チートオリ主による、蒼かな太平記 (テカサナ)
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プロローグ




「バケモノ、お前はバケモノだ!」

 

試合をしていたら、いきなり相手チームの一人が、そんなことを言ってきた。他のみんなも声にはださないが、体がふるえている。

 

「へっ……?いったい、どうしたの?さぁーもっと試合をしようよ!」

 

俺がそう言うと、全員がただでさえ震えている体を、いっそう強くふるわせた。まるで、殺人気を目の前にしたかのように………

 

「さぁー……」

 

 

 

「うるさい!」

「お前みたいなバケモノと試合が出来るか!」

「そうだ、どっかいっちまえ!」

一人が言い出すと、次々と続いた。

 

( なんで……?なんで、そんなひどいこと言うの?さっきまで、みんな優しかったじゃん!俺をこの部に誘ってくれたじゃん!)

 

皆から罵声を浴びせられ、救いの芽を監督に求めた………しかし

 

「……頼む、退部してくれ。お前みたいなバケモノは、いちゃけいないんだ。」

 

と冷たく引き離した………。

 

 

(思えばこの時からだったろう。自分を繕って、テキトーに生きる様になったのわ……)

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…午後の屋上は、太陽の日射しを満遍なく浴びることができる絶好の昼寝スポットだ。さらに、満腹感も相まって寝ないという選択肢はない。

 

「ん……」

 

俺はそんな屋上の特等席で、授業をサボって堂々と昼寝をしていた。他に人が居ないので、ゆっくり出来る……もっとも俺が近付いたら、大抵の奴は気味悪がって、どっか行くが…。

 

 

 

 

 

 

 

「ん!」

 

不意に何かがせまって来る気配がしたので、俺は素早くジャンプをして回避をした………。もと居た位置を見てみると、案の定握り拳が置かれていた。

 

 

「まったく、お前は……そんな反射神経があるなら、スポーツでもやれ!」

 

白衣を着た紫色の髪をした女性は、そう説教してきた。それもそうだろう。この人は俺のクラス担任だ。名前は『各務葵』。度々抜け出す俺をこうやって、連れ戻し来ている暇な先生だ。

 

「……今、俺はそれどころじゃないですよ。俺はもっと太陽光を浴びなきゃいけないんです……知ってますか?太陽光を浴びると、いつか宇宙まで飛べるらしいですよ」

 

「……お前はソーラーパネルを付いたロケットか……?」

 

「人間可能性とは無限大ですよ~~」

 

「はぁ~~~……」

 

先生は本当に呆れた顔をしながら、溜息をついた。

 

「なぁー司馬、もうお前も二年生だ。そんなじゃいけないていうのは、わかるよな?」

 

「わかるような、わからないような……」

 

「……まぁーいい、そのまま聞け。はっきり言って、お前の振舞いには目に余るものがある。今までは、見逃してきたが、これ以上は庇いきれないぞ」

 

庇いきれないっか、そんなこと頼んだ覚えないんだけな。親がどうしてもって言うから、通ってるだけで、本当はこんな場所来たくないんだ。

 

「お前に複雑な事情があるのは、弁えている。しかし、それとこれとは別だ。学校での事を疎かにするな!」

 

「先生、それも人生です。なるようになりますよ」

 

「誤魔化すな!お前はただサボってるだけだろ!それに、人生を語るにしては、随分若いと思うが?」

 

 

「……関係ありません。生れた時から、人間なんて大差ありませんから」

 

「意味のわからんことを言うな!大体お前は……

 

キン、コーン、カーン、コーン!

 

先生の長い説教が始まる前に、授業終了のチャイムがなった。よかった、これで解放される。

 

「ちっ!」

 

「お話しの途中すみませんが、今日の授業は終わったので、帰らせて頂きます」

 

俺は先生を横切って、ドアに手をかけた。

 

「待て、司馬!これだけは言わせろ……そんな生き方をしていたら、いつか痛い目に遭うぞ!」

 

「…」

 

ぺこりっと頭を下げて、俺はその場から退散した。

 

 

 

 

 

(……痛い目っか、それに遭わないために、こんなふざけた人格を繕ってるんだけどな……)

 

 

 

 

 

 

教室に入ると、全員俺を変なものでも見るかのような目で、チラ見してきた。恐らく、素行が目立つのであろう。すっかり変人扱いのレッテルを張られ、殆ど誰も近寄って来ない……。

