スマホ片手に生き抜こう(凍結) (麻婆被験者01)
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プロローグ、的な何かかな?
生まれ直しのリスタート


眠いです。
四作目です。
宜しくお願いします。
あと、おやすみなさい。


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皆様は、現在の現実をどう思うでしょうか?

私はとても不満に思っております。様々な技術が生み出され、出来ることはとても多くなりました。

しかし、出来る事は増えても、現実ではない事---二次元などに対しての渇望などは、決して叶う事はありません。

王になりたい、無双をしたい、美少女達を侍らせたい、誰かを貶したい、自分自身が美少女になりたい、異世界でのんびりと過ごしたい、願いは決して尽きる事はないでしょう。

しかし、それと同時にその願いが叶う事もありません。

それではとても悲しいではないですか。科学万能と謳われていたとしても、根本的な人間の願いというものは叶いません。

そして、私の手元にはあらゆる願いを叶える事が出来る機械があります。それを使って、貴方方の願いを叶えて見せようと思っています。このメールは、厳正に審査した上で、100名に送っております。

なお、異世界に行きたい場合は、同じ世界に送られる事はない事になっております。

では、下の三つの質問に答えて頂けますでしょうか?

1、どの様な世界に行きたいのか

 

2、どの様な力が欲しいのか

 

3、私の事をどう思いますか

 

では、是非とも返答を。

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カーテンで閉じ切られた部屋。時計は夜の11時を指し示す。

そんな部屋の主は、自らのスマホを見ていた。この謎のメールを見て、どういう事なのかと思っていた。そもそも、彼はメールは基本使わない。メッセージアプリなどで充分に間に合うからだ。

返答をしようかどうか、悩んでいた彼だが、その指を動かしてメールの返答を書き始めていた。

メール自体はくだらないと一蹴されても仕方がないものだが、彼は世間一般的に言うところのオタクというものであった。といっても、引きこもったりはせず、普通に学校などに通っている。

怪しい物には手を出さない、心の中で絶対と言ってもいいほどだが、そういう風に彼は自身に決めていた。けれど、もしも、もしも本当だったらというほんの少しの希望に従って、彼はそのメールの返答を書き始めていた。

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1、どの様な世界に行きたいのか

どこでもいい。けど、いきなり死んだりするのは勘弁

2、どの様な力が欲しいのか

自分と相性が良い物を。高望みはしない

3、私の事をどう思いますか

胡散臭い

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取り敢えず、彼は自分自身の本心で書いてみた。冒険はあったら、男故にロマンを感じる。ただ、すぐに死にそうになる様な世界は勘弁願いたい。能力に関してもそうだ。下手にアニメなどの強い能力などを手に入れたとしても、使いきれる気はしないし、能力の本来の持ち主に怒られそうだ。

三つ目は馬鹿正直に書いた。誰がみても、胡散臭いと思う事間違いなしであろう。

彼は自分で書いたメールの返答を改めてみて、苦笑いをした。この歳になって何を書いているのかと。夢を見るのは小学生まで。彼はスマホを充電器にさして、布団にもぐって目をつぶった。

 

 

「おー、意外と返答が来てるねぇ」

どこかの家の一室。男とも女とも言えない中性的な容姿の存在は、自らの手の中にある黒い箱を弄りながら、ニヤニヤと笑っていた。

「いやー、馬鹿正直に書くもんなんだね。この人なんて、『美少女になりたい!』なんて書いているし、かと思いきや『聖剣が欲しい』なんてものもある。で、こっちの人は・・・おっ」

誰かの目に止まったのは、他の人物達と同じように馬鹿正直に書いた少年の返答。それを見て、誰かは今までとは違う雰囲気でニヤリと笑った。

「ふーん。相性が良いのねぇ。ねぇ、黒箱。この子と相性が良い物って何?」

『・・・ゲーム』

誰かは自らの手に持った黒い箱に問いかけた。側から見たら、明らかに不審者だ。そして、そんな問いに黒箱と呼ばれた黒い箱は答えた。誰かからのツッコミが入りそうだが、この部屋には誰かと黒箱しか居ない。

「そっかー、ゲームかぁ。よし。なら、スマホを持たせよう」

誰かはすぐさま、スマホという風に決定した。

「じゃ、黒箱。面倒くさいから、世界は小説を基にして」

「・・・了解」

誰かは、意味不明な言葉を黒箱に告げると、黒箱を放り投げた。重量に従っておちるかと思いきや、黒箱はふわりと宙に浮き、ゆっくりと回り始めた。

回り始めて30分程だった時、黒箱が一瞬、強く光った。そして黒箱は、いきなり床に落ちた。それを拾い上げて自らの足の上に置いた誰かは、宙を見ながら笑う。

「さて、願いは叶えた。好きに生きてね」

 

その日、世界中で46名が行方不明になるという事件が起きたが、10年、20年とたつと、次第に人々の記憶からは忘れ去られた。

 

くらい。彼が、最初に思ったのはそれだ。息苦しく、とてもくらい。流石に耐えきれず、ようやく目を開ける。たったそれだけのことなのに、なぜかとても疲れる。

彼は目を開けた瞬間、固まった。その光景がありえなかったのだ。絶句している彼の前にいた看護師らしき人達のうちの一人が、口を開く。

「現堂さん。元気な男の子ですよ」

新たな自身の親を見ながら、彼は心の中で思った。

どうやら自分は生まれ変わったらしいと。



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八重樫流道場

どうも、久方ぶりの更新です。
主人公のヒロインを誰にするか・・・それが問題だ。
このキャラがいい!こんなキャラを出して!というような意見があれば、どしどしください。是非ともお待ちしてます。
では、どうぞ!


俺が生まれ変わって、早くも5年が過ぎた。

どうやら俺は、現堂という苗字の家に生まれたらしい。両親もとてもいい人で、何度心の中で感謝したか分からない。

ただ問題だったのは、食事の時だ。まぁ、元が高校生だったのだ。まぁ、俺は赤ん坊、そして目の前には母親。・・・正直なところ、どんな拷問かと何度も思った。

そんなこんなで今日まで過ごして来たが、内面がとっくに大人だからか、幼稚園では友人の一人すら出来なかった。お陰で、一人で体を鍛えたりするぐらいしか出来なかったため、中々に強くなって来たと思う。

そして、そんな俺を見ていたからか父---現堂智治から、とある提案が出てきた。

「ケイ。最近体を動かしているみたいだけど、何でだ?」

「んと、つよくなりたいから」

「そっか、ケイは強くなりたいんだね」

というような会話を先週したばかりなのに今日の朝、唐突に父は俺にこう言った。

「今日は、八重樫流道場に行くからな」

「やえがしりゅう、どうじょう?」

「うん?言っていなかったか?」

「うん」

俺が父にそういうと、父は顎に手を添えて「伝えていなかったっけ・・・」と呟いていた。

八重樫流道場。未だにこの世界がどの世界なのかは分かっていないが、普通の世界である事は分かっている。しかし、八重樫という名前からは、とある小説が思い浮かぶ。

『ありふれた職業で世界最強』という小説に出てくるヒロインのうちの一人、八重樫雫の家が確か八重樫流道場だったはずだ。

けれど、まだ確信はできない。何にせよ、目の前で硬直しながら何かを呟いている父を元に戻すとしよう。

*******************************

「ここが、やえがしりゅうどうじょう?」

「そうだ。実は父さんとこの八重樫流道場の師範代である虎一くんはね、友人なんだ。それで、うちの子が体を鍛えてるって事を伝えたらいい、うちに来てみないかって言われたんだ」

八重樫虎一。八重樫雫の実の父親で、八重樫流道場の師範代。原作では南雲ハジメに対して、様々な事をしていたが、俺に対して何をしてくるかは分からない。何もしてこない可能性の方が高いぐらいだ。

どちらにせよ、八重樫流は覚えておいて損は無い。上手く体を鍛える方法などを教えてもらえれば、生き残れる可能性は高くなっていく。

「虎一くん、来たよ」

父がこれぞ和風!というような扉を叩くと、中から若い女性が出てきた。

「はい、何方かしら?」

「あ、久し振りです。霧乃さん」

「ああ、智治くん。夫からは話を聞いています。そちらの子がケイ君で良いのかしら?」

「ええ、うちの自慢の息子です」

「あら、そうなの」

父が自分の事を誇らしげに言ってくれるのは嬉しいが、目の前の霧乃さんをどうにかして欲しい。先程から穴が空くほど俺を見てくるのだ。

「・・・この子なら問題はないかしら」

「?どうかしました、霧乃さん」

「いいえ、何でもないわよ?」

さ、入って。霧乃さんの言葉を聞いて、俺と父は入っていく。美人に見られるのは役得だという話だが、これは中々に辛い。それに最後に言っていた、問題はないという言葉はどういう意味なのだろう。

・・・今からでも帰らせてはもらえないだろうか。少々憂鬱になりながら、父に手を引かれて八重樫家の中を歩き、道場に通じている扉の前まで来た。

父は何事も無く、扉を開くとそれと同時に自分に対してよくは分からないが、威圧感の様なものが向けられているのが分かった。

「久し振り、虎一くん。元気だったかい?」

「ああ、それでその子が?」

「そう、うちの自慢の息子だ」

父と虎一さんが話しているが、俺はそれどころじゃない。先程からずっと威圧感があるのだ。冷や汗が出て止まらない。

「すまないが、智治。ちょっと君の息子と話がしたみたい。いいか?」

「ん?いいよ。それじゃあ、僕は別の場所に行ってるよ」

「ああ、助かる」

その会話が終わると、父は初めに入ってきた扉をまた通り、部屋の外に出て行った。

そして道場の中では、俺と虎一さんの二人だけが残っている。威圧感がどんどん増していく中、俺はどうすればこの状態から抜け出せるのかを考える。

そして5分程たったあたりで、ふと威圧感が消えた。

どっと疲れた気分になり、俺は静かに息を整えながら、虎一さんの様子を見る。虎一さんは何故か、笑顔で俺の事を見ていた。

「中々に根性はある様だ」

「あ、ありがとうございます」

「では、何を学びたい?」

何故か認められた上に、何を学びたいかを聞かれた。何を学びたいのか、か。原作では、八重樫流道場は娘の雫は知らなかったが、ある意味忍びの様な事が出来た家だ。と言っても、雫ですら剣術に体術、投擲術を教えられていたのだ。実際、様々な事を教えられるのだろう。とりあえずは、雫と同じものを学んでおこう。

