剣豪ギルガメッシュが鎮守府に着任しました (スライムベス)
しおりを挟む

「鎮守府に落ちた武人」

この作品は艦これ×FFになります。
また、キャラ崩壊や口調や一人称が違う、文章が拙い等お見苦しい点は多々あります。
それらが苦手な方はブラウザバックをして下さい。

このギルガメッシュはFF世界を一通り巡った人物となります。


「おぉおおおおぉおおッ!?!?!?」

 

俺の名はギルガメッシュ、元の世界に戻ろうと次元の狭間を彷徨っていたら狭間の穴に落ちてしまったみたいだ!

落ちた先は地上から遥か上空ッ!!

言ってる意味が分からないと思うが次元の狭間では、落ちた先は大抵、お空の上だッ!

だがしかぁしッ、この程度の高さで俺様がどうにかなると思ったかッ!!

 

「うおりゃッ!?!?!?」

 

ズドンッ!と豪快に着地をし、新たに降り立つ世界を一望する。

海に隣接する人工的な建物はあるが、俺様のいた世界の建物とは雰囲気が異なる。

 

「ちくしょ〜、またハズレか……。」

 

思えば長いこと異世界を放浪した。

最初はバッツ達を助けて自爆してからだったか。

命を賭けた技だったが、運が良いのか悪いのか、生き残っちまった。

その後は色々と世界を彷徨った、コロシアムでひたすら戦ったり、最強を目指したり、無愛想な学生の助太刀もしたか。

そんなこんなで、故郷を目指していたんだが……新天地になってしまったな。

 

「……なっちまったものは仕方ねぇ、取り敢えず聞いて回るか。」

 

幸いにも人がいる気配はある。

今までも、どうにかなったんだから今回も大丈夫さ。

 

---

 

「えーっと何々……『鎮守府』?」

 

入り口と思わしき場所の隣にあった立て札に書かれているのは地名だろう。

町にしては小さいが、家にしては大きすぎる。

勝手に入るのはマズイ、そりゃ魔物の俺にだって常識は弁える。

 

「ごめんくださーい!」

 

待てど暮らせど、反応はない。

かと言って、周りにあるのは海と道のみ。

 

「気は進まねぇが……。」

 

[ レビテト ]

 

[ ヘイスト ]

 

[ ダッシュ ]

 

[ かくしつうろ ]

 

「お邪魔しまーすッ!」

 

目にも留まらぬ速さで建物に入った。

 

-鎮守府玄関前-

 

「建物に入るのは流石にやめよ、言い訳が思いつかん。」

 

建物の前をうろちょろし、人がいないか探索する。

建物は1つではなく、いくつもあった。

恐らく、複数から成る総合施設の様なものだろう。

そのうちの1つは俺の世界にもあった建物に似ている。

 

「ありゃ倉庫か?」

 

煉瓦造りの外装に大きな二枚扉、丸みを帯びた屋根と来たら大抵は倉庫だと相場が決まっている。

異世界を放浪した実体験だ、間違いない。

 

「倉庫なら誰かしら番をしているか。」

 

サササッと倉庫に近づく。

それにしても扉がデカイ、俺の身長の3倍はあるんじゃないか?

そんな適当なことを思ったとき、不意に背後から殺気を感じ取った。

時既に時間切れ、何か筒状の物を背中に押し付けられる。

 

「……ここで何をしているのですか?」

 

直接見てないが、確か銃と言ったか。

多分、振り返れば攻撃が加えられる……。

兎に角、敵ではないアピールをしなければ……

 

「……こいつは悪かった、あんたはここの関係者か?」

 

「貴方は部外者の様ですが?」

 

「あー、一概には説明できないが怪しい者じゃない。信じてくれ。」

 

「そうですねぇ……、なら場所を移しましょうか。」

 

お、意外と話が分かる奴じゃねぇか。

銃でグイグイと前に押されるのは正直、良い気分じゃないが、話を聞いてくれるだけ御の字か。

 

-地下 牢屋-

 

「待てよ、扱いおかしいだろ。」

 

「剣を持ってうろつかれれば、誰だって警戒しますから。」

 

なんてこった、ホイホイ案内に進んでいったら捕まるなんて……。

しかも、この眼鏡女……牢屋に鍵をしても、未だに銃を下げる気配がない。

警戒しすぎだろ。

 

「で、ここに来た目的は?」

 

「は?」

 

「目的よ、ここに忍び込んだって事は相応の目的があったのでしょ?」

 

「まぁ、目的はあったが……ここはどこだ?」

 

「牢屋よ。貴方、ふざけてるの?」

 

「ちげぇよ!みりゃ分かるよ!この世界はなんて言われてるかって聞いてるんだよ!」

 

訝しい表情の眼鏡、言っといて何だが、分からなくもない。

 

「簡潔に説明するとだな、俺は別世界から来て、ここが何処かわからねぇ。」

 

「そんな話を信じろと?」

 

「信じるのは勝手だが、事実だ。」

 

「…………。」

 

長い沈黙が続く。

暫くすると、眼鏡女は大きなため息と共に銃を下ろした。

 

「良いわ、信じてあげる。」

 

「お、流石!話が分かるね!」

 

「でも不法進入は紛れもない事実だから数日は牢屋ね。」

 

「はぁ!?」

 

別に捕まったから何かある訳じゃないが、数日も何もしないのは俺の肌に合わない。

 

「もうここには近付かないから出してくれよー。」

 

「ダメです、腐ってもここは軍事施設、おいそれと不法進入者を返してはならないのです。」

 

「鬼!悪魔!魔物!」

 

ブーブー文句を言っていると、眼鏡女から軽快な音が鳴る。

眼鏡女はポケットから取り出した箱を押すと、これまた軽快に『ピッ♪』と音がなった。

あれは前の世界で見た……PHSだったか。

遠距離でも会話出来る優れものだ。

俺様の世界には『ひそひ草』ぐらいしかなかったからなぁ、便利だよなぁ。

 

「……えぇ?……はぁ、はい……それは難しいかと……。」

 

眼鏡女は思案しながら会話してる様子だ。

会話する相手の顔がないからか、ジロジロと見られてる気がする。

 

「あー、いや、もしかしたら行けるかもしれません……はい、はい……可能であれば折り返し電話します、はい。」

 

PHSを切った眼鏡女は、又もや深いため息を吐く。

そして、再び銃を取り出し、突き付けてきたッ。

 

「貴方も運がないですね、上層部から銃殺の命が降りました。」

 

「待てよッ、話せば分かるッ!」

 

怪我しても回復すれば済む話だが、それでも痛い思いはしたくない。

 

「分かりました、お望み通り話をしましょう。」

 

「へ?」

 

それは思いも寄らない返事だった。

この眼鏡女はてっきり撃つものだとばかり思っていた。

 

「貴方の道は2つ、1つはここで朽ち果てるか……。」

 

片方選ばせる気ねぇじゃねぇか。

せめて、もう片方の条件が良い方になりますように……。

 

「……もう1つは、この鎮守府の提督となるか?」

 

「………………はぁ?」

 

今、ここの提督とか言ったな。

鎮守府は知らんが、提督はアレだ。

確か海軍の大将がそう呼ばれてた筈だ。

 

「俺が言うのも何だが、見ず知らずの奴に言うなんてマトモじゃないぜ。」

 

「私は至って真面目、死ぬか働くか……どっちがいい?」

 

此処ぞとばかりに銃をチラつかせる。

こいつ、ぜってー頭のネジ数本抜けてるぜッ。

ここで言いなりになってしまっては男の名折れッ。

 

「へッ!そんなのお断りに決まって……」

 

ズドンッ!と重量感のある音が牢屋にぶち込まれる。

鬼畜眼鏡が銃の引き金を引いたのだ。

幸い、俺様には当たらなかったが奥の壁には大きな穴が空いた。

 

「…………働かせてください。」

 

「了解しました、これからよろしくお願いしますね。」

 

故郷に戻りたいだけなのに、どうしてこうなってしまうのか……。

かくして、俺様の奇妙な鎮守府生活が始まってしまったのである。




おいおい、いきなりドジって独房行きとか、らしくないじゃないかギルガメッシュ!
折角、このエンキドウ様が次回予告をしてるんだ、良い所を見せてくれよ?
ギルガメッシュは提督としての初仕事で相方を決める事となる。

次回、ギルガメッシュ提督

「最強の初期艦」

目利きだって上に立つ者の条件だ、良い奴を選べよッ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

「最強の初期艦」

この作品は艦これ×FFになります。
また、キャラ崩壊や口調や一人称が違う、文章が拙い等お見苦しい点は多々あります。
それらが苦手な方はブラウザバックをして下さい。

このギルガメッシュはFF世界を一通り巡った人物となります。


「ちくしょう……なんでこんな事に……。」

 

「はいはい、文句はなしですよ、提督。」

 

俺は何をしてんだか……。

紆余曲折あって、この『鎮守府』の提督になっちまった。

まぁ、新たな世界で初日から飯と宿にありつけるから良しとするか。

 

「て言うか、この堅苦しい服はなんなんだ、ギッチギチで裂けちまいそうだ。」

 

「一応、鎮守府にある1番大きなスーツなんですけど……これは特注する必要がありそうですね。」

 

「いらんいらん、俺様はいつもの装備がありゃ充分だ。」

 

「ならせめて、帽子だけは被って下さい。提督としての威厳は保っておかないと。」

 

帽子だけで保てるものなのか、その威厳というやつは……。

取り敢えず、伸び切った白いスーツを脱ぎ、普段着に着替える。

やはり、いつもの服装が1番しっくりくる。

 

「悪いが布の上から被せてもらうぜ。」

 

「構いません、一目で提督と分かれば良いのです。」

 

そう言うと鬼畜眼鏡こと大淀は帽子と封筒を渡してきた。

 

「なんだこりゃ。」

 

帽子を被った後、封筒の中身を確認する。

中身は写真が5枚、それぞれ子供が写っていた。

 

「……お前の子供か?」

 

ズドンッ!

大淀ご自慢の14cm単装砲が火を噴いた。

曰く、銃じゃなくて大砲とかなんとか。

 

「まだそんな歳じゃないですよ?」

 

「ゴメンナサイ、ナンデモナイデス。」

 

真新しい部屋なのに穴が空いちまった……。

きっと修繕するのも俺様になるんだろうな。

 

「その5名の中から1人を選んで下さい、今後はその子が貴方の部下となります。」

 

「ここの世界では子供にも労働させるのか?」

 

どの娘も見たとこ10代前半、まだ外で遊んでてもおかしくない見た目だ。

 

「見た目は……ね、細かい説明は省きますが彼女達は少なくとも人間の成人に値する年齢は超えています。」

 

「馬鹿なッ!?若作りってレベルじゃないぞッ!?」

 

「見た目に騙されてはいけないって事ですね、で……どの子にするんですか?」

 

「あー、そうだな……。」

 

騙されるなって言われてもなぁ……。

ぶっちゃけ、誰かの上に立つ仕事なんてした事ないから、誰が良いとか分かんねぇだよなぁ。

取り敢えず、写真を眺めるが……イマイチ、ピンと来ない。

 

「あ、そうだ。」

 

「どうしました?」

 

どうせ選ぶなら、いつもの選び方があるじゃないか!

 

「ちょっと離れてろ、当たっても怪我しないと思うがな。」

 

「??はぁ……。」

 

大淀がドアの近くまで下がる、これで準備が整った。

 

「よっしゃ、いくぜッ!!」

 

[ 最強の初期艦 ]

 

写真を空中で回転させ、じっくりと吟味する。

迷った時は、この方法に限る。

 

「こいつだぁッ!!」

 

そして、一枚の写真を取る。

淡い水色の髪、そして手には槍を持っている。

名前は……『叢雲』

 

「この娘にするぜ。」

 

そう言って叢雲の写真を大淀に渡す。

残った写真も封筒に戻して返す。

 

「了解しました、初期艦が着任するのは明後日なので、今日はゆっくり休んで明日はここの施設の説明としましょう。提督の自室はこの執務室の向かい側にあるので、自由にお使い下さい。」

 

「おう、また明日な。」

 

こうして自室に戻り、備え付けのベッドに転がり込む。

ちゃんとした所で寝るのは久々だ。

 

「次元の狭間では寝るのも一苦労だったしなぁ。」

 

フカフカのベッドは最高だが、何より、何者からも襲撃される事なく眠れるのが良い。

そのまま、意識は夢の中へと落ちて行った。

 

翌日は、この『鎮守府』の設備と機能の説明を受けた。

主に覚えておく施設は5つ、住居施設と工廠と入渠施設、備蓄倉庫に食堂だ。

それと、この世界の現状についても話を聞いた。

どうやら深海棲艦とやらが派手に暴れまわってるらしい。

つまり、俺様の目的は深海棲艦の撲滅と世界の平和と言う訳だ。

世界を平和にすると言う点については、バッツ達と似たような事をしてる気がして悪い気はしない。

 

「トントン拍子で聞きそびれたが、元々ここに提督がいなかったのか?」

 

「着任予定の提督はいたのですが、トラック島で研修中に深海棲艦からの爆撃で殉職なされました。」

 

「そいつは御愁傷様だな。」

 

「それが4日前の出来事でしたので、一昨日、貴方が侵入してくれたのは助かりました。」

 

「前にも言ったが、侵入者を軍事施設の長にするのは問題じゃないのか?」

 

「提督が殉職した事、これは深海棲艦に先手を打たれた結果であり、国民に知られれば混乱を招くでしょう。」

 

「つまり、俺はすり替わりってこった。」

 

「そうなりますね、好都合にも貴方は元々この世界にいない人物、話の統合性は調整しやすいです。」

 

「やれやれ、軍人様は随分と冷たい事で……こんなんじゃ、俺もいつか切られそうだ。」

 

「ッ、貴方に何が分かるッ!!」

 

バンッと力強く叩きつける大淀。

その顔は興奮で赤く、肩は震えていた。

 

「……すまない、軽率だった。」

 

「いえ、こちらこそ取り乱しました……時に軍人は冷酷無比でなければ務まりません。」

 

すぐに平常心を取り戻したが、内心では気にしているようだ。

大淀の気持ちが悔しいのか、悲しいのか、俺には分からないが……少なくとも同じ事を繰り返してはならない、発言も出来事も。

 

「お詫びと言っては何だか……キッチリと耳揃えて、この海と平和を取り戻してやるぜ。」

 

「……期待しています。」

 

せめて、大淀が戦いなんかで思い悩まずに済むような世界にしてみせる。

そう、心の中で誓ったのだった。




女の子を怒らせるとは、とことんデリカシーがない奴め!
そして、無事に初期艦が決まるも、まさかの喧嘩勃発!?
白黒付ける為に戦いに身を投じるギルガメッシュと叢雲、次第に戦いは激化していく!