 

 

 

 

 

「ねぇーあんた、授業サボったの?いい加減やばいんじゃない?」

 

しかし、ここにも俺に構う暇人がいた。こいつの名前は鳶沢みさき。外見だけでいえば、間違いなく美少女だ。端正な顔立で、黒い長い髪は、大和撫子を想像させ、スタイルのいい体は女性らしさを際立たせている……。

 

なぜかこいつは、俺に構ってくるのだ。

 

「……まぁ、なる様になるだろう…」

 

「相変わらずねーあんた、まぁ、私は好きだけど、あんたのスタイル」

 

 

 

身支度を整えた後、教室を出た………すると、

 

「あっ!あっ、あの十六夜センパイ!」

 

教室を出てすぐの所に、少女が立っていた。たて続けの紹介になるが、この少女は有坂真白。体型こそ幼児だが、十分に美少女である。ある事件をきっかけになついてしまった……

 

「なんだ?」

 

「一緒に帰ってもいいですか?」

 

「断っても、付いてくるんだろ?なら、勝手にしろ」

 

「はい………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、センパイ、また家のうどん食べに来てもらえませんか?」

「そのうちな……今日は、だるいから帰るわ」

「そうですか。では、待ってます!」

 

帰り道、テキトーな話しをしながら、暇を潰した。因みに、こいつの実家はうどん屋をやっている。これが中々うまい。雰囲気もいいので、利用させてもらってる……

 

 

「それではセンパイ、また明日!」

「きーつけてな!」

「はい!」

 

分かれ道になったので、当然ここで別れた……!

 

 

 

 

 

 

 

 

真白と別れた後、帰宅することに成功した。軽く食事などの必要家事をした後、自分の部屋に向かった。因みに、両親は海外出張のため、俺は一人暮らしだ。

バックを投げ飛ばした後、真白から借りたゲームを夜遅くまで楽しんで寝た。すると、眠気はすぐに襲ってきた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…… 俺の名前は司馬十六夜。日本の南にある四島列島の一つ、久奈島にある久奈浜学院に通う2年生だ。冒頭でもわかるように、少し他より自分を優先する傾向がある。でも、それを改める気は全くない。まぁ それ以外は多分普通の学生だ……おそらく。好きなことはスポーツだが、ある事件以降個人的にはやるが、部活には入っていない。

 

……そんな感じて、俺は今に至る。

 

(周囲から変人扱いされてるが、別にそれでいい。俺はこんな日常が結構気に入ってる。だから、それでいいんだ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、起きた時はもう遅刻確定の時間だった。

 

「……最近遅刻がおおいな……まぁーいいか!」

 

遅刻が確定しているので、俺はゆっくりと身支度を整え、これまたゆっくりと学校へ向かった。

 

 

その道中、不意に空を見たら……人が空を飛んでいるのが見えた。驚くかもしれないが、これはこの島ではいたって普通のことである。

 

 

…約15年前、重力に反発する粒子「アンチグラビトン」が発見され、それを利用した反重力発生装置を搭載した「アンチグラビトンシューズ」(グラシュ)発明された。グラッシュは、メンブレンと呼ばれる反重力の膜を装着者の周囲に発生させることで飛行を可能とする。電源を入れるとシューズの脇に羽形のオブジェが表示され、飛行可能になる。もちろん飛行する時、本来ならめんどくさい法律とかがあるのだが法律との兼ね合いで、民間での使用には制限が多いが、四島市はとても規則が緩く、自由に飛ぶことが許されている。

 

 

体感としては、とても気持ちいい。まるで鳥になったように、空を自由に行来することが出きる。俺も時々、空を飛んで空を謳歌している……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……社長出勤とは、随分偉くなったものだな、司馬」

 

「はい、先生も嬉しいでしょ?こんな意識の高い生徒を持って」

 

今、俺はなぜか校門で待ち構えていた、各務先生と話している。もちろん嫌みということは知ってるが、ここは敢えて開き直ってみた。

 

「はぁー私はお前のことがわからん。なぁー司馬、お前は何がしたいんだ?まさか、私の気を引きたいが為に、こんなアホなことをしているわけではあるまい?」

 

「何がしたいっかですか?特に何も考えてません。俺はおれらしくいるだけです」

 

 

「……まぁーいい。貴様には、遅れて来た罰を受けてもらう。今日の放課後、職員室に来い。そこで、お前に罰を言い渡す」

 

「……すいません、実は親が危篤で……」

 

「お前の親は出張中だろ!

