闇と光より産まれし兄妹 (エルナ)
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プロローグ

おかしなところがあればご指摘ください。


メリオダスが魔神族を裏切る100年ほど前、魔神族と女神族の男女が結ばれた。もちろん同族と共にはいられない。彼らは身を隠し、二人の子を産んだ。その子等は魔神と女神のハーフ故か親を超える才を見せた。兄は魔神族の力を濃く受け継ぎ、妹は女神族の力を濃く受け継いだ。

 

その才気づいた最高神と魔神王はその子等を自分達へ引き入れようとした。しかし、両親もその子等も神々の要求に反発した。

 

最高神と魔神王は諦めず、女神族と魔神族をその家族へ送り込んだ。

 

両親は子供達を守ろうと必死に戦ったが、四大天使や十戒まで出てきては一介の女神や魔神ではどうにもならず両親は殺された。子供達は両親の仇を取ろうとしたが、『慈愛』の戒禁にかかり、抵抗できず捕らえられた。捕らえられた子供達は最高神と魔神王の前まで連れてこられた。

 

最高神と魔神王は子供達へ加護を与え、自分達に与せよと言うが子供達はそれを拒否し、女神と魔神を惨殺して逃走した。

 

神々は子供達を捕らえようとしたが、神々の加護により戒禁がとけた子供達は神々が一目おく才を発揮し、追っ手の手を掻い潜り、時には殺した。兄の方は両親を殺されたことで、女神族と魔神族を深く恨みそのことで、神殺し(ゴットキラー)という女神族か魔神族を殺す度に闘級が上昇する魔力が発現した。

 

『神々の加護』『神が引き込もうとする才』『神殺し(ゴットキラー)の魔力』これらにより女神族や魔神族の追っ手から逃れ続けた子供達は“忌み子”と呼ばれ、兄の方は“神殺し”と恐れられた。

 

その数十年後、魔界——いや、全種族を驚愕させる事件が起こった。

 

次期魔神王とまで言われ、女神族ですら恐れ手を出さなかったメリオダスが突如魔神族を裏切ったのだ。

 

それをキッカケに魔神族と女神族の均衡は崩れ、聖戦へと発展した。

 

これにより“忌み子”達への追っ手は激減した。聖戦に戦力は必要だったが、成長した子供達は十戒ですら一対一では殺される可能性が高いほどにまでとなっていた。

 

子供達の兄の方は妹よりも両親を殺された恨みが深く、妹の説得に耳を貸さず、聖戦に横槍を入れ女神族や魔神族を殺しまくった。

 

しかし、如何に“神殺し”であろうと聖戦へ横槍を入れ無事では済むはずがない。聖戦に横槍を入れる——それはつまり5種族を敵に回すことなのだから。

 

いくつかの戦場では女神族と魔神族を壊滅させられたがそれが続くはずがない。

 

十戒、四大天使達により“神殺し”は返り討ちに遭い致命傷を負った。殺されかけた“神殺し”を助けたのは1人の女神族と魔神族だった。

 

助けた女神族と魔神族——エリザベスとメリオダスは“神殺し”を治療し、手厚く保護した。もちろん仲間の光の聖痕(スティグマ)からは殺すべしという意見が多数上がったが2人は断固拒否した。

 

助けられた“神殺し”も2人を全く信用していなかった。何せエリザベスはともかくメリオダスは両親を殺された時に魔神族の指揮を執っていた者だったからだ。

 

何度となく殺そうとしたがしかし2人は決して“神殺し”を見捨てようとはしなかった。

 

そんな時、兄が光の聖痕(スティグマ)に捕まったと聞いた妹が隠れ家からこちらへ向かってくる途中で魔神族に囚われた。

 

それを耳にした“神殺し”は妹の救出へ向かった。その時にエリザベスとメリオダスが協力した。

 

助けられた妹は兄妹で助けられたことにとても恩を感じすごく懐いた。

 

そのことで“神殺し”も徐々に心を許し始めていた。

 

エリザベスとメリオダスもハーフであることで自分達の子供のように可愛がった。

 

しかし、幸せは長くは続かない。

 

エリザベスとメリオダスが最高神と魔神王に女神族でありながら魔神族と結ばれ、〈十戒(てき)〉をも救った罪と魔神族でありながら女神族の手を取り——さらには同胞を裏切り殺した罪で罰を受けた。

 

兄妹は当然反抗したが神々には敵わず、別々の場所に封印された。

 

兄妹の封印が解けるのはそれから三千年後のこと……

 




しばらくは妹の方しか出ません。
オリキャラのプロフィールは戦闘をした話の後書きに書きます。


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第1話 再会

ここはリオネス近郊の洞窟。そこに2人組の盗賊が居た。

 

「なぁ、本当なんだろうな?」

「ああ、下調べはバッチリだ」

 

彼等はとある噂を耳にしてやってきた。その噂とは——

 

「〝女神族が現れあらゆる願いを叶えてくれる〟てか?嘘くせぇけどな〜」

「昨日来た時にこの洞窟の奥に祭壇を発見したんだよ。絶対本物だ」

 

——ガセネタである。

 

どうすればそんな事実に近い噂が立つというのだろうか。確かにこの洞窟の奥の祭壇にはとある者が封印されている。女神族と同じ容姿もしている。しかし、ハーフであり、願いも叶えてくれない。

 

「おっ、あそこか?」

「おお!あそこだ!」

 

一本道を進んで行くと広間が広がっていた。その奥には翼の生えた女性の銅像があった。

 

「……あれが祭壇?」

「おう!」

 

1人目の盗賊は言いたいことを飲み込み、

 

「で?どうすればいいんだ」

「さぁ?」

 

…………。

 

「は?」

「いや、だから知らねぇって」

「は?じゃあどうすんの?」

「祈れば出てくるんじゃね?」

「下調べバッチリなんじゃなかったのか⁉︎」

「まぁまぁ、やってみようぜ?」

 

そう言って2人目の盗賊は手を合わせて、

 

「女神族様、どうか俺の願いを叶えてください」

 

バカか?、という感想を飲み込み変化がないか様子を見る1人目だが……何も起きない。

 

「おい、やっぱガセじゃねぇか!」

「ちっ、ふざけやがって!」

 

2人目の盗賊はキレて銅像を蹴る。

 

「こんなもんぶっ壊してやる!」

「はぁ?いやちょっと待て——」

 

1人目の制止を聞かず、盗賊にしては珍しく魔力が使える2人目は手から火の玉を出し、銅像へ放った。そして、銅像にヒビが入った。

 

「何!俺の攻撃でヒビしか入らないだとぉ⁉︎」

「バカか、お前は!高く売れたかもしれないだろ!」

 

そんな話をしている盗賊をよそに銅像のヒビから光が出てきた。

 

「「!」」

 

銅像のヒビが徐々に増え、ついに割れた。

 

割れた瞬間に一際激しい光を放ち、それが止むと、少女が居た。

 

「「おお」」

 

盗賊達は思わず見惚れた。理由は薄暗い中、本物の金のように輝く腰まで伸びた髪、白い陶器のような肌、瞳には不思議な模様——彼等には知る由もないが女神族の模様が浮かび、背中には2枚の翼と2枚の小さな翼の4枚2対光り輝くような白い翼。140cm程の子供のような身長だが神々しさを感じさせるには十分だった。

 

「貴方方が封印にヒビを入れてくださったのですね?ありがとうございます。おかげで出ることが出来ました。それでは」

 

そう言いつつ頭を下げ、女神族のような少女は洞窟を出ようと歩き出した。

 

「いや、ちょっと待ってくれ!」

「はい?何か?」

 

少女は振り向き、問うた。

 

「俺達の願いを叶えてくれるんじゃないのか?俺達はそう聞いて来たんだが……」

「ごめんなさい。その話は嘘ですね。長年の封印で魔力が殆ど失い、その残っていた僅かな魔力も封印を破るのに使ってしまい魔力がすっからかんなのです。それでは」

 

とまた頭を下げ、出口へ向かう少女に2人は激昂し、

 

「ふざけんな!ここまで来てガセだとぉ!」

「だったらテメェの体で払いやがれ!」

 

少女へ向かって飛びかかった。しかし、少女は鮮やかな動きで2人の首に攻撃し、意識を刈り取った。

 

少女は倒れる2人を受け止め、地面にゆっくり横たえ、もう一度お辞儀をすると出口へ向かって歩き出した。

 

洞窟から出た少女は大きな街を見つけた。城も見える為かなり人がいるのだろう。少女は情報収集の為街へ向かって飛んだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

街の上空へ着いた少女は頭を傾げた。住人が全員道端で倒れているのだ。

 

起きている人を探し、飛んでいると5人起きている人を見つけた。少女は起きている人達に近づき声をかけた。

 

「すみません。少しお聞きしたい……こと……が……」

 

しかし、その質問は少女の声に振り返った5人の顔——正確にはその内の2人の顔を見て消えた。

 

ここにいる少女を含めた5人は各々の理由で驚愕の表情を浮かべる。3人——エリザベス、ディアンヌ、スレイダーは少女の翼を見て、残る2人——マーリン、メリオダスは封印されたはずの少女を見て、そして少女はメリオダスとエリザベスを見て。

 

そして、5人が何か言う前に少女はメリオダスに飛びついた。

 

「よかったッ、無事だったのですね!メリオダスさん!」

「お前、ジブリールか⁉︎封印はどうした⁉︎」

 

その後興奮した少女——ジブリールはメリオダスに抱きついたまま離れなかったり、他も驚きでしばらくパニックになったりして話にならなかった……。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「——つまり、団長とジブリールは古い知り合いで彼女はつい最近まで封印されてたってこと?」

 

ディアンヌがメリオダスの説明をまとめる。

 

「まっ、そんな感じだな」

「お騒がせしました。興奮してしまって」

 

ジブリールが頭を下げる。すると豚——ホークが進み出て、

 

「ほーう、どれどれ。魔力0 武力900 気力3000 闘級3900、って魔力0ってどゆこと?」

「封印の影響ですね。休息を取って回復させないと——」

「魔力なしで闘級3900ってどんだけすげ〜んだよ、お前⁉︎」

 

ジブリールの言葉を遮り、ホークが叫ぶ。

 

「えへへ、それほどでも///」

 

ジブリールは頰を赤らめ満更でもなさそうだ。

 

「ふむ、しかし封印が解けたとは驚きだ」

「私としては貴方の成長の方が驚きですよマーリン。いつの間にか背が抜かれてる……」

 

ジブリールはマーリンを見上げながら落ち込みがちに言う。

 

「フッ、仕方あるまい。お前は封印されていたのだから」

「む〜、私の方が年上だったのにぃ」

 

可愛らしく頰を膨らませ零す。

 

「さてさてさーて、積もる話もあることだし俺達は少し2階に行ってくる」

 

そう言ってメリオダスはジブリールを連れて2階へ上がる。

 

2階の部屋へ入ったジブリールは開口一番に、

 

「……一体何があったのですか?」

 

メリオダスはさっきのディアンヌ達への説明の前に、ジブリールへ「エリザベスのことは後で話すから黙ってろ」と耳打ちをしていた。

 

それを聞いたジブリールは、エリザベスについては何も言わなかった。……ちらちらとエリザベスを見てはいたが。

 

「俺とエリザベスは神々に呪いをかけられたんだ」

 

メリオダスが話したのは壮絶な人生——人間ではないが——だった。

 

神々はメリオダスに2度と齢を取ることもなく、たとえ死んでも蘇る呪いを、エリザベスには人間として短い生を繰り返し、その度に前世の記憶を忘れる。万が一前世の記憶が全て戻ったら必ず3日で死ぬ。そして、転生する度にメリオダスと必ず出会い恋に落ち——メリオダスの目の前で必ず命を落とす呪いをかけられた、と。

 

そして、メリオダスは三千年で107人のエリザベスに出会い106人のエリザベスを看取った。

 

それを聞いたジブリールは俯き涙を流す。

 

「そんな……酷い」

「だからエリザベスや他の奴らにエリザベスの話はしないでくれ」

 

ジブリールは黙って頷いた。

 




ジブリールの名前の由来はイスラームの四大天使です。
決して、どっかの天翼種(あくま)ではありません。……容姿も性格も全然違うし。


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第2話 「真実」のガラン

今回長いです(汗)8000文字超えました(汗)
途中で切れば良かった……。


キィィン キィィン

 

メリオダスとジブリールの話が終わった後、一階から音が響いた。

 

2人が降りるとカウンターに座っているマーリンの手に球——神器『明星 アルダン』があった。

 

「当初の予定を変更…ただちにキャメロットに向かうぞ。キャメロット(王都)付近で異常な魔力の動きが確認された」

「ただちにって…マーリン一体何が——」

 

ディアンヌの言葉が終わる前にマーリンは“瞬間移動”を使い、キャメロットへ飛んだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「〈十戒〉…古に封印されし魔神の王直属の精鋭部隊……」

 

メリオダス達はキャメロット付近の異常な魔力の正体——巨獣 アルビオン討伐後情報交換をしていた。

 

「この圧倒的な化け物が動き出したのはその〈十戒〉が目醒めたため…そう申されるのですか?」

 

茶髪で金色の鎧をつけた少年——キャメロットの王 アーサーがメリオダスが倒したアルビオンを見上げ、メリオダスに問う。

 

「すぐには信じられねぇだろうけど、全部本当の話だ」

「たしかに…あの化け物を目にしなければ、まず信じられん話だったろうな…」

「古のブリタニアはこのような化け物が跋扈する大地だったとは、恐ろしい…‼︎」

 

メリオダスの言葉にアルビオンを見上げながらキャメロットの聖騎士達は呟く。

 

「だとしたら、団長。アルビオンを作った〈十戒〉は、もっと強いってことだよね?そ…そんな、とんでもない連中に勝ち目はあるのかな?」

「ハッハッ、お前ら何か忘れちゃいねーか?」

 

ディアンヌの言葉にホークが歩いて来て、言った。

 

「さっきのメリオダスの技があれば、どんな敵もイチコロじゃねーの?」

「た…たしかに!豚殿の言う通り。あの技は凄かった‼︎」

 

アルビオンを倒す時、メリオダスの全反撃(フルカウンター)を学習したアルビオンが顔から5つの角のようなものを出し、そこから魔力攻撃をして来たのだ。その瞬間、メリオダスが5人に増え、5つ同時に全反撃(フルカウンター)で跳ね返したのだ。

 

「にししっ、あれはオレの技じゃねぇ…神器ロストヴァインの特性『実像分身』さ」

 

メリオダスの神器『魔剣 ロストヴァイン』の特性は自身の半分の闘級の分身を作り出すことが出来る。分身の数を増やす程分身の闘級は下がるが、メリオダスの全反撃(フルカウンター)はほぼ 0(ゼロ)の力であらゆる攻撃魔力を跳ね返せる為メリオダスにとても相性のいい神器だ。

 

「神器といえば、ジブリールにこれを返しておこう」

「へ?」

 

マーリンがずっと空気だったジブリールに向き直り、指を鳴らすと空中に先端に白い球をつけた150cm程の杖が出現した。マーリンはそれを取るとジブリールに差し出した。

 

「あっ!私の神器『聖杖 ルーチェ』だ!なんでマーリンが持ってるの?」

 

ジブリールはマーリンから受け取ったルーチェを抱き、飛び跳ねながらマーリンに問うた。

 

「20年程前に競売にかけられているのを発見してな。些か出費がかさんだが買っておいたのだ」

「ありがとうマーリン!」

 

ジブリールはルーチェに頬ずりをしながらマーリンに礼を言う。……かなり愛着があるようだ。

 

「ジブリールの神器にはどんな特性があるんだ?」

「これはね、魔力を無限に貯蓄出来るの!これで封印の影響でなくなった魔力を回復——ってあれ?」

 

ルーチェを見つめていたジブリールの笑顔が引きつり、ギギギ、と音を鳴らしてマーリンへ視線を向け、

 

「ま、魔力めちゃくちゃ減ってるんだけど⁉︎」

「仕方あるまい。3000年も持ち主を変えて使われて続けていたのだからな。競売では無限の魔力をもたらす杖として出品されていた。人間にとっては無限に等しい量の魔力だったのだろうな」

 

というマーリンの言葉にジブリールは納得せず、

 

「3000年としても減りすぎでしょ⁉︎私の本来の魔力の倍以上蓄えてあったんだよ⁉︎」

 

ジブリールの言葉にマーリンはバロールの魔眼を取り出し、

 

「ふむ、数値にして1万2200か…かなり減ってるな」

「減りすぎでしょ⁉︎マーリンは使ってないの⁉︎」

 

ジブリールの言葉にマーリンはさっ、と目を逸らし、

 

「使うわけがないだろう?」

「使ったんでしょ!使ったんだよね!なんで使っちゃうの⁉︎」

「まぁ、落ち着け。私の手元に来た時は既に3万と少ししかなかった」

「使ってんじゃん⁉︎半分以上使ってんじゃん⁉︎ひょっとして、いつか私に返そうとして買ったんじゃなくてルーチェにある魔力が欲しくて買ったんじゃないの⁉︎」

 

その言葉にマーリンは再び目を逸らす。

 

「やっぱりそうなんだ‼︎うわーん、マーリンのバカァ‼︎」

 

若干涙目になりながらジブリールはマーリンをポカポカと殴る。

 

「…ところでメリオダス殿あの方は?」

 

アーサーがジブリールを見ながらメリオダスに問う。

 

「ジブリールか?最近まで封印されていた女神族だ。かなりの戦力になるぜ」

「それは心強い」

 

メリオダス達はジブリールを女神族として話すことにしている。ハーフと話すと話がややこしくなるし、見た目は完全に女神族なので問題ない。

 

そんな話をしていると、遠くの山に何かが落ちたような音がした。

 

「遠雷?」

「ううん?雨雲なんて見えな…」

 

その瞬間、全員が凄まじい威圧感を感じた。その後、すぐ近くに何かが落ちて来た。凄まじい衝撃により土煙が舞う。メリオダスはエリザベス、マーリンはアーサーの前に立ち、土煙から守る。

 

「ふーむ…72歩か…」

 

土煙の奥からそんな声が聞こえる。

 

「だ…団長。これって…これってま…さか」

 

ディアンヌが怯えたような声を出す。

 

「この距離なら70歩で届くと思うたが…3000年の間になまったものよ」

 

土煙が晴れると老人のような口調の、柄の片側が槍、片側が斧になっているハルバートを持ち、甲冑を纏ったような姿をしている4m程の者が姿を現した。

 

「お前は……〈十戒〉のガラン!!!」

 

ガランの姿を見たメリオダスが叫ぶ。

 

「久しいな、メリオダス。やはり儂の予想通りお前さんじゃったな。カッハッハッハッ。しかし相変わらずその姿のままか…」

「こんな…こんな化け物がこの世に存在していいの?」

 

ディアンヌが震えながら呟く。

 

「マーリン…魔眼が壊れちまってるぜ⁉︎」

「何?」

「だってよおかしいだろ」

 

「闘級2万6000って」

 

ホークの言葉に全員が動揺する。しかし、マーリンは、

 

「たしかに想像以上の闘級だが————この感じは妙だな…。ホーク殿、奴の魔力はいくつだ?」

「ん?魔力?え〜〜…と。魔力 0‼︎なんだよ〜〜〜〜この魔眼、本格的にぶっ壊れてるぜ‼︎」

「なるほど…おそらくはジブリールと同じく封印の影響か…」

「つ…つまり叩くなら今しかないってこと?」

 

ガランはガシャッガシャッと音を鳴らしながらメリオダス達へ歩いていく。

 

「ここが人間共の巣か…3000年前と比べると大分、様子が変化したの。だが相変わらずウジャウジャと群れる習性は変わっとらんか」

 

ガランは周りを見回して、呟く。

 

「狭いな」

 

そして右腕を振る。その衝撃で建物が粉々に吹き飛び辺りが更地に変わった。

 

「これで、少し動きやすくなったか」

 

そして、メリオダスに向き直り、

 

「さてと…メリオダス。お前さんとは一度じっくり手合わせしたいと思っておった……ッ⁉︎」

 

ガランはメリオダスの奥の方にいるジブリールを見ると驚愕した。

 

「まさか…女神族か⁉︎…いや、お主の顔には見覚えがあるの〜」

 

しばらく顎に手を当て考えていたガランだったが急に笑い出した。

 

「カッハッハッハッ!思い出したぞ!お前さん“忌み子”の片割れじゃなぁ?」

 

ガランは上機嫌に進める。“忌み子”という単語にジブリール、メリオダスの2人は顔を顰める。

 

「いやはや、儂も運が良い。まさかメリオダスと悪名高き“忌み子”の片割れと戦えるんじゃからな。しかし、もう1人の“忌み子”の“神殺し”はどうした?一緒じゃないのか?」

 

メリオダスはガランの質問には答えず、跳躍し、ガランの首を斬りつける。しかし、ガランは無傷でハルバートの槍の方で後ろのメリオダスを刺す。

 

さらに前から2人のメリオダスがガランへ飛びかかる。ガランはそれを一振りで斬りとばす。その衝撃で突風が吹き荒れる。

 

刺されたメリオダスと斬られたメリオダス達は消える。

 

(残像…いや、この手ごたえ。実像を伴う残像か)

 