「けんじゅつとたいじゅつ、あと、できればとうてきじゅつもまなびたい、です」

「ほぉ・・・」

俺が学びたい事を言ったら、虎一さんが俺の方をじいっと見てきた。霧乃さんの時は緊張しただけだが、虎一さんの場合は、緊張と恐怖の二つだ。逃げ出したい衝動に襲われながらも、ぐっとその気持ちを抑えて、虎一さんの顔を見る。

じっと俺を映す虎一さんの黒い目。それを見ながら俺は静かに待つ。すると、虎一さんが再び口を開いた。

「何故、強くなりたい?」

「なんでか?」

「ああ。強くなる意味なんてないだろう?」

「それは・・・」

確かに、普通に生まれて強くなる意味なんて、ほとんどないだろう。改めて思うと、俺はまだ確認できていないが、何かしらの力を貰っている、筈だ。それを考えても、俺は強くなる必要はない。なら、なんで俺が強くなりたいのか、その理由は・・・ある。

「まもり、たいんです」

「守りたい?」

「はい。いまのぼくは、ちちたちにたすけてもらっています。けど、いつかこまったときにぼくがちちをまもりたいんです」

正直に、心から思っている事を言う。これに関しては、一切の嘘偽りはない。前世では親に対して、何も返す事は出来なかった。だから、今回は親に対して何かを返したいのだ。

「そうか・・・」

虎一さんはその一言を聞いて、黙ってしまった。何かいけない事を言ってしまったかと思いながら、俺は内心冷や汗をかく。そんな重い空気の中、入ってきた扉が開いた。

「ケイ。今日はもう帰るよ」

「あ、はい」

救世主、父が降臨した。

そして、迎えに来た父に手を引かれ、後ろからの虎一さんの視線を気にしながら帰っていく。

「明日から、道場に来たまえ、ケイくん」

その虎一さんの言葉を聞けて安心できたのか、俺は家に帰ってきたら、自分のベッドに倒れこんで眠ってしまった。




今日も明日も、チョコミントアイスを食べます。
チョコミントアイス美味しいなぁ・・・。


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その少女は、八重樫雫

はい、どうも!久々の投稿ですね〜。
いやぁ、ちょっとリアルが忙しくてですね。
まぁ、何にせよ、今回の話は黒いです。
ちょっと黒いです。
あ、あと、ヒロインは雫に確定しました。
どうしてこうなったと、ツッコミどころ満載ですが、どうか生暖かい目で見守ってください。
では、どうぞ!



・・・いつになれば、本編入れるんだろう。
あと、いつになれば能力出せるんだろう?


虎一さんに言われてから、八重樫流道場に通うようになった。

それからは、毎日がとても充実している。しかし、俺には剣術についての才能は無いようだ。剣を振っていたとしても、平凡から一つ抜け出した程度しかなれない。

それでも、俺は力をつけておかなければならない。自分自身も含めて、護りたいものの一つすらも守れない。

剣を振りながらも、様々なことを学ばせてもらっている。

最初に頼んだ剣術、体術、投擲術に加えて、弓術や暗殺術、隠密術、柔術、サバイバル術などなどetc...。

正直に言って、何度も死にかけた。というか、八重樫流道場は普通の道場という当初の設定はどこに行ったのだろうか?何にせよ、学ばせてもらった中では弓術と銃術が一番適性が高そうだった。

何度か道場に泊まるようなこともあったが、幼稚園ではなく保育園であったのが幸いであった。個人的にも幼稚園なり保育園などで他の子供達と交流ができるかと言われたら、かなり難しい自信があった。というよりも父よ、知り合いだから安心だと簡単に俺を八重樫さん家に預けるなよ・・・。

これらの厳しい鍛錬のおかげで、かなり強くなれた。ただし友人は一人としておらず、少々虚しさを覚えた小学二年のある日、鍛錬をしていた俺は、半分以上忘れていた自身のおかれた状況を思い出す事になった。

 

 

「ねぇ、現堂ケイくん、だよね?」

「ん?そう、だけど」

「なんでそんなにがんばれるの?がんばって強くなっても意味ないでしょ?」

「・・・」

原作におけるヒロインの一人、八重樫雫に話しかけられた。一瞬誰かと思ったが、すぐさま誰なのかを思い出した。さらに言うならば、此処は彼女の家なのだから、此処にいるのも当たり前だろう。

俺はどう返答すればと悩む。最低限の人としか関わらずに俺は今日まで鍛えてきた。つまりどういうことか。オタクならば大抵は持ち合わせている障害、コミニュティ障害・・・通称『コミュ障』なってしまったのだ。

・・・俺はどうしてしまったのだろう?何故か変なテンションになってしまった。何にせよ返答をしないと、娘に対してかなり、いや少々愛が重い八重樫家を敵に回すことになる。それだけは何としても避けなければならない。

「・・・護りたいものがある」

「まもりたい、もの?」

「ん」

「そっ、か・・・」

唐突に雫氏が黙ってしまった!背後や頭上、足下などなど様々な場所から殺気が放たれた!ケイは硬直している!

「ケイ君は、強いね」

「・・・」

「私は、そんな風になれないや」

周囲の殺気が一瞬で消え去った。俺は息を吸ったが、今は彼女の今の状態をどうにかしなければならない。正直関わりたくないが、彼女をどうにかしないと、俺の命が危ない。

「俺には何も言えない」

「・・・そうだよね」

「けど」

「?」

「話を聞くことならできる」

「言え、ないよ」

「なら良い。それでいれるのならば、問題はない。今は問題なくても誰かに言わないとやってられない時ぐらい、俺が聞いてやる。返答は期待されたくないけどな」

「・・・」

ふぅ、軽く猫を被って答えさせてもらった。素では話せないが、猫を被って話せば、今みたいに話せる。ほれ、ちゃっちゃと離れてくれ。余談なのだが、此処は剣術場ではない。弓術場なのだ。この家どれだけ広いんだろうか?

「なら、話を聞いてくれる」

「・・・分かった」

え?!あ、危ない危ない。この驚きを表に出すところだった。そんな風に安心していると、ポツポツと話し始めた。剣術について、家庭の事、父や母に祖父達家族の事、そして自分が可愛い物が実は好きだという事。

全てを語り終わった時には、もう夜になっていたが、そんな事よりも隣で泣いている雫をどうするか悩んでいた。

「ひっぐ、わ、私、もう、やだよぉ・・・」

「・・・ぉぅ」

何故、鷲三さんや虎一さんはこんなになるまで気づかなかったんだ・・・。そう思いながら、なんて返すか考える。

「別に、いいんじゃないか?」

「え?」

「可愛い物が好きでも、剣術を磨かなくても、自分の心を押し殺さなくもいいんじゃないか?」

「いい、の?」

「いいかどうかを決めるのは、俺じゃない。お前だ」

「・・・でも、家は道場だし・・・」

「そんな事を気にするな。どうしても気にならんだったら、自分や自分の家を守ってもらえるような、強い奴を見つければいい」

「・・・よく、分かんない」

流石に高校になれば、魔王に会えるよ!なんて言えない。だからこそ、取り敢えずはやな事からは逃げてしまえと言っておく。後は知らん。

「・・・ねぇ」

「なんだ?」

「守ってくれるの?」

「ああ、いつかお前を守ってくれる奴が来るだろ」

「違う」

?ちがうとはどういう事なのだろうか?

「ケイ君が、私を守ってもらえる?」

?!ど、どういう事だ?!雫とは今日会ったばかりだ。故に、何かしらのフラグが立つのはあり得ない。つまり、これは勘違いだ。

「・・・俺みたいな中途半端な奴よりも強い奴が来るさ」

「うんん、私が一番強いだ思うのはケイ君だよ?」

「・・・そんな事はない」

「違うの。そうじゃなくて、ケイ君はなんていうか、心が強いなぁって思ったんだ」

「いやいやいや、俺ほど弱い奴居ないからな?!」

「?口調が変わった?」

「あ」

「・・・それが素なの?」

本心が出てしまった。今まで隠してこれたが、ここまで言われて動揺してしまった。

「何にせよ、俺は強くない」

「・・・けど、私からしたら強いと思う。こうやって話を聞いてくれたり、最初に言ってた護りたいものを守る為って言ってた。私にはそんな風になれない。ケイ君が弱いと思っていたとしても、私からしたら、すごく強いと思う」

「・・・俺はそんなにご大層な人間じゃない」

本当に、俺は彼女がいうほど強くない。護る為に強くなっているって言ったって、それは上部だけだ。こうやって話していて少し動揺するだけで素が出る程に、俺は弱い。

「?ご大層っていう言葉の意味が分からないけど、ケイ君は私からしたら充分強いと思う」

慰めていたはずなのに、逆に慰められている感じがする。何故こうなった。

「あぁもう。この話は終わりだ!」

「駄目」

「うぉう?!」

立とうとしたら雫さんに、捕まりました。そのせいで頭が床に当たってとても痛い。俺も雫も弓道場で倒れている。というよりも雫さんや、早く離れて貰えません?位置的に危ないんですが。

