獣の歌 (ミサエル)
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Amazing night

初めましての方は初めまして。
そうでない方はこんにちは(こんばんは)。
ミサエルと申します。
楽しんでいただけたら、幸いです。

狩り、開始。

※追記
必殺技名を修正しました。5/30 0:05


「ハァッ...あぁっ...。」

 

夜中の街を、傷だらけの少年がよたよたと歩いていた。

辺りに人気はなく、夜空だけが、少年を見ていた。

 

―嫌だ...。逃げなきゃ...。

 

少年はただひたすらに、その一心で歩く。

一体、何から逃げているのか。

 

―...ッ!!

 

唐突に、少年が足を止める。

数秒間、苦しそうな、迷っているかのような表情を浮かべた。

すると、すぐに駆け出す。

風にでもなったかのようなスピードだ。

駆けながら、腰に巻いた奇妙なベルトに着いている左のグリップを握る。

 

「うぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

 

獣のように叫び、少年は自身の存在を知らしめるかのように、星に向かって咆哮した。

 

 

「アマゾンッ!!」

 

 

※※※

 

―What?何なの?

 

―私は一体、何を見ているの?

 

私、小原鞠莉(おはら まり)は、この状況が何も分からなかった。

今夜は何だか眠れなかったから、こっそり部屋を抜け出して、砂浜を散歩していたの。

そこまでは理解できるわ。

というか、できているわね。

そしたら、倒れている男の人が居たから、声を掛けたの。

 

―「大丈夫ですか?」

 

すると、その男の人が、

 

―「腹が...、減ったっ!」

 

って言って、体から蒸気をあげ始めたの。

 

―「へ?」

 

思わず、2、3歩。

いや、5、6歩は後ずさったわね。

そしたらね、爆発するみたいに蒸気が晴れて、その人は、見たこともない怪物(クリーチャー)になっていたの。

びっくりしちゃって、腰が抜けたわ。

そいつは、私の方に歩み寄ってくるの。

 

―「食ワセロ...。」

 

なんて言いながら。

 

とても、怖かったわ。

 

すぐに逃げたしたかった。

 

でも、私の体は、動いてくれなかったの。

 

―あぁ、私、こいつに殺されちゃうのかな。

―せっかく、あの子達と仲直りできたのに。

―また一緒に、アイドルができると思ったのに。

 

 

―ごめんね。皆。

 

 

私は、死を覚悟したわ。

目の前でそいつが腕を振り上げた。

私を、殺そうとしたのね。

目をギュッと瞑って、私はその瞬間を待ったわ。

でも、何故だか何も起こらなかったの。

いつまで経っても、私は殺されなかったわ。

 

...いや、『何か』は起こったわね。

 

私には、その怪物(クリーチャー)と、別の何かの叫び声が聞こえた。

恐る恐る目を開けてみると、さっきの怪物(クリーチャー)と、もう一体の怪物(クリーチャー)が戦っている姿が見えたの。

それが今の状況よ。

我ながら何を言っているのか、よくわからないわ。

私を殺そうとした怪物(クリーチャー)は、いかにも、って感じの、蟻人間みたいな見た目だけど、もう一体は、何かが違ったわ。

何だか、人に創られたみたい。

メタリックグリーンの皮膚に、赤い大きな目(複眼って言った方が良いかしら。)と、胸やお腹に着いた黄色いプロテクターのようなもの。

右の二の腕に着いた銀色の腕輪に、同じく銀色のベルトが、月の光を反射しているわ。

腕や足、特に踵からふくらはぎにかけては、よく切れそうなカッターみたいなヒレがついているわね。

そのヒレで、さっきから蟻みたいな方を何度も切りつけているわ。

その度に黒い体液が飛び散って...何だか気分が悪くなりそう。

すごく荒々しい、野生の戦いね。

お互いに一歩も譲らず、叫びあっているわ。

 

...でも、何でかしら。

 

何だかとっても、哀しそう。

 

「ヴォォォォォォォォ!!」

 

一旦距離をとった緑色の方が叫んで、ベルトの左側に着いたグリップ(?)に手を掛けて、捻った。

 

『violent attack』

 

くぐもった電子音声が聞こえて、次の瞬間には、一気に距離を詰めた緑色の腕が、蟻の怪物(クリーチャー)の胸を、刺し貫いた。

腕を引き抜くと、勢いよく体液が吹き出たわ。

そして、蟻の怪物(クリーチャー)の体がどろどろに溶けた。

 

終わったってことかしら...。

 

私がぼおっとその光景を見ていると、不意に緑の怪物(クリーチャー)が、こちらを向いたわ。

プロテクターのところには、蟻の怪物(クリーチャー)のだと思う黒い体液がこびりついている。

でも、月を背にして立つ姿は、何だか、『戦士(ヒーロー)』みたい。

すると、急に緑色の怪物(クリーチャー)が膝から崩れ落ちた。

 

って、ええっ!?

 

大丈夫かしら!?

 

慌てて駆け寄ってみると、そこには私と同じくらいのボーイが倒れていた。

 

「ねぇっ、ちょっと!」

 

少し体を揺すってみるけど、反応がない。

息はしているから、気を失っただけみたいね。

 

...しょうがないか。

 

「よいしょっ。」

 

Wow!意外と軽いわね。

それにもっとガッシリしてるのかと思ったら別にそうでもないみたいだし。

本当にこの子が、さっきまであんなに荒々しく戦っていたのかしら?

私は彼に肩を貸す形で、歩き始めたわ。

どこに行くのかって?

勿論、私の家。ホテルオハラによ!

こんなに傷だらけの子を、放っておくわけにはいかないもの!

 

...それに、さっきの怪物(クリーチャー)のこと、知らないままでいるのは、怖いし。

 

この子が起きたら、教えてもらおうっと!

さ、早く帰らなくちゃ!

私たちは夜空と海に見守られながら、砂浜を歩いていったわ。

 

何だかとっても、『シャイニー!』なことが起こりそう!

 

そんな予感と、一緒に。

※※※

 

異形の少年と、優しい少女。

 

この2人が出会ったところから、この物語は始まります。

 

決して綺麗ではないかもしれない、だけどどこか美しい、命と明日の物語。

 

 

 

 




NEXT HUNT

「僕は...何なんだ?」

「思い出すまで、マリーと一緒に居れば良いわ!」

「...どこに行ったのかな~?」

「僕は...人間だ!!」

※※※
はい、いかがだったでしょうか?
少しでも楽しんでいただけたのなら、本望です。
それでは、次回。


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Behind the dream

どうも、ミサエルです。

第2話となります。

頑張って書きました。

それでは、今回もお楽しみください。


狩り、開始。




...ここは、どこだ。

目覚めたのは、知らない場所だった。

一言で形容するなら、『高級ホテル』といった所だろうか。

...何でこんな所にいる。昨日、僕は何をしたんだ。

記憶を辿る。

あぁ、そうか。

また、戦ったんだ。

逃げ疲れていた所に、あの戦闘だったから、かなり疲れた。それで、倒れたんだ。

でも、一体誰がここに?