さらにメリオダスがガランの後ろから斬りかかろうとする。

 

「次は後ろ…と見せかけて、上か」

 

ガランは上から飛びかかっていたメリオダスの首を掴む。

 

「なかなかおもしろい術だが…儂は、あまり小細工が好きくない」

 

後ろから来ていたメリオダスがガランの足や腰を斬りつけるが効果なく、ハルバートの槍の方で刺され、消える。

 

「な…んて化け物なのよ」

「アーサー王は御無事か‼︎」

「これ…は‼︎ああ、私なら大丈夫だ‼︎」

 

聖騎士の言葉にマーリンの完壁なる立方体(パーフェクト・キューブ)の中のアーサーが応える。

 

「…お前さん、本当に——あのメリオダスなんじゃろうな?」

 

首を掴まれたメリオダスはガランの腕を蹴るがダメージになっていない。

 

「ぐっ…」

 

ガランが手に力を込める。メリオダスの首からメキメキと音がなり、吐血する。

 

「まずいわ…このままじゃ」

 

スレイダーの言葉の途中でディアンヌがガランへ向かって走り出す。

 

「団長を…」

「“魔力解除(マジックキャンセル)” “物体転移(アポート)”」

 

ディアンヌが大きくなり、破けた服の上にいつもディアンヌが着ていた服が現れ、さらにディアンヌの神器『戦鎚 ギデオン』が現れ、ディアンヌはそれを掴みガランへ振り下ろす。

 

「放せ‼︎」

 

しかし、ガランはギデオンを蹴り上げられ、はね返ったギデオンに頭をぶつけたディアンヌは倒れる。

 

その瞬間、ガランの手からメリオダスが消える。ガランが周りを見回すと後ろにルーチェを持つ右腕にメリオダスを抱えたジブリールが浮かんでいた。

 

メリオダス達が戦っている間にルーチェから魔力を回収したジブリールが瞬間移動でメリオダスを手元に飛ばしたのだ。

 

「“聖櫃(アーク)”」

 

ガランが光の球体に覆われる。

 

「ぐぬぬ……はあッ‼︎」

 

しかし、闇を放出し、消す。

 

「なんじゃ、こんなもんか?」

 

「“執念深き聖人”」

 

ジブリールが上に手を掲げると、無数の光の球が現れた。ジブリールが手をガランに向けると光の球がガランに向かう。

 

「“伐娑利(ばっさり)”‼︎」

 

しかし、ガランはそれを気にせず突っ込んで来た。ガランに光の球が直撃するがダメージになっていない。そして、ガランの攻撃により、ジブリールの右肩から股まで真っ二つになった。

 

メリオダスはガランが突っ込んで来た時にジブリールに少し乱暴に下され無事だった。

 

ジブリールは傷を治しながら振り向き、ガランへ左手を向ける。

 

「“聖櫃(アーク)”ッ」

 

ガランを再び光の球体が覆う。

 

「効かんと言って——」

 

ガランが再び闇を放出しようとした瞬間、

 

「“瞬間移動”」

 

ジブリールが指を鳴らし、ガランが消えた。ジブリールは聖櫃(アーク)をダメージ目的ではなく、足止めとして使ったのだ。

 

自分の傷を治したジブリールはメリオダスに手を翳すとメリオダスを光が覆い、メリオダスの傷が治った。

 

「サンキュー、ジブリール」

 

ジブリールはメリオダスの言葉に微笑み、傷を治す為、ディアンヌへ向かって歩く。

 

「奴はどうした?」

「瞬間移動で飛ばしただけです。おそらくすぐに戻って来るのでそれまでに態勢を立て直——」

 

ジブリールの言葉が終わる前に再び何かが落ちたような音がさっきとは反対の方向から聞こえた。

 

全員がそちらを向いた時、ガランが近くに落ちて来た。ジブリールの予想よりかなり速くガランが戻ってきたのだ。

 

ジブリールがガランへ手を向けようとする前にガランにより右肩から左の脇腹まで真っ二つにされた。そして、ガランはジブリールを左手で殴り飛ばす。

 

「お前さんのような小賢しい魔術士が1番嫌いなんじゃよ、儂は」

 

メリオダスがガランに斬りかかるが頭を掴まれ、地面に叩きつける。

 

トドメを刺そうとメリオダスへ向かってハルバートを振り下ろそうとしたガランの前にマーリンが瞬間移動する。

 

「待て…取引といこう」

「ほう?」

「魔神の王に仕えし〈十戒〉のガランとやら貴殿の手並み、強さは正直想定以上だった。なぁガラン殿。貴殿がその気になれば我らを殺すことなどいつでもできよう。どうだろう?ここは一度引いてもらえまいか。代わりに〈十戒(そなたたち)〉の目的を教えてくれれば私が知りうる限りの情報を与え、協力すると約束しよう」

 

マーリンは平静を装っていたが内心では、

 

(10秒で考えろ!全員を無事にやりすごし、王都(キャメロット)に、これ以上の被害を与えずガランを退却させる方法を!)

 

そこまで話していたマーリンは体に違和感を感じた。

 

「なんだ…?…これは…」

「マーリン!だめだ…ガランには…」

 

メリオダスが何か言いかけるがその前にマーリンの体が灰色になり、石になっていく。

 

「お主嘘をついたな」

 

そして、完全に石化する。

 

「そ…んな…マーリン‼︎」

 

アーサーが悲痛の声を上げる。

 

「儂は〈十戒〉——『真実』のガラン。儂の前で「偽り」を口にすれば、何人であろうとその身は石と化す‼︎魔神の王より与えられしこの戒禁に抗う術はなし。さぁ…粉々に砕け散れい‼︎」

「やめろ…!やめてくれーー!」

 

ガランが左の拳でマーリン殴ろうとするが、メリオダスがガランへ斬りかかる。ガランはそれを左腕で受け止める。

 

メリオダスの額に黒い太陽のような模様が浮かび、瞳が黒く変わっている。

 

「おお⁉︎メリオダスの闘級が4400に⁉︎」

 

メリオダスがガランに斬りかかったら隙にスレイダーが石化したマーリンを持ち上げ、離れる。

 

「メリオダス殿につづけーー‼︎」

「「おおおおぉぉぉぉ‼︎」」

 

聖騎士たちがメリオダスに続き、ガランへ近づく。

 

「あ?」

 

ガランはそれを見て、ハルバートを振り回す。それにより聖騎士たちは抵抗することも出来ずバラバラにされる。

 

メリオダスはロストヴァインでハルバートを弾くが、それも長く続かず、両腕を斬り飛ばされる。

 

「ムチャクチャだ…強すぎるぜ…‼︎」

「いやぁ〜〜〜っ メリオダス様‼︎やめて!もう、これ以上殺さないで‼︎」

 

聖騎士達の亡骸が吹き飛ぶ中エリザベスの声が虚しく響く。

 

「こうなりゃ…やるしかねぇか」

 

覚悟を決めたような表情のメリオダスの額の模様が広がる。

 

「マーリンの術がきいてる、今なら——」

 

聖騎士達をハルバートで刺し殺したガランがメリオダスへ振り返る。

 

メリオダスの腕が闇により修復される。

 

「ホークちゃんあれを‼︎」

「ありゃ、喧嘩祭りん時の——…」

 

額の模様は顔の半分を覆い、両手から闇が溢れる。

 

「その姿…」

 

何かを言いかけたガランの腹部へメリオダスが蹴りを入れる。

 

「かはっ」

 

ガランが僅かに吹っ飛び、初めてガランにダメージが入る。

 

「闘級1万300…や…やっべぇ‼︎」

 

そして、メリオダスは闇でガランへ乱撃を加える。

 

その攻撃で巨人族であるディアンヌが吹き飛びそうになるほどの突風が吹き荒れる。

 

「団長……」

 

ディアンヌがメリオダスの身を案じる。

 

「…れるな…」

「団長…?」

「闇に…吞ま…れる…な。制御…しろ…」

「何をブツブツ言ってお…⁉︎」

 

さらに、メリオダスがガランへ闇を放つ。それは、闇の柱のようになる。

 

「メリオダスの奴…あのスゲェ魔力を制御してやがる‼︎」

 

ホークが驚きの声を上げる。しかし、

 

「お…お前さん。この闇の力‼︎まさか…まさか、ここまで腑抜けとるとはな」

 

闇の中にいるガランからハルバートがメリオダスに投げられ、メリオダスの腹部に刺さった。

 

ガランに傷のようなものはなく、無傷であった。

 

メリオダスの腹部にハルバートが刺さった瞬間、ガランを襲っていた闇も、メリオダスが纏っていた闇も全て消えた。

 

「興が冷めたわい……時とは残酷なものよのう…」

「メリオダス様ーーーー‼︎」

 

ガランがメリオダスへ歩み寄る中エリザベスが叫ぶがもちろん、メリオダスが立ち上がることもガランが止まることもなかった。

 

「裏切りの戦士メリオダス。そして〈十戒〉に立ち向かう愚か者共よ…あの世で、この無力さを戒めるがよい‼︎」

 

ガランはメリオダスからハルバートを抜き、メリオダスへ振り下ろした。

 

ガキンッ

 

メリオダスへ迫るハルバートは、しかし、メリオダスに当たる前に何かに阻まれた。

 

「ぬ?」

 

よく見るとメリオダスの前にピンク色の壁のようなものがあった。

 

「これは、魔力防御壁?」

 

いつの間にかエリザベス達が入っている完壁なる立方体(パーフェクト・キューブ)の上に右手にルーチェを持つジブリールが浮かんでいた。

 

しかし、先とは違い瞳が黒く染まり、女神族の模様が消え、右頬に黒い翼のような模様が浮かんでいた。

 

「闘級2万6000⁉︎あいつと互角じゃねぇか‼︎」

 

ホークが魔眼で見た内容に驚く。そして、ホークの声を聞いた周りはあの娘なら勝てるのではと希望を持った。

 

「お主、なぜそこまでの魔力が残っとる?あれだけの魔力攻撃をしておったのに…」

「“抑制(セーブ)”それが私の魔力」

「んっ⁉︎思い出したぞ‼︎確か魔力消費量を半分以下にする魔力じゃったな。なるほど、一見地味じゃがお主のような魔術士には相性の良い魔力じゃな。面白い‼︎さぁ、かかってこい!」

 

ジブリールは左手を空に掲げる。すると、光の球が1つ出現した。そして、左手から闇が光の球はと伸び、光の球を覆う。

 

「“光と闇の球体(ライト&ダークネススフィア)ッ」

 

左手をガランへ向け、闇に覆われた光の球はガランへ向かっていった。そして、それがガランへ当たると、今まで以上の突風——いや、爆風が吹き荒れた。

 

土煙がある程度晴れると先の攻撃が凄まじい威力であることがわかった。ジブリールが左手を向けた先は遥か彼方の山まで大穴を開けていた。

 

しかし、今ので完全に魔力が尽きたのか、右頬の模様が消え、息切れをしているジブリールがゆっくり降りて来た。

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ」

「スゲェなお前‼︎あんな化け物を倒しちまうなんて‼︎」

 

膝をつき肩で息をしているジブリールにホークが賞賛する。

 

「それより、早く団長の傷を治してあげて!」

「すみ…ません。魔力…が…完全に…なくなりました。しば……らく、休まない…と」

「とりあえず、応急処置だけでもするわよ」

 

マーリンを庇っていたスレイダーがメリオダスへ歩み寄ろうとした時、全員を絶望させる声が聞こえた。

 

「カーハッハッハッ!見事な攻撃じゃったぞ‼︎」

 

全員が声の方を見ると未だ完全には晴れない土煙の中からガランが出てきた。しかし、その姿は先と変化していた。

 

細身だった腕や脚が太くなっていたのだ。身体中に傷があり、血が出ているが致命傷にはなっていない。

 

そして、ホークからさらなる絶望を聞かされた。

 

「う、嘘だろ⁉︎闘級4万⁉︎何が起こったんだ⁉︎」

 

その答えはジブリールだけが知っていた。

 

「ク…“臨界突破(クリティカル・オーバー)”…?」

「そう‼︎儂の魔力“臨界突破(クリティカル・オーバー)”自身の武力を極限まで高める魔力じゃ」

「そ…そんな貴方の魔力は尽きていたはず…」

「そうじゃ、流石の儂も危なかったがさっき殺した人間共の魂を食らってなんとか魔力を回復させたのじゃ」

 

そう言ったガランの身体が元に戻った。

 

「ふむ、流石に短いな。じゃが魔力の尽きたお主と雑魚共を殺すには必要ないな」

 

そして、ガランはジブリールの心臓へハルバートを突き刺した。

 

「ゴハァッ」

「メリオダスよりは楽しめたぞ」

 

そして、さらに頭部を刺す。

 

「ジブリール‼︎」

 

メリオダスがなんとか体を起こそうとしながら叫ぶ。しかし、ガランにより頭部を斬り飛ばされた。

 

そして、スレイダー、ディアンヌ、石化したマーリンまでガランに斬られる。

 

そして、エリザベス達へも攻撃するが、

 

「ほ?……ぐぬッ!!?」

 

攻撃が跳ね返り、エリザベス達は無傷だった。

 

「ほぉ〜〜これは魔界の秘術“完壁なる立方体(パーフェクト・キューブ)”流石の儂にも容易には、破壊できんわい…」

 

感心したようにガランは言う。

 

「お主らも、よほどの強運よのう〜〜〜このガランを前に生きて立っておった者はそうはおらんのだから。さらばじゃ」

 

ガランは跳躍していった。

 

「ぐ…っ」

「あ…ああ…」

「あわわわわ…」

 

アーサーとエリザベスは涙を流す。

 

「“忌み子”の片割れは多少楽しめたからよしとするかのう。カーーーーッハッハッハッハッ‼︎」

 

ガランは仲間の〈十戒〉の元へ帰って行く。…自分の首の光の矢には気付かず。

 

そして、ガランが去ったエリザベス達の元では、

 

「クスッ。ふふ…」

「はっ‼︎お…おめぇ…」

「ふふふ…」

 

「あはははははははははははははははっ。あーーーっはっはっはっはっはっはっ」

 

不気味に笑う、色欲の罪(ゴートシン) ゴウセルの姿があった……

 




ジブリールのプロフィールを載せてきます。
身長:143cm 体重:秘密!
誕生日:8月9日
年齢(封印前):57歳
血液型:O型 利き腕:右
魔力:抑制(セーブ) 特技:料理
趣味:動物を愛でる 好きな食べ物:甘いもの
コンプレックス:身長
尊敬する人物:メリオダスとエリザベス
自分の好きなところ:髪
夢・野望:メリオダスとエリザベスと兄の4人で幸せに暮らす
好きな動物:動物全般
闘級(通常時):???
魔力(通常時):???
武力(通常時):900
気力(通常時):3000
闘級(魔神化時):???
魔力(魔神化時):???
武力(魔神化時):1000
気力(魔神化時):3500
闘級については本来ならガランは臨界突破(クリティカル・オーバー)を使っても勝てないとだけ言っておきます。

光と闇の球体(ライト&ダークネススフィア)は女神族と魔神族の力を合わせた“忌み子”しか使えない技です。本来は女神族と魔神族の力は相反する力の為合わせられませんが生まれた時から2つの力を持つ“忌み子”はこの相反する力を合わせることが出来る設定です。


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第3話 悪夢

遅くなり大変申し訳ございませんでした
m(_ _)m
私がサボっている間にアニメが終わってしまった(´;ω;`)
映画を楽しみにしておこう。

それより原作が進んだことにより重大な問題が発生しました。エスタロッサが、魔神族じゃないッ。エスタロッサが兄妹の両親を殺したことにしようと思っていたのにッ。
まあ、マエルが殺したことにしますか。そうすればゴウセルの記憶改竄でエスタロッサが殺したことになりますし。後ついでにリュドシエルも殺したことにしましょうか。……あいつ嫌いだし。いつか兄に殺させたいですが原作の進み方によっては出来ないかなぁ。マエル?あいつはほっといても死にそうじゃん。記憶は戻ったみたいだけど戒禁取り込んだままだし、拒絶反応は起こったままなんじゃないかな。



森の中の小さな小屋。台所で料理をする最愛の母。庭で剣を打ち合う最愛の父と兄。それを見る自分の膝や肩に居る小動物達。

 

自給自足の生活。貧しく、大変なこともあったが、平和で幸せだった日々。……呆気なく消え去り、もう2度と戻らない日々。

 

景色が切り替わる。黒い炎に包まれる森。降り注ぐ光。無数の黒と白の翼を広げる簒奪者(魔神と女神)達。その中で一際強力な4つの気配。

 

額に黒い太陽のような模様を浮かべる、身の丈の倍以上の大剣を持つ金髪の少年とその少年に似た顔立ちの黒髪の少年。更に銀髪の男性。2対4枚の白い翼を広げる長い黒髪の男性。

 

無数の魔神と女神に精一杯抵抗したが、完全に包囲され、最凶の魔神に最強の四大天使相手に敵うはずがなかった。

 

(……?最強の四大天使?マエルは居なかった、は、ず?)

 

景色が乱れる。そして、ブラックアウトする。そして次の場面では両親をリュドシエルとエスタロッサに殺された場面だった……。

 

絶望し、憎しみに囚われる自分と兄。それにより、メリオダスの「慈愛」の戒禁によって力を失う自分達。

 

それにより、微かな抵抗すら出来ずに捕らえられる自分達。

 

再び、景色が切り替わる。そこは魔神と女神から身を隠す為の隠れ家。聖戦が始まり、追っ手の数が激減し、自分は平和に暮らせると思っていた。しかし、優しかった兄は変わり、魔神と女神を根絶しないと気が済まないらしい。少なくとも親の仇だけは確実に取ると殺気立っている。

 

最後の1人の家族まで失いたくないと必死に説得をしたが、耳を貸さず、戦場を駆け回った。血塗れで帰ってくることは日常茶飯事で、時には重傷を負って帰ってくることもあった。

 

そして、ある日恐れていたことがついに起きた。〈十戒〉率いる軍勢と〈四大天使〉率いる軍勢が激突した戦場に横槍を入れた兄は両陣営から攻撃を受け、死にかけ、光の聖痕(スティグマ)に囚われたのだ。

 

最後の家族まで失うと、動揺した自分はなりふり構わず光の聖痕(スティグマ)が拠点としている妖精王の森へ向かった。

 

その途中で兄によって戦いが中断となり、帰還途中の魔神族達に遭遇した。〈十戒〉が率いていた為、苦戦し、そのまま捕らえられてしまった。

 

牢屋の中で兄のことを想っていると、兄が2人の魔神族と女神族を連れて助けに来てくれたのだ。

 

〈十戒〉と交戦しながらなんとか逃げ出すと2人の魔神族と女神族——メリオダスとエリザベスは自分達を匿ってくれると言ってくれた。

 

兄は信用しなかったが、自分は信じた。メリオダスはかつて自分達を捕らえようとし、戦ったこともあったがあの時とは雰囲気が穏やかなモノに変わっていた。

 

理由は恐らくエリザベスだと思った。不思議な人だった。一緒にいるだけで落ち着き、安心出来た。

 

この人なら変わってしまった兄を元に戻してくれると確信した。そして、それは間違っていなかった。

 

最初は全く信用していなかった兄も徐々に心を許すようになり、憎しみしかなく、自分すら写っていなかった瞳も憎しみが薄れ、自分を見てくれる優しい兄に戻っていったのだ。

 

もちろん、魔神族と女神族への憎しみが完全に消えたわけではないが、それでも、戦場へ横槍を入れる無茶はしなくなった。

 

ようやくまた、穏やかで楽しい日々を過ごせた。しかし、それも長くは続かなかった。

 

魔神王と最高神がメリオダスとエリザベスに罰を与えようとしたのだ。

 

自分達はもちろん反発したが、神々の圧倒的な力には成すすべもなく、自分と兄は封印されることになった。

 

封印される直前に見た光景は傷だらけで自分達を取り返そうとするメリオダス達と引き離される兄の姿だった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

イヤアアアァァァァァァアア‼︎

 

ベッドで寝ていたジブリールは泣き叫びながら飛び起きた。

 

ガラン戦での傷や消耗で気絶していたジブリールだったが悪夢によって目を覚ました。

 

「どうした⁉︎ジブリール‼︎」

 

メリオダスがジブリールの叫び声で駆け込んで来た。しかし、ジブリールは目の焦点が合っておらず、泣きながら震えているだけだ。

 

その様子にメリオダスは駆け寄る。

 

「ジブリール!しっかりしろ!」

 

メリオダスに肩を揺さぶられ、ジブリールの目がメリオダスを捉える。

 

「メリオダス、さん?」

「ああ、大丈夫か?」

 

ジブリールはメリオダスの問いには答えず、メリオダスの服を掴み、震えながら言う。

 

「いなく、ならないで、ください。もう、大切な人がいなくなるのは嫌なんです」

 

泣きながら震えるジブリールにメリオダスは抱きしめ、頭を撫でながら言った。

 

「安心しろ。オレ達はずっと一緒だ。お前の兄貴も絶対見つけてやる。落ち着いたらまた4人で暮らそう。な?」

 

メリオダスの言葉にジブリールは落ち着きを取り戻した。

 

「……すみません。取り乱しました。怖い、夢を見たので」

 

