うちの妖怪娘 (生涯中二病)
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平成エロ草子 あかなめ一番!

垢嘗娘ちゃんをぺろぺろしたりされたりしよう。


祖父が亡くなってから空き家になっていた、古い数寄屋造りの日本家屋。

大学への通学に便利だからと、そこに住み始めたのはもう二年も前の事になる。

久しぶりにやってきた祖父の家は、荒れ果てていた。

正直・・・・・・甘く見ていたと白状しなければならない、そんな荒れっぷりだった。

小さいながらも、品のいい温かみのあった庭は雑草により侵略。

雨戸を閉めていなかったせいか、台風の影響だろう、ガラス戸は倒れ風雨が屋内を侵蝕。

畳はおろか、床板は腐り、ガラスは散乱し、黴や蟲の蠢く腐海へと変貌。

ちょっとした日曜大工が趣味とはいえ、流石にげんなりとした想いを殺しきれない惨状だった。

風呂場だけは不思議とそこまで荒れちゃいなかったが。

その理由はしばらくしてから判明することになるのだが・・・・・・

 

それから二年の月日が流れ、いまでは我が家はいつも綺麗に片付いている。

ほとんど毎日のように掃除しているので当然ではあるが。

今日も今日とて洋間に改装した一室で、はたきをパタパタ振るっている。

 

「主様はほんに掃除が好きでありんすねえ」

 

そんな俺を、からかうような事を言いながら見物している女。

この家の同居人であり、そして俺の恋人、名はアカナと()()()た。

背は低く、残念ながら胸も無いため、一見すると子供のようにも見えるが、くびれるところはしっかりとくびれ、生々しい女の色気をしっかりと内包している。

そう、女の色気だ。

俺の浴衣のお下がりを着て、ベッドの上で足をブラブラと揺らしながら・・・・・・それを見せつけているのだ!!

帯は緩め、浴衣は肌蹴て、赤味がかった肌をわざと魅せている。

揺れる足の間、その付け根が見えそうで見えない。

明らかに履いてないし。

 

惑わされるな。

いつも見てるじゃないか、昨日も一昨日も。

惑わされるな。

あ、今足組んだ!? チラっと桜色の割れ目が・・・・・・惑わされるなっつってんだよ俺ぇ!!

そんな俺の様子にくすくす笑うアカナ、くそう可愛いな。

昨日も一昨日も、ちょっと頑張ってイジメすぎたからって、意趣返しのつもりか。

まあ掃除をしてる時点で、誘惑に敗北宣言してるってことなんだが。

 

「ところで主様、今日は総髪(そうがみ)にしてみんした。似合うでありんしょうかね?」

 

アカナは古い言葉をよく使うので時折戸惑うことも多い。

だが、髪という以上は髪型のことだろう。

初めて会った時は散切り頭だった彼女だが、この二年で肩にまで伸び、今日はその艶やかな黒髪を束ねてポニーテールにしている。

つまり「そうがみ」とやらはポニーテールのことなのだろうと察しを付ける。

 

「・・・・・・まあ、可愛いぞ」

 

ちゃんと褒めてやらないと拗ねるからな。

いや、可愛いのは事実だが。

いやいや、拗ねたアカナもそれはそれで可愛いんだが。

 

「嬉しいでありんすねえ。いつもの尼削ぎの方が良いと言われたらどうしようかと心配してんした。主様はちゃんと褒めてくれるから甲斐があるというものでありんす」

 

そりゃな、毎回そんな喜色満面の可愛い顔されたら、こっちも褒めたくなるってもんだ。

そういや尼削ぎって何だ? いつものってことはセミロングのことでいいのかね?

などと考えていると、首筋を舌でねろんと舐められて、妙な声を出してしまった。

チロチロと首筋を(ねぶ)り、這うように舌が巻き付いてくる。

軽く首を一巻きした舌の先が、今度は喉元から顎にかけてをれろんと舐め上げていく。

舐める時に痛いと言うので、毎日ツルツルに剃りあげた顎を舐め這う舌が視界に入る。

赤ん坊を思わせる赤味がかった肌を除けば人間のように見えるが、この長い長い舌を見るとやはり妖怪なのだと実感する。

 

垢嘗、垢舐(あかねぶ)り、それがアカナの種族だ。

あかなめ、だからアカナ。実に安直な名前を付けてしまったのを少し後悔している。

妖怪に名前を付けるというのは、その存在を縛ることになるらしい。

妖怪と名前というのは非常に重要な関係があるのだと。

名付けるというのは婚姻にも等しく、訂正の効かない一大事なのだと。

 

「もしへ主様、そう綺麗に掃除されては、あちきは飢えてしまいんすよ」

「・・・・・・・・・じゃあ俺の垢でも直接、舐め取ればいいんじゃないかな?」

「我が背の君様は変態でありんすねえ」

 

クフフフと喉を鳴らすように笑うアカナ。

幼く見える身体付きに反して、その顔は、怪しく妖艶な、男を誘う女の顔だった。

いつしか俺達の間で行われるようになった、睦言、褥を供にしようというサイン。

ぶっちゃけるとセックスしましょうというお誘い、掃除をするというのがそれだ。

風呂場の垢を舐めとる妖怪であるアカナは、別にそれ以外の場所を掃除したからといって飢えることはないのだが、まあ建前だからそんなのは些細な問題である。

そしてこの場所でしたいですという部屋を掃除するのも、いつの間にか暗黙の了解になっていた。

昨日と一昨日はアカナが、風呂場と和室を掃除してたわけだが。

 

「さあさあ、主様~、おしげりなんしょ~」

 

巻き付いた舌がこっちにきてと、引っ張る力に逆らわずアカナに近付いていく。

全力でもそんなに大した力は入らないので、くいくいと肌にかかる舌の圧力はこそばゆいような心地良さがある。

ベッドに腰を下ろすと、舌を口内に戻し、嬉しそうに抱きついてきて、服越しに温かい体温が伝わってくる。

 

自分で上を脱ぐと、アカナがズボンのベルトをすっかり手慣れた感じで外しにかかる。

・・・・・・エッチな垢嘗(あかなめ )め、けしからん、まったくもって怪しからん、妖怪だしな、怪しからん。

特にこの廓言葉が、下半身に響いてけしからん。

 

赤嘗という妖怪は家に憑くモノ、家とは土地にある物、家屋や土地に居憑く妖物は土地の影響を強く受けるとアカナは言う。

まあ要するに方言に染まりやすいということで、物凄く方言がキツイ。

しかもアカナは長く感得され(人生ならぬ妖怪生みたいなものか?)あちこちの土地を渡ってきたと言うので、方言がチャンポンになってて、一度素の口調を聞いたら何を言ってるのか理解できないレベルだった。

通訳が必要だったり、戦時中に暗号代わりに使われたと聞く島津弁に匹敵するか凌ぐかもしれない。

島津弁聞いたことないけどさ。

直そうにも現代のように人の移り変わりが激しくなると、土地に篭もる人の情念は薄くなり、標準語で上書きしにくいのだそうだ。

 

「そういう生まれでおすもの」

 

とはアカナの言だ。妖怪の本能的な部分なので直すのが難しいと。

まあ遊女が方言を隠すのに生まれたのが廓言葉だし、方言がキツイのを隠すのにはうってつけだろう。最近は現代風に近付いてきてるし。

あとこの言葉使いが妙にそそられるのもそういう人達の言葉だから仕方ない。

うん、仕方ないんだ、俺の性癖とは無関係だ、たぶん。

 

「うおう!?」

 

そんなこと考えていたら、もうズボンも脱がされ、アカナの舌が耳を這う感触で我に返った。

耳の裏をなぞりあげ、それからゆっくりと耳たぶの下から回りこむように、耳介の溝に細い舌先が潜り込み、チロチロと舐め取っていく。

それが済むと、耳の穴、専門的に言えば外耳道の入り口を優しく拭うように。

性的快感よりも心地良さが先立つが、それでもちらりちらりと、肌蹴た浴衣から見えるアカナの肢体が興奮を引き出していく。

片耳が終わり、もう片方に舌を這わせ始めた頃合いで、トランクスが下げられ、下半身を剥き出しにされた。

 

「・・・・・・今日も元気でありんすな。いつもあちきをイジメて泣かせるこのイジメん棒は」

 

いつもながら舌を伸ばした状態で、器用に喋るものだと思いながら、アカナの小さな手が俺のモノを扱く感触に股間から背筋にかけて言い知れぬ感覚が走る。

やがて両耳の耳垢を舐め終わると、次は恥垢とばかりに一物を咥え飲み込んでいく。

 

「ん・・・んぶぅ! ふ、んぐぅ! ん、んぶぅ、ん、んふ!」

 

アカナの長い舌が、口内で根本まで絡みつき、じゅぼじゅぼと音を立てて、ストロークを繰り返す。

 

「ん、ぷぁ・・・・・・あちきの口は小さいので、主様のをしゃぶるのは大変でありんすよ」

 

そう言って口を離すと、今度はその舌を蛇がトグロを巻くように、根本からゆるゆると巻き付けていく。

そうして舌が一物全体を擦り上げていく感覚に思わず唸る。

 

「これは・・・ん、どうでありんすか?」

 

巻き付いた舌がゆっくりと蠕動運動(ぜんどううんどう )をして一物の上を這いながら、その舌先がちろちろと鈴口を刺激してくる。

正直、これは凄い。あんまり持たない。

 

「う、ん・・・・・・上手くなったよな、アカナ」

「散々仕込んだのは主様でありんしょう。未通女(おぼこ)だったあちきを無理矢理手篭めにして」

「・・・・・・誘ったのはお前だろ」

「本当に襲われるとは思わなかったでありんす」

 

これはもう一生言われ続けるだろうな、もう諦めるしかない。

事実だし、言い訳ができない。

 

「主様は、妖怪に欲情して手を出す変態でおすものな」

 

舌の動きがだんだん激しさを増して、射精感が込み上げてくる。

それに逆らわず精を放つと、アカナがその小さな口で先端を咥え、それを受け止めていく。

 

「ん! ん、ぐ、ふぅ・・・・・・んむ、んんっ!! んっんっ! んっ! んんんっ!! んぐ!!」

 

喉を鳴らして嚥下していき、やがてちゃぱっという音とともに、アカナの口が離れるのに一抹の寂しさを覚える。

 

「は、あ・・・・ほんに、主様のこれは相変わらずのきかん棒でありんすな」

 

その長い舌を垂らして、浮かべる笑みは妖艶そのものだった。

 

「あ・・・・・・も、もう主様、またこんな、すぐ熱り立たせて、仕様のないお方でありんすな。じゃ、じゃあもう一度してあげるで、ひゃあ!?」

 

と、言いながら舌を一物に伸ばそうとしたアカナを抱えて、顔の上に跨がらせシックス・ナインの態勢に持ち込む。

まあ背丈が少々足りないので、アカナの口は微妙に届かないんだが。

 

「ぬ、主様!? あ、あちきはいいでありんすよ!! 今日はあちきがご奉仕しんすから!」

「いやいや、俺もアカナを可愛がってあげたいから、気にしない気にしない」

「ちょ、ぬ、主様、おぶしゃれんすな~~!!」

 

目の前にある可愛らしいアカナのおまんこは、すでにぐっしょりと濡れそぼって蜜を滴らせている。

その割れ目を両手で押し広げてやると、大陰唇に隠されていた桃色の小陰唇と膣口が目に入る。

小さいながらも熟れたそこに、舌を伸ばして大陰唇と小陰唇の間の溝に割入っていく。

 

「うああ!? だ、だめでありんす、そ、そんな広げちゃだめでありんす。あ、あちきの女陰(ほと)、そんなほじらないでおくんなし!!」

 

逃げようと足掻くが、力ではこちらが上なので、ぐいっと腰を抱えて顔に押し付け、なおも執拗に舐め上げていく。

舌で小陰唇を割り開いて、膣口の淵周りをなぞって舌をぐるぐると這わせると、がくがく腰を震わせ始める。

 

「ぬ、主様! 主様ぁ!! な、舐めるのはあちきの仕事でありんすよぉ!」

「ん~、エッチな垢嘗は舐められるのも大好きなんだよね?」

 

くにくにと小陰唇を唇で挟んでこりこりと刺激したり、引っ張ったりするたびに可愛らしい鳴き声を上げるので、人間の俺でも舐めるのが好きになってしまうというものだ。

 

「そ、そんなこと、言わずにおいておくんなんし!!」

 

否定は・・・・・・しないんだよなあ。

と思いつつ、舌を膣の中に侵入させて、啜り上げてやると、舌と空気が振動して膣道を刺激していく。

 

「あうぅぅぅううぅ!? うぅぅぅううう~~~主様、イジメないでおくんなしぃ、あ、あちき、もっと主様にご奉仕してあげたいでありんすよぉ!!」

 

か、可愛いことを言う・・・・・・

少し性器への責めを緩めて、太股やお尻などをさわさわと刺激してやる。

ううむ、この大腿部から臀部へのラインが、しっかりと成熟した括れがあってまた素晴らしい。

形の良いお尻を掴み優しく揉みほぐしてやると、成熟した女の柔らかさを持った肉の感触が指を楽しませてくれる。

 

「ん、あ・・・・・・ん、む、ふぅっ、んじゅ」

 

口は届かずともその舌ならば届くとばかりに伸ばされた舌が、そそり立った男根に巻き付いていき蠕動運動を開始する。

陰茎、裏筋、鬼頭、カリ首、敏感な部分を満遍なく舌が蠢き回り、舌尖が鈴口を責め始める。

アカナのすべすべした太股の感触を頬で感じながら、下腹部からの快楽を味わっていく。

時折、膣道に指を入れてざらつきのある部分を擦り上げてやると、びくんと身体と舌が震えるのでこれがまた心地良い。

 

「あ・・・? 主様のお珍宝がびくびくしてきんした」

「うん、射精るよアカナ」

「あい、主様の精、たくさん出しておくんなし、あちきが全部、受け止めてあげるでありんす」

 

さらに舌を伸ばし、鬼頭周りに巻き付かせていき、器用に筒を形作っていく。

そうして形成されたアカナの舌の器に、込み上げる射精感に任せ欲望を解き放った。

 

「ん、はぁ、あぁああ・・・・・・主様の子種、熱い」

 

舌の器に放たれたそれを、零さないように口に運んで嚥下していく姿は実に卑猥だ。

さて、気持よくしてもらったお礼に、こっちも気持ちよくしてあげないとな。

小陰唇を指で押し広げて、膣前庭部・・・膣口、尿道口、クリトリスのあるイヤラシイ肉ビラの部分を露出させてやる。

ふっふっふ、今アカナの大好きなのをしてあげるからね。

 

「あ、あぁぅっ!? ぬ、主様、そ、そこはお小水の、あ、孔で、ひぅん!? お、お豆まで、そ、それされると、すぐ気をやってしまうからぁ、い、いつも、イジメないでおくんなんしとおねがいしてるではありんせんかぁ」

 

分かっているけど、尿道を舌先で優しくほじり、クリトリスの皮を剥いて出てきた豆をふにふにと指で揉んでやる。

そしておまんこの中に侵入させた指を、お腹の方に曲げてにゅぐにゅぐと壁を撫でてやると、ビクビクと痙攣してすぐにイッてしまうのが可愛いのだからやめられないだろう。

 

「あ、あぅうぅぅうううぅぅううぅうううう~~~~~~!!」

 

イッてしまって息を荒げるアカナを、体勢を入れ替えてベッドに横たえてやる。

そしてその足を抱えて、M字型に開いてやると、ぐっしょりと濡れそぼった桃色のおまんこがぱっくりと口を開けているのが否が応でも目に入る。

 

「あ、あぁぅ・・・・・・・ぬ、主様ぁ」

 

女としての一番淫らな部分を曝け出されているのだ。

赤い肌が一掃赤みをましたのは錯覚ではないだろう。

 

「アカナ、いくよ」

「あ、あい、主様、あちきに、お情けを下しんせ」

 

膣口に男根をあてがってやると、すっかり解れた柔肉が吸い付いてくる。

そのままゆっくり慎重に沈めていく。

小ぶりなアカナのおまんこだと、激しくすると痛がるからだ。

俺もゆっくり抽挿するほうが、ひだの感触や、体温をよく味わえるので好きだったりする。

そうした感触味わいながら、腰を押し進めていくと半分ほどでこつんと奥に突き当たる。

コリコリした子宮口の感触を感じ、小刻みに軽く抜き差ししてやると、途端に可愛く震えて鳴き出すアカナはいつ見ても最高に可愛い。

そうして主様、と甘く鳴きながら、その舌を結合部に伸ばしてくる。

いつもは全部入らない部分をカバーするために舌を使うのだが、今日はどうしてもしたいことがあったので、その舌を指で摘み上げてやる。

途端にびくんと震えて、アカナの戸惑いの視線と声が俺に向かう。

 

「舌、吸っていいかアカナ?」

「な!? な、に、言ってるでありんすか、だめでありんすよ主様」

 

何度も何度も体を重ねてきた。褥を供にしてきた。

だけどいまだに、キスをしたことがない。

いつもそれは避けられてしまう。

だから不安になる。俺と交わっているのは、名前を付けてしまった。

妖怪としての存在を縛ってしまったから、それだけの理由なのではないかと。

だから口付けだけは避けているのではないかと。

 

「駄目か?」

「だ、だめでありんす!! 主様は何を考えているでありんすか!?」

「アカナとキスがしたい、舌を絡めたい、そうやって愛し合いたい」

 

その言葉を咀嚼し、理解したのか、顔が茹だったようにみるみる染まっていく。

 

「あ、あああああ、あちきは垢嘗でありんすよ!?」

「いや、知ってるけど」

「こ、ここここの舌は、あ、垢を舐めとるもので、ばっちぃでありんすよ」

「ばっちくはないだろ」

「そ、そそそそそそれに、今、主様の精を受けたばかりでありんすよ」

「・・・・・・別に気にしない」

 

本当は気になるけど・・・・・・それ以上にアカナとキスしたいという衝動の方が強い。

舌を引っ込めようと抵抗するが、力では俺に勝てないのだ。

うにうにと指から逃れようと蠢く舌を口元に運び、それを舐め上げる。

 

「ひぅん!?」

 

その長い舌を丹念に(ねぶ)ってやる度に、びくんと身体を弾ませ、ねっとりとした肉壁がきゅうきゅうと締め付けてくる。

紅色でてらてらと濡れた、ぐにぐにと蠢く長い舌。

いつも俺の体を舐めるたびに恍惚とした表情をしていたし、あそこもぐっしょり濡れるから、そうだと思っていたが。

間違いなくアカナの舌は敏感な性感帯だ。

じゅるじゅると音を立てて啜ってやると、たちまち気をやって、おまんこがびくびく痙攣しだす。

色といい形といい・・・・・・性感帯なところといい、でかいクリトリスみたいだな。

そう思うと、いっそうこの舌が淫靡なものに思えて興奮してくる。

 

「やっぱりアカナは舌が一番感じるんだな、今まで出来なかった分、たくさんしてあげるからな」

「ぬ、主様!? あ、あちきは充分気持ち良うしてもらってるでありんすよ!」

「いやいや、もっと気持ちよくしてあげるから」

「こ、これ以上なんて、あちきおかしくなってしまいんす。ご、後生だから堪忍しておくんなし!!」

 

これが返事とばかりに、黙って腰を動かし、舌を舐ってやる。

アカナの舌の裏側を先端に向けて俺の舌を這わせていく。

その先端、舌尖と呼ばれる部分を指でコリコリと弄るとガクンガクンと腰を震わせてイッてしまう。

 

「ぬひひゃま、ゆ、ゆうしとーせ、あがはばしか、にすぃへっちゅぅ」

 

呂律も回らなくなってる上に、廓言葉を使う余裕もなく素のチャンポン方言が出て、もう何を言ってるか分からなくなってる。

もう抵抗もなく、アカナの方から舌を口内に侵入させ俺の舌に絡めてくる。

何度も何度も、舌を吸い、性器を擦り合わせ、何度も膣に注ぎ込んで、何度も唾液を呑み、何度も唾液を呑ませ、何度も互いの名を呼び合って。

 

気付いた時には、お互い精根尽き果て、ぐったりしたまま抱き合っていた。

総髪、と言っていたそのポニーテールを手櫛で梳いて、髪の手触りを味わう。

愛しい女の温もりを感じながら、その匂いを鼻孔で感じながら。

確かにここにいるのだと、それを感じるためにこそ五感があるような気がしてくる。

アカナは妖怪だ。いつか消えてしまうのではと思うと、不安で堪らなくなる。

ずっと一緒にいられるだろうか? ずっと俺のところに居てくれるだろうか?

あの日、この家で、あの風呂場でアカナに出逢って一目見たあの瞬間から、俺は魅入られてしまったんだと思う。

この妖怪に、この垢嘗に、いや、この愛しい女に俺の心は憑かれてしまったのだと。

なあアカナ、俺を愛してくれるか? できるなら俺の子供を産んでくれるだろうか?

俺の・・・・・・妻になってくれるか? 否定されるかもしれないと思うと、怖くていまだに口にしたことはないが、いつかきっとこの想いを伝えようと思う。

なあ、・・・・・・俺の、俺だけのアカナ。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「ん、主様? まだ寝ているでありんすか?」

 

あれから、どれだけ経ったのか。

まだ外は暗く、夜明けまではまだかかるだろう。

体は拭われ、着物はちゃんと着せられているが、主様がやってくれたのだと思うと気恥ずかしくなる。

 

「はふぅ、きょ、今日はたくさん愛してもらいんしたが・・・・・・主様にはすぐ手玉に取られてしまいんすね。あちきもこの世に感得されて長くなりんすが、床の経験はほんにまだまだでありんすな」

 

舌を出して、寝ている主様の頬をつんつんと突いてやる。

本当にいつもいつもイジメられて、泣かせられてしまう。

 

「口を吸い合うというのは、実に甘美なものでありんした、ばっちくないと言ってくれて、あちき嬉しかったでありんすよ」

 

言葉にしてくれないので不安で仕方ないが、ちゃんと主様は自分を受け入れてくれていると思うと、胸が暖かくなる。

妖怪なんかとずっと一緒にいてくれるだろうか? ずっと私の側に居てくれるだろうか?

 

「髪も伸びるようになりんした、名前で縛られて、主様の子種を注がれて、少しづつ人間に近付いていんすよ。完全な人間にはなれないけど、主様と同じ時を生きて、死ねんすよ。主様の子もたぶん孕めるようになりんす。あちきの知己だった妖怪たちもそうやって、人と番うて子を産んで老いて死んでいきんした。あちきもいつかそんな風になりたいとずっと夢みていんしたよ」

 

この妖怪を、この垢嘗を、いや、こんな女を愛してくれるだろうか?

 

「言葉も、少しづつ今風に、喋れるようになってきてるんですよ。ねえ、私の背の君。私の夢叶えてくれますか? 私を幸せにしてくれますか? 私の、私だけの愛しい主様?」

 

否定されるかもしれないと思うと、怖くていまだに告げることが出来ない。

でも、でもいつか。

 

「いつか、起きている時にちゃんと、伝えますね」

 

END




今回は男側の一人称で進行して、垢嘗ちゃんの心理描写は一切排除するという構成で最後にという展開にしました。
愛がちょっと重いけど、お互い様の似たものバカップルだったというオチです、はい。

洋間での情事なのは、ベッドのスプリングよく弾みます、むしろそのために買いましたみたいな描写も入れたかったからなんですが、どうも邪魔かなと思うので削ちゃったりして、少々難産な話でしたね。


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Remote Control Dullahan

デュラハンちゃんとイチャイチャしたい。


同棲と同居の違いとはなんだろう?

同棲が、婚姻していない恋人同士が同じ家に一緒に住むことであり、同居が、親兄弟・友人といった関係の人間と一緒の家で暮らす、ということならば俺と彼女の関係は同居人ということになるだろう。

しかし、世間一般的には若い男女が共に暮らせば、肉体関係になくとも同棲と見做される傾向が強いわけで。

 

「ナハル、これもお願い」

「はい」

 

こうして一緒に洗い物を片付けながら、俺と彼女の関係とは何かと思いを巡らす。

思えばもう同居、同棲? を始めてからもう一年になる。

その間、色っぽい展開などなにもないのだが、まあ気心は知れたように思う。

ナハル・・・という名前から分かる通り日本人ではなく外国の出。

祖父母はアイルランド出身で、父がドイツへと移り住み、彼女はそこで生まれ育ったと聞いたことがある。

外国人らしく目鼻立ちがはっきりとし、明朗快活で笑顔が可愛い女の子だ。

背丈は女子の平均より低い、といってもドイツの基準だから、日本ならば平均並みの160cm。

運動をしているだけあって体型はスラリと引き締まりつつ、出るところはしっかり出ている肉感的なスタイル。

そして一番の特徴は美しい銀色の髪。

 

「ひゃわ!?」

 

もう一つあった。かなりドジだ。

泡だった食器を滑らせ、落とさぬように慌ててキャッチするが、代わりに自分の首を落としてしまう。

ドポンという水音とともに、水の溜まったシンクの中に落ちた彼女の首を急いで引き上げる。

 

「大丈夫?」

「ひゃ、ひゃい・・・」

 

いつも通りにタオルで彼女の頭を拭いてやる。

最初のうちは随分恥ずかしがっていたっけ。

一通り拭き終わったら、彼女の身体に頭を手渡してあげる。

 

「いつもすみません」

「いやいや」

 

首が離れて胴体の上をふよふよと浮いている。

いつもながらシュールな光景と言うべきか。

最初はかなり怖かったが、人間とは慣れる生き物なんだな。

 

デュラハンという西洋妖怪(妖怪というのは日本独自の概念なので、ちょっと語弊が出るかもしれないが、便宜上そう呼ぼう)

それが彼女だ。

首と胴が分離してそれぞれが自律行動できる妖怪らしい。

頭は念力だか何かしらで浮遊して飛び回ることができ、体も自由に動かせるのだが頭が体から離れすぎると体を動かせなくなるとか。

頭部からのリモコン操作みたいなものか。

 

飛頭蛮という中国や日本の妖怪とも類似点が多いが、ルーツを同じくしているらしい。

欧州へと渡った者達はデュラハンとなり、大陸へ移り住んだものは落頭民と呼ばれる存在として発展したと伝わっている、と彼女は言う。

この落頭民が日本に来たのが飛頭蛮の祖先だそうだ。

 

それぞれに独自の方向に進化したため、似て非なるものとなってはいるが。

デュラハンは首が離れても体を動かすことができる、というよりも首が最初から繋がっていない。

だから彼女もよく頭を落っことしてしまうのだろう。

それとは違い、飛頭蛮は普段は体と首が繋がっている。

分離すれば首だけが行動でき、体は動かすことが出来ない。

また長時間分離したままだと体が死んでしまうという欠点がある。

反面、飛行する能力はデュラハンよりも遥かに高いという。

それに対しデュラハンは頭が生きていれば体が死ぬこともないのだそうだ。

飛頭蛮は生物的に、デュラハンは幻想的な方向にそれぞれ違う進化したというのが彼女たちの定説だそうだ。

デュラハンは頭と体が分離していても、何か不思議な力で繋がっているらしく、食べた物などはそのまま体にいくという。

飛頭蛮は何か食べても、体と繋がって始めてそれが体にいくのだと。

その証左の一つとして、飛頭蛮の中では首が分離せずに伸びるだけという進化をした者もいる。

日本ではこれが一番有名であろうろくろ首という形態だ。

 

「はあ、やっぱり頭を落とさないように紐でも付けるべきでしょうか?」

 

溜息とともに出てきた言葉に、ふとその姿を想像してみる。

分離した、頭と、体が・・・・・・紐で繋がっている。

ケンダマンだこれ!!

 

「・・・・・・あんまり似合いそうにないからやめた方がいいと思う」

「そうですか」

 

何故か残念そうに見えるのは気のせいか?

 

「まあ、俺がいる時はちゃんと助けるから」

「Sei doch immer bei mir nahe zum Greifen」

 

時折出る、彼女の母国語。

意味を尋ねる前に、お風呂いただいてきます、と行ってしまった。

やはり俺もドイツ語習うべきか、とも思うのだが彼女は何故か恥ずかしいからやめてくれと言うし。

 

彼女は俺をどう思ってるんだろう?

俺は・・・・・・うん、ナハルが好きだ。

一目惚れだった。

妖怪と知って怖がった時期もあるけど、すぐに慣れる程度のものだったし、やはり想いは消せるものではなかった。

彼女は、どうなんだろう?

嫌われてはいないと思うけど、妖怪である以上、文化が違うのかもしれないと思うと、今一歩踏み込めない。

俺はもう妖怪だろうとそれでも構わないと思ってはいるが、彼女も種族差を乗り越える気構えがあるとも限らないし。

一年、一緒に暮らしてもそれでも色のある関係になれないのも、そんなところが原因だろう。

初めてナハルと出会った日を思い出す。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

それは肌寒さが増してきた、ある日の事。

そうだ、ちょうど万聖節の日だった。

月が美しい夜だったのを覚えている。

バカラ、バカラ、文字として表すならそんな音。

蹄の音だ。

 

田舎と言うほど不便でもなく、都会と言うほど大きくはないが、必要な物は大抵揃う規模の街。

住むのにちょうどいいと言える、そういう街。

それでも山裾に近い郊外になると、人家は疎らになる。

そんな閑静を通り越して、寂れた町外れに響く蹄鉄の音。

そうだ、野生の有蹄類とは違う、蹄鉄を履いた足音だ。

 

その音が家へと近付いてくる。

何事かと玄関を開けると、黄金色の 天満月(あまみづき)に照らされて、ボブ・ショートに整えられた、眩く銀色に光る美しい髪を持った女性が立っていた。

月明かりの中に浮かぶその顔に、吸い付けられるようにして目が離せなくなる。

どれだけそうしていただろう。

何時間も見つめ合っていたような気もするが、実際の時間にすれば数秒にも満たないだろう。

永遠へと引き伸ばされたような須臾の時は、彼女が手にしたタライの中身を頭から被ったことで終わった。

酷く生臭い臭い。

台無しだった。

こんな美しい月夜、その光の中に幻想的な美しさを放つ女性。

だというのに雰囲気ぶち壊しだった。

 

「あ、間違えました・・・・・・」

 

決定的だった。

ここまでしでかして、間違いときた。

カチンときた。

現在は作家業を営んでいるとはいえ、学生時代はプロレス同好会でバリバリ鍛えていた身だ。

 

「ちょっと・・・・・・君ねえ!!」

「ご、ごごご・・・・・・ごめんなさいぃ!?」

 

体格のいい男に詰め寄られて、思わず謝りながら後退る彼女。

慌てていたためか、足を縺れさせて盛大に後ろ向きにすっ転んだ。

 

「あわ!? あわぁああ!?」

 

ガチャンガチャンと金属のぶつかり合う音が耳朶を打つ。

ころころと彼女の頭が転がっていく。

なんだこれ? ・・・・・・本当になんだこれ?

もう頭が取れているとか、それでも身体も首も動いているという光景に、血が上った頭は怖いとかいう感情を持ちはしなかった。

ただただシュール過ぎる光景に呆けていたというかなんというか。

 

「あ、あぅぅぅぅうう・・・・・・」

 

この時になってようやく気付いたが、彼女は金属製のフルプレートアーマーを着込んでいた。

普通は如何に金属甲冑とはいえ全身に重さが分散するので、起き上がれないわけではないはずだが、見栄を張ってかなりゴツイのを着てきたというのは後で聞いた話だ。

ジタバタと起き上がろうとするも、起き上がることができない。

取り敢えず助け起こすべきかと、彼女に近付いた時、一頭の馬が突っ込んできた。

そうだ、そもそも蹄の音で外に出たのだった。

彼女の馬か、主のピンチと俺に突進してきたのだ。

 

「Cóiste bodhar!? halt!!」

 

異国の言葉だが、それが制止の言葉だと何となく分かった。

だがもはや止まるにも止まれぬ距離。

馬に慣性制御などという機能は搭載されていないのだ。

その頭部の無い馬の首を・・・・・・そうだ頭が無かった。

だがそんなことに気を配っていられる状況でもなく、ほとんど反射で動いていた。

首を脇に抱え込み、馬の突進力も合わせて利用して、渾身の力を込めて馬体を持ち上げる。

無理をした酷使に腕からブチブチと筋繊維の千切れていく音が響いてくる。

 

「うおおおおおおお!!」

 

そのまま行き場のない怒りをぶつけるように、全身全霊を傾けた垂直落下式ブレーンバスターで首無し馬をKOした。

げに恐るべきは怒りの力である。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

そんななんと言っていいのか言葉に困る出会い。

それが俺と彼女の出会いだった。

妖怪の世界も世知辛いようで、日本では死神稼業を継ぐ妖怪が不足してきており、「やぎょうさん」という人が伝手を使って彼女の所に話がいったらしい。

やぎょうさんって、あれかな、百鬼夜行の・・・・・・会ったことないから知らないが。

 

魂を迷わないようにあの世に送り届ける大切な仕事だとかで、これが滞ると地縛霊だの悪霊だのが増えかねないという。

死神稼業はデュラハンのお家芸と、奮起したまでは良かったのだが、迎えに来る家を間違えるという失態を犯してしまった。

しかも乗騎であるコシュタバワーとかいう首無し馬は、俺のブレーンバスターで長期入院するはめに。

そんなこんなで彼女は現在長期休職中、上司?のやぎょうさんからは、迷惑をかけた俺の世話をしてお詫びしなさいと言われ住み込むことになった。

正直しばらく腕が酷く痛かったので、ありがたかったのは確かだ。

ドジだったけど。まあ、助かった。ドジだったけど。

そんなことを考えながら、本業たる執筆を続ける。

現在は妖怪を主軸とした日常物語を書いているが、妖怪達が活き活きとしているとなかなか評判は良い。

彼女から聞いた話をだいぶ参考にしてはいるが・・・・・・

 

「お風呂、上がりました・・・・・・」

 

そう声をかけられた時には、すでに二時間近くが経過していた。

女の風呂は長いものみたいだが今日は随分、長湯だったんだな。

のぼせたのか、顔が真っ赤になっていた。

湯上がりで上気した首周りから見える鎖骨のラインがまた扇情的というか。

ボタン止めてほしいな。目のやり場に困る。そりゃ見たいけどさ。

・・・・・・「そもそも湯上がりの時美しき女はまことの美人なり」とは何の一節だったか?

なるべく彼女を見ないように、俺も風呂へ向かった。

ただでさえ最近は鰻だの山芋だの精の付くメニューが多くてムラムラしていかんというのに。

今日はもう風呂に入って寝てしまおう。

 

そうして一風呂浴びて、床に就こうかという時だった。

 

「あの・・・・・・すみません、ちょっと助けてもらえませんか?」

 

ナハルの首だけがふよふよと浮遊して来た。

 

「どうした?」

「あの、そのですね・・・・・・訓練しようと思って、その・・・・・・よ、鎧を着たんですが、倒れてしまって」

 

それで一人じゃ起き上がれないから、手伝ってほしいってことか。

お風呂の前にすればいいのにと思わなくもなかったが、口には出すまい。

彼女の首に先導され、ナハルの部屋へと・・・・・・部屋?

外だと思ったんだが、部屋で鎧着てる時に倒れたのかな?

 

彼女の部屋へ入ると、明かりは点いていなかった。

だがカーテンは開いており、窓からは月明かりが差し込んで部屋を照らしている。

だから彼女の姿も夜中とはいえ十分視認できた。

鎧を着た上半身がベッドにうつ伏せに突っ伏しており、キワドい長さのミニスカートをはいた下半身がこちらに突き出されている。

鎧の下ってこういうの着るもんだったっけ?

スカート越しにもはっきり分かる曲線は、理性を揺らすには十分な破壊力がある。

だからといって無軌道に行動するような真似はしない。

それくらいの分別は持ち合わせている・・・・・・が、正直辛いなあ。

 

「じゃあ、すぐ起こすから」

「・・・・・・あの、起き上がれないんです」

 

何を言ってるんだろうか?

だから自分に助けを求めたはずなのに。

 

「ああ、うん・・・・・・すぐ起こすから」

「その!! ・・・ですね、だから・・・・・・」

 

何か言い淀む。

何を言いたいんだろう?

 

「だから・・・・・・何を、されても、ですね・・・抵抗できません、よ?」

 

それは、まさか・・・・・・

 

「ナ、ハル?」

「抵抗、できません、から」

 

ナハルの顔は真っ赤だった。

どうやら、そういう意味で間違いはないらしい。

ナハルの首が、自らの身体、その背中の上に降りてくる。

長時間浮いているのは少々疲れると言ってたっけ。

上目使いで、こちらをじっと見つめている。

 

「抵抗、できま、せん・・・・・・ダメ、ですか?」

「じゃ、じゃあ・・・・・・」

 

彼女のお尻に手を伸ばす。

スカート越しでも、心地の良い弾力が返ってくる。

片手でその肉を出来る限り、優しく揉み解していく。

 

「こんなことされても、抵抗できないわけだ」

「は、はい・・・・・・」

 

両手を使って左右の尻肉を掴んでみる。

 

「ふ・・・・・・ぅ」

 

むにゅむにゅっとした感触が堪らない。

スカート越しなのに、これだ。

・・・・・・そうだ、スカード越しだった。

ちょ、直接、いってもいいんだよな?

 

意を決して、ゆっくりとスカートをたくし上げていく。

 

「あ?」

 

穿いて、なかった・・・・・・下着はそこになかった。

月明かりに照らされ、髪と同じように綺麗な銀の茂みが。

両の指で茂みをかき分け、その割れ目を左右へと押し広げていく。

ビクリと体を振るわせ、可愛い声を吐き出すナハル。

 

「ひぅ、ん!?」

 

茂みの奥から顔を覗かせた、桃色の肉襞。

そこに舌を差し入れてみる。

 

「ひゃぅぅん!!」

 

ビクン、とナハルの身体が跳ね上がる。

構わずにその秘裂にむしゃぶりつき、その膣襞を舐め上げていく。

次第に愛液の量が増していき、ぐちゅぐちゅと泥をこねるような水音が響き始める。

ズズッと音を立てて愛液を啜ってやると、またもビクンと身体が跳ね上がる。

膣壁がグネグネと蠢いている。

物欲しそうに、淫らに、パクパクと収縮していた。

 

もう抑えられなかった。

早くここに、自分の男自身を突っ込みたくて堪らない。

ベルトを外し、ジッパーを下ろし、ズボンを脱いで、それを露出させる。

そこでようやく、彼女の背中にいた首が無いことに気付く。

 

「ナハル?」

 

いや、いた。

ベッドの脇に彼女の頭が転がっていた。

拾い上げると、上気した顔で息を荒らげていた。

イッた時に、力が抜けて転がったようだ。

 

「あ、あんまり、見ないで下さい」

「ナハル・・・・・・」

 

見ないでくれと言われても、目を離せない。

こんな、可愛いナハルから。

しばし見つめ合っていると、意図を察したのかナハルが目を閉じた。

唇を合わせるとブルっと震えたが、やがてナハルのほうから舌を絡めてきた。

夢中になって舌の感触を味わい、歯の裏側を舐め、頬の内側を舐っていく。

そうやってしばらくお互いの口内を嬲り尽くし、口を離した時には唾液が糸となって二人を繋げていた。

呼吸も疎かにするほど、没頭していたため、お互い酸素を取り込むために息は荒く、それでもナハルの頬は上気して茹で上がり、うっとりとした顔をしていた。

 

「ナハル、いくよ」

「は、はい」

 

キスを堪能したことで、多少落ち着いた。

あのままだと、どれだけ無茶したか分からなかった。

熱り立った塊を、ナハルの肉溝に擦り付ける。

腕に抱えたナハルの首がブルっと震える。

大丈夫、と言うようにその頭をできる限り優しく撫でる。

少しばかり肌寒さのある空気の中で、手に伝わる体温が心地良かった。

やがて肉棒の先端がナハルの肉の輪を捉えると、ゆっくりと腰を押し進めた。

先端に愛液のぬめりを感じ、続いて傘を張った亀頭が子宮へと至る肉路を押し広げていく。

途中で多少の抵抗を感じたが、ブチっと千切れるような感触がした後は、一気に膣奥まで呑み込まれていった。

 

今の、処女膜?

見れば秘部からは愛液とはまた違った感触の液体が混じっていた。

 

「ナハル、大丈夫?」

「ちょっとピリピリしますけど、平気です」

「動いて大丈夫?」

「はい、お願いします」

 

大丈夫なようだ。

ゆっくりとナハルの腰を揺さぶり始める。

ふーふーと息を吐いているが、苦痛はないようだ。

肉の園をほじり返していくと、固い膣肉が徐々に柔らかく絡みつくようになってくる。

 

「ふぅ、ふぅ、は、あぁ」

 

ナハルの呼吸はだいぶ落ち着いているが・・・・・・痛くはないみたいだけど、あまり感じてもいないのかな?

初めてなら、そんなものだろうか。

少し寂しくもあるが。

 

「あ、あの・・・わ、わたしの気持ち良いですか?」

「うん、ナハルの中、凄く良いよ」

 

恥ずかしそうにするが、俺の手の中にある以上、表情を隠すことはできない。

頬を撫でてやると、きゅうっと膣が締め付けてきた。

さっきのようにキスをして、舌を吸ってやる。

その度に、あそこがきゅうきゅうと締め付け、吸い付いてくる。

デュラハンってのは顔の方が、感じるのかな?

いや・・・・・・待てよ。

 

デュラハンは頭と体が離れすぎると体を動かせなくなる。

 

それって、もしかすると離れていると体の感覚が鈍くなるのかな?

ものは試しだ、と揺れるお尻の上に頭をくっつけてみる。

 

「ひ!? ひぅぅぅううう! ひぃぃッ! うぅぅぅッ!」

 

ナハルの鋭い悲鳴が、部屋の中に響き渡った。

ガクンと腰が跳ね上がり、痙攣が全身に伝播していく。

うねうねと蠢く淫肉が、肉棒を絞り上げ一気に絶頂へと押し上げていく。

 

「うあ・・・・・・」

 

かつてないほどの勢いで精液が放たれたのを感じる。

激流と錯覚しそうなほどに放たれた子種の勢いに合わせ、俺の腰とナハルの腰がガクガクと揺れる。

それがまたさらに射精感を促し、子宮へと男の原液を注ぎ込んでいく。

力が抜け、ぬぼっという音とともに、ナハルの女の部分から、俺の男が抜け落ちた。

 

「た、たくさん、射精()ましたね」

 

俺の腕の中でナハルが呟いた。

ナハルの視線は自分の秘所に釘付けになっていた。

つい先程まで男の物を咥えこんでいた穴から、ボタボタと白濁した粘液が滴り落ちてきている。

 

「わぁ・・・・・・」

 

自分の女の穴がぱっくりと開き、物欲しそうにいやらしくパクパクと収縮を繰り返し、その度に精液が逆流してくるのを見て、羞恥の声を上げた。

 

「あ、あの・・・・・・放してくれます?」

「あ、ああ・・・」

 

中に出したのは不味かったかな。

俺はデキても構わなくても、彼女までその気だったとは言えな、

 

「うぉ!?」

 

不意に、一物に電流が走ったような感触。

見るとナハルが俺のモノを咥え込み、ちゅうちゅうと吸っていた。

尿道内に残った精液を吸い上げられる感覚に、力が入らない。

 

「ナ、ナハル?」

「ん、はぁ・・・ん、ん、ん、ちゅば」

 

男根が喉奥まで呑み込まれ、陰茎に舌が這い、たちまちのうちに射精まで導かれる。

 

「ん!? んぐ、く・・・・・ん、んぅ、ん、んぐ」

 

それを、一滴残らず嚥下していく。

好きな女が、自分の精液を飲み干している。

一度射精しながら、その様にたちまち硬さを取り戻していく。

好きな女に、自分の体液を注ぎたいという本能が、否応なく刺激されている。

 

「なんか、す、凄く上手いね」

「その、三丁目の奥さん、二葉さんから、教えてもらいました」

「ああ、そうなの・・・・・・でも正体とかバレてない?」

「大丈夫です、あの人も妖怪ですから」

 

衝撃の事実だった。

意外と妖怪ってそこらにいるものなのか?

 

「まだ、しますか?」

「う、うん、いいの?」

「は、い・・・・・・わたしも、あなたともっとしたいです」

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

鎧を脱いで、二人とも裸になり、何度も繋がった。

後ろから彼女を抱きしめる形、背面座位で彼女を貫いて、責め立てる。

彼女の頭を結合部に持っていき舐めさせると、舌が触れることで自分の体と繋がる。

彼女に肉棒で女をほじられる感覚が流れ込む。

その度に男根を埋め込まれた肉壁がぎゅうぎゅうと締め付けてくる。

 

「い、イく、い、イくぅ・・・・・・ぉぉっんッ!」

 

もう何度目になるのか、ナハルが達したと同時に俺も彼女の子宮に精液を注入する。

ふと、彼女の体、人間なら首のある部分を見てみた。

そういえば、よく見たことはなかったな。

するとそれに気付いたナハルが声を上げる。

 

「ど、どこ見てるんですか!? そんなところ、見ないで下さい」

「いや、もうおまんこもお尻の穴まで見てるし今更・・・・・・」

「そ、そういう問題じゃないです!!」

 

こっちの方が、恥ずかしいのかな?

首の断面部分は、木の葉が自然に落ちた跡のような、すべすべとして肌触りの良さそうな、それはきれいなものだった。

 

「だ、だからそんなに見ないで下さい!」

 

体の方がこれだと、首の方はどうなんだろう?

 

「ひゃあ!?」

 

彼女の頭をひっくり返すと、その断面部分をさらけ出してやる。

体と同じように、すべすべ卵肌なきれいなものだった。

 

「や、やぁ・・・見ないで下さい」

 

チロッと、舌を這わせてやるとびくんと、体が跳ねて再び一物を締め付けてきた。

 

「や、やぁあ、だ、だめです、そこ、そこだめぇ・・・・・・」

 

性感帯見っけ。

ペロペロと丹念に舐ってやる。

 

「ひぃ、ひいいぃ、あうぅ、おッ、ほぉ・・・うぁああ!!」

 

ナハルが今までにないほど、感じている。

はしたないくらい嬌声を上げ、あっという間に達してしまう。

少しタイミングが合わずに精液を注ぎ込んでやれなかったが、うねうねとする膣肉の感触が気持ち良い。

頭の角度を変えてナハルの顔を見ると、涎が垂れるのもそのままに呆けた顔をしていた。

・・・・・・良いこと考えた。

 

秘所から一物を抜いて、体勢を変えると、彼女を座らせる。

体の断面部分に、一物を乗せ、それをナハルの首の方の断面部分で挟んでやる。

すべすべした肌の感触が凄く心地良い。

 

「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛ッ! お゛ッ!! イグイグゥゥ!ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!! イグイグま゛だイグゥ!! イッでる゛イッでる゛のぉ!! ま゛だイグゥ!! イッでる゛のにぃま゛だイグゥ!!」

 

腰を使い出すと、たちまち幾度のオルガスムに全身を痙攣させ、穴という穴から体液を撒き散らして泣き叫んだ。

 

「だめ゛ぇこれ゛だめ゛ぇ!! お゛お゛お゛お゛お゛ッ! お゛ッ!! お゛ッ!!! これ゛だめ゛ぇ!!イグイグゥゥ! お゛がじぐな゛る゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!! ま゛だイグゥ!! ゆ゛る゛しでぇ! ゆ゛る゛しでぇ!!」

 

涙を流し、鼻水でベタベタになり、涎が口から溢れ、膣からは注ぎ込んだ精液とともに愛液が滴り、失禁までしている。

ひどく、興奮した。

自分の手で女を狂わせているという、どうしようもなく男の本能を刺激するこの下品なほどの嬌声が、どこまでも昂ぶらせてくれる。

一擦りする度にナハルが達する。

夢中になって腰を振った。

 

気付けば完全に失神した彼女が、俺の精液でベトベトになっていた。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

あれから三日間、ずっとセックスしていた。

今まで無駄にした分を取り戻すかのようにずっと繋がり続けた。

 

お風呂も、食事の時も、トイレの時までも。

デュラハンというのは便利だ。

どんな風にでも、キスしながらできる。

 

「ナ、ハル・・・愛してる」

「Ich liebe Dich」

 

言葉の意味が分からなくても、そこにどんな想いが込められているかは伝わる。

なんで、ドイツ語を覚えられると恥ずかしいのかと言っていたのかも。

彼女も俺と同じ気持だった。

行動の端々にそれが出ていたのに。

もっと早く踏み出していればよかったんだ。

 

その時、インターホンの音が響いた。

もう時間は夜分だというのに。

すっかり雰囲気を壊されてしまった。

 

「ちょっと行ってくるよ」

「はい」

 

取り敢えずズボンだけはいて、玄関に向かう。

しかし、こんな時間に一体誰だろうか?

締め切りまではまだ時間があるし。

 

「失礼、こちらに娘が・・・・・・」

 

玄関を開けたら鎧が立っていた。

小脇に自分の頭を抱えた鎧騎士だ。

 

「キ、キサマ・・・そのかっこう、そ、それにこの臭いは!?」

 

意外とアレの臭いってキツイよね。バレますよね。

というか、この人、ナハルの・・・・・・

 

「Vater!?」

 

今、出てきちゃだめー!!

 

「キ、サマ・・・・・・む、娘を傷物に!!」

 

ブオンと空気を裂く音とともに、白刃がひるがえった。

躱せたのは奇跡に近い。

剣筋が恐ろしく鋭い、凄腕だよこの人。

 

二刃目で確実に斬られる!

 

「ダメー!!」

 

と、ナハルが自分の頭を投擲。

見事、自分の父親の首と衝突し弾き落とす。

 

「ぬ、ぬお!? な、何をするか!!」

 

今だ!! とにかく無力化しておかないと話し合いもできない。

剣を持った手を掴むと、アームブリーカーを決める。

 

「ガ!?」

 

剣を落とした。

このままグラウンド・コブラツイストに持っていく。

頭がないからそれに合わせて変形させるが、鎧を着ていようと関節を決められたら動けまい。

むしろ寝技なら鎧を着ている分、より起き上がりにくいだろう。

だが向こうも渾身の力を込めて振りほどこうとする。

関節を痛めるのもお構いなしか。

娘の情事を目撃してしまった、父の怒りというやつか。

だが俺も愛の為に負けるわけにはいかない!!

ギリギリと力を振り絞る。

 

「あんさん・・・・・・その辺にしときーな」

 

もう一人いた!?

俺に声をかけたのは、一つ目の鬼だった。

 

「泡吹いとるで、しょうがない旦那や」

 

見ればすでにナハルの父親、お義父さんはぐったりとしていた。

うーむ、無我夢中で気が付かなかった。

 

この一つ目鬼がやぎょうさんらしい。

いつまでも帰ってこない娘を迎えに行くとやってきたらしいがタイミングが悪すぎた。

まあお義父さんの方はやぎょうさんが取り成してくれることになった。

 

「ま、成人した娘の色恋にまで目くじら立てたらあかんわ」

 

意外と現代的な考えのようだ。

妖怪はもっと古風だと思ってた。

まあ、ちゃんと責任を取るならばという話だったが。

それなら何も問題などない。

 

「ナハル・・・・・・その、結婚してくれないか?」

「はい」

 

即答だった。

本当にもっと早くしてればよかった。

あ、籍って入れれるのかな?

妖怪だし・・・・・・ああ、二葉さんが妖怪だって言ってたな。

あの人、既婚者だし聞きに行ってみるか。

でも、いまはいいか・・・・・・

 

「まあ、なんだ、その、これからもよろしくな」

「はい、ずっと一緒にいてくださいね」




導入部やオチは前々からギャグぽくいくかということで決めてましたが、いざ書いてみるとなんじゃこりゃと思わなくもない。
キン肉マンばりに最後はタワー・ブリッジばりのアルゼンチンバックブリーカーにしようかと思ったけど首無いとちょっと無理だよねってことでコブラツイストにしました。

ナハルはデュラハンの逆読みをもじってみました。
首の断面描写は小泉八雲のろくろ首から。
二葉さんは次の話に出てくる二口女さんです。
二口=二つの言葉=二葉

タイトルは僕の彼女は首っだけとどっちにするか迷いました。
どっちの方が馬鹿っぽいだろうと悩み、最終的にこのタイトルになりました。

イラストを描いていただきましたので、それを挿絵に追加したバージョンをpixivに投稿しました。
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=3179355


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ときめきツーマウス

二口女とイチャイチャしたいか?俺はしたい!!


郊外の住宅地、少々人家は疎ら気味。

でもまあ駅には近い、当然駅前繁華街にも近い。

カラオケ、ビリヤードにボウリング、書店にゲームセンター、百貨店やファミレス、ファーストフード、まあブランドに拘らない限り、大抵の遊びや物は供給可。

静かに住むには丁度いい、そんな場所の一軒家がマイホーム。

愛しい妻が待つ我が家だ。

最近忙しくてご無沙汰だったし、師走の超繁忙期を前に少しだけ取れた有給を使って、しっぽりねっとりと構ってやりましょうかね。

そろそろ子供もほしいし。

そう思うと疲れて重かった足取りも実に軽くなる。

我が家が視界に入ってきたところで、人影が見えた。

あれはもう少し山裾に近い方に行った場所に住んでいる、娯楽小説を書いている作家さんだ。

遠目ではあるが月明かりと体格の良さから、見分けが付いた。

隣にはこの距離でもはっきり分かる、月光に照らされて綺麗に輝く銀髪の女性。

そんな二人が仲睦まじく寄り添って歩いている。

それを見ているとこちらも早く妻に会いたくなって、心なしか歩調が早くなっていく。

・・・・・・ん? 気のせいか、銀髪の女性の頭が、いや、まさかな?

ふと、最近この辺りで首の無い騎士が現れるだの、その騎士がツームストンパイルドライバーでKOされただの、一つ目の鬼に簀巻きにして連れて行かれただのという怪談を思い出し、駆け込むように家に飛び込んだ。

 

「ただいま!」

 

玄関を開け帰宅を告げるとパタパタと足音が響き、小さいが良く通る鈴の転がるような声が返ってくる。

 

「お帰りなさい、あなた」

「うん、ただいま二葉さん」

 

腰まで伸びた黒いダイヤのように輝く艶のある髪。

くりくりとして可愛らしい目、すっきりと通った鼻筋。

本人は少々気にしているふっくらとした頬。

少し小さめな、可憐な口元。

白を基調とした清楚なエプロンドレスの上からでも、自己主張が分かる胸。

もっと痩せたいと言うが、自分にとっては程よい肉付きをした魅力的な肢体。

これが愛妻の二葉さんだ。

現金なもので二葉さんを見た途端、さっきまで頭の中にあった怪談など吹っ飛んでしまった。

 

「すぐにご飯にしますか?」

「うん、そうしようかな」

 

上着をハンガーに掛け、ネクタイを外して、ダイニングキッチンにあるテーブルに着いて、食事の支度を手際良く行う二葉さんの後ろ姿を眺める。

うーむ、いいなあこのお尻のライン。

きゅっと締まっていながらも、ちゃんと肉が付いて丸みのあるこのヒップライン。

これが、これが俺の奥さんだと思うと・・・・・・最高です!

