Fate/BlueBLAZE (芹香)
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始まり

 ※初投稿です。よろしくお願いします※


 気がつけば、私は見知らぬ空間を漂っていた。上も下も、右も左も分からない。時間の概念も無いのか、今が何時なのかも不明である。

 

 そんな空間に何故私が居るのか。うっすらと覚えている事は、私を救ってくれた命の恩人が身を挺して作った"新しい世界"で暮らしている時に、突如発生した蒼い渦に吸い込まれたから。

 

 余りにも突然だった為、助けを呼ぶ暇もなくこうして見知らぬ空間に一人、佇んでいる。身体は浮いている為、佇んでいるという表現が合っているかどうかは分からないが。

 

 

「(……皆、心配してるだろうな)」

 

 

 元の世界に帰れる保証も無い。取り敢えず何かしらアクションを取るべきだと考えた私は、今はもう使わなくなった愛用の武器を取り出そうとした。使わなくなったとしても、肌身離さず所持していたのだ。

 

 

 "思い入れがある武器だったから、手離したくないという思いもあったかもしれない"。

 

 

 呼び出そうとしたら、案外あっさりと呼び出せた。手こずると思っていた為、拍子抜けである。手に持てば、あの時から何も変わっていない事に安堵した。その時、僅かながら記憶が蘇る。

 思い出したのは自分の親友であるツバキとマコト、二人と仲良く話している時の記憶、上司に当たるキサラギ少佐との言い争い、マコトの右ストレートを喰らっても尚、私の側に居てくれたカグラさん、あの時自分の左腕を犠牲にしてまで私を助けてくれた○○○さんの記憶。何故か最後に思い出した人物の名前と姿が思い出せなかったが、私だけじゃなくあの世界で暮らす皆が忘れてしまったのだろうか。

 

 

「(今、何してるだろうなぁ…)」

 

 

 名前と姿を忘れてしまった、見知らぬ恩人に思いを馳せながら、私は自らの意識を闇に沈める。考える事は、既に放棄していた。幾ら考えても、状況は変わらない。そう結論付けた為だ。

 

 

 

 

 

 ─────人理継続保障機関「カルデア」。

 世界中から集められた47人+αの魔術師達。彼等は人類を救うべく集められた、エリート中のエリート達である。

 その+αである一般枠でカルデアに来た、最後の一人「藤丸立夏」。彼女は此処の所長「オルガマリー・アニムスフィア」の怒りを買い、最初のミッションから外されてしまう。そんな中、触媒となる物を入れないと起動しない筈の召喚陣が起動し始めた。

 無論、その異常事態に誰も気づかず。中から現れたのは金髪の少女。銃火器に似た武器を携帯している為、何かしら訓練を受けていたと解釈出来る。

 

 

 謎の少女と邂逅するまで、後数分────




 地道に更新していきます


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邂逅

筆が乗るとガシガシ書けますね(`・ω・´)
それはさておき、どうぞ


 暫くして目を覚ました私は、見慣れない部屋に一人で居た。訳が分からずに混乱していたが、行動あるのみという考えに至り、取り敢えず外へ出てみる事にした。

 廊下らしき通路を歩いている時、ふと外を見てみる。すると、外は吹雪いているようで何も見えない。それだけでも別世界なのはよく分かる。一体何が起きたのか分からず、暫くうろうろする事に。

 

 

「……此処、何処なんだろ?」

 

 

 思わずそう呟く。あの空間元い、さっきの部屋元い、自分の身に何が起きたのか謎が深まるばかりである。

 誰か居ればすぐに質問出来るかもしれないが、見ず知らずの人に話しかけるのは中々に勇気が要る。実行出来るかどうか分からないが、すれ違ったらやってみようと思い、又歩き出した。

 

 

 

 

 

 その頃、所長の怒りを買って自室待機となった藤丸立夏は、ロマニの愛称で親しまれている「ロマニ・アーキマン」と色々話していた。

 ロマニはサボり癖があるようで、事あるごとにこの部屋に来ては仕事をサボっていたようだ。それでも何処と無く憎めないキャラがあるおかげなのか、咎める人物は多くない。

 そんな時、部屋の照明が落ちる。何事かと思った矢先、警報が鳴り響く。何かあったようだ。

 

 

「君はそこに居て欲しい。僕はやるべき事がある!」

 

 

 そう言い、部屋を飛び出すロマニ。だが、立夏は大人しくしている訳が無く。ロマニの後を追うように外へ飛び出した。

 その時、見慣れない少女とすれ違う。少女はこちらに気づいたらしく、駆け寄って来た。少なくとも、自分が見た限りではこの少女を見かけた事は無い。

 かと言って今は問いただす時間が無い為、自分の後を追うように言ってみれば、すぐに承諾してくれた。感謝の言葉を述べ、ロマニの後を追う。

 

 

「そう言えば……貴女は何処から来たの?」

 

 

 ふと、何気ない疑問をぶつけてみる。時間が無い事はよく分かっているが、それだけは聞く余裕があった。

 少女は悩む表情を見せた後、答えを出した。それを聞いた時、その答えには現実味が無いように感じられた。

 

 

「実は、違う世界から来たみたいで……」

 

「違う世界?」

 

「はい。私が覚えているのはそれ位しか……」

 

 

 カルデアに来る前、好き好んで読んでいたライトノベルにそういうのがあった気がする。

 異世界にやって来てしまった主人公が、その世界で過ごしながら元の世界に帰る方法を探すというもの。もしも、目の前に居る少女の言うことが本当であれば、文字通り異世界にやって来てしまったという事なのだろう。

 

 

「そうなんだ。じゃあ、名前は? 私は藤丸立夏。立夏って呼んでね」

 

「私はノエル=ヴァーミリオンと言います。ノエルでいいですよ、立夏さん」

 

「さん付けは固いかな…? ちゃん付けでいいよ。同じ女性だし、ね?」

 

「そうですか? では、立夏ちゃん…?」

 

「うんうん、それでいいよ」

 

 

 なんて、呑気に自己紹介している場合では無い。急いで向かった先にあったのは、固く閉ざされた扉。男性でも苦労するだろうその扉を開けるには、女性の力では不可能だろう。

 どうしようか迷っている最中、ノエルが数歩下がった。何をする気なのか眺めていると、何処から取り出したのか二丁の銃を手に持つ。それは、とてもじゃないが女性が持つべき物じゃない。

 

 

「ノエルちゃん、何を…?」

 

「緊急事態なのでこれくらいは許されますよね、多分…。立夏ちゃん、危ないので少し下がってください」

 

「う、うん」

 

 

