという怪音を立てて、高い位置から見降ろす。

 その頭部には無数のナニカが蠢き……いや、下半身もまたうねって居た。

『はぁ~いぃ。お待ちかねぇ』

 二機目は足音を忍ばせた低い軌道の機体。

 こちらの頭部には代わりが無いが、不思議とファンネル・コンテナがあるべき場所が長く細く連なっている。もう一機が引きずっているモノが尻尾であるならば、サイズこそ違えどこちらも尻尾なのだろう。

 

『……イメージしてるのはメデューサキュベレイと九尾之キュベレイだね。アレンジが違う様だけど……』

『直ぐに判るさ。黙って居ろ』

 それは『ナイトガンダム物語』に出て来たメデューサキュベレイや、『Gの影忍』に登場した九尾のキュベレイに良く似て居た。

 ミツオがどんな改造なのかを尋ねようとすると、隊長格の男は笑って指差した。

 

『ひゅ~ほほほ♪ こちらはよろしくてよ!』

『ほっ! はっ! ……うちらは準備万端ですえ』

 二機は髪の毛に当たるナニカと、尻尾に当たるナニカを振り回した。

 天井に対して跳ね上げたかと思うと、一部がアンカーを使ってぶら下がり、大破して居るガンプラを引きずって来る。

 尻尾の先で細いアームがカチカチと音を立てるのも不気味だ。

 

 そしてメデューサキュベレイの方が、大蛇に成っている下半身部分をスライドさせて行った。

 

『工具と予備パーツ! もしかして、この二機は修理用なのか!』

『見りゃ判るって言ったろ。ログアウトして見直すにしろ、施設やパーツも重要だからな』

 ここでガンプラバトルに置ける修理というものを説明しておこう。

 修理方法は概ね二つ。まずは施設やパーツを利用しての時間経過と、ログアウトしてのパーツ見直しである。

 

 二機が所属するラビアン・ローゼスはフォース全体が修理屋稼業を営んでおり、こういった長丁場のミッションを選んで参加しているらしい。

 今回は序盤で破壊された機体が続出した為、隊長格の男が名指しで呼んでいたとか。

 流石に専門施設には及ばないが、野戦修理を行える程度の機材を積み込んで居る。この時点で何も無い相手よりも有利に立てるだろう。

 

『そんじゃ俺らは一足先に落ちるわ。働かせた上に見張りまでさせてすまんな』

『気にするな。こっちも見張りを任せるし役割分担さ』

『それに……良いモノ見せてもらったしね』

 次の補修手段、ログアウトしての見直しが最も重要とされる。

 なぜならばパーツや装甲板を丸々交換し、その整合性を含めて見直したと言う扱いを受けるからだ。この作業で修理の過半が決まり、施設補正を加えて修理段階が決定される。

 

 ……さて、では何を基準に見直して修理段階を決めて居るかと言えば、スキャン・データである。最初に登録したデータの中からパーツ同士の位置情報を元に、ダメージ・データを重ね合わせて居るのだ。

 要するに元の位置情報と照らし合わせて、角度だけが違って居れば簡単なメンテ、全体のパーツ情報が別々に向いて居れば大掛りな補修を行った事に成る。

 

 もちろん位置情報であるからには変更し切れない場所が出て来るし、それは直し切れないダメージとして累積する。

 施設に任せて直すのは、その直し切れない部分だけを任せておくのが良法とされていた。

 なお、猛威を振るった『始める前に粉吹いてスプレー』など強過ぎる技術は、埃・雪の迷彩扱いというパッチが充てられるなど対応がなされている。

 

『この後はどうなると思う? 探索中止を目論む陰謀か、地下世界に通じて居るかもという話だったが』

『GBNのミッションで陰謀ってのはあくまでシナリオ・ソースだからね。大きな分岐が合って、それをクリアできれば地下世界。無理だったら中止でジャブローかどこかへのショートカットってところじゃないかな』

 ダイバーのなかには陰謀好きも居るが、全員がそういう話でもない。

 あくまでストーリーを造る要素として、話の筋を楽しめれば良いということなのだろう。

 

『さっき戦ったのがマッドアングラー隊扱いってことなのかしらね? ゾックやアッガイが敵なら楽なんだけど』

『ジャブローコースならそうなじゃない? 思ったよりも長かったらボルジャーノンでも出そうだけど』

『そういえば、マウンテン・サイクルは北アメリアだったか。ホワイトドールが出るならそれも悪くないな』

 三人はそんな他愛ない話をしながら他の仲間達が戻ってくるのを待った。

 そして交代でログアウトしながら、次の戦いを心待ちにする。

 

 やって来る戦いは……。

『でもターンAに繋がるような話って何かあったかしら?』

『さあ? でも長く使われて無いくらいに平和だったみたいだし、後に語り継がれるような凄い闘いでもあったのかもね』

 そんな激しい戦いの敗残者たちだった。

 

●分岐路の遺産

 やがて全員が交代で休憩を取り、地道に地下を降りて行く。

 途中で散発的な抵抗に合うが、殆どがNPC出逢った為に順調に進んで行った。

 

『大規模な金属反応?』

『ああ、クレーターが中途半端に埋まってる感じだったろ? あの続きみたいなんだが』

『コロニーでも落ちたのかね? でも南米にそんなの墜ちたっけ』

 先頭からの情報でそんな情報が返って来た。

 そこで探索隊は一度足を止め、先発隊を出す事に成る。

 

『あーもうっ。私のV2にも金属探知でも入れとけばよかった』

『しょうがないよビッチ先輩。ガンプラバトルで金属パーツなんて仕込んでる奴は滅多にいないからね』

 特殊なシステムは地道なプログラムと比較検証が必要で、少女の探知システムにはワザワザそんな物を入力して居ない。

 何しろ様々な素材のパーツを並べて、『これは金属です』『これは岩です』と地味に入力し続けねばならないのだ。

 探索系のミッションを選んで参加しているようなフォースでなければ、必要の無いプログラムとも言える。

 

 結果的に言えば、それが幸いしたと言えるだろう。

 

『こちら先発隊、目標を発見。四角いブロック状……いやピラミッドのブロックが刺さっている様に見える』

『地下にピラミッドだと?』

『ちょっと待て。俺はこの形を知って居るぞ……。あれはどこで……』

 通信で送られて来た画像と言葉は意外なモノだった。

 地下深くに埋まった構造物は、ピラミッドにも見える複数のブロックで構成されていると言う。

 

 そのシルエットを見た者が何かを思い出す前に、イベントは次なるステップに移行してしまったのである。

 

『うおっ! 敵だ! モビルスーツが出て来やがった』

『ちくしょう! こっちの攻撃が効かねえぞ! ウワー!?』

『落ち付け、敵の機体と数を報告しろ! 聞こえるか!』

 突如打ち切られた画像と、戦闘を始めたらしき先発隊の声。

 ビームの発射音と、かなり大きな撃破音……おそらくは先発隊のモノがスピーカーから木霊する。

 

『報告しろ! 敵はなんだ!』

『ビルゴだ! 見渡す限りにビルゴで埋まってやがる! ここは地下何だぞチクショウメ!』

 ビルゴビルゴビルゴビルゴ……。

 スーパーロボット大戦で見たような、繰り返しで情報と経験値を集めるゲームだから許されるような光景が広がって居た。

 

 その情報を聞いた時、仲間達はある種のテーマ曲を思い出す。

 それは敵軍の登場か、はたまた絶望か。

 

『俺たちはもう駄目だ、誰か画像を持って行け! 後に続く者たちの為に!』

『りょっ、了解! こ、これが最後の通信になります! せめてMAPの全容だけでも……!』

 偵察用が多く少数とはいえ、またたく間に殲滅される先発隊。

 次第に数が少なくなる攻撃音とは別に、ブースターを必死で吹かす音と、プログラムをいじるカタカタという音が聞こえて来る。

 

 やがてその音も、むなしく消えて行った。

 

『察するにリーブラが質量兵器として落っこちた後ってことなのかな?』

『後の世にも語られる凄惨な戦いがあって、人々はようやく平和を手に入れましたってか? 笑えねー』

『そういえばターンAでコレン・ナンダーが見た悪夢って、ウイングだっけか』

 画像を検討して作戦を練る間、そんな会話が聞こえて来る。

 他にもあるはずなのだが、あまりにも絶望的な光景だけにこちらの話台の方が印象に残るのだ。

 カクテル・パーティー効果が悪い方向に効いているというべきだろうか。

 

『選択支は二つある。一つは逃げ出してコレン・ナンダーよろしく北アメリアに向かう』

『もう一つは当然、このまま進んで連中を撃破するってことだよな』

『しかし勝てるのか? あの数のビルゴによ』

 問題なのは手気がビルゴ……正確にはビルゴⅡということだ。

 プラネイト・ディフェンダーで守りを固め、色々な武装で死角を補いながら戦う強力な機体。

 続編的な小説に出て来るビルゴⅣには劣るが、ガンダム史に登場する量産機のなかで屈指の強さを誇っているのだ。

 

『妥協するくらいなら全滅覚悟で挑んで、最初からアメリア目指そうぜ』

『それは極端だろ。いやどこかで勝負するにしろ、作戦くらいは欲しい』

『だったら……。メタな発言に成るけど、敵の優先順位と限界線を見るしかないな』

 途中で話題がル-プしかけるものの、徐々に相談が形に成って来る。

 まずは攻略を前提に、作戦を立てることになった。

 

『優先順位か……。AIがこっちを追い掛け続けるか、ずっと守り続けるか』

 まず外されたのが、侵入者を追い続けるパターン。

 その場合は広大な地下である、パターンを見抜いた時点で楽勝だ。コレン・ナンダーなら何とかなったに違いない。

 

 次に外れるのが、常に守り続けるパターン。

 防備こそ堅いしリーブラで自動修理するのだろうが、遠距離から指向性ビームやダインスレイヴでチクチク削れば勝ててしまう。

 先発隊は不意打ちを受けたから遠距離戦で勝てなかったが、最初から知って居れば試す事もできるだろう。

 

『それとも……やはりフレキシブルに変更して来るか』

『それは嫌だな。最悪過ぎる』

『でもまあ……その時はボス・ユニットを倒して終わるパターンだろ』

 結果として話し合いはそこで止まった。

 ボスを倒せばクリアというのは良くあるパターンだ。

 もし動き続けるとしても、AIを制御するボスが居なければ前述の頭の悪い行動を繰り返す可能性はあるだろう。

 

『なら俺達のフォースがボス狙いで良いか?』

『そうだな。お前らと……ダインスレイヴ使える連中を繰り札に残しとこう。他でビルゴ退治だ』

 大まかな作戦が決まったところでクリスが手を挙げる。

 

 三人はV2プリマで戦場を監視しつつ、ヘビーアームズver.33(トラントロワ)が邪魔者を掃射。

 道が開いたところで、白兵戦用のバエル・ザ・ブラックナイトを投入できるからだ。

 そしてスナイパーとしてダインスレイヴを使える機体が援護に徹し、場合によってはボス排除後にルーチンが固まったAIを倒すという流れに成った。

 

●設定のキマイラ

 思ったよりもスムーズに戦況は進行して居た。

 

『これは賭けに勝ったかしら?』

『どうだろ? それはラスボスに勝てたらじゃないかなあ。嫌な予感がするんだよね』

 フル装備で来たV2プリマのスマートガンがビルゴを射抜き、あるいはインコム式ヴェスバーやハモニカ砲で薙ぎ払う。

 ヘビーアームズver.33(トラントロワ)が同様に道をこじ開けて行った。

 

『地面に埋まったAI機とボスって、何かを思い出さない?』

『構わん。ここまでの流れは情報を送り届けてくれた連中のモノだ。俺達の勝利は自分で勝ち取りに行くぞ』

 先発隊が殲滅されたのは痛いが、お陰で対策して攻撃する事が出来る。

 

 ビルゴⅡは強力だが相手の能力を知って居ることと、戦乱後と言う設定らしく一部装備が欠けて居るのが大きい。

 元から強力な攻撃は貫通できるし、プライネト・ディフェンダーの数が来てい数まで補充されてない機体ならば死角を付くことが出来るのだ。

 相手の情報を精査できなければここまでの戦いはできなかったし、今からボスに挑むこともできなかったろう。

 

 やがて進路をクリアできたことで、ボス・ユニットの姿が見え始めた。

 

『SYSTEM……フル・コンタクト』

 ヴィン……。

 闇の中で光るモノがある。デュアルセンサーの輝きが双眸として眼を映し出す。

 機体の右側には翼が、左側にはマント状のエネルギーが渦巻いていた。そして右手の剣突き盾と左手に燃える剣をゆっくりと引き抜いている。

 

『やはりウイングゼロの改造機か。フェニーチェと炎を足した様な感じだな』

『何言ってるのさ。あれって神聖騎士ウイングじゃない』

『どっちかといえば、ハシュマルが変形するとしたら……って感じもするわね』

 ボス・ユニットはナイトガンダム物語の続編に出て来る、新聖騎士ウイングをモチーフにしているようだった。

 しかしながら暗闇から出現し、形状も一部独特なので正義のい方と言うよりはやはりラスボスの風貌を見せて居る。

 

『どっちでも構わんさ。バエル・ザ・ブラックナイト、クリス・マモル。まかり越して候!』

 クリスのバエルが闇の中を飛行し、闇に黒が融けて臙脂色の部分だけが妙に印象を残す。

 いつものように段階を付けて加速すると、一息に切りかかったのだが……。

 

『その攻撃は予測されている』

『何!? ZERO-SYSTEMか!』

 Vの字に機動を掛けて、左側(こちらから見て右)に回り込んだ筈なのにその先には剣が待ち受けて居た。

 流石に右手に持つ盾剣の側で受けるような速さは持たないが、恐るべき反応速度……いや予測能力である。

 

『おいおい。クリス、大丈夫かよ?』

『この技だと難しいな。MSタイ捨流は、あくまで咄嗟に対応できない相手用だからな』

 タイミングと侵入方向を操る技を普通の人間は上手く対応できない。

 しかしながら敵はAI……おそらくはマザーコンピューターだ。人間には無理な動きでも予測さえして居れば防ぐことは難しくない。

 

『ちょっとー。いま援護してる余裕無いんだけど』

『いや、問題無い。多分……なんとかなる』

 続けてスリ足のような短い移動で、右に左に移動しながら斬撃を浴びせる。

 全天の図を見れるV2プリマからは巧みに防がれているようにしか見えず、クリスが言う様に余裕などあるようには見えなかった。

 

『コンマ0,3秒遅い。隙が見える』

『……やはりな。所詮は数手先が見えるだけか』

 ウイングの掲げる剣がバエルの大太刀を弾き、盾から延びるブレードでバエルの喉元を狙う。

 それに対してクリスが取った行動は、実に意外なものである。

 

 バエルの籠手に食い込ませたかと思うと、そのまま対抗する様に押し返して行く。

 当然ながらボス・ユニットゆえのパワーで腕が切られ掛けるのだが……。

 

『左手は持って行け。代わりにお前の右手も持って行く』

『相討ち狙い? 愚かな』

 バエルの大太刀が再度振るわれる。

 さきほど弾かれたように、このままでは通じないのだ。

 だが先ほどとは違う流れがそこに在った。

 

『うなれソニックブラスト。バエルの絶叫を受けろ!』

『剣が流される? 先ほどはこんなに重くは……』

 それはまさに音階の剣(オクターバー・ブレード)

 フラットに由来する籠手とコードで繋がれた大太刀は、極振動で炎の剣を弾き返す。

 

『なるほどアスタロトのアレの代わりにソニックブラストを利用したのか』

『本当は威力上げに使って一撃で倒すような技が欲しかったんだけどな。でき上がったのはいつもと逆の技だった』

 超震動と言えど大太刀を伝えば威力が落ちる。だが刃を合わせたままは居られないほどの動きではある。

 回避可能でも防御不可能な剣撃によって、ウイングの右手にある盾付き剣を切り落としたのだ。

 

『まだ右手が無くなっただけだ』

『それでも有利にはなったさ。それともヒイロみたいに自爆覚悟で戦うか?』

『いや、ナイトガンダム系は元と微妙に違うんだって』

 そんな冗談を交える余裕がある訳でもないが、あえて口にして剣戟を交わす。

 動きをことごとく予想されてはいるが、こちらが相討ち覚悟ならば全てを防御し切れる訳でもない。

 そしてクリスの動きは回避不能だが防御可能な攻撃と、防御不能だが回避可能な攻撃を使い分けている。

 

 更に言えば、他の仲間達が駆けつけるまでに装備を削り取るだけでも十分なのだ。

 

『ハシュマルより動きはいいが、地下と言うのが邪魔をしている。そしてハシュマルほどのタフネスと攻撃力を持たないのがお前の欠点だ』

『理解不能。なぜお前は戦える!?』

 全てを予測する行動と恐るべき機動力。

 だがこの地形はソレを活かし切るには足らないし、ハシュマルほどの耐久力があれば相討ちで装備を壊すのも難しかっただろう。

 

『せっかくだ。勝ち逃げでも良いんだが、その首置いて行け!』

『この速度、まさか自爆する気か!?』

 壁際なのに、ありえないほどの速度で突っ込んだ。

 それもボディをガラ空きにするほどの大振りで、現に炎の剣がバエルの胴を貫いた。

 

 だがしかし、これはガンプラバトル!

 胴を貫かれても死亡ではないのである。

 

『俺の勝ちだ!』

 真・バエルソードがウイングの首を切り落とす。

 それでもまだ倒されはしないが、メインセンサーがやられればレイド戦では致命的である。

 抱きついた格好のバエルを排除する間に、仲間達が砲撃を集中させてもろともに倒したのであった。

 

 こうして地下道を巡る戦いは終わり、地下道も流石に日本までは続いて居なかった。

 だが地下空洞はまさに地下世界と言えるほどの大きさであり、参加したフォース全てに拠点として配布できるほどのサイズであった。




夜だとあんまり反応なかったので、昼に予約投稿してみます
やはり反応なければ朝にしてみる予定

 と言う訳で探索の戦闘回は無事終了。主人公達のフォ-スも拠点ゲットとなります。
設定的にはさすがにブラジルー日本への大穴は存在していないのですが、とても大規模な大穴が過去の大戦で空いて居ると言う感じかと。
Wガンダム(ミリアルド勝利でヒイロ敗北) → 鉄血のオルフェンズ(一緒に埋められる) → ターンAに続く という流れでしょうか。
なお、修理ルールに関してはある程度の捏造が入って居ます。

●機体解説
・『メデューサキュベレイ』と『九尾之キュベレイ』
 ナイトガンダムに登場するキュベレイと、Gの影忍に登場するキュベレイをイメージのベースに。
修理用の艦艇であるメデューサ級工作艦と、明石級工作艦を足した様な感じです。
乗って居るお姉ちゃんたちはラビアン・ローゼスというフォ-スで、デンドロビウムを移動基地にしているという設定(ラビアンローズは大規模フォースが奪っている)。
なおメデューサはディアナ様を変な意味での女王様にした感じで、逆に九尾の方はキエルを忍者にした感じのアバター。

・『新世紀機士ウイング』
 マザーコンピューターが操る機体で、神聖騎士ウイングの偽者。
ウイングゼロ・フェニーチェと炎のパーツを使用し、騎士風の装備を付け足している。
WガンダムとターンAの世界感とハシュマルのイメージを足した感じだが、能力的には平均化して居るので中途半端とも言える。

・『ビルゴⅡ(レストア)』
 リーブラと共に埋没して居たと言う設定で、耐久値はMAXであるものの、装備が一部欠けている。
ターンA風味に徹するのだとしたら、きっとリーオーの方が強かったと思われる。

●自分だけの技
・『音階の剣《オクターバー・ブレード』
 ウヴァル(アスタロト)の腕パーツを利用し、フラット由来の籠手を繋げて超震動させている。
クリスはアスタロトのナノラミネートソードを真似て一撃必殺の武器としたかったようだが、剣受け・盾受けできない技に仕上がった。
結果としていつものMSタイ捨流が回避不能だがブロック可能な技だったので、使い分けるには丁度良いかもしれない。


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フォ-ス・ネスト

●拠点造り

 大規模な地下空洞を発見したことで、一同はフォース拠点(ネスト)を手に入れた。

 地下ゆえに屋外や宇宙空間と比べて広さや移動に補正が掛るが、今のところ三人とあって問題は無い。

 逆に訓練状況などを隠匿することもできるので、現時点では中々の好物件だろう。秘密特訓から始まって自分のイメージに合わない装備も試したりできるのだから。

 

「三人だけで使うの勿体ないわね」

「その辺はフレンドでも呼べば直ぐだよ。それに招待客以外にも、NPCバイヤーを出入りさせることもできるんだ」

「バイヤー? 商売でもやるのか?」

 ミツオはうんうんと頷きながらショップリストを立ち上げた。

 

「判り易い範囲でドロップ品や設計図を売ったり、ミッションで手に入れた小物を置けるよ。他にも手作りのパーツをドロップ品扱いの消耗品として置く事も出来る」

「あーなるほど。ザクの設計図やマシンガンなんか持ってても仕方ないしね」

 ミツオがシュツルムファストやマシンガンを並べて適当な値段を付ける。

 MS-06Fや06Rの設計図も並んだが、こちらは少々お高い。そして一部の品目にタイマーが付いているのが不思議だった。

 

「ん? 自作パーツやプログラムに補充期間があるのはどういうことだ?」

「そりゃ現品は手元にあるままだからね。常に存在するなら無限に購入できちゃうし、こっちは大儲けすることもできるよ」

 自作パーツ等はログイン時に元に戻る仕様上、数時間に一つしか置けないらしい。

 プログラムの方は消ええるもののアップの際にコピーしておいたり、パターンのアレンジを変えれば幾らでも作れるので数日に一つというレベルの物もある。

 

「そんなに凄い商売なんて出来たらバランス壊れるわよね。でもファンネルのパターン・プログラムとかは確かに欲しいかも」

 試しに商品を増やして行く目的で、ファンネルで後ろを狙うパターンに四方からパターン、あるいはシールド・ファンネルとして使う為の物等を並べていくのだが……。

 何故か途中で、アレンジを幾つか並べたら止まってしまった。

 

「あれ、これ以上増やせないの?」

「ウチのフォース規模じゃここまでだよ。メンバーを増やすのは無理にしても、せめて友好団体でも造らないと」

 そう言いながら拠点を手に入れるミッションで登録した、探索仲間のフォースをフレンド枠から友好団体にレベル変更してみる。

 すると商品枠と時間が微妙に変化して、フォース規模こそ変わらぬもののバイヤーが若干強化された様に見えた。

 

「せっかくだしラビアン・ローゼスも登録しちゃいましょうよ。そうえばクリスってあの時のティターンズと連絡取って無いの?」

「アドレスくらいは交換してるが……待て、勝手に俺の名前で招待するなっ」

「バイヤーに関してはこのくらいにしとこうよ。本格的に何を売るかも決まって無いしね」

 そんなこんなで色々弄ってみるが、バイヤーに関してはその辺で打ち止めだった。

 

 気分を変えて周囲を確認するが、真っ暗な中にネストの明かりだけが薄暗く周囲を照らしている。

 

「練習区画があるのは良いな。据え物斬りくらいはできそうだ」

「できれば飛行目標相手の訓練や、相手もエアリーズくらいは欲しいけどね」

「その為には結構規模を大きくしないと駄目だよ? 仮メンバーで人数を水増しするにしても、フォースpとか資材とか必要になって来るんだ」

 デフォルトで設定されているネスト前の広場は練習場を兼ねたそこそこの広さで、61式戦車やジムを相手に戦うには十分なレベルだった。

 だが逆に言えばそのレベルだ。機動目標を狙うには狭過ぎるし、NPCもトリアーエズやセイバーフィッシュくらいでしかない。

 

「水増し? ああ、気の合う奴らの中で一匹オオカミや傭兵スタイルの連中を呼ぶのか」

「そうだね。あとは拠点(ネスト)を持つ気の無いフォースも一定人数までならフレンド枠で準ユーザー登録出来る」

 以前の三人がそうであったように、別に拠点を必要としていないフォースは沢山ある。

 もちろん条件の合う場所が無いとかもあるが、誰もが拠点管理をしたい訳でもないのだ。

 拠点があれば助かるが、管理まではしたくないというメンバーならば条件次第で協力してくれるだろう。

 

「じゃあさ、何をしたら拠点を大きくできるの? その辺サッパリ知らないのよね」

「まあ俺らも必要無いと思って居たクチだからな」

「んーと、ちょっと待ってね」

 そう言いながらミツオは一般的なリストを並べた後で、その中にオススメと思われるモノにマーカーを付け始めた。

 

「簡単な所で、自分達で公示するか他所のフォースに頼んでしまう。次に大会スコアを稼いで上位フォースに認定される」

「あそっかー。目の前に有るんだもんね、工事しちゃえばいいんだ」

 現在の状況は空洞の一区画を割り当てられただけだ。

 近隣にある他のフォースの拠点までは拡張工事が出来る。もちろん拡げ過ぎると隠匿性が無くなるので、迂闊にやると地下である意味が無くなってしまうが。

 

「工事専門のフォースまであるのか。しかも材料アリとナシで代金が違うとか……なかなか本格的だな」

 そして工事系フォースの拠点に張られている動画は実に独特だった。

 見積書があるのは当たり前。イエローカラーのアッグガイやジュアッグがピラミッドを造ったり、山に穴をあけてトンネルを造ったりしている。

 

