QUICKSILVER IS FASTEST MAN ALIVE (ピエトロ)
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PHASE-1 THE ORIGIN

今回思いつきで書いてみました!クイックシルバー×THE FLASHです。クイックシルバーの能力の設定は多少変えていますのでご了承ください。








この職業柄よく聞かれるんだ。どうして今の職業に就いたのってね。答えは簡単だ。誰だってヒーローに憧れる。俺も例外ではなくその一人だったんだ。けど俺は周りとは少し違ってた。まあ今思い返してみれば、全部神様が敷いたレールの上を走ってただけなのかもしれないな。さて、じゃあ本題に入ろう。長くはなるがアンタは聞き上手だ、よろしく頼むよ。
 


もう数年前にもなるかな、俺の前世とやらの記憶が戻った。脳内に次々と経験したことのない記憶や知識が一気にフラッシュバックしたんだ。これは前世の記憶としか言いようがない。

 

俺の前世はオタクのサラリーマンだった。前世での嫌な上司の顔がはっきりと頭を過ってたよ。かなりウザかったみたいだ。そして莫大なほどのDCコミックのヒーロー達の知識。次々と蘇ってくる前世の記憶を整理するのには数ヶ月以上もかかったよ。

 

前世の俺は子供のころから何をするにしても遅かった。かけっこや運動会のリレーでも俺はべべ、その上就職が決まるのも童貞を捨てるのも何もかも遅かったのだ。こんなスローな人生に嫌気がさしていたよ。

 

でもある日、前世の友達からあるアメコミ原作の海外ドラマのDVDを借りた。そのドラマこそDCコミックが原作のTHE FLASHだった。主人公は科学捜査官として働くバリー・アレン。雷に打たれ、粒子加速器の影響を受けた彼は光速で動ける能力を得てフラッシュになった。

 

アメコミ初心者の俺だがこのフラッシュの世界観にどっぷりとハマってしまった。ドラマの内容、フラッシュのカッコよさ、出てくる個性的なヴィラン達、全てにおいて俺のツボをついていたのだ。それ以降アローは勿論のこと、DCコミックの映画やドラマはすべてチェックし原作の漫画も買いあさった。まあこれ以上話すとキリがないので次は俺の現世での話をしよう。

 

先ず俺が8歳の時に母さんが事故死、あの時は結構へこんだな。現世での親父はろくでなしでね。母さんとヤった後に腹の中にいた俺と母さんをおいて蒸発。

 

母さん以外に俺の身内はいなかったので母さんの親友である緑谷引子さんが俺を引き取ってくれて育ててくれた。おばさんの息子である出久とも兄弟同然となった。

 

それとこの世界のことなんだけど、驚いた事にこの世界では世界総人口の約8割が何らかの"特異体質"つまり超能力を持った超人社会なんだ。超常は日常に………架空は現実に、ってね。

 

俺の言葉で分かりやすく言えば世の中メタヒューマンだらけだね。でも………何故か俺と出久には個性が備わっていなかったんだ。さっきも言ったように個性を持っているのは8割で残りの2割は俺ら見たくなんの能力もないんだ。

 

おお神よ、あなたは何故私に試練をお与えになるのですか?大体前世の記憶があるってのは特別な力を神様が持たせてくれて転生させてくれるとかじゃないのっ思ってたよ。

 

「今から進路希望のプリントを配るが皆!!!だいたいヒーロー科志望だよねー」

 

後ろをちらっと振り向くと先生の問いかけにこのクラスの全員が手を挙げていた。出久はかなり申し訳程度だけど。

 

「センセェ!皆んなとか一緒くたにすんなよ!」

 

あ〜あまた始まった。

 

「俺はこんな没個性供と仲良く底辺なんざ行かねえよ」

 

「あー確か爆豪は雄英高志望だったな」

 

「国立の!?今年偏差値79だぞ!?」

 

「倍率もまいどやべーんだろ!?」

 

「そのざわざわがモブたる所以だ!模試じゃA判定!俺はウチの中学唯一の雄英圏内!あのオールマイトをも超えて俺はトップヒーローと成り!!必ずや高額納税者ランキングに名を刻むのだ!!!」

 

うわちっさー…………このみみっちい男は爆豪 勝己、通称バカツキ。個性は爆破で文字通りなんでも爆破させる。見たまんまのガキ大将でかーなーりムカつく野郎だ。全くこいつにはフラッシュやスーパーマンの爪の垢を煎じて飲ましてやりたいくらいだよ。

 

「そういえばマキシモフと緑谷も雄英志望だったな」

 

ああそうそう、そう言えばまだ自分の名前を言ってなかったな。俺の名前は牧霜歩 速人だ、みんなこれからよろしく。今先生が言った通り俺と出久も雄英高校志望だ。せっかっくやるんなら一番のところ挑戦してみたいじゃない、例え無個性だとしても。さてと先生が爆弾こっちに投げつけてきたからなバカツキがまた荒れるぞ〜。

 

「はあ!緑谷にマキシモフ?無理っしょ!!」

 

「勉強できても雄英には入らねえぞ」

 

「そっ、そんな規定もうないよ!前例がないだけで……」

 

するとバカツキは出久の机の上を軽く爆破する。その衝撃で出久はバランスを崩し後ろに倒れこんでしまった。

 

「"没個性"どころか"無個性"のてめェらが何で俺と同じ土俵に立てるんだ!!?」

 