「ケイ君」

「はい」

「私からしたら、ケイ君が本心を出してくれて嬉しいんだ。私だけじゃないんだって分かった」

あ、あれ?さっきからずっと思い始めていたけど、なんだか雫さんが大人っぽいんですが。

「こうやって本心を出して話が出来たの、ケイ君だけなんだよ?だからケイ君が私からしたら・・・えっと、王子様、みたいなんだよ?」

「ゴフッ」

上目遣いからの赤面。ロリコンではないが、かなりやばい。

「俺は王子様なんて柄じゃない」

「なら、なんならいいの?」

「・・・そこら辺の物語に名前だけ出てくる普通の人間とか?」

「そっか、なら私もそうだね!」

「いやいや、それはない。雫はヒロインだ」

「えっ///?!」

あ、やばい。なんか地雷踏んだかも。

「え、えっと、そそ、そんな事ないよ?!」

「俺なんか、それを側から見ているだけの人間だ。俺とは絶対に相容れない。話は出来ても、関わりが話をする程度だ」

「・・・なんで?」

なんだと言われたが、事実そうだ。俺は側からこの物語を見て、それに干渉する部外者。雫の様なヒロインとは合わないし、合ってはいけない。

原作に関わるかどうかも怪しいのに、さも関わるのが当たり前かの様に鍛えているのが俺だ。

「なら、いい」

「そうか」

やっと雫も諦めてくれたか。

「物語のヒロインじゃなくてもいい。ケイ君のヒロインに、なれればいい」

「は?」

「それでいい」

「・・・いやいやいや、だから、俺は一般人Aで雫さんはヒロイン!」

「なら、そんなヒロインの立場いらない」

え、えっと、やばくなってきました。ここからどうしよう。正直なところ、離れるには俺には何も言えない。自然に離れてくれる様にするしかない。

「・・・はぁ、なら友達だ」

「え?」

「だーかーら、友達になるぞって言ってんの」

「え、あ、うん」

「ならないんだったら別にいいぞ」

「え?!いや、なる!」

取り敢えずは、友達って事にしておいて、徐々に離れて行けばいいだろう。俺はそう思って、これで終わりにした。現実逃避に近いが、今はこれが最善だろう。

「ふふふ、ケイ君と友達・・・」

「・・・あの、帰ってもいいですか?」

「駄目」

俺はその日、八重樫家に泊まる事になった。当時の俺は何も知らなった。こんな事になるなんて

 

 

 

「ケーイ、どこに行くの?」

「え、あ、ああ。ちょっとトイレに、な」

「ふーん、なら途中までついて行くわ。道中の職員室に用事があるの」

「・・・」

高校の廊下にて、俺はトイレに歩いていた。後ろには、いつもニコニコ這い寄る高校の二大女神、『八重樫雫』。本来なら、俺にはきっと嫉妬と怨嗟のこもった視線を向けられるはずだっだろうが、そんな事はない。逆に慰める様な視線を向けられている。

学校が終わり、帰宅しようと校門に向かう。雫はクラス委員長なので、少し遅れるそうだ。なお、俺は副委員長だ。俺の分の仕事は全部雫に取られてしまった。取り敢えず、校門で雫を待つ。

すると、他校の女子だろうか?俺に近づいてくる子がいた。

「あ、あの!現堂ケイさん、ですか?」

「ん?ああ、そうだが?」

「そ、その、この手紙、読んでください!」

俺にそう言うと、女の子はすぐに走って行ってしまった。周囲からは嫉妬と怨嗟、更に恐怖心がこもった視線が俺に向けられてきた。

「ケイ、今の子は?」

「し、雫?い、いや、俺に手紙を渡してくれただけだぞ?」

気づけば俺の後ろに雫が立っていた。

「ケイ?ちょっとこっちきて」

「・・・はい」

首元を掴まれて何処かに連れて行かれる。周囲からは慰めの視線が俺に送られてくる。

「・・・ふふっ、私のものなのよ?なのに他の子が、私のケイに近づいていいわけないじゃない。あの子、どうしようかしら。いつもと同じでいいかしら?何にせよ、今はケイにお仕置きしなきゃ。ケイは優しすぎるのよ。その優しさは私や、子供達だけに向ければいいの。子供達でも本来ならいけないのに、ケイに頼まれて許してあげたのよ?なのに、あんな雌豚が許されるわけないじゃない・・・」

何かしらブツブツと呟いている内容が、とても怖いです。

本当に、どうしてこうなってしまったのだろうか?俺はこの後どうやって被害を減らそうか、悩みながらも雫に何をされるのか恐怖で体が震えているのを抑えようとしている。

本当、どうしてこうなったのだろうか・・・。




タグにヤンデレ追加します。
高評価に感想などなどどしどしください!お待ちしてます!
・・・それらがきてくれれば、やる気が出て投稿スピードが速くなります。本当です。


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召喚士、降臨
ありふれた日常は、崩された


・・・えー、どうも。
何でか、意外と感想を貰えて喜んでいる陽光のアリスです。
はい、すみません。
いやぁ、まさか感想を貰えると思わなくて、5日間程マイページにinしてなかったんですよねぇ。
で、確認するとあら不思議。感想が来てるじゃ無いですか。
こりゃ、書かないとと思って書こうとするものの、ネタが思い浮かばなくてですねぇ。
ゲ、ゲームが悪いんです!私の集中力を奪っていくゲームが!
現在、スマホでやってるゲームはですね
FGO
バンドリ
天界のヴァルキリー
ファントムオブキル
スクスト
乖離性MA
になります。
内、乖離性MAとスクストは完全初心者ですねぇ。
といっても、スマホ自体四月に買ってもらったばかりです。
フレンドになってくれる方、是非ともフレンドに!
感想、評価貰えると書きます。明日から。
では、どうぞ〜。


「はぁ・・・」

「?どうしたの、ケイ」

「いや、どうしたもこうしたも・・・」

昨日、他校の女子に手紙を貰い、それを雫が見て連れていかれた後に、どうにかあの女の子が被害に遭うのを防ぐことが出来た。その後、一時間程休憩無しで全力で試合をし続けたのだ。疲れるに決まっているだろう・・・。

俺はある程度剣術を学んだ。剣道ではなく、剣術だ。ただ才能が無い為に、そこまで腕は上がらなかった。結果、中学二年になって剣術を習うのは打ち止めにしてもらって、格闘術や短剣術を習った。

すると今度は、何故かするりと上手くなっていき、結果今は虎一さんと一対一でも、5割の確率で勝てるようになってきた。

そして、やはり例の奴にあった。そう、主人公曰く『勇者』(笑)とか、『勇者』(爆)こと『天乃河光輝』だ。あいつが八重樫流道場に来た時、開口一番なんと言われたか、今でも覚えている。

『君!僕と戦いたまえ!』

は?と、聞き返してしまったものだ。入ってきたばかりであった奴と、もう五年以上学び続けていた俺。勝敗は明らかであったにも関わらず、何故挑んできたのか。隣に立っていた雫さんが、あからさまに嫌悪感を示していてこちらの方が怖かった。

『正義は絶対に勝つんだ!』

とか言いながら挑んできたので、半歩後ろに引いてからの一本で決めさせてもらった。何故勝てないんだ・・・とか言っていたが、勝てないに決まっているだろう、常識的に考えて。

取り敢えず、自分が五年間以上やっている事と、別に俺は悪ではないことを説明した。ついでに言うと、確かに世間一般的に見ると悪かもしれないが、正義とは人それぞれである事を説明した。

うん、偉そうに言ったわけだが、俺自身もそこまで悟りを開いているわけではないからなぁ・・・。そこまで言うと、まだ子供で理解しやすかったのか、すんなりと分かってくれた。あと、女の子だった。

・・・自分が転生したせいか?ただ、雫と同じように同性にモテるタイプだと言わせてもらおう。

そんな光輝と出会った過去を思い出しながらも、クラスの扉を開けて、自分の席に着く。一番後ろで窓際の席だ。うん、ここがやっぱり一番だ。

クラスの席の配置は、女子と男子が交互に混ざる並び方だ。なお、俺の目の前は光輝で、左側は雫さんである。

現在7時10分だ。何故こんなにも早く来たのかというと、雫はクラス委員長だからである。様々な仕事をする必要があり、珍しくこの高校では一番不人気な委員である。ん、俺?俺は巻き込まれた。

「んじゃ、俺は図書室にいるから」

「ええ、それじゃあ」

教員室に向かう雫と別れ、図書室に向かう。俺は図書委員だからな。この高校は、朝早くから図書室が開いているから、俺としてはかなり嬉しい。更に、ライトノベルなども大量にある。何故、図書室に人が来ないのだろう?

朝から図書室で本を読んで、そして予鈴が鳴って、クラスに戻る。クラスで、原作主人公の『南雲ハジメ』の周囲で何かしらあったらしい。

誰がハジメに絡むのか、決まっている。"俺以外の転生者"だ。

名前は『覇道シンジ』。あからさまに、俺様系。その想像は外れていなかった。

『ふはははは!貴様を俺の嫁にしてやろう!』

開口一番に、俺の隣の雫さんと前の光輝さんが言われた言葉です。

それ以降、覇道氏に対して苦手意識?というか、嫌悪感を抱いたようで、一切近寄らない。ま、あちらが勝手に近づいてきて、俺に絡んできて、公衆の面前というのに手を出してきて、合気道で気を失わせて、そこら辺にぽっぽいて帰るというのが、一連の流れになってきている。

・・・正直、2次創作で良くいる奴だ。リアルにいると思わなかったけど。今は、自分のハーレムの邪魔となる、南雲ハジメを排除しようとしているようだ。あいつが何を願ったか知らないが、恐らくトータスに行かない限り、特典は確認できないし、使えない。

というよりも、原作ヒロインの一人、背後の夜叉さんで有名な『白崎香織』が欲しいらしいシンジ氏だが、そもそも白崎さんが惚れているのはハジメなのだから、虐めたら逆に遠のく事に気がつかないのだろうか?

