ワールドトリガー〜黒の十字部隊〜 (switch4242)
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episode0-1 ラウンジにて…

この章は、原作の少し前のお話です。

それでは、どうぞ!



〈ボーダー本部基地 個人ランク戦ロビー〉

 

 

『10本勝負終了。6‐4勝者 米屋陽介』

 

 ロビーに機械音のアナウンスが流れる。仮想空間での模擬戦が終わった合図だ。

 

「おっしゃ!俺の勝ちぃ」

 

 ガッツポーズをしながら槍を持つとんがり頭の男、米屋陽介。A級7位である三輪隊のアタッカーを務めている高校二年。通称、槍バカ。

 

「あーあ、負けた負けた。お前、開始早々人の首落としに来るんじゃねぇよ、この槍バカ!」

 

 そう通称で米屋を呼びながらマットにどっかりと座り込む男は出水公平。米屋と同じく高校二年で、A級1位である太刀川隊に所属するシューター。通称、弾バカ。

 

「いずみん先輩、何か調子悪いねー何かあったの?」

 

 座っていた椅子に顎を乗せながら模擬戦を観戦していた小柄な少年は親し気にそう言った。

 緑川俊。A級4位草壁隊のアタッカーで、クリアタイムを測定する仮想訓練で4秒という驚異的な記録を持つ中学生。通称、迅バカ。

 それぞれ実力者であり、バカである三人が昼時のボーダー基地本部のロビーに集結していた。

 

「あぁ、今朝まで防衛任務があったからかね。終わったら寝ようって思ってたら槍バカから『ランク戦やろーぜ』って無理やりな」

 

「ありゃりゃ......それでか。通りでよねやん先輩が......って何してるの」

 

 勝利の余韻に浸っていた米屋はごそごそと鞄を漁っていた。緑川が知る限り、それは米屋のものではない。

 

「さてとっ、んじゃ弾バカに何奢って貰おうかなー」

 

「ハァ!?何言ってんだお前っ、そんなの聞いてねえぞ!」

 

「おいおい、負けたやつが何言ってんだよ。いいじゃねえか一食ぐらい」

 

「そういえばもうお昼近いしねー、僕も何か食べたいな」

 

 けたけたと笑う米屋に緑川が同調するように言った。傍目に見れば約束をしていないというなら米屋が悪いわけで、それを緑川も理解していたが。

 

「と、言うわけで~、弾バカには昼飯を奢って貰うことにしま~す」

 

 そう笑顔で出水の財布を手に取る米屋を見れば対応も変わるというものだろう。

 

「!?、おまっ、それ俺の財布じゃねーか!いつの間にっ......!」

 

「よし、行くぞ緑川!今日は俺の奢りだ!」

 

「いずみん先輩、ゴチでーす」

 

 出水の金で自分の奢りと言い張る米屋。一応、礼は出水に言いながらもそれに付いて行く緑川。二人は風のようにラウンジの方へ走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ポツンと取り残された出水。怒涛の勢いにしばし呆気に取られていたが、やがて今しがたの出来事を理解し。

 

「......ふっざけんなあああぁぁぁぁ!!!」

 

 ロビーには他のボーダー隊員たちもいた。先程模擬戦を行っていた彼らよりは格下である他のB級やC級の隊員たちがA級の咆哮にびくりと肩を震わせる。

 だがこれもまた一つの日常。日夜戦いが起こる可能性のある世界における平和な一時と言えるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――彼らが、出会うまであと少し......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――***―――――

 

 

 

 

 

ボーダー本部基地のラウンジ。ボーダー隊員が利用できる食堂があるそこに米屋と緑川は来ていた。昼時ではあったが比較的すいていた。出水とっては分からないが米屋と緑川にとっては幸運と言えるだろう。

 

「よーし、まだすいてる時に来れたな」

 

「でも、いずみん先輩置いてきちゃったね。財布はあるけど」

 

「大丈夫だろ、あいつもそのうち来るだろうぜ」

 

 はたして、出水が何もせずにただ来るだけで済むだろうか。恐らくは激昂しているであろう出水の顔を想像しながら、米屋がどんな仕打ちを受けるか僅かばかり楽しみだったので、緑川は笑うだけでそれを黙っていた。

 

「まっそんなことより、早く行こーぜ」

 

 楽観視しているのか考えていないのか、米屋はそう言って食道の列に並ぼうとする。

 が、それに続こうとした緑川が突如立ち止まった米屋の背にぶつかる。

 

「どしたのよねやん先輩......って」

 

 やや腫れた鼻をこすりながら米屋の見ていた先を確認した緑川は目を疑った。

 黒のコートに、米屋と同じくらいの背丈の人物が先に列に並んでいたのだ。

 

「「い、出水!?/いずみん先輩!?」」

 

 二人がそれぞれ同じ人物を指す言葉を思わず叫ぶ。

 

「......?」

 

 そこで二人が出水だとばかり思っていた人物が声に反応して振り返る。

 だが、確認できたハーフのような顔立ちの少年は出水とは似ても似つかない。単なる別人だった。

 

「って、何だ人違いか、ビックリしたー、あいつが瞬間移動《テレポート》使えんのかと思った」。

 

「もぉ、驚かせないでよよねやん先輩」

 

 同じように驚いておきながら緑川は米屋の腰を小突いた。

 

「?、あの、どうかしましたか?」

 

「あー、いやなんでもない。こっちの人違いだったわ。何かワリィな」

 

「すみません、うちの先輩が」

 

「おいコラ緑川。何が『うちの先輩が』だ」

 

「ぐえっ」

 米屋は緑川の頭を脇にはさみヘッドロックをかけた。身長差がややある二人なのでガッチリはまった。

 

「......ははは」

 

 そんなやり取りを見て少年は少し笑った。

 知らない人にそのやり取りを見られたのをやや恥ずかし気にしながら、米屋は頭を掻く。

 

「あー、そう言えばまだ自己紹介してなかったな。俺は米屋陽介、陽介でいいぜ」

 

「よねやん先輩がするなら次は俺ね!初めまして、緑川俊でーす。よろしくね!白髪のお兄さん。見た事ない顔だけど新しい人?」

 

「ええ、まあ。僕は、アレン・ウォーカー。一応イギリス出身です。よろしく」

 

 アレンと名乗った少年は丁寧に頭を下げる。

 

「へー、外国出身なのか。珍しいな」

 

「そうなんですか?」

 

「うん、たまに県外からスカウトされた人とかは知ってるけど、外国からは知らないかな」

 なるほど。とアレンが納得すると同時に、食堂の受付の女性が顔を出した。

 

「次の人、どうぞー」

 

「おっ、俺たちの番来たみたいだな」

 

「やっとかぁ、お腹ペコペコだよー。あ、アレンさんが先か」

 

「えっと、それじゃあ......」

 アレンは注文をするためにしては、深すぎる呼吸をし.....