まぁ、そういう訳だ、必ず来いよ!」

 

 

先生そう言って、ゆっくりと校舎の中に入っていった……。

 

 



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始まり

 

…退屈な授業を終え、やっと放課後になった。いつもなら、嬉しいはずなのだが、今日はちっとも嬉しくない。むしろ、辛く感じてしまう。

 

「センパイ、帰りましょう!」

 

今日も真白は律儀に迎えに来てくれた。しかし気のせいだろうか、クラス殆どの男子が俺を睨みつけているような気がする……いや、気のせいではないだろう。真白は胸こそないが、それを差し引いても十分美少女だ。そんな美少女が、俺なんかを迎えに来たら、そりゃ睨まれるわな……。

 

 

「真白、悪いが、先に行ってくれ。今日はちょっと、先生に呼び出されたんだ」

「大丈夫です、待ちます!」

「……好きにしろ」

 

俺は一足先に職員室に向かった。別に、奴と一緒に来いとは言われてないからだ……。

 

 

 

 

 

 

 

……今思うと、これが俺の災難の日々の始りだったのかもしれない。もしって可能なら、過去に戻って言ってやりたい、『逃げろ!』っと………。

 

 

 

真白side……

 

みんなが、黒板に板書したことをノートに書いている中、私はある人の似顔絵を書いていた。その人は私の尊敬する人であり……大好きな人だ。

その人のことを思うだけで、胸が張り裂けそうなくらいにいたくなる。でも、もっともっとその人を知りたい、と思ってしまう。

授業中はその人のことを思って、ついついにやけてしまった。先生からそのことを指摘され、漸く気付いた時には、クラスの笑い者になってしまった……

 

 

 

……授業が終わると、いつものようにセンパイの所に行った。センパイに会えると思っただけで、、胸がドキドキしてくてくる。

先輩のクラスに行くと、先輩はいつもの様に、眠そうにしていた。私から見れば、その姿も素敵である!

 

 

一緒に帰ろうとしたが、どうやらセンパイは先生に呼び出されたらしい。センパイは先に帰れと言われたが、待つことにした。それで、センパイの教室の前で待っていると…

 

「あれ、有坂か?」

「あっ、日向先輩」

日向センパイという、顔馴染のセンパイが声をかけてきた。特に接点はないのだが、十六夜センパイと同じクラスということもあり、ちょっくちょっく話をする。

 

「なんだ、今日も司馬を迎えにきたのか?」

後、この先輩はとても気が利く。私が十六夜センパイを訪ねてきた時は、たびたびセンパイの所に案内してくれる。

 

 

「はい!でも、先輩は呼び出されたらしいので、ここで待ってるんです!」

 

「そうか、頑張れよ!」

 

「はい!」

 

 

こんな風に、このセンパイは優しい。多分、特定の人とかじゃなくて、全員に優しいタイプなんだろう。十六夜センパイとは、違った魅力の持主だ……あっ!もちろん、十六夜センパイのほうが、1億倍かっこいい!

 

 

「あれ、真白じゃん?なにあんた、またあいつのこと待ってるの?」

「はい、みさきセンパイ」

 

この女性はみさきセンパイ。中学が同じだったので、偶に話す。上級生に知りあいが少ない、私としては貴重な存在だ。

 

「よく飽きないわね~………ねぇ、なんでそんなにあいつに夢中なの?別にかっこいいわけでもないし、むしろ皆から、気味悪がられてるじゃない!」

 

「それは、みんなが十六夜センパイの凄さを知らないからです………!って、実は私も偉そうなこと言えないんですけどね……。実は、センパイに助けられたからです。それから、先輩の偉大さを知ったんです。それからは、十六夜センパイ一筋縄になった訳です!」

 

「助けられた?へぇーあいつそんなことするだ!ねぇねぇ、あいつどんなことしたの!」

 

「そっそれは、私と十六夜センパイとの秘密です!」

 

「な~んだ、つまんないのー!」

 

なんて言われたっていい。この想い出は、私の大切な宝物なんだから……

 

「まぁーいいや!それで、肝心の司馬は?」

「はい、職員室に呼ばれたと仰有ったので、ここで待ってるです!」

「ん?たしか昌也も呼び出されてたっけ……これは、におうわ!行くわよ、真白!」

「へっ………?