そんなこんなで、授業を受けて昼になった。

俺の弁当は・・・

「はい、ケイ。今日のお弁当」

「お、ありがと」

「ふふっ、このぐらいなら別にいいわ」

「おー、美味しそうだね。僕も混ざっていいかい?」

「ええ、いいわよ」

雫さんがいつも作ってくれるのである。ありがたやありがたや。そして、それを見て光輝さんが混ざってくるのもいつも通りだ。そして、食べようと箸を持つと、

「皆! 教室から出て!」

4時間目の社会担当の『畑山愛子』先生がそう叫んだ瞬間、いつのまにか足元に広がっていた魔法陣が光り輝いた。

原作通りだ。ただ、これだけは言いたい。

今日の弁当はいつもより美味しそうだったのに、もったいないいいいいい!!!

 

 

 

 

 

気がつくと、何処か分からないが、部屋の中に居た。しばらく呆然としながらも、記憶を思い出す。

・・・ああ、成る程。原作が始まったようだ。それと同時に、特典についての知識が、俺の頭の中に入れられた。まだ頭が痛い・・・。俺の特典は、【スマホゲーム】との事だ。転生する事になった時に、やっていたゲームを使える、という事だ。

しばらく頭の中の知識と、能力を確認していると、雫が入ってきた。もう、朝の7時との事で、なんでも闘う事になったから、訓練をするとの事だ。

なんとも嫌そうな顔で、そんな事を報告された。なんでも、覇道氏が『俺が全ての敵を倒してやる!』的な事を言って、それに雫、白崎、南雲、光輝、畑山先生以外が賛同してしまったらしい。

?覇道氏は頭が痛くならなかったのだろうか?

何にせよ、闘う事が決まったので、取り敢えず俺が起きているかどうかを確認しにきたらしい。

「あー、すまん雫」

「別に、いいわよ」

との事で、すんなりと許可を貰った。雫につられて外に出て、訓練場に向かう。

そして、訓練場に着くと、丁度説明が始まるところだったようだ。騎士団長『メルド・ロギンス』が豪快に笑いながら、俺の肩を叩いて起きた事を喜んでもらえた。他の奴なら、正直言って信用出来なかったが、この人は原作でかなりいい人と分かっている。多少痛いが、素直に受けておく。

そんな事がありながらも、説明が始まった。まず十二センチ×七センチ程の銀色のプレートを渡された。

「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

メルドさん・・・ああ、本人が戦友になるんだから堅苦しいのはやめだ!と、中々に気さくに空気を絆してくれたから、そう呼ぶ事にした。、

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 “ステータスオープン”と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」

「アーティファクト?」

いつのまにか右隣に居た光輝がメルドさんに質問をした。

「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」

ふむふむ、原作通りでやっぱり便利で危険なものなんだな。

渡された針で、指先を軽く刺して、血を出す。それをステータスプレートに擦り付けると、俺のステータスが出てきた。

===============================

現堂ケイ 17歳 男 レベル:1

天職:召喚士

筋力:100

体力:50

耐性:500

敏捷:250

魔力:1000

魔耐:1000

技能:契約・召喚・憑依[+自身憑依]・召喚可能対象確認[+天界を治める者][+己が記憶を求める者][+運命の冠位を巡る者][+聖剣の王の器を持つ者]・言語理解

===============================

成る程、記録で貰った内容と変わりない。それで、隣の光輝と雫はどうだろう?と、思ったら光輝の方は、メルドさんにステータスプレートを見せに行ってしまった。なので、雫の方を見させてもらう。

「雫、見せてくれないか?」

「え?まぁ、いいわよ?その代わり、ケイのを見せてもらうけど」

===============================

八重樫雫 17歳 女 レベル:1

天職:剣士

筋力:50

体力:70

耐性:30

敏捷:120

魔力:35

魔耐:35

技能:剣術・縮地・先読・気配感知・隠業・言語理解

===============================

「・・・すごいステータスね」

「何でこうなった」

俺のステータスは、結構なチートだな。そんなこんな思っていると、光輝のステータスで、メルドさん付近が騒いでいるようだ。どれどれ・・・。

============================

天之河光輝 17歳 女 レベル:1

天職:勇者

筋力:100

体力:100

耐性:100

敏捷:100

魔力:100

魔耐:100

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

==============================

ふむふむ、結果的には、ステータス面では特に変化は無いのか。そう思い、少し安堵していると、一際大きな歓声がメルドさん付近で再び起きた。何だと思っていると、覇道氏のステータスについての事らしい。

では、転生者さんはどんなステータスかなぁ。

============================

覇道シンジ 17歳 男 レベル:1

天職:騎士王

筋力:2000

体力:2000

耐性:2000

敏捷:1500

魔力:500

魔耐:1000

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・魔法耐性・竜の心臓[+使用不可能]・聖剣抜剣・風王結界・聖剣の鞘・言語理解

==============================

・・・わぁお。俺を遥かに超えているなぁ。技能数では、光輝が勝っているが、ステータスが全くもって及ばない。そんな風に思っていると、覇道氏が聖剣を虚空から出した。それによって、更にどよめきが起きて、凄い凄いと騒ぎ出した。

それと同期して、俺の中でも何かが騒ぎ出した。

『聖剣ですか。折りましょう』

何かが聴こえた。それと同時に思い出した。俺の能力は、スマホゲームが元だ。確か、[聖剣の王の器を持つ者]の元になったゲームには『錬金アーサー』という、聖剣を折るアーサーが居た。

・・・よし、折ろう。

人混みを避けて、覇道氏に近づく。

「覇道氏、俺にその聖剣ちょっと持たせてくれない?」

「ほう?まあよい。どうせ俺以外には持てないからな!」

それで俺に渡されたが、普通に持てた。それに驚いた覇道氏だったが、俺は気にせず聖剣を持ってその場から離れる。

そして、周りが俺に注目する中、自身に『錬金アーサー』を憑依させる。

その瞬間、『錬金アーサー』のようなフードと、小さな王冠、手の謎のグローブ?と足の同じく謎の靴。手元にはハンマーが現れる。

『聖剣は、折るべし!』

心に響く声に従って、俺は思い切り手に持ったハンマーを打ち付けた。すると聖剣は・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポッキリ折れた。



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英霊召喚

どうも、久々ですね〜。
あ、名前を陽光のアリスから、月見兎に改名しました!
これからは、ある程度のペースでキチンととうこうしますので!(多分
まぁ皆さん、気長に見てくれると嬉しいです!
こんな展開、こんなキャラが出てきて欲しい!などなどの意見、ここ面白いよ、ここの文字間違っているんじゃない?というような意見があったら、是非くださいね〜。
では、どうぞ〜。


「な、な、な、何をした!?貴様!?」

「聖剣を折りました」

「見ればわかる!?何故折ったと聞いている!?」

「決まっているじゃないですか、エクスカリバーだからです」

聖剣、もといエクスカリバーをポッキリ折ると、覇道氏に胸元を掴まれて怒鳴られた。反省はしているが、後悔はしていない。

『ステータスの割には』弱い筋力だなぁと思いながら、念の為に覇道氏を振り払って、落ちている覇道氏のステータスプレートを確認する。

============================

覇道シンジ 17歳 男 レベル:1

天職:騎士王

筋力:150

体力:200

耐性:100

敏捷:75

魔力:500

魔耐:1000

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・魔法耐性・竜の心臓[+使用不可能]・聖剣抜剣[+破損状態]・風王結界・聖剣の鞘・言語理解

==============================

ステータスが軒並み下がったうえに、聖剣が破損状態となっている。成る程、覇道氏のステータスはエクスカリバーに支えられていたのか。

「貴様ぁ・・・よくも!」

「はぁ・・・」

覇道氏が殴りかかって来たので、今だに手に持っていたハンマーで防ぐ。すると、鈍い音が響き覇道氏がうずくまる。

「ぐ、ぁ」

「何で全力で殴ろうとするんですか。全く。ま、これも一応エクスカリバーですし、結構な強度があるんですねぇ」

覇道氏を放っておいて、自身への錬金アーサーの憑依を解除する。軽い疲労感に襲われるが、特には問題なさそうだ。周囲が俺から離れる中、自身のステータスプレートをメルドさんに提出する。

「どうぞ、メルドさん」

「あ、ああ。って、このステータスは・・・」

メルドさんが再び覇道氏の時のように驚いているが、さっさと回収して、集団の後ろに戻らせてもらう。俺が通ろうとすると、元クラスメイト達は俺を避けてくれる。うん、余分な騒ぎは起こしたくないからね。

集団の後ろに戻ると、雫に殴られた。痛い。

「はぁ、なんでケイは面倒ごとを起こしたのよ」

「聖剣を折るべしと、聞こえたからだけど?」

「・・・ケイって、たまに直感で動くわよね」

「大丈夫だ。問題しかない」

「・・・はぁ」

何にせよ、これで覇道氏はかなりステータスが落ちた。原作組からしたらかなりステータスが高いが、俺からしたらまだ対処が出来る。

原作と同じように南雲氏が錬成師だった事で騒ぎが起きたが、俺のやった事の方がインパクトが強かったようだ。なんにせよ、今日はそれぞれ自らのステータスを確認してする事が目標らしい。

雫は同じ前衛系の場所に行ってしまったようだし、光輝は覇道氏と一緒にメルドさんに話しかけられている。俺は・・・周りから避けられているみたいだ。取り敢えず、召喚を試してみよう。