 

「グラタンとポテトとドライカレーと麻婆豆腐とビーフシチューとミートパイとカルボナーラとカルパッチョとナシゴレンとアクアパッツァとチキンにポテトサラダとスコーンとクッパにトムヤムクンとライス、全部量多めで」

 加え。

「あ、あとデザートにマンゴープリンに、みたらし団子30本で」

 

「.......え」

 

 アレンはおおよそ人並みと呼べるモノではない量の注文を一息でした。

 

「ん?どうかしましたか?」

 

 しばし呆けていた受付の女性を不思議そうに眺めるアレン。

 

「え、あ、はい!わかりました!」

 スタスタと今の注文を伝えに行く女性が今のを聞きとれたのかという疑問もあったが。

 

「「イヤイヤイヤイヤ、注文しすぎだろ/でしょ!!!」」

 二人に限らず、初見ならば誰もがまずそちらにツッコミをいれるだろう。

 

「何今の!?呪文かなにか!?怖いんだけど!」

 

「グラタンにカレーに、あと.......あーとにかく、そんなに食えんのかよ、お前......」

 

「はい。普段からこれくらい食べてますよ」

 けろりと言って見せるアレン。現にこうして注文して見せたのだから嘘ではないのだろう。

 

「はぁ、とりあえずお―――――」

 不意に言葉を詰まらせた米屋。

 

「おいコラ槍バカあああぁぁぁぁぁ!」

 

 今度は本当の出水が、廊下は走らないというルールも無視して鬼の形相でダッシュをしてくるのだから無理もない。

 

「てめぇ、財布返せゴラアアァァ!」

 出水は走りの勢いそのまま、米屋に向けて飛び蹴りを仕掛けてきた。

 だが米屋は慣れているかのようにひょいとそれを躱して見せた。

 無論飛び蹴りなので勢いは失う事なく、そのまま米屋のいた位置を通り過ぎる。

 

「―――――え」

 その先にいたのは、列の順番通りである。

「ゴハァ?!」

 

「あ」

「あ」

 米屋と緑川が順に口を開く。

 

 

「......あ、ヤベッ」

 怨恨こもった出水の渾身の飛び蹴りは怒りの対象には当たらず、無縁のアレンの体を数メートル吹っ飛ばした。

 

 

 

―――――***―――――

 

 

 

「本当にスマン!!」

 

 両手を合わせて米屋はアレンに頭を下げる。

 既にそれぞれの注文した皿は平らげられており、四人はそのまま座り込んで会話を弾ませていた。ちなみに出水は蹴ってしまった詫びにとアレンの分の料金を担おうとしたが、その莫大な数を見て一度戦慄したが、男が言った事は引けぬと結局は支払った。

 出水にももちろん非があるが、元を辿れば彼だけのせいとは言い難いので何とも不憫である。

 

「いえいえ、本当に大丈夫ですよ。トリオン体だったんでケガとかもしてませんし。」

 

「いや~、ありゃ弾バカが悪い」

 

「誰が弾バカだ、大体お前が避けたせいだろうが槍バカ」

 それぞれの愛称か蔑称かを呼びながら目と目で火花を散らす。

 

「まぁまぁ、二人とも」

 

「あはは......」

 

 宥める緑川と苦笑いをするアレン。

 それぞれ二人ずつが対になるよう席を確保したが、何故か出水と米屋は隣同士に座り込んだ。喧嘩するほど仲がいいというやつなのだろうか。

 

「いやぁ、マジで悪かったな。俺は出水公平だ。よろしくな」

 

「アレン・ウォーカーです、こちらこそよろしくお願いします、公平」

 

「ところでさ、アレンってポジションどこなんだ?俺はアタッカー」

 米屋が興味ありげに会話に割り込む。

 

「うーん、オールラウンダーですかね。シューター系統のトリガーも使うので」

 

「へ~、そうなんだ。ねぇ、この後俺らとランク戦やろうよ!」

 

「おっ良いなそれ、俺らとバトろうぜアレン!」

 

「ええ、いいですよ」

 

 緑川と米屋はボーダーの中でも有名な方だろう。A級である二人の申し立てをアレンはすんなりと了承した。

 

「そういえば、アレンってどっかのチーム入ってんのか?さっきから隊服見てんだけど、B級か?初めてみるが最近ここに来たのか?」

 

「......っ」

 

「言われてみれば、B級のロゴも入ってないし、番号も入ってないね」

 緑川も不思議そうにアレンの隊服を眺める。最初は出水のと同じ隊服かと思ったが、その出水が尋ねたのだから同じ隊ではないのだろう。

 

「えっと、それは.......」

 

 やや答えづらそうにしていたアレンのポケットから電子音が鳴る。

「あ、スミマセン。ちょっと呼び出しがかかったんでこれで失礼します。また今度ランク戦しましょう!それでは!」

 

「あ、ちょ」

 出水が声を出したが、アレンはそう言い残して、ラウンジから去って行った。

 

「行っちまった......答えたくない理由でもあったのかね」

 

「でも、面白そうな人だったね。自信ありげに僕ら挑戦受けてくれたし強いのかも」

 

「あぁ、そうだな。ランク戦が楽しみだ」

 

 戦う気満々の二人。出水はその様子をやや訝し気に見ながらも、コップの水を呷った。

 

 

 こうして、彼らは初めての出会いを果たしたのだ。

 幸か否か、それはアレンと言う存在を深く知るまで知る由もない。

 この遭遇により一つ、異なる世界の歯車が軋んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――てか、飯食うの滅茶苦茶速かったな。

 残った山のように積み上げられた皿を見て、偶然にも三人は同じ感想を抱いた。

 

 




ご視聴ありがとうございました。
遅い更新になりますが、これからよろしくお願いします。


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episode0-2 ランク戦ロビーでは・・・・

大変長らくお待たせいたしました。switchです。
なんとか第二話の投稿が出来ました。読者の皆様にはこれからもこんな感じで待たせてしまうことがあると思いますが、これからもどうか、よろしくお願いいたします。

さて今回は、あの人が登場です。



〈ボーダー本部基地 個人ランク戦ロビー〉

 

 

 

『ふっざけんなあああぁぁぁぁ.......』

 

 

 

出入口の方から叫び声が上がっているランク戦ロビー。

 

「・・・・・」

 

そんな広いロビーのソファに一人、ボサボサのあまり手入れをしていなさそうな髪型で、マスクを顎の下にずらして掛け、足を組みながらスマートフォンを見ている男がいた。

 