 

十六夜side…

 

先生の机の所に行くと、先生は嬉しそうな顔をした。

 

「感心、感心。ちゃんと来たようだな。内心、無視されるんじゃないかと、心配していたぞ」

「それがお好みだったら、今すぐにでも、この場からいなくなりますが」

 

そう言って、逃げる素振りを見せると、先生は「まぁー待て!」と慌てて止めた。

「それで、何の用ですか?」

「そういきりたつな!実はな、お前の他に昌也を呼び出している。話しは、奴が来てからにしょう…………

 

 

 

数分後、遅れて日向がやって来た。俺が居ることに、少し驚いた様子だった。

 

「さぁ、来たことですし、本題を聞かせて下さい」

「うむ、実は………

 

聞いた話しを要約すると、転校生の「倉科明日香」にグラッシュの指導してほしい、とのことだ。もちろん俺は免許など持ってないので、これはこいつの用事だろう……

 

「……先生、そろそろ俺の用事を話してくれませんか?」

「あぁー、十六夜、お前も指導に参加しろ。もちろん教えろって言っている訳じゃない。初心に帰った気持ちで、転校生と一緒に昌也の講義をうけてほしいんだ」

 

 

「…すいません、仰ってる意味がよくわかりません。なぜ、今さらそんなことを教わらなければならないのですか?既に、基本知識は抑えてますよ?」

 

「良い薬だと思ってな、既に知ってることを、再び教わること程退屈なことはない。これにお前は耐えられるかな?っといても、拒否権はないが……」

 

(……この先生、絶対男出来たことないな。いや、出来たとしても、捨てられるタイプだ……)

 

 

 

 

 

 

 

断りたい所だが、ここで断った場合、この人はまた無理難題を押し付けられるに違いない。だったら、これで妥協するのが吉である。

 

「どうやら、決まったようだな。昌也もそれでいいな?」

 

「はい」

 

こうして俺は、転校生と一緒に講義を受ける羽目になってしまった訳だ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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講義

俺達は校庭に場所を移して、転校生と合流した。

 

「っと言うわけで、お前たちの講師になった訳だ。宜しくな」

 

「うぁー講師って、日向さんだったんですか!まさかの再会でしたね!」

どうやら、二人は既に面識があるらしく、すぐに打ち解けあった。俺はと言えば、完全に浮いている。

 

「あのー日向さん、この方は?」

 

転校生が、不思議そうにこちらを見ている。振り向く際、ピンク色のロングヘアーがなびいた。

 

(うむ。写真だけではよくわからなかったが、中々の美人だ。性格も良さそうだ。これなら、俺が居ても差し障りは有るまい……)

 

「あぁーこいつの名前は司馬十六夜。クラスメートだ」

 

「転校生ではないんですか?では、なぜここに?」

 

「それは、先生からの指示だ。よくわからないが、倉科さんと一緒に講義を受けることになった」

 

「そうなんですか!よろしくお願いします、司馬さん。倉科明日香っていいます!」

 

そう言って、彼女は手を出してきた。

 

(握手をしたいんだろか……?ならば、こちらも出さなくはならないな……)

 

「よろしく、倉科」

 

 

俺は無難に手を出して、握手した。彼女は笑顔だったので、こちらも一応笑顔で返しといた……今の俺達の姿は、端から見れば、カップルに見えないこともない。

 

 

………すると、なぜか、背後に物凄い悪寒を感じた。自慢じゃないが、俺は大抵のことにはもの落ちしない。そんな俺がびびるくらいの悪寒だった。

 

俺はゆっくりと上半身を回し、背後を見た………

 

 

 

 

……すると、同じクラスの鳶沢みさきと……目が赤く光ってる、真白の奴がいた。目の光りからは、一切の感情が感じられない程冷たかった。

 

(意外だな。真白の奴、あんな目出来たのか……?しかし、それがなんで俺に向けられてるだ……?)

 

 

 

 

「なんで、君らまでいるのかな?みさきはともかく、有坂」

 

日向が溜息つきながら、当然の質問をしてくれた。

 

 

 

まず、みさきが

 

「悪友がこれから悪さしようとしてるのに、それを止めないわけにはいかないじゃない」

 

っと、お茶らけた感じで言ってくれたお陰で、場が和んだ……しかし、

 

 

「……そうですよ。悪さする先輩には、お仕置しなくちゃいけないですよね」

 

っと、真白がトーンの無い冷たい声で言ったので、一気に冷めてしまった。一緒に来た鳶沢までが、真白の豹変振りに戸惑ってしまった。そんな風に皆が固まっていたら、日向が小突いてきた。目を見ると、小声で「なんとか、しろ!」、と言われた。

 

(……何で、俺がそんなことをしなくちゃならないんだ?そもそも、何で真白は冷たい目で俺を見ているんだ?)