 言われた通りに下がると、マズルフラッシュが輝く。その瞬間、目にも留まらぬ速さで弾丸が撃ち出された。余りにも速く、肉眼では追いつけない。

 少しして、大きな音と共に扉は人二人くらいならギリギリ通れる大きさの穴を開けた。それと同時に熱風が全身を襲う。何があったのか気になるが、今はやるべき事をしなければ。

 

 

「─────先行きます!」

 

「えっ、ちょっ……!?」

 

 

 何故か先陣をきられたが、ノエルの後を追う形で私も内部へ向かう。眼前に広がるのは、地獄絵図と称した方がいい程、炎によって真っ赤に染め上げられた管制室だった。

 顔面だけでなく全身も熱風に晒される中、ノエルは何の躊躇いもなく先に進んでいた。私も後を追うと、唐突に通信が入る。相手は、Dr.だった。

 

 

『立夏ちゃん、何故来たんだ!?』

 

「いてもたってもいられなくなって…! すみません、Dr.! 生存者を確認次第、すぐに離脱します!」

 

『……無茶だけはして欲しくなかったんだけどね。分かった。生存者が居たらその人と共に逃げるように!』

 

「……了解です!」

 

 

 通信は切られ、機械的なアナウンスが流れ続ける管制室をひたすら走る。爆発でもあったのか、瓦礫が積み上がった部屋。瓦礫を器用に渡り、先に進んでいったノエルと合流すべく、急ぐ。

 暫くして、カルデアの中心部に到達する。中央に鎮座する地球儀のような物は真っ赤に染まっており、何処と無く禍々しい。

 その近くに、一際大きい瓦礫に挟まった少女と瓦礫をひたすら攻撃するノエルの姿があった。駆け寄ってみると、少女の顔に見覚えがある事に気づく。眼鏡を掛けた少女は私を先輩と呼び、親しくしてくれた少女〈マシュ・キリエライト〉だった。

 

 

「……マシュ?」

 

「先、輩……? 来てくれたんですね……」

 

 

 駆け寄ろうとした時、見えてしまった。瓦礫の間からマシュの血と思われる赤い液体がとめどなく溢れていた事に。その瞬間、マシュはもう助からない事を悟る。だが、此処で見捨てる訳には行かない。

 せめて側に居てやろうと考えた私は、疲れてその場に座り込んだノエルと共にマシュの側へ。差し出された手を優しく握り、寂しくない事を教える。

 

 

「私は、幸せ者ですね…。こうして、先輩の温もりを感じていられる…」

 

「……生きられない、の?」

 

「私の体の事は私がよく知っています。ノエルさん、すみません。その手に持つ銃で、私を救おうとしてくれたんですよね……?」

 

「……うん。私も誰かに助けられたから、今こうして生きてる。罪滅ぼしや恩返しって訳じゃないけど、この手で誰かが救えたらって思ったの。だけど、私じゃ力不足だった……。ごめんね」

 

「そんな事ありませんよ。ノエルさんが謝る必要は無いです。その気持ちだけでも嬉しいですよ。見ず知らずの人である私に対して全力を尽くしてくれた事、私はずっと覚えていますから」

 

 

 マシュの命は最早風前の灯である。誰かを救えなかったという想いは、ノエルの心にいつまでも染みとして残るだろう。

 爆発は止む事を知らず、どんどん酷くなっていく。Dr.には生存者を見つけ次第撤退すると伝えていたが、もう間に合わない。唯一の退路を瓦礫に塞がれてしまったからだ。

 こんな事に巻き込んでしまったノエルに謝罪をし、寂しくないように最後の最後まで三人で話していた。その後、どうなったのかは分からない。だが、最後にこんなアナウンスを聞いた気がした─────

 

 

《マスター、再登録。No.48、藤丸立夏。No.不明の人物。二人を特異点Fにレイシフト。システムオールグリーン。レイシフトを実行します》

 

 

 今、この時を以て二人は何処かへ飛ばされた。そして、コレは果てしない旅の始まりでもあった。果たして二人は何を思い、そして何を見ていくのか。

 

 

 今、誰も経験した事の無い聖杯戦争が幕を開ける。

 

 その戦争は、大規模且つ数々の陰謀が交わるもの。

 

 そして、聖杯絡みという事もあり、立ち塞がるのはサーヴァントと呼ばれる者達。

 

 彼等を相手に、立夏とノエルの二人は人類史を守れるのか。それはまだ、先のお話。




もう少し長くてもいいかな…?
(*´∇`)ノ ではでは~


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見知らぬ街

ネタ無い(´・ω・`)
ではどうぞ


 ──────目が覚める。身体の感覚がある事を確認した後、周りを見渡す。やはり、私が知らない街だった。辺りは瓦礫が積み上がり、炎は消える事無く燃え盛っている。

 

 あの時、何が起きたのか。断片的に覚えている記憶を手繰り寄せ、状況を把握しにかかる。

 必死に思い出そうとした結果、分かった事が一つ。あの時、No.不明の〜等と変なアナウンスを聞いた後に何処かへ飛ばされる感覚があった。そして、気がつけばこの場に居る。そこから導き出した答えは……

 

 

「……又、異世界?」

 

 

 最早それしか考えられない。変な空間に居たと思ったら見慣れない部屋に居るし、今は見知らぬ街に一人で立っている。

 自分の運命が何処で狂ったのか気になる所ではあるが、それを考える暇も無い事は分かっていた。取り敢えず立夏を探すべく、歩く事に。

 

 

「……何処だろ」

 

 

 それだけしか呟けない。身体が消滅していく感覚があったのは覚えているが、その前に何が起きたのかは分からないのが現状である。

 闇雲に歩くしか無いが、これしか方法が無い為仕方ない所ではあるが。

 

 

 

 

─ ノエルsideout ─

 

─ 立夏side ─

 

 

 

 

 

 目が覚める。周りを見渡すと、今まで見た事が無い景色が広がっていた。側に居た筈のノエルとマシュは姿が無く、私だけがこの場に居る。

 

 

「……何が起きたの?」

 

 

 異世界と称するに相応しい景色ではある。おそらくノエルは二回目になるだろう。又もや変な事に巻き込んでしまった事に謝罪したい気分ではあったが、当の本人はこの場に居ない為無理である。

 探した方がいいと考えた私は、未開の地を歩き始める。だが、私は何か重要な事を忘れていた。それはとても重要な事。なのに忘れている事に気づかず、私はノエルを探していた。すぐに会えるとは思っていないが、行動しなければ一生会えないのは分かりきっていた。

 

 

「……何処に居るんだろ」

 

 