そう思ったとき、部屋の扉がノックされた。

 

「起きてるー?入っても良いかしらー?」

 

扉の向こうからは、女の子の声が聞こえてきた。

 

「....どうぞ。」

 

警戒しつつ、返事をした。

ガチャリと扉が開き、僕と同い年くらいの綺麗な金髪の子が、部屋に入ってきた。

肩を露出させた白いワンピースタイプの寝間着が、よく似合う。

 

「グッモーニン!良かった、目が覚めたのね。」

 

女の子が僕に微笑んで、言う。

その笑顔はまるで、大きく、綺麗なヒマワリが咲いたようだった。

 

「もしかして、君が僕を?」

「イェース!私がここに運んだのよ。ここは、私のパパが経営してるホテルなの。」

 

なるほど、そうだったのか。

 

「ありがとう。」

「ノープロブレム!何なら、お礼を言うのは私の方よ。」

「ん?何で?」

 

身に覚えがない。

 

「だって、あなたが昨日、私を、怪物(クリーチャー)から守ってくれたんじゃない。」

「そうなの?」

「覚えてないの?」

「うん。そうみたい。」

 

あの場にこの子が居たのか。

戦いに夢中で、気がつかなかった。

 

「そう。―まぁ、良いわ!私は小原鞠莉(おはら まり)!『マリー』って呼んで?」

「よろしくね、―小原さん。」

「マリーだよ!」

 

ウインクしながら小原さんはそう言うが、初対面の女の子をニックネームで呼ぶのには、抵抗がある。

 

「......マ」

「マ?」

「......鞠莉、ちゃん。」

 

頑張ってみたが、やっぱり無理だ。これで勘弁してもらいたい。

そんな僕のささやかな願いが通じたのか、鞠莉ちゃんは、

 

「んー。まぁ、いいわ!」

 

と言って、ニコっと笑った。

やっぱり、綺麗で、可愛い。

 

「それで、貴方は?」

「あ、僕?」

 

鞠莉ちゃんの笑顔に見とれていると、鞠莉ちゃんが僕に尋ねてきた。

そういえば、まだ名乗ってなかった。

 

「僕は...。」

 

.....あれ?

 

「どうしたの?」

 

僕が動揺していることが伝わってきたのか、鞠莉ちゃんが僕の顔を覗きこみ、聞いてくる。

 

「......分からない。」

「え?」

 

手が震え、頬を冷や汗が垂れる。

 

僕は...。

 

「僕は......誰だ?」

 

僕は、何なんだ?

 

なぁ、『僕』。

 

 

お前は、誰だ?

 

 

※※※

昨日、私が助けてもらった彼は、自分が何者か分からないと言った。

 

「思い出せないの?」

「......。」

 

無言で頷く、彼。

 

「何か覚えていることは、ある?」

 

私が聞くと、彼は少し考える。

 

「『何か』から逃げていたこと。それと、『あいつら』のこと。」

「『あいつら』って、あの怪物(クリーチャー)のこと?」

「うん。」

 

それは覚えているのね。

一体、この子に何があったのかしら。

私が考えていると、彼は『あいつら』について話しだした。

 

「あいつらは、『アマゾン』。」

「アマゾン?」

 

私が聞き返すと、彼は頷き、続きを話す。

 

「『アマゾン細胞』っていう未知の細胞に、生物の遺伝子が組み合わさって生まれた、怪物。」

「そんな危険な細胞、一体誰が。」

「それは....分からない。分かることは、アマゾンはタンパク質、特に人の肉を食べたがるってこと。」

「...人の、肉。」

 

それで、私は昨日襲われたのね。

 

「僕も、多分アマゾンだ。」

 

ん?何ですって?

 

「貴方が、アマゾン?」

「うん。でも、今はお腹が空いていないし、鞠莉ちゃんを見ても、可愛いとは思っても、食べたいとは思えない。」

「....ふ、ふ~ん。そうなのね。」

 

この子、さっきあだ名で呼ぶのは恥ずかしがってたのに、今、さらっと可愛いって言ったわね。

どうしよう。こんなに真面目に、真剣に可愛いって―しかも、男の子に―言われたこと無いから、何だか照れちゃう。

あぁ、顔が熱くなってきたわ。

 

「鞠莉ちゃん、どうしたの?」

 

気がつくと、彼の顔が目の前にあった。

 

.....って、近い近い!

何か距離近くない!?

しかも、昨日は暗くて分からなかったけど、結構格好いい顔してるから、余計に照れちゃうじゃない!!

 

「だ、大丈夫!!何でもないから!!」

 

慌てて私は彼から少し離れる。

不思議そうな顔をする彼を見て、ふと、思いついた。

 

「ねぇ、名前、考えない?」

「名前?僕の?」

「そう!思い出すまでの、仮の名前!」

 

私がそう提案すると、彼は少し考えてから、

 

「そうだね...。うん。無いと困るし、考えてみるよ。」

 

と言った。

 

「あ、マリーが考えてあげる!」

「え、いいの?」

「オフコース!う~ん、そうねぇ。」

 

私達が出逢った、昨日の夜を思い出す。

月と星が綺麗な、夜だったから....。

うん、決めた!

 

星夜(せいや)ってどうかしら?『星』に、『夜』って書くの!」

「『星夜』か....。」

 

彼は少し目を瞑って、それから、うん、と頷いた。

 

「気に入った。素敵な名前だ。ありがとう、鞠莉ちゃん。」

 

そう言って彼、星夜は、微笑んだ。

とってもキラキラした、良い笑顔ね。

 

「気に入ってもらえて、何よりだわ。」

 

「うん、とっても、気に入ったよ。」

 

すると星夜は立ち上がり、枕元に私が置いておいたあのベルトを肩に掛けて、

 

「それじゃ、そろそろ行くよ。」

 

と、部屋を出ようとした。

 

「ちょ、ちょっと!どこ行くのよ?」

 

私は、星夜の前に回り込む。

 

「どこ、だろうね。」

 

星夜は、少し下を見て、呟く。

 

「...どういうこと?」

 

星夜は顔を上げて、私に微笑んだ。

微笑みながら、言う。

 

「僕は、人間じゃない。それに、記憶もない。このままここに居たって、鞠莉ちゃんや他の人に、迷惑をかけてしまう。だから、ここを出る。大丈夫、これまでも多分、そうやって生きてきたから。」

 

その笑顔は、何だか。

さっきの、シャイニーな笑顔とは全然違う。

 

あぁ、そうか。

 

この子は、寂しいんだ。

 

すぐに分かったのはきっと、そんな風に笑っていた誰かさんを、よく知っているから。

 

「!?鞠莉ちゃん?」

 

気がつくと、ごく自然に、星夜を抱き締めていた。

 

「.....大丈夫よ。」

「...え?」

「私ね、つい最近まで、友達とケンカしてたの。しかも、2年間も。」

 

脳裏に浮かぶのは、親友2人の顔。

 

「その間、とっても寂しかったわ。それで、貴方みたいに、どこかできっと、無理矢理笑っていたの。

 

「だけどね、分かったの。

 

「そんな笑顔は、笑顔じゃないの。

 

「笑顔には、人を元気にする力がある。

 

「でも、無理して作る笑顔には、そんな力は無いわ。」」

 

「鞠莉ちゃん...。」

 

「私は、星夜に、心から笑っていてもらいたいの。勿論、寂しい思いもしてほしくない。ここに居れば、私が絶対に、星夜を寂しくなんてさせないわ。」

 

「でも、僕は...。」

 

「人間じゃなくても良い。記憶が無いのなら、思い出すまで、マリーと一緒に居れば良いよ!」

 