 

とは思いつつも、真白の機嫌を治すため……いつもの手を使った。

 

「…今日は、真白の家行こうかな」

 

そう言うと、さっきの表情から一変して、笑顔になった……

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの~~日向さん、この方達は?」

 

置いてきぼりにされた、倉科は不思議そうに尋ねた。

 

「あ~別に気にしなくていいぞ。そんな重要じゃ…」

 

昌也が言い終わる前に、みさきと真白は高速で、少女に接近した。

 

「はじめましてー。2年C組の鳶沢みさきでーす。つねにお腹を空かせたキュートな女子高生で、うどんとお菓子をくれたら、とごでもついていきまーす」

 

 

「はいはーい。一年A組の有坂真白です。十六夜先輩の配下というか、しもべというか、そんな感じで楽しくやってまーす」

 

 

日向が二人が居た事情を聞いたが、どうやらただの興味本位らしい。日向は無視しようとしたが、二人は積極的に介入してきたので、意識せざるおえなくなったので、仕方なしに二人も講義に参加させた………

 

 

 

 

 

日向の講義は正に教科書通りだったので、俺からしたら本当に退屈だった。退屈過ぎて、あくびがでそうだった

。この調子では暇つぶしにすらならない。

それも仕方ないだろう。人間とは既知の物を再び教わることほど、つまらないことはないからだ。人間というのは常に未知を求める。しかし未知が既知になった瞬間、再び新しい未知を求める。人生とは総じて、そう連続だ……

 

 

 

とりあえず聞くだけ聞いといたが、意識は別の所にあった。

 

 

 

 

「それじゃー今日の講義はここまで!」

 

その言葉で、俺は意識を元に戻した。一応耳だけは働かせていたが、やっぱり全部知ってる内容だった。

 

「それでは、もう俺がここに居る理由はないな……」

 

俺はそう言って、早々に退散した。日向は何か言いたげだったが、何を言ってこなかった。

 

「先輩、一緒に帰りましょう!」

 

「好きにしろ」

 

「はい………!」

 

 

 

 

 

 

「……あの、先輩、家に寄って頂けるんですよね」

 

帰り道、突然真白は体をもじもじさせながら言ってきた。

 

「あぁーそうだったな。腹も減ってるし、調度いいや」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー!」

 

上機嫌の真白は、大きな声で言った。

 

「おかえりなさい……あら、十六夜くん。来てくれたのね」

 

この人は、真白の母「有坂牡丹」。夫と一緒にうどん屋を経営してる人だ。

 

「…邪魔します」

「先輩、あそこの席で待っていて下さい!すぐにうどんをお持ちするので!」

 

 

 

真白は慌ただしく、二階に上がっていった。これまた凄い勢いで降りてきた。部屋に荷物を置いてきたのだろう、降りてきた真白は何も持ってなかった。

 

 

「いらっしゃい、ゆっくりしてってね。貴方が居ると、真白が凄い喜ぶもの」

 

牡丹さんは、水を置きながら言ってきた。

 

「……善処します」

 

……この人は普段はおしとやかだが、怒る時は怒る。この前、真白を泣かせそうになった時、もの凄い勢い右ストレートを顔面に喰わせてきた。それも中々の威力で、俺は意識を失ってしまった……それ以降、俺はこの人を怒らせないようにしている。

 

「うふっ、相変わらずね。あっ、お金のことなら心配しないで。真白の大切な友達だもの。そんな友達からお金はとれ」

 

「…そういう訳にも、いかないでしょう。俺はべつに施しを得たいがために、ここにきたわけではありません」

 

そう言うと、牡丹さんは嬉しそうに笑った。

 

「うふっ、そういうところも変わらないわね。なんだ、かんだ言って、結局、人の利になる様に貴方は動くのだから」

 

「買いかぶりですよ……ただ、そうしたいから、するだけです……」

 

 

 

 

 

 

 

 

少ししたら、エプロン姿をした真白が、うどんを持ってきた。旗から観たら、小学生かと思う程、周りの店員との身長差があった

 