 

「ふーたっばさん!」

「ひゃあ!?」

 

もう堪らなくなって、危なくないようなタイミングを計って後ろから抱きしめる。

 

「あ、あなた!?」

「駄目かな?」

「い、いえ、駄目というわけじゃないですけどお料理が・・・・・・」

 

危ないので、味噌汁を温めているコンロの火を止める。

 

「先に、二葉さんが食べたいな」

「ひ、ひうん!」

 

服の裾から手を入れて、もう何度も何度もして来た通りに手が動き、手早くブラのホックを外して、直接その胸の弾力を味わう。

むにむにと胸を優しくこね回してやると、二葉さんの体が小刻みに震え出し、膝の力が抜けてへたり込んでしまう。

乳首をキュッと絞ってやると、ビクンと体を仰け反らせ、潤んだ瞳で肩越しにこちらを見つめる顔がとてもチャーミングだった。

そのまま肩越しに唇を重ね、舌をちゅうっと吸ってやると目をとろんとさせる。

ちゅぴ、ちゅぴという水音と共に舌を絡ませ、その感触をたっぷり堪能して口を離すと、二人同時に荒い息を吐き出した。

 

「ほら、手を付いて」

「は、い・・・」

 

いつも二葉さんが綺麗にしれくれているキッチンは、どこもピカピカだ。

シンクの中には今使っていたまな板に菜箸やおろし金、湯呑みが三客。

シンクの縁に手を付かせ、こちらにお尻を突き出させる姿勢にする。

しばらくご無沙汰してた、まあるくて、餅のように吸い付くようなお尻を思い出して、スカートの中に手を入れ、下着をゆっくりと引き下ろしていく。

じっとりと濡れそぼった布切れは糸を引いて、いやらしい割れ目と繋がっている。

 

「もう、こんなにぐちゅぐちゅになってる」

「や、やあぁ・・・あなた、言わないでください!」

 

人差し指と中指を二本合わせて、押し込んでやるとねっとりと熱くほぐれた秘裂は、にゅるんと容易く滑りこむ。

 

「ひうぅ・・・・・・だめぇ、だめ」

「ほら、もっと素直になって。こっちの口は嬉しそうにしてるよ」

「やぁああ・・・・・・」

 

口とは裏腹に、飲み込んだ指を逃すまいと、貪欲なまでに絡み付き、にゅるにゅるとした膣壁が締め付けてちゅうちゅうと吸い上げるように絞り上げようとうねってくる。

 

「~~~~~~~~~~~~~~~!!」

 

指をお腹の方に曲げて、ぐりゅぐりゅっと壁を撫でてやるとびくんと体を震わせて、それに合わせて呼吸音とも声ともつかないものを吐き出す。

爪で傷付けないように気を付けて、指を曲げたままグルングルンと右に左に関節の可動範囲一杯まで回してやる。

二葉さんはこれが大好きなんだよね。

 

「ひぃぃ! ひん、ひぃ!! ひいぃん!!」

「そろそろ・・・・・・素直になるかな?」

 

ガクガクと体を痙攣させ、明らかに絶頂を迎えている二葉さんのそこをねりねりねりねりとこねてやると、二葉さんの髪がざわざわと蠢き、ひとりでに左右に掻き分けられていき、後頭部の中心を露わにする。

この中心部には実は毛が生えていない。

その代わりあるのが、ぷっくりとした大きな大きな唇。

その後ろの唇が、パクっと開く。

 

【おまんこ、気持ちいいです! ねりねりねりねりとあなたの指でこね回されるの大好き!!】

「い、いやぁ!! 違う、違うの!!」

 

ぶんぶんと首を振って否定するが、後ろの口は止まらずにどんどん言葉を吐き出していく。

 

【違わないの! おまんこの中で指を曲げられてGスポットをカリカリってされると凄く感じるの!! そのままぐるんぐるんってかき回されるとすぐイッちゃう。そのままイッたままのはしたないおまんこをいじめられるのが大好きなの」

「~~~~~~~い、いやぁ!!!】

 

二口女。

割りと有名な妖怪だが、二葉さんはその二口女だ。

こうして感情が高ぶった時などは、素直になんでも喋っちゃうという困った部分がある。

いくら本当の事でも、口にしたくないこと、知られたくないことというのは必ずある。

それが自分の意志で抑えられずに口にしてしまうというのは、物凄く辛かったり恥ずかしかったりするものだ。

まあこの場合は・・・・・・オートでセルフ淫語責めしちゃうので、自分としてはバッチコーイなんだが。

 

「二葉さん、ほらほら、どうしてほしいの? このまま指でくちゅくちゅされるのがいいの?」

【あなたのぉ、あなたの逞しいのください! 奥までおちんちん突っ込んで、子宮をこんこんってノックして欲しいの!! ずっと構ってもらえなかったから寂しくてうずうずしてたのぉ!! 毎日毎日、あなたのおちんちんで、おまんこほじほじしてもらうこと考えてたのぉ!!】

「やだぁ、言わないでよぉ・・・・・・」

 

涙声で、瞳を潤ませてこちらを見つめる二葉さんは、もういっぱいいっぱいだ。

久しぶりだから、のっけからやり過ぎたな。

二葉さんはただでさえ貞操観念が強いから、本気で泣かれそうだ。

そっと後ろの口を手で塞いでやる。

 

「ごめんね二葉さん。有給取ったからしばらくは家にいるから」

「・・・・・・うん」

 

まあそれはそれとして頂きます!

ジッパーを下ろして、さっきから痛いほど膨張したそれを取り出すと、茹で上がった割れ目に押し当ててやる。

驚くほどすんなりと挿入され、一気に奥まで到達してしまった。

 

「あっ、あ・・・・・・・あ~~~~~~~!!」

「入れただけでイッちゃった?」

【イッたのぉ!! イッてる、凄いのきてるぅ!!】

「じゃあ、動くね」

「や、やぁ。ま、待ってあな、ひいっ!」

 

ぬめぬめと絡みつく肉壁が、一物をぎゅうぎゅうと締め付け、襞の一枚一枚が扱き上げてくる。

腰を揺すってやると、その度にびくびくと痙攣して、膣内が蠕動して凄い。

 

「イキっぱなしだね」

「ひぁあああ! ひぬ、ひんじゃうう!!」

【子宮こんこんってされてGスポットゴリゴリってカリでこすられてバカになるのぉ!!】

 

どろどろに茹だった蜜壺をぐちゅぐちゅと掻き回しながら、後ろから覆い被さり、両手でむにむにとその乳房をたわませて、時折その先端を軽くつねり、絞り、こりこりと揉んでやる。

ガチガチと歯を鳴らし、狂ったように頭を振り乱す二葉さん。

 

「イクぅ、またイクぅ!! もう、もう許ひてぇ!!」

【狂っちゃうぅ! イキっぱなしで狂っちゃうのぉ!! 早くぅ、早く、あなたの精液注いでとどめを刺してくださいぃ!!】

「う、ん・・・・・・もう、射精るね」

 

ごぷっという感覚とともに、熱い汁が二葉さんの子宮にどくどくと注ぎ込まれていく。

ゆっくりと時間をかけて注ぎ終わると、一物をずるるっと引き抜いていく。

二葉さんはその感触にまたびくんと痙攣し、荒い息を吐きながら、手をかけていたシンクに縋りつくように、その肢体を呼吸に合わせて揺らし虚脱していた。

綺麗な桃色の陰唇は、自分の男根の形に押し広がったままで、絶頂を迎えたばかりの筒状の肉壁はその卑猥な襞の一枚一枚から、どろどろと蜜を粘り垂らしている。

ぱっくりと開いたままの口の最奥ではぷっくりとした子宮口が丸見えになって、注ぎ込まれた白濁した汁をブジュブジュと泥濘から足を引き抜くような音と共に吐き出していた。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「あの~二葉さん? おかわりを」

 

無言で味噌汁をよそって、こちらに差し出す。

ちょっとやり過ぎたせいか拗ねてしまった。

 

「ふ、二葉さん・・・・・・?」

「・・・・・・・・・・・・すごく恥ずかしかったんですからね」

「ごめんなさい」

「お料理してる時に、あんな急に、お風呂も入ってないのに」

【でもすごく気持ちよくておかしくなりそうだったの。あなたの臭いですごく興奮しちゃった】

 

慌てて頭に手をやって、後ろの口を塞ぐ二葉さん。

茹で蛸みたいに真っ赤になって、今にも泣きそうだ。

まずいな、これは。

何か話題を・・・・・・

そういえばシンクに湯呑みが三客あったな。

 

「ふ、二葉さん、今日はお客さん来てたの?」

「え、ええ。三丁目の方に住んでる作家さんいらっしゃるでしょ? ご結婚なさるから先程ご挨拶と相談にこられたの」

「ああ、帰ってくる時に二人で歩いてるのが見えたよ。そうか、あれはうちに来てたのか」

 

もう少し早ければ間に合ったのか。

でも挨拶はいいけど、相談って言ったよな。

何を相談されたんだろうと思って訪ねてみると。

 

「人間と妖怪との、婚姻について」

「・・・・・・え!?」

 

ということは、つまり。

 

「ぎ、銀髪の女の人だよね?」

「ええ。西洋のろくろ首みたいな妖怪だとか」

 

頭が外れたように見えたのは見間違いじゃなかったのか。

 

「いるものなんだなあ、他にも」

「そりゃ、いなかったらお役所も受け付けてくれないわ」

 

そう、意外なことに役所は普通に妖怪との婚姻届けを受理してくれる。

割と昔からあったことみたいで、知ってる人は知ってることらしい。

でも公にはしないという方向。

二葉さんは人間から先祖返り的に発生した妖怪だから最初から戸籍があるけど、自然発生した妖怪なども申請すれば戸籍は取れる。

納税その他の義務も発生するけど。

 

「知らなかったから、受理されないんじゃないかってヒヤヒヤしてたっけ」

「そんなこともあったわね」

 

入籍するときに役所で「二口女さんですか、こっちの書類にも記入おねがいしますね」と言われた時はびっくりした。

当時は結構悩んだり思い詰めたり、大変だったな。

だというのに、あっさり片付いて拍子抜けしたっけ。

 

ズズっと味噌汁を啜り、冊切りにした山芋に箸を伸ばす。

にんにくの醤油漬けもあったっけ。

 

「あ、あなた?」

「う、ん・・・・・・二葉さん」

 

おかずは十分に足りてるのに、わざわざにんにくまで出してもらったから、察しがついたようだ。

 

「食べ終わったら、一緒にお風呂、入らない?」

 

真っ赤になってしまった二葉さんは、それでもこくりと頷いてくれた。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「は、あぁ・・・・・・あ、あなたぁ」

 

泡まみれになった二葉さんの胸を後ろから、グニュグニュグニュグニュと揉んであげる。

脇の下から回した左右の手で、掬い上げるように持ち上げ、指をその乳脂肪に優しく食い込ませていく。

 

【あはぁあ!! おっぱいすっごく感じるのぉ!! あなたの指がこりこりって乳腺に触れる度に、電気が走ったみたいにおまんこまで疼くのぉッ!! もっとぉ、もっひょぶ】

 

はいはい、二葉さんが恥ずかしがってテンパっちゃうから、後ろの口は塞いじゃおうね。

後ろの口を唇で塞いで、舌を引っ張り出しちゅうちゅうと吸ってやる。

 

「や、やぁ、あなた、後ろの口、そんなにしちゃ、や、やらぁ」

 

口内というのは結構敏感で、性感帯としても十分な快感をもたらす場所だが、二口女の後ろの口は特に敏感なようで、こっちで濃厚なキスをしてあげるとすぐ蕩けてしまう。

肉厚の舌に自分の舌を絡ませて、裏側をねっとりと舐め上げてやるとすぐに甘い声を上げる。

 

「ひゃううううンンーーッ!」

 

指で摘んでいると、乳首の先がこりこりと勃起してくる。

これくらい固くなれば、多少力を入れても痛みより快感の方が勝るようになる。

ギュウッと摘み上げると、ビクンと体を弾ませて達してしまった。

 

「あッ、あぁ、はぁッ、はぁ、や、やぁあ、だめぇ、あなたぁ、い、今、クリ、いじっちゃだめぇ」

 

皮の上から、撫でるようにクリトリスを刺激する。

こっちもすっかり固くなって、こりこりとしている。

茹だった性感を冷まさないように、イッたばかりの感覚が落ち着くまで刺激を弱めて、股座の肉をやんわりと揉みながら、周りの肉で挟むように大陰唇に緩やかに刺激を加えていく。

 

「あ、あなたぁ・・・・・・」

「いくよ、二葉さん」

 

落ち着いたのを見計らって、体をこちらに預けさせ、背面座位の形でゆっくりと挿入していく。

 

「あッ!? あぁ!? は、はいって、くりゅ」

 

ぐちゅぐちゅっと音をさせながら、膣道を拡張して肉棒を埋め込んいく。

中のひだひだの細部までゆっくりと味わいながら子宮口まで埋め込むと、そのまま体を倒して寝そべる。

少々動きにくいが、まだまだイッたばかりで敏感すぎる二葉さんには、これくらいのゆるゆるとした動きの方がいいだろう。

それに全身にぴったりと肌が密着して心地良い。

揺するように腰を動かして、こんこんと子宮をノックして二葉さんに甘い声を上げさせる。

 

 

「あ、あなたぁ、こんこんって、こんこんってするのだめぇ」

「これ?」

 

こんこんっと、子宮を突いてやる。

 

「ひぁ、あ、あああああ!?」

【イク、イクぅ、イッちゃう!!】

 

膣肉が痙攣して絡み付き、精液を搾り取ろうと卑猥に蠢き、その快感に逆らわずにたっぷりと射精する。

 

「あ、あぁ・・・・・・はぁ、こ、こんなにたくさん。に、妊娠しちゃう・・・・・・」

「嫌?」

【嫌じゃない!! 大好きなあなたの精液どぷどぷって注ぎ込んで、孕ませてほしいの!!】

「う、うぁ・・・・・・」

 

さっきから赤面しどうしの二葉さんはとっても可愛い。

でもね。

後ろの口を手で塞いで、お喋りを中断させる。

 

「二葉さん、ちゃんと前のお口から聞きたいな?」

「あ、や・・・・・・・」

「僕とじゃ嫌?」

「い、嫌じゃない・・・・・・あ、あなたの赤ちゃん、孕ま、せてください」

 

流石に肌寒い季節。

一度湯船に浸かって、温まるが、温まるような運動も頑張ってしまう。

正面から抱き合って、口を吸い合い、ばちゃばちゃと水音を響かせる。

 

【いいのぉ、あなたぁ、大好きぃ! 大好きなあなたの赤ちゃん妊娠させてぇ!!】

 

後ろの口が、もう駄々漏れにいやらしい言葉を吐き出しているが、すっかり茹で上がった二葉さんは、ぎゅうとしがみつくのに夢中だ。

頭足類の触手のように動かせる髪の毛も使って、ぎゅうぎゅうと体もあそこも力一杯抱き着いてくる。

二回ほど励んだ辺りで逆上せそうになったので、休憩がてらお互いを洗いっこしたりしてお風呂から上がった。

・・・・・・・・・・・・毎日でもしたいですね、はい。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

お風呂の次は寝室で。

二葉さんのお口は小さいので、奥まではちょっと厳しいが、自在に動く髪の毛を筆のようにして亀頭をさわさわと撫で上げてくる。

鈴口をちろちろと這う舌の感触がまた堪らない。

あっという間に、精液を搾り取られてしまう。

 

「う、あ・・・・・・ふ、二葉さん、ちょ、ちょっと止めて」

「ダ・メ・で・す。あんなに恥ずかしいことして私をイジメて・・・・・・お返しです」

 

尿道に残った精液もちゅうちゅうと吸い出され、強すぎる快感に腰ががくがくする。

いつの間にか体勢を変えた、二葉さんが後ろの口で男根を飲み込んでいく。

 

「う、ああ!?」

 

肉厚の舌がねっとりと陰茎全部を包み込んで、口内でぐるんぐるんと動きまわって肉棒を弄ぶ。

体勢の関係で、ストロークを使うのが難しいが、熱くて厚い舌の感触は補ってあまりあるものだ。

陰嚢まで丸ごと呑み込まれ、口内で転がされるのもこっちの口ならではのものだ。

 

夫として負けていられないと、こっちも腰を突き込む。

ごりっと喉の粘膜の感触が伝わってくる。

 

「あ、あぁぁぁ・・・・・・」

 

かなり苦しいみたいだけど、でも二葉さん、これが好きなんだよね。

ごりごりっと後ろの口内から、喉奥まで犯していく。

 

「あ、うぁああ、あ、頭に、ひ、響くの。脳までこんこんされてるみたいで、お、おかしく、おかしくなるぅ」

 

喉の奥の奥まで突き入れて、精液を流し込んでいく。

ひくひくと痙攣した二葉さんから、肉棒を引き抜き、足を広げさせ片足を肩に担ぐ。

 

【あ、あなたぁ・・・・・・こんなにされたのにまだまだ欲しいってひくついてるエッチなおまんこにお仕置きしてぇ!】

 

亀頭をぱっくりと熟れた赤い肉ビラに押し付けて、その割れ目を押し広げていく。

 

【あはぁん! おまんこいっぱいまで広げられてるぅ! お豆までびんびん感じるくらいみっちり詰め込まれて入ってくるぅ!】

 

一気に奥まで挿入して、腰を押し付けてグリグリグリグリと擦ってやる。

 

【しゅごいのぉ! 子宮でおちんちんにちゅっちゅってキスしてるのぉ!!】

 

熱い体温を伝える血管がドクンドクンと脈打つ鼓動まではっきり分かるくらい敏感になって、それでもなお互いを貪り合っていく。

突く度に、ぷるぷると震えるお尻をむにむにと揉みしだき、その穴に指を潜り込ませる。

こっちの二口も散々使い込んできたから、すっかり柔軟になって簡単に指を二本も咥えこんでしまう。

 

「あなたぁ、す、凄いのぉ、狂っちゃうぅ!」

【あなたぁ、す、凄いのぉ、狂っちゃうぅ!】

 

前後の口がハモりだす。

こうなるともう、終わるまで乱れまくるんだよなあ。

中指も追加して、菊門をほじってやる。

こっちでもしたいけど、今日は全部子宮に注ぎたい。

抱えていた足を下ろすと、後背位に体勢を変えて再び突き込む。

その度にぷるぷると震える胸を鷲掴みにして乳首を扱いてやる。

 

「乳首ぃ! 乳首きゅってしゃれるとしゅっごくきもちーのぉ!!」

【乳首ぃ! 乳首きゅってしゃれるとしゅっごくきもちーのぉ!!】

 

腰を振り、肉棒を突き入れてやる度に、ガクガクと身を捩り、快感に悶えて嬌声を吐き出してくる。

その度に、白くてまあるいお尻がふるふると震えて、とってもエッチで興奮する。

好きな女をよがらせ、自分の体液を注ぎ込む。

男としての喜びを味わいながら、何度も何度も行為に及び続けた。

結局、二つの口が猥らな歌を歌い終えたのは、明け方近くのことになった。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「あなた、準備出来ました?」

「うん、いつでも出発できるよ」

 

お昼過ぎまで寝てしまったから、洗濯に買い出しにちょっと忙しい。

まあ二葉さんの支度が一番時間がかかるんだけど。

外で変なコト言わないように、後ろの口を塞ぐように髪を結い上げるのに手間がかかるのだ。

髪が動かせるんだから簡単そうに思えるけど、女性の髪型というのはそう単純にはいかないようだ。

 

「今晩は、何が食べたいですか?」

「うーん、鰻とか、とろろとか。レバニラとかもいいかな」

「・・・・・・・・・・・・」

 

睨まれてしまった。

 

「ちょ、ちょっとだけですからね」

「うん」

 

真っ赤になって横を向く、照れ屋な二葉さん。

こういう可愛いところが大好きだよ。

二葉さんにはできるだけ、素直に思ったことを伝えるようにしている。

だから今、思ったことを伝えたら、ますます赤くなってしまった。

 

「そうだ、せっかくお休み取れたんだし、遊んでいこうか? どこか行きたい所ある?」

「え、ええと、実は、見たい映画がありまして」

「じゃあ見ていこう。映画は僕も久しぶりだよ」

 

エッチな事もいいけど、こうして一緒の時間を過ごすのも大事なことだ。

車に乗って、買い出しに行く。

その隣に好きな人がいる。

それはとっても幸せなことなんだ。

 

「あなた・・・・・・」

「うん」

「わ、私も、その・・・・・・大好きですからね」




ということでエロ度増々で二口女さんでした。
既婚者、口が二つある、髪が触手のように動く。
ちょっと使える属性が多くないですか、書くの大変です。

住んでる立地条件は、昔出張で行ってた三重県辺りをイメージしてますが、特にどこと決めてるわけではないです。

これ書いてる最中に、PCのネットの調子が悪くなってそれの原因究明に追われるわで、ちょっと遅くなってしまいました。

役所が普通に妖怪との婚姻届け受理してくれますってのは次の話くらいで出す予定でしたけど前倒しで出しちゃいました。
次は烏天狗ちゃんです。
後は鬼、吸血鬼、妖狐と続きます。この三編はちょっと毛色の違う話になります。
書いてる最中にどんどんネタが出てきて、すでにプロットが出来てしまっているという。迸れ俺の妄想力!


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恋する烏天狗はせつなくてお兄さんを想うとすぐHしちゃうの

烏とかの羽の色って綺麗だよね。
タイトルは三千世界の鴉~をもじろうとしたけど馬鹿っぽい感じにならなかったので、安直なパロタイトルに逃げてしまいました。


「あ、はぁ・・・ん」

 

窓から入り込む月明かり。

うっすらとした闇の中で、甘い嬌声が響いていた。

僅かな光源の中でも、白く浮かび上がる肌。

髪色は闇に溶けこむような見事な黒。

それが悩めかしく淫らに踊り揺れるたびに月の光を反射し、しっとりと濡れたような肩まである黒髪に美しい干渉色を浮かび上がらせる。

 

「あ、あ! ひ・・・・・・いっん! いいいいいいぃ・・・・・・」

 

寝そべった男の上に跨がる女の顔は、まだまだあどけなさの残る少女のものだった。

騎乗位、俗に四十八手と呼ばれる体位では時雨茶臼。

少女が自ら腰を揺らすと、その外見には少々不似合いな双丘がゆさりゆさりと揺れ、それに合わせベッドがギシリ、ギシリと軋み、その度に快楽に咽び泣いては甘い声を上げる。

だが少女が男の欲望を受け入れているのは、女性器ではなかった。

尻を振るたびに、尻穴から男の肉棒が引き出され、また呑み込まれていく。

排泄口を犯されながら、その声も顔も快楽に蕩けきっていた。

それはこの行為がもう何度となく繰り返され、手慣れたものである証左でもあった。

 

「芹、お尻でたくさんイケるようになっちゃったね」

「あ、はぁっ! お、お兄ひゃんがぁ、んっ、はぁっ、し、仕込んだんじゃ、ないですかぁ」

「ん~、嫌なら止めようか?」

「あ、や、だ・・・・・・あ、うぅ」

 

思わず発した言葉に、羞恥を感じて顔を伏せてしまう。

 

「お、お兄さんが羞恥プレイをしてきますぅ」

「したいならそうするけど?」

「・・・・・・・・・・・・ま、また今度でぇ」

 

羞恥プレイは、また今度。

そういうことになった。

 

「じゃあ今はアナルセックスの時間です」

 

と、芹と呼ばれた少女の動くに任せていた男が、腰を突き上げた。

 

「かひぃ、ん。いいいぃぃん、おひりぃ、おひりぃすごいのぉ」

 

少し前までは排泄にしか使用されていなかったその穴は、今やすっかり性器へと変貌していた。

きつく閉ざされ、固かった菊肉は丹念にほぐされ、柔軟性に富んだ淫肉へと作り替えられてしまったのだ。

膣の粘膜を擦り上げられるのとはまた別種の、肉の輪を広げられ、腸に肉を詰め込まれる圧迫感と、引き抜かれ開放されるカタルシスの輪舞曲。

突き上げられ、腸襞を擦りながら侵入してきたペニスに、腸壁全体がいやらしく吸い付いていく。

全体がねっとりと絡み付く、それは動く度に尻穴全てに肉欲の味を響かせるということだ。

芹は自分では意図的に避けていた弱い部分を集中的に擦りたてられ、たちまちのうちに絶頂まで押し上げられていく。

 

「あっ! だ、だめぇ!! イ、イク、イクぅ・・・・・・ひぃん」

 

ブルブルと身体をわななかせ、絶頂の快感に翻弄され、芹の身体から力が抜け崩れ落ちた。

撓垂れ掛かる形で、男の胸に顔を埋め、荒く呼吸を繰り返す。

その豊かな二つの膨らみが、男の胸の上で潰れ、柔らかさを主張するように形を変える。

 

「芹、たくさんイケたね。良い子良い子」

 

少々茶化す口調だったが、その黒い髪を梳くように、男の手がいたわるように優しく頭を撫でる。

その感触に芹は頬を弛めて、微笑みかけた。

 

「えへぇ~、お兄さんに頭撫でられるの好きぃ」

 

と、男の空いている片方の手が芹の背中に伸びる。

 

「ひぁ!? お、お兄さん、そ、それ、だめぇ! い、今、まだ敏感だからぁ!」

 

芹の背中、肩甲骨の辺り、そこには少々不自然な程に盛り上がった箇所があった。

男の手が手慣れた手付きで、その出っ張りを愛撫する。

背中の性感帯というのは個人差が激しいものだが、芹は非常に敏感な部類に入る。

特に肩甲骨辺りの出っ張りは、彼女の感覚が集中している箇所の一つだった。

何故ならば。

 

「あ、だ、だめぇ! 出ちゃうぅ、出ちゃいますよぉ、お、お兄さぁん!!」

 

バサリと、大きな羽音が響いたかと思うと、芹の背中から大きな黒い翼が飛び出してきた。

深みのある輝くような色艶の美しい黒色の羽。

烏の物に類似した、人にあるべからずモノ。

芹という少女が、人間ではなく妖怪だと示すものだった。

烏天狗と呼ばれる妖怪、それが芹なのであった。

 

「何度見ても、何がどうなってこの翼が身体に収まってるのか、よく分からんな」

「私もよく知りませんよぉ」

「まあそんなものか」

 

本人だからといって、自分の身体構造を把握しているなどという話もない。

そして男は疑問に対して妖怪だしな、と思考停止することにして、愛撫を再開する。

お尻から腰にかけた括れ、そして背中側から子宮の辺り、仙骨の部分を責められるのが弱いことはすでに発見・開発済みだった。

片手でそこを重点的に攻めながら、残った手が徐々に、徐々に、下半身から上半身に這い上がっていく。

太股から、お尻、腰、脇腹、背中の中心の脊髄をなぞる中心線を経て。

そして翼の根本に指が触れると、芹がびくんと身体を震わせ、潤んだ瞳で男を見る。

 

「羽、撫でられるの好きなんだよね?」

「す、好きぃ、羽さわさわってされるの好きぃ」

 

すっかり快楽に茹で上がった身体は、敏感になった翼を撫でられる度に甘く反応を示してしまう。

かりかりと爪で掻いてやると、左右に激しく身体をくねらせ悶え泣く。

 

「烏天狗って、みんなこんな風に羽が感じるの?」

「し、知らないぃ、知らなぃよぉ!!」

「でも、前に天狗って性欲が強いって言ってたしー」

「知らないぃ、知らないぃ!」

 

神経系の集中した根本をしごいてやると、芹は髪を振り乱して悶え、白い肌はすっかり赤く茹だり、びくびくと快感に震え上がっている。

ぴんと勃起した乳首がその度に男の胸板で擦られ、どんどんと快感を高めていく。

ポタポタと、だらしなく開いた口から涎が滴り落ち、一物を咥え込んだままの肛門がぎゅうぎゅうと、食い千切らんばかりに締め付けてくる。

 

「だめぇ、またイク、イクぅ、羽でイッちゃうぅ」

 

バサッと翼が垂直に立ち、小刻みに震え、やがて力なく垂れ下がっていく。

 

「ほーら、俺はまだだからもう少し頑張る」

 

尻穴への抽挿を再開すると、芹は身悶えて喚き懇願した。

 

「イッてるぉ! イッてるぅ! やめ、やめてぇ、お兄さぁん!!」

「でも、芹ってイッてるのを責め立てられるの好きだろ?」

「お、お兄ひゃんがぁ! お兄ひゃんが、面白がってぇ責めるからぁ!! く、くしぇにぃ、なっちゃったん、んん、じゃ、ないですかぁ!!」

 

男に抱きしめられ、逃れることのできない肛門への抽挿に過剰すぎる快感が押し寄せ、狂るったように全身を痙攣させ、バサバサと翼を羽ばたかせ抵抗するが、巻き起こす風が火照った身体を冷ます程度の役割しか果たさない。

目はすでに焦点が合っておらず、涎は垂れ流し。

手はベッドのシーツを力の限り握り締め、快感の瀑布に翻弄される意識を辛うじて繋ぎ止めていた。

幾度目かの突き込みとともに、直腸の奥へと白濁した液を注ぎ込まれると、肛虐の虜にされた芹が激しい絶頂を迎える。

しばらくそのまま抱き合い、お互いの体温を感じながら微睡んでいたが、やがてゆっくりと肛門から男根を引き抜いていく。

 

「ん、ふぅ・・・・・・」

 

甘い声を上げて、芹が震える。

ぽっかりと開いた尻穴から、どろりとした白濁液が溢れ出して、シーツに染みを作っていく。

 

「う、わぁ・・・・・・なんかたくさん出てきますよぉ。お兄さん、どれだけ出したんですかぁ?」

「抜かずの三発もすれば、まあ、ね」

 

男はちょっとやり過ぎたかと、苦笑を顔に張り付かせ、芹の頭を撫でた。

 

「これぇ、お尻の中、前もってキレイにしてたからいいですけどぉ、そうじゃなかったら大変なことになってましたよぉ」

「やめて、そういう生々しいの聞きたくない。夢を壊さないで」

 

何が大変かは、まあ、触れない方がいいだろう。

かぶりを振る男の様子に、芹はシシシと笑いながら抱き付き、ついばむように唇を合わせた。

そうしているうちに、だんだんと一物が再び怒張を始める。

 

「お兄さん、まだ元気ですねぇ」

「・・・・・・ああ、まだしたい」

「それじゃぁ、まずお口で綺麗にしてあげますねぇ。でも、どれだけ溜めてたんですかぁ?」

「芹に最後に会ってからずっとかな」

「って、三ヶ月もずっとですかぁ!?」

 

肯定の意思を示した男を、珍しいものを見るようなしげしげと眺めた。

 

「今までずぅっと私の中に射精しまくってましたもんねぇ。私の中じゃないと駄目になっちゃいましたかぁ?」

「・・・・・・そうかもしんない」

 

天狗とは古来より人を惑わし、魔道へと誘うという。

まさにその言い伝え通りに、男はこの烏天狗の少女の色に惑ってしまったのだった。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

あれはようやく寒さも和らぎ始めようという初春の事。

男は気紛れに、近くの山へ森林浴に出かけたのだった。

特に何か名所があるというわけでもない、よくあるような里山だ。

だからいるのは山菜取りか、男のように気紛れに森林浴に来るような物好き程度。

何の気なしに覗きこんだ崖に近い急斜面、人が倒れているのを見つけたのはまったくの偶然だった。

足を踏み外して転げ落ちたのかと、慎重に降りて行った男が見たのは、驚いた事に背中から黒い翼が生えた少女だった。

片方の翼が折れており、苦しげに呻く声が聞こえてきた。

驚きもあった、翼が生えた少女という異常事態に、いくらかの警戒や怯えもあった。

だが見捨てられる程に薄情ではなかった男は、彼女を助けることにしたのである。

それが男と芹との出会いだった。

家に連れ帰り、治るまで男の世話になったのが交流の始まりだった。

 

「私は烏天狗ですよぅ」

「天狗ってのはもっと鼻が長いとか、クチバシが生えてたりとかそういうもんだと思ったけど」

「それは男の天狗ですぅ。天狗は修行者が動物霊を降ろしたり、呪法を学んだりして肉体を変化させたりしますから、姿は様々ですよぉ」

「じゃあ男の天狗は、山の中に篭もりっきりなのか?」

「いいえぇ、大抵は修行でそういう異形に変化できるようにするのでぇ、ほとんどは人間と同じように暮らしてますよぉ。修行のために山に家がある天狗が多いのも事実ですけどぉ」

「芹も、羽以外に変化するの?」

「女の天狗はぁ、産まれた時にある羽くらいですねぇ。女性が変化すると、その、こ、子供を作る機能に影響が出やすいのでぇ、大抵は修行とかはしないですねぇ、だから天狗は凄い男社会ですよぉ」

 

だから家族は放任主義の傾向で、その反動か甘えたがりの部分があった。

お喋りも大好きで、芹は男とずいぶんと色んなことを話したのもあり、すぐに打ち解けて、お兄さんと慕ってくるようになるのに然程の時間は掛からなかった。

一人暮らしの寂しさがあったのか、あまり口数の多くない男も、不思議とそれが楽しみになっていたのも大きい。

学校では優等生で通っていること、家族は兄が二人いること、密教系の修行者で道場も開いていること、昔、修行に来ていた門下生が厳しい修行の総仕上げにその兄との稽古に来ていること。

その人は人間でありながら天狗と互角に渡り合えるらしいということ。

芹はそのせいで家が慌ただしくなったため、出かけようとして山中を飛んでいたところ、樹の枝に翼を引っ掛けて落ちてしまったという。

 

「私はぁ是害坊って大陸の天狗に連なる系譜ですぅ」

 

なんでも中国の方で最強に近い暴れっぷりの天狗だったが、日本にやってきた時に、比叡山のお坊さんにボコボコにされて、湯治して帰っていったという逸話がある。

その時に一緒について来てた兄弟や子分の天狗が何人か日本に残ったのが先祖に当たるのだと語った。

 

「どんだけ強いんだよ、日本の坊さんは」

 

寺生まれって凄い。

 

「日本は霊的には魔境だそうですねぇ。芹は会ったことありませんけどぉ、この国の貴人の方に一代で大天狗になった方もいらっしゃるようですよぉ。確か、人外大魔縁って名乗ってらっしゃるそうですぅ」

 

治ってからもお礼にと、ちょくちょく男の住むアパートの一室に食事を作りに来るようになり、やがてつい手を出してしまい関係を持つようになった。

天狗は性欲が強い傾向にあるらしい。

そして意外にもすぐに積極的に求めてくるようになった。

アダルトなおもちゃを使ったり、お尻でしてみたりと、なんでも結構すんなりと受け入れてくれた。

 

そしてほとんど日を空けずにやってきては肉欲に溺れていたが、ある日を境にぷっつりと来なくなってしまった。

今までは長くても一週間と空いたことがなかったが、もう三ヶ月が過ぎようとしていた。

 

「結局、セックスフレンドでしかなかったってことかね?」

 

彼女の残していった、抜け落ちた一枚の黒い羽根を弄びながら、男はひとりごちる。

少々ずぼらだった男が、身嗜みに気を使い、小まめに風呂に入り歯を磨くようになった習慣もそろそろまた昔のように戻りそうだった。

 

「それとも、やはり尿道がマズかったか?」

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「芹、今日は新しいおもちゃがあるんだ」

「あ、新しい、その、バ、バイブですかぁ? わ、私は、そのぉ、お兄さんのでいじめられる方がぁ、好きなんですけどぉ」

 

そういう芹の顔は、それでも期待の表情を浮かべていた。

男が取り出したのは直径は5mm程の棒状の物体。

それを見た芹は一瞬、ビクリと身体を震わせる。

 

「針かと思ってぇ、ちょっとびっくりしちゃいましたぁ。ピアスの穴でも開けられちゃうのかと思っちゃいましたよぉ」

「したいの?」

「それは嫌ですぅ」

「まあ、俺もそういう趣味はないから」

 

ピアスは本気で厭だったのだろう。

それを聞いて、芹は安堵の息を吐き出した。

 

「ま、取り敢えず使ってみよう」

 

まずは愛撫から。

軽くついばむように、唇を吸った。

少し強めに、ぐいっと押し付けるように芹からも返礼。

ほのかに香るソープの匂い、シャンプーの香気が鼻をくすぐる。

微細な体温の心地良さ、触れるだけで虜になりそうな肌の味。

ねっとりと舌を絡め合い、吸ってみると粘膜的な軟らかい感触が伝わってくる。

甘い、甘い、底知れぬ甘美な幸福感に陶酔していく。

それは濃度を増していき、生々しい快楽となって体と脳を犯していく。

 

「芹、ベッドに座って、足開いて」

「は、はいぃ・・・・・・」

 

もはや手慣れたものとはいえ、やはりそこを曝け出すのは羞恥が伴なう。

芹の顔には、快楽のためだけではない朱が差していた。

広げられた足の付け根から、男の片手が芹の中に侵入してくる。

親指が陰核を包皮の上から揉み解し、キスによりすでに濡れそぼっていた膣内へ人差し指と中指が、残った二本の指が腔内へと侵入し、芹の下半身を蕩けさせいく。

 

「ひぃん、これ、これぇ、だめぇ、おかしくなるぅ」

 

ぐにり、にゅぐにゅぐっと指が陰核も膣穴も尻穴も、混ぜ合わせるように蹂躙していく。

指で何度も何度も丹念にほぐし、こんこんとその秘裂から溢れだしてきたところで指を引き抜いていく。

放したくないとでもいうように粘膜が吸い付いて、きゅぽっと音が響いた。

 

「やぁ・・・」

 

その音に羞恥を感じて、頭を振る芹。

それに構わず、粘膜という粘膜を舐りとってやろうという勢いで、舌が膣内に入り込み、襞を広げて卑猥に蠢き回る。

そしてクリトリスの皮を剥かれ、直接吸われた途端、芹は達してしまった。

早くも骨抜きにされて、されるがままになってしまった芹に、いよいよ新作が持ち出された。

うつ伏せにされ、お尻を突き出させた芹の秘所に、それが迫ってくる。

かなり細長いバイブだ。

お尻の快楽も覚え込まされ、太い一物も飲み込めるようになった。

だから何てことはないだろう、と少し惚けた頭で考えていた芹だが、次の瞬間それが間違いだと気付かされた。

 

「お、お兄さん!? そ、そこ、そこはぁ、お、おしっこのあ、穴ぁ!!」

「いやいや、いいんですよーここでー、尿道用のバイブだし」

「にょ、尿道用ってぇ」

 

そのバイブが侵入してきたのは尿道口だった。

敏感に過ぎるその粘膜を蹂躙されて芹の身体が跳ねる。

その衝撃に立ち直る間もなく、次に芹を襲ったのは沁みるような熱さだった。

 

「あ、熱ぃ!? あ、熱いいいぃーーっ、お、お兄さん、灼け、おしっこの穴灼けっちゃってるぅ、な、何これぇ!!」

「あー、大丈夫、大丈夫。ほら雑菌入って尿道炎とかなると怖いしさ。アルコール消毒しといたんだよ、バイブ。だからちょーっとしみるかもねーってだけだから」

「ちょ、ちょっとってぇ、熱、熱いぃ!!」

 

だがその熱さは逆に芹の感覚を焼いてしまい、開発もされていない敏感過ぎる尿道を犯されながら、痛みよりも熱さが優って芹を狂わせていった。

敏感過ぎる感覚は痛みと同義と言ってもいい。

それがアルコールの熱さでかき消されてしまう。

男がちゅこちゅこと傷を付けないように、慎重に尿道のバイブを動かしていく。

 

「や、だ、だめ、だめぇ! う、うごかひゃないでぇ」

 

尿道の刺激にがくがくと身体を震わせわななきながら、快楽とも痛みとも判別できない熱さに咽び泣く。

男が空いた手で陰唇を押し開き、膣肉が外気に晒された。

 

「うわぁ、凄いいやらしい。ほらほら、尿道の方から圧されて、おまんこの中が盛り上がってるよ」

「や、やぁ~、み、見ないでぇ」

 

盛り上がった部分を指で撫でてやるとたちまちのうちに達してしまう。

膣は感覚神経の少ない鈍感な部分だが、芹はすっかりと開発されきってしまっていた。

膣内で感じる数少ないスポット。

俗にいうGスポットは、その名の通り点状だ。

丹念に発掘された快感の地はその点をすっかりと広げられてしまい、簡単に止めを刺されてしまうウィーク・ポイントへと開墾されてしまった。

 

「さて、じゃあ本番いこうか、スイッチ入れるよ」

「へ、ヘァ?」

 

芹は尿道を侵食するそれが、バイブであるということをすっかり失念させられてしまっていた。

バイブとは振動のこと。

それがないのならば張り型と呼ばなければならない。

だからバイブであるそれが振動するのは、あたりまえのことだったのだ。

 

「------!?!!?!?!?」

 

振動そのものは強いものではなかった。

ただ敏感過ぎる尿道にはその程度の微振動も、狂うほどに強烈な電流を神経に流し込むには充分なものだった。

もはや言葉にならない絶叫を、吐き出すこともできないほどの感覚。

 

「じゃあ、挿れるよ」

 

続いて男の性器が、芹の膣にぐちゅりと侵食してくる。

その瞬間、芹は絶頂に押し上げられ、降りるための梯子を外されてしまった。

バイブの振動でクリトリスの根本を刺激され、尿道からGスポットを押し上げられたために、男根が動く度にそこを擦り上げられてしまう。

もはや言葉も出ず、腰をうねらせて官能の嗚咽を漏らすばかりだった。

 

「挿れただけでイッちゃった?」

 

膣肉が激しくうねり、さらに尿道に刺さったバイブからの振動が一物に伝わる感触にあっという間に射精感が込み上げてくる。

何だかんだ言って、芹がイッたばかりのところを立て続けに責め立てられるのを気に入っているのを知っている男は、それでもやめずに抽挿を続けていく。

押し込んだ男根を引き抜いていくと、絡みついた肉が引っ張られ婬肉が盛り上がっていく。

奥まで押し込み、子宮を軽くノックされるだけで達してしまい、また引いてはその感触で達する。

いつの間にか背中から飛び出た翼が、バサバサと狂ったように羽ばたき、巻き起こった風で部屋の中の小物が散乱していく。

あっという間に男も射精を促され、その子宮へ精液を注ぎ込んでいく。

 

「~~~~あっ!!! ひっ!?!?」

 

がくがくと痙攣する芹を男はなおも責め立てた。

 

「じゃあ、お尻も挿れてあげるね」

 

別のバイブを取り出して、それを肛門へとあてがうと、さして抵抗もなく太いバイブを飲み込んでいった。

肛門へ侵入された衝撃に、芹は獣地味た咆哮を上げると、一際大きく身体を震わせ、失神してしまうのだった。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

三ヶ月前の最後の情事を思い出し、来なくなった原因はそれだろうかと思い悩む。

 

「やっぱ尿道はまずかったか、尿道は」

 

でも、特に文句は言ってなかったし、いつも通りだったんだがと思いながら、寝返りをうった。

いつも通り、一緒にお風呂に入って、羽を洗って上げた。

水で濡れた羽を車用の毛羽たきで、なぞるように洗ってやるのが芹のお気に入りだった。

芹の羽の感触を思い出すと、一層気鬱になっていく。

 

(結局、自分には分からなかっただけで、愛想を尽かされてしまったか)

 

と、その時だった、ひとりでに窓が開き、風が吹き込んできた。

いつも窓から入ってくる芹のために、鍵をかける習慣はなかったのだ。

 

「お兄さん、ご無沙汰してますぅ」

 

がさりという音とともに芹の頭が、空中から現れた。

続いて、上半身が現れ、着ていた上着を脱ぐと全身が現れる。

空を飛ぶ姿を見られないように着ている、姿を透明にする天狗の隠れ蓑という物だ。

 

「いやぁ、すみません、ちょっと学校の試験で忙しいのと、体調の問題でしばらくこれなくてぇ」

「うん、いらっしゃい」

 

努めていつも通り平静でいようとしたが、それでも声が上ずるのは止められなかった。

それを分かっているのか、芹はシシシと笑うと、抱き付いてきた。

 

「久しぶりのお兄さんですぅ」

「ふふ、久しぶりの芹だな」

 

そうして久しぶりにハッスルしてしまう二人だった。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「私じゃないと駄目って、女冥利に尽きますねぇ」

 

足で一物をしごきながら、芹が妖しく笑った。

見た目は人間と同じだが、可動範囲が若干広いため、足での手淫ならぬ足淫は人間よりも得てといえる。

両足を使うこの行為は、遮るものもなく、女の女たる部分が曝け出され、足を動かす度にその秘所を男に見せつけてくる。

 

「もう、花も恥じらう女の子にこんな格好させてぇ、お兄さんどこを見てるんですかぁ?」

(尻穴や尿道でもイケるようになって、花も恥じらうも何もないような・・・・・・)

「お兄さん、今なにか変なこと考えませんでしたぁ?」

 

女の勘は鋭い。

余計な事は言わずに、本番にいこう。

と、男は芹を抱きかかえた。

 

「もう、仕方ないですねぇお兄さんはぁ」

 

芹が翼を体を包むように器用に丸めて、男の膝の上に腰掛けた。

背面座位、四十八手でいうところの絞り芙蓉という体位だ。

男は芹とするのに好きなのがこの体位だ。

ふかふかした羽毛の感触がとても心地好いのだ。

 

「あんまり、激しくはしないで下さいねぇ」

 

元より、動き難い体位だ。

だがその分、手が自由に使えるのが強み。

ゆっくりと一物を芹の鞘に収めていく。

三ヶ月ぶりのそこは覚えているよりずっと腫れぼったく、ねっとりとして熱かった。

揺するように腰を使いながら、陰核を撫で上げていく。

下から上へ、角度を変えて。

 

「ふぅ、ああぁぁあ・・・・・・っ。あっ、クリ、なでなで好きぃ」

 

結合部から愛液を掬い取って、指先にまぶしてやると、クリトリスの先端部分をくすぐるように撫でてやる。

少し無理をして首を曲げ、背中から生えた翼の根元部分の肉を甘く喰んでやると、すぐさま達してしまった。

 

「あ、あぁぁ、は、羽、はむってしちゃぁ~~、いぃい、んはぁあ」

 

キュウっと絞り上げるのに合わせ、男もその精を解き放った。

敏感になった陰茎は、膣の中から愛液が分泌されるのもはっきりと感じ取っていた。

 

「ん、たくさん、射出ましたねぇ」

 

芹がねだるので、いつも中に射精するのが当たり前になっていたが、男はふと、今まで一度も口にしたことのなかった言葉を口にした。

 

「芹、赤ちゃんできちゃったらどうする?」

 

芹はその言葉に今まで見たことのないような妖しい笑みを浮かべた。

 

「・・・・・・もうデキてますよぉ」

「・・・・・・・・・・・・・・・は!?」

 

男がその言葉の意味を理解するまでに少々の時間を有した。

 

「この間のが当たっちゃってましたぁ。人間と同じく十月十日ってところですけどぉ、悪阻が治まるのとぉ、安定期に入るのは早いので、まああまり激しくしなければちゃんとお相手できますよぉ」

「胎生、なの?」

 

違うそうじゃない、言いたいことはこれじゃなーい。

パニックになる男に構わず、芹は言葉を続ける。

 

「烏天狗って言ってもぉ、鳥じゃないですよぉ。人間寄りで、ちゃんと胎生ですぅ。授乳の器官もちゃんとありますぅ」

 

そういって立派に育った胸を魅せつけるように、ゆさりと揺らす。

 

「俺の、子供?」

「そうですよぉ、お兄さん以外とこんなことしてませんものぉ」

 

それともと、ぞっとするような笑みで芹は言った。

 

「もしかしてお兄さん、私が股の緩い女とでも思ってましたかぁ?」

 

男の背中を恐怖という感情が駆け上がっていった。

思えば、最初の時も妙に蠱惑的だったというか、抵抗も何もなかったというか。

むしろ、自分から・・・・・・

ぶるりと身を震わせながらも男が答える。

 

「そんなことはないよ、いきなりだったからびっくりしただけさ」

「そうですかぁ、ふふ、でも良いタイミングでしたぁ。お腹が目立つ前に学校は卒業できちゃいますねぇ。烏天狗は出来難いのを数で補うために性欲が強いなんて言いますけどぉ、私、石女なんじゃないかって心配になっちゃいましたよぉ」

 

その言葉で男は確信した。

最初から計算ずくだった。

 

「は、はめられた・・・・・・」

「いやですねぇ、散々ハメまくったのはお兄さんじゃないですかぁ」

 

怖い。男は心底そう思った。

この怖さは、そうだ、この怖さは。

 

「じゃあ、お風呂入りましょうぉ、お兄さん。いつもみたいにぃ、羽、洗ってくださぃ」

 

妖怪だとか、そういう怖さではない。

これは女の怖さだ。

妖怪だとか以前に、女は女というだけで魔物なのだ。

 

因みに結婚した後で知ることになるが、羽を洗ってもらうのは烏天狗にとって仲の良い夫婦がする行為だった。




烏天狗ちゃんでした。
名前は天狗の団扇の異名があるヤツデが、セリ科なので芹に。
妖怪として怖いんじゃない女の怖さだってのは、実は最初の垢嘗めの話からやろうと思ってたのですが、なかなか入れる機会がなくてこの話でようやくできました。

天狗の来歴や変換はかなり多岐に渡っていますので、修行して動物霊を憑依して妖怪化した人間の系譜という設定を捏造して、様々な姿があるのに理由付けをしてみました。
女の天狗は羽以外は人間と見た目が同じという説もあるのでそれを採用。
尼天狗とかは獣面だったりもしますが、女がやると子供作る器官に影響出たりするとして、だから尼になっちゃったんだよって感じです。

喋り方はカアーって鳴き声を意識して、「かぁ」ってのを多用する感じにしようかなと思いたち、書いてるうちにいっそ全体的に語尾は少し伸ばすような方向にしようということになりました。
鳥類は総排出腔で卵生むとこも尿も糞も全部同じ穴からしますので、同時責めのシチュにしてみました。

書けなかったネタとしては、近くに垢嘗めのアカナさん夫妻が住んでいるというのを出そうと思ったんですが、蛇足になりそうで断念。

次回の鬼娘はいちゃいちゃ路線から打って変わって、かなり重い話になりますので代わりに今回と前回のエロ分は増々です。
道場の門下生とやらはそちらに出演します

執筆予定ネタ:鬼娘→吸血鬼→妖狐。送り狼、たんころりん、ゲドガキの化け物。


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HUNGRY OGRE

鬼娘ってことで節分に更新。
今回は重い話です。
イチャラブばかりで胸焼けしないように、ちょっと口直しのツマにでも。


醒めがたき虚妄に身をゆだねつゝ

わが飢ゑの深まりゆくを

日はすでに奪はれて

げにあとかたもなき水脈のおそろし

くろがねの冬の砦は手にとらば一片の雲となるべく

手にとらばわが飢ゑも血をなせる灰とならむを

かくてまた

醒めがたき日を享けつがば

なにをもてわが歌のうたはれん

 

----逸見猶吉詩集より

 

 

 

夜の底に沈んだ山々に、荒く激しい息使いが吸い込まれ行く。

闇の中、走る影が一つ。

息を荒げ、何かから逃げるように、走る、走る、走る。

闇夜の山中にあっても、その足取りにはまったく迷いは見られない。

地理を完全に把握している証拠であった。

 

それを追い、轟々と葉擦れの音を響かせる風と共に、黒い人影が一本線のように残像を残し、獣道を走り抜けていく。

まったく体幹に振れのない、あきらかに武術を修めた者の歩法だった。

狙いを定めた肉食獣のように、その速度はいや増していく。

とても人間とは思えぬ速度だ。

凄まじい速度で坂道を駆け上がる人影の後に、つむじ風が立ち、枯葉を巻き上げていく。

 

追われる影が立ち止まり、振り返る。

逃げきれぬと踏んで、迎え撃つ覚悟を決めたのだろう。

追い駆ける影がそれを認め、さらに速度を上げる。

突進するその影に、横薙ぎに腕を振るった。

それは尋常なく速く、重い!

だがその一撃を予想していたのか、走りながら体を沈み込ませ躱す。

そのまま勢いを落とさず、がら空きになった腹部に肩から思いっきりぶち当たった。

 

「あ、ぐぅ!?」

 

この靠撃(こうげき)に、呻き声を上げ、吹き飛ばされる。

だが柔らかい腐葉土の上に落ちたため、さほど大事はなかったようだ。

 

大雷(おおいかずち)火雷(ほのいかずち)黒雷(くろいかずち)析雷(さくいかずち)若雷(わかいかずち)土雷(つちいかずち)鳴雷(なるいかずち)伏雷(ふすいかずち)

 

その呟きとともに、腕から雷光が迸った!!

闇の帳を引き裂くように、両者の姿が照らされる。

 

逃げていた影は女。

ボロボロだが、それでも大事に手入れしていたのが見て取れる、薄手のブラウス。

スカートは所々が擦り切れ、留め具は壊れ、縛ってパレオのように着用している。

首回りには、古びた毛布をマントのように巻き付けていた。

どう見ても、まともとは言えぬ出で立ちの、まだ若い女だった。

だが外見はそれ以上にまともではなかった。

顔の彫りは日本人よりも深いが、欧米人程ではなく、ハーフめいたものがある。

体は引き締まっており、筋肉質だが、女性特有の柔らかさや丸みも充分に主張していた。

だが一番目を引くのはその頭だった。

秋の山々の紅葉(こうよう)のように、美しいほどの赤みがかった金髪。

そして・・・・・・頭の両側面から生えた長い角。

緩やかに波打つようなくびれがある、象牙のような質感をした角。

女は鬼であった。

 

対するのは人の男。

山伏に似た、装束を纏っていた。

手には白木の金剛杖。

瘴気を防ぐといわれる頭襟(ときん)は、頭をすっぽりと覆う裹頭襟(つつみときん)

そして鈴懸から脚絆に至るまでもが、全て黒を基調としたものだった。

体格は装束の上からでもそれと分かる、よく鍛え込まれた頑健さが見て取れる。

頭襟を被っているため顔は見えないが、そこから覗く目は呑み込まれそうな、どこまでも深い深い、底知れぬ闇の色を持っていた。

 

背中には紅葉の葉に似た意匠。

それが三角形を描くように並ぶ紋章が染め抜かれていた。

否、これは鳥の足。

烏の足だ。

三本足の烏。

それは中国の火烏であり、日本の八咫烏であり、太陽を象徴する霊鳥の足を象ったもの。

足跡とは古来より、特別視されてきたものだ。

踏みしめるという行為は、大地に封ずる事に通ずる。

相撲の四股も、邪霊を大地に封ずる儀式であった。

古代中国、伝説に残る夏王朝の王である()

その歩き方を真似た禹歩(うほ)もまた、魔を祓い清めるとされた。

仏教の祖、釈迦の足跡を象った仏足石も、信仰の対象であった。

聖人や偉人、そして聖獣の足跡を象るとは、その力を宿し、邪を封ずるということだ。

 

三足跡の紋章。

これは烏天狗の使う流派紋の一つである。

天狗は妖術以上に武術に長けた妖怪だ。

天狗が人間に武術を指南するというのは、古来より多くの逸話が残っている。

有名どころでは、かの源義経が幼少の頃に、京の鞍馬山で天狗から武術を学んだというものがある。

人間を魔道に誘う天狗もいるが、人間に友好的な天狗とて多いのだ。

現代でも天狗に師事する退魔師は少なくない。

この男も天狗から武術や妖術を学び取った人間の一人なのだろう。

 

「どうした、紅葉(もみじ)? 親の仇を前にいつまで寝ているつもりだ?」

 

男が紅葉と呼んだ鬼女に向けて、電光を纏った腕をかざした。

腕に絡み付く雷が解き放たれ、紅葉へと向かって襲い掛かった。

如何に身体能力に優れる鬼族とはいえ、雷速には及ばない。

当たる。

かわせるはずがない。

だが、雷は紅葉を大きく反れ、地面に吸い込まれていった。

一瞬の静寂の後・・・・・・

大地と大気を震わす轟音。

地面が爆発し、地雷が響き渡る。

 

「きゃあ!?」

 

意外なほどに可愛い悲鳴とともに、紅葉の体が宙を舞った。

体勢を立て直し、たたらを踏みながらも、何とか着地に成功する。

はぁ、はぁと息を荒げながら、紅葉は男を見た。

相も変わらず、闇色の眼で紅葉を睥睨していた。

その眼が、紅葉の心をかき乱す。

 

(見ないでよ、そんな眼で、そんな眼で私を見ないでよ)

 

「あんちゃん」

 

紅葉の呟きに、男の眼が揺れる。

だがそれを遮るように、轟っという振動と共に、男の背後から雷の柱が生えてきた。

それに続き四方に、八方に。

地面から雷が生えるという、有り得ざる光景。

八柱の雷が二人を取り囲んでいた。

等間隔に並んだ雷は、通り抜けるのに充分な間隔が空いてはいたが、その空間は全てを飲み込む深淵の穴にも・・・・・・あるいは全てを阻む城壁のようにも見える、そんな一種異様な雰囲気を伴っていた。

ここにいてはいけない、そんな思いに駆られた紅葉は、後方の隙間から抜けようとする。

途端、足がもつれて転倒する。

足の合間に金剛杖を投げ込まれたのだ。

顔を上げたと同時に、一息に跳躍した男が紅葉の眼前に着地した。

跳ねるように飛び起きて、右に向かって駆け出した。

が、駆け出す紅葉に向かってメキメキと木の倒れる音が響いてくる。

進路変更。

右後方の雷の間を通り抜ける。

 

「よし、杜門(ともん)に入ったな・・・・・・あやうく驚門か傷門に入られるところだった」

 

男は呟きながら、金剛杖を拾い上げた。

木など、どこにも倒れてはいなかった。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

行けども行けども、果てがなかった。

この山は紅葉が幼い頃から棲んでいる場所だ。

隅から隅まで、知り尽くしている。

迷うことなど有り得なかったはずなのだ。

 

彼女は知る由もないが、これは奇門遁甲と呼ばれる、戦争にも用いられた古い魔術だ。

八つの方角のいずれか、どこに進んだかによりそれに応じた空間へと誘われる。

紅葉が迷い込んだのは、杜門。

どこまでも果ての無い、閉ざされた空間。

何処へも行くことのできない、停滞した世界。

それはまるで・・・・・・あの男の。

 

甚だ平等にして(ビシュダヤ・ビシュダヤ)地獄の底まで普く照すを(アサンマサンマ・サーマンダ)自性とする清浄尊よ(ババサソワランダ)邪を除き除きて浄化したまえ(ギャチギャカナウ・ソワハンバ・ビシュデイ)

 

男の声がこちらへと近付いてきていた。

全身に痺れるような感覚。

それとともに、力がどんどん流れだしていく。

男が唱えているのは、邪を祓い百鬼夜行を退けるという尊勝陀羅尼(そんしょうだらに)の文言だ。

 

「紅葉、もう逃げ場はない。この閉鎖された世界、俺を殺そうと出ることはできぬよ」

 

男が金剛杖を構え、腰を落とした。

 

「さあ、両親の仇、討ち取ってみせよ」

 

その言葉に紅葉が浮かべた表情は、憎しみでも、怒りでもなかった。

それは悔しさと、悲しみだった。

震える拳を握り、泣きそうな顔で飛びかかってきた。

その拳が、金剛杖で容易く払われる。

二度、三度、その度に、受け流されてしまう。

金剛杖は何の変哲もない、白木の杖でしかない。

人間でもへし折れる程度のものだ。

如何に尊勝陀羅尼の文言で力を減じているとはいえ、妖怪の中でも随一の怪力を誇る鬼の膂力なら、それこそ枯葉みたいなものだ。

だというのに金剛杖には傷一つ付かない。

完全に受け流され、力を殺されている。

腕力を埋める、圧倒的な技量差があった。

力任せに突き出した手を取られ、投げ飛ばされる。

息が、出来ない・・・・・・

体力が、もう限界に来ていた。

柔らかい土の感触に、このまま身を委ねてしまおうかとも思う。

柔らかい土・・・・・・

紅葉は気付いてしまった。

さっき吹き飛ばされた時も、わざわざ柔らかい土の上に落としてくれたのだ。

手加減されている。

それが紅葉の癇に障った。

 

私は戦う価値も無いのか?

