魔法科高校の魔改造ほのか (nyanco)
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入学編
入学式


初投稿です。


「ほのか、あの子だった?」

 

「うん、そうだよ雫」

 

 2094年4月、幼馴染である光井ほのかと北山雫は共に国立魔法大学付属第一高校の入学式に出席していた。

 現在は新入生代表の司波深雪が答辞を読んでいた。彼女はとても美しく、入試の時もとても目立ち、周りはざわついていた。実技試験も飛びぬけて成績が良く、魔法を使う様のかっこよさにほのかもときめいていた。

 

「あらためて見ても綺麗な人だなぁ」

 

 ほのかの瞳は完全に恋する乙女のようで雫は少し不機嫌になる。

 

「かわいさで言ったらほのかも負けてないよ」

 

 そうぼそっとつぶやいたが聞こえていなかったようで、雫は一人少し気まずげに黙ることにした。

 

 

 

 

 式が終わると生徒会長、および深雪と話したい男子学生に深雪は囲まれていた。

 

「私もちょっと行ってくる!」

 

 ほのかは雫に断りを入れると返事を待たずに人垣へと突進していく。

 

「あ、ちょっと……」

 

 取り残された雫は苦笑しつつほのかとはぐれないように人の塊を少し離れた所から追跡する。

 

 しばらく追跡していると深雪を中心にしてできていた集団が少しまばらになり始め、ほのかを見つけ出すことができたため、彼女に近づく。

 

 

「ほのか、行かないの?」

 

 ほのかの立ち位置でまだ話はできていないらしいと察した雫はいつもなら突撃していくほのかが立ちつくしていることに疑問を覚え、後ろから声をかける。

 

「あの人だ……」

 

「え?」

 

「入試のとき、すごく無駄のない綺麗な魔法を使う人がいて、私もそれを真似してみようと思ったんだけど全然できなくて、さすが魔法科高校だって思ったのよ」

 

 雫は初めて見るほのかの取り乱しようにたじろぐ。

 

「それがなんで二科生(ウィード)なのよ……っ」

 

 状況が分からず、なんと声をかけていいのかわからない雫はほのかと共にしばらく立ちつくしていたが、すでに周囲に人が少ないことに気づく。

 

「ほのか、もう帰ろう。今日は式だけだし、同じ一高ならまた話す機会もいくらでもあるよ」

 

 

 

 あのまま先ほど立ちつくしていた理由については触れないまま帰宅した雫は、あとは寝るだけというときにほのかから音声通話がかかってきていることに気付き、ベッドにダイブしつつ通話に出る。

 

「ほのか?どうしたの?」

 

「雫、今日はごめんね、学校では取り乱して」

 

「ううん、ほのかすごく楽しみにしてたんだもんね」

 

「うん、勝手だとは思うんだけど、あんな魔法を編み上げる人が一科生じゃないなんて裏切られた気持ちっていうか

……ゴメン、やっぱり勝手だよね」

 

「でもそんなに綺麗だったんだね」

 

「司波さんのお兄さんだったんだけど、魔法式の無駄で出る光波ノイズが全くなかったの」

 

 ここにきて雫は初めて、司波さんに兄がおり、その件のお兄さんがほのかの気になっている人であることを知り、わずかに動揺した。

 

「ほのかが言うなら相当だね」

 

「私は特に光に関しては敏感だから」

 

 彼女が司波さんのお兄さんをとても気にしていたのは今日の様子でよくわかった。雫はそれが恋でないことを祈ってしまっていた。

 

「って聞いてる?あれっ??

雫寝るの早いよー!」

 

 そんな自分の醜い感情が嫌で、気づかれたくなくて、寝たふりを選んだ結果そのまま眠ってしまった。




主人公はほのかですが雫視点です。


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一科生の意識とほのかの決意

 翌日、昨日のことは引きずっていない様子のほのかはホームルームで席に座っている雫と世間話をしていた。

 

「おはようございます」

 

 ふと透き通る声が聞こえ、クラスが一瞬でざわつく。その様子からほのかは司波さんがやってきたのだと気付いた。ホームルームの扉の方を見ると司波さんが学内用カードを片手に持ちながら徐々にこちらに近づいてきているのがわかる。

 

「あ、司波さん私の後ろかもしれない」

 

 彼女は北山なので、司波の前ということも充分あるだろう。そんな雫をうらやましく思いながらこちらにやってくる司波さんに挨拶しなくてはと意気込む。

 

「司波さん!おはようございます!