涙を拭いながら言うジブリールにメリオダス安心して、ジブリールの頭をポンポンと叩き、ジブリールを離した。

 

 




話がッ、進まないッ!次回は進みます。

ちなみにマエルとリュドシエルが兄妹の両親と戦っている間、メリオダスとゼリドリスは兄妹と戦っています。……手加減しつつ、圧倒してました。


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第4話 獄炎鳥

前回タイトルが書いてありませんでした。すみません。すぐに気づいて直したのですがここで謝罪させていただきます。

最近は、最新刊でマエルが女神族の力と魔神族の力を使っているのを見てドキドキしてますw


ジブリールはその後マーリン達を交えてあの後何があったかの説明を聞いた。ジブリールが寝ていたのは豚の帽子亭の部屋の1つだったらしい。

 

現在はいなくなった巨人族の少女——ディアンヌを追っているらしい。

 

「あの、それはわかりましたけど……」

「ん?どうかしたか?」

 

ジブリールは顔を真っ赤にしてプルプルしながら叫んだ。

 

「もっと他に服はなかったんですか!」

 

ジブリールが今着ている服はおへそ丸出しにかなり短いスカートに片足ニーソ(第1部のエリザベスの衣装)だ。元々ジブリールが着ていたワンピースはボロボロになってしまった。

 

「後は今エリザベスが着てる服くらいかな」

「なんで!」

「うちの制服だからだ」

 

メリオダスが親指を立てながら言う。

 

「キャメロットっていう国にいたじゃないですか!そこに別の服はなかったんですか!」

 

スカートを引っ張りながら叫ぶ。

 

「いや〜、ディアンヌが突然いなくなるもんだからよ。慌ててたからな。しょうがない。安心しろ、着替えはエリザベスがした」

「そういう問題ではありません!」

「まあまあ、落ち着け、服などどうでもいいではないか」

 

マーリンの声がジブリールを宥める。

 

「む〜、飛んだら見えちゃう……」

 

そんな話をしているとメリオダスとジブリールが何かに気づいたような仕草をすると外へ出た。

 

「ホークママ‼︎一旦ストップ‼︎」

 

ブゴーーッ

 

メリオダスが声をかけるとホークママは立ち止まる。

 

「メリオダス、急にどした。ウンコか⁉︎」

 

そう言ったホークの耳をメリオダスが引っ張る。

 

「イダダ!ミミガ〜〜‼︎」

「団長、早く行こ……⁉︎」

 

メリオダスへ話しかけていたキングが何かに気づいたように口を止めた。

 

「なんだ…?遥か遠くから感じるこの桁違いの三つの気配は‼︎」

「メリオダスさん、これは……」

「ああ、〈十戒〉と何者かは知らねえが……衝突しているようだ。〈十戒〉側は——ガランそれとモンスピート。もう一つは全く覚えのねえ魔力だ」

 

マーリン達も豚の帽子亭から出てくる。

 

すると突然、全員が殺気を感じる。

 

「お…お姉様‼︎この強烈な殺気は…まさか…」

「ああ…向こうも我々の存在に気づいたらしい」

 

その言葉にホークが驚く。

 

「うぉぉい‼︎本当(マジ)か⁉︎〈十戒(そいつら)〉は、こっから何百マイルも離れているんだろ⁉︎どんだけ鼻がいいんだよ‼︎」

「ニ…ニオイで気付いたんじゃないと思うよ?」

 

ホークの言葉にエリザベスがツッコミを入れる。

 

「…よりによってあいつに気付かれたか」

 

そのメリオダスの言葉の少し後、殺気の位置から魔力の塊が飛んでくる。

 

「団長‼︎凄まじい魔力の塊が猛速度(スピード)で、こっちに向かってきてる‼︎」

 

それに気付いたキングがメリオダスへ叫ぶ。

 

「10秒で到達」

 

店の中のゴウセルが呟く。

 

「ホークママ‼︎方向転換して全速前進だ‼︎」

 

メリオダスのその声にホークママは方向転換し、走り出すが、

 

「魔力の軌道がズレた?…追尾されてるわよ‼︎」

 

そうスレイダーが叫んだ直後に左側から鳥のような形をした炎の塊が飛んでくる。

 

「わ〜〜っ、なんか来た来た〜〜!!!」

「…オレがいると踏んでの魔力攻撃だろう。『全反撃(フルカウンター)』を使えばオレが生きていることと正確な位置がバレる。だが、やらなきゃ後はねえ」

 

そう言ってロストヴェインを抜くメリオダスだが、ホークママが唐突に揺れ、迫る魔力の塊に向かって行く。

 

「ホークママどうしたの⁉︎」

「おっ母‼︎そっちはダメだって‼︎」

 

迫る魔力の塊にメリオダスが『全反撃(フルカウンター)』を使おうとするが、

 

「ぴゃ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」

 

怯えたホークがメリオダスへ抱きつく。

 

「こら、ホーク!離れろって!」

 

メリオダスがもたついている間に魔力の塊は迫り、直撃する前にホークママが口を開け……食べた。

 

「「「「「「「「⁉︎」」」」」」」」

 

これにはメリオダスやマーリンも驚いた。

 

「いやー、すげぇなホークママ‼︎あの強烈な魔力を一呑みなんてよ‼︎」

「すごいというか…すごすぎません?」

「すごいですよ、ホークママさん!」

「ホークママ、お腹は壊してない…?」

 

メリオダス、キング、ジブリール、エリザベス。それぞれがそれぞれの言葉をホークママに投げかけている中、なにかを考えている様子のマーリンがメリオダスに言う。

 

「団長殿…進路変更を進言する」

「ん?」

「ま…待ってよマーリン!話が違う‼︎ディアンヌを捜す気がないなら、オイラは1人でも…」

「気持ちはわかるが落ち着け、キング」

 

マーリンの言葉に抗議するキングにマーリンは言う。

 

ディアンヌが〈十戒〉と対峙する強力な存在と〈十戒〉の攻撃を受ける前に気配を断ったからおそらく無事だと。

 

そして、全員はマーリンの進路変更に従って移動を開始する。

 

森の賢者ドルイドの聖地イスタールへマーリンが10年にメリオダスから奪った力を戻すために……。

 

 




今回原作と殆ど一緒(´;ω;`)
次回は変わるはず。……多分。


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第5話 ドルイドの聖地と神殺しの復活

映画観に行ってまいりました。とても素晴らしゅうございました。ネタバレになるので内容については触れませんが1つだけ。……最後に第3期制作決定!とか出るの期待してたの自分だけ?


「マーリンがメリオダスさんの力を奪ったってどういうこと?」

「団長殿の力があまりに強大かつ危険すぎたからだ」

 

ジブリールの問いにマーリンは答える。

 

「それゆえに団長殿は常に感情を操作(コントロール)し〝力〟の暴走を抑えていた。しかし、10年前の王都追放劇の中暴走しかけた団長殿の隙をつき、団長殿から〝力〟を分離させると、私はドルイドの長に封印の協力を求めた。だがその〝力〟が、今〈十戒〉と戦うために必要なのだ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

メリオダス達の案内で着いたそこは丘に岩が乱立しているところだった。

 

「ここが、森の賢者ドルイドの聖地なんですね」

「ああ。ここへ来るのも10数年ぶりかな」

「メリオダス様はドルイドの方々と面識が…?」

 

メリオダスとエリザベスが話しながら進んでいく後ろではジブリールが顎に手を当て考え事をしていた。

 

「どうした?行かぬのか?」

 

すると、後ろからアルダンが漂ってきて、マーリンが問う。

 

「いや、私の魔力をどう回復させるか悩んでいまして」

「ふむ。1番楽なのは魂を喰らうことだが——」

「そんなのダメです!」

「だろうな。だが問題ない。ドルイドの聖地に行けば魔力を回復させる術がある」

「ホントですか?」

「ああ、だから早く行くぞ」

 

前を見るとエリザベス達がドルイドの聖地へ入っていったところだった。

 

その後をついて行き大きな石柱をくぐるとそこには大きな湖があり、その中央には塔と岩山があった。

 

「おお〜〜〜〜〜〜っ!すげぇな、こりゃ‼︎」

「一体どんな仕掛け…?」

「2つの場所をつなぐ〝転移門(ゲート)〟の一種だ。ただし通過するには術者の許可がいる」

 

話をしながら〝転移門(ゲート)〟と島をつなぐ道の途中にある小さな島に2人の少女と1人の大男が立っていた。

 

「久しぶりじゃな。〈七つの大罪〉」

「何者?」

「ドルイドの長だよ」

「ほほう、長とな‼︎俺様はホーク‼︎〈七つの大罪〉の盟友にして師匠。残飯処理騎士団団長なんだぜ‼︎……プガッ⁉︎」

 

そう言いながら3人に駆け寄ったホークの鼻に片方の少女が持っていた杖を鼻に突っ込んだ。

 

「長は、この私ジェンナ様と妹のザネリじゃ‼︎」

「こ…このちびっこ共が長なわけ⁉︎んじゃこのオッサンは⁉︎」

「ボクは長たちをお守りする司祭のテオだよ!」

「お前一体何歳(いくつ)よ⁉︎」

 

ホークたちが騒いでいるとジェンナとザネリが後ろのジブリールに気づき、目を見開く。

 

「も、もしや女神族か?」

「初めまして。ジブリールです」

「ジブリール⁉︎まさかあの有名の…」

「ああ、最近封印が解けたんだ。しかし、封印の影響か魔力がすっからかんなんだよな」

「それについては問題ない。なあ、長よ」

「うむ。魔力を回復させるマジックアイテムを作った。まだ試作品故にお主程の魔力を完全回復させるとなるとちと厳しいかもしれんがな。ついでにお前たちが聖地にやってきた理由もわかっておる‼︎」

「話が早い…さすがはドルイドの長。助かる」

 

話を終えると大きな島へ進む。

 

「それじゃあ、メリオダス。私と右の塔に行くぞ。それからお前とお前もな」

「私…?は…はい」

「わかりました」

「じゃあみんなあとで!」

 

そうして、メリオダス、エリザベス、ジブリールの3人はザネリについて右の人塔へ入って行った。

 

塔の中は真っ暗で広さもわからない程だった。

 

「この中に俺の〝力〟が?」

「その前にジブリールの魔力だぞ」

「私の?」

「ーーーーーー」

 

ザネリが何事かを呟くと、地面に魔法陣が浮かび上がった。更に、人の頭程の水色の水晶球のような物が現れた。ザネリはそれを掴むと、ジブリールへ言った。

 

「その魔法陣に立つんだぞ」

「は、はい」

「それがそうなのか?」

「そうだぞ。2人は少し離れているんだぞ」

 

ジブリールが魔法陣に降り立つと、ザネリが水晶球を掲げ、再び何事かを呟き始まる。

 

「ーーーーーー」

 

すると、魔法陣と水晶球が光りだす。そして、その光がジブリールへ集まっていく。すると、さっきまで何も感じなかったジブリールの体から魔力を感じ始める。

 

最初はそこらの聖騎士程度の魔力だったが段々と増えて行き、大罪メンバーの魔力を超え、ガランにダメージを与えた時の魔力すら超え、更に増していく。その辺りになると、水晶球にヒビが入り始める。しかしザネリは構わず、呪文を唱え続ける。

 

そして、最後に一際強く輝くと、「ガシャァァァン!」と水晶球が砕け、光が収まった。

 

光の中心にいたジブリールは光が収まると、ふらりと地面に倒れた。

 

「ジブリール!」

「安心するんだぞ。魔力を急激に回復させたから気を失っただけだぞ。それじゃあ、メリオダス、お前の方を始めるんだぞ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

同時刻。ここは20年前まで妖精王の森があった場所の近く。そこの洞窟に盗賊団の根城があった。

 

そこでは酒を呑みながら騒いでいる20人程の小汚い男達と隅で震えている1組の男女とその子供らしき少年と少女がいた。父親は殴られた様子があり、少年は妹らしき少女を庇うようにしていた。

 

その、洞窟の奥にある、禍々しい異形の化け物の銅像の下で座っている一際大柄な男に1人の男が話しかけた。

 

「へへ、兄貴。そろそろ、楽しみましょうや!」

「そうだな!おう、野郎共女を連れてこい!」

「よ!待ってました!」

 

大柄な男が言うと周りの男達のテンションが上がり、震えている4人に歩み寄る。

 

「や、やめろ!妻と子供には手を出さないでくれ!」

 

父親が震えながらも3人の前に立ち、止めようとする。

 

「あ?邪魔すんな!男はいらねぇからな。そろそろ死ね!」

「へ!俺の斧で叩き斬ってやる」

「よ!アニキカッコイイ!」

 

大柄な男が傍らの血で所々が錆びた大きな斧を片手で持ち上げた。そして、それで銅像を叩き斬る。その光景に4人は青ざめた——瞬間、銅像から闇が溢れ出した。

 

「な、なんだ⁉︎」

 

1番近くにいた大柄の男が離れながらそう言う。

 

そして、闇が消えると、黒髪の左腰に剣を差した少年が立っていた。少年は左の頬に黒い翼のような模様があり、身長は170cm程あった。そして、その少年の顔には明確な怒りと殺意が浮かんでいた。

 

「クソがぁぁ!魔神王と最高神共!奴ら絶対に殺してやる!」

 

その怒気のこもった声に全員が圧倒され、黙る。

 

「はあッ、はあッ、はあ〜。クソ、魔力が完全に尽きてるな。回復させねぇと」

 

そう言いながら、少し落ち着いた様子になり、洞窟の出口へ向かって歩き出した。

 

その様子に盗賊団達は我に返った。

 

「テメェ、何もんだ!何処から入りやがった!」

「黙れ、下等な人間風情が。とっとと失せれば生かしてやる」

「て、テメェ言わせておけば!野郎共!袋叩きにしてやれ!」

「「「おう!」」」

 

その不遜な物言いに完全にキレた、盗賊団達は武器を持ち、少年へ向かっていく。

 

「あ、危ない!」

 

子供達の父親がそう叫ぶが少年は動かない。

 

「目障りな。死ね」

 

そう言って剣を抜いた少年の右手が消える。次の瞬間、少年に飛びかかった男達が全員バラバラになった。

 

「は⁉︎」

 

大柄な男がそう呟き、4人も固まっている。

 

その5人には一瞥もくれず、少年は自分の剣を見て、呟く。

 

「神器解放」

 

すると、剣から白い球——魂が出てきた。それを少年はバクバクと食べる。そして、少年は大柄な男へ歩み寄る。

 

「ひ、ひぃぃぃ!く、来るな!」

 

それを見た大柄な男は、泣きながら懇願する。しかし、少年はそれを無視して、盾のように掲げた大きな斧ごと男を真っ二つにした。

 

ほんの僅かな時間で20人を斬り殺した少年は、未だ呆けている4人を一瞥する。

 

それにより、4人は我に返ると、父親は3人の前に震えながら立ち、母親は子供達を抱きしめ、兄は妹を抱きしめていた。

 

それを見た、少年は軽い既視感に襲われた。

 

それは思い出したくもない記憶。無数の女神と魔神が自分と妹を捕らえんと攻めてきた時のことだ。あの時もこのような状況だった。

 

少年は顔を少し悲しみに歪め、洞窟の出口へ向かって歩き出した。洞窟を出た少年は闇の翼を広げ、魂を喰らいながら、空へ飛び立った。

 




神殺しの剣には斬り殺した相手の魂を囚える特性があります。
そして、神殺しはメリオダスのように武力特化なので魔力が無くてもめちゃくちゃ強いです。

詳しいプロフィールはキチンと出てきてからです。


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第6話 ジブリールの闘級

今回短いです。


「……ん、ここは?」

「よ、起きたかジブリール?」

「メ、メリオダスさん⁉︎こ、これは一体どういう…っ」

 

目を覚ましたジブリールはメリオダスに背負われていた。

 

「何、魔力回復の反動で気絶してたから背負ってやってただけだよ。いやだったか?」

「い、いえいえ!いつもはエリ——ムゴッ!」

 

エリザベスと言おうとしたジブリールへメリオダスが頭突きをする。

 

「言葉には気をつけな」

 

ジブリールが周りを見るとエリザベスを含めた全員がいた。

 

「す、すみません」

 

謝りながら、メリオダスから離れ、宙に浮かぶ。

 

「えっと、ここは」

 

ジブリールが周りを見回すとドルイドの聖地の外の岩が乱立している場所だった。

 

「聖地での用は終わったからな。2人がお前によろしくって言ってたぜ」

「そうでしたか」

 

と2人が話している後ろで、ギルサンダーがツノが生えたり、尻尾が大きくなったり微妙に変化しているホークへ話しかける。

 

「と…ところでホークさん!メリオダスの闘級って…」

「やはり気になるかね、少年‼︎実は私もだよ!どれどれ……闘級3250!!!…ん?」

「やっぱりメリオダスはすごいよな‼︎な⁉︎」

「コラコラメリオダス‼︎〝力〟が戻ったわりに前の3370よか下がってんじゃん‼︎」

 

メリオダスへ詰め寄ったホークにマーリンが話しかける。

 

「一桁0をつけ忘れているぞ、ホーク殿?」

「「へ?」」

「…ってことは闘級…3万2500!!!!?」

 

それを聞いたメリオダスは笑いながら言う。

 

「にししっ、ジブリールの闘級見てみろよ」

「ん?なになに、げぇ‼︎と…闘級6万3000!!!!?」

 

それを聞いた全員が驚く。

 

「さてさてさーて。それじゃ、次は——…エスカノール探しだな‼︎」

「大罪最後の1人か。いまさら探して役に立つのかよ?もう、お前ら2人で十分じゃね?」

「エスカノールは俺らより強えぞ?」

 

それを聞いて再び驚く。

 

「わ、私やメリオダスさんより強いってそれ人間ですか?」

 

ジブリールが恐る恐る聞く。

 

「おう。正真正銘の人間だ。ちょっと特殊だけどな」

「す、すごいですね」

 

そうして、メリオダスたちは旅を再開した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

おまけ:ジブリールの酒癖

3000年前……

 

「ジブリール、酒呑むか?」

 

メリオダスがジブリールへ話しかける。ジブリールは“何故か”兄に酒を飲まして貰えないのだ。

 

「え?いいんですか‼︎やったー!お兄ちゃんがいると飲まして貰えないんですよね」

 

そう言いながら、メリオダスからコップを受け取り、一口……そう“一口”だけ飲んだ。

 

「なんでだろうな?確かに見た目は幼いがそれでも一応大人なのにな?」

「ぶー!一応ってなんれるすか!ひょうひんひょうへいのおほなでふよ(正真正銘の大人ですよ)!」

 

完全に呂律が回っていないジブリールに驚き、メリオダスはジブリールを見る。

 

ジブリールは顔を真っ赤にしながら頰を膨らませていた。

 

「ジ、ジブリール。お前もう酔ったのか?」

「む〜、よっへらんへらいれふよ(酔ってなんてないですよ)!」

 

そう言うとジブリールは残りを一気飲みした。

 

「ほら、ぜんれんへいひへふよ(全然平気ですよ)?おかわひ!」

「ちょ、もうやめとけって」

 

コップを掲げるジブリールをメリオダスが止める。

 

なんれれふか(なんでですか)れんれんよっへなんはなひのひ(全然酔ってなんかないのに)

されをらへぇぇぇ(酒を出せぇぇぇ)!」

 

そう言うとジブリールは魔力を使って暴れ始めた。

 

「ちょ、お、落ち着けって!」

されぇぇ(酒ぇぇ)されぇぇ(酒ぇぇ)!」

 

メリオダスの声が聞こえてないのかそう叫んで暴れ続ける。

 

ジブリールの魔力は強大だ。それを使って暴れられると凄まじく迷惑だ。

 

「く、クソ!いい加減にしろ!」

 

メリオダスが今度は力づくで止めにかかる。

 

…………。

 

そして、出かけていた兄とエリザベスが帰った時には、ボロボロで疲れた様子のメリオダスと同じくボロボロだが酒瓶を抱いて幸せそうに寝ているジブリールの姿があった……。

 

それから、ジブリールは兄だけでなく、メリオダスとエリザベスにも酒を禁止された。

 

何も覚えていなかったジブリールは、理不尽だと頰を膨らませた。

 




ジブリールの闘級内訳
闘級(通常時):63000
魔力(通常時):59100
武力(通常時):900
気力(通常時):3000

闘級(魔神化時):71500
魔力(魔神化時):67000
武力(魔神化時):1000
気力(魔神化時):3500

強いね。だけど兄はこれより強いですよ。我ノールや殲滅状態(アサルトモード)のメリオダスに近い実力を。

そして今回初のおまけはいかがでしたか?文字数足りなかったので書いてみました。ジブリールが酒にめちゃくちゃ弱いです。しかも満足するまで飲まさないと全力で暴れます。闘級6万3000が暴れたらもう災害というか天変地異ですよw

ちなみに兄は酒には結構強いです。メリオダスやマーリン程ではありませんが。


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第7話 巨大迷宮

キングがついに覚醒しましたね。闘級いくつぐらいになったのでしょうか?マエルが20万以上だったのでそれと同等程度はないとダメそうですが元々4万だったキングが20万以上になるのは上がりすぎな気もしますね。