私は殺す価値も無いのか?

私は、相手をする価値も無いのか?

私を見ろ。私を見てよ。

私を覚えていてよ!!

 

気付けば紅葉は絶叫していた。

飛び上がり、男の顔に向かって腕を振るった。

どうせ先程のように容易く捌かれる。

紅葉はそう、思った。

だが・・・・・・

男は微動だにしなかった。

避けようとも防ごうともせず、甘んじてそれを受けようとでもいうように。

当たる、と思った。

その確信があった紅葉は、慌てて拳を引こうとした。

だが勢いの付いたものを、引き戻そうとすればどうなるか。

大きくバランスを崩し、二人はもつれ合って絡み合いながら倒れた。

 

気付けば、紅葉は男の胸に顔を埋めていた。

懐かしい温もりに、紅葉はしばらく惚けていたが。

 

「どうした、殺さんのか?」

 

その言葉に、紅葉はようやく我に返る。

倒れた時に解けたのか、頭襟の下の顔があらわになっていた。

ずいぶんと変わっているが、昔の面影が残る、紅葉の知る顔だった。

圧倒的技量差があっても、これだけ密着してしまえば身体能力差を覆すことは出来ないだろう。

もはや紅葉の手に、男の命は握られたも同然だった。

 

「い、いま、今、何で当たろうとしたんだ!?」

「・・・・・・さて、鬼気にでも当てられたのかもな」

 

泰然とした態度に、ますます苛立ちが募る。

体を起こし、男の胸ぐらを掴み上げて怒鳴った。

 

「ふざけんなよ!! 当たったら、死んじゃうんだよ!!」

「それでいいではないか? 両親の仇を討てるのだ、何を躊躇う?」

「なんで、そんなこと言うんだよぉ!! 私に、私にあんちゃんを殺せるわけないじゃないかぁ!!」

 

その叫びは、慟哭だった。

どこにも行き場のない、怒りだった。

 

「俺は、お前の両親を殺したぞ」

「おっとうと、おっかあが、殺されたのも、仕方ないじゃないか。おっとう達が、あんちゃんを・・・・・・あんちゃんの!!」

 

ぼたぼたと、男の服に水滴が落ちていく。

紅葉の両目から、とめどめなく涙が溢れだしていた。

 

「私は、あんちゃんの、仇の娘、じゃないか!!」

 

気付けば、男の手が頬を撫でていた。

優しく、いたわるように。

その眼はもう闇を湛えてはいなかった。

紅葉のよく知る、優しげなものだった。

 

「お前が、悪いわけじゃないんだ・・・・・・紅葉」

 

もう紅葉からは嗚咽しか出なかった。

子供のように泣きじゃくって、大声で泣き続けていた。

男は涙や鼻水に唾液で胸元が汚れるのも気にせず、胸に顔を埋めた紅葉が泣き止むまでずっと、頭を撫で続けていた。

 

「俺にだって、お前を殺せるわけないじゃないか」

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「お前、だれだ? 名前は?」

「な、まえ?」

 

初めて二人が出会ったのはいつだったろうか?

 

「名前、ないのか? さいきんはやりのいくじほーきってやつか、よもすえだなー」

「いくじ、ほーき?」

「おれ、安志ってんだ」

「あんじ・・・・・・あんちゃん」

 

あんちゃんと口にした時のことはよく覚えている。

 

「じゃあ・・・・・・もみじみたいにきれいなかみの毛だから、お前はもみじだ!!」

「も、みじ?」

 

私に名前をくれた。

木の名前、虫の名前、星の名前、魚の名前、動物の名前。

色んな名前を教えてくれた。

文字の読み方、数の数え方、計算の仕方、みんなあんちゃんに教わった。

子供には、鬼だの人間だの、そんなことは然程の問題ではなかった。

そういったものがあるということさえ知らなかった。

ただ、そういうものだという事実。

それを素直に受け入れていた。

あんちゃんにとって、私は角の生えた女の子で、私にとっては角の生えていない男の子。

それだけでしかなかった。

 

「紅葉の服、ボロボロだしな。かーちゃんの着なくなったお古持ってきた、ちょっとでかいけどな」

 

あんちゃんからの、贈り物が嬉しかった。

転んで汚してしまって、泣いてしまったのを覚えてる。

わんわんと泣く私の手を握ってくれた。

そうしてずっと手を握り合っていたかった。

何も恐れずに、ただはしゃぎあっていたこの時が、一番幸せだった。

あんちゃんと一緒に山を駆け回って、日が暮れるまで遊んでいたかった。

あんちゃんが帰ると、私は一人きり。

おっとうもおっかあも、いつも山にはいなかった。

たまに来くることがあったが、私には見向きもしてくれない。

あんちゃんが遊びに来てくれる日がいつも待ち遠しかった。

そして、あの日が来た。

 

「紅葉、いるかー?」

「あんちゃん!?」

 

ある寒い日の夜の事だった。

ねぐらにしていた古い山小屋に、あんちゃんが訪ねてきた。

 

「今日は、すごく冷え込むっていうからさ、毛布持ってきた」

 

一人でいたくなかった。

だから、私はわがままを言って、あんちゃんと一緒に寝てもらった。

帰ったらどやされるなと、それでも笑いながら私のわがままを聞いてくれたあんちゃん。

とっても暖かかった。

この時には、私達はだいぶ大きくなっていて、あんちゃんの顔は真っ赤になっていた。

とても幸せな気持ちで眠れたのを覚えている。

 

「じゃあ、またな紅葉!」

 

寒桜の花びらが舞い、朝露に濡れた葉が朝陽を浴びてキラキラと光って、その景色の中であんちゃんは笑って言った。

あんちゃんはいつも、またなっと言った。

また、次がある。

それが当たり前なのだと言うように。

またなっと、あんちゃんは笑って。

そうして、あんちゃんはそれっきり、来ることはなかった・・・・・・

 

私は山の外に出たことがなかった。

何故か知らないけど、山から降りてはいけない。

そんな強迫観念があった。

思えばそれは、人里に降りた鬼は退治されるという、祖先から受け継いだ本能だったのかもしれない。

だけど、我慢できなくなって、夜を待って山を降りたのだ。

あんちゃんの匂いを辿って、人間の街の中を歩きまわって。

そうして、あんちゃんの家を見つけた。

表札にはあんちゃんの苗字と同じ文字。

教わったのと同じ文字。

だけど・・・・・・その家には黄色いテープがあちこちに貼られていた。

 

KEEP OUT 立入禁止 警察

 

知っている。

これは、あんちゃんが持ってきてくれた漫画にもあった、事件現場に貼られるもの。

なんで、血の臭いがするの?

なんで、おっとうと、おっかあの臭いがするの?

私は、あんちゃんが何で来なくなったのか分かってしまった。

私の幼い恋は、それが恋だと気付く前に、永遠に失われてしまった。

 

殺してやろう

 

私からあんちゃんを奪ったあいつらを。

そう思った、そう決めた。

そうして、ずっと待っていた。

ずっと、ずっと・・・・・・何年も、何年も。

そして、ついに待ち望んだ臭いがやってきた。

殺す。

それ以外の事は頭になかった。

臭いを追って、走って、走って走り続けた。

私が着いたのは、全てが終わった後だった。

 

血の海に沈んで、動かなくなった両親。

そこに立っていた黒ずくめの男。

ああ、先を越されてしまった。

私の、私の仇だったのに・・・・・・

 

だけど、その顔を見た時、私はそうだと分かった。

だいぶ変わっていたけど、あんちゃんだ。

黒ずくめの男は、あんちゃんだった。

生きて、いた。

生きていてくれたのだ。

 

「あん、ちゃん」

 

あんちゃんは、はだけた布を顔に巻きなおすと、私の横を黙って通り過ぎていった。

私のことを、見てもくれなかった。

当然だった。

それは当然のはずなのだ。

生きていたからといって、家族の仇、その娘の私が今更どんな顔をして近付けるというのだ。

それでも、許せなかった。

無視されたのが許せなかった。

理解できても、感情が納得してくれなかった。

私を見てほしかった。

私を覚えていてほしかった。

だから、私はこの人に殺されよう。

そうしてこの人の心に、私を刻み込んでもらおう。

もう止められなかった。

自分の浅ましさを嫌悪しながら。

気付けば、私は絶叫して、あんちゃんに跳びかかっていた。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

ようやく落ち着いてきた紅葉の、土埃が付いた唇に被せるように安志の唇が重ねられた。

ついばむような短い口付けの直後、近付いた唇から漏れ出る互いの吐息が、お互いの鼻先をくすぐるようにかすめていく。

 

「あ、あん、んぐぅ!?」

 

驚きのあまり呆けて開きっぱなしの紅葉の唇を再び奪い、滴る唾液を啜りながら、貪欲に口内に舌をねじ込んでいく。

前歯、歯茎、頬裏、口内を隅々まで舐めしゃぶり、唾液を流し込み、思う様に蹂躙していく。

 

「んぷぅ、ぅぅぅんっ?」

 

紅葉は何が起きているのか理解するのに時を要し、そのあいだ口の中を蹂躙され尽くし、すっかり腰が砕けていた。

 

「あ、あんちゃん!?」

「嫌、か?」

「わ、私、私、鬼だよ!?」

「何か問題でも?」

「だ、だって、人間じゃないんだよ?」

 

安志はがりがりと頭を掻きながら、そんな大した問題なのかと言わんばかりの表情で答えた。

それは、紅葉に勉強を教えてくれた在りし日と同じ表情だった。

 

「俺が鍛えてもらってた烏天狗さん家の末の娘さんな、このあいだ人間の旦那さん捕まえてきてな。もうじき子供も産まれるそうだ」

「人間と・・・・・・烏天狗が?」

「ああ、別に、大した問題じゃないみたいだぞ。ずいぶんと幸せそうだった」

「私で、いい?」

 

それに頷いた安志に、感極まって抱き付いた紅葉だが、その瞬間、鈍い音が響いた。

 

「・・・・・・ごめん、あんちゃん」

 

角の側面で顔を殴打されてしかめっ面をする安志に頭を下げ、またぶつけられそうになった安志が、角を手で受け止めた。

しばし見つめ合って、安志が苦笑を浮かべた。

つられて紅葉も笑った。

そうして、どちらからともなく、唇を寄せあった。

 

「この毛布、あの時のか」

「うん」

 

最後に会った日に、二人で包まった毛布。

紅葉にとって、それは大切な思い出の品だった。

それが、今また二人の褥になっていた。

 

ぐいっと、足の間に割り入って、紅葉の秘裂に押し入ろうとする。

安志の半生は家族の仇を討つための修行ばかりだった。

女の扱い方など、まるで知らなかった。

紅葉も経験など無い未通女(おぼこ)で、お互いろくな知識など持ち合わせていなかった。

ただ本能のままに、力任せに貪ろうと、ろくに濡れてもいない女陰に一物を押し付けて、ぐいぐいと強引に分け入っていく。

ぶつんっと肉が引き裂かれ、湿り気の足りない、粘膜同士の接触はただただ痛みだけを訴えてくる。

それでも、それが心地よかった。

この人のものにされたのだという証を刻み込まれているようで、ひどく甘い痛みに感じられた。

安志にぎゅうっと力強く抱きしめられて、胸が蕩けそうな程の幸福感を覚えて、紅葉も抱き返したくて堪らなかった。

子供の時よりもずっと力が強くなってしまった、今の自分がそんなことをすれば、どうなるのか・・・・・・

こんな力などいらなかった。

抱き締めることもできないのに。

抱き合うのに邪魔な角もいらなかった。

 

それでも体は反応しだしていた。

行為を行えば、防衛反応として自然と愛液は分泌されていく。

徐々にだが、抽挿がスムーズになって鈍痛が疼痛へと変化しだした。

鬼は元々、痛覚が鈍い傾向がある。

快楽が痛みに勝りだしていた。

 

「おおぅう、おおぉぅ、んはぅぅうぅぅ・・・・・・」

 

お腹の奥に灼熱を感じた。

ずるりと一物が引き抜かれていく喪失感。

いつの間にか目の前に差し出された陰茎を呆けて、ただ見つめ続けていた。

 

唇を押しのけて、精液と愛液と破瓜血が混じった亀頭がぬるりと押し入ってきた。

自分と男のものが混じった性臭が口いっぱいに充満し、鼻孔に抜けていく。

そのまま歯が当たるのも構わず、ぐいっと押し込んでいく。

ずるずると喉に浸入を続け、吐き気がこみ上げ喉奥が広がると、熱り立った陰茎をさらに深く喉の奥に導く結果になってしまった。

角を掴まれ蓋をするかのように強引に腰を突き込まれ、喉を抉られ、擦られる。

掴まれた角が、ひどく熱かった。

自分の角が、まるでそのために付いているかのように、喉の奥の奥まで男が進入するための取っ手にされて。

抱き合うのに邪魔なだけだと、そう思っていたのに、役に立つなら悪くないなどと思ってしまっている。

苦しくて、吐き気が込み上げてくるのに、その考えが、膣内を拡張されるよりも子宮を熱くさせていた。

喉奥に垂れ下がった柔肉が、男の物にぷるぷると当たり、そうやって喜ばせる器官のように錯覚する。

口はこのためにあるのだと教えられているようで、ひどく興奮した。

喉の奥を全て一物で塞がれて、胃を精液漬けにされていく。

 

そしてまた赤く潤んだ女の割れ目を滅茶苦茶に突き崩され、腰を押さえつけては何度も何度も注ぎ込まれた。

 

「あんちゃん?」

「どうした?」

「ぎゅって、したい」

「そっか、気付かなくてごめんな」

 

安志が紅葉の耳に口を寄せ、ボソリと何事か呟いた。

途端、紅葉の全身の筋肉が弛緩していく。

 

「にゃ、にゃに!? こりぇ・・・・・・ちから、はいんにゃい」

追儺(おにやらい)の呪、略式の呪文だが、まあこの場合はちょうどいいだろう」

 

紅葉の手が、ゆっくりと背中に回される。

 

「どうだ?」

「うん・・・・・・うん、こりぇ、ぎゅっとできゅりゅ」

 

(これでも、ちょっと痛いくらいだな)

 

と、思ったが安志は口には出さずに紅葉を抱きしめた。

全身が弛緩して、程よく絡みつくようになった婬肉。

脱力しきった筋肉は、独特の弾力を持ち、肌と肌が触れ合っているだけで心地良かった。

ぬめぬめと肉壁が蠕動して、男根を擦り上げていく。

だいぶ要領を理解して、性感帯に当たるように腰を動かすと、もう痛みもない快楽に染まった甘い嬌声が上がる。

 

目の前で揺れる紅葉の頭。

それに合わせて揺れる角。

安志はふといたずら心を起こして、その角をかじってみた。

 

「や、ぁぅ、つ、角、か、かじっひゃ、だめぇ!!」

 

カリカリと歯を立てられる度に、その振動が頭の中にまで響いて、紅葉の意識を混濁させていく。

 

「ひゃあああぁあァァンッ!! ああ、つ、のぉ、ひびくぅ」

 

昂った性感は、角を性器へと変貌させていた。

歯を立てられる度に、ガクガクと身を震わせる。

こんこんと子宮を突かれながら、角をかじられて、紅葉は全身を震わせて絶頂を迎えながら意識を手放した。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

目が覚めると、空が白み始めていた。

 

あんちゃんに抱かれて、分かってしまったことがある。

あんちゃんは、私を好きじゃない。

あんちゃんが求めたのは、家族という幻想と、過去の思い出。

烏天狗の夫婦とやらが、あまりにも幸せそうで、それが羨ましかったから。

失ってしまった家族を、取り戻したかったから。

分かってしまった。

私は、女だから。

ずっと想い続けていた人だから。

それが解ってしまった。

あんちゃんは、今の私ではなく、過去の私の幻想を見ている。

私は、私はこんなに愛しているのに。

こんなに想っているのに。

 

ああ、いっそ、食べてしまおうか。

それが素晴らしい考えであるように思えてきた。

肉を喰もう、(はらわた)を啜り、骨をしゃぶりつくそう。

あんちゃんの全てを、私のものにしてしまおう。

そしてこの閉鎖された空間で腐り果てて一つに溶け合おう。

たぶん、あんちゃんもそのために、この空間へと自分を誘ったのだろう。

自分より遥かに強い彼なら、こんな世界を作る必要はなかったはずだ。

あんちゃんは、私に殺されて両親の仇を討たせようとした。

だけど、人を殺した私を野放しにはできない。

だから、彼を殺してもどこにも行けない世界を作った。

だから、ここは私と彼だけの世界だ。

だから、あんちゃん・・・・・・一つになろう。

この二人だけの世界に。

 

疲れ切った老人のような顔をして眠る男に、紅葉は手を伸ばした。

 

私が食べる人間はこの人だけ。

この人が最初で最後の人だ。

私だけの特別にしてしまおう。

 

心臓が早鐘のように脈打っている。

その顔に、手が触れた。

あとは、力を入れるだけだ。

 

はらりと、その手に花びらが舞い落ちた。

寒桜だった。

桜の花が舞っていた。

あまりにも美しいその花は、清涼であると同時に、ひどく心をかき乱す魔性も同時に内包して見えた。

あの日、最後に見たあんちゃんの笑顔を飾っていたあの桜と同じように。

何をしようとしていたのだろう、私は。

自分の浅ましさが嫌になる。

ああ、桜よ、桜。

私の浅ましさを吸い尽くしてくれ。

魔性を吸い尽くして、散って消えていくように。

 

「紅葉・・・・・・」

 

愛しい男が微睡みの中で、名を呼んでくれた。

紅葉にとってはそれで充分だった。

もうさっきまでの陰鬱とした感情は何処にもなかった。

私は自分のおぞましい感情を知りながらも、もうこの人から離れることは出来ないだろう。

浅ましい自分が嫌になる。

それでも、この人のために生きよう。

この人と共に生きていきたい。

朝陽の光を浴びながら、私はこの人の幸せを願い続けた。

疲れ切った老人のように見えた顔は、今は母に抱かれて眠る幼子のようだった。




食べちゃうと思ったかい?
残念、私の話は基本、ハッピーエンドです。
さて、今回は今までと毛色の違う話になりますと前々から言っておりましたが、まず男の方の描写が濃くなっています。
今まではエロということで、極力男のキャラ付けは薄くしてきました。
名前なんかまったく出しませんでしたしね。
それでも一応、設定とかは作るには作ってはあるんですけどね。
今回の話は、捕食者と被捕食者の恋という感じです。
着想は槇○敬○氏のHu○gry Sp○der」の歌詞を参考に、自分の考えを盛り込んでみたものです。
あと仮○ラ○ダーJの主題歌なんかも参考に。
妖怪物ならやはり捕食者っという部分はやっておきたいなという自己満足ではありますが。
また妖怪退治屋みたいな存在もいるわけで、鬼、吸血鬼、妖狐の話は毛色が違いますと言ったのは、その部分に触れる話になるからという。
まあ自分の自己満足なんで、軽く読み飛ばしとけばいいやと思ってください。
魔術関連も自分の趣味ですので、読み飛ばして問題ありません。

さて、次は吸血鬼の予定だったのですが、せっかくバレンタインというイベントが近いので、先に送り狼の方を書いてバレンタインに投下ということで。
この話のプロットが一番バレンタインイベントを絡ませやすかったので。
これはいつも通りのイチャラブ話でせう。


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狼とチョコレート

今回は狼っ娘だよ。
しかしパロディAVみたいなタイトル目指そうと思ったけど、もうただのパロネタでしかないよね。
難しいものです。
前回が重い話だったので、今回は文も展開も軽めを目指しました。
ニホンオオカミは妖怪化して生き残っていたんだよ!な、なんだってーー!?


ヒタヒタ。

ヒタリヒタリ。

スタスタ。

・・・・・・つけられている。

いや、別に相手は隠れているわけでもないし、付いてきているというべきか。

尾行というのは、隠れて後をつけること。

追尾というのは、ぴったりとついていくこと。

追跡というのは、足取りや形跡を含め、執拗に追っていくこと。

と、使い分けるらしいが、ならばこの場合は追尾されている、と言えばいいのか?

不審者でもストーカーでもなくて、自分の彼女のはずなんですけどね、追尾してきてるのは。

 

振り返える。

目が合うと、ぷいっと顔をそらしてしまった。

 

シャギィの入った無造作ヘア。

肉食獣を想起させる、攻撃的な印象の切れ長の瞳。

まだまだ寒いのだが、そんなの平気だと言わんばかりに、防寒着を身に付けないノーマルな制服姿。

セーラー服が女学生の制服ではなく、本来の海兵服をイメージさせるような凛とした佇まい。

でありながら、ひらっとしたスカートと、膝上辺りまであるスパッツがそれにボーイッシュな可愛らしさを演出し、そこから覗く足は野性的な筋肉美を感じさせる。

スレンダーで引き締まった身体には、同時に女性らしい柔らかで丸みのあるラインも備えており、素晴らしいの一言だ。

胸のボリュームはもう一声だが、まあいい大した問題じゃない。

あのきゅっと引き締まった尻があれば、充分だ。うん。

これが俺の彼女か、実に感慨深い。

彼女のはずだよな?

一応・・・・・・

 

とはいえ、いつまでもこんな付かず離れずをやっていても仕方がない。

(せん)っと彼女の名前を呼んでみた。

 

「あー、っと。手でも繋がないか?」

 

途端、顔を真っ赤に染めてまくし立ててきた。

 

「ば、ばばばばば、馬鹿じゃねーの!? お、おま、お前な、てててててって手をつなぐってお前!!」

 

・・・・・すっかりテンパってしまった。

どうもここ最近はこんな感じで、まともに話ができない。

嫌われているわけではないはずだよな。

いままで以上にぴたっと、追尾してくるようになったし。

家以外は四六時中、一緒にいるようなものだし。

照れているだけだ・・・・・・と、信じたい。

そのはずだ。

だって、こうなったのって初体験した後だし。

 

凄かった。

本当に凄かった。

いきなり押し倒されて、三日三晩繋がりっぱなしで搾り取られた。

口と言わず顔と言わず、身体中をずーっとベロベロ舐め回されて、皮膚が擦り切れてしばらくヒリヒリして大変だった。

というか、もう何が何だか疲労困憊で、あんまり覚えてないというか。

発情期って凄いものなんだな。

ニホンオオカミの妖怪って聞いたけど、普段はそんな変わった素振りは見えなかったしな。

 

「わ!?」

 

なんて考えてたら、足を滑らせて転んでしまった。

ああ、そう言えば一つだけ妖怪らしい面を見せる時があった。

(せん)を見ると、彼女の眼が金色に爛々と光っている。

瞳孔は犬科の猛獣のように開き、よりいっそう捕食種然とした雰囲気を放っている。

 

「・・・・・・どっこいしょと言え」

「あ、ああ・・・・・・どっこいしょ」

 

妖怪としての習性とかなんとか。

転んだ人、特に一緒に歩いている人間なんかは襲いたくて堪らなくなるらしい。

性的な意味じゃなくて、食欲的な意味の方で。

だから、こうしてどっこいしょと言う。

転んだのではなく、ちょっと休んでるだけですよと。

これが古来から彼女達の難を退けるために伝えられてきた作法だ。

服に付いた土を払って、立ち上がる。

幸い、怪我はなかった。

 

「手ぇ、つなぐんだろ?」

 

そこに(せん)が手を差し出してきた。

棒立ちになって、顔をあさっての方向に背け、ぷるぷる震えながら。

 

「ま、また、こ、転んだら、その、こ、困るからな。べ、別にお前のためじゃねーぞ! 人間襲っちまったら役所から怖い殺し屋が派遣されるからそうならないためにだな・・・・・・その」

 

ああ、照れてるんだな。

こういうところがとっても可愛い。

頭頂部からぴょんと飛び出した、狼の耳がキュートだ。

もふもふしたい。

 

(せん)、耳出てるよ」

 

指摘したら、すごい勢いで手で抑えた。

しばらく手で抑え続けて、離した時には耳は消えていた。

もう少し、見ていたくもあったけどまあ人に見られるとマズイよな。

うーっと唸っている(せん)の手を握ると、びくっと身体が跳ね上がった。

 

「手、握るんでしょ?」

「う、ううう、うん・・・・・・」

 

もう少しごねるかなと思ったけど、案外素直だ。

久しぶりの(せん)の手の感触。

小さいけど、ちょっとゴツゴツして、でも手の平はぷにぷにして心地良い。

なにより誰かの体温を感じるというのが良い、それが好きな女の子ならば、なおさらだ。

(せん)のスカートから飛び出した尻尾が、千切れんばかりにブンブンと振られている。

まあこれは黙っておこう。

なんか面倒くさくなりそうだし。

人通りも少ないし。

尻尾くらいならアクセサリーとか、そんなものだと思ってもらえるだろう。

 

後日、俺が(せん)をアナル調教してると噂が立つとは予想外だった。

・・・・・・そういうのもあるのかと思ったので、じっくり取り組んでいこう。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

カントリーロード、テイク・ミー・ホーム。

長閑な田舎道を、彼女と手を繋いで歩く。

これぞ素晴らしき青春。

今、俺は幸せを噛み締めている。

この時期、まだまだ風も冷たく寒いが、我が世の春はここにあった。

言葉もいらない二人だけの時間と空間。

・・・・・・の、はずだったんだけどなあ。

最初の辺りは。

家に近付くにつれて、(せん)の雰囲気が沈み込んでいっているというか何というか。

尻尾もだらんっとしてるし。

今日は帰りたくないのって展開ならバッチコイなんだが。

ああ、そうこう思ってるうちに、家が見えてきてしまった。

名残惜しいけど、今日はここまでか。

 

「あ、あのさ・・・・・・」

 

(せん)が繋いだ手を、ギュッと握り締めてきた。

じっとりと汗ばんだ熱っぽい体温を感じる。

(せん)が鞄から何かを取り出した。

それは綺麗にラッピングされた長方形の包み。

 

「こ、こここここ、これ・・・・・・や、やる!」

「これは、もしかして」

「チィ、チョ、チョコレート。きょ、今日は、その、あれだ、バ、バレンタインデー・・・・・・だから、その」

 

うん、どう渡そうかって悩んでたのか。

嬉しいけど、これはちょっとテンパりすぎだよな。

 

「これ、食べて大丈夫なの?」

「な、なんだよ!? ちゃんと味見してるから問題ないぞ!! 料理は結構得意なんだからな!!」

「いや、そうじゃなくて、(せん)はチョコ食べて大丈夫なの?」

「・・・・・・狼の妖怪って言ったって、妖怪化した時点で狼そのものってわけじゃないんだからな。人化だってしてるし、チョコでもネギでも平気だっつーの」

 

よしよし、ちょっといつもの調子に戻ったな。

せっかくだし、このまま家に誘ってみるか。

・・・・・・ううむ、いざそうしようとすると途端に緊張してきたな。

 

(せん)、その、一緒に食べないか?」

「い、いいいいいっしょにって!?」

「あ、上がっていかないか? お茶しよう」

 

って、ナンパみたいな台詞しか出てこないのかよ俺!?

ああ、もっと気の利いた言葉が出てこないものか。

国語の勉強とか頑張った方がいいのか?

くそ、今更手遅れだ。

 

「わ、わわわわかった・・・オチャスル」

 

ああ、(せん)がまたテンパってしまった。

というか、俺もテンパってるよ。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

自分の部屋に彼女を招くって、すごい良いものだなっというのを実感している。

俺がお茶を入れて、(せん)がテーブルにチョコを出す。

これが共同作業!! いや違うか。

 

「どうぞ」

「け、けっこうなおてまえで・・・・・・」

 

ティーパックの紅茶なんだが。

ん? ティーバックだったか?

いやそりゃ下着か。

あのエロい感じの。

ティーバッグ?

・・・・・・どうでもいいや、さっきから何を思考してるんだ俺!?

彼女が部屋に来たからってテンション上がりすぎたか。

落ち着け、俺はイチャイチャしたいだけなんだ。

うむ、とりあえずお茶を飲んで落ち着こう。

チョコも食べよう。

チョコにはリラックスする効能もあったはずだ。

一口サイズのハート型のチョコを口に放り込む。

 

「・・・ナッツか」

 

コリッとした心地好い歯応え。

チョコの風味と甘さが程よくて、これは美味い。

 

「あ、ああ。マカデミアナッツとヘーゼルナッツを、その入れてみたんだ」

「うん、美味しいよ。風味もまろやかっていうか」

「ミ、ミルクを加えてんだ。分量が難しいんだけど」

 

おっと、俺ばかり食べてても駄目だよな。

(せん)は照れながらも、嬉しそうに笑ってくれてるけど。

自分の作ったバレンタインチョコを、美味しいと言って食べてくれるってのは嬉しいのかもしれないけどさ。

 

(せん)、あ~ん」

「え、ええええ?!」

 

チョコを1つ摘んで、あ~んをやってみる。

ううむ、頬を染めて照れる俺の彼女は最高に可愛いな。

しばらく迷っていたけど、意を決して口を開けてくれたので、チョコをそっと舌の上に乗せる。

(せん)がころころと口の中でチョコを転がす様子を見ていると、自然と頬が緩んでくる。

ああ、さっき(せん)が嬉しそうに笑ってたのが分かるなこれは。

 

「・・・・・・な、なあ?」

「うん?」

「その、このチョコ、ち、小さいけど、その・・・・・・い、一応、ほ、ほ、本命、だからな」

 

本命じゃなかったらへこむよ。

立ち直れないかもしれない。

 

「そ、そのだな。最初は、もっと大きいのにするつもりだったんだ。で、でも、な、それだと、そのた、食べるときに割るだろ? ハ、ハート型のを割られるのって何かやだなって思って、その・・・・・・」

(せん)は可愛いなあ」

「ぅぅっぅううう~~」

 

真っ赤になって顔を伏せてしまった。

しばらく唸ってたかと思ったら、(せん)がとつとつと語りだした。

 

「あのさ、ちゃんと言ってなかったから、言うけど・・・・・・あ、あたしさ、お前が好きだよ。ここんとこずっとお前のことばっかり考えてる。見てもらいたい、気付いてほしい、もっと好きになってほしい、もっと独占したい。そんなことばっかり考えてるんだ。なし崩しにあんなことになっちゃって、いまさらどう言えばいいのかぜんぜん分かんねーけど、どうしたら呆れられないような格好いい告白できるかとか、考えても考えても思いつかねーから・・・・・・もう、そのままの気持ち言う・・・・・・その、こんな独占欲の強いめんどくせー妖怪の女でいいなら、付き合ってください!」

 

ああ、思い出すな。

あの時も、こうだった。

 

「妖怪だけど、嫌わないで」

 

俺に妖怪だと知られた(せん)は、そう言ったんだ。

いつも真っ直ぐに前を見て、凛とした(せん)が、縋るような眼で。

 

(せん)じゃなきゃ嫌だよ俺。ヤキモチ焼きで、めんどくさい(せん)がいいんだ」

「・・・な、なんだよ、それぇ」

 

(せん)の側に寄って、その身体をぎゅうっと抱きしめた。

(せん)も、俺の背中に手を回してくれる。

 

(せん)、俺からもお願いする。俺でよければ、恋人になってください」

「・・・・・・は、い」

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

俺と(せん)はどちらからともなく、互いの唇を塞いでいた。

強引に舌を捩じ込んで、舌を吸うと甘い味がした。

甘いチョコレートの味だ。

気付けば、ベッドに(せん)を押し倒していた。

小さな唇を再び奪い、舌を絡めて、口内で溶けたその甘い粘液状のチョコを舐め取っていく。

やがて口を離して大きく空気を吸う。

見るといつの間にか頭頂部から狼の耳が飛び出している。

そっと甘噛して、狼の耳に息を吹きかける。

 

「は、ぁ」

 

その大きな耳の中に、そっと指を潜り込ませて耳介の内側を撫ぜ上げる。

少しづつ、少しづつ、奥へ奥へと潜っていく。

耳の穴の入口辺りは、狭くなってそれ以上進めない。

無理をせず、優しく指の腹でその周りの擦ってやる。

(せん)が心地よさそうに目を細めている。

うなじに手を差し入れて、さわさわと撫でながら、また口を吸い、服をたくし上げていく。

 

「あ、だ、駄目!」

「え?」

 

ここまで来て、お預けなのか・・・・・・ちょっと辛いんだが。

あの日だったというのか? キスまでよってことか?

 

「こ、この前、あんなことしちゃっといてあれだけど。あ、あたし、今できないんだ」

「あー、その、あの日、とか?」

「そ、そういうんじゃなくて・・・・・・季節、過ぎちゃったから」

 

季節、発情期ってことか。

 

「あ、あたし達って、季節じゃないとできねーんだよ。キ、キキキ、キスしたりとか、触られたり、とかだな、そういうのは、何か暖かくなってぽかぽかして気持ちいーんだけど、その、そういう気持ちよさじゃねーし・・・・・・ご、ごめん。その、求めてくれるってのは嬉しいし、こ、応えてやりてーとは思うんだけど、こ、こればっかりは、どーにも、人間みたいにいつでも気分次第でってわけには」

「試させて」

「へ?」

「本当にできないか、確かめさせて」

 

ここまで来てお預けは辛い。

せめて出来るかどうか、確かめるくらいはさせてほしいのだ。

・・・・・・何か、先っちょだけだからって迫る、ナンパ男みたいな気分になってきた。

 

「ぅ、ぅぅっぅううう~~」

 

恥ずかしくて泣きそうになってる。

ううむ、こういう顔も可愛いな。

 

「む、無茶するなよ。ぜ、ぜったい痛くするなよ、優しく、だぞ?」

「うん、分かった」

 

セーラー服の上を脱がし、スポーツブラを外していく。

健康的な筋肉美に、艶かしく日焼けした肌。

スレンダーな身体だが、引き締まった筋肉に柔らかい脂肪が適度に配合された魅力的な肢体。

慎ましいふくらみの中心に、つんと桜色の突起。

もう、愚息が大暴れしたいって熱り立ってきてる。

スカートの留め具を外すと、スパッツだけだ。

光沢のあるスパッツが、(せん)の下半身をピッタリと覆って、そのラインがくっきりと。

うう、もっとじっくり堪能したいけど、今日は諦めるしかない。

スパッツと下着を脱がせにかかる、スパッツ越しのきゅっとしたお尻の感触・・・またいつの日かの楽しみにしよう。

羞恥に震え、顔を真っ赤にする(せん)の両足を開いていく。

 

「あの、(せん)さん? 毛が・・・・・・」

 

俺もかなりテンパってて、今の今まで気付かなかったけど、体毛がなんというか、つるっつるになっている。

前の時は、けっこうもふもふってなってたんだが。

 

「し、知り合いの毛女郎の、あー、妖怪仲間にもらった脱毛薬で、その。毛深い女ってなんかやじゃね?」

「あ、いや・・・」

 

どうだろうか?

正直、そこまで考えたことがなかったが。

でも、女の子って毛とかを気にするみたいだし。

(せん)の家はひいお爺さんの代から人化して暮らしてきた家系で、両親も自分もメンタルは人間とほとんど変わらないって言ってたしな。

しかし、その、毛が無いせいかはっきりあそこの形がわかるというか。

丸見えですねこれ。

エロくてよろしい。

ううむ、しかし、前にした時と形が。

あの時は、処女だったのにぱっくりと開いて、びらびらがくぱぁっと。

季節じゃないって言ってたし、発情期じゃないとこんな感じなのか?

そっと陰部に触れてみる。

まるで小さく固い蕾のようにギュッと縮こまっていた。

指が入らないか試しみる。

 

「う、痛ぅ」

「あ、ごめん、痛かった?」

「ぅぅ~、だから、無理なんだよぉ。季節じゃねーとできねーんだ」

 

でも、(せん)はさっきこう言った。

 

――――・・・・・・狼の妖怪って言ったって、妖怪化した時点で狼そのものってわけじゃないんだからな。人化だってしてるし、チョコでもネギでも平気だっつーの――――

 

狼そのものではないから、チョコやネギも平気になってる。

人間に近くなってるからだ。

なら人間みたいに年中発情できる要素もあるのではなかろうか?

それに、あれだ。

チョコって昔は媚薬の一種でもあったとか何とか。

刺激物の少ない昔と今じゃ違うのだろうけど、狼の部分がそういう要素を過敏に受け取ってくれはしないだろうかと、都合の良い期待もある。

可能性は0ではないはずだ。

いや、この言い回しは何か良くない気がする。

まあ、とにかくチャレンジしてみよう。

人間の部分と妖怪の部分、両方に望みを託そう。

 

マッサージするように、陰部の回りを揉んでみる。

小さな(せん)の陰部に口を付け、小さなクリトリスをついばんだ。

ぴったりと閉じた割れ目を、優しく、ほぐすように舌先を往復させ、震える恋人の閉じた花びらを、じっくりと味わうように吸い、舌を這わせる。

陰部を吸いながらも、クリトリスへの愛撫も忘れないように、指先で優しく柔しく撫で続けていく。

時折、口を離し、手の平でマッサージするように揉みほぐすように刺激を与える。

何度も、何度も根気良く、大切な恋人を気持良くすることを考えて。

 

「んっ! ふ、んっ!」

 

小さく声を上げて、(せん)が眼を閉じて唇を噛んでいた。

 

これはイケるか?

ピクピクと引きつる小さなクリトリス。

女の子の弱点を包み込んだ、薄い包皮を優しく、撫でるように剥いていく。

小さなクリトリスが赤く腫れ上がってきている。

充血し始めた小粒の肉芽を、舌先で慎重に舐める。

 

「・・・・・・ふッ! ひぅん!?」

 

その瞬間、電流を流されたように、(せん)の腰が跳ねた。

 

「あ、痛かった?」

「い、いや、なんか、変な感じがして・・・・・・」

 

やっぱり感じてきているのかな?

これ、愛液、出てきてるよな。

人差し指を、ゆっくり差し入れていくと、先程拒まれた時とは違い、ぬるりと沈み込んだ。

 

「ひぅ!?」

 

それでも(せん)の膣内はまだまだ固く狭い。

指一本でもギチギチだ。

濡れてはいるけど、ギュッと締まり指の浸入さえ拒もうとしている。

指先を入れたまま、お腹側の壁をゆっくり撫ぜてやる。

 

「ぃぅ!?」

 

少しづつ、指が中へと押し入っていく。

早る気持ちを抑えて、ゆっくりゆっくり愛撫しながら、少しづつ深く、深く潜っていく。

下腹部から、キュッと締まった太ももに舌を這わせ、舐め上げる。

さらにくびれた腰、筋肉の弾力に富んだ脇腹のライン、桜色の突起、首筋、耳へと。

 

「や、やぁ、ぞわぞわする、これ、これ変になる、おかしいよこれぇ」

 

舌であちこちを愛撫し続けてやるたびに、秘所が指を受け入れていく。

気付けばすっかり根本まで埋まっていた。

ゆっくり引き抜いていく。

 

「ーーーーーーーっ!?」

 

(せん)の身体がビクンと跳ねる。

入り口まで抜いたところで、また根本まで埋め込んでいく。

 

「~~~~~~っ!!」

 

さっきはギチギチに拒んでいた膣内は、ある程度スムーズに飲み込んでいくようになった。

引き抜くとぎゅうっと隙間なく膣肉が吸い付いて、愛液が掻き出されていく。

押し込むとギチギチと隙間なく締め付ける膣肉のせいで、愛液が押し出されていく。

抽挿する度に、愛液がぼたぼたとシーツに零れて染みを作る。

一度、指を引き抜くと、クリトリスを舌で転がし、ちゅっと吸ったり、優しく、または強くタッチを変えてしゃぶってやる。

さっきまではぴっちりと閉じていた陰唇の周辺を、舌でなぞって。

舌先を膣内に、そっと入れ、出して舐り、指を入れて擦ってやる。

 

「ふぅ、ふぅぅぅ、ふうーーっ!!」

 

まるで吠え声を抑えるかのような、嬌声を発し始めている。

愛液ですっかり濡れそぼった性器から、むわっとにおいが立ち昇ってきていた。

好きな女だから、そう脳が感じさせているのか、とても甘い良い匂いに思える。

 

「はぁ! あ、あ、ひぅぅんっ!?」

 

妖しくうねっていた腰が痙攣し始めた。

 

「気持ち良い、(せん)?」

 

うっとりした表情で、快感に身を委ねるように目を閉じていた(せん)が、その言葉で突然ハッと目を開いて顔を真っ赤に火照らせてかぶりを振った。

 

「ひ、ひがう、気持ち良いはず、ないぃ! き、季節じゃねーのに、そんなのなるわけないのに!あ、あたし、そんなやらしい娘じゃないもん・・・・・・」

 

発情期じゃないのに、感じてるのが恥ずかしいのか。

とはいえ濡れてはいるし、指も入るようになったから最後まで出来ないはずはないよな。

しかし・・・・・・指一本でギチギチじゃ、ちょっと本番は無理かな。

ひりひりするくらい締め付けてきたからな。

 

「ん?」

 

足元に何か転がってきた。

(せん)の鞄が開いている。

そこから零れたのか・・・・・・って、これ。

 

(せん)さん、これは?」

「ふぇ?」

 

俺は拾ったそれを(せん)に見せた。

 

「かーちゃんが、持ってくといいって、もたぃしてくれたんだけど・・・・・・何かよくわかんねーけど塗り薬か何か?」

「ああ、うん、そうね・・・・・・」

 

(せん)のお母さん。

色々とお見通しみたいだな。

というか、親公認ってことでいいのか。

まあ、ありがたく使わせてもらいます。

このローション。

(せん)のお母さんが持たせたってことは、つまり、発情期じゃなくてもできるってことだな。

お墨付きが付いて、ちょっと安心した。

ローションのボトル先端部を、ゆっくり腟口に差し込んでいく。

 

「ひゃ!? ひゅべたい! な、何しちぇんの!?」

 

溢れるまで、満遍なく注ぎ込んで、手で陰部周辺に塗り広げていく。

指を中に侵入させると、さっきとは比べ物にならない程スムーズに侵入していく。

2本・・・・・・うむ、すんなりいけた。

3本・・・・・・きついけど、なんとか入る。

これならいける。

 

(せん)、いくよ」

「ふぇ?」

 

(せん)が俺の熱り立った一物を見て、意図を悟ったようだ。

 

「む、無理ぃ、で、できないって、言ったじゃねーか・・・・・・」

 

逃げようと、身体をひるがえした(せん)に、反射的に手を伸ばした。

意図せずに、お尻の辺りから生えた尻尾を掴んだ途端、(せん)の身体が崩れ落ちた。

 

「ひ、ひっぽ、だめ、ちからはいんにゃい」

 

ああ、そういえば動物って、尻尾の辺りが性感帯だとか聞いたことが。

散々愛撫し続けてたから、腰が砕けてたところにトドメ刺しちゃったか。

でもまあ、好都合というか。

四つん這いで、こっちにお尻突き出す格好になって、こんなの見せられちゃもう我慢なんか利かない。

後ろから、その身体に覆い被さった。

 

「や、やだぁ! ひゃめてよぉ!」

(せん)・・・・・・」

 

自分でも信じられないほど怒張した、熱くて硬い、俺の男の部分を(せん)の膣口にあてがった。

 

「むちゃ、しないってやくしょくしたのにぃ!」

「大丈夫、ちゃんと入るよ」

 

気持ちは早るけど、必死に我慢して、ゆっくりとゆっくりと腰を押し進めていく。

綺麗なピンク色をした花びらは、花弁を開いて一物を呑み込んでいく。

 

「ああっ、あああーーーーッ!!?」

 

亀頭がぬるりと膣内に姿を消して、そのまま入り口をこねるように押し広げ、ゆっくり根本まで挿入していく。

 

「あ――――――ッ!!!」

 

背を弓なりに反らして、(せん)が絶叫した。

 

「ちゃんと入ったよ、(せん)。痛い?」

「い、いいい、痛くは、にゃいけどゅ、あ、圧迫感がすご、く、苦しい・・・・・・」

 

こっちも締め付けがすごい。

初めてした時は、ねっとりと柔らかく絡みついてきたけど、それとは正反対だ。

ここまでぎゅうぎゅうに締め付けてこられると、そんなに持たないな。

ぐいっと一往復させるだけで、かなりクる。

突き込む度に、ぎゅぽんといやらしい音が響く。

 

「狂うぅー、こ、こんなのくるちゃうぅ」

「この間、さんざんしたじゃないか」

「ら、らってぇ、この間は、あ、熱くて、頭がぼぅっとして、にゃにがなんだきゃ、わかんなきゃったからぁ!!」

 

発情期で理性が飛んでたからよく覚えてないってことか。

今は理性があって、意識がはっきりしてるから、余すとこなく、されてる感覚を味わっちゃうってことか。

 

「なのにぃ、発情期じゃないのにぃ・・・・・・あ、あたしこんなになってる」

「感じてる?」

「ひがうぅ~、きもひよぐなひっイッでないぃい」

 

亀頭の先を押し付けてぐりぐりっとしながら、尻尾の付け根をとんとんと叩いてやると、膣肉が痙攣してぐにぐにと蠢きだした。

これって、イッてるよね。

 

「つっ~~~~~~~~っっっ!」

 

(せん)の全身がガクガクと痙攣しだす。

俺も、堪え切れずに燃え上がるほど熱いものが(せん)の子宮に吐き出された。

こんなに熱いと思ったのは生まれて初めてだ。

もっと、ほしい・・・・・・

 

(せん)・・・・・・」

「あ・・・・・・? うそっ・・・そんにゃ、まっまだ? だってこんなに・・・も、もうゆるひれ、気持ちよがったがらっっ! なんどもイッたのっっ! だがら、もうぅっ」

「ごめん・・・」

 

発情期のあれ以来、擦り切れるまで舐め回された体中が、ヒリヒリして痛くて、そんな気になれなくて本当に久しぶりなんで、ちょっと抑えが・・・・・・

 

「あぁあああ~~~~~~っっっッ」

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「送り狼が、送り狼された・・・・・・」

「ごめんなさい」

「無茶しないって言ったのに、無茶した・・・・・・あたしが、イッてるのにあんなに」

「すみません」

「爺ちゃんが一番怖いのは人間だって言ってたけど、本当だよ。狼以上に狼だ」

「申し訳ありません」

 

ピロートークは、俺の謝罪会見になってしまった。

ちょっと調子に乗りすぎた。

まあ互いに抱き合って、いちゃいちゃしながらだから、いいや。

 

「ま、まあ・・・・・・あたしも、この間、似たようなことしたし、お、おあいこってことで、ゆ、許してやらなくも、ない」

「ありがとうございます」

「・・・・・・こんな、するのにも手間のかかるめんどくせー女だけど、逃げるにはもう手遅れだからな」

 

むしろ俺の台詞だと思う。

それに、まあ、そんな面倒くささがいいんだ。

じっくり仕込んでいくさ。

 

このあと、いつでもOKなくらいに調教されてしまう(せん)さんに関しては・・・・・・また別のお話。




はい、送り狼でした。
ネコ目の動物って大抵、チョコは毒になりますが、まあ妖怪化してれば関係ないさ。
って考えが根本にあります。
名前は同じ狼の妖怪である、千疋狼から千ということで。
送り狼の別名である山犬から、ヤマ→マヤって感じにしようかとも思ったんですが、それって「神様のお○にいり」及びその続編の「もふもふっ珠○さま!」という商業ラノベの山犬娘ですでにいるので、別のにしました。

さて獣っ娘となると発情期ですね。
発情期あったりなかったり色々と巷の作品はありますが、敢えて発情期を外してみました。
尻尾や耳とかは、あまり責めないように、発情期じゃないって点を強調した展開です。
あとに狐キャラが控えてるんで、あまり早々にやってしまうとプレイ内容がね、被っちゃうから。
性格は送り狼の人を襲う、人を助けるという相反する逸話があるので二面性、ツンデレとなりましたが、すでに関係が進んだ後なのでデレの面しか出てないですね。
口調が伝法という点にしか、それが残ってません。
あとは狼って一夫一妻制で、番とは常に行動を共にするとか。
なのでそういう習性も、参考にしていますね。

次回は、吸血鬼の予定ですが、ちょっと間を空けて4月末の投下予定としましょうか。
一気に見ようと録り溜めてたアルペジオ見たり、部屋の掃除や本の整理とかSS書くのに専念してたせいで溜まってる用が色々と・・・・・・消化しとかないとね。


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ガブッてハニー

超難産でした。
何度プロット変更したことか。
今回は強姦描写有り。
ガチレイプみたいなの書いてると辛い。
読む分には全く平気なのに書くと辛い何故だ?


「なかなか良い国じゃない」

 

摩天楼を織り成す、高層建築物の群れ。

そのガラス窓が夕日を反射し、世界一面を茜色に染め上げている。

この摩天楼で一番高いビルの屋上。

一人の異国の少女が夕日に染まった風景を眼下に睥睨し、独りごちる。

 

白いチェニックと、それに合わせた白いミニスカート、黒いケープを羽織った少女。

肌は病人を思わせる程に、異様なまでに白い。

だが艶も張りも健康的なそれだ。

金色のさらさらとした長いストレートヘアが、風にたなびいている。

モデルを思わせるスレンダーで整った体型、手足はすらりと伸びている。

その表情や所作に、少女でありながら大人の魅力、蠱惑的とも言える妖しさを内包し始めている。

その雰囲気を決定付けているのは、夕日よりも赤く紅く、血色のルビーを思わせる深紅に燃えるような瞳だった。

 

「お父様ったら、この国は魔境だなんて脅かして」

 

まあ、ある意味そんなに間違ってはいないのかもしれない、と少女は思う。

眼下に広がる街並みを歩く大勢の人々。

彼女の眼には、その中に人に化けた化生の存在が見て取れる。

全体の一割どころか一分にも満たないだろうが、彼女の祖国では考えられない光景だ。

この極東の島国では昔から、人と妖が混じって暮らしてきたと聞く。

 

父親の仕事にくっついてあちこちの国を巡ってきた。

妖怪というだけで、排斥される国。

付かず離れずを保つ国。

そして共存する国。

様々な国がある。

しかし、ここほど文明が発達していながら、人と妖の距離が近い国は初めてだ。

 

電線に三本足の鴉が止まっている。

人間と妖が携帯ゲームで盛り上がっている。

公園で転んだ子供を、木精が助け起こしてあやしている。

仕事帰りに繁華街に繰り出す労働者達の中に、当たり前に人間に化けた妖怪が混じっている。

不思議な国だ。

妖怪が当たり前の隣人として無意識に共存している。

面白い国、楽しそうな国だ。

父親の仕事がいつまでかかるかは分からないが、それまでは色々観光しよう。

 

「さて、次はどこに行きましょう!」

 

言葉とともに少女は屋上から身を躍らせていた。

夕日の中で、少女の体が溶けるように消えていく。

バサリ、と大きな羽音が響いたかと思うと一匹の大蝙蝠が夕日に向かって飛び去っていった。

 

「うふふ、日の中の変化もだいぶコツを掴めてきましたわね」

 

吸血鬼。

北欧のブルコラカス、ドイツ地方のノインテーター、ルーマニア辺りのストリゴイ。

吸血鬼と称されるものは数多いが、単純に吸血鬼(ヴァンパイア)といえば彼女の種族だ。

吸血鬼の両親から生まれた、生まれながらの吸血鬼。

真祖の吸血鬼たる彼女は、歳若いながらも低位の吸血鬼のように日光で滅びることもない、日を克服したもの(デイウォーカー)だ。

とはいえいかな日を歩く者(デイウォーカー)といえど、日光の中ではその力は大きく阻害されるのが常だ。

吸血鬼の変身能力などはその最たるもの。

霧、狼、蝙蝠、様々なものに変化する吸血鬼だが、太陽が出ている間は高位の吸血鬼でもそう容易く出来るものではない。

日没間際とはいえ日光の中で变化してみせた彼女の力は、かなりのものといえるだろう。

 

「きれい・・・・・・」

 

日光は力を阻害されるので好きではない。

だけど日に輝く世界を見るのは好き。

矛盾した感覚がどこか心地良い。

風の向くまま気の向くまま、彼女は飛び回る。

 

「あら? あらあらあら、まあまあまあ!!」

 

ふと、何かを見つけて降下を始めた。

翼を折りたたみ、急降下したかと思うと、器用に急制動をかけて慣性を殺し、樹の枝にぶら下がる。

そこは少し大きめの公園。

彼女の視線の先には、一組の男女がいた。

女の方は、幼い少女のようにも見えるが、そのお腹が大きく膨らんでいる。

 

「アカナ、大丈夫? 無理はしちゃ駄目だよ」

「もう、心配しすぎですよアナタ。適度に運動した方が良いんですからね」

 

(まあまあまあ、あちらの殿方は人間ですわね。それでそれでそれであちらの女性は妖怪さん!! お腹の中に子供がいますのね! いますのね! きゃー種族を越えた愛ですのねー!!)