私、光井ほのかです!よろしくお願いします!」

 

 勢いのある突然の挨拶に深雪は驚いたがすぐ微笑みほのかが差し出してきた手を握る。

 

「司波深雪です。光井さん、仲良くしてくださいね」

 

「こちらこそ!」

 

 ほのかはそれはもう満面の笑みでハンドシェイクする。完全に放置されていた雫もほのかの隣に立つ。

 

「すいません司波さん。この娘ちょっと猪突猛進なもので

私はほのかの幼馴染の北山雫です。よろしくお願いします」

 

「よろしくお願いします北山さん」

 

 そう言ってほのかと同じように握手をしようとする深雪を見て、雫は少し恥ずかしげに握手を返す。

 

「ほのかは試験会場で司波さんに一目惚れしてから司波さんのすごいファンらしくて」

 

「ちょ、やめてよ恥ずかしい!」

 

 入試後に雫と深雪の話をしたことを暴露され、恥ずかしい思いをしながらも、憧れに似た思いを抱いていた彼女と仲良くなれて喜んでいた。

 

 

『ただいまよりオリエンテーションを開始します。生徒の皆さんは席についてください』

 

「じゃあ、私は席に戻るね!」

 

「あとでねほのか」

 

「では後ほど」

 

 ホームルームに放送が入ったため、一人離れた席に戻るほのか。やはり寂しく、席の近い二人をうらやむがしょうがないと割り切り、ホームルームに入ってきた指導教官に注意を向けた。

 

 

 

 オリエンテーションの説明が終わり、自由に見学できると聞きざわめくクラスの中、ほのかは二科生に対する同情の意見や一科生であることに優越感を感じているであろうざわめきが耳につく。

 

(司波さんは心なしか表序が険しいような……)

 

 二科生に兄をもつ深雪に注目するとほのかの想像していた通り深雪は周囲のざわめきを不快に感じているように思えた。

 

(私が元気付けなくちゃ!)

 

 ほのかは深雪に対して謎の義務感を覚えると既に周囲を男子生徒に囲まれていた深雪の元へ向かう。

 

「雫!司波さん!授業見学行きましょう!」

 

 ほのかは周囲の男子生徒を完全に無視して深雪の腕をとる。

 

「そうですね、光井さん、北山さん、行きましょうか」

 

 実は囲まれてかなり困っていた深雪はこれ幸いとその場を離脱する。

 

 

 

 午前の授業見学も終わり、昼休憩に入った。相変わらず深雪人気は高いようで深雪とともにいた二人まですぐに囲まれ次々と声をかけられてしまった。

 

「司波さんお昼はどうされます?」

 

「学食に行くつもりですが……」

 

「ご一緒してもいいですか?」

 

「席が空いていれば……」

 

「では埋まらないうちに急ぎましょう!」

 

 困った表情をしている深雪を完全に無視して話しかける回りの生徒に急かされ、食堂へと移動していく一行。それについていく中、ほのかは少し自己嫌悪をしていた。

 

(もしかして、私が司波さんに挨拶したときもこんな感じで司波さんを困らせていたのかな?)

 

「ほのか、どうしたの?」

 

 暗い顔をしていたせいか雫に心配をかけてしまったらしく心配そうにほのかの腕をとる雫がいた。

 

「ううん、なんでもないよ!私たちも食堂行こ!」

 

 後悔に囚われていたほのかは雫の声で我に返り、やはり人垣となってしまっている深雪集団を追いかけた。

 

 

 

 食堂はかなり広々とした空間であることがわかるが、それに比例して生徒数もすごく、とてもではないがこの集団が一緒に座れるようなスペースは残されていなかった。

 

「深雪ーっ

こっちだよー!」

 

 どうしようか少し迷っていると活発そうな女子が深雪に声をかけた。

 

「エリカ!美月!お兄様!」

 