「げっ」

 

「ん?どうした」

 

「あぁ、あそこにヤバいのがいんだよ」

 

「ヤバいの?」

 

‘‘ヤバいの,,と言われた男から数メートル離れた所でC級隊員がしゃべっていた。

 

「影浦雅人、少し前にA級に上がったんだけど、暴力沙汰で問題起こしてB級に降格して、

ポイント没収食らったんだんだってよ。」

 

「なんだそりゃ、頭悪い。何のためにランク戦やってんだってな。」

 

「リスク計算出来ないタイプなんじゃね。」

 

「はは、確かに頭悪そうだしな。」

 

影浦のことをバカにしながら二人はクスクスと笑っていた。すると………

 

「オイ、そこの二人」

 

「「!?」」

 

「俺に何か用かぁ」

 

突然、影浦が喋っていた二人に声をかけてきた。

 

「(嘘だろ、あの距離で聞かれてたのか…)い、いや俺らただ雑談してただけで…な。」

 

「(内部通話にしときゃよかった……!)そうそう、特になにもないっすよ!」

 

「………………」

 

((ヤ、ヤベェ、めっちゃ睨んでる!こ、怖ぇ))

 

しばらくの沈黙、内心ではビクビクと震えている二人に対して影浦が口を開いた。

 

「はぁ……、いいや、めんどくせぇ。解散だ解散。」

 

「「は、はい!失礼しました!!」」

 

影浦がだるそうに言うと、C級の二人は走って逃げて行きました。

その場の目線は冷たく、影浦の方に向けられていた。

 

「…………ッチ、視線がうぜぇ。はぁ、胸糞悪ぃ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、逃げたC級の二人は・・・・・

 

「はぁ、はぁ、なんなんだよアイツ!」

 

「知るかよ!(ドンッ)ッ!いってぇな!お前、ちゃんと前み……て……。」

 

「………あ?」

 

「「ひ、ひぃぃ。」」

 

黒いロングコートを着た男に思いっきりぶつかっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらず、ピリピリしてるな、カゲ。」

 

イラついている影浦に声をかけながら近づく人物がいた。

 

「……よぉ、鋼じゃねぇか。」

 

「鋼」と呼ばれた男。村上鋼、B級9位鈴鳴第一(通称:来馬隊)に所属するボーダーアタッカーランキング4位の実力者。影浦とはそれなりに親しく、よく個人ランク戦をしている。

 

「まったくだ、見てるこっちもひやひやしたぜ。そんなんじゃまた減点食らうぞ。」

 

「荒船、お前もいたのか。」

 

そこへ、現在B級10位荒船隊隊長の荒船哲次が入ってきた。

荒船は村上の入隊当初の師匠であり、現在はスナイパーのポジションだが、アタッカーとしての実力はかなりのものである。影浦とも同い年でたまにランク戦をやっている。

 

「ケッ、んなもん今更痛くも痒くもねーよ。雑魚にナメられるほうが100倍むかつくぜ。」

 

「まぁ、さっき手を出さなかっただけカゲも少しは学んだみたいだな。」

 

「荒船テメェ!喧嘩売ってんのかァ!」

 

荒船の笑い交じりの言葉に影浦はキレながら荒船を睨み付けた。

 

「ところで、鋼が本部に来てるなんて珍しいなカゲとランク戦か?」

 

普段は鈴鳴支部にいる村上を疑問に思った荒船は、睨む影浦をあしらいながら聞いた。

 

「いや、今日はカゲじゃない。」

 

「?じゃあ誰と待ち合わせしたんだ?」

 

「それは………。」

 

「「ひいいぃぃぃぃぃ!!」」

 

「あぁ?なんだ?」

 

「行ってみるか。」

 

 

 

 

 

 

「ほ、本当すんませんでした!」

 

 

悲鳴が聞こえた方へ行ってみると、そこには影浦達と同い年位の黒いコートを着た長い真っ直ぐな黒髪をポニーテール状にしている男と先ほど影浦の噂話をしていたC級隊員二人が一人は腰を抜かし尻餅をつき、もう一人は男に締め上げられていた。

 

「勘弁してくだsグエっ!?」

 

「なんだ、さっきは偉い口叩いてた癖にもうお終いか?所詮、仮入隊と言ってもこの程度か。そんなんじゃB級に上がったところですぐに死n……。」

 

「ストップ、そこまでだ。やりすぎだぞ神田。」

 

「………村上。ッチ。」

 

村上に止められた神田と呼ばれた男は締め上げていた手をはなした。解放されたC級二人は「ひいいぃぃぃ」と悲鳴を上げながらその場から逃げて行った。

 

「まったく、お前も少しは我慢を覚えた方が良い。」

 

「うるせぇ、俺はあんな風に自分の事を棚に上げてもの言う奴が嫌いなんだよ。」

 

「おい鋼、もしかしてこいつが?」

 

「あぁ、神田ユウ、少し前の防衛任務に俺の代わりに入ってくれて。その後、礼を言いに行った時知り合ったんだ。」

 

村上は神田との出会いについて簡単に荒船と影浦に説明した。

 

「それで神田、こっちの帽子を被ってるのが荒船。」

 

「荒船哲次だ。よろしくな。」

 

「………………あぁ。」

 

「えらく貯めたな。」

 

「それとこっちのバサバサした頭のが影浦だ。攻撃的でデリカシーは足りてないが、根は単純で裏表のない優しいやつだよ。」

 

「ぶふっwww」

 

「おい鋼ぉ。てめぇ余計なこといってんじゃねえ!荒船ぇ!テメェなに吹いてやがる!」

 

 

 

 

 

「………………ぼさウニ。」

 

そんなやり取りをしている中で神田がつぶやいた。

『プツン』と何かが切れる音が聞こえた気がした。

 

「っるせぇ!ぱっつんロン毛ぇ!!」

 

影浦が言い返した、今度は反対側から『ブチッ』と音が聞こえた気がした。

 

 

「………上等だコラ、真っ二つにしてやるよ!」

 

「おいカゲ、落ち着けって!神田も抑え……。」

 

そんな一触即発な空気の中【prrrrrr】と電話の着信音が鳴り響いた。

それは、神田から発しられているようだった。

 

「ッチ、誰だタイミング悪ぃ。」

 

画面を確認するとそこには【モヤシ】と表示されていた。

確認してすぐピッと電話を切った。

 

……暫くするとまた着信音が流れたが、今度は確認もせず鳴りやんだ。

 

「……おい、電話出てやれよ。」

 