 

人間でも吸血鬼でも、女というのは色恋沙汰が大好きなようだ。

 

「ん~?」

「どうしたのアカナ?」

「何か、見られているような」

 

少女のような妊婦が、きょろきょろと辺りを見回している。

 

「俺、犯罪者に見られてる?」

「わたしの方が歳上ですのにねぇ。でもこの気配は同属かしら? けっこう力のある人みたいね」

「あ~、物珍しいのかな?」

 

(いけませんわ、私としたことが人の逢瀬を邪魔するなど・・・・・・)

 

バサリ、と一匹の蝙蝠が翼を広げて再び高空へと舞い上がっていく。

 

(私はクールに去りますわ)

 

日はすでに沈み、空は藍色の幕が広がり始めている。

今日は月が燦然と輝き、優しい月光が降り注いでいた。

元の姿に戻って、空で踊るのもいいかもしれないと思ったが、流石に都市部では人に見られると思い自重する。

 

「次はどこに行きましょう? そういえばこの国で同族の方がカートゥーンを描いてると聞きましたわ、少しご挨拶に伺うのもいいかもしれませんわね」

 

それにしてもと、先ほどの二人を思い出す。

 

(ああ、いいですわね。私もいつか素敵な殿方と・・・・・・)

 

ハニーなんて呼ばれて、ダーリンって呼んじゃったり呼んじゃったり!!

そして、そして、甘く優しく・・・・・・血を吸いあって・・・・・・

 

「きゃあーーー!! いやですわいやですわ私ったらはしたない!!」

 

グルグルときりもみ回転して、身悶えしながら複雑怪奇な軌道を描く大蝙蝠。

失速して墜落しないのは器用というべきか。

 

「あ、あらいやだ。私ったらはしゃいじゃって」

 

気付けばいつの間にか港湾区の寂れた倉庫街までやってきていた。

流水もまた吸血鬼の力を阻害するものだ。

いかに高位の吸血鬼とはいえ、自力で海を越えることはできない。

引き返そうとしたところで、鋭敏な嗅覚がある臭いを感知した。

 

「血の、臭い?」

 

集中してその出処を探ってみると、何やら争う物音がする。

 

「同族?」

 

騒ぎの元は、三人の同族。

すなわち吸血鬼。

それもかなり高位の存在のようだ。

それに対していたのは、一人の人間だった。

夜の藍を思わせる色の装束。

形は旧日本陸軍の将校服が近いだろうか。

上半身は金属製の胸鎧で覆われている。

手の甲部分までを覆い、手の平が露出している手甲(ガントレット)

足には脛までをカバーする足甲(グリーブ)

手には変わった形のサーベルが一振り。

 

「あれは、この国の妖怪退治屋(エクソシスト)ですの?」

 

吸血鬼は意外に思われるが、人間に友好的だ。

長く人間に混じって暮らしてきたせいだろう。

だが時折、映画や小説のような悪い吸血鬼のように、人間を襲い血を吸って殺すような無法者もいる。

吸血は性交のようなものという貞操観念のある彼女には、理解し難い連中だ。

彼らに対して思うものといえば、一般の人間が凶悪殺人鬼に抱くような感情と同義と言ってもいい。

血の臭いをぷんぷんさせているあの吸血鬼達は人を襲ったのだろう。

とはいえ流石に多勢に無勢だ、加勢するべきか否かと判断に迷うが、

自分達が人間に友好的とはいえ、人間が吸血鬼に友好とは限らない。

ましてや相手は妖怪退治屋(エクソシスト)だ。

いくらこの国が妖怪に寛容でも、問答無用で攻撃される可能性もある。

 

と、彼らに動きがあった。

一人が瞬時に獣へと変じ、分裂して襲いかかる。

かなり高度な変化だ。

 

「やはり私よりも強い!」

 

だが次の瞬間、分裂した五匹の獣が、首を切断されて地を転がっていた。

あの人間がサーベルを一閃したと気付いたのは、側にいたもう一人の顔面に膝蹴りが叩き込まれた後だった。

グシャリと顔の砕けた吸血鬼は、何が起こったのか認識する間もなく、心臓に鉄の剣を打ち込まれて灰になって崩れ落ちる。

 

「え、あ?」

 

それは上空から遠目に見ていた彼女の呟きでもあり、相対していた最後の吸血鬼のものでもあった。

当たり前だ、二十人力の怪力と呼ばれる吸血鬼を、近接戦闘で圧倒する人間など、想像だにしたこともなかったろう。

勝ち目がないと見た吸血鬼は、霧に変化して逃げようとする。

だが、それすらも出来ずに、一足で踏み込み、吸血鬼の急所たる頭と心臓にかけて剣閃が走り、散華した。

 

「凄い、吸血鬼を圧倒する人間なんて初めて見た!!」

 

怖いという感情よりも、ただ純粋に凄いという感情が勝っていた。

 

「もしやあれは妖怪退治屋(エクソシスト)ではなく、話しに聞くサムライというものかしら?」

 

となると、あのサーベルは日本刀(サムライ・ソード)!!

凄い、凄い、本物は初めて見たと内心大はしゃぎだ。

だから、次の瞬間、何が起きたのか理解できなかった。

 

「え!?」

 

気付けば、地に落ちていた。

体には極細の糸が絡まり、強制的に変化を解かれていた。

 

「さて、君は何者かね?」

「あ、あ・・・・・・」

 

あの高空にいる自分に気付いていた。

 

「空からこちらを探っていたようだが?」

 

糸はいつの間にか解けていた。

だが、逃げようにもその前に手を捻られて、動きを拘束されてしまう。

何をどうしているのか、霧や蝙蝠への変化も封じられてしまっている。

 

(この人、吸血鬼を把握しつくしている!?)

 

鳥は飛ぶ際に地を蹴って体を宙に躍らせる。

この動作を阻害されると、鳥は空を飛ぶことができない。

それと同じように、吸血鬼が変化する際の微細な動作を把握して、それを封じている。

吸血鬼本人ですら知らない生理的反応すら、この男は知ってこちらを拘束している。

それは自力では絶対に逃げられないということだ。

それを理解し、ようやく彼女は身を裂くような恐怖が実感として襲ってきた。

 

殺されると・・・・・・

 

「さて、何が目的だったか吐いてもらおうか?」

「わ、わたし、迷い込んだ、だけで」

「正直に話す気がないなら、話したくなるようにしてやろうか?」

 

ぐいっと、服を掴むと同時に一気に引き裂かれた。

白い肌が、闇の中で浮かび上がる。

必死に振り解こうと足掻いた。

細い腕に力を込めて、拘束している男の手を振り解こうともがいた。

だがその度に激痛が走り、骨が軋む。

力を入れると、自分の関節に負担がかかるように関節を極められていた。

これでは如何に吸血鬼が怪力とはいえ、人と同じ関節構造を持っている以上、どうにもできない。

服に続いて、ランジェリーも引き裂かれていく。

 

(お気に入り、だったのに・・・・・・)

 

艶のある白い白い肌が眩しく扇情的に輝いていた。

 

「話す気になったか、お嬢ちゃん?」

「いやあーーっ! ふぎうううぅう!!」

「そうか、嫌か、じゃあ仕方ないな」

 

ジジ、っと音が響く。

それがファスナーを下げた音だと気付いた彼女は必死になって暴れる。

だが男がぐいっと力を入れると、関節がミシミシと音を立てて軋んでいく。

 

「いぎゃあああああっーーーっ!? いダイぃぃイだイぃいダイ!!」

「さっさと話せばよかったのにな、もっと痛くなるんだぜ、そら・・・よっと!!」

「あがああっ!?」

 

下半身、股の間に激痛が走る。

何かが肉壁を抉じ開けながら、侵入してくる悍ましい感覚。

内部の肉がぎこちなく不規則に動き、締め付けるというより、必死に外へ侵入者を追い出そうとする。

 

「んぎうううううっ!! んぎっ、きふううううッ!!」

 

男は無遠慮に腰を振り、奥までねじ込もうとする。

途中にある膜がブチブチと引き千切られていく。

 

「ぎゃああああああっ!!」

「うるせーな、叫ぶよりちゃんと情報吐けよ、おい」

 

(痛いよ、私、何されてるの? い、挿れられてる? 私、初めてだったのに・・・・・・酷いよ、どうしてこんなことに)

 

男の動きがいっそう激しくなる。

ビタンビタンと音を立てて、下半身同士がぶつかり合う。

 

「おぐぅううううっ!! ぎゃうううぅうーーっ! あぐがっ、いぎゃああー!」

「痛いかー? 痛いよなー? 話さないともっと痛くしてやるからなちゃんと話すまで終わらねーぞ」

 

力強くピストン運動が繰り返され、ペニスが膣内に送り込まれてくる。

その肉の杭がだんだん紅く染まってきた。

吸血鬼の深紅色をした破瓜血だ。

激痛に顔を歪め、声にならない獣の咆哮を上げて叫ぶ。

苦痛を与えるために、破れた処女膜の残骸を突き回し、その度に苦しそうな絶叫を吐き出す。

 

「そら出すぞー」

「だ、す?」

 

その言葉の意味を理解した瞬間、少女は叫ぶ。

 

「やべてえ!! 嫌だ、やだやだややぁ!! 中は、中だけは許しでぇ!! おねがいじまずおねがいじまずぅーーー!!」

「じゃあ何が目的だったんだ、ほら」

「だ、がら、迷い込んだだけだっでぇ」

「じゃあ中だ」

「い、いやあああああーーーーっ!!」

 

男が腰を押し付けて、その欲望を注ぎ込んていく。

逆流した精液が押し出され、ぐっぽ、ぐっぽと音を立てて撹拌される音が、取り返しの付かない体にされたことを少女に思い知らせていた。

射精してもまだ硬いままのソレが、止まることなく抜き差しされている。

 

「な・・・・・・い、いやあ、なにを、なさってますの!? 早くぅ・・・・・・早く、抜いてください」

「言ったろう、喋るまで終わらねーって」

「ぬ、抜いてくださいっ!! うあああっ!! もう、もう、いやあああああッ!!」

 

真っ白な尻たぶをゆすり、肉棒が打ち込まれていく。

 

「ああっ・・・・・・いやっ! ひいいい~~っ!!」

「そら今からまたこの穴にたっぷり注いでやるからな」

「だめぇ、中は、もう中はゆるじで!!」

「正直になるまで全部中だ」

「いやああああああああ!!」

 

それから何時間経っただろう。

何度も何度も犯され、中に注がれ子宮を汚され続けた。

 

(なんで・・・・・・こんなことに?)

 

「反応鈍くなったな、じゃあ気付けにこっち使ってやるな」

 

一度も抜かれることなく、少女を陵辱し続けた一物がようやく引き抜かれた。

もうぽっかりと開いてしまらなくなった膣壁が、真っ赤に充血した肉をのぞかせヒクヒクと痙攣している。

その上で窄まった尻穴に、男がそのペニスをあてがうと、力任せに押し込んでいく。

 

「ぎゃあああああああ!! やめでぇ!! 死ぬッ死んじゃう!! ぎゃああぁあああッ!!」

「はははは、まだまだ元気じゃないか、ほら頑張れー」

「いだいよぉーっ!! たず、だずげでぇ!! だれがぁだれがぁ、おどうざまぁーー!!」

 

無理矢理体を反らされて、男の欲望がいっそう深く侵入して蹂躙していく。

男の歯が首筋に当たり、皮を裂いて、ブツンと肉に食い込んでくる。

真っ赤な鮮血が溢れて、それをじゅるじゅるとわざわざ大きく音を立てて男が啜っていく。

 

「あ、ああ・・・・・・や、だ、血、血を、吸われてる、わ、私の、ひどいよ、こんなの」

 

吸血鬼にとって、血を吸うというのは婚姻にも等しい行為なのだ。

それが奪われてしまった。

何もかもを蹂躙され、穢しつくされてしまった。

失意と絶望が少女の全てを支配していく。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「それで、最後は血と腸液が混じった物を咥えさせられて、もう噛むとかそんな考えもできないくらいに犯されちゃって、そんな感じで身も心も調教されてしまったのがダーリンとの馴れ初めかしら」

 

そこまで話を聞いて、絶叫が響いた。

 

「女の敵ーーーっ!!」

「ちょ、ちょっと紺、落ち着いて」

「離しなさい紅葉!! あの女の敵に然るべき報いを与えなければ!!」

 

ここはとある役所の一室。

女三人寄れば姦しいというが、それは妖怪でも同じこと。

善狐のお紺、鬼の紅葉、そして吸血鬼のピエレットの三人が大騒ぎをしていた。

 

「だから落ち着いてって紺!!」

「これが落ち着いていられるかーー!!」

 

小学生高学年~せいぜい中学生くらいの身長の紺が、大柄な紅葉に抱きかかえられてバタバタと暴れている光景は微笑ましいというかなんというか。

 

「ピエレットの話、嘘だから!! 落ち着いてって!!」

「・・・・・・へ? う、そ?」

「糸で落とされたんでしょ? 糸使いなんて隊長さんともう一人くらいしかいないじゃない!!」

 

そう聞いて、紺はその二人の事を思い出す。

政府の妖怪関連を担当する省庁に所属する中で最強の戦闘部隊。

本当はもっと長い名前なのだが、仲間内では単に特殊部隊、あるいは精鋭部隊と呼ばれている。

外部からは殺し屋集団とか色々物騒な呼び名も頂戴しているが。

それをまとめる隊長は、そういう勝手な行動、特に無関係の相手を殺害とか強姦とかいう行為には非常に厳しく罰する男だ。

 

戦闘行動は基本的に最低ツーマンセルの集団行動が義務化されている。

くだんのピエレットのダーリンは剣士だし、使う魔術はいざなぎ流だ。

糸で高空の吸血鬼を絡めとって落とすなんて芸当をするのは、隊長かもう一人の隊員くらいだが、そのもう一人は女性だ。

とてもそんな行動を見逃すとは思えない。

 

「だいたい特殊部隊の人がそんな、ご、強姦とか、そんなことするわけないじゃない」

「・・・・・・言われてみれば」

 

別にこれは特殊部隊の連中が品行方正だから、という理由ではない。

戦闘中に強姦して尋問? それをすると何か有利になるのか?

むしろ隙だらけにならないか?

とかそういうズレた考えをする、脳筋集団どもだからだ。

 

「ピエレット・・・・・・あんたねえ」

「ごめんごめん、紅葉と旦那の馴れ初めが重かったからちょっと場を和ませようと」

 

クスクスと笑うピエレットの言葉に、紅葉が真っ赤になって反論する。

 

「ま、まだ旦那ってわけじゃ」

「でも式の日取りは決まったんでしょ?」

「う、うん・・・・・・」

「ところでヴァージンフォックスな紺は今の参考になったかしら?」

「なるわけないでしょ!!」

 

そもそもの議題は彼氏いない歴がこのままでは四百年経っても無理かもしれないという紺のために、彼氏持ちの二人に馴れ初めを聞きたいということだったのだが、紅葉は重すぎるし、ピエレットはこれだ。

自分の十分の一も生きてないのに、何が違うんだろうと紺の内心は忸怩たる思いだ。

 

「今の話、どこまで本当だったのよ?」

「組み伏せられたとこまでかな」

「それでなんでくっつくことになるのよ?」

「私からアタックかけたからかな。好きになったら積極的にいかないと。紺も受け身ばっかりじゃダメだよー」

「そんな状況でなんで惚れたのよ?」

「それは内緒ー。それにこういうのは聞いても意味が無いよ。自分の感情の問題なんだから」

 

むー、と唸る紺。

 

「そういえばあんたのダーリンさんは、今出動してるんだっけ?」

「うん、なんか長崎県の福江島ってとこで人喰いが出たんだって」

 

人喰いと聞いて紅葉の表情が曇る。

隠形鬼の系譜に連なる彼女の両親は、人喰いをしていた。

しかも幼馴染で今度結婚予定の旦那、その家族が喰い殺されるという事態になっている。

隠れ潜むのに特化した鬼である隠形鬼だけあり、長年逃げ続けていたのだが、その被害にあった旦那当人の手によって討たれるという、なんと言っていいのか困る重い事情がある。

 

「ダ、ダーリンさんが心配ね」

「無事に決まってるわよー」

 

まあ人型のMBT(主力戦車)か戦闘ヘリかと例えられる高位の妖怪とタイマンで戦えるのが、特殊部隊の最低レベルとまで揶揄される、どっちが化け物なのか分からない連中だ。

心配するだけ無駄だろう。

 

「まあ今晩には帰ってくるわよー」

「あんたみたいに相手の妖怪がくっついてきたりしてね」

「・・・・・・それはないわ絶対に」

 

眼が笑っていない。

しまったと紺は思った。

鬼もそうだが、吸血鬼も相当に執着心が強く嫉妬深い種族だ。

恋人に色目使う相手が出てきたら、間違いなく刃傷沙汰になる。

 

「そ、そうね、ないわよね。ダーリンさんはピエレット一筋だもんね」

「そ、そんな照れますわ」

 

そのままきゃいきゃいと、まだまだ話し足りない三人であったが、昼休憩終了の鐘がなり解散となった。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

壁の中にいる。

 

(どうしてこうなった!)

 

ダーリンが帰ってくる前に美味しい食事を準備しておこうと、家に来たのはいいのだが、霧になって壁抜けしようとしてハマってしまった。

壁から手や足が突き出し、身動きが取れない。

家屋は一種の結界でもある。

そういうものに弱い吸血鬼は、家人の許可を得ないと侵入できないのだが、一度許可を貰えば以後はフリーパスで入れる・・・・・・入れるはずだったのだ。

流石に精鋭部隊の家、普通の一般家屋に見えて、色々防備が半端無かった。

何度も来ているので、中途半端に入り込めてしまったのがマズかった。

油断していた。

結果がこれだった。

 

(ご覧の有り様だよでしたかしら? まさかネタ抜きでそんな有り様になるなんて)

 

「何やってるんだ、お前は?」

「あ、ダーリン!!」

「合鍵は渡してあるだろう、ちゃんと玄関から入らんからそうなるんだ」

 

すっかり呆れ顔だった。

 

(や、やだ私ったら、これ下着とか丸見えで・・・・・・)

 

「いけない娘だ。これはオシオキが必要かな?」

「え、ダ、ダーリン?」

 

シュルっと下着がずり下げられ、潤んだ秘所が露わにされる。

 

「だ、だめよダーリン、こ、こんなの」

「ここは駄目とは言ってないぞ」

 

グチュリと、愛液を垂らした秘部が誘うようにヒクヒクと蠢いて、妖しく口をひらいている。

 

(いやあん、全然身動きできませんのに、い、挿れられちゃいますわ)

 

亀頭の先端が、真っ赤な割れ目に押し込まれていく。

 

「あっ、うああ、パンパンになる、私のプッシーパンパンに広がっちゃう!!」

 

ぷっくりと膨らんだ土手周り。

だがまだカリの広がりが入っただけだ。

ここから無理矢理にねじ込まれ、ぐち、ぐちと肉壁をすり潰されていく。

 

「子供みたいなプッシーのくせに、こんなに嬉しそうにペニスを頬張って、それもこんな壁に埋まった格好で、これはもう立派な肉便器だな」

「べ、便器ぃ、わたひぃ肉便器ぃれひゅ」

 

ぐいっと奥まで突き入れると、突き当りの子宮口が押し潰される。

ピエレットの全身の毛穴が総毛立ち、頭が真っ白に沸騰する。

 

「ひぃんんぅうううっ!」

「お、ぎゅうぎゅう締め付けてくるなイッたか?」

「い、イッたぁイッてるぅ、一番奥、コンコンってされるの凄いぃ!!」

 

(これぇ、これ犯されてるって感覚がすごい)

 

腰をくねることも不自由な体勢、男の為すがままにされるしかない。

どんなことも抗うことが出来ず、どんな行為も好きなようにされたい放題されてしまう。

小気味よくピストンされるたびに、ジリジリと膣内を焼き広げていくような摩擦の悦楽が子宮を支配していく。

やわくほぐれた膣の婬肉を広がったエラで掻き毟られ、一番奥までノックされるたびに下腹部から甘く痺れて狂わされていく。

 

「もっとぉ!! ダーリンの肉の杭で、いけない吸血鬼を退治してぇ!!」

「ああ、もっと貫いてやる、俺の聖水で狂わせてやるぞ」

 

女の最深部で男の杭が、聖水を迸らせていく。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

(い、いやあん、こんなの私っ私っだめになっちゃいますわ!!)

 

「おい、おいピエレット?」

「は!?」

 

どピンクな妄想に染まって身悶えていたピエレットは一気に現実に引き戻された。

 

「今出すから、ちょっとじっとしてくれんか?」

「あ・・・・・・はい」

 

(私ったら最近こんなことばっかり考えてますわ、そりゃ痛いばっかりだったソッチのほうも、さいきんは良くなってきて、もっとしたいかなって思っちゃって)

 

紺や紅葉は何でも話せる気の置けない友人達だから猥談もよくするが、流石に最近の自分はちょっと頻度が多すぎはしないだろうかと悩む。

 

(そもそもダーリンは、俺の聖水がーなんてアホなこと言いませんわ)

 

と、頭を掴まれたかと思うと、全身がざわっとした感覚が駆け抜けて、気が付くと壁の外に出ていた。

強制的に霧にされて、再構成されたようだ。

 

(相変わらず、私以上に私の体を使いますわね)

 

「大丈夫か?」

「あ、はい、問題なさそうですわ」

「ああ、それと、だな、なんだ。下着変えた方がいいぞ」

「へ?」

 

ピエレットの下着は愛液でビシャビシャになっていた。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「そろそろ機嫌直せ、ピエレット」

「私がいやらしくってエッチでビッチなのを自戒しているだけですわ」

「いや、俺が悪いんだ。気にしなくていい」

「ダーリンは関係ありませんわ、私がスケベなだけなんですわ」

「いや、俺のせいだ、土砂加持(どしゃかじ)の影響だと思う」

「・・・・・・なんですのそれ?」

 

吸血鬼は土の上で眠らないとだんだん弱っていく。

普通は土を敷いた棺桶などで眠るのだが、ピエレットは最近一緒に寝たいとよく泊まりに来るので、心配して何か手はないかと手段を講じたのだ。

 

「それで、土砂加持が効くと聞いてな」

「この国の、土を聖別する儀式と考えればよろしいですの?」

「まあ、そうだな」

 

土砂加持とは清水で洗い清めた土砂を、光明真言を唱えて加持する密教の儀式だ。

病魔の退散や死人の滅罪などに効果を発揮する。

 

「それでベッドの下に敷いてあるんだが、慣れないうちは体が熱っぽくなったりする副作用が出たりするらしいから、そのせいだろう」

「・・・・・・・・・そう、ですわね」

 

熱っぽくなったりする、なんてものじゃないのだ。

単純に覚えたての猿状態なだけなのである。

体が熱っぽくなったから発情してるのではなく、妄想してるから発情して熱っぽくなっているのだ。

それに気付いたピエレットは、泊まりに来るのを自重するべきと決心した。

したのだが、三日後には開き直ってもういいやと、入り浸ることになるのだが。

 




吸血鬼娘でした。
レ・ファニュのカーミラやブラム・ストーカーのドラキュラ以降、数多くの吸血鬼モノが世に出ましたがやってみると超難しいですね。
様々な設定が盛られてきたので、どれ採用してどう使おうとか。
本当は、たまにはレイプものでもとか思って、そっからだんだん調教されてラブラブにとか考えてたんですけど、ガチレイプ書くの心に辛いので妄想というオチに逃げてしまいました。
やりたい要素がありすぎて詰め込みすぎてまとまりがなくなってしまったようにも思います。
プロットが何十回も変更になった超難産な話でした。

牙と牙の間でシゴイてフェラするとか、血を吸い合うとか、死んだら一緒に墓に入って灰になって混じり合おうとか物騒なこと考えてるとか、ネタとしてはあったのですが、流石に収めきれませんでした。
ピエレットという名前は、公文書にて最初に吸血鬼という名称を使われたとされるPeter Plogojowitz ピーター・プロゴジョヴィッツから、Peterは聖ペトロ由来の名前でそこからフランス女性系の名前が語感良さそうなんで採用しました。

次は今回出てる狐っ娘のお話。


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ようこそ妖狐

狐っ娘っていいよね。
今まで出てきた娘達や今後登場予定の娘の事を詰め込んだらちょっと説明ぽくなっちゃたかなっと反省。
機種依存文字は環境によっては上手く表示ができないってこともあるんで、避けてきましたが今回から❤を使ってみましたけど、どうでしょうかね?


きつね色の長い髪をしたOLが、パソコンを前に唸っている。

女物のスーツをビシっと着こなしてはいるが、背が低く童顔、あと胸も控えめのため、キャリアウーマンというよりは、可愛らしいという形容の方が似合う少女のような女だった。

唸りながらも、止むことなく軽快にキーボードを叩く音が響き、それに合わせるように大きな狐耳がピコピコと動き、椅子の隙間から飛び出たふわふわした二本の尻尾が揺れる。

彼女の名は紺。

狐の妖怪である。

 

「人手が足りない・・・・・・」

 

大量の書類、書類、書類。

書類が山になっている。

まあいつもの事なのだが、それでもというか、だからこそというか、愚痴も出るというもの。

 

「これもみーんな、上の連中が悪い」

 

数年前に厄介な戦闘作戦があって、上の無能で戦力の逐次投入各個撃破で部隊が半壊するという洒落にならない一件があったため、現在も人手不足が解消されていないのだ。

龍脈や霊域の管理に今まで事務職だった者も駆り出されているので、必然的にあちこちにしわ寄せがきている。

ちょっとした戦闘作戦にも特殊部隊の人員が出張ったり、さらには書類仕事の手伝いにも回される辺り、人手不足が顕著に現われている。

 

(でもあの人達、データ入力以外は使えないのよね。というか感覚がズレているのが問題というか)

 

そう考えていると、さっそくその問題児達がまたぞろ動きを見せた。

 

「お紺さん、これD案件でいいですかね?」

「・・・・・・ええーと?」

 

本当はもっと長い正式名があるのだが、そちらはあまり呼ばれることはなく、単に特殊部隊、あるいは精鋭部隊と通称される日本最強の対妖怪戦闘部隊。

それが事務仕事をやらせて不満が出ないのかと思うが、意外にも喜んでいる節があるのが、誰からも不思議に思われている。

まあ、喜んでやっていようと、ちゃんと出来るかどうかはまた別問題なのだが。

 

「・・・・・・なんで離婚調停とストーカー相談が、D案件になるの?」

 

D案件。

DはデリートのD。

安直なネーミングだが、そうなってしまったものを、今更変えるのも面倒くさいのでそのまま使われているが、ようは対象の抹殺。

早い話、戦闘による問題解決が必要という案件だ。

人喰い妖怪相手ならまだしも、間違っても離婚調停やストーカー相談で出す結論ではない。

 

「でもこの離婚調停は、雪女側の親族が正体がバレたから別れろと騒いでいるだけで、当人同士は別れたくないという案件ですから、騒いでいる親族を消してしまえば問題は解決と」

「別の問題が発生しちゃうでしょ!! まずは説得!!」

 

頭の中で、雪女の職員のリストアップ。

長年の経験から、こういうのは同族の妖怪がいた方が良いという傾向が分かっている。

それと交渉事が得意な面々をリストアップして、案件に沿う人選を考え、彼等を派遣するように書類を作成する。

この辺りの処理をものの数分で片付けてしまうため、この紺という妖狐は事務員として重宝されている。

 

「で、こっちのストーカー案件は・・・・・・」

 

――私はタンタンコロリン(♀)なのですが、付き合ってる人間の彼に別のタンタンコロリン(♂)がちょっかいをかけてくるようになって――

 

「ストーカーしてるタンタンコロリンのやつをぶち殺してしまえば解決ですよね!」

「何で自信満々なの!? まず詳細を調査して、ストーカーしてる事実を把握して厳重注意!!」

「はあ? そういうものですか?」

 

特殊部隊所属の男はひとしきり感心したと頷くと、席に戻って仕事を再開した。

 

(疲れる・・・・・・常識がどこかズレてるのよね、あの人達。隊長さん、早く帰って来て)

 

一人じゃフォローが辛いと独り言ちる。

一番の常識人である特殊部隊の隊長さんが来てくれれば、楽になるのにと切に思う。

別の案件で動いているので、しばらくは戻ってこないのだが。

 

(でも一番強い人が、一番常識人ってのがちょっと怖いのよね)

 

特殊部隊は完全実力主義だ。

その大半が人間のため、人間贔屓と言う者もいるが、実際は完全実力主義にしたら人間ばかりになっただけなのだ。

一人一人が、比喩抜きで文字通りの一騎当千の化け物揃い。

人型の主力戦車だ戦闘ヘリだと例えられる、高位の鬼や吸血鬼と一対一で戦える、というか上位陣辺りになると素手で殴り殺せるような連中だ。

 

(良い人達では、あるんだろうけど)

 

こうして特殊部隊の人達と、交流が続くにつれて紺は思うのだ。

あの人達は強くなるために、何かを削ぎ落としてきてしまったと感じることが多い。

あんな化け物じみて強くなるための何か。

生まれ、育ち、環境か、強くならなければならない、そうでなければ生きられないような、何か異常な要素が、人生の中にあったのだろう。

常識を身に付けるような生活が出来なかったのだ。

だけどそれを束ねる一番強い人が、一番常識を身に付けている。

だからこそふとした弾みで、何かとんでもない歪みが顔を見せるような、あの人にはそんな怖さがあるのだ、と。

 

(・・・・・・いけない、いけない。そんな風に考えちゃ)

 

自分が孤妖だから、警戒心が強すぎてしまうのだろうかと反省する。

こんな考え事をしながらまったく手を止めず、書類のデータを入力していく速度が落ちないのが大したものだ。

 

「お紺さん、何か新潟の方で臼を背負った妖怪が出たとか何とか通報が」

「ああ、それバーバ・ヤガーのワシリーサさんね。たまに死んだ恋人思い出しては、倒れるまで走って日本の沿岸部なんかにも出没するのよ。それだけだから放っておいても問題ないわ」

 

答えながらも、処理を続けていく。

今は出産届けの処理に追われている。

これもなかなか多いのだ。

人間派生型妖怪、二口女の・・・・・・

 

「えっと、次はっと」

 

自然霊型妖怪、垢嘗めの・・・・・・

 

「また、こいつか」

 

この妖怪は毎年のように出産届けを出してくるので、すっかり名前を覚えてしまった。

確か今回で六人目。

 

(ラブラブか? ラブラブなのか? アナタの子供孕みっぱなしなのーとかやってんのか?)

 

こちとら三百年以上処女だってのにと、イライラを募らせていく。

さっきのタンタンコロリンもそうだ。

木精の一種であるタンタンコロリンが人間と付き合うって、何年かはやりまくって精を注がれなきゃ人間形態維持できないんだから、つまりそういうことだってーの!!

キーっと苛立ちをキーボードにカタカタと叩き付けて、データを打ち込んでいく。

しばらくそうしているとパソコンの画面下に、ポップアップが表示された。

メールのお知らせだ。

妖怪はどうもこういう機械に疎い連中が多いのだが、最近はだんだん使用頻度も上がってきている。

こうしてメールで相談を受けるケースも多くなってきた。

メールを開いて、目を通す。

 

――私は送り狼という妖怪なのですが、人間の彼氏に発情期でもないのに求められて困っています。恥ずかしい話ですが最近は、何かだんだん良くなってきてしまって、発情期でもないのにこんなことしてしまっても大丈夫なものかと――

 

知るか、ボケェ!!

と、キレそうになりながらも、慣らしていけば発情期じゃなくてもOK、あと口や尻穴でも使っとけばいいよという内容をオブラートに包んで注意点も添えて送り返す。

そもそも妖怪の発情期なんて若い時分だけで、長じれば人間と同じようにいつでもいけるようになる。

 

(経験無いのにこういう知識ばっかり増えてく。ちくしょう、どいつもこいつもー!! 私だって彼氏欲しいよぉ!! いいかげん一人寝は寂しいよぉ!!)

 

と、そこで昼休みのチャイムが官庁内に響き渡る。

溜息を吐き出して、気分を切り替えようと席を立った。

お昼の前に、ジュースでも飲もうかな。

それとも給湯室の冷蔵庫に入れてある冷えたオリーブオイルでも舐めようか。

さてどうするかと考えながら待合室の辺りまで来ると、一般の妖怪達が集まって世間話に興じていた。

妖怪関連の問題を扱う部署の待合室のここなら、人間に化けていなくても問題はなく、役所に用はなくても仲間との世間話に集まってくる妖怪は割と多いのだ。

 

(あ、夜行さんだ)

 

その中に見知った顔を見つけて、足を止めた。

地縛霊や浮遊霊を浄化したり、死んだ人の魂を導いたりする死神業をしている妖怪だ。

最近はデュラハンとよく一緒にいる。

なんでも死神業をしに日本に来ていた娘さんが、人間と結婚してしまって、それに反対して連れ戻そうと毎回その人間のところに押しかけているのだと。

 

「デュラハンバスターとデュラハンドライバーは破られたが、今回は新たにデュラハンスパークとデュラハンインフェルノ、そしてデュラハンリベンジャーという技を開発した。これで今度こそあの男を倒してみせる!!」

「旦那、いい加減に諦めたらどうなんや?」

「しかし、あの男め。不思議な技を使いおって・・・・・・背後からまるでパイプ椅子でぶん殴られたようなダメージを受けたぞ」

 

(それは夫を助けようとした娘さんに、後ろからパイプ椅子で殴られたんじゃ?)

 

そもそも娘を連れ戻すという目的が、すでにズレてしまっているような。

まあ割りと仲良く喧嘩している感じだし、問題はなさそうだ。

いざとなったら夜行さんが止めてくれるだろうし。

と、思いながら食堂への歩みを再開する。

 

(今日は紅葉もピエレットもいないのよね)

 

二人共、数年前に職員になった鬼と吸血鬼だ。

歳若いが今では紺の気の置けない友人である。

ピエレットは付き合ってる恋人の休暇に合わせて有給を取っている。

紅葉は近々結婚予定の幼馴染、その師匠である烏天狗の家に行っている。

人間と結婚した末の娘さん、芹ちゃんと言うらしい、が半狂乱で夫が殺されたと連絡してきたので、すっ飛んでいったのだ。

実際は息子と娘にお父さんって弱いの? と聞かれてムキになった旦那さんが修行を開始。

相手をした義兄にあたる烏天狗も、可愛がってる甥と姪にいいところを見せようと張り切りすぎて、加減を間違え旦那さんの腕の骨にヒビを入れてしまったとか。

それで旦那さんが怪我をしてパニックを起こした芹ちゃんが、通報してしまったということらしい。

お兄ちゃんなんて大嫌いと妹に嫌われ、甥と姪にも怖がられて大変らしい。

太郎坊やめるとか腹を切るとか大騒ぎで、なだめるのに時間がかかってるとか。

ふう、っと深く溜息をつく。

最近はどれもこれも色恋沙汰ばかり目に付く気がする。

鬱屈した気分で、紺は自分の手首を見る。

紅葉とピエレットがしている、鎖のアクセサリーを思い出す。

あれは日常生活では腕力過多な妖怪の力を封じる呪具である。

別に付けていなければならない義務は無いのだが、彼/彼女を気兼ね無く抱きしめられるとかで、割りと好評だったりする。

だから付けていないということは、自分は独り身ですとアピールしているような、そんな気持ちを紺は払拭できないでいる。

 

(千年、三千年と生きた、天狐や空狐どころか、三百年以上生きても尻尾が二本の野狐でしかない私に、必要ないのは分かってるんだけどね)

 

分かっていても感情で納得出来るかは別問題なのだ。

もっと奔放というか淫蕩に生きればよかったのだろうか?

他の妖狐を思い出すと、みんなスラっと高い背にボン・キュッ・ボンのスタイルで、つるぺたんな自分とは大違いだ。

 

(妖狐ってもっと色々育ちやすい種族なはずなのにな)

 

腰は割りとくびれてるわよね、と腰に手を当てて揉んでみる。

処女なのがいけないのか?

妖狐は確かに淫蕩な質の妖怪ではある。

だが紺は生まれてすぐに人間に拾われ、箱入りお嬢様として育てられ、すっかり人間の価値観が染み付いてしまった。

そのため貞操観念は強くなったが、流石にこじらせすぎてしまったと最近は焦りが募るばかりだ。

 

「お義父さん、もうちょっと淫蕩に育ててくれてもよかったんじゃないでしょうか?」

 

草葉の陰で聞いていたお義父さんも、流石にこの台詞には苦笑い。

 

紺の母は妊娠した時分に栄養が足りず、仕方なく人間から食べ物を盗んだのだが、後日そのお詫びに野の獣を狩って持っていった際に、また盗みに来たと思われ射殺されてしまったのだ。

当時の食糧事情を思えば、それも仕方ないことではあったのだろうが、子を育てるためだったと知った人間はそれを悔い、産まれたばかりの紺を引き取って育ててくれたのだ。

紺というのも母のオコンという名を継いでいる。

そして本当に我が子のように大切に育ててくれたのだが、まあちょっと大事にされすぎた。

そもそも義父としては、娘を淫蕩に育てようなんてそんな発想は存在しないだろうし、責めることはできないのだが。

 

そうこうしている内に、職員用の食堂に到着。

 

「って、誰よこんな危険な物置きっぱなしにしたの!?」

 

したと同時に、テーブルに放置されていた少年漫画雑誌を慌てて回収する。

 

「特殊部隊の人達が読んで、真似したらどうするのよ」

 

特殊部隊の面々が漫画に影響されて、サッカーやテニスで遊技場を半壊させたのは記憶に新しい。

彼等にとって少年漫画は荒唐無稽なものではなく、実際に出来てしまう事柄なのだ。

・・・・・・連中の存在自体が荒唐無稽とも言えるが。

 

(あの時まったく関与してなかった隊長さんが方々に頭下げて回って、結局自分で修理してたのよね)

 

あの時は怒るの怒らないの、特殊部隊のみんなが泣き入るまで絞り上げられていた。

こっちにとばっちりが来るようなことをする人ではないが、あの時の威圧感は凄かった。

またあんなことがあっては、こっちも堪らない。

この漫画雑誌は遺失物入れに突っ込んでおこう。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「はあ、お揚げ美味しい❤」

 

きつねうどんに舌鼓を打つ、至福の時間だ。

食事は勤務中の数少ない楽しみだ。

狐の妖怪だからお揚げが好きというわけではないが、動物の変化である以上は油っこい物を好む傾向にある。

栄養バランスにこだわる必要も人間と違って薄いので、最近はちょっと手抜きをして油を舐めるだけで済ませたりということも多いから、ちゃんとした食事はお昼くらいだ。

なおさら味が染みようというもの。

冷蔵庫の中身がビールと油だけというのは、流石にそろそろ何とかした方がいいと思うのだが。

 

「美味そうだな」

「あれ、隊長さん?」

 

いつの間にか、向かいの席に特殊部隊の隊長が座っていた。

気配をまったく感じさせないこの男は、気付くと側にいたりして心臓に悪い。

 

「任務終わったんですか? もっとかかるかと思ってました」

 

隊長が担当していたのは、妖怪の奴隷売買組織の内偵だ。

日本ではもう無くなったが、海外では人間も妖怪も物のように扱う連中というのはいまだにいる。

そのバイヤーが日本に拠点を作ろうとしているというので、内偵中だったのだが。

 

「連中、エルフに手を出しておってな」

「ああ・・・・・・」

 

エルフ。

北欧を起源とする妖精種。

日本では美しく気高い存在などのイメージがサブカルチャーなどで定着しているが、実際は相当に質の悪い連中だ。

姿は子供のようだが、いたずら好きで、悪夢を見せたり、呪いに長けて病も操る中々に厄介な存在である。

 

「全員重い性病になって倒れていた」

「あー・・・・・・」

「む、すまん・・・食事中にする話ではなかったな」

「いえ」

 

隊長は頭を下げた後、書類を取り出して紺に手渡した。

 

「それで、そのエルフなんだが、保護してくれてた男と結婚すると言っててな。戸籍の作成と入籍手続きをだな」

「あ、はい・・・・・・」

 

(こいつもか・・・・・・)

 

昔から日本は妖怪との婚姻が割りとあった国のため、戸籍の取得も別に難しいことではないのだ。

ただ、当時作られた法律のままのため、外国の妖怪でも日本国籍が割合簡単に取れてしまう。

妖怪という括りで扱っているため、出身地が日本以外でも適用されてしまうためだ。

どうかとも思わないでもないけれど、現状がそうなっている以上はそうしなければならない。

問題はだ・・・・・・

 

(面倒くさいのよね、これの手続き)

 

簡単なのは申請者側であって、受理するこっちの手間は簡単ではないのだ。

流石にこの忙しい中でさらに煩雑な仕事を増やすのに気が引けたのだろうか。

 

「すまん、夕食でも奢ろう」

「・・・・・・じゃあ、遠慮無く」

 

隊長さんも忙しいのは分かっているのだが、せっかくのタダ飯のチャンスを逃す手はない。

こう見えて隊長は中々の食道楽と噂で、美味しい店をいくつも知っていると聞く。

 

(まあ、あまり高いお店じゃ悪いし、居酒屋辺りにしておきましょう)

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

さて、もう一仕事頑張りますかっと気合を入れて、仕事を再開する。

問題児達は隊長さんが面倒見てくれるので、自分の仕事に集中できるだろう。

 

(隊長さんにご飯奢ってもらうのも楽しみだ。明日はお休みだし、多少遅くなっても問題ないからゆっくり飲めるなー)

 

「隊長ー、装備の発注どうします?」

「土砂加持した土を五袋。独鈷杵と七鈷杵を三個。如意宝珠が四個いるな。日本刀用に鉄の発注もしてくれ。呪符用の紙を千枚、鶏の血と、施餓鬼米もそろそろ切れるな」

 

装備品の発注は未だに手書き書類で行っている。

使用目的に申請理由まで書かされるので手間で仕方ない。

 

(まあ、今日は隊長さんがやってくれるから楽できるわね)

 

というか、自分達で使うものなんだから自分達でやってくれと。

こっちは門外なんだから、使用目的書くの苦労するんだから。

と内心、愚痴りながら次の書類を手にする。

 

「あ・・・・・・」

 

その内容に目を通し、しばらく固まる。

そしてもう何度か目を通して、それが間違いではないことを確認した。

 

「お妙さん、死んじゃったんだ」

 

それは百年くらい前に知り合った化け猫の・・・・・・死亡届だった。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「・・・・・・ふえ?」

 

最初に感じたのは気怠さと、どこか心地良さをも感じるような疼痛。

次に感じたのは、鼻孔をくすぐる味噌と油の匂いだ。

 

「・・・・・・あ、れ?」

 

見慣れた自分の部屋だった。

 

「起きたか? 具合はどうだ?」

「隊長さん?」

 

身を起こそうとした途端、鈍痛が走った。

 

(つぅ)~~~」

「痛むか? 昨日はずいぶん飲んでいたからな」

 

まだ判然としない思考が、だんだんとはっきりしてくる。

この痛みは、二日酔いではない。

痛むのは頭ではなく、股の間・・・・・・

そっと布団を捲ると、何も着ていなかった。

股の間は何かヌルヌルとして、敷布団には血の跡が残っている。

 

(あ、あれ、これってヤッちゃってるよね!? 私、隊長さんにお持ち帰りされちゃった!? 隊長さんってそういう人だっけ!?)

 

差し出されたコップを受け取って、平静を装って水を飲み干す。

内心はパニック寸前だ。

 

(知らない間に処女喪失!? い、いや、いやいや・・・・・・こういう急展開は想像してなかったというか。覚えてないってどうなのよ、私)

 

水のお代わりを貰って、二杯目を口にしながら、必至に昨日のことを思い出そうとする。

昨日は古い知り合いの死亡届を見て、凹んでしまったのだ。

それで、約束通り隊長さんに居酒屋で夕飯を奢ってもらって・・・・・・

 

「それでねー、お妙さん旦那さんのお墓の前で亡くなってたっていうんですよー」

「うん、そうか」

「聞いてますか、隊長(たいひょう)ー!!」

「ああ、聞いてる。その話は四回目だ」

「そうですかー、じゃあもっと飲んで下さい!!」

「いや、ちょっと飲み過ぎではないか?」

「私の酒が飲めねーってのか隊長(たいひょう)ー!!」

 

(きゃああああーー!? 何してんの昨日の私ーー!?)

 

普段やらないというか、かつてないほどベロベロに泥酔して、隊長さんに絡みまくっていた。

それでまともに歩けなくなった私を、隊長さんがおぶって家まで送ってくれて・・・・・・引っ張りこんで・・・・・・

 

(わらひ)の処女が食えねーってのか隊長(たいひょう)ー!!」

 

(ぎゃああああああーーーー!? やらかしたのは私だーーー!?)

 

「もうすぐ朝食が出来るから少し待っててくれ」

「・・・・・・隊長、さん」

「ん?」

「昨日は、その、とんだ醜態を・・・・・・」

 

隊長は苦笑を浮かべると、酒は程々になと言って台所に戻っていった。

 

「・・・・・・・・・はっ!? あ、あの隊長さん、冷蔵庫の中、見ました?」

「・・・・・・程々にな」

 

(うあああああ~~~!!)

 

酒と油だらけの冷蔵庫という、乙女にあるまじき物を見られてしまったと身悶えする。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「いただきます」

 

異口同音に食前の挨拶を唱え、朝食に手を付ける。

 

(あ、美味しい)

 

程良いかつお節の効いた出汁と、味噌の風味の加減が絶妙だった。

汁をたっぷりと吸ったお揚げも、しっかりと味を主張して、口内で渾然一体となって味蕾を刺激してくる。

お米もふっくらと炊き上がっていて、米の旨味がたっぷりと楽しめる。

これに鮭の旨味と醤油の旨味が合わさって、また堪らない旨味へと合成されていく。

 

(うう、隊長さん料理上手なんだな。私も出来るけど最近サボってるしな、それにこんな美味しくは出来ないし)

 

朝から丼三杯余裕でした。

 

「ごちそうさまでした」

「お粗末様。口に合ったなら何よりだ」

 

ズズッと、食後のお茶を啜り一息付く。

 

(それにしても隊長さん、余裕だな。私よりずっと歳下なのに)

 

妖怪は中々精神が老成しない傾向があるという。

だから何百年も同じことを繰り返したり、簡単に騙されてしまったりという事例が多い。

なので、人間の方が大人っぽいというのはそんなに珍しいことではないが、あまり慰めになる話でもない。

 

(それにしても、夜明けのコーヒーならぬ夜明けのお茶を飲んでいるというのに、この落ち着きっぷりはちょっと釈然としないのですけどね、女としては)

 

「それで、紺。俺は責任取った方がいいのか? それとも忘れた方がいいのか?」

 

いきなりの発言に、むせて盛大にお茶を吹き出してしまった。

落ち着くまで黙って背中を擦って、テーブルを拭き、後片付けをこなしていく。

 

(うう、隊長さん優しいな。ちょっときゅんっときちゃったかも)

 

「いや、な。俺もそんな無責任なことはするつもりはないのだが、一度抱いた程度で自惚れるなと・・・・・・その、なんだ・・・・・・嫌だ、と言うなら忘れるが」

 

(ど、どどどどど、どうしよう!? どうしよう!? どうしよう!? か、彼氏ゲットのチャンス到来してる!? いやいやいや、こんな成り行きというか衝動的というかそんなのでいいのか私!? でも、でも、そうすると彼氏できないし、隊長さん悪い人じゃないし、料理美味しいし、これはいっちゃうべきでしょうか!!)

 

しばし逡巡した後、紺は打算の混じった感情で深々と頭を下げた。

まあ世の中の大半は、大した理由もなくなんとなくでくっつくものなのだし、別に不思議でも悪いことでもない。

 

「ふ、不束者ですか、よろしくお願いします・・・・・・そ、それで、その、い、一度で不安でしたら、も、もう一度、抱いてみます?」

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

くちゅっと、唇を吸われ、すっと離れていく。

軽く口付けを交わしただけなのに、頭に桃色の花が咲き乱れたような気分になる。

 

(キス、ふわふわする、す、ごい)

 

紺の体はかなり小さく、精々が中学生並と言っていい。

軽く口を被せられただけで、唇の端から端まで飲み込まれるようになってしまう。

 

「んちゅ」

 

湿った音が口から漏れ、粘着感のあるものが潜り込んでくる。

 

「んっ? おふぅ」

 

甘くて、ねっとりとしたものが、紺の舌に絡み付いてくる。

 

(あ、これ舌、だ❤)

 

舌と舌の粘膜同士を絡め合う。

剥き出しの感覚器官で、お互いの唾液と熱を交換し、そして味を確認していく。

 

「んふぅ、んろっ、ちゅるぅ」

 

ぐちゅり。

ぬちゅ、ねっちゅ。

粘着質な音が部屋に響いていく。

隊長の手が、優しくピンと尖った紺の狐耳を抑え、わさわさと撫で回している。

耳が抑えられてしまっているため、口内から響く音が、殊更に脳内に反響して、淫猥な音色に脳神経が犯されてしまう。

口付けとは紛れも無く、性交の一つなのだと身を持って教えこまれてしまっている。

口内に押し込まれた舌が、頬の裏側や歯茎の敏感なところを的確に探り当てて、執拗に摩擦による愛撫を行ってくる。

 

「んん、ちぇふ❤」

 

舌を吸い出され、また押し込まれ、口内を陵辱され、どれほど時間が経ったか。

喉元まで唾液でベタベタと濡れ、脳も顔もキスに酔わされていた。

 

「んふう!?・・・・・・❤」

 

すっかり蕩けきっていた脳が、新たな快楽信号を受け取り、身体を跳ね上がらせる。

伸びてきた手が、腟前庭部を優しく揉み解していた。

キスされながら、むにむにと性器を刺激され、紺の身体はガクガクと震えだす。

 

(あ、ゆ、びぃ、入ってきたぁ❤)

 

ゆっくりと膣内に差し込まれた指が、にゅぐりとその柔い肉を掻き分け、一番弱いところを的確に撫で回す。

たちまち達してしまった紺は、痙攣とともに崩れ落ちてしまう。

そっと紺の体を布団に横たえると、その身体に指を這わせていく。

 

「ぁあ❤」

 

ひどく柔らかい肉の感触。

手荒に扱えば壊れてしまいそうな感触。

だがすでに一度味わっているその手の動きは、すでに手慣れたものになっていた。

 

(あ❤ これ、この感触、覚えてる❤)

 

酒のせいで記憶は曖昧ではあるが、その感覚は体が覚えていた。

 

幼児体型と紺は悩んでいるが、その肌のきめ細やかさに関しては、密かに羨まれている程である。

その肉付きの薄いながらも、肌も肉も張りと弾力のある平らな白い肌の一面に、自己主張する突起が四つ。

哺乳類というものは、乳房を複数持つもので、人間は一対である。

だが動物には二対、三対と多くの乳房を備えるものもいる。

元々は人間も多くの乳房を持っていたが、少産の動物は退化して少なくなる傾向がある。

だが退化しても無くなったわけではないのだ。

大半の人間はほとんど目立たないが、時折、副乳や過剰乳頭と呼ばれる、退化しきらなかった乳房が残っていることがある。

人間でさえあるのだ。

動物の変化である妖怪ならば、尚更である。

人間に化けても副乳が残りやすい傾向にあるのだ。

 

するっと指がその腰を撫で、線を引く様に流れていく。

やがて脇の下に差しこむように入り込んだ手が、その胸を撫で回していく。

優しく、的確に、性感を確実に高める動きで。

小柄な体だからこそ、男のその手で四つの赤く腫れた胸の淫核を同時に擦り上げられてしまう。

キスによって茹で上がった身体は、軽く擦られるだけで、達しそうになる。

女とはまったく違う質感の手が、自分の身体に触れるたびに、お前は俺のものだと言われているような気になってくる。

男に支配される。

だけどそれに嫌悪感はなく、むしろ暖かみさえ感じている。

 

(これ、がぁ・・・・・・セッ、クス❤)

 

ちゅむっと、左の副乳を吸われた瞬間、一気に達してしまう。

胸が痺れるような感覚に満たされ、目の前がクラクラしてくる。

 

(おっぱいぃ、ぺろぺろされて、ちゅうちゅうって吸われて、す、ごい、おかしくなりそう❤)

 

胸の突起を男の舌がにゅるにゅると流動しては擦り上げて、息つく間もなく、乳房の肉を揉み上げられ、空いた乳首を指で摘み取られて再び絶頂をむかえた。

 

「あ、あぅうぅぅうううぅぅううぅうううう~~~~~~❤」

 

イッてしまって痙攣しながら息を荒げる紺の体を、そっと持ち上げて向き合って抱き合う形にする。

対面座位の形だ。

そしてその足の間に、桃色の穴に、女としての一番淫らな部分に、男の象徴をあてがってやる。

すっかり解れた柔肉が吸い付いてくる。

 

「いくよ」

「・・・・・・あ、ひゃい、隊長(たいひょう)ひゃん。しぇっくしゅ(SEX)、しましょ」

 

紺が自らの意志で、そのままゆっくりと体を沈めていく。

甘く喘ぎながら、徐々に徐々に深く結合していく。

やがてその最奥を、こんっと叩かれるとビクンと震えて、紺は男の体をぎゅっと抱きしめた。

 

隊長(たいひょう)ひゃん、隊長(たいひょう)ひゃん❤ 入ったぁ、全部入りましたよぉ❤」

「うん、動くよ」

 

二度目の性交とはいえ、元々妖狐とは多淫の気がある種族だ。

多少の痛みはむしろ性感のファクターとさえ言え、すっかり茹だった体を揺すりつけて、その陰唇で肉棒を咥え込み、男の体にその四つの乳首を擦り付けて、快感を貪り始めていた。

 

「ひもちひいぃ❤ 隊長(たいひょう)隊長(たいひょう)さぁん!! もっひょぉ❤ もっひょぉ❤」

 

その狐の耳を甘く噛まれると、膣肉がきゅうきゅうと締まり、全体がうねるように蠕動運動を繰り返す。

ようやく覚えた男の味を、一辺たりとて逃がすまいと、イキ狂いながらも腰を振るのを止めずに動き続けている。

遅まきながら花開いた狐妖の淫性が、男を貪ろうと小さな体を必死に振らせていた。

 

「耳ぃ、耳はむってされるのいいのぉ❤ 乳首も擦れて感じるぅ、おまんこぐちょぐちょして良いよぉ隊長さぁん❤ 尻尾❤ 尻尾もいじって❤」

 

跳ねてうねる二本の尻尾。

その付け根の中心部を的確に捉えて、根本から絞り上げるように、尻尾の先端まで撫で上げていく。

 

「イク❤ イク❤ イクぅ❤ 尻尾でイクぅ、イッちゃう❤ ~~~~~~~~~~~~❤」

 

妖狐の婬はそれから一昼夜、散々にお互いを貪りつくして、ようやく治まったのだった。

内訳は口付けで六回、胸で十二回、耳で七回、尻尾で十回、女性器で八回。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

(ふ、ふへへへへへ❤・・・気持ち良かったなぁ❤ 肌と肌が触れ合うのってすごい陶酔感と高揚感があるにゃ~。これクセになる、みんなしたがるわけだぁ。えへ、えへへへへ❤)

 

胸に顔をすり寄せ、その温もりを感じ取る。

皮膚の下の筋肉の弾力が、上等な枕のように心地良い。

 

(鍛えてるなぁ、隊長さん❤)

 

最強の特殊部隊の隊長さんだ。

それも当然か。

むしろそれにしては、割と普通っぽいくらいかも。

 

(でも、よく見ると傷がいっぱいね)

 

「・・・・・・」

 

ふと、呟いた声が耳に入ってしまった。

 

(それが隊長さんの歪みなのかしら?)