ここは大岩に潰されたバイゼル近郊。そこは巨大な迷宮と化していた。そこの一角。そこには白い4枚の翼を背負った少女が1人ポツンと空を見上げていた。

 

「………ここはどこでしょう」

 

——ジブリールは迷っていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

事の始まりはドルイドの聖地から出発し、エスカノールを探し、旅を続けているところだった。

 

空を青色魔神(コバルト)が通り過ぎ、チラシを配っていた。その内容は、

 

“近日バイゼルにて大喧嘩祭開催。尚、優勝者には〝如何なる望みを叶える〟権利を与える”

 

というものだった。

 

「中々魅惑的な、優勝賞品じゃないの。店を増築するか」

 

それを見たメリオダスは顎に手を当て考え始める。

 

「メリオダスさん、どう考えても罠です!魔神を使ってビラ配りをするなんて十戒しかいないじゃないですか!」

 

「そうだぜメリオダス!」

 

ジブリールの言葉にホークが同調する。

 

「さてさてさーて。エスカノールの反応もなくなっちまったし、ちょっと寄ってみるか」

 

「ほ、本気ですか⁉︎それとも何か策が?」

 

メリオダスの言葉に驚きつつ、聞いたヘンドリクセンの言葉に、メリオダスは拳を合わせながら答えた。

 

「んにゃ!面白そうだから!」

 

「「「ズコォ!」」」

 

「よし!」

 

約1名(ギルサンダー)以外の全員がずっこけた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そんなこんなで、バイゼルへ向かっていたわけだが、バイゼルの周りが巨大な迷宮と化していたのだ。その迷宮のギミックによってみんなとはぐれてしまったというわけだ。

 

1人っきりでポツンと立ち尽くし——正確には飛んでいるが——途方に暮れていた。

 

「はあ、これからどうしましょう」

 

ため息を吐きながらも、取り敢えず進んでいると、前方の地面から巨大な化け物——アースクローラーが現れ、こちらへ大口を開けながら突っ込んで来た。

 

普通ならば大慌てする場面だが、ジブリールは一切慌てず、アースクローラーへ手をかざした。

 

「“安息の眠り”」

 

すると、ジブリールの手からピンク色の音波のようなものが出てくる。それがアースクローラーに当たると、アースクローラーは倒れ、安らかな寝息を立て始めた。

 

ジブリールはアースクローラーを優しく微笑みながら撫でる。

 

そして、再びため息を吐くと、

 

「……取り敢えずお腹が空きましたね」

 

と呟いた。

 

ジブリールは寝ているアースクローラーに「バイバイ」と呟くと再び進み始めた。

 

その後、プカプカ漂いながら進んでいると、りんごが実った木を見つけて、お腹を満たすと、そろそろ本格的に迷宮クリアの作戦を考え始めた。

 

「……ぶっちゃけゴリ押しでもクリア出来そうな予感はするんですよね〜」

 

岩の壁を見つめながらそう呟く。この壁の再生力と再生速度は眼を見張るものがあるが、回復が間に合わない程の大穴を開けてもいいし、壁の魔力を消してしまうのもいい。流石に迷宮の壁全ての魔力を消すのは難しいが1区画の壁の魔力を消すのはそこまで難しくない。問題はいい子のジブリールは卑怯なことが嫌いだということだ。

 

「……やっぱり普通に攻略しましょう!」

 

拳を握りながらそう言うジブリールだが、既に迷宮に入ってから1日経っており、更に辺りが暗くなってきていた。

 

しかし、そんなことは関係ないとばかりに真面目に攻略を続けようとしたジブリールだったが、突然ゴールとおぼしき方向から巨大な魔力を感じた。

 

「⁉︎これは⁉︎」

 

それだけならまだしも、その魔力をジブリールは感じたことがあった。

 

ジブリールが呆然としていると、魔力の方向から無数の荊が向かって来た。

 

それを躱しながら、真面目に攻略なんて言ってる場合ではないと、ジブリールはゴリ押しすることを決めた。

 

「“聖浄の槍”」

 

ジブリールが空へ手をかざすと、光の巨大な槍が出現した。そして、ジブリールが手を下ろし、ゴールがある方向の壁に向けると、槍はそちらへ向かっていった。

 

凄まじい爆音と振動が発生したが、ジブリールは気にせず、土煙の中、空いた大穴を進んだ行った。

 

何枚か壁をぶち抜いていたようで、しばらく飛ぶと、驚いた表情でこちらを見ている沢山の人達がいる、大岩へ着いた。

 

ジブリールは周りの視線を気にせず、大岩の上にいる人物達を見ていた。

 

「そ、んな。何故ですか⁉︎グロキシニアさん!ドロールさん!」

 

戒禁の力を纏った、恩人の親友に驚きの声を上げた。




「いい子のジブリール」という言葉に違和感を感じたw

個人的には、この時点でソラシドの体にサリエルが入っていると思っています。

ちなみにオリ技の“安息の眠り”はぶっちゃけただの催眠術、ラ○ホーです。しかし、この魔法にかかったものはとても安らかな眠りにつくことができて、疲れも綺麗さっぱりなくなります。どうでもいいね。グロキシニアの戒禁は全く関係ありません。
“聖浄の槍”は女神族の力で作った光の槍はです。女神族らしく魔神族に特攻効果があるくらいで、魔神族以外にはただの強力な魔法攻撃です。


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第8話 大喧嘩祭り

キング強えぇぇぇぇえ‼︎アーサーみたいなガッカリ覚醒かと思ったらめちゃくちゃ強くなってる‼︎
まさかマエルをフルボッコにできるとは。20万以上のマエルをボコれるってことはそれ以上になってるってことですかね?エスカノールを超えたんじゃ……
それとなんかマエルを救う流れになっている気がしますが個人的にはマエルに死んで欲しい。デリエリを殺しといて生き残るのはちょっと……。

しかし、原作が進んでこの作品の展開を少し変えなくてはいけなくなりました(汗)予定通りだとデリエリとオスローが死ぬことがなく、キングを覚醒しないんですよね。ガッカリ覚醒ならともかくここまで強くなっているのに覚醒なしはやめた方がいいですよね。しかし、デリエリは生かしたい。……ふむ。


「そ、んな。何故ですか⁉︎グロキシニアさん!ドロールさん!」

「やあ、ジブリール。久しぶりっスね。ガランの言っていたことは本当だったみたいっスね」

「質問に答えてください!メリオダスさん達の親友だった貴方達が何故十戒に⁉︎」

「君も知りたいんっスか?だったら君もこの祭りの優勝を目指せばいい。優勝すればその質問に答えてあげるっス」

 

グロキシニアの言葉にジブリールは苦虫を噛み潰したような顔をして、メリオダスの近くに降りてきた。

 

「メリオダスさんは知っていたんですか?」

「……ああ」

「そうですか……」

 

「さあっそれじゃ、いよいよ大喧嘩祭りを始めるっス‼︎」

 

グロキシニアがそう話し、後ろから人間の大柄な男が現れた。その男が言うには初戦は二人組(ペア)でタッグマッチ方式で戦うようだ。

 

その説明が終わった時に後ろから声が聞こえてきた。

 

「ちょっと待った‼︎参加者は、まだいる‼︎ゴウセル、ただ今参上‼︎」

 

そう言いながらゴウセルがエスカノールの上に着地した。

 

ジブリールがゴウセルの名前を聞いて呟く。

 

「ゴウ、セル?ってまさか⁉︎」

「ああ、お前の考えている通りだ」

 

メリオダスの肯定に再びジブリールは驚いた。

 

「うるさいっス。祭りの進行の邪魔は、やめてほしいっス」

 

ジブリールとメリオダスが話している間に騒いでいたエスカノールへグロキシニアがそう言いながら、緑色のタコの足のような触手でエスカノールの腹を貫いた。

 

「「「「…っ」」」」

「エスカノーーール!!!!」

 

突然のことに全員が一瞬唖然とし、メリオダス達はエスカノールへ走り寄る。

 

「せっかく、あたしらがみんなの願いを叶えてあげたくて、この祭りを開いたんっスから〜〜。たとえば——…。霊槍 バスキアス第七形態『月の華(ムーンローズ)』〝命の雫〟」

 

エスカノールの口元へ触手が変化した花から出た雫が落ちるとエスカノールの傷が綺麗さっぱり無くなってしまった。

 

その現象に全員が息を呑む。

 

「みんなのやる気が出たところで早速、組み分けをするっスよ‼︎でわでわドロール君よろしくっス」

「二人一組ですね…。〝占盤術〟」

 

ドロールが手を合わせると、全員の足元の地面が浮かび上がる。

 

「今、同じ浮石に立つ者同士こそ、運命に選ばれし共闘者なり…。さあ…、互いの生死と誇りを託し、存分に戦うがよい‼︎」

 

ペアはまずメリオダス&バンペア。ヘンドリクセン&グリアモールペア。キング&ディアンヌペア。トーラ&ジグモペア。エスタロ&アーバスペア。アーサー&ななしペア。スレイダー&ハイファンペア。ギルサンダー&ギルフロストペア。ホーク&エスカノールペア。ゴウセル&ジェリコペア。マトローナ&オスローペア。シルバー&ジブリールペア。さらに青色魔神(コバルト)であるドルツォ&カルツォペア。そして

ドロールとグロキシニアの代理である、ドロールゴーレム&グロキシニアサーバントペア。最後にエリザベス&エレインペアだった。

 

そして、大喧嘩祭りが始まった。

 




今回短くてすみません。
この先の展開は少し悩んでいるんですよね。ドロールとグロキシニアをエスカノールがぶっ飛ばすまでカットしようかなと。それまでは原作と完全に同じですので。まあ、今回も殆ど同じでしたが。
それから前書きで書いた通りこの先の展開について考えるのでこの作品は七つの大罪の最新話を見てモチベを上げているのですが来週の水曜日は投稿できないかもしれません。


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第9話 VSグロキシニア&ドロール

遅くなってすみませんでした。

しかし、原作はインフレが加速してきましたね。10万後半や20万以上がポンポンと。これは兄妹を強化しないとですね(使命感)

そして、今回はエスカノールがドロールとグロキシニアをぶっ飛ばすシーンからです。

ちなみにデリエリは諦めました……


「あ、あの人間は一体何者なのですかッ⁉︎」

 

あまりにも人間としては規格外の力を放つ人間にジブリールは驚愕に喘ぐ。

 

ジブリールの視線の先は空中で太陽の如き光を放つ巨大な片手斧を構える大柄な男——七つの大罪 傲慢の罪(ライオン・シン)エスカノール。メリオダスにして「俺よか強えぞ?」と言わしめた、七つの大罪最強の男。

 

そして、エスカノールが斧——神器『神斧 リッタ』を振り下ろした。

 

その瞬間、凄まじい爆音と光、爆風が辺りを包んだ。

 

そして、その場の全員がその攻撃の矛先を見ると……傷だらけで地面に倒れ臥すドロールとグロキシニアの姿があった。

 

その姿に驚く一同だったが、ジブリールはほぼ無意識で2人の傷を治そうとしてしまった。

 

しかし、幸いと言うべきか。メリオダスの動きの方が速かった。

 

「始めようぜ。祭りの本番を」

 

ドロールとグロキシニアの前に着地したメリオダスはそう言うと、未だ倒れたままのドロールへ突っ込んだ。

 

「フンッ!」

 

ドロールは4本の腕で迎え撃つ。しかし——

 

「はあ…っ」

 

メリオダスの攻撃に弾かれ、ドロールは仰け反る。

 

その隙に、メリオダスはドロールの顎を殴り上げる。続けて、背中のロストヴェインを抜き、そのままドロールへ振り下ろす。

 

ドロールは左の2本の腕で防ごうとするが、並の者ではかすり傷すらつけられないドロールの強靭な体をメリオダスはドロールの2本の腕をいとも容易く斬り飛ばしただけに留まらず、ドロールの体に縦に切り傷をつけた。

 

「謀りましたね……」

 

メリオダスに付けられた傷から流れる血を舐めながら、ドロールが言う。

 

「オレはこの時を待っていた。お前ら2人を確実に討てる機会(チャンス)をな…‼︎」

 

メリオダスのその言葉に仲間たちは困惑する。当然だ。そんな作戦は聞いていなかったのだから。

 

「正面からオレ1人で向かえば〈十戒(お前ら)〉2人に必ず警戒されるだろ?その状況で戦えばいくらオレでも負ける。だから、お前らを油断させるために仲間と祭りを楽しむ参加者として来たんだ。あとは、ひたすらお前ら2人に隙ができるのを待った。エスカノールは最高の機会(チャンス)を作ってくれたぜ」

「なるほど……たしかに、あなたと一対一なら我々も苦戦を強いられるのは間違いない…。しかし、謎ですね」

 

ドロールは、チラリと両手で杖を構え、震えながら顔を悲しげに歪めたジブリールへ視線を向ける。

 

彼女(ジブリール)と共になら、たとえ我ら2人相手であろうと正面から倒すことすら可能だったのでは?」

「できるわけねぇだろ」

「ほう?」

 

メリオダスはジブリールへ優しさに満ちた表情を向けながら言った。

 

「アイツは優しい。憎しみで変わっちまったらしいアイツとは違って直接の仇と2人の神以外は憎んじゃいねぇ。それどころか、誰にも傷ついて欲しくないと、くだらない争いが終わることを心の底から願っていたんだ。そんなアイツに、オレのダチとして関わりがあったお前らを殺すのを手伝えなんて言えるわけねぇだろ」

「相変わらずあなたは甘い。その甘さが命取りとなるのです。〝巨神の抱擁(ギカント・エンプレス)〟!!!」

 

ドロールがそう言って腕を合わせると、舞台となっていた巨大な2つの手がその上にいた者たちを中に閉じ込めた。

 

そして、ドロールが腕を下ろすと巨大な手は地面へ沈んでいった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ズウンッ

 

地面の中に閉じ込められたジブリールたちは地震のような衝撃を感じていた。

 

「凄まじい(エネルギー)のぶつかり合いだ」

「あんな化け物共に1人で挑むなんて、無謀もいいとこだろ!!!」

「てめえら‼︎みんなでメリオダスの加勢に行くぞ‼︎」

「…行ってどうする?」

 

ホークの言葉にバンが応える。

 

地上(うえ)に出て何秒立ってられる…⁉︎団ちょの足を引っ張るのが関の山だ…」

「バンの言う通りだよ…。相手は、今までの敵とは次元がまるで異なる力を持つ〈十戒〉。正直……現状で太刀打ちできるのはメリオダス————彼をおいていない」

 

しかし、キングのその言葉にホークが言う。

 

「で、でもジブリールならメリオダスに加勢できるんじゃねえのか?」

 

その言葉にジブリールへ全員が視線を向けると、ジブリールは両手で杖を持ちながら、目を瞑り、何事かを考えている様子だったがしばらくすると、覚悟を決めたような表情で言った。

 

「……まず、みなさんを安全なところに避難させます」

 

そのジブリールの言葉に巨人族のマトローナが反論する。

 

「冗談じゃない‼︎私は残るぞ…。ここで退くわけにはいかない‼︎」

「ダメ!今は逃げなきゃ」

「では、ゾルとデラは」

「ボクに考えがあるの!ね?マトローナ‼︎」

「行きますよ」

 

そう言って、ジブリールが左手の指を鳴らすと、その場にいた全員の姿が消え、リオネス城へ転移した。

 

「こ…ここはリオネス城?」

「おお‼︎す…すげえじゃんか‼︎」

 

ハウザーが疲労した様子のないジブリールに言うが、ジブリールがそれに反応する前に地震のような揺れが起きた。

 

「お…おい。まさかこれって」

「バイゼルでの戦いの余波がここまで届いている」

 

ジブリールはそれに顔を険しくすると全員に話す。

 

「私はこれからメリオダスさんの加勢に行きます」

「お願い!メリオダス様を助けてあげて!」

 

エリザベスの言葉にジブリールは微笑むと、

 

「はい!エリザベスさん!」

 

そう言って、ジブリールが再び左手の指を鳴らすとジブリール姿がその場から消えた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

〈十戒〉2人とメリオダスの戦いは苛烈を極めた。

 

メリオダスは絶えず片方を戦闘不能にする事で一対一の状態を保ち続け、徐々に2人を追い詰め始めていた。

 

そして、リオネス城から消えたジブリールはその戦場の上空に現れた時、メリオダスの〝神千切り〟をドロールが〝重金属(ベビーメタル)〟で防いだところだった。

 

グロキシニアが自身の傷を霊槍バスキアスで治そうとした時、ジブリールの魔力を感知し、メリオダスを含めた全員が視線を上に向け、動きを止めた。

 

「〝降り注ぐ光(シャイニングレイン)〟」

 

その隙を逃さず、ジブリールからドロール達へ向けて無数の光球を雨のように降り注いだ。

 

それを見た3人は我に返り、ドロールは再び〝重金属(ベビーメタル)〟を使い、全身を鋼鉄と化し、防ぐ。

 

光球の一つ一つが下位魔神ならば数匹をまとめてチリと化す威力を秘めているそれをドロールは無傷で防ぐ。

 

「霊槍バスキアス第7形態「月の華(ムーンローズ)」〝命の雫〟‼︎」

 

その間にグロキシニアは自身の傷を治す。

 

「ごほぁっ……はぁっ‼︎」

 

ジブリールの〝降り注ぐ光(シャイニングレイン)〟が止むと、ドロールは〝重金属(ベビーメタル)〟を解く。そして、メリオダスに付けられたダメージで膝をつく。

 

「〝命の雫〟!」

 

その傷をグロキシニアが治す。しかし、治し終わる前にグロキシニアへメリオダスが突っ込む。

 

グロキシニアはそれを後方へ飛び、回避するが、メリオダスはその後ろへ回り込み、ロストヴェインを振り回す。

 

グロキシニアはそれを回避し、メリオダスへ手を翳そうとするが、メリオダスはそれより前にグロキシニアを肘打ちで、地面へ叩きつける。

 

「〝大地の鎚頭(ギガピック)〟!!!」

 

グロキシニアへトドメを刺そうとロストヴェインを構えたメリオダスを地面から現れた尖った水晶のようなモノが襲う。

 

「〝聖浄の槍〟!」

 

しかし、技を放ったドロールへジブリールからの巨大な光の槍が襲う。

 

ドロールはそれを〝重金属(ベビーメタル)〟を使いながら、2本の腕で防ぐ。

 

「〝酸の雨(アシッドレイン)〟!」

 

しかし、ジブリールは酸の雨を降らす。

 

それを見たドロールは、〝重金属(ベビーメタル)〟を解除し、回避するが、その隙をついたメリオダスに蹴り飛ばされる。

 

着地したメリオダスとその側に降りたジブリールが、ダメージを受けつつ起き上がったグロキシニアとドロールと向かい合う。

 

「メリオ…ダス。あいかわらずの…強さと甘さっスね。なぜ…キミは…あんな救いようのない人間共の味方をするんスか?」

「その気にさえなれば…魔神王の座すら手にできる器でありながら。私には視えますよ。非情になりきれぬあなたが迎える…惨めな敗北の姿が」

「苦しみが、お前らをそこまで変えちまったのか……」

 

そう言うとメリオダスはロストヴェインを構えて、言う。

 

「なら、その苦しみを終わらせてやる……!」

 

メリオダスのその言葉にジブリールが本当に殺してしまうのかと思った、その瞬間。

 

空から7つの流星がメリオダスとジブリールの周囲に落ちた。

 

その衝撃で舞った土煙が晴れると——メリオダスとジブリールの周囲を7人の十戒が囲んでいた。

 

そして、ゼルドリスとメリオダスが対面した。

 




ホントはリベンジカウンターのところまでやる予定だったんですがこのままだと1万文字近くまで行きそうだったので今回はここまでです。

次回!ついに神殺し登場!?……たぶん


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第10話 VS十戒

今回長めです。なんと6000文字。……前回は今回の最後までやろうと思ってたんですよねぇ。切ってよかった。
え?今回も切れって?兄貴出せねぇんだよ(逆ギレ)


しばらく向かい合うメリオダスとゼルドリスだったが、メリオダスが凄まじい速度でロストヴェインを振った。

 

並の者なら一刀両断される斬撃を、ゼルドリスはそれを上回る速度で剣を振り、メリオダスの左腕を斬った。

 

腕を斬られたメリオダスは、しかし顔色を変えることなく、ゼルドリスを蹴り上げた。

 

そして、そのまま闇で腕を治そうとするメリオダスだったが着地したゼリドリスがメリオダスの左腕を踏み、阻止する。

 

「やれ」

「〝呪縛怨嗟〟」

 

ゼルドリスが呟くと、グレイロードが黒い鎖のようなものでメリオダスを拘束する。しかし、しばらくすると鎖は消えた。

 

「〝殲滅の光(エクスターミネイトレイ)〟!」

 

突然の〈十戒〉の出現に放心していたジブリールだったがメリオダスたちの攻防で我に返り、ゼリドリスの斜め上に転移すると、杖をゼルドリスへ向け、光を放つ。しかし——

 

「ガハッ」

 

無傷のゼルドリスがジブリールの右横腹から左肩まで斬り裂いた。

 

しかし、その隙にメリオダスは左腕を闇で治す。

 

「〝魔力遮断の霧(マナキャンセル・ミスト)〟」

 