「拠点のサイズよりも僕らにはこれが一番重要だと思うんだけど……。どういうイメージの拠点にするかどうかが大きいと思う。見なよここ」

「ここのフォースは戦闘も凄かったけど、拠点までらしい(・・・) わね。あ、でもオリジナルの野戦服は羨ましいなぁ」

「販売装備は当然ジオン系で固めてるとしても、ジオン兵と行進パターンだと? 良くやる」

 ミツオが次に立ち上げた動画は以前に戦った近藤一家の拠点動画だった。

 森の隠し拠点といった場所へケルゲレンらしきザンジバル級巡洋艦に網を掛けて隠されており、野晒しで野戦修理されている機体やパーツが食われている機体までデザインされている。

 販売して居るパーツやプログラムも独特で、何故かザビ・ユーゲント御断りと制服発注コーナーに書かれているのが笑えるところだった。

 

「僕らの装備を全部売ると手の内バレるし、不要なドロップ品だからって何でもかんでも置くと面白身も無くなる」

「そう言われてみるとプログラムやパーツは判り易い方かしらね」

「出せないモノがハッキリしてるからな。俺だと阿頼耶識までは良いとしてもMSタイ捨流を置く訳にもいかん。ミツオのマルチロックにしても同様だな」

 フォースの強さに繋がるモノは出さなければ良い。

 EⅢシステムは当然の事、瞬時にバランスを戻すMSタイ捨流や無数のミサイルで敵だけを狙うマルチロック。

 そういったモノは戦闘の要ゆえに販売する事が出来ない。売るとしても思いつく者が限られる阿頼耶識やスーパーモードなど前提OSくらいなものだ。

 

「しかし統一性のあるイメージか」

 一方でどんな拠点にするか、どんなフォースにして行くかというのは簡単に決まるモノではない。

 かといって延ばし延ばしにして全ての物を販売したり、あちこちのフォースと提携し続けると言うのは面白さに掛けると言う物だ。

 

「僕からは……うーん、そうだね。せっかくの地下拠点だし、それにからめたネタが良いかな? ラクロアでもいいけど」

「そういうことなら……。ここってリーブラが落っこちてできた穴ってイメージだったわよね? ガンダムXかターンA系ってのはどうかな? それなら設計図売っててもおかしくないし」

 とはいえこういうのは、確固たるイメージがなければ雰囲気や来歴に流されるものである。

 特にソレが自分達の路線とそれほど変わりなく、流用できるモノであれば組み込んでしまうこともある。

 

「マウンテン・サイクルの一種みたいな? まあ思いつかなければそれもアリかも」

「俺のバエルだと、マクギリスが倒された後で封印されっぱなしだった扱いに成りそうだな。ボロボロになった姿をウヴァルやアスタロトのパーツで補修したというところか」

「良いんじゃないソレ? ラクロアだと私のV2お姫様みたいなイメージだと嬉しいな」

 始まりはその程度の認識だったが、一度方向性が決まると自体は加速して行く。

 気が付けば地下世界に封印された魔神だとか、発掘された古代の遺跡と言う雰囲気で造ろうということに成ったのである。

 

進むべき道に邁進せよ(ベクトル・スラスター)

 例え適当な理由であっても、意見が固まれば提案する事も推敲することもできる。

 一同の計画は草案どころか、今までの停滞が嘘の様に進んで行った。

 

「それじゃあまとめるよ? まずは表層。入り口周辺は遺跡風でそれ以上は広げない。裏手は可能な限り広くして演習場にする」

「裏に地底湖ってのは絶対譲れないんだからね!」

「その方が一見何を用意してるか判らないし、問題無いだろうよ」

 ロケーションは地底湖に面した丘であり、そこを入り口に地下遺跡といった風情だ。

 移動標的などは倒すと同時に湖に沈めるので、客が居てもパっと見るだけでは判らないようにする予定だ。

 リアルでそんなことをすれば大変なだけだが、ガンプラなので問題無い。

 

「大雑把な書く蝶は専門のフォースに依頼するとして、詳細な場所は僕らで時間を掛けてやる」

「隠すべき場所と、新規メンバーの割り当ては地下だったよな。なら当面は上か」

「はいはーい! 私は自分の部屋と客室回りにお花畑を用意するね」

 方向性である過去の遺跡をコンセプトに沿って、陰陽をハッキリさせることになっていた。

 見せても良い部分は上層に、現在の優先区画として大雑把にではあるが先に片付ける。

 見せ無い部分は核心を隠す場所であると同時に、今は無理に手を付けない区画だ。

 

「まあ当面は依頼料と資材稼ぎにミッション受けなきゃならないし、ゆっくり確実にね。現在のフォース・レベルでは手狭になった辺りで、ランキングを徐々に上げよう」

 良くも悪くも今までは拠点が不要で、大会に予選なしで出場しようと言うほどの気が無かったことが大きい。

 フォースとしての規模が大きくないので現在の拠点補正は小さいし、だからこそ実績に応じて大きくなっていくだろう。

 

「ランキングを上げるのは良いが、前にも言った通り気の合わない連中と組んで方向性が変わるのは好きじゃないからな」

「主力の入れ換えをするほど増やす気は無いよ。それなら公式大会に出る方がメリットがあるさ」

 フォース・レベルの上げ方は基本的に人数xランクなので方法は二つだ。

 

 一つ目は単純に参加者の実績を増やす事。

 徐々にランキングの関わるミッションや大会に出れば、それなりにランクが上がっていく。

 二つ目は当然ながら、制限人数まで人数を増やしていく事。

 実力のあるメンバーが増えれば増えるほど高くなっていく。

 

 ただし上位ランカーと下位ランカーでは、フォース・レベルの上がり方が異なるので足切りや制限があると言えなくもない。

 これを回避するにはタイトルに関わること……、質の高い公式大会や特別ミッションで上げるしかないだろう。

 

「じゃあどんな資源ミッション受けて行くの? それしながら大会や特別ミッションを見繕うってことよね」

「輸送任務が鉄板だけど……木星行きなんかやってられないから。まずはご当地任務を受けて、そこから派生形を探すかな」

 資源ミッションというのは読んで字の如く、資材をゲットできる依頼である。

 以前は存在しなかったミッションで、拠点を自在に加工できるパッチが実装されてから加わったモノだ。

 自分で掘ったり伐採することもできるし、その場にある交換ミッションで資金や他の資材に変えたり、輸送ミッションに繋げることもできる。

 

「なるほど、地下で獲れる資材を他所に売るのか。ますますMMOに成って来たな」

「そういうこと。地味に掘り続けるだけなんてつまらないからね。同じ稼ぐなら色々見て回ろうよ」

 良いことずくめに見えるが欠点としては非常に地味な作業で、長く続けて居られないタイプになるだろう。

 当然ながらマクロ作業も制限されており、木星便や火星便など長期にINできない人向けのミッション以外では使用する事が出来ない。

 

 その後の流用方法がかなり分かれており、資材を自分達が使う為に備蓄するものと、必要とされる場所に売りに行くモノに分かれる。

 最初は採掘補助・護衛依頼を出して居る場所から初めて、輸送護衛依頼を受けてついでに売ることもできる場所や他の資材ミッションを選ぶか、ネットで欲しがっているPCを探しても良いだろう。

 

 こうして一同は拠点拡張の為に動き始める。




 と言う訳で今回は拠点をゲット、拡張するという話です。
拠点に関しては特に描写がないので、ウルティマ・オンラインなどのホームやギルド・タウンに各種ミッションを合成しています。
今回は地味でMMOポイ話だったので、次回が戦闘回。多分早めの予定になります。
この話が予約投稿、今夜に装備データ例。早ければ水曜日か木曜日くらいに戦闘回と言う感じでしょうか。

拠点(ネスト)レベル
 各種サイズの他、入室最大人数や個室の数、ショップの品目や置いておける数などが変わってくる。
基本的にはレベルが高い方が色々と良くなっていくが、特定の項目に特化してカスタムする事も可能なので無理に大きくしないフォースもある。
貨物室を潰して客室にしているようなフォースもあれば、極限まで客室を削って個室やミーティングを広くすることも可能だからである。

 よってフォースとしての格付けよりも、拠点としての特性・看板の方が重要とも言える。
隕石や宇宙要塞ならば個室のサイズは小さいが、練習スペースは広く移動し易い傾向にある。地下ならば練習スペースも個室も狭いが、見晴らしを悪くも良くも調整し易い。
もちろん上位ランカーの居るフォースの方が質が高くなる傾向にあるが、どんな拠点なのか判り易い方が同好の士や注目集め易いと言える。
単に広い場所で休んで練習するだけならば戦場ミッションに行けば良く、豪華なスイートよりも天空の城なり巨大戦艦に宿泊する方がロマンがあるようなものである。

●3人の拠点
名称:『封印の地』
人数:正式メンバー3人、フレンド4名~。
友好フォース:2
個室サイズ:1x10 (仮設住宅レベル)
PCブローカー:
 ファースト・X・W・ターンAの設計図を限定で、強力だが残り使用回数の低い武装などを販売。
特注品はファンネルの軌道パターンや複座式コックピットなど。

ロケーション:
 地底湖に面する丘にある遺跡で、入り口が岩場に成っている。
裏手は花畑の中に仮設住宅が並べられており、湖で泳ぐ事も小舟で遊ぶこともできる。
入り口の岩の中に隠された場所からバエルが出撃したり、湖に面した場所からV2が空を飛んだりする。なおヘビーアームズは普通に入口から大きなトロッコで運ばれてくるとか。

 現時点でのメンバーはいつもの3人で、フレンド登録して居るのはバーザム・マークⅡに乗って居た厨二病の二人とラビアン・ローゼスの数名。
キュベレイ姉妹と執事達が入り浸って居るのは単に、ラビアン・ローゼスは欲しいフォース拠点を万年交渉中なので今は定める気が無い為である(だからデンドロビウムが仮説拠点だった)。


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策謀の宇宙へ

●PKエリア

 資源エリアでご当地資材を手に入れ、拠点に備蓄したり売り払ったり。

 順調にフォース拠点(ネスト)を飾り立て、あるいは機能を拡充させる為の準備が整っていく。

 

 だがあるラインでその動きは止まった。

 ランキングがタイトル(上位入賞)を手に入れなければ上げ難いように、フォース拠点(ネスト)も拡充し難くなっていくからだ。

 調度品はともかく特殊な機材を造るためにはレアな設計図に、レアな素材が必要になって来る。

 

「相談なんだけど、PKエリアにいかない?」

 ガンプラバトルは対戦ゲームであるのだから、みんなプレイヤー・キラーなのは大前提だ。

 だが誰もが『常に』戦闘を前提としたい訳でもない。基本的には御伺いを立てて戦いを挑むのが普通で、不意打ち上等で強襲するなどはハードなミッション中くらいだ。

 町中は基本的に戦闘禁止であり、一般のプレイヤーは気楽なPVPを行いたいときだけプレイヤーと戦闘する。

 

 これに対して原作準拠……いや、それ以上にフリーなPVPを前提にして居るのがPKエリアだ。

 明確な危険地帯であるが、それと引き換えにするだけのメリットも多く存在して居た。

 

「PKエリアって、あの危険地帯へ? なんでまた」

「さすがにレアモノが集まり難くてさ。購入しようにも使い過ぎると拠点《ネスト》の改修費用がね」

 まず危険エリアだからライバルが少ない。

 資材が取り尽くされていない場所が多いし、人気なミッションもここでは入り放題だ。

 

「確か……入手率が違うんだっけか」

「そっ。普通に効率は二倍弱、ライバル居ない事を考えれば三~四倍近いかな」

 そしてここからが重要なのだが……。

 危険エリアでの戦闘・冒険を成り立たせるために、PKエリアではリポップやレア素材の入手条件が緩和されているのである。

 だからこそPKエリアで一稼ぎしようと思う者も居るし、それを狙う者も出て来る。

 

「もちろん倒されて無いNPCどころか、海賊PCも普通に出るけど」

「それだけなら普通の対戦ミッションと変わらんから反対する理由は無いが……。まだ何かあるんだろ?」

 せっかく収集した資材を奪われるのは痛いが、それなら予め警戒した上で護衛ミッションだけを受ければいい。

 だがそういうPCまで少ない以上は、他にも何かあると見るべきだろう。

 

「言い難い事なんだけど勝者側のドロップ品がね……。パーツを奪われこそしないけど、コピーされちゃう可能性もあることかな」

「それは微妙だな。ムザと負ける気は無いが」

 原作でボロ負けしたら殺されなかったとしても、捕まって機体や装備を奪われる可能性もある。

 PKエリアではそれに準拠して、負けた側のパーツやプログラムがドロップ品として出ることもあるという話だ。

 かといって標準に近い装備と機体ではPK好きなプレイヤーに負ける可能性が高くなるので、勝利数を進呈してしまうことになる。

 

 他にも録画不可の条件にしていても対戦データを保存可能な条件もあるとか、資材もストレージ保存できないとか面倒なこと枚挙にいとまがないほどだ。

 しかしながら資材稼ぎなどの退屈なミッションが続く面倒さを短縮出来るのは魅力で、特に行った事も無いエリアで未知のミッションを受けるというのは面白そうだった。

 

「俺は内容の濃い戦いができそうだし賛成だな」

「私はちょっと怖いけど……。どのみち暫くINできないから構わないわよ。その時にカスタム掛けるしね」

「僕も大規模な改修をするつもりだからね。……じゃあ向こう行きのミッションを受けて見ようか」

 元もと三人は造る拠点イメージに合わせて、外見や設定を見直すつもりだった。

 また三人は大幅なランキングを稼ぐような公式大会を目指して居ないので、コピーされてもたかがしれるというのがポイントだったかもしれない。

 データが撮られて警戒されるとしても、公式大会に出る頃にはアップデートしている予定だ。

 

 こうして一同は策謀の宇宙へと進軍して行く。

 

●敵は海賊船!?

 前金は資材の一部、後金はインゴット化したレア素材。

 その条件で護衛任務を引き受けたものの、行きは順調で拍子抜けするほどだった。

 

「意外ね。ここに来るまで襲撃がなかったなんて」

「どんな手品を使ったんだ?」

 暗礁区域にある鉱山ブロックに上陸して報酬を受け取り、次のミッションから面白い物を見繕って受ける。

 これだけで通常エリアの採掘を地道にやってるくらいの価値はあるので、攻略法を知って居るかどうかというのはまさに手品のようだ。

 

「手品の種は積み荷だよ。アガリが少ない間に奪うよりも、タップリと蓄えてから来るつもりなんでしょ」

「豚は太らせてから食えってやつね。でも一体、何を運んで来たの? いい加減教えてよ」

 一同が運んだのは機材を詰めたコンテナで、輸送用にコロンブスやパプアをレンタルせずともゲタやクタン三型のようなSFSでもお釣りが来るほどのサイズだ。

 そのサイズの機材では、複数あるとはいえ儲けが出るとも……海賊を思いとどまらせるほどとも思えなかった。

 

「答えは鉱山を効率良く動かす為の機材。要するに採掘装置や各種探知機器一式だよ。運営が用意してる隠しゲートを見付ける為の、ゲートキャッチャーも一応あるけどね」

「なるほど。鉱山の採掘効率をアップデートするなら、その機材よりもアガリを奪った方が効率良いものな」

 当然ながらPKの危険性は襲撃側にもある。

 待ち構えた護衛と機材目的で戦うよりは、輸送船団を襲う方がメリットが多い。

 

 機材を奪って自分達が使う手もなくはないが、そんなことをするくらいならば地道に安全地帯でやった方が気楽なのだ。

 リスクを天秤に掛けて愉しむ以上は戦闘の方が面白いし、そこに至るまでの計画や偵察を繰り返す方がまだマシだろう。

 

「という訳で次は採掘中の護衛だけどこれもアンパイ。データを撮りに来る連中にだけ気を付けといて」

「本命はその後の輸送ミッションって訳ね。今から腕が鳴るってものよ!」

「それは良いんだがな。……味方の中に平然と裏切り者が居ると言うのもどうかと思うぞ」

 三人がドックで機体を用意しながら外を見渡すと、中に護衛と言うよりは偵察機と言った風情の機体が見受けられる。

 それも三人が使うEⅢ以上のモノに見え、海賊対策だけではないのが透けて見えるほどだ。

 

『まあまあ。敵の敵は味方さ。露骨に鉱石を奪おうとしないだけ良いと思わなくちゃ。ヘビーアームズver.33(トラントロワ)、出るよ』

『データ泥棒くらいはマシと思うしかないか。バエル・ザ・ブラックナイト、出撃する』

『探したらガーベラテトラやシナンジュみたいな取引もやってるかもね。V2プリマ『オデット』、今日も踊るわよ』

 こうして三人は採掘現場の護衛を行いつつ、自分達が担当するコロンブスへの搬入作業を見守ることにする。

 

『それがさ、失敗した奪還ミッションの機体を兼ね払って取り戻……』

 その間に軽口を叩きながらちゃんと予定の鉱石であることを確認し、近寄るステルス機が無いかだけをチェックしておいた。

 そして、いよいよ輸送船団が組まれたのだが……。

 

『至急! 全フォースに伝達いたします。暗礁区域の中にザンジバルらしき船を確認いたしました。以上』

 輸送船団が出発して暫く急な通信が通達される。資源衛星に戻れない辺りで不穏な影が見え始めて居たらしい。

 ザンジバルは輸送に使われることもあるが、レンタル料金も高く、フルスクラッチで自作するような連中に輸送屋は居ない筈だ。

 

『どう思う?』

『ミノフスキー粒子を戦闘散布してないってことは、護衛を排除する自信はある。でもダミーは掴みたくないってとこかな』

『最近はダミーバルーンも巧妙になって来たもんね』

 護衛船団の作戦と言うのはそれほどある訳でもない。

 依頼を受けた各フォースが団結して敵を押し返すか、全体の無事を諦めて大多数だけでも逃がすか……くらいだ。

 

『ここじゃあ四方八方へ逃げ出す手も使えないし、地道に迎撃するかしないよ。それを判って悠然と姿を見せてるんだと思う』

『その辺も含めて駆け引きを愉しんでそうだな。厄介な連中だ』

 そして位置的には微妙な場所で、まだ採掘地に近くゲートには程遠い。

 後者を選んで分散逃走するには向かないし、万が一にも他の海賊が居たらリスクが大き過ぎるだろう。

 

『全フォースに伝達いたします。艦影からザンジバル級リリー・マルレーンと推測されます。以上』

 強襲揚陸艦であるザンジバルにはバリエーションがあるが、カタパルトの有る無しや武装の位置で判別する事が出来る。

 初期型はカタパルトを持たず、追加したのが改という風にだ。

 

『リリー・マルレーンにゲルググか。NPCの可能性はあるけど……』

 その中でも最初からカタパルトを備え、武装の位置も調整されているのがザンジバルⅡ型である。

 有名なのは海兵隊のリリー・マルレーンであり、エース級と古参兵設定のシーマ艦隊という海賊NPCが存在した。

 

 まだ遠いのと傾斜した姿勢で進むので機影は判らないが、ゲルググのバリーエーションであるとは判別できる。

 その姿は盾のある左側に回転しながら、渦巻状のフォーメーションを保って居た。

 そこまでは良くある光景だが、速度を保っているのが恐ろしいところだ。

 

『いや、動きが良い。おそらくPCだな』

 宇宙空間という地形にカタパルトを使った高速移動モードは、条件次第で誰でもできるオープン・マニューバー。

 しかしながらこれを維持したまま曲がることが非常に難しく、迂闊に移動すると回避機動を取らなくても高速移動モードが解除されてしまう。

 それほど複雑な軌道ではないとはいえ、暗礁宙域を抜けて来る動きはNPCの物とも思えない。

 

『通信拾ったんだけど、あっちのフォースで何か言ってる。前に出るなって……』

『多分アレでしょ。宇宙カラーで簡易迷彩したメガバズーカ・ランチャーで狙ってるみたいだから』

 色だけの簡易迷彩にそれほどステルス性はないが、初撃を叩きこめるだけでも意味があるということだろう。

 他のフォースが用意したらしき、メガバズーカ・ランチャーが最低限のチャージで発射するようだ。

 

『忍に火の気は厳禁。ゆえにこれ一発限り!』

『エネルギーCAP連結! 火縄メガバズーカー・ランチャー撃てーい!』

 Gの影忍に登場した火縄銃を摸した砲塔が直接照準で狙いを付ける。

 そしてFCSなしで見定め、ギリギリのタイミングでエネルギーキャップを直接連結して膨大な熱光線を撒き散らした!

 

『やったか!?』

『駄目だ、避けられた! くそ、あの動きPCだ。絶対にNPCじゃねえ!』

 火線が延びてゲルググが組むフォーメーションの中央を穿つ。

 だがターゲットロックの警告も無いのに即座に散開して再集結して居る。

 

 その間も高速移動は途切れることはなかった。

 高速移動を継続するには予備スラスターが幾つも必要で、明らかにNPC機には設置されて無い数を用意して居るものと思われる。

 

『敵影は? 今の光で見えたんじゃないのか?』

『んっと一機を除いて全部同じゲルググに見えるわね。その一機はテスト中に見た奴と同じバリエーション』

『MS-14Fゲルググ・マリーネだね。海兵隊ッポイ場所に改造が施してある』

 モビルスーツによる海兵隊の任務は、重要地形への突入任務が主眼だ。

 危険地帯での運用が前提となるがゆえに、高い移動力を保持する様な仕様に成っている。

 元のプラモ以上にコックピット回りを中心に装甲が厚くなっており、増加スラスターと並行して強化されていた。

 

『この構成、これはもしかしたらもしかするかも』

『……防衛ミッションで無ければ借りを返す良い機会なんだがな』

 以前に戦った相手の中に、ここまでこだわって居る連中が存在した。

 長期戦を主眼とした改造を施した機体を並べ、一機だけ強力な改造機を上位ランカーのエースが操って居たのだ。

 前回はこちらが攻撃側で判定勝ちをもらったようなものだったので、クリスとしては勝負が付けたかったのだろう。

 

『ふ~ん。じゃあどうする?』

『コロンブスやパプアを守るのが優先だからな。遊撃に回れなかったら、来た奴を迎撃するしかないな』

 襲撃側にも作戦がある以上、こちらに都合の良い対応をしてくれるとは限らない。

 輸送船団の警備状況を把握して、密度の薄い部分を突破して来るだろう。

 

 そう言いながら、暗礁宙域の中を跳ねるようにやって来るゲルググの群へ視線を這わせた。

 ほどほどに接近したところで彼らはフォーメーションを変更し、三機編成の小隊を三つ、指揮官機がそれらを率いるモノにスライドさせている。

 こちらの陣営を見定めたところで襲い掛って来る算段だろう。

 

『……突入っ』

『GoGoGo!』

 そして、その時がやって来た!

 二つの編隊をそのままの体勢で攻撃用に投入し、残る一つが足を緩めてそこに至るラインを塞ぎに掛る。

 そして指揮官機は狙撃しながら全体を指導し続けて居た。

 

『このライン! 俺達を無視する気か!』

『違うよ! 輸送船のエンジン狙いで飛び抜けて行くつもりだ。迂闊に飛び出るとコロンブスが食われる!』

 襲撃側から見れば、数隻ある輸送船団のどれでも良い。

 足を留めてしまえばその船を襲い放題だし、他が牽引していくならば全体のペースが落ちる。

 高速移動を保ったまま、隙の出来た船に狙いを定めれば良いのだ。

 

『ビッチ先輩、狙撃で狙える? 一番怖いのはシーマ機の狙撃だからさ』

『早いけど……やってやれないことはないか……なっ!? こっちからもお返しよ!』

 ミツオが警告して間も無く、MS-14Fsから長距離狙撃が飛んでくる。

 少女は自身が持つビームスマートガンで応射した。

 

『どうせなら通常機の方を狙った方が良くないか? 悔しいがエースを相手にしている余裕はなさそうだ』

 クリスのバエルは白兵に限れば相当な強さを持つように成ったが、逆に射撃戦は不得意だ。

 今も予備の武器を借りて射撃しているが、牽制程度にしか役立って居なかった。

 

 ゆえに全体を見ることが出来たのだが、他のフォースの中にはミツオが言った様に迂闊な飛び出しをして、手痛い逆襲を喰らった者もいる。

 

『マズイな。こっちの方が数が多いのに分断されてる。このままじゃバラバラに潰されることになる』

『まあ最低限の取り決めしかしてない同レベルの集団だから、烏合の衆だもんねえ』

 護衛はNPCのジムやドラッツェを覗いたとしても、二十機近く揃っている。

 それが僅か十機のゲルググに翻弄されている訳で、いかに連携の取れた攻勢が厄介か判ろうと言う物だ。

 

『成果は山分けということで、被害無視で協力するというわけにはいかんのか?』

『最初からそういう契約結んでるならともかく、今からじゃ無理! よほどの作戦案が無きゃ』

『自分のフォースが一番なんだから聞いちゃくれないわよね。でも今すぐ思い付く様な名案があったら最初から思い付いてる筈だし……』

 輸送船団の間を通り抜けたゲルググが、一度下がって補給を受けに戻っている間に補給ついでの相談し始める。

 しかし都合の良い案が思い浮かぶ訳はなく、再度の出撃を見守ることに成るのだが……。

 

『なあ。なんであの連中は警戒行動からスタートしてるんだ? そのまま弱ってるフォースに襲い掛れば輸送艦を何艦かは食えるだろ?』

『知らないよっ。ロールプレイか何かじゃないの? 近藤一家だったらロマンでやってても不思議じゃないよ』

 本当にそうだろうか?