「待っ…違う待ってかっちゃん!別に…張り合おうとかそんなの全然!本当だよ!ただ…小さい頃からの目標なんだ…それにその……やってみないとわかんないし……」

 

「そうだそうだ!無個性なめんなこの野郎!」

 

「なァにがやってみないとだ!!!記念受験か!!てめえらに一体何がやれるんだ!?」

 

「えーと、オタ芸 裁縫にブーメランの名手、バカツキを怒らせる事くらいかな?」

 

「何だとてめえ!!」

 

「ほら、言った通りだろ?」

 

バカツキとは4歳くらいの時から付き合いで俺と出久の因縁の相手だ。こっちには個性が備わってなかった分喧嘩の時は何でもやった。金的、目つぶし、チョーク、でも最後にはドカン。やっぱり特殊能力あるのとないのじゃ差は歴然だ。

 

そこで俺も色々対策を考えた。アメコミのヒーローやヴィランの中には超能力を持たない者もいる。グリーンアローやバットマン、ブルービートル(2代目)キャプテンコールドにヒートウェーブ、キャプテンブーメランなどなどだ。

 

個性がない分俺は体を鍛え弓矢とブーメランの練習を始めた。流石にコールドガンを作る技術は持ち合わせてなかったし、それに爆発物を扱うにも資格がいる。

 

だからまだ許容範囲内であるブーメランとアーチェリーに絞り込み結果ブーメランの技術を習得するように頑張った。その結果、キャプテンブーメランよろしくブーメランの扱いがプロ級に上手くなった。

 

私生活でも俺は胸ポケットには必ず俺お手製のブーメランを忍ばせている。この世界はなんていうかその……………少し危険で。ゴッサムシティ並みとは言わないけど犯罪者も多くてね。だから、ヒーローなんて職業も成り立ってるんだ。

 

◇◇◇◇

 

6時間目も終わり下校の時間となった。あー6時間目の最後はいっつもトイレに行きたくなるな。一日溜まってたものが全部来るっていうかなんていうか。

 

俺がトイレから教室に戻ると既にホームルームが終わっており、クラスメイト達がぞろぞろと教室から出てきていた。今日も一日長かったな、人生2回目の中学校は中々退屈なもんだ。

 

あれ、出久またバカツキ達に絡まれそうだ。全くアイツらもしつこい事しつこい事。どうしてこうも超能力が無い事を馬鹿にするのかね。俺は二人の間に割って入り出久の手を引っ張り教室を出た。

 

「さあ帰ろうぜ出久ー!」

 

「は、速人!?」

 

「待てや!まだ話は終わってねーぞ!」

 

「聞く必要ある?そんじゃあバーイ、バカツキ」

 

バカツキは相手にしなけりゃ良いだけの話だ。あいつに付き合ってても時間の無駄無駄無駄無駄無駄!

 

「お前ももう少し抵抗するなりしろよ。そのための右手、あとそのための拳だろ?」

 

「わかってるさ!!でも……」

 

「まあ、クラスメイトのことなんかほっとけ。自分は自分だ。出久のやり方でヒーローを目指そうぜ?」

 

「う、うん!そうだよね!」

 

「そうだとも!というわけで俺はちょっと寄ることあるから、悪いけどここからは先に帰っといて」

 

「分かった。それじゃあまた後でね」

 

これから向かうのは商店街の裏手にある小さなCD屋さんだ。俺がおばさんに引き取られて、初めての誕生日プレゼントはここで買ってくれたんだ。ガンズアンドローゼスのアルバムよかったなあ。

 

「おばちゃーん?」

 

「おお速人ちゃん来てくれてありがとね!」

 

「お結構片付いてるね」

 

「いやーまだまだ片付てないよ。それじゃあ早速お手伝いお願いね」

 

俺は学校の鞄を置き店の片付けの作業に入った。まあ作業はいたって簡単だ。店に出ていたCDをダンボールに詰めて倉庫に直す。これを終わるまでひたすら繰り返す。俺は元々音楽が好きだったからこういうのを眺めてるだけでもかなり楽しいんだよ。

 

◇1時間後◇

 

店の方もだいぶ片付いてきたな。こういう時にスピードスターの力があれば一瞬で片付くのに。フラッシュが羨ましいよ。そういえばこの世界にはフラッシュみたいな超高速で動けるヒーローは聞いたことがないな。でも嬉しいことに他のDCヒーローの何人かはこの世界にマジで存在していてこの国で活動している。それを知った時なんてそりゃあもうテンションが上がったよ。

 

「いやー助かったよありがとね速人ちゃん。そうだ!速人ちゃん、記念に何か一つ欲しいCD持ってっていいよ」

 

「え?そんなの悪いよおばちゃん」

 

「良いっていいって。手伝ってくれたお礼よ、遠慮なく持ってって」

 

俺は余ったCDの山からとある一枚のアルバムに手を伸ばした。俺100曲もの曲が入った洋楽ヒットソングアルバムだ。エドサリバンショーやソウルトレインで流されていた曲もはいってるのか。成る程成る程、なかなか渋い曲も入ってるな。よしこれにしよう。

 

「ちょっとアンタ何すんだい!?」

 

「おい騒ぐんじゃねえ!さっさと有り金を全部出しな!」

 

店内から急に物騒な声が聞こえてきた。壁際から中をそっと覗き込むと手に無数の鋭いトゲが備わっている男がおばちゃんを脅していた。マジかよ、ヴィランじゃん!よりにもよって何でこの店なんだ!?