 成り行きとはいえ、マシュを助けようとしてくれた恩人には変わりない。魔術師でも無いのは確かな為、一般人でも平凡な魔術師である私が守らなきゃ話にならないと思う。

 暫く歩くと、一度見たら忘れない金髪の少女を見かけた。間違いなくノエル本人だろう。慌てて合流しようとした時、空が一瞬だけ輝いた気がした。

 

 

「────────立夏!」

 

 

 私に気付いたノエルが急いで走り寄って来る。でも、空から降ってきた大量の矢により、行く手は阻まれた。おそらく、超遠距離からの攻撃。こんな芸当が出来るのはと考える暇は無く、私はただただ身を晒す。

 

 

 ───だが、その矢は届かない。固い物に弾かれるように。

 

 

 恐る恐る目を開けると、大盾を持った見慣れない少女が私の前に立っている。桃色の髪色に何故か見覚えがあった私は、その人物の名前を呟く。

 

 

「……マシュ?」

 

 

 そう。私の記憶が確かであれば、桃色の髪を持つ人物は一人しか居ない。私を先輩と呼び、親しくしてくれた自慢の後輩。マシュ・キリエライト本人だと。

 マシュと呼ばれた人物は私の方をちらりと見た後、いつも見せていた笑顔を向ける。それにより、今の私を守ってくれているのは本物のマシュだと確信が持てた。

 だが、そこで一つの疑問が生じる。あの時、マシュは瓦礫の下敷きとなっており、今にも命が消えそうな状態だった。それなのに、鎧を纏い、大盾を構えて前に出ている。マシュに対しての謎が増えた瞬間である。

 

 

 

 

 

 暫くして、敵が放ったと思われる攻撃は止む。その後すぐにノエルも合流し、三人が揃った。

 私とノエルはマシュに疑問をぶつけたかったが、何時また攻撃が来てもおかしくない状況である。近場に避難するのが先と判断し、マシュの案内の元、先を急ぐ。

 

 

「変わっちゃったね……。マシュ」

 

「色々ありまして…。必ず話しますので、少しの間辛抱してくださいね、先輩」

 

「分かってる。兎に角今は───」

 

 

 と、何か言いかけた所で質量を持った影と接触する。何となく、嫌な予感が駆け巡った。目の前の奴とは戦ってはならないと、頭の中に危険信号が走る。だけど、身体が動かない。恐怖で支配されてしまっているからだろうか。

 

 

「……立夏ちゃん?」

 

「先輩?」

 

 

 ノエルとマシュ、二人が心配してくれているが、それでも身体は動かない。このままじゃやられる。対策を練らないと、と考えても固まったように動かない。

 そんな事をしている間に、ノエルが前に出る。あの時、ノエルの戦闘力を垣間見たから分かる。彼女ならこの状況を覆す事が出来るだろうと。

 

 

 

「マシュ、立香ちゃんを御願い」

 

「わ、分かりましたっ」

 

 

 あらゆるものがゆっくりと見える中、ノエルは二丁の拳銃を構える。さっきまで可憐な少女だったのに、銃を持った瞬間に軍人のそれに様変わりする。

 おそらく、彼女は元の世界では訓練を受けた軍人だったのだろう。私と歳は変わらない筈なのに。

 そもそも私の故郷を含めた国自体、戦争とは無縁の世界だった。ノエルがどんな戦場を見てきたのかは分からない。だけど、数多の死線をくぐり抜けねばあの表情にはならない筈である。

 

 

 

 先に仕掛けたのは影。その手に持つ大鎌に似た武器を振り回し、ノエルに致命傷を負わせようとしている。対してノエルはそれを紙一重で躱していき、銃撃を浴びせていく。空薬莢が宙を舞い、常人には到底不可能な速度で弾丸が撃ち出されているのが分かる。

 

 

「フェンリルッ!」

 

 

 ノエルがそう叫ぶと、二丁拳銃は姿を変える。その風貌は機関銃と呼ぶに相応しい。それを両手で軽々と持ち、さっきとは比べ物にならない速度で空薬莢が宙を舞う。それに比例しているのか、撃ち出される弾丸は夥しい量になっていた。

 まさに弾幕である。さっきまで攻勢に出ていた影は一転して防御に徹するようになった。遠距離攻撃に特化していると言えばそうなる。

 

 

 

 投げ捨てるようにフェンリルを手放し、再び二丁拳銃を手にしたノエルは一気に距離を詰め、まさかの接近戦を始めた。それは予想外だった為、私とマシュは驚きを隠せない。

 そうして、少し経った後。水を差すように炎が飛び、二人は戦いを強制的に中断され、その上分断させられた。新手、そう思うしかない。突如現れた人物、その姿を見た時は敵と思わざるを得なかった。

 なんと言っても此処は見知らぬ世界。いつどこで誰に襲われるか分からない。ましてや、新たに登場した人物が味方だと確信出来る訳も無い。

 

 

「嬢ちゃん、その細い身体でよく戦えるな? 正直に言うと、驚いたぜ」

 

「……えっ?」

 

「嗚呼、安心しろ。俺は味方だ。奴とはちょいとした因縁があってな、いがみ合ってるって訳よ」

 

「は、はぁ……」

 

「なんだ、信用出来ないって顔だな?」

 

「え、まぁ……はい」

 

 

 ノエルが警戒するのも仕方ない。突如現れた人物に"味方だ"と言われても信用出来ないのは当たり前である。いくらフレンドリーに話しかけられても、知人では無いのは確かだ。

 そもそも、傍観を決め込んでいた事自体タチが悪い。凡人より戦闘経験を積んでいるから戦えるとはいえ、ノエルは少女だ。男(見た目からしておそらくそうだと思われる)ならすぐに助けるべきだと思うのだが。

 

 

「ま、そのままだと分が悪いだろ? 俺も手伝うからよ」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 

 果たして、魔術師風の服装で身を固めるこの男は本当に味方なのだろうか。その答えが出るのは、少ししたらすぐに出る事だろう。

 そして、謎の男の正体もその時に分かる筈だ。その場の状況もあり、状況を覆す為に一時的に協力関係を結んだが、これから先、この男が敵になる事も考えられなくはない。

 

 

 画して、この世界に来て初めての戦いが幕を開けた─




(*´∇`)ノシ ではでは~


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英霊

感想、誠にありがとうございます。
なるべくキャラ崩壊をしないように、上手く書いていきたいと思ってます。

それではどうぞ(⊃ ´ ꒳ ` )⊃


 突如現れた人物を見た時、妙な既視感を覚えた。私の知り合いにそういう方が居た気がして、困惑を隠せないでいる。

 そんな私を見ていた謎の男(多分)は首を傾げ、顔を近づけてきた。そんな間近で見る必要があるのかというくらいに近い。近くには敵が居るというのに、謎の男は私の顔をじっと見ている。