「...だから、ね。」

 

少しだけ、抱きしめる力を強くする。

 

「ここに居て。」

 

星夜の鼓動が伝わってくる。

私達人間と、何も変わらない、命の音。

 

「...分かったよ。」

 

そう言って、星夜は私の肩を掴んで、引き離す。

とっても優しく、そっと。

 

「鞠莉ちゃん、僕は、ここに居てもいい?」

 

私の目をじっと見て、そう言った。

返事は、決まっている。

 

「もちろんよ。」

 

私は微笑んでそう答える。

すると、星夜も笑って、

 

「ありがとう。」

 

って、言った。

 

それはとっても素敵な、心からの、とびきりの笑顔だったわ。

 

※※※

少年、星夜が居場所を見つけた頃。

とある山奥を、一体の(アマゾン)が歩いていた。

 

「...どこに行ったのかな~。」

 

どこか狂気めいた雰囲気を纏い、ゆっくり、堂々と歩く、赤い(アマゾン)

腰には、星夜と同型のベルトが巻かれており、その姿も、星夜のそれと、少し似ていた。

その身体は傷だらけで、数々の修羅場をくぐり抜けてきたであろうことを、容易に想像させる。

(アマゾン)は不意に、緑色の複眼をどこかに留めた。

 

「そこか。」

 

そう言うと跳躍し、1本の樹を、腕のヒレで切り倒した。

ミシミシと音を立てて倒れる樹。

と、完全に倒れきる前に、樹冠から何かが飛び出した。

その影は赤い(アマゾン)を襲撃する。

 

「ガァァァァァァ!!」

 

それは、青い(アマゾン)だった。

星夜や赤い(アマゾン)と同じように、腰にはベルトが巻かれているが、青い(アマゾン)が身につけているのは、星夜達のモノとは違い、赤く、より近代的な見た目だった。

青い(アマゾン)は、装甲を身体中に纏っており、その顔もまた、装甲で守られていた。

青い(アマゾン)の攻撃を、腕で受け止めた赤い(アマゾン)

両者一歩も退かず、対峙し続ける。

 

「いい加減、諦めたらどうだ。お前達みたいな『化け物』は、この世界に存在しちゃいけないんだよ。」

 

「うるさいっ!」

 

赤い(アマゾン)の腕を弾き、距離をとる青い(アマゾン)

 

「あんたなんかに、僕達を語ってほしくない!!

 

「僕達は....

 

「僕は...

 

「人間だ!!」」

 

そう言うと、青い(アマゾン)は、地面を力の限り叩いた。

砂埃が、視界を遮る。

 

「小癪な真似を....!」

 

赤い(アマゾン)はその不意打ちに、身動きが取れなかった。

砂埃が晴れたときには、青い(アマゾン)の姿は、そこには無かった。

 

「....逃げられたか。まぁ、いい。いずれ見つけるさ。」

 

そう言って、踵を返す。

 

 

「あぁ、そうさ。見つけてやるよ。そして、殺してやる。一匹残らず、全て。」

 

 

「勿論、『あいつ』もなぁ。」

 

 

ひとしきり呟くと、赤い(アマゾン)も、無常の世界へ、消えていった。

 

 

 




NEXT HUNT

「執事!?」

「これが私達、『Aqours』よ!」

「僕が、鞠莉ちゃんを、皆を守る!」

「この、甘ちゃんが!!」


※※

如何だったでしょうか。

最後に出てきた2体は恐らく簡単に予想がついたと思いますが、アマゾンアルファとアマゾンネオです。

3体のアマゾンが出逢うとき、一体何かが起きるのか。

今後も、読んでいただければ、幸いです。

また、お気に入り登録してくだった


野獣と化した先輩さん、サスライガーお兄さんさん、

めんどくせえええさん、セイ2015419さん、悠貴さん、

八瀬か瀬戸瀬さん、島知真さん


ありがとうございます!


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Creatures

どうも、お久しぶりです。ミサエルです。

だいぶ間が開いてしまいました。

夏も始まってしまい、熱中症に悩まされています。

まぁ、そんなことは置いといて。

今回も拙い駄文な上に、少し長いのですが、楽しんでいただければ、幸いです。


狩り、開始。




―遅い...遅すぎますわ。

私、黒澤 ダイヤ(くろさわ だいや)は怒っていた。

イライラしていた、と言った方がいいのかもしれない。

私が今居る場所は、静岡県沼津市某所にある、私立浦の星女学院。その、校門前。

そこで私は、人を待っていた。

別に、それだけなら特に怒ることはない。

そう、それだけなら。

私は携帯電話を開き、現在時刻を確認する。

午前6時10分。

ディスプレイ上で、デジタル表示の数字がそう主張していた。

さすがの私でも、こんな朝早くから起きて、しかも、学校に居ることなんてほとんどない。

では、何故私は今、ここに居るのか。

そして、誰を待っているのか。

それは昨夜に遡る。

 

***

 

―『ふぅ。いいお湯でしたわ。』

 

昨夜、午後9時30分。

私はお風呂から上がり、濡れた髪をタオルで拭きながら自分の部屋に入った。

一人言を呟きながら、なんとなく、窓の外を眺める。

月明かりが煌々と、夜の闇を優しく照らしていた。

それを見ていると、ふと、親友達のことを思い出した。

少しだけ離ればなれになってしまっていた、とても大事な2人。

 

―(もう二度と、元には戻れないと思っていたというのに。まったく、人生は何が起きるのかわかりませんわね。)

 

ほとんど修復不可能だったこの縁を繋いでくれた、後輩達と、大事な妹。

彼女達にはとても感謝している。

そして、また昔みたいに接してくれる、あの2人。

 

―『ありがとう。なんて、照れくさくて言えませんわ。』

 

そう呟くと、なんだか何もかもがいとおしく思えて、思わず笑みがこぼれてしまった。

その時、机の上に置いておいた携帯電話から、着信音に設定してあるμ'sの『Snow haration』が流れた。

 

―(はて、こんな時間に誰かしら)。

 

携帯電話を開くと、そこには先程思い浮かべた親友の1人の名前が表示されていた。

少しだけ、ドキリとした。

とりあえず、電話に出る。

 

―『はい。ダイヤですわ。鞠莉さん?突然どうしたので』

―『ダイヤ!!大事な話があるの!明日の朝6時に、学校で待ってるわ!!』

―『は?えっ、ちょ、鞠莉さん?』

 

早口で捲し立てられ、私が聞き返した時にはもう、ツー、ツーと電話が切れたことを告げる話中音が鳴っていた。

そして部屋には、突然のことに理解が追いつかず、呆然と立ち尽くす私と、どこかから聞こえる鈴虫の鳴き声が微かに響いていた。

 

***

そんなわけで今に至る。

確かに、鞠莉さんが唐突な行動をとることは特に珍しいことではない。

だがしかし、昨夜の電話口での鞠莉さんはどこか焦っていたように思えた。

一体何があったのか。

心配になった私は、もう少し寝たいと呟く自分をなんとか気合いで起こし、眠い目を擦りながら5時50分にはこの場所で鞠莉さんを待っていた。

しかし、既に約束の時間から10分も過ぎているというのに鞠莉さんは一向に現れない。

 

―全く、人をわざわざ朝早くから呼び出しておいて自分が遅刻するとは一体どういう了見でしょう。

―鞠莉さんが来たら一言言っておかなければいけませんわね。

 