「お待たせしました!私が丹精込めて持ってきたので、味わって食べて下さい!」

「……相変わらず、香ばしい匂いだ。食欲をそそられる」

 

うどんには無駄なトッピングはしていない。しかし俺はそれでいいのだ。俺は断固素うどん派だ。

 

「…うむ、悪くない」

うどんを啜る、一気にうどんの風味が口に広がった。それと同時に、うどんが口の中で蕩ける感じがした。まるで、上質の肉のようだ……

 

「それはそうですよ。私の気持ちが込もってるんです…………あと、え~と、その」

 

真白はまた体をもじもじさせていた。そして、弱冠頭をこちらに突きだしてきた……撫でて欲しいのだろうか?

横目で牡丹さんを見ると、笑いながらも凄い迫力がある。多分無視したら、殴られるな。

 

「どうですか……?」

「美味しいよ」

 

不安げに見る真白の頭を撫でながら言った。

 

「ふにゃゃゃゃゃ~~」

 

真白は気持ち良さそうな声した……こうしてみると、猫に見えないこもない。

 

「うふ、こうして見ると、まるで夫婦みたい」

 

「!!!おかーさん!」

 

真白は顔を真っ赤にして、声を荒らげた。

 

(この人、何かと俺と真白をくっつけたがるけど、何を考えてるんだろう。真白確かに俺になついているが、それは決して恋愛感情ではない……と思う……多分)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ~~~~、ごちそうさま!」

 

結局、数回おかわりしてしまった。しかしその分腹は白いもので埋め尽くされている。

 

「では、お勘定お願いします」

「あら、気にしなくていいって言ったのに」

「いえ、そういうわけにもいきませんから………3万あれば足りますよね?」

 

俺は空っぽの財布から、なけなしの3万を出した。しかし牡丹さんは、受けとるのを拒否した。

 

「いいのよ。でも、その代わりいざなぎ君、また真白と遊んであげてくれる?あの子、十六夜くんと遊べる日を何より楽しみにしてるのよ」

「ちょ、お母さん!」

「いいじゃない。本当のことでしょ?」

「……それはそうだけど……」

 

真白はまた顔を真っ赤にして、もじもじしていた。

 

「だからね?お願い」

「………まぁー考えときます。しかし金は受け取ってもらいます」

 

俺は無理矢理金を牡丹さんに握られた。

 

「あら、あら、十六夜君」

「俺は先程払うと言いました。だったら、それは必ず払います。マイペースな俺ですけど、自分の言葉を違える程落ちぶてはいませんつ」

 

そう、俺は有言実行主義だ。言ったら、必ず成功させる。

 

「ふっふっ……」

「何がおかしいんですか……?」

「いや、本当に素直じゃないと思っただけよ」

 

(……はて、この人は何を言ってるのだろう。俺は常に正直に生きている。それを素直ではないとは……もしかして、脳にいく栄養が全て胸にいってしまったのであろうか……?)

 

「十六夜君、今失礼なこと思った?」

 

「……気のせいですよ。疲れたんじゃないんですか?」

 

「よかった、なぜか胸を悪く言われて気がしたの。そしたら、またパンチをしなきゃいけなかったわ」

 

……時々、この人はエスパーなんじゃないかと思う時がある……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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訓練

昌也side……

 

今日、葵さんから言われた通り、司馬と倉科さんの講義をした。倉科さんはいいとして、問題は司馬だ。講義中、不遜な態度こそ取らなかったが、意識は完全に他の所に言ってた。流石にこれはっというこど、葵さんに相談しに行った……

 

 

「そうか、やはりそうなったか」

葵さんは、いつも通り少し暗い表情だった。

 

 

「はい……しかしなんで先生は、あいつに俺の講義をうけさせたんですか?まさか、本当に嫌がらせのつもりじゃないでしょ?」

 

「それは……なんでだろうな。正直なところよくわからん。しかし、どうも奴のことが気になってな……もしかしたら、あいつにFCでもさせたいのかもな」

 

(FC?あいつがっか……?言っちゃ悪いが、向いてないと思う。能力以前に、あののんびりとした性格では激しいFCには耐えられるとは思えない…あいつ、点を取られてもあくびとかしてそうだもんな……)

 

「ん、どうした?不満そうな顔をして?」

 

「……正直不満です。本人はまるでその気がないし、失礼ですけど向いてるとも思えません。無理強いするのは、あいつにとって不幸になるのでは?」

 