「あ、お前には関係【prrrrrrrrr】っ!しつけぇぞモヤシ!お前から真っ二つにすんぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………誰がモヤシで、誰を真っ二つにするですって?か・ん・だ?』

 

電話からは女性と思われる澄んだ声が聞こえてきた。

 

「……なんでお前がでるんだよ。」

 

『そんなことはどうでもいいのよ!それよりも早く会議室に来なさい!』

 

「あ?会議なんざお前とモヤシ、あとバカウサギで十分だろ。」

 

『隊長から全員招集掛かってるわよ。』

 

 

「…分かった。」

 

電話が終わり端末をしまった。どうやら急用ができたらしい。

 

「はぁ、めんどくせぇな、おい村上。悪いがまた空いた時間に延期するぞ。」

 

「あ、ああ。俺は別に構わない。」

 

「あと、…影浦だったな。」

 

「あ゛ぁ!」

 

「お前も後回しだ。次に相手してやる。」

 

「…はっ、上等だ。串刺しにしてやるよ。」

 

そう言い残して神田は会議室へと向かっていった。

 

「なぁ鋼、お前神田とランク戦やったんだろ?」

 

緊張が解けたのか、黙っていた荒船が村上に話しかけた。

 

「ああ、十本勝負で十五分休憩挟んでやったぞ。」

 

「スコアは?」

 

「10対0、……俺の完敗だった。」

 

「!マジか。」

 

 

 

 

 

ボーダーで№4のアタッカーである村上。それを打ち負かしたと知った荒船は驚愕をあらわにした。

 

 

彼らもまた、これから始まるモノガタリの重要な位置に立つことになる。

しかし、今の彼らにはそんなこと知るすべもないのであった。

 

 

 




ご視聴ありがとうございました。

今回の投稿が非常に遅くなってしまい申し訳ございませんでした。
これからは、もう少し早く投稿出来るように書いていこうと思いますので、
何卒宜しくお願い致します。

それでは、次回の投稿まで、トリガー・オン!


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episode0-3 資料室での談話・・・

こんにちは、作者のswitchです。

ワールドトリガー、連載再開おめでとうございます!
G〇〇gleのトップに朗報とあって本当に嬉しかったです。

今回は自分で捏造した資料室でのお話です。
資料室といえば「本」、本は英語で「ブック」、ブックといえば....

ってな感じで、本編をどうぞ。

*クロスキャラの名前は作者の独断と偏見で付けました。



〈ボーダー 開発室〉

 

ボーダー開発室、ここでは文字通り隊員達が使用するトリガー及びトリオンの技術について研究・分析し、そこから新しく発明し現代の技術へ発展させようとするボーダーにおいて非常に重要な役割を持つ場所である。

 

「失礼します、風間隊三上です」

 

「同じく、嵐山隊綾辻です。本日の報告書持ってきました」

 

そこへ、二人の少女が入室して来た。

最初に入ってきたのは、A級3位風間隊のオペレーターを務める三上歌歩。

元々本部所属のフリーであった彼女だが、元風間隊オペレーター宇佐美栞が玉狛支部へ転属になる際紹介され後任を任された。

 続いてきたのが、A級5位嵐山隊オペレーターの綾辻遥であった。

彼女は嵐山隊結成当初からオペレーターをしており、そのサポート能力はオペレーターの中でも非常に優秀である。最近では、広報の活動をしている嵐山隊の事務作業を難なくこなしている優等生。

 

「ああ、三上ちゃんに綾辻ちゃんいらっしゃい。報告書ならそこのデスクに置いといてもらっていいかな、『化学班』ってとこ」

 

「「はい」」

 

開発部担当者の一人からそう指示を受けた二人は、目の前の『化学班』と書かれた箱に報告書を提出した。しかし、『化学班』と言う言葉を聞いた事の無かった三上は少し首をかしげていた。

 

「ねぇ遥ちゃん、化学班ってどんな研究してる部署なの?」

 

そこで三上は自分より早く入隊していた綾辻に聞いてみることにした。

 

「えっと私もよくは知らないんだけどね。なんでも、『トリオンの技術を科学的に解明して私たちの生活に役立てられるじゃないか!』ってことで始められたのが『化学班』らしいよ」

 

「何か凄そうなところだね。ありがとう」

 

「いやいや、そんなことないよ~」

 

 疑問に思ってたことを分かりやすく説明してくれた綾辻に三上は感謝を述べた。綾辻はそんな三上に当然のことしたまでだと手を横に降っていた。

 

「すみません、東さんここにきてないですか?」

 

「あ、人見先輩、こんにちは」

 

そこへ、B級7位東隊オペレーター人見摩子が入室して来た。

どうやら自隊の隊長である東春秋を探しに来たようだ。

 

「みかみかに、綾辻ちゃんじゃん。こんにちは~」

 

「ああ、人見さん。東さんなら資料室に用があるってさっき出てったよ」

 

「そうですか、どうもありがとうございます」

 

「それと、ついでに悪いんだけどこの資料持って行ってくれないかな。こっちは東さん忘れてたみたいで」

 

「あ、はい。解りました」

 

そう言われて人見は数冊の資料と東が忘れていったと言われたファイルを渡された。

 

「手伝いますよ人見先輩」 

 

「私も手伝います!」

 

「あら、ありがとう二人とも」

 

こうして珍しい三人組で本部資料室へ向かうのであった。

 

 

〈ボーダー本部 資料室〉

 

資料室は隊員限定で入室することができ、これまでの活動報告書や各隊員のランク戦ログなどが視聴できる。ほとんどの隊はここから情報を集めランク戦での対策及び作戦などを考える。

 

「「「失礼します」」」

 

そこへ、人見・綾辻・三上の順で入ってきた。

 

「すみません、東隊の東隊長ってここに来てますか?」

 

 人見が管理人の人に声を掛け、目的の東がいるか尋ねた。

 

「ああ、東隊長なら奥の方にいると思うよ」

 

「ありがとうございます。奥の方にいるみたい」

 

「了解です。それなら私と歌歩ちゃんで資料返しているので人見先輩は東さんに忘れ物届けてあげてください」

 

「そうだね、その方がすぐに片づけられるしね」

 

「ごめんね、綾辻ちゃん、みかみか。それじゃあよろしく。直ぐに戻るから」

 

そう言い人見は奥へ進んで行った。残った二人は、それぞれ資料を分担して片付けを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~5分後~~~~~

 

 流石はA級部隊のオペレーターである。あれから5分程しかたたないうちに三上は残り二冊まで片付けていた。

 

(よし、あと二冊は…『バサッ』ッツ!)