 猛烈な違和感をクリスは受け取った。

 

(ロマンなら最初だけでも良い筈だ。原作を意識するなら連邦の治安維持部隊を警戒して、さっさと強襲する方がらしく(・・・)ないか?)

 そして答に辿り着く。

 それはPKエリアに詳しく海賊に襲われるというシチュエーションに納得してしまっているミツオと、未知だからこそ色々模索して居るクリスの差だった。

 あるいは単純に、他のフォースと連絡を取り合って忙しいかどうかの差であったかもしれない。

 

『判った! 連中も警戒して居るんだ! 他の連中に伝えてくれ、良い案があるってな』

『警戒って何に!? ここには連邦軍NPCなんて来ないよ!』

 そう、連邦軍は来ない。

 少なくともNPCが自発的に来ることはありえず、自治会を気取るフォースがパトロールをするくらいだろう。

 襲撃側もパトロール時間を調べて避けるというプレイングくらいは掛けて居る筈だ。

 

『奴らも他のフォースにPKされることを警戒してるんだよ! こっちのフォース全員を倒してドロップ品を得るくらいの価値を、あいつはら抱えてる!』

『え?』

 盲点と言えば盲点と言えた。

 PKエリアなのだから、海賊を気取って居るプレイヤーも他のフォースに狙われる可能性があるのだ。

 一緒になって輸送船団を襲撃したり、漁夫の利を狙うよりも良い獲物を襲撃者達は所持していた。

 

『そんなに都合の良いアイテムってあったっけ?』

『大き過ぎて気が付いて無いだけさ。そこにあるじゃないか……』

 首を傾げながら回覧版のメールだけは用意するミツオに、クリスは不敵な笑みを浮かべた。

 受け身になって何もできない者が、我慢の果てに獲物を見付けて攻勢に出る時の表情だ。

 

『あるだろう? ザンジバルだ』

『そうか! あれがフルスクラッチのプラモなら、設計図をドロップさせられる!』

 結局は考え方というか、根底はPKエリアにリスクを抱えて戦闘すると言うのは皆同じ条件なのだ。

 仮に相手を倒して設計図をドロップする確率は、そう高くないとしよう。それでも人数はそのまま確率の上昇に成る。

 

 倒される側……三人が全て撃墜されたら、確率は低くともEⅢシステムが誰かから落ちる可能性は非常に高い。

 同じ様に攻撃する者が複数名居るなら相手が一艦であっても、ザンジバルを墜とせば人数分だけドロップする確率が増える。

 

『えっと今のネタだけど……。幾つかのフォースも興味があるみたい。もうちょっとリスクを軽減できるなら、みんな乗って来ると思うけど』

『そうだな。さっきの被害補償の話を派生させて、基本は皆で損失を頭割り。ドロップ品の優先権が欲しい場合は、保障レベルというのはどうだ?』

 ゲルググが迫り重苦しい雰囲気のはずなのだが、気分の面では既に持ち直して居た。

 このままでは倒されてミッション失敗、ドロップ品として改造パーツをコピーされるという状態だった。

 これが『もしかしたら、ザンジバルを自分達が所有できるかも』という美味しいネタをぶらさげられたのだから、現金な連中だとは言いきれまい。

 

『連中にリスクを思い付かせることが出来たらボーナス、直ぐにでもやってもらうとして……。足止めと襲撃は俺みたいな迎撃が苦手な連中と、人数に余裕のあるところでいいだろ』

『それだと抜け駆けされそうだけど……。まあいいや、今のアイデアで提案してみる』

 この際は案の整合性だとか、利益を得る得ないなどは後回しだ。

 今のまま襲撃されて何もかも奪われるか、それなりの作戦に従って、可能ならばメリットを追い掛けるか。

 ザンジバルを手に入れるのは夢物語にしろ、座して待つよりは確実性が高いだろう。

 

 こうして攻守逆転祭りが企画された。

 輸送艦が分散しつつ、とある行為を同時に実行する。

 

『なんだ? やつらこのタイミングで四方に分散する気か? まだ早や……』

『おい、どうした?』

 通信にザリザリとノイズが混じり、画像も段々とボヤけ始める。

 有視界距離まで近づけば、既存の機体や特定しているネームドのランカーは過去の画像で再現され、良く調べて居ない機体は大枠だけで表示される。

 

 その現象は輸送船団の周囲から少しずつ全体に広がり、それゆえに敵味方を巻き込んで居た。

 特定の者にではなく、全てを巻き込むがゆえに対抗する事は出来ない。

 だが意図した迎撃だけは、何が起きるのか、そのデメリットは何かを熟知して居た。

 

『通信が効かない? まさか……』

『こいつは、ミノフスキー粒子の重戦闘散布だ! ちくしょう!』

 襲撃補助の為に足を留めた遮断班のゲルググが、別のゲルググに触れて『御肌の接触回線』を開く。

 途端にクリアに聞こえることから、ミノフスキー粒子が重戦闘散布された現象だととようやく理解できる。

 

 劇中に置いてミノフスキー粒子の散布濃度は複数あり、散布すれば通常通信ができなくなる。

 この不便さを回避する為にブレードアンテナで指向性通信を送るのだが、それさえも遮断して、震動伝播やケーブルによる接触回線のみとするのが重戦闘散布だ。

 主に戦艦の脱出シーンや、援軍を分断する時に良くみられるアレである。

 

『奴ら狂ったのか? 重戦闘散布をしちまったら、統制射撃や観測射撃で飽和攻撃もできんぞ』

『こっちはレーダー使えないけど、視認しなくても撃ちまくれば良いからな』

 遮断担当の班は、最初の襲撃で見事な成果を挙げたので気が付かなかった。

 本来ならば彼らを突破するか、遠距離から削るために近づく機体が無い事を。

 

 そして……。一部の護衛が歯抜けになって引き抜かれている事を。

 かき集められた戦力が、何処に向かっているか……をだ。

 

『なんだ、信号弾!? それも撤退信号? 上手くやれてるのにか? どういう……』

『ちょっと待て発光信号だ。待機してる二番機が指揮を受け継いで……。急いで戻るぞ! 母船がヤバイ!』

 凝り性の彼らは、信号弾と発光信号を組み合わせてこんな時でも連絡が取り合えるようにしていた。

 だがそれでも伝えられるのは、母船であるザンジバルが襲撃を受けた事。

 

 そして……指揮を取るべきMS-14Fsが、足止めを受けて居ることだけだ。

 

『まさか……。君に……で足元をすくわれるとはな! 短い間に腕を上げた』

『この間の借りは……、……で晴らしたぞ!』

 シーマ機を改造した機体とクリスのバエルが掴み合い、蹴りや体当たりを掛けながら強引に切り結ぶ。

 他にも足止め機体は居たのだが、MS-14FsにはV2アサルトに使われているリアクティブ・ビームアーマーが張られていたのだ。

 地味な改造だがありえるレベルの改造だけに完成度が高く、他の能力に影響を与えない範囲の優れたモノだった。

 

 結果としてクリスのバエル以外が戦うことが難しく、援護に向かっているMS-14Fに二重の足止めを行っている。

 

『あの時に完成して居なかったワザを見せてやろう!』

『なんの! 全国に上がって来い、そのレベルならば私でも使える!』

 バエルがキリモミ回転を掛けながら脇に回り込むと、MS-14Fsは小さいS字を描いて最低限の軌道で斜め横に向き直った。

 歪な巴戦を繰り広げた後で、真・バエルソードとビームサーベルがぶつかり合う。

 

 先ほどまでの掴み合いから一転し、離れたことで既に会話は成立していない。

 しかしながらファイター同士の言いたいことは、何となく判るものだ。

 

『君ばかりに時間を食っている訳にもいかん。これで……』

『甘くみるなよ! あの時よりも成長して居ると言った!』

 ビームサーベルが十手状に成り、真バエルソードを挟もうとする。

 そして速射砲で強引に撃とうしたところで、振動装置が挟まれるよりも先にサーベルを跳ね除けたのだ。

 

 続く攻撃で切り落とそうとしたところを、MS-14Fsは盾を犠牲に強引なバックを掛ける。

 

『ブロックは効かんと……ちぃ!』

『隊長!』

『君ばかりに構っては居られんと言ったぞ。……いかんながらこのまま撤収する』

 盾の表面を滑る様に刃が腕や肩を斬るが、バック中ゆえに致命打にはならない。

 そこへMS-14Fが駆け付け、両脇から抱える様に守りながら立ち去って行った。

 

 ザンジバルは残って居た護衛がなんとか迎撃しており、損傷を受けながらも戦場から離脱。

 やはり彼らもまた、他のプレイヤーからのPKを警戒していたのである。

 

 こうして三人はレンタルしたコロンブスの補修費用を払ったものの、それ以外の被害を抑えて初めてのPKエリア戦を乗り越えた。




 と言う訳で戦闘回です。
今回はガンプラバトルにも、PKエリアがあるのではないか? という予想と捏造のもとに行っています。

 思い付いたのは完全な非戦闘エリアがあったり、平然と戦いを挑める場所が多いのに、それほどバトルが起きて居ない事。
もちろんミッションでは普通に戦闘して居ますし、優先権もあるのでしょうけれど……。
そこで疑問に思い、普通のMMOのように対人戦闘を前提として、奇襲や騙し討ち上等のエリアがあるのではないかと思った訳です。
PKエリアだとレア率が高いとか、報酬が良いだろうと言うのは、それを成立させる為の捏造になります(ウルティマ・オンラインを参考)。
レアアイテム以外にもドロップ品として、相手の設計図を強引に奪えるとか、記録不可設定でもデータ偵察が可能とか捏造して居ます。

●オープン・マニューバー
 誰もが使える、登録せずとも行える特殊な行動。
宇宙空間でカタパルトがあると使える高速移動(移動力二倍)や、とりあえず一緒に射撃して仲間の命中率を挙げるとか。
他にも遮蔽物に隠れて、その大きさを盾代わりにするなど。

●登場機体
・MS-14FS【対ビーム仕様】
 シールドにあるビームコートだけではなく、リアクティブ・ビームアーマーを張りつけてある。
当然ながらスラスターも増加させており、数回の回避までなら高速移動を継続する事が出来る。
(オープン・マニューバーの高速移動は、曲がるとか、回避すると予備スラスターがないと終了する)
 武装としては管制機でもあるので、EWSの付いたロングレンジ・ビームライフルを装備し、オマケでパイルバンカーや海蛇も装備して居る。

・ザンジバルⅡ級『リバーシブル』
 リリーマルレーンやケルゲレンのフリができる、外見を入れ換えられるザンジバル。
フルスクラッチだから可能な方法であり、仮に倒されて設計図がドロップされると、その辺の情報もバレてしまうとか。

・『火縄』メガバズーカ・ランチャー
 Gの影忍で登場した、宇宙迷彩カラーのメガバズーカ・ランチャー。
FCSを搭載せずに直接照準で狙う為、ロックオン表示が出ない。
また直前までエネルギーを直結して居ないので、エネルギー反応で見付ける事も難しいのだとか。
なおビームの光条は激しいし、ステルス機能は無いので、隠れる機能はオマケである。


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トレード

●オファー

 拠点造りも形が整ってきたところで、思いもせぬ通信が入った。

 保有するプログラムやパーツの交換をしないかと言う御誘いだ。

 

「名指しで申し込んで来るのは珍しいな。バイヤーに並べて無い商品か?」

「それもあるけど……並べてるあつで扱いが微妙なのをワザワザ申し込んで来てる。……となると一回限りじゃないのか」

 オンラインゲームである以上は、当然の様にトレード機能がGBNには存在する。

 流石にスキルは無理だが、ドロップ品や設計図を始めとして、自作のプログラムにパーツも交換出来るのだ。

 それらを販売するバイヤーが存在するのだから当然とも言えるが、直接の取引は少々微妙な問題が存在した。

 

「冗談で並べてた複座式が継続で購入されてたよね? あれって同じところだったみたいだね」

「ということは試しで購入した後、有効だと判断したのか。どんな風に使う気やら……」

 郵便や簡易メールではなく、ネット上に管理するデータである以上は騙されることはない。

 だが重要な問題として、流通させる気の無い技術や大量の品を指定されることが殆どだ。

 要するに自分も得をするが、相手が劇的に強くなってしまう可能性も秘めて居た。

 

「向こうが提示して来た条件はなんだ? 先輩の自作だから直ぐには応じられんが、複座式は条件が緩くてもいいとか言ってたろ」

「聞かなきゃ良かったって想うよ? とても美味しいけど僕らには凄く微妙だからさ」

 欲しい品を名指ししてのトレードは、相手に取って欲しい品を直接釣り上げるチャンスである。

 逆に自分達から見れば、欲しくない物を並べられても困るだけだ。

 オンランゲームではありがちな事だが、GBNでも同様の葛藤が多くみられる。

 

「聞かなきゃ先輩に伝えられんだろ」

「……モビルトレース・システム。マルチロックも渡すならスーパーモードも付けるってさ」

 ストーリーに登場する機体制御OSの中で、トランザムやZERO-SYSTEMはパーツ由来なので比較的に手に入れ易い。

 だがモビルトレース・システムとスーパーモードは機体由来なので、手に入れ難い。

 三人が苦労して阿頼耶識の設定の仕方を発見した様に、それらも解放条件から見付けねばならないのだ。

 

 ゆえにこのトレードは非常に美味しいレーティングではある。

 もし現バージョンの阿頼耶識にビーム不可、モビルトーレース・システムにビーム前提という矛盾が無ければ飛び付いていたかもしれない。

 

「確かに微妙だな。だからこそ向こうも条件を下げて居るのか」

「だと思うよ。マルチロックの方を狙ってる可能性も無きしも非ずだけど……。これはこれでコツを見付けたら自作できるしねえ」

 副座式コックピットは自作して試してこそ見たが、それほど有効的な使い方を見付けて居ない。

 何のかんのといってモビルアーマーでもないのに、二人のプレイヤーが手を掛けるほどとは思えなかったのだ。

 

 だから放出しても良いと考えてNPCバイヤーに持たせていたが、相手が劇的に強くなるなら話は別かもしれない。

 場合によっては別に放り出しても良いのかもしれないが、代価が使うことを考慮して居ないモビルトーレース・システムでは判断に迷うところだ。

 

「これがボ-ドゲームだったら話を打ち切るか、将来を見越して思い切るか考え易いんだけどね」

「別に一回切りのゲームじゃないからな」

 限定された時間で一位のみを奪い合うボードゲームの場合は、勝たせない為に渡さないという選択と逆に大胆な譲歩が有効だ。

 しかしながらGBNはボードゲームではない。今は有効では無い技術であっても、他の形で役に立つ事もあるだろう。

 その意味では交換する事自体は悪いことではないし、コツが判れば自分達で解放条件を見付けることだってできるかもしれない。

 

 それでも躊躇ってしまうのは、そろそろランキングを上げに行こうという時期だからだ。

 別に勝ち続けるとか配点の高い試合で上位に食い込むつもりなどないが、技術を渡して強くなった相手と競合する可能性があるのは面白くはない。

 

「まあ判断に困るくらいなら、先輩にメールを投げて見てOK出たらで良いんじゃないの?」

「そうだな。俺らが五分五分で微妙と見て居るなら、余計な忠告無しで判断してもらうか」

 こうして今は居ない本来の持ち主に判断を託し、二人は互いにメールを送信しあった。

 

●交換でき得ぬもの

 何度か連絡文が行き帰りして、ようやく段取りが固まった。

 双方の基本的なラインは当初のままだが、間に別の人間を挟む事で三角協定としたのだ。

 

「今回はボクの我儘の為にごめんね」

「ううん、私達にも得があったから構わないわよ」

 交渉を持ちかけて来たのは、以前に戦ったヘルムヴィーゲとユニコーンのフォースだった。

 

「でも本当に阿頼耶識は良かったの?」

「アハハ。そっちも悩んだと思うけど、こっちも使い切れないんだよね」

 ユニコーンを操るショートカットの少女が、屈託の無い笑顔を浮かべて答えた。

 ヘルムヴィーゲとユニコーンは両機ともにモビルトレース・システムを使用し、スーパーモードを切り札にして居る。

 ゆえに現バージョンではビーム不可の阿頼耶識と相性が悪いのだ。

 

「ということはやっぱり、XのGファルコンやOOのオーライザーみたいにする気なんですか?」

「ええ。内蔵型とどっちにするか散々なやんだのですけれど……。相手の方が数が上の場合は、予備機にしかなりませんものね」

 自分も似たような事を考えていたのか、ミツオが導入するギミックに関して興味深々で質問を重ねた。

 RGアーマーを使っていたロングヘアーの少女は少しだけ悩んだものの、強引に取引を進めてしまった為か正直に答えてくれる。

 

「じゃあ武装の配置を変更するか、肩回りを改造した方がいいですね。FAユニコーンはそこが弱点ですから」

「そのつもりですわ。最初から合体して火器管制を行う事も考慮しますし、追加武装を使い切ってからばかりという訳にもいきませんから」

 そこまで話した段階で、ロングヘアーの少女は交渉がまとまってからの懸念材料を確認しておくことにした。

 

「改めて確認させていただきたいのですが、お渡ししたシステムの譲渡相手ですけれど」

「ええ、もちろん。こっちが渡すモノも無制限に渡されても困りますしね。お互いに渡すのは……」

 モビルトレース・システムとスーパーモードは阿頼耶識と矛盾する為、自分達では無く三角トレードで別の人物に渡す。

 それを承諾したものの無条件と言う訳にも行かない。

 もちろん三人とて判って居るし、無関係な相手に渡してそのフォースを強化する気はない。

 

「待て。それ以上はいい」

「「え……?」」

 だが、そこで待ったが掛る。

 今まで黙って居た番長風の……ヘルムヴィーゲを操っていた男がここに来て口を挟んだ。

 筋書きには無いことなので、一瞬驚いてしまう。

 

「俺と勝負しろ。勝った方が譲渡範囲を好きに決めればいい」

「その条件を呑もう。ついでにランキング戦に関しても同様で行こう」

 男の言葉にクリスが相乗りして、あれよあれよと野試合が決まってしまう。

 

「ちょっと、何勝手に話進めてんだよ。どうせ仲の良いフレンドにしか渡さないのに」

「そうだと判って居ても、なあなあで済ませない方が良い事もある」

 せっかくまとめたのに、勝負で決めたら荒れる元に成る。

 そう言って留めようとするミツオに、クリスは首を振って断った。

 

「どうせ判断に迷うことだったんだ。ああすれば良かった、こうすれば良かったと後で言うよりも勝負で決めた方がすっきりするさ」

「勝者が全て持って行く。元よりガンプラバトルはそういう場所だ」

 男たちはそう言って不敵に笑うと、背中を向いてゆっくりと歩き始めた。

 

「あーやだやだ。それだけ判り会えてるなら戦わなくても良いのに」

「あれじゃない? 河原で殴り合って笑わないと仲良くできない人種」

「全部の男がああいうのばっかりだと思わないで欲しいけどね」

 一同はガンプラを出現させる光景を呆れた目でみながら、離れて様子を見守ることにした。

 

『クリス・マモル。バエル・ザ・ブラックナイト、出る!』

『カワカミ・タケル。ヘルムヴィーゲ・タウルス、出陣するぞ!』

 黒いバエルと四足のヘルムビーゲが現れ、加速を付けながら正面から殴り合う。

 

『叩き潰せタウルス!』

『咆えろバエル!』

 四足のヘルムヴィーゲは前回のランスから、巨大なハルバードに持ち替えて居た。

 対するバエルは完成した震動する刀身により、斧槍を弾いて肩口に切りつける。

 

『覚えたな? では本気で行くぞ!』

『ぬっ、防御不可能技か。面白い! だがそちらばかりに良い恰好はさせられん!』

 バエルが飛びのいた所へ、ヘルムヴィーゲは四足部分を変形させる。

『黄道に星は満ちよ! 明・鏡・止・水!』

『そちらも技を進化させたか! 同じ死力を尽くすならば、こうでなくてはな!』

 前回は追加一体分の下半身を繋げただけであったが、今回は補強パーツにリニューアルされていた。

 上下に翼の様に展開し、ビームを用いて上のパーツは腕を下のパーツは脚力を強化しているようだ。

 放たれる光線よりも早く飛びのくことで、バエルは攻撃範囲から離脱して行く。

 

『あれはガンダム・ダンダリオンを参考にしたのか!』

『フルカウルほど素のパラメーターを強化しておりませんけどね。ですが……スーパーモード制御化ならば十分ですわ』

 あくまで稼働ラインは四足でありビームによる補強パーツであるので、手足の出力そのものを強化して居る訳ではない。

 だが闘気代わりのビーム砲を設置し、スラスターを追加するには十分な構造をしている。

 

『保てよバエル! 振り回すぞ!』

『防げぬならば受けねば良い、避けられぬならば回避せねば良い! 受けよグランド・カタストロフ!』

 戦場を翔けた後、斧槍が苦手な接近戦を挑むべく一気に踊り掛るバエル。

 対するは斧槍を捨て、範囲攻撃をもってカウンターを放つヘルムヴィーゲ。

 輝く掌圧がバエルの周囲を包み、逆進波となって動きを鈍らせたところへ掌底が迫る!

 

 もし勝敗を分けた要員があるとすれば、誘導した者と覚悟を決めて逆撃に出た者の差。

 あるいは前段階に置いて初撃を喰らったか、避けたかの差と言っても良い。

 

『俺の勝ちだ。だが……最後までは保もてなかったか』

『同時KOか。しかし数秒でも俺の負けだな』

 互いに防御を捨てたことで、真バエルソードがヘルムヴィーゲの胴へ深く潜りこんだ。

 だが接近されると当て難いハルバードではなく掌底で殴りつけたことで、バエルの胸元に大きな亀裂を造り出して居た。

 

 クリスの狙い通りであったものの、強化されたスーパーモードの性能を見誤り、結果としては相討ちと成った。

 僅かなタイムラグを生じさせた後、小さな爆発が二度。

 そしてダブルKOのアナウンスが流れたのである。

 

「……そちらのフォースに暫く下駄を預ける」

「それならランキングに関係しないから気にする事も無くなるか。増えた分の商品枠を使っていいぞ」

「こらこら! 何勝手に勝負して、勝手に話を進めてんだよ。みんなも何か言ってやってよ!」

 クリスとタケルは勝負の結果とあって納得している。

 納得できないのは交渉の流れを造って、上手くやったと自負して居たミツオの方だ。

 

「ホラ、やっぱりこうなったでしょ? 最近勉強してるのよ。ジャパニーズ・マンガ・アートで」

「釈然としない事もありますが、良い感じに収まったのではないでしょうか」

「そうそう。終わりよければ全て良しって言うじゃない」

「そんなあ……」

 女性陣の方は損得勘定が整ってしまったため、すっきりと収まってしまったようだ。

 そもそも分野がみんな違うと言う事もあり、自分のポジションを奪われないことなども影響しているのかもしれない。

 

「スーパーモードはあいつらに渡して、代わりに暫く同行するって話だったろ? これで8人。やろうと思えば10人の大会にも出られるじゃないか」

「そうなんだけどさ。……散々悩んだ挙句に決めたのに、最後の最後に脳筋展開ってのが納得いかないんだよ!」

 こうして憤懣やるかたない一名を除き、大団円でトレードにまつわる物語は終了したのである。




 と言う訳で、オンラインゲームならば交換を持ちかけられることもあるだろうとトレード会です。
次回は増えたメンバーを、お互いに技術を交換して強化していく。という回に成る予定です。

 カードゲームなどでトレードした事のある方は良く判るかもしれませんが、地方で迂闊なトレードすると相手の方が実は有利な取引もあるのですよね。
コレクターじゃないからレアだったり性能の良いカードをもらったつもりでも、相手はそれでコンボに必要なカードが揃ってしまうみたいな感じ。
その辺を再現する為に、今回は今までに登場したキャラの中から、主人公組が使わないスーパーモードを相手に選んでみました。

『阿頼耶識』
 割り込み行動が、複数回行える。
ただし現段階のパッチ・バージョンでは、ビーム兵器を搭載できず、味方にモビルアーマーが居てはいけない。

『モビルトレース・システム』
 動作でコントロールが可能になり、任意の地点にビームを打ち込んで闘気として使用出来る。
(データ的には動作環境の改善と、若干遅いものの思考操作でビームを撃ちこめる、特殊動作でも撃ち込める)

派生形:『スーパーモード』
 ビームを拳や足の先に放ち、火力や推力を一時的に向上させる。
全能力が大幅に上がるものの、本体エネルギーの消耗が激しくなる。

 と言う感じで主人公組はクリスが阿頼耶識を基本使用、ミツオと先輩は装備変更によって使用を考慮して居る(V2はスマートガンをダインスレフとか)。
だからスーパーモードをもらっても相性が悪い……と悩んで居た感じです。
一方でトレードを持ちかけて来た三人組みですが、FAユニコーンとRGアーマーが合体してwコントロールで火器管制UP・スーパーモード強化予定。
マルチロックももらったら、その火器管制は更にUP。スーパーモードはレート的に惜しいけど、複座式コックピットの方が遥かに有効。という差があります。