次回、ギルガメッシュ提督

「相性最悪の2人」

相手は女の子なんだから、少しは手加減してやれよッ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

「相性最悪の二人」

この作品は艦これ×FFになります。
また、キャラ崩壊や口調や一人称が違う、文章が拙い等お見苦しい点は多々あります。
それらが苦手な方はブラウザバックをして下さい。

このギルガメッシュはFF世界を一通り巡った人物となります。


更に翌日、初期艦着任の日であり、鎮守府が本格的に始動する日でもある。

執務室には2人、俺と大淀がいる。

予定では、この後に初期艦とやらが来て、鎮守府での仕事が始まるらしい。

椅子に座り、その時を待つ。

数分もしないうちに、ドアをノックする音が3回、静かな執務室に響く。

 

「どうぞ。」

 

大淀が返答し、ドアが開かれる。

写真を見て思ったが、現実だともっと背が低い。

本当にこんなチビで仕事が務まるのか?

戦う女はいくらでも見たし、刃を交えた事もあるが、ここまで小さいのは初めてだ。

そのまま叢雲は机の前まで移動する。

ジロジロと上から下まで見回されて、まるで値踏みされてる気分だ。

 

「あー、提督のギルガメッシュだ。よろしくたのむ。」

 

「………………アンタが司令官?」

 

ようやく口を開いたと思ったら『アンタ』呼ばわり。

 

「……ま、せいぜい頑張りなさい。」

 

その上、上から目線と来た。

見た目と年齢は違うとは聞いたが、それでも少し腹が立って来たぞ。

 

「ふん、小柄ながら威勢だけは良い……が、こんな少女に戦闘が出来るのかねぇ?」

 

ピクッと眉を釣り上げる叢雲、どうやら気に障った様子。

 

「アンタ……喧嘩売ってんの?」

 

「喧嘩売ってるのは、お前のふざけた格好じゃないかッ?」

 

華奢な身体の事もそうだが、何よりも布一枚でマトモな戦闘が出来るかッ!

 

「ふざけてんのはあんたの方でしょ!?何よッ、その鎧みたいな変な格好は!?」

 

俺の中で何かがプツンと切れた。

机を叩きつけ、勢い良く立ち上がる。

 

「ふざけんなよッ、由緒正しき『げんじのよろい』を変な格好だとゥッ!!」

 

「そんな古臭い鎧なんてッ、私の主砲でぶっ壊すんだからッ!!」

 

「上等じゃねぇかッ、表に出ろッ!!」

 

「はいッ!!ストォオオオップッ!!止めッ!!」

 

鎮守府始まって以来の大喧嘩を仲裁する大淀。

だが、おいそれと売られた喧嘩を返品する訳にゃいかないんだッ!!

 

「止めるなッ大淀ッ!収まりが付かねぇんだッ!こんな小娘に言われっ放しじゃ名が廃るッ!!」

 

「私だってッ、あんたの事を司令官とは認めてないからッ!!」

 

「んだとぉおおおぉおおおおおおおッ!?」

 

「叢雲さん、煽らないで下さいッ!!提督も落ち着いてッ!!」

 

「もし、私と海の上で対等に戦えるなら認めてやっても良いわッ!!」

 

「しかと聞いたぜッ、その言葉を忘れるなよッ!!」

 

こうなりゃ、やる事は1つだッ。

 

[ レビテト ]

 

「目の前の海で決闘だッオラッ!!」

 

--

 

鎮守府正面海域

この海面は突起した岩や小さな島などの障害物が多く、演習などの訓練には丁度良い。

もう少し沖に出れば深海棲艦との遭遇もあり得るが、鎮守府周りの海域であれば、その可能性は少ないらしい。

そして、その海域で叢雲とバチバチッと火花を散らして睨み合っている。

中央で大淀は深いため息をついていた。

 

「へぇ、アンタって艦娘でも無いのに浮けるのね。」

 

「浮いてるのは俺の力だ、勘違いするな。」

 

「はぁ?意味分かんない。」

 

「この後で嫌って程、思い知らせてやるぜ。」

 

「えー、不本意ではありますが……お互いの実力を知ると言う意味では悪く無いのかもしれない……そう割り切りましょう。」

 

「ルールは簡単、戦闘不能になった方の負けだ。合図は大淀に任せる。」

 

「良いわ、シンプルなのは好きよ。」

 

「分かりました、じゃあ、いきますよ?」

 

大淀は主砲を上に掲げる。

緊張の一瞬……見た限り叢雲は槍を構えてはいるが、何処かぎこちない。

ははーん……さては普段から使って無いな?

本懐は両端に着いてる二本の砲身と見た。

ならば、やる事は1つ……。

 

「……………………始めッ!!」

 

ドンッと空砲が鳴り響く。

同時に叢雲に向かって全力で接近するッ!

 

「クッ!?」

 

砲身から弾を撃たれるが、直線的で回避は容易い。

そのまま抜刀、『まさむね』で首なり胴なり峰打ちをすれば勝負はつくッ!

槍で進行を防ごうと横に薙ぐが、そんな大振りじゃ当たる事さえ困難ッ!

刀を力任せに振るい、槍を明後日の方向へ弾き飛ばすッ!

槍は空中で弧を描き、ちゃぽんと音を立てて海に落ちた。

叢雲は槍を弾き飛ばした勢いを殺せず、両手が上に持って行かれ、無防備な姿を晒した。

驚きと困惑の表情をする小娘に叩き込むには忍びないが、悪く思うなよッ!!

 

「もらったァッ!」

 

[ みねうち ]

 

m i s s !!

ガキンッ!!

 

叢雲の身体に峰が当たる前に硬い何かに弾かれた。

少なくとも、皮膚の硬さでは無い。

鉄や岩などの無機質を叩いた時の感触に似ている、おかげで手が痺れたぜ。

 

「どうなってやがるッ!?」

 

「アンタ、提督なのに艦娘の基礎知識も知らないのね?」

 

砲身で再度、狙いを定めて撃ってくる。

躱すには距離を取るしかなかった。

つまり、接近戦で倒す千載一遇のチャンスを逃した訳だ。

 

「艦娘には轟沈を防ぐために『アクティブバリア』が常に展開されているのよッ!」

 

「なんだそりゃ、無敵じゃねぇかッ!?」

 

「馬鹿ね、そんな都合の良い装備がいつまでも持つ訳ないでしょ。」

 

「どう言う事だ?」

 

「大きな衝撃を受けたり、ダメージが蓄積されると装置そのものが使い物にならなくなるの。」

 

なるほど、一定のラインを超えると生身にダメージが貫通すると言う事か。

 

「だけど、アンタはもう私に近づけないッ、触れる事さえ出来ないわッ!一方的に蹂躙されなさいッ!!」

 

叢雲は後退しながら砲身で撃ち続ける。

距離を詰めるどころか、引き離される一方だ。

 

「剣しか使えない己を恨むが良いわッ!!」

 

「誰が剣だけだって?」

 

刀を納刀し、叢雲に向き直る。

飛んでくる砲弾は必要最低限の動きで回避する。

 

「一芸で満足する程、安いギルガメッシュ様じゃないぜッ!!青魔法ッ!!」

 

「魔法ッて、何よそれッ!?」

 

[ ミサイル ]

 

一直線に鉄の塊が叢雲に飛んでいく。

多少、距離は離れているが、このスピードなら十分に意表を突けるッ!

しかし、叢雲は驚きながらも砲身をミサイルに合わせる。

 

「ミサイルくらい撃ち落とすッ!!」

 

精確に撃たれた砲弾はミサイルに直撃、爆音と共に相殺となった。

 

「あれの何が魔法よッ!!思いっきり物理技じゃないッ!!」

 

「歴とした魔法だッ!!覚えるのに苦労したんだからなッ!!」

 

「何、デタラメなッ……………。」

 

叢雲も何か言い返そうとするが、不意に口を紡ぐ。

少し離れていた大淀も異変に気付いた様だ。

どうやら、招かざる客が来たらしい。

辺りを警戒していると、30mぐらい先の岩陰や島の死角などから黒い不気味な生物が飛び出してきた。

 

「深海棲艦ッ!?」

 

大淀が驚愕の声を上げる。

 

「あれが、噂に聞く深海棲艦か……。」

 

決着を付ける予定が余計な邪魔が入っちまったようだ。

改めて武器を構える、使う剣は……斬鉄剣。

不完全燃焼のツケは自分達に払わせるとしようッ!!

 

「良いぜッ、このギルガメッシュ様が相手だッ!!」




こいつは、とんだ飛び入り参加が来ちまったなッ!
乱入した深海棲艦を迎え撃つギルガメッシュ艦隊、迎撃態勢を整えたギルガメッシュは叢雲にある提案をする。

次回、ギルガメッシュ提督

「相方の在り方」

相手は未知数だ、油断せずに行けよッ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

「相方の在り方」

この作品は艦これ×FFになります。
また、キャラ崩壊や口調や一人称が違う、文章が拙い等お見苦しい点は多々あります。
それらが苦手な方はブラウザバックをして下さい。

このギルガメッシュはFF世界を一通り巡った人物となります。


確か、深海棲艦は鎮守府正面海域に出現しないはずだが、さっきの戦闘音で引き付けてしまったらしい。

数は全部で4匹、人っぽい奴が1つと後は……如何にも形容し難い変なのが3つ。

 

「大淀、お前は戦えるか?」

 

「すいません、まだ装備が支給されていませんので……。」

 

叢雲と比べて持ってる装備が少ないと思っていたが、やはり必要最低限だったか。

 

「いやいい、幸いにも奴等は沖側から来てるし、少し距離がある、退避出来るはずだ……鎮守府へ逃げろ。」

 

「……提督、御武運を祈ります。」

 

鎮守府方面へ退避する大淀、入れ違いで深海棲艦と会敵する。

 

「駆逐3軽巡1、大淀さんを抜いて、戦力は私だけ……厳しいわね。」

 

「ふざけんな、誰を忘れてやがる。」

 

「深海棲艦にも『アクティブバリア』と似た様な障壁があるの、アンタは破れる?」

 

「へッ、てめぇは自分の心配だけしてりゃ良いんだよ。」

 

手にするは刃に触れるもの全てを切断する斬鉄剣。

バリア諸共、切り裂いてくれるわッ!

 

「ふん、途中から助けてくれって言っても知らないからね。」

 

「ぬかせ、狭間の百戦錬磨は伊達じゃないってとこを見せてやろう。」

 

深海棲艦との距離が段々と縮まってくる。

 

「そうだ、ルール変更の提案だ。」

 

「はぁ?こんな時に何寝ぼけてるの?」

 

腕にある盾の動作を確認する叢雲、どうやらアレも武器の一種みたいだ。

 

「そう言うなよ、勝負が有耶無耶なのは気持ち悪いだろ?」

 

「……内容は?」

 

「深海棲艦を多く倒した奴の勝ち、ずんぐりむっくりは1ptで人型は2pt、負けたら手持ちの武器1つ、勝者に譲歩する。」

 

射程内に入った深海棲艦が砲撃を開始する。

精度が良くないのか、まだ当たる気配はない。

 

「……伸ったわ、その約束ッ!」

 

返事と共に叢雲も反撃を開始する。

放った砲弾は見事、駆逐と名付けられた生物に直撃し、海の藻屑へと変貌した。

 

「私が一歩リードね、やっぱ無しは聞かないから。」

 

砲弾の装填をしつつ、叢雲は更に深海棲艦へと突撃して行く。

俺もノンビリしてられない、そう思って叢雲を追いかける。

 

「だが、その余裕も今のうちだぜ……必殺ッロケットパァアアアンチッ!!!!」

 

[ ロケットパンチ ]

 

突撃してる叢雲を追い抜き、超高速のパンチが残った駆逐に当たった。

遥か後方まで吹き飛ばし、派手に水切りした後、盛大に爆発した。

我ながら良い威力だと思っていると、少し先にいる叢雲が怒鳴り声を浴びせた。

 

「ちょっと危ないじゃないッ!!私に当てるつもりッ!?」

 

「味方に当てる程、不器用じゃねぇよッ!!」

 

ともあれ、これで深海棲艦の残りは2つ、ぐんぐりむっくりは問題ないが、人型は未知数だ、油断ならない。

俺達と深海棲艦との間は約10m、飛び交う砲弾が多くなり、激戦になる。

撃たれる砲弾は斬り払えど斬り払えど次々に飛んでくる。

 

「ちくしょうッ、近付きたいのにキリがないぜッ!」

 

「ご自慢の剣は御飾りかしらッ!?」

 

「お前だって当てたのは最初の1発だけじゃねぇかッ!!」

 

有効打が思った様に入らない。

そんな時、痺れを切らした叢雲は腕に装備した盾を前に突き出す。

 

「なら、これでどうッ!?これだけ近いなら避けようがないわッ!!」

 

パシュンと気の抜けた音と共に鉄の棒が4本、海に放たれる。

だが、深海棲艦達に目立った変化はない。

 

「何も起きないじゃねぇかッ!!」

 

「いいえ、当たったわ。」

 

直後、ずんぐりむっくりが轟音と共に爆発したッ。

こんがり焼けたずんぐりむっくりはゴポゴポと音を立てながら沈んでいく。

 

「今のは、まさか噂に聞いたダイナマイトと言うやつか。」

 

「『魚雷』ね。厳密には違うけど、概ねその通りよ。」

 

これで残る敵は1人。

弾幕も薄くなり、近付きやすくもなった。

斬鉄剣を構え直し、チャンスを伺う。

 

「さぁ、年貢の納め時だぜ覆面ッ!!」

 

「ァ……ァア…………。」

 

決して近付けない距離ではない。

だが、覆面からは隙が見えない、恐らく何かを企んでる。

さて、どうしたものか……。

 

「いつまで棒立ちなのよッ!ちゃっちゃと片付けるわッ!!」

 

「ッ!?馬鹿野郎ッ!!」

 

もう一度、盾を前に突き出して魚雷を放とうとする。

その瞬間、覆面は目にも留まらぬ速さで砲撃を放つ。

 

「えっ……?」

 

気付いた時には引き金を引く指を止められない。

再びパシュンと音が鳴り、魚雷が放出された。

しかし、今度は着水する前に放たれた砲弾と衝突する。

直後、空気を震わせるような轟音が辺りに響く。

 

「むッ叢雲ォオオォオオオッ!!?」

 

さっきの雑魚を焼いた魚雷だ、直撃ではないにしろ、無事で済むはずがないッ!!

間髪入れずに射撃体制に入る覆面。

 

「野郎……ッ!!」

 

[ かばう ]

 

今は倒すより叢雲の安否が優先だッ。

間に割り込み盾を構え、覆面の砲弾を弾く。

 

「叢雲ッ!!無事かッ!?返事をしろッ!?」

 

黒煙が濃くて叢雲の姿を確認する事が出来ねぇッ!

くっそ、こんなんで死なれちゃ目覚めが悪いぞッ!!