イライラしながら私は、特にやることもないのでぼうっと目の前の景色を眺める。

すると、この学校に繋がる坂を登ってくる一台のバイクの存在に気がついた。

 

―まぁ、なんて野蛮なバイクでしょう。

 

これが、そのバイクに対する私の第一印象だ。

赤く、生体的な見た目のフロントカウルに、緑色のヘッドランプ。

お世辞にも、趣味が良いと言えるものではないだろう。

 

―暴走族、というわけではなさそうですわね。

―一体どんな人が乗っているのでしょう。

 

私はほんの少しの興味から、そのバイクが坂を登ってくる様子を見ていた。

 

「....ヤ~!」

「...イヤ~!」

 

―ん?何でしょう。

―今、聞き覚えのある声がどこからか聞こえたような。

 

「ダイヤ~!こっちよ~!!」

 

その声は、あろうことか坂を登ってくるバイクの後部座席から聞こえていた。

こちらに向かって手を振る、特徴的な髪型のブロンドヘアーが目に入る。

 

―...ま、まさか。

―まさかとは思いますが...。

 

「あ、やっとこっち向いた。おーい!ダイヤー!」

「鞠莉さん!?」

 

被っていたと思われるヘルメットを頭の後ろにやり、ゴーグルを着けたまま立ち上がろうとする彼女は、何を隠そう、私を呼びつけた張本人である鞠莉さんだった。

 

「鞠莉ちゃん、危ないから立ち上がろうとしないで。」

「オウ!ソーリー。」

 

運転手に言われて素直に座り直す鞠莉さん。

そこから私の前に来るまで1分もかからなかった。

ゴーグルとヘルメットを外し、運転手に預けると、すぐに私の所へ駆けてくる。

 

「グッモーニン!どう?ダイヤ?びっくりしたでしょ~?」

「びっくりどころではありませんわ!」

 

感情のままに私は叫ぶ。

 

「色々と言いたいことがありましたが、とりあえず2つ言わせてくださいまし!まず、人を呼びつけておいて自分が遅刻するとはどういうことですの!?次に、その野蛮なバイクと運転手の方は一体どうしたのですか!?」

「オーウ!ダイヤってばベリーアングリーね!」

「ふざけるんじゃありません!!」

 

どうどう、と私をまるで、自分が飼っているという馬をしつけるみたいになだめる鞠莉さん。

すると、例のバイクの運転手が鞠莉さんの横に歩いてきた。

 

「鞠莉ちゃん、この子が、話してた子?」

「そうよ~。名前の通り硬度10のお堅い頭の生徒会長、黒澤ダイヤよ!」

「紹介の仕方に悪意がありますわ!!」

 

―はぁ。まったく、朝から疲れますわね。

 

「...それで?鞠莉さん、その殿方は誰ですの?」

「あぁ!まだ言ってなかったわね!」

 

そう言うと鞠莉さんは隣に立っている正体不明の殿方の腕を取り、私に紹介してきた。

 

 

「紹介するわね!こちら、マリーのフィアンセ!オハラ・セイヤよ!」

 

 

「...はぁ!?」

 

私が驚愕の声を上げたことは、言うまでもないだろう。

 

※※※

午後15時30分。

浦の星女学院内の体育館にある、『スクールアイドル部』の部室。

そこに居たのは9人の少女と、1人の青年だった。

 

「それで、その人は結局誰なの?鞠莉ちゃん。」

 

灰色がかったショートボブの髪の少女、渡辺 曜(わたなべ よう)が、鞠莉に聞く。

 

「だ・か・ら!私のフィアンセだって言ってるでしょう?」

 

ウインクをして青年の腕に抱きつきながら答える鞠莉。

 

「ええっ...。」

「えっと、セイヤさんだっけ?ホントのとこ鞠莉とはどういう関係なの?」

 

鞠莉の返答に少し困惑する曜。

その次に、今度はポニーテールの松浦 果南(まつうら かなん)が聞く。

 

「とりあえず...フィアンセではないです。」

「もう!セイヤはつれないわね。」

 

青年、星夜が困った顔で答える。

その答えに少しだけ不機嫌そうな鞠莉。

 

「じゃあ、どういう関係ずら?」

 

静岡のご当地パンであるのっぽパンを食べながら、国木田 花丸(くにきだ はなまる)が方言を交えて質問する。

 

「きっと、2人は前世からの因縁により巡りあった禁断の」

「善子ちゃん、椅子の上に立つんじゃありません。」

「善子言うな!!」

 

黒いシニヨンが特徴的な津島 善子(つしま よしこ)が椅子の上に立ち上がって何か言うが、それを大人しそうな雰囲気の桜内 梨子(さくらうち りこ)が座らせる。

どうやら自分の名前が好きではないらしい。

その様子を見ながら、星夜は少し考え、

 

「...拾われた、って感じですかね。」

 

と、答えた。

 

「ひ、拾われた...?」

 

姉であるダイヤの後ろに隠れながらそう言ったのは、赤毛をツインテールに結った少女 、黒澤 ルビィ(くろさわ るびぃ)である。

 

「本当なの?鞠莉ちゃん。」

 

先程から、ことの成り行きを見守っていた高海 千歌(たかみ ちか)が鞠莉に聞く。

 

「そうね~、確かに、そう言えるかも。」

「へぇ~。そんなことあるんだね~。」

 

うんうんと何故か納得する千歌。

 

「...鞠莉ちゃん。」

「ん?なぁに?セイヤ?」

「僕、ここに連れてきてもらった理由がまだ分かんないだけど。」

 

星夜が鞠莉に言われたことは、

『私の友達に紹介する!』

というものだけだった。

紹介されることに大して抵抗はないのだが、その意味が星夜にはよく分からないのだった。

 

「だって、新しい友達を紹介したくなるのは、当たり前じゃない。」

「そういうものなの?」

「そうよ?」

「そうなんだ。」

 

星夜の質問に、さも当然のように答える鞠莉。

 

「と・も・か・く!」

 

手を叩いて、仕切り直しをするかのように声を上げる鞠莉。

 

「星夜!これが私達、『Aqours(アクア)』よ!」

 

と、自分達を紹介した。

 

「『Aqours』?」

「そう!私達がスクールアイドルとして活動するときの名前よ!」

「あぁ。昨日話してたやつね。」

 

実は星夜は昨日、鞠莉に学校での話を聞かされていた。

話す中で、見せた方が早いと思った鞠莉が今こうして自分の仲間達を紹介したのだ。

 

「それじゃ、改めて皆に紹介するわね。」

 

鞠莉が他のメンバーの方を向いて言う。

 

「こちら、私の新しい友達にして、居候にして、執事の尾原 星夜(おはら せいや)よ。」

「よろしくお願いします。」

 

ぺこりと頭を下げる星夜。

その様子を呆然と見ていた他のメンバーは一拍置いてから、

 

『執事!?』

 

と、声を揃えて驚いた。

 

※※※

その後、Aqoursのメンバー1人1人と互いに挨拶を交わした僕は、鞠莉ちゃんをバイクの後部座席に乗せて家に帰っているところだった。

 

「しっかし、皆驚いていたわね~。」

 

鞠莉ちゃんが僕に向かって言う。

鞠莉ちゃんは僕と違ってフルフェイスのヘルメットではなく、ゴーグル付きのハーフヘルメットなので声がよく聞こえる。

 