 

 

「あ、あの……何か?」

 

「嗚呼、悪ぃ。嬢ちゃんがあまりにも可愛くてな、俺とした事が見蕩れてたわ」

 

「な、なっ……?!///」

 

 

 突如そんな事を言われ、漫画のヒロインのように顔が真っ赤になる。そして思った。この男は阿呆なのか。私の何処が可愛いというのだ、と。確かに私の親友達も私の事を可愛いと言う時があるが、この男が言う可愛いはなんか違う気がする。まるで、口説いているかのように思えて仕方ない。

 勿論、私にはそんな経験は無いに等しい。故に、パニックに陥った頭を冷静にさせるしか手段が無かった。最初の時点で顔を真っ赤にしていた為、今更感があるが冷静を装う事にする。

 

 

「じょ、冗談が上手いですね…?」

 

「んにゃ、俺は冗談は滅多に言わない質でな? さっきのは本音と捉えていいぜ?」

 

「……」

 

 

 戦場でふざけられる時程イラつく時は無い。私は無意識に銃を向け、発砲していた。簡単に避けられたがそんなのは気にしない。今ここで倒さない限り、私の怒りは収まらない。だが…

 

 

「あっぶねぇっ?! 待て待て、急に攻撃すんの無しだ無し! その弾痛そうだしよ、勘弁してくれ…」

 

「……分かればいいんですよ、分かれば」

 

 

 威嚇射撃のつもりだったのだが、割と本気で引き金を引いていたようだ。それより先に済ませておかねばならない事がある。その男を押し退けて前に出た私は、再び二丁拳銃を構える。

 だが、あろうことかその男は私の前に出た。男が女を守る心理は分かる気がしないでもないが、今は立夏の方が心配である。この場はその男に任せる事にし、私はマシュと立夏の側に来た。なんとなくだが、あの男の側に居たくないと感じたからだ。

 

 

「お疲れ様です、ノエルさん」

 

「うん、ありがと…。立夏ちゃんは大丈夫?」

 

「私は大丈夫だよ。マシュが守ってくれてたからね」

 

「よかった…」

 

 

 この世界に来て初めて出来た友人の無事を確認出来ただけでも嬉しい事だが、満面の笑みを見せる立夏を見ていた私は又もや既視感に襲われた。光景は違えども、何故か経験があるように思えたのだ。

 果たして、立夏に誰を重ねたのか。はたまた、立夏に自分を重ねたのだろうか。そこまでは分からなかったが、既視感の正体が知りたかった。

 だが、幾ら記憶を遡ったとしても、その既視感の正体が分かる訳が無かった。一旦思考を止め、例の二人の戦いを見る事にする。

 

 

 

 

 

 二人は、明らかに人間ではない。影の方はそう断言出来るが、男の方はそう断言するのが難しかった。だが、影の奴にダメージを与えている所を見ればなんとなく合点がいく。

 私が持つ二丁拳銃〈魔銃・ベルヴェルク〉も決定打とまでは行かなかったものの、ダメージは与えられていた。それとは意味合いが違うかもしれないが、あの男には何か秘密があるように思える。

 そんな事を考えていた時、立夏が気になっていた事を元に、質問をされた。

 

 

「そう言えば、ノエルちゃんが持つその銃。只の銃じゃないよね?」

 

「そうだね。コレに関しては、又後で話してもいい?」

 

「その言い分だと、長くなる?」

 

「そうかな。立夏ちゃんが知らない事、沢山話さないといけないから」

 

「……分かった。ノエルちゃんの事、もっと知りたいし。聞くよ」

 

「うん。ありがとう」

 

 

 後で説明する事にはなったものの、立夏はなんとなく乗り気では無いようだ。それもそうだろう。私自体が異世界の存在。所有している武器とかも異世界の技術で作成されたもの。アレコレ話さなければ。

 とはいえ、ベルヴェルクを含めた兵器〈事象兵器〉に関しては、何故それが作られたのか。何があったから、それを作る切っ掛けになったのかという事まで話さなければならないだろう。掻い摘んで話すとして、何処まで削ればいいのか不明である。削り過ぎても駄目、多すぎても駄目。難しい所だ。

 

 

「(こんな時、カグラさんかマコト、ツバキが居てくれたら助かったのにな……)」

 

 

 今頃向こうでは突如消えてしまった私を探している頃だろう。私の目の前に現れた、あの蒼い渦の正体も気になる。僅かだが蒼の残滓を感じたという事は、蒼が絡んでいるのは確かな筈。然し、蒼の残滓とはいえ、私以外に誰が所持しているのだろうか。

 

 

 

 "あの日"を境に、私にとって大切な人に関する記憶がすっぽりと抜け落ちている。今となってはもはやそれが誰なのか、思い出せないでいる。キサラギ少佐やカグラさん、マコトやツバキにも聞いたのに、全員が覚えていない。まるで、その人は自分の存在自体を無かった事にしたかのように。

 

 

 

「(考えても仕方ない、か。今は向こうに帰れる手段を探さないと……)」

 

 

 兎に角今は、カルデア(立夏ちゃんから聞いた)に協力しておいた方がいいだろう。後で色々説明しなければならないが、等価交換という事でいいだろう。

 そうこうしている内に、例の二人の戦いは終わったらしい。勝者であるあの男が私達の元に歩いてくるのが見えた。無論、警戒は続けるが、何処と無く悪い人には見えない。悪い人ならば、あの影と共に私達に襲いかかる筈だからだ。

 

 

「悪ぃ悪ぃ、ちと手こずったわ。三人共大丈夫だったか?」

 

「私は大丈夫です。それよりも、説明する事があるんじゃないですか?」

 

「こりゃ手厳しいねぇ。んじゃ、話すとしますか。そっちの嬢ちゃん達も気になるだろ?」

 

「「あ、はい。是非御願いします」」

 

 

 そうして、謎の男の話が始まる。男の名は「キャスター」というらしい。私が本名じゃないのでは? と指摘したら、そこまで分かるのか。鋭いなとキャスターに驚かれた。驚いた意味が分からない為、そこまで驚く事なのだろうか? と、首を傾げる私だった。

 

 一先ず私達も自己紹介を済ませ、キャスターと名乗る男と一時的に協力関係を結ぶ事に。その時、私は立夏の正体(そこまで重要な事ではないらしいが)に気づく。

 

 

「立夏ちゃんが魔術師…そして、マスター?」

 

「うん。とは言っても、私が弱い事には変わりないけどね…」

 

 

 立夏に詳しく聞くと、魔術師とは魔術を扱う人間を指すらしい。魔法とまでは行かないものの、ある程度なら魔術を行使する事で実現可能みたいだ。

 