・・・誰を呼ぼう?なるべく温厚で話が分かる人物は・・・オカンだな。

頭の中にある式句を、口に出す。小っ恥ずかしいが、まぁ我慢しよう。

「我汝らの主なり。故に来たれ、我が元に!アーチャー、エミヤ!」

目の前に自分達を召喚した時に酷似した魔法陣が発生する。そして、魔法陣から一人の人物が姿を現した。

「アーチャー、エミヤシロウ。久しいな、マスター」

「・・・覚えているのか?」

「ああ、あのよく分からん存在からマスターを助けろと言われてな。まぁ、元から助かるのだから渡りに船だった」

そうエミヤが言うと、ふっと笑っていた。

「取り敢えず、俺の武術の相手になってくれ」

「ふむ。そういう話なら、相手になろう。っと、そうだマスター」

「?なんだ?」

「あー、その、だな。清姫が、マスターに会いたがっていたぞ」

「・・・ッ!」

清姫。彼女はFGOでも有名な、ヤンデレ代表みたいな人物だ。なお、うちのカルデアのバーサーカー枠だった。彼女を呼ぶのはいいんだが・・・雫に会ったら、きっと大変な事になる。

「・・・そのうち、な」

「・・・頼んだぞ」

「・・・ああ」

はぁ、どうしようかな。何にせよ、彼女をそのうち呼ばないと、大変な事になるだろう。となれば、いつ呼ぶかが重要になってくる。

胃が痛くなってくる中、今だけは忘れる為にエミヤの試合を始めた。

*******************************

周りのクラスメイト達は、圧倒的なその戦いに見惚れていた。若干一部の女性は赤い服の男性に目がいっているようだが、クラスメイトの殆どは同じクラスメイト---現堂ケイに目がいっている。

赤い服を着た男性がどこからか双剣を出して斬りかかったかと思ったら、黒い服に大きな槍、首と手につけられた首輪と腕輪から伸びた有刺鉄線が体を縛り付けているという痛々しい状態になっていた現堂が、槍で双剣を回すように受け流して下から槍で突こうとするが、すぐさま双剣を手放した。そのような斬り合い、突き合いが数十回行われた。すると、赤い服の男性は再び何処からか大盾を出し、槍の一撃を防ぐ。しかし、すぐに壊され刺されるかと思いきや、盾の後ろには既に男性はおらず、何処だと思ったら現堂の背後から斬りかかる。現堂はいきなり蝙蝠の大群になってしまい、少し離れた場所に蝙蝠が集まって再び現堂が現れる。気付けば男性は剣ではなく、弓を持っており、奇形の剣を弓につがえて弦を引いた。

「・・・壊れた幻想ッ!」

瞬間、男性の持っていた弓から剣が放たれ、現堂に向かう。現堂は大盾を構えて向かってくる剣と向き合ったままでいる。当たりそうになる瞬間、

「遥か遠き理想の城ッ!」

一瞬、周囲のクラスメイト達や騎士達には、現堂の周囲に城の城壁が幻視出来た。そして、幻の城壁に剣が当たった瞬間、剣が爆発した。土煙が舞う中、何度も金属が打ち合われる音が鳴る。そして、土煙が収まると、中央で剣と槍を打ち合わせた状態の現堂と男性が居た。すると、二人は剣と槍を納めて戦いをやめた。

「ふむ、中々にマスターの戦い方は決まっているな。殺さないようにしていたとはいえ、それはマスターも同じ。補助を受けた上で私と打ち合えるのだから、かなり強いと思うぞ」

「エミヤ、戦ってくれてありがとうな。俺としても、中々に出来ない経験ができたからこちらとしても嬉しい」

男性と現堂が手を握り合う中、俺達の心情はきっと一つだったと思う。

---土煙のせいで、汚れたよっ!

それに怒ったクラスメイト(主に女子)に怒られて、男性と現堂は深夜に罰として訓練場の整備をさせられる事になった。




せんとうしーんきらい。
まぁ、書かないと勿体無いので戦闘シーンを描いたんですけど・・・うぅ・・・。
私にっ、文章力をっ、くださいっ!
今回、主人公に憑依させたキャラがわかる人っ!
感想で答えてね〜。(露骨な感想稼ぎ


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異世界の朝は早い

ども〜、昨日に続いて投稿でーす。
いやぁ、意外と読んでくれている人が多くて、びっくりしちゃいました。
そんな事を思いながら、書いたわけですが・・・。
キャラの性格を上手く書けているかが、一番心配になって来ますねw
何にせよ、どうぞ〜。
あ、感想に評価をどしどしくださいね〜。
良い案や、オススメのゲームがあるのなら、採用するかもです。
ゲームのフレンドに〜って方は、感想で言ってくれればなりますので〜


ステータスプレートを渡されて、軽く訓練をした夜に俺は王宮の一角にあてがわれた部屋で、ベットの上に横になっていた。

「・・・一応、能力的には普通に使えるみたいだな。あと問題があるとすれば・・・」

訓練の時に呼んだエミヤは、今はカルデアに戻っている。今回エミヤを召喚した事で、カルデア側からこちらのいる空間の位置が特定できた為、ある程度の支援が出来るようになった。

俺はベットの上に横になりながら、手元に意識を集中させる。すると、手元にスマホが現れていた。

「現在のリソースについてや、どれがどのくらい消費するのかは、これで確認すればいいって事だよな・・・」

スマホの画面には、やっていたゲームの他に、新しく【コスト確認】という名前のアプリが追加されており、それを見ると自分の現在のリソース量は5000程だという事が分かった。

例えば、エミヤにさく必要のあるリソース量は大体1500程。自身に憑依させた場合のリソース量は1000程。キャラによって変わりそうだが、何にせよ強いキャラなら、多くのリソースをさく必要が出る。

リソース量を増やす方法としては、自らのレベルをあげたり、能力自体が成長する事でも、一応増えるようだ。

「・・・FGOは召喚が出来た。なら、次に試すのはファンキル辺りでいいか」

ファンキルも一応憑依で使ったが、召喚した場合どうなるかは試していない。召喚するのは・・・やっぱり、うちの最高戦力かな。

「我汝らの奏者なり。故に来たれ、我が元に!!『怠惰』レーヴァテイン!」

召喚の式句は、基本同じだが自らの立場が多少変わる。FGOの場合は主、ファンキルの場合は奏者、天界のヴァルキュリアの場合は領主で、乖離性MAは王といったそれぞれのゲームにおいての主人公の立場によって変わる。

そして、今回呼んだのは・・・

「はぁ・・・、何用事も無いのに呼んでくれちゃってるの?殺すよ?」

「・・・性格の事を忘れてた」

今思い直せば、『強欲』ティルフィングを呼ぶべきだったかもしれない。

「で?何で呼んだの?」

「あー、一応召喚が出来るかどうかを確認していた」

「はぁ?なら私じゃなくても良かったじゃん」

「まぁ、そうなんだが・・・」

・・・どのゲームでも同じだと思うが、1人のキャラでも季節のイベントなどでも様々な服装で登場したりする。だがレーヴァテインは少々違い、ファーストキラーズという7人のキル姫(ファンキルのキャラ達の事)のブラックキラーズという、ある意味別側面の存在だ。

まぁ、他の説明は省くとして、兎に角ブラックキラーズは強いのだ。下手なキャラよりも。まぁ、『怠惰』という名前から分かるように、面倒な事はやらないタイプなのだ、彼女は。

「まぁ、いいけどさ。今後意味もなく私を召喚しないでね」

「分かったよ」

「それじゃあ、おやすみ〜」

「ああ、おやす・・・って、そこは俺のベットなんだが」

「・・・zzZ」

寝てしまった。取り敢えずは、きちんと召喚は出来る事が分かった。アプリで確認すると、レーヴァテインのリソース消費量は、大体1800のようだ。エミヤ、負けているのか。

次に確認するのは、ヴァルキュリアなのだが・・・呼ぶのに良さそうなキャラが思い浮かばない。乖離性MAも同じだ。基本、昼間なら問題は無いと思うが、今は夜。流石に迷惑はかけられない。

「・・・FGOの服装でも着てみるか」

服装を変えていて分かったが、FGOの礼装を装備している間は、FGO関連の存在しか扱えないようだ。その前に召喚などをしてあったら問題はないが、礼装を来ている間は注意しなければならない。ついでだが、性別も一時的に変えられた。

それらの結果を頭の中で纏めながら、俺は今日1日の違和感について考える事を変えていた。

まず、エミヤを呼んだ時に言っていた『よく分からない奴』というのが誰なのか、他の人達にも聞こうと思ってレーヴァテインを召喚したのだが・・・。

「・・・zzZ」

「・・・本当に寝てしまっているしな」

これでは、答えてもらう事ができない。兎にも角にも、もう一つの疑問点をまとめよう。

「何故、あそこまで簡単に聖剣を折る事ができたのか。そして、聖剣を折った時に感じたあの違和感・・・」

確かに、錬金アーサーは聖剣を折るアーサーだ。確かに、彼は聖剣の使い手としてはいい部類ではなかっただろう。ただそれでも、聖剣は、つまりエクスカリバーの伝承としては、こちらなんて簡単に飛び越えるだろうし、ゲームでも錬金アーサーは他のアーサーの剣を折ろうとして失敗している。

となると、一発で簡単に折れてしまうのは、やはりおかしいのだ。

更に、折った時に一瞬感じた『あの気配』。良いとも悪いとも言えないが、今まで感じた事の無い気配だった。

・・・ダメだな。これ以上は流石に何の情報もなしだと、流石に分からない。明日の朝まで寝て、もう一度考え直すか。って、ベットはレーヴァテインが寝ていたか・・・。どうしようかな・・・。

「・・・ねぇ、ケイ。起きてる?」

瞬間、俺に死刑宣告が下された。部屋のドアを開けたままで固まる雫、レーヴァテインを隠そうと布団を上手くかけようとする俺、そして、ベットの上でぐっすりと眠ったままのレーヴァテイン。

「ケイ?そこに座りなさい?」

「え」

「良いわよね?」

「はい」

即座にその場に座らされる俺。そしてにこやかに笑いながらも目が笑っていない雫。その後、朝になって隈が出来ている俺を心配してくれたメルドさんにやんわりと問題ない事を伝えながら、あれは思った。

今後の人生、雫に刺されないように気をつけないとなぁ・・・。

異世界の朝は早い。




うさぎお〜いし、か〜の〜や〜ま〜。
た〜の〜むか〜ら、ころ〜さ〜ないで〜w
兎鍋って、美味しいんですかね?
同族は食べませんけどね!