 先ほどまでの困り顔とは打って変わって晴れやかな顔で深雪は呼ばれた方へ近づいていった。その結果当然集団もそれについていくことになってしまう。ほのかはその集団の中に深雪の兄を見つけて舞い上がるが明らかに席は足りず、先ほど覚えた罪悪感もあり、同席は諦めようと考えた。

 

「おいキミたち、ここの席を譲ってくれないか」

 

 その直後、深雪集団の中でもなぜか仕切りたがっていた男子生徒が、深雪の兄たちに対してそのような声をかけ唖然とする。

 

「二科は一科のただの補欠だ

授業でも食堂でも一科生が使いたいといえば席を譲るのが当然だろう?」

 

 ほのかはその完全に相手を見下した態度に嫌悪感を覚えたがどうやら周囲を見るにほのかと雫、そして深雪以外の一科生はこの意見に対して何も疑問は持っていないらしいことに気づく。

 

「実力行使をしてもいいんだが、学内ではCADの使用は禁じられているからな」

 

「わかった、俺はもう終わったから行くよ」

 

 深雪の兄は理不尽な要求に逆らうことなく席を立ってしまう。

 

「いい心がけだ、他の三人も見習ってほしいものだ……

さ、司波さん空きましたよ」

 

「え……でも

私はお兄様と一緒に……」

 

「それはいけない、ウィードはしょせんスペア

一科生と二科生のけじめはつけないと……

みんなもそう思うだろ?」

 

 途惑う様子の深雪を無視して饒舌で垂れる彼に周囲の一科生は同意する。

 

「そうだ!自重しろよウィード!」

 

「僕たちは深睦を深めないといけないんだ!」

 

 あまりの自分との価値観の違いにほのかは混乱した。

 

「アホらし、私たちも行こ」

 

「ああ」

 

 まだ残っていた他の二科生も席を立つ。

 

「雫、司波さんをお願い」

 

 立ち去っていく集団を見てほのかは雫に告げ口をしながらその場を立ち去る。

 

 

 

 先ほど、ほのかは自分が彼らのように深雪に迷惑をかけていたんじゃないかと自己嫌悪した。しかし食堂でのやりとりを見て確信する。自分が深雪と、深雪の兄を選民思想をもつ一科生から守らなくてはならない。ほのかはまたしても謎の義務感が働いていた。

 食堂を抜け出したほのかは追いかけていた深雪の兄たちと距離を詰める。

 

「あの!司波さんのお兄さん!」

 

 声をかけると皆振り向き、一人、先ほど深雪を呼んだ活発想な女生徒が前に一歩出る。

 

「さっきの一科生?まだ何か用があるってわけ?」

 

 喧嘩腰な態度にそれも仕方ないと思いつつほのかは頭を下げた。

 

「先ほどは私のクラスメートがみなさんに不愉快な思いをさせて、すいませんでした!」

 

 突然の謝罪に喧嘩腰だった彼女も驚き、唖然とする。

 わずかな間沈黙が流れるが、頭をあげる気配のない彼女に、彼女に呼ばれた本人が前に出る。

 

「頭をあげてほしい、俺は特に思う事もないし、君が謝ることでもない」

 

「お兄さん……」

 

 ほのかは顔をあげ、見上げる。そこには話したいとずっと思っていた彼が優しげな微笑みを浮かべ、こちらを気づかってくれていた。

 

「同学年なんだ、お兄さんはやめてくれ

俺は司波達也だ、妹とかぶるだろうから達也でいい」

 

「私は1-Aの光井ほのかです。私もほのかって呼んでください!」

 

「私は千葉エリカよ、さっきはごめんなさいね」

 

「私は柴田美月です。よろしくねほのかさん」

 

「俺は西城レオンハルト、レオでいいぜ」

 

 ほのかの態度に他の一科生とは違う事がわかったためか、皆自己紹介をしてくれた。

 

「皆さんよろしくお願いします。今度また同じようなことがあったら、私がなんとかします!」

 

「そんなに気負わなくてもいいぞ、だいたい他の生徒の責任まで持つ必要はない」

 

 なんとなくほのかの性格を察した達也は本当になんとも思っていないことを示したかったがほのかの決心は変わらなかった。

 

 

 



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警戒

 午後の見学も終わり、ほのかたちはオリエンテーションを終えた。

 あとは帰るだけとなったがわかっていた通り深雪目当ての生徒に囲まれる。

 