 

 すると、三上の背後の本棚から一冊の本が落ちた。

 

(な、なんだぁ、ビックリした…)

 

 本が落ちただけだと安心した三上は落ちた本を拾い元の本棚へ戻した……のだが。

『バサッ』と、今度は隣の本棚から本が落ちたのだ。

 

(えっ!? なんで?!)

 

 今度は少し警戒しながら落ちた本を拾い上げた。

 

「へぇ~、真面目だな。流石は優等生の三上歌歩ちゃんさぁ」

 

本があった場所を見ると、先ほどは無かった右目に眼帯をしてこちらを向いてニコニコと笑って覗いている顔があった。

 

「………」

 

「んぉ、どうしたんさ?」

 

「……き」

 

「き?」

 

 

 

「キャアアァァァァァ!!」

 

 驚いた三上は叫びながら、拾った本を思い切り差し込んだ。

 

「フッゴッ?!」

 

 当然、差し込まれた場所にはその顔があったため、本は彼の顔面へ『メコォ』と音を立ててめり込み、彼は後ろの本棚へ突っ込んだ。

 

「…あっ」

 

「どうしたの! 歌歩ちゃん、大丈夫!!」

 

「凄い音がしたぞ…」

 

「うわー、反対側誰か埋まってるよ」

 

 上から、綾辻・東・人見の順で三上のいる場所まで駆けつけてきた、どうやら東さんには会えたようだ。人見は崩れた本から出ている手を見ながら「大丈夫?」と埋もれている人物へ話しかけている。暫くすると本の中から鼻を擦りながら出てきた。

 

「いや~オペレーターにしてはなかなかいいもん持ってるさぁ、痛ぇ」

 

「あ、ラビじゃん」

 

「宇佐見だったのか。大丈夫か?」

 

「おー、摩子ちゃんじゃん。それに東さんも、どーもさー」

 

「人見は知り合いだったのか」

 

「はい。最近うちの高校に編入してきて、同じクラスなんです」

 

 宇佐見と呼ばれた少年は人見と同じ学年のクラスメイトであることを人見が東に説明していた。

 

「(ど、どうしよう!? 私、先輩の顔思い切り……)あ、あの! すみませんでした!」

 

「ああ大丈夫、大丈夫。こんなんなれてるからさぁ。普段もっとヤバいのくらってるから」

 

「でも…「まぁまぁ、気にしないでくれさー」…はい。すみません」

 

「あ、そう言えばまだ自己紹介してなかったな。どーもー、本田宇佐見でーす。年は18で摩子ちゃんと同じクラスさー。あだ名はラビだから呼びやすい方で読んでくれさぁ」

 

「はい。よろしくお願いします。わたしは…」

 

「知ってるさぁ。茶髪の子が綾辻遥ちゃん。さっきのパンチの子が三上歌歩ちゃんでしょ」

 

「「えっ」」

 

 自分達も名前を教えようする前にラビは彼女たちの名前を言い当ててきた。

 

「そうか、三上も綾辻もこいつと会うのは初めてだったな」

 

驚いている二人に対して東が説明に入る。

 

「宇佐見は、【完全記憶】のサイドエフェクトを持っているんだ」

 

「! サイドエフェクト」

 

「記憶ってことは、村上先輩のサイドエフェクトとは違うんですか?」

 

 綾辻の言う通り、鈴鳴第一の村上は【強化睡眠記憶】と言う学んだことを一眠りするだけでほぼ100%自分の経験に反映出来るサイドエフェクトを持っている。記憶のサイドエフェクトに覚えのあった綾辻は東に質問した。

 

「そうだな、村上のサイドエフェクトは眠ることで自身の経験に反映させる。だが宇佐見の完全記憶は見たもの・聞いたものを瞬時に記憶するサイドエフェクトなんだ」

 

「それって凄い能力じゃないですか」

 

「いや、そんな便利なものでもないんさー三上ちゃん」

 

 東の解説に三上が関心していると、宇佐見が少し苦い顔をしながら話し始めた。

 

「俺のは記憶することが出来るけど、逆に忘れることができないんだ。いい思い出も、そうでないものも、そのせいで毎晩頭痛がひどいんだよ。サイドエフェクトってのは便利な能力程度に思われがちだけど、使用者にはその分負担がかかるんだ。さっきの話にも出てきた鋼だって一時期はサイドエフェクトの所為で孤立してたし、菊地原とかはチームメンバーの三上ちゃんならよく知ってるんじゃないかな」

 

「……辛くはないんですか」

 

「俺?俺は今が楽しいからそれで良いんさぁ」

 

 ラビは笑いながら答えるが、同じチームである菊地原の苦悩を知っている三上だからこそラビの忘れることが出来ないというのは辛いものなのだと理解が出来、下を向いてしまう。

 

「歌歩ちゃん……」

 

「これっ、あんまり暗い話をしないの」

 

「痛っ、叩くことないじゃんよー」

 

「今のはラビが悪い」

 

「東さんまでぇ」

 

 人見がラビちチョップしながら注意し、東もそれに賛同した。

 

「そうさな、何か暗い雰囲気にしちまって悪かったさぁ」

 

「い、いえそんなことは」

 

 

 

 

 

 

「お詫びに……三上ちゃんの好きな人のスリーサ「「ふん!」」ぶげらぁ」

 

ラビが何かを口走ろうとしたところへ腹部と頭頂部に強い衝撃がはしった。それらは人見と三上によるものでラビはその場にうずくまった。

 

「っ~~///」

 

「堂々とセクハラすんじゃない」

 

「さ、流石は、俺のこと吹っ飛ばした、だけのことはあるさぁ、って痛い! 蹴んないで!」

 

「……東さん、宇佐見先輩っていつもあんな感じなんですか」

 

「悪い奴ではないんだが……アイツはサイドエフェクトの無駄遣いだな」

 

 綾辻が若干引きながら東に聞き、東も苦笑いしながら答えた。

 

「ちょ、摩子ちゃん、俺、会議室に呼ばれてるから、今から行かなきゃだから」

 

「ふう、まあこんなもんでいいでしょう。行くならこれ、本部長に渡しといて」

 

「ア、 ハイ」

 

「じゃあこれも頼む、さっきの罰てことで」

 

「それじゃあこれもお願いします、歌歩ちゃんの分です」

 

「え゛っ」

 

 上から人見・東・綾辻の順で座り込んでいたラビの手元に大量の資料やらファイルが積み上げられた。ラビは「うへぇ」と言いながらも立ち上がった。

 

「そんじゃあっと、俺はこれで失礼するさぁ。四人ともお疲れさー。三上ちゃんには今度は大福でも持っていくさ。そんじゃ」

 

 そう言いラビは資料室を出ていった。

 

「ふう、人見悪かったな、わざわざここまで来てくれて。」

 