砲撃を弾き続ける腕が痺れ始め、後方を確認する余裕もなくなってきた時、あのキンキンとした声が響いた。

 

「……うるっさいッ!!耳に響くでしょうがッ!!」

 

「無事だったかッ!!」

 

「損害大で身体中が痛いけど、命に別状はないってとこかしら。」

 

怪我の度合いは見れないが、喋る余裕があるなら大丈夫だろう。

叢雲の安全を確保しつつ覆面を倒す方法はこれしかない。

 

「身体中が痛いとは思うが、俺の腰にある槍を抜いてくれ。」

 

「はぁ?これ?」

 

脇差の様に差してある槍を抜く。

龍を屠る為の槍……『ひりゅうのやり』

 

「いいか、俺は突っ込んで覆面の砲身を切断する、その後ろから奴を倒せッ!!」

 

「ちょっと待ってッ、装備が壊れて思った様に動け……」

 

[ レビテト ]

 

[ ヘイスガ ]

 

「……あれ、動ける……と言うか浮いてる?」

 

「スピードアップのおまけ付きだ、遅れるなよッ!!」

 

「……アンタこそ、失敗るんじゃないわよッ!!」

 

盾を前面に出して突撃する。

決して壊れる事がない『げんじのたて』だ、俺の腕が折れない限り攻撃を弾き続けるッ!!

 

「こいつでも喰らいやがれぇえええッ!!」

 

そのまま覆面の覆面に勢いをそのまま乗せた盾を叩きつけ、怯ませた隙に『斬鉄剣』で砲身を切り裂くッ!!

多少の抵抗は感じたが、『斬鉄剣』はそれを物ともしない斬れ味で奴の右腕ごと切断した。

 

「ァ……ァアアッ!イァアアアアアッ!!!!」

 

「やれッ!!叢雲ォッ!!」

 

斬り抜けた俺の後ろにいる叢雲が間髪入れずに突撃するッ!!

 

「沈みなさいッ!!」

 

槍と共に深海棲艦を貫通した叢雲。

残ったのは海に沈む骸だけとなった。

 

「叢雲、やったなッ!!」

 

クルッと振り返ると、火傷や焦げ、深海棲艦の返り血などでボロボロの叢雲だった。

主砲は両方とも粉砕、背負ってる装備は黒煙を上げていた。

 

「うおっッ!?思ってたより酷いな。」

 

「全く、怪我人に無茶させるんだから……。」

 

「怪我の元はお前だろ。」

 

「あたっ……。」

 

軽くチョップをかます。

 

「取り敢えず、体力だけでも回復させるか……。」

 

[ ホワイトウィンド ]

 

心地の良い風が辺り一面に吹き抜ける。

叢雲の火傷や多少の擦り傷は消えたが、服の焦げと返り血はどうにもならなかった。

 

「ほれ、痛みはなくなったはずだ。」

 

「アンタ……ほんとに魔法使いだったのね。」

 

「魔法使いじゃなくて魔法を使えるだけだ。」

 

元々は苦手だったんだがなぁ……。

 

「そんな事は後回しだ、帰るぞ。」

 

「……うん。」

 

鎮守府へ帰る最中、叢雲がもじもじしてるのに気付く。

 

「なんだ、ションベンか?」

 

「違うわよッ!!……悪かったわね、先走って。」

 

「その事か、済んだことは気にするな。」

 

「迂闊だったわ、もう少し様子を見るべきだった……。」

 

「だから、気にするなっての。」

 

神妙な顔の叢雲にデコピンをする。

 

「あうッ!」

 

「反省なら次に活かせばいいし、後悔ならするだけ無駄だ、過去は変えられないんだからな。」

 

「……そうね。」

 

「だから、今は楽しい事を考えろ。そうだ、勝負はお前さんの勝ちだから受け取りな。」

 

「えっ、これ。」

 

渡したのは『ひりゅうのやり』

さっき返してもらったが、負けた奴は勝者に譲歩だ、未練はない。

 

「弾き飛ばした槍の事もある、大切にしろよ。」

 

「…………そうね、これで我慢してあげるわ。」

 

「やっと調子が戻ったって感じだな。」

 

「うっさい。」

 

さて、大淀には何て言い訳するかなぁー。

そんな事を思いながら鎮守府へ帰る。

そしてハッとする、鎮守府は帰る場所ってことに気付いた。

怪物溢れる次元の狭間を彷徨い、世界を渡った俺に帰る場所があるなんてな。

 

「……フッ。」

 

「どうしたの、急ににやけちゃって……気持ち悪いわ。」

 

「良いんだよッ!ほら、鎮守府まで競争だッ!負けたら槍を返してもらうぞッ!!」

 

「あっ、ずるいッ!!待ちなさいよッ!!」

 

バッツ、お前との勝負は一旦お預けだ。

お前が世界の英雄なら、この世界の英雄になった俺様と戦ってもらうぜッ!

 




ふぅ……まったく、ヒヤヒヤさせてくれるぜ。
鎮守府に戻ったら労ってやれよな!
帰投したギルガメッシュは大淀に押し付けられた役職に従事する事になる。
その内容とは……?

次回、ギルガメッシュ提督

「戦力補充」

こいつは……仲間の予感!?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

「戦力補充」

この作品は艦これ×FFになります。
また、キャラ崩壊や口調や一人称が違う、文章が拙い等お見苦しい点は多々あります。
それらが苦手な方はブラウザバックをして下さい。

このギルガメッシュはFF世界を一通り巡った人物となります。


無事に鎮守府に辿り着くと、大淀が出迎えてくれた。

最初は叢雲の姿を見て驚いたが、怪我がないと分かると肩を撫で下ろした。

叢雲は予備の制服に着替えて来ると言って執務室を出た。

あれって制服だったのか……。

待つ事数分……戻って来た叢雲だが、挨拶した時と少し雰囲気が変わっている……。

 

「あ、そうか。頭のアレがないのか。」

 

「戦闘中に1つ故障したみたい。片方付けてても締まらないから置いて来たわ。」

 

「装備を直してあげたいのですが、担当の者が明日着任予定なんですよね。」

 

「今日はゆっくり休めだってさ。」

 

「いえ、叢雲さんには仕事がまだ残ってます。」

 

「そうね、と言うか元々はそういう予定だったし。」

 

「はぁ?」

 

俺は初期艦と挨拶するまでしか聞いていないぞ。

そもそも、鎮守府の仕事ってなんだ。

 

「そうですね、説明するより見てもらった方が早いですね。」

 

「百聞は一見にしかず……か?」

 

「そういう事、付いて来なさい。」

 

一体、何処に行こうってんだ……。

執務室がある建物から歩いて数分、見るからに他のより丈夫そうな建物があった。

 

「ここは?」

 

「前に主な施設が5つあるとお話ししましたね?」

 

「住居施設、工廠、入渠施設、備蓄倉庫、食堂……だったか?」

 

「その通り、ここはその1つ、『工廠』となります。」

 

「ふーん……。」

 

唯一、名前から想像が出来なかった施設だからか、イマイチ感想が出てこない。

 

「取り敢えず、中に入りましょう。叢雲さんは資材の準備をお願いします。『燃料』、『弾薬』、『鋼材』、『ボーキサイト』、後は『開発資材』と『高速建造材』も少々。」

 

「了解、準備出来次第向かうわ。」

 

「では提督、どうぞこちらへ。」

 

「おう……。」

 

何だか置いてけぼり気分だ……。

バカでかい扉の横にある勝手口を開け、中に入るとだだっ広い空間が広がっている。

だが、これと言って何かあるわけじゃない……と言うか、何もない。

強いて言うなら作業台とか椅子はあるが、それだけだ。

 

「『工廠』の1階は装備の開発、及び改修に使う部屋です。」

 

「部屋……部屋か、随分と広いな……。」

 

ビッグブリッヂの半分くらいか、走り抜けるのに数十秒近くは掛かりそうだ。

 

「そして、今回使う部屋は地下にあります。」

 

入って来た扉の近くに地下へと降りる階段があった。

大淀と共に地下の部屋へ向かう。

階段を降りた先に通路があり、その先には扉が佇む、恐らくこの先が目的の部屋なのだろう。

 

「着いたか、ここは何の部屋なんだ?」

 

「言うなれば……戦力補充の部屋でしょうか。」

 

「うん?上の部屋も戦力補充じゃないのか。」

 

「間違いではないですが……百聞は一見にしかずです。」

 

大淀が部屋へ入っていく。

一体、中に何があるのか。

部屋に入り、1番に目に付いたのは床に大きく彫られた魔法陣の様な図形。

そして、辺りには複数の機械が低音を響かせ稼働している。

 

「これは……召喚術か?」

 

「当たらずとも遠からずってとこですね。」

 

頭を捻っていると、叢雲が荷物を持って入って来た。

準備とやらが終わったらしい。

 

「簡単に説明すると、我々『艦娘』も別世界の存在でして、こちらの世界へ呼び出すシステム『建造』になります。」

 

「ちょっと待て、しれっと重要な事をいくつも出すな。」

 

お前らも別次元だったのかよ。

まぁいい、問いただすと切りがないから今は後回しだ。

 

「つまり、お前達と似た様な奴がいるんだな?何と言ったか……えーっと?」

 

「『艦娘』よ。」

 

せっせと準備を進める叢雲が口を挟む。

弾やら鉄やらを魔法陣の中に並べていく。

 

「そうそれ、艦娘。で、そいつらを呼び出すのが魔法陣ってことか。」

 

「そうなりますが、補足すると『艦娘』を呼び出すには『媒体』が必要となります。」

 

「叢雲が準備してるアレか。」

 

「『媒体』とは『燃料』、『弾薬』、『鋼材』、『ボーキサイト』、これらを一纏めで『資材』と呼びます。」

 

「し、『資材』……。」

 

「それとは別に『開発資材』と言う物が……。」

 

「ぬぉおおおおおッ!!新しい単語をいくつも出すんじゃないッ、覚えきれぬわッ!!」

 

なんて面倒臭い世界なんだッ!!

召喚なんて魔力を消費して出せば終わりじゃねぇかッ!!

 

「……トリ頭。」

 

「おいこら、ボソッと言っても聞こえてるからな。」

 

「あらそう、でも心配しなくていいわ。『建造』は私達『艦娘』しか出来ないから、提督は指示だけしてちょうだい。」

 

「提督ってのは、それだけなのか?」

 

1番上に立つ者が指示しか出来ないってのは、中々にもどかしい。

思い出すのも癪だが、俺の雇い主だったエクスデスも自ら行動していたのだから、俺も行動すべきだろう。

 

「そんな顔しないの、取舵は提督で航海は私達。生かすも殺すも提督次第って事よ。」

 

「なぁんか、釈然としないな。」

 

「そのうち慣れるわ。」

 

そう言うと叢雲は魔法陣から出てくる、どうやら建造の準備が整ったらしい。

 

「それじゃ、指示をお願い。」

 

「指示って……大淀、どうすりゃいいんだ?」

 

「厳密に何かしなきゃいけないって言うのはないので、適当で大丈夫ですよ。」

 

「そうか、じゃあ……『建造開始』ッ!」

 

俺の合図と共に叢雲は指を鳴らす。

すると、魔法陣の中央に閃光が迸る。

決して目が眩む程の光量ではない、むしろ暖かな温もりすら感じられる光だ。

しばらくは蜃気楼の様に揺らめいていたが、次第に真円にまとまる。

 

「この真円の光を『境界』と我々は呼んでいます。また、『建造』は大なり小なり時間が掛かりますが、この『高速建造材』を使用すると一瞬で『建造』が完了します。」

 

「使い方はこんな感じね。」

 

叢雲は手に持っていた『高速建造材』と呼ばれる缶を『境界』に放り込む。

すると、『境界』の表面にヒビが走った。

 

「おいッ、割れそうだぞッ!?」

 

「これでいいのよ。ほら、新しいメンバーが加わったようね。」

 

その瞬間、『境界』は鋭い音と共に砕け、破片と共に誰かが飛び出した。

その手には剣を携え、眼帯で目を覆う少女。

破片が散らばる中、彼女は華麗に着地する。

ゆっくりと立ち上がり、こちらを見つめ、口を開く。

 

「俺の名は『天龍』……ふふッ怖いか?」

 

「おぉ……?」

 

格好良く決めたと思ったら、なんか質問が変だ。

怖い……怖いか?

 

「いや、怖くない。」

 

「そうか……。」

 

心底、残念な様子であった。

まぁ、悪い奴ではなさそうだ。

 

「俺はギルガメッシュだ、適当に頼む。」

 

「アンタが提督だな、この天龍様を上手く使って見せろよな。」

 

天龍と握手を交わし、叢雲達にも挨拶をする。

 

「そっちの2人もよろしくな。」

 

「叢雲よ、頼りにしてるわ。」

 

「大淀です、一緒に世界を守りましょう。」

 

まだ分からない事だらけの世界ではあるが、これなら何とかやって行けそうな気がするぜ。

こうして、新たな仲間を迎えた俺たちは世界を救う初めの一歩を踏み出した。

 




随分と綺麗な姉ちゃんじゃねぇか、羨ましいぜコンチクショウッ!
だが、ギルガメッシュ提督の長い1日はまだ終わらない!
鎮守府の広さに対して人員の少なさが気になるギルガメッシュ。
その秘密を大淀が今、打ち明ける。

次回、ギルガメッシュ提督

「ミニマムじゃないよ!妖精さん!」

小さいからって間違っても潰すんじゃないぞッ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

「ミニマムじゃないよ!妖精さん!」

この作品は艦これ×FFになります。
また、キャラ崩壊や口調や一人称が違う、文章が拙い等お見苦しい点は多々あります。
それらが苦手な方はブラウザバックをして下さい。

このギルガメッシュはFF世界を一通り巡った人物となります。


 

「なーんか妙だよな……。」

 

「どうしましたか、提督?」

 

執務室に戻る途中で覚えた違和感がある。

広大な敷地に物音1つしない……静かすぎる。

 

「建物の割には人が少なすぎないか?」

 

「明日には2人の方が着任いたしますよ。」

 

「それでも少ないな……こんだけ大きければ50人はいないと、運営自体出来ないだろ。」

 

指揮を執る者がいて戦闘員がいても、サポートや運営する者がいなければ意味がない。

その人員が今のメンバーしかいないのでは、とてもじゃないが仕事が回るとは思えない。

 

「実はですね、心強い味方がいるんですよ。」

 

「あの子達ね。」

 

「あぁ、あいつらか。」

 

後ろからついて来てる2人は納得したように頷く。

 

「なんだ、来たばかりの天龍でも知ってるのか?」

 

「艦娘で知らない奴はいないと言っても過言ではないと思うぜ。」

 

「執務室に戻ったら御紹介しますね。」

 

艦娘の間では大層有名らしい。

一体、どんなお偉いさんなのか。

 

-執務室-

 

部屋に戻って来た俺らは楽な体制でくつろぐ。

俺は椅子、天龍と叢雲はソファー、大淀は立ったままで一息ついた。

 

「さて、改めて紹介しましょう。」

 

大淀はそう言ってポケットに手を入れる。

多分、PHS……じゃなかった、スマホだったか、それで呼び出すのだろう。

しばらくポケットをモゾモゾと探り、取り出した。

だが、持っているのはスマホでは無い。

 

「はい、提督。『妖精さん』です。」

 

出されたのは小人だった。

手の中にいる小人は鼻ちょうちんを作って、如何にも『寝てます』という感じだ。

 

「……なんだ、この訳分からん奴は?」

 

「だから、妖精さんですよ。」

 

まじまじと見てみるも、小人以上の情報はなかった。

これはアレか、ミニマムに掛かった人間というオチか?