●機体OSに関する、隠し条件の発見と開放
 プログラムやマニューバーを打ち込み設定して行く中で、機体OSの条件を発見し、自分達でも作成できるように成ると設定して居ます。
阿頼耶識ならば割り込み行動をプラモとスキャナで画像を取り込んで、無数に条件設定して行くと、途中から可能になります。
モビルトレース・システムならば、コントロール用のポーズを視点ポインタで登録し続け、基本ポーズが崩れなくなるまで頑張る。コマンドも動作を無数に登録して行く。
などの、非常に手間な内容を登録すれば可能になります。
ただし、阿頼耶識ならば、動作設定した行動しか割り込みが出来ない。更に使いこなせるシチュエーションがあるかどうかは判らない。
モビルトレース・システムもまた、技コマンドを設定しないと任意の地点にビームが飛ばないし、できても当たるとは限らない……という欠点も存在します。
(スーパーモードは更に、どこのビーム砲がどこに対応するかを割り振らなければならない)

●追加登場人物
カワカミ・タケル(弟)
 ヘルムヴィーゲ・タウルスの使い手。北九州の方の人物で番長風のダイバールックをしている。
その服装は兄から譲られたもので、その兄もまた同じ格好でGBデュエルをしていたとか。
今回は四足からスーパーモードに変形するに際し、捨てて居た追加下半身を強化パーツに変更。
武装も移動攻撃用のランスから、重厚なハルバードに換えて居る。
なお、ガンダム・ダンダリオンを参考にしたとか言っているが、実際には聖闘士星矢・黄金魂における、タウルスのゴットクロスがモデルである。

リンダ・ヤマト
 ユニコーン使いの少女でボクっ子、体操服姿のダイバールックをしている。なおリンダは林田と書くのが本来は正しいと思われる。
その服装は本人が一番動き易いと思っている為。ダイブ中であっても一番意識し易いから。
現在の予定ではFAユニコーンの移動力と火器管制を強化する為、RGアーマーと合体するつもりである。

ヘイズ・ヘイゼル
 RGアーマーの使い手で、ロングヘアー。体操服のダイバールックをしている。
なお本名は霞で榛色の眼を持つハーフなので、ヘイズ(霞)・ヘイゼル(榛色)と名乗って居る。
服装は女子高の妹分であるヤマトが勧めたからという単純な理由であり、日常ではまず着ることが無いので意識の切り替えに使用して居る。
もちろん後付けの理由であり、二人の服装のモデルが単にトップを狙え!である為。
現在の予定では複座式を組み込んだ後、マニューバーによる合体モーションと火器管制変更を組み込み、できればマルチロックも導入する予定。
(マルチロックの開放条件は、視点ポインタによる対象設定と余分な動作排除の繰り返し、および友軍機のターゲット指定解除確認であり、やはり長時間の入力作業が必要になる)。


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ランキングを上げて見よう

●公式大会に出よう

 一時的に他のフォースやフレンドを吸収し、メンバーは八人になった。

 何度かの交流を行った後、みんなでやる為の新しい目標が発表される。

 

「ビッチ先輩。それで何やんの?」

「せっかくメンバー増えたし、今の内に公式系の大規模フォース戦に出て見たいと思うの」

「構わんが、効率重視の前提は勘弁な。どうせ分かれるから称号によるブーストは無意味だし」

 ビッチ先輩と呼ばれた少女……アレクサンドラの言葉に一つだけ否定が挟まれた。

 一同は特色のあるこだわりを持つ者もおり、個性に合わない事はしたくないタイプのメンバーが多い。

 それと大前提としてこのメンバーでずっと行くわけではないので、タイトルの掛った公式試合でポイントの入る称号(上位入賞)を得ても無駄になるのだ。

 

「まーその辺は了解。私だって地道なスポーツとか嫌いだしね」

「ボクはバスケとかバレー好きだけどね。その辺のエンタイーテイメント系ミッションは好き嫌い出ちゃうし」

 公式のフォース戦の中には、ガンプラ・スポーツと呼ばれる戦いもある。

 読んで字のごとく、ガンプラでマラソンや野球などのスポーツを行うのだ。

 

 この手の大会は好きな者と嫌いな者がハッキリするので、参加者数的に狙い目ではあるがメンバー内ではあまり人気は無い様だ。

 

「では普通に戦闘系のフォース戦を選びますの? 人数的と練度の両方で難しいと思われますけど」

「やり易いがそれだけにライバルは多いし、強いところは十人前提だもんね~」

 当たり前の話しながら、普通のフォース戦は戦闘力とチームワークがモノを言う。

 参加枠は十名だが一同は八人であり、臨時に増えたばかりなので連携訓練もそれほど行っている訳ではない。

 まだまだ個人の力量を見たうえで、パーツやプログラムを相互交換して能力を磨いている段階だと言えた。

 

「経験を積む為にとりあえず出て見るのも悪くはないと思うが……。何か名案はないのかミツオ?」

「こういう時だけ頼りにされても困るけど……。まあ無くはないよ」

 話を向けられたミツオが嫌味を言いながら肩をすくめた。

 少し前の戦いで、勝手に戦って勝手に勝利条件を決めたことに文句を言っているのだろう。

 

 だが注目を集めたことと、難題に解決策を閃いたことに満足するとミツオはおもむろに話し始める。

 

「要するに数人ずつの班が複数必要になる戦場で戦えば良いんだよ。もちろん通常戦闘でもいいし、エンターテイメント系もスポーツ過ぎなきゃ完全な純戦闘で無くても良いんだしね」

「そりゃそうだけど……。そんな都合の良いステージなんてあるわけ? 無いから困ってるんだと思うけど」

 ミツオの言葉に何人かが首を傾げる。

 通常の大規模戦闘では必ずしもステージが選べるわけではない。

 

 メンバーのガンプラが局地用に偏って居る時に考慮されることもあるが、その場合も上位ランカーの集まる有名大会だから考慮の余地が大きくなって居るだけだ。

 運が良ければ能力が行かせるステージになることもあるが、運が悪ければ全く使えない事もある。

 

「あの……。もしかして護衛ミッションとかですか?」

「それなら確かに全員が一か所に集まる訳ではないし、場合によっては小出しに連戦することもあるか」

 おずおずと二人の少年たち……巻き毛のカザマ・ジンと、ロンゲのイナオ・アキラが口を出す。

 彼らはバーザムやティターンズ仕様のマークⅡに、Gディフェンサーを付けて居た二人組でクリスの招待でやって来たフレンド組だ。

 似た能力を防御特化と攻撃特化に分かれて製作しており、その延長で思い付いたのかもしれない。

 

「だいたいそんな感じかな。ファーストガンダムみたいな戦艦を守るステージとか、エンターテイメント系だとフォーミュラーなんか似たような感じだね」

 ファーストガンダムを元にした戦艦に乗って移動するキャンペーンは、聖地巡礼と呼ばれてメジャーなミッションだ。

 公式大会だと流石に護衛対象は戦艦ではないが、NPCの操る小型船やモビルスーツを守って移動するモノは一応存在する。

 

 もっとも良く見掛けられるモノは、フラッグ機に重要人物が乗って居るという設定で、通常戦闘とそれほど変わりない物だ。

 いつも以上にフラッグ機の守りが重要になるだけで、それほど護衛ミッションという印象は無い(制限がある場合を除いて)。

 

「フォーミュラーってレースだっけ?」

「そうだな。確かにアレは戦闘アリのレースだった筈だ」

「護衛ミッションと似てるんだけど、基本的には指定エリアへの移動を要求されるやつだよ。コースにラインは無くて、ビーコンに従ったり任意にマーカーを回ったりする差はあるけど」

 フォーミュラーは旧時代の耐久レースに近いエンターテイメント系ミッションである。

 流星のようなビーコンを追い掛けたり、一か所巡るごとに次のポイントを指定されるモノなどがある。

 当然ながら途中で戦闘が起き、敗北する可能性もあった。

 

「限られた機体が巡るモノと、フラッグ機を守りながら回るのがあったよな?」

「うん。この場合は当然、フラッグ機を守る方だね」

 限定された数で挑むミッションは開発性の高いレースであり、移動力のある機体の数機へ絞る必要があった。

 だが今回は八人に増えたことで最大十人の大規模フォース戦に挑もうというものであり、趣旨から外れることに成る。

 

「指定されたコースを離れてはいけないモノならば全員で守り、ポイント指定の場合は足止めやら先回りで班を分ける必要がある。面倒といえば面倒だけど、僕らの都合には合致してると思うよ」

「なるほどー」

 ミツオの解説が終わり、一同は判ったような判らない様な声を挙げる。

 結局のところ護衛ミッションの条件アリ版ということが判れば良いので、ミツオの方も特に注釈は付け加えない。

 

「とにかく私達向きのミッションやってる公式大会を見付けて、大規模フォース戦をやってみましょ!」

「「おー!」」

 こうして一同の目標は定まり、それに向けて強化の精度を上げて行くことに成った。

 

●試合に向けて邁進せよ

 公式大会に向けて技術の交流が始まった。

 とはいえ最初からスムーズに行った訳でもなく、意識の問題やコミュニケーションの問題が立ち塞がる。

 

「タケルさん、明鏡止水ってどうやるんですか? 問題無ければ……」

「そんなモノは無い」

 スーパーモードを試してみたジンが、おそるおそる尋ねて見た。

 だが提供元である番長姿の男……カワカミ・タケルはそっけない。

 

「問題があるなら最初から無理だと言えばいいじゃないですか。でも見せてもらった試合では、明鏡止水を……」

「無いと言ったら無い」

「大将っ! そんな言い方じゃ伝わらないでしょ! ちゃんとただのコツなんだって説明しなきゃ」

 相方のアキラがカチンと来て抗議するのだが、タケルは頑として意見を変えない。

 流石に見かねたのか元チームメイトの少女……リンダ・ヤマトが割って入る。

 

「コツ……ですか?」

「システムじゃなくて?」

「そうなんだよー。あれって単に、まだ冷静うちにスーパーモードを発動してるだけなのよね。詳しいことは御姉さまに聞いてちょ」

 二人の少年達にリンダは気楽に教えてくれた。

 そして詳細に関してはお姉様こと、ヘイズ・ヘイゼルに丸投げしておく。

 

「戦いのクライマックスになると、つい頭に血が登りますわよね。その前に使用するんですの」

「言われてみればGガンダムの劇中でも、スーパーモードそのものは明鏡止水よりも先ですよね」

 スーパーモードは本体エネルギーでひたすらビームを撃ちながら、そのビームを出力強化やスラスターや回す事である。

 本来は攻撃手段であるビーム砲撃をバフ……能力強化に使えるのだが、欠点としてエネルギー消費が増大する。

 

 当然ながら最初から使用すればエネルギー不足に成って戦闘でき無くなるし、追い込まれてから使えばダメージの方が大きくなってしまう。

 要するに程良いタイミングを見据えて、まだ冷静な間に起動するということらしい。

 

「参考に成りました、ありがとうございます」

「いいのよ、今は同じフォースだし技術共有すると決めた範囲の事ですしね」

 アキラはまだ不本意らしく、ヘイゼルにだけ礼を言ってタケルの方を無視して居る。

 まだまだ子供だなと思う反面、彼らの年齢で今の強さに辿りつく辺り、ガンプラに年齢は関係ないのだと認識させられる。

 

「それで……あの、閣下の方は阿頼耶識で何かありました?」

「マクギリスじゃないんだ、閣下は止せ。……そうだな疑似阿頼耶識に目途が立ったのと、阿頼耶識ユーザーに運営から制限変更のパッチをあてる可能性が届いたくらいか」

 話題を変えるべくジンがクリスに声を掛ける。

 本来は目を見張るべき状況の筈だが、当のクリスはそれほど嬉しそうでも無い。

 

「お顔が優れませんが、何か不都合でも?」

「まあな。疑似阿頼耶識は複座型からのバリエーションだし、パッチの方は純粋な解除じゃなくて、コスト削減になりそうだという話だ」

「なるほど……自由に使おうと思ったら、機能が制限されてしまう訳ですね」

 流石に阿頼耶識は強力なだけにバリエーションが増えたり、パッチが当たるとしても良いモノとは限らない。

 

 まず疑似阿頼耶識の方だが、現段階のプログラム容量は限られているので、複座式と併用すると他に何もできなくなる。

 感覚的には『阿頼耶識』 + 『Alice』で疑似阿頼耶識になると解釈されている様なのだ。

 

「せめて半分ずつにしてくれればビームを併用してスーパーモードで遊べそうなんだが、せいぜい3:7だろうな」

「モビルアーマーを使ってるフォースは少ないですからね。先にそっちの修正が無いといけませんか」

 次にコスト削減案に関しては、現状と同じ能力を使うとやはり他に何もできなくなる。

 何か併用したいならば今と同じ様にビーム制限やモビルアーマーを友軍に入れられないといった不利益を甘受するしかない。

 とはいえクリスが言うようなスーパーモードとの併用など認めてしまえば、圧倒的な性能に成り過ぎるので仕方の無い事なのだろう。

 

「あれ? でもスーパーモードとトランザムは併用できますよね? あっちは良いんですか?」

「トランザムは装備由来なのもあるが……。どっちもエネルギー消費系だからな」

 正確にはトランザムは行動増加系で、元もと行動一回ごとにエネルギー消費するから、移動を含めて全ての行動が増えた分だけエネルギー消費が増えるだけだ。

 通常時ならばそれほど困ることではないが、スーパーモードと組み合わせることで膨大な消耗になってしまう。

 感覚的には『トランザム』 + 『スーパーモード』でリミッターの無いトランザムになると解釈されていると言っても良いだろう。ツインドライブでも同じことができるので、スーパーモードにこだわる必要も無い。

 

「併用してから一分で片付けられるならば別なんだけど……。トランザムは見た目で判り易いしね」

「流石に一分じゃ倒すのは無理ですね」

「必殺技は警戒されて当たり前だからな。太陽炉を設置していれば当然トランザムを疑うさ」

 試してみたらしいミツオが付け加えると、質問したジンも苦笑する。

 クリスが言う様に強力な攻撃は相手も警戒するし、防御させずにクリーンヒットするのは相当難しい作業である。

 

「まあゲームだし割り切って併用しても良いけど……システムを並べるとこんな感じだよ」

「スーパーモードは強化(バフ)、阿頼耶識は割り込み(インタラプト)、トランザムは行動増加、ZERO-SYSTEMは演算強化と言う訳ですのね」

 これらにスキル増加系である教育型コンピューター(AliceやEXAMなど含む)と、脳波制御(実際には視点ポインタ)であるサイコミュを加えた物が機体制御OSである。

 

 それぞれに長所と短所を持ち載せられても精々二つ。

 長所よりも短所が重なり易い事を考えれば迂闊に併用するのは問題があるし、プログラム系は有用なモノが多いのでできればそちらを載せたいのもある。

 

「硬直すると判ってる戦場をこじ開ける時くらいかな? 同じ実力のチームだと偶には博打に出ないといけない時もあるだろうし」

「それは余ほどの時だな。さっきも言ったが防御に徹すれば何とかなることは多いんだ」

 延々と勝負の付かない千日手を崩せる可能性はあるだろう。

 誰かが犠牲に成って一機だけ倒せば良いという状況なら意味はある。

 だがフラッグ機ならば小隊を隠せば良いし、NPCのようにボスを倒して終わりとはいかないのだ。

 

「まあその辺も含めて作戦次第だよ。ユニコーン・フルアームズが完成したらフォーメーションを考えてみようか」

「へっへー。もうちょっとなんだけど、すっごく使い易くなったんだよー」

「その分だけ私の苦労が増えているのですけれどね」

 こうして一同はそれぞれの強化を行い、試合に備えるのであった。




 と言う訳で今回はチームの結成と、ガンプラの強化回になります。
前回の三人組と、バーザム・マークⅡの二人が加わって八人に臨時で増加。
最大十人の大規模フォース戦に挑む為に調整中な感じ。

●追加登場人物とプラモデル
カザマ・ジンと、バーザム・ディフェンダー『風神』
 巻き毛で前髪をクルっとやって、片目を隠して居る。仕草は幼くまだまだ少年と言う感じ。
厨二病のケがあり、マクギリスとかトレーズ様みたいな行動に憧れて居る。
連邦カラーバーザムを使っていたがGディフェンサーと、スーパーモードを取り入れてバーザム・ディフェンダー『風神』を作りあげる。
この機体はプラネイト・ディフェンダーを数多く設置し、防御特化で構築されている。またリフレクター・ビットが追加され、アレクサンドラのV2プリマと共用可能になっている。

イナオ・アキラと、スーパー・ブラック『雷神』
 ロンゲ少年で仕草が妙に芝居掛って居る。やはりまだまだ子供であり厨二病のケがある。
勇敢な行動や恰好良い技に興味があり、行動の成否よりも重視する傾向にある。
ティターンズ仕様のマークⅡを使用して居たが黒いGディフェンサーと、スーパーモードを取り入れて、スーパーブラック『雷神』を作りあげる。
この機体は火器の出力強化に特化しており砲撃戦を得意とする。またV2バスターのメガ・ビームライフルが追加され、アレクサンドラのV2プリマと共用可能になっている。

ユニコーン・フルアームズとRGアーマー(合体可能版)
 フルアーマー・ユニコーンのNT-Dをビーム砲とモビルトレースシステムに変更し、スーパーモードを可能にした機体。
前回に副座式コックピットを手に入れたので合体可能な様に改造を施し、同時に火器管制も変更して居る。
これによってフルアーマー・ユニコーンが抱えて居た武装を扱い難いという欠点を克服し、同時に移動力も大幅に強化されている。
もちろん二人で一機を扱うことによる欠点は抱えたままだが、性能面では相当な強化が図られた摸用。


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フォ-ミュラー:前編

●レースに向けて

 方針を決めた一同は、レース系の公式試合に向けて特訓を重ねて居た。

 試合そのものは割りとあるのだが、公式のランキングポイントが入手でき、かつメンバーに向いたモノは中々無い。

 その為に空いた時間を使って練習して居た。

 

 

「申し訳ないけど、二人の『風神』『雷神』はバラして使うかもしれない。そん時はゴメンね」

「構いませんよ。ボクらはもともとそんな感じでしたしね。火力モードに移行する時に、誰かが守ってくれるなら問題無いです」

「同じくです。誰かを守って戦えるなら、どこでも同じですね」

 アキラとジンの機体はヴァイエイトとメルクリウスをイメージして居た。

 二機一組と言えなくもないが、得意傾向から自然とそういう使い道になっただけでそれほどこだわりはないようだ。

 

 対してこだわりがあるというか、二機一組の編成が前提に成って居るのはユニコーン・フルアームズとRGアーマーだった。

 元からその傾向はあったが、新たに合体システムを導入したので話して考えるのは論外である。

 

「そっちは最後の手段で分離するくらいか……。マルチロックは上手く行ってる?」

『なんとか導入出来ましたわ。追加武装を変えると修正が必要ですけれど、フルアーマーの装備でしたら問題はありません』

 ミツオが渡したプログラムの進捗状況を尋ねると、テスト中のヘイゼルは問題無いと返してきた。

 そして言葉ばかりではなく、フォース・ネストから射出される飛行目標を次々と撃ち落として居る。

 

「お、いい感じ。こうなったらNT-Dを誰かの機体に載せたいなぁ。確かガトリングってサイコミュだったよね」

『搭載量としては余裕ありますけれど……。流石に今から隠し条件を探すのは難しいのではありませんか?』

『ボクのユニコーンも今更サイコフレームには戻せないしね~』

 リンダのフルアームズはスーパーモードを前提としてサイフレームの位置にビーム砲を設置してしまった為、NT-Dは使うことができない。

 改造したがゆえに面白い使い方ができる以上、改造で除去したモノに頼ることはできないということだ。

 

「偶然ドロップしたらで良いんじゃない? 載せるとしたら私のV2に載せてるサイコミュからバージョンップするくらいだけど……調整面倒くさいしね」

「その場合は僕のバーザムをユニコーンのイメージにした方が面白いかな? でもスーパーモードも惜しいんですよね」

「プラネイト・ディフェンダーにビームで作ったシールドを追加すると鉄壁だものね。そうなるとむしろNT-Dの方が蛇足に成る」

 そんなこんなで色々な技術を導入し、ソレを前提としたフォーメーション訓練を重ねて居た。

 

 基本系は中央にEWS装備のV2とヘビーアームズ。前衛には盾役のバーザム、火力仕様のマークⅡ、突入役のバエル。

 その中間を担う重装甲のヘルムヴィーゲは前衛でもあるが、囲まれる場合は後列を担う。これにユニコーンと合体したRGアーマーが足りない所に急行する予定に成っている。

 

「あとはミッション次第だね。母艦やNPCを守る巡礼ミッションなら楽なんだけど」

 レース系のミッションはタイプ毎に微妙な傾向の差がある。

 母艦を守るタイプは足の遅い機体を載せられるし、NPC機を守るタイプは機体数が減るから8機しかない一同にはむしろ助かる制限だ。それに格上相手でもNPCを落とせば勝てるので一発逆転がし易い。

 

『そこまで都合良くいくかな~? サーキットにならなきゃ良い。くらいに考えた方が良いと思うよー』

 それに対してやり易いがゆえに難しいのが、サーキットと呼ばれる同じコースを周回するモノだ。

 同じコースを回り続けるがゆえに動き易いのだが、熟練度や機体の完成度がモノを言うのでアライアンスを汲んだばかりの一同には荷が重い。

 とはいえレース物で公式試合を兼ねて居るものは人気があるので、なかなか狙ったミッションに入り難いという欠点があった。

 

 

 結果としてはリンダが言う様に中間的なモノが巡って来た。

 運良く手配できたミッションは、座標指定で巡るタイプだったのだ。

 

「座標指定はどんなタイプなんだ?」

「ユニコーンのストーリーを思い出してよ。あれと同じく指定座標に到着すると、次の指定ポイントが送られてくるんだ。派生形のミッションがある場合はその条件もね」

 クリスの質問にミツオが資料を出しながら答える。

 一定区画にフラッグ機が到着すると詳細な情報が転送され、遠方から巡する場合は距離が遠くなるごとにもらえるデータが怪しくなって行く。

 

 派生形のミッションがある場合は近くにある指定対象を狙撃せよとかアイテムを持って行け、あるいはNPC機との戦闘が待って居たりする。

 それらをこなしながら、どのチームが早いかを競う競技なのだと言う。

 もちろん二チームだけで争う場合は相手チームを倒す方が簡単なので、様々な戦略が成り立つだろう。

 

「場所の特定にはフラッグ機が必要だが、詳細でないなら必ずしも所定の場所に近づくのがベストじゃないってのがミソだな」

「破壊されることを考えれば、途中までは遠隔地で済ませるのもアリだになるからね。まあポイント稼ぐなら全部正確に回った方が良いけど」

 受信するだけならば正確な場所に近づく必要はない。

 場所によっては狙われ易くなるし、次のポイントを目指す場合は近づかない方が早くなるポイントも存在する(重力の影響が強い場所など)。

 

 ただし正確であればあるほど次の場所が詳細に判るし、もらえるポイントも多くなる。

 ランキングがポイントで上がる上限まで上がったチームは別だが、それはそれで戦績で取得出来るタイトル称号に関わってくるので無駄にするチームは少ないとのことだ。

 

「最初は慣れてない事もあるし、全機で初期ポイントを通過。次からは護衛と足止めに分かれてってのいいんじゃないかな」

「俺も依存は無い」

「オレもだ。フラッグ機はどうする?」

 ミツオの提案にこれまで黙って居たタケルが即答し、クリスも同様に頷いた。

 タケルとクリスはフォースの意志決定としては中心的な位置に居るが、提案その物はミツオやヘイゼルに任せて居ることが多い(脳筋と居てしまえばそれまでだが)。

 

「奇をてらわずに先輩のV2で良いと思うよ。フォーメーションの中心だし、イザとなれば単騎での移動力もあるしね。後は……」

 ミツオの案は基本に忠実な物で、全体の管理役であり基本的に狙われ難い位置に居るアレクサンドラのV2がフラッグ機を担当する。

 戦闘するにしても受信までの防御に徹するとしても、全員の判断がスムーズに切り換えられるだろう。

 

「EⅢを装備してるメンツは所定場所に着いた時、受信データに気を付けてくれる? 誤差修正できるなら近づかずに三角測量みたいな感じで行けるかも」

「了解です」

「判った。どこまでやれるか判らんが、やってみよう」

 今回、EⅢシステムをミツオのヘビーアームズには付けずに、ジンのバーザムに設置して居た。

 リフレクタービットを共用して居るからだが、前衛の二人組がフラッグ機の代わりに慣れるのならば、戦略の幅は大きくなる。

 他のチームが狙ってくるかは別にしても、後の移動に差し支える……砂漠地帯や大気圏突入地点での戦闘などを避けることもできるからだ。

 

 こうして一同は色々なケースを想定して作戦を詰めつつ、ミッション当日を迎える。

 

 大会当日になれば対戦相手のデータも見ることが可能になる。

 今回参加するのは五つのフォースで、既にもらっているMAPやレギュレーション(詳しいルール)と身比べあいながら、どのフォースが強敵なのかを推し量る。

 