「それは鞠莉ちゃんが僕のことを『フィアンセ』なんて言うからでしょ。」

「あら?でも、それを言ったら星夜が名字を『尾原』になんてしなければややこしくはならなかったと思うわよ?」

「いや、あれは鞠莉ちゃんが『せめて読みは一緒が良い』って言うから」

「そんなこと言ってマッセーン!」

 

よく言うよ。

ちょっと涙目になってたくせに。

ちなみに、僕が鞠莉ちゃんと同じ名字を断った理由は、この街で一番力を持っていると言ってもいいその名字を名乗るのに抵抗があったから、というのと、あとはまぁ、単純に恥ずかしかったからだ。

何か結婚したみたいで。

 

「はいはい。そういうことにしときますよ。」

 

まぁ、拗ねる鞠莉ちゃんが可愛かったから良いけどさ。

 

「それでいいのよ!」

 

得意気な様子でそう言う鞠莉ちゃん。

やっぱり、元気な所が彼女の一番の魅力なんだろう。

その声を聞くたびに、僕も元気が出る。

 

「ねぇ、星夜。」

「うん?」

 

そんなことを考えていたら、鞠莉ちゃんがもう一度話しかけてきた。

 

「記憶が戻ったら、星夜はどうするの?」

「う~ん、どうしようね。」

 

実際、何も思い出せてない現状では、考えるのも難しい。

 

「ここから、出ていくの...?」

 

寂しそうに、鞠莉ちゃんが言った。

あぁ。それが気になってたのか。

 

「大丈夫だよ。」

 

後ろからまわしている、僕の腹の辺りにある華奢な手に、左手をそっと重ねる。

 

「とりあえず今は、ここに居るから。」

「うん...。」

 

顔を見なくても、安心していると分かる返事が返ってきた。

 

―...!

 

『あいつら』の気配だ。

 

「ごめん、鞠莉ちゃん。少し寄り道する。」

 

僕がそう言うと、鞠莉ちゃんも察してくれたのか、(恐らく)頷いて言った。

 

「オッケー。行きましょう。」

 

バイクをUターンさせ、気配を辿る。

 

 

―あぁ、そうだ。

―僕はここにいる。

―記憶が無くても、僕は僕だ。

化け物(アマゾン)だろうと、関係ない。

―力があるなら、それを使って、『守る』だけだ。

 

そう遠くはなかった距離のバス停に、奴等はいた。

だが、そこに居たのは奴等だけではなかった。

 

「善子!花丸!ルビィ!」

 

鞠莉ちゃんが叫んだ。

そこには、先程学校で別れたAqoursの1年生の3人も居た。

腰を抜かしてしまっている花丸ちゃんとルビィちゃんの前に、善子ちゃんが腕を広げて立っている。

だが、丸腰の善子ちゃんが、2人を守れるはずはない。

このままでは、3人とも喰われてしまう。

そう思った僕はバイクのアクセルを余計に吹かした。

音に気を取られたからか、はたまた同族の気配を感じたからなのか、アマゾンがこちらを向く。

モズのような見た目だった。

 

「鞠莉ちゃん、3人をお願い。」

「分かったわ。」

 

バイクを止めて、2人同時に降りる。

鞠莉ちゃんが3人の元に向かったのを見て、僕はバイクに乗せておいたドライバーを巻く。

一瞬、モズアマゾンは鞠莉ちゃんの方を向いたが僕の方を優先すべきだと思ったらしく、威嚇しながらすぐにこちらを向く。

 

―そうだ、それでいい。

―彼女達には手を出すな。

 

「ぐるるるる...。」

 

戦闘体制に入ったらしいモズアマゾンが唸り声を上げる。

 

―お前なんかに、喰わせはしない。

―僕が。

 

「僕が、鞠莉ちゃんを、皆を守る!」

 

ドライバーの左側に付いているアクセラーグリップを回す。

その瞬間、身体の内側から、もう1人の僕が、叫ぶ。

 

―『戦え。』

 

―『暴れろ。』

 

その声に従い、僕もまた、叫ぶ。

 

 

「アマゾンッ!!!!!!」

 

 

『O・ME・GA』

 

ドライバーから特殊なパルスが伝達され、僕の身体を変化させる。

その時、辺りに熱風が吹き荒れる。

まるで僕の叫びが、形になったように。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

雄叫びをあげながら、本能に従って、僕は目の前の敵に突っ込む。

 

守るために。

 

※※※

星夜が変身して、アマゾンと戦い始めた。

 

―相変わらず、荒ぶるわね。

 

叫びながら、星夜は何度も敵のアマゾンを殴る。

敵もまた、星夜を殴り返す。

一進一退の、命のやり取り。

私達はそれを、星夜のバイク、『ジャングレイダー』の陰から見守る。

 

「あれが、星夜さん...。」

「まるで、別人ずらぁ...。」

 

ルビィと花丸が、呟いた。

無理もない。

この時の星夜は、普段の星夜とはかけ離れている。

 

「正直、私だってまだ見慣れてないわ。」

「鞠莉ちゃん、あの星夜さんを知ってるずらか。」

「もちろん。だって、私はあの姿の星夜に命を助けられたんだもの。」

 

あの夜、星夜が助けていなければ私は今頃どうなっていたのか。

想像するだけで恐ろしい。

 

「...星夜さんも、アマゾンなんだ。」

 

善子がポツリと呟いた。

 

―ん?

―星夜『も』?

 

「善子、それってどういうこと?それに、あなたアマゾンを知っているの?」

 

私が善子に訊ねるのを、ルビィと花丸はきょとんと見ている。

 

「まぁ、知らなくはないわ。だって...。」

 

そこまで善子が言ったときだった。

 

「ぐぁぁぁ!」

 

星夜の悲鳴が聞こえた。

慌ててそっちを見ると、膝をつく星夜と、さっきのアマゾン。

そして、もう一体、トンボのようなアマゾンが居た。

 

「星夜さん!」

 

ルビィが星夜に呼び掛ける。

すると、トンボのアマゾンがぐるりとこちらを向いた。

 

―しまった。気づかれた。

 

「キシャァァァァ!」

 

空中を滑るように飛んで、すぐに私達の近くまで来た。

 

「鞠莉ちゃん!皆!」

 

起き上がった星夜がこっちに来ようとするが、もう一体のアマゾンがその行く手を阻む。

その間にも、じりじりとトンボアマゾンはこちらに近づいてくる。

 

―だめ。

 

そう思った瞬間、私は3人の前に立っていた。

 

「...この子達には、指一本触れさせないわ。」

 

―絶対に、手を出させるものか。

―私が、この子達を守る。

 

「鞠莉ちゃん!逃げて!」

 

星夜が戦いながら叫ぶ。

 

―ごめんね。それは出来ない。

 

「さぁ、食べるなら私を食べなさい!」

 

私がそう叫んだ瞬間だった。

 

 

「おらぁっ!!!」

 

 

横から来た何かが、トンボアマゾンを蹴り飛ばした。

ゴロゴロと地面を転がるトンボアマゾン。

 

「...まったく、遅いのよ。」

 

後ろで、その姿を見た善子が安心したように言うのが聞こえた。

 

「大丈夫か?」

 