「いえ、そんなことないですよ」

 

「綾辻と三上も」

 

「はい、私は大丈夫です」

 

「東さん、一つ聞いてもいいですか? 宇佐見先輩のことで…」

 

「ああ、かまわないぞ。特に三上には宇佐見が迷惑かけたからな、秘密の一つ二つ教えても文句は言えんだろ」

 

 東は宇佐見について聞いてきた三上に彼の秘密を何でも答えると言った。

 

「では、宇佐見先輩はどこの隊に所属しているんですか?先ほどの服装からはA級かB級かわからなかったので」

 

「…すまん三上、そのことについては俺からは話せない。ただ…」

 

「ただ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………アイツは、ブラックトリガー使いだ」

 

 

 

 

 

 

 東の発言は本当なのか、彼が所属する部隊とは何なのか、そこにいた三人はこれから知ることになるが、それはまだ先の話だ。

 




はい、というわけでクロスキャラは「ブックマンJr.」ことラビの登場でした。

作者個人的にラビはDグレで一番好きなキャラです。
となると次回登場するのは.....なんて考えてます、また少し遅くなると思いますが、こんな作品を見てくださっている皆様のために頑張っていこうと思います。

ではまた次回お会いしましょう。




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episode0-final 会議のち始動

えー、どうも視聴者の皆様、投稿主のswitchです。


更新をさぼっておりました!大変申し訳ございません!
episode0-3から約四ヶ月ぶりの更新です、ダラダラと書いてはちっとも完成せずこんなに時間がたってしまいました。

これからはなるべく早く更新していきたいと思いますのでどうかよろしくお願いします。
今回で原作前の話は終わりになります、それとちょっと長めだと思います。


<ボーダー本部基地北側通路>

 

 

 

 日夜、戦闘音が鳴り止まない本部基地周辺だが基地内部は時々、お荷物の隊員を蹴り飛ばす音や、

隊室から「死ぬな!堤いぃぃ!」などの叫び声が聞こえたりなどはするが基本的には静かである。

 

 

「ぎゃっ!」

 

 

 そんな本部基地の通路の真ん中で本部長補佐である沢村は小さな悲鳴を上げた。

沢村響子、ボーダー本部長補佐の役職を担う女性。今は会議室へ向かっているところである。

 

 

「やー沢村さん、相変わらずお綺麗で」

 

 

「迅くん!」

 

 

迅悠一、ボーダー玉狛支部に所属するブラックトリガー『風刃』を所持するS級隊員。

沢村が声を上げたのは彼のしわざだった。

 

 

「最低!最悪!セクハラなんて!」

 

 

「まぁまぁ、はは………あ、ヤバい読み逃した」

 

 

 沢村が文句を言いかけて言っているとき迅は何か恐ろしいモノでも見たかのように青ざめ始めた。

 

 

「どうしたのよ迅くん、冷や汗なんてかいて………」

 

 

 

 

 

 

 

「迅さん、何をしてるんですか?」

 

 

 沢村が迅の変わりように気が付いたところで、後ろから聞き覚えのある声がして振り返った。

そこには自分と同じくらいの身長のツインテールの少女が笑顔で立っていた。

 

 

「あら、梨菜ちゃん久し、ぶり、ね」

 

 

「こんにちは、沢村さん…それで迅さん、いったい何をしていたんですか?」

 

 

 梨菜と呼ばれた少女の笑顔《黒オーラ》を見た沢村は迅が顔色を悪くした事を理解して、彼女の目的であろう迅を前へ押し出した。

 

 

「ちょ!?沢村さん何 「迅さん?」ヒッ、よ、ようリナリー 今日はどうして本部に来てるんだオフじゃなかったっけ?」

 

 

「………これが最後です、何をしていたんですか迅悠一さん?」

 

 

「ま、まった!待って下さい!さっきのは軽い冗談みたいなモノ………」

 

 

 

 

ドゴオォォ!

 

 

 

 

 次の瞬間迅は自分の身体が宙に浮く様な感覚と、横腹に強い衝撃がはしったのを同時に感じ、目の前には白い通路が見えていた。

梨菜が迅を蹴り上げたのであった。

 

 

「ブベラァ!?」

 

 

「あれのどこが冗談ですか!完全なセクハラです!」

 

 

 

 

「ちょ、ちょっとまってぇ、今のはヤバい………あっハイ、ゴメンナサイ」

 

 

 

————————————————————————————————————————————————————

 

 

 

それから暫くして迅は正座で梨菜に説教され、沢村にしっかりと謝罪して現在会議室に来て準備をしていた。

 

 

「それで、結局リナリーは何しに本部に?」

 

 

「今日は遠征について会議があるって隊長に呼ばれたんです。アレン君達も来るはずなんですけど………」

 

 

「リナリー!すみません、少し遅くなりました」

 

 

「こんにちはアレン君、大丈夫だよ私たちもさっき来たとこ」

 

 

「よう、アレン」

 

 

 そこへ、白髪の少年アレンが駆け足で入って来て———

 

 

「お、おーいアレン、リナリー!手伝ってくれさぁ」

 

 

「どうしたの、その資料?」

 

 

 遅れてラビが両手一杯の資料をもって会議室に入ってきた。

 

 

「あとは神田だけですね……さっき電話切られましたけど」

 

 

「ユウは俺らが呼んでもこないさー」

 

 

 

——誰がモヤシですって?か・ん・だ! 早く来なさい!——

 

 

 

「……ッチ」

 

 

「早く入んなさい!」

 

 

開始時間ギリギリに神田が不機嫌そうにやって来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<ボーダー本部基地 会議室>

 

 

「入るぞ」

 

 

会議室の扉が開きボーダー本部上層部の面々とA級部隊上位3部隊の隊長たちが入室、それぞれ席に着いた。

 

・ボーダー本部司令 城戸 正宗

 

・ボーダー本部長  忍田 正史

 

・玉狛支部 支部長  林藤 匠

 

・本部開発室長  鬼怒田 本吉

 

・本部長補佐    沢村 響子

 

 

・太刀川隊 太刀川 慶

 

・冬島隊  冬島 慎次

 

・風間隊  風間 蒼也

 

 

S級隊員 迅 悠一

     アレン・ウォーカー

     神田 ユウ

     本田 宇佐見

     神月 梨菜

 

 

会議室にボーダートップのメンバーが一堂に会したところで、最高司令官である城戸が開始の合図を出す

 

 

「揃ったな。それでは、会議を「ちょっと待ってください」なんだね、アレン・ウォーカー」

 

 

城戸が会議を始めようとしたところへアレンがストップをかけた。

 

 

「あの、まだうちの師匠…隊長が来てないのですが……」

 