傷を光で治しつつあるジブリールがそう言いながら、左手を上に翳すと紫色の霧がジブリールの左手から発生し、〈十戒〉を覆う。

 

そして、ジブリールとメリオダスは霧に乗じて、〈十戒〉から逃走を図る。

 

〈十戒〉全員を相手にすれば、如何にこの2人と言えども勝機はない。故の逃亡だったのだが——

 

「……⁉︎」

 

無事〈十戒〉から距離を取れたジブリールは首を傾げた。同じく、〈十戒〉から離れていたメリオダスの魔力が唐突に消え、再び〈十戒〉の包囲網の中へ入ったのだ。

 

ジブリールの出した霧——〝魔力遮断の霧(マナキャンセルミスト)〟はその名の通り、霧の中にいる者は周囲の魔力を感知することができなくなり、霧の外から霧の中の魔力を感知することができなくなるものだ。術者——つまり、ジブリールは関係なく感知することができる。

 

封印される前。魔神族と女神族に追われている時によくこの魔法を使って逃れていた。〈十戒〉や〈四大天使〉であろうとも例外ではない。

 

そのため、〈十戒〉もメリオダスも何が起こっているのかわからない様子だったが、しばらくすると、霧の内側から突風が吹き、霧が払われてしまった。

 

この魔法は強力な効果を持つが、そこまで大きく動かすことができず、一定範囲に留めておくことしかできない。そして、上位魔神ならば腕を振るだけで払うことができてしまう。

 

そのため、いつもはこの霧で時間を稼ぎ、その隙に〝瞬間移動〟で逃げるという手を使っていたのだ。

 

霧が払われて中の様子がわかるようになると、メリオダスがあの妙な鎖で拘束されていた位置に立っていた。

 

「これが…〝呪縛怨嗟〟」「呪いを受けしその場所より」「お前は離れることができなくなる……」「もはや〝死〟は不可避」

 

それを聞いたジブリールは直ぐさまメリオダスのそばに転移。そして、〝絶対強制解除(アブソリュートキャンセル)〟でメリオダスにかけられた魔力を解こうとする。

 

しかし、その前にジブリールの後方からデリエリがジブリールを殴り地面へ叩きつける。

 

「きゃっ!」

 

デリエリはそのままメリオダスへ攻撃を仕掛ける。

 

ジブリールは魔力防御壁によって、ダメージを無くしたので、すぐにメリオダスの援護に行こうとしたが、

 

「〝天漢破獄刃〟‼︎」

 

横からドレファスの体を乗っ取ったフラウドリンがジブリールに剣を向け、光で貫く。

 

「くっ!」

 

その攻撃で魔力防御壁は砕け散ったが、ジブリールへのダメージはほぼ無く、ジブリールはメリオダスへ向かう、が——

 

「〝砕破(ギガ・クラッシュ)〟!!!」

 

無数の大岩が地面からジブリールへ当たりながら、空へ上がり——

 

「〝落山(ギガ・フォール)〟!!!」

 

そして、隕石のようジブリールを巻き込みながら地面へ落下する。

 

「ガハッ……くっ……!」

 

傷を治しながら、ジブリールはなんとか起き上がろうとする。しかしその前に大爆発が近くで起こる。

 

ジブリールがそちらへ視線を送ると——

 

「そん…な……っ。メリ…オダス……さんっ」

 

腕は砕かれ、体は焼かれ、貫かれ、そして右腕は無くなっているメリオダスの姿があった。

 

「くっ……ガハァッ…!」

 

メリオダスの傷を治そうと左手をメリオダスに向けたジブリールを空中からデリエリが飛び蹴りをして阻止する。その後デリエリはモンスピートの側による。

 

「我が兄メリオダス。お前の死をもって、ようやく1つの復讐が果たされた。お前さえいなければ我らが屈辱を味わうことはなかったものを、お前1人の裏切りが我ら魔神族を戦の敗者に仕立て上げたんだ」

 

ゼルドリスがそう言うと、メリオダスはニヤリと笑い、ロストヴェインを抜くと——メリオダスから膨大な魔力が溢れ出した。

 

「こりゃあ、マズイね」

「おのれ……。またしても貴様に敗れるというのか……」

 

〈十戒〉ですら、その魔力量に危機感を覚える。

 

「〝リベンジ・カウンター〟!!!」

 

そして、メリオダスが剣を振り、〈十戒〉を討つ力が放たれる——が、〈十戒〉の1人「慈愛」のエスタロッサに片手で受け止められた。

 

メリオダスは力尽きたように、ロストヴェインを落とし、倒れた。

 

「なぁ、メリオダス。本当は死ぬほどこんなことはしたくねぇんだ。わかるよな?」

 

そう言ってエスタロッサはメリオダスの胸に足を乗せ、力を込めると、メリオダスの胸から「ベキ、ベキッ」と音がする。

 

「俺は、お前のことを愛してるからよ」

「あ゛……がああぁ……ぁぁあああ!!!」

 

メリオダスから苦悶の声が上がる。

 

その声を聞いたジブリールは、怒りを浮かべた顔に黒い翼のような模様を浮かばせ、エスタロッサの前に転移し、杖の先と左手をエスタロッサに向け、

 

「離れろッ!」

 

ジブリールらしくないキツイ言葉遣いでエスタロッサに言いながら、光と闇の球——〝光と闇の球(ライト&ダークネススフィア)〟を放つ。

 

流石に後退したエスタロッサだったが——

 

「ガハッ……!?」

 

いつの間に取り出したのか。エスタロッサが投げた小さな短剣——〝反逆剣(リベリオン)〟がジブリールの胸に突き刺さる。

 

ジブリールはそれを抜き、光と闇で治療するが——

 

「霊槍バスキアス第1形態「霊槍(バスキアス)」!」

 

グロキシニアがバスキアスを向かわせる。

 

「…ッ。〝聖邪の槍〟ッ!!!」

 

ジブリールはそれを光と闇の槍で相殺する。

 

間髪入れずに続けて、ゼリドリスとデリエリが左右からジブリールへ向かう。

 

「〝回転する魔剣(ジャグリングソード)〟ッ!!」

 

5つの魔力で作った剣を周囲に回転させ、近づかせないようにする。その隙にメリオダスの傷を治そうとする。

 

「ジブ…リール……。逃げ……ろっ」

「いやです…っ。絶対に」

 

涙を浮かべながらメリオダスの傷の治療を開始するジブリールだったがすぐに、ゼリドリスとデリエリが剣を破壊し、迫る。

 

「〝聖櫃(アーク)〟ッ!!」

 

ジブリールは治療を中断し、両手を広げ、ゼリドリスとデリエリへ向け、2人を〝聖櫃(アーク)〟に閉じ込める。

 

そして、その2人を〝聖櫃(アーク)〟ごと、〈十戒〉たちへ飛ばす。

 

「〝獄炎鳥〟」

 

しかし、後ろへ回り込んだモンスピートがメリオダス諸共、ジブリールを焼かんと火の鳥を飛ばす。

 

「…!?〝聖炎(シャイニングフレア)〟!!!」

 

ジブリールはそれに素早く反応し、光の炎で相殺する。その直後——

 

「ぐ…ッ」

 

聖櫃(アーク)〟から抜け出したデリエリがジブリールを殴り飛ばす。

 

地面を何度か跳ねるジブリールをデリエリは回り込み、地面へ叩きつける。そのまま連続でジブリールを攻撃し続ける。

 

地面へめり込んで行くジブリールだったがデリエリは30発辺りまで連打をしていた時に何かに気づいたように唐突にジブリールから距離を取る。

 

その直後、ジブリールがめり込んでいた穴から空へ光と闇の槍が飛んだ。避けなければデリエリに直撃していたコースだ。

 

〝聖邪の槍〟は高速回転しながら〈十戒〉たちへ向かう。しかし、ゼルドリスに防がれ、破壊された。

 

「ハァッ……ハァッ……ゴホッ……ハァッ」

 

穴からボロボロのジブリールがなんとか浮かび上がる。

 

光と闇で傷を治しながら、〈十戒〉へ手を向けるが——

 

「〝大地の鎚頭(ギガ・ピック)〟!!!」

 

地面から尖った水晶のようなモノがジブリールを襲う。

 

「〝霊槍(バスキアス)〟!!!」

 

続けて、グロキシニアのバスキアスがジブリールを襲う。

 

地面に倒れ伏したジブリールは最早起き上がる力すらない。

 

その後メラスキュラがグロキシニアに自分の傷を治すように言う。

 

「おい、エスタロッサ。ケツから言っていいのか?」

「どうも、さっきから妙な視線を感じる。おそらくはメリオダスの一派の可能性が高いがこのまま放っておいていいのか?———ということだな?」

「ん」

 

未だ倒れたままのメリオダスに再び近づくエスタロッサにデリエリとモンスピートが話しかける。

 

「〈七つの大罪〉…」「メリオダスの新しい…仲間」

 

グレイロードが視線の正体の予想を話す。

 

「新しい仲間——ねぇ」

 

その言葉を聞いたエスタロッサはメリオダスの首を掴み、顔を近づけて言った。

 

「今度は、いつ裏切るんだ?〈十戒〉の統率者だったお前が、俺らを見捨てた時みてぇに…」

 

エスタロッサは語る。

 

かつてのメリオダスの強さと非情さは凄まじく、誰もが次期魔神王にふさわしいと認めていた。しかし、メリオダスは突如として居合わせた〈十戒〉2人を惨殺すると魔界をめちゃくちゃにして消えた。それにより、魔神族と女神族の均衡は崩れ、女神族は魔神族を一気に潰さんと他種族をけしかけた。

 

「…3000年前の戦争は、お前が始めたんだよ。教えてくれ…どうやったらそんな楽しいこと思いつくんだ?今度は〈十戒〉に代わって〈七つの大罪〉か。腹の中じゃ、次にいつ裏切ってやろうかワクワク胸を躍らせているんだろ?」

 

そう言ってエスタロッサは掴んでいたメリオダスを地面に放り投げた。

 

「うる…さいッ!」

「あ?」

 

エスタロッサが声の方を見ると、傷を治している途中のジブリールの姿があった。ジブリールは怒りに顔を歪めて話す。

 

「メリオダス…さん…はッ、そんな人じゃ…ないッ。愛する人の——あの人のために戦いに身を投じた…だけッ。あなたとは違うッ!」

「おいおい、忘れたのか?お前らの両親を殺した時に指揮を執っていたのはこいつとリュドシエルなんだぞ?」

「メリオダスは変わったのッ。あの人のおかげで。何も変わってないあなたとは違うッ!」

 

話にならないという表情をエスタロッサがすると、メラスキュラがエスタロッサへ話しかける。

 

「メリオダスのトドメは、私に刺させて頂戴」

「……お前に?なんで?」

「〈七つの大罪(こいつのなかま)〉には散々な目に遭わされたの……おいたの責任が仲間の(メリオダス)にあるのは当然でしょ?」

 

そう言ってメラスキュラはメリオダスに手をかざし、呪文を唱え始める。

 

「ーーーーーーー」

「うっ…ぐっ…」

「あら…抵抗するわね。けど、私も死者の——魂を操る専門家なの。動けぬあなたの魂を取り出すことくらい造作もないわ」

「やめてぇぇッ!」

 

傷を治すのに精一杯のジブリールが涙を浮かべながら叫ぶ。

 

「ーーーーーーー」

 

しかし、メラスキュラはそれを無視して、呪文を唱え続ける。

 

「〝招来魂〟」

 

そして、メリオダスの口から魂が出てきてしまう。しかし、次の瞬間——

 

「メリオダス。あなたの魂はどんな味がするぎべ?」

 

突然バンがメラスキュラの首を捻った。

 

「おま…べば?がばぼ…ごぼぼ!!?」

「何言ってっかわかんねーし♬」

「!!!?」

 

〈十戒〉のみならずジブリールも目を見開く。

 

「〝獲物狩り(フォックスハント)〟!」

 

続けて、バンはメラスキュラの心臓を5つ取り出し、踏み潰した。

 

「バカ…野郎。なんで…来たん…だ」

「バカはどっちだいいカッコすんなよな♬」

「お前は……大バカ野郎だぜ……!!」

「ま♬バカダチ同士気が合うってやつだな〜〜♬」

 

そう言ってバンはメリオダスに手を掴む。

 

「立てるか団ちょ♪」

「バーカ……オレが…ケガをしてるように見える……か?」

 

メリオダスはバンに支えられながらなんとか立ち上がる。

 

「メラスキュラ!!!」

「あいつは…〈七つの大罪〉バン!!」

「…こいつは、俺の兄弟の魂を勝手に喰おうとした。死んだ当然だ。人間……お前には礼を言うぜ。もっとも、お前が殺さずとも俺がこいつを殺ったが」

「バンさん!これを!」

 

未だ倒れたままのジブリールはそう言うとバンへ手を向けて、光を浴びせた。するとバンは力と魔力が溢れてくる感覚があった。

 

「メリオダスさんを守って!」

「当然だ♪」

 

そう言ってバンはエスタロッサへ向き直る。

 

「団ちょ…下がってろ」

「メリオダスは俺の手で死ななくちゃならねぇ」

 

しかし、バンはメリオダスへ剣を突き刺すエスタロッサに反応することができなかった。

 

メリオダスは再び倒れる。

 

「〝反逆剣(リベリオン)〟」

 

エスタロッサは宙に6つの短剣を出す。

 

「ところで、お前何しにここへ来たんだ?」

「決まってんだろ……!!〝獲物狩り(フォックスハント)〟!!!」

 

バンはメラスキュラのようにエスタロッサの心臓を抜き取ろうとしたが、逆に手を潰される。

 

「いいことを教えてやる。————俺たち上位魔神族には心臓が7つある。これで2本目。どんな魔神もそれを全て潰せば…死ぬ」

「させるか……よぉ!!!」

 

バンは首に組み付き、エスタロッサをメリオダスから引き離そうとする。そして、ジブリールは無数の光球をエスタロッサへ放つ。

 

「3つ、4つ、5つ」

 

しかし、そのどちらもエスタロッサは意に返さず次々とメリオダスへ剣を突き立てる。

 

「〝狩人の祭典(ハンターフェス)〟!!!団ちょは絶対に殺させねぇ…!!!かあぁあ…」

「おっと……邪魔クセェな」

「ガァッ……!」

 

エスタロッサはバンに引き離されそうになるが、バンの右腕と右肩から腹部にかけて切り裂く。普通の人間なら即死する傷を受けて、しかし、バンは左腕だけでなんとかエスタロッサを引き離そうとする。

 

しかし、片腕では無理で、エスタロッサはメリオダスへ6つ目の剣を突き刺そうとする。

 

ジブリールはメリオダスへ魔力防御壁を張り、守ろうとするが、エスタロッサはそれを貫き、メリオダスへ剣を突き刺す。

 

「やめ…ろ」

「あばよ、兄弟。俺の愛するメリオダス」

 

そして、メリオダスへ7本目の剣を突き刺そうとする。しかし——

 

 

 

 

ドンッ!!!

 

突如として、空から何かが落ちて来た。

 

それに全員が視線を向ける——前に。

 

「「「「!!!?」」」」

 

全員が凄まじい怒気を感じた。

 

その怒気は〈十戒〉にして、一歩後ろへ後退させるほどのものであった。

 

しかし、ジブリールは安心感と懐かしさ、愛おしさ——様々な感情に涙を浮かべながら、それを見た。なぜなら土煙の中から最愛の兄の魔力を感じたからだ。

 

「お兄……ちゃん」

 

土煙を裂いて、現れたのは黒髪に魔神族特有の黒い目、ジブリールと同じ黒い翼のような模様を、だがジブリールとは違い左頬に浮かべ、怒りに顔を歪めた少年だった。

 

「……ザレ……オス……」

 

メリオダスは、エリザベスとともに自身たちの子供のように思って愛した少年の名を呟いた。

 

かつて、魔神と女神に恐れられた神殺しと〈十戒〉の戦いが始まる。

 




さあさあ、ついに神殺しこと、兄こと、ザレオスの登場です!
名前の由来は悪魔です。悪魔の一覧見て、気に入った名前選んだだけなので名前の元の悪魔の要素は皆無です。

あっ、ちなみにジブリールがバンにかけたのは〝祝福の息吹(ブレス・オブ・ブレス)〟ではありません。〝全付与(フルエンチャント)〟という別の魔法です。身体能力、魔力、魔力耐性を上昇させます。

本編で言えって?細けぇこたぁいいんだよ。

その他オリ技で分からないことがあれば質問してください。大抵名前の通りですが。


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第11話 “神殺し”と決着

やっと主人公の1人のザレオスの戦闘です。詳しい闘級やその他のプロフィールは後書きに載せておきます。


「や、奴は!?」

「しまったっスね。ジブリールの封印が解けているのだから彼のも解けているかもと考えとくべきだったっス」

 

〈十戒〉達は神殺しの乱入に驚きを隠せないようだ。

 

ザレオスはそんな〈十戒〉達を無視してジブリールへ歩み寄る。

 

「お兄ちゃん……っ」

 

未だ倒れ伏すジブリールに険しい表情を和らげ、微笑みかけるとジブリールに手をかざし、

 

「〝神殺しの守護〟」

 

そう呟くとジブリールにかざした手から紅い光が放たれ、ジブリールの周囲を覆い、紅い立方体に変わる。

 

「そこにいろ。すぐ、終わらせる」

 

後半は、〈十戒〉へ向き直り、険しい表情に戻りながら言う。

 

ザレオスは6本の剣を突き立てられ、ボロボロのメリオダスと、その前に立つエスタロッサに目を向けると激しい怒りに顔を歪める。

 

次の瞬間——

 

「どけ、下種が」

 

エスタロッサとメリオダスの間に移動したザレオスの動きを捉えられた者はこの場にごく僅かだった。

 

エスタロッサにそう言いながら手をかざしたザレオスの手から獄炎(ヘルブレイズ)が放たれる。

 

それにより、エスタロッサに組み付いたままだったバンは消し炭になったが、エスタロッサは後退しただけで無傷だった。

 

「はっ、こんなもんかお前の力——!?」

 

エスタロッサの言葉は最後まで続かなかった。

 

その前にザレオスに両腕を斬り飛ばされ、上半身と下半身を斬り離されたからだ。

 

「うるせぇよ」

 

エスタロッサの背後にいつのまにか移動していたザレオスがそう呟く。

 

「ガッ!?ガァァァァアアアアァァァァッ!?」

 

その直後、エスタロッサが凄まじい叫び声を上げる。

 

見れば、ザレオスの剣とエスタロッサの傷口にジブリールを囲う立方体と同じ紅い光が漂っている。

 

〝神殺しの剣〟

 

この技は闇や光での防御が不可能であり、斬られた神は地獄のような激痛を味わい、闇や光での回復を阻害される。傷口の魔力を消すか時間をかけて傷を治すまで、苦しみは続く。

 

それだけでザレオスの神々への憎しみがどれほどのモノだったかがよくわかる。

 

「テ、テメェ……っ」

「どうした?苦しいか?……俺らが感じた心の苦しみの大きさを思い知ってから死ね」

 

倒れたエスタロッサの顔を踏みつけながら深い憎しみをエスタロッサに向ける。

 

「兄者!」

 

ゼルドリスが叫びながら、ザレオスの首めがけて剣を振る。それをザレオスは容易く受け止める。

 

「〝神殺しの領域〟」

 

ゼルドリスの剣を振り払いながらザレオスがそう言うと、ザレオスを中心として、紅い光が辺りへ広がり漂い始める。すると——

 

「ぐっ……」

「……これは」

 

ゼルドリス、グロキシニア、ドロールを除く〈十戒〉が異変に気付く。体の力が抜け、魔力もうまく発揮できなくなっている。

 

この技は自身と自身の仲間以外の神の力を制限する技だ。下位魔神なら十分の一まで力が落ち、〈十戒〉でも四分の一の力が発揮できなくなる。

 

しかし、「魔神王」の魔力を持ち、影響を受けないゼルドリスがザレオスへ斬りかかる。

 

「ちっ、忌々しい魔力だ」

 

凄まじい速度でゼルドリスと剣を打ち合いながら、〝神殺しの領域〟を使う前と全く同じ動きのゼルドリスを見て不愉快そうな眉を寄せる。

 

「〝灰燼龍〟」

 

ゼルドリスと剣を打ち合っているザレオスへモンスピートがゼルドリスごと魔力で攻撃する。「魔神王」の魔力でゼルドリスに効果はないからだ。しかし——

 

「貴様……っ」

 

ゼルドリスと変わらず、灼熱の中で剣を振るい続けるザレオスの姿にゼルドリスは驚愕の声を上げる。よく見ればザレオスの体を紅い鎧が覆っている。

 

〝神殺しの鎧〟

 

闇と光の攻撃を完全防御する鎧である。しかし、物理的攻撃や他の種族の攻撃、神でも闇や光以外の魔力なら防ぐことはできない弱点はある。

 

驚いたゼルドリスの隙を突き、ゼルドリスの肩を斬り、腹部を蹴り、吹っ飛ばす。

 

しかし、その隙にデリエリがザレオスへ殴りかかる。普段より、威力は弱いが、それでも「連撃星(コンボスター)」の魔力でどんどん威力が上がっていく。

 

しかし、ザレオスはそれを片手で受け止め続ける。

 