 立夏も魔術師の一人なのだが、本人も言っているようにあまり強くないようで、カルデアに招集された他の魔術師は有名な家系に属しているらしい。

 そんな中に何故呼ばれたのか。言い方は悪くなるが、要は人員の数合わせで呼ばれた一般枠。なのにこんな事に巻き込まれた立夏ちゃんが可哀想に思えてくる。

 

 

「……私と同じ境遇かも」

 

「そうなの?」

 

「正確には違うかもだけど、私を引き取ってくれたヴァーミリオン家は小さな貴族だったから…」

 

「……え? ノエルちゃん、貴族だったの?」

 

「う、うん」

 

 

 私が貴族だと知った立夏ちゃんは、目を点にして呆然としていた。マシュも同様で、キャスターだけは感心しているように頷いていた。

 そんな中、キャスターが質問をふっかける。何に関してだろうと思っていた矢先、目付きが変わった事に気づく。重要な事を話す気なのだろう。

 

 

「嬢ちゃんは一体何者だ? 幾ら影とはいえ、奴にダメージを与えていた所を見た限りだと、俺達と似た存在なのか?」

 

「いえ…私は、私が暮らしていた世界からこちらへ来たみたいなんです。なので、立夏ちゃんと同じ人間ですよ。私が戦えたのは、軍人としての訓練を受けていたのと、この銃があったからです」

 

「ふむ。つまり嬢ちゃん…いや、ノエルは異世界からの来訪者であり、元居た世界で積んだ経験があったからこそ、あそこまで華麗に戦えていたって訳か」

 

「あ、はい。そうなります」

 

「となると、英霊…サーヴァントの事は知らないな?」

 

「はい。初耳ですね…」

 

「よし分かった。一から教えてやるよ。何も知らないよりはマシだろ?」

 

 

 キャスターから、サーヴァントについて色々教えて貰った。サーヴァントとは、この世界で起こる戦争に於いて、参加資格を得ている魔術師が召喚する存在。

 過去の英雄達に七つのクラスと仮初の肉体を与えて現界させ、最後の一人になるまで争う。その戦争の勝者だけが手にするのが、聖杯と呼ばれるあらゆる願いを叶える事が出来ると言われる願望器。故に、聖杯を手にするべく行われる戦争を聖杯戦争と呼ぶらしい。

 

 

 戦いの敗北者は去っていき、最後に残るサーヴァントとマスターが聖杯を手にする。それが本来の聖杯戦争なのだが、今回は少々勝手が違うようだ。

 先ず、サーヴァントを召喚した魔術師〈マスター〉は居ない。そして、マスターが居なければ現界出来ない筈のサーヴァント七騎は現界し続け、未だに戦いを続けている。その内の一人が、私達の前に居るキャスター。

 

 

 彼はこの狂った戦争を一日でも早く終わらせる為に暗躍を続けていたとの事。だが、一人では限界があるというもの。そこにタイミング良く来たのが私達という訳らしい。

 私達がカルデアに帰れる条件は、そこで定まった。此処で行われ続けている聖杯戦争を終結させる事。だけど、気になっている事がある。

 

 

「立夏ちゃん、探している人達はどうなったの?」

 

「先ずはそれだね…。誰かは此処に居る筈なんだ、探さないと」

 

「だね。あの時、もしかしたら生きていた人達が此処に居る可能性もあるし」

 

「うっし、決まりだな。先ずは立夏の目的を果たすとするか」

 

 

 目的が定まった所で、此処に詳しいキャスターの案内の元、行動を開始する。願わくば誰か居ますようにと、願いながら。

 だが、その願いはそう簡単に叶う訳が無い事を知るのは、もう少し後の事。




更新遅れて申し訳ないです(´・ω・`)
なるべくなるべく早く更新しますので、気長にお待ちくださいませ

それでは(・ω・)ノシ


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生存者

いいタイトル思いつかない(´・ω・`)
取り敢えず今回は所長&ロマニ、ノエルと遭遇回という事です、はい

それではどうぞ(⊃ ´ ꒳ ` )⊃


 暫く歩くと、私の内にあるもう一つの力が呼応し始めた。それは、他の三人には分からない微々たるもの。だけど、私には分かった。

 確証は無い。だが、蒼の残滓を近くに感じた気がしたのだ。私以外に誰かが此処に居る可能性がある。流石に誰とまでは分からないが、発生源がある筈なのだ。それを探そうとしてぼーっとしていた所、立夏に声をかけられる。

 

 

「ノエルちゃん、どうしたの?」

 

「う、ううん。何でもないよ」

 

「そう? 何かあればすぐに言ってね?」

 

「うん。ありがとう」

 

 

 無闇矢鱈に心配をかけては駄目だと思い、蒼の残滓を探すのを止めた。おそらく、近いうちに逢える筈だと確信していた。

 何故確信出来たのかは謎だが、蒼を感じたという事は向こうも同じく感じた筈だと思った為である。引かれ合うという訳では無い筈だが…

 

 

「キャスター、何時まで歩くの?」

 

「まぁ、そう焦んなって。盾の嬢ちゃんは兎も角、ノエルと立夏の二人は生身の人間だろ? 此処では奴の攻撃を凌げない。我慢してくれ」

 

 

 キャスターの一言に対し、立夏は渋々歩き出す。キャスターが言う奴の攻撃とは、この世界に来て最初に受けた矢の嵐を指すだろう。

 とてつもない量の矢を凌ぎ切ったのがマシュであり、その後は邪魔が入ったのかあっさりと止んだのだ。おそらく、邪魔をしたのはキャスターだと思う。キャスターはルーン文字で攻撃する為、それが書ければ何処からでも攻撃可能なのだ。

 

 

「もう少し歩けば、俺が根城にしている廃屋に着く。たどり着いたらそこで体制を立て直した方がいいだろ?」

 

「一理ありますね…。先輩、頑張りましょう」

 

「マシュが言うなら、頑張るよ…」

 

 

 と、立夏が倒れそうになったその時。小さな声で悲鳴が聞こえてきた。誰の声なのか確認する間も無く私は走り出しており、後ろからキャスター達の静止の声が響く。

 だが、そんな事を一々気にしていられる状態では無かった。収納していた銃を構え、ただひたすらに走る。あの時のマシュのように、目の前に救える命を救えない事態になったとしたら、今度こそ私の心は潰れてしまう。

 

 嘗て、あの男の手によって覚醒させられた力は使えなくてもいい。あの力はレイチェルさんの御指導でコントロールが出来るようにはなったが、出来るならこの手で救いたいのだ。

 

 

 「(……! 居たっ!)」

 

 