「さすが魔法科高校って感じだったね」

 

「明日からの授業ついていけるか心配だなあ」

 

「今日見学した授業は上級生のだし初日から難しいことはやらないでしょうきっと」

 

 思い思いに周囲が話すため本日何度目になるかわからない困った様子の深雪、それを助けるために深雪の手を取る。

 

「廊下で立ち止まってるわけにもいかないですし行きましょう!司波さんももう帰りますよね?」

 

「ええ、帰ります。光井さんたちも途中まで一緒に行きましょう?」

 

 そう言って歩き出すが、光井さん“たち“に含まれると考えている者たちも当然ついていく。

 そうやってできた10人ほどの集団で校門まで進んでいくと妹を待っているであろう達也たちと出くわした。

 

「では皆さん、私はお兄様と帰るので……」

 

 そう言ってほのかの手を離し、達也の元へと歩み寄る。しかしそれをよしとしない男子生徒が一歩前へ出る。

 

「彼らは二科生じゃないですか、深睦を深めるためにも一科生だけで帰りるべきではありませんか?」

 

 食堂の時と同様に一人が二科生差別を始めたため、深雪と仲良くしたい他の一科生も同調し始める。

 

「部活や選択科目のことでいろいろと相談したいし、一科生のみんなでどこかに寄って行こうよ」

 

 一科生の生徒が次々深雪を誘うセリフを吐いていくが、それは徐々に二科生への差別へと変わっていき、達也を除く二科の生徒たちの表情も不快な思いを隠せなくなっている。

 

「いい加減に……」

 

 自分がなんとかしなくちゃとほのかが口を出そうとしたがそれを上書きするように大人しそうな二科生の女の子、美月が叫んだ。

 

「いい加減にしてください!深雪さんはお兄さんと帰るって言ってるんです!!

なんの権利があって二人の仲を引き裂こうっていうんですか!!」

 

 彼女の言葉に今まで深雪にしか意識がいっていなかった彼らは二科生へと敵意を向ける。

 

「これは1-Aの問題だ!他のクラス、ましてやウィードごときが僕たちブルームに口出しするな!」

 

「同じ新入生なのに、今の時点でどれだけ優れてるっていうんですか?!」

 

 確実にマズい状況になりつつある中、ほのかは冷静であった。ここ最近していた練習をしっかり思い出す。

 

「ウィードとブルームを同列に語るな、その差を思い知らせてやろうか?」

 

 ずっと一科生の集団のリーダーを気取っていた男子が一歩美月に近づき、右手を腰の特化型CADにあてる。

 魔法を発動する、と誰もが思ったが次の瞬間裏切られる。

 

「あぁ、今日は早く帰らなくては。

みんな、それじゃあまた明日」

 

 それまで好戦的な笑みを浮かべていた彼は突然表情はなくなり、手もだらんと下がり、そう言って一人校門へと向かっていく。

 一部を除いて何が起きたかわからない様子で一時的に対立していたことを忘れた瞬間を狙ってほのかが前に出る。

 

「みなさん!校門前で長い時間立っていても迷惑ですから!今日はもう帰りましょう!ねっ?!」

 

 リーダー格がいなくなった一科生集団をどうにかごり押しで帰していく。

 ある程度帰したのちに雫の手を引いて、一度達也たちに礼をしてから帰っていった。

 

 

 

 

 司波達也は悩んでいた。それは今日の帰り、深雪の手を引いて校門まで共に歩いてきていた少女、光井ほのかについてだった。

 

(あれは、光波振動系洗脳魔法『邪眼(イビル・アイ)』)

 

 達也はあの場で起きたことに気付いた当事者以外で唯一の人物であった。ほのかが発動した魔法は催眠効果を持つ光信号を人の知覚速度の限界を超えた感覚で明滅させ、指向性を持たせて相手の網膜へ投射するサブリミナル効果を応用した催眠術、邪眼であった。しかしそれは起動式はおろか魔法式すら使わず、思考だけで発動させた完全に超能力の部類に属する魔法であった。その上達也でもぎりぎり、おそらく想子観測機では記録されないレベルのサイオンしか感知できなかった。

 