 

 アレンが言った通り、林藤と鬼怒田の間の席が空席となっている。

そこにはアレン達の部隊長が座るはずだった。

 

 

 

 

 

 

「「「……………………」」」

 

 アレンの発言発言に、城戸は静かに目を閉じ、忍田は頭を抱えながらため息をつき、

林藤は知っているのか銜えたタバコを揺らしていた。

 

 

 

「………まさか、またバックレたんですか!?」

 

 

 城戸達の反応で察したアレン、そして他のメンバーも『やっぱりかぁ』と頭を抱えた。

 

 

「問題ない、奴のブラックトリガーに伝言が残されていた、鬼怒田開発室長」

 

 

「ああ、おい!入ってこい!」

 

 

 鬼怒田が呼ぶと会議室の扉から顔を黒い布で覆い、中央に翅を広げた蝶のような装飾を付け、

漆黒のドレスを身にまとった女性が入ってきた。しかし、その身体からは生気は感じられず動きもまるで機械のようだ。

『聖母ノ柩』アレン達の隊長の所有する特殊なブラックトリガーの一つ、その能力は開発室長の鬼怒田ですら解明出来ていない。

 

 

「……聖母ノ柩、こいつに奴からの伝言が記録されていた。 内容は今回の遠征についてのものだ

『遠征のメンバーに俺の隊から二人連れていって構わん、ただし遠征終了後は待機、残り二人は聖母ノ柩に命令パターンを記録してあるからそれらに従え以上だ』とのことだ」

 

 

「伝言にもあった通り、今回の遠征任務にはクロス部隊から二名同行してもらう。

各A級部隊は迅隊員及び他二名との遠征訓練を行ってもらう各隊はそれぞれ備えるよう」

 

 

「「「了解」」」

 

 

 忍田の言葉に各A級部隊長はそれぞれの隊室へ戻っていった。

 

 

「では、クロス部隊からは、アレン・ウォーカー,本田宇佐見 両隊員を指名する。何か意見のあるものは」

 

 

 城戸がアレンとラビを指名したところで迅が手を挙げた。

 

 

「あのー城戸さん、その指名ちょいと変えてほしいんだけどいいかな」

 

 

「どうした迅……何か見えたのか?」

 

 

 迅の申し立てに部屋を出ようとしていた風間は様子が変に感じ立ち止まった。

 

 

「そう、まだよく見えないけどアレンがこっちに残っていてくれるとボーダーにとっていい方向に向くって、俺のサイドエフェクトがそう言ってる」

 

 

 迅悠一のサイドエフェクト、それは少し先の未来を見ることが出来る【未来視】のサイドエフェクト。

彼はアレンの先の未来を見てボーダーにとっての最良の未来へ繋げるために指名の変更を提案したのだ。

 

 

「成程……いいだろう、ではウォーカーにはこちらで待機、遠征には神田隊員を任命する、これにて会議は終了、各員持ち場に戻ってくれ」

 

 

「「神田/宇佐見 了解」」

 

 

「了解、ありがとう城戸さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、一週間後遠征部隊による近界遠征任務が始まり、残った部隊・隊員達は防衛任務へそれぞれの持ち場での活躍をした。

 

 

 

 

 

——————それから一ヶ月が過ぎた、分岐点はすぐそこまで………

 

 




読了ありがとうございました。
次回からワールドトリガー原作へ入っていきます

なるべく早く更新致しますのでこれからもよろしくお願いします。


ご意見・ご感想がありましたら是非送ってください。


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イレギュラーゲート編
イレギュラーゲート ①


今回から原作に絡んでいきます。
始まりはイレギュラーゲートのあたりからです。


<立入禁止区域内>

 

 

「……来ましたね」

 

 

 ボーダーに管理されている警戒区域内の一角に一人、アレン・ウォーカーは自分の後ろから来た隊員達を見て小さく呟いた。

 

 

「三輪隊現着した…これはどういうことだ」

 

 

 三輪秀次、A級7位三輪隊の隊長がアレンの視線先を見て状況の確認をするために声をかけてきた。

 

 

「うわっ、すっげーなこりゃバラバラじゃん、流石S級なだけあるなアレン」

 

 

 三輪のすぐ後ろから声をかけてきたのは米屋であった。どうやらトリオン兵の残骸を見てS級であるアレンがやったものだと思ったようだ。食堂での一件のあとすぐに再開した米屋はランク戦をしようとしたところでアレンがS級である事を知った。(出水は遠征中のためまだ知らない)

 

 

「いえ、これは僕がやったわけじゃありません。 トリオン兵の反応があったので駆けつけてみたら既に倒されていました。 それに僕でもトリオン兵一体にブラックトリガー使ったりしませんよ」

 

 

「…何だと」

 

 

「んー、じゃぁ誰だ?ここまでやれるのってA級以上の奴らだろ?」

 

 

「オペレーターによるとお前以外のA級隊員が来た反応はないそうだ…まさか」

 

 

「恐らくボーダー以外のトリガー、近界民の仕業ではないかと思われます」

 

 

「マジか!てことは人型だろ、俺初めてだな」

 

 

「まだ予測ですが、ほぼ確定かと…ボーダーのものとは違うトリオンが見えたので」

 

 

「相変わらず呪われているようだな、その左眼」

 

 

「……」

 

 

 三輪がアレンに対していった言葉、それはアレンの左眼にかかる傷跡、その額には逆さまの星のようになっている。三輪はアレンのことをあまり好ましく思っていない。

 

 

「その眼が何を見ているのかは知らないが近界民を殺すことがボーダーの責務だ救済など必要ない、近界民はすべて敵だ!回収班は呼んだ、戻るぞ陽介」

 

 

 三輪はアレンに言い放ちその場を後にした、残った米屋は頭を掻きながら、下を向いているアレンに話しかけてきた。

 

 

「あんまり気に病むなよアレン、秀次もあれでお前のことそれなりに認めてるところあるからよ。 んじゃ俺も行は、もうすぐで交代だしな」

 

 

「……はい」

 

 

 米屋なりの励ましを貰ったあと、敵の反応は無く次の隊への引継ぎを済ませその日の防衛任務は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

——————————次の日、本部基地で警報が鳴り響いた。

 

 

 

『緊急警報!緊急警報!市街地にゲートが発生しました 各隊現場へ急行してください』

 

 

「リナリー!場所はどこですか!」

 

 

「三門市立第三中学校よ!けど本部からじゃ…今、嵐山隊が向かってる」

 

 

「間に合いませんよこの距離…!」

 

 

 アレンが隊室から出ようとしたとき、扉が開いた

 

 