 

[ ミニマム ]

 

M I S S ! !

 

ミニマムに掛かった奴はミニマムで治る筈だが、手応えがない。

 

「ちょっと貸して貰って良いか?」

 

「どうぞ、乱暴だけはしないで下さいね?」

 

「小人相手に取って喰おうなんて思わねぇよ。」

 

確か、懐にアレをしまってたはずだ。

あーと、あれでもない……これでもない……あ、あった。

手に持ったものを懐から取り出す、見た目は小振りの木槌だ。

それを見た天龍は何を想像したのか、止めに入る。

 

「おいおい、叩き潰し気じゃないよな?」

 

「だから、そんな事しねぇっつの。」

 

「じゃあ、それは何よ?」

 

叢雲は怪訝に思ったのか、木槌を半ば強引に持ってかれた。

 

「そいつはな、『うちでのこづち』つって、早い話が小人になってる奴を元に戻す効果がある。」

 

「ふーん?うちでのこづち……ねぇ?」

 

まぁ、初めて見るアイテムを警戒する気持ちは分かる。

俺も変なランプを不用意に触ってしまったがばかりに痛い目を見たからな。

 

「じゃあ試しにやって見るか、天龍?」

 

「おっ?使って良いのか?」

 

[ ミニマム ]

 

うちでのこづちを叢雲から受け取ろうとした天龍にミニマムを掛ける。

ポンッと軽快な音と共に煙が一瞬で天龍を包む。

また一瞬で煙は晴れるが、そこには天龍の姿はない。

良く見ると叢雲の足元には天龍に似た3寸ばかりの妖精さんがいた。よっぽど悔しいのか地団駄を踏んでいる。」

 

「え……ほんとに小人になっちゃった?」

 

「これが小人状態で物理技がほぼ無効化される。」

 

「イイカラモトニモドセー。」

 

「へいへい、今戻しますよーっと。」

 

天龍の上でうちでのこづちを振るう。

すると、ポンッと煙が立ち込め、晴れた頃には天龍は元の姿に戻っていた。

 

「えらい目にあった……。」

 

「それじゃ、本題に戻るか。」

 

早速、机の上に置いた寝ている妖精さんの上でうちでのこづちを振るった。

だが、幾度振るおうとも変化する兆しはない。

 

「これは……失敗ですか?」

 

「不調……じゃないわよね、天龍の時は使えてたし……。」

 

「あー、そうか。」

 

「何が『そうか』何だ?」

 

うちでのこづちは小人状態を治すアイテム。

つまり、うちでのこづちを振るって治らないと言うことは元々、この妖精さんはこの大きさなのだ。

 

「妖精さんは大きくなれないって事だ。」

 

「ちぇっ、ちょっと期待してたのに。」

 

「別に良いじゃねえかよ、それより腹減っちまったよ。」

 

外を見れば日は傾き、辺りを赤く染めている。

今日だけで色々とあった上に、なんやかんやで昼飯も食べ損なったからな。

俺の胃袋は悲鳴をあげていた。

 

「大淀、今日の飯も『レーション』ってやつになるのか?」

 

ここに来てからは備蓄食料こと『レーション』を食べ続けている。

見た目は四角に整えた大きいクッキーで、不味くはないがパサパサしていて味気ないし、何より食べたって気がしない。

大淀曰く、1食分の栄養はあるらしいが、どうせ異世界に来たんだから異世界特有の美味い飯を食いたい。

またレーションと言ったらぶーぶー文句を言おうと思ったが、別の答えが返って来た。

 

「いいえ、今日は叢雲さんや天龍さんが着任して人が増えたので私が作ろうと思います!」

 

「おっ?やっとマトモな飯か!?」

 

「へー、大淀って料理が出来るのか?」

 

「みんな大好き海軍カレーです。これなら誰でも作れるでしょう?」

 

天龍は成る程と頷く、馴染みのある料理らしい。

海軍カレー……聞き覚えはない。

一体、どんな夕飯になるのか……楽しみになってきやがった!

 

-食堂-

 

「暇だ……。」

 

やる事がなくてテーブルに突っ伏す。

料理を手伝おうと申し出たが、叢雲と天龍がいるから大丈夫と断られてしまった。

テーブルには大淀が一緒に連れてきた、さっきの妖精さんもいて、相変わらずスヤスヤと寝ている。

地味に聞きそびれたが、こいつ1人で本当にどうにかなるのか?

 

「実はとんでもなく力持ち……とか?」

 

ツンツンと妖精さんのほっぺをつついてみる。

うむ、柔らかい。

妖精さんで遊んでいると不意に鼻ちょうちんが破れ、目を覚ました。

 

「うお、起こしちまった。」

 

むくりと起き上がり、こっちを見るや否や敬礼をする。

ちっちゃくとも一人前の人員と言うわけか?

 

「そんな堅苦しくしなくて大丈夫だ、お前も疲れるだろ。」

 

そう言うと妖精さんは敬礼を解き、ペタンと座り込む。

天龍をちっちゃくした時は喋ってたが妖精さんは喋らないのか。

 

「………………。」

 

妖精さんと無言の時間が続く、正直気まずい。

 

「そうだな、このギルガメッシュ様がお近づきの印にこれをやろう。」

 

適当に見繕った物を懐から取り出す。

これなら小人サイズでも楽しめるだろう。

 

「この世に二つと無いアイテムだ、大切にしろよ。」

 

そう言って渡したのは、手のひらサイズの丸い緑色石。

妖精さんの目の前に置くと、転がしたりして遊び始めた。

気に入ってもらえてなにより。

 

「なんだ、随分と楽しそうじゃねぇか。」

 

「おう、新しい部下と親交を深めてるところだ。」

 

妖精さんの遊ぶ光景を見ていると、天龍が調理場から戻ってきた。

向かいの席に座る天龍。

改めて見ると、中々ナイスバディーだな。

 

「何だよ、何かついてるか?」

 

ジロジロ見たのが気になったのか、天龍は身体を見回す。

『良い身体をしてる』と言えばセクハラになるな、話題を変えるか。

 

「いや、何でもない。そんなことより、この妖精さんがいるだけで鎮守府が動くのか?」

 

「そうだな、簡単に説明するとだな……うーん。」

 

しばらく腕を組み、唸って悩む天龍。

そして、言葉を選ぶ様に答えた。

 

「妖精さんは1人じゃなくて、鎮守府に大勢いるんだ。んで、運営に必要な施設や設備は妖精さん達で十分に賄える……ってところか。」

 

「大勢って、まだ来て数日だが全然見かけなかったぞ?」

 

「普段は天井裏とか壁の中に住んでる、オレ達の廊下や部屋は広すぎるな。」

 

「なーる、そう言うことか。」

 

見えないだけで存在はしていて、物音がしなかったのは多分、身体が小さいからか。

 

「ところで、俺にお近づきの印はないのか?」

 

「あー……仕方ねぇな、今回だけだぞ。」

 

妖精さんにあげた手前、天龍にはあげないってのは筋が通られねぇし……これでいいか。

 

「ほれ、剣なんてどうだ。」

 

渡したのは片手で扱うには丁度良い大きさの剣。

 

「お、剣か〜……って、錆だらけだし刃こぼれしてるぞ、これ。」

 

「そりゃ武器として使えない剣だしな。」

 

「見た目がカッコいいだけに惜しい……この剣の名前は?」

 

「『味方殺しの剣』」

 

「物騒な事この上ないな。」

 

そんなこんなをしてるうちに、調理場から良い匂いが漂ってくる。

数分後、テーブルには出来た料理が並べられた。

ふむ、独特な香りではあるが食欲がそそられる良い香りだ。

 

「お米の上にスープとは、大胆だぜ。」

 

「何が大胆なのよ、バカ言ってないで食べるわよ。」

 

叢雲は両手を合わせて、いただきますと言う。

この文化は俺の世界にもあったが、あまり気にした事はなかったな。

今度、聞いて見ることにしよう。

 

「いただきます。」

 

早速、スプーンで米とスープを一緒にして口に運ぶ。

 

「こりゃ美味い!今まで食べた事がない味だッ!」

 

ここ数日がレーション続きってこともあってか、より一層美味く感じる。

ピリッと辛い味付けは米と良く合う。

 

「あぁ、美味いぜ!」

 

「うん、美味しい!」

 

「喜んで貰えて良かったです。」

 

その後は食べながら、俺様の冒険記を存分に語った。

好敵手と出会ったり、異世界で手助けしたり、トレジャーハンターになったり、思い返せば本当に色々あったもんだ。

聞いてた天龍は目を輝かせ、叢雲は嘘っぱちと一蹴。

大淀は自分も魔法が使えるか聞いてきたが、素養の問題だから何とも言えなかった。

食後は各々で片付け、解散した。

 

-自室-

 

鎧を脱ぎ、シャワーを浴びてからベットに転がり込み、ジーッと天井を見つめる

 

「明日にはまた仲間が増えるのか、段々賑やかになっていくな。」

 

誰かいる訳でもないのに呟く、次元の狭間で付いた癖だ。

思った事を口にするだけでも気持ちの整理や余裕が出来る。

 

「提督か……ハッ、俺にゃ荷が重いぜ。」

 

今まで一人旅を続けてた身だ、急に団体行動のリーダーとか無茶振りにも程がある。

そんな想いに耽っていると、コンコンと誰かがドアをノックした。

 

「開いてるぜ。」

 

「失礼するわ。」

 

入ってきたのは叢雲だった。

風呂に入ったのだろう、パジャマを着た叢雲の姿は見た目相応の幼さを感じさせた。

 

「どーした、相談ならいつでも受け付けるぜ?」

 

ベットに転がったまま、叢雲の方を向く。

不躾極まり無いが、緊張されるより何倍もマシだろう。

 

「相談と言うか……ちゃんとお礼を言ってなかったって思って……。」

 

「律儀な奴だな、上司は部下を守って当然だ。むしろ、怪我をさせた俺に落ち度があるんだから気にするな。」

 

「それはそれ、これはこれよ。」

 

ムスッとした表情で言ったかと思えば、今度は顔が赤くなってモジモジとし始める。

 

「あ、あの……ありがとね。」

 

こいつ……本当に叢雲か?

今朝の態度とまるっきり違くないか?

ちょっと俺様、キュンと言うか、守らなきゃって使命感が湧いてきたぞ。

 

「そうか、じゃあ『どういたしまして』とでも言っておうか。」

 

「うん、それだけ。悪かったわね、邪魔して。」

 

部屋を出て行こうとする叢雲。

ドアに手をかけた所でもう一度、俺の方へ向く。

 

「それと、アンタは理想のリーダーだと私は思ってるから自信持ちなさい、おやすみ。」

 

それだけ言うと部屋から出て行った。

聞かれてたのか……。

まぁ、なんだ……どうせなら期待を裏切らない様にしないとな。

 

「明日も頑張っていくか!」




おー?
ククッ、ギルガメッシュお前……もしかして叢雲ちゃんに『ほの字』なんじゃねぇか??
いやいや、隠さなくても良いぜ、俺には分かる!

ギルガメッシュ一行は新たに仲間を加え、意気揚々。
だが、そんな内に慌てた様子の妖精さんから一報が入る。
気になる内容は……なんと敵襲!?

次回、ギルガメッシュ提督

「南西諸島沖海戦」

アピールチャンスだ、カッコ悪い姿を晒すなよッ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

「南西諸島沖海戦(前編)

この作品は艦これ×FFになります。
また、キャラ崩壊や口調や一人称が違う、文章が拙い等お見苦しい点は多々あります。
それらが苦手な方はブラウザバックをして下さい。

このギルガメッシュはFF世界を一通り巡った人物となります。


 

俺様、ギルガメッシュの朝は早い。

朝はいつもの鎧を着込んで執務室に向かう。

そこで瞑想し、心を洗練することで1日が始まるのだ。

 

-執務室-

 

「提督、おはようございます。」

 

1日が始まらなかった……。

執務室に入ると大淀が書類を整理していた。

相変わらず仕事が早い奴だ。

 

「あぁ、おはよう。新しい仲間は今日だったか?」

 

「はい、つい先ほど連絡がありまして、あと少しで鎮守府に着くそうです。」

 

「なら、出迎えてやるか。」

 

わざわざ来てくれるんだから、それぐらいしないとな。

叢雲と天龍は……まぁ、そのうち執務室に来るだろう。

 

-鎮守府玄関前-

 

大淀と待つ事数分……鎮守府に一台の大型トラックが到着した。

門の前で停止し、窓から女性が身を乗り出して上機嫌に声をかける。

 

「すいませーん、宅急便でーす!」

 

「こら明石、ふざけないの!」

 

おぉ、珍しく大淀の敬語が崩れた。

普段、誰に対しても敬語である大淀から聞けるのは中々レアな体験だ。

 

「えへへ……あっ提督ですね?初めまして、明石です!」

 

「おう、ギルガメッシュだ。これからよろしく頼むぜ。」

 

「あれ、明石?2人って聞いたけど……間宮さんは?」

 

「助手席にいるよ、そっからじゃ見えないかもね。」

 

「間宮ですー、よろしくお願いしますー!」

 

顔は見えないが、奥の方から声が聞こえた。

 

「取り敢えず、トラックを置いて来ちゃいますねー。」

 

トラックを鎮守府の地下駐車場まで誘導した後、2人を執務室まで案内した。

 

-執務室-

 

執務室に戻るとソファーに腰掛けている叢雲と天龍がいた。

くつろいでる2人に明石と間宮を紹介する。

 

「2人とも、新入りの明石と間宮だ。」

 

「明石です、装備の開発ならまかせて!」

 

「間宮です、戦いは苦手ですので後方支援で頑張りたいと思います。」

 

挨拶もそこそこに、明石と間宮には鎮守府の現状を説明する。

戦闘員が2人しかいないし、叢雲の装備はぶっ壊れだしと割とヤバい。

 

「間宮は戦闘が苦手って言ってたけど、明石は出来そうか?」

 

「あ〜、すいません……私も大淀同様で艤装がまだ出来てないんですよ。」

 

なんとなく分かってたが、やはり明石も戦えない……。

そろそろジリ貧もここに極まれりってとこか。

 

「ただ、叢雲ちゃんの艤装はどうにか出来ますよ。」

 

「なに!ホントか!?」

 

「ふふん、技術屋をなめないでください。」

 

-工廠-

 

俺達一行は場所は移り、だだっ広い工廠。

間宮さんは材料の仕入れがあるとかなんとかで大淀と共に食堂へ向かった。

目の前にあるのは、壊れてうんともすんとも言わなくなった叢雲の艤装。

 

「結構、派手に壊れちまってるが……いけるか?」

 

「駆動系や制御系が著しい……特にアクティブバリアの損害が激しいみたい。」

 

明石は工具を使って艤装を診る。

叢雲は壊した手前、気まずそうにモジモジしていた。

 

「あの……明石さん、直りそうですか?」

 

「そうですねぇ……最終兵器と参りましょうか。」

 

最終兵器の出番早いな、おい。

て言うか、これだけ壊れてても直せるのか。

 

「先に入渠施設に行っててもらって良いですか?私は最終兵器をトラックから降ろしてきます。」

 

「なら俺も手伝うぜ、提督と叢雲は艤装を入渠施設に運んでくれ。」

 

天龍と明石は最終兵器を取りに工廠を後にする。

 

「あー……入渠施設ってどこだっけ?」

 

「ちゃんと覚えておきなさいよ……。案内してあげるから艤装持って。」

 

「うっす。」

 

叢雲に導かれること数分、少し奥まった場所に入渠施設はあった。

何でも海に隣接した場所にあると襲撃される可能性が高いんだとか。

 

-入渠施設-

 

この施設の役割は主に2つある。

1つは日々の疲労を癒す為の入浴施設、差し詰め銭湯と言ったところか。

もう1つが艤装や兵装などを修理する場所と聞いているが……。

 

「叢雲よぉ、機械を直すんなら工廠の方が良いんじゃないか?」

 

機械が湿気に弱い事ぐらいは俺にでも分かる。

入浴施設の隣で修理するのは不合理極まりないと思う。

 

「そうね、普通の機械なら工廠の方がよっぽど効率的だと思うわ。」

 

「なら何でだよ?」

 

そう聞くと、叢雲は目の前のお湯が入った浴槽を指差し、説明した。

 

「理由は簡単、ここのお湯……私達は『修復液』って呼んでるけど、これに艤装を漬けると自然に直るからよ。」

 

「はぁ?」

 

まるで意味……と言うか、理屈が分からない。

何かの比喩か?