 『眼』の力の影響か、遥か遠くまで見えるようになった私の視界に、白い髪の毛を持つ女性を捉えた。その女性は骸骨─ スケルトン ─に襲われている。

 走っても間に合わないと判断した私は一か八か、遠くから狙撃してみる事に。ベルヴェルクには認識した場所に攻撃出来るという能力が備わっており、所有者の私が認識さえすれば壁などの遮蔽物など関係なく攻撃可能という訳だ。

 

 敵の数は凡そ五十。その全てを認識した為、躊躇う事無くベルヴェルクの引き金を引く。幾つか取り逃したが、女性までの道は拓ける。そこを目掛けて一直線に突っ切った。

 その女性の前に出た時、とある感情が渦巻いているのが分かる。怖いのだろう。無理も無い、あんな状況になって冷静でいられる方がおかしいと思う。

 

 

「だ、誰よ貴女…!?」

 

「安心してください、私は味方です。もうすぐ増援が来ますので、その間は私の後ろに───」

 

「じょ、冗談じゃないわ! 何処の馬の骨とも分からない奴に守られるくらいなら戦って命を落とした方がマシよ!」

 

 

 相当パニックに陥っているのは分かる。だが、この女性が言った一言が許せなかった。それは禁句というもの。"私"が最も聞きたくない言葉だった。

 私は心の内に滾る怒りを抑えながらその女性を見据える。すると、その女性は縮こまった。

 

 

「な、何よ…! 何か言いなさいよ!」

 

「命を棄てる。貴女はそう言いましたか?」

 

「そ、それが何よ…!」

 

「そんな簡単に命を棄てると言わないでください。生きたくても生きられない人達だって沢山居るんですよ?! 貴女は、生きる努力をしてください!」

 

 

 それだけを言い放ち、私は再び敵陣に突っ込む。少しして、立夏達の声が聞こえてくるのが分かった。無事に追いついた事を確認した後、最後の一体を倒す。

 

 立夏達に合流し、先ずは先走った事を謝罪する。悲鳴を聞いて、いてもたってもいられなくなったと言えば、なんとか納得してくれたようだ。

 後、さっき偉そうに説教地味た事を言ってしまったが、私が助けた女性こそカルデアの所長であり立夏の上司(?)に当たる人物〈オルガマリー・アニムスフィア〉らしい。慌てて頭を下げ、出過ぎた真似をしてしまった事を後悔する。

 

 

(所長の怒りを買ったの、ノエルちゃんで二人目だね)

 

(えっ。じゃあ…)

 

(……うん。一人目は私。目の敵にされてるから)

 

(そうなんだ…)

 

 

 依然として私達を睨んでいるオルガ所長。立夏に対しては何でアンタが此処に居るの的な感じで、私に対してはさっきの事が原因だろう。知らなかったとはいえ無礼な事をしてしまったのだ、仕方ない。

 ここに来て一気に緊張感が増した。自分の失態を恥じていた時、雑音混じりの通信が入る。所長が繋げると、白衣を着た男が投影された。術式通信かと私は思ったが、どうやら違うらしい。

 

 

『あぁ、よかった! やっと繋がった……! 皆無事かい!?』

 

「ロマニ! 何でアンタがそこに居るのよ!! レフはどうしたの!?」

 

『……って、しょ…所長!? 何故そこに居るんですか!?』

 

「質問を質問で返さない! いいからレフを出しなさい!」

 

 

 繋がったと思った矢先、所長とロマニと呼ばれた男の口論が始まった。まるで子供の口喧嘩のようにギャーギャー騒いでいる。このままでは埒が明かないと思った私は、二人に割って入った。

 当然、二人は口論を止める。私に注目が集まっているのが嫌でも分かってしまう。

 

 

『えーと、君は誰だい? ここらでは見かけない顔だが…』

 

「わ、私はノエルといいます。そ、それよりも先ずは情報共有が先なのではないでしょうか? このまま言い争っていては解決する事も解決しないと思いますが…」

 

『それもそうか…。では、所長。此方の状況をお話ししますので、心して聞いてください』

 

「急に改まったりして何よ。何が起きたのか簡潔に話しなさいよね」

 

『だから今から話しますから…(相変わらずせっかちだなぁ、所長は…)』

 

 

 ロマニの口から、カルデアの現在の状況が語られる。それは、四十八人の魔術師を招集した所長にとって絶望に叩き落とすには十分な出来事だった。

 

 ロマニの状況報告が終わった直後、所長は膝から崩れ落ちた。ロマニが語った事は紛れもなく真実なのだろう。だが、所長は信じたくないと言わんばかりに耳を押さえて首を振り続けている。

 それもそうだ、四十七人の魔術師の命を預かっていたも同然の状況の中、あの事故が発生し、立夏以外の魔術師は意識不明の重体。所長とはいえ、若い。全責任を負うなんて事は経験が無い筈だ。

 

 

「ロマニ、今すぐ冷凍保存に移行して。四十七人の命なんて背負える訳が無いじゃない…! ほら、とっととやる!」

 

『言われなくても、今スタッフ総出でやってます! それよりも、そこがどんな場所なのか説明したらどうですか? 立夏ちゃんは知らないようですから…』

 

「あ、それならなんとなく分かってますよ。Dr.」

 

『そ、そうかい? 特異点の説明の手間が省けたという事で…。ノエル君には説明を頼みたいんだが、大丈夫かい?』

 

「……はい。話さないと駄目だなと思っていた所なので。先に言っておきますが、私が言う事は全て本当の事です。怪しんだり疑ったりするのは自由にして構いません」

 

『分かった。じゃあ、頼むよ』

 

 

 ロマニと呼ばれた人物を含め改めて自分に関する情報を話す。先ずは敵では無い事、立夏と同じ人間だと言う事、元の世界に帰る手段を探している事等を洗いざらい話した。

 と言っても、ベルヴェルクの事は説明しない。異世界の技術で作られた物を解析される訳には行かないと思ったからである。

 

 仮に作成出来たとしても、ベルヴェルクを含めた十一の事象兵器〈アークエネミー〉はとあるものが必要になる。それが無ければ例え形だけ出来てもアークエネミーでは無い、単なる兵器でしかないのだ。

 そもそもアークエネミーの作成方法自体、非人道的な所もある。彼等が人理を守る立場にあるとしたら、コレは話すべきでは無い。

 

 

「という訳です。し、信じて貰えたでしょうか?」

 

 

 先に疑ったりするのは御自由にと言ったが、やはり信用してもらえないと厳しい所がある。自分の情報を公開したとはいえ、怪しい人物には変わりないからだ。

 だから、或る意味賭けではある。信用が無かったら自力で帰る手段を探さないと駄目だろう。とはいえ、出会ったばかりの怪しい少女を信用しろというのは些か…いや、かなり難しいが。