 

でもまずいぞ、おばちゃんの個性は明らかに戦闘向けじゃねえ。よし、先ずは警察に連絡をと。

 

「もしもし?〇〇町のウェストレコード店にヴィランが押し入って来てます………!」

 

『分かりました!すぐに警官とヒーローを向かわせますので出来るだけ遠くに逃げてください!』

 

よしひとまずこれで安心だ。でも逃げろって言われてもね。これでも一応ヒーロー志望なんだ。おばちゃんを置いて逃げるほど俺は根性なしじゃない。何もあのヴィランを倒さなくても良いわけだ。少し怯ませておばちゃんを連れて店を出る。

 

この近くにもヒーロー事務所は腐るほどある。ヒーローと警察官達が到着するのはせいぜい来るのは3分てところだろう。脳内シュミレーションでは最初にブーメランでアイツを牽制、その後におばちゃんを連れて店の外にダッシュ!俺のこの世界での11年間の成果を出す時が来たぞ。

 

「良いからさっさと出せってんだ!」

 

「おいおっさん、今日でこの店は閉めることになってるんだ。最後の日くらい華を持たせろい!」

 

「ガキか、死にたくなきゃ他所に行ってな!俺は今仕事中なんだよ!」

 

「…………因果応報って言葉知ってるか?」

 

「ああ?」

 

「ティガー・ハークネス曰く………やった事は、必ず自分に帰ってくる!」

 

一度いってみたかったんだよなこのセリフ。俺は両手からブーメランを取り出し強盗に投げつけた。一つのブーメランは強盗の持っていた刃物を落とし、もう一つのブーメランは顔面にクリーンヒットした。

 

「ぐっ………!?」

 

「おばちゃん早くこっちへ!!」

 

俺はおばちゃんの手を引き店の外へ飛び出した。

 

「おいてめえ、何してんだ?」

 

店を飛び出ようとした瞬間、背後から近づいてきたもう一人のヴィラン2が俺を殴り飛ばした。ヴィラン2の腕は鉄球のような形をしており鉄くらいの強度をしていた。つまり殴られたらものすごく痛い。

 

「もう1人いたの、だああっ!?」

 

殴り飛ばされた俺の体は宙を舞いダンボールの山へと落下した。いててて…………この野郎せっかく片付けたってたのによ。なんて真似しやがるんだ。

 

「このガキぶっ殺してやる!!」

 

「まあ落ちつけ。危険を顧みずそこの婆さんを守ろうとしたって事は恐らくこいつもヒーロー志望だ」

 

「だったら何だよ?」

 

「少し速いとは思うが挫折を味あわせてやろう」

 

「なるほどな、そんじゃあ!」

 

ヴィラン1は再びおばちゃんにトゲを向けた。

 

「やめろ!!」

 

「あばよ婆さ……………」

 

ヴィラン1は備わっていたトゲを撃ち出しおばちゃんに放った…………はずだった。

 

トゲは突如カタツムリほどのスピードでしか動かなくなったのだ。今の状況を説明するなら映画のジャスティスリーグでブルース・ウェインがバリー・アレンにバッタランを放り投げるシーンそのものだ。

 

トゲはのろりのろりと俺の前をゆっくりと通過していく。俺は目の前を通過したトゲを掴み地面に投げ捨てた。

 

「…一体何が起こった?!」

 

「クソッ!!何なんだよお!!」

 

ヴィラン1は身の回りで起きた状況を理解できず無差別にトゲを撃ち放った。俺はおばちゃんに迫るトゲを全て掴みヴィラン1に向かって投げつける。その隙におばちゃんを安全な場所へと移し隣にいたヴィラン2を殴り飛ばした。

 

「ん!ぐおおおっ!!いってええええ!!」

 

「ぐふっ!?(こいつ今何しやがった?)」

 

「大丈夫おばちゃん?」

 

「あ、ああ大丈夫よ。ありがとね速人ちゃん………ありゃ速人ちゃん!?個性が!」

 

「火事場のクソ力ってやつかな」

 

「動くな警察だ!!」

 

数秒後警察官とヒーローが遅れてやってきた。

 

その後の展開は早かった。ヴィラン1と2は御用となり連行された。そして俺はヒーロー達に注意されていた。何故こんな無茶をしたんだってね。

 

「何故こんな無茶をしたんだ?」

 

ほらね。

 

「あの場で最適なことをしたつもりなんですが」

 

「一歩間違えれば君は死んでいたんだぞ!「ちょっとアンタらねえ!」な、何ですか?」

 

「速人ちゃんが助けてくれなきゃ確実に殺されてたのよ!後から来たアンタらが偉そうに言うんじゃないわよ!」

 

マシンガンの様に次々と放たれるおばちゃんの言葉にヒーロー達は言い返せないでいた。そして一通りおばちゃんが言い終わると、ヒーロー達はそのまま言い返すこともなく暗い顔で店を出て行った。

 

「庇ってくれてありがとうおばちゃん」

 

「いいのよ。それよりも今日はもう帰りなさい。おばさんと出久君に個性が発現したって早く見せてあげて」

 

「もちろん!それじゃあまたねおばちゃん!」

 

俺は上気分で帰路を目指した。公道での個性使用禁止なので歩きで帰っているけど嬉しいな。まさか自分の個性がフラッシュ達スピードスターと同じ超スピードで動けるなんて。速いとこ出久に見せてやろう、きっと驚くぞ。

 

いつもの帰路を辿っていると出久と骸骨みたいな人が道の真ん中で何か話していた。あの骸骨の人どっかで見たことあるような…………

 

「個性を譲渡する個性…それが私の受け継いだ個性!冠された名はワン・フォーオール!一人が力を培いその力を一人は渡しまた培い次れ…そうして救いを求める声と義勇の心が紡いできた力の結晶!!」

 

「そんな大層なもの何で…何で僕にそこまで…」

 

「元々後継は探していたのだ……そして君になら渡しても良いと思ったのさ!!"無個性"で只のヒーロー好きな君はあの場の誰よりもヒーローだった!!」

 

おいおいおいおいおい!一体何の話ししてんだ?全然話が読めねえんだけど?