乱入者は、私にそう言った。

装甲の着いた青い身体に、黄色い複眼を持つ、やはり装甲を纏った頭部。

腰に巻いた、赤い、メカニカルなベルト。

 

「あなたは...?」

「俺?俺は、アマゾンネオ。」

 

私が聞くと、その戦士(アマゾン)は聞き返してから、名乗った。

 

「そう!そしてそいつは、私のリトルデーモンよ。」

 

後ろで善子がそう言うと、アマゾンネオは、やれやれといった感じで、

 

「はいはい。」

 

と答える。

そのままのテンションで善子が、

 

「さぁ、やってしまいなさい!!」

 

と叫んだ。

 

「言われなくても、そうさせてもらう!」

 

アマゾンネオはそう言うと、起き上がったトンボアマゾンに向かっていく。

 

トンボアマゾンは飛んで逃げようとする。

が、ネオの方が速かった。

 

「うらぁ!!」

 

足を掴み、トンボアマゾンを地面に叩きつけるネオ。

 

「この、甘ちゃんが!逃がすわけねぇだろ!」

 

そう言うと、トンボアマゾンの上に馬乗りになり、右手を振り上げた。

よく見るとその腕からは鋭いブレードが伸びている。

そしてそのまま、そのブレードをトンボアマゾンの胸に突き立てた。

 

「ガッ...。」

 

断末魔を上げる暇もなく、動きを止めるトンボアマゾン。

そして次の瞬間には、どろどろと溶けていた。

 

「よし、終わり。」

 

ネオはそう言って立ち上がる。

私はその姿を呆然と見ていた。

 

―そうだ!星夜は?

 

私がそう思って星夜の方を向くと、

 

『violent atack』

 

というくぐもった電子音声が聞こえてきた。

そして、次の瞬間、星夜の腕がアマゾンを刺し貫いているのが見えた。

トンボアマゾンと同様、どろどろに溶ける。

肩で息をしながら、立ち尽くす星夜。

 

「終わったずら...?」

 

花丸がそう言った時だった。

 

 

「いやぁ、こりゃあ良いもん見れたな。」

 

 

拍手をしながら、何者かが道路の向こうから歩いてきた。

 

「あんたは...。」

 

ネオがそう言って、身構える。

やってきたのは、新しいアマゾンだった。

所々傷がついている赤い身体に、緑色の垂れ目の複眼。

腰には、星夜と同じタイプのベルトが巻かれていた。

 

「まぁ、待てよ。」

 

ネオに向かって左手を見せる赤いアマゾン。

落ち着け、と言いたいらしい。

 

「確かに、お前とやり合うつもりでここに来たが、気が変わった。それに...。」

 

そう言うと、赤いアマゾンは地面を蹴り出し、どこかに移動した。

速すぎて分からなかったが、いつの間にか私の後ろに来ていたようだった。

そしてその腕には、気を失っているルビィが抱き留められている。

 

「嬢ちゃん達の前でわざわざ血だらけになるつもりはない。」

 

どうやらルビィを受け止めてくれたらしい。

 

 

「まぁ、話し合おうや。化け物3人(・・)で。な?」

 

 

赤いアマゾンが有無を言わさぬ高圧的な言い方でそう言った。

 

「...どうだかな。」

 

ネオが構えを解かずに言う。

 

辺りに緊張感が走るなか、スースーと規則正しいルビィの寝息だけが、微かな日常を演出していた。




NEXT HUNT

「んで、お前は何なんだ?」

「ピギャァァァァァァ!!」

「ねぇ、ずっと一緒に居てくれるわよね?」

「...全く、嫌な海だ。」

※※

はい、如何だったでしょうか。

とても長くなってしまいましたね。

途中で飽きて読むの辞めようと思った方もいるのではないでしょうか?

次回からは短くできるよう、頑張ります。

あと、設定の補足ですが、星夜のジャングレイダーは彼の私物です。

星夜宛に、差出人不明の状態で届けられました。

まぁ、その辺も、追々明かしていこうと思います。

今後も、お読みいただければ幸いです。

それでは、次回。

また、新たにお気に入り登録してくださった

黒鷺姫さん、時雨零さん、レックス89さん、狼牙竜さん、薄月さん、里見@元エレメンタルさん、グルッペン閣下さん、ハイパームテキさん、Rikitomakerさん

ありがとうございました!


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Dance with me

お久しぶりです。ミサエルです。
いやー、元号が変わる前にとか何とか言ってたのに、気づけば令和になっちゃって。

どんだけサボってんだよ!
もう皆忘れてるよ!

って感じですけども、まぁ、どうにかこうにか書き上げました。
お暇ならお付き合いください。

それでは、どうぞ。


「おいおい。戦うつもりはないって言ってるだろう?」

「そんなこと言うなら、あんたが先に変身を解いたらどうだ?」

 

互いに一歩も譲らず、警戒を解こうとしないネオと赤いアマゾン―アルファ。

一触即発の空気とはまさにこのことだろう。

 

「あ、あのぅ...。」

 

その均衡を、一人の少女が破った。花丸だ。

 

「うん?どうした?」

「いえ、その、ルビィちゃんは大丈夫なのかと...。」

「ルビィちゃん?あぁ、この子か。」

 

アルファが抱き留めていたルビィをそっと地面に寝かせた。

 

「気を失っているだけだ。すぐに起きる。」

「そ、そうずらか。良かった~。」

 

ほっと安堵の息をついてから、とてとてとルビィに歩み寄る花丸。

その様子を見て何故か数度、首を縦に振るアルファ。

 

「んで、お前は何なんだ?」

 

そう言って、アルファはオメガの方を向いた。

 

「...僕?」

「あぁ、お前だ。ここに来て5年は経つが、お前みたいなのは初めてだ。俺以外にそのドライバーを持っているアマゾン、なんてのはな。」

 

語りながら、オメガへとゆっくり歩み寄るアルファ。

彼から放たれる殺気を受け、オメガも自然にファイティングポーズをとる。

両者の距離が約2メートル、となった地点でアルファが立ち止まり、オメガに1つの問いをぶつけた。

 

「答えろ。お前は、何者だ?」

 

―何者。

 

それは今のオメガ、星夜にとって一番答えに困る質問だ。

一瞬だけ、オメガの構えが解けた。

答えを探しているのだろう。

 

「だんまりか...。なら、身体に聞くだけだ。」

 

アルファがそう言って腕を広げた瞬間だった。

 

「セイヤよ!オハラ・セイヤ!!」

 

そう叫んで鞠莉が両者の間に入った。

 

「この人は、尾原星夜。私の、大切な人よ。」

 

アルファと対峙し、正面切ってまた叫んだ。

少しの間、鞠莉とアルファが睨み合う。

すると、ふっと息を吐きアルファが腕を降ろした。

 

「そこまで言われちゃ、敵わねぇな。」

 

やれやれ、と言った風に肩を竦めて言う。

そして、くるりと背を向けた。

 

「じゃあな。」

 

そう言うが早いが、ジャンプして木に跳び乗りそのまま木から木へと跳び移ってどこかへと消えていった。

 

※※※

あの後、ネオと名乗ったアマゾンは善子ちゃんをお姫様抱っこしてどこかに跳んでいき(善子ちゃんはずっと決めポーズをとっていた)、僕と鞠莉ちゃんと花丸ちゃんはルビィちゃんが起きるのをその場で待った。

2人にはアマゾンについて説明しといたけど、わりとすんなり受け入れてくれたし、別にトラウマにもなっていないみたいだったから一安心だ。

 

「良いですか?皆さん、夏と言えば!はい、ルビィ。」

「...多分、『ラブライブ』!」

「さすが我が妹!可愛いでちゅねぇ~。よくできまちた~。」

「頑張ルビィ!」

 

その証拠に、今もホワイトボードの前で姉妹仲良く戯れている。

 

「何、この姉妹コント。」

「コント言うなっ!」

 

善子ちゃんがボソッと呟いた言葉に、ダイヤさんが少し怒りながらツッコミを入れた。

その善子ちゃんを見ながら、僕はあの青いアマゾンのことを考える。

 

彼は一体、何者なんだろう。

彼だけじゃない。あの赤い方もだ。

あの人は僕と同じベルトを持っていた。

もしかして、僕のことを何か知っているんじゃないか?