 

 

『まだまだ信用出来ない所はある。だけど、今は協力しよう。君が無事に帰れるよう、カルデアは全力でサポートをするつもりでいるよ』

 

「ちょっ、ロマニ! 貴方はそれでいいかもしれないけど、最終的に決めるのは私よ!?」

 

『それでもですよ、所長。貴女はノエル君を見捨てるおつもりですか? いくらなんでもそれは人としてやってはいけない事だと思いますが…?』

 

「くっ…! はぁ、いいわ。非常に不本意だけど、助けられた恩もあるし。カルデアは貴女に協力します。ですが、貴女が無事に帰るまでという事をお忘れなく」

 

「あ、ありがとうございます! 後、私は男じゃないので…」

 

『……えっ!?』

 

「……まぁいいです。宜しくお願いしますね…」

 

 

 承諾を得られたという事で、私は訂正を付け加えて頭を下げる。だが、コレはまだ序章に過ぎない事をこの場に居る誰もが知る由もない───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻、とある寺の庭。そのど真ん中に見慣れない人物が立っていた。その人物は自分が置かれている状況が分かっていないらしく、頻りに辺りを見渡している。

 

 見た目から分かるのは、黒髪の男だと言う事だけ。その男は自らの得物である大剣を担ぎ、あちこちウロウロし始めた。挙動不審とも、人を探しているようにも見える動きをし続ける男は独り言を呟く。

 

 

「……しっかし、一体此処は何処なんだ? 魔素も無ぇ、術式も使えねぇと来た。こりゃあ、ピンチって奴か…?」

 

 

 誰も居ない寺で、男はその場にどっかりと座る。そして、又もや独り言を呟いた。やる事が無いらしく、仕方ない事かもしれない。

 

 

「急に現れた渦っぽい奴に吸い込まれたと思ったら、異世界と称するに相応しい場所に来ちまうし…。ん? 確かマコトが言ってたな? "のえるんが蒼い渦に吸い込まれた"って…。まさか、此処にノエルちゃんが居たりするのか?」

 

 

 ぶつぶつ呟く、ノエルを知る謎の男。彼が立夏達カルデアメンバーと邂逅するのはまだ先になる。果たして、彼は何者だろうか。それは、彼とノエルが出会った時に分かる事だ。




最後に出た人物、分かる人には分かるかと。
では(・ω・)ノシ


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黒騎士

今回であの方が出ます
伏線は、前回の最後に(。・ω・)ノ

それではどうぞ(⊃ ´ ꒳ ` )⊃


 所長を加え、五人で先を急ぐ中。自分の内に眠るもう一つの力が再び呼応し始めた。何者かの波長を受け取っているらしく、それを頼りに探してみるものの、感じ取っている波長は不完全な為か場所までは分からない。だけど、私以外の誰かの波長である事は確か。立夏達にそういう波長を感じる気配は無い為、確信出来た。

 

 

(間違いない。私と同じ方法? で、こっちに来た人だ。それも、蒼を知っている人。あの世界から来た人に間違いないかも…)

 

 

 立夏達は色々話している為、私がぼーっとしている事に気づいていない。これなら気が済むまで探せると思い、精神を研ぎ澄ませる。

 研ぎ澄ませた瞬間、今まで聞こえてこなかったものや見えなかったものが見えてくる。『眼』の力も最大限に引き出されているようにも思える。この世界に"蒼"は無い筈なのに、此処に来てから無意識でも分かるくらいに鋭くなっている気がするのだ。

 

 

(なんだろう…? 身体の底から力が溢れるような感覚…。こんなの、今まで体験した事無い…)

 

 

 今、ノエルに起こっている事は、元居た世界では破れなかった自らの殻を打ち破ろうとしている事だろう。言い換えれば、ノエルにはまだまだ伸び代があるとも言える。

 そして、精神を研ぎ澄ませる事数分。謎の波長を発している場所を見つける。そこは、とある寺の中庭に当たる場所だった。そこまで行く方法が分からない為、キャスターに聞いてみる事に。

 

 

「寺だぁ? んなとこ行ってどうすんだよ?」

 

「私の知り合いが居るかもしれないんです。道案内、お願い出来ますか?」

 

「ったく、俺としちゃあ……寄り道は出来るだけしたくねぇんだがな」

 

「お願いします…!」

 

 

 再度頼み込むと、流石に折れたようで。渋々道案内をしてくれた。後で何かしら御礼をしなければならないだろう。

 もしかしたら、あの人かもしれないと考えたのだ。私の恩人が。何度も助けてもらっているにも関わらず、そんなに御礼をしていない。あの人は気にしていないかもしれないが、私は結構気にする派なのだ。

 

 

(会えたら嬉しいけど、そんな事無いか…。多分、あの人じゃない。違う人だ…)

 

 

 もう、どんな姿だったのかすら思い出せない恩人。そんな人に会える訳が無いと割り切った私は先を急ぐ。恩人じゃなくても、同じ世界から来た人であれば頼れると思ったからだ。

 おそらく、敵では無い事は断言出来る。仮に敵だとしたら、一握りの人達しか思いつかない上に、皆が強い。味方だったら頼もしいかもしれないが、そんな人達が私の味方になる筈も無い。皆が皆、私にとって嫌な人ばかりだからだ。

 

 それはさておき、どうか知っている方でありますようにと淡い思いを抱きつつ、先を急ぐ。

 

 

 

 

 

 ノエル達が寺へ向かっている頃。寺の中庭に当たる場所にて、二人の男が戦っていた。一人は、褐色肌に白髪の弓使い。もう一人は、黒髪の大剣使い。遠距離攻撃が可能な弓使いが有利かと思いきや、戦況は大剣使いの方に傾いている。

 それは何故か。大剣使いの男は自らの得物である大剣を盾にしつつ、放たれる鏃を弾きながら、特殊なエネルギー弾を放っていた。それにより、遠距離攻撃というアドバンテージは無くなったも同然である。

 

 

「んだ? そのまま逃げに徹する気か? よもや弓矢だけが攻撃手段の全てじゃねぇだろ?」

 

「……言われなくても。そろそろこちらが打って出ようと思っていた所だ」

 

 

 白髪の男は弓矢を手放す。すると、風に溶けるかのように弓矢は消えていく。続いて取り出したのは二振りの剣。白髪の男がその剣を手に持つ際、まるで虚空から創り出したように見える。

 それを見た黒髪の男は口笛を吹き、見た目からして重そうな大剣を片手だけで軽々と持つ。まるで、大剣の重さなど感じないように。

 

 

「へぇ…? 面白ぇ技使うじゃんか。やっとこさ本気になったって訳か?」

 