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貴方の全てを、私に頂戴?

反省と後悔はしている、だが懺悔はしないっ!
いえ、嘘ですすみません。
まぁ、ある程度開けての投稿になったねぇ。
こんな感じで結構不定期投稿になるけど、是非も無いよネ!
ああ〜、どんどん色んな小説の二次が浮かぶのだぁ・・・。
あ、感想に評価どんどん頂戴ね〜!


剣を振るう。剣を突く。剣を薙ぐ。剣を右に、左に、上に、下に、右斜め、左斜めetc・・・。

次は闇に持ち替える。矢を射つ。矢を射つ。矢を投げる。矢を放つ。弓を刺す。弓で架空の敵の首を・・・

「マ、マスター!まて、まてぇ!」

「・・・ハッ!」

敵の首だと思っていたのだが、実際はエミヤの首だった。危ない危ない。・・・まぁ、一応英霊だから問題は無いと思うが・・・。

今はちょうど訓練場で訓練をしているところだった。エミヤとの試合のせいか、メルドさんにクラスメイト達とは別の場所で訓練をするようにと言われ、仕方なく弓術を磨くために場内の隅で壁に矢を射っていた。

「・・・はぁ」

「どうしたんだ、マスター?」

「いや、なんでもない」

実際、こうして剣なり弓なり槍なりを振るっているわけだが、正直意味があるようには思えない。実際、原作では人の死に関する事が起こった時、クラスメイト達は動かなくなっていた。

それに関してメルドさんが悩んでいるのは分かるのだが・・・。

「もう少し、実践的な事は出来ないのだろうか・・・」

「ふむ、私と戦っても、あくまでも模擬戦。実戦的な事は流石に私では出来ないからな」

「確かに・・・」

もう少しリアリティのある事をするには、どうすればいいのか。こうやって動かないまとを射っていても、意味があるとやはり思えないのだ。

「実戦、実戦・・・」

・・・南雲氏や他のクラスメイト達には悪いが、早くオルクス大迷宮に行きたいな。こんな風に普通なら忌避するべき殺傷行為に対して何も感じていない時点で、俺には何かしらなくなってしまっているのだろう。

『あ〜、あ〜。てすてす、マイクテストだ。どうだい、立夏くん。いや、今の名前は確かケイ君だったかな?』

「はぁ、いきなり話しかけて来ないでくれるか、ダヴィンチちゃん」

変人奇人が揃うカルデアの英霊達の中でも、自身が召喚していない変人にして奇人にして天才にして変態。それが今話しかけてきたレオナルド・ダ・ヴィンチ。

『いや、なに。こちらとの連絡なりなんなりが出来るようになったからね、そちらに対しての援軍として何人かそっちに送ろうと思っているんだ』

「・・・エミヤがいるわけだが?」

そう、そこが一番の問題点なのだ。俺も一度は英霊達を召喚しようとは思った。しかし、決定的にコストが足りないのだ。

『うん?いや、なに。前と同じように、そちらでのコストをこちらで背負えば良いんだよ』

「・・・その手があったか」

自身のコストを削るのではなく、カルデアの方から魔力を回してもらって、こちらで維持する。そもそものカルデアのシステムが今の俺の状態に近いのだ。

カルデアでは世界を救う為に、多くの英霊達を召喚して電力で魔力を補っている。本来の英霊召喚とは、自身の魔力で補うところを電力で補っているのだ。

つまり、俺自身の下にカルデアから英霊達を送り込むという形が落ち着くのだ。

『というわけで、何人か送ろうと思っているんだけど・・・流石に今はやめた方が良さそうだね』

「まぁ、こうやって住まわせて貰っている身で、更に住人を増やすのはなぁ」

別に、英霊達は霊体化すればいいだけなのだが、それでは他のクラスメイト達からしたら傍迷惑な事になってしまう。っと、そうだ。前々から考えていた事を本人に確認しないと。

「ダヴィンチちゃん、ちょっと佐々木小次郎を呼んでくれないか?」

『ん?別にいいけど・・・彼に何か用かい?』

「ああ、そんなもんだ」

ダヴィンチちゃんに佐々木小次郎を呼んで貰って、話をつける。取り敢えずは本人からの許諾は取れた。次は、雫に許可を貰わないとな・・・。

さて、一度自分のステータスを確認するか。

===============================

現堂ケイ 17歳 男 レベル:5

天職:召喚士

筋力:500

体力:250

耐性:1000

敏捷:750

魔力:5000

魔耐:5000

技能:契約・召喚・憑依[+自身憑依][+他者憑依]・召喚可能対象確認[+天界を治める者][+己が記憶を求める者][+運命の冠位を巡る者][+聖剣の王の器を持つ者]・言語理解

===============================

*******************************

「雫に一つ聞きたい事があってな」

「ええ、いいわよ」

「雫にとある英霊を憑依させて・・・って、いいのか?!」

「もちろんよ、ケイが私の事を思って言いだしてくれているんでしょ?それなら、別に拒んだりなんてしないわよ」

自惚れかもしれないけれど、恐らく彼女は俺をある程度信頼してくれている、筈だと思っていた。それでも受け入れてくれるかどうかに関しては、分からないでいた。だが、こうもあっさり受け入れてくれるとも思っていなかったのだが・・・。

「はぁ、ねぇケイ。貴方と私、幼稚園より前からの付き合いよね?」

「・・・そういえば、そんなに長い付き合いだったんだな」

思い返せば父に道場に連れて行かれて、そこからの付き合いだ。その後も小学校、中学校、それに高校も同じだった。

「ケイは私にとって何よりも代え難くて大切で縛って縛られたい人」

・・・あれ、なんか変な言葉が聞こえたなぁ(棒)。

「だからこそ、私はケイを信じている。ケイ以外を信じなかったら、誰を私は信じればいいの?私はケイに全てをあげる。私はケイが望むのなら何でもする。私はケイが私を見てくれるのなら・・・私は他の何もいらない。私はケイのもの。ケイは私のもの。だから、信じるとか信じないとか、そういった話じゃないの。自分を信じなかったら何を信じるの?」

・・・愛と信頼が重い。けれど、本人が良いといっている。俺の所有者で所有物の彼女が良いと。なら、俺はそれに応えたいと心の底から誓おう。俺は彼女のもので彼女は俺のもの。そう、心に刻もう。

「・・・それじゃあ、やるぞ」

「ええ」

雫の手を取りながら、技能を発動する。技能からどのようにすればいいのか、それに関する知識が俺の中に入ってくる。

「古今東西、遍く世界に語り継がれし英霊よ。汝らの主たる俺、現堂ケイが望む。彼女、八重樫雫の力となれ、佐々木小次郎っ!」

風が吹き荒れる。雫の中で力が混ざっていくのを感じる。恐らく雫の状態としては、マシュが一番近い状態として当てはまるだろう。

そして、カルデアの令呪とは別に左手の手の内に、令呪が浮かび上がってくる。そして、目の前で吹き荒れていた風が治ると、そこには和服を着て刀を腰に携えた雫がいた。

「サーヴァント、アサシン。佐々木小次郎の力を借りたみたいだけど・・・。ねぇ、ケイ。私は貴方に全てをあげる。だから、私に貴方の全てを頂戴ね?」

・・・雫が仮とはいえ、英霊になってしまったようだ。はぁ、どうやって話をつけよう。




活動報告にて、この小説の今後についての質問をあげましたっ!
今後も一作ごとにこんな事を聞くかもしれないので、返答もらえると嬉しいですっ!
以上っ!


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迷宮攻略

・・・すみませんっ!
あの、そのですね。27日に投稿しようと思っていたんですけど、ゲームの周回して忘れていちゃって・・・。
こ、これもFGOの水着イベントに邪ンヌが来たのが悪いんです!
・・・本当スミマセン。
何にせよ、投稿ペースについては4票いただきました!
感謝、圧倒的感謝!
その内2票あった一週間に一回ペースで投稿しようと思います。27日に投稿する予定だったので・・・次は9月の3日ですね。
あ、あと。ミトラスフィアというゲームをタグ追加しようと思うんですけど・・・どう思いますか?
活動報告の方で質問しておくので、意見お願いしますね!