 

「まァしかし君次第だけどさ!どうする?」

 

「お願い…します………オールマイト!」

 

「マジかよ…あんたがオールマイトか!?」

 

「「!?」」

 

「は、速人!?」

 

「ど、どこから聞いてた!?」

 

「ええと………全部、かな。いや、だってこんな道端で話してたら聞こえるよ」

 

「Oh My…………」

 

 

「…………つまりこういう事?オールマイトの個性は代々受け継がれてきたものでそれを出久に譲渡したいと?」

 

「簡単に言えばそうだね」

 

「それって…………超カッコいいじゃん!!」

 

「マキシモフ少年、頼むからこのことは」

 

「口外禁止でしょ?モチコース」

 

こんな事がヴィランにでも知られたりすればこの国はおしまいだよ。実質問題オールマイトの存在がこの国では犯罪者達への抑止力となっているんだ。それにしてもオールマイトの能力は受け継ぐタイプの個性だったなんて超驚きだよ。

 

「あ、そうそう!俺個性出たんだよ!」

 

「え本当に!?どんな能力なの!?」

 

「そんじゃあ軽く」

 

俺は瞬時に出久の鞄から今日体育で使った体操着を取り出し学ランから体操着に早着替えさせた。

 

「これが俺の個性、超スピードだよ」

 

「速っ!?す、凄いよ速人!こんなスピード出せるヒーロー中々いないよ!?」

 

「私もここまでのスピードを出せる人間見たことがないな」

 

とまあこれが俺と出久のオリジンだった。出久は良く偶然って言ってるけど俺はそう思わなかった。そしてこの日を境に出久のオールマイト式トレーニングが始まった。なんでも入試までの残りの期間で出久の体を鍛えオールマイトの個性を扱える体にしないと、四肢が爆散するらしい。オールマイトが考えたプランは基礎トレーニングは勿論、海浜公園のゴミ掃除を行なう事だった。出久曰くゴミの形や大きさで使う筋肉が違うんだとさ。

 

かくいう俺は記憶に残っているドラマ版フラッシュのトレーニング方法を用いり個性に慣れることにした。残りの期間でいかに個性を自分の思うように使えるかが重要になってくる。オールマイトの紹介で格安で個性を自由に使える体育館を紹介してもらった。そして特訓や勉強を重ねる事数ヶ月後…………

 

 

入試当日 朝6時、出久は今日も早起きをして最後の追い込みをかけていた。入試当日という事もありいつもより張り切った様子で頑張っていた。そして数分後、オールマイトが出久の様子を見に海岸へと来た。

 

「おはようございまーす」

 

「GOOD MORNING!マキシモフ少年!」

 

「あれ、見てあげてください」

 

片付けたゴミの山の上で咆哮を上げる出久。なんと出久は一人でオールマイトが指定した区画以外までも綺麗にした。辺りにはチリ一つ残っておらず、カップルがデートで訪れても問題ない程に片付いていた。

 

「オーマイ……オーマイ……グッネス!!」

 

オールマイトはふらりと倒れこむ出久をキャッチした。

 

「おつかれ!」

 

「オールマイト……!僕…出来た…出来ました!」

 

「ああ!驚かされた!エンターテイナーめ!10代って素晴らしい!!ほら見ろよ!!」

 

オールマイトは出久の目の前に十ヶ月前に撮った写真を見せる。

 

「十ヶ月前の君さ!よく頑張ったよ!本っっ当に!!ようやく入口の蜃気楼がうっすら見えてきた程度だが!確かに器は成した!!」

 

この十ヶ月オールマイトの特訓に耐え更に自身でも肉体を鍛え上げた結果、ひ弱なモヤシ野郎の身体は見る影もなく腹筋は割れ見事に鍛え上げられた身体となっていた。

 

「その泣き虫は治さないとな!さァ授与式だ緑谷 出久!」

 

「おめでとう出久!!」

 

でもでもどうやって力を譲渡するのかな?グリーンランタンみたく何かパワーを引き出すアイテムがあるのか?それともシャザム!みたいに叫んだりするのかな?

 

「これは受けおりだが最初から運良く授かったものと認められ譲渡されたものではその本質が違う!これは君自身が勝ち取った力だ。肝に銘じておきな」

 

しかし次の瞬間、俺達は驚愕の事実を知らされた。

 

「食え」

 

「「へあ!?」」

 

「別にDNAを取り込めれられるなら何でも良いんだけどさ!さア時間ないって!」

 

「思ってたのと違いすぎる……!」

 

入試まで残り3時間…………

 




今回はここまでです!次回も機会があればよろしくお願いします!