 

「百歩譲って、文面通りに直るとしよう。なら、明石がいなくても勝手にその修復液に漬ければ修理できたんじゃ……?」

 

「それが出来ないのよ、司令官はガソリンを安全に扱える?」

 

「あ、そっか。」

 

なるほど、身近にはあるが専門的な知識がないと取り扱いが危険である可能性があるのか。

 

「一応、理解はしたが……水に浸けて直る機械って違和感しかないな。」

 

「そうね、未だ成分とか不明瞭なところもあるけど、今のところ判明している特性は人体にも有効ってことね。」

 

「人も治る液体か……。」

 

何とも胡散臭い液体だ。

だが、フッと気になる疑問も湧いた。

 

「ときに叢雲よ、この修復液は飲めたりするのか?」

 

温泉なんかは飲めると聞いた事がある。

これも似たようなもんだし、いけるだろう。

 

「一応、飲んでも害はないって聞いたことはあるけど……飲むの?」

 

「物は試しだ、これで回復ポイントだったら儲けもんだろ。」

 

早速、湧き出る湯元からお湯を掬って飲んでみる。

こ、これは……ッ!!?

 

「うっっっすッ!!まずッ!?」

 

「でしょうね、てか薄いって何よ。」

 

口の中が甘いような、甘過ぎて苦いような薬独特の後味に支配される。

いや、待てよ……この感じ、どこかで飲んだ覚えがあるような……。

 

「そうだ、エリクサー!!」

 

「わっ、急にどうしたのよ!?」

 

大声に驚く叢雲を尻目に懐からエリクサーを取り出し、飲み干す。

間違いない……この修復液はエリクサーが混ざってる。

 

「そりゃ漬ければ直る訳だ。」

 

「さっきからアンタ1人で自己解決してて、話が見えないんだけど?」

 

「あー、つまりだな……。」

 

叢雲には簡単に、万能薬が混じってると説明した。

 

「万能薬……本当に存在したら明石さんも商売上がったりね。」

 

「実際にある訳だが……それにしてもエリクサーが湧いて出るなんて聞いた事ねぇな。」

 

「よく分かんないけど、山の天然水的な物じゃないの?」

 

「エリクサーは精製して初めて出来る薬品なんだよ、少なくとも天然物ってのはないハズだ。」

 

「ふーん、まぁいいわ。詳しい事は水脈を調べてる大本営の研究を待ちましょ。」

 

些か謎は残るが、調べようにもどうしようもないから、一旦放置しておこう。

そうこうしていると、明石と天龍がバケツと資材を運んできた。

 

「提督ー、お待たせいたしました。」

 

「明石の最終兵器だ、大事に使えよ。」

 

天龍はそう言うと手に持っていたバケツを俺に渡す。

見たところ、粘度が高い液体が入っているようだが……?

 

「なんだ、このドロドロしたシロップみたいな液体は?」

 

明石にバケツの中身を聞いたが、当の明石は待ってましたとばかりにバケツの説明を始めた。

 

「よくぞ聞いてくれました!これは『高速修復材』と言って、『修復液』を濃縮した物になります!これを艤装に掛ける事によって即座に修復が完了します!」

 

「俺の知ってるエリクサーと違う……。」

 

「エリクサーが何のことか分かりかねますが……百聞は一見にしかず、早速叢雲ちゃんの艤装にぶっかけます!」

 

艤装を浴槽に浸け、バケツの中の液体を入れる。

すると、まるで時間が巻き戻る様に艤装の傷が塞がっていく。

いや、これは元に戻ると表現した方が正しいか。

数秒もすれば新品同様の艤装がそこにはあった。

 

「すげぇ……ほんとに直っちまった。」

 

「私も初めて見たけど、凄い効力ね……。」

 

艤装を湯船から取り出し、水気を取って叢雲に渡す明石。

 

「さぁさぁ、早速装着してみてください、叢雲ちゃん!」

 

「分かった、分かりましたから押し付けないで下さい!」

 

言われるがまま艤装を装備する、見た目は完全に昨日と同じだ。

主砲を空撃したり、脚部の艤装を動かしたりして確認する叢雲は満足そうに頷く。

 

「悪くないわね、元通りって感じ。」

 

「そうでしょ、そうでしょ!何たって『高速修復材』には数々の実験に基づいた……」

 

「明石、長そうなら手短に頼む。」

 

こう言った輩は必ず説明が長くなると相場は決まっている。

ので、明石には悪いが釘を刺して貰った。

不満そうな目線を送る明石から顔を逸らす。

少し間が空いたが、渋々と簡潔に説明してくれた。

 

「……『高速修復材』は瞬時に修復可能、だけど数には限りがあるので留意されたし。」

 

「うむ、分かりやすい説明ご苦労。」

 

「なぁ明石さんよ、限りがあるって言ってたが具体的にはどんぐらいあるんだ?」

 

話を聞いていた天龍が質問を挟む、確かに確認した方がいい意見だ。

 

「バケツ1つで1人分の修復なので、今のところは3回が限度です。」

 

流石にそこまで数は多くないか。

だが、これで幾分かは戦力を持ち直しに成功だ。

 

「ここで増員出来れば完璧なんだがなぁ〜。」

 

「なんだよ、俺みたいに『建造』すりゃいいじゃねぇか?」

 

「それが出来たら苦労しねぇんだわ、天龍。お前を呼んだので最後だったみたいでさ。」

 

昨日、寝る前に資料を漁っていたら『開発資材』の在庫が無いことに気付いた。

ついでに各資材も底を尽きかけている。

 

「なんだよ、何もできねぇじゃねぇか。」

 

「一応、大本営って所から任務を遂行すれば追加支給されるけど、月に一回ですからねぇ〜。」

 

「次の定期支給は1週間後よ。」

 

「先が長い……開店早々に1週間の休業か。」

 

シラナイトイウツミト シリスギルワナ ウゴケナクナルマエニ ウゴキダソウ~♪

 

「すいません、私のです。」

 

何か良い方法が無いものか……とか思っていると、スマホの着信音が工廠に鳴り響く。

電話に出る明石だが、直ぐに耳からスマホを離し、スピーカーモードに切り替えた。

画面には大淀の文字、そして画面越しに緊迫した声が流れる。

 

『提督、敵襲です!敵の艦隊が南西諸島沖で集結し進軍を始めたとの情報が入りました!』

 

「何だと!?詳しく聞かせろッ!!」

 

『妖精さんの情報ですと、中規模艦隊がここを目指して進撃中とのことです!』

 

マズイ、今の戦力は俺を含め3人しかいない。

恐らく、先の戦闘でここの存在がバレたのだろう。

そんな状態で拠点である鎮守府が狙われたら、正直守りきれる自信はない。

 

「敵がここに着くまで、どのくらい掛かるッ!?」

 

『約24時間です!!』

 

「……うん?すまない、もっかい言ってくれ。」

 

『約24時間、大体1日後くらいとなります。』

 

「長ッ!?」

 

思ってた以上に緊迫しない状況に逆にびっくりしたわ。

南西諸島ってそんな遠いのかよ。

 

「あー、どうすんだ?敵さんが来るまで防壁でも作りゃいいか?」

 

『深海棲艦は海上から真っ直ぐこちらに来ていますので、迎撃しましょう。』

 

「俺らも夜通しで海の上を走れと?」

 

『バカ言わないで下さい、ちゃんと脚はあります。操縦は明石に任せて、提督達は迎撃に当たってください。』

 

「大体、何時間くらい掛るんだ?」

 

『おおよそ1時間ぐらいになりますね。』

 

片道24時間が1時間になる脚とは一体……?

 

大淀の案内の下、俺たちは滑走路に到着した。

今更だが、ここの鎮守府は何でもあるな。

 

『明石、管制室で操縦をお願い。そこで操作が出来るわ。』

 

「お、遂にアレが完成したのね!はいはーい、おまかせー。」

 

そう言って明石は1番目立つ塔に1人で行ってしまった。

残された俺、叢雲、天龍は滑走路に放置されたままだ。

 

「……お前らは何か知ってるか?」

 

「来たばかりの俺が知る訳がないぜ、叢雲は?」

 

「何も聞かされてないけど……滑走路って事は飛行機じゃないの?」

 

「飛行機……ってなんだ?」

 

それは何かと聞こうとした時、数ある倉庫の内の1つが派手に音を立てた。

 

「な、なんだぁ!?」

 

音がした方向を見ると閉まっていたシャッターが上がっていく。

中からはずんぐりむっくりとした巨大な鉄の塊が出てきた。

少なく見積もってもバッツ達が乗っていた飛空艇の5倍は有りそうな大きさだ。

 

「でけぇ……なんだ、ありゃ?」

 

「アレが飛行機だよ、空を飛ぶ乗り物。まぁ、飛行機よりか輸送機ってのが正しいな。」

 

「船が空を飛ぶのを見た事はあるが、ホントに鉄の塊が空を飛べるのか……?」

 

「むしろ、船が空を飛ぶってなんだよ。」

 

「2人とも、早く乗らないと置いてくわよ!」

 

-輸送機 内部-

 

中に入り、通路を真っ直ぐ行くと執務室と然程変わらない部屋があった。

違う点を挙げるとすれば、椅子が固定式になってるぐらいか。

辺りを見回すと部屋が次第に暗くなり、壁に映像が投影される。

そこには明石が映し出されていた。

 

『明石エアーラインの御利用、ありがとうございます!当機は鎮守府発、南西諸島沖深海棲艦進撃部隊行となっております!』

 

「すまない、そろそろ説明してくれると助かる。」

 

明石は意気揚々と喋っているが、俺たちは全くの置いてけぼりだ 。

 

『では作戦の概要を説明しましょう。簡潔に言えば輸送機で相手の真上まで移動して強襲を仕掛けます。』

 

「なるほど、空からひとっ飛びって訳か。」

 

『はい、砲弾が飛んで来ない高高度からの投下出撃をする事で短い時間で長距離の出撃に対応できます!』

 

「ねぇ明石さん……高高度って言ったけど、まさか輸送機からダイブするの?」

 

『御名答、空の旅を存分に味わってきて下さい!』

 

「でもそれだと落下中に撃ち落とされるんじゃねぇのか?」

 

『心配御無用!それはですね……』

 

明石が降下作戦の概要を説明する。

それは俺が思っていた以上に凄まじい方法であり、1時間後には体験する事になった。




to be continued


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

「南西諸島沖海戦(後編)」

この作品は艦これ×FFになります。
また、キャラ崩壊や口調や一人称が違う、文章が拙い、最後が雑になる等お見苦しい点は多々あります。
それらが苦手な方はブラウザバックをして下さい。

このギルガメッシュはFF世界を一通り巡った人物となります。


-南西諸島沖 遥か上空-

 

『準備は良いですね!それでは健闘を祈ります!!シュート!!!』

 

明石の合図と共に輸送機の搬入口が開き、機体の外へ放り出された。

 

「あぁあああああれぇえええええええ!」

 

地上から10000m……空から落ちた事は何度もあるが、流石にここまで高いのは初めてだ。

生身なら普通に死ねる高さ……。

 

-1時間前-

 

『心配御無用!それはですね……この艤装で行ってもらうからです!』

 

そう言うと機体の壁から収納扉が開いて装備が排出された。

見た所、バッグと板の様だが……。

 

『皆さんはサーフィンをご存知ですか?』

 

「それなら俺様も聞いた事があるな、海の上で波に乗るアレだろ?」

 

『イエス!あの要領で降下してもらいます!』

 

「撃ち落とされる事に関しての返答を貰ってないんだが?」

 

『心配後無用と言ったハズです、そのサーフボードとバックパックにはアクティブバリアが内蔵されていまして、下からの砲撃や正面、上空の攻撃も防いでくれます!』

 

「この高さって空気が薄いと思うんだけど、それも大丈夫なの?」

 

『イエスッ!アクティブバリアが人体に必要な空気を常に一定に保つように設定してありますので、高高度故の酸欠は心配なしッ!』

 

衝撃緩和に空気保持、致命傷回避、気温調整、エトセトラエトセトラ……。

万能だな、アクティブバリア。

 

「……もし、俺様が艤装を吹っ飛ばされたら?」

 

『即死と迄は言いませんけど、助かる見込みは薄いですね〜、せめてバックパックだけは死ぬ気で持ってて下さい。』

 

「……おぉん。」

 

「提督……骨は拾っておいてやる。」

 

「縁起でもないこと言うなよ……。」

 

-現在-

 

側から見れば空を滑空してるサーファーに見えるだろうが、楽しんでる余裕はあまりない。

俺を円形に張っている膜がアクティブバリアなのだろう、思ったよりも空気抵抗はなく、普通に喋れるが、降下スピードがめちゃんこ速い。

ヘイスト掛けてもここまで速さを出す事は難しい。

つまり、何が言いたいかというと。

 

「ウォオオオオオオオオオオッ、誰か止めてぇええええええええッ!」

 

『落ち着け、提督!落ちても死にはしないッ!』

 

速度に恐怖する……以前の俺なら鼻で笑ってるところだが、制御出来ない速さは恐怖以外の何物も感じなかった。

少し離れた所から天龍が無線越しに何か叫んでいるが、全ッ然聞こえない。と言うか、聞く余裕もない。

 

「うわぁああああああッ!明石の馬鹿野郎ぅうううううううううッ!!もっとマトモな方法にしろよぉおおおおおおおおおおおッ!!!」

 

なおも加速は続く、身体に纏う浮遊感は生きた心地がしない。

放り出されてから何秒経っただろうか、依然として下には海雲が広がったままだ。

 

「雲がクッションになったり……はしないか……。」

 

海雲を見つめ、そんな事を思ってみたり……。

ハハッ、自分でも分かるくらい現実逃避してるぜ……。

そう思っていると海雲にポツポツと小さな穴がいくつか空いた。ありゃ一体……?