 

それは、おそらく大切な人の名なのだろう。

もうどんなに求めても二度と手に入らない大切な人の。

そんな確信があった。

 

そして急に理解できてしまったのだ。

特殊部隊の人達がなんで書類仕事を喜んでやっているのか。

強くなるために人間としての何かを、捨ててきてしまった人達。

強くなるために人間としての何かを、削ぎ落としてしまった人達。

強くなるために人間としての何かを、失ってしまった人達。

彼等も人間に戻りたいと、無くしたものを取り戻したいと、戦いのない日常に馴染もうと、ずっと足掻き続けているのだろう。

 

それは妖怪も同じなのだ。

何かを求めるように、小袖は手を生やし、火や煙は顔を形作る。

経立(ふったち)は人の所作を真似、障子に目が浮かび、器物は人の言葉をしゃべる。

そしてやがては人に化けて近付いていく。

人を脅かし、人を助け、人を喰らい、そして人と番って。

妖怪は人間に関わらずにはいられない。

 

ある日、義父が紺をその背に負って散歩をしていた時のことだ。

 

「見てご覧、お紺。今日は空がきれいだね」

 

私はそれまで、空をきれいと思ったことなどなかった。

空は空だ。

それ以外のなにものでもない。

だけど、義父はきれいと言ったから、私は空とはきれいなものなのだと思った。

その日から、私の世界に色が付いたのだと思う。

あの日から、何かをきれいだと思う心が生まれたのだと。

 

それは妖怪が何処かに置いてきてしまったもの。

忘れてきてしまったもの。

それを育てる方法を、見つける方法を、人間は知っている。

空をきれいだと思える。

路傍の石にさえ愛おしさを見いだせる。

たぶん、愛と呼ばれるものを。

 

妖怪も、みんな愛し合いたいと思っている。

だから、妖怪は人間が大好きなのだ。




狐っ娘でした。
お紺さんの元ネタは静岡に伝わるオコン狐の伝承から。
その子供ってことで設定してます。
当初の予定だと隊長さんはモブで事務員が竿役だったんですが、書いてたら想像以上に出番が増えちゃったのでそのままくっついてもらうことにしました。
ボツ案としては
「隊長がまた異世界に召喚されたぞー!!」
「今月で五回目だぞ!?」
「魔王を倒して帰ってくるに一万」
「悪の帝国を滅ぼすに三万」
「召喚者殴り倒して帰ってくるに二万!」
みたいなギャグ描写の予定もありました。

前回と今回の話で現在執筆を予定してる娘さん達の情報は、蛇っ娘を除いて出揃ったことになりますね。
次回からはまた一般人と妖怪のカップリング。
さて次は化け猫の話をば。その次は雪女。


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陽だまりの猫

猟師無双!!
化け猫を捕まえた猟師が性的に屈服させて嫁にしてしまうお話。
昔話っぽい文体で書いてみました。


初夏の日差しが心地良い、ある午後の事だった。

人気の無い霊園、立ち並ぶ墓石の列。

その墓石の一つ。

その墓前に、喪服を着た一人の女がいた。

 

何とも不思議な女だった。

 

顔を見ても年齢がようとして知れぬ。

加減によっては少女のようにも見えるが、年老いた老婆のようにも見える。

いやよくよく見れば、やはりその女は若々しい姿ではあるのだ。

しかし、女の所作の一つ一つがやけに年季を感じさせる。

何よりもその身体からは生気というものが、まるで感じられぬのだ。

もはや死を待つばかりの、老いさらばえた者、特有の気配を纏っている。

それ故に、女を老婆のように錯覚させてしまうのであろう。

 

何とも不思議な女であった。

 

これはいよいよ、常の者とは思えぬ。

この世の者ではなく、幽鬼の類と言われた方がまだ得心がいこう。

そんな女が墓の前で、じっと身動ぎもせずに、手を合わせている。

 

やあれ、これは一体どうした者か

さあて、それは昔々のお話

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

昔々あるところに、山間に小さな村があった。

小さいと言っても貧しいわけではなく、慎ましやかに生きていくには困ることのない、そんな村である。

そんな村の外れに、一人の猟師が住んでおった。

 

まだ歳若いが腕の良い猟師で、火縄に罠にどれも達者な腕前であったそうな。

畑を荒らす猪や鹿を獲り、熊撃ち狐釣り、鳥や兎に猿にまあなんでもござれ。

豪放磊落で気風がよく、村人達にもたいそう慕われておった。

 

そんな男ではあったが、どうも嫁と長続きしない。

二回嫁をもらったのだが、どうも上手くいかんようで、結局は二回とも別れてしもうた。

別に暴力を振るうのかといえば、そうでもない。

浮気症なのかといえば、これがまた妻一筋で身持ちが固い。

酒も嗜む程度に楽しむが、過ぎるほど飲みもしない。

では何故かといえば、別れた女はどちらもただこう言った。

私どもでは身が持ちません、とな。

 

まあ、そんな男であったが、嫁がいないなりにそれなりに楽しく日々を暮らしておった。

そんな、ある日のこと。

男はいつもの様に、シノビ猟に出かけていった。

シノビ猟というのは、まあ簡単に言うと犬なども連れずに一人でやる猟でな。

獲物の足跡や、糞や、木に付いた毛だとか、そういったのを手掛かりに、獲物を追っていくやり方のことで、これが出来ればまあ一人前の猟師と言ってもいいだろう。

 

そして猟に出かけて、三日目の夜のことであった。

男は山中に幾つかある山小屋の一つでな、獲れた鹿の肉を塩漬けにしたり、囲炉裏の煙で燻製にしたり、皮をなめしたりして、夜を過ごしておった。

 

ふと男の耳が、妙な音を捉えた。

ずる、ずるっと何かを引きずるような音でな。

それがゆっくりとだが、この山小屋に近付いて来ておる。

熊が捕らえた獲物を引きずっておるのかというと、そういう音ではない。

男は猟師だからな、そういう聞き分けは得意のものでな。

足は二本、引きずっているのは片方の足。

少なくとも人型をした何かということは分かる。

やがて音は山小屋の前まで来てな、それからドンドンと戸を叩く音がする。

 

()し、誰かおりませんか?」

 

女の声がしてな。

男はいらへを返した。

 

()()し、かような夜更け、このような山の中で一体どなたかの?」

「旅の者でございます。猟師どのの流れ弾で足を怪我してしまい、難儀しております。どうかお助け下さい」

 

男は山小屋に女を招き入れてやったそうな。

きれいな小袖を着た女でな。

年の頃は十七、八といったところ。

髪は黒ではなく茶色がかった色でな、少々くせのある毛が豊かに両耳を包むほどふさふさと流れておる。

細面の器量の良い娘で、鼻筋は少し高く、どこか猫を思わせる面持ちだった。

娘は(たえ)と名乗った。

 

(たえ)の足の怪我を診てみると、確かに銃創でな。

弾は抜けておったので、焼酎で傷を洗ってやり、包帯を巻いてやったのよ。

猟師達は傷を焼酎で洗ってやると、化膿し難くなるというのを経験で知っておったからな。

食事を勧めると、これがよう食べる。

煮込んでおった鹿のもつ煮を平らげ、焼いた肉もどこにそんなに入るのかと食べた。

味噌漬けにした山菜も美味そうに平らげる。

男も化生の類と分かっておっても、微笑ましいと思うくらいだった。

 

そう、この女は化生だった。

訓練した猟師だからこそ歩けるような深い山を、旅装束でもなく小袖で歩く女など有り得ん。

それに女は最初に申しと言った。

化生や幽霊などはな、同じ言葉を続けて言うのがひどく苦手なのだと言われておる。

だから申し申しと、二度続けるのが習いというもの。

それに傷の具合も、撃たれてから一昼夜は経っておった。

普通の人間であったならば、血を流しすぎてとても生きてはおれん。

 

それに男は今朝方、弥三郎という隣村の猟師に会ってな、こんな話を聞いておった。

 

「わしが山小屋でな、弾を鋳っておったんじゃが、それを猫がジーっと見ておってな。一つ作るたびに頷くんじゃよ。変な猫じゃと思っておったんだがな、その訳が分かったのよ」

 

その日の夜に、山小屋に異様な気配が近付いて来たそうな。

小窓を開けて外を見てみると、何か大きな獣が目を爛々と輝かせてな、こちらに向かってくる。

そこで弥三郎は、鉄砲でその化け物を撃ったのよ。

ところが、カーンと何か硬いものに弾かれたような音がしてな。

何度、撃っても弾かれてしまう。

 

「それで作った弾を撃ち尽くしてしまってな。弾がなくなったと、その化け物は安心して近付いて来たんじゃろうな」

 

だがその程度で怯んでおったら猟師なぞ出来ん。

山の中を一人で歩き回り、狩りをする猟師よ。

妖かしに行き会うたり、不思議な経験をすることもある。

それを一人でも何とかするのが、一人前の猟師というもの。

鬼に髪の毛を捕まれ、樹の上に引き摺り上げられそうになった猟師もおる。

やまんじいという妖怪に餌をやり、狼を追い払ってもらう猟師もおるという。

その他にも猟師の妖怪退治というのは、ようけあるもの。

決まった日に祭壇を設けてな、すると夜中にそこを必ず魔物が通るで、これを射殺す習わしもあったそうな。

鬼のまた強いから、叉鬼(マタギ)と言う。

なんて言われるくらいだからの。

 

「思えばありゃ弾を鋳っておったのを、見ておった猫じゃったんだろう。作った弾を数えておったのよ」

 

それで弥三郎は化け猫が弾が無くなったから油断しておると判断し、冷静に懐からもう一発弾を出して銃に込めたのよ。

猟師っていうのは、お守り代わりに弾を一発余分に持っておくいう者が多いでな。

事前に持っておった弾だから、猫はその弾のことまで知らなかった。

 

「弾がはじかれるのは、何か身に付けておると思ってな。だから足を狙ったのよ」

 

撃たれた化け猫は、物凄い叫びを上げてな、一目散に逃げていったそうな。

 

「夜だし深追いはせなんだ。朝になって確認してみたが、鍋が落ちておった。これで弾をはじいておったのだな」

 

それで弥三郎は血の跡を追って、この近くまで来たという。

 

「まあ気を付けい。手負いの獣同様、手負いの物の怪も用心した方がいいじゃろう」

 

それが今朝の事だった。

 

男は油断なく山鉈と火縄を側に置き、用心しておった。

やがて女の体が、ぐらりと力なく崩れそうになり、何とか堪えようと船を漕ぐようにゆらりゆらりとしてな。

 

「おう、効いてきおったか。となると、もう間違いはなさそうじゃな」

「な、何を?」

「弥三郎どんから、足を撃ち抜いた化け猫が、この辺りに逃げてきとるかもしれんと聞いておったでな」

 

女の髪が逆立ってな。

それで耳や尻尾が出てきおる。

 

「た、食べ物に何か盛ったのかい?」

「そんなことはせんよ。人間だったら害なぞない。化け猫だから、効くものよ」

 

女の食べた山菜の味噌漬けはな、またたびが入っておったのよ。

食べるとまた旅が出来るからまたたび。

その名の由来は俗説だそうだがな、滋養強壮に効くのは本当だで。

ただ人間には薬でも、猫はまたたびで酔っぱらったようになる。

実はまたたびはな、猫には媚薬のようなものなのだ。

化け猫はすっかり腰が砕けてしもうた。

男が縄で手早く縛り上げると、化け猫はもう身動きが取れんようになった。

 

「ちく、しょう」

「ちくしょうはおぬしじゃろう」

 

さて蓋を開けてみれば拍子抜けするほどあっさりと、化け猫を生け捕りにできてしまった。

こうなると余裕が出てくるものなのか。

襲ってきたのならまだしも、身動きできない人の形をしたモノを殺すのは流石に躊躇われた。

言葉を交わすこともできるしのう。

さりとて人を襲う物の怪を、ほうっておくわけにもいかん。

だから男は一計を案じたのよ。

もっとも、あるいは、その魔性に魅入られておったのかもしれん。

 

「のう、(たえ)や。おぬし、わしの嫁にならんか?」

 

何しろこんなことを言い出したからのう。

 

「な、何を言っへんだいあんたは!? に、人間のくしぇに!!」

「いやのう? 人を襲う物の怪は殺さにゃならんが、流石にそれは不憫と思うてな。わしの嫁になってもう人を襲わんように見張っておれば、殺さんで済むと思ってな」

「はん! 獣を狩りゅ猟師が何言ってんだぃ!!」

「猟師は無益な殺しはせぬ」

 

猟師というのはな、場所によって違いはあるものの、これで厳しい掟いうものがあるでな。

猟をしてはならん日や、入ってはならぬ場所、獲ってはならぬ獣、まあ色々掟がある。

中には山入る時は女に触っちゃならんとか、そういう女人の禁忌もあるが、この山ではそういうのはないでな。

だから嫁と別れて女日照りだった男もな、我慢が効かんかったのかもしれんな。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

男の手が小袖の脇から入り込み、形の良い胸を付け根から、ゆっくりと優しく、揉んでいく。

 

「ひぅ・・・」

 

(たえ)が小さく悲鳴を上げて、身体をくねらせ、柔らかい、張りのある肌の弾力で、男の指を押し返し、指の間から肉がこぼれ出る様が、男の劣情を刺激していく。

きれいに色付いた、乳首をつまみ出されると、艶かしく息を吐き出して、太腿をもじもじと捩って身悶えする。

背後から組み付いて、乱れた髪をかき上げて、その猫耳を甘く噛んでやると、白い肢体を跳ね上げて、甘い嬌声を上げて泣いた。

 

「ひああああぅっ!!」

 

着物の裾をまくり上げると、ほっそりとした白い足と、まあるい尻たぶが囲炉裏の火に照らされて、それはもう蠱惑的に浮かび上がった。

熟れた果実のように、ぱっくりと割れた秘裂が、ひくひくと蠢いて、そこをなぞってやると愛液に濡れた恥毛が、男の手に張り付いてきよる。

 

「あ! ふぅ、んにぁあ❤」

 

男が指を埋める度に、(たえ)は甘い声で泣き悶えている。

山小屋に充満した、女の淫らな体臭と、痴態と艶声に男もすっかり理性をやられて、もう我慢できんようになっておった。

男が野太い逸物を出して陰唇にあてがうと、それまではすっかり快楽に身を任せていた(たえ)が暴れ始めた。

 

「や、だぁ!! やめろぉ!! 厭だ!! やめろ!! 痛いのやだぁ!!」

「これだけ濡れほぐれとるんじゃ、大丈夫じゃ。優しゅうするでな」

「嫌ぁ!! ウソだぁやめろぉ!!」

 

だが口ではいくら言っても、媚薬(またたび)と愛撫ですっかり蕩けた身体が上手く動かせん。

どろどろにほぐれた肉壷は、たっぷりと愛液を湛えて、ずるっと男の逸物を呑み込んで行きおった。

 

「あ、あぁぁうっ、にゃああぁう❤」

 

(たえ)が肺に溜め込んだ空気を漏らすように、喘ぎ声を響かせる度に、男の物をきゅうきゅうと締め上げる。

 

(なにコレぇ!? 前にした時は、あ、あんなに痛かったのにぃ・・・・・・こ、これぇ、ツルンとして、か、かさ張ってて、ぜ、ぜんぜんちがうぅ)

 

化け猫いうのは、長く生きた猫がなるものだで。

それだけ生きとると、普通は猫の時分に交尾くらいしたことはあるものでな。

ただ猫の陰茎は、釣り針の返しのように棘があってな。

これが痛いらしゅうて、交尾の時に猫はな、それは凄い声で泣き叫ぶのよ。

この痛みで、排卵を起こして子を孕むゆうでな。

だから(たえ)は、痛いだけのものと思っておった交尾で、未知の快感を味わってすっかり茹で上がってしまった。

 

汗の浮いたうなじをぺろりと舐め上げながら、男は軽く腰を揺すると、くちゅくちゅと湿った音が、(たえ)の淡い婬肉から湧き起こる。

未知の快感に、自分が別のものに作り替えられていくような恐怖に、抵抗しようとするが、媚薬(またたび)によって発情させられ、縛られておる上に腰が砕けきった(たえ)は弱々しく震えることしかできず、やがて快感に飲み込まれていった。

 

「ひぃいっ、や、やめりょぉ、う、動くにゃぁあ、あ、あ、うあああ❤」

 

巻き上げられた着物の裾から覗く白い尻に、すりこ木のような男の逸物が、埋め込まれては引き抜かれ、引き抜かれてはまた埋め込まれ、(たえ)が逃れるように身を捩る度に白い尻がふるふると震えている。

 

「おう、こりゃあ良い女陰(ほと)じゃ。ねっとり絡みついてきおる」

「はひぃいいいっ、ひぃいいいっ、あ、ああああ❤」

 

男の肉棒が往復する度に、(たえ)の肉穴は微妙に形を変え、広がって、思いっきり締め付け、絡み付いて蠕動を繰り返す。

 

(に、人間の交尾、す、すごい、気持ち、良い)

 

(たえ)の身体が、びくんと痙攣して震えおる。

 

「おう、気をやったか。中の肉がうねうねと動いておるわ。中でミミズがのたくっておるような心地というか、これは名器じゃのう。わしももう射精()そうじゃ」

「あぅ、や、やらぁ・・・に、人間の子なんて、は、孕みたくないぃひぃん」

「なんじゃ、産んでくれんのか? 大事にするといっておるのに」

「う、うしょだぁ・・・」

「噓なものか。男が言葉を違えるようなことなどせんわい」

「ら、らっひゅえ、ほ、ほかにょ化け猫が、人間の子まで産んだにょにぃ、す、すてられたって」

「そうか、そんなことがあったか。よし、わしが言葉を違えたなら、この首を持って行くがいい」

 

そう言うと、男は縛っていた縄をほどいて、自由にしてやったのよ。

まあそれでも、これだけ気をやった後では、さして違いはなかったが。

(たえ)は逃げようと、四つん這いで何とか進もうとするのだが、むしろふりふりと揺れる尻が、男を誘う結果にしかならなんだ。

その腰を掴むと再びその逸物を、白い尻肉から覗く淫靡な蜜壺に埋め込んでいく。

 

「あ、ぉおおおおおお❤」

 

ガリガリと床に爪を立てて、膣から全身へと飛び火するような摩擦熱に耐えようとするが、尻に擦りつけるような前後動で、力強く突かれるとたちまち腰砕けになって法悦の心地に至ってしまう。

それでも必死に抗おうとするがな、身体はもう完全に屈服してまるで抵抗もできん。

 

「だ、だましゃれにゃい。ぜったいだましゃれにゃいかりゃぁ」

「いやわしは本気で言っとる。末永く可愛がってやるで、大事にしてやる」

 

すっかり茹だっておった両者の快感はすぐに高まって、(たえ)は男の絶頂の証を奥深くに打ち込まれて、雄の熱を、吐息を、粘度を、その脈動を全て粘膜で感じて、ガクガクと痙攣しながら弓なりに背を仰け反らせた。

 

「い、やぁぁ、に、人間の子、は、孕んじゃぅ」

「おう、流石は猫じゃな。よう反るものじゃな」

「こ、りょす、お前、こりょす」

「それは怖いの。じゃあ、わしなしではおれんようになるよう、頑張ってみるかの」

 

そう言って、男の手が(たえ)の乳房を掴み、揉みしだきながら、またゆるゆると腰を動かし始めた。

 

「うしょ!? そ、そんな、までぃゃぁ、や、やるのぉ?」

「どうも、わしはこっちが過ぎる言うてな、前の女房達に逃げられてしまったくらいで。わしと一緒になれば毎晩好きなだけしてやるぞ? 嫌な時はわしも我慢するようにするで」

「こ、これぇ・・・・・・ま、まいにちぃ❤」

 

空が白み始める頃になっても、山小屋からはまだ嬌声が止むことなく響いている。

もはやぐったりと頬を染め、喘いでいる(たえ)を抱き上げ、体勢を変えて腰を回転させるように、肉茎で内部の肉壁をなぞるようにこね回して続けた。

 

「みょ、みょう、ゆ、ゆるひ、てぇ・・・・・・あ、ま、また、ひ、にゃぅん❤」

「また気をやったか。わしも、これで・・・・・・おう、九回目じゃ」

 

流石に肩で息をしながら、男が九発目の精弾で(たえ)の子宮を撃ち抜いた。

 

「あ、へぁ、あへひぃ・・・・・・ぐ」

 

すっかり伸びてしまった(たえ)は、ようやくこの情事が終わったと少し気が抜けたのだろう。

ぐったりした(たえ)の顔が猫科独特の形にせり出し、犬歯は牙と言えるほど伸びて、背骨は丸まり、猫と人の間のような姿になった。

 

(あ、気が抜けたら、化けるのが甘くなっちゃったな。まあいいさ。こんな姿見たら、この男も自分がどれだけ馬鹿を言ってたか分かるだろう。さんざん好き勝手に犯しやがって、いつか殺してやる・・・・・・まあ、気持ち良くはあったけど)

 

ところが、この男。

想像以上に肝が据わっておった。

 

「ほう、これはこれで」

 

と言ったかと思うと、萎えかけた逸物がまた鎌首を上げてな。

正面から(たえ)を組み敷いて、絶頂の名残りが燻っている女体の奥深くに、自分の男たる部分を潜り込ませていく。

 

「う、うそぉ、ま、まだ、こ、こんにゃあ!?」

「おう、先程とはまた中の感じが違って、襞がうねるように絡みついてきおる」

 

淫欲に火照りきった身体はブルブルと震え、婬肉がきゅうきゅうと男を締め付けて、見る見るうちに快楽の都へと連れ去っていく。

仰け反って、無防備にさらけ出した喉に、男が齧り付く。

歯も立てずに、唇だけで撫ぜるように喉を甘く食まれる。

それだけなのに、敏感な喉元への刺激と、急所である喉を相手に噛まれているという事実が、男に完全に支配されたと、とうとう(たえ)の心を屈服させてしまった。

喉を舐め上げられ、ねぶられ、食まれ、その度にゴロゴロと喉を鳴らして、いやらしく肉の壺がわなないては、男を悦ばせるためにむしゃぶりついてな。

 

「ほれ、わしの女房になると誓え」

「な、なりますぅ❤ あんたの妻に、な、なりまひゅからぁ❤ ぴぃ、ひにゃぁあ・・・あぅ、おっ、ほおぉ❤ うにゃあ❤」

 

男の熱い迸りに子宮を叩かれて、幾度もの絶頂を味わい全身を痙攣させ、穴という穴から体液を撒き散らし、ついには白目を向いて失神してしもうた。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「いや、すまん。お前があんまり可愛いものだから、つい夢中になってしもうたんじゃ。足を怪我しておったのになあ」

「それで大事にするなんて、どの口が言うんだい。この宿六が」

「いや、すまんかった。許してくれ」

「ふん」

 

男が(たえ)をおぶって帰路に付いたのは、もう昼も過ぎたあたりだった。

何しろ朝までまぐわっておったからな、二人ともぐっすりでな。

 

「なあ、あんた? アタシがここであんたを襲ったらどうするね?」

 

何しろ男は(たえ)を背負ってる。

今ならば容易くできるだろう。

男もそれを分かっておる。

ならば何故、自分の命を握らせるような真似をするのか。

(たえ)はそう尋ねておるのだ。

 

「好きにすればいい。わしゃなあ、どうも。その、なんじゃ? お前を、一目見た時に、いかれてしまったようでな。まあ、それならそれで構わん!!」

「・・・・・・約束、破ったら命であがなってもらいますよ」

 

男はそれに短く、いらへを返してな。

そのまま村へ帰るまで、黙って歩いておったそうな。

ただ二人の心の臓の鼓動は、お互い分かるほど、ドクンドクンとうるさかったらしいがな。

 

妖怪というのはな、一度交わした約定というのは、滅多なことでは破れんものなのだ。

だから男も、あれほど誓わせようとしておったのさ。

一度誓ってしまった以上は、(たえ)は男の女房となるしかなくなったのよ。

 

だが男は言った通り、良い夫であり続けた。

よく働き、よく妻を気遣い、よく愛してくれた。

いつからか、(たえ)は良い妻であろうとするようになっていた。

口は悪かったがな。

だけど約定を破るのは、いつだって人間なのだ。

 

子供が産まれ、子供達が長じてくると、男の髪に白いものが混じり始めた。

やがて孫が産まれる頃には、髪が雪のように白くなっていった。

動きも年々、鈍くなっていく。

歩くのに杖が手放せなくなり、そしていつしか布団から起きることも出来なくなっていった。

 

「まあ、悪くない人生だったかもなあ」

「アタシは迷惑でしたよ。その面とも、近々おさらばできるかと思うとせいせいするさね」

「そんなに待たせはせんよ。まあわしは天女みたいなめんこい女を女房にできて、幸せだったよ」

「な、なに言ってんだい、こんな婆さんつかまえてさ」

「なあ(たえ)や。愛して、おるよ」

「あんた?」

 

そう言って笑って、男は逝ってしもうた。

(たえ)はその時、何と言ったか。

 

――アタシは何も言わなかった。言えなかった

 

ただずっと、冷たくなっていく男の手を握って、震えておった。

(たえ)は葬式で、死体を持ち去ろうかとも思ったそうな。

猫妖の性とも言うべきものだからの。

だがそうはしなかった。

 

――邪魔をしたくなかった。人間のあの人を、人間のやり方でおくってあげたかった

 

それからどれだけ経ったか。

子供はもう皆、逝ってしまった。

最後の孫も、天寿を全うした。

自分だけが未だにここにいる。

けれども、それも終わりの時が近付いている。

終わったらどうなるのだろう?

またあの人に会えるのだろうか?

もしそうなら・・・・・・

 

――言いたいことがたくさんある。さっさと先に逝ってしまって・・・・・・文句を山ほど言ってやらないと

 

――それで、言い終わったら、そうしたら、そうさねえ。久方ぶりに可愛がってもらいましょうかねえ

 

――そうしたら・・・・・・言ってあげてもいいかもしれんせんね

 

――ずぅっと言わなかった事を

 

――愛している・・・・・・って・・・・・・

 

ある初夏の日のことであった。

心地よい日差しの中、一つの墓石の前で。

大きな大きな、年老いた猫が。

眠るようにその生涯を終えていた。

今々しのことである。




お妙さんは、妙多羅天女から。
猟師仲間の弥三郎さんは、弥三郎婆から。
猟師さん頑張った。九回戦したのは、猫の命が九個あるという俗称から。
そこから最後にもう一発は、猟師の隠し球でトドメを刺される化け猫の逸話から。
あと猫なら、喉を責めないとね。いいよね喉撫でてゴロゴロ言う猫!!

今回は昔話っぽい感じの文体にしてみました。
方言バリバリにしようかとも思ったんですが、それじゃ読みにくいし、したからといって面白いわけでもない。
というので、昔話っぽい感じなら雰囲気が出るかなと思ってやってみました。

人間の子供を産んだのに、捨てられてしまうというのは沖縄の方の化け猫の伝承。
子供まで産んだのに、正体を知られて追い出された取り殺してやると舞い戻るが魔除けの呪文を知られてしまい結局手が出せずに失敗するというお話。

寿命ネタは異類婚姻譚ではやってみたいネタだったので、こんな感じのを書いてみました。
着想はグレン○ガンの挿入歌、~云えない言葉の辺りの歌詞から。
結局生前は一度も言わなかったいじっぱりなんです。


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真夏の夜の雪

雪女さんのお話。
今回は短めです。


「ただいま」

 

一組の男女が玄関をくぐり、異口同音に声が響く。

家の中はむっとした熱気に包まれていた。

真夏日の熱気がこもる家屋、太陽の光が暴力的に殴り付けてくる屋外、さてどちらがマシなのか。

 

女の髪は長く豊かで美しき漆黒、肌は雪のように白い。

人間としては病的と言ってもいい白さだが、肌に張りも艶もあり、健康的なそれだ。

まるで話しに聞く、雪女を思わせる。

いや、思わせるどころではない。

彼女は真実、雪女なのだ。

女がフーっと息を吐き出すと、冷気により空気が白く輝きを放ち、室温は一気に低下していく。

程よく室温が下がったところで、男は靴を脱いで中に上がると雪女に向き直った。

 

「お帰り、六花」

「はい、ただいま帰りました。あなた」

 

二人は夫婦であった。

だが六花と呼ばれた雪女がこの家の敷居を跨ぐのは、実に一年ぶりになる。

話はそう難しいものでもないのだが、夫に雪女であるとバレたのが原因だ。

そのせいで新婚ほやほやの二人は離れ離れにされてしまった。

 

雪女というのは、各地に伝承があり、それぞれ様々な逸話が伝わっている。

人間に友好的な者、害を為す者、時に正反対とも言える性質を伝えるものもある。

この六花なる雪女の一族は、正体を知られたならその者の元を去らねばならぬという掟があった。

いや、元々はそんな穏当な物ではなかった。

正体を知られたなら、その相手を殺せ・・・・・・本来はそんな過激な掟だったのだ。

近年に入って陰陽師や密教僧、道士に呪禁師を始め各分野の術師達、さらには人間に友好的な妖怪達が取りまとめられ組織だって動くようになり、人的被害に五月蝿くなったので穏当な方向に進みはしたのだが。

それでもそういう因習というのは人であろうと、妖怪であろうとも簡単になくなるようなものではないのだ。

愛し合う夫婦は引き裂かれるのを良しとせず、苦労を乗り越え再び一緒に暮らせるようになるのに一年の月日が必要だった。

雪女一族の説得に東奔西走してくれた役所の方々には頭が下がる思いだ。

 

長い一年だった。

どれだけ男は妻の帰りを待ち望んだことか。

どれだけ女は夫の元に帰りたいと望んだことか。

再び暮らせる日をどれだけ願ったことか。

恋しく請い濃く願い続けたことか。

 

問題が片付き、笑顔で見送ってくれた役所の雪女さんや妖狐さん。

こちらも笑顔で謝辞を返した。

そこに嘘偽りはなく、心から感謝してはいたが、彼女達には悪いが二人の気持ちはもう一刻も早く家に帰ろうという想いで一杯だった。

まあ、なんだ・・・・・・ご無沙汰の夫婦は燃え上がってしまったのです、玄関先で始めるくらいに。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

きつく抱き合ったまま、男が六花の口を貪るように吸い、口を抉じ開け舌を侵入させる。

六花も自分の舌を絡めて、夫を迎え入れる。

ひんやりとした舌はぷるぷるとした弾力があり、わらび餅のように心地良かった。

舌を絡めては離し、吸い上げてはしゃぶり、濃厚な唾液交換が延々と続く。

その間に、男の手が程よく大きく形の良い乳房に触れる。

 

「ふぅ・・・」

 

真っ白な肌と低い体温が相まって、雪見大福を思わせるその胸を愛撫し、指を沈ませる。

すでに固く尖っている乳首を親指と人差指で軽くつまみ、くりくりと転がしてやる。

六花の全身から力が抜けていく。

いつの間にか足がガクガクと震え、支えるために夫の肩を掴んでいる。

やがてそれさえも出来なくなり、夫の身体にしがみつきながらゆっくりと体重を預けていった。

 

「あ、あなたぁ❤」

 

甘く啼きながら、されるがままに体を横たえられた。

乱暴に下着を剥ぎ取られ、その真っ白な裸身を晒し出していく。

漆黒の長い髪と雪のような純白の肌が織りなす、黒白の美しいコントラスト。

つんと尖った乳首はキレイな桜色。

体毛は薄く陰部の淫らな緋色を隠すものはほとんど無かった。

男の舌先が六花の小さな肉の突起を捕らえた。

 

「ひぅ❤」

 

六花の朱をひいた唇から嬌声が漏れる。

陰核を舌先で転がしながら、その手で胸の感触を味わい、気まぐれに突起を摘み扱きいじり回す。

 

「ん、ふふふ、ほら六花のクリトリス・・・・・・真っ赤になってる」

「やぁ❤ 」

「六花の肌、すごく白いからさ。充血して勃起したクリトリスの根っ子がうっすらと見えるよ」

 

クリトリスは体外に露出しているのは先端のほんの僅かの部分。

陰核亀頭と呼ばれる部分のことを一般には指している。

だが実際には体内に隠れている部分は数センチ、それに繋がる海綿体組織も含めれば十センチ近い性器、女だけにある、性的快楽を得るためだけの器官なのだ。

あまりにも白い純白の肌の下で、真っ赤に充血して膨れた陰核が、その存在を外部に主張していた。

 

「あ、やぁ、いやぁぁぁ❤」

 

うっすらと皮膚下に浮かび上がっているクリトリス。

肌越しに触ってみると、コリコリとした触感が返ってくる。

 

「そ、それだめぇ、おかしくなるぅ❤」

 

左手で体内のクリトリスの根を揉むように愛撫しながら、右手をその陰唇にそって動かした。

秘裂はすでに充分に愛液を吐き出し潤っている。

秘唇は簡単に口を開き、自分から吸い付くようにその指を迎え入れていった。

中指が膣腔を擦り上げながら、ゆっくり上下に動く。

指によって押し広げられた婬肉が離すまいとするように指に絡み付いてくる。

六花の息づかいが、さらに荒くなっていく。

充分に潤っている秘所から、さらに蜜が溢れ床を汚している。

溢れる蜜がぐちゅぐちゅと音を立て、綻ぶ割れ目へ沈んだ指が何度も往復する。

ひんやりとした六花の肌が熱を帯び、湯気が立ち上っている。

 

「あなたぁ! ひぃぃいっ! ふぅぅぅいぁ! は・・・・・・ぁっ・・・・・・は、激しっぃあぁぁあ❤」

 

ガクガク腰を揺らし、快感を貪ろうと秘所を押し付けてくるのは無意識の動きか。

淫らな興奮に男の一物も、布の下で突き破らんばかりに膨れ上がっている。

体勢をシックスナインに変えてやると、六花の手がベルトをもどかしげに外し、ズボンをずり下しにかかる。

何度も陰核を吸い上げ、摘まれ刺激される度に、体が震えその動きを止めたが、ようやくその手が男のパンツにかけられた。

 

「は、あぁ・・・す、ごい❤」

 

ぶるんっと飛び出した夫の逞しい逸物に、色の混じった六花の声が漏れる。

そっと添えられた指先が男根を這うと、迷うことなく唇を近付けていく。

一年ぶりの感触を期待して、男の全身がカッカッと火照り、興奮でさらにペニスが一段と大きく膨れ上がり、痛いほどに充血する。

 

ちゅ、ば・・・れろっと舌が這い回る。

ぴちゃ、ぴちゃと水音が響き、妻の舌が亀頭を徘徊して回る感触に、心臓が跳ねて、全身に得も言われぬ快楽のパルスが緩やかに広がっていく。

堪らずに、腰を押し付けてしまうが、六花は構わずにそれを呑み込んでいく。

ねっとりとして、冷たい舌の感触が、ぬぷぬぷっと竿を刺激し、喉奥の粘膜が亀頭を包み込んでくる。

あっという間に射精欲求が込み上げて、身体が震える。

久しぶりの性交に、かつてないほどの興奮と享楽を味わいながら、自分の女に体液を注ぎ込む男の喜びを思い出せという本能の囁きに、一切逆らうことなく欲望を解き放つ。

脈打ちながら精液を注ぎ込む度に、気が遠くなるほどの快感を感じ息を荒げる。

 

「んぅ、ぶ、んぐ、ん、ぎゅ」

 

苦しそうに喉を鳴らし精汁を嚥下する六花の花弁は、こんこんと愛液が吐き出していく。

精を解き放っても、まったく収まらない剛直を喉奥から引き抜いてやる。

 

「んぶぅ、うぇ・・・・・・げほ」

 

塞がれていた口が自由になった六花は嘔吐きながら、それでも快楽の交じる声と、性臭の混じる白い息を吐きながら夫にせがんだ。

 

「ねえ、あな、た・・・・・・も、もう」

 

男は残った衣服も全て脱ぎ捨てると、愛妻に見せ付けるようにその裸身を晒した。

股間には、はちきれんばりに膨張した、喉を犯していた時と変わらず主張を続けている、ぬらぬらとした剛直が見える。

思わず息を呑む六花の目の前で、夫の男根は全ての血液が海綿体に集中しているのでないかと思うほどにギンギンに硬さを誇っていた。

六花はそっと両手でその硬さを確かめると、夫に物欲しげな視線を送る。

それに対し、男が何事か耳元で囁くて、六花の頬に朱が差した。

 

「ほら、言った通りに、おねだりしてみせて」

「あ、あなたぁ・・・・・・い、意地悪だぁ」

「ほら、早く」

 

おずおずと足を開くと、六花の手が自らの秘裂を押し広げていく。

ぐぱぁっとその子宮の入口まで露わにするほど、いやらしく広げられた陰唇から覗く膣道がひくひくと誘うように蠢いている。

純白の肌の合間に、赤く色付いた花が咲くように。

朝露に濡れた花のように、愛液で妖しく光り、大きく咲き乱れている。

 

「あ、あなたの、に、煮え滾ったオ、オチンチンせ・・・せっくす・・・お願いします・・・り、六花のオ、オマ、ンコ、たくさん可愛がってください」

 

その白の丘陵の狭間にある、朱色の谷に灼熱に滾った陽根を近付ける。

体温の低い雪女にとっては焼けるほどに熱く感じる肉槍の感触、久しぶりに味わうそれへの期待に六花の心臓は早鐘のように脈打っていた。

手を添え、二度三度と上下に動かし秘裂をなぞり、膣口の位置を確認すると一気に貫いていく。

 

「ん、あぁぁ❤」

 

ずっと待ち望んでいた、体の内側から焼かれるような熱棒の蹂躙に、六花が嬌声を上げた。

いったん根本まで埋め込まれた一物を、ゆっくりと引きずり出してやり、そして再びゆっくりと埋め込んでいく。

六花の体を抱きしめると、火照った体に雪女の冷たい皮膚の感触と温度が心地良く染みこんでくる。

ひんやりとした寒天のようなジェル状のツブが密集した膣を掘り返す度に、結合部の神経が全身に甘い悦楽を伝えていく。

 

「六花、六花ぁ」

「いぃぃぃぃ、ひっ、ひん、あぅぅ❤」

 

二人の荒い息遣いと、ずにゅ、ずちゅ、ぐちゅ、と愛液に濡れたペニスとヴァギナの粘膜がこすれ合う音が響く。

一物が膣肉を突き上げる度に、新たな快楽が背を走り、その度に膣が肉棒を締め上げ奥へ奥へと誘うようにうねる。

口を吸いあい、胸を吸われ、陰核を弾かれ、灼熱した陽根で膣を抉られ、六花は何度も絶頂を迎えながら、それでも休む間もなく抽挿が繰り返されていく。

 

「あ、なたぁ・・・・・・な、かぁ、膣ぁ、出ひてぇ❤」

「ああ、六花、いくよ」

 

先程口に放ったモノより、さらにどろどろとした雄汁が子宮へと注がれていく。

 

「あ、熱いぃぃぃひぃいっ、あぁぁ、灼ける、灼けちゃうぅぅっ、ひ、ひぃぃぃん❤」

 

ドクンドクンっと精液が注がれる度に、身の内が灼かれるような熱を感じ、その熱がさらに快感を押し上げていく。

ガクガクと体を揺らし、エクスタシーを堪能して。

しばらく抱き合いながら、お互いに放心していたが、やがて息が整うとどちらからともなく、唇を寄せてついばむように口付けを交わした。

 

六花の心が暖かいもので満たされていく。

夫の黒い髪を愛おしげに撫ぜながら。

熱く、蕩けそうな口付けを交わして。

これが雪女の求めているもの。

欲して止まぬもの。

 

この温もりが欲しい。

 

この熱いものが欲しい。

 

この人が欲しい。

 

この人の全部が欲しい。

 

この人の、生命が欲しい・・・・・・

 

六花の心に雪女の性が甘く囁きかけていた。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

永遠に続くように思えた、永い永い口付けを終え、そっと唇を離す。

甘美だった。

この上もなく至福の時間だった。

徐々に消えていく体の温くもり。

雪女が欲して止まぬ熱い魂を吸い尽くし、この人の全てを自分のものにしたのだという達成感。

引き離そうともせず、全てを受け入れて、背中に回されきつく抱きしめていた手から力が抜けていく一瞬。

浅ましくも、かつてないほどの快楽を感じていた。

愛する者を殺めるのが、たまらなく甘美だった。

そんな事を感じる自分にどうしようもない嫌悪感も感じてしまう。

死の象徴とも言える凍てつく雪。

その雪の妖としての歓喜と悦楽、女としての寂寂とした哀傷。

冷たくなった夫の体をかき抱き、その耳に囁きかける。

 

「ずぅっと、ずぅっと一緒よあなた・・・・・・さあ、一緒に逝きましょう」

 

この人がいない世界では、私は生きていくことなど出来ないのだから。

すっかり白くなった夫の髪を優しく撫でながら、その頬に愛おしげに自分の頬をすり寄せる。

 

轟々と呻くような、泣き叫ぶような鋭い音を立てて、風が吹き通って行く。

樹々を揺らし、憐憫を誘う吐息のように。

 

 

 

「雪? こんな真夏にか。親父達、大丈夫かな」

 

車を走らせる、初老の男が呟いた。

フロントガラスに白い綿のような雪がぶつかり、視界を染めていくのをワイパーで拭い去っていく。

こんな真夏の季節に雪とは、と驚く。

 

初老の男は子供の頃から、この歳になってさえ雪というのが好きで、いつだって心が沸き立ったものだ。

だというのにこの雪を見ていると、何故かひどく物悲しい気持ちが沸いてくるのだ。

どうも胸騒ぎがしてならない。

 

脳裏に浮かぶのは、金婚式を過ぎても暑苦しいくらい仲の良い両親の姿。

髪が真っ白になった父、年齢よりもずっと若く見える母。

虫が知らせたとでも言うのだろうか。

何かが騒ぎ立てるように、胸がざわついて仕方がなかった。

仕事が終わると実家に向けて車を走らせていた。

久しぶりの実家に着き、玄関を開けると異様な冷気が中から溢れだしてきた。

まるでこの真夏の雪の源がココなのだと言うように。

 

「親父!! お袋!! 無事なのか!?」

 

男が両親を求めて声を上げ、見たものは。

縁側でひなたぼっこでもしているように微笑みながら冷たくなった父と、それに寄り添うように、まるで抱きしめるように、うず高く積もった雪の塊であった。

母の姿はどこにも見えず、行方はようとして知れなかった。




雪女さんでした。
六花は雪の別名から。

中々難産なお話でした。
寿命ネタで後追い自殺か、夫の今際に心中かってのが当初のネタで、このままいくか迷ってました。
真夏に雪が降るのは雪女が心中するからなんだ!!なんだってーー!?

あのまま殺っちゃったみたいに思えるように書いてみました。
まあ時間はかなり経ってるってのは、新婚→金婚式過ぎて辺りで把握できるかなっと。
こういう手法はもっと勉強が必要ですね。

次はゲドガキの化け物か、バーバ・ヤガーか、タンタンコロリン辺り。


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ワシリーサ 魔女ヤガー Василиса Ведьма-Яга́

魔女の婆さん、バーバ・ヤガー。

深い深い森の奥、鶏の足が支える小屋で暮らしてる。

鳥のように細い足、骨のような細い足。

臼に乗って駆けていく。

人喰い魔女のバーバ・ヤガー。

楽しそうに駆けていく。

赤い騎士(太陽)が染めた大地を駆けていく。

白い騎士()黒い騎士()と共に駆けていく。

魔女の婆さん、バーバ・ヤガー。

人喰い魔女のバーバ・ヤガー。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

森の小道を、臼が飛んでいた。

その臼には女が一人、座っている。

流麗で背にかかる程の暗い夜を思わせる黒い髪。

彫りの深い整った顔立ち。

妖艶という言葉が似合う豊満な胸とスラリとした体のライン。

手も同じくほっそりと美しいラインを描いているが、腰掛けた臼から伸びている足は、異様なまでに細く、曙光の輝きのように白い。

そして血色の夕日のように、妖しく光る紅い虹彩の瞳が、その女が魔性なのだと思わせる空気を纏わせていた。

魔女バーバ・ヤガーその人である。

 

「流石に寒くなってきたわね」

 

イワン・クパーラ(夏至祭)が過ぎたのも数ヶ月は前。

冬も間近に迫り、ルーシの地はこれからどんどん寒さを増していく時期だ。

冬の化身などとも言われるバーバ・ヤガーとはいえ寒いものは寒い。

 

地母神(モコシ)の長話に付き合ってたら、すっかり遅くなってしまったわ」

 

右手の杵を振ると、臼はその速度を上げていく。

宙に浮いた臼が、底部を僅かに引き摺りながら飛び、左手の箒でその跡を消しながら、悪路で名を馳せたルーシの大地をするすると進んで行く。

秋から冬にかけて大地は凍結し、春先には溶けた雪で大地は広大な泥の世界へ変わる。

この大地を高速で走破できるのは、魔女としての力量の証左である。

 

「しかし、あいつ(モコシ)め。なーにが、あなたは気楽な独り身でいいですねーよ!! 私にだってそういう相手くらいいるっつーの!!」

 

臼を飛ばしながら、ブーブーと文句を言う。

 

「・・・・・・ま、まあ、そのうち地母神の領分(結婚・出産)をお願いするかもしれないけど、さ、先の話よ先の!! というかあいつは食料! 非常食よ非常食!! そんなんじゃないのでありますのよ!!」

 

矛盾した事を叫びながら、顔を真赤に染めて手に持った杵や箒をぶんぶんと振り回していては、説得力など皆無である。

 

「おわあ!?」

 

そんなことをしていれば当然、バランスを崩す。

危うく臼から転倒しそうになり、杵と箒を取り落としながらも辛うじて持ち直した。

 

「あっぶなー!! はー、焦ったわー」

 

バクバクと鳴る心臓の鼓動に、無意識に右手を胸に当てる。

すると服の上からでもしっかりと自己主張する胸が、むにゅうっと見るからに柔らかく形を変えてみせる。

胸に当てた右手から伝わる鼓動が、徐々に静まったところで、大きく深呼吸をしてようやく平常を取り戻す。

と、そこで森の中からクスクスと笑い声が響いているのに気付く。

森の精霊(レーシー)どもだ。

 

「私の忠実な下僕どもよ、我が友たちよ、あいつらを絞り上げろ!!」

 

怒った魔女がそう唱えると、どこからともなく三組の手が現れるが、その頃には森の精霊達はすでに遁走した後であった。

 

「う~~、逃げ足だけは早いんだから!!」

 

姿を捉えることさえ難しい森の精霊(レーシー)どもだ。

もはや捕まえるのは不可能だろう。

悔しさと怒りの混じった視線を森に向ける。

釣り上がった魔女の口元からは大きく鋭い裂肉歯が覗き、噛み締めた歯がぎりぎりと軋む音を上げていた。

やがて魔女は諦めて所在なさ気にうろうろしていた三組の手に退散を命じると、手は音もなく煙のように消え去ってしまう。

続いて指を鳴らすと、地面に落ちた杵と箒が浮かび上がり手元に戻ってくる。

再び臼を飛ばして、先を急ぎ始める。

遅れを取り戻すように、臼はどんどん速度を増していく。

森の精霊(レーシー)どもに笑われ不機嫌だった魔女も、それにつれてだんだん機嫌の良い表情を浮かべ始めていた。

 

「急げ急げ、私の臼よ!」

 

(ルサールカやスネグーラチカのやつにでも絡まれたら、また遅くなってしまう。

どうせまた惚気話でも聞かされたり、聞かせたりするだけなんだから)

 

「って、い、いやいやいや!! そんな聞かせたりとか、あいつとは別にそんなんじゃ!!  のわぁ!?」

 

またもやバランスを崩しながら、魔女は必死に言い訳する。

ちょっと体を許してやっただけよ。

別に好きとかそういうんじゃないから!

たまに食事を作って上げたりとかしてるだけだから!!

こ、この牙が可愛いって言われて、嬉しかった訳じゃないわ!!

恋人とかそんなじゃないですわよ!!!

ただ子供くらいは産んであげてもいいかもしれないなんて、ちょっと思ってるくらいで本当にそんなんじゃないのよ!!!

 

知り合いの女神や女妖達が聞いたら総ツッコミが入る言い訳をしながら、バーバ・ヤガーの臼は一路目的地を目指し進んでいく。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「や、やっと着いた・・・・・・」

 

何故か疲労困憊しているバーバ・ヤガーが、一件の家の前で服を整えていた。

ある富農の家である。

流石に冬に入ろうかという時期だ。

夜は氷点下近くまで気温が下がり、それを下回るのも目前だろう。

すでに収穫は終わっており、冬越えの準備に入っている。

保存食や薪を用意して、長い冬の間は家に篭ってダラダラ過ごすのだ。

というか厳しい冬の大地では、それ以外に出来ないというべきか。

 

「わ、私は別に冬でも自由に移動できるし、そんなずっと二人っきりで家で、その・・・・・・だなんて、そんなこと期待なんてしてないし・・・・・・」

 

そう言いながら服を整え、手櫛で髪を整えて、念入りに身嗜みを確認して、ようやくドアをノックする。

コンコンコンと三回。

親しい人を訪ねる回数。

そして妖が人を誘う回数。

 

程なくして、ドアが開かれ家人の青年が姿を見せた。

富農の息子で、残念ながら流行病で家族を亡くして以来、自分と小作人で農地を切り盛りしている。

ひょんな事で知り合い、いつの間にか恋人と呼べる関係になっていた。

本人は真っ赤になって否定するが・・・・・・

 

「ああ、ワシリーサ。今年も来てくれたんだね」

「え、ええ。まあ暇だし来てあげたわ」

 

ワシリーサというのは、この魔女の本名だ。

真名まで教えておいて、恋人でも何でもないなどと言っているのだから、知られれば彼女の知り合いはこれにも総ツッコミを入れるだろう。

 

「ほ、ほら、ちゃんと支えなさい。私、歩くのは苦手なのよ。知ってるでしょ!」

 

バーバ・ヤガーの足は、太腿の先から急激に細くなり、ほとんど骨みたいな作りをしている。

歩くのには向いていないのだ。

青年はそんな彼女の手を取り、エスコートしていく。

向いていないとはいえ、超常の力を持つ魔女だ。

歩けないわけでもないし、不自由などないはずだが、ワシリーサはいつも青年にエスコートをさせている。

家の要所要所に手すりでも付けようかという青年の提案を、にべもなく断っている辺り理由は見え見えではあるが。

 

「はい、これおみやげね」

 

テーブルに色々と広げられていく。

比率としては海の魚が多い。

川魚は取れても、海の物はこの辺りでは希少なのだ。

 

「いつもありがとうな、ワシリーサ」

「い、いいのよ別に。私の臼ならこれくらいすぐ取ってこれるんだから」

「それじゃあ早速いただこうかな、実は海魚楽しみにしてたんだ」

「そ、そう。じゃあ、りょ、料理は私がするからあなたは座ってなさいよ」

 

お客様にそんな、などと言うとワシリーサが怒り出すので、青年はいつも黙って任せるままにしている。

 

ワシリーサが髪を後ろで縛りポニーテールにすると、石窯兼暖炉(ペチカ)に手際よく薪を足し、慣れた手付きで野菜や魚を調理していく。

そうして時折、何かそわそわと髪を揺らしては、青年の事を窺っている。

 

(おかしいわね? スネグーラチカのやつは、この髪型ならすぐにでも押し倒してくるなんて言ってたのに・・・・・・こう揺れる髪から覗くうなじとかでイチコロって・・・・・・)

 

その時は、相手をしてあげなくもない。

あげなくもないのよ? と、料理が出来上がるまでそわそわとしていた魔女であった。

 

今日の献立は白身魚と野菜のスープ(ウハー)にピロシキ、豚の腸詰め(キシュケ)薄いパン(ブリヌイ)にイクラのトッピング。

かなり豪勢なものだ。

 

「すごく美味しいな。やっぱりワシリーサの作ってくれる料理は最高だよ」

「そ、そう、ほ、ほら、もっと食べなさいよ。保存とか気にしなくていいのよ。足りなくなったら私がすぐとってくるから」

「うん、いつもありがとう」

 

ウハーは魚と野菜を煮込み、シンプルに味付けしたもので、素朴でシンプルな味が人気の、広く親しまれている料理だ。

キシュケとピロシキを噛じり、ウハーに舌鼓を打つ。

 

「これ、キャビア?」

「ううん、クラースナヤ・イクラーよ。ずっと東にある島国でも食べられててね、その国で使われてる豆から作ったソースに漬けてあるの」

「へえ、不思議な風味だね。でもいけるなこれ」

 

赤い魚卵はクラースナヤ・イクラーと呼ばれ、黒い魚卵はキャビア、あるいはチョールナヤ・イクラーと呼ばれる。

この辺りではよく食べられる食材だ。

ワシリーサはイクラをツマミに、クワスを飲みながら、そんな青年に魅入っていた。

 

「ワシリーサ? ちょっと飲み過ぎじゃない?」

「なーによ? クワスなんかで酔ったりするわけないでしょー」

「・・・・・・いや」

 

クワスはソフトドリンクのような扱いをされているが、一応は微弱ながらアルコールが入っている飲み物だ。

ワシリーサはそれで酔うじゃないか、という台詞を何とか飲み込む。

指摘するとムキになるし、青年はもういつものことと諦めている。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

そして酔ったワシリーサにベッドに押し倒されるのも、もう分かりきったことであった。

 

「ちゅーしましょー、ねー、ちゅー!!」

「うん、分かったから、落ち着こうねワシリーサ」

「なーによー! 私はいつだって冷静ですわよー! それとも私とはしたくないっていうのかしらー?」

 

いーっと、大きく口を開けて、その黒曜石のような鋭い肉切り歯を見せ付ける。

 

「したくないっていうならー、そろそろあなたのこと食べちゃおうかしら? 私はこれでも人喰いの魔女なんですからねー」

 

ワシリーサは青年の首に口を寄せると、かぷかぷと首筋に歯を立てて、甘咬みしては舌を這わせていく。

 

「あなたはー、私が全部食べてあげるんだから。あなたの全部は私の、私のものにするの」

 

妖艶に笑いながら、口元を涎で濡らし、男の顔に舌を這わせ唾液をすり込んでいく。

これは私のものなのだと、所有権を主張するように。

 

「んぅ」

 

顔を這わせていた舌が、男の口に捕まえられ、じゅるじゅると啜られていく。

情熱的に、唇を押し当て、貪るように熱いベーゼを交わす。

ぐちゅぐちゅと唾液を交換する儀式の音が、部屋に響き、空気を淫らなものへと変貌させていく。

ワシリーサは自ら唇を開いて、差し入れられた舌を招き入れお互いの唾液で濡れた口内を蹂躙させるに任せて、柔らかい粘膜を削ぎ落とすように舐め回す男の舌を味わうのに専念した。

男の舌がワシリーサの、大きな裂肉歯を裏から撫でるように舐っていく。

何度も、何度も執拗に。

 

(ああ、牙ぁ、牙、もっと舐めてぇ❤)

 

人間と付き合うようになって、少しばかり気にしていたこの牙。

それが可愛いなどと言う。

飴でも舐めるかのように、しゃぶられると心臓は激しい鼓動を打つ。

胸が激しく高鳴るのを感じる。

形容できないほど熱い想いが湧き出てくるのだ。

 

舌を動かせば、粘ついた液体がぴちゃぴちゃと音を立て、口の端から溢れた液体が筋を描いていた。

二人は濃厚に体液を交換しながら、互いの服をもどかしそうに脱がせていく。

肌と肌を触れ合わせたいのに、邪魔をする無粋な布地だと言わんばかりに。

ワシリーサの豊満で真っ白な、形の良い乳房がさらけ出される。

見事な曲面を描いた、その魅惑の丸みへ青年は慣れた様子で手を這わせていく。

農作業で鍛えられた無骨な指が、簡単に埋まり、全体がふよふよと弾む。

 

「ぁはぁぅ❤」

 

時々力を入れて、揉みしだき、尖っている乳首をきゅっと絞ってやるとビクンっと体を弾ませて。

やがて染み出すように汗が滲み出し、潤滑油のように手の滑りをよくしていく。

ふわふわと柔からかくありながら、張りもあり、指を沈めると飲み込まれるように沈んでいくのに、ぷるんぷるんとした弾力が指を押し返してくる。

その先端に舌を這わせると、甘い嬌声が強くなる。

 

「ひっ、んひぃいぃ❤」

 

そしていきなり訪れた、脳を打たれたような衝撃に打ち震える。

桃色だった乳頭はいまや紅色に充血しきって、唾液でぬらぬらと卑猥にきらめき、その存在を主張して痛いほどに固さを増している。

そんな乳首に、硬いものが食い込んでいた。

青年が軽く歯を立てたのだ。

軽い甘噛み。

それだけで快感に茹だっていた身体は、一気に絶頂にまで達してしまう。

 

やがて男が這う舌は、徐々に下がっていき、むっちりとした太腿をちろちろと舐めると、くすぐったさと微弱な快感がワシリーサの興奮を高めていく。

そして骨だけと言えるほど細い足に、キスをして、指を丹念に丹念にしゃぶりつくしにかかる。

 

「これ、好きだよね、ワシリーサ」

「そ、そうね、もっと私の足をお舐めなさいな」

 