「デリエリ、モンスピート。お前らはメリオダスとエリザベスが救った命だ。引くなら見逃してやる」

 

ザレオスのその言葉を無視して攻撃し続けるデリエリにザレオスはため息を吐き、

 

「〝神殺しの鉄拳〟」

 

デリエリの腹部を紅い光を纏った左手で殴り飛ばす。

 

「ガハァッ」

「デリエリ!!」

 

飛んでいくデリエリをモンスピートが抱き止める。モンスピートの腕の中でデリエリは腹を抑えて悶える。

 

その直後、ザレオスの真上からザレオスへ槍——バスキアスが落ちる。それをザレオスは剣で受け止める。

 

しかし、さらに地面から無数の岩がザレオスを巻き込み、空へ打ち上がる。

 

ザレオスはバスキアスを振り払い、岩を細切れにする。

 

「グロキシニア、ドロール」

 

そして、闇の翼を展開しながら、恩人の親友へ目を向ける。

 

「流石っスね。この程度じゃ傷1つ付かないっスか」

「……お前ら、今すぐ引け。できればお前らは殺したくない」

 

グロキシニアは答える代わりに、再びバスキアスをザレオスへ振るい始める。

 

それを剣で弾きながら、ザレオスは少し悲しそうな表情をした後、険しい表情へ戻し、

 

「そうか……ならば死ね」

 

そう言って剣を一振り。それだけでバスキアスは両断される。

 

そして、次の瞬間にグロキシニアの背後に現れ、剣を振り下ろす——

 

「ふんっ」

 

その前にドロールがザレオスを殴り飛ばす。そして、ザレオスが地面に激突した轟音が響いた直後、

 

「ガハッ!?」

 

ザレオスはドロールの胸を蹴り砕く。

 

倒れるドロールへ追撃に振ろうとした剣は、ザレオスの背後から剣を振り下ろしたフラウドリンの剣を受け止めた。

 

「お前、フラウドリンか?なんで人間の体なんかに入ってるんだ?」

「貴様には関係ないことだ!〝天漢破獄刃〟ッ!!」

 

フラウドリンの剣から放たれた光に包まれるザレオスだったが、しかし、

 

「ああ、確かにどうでもいいことだな……お前が死ぬのに変わりはない」

 

無傷のザレオスが右脇腹から左肩にかけてフラウドリンを斬り裂く。

 

「な…に……!?」

 

驚愕に喘ぐフラウドリンへトドメを刺そうとしたザレオスの背後から無数の荊——〝死荊(デスソーン)〟が襲う。

 

「ちっ……」

 

流石にそれを受けるわけにはいかず、回避する。そして、それを操るグロキシニアへ斬りかかるが、横からゼルドリスがザレオスへ斬りかかる。

 

ゼルドリスと斬り結びながら、後退するザレオスへ背後からバスキアスが襲う。

 

「ハァッ……!!」

 

ザレオスはそれを全身から〝獄炎(ヘルブレイズ)〟を放ち、吹き飛ばす。

 

当然ゼルドリスも巻き込まれるが歯牙にも掛けない。

 

ザレオスは続けてゼルドリスを蹴り上げ、飛んで先回りして、剣を振り下ろす。

 

地面へ墜落したゼルドリスへ追撃を仕掛けようとしたザレオスだったが、突然動きを止めて、剣を振るう。その先には両断された巨大な蜂—— 〝守護虫(ガーディアン)〟の姿があった。

 

再びゼルドリスへ向かおうとしたザレオスだったが、地面から無数の岩の柱がザレオスへ向かって伸びる。

 

それを斬り払いながら進むザレオスへ上空からモンスピートの〝獄炎(ヘルブレイズ)〟が降り注ぐ。

 

それを〝神殺しの鎧〟で防ぎつつ、進む。

 

自身の魔力が効かないゼルドリスは優先して排除すべき存在だ。故に妨害されながらも脇目も振らず進む。

 

そして、ゼルドリスの下にたどり着くがすでに傷は治っており、振り下ろされたザレオスの剣を受け止める。しかし、

 

「ハァッ!」

 

ザレオスが力を込めるとその力に耐えきれず、地面に埋もれる。

 

追撃に剣を振ろうとしたザレオスへ比較的軽傷だった故に治ったデリエリが飛び蹴りをするがそれを片手で受け止め、地面へ叩きつける。

 

〈十戒〉全員と正面から相手してなお圧倒するザレオスだったが、

 

「……!?」

 

突然、地面が揺れ、岩がザレオスを拘束し始める。

 

「「合技〝鉱樹オルドーラ〟」」

 

そして、巨大な樹のようになり、ザレオスを閉じ込める。

 

「ふぅ、相変わらずとんでもない強さっスね。ゼルドリス。ここはメリオダスにトドメだけ刺して撤退するべきじゃないっスかね」

「……そうだな」

 

不服そうにゼルドリスは答え、倒れたままのメリオダスの下へ向かう。

 

「させるかぁぁぁぁあ!!!」

 

封印が解けたばかりでいきなり本気を出すのは体によくないと思い女神族の力を使っていなかったがもうそんなことを言っている場合ではない。

 

両目に女神族の模様を浮かべ、全力で暴れる。それによりオルドーラは変形するが破壊するには至らない。

 

もしこれが闇や光だったのならこれの倍の魔力がこもっていようとも容易く破壊できただろうが、妖精族と巨人族の力で作られたオルドーラには「神殺し(ゴッドキラー)」の魔力は意味を成さない。

 

戦闘中ずっと治療に専念してやっと傷を治すことができたエスタロッサはメリオダスの最後の心臓へ剣を突き立てる。

 

「クソがああぁぁぁぁぁあああ!!!」

 

未だオルドーラの中で暴れ続けるザレオスだが、破壊することはできない。

 

「絶対にぶっ殺してやるぞ貴様らぁぁぁぁぁああ!!!」

「……行くぞ」

 

ゼルドリスのその言葉で〈十戒〉達は飛び立った。

 

そして、ついに出れたザレオスが見たのは既に生き絶えたメリオダスを抱え泣くエリザベスの姿だった。

 




身長:170cm 体重:62kg
誕生日:10月7日
年齢(封印前):82歳
血液型:O型 利き腕:右
魔力:神殺し(ゴットキラー)
特技:乗竜 趣味:神殺し
好きな食べ物:酒、肉
コンプレックス:特になし
尊敬する人物:メリオダスとエリザベス
自分の好きなところ:特になし
夢・野望:魔神王と最高神を殺す
好きな動物:竜
闘級(通常時):116000
魔力(通常時):9000
武力(通常時):102000
気力(通常時):5000

闘級(女神化時):130000
魔力(女神化時):12000
武力(女神化時):112000
気力(女神化時):6000

かなり強めにしたつもりだったんですけど最近はインフレでこれだと弱くなってしまってますね。

ザ「おい、初登場なのにこの仕打ちはなんだ。かませっぽくなってるじゃねぇか」

バカタレお前に〈十戒〉の1人でも殺されると困るんだよ。

あ、そういえばゼルドリスに「凶星雲(オミノス・ネビュラ)」を使わせる案もありましたがザレオスが逆に殺されそうなのでやめました。周り巻き込みますしね。

今回のオリ技はほとんど説明したし、してないのは効果が被ってる奴なので大丈夫ですかね?不明な点があれば質問してください。

ちなみにザレオスの魔力は魔神王と最高神には一切通用しませんでした。リュドシエルとかには効くんだけどね。


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第12話 メリオダスの死後

   何とも時の流れとは早いもので私がハーメルン様でもの書きを初めてから1年が経ちました。
   それを記念致しまして、とあるアンケートを活動報告にて行っています。「1周年記念!」というタイトルの活動報告です。お暇でしたらそちらもご覧ください。
   ……いや、ホントに。お暇だったらでいいんで、無理とかしなくていいんで。ホントに。
    〆切は12月25日です。

   さて、ここまで続けることが出来たのも皆様のおかげです。
   本当にありがとうございましたm(_ _)m
   これからもよろしくお願いしますm(_ _)m

   ちなみにこの作品だけなら7ヶ月ですね。
   な、7ヶ月で総話数13……だとッ。スローペース過ぎないか。来年から頑張ります。

   それから今回短めです。


   〈七つの大罪〉メリオダスの敗北から1ヶ月。

   魔神族に立ち向かう勢力は多数存在したものの、〈十戒〉の前にはなす術がなく。その数は、日ごとに減少し、ブリタニアの勢力図は、暗黒の波に侵食されつつあった。

 

   着実にブリタニア支配に近づいていくなか、しかし〈十戒〉は——否、だからこそ〈十戒〉は違和感を隠せなかった。

   今までに一切、“忌み子”達からの介入がないのだ。

   妹はともかく復讐鬼たる兄が尊敬するメリオダスを殺されて黙っているだろうかと。

   聖戦時、“忌み子”達はザレオスが1人で暴れることが多かったが、2人が組んだ時は1人の比ではない程に危険な存在だった。

 

   ザレオスの〝神殺しの領域〟により、力が制限され、ジブリールの魔法により、さらに力を増したザレオスに斬り刻まれる。

   そして、ザレオスの後方から神器と魔力の力で魔力が尽きないジブリールからの強力な魔力攻撃などによる援護。

   さらに、視線すら合わせず、行う絶妙なコンビネーション。

   〈十戒〉全員を正面から相手しても勝ち目が大いにある戦法であった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

   さて、そんな“忌み子”達が今何をしているかと言うと——

 

「大ジョッキ5つお待ち!」

「お兄ちゃん!、エリザベスさん!アップルパイ出来ましたよ!」

「分かった!」

 

   とある酒場で店員をやっていた……。

 

   とある酒場とはもちろん豚の帽子亭である。

   そこで、ジブリールは調理、ザレオスはエリザベスと共に酒や料理を運んでいた。

   2人の姿はジブリールの魔法で人間と変わらない姿になっている。

 

   あの(メリオダスが殺された)後、〝鉱樹 オルドーラ〟から脱出したザレオスは涙を流すエリザベスに抱かれるメリオダスを見て、即座に〈十戒〉を追い、命にかけても滅殺しようとしたが、傷を治したジブリールに呪いの話を聞き、何とか踏みとどまった。

 

   ザレオスが〈十戒〉を圧倒していたのはもちろんザレオスの実力もあったが、〈十戒〉がメリオダスやジブリールとの戦闘で消耗していたのも大きかった。

   加えて、ジブリールも消耗しており、ただの人間程度の力しか発揮できないエリザベスを放置することは出来ないなどのこともあり、ザレオスはメリオダスが復活するまでは〈十戒〉を見逃すことにした。

   それにより、人間達に多数の死者が出たわけだが、ザレオスはそんなことは知ったことではなかった。

   心優しいジブリールは罪悪感を感じていたようだが……。

 

   ちなみに、ジブリールの料理は非常に美味しく評判だった。

   メリオダスとエリザベスは言わずもがな、ザレオスも料理など出来ないので、4人で暮らしていた時もジブリールが料理担当だった。

 

 

「3番テーブルのお客様!!アップルパイお待たせしました!……キャーーーッ!」

 

   アップルパイを手に走っていたエリザベスは何もない所で盛大に転んだ。

   投げ出されたアップルパイだったがそれをザレオスはキャッチしつつ、エリザベスを支えた。

 

「大丈夫か?」

「あ、ありがとうザレオス」

 

   テーブルにアップルパイを置きつつ、エリザベスに聞くザレオスにエリザベスが答える。

   ちなみに、ジブリールが来てから豚の帽子亭の意味不明なメニューは廃止され、普通のメニューになった。

 

「すみませんでした」

 

   エリザベスは、危うくアップルパイを頭から被りそうになったお客達に頭を下げる。

 

「俺たちなら大丈夫!」

「そうそう、気にせずがんばれ!!」

((可愛いから許す))

「ハイッ!!頑張ります!!」

 

   その挫けない姿にホークが「たくましくなった」とホークがしみじみと呟く。

 

   魔神族に攻められながら、ここは平和であった。

 




   ジブリールの料理の腕前はバンと同じくらいです。美味しそう。

   後、多分今回が今年最後です。皆様良いお年を!


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第13話 復讐の連鎖

 皆様あけましておめでとうございます(今更
 そして、お久しゅうございます。
 新年に1回投稿するとかほざいておきながら結局毎日投稿が終わった2月になってしまい大変申し訳ありませんでしたm(_ _)m

 そして、今回はゴルギウスやザラトラスによる過去鑑賞は全カットです。
 どちらも原作と大差ない上にザラトラスの方は長いのでね。

 後、今回凄まじく長くなりました^^;
 一万字越えはこの作品じゃ初かな?
 切ろうかと思ったけど待たせた詫びがわりにでもと。


 現在ブリタニア随一の大国であるリオネス王国は魔神族〈十戒〉の侵略を受けていた。

 当初〈十戒〉「無欲」のフラウドリン率いる魔神族相手に何とか持ちこたえていたリオネス王国だったが、フラウドリンの救援に来た他の〈十戒〉の参戦により一気に劣勢に立たされた。

 

 〈十戒〉達の絶大な力だけではなく、〈十戒〉「慈愛」のエスタロッサの戒禁により、聖騎士達は戦う力を失い、最早ただ死を待つのみとなってしまった。

 

 そこで立ち上がったのが〈七つの大罪〉〈傲慢の罪(ライオン・シン)〉エスカノール。〈七つの大罪〉最強の男。

 エスカノールは〈十戒〉「慈愛」のエスタロッサ及び「敬神」のゼルドリスを遥か彼方まで吹き飛ばした。

 

 しかし全力戦闘の結果、エスカノールの魔力「太陽(サンシャイン)」による被害を恐れ、リオネスから離れた場所で待機せざる負えなくなった。

 追い討ちをかけるように「敬神」の戒禁にかかった聖騎士や民が暴徒と化した。

 

 

「悪いことは言わない、もう降伏しなさいよ。正直、この状況での君らの勝算は…。ねえ、デリエリ?」

「0な」

 

 暴徒と化してはいないが、「慈愛」の戒禁にかかり、戦う力を失った聖騎士達に〈十戒〉「沈黙」のモンスピートと「純潔」のデリエリが降り立ちながら言った。

 

「勝算はある」

「ん?」

「お前達を今ここで殺す」

 

 その言葉に返したのは城から出てきた、1人の男。

 リオネス王国、国王の実弟にして、聖騎士長補佐の〈蒼天の六連星〉を率いる団長デンゼル。

 

「おいデンゼル♪奴らにハッタリは効かねぇぞ〜?」

「〈強欲の罪(フォックス・シン)〉バン。陛下と王女達をくれぐれも頼む」

「デンゼル様…本当に実行するおつもりですか…!? まだ、その時では…」

「今がその時なのだ。案ずるではない…覚悟はできておる。王国の未来の…若人達のためならば喜んで、この老骨の命、捧げよう。さぁ下がれデスピアス」

 

 涙ぐみながらデンゼルを止めようとしているデスピアスの言葉にデンゼルはモンスピート達に歩み寄りながら引かせる。

 

「さっき、我々を殺すとか聞こえたんだが」

「耳はいいようだな」

「誰が? どうやって? たかが赤色魔神(あか)に毛が生えた程度の闘級のジジイが——」

「お前達を殺すのは私ではない」

 

 そう言ってデンゼルが腰の剣の柄を握った時だった。

 その場の全員が巨大な気配を感じた。

 目の前の〈十戒〉を軽々と上回る存在感。

 反射的に全員がそちらを向く。

 

 その視線の先には黒い闇の翼を広げ、空を飛び、黒き瞳で見下ろしている少年の姿があった。

 

「〈神殺し〉ザレオス…ッ!」

 

 デリエリがその少年の名を呼んだ。

 


 

 さて、ザレオスがここにいる理由を語ろう。

 

 ゴルギウスに飯を食わせ、ザラトラスに驚き、過去の記憶を見たザレオス達はリオネスへ向かってホークママを進ませていた。

 

 もちろん、ジブリールの〝瞬間移動〟ならば即座にリオネスに着く。

 しかし、ザレオスとジブリールは可能な限りエリザベスを〈十戒〉に会わせたくなかった。

 〈十戒〉ならば当然エリザベスを知っている。下手すれば呪いのことすら知っているかもしれない。

 それをエリザベスに話されると記憶が戻る切っ掛けになりかねない。

 それだけは絶対に避けなければならない。

 

 しかし、エリザベスの故郷であり、家族や知り合いがいるリオネスを蹂躙されればエリザベスは深く傷ついてしまうだろう。

 その苦肉の策として、ジブリールをエリザベスの護衛に残し、ザレオスだけ全速力でリオネスへ向かったのだ。

 

 ジブリールならば複数の〈十戒〉を相手にすれば負ける可能性が高いがザレオスならば〈十戒〉を複数相手にしても勝率は高く、エリザベスと共に来るジブリールが到着するまでの時間稼ぎくらいなら容易だあるし、〈十戒〉を撤退させる可能性の方が高いだろう。

 

 ジブリールとエリザベスに無理はするなと言い含められてはいたがザレオスはリオネスの〈十戒〉を皆殺しにする気満々だった……。

 


 

「よお、モンスピート、デリエリ。1ヶ月ぶりだな。未だしぶとく生きていやがったのか。非常に残念だ」

 

 嘲笑を浮かべながら、モンスピート達に話しかけるザレオス。

 

「魔神族が1人増えたか。纏めて殺してやる」

「いや、あいつは…」

 

 デンゼルがザレオスを魔神族側だと勘違いしている中、あのメリオダスが死んだ戦いを見ていた者達はそうではないのではと考える。

 

「ルギツ、ヨリ、ロデ…「ネロバスタ」……」

 

 しかし、それを口にする前にデンゼルが剣を抜きながら、術を唱え始める。

 デンゼルは術を唱えながら、剣で自身の手の甲を斬り、出た血を円状にばらまく。

 すると、血が発光し始める。

 

「顕現せよ」

 

 そのデンゼルの言葉に巨大な翼を生やした女性が出現した。

 

「これは…!! ケルヌンノスの角笛から感じた気配に似た…」

「デンゼル様は命を代償にその身に顕現させる道を選択された!!」

 

 その巨大な女性は剣を掲げたデンゼルに吸い込まれた。

 

「女神族を」

 

 その後のデンゼルの瞳には女神族の模様が宿っていた。

 

「嫌なモノを感じていた」「これが…正体」

「とんだサプライズだね」

 

 女神族の気配を感じてか、「不殺」のグレイロードがその場に現れる。

 モンスピートは空からこちらを見下ろすザレオスと女神族をその身に宿したデンゼルを見比べ、冷や汗をかきながらそう言った。

 

(アタシ)が殺る」

 

 そう言ってデンゼルへ向かうデリエリの顔には怒りと殺意に満ちていた……神を前にしたザレオスのように。

 

「なんだ、この邪悪な気配は……!!」

「ひ…」

 

 「敬神」の戒禁にかかった人々がデンゼルを恐れるような声でどよめく。

 

「女神族なのですね…」

 

 自身の体を確かめるように、手を動かしていたデンゼルに宿る女神族にデスピアスが話しかける。

 

「私は女神族〈神兵長〉ネロバスタ。望みを言えばもう少し若い肉体が良かったのですが…」

 

 その言葉にデスピアスが複雑な表情をする。

 当然だろう。敬愛する団長が命をかけて顕現させたのに、そのようなことを言われれば。

 

「…それで何用です? 私を復活させたにはそれなりの理由がおアリなのでしょう?」

 

 デンゼルの中にいるネロバスタはそこで、灰色や赤色の下位魔神に気づく。

 

「!! あれは…魔神族? あの戦で生き延びた残党が、まだいたのか?」

 

 そして、ネロバスタは背後の巨大な気配にようやく気づいた。

 振り向いて視線の先にいた殺気立つデリエリに驚愕を露わにする。

 

「お前は……!!! 〈十戒〉…〈純潔〉のデリエリ!!!? なぜ…〈十戒(きさまら)〉は我ら女神族により「常闇の棺」に封印されたはず…!! 封印を解いた愚か者は誰だ!?」

 

 そして、周囲をよく確認したネロバスタは上空にそれ以上の化け物の存在に気がついた。

 それを視認したネロバスタは驚き以上に明確な恐怖の表情を浮かべた。

 

「ば、馬鹿な…! 〈神殺し〉だとッ! 最高神様に封印されたのではなかったのか!?」

「はっ、ネロバスタ久しぶりだな。ん? いつもの偉そうな威勢はどうした?」

 

 怯えるネロバスタへ近づきながら、馬鹿にするようにそう言ったザレオスの言葉には答えず、ネロバスタは保身に走る。

 

「ま、待て! お、お前は女神族を含めた四種族の陣営にいたはずだ…ッ。ならばお前と私は味方で戦う理由は無いはずだ」

「へぇ——」

 

 そう呟いたザレオスが——

 

「——俺らの両親が殺された時にお前もリュドシエルと共にあの場にいたのにか?」

「!!!!?」

 

 ——ネロバスタの眼前に現れ、首に手をかけたのを視認できたのはその場に誰もいなかった。

 まだ、右手を添えているだけだが、その手に力を込めるだけで自分は殺される。

 そう理解したネロバスタは冷や汗を滝のように流しながら、弁解——言い訳を言う。

 