 

『対空射撃よッ!衝撃に備えてッ!』

 

叢雲のキンキンとした声が余裕のない頭に響く。

おかげでこれからどうするべきか、咄嗟の判断を下す事が出来る。

サーフボードの先を上げ、手で掴んで姿勢を安定させる。

叢雲と天龍の位置は……よし、あまり離れてない、いけるッ!

 

[ マイティガード ]

 

周りに張ってあるバリアにもう一枚バリアを張る、多少曇った感じはあるが完全に見えないわけではない。

アクティブバリアを信用してないわけじゃないが、念には念を入れる。

マイティガードと唱え終わると同時にサーフボードが小刻みに揺れ始める。

下からの衝撃を上に流してる振動だと事前に明石から聞いていたが、思ったよりも揺れが小さくて助かった。

そのまま、海雲へ突入し視界が白一色に塗り潰される。

次第に揺れは激しくなり、支えてる手が痺れる。

対空射撃に晒される中、遂に海雲を突っ切る。

ここまで落ちると海までは目と鼻の先だ。

最後にお祈りを済ませ、対空射撃の閃光を辿る。

これを目で追えば深海棲艦を見つけられるはずだ。

しかし、俺が深海棲艦を発見するよりも先に天龍が見つけた。

 

『2時の方向に深海棲艦を発見したぜ!重巡1軽巡1駆逐2だッ!』

 

「分かったッ、着水したら突っ込むぞッ!」

 

言い終わりと同時に着水、派手に水柱が立ち上がる。

水柱の中にいるが、バリアの外に水が流れていくので全く濡れなかった。

また、身体への負担はかなり小さく、少し重力に引っ張られた程度の力で済んだ。

 

[ グラビデ ]

 

水柱が収まる前に魔法を掛ける。

すると、反重力によって水柱の中を突っ切っり、真上に飛び上がった。

事実上、サーフィンとなった訳だ。

僅かな滞空時間だが、尚も対空射撃に加え砲撃も敢行する深海棲艦。

 

「おかげで居場所はモロバレだぜッ!」

 

距離はおおよそ20mくらい先か。

ならば、俺の距離だッ!

 

[ ジャンプ ]

 

サーフボードを踏み台にして、さらに天高く舞い上がる。

落下が始まると同時に抜刀、手にする劔は……。

 

「『フレイムタン』と『アイスブランド』の合わせ技だぁああッ!!」

 

落ちた先にいた駆逐の深海棲艦を二体の劔で叩き斬る。

アクティブバリアのせいでダメージ自体は薄い……だが。

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ゛!!!」

 

炎が身体を焼き払い、氷は凍結した所から崩れ去る。

先ずは一匹。

すぐに後ろへ飛び退く、俺がいた場所には砲弾が撃ち込まれ水柱が上がる。

どうやら戦闘の勘は鈍ってないみたいだな、良かった良かった。

深海棲艦も距離を置き、砲撃をかましてくる。

さて、あと三匹か……これはちょっと骨が折れそうだ。

なーんて思ってると後ろからも砲弾が深海棲艦に向かって撃ち込まれる。

 

「提督、あんま突っ走るなッ!」

 

「艤装も無いのに、何でそんな速いのよッ!?」

 

「悪りぃな、先に始めちまったわ。」

 

後ろにいた叢雲達も追いつき、頭数は同じになった。

残りは重巡、軽巡、駆逐が一匹づつ……だったか。

あのゴツゴツしたのが重巡だとして、駆逐は見たことある奴で、軽巡は別のタイプ……か?

いいや、今は些細なことだ。

 

「俺が仕掛ける、お前らは周囲を警戒してくれ。」

 

「待ってよ、私達だって戦えるわッ!」

 

会話してる間も御構い無しに深海棲艦供は砲撃してくる。

特に重巡の野郎は良い腕をしてる、的確に狙いを済まして撃ってきやがる。

命中弾が飛んで来る度に斬り払う俺の身にもなって欲しいぜ。

 

「いいやダメだ、今は後衛に徹してくれ。」

 

「軽巡の真髄は肉薄だッ!俺は行くぞッ!」

 

「落ち着け、とっておきの作戦があんだよ。頼む。」

 

「………………チッ、分かったよ。」

 

「ちょっと天龍!?」

 

何か言い返そうとする天龍だったが、渋々了解してくれた。

叢雲は……いかん、見事に不貞腐れてしまった……後でご機嫌をとってやらなくては……。

 

「いい加減、腕も疲れてきたし……終いにするぞッ!」

 

[ ヘイスト ]

 

速度は上げた、後は全力で深海棲艦に突っ込むッ!

無論、目の前に敵が飛び込めば深海棲艦も迎撃してくるだろう。

予想通り、一斉に砲身を向ける。

ならば、こうしてやれば良い。

 

[ フラッシュ ]

 

眩い閃光が辺り一面を覆い尽くす。

見た目が人型なら、少なくとも視力を頼りにしているはずだ。

これも予想通り、砲弾はあらぬ方向へ撃ち込まれる。

多少ではあるが、こいつは時間稼ぎ。

次はアイスブランドで海面を薙ぐ。

 

「……よし、こんなものか。」

 

上手くいくか半々だったが、目論見は成功した。

冷気が海面伝いにパキパキと氷結しながら深海棲艦の方へ向かう。

奴らは半径数mの氷で封鎖され、身動きが取れない。

砲撃を撃とうにも弾が凍りついたか、カチッカチッと引き金の音しか聞こえない。

……重巡の奴が憎しみを込めて睨んでるのが分かる。

 

「……悪りぃな、今楽にしてやる。」

 

そう言って、フレイムタンを氷海へ真っ直ぐ投擲する。

氷を溶かし進む劔はやがて停止。

尚も膨大な熱量を放つフレイムタンは周りの氷海を融解。

 

「せめて、最後は苦しまないように……な。」

 

直後、耳をつんざくような大爆発が起きた。

強い衝撃に、つい手で顔を覆う。

目線を再び氷海に移すが痕跡は跡形もなく、元の海が揺蕩う。

まるで、何も起こらなかった様に静かな海が広がっていた。

 

「フレイムタンは手向けだ、受け取っておけ。」

 

それだけ言い残し、俺は叢雲達の元へ駆け寄った。

 

「またせたな、上手く行ったぜ。」

 

「司令官、今の爆発も魔法なの?」

 

「原理は知らんが大爆発する魔法だ。」

 

叢雲にまた怪訝な顔をされてしまった。

仕方ないだろ、爆発するんだから……。

 

「おい提督ッ!あれを見ろッ!」

 

天龍がいきなり叫ぶ。

言われた通り、指差す方へ視線を向けると、何もないはずの海の上にポッカリと白い真円が浮いている。

 

「……あれ、なんか見覚えがあるような、ないような。」

 

「司令官も大概、トリ頭ね。」

 

「なんだよ、知ってるなら教えてくれよ。」

 

ちょっと胸に言葉が刺さりながらも答えを求める。

叢雲は何時も一言多いんだよなぁ。

 

「工廠の地下で建造したのは覚えてるでしょう?アレよ。」

 

「え、仲間が増えるのか!?」

 

アレって資源とか色々準備して出来るやつじゃないのか?

だが、現実に同じ現象が起きてる……。

どういうことだ……?

 

「堂々と迎えてあげればいいのよ、ほら来るわ。」

 

「待て、心の準備がッ!?」

 

純白の真円にヒビが入り、中から少女が飛び出した。

茶髪のセーラー服を着た、あどけなさを残す少女の見た目に反し、右腕全体を覆う仰々しい機械。

叢雲や天龍とは、また違ったタイプの艦娘……。

彼女は静かに着水し、ゆっくりと瞳を開く。

一体、どんな奴なんだ……?

 

「古鷹と言います。重巡洋艦のいいところ、たくさん知ってもらえると嬉しいです。」

 

曇りのない笑顔、そして柔らかい雰囲気……間違いないッ!

良い子だッ!

 

「よろしくッ!ギルガメッシュだッ!」

 

「はい、ギルガメッシュ提督ですね。よろしくおねがいします。」

 

こうして新たな仲間と出会い、鎮守府に迫る危機は去ったのだった。

この後、俺様がフルトン回収ってやつで絶叫したのは、また別の話だ。




ギルガメッシュ、お前は落ちても飛んでも叫ぶのな。
深海棲艦からの襲撃を迎撃した一行、仲間も増えて幸先は順調。
だが、ギルガメッシュ提督は一枚の紙と対面していた。
気になる内容は……?

次回、ギルガメッシュ提督

「武人からの贈り物」

何気無い1日も大切な思い出だ、大切にしていけよッ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

「武人からの贈り物」

この作品は艦これ×FFになります。
また、キャラ崩壊や口調や一人称が違う、文章が拙い等お見苦しい点は多々あります。
それらが苦手な方はブラウザバックをして下さい。

このギルガメッシュはFF世界を一通り巡った人物となります。


 

「チクショウ……やらかした……。」

 

南西諸島沖の戦いから翌日、俺は執務室の机に向かっている。

相手は始末書、何故こんな事に……。

 

-前日-

 

「提督ッ、ボードッ!?サーフボードはッ!?」

 

帰投してから数時間後、輸送機を含め整備をしていた明石が顔色を変えて俺の部屋のドアを蹴破って来た。

せめてノックはして欲しいぜ。

 

「ん?ジャンプしたらどっか行った。」

 

「ヌォオオオオオオオオオッ!!??なんて事をォオオオオオッ!?!?」

 

膝から崩れる明石、しばらくは顔は俯いていたが、次第に肩を震わせて笑い声が漏れ始める。

 

「あ、あの……明石さん……?大丈夫……デスカ?」

 

不意に悪寒が走り、嫌な予感が頭の中を埋め尽くす。

この感覚……知ってるぞ。

 

「フフ……フッ……ねぇ提督?」

 

「アッハイ。」

 

確か、バッツ達と決着をつけようとした時の事だ。

握った剣が偽物と気付いた瞬間の……あの取り返しがつかないと直感した感覚に似ている。

 

「……正座。」

 

「ハイ……。」

 

「アレって作るの大変なんですよぉ〜?」

 

「ハイ……。」

 

「わざわざアクティブバリアをですねぇ、小型化させてまでボードに積んだんですよぉ〜。」

 

「ハイ……。」

 

こうして向こう数時間後は明石の苦労話と説教を聞く羽目となり、翌日には紛失したボードの費用と素材を大本営に請求する為の始末書を書く事になった。

 

-現在-

 

「大本営が納得する紛失の仕方……壊れて爆発四散したとか……。」

 

ダメだダメだ、破片を要求されて詰む。

素直に無くした……は正当な理由にならなそう。

深海棲艦に盗まれた……もっと問い詰められるな。

 

「……無理だぁあああッ!!!」

 

正当な理由ってなんだよッ!

無くなったもんは無くなったんだよッ!

その時、コンコンコンッと扉をノックする音がした。

 

「……開いてるぜ。」

 

「提督、失礼しますね?」

 

入って来たのは古鷹だった。

元々、叢雲と一緒に鎮守府を案内する約束だったが、ボード事件の後始末で無くなってしまった。

 

「すまない、約束を違えちまって。」

 

「いえ、私なら大丈夫ですよ。お気になさらないで下さいね?」

 

おぉ……優しさが身に染みる……。

せめて……せめて何か詫びをしなくては……。

 

「そうだ、約束を違えた詫びも含めて、歓迎祝いをやろう。」

 

「え、よろしいのですか?」

 

「おう、受け取ってくれ。」

 

懐に仕舞ってあるアイテム袋に手を突っ込む。

古鷹に合いそうな物は……お、これなんか良いんじゃないか?

 

「俺様が持ってても宝の持ち腐れだからな、きっと似合うぞ。」

 

渡したのは小さなピンクのリボン。

受け取った古鷹は嬉しそうにお礼を言った。

 

「わぁ〜、可愛いですね!ありがとうございます!」

 

うんうん、喜んで貰えるとあげた甲斐があると言うものだ。

そう言えば大淀と明石と間宮さんにはまだ何もあげてなかったな。

 

「良いってことよ。それよりも何か物を失くしたときの正当な理由って心当たりないかー?」

 

「正当な理由……ですか?」

 

しばらく考え込む古鷹、そして前置きで「正当か分かりませんが」と置いた。

 

「回収が出来ない場所に落ちた……とか?」

 

「回収が出来ない場所……なるほど。」

 

そうだな……どの道、あのサーフボードは海の藻屑になってるだろう。

ならば、最初から海の底に落ちて回収不可、渋々置いてきたという事にしよう、そうしよう。

 

「助かった、何とかなりそうだ。」

 

「それなら良かったです。」

 

テキトーに書類を書き上げ、クリアファイルに差し込む。後は明石に渡すだけだ。

 

「あ、そう言えば俺に何か用があったのか?」

 

「あ……廊下を歩いてたら叫び声が聞こえきたので……。」

 

「oh……それは失敬したぜ。」

 

これは恥ずかしいが、まぁいいや。

さっさと明石に渡してこよう。

 

「よし、俺は工廠に行ってくるから、ゆっくりするなり、自室に戻るなり自由にしてくれ、じゃ。」

 

「はい、いってらっしゃいませ。」

 

古鷹と別れ、執務室を後にする。

明石にも何か用意してあげないとなー。

 

-工廠-

 

扉を数cm開け、中を伺う。

明石の奴、もう怒ってないと良いけど……。

 

「何コソコソしてるんですか。」

 

「おわッ!?」

 

後ろから掛けられた声に驚いて変な声が出る。

慌てて振り返ると、むすっとした明石だった。

 

「いやー、あのですね……書類書ケマシタヨ?」

 

緊張で声と手が震える。

明石はクリアファイルを受け取り、中の書類を確認した。

 

「……腑に落ちない点は残りますが、いいでしょう。次からは気を付けてくださいね。」

 

「あぁ、悪かった。そのお詫びも込めて、これをやるよ。」

 

そう言って結晶体の石を渡す。

受け取る明石は怪訝な顔をした。

 

「……綺麗ですが……この石はなんですか?」

 

「『エネルギー結晶体』って言う素材だ、道具や武具より、こっちの方が喜ぶと思ってな。」

 

「エネルギー結晶体……?」

 

目に見えて明石の眼の色が変わり、マジマジと結晶体を見つめる。

 

「提督、この結晶体の成分は分かりますか?」

 

「えッ!?成分ッ!?」

 

しまった……俺も良く分からないアイテムだから全然分からない……。

仕方ないから、正直に言う事にしよう。

 

「あー、すまん。詳しくは分からん……。」

 

「ほう、正体不明!実に結構ですよ!腕の見せ所です!」

 

あれ……なんかめっちゃテンション高くない?