 

「...星夜さん?善子ちゃんのことを睨んで、どうしたんですか?」

「え?」

 

花丸ちゃんが僕の顔を不思議そうな顔で見ていた。

 

「クックックッ。そんな事も分からないの?ずら丸。星夜さんはこのヨハネの魅力の虜になったのよ。」

「!?」

 

善子ちゃんがポーズを取りながら言った。

鞠莉ちゃんが驚いた目で、僕の方を見ている。

 

「善子ちゃん。星夜さんは鞠莉さんの執事ずらよ?」

「甘いわね。ずら丸。このヨハネにかかれば、どんな人間も私に忠実な僕になるのよ。」

「いや、僕、人間ではないんだけど...。」

 

僕が発した一言に、2人は何とも言えない表情になった。

 

「...星夜さん。今のは、ヨハネでも少し反応に困ってしまうわ。」

「あ、ごめん。」

「あんまり言わない方が良いと思うずら。」

「うん、分かった。」

「そこ!うるさいですわよ!」

 

善子ちゃんと花丸ちゃんと話していたらダイヤさんが僕達に向かって指を突きつけた。

 

「全く、今は『ラブライブ!』に向けたミーティング中ですわよ!優勝したくないのですか!」

「ご、ごめんなさい。」

 

僕(だけ)が謝ると、ダイヤさんは会議を再開させる。

 

「んっんん。それでは、気を取り直して。夏と言えば、『ラブライブ!』その大会が開かれる季節なのです!」

 

そう言ってダイヤさんは、ミーティングが始まった時点からホワイトボードに貼られていた紙を指差す。

 

「『ラブライブ!』予選突破を目指して、Aqoursは

この特訓を行います!」

 

その紙には、円グラフで1日の練習メニューが書かれていた。

 

「これは、私が独自のルートで手に入れたμ's(ミューズ)の合宿のスケジュールですわ!」

「すごい、お姉ちゃん!」

 

μ's(ミューズ)』って確か、スクールアイドルの文化を全国的に普及させた伝説のグループだっけ。

ちょうど昨日、鞠莉ちゃんからその話を聞いていたな。

Aqoursも、彼女達に憧れた千歌ちゃんが作ったグループなんだってことも教えてもらった。

その彼女達が行っていた練習メニューか。

一体どんなものなんだろう。

そんなことを考えて、僕はホワイトボード上の紙を見る。

 

...いや、厳しくない?

 

「遠泳、10キロ...?」

「ランニング15キロ...。」

「こんなの無理だよぉ...。」

 

花丸ちゃん、善子ちゃん、そして千歌ちゃんが紙に書かれたメニューに対して難色を示す。

アマゾンの僕ならまだしも、普通の人間の皆には無理じゃない?

 

「ま、何とかなりそうね。」

 

...果南ちゃん、実はアマゾンだったりしないよね?

 

僕の失礼な疑問は、恐らく口に出さなくて正解だっただろう。

その後もミーティングは、賑やかに、和やかに続いたのだった。

 

※※※

結局、色々あって私達は、夏休みに千歌さんの家で合宿をすることになった。

 

「全く。朝4時なんて、起きられるわけないじゃない。」

「善子ちゃん、朝弱そうだもんね。」

「堕天使だからよ。というか、善子じゃなくて、ヨハネ。」

「堕天使は皆、朝が苦手ずら?」

「皆かどうかは知らないわよ。」

 

痛い所を指摘してきたずら丸に、私は無難な返事をする。

 

今、私達1年生は他の学年より少し離れた場所にある下駄箱に向かって歩いていた。

 

「そういえば、善子ちゃん。」

「だからヨハネ。何?」

 

ルビィが私の隣に来て、話しかけた。

とっても無邪気な笑顔を浮かべて、私に聞く。

 

「あの青いアマゾンさんって、もしかして善子ちゃんの彼氏さんなの?」

「はぁ!?」

「あ、それはマルも気になってたずら~。」

「な、ずら丸!?」

 

何で!?

何でそうなった!?

 

「べ、別に、そんな関係じゃないわよ...。ほら、言ったでしょう!?あいつは私のリトルデーモンだって!」

「でも、リトルデーモンって彼氏さんって意味じゃないの?」

「違わい!」

 

くっ!あぁ言えばこう言う!

あぁもう!!

 

「うるさいうるさいうるさい!!早く行かないとダイヤさんに怒られるわよ!」

 

私は少し速度を早めた。

ルビィとずら丸はクスクスと笑いながら後ろを着いてくる。

 

あいつのことなんて何とも思ってないわよ!

 

校門では、2年生と3年生、プラス星夜さんが談笑しながら立っていた。

鞠莉さんが星夜さんの腕に抱きついていて、それをダイヤさんが注意しているらしい。

 

「鞠莉さん!学校内では節度を持って星夜さんと接するとあれほど!」

「いーの!星夜は私の執事なんだから!」

「意味が分かりませんわ!」

 

随分とまぁ、賑やかね。

こっちにまで声が聞こえてくるわ。

 

「星夜さんと鞠莉ちゃん、仲良しずらねぇー。」

「そうね。でも、ダイヤさんの言うとおり、あんまり学校ではくっつかない方が良いと思うけど。」

「善子ちゃんは、くっつきたくてもくっつけないもんねー。誰にとは言わないけど。」

 

...聞こえなかったフリしとこ。

 

「あ、来た来た。おーい。」

 

千歌さんが私達に気づいたみたいで、こっちに向かって手を振った。

私達が合流したところでダイヤさんと鞠莉さんの漫才も終わり、ダイヤさんが咳払いをした。

 

「さて、それでは皆さん、先程も言った通り、明日は朝の4時に集合です!」

 

4時...。やっぱり、起きられる気がしない。

最悪、ママに起こしてもらおうかしら。

 

「では、本日はここで解散としま...って、あら?」

 

そう言ってダイヤさんが校門の外を見る。

気になって見てみると、こちらをじっと見つめる男の人が居た。

暑いのに長袖のパーカーを着て、フードを被っている、見るからに怪しい人。

 

「あのー、何かご用ですか?」

 

さすが生徒会長。ダイヤさんが男の人に話しかけながら近づいた。

 

その光景を見ていた私は、その男の人の左側の二の腕が不自然に膨らんでいることに気がついた。

 

まさか...。

 

「ダイヤちゃん、そいつに近づくな!」

 

私がそう思ったのも束の間、星夜さんが叫んだ。

その緊迫感のある叫びが、私の嫌な予感を確信に変えた。

 