雫に佐々木小次郎が憑依した事で、雫のステータスが大幅に変わった。それによってメルド氏に驚かれたが・・・まぁ些細な事だ。

何にせよこれで雫は死ににくくなった。そして最近、気付いたことがある。だんだんと前世の記憶と、原作の記憶が薄れていっているのだ。今はオルクス大迷宮で“何か”が起こるということは覚えているが、それ以上は覚えていない。

だからこそ、雫に対しての保険が欲しかった。

兎にも角にも、今はオルクス大迷宮に向かう馬車の中。何台かある内の、俺が載っている馬車には、雫、光輝、白崎、南雲、坂上という、勇者パーティ+αである。

最高戦力が集められた上で、誰とも一緒に乗れなかった南雲氏を白崎氏が誘った形だ。その上で、メルドさんも一緒に乗っている。

「それじゃあ、お前らの中で一番ステータスが高いのお前らに言っておく。ステータスは全てじゃない。ほんの少しの油断や戸惑い、躊躇によって簡単に死んでしまう。だからこそ、ステータスが高いお前らは危ない状況に陥った奴らを率先して助けろ」

メルドさんは真剣な顔で、俺達を見た。張り詰めた空気を感じて、馬車内の俺達はスイッチが切り替わる。ここから先は命が幾つあっても足りないのだと、本能が悟る。

「了解です」

俺がそう口にすると、メルドさんはふっと表情を崩した。

「なに、俺達は王宮騎士の中でも実力があるんだ。そう簡単にお前らを死なせたりなどせんよ」

そうメルドさんが口にすると、一気に空気が柔らかくなった。全員笑い始めたが、俺にとっては不安しかない。血で血を洗う戦場。命で命を奪う戦い。そこまで酷くないとしても、安心などどこにもない。

前世の記憶が薄れていく代わりに、俺には別の記憶が浮かび上がってきていた。

国を作り世界を旅した事、記憶を取り戻す為に多くの人物と友になり敵になった事、世界を救う為に七つの特異点を巡った事、王を定める剣を抜き戦った事。様々な事を知る、いや、思い出していっている。

霧に包まれた様な、朧げに掴めそうな何かも感じている。

日本では滅多に見られない広々とした平原をみながら、俺達は馬車に揺られて宿場町【ホルアド】に到着した。

*******************************

ホルアドにて一泊して、その後にオルクス大迷宮に挑むらしい。何にせよ俺は自己鍛錬をしておきたかったので、メルドさんに頼んで外に近い部屋を取らせてもらった。

俺一人ではなく、南雲氏も一緒ではあるが。

「南雲氏、俺は外に行ってくる」

「え、あ、うん。いってらっしゃい、現堂くん」

どうせすぐに白崎氏がくるのだ。なら、俺がここにいない方がいいだろう。自身の欲求とたにんへの気遣いの両方がこなせるのだ、ならば外にいよう。

外に出て、自身に対して憑依させる。憑依させるキャラクターは『天界のヴァルキュリア』のキャラ、『聖人 ヒラガ』だ。

そして、自身に対して憑依を実行する。髪は金に、眼は緑に染まり、服も自らを覆う様な服に変わる。赤を基調としたどこか豪華な、しかし下品ではない服装。

俺は自身の手を握ったり、ひらいたりしながらどれだけリソースを消費するのかを確認する。消費するコストは750程。憑依させている為か、かなり少ない。取り敢えずは、力を試してみる。

このヒラガというキャラクター。いや、人物は魔術ではなく科学技術を確立させてみせるとしている人物だ。だからこそ、この人物には電気を操る能力がある。

「・・・ふっ!」

自身の周囲を纏わらせておいた電気を、落ちてきていた葉に向かって打つ。そして他の葉へと移動。それをずっと繰り返す。単純だが、集中力が切れていく。電気を通した葉はボロボロになって崩壊する。

それを横目に続けていく。電気の操作はかなり精神を擦り切らせる。ある程度動かす感覚を掴めたところで、俺はその行動をやめた。

今度は体に電気を走らせていく。足先、膝、腰、腕、指先、頭。

死なない様に、神経を傷付けない様に、慎重に冷静に。その感覚を掴んで、何度も繰り返す。そして、その状態でも動いてみる。木をつたい、上下逆になり、様々な動きで身体能力を試してみる。

そして、体感で12時になった事を理解して、俺は宿に戻る。水を貰って体を流し、部屋に戻ってベットに横たわる。実は良くないが、畳の上で寝る感覚でいたらすぐに寝れた。

次の日の朝、宿の前に全員集まって各々の武器、装備を持つ。

「ここから先は、命を失う可能性がある。決して侮る事なく、慎重になるんだ」

メルドさんは真剣な顔でそういうが、殆どの奴はそれを間に受けずにヘラヘラと笑うか談笑している。

・・・憂鬱だ。

「ねえ、ケイ。大丈夫かしら?」

「さぁな。俺にも分からん。何にせよ、慎重にいくぞ」

「ええ、分かっているわ。こう言っては何だけれど、佐々木小次郎さんの方が戦いたくてうずうずしているみたいなの」

苦笑いをしながらそう言う雫をみながら、俺は目の前のまるで博物館の様な入り口を見る。これもクラスメイト達の緊張をどこかにやってしまっている要因の一つなのだろう。

そう思いながら、俺達はオルクス大迷宮の中に入っていく。その先に絶望があるという事を知らずに。




久しぶりに書いたので、少し文章などがおかしいかもしれません。
指摘、感想、評価どしどしくださいね!


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化け物の咆哮

ひっさしぶりに投稿です!
いやぁ、ネタが湧かない湧かない。頑張って今回形にしてみまして、次回はようやくベヒモス戦ですね。
こんな小説をちょくちょく読んでくださっている読者の方々、感謝しかありません。長い目で見守ってくださると、とても嬉しく思います。
あと、読者の方々が、こんな感じがいいんじゃない?こんなキャラクターを出してみたらいいんじゃない?というような意見があったら是非感想送ってくれると嬉しいです!
では、『化け物の咆哮』。どうぞ!


「・・・燕返しっ!」

暗く、深い奈落の上。たった一本の石橋の上。ある者は剣を、ある者は槍を、ある者は斧を、ある者は杖を持って己の命を守る為に力を振るっている。

「ちっ、雫!少し下がれっ!」

「了解っ!」

俺と雫は目の前の怪物を相手にしながら、ヒット&アウェイで確実に、そして着実に傷を増やしていく。例え他よりも自身の能力が高かろうと、自分は戦場を経験したのは初めての素人。

命あっての物種と言うように、安全を確保しながらも、拳で、刀で斬りつけていく。

グゥルルルルルゥオオオオオォォォォォォ!!!!!

怪物が叫ぶ。殺意を込めて、ただ俺達を殺そうという意思だけを込めて。

「鉄、拳、聖、裁っ!!」

突進してくる怪物に対し、全力の拳を振るう。本人から教えられた・・・今なお教えられている全力の、全開の拳を振るう。

「ちぃっ!硬いっ」

まるで鉄のようだと思った。しかし、それだけだ。今の俺は彼女とほぼ同化している。経験が、彼女が戦ってきた記憶が、竜よりも柔らかいと告げている。竜を沈めることができるのだ。ならば、それ以下を下せぬ筈はない。

拳を振るう。いままでのようにヒット&アウェイではなく、超近距離での連続打撃。攻撃をいなし、その拳すらも砕き、真正面からその力を挫く。

グルゥオゥ?!?!

まさか自身が力負けすると思っていなかった怪物は、驚愕に目を見開く。しかし、そんな隙を俺は見逃す程甘くはない。・・・チャージは出来た。ならばあとはぶちかます。

「愛を知らぬ偽りの竜よ、ここに。星のように!『 荒れ狂う偽りの竜よ (タラスク)』!  鉄・拳・聖・裁!」

怪物に拳が沈む。硬直し、血を垂れ流して力なく床に頭を垂れる・・・完全に沈黙。

「・・・ごふっ」

「ケイッ!」

血を吐きながら、何故こうなったのかと、俺は思い出し始める---

 

 

 

オルクス大迷宮の内装は、入り口を見た時に思ったのと同じ感想だった。確かにある程度の規模として営業するのなら、こういう事をする必要があるのは分からなくはないが---

「はぁ、ある意味夢を壊されたな」

周りを見てみると、あからさまに落胆した様子のクラスメイト達の姿が見えた。といっても、もうすぐ戦闘があるのだから、気を抜かないで欲しいのだか・・・。

そんな事を考えていたら、壁の隙間という隙間から、灰色の毛玉が出てきた。

「よし、光輝とケイ、雫は前に出ろ!交代で敵に対しては対応してもらう!あれはラットマンという魔物で、すばしっこいが大したことはない。冷静に対応しろ!」

メルドさんに指名されたので、取り敢えず前に出る。今回自身に憑依させる予定としては、乖離性ミリアサから持ってこようと思っている。

「憑依、『妖精 ミディール』」

正直、召喚士として召喚をして戦うべきなのだろうが・・・。

「ふっ!」

憑依した時に現れた剣で、ラットマンを斬り払う。

憑依して力を手に入れても、経験が伴わなければ、その力を十分に扱う事なんて出来ない。慢心は許されない。慢心をすれば、失ってしまう。大切な、守るべき---を・・・。

「---イ。・・・ケイ!」

ふと、雫の声が聞こえて、腕を止める。改めて周囲を確認してみると、既に周りのラットマンは全て殲滅し終わっていた。・・・あれ、俺は何を考えていた?

「はぁ、ケイ。今までろくに戦う相手とか居なくてちょっと物足りなかったのかもしれないけど、他のみんなが戦う分まで倒しちゃったら、意味ないじゃない・・・」

いや、そんな事よりも大切な事があるはずだ。そうだ、守らないと。失う前に、早く、早く。強くならないと。また失ってしまう。

「ははは、まぁ、今回はケイがやりすぎて殲滅してしまったが、本来はこう簡単には出来ない。お前達は三人から四人でパーティーを組んで、安全を確保してから戦うんだ」

「「「はいっ!」」」

その言葉で、一階層は締めくくられた。そのまま二階層、三階層と順調に進んでいき、二十階層まで来る事ができた。次の階層の、二十一階層の階段までいったら、今回の訓練は終わりらしい。

狭い空間で、縦に並んで移動していくと、違和感のある場所が見えた。よく目を凝らして見ると、カメレオンのような擬態能力を持ったゴリラの魔物にみえる。

「擬態しているぞ! 周りをよ~く注意しておけ!」

メルドさんがそう言うと、擬態ゴリラはその擬態をといてドラミングをした後、こちらに飛びかかってきた。すぐに後ろに下がろうとするが、後ろにはクラスメイトがいる。

「ッ!憑依変更ッ、『ルーラー ・聖女マルタ』!」

すぐさまマルタに憑依を変更。飛びかかってくる擬態ゴリラに対して、拳で殴りかかって粉砕する。多少拳に響いたが、これぐらいならばスキルの『天性の肉体(海)』で回復できる。

「ロックマウントだ! 二本の腕に注意しろ! 豪腕だぞ!」

メルドさん、それは俺が拳で対抗する前に教えてくださいよ。なんにせよ、既にこちらに飛びかかってきたロックマウントの一体は倒した。なら後は残った奴を片すだけだ。そう思い、擬態を解いた別個体のロックマウントを見据える。直後、

グゥガガガァァァァアアアアーーーー!!