予想以上の喜びように、逆に俺様が恥ずかしい。

 

「良いですよー、非常に良い!じゃ、私は工廠に籠りますんでッ!」

 

そう言って工廠に運ばれたトラックの荷台に篭ってしまった。

あれも工廠になるのか……。

何はともあれ、明石の機嫌も直ったようだし、良しとしよう。

 

「さて、この後はどうするか。」

 

ぐ〜〜ッ。

 

不意に腹の虫が鳴る。

時計を見ると針は正午を大きく過ぎていた。

 

「……取り敢えず、飯にすっか。」

 

忘れないうちに間宮にも歓迎プレゼントを渡さないといけないしな。

 

-食堂-

 

食堂に入ると良い香りが漂う、この香りはカレーだな。

 

「いらっしゃいませー、あっ提督さん!」

 

「おう、昼飯を頂きに来たぜ。カレー頼めるか?」

 

「かしこまりました、少々お待ちくださいね。」

 

間宮さんは厨房へ戻り、俺は適当に席に着いた。

実はこの前の大淀が作ったカレー以来、大好物になったんだよなぁ〜。

こう、肉とも魚とも野菜とも異なる風味が中々新鮮でクセになる。

間宮さんの料理を心待ちにしていると、厨房からパキーンッと鉄の乾いた音が響いた。

駆けつけると、付け合せのサラダを作っていた間宮さんがオロオロとしている。

 

「どうした?大丈夫か?」

 

「すいません、包丁が折れちゃって……。」

 

折れた包丁を脇に置き、切った野菜の処理をする。

それにしても、腹部から綺麗に真っ二つに折れたな。

 

「長年使ってた包丁なので、寿命だったのかもしれないですね。」

 

「そっか、直せるなら直してやりたいが……。」

 

流石に鍛治までやった事はないな……。

覚えて損はない……か?

 

「そうだな……代わりになるかどうか分からねぇが……使ってくれ。」

 

懐から出したのは布に包まれたほうちょう。

切れ味は身をもって体験済みだ。

 

「まぁ……よろしいのですか?」

 

「あぁ、歓迎プレゼントだ。」

 

「でしたら……ありがたく頂戴しますね、ありがとうございます。」

 

間宮さんは一度、ほうちょうを丁寧に洗い、また野菜を切り始める。

ザクザクと心地の良い音とリズムを刻み、あっという間にサラダが出来上がった。

 

「この包丁すごいですね、野菜がスッと切れちゃいます。」

 

「暇があれば研いでたからな、しばらくは切れ味は落ちないんじゃないか?」

 

最も、研いだのは俺じゃ無いが。

その後は間宮さんの絶品カレーを食べ、大淀を探すことにした。

 

-鎮守府内 浜辺-

 

探すこと約1時間、浜辺で天龍と一緒に所を発見した。

どうも、天龍が何か大きい物を大淀に見せてるようだ。

 

「よぅ、何してんだ?」

 

「提督じゃん、見てくれよこれ!」

 

そう言って見せつけるのは、人1人が入っても隙間がある大きな亀の甲羅。

何の変哲も無い素材ではあるが、何かあるのか?

 

「中身空っぽだけど、でけぇカメだッ!こりゃUMAに違いねぇぜ!」

 

「だから、こんな大きな亀はありえません。作り物ですよ。」

 

「あ〜〜、うん、そうだな。」

 

そうか、この世界だとカメはここまで大きく無いのか。

と言うか、モンスターらしいモンスターって深海棲艦を除いたら、全く見かけないな。

 

「兎に角、そんなに大きなガラクタは必要ありません、捨てなさい。

 

「まぁ、なんだ……取り敢えず工廠に持っていけば良いんじゃないか?」

 

「そーだそーだ、だだっ広く部屋なんだし、甲羅くらい置いたって良いじゃねぇかー!」

 

「提督、天龍さん、工廠は倉庫ではありますけど、ゴミ箱ではありませんよ。」

 

「世の中、何が役立つか分からないもんだぜ?これやるから、許してくれよ。」

 

大淀に100枚ほどの紙を渡す、大きさはカードと同じくらいか。

表面には複雑な模様と『ブリザド』の文字が書かれている。

 

「これは……一体?」

 

キョトンとして紙を見る大淀、天龍も物珍しげに見ている。

 

「大体100枚あるから、1枚だけ抜いてみな。」

 

「はぁ……。」

 

大淀は言われた通りに1枚引き抜く。

 

「次に天龍の方へ向けて、書かれてる文字を詠んでみろ。」

 

「おいおい、何をする気だ?」

 

「えーっと……『ブリザド』」

 

言葉にした瞬間、大淀の指に挟まった紙が消失して周りに魔力が満ちる。

それと同時に天龍の頭上には冷気が集約し、氷塊となって形成された。

 

「……え?」

 

「……は?」

 

いきなりの出来事に理解が追い付かない大淀と天龍。

後は重力の赴くまま、氷塊は天龍に落下した。

 

「ィデッ!?」 -259

 

ゴチンッと音がなった気がするが、アクティブバリアがあるし大丈夫だろう。

 

「天龍さん!?大丈夫ですか!?」

 

「ぉおお……何とかな……。」

 

「ほい天龍、取り敢えずこれを飲むんだ。」

 

「今度は何だ……うぇ、苦い……。」 500

 

天龍はハイポーションを受け取って飲み干す。

若干、口元から垂れたハイポーションをハンカチで拭き取る大淀の姿はお母さんみたいだ。

 

「良薬口に苦しって言うだろ、痛みは引いたか?」

 

「……あ、ホントだ!全然痛くねぇ!」

 

一気に明るい表情になる天龍。

まぁ、俺はハイポーション嫌いだからエリクサーしか飲まないんだけどな。

 

「それで提督、今のは何ですか……?」

 

「前に魔法が使えるか聞いただろ?それは魔力が無くても使える魔法……『擬似魔法』って言うんだが、それなら使えると思ってな。」

 

「これが……魔法。」

 

「いーなー、俺にもくれよー。」

 

「悪い、もう無い。」

 

「ちぇー、無いなら仕方ない。」

 

「実験台にした事も兼ねて1つ借りって事で。」

 

「よし、貸した。」

 

実際は作れない事もないけど、道具から魔力を抽出して紙に宿すって工程が凄く面倒くさい。

 

「あと大淀、1回使う事に1枚消費するから覚えておけよ。」

 

「つまり、あと99回使える訳ですね。」

 

「無駄遣いするなよ?」

 

艤装が無い大淀にとって、今ある武器は14cm砲だけだから、少しでも補えると思ったが天龍の反応を見るにあまり期待は出来ないな。

もう少し、有効打になりうる魔法を見つけられれば良いんだが……。

この日は浜辺を最後に自室へ戻った。

 

-自室-

 

大本営ってとこから物資が届くのは数日後。

それまでは在り来たりな日常を過ごすこととなる。

毎日、命を張るよりかは何倍もマシだが、せめて鈍らない様に訓練や練習だけでも出来る環境を整えないと。

 

「訓練……訓練な〜。」

 

人もいなけりゃ資源もない。

艤装を動かすにも燃料は必要だし、砲撃訓練も弾薬が必須。

出来る訓練と言えば体力作りか陸上での近接戦ぐらいか。

 

「時間が勿体無いが……どうしたものか。」

 

悶々と悩んでいると、部屋にノックが掛かる。

前は叢雲だったが、今夜は誰だ?

 

「提督、俺だ。ちょっと良いか?」

 

「どうぞ、開いてるぜ。」

 

相手は天龍か、こんな時間に何の用だろう。

扉を開けて部屋に入る天龍、剣の柄に手を置いて、そこら辺にあった椅子に座る。

 

「昼に貸した借りを取りに来た。」

 

真剣な眼差し……これは冗談などではないと悟る。

ベッドに寝転がっていた身体を起こし、座って話を聞く。

 

「そうか、要件は?」

 

「俺と腕試しをしてもらう。」

 

腕試し……ははーん、なるほどな。

俺様も気にはなっていたが、それは天龍も同じだった様だ。

お互い、剣を持つ者としての実力を知りたかった訳だ。

 

「いいだろう、表に出るぞ。」

 

「おう!」

 

-鎮守府 周辺-

 

ここなら騒音も気にならないだろう。

天龍は屈伸をした後に抜刀して構える。

 

「その剣……何かあるな?」

 

「バーカ、教えねぇよ。」

 

そりゃそうだ、ここで教えてもらっては興醒めも良いところ。

真剣勝負に水を差す事はしたく無いし、俺様も真面目にやるか。

引き抜く劔は……『バスターソード』

 

「いいねぇ、中々そそる武器じゃねえか。」

 

「お喋りもここまでだ、後は剣が語ろうぞ。」

 

巨大な劔を構え、時間が静止する。

聞こえるのは風の音だけだ。

 

「……ハァッ!」

 

「ッ!」

 

先に動いたのは天龍。

中段からの薙ぎ払いを剣技で流す。

続く下段の斬り上げ、叩き斬りも峰で受け止める。

天龍が剣を引く前に突き飛ばして体勢を崩そうとするが、逆に勢いを利用されて安全に後方へ逃げられてしまった。

この攻防で分かった事は力で俺様に分があるが、速さは格段に天龍の方が早いって事だ。

どうやら、叢雲と違い天龍は剣技の方も腕がある様だ、再び構える天龍には隙が全く無い。

 

「……………………。」

 

「……………………。」

 

だが、それは良くも悪くも普通。

無闇矢鱈に隙を無くせば良いというものではない。

僅かで良い、ほんの少しだけ死角を作る。

バスターソードの剣身を右後方に、刃を下にして構える。

この構えは移動しやすく、振り上げるだけで正面全域を攻撃できる。

だが、代償として左側がガラ空きとなる。

あいつは必ずそこを突いてくる。

 

「…………ッ」

 

読み通り、天龍は一気に駆け込んで俺様の懐へ飛び込みながら剣を突き出す。

ここで薙いでも懐へ逃げられるか躱されるだろう。

であれば、取るべき選択肢は1つ。

 

[ しらはどり ]

 

柄を握る左腕を離し、天龍の剣先を思い切り、叩きつける。

白刃取り、なんて大層な名前をしているが、刃を握ったら指がいくつあっても足りないぜ。

目標をズラされた剣は俺様を突くどころか、横から来た衝撃に天龍自身が耐えられず、身体のバランスが崩れる。

 

「グッ!?」

 

「終いッ!」

 

体勢を立て直そうとする脚を掬ってやる。

勢いを殺せず、踏ん張る脚も空中に舞う。

つまり、天龍は盛大に転倒したわけだ。

 

「グヘッ!」

 

「王手。」

 

首筋にバスターソードを添える。

天龍は両手を挙げて「降参。」と言った。

バスターソードを収め、天龍を起こす。

 

「ちくしょー、良い腕してるぜ。」

 

「これでも色んな所を渡り歩いたからな、簡単には負けられない。」

 

天龍も剣を収め、身体に付いた砂や埃を払う。

 

「ところで結局、剣の秘密って何だったんだ?」

 

「あぁ、これ?」

 

再び剣を抜き、前に突き出す。

今度は刃がスライドし、中にある筒が露出した。

 

「今回は飛び道具を縛ったが、これで近接も砲撃も出来るって事だ。」

 

「ガンブレードとちょっと違うが……通好みの武器じゃないか。」

 

「さっすが提督、こいつの良さがわかるか!」

 

「あたぼうよッ、色んな世界を見てはお気に入りの武器を揃える俺を誰だと思ってやがるッ!!」

 

「他にもあるのかッ!?」

 

「俺について来いッ、秘蔵のコレクションを見せてやるぜッ!」

 

その日の夜は朝を迎えるまで、武器の解説と自慢話を延々と天龍にしてやった。

天龍も興味津々な様で、見せるたびに素振りを所望していた。

そして翌日、目が覚めたのは正午を回ったのだった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

「揺れる決意」

この作品は艦これ×FFになります。
また、キャラ崩壊や口調や一人称が違う、文章が拙い等お見苦しい点は多々あります。
それらが苦手な方はブラウザバックをして下さい。

このギルガメッシュはFF世界を一通り巡った人物となります。


 

-倉庫-

 

数日が経ち、遂に大本営から物資が支給された。

納品された資材をファイル片手に大淀と点検する。

取り敢えず、これだけあれば次の支給日までは保つか。

 

「大淀、今回の支給でこの前の建造が何回出来る?」

 

「そうですねぇ……限界まで建造するとしたら大体30回ぐらいで底が付きますね。」

 

1日1回……いや、出撃や修理分の資材も含めたら無理か。

どうも、こういったやりくりは苦手だ。

 

「あと、何か地味に量が多くないか?」

 

大淀が説明してた量よりも僅かながら支給量が多い。

明細書と睨めっこして頭を捻ると、大淀はフフンと誇らしげに説明した。

 

「それは私がこっそりと『任務』を遂行していたからですよ。」

 

「任務?」

 

また聞き慣れない言葉が飛んでくる。

そろそろ忘れそうだから、マニュアル的な物が欲しい。

 

「特定のノルマを達成することで、追加の資材等が報酬として支給される制度です。本来は提督自身で受注するのですが、非常時だったので私がやりました。」

 

「ふーん……『資材等』ってことは、それ以外にもあったりするのか。」

 

「良い質問ですね、その通りです。」

 

同時に腕時計を確認し、パタンとファイルを閉じた。

 

「では参りましょう、新入りさんがお待ちしております。」

 

「なんだよ、来るなら前もって教えてくれりゃいいのに。まぁいいや、執務室?」

 

「えぇ、執務室で待機命令を出しています。」

 

「よし、行くぞ。」

 

-執務室-

 

ノックを3回鳴らして入室する。

中には見覚えのない2人の少女が敬礼して待っていた。

 

「白雪です、よろしくお願いします。」

 

「深雪です、よろしくお願いします。」

 

「よろしく、ギルガメッシュだ。ここで堅苦しいのは無しだから楽にしてくれ。」

 

「大淀です、今は提督のサポートに回っています。」

 

2人は顔を見つめ合わせて、敬礼を解く。

結構、顔とか雰囲気とか似ているが、双子だったりするのか?