「そうとも取れるな。生憎、遠距離からちまちま攻撃するのは性に合わないのでね。サーヴァントである俺とここまでやり合える奴が居るとは思いもしなかったのが本音だ。剣を抜かせる程、お前が強いという事か」

 

「ほぅ…? 上から目線なのはスルーするとしてよ、つまり俺は舐められてたって訳か。余裕ぶるんじゃなかったって後悔させてやるよっ!!」

 

「……来い!」

 

 

 双剣と大剣、三本の剣がぶつかり合う。火花を散らし、何度も何度も切り結ぶ。

 白髪の男が双剣を手にした事により、戦況はガラッと変わる。何かしらの術が影響しているのか、白髪の男が振るう双剣は余りの激しさにより、へし折れる。然し、折れる度に白髪の男は虚空から剣を創り出し、尚も切り結ぶ。

 或る意味無限とも取れる双剣の応酬に、黒髪の男の体力は確実に削られていく。体術も織り交ぜての攻めを繰り広げ、一進一退の攻防にもつれ込むも、依然として白髪の男の方に戦況は傾いている。

 

 

(ちっ、このままじゃジリ貧なのは俺の方だ。何か策は無ぇのか…?)

 

「どうした。息が上がって来ているぞ?」

 

「けっ、なめんなよ? 俺はまだまだいけるぜ!」

 

「ふっ、そうこなくてはなっ!」

 

 

 サーヴァントと人間には圧倒的な差があった。身体の構造自体が違う為、仕方ないかもしれないが。身体能力が高いとはいえ、黒髪の男は生身の人間。サーヴァントである白髪の男とは違い、スタミナというものが存在する。白髪の男が弓矢を放っていた時はまだいい。最小限の動きで弾く事が出来たからだ。

 だが、今は白兵戦にもつれ込んでいる。当然、攻撃しつつ自分の身を守る事もしなくてはならない為、遠距離攻撃に対応する時より遥かに体力を使うのは目に見えている。

 

 状況は白髪の男が有利になってきている。それでも黒髪の男は退くという事をしなかった。敵前逃亡は恥と思っているのか、はたまたこの男も軍人としての誇りがあるのか。そこまでは分からないが、兎に角男は戦い続けた。

 然し、体力の消耗がピークに達したのか、黒髪の男は僅かだがふらつき、肩肘をついたその時だ。その隙を狙い、振り下ろされる双剣を何かが弾く。その前に銃撃音が辺りに響いたような気がしたのだ。

 

 

「誰だっ!」

 

 

 白髪の男が声を荒らげたその時、一点集中と言わんばかりの弾幕が男を襲う。小型の盾を瞬時に作成した白髪の男は弾幕を防ぐが、余りの密度に後ろへ大きく下がる結果となった。

 黒髪の男が弾幕が飛んで来た方向を向くと、金髪の少女と橙色の髪の少女、盾を持った桃色の髪の少女に白髪の女性、青髪の男の五人が走って来ていた。

 他の四人は知らなくとも、男は金髪の少女に見覚えがあった。名前を呼ぶ前に、自らの名前を呼ばれる。

 

 

「────────カグラさんっ!」

 

 

 飾りも無い無骨な二丁拳銃を手にし、自分に走り寄ってくるその少女を見た時、確信が持てた。この少女は自分が良く知る少女だと。だからこそ、名前を呼ぶ。

 

 

「おう。逢えて良かったぜ、ノエルちゃん?」

 

 

 白い歯を見せ、満面の笑みを浮かべる。探していた少女─ ノエル ─が見つかったのだ。これ以上に嬉しい事は無い。

 今までの疲れもなんのその、ノエルにカグラと呼ばれた男は無双とも取れる動きで白髪の男を退けた。

 一段落した所で、改めて事情説明を受けた。橙色の髪の少女は藤丸立夏、白髪の女性はオルガマリー・アニムスフィア、青髪の男性はキャスターとそれぞれ名乗る。そして、彼等がカルデアという組織に属している事も分かった所でカグラは自己紹介をしてから質問をぶつける。

 

 

「俺はカグラ。階級は大佐だ。んで、そこに居るノエルちゃんと同じ世界出身っつー事になる」

 

「貴方も、平行世界から来た人という事ですか?」

 

「そうだ。立夏ちゃんは理解が速くて助かる。それはさておき、俺からの質問だ。アンタ達はカルデアと言ったか? そんな組織がノエルちゃんと一緒に居る理由、差し支え無ければ教えてほしい」

 

「それは私からお話します、カグラさん」

 

 

 自ら説明役を買って出たノエルの話を聞く限りでは、元の世界に戻る手段を探すべく、互いに協力関係を結んだという事らしい。

 

 

「……という訳です、カグラさん」

 

「なるほどな…」

 

 

 もう一つ、謎があると言えばある。あの時突如発生した蒼い渦。それの解明もしなければならないだろう。何れ消えるとはいえ、蒼の反応を感知したとノエルは言っていた。それならば、蒼を良く知る人物が関わっている事にもなる。

 知っている事と言えば、六英雄にして自分達の敵として立ちはだかったユウキ=テルミ、統制機構のトップにして最悪の敵となった帝…否。冥王イザナミ、目の前に居るノエル、後一人居た気がするが気の所為だという結論に至る。

 兎に角、彼等が一番蒼に関わっていたのだ。ノエルは違うとして、残りは二人。だが、そのどちらも可能性としては薄い。あの世界には二人は居なかったからだ。

 

 

(今考えこんでも仕方ないか…? 原因究明はゆっくりと行えばいいだけだ)

 

 

 取り敢えずアレコレ考えるのはやめておいて、今はノエルと共に元の世界に帰る手段を探した方がいいという結論に至った。そうなれば、必然とカルデアに協力せざるを得ないだろう。

 ノエルが信頼しているかどうかは置いておき、カルデアに協力する事を選ぶ。人手は多いに越したことはない。

 

 

「良かった…。カグラさんが居てくれたら百人力ですよっ!」

 

「ははっ、ノエルちゃん。そりゃ買い被り過ぎってもんだ。でもまぁ、退屈しのぎにゃなるだろ。さっきみてぇに強ぇ奴が居るからな」

 

「そ、そうですね。私も協力しますので、存分に戦ってください!」

 

「そこまで言われちゃ、頑張らないと男が廃れるな……」

 

 

 傍から見れば恋人に見えなくもないが、それはさておき。新たにカグラを迎え、計六人となったカルデア勢。この先どうなるのか。それはまだ分からない。




更新遅れて申し訳ない…っ!
次はなるべく早く更新します(´・ω・`)

それでは(・ω・)ノシ


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