「あ、あれは私の意思ではなく、さ、最高神様の、命令で……ッ。仕方がなかったのだ!」

 

 だが、それはザレオスの怒りを煽るのみ。

 

「へぇ、俺らの両親が死んだのが「仕方がなったから」ねぇ」

「!!!!!?」

 

 ネロバスタがここまでザレオスに怯えているのは古の聖戦でザレオスの恐ろしさをその目で見たからに他ならない。

 

 女神族と魔神族の戦闘中に乱入して来たザレオスは自身の部下や自身と同じ〈神兵長〉、敵の魔神族をホコリでも払うかのように殺し、自身の攻撃をまるで受け付けず、自身では手も足も出ない〈十戒〉を一蹴し、敬愛する〈四大天使〉長リュドシエルに重症を負わせた化け物。

 ネロバスタに取っては〈十戒〉などよりも恐ろしい存在なのだ。

 

 ザレオスは滑稽なネロバスタを鼻で嗤いながら言った。

 

「まあ、人間を守れと言われている以上お前と事を構える気は今のところない。命拾いしたな? ネロバスタ?」

 

 その言葉にあからさまにホッとした様子のネロバスタにザレオスは続ける。

 

「だからまあ、今日は——」

 

 そう言いながらザレオスは右手でネロバスタの頬を叩いた。

 

「——これで勘弁してやる」

 

 頬を打たれたネロバスタは轟音を立てて、壁に激突した。

 血を吐きながら、ザレオスを怯えた目で見るネロバスタを鼻で嗤ってザレオスは放置されたデリエリに向き直った。

 

「さてと。待たせたな。ぶっ殺してやるよ」

 

 そう言ってザレオスは剣を抜き、デリエリに向ける。

 

「もう、逃げても、泣いて命乞いしても見逃さないからな」

 

 ザレオスがそう言った直後、ザレオスが消えた。

 その直後デリエリの前に剣を振り上げたザレオスが現れた。

 

「な……ッ!」

「デリエリ!」

 

 その剣がその場の誰にも捉えられない速度で振り下ろされた。

 デリエリはザレオスが目の前に現れた時に左の闇の手で防御の構えを取っていた。

 それ故に間一髪で両断されるのを避けることができた。

 

「くっ……!」

 

 凄まじい力で体が押しつぶされそうになりながら、なんとか押し返そうとするが力の差がありすぎる。

 デリエリは両手で押し返そうとしているのにザレオスは片手でデリエリを圧倒している。

 

「〝神殺しの——」

 

 デリエリの闇の手を剣で押しながら、ザレオスがそう呟く。

 〝神殺しの剣〟でデリエリの闇の手ごと斬り捨てようとしたのだ。

 〝神殺しの剣〟ならば闇や光で守っていようとも紙切れ一枚分の意味すらない。

 

「!?」

 

 しかし、その前にザレオスが何かに気づいたように天を仰ぎ見る。

 その直後、ザレオスは落ちて来た女性に踏まれ、地面にめり込んだ。

 

「デリエリの姉御!大丈夫ですか!?」

「ケツから言って…遅かったな、グレモル」

「すみません。こいつの魔力を探知するのが遅れまして」

 

 ザレオスを踏んだまま、デリエリと会話をする女性。

 赤い髪を腰まで伸ばし、デリエリより僅かに背の高い彼女の名前はデリエリが言った通りグレモル。

 

「モンスピート様、デリエリ様。約束通りザレオス(こいつ)は俺たちの獲物です。お譲りいただけますね?」

「もちろんだよ。私達では彼を倒すのは容易ではない。だが、君達ならば可能だろう。だが、油断はしないようにね」

「はい」

 

 空を飛びながら、モンスピート達に話しかける青い髪のグレモルデリエリよりも背の低い杖を持った少年。

 彼の名はアルケロ。

 2人とも〈十戒〉に匹敵する実力を持つ者達である。

 

「「!?」」

 

 踏まれていたザレオスが剣をデリエリとグレモルに向けて振り回した。

 デリエリとグレモルはそれを避けるために距離を取る。

 

「誰だ、お前ら?」

 

 起き上がったザレオスがグレモルとアルケロを見て問う。

 問われた2人は怒りと憎しみを宿し、返した。

 

「貴様に両親と友を殺された姉弟だ…ッ!」

「惨たらしく殺してやる…ッ!」

 

 アルケロとグレモルの怒りと憎しみの言葉に、しかし、ザレオスは鼻で嗤う。

 

「はっ!ラッキーパンチを一回当てたくらいで俺に勝てるつもりか?デリエリ達より弱い雑魚共が?」

 

 ザレオスの言葉通り、グレモルとアルケロは確かに〈十戒〉に匹敵する。

 だが、それでも闘級三万ほどしかない。

 十分に強者ではあるがザレオスから見れば雑魚そのものである。

 

「両親を殺される気持ちはわかるだろ?大人しく殺されろ」

 

 しかし、ザレオスの言葉には答えず、アルケロが言う。

 

「はあ?寝言は寝てから言え。力のないやつは奪われるしかないんだよ」

 

 ザレオスの脳裏に浮かぶのは両親を殺されるのを黙って見ていることしかできなかった自分。

 

「だから、雑魚が復讐なんてできるはずがないんだ」

 

 憎しみを浮かべながら、ザレオスは言った。

 

「貴様らが死ね」

 

 そう言いながら、高速でグレモルへ向かって跳びかかりながら剣を振り下ろ——

 

「!?」

 

 ——そうとした直後ザレオスは頬を殴られたような痛みを感じながら、吹き飛ばされていた。

 

 否、それは正確ではない。

 ザレオスから見れば先の説明の通りだが、他の者から見ると違う。

 ザレオスがグレモルへ斬りかかる直前で空中で静止した。

 そして、その静止したザレオスをグレモルがぶん殴った。

 ただそれだけだった。

 

 混乱しているザレオスはリオネス近くの平原に墜落した。

 そのザレオスへグレモルが追撃を加える。

 

「ハアァァァァァァッ!」

 

 連続でザレオスへ向けて殴り続けた。

 その凄まじい力で地が揺れ、陥没した。

 

「くっ……!」

 

 腕を顔の前に構えて防御するザレオスはその力に驚く。

 自分と同等の力なのだ。

 

(どうなってやがる…ッ!)

 

 ザレオスの武力は数値にして10万2000。

 それと同等となると〈十戒〉の闘級を軽々と上回る。

 その上さっきまでは確実にデリエリ達より下だった。

 

 そう考えていたザレオスは再び不自然な体勢で静止する。

 グレモルは無防備なザレオスを殴りまくる。

 そして、再びザレオスが動き出す直前に殴り飛ばし、地面へ叩きつける。

 そして、ザレオスは殴打されている自分の体と自分のいた場所と変わっているのに驚愕する。

 

「き、貴様らの魔力のせいか…ッ!」

 

 ザレオスは闇で傷を治しながら、こちらへ歩み寄るグレモルと空中からこちらを見下ろすアルケロへ零す。

 

「そうだ。俺の魔力「停止(ストップ)」が貴様の動き、思考、魔力の全てを5秒間停止させる」

「そこを、(アタシ)の魔力「同一(セイム)」の力で貴様と同じ武力になった(アタシ)が貴様を殴る」

 

 それがこのおかしな現象の正体だった。

 モンスピートがこのタッグならばザレオスを倒せると思った理由でもある。

 

「はっ、自分から手の内を明かすとはバカな奴らだ。〝神殺しの領域〟ッ!」

 

 ザレオスを中心にして紅い光が周囲を覆った。

 これならば自分と同じ武力になったとしても力が弱まる。

 そんなザレオスを考えをつぶすようにアルケロが呟いた。

 

「問題ないんだよ。〝絶対強制解除(アブソリュートキャンセル)〟」

 

 直後周囲を覆った紅い光が消える。

 

「俺の魔力を一瞬で消しただと…ッ!?」

 

 驚き、喘ぐザレオスへグレモルが殴り掛かる。

 ザレオスはそれを腕をクロスして受け止める。

 しかし、その直後ザレオスの体が静止し、グレモルはザレオスの腹や背中などの無防備な部分を殴る蹴る。

 そして、5秒経つ前にザレオスを蹴り飛ばした。

 

 再び動き出したザレオスは分かっていても抵抗すらできないことに舌打ちする。

 

「先にお前から殺してやるよ!」

 

 そう言いながら、空を飛ぶアルケロへ飛びかかる。

 その前にグレモルが立ち塞がる。

 

「だろうな!」

 

 ザレオスはそう叫び、グレモルへ斬りかかる。

 グレモルはそれを受け流し、防御に専念する。

 同じ身体能力で防御に専念されれば、ダメージを与えるのは非常に困難だ。

 何度もグレモルへ剣を振るが、その全てを受け流すか、避けられる。

 再びザレオスの体が静止し、グレモルはザレオスを攻撃する。

 そして、5秒経つ前に地面へ叩きつける。

 

「ゴハァッ!ク、クソ!」

(あっちの男の魔力は連続で使えないんだな。だからその間あの女は防御に専念してやがるッ!めんどくせぇ連携だ!なら——)

「〝神殺しの煌炎〟!!!」

 

 ザレオスは左手から紅い光を放つ炎をグレモル達へ放った。

 神々を地獄の苦しみを与えながら、焼き尽くす技だ。

 もちろん、闇や光の回復を阻害する効果付き。

 遠距離攻撃ならばグレモルでは対処できないだろうという判断からだ。

 しかし——

 

「〝殲滅の光(エクスターミナイト・レイ)〟」

 

 アルケロから放たれた魔法によって相殺された。

 

「貴様の闘級は確かに俺らや〈十戒〉おも上回る。だが、殆どが武力で魔力は俺にすら劣る。そんなお前の魔力攻撃を相殺するのはわけない」

「雑魚が…ッ、粋がるなよ…ッ!」

「いつまで、自分が上のつもりだ? お前では俺らには勝てん」

 

 アルケロのその言葉と共にザレオスの体が静止する。

 そこをグレモルが攻撃する。

 

「クソがッ!」

 

 5秒後、〝神殺しの剣〟や〝神殺しの鉄拳〟でグレモルを攻撃するが、それすらも紅い光に触れぬようにしながら受け流し、回避する。

 完全に2人はザレオスを追い詰めていた。

 ザレオスの回復力を持ってしても何度も攻撃を喰らい続ければ消耗する。

 魔神族の力は傷は治せるがダメージは残るのだ。

 

「終わりだな」

「クソ野郎が。とっとと死んだ方が身のためだぜ? まあ、簡単には死なせないがな」

「ハァッ……ハァッ……」

 

 その後も何度も停止(ストップ)の魔力を受け、無防備に攻撃を受け続けたザレオスはかなり疲弊し始めていた。

 

「ハァァ……ハァァ……。なるほど? 確かに手強いな。だがな、その程度で俺に勝てると思うなよ? 魔神と女神を震え上がらせた〈神殺し〉の力を見せてやるよ」

「減らず口を」

 

 ニヤリとザレオスは笑うと、地面を全力で殴った。

 

「「!?」」

 

 それにより、辺りを土煙が漂う。

 

(煙幕か? そんな手で)

 

 2人は特に動揺することもなく、グレモルが即座にアルケロの側に寄る。

 

「〝嵐の球体(テンペスト・スフィア)〟!」

 

 アルケロとグレモルの周囲以外を球体状に地を砕くほどの突風が吹き荒れた。

 しかし、それをザレオスは剣を一振りしただけで搔き消した。

 

「「!?」」

「テメェ程度の魔力で俺をどうにかできると思ったか!?」

 

 そう言いながら、2人に向かって飛びながら、2人へ手をかざす。

 

「〝聖櫃(アーク)〟ッ!!」

 

 女神族の力を発現させながら、2人まとめて〝聖櫃(アーク)〟に閉じ込めた。

 

「「ハァッ!!!」」

 

 2人はそれを闇を放出して脱出する。

 その隙にザレオスが2人の背後に回り込み、反応して振り向いたアルケロの両眼を斬り裂いた。

 

「ぐあ…ッ!」

「テメェ…ッ!」

 

 グレモルがザレオスへ乱撃を加える。

 それを防御しながら、嘲笑いながらザレオスが闇で眼を治しつつあるアルケロに問う。

 

「どうした? ()()()()()()()()()?」

「「!?」」

 

 問われたアルケロのみならずグレモルも眼を見開き、驚愕を露わにする。

 それによって生じた隙に、グレモルの腹部へ蹴りを叩き込み、地面へ蹴り飛ばした。

 

「が……ッ!」

 

 〝探知(ロケーション)〟したのかザレオスへ向けて〝獄炎(ヘルブレイズ)〟を放とうとしているアルケロの背後に回り込みながら回し蹴りを加え、グレモルの上に墜落するように蹴り飛ばした。

 

「何度も見せたんだ。連続で使えないなら次までを数えるのは当然だろ? しかも、思った通り視界内の奴を停止させるみたいだな。そして——」

 

 地面に着地して、地面でダメージに悶絶する2人に近づきながら、グレモルへ眼を向ける。

 

「——そこの女は武力は同じになるが体の頑丈さは変わらないみたいだな。俺以上にダメージを受けてるじゃないか。——なんだ、どっちも弱点ばかりの欠陥魔力だな?」

 

 忌々しそうに顔を歪める2人に嘲笑を浮かべて見下ろす。

 

 本来ならば2人の弱点はあって無いようなものなのだ。

 この戦法は短期決戦向けである。

 グレモルが敵と殴り合い、足止めしているところをアルケロが魔法や魔力でダメージを与えたり、動きを止め、敵の動きが鈍ったところをグレモルが追撃を加えるというものだ。

 

 アルケロの「停止(ストップ)」のクールタイムが終わった瞬間に再度使用するといったことはしない。

 したとしても戦闘中に、グレモルの相手をしながら正確に体内時計で時間を計るのは非常に困難である。

 だが、今回は敵が規格外過ぎた。

 闘級が倍どころか4倍近い。

 アルケロの魔法攻撃は殆ど意味をなさないと見て、「停止(ストップ)」魔力にアルケロは専念することにしたのはいい判断だろう。

 アルケロの魔力では僅かに気をそらす程度しかできない。

 その上「神殺し(ゴットキラー)」の魔力は掠るだけでも危険でアルケロは魔力を連発せざるおえなかった。

 それでもクールタイムを正確に測るとは想像もしていなかった。

 

 グレモルにしても武力10万2000、女神族の力を発現させれば11万2000。

 これほどの武力を持つ相手と戦ったことなど一度もない。

 もちろん、グレモルは自身も魔力の弱点を知っていた。

 故に、受け流しをメインとした武術を習得していた。

 だが、一度打たれればしばらく戦闘不能になるほどの大ダメージを受けてしまう。

 さらに、ザレオスの「神殺し(ゴットキラー)」の魔力による緊張感も加えてかなり集中し続けなくてはいけなかった。

 

 その上彼等は若かった。

 ザレオス達よりは年上だが100歳程度の年齢だった。

 ザレオスへの復讐心で鍛えた力は〈十戒〉に匹敵し、数多の多種族を葬った。

 〈四大天使〉との戦闘経験もなく、負けを経験したことがなかった。

 故に彼等は慢心し、ザレオスを絶望させようと自分達の手の内をバラしたのもまずかった。

 

「舐めるなよッ!!」

 

 眼を治し終えたアルケロがザレオスの動きを止める。

 嘲笑を浮かべたまま固まったザレオスへグレモルが飛びかかるがザレオスへその拳が当たる前に、ザレオスの足元から紅い光を放つ炎が終え上がった。

 

「!!? ア、ガァァァァァァァア!!!!?」

 

 反応が間に合わず、体を焼かれたグレモルがその痛みに悶絶する。

 〝神殺しの煌炎〟だけではなく「神殺し(ゴットキラー)」の魔力は自身や味方を魔力の対象外にできる。

 それを利用して足元に〝神殺しの煌炎〟を地雷のごとく設置していたのだ。

 

「姉ちゃんッ!!」

 

 広がる炎から逃げることもできずにいるグレモルを〝瞬間移動〟でアルケロが手元へ取り寄せ、回復を阻害する紅い光を〝絶対強制解除(アブソリュートキャンセル)〟で消す。

 

「っと、上手く引っかかったようだな。やっぱ、お前ら大したことないわ。まあ、〈十戒〉よりは小賢しかったがな」

 

 体を焼かれたグレモルを見てそう言ったザレオスにアルケロが憎々しげに睨む。

 

「大丈夫!? お兄ちゃん!!」

 

 そろそろ仕留めようかとザレオスが2人に近づこうとする前に、慌てた様子のジブリールが合流した。

 ジブリールは治しつつあるが、傷だらけのザレオスを見て兄の心配をしつつ、兄をここまで傷つけたのは何者だと、アルケロと傷を治し終わったグレモルへ眼を向ける。

 

「ああ、ジブリールか。お前が来たってことは結構な時間手こずっちまったようだな。次からは雑魚でも手の内がわからない相手は全力で消すことにしよう」

「ゆ、油断してたの?」

 

 呆れたように零したジブリールへニヤニヤ笑いながら首を振る。

 

「まあ、油断もあったがそれでも中々小癪な手を使うもんでな。だが、もう片付く」

「油断してたとはいえ、お兄ちゃんを手こずらせるって彼等は?」

「俺に両親と友を殺されたらしいぜ?」

 

 それを聞いたジブリールは眼を見開き、悲しげな表情を2人に向ける。

 それを向けられた2人は、一気に劣勢になった戦況をどうにかする策を考えていたことも忘れ、怒りに震える。

 理由は敢えて語るまでもないだろう。

 

「……それを聞いて、平気で返り討ちにしようとしたの?」

 

 真剣な声音で問うジブリールにザレオスは肩をすくめて返す。

 

「戦争だぞ? 死ぬ覚悟のないやつは戦場に立つなって——」

「違う!!!」

「あ?」

 

 ザレオスの言葉を切り、アルケロが叫ぶ。

 

「貴様は俺達がいない間に集落に襲いかかって、非戦闘員だろうと関係なく、女子供だらうと皆殺しにしただろう!!!」

 

 それを聞いたザレオスは小馬鹿にした態度を一転。

 真剣な表情にして答えた。

 

「あ〜、そいつは悪かったな。あん時は憎しみでどうかしてた」

 

 ザレオスが〈神殺し〉として猛威を振るったのは基本的に戦場だったが、メリオダス達に出会う前のザレオスは戦場であろうとなかろうと、男だろうが女だろうが子供だろうが非戦闘員だろうが神ならば殺しまくった。

 無論、魔神族だけでなく、女神族にも多くの犠牲者が出ていた。

 故にメリオダスとエリザベスがザレオスとジブリールを匿った時の批判は凄まじかった。

 

 ザレオスの言葉を聞いた2人はさらに怒りを燃え上がらせる。

 ザレオスはだろうなと苦笑する。

 自分もリュドシエル達にそんなことをほざかれればキレて暴れる確信がある。

 

「ま、そういうことなら今すぐ失せれば見逃してやるよ」

「ふざけるな!!!」

「貴様ら兄妹まとめて殺してやる!!!」

 

 それを聞いたザレオスは少し嬉しそうに笑う。

 

「ああ、そうだろうな。そうかなくては。よくいるんだよ。敵討ちだってくるやつは。友を殺された、仲間を殺された、親を兄弟を恩人を。そう言ってかかって来るくせして俺の力を見ると逃げ惑い命乞いするやつまでいる。……おかしくないか? 大切な人を殺されたんだろ? なぜ逃げる? なぜそんな奴に命乞いできる? 復讐の果てに死ねるなら本望だろ? 死すら恐ろしくないだろう? それともその程度の覚悟しかないのか? その程度の人だったのか? 俺は奴らを殺す。殺して殺して殺し尽くす。その果てに死のうと関係ない。復讐は何も生まないなどとほざく奴がいるが知ったことではない。俺らの大切な人を殺した奴がのうのうと生きているのを許せるはずがないッ」

 

 ザレオスの深い憎しみに敵討ちに来たはずのアルケロとグレモルですら気圧された。

 メリオダスとエリザベスに出会って憎しみが消えたわけではなく、ただ心の奥底にしまわれていただけだったことを再確認したジブリールは悲しげに顔を伏せる。

 そんな3人をを差し置いてザレオスはさらに続ける。

 

「てっきり俺がおかしいと思ってたんだが……そうだよな。復讐のためには命なんか投げ捨てるものだよな。所詮は俺のエゴだ。父さんと母さんが望んではないだろう。ならばそのエゴを押し通す。命乞いなどするものか。逃げてたまるか。逃げるのならば次は確実に殺す。殺す殺す殺す殺す殺すッ!殺すッ!!!