「えっ、近づくなって...。きゃ、ちょっと、何ですの!?」

 

星夜さんの叫びを聞いたダイヤさんがこっちを向いた時だった。

男の腕が、ダイヤさんの腕を掴んだ。

 

そして、男の身体からみるみる蒸気が上がり、その蒸気が晴れる頃には、そこには鷹のような姿ををしたアマゾンが現れた。

 

「ちょっと、離してください!」

 

ダイヤさんが必死にアマゾンの腕を振りほどこうとしているが、力で敵うはずもない。

タカアマゾンは背中に生えている翼を広げて、空へ飛び上がろうとする。

 

「ダイヤ!」

「お姉ちゃん!」

 

鞠莉さんとルビィが叫んだ。

 

「くそっ!間に合え!」

 

星夜さんが呟いて走り出した。

ダイヤさんの足を掴もうとするものの、タカアマゾンの方が早く飛び上がっていたせいで、ギリギリ届かない。

 

タカアマゾンは上空で体を1回転させ、どこかへ飛び立とうとした。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

刹那、()()()()()()()()

 

その衝撃で、タカアマゾンはダイヤさんを離した。

 

「ピギャァァァァァァ!!!」

 

悲鳴をあげながら落ちてくるダイヤさん。

でも、その下で待ち構えていた星夜さんに、俗に「お姫様抱っこ」と呼ばれる格好で無事にキャッチされた。

 

「大丈夫!?」

「...え、あ、はい。大丈夫ですわ...。」

 

ん?何か照れてない?

 

「...むぅ。」

 

あぁ、ほら。

鞠莉さんが私の隣で膨れてるじゃない。

 

「早くあっちに。」

「え、ええ。」

 

ダイヤさんがこちらに向かって走ってきた。

とりあえずまぁ、一安心ね。

 

タカアマゾンは打ち所が悪かったのか、地面でうずくまっていらしい。

そんなタカアマゾンに向かってどや顔を向ける男が1人。

 

「どうだ!俺の必殺キックは!よく効くだろ?」

 

そう叫んでいるのは、というよりカッコつけているのは、黒いライダースジャケットを着た()()()

 

...やっぱりか。

 

「ねぇ、君。助けてくれてありがとう。」

 

星夜さんが絶賛カッコつけ中のアイツに話しかけた。

 

「礼には及ばねぇよ。それより、ちょっと離れてろ。」

「いや、ここは僕が戦うから、君こそ離れてて。」

「あ?そりゃどういう意味だ?」

 

アイツが星夜さんに聞いた。

 

「星夜!」

 

するとタイミング良く、鞠莉さんが星夜さんにベルトを投げ渡した。

 

「ありがとう!」

 

鞠莉さんにお礼を言って、星夜さんは腰にベルトを巻く。

 

「...アマゾン。」

 

そう呟いて、ベルトのグリップを回した。

 

『O・ME・GA』

 

音声と共に一瞬、緑色の熱風が辺りに吹き荒び、星夜さんはアマゾンオメガに変身した。

 

「アンタ、この間のアマゾンか!」

「早く逃げて..って、え?この間の?」

 

星夜さんのその疑問に答えるかのように、アイツはニカっと笑うと着ているライダースジャケットのジッパーを下げた。

アンダーシャツの上に巻かれているのは、鳥の横顔のような見た目の、赤い派手なベルト。

アイツがポケットから、小さな注射器を取り出し、ベルトに装填した。

 

『NE・O』

 

さっきとはまた別の、聞き取りにくい機械音声が鳴る。

 

「アマゾン!!」

 

アイツがそう叫ぶと、辺りに今度は青色の熱風が吹き荒れた。

 

熱風が晴れると、そこにはプロテクターを纏った青色のアマゾンーネオが立っていた。

 

「君は、アマゾンネオ!」

「よく覚えててくれたな!」

 

2人のアマゾンが楽しそうに話す。

あの2人、タカアマゾンのこと忘れてない?

 

「キィヤァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

痛みが解けたのか、それとも存在を忘れてたことに怒ったのか(?)タカアマゾンが立ち上がって叫んだ。

 

「一緒にやるか?」

「うん。よろしく!」

 

そう言って各々がファイティングポーズを取った。

アマゾン2人とタカアマゾン。

互いに睨み合って、相手の出方を伺う。

 

「...っくちゅ!」

 

すると私の隣で、ルビィがくしゃみをした。

 

「うぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「はぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「きぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

それを合図に、3体のアマゾンが同時に駆け出す。

 

私達の目の前で、獣達の戦いが、幕を開けた。

 

※※※

同時刻。

内浦のとある海岸。

 

「はぁ...はぁ...っあ...。」

 

あるカップルが走り回っている。

何かから逃げているようだ。

2人は物影に座り込み、周りを見回して、周囲に何も居ないことを確認した。

 

「くそっ!!何なんだよアイツ!」

 

男の方が息を切らせながら悪態をついた。

 

「あのまま、地の果てまで追ってくるつもりかしら。」

 

女の方もまた、息を切らせながら喋る。

 

「...さぁな。でも、アイツには絶対勝てない。だとしたら、このまま逃げきるしかないだろ。」

「このまま...。」

 

海風が優しく2人を撫でる。

直後、2人の顔が強張った。

 

「...来た。」

「あぁ。分かる。」

 

そう言って、男は立ち上がった。

 

「お前だけでも逃げろ。」

「嫌。だったら、私も一緒に死ぬわ。」

 

女もまた、立ち上がる。

 

2人が見つめる遥か先に、揺れる人影が歩いている。

 

「ねぇ、ずっと一緒に居てくれるわよね?」

「...あぁ、地獄まで一緒だ。」

 

2人の身体を、蒸気が包み込む。

そして、2人を本来の異形の姿に戻した。

 

「行くぞ。」

「ええ。」

 

異形達は、人影に向かって駆け出した。

 

※※※

 

※※

 

 

「...全く、嫌な海だ。」

 

呟く影が1つ。

鈍い銀色の身体を持ったその獣は、両手に持ったものを握りつぶした。

 

獣の足元には、さっきまで異形だったものが2つ、転がっている。

 

「潮風に乗って、アイツらの臭いが飛んでくる。」

 

歩きながら、獣は独り言を言う。

 

「まぁでも、仕方ないか。」

 

獣が取り出した写真には、アマゾンオメガの姿が写っている。

 

「待ってろよ。すぐに、すぐにだ。」

 

獣は写真を、見つめて、そして、こう言った。

 

 

「すぐに、会えるからな...我が息子よ。」

 

 

銀色の獣はそのまま、どこかへ歩いていった。

不穏な予感と共に。

 

 




はい、如何だったでしょうか。

ぶっちゃけ、書いてて段々、自分でも分からなくなっていきましたね。

それで何度も書き直して出来上がったのがこちらになります。はい。

意味がマジで理解できない所とかあったらどうぞ、感想等で意見を聞かせてください。
できれば優しくW

今後もお読み頂ければ幸いです。

それでは、次回。

また、新たにお気に入り登録してくださった、

王蛇さん、いて座の馬さん、クウ太さん、フユニャンさん、大日小進さん、tantan3さん、artisanさん、大根の味噌汁さん、ボーフボルシチさん、テテフガチ恋民さん

ありがとうございます!


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