平静に奉仕させているといった体を装っているが、フーフーと息を荒げ、ビクビクと体を痙攣させていては台無しである。

一本、また一本と舐められるたびに、達しそうになるのを必死に堪え、じゅくじゅくと股の間からは淫猥な液体が分泌されていく。

 

「んちゅ、ほら、全部キレイになったよ」

「・・・・・・ぁ、そ、そうね、ご苦労様」

 

ゆっくりとワシリーサが、足を広げてじっとりと濡れそぼった秘蜜溢れる渓谷をさらけ出すと、精一杯の艶のある声を出した。

 

「さぁ、いらっしゃいな・・・・・・ちゃんと私を楽しませないと食べてしまうわよ」

 

まあ、そう言いながら足がガクガク震えているので台無しだったりするが。

 

「ねえ、ワシリーサ。その、先に口でしてもらったりとか駄目かな?」

「・・・・・・も、もうしょうがないわね」

 

少し休ませてあげようという意図ではあるが、まあ口も味わってみたいという思いもあってのことだが。

ワシリーサは、熱く脈打つ男根に両手の指を絡み付ける。

紅い魔性の光を湛える瞳はとろんっと潤み、いつも自分を責め立てている物の形を指と目で確かめる興奮に蕩けた吐息が唇から悩ましく漏れだしてくる。

 

「あ、あなたは勇気があるわね。それとも蛮勇の類いかしら? 人喰いの魔女にこんなことさせようなんて」

 

こんなもの簡単に噛みきれてしまうのよと言わんばかりに、口を開けてその鋭い牙を見せ付ける。

 

「その気になったら、別に人間でも同じだよ」

 

そう言うと、ワシリーサの闇夜のような髪をくしくしとやり、頭を撫でてくる。

子供っぽいのでやめてと言おうかと思いながら、意外と心地良い感触に、癪ではあると思いながら、黙って股間の付け根に顔を埋めていく。

愛らしい唇が、その亀頭にそっと擦り付けられる。

囁くようなキスを何度か繰り返し、ゆっくり舌を陰茎部分にねとっと這わせていく。

そうして大量に唾液をまぶしては、丹念に舌で磨いていく。

やがてその口が、濡れた亀頭を飲み込み、口内に含んだそれをちろちろと舌の先端で刺激する。

たっぷり時間をかけてしゃぶり回すと、ゴツゴツした肉竿の部分まで歯で傷を付けないように慎重に呑み込んでいく。

喉を鳴らしながら根本まで咥え込み、夢中でちゅうちゅうと音を立てて吸いたて舌を絡ませ、頭を前後に動かし、陰茎を唇で締め付け、舌で扱き立てる。

堪らなくなった青年が、腰を突き出し、太い無骨な指がワシリーサの髪を掻き撫でていく。

輝くような闇色の髪、その柔らかい感触が心地良い。

ワシリーサはそんな青年の腰を掴むと、ぐいっと自ら引き寄せた。

喉奥まで潜り込んだ感触に、灼けるような快感が駆け上がり、青年は魔女の喉奥でその精を弾けさせた。

迸った熱いエキスが、勢い良く喉を叩いて注ぎ込んでいく。

えづきそうになりながら、生臭い粘液を喉を鳴らして懸命に飲み込んでいくと、ワシリーサの体は興奮で一際熱くなる。

ゆっくりと口から男根を吐き出すと、それは未だに衰えず隆々と威容を誇っていた。

驚きながらも再び唇を寄せ、残った粘液を舐め取り、男の味を感じながら清めていく。

それが終わると、ワシリーサは青年の頬を抓り上げて言った。

 

「あんまり変なことしないの。下手に動かれると歯に当たって怪我しちゃうじゃないの」

「ご、ごめんつい」

 

仕方のない人ねとばかりに、頬を指で弾くと、妖艶な笑みを浮かべてその頭を掻き抱いた。

 

「さぁ、きなさい。私をちゃんとイカせないと食べてしまうんだから」

 

クスクスと笑う姿は、魅惑的で、人を惑わせる魔女のものだ・・・・・・始めの内だけは。

と思いながら青年は誘われるままに、その裸身に被さり、鮮やかな媚肉を覗かせる、ひくひくと誘うようにわななく秘唇に男の象徴をあてがった。

何度も味わったそこは、それでも壊れそうなほど可憐な唇だった。

毎回始めはどうしても躊躇してしまうが、それでもゆっくりと押し進める。

いつもながら秘孔は驚くほど柔軟に伸縮して、青年を迎え入れていく。

 

「ひっ❤ ぁあああぁああ!!」

 

ゆっくり侵入してくる肉槍。

いつもこうやって緩慢に押し入ってくる瞬間は、ワシリーサの理性にとって恐ろしい難敵だった。

ゆっくりと膣内を蹂躙され、ぶちゅ、ぷちゅと膣壁を挽き潰されていくのが、つぶさに感じ取れてしまう。

カリ首が中のツブツブとした突起を、愛液と先走り汁の混じった淫汁をまぶされながら、ごりごりと擦っていくと、背筋にぞわぞわと快感が走ってワシリーサを狂わせていく。

亀頭の先端が子宮の入り口を叩く頃には、ガチガチと歯を鳴らし、何度も何度も絶頂に達して息も絶え絶えになってしまうのだ。

 

「ワシリーサ、何回イッた?」

「・・・・・・ぁ、ひぁ、イ、イってない、わよ」

「じゃあ続けるね」

「待っ、す、すこひ休まひぇ、ひぅん❤」

 

強がってはいるが、どうもこの魔女はこういう方面は酷く弱い。

入り口に笠が引っかかると、きゅんきゅんと締め付けては痙攣している。

 

「あっ、だ、だめだめだめ❤ んぁぁッ! ひぃいッ、か、感じる、そこ感じちゃう❤」

 

子宮を抉じ開けて貫かんばかりに肉槍をねじ入れられ、エラばったカリ首やゴツゴツした肉茎で淫肉を磨かれる感覚は脳みそが焼け付くほど刺激的で、甘美な陶酔と酩酊の世界に連れ去られていく。

肉体はより深く快感を求めては、女の機能を最大限に引き出してワシリーサを快感の濁流へと誘い、肉の本能に支配されていく。

子宮を中心に湧き出してくる悦楽の波に、ただ腰を捩ってはなけなしの抵抗をしてはそれが無駄だというように目の前を白く染めるほどの快感に打ちのめされるのだ。

 

「あぅうぅうう❤ ひぃんひん❤ あぉおおお・・・❤」

 

度重なる絶頂に、粘膜が生き物のように絡みつき、蠕動を繰り返してツブツブの壁が男根を刺激しては、ギチギチと締め付けて愛液が寝具を汚していく。

突き込まれ、引き抜かれる度に、ワシリーサの背は仰け反り、腰がわななく。

豊かな胸がふるふると震え、開かれた口からは唾液がぽたぽたと溢れ落ち、悲鳴とも泣き声ともつかないような嬌声がほとばしる。

割り開かれた細い細い足は、頼りなげながらも懸命にすがりつくように精一杯に男の腰に回されていた。

喘ぎ、わなないては唇を貪られ、激しく律動するままに揺さぶられて、塞がれた口の間から、くぐもった呻きをもらしては、また絶頂を迎える。

 

「ひぅぅぅ、だめ、だめぇ、もうむりむりぃむりなのぉ❤ い、イクぅ、イッちゃうッ!!」

 

とうとう強情な魔女が陥落し、絶頂を宣言する。

青年の広い背にしがみついた手が激しく痙攣し、甲高い嬌声が迸る。

同時に肉壁がぎゅうぎゅうと、肉茎を食いちぎらんばかりに締め上げて精を絞ろうとして激しく蠕動を始めた。

堪らずに、その最奥で激しく精を放った。

二人共そのまま身動ぎもせずに、どれくらいそうしていのたか。

やがて荒い息を整えながら、愉悦に満ちた表情を浮かべた。

 

「ま、まあまあだったわよ・・・・・・」

 

やはりこの魔女は強情である。

 

「じゃあちゃんと満足できるまで・・・」

「ば、馬鹿! そんな簡単に何度もやらせたりしないんだからね!!」

 

それから二人は体を清めて、再びベッドに潜り込み、ずっと話をしていた。

 

「それでね、そこは見渡す限り砂と岩ばかりのところなの。死の世界って意味の名前で呼ばれているわ」

「へええ、そんなところがあるんだ」

「他にもあちこちにあるわね。ずっと西にはもっと広い砂の世界があるの。他にも外にはたくさん見たこともないものがあるわよ。鯨って知ってる? この家より大きな魚なの」

「そんなにデカイのか?」

「ええ、物凄い大きさだったわ」

 

ワシリーサの話す異国の話は、青年の楽しみの一つだ。

常に夏のように暑い国や、氷の世界に、よく地面が揺れる島国だとか。

首が何メートルもある獣や、角を持った魚に飛ばずに走る鳥。

この大地のことしかしらない青年には、どれもが不思議の国の話だ。

 

「ねえ、いつか一緒に行きましょうよ。私が連れて行ってあげる」

「そうだね、いつか行こう」

 

やがてしゃべり疲れて、青年の頭を胸に掻き抱いてその温もりを感じながら、魔女は寝息を立て始める。

ずっとこの温もりが続くのだと信じて・・・・・・

 

そんなはずはないのに

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

ダン! ダン! とワシリーサの手が、石の塊を叩き付ける。

血が滲み、石に触れる度に手から白煙が上がり、血が滴り落ちていく。

 

「ねえ開けて!! こんな意地悪しないでよ!!」

 

この石は祝福が施されている。

祝福されたものは魔女には毒だ。

三組の手など近寄ることも出来ない。

 

「お願いよ、こんな冗談やめて!! 開けて、今なら許してあげる。ね、あなたの好きなボルシチたくさん作ってあげるわ」

 

何度叫んでも男のいらえは無く、魔女の声だけが響いていた。

 

「そ、そうだ、お尻でさせてあげましょうか? 恥ずかしいしちょっと怖かったから前は断ちゃったけど、し、したいならさせてあげる。ね、だから出てきて・・・・・・」

 

ワシリーサの声は悲痛を帯びていた。

やがて永い永い静寂の後、土と血に濡れた両手を、再びその石に叩き付けた。

シュウシュウと手が焼けつき、白煙が帯を作る。

 

「逃がさない、あなたは私が食べるんだって言ったじゃない!! こんなのふざけないでよ、力尽くにでも引きずり出してやるから!!!」

 

激痛を無視して、石にその指を食い込ませていく。

やがて音がジュウジュウといったものに変わり、肉の焦げるような腐ったような臭いが漂いだす。

 

全身に渾身の力を込めて。

細い足が嫌な音を軋ませるのも無視する。

手の痛みも無視して、その重い石の蓋が持ち上がった。

石棺の蓋を投げ捨てると、ワシリーサはそれを覗き・・・・・・

よろよろと力無く地面に座り込むと、ただ静かに空を仰いだ。

そのまま朝が夜を連れ戻し、太陽が昇り再び朝が戻ってくるまでずっとそうして空を仰いでいた。

 

やがて棺の中のソレと臼を担ぎ上げると、どこかへ走り去っていった。

逆さまの事をすれば時が逆しまに回ってくれと祈るように。

臼とともに担がれた、ゆらゆらと揺れるソレの右手には、魔女の瞳のような紅い宝石の指輪がはめられていた。

それにはこう刻まれている。

 

『麗しのワシリーサへ永久の愛を』

 

 

 

 

 

歳を取らない魔女とは違い、人間はやがて年老いていく。

ある日とうとう・・・・・・

魔女の婆さん、バーバ・ヤガー。

臼を背負って駆けていく。

人喰い魔女のバーバ・ヤガー。

悲しそうに駆けていく。

深い深い森の奥、人骨で飾った家で暮らしてる。

赤い騎士(太陽)白い騎士()黒い騎士()

バーバ・ヤガーの忠実な下僕。

けれどどんなに命じても、逆しまにだけは巡りはしない。

魔女の婆さん、バーバ・ヤガー。

人喰い魔女のバーバ・ヤガー。

紅い瞳を濡らして泣いた。

独りぼっち頭をたれてお家へ帰る。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

あるところにワシリーサという女の子がいました。

ワシリーサの母親は早くに亡くなってしまいましたが、最期にワシリーサに祝福された人形を残してくれたのです。

やがて父が再婚すると継母と二人の義姉は、ワシリーサに辛く当たるようになりましたが、人形の助けを借りて頑張って乗り越えていました。

そんなある日のことでした。

夜なべ仕事の最中、火が消えてしまったのです。

 

「ワシリーサ、あなたバーバ・ヤガーのところに火をもらいにいきなさい!」

 

意地悪な二人の義姉は、ワシリーサを家から追い出しました。

人形は答えます。

 

「怖がらないで大丈夫、ワシリーサ。私の言うとおりにしなさい」

 

人形の言う通りに歩いて行くと、やがてバーバ・ヤガーの小屋へ辿り着きました。

鶏の足に支えられ、人間の手を閂にし、錠前は人間の顎を使った恐ろしいバーバ・ヤガーの家です。

ワシリーサが驚き、恐怖に竦み上がっていると、やがてバリバリと枯れ葉を踏みしだく音が聞こえてきました。

 

「ロシア人の臭いがする! 誰、私の大事な家に近付くのは!?」

 

バーバ・ヤガーが帰ってきたのです。

夜を思わせる黒い髪。

彫りの深い整った顔立ち。

妖しく光る紅い瞳。

そして愛おしげに人間の頭蓋骨を抱えた、恐ろしい魔女でした。

その左手の指には赤い宝石の指輪がきらきらと光っています。

勇気を振り絞ってワシリーサがこわごわと近付くと、丁寧に頭を下げて説明しました。

 

「ヤガーさん、私はワシリーサと言います。義姉達が火を貰いに行くように、私をよこしたのです」

「そう、でも私の家に近付く者は、食べられてしまうって聞いてなかったの?」

 

バーバ・ヤガーの紅い眼で睨まれ、ワシリーサは恐怖に竦み上がります。

その時バーバ・ヤガーが持っていた頭蓋骨が、ひとりでにカタカタと音を上げて動き出しました。

バーバ・ヤガーは頭蓋骨に接吻をすると、何事か呟いています。

 

「助けて上げなさいって? ・・・・・・そうね、いいわ、あなたがそう言うなら」

 

そう言って、頭蓋骨を見つめるバーバ・ヤガーの瞳はとても優しい光を湛えていました。

 

「きなさい、まずは私のところで働いてもらう。そしたら火をあげるわ。さあ私の愛しい閂よ外れなさい、私の門よ開きなさい!」

 

魔女がそう言うと、門が開き二人は中へ入ると、再び門は閉じられました。

バーバ・ヤガーのワシリーサと、人間のワシリーサがどうなったか、それはまた別のお話。




いやはやお待たせしました。
何故か唐突にネタが降ってきたバーバ・ヤガーです。
ワシリーサはロシアの民話の「うるわしのワシリーサ」から。
というか前日譚みたいな感じで、最後にそれに繋がるというか。
構想は天○月○さんの蝶と、パ○・ザ・マジッ○ドラゴンから思い付きました。

当初はプラチナブロンドの髪って予定だったんですが、バーバ・ヤガーは赤い騎士、黒い騎士、白い騎士、つまり太陽と朝と夜を従えているという話でしたので、赤と白と黒で配色しようかということで黒髪になりました。
性格ももうちょっと妖艶なはずでしたが、書いてるうちにどんどん素直になれないデレデレお姉さんになっていきました。

ведьмаはヴェーディマ。
魔女やウィッチに当たるロシア語です。
カタカナで書くと、タイトルはワシリーサ・ヴェーディマ・ヤガーになります。

ロシアの昔の風習はどうもなかなか調べきれなくて苦労しました。
だいぶぼかして誤魔化すことにしましたが。

場所としてはハバロフスク辺りをイメージしてます。
最後に臼を背負って走りだしたのは、日本の新潟県に出る妖怪である臼負い婆と関連付けてたりします。


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ゲドガキより愛をこめて

昔々、長崎県福江島の玉之浦町字荒川、そう温泉が有名なところじゃな。

そことな、南松浦郡岐宿町二本楠郷との間になゲドガキと呼ばれる土地があった。

そこには化け物が棲んでおり、ゲドガキの化け物と呼ばれておったのじゃ。

 

ある時、玉之浦中須にいた丑松という子供がな、晩にぐずって大泣きをしたので、父親は言うてはならんことを言ってしまった。

 

「いつまでも泣いていると、ゲドガキのバケモンに食わせちまうぞ!!」

 

とな、叱りつけたのよ。

すると家の外から大きく高い声が返ってきた。

 

「そんならオラに食わせろ!!」

 

言葉には力が宿る。

言葉にしてしまえば、それは現実を動かしてしまう。

ことに、妖怪などは言霊に大きく左右される。

口にしてしまったために、招かれざるモノを呼び寄せてしまったのよ。

 

「これが大人になるまでは待ってくれ!!」

 

何を思ったか、父親はそんなことを口走ってな。

こうして丑松の魂はゲドガキの化け物の手に渡るよう、運命付けられてしまったのさ。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「おお、潮や、帰ったかい」

 

ただいまーとうちにかえると、だいすきなばーちゃがおでむかえ

きょうはおとなりのみっちゃんと、おままごとであそんだ

しょうらいはこーがくれき、こーしんちょうの、すてきなだんなさまのおよめさんになりたいとふたりでしょーらいせっけー

こーがくれきとかよくわかんないけど、なにかすごいってことらしい

 

てをあらってうがいをすると、ばーちゃがうしおはよいこだねってほめてくれた、えへへ

ばーちゃだいすき

いつもいろんなおはなしをしてくれる

 

「潮や、人間とは仲良うせえよ」

 

うん、うしおはおとなりのみっちゃんだいすきだよ、しんゆーなんだ

うしおとみっちゃんのしょーらいせっけーをきいたらばーちゃはわらってこういった

 

「そうかい、そうかい。潮はめんこいからのう。どうれ、それじゃあ今日は、おらとじい様が初めて会った時のことでも話そうかね」

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

住宅街の、それも電信柱の上に、奇妙な装束と覆面をまとった男が二人。

怪しいことこの上ないが、だからこそひと目に付かぬように、電信柱の上を選んだのであろうか・・・・・・

 

「隊長・・・」

「うん?」

 

隊長と呼ばれた男が、陰陽道の占具である式盤をいじりながら、応えを返した。

この男は日本政府有する対妖怪関連の特殊部隊、その隊長である。

問うた男はその部下に当たる、同じく特殊部隊に所属する隊員だ。

特殊部隊の二人が派遣されたのは、ここ長崎県福江島にて人喰いを行った妖怪がいると、小妖から通報があったためだ。

おそらくは抑え役の妖怪でも、いなくなるなりしたのだろう。

かなり派手にやらかしたらしく、早急に処理せねばならない。

現在は詳しい位置を割り出すために、魔術的レーダーとも呼ぶべき術を行使しているところである。

 

「隊長は、吸血鬼に詳しいんですよね?」

「まあ、人並み以上だとは思うが」

 

何しろこの男は、吸血鬼狩りのレコードホルダーである。

特殊部隊の隊長としてよりも、むしろそちらの方が有名なくらいだ。

当然、それだけ吸血鬼と戦ってきたのだから、それなりに詳しい。

さらに個人的な友人の中には、吸血鬼も何人かいたりする。

 

「その・・・・・・吸血鬼というのは、首を絞められて喜ぶものなんでしょうか?」

 

この部下には、吸血鬼の恋人がいる。

先日も吸血鬼の寝床に関して相談を受け、土砂加持をした土を敷くと良いと教えたのも記憶に新しい。

今回の質問も、つまりそういうことだ。

しばしの沈黙。

式盤をいじる手もはたと止まる。

言ってもいいものかという逡巡を示す沈黙。

 

「個人的な嗜好だと思うぞ、それは」

 

だが言った。

そして、再び沈黙が訪れる。

これは、分かってはいたけど出来れば否定して欲しかった、という想いがこもった沈黙だった。

ですよね、とだけ呟いて何かを諦めた表情を浮かべる。

 

「・・・・・・まあ、何だ、仲が良さそうで何よりだ」

 

そう言いながら、式盤をいじるのを再開する。

 

「では早く戻れるように、頑張るかね。六壬式は苦手なんだが、なるべく急ごう」

 

因みに六壬式という占いは陰陽師にとっては必須科目と言っていいのだが、この男、攻撃系の魔術に偏っているためか、こういう占卜全般があまり得意ではないのだ。

 

「い、いえ、そんな・・・・・・と、ところで隊長の方はどうなんですか? その、好い人とかいないので?」

 

照れ隠しにか、話題の方向を隊長の方へと切り替える。

 

「おらんなあ。あまり出会いも無いし、そもそもこんな男ではな」

 

手を止めることなく自嘲気味に呟くが、学生時代は割りと好意を寄せてくれていたクラスメイトもいたのだが、まったく気付いていなかった。

朴念仁である、こやつ。

 

「そんなことはないと思いますが・・・・・・ああ、そうだ、お紺さん何かどうなんです?」

「・・・・・・紺か」

「陰陽師といえば狐ですしね」

「信田妻か」

 

そうして、しばし考えた後、口を開き。

 

「無理だろう。仕事柄、話をすることは多いが・・・・・・そもそも、俺を怖がっている節がある」

「いやあ、何か切っ掛けがあればコロっといきますよ、こういうのは」

「そういうものか?」

「ええ、まあ・・・・・・」

 

自分が吸血鬼にコロっといったので、実感がこもった言葉だった。

 

「じゃあ、まあ、そうですね。食事にでも誘ったらどうですか? そういうの抜きにしても、親睦を深めて悪いことはないですし」

「そうだな、では機会があればそうしてみようか」

 

冗談めかしたその言葉が言い終わると同時に、式占の結果が出た。

 

「ここからちょうど、裏鬼門の方角だな。行くぞ」

「了解!」

 

瞬時に二人の姿が掻き消える。

電柱から電柱へ高速で飛ぶように移動していく。

 

この件の報告書にはこうある。

人喰いをした妖怪四名を処理。

被害者と思われる人骨を、八名分確認。

対象外の妖怪一名を保護。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

丑松はやがて一人前の大人になった。

ある日、用事で荷物を背負って帰宅する途中にゲドガキを通ると、バケモンが現れてな、約束通りお前を喰いに来たと襲いかかってきた。

 

丑松の父が家におった時に、外からあの時と同じ声が響いた。

 

「お前の子はおらが貰ったぞ!」

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

ばーちゃがしんじゃって、おそうしきもおわってから、とーちゃやかーちゃたちのようすがおかしくなった

にーちゃたちも、よるになるとどこかにでかけているようで、よるにおてあらいにいくときにいないからさびしい

でもきょうはみんないるらしい

いまにあかりがついてる

 

「あら、潮、起きてきたの?」

「せっかくだ、お前も食べなさい」

 

とーちゃやかーちゃ、だいにーちゃとちいにーちゃがみんなでたべていた

 

「婆さんが死んだからな。もう遠慮なんていらねーから好きなだけ食えるぞ」

 

みんなでたべていた

かーちゃがみっちゃんのくびを

とーちゃがみっちゃんのあしを

にーちゃたちがみっちゃんのおなかを

 

きがとおくなって、きづいたらかーちゃがうしおをかかえてはしっていた

にーちゃもいっしょにはしっている

だめだ、そっちにいっちゃだめだ

 

だって、ほら、闇から滲みだすようにあいつがやってくるから。

にーちゃ達の頭が風船のように割れた。

かーちゃの首がコトリと落ちた。

あいつが私に手を伸ばしてくる。

その手がピタリと止まると呟いた。

 

「お前は、人を喰っていないようだな」

 

ああ、ばーちゃは正しかった。

 

「潮や、人間とは仲良うせえよ」

 

だって、人間はこんなに怖くて恐ろしくて、強かった。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

またあの夢だ。

寿命がきた蛍光灯がチカチカと点滅を繰り返し、部屋が明滅する。

怖い。闇は怖い。

闇の中から、またあいつが滲み出してくるような気がして、怖くて仕方がない。

いつも灯りは点けっぱなしだ。

暗いといつもあの時の夢を見てしまう。

蛍光灯が壊れたから、あの夢を見てしまった。

 

もう何十年も経っているのに。

 

分かってはいる。

悪いのは人間を食べた私の家族達で、そのことを・・・・・・みっちゃんを食べたことを私は許せない。

けれども、あの時の恐怖は私の心に楔となって打ち込まれ、たぶん二度と抜けることはないのだろうと思う。

暗いのは怖い。

人間も怖い。

 

でも、一人も怖いよ、寂しいよ。

寝ても、起きても寒いばかりで。

 

怖くて、動くと闇の中からナニカが出てきそうで、、蛍光灯を替えることも出来ずに、しばらく一人で震えていると、部屋の扉が開いて、灯りが差し込んでくる。

 

「潮さん、ああ、蛍光灯切れちゃったんだ。ちょっと待ってね今替えるから」

 

てきぱきと蛍光灯を付け替えているのは、見知った顔の男の子だ。

一回り年下の近所の子で、赤ん坊の時から知っている。

人間は怖かったけど、子供なら大丈夫で、だからよく面倒を見ていた。

だけど数年前、彼は私を強姦したのだ。

怖かった。痛かった。

人間に危害を加えるのも怖くて、抵抗することもできなくて、そのまま純潔を散らされた。

それ以来、ずっと体の関係を続けている。

最初は怖くて、痛くて、嫌でたまらなかった。

でも今はもうあまり嫌ではない。

抱かれている間だけは、厭なことを忘れられるから。

一人じゃないって感じられるから。

寒くなくなるから。

 

「ねえ、しようか?」

 

だから、ねえ、忘れさせてよ。

 

   ♡❤♡   ♡❤♡   ♡❤♡   ♡❤♡   ♡❤♡

 

彼は、私の本当の姿を見ても、怖がらない。

それだけは、嬉しいと思う。

人間とは違う青い肌、本来白いはずの眼の強膜は黒く、虹彩は金色。

額からは真っ直ぐな一本角が突き出しているが、半ばから折れて先端は丸くなっている。

以前、彼の手を突いてしまい、怖くなって切り落としたのだ。

神経が通っていたらしく、痛くて気絶したが。

胸は我ながら真っ平らで悲しくなる。

こんなので欲情してくれるのは、まあ少し嬉しいと思えるようになった。

 

「んぅん・・・・・・」

 

重ねられた唇から、淫猥な水音が響く。

貪るように深く、唾液とともにいつもは奥手な潮から、熱心に舌を絡め合わせる。

心の中の不安と恐怖を塗り潰そうとするように。

そんないつもより積極的な潮に、性欲旺盛な若者である男も触発され、男の象徴はすぐさま体積と硬さを増していく。

口を離すと、舌が首筋から下に下に這って行く。

やがて青い胸のその先端、少し色が薄くなっている先端部分に男の舌が到達する。

唾液を塗り込まれ、勃起して果実のようになった乳首がくにゅくにゅと舌先で弄ばれ、いやらしく音を立てて吸われると、この数年の間、散々犯された体はたちまち快楽に支配されていく。

 

「はぁ・・・あぅうう❤」

 

吸われるたびに、きゅうきゅうと潮の膣が収縮する。

彼女の穴奥にある秘部の触手が、よく知った男の逸物を求めて蠢いている。

早くおいで、この穴は気持ち良いよと主張するように、膣襞がうねうねと震えている。

ちゅぽっという音とともに、口が離れる頃には、潮はすっかり腰砕けになってしまっていた。

 

「あはは、キレイなピンク色」

「あ、あぅうぅぅぅ」

 

青かった胸の先端は、茹でられた海老のように、鮮やかな桃色に染まっていた。

感じたりして充血すると、何故か色が変わってしまうのだ。

変わるのは乳首だけで、敏感な部分が強調されて恥ずかしくて堪らない。

でも、これからもっと恥ずかしい事をされるのだ。

 

「ここも凄くキレイなピンク色だね」

 

男が潮の秘部を割り開き、左右に広げながら呟いた。

蒸れた香りが立ち込める。

男にとっては獣欲を滾らせる、果実の芳香だ。

そのまま両方の親指を使って、皮を剥き陰核を外気に曝け出す。

 

「み、みないでぇ・・・」

 

これだけはいくらされても慣れない。

いつも恥ずかしくて、死にそうになる。

一番敏感でいやらしい部分を剥き出しにされ、物欲しそうにぱくぱくと口を開けて、男の欲望を注がれるのを待ちわびている膣腔をじっくりと観察されている事実が、体を熱く震わせる。

この瞬間ばかりは、いくら怖くても電気を消してしまいたくなる。

けれど替えられた蛍光灯は明々と、彼女の恥ずかしい部分を暴き立てている。

それどころか、粘液が光を反射し、ぬらぬらと淫靡な輝きを放っている。

青い肌がその桃色の秘部をより一層、いやらしく引き立てている。

 

「やぁ・・・・・・す、吸っちゃ、だ、だめぇ・・・・・・」

 

外気に曝されただけで、ひどく感じる陰核を、唾液をたっぷり湛えた舌が這い回る。

小刻みに震えながら、まんべんなく婬豆をこね回され、潮は嬌声を上げる。

 

「うぁああああ!! や、っあぁあああ、い、イッた、イッたからぁ」

 

吸われるたびに、下腹の奥が疼いて、快感が頭を貫いていく。

恥ずかしい愛蜜がこんこんと奥から沸き出して、シーツを汚していく。

一回りも年下の男にこれだけいいようにされてしまう自分が恥ずかしくて、それがいっそう興奮を誘ってしまう。

息も絶え絶えになったのを見計らって、一気に挿入され、また絶頂を迎えてしまう。

最近は責め方がねちっこくなり、もう為す術もなくイかされてしまう。

 

「あぁ、あ! あぁ❤ ひぃいいい❤ ああっぁぁああ!!」

 

足を広げられ、肩に担ぐようにしてペニスを突き込まれる。

深く深く侵入してきて、子宮を刺激され再び絶頂を味合わせられる。

四十八手でいう、深山である。

結合部が丸見えになり、男の欲望を否応無く刺激する体位だ。

 

「ほら、潮さん。今どうなってるの?」

「ひぃいいい❤ し、子宮、子宮をこんこんってひゃれてぇ・・・・・・か、感じるぅ❤」

「だーめ、もっとエッチに言ってよ」

「ひょ、ひょんなぁ・・・」

「ほら、ほら」

 

こんこんっと子宮の奥を突かれて、淫語を強制される。

 

「ち、ちんぽぉ!! んぅぅう、ちんぽに、お、犯されて・・・・・・き、気持ちいいでひゅう❤ あ、あぁああああ、ちんぽぉ、ずこずこひゃれえ、お、おまんこ感じますぅううう❤」

 

恥ずかしさに興奮して髪を振り乱して、潮が男の腕の中で大きく喘ぎ、男は汗を滴らせながら、激しく腰を振りたくって子宮に欲望を叩き付けていく。

やがて互いの名前を呼びながら、男はその精液を子宮に注ぎ込み同時に絶頂を迎えた。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

潮は、自分の膝を枕にして眠る男の髪を撫でながら、静かに微睡んでいた。

流石にあれからさらに五回も励んでしまった、なかなかにハードであったためか、男は疲れてそのまま寝てしまったのだ。

最近は角をいじってくれなくなったのが、少々物足りないが、まあ仕方ない。

切り落として気絶した時に、泣きながら包帯を巻いたりしてくれたのは彼だ。

あれ以来、角に触るのを躊躇うようになってしまった。

医者を目指して毎日、夜遅くまで勉強しているのも知っている。

私の事は自分が治してあげるんだと。

私なんかに好意を持ってくれて、強姦もそれが行き過ぎてしまった故なのは理解している。

それは、まあ、ちょっとまだ怖かったりもするが、もう許している。

だけど、それでも、こんな関係はいつまでも続けてはいけないと思うのだ。

このままではきっとお互い、どこかで駄目になってしまう。

きっと自分達は不幸にしかなれないと。

嫌いではない。

むしろ好きだと思う。

それでも少なくとも、今はこうしていてはいけないのだと。

傷の舐め合いはもう終わりにしないと。

だから・・・・・・そう、だから・・・・・・

 

「あなたの子供は、もらっていくね」

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

彼女がいなくなって、あれからもう十年近く。

研修医になって、忙しさに謀殺される日々を送りながら、想うのは彼女のことばかりだ。

子供の時から彼女が好きだった。

誰にも渡したくなくて、どうしても自分のものにしたくて。

そうして、あの時、無理やり彼女を犯したのだ。

最低だったと思う。

人間じゃなかったのには驚いたけど、好都合だと思った。

彼女を見るのは自分だけにできる、自分だけのものにできると、虫のいいことを考えていた。

どうしようもない男だと自分でも思う。

そんな自分を許してくれていた彼女に甘えていたと、今ならはっきり分かる。

許してくれなくてもいい、ただ・・・もう一度だけ逢いたい。

 

さて、そろそろ戻らないとな。

 

「とーちゃん!!」

「え!?」

 

そう呼ばれて何かがぶつかってきた。

振り向くと子供が裾を掴んでいて、こちらを見上げている。

 

「あのなあのな!! サンタさんにおねがいしたの!! とーちゃんにあいたいって!! そしたらな、こうやってとーちゃんにあえた!!! サンタってすげーな!!」

 

矢継ぎ早にまくし立ててくる。

 

「とーちゃんって、俺が?」

 

何の冗談だろう。

 

「かーちゃんの持ってた写真に映ってた!!」

 

他人の空似だろうと、苦笑しながらその子供の頭を撫でて、さて何と説得しようと考えて、手の平に硬い感触を感じた。

 

「これ・・・」

「えへー、まだうまく化けきれねーからちょっと角のこっちゃうんだけど、まあとーちゃんはしってるからいいか!!」

 

その子供の歳を聞く。

・・・・・・計算は、合う。

それじゃあ、この子は。

この子は、もしかして俺の。

俺と潮さんの・・・

 

「ねえ、お母さんはどこにいるの?」

「かーちゃんなー、今あっちのスーパーで買い物してる」

 

その子を抱えて、俺は走り出した。

他の事は何も考えられなかった。

 

「あ、かーちゃんだ!!」

「潮さん!!」

 

振り向いた彼女は、俺を見て驚いた顔をして、それで・・・・・・優しく微笑んでくれた。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「それでな、じい様ったら、これがもう強くてのう。おら縛り上げられてしまってな。いやあ、動けねえおらをじい様ったら・・・・・・いやだようもう、こんな婆さんに何言わせるかねこの子は」

 

きょうのばーちゃのはなしはよくわかんない

 

「次の時なんて、切れねえようにって、もっと丈夫な縄を持ってきてなあ。情熱的だったのう、じい様は」

 

とにかくじーちゃはすごいひとだったらしい

うしおもしょーらいそんなすごいひととあえるかな

 

「そうじゃなあ、運命の人とは、足首の赤い縄で繋がれておるって言うしのう。きっと逢えるさね」

 

あかいいとじゃないの?

 

「今は赤い糸なのかい? ばーちゃの頃はそうだったんだけどねえ」

 

うしおとうんめーでつながっただんささまかあ

 

「そうじゃよ。例え離れ離れになっても、きっとまた巡り逢えるもんさね」

 

ばーちゃとじーちゃみたいに?

 

「そうよ。きっとあの日のわしらの出逢いも、奇跡だったのだからのう」

 

なあ、丑松。おら達のややこの名前考えてくれたか?

さてなあ。俺の字を一つ取って松の字は付けようかと思っておるが。

おらはもう考えたぞ、丑松のうしから取って潮じゃ。

潮か。

おのこなら丑松の考えた名前じゃ。めのこならおらの考えた潮にしよう。

どちらかしか使えんはもったいない気もするのう。

その時は、孫にでも付けようさ。

きっと強い子になるのう。

いやあ、おめえさまに似た優しい子になるさ。

 

なあ、潮や。

 




難産でした。
食人描写、詳しくいらねえやカットカット。
隊長さん達の戦闘描写、この話には不要、カットカット。
リクエストされたのはゲドガキの化け物でおねしょただったんですが、俺おねしょた属性無いよってことで申し訳ないけどこんなんなりました。
当初のプロットでは、母親が龍脈に押し込めて逃したりという予定でした。
隊長さんが前準備も無しにやるそれほとんど自殺と同義って言わせて、ちょっとお紺さんの後日談の方にそのネタ回そうかとも思ったんですが、展開的に無理かなっと思って保護されたという形になりました。
本当は男の元から去ったのも、通りかかった隊長さん見てトラウマ刺激されてって感じを予定してましたが、ゲドガキの伝承から話展開させて運命が云々にした方がいいかと思いプロット修正。
かなり直前まで着地点、悩んでました。

ゲドガキの化け物は姿の描写がないのをいいことに、青肌悪魔っ娘みたいな外見にしちゃいましたひゃっほーい。

次はタンタンコロリン。
後はエルフと蛇娘を書いたら、いったん妖怪娘さんは終了して、のんびり後日談書きつつネタをストックする所存です。


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年々歳々柿逢い来たり

スカ要素有りなので注意。


「んぁあぁぁっ❤」

 

部屋には甘い匂い、甘い声が充満していた。

じゅるじゅると何かを啜る音が響く度に、それは部屋を満たしていく。

軋むベッドの上では、一人の女がうつ伏せにされ、肉付きの良い尻を突き出すようにして男の責めるがままにされていた。

光の加減によっては、緑にも見えるセミロングほどの黒髪は、四つに分けて括られフォーサイドアップ。

それはどこか柿のへたを思わせる。

出るものは出、引っ込むものはそのように、紛れも無く体は成熟した女性のものである。

だというのにまだ全体的に青臭さを感じさせるという、不思議な女だ。

艶めかしく淫靡にくねる愛らしいお尻に顔を埋め、男の舌が菊門を執拗に舐り続けていた。

本来不浄なはずのその穴に、躊躇いもなく舌を割り入れ、啜り立てると女の背が反り、口からはカチカチと歯の鳴る音が漏れてくる。

 

「ゆ、許ひてぇ❤ ひぃっひぃぃんっ、ひぃ、ひぃぃ、あぅぅっ、あうぅ❤ も、もぉ、ゆ、許ひぃぃっ❤ やめへぇ、じゅ、じゅっと、お、おかひくぅ、な、にゃって、るぅ❤」

 

何を言ってるんだろう、この女は?

何でやめなきゃいけないのだろう?

最初に尻穴をほじって舐めてくれと頼んだのは自分じゃないか。

そう男は思いながら、女の哀願を無視して、本来は汚物を排泄するためだけの穴に、なおも舌を深く深く捩じ込んで啜り立てる。

すっかりほぐれきった括約筋が健気にも抵抗を示すが、それも男を喜ばせるアクセントとしての意味しか持たなくなっていた。

儚い抵抗を容易く捻じ伏せ、夢中で舌を動かすと、その度にねっとりとした甘みが味蕾を刺激する。

同時に蠱惑的な甘い匂いが立ち昇って男の理性を融かしていく。

どれだけそうしていたのか・・・・・・やがてその甘味もだんだんと薄れてくると、男はもっと寄越せと菊門を口で覆うと、じゅるじゅると音を立てて吸引する。

 

「にゃ、にゃいぃいい❤ も、みょ、うぅうう、にゃいからぁああ❤ わらひのなかぁ、みょぅ、にゃいからぁ❤」

 

もう無いから、吸わないで、吸わないでと懇願する女を無視して、もっと出せとばかりに女の下腹部に手を滑りこませる。

そこでようやく男は女の異形に気付いた。

一見すると無毛にも見える、うっすらとした産毛の感触だけで、あるはずの感触がなかった。

本来なら女性器が存在するはずの場所は、なだらかな女らしい曲線を描くのみで、剥きたての茹で卵のようにつるりとした、まるでのっぺらぼうのような、すべすべした肌だけが広がっていた。

興奮しきった男はその異形にむしろ興味を持ち、無穴の女性器を撫で上げてその感触を確かめる。

 

「ひぃ、しょ、しょれぇ、だ、だめぇ、ぞわぞわするぅ❤」

「は、ははは、穴も何にもなくてつるっつるで。まるでのっぺらぼうみたいなおまんこだな」

「にょ、にょっぺりゃびょうじゃぁ、ぬぁいもん・・・・・・た、んぅ・・・たん、こ、ころりん、だもん」

 

呂律の回らない女の言葉に男は問い返しながら、つるりとした性器、いや性肌(せいき)と言うべきかをふにふにと揉みしだく。

 

「何、ころりんだって?」

「た・・・んぅぁ❤ た、たんたん、こ、ころりんぅぅ❤」

「タンタンコロリンね・・・・・・それってなーに?」

「よ、ようかぃい。妖怪でひゅぅ・・・ひゃ、ひゃきのきのよ、妖怪ぃ❤」

 

ひゃきのき、というのがよく分からないが、とにかく妖怪だと理解した男だが、興奮しきった頭はそれを大した問題とは認識しなかった。

何の先触れもなく訪れた、不思議な女。

甘い匂いを放ち、蕩けるように魅入られた。

疑問に思う心を押しのけて、言われるがままに女の尻穴にむしゃぶりついた時点で、もう男は戻れないところに来ていたのだ。

 

「そうか、君は妖怪なんだ」

 

何でもないことのように言いながら、手を離し、柔らかい尻肉を割り開くと、散々舌で嬲り尽くされたその愛らしいすぼまりは、ぽっかりと穴を開けて、ひくひくと誘うように蠢いている。

 

「わざわざお尻の穴を舐めさせにやってくるド変態妖怪なんだ」

 

ほっそりとくびれた腰を掴み、尻穴に肉棒の切っ先をあてがう。

それだけで、腫れ上がった肛門の粘膜は、ちゅうちゅうと男の欲望に吸い付いて引きこもうとしてくる。

 

「うぅぅう、そんなこと言わないでぇ」

 

髪から覗く耳朶やうなじは、長い長い愛撫の快楽によるものとは別のものによって、さらに赤く染まっていく。

 

「んぁあああ!?」

 

そんな(タンタンコロリン)の尻穴に、腰を沈めていくとすんなりと抵抗もなく男の物が呑み込まれていった。

反射的なものなのか、女の足がぱたぱたと跳ね上がり、まるで泣くように嬌声を上げる。

奥まで入ったそれを、ゆっくりと引き抜いていくと柔らかな腸の肉が包み込むように絡み付いて、快楽を与えてくる。

亀頭の雁首が見えるところまで引き抜くと、体重を乗せて一気に、容赦なく肉棒を突き立てる。

それでも小さな肛門の皺は完全に伸びきって、男の逸物を楽々と迎え入れていた。

 

「あああ・・・・・・こ、こんなのぉ❤」

「お尻の穴しかないアナルセックス専門のド変態妖怪なわけだ」

 

その言葉に否定を返す前に、男は腰を抱え、上に下に右に左にと角度を変えては何度も何度も突き込み、躊躇なく串刺し刑を実行していく。

発情した牝の声で絶叫し、腰が震え、足がガクガクと震える。

張り出た雁首が淫肛肉をぐりゅぐりゅと掻き毟り、その度にきゅんきゅんと括約筋が収縮して肉茎を締め付けて喜ばせにくる。

 

「おぉォォ! あおぉお!!」

 

幾度も絶頂を向かえて、発狂しそうな程の性感の波に、体中から搾り出されたような獣地味た喜悦の声を上げて、髪を振り乱す。

奥の奥まで容赦なく、体重をのせて男の欲望が何度も何度もピストンされていく。

舌で散々舐られてもたらされた絶頂以上の快楽に、全身からじっとりと汗が滲み出してくる。

 

「この、この尻穴妖怪め。なんていやらしいんだ。このドスケベ妖怪」

「ひ、ひがうもん❤ ひ、ひりあな、ひょ、ひょうかい、じゃぁ、にゃいみょん❤ はぁきのきぃだも、ん❤」

「どう違うんだ、この、この」

「にゃぁ、にゃるもん❤ ひゃ、ひゃんと成長(せいひょう)、ひたらぁ・・・・・・ひゃんとぉ、に、人間にょぉ、お、おんにゃ、のこぉみ、みたいにぃ❤ こ、こっちの、ひぃん❤ あ、(あにゃ)もで、できりゅぅうううう❤」

「へぇ・・・・・・おまんこもその内、できるってこと? はは、やっぱりドスケベ妖怪なのはかわらないじゃないか」

 

甘ったるく茹だって、蕩けきった女妖の体を強引に起こして、背面座位の形になる。

 

「ひ、ひゃぁ・・・こ、こりぇ、ふ、(ふか)ひゅぎぃ❤」

 

体重をかけて、男根に座る体位となったため、奥までみっちりと肉塊で埋められて、全身から汗を吹き出して、紅潮した内股をぴくぴくと痙攣させて快楽に震えていた。

その淫らな姿に堪え切れず、男は腰を揺すってさらに奥へ奥へと入り込もうと、ぐりぐりと腸壁を掻き回す。

 

「あぁぁあああーーっ、だめぇっ❤」

 

汗の滲んだ首筋から、甘い匂いが漂ってくる。

それを舌で軽くぬぐってやると、甘い味が口の中に広がって鼻孔から匂いが抜ける。

その味と匂いに誘われ、むしゃぶりつくように、首筋に吸い付いて汗を啜ってやると、ビクビクンと女の体が跳ねた。

男は唇を窄め、ちゅうちゅうと首筋から、そのほっそりとした撫で肩に吸い付いて。

まるで樹液にたかる虫のように。

その甘い体液を味わい尽くそうと。

女の肩に顎を乗せて、軽く押さえつけるように体重をかけると、その程良く張り出した乳房を手で持ち上げ、その先端を啄んだ。

 

「ひぃん❤」

 

体重をかけられ押さえこまれてしまい、ただでさえ快楽で茹で上がり上手く動かない体では、その敏感な突起を唇でむしゃぶられても、体をひねって逃れることもできない。

男の舌が蠢き、女の体液を吸い上げる代わりに、自身のねっとりとした唾液を塗り込みながらピンクの突起を蹂躙してやると、男を咥え込んだ腸壁が何度も締め付けて、精を絞り出そうと動く。

とうとう男も堪え切れずに、その精を女妖怪の尻穴へと注ぎ込む。

ドクンドクンと脈動するたびに精巣から送り出された液体が陰茎から放出され、敏感な粘膜に精液の熱さが染み込んでいく。

 

「あぁぁあああ・・・・・・熱ぃぃぃ❤ お、おひりぃ・・・熱ぃよぉ❤」

 

小さな口が裂けるほどに大きく開かれ、白く歯並びの良い歯を覗かせながら、戦慄くようにブルブルと快楽に震えて、ぐったりとその体から力が抜け放心してしまった。

やがて口元から滴る涎に目を付けた男は、その顔に舌を這わせていく。

女が口内を蹂躙されて、また何度も何度も絶頂させられるのに、さして時間はかからなかった。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

空がゆっくりと白み始めていた。

男が気が付くと、女はどこにも見当たらない。

乱れた寝床と、何度も何度も事に及んだ惨状だけが、女の存在を証明していた。

意識が失くなるまで励んたせいか、流石に少しばかり痛む頭と、疲労のためにふらつく足に苦労しながら、女の姿を求めたのか、あるいは何の気なしにだったのかは、本人にも判然としなかったが、庭へと足を向け縁側の窓を開けた。

情事に火照った体に、ひんやりした夜気を孕んだ風が、心地良く感じられる。

庭へ出てみると、地面に何かが散乱しているのが目に付いた。

それは熟した柿の実である。

庭に生えた柿の木を見上げると、たわわに実っていたはずの実は全て無くなっていた。

そして地面に落ちた柿の実には、一つの例外もなく何かに啜られたように、抉れた痕。

 

「・・・・・・なるほど、甘いわけだ」

 

そしてあの女が口にしていた、ひゃきのきというのは、柿の木のことであったかと、男は納得した。

これが最初の一年目の出来事である。

 

タンタンコロリン、タンコロリン。

誰そ彼、柿をタンタン、コロリンと。

柿樹の精霊タンタンコロリン。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「あ、あの・・・・・・きょ、去年みたいに一晩で全部食べちゃ駄目ですからね。も、もう少しゆっくりお願いします」

 

翌年の同じ時期。

柿のなる頃。

その女は再び現れた。

柿の妖怪だから・・・・・・という理由とは明らかに違う理由で、朱に染まった顔をして。

 

まだ年若い妖怪故に固有の名前は無いという、タンタンコロリンのために男はリンという名を付けた。

そう、妖怪に名を付けてしまったのだ。

もう、リンは男を逃がそうとはしないだろう。

リンの浮かべた蠱惑的で妖美な笑みが、言葉にせずともそのことを物語っていた。

化生とはそういうものだ。

妖怪に魅入られるとはそういうことなのだ。

幽霊は人に憑くものだが、妖怪は特定の場所に現れ、そこに近付かねば害はない。

俗にそのような説を唱える者もある。

だがしかし、それは誤りだ。

幽霊とて土地に縛られるモノもあれば、妖怪とて人に憑くモノもある。

一度ひとたび、魅入られたなら・・・・・・そう容易に離れることはない。

例えそれが、地に根を張り動けぬ柿樹の、精であろうと。

樹木であろうとも、想えば空をも舞ってみせるものなのだから。

 

いずれにせよ妖かしに魅入られた者の末路は

 

「イ、イぐゥうウううぅうゥ――――――――も、もう、許ひて、許ひてぇ、あぁぁアア、はなじでぇええ、た、たひゅけてぇええ!!」

 

魅入られた者の末路は

 

「ごめんなひゃい、ごめんなひゃい!! おまめひゃんもういじらないでぇ!! いグのとめでぇええええ!!」

 

末路は・・・・・・

 

「ーーーーーーーーーーー~~~~~~!!」

 

まあ問題はなさそうである。

 

ズズッと、お茶を啜る音が響く。

陽は沈みかけ、逢魔ヶ刻を向かえている。

窓から差し込む光は部屋を昏い黄に染め、幻想的に輝いていた。

間もなく宵の口となろう。

また一口、湯飲みを口に運ぶ。

さっぱりとして、喉越しのいいお茶である。

湯飲みの中で揺れるお茶の波紋に、ふと口元を綻ばせる男。

どこで仕入れたのか、緑茶の二十倍くらいビタミンCが含まれてて体に良いんですよ、風邪や糖尿予防にもなりますよ、などとしきりに奨めてくるので、今では日常的に飲んでいる柿の葉茶だ。

柿のなる時期にしか会えない彼女としては、どういう思惑なのかを考えると、微笑ましくなるというか何というか。

他のお茶を飲むと拗ねてしまう彼女の姿を思い出すと、何とも可愛いものだと笑みが堪え切れない。

 

「もう、あれから八年か」

 

タンタンコロリンのリン。

彼女が初めて現れてから、早いもので八年が過ぎていた。

初めての時は、貪るように彼女の体を味わった。

次の年は、あのつるりとした性肌に無穴のスジが走り、陰核が生じていた。

無論、興味本位で弄り回したのは言うまでもない。

動かなくなるまで。

 

「甘いもんだから飴玉みたいで、夢中でしゃぶちゃったからな・・・・・・気付いたら体中から汁を垂れ流して痙攣してたっけ」

 

治まってから、怒るの怒らないの。

怒ると怖いタイプだった。

 

三年目に現れた時は、尿道が出来上がっていた。

 

「ストローはちょっとやり過ぎだったかもしれない」

 

彼女に聞かれたら、当たり前だ馬鹿と怒られそうだ。

というか実際、言われた。

まあ何だかんだいって、受け入れてくれるのが可愛いのだが。

 

四年目には膣口が出来た。

浅くて指の第一関節までで、すぐに行き止まるくらいだったが。

 

「そういえば、この頃からデートとか普通に過ごすことも多くなったんだよな」

 

流石に最初の頃のような一晩中みたいに、がっつくのは無くなって(それでもかなり濃密にいたしてはいたが)料理したり映画見たり、普通に遊びに行ったりという事も増えてのがこの時期だ。

これには男の精を吸って安定してきたため長い時間、人の姿でいられるようになったというのも大きいのであるが。

 

五年目には指を根本まで飲み込むくらいには、膣は深くなっていた。

流石に男の物を受け入れるには、狭すぎたが。

この年は二ヶ月程、人の姿で一緒に暮らしていた。

 

「家事をほとんど任せっきりにしてたっけ」

 

料理も美味かった。

果物に関してだけは柿以外を食べようとすると、やたらと拗ねるのでちょっと困ったが。

 

六年目は挿入が可能なまでに膣口は出来上がっていた。

七年目は子宮が出来始めていた。

 

「あの奥の奥までねっとりと包み込むような感じも良かったけど、子宮口があるとコリコリってした感じが加わってそれがまた堪らなかったな」

 

男はあの蜜月の日々を思い出す。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

部屋中に満ちる、リンの甘ったるい叫びと匂い。

女の膨らみが、男の物を挟んで、上下左右へと動く。

亀頭が乳肉に刺さり、その弾力に弾かれたと思うと、今度は竿の根本から先端までを乳肌が擦り上げていく。

ぐにゅぐにゅと弾力があるのに、柔らかくもある蠱惑的な感触が左右から男根を包み込んでは、激しく扱かれ、胸の間から見え隠れする鈴口にむしゃぶりついて、舌が縦横無尽に激しく舐め弾いていく。

その度に、四つに括られているリンの髪がふわふわと揺れる。

ニュルッと丸められた舌先が、ストローのように鈴口を刺激してくる。

前にされた事のお返しとでもいわんばかりに。

 

「で、射精(でる)よ、リン!!」

「むくぅ❤ ん、んんん~~❤ んぷ、ん、ぐぅ・・・・・・はぁ❤」

 

深く咥え込んだまま、喉奥を叩く精液を甘んじて受け止め、何の躊躇いもなく嚥下していく。

 

「凄く濃いです。ドロドロでゼリーみたい。栄養たっぷりな私の柿をたくさん食べてるからかしら?」

「少なくとも、リンが凄くエッチで興奮したからなのは、間違いないかな」

「も、もう・・・恥ずかしいこと言わないでください」

 

自分の精液を嬉しそうに味わう女の姿というのは、何故こうまで男の本能を刺激するのか。

射精したばかりだというのに、肉竿はすでに硬度を取り戻し、女を貪りたがっている。

 

「リン・・・」

「は、はい・・・・・・き、来てください」

 

男がリンの花弁の中央に開いた、甘く誘うような匂いの漂う穴に、剛直を突き立てた。

じっとり濡れた媚肉が、淫靡な音を上げ、血管の浮いた棒肉をねっとりを締め上げていく。

最奥まで到達した男の亀頭が、コンコンとそれをノックする。

 

「これ・・・去年と感触が違う、奥に何か」

「ひ、ひきゅうですぅ❤ ま、まだ入り口だけだけど、し、子宮・・・・・・」

 

トントンと力強く肉の槍で突かれる度に、甘い声が跳ね上がる。

その体をぎゅっと抱きしめ、豊かな胸に顔を埋めると、その奥からドクドクと鼓動が伝わってくる。

粘膜と粘膜が擦れる度に、甘い匂いが、甘い快楽が、甘い声が二人を満たしていく。

腰を一振りする度に、意識が交じり合うように錯覚する。

口舌に尽くしがたい、幸せが溢れてくる。

 

「も、もっとぉ❤ お、おかひぃっ、気持ちひいのが、と、とまらないのにぃ、もっと、もっとぉほしくなるぅ❤」

「リン、リン、好きだ、リン」

 

ギチギチに勃起した男根を、さらに奥まで突き込み、出来たばかりの子宮口に、熱烈な口付けを繰り返す。

ニュチュニュチュと、粘液の擦り合う音が。

グチュグチュと男女の性液が交じり合う音が。

ドクドクと暴れ狂う白濁を吐き出す音が。

二人にはっきりと伝わっていた。

まだ何も飲み込むことの出来ない子宮口を、びちゃびちゃと叩きながら精液が逆流して結合部から溢れ出していく。

 

「ね・・・ぇ❤ こ、今度はこっちに」

 

息も整わぬ内にリンはそう言って、尻の肉を割り開き、もう一つの性交に使う穴を示す。

夜はまだこれからだった。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「良かった、あれは本当に良いものだった」

 

そして今年は八年目。

去年の別れの日。

 

「あの来年、来る時は、その・・・・・・体も完全になりますので、そしたらずっと人の姿で一緒にいられるようになると思います」

 

桃栗三年柿八年。

柿の実が収穫できるようになるまでは確かに長くかかるが、実際はそこまではかからない。

八年とは柿の木がタンタンコロリンになってから、嫁にできるようになるまでが八年ということだったのだ。

 

「まだか、俺の嫁! 指輪の準備は万端だぞ!!」

 

流石に出会って八年。

まだ世間的に問題はないとはいえ、男もいい加減、身を固めていてもおかしくない年齢だ。

八年の間にすっかり胃袋も玉袋も握られてしまっているので、身を固めるのに異論もない。

 

「早く来い、いつでもOKだ!!」

 

というか、もうすぐにでも子供作ろう子供。

年に一緒に入られる期間がそこまでではなかったので、結構溜まっているのだ。

しかもあんな可愛い娘が積極的だし、大抵のことはさせてくれるし、してくれるし、色んな意味で美味しいし良い匂いだし。

妖怪とかどうでもいいです、嫁になってくださいと土下座してもいいと、男のテンションは止まるところを知らない。

そこに玄関でノックする音が聞こえたきた。

 

「来たか!!」

 

さようなら独身生活。

ようこそ新婚生活!!