 

 放たれた殺気がアルケロとグレモルに怒りを忘れさせ、恐怖させる。

 かつて、エスタロッサとなる前のマエルやリュドシエルですら死を覚悟させた憎しみが2人を襲う。

 

「さあ、かかってこい。復讐の果てに殺してやる。上手くいけば復讐を果たせるかもな?」

 

 殺気をしまったザレオスが嘲笑も怒りもなく、ただ無表情で2人に告げる。

 

「ジブリール、手は出すな。奴らの勝ち目が完全になくなるからな」

「は、い……」

 

 顔を伏せたままのジブリールが返す。

 ザレオスに対するアルケロとグレモルの頭にはもはや撤退の2文字しかなかった。

 作戦の練り直しが必要だ。

 現状では勝ち目はほぼない。

 

 アルケロは「停止(ストップ)」でザレオスの動きを止める。

 ジブリールが突如止まった兄に顔を上げ首を傾げる。

 それを捨て置いて、グレモルがザレオスを殴り飛ばし、距離を開ける。

 

「お兄ちゃん!?」

 

 ザレオスを心配するジブリール。

 

「ザレオスに伝えろ。次は必ず殺すと」

 

 それを気にせず、グレモルが悔しそうにジブリール言う。

 そして、ザレオスが轟音と土煙を上げながらこちらへ飛ぶのを尻目にアルケロの〝瞬間移動〟で2人は消えた。

 直後2人がいた場所にザレオスの斬撃が襲い、地を割った。

 

「チッ!逃したか」

「『次は必ず殺す』だって……」

「そうか……」

 

 ジブリールから伝言を聴くと、ザレオスは剣を鞘にしまう。

 

「お兄ちゃん…。もうやめて…ッ。復讐は復讐しか生まないよ。お兄ちゃんが傷つくのなんて見たくない…ッ。死んでも構わないなんて言わないで……。私、お兄ちゃんが死んだら生きていけないよ…!」

 

 涙を零しながら、そう訴えるジブリールにザレオスは眼を見開き、目をそらしながら返した。

 

「俺が死んでも、メリオダスとエリザベスが——」

「それでもッ!それでも……たった1人の家族なんだよ? もう家族を失うのは嫌なの……。1人にしないで……」

 

 ザレオスの服を掴み、震えながら消え入りそうな声でその小さな体、幼い精神には不釣り合いな巨大な力を持つ少女は言う。

 57歳。

 人間ならば大人どころかおばさん呼ばわりされる年齢だが魔神族や女神族から見ればまだまだ幼い。

 そんなうちから、親を失い、兄を失いかけ、恩人に酷い仕打ちをされてしまった。

 

 ザレオスは先程とは打って変わり、ごく一部の者にしか向けない——それどころか見たことすらないほどの優しい笑みでジブリールの小さな体を優しく抱きしめた。

 そして、憎しみを語る声や敵に向ける声とはまるで違う別人のような優しげな声で、安心させるように言った。

 

「わかった。悪かったな。もう、死んでも構わないなんて言わない。無茶も無理もしない。メリオダスとエリザベスのクソみたいな呪いを解いて、くだらない戦争も終わらして、平和な世界でまた4人で暮らそう。ジブリールの美味い飯を食って、時々マーリンが遊びに来たりして、メリオダスの新しい仲間——〈七つの大罪〉って言ったか? そいつらとも馬鹿騒ぎしてみて。穏やかで、かけがえのない日常を。な?」

「うん…ッ」

 

 ザレオスの胸に甘える猫のように顔をこすりつけながら、鼻をすすってジブリールが答える。

 そんなジブリールが泣き止むまでザレオスは優しくジブリールの頭を撫でた。

 

「もう、大丈夫です。また、頑張れます!」

「そうか、んじゃリオネスに戻るぞ」

「はい!」

 

 笑顔で元気に返事をして飛び立つジブリールの後を追いかけながらザレオスは考える。

 

 先程ジブリールに言ったことは紛れもない本心だ。

 だが、自分はリュドシエルやエスタロッサを前にして同じことを言えるだろうかと……。

 




 うん、長ったらしいったらありゃしない。
 予定ではジブリールが来てから少し2対2で戦う予定でしたが書いてたらなぜかなくなりました。
 怪奇現象だ((((;゚Д゚))))

 ガランがエリザベス見て無反応だったのなんでなんでしょうね?ボケたのかなガラン爺。

 復讐に関しては世界中で数多の意見があるとは思いますが少なくともザレオスの考えは「エゴなんてことはわかったんだよ。何も生まない? 憎しみを育てるだけ? 知るか殺す」と言った感じです。

 後はオリキャラ2名。
 書き始めた当初には予定にはありませんでした。
 リオネス防衛戦は特にザレオス達の役目はないという予定だったのですがそれだと味気ないので追加されました。
 暴れまわっていたザレオスに敵討ちを挑むキャラがいた方がいいかなとも思ったので。
 以下、2名のプロフィール。

グレモル

身長:165cm 体重:68kg
誕生日:3月4日
年齢(封印前):103歳
血液型:A型 利き腕:右
魔力:同一(セイム)
特技:肉料理 趣味:筋トレ
好きな食べ物:肉
コンプレックス:気が弱いこと
尊敬する人物:デリエリ
自分の好きなところ:赤い髪
夢・野望:デリエリに認められる、復讐
好きな動物:豚
闘級:32000
魔力:1000
武力:29000
気力:2000


アルケロ

身長:160cm 体重:58kg
誕生日:12月21日
年齢(封印前):91歳
血液型:AB型 利き腕:右
魔力:停止(ストップ)
特技:速読 趣味:読書
好きな食べ物:甘味
コンプレックス:才能の無さ
尊敬する人物:ゴウセル(本人)
自分の好きなところ:頭が良い
夢・野望:世界の全ての知識を得る、復讐
好きな動物:特になし
闘級:34000
魔力:31000
武力:500
気力:2500

 はいそこ、「ざっこwww」とか言わない。ガランが可哀想でしょ!

 詳しい設定は後に語られるかもしれないし、語られないかもしれません。
 語られなければ完結した後にでも載せます。
 まず原作が完結しないことにはなんとも言えませんが。
 どうしても知りたいことがある人は感想をいただければ、答えます。
 まあ、想像してみてくださいw

 あ、ちなみにザレオスは〈七つの大罪〉のことをジブリール達に聞いていますがエスタロッサごと焼いたバンがその1人だとは知りません。
 というかバンの存在に気づいてすらいませんでした。

 次回は今月中に上げたいですねぇ。


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第14話 リオネス防衛戦終結

 皆様お久しゅうございます(いつもの
 なんと「今月中に出したいですね」とかほざいておきながら2月が終わったどころか新学期が始まり、GWが始まり、平成が終わって令和になり、GWが終わってしまいました^^;

 これには少しわけがありまして、今回の話でフラウドリンを倒した後にメリオダスとエリザベスが会話するシーンがあるのですがそのシーンで2人きりにしておくべきか、ザレオス達も投入するべきかですごく悩んだんですよ。

 そして、投稿が開いている間に七つの大罪が終わりそうですね(絶望
 いや、二次創作を書く身としては終わってくれた方がやりやすいんですけど毎週楽しみにしていた身からすると悲しい( ´•̥̥̥ω•̥̥̥`)
 まあ、3期があるのでそれを楽しみにしておきましょう。

 今週の答えてばっちょで女神族は人間と同じ生まれ方をするみたいですね。
 妖精族みたいに変な生まれ方じゃなくて良かったε-(´∀`;)
 後は魔神族が人間と同じならハーフは生まれないという設定がない限り問題はなさそうで何よりです。

 そういえば前回言い忘れていましたがネロバスタはザレオスがいなくなった後に原作通りデリエリに殺されました。
 特に生かす理由もないですしね。


 ザレオスとジブリールがリオネスに戻って来た時には全てが終わった後だった。

 

 夕日に照らされる戦いの爪痕残る町を眼下にメリオダスの下に着いた2人が見たのは顔を合わせず話し、別れるメリオダスとバンの姿だった。

 その雰囲気から2人はまず近くにいたマーリンとエスカノールの傍に降り立った。

 

「よぉ、マーリン。久しぶりだな」

「ザレオスか。久しいな」

「ああ。お前がガランの戒禁で石化したと聞いた時はなんの冗談かと思ったぜ」

「私としたことが、な」

 

 話しながらも浮かない表情のマーリンにザレオスは本題に入ることにした。

 

「それでこれはどういう状況だ?」

「…………」

 

 ザレオスの問いにマーリンは口を開いた。

 フラウドリンとメリオダスの戦いの顛末。

 そして、フラウドリンの最後。

 

「……そうか」

「……フラウドリンさん」

 

 ザレオスはメリオダスやジブリールを傷つけたフラウドリンの死に大した感慨はない。

 だがジブリールは違う。

 メリオダスや自分を傷つけた相手とはいえ、彼には彼なりの信念があり、人間の少年のために自爆を辞める想いもあったのだ。

 ザレオスと違って魔神族をあまり憎んでいない彼女からしては辛いことだ。

 

「…………ジブリール。久しぶりに兄妹水入らずで酒でも呑むか」

「え? そ、それは嬉しいけど、その、メリオダスさんを放っておいていいの?」

 

 呪いによって最凶の魔神と呼ばれたメリオダスに逆行しつつあるのは2人も知っている。

 そのメリオダスの気持ちを想像に難くない。

 

「今はそっとしておいた方がいいと思うし、それにそれは俺らの役目じゃなくてエリザベスのだろ? 感動の再会は明日でも遅くはないさ」

「……そう、だね。その方がいいよね」

 

 納得したジブリールはザレオスと共に歩き出した。

 

 空からは戦で亡くなった者を悲しむかのように雨が降り出していた。

 


 

 次の日。

 七つの大罪とザレオス達はマーリンによって復元された王城の一室に集まっていた。

 

 集まった時にはメリオダスはまだ浮かない顔をしていたが、バンとエスカノールと話すことで元気が出たようだ。

 

「お前らにも気を使わせちまったみたいだな」

 

 メリオダスはメリオダス達のやり取りを黙って見ていたザレオス達へ話しかけた。

 

「いや、元気が出たみたいで良かったよ。また会えて嬉しいぜメリオダス」

 

 そう言ってザレオスはメリオダスと拳を合わせた。

 

「そういや団ちょ。コイツら一体何もんだ?」

「コイツらは……魔神と女神のハーフだ」

「…な!?」

 

 初めて知ったバン達は目を見開いて唖然とする。

 

「敵同士のハーフってだけでも生きずらいんだが、魔神族と女神族のそれぞれの長がコイツらの才能に目をつけてな。2人を捕らえようとして軍勢を差し向けたんだ。その時に両親を殺されて……その時、俺も——」

「その後何やかんやあってメリオダスに助けてもらったんだよ」

「……ザレオス」

 

 自分の言葉を遮ったザレオスにメリオダスは顔を向ける。

 

「もういいって言ってんだろ。何度も謝ってもらったし、助けてもらわなかったら俺達兄妹は死んでたかもしれないからな」

「……悪い」

「だから謝んなって」

 

 ザレオスが苦笑したあと、ジブリールが空気を変えるように話し出した。

 

「そうだ! お兄ちゃん。バンさんに一言謝っておきなよ。十戒との戦いの時にエスタロッサと一緒に焼き払ったでしょ」

「俺は不死身だから別に気にしちゃいねぇよ♪」

「あ? ンなことあったか?」

「「え?」」

 

 真顔で首を傾げたザレオスにあの場面を見ていた全員が声を上げた。

 

「いやいや、メリオダスさんにトドメを刺そうとしたエスタロッサに組み付いていたバンさんを一緒に焼き払ったじゃん」

「ん? あの時に十戒とお前ら以外に誰かいたか?」

 

 ついにあの時のザレオスの眼中にバンがいなかったことを悟ったジブリール達は顔を引き攣らせた。

 




 今回短い上に全然話が進まなくてすみません^^;

 次回からは過去編です。
 キング&ディアンヌの修行編と言い換えてもいいですね。
 あの時にザレオスとジブリールがいてどう原作と変わったかをやります。
 まあ、グロキシニアとドロールが十戒側にいる時点で大して変わらないのが確定してるようなもんですけどねw

 次回がいつ出るかは未定です。
 言っても全然守れないので気長にお待ちくださいm(_ _)m


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第15話 聖戦

 【悲報】前回の更新日約半年前。
 【悲報】今年の投稿話数たった3話。

 こ れ は ひ ど い

 というわけでみなさんに本当にお久しぶりです^^;
 遅れまくって大変申し訳ございませんでした!m(_ _)m

 何ともうあと一ヶ月後には2周年目です……。
 そんなことで去年の1周年記念では1月毎日更新をしたのですがこの体たらくなのでできない気がするんですよねぇ……。
 というわけでアンケートを取ります。
 出来ればポチッとください。


 リオネス王国。

 ブリタニア北部に位置するブリタニア最大の国。

 七つの大罪により魔神族の侵攻を退けたその国は。

 はるか3000年以上昔。

 巨大な妖精王の森が広がっていた。

 そこは魔神族に対抗すべく集まった四種族の連合軍——〈光の聖痕(スティグマ)〉の本拠地となっていた。

 

 その妖精王の森に人間達を連れ、帰還してきた4名。

 

 メリオダスとエリザベス。

 そしてグロキシニアとドロール——に入ったキング&ディアンヌ。

 

 彼らは未来のグロキシニアとドロールの女神族に伝わる刻還りの術により過去のブリタニアに妖精王と巨人王の姿で送られた。

 それは丁度メリオダスとエリザベスと共に魔神族の襲撃を受けている人間の集落の救助へ向かう待ち合わせをしている所だった。

 2人は王たる力を使い〈十戒〉を退け、見事人間達を救うことに成功した。

 

「ここが…妖精王の森…でけぇ!!」

「ここに〈光の聖痕(スティグマ)〉の本拠地が…」

「魔力の差が如実に現れてるなぁ……じ…自信なくしそう」

 

 人間を上回る巨人族の巨躯をさらに上回る体躯をもつドロールの数十倍の木々が立ち並ぶ森に人間達は驚き感心し。

 そしてキングは自分の妖精王の森と比較して凹んでいた。

 

 しばらく進んでいると1人の少女が彼らの前に降り立った。

 

「おかえりなさい! 皆さんご無事のようで何よりです」

 

 輝くような笑顔でそう言ったのはジブリール。

 メリオダスとエリザベス、グロキシニアとドロール。

 そして人間達に怪我がないのを見て本当に嬉しそうに笑う。

 

「ただいま、ジブリール」

「よう、ジブリール! 1人か?」

 

 ジブリールの側に兄のザレオスの姿がないことにメリオダスは首を傾げる。

 メリオダスの問いにジブリールは表情を暗くし、俯く。

 

「……はい。お兄ちゃんはリュドシエルの指示でここを離れています」

「リュドシエルの?」

 

 メリオダスとエリザベスはジブリールの言葉に眉を顰める。

 

「はい。リュドシエルは元々私とお兄ちゃんの2人をここから遠ざけたいようでした。そこをお兄ちゃんが強引に私を残して1人で行きました。お兄ちゃんが言うにはリュドシエルは何かを企んでいるらしいです。森の奥にリュドシエルの妙な魔力もありますし……」

 

 不安そうなジブリールの頭をメリオダスが撫でる。

 

「心配すんな。あいつが何を企んでようと俺が何とかしてやる」

「! ……はいっ!」

 

 メリオダスの言葉にジブリールは大きく返事をした。

 

 そのままジブリールを加えて森を進むと木々に匹敵する天を突かんばかりの巨大な白き塔が見えてきた。

 

「わ……あれは何?」

「さ…さあ? オイラも見当がつかないよ」

「どうも今日のお前ら変だな。〈光の聖痕(おれたち)〉の拠点だろ」

 

 過去に来た故に知らない2人に怪訝にメリオダスが言う。

 

 その塔の周りには沢山の巨人族や妖精族がおり、連合軍であることを裏ずけている。

 

「ようやくのお戻りか…。3人がかりで〈十戒〉1匹を退けるのがやっととはな」

 

 その言葉と共に、その塔の入口から1人の女神族の女性が現れた。

 

「ネロバスタその辺にしておきなさい」

 

 そして、さらにその後ろから1人の女神族の男性が現れる。

 

「「!!!」」」

「おい…この魔力は」

「おお…あの女神族はまさか…」

 

 その男が放つ〈十戒〉すらも上回る巨大な魔力にキングとディアンヌはたじろぎ、人間達は驚き露わにする。

 

「跪け人間ども。この御方こそ我らが導き手。〈四大天使〉リュドシエル様」

「戦火に傷つきし我らが徒を救えたのは何より…。私はあなた方を歓迎しましょう」

 

 メリオダスとジブリールはそんなリュドシエルを睨む。

 

「ちょうどよかった。みなさんに朗報です。全ての種族が待ち望んだ聖戦の終結がやってきました」

「「「!!!」」」

 

 リュドシエルの言葉に全員が目を見開いた。

 

「それじゃ…魔神族との和平が!!?」

 

 僅かに目に涙を浮かばせながら言ったエリザベスの言葉を——だが。

 

「魔神どもを根絶する時です」

 

 殺意を装填した笑みで切り捨てた。

 


 

 その日の夜。

 

「…聞いたか? 西では友軍が〈十戒〉に全滅させられたと」

「〈黒の六騎士〉とかいう魔神族にも相当苦戦してるって話だ」

「魔神どもめ…!!」

「ふん! でも数じゃ僕ら連合軍〈光の聖痕(スティグマ)〉が勝ってるんだ!!!」

「魔神族なんぞ全員血祭りにあげてやろうぜ」

 

 拠点である白き塔の近くで焚き木をして話す巨人族と妖精族。

 その彼らから少し離れた場所で焚き木をしながら蔑視を浴びる2人。

 

「あんなの気にしなくていいですからね、メリオダスさん! 私も、お兄ちゃんも。もちろんエリザベスさんもメリオダスさんの味方ですから!」

「……ああ。ありがとうなジブリール」

 

 魔神族を蔑む彼らや昼間のリュドシエルの発言にぷりぷりと可愛らしく怒りながら焼いた肉をメリオダスに渡すジブリール。

 それを優しく見つめながら受け取るメリオダスの姿ががあった。

 

「昼間のリュドシエルの言葉だってぜんっぜん気にしなくていいですからね! 私達がそんなことはさせません!」

 

 昼間の不安げな表情はどこへやら。

 肉を食べながら不満を垂れ流す。

 

「だいたい、魔神族と分かり合えるってお母さんとお父さん。そしてエリザベスさんとメリオダスさんが証明してるんです! なのに歩み寄ろうとしないで根絶!? 何を考えてるんでしょうね!」

「……そうだな」

 

 怒っているジブリールは気づかない。

 メリオダスがその言葉に僅かに顔を伏せたことを。

 彼女の母と父を奪った罪悪感。

 それは未だにメリオダスの心に残っていた。

 

「ヒュ〜〜〜〜♬︎ まるで鉄の塊だ」

「ロウ」

 

 近くに刺していたメリオダスの大剣を叩きながらメリオダス達が助けた人間の1人——ロウが近寄って来た。

 

「あなたは……」

「あんたにはまだ挨拶してなかったな。俺はロウだよろしくな」

「はい! よろしくお願いします!」

 

 2人は握手を交わす。

 

「それにしても…まるで針のむしろだな」

 

 メリオダスの隣へ座ったロウがそんなことを口にする。

 

「……あんた魔神族だろ? 魔神族達と()りあってた時の魔力といい、そんなバカでかい剣を片手で軽々振り回せる子供(ガキ)がどこにいるよ?」

「……驚いたか?」

 

 ロウの言葉にメリオダスがニヤリと返す。

 

「そりゃ驚くさ。魔神族が女神族と共闘してるなんざ前代未聞だろ…だけど俺にはわかる、あんたはいい奴だってな」

「ははっ。魔神族(みうち)からすりゃオレはとんだ大悪党さ」

 

 ロウの言葉に軽く笑う。

 しかし、メリオダスの言葉に異を唱える者が1人。

 

「いえ、メリオダスさんは本当にいい人です! 私達を助けてくれましたもん!」

 

 ジブリールの言葉にメリオダスは優しく——そして悲しげに微笑んだ。

 

「…そういやあんたらの関係はなんだ? そこの嬢ちゃんは女神族だろ?」

 

 ロウの言葉に2人は視線を下げる。

 

「こいつは——」

「私は——私は女神族と魔神族のハーフです」

 

 膝を抱えてメリオダスの言葉を遮ったジブリールにロウは目を見開く。

 

「女神族と魔神族のハーフ…!? ……そうか、そいつは生きづらかっただろうな」

 

 敵対する種族同士のハーフ。

 どちらにも受け入れられないのは想像に難くない。

 きっと壮絶な生だったことだろう。

 ロウはそれ以上何も言えなかった。

 

「いえ、確かに辛いことは沢山ありましたが今はメリオダスさん達に助けて頂いてとっても幸せです」

 

 少し悲しさを秘めた——だが幸せそうな笑顔に。

 

「……メリオダス。やっぱりあんたはいい奴だ」

 

 ロウはメリオダスに言った。

 しかし、メリオダスはそれを複雑そうに受け取った。

 

「…聖戦の決着はどうつくのかな」

「…戦争に(いい)(わりィ)もあるかよ」

 

 僅かな沈黙の後にロウが呟いた言葉にメリオダスが返す。

 

「………………だな。でもよメリオダス。1コ確かなのは——今俺たちは仲間ってことだ!!」

 

 そう言って拳を突き出したロウに。

 

「……おう」

 

 メリオダスはそう言って拳を合わせた。

 ジブリールはそれを嬉しそうに見つめていた。

 




 ぶっちゃけ原作とあんま変わらんから飛ばしてもいいかもしれないと思い始めてた……。

 それではアンケートよろしくお願いします。
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