『母艦ミッションの方が良いかとか言ってたけど、あっちじゃなくて正解だったねー』

『うん、アレは母艦に載せるとヤバかった。正面から対戦するとは限らないけど、こっちで良かったかな』

 リンダとミツオは肩をすくめあって共に苦笑を浮かべた。

 何しろ参加フォースの中に、母艦があったら強くなるフォースがあったのだ。

 

 名前は『コアファイターズ』で、その構成は色違いのガンダム・ガンキャノン・ガンタンクが二機ずつ。

 それを補佐するGアーマーが四機とホワイトベース隊を意識した構成で、母艦があればGアーマーの代わりに砲撃機体が増えて居たかもしれない。

 その場合は近寄るだけでも苦労しただろうし、強引に割り込まれたら一斉射撃を喰らいかねない。

 

『でもガンタンクの足をGアーマーにしちゃうなんて凄いね』

『昔のホビー雑誌で見たことあるよ。ワイバーンだったかグリフォンだったか、まあ空飛ぶモンスターの名前が付いてたと思う』

 良く考えればコアブロック・システムの支援機であるならば、ガンタンクやガンキャノンを支援して悪い道理は無い。

 アムロがエースだったからガンダムを優先しただけの話で、モビルアーマーをイメージするならばむしろガンタンクの方がらしいと言える。

 

『ねえねえ、あっちのフォースって前に戦った事無い?』

『そういえばゲルググとリックドムの組み合わせのフォースがあったな』

 アレクサンドラが望遠レンズで示したのは、先ほどとは逆にジオン系で固めたフォースの『サーキット・タケダ』だ。

 ゲルググ・ドム・ザクがそれぞれ三機ずつ、バリエーションが異なり赤い機体も一機ずつ存在する。

 そして最後の一機はサーベルを持ち、足をリックドムのパーツに換装したパーフェクト・ジオングらしき機体だ。

 

『なんで三機ずつなんだろ。趣味ならザク主体だし、強さならゲルググで良いのに』

『確かあそこはゲルググ系のチームやドム系のチームとかがあって、レースごとに組み合わせてるらしいよ。普段は一軍がサーキットの方でコースレコードに挑んでるみたい』

『じゃあこないだ戦ったのは二軍ってわけ? 拍子抜けしたような、アレ以上と思えば怖い様な』

 以前に戦った時は隙の無い突撃体制こそ見事だったが、その後の立ち回りは微妙だった。

 プレイング・ミスもあってこちらが勝利を収めたが、今回は一軍相手となれば苦戦は免れまい。

 ましてリーダーらしき人物がパーフェクト・ジオングを操るとあって、熟練度や指揮系統を考えれば今から怖いほどだ。

 

『どのみち戦う相手だ。恐れて居ても仕方無いし、複数のフォースが参加してるからな』

『強敵は狙われる可能性が高いものですし、そもそもレースですからね。勝負は時の運でしょう』

 皆の懸念を抑える様にクリスが促し、それを補う様にヘイゼルが言葉を添えた。

 いずれにせよスタートは間近でそれほど余裕がある訳でも無い。それと同時に誰が相手であっても事態が今更変わることなどないのだ。

 

 

 一同はコースを精査して最初のポイントである暗礁区域への道を再確認。

 各フォースの相対位置を眺めて警戒して居ると、信号灯が彼方に撃ちあがった。

 最初に小さく箒星のように光が棚引き、燦然と煌めく光が大輪の花を咲かせる。

 

『スタートだ。まずはジンとタケルが先行して』

『判った』

『はい!』

 一同に先駆けて、ヘルムヴィーゲ・タウルスとバーザム・ディフェンダー『風神』が先行する。

 防御力の高い二機に続く形で、他のメンバーもシールドを構えて飛び出した。

 

『スタートと同時に仕掛けたフォースがあったけど、先輩、様子はどう?』

『んー。見逃されたって感じかな? ちょっち悔しい気もするけど、ラッキーって感じ』

 先ほど挙げていた『コアファイターズ』と『サーキット・タケダ』は上位のフォースなのか、先制攻撃を受けて居た。

 だがコアファイターズはGアーマーに騎乗して全体の速度を上げることで距離を離し、サーキット・タケダは先を読んでいたかのような位置取りで上手く捌いている。

 

 結果として一同は放置された形で、見逃してもらえたと言えなくもない。

 

『まあウチは結成したりアライアンスを組んだばかりだしね。注目されてなくても仕方無いさ』

『安心ばかりはしていられんぞ。距離を開けられたら、先にこっちを狙いかねん』

『先を急ぐ』

 そこでまずはヘルムヴィーゲが先行し、バーザムは他のチームとの間を保ち続ける。

 このフォーメーションが崩れたのは、暗礁区域に入ってからだ。

 

 移動力に優れるコアファイターズが苦労して隕石を避けて居るのを好機と見たのか、それとも自分達の力を見せつけようとしたのか。

 彼らがペースを上げて一気に進軍を始めてからだ。

 

『サーキット・フォーメーション!』

『Go!』

 跳ねるようにして隕石群を避け、自分達の腕を見せつけた後。

 一気に集合して回転運動に入った。射撃しながらの回転移動で隕石群の内、小さなものを次々に破壊。

 可能な限り邪魔を排除して直進し始めたのだ。

 

『あー。あのフォーメーションってこのためだったんだ。あれだけ正確に射撃できるなら『流鏑馬』くらい簡単だろうし』

 流鏑馬というのは移動射撃で標的を撃ち抜く事を要求するミニゲームで、座標通過時に要求されることもあるらしい。

 サーキット・タケダは優れた連携技術と射撃によって、ショートカットする為に訓練しているようだ。

 

『僕らも同じコースを取りますか?』

『駄目駄目。流石に向こうが許さないでしょ。ね、先輩?』

『当たり。機雷が流れて来てる……。ザク・タイプの中にマインレイヤーが居たんだと思う』

 V2プリマのEWSが望遠モードで機雷を把握し、詳細をZERO-SYSTEMが次々に暴いて行く。

 どうやら他のチームの中には気が付かない連中も居るらしく、何機かが爆発して少なくないダメージを受けて居た。

 

『コアファイターズが引っ掛かってくれたら楽なんだけど……。無理かー』

『何度も対戦してるみたいだし、引っ掛らないでしょ。常連同士なら手の内は読めてるだろうしね』

『おしゃべりはそこまでだ。そろそろ初期座標に辿りつくぞ』

 リンダとミツオが叩いている軽口を差し止めながら、クリスは記録画像の準備を始めた。

 当初の要望通りEⅢシステムでデータ共有を行って、受信状況が修正できるかを試す為だ。

 

『他チームとの距離も十分に離れましたので、僕も用意します』

『聞いての通りよ皆、そんじゃ気合い入れて行くわよ!』

『『了解!!』』

 一同は意識を集中させてデータを計測する。

 ここで上手くデータ取りを行えば、次からフラッグ機が危険な区画に突入しなくても良くなるからだ。

 もちろん割り出したデータ同士の照合と修正に時間が掛るだろうが、フラッグ機を潰されて敗退されるよりは良い。それに修正作業だけならば移動中にだって可能だ。

 

『来た! この姿はソロモン……じゃなくて、撃沈されてる駆逐艦の方ね!』

『なるほど。詳細なデータを得られなければ、想定する区域をグルグル回る羽目に成っていたかもしれんな』

 最初に全体MAPのどこに場所に当たるか、次に座標ポイント、最後に艦影が映し出される。

 どうやら激戦が行われた区画らしく、数隻の残骸が同じ座標に浮いているようだ。

 

『じゃあソッコで移動しちゃいましょうか』

『ちょっと待って。この艦影はムサイ改で……こいつはガトーのペール・ギュントだ』

『見間違いじゃないのか?』

 移動を始める中でミツオが注意を促した。

 そして画像を切り替えながら艦橋部分を拡大していく。

 

『間違いないよ、GP03に艦橋を潰されたやつだ。ホラ、こんなに大きなビームサーベルなんか他にあるもんか!』

『……となると監視衛星が想定されますわね。ミサイルとバルカン……でしたかしら』

『となると時間を掛け過ぎると援軍も出て来そうだよね~。他のフォースだけじゃなくてジムの集団とか面倒だよ~』

 ピックアップされた画像を可能な限り拡大すると、損傷部分はバズーカやミサイルでは付く筈のない傷痕だった。

 他の艦でも良い事を考えれば、この艦の情報はあえて入れられたモノだろう。

 

『ということは監視衛星を無視する為にデブリ帯を通らないか、通った上で速攻を掛けるしかないね』

『オレ達だけで判断する訳にもいかんだろう。先行して居るチームは当然の様にショートカットするはずだ』

 正確には移動力に優れるコアファイターズは迂回して、機動力重視のサーキット・タケダが抜けて行く筈だ。

 他のフォースの中にもモビルアーマーや可変型は居るが、全体的には一同と同じオールラウンド・タイプなので似たような移動経路に成る。

 

『どうする? 時間を掛け過ぎると置いて行かれるし、艦の情報に気が付いたら何があるか判らんぞ』

『あれだけ特徴的なら気が付かない筈は無いよなぁ。御あつらえ向きに大型のサーベルまで持ってるし……』

『あー。サーベルでガツンとやれば艦橋を誤魔化せる艦もあるかもねー』

 先頭のバエルから見たサーキット・タケダの位置は、既に相当な距離が離されている。

 このままデブリ帯に突入すれば更に距離を付けられるだろう。やはり相手は直進してこちらは蛇行せねばならないのが痛い。

 

『よし、さっきの逆で行こう。機雷に注意しながら突破するんだ』

『他のチームは警戒して居るし二番手には付けられるか。工作される前にペール・ギュントを特定したい所だな』

 幾つかのコース取り考えて見るが、迂回コースでは追いつけない。

 そして蛇行しながらデブリを抜けて行くと、どうしても相手に工作される余地を残してしまう。

 だが機雷が飛んでくる事を前提に考えれば、相手がデブリと監視衛星を処分した後に追走するるのはそう悪い話ではない。

 

『そういうことなら任っかせて! どんな小さな御邪魔虫だって見付けてあげるんだから!』

『ならボクも協力するよ。お姉さま、合体しましょう! どの道ここからは戦闘が多くなりそうですしねー』

『ええ、よくってよ。時々コントロールを交代しながら、集中力を維持して監視に当たりましょう』

 EⅢシステムのデータリンクで集めたデータをZERO-SYSTEMで処理し、アレクサンドラがメイン、リンダとヘイゼルが交代で監視することになった。

 搭乗していたユニコーンが変形プロセスに入り、RGアーマーと合体。プログラムに割り込ませた副座式シートのデータに移譲し直しておく。

 

 こうして一同は第二チェックポイント、ペール・ギュントをレンズに収めたのである。




 と言う訳で前半、レース的な説明部分になります。
後半は真面目に戦闘を交えつつ、先を急ぐ形に成ります。

●状況
・五つのフォースでレースを行う
・指定座標に到着すると次の場所の詳細な情報が判り、離れていると少し怪しくなってくる。
・他のフォースを攻撃してもOk
・監視衛星やNPCの巡回部隊など、邪魔者は存在する

 と言う感じです。
敵フォースに関しては
・コアファイターズ。
 ホワイトベース隊を中心に、シャア専用ガンダムや追加のGアーマー数機。
コアブロックシステムでの戦力調整を行ったり、移動力を向上させるフォース。

・サーキット・タケダ
 レース系に強い連携・技術力に優れたチーム。ゲルググ・ドム・ザクが三機ずつ、パーフェクトジオング『サッキーカスタム』一機という構成。
エレクトロニクスの天才が率いる開発チームで、メンバーもそれぞれ何らかの技術を持って居る物が多い。
赤備えと呼ばれる精鋭が存在し、その内の一人一人が二軍チームを構成して様々な特訓に励んで居るとか。
元ネタはプラモ狂史郎に登場する、サッキー・タケダとサッキー5。

・ジュピトリアン
 シロッコ隊をイメージしたハーレム系フォースで(ネカマが居ないとは限らない)、可変型MSが多い。
メッサーラ・森のクマサーン・ハンブラビx3・ガブスレイx2・ギャプランカスタムx2という構成。
レース系の熟練度は中間レベルで主人公達よりは上手い。

・トラトラトラ
 全ての機体がトランザムを可能な機体とカスタム機(改造で太陽炉を付けた機体)で構成された、攻撃重視のフォース。
レース系の熟練度は主人公達と同レベルだが、フォースを結成してからはそれなりなので連携度などは高い。

 と言う感じになります。
まあ上位二つ以外は賑やかしになりますので、どこまで出てくるかはシチュエーション次第になります。


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フォーミュラー:中編

●シークレットゲーム

 残骸や隕石の漂う暗礁宙域の中で、破壊されたムサイを目指す。

 一同は機雷を効率的に発見しながら、先行するフォースを追って居た。

 だが、いまだに追いつけないでいた。

 

『ダミ-バルーンにワイヤー? ちょっと! あの人たちこんな物まで作れるわけ!?』

『私たちと違ってレース物のフォースですわ。強さよりも、この手のギミックを重視しているものかと』

 データ管制を務めているアレクサンドラとヘイゼルは、次々に待ち受ける邪魔物と戦っていた。

 ZERO-SYSTEMでの推測は積みあげたデータが全てなので、ダミーバルーンやワイヤーを入力して居ないと、本物と変わらず表示してしまうし気が付かない事もある。

 全部を始末はして居られないので、自分達に当たるコースの物だけを指定して仲間達に通達して居る。

 

『……こちら前衛のジンです。ボクらの目の前にペール・ギュントが見えます』

『同じくアキラ。パーフェクト・ジオングはサーベルで他のムサイ級に次々とサーベルで工作している。でもアレのレベルじゃあ意味が……』

『見える見える。今そっちに向かって……』

 風神と雷神が辿りついた段階で、本隊に向けて通信が入る。

 リフレクタービットに付けて居るEⅢ・システムにより、詳細な画像が転送される。

 フラッグ機であるV2もその導きに従って急行し、次の指定ポイントのダウンロードを開始したのだが……

 

 突如として通信が途絶し、送られてくる画像もかき消える。

 サーベルで切りつけられたムサイ艦同士の区別もつかなくなり、遠距離だと艦橋が吹っ飛んでいるペール・ギュントとも似て見る。

 ダウンロードされるデータは流石に止まりはしないが、かなり重くなり、そして解析される図も荒い。

 

『嘘でしょ……。ミノフスキー粒子の重戦闘散布ぅ!? モビルスーツでそんな事までやれるなんて……』

『……』

 アレクサンドラは思わず絶叫するが、近くに居るユニコーンからの反応が無い。

 明らかに指揮官アンテナによる短距離通信すら妨害されていた。

 

 この事態を打開すべくモビルスーツ同士が接触、お肌の触れ合い回線を開くことにした。

 

『どうする? このまま散布レベルが下がるのを待つ?』

『止めた方が良いと思いますわ。先行フォースに追いつけませんし、外枠を回って次のフォースが来てしまいますもの』

『ボクもさんせー。格納してGア-マーになるとスッゴイ早いんだからっ。追い抜かれたら、もう追いつけないよ』

 合体して居るユニコーンから経験者達の貴重な声が聞けた。

 ヘイゼルのRGアーマーは、以前のバージョンではGアーマーとしてユニコーンを格納して居たのだ。

 次に来るであろうコアファイターズはGアーマーを基準にしており、何も無い区画では相当な早さを誇る(逆に言えば今のような暗礁区域では全力を出せないが)。

 

『そうするしかないわね。ハンドサイン決めといて良かったわ。それにしても……次はどこなのかしら』

『えっとー。座標ポイントと……これはコロニーかな』

 アレクサンドラがV2の腕を動かすと、周囲に展開して居た仲間達は指示された方向に移動し始めた。そして通信状況が指揮官アンテナがある者同士ならではあるが、元に戻ったことで相談が再開できる。今回入手したデータは二つしか無く、大まかな場所が判っただけでどの宙域まで移動すれば良いかくらいだ。

 

『うーん。ノーヒントだとつらいけど、さっきのムサイがペール・ギュントであってるなら、このコースって星の屑作戦の経路をたどるって事じゃないかな』

『ユニコーンで宇宙世紀の歴史を振り返ったみたいに? でもコロニー墜ちちゃったじゃない』

 ミツオの案には幾つかの穴があった。

 真の星の屑作戦に置いてコロニーは北米の穀倉地帯に落下して居る。場所は地上ではないので、あの時のモノではありえまい。

 更に先ほどのムサイもまたペール・ギュントであるとは限らないのだ。ミノフスキー粒子の濃度がかなり濃くなっていたので、詳細が判明しなかったのだ。

 

『そうとも言えませんわ。あの時のコロニーは二つあった筈。残ったコロニーは宇宙に漂っているだけの筈ですから、その後に本来の場所に設置したのでは?』

『あ、そっか。コップ二つで試してたよね。お姉さまあったまいー』

『最初に思い付いたのは、ぼくなんだけどね……』

 ともあれこれで目星は付いた。

 仮にミツオとヘイゼルの案が正しいのであれば、おのずと目指すべき場所が判明する。

『ということは、他のコロニー群と形式が違っているモノ。細かい場所を問うのであれば、新しく設置した太陽光パネルってとこかしらね?』

『そんなところじゃないかな? でも、この事も瞬時に推測してミノフスキー粒子をバラまいたってんなら、サーキット・タケダは恐るべきフォースだね』

『……ですわね。そして、この推測が正しいのであれば見えて来るモノがあります』

 アレクサンドラとミツオは、思わずヘイゼルのアイコンを見つめた。

 今の情報で判るのは、そおくらいだったと思うのだが。

 

『その次の場所と、次の次の場所ですわ。おそらくはラビアンローズと地球への降下ポイントだと思いますわ』

『ということはゴールは地球……ううん、違うわね。ソーラーシステムの方!』

 不思議なことに推測が外れているとは思えなかった。

 そして待ち受けるのは難関であろう……。

 

●時には博打も

 追いつ追われつ、一同はコロニー群までやって来た。

 遠目に見えるのは、立ち去って行くパーフェクト・ジオングと護衛たちだ。

 

『流石にもうクリアしてるのか。ということは、ミノフスキー対策を考えた方が良いな』

『あれ? そうなんだけど……。十機居ないわよ?』

 望遠モードで拡大してみるが、言われてみれば粒子を散布してる機体を合わせても六機しか居ない。

 

『どうせ罠だろう。ならば罠ごと噛みつぶせばいい』

『大将は豪気ねえ。こっちは何処に潜んでるのかヒヤヒヤしてるんだけど』

『……足止めならば良いのですけれどね』

 タケルの言葉でヘルムヴィーゲが突撃体勢を整えるのだが、ユニコーンの方で冷やかしと懸念が入った。

『お姉さま、それってどういう事?』

『時間稼ぎならば狙撃役と突撃役だけで事が足ります。むしろ厄介なのは、次のラビアンローズが補給ポイントだった場合です』

『でも補給ポイントなら中立地帯よね? 流石にハッキングなんて出来ないと思うんだけど』

 一同の視線が再びヘイゼルの元に集まる。

 次がラビアンローズが補給ポイントであるのは想像に難くない。しかしながら公式がハッキングを可能な装備を隠しデータにして居るとは思えないのだ。

 で、あればどんな問題があると言うのか。

 

『マインレイヤーやシュトゥッツアーを装備した機体が先行、補給ポイントに出入りを繰り返すことで大規模な罠を設置。我々の補給を阻む事です』

『あー! そこまでされたらいっそ補給しないか、それとも時間を掛けて排除してから仕方無く補給って思うよなあ』

 比例して時間は掛るだろうが、先行して補給する事でその問題は排除できる。

 ラビアンローズのアームにワイヤートラップを仕掛け、あるいは機雷を目立たない場所に隠しておけばいい。それだけで補給に向かう無防備な機体がダメージを追うであろうし、極論を言えば無数の機雷で着艦出来なくしても良いのだ(そこまで高速で補給できるとも思えないが)。

 

 ここで一同は長考に陥り掛ける。

 コロニーに突入してしまえばミノフスキー粒子で通信できない可能性は高いし、今も現在進行形で突き離されつつあるのだ。

 

『くそー悩ましい~。こうしてる間にも時間が過ぎてくのに……』

『だから言ったろう。罠など噛みつぶしてしまえばいい。解決策が無い以上は考えるだけ無駄だ』

『だけど大将、それだと狙撃を警戒しながら探さなくちゃいけないんだよ?』

 いっそのことミノフスキー粒子が晴れてから突入するか?

 だがそれとて、散布できる機体が居残って居る場合は再び邪魔をされるだけだ。

 かといって考えなしに突入しても、邪魔されながら時間を掛けてコロニーを探す事に成るだけである。

 

 だがそこで、一つの博打を提案した者が居る。

 

『提案がある。いっそのことフラッグ機が絞られても良い。V2とバエル……それと風神だけ突入して、残りはこのままショートカットしてラビアンローズを目指してくれ』

『それなら罠を設置するのを防ぐくらいは出来そうだけど……大丈夫なの?』

『フラッグ機を守って見せます! ……でも、五機で大丈夫でしょうか? 相手は本隊も合わせて八機は居ると思いますけど』

 クリスが提案したのはEⅢ・システムを装備し、かつ足も早めの機体主体で捜索するということだ。

 足の速い機体だけならば候補地を探すのも早くなるし、危険そうな場所は防御に優れた風神が守ると言う作戦である。

 

『邪魔の邪魔に徹して時間を潰して居ればいいさ、こっちもその内に追いつく。それに俺達がその作戦を取れば、同じことを他のフォースもするかもしれんしな』

『確かにその方法ですと、実際に我々しか居なくても相手はそのことを警戒する必要が出て来ます。防御に徹して下がり続ければ八対五でも戦い抜けますしね』

 先行する五機は火力に優れたヘビーアームズやスーパーブラック、そして合体しているユニコーンが居る(合体中は四機なのだが)。

 ヘルムヴィーゲも今回は騎兵装備としてキマリスのランスと盾を用意して居るので、イザとなればダインスレイヴで射撃する事も可能だ。

 遠距離から牽制しつつ、引き寄せる様に下がれば相手も無駄に突入して来ない可能性は高い。

 

『その考えに異存は無い』

『仕方無いわね。その案でいきましょ。……ただし、EⅢでの索敵は最大限しながらってことで』

『『了解!』』

 結局、他に案が無い事もあって作戦は決まった。

 一同は進路を二手に分けV他二機が残留、ラビアンローズがあるであろうポイントに向かう。

『リフレクターを展開しながら突入するわよ。どうせ相手にも見え難くなってるし、情報は多いほど良いもの』

『はいっ!』

 翼の様な形状をしたリフレクタービットが、弧を描いて展開される。

 二器ずつ二機の機体が使うことで、遠目には四機の影が増えた様に見えるだろう。もちろん近づけば視認できるが、重戦闘散布ではデータにナイものはアヤフヤにしか見えないのだ。

 

●ゲリラ戦闘

 そしてコロニー群へ突入後に暫くして、送られてくる画像が荒く、やがて途絶えて行く。

 だがリフレクターはそのまま周囲に展開し、イザという時の盾にしつつ機影を水増ししたままにしておく。

 

(大戦で壊れた場所と入れ替えの筈だからあの辺として、EⅢが最後に送ってきたのがこことそこ。これにフォースが取った進路も含めてっと……)

 アレクサンドラは望遠モードで取った概要図と、EⅢが最後に撮影していた地点を重ね合わせる。

 そして敵フォースの進路をその上に描くことで、それなりの場所を絞りだして居た。

(誤魔化す為に多めに移動してるだろうけど、そのくらいは仕方無いわね。気を付けて行きましょ)

 V2のハンドサインで二機はリフレクタービットを伴い、コロニー群の周囲を滑る様に抜けて行く。画像はさほど役にた立たないので、攻撃できそうな位置を警戒し、ポイント探しは受信機頼りである。

 

 そして……探索すべきルートを大まかにであれば判ると言うことは、敵に待ちかまえられているということでもある。順繰りに入れ替わる三機とリフレクターに、光の柱が襲い掛ったのだ!