扉を開けるとそこに待っていたのは・・・・・・

 

「おい、俺の尻を舐めろ!!」

 

むさ苦しい僧形のおっさんという名の絶望だった。

未だかつて無い勢いで扉を閉めると、鍵をかける。

扉の向こうからは尚も、俺の尻を舐めろというおぞましい声が響いてくる。

ドン! ドン! と扉を叩く音に、男はへたり込んで呟いた。

 

「こんなのってないよ・・・・・・あんまりだよ」

 

体が完全になるって、おっさんに性転換(TS)することだったのかと、男は咽び泣いた。

妖かしに魅入られた者の末路は、やはり凄惨なものにしかならないのか。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

どれくらい経っただろうか。

あのおぞましき野太い声は、いつの間にか消えていた。

代わりに聞こえてきたのは、聞き慣れたよく通る声だった。

自分が散々に甘い嬌声を上げさせたあの声だ。

 

「すみません、何か別のタンタンコロリンが来てましたから、追っ払いましたよー、もう大丈夫ですよー」

 

別のタンタンコロリン!

そういうこともあるのか、と男はほっとして扉を開けようとした。

だが怪談でよくあるパターンだ。

声に騙されて開けてみれば・・・・・・雨月物語の吉備津の釜にだって書かれている定番パターンだ。

扉を開けたら、そこに立っているのは、あのむさ苦しい僧形のおっさんかもしれない。

もしそうなら、貞操の危機だ。

 

「本当にリンかー? じゃあこの質問に答えてくれー」

「な、何ですかいきなり?」

「リンは俺の何だー?」

 

この問いに、少し間を置いて扉の向こうから返ってきたのは。

 

「あ、あなたの・・・・・・その、し、尻穴奴隷です」

 

最後の方は消え入りそうな声であった。

男は恋人とか、奥さんとかそういう答えを期待していたのだが、いや、確かにプレイ中にそう言葉責めしたこともあったなあとは思うのだが。

しかし、逆にこういう答えを返してくるのは、確かにリンに違いないと、男は把握していた。

気を取り直した男は、少しだけ扉を開けて外を窺った。

そこにあったのは、むさ苦しいおっさんの顔ではなく、愛しい女の顔だ。

初めて会った時と変わらぬ、だが青臭さ感じさせる雰囲気は消えた成熟した女の顔だ。

 

「リン・・・か?」

「何を言わせるんですか、あなたは・・・もう」

 

言ったのはそっちなのだがと思うが、言うと余計に拗ねそうなので黙っておく。

完全に扉を開けると、男はリンを力強く抱きしめた。

 

「怖かった・・・」

「ふふ、もう大丈夫ですからね。私が他のタンタンコロリンなんて近付けませんから」

 

ふと、男は玄関先に何かが転がっているのが見えた。

さっきの僧形の男が、頭から何かを垂れ流しながら痙攣している光景だった。

近くには何かがこびり付いた、程よい大きさの石が転がっている。

殴るのに程よい大きさの石が。

 

「絶対に近付けたりしませんから・・・・・・うふふ」

「あ、はい・・・・・・」

 

絶対怒らせてはいけない。

男はそう思うのであった。

 




ご無沙汰してしまいました。
今年は花粉症長引いたなあ。

タンタンコロリンの名前はリンになりますが、名前出るのは次になってしまいました。
前の穴がないのは、元の伝承で尻の穴舐めさせる柿妖怪がいるのと、昔のエロゲーってモザイク無しで性器に描き込みのないつるつるなのがあったので、ああいうの実際に穴が無いって設定でやってみようと思い立ったからだったり。
桃栗三年柿八年と言いますし、前の方は八年かけてできることにしようと。
汗とか涎も甘いのは中国の桃娘の柿バージョンみたいな感じで。

個人的にスカは苦手ですが、食物ならいいよねってことで。
オオゲツヒメとかセーフですよね。
え、アウトですかね?


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エルフな彼女と僕の毎日

「ふむ・・・・・・」

 

取り壊されることなく、放置された郊外の廃工場。

そんな廃工場に程近い林で、一人の男が佇んでいた。

存在感のまるで無い、気配の希薄な、周囲の自然に溶けてしまっているように感じる、そんな不思議な男だった。

その男の傍らに蹲るは、日本人とは異なる容貌の二人の男。

外国人達は男が見つけた時には、既にこのような状態であった。

体のあちこちには、瘤のように腫瘍が盛り上がり、皮膚の丘疹、結節がおびただしく見受けられた。

梅毒の第三期に属する、重症化した症状である。

日本において、まず見られないものだ。

 

「妖精の輪、か。また厄介なモノを持ち込んでくれた」

 

男の視線の先には、樹を取り囲むように生えた小さな茸がある。

驚くことに茸がきれいに輪になるように生えているのだ。

茸の輪からはアンモニア臭が微かに立ち上っているのを、男の鼻は捉えていた。

外国人達は設備の壊れた廃工場のトイレを嫌い、ここで用を足していたのだろう。

男はその茸の輪を写真に収めると、一枚の紙をその上に落とした。

ひらりと滑るように落ちてきた紙・・・・・・呪符が触れた途端に、ボォっと火が上がり、茸を消し炭へと変えていく。

この茸の輪の中に小便をすると、性病にかかるという力が込められている。

北欧や欧州などに住まう、妖精共が使う魔法の一つだ。

それを看破するこの男は、日本政府の対妖怪・怪異に対処する為の機関でも、最強とされる戦闘部隊の隊長である。

見世物や好事家への販売目的に、海外の犯罪組織が妖怪を捕縛して密入国した件の内偵を行っていたのだが、根城にしていた廃工場に着いて早々に、性病でぶっ倒れている犯人と思わしき外国人を発見したのが今しがただ。

状況からして、原因は持ち込んだエルフだろう。

サブカルチャー等では好意的に描かれ人気の種族だが、実際はかなり質の悪い妖精だ。

精神を操り、呪詛に長け、病を引き起こす魔術を使う。

この倒れ伏した外国人を見れば一目瞭然だろう。

本来は時間を掛けて進行する梅毒が、一気に重篤化している。

発症して動けなくなってから、二日~三日といったところかと、外国人の様子から隊長は当たりを付ける。

相当、頭にきていたのかもしれないが、こんな物騒なトラップをそこら中に放置とは。

いずれにしても放っておいていいものではない。

妖精の輪はもとより、エルフの方もだ。

 

「きいきい」

「きゅうきゅう!」

 

手の平程の小さな鬼達が、競うように鳴き声を上げる。

家に憑き、物を揺すったり、軋むような音を立てて人を驚かせる妖怪家鳴である。

 

「あっちにもあるのか。ありがとうな」

「きゅぅい!!」

「きいぎい!!」

 

隊長が懐から金平糖の包みを出すと、にわかに家鳴達が騒ぎ出す。

こういった小妖は甘味が好きなモノが多い。

特に昔は献上品等に使われていた金平糖は、ちょっとした殿様気分を味わえるのか人気が高いのだ。

そのためこういった菓子で小妖を手懐けるのは、退魔師達の間では常套手段になっている。

数個の金平糖を渡してやると、他の家鳴達もこぞって、ここにあるよ、こっちにもあるよと、妖精の輪の在処を指し示す。

それらを順番に焼き払いながら、隊長が呟いた。

 

「エルフの方も捜索せねばな。逃げて数日ならそう遠くには行っていないだろうが・・・・・・」

「きゅうぎぃきぃ!」

「きゅわきゅいほうふう!!」

「逃げたのは一月前!? それを早く言え!!」

 

発端は五年程前に遡る。

イギリスの方に住んでいたエルフが、気紛れで旅に出ることにした。

東の果ての島国は大層面白いらしい・・・・・・そう噂をしていたのはポルターガイストの連中だったであろうか。

理由は本人もあまり覚えてはいないし、気にもしていないが、とにかくそのエルフはその島国に行ってみようと、唐突に思い立った。

それが発端。

とはいえ元々気紛れなエルフという種のこと。

途中であっちにふらふら、こっちにふらふら。

飛行機に密航して退屈しのぎにグレムリンを焚き付けたせいで墜落し、ドイツではちょっと抜けてそうなデュラハンの女に、少しだけ運の悪くなる(ドジを踏む)呪いをかけてやったり、ロシアではバーバ・ヤガーにちょっかいをかけて危うく殺されそうになり、ルサールカに仲介されて事なきを得て、中国では軽い悪戯でとある封印が解けてしまい、キョンシーが大量発生して、解決に際して白澤に散々迷惑をかけ、そんな傍迷惑を撒き散らし続けて、いつまで経っても目的地に着かず、このエルフはここで一計を案じた。

日本に妖魔を密輸をしようとした連中に捕まって、連れて行ってもらえばいいと。

そうして日本にやってきて、あっさり縛めを破り、そいつらの乱雑な扱いにちょっと腹が立ったので置き土産をして逃げてきたのが、およそ一ヶ月前の事だった。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「何か思ったよりも普通だな」

 

ルサールカからはこの国は人外魔境だと聞かされたのだが、他の近代的な国とそこまで大差は無いという印象だった。

確かに小妖は多いし、さっきからポルターガイストみたいな連中がちょろちょろとこちらを見澄ましているが、それとていくらか多いというだけで、イギリスでもそれなりには見られるものだ。

人外魔境と言うほどではない。

 

「噂ほどじゃなかったか」

 

まあ食い物は結構美味そうだし、その辺は楽しめそうか。

さてどうくすねてくるか、そこらの家からちょっと失敬するかと、閑静な住宅街を悪巧みをしながら歩いていると、ふと妙な気配を感じてそちらに視線を向けた。

そこにいたのは五人も子供を連れた夫婦だった。

父親は人間なのだが、腹が大きな臨月間近の母親と思わしき女はどうやら妖怪のようだ。

 

(ありゃ自然霊型かな? あの手のは人間なんかと結ばれたら寿命ができちまうのによくやるねえ)

 

妻が妖怪と知ったら、夫はどうするだろうね?

そう思い立ったら、何かしでかさずにはいられないのがエルフというものだ。

さてどんな魔術をかけてやるか、どれが一番面白いだろうと思案する。

そうしてエルフが虎視眈々と機を窺っていると、唐突に走りだそうとした子供を母親が引き止めた。

その事自体は極々普通の事ではあるが、問題はそれを手ではなく長く伸びた舌でやったのだ。

 

「え?」

 

夫の方は慌てて辺りを見回して、人がいないかを確認している。

とっさに隠れたので、姿は見られていないはずだと、エルフは物陰で気配を窺う。

 

「おいおい、人に見られたらまずいよ」

「すみませんあなた、つい。こら、急に走っちゃ危ないでしょ」

 

(何だ、あいつ。まさか妖怪だって分かって一緒になったのか?)

 

正体をバラしてやる悪戯が出来なくて面白くないのか、よく分からないもやもやした感情を抱えて、エルフはその場を走り去った。

子供のような見た目に反して、獣のように俊敏に、住宅街を駆け抜けて行く。

もともと森を主として生きるエルフだ。

身体能力は見た目よりずっと高い。

どれだけ走ったのか、山裾に近い所まで来てようやく立ち止まる。

 

「ああ!! くそ、なんでこんな苛つくんだ!!」

 

それは本人も忘れてしまった、あるいは無意識に思い出したくないと思っている、遠い過去の出来事。

人間と仲良くしようとした幼い日の事、そして裏切られたあの艱苦辛苦。

それを想起させるような、心の底の澱みを刺激するような・・・・・・光景を

あの日、望んでいた光景を、望んでも得られず踏み躙られたものを、見せ付けられてしまったのだと、そう思い至るには彼女はあまりにも長く生き過ぎてしまっていた。

 

取り敢えず彼女は、次に出会ったやつに何か悪戯して、憂さ晴らししようと決めるとまた歩き出した。

長く生きていようと、エルフというのは割りと短慮だったりするのだ。

ちょっとした事で相手を殺しにかかるし、強姦だってやる種族である、サブカルチャーとは大違いなのである。

そんなエルフと運悪く行き会った、いや運悪くエルフが出会ってしまったのはと言うべきか・・・・・・

この山に住む、大天狗の娘だったりしてしまうのだった。

獲物を見付けたエルフが、その娘に指を向ける。

これはガンドという北欧に端を発する魔術の一つで、指差した相手に呪詛をかけるというものである。

呪詛の種類は、エルフロック。

髪をもつれさせるという、軽い悪戯に使うものだ。

まずは小手調べというつもりなのだろうが、その前にエルフの足元を何かが駆け抜けて行く。

 

「!?」

 

それは小さな鼠だ。

鼠はちょろちょろと、足元に纏わり付くように走り続ける。

 

「わ、わわあ!? こ、こいつ!?」

 

いきなりのことに、さしものエルフもバランスを崩し転倒して、強かに尻餅を付いてしまう。

これに頭にきたエルフが、鼠を捻り潰そうと痛みを堪えて、立ち上がろうとするが、そこで彼女は異様な姿を見る。

小さかった鼠が、猫ほどの大きさに膨れているのである。

これに一瞬、呆気に取られてしまったエルフは、次の惨劇をまともに浴びてしまう。

具体的には膨れ上がった鼠が勢いよく破裂して、飛び散った肉片や臓物がエルフの顔を直撃したのだ。

 

「あ、あぁァァああ!? 目が目がぁ!!」

 

血だの臓物だの言う以前に、そんなものが直撃したら、まず物理的に堪ったものではない。

あまりのことに我を忘れて、のたうち回るエルフ。

そこにいつの間にか再生を遂げた鼠が、エルフに体当たりをして、そのまま畑にダイブさせた。

 

「あぅ!?」

 

道路から一段低く、結構な段差のある畑に落ちた衝撃は思いのほか強く、内臓への衝撃がもたらした苦しみにより、しばし身動きが取れなくなる。

その間に鼠は素早く走り去っていった。

この鼠は小玉鼠と呼ばれる妖怪である。

山の神の使いであり、この場合は天狗が娘のために、護衛として付けていたのであろう。

それ故に、悪戯をしようとしたエルフを敵対者と見なして、立ち向かったのだ。

さらに容赦のないことに、エルフを落とした畑は怪畑(ケバタケ)である。

立ち入れば不幸になるとされる、忌み地の一種である。

 

「ちくしょう!! あのネズ公!!」

 

怒りに任せて畑にあった石を掴み投げ付ける。

いまだ目もろくに見えない状態での盲投げである。

コンクリート製の畑の縁に当たり、跳ね返った石が額を直撃した。

 

「あがぁ!?」

 

さらに石の下に潜んでいたミイデラゴミムシが鼻に貼り付いた。

二種の化学物質を噴出、混合させて、高温のガスを外敵に噴きかけるという、特異な性質を持つ昆虫だ。

当然、いきなりの事に外敵に襲われたと判断したミイデラゴミムシは、ガスを噴出する。

 

「熱っちゃぁああぁあ!?」

 

突然の熱さにゴミムシを振り払い、一歩下がったところ、モグラの掘ったトンネルがあったのか、土が陥没して足を取られ、そのまま派手に転倒する。

 

「あ、あぐ・・・・・・」

 

怪畑は本来は人死にが出るような災厄をもたらす、非常に危険な忌み地である。

本当ならば陰陽師などが鎮めており、そういった問題は起きないはずだったのだが、ここ数年、とある事情で慢性的な人手不足になり手が回らないのが現状だ。

それでもコントレベルの災難で済んでいるだけ、彼らはよくやっていると言えるのだが、災難に合う当人にとっては、堪ったものではないだろう。

そうしてエルフが散々な状態で、ようやく畑から出たのは一時間してからだった。

・・・・・・仏教的に言うと、このエルフは業が深かったため、常よりちょっと酷くなったのかもしれない。

なにしろ・・・・・・

 

「あ?」

「あ!?」

 

いきなり道路に飛び出したことで、走ってきた農家の軽トラに跳ね飛ばされたのだから。

とにかく、エルフな彼女とその男は、こうして出会うことになった。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

少女は目も覚めるような美貌だった。

肌は驚くほどに白く滑らかで、シルクのようにすべすべとした質感が見て取れる。

陽光を弾いてきらきらと光る肌の美しさは、プリズムを通した光が虹色のスペクトルを放つような、七色の輝きを幻視しそうになる。

ふわふわでボリューム感のある肩にかかる、輝くような綺麗な金の髪。

体躯は小さく、幼く見えるが、可愛らしい顔の輪郭も相まって、それがまるで絵画に描かれた妖精のように可憐さを演出していた。

アーモンド型のような尖った耳が少々気になるが、不思議と調和していて、むしろ良いアクセントになっている。

 

だが不思議な事に、あどけない乙女にも見えそうな輪郭を持ちながら、良く言えば野性的な力と狡猾さ、悪く言えば腹黒さを感じさせる少女だった。

そんな印象を与えるのは、ひとえにその目付きだ。

とにかく目付きが悪い。

何を企んでいるのかと思うような、目付きの悪さが全てを台無しにしていた。

まるでチンピラである。

いや、まだチンピラの方がマシだと思えるくらいに、ガラの悪さを印象付ける目付きだった。

 

「おーい、コーラとクリスプス取ってー」

「あ、ああ・・・・・・」

 

そんな少女に顎で扱き使われているのは、一週間ほど間にこの少女を軽トラで跳ね飛ばした農家の男だ。

幸い足を捻った程度で済んだのだが、このエルと名乗った少女は警察も呼ぶなと言う、病院にも行きたがらない。

家出少女か何かと思った男は、どうしたものかと思案に暮れたが、やはり警察に通報するべきと思ったのだが、気付けばエルを家に泊めていたのだ。

何故そうなったのかどうにも思い出せないが、車で跳ね飛ばした少女を家に連れ込み、一泊させたとなると今更警察にも通報し辛い。

いや、それだけならばまだよかったのだが、この少女には弱みと負い目を握られてしまって、強く出ることが出来ないのだ。

 

「その、すぐそこにあるんだから自分で取った方が早いんじゃ」

「・・・・・・ふーん、オレに歩けっていうんだー」

 

伝法な口調と動作で起き上がると、挑発的な笑みを浮かべてエルは男を睨めつけた。

スカートから伸びる無造作に投げ出した足。

白くて細いその間から、白い布がちらりと男の視界に入る。

否、わざと入るようにしているのだ。

 

「歩くと痛むんだよなあ・・・・・・足の方じゃなくてこっちがさぁ」

 

そう言うと、外見に似合わぬ、やけに蠱惑的で扇情的な仕草でスカートをたくし上げていく。

丸見えになった股布を、くいっと指で横にずらして・・・・・・

 

「う、あぁ」

 

露わになった自身の性器を男に魅せ付けるように腰を突き出し、くいくいっと小さな尻を揺らして。

よく見ろと言うように、ゆっくりと足を広げて。

男を食い物にする魔性が笑っていた。

 

「なあ、見ろよこれ。オレのプッシー・・・・・・お前にレイプされてからさ、まだぽっかり広がったまま閉じきらねえんだよ」

 

その言葉に、男の顔がさっと青褪め、だらだらと冷や汗が流れ落ちていく。

そうなのだ。

少女を泊めたあの晩、男は気付けばこの少女を組み伏せていた。

そのまま何度も繰り返し、欲望を注ぎ込んでしまったのだ。

何故、あんな馬鹿な真似をしてしまったのかと。

ここ数日、何度も自責の念に駆られ、罪の意識が男の心を苛むのだ。

そんな男の様子に、エルは口元をにぃっと釣り上げた。

さも愉快そうに、ケラケラ笑いながら。

 

「いいんだ、いいんだ。オレはヤること自体はなんも気にしてねーぜ。でもよぉ、さすがにオレの腕くらいあるようなペニス突っ込まれてズコバコやられたらなぁ・・・・・・いやぁ、あの時は口から内臓飛び出すかと思ったぜ」

「・・・・・・・・・どうぞ」

 

男はおずおずと、クリスプス・・・日本でポテトチップスと呼ばれるジャンクフードとコーラを差し出す。

 

「いやぁ悪いね。苦しゅうない苦しゅうない」

 

それを受け取るエルの、邪気はあるはずなのに無邪気に見える、男を骨抜きにするような笑顔が空恐ろしい。

ひっひっひ、と少女が老婆のようにも思える笑い声を上げて、ジャンクフードを口に運び、ポリポリと美味そうに音を立てて咀嚼しては、コーラで流し込む。

何ともシュールであり、退廃的な有様をも感じさせる姿だ。

 

「腐るな腐るな、ちゃぁんと後で、お礼はしてやるからさ。そうさなー、いつもどおり風呂の後でな。クリスプスまみれの口じゃ、具合が悪いだろ?」

 

もう世間に言い訳のできない所に来てしまったのだと、下半身の疼きが男に思い知らせてくる。

せめて両親が畑仕事をしている最中に、コントみたいな事故で怪我をして入院しなければ、こんなことにはならなかったかもしれないのに。

そう思いながらも男はいそいそと風呂の準備をするのであった。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「はぁぁ~~やっぱいいなこれ。日本の風呂って」

 

心地よい湯温を感じて、両手を広げて深く息を吐いた。

イギリスは水事情が悪いので、あまりバスタブに湯を張る事ような習慣はなく、何日かに一度シャワーなどで済ませるのが一般的だ。

人間ではない彼女(エルフ)ともなれば、湯を波々と張った風呂など、この上ない贅沢事だ。

それが毎日入れるとなれば、ご機嫌にもなろうというもの。

 

「さて、今日もサービスしてやりますかね」

 

だから人間相手とはいえ、それくらいはしてやるかと、この後の情事に備えて、歯を磨きながら独りごちる。

もっとも、それだけが理由ではなく、自身の奥底で熱を伝えてくる子宮(おんな)のせいでもあるのだが。

 

(マズったよなぁ。まさかあの畑が忌み地の類だったとは・・・・・・その影響を受けた状態じゃ、ドジも踏むわ。媚薬を頭から被るなんてなぁ)

 

そう媚薬である。

ちょーっと、男と既成事実を作って色々と要求してやろうと企んでいたのだが、ちょっとしくじってしまい媚薬の影響がまだ抜けきっていないため、体が疼いて仕方ないのだ。

 

(匂いにアテられただけのあいつは、何発か出したら治まったみたいだけど、原液被ったこっちは全然治まんねーんだよな)

 

とはいえ男の一物はいくらなんでもデカすぎた。

大抵の事は快楽として感じる状態だったにも関わらず、苦痛の方が先に立ったくらいだ。

 

(我ながらよく裂けなかったな)

 

くちゅっと確かめるように二本の指を、陰唇に潜らせる。

それだけで、全身に甘い痺れが走る。

 

(やっぱり、前より広がってる)

 

流石にガバガバになるのは厭だなと思う。

それなりに経験はあるが、だからといってゆるゆるで構わないとは、思うわけがないだろう。

やはり締まりが良くて、気持ち良い穴というのは、表立って口には出せないが『女』としてはそれなりに自負を持ちたい部分だ。

 

呼吸に合わせて鎖骨が上下して、湛えた湯が流れてはまた湛えてを繰り返しながら、二本の指がひりつくような疼きを訴えてくる膣壁を掻きむしれば掻きむしる程に、皮の舌に隠れた豆に似た部分が、充血して痛いくらいに張ってジンジンと存在を訴え続けてくる。

媚薬の効果を抜くのに一番手っ取り早いのは、やはり男の精を注がれることなのだが。

 

(アレはちょっとな)

 

指ではどうしようもない、体の熱を沈めるあの男の味。

毎日のように口で受けてはいるが、やはり効き目は薄い。

子宮に注いでもらうのが一番なのだが、あの大きさではその前に壊れかねない。

かといって他に男を漁るとなると。

 

(この国のエクソシストどもにすぐ嗅ぎ付けられるよな)

 

それにまあ、あの男はそれなりに気に入っているのだし。

いっそあの最初の晩のように無理矢理にでも事に及んでしまうべきかとも思う。

思うのだが・・・・・・

 

――やだぁ!! もう無理ぃ・・・もう挿れんなぁ、ォ、オレのプッシィ、壊れちまうよぉ!!

 

(みっともなく・・・初めてのガキみたいに、あんな、ピイピイ泣きじゃくって・・・このオレが、あ、あんな)

 

あの夜の屈辱感とそれだけではない感情が、体をどんどん熱くさせる。

お湯では潤す事の出来ない、別種の乾きが治まらず、それどころかどんどん激しくなっていく。

ぐちゅぐちゅとお湯と愛液を混ぜるように、荒々しく指の動きは増していく。

もう少し、もう少しでお腹の奥の、気持ちの良い部分に指が届くのにと、ぐいぐいと指を押し込んでも、後少しが届かない。

意識ではどうしようもない、無意識の本能的な女の部分が、体の奥で暴れて駄々をこねるように懇願している。

 

女の淫欲的な本能が、囁いてくる。

女だけが持つ穴が、訴えてくる。

ざらざらした淫肉の疼きを、男の物で擦り落として欲しいのにと。

入って来てくれたら、お礼に吸盤の様にちゅうちゅうと吸い付いて、ご奉仕して上げるのに。

この穴はこんなに気持ち良いんだよって、にゅるにゅる絡み付いて、ぎゅうって抱きしめて上げるのに。

気持良く絡み付いて、搾り取って上げる。

この産道を男の形でいっぱいに満たしてよ(いっぱい過ぎて無理だと言う理屈を無視して、きゅうきゅうと膣肉が指を締めてくる)

奥の奥までたくさん愛してよ(奥まで来すぎて苦しいんだという思考を無視して、女の部分は欲しい欲しいと口を開けて貪欲に収縮を繰り返してる)

ペニスでこんこんってノックして(あんなに大きなので、されたら壊れちゃうのに、それでも構わないって欲しがってる)

奥に押し付けて、精液びゅぅびゅうってたくさん出して、子宮に飲ませて(欲しい欲しい欲しい男が欲しいペニス入れて欲しいセックスしたい)

それで、それで・・・・・・

 

――お、俺・・・なんで、こんな!! なんて事を。ご、ごめんな。ごめんよぉ・・・

 

・・・・・・あの夜みたいに。

またギュッて抱きしめて。

頭撫でて。

 

「~~~~~~~~~あぁ、はぁぁあああ♥ い、いクぅ、イくゥ♥」

 

あの時の事を思い出した瞬間、昂ぶった快楽が神経を巡り、身体を一気に絶頂に押し上げた。

ガクガクと全身を震わせて、荒く呼吸を繰り返して。

動悸がする。

心臓の脈打つ鼓動がはっきりと感じられる。

少し頭に痛みが走る。

 

「あ・・・・・・やばい、これ」

 

くらくらとする頭で、これは不味いなと湯船から這い出て、シャワーの蛇口を捻って水を浴びる。

完全にのぼせた。

これからまさにヤろうというのに、風呂で自慰行為をして、のぼせるなどと何をやっているのか。

熱を逃がすために髪を手で梳きながら、自虐的な笑みを浮かべて。

 

「何がしたいんだろうね、オレは・・・・・・」

 

興味本位で異国に渡って。

厭忌の情さえ抱いていた種族と、情交すらして。

独り身だし、一人寝が寂しい時も、それは確かにあるが。

同族の男は自分勝手だ。

あいつらは突っ込んで好きに腰振って、自分だけさっさと満足するだけ。

だからといって人間はと言われれば、別に大差はないと思う。

まあ、あの男は優しくはあるが・・・・・・

 

「いまさら恋だ愛だ言うような歳でもあるまいし」

 

眩暈も治まったかと、シャワーを止めると立ち上がった。

難しいことなど、どうでもいい。

後の事などその時、考えればいい。

エルフなんて寿命が無駄に長い分、刹那的、享楽的にダラダラ生きるものなのだ。

だから今は、これからヤる事だけ考えればいい。

 

「よし、思い切って本番までやって・・・・・・」

 

と言いかけて、男のサイズを思い返す。

 

「無理、あれ胃まで来る・・・・・・」

 

何か体を自由に伸び縮みさせる魔法の薬とかなかったかなと、自分の知識を思い返してみるが、そんな都合の良いものは出てこない。

まったく違う生き物に変身したり、体の一部を変化させたりとかは心当たりがあるが、あそこだけ一時的に伸び縮みというピンポイントなのが無いのが解せぬと思いながらエルは風呂を後にした。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

舌先を亀頭の割れ目に這わせると、口の中で熱い塊がビクリと震える。

先端部分に口を被せるだけで、精一杯の巨大な一物。

その分、尿道口も大きく、小さなエルの舌も相まって、押し入れた分だけ中に侵入していく。

 

「う、あぁぁ」

 

唇の部分だけで、亀頭を噛むように締め付けると、ガチガチに怒張しながらも、ぷにぷにした弾力を返して、面白いとエルは思う。

そのまま亀頭のあちこちに吸い付いて、引っ張ってみる感触も何か楽しい。

ちゅぽちゅぽっと、引っ張りすぎて唇が滑る度に、卑猥な音が響いて、その度に男の身体が震える。

 

「ちょ、エ、エル・・・そ、それやめて、も、もたない」

「いいだろ、これくらい、いつでも射精()していーんだぜ?」

 

両手で根本をすりすりとしながら、その柄の悪い目付きで男を睨むと、手による刺激によるものか、その眼力によるものか、まあ多分前者だろうが、男は黙って渋々なすがままにされる。

すべすべぷにぷにした亀頭に唾液をまぶしていく。

ぬるぬるとした唾液に、時折まじる塩気に少し気色悪さを感じて、だけどそれが妙に興奮して。

血管の浮いた陰茎を唇で締め付けて、舌で舐めたり、吸ったりを繰り返していく。

男はもうぐったりとして、されるがままになっている。

 

(なんか、かわいぃな。こんなでかい図体してんのにさ。オレのなすがままになっちゃって)

 

よくよく考えると、こんなじっくりと愛撫した経験などなかった。

大抵はさっさと突っ込まれて、腰振って終わり。

そんなのばっかりだった。

 

尿道に舌を入れて、じゅぶ、じゅるるるるぅと啜りながら、亀頭をシゴイてやる。

男の全身が痙攣してビクンと震えた。

 

「ん、あぁ・・・」

 

それから一瞬、遅れて精液が吹き出した。

エルは鈴口に口付けして、そのまま精液を受け止める。

ぬるぬるして、生暖かい。

変に喉に絡んで、生臭くて。

気持ち悪いのに、ひどく興奮して、うっとりする。

身体を侵す媚薬の効果は、精飲により僅かながらも鳴りを潜めたはずなのに・・・・・・男が何度も力んで尿道に残った精液を絞り出してくる度に、身体の熱がどんどん昂ぶってくる。

 

人間なんて大嫌いで、気持ち悪くて、だけどもっと気持ち悪いことがしたくなる。

射精して満足したそれは、さっきまでとはまったく違い、すっかりと柔らかくなって、同じモノとは思えない。

ソレを口に含んで、喉奥まで飲み込んでみる。

パンパンに膨張していた時とは、萎えて半分くらいにスケールダウンしているから、何とか口に入る。

何とか飲み込める。

でも長くて太くて、どこまでも入ってくるような感じで。

気持ち悪くて、気持ち良い。

 

「う、うぁああああああ・・・・・・」

 

喉を通り過ぎて、食道にまで達し、男が吠えると同時にそれは来た。

食道から胃に直接、精濁が流し込まれていく感触。

萎えきったモノからトクントクンと微弱な、喉にぴったり張り付いているからこそ分かる程度の脈打ち。

その度に、その脈動に連動するように、子宮も震えているような気がする。

 

「・・・・・・んぅ、ぷはぁ」

 

食道からズルリと抜ける感触。

同時に精液の匂いが、鼻腔に溢れてくる。

気持ち悪くて、ぞくぞくする。

食道まで入るとか、我ながら凄くない? と妙な自画自賛をしながら、完全にふにゃふにゃになった男の逸物を、手で弄び、その感触を楽しむ。

ガチガチだった時と違った、変な感触が面白い。

 

「ちょ、エル・・・そんな弄り回されたら」

「んー? なんだよぉー、オレがやめろってあんなに言ったのに、無視して腰ふりまくったのは誰だったかなぁ?」

「う・・・」

 

悪戯した子供のようにシシシと笑うと、舌舐めずりをして、今度はニタリと妖艶な女の笑みを浮かべた。

目付きの悪さすらも考慮した、女の性を露骨に意識せる、男を骨抜きにするような所作だ。

舌舐めずりで見える舌が、先程まであれが自分の一物を散々に這い回っていたと、男に魅せつける様に計算されている。

だがそれでも男の物は、ヒクヒクと震えるだけで硬さを取り戻すことはなかった。

 

「へへ・・・五回も出したからな。さすがにもう勃たねーか」

 

数日前まではもう少し持ったはずだが、流石に毎日だとそうもいかないようだ。

小柄だが怪力の妖怪というのもいるが、エルフはそういう類の存在でもない。

敏捷さには自信があるが、体格差を考えれば、抑えこまれてしまうと抵抗できないため、もっぱら暴走されてもいいように口で勃たなくなるまで抜いてしまう。

 

「じゃ、満足したなら、オレのもさ・・・・・・」

 

男の視線が、エルの足の間に注がれた。

ぬらぬらと濡れ光って、男を誘う匂いを放っているそこに。

男がエルの足を掴むと、ぐいっと押し上げた。

柔軟に稼働するエルの足は、難無く頭の上に押し付けるように固定されてしまう。

男は足の間にぽっかりと開いた、その穴に顔を押し付ける。

 

「あぁ♥」

 

婬毒に冒された身体は、すっかり火照ってそれだけで震えが走る。

流石に羞恥を感じるも、黙ってその行為を受け入れていく。

 

「ひぅ・・・」

 

柔らかいものそこに触れると、一瞬身体が強張るように震えて。

濡れた舌が、腟口に触れ、そのまま舌先がその周りをなぞっていく。

 

「はぁ・・・あ、ひぁあ!」

 

少し押し入って何度も何度も、舌先が撫でるように壁を舐める度に、少しくすぐったいような感触と、快楽神経を走るパルスに、身体を跳ねさせる。

舌全体が押し付けられ、ぐにりとそこが軟らかく押し広げられて開いていく。

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

壁の間に押し付けれる舌の感触、熱い体温。

エルは酩酊にも似た感覚に、うっとりと身を委ね、力が抜けていく。

男が舌先を尖らせ、二枚貝のような壁の間をぐねぐねと弄ると、舌がそこから上に這い上がってくる。

壁の合わせ目に舌が到達し、エルは溢れだすような快感に襲われてわなないた。

 

「あ♥ あ♥ あぁ♥」

 

舌でその突起を小刻みに刺激する。

男は夢中になって何度も何度も舐め上げて。

それだけでエルは充分な快感に震えるのに、男はさらに舌全体を押し付けて、執拗に舐め回してくる。

 

「あはぁ♥ あ、じょーず、そ、そこもっとぉ♥」

 

その言葉に男は唇を細めて、クリトリスを吸い出すように刺激する。

一気に官能が高まり、頂きに押し上げられていく。

このままじゃすぐにイかされる。

あまりにも呆気ないのが、癪に障る気もしたが、そう思っても全身の力が抜けて、抵抗もできない。

エルの体は、貪欲に快楽を欲している。

男の舌が陰核の包皮の中に侵入して、グリグリと這い回った瞬間、エルの頭は真っ白になった。

どこかに落ちていくような浮遊感。

本能的に伸びた手が、必死で男の頭を掴みながら、何度も何度も神経を快感が駆け抜けて、その度にカラダがびくびくと痙攣してしまう。

 

「ああぁ!? はぁっ♥ あぁぁああああああ~~~~~~~♥」

 

絶叫と共に、荒い息を吐き出される。

吐き出し切って、しばし吸う事もできずに、金魚のように口をパクつかせ。

徐々に波が引いていくに従い、呼吸も元に戻っていく。

 

「あ・・・?」

 

自分が男の髪を握りしめているのに気付き、慌ててそれを放した。

我を忘れて気をやった証のようで、恥ずかしかった。

こんなにじっくりと愛撫されるのも、この男が初めてだったからというのもある。

手馴れているつもりだったが、どうも攻めに回られると、中々巧みで手玉に取られてしまう。

というか今までの連中が下手というか、自分本位のセックスばかりだったのだろう。

この男はエルを気持ち良くしようと、丁寧にしてくれるのが分かって、それがまた恥ずかしい。

 

「・・・・・・エル、可愛かった」

「・・・・・・恥ずかしいこと言ってんじゃねーよ、ばーか」

 

頭を撫でられるのは・・・少しだけ悪くないかもと思った。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

そんなちょっと? 爛れた日々を送るある日の事。

 

「エンニチ?」

「えーと何というのかな、お祭りで、そのカーニバル? フェスティバル? ・・・・・・えーと屋台とか出て、踊ったりとかで」

「EVENT?」

「あー、それが近いかな」

 

カーニバルもフェスティバルも宗教的な催事が元だ。

今はそういう部分が薄れたものが多くなったが、日本などは特にそういう面が薄いというのは、知識として知っている。

エンニチとやらも、まあ宗教的なものもあるだろうが、どちらかといえば娯楽的なものに特化してしまった、イベント的なものだろうとエルは当たりを付けた。

 

大体合っている。

この縁日も元は、山の大天狗の誕生日を祝っていたものだった。

前日から二日かけて行われる、賑やかなお祭りだったのだが、最近は完全に屋台が出る日くらいの認識で、ここ十数年などは客が集まるようにと、土日にずらされてしまったりしている。

大天狗はちょっと泣いた。

 

「せっかくだから遊びに行かない?」

「うーん」

 

エルは少し考えこむ。

正直に言えば、楽しそうだし行ってみたい。

だが下手に動いて、この国のエクソシストと出くわしたらどうなるか。

日本はかなり穏当な方だとは聞いているが、それだってどこまで本当なのか。

それによそ者のエルにとっても、穏当かは分からない。

エルの知っているエクソシストは、何というか・・・・・・今に見ていろ人間以外は全滅だ、という感じの危ない連中ばかりだった。

ルサールカに偏った連中に当たったわね、と言われたことはあるが、エルにとってはそいつらがエクソシストの一般的イメージだ。

遭遇したくない連中の筆頭である。

しかも媚薬のせいか、体調も万全とは言い難い。

あまり迂闊に動くべきではないと思う。

思うのだが・・・・・・エルフというのはそこまで思慮深くないのである。

伊達に性悪で悪戯好きなどと、言い伝えられているわけではない。

そして何より・・・・・・

 

「お袋の子供の時のお古だけどさ、浴衣もあるしこいつを仕立て直そうと思うんだ」

 

浴衣である。

エルとて女である以上、やはりお洒落には興味があるもの。

桜柄の綺麗な浴衣に、心が弾んでしまう。

こんな綺麗な服を着て、遊びに行けるとなれば、是非もなかった。

だからだろうか。

気付かなかったのは・・・・・・

 

家を出る時に、きいきゅいという音が聞こえた。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「えへ~~」

 

服屋で浴衣を仕立直した帰り道、エルはご機嫌だった。

雑木林から葉鳴りと共に、吹き付ける風に舞うように軽い足取り。

古着とはいえ、こんな綺麗な服が自分のためになんて、初めてだった。

大事そうに浴衣の入った収納バッグを抱きかかえて、ご満悦の笑みで浮かれていた。

そのせいか目付きの悪さも、今はうきうきした笑みも合わさってか、魅力的に見える。

こんな小さくても女なんだなと、男は否応無く意識させられた。

まあ毎晩させられてはいるのだが。

 

「なあ、この服の模様ってサクラっていうんだろ?」

「うん、日本でよく親しまれてる花だね。春には山の桜が一斉に咲くから、凄い景色になるよ」

「へ~~~」

 

秋に桜紅葉で染まった山も凄いが、やはり春の桜花で染まった山は筆舌に尽くし難い美しさがある。

 

「そんなにすごいのか? そりゃ見てみたいな」

 

無邪気にはしゃぐエルの姿に、男は胸が締め付けられる。

だって、それは無理な話なのだから。

こんな生活がいつまでも続くわけがない。

男はエルとの生活が、こんなにも気に入っていたのだと思い知らされた。

そしてその生活が、すぐにでも終わる、その時が近付いていると、そう思うと胸がどうしようもなく痛んだ。

両親も、もうじき退院して家に帰ってくる。

それに・・・・・・

 

陽は暮れ始め、空は茜色に変わりつつある。

気が付けばどちらからともなく、二人は手を繋いで歩いていた。

顔が朱に染まって見えたのは、夕日に染められたからだろうか。

もう間もなく、家に着く。

それが何故か惜しいような。

二人はなんとなく、お互いにそう思っていると、奇妙な確信があった。

いつの間にか、口数は減り、静寂を破るのは何もなかった。

 

・・・・・・虫の音さえも。

 

「失礼、少々お時間よろしいですか?」

 

突然、呼びかけられた声。

丁寧ではあるが、有無を言わさぬ、強制力を感じる言葉だった。

夕闇の中で、電信柱の傍らにそれは立っていた。

人間、ではあった。

だが最初からそこに佇んでいたはずなのに、声をかけられるまで、気付きもしなかった気配の薄さ。

それはまさに幽鬼を思い起こさせる、不気味な存在だった。

時刻はまさに逢魔ヶ刻。

 

男は悟った。

ああ、終わりがやってきたのだと。

 

「思ったよりも早かったですね」

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

エルが咄嗟に指を向け、撃ちだしたガンド魔術が、あっさりかき消される。

微動だにもせず、空漠とした幻のようなその男に、エルは総毛立った。

強制力を持つ、言霊のこもった言葉。

間違いなく、この国のエクソシストだ。

 

先程まで心地よく思っていた、雑木林から吹き付ける風が、今は妙に生温く不快に感じる。

林から響く、葉鳴りとは違う、地を這う音。

横目で見れば、いつの間にか林の中に無数の蛇が群れていた。

その中に一際、大きく、頭に刃のような角を生やした大蛇が、静かにこちらを窺っていた。

 

頭上から羽音が響く。

電線に無数の鴉が止まっていた。

そこにも一際、大きな・・・・・・三本足の鴉がこちらを睥睨している。

使い魔、囲まれている。

どうする、どうすればいい。

静かだが、飲み込まれそうな、眼前のエクソシストの圧力。

いつだったか、あれはずっと昔、中東の辺りで会ったあの悪魔。

そう、アスモデウスとかいう悪魔と、同等の圧力を感じる。

 

(ルサールカのやつ、人外魔境ってこういうことかよ!! 魔王クラスの人間とエンカウントするとか聞いてねーぞ!!)

 

しかも得意の呪詛もまったく通じそうにない。

なんと云ったか。

この国のエクソシスト・・・・・・

 

(オン、ミョウジ)

 

そう、陰陽師だ。

聞くところによれば、陰陽師とは抗魔術(アンチマジック)専門家(スペシャリスト)

さらに無造作に見えて、どんな状態にも対応できるような重心の置き方から、間違いなく武術の心得がある。

魔術は通用しない、力では勝てない。

圧倒的に格上の相手、さらに相性は最悪。

 

(詰ん、でる・・・?)

 

どう考えても、戦って勝つのは無理だ。

 

逃げる。

 

だが周囲を使い魔に囲まれて、どう逃げる?

身震いする程の恐怖が、全身を駆け巡っていく。

男と繋いでいる手の温もりが、辛うじてエルの正気を繋ぎ止めていた。

人質・・・一瞬、頭をよぎった考えを振り払う。

通用する相手か分からない、無用に怒りを買うだけの可能性が高い。

むしろまとめて殺されるかもしれない。

一か八か、連れて逃げの一手を打つべきか。

その時だった・・・・・・

 

「思ったよりも早かったですね」

 

繋いでいた手が解かれた。

一瞬、遅れて男の言葉が頭に入ってくる。

男はゆっくりと陰陽師の方に歩いて行く。

 

ああ、また裏切られたんだ。

どこか冷めた思考が、エルにそう認識させた。

縁日も浴衣も自分を連れ出して、陰陽師を待ち伏せさせておくための、方便だったのだ。

分かっていたはずなのに、人間なんてそんなものだと。

なのに、なんで・・・・・・自分は信じてしまったんだろう。

湧き上がる感情は、怒りでも憎しみでもなかった。

ただ、悲しかった。

それだけがエルを満たそうとしていた。

 

男が陰陽師から数歩の距離で立ち止まると、両手を前に差し出してこう言った。

 

 

 

「刑事さん、私がやりました」

「は?」「え?」

 

その台詞に、期せずしてエルと陰陽師から同時に漏れたのは、困惑の声であった。

そんな二人に構わず、男は言葉を続ける。

 

「本当ならすぐにでも自首するべきだったというのは分かっています許されざる罪を犯してしまったというのにでも気付けばずるずると過ごしてしまってもう調べは付いているのでしょうが俺はこんな小さな女の子を車ではねた上に家に連れ込んで淫らな関係を持ってしまった最低のロリペド野郎なんです刑事さんにはお手間を掛けて申し訳ありませんでしたもう覚悟はできていますどうぞ手錠をかけてください」

 

男は一息で言い切った。

もう完全にさっきまでの空気は吹っ飛んでいる。

陰陽師はちょっと引き気味だ。

普段のポーカーフェイスが若干崩れて、知り合いが見たら、珍しい物を見たと言うだろう。

 

刑事と勘違いされているのは理解したが、どうするよこれ? とばかりに、電柱に止まっている自分の式神にアイコンタクトを送る。

知らんがなと、大鴉はそっと目を逸らした。

林の中の大蛇に・・・目をやるまでもなく、そんなことこっちに振られても困るという雰囲気が伝わってきている。

どうしたものかと僅かに思案して、面倒くさくなったので、別に誤解させたままでいいかと思い直した。

途中で見つけた怪畑を鎮めたり、エルフの捜索に近くの家鳴に聴きこんだり、式神を呼んだりと色々あって、もう今日で五徹目だったので、さっさと終わらせたかったのである。

 

「少し勘違いしているようだが、別に君を、逮捕に来たわけではない、のだが・・・」

「は?」

「それとそっちのエ、いや女の子と言ったが、彼女は俺や君よりも年上だぞ」

「・・・・・・・・・・・・え?」

 

思い返せば、エルには確かにやたらと大人びた所があった。

色気というか、女の武器もよく扱いを心得ていた節がある。

だが子供にしか見えない見た目と普段の言動で、完全に未成年だと思い込んでいたのだ。

そもそも年齢を聞いたこともなかった。

 

男はエルの方に振り返る。

勘違いで色々と湧き上がった感情と、それを一気にぶち壊されて、行き場のない名状しがたい感情、それと女の年齢を詮索するなという感情がこもった眼で、ギロリと睨まれる。

凄い形相に、すごすごと男は目を逸らす。

 

「あの、それで、どうなるんでしょうこれ?」

「そう、だな・・・・・・こちらで保護して・・・身元を調べて本国に送り返すということになるか」

 

妖怪等に関しては、現場の裁量に任される部分がかなり大きいが、基本的な対応としてはそんなところだ。

陰陽師が視線を向けると、エルの身体がビクリと震えた。

エルからしてみれば、保護とは名ばかりで、連れて行かれて殺されてもおかしくはないと考えているので、無理もないだろう。

怯えるエルを見て、男は間に割って入り、口を開いた。

 

「あ、あの!! 彼女、ここで暮らすっていうのは駄目ですか?」

「ん?」

 

人間ならば不法滞在ということで、本国送還は免れないだろうが、国籍など持っていない妖怪が大半だ。

送還は努力目標と言ってもいいので、必ず送り返さなければいけないというわけでもない。

自然発生的に誕生する妖怪も少なくはない。

戸籍の取得に関しては融通が利くので、確かにこのまま暮らすというのも不可能ではない。

だが融通を利かせる権限は持っているが、問題を起こしたら責任だって生じるのだ。

陰陽師としては、軽々しく認めてしまうわけにもいかない。

問題児で有名なエルフとなると尚更だ。

少なくとも身元保証人も無しに認めるわけにはいかない。

 

「君達はどういう関係だ?」

「え?」

 

陰陽師の問いに、男はしばし考える。

出会いは飛び出してきたエルを、車ではねた時、つまり被害者と加害者?

レイプ紛いの事までしてしまったし、これが一番しっくり来そうな気がした。

それとも同棲相手だろうか、あるいはセックスフレンド?

間違っても恋人とはいえない気がした。

 

「彼女が何かした時、君は責任を取れるか?」

 

男はその問いにしばし考え、取れますと答えた。

 

「エル!!」

「な、なんだよ!?」

 

男の剣幕に少し、怯えた表情を浮かべるが、強がって睨み返す。

だが鋭い目付きも、今となっては男には秋波にしか見えていない。

興奮させる役目しか果たしていないようだ。

 

「け、結婚しよう!! 俺と結婚してくれ!!!」

「は? はぁあああああ!? ちょ、おま、な、なに、い、いきなりなに言ってんだょ!!」

「いきなりじゃない!! ずっと考えてた!! あ、あんなことしちまって、ずっと責任取らなきゃって!! だ、だから、エルさえよければ! 俺と結婚してここで一緒に暮らそう!!」

「ぅえ? ぇえ!? ほ、本気かお前?!」

「本気だ!! 結婚しよう!! 俺より歳上だっていうなら結婚できる年齢なんだろ!!」

「女に歳のこと言うんじゃねえ!!」

「今はそんな事はどうでもいいんだ、重要なことじゃない!! 結婚してくれるのか、はいかイエスで答えてくれ!!」

「拒否権ねーのかよ!?」

 

約三十分、そんなやり取りが続くのを、陰陽師は帰りたい気持ちを抑えて見守っていた。

まだ凶悪な妖怪と殴り合ってた方が楽だと思っても、人出が足りないので仕方ないのだ、頑張れ陰陽師。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「では受理書は後日、郵送ということで」

 

たまにある事例なので、こういう時の書類一式は常備してあったのが幸いした。

さっさと記載させて、その場で受け取って陰陽師は帰路についた。

妖怪というのは洋の東西を問わず、人間とは比べ物にならないくらいに、こういう約束・契約に縛られる存在だ。

妖怪の戸籍を作るのが比較的容易というのも、その方がむしろ安全なためという理由が大きかったりする。

正式に婚姻契約を結んだ以上は、そうそう勝手もできないだろう。

 

(念の為に魔法も封じておいたし、エルフの方も何だかんだ言って、満更でもなさそうだったし、まあ上手くやってくだろう)

 

「流石に疲れたな」

 

とはいえまだまだ、やることは山積み。

書類の方は優秀な事務員に任せればいいだろうが、問題児な部下達を監督しないと、またぞろ後始末で仕事が増えかねないと思うと、さしもの特殊部隊の隊長も気が重い。

 

――お紺さん何かどうなんです?

 

ふと以前、部下に言われた事を思い出した。

事務員の妖狐についての話だ。

 

――食事にでも誘ったらどうですか? そういうの抜きにしても、親睦を深めて悪いことはないですし

 

面倒な仕事を頼むのだし、折角だ。

何か奢るのも悪くないだろう。

 

彼はまだ知らない。

そのせいで、七徹に突入するはめになることを。

詳細は第八話「ようこそ妖狐」を参照下さい。

 

「きぃきゅい」

「どうした? もう菓子はないぞ」

 

一匹の家鳴がとてとて駆け寄ってくる。

エルフの居所を教えてもらった謝礼に、持っていた金平糖やチョコレートをあげたので、今は菓子を何も持っていない。

 

「きぃ!!」

 

その家鳴は小さな手で、持っていた金平糖を持ち上げた。

 

「くれるのか?」

「きゅい!!」

 

その通りと、得意気に胸を張る家鳴。

そのまま、持っていたもう一つの金平糖を齧り出す。

一緒に食べようということなのだろう。

 

「ありがとな」

「きぃきゅぅ!!」

 

カリッという音と共に、口内に広がる砂糖の甘味・・・・・・それと家鳴の気遣いが、疲れた身体に染み渡った。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

さて、唐突に新婚初夜となった二人はというと。

色々今後の事で談論風発、丁々発止とやっていたが、夜も更ける頃には盛っていた。

 

「も、もういーっての、これ以上は意味ねーって」

「だ、大丈夫かな? やっぱやめた方が、せめてもうちょっと慣らしてから」

「いくらなんでも、そんなかんたんに体なんて伸び縮みしねーっつーの!! たく、五回もイカせやがって」 

「ご、ごめん・・・・・・」

「ほ、ほら。挿れるから、ちょっとジッとしてろ」

「なあ、エル。やっぱ無理はしない方が」

「うるせーよ! オレとしたくねーのかテメーは!!」

「そういうわけじゃないけど」

「テメーは、黙っておっ勃ててればいーんだよ・・・・・・あー、いや、まて、ちょっとくらい萎えとけ」

 

エルが膝立ちで男に跨ると、そそり勃つ肉棒を震える手で、そっと女の入り口にあてがった。

 

「ひ、膝立ちしてんのに、入り口にとどくとか、ふざけてるよなテメーのコレ」

「・・・・・・ご、ごめん」

「いちいち謝んな!!」

 

さっきはあんな積極的に結婚しろだの迫ったくせに、こっちはもう覚悟決めたってのに、うだうだやってんじゃねえと憤懣やる方ない思いを募らせる。

 

(薬も飲んだし、ここまできて後戻りなんてできねーんだよ、このトウヘンボクが!!)

 

エルはとある薬を服用していた。

本当ならある程度、痛みを麻痺させる媚薬なんかも使いたかったが、薬が変にバッティングして効果が出なかったら元も子もないので、そこは我慢する。

我慢しなければならない。

我慢してこの並外れた腕並みの巨根を、受け入れねばならない。

 

(魔法封じられちまったし、どうにかなるかわかんねーけど、精気は確保できるよーにしとかねーとな)

 

地脈、龍脈の管理も行う高位の陰陽師が施した封印となると、エルフといえどまず解けないだろうが、エルの専門はどちらかといえば知識さえあれば作れる魔法薬の類だ。

解けなければ解けないでまあ仕方ないと、それなりに楽観的に考えてるが、それでも色々試しておきたい。

そのためにも、効率的な精気の獲得手段、つまりセックスはできるようにしておきたい。

 

(・・・・・・なんかこいつ以外は、ちょっとやだなって思うし)

 

割りと今回の件は満更でもなかったりする。

夫婦の性生活は、家庭円満に欠かせないので重要である。

 

「よ、よし!! いくぞ!!」

 

向かい合った男の肩に、手を付いて体を支えながら、ゆっくりと腰を落としていく。

滴る愛液でテラテラとヌメる亀頭の先端が、柔くほぐれた花肉を押し広げていく。

体の小ささに反して、驚くほど柔軟に広がっていく膣肉。

だが骨盤一杯までと思う程に広がった辺りで、メリメリとひび割れそうな感覚と、窮屈な感触。

 

「ふぅ、ふぅっぅうう!」

 

苦しげに呻きながら、懸命に腰を落とそうとするが、限界なのかそれ以上は通って行かない。

二人の位置からは見えないが、エルの女の構造は伸びきり、張り詰めたゴムのように今にも裂けそうになっていた。

 

「エ、エル・・・・・・無理するな」

「うぅるしゃい、一回、もうやってんだ。入らねぇわけぇね、ねえだろぉ」

 

普段の横柄さも鳴りを潜めて、一杯一杯になってふうふうと呻いている。

 

(こ、これ、やっぱでかすぎ・・・・・・が、がき産むよりきついんじゃねーかこれ?)