部屋全体にロックマウントの叫び声が響き渡る。すると、臨戦態勢を取っていたクラスメイトが動かなくなる。

「えっ、どういうこと?!」「な、なんで動かないんだよっ!」「動けっ、動けぇっ!?」

「落ち着けっ!これはロックマウントの固有魔法“威圧の咆哮”だ!しばらくすれば動けるようになるっ!」

しかし、その隙にロックマウントが動かないとは限らない。近くにあった岩を両腕で掴んで俺と雫に目掛けて投げてくる。そして、飛んでくる最中に岩が形を変えてその正体を現す。ロックマウントが投げた岩は、同じロックマウントだったのだ。両腕を開き某怪盗のように飛びかかってくるが。

「それは悪手だ」

岩だから空気抵抗があってもある程度の速度が出たが、腕を開けばもろに風を受ける。つまり、急速な減速。しかも柔らかい腹を見せてくれているのだ。それを逃すほど、俺も雫も甘くはない。

「砕けちれっ!」

「遅いっ!」

俺は拳で、雫は刀で。砕き、一刀両断する。奥にはまだロックマウントが残っているので、クラスメイトが元に戻るまでここから動けない。

そんなふうに考えていると、他のクラスメイトよりも先に硬直から立ち直った光輝が前に出てきた。

「光輝?」

「っ。僕は足手まといなんかじゃない・・・!」

光輝が何かを呟いた後、すぐさま詠唱に入った。それも、周囲に傷跡を残すような魔法を。

「光「万翔羽ばたき、天へと至れ――〝天翔閃〟!」っ!」

止めるのに間に合わず、魔法が放たれる。俺にはあまり魔法は向いていないらしく、光輝が使ったような魔法は使えない。だが、ある程度の知識に入れていた為、被害がどれくらい出るのかは理解していた。

魔法が終わると、目の前はまっさらになっており、ロックマウントの影もなかった。敵の殲滅なら、これで十分だっただろうが・・・。

「僕は、足手まといなんかじゃない・・・」

あいも変わらず、何かを呟いている。だが、それよりも先に。

「この馬鹿者が。気持ちはわかるがな、こんな狭いところで使う技じゃないだろうが! 崩落でもしたらどうすんだ!」

「・・・すみ、ません」

メルドさんの言う通りではあるが、光輝は敵を倒す前も後も表情は暗いままだ。一応フォローしておくか。勇者である光輝が暗いと他のクラスメイトの士気が下がるし、純粋に俺自身が気になってしまう。

「光輝」

「っ!」

「何を焦っているのかは知らないが、あんまり思い詰めるな。思い詰めすぎると考えがまとまらなくなって、大切な時に戦えなくなる」

「・・・僕は。・・・僕は、弱いかな」

?誰がそんな事を言ったのだろう。正直、ステータスがある程度の差があっても、剣を使っての一対一は技術的に劣る。それに、元から異常な俺や、擬似英霊になった雫の様な裏技を使ったわけではないのだ。

「光輝。お前がなんでそんな事を考えているのかは知らないけれど、十分に強いさ。それに、今はまだレベルが低いだけで、レベルが上がれば俺なんてすぐに勝てなくなる」

「・・・本当?」

「あぁ、保証する。技術で俺はお前には及ばない。今こうやって前線にいられるのだって、様々な存在の力を借りているからだ。だからこそ、お前はお前自身の力があるんだ」

「そっか・・・ふふっ」

何にせよ、これで光輝は大丈夫だろう。もう少しで階段だ。いや、何か大切な事があるはずだ。なんだ?思い出せ、思い出せっ!

「あっ、おい、覇道っ!勝手な行動はするなっ!」

メルドさんの声が聞こえてそちらを見てみると、美しい水晶に触れようとする覇道氏の姿が見えた。そして、それを見た瞬間、俺が思い出すのと覇道氏が水晶に触れるのは同時だった。

「隊長っ、トラップですっ!」

「っ!全員、警戒しろっ!」

しかし、現実は無情なり。警告も注意も思い出すのも一歩遅い。それらがなされる時には、既に転移していた。そう、原作の始まり。

「ベヒ、モス、だと?」

怪物は宴を祝って、今、吠えた。




現実は実に無情。
さて、物語の予定としては、彼は落ちる予定はないのだが・・・さて、どうなるかな?


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荒れ狂う偽りの竜

はい、すみません。ひっさしぶりの投稿になります。
い、いやですね?リアル事情が色々とね?
・・・はい、申し訳ありません。
な、何にせよ、『荒れ狂う偽りの竜』。どうぞ!


「ベヒモスッ!」

俺が微かに覚えている原作についての記憶。その中で、ベヒモスは原作の始まりだった筈だ。故に

「先手必勝っ!重くっ、鋭くっ、早くっ、星のようにっ!!」

グゥルァ?!!

相手がこちらに攻撃してくる前に、こちらから先に攻撃を仕掛けていく。憑依している聖女マルタが教えてくれる。

『拳を振るう時には、腰をしっかりと据えて、一撃一撃に祈りを込めるのです。ただ闇雲に力を振るうのではなく、命への感謝、命の尊さを尊重して振るいなさい』

かの聖人モーゼは海をも割った。聖ゲオルギウスは竜を下した。同じく、聖女マルタは竜を下している。俺の力は借り物。所詮は虚偽の力。けれど、けれど!

---俺の思いはっ、虚偽ではない!

「メルドさんっ、光輝っ!後ろは頼むっ!雫っ、こいっ!」

「「了解っ!」

「小僧っ、無茶はするなっ!」

まだ足りないっ、守りがっ、足りないっ!

---先輩ッ!

守り、盾、守護者。ならば、彼女だっ!

「我汝らの主なり。故に来たれ、我が元に!シールダー、マシュ!」

「はいっ!うけたわまりました、マスター!」

ベヒモスの頭突きを、受け止めるマシュ。そしてその隙に、俺はまた懐に入り込み、拳をめり込ませる。後ろを安心して任せる為、雫は後ろに下がってもらう。

グルゥァ!!!

吠える。しかし、意味はない。威圧のような効果があったとして、そんなのは気にしない。拳を振るう。振るわれる。マシュが防ぐ。また振るう。単調、けれど、気を抜けない。

・・・一手足りない。いや、それはある。だが、振るえない。今振るえば、後ろに被害が出てる。

「雫っ、そっちはどうだ!」

「だめっ!どんどん増えて、手が足りないっ!」

っ!後ろは人が足りない。だとしても、今この状況では、召喚もできない。どうすれば・・・!

「現堂君ッ!」

「「?!」」

一人、後ろのトラウムソルジャーを相手にしている集団から、飛び出してくる。

「南雲氏っ、こっちに来るなっ!」

微かに残っている、前世の記憶が叫んでいる。彼を、南雲ハジメをこちらに来させてはいけないと。

「そんなこと言ってる場合じゃ無い!後ろはもう限界だっ!」

「知っているっ!だがっ、今の状態ではっ・・・!」

「後ろはっ、僕がなんとかするっ!だからっ!」

「っ!」

正直、どうにか出来るとは思っていない。だが、信用ができる気がした。心のどこかで、それを許容した。

「了解したっ!後ろが大丈夫になるまで待つ!それまで持ちこたえるぞ、マシュッ!」

「はいっ、分かりました先輩っ!」

ここまでのように、倒すために拳を振るうのではなく、後ろに被害が出ないように、徹底的に受け流していく。

力を抜く。脱力。そこから、一瞬だけ力を込める。相手からの攻撃はそれる。それを、何度も繰り返す。赤熱化を込めた頭突きは、マシュが盾で受け止める。

そして、それを繰り返すと、その時が来た。

「現堂君っ!後ろはもう大丈夫っ!だからっ、全力をっ!」

後ろを一瞬見る。全員退避していた。メルドさんも含めて、こちらを見ていた。南雲氏は、延々と骸骨を産む魔法陣を壊し続けていた。

・・・・・・。

「マシュッ!」

「はいっ、下がりますっ!」

そう言って、マシュはカルデアに戻っていった。そして、 ベヒモスがこちらを見た時には・・・もう遅い。

「鉄、拳、聖、裁っ!!」

突進してくる怪物に対し、全力の拳を振るう。本人から教えられた・・・今なお教えられている全力の、全開の拳を振るう。

「ちぃっ!硬いっ」

まるで鉄のようだと思った。しかし、それだけだ。今の俺は彼女とほぼ同化している。経験が、彼女が戦ってきた記憶が、竜よりも柔らかいと告げている。竜を沈めることができるのだ。ならば、それ以下を下せぬ筈はない。

拳を振るう。いままでのようにヒット&アウェイではなく、超近距離での連続打撃。攻撃をいなし、その拳すらも砕き、真正面からその力を挫く。

グルゥオゥ?!?!

まさか自身が力負けすると思っていなかった怪物は、驚愕に目を見開く。しかし、そんな隙を俺は見逃す程甘くはない。全力を、全開で、全てを置き去りにして、この一撃をっ!

彼女と同じ言葉は紡がない。これは、彼女の力で、俺はただ借りているだけだ。だからこそ、こう紡ぐ。

「愛を知らぬ偽りの竜よ、ここに。星のように!『 荒れ狂う偽りの竜よ(タラスクッ!)』!  鉄・拳・聖・裁!」

ベヒモスに拳が沈む。硬直し、血を垂れ流して力なく床に頭を垂れる・・・完全に沈黙。

「・・・ごふっ」

「ケイッ!」

俺は膝を着く。流石にもう助力が・・・。

「ケイィィ!!!」

俺は落ちる。谷の底に、深い場所に、落ちていく。

視界の端に、黒髪の少女が俺と同じように落ちながら手を伸ばしているのを見ながら、俺の意識は閉じていく。



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