 

『来たっ! リフレクターだと判らない距離よ!』

 敵の射撃はリフレクターに直撃するが、反射面を外側にして居るのでビームでは壊れない。

『追っちゃ駄目よ。白兵戦用がこっちを……って聞こえる訳は無いか。ならっ!』

 アレクサンドラは仲間達を留める意味もあって、即座に射撃された方向にビームスマートガンで応射する。仲間達の鼻先を掠めることで停止を促しだ。

 すると遠目にザクらしき姿が、他のコロニーの陰に移動したのが見えた。残念ながらビームで姿が見えることは無く、登録して居る汎用の画像でしか表示されない。

 

(ザクってことは隠れハイザックやザク・スナイパーをイメージしてるのかしらね? まあ確かにザクをそのまま採用なんてしないでしょうけど)

 判って居るのは近くならばリフレクターをモビルスーツでは無いと見抜ける筈で、相当な遠距離から射撃したということだ。

 おそらくは数が中途半端である為、状況を確認する為に撃ってきたのだろう。あるいは場所についてミスリードを行う為かもしれない。

(このまま捜索を続けましょう。あんまり時間は無いし、間違っていないならそのうち受信し始めるわ。戦闘はその時ってことよね)

 ハンドサインで移動と戦闘準備の合図を送る。

 初めてのサインが増えたことで、二機にもやがて本格的な戦闘が待って居ると窺いしれた。当然ながらその予想が外れる筈も無い。

 次なる敵が軽やかに襲撃して来たのである。

 

『閣下、アーカイブに感アリです! ……これはリゲルグ?』

 ジンは通信が通じないのも忘れて呟きながら、過去に戦った戦闘歴が画像が表示されたのに驚いた。何しろ彼は直接戦った事が無く、話しに聞いたくらいだったからだ。その機体は体を回転させながら突っ込んで来た。

『たった一機で! っ!? まさかビームコーティング? 以前の記録には無かったのに!』

 ビームライフルで牽制するが、ショルダーバインダーが弾いて行く。

 いや、それだけではなくキュベレイのスラスターの様に四枚の翼に分かれて機体の上面を覆うのだ。回転運動も合わせればこの体勢からビームで撃ち抜くのは難しいだろう。

 

『改造して来たか! しかもあの時よりも精度が高い!』

『お前らのせいでオレはプロジェクト・リーダーから降ろされたんだよ!』

 バエルとリゲルグは通信が通じないので、機体も言葉もすれ違いながら切り結ぶ。

 前回はドーベンウルフの様に腕部を切り離せるようにしていたが、今回は小さな補助腕にキュベレイ用のビームサーベルを持たせているだけだ。

 ビームガン兼用である為に移動時は牽制射撃、切り込んでからは多段攻撃で切りつけながら通り抜けた。

 

 お陰で本体を狙うのが難しく、ダメージと引き換えに補助腕を一本切り捨てただけである。

 とはいえ向こうも移動しながら四本の腕を活かすのは難しいようで、受けた攻撃はもっぱらビームガンでの乱射だ。

 

『だが、ここからが反撃だ!』

 バエルは上手く急ターンを掛けていた。

 片方の足と片方の肩、複数のスラスターを不規則に動かす事でねじる様に方向転換したのだ。

 それは機動に特化したプレイングを繰り返して居なければ為し得ない技であった。

 

 だが、それは敵の予想する範囲でもある。

 以前に戦った経験を、リゲルグのパイロットは活かして居たのだ。

 

『掛った!』

『いけません閣下!』

『何? ダインスレイフ!?』

 ジンの通信が届くことは無く、気が付けばダインスレイヴが光も無くバエルの肩を撃ち抜いていた。

 仕方無く追撃を諦めて、一端、風神の援護圏内に立ち戻る。

『ちっ。前回の独りよがりな動きに囚われ過ぎて居た』

『タケダさんにこっぴどく叱られたからな。お返しはさせてもらったぞ!』

 通信が届かなくても意味は通じることがある。

 自分では無くザクにやらせることで、連携作戦を実行して居たのだ。立ち去る後ろ姿に、思わずニヤリと笑う顔が見えた気がする。

 

『緒戦はこっちの負けね。ま、私が無事なんだからラビアンローズでの補給込みで取り返しがつく範囲よ』

『次は必ず勝つ!』

『閣下……』

 アレクサンドラはハンドサインで移動を指示し、追撃するなとあくまで探索を優先する。

 そしてもう一つ、風神に対して指示を出した。

『アレをつかってちょうだい。ちょっと早いけど、見られてもフォース一つならもんだいないわ』

『AEGSを通常運用ですか? 判りました』

 風神は自分のリフレクターを近くまで戻すと、移動時に死角に成る場所に固定した。

 そしてGディフェンサーのミサイル代わりに格納して居るモノを射出する。

 

『……行け、プラネイドディフェンサー! AEGSの盾を作りあげるんだ!』

 リフレクターを中心としてプラネイドディフェンサーで作った防御幕が、幾枚も展開される。

 それは女性の顔を中心に、皮を張り合わせて作ったという古代の盾をモチーフとしたものだ。意味するものは鉄壁の防御。エネルギーを垂れ流すよなモノではあるが、この場はありがたい。

 

『行きましょ。クリスはリゲルグが壊しに来るのを牽制するだけで良いわ』

『了解した。ラビアンローズまでは援護役だな』

 一同はフォーメーションを組むと移動を再開。

 ほどなくして受信ポイントに辿りつく。どうやら一撃入れて満足したことと、コアファイターズが接近して居るとみなして立ち去ったのだろう。

 

 こうして序盤の戦いは敗北で終わったが、レースこそが本命。

 一同は巻き返しを図りながら、終盤へと進んで行く。




 と言う訳でレースの中盤に成ります。
コースの概要を0083の足跡を辿るモノ……と判明しつつ、戦闘に突入した感じです。
次回は腰を据えて撃ち合う感じになりますかね。

 レース内容、および牽制戦闘ではボロ負けしております。
相手はレース物を得意とする上位フォースであり、リーダー自ら指揮してるので、レース初心者の主人公達が不利なのは当たり前なのは当たり前なのですが。
その意味では健闘している順位というところでしょうか、コアファイターズも主人公達を当て馬に使ってるフシもるので、必ずしも二位ではありませんので。

●機体紹介
リゲルグ・Xウイング
 ショルダーバインダーをアクティブに動く四枚のバインダーに変更し、ビームコーティングを施してある。
この事により突入時の安全を確保しつつ、前回は切り波無しタイプであった補助腕を牽制に用いる。
武装はライフルの他にキュベレイ用のビームサーベルを使用して居るので、ビームガンとしても射撃可能。
前回は戦闘指揮はよろしく無かったまま終わったものの、今回は戦闘指揮でも移動攻撃でも本領を発揮して居る。

ザク・スナイパーカスタム
 隠れハイザックの様な腕を持ち、ダインスレイヴを射撃可能。
ビームスマートガンで目立つ攻撃と火力攻撃を行いつつ、暗殺用にダインスレイヴを使用する。
全体としてはダインスレイヴ専用グレイズをスマートに絞ることをイメージしており、連射こそできないものの、移動力を保つことに成功して居る様である。

ザク・ミノフスキードライバー
 ミノフスキー粒子を散布する事が可能なように改造されたモビルスーツ。
実際にはガンダムシェヘラザードの様に戦艦のパーツを使用し、電子機器を内部に納めることで、散布を可能としている模様。この為に戦闘は殆ど出来ず、おそらくは偵察機能を重視するアイザックかザクフリッパーと思われる。
(なお、三機目のザクはザク・マインレイヤーカスタムで、色々なダミーバルーンも使用出来る)

バーザム・ディフェンダー『風神』
 偵察能力を持つEⅢシステムを備えたリフレクタービットを二器、プラネイト・ディフェンサーを十二器所持する。
これを同時展開する事で鉄壁の守りを使用するのがAEGSの盾で、更にスーパーモードを使用した上位駆動も存在するとか。
もっともジン本人はドロップさえできればNT-Dに切り換えて、バーザムのイーグルヘッドからガンダム顔にしたいと思っている模様である。


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フォーミュラー:後編

●逃げ切り型と、追い込み型

 ラビアンローズを巡る戦いで、一同は追い詰められていた。

 それでも保ち堪えて居るのは、一同が下がり続けて居ることと相手もまた本気ではないことだ。

 サーキット・タケダは機雷とワイヤーの敷設を繰り返し、一同もまた自分達用に指定されたドックの周辺を時々薙ぎ払うのが精々だった。

 

『まずいよまずいよ。このままじゃ連中の良い様にされちゃう』

『どして? ボクらは別に困って無いし、他のフォースも来てるじゃん』

 ユニコーンが合体して居る為に四機しかいない一同が健闘できた理由は、サーキット・タケダが歩機で無かったほかにもう一つある。

 下位集団から同じ考えで先行して来た、二機のガブスレイが高速移動で遠距離攻撃を繰り返していた。タケダ側が三機をコロニーの足止めに置

き、ここでも一機ずつ交代で補給して居たこともあり戦力は一応互角だったのだ。

 

『本当ならもう一つの本命であるコアファイターズも来てるべきなんだよ。それが来て無いって事は……』

『私達を当て馬に使って居ると言う事ですわね。そう考えれば遅れているのでは無く、様子を見て居るだけ』

 コアファイターズはGアーマーに搭載して全機が高速移動できる。

 それなのに訪れて無いということは、まだ戦う気は無いということだ。

 

『ふ~ん。でも変なの。このままじゃあ距離とポイントが開き過ぎて勝負ついちゃうんじゃない?』

『それは……。多分、アレが答よ』

 リンダの疑問はもっともだ。

 到着時間にスコアを加味して計算される為、先行して居る上に全てのデータを抑えているタケダの有利は覆らない。最低移動力の高さに任せて追いついたとしても、追い抜いて一位の点を取らない限りがスコアが足りるかも判らない。

 

『え? さっき来たばかりのリゲルグ、損傷直さずにもう出てる?』

『まだ一機だけ。エネルギー補給だけして先行すれば十分にお釣りが来ますわ。おそらくは同じこと……あるいはそれ以上をコアファイターズも行うでしょうね』

 足止めに残ったリゲルグとザク二機。

 その中でも損傷していたリゲルグが、エネルギーの補給だけで既に出発状態なのだ。

 仮修理すれば耐久値はともかく隠し腕は動く様になる筈だが、タケダは補給を打ち切ってもう出撃する気なのである。

 

『推進剤の補給を半分、その穴埋めに同時に大量に装備したプロペラントタンクの交換で補う。……そんなところじゃないかな』

『理屈は良い。問題はこの後どうするかを話し合っておけ』

 コアファイターズの案を推測してみせるミツオに対し、タケルは興味なさそうにガブスレイの担当ドック周辺にあった機雷をダインスレイヴで撃ち抜いた。

『今の内に掃除しておけ。決着は後で付ける』

『……そうさせてもらうわ。お互い様だから御礼は言わないわよ』

『また勝手なことを……』

 共闘のお返しとして邪魔はしない。

 タケルの申し出をガブスレイ二機は受け入れて、自分達のフォースが補給する為のドック周囲の機雷を処分し始めた。

 ミツオも苦笑を浮かべるがそれを止める気は無いようだ。力を借りたのも事実であるし、ここで争う方が無益だろう。

 

 結局のところ一同も計画を練り直す必要があり、また残り三人が合流する前に補給が必要だったからである。

 

一人はみんなの為に(オール・フォア・ワン)みんなで勝利の為に(ワン・フォア・オール)

 結果的に合流した三人も損傷を放置して、補給だけを整えると出発する事にした。

 今ならばまだ間に合うレベルであるのと、エネルギーの消耗と引き換えにAEGSを使っていたことも大きい。

 巨大な防御壁を造って居たので、クリスのバエルを除いて大きな損傷は無かったのだ。

 

『コースの情報を伝えて無いなら良いじゃないか。貸し借り無しってことで』

『相談もせずに独断ってのが問題だって言ってるんだよ』

 受信したデータを精査しつつ、次のポイントである地球への突入地点を目指していた。

 全てを受信し切れていないという不備があるゆえに、幾つかの候補地がある。だが0083の足跡を辿ると言う設定があるならば、目標は北米と南米の調整を出来るエリアで間違いは無いだろう。

 

『その辺はまた後で反省会をするとして、残りの情報は何だったんだ?』

『付随ミッションのデータ。邪魔なデブリをコースから除けろってさ』

『最終ポイントがソーラーシステムだとすると、レーザー照射に邪魔な物を排除せよと言う事ですわね』

 なるほど。という声が相次いだ。

 設定を通すと見えて来るモノがあるというか、一本筋が入っているように感じられる。

『おそらく次は激戦に成るね。ぼくらも修理はスルーしたし、コアファイターズも今頃は追い上げを開始してる筈だ。最後にノイエジールが居るかは別にして、ここで稼ぎつつ、可能な限り邪魔をしておかないと」

『でもさー、それって時間が過ぎるとレーザー来るんだよね? うええ』

 そしてデブリの除去で点数が入るのだとすると、もう一つの問題が浮かび上がってきた。

 気を取られ過ぎるとゴールした時の時間による点数が入らない。だが先を急ぎ過ぎると、後続のフォースがここで点数を稼いでしまうということだ。

 相手に点数を渡さない程度に稼いでおく必要があるということである。

 

 当然ながらソレは相手も考えると言うことであり、フラッグ機以外はここで激闘を繰り広げることに成る筈だ。

 

『先輩は受信してる間、リフレクターを駆使して狙撃。ジンはその援護と護衛ね。タケダもコアファイターズも遠距離タイプを残すと思うし、ここの主力はアキラかな』

『『了解!』』

 ミツオは一同の軍師役がすっかり板について来たのか次々と指示を出す。

 普段はぶつかることが多い面々も、その指示が妥当な限りは反発する事も無い。

 

『クリスは阻止臨界点から突入ポイントギリギリまでをカバー。代わりにタケルが護衛に入れ替わって』

『問題無い』

 肩に損傷が残ったままのバエルは戦闘でのペナルティが大きく、逆にヘルムヴィーゲはそれほどやることが無い。

 ここでは役を入れ換えて、重装甲のヘルムヴィーゲがフラッグ機であるV2の護衛に回り、移動力に優れるバエルが稼ぎ役である。

『ボク達はどうする?』

『悩ましいところですわね。最終ポイントでどれほどの戦闘が行われるのか次第ですけれども』

『それなんだよなあ。結局、壁役にノイエジールが居るか、他のフォースが仕掛けて来るか次第だからね』

 ボスが居てそれをくぐり抜けてコントロール艦を目指すか、それとも他のフォースと戦闘に成るか。最終的に戦闘が起きる可能性があり、同時に無い可能性もある。

 

『まあ、その辺は受信して見ないと判んないでしょ。いくらなんでも運営が最後に戦闘有りか無しか、伝えない訳ないし』

『それもそ……っ!? もう来た! 早過ぎる!』

 アレクサンドラがまとめたところで、レーダーの限度いっぱいに敵影が映った。

 まだモニターで視認できる位置には居ないが、Gアーマーに合体し六機状態で進軍していた。

 

『幾らなんでも早過ぎだろ! やっぱり最初から狙ってたんだ』

『あちらも補給だけして居たのでしょうけれど、ひょっとしたら以前にも似たような妨害をされていたのかもしれませんわね』

『あー。そしたら対策入れてるよね』

 ドックに入る前に他フォース同様周囲の機雷を掃討したのだろうが、おそらくは接近する前に一気に処分したのだろう。

 レースには不用な装備にも思えるが、今回のような執拗な妨害を考えれば想定してもおかしくはない。それこそ補給時には分離せざるを得ないのだ、ガンキャノンがスプレーミサイルを、ガンダムが散弾を入れたバズーカでも撃てばよい。

 

『え~と。……ここは道を譲って突入コースの根元から行こう。そうすれば撃たれたとしてもガンタンクMAから一度だけ。何より掃除し易いからね』

『それっきゃないわね。そのコースなら途中から重力加速も使えるし、指定ポイントまでには無駄にした距離を取り戻せるわ』

 ミツオはMAPを表示すると目的地をクリックしてルートを示す。

 矢印は落下するように地球に向けて移動した後、指定ポイントで大きく曲がってソーラーシステムがあると思わしき太陽側に向かっていた。

 

 そしてコース変更の甲斐もあり、コアファイターズとすれ違ったのはMAP上限に侵入する時だった。

 

『来ますわ。120mm無反動砲による長距離砲撃!』

『装甲が薄いメンツは、盾持ちと装甲が厚い機体に隠れてて。その後は散開! 適当にスコアを稼ぎながら指定ポイントに急降下するよ』

『『了解!』』

 前面に『風神』やユニコーン、そしてヘルムヴィーゲ。後列に残りという陣形で突入。

 直撃を防ぎながらMAPに侵入し、各機体はそれぞれに間隔を保ちつつ距離を開けて行った。

 そしてデブリや小隕石をコースから排除しつつ指定ポイントに向かっていく。

 

『レーダーに感あり。下位集団が見えました。それと大きな隕石がかなりの速度で飛び込んできますわ」

『それだ! そいつを盾にしながら途中まで突っ込んで行こう』

 

 暫くしてレーダーで周囲を監視して居るヘイゼルからアナウンスが入った。

 一同は隕石の陰に入ってタケダやコアファイターズからの攻撃を遮りつつ、四方にあるデブリを射撃していく。

『ジンにぼくらの背中は任せた。アキラはスーパーモードでこいつをお願い』

『了解です! 任せてください』

『たかが石ころ一つ、ボクの雷神に掛れば問題無いですよ!』

 やや間があって隕石を利用できる最大限の時間が過ぎた時、一同は飛び出しながら背中を『風神』のプラネイドディフェンダーに守られながら移動。

 そして『雷神』は『風神』の脇に残りながら、光を帯び始めた。

 

『轟け雷鳴、落ちよ稲妻! 明鏡止水!!』

 ヘッドバルカンやハンドグレネードから変更した小形ビーム砲など、各所に仕込んだ同様の仕掛けがマークⅡとしてのボディを輝かせる。

 ここからが『雷神』としての真骨頂、メルクリウスをイメージしていた筈のビームスマートガンが別のモノに変貌して行った。

『神成る力を受けるが良い! 雷・神・剣!』

 ビームスマートガンの光線が、スーパーモードにより位置固定される。

 長大な射程を持つその火力を、物干し竿を越えるほどの超巨大ビームサーベルとして起動させたのだ。流石に一撃で真っ二つに成りはしないが、隕石はコースを外れて離れて行った。

 

『やったね! これで最大サイズはぼくらの物だ。数は何処のフォースが取るか判らないけど……』

『そんな事言ってる場合じゃないわ! ちょっとこれ見て、最終ステージかなり厄介よ!』

『え? あれ? ミノフスキー粒子が散布されてないの?』

 作戦が上手く言った事をミツオが喜んだのも束の間、アレクサンドラから全員に指示書が配布された。

 今までは途中でミノフスキー粒子が重戦闘散布されていたので、リンダが驚くのも無理は無い。

 

『最終関門は機動目標……ノイエジール(?)に一定数のダメージを当ててからゴールへだと?』

『うわぁ……。こいつはマズイよ……。仕方無い、ぼくとアキラに任せて皆は先に行って!』

『サーキット・タケダも同様の判断をして、妨害をする暇は無いと判断したのですね……』

 移動し続ける機動目標にダメージを与えるのは難しいが、相手にI・フィールドが有ると成れば尚更厄介だ。

 ビームのみに切り変えた『雷神』は役に立たないし、火力だけならヘビーアームズの火力は有意義だが……この中で一番足が遅いという欠点がある。

『ゴメン、本当は私も残るべき何だけどね』

『フラッグ機は居ないと困るから仕方ないよ。とりあえずタケダとコアファイターズにだけは、処理数のスコアを渡さないようにしとく』

 V2は攻撃がビームスマートガンだけなので、超距離火力はあるのだがノイエジールには通用しない。一応は機動目標としか表示されていないが、ここまで来れば何が相手かは問うまでも無い(デンドロビウムにもI・フィールドは装備されているので差は無い)。

 

『肩がこのザマだが、I・フィールドくらいは何とかして見せるさ。後は任せたぞ』

『うん、任された。そっちこそ頼んだよ』

『我らに勝利を! お願いします、閣下!』

 バエルは移動力があるのと、避けられない攻撃・受けられない攻撃を使い分けられる。

 反面、両手でキープしての大振りしか火力を上げる手段が無いので、同ランクとの一騎打ち主体の機体だった。

 だから両手が使えない以上はノイエジールは倒し難い相手なのだが、それでもI・フィールドを排除するくらいはなんとかなるだろう。

 

 見ればコアファイターズも同様の決断を行ったのか、ビーム砲に改装したガンキャノンとノーマルのガンダムがMA状態で居残るようだ。

 その判断を見ると彼らもコースの設定が0083であるという事をどこかで悟ったのだろう。

 いずれにせよ閃光するサーキット・タケダを追って猛追を開始した。

 

●最終決戦

 戦いは混迷を極めた。

 戦場を所狭しと暴れ回る赤いゼロ・ジ・アジール。

 先行した時間のボーナスを使って待ち受けるサーキット・タケダの主力部隊と、遅れてやって来た二つのフォース。それらが四つ巴となって激戦を繰り広げて居た。

 

『あんなモビルアーマーあったっけ?』

『判らん、一番詳しいのがミツオだからな。だがミサイルが無いんだ、助かったと思っておこう』

 ゼロ・ジ・アジール設定上のモビルアーマーで、シャアの為に計画が用意されたが頓挫としたということに成っている。

 その後に一部のコミックで流用されたらしいが、基本はメガ粒子砲によるビーム攻撃なのでリフレクターで防御が効いた。

 

 とはいえそれで戦闘が楽になった訳ではなく、タケダは早々にスコアを稼いだ後でむしろゼロ・ジ・アジールを守る様にしながら自分達だけスコアを伸ばしている。

 コアファイターズはその防御網へ長距離砲と移動力を活かして規定のスコアを狙いつつ、タケダとこちらを排除する事でその後を有利にする狙いのようだ。

 

『こうなると手に入れられなかった最後の情報の中に、制限時間を越えないとゴールが出現しないと言う情報があったのかもしれませんね』

『そういえばボクらって、全部の情報を集めたわけじゃないんだよね……』

『それを言っても仕方あるまい。何とかして規定のダメージを与えないとジリ貧になる』

 一同は二つのフォースによる牽制を受ける立場なので、攻勢を阻まれて中々ダメージを与えられない。

 一番上手く宛てられたのが、ダインスレイヴ一発きりなのでこのままではスコアによるペナルティを貸されてしまうかもしれない。

 せっかくここまでのスピ-ドが二番手であり、デブリ除去でも良い点数を出して居るのが無駄になりかね無かった。

『こうしていてもラチがあかん。三機のスーパーモードを束ねて……』

『あっ、またミノフスキーの圏内に入ちゃった。でもどこかで突貫するしかないんだよね』

 戦場が広域にまたがった為に、どこかで息継ぎする様な通信が行える。

 話し合っている様な状況でも無いので数回喋れれば十分なのだが、それでも息苦しさを感じるのは仕方が無い。

 

 結局のところ、危険を承知で大きなスコアを取りに行くのか、このまま最低源ラインをなんとか抑えて済ませるのか。

 そのことを先送りにし続けた来たツケが響いていると言えた。

 

『どうしよっかお姉様?』

『機動目標はノイエジールに準じた性能の様ですし、ビームを弾きながら移動。接近戦を挑むのが王道ね。問題は残りのフォースがソレを許してくれないだろうということ』

 ダメージを与える方法はそれほど難しくは無い。

 接近して白兵戦を挑み、それまでの過程でバズーカやダインスレイヴを当てるだけだ。

 しかしながら王道ゆえに判り易く、他のフォースから牽制され易いという欠点を持って居た。

『他のフォースが追いついて来るのを待つか、それとも勝負に出るか……だね』

『前者は安全策だけれどもダメージ上限が厳しくなるわ。二つのフォースで独占されてしまうから、相当に強烈な……場合によっては撃破ボーナスを狙わないと上位争いも難しいでしょうね』

 コアファイターズよりは指定ポイントのスコアで上回っている筈だが、彼らが移動力に物を言わせて受信しきるまで待って居た場合は判らなくなる。

 タケダにはデブリ除去以外で勝てる要素が無いので、安全策を取る場合は二位狙いですら怪しくなってくるだろう。

 

 堂々巡りに陥りかけたところで、ヘルムヴィーゲが強引に進路へ割り込んで来た。

 

『これ以上の議論は無駄だ。他のフォースに期待するのは止せ』

『……大将。判り易いのがありがたいけど……またモメごと起こさないといいけどな』

『でもそれしか方法はありませんわ。でもどうやって他の方を説得……』

 タケルは躊躇なく行動した。

 これまであからさまな相談をするとこちらの行動が予想されてしまうので、中々『お肌の接触』通信で相談出来ずにいた。

 ゆえに散布された地域を飛び出した時にだけ会話して居たのだが、そのタブーを押し切って通信の端渡しを行ったのだ。

 最低限の事だけを伝えると、次はバエルの方に向かっていた。

 

 いずれにせよこれだけは判る。

 ここまで強引に相談を行った以上、他のフォースも警戒をして居ると言うことだ。

 一同は警戒態勢を取った相手に対して、どれだけ危険であっても突破せざるを得ないということである。

 だがそれでも、今の状況でジリジリと順位を下げるよりはマシだったろう。何より勝利をつかむ為にこのミッションを受けて居るのだから。

 

『博打に出るのは読まれている。だから『三つの矢』全てが囮で、全てが本命だ』

『『了解』』

 ハンドサインで総攻撃の合図を出しながらクリスのバエルは第二列についた。

 風神の防御壁を盾にして、ヘルムヴィーゲとフルアーマー・ユニコーンが突進。その隙をバエルが突くという簡単な作戦だ。

 勿論予想されているだろうから、実際に狙うのはI・フィールドのジェネレータがある部分。壊すか大きな負荷を与えられればしめた物で、V2の曲射狙撃で片が付くだろう。

『先輩に援護は任せた。フラッグ機狙いを避けながらで言いから、適当に援護してくれ』

『了解。この程度で踊れなくなるほどじゃないわ』

 流石に付き合いが長いだけあって、首を向けただけでアイコンタクトが出来る。

 アレクサンドラはビームスマートガンを構え、ゼロ・ジ・アジールではなく近くに居るドムの改造機に向けて居た。

 

『行っけーリフレクター!』

『今だ、突撃する!』

 ビームスマートガンを回避したドムに対し、再度の連射を行いながらリフレクタービットを射出。

 それは一同を守りながら、徐々に相手サイドに近付いて行った。

『……行け、プラネイドディフェンサー! AEGSの盾となって皆を守れ!!』

 普通は全周三器か四器で張り巡らされるプラネイドディフェンサー、これを十二器全てで一面だけを守る。

 通常攻撃に対して一機を守る為には過剰なほどだが、今回の様な戦いで仲間を同時に数機守るには敵した防御法だろう。

 前方のタケダのみならず、脇から襲ってくるコアファイターズの超距離砲をも防いでいる。

 

 そしてAEGSの盾に隠れながら、タケダの懐に斜めに潜り込んで行く。

 できればコアファイターズがタケダを潰してくれれば良いという位置取りだったが、読まれていたのかサっとタケダ陣営のフォーメーションが左右に分かれた。

 

『見え見えなんだよ!』

『さっきの戦いで見せてもらったしな!』

 脇に回られて撃ち込まれる為、比断面積を下げる程度にしか役に立って居ない。

 だがそれでもコアファイターズの弾幕を防ぐ手立てには成っているので、ゼロ・ジ・アジールに近寄るにはこれで満足する他は無い。

 それでも接近できるのであれば十分、そして今から行う動作を覆い隠す効果もあるのだ。

『黄道は満ちよ、明鏡止水!』

『ヴォォル……テェェクッス!!』

 ここでヘルムヴィーゲとユニコーンがスーパーモードを発動させた。

 スーパーモードの本質はビームを闘気のように扱い、出力を様々な能力に振り分けることが可能な物だ。これが作戦における第二の矢!