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PHASE-2 ENTRANCE EXAMINATION

だいぶ時間が経ってしまいすみません。
更新頻度はかなり遅いですが気長にお待ちいただけると幸いです。


現時刻は2月26日午前7時を過ぎたところ。出久を連れて家に戻りシャワーを浴び朝ごはんを食べ今日の戦場へと俺たちは向かった。

 

今日、俺たちは雄英高校一般入試実技試験に挑む。この日のために俺たちは特訓してきたんだ。ほらあれだよ人事を尽くして天命を待つ

「間にあった!」

 

「ギリギリセーフ、ってあと15分も余裕があるじゃん」

 

結構遅めかと思ったけどそうでもなかったな。俺と出久が雄英に到着した時には既に受験生たちが何人も試験会場に入っていた。

 

雄英の校舎はHEROの頭文字のHの形をしていた。理に適ってはいると思うけどやっぱり最高峰ってだけに校舎のデザインもすげえな。

 

「どけてめえら……!」

 

聞き慣れたドスの利いた声の方を見ると俺たちの予想通りバカツキがいた。

 

「俺の前に立つな、殺すぞ」

 

「はいはい分かりましたよ国王殿」

 

こいつはどこに来てもブレないな。高校でもこんな感じ貫き通すつもりか?

 

ガチガチガチ!

 

隣を見ると出久がさらに萎縮しており体が目覚まし時計のように震えていた。

 

今までのどんな場面よりも緊張してるな。まあ無理もない、何せ俺と違い出久は個性を使うのが今日が初めてだ。かなり不安なんだろう。

 

でも、この世界のマンオブスティールであるオールマイトから力を授かったんだ。それにここ十ヶ月間出久はかなり追い込んでた。今では以前のもやし野郎の出久ハマる影もないほどに変わっている。

 

腹筋も割れガタイも良くなり体力も上がった。オールマイトも言ってた通り器はなしてる。問題はオールマイトの髪の毛がお腹に馴染むかどうかだな。俺はガチガチに固まった出久の肩に手を乗せ揉みほぐした。

 

「よーし良いかチャンピオン、リラックスだ!力の試運転は出来てないが大丈夫!前とは違うんだ!この地獄の10ヶ月を思い出せ!覚悟はいいか?俺はできてる!」

 

「速人……う、うん!以前の僕とはもう違うんだ!」

 

決意を新たにした出久はその第一歩を踏み、

 

「「あ」」

 

外してしまった。出久の足は段差に引っかかりそのまま前へと倒れ込んだ。

 

「あちゃー……」

 

しかし出久の体が地面とぶつかる事はなかった。

 

地面に倒れるはずの出久は宙に浮いていたのだ。その後ろには自身の両指同士を当てている女子の受験生が安堵の表情を浮かべていた。

 

「大丈夫?」

 

「わっ えっ!?」

 

女子の受験生は出久が大勢を整えたのと同時に個性を解除した。どうやら浮遊させる個性らしい。

 

「ごめんね勝手に。でも転んじゃったら縁起悪いもんね」

 

「へ……あ……えと………」

 

「緊張するよねえ……まあお互い頑張ろう!」

 

そう言い残し女子の受験生はは試験会場へと入っていった。かくいう出久は目を輝かせ女子とのコンタクトに嬉しさを隠せないでいた。

 

クラスの女子と会話もせず話しかけられない出久にとってこのことは大きな一歩となっただろう。しかし、

 

「速人、じょ、女子と喋っちゃったよ!」

 

「いや喋ってない」

 

女子と会話した(思い込み)余韻にふけっている出久を連れ、俺は実技試験の説明を受けるため会場である大ホールへと向かった。

 

 

 

⚡︎⚡︎大ホール⚡︎⚡︎

 

大ホールは並のライブ会場と同等の広さがあった。数百人以上いる受験生がさっぱりと入るくらいだ。とにかく何もかもがでかいなこの学校は。

 

『今日は俺のライヴにようこそ!!!エビバディセイヘイ!!?』

 

当然、この緊迫した雰囲気司会進行役のヴォイスヒーロー・プレゼントマイクにのる受験生はいなかった。出久が毎週ラジオを聞いてるから俺も一緒に聞いてるけど、常時あんな感じなのね。

 

『こいつあシヴィーーーー!!!受験生のリスナー!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!!アーユーレディ!?YEAAHH!!!』

 

「ボイスヒーロープレゼントマイクだ、すごい……!!ラジオ毎週聞いてるよ。感激だなあ、雄英の講師はみんなプロのヒーローなんだ」

 

生でヒーローを見た出久はかなり興奮していた。目を輝かせながらぶつぶつ言うのは相変わらずだけど。

 

「入試要項通り、リスナーにはこの後!10分間の模擬市街地演習を行ってもらうぜ!!持ち込みは自由!プレゼン後は各自指定の演習会場へ向かってくれよな!!』

 

「同校同士で協力させないってことね」

 

「てめェらを潰せねえじゃねえか」

 

「…………」

 

潰すつもりやったんかい。てかそれ趣旨違うかねえか?