 

出産時の赤ん坊の平均的な頭囲は、おおよそ三十センチ少々である。

流石にそこまできつくはない。

 

(が、がき・・・こいつとのがき?)

 

ゾクリとした。

子供を産む。

人間との子供。

それを、悪くないと思ってる自分がいる。

 

俄にエルの女があちこちから、ヒク付き押し寄せてきた。

ぬるぬると潤滑油を垂れ流し始めて、僅かに飲み込んだ男の亀頭を、濃厚に口付けるように蠕動する膣肉。

ずるっと一番大きく張り出しているカリが、エルの関所を越えた。

後は驚くほどスムーズに奥まで到達する。

 

「あ、ぁああぁぁ、ひっ、ひ、っひ、ひっ」

 

肺から絞り出された空気が、悲鳴とも嗚咽ともつかない音を上げる。

一気に侵入された衝撃。

ただただ己を満たす圧迫感。

 

「エ、エル、ちょ、大丈夫!?」

「ひ、ひぃっひひひひ・・・・・・は、入ったぞ。ちゃ、ちゃんと入ったろ、へ、へへへ」

 

(あ、あとは、しゃ、射精させれば・・・・・・え?)

 

とはいえ、挿入しただけで終わりではない。

男女の睦事は本来はここからなのだ。

 

(う、うごかねーと。そうだった、挿入れただけで終わりじゃねえよ。いや、でも、これ・・・・・・うごくの?)

 

比喩抜きで裂けそうなくらいに広がりきった腟口。

内蔵を圧迫される、凄まじいまでの違和感。

事前にちゃんと済ませておいたが、そうでなければ粗相の一つ二つはやってしまっただろう。

 

ふーふーと息を荒げて、震える足に力を込めて、抽挿を始めようと、陰茎を引き抜いていく。

 

「い、ぎぃ!?」

 

身体に走る、鋭い痛み。

みっちりと隙間なく詰まった物を引き抜くと、吸引の圧力で子宮が引っ張られていく。

痛みのあまり、半分も引き抜けずに、力の抜けた足が崩れ、腰掛けるように男のモノが再び押し込まれていく。

 

「うぐぅ!」

 

肺から絞り出されるように、空気と呻きが漏れる。

半分も往復できずに、エルの気力はすっかり萎えてしまっていた。

そんなエルを男は、ぎゅっと抱きしめる。

反射的にエルも男の背に手を回し、抱き返していた。

手が回り切らぬほどに、大きな背中。

それが何故かエルを安心させる。

 

「なあ、やっぱりやめとこう。エル、すっごい辛そうだよ」

「・・・・・・オ、オレのこと抱きたくない?」

「い、いや、その・・・めっちゃしたいです、凄い興奮してますよ」

 

実際、エルの中で男のそれはガチガチに怒張しきって、血管の脈動が分かる程に滾っていた。

う~と呻きながら、手に力を込めて、男の胸に顔を埋める。

 

「じゃあ、抱けよ・・・・・・」

「う・・・・・・いや、でも、エルが辛いだろ」

「なんで、そんなこと気にするの?」

「何でって? 普通、気にしないか」

「今まで、気づかってもらうとかなかった。誰もいなかった」

 

男は反射的に、エルの頭をかき抱いていた。

 

「もっとギュッて、して」

「うん」

 

いつの間にか、しおらしくなったエルが、胸に顔を押し付けてくる。

暖かい体温、体から立ち昇る匂い。

 

「さっき・・・・・・」

「ん?」

「さっき、あいつからかばってくれたよな」

「あいつって、あの刑事さん? ちょっと怖そうな人だったけど、別にそんな大したことじゃ」

 

ちょっと何てものじゃない。

あれは化け物だった。

そんな相手から・・・・・・

 

「なんか、うれしかった。ちょ、ちょっとだけ」

「そりゃ、その・・・好きな娘のためなら、まあ、頑張っちゃったというか」

「・・・・・・オ、オレも、好き、かも。よくわかんねーけど」

 

どちらからともなく、二人は口付けを交わしていた。

どこかぎこちなく、舌を絡め合い、啄むように吸い合う。

 

「チンコにはさんざんキスしたけど、口にするのってそういえば初めてだったな」

「女の子がそんなこと言わないの」

 

今更だろと、シシシと笑うエル。

再び口が交わされ、舌を吸い出し、飴を舐めるようにしゃぶる。

僅かに顔にかかる鼻息。

それは男に否応無しに、エルを意識させた。

腕の中にすっぽり収まる、エルの体。

今まではその小ささから、子供だとばかり思っていたが、確かに子供らしからぬ成熟した靭やかさがあった。

小さいのにふにふにと柔らかくて、ちゃんと体も女性らしい曲線を持っている。

歳上だと聞いたが、肌などすべすべして、触れているだけで心地良い。

背中に回していた手が、ゆっくりとその背をなぞっていく。

身震いするエルの鼓動がダイレクトに伝わってくる。

その手はやがて、やわい尻肉に到達する。

 

「ん、んん♥」

 

薄い肉付き。

なのに触れた指は、どこまでも沈み込んでいきそうで。

口を吸い合いながら、むにむにとその感触を愉しむ。

ただ挿入しているだけで精一杯だったその結合部は、その度に微妙な収縮を繰り返す。

蠕動して、膣肉が男の怒張にねっとりと絡み付いて、抽挿できずに飢えた膣壁自体が、貪欲に男を搾り取ろうとしているかのようだった。

女の蜜はこんこんと分泌量を増やして、お湯のように熱さを伝えてくる。

 

(は、腹の奥がぐにゅぐにゅしてるぅ♥ なんだこれ? こ、こんなの初めてで)

 

エルの穴はそれ自体が意思を持ったように、男を咥え込み、その陰嚢から精液を搾り取ろうと求めていた。

自分の意思を離れて、暴れ出した性器。

身体の変調にエルも不安なのだろう。

子供のように、男の体にしがみついて震えていた。

 

「エ、エル」

 

膣の蠕動によって射精を促され、エルの最奥にビシャビシャと男の精液が叩き付けられた。

みっちりと男がつまった膣に放出された液体は、逃げ場を求めて子宮に注ぎ込まれていく。

射精は恐ろしく長く続いた。

子宮を圧迫する感覚に、エルは何度も身を震わせていた。

男は凄まじい虚脱感に襲われながら、荒い呼吸を繰り返す。

腕の中でエルは言葉もなく、息も絶え絶えに肩を上下させ、男に体重を預けていた。

いつまでそうしていたのか、その硬度をなくし、いくらかダウンサイズした陰茎をゆっくりと引き抜きにかかると、ハッとしたエルの手に力がこもる。

 

「だ、めぇ・・・このまま」

 

逆らう気力も起きず、繋がったままゆっくり倒れむ。

胸にエルを抱いたまま、虚脱感と心地良い温もり、そして女の肉に包まれた一物から、弾けるような感触を感じながら、その意識は闇に落ちていった。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

ぴちゃ、ぴちゃと水音が響く。

朦朧とした頭は雨の音かと、しばしの間、錯覚する。

やがてそれは、自身の近くから響いているのだと、覚醒を始めた頭が理解する。

意識した途端に、下半身、正確にはその一部に感じる感触。

同時に水音もそこから響いているのだと気付いた。

見れば、シーツが盛り上がり、下半身の辺りでもぞもぞと動いている。

 

気怠げな身体とは裏腹に、急速に動き出した意識。

昨夜の情事を思い出し、口元が緩む。

新婚。

何とも甘美な響きであった。

 

(しかも、朝からなんて)

 

朝から新妻のご奉仕!

男の浪漫である。

だが、そこで妙な事に気付いた。

今までも、散々口でしてもらったはずなのだが、現在、下半身に感じる感触がおかしいのだ。

男の並外れた巨根は、萎えていなければ、とても口に入るようなサイズではない。

だというのに、今感じているのは竿の半ばに、ぷにぷにとした唇の感触。

そして亀頭を這い回る、舌の感触だった。

 

「エル?」

「ん? 起きたか」

 

シーツから顔を出したエルが、夫となった男の一物から口を放して、頬を寄せて蠱惑的に笑っていた。

 

「え?」

 

どこか信じられない物を見るように、男の目が見開いた。

エルが手で弄んでいる、それがおかしなことになっていた。

 

「ええ?」

 

まだ状況を理解できない。

小さくなっていた。

萎えているという意味ではない。

サイズそのものが、半分以下になっていた。

長さも、太さも。

理解が追いつかない。

何故こんなことになっているのか。

 

「オレサイズ。あんなの毎日じゃ壊れちまうからな」

 

エルが飲んだ魔法薬の効能、それがこれであった。

男のモノを、女のサイズに合わせてしまったのである。

それはエルフの卑劣な魔術。

男の尊厳を奪う許せぬ術だ。

 

「な、なんだよ? これでオレのことちゃんと抱けるだろ?」

「え? あ、いや・・・・・・」

「まさか、オレ以外に使うアテがあるなんて、言わねーだろうな?」

 

ギリっと男のソレを握る手に力が篭もる。

 

「いえ、その、残念ながら」

「ざんねんながら?」

「エル以外には使いませんです! 残念じゃないです!!」

「よろしい」

 

シシシと笑うエルフは、どこか幸せそうであった。

 

余談ではあるが、これからしばらくして、エルが魔法薬をネット販売で売り捌いたことで、いくつかの事件が起こるのだが、それはまた別の話である。

 




サブカルチャー的なのではなく、原典に近いエルフをイメージしました。

あと3千字位書けば書き上がると思ったら、2万字オーバーしてた。
結構削る羽目になりました。
隊長さん出てくると、ついバトル描写入れて、そういうSSじゃねーよと大幅にカット。
隠し持ってた手榴弾を投げるエルフに、袖裏乾坤の術で手榴弾を吸い込む陰陽師!!
電線が結界を構築しており、瞬時に動きを封じられるエルフ!!
何を書いているんだ俺は・・・・・・

この二人はだらだら過ごしてその内、破局してるビジョンしか浮かばなかったので、強引でもくっつける要素が必要だと思ったので隊長さんが出張りました。
大まかなプロット自体は初期にできてたりしましたが、時間かかったなあ。

この話で一番やりたかったのは最後のエルフの卑劣な魔術だったりします。


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エピローグ 平和な日常あるいは普通な日々

これにて完結。


役場の一室。

普通の人間に混じり、角が生えたモノ、翼が生えたモノ、燃えているモノ、光るモノ、様々な異形達が忙しなく動き回っていた。

ここは妖怪に関連する事を扱う部署である。

天狗に雪女、鬼に狐、狸、蛇と雑多な妖怪達が人間と共に働いている。

あちらを見れば、蛇腹折りの和本が、人の様に動いて書類整理をしている。

経典の付喪神、経凛々(きょうりんりん)である。

こちらを見れば、古い和式の鞍が、革紐を手のように使って器用にキーボードを叩いている。

鞍の付喪神、鞍野郎(くらやろう)である。

 

そんな妖怪だらけの中で、一際異彩を放つ集団があった。

対妖怪戦闘部隊の中でも最強と呼ばれる、特殊部隊の連中である。

その特殊部隊が事務仕事に励んでいた。

はっきり言って異常である。

自衛隊のレンジャー部隊が、警察の交通課に手伝いに来たくらいおかしい状況である。

 

それというのも数年前に復活した邪神との戦いで、戦力の逐次投入という愚を犯し、被害が拡大して人員の大量損失を出してしまい、手が足りなくなったためである。

普通ならこんなことは、在り得ないのだろうが、何分にもオカルトに関連する実践的な能力があるという条件が付くと、どうしても該当する人材が限られてしまうために、この様な妙な事態になっている。

まあ、最後の辺りで上層部の待機命令を無視して、独断で戦場に参加したのが原因の、懲罰人事という噂もあるが、真相は定かではない。

 

「隊長、遅いな。今日は現場じゃないよな?」

「隊長が遅刻って珍しいな?」

「隊長のことだから、異世界に召喚されて、世界を救う冒険でもやってたりしてな」

「俺、知ってる! テンプレってやつだ!!」

「テンプレだ!」

「テンプレ!!」

「テンプラ食べたい!!」

「テンプレで転移!!」

「テンプレ転移!!」

「略してテン移だ!!」

「テンイーテンイー」

 

訳の分からない、テンションである。

戦闘部隊というか、チンピラ集団にも見えなくはない。

そこに、毅然と歩み寄る一つの影。

事務員である、妖狐のお紺さんである。

 

「あなた達、仕事して!! 書類溜まってるんだから」

「お紺さんだー。はよっす!!」

「コンコンだー」

「オッス、コンコンー!!」

「コンコン、オッス!!」

「勝手に変なアダ名つけないで!!」

「でも毎晩、隊長にコンコンされたりしてるんだ」

「コンコンお盛んー」

「毎晩じゃないわよ!! 週に五回くら・・・・・・」

 

コンコンと咳払いするが、誤魔化せない。

 

「コンコン本当にお盛んー」

「やるじゃないかコンコン」

 

次の瞬間、囃し立てる連中の頭に衝撃が走った。

 

「仕事しろ馬鹿共!!」

 

彼らを束ねる特殊部隊の隊長だ。

ちなみに、お紺さんと交際中である。

頭に拳骨を落とされ、呻く隊員達。

普通に仕事をしていた他の隊員からは、馬鹿だなあという目で見られている。

 

「衝撃が突き抜けてくるぅ」

「ひでえよ、隊長」

「というか遅刻じゃなかったんスか隊長?」

「・・・・・・お前らがぶっ壊した施設の件で、上の連中に小言を言われてたんだよ」

 

藪蛇であった。

これは後でこっぴどく怒られるぞ、と思った問題児な隊員達。

取り敢えず、真面目に仕事して少しでも心象を良くして、お説教を軽くしてもらおうと、いそいそと仕事に手を付け始めた。

 

「遅刻といえば、一人おらんようだが・・・・・・」

 

その時、電話が鳴り響いた。

 

「はい、もしもし」

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

 

アトランティス大陸。

大西洋に存在したという、伝説の大陸であり、現代以上の文明を築きながら、一万と二千年前に、一昼夜にして海に沈んだと言われる超文明。

 

今、世界に危機が迫っていた。

その古代アトランティス王国の、邪悪なる王が転生を遂げたのである。

しかし、かつてその邪悪なる古代アトランティス王に、立ち向かった戦士達がいた。

彼らもまた、現代に転生を遂げていたのである。

 

「急げ!! こっちだ」

 

古代アトランティスでも有数の魔法使いであった、彼らの最後の仲間。

その魔法使いに、アトランティス王の魔の手が迫っていた。

強固な魔法障壁を誇るアトランティス王に、魔法使いを欠いては勝ち目などない。

前世の力に目覚める前に、魔法使いを始末しようとしているのだ。

 

「間に合うか!?」

「急いで!! 彼が殺されてしまったら!」

 

男子学生、女学生、さらにスーツ姿の会社員。

古代アトランティス人の転生体である彼らは、前世からの力を受け継いでいる。

人の限界を超えた速度で、駆けて行く集団。

そして、彼らが駆けつけた時、そこで目にしたものは・・・・・・

凄惨な光景であった。

全てが終わっていた。

姿こそ違うが、血の海に沈んでいるのは、前世でよく知る力の波動を持った男であった。

 

「あ、ああ・・・!?」

「な、何が・・・!?」

 

この凄惨な光景を作り出したであろう、無傷でたたずむ一人の男。

力の気配こそ違うが、本能的に理解できた。

前世で戦った、あの男なのだと。

 

「やり過ぎたかな?」

 

少々焦ったようにその男が、血の海に沈んでいる男の顔に耳を寄せる。

 

「よかった、ちゃんと息してる」

 

ビクンビクンと痙攣して、虫の息になっている事を、ちゃんと息をしてるなど、普通は言わない。

古代アトランティスの戦士達はドン引きだった。

 

「なあ・・・」

「うん・・・」

「覚醒してないよな、あいつ?」

「みたいね」

「前世より強くね?」

 

古代アトランティス王を単身で血の海に沈めた魔法使いが、遅刻の言い訳が出来ただの嬉しそうに呟いている。

敵とはいえ、人一人を死ぬ寸前まで追い込んでおいて、朗らかにそんなことを言い放つ様には、ちょっとした狂気を感じる。

 

「俺、学校行かねーと」

「私も・・・」

「さて、私も仕事に戻りましょう」

 

戦いは終わった。

世界に平和が戻ったのである。

特に何もしていないが。

 

「今度、みんなで遊びに行かね?」

「いいわね」

「彼は?」

「・・・・・・来世になったら誘おう」

 

正直、前世の仲間とはいえ、今代の魔法使いとは、ちょっと関わりたくなかったようである。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「うん、うん・・・・・・分かった、なるべく早くな」

 

ガチャっと受話器を置く音が響く。

 

「古代アトランティス王の転生体に絡まれたんで、少し遅刻するそうだ」

 

前代未聞の遅刻理由である。

普通ならばだが・・・・・・

 

「ああ、もうそんな時期でしたっけ?」

「毎年、この時期になると湧いてきますよね、アトランティス王」

 

そんな普通は、特殊部隊の連中には一切通用しないのだが。

まるで害虫か何かのような扱いである、古代アトランティス王。

 

(毎年、現れてたの!?)

 

傍で聞いていた一般の事務員達は、頭を抱えていた。

 

「すみませんね、私の後進が毎回」

 

そう言った事務員は、初代アトランティス王の転生体である。

 

「どれだけいるんでしょうね?」

「さて、流石に記録に残ってないですからね」

 

こればかりは初代アトランティス王もさっぱりだ。

当たり前の話ではあるが、前世の記憶を引き継いでいても、死んだ後の事となると文献等を頼らなければ知りようがない。

謎に包まれたアトランティスの歴史が記録に残っていない以上、初代とはいえ知りようがないのだ。

 

「一匹見かけたら百匹はいると思えっていうしな」

「今回のは七十二代目だとか言っていたぞ」

「一昨年の百八代目が今のとこ一番でしたっけ?」

「たまにアトランティスじゃなくて、ムーのやつが出てくることもあるよな」

「あるある!!」

 

一部が盛り上がる中で、一般の事務員達は心の中でねーよと、総ツッコミ。

 

「しかし、最近は何か平和ですねー」

「だよなー。ここんとこ邪神が復活したりとかもないし」

 

そんなにちょくちょく復活してたまるかと、またもや総ツッコミ。

した直後に響いた、この前のは大したことない小物でしたしねという声に、二メートル近い真っ赤な巨顔の妖怪、朱の盆もいささか顔を青くしている。

 

「魔王が召喚されたりとか、そんな事件もここのところ無いですしね」

「そういえば、今年に入ってからは魔王出てないな」

 

去年まではちょくちょくあったのか!?

驚愕の事実である。

実は週間世界の危機だった事実に、事務員達のSAN値はゴリゴリ削れていく。

床を這って掃除していた、古雑巾妖怪の白容裔(しろうねり)の顔色が真っ白になっている。

 

「あー、隊長!! アスモデウスのやつからメール来てますよ。今度、皆で飲みにでもいかないかって」

「んー、人数は・・・・・・七十ちょいも来るのか。俺達も含めてだから、どっか大人数で宴会できる店探すか」

 

これには、恋人が特殊部隊に所属している吸血鬼のピエレットも、開いた口が塞がらない。

どの口で魔王出ないなー、とか言うのだろうか、こいつらは。

 

「まあ、平和なのはいいことだ」

 

平和ってなんだろう?

多くの事務員達が、そう思ったある一日の事であった。

 

とっぴんぱらりのぷぅ




これにてうちの妖怪娘は完結となります。
本来はもう一本、蛇娘を書く予定があったのですが、最後だから自重とか取っ払って異形分増し増しで行こうと思ってたら、それはそれで別にまとめてしまえばと思ったので、次の機会に回しました。

この話に登場した彼女達のその後を書く、妖怪娘さんその後(仮題)
あるいは異形分多めの、妖怪娘さん濃ゆいの(仮題)でまた妖怪娘さんに付き合ってくだされば幸いです。

しかしもっと早く完結させる予定だったのに、大幅に予定超過してしまったなあ。


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四方山話
後書き


長らく拙作「うちの妖怪娘」にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

何故、妖怪を題材にしたエロSSを書こうかと思ったのか。

と聞かれますと、好きだからとしか答えられません。

何故に、自分は書こうと思ったのでしょうか?

思うに妖怪というのは、どこか人を引きつけてやまない、魅力があるからなのかもしれません。

過去に様々な人が、妖怪を題材とした作品を残してきました。

可愛いもの、かっこいいもの、エッチなもの、愉快なもの、そんな様々な妖怪達の世界。

しかし知れば知るほどに、彼らを理解するには膨大な知識が必要な事が分かります。

様々な書物を紐解けば紐解くほどに、違う顔を魅せる妖怪達。

成立した当時の文化背景、人々の暮らし、また歴史的事件。

様々なものが妖怪の成り立ちに関わっています。

中には風刺として創られた、当時の背景を知らなければ、あるいは洒落として当時の文化を知らなければ、理解することの出来ない妖怪も少なくありません。

未知への恐怖、あるいは解明できていない現象を妖怪として説明したもの。

それらが時代を経るにつれ、一種のマスコットとして愛されるようになり、たくさんの人を惹きつけてきました。

 

また水木しげる先生の描いたゲゲゲの鬼太郎等も、欠かすことの出来ない影響を与えています。

鬼太郎の持つオカリナに憧れ、当時の自分は学校で粘土を使ってオカリナを作ってみたりしたものです。

水木先生の描く、活き活きとした妖怪達。

一反木綿、ぬりかべ、砂かけ婆に子泣きじじい。

何度もアニメになり、鬼太郎の活躍に胸を躍らせた幼少の思い出。

悪い子は~というEDの歌に、どこかバツの悪い思いを感じていたあの時。

思い返すに、妖怪とは自分の世代には馴染み深いマスコットであり、そうなったのは間違いなく水木先生のおかげでありました。

それ故に先生の訃報には強い衝撃を受けたものです。

何の根拠もなく、水木先生は百歳は生きるだろうとそう思っていたのです。

 

水木先生と帝都物語の荒俣宏先生が、共に回った旅行記。

従軍中に一人だけ原住民からバナナを貰って食べていたから一人だけ肥えていた等、愉快な人柄をうかがえるエピソードなど楽しく読ませていただいておりました。

そんな偉大な先人である、水木先生がいなければ、今の妖怪文化は全く違ったものになっていたでしょう。

 

また近年ブームになった妖怪ウォッチなど、新たな妖怪作品も続々と生まれております。

そんな中で、自分のような素人の書くSSがどれほどのものなのかと、鼻で笑われるかもしれません。

しかし、好きなものは好きなのだから、書きたかったのだから、そうなったらもう書くしかなかったのです。

男の妄想溢れる、エロエロな妖怪SSというニッチな題材。

さて如何程のものであったか。

男の個性はなるべく削り、一部の例外はありましたが名前を出さないという手法は、素人の自分にはいささかハードルが高かったように思えます。

また技術的にも、まだまだ力不足を感じることも多く、単語一つに辞書を引き、文献を探してと手間もかかり、かなり遅い執筆ペースでもありました。

変に回りくどい言い回しになっていやしないか、エロSSなんだからもっと軽い文体にするべきでは? 地の文はもっと削って台詞を増やした方がいいのでは?

いつも試行錯誤しておりました。

この部分は話に関係ないからと、かなりの分量を削ることも多かったです。

そんな拙作を少しでも面白いと思っていただけたのなら、何よりの幸いであります。

 

一応の完結をしたとはいえ、今後もその後のあの妖怪はどうしているのかという後日談「妖怪娘さんその後(仮題)」また異形の要素を強くした「妖怪娘さん濃い目」あるいは「妖怪娘さん濃ゆいの」といった感じのタイトルで、また新たなお話をお届けできればなと思っております。

ちなみに現時点では、蛇娘、一反木綿、蟹坊主、絡新婦といったネタが出来ております。

またエッチなもの以外でも、真面目な妖怪物だって大好きなので、何かしらそういった話も書いていこうかと思いますので、気長にお持ちいただけると幸いであります。

 



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用語集

垢嘗め:江戸時代に描かれた妖怪。垢ねぶりとも。実は姿に関しては記述がない。当時の絵師が描いた、子供くらいの人型にざんばら髪で長い舌というデザインが現在も定着してる。有名なところでは、百種怪談妖物双六(むかしばなしばけものすごろく)の芳員画が有名。劇中では土地の影響を強く受ける、人間と交わると寿命を獲得するという設定が付いている。無論、この作品でのオリジナル設定である。

 

デュラハン:アイルランドの首無しの妖精。男説女説両方がある。近々死人が出る家にやってくると、戸を開けた家人にタライに満たした血を浴びせかけるという、はた迷惑な存在。劇中では飛頭蛮とルーツを同じくするとしている。

 

コシュタ・バワー:デュラハンの乗る首無し馬。超速いが、川を渡ることが出来ない。劇中ではプロレス技で沈められ、長期療養に突入した。

 

夜行さん:大晦日や節分など特定の日の夜に現れる鬼。首の無い馬に乗っている事もある。出会った人間を投げ飛ばしたり、馬で蹴り飛ばしたりする。

 

二口女:大きく分けて二つの逸話があり、山姥や蜘蛛が化けたタイプと、罪の意識から懺悔の言葉を吐露するためにもう一つの口が生じたとするタイプがある。髪が触手のように動くのは描いた絵師が、悪ノリでそのように描いたのが広まったためらしい。

 

烏天狗:ルーツは非常に古い妖怪。流星に関連付けられたり、ガルーダ=迦楼羅からの派生など様々な説がある。日本で天狗といえばこの烏天狗のことであったが、時代が下って行くと鼻の高い天狗が主流になっていった。女の天狗は羽以外は人間と見分けが付かないという説があり、劇中ではこれを採用している。

 

鬼:中国で幽霊の事。日本では隠からの派生で鬼の字を当てたとする説がある。様々な要素が交じり合っていった結果、とても一言で言い表せる存在ではなくなっている。その意味も時代や場所によって変遷を重ねており、非常にとらえどころのない妖怪。

 

隠形鬼:平安時代の豪族「藤原千方」が従えたという四鬼の一鬼。その名の通り気配を消し相手に襲いかかる。

 

三足烏:火烏とも。文字通り三本足の烏。道教、陰陽思想において三は陽の数であり、三本足は太陽を表すという。烏というのは世界各地で、太陽と関連付けられており、格の高い霊鳥として扱われる事が多いが、中国の伝承にて太陽を背負って運ぶ烏とされる。十羽おり、順番に太陽の運行を司っていたが、一度に十羽も出てきたために、地上が灼熱に包まれ、弓の名手である羿によって一羽を残して射落とされてしまった。

 

八咫烏:日本の霊鳥。八咫はこの場合、巨大の意で、文字通り大烏。神武東征において神武天皇を導いたとされる。太陽の化身ともされ、天照大神、高皇産霊尊、熊野大神の使いとも言われる。三本足の烏とされるが、これは中国の三足烏の影響によるものと見られ、三本足だとする文献は平安時代中期の「倭名類聚抄」が最古のようだ。

 

送り狼:送り犬とも。山道で道行く人にぴったりとついて回り、転んだら襲いかかってくるという。また地域によっては、転ばない限りは災から守ってくれる、自ら転ばせようとぶつかってくるとも様々な話が伝わっている。ニホンオオカミがその習性から、妖怪として伝えられたものとする説がある。

 

吸血鬼:ご存知レ・ファニュのカーミラ、ブラム・ストーカーのドラキュラで一躍大人気の題材になった。なおこの頃の吸血鬼は太陽で弱体化はしても滅ぶようなことはなかった。後発の作品でどんどん属性を盛られていく。主要な漫画雑誌を見ると大抵どこかで吸血鬼が登場する作品があったりする。

 

ブルコラカス:ブリコラカスとも。いわゆる狼男、人狼。死後は吸血鬼になると伝えられている。劇中では北欧圏の吸血鬼と記載したが、本来の伝承ではギリシャ・ローマ発祥で語源はスラブ語に遡る。これは劇中では別の勢力に押されて、現代では北欧圏にあらかた移ったという設定のため。あの地方は吸血鬼・人狼伝承が多いんで、勢力争いくらいあるよねと思ったのが発端。何かに活かせるかと思ったが、死に設定に終わった。

 

ノインテーター:ドイツはザクセン地方伝承の吸血鬼というかアンデット。九の殺人者の意。死んでからノインテーターになるのに九日かかるのが名の由来という。疫病を撒き散らす存在で、口にレモンを詰めると倒せるというよく分からないやつである。

 

ストリゴイ:ルーマニア地方の代表的な吸血鬼。叫ぶという意味のストリガ語源という。複数形はストリゴイイ。女性系はストリゴアイカ、複数形はストリゴアイチェ。赤髪碧眼で心臓が二つあるという。自殺、魔女、犯罪者、偽証者が死後なるという。また犬や猫がその上を通った死体もストリゴイになるという。鎌やワインを苦手とする。

 

妖狐:狐の妖怪のこと。天狐、空狐、野狐など格付けが存在するが、文献によっては入れ替わってたりしたりして。人間と結婚したりする話も多い。

 

猫又:猫の妖怪。初期の伝承では山奥に住み、人を襲っていたとされる。どうも大型の山猫か何かが妖怪として語られたと思われる。江戸時代以降は飼い猫が歳を経て变化する妖怪と変化していく。歳を経て尻尾が二つになり、妖怪化するとされたため、尾の長い猫は敬遠され、尾の短い猫が喜ばれたため、日本では尾の短い猫が増えたという。

 

妙多羅天女:子供の守護者で縁結びの神。北国奇談巡杖記では猫と関連しているため、猫の字をあてて、猫多羅としている。新潟県には、弥三郎という男の母親を食って成りすましていた化け猫が後に改心して、妙多羅天女として祀られたとされる話がある。また山形県にも母が鬼となり、狼を率いて人を襲っていたが、それを知った息子が憐れみ母を妙多羅天女として祀ったという話がある。

 

雪女:全国各地に類話が見られるが、悲恋が多かったりする。妖怪だったり幽霊だったり正体は割りと様々に語られる。お風呂で溶けちゃったという話もあるが、普通に暮らしてる事例もあるので能力も様々なのだろう。結構子沢山だったりする話も多い。

 

バーバ・ヤガー:ロシアに伝わる魔女。バーバで女性という意味らしく、ヤガーが名称のようだ。ルーツは大地母神だったという説もある。日本における山姥に近く、民話での役どころも似通った話が多い。人間と結婚してたり複数出てくることもある。

 

モコシ:スラブ神話の女神。恵みの雨を降らせたり、家畜の多産をもたらす豊穣神。キリスト教が布教されると聖人パラスケーヴァ・ピャートニツァと同一視されるようになり、パラスケーヴァは結婚や出産・家事等の女性生活や、大地の恵みと繁栄を司るという属性が付加された。

 

ルサールカ:ルサルカとも。ロシアに伝わる水の精霊。水死した女の幽霊ともされる。北部では醜い姿で嫉妬深い邪悪な存在として、南部では真逆に美しい娘の姿で愛嬌のある性格とされる。淫魔としての性質もあり、男を誘惑して水の底に引きずり込むともされる。

 

レーシー:ロシアに伝わる森の精霊。森に入った人間の方向感覚を狂わせ迷わせるという。とても素早いので、気配を感じて振り向いても、すぐに隠れて姿を見ることはできないとされる。靴や服を左右逆、後ろ前に着ればレーシーは混乱して彼らの魔法は解けるという。

 

スネグーラチカ:ロシア版のサンタクロースともいうべき霜の精ジェド・マロースの孫娘。雪で作られ命を吹き込まれた、白く輝く美しい少女。

 

臼負い婆:新潟県の海から何かを背負って現れた老婆。何かは後代の妖怪辞典で臼とされた。何年かに一度、現れるが特に害をなすことはないという。劇中ではバーバ・ヤガーとしている。

 

ゲドガキのバケモン:長崎県福江島のゲドガキという場所に現れたという化け物。

ぐずる子供に親がゲドガキのバケモンに喰わせるぞと脅したら、それを聞き付けて現れた。成長するまで待てという売り言葉に買い言葉で、成長するまで律儀に待っていたりする。喰ったらちゃんと親に報告に現れたり、妙な律儀さがあるようだ。

姿に関しては記述がないので、作中では趣味に走った。たぶん外国から来た悪魔の末裔とかそういう方向の妖怪かな、書いた本人もあんまり決めてない。

 

タンタンコロリン:タンコロリンとも言うが、これは別の妖怪との混同のようだ。

柿の老木が柿を取らずにいると現れ、街中を練り歩いて柿の実をポトポト落としていくという。柿の木の精霊とも言われる。僧形の男として現れ、尻穴を舐めろだの俺の糞を喰えと強要する話が伝わっている、紛れも無いド変態妖怪。

 

エルフ:北欧神話のアールヴに端を発する。日本語で言う妖精や妖怪くらいに範囲が広い言葉だったが、トールキンさんの作品で単一種族名として定着していく。

元の伝承だと人間を助けることもあるが、かなり悪辣な面が多い。劇中のエルフはイギリス民間伝承や文学作品がモチーフ。

 

白澤:白沢とも。中国の瑞獣で万物について知るという。中国の伝説の皇帝である黄帝と出会い一万千五百二十種に及ぶ天下の妖異鬼神とそれらに対する対処法を教えたという。この事を記した書を白澤図と呼ぶ。牛、または獅子に似た獣の体を持ち、三眼。鳥山石燕の妖怪画では体の左右にもさらに三眼と計九個の眼を持った存在として描かれた。厄や病魔を退けるとされ、その姿を記した物もお守りとして用いられた。

 

キョンシー:僵尸。中国では魂魄という考えがあり、魂は精神を支えるもの、魄は肉体を支えるものと考えられた。このうち魂がなくなり魄だけになった死体がキョンシーになるという。魂は陽、魄は陰であり、キョンシーは陰気である魄だけを持つ、動く死体。凶暴な人喰いであり、長い年月を経ると、神通力を備え空まで飛ぶようになるという。日本では霊幻道士のヒットで一時期大ブームになった。

 

毛女郎:顔も見えないほど毛むくじゃらの女郎姿の妖怪。鳥山石燕や黄表紙などに描かれている。女郎の風刺を描いたものとされる。劇中では妖怪用の除毛薬を作っており、動物系妖怪の女性に人気の商品となっている。

 

毛羽毛現:毛女郎と同じく毛むくじゃら妖怪。鳥山石燕の創作と見られている。仙人や疫病神の一種ともされる。劇中では毛羽毛現は妖怪用の育毛剤を作っており、○○坊主や○○入道系の妖怪ご愛用となっている。

 

小玉鼠:山で出会うと膨らんで破裂して内蔵を撒き散らすという傍迷惑な鼠の妖怪。

山の神の使いともされ、猟師は出会ったらすぐに山を降りたという。降りなければ災厄が振りかかるとされる。作中では破裂した後に再生しているが、これはオリジナル設定。

 

家鳴:鳴家とも。家や家具が揺れたり、ラップ音が鳴らす妖怪。ポルターガイストと同一視する説がある。人や動物の悪霊が似たような怪異を起こしたとされる話もあるが、妖怪画では小さな鬼が家を揺する絵が描かれており、これにより家鳴=鬼のイメージが付いている。

 

グレムリン:英国戦闘機パイロットの噂から生まれたという、近代の妖怪。その名は士官食堂にあったグリム童話とビールの銘柄フレムリンの合成だと言われている。機械に悪戯をして、誤作動を起こさせる。またガソリンを飲んでしまい、燃料切れを起こしたりもする。機械の原因不明の異常動作をグレムリン効果と呼ぶ。

 

ポルターガイスト:ドイツ語で騒がしい霊の意味。誰も何もしていないのに、物が動いたり、ラップ音が響いたり、発光現象や発火現象が起こる現象。錯誤や偽証によるものとされたり、土地や家屋の何らかの要素が、異常な振動を発したために起こるなどの説がある。近代では家鳴りもポルターガイスト現象の一種とすることもある。一説では思春期の子供が無意識な超能力によって引き起こされるともされる。劇中世界では家鳴りは家に憑き、ポルターガイストは人に憑く妖怪として区別している。

 

アスモデウス:古代イスラエルのソロモン王が使役したとされる七十二の魔王の一人。七十二の軍団を率いる悪魔。七つの大罪の色欲を司るという。一時期はソロモン王に取って代わって王になったともされる。礼節を持って対応すれば贈り物をくれたり、幾何学や天文学の知識を教えてくれるという。サラという娘に取り付いて、彼女の夫になるものを次々に殺したともされるが、サラ本人には手を出さなかったなど、どこか憎めないエピソードもある。

 

夜刀神:ヤトノカミ。常陸国風土記に記される蛇神。古墳時代辺りに出没して、二度程、工事の邪魔に現れたが、あっさり返り討ちにあったり、脅されて逃げ出したりとあまり強そうなエピソードがない。のだが、実はその姿を見ると一族ごと滅ぶというやばい神様だったりする。工事の邪魔に来た時にはそんな事はなかったようなので、かなり気を使って穏便に邪魔をしようとしてたと思われる。実は優しいやつなのだろう。今は隊長さんの式神をやっている。

 

八咫烏:神武東征の際、神武天皇のもとに遣わされ、熊野国から大和国への道案内をしたという大烏。太陽の化身とされ、導きの神。一般的には三本足の大烏のデザイン。日本屈指の霊鳥である。隊長さんの式神。

 

経凛々:弘法大師の名で知られる空海と、京都西寺の祈祷僧として知らる守敏という僧が法力比べを行った。敗れた守敏が不要となって捨てた経文。それが付喪神と化したものが経凛々であると鳥山石燕が創作した妖怪。劇中では書類整理等をして働いている。

 

鞍野郎:馬具の付喪神として鳥山石燕が創作した妖怪。元は源氏の家臣・鎌田政清が使っていた馬具であったという。

 

白溶裔:白容裔とも。江戸時代の妖怪絵師鳥山石燕の創作妖怪。古い布巾が化けたもので、ボロ布で出来た龍のような姿で描かれている。後世では体を覆うぬめりや、酷い悪臭で相手を気絶させるという設定も加わった。劇中では役場で掃除を行って働いている。

 

朱の盆:会津は諏訪の宮に出現したという妖怪。鬼や大入道等、文献によって姿にいくらか違いがあるが、その名の通り朱い盆の様な顔は共通のようだ。のっぺら坊と同じ様な逸話のある、再度の怪でもある。これに行き会った旅人は寝込んだ末についに死んでしまったという話もあり、また舌長姥なる妖怪と共に旅人を襲った話もある危険な妖怪。劇中では人を襲うことなく、役場で働いている。

 

陰陽師:現在は陰陽術を使うもの全てを指す言葉として使われることが多いが、元は役職の名前。陰陽五行説を元とする、日本の呪術、祭祀、天文学などを行っていた陰陽寮の役職の一つ。当時の立派な役人であり、貴族階級。

民間では法師陰陽師といった、非合法陰陽師等もいたと伝わっている。

ちなみに陰陽寮は、明治始めに解体されるまで存続していました。

 

いざなぎ流:土佐の民間信仰。陰陽道との類似が見られるため、時に陰陽道の派生ともされるが、神仏習合も激しく様々な要素が混じって独自発展した民間信仰である。陰陽道の式神に当たる式王子や、不動王生霊返しという呪詛返しなどがある。術者は太夫や博士と呼ばれる。呪詛を行えばいつか自分に返ってきて自分や家族に災厄が振りかかるとされる「返りの風」と呼ばれる概念があり、呪詛は忌むべきものと考えられている。

 

土砂加持:真言密教の儀式。清らかな砂を光明真言により加持を施し、土砂に法力を付与するもの。墓場に撒けば亡者は極楽往生し、病人は病が治り、持っていれば魔除けになるという。劇中では吸血鬼の寝床に具合良し。

 

六壬式:六壬神課、六壬とも。古代中国でおおよそ二千年前に出来た占い。陰陽道にとっては必須科目の占い方法。実は非常にたくさん種類が派生しており、日本のものも中国とは別に、独自発展していたらしいのだが、失伝してしまっている。ちなみに安倍晴明の書いたとされる占事略决という書物は六壬式の初歩の教科書である。

 

光明真言:フルネームは不空大灌頂光真言(ふくうだいかんぢょうこうしんごん)。オン アボキャ ベイロシャノウ マカボダラ マニ ハンドマ ジンバラ ハラバリタヤ ウンと唱える。罪や前世の業の報いなどを祓い清めるとされる。

 

ガンド:北欧に端を発する魔術。相手に人差し指を向けることで呪いをかける。ガンド撃ちともいう。他には幽体離脱や、動物への変身などができるという。元々は杖を用いたともされる。ガンドとは杖の意。

 

怪畑:ケバタケ。踏み込むと災厄が訪れるとされる畑。畑で死んた人間の祟りと言われる。他にも耕すと死ぬという死田など、田に関する怪異は意外と多い。漢字は正確にはどう書くのか調べきれなかったので、こちらの当て推量。




妖怪とか魔術とか簡単な解説。
随時追加予定。


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設定

どうでもいいような設定とかその後とかを垂れ流すだけの項目。


一話(垢嘗め)

アカナちゃんは江戸初期辺りに感得されて発生した垢嘗めの中でも古参の妖怪。300歳オーバーのロリババア。

人間と交わることで寿命を獲得するタイプの妖怪。

旦那さんは在学中にデキちゃった結婚した。

子供孕める様になってから、普通に喋れるようになったが、プレイ中など廓言葉を使うこともある。

子供はたくさん、目指せギネス。

と毎年のように産んでいたが、二十一人目でギネスぱねえとギブアップした。

なおギネス記録で最多出産は二十七回出産の六十九人。

人間って凄い!!

ちなみに近所に烏天狗の芹ちゃんが通い妻してたお兄さんのアパートがある。

タイトルは昔の漫画及びアニメのパロ。

 

二話(デュラハン)

ナハルちゃん、無職じゃないから。ちゃんと仕事もしてます。

デュラハンパパは日本に居着いて、定期的に旦那さんとプロレスしに来ています。

デュラハンママはカンカンです。パパさんは忘れてるけど後でたっぷり絞られることでしょう。

首コキが予想外に反響が多かったです。

ご近所さんに二葉さん家があります。

女同士色々結託してる模様。

タイトルはPSの某ロボゲームのパロ。

当初予定のタイトルは僕の彼女は首っだけ。こちらは海外ドラマのパロ。

 

三話(二口女)

二口女さん。人妻、人妻。

二人の出会いは高校時代。

両親は人間だけど隔世遺伝的に、妖怪の因子が活性化したタイプの妖怪。

結構コンプレックスを持っていたが、旦那さんはウェルカムだったので今はそんなでもない。

でも勝手に淫語を吐き出す後ろの口には困っている。

あの後、何度か励んで無事おめでた。

タイトルは、アニメのEDが裸マント祭だった某漫画のパロ。

 

四話(烏天狗)

芹ちゃんは惚れた男と既成事実作るために色々画策してた。

お兄さんはちょっとドン引きしたけど、まあ結婚して幸せにやってます。

なお産まれた子供は男女の双子。

結婚後は旦那さんは芹ちゃんの実家で暮らしてます。

二人の義兄とは可愛い妹をよろしくと凄まれてましたが、今は仲良くやってます。

五話の安志さんの修行先でもあります。

紅葉ちゃんに色々、アッチのテクを授けたりしております。

タイトルは某エロゲーのパロ。

 

五話(隠形鬼)

一転暗い話になった鬼娘。

当初は決めてませんでしたが、特殊部隊の人達いるのに、紅葉ちゃんの両親が何年も放置されてたのは何故? ということで隠れるのに長けた隠形鬼の系譜となりました。

これは藤原千方の四鬼の一鬼ですね。

安志という男側の名前が初めて出ました。

以後の話も男側の名前を出そうかと思いましたが、まあこの話だけになりました。

安志さんの強さは中の上くらい。密教系の術者です。

妖怪いるなら魔術だってあるよねということで出しました。

そのうち魔術使ったエロもアイディア出たら使おうみたいな感じで。

最後に紅葉ちゃんが看破した通り、安志さんは過去の思い出にしがみつこうとしただけです。

でもそれからちゃんと愛情を育んで、結婚を申し込みました。

タイトルは某腹減り蜘蛛さんな歌から。

 

六話(送り狼)

千ちゃんは動物の妖怪化したタイプ。

狼は人間と同じくらいの寿命と設定。

狐>猫>狼と動物によって寿命の差は激しいかな。

チョコの媚薬効果は、実は多少熱っぽくなる程度って設定。

それから結構励んじゃってる模様。

調教は順調です。

タイトルは某穀物神ヒロインなラノベのパロ。

 

七話(吸血鬼)

色々盛り過ぎてまとめ切れなかった力不足を実感する一作。

別口で練ってる伝奇バトルの設定や没設定が流用されています。

自己満足の類なのでスルーしてOK。

ダーリンさんはいざなぎ流の魔術師で剣士。

ピエレットさんは、ダーリンさんの上司である隊長さんには苦手意識を持っている。初対面で糸で絡め取られたのもあるが、隊長さんが吸血鬼狩りのレコードホルダーなのが大きい。

組み伏せられた時に大泣きして、それで子供のように慌てたダーリンの一面に興味を抱いてアタックを掛けるようになる。

数年という年月でようやく落ちて、今は色呆け中。

ダーリンさんが出張で退治しに行ったのはゲドガキの化け物。隊長さんも同行してます。

タイトルは某ゲーム名人モデルが出てたアニメのパロ。

 

八話(妖狐)

色々中二設定ぶち込んだ一作。

今まで出てきた妖怪+今後出る妖怪の情報がちらほら盛り込んだ自己満足の集大成である。でも蛇娘の事は出せなかった。

お紺さんは自重はするけど、根は重い女なので意外と大変。

化け猫のお妙さんと知り合ったのは百年位前と言っているが、実際は百五十年位前である。

お妙さん夫婦を通して、隊長さんの先祖とちょっと関わってたりする。

没になったが、腐女子属性を付けようか迷っていた。

「天国のお義父さん、どうすれば彼氏ができますか?」「BL趣味やめなさーい」「アーキコエナイキコエナイ!」

隊長さんは色々中二設定の塊。糸使い、剣士で武術家、陰陽師で仙術も使えるetc。

一番得意なのは気配遮断。隠形鬼より気配を消すのが上手いのでキモいと紅葉ちゃんには気味悪がられている。

成り行きでお紺さんとくっついたが、満更でもないご様子。

タイトルは某アイドルアニメのパロ。

 

九話(化け猫)

江戸後期くらいのイメージ。

お紺さんと出会うのはもう少し後。

撃たれた足の治りが悪いので、旅の途中だった隊長さんの先祖に呪符をもらって治したりしてた。余った呪符はお紺さんの手に渡る。

お妙さんはお紺さんに変化の仕方を教えてもらう。狐の方が変化が上手いから。

特に舌とか重点的に。理由はお察し。

タイトルは、某幕末が舞台の漫画およびアニメのパロ。

 

十話(雪女)

六花さんは人間とのハーフ。

母親も似たようなことやらかしたけど、まだ六花さんが幼かったから死なずに生きて育ててた。

六花さんと旦那さんは割と子沢山で十人くらい産んだ。

最後にやってきたのは長男。

タイトルはシェークスピアのあれのパロ。

 

十一話(バーバ・ヤガー)

青年は家族と同じ流行病でぽっくり逝った。

まあ平均よりは生きた方。

おみやげ持ってやってきたワシリーサさんが、墓穴を掘り返して絶望する。

結局子供はできなかったよ。

どこに行くにも常に彼の頭蓋骨を持ち歩いている。

もう二度と離さない。

タイトルはマジックドラゴンのパロ。

 

十二話(ゲドガキの化け物)

ちゃんとくっつきましたよ、ええ。

よーしパパじゃんじゃん働いちゃうぞー。

タイトルは某漫画から。

 

十三話(タンタンコロリン)

その後もストーカーしてたタンタンコロリン(♂)は、通報されました。

タイトルは漢詩から。

 

十四話(エルフ)

手玉に取っているようで、実は手玉に取られているのはエルちゃんの方。

義親には天狗だと思われています。

その度にエルフだからと訂正するが覚えてくれません。

魔法薬をネット販売しちゃって、色々事件起こして隊長さんにお説教されます。

お紺さんも買っちゃってね。

タイトルは某小説から。

 

 

年齢順

ワシリーサ>エル>アカナ>お紺>お妙>ピエレット>二葉>六花>リン>ナハル=紅葉>芹>千>潮

 

話の時系列

十一話(バーバ・ヤーガ)→九話(化け猫)→五話(隠形鬼過去部分)→一話(垢嘗め)→十三話(タンタンコロリン出会い)→七話(吸血鬼前半過去回想部分)→四話(烏天狗)→二話(デュラハン)→三話(二口女)→五話(隠形鬼)→六話(送り狼)→十二話(ゲドガキの化け物回想部分)→七話(吸血鬼)→十三話(タンタンコロリンラスト部分)→十四話(エルフ)→九話(化け猫ラスト)→八話(妖狐)→十話(雪女)→十二話(ゲドガキの化け物)→十話(雪女ラスト)

 

古代アトランティス:一時期、人気だった伝説の大陸。アトランティス人の転生体などそんな話がいくつかありましたね。オリハルコンなんかも、この大陸の伝説周りが出典だったりします。

劇中での設定では、高度な魔法文明を築いていましたが、魔法の暴走により海に沈んでしまった事になっております。しかもこれ個人の暴走。

他にもムーも同様の事件で消失したとしており、個人の暴走で大惨事になる魔法は以後の歴史で秘匿されていく方向に進んだと設定しております。

 

世界観裏話:実は別口で練ってる伝奇物の設定を流用しています。隊長さんは最終回後を想定した主人公の流用。差異としては、鬼が滅びかけていて、女の鬼がもういないという設定が消えています。

陰陽師やエクソシスト等は、人知れず結構な数がいまして、各国に公的私的問わずにたくさんの組織があります。

日本では明治維新後の廃仏毀釈、さらに陰陽寮の解体等を機にそれまでバラバラに活動していた様々な組織が統括され、新たに一つの組織として改編されたのが、現在の状態になりました。

ちなみにその時に政府組織に属さなかった組織も多く、現在もまだまだ存在しております。

 

邪神:八話でお紺さんが言っていた、ある事件。邪神が復活というものです。某小説家が作ったあの神話のアレです。上層部の戦力を動かす事への異常な忌避感により、後手後手に周り被害が拡大。業を煮やした隊長さん率いる特殊部隊達が、待機命令を無視して戦場に突入し激戦の末に仕留めました。

被害に関しては大災害のカバーストーリーで対処しました。

 

特殊部隊:所属は一応、防衛省という設定。発足は割と最近。隊長さんがあちこちから拾ってきた人員が多い。他にも各魔術組織からのドロップアウト組の受け皿的な部分もある。この場合のドロップアウトとは、落ちこぼれというより、規格外過ぎて扱いきれなくなった連中である。幼少期から学校にも行かせず、死亡率の高い異常な鍛錬やらを施されて育ってきた連中が大半のため、子供っぽく常識が欠落した基本的に頭のおかしい連中しかいない。現在は総勢で七十名ほど。構成される九割が人間だが、完全に実力主義なので化け物じみた人間ばかり。まだ残り一割の妖怪達の方が良識的なくらいである。




気晴らし代わりにちょっと書いてみました。
実は男側の設定もけっこうあるんですが、まあ出さない方がいいでしょうとここでも秘匿しておきます。男=自分でいいじゃないってことで。
使えなかった設定とかは、そのうち後日談的なものでも書くときに。


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参考文献

『いざなぎ流 祭文と儀礼』斎藤 英喜2002/12

『いちばん詳しい「ケルト神話」がわかる事典 ダーナの神々、妖精からアーサー王伝説まで』森瀬 繚2014/2/20

『いちばん詳しい「北欧神話」がわかる事典 オーディン、フェンリルからカレワラまで』森瀬 繚2014/2/20

『クリエーターのためのネーミング辞典』学研辞典編集部2011/11/22

『ゲームシナリオのためのファンタジー衣装事典』山北 篤2012/11/27

『にっぽん妖怪の謎 古代の闇に跳梁した鬼・天狗・河童・狐たちは生きている!?』阿部正路1992/7

『よくわかる「世界のドラゴン」大事典―ドラゴン、ゴブリンから、ナーガ、八岐大蛇まで』「世界のドラゴン」を追究する会 (著), ブレインナビ (編集)2007/10/1

『よくわかる「世界の幻獣・ドラゴン」事典―サラマンダー、応龍から、ナーガ、八岐大蛇まで』「世界の幻獣ドラゴン」を研究する会 (著), ブレインナビ (編集)2010/12/1

『よくわかる「世界の女神」事典』幻想世界を研究する会2008/12/16

『ルーン文字 (大英博物館双書―失われた文字を読む)』レイ ページ (著), 菅原 邦城 (翻訳)1996/4

『悪魔の事典』フレッド ゲティングズ (著),大滝 啓裕 (翻訳)1992/6

『悪魔の話』池内 紀1991/2/18

『異界と日本人―絵物語の想像力』小松 和彦2003/9

『遠野物語』柳田 国男1973/9

『怪談―小泉八雲怪奇短編集』小泉 八雲 (著), 平井 呈一 (翻訳)1991/9

『官能小説用語表現辞典』永田 守弘2006/10

『鬼の研究』馬場 あき子1988/12

『吸血鬼カーミラ』レ・ファニュ (著), 平井 呈一 (翻訳)1970/4

『吸血鬼ドラキュラ』ブラム ストーカー (著), 平井 呈一(翻訳)1971/4

『決定版 日本妖怪大全 妖怪・あの世・神様』水木しげる2014/2/14

『幻獣大全』健部 伸明2004/5

『幻想世界11ヵ国語ネーミング辞典』ネーミング研究会2011/6/28

『幻想世界和風ネーミングナビゲーション』和風ネーミング研究会2013/4

『幻想動物事典』草野 巧 1997/4

『現代語訳 雨月物語・春雨物語』上田 秋成 (著), 円地 文子 (翻訳)2008/7/4

『江戸武蔵野妖怪図鑑』山口 敏太郎2002/7

『呪術探究 いざなぎ流 式王子』斎藤 英喜2000/5

『初版金枝篇』上下巻ジェイムズ・ジョージ フレイザー (著),吉川 信 (翻訳)2003/2

『図解 悪魔学』草野 巧2010/6/25

『図解 陰陽師』高平 鳴海2007/10/18

『図解 吸血鬼』森瀬 繚 (著), 静川 龍宗 (著)2006/7/7

『図解 魔導書』草野 巧2011/7/29

『図解 錬金術』草野 巧2006/2/17

『図説・日本未確認生物事典』笹間 良彦1993/12

『水木しげる妖怪大百科』水木 しげる (著), 小学館クリエイティブ (編集)2004/10

『星座と神話がよくわかる本』世界の神話と伝説研究会2015/2/26

『西洋魔物図鑑』江口 之隆1996/12

『知っておきたい日本の神話』瓜生 中2007/11

『地獄の辞典』コラン ド=プランシー (著), 床鍋 剛彦 (翻訳)1997/11

『鳥山石燕 画図百鬼夜行全画集』鳥山 石燕2005/7/23

『帝都物語』荒俣宏1985~

『天狗の研究』知切 光歳1975

『動物妖怪譚』日野 巌1979

『日本の呪い―「闇の心性」が生み出す文化とは』小松 和彦1988/2

『日本の伝説』柳田 國男1977/1/25

『日本妖怪大事典』水木 しげる (著), 村上 健司 (著)2005/7/16

『日本妖怪変化史』江馬 務2004/6

『萌え萌え妖怪事典』妖怪事典制作委員会2008/7/24

『北欧・ケルトの神々と伝説の武器がわかる本』かみゆ歴史編集部2012/10

『魔導書(グリモワール) ソロモン王の鍵―護符魔術と72人の悪魔召喚術』青狼団1991/12/9

『妖怪の常識』ファミリーマガジン2014/9/24

『妖怪談義』柳田 國男1977/4/7

『妖怪馬鹿』京極 夏彦 (著), 村上 健司 (著), 多田 克己(著)2001/2

『憑霊信仰論』小松 和彦1994/3/4

『神隠しと日本人』2002/7

新紀元社Truth In Fantasyシリーズ

 



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