 後方に向けて放つビームをスラスターの補助に回しているので、先ほどよりも強力な加速で駆け抜ける!

 

『なんだこいつ! さっきよりも性能が……』

『落ち付け、ただのスーパーモードだ。所詮は長続きしやない!』

 激しい戦闘に慣れて無いメンバーを、戦いも慣れて居る親衛隊が落ち付かせて行く。

 やや上に立つ者が落ち付いてサインを出して居るのは大きいのだろう。一般メンバーも落ち着きを取り戻し、正確にフォーメーションを築き直した。

『保たんか……だが問題無し!』

 スーパーモードで振り分けた能力は、別に移動力だけでは無い。

 ビームシールドとしても機能するので、装甲も若干増えている。移動力の上昇により攻撃を喰らう回数が減って居る事を合わせれば、それなりの時間が稼げるだろう。

 

『ひゃあ!? あんまり保たないよー。なんとか当てないと!』

『武器管制はこちらでやります。貴女はできるだけ撃つことに専念しなさい』

 ユニコーンは合体する事で、フルアーマー時よりも武器の扱いがやり易くなっている。

 そしてRGアーマー側に居るヘイゼルが管制を行うことで、バズーカやガトリングの命中精度が上がって居るのだ。

 今は弾幕を避けて居るので中々当たらないが、もう少し接近すれば普通に当たる様になるだろう。

 

『……すまんな、みんな。このチャンスは逃がさん!』

 これまで風神のもとに居たバエルが、加速力を活かして一気に戦場を駆け抜ける。

 第二の矢が集中砲火を喰らっている以上、比較的安全にゼロ・ジ・アジールへ接近する事が出来た。

 そして阿頼耶識を発動させて、近距離レンジに辿りついた段階で一気に攻め立てたのだ。

『もらった!』

 真・バエルソードによる袈裟斬りがゼロ・ジ・アジールの胴に決まり、再び振り上げrのではなく、体を回転させながら下胴を袈裟斬りを浴びせる。

 回転するような斬撃の中で、クリスは『誰か』の声を聞いた様な気がした。

『……そう、この私がね』

『何!?』

 強烈な衝撃が訪れた後、バエルの体をサーベルが貫いていた。

 だが敵の体は近くには見えない。

 いや……正確にはサーベルを持った腕だけが、長距離から貫いていたのだ。おそらくはこちらの行動を読んで狙っていたのだろう。

 

『こちらの手の内を読んで居たのだろう? ならばそちらの行動もお見通しさ』

『やれやれ、なら仕方無いな』

 接触回線で聞こえると言うことは、視えない様でも何処かにコードが繋がって居るのだろう。

 そういえばシュトッツアー仕様のゲルググやドムが居たわけだし、サイコミュ操作にはせずに簡易サイコミュのまま合えて使っているのかもしれない。

『フン。強がりは……』

『強がりじゃないさ。読まれているのも計算の上だ』

 クリスはバエルに退避行動を取らせずに、そのまま剣を振りあげてゼロ・ジ・アジールに振り降ろした。

 サーベルを抜き取られてよろめくが、まだそれだけで落ちる訳ではない。オールレンジ攻撃で遠距離から狙ったということならば、まだ攻撃するチャンスはあるだろう。

 

『馬鹿な。フラッグ機ならともかく……無駄死にする気か?』

『もはや何を言っているのか判らんが……。まあ言いたいことはなんとなく判る。接近できた奴が居る限り攻撃する。それ以外に方法が無いだけだ』

 二度・三度と繰り返して剣を浴びせて、時折にタケダからの攻撃を受ける。

 だが無理やりにゼロ・ジ・アジールに接敵し続けて居る為、今度は逆に迎撃はそちらに向かっていた。

 無理な体勢ゆえに切りつけてもそれほどのダメージは入らないのだが……。

『前にも言った気がするが……。I・フィールドはもらっていく』

 バエルが破壊される頃には、ビームがゼロ・ジ・アジールに届いていた。

 同じ様にヘルムヴィーゲも破壊されたが、その影に入って砲撃したユニコーンの火力が届いたのも大きいだろう。

 

『あんたの犠牲は無駄にしないわよ! リフレクターを飛ばして! 連続でぶっ放すわよ!』

『リフレクターを? 判りました!』

 曲射モードに入ったV2が、ゆっくりと移動しながら次々に砲撃を掛けて行く。

 ユニコーンもリフレクタービットの後ろに移動しながら、可能な範囲で攻撃を掛けて居た。

 少なくとも規定のダメージを与えたのは間違いないだろう。

 

『だが! こちらの攻撃もフルで通る用に成っただけだ! 先にスコアを稼げば問題無い!』

『撃って撃って、撃ちまくれ!』

 だが現実は非情である。

 タケダは作戦を牽制から攻撃に切り換えて、ゴールを目指すジオングと直衛以外は総攻撃を掛けた。戦場の戦力密度が下がったことでコアファイターズも大攻勢を掛けつつ、フラッグ機はタケダを高速で追い掛けるつもりだろう。

 

 アクサンドラのV2も適度な所で移動するつもりだが……。

 もしそのまま状況が推移すれば考えるまでも無く一同の不利は否めなかった。

 だが、もう一つのキー・パーソンがその場に到着したことで戦線が膠着する。

 

『こちらシロッコ隊、参戦させてもらうぞ。貴軍を援護する訳ではないがな』

『俺達も忘れてくれるなよ? トランザム!』

 下位集団の中で、一部の高速機体がようやく追いついて来たのだ。

 ハンブラビ三機やキュリオスガンダムとユニオンフラッグ改が到着し、結果的に上位集団を牽制しながら規定のスコアを稼ぎに参加したのである。

 もちろん一同も直線上に居れば狙われたのだろうが、そこまでの戦力が残って居なかったので結果的に無視された形となった。

 

『悪いわね。先に行かせてもらうわ』

『いってらっしゃい。ここはボクらでなんとかします』

 V2も途中で削げ気を止め、単騎でゴールを目指した。

 三位ではあったものの悪くないペースでゴールに到着したと言えるだろう。

 

 そして……。

 途中のポイントで稼いだ点数が影響し、二位に浮上。

 スコアによって逆転したのであった。




 と言う訳でレースを混ぜたストーリーは終了です。
当然ながら主人公たちは一位には成れず、他のフォースが作戦ミスしたことと、コース設定に気が付いたことの累積で二位に入って居ます。
とはいえスコアを稼いだ砲が上位入賞できるルールなので、純粋な速度勝負であれば三位だったでしょう。

 最終戦ですが他のフォースは、特攻するとしたらゼロ・ジ・アジールではなくタケダの方に行くだろう。
まかり間違って二位狙いだとしても、コアファイターズを潰して二位狙いに行くよね……。という予想だったこともあって、読み間違えて居ます。
犠牲を出しながらフラッグ機を倒せば勝利だけど、NPCにダメージ与えてもそれだけでは勝てる訳でないので。
 結果としてサーキット・タケダは二位以下が自爆したのでダントツの勝利。
コアファイターズは読み違えており戦力の温存をやり過ぎた。突入ポイント・アジールでの点数稼ぎしつつ一気に追い越すつもりが、下位集団に巻き込まれてスコア差で三位に。
(獲得ランキングポイントとしては、二位・三位と余り変わらず)
シロッコ隊とトラ・トラ・トラは下位集団であることを自覚したので、最終戦は上位の足引っ張りつつできるだけ点数を稼いだということになります。

●フォーミュラー0083アフター
チェックポイント
1:暗礁空域に漂うペール・ギュント
2:移送されたコロニーに新設されたミラー
3:ラビアンローズ。一応ドックでの補給そのものは不可侵(機雷や罠は問題無い)
4:地球突入ポイント
5:ソーラーシステム

スコア目標
1:デブリの排除(数・サイズ)
2:ゼロ・ジ・アジール(ダメージ比率)

 このコースの最初がペール・ギュントなのは、判り易い損傷が有る為です。
0083を想起させる為であり、最初の目標の時点でヒントがもらえることになっていました。
流石にミノフスキーを散布できるモビルスーツは運営の想定外ですが、まあ使いこなせるならアリで。と言う感じでしょうか。
なお、ペール・ギュントではなくシーマ艦隊のムサイ(交渉中に破壊されたやつ)の場合は、宝探しでバニング大尉のジムカスタムを探す事になります。

 以降は0083を思わせるコースが続き、序盤でコースの設定に気が付くと目標の詳細が判ります。
第二ポイント以降は邪魔な障害物が少ないので、コアファイターズの追い込み型戦術も間違いではありません。
と言う訳で彼らは序盤遅れてでも確実に点数を稼いでおり、ミノフスキーが晴れてから移動して居ました。

●オマケ
コアファイターズの構成
・Gアーマー-x4
・ガンタンクMAx2
・ガンキャノンx2(スプレーミサイル・無反動砲)
・ガンダムx2(ビーム主体のノーマル、星一合作戦時のバズーカ主体)
 移動力の最低値が高く、同時に長距離砲を備えています。

サーキット・タケダの登場して居ない機体
・ドムx3。シュトッツアー仕様、シャア専用(小説版のビームバズーカ型で高速型)、リックドムⅡ(高速でマシンガン型)
・ゲルググx2。シュトッツアー仕様、ガトー機(ロングレンジライフル)


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時には他のマシンで

●ギミックの見直し

 一同はフォーミュラーを得て、装備や連携などの再検討に入った。

 二位とはいえスコア勝負によるもの。それも下位集団が介入しての結果とあっては誇れるようなものではない。

 もしフォース同士の一騎打ちであれば惨敗したかもしれない。自分達を磨く必要を感じたのだ。

 

「判ってる? こっちの指示」

『なんとかね~。最初が警戒、次が移動でしょ? 方向の変更なかったし、ようするに警戒しながらそのまま移動って事で』

『合っているなら一応は成功みたいですわね』

 フォースネストで練習しているのだが、新しい訓練が増えた。

 通信もハンドサインも使わずに、連携を取る為のものだ。

「合ってる。後はそれぞれの判断ペースを早くする段階かな。合図を一通り終わったら戻ってきていいよ」

『おっけ。これでようやく先延ばしにしてたお祝いだね~。前みたいな失敗はしないんだからっ!』

 ミツオの指示でリンダが嬉しそうな声を上げ、ヘイゼルは言葉では無く承諾を示すアイコンを返してきた。

 一同は数パターンの信号に対応する指示コマンドを用意する事で、簡単な指示を出せるようにしたのだ。慣れて行けば、急にミノフスキー粒子が重散布されても戸惑うことは無いだろう。

 

「簡略指示と対応訓練は普通の状態でも使えそうだな」

「まあね。次にやるとしたらマーカーを追い掛けるやつか母船を守るやつだと思うけど……。純粋なフォース戦もないではないし」

 いや、むしろ普通にフォース戦で戦うと言う方が十分にありえるだろう。

 そちらの方が一般的なのだし、人数か実力が似たようなフォースと戦えば腕を磨く事も出来る。

 別にフューミュラーに固執して居る訳でもトラウマがある訳でも無いのだから、可能性としては通常のフォース戦の方があえりえるのだ。

 

「なら当面はギミック造りながら連携訓練でしょうか」

「それなんだけどさ、いつもの延長だと、いつもの事しかしないじゃない? ちょっと変えて見ない?」

「いつもと違う?」

 アレクサンドラの提案に一同は首を傾げた。

 同じことを繰り返して自分達を磨くのが訓練と言うものだからだ。

「そりゃ訓練なんだからそうなんだろうけど、それだと思いきった事とかできないのよね」

「先輩の言いたいことは判りますが、ウチのポリシーは覚えてますよね? その上でなら」

 念の為にクリスが確認を居るとアレクサンドラは元気良く頷いた。

 効率重視でやるべきだ、やらないとおかしい。そんな押し付けは無しにしようと決めたのだ。

 クリスやタケルの様に接近戦主体の者に射撃をやれとか、そういうことはしないと皆の前で確認を取ったのである。

 

「まっさらなの弄って無い機体でやってみたいこと、試したいことを思いっきりやっちゃうの」

「やりたい事と言ってもオレだと阿頼耶識積を外して強力なビームソードを試すくらいなんですが……。一から替えるのも良いかもしれませんね」

「良いんじゃない? 言われてみるとOSを入れ替えたり装備の一部を変えるくらいで、大きく変えれないしね」

 当たり前の話だが、使っているガンプラに大胆な改造を施す事は中々出来ない。

 手持ち火器を除けば、穴に挿し込みするタイプなら変更できるくらいだ。どうしても微調整になってしまうし、言うほどの成果が上がった気がしない。

 

「まずは試してみないとねっ。それで大きな成果が出たりしたら、元の機体に導入したり武装バリエーションにすんのよ」

「それならさ種類を絞って判り易くしない? ゲルググとかジンクスみたいな万能機をベースに、自分の欲しい装備を付ける感じで」

「その辺なら何処の店にも置いてありますし、ポイントに余裕あるなら設計図から造っても良いですね」

 こうして大まかな目標が決まった。

 ベース機に何を改造しても良く、どんな装備を持たせても良い。その結果は敵味方に分かれてレポートして、元の機体にフィードバックするというものだ。

「それじゃあ対戦形式なんだし、チームAとBに別れてベース機を決めましょ」

「さんせー」

 タケルが興味ないというか、やりたいことを試す機体が決まっているので除外。

 人数的にも付き合う形でクリスがその機体をベースに試し、AチームとBチームがそれぞれ違う機体ということになった。戦場もミノフスキー対応の訓練も同時に行うということに成った。

 

●鋼と妖精のダンス

 ギニア高地の上で二機のアレックスが格闘戦を繰り広げる中、大地では高速で移動する三機のドム・タイプが移動して居る。

 既に待ち受けている三機を探しながらホバー移動して居るのだ。

 

「見付け次第、散開して撃ち込むわよ」

「了解ですわ」

「接敵、分散、攻撃……。確認したら分散して攻撃って事かな」

 そのドムはいずれも頭をガンダム・グレモリーの様にフード型装甲と仮面で覆っており、光通信でコマンドを送る。

 ミノフスキー粒子が濃く通信できない中、徐々に慣れる為の訓練を行っていた。待ち付ける三機も同様の訓練を行っているだろう。

「左前方の岩陰に反射光を発見。罠かもしれませんし、散弾を撃ち込みます」

「十時の方向に発見? ヘイゼルだけってことは牽制するつもりかしらね」

「了解っと。確かこの後は、足止めと攻撃に別れるんだっけ」

 ヘイゼルの機体がバズーカーを担ぐと、先端に取り付けられたV2ガンダムのスプレービームポッドが唸りを上げる。

 光の散弾がシャワーとなって撃ち込まれるのに合わせ、残り二機が対応と突撃の構えを取った。

 

 しかし待ち構えている筈の機体は動か無い。

 ダミーかと思うよりも先に、光の壁がシャワーに対し立ち塞がる。

 

「ハモニカ砲の中にプラネイト・ディフェンダー!?」

『新しく作ったアイアスの盾は良い調子ですね。普通にプラネイト・ディフェンダーを使うよりも早く反応できます』

 岩を削り取った後から出て来たのは、ハモニカ砲を改造した盾を持つギラ・ドーガだ。

 一方向に固定する代わりに、展開するだけでプラネイト・ディフェンダーが起動する様にしたのだろう。

『ではお返しいきますよっと』

『飽和攻撃A? 了解です!』

「撃ち上げ型のミサイル? 散開!」

 三機のギラ・ドーガの盾裏に張りつけたミサイルが、盾の領域を山成りに越えて放たれた。

 三機のドム・タイプは分散して回避し、アレクサンドラのビームライフルや、リンダのビームマシンガンで牽制攻撃を掛けながら回り込んで行く。

 

『全部ビーム攻撃って、見た目のままドムじゃないよなやっぱ。と成るとスーパーモードを警戒した方が良いかな』

「『突撃不用? ならこのまま反撃します!』

 ミツオの指示でアキラのギラ・ドーガが、こちらもビームマシンガンで応射していく。

 リンダの持つショートバレルよりも基礎威力が強いのもあるが、何らかの強化をしてあるのかユニコーンのビームガトリングもかくやという威力だ。

「とんでもない威力ですわね……。おそらくスーパーモードは付けずに、純粋な威力強化型……」

 ガンプラに付けられる装備や、データ内に保存できるプログラムの容量は決まっている。

 スーパーモードはビームの放射量が増えれば増えるほど強力・便利になって行くが、残念ながら強化するジェネレーターと食い合うことが多い。アキラのギラ・ドーガはジェネレーター強化に特化した機体だろう。

 

「このまま撃ち合ってもあの盾の分だけ不利かな? 相手にスーパーモードが無いなら、接近戦で方を付けるべきね」

「もう仕掛けますの? まだ相手の全容も把握できてませんけど……。でも恐れてばかりでは状況は動きませんものね」 

「まあ即決で判断する訓練だしね。行っちゃお、行っちゃお」

 アレクサンドラの指示で、三機のドム・タイプが横一列に並ぶ。

 まずは胸元のフラッシュビームで視界を覆い、クロスしながら不用なパーツを排除した。

「「「明鏡止水!」」」

『キター!? 予定通り迎撃ヨロシク!』

 三機のドムはフード型の装甲を跳ね上げて、その『素顔』をさらけ出した。

 前列で突撃するリンダはフードもスカートも排除して視界と足まわりの動きを良くし、ショートバレルのビームマシンガンはトンファーの様だ。

 後列から援護するヘイゼルの機体は、フード型装甲に追加したEWSを防止の様に被って居る。そして先ほどスプレーモードを使ったビームバズーカを長刀……いや箒の様に構えて居た。

 

『あれはドムじゃない、ギャン子の改造機です!』

『それもブルマ姿にウイッチ・スタイルかよ! 最後の一機は……アイドル!?』

「ここよ!」

 三機目のリックドム・ぎゃん子は、背中のフリルとミニスカで光の翼を生やして飛んだ。

 魔法少女かアイドルか区別つかないほどフリフリで、わざわざビームの一部を演出の為に使って居る。ビームライフルも光の剣というより魔法のロッドとして煌めいている。

『悪いけどアキラはそのまま抑えて。ジンは後ろのウイッチを遮断してて!』

『全力の許可? 了解。トランザム!!』

「えっ嘘!?」

 想ったよりも迎撃側の反応が早い。

 ジンのギラ・ドーガは自身に接続されたコードをブチブチと引き千切りながら移動し、ヘイゼルのぎゃん子を抑えにかかる。その間にアキラの機体が赤い光を発して、接近戦を行う二機から少しずつ下がりつつ迎撃していく。

 

 限度いっぱいの火力は消えたが、トランザムまで起動された。あり得ない動きに一瞬戸惑う。

 更には徐々に下がる的確な動きで無理せず攻撃をいなし、その間にミツオの機体がミサイルやらマシンガンでの全力攻撃を行い始める。光の翼で防御できるアレクサンドラはともかく、軽量級のリンダ機が動きを止めるまでそれほど時間は掛らなかった。

 

「動きの予測はZERO-SYSTEMでの指示として、トランザムはなんで?」

『スローネの連結を参考にしたんですよ。空中制御を前提とした合体型じゃなくて、拠点防御用にしてますけど』

「それで隠れたまま動か無なかったのですね」

 練習戦闘が終わって出て来たギラ・ドーガにはケーブルによる連結システムが造られていた。

 ジンの機体は殆どアキラ機用のバッテリーで、プラネイト・ディフェンサーの位置制御も削ってシールド固定型にしてしまっている。一機の能力としてはやや劣る形になってしまったが、全体としては火力の底上げというべきだろうか。

 

「まあジン君が納得してるならいいわ。もともとアキラ君と一緒だったし、やらされてるって事も無いだろうしね」

『ありがとうござます。一応は今回の実験は成功でしょうかね』

「そうなんじゃない? 三機同じ機体にした意味もあったみたいだしね」

 同じ機体だと相手が何処に何を付けて居るのか判るし、相談したり必要な物を融通し合う事も出来る。

 もちろんそれが本来の機体へストレートに活かせる訳ではないが、装備や戦術を洗練してから完成製品をフィードバックすれば良いだろう。実際Gディフェンサー同士の連結は今でもできるし、スーパーモードの能力値振り分けなどもそうだ。

 

「となると後は大将たちかな。あの人たち何やってんの?」

「上でガンダムファイトやってたけど……なんかヌルヌル動いてた気がするわ」

 タケルとクリスは高台で接近戦をやっているのは知っているが、実際に目にしたのは光の翼で飛行したアレクサンドラだけだ。

 ただそれほど注目した訳でも無いので、何をやって居るかまでは判らない。

「アレックスのマグネットコーティングとモビルトレースシステムを合わせて、最高反応速度で特訓して居る筈ですわ」

『ということは1フレームごとの動作でも見直して居るんでしょうかね? 機体設定のアジャスターを外すことができれば早いんでしょうけれど』

『外せたとしても流石にアジャスターを外したらまともに動かないと思うよ。0080でクリスチーナが凄い苦労していたしさ』

 アジャスターというのは原作の能力設定に掛けるリミッターである。

 リミッターを掛けて無いとニュータイプやコーディネイターでなければ動かせないとか、『ガンプラの差では無く設定上の差で相手になりません』ということではガンプラ・バトルが成り立たないからだ。

 とはいえ訓練だけであるならば……と、超反応の機体に対して興味が出ても不思議ではあるまい。

 

「何はともあれ装備と連携の訓練を兼ねて問題なさそうね」

『いんじゃないの? その上で役割交換までするかは相談必要だと思うけど』

「そうですわね。お互いのしたいことと、今後を踏まえて話し合いが必要だと思いますわ」

 今回は中途半端な立ち位置に成り易いアレクサンドラ・ミツオ・ヘイゼルの三人が、互いの役目を分割し合っていた。

 EWSによる偵察、ZERO-SYSTEMによる戦術予測、それらを繋げる部隊管制。三人から八人に増えたことで、他者に役目を譲れると同時に、今までのままでは機体のバランスが悪かったのだ。また別々のフォースになるならば今のままで十分であるし、今後も同盟を組むのであれば見直しは必須であろう。

 

「まあ今はこんなもんでしょ。帰って先延ばしにして居たフォーミュラーの祝勝会と残念会をやっちゃいましょうか」

 こうして一同は将来を見据えながら、ギミック演習を終えたのである。




 と言う訳でレース後に反省を踏まえながら、自分達を強化していく話になります。
一応は前回までの締め。かつ次回以降も続けるのであれば、機体設定を見直す為の回になります。

●練習用機体
 基本的に一つの部隊で同じ機体を使い、ギミックだけ入れ換えることで練習用にして居る。
共通するのは光通信で簡単なアイコンと方向を表示し、ミノフスキー粒子の重散布下でも簡単な通信ができるように成っている。

/リックドムぎゃん子
 スーパーモードのパターン試験用と、EWS・部隊管制の試験を兼ねて居る。
原型のリックドムではなく、ぎゃん子をあえて選んだのは可愛く改造できるから。また後発の為ビーム対応なのでその辺の処理が不要だからである。
パージするまで外部パーツは似たような構成に成っており、フード型装甲・仮面型の簡易EWS・スカートアーマーが共通。

・ウイッチサルブ
 頭部に最も大きいEWS、ビームスプレー付きのビームバズーカを所持して居る。
名前の通り箒に乗った魔女をモデルとしており、三機の中ではゴテゴテしている分だけ一番動きが鈍い。
スーパーモード時も動きを補正するのではなく、火力と命中補正に全てを割り切って居る。

・フェアリーウイッシュ
 頭部に簡易EWS、光の翼とビームシールドを持ち攻防一体型になっている。
派手な外見ではあるが一番のバランス型で、展開型のビームライフルを持って中衛に位置し、足りない場所のフォローを行う。
スーパーモードも攻防のバランスを保って向上させており、中途半端になりがちな火力を補強して居る。