 

『演習場には仮装敵三種・多数配置してあり!それぞれの攻略難易度に応じてポイントを設けてある!!各々なりの個性で仮装敵を行動不能にしポイントを稼ぐのがリスナーの目的だ!!もちろん他人への攻撃等アンチヒーローな行為はご法度だぜ!?』

 

「質問よろしいでしょうか!?」

 

俺たちの前に座っている受験生が手を挙げた。生徒はメガネをクイっと上げプレゼントマイクに聞いた。

 

「プリントには四種の敵が記載されております!誤載であれば日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態!我々受験者は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!!」

 

プリントに目をやると確かに四種類の仮想敵の絵が書いてあった。流石に誤載ってのはないんじゃないかな。

 

「ついでにそこの縮毛の君!!」

 

受験生は出久に向かって指を指した。突然指名された出久は慌てふためいていた。

 

「先程からボソボソと………気が散る!物見遊山のつもりなら即刻雄英から去りたまえ!」

 

あの感じからしてかなりの優等生で真面目くんだな。

 

「す、すみません…………」

 

「興奮するのはわかるけどそういうのは心に閉まっとこうな。ところで………それと、あとで物見遊山って意味教えて」

 

『オーケーオーケー!受験番号7111くん、ナイスなお便りサンキューな!四種目の敵は0ポイント!そいつはいわばお邪魔虫!マリオやったことあるか!?あれのドッスンみたいなもんさ!』

 

プレイヤーである受験生への障害か。マジでゲームみたいただな。でも実際やってみるとしてこの試験結構危なくないか?流石に死ぬまでは無いだろうけど、下手すりゃ大怪我だ。恐らく先生の中に治癒能力の個性を持った人でもいるんだろう。

 

「有難う御座います!失礼致しました!」

 

『俺からは以上だ!最後にリスナーへ我が校訓をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン・ボナパルトは言った!「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」更に向こうへ!PLUS ULTRA!!』

 

 

⚡︎⚡︎⚡︎⚡︎

 

試験の詳しい説明を受けてから数十分後、俺はいつも走るときに着ている身体にフィットしたスポーツウェアとスニーカーを身につけ演習場にいた。

 

周りの受験生もゾロゾロと動きやすい服装に着替え演習場に集まってきていた。みんなそれぞれ自分の個性に合った服やサポートアイテムを付けている。

 

俺は両腕を伸ばし軽いストレッチを始める。さてさて出久の心配をしたいところだけどこっちも受かりたいんでね。

 

 

俺も個性が出てからただボーッとしてたって訳じゃない。個性を使用できる運動場を借りてスピードを上げる為に走りこんだり竜巻を発生させたりなど能力の強化に勤しむ訓練をしていた。

 

その甲斐もあってか今では水の上でも走れるほどスピードが上がり色々な事ができるようになった。まだ稲妻とかは撃てないけど、我ながら個性発現から約半年でここまで来れたと思うよ。フラッシュのトレーニング方法大成功だ。

 

『はいスタート!』

 

唐突にプレゼントマイクが開始の合図を出した。俺はゴーグルをかけ走り出した。

 

この瞬間俺の周りの世界は制止した。しかしこれはDIOのように時を止めたからではない。俺が速すぎるため周りが止まって見えているだけなのだ。

 

唐突にプレゼントマイクが開始の合図を告げたためか俺以外の受験生はまだ市街地に入っていなかった。

 

俺はこのブロックにいる誰よりも速く走りだし一台、また一台と仮想ヴィランをスピードパンチで破壊していった。このスピードで壊れるなら強度は大したことなさそうだ。

 

『どうしたあ!?実践じゃカウントなんざねえんだよ!!走れ走れぇ!!債はなげられてんぞ!!?』

 

ハッとした受験生達が次々と遅れて入ってきている。まあ今は他人よりも自分のことに集中しよう。

 

「オラっ!」

 

スピードパンチを繰り出しロボット達を破壊する。俺の能力は超高速で動くこと、オールマイト並みのパワーを出せるわけでもない。

 

でも攻撃のスピードを上げることは出来る。例えばパンチのスピードを上げることで通常時の力よりもパワーを出すことはできる。また手を超高速で振動させて強力な打撃を与えることも可能だ。

 

「よっ!はっ!」

 

『目標補足ぶっ殺』

 

一体、また一体と仮想ヴィラン達を破壊していく。

 

「寝てろ遅すぎる」

 

その後、驚くほど順調にポイントを獲得していった。大体ポイントはそれなりに取れたって感じかな。

でもまだまだ油断はしてらんない。取れるところまで取っていこう。

 

『目標!目標補足!』

 

俺が次の標的に狙いを定めたその時、突如試験会場に大きな地響きが鳴り響いた。

 

「な、なんだ!?」

 

地響きはどんどんデカくなっていった。俺が振り向くと背後には他のロボットよりも遥かに大きいロボットが、ビルの影からこちらを覗き込んでいた。20メートルはあるな。

 

「うわでっか!あれがお邪魔ロボットって奴か」

 

大型仮想ヴィラン・インフェルノの出現により付近にいた受験生達が一斉に逃げ出してきた。絶対にドッスンより質が悪そうだ。ポイントは十分とったしアレは無視、

 

「ってアレやばくね?」

 

大型仮想ヴィランの方に目をやると、足元には受験生が2人いた。1人は金髪の髪の毛に黒いメッシュが入った男子ともう1人は耳からイヤホンが伸びている女子だった。あのままじゃ踏まれるぞ…………んんん、しょうがない!