「……そうか、昌也から見てもそうか…ククク」

 

なぜか葵さんは笑いだした。そして笑った表情のまま、

 

「私も同じ意見だ。あのふざけた態度、スポーツどころか、日常生活にすら支障をもたらしている。正直、生徒と教師の関係じゃなかったら、関わりたくない人種だな………授業は出ない、舐めた口をきく、何を考えてるかわからない、終いには意味不明なことをぬかす…どう考えても、人生を舐めてるとしか思えない。」

と、言った。

 

 

 

「…それだけ聞くと、どうしょうない奴みたいですね」

 

「そうだな……そのはずなんだが、なぜかあいつが気になる……まぁ、もう少し様子を見てくれ。それ次第で次の処遇を決める」

 

結局、その流れで司馬の講義は続行することになった…

 

 

 

 

 

 

十六夜side……

 

翌日、転校生の倉科は正式に俺達のクラスに転入してきた。

 

 

「えー、というわけで、今日からこのクラスに入ることになった、倉科明日香だ。みんな、よろしくたのむ」

「倉科明日香です。内地の方から来て、わからないことがあると思いますが、色々と教えて下さいね!」

 

 

 

自己紹介が終ると、倉科は日向とその愉快は仲間達に囲まれ、とても楽しそうだった。俺はというと、一人寂しく天上にあるしみを数えて、ボケーッとしてた。

 

「あの、司馬さんもこれかもよろしくお願いします!」

 

気を使ったのだろうか、孤立している俺に話しかけてきた。

 

「……ねぇ、エレベーター乗る時、なんで皆閉じるのボタン押さないだろうね?押したほうがいいと思わない?」

ふっと思ったことを言った。

 

「はいっ………?あっ、そうですね、そのほうがいいですよね!」

 

「でも、押さなければ電気代うくのかな?」

 

「さぁ、さぁ~~~~」

 

明らかに困った顔と声をしていた。他の皆もどう対応していいのか、わからない様子だ。

 

「まっ、まぁーいいじゃない、そんなこと!」

 

そこに、クラス委員の青柳窓果が助け船をだした。そのお蔭で、雰囲気がまた活気づいて話しが盛り上がったのだった……

 

 

 

授業終了のチャイムが鳴った時、俺は猛スピードで教室を出た。講義をサボるためだ。理由は簡単。俺は退屈且つ拘束されるのが嫌なんだ。昨日みたいな無駄な時間を過ごしたくないんだ。

まぁ、昨日参加したし、先生も満足したろー………。

 

 

「…どこに行く気だ司馬、講義はどうした?」

 

……と思ったが、先生は俺の脱走を予想してたのか、校門の前で待ち伏せていた。

 

「…ちょっと、夕陽に向かって走りたくなりまして」

 

「まだ、夕陽は出てないぞ」

 

「……じゃー太陽に向かって、走りたくなりまして」

 

「それじゃー逆方向だ。今太陽は校庭の方にある」

 

「……すいません、全部嘘です。本当は先生に僕を受け止めて貰いたくて…」

 

「よし来い!脳髄に、げんこつをくれてやる!」

 

 

 

先生は嫌みたらしい顔で、勝ち誇ったように言ってきた。

 

「……本音はなんだ。飽きたのか?」

 

「……そうかもしれませんし、そうでないかもしれません…」

 

「……またそれか。やはりお前みたいな奴は、スポーツでもやって、心を清めろ!」

 

スポーツか、何年ぶりにその単語を聞いただろう。いや、聞かない様に、敢えて聞こえていない振りをしていたのかもしれない。

 

「何を言ってるですか?スポーツ向きじゃないでしょ、俺は!」

 

「向き不向きを言っているのでない……このままお前をほおっておいても、ろくなことはせん!よって、部活に入れ!もし断ったら、お前には一年間ずっと、私の雑用を手伝ってもらうことにしよう」

 

(……つまり、どっちにしろ、俺を自由にさせる気はない、という訳か)

 

 

「今すぐに決めろとは言わん!ただ数日中にはどちらかを選べ!……そうだな、私としてはFCを薦めるがな…」

 

「たが、私はそんなへたれた不良に未来を感じたんだ。私は用事あるから去るが、きちんと授業出ろよ」

 

そう言って先生は、俺の横切って、ゆっくりと学校の中に入って入っていった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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