・ソードダンサー
 頭部に簡易EWS、ショートバレルの扱い易いビームマシンガンを二丁構え接近戦を前提としている。
ドムにしては装甲が薄いこともあって、ドム系というよりはガンダム・ピクシーやイフリートに近いコンセプトである。
スーパーモードも移動力・火力のみに絞って上昇させており、ビームコートで防がれても手数で押し込めるような短期決戦型になっている。

/ギラ・ドーガ
 後期ネオジオンのコンセプトをそのまま引き継ぎ、オプション装備の試験用としている。
基本的にはギミック試験として忠実に造られており、個別装備以外は全て共通の武装で固めている。
なおテスト用としてはA型がOSテスト、B型がOSに頼らない武装のテスト用。

・ギミック試験型A:ZERO-SYSYTEM対応
 派手さはないが堅牢で多彩な武装を持つ本機を、様々なOS追加で強化すると言うコンセプト。
戦術予測用にZERO-SYSYTEMを搭載し、指示パターンが多い以外は基本設定。
とはいえ多彩な武装を活かすのに適しており、相性そのものは悪くない。

・ギミック試験型A:トランザム対応
 派手さはないが堅牢で多彩な武装を持つ本機を、様々なOS追加で強化すると言うコンセプト。
今回はトランザムで追加行動することと、余った部分にジェネレーターを追加して居るので、それなりにビーム火力があがっている。

・ギミック試験型B
 本体に複数の追加ジェネレーターと供給用ケーブルを装備して居る。
試験型Aよりもテスト用としてのイメージが強く、他の機体にエネルギーを供給する為の機体で、空を飛ばないもののガンダム・スローネに近いコンセプトになっている。
このジェネレーターは外部供給用で自分には使えない為、今回は追加武装として、味方を守る為の盾役としてプラネイトディフェンダーを埋め込んだシールドを所持して居る。
(空中固定しないのでエネルギーや散布時間が不要なので、一方向だが簡単に展開できる)

・ガンダムアレックスAB
 マグネットコーティングを利用した反射速度の高い機体を利用して、格闘戦の訓練を行っている。

A型:
 モビルトレースシステムを追加して対応力を上げたもの。
それだけでプログラムは一杯いっぱいなので、格闘の動作練習用。
装備に関して頭部のバルカンや腕部のガトリングをビームに変更して居る。

B型:
 ジェネレーターを追加し、それをビームサーベルに特化させたもの。
特化させると比率が上がるのだが、他の装備に変更できないので、純粋にビームサーベル試験用である。


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これからも続く戦い

●大規模フォース戦

 同一機体を利用してギミックを開発し直した一同は、フィードバックと共にフォース戦を試みた。

 当然ながら相手は弱いフォースではなく、同等以上とマッチングを求める。

 

「作戦がマッチすると勝てるようになって来たね」

「そりゃ使用率の低い装備を外して予備にまで下げたんだもの。強くなって無いと困るわ」

 惜しいとは思ったものの、リフレクタービットを含めて御倉入りなった装備は多い。

 戦場によっては使わない装備や、追加した物のそれほど強く無かった装備を排除。軒並み他の装備に修正したお陰で一同は強化を果たして居た。

 

 もっともアレクサンドラがずっと使ってきたリフレクターを外したのも、重要なのは偵察衛星を兼ねて居たことだ。

 それは八機に増えたことそこまで必要では無くなって居たし、正面からの撃ち合いが予想されて居たり、冒険系のミッションでなければ言うほど役立って居なかったというのも大きい。

 同じ様に追加してみた装備の中から、微妙に思える物、あるいは新しく作った装備の方が魅力的な物を優先したのである。

 

「これで十機居ればもっといけそうなんだけど」

「そればっかりは気の合う相手じゃないとね。あれしろこれしろは避けたいしさ」

「都合良く、こっちの必要な能力持って居るとも限らんしな。前衛が居なくて狙撃手ばかりということになりかねん」

 そういう意味では三機の状態から八機まで増えた今は幸運なのだ。

 色々ありはしたが暫く解散というほどでもなく、今は経験を積んで強くなる方が先だろう。

 

「次はどうする?」

「マッチングリストの中から適当な相手を物色するか、それともどこかの大会にでも挑むか」

「それなら丁度良い相手が居るよ。因縁のある相手が挑んで来たとも言うけど」

 こちらが対戦を挑むように、相手からも挑まれることは多々ある。

 中にはマッチングリストから次々と選ぶ人も居るので、基本的には数日掛けて一つを選んで返事するのが定番だ。

「どこのフォース?」

「近藤一家だと嬉しいんだがな。どれだけ強くなったか試せる」

「残念ながらサーキット・タケダ。あそこは戦闘チームは別分けだったでしょ?」

 挑戦状を叩きつけて来たのはサーキット・タケダに所属する戦闘チームだった。

 リゲルグ使いがまたチーム・リーダーに昇格し、リベンジ・マッチを挑んで来たというのだ。戦闘面では未知数だが連携と判断速度はかなり高い相手だ、もちろん一同に異存は無く、勝負を受ける事になった。

 

●巴戦

 戦いは月面に置いてのオーソドックスな遭遇戦。

 互いに牽制し合いながら接近し、大きなクレーターを利用して防御に劣る機体を後方に配置する。

 

『良く逃げずに来たな!』

『お前こそ凝りないな』

 まずは改装されたリゲルグ・Xウイングが彼方より飛来する。

 ビームコーティング付きのショルダーバインダーでこちらのビームを弾きながら急旋回。そこをクリスのバエルが抑えに掛った。

『ファンネル・コンテナなんて付けておかしいと思ったが、稼働型スラスターだったのか。面白い事を考える』

『そっちこそミノフスキー対策なんかしやがって。お陰で一機無駄になった!!』

 最初こそミノフスキー粒子を重戦闘散布していたが、一同がスムーズな連携を見せたので解除されている。

 現在は牽制状態からこうやって、機動力に優れるマシン同士が相対しあって居た。

 

 先に動いたのはリゲルグだった。

 分割されたショルダースラスターの中から、副腕が展開。ビームの乱射モードからビームサーベルにモードチェンジして斬り掛って来る。

 

『切り刻んでやるよ!』

『それはご免こうむる。それに……倒すとしたらお前じゃない! そうだろ!』

 リゲルグの影に隠れてリックドムⅡ、そしてムサイを背中に背負ったザクが突進を掛けて来た。

 足の速い機体で前衛を抑えている間に攻勢をかけようと言うのだろうが、ザク・ミノフスキドライバーは不用になったミノフスキー粒子散布用の機体とあって、火力こそあれど突進力に欠けている。

『ジンはそのまま抑えて居ろ。俺が沈めておく』

『了解です、閣下!』

 ジンのバーザム・ディフェンダー『風神』が、ザクの背負ったムサイ用メガ粒子砲を食い止める。

 手足とシールドをユニコーンのような装甲展開型に改造して、中に仕込んだプラネイト・ディフェンサーがシャットアウトしたのだ。以前の放出タイプに加えて即時の反応が可能だった。

 

『受けろ猿叫剣、キィイイェェェ!』

『何!? 火力が上がっている!?』

 バエルのスラスターが全力稼働し、リゲルグをかわしながら体をねじり、突っ込んで来るザクに対し強烈な袈裟斬りを掛けた。

 相手は妨害と火砲仕様なので変幻自在さは必要ない。駒の様に回転する推進力は威力の増強用だ、以前には無い威力でザク・ミノフスキードライバーを沈めた。

『ちっ。以前はショボイ火力しかなかったのにな!』

『お前が腕を上げたんだ。俺だって以前のままじゃ居られないさ』

 即座に追ってくるリゲルグに対処しながら、クリスはこの男の腕前を認めた。

 以前はプラモの製作技術ばかりで戦闘面ではそれほどでも無かったのだ。以前の彼であれば負ってくる速度はともかく、即座には対処できなかったろう。

 

『火力が無いのはお前もだろう? 必要ならスーパーモードをトレードしても良いが』

『冗談! アレが強いなら、なんで貴様の所は何機か外してるんだ?』

 リゲルグが手で持つ大型ビームソードはともかく、副腕が構えたキュベレイ用のサーベルはあくまで牽制用だ。ビームガンとしても使えるからべんりだが、直撃しても想ったほどの威力は無い。

『この戦いが終わったら今の貴様を参考にさせてもらうさ!』

『やれやれ。この辺はお互い様か……アキラに任せるしかないな』

 そしてスーパーモードは能力全体を底上げしてくれるが、元が強い機体に使わないと決定打に掛けるのだ。

 事実、風神と雷神は外して居たし、クリスのバエルもスーパーモードのビーム配分を下敷きにはしたが、スラスターの配分で威力を上げる方法を編み出して居た。

 

『アキラさん。リックドムⅡたちはタケルさんに任せて、後ろに居るゲルググ・キャノンを牽制してくださいまし』

『判ってます! 装甲展開、ジェネレーター直結!』

 ヘイゼルがZERO-SYSTEMで表示した座標に移動し、アキラのスーパーブラック『雷神』が射撃モードに移行する。

 こちらも装甲展開型に改造することで、外部に装備したジェネレーターを直結して火力を底上げして居た。ある意味で風神と雷神は、途中で追加した装備を削って、最初に出逢った時まで原点回帰したと言えるだろう。

『メガ・ビームライフルの砲身延長を確認。あったれー!!』

 射撃と白兵を共用して居たスーパーモードから、単純な火力増強型に切り替えたことで雷神は戦場における脅威に成長できた。

 強烈なビームがゲルググ・キャノンに迫り、塗られていたビームコートを容易く突破する。以前の火力であれば中衛として便利であっても、これほどの威力は出せなかったろう。

 

『流石に一人じゃ一撃じゃ落ちないか。今は風神と連結できないしな。アレは回数が限られてるし……』

『それで構いません。アレは相手が一直線に並んだ時に使用すべきですわ』

 雷神と風神はガンダム・スローネの様に連結して、火力をあげた上に直線状を薙ぎ払う事ができる。

 とはいえ常にそんな都合良いタイミングがある訳でも無く、使いどころが限られていた。

『そちらはどうですかミツオさん?』

『問題無いよ。むしろ反対側の前衛が問題かな。もしかしたら救援にいかないとマズイかもしんない』

 ミツオのヘビーアームズver37(トランセット)が敵の後衛をまとめて抑えて居た。

 ビームガトリングガンの連射に加えて新型のマルチミサイルを放つことで、子ミサイル・孫ミサイルを広範囲にばらまいていたのだ。結果として敵の分断には成功したが、抜けて来ているリックドムⅡにタケルが苦戦して居た。

 

 風神雷神が原点回帰の成功もあって上手く行ったのに対し、タケルのヘルムヴィーゲ・タウルスは相手の新装備に苦しめられていたのだ。

 独断専行の多いタケルをミツオは苦手としているが、それでもフォースの仲間である以上は見捨てるわけも行かない。救援の必要を認めたのである。

 

『悪いな。援護に来てもらって』

『バーザムを突破できなかったしな、気にするな』

『……』

 ヘルムヴィーゲ・タウルスを苦しめているのは、二機のリックドムⅡが放った海蛇によるクモの巣攻撃だった。

 彼らもまたシュトッツアー仕様をシンプルに見直し、戦闘用の簡易システムとして海蛇を採用して居たのだ。当然ながらただの海蛇では無く、ビームコーティングを使用しビーム攻撃では切れない仕様に成っている。

『ぬううっ……!』

『へへ、まさかスーパーモードをビームコーティングで抑えられるなんてな』

『遊ぶな! 直ぐに向こうの援軍が来るぞ、さっさと倒すか、離れるかしろ』

 スーパーモードの能力強化は、あくまでビームを出力や推力として利用できるからだ。

 ビームサーベル用のビームコーティングが功を奏し、絡みついたまま千切れないでいる。物理属性とは言えランスであるグングニルでは斬ることもできず、ジリジリと電撃で耐久力を削られていた。

 

『待ってくれよ、流石にタンク役を簡単には……』

『なら諦めろ、時間を掛け過ぎだ』

 倒されて居ないのは単にヘルムヴィーゲが重装甲で、持久専用に耐久値を高めに設定して居るからだ。

 リックドムⅡは海蛇による高速を解除すると、MMP-80マシンガンを撃ちながらその場を移動する。クリスと戦っているリゲルグと合流しながら後方に下がろうと言うのだ。

『おっ待ったせー!』

『大将! 助けに来たよ~』

『すまんな』

 こちらの中衛であるV2プリマとユニコーン・フルアームズが、スーパーモードを稼働して突入して来る。

 リックドムⅡへ光の翼を浴びせたり射撃で牽制するが、敵は螺旋を描く様な回避機動で脱出されてしまった。シュトッツアーの代わりに装備したシュツルム・ブースターを吹かしての高速離脱だ。

 

 敵後衛を中破に追い込み、飛び込んで来たザクを撃破。

 こちらの前衛が中破で済んだのでダメージ効率そのものは有利に立っているが、実際には相手の方が二機多いのでまだまだ戦局は不利だと言って良い。

 

『なんか苦戦しちゃってるね~。なかなか勝てそうにないや』

『弱い相手と戦うよりはいいさ』

『それにこっちがパワーUPしているんですもの、相手がして居ないとなれば嘘ですわ』

 当然のことながら勝てるとの自信がなければ相手も勝負を挑んでは来ないだろう。

 同じ条件のままで次こそはと考えるような奴は、このレベル帯に居ないと言っても良い。フォーミュラーで戦ったシロッコ隊なども今戦えばかなり強化して居るだろう(森のクマサーンを除いて)。

『それはそれとして、どうするの?』

『僕の一斉射撃は警戒して居るだろうから通用しない。でも逆に言えば風神雷神の連結モードは通じると思うよ』

『誘い出すわけか? ならまずは相手の攻勢を凌がないとな』

 傷付いたヘルムヴィーゲを中央に入れて、一同は距離を取りつつ作戦を練った。

 

『ジンの幕動柵で防壁築いて、一時的にこっちの動きを止めるのはどう? あっちは速度に自信を持ってるから誘い出せると思う』

『爆導索と同じ欠点を持ってるし、その可能性は高いか』

『こう言う時、リフレクターが無いのは痛いわね。あからさまに持久戦狙いッポク見えるのに』

 幕動柵はプライネイト・ディフェンサーを爆導索を模して連ねた物だ。

 防衛陣地を敷いて戦う為の装備で、一方向のみだが長い壁を築くことができる。だがそれだけにこちらの動きは止まるし、回り込まれたら意味が無いのは同じだった。

『イメージ的にはギミック練習を始めた時に、最初にやったアレ。連中から見ればバーザムは壁役のままに見えるからね』

『了解です。連中の前へ飛び出す時に、コードだけ出して何時でも連結できる様にしておけばいいんですね』

 あの時にギラ・ドーガでやった二機のジェネレーターを直結するやり方は、相当な火力を出せる。

 今ではGディフェンサー込みで改修して居るので、ビームコーティングの上から焼くことができる筈だ。

 

『いつでも行ける』

『それじゃあ行きますよ! 幕・動・柵!』

 クレーターの中で壁に出来る場所を探した時、ヘルムヴィーゲがグングニルと盾を合体させて、ダインスレイヴの砲撃モードを起動する。

 それに合わせて風神が防御壁を起動し、一番広い部分をコードで連結したプラネイト・ディフェンサーによって遮断したのだ。

『駄目だ、弾幕じゃやっぱり避けられる!』

『それと……あれはGNフィールド?』

 とはいえ敵もこちらの想定通り動くとは限らない。

 回転運動を掛けて更に蛇行しながら、第二列に居るシーマ機がGNフィールドでそれ以降を守って居る。ゲルググ・キャノン達はその間もビーム砲で援護して居る為、なかなか良いポジションで迎撃するのは難しかった。

 

 旋回運動を掛けながら、ライフルと爆雷で間断なく抑えつける。

 その移動は大胆であると同時に慎重で、こちらから移動しなければ近距離での打撃戦を挑むのは無理だろう。

 

『どうしよっか? こっちが引きつけてから飛び出すのバレバレだけど』

『抑えつけてる砲撃はともかく、飛び出した瞬間に散開されるのは上手くないな』

 サーキット・タケダはレース向きのフォースなので、こう言った編隊飛行のバリエーションが多い。

 当然ながら対応訓練も数をこなして居る筈なので、適当に飛び出したのでは対応されて終わりだろう。こちらが特殊な事をすれば、即座に散開して被害を抑えるに違いない。

『クリス、お前が出ろ。向こうがやったことを真似して見せれば良い。ただし途中までだ』

『なるほど、連中がやったことなら未知の行動じゃないからな。消極的に動くよりは罠に掛けようとする筈だ』

『そこを突くわけですね?』

 先ほどサーキット・タケダは戦力として微妙になった機体を使って、こちらの戦力を図りつつ動きを止めに来た。

 その間にヘルムヴィーゲが追い込まれた訳だが、こちらが同じことをやってみせれば逆手を打って罠に掛けようとするだろう。もちろんこちらは同じことをするつもりは無いので、ワザと罠に掛ったフリをする訳だ。

 

『勝負!』

『先ほどの借りは返させてもらう!』

『見え透いた手を! お前ら、相手をしてやれ!』

 バエルの陰からヘルムヴィーゲが突入。

 四足に備えたブースターで加速するが、最初から加速しているタケダ勢には叶わない。高速で包囲・遮断され、更に誤射しても良い様にビームコーディングに合わせたレベルの支援砲撃が来る。

『このまま嬲り殺しにしてやるぞ!』

『望むところだ! そのまま足踏みして居ろ!』

『負け惜しみを!』

 四方から海蛇が射出され、バエルが斬り払っても全てを叩き落とす事は出来ない。

 ヘルムヴィーゲともども捕まっており、しかも先ほどと違うのはタケダ側の数機が援軍を邪魔出来る位置に居る位置に居るのだ。

 

『巻きこんでも構わん、やれ!』

『了解! トランザム!』

 ここで雷神がトランザムを掛け、風神の隣に移動した。

 高速でコードを接続し、長大な砲身を二機で支ええる体勢を取る。そう、高速で連射する為ではなく、高速で連結する為にトランザムを使用したのだ。

『全ジェネレーター直列機動、承認! 吹けよ嵐! 呼べよ稲妻!』

『バスター砲の展開を確認。照準開始! 落ちろ雷鳴、轟けイカヅチ!!』

 右手に構えた風神と、左手に構えた雷神が手を取り合い腕を組み合うような不思議な体勢。

 まるで魔法少女の番組や戦隊ヒーロー物に出て来るような体勢で、二機一組の砲撃態勢を取ったのだ。

 

 ギミック訓練の時、あの時の教訓を活かしたのがトランザムによる高速連結だった。

 あの時は訓練だったので成功したが、いつも都合良く行くとは限らない。ゆえにトランザムは連射の為と言うよりは、僅かな時間に連結する為の時間を稼ぐものになっていた。相手が想ってもみないタイミングで砲撃するのである。

 

『三機以上を当てられる体勢までカウント開始。三、二、一』

『『全力全壊! バスターGNランチャー、発射!!』』

 ヘイゼルがZERO-SYSTEMを利用してガイドを果たすと、可能な限り敵を巻き込んだ体勢で重砲撃を放つ。

 最大数を狙った為にヘルムヴィーゲも巻き込まれて大破するが、それでも相手の三機以上を葬ったのである。

『馬鹿な……。トランザムをただ合体する為だけに使用するだと? 正気か!?』

『うちは最大効率は嫌いなメンバーが多くてね』

 もしタケダ勢に敗因があるとすれば、やはりトランザムの使用方法にあるだろう。

 自分の強化に使うのが当然であり、時間を掛ければ済む様な事に使うよりも、追い込む時に使う方が有効なのである。だからこそ、想定外だったと言える。

 

『これで七対六、いや五だ!』

『まだまだ!』

 バエルの不規則な機動は、威力ではなく命中重視。

 そう判断したリゲルグはXウイングを展開して機動戦に移行する。その間にも後退の指示を出し、無事な機体で戦線を再構築して行った。

 

 だがあちらの反撃は風神の防御によって遮断可能であるし、この後の展開は語るまでも無いだろう。

 一同はサーキット・タケダの戦闘チームに勝利し、僅かではあるがフォーミュラーの雪辱を果たしたのである。

 癖の多いメンバーであるが、これからも時に協力し時にいがみ合いながら愉しんで行くことだろう。




 と言う訳でビルドダイバーズ物の最終回に成ります。
まあ最終回と言いつつ、続けられるような構成でもありますが。
今までの成功と失敗を見直して強くなり、特に今まででは中途半端だった部分を一点突破できるようになった感じ。

●機体解説
『バエル・ハザード』
 スラスターの稼働にバリエーションを設け、マニューバー用にプログラムで修正を掛けられるようにしたもの。
具体的にはフェイント用が通常時で命中用だが、切り替えると威力重視になる(回避パターンも模索中)。
これまでは真バエルソードに付けようか悩んでいたが、それでは命中補正に戻せないので悩んで居た。
そこでスーパーモードの能力割り振りを参考に、スラスターの稼働方向を調整したのである。

『V2プリマ』
 思い切ってZERO-SYSYTEMとサイコミュを排除し、スーパーモードで光の翼とビームシ-ルドを操る妖精と化した。
元から可能であったがせっかく付けた機能を外す事を悩んでおり、他の機体にZERO-SYSYTEMを渡す事で大胆な決断を果たす。
もっとも、アレクサンドラの目的は妖精の様な機動を行う事なので(プロローグ)、むしろこの決断に納得している模様。

『ヘビーアームズver37(トランセット)
 ギラ・ドーガでのギミック訓練が最も功を奏した機体で、一気に番数が3つあがった。
現時点で様々なギミックを設置する為のラッチが取り付けられており、その試行に二度失敗したということもである。
今回は子・孫ミサイルを射出する大型のマルチミサイルだが、高速機動用など様々なギミックを開発中。

『バーザム・ディフェンダー風神』
『スーパーブラック雷神』
 どちらも原典回帰し、出逢った頃のイメージに戻って居る。
装甲を展開し、中にプラネイト・ディフェンサーや外部ジェネレーターを装備。
必要に合わせて防御力や火力を底上げできる様になっている。最大の攻撃は二機一組になっての重砲撃、バスターGNランチャーである。

『Gディフェンサー改二』
 風神と雷神の共通パーツで、外部ジェネレーターとプライネイト・ディフェンサーの予備が入って居る。
これは風神の火力込みで全体火力を底上げしており、太陽炉やバスターGNランチャーなど追加ギミックはこちらを改造する事で本体は最終的な完成を身超だ。
なお、風神はトランザムを使用せずにただのエネルギータンク、同様に雷神はプライネト・ディフェンサーを使用しないが、これは片方が壊れてもお互いの装備を融通し合うニコイチ用。

『ユニコーン・フルアームズ改』
 設置火器の一部を変更し、ビームスプレーや展開式のメガ・ビームライフルなどV2バスターの装備に志向して居る。
ハモニカ砲やヴェズバーなども移設しており、更にZERO-SYSYTEMを合体して居るRGアーマー側に組み込む事で、V2プリマと装備を入れ換えた形だろうか。
殆ど動く要塞攻略兵器であり、同時に全体の管制塔でもある。これによっていまいち合体する意味が薄かったのを、かなり強化した。

『ヘルムヴィーゲ・タウルス』
 ビームの振り分けパターンを増やして、高速移動モード・重防御モードなど切り替えが可能になった。
こちらも防御志向だったのでプライネイト・ディフェンサーの追加が考えられたが、本人の意向で組み込んで居ない。
あくまで使いこなす事を優先して居る摸様。

『リゲルグXウイング』
 肩のショルダーバインダーが分割でき、後ろ腰にファンネルポットを使ったスラスターを付けるなど、イメージ的にはキュベレイやクシャトリアが近い。
多数のスラスターで移送しつつ、ビームコーティングで仲間を守る先導機である。
火力はショルダー内の副腕にキュベレイのビームサーベルを持たせ、ビームガン兼用なのでそれなりの物である。

『リックドムⅡカスタム』x複数機
 シュツッツアー仕様から修正し、海蛇など装備品に切り替え、代わりにシュツルムブースターを装備して居る。
武装はMMP-マシンガンとブースター内のミサイルで、イメージ的にはスタークジェガンに近い。レース仕様から戦闘仕様に変更した摸様。

『ゲルググ・マリーネ、シーマ機カスタム』
 ライフルの強化やシュツルムブースターなど全体的にガーベラ・テトラをイメージしたカスタムを掛けて居る。
だがそれは太陽炉を隠す為で、GNフィールドを展開して編隊飛行の間、仲間を守る為の仕掛けを有している。
当然ながらトランザムも可能で、全体的に能力が向上して居る。

『ザク・ミノフスキードライバー改』
 背中にムサイを背おうことで、ミノフスキー粒子が展開可能になっている。
今回は戦闘用のチューンということで、メガ粒子砲を放つ大型バックパックとしてもテストを行っている。
イメージ的にはスキウレ装備型のザク。

『ゲルググ・キャノンⅡ』x複数機
 ビーム砲が二門になり、全方向に稼働可能。その為にバックパックを改装し、移動能力も向上して居る。
砲門は二門を調整しながら撃つことで、二発目以降の命中率を上げるタイプのプログラムを組んで居るとか。
このプログラムは手持ちのライフルにも使用出来るので、地味に見えるがかなり戦闘力は高い。


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