 

「ヤッベェ!!」

 

「ちょっと嘘でしょ!?」

 

大型仮想ヴィランに踏まれそうになっていた二人を俺は間一髪で抱き抱え、大急ぎで仮想ヴィランから離れた。そして数十メートル先の位置に二人を下ろした。

 

「お二人さん大丈夫かい?」

 

「速っ!?アンタメチャクチャ速ぇな!!」

 

「う、うん。ありが「それじゃあお互い頑張ろうぜ!」あちょっと!」

 

さてとあのでかい仮想ヴィラン、倒せるだけの腕力俺にはねえしここは無視するのが得策か。

 

「うわああああ!!」

 

「ん?だあっ!?」

 

空から黄色いパーカー着た受験生が吹っ飛んできた。受験生は俺の真上に勢いよく落ちてきた。受験生は打ち付けた箇所を押さえながら立ち上がった。

 

「イテテテ、やっぱ無理かー」

 

「いってえ、何なんだよ一体!」

 

「あー、悪いな!いや実はなあの巨大ロボぶっ壊そうと思ってさ。いやー、流石にあれは一人じゃきついな。俺は濱雲修二!個性は振動波だ!」

 

「マキシモフ速人、ってそんな悠長に自己紹介してる場合じゃねえ!」

 

「あーナイスツッコミ!」

 

全然つかみどころのねぇ野郎だな。

 

「でも濱雲よー、あんなのどうやってぶっ壊しゃいいんだ?」

 

「所詮ロボットだ。"脳みそ"破壊すりゃ止まるだろ?」

 

そういうと濱雲はインフェルノの頭部を指差した。確かに濱雲の言う通りだ。所詮こいつらはロボット、中身の機械を破壊さえ出来れば動きは止められる。

 

「でも問題は」

 

「どうやってそこまで行くか、だよな」

 

アイツは俺たち受験生の動きに反応する。俺の最高速度を出せば余裕だが、アイツは賢い。でも誰かに引き付けられていたらどうだろうか。

 

「閃いた!俺にいい考えがある!」

 

「ほうほう。して、その方法は?」

 

「アイツのブラックボックスの場所はわかるか?」

 

「頭と胴体の付け根だと思う」

 

「よし、振動波でヤツの動きを止められるか?」

 

「大丈夫だけど長くは持たないぞ。持って1分だ」

 

「上等だ」

 

 

『ブッコロォォス!!』

 

「レディ!」

 

「ステディ!」

 

「「ゴー!!」」

 

俺たちはお互いの合図に行動を開始した。濱雲は両手のガントレットを構えインフェルノの前に立ちはだかった。

 

「SHOCK'N 'ROLLといこうぜ!」

 

濱雲のガントレットから衝撃波が勢いよく放たれた。衝撃波はあたりの瓦礫を吹き飛ばしインフェルノに直撃した。衝撃波の威力は凄まじくインフェルノを押し返すほどに強力だった。

 

「今だ!行け!」

 

「あいよ!」

 

俺はゴーグルを目に当てインフェルノに向かって走り出した。空中に浮いている瓦礫を伝い俺はインフェルノのブラックボックスを目指した。

 

「ぐぬぬぬぬぬ!ここから先は通さぬ!!」

 

『ブッコロォス!ブッコロォス!』

 

インフェルノも衝撃波に負けじとじわりじわり濱雲に迫っていた。

 

俺はインフェルノの機体に飛び移りブラックバックの目の前へと移った。ブラックボックスの盤を外すと中には制御盤らしき精密機器が所狭しと並んでいた。

 

「そんじゃあいっちょ!!」

 

俺は制御盤に向けて拳を振り下ろした。速度を上げた俺のパンチが制御盤を貫いた。制御盤から火花が散りインフェルノの動きがだんだんと遅くなっていく。そしてインフェルノは完全に停止した。

 

『ブ……コロォォ…………』

 

「やったぜ!」

 

「やったな速人!ほらハイタッチだ!」

 

「「イェーイ!」」

 

『終ーーーー了ーーーーーーーッ!!!』

 

プレゼントマイクの終了宣言が試験会場に響き渡った。この後俺は濱雲と意気投合し連絡先を互いに交換した。こうして俺たちは実技試験を無事終えた。

 

 

 

 

 

⚡︎⚡︎一週間後⚡︎⚡︎

筆記の方は自己採点ではギリギリとれていた。この半年死ぬほど勉強した甲斐あったよ。

 

問題は実技だ。実際のところどんだけロボットが出てたのか知らないし、それに周りが俺よりポイント獲ってたかも知れないし……でも今一番心配なのは、

 

「……………………」

 

「出久…おい出久ってば!!」

 

「ちょっと大丈夫!?何魚と微笑み合ってんの!?」

 

「え?ああごめん……大丈夫!」

 

入試が終わってからずっとこの調子だ。筆記の方は俺と同じで自己採点でギリギリ合格ラインを超えていたみたいだけど、実技が0ptじゃあきついよ。

 

しかし理不尽な話だよ、危険な状態の他の受験生を巨大なロボットぶっ倒してまで助けたのにポイントなしとは。オマケポイントみたいもんはないのかね。

 

「終わったものはしょうがないんだし腹くくるしかないよ。俺だってまだわからないし」

 

「ま、まあそんな落ちた時の話ばかりしてないで!でも私受けるだけでもすごいと思うよ!」

 

「おばさんの言う通り!全力出したんだ。雄英がダメでも他所のヒーロー科のある学校に行けばいい」

 

俺は食べ終わった食器を回収し皿を洗った。高速移動の良いところの一つは家事が一瞬で終わる事だ。

 

「ふ、ふ、ふ、二人とも!!」

 

慌てふためいたおばさんが手にしていたのは雄英高校から届いた合格通知だった。

 

 

俺達はそれぞれ自分の部屋に入り封筒を机の上に置いた。まずは深呼吸だ………

 

「すぅ………ハァ……開けるか」

 

俺は封筒の封を破った。中には円盤の形をしたディスクのようなものが入っていた。

 

「これ一体なんだ?」

 

『やあマキシモフ少年しばらくぶりだね!!』

 