「聖母ノ柩、どうして…」

 

 

 現れたのはブラックトリガー『聖母ノ柩<グレイブ・オブ・マリア>』

マリアはアレンの前まで来て手をかざした。

 

 

 

 

[スッ]

 

 

 その瞬間アレンの姿がその場から消えた。

 

 

「アレン君!?何を『心配するなちょっよ飛ばしただけだ』隊長の音声記録?」

 

 

 どうやらマリアの能力でアレンは現在ゲートが開いた『三門市立第三中学校』まで飛ばされたようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<三門市立第三中学校 上空>

 

 

「どこに飛ばしてんですかー!?バカ師匠――」

 

 

その頃アレンはマリアの能力によって現場へ急降下している。

 

 

「くっ、グラスホッパー!」

 

 

 アレンはオプショントリガーの<グラスホッパー>を使いなんとか地上へ降り立つことが出来た。

 

 

「ふぅ……さてと」

 

 

 降り立った目の前にはトリオン兵、モールモッド二体がこちらを向いて攻撃態勢に入っていた。それを見てアレンは、自身の武器レイガストと左手にトリオンキューブを展開した。

 

 

 

 

 

 

 

「…本部、こちらアレン・ウォーカー現場に到着しました。行動を開始します」

 




読了ありがとうございました。
次回はアレンのノーマルトリガーでの戦闘!(かけるかなぁ)
そしてやっと登場するメガネ!

これからこのぐらいの分量で投稿出来たらと思います。
ご意見ご感想よろしくお願いします。




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イレギュラーゲート②

前書きって何書けばいいか悩んでます。投稿主のswitchです。
イレギュラーゲート編、中学校での戦闘シーンとメガネとの会話パートの第二話です。




<三門市立第三中学校 校舎裏>

 

 

 アレンが攻撃態勢をとったのを感知してモールモッド一体が鎌のような爪を振り下げてきた。

 

 

「スラスターオン」

 

 

 アレンはすかさず右手のレイガストで攻撃を往なし、スラスターを駆使しモールモッドの下へ潜り込みながらトリオンキューブの弾丸を撃ち出した。

 

 

「アステロイド」

 

 

 放たれたアステロイドはモールモッドの装甲を貫き、活動を停止させた。

そこへもう一体のモールモッドが突撃して来た。

 

 

「足元には注意ですよ、メテオラ」

 

 

 次の瞬間、突撃して来たモールモッドの足元が爆発した、一体目を倒す時にあらかじめ炸裂弾の『メテオラ』をばらまいていたのだ。

 

 

「はい、止め」

 

 

 動けなくなったところにレイガストを急所の目玉に刺し二体目も倒した。

 

 

「さてと、あと二体ですね。」

 

 

 アレンはレーダーを確認せずに残りのトリオン兵の数を言い当てた。

これがアレンの左眼の能力、本来は『相手の魂を読み取る』サイドエフェクトなのだが

アレンは、この力を応用して『トリオン反応を読み取る』ことも出来る。今はトリオンを読み取りトリオン兵の位置を視たのだ。

 

 

「マズい! 校舎の中に!」

 

 

 学校の中に侵入したトリオン兵と、もう一つトリオン体が視えたアレンは駆け出した。

 

 

 

———————三門市立第三中学校 校舎内

 

 

 

『ドスッ』

 

 

「かはっ!」

 

 

 モールモッドの攻撃を受けた三雲修はトリオン体が砕け換装が解けてしまった。

 

 

(変身が…解けた!)

 

 

 その場に膝をついて動けない修にモールモッドは近づいてきた。

 

 

「ッツ!」

 

 

(……空閑の言う通り、C級の僕じゃ勝てないのか…)

 

 

 モールモッドはそのまま無数の爪を修めがけて振り下ろした。

 

 

(死……!)

 

 

「『盾』印 二重」

 

 

 ガギンッと音を立てモールモッドの爪は緑色の膜によって止められていた。

 

 

「無事か?オサム」

 

 

「空閑!?」

 

 

 修の目の前には同じクラスで昨日警戒区域でバムスターを撃破した少年、空閑遊真がいつの間にか立っていた。周りの膜は遊真のトリガーのシールだったのだ。

 

 

「話は後だ…おまえのトリガー、ちょっと借りるぜ」

 

 

 そう言った遊真の手には先ほど修が使っていたトリガーを持っていた。

 

 

「トリガー 起動」

 

 

 遊真はトリガーを起動して武器を構え、モールモッドは遊真に対して四本の爪で攻撃を始めた。しかし、モールモッドの攻撃を遊真は避けながら腕を破壊した。

後ろに回った遊真は背中から真っ二つにモールモッドを切り裂いた。

活動を停止したことを確認した遊真は換装を解いて修に近づこうとした時、、、

 

 

「…空閑、まだだ!」

 

 

「!『盾』印 二重」

 

 

 窓側から登ってきたモールモッドに気づいた修が遊真に向かって叫んだ、遊真もシールドを展開して攻撃をなんとか防いだ。

 

 

「まだいたのか、でもこれで…」

 

 

『…伏せろユウマ!何かが飛んでくる!』

 

 

 攻撃に移ろうとした遊真に、お目付け役のレプリカが慌てて指示を出した。

次の瞬間、窓に張り付いたモールモッドを貫通し、伏せた遊真の頭上を凄い勢いで通り過ぎて、

柱に突き刺さった。それは今遊真の持つ武器と同じレイガストであった。

 

 

「い、今のは何だ?」

 

 

「おー、凄いな。モールモッドの急所を打ち抜いてる…ほいオサム、トリガーは返すぞ」

 

 

 今度こそトリオン兵がいなくなったのを確認した修達、そこへ窓からアレンが入って来た。

 

 

「君たち、無事ですか!?」

 

 

「は、はい。大丈夫です!助かりました。C級隊員の三雲修です」

 

 

 声をかけられた修は、助けてくれたアレンに感謝を述べ、自分がC級である事を話した。

 

 

「…そうですか。すみません、到着が遅れてしまって。でも助かりましたありがとう修。

とりあえず、ここから出ましょう」

 

 

『…ユウマ、ここは彼の指示に従おう、先程の投擲も彼のものだろう』

 

 

「(なるほど、了解だレプリカ)ありがとうございます、ボーダーの人」

 

 

「どういたしま…!君は」

 

 

 遊真のことを見たアレンは驚きを隠せなかった。彼の左眼が反応したのだ。

 

 

「どうしたの?」

 

 

「…いえ、何でもありません。僕はアレン・ウォーカー」

 

 

「俺は空閑遊真、よろしくアレン先輩」

 




読了ありがとうございました。
次回の更新をお待ちください。



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