 

「んじゃ、そうさせてもらおっかな。」

 

「こら、深雪ちゃん!」

 

ソファーに飛び乗る深雪を叱る白雪、何だか微笑ましいな。

 

「大丈夫だ、そのぐらいの方が俺様も取っつきやすい。2人は姉妹か?」

 

「はい、私は特型駆逐艦2番艦なので次女になります。」

 

「アタシは4番艦だから四女だね。」

 

「四女って……結構、大所帯なんだな。」

 

「おっと、ここで驚いてちゃいけないぜ司令官!なんせ全員で24姉妹なんだからな!」

 

「24姉妹ッ!?」

 

流石に多すぎだッ!!

家庭が複雑にも程があるぞッ!?

待てよ、そう言えば元々は船なんだったか。

それなら普通……いや、普通じゃねぇわ。

船を10隻や20隻って……実はこの世界はトンデモない技術力を持ってたんだな。

 

「はい、私達特I型で10姉妹、続く特II型も10姉妹、そして特III型は4姉妹。なので、合計で24姉妹となります。」

 

「因みに提督、叢雲さんも特I型姉妹の五女なんですよ。」

 

「マジで?全然似てない。」

 

あいつも2人の姉妹だったのか、しかも妹。

普段、ツンケンしてるだけに姉に甘えるあいつが想像できんな。

 

「まぁ24姉妹って言っても、まだ呼ばれてない妹もいるけどねぇ〜。」

 

「なんだ、その呼ばれてない妹って。」

 

イマイチ、ピンと来てない俺に白雪が説明してくれる。

 

「えーっと、私達『艦娘』は世界が深海棲艦の脅威に晒されると現界するのですが、一度に全員が召喚されると世界が負荷に耐え切れずに崩壊してしまう……です。」

 

「よく勉強してて偉いわね、白雪ちゃん。」

 

白雪の頭を撫でる大淀。

世界も世界で均衡を保つので精一杯ってところか。

 

「なるほどなぁ、まるで病原菌と戦う抗体だな。」

 

「正しく、その通りです。そして、地球は身体で人類は血液です。」

 

「随分とスケールのデカい話だ。」

 

そもそも1人の旅人がいきなり提督になること自体、スケールのデカイ話だけどな。

そう思っていると、深雪が「なぁなぁ」と呼びかける。

 

「そう言えば司令官、大淀さんから人手不足って聞いたけど、今から哨戒に行った方が良いか?」

 

「こっちに来て疲れてるだろ、叢雲達も居るし今日は休め。」

 

「いえ、私達なら大丈夫です。むしろ、叢雲ちゃん達をゆっくり休ませてあげて下さい。」

 

南西諸島沖の戦いから昨日まで出撃らしい出撃は無かったのだが、言われてしまったら無下にも出来ん。

 

「じゃあ、叢雲、天龍、古鷹は今日お休みで白雪と深雪と俺で行くか。」

 

「えっ、俺って……司令官の事か?」

 

「えッ、司令官は海上で戦えるのですか?」

 

2人が同時に驚愕する。

やはり、こっちの世界だと人間は自力で浮いたり戦ったりとか出来ないのか。

 

「この俺様を誰だと思ってやがる、常勝無敗のギルガメッシュ様だぞ?」

 

「ほんとか〜?確かにゴツくて強そうだけどさー。」

 

「強そうじゃなくて、実際に強いんだよ。」

 

「はいはい、水掛け論はそこまで。そこら辺は実戦を見れば分かるでしょう。」

 

パンパンと手を叩いて大淀が話の腰を折る。

大淀には休みの伝達をお願いし、白雪と深雪には指令を出した。

 

「それじゃあ、2人は1時間後に桟橋集合だ。」

 

「了解しました。」

 

「了解だぜ。」

 

-桟橋-

 

[ ヘイスト ]

 

[ レビテト ]

 

予めヘイストとレビテトは掛けておく。

最近はこのセットばかり使ってるが、これが無いとお話に成らない。

後は明石からの貰った耳当ても装備しておく。

確か、ヘッドホンと言ったか、特定の艦娘の艤装にリンクして通話が出来るとのこと。

桟橋に着くと、既に2人はフル装備で身を固めていた。

流石、姉妹とだけあって装備も似たり寄ったりだ。

 

「準備は良いか?正面海域だが気を抜くと痛い目に合うぞ。」

 

「訓練は沢山こなしたんだ、そう簡単にはやられないぜ。」

 

「私も深海棲艦に遅れは取りません。」

 

油断しなけりゃそれで良いが……この2人はしそうだな〜。

そんな事を思っていると、鎮守府から走ってくる人物が見えた。

あいつは……叢雲だな。

鎮守府から桟橋まで割と距離はあるはずだが、艤装込みで走った叢雲は多少息が上がってるだけだった。

まだまだ体力に余裕があるといったところか。

妹の姿を見た姉2人は再開の言葉と握手を交わす。

 

「叢雲じゃん、よぅ!」

 

「叢雲ちゃん、元気にしてた。」

 

「えぇ、姉さん達も変わらずね。」

 

うんうん、仲良きことは美しきかな。

だが、叢雲には休暇を言い渡したし、集合場所が此処って事も知らない筈だ。

 

「そんで、何で此処にいるんだ?」

 

「大淀さんに聞いたら教えてくれたわ。姉さん達が来るって言うのに、私だけお留守番はないでしょ?」

 

言われてみれば、そんな気もするが……分からん。

俺様には兄弟なんていなかったし、付いて行きたいものなのか?

悶々とする俺様を横に白雪は心配そうに言った。

 

「叢雲ちゃん、無理しなくても良いんだよ?」

 

「私なら大丈夫、それに3人より4人の方が安全よ。」

 

槍をブンブン振り回す叢雲、何としても一緒に行きたいらしい。

それを見た深雪はニシシとイタズラっぽく笑った。

 

「これはダメと言っても付いてくるぞ〜司令官。」

 

「決まりね、早速行きましょ。」

 

「あっ、おい……。」

 

俺の意見は無視か。

勝手に決まったが、まぁいいだろう。

これだけいれば、誰かが怪我を被ってもカバーできるし、この前と違って救難信号を出せば明石からの救助も見込めるはずだ。

こうして俺たち一行は海へ順番に飛び込み、パトロールを開始した。

 

-鎮守府正面海域-

 

「これで3体目っと。」

 

叢雲の放つ砲弾が深海棲艦に直撃し、炎を纏って沈む。

ちらほらと単騎でいる深海棲艦を駆逐していく。

 

「こいつも単体か、こいつらは群れで行動してるんじゃなかったのか?」

 

「深海棲艦の生態は未だ謎に包まれてるわ。群れるのにも何か条件があるのかも……。」

叢雲は考え込むが、叢雲が分からないんじゃ俺様はもっと分かんねぇや。

 

「司令官、仲間が来るみたいだぜ?」

 

深雪が指差す先には境界が出現している。

 

「よし、白雪と叢雲は周囲の警戒をしてくれ。」

 

「了解です。」

 

「分かったわ。」

 

2人は散開して索敵、深雪は近くで待機して貰う。

少し時間が経つと境界にヒビが走り、中から人が飛び出す。

赤毛の髪を黄色のリボンでツインテールに纏める少女。

 

「やっと会えた!陽炎よ、よろしくねっ!」

 

やたら元気の良い女の子だ、嫌いじゃない。

 

「俺が提督だ、よろしく。」

 

手を差し伸べて、握手を交わす。

陽炎は握手を交わしつつも怪訝な表情をしていた。

 

「……なんで戦場に司令がいるの?」

 

「現場主義者だから、とでも言っておこう。」

 

ふーんと一応の返事はしてたものの、釈然とはしてない様子。

そして、陽炎は横にいた深雪とも握手を交わした。

 

「私は深雪、あっちにいるのが白雪に叢雲な。」

 

「特型駆逐艦ね、頼りにしてるわよ。」

 

「おうよ、任せときな!」

 

この2人は息が合いそうだ、何となく雰囲気が似てるし。

 

「あ、そうだ。陽炎、ちょっと後ろ向いて。」

 

そう言えば、明石に言われてた事があるのを思い出した。

『新人が来たら艤装に装備して下さい。』と言われて渡された謎の筒で、先にはフックが付けられている。

 

「ん?何?」

 

取り敢えず、言われた通りに後ろを向く陽炎。

艤装の比較的頑丈そうな場所にフックをカチャンと引っ掛けた。

そんでもって、筒から垂れてる紐を引っ張る。

 

「ねぇ、司令ってば〜何してきゃああぁあッ!!?」

 

陽炎の言おうとした言葉は途中で悲鳴に変わった。

紐を引くと風船が瞬時に展開して、そのまま大空へ飛んでいってしまった。

確か、フルトン回収だったか。

後は明石の操る無人機で信号を頼りに回収、鎮守府まで輸送する事になっている。

 

「確かに効率的だけど、後で文句言われそうだな。」

 

「うん、確実に言われると思うよ。」

 

深雪と共に大空へ飛んでった陽炎を見送る。

既に点にしか見えないほど高く飛び上がっていた。

 

「よし、進むか。」

 

「りょーかい、こりゃ楽に終わりそうだな。」

 

「しつこく言うが、油断はするなよ?」

 

「わーかってるってー。白雪姉、叢雲ー、行くぞー!」

 

「なーんか嫌な予感がするんだよな……。」

 

ジメジメとしてると言うか、ねっとりしてると言うか……兎に角、纏わりつくような……。

 

「こう、何て言うか……監視されてる感じ?」

 

「もー!大丈夫だって!司令官も心配性だなー!」

 

「いいや、こう言う時の直感は当たるもんだ。」

 

深雪はプリプリと怒るが、俺は意見を変えるつもりはない。

 

これは何か起きる。

 

叢雲達も集合し、パトロールを再開しようとした。

その瞬間、白雪、深雪、叢雲の艤装から騒々しい警告音が鳴り響く。

 

「叢雲ッ!何の音だッ!?」

 

「魚雷の反応よッ!全員散開ッ!!!」

 

「「了解ッ!!」」

 

叢雲の号令を合図に素早くその場から離れる。

コンマ数秒後、尋常じゃない量の魚雷が元いた場所を素通りしていった。

 

「あぶねぇッ!!!」

 

第一波は避けたが、依然として魚雷は四方八方から撃ち込まれ、その本数も目に見えて多くなってる。

 

「深雪ちゃんッ!叢雲ちゃんッ!敵は確認出来るッ!?」

 

「ダメだッ確認出来ねぇッ!!」

 

「こっちも見当たらないわッ!となると海中……。」

 

「「「潜水艦ッ!!!」」」

 

「あの潜る乗り物の事かッ、見えねぇし相当厄介だなッ!!」

 

敵の姿が見えない以上、下手に移動は出来ない。

だが、このままでは魚雷に引っかかるのも時間の問題だ。

 

「ソナーが無いと辛いわねッ!」

 

「司令官ッ、退避しましょうッ!!」

 

「無理だッ白雪姉ッ!魚雷が多すぎるッ!!」

 

「いやッ退避だッ!!お前らッ、そこを動くなよッ!!」

 

「どっちだよッ!?」

 

深雪が叫ぶが、今は答えるより行動で示した方が速い。

確かに魚雷のせいで逃げ道が少ない。

だが、完全に退路を塞がれた訳ではない。

 

「ちょっと痛いが食いしばれよッ!!」

 

[ トルネド ]

 

「ちょッ!?」

 

「な、何?身体が持ち上がってッ!?」

 

「とッ飛ばされッ、うわッ!?」

 

魔力を風に宿し、一瞬で暴風を巻き起こす上位黒魔法。

空にまで魚雷は撃てっこないし、叢雲みたいな、ちんちくりんなら速攻で空に吹き飛ばされるだろう。

 

「そしてッ!俺様は巻き添えの心配をせずにぶっ放せるッ!!!青魔法ッ!!喰らえッ100億ボルトッ!!!!」

 

[ 高圧電流 ]

 

凄まじい音と共に海面が輝く。

海中を泳ぐ魚雷は一瞬で爆発四散し、全身でマトモに電撃を浴びた潜水艦や魚は海面へ浮く事になった。

 

「よしッ!後はッ!!」

 

吹き飛ばした方向を見るとタイミングよく叢雲達が落ちてきた。

落とすと後で何を言われるか分かったもんじゃないし、3人とも懇切丁寧に受け止めた。

 

「よしッ、いっちょあがり!」

 

「いっちょあがり!じゃないわよッ!このバカッ!!」

 

「仕方ないだろ、あれしか思いつかなかったんだって。」

 

叢雲はまだ吠える余裕があるようだが、深雪と白雪は息を整えながらも呆然としていた。

 

「おう、二人とも大丈夫か?痛い所は?」

 

「あ、ありません……。」

 

「アタシも大丈夫……って言うか、司令官……今の何?」

 

「まぁまぁ、それは帰ってからにしようぜ。海水が軽く湯気を立てる位には電撃を放ったが、奴らも全滅したとは限らない。ここは退くに限る。」

 

その後は何事も無く鎮守府に帰投出来た。

叢雲に2人を任せ、俺様はすぐに大淀に今回の事を報告した。

 

-執務室-

 

「そんな事が……これは思ってたより深刻な事態になってますね。」

 

「何だよ、他にも厄介事があんのかよ。」

 

大淀は静かに首を縦に振る。

手には走り書きした紙が数枚、収まっていた。

 

「つい先ほど、我々の所有する製油所が襲撃に遭いました。これは非常に痛手であり、早急に対策する必要があったのですが……問題はそこでは無いんです。」

 

近くにあるホワイトボードに大淀は簡易的な周辺地図を書き、今回の襲撃された製油所の位置を書き出す。

 

「ここに製油所があり、提督達が奇襲にあったのはここ、それで鎮守府の位置はここ。つまり……。」

 

製油所と鎮守府のほぼ真ん中に奇襲された場所が来る。

 

「奴等は俺様達の所在を把握した上で妨害工作をしたと言うことか?」

 

再び頷く大淀。

前に聞いたトラック島の襲撃と言い、敵にはかなりのキレ者がいるらしい。

 

「状況はほぼ最悪……ですが、やれる事からやっておきましょう。先ずは明日、天龍さんと陽炎さんと共に製油所の援軍に行ってもらいます。燃料が補給されなくなれば一巻のおしまいです。」

 

「どうやら今後しばらくは退屈せずに済みそうだな。このギルガメッシュ様に楯突いた事を後悔させてやろうじゃねぇの。」

 

「心意気は頼もしいですが、奴等は本気で人類を滅ぼそうとしています。その事を忘れないでくださいね?」

 

「分かってるよ、天龍と陽炎の連絡は頼んだぜ。」

 

「えぇ、了解です。」

 

-自室-

 

大淀に業務を引き継ぎ、俺は明日の為に自室へ戻り、早めの休息を取った。

正直な所、俺様にも不安はある。

だが、どんな修羅場だって乗り越えてきたんだ、今回だって上手くいく……いや、上手くこなしてみせるさ。

そんな思いを胸に秘めながら意識は落ちていった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。