ディスクをいじくり回していると、ディスクからオールマイトが投影された。急に飛び出してきたオールマイトに驚き俺は椅子から転げ落ちた。

 

「どわあっ!?」

 

『実は私!この春から雄英高校で教師をやることになってね!!それで、え?もっと短く?これ以上いったいどうしろと、分かったよ。それじゃあ要点だけ言おうマキシモフ少年!先ず試験の評価だが!筆記はきちんと合格ラインに到達している!そして、実技の点数だが君はなんと実技成績1位だ!君があの巨大仮想ヴィランを他の受験生と協力し破壊したことによって、君たちにはレスキューポイントが付与された!』

 

『そう!我々が見ていたのは倒したポイントのみならず!まあ、人助けした人間を排斥しようとするヒーロー科などあってたまるかってはなしだよ!』

 

「………おっとこれは」

 

『すなわち、見事君は合格したといううわけだ!!おめでとうマキシモフ少年!!』

 

「よっしゃあー!!!」

 

『さて!君がこれを見ていると言うことは緑谷少年も見ている頃だろうれさっそく報告に行ってきたまえ!』

 

俺は自分の部屋を飛び出し出久の部屋の前に向かった。

 

「出久出久出久出久!!!」

 

俺は興奮のあまり出久の部屋の戸を何度もたたきつけた。すると出久がフラフラとした足取りで部屋から出てきた。

 

「ど、どうだった?」

 

「………合格、してた!」

 

「ヤッタア!!!」

 

近所迷惑かってほどに叫んでしまったがどうでもいいや。雄英に、しかも兄弟と一緒に受かるなんて最高だ。

 

 

 

 

⚡︎⚡︎⚡︎合格通知開封の翌日 午後3:30⚡︎⚡︎⚡︎

 

俺は家から電車で20分のとある場所へ向かった。安らぎ霊園、俺の母さんが眠る場所だ。受験が終わったら一度来ようと思っていたんだ。

 

俺の母さんはシングルマザー、たった一人で俺を育ててくれた。

 

俺は母さんの墓石の前に立ち手入れを始めた。墓を拭き枯れた花を新しいものに取り換える。

 

母さんは俺がまだ8歳の時に事故死した。車がスリップし壁に激突、母さんは即死だったそうだ。その時俺は後部座席に乗っていて助かったらしい。

 

その事故から数週間後、俺の断片的な記憶が思い出せなくなった。医者は事故のショックだろうと思ってるみたいだけど、俺が思うにそれと同時期に前世の記憶が蘇ったせいだろうとも思う。現世の記憶と前世の記憶が混同しちまったのかもしれない。まあ母さんの最期を見てるかもしれないからあんまり思い出したあとは思わないけどね。

 

俺の目標はフラッシュやオールマイトのように人々を助けられるヒーローになりたいこと。それと俺のように親を事故や事件で失う子を少しでも減らしたいんだ。俺が最速でみんなを助けられるようなヒーローに。

 

「よっしゃこれでオッケーと………母さん、俺ヒーローに絶対になるよ。みんなを救えるヒーローにね」

 

 

俺は母さんの墓石に手を当て墓地を後にした。

 

 

 

⚡︎⚡︎⚡︎⚡︎⚡︎

 

そして月日はあっという間に流れ数週間後、ついにこの日がやってきた。今日は待ちに待った雄英高校の入学式だ。俺と出久は新たな制服に身を包み心機一転機を引き締めていた。今日から俺達はヒーローの卵、ヒーローになるための大きな第一歩を踏み出すんだ。

 

朝から緑谷家はバタバタしている。お隣さんに写真を撮ってもらったり学校に持っていくものの確認など大忙しだ。

 

「出久ティッシュ持った!?」

 

「うん」

 

「速人襟立ってるわよ!」

 

「あ、いけね」

 

「二人とも」

 

「「なァにィ!!?」」

 

「……超カッコいいよ!」

 

「へへっ」

 

「………行ってきます!!」

 

俺たちはおばさんに見送られ雄英高校に向かった。

 

⚡︎⚡︎⚡︎⚡︎⚡︎

 

同時刻、東京のとある街の路地に渦が出現した。出現してから数秒後、渦の中から一筋の閃光が勢いよく飛び出して来た。閃光は街中を駆け回ったあと路地へと入り込んだ。閃光は立ち止まりマスクを外した。マスクの下の顔は白人の男だった。

 

「はぁ、はぁ、どうやら成功したみたいだ。この世界ならアベンジャーズもスパイダーマン も来ることはなさそうだな」

 

「おい、そこの君!」

 

するとパトロール中のヒーローとサイドキックが路地裏にいる男に声をかけた。

 

「君、その格好は」

 

「君もヒーローか?」

 

「この世界にスピードスターはいるか?」

 

「スピードスター?なんだそれは?」

 

「そうか。知らないんなら良いや。じゃあ死ね」

 

「死ねって何言っ」

 

ヒーローが言葉を言いかけた次の瞬間、ヒーローは首を折られ地面へと横たわっていた。

 

バキッ!

 

「お前何を」

 

サイドキックが身構えるもまた次の瞬間には首を折られ地面に横たわっていた。そんなヒーロー達を眺め男は嘲笑った。

 

「フン、他愛もないね。さてと、待ってろよこの世界のスピードスター。"スピードの悪魔"が今行くぞ!』

 

男は再びマスクを被り、再び街中へと駆け出していった。




今回はここまでになります。
次回も頑張って投稿しますのでよろしくお願いします!


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