(能力で言えば美月の霊子放射光過敏症を圧倒的に凌ぐ危険性だ、師匠に調査を頼むべきか)

 

 誰にも気づかれずに洗脳するなど、脅威以外の何物でもなかった。流石に自分、もしくは深雪のそばで使われたら達也なら必ず気づくことができるであろうが深雪と仲良い様子であったため、警戒は必須であると言える。初対面時に良い印象を持っていたがそれも演技でないとは言いきれない。

 

 達也と仲良くなりたい、力になりたいと思うほのかのがんばりとは裏腹に、達也にはかなり強く警戒されてしまったことをほのかは気付かないでいた。




想子観測機について調べてたけど全然見つからなくてダブルセブン編でようやく記述を見つけました。


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反省

 光井ほのかは舞い上がっていた。それはもうベッドの上でにやにやしながら枕を抱えてごろごろ転がるくらい舞い上がっていた。

 

(うまくできた!)

 

 ほのかは一高を受験するまで魔法は火力のタイプであった。光のエレメンツの末裔であるほのかは基本的に攻撃系の魔法よりもサポート系の方が適性が高い。しかしほのかはある時期より攻撃魔法に憧れをもってしまったため、光波振動系以外の攻撃魔法の開発、練習をし続けていた。しかし入試の実技試験の際、攻撃魔法への憧れは他の対象へと移ってしまった。その原因となったのが達也が魅せた、光波ノイズをほとんど出さない魔法であった。それを見てからというものの、ほのかは入試の実技試験を含め、ひたすら光波ノイズを出さずに魔法を使う練習をし続けていた。そのせいで主席を逃すこととなったが特に気にすることはなかった。そしてたった2カ月でたどり着いたのが、先ほど使用した認知されない光波振動系魔法であった。練習ではまだ完ぺきと言えるほどではなかったが、想いの力というものの影響か、校内に設置されていた想子観測機に引っかからずに発動する事ができてしまった。

 

(これからも二人の力になれるかな?)

 

 ここで言う二人とは当然深雪と達也のことであり、強い従属願望を持つほのかは既に忠臣のような気持ちでいた。当の達也には要注意人物として危険視されかけていることも知らずに、恋にも似た尽くしたいという気持ちを胸に、新しい高校生活に心をときめかせていた。

 

 

 

 

 翌日、昼休みになると生徒会に用事があるとのことで深雪とは別れ、雫と二人で食堂にきていた。今日は深雪がいないためか、昼になってもあまり人は寄ってこなかった、とほのかは感じていたが実際は充分話しかけようとしている人間は多かった。こういうときに積極的に話しかける森崎がなぜかほのかを恐れ怯えているため、誰も話しかけることができなかったのであった。

 

「昨日のはまずいと思う」

 

 食堂で列に並んでいる時に雫は切りだした。

 

「ほのかが無鉄砲なのは知ってたけど、流石にいきなり洗脳魔法はない」

 

 雫は昨日、魔法の発動自体は気付いていなかった。しかし流石に長年の付き合いのある雫はほのかが何をやったのか把握していた。

 

「で、でもあのままじゃ、魔法発動されてたし、達也さんたち危なかったし……」

 

「だからってほのかが危ない目にあうのは認められない、一歩間違えれば警察沙汰」

 

「う、ごめんなさい」

 

 確かになんとかしなくちゃという気持ちが先走りすぎて後のことを考えていなかった気もする。サポート系の魔法は得意であるため、他にも魔法を発動しようとしていた人を無力化する方法があったのだが、最近練習していた、少し危険な魔法を咄嗟に使ってしまっていた。

 

「でも、また達也さんが狙われたりしたら私は迷わないよ」

 

「達也さん?限定なの?」

 

 少し不機嫌そうな雫を見て苦笑する。この幼馴染は心配性かつ嫉妬しいなのだ。

 

「もちろん雫がピンチの時も迷わないよ!」

 

 その解答に満足したのか少し微笑む雫。そして最近二人のことばかり気にしていたせいでほったらかし気味であったこのかわいい幼馴染のこともしっかり守らなくてはと考えるのであった。

 

「ところで明日から新入部員勧誘週間らしいけど、ほのかは入る部活決めてる?」

 

「特に決めてないから一緒に回ろうよ」

 

「うん」



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