人物紹介(原作から大きな変更点のある人物のみ紹介)
本編の進行度によって随時情報が追加されていきます。
〇潮田渚
本作の主人公
椚ヶ丘中学3年E組、出席番号11番
左利き
中性的な顔立ちをしているが本人はそのことを気にすることなく、むしろ活用できるなら積極的に活用していこう考えている。
が、周囲からあまりにも女の子扱いされたりすると拗ねる。
自身に対する劣等感は原作ほどないが、自分を大切にしない傾向にある。
↓原作からの変更点
物心つく前に両親に捨てられ孤児院で育つことになる。
その後、孤児院から研究施設に買い取られて人体実験の材料とされる。
触手持ち
大事なことなのでもう一度、潮田渚は触手持ちである。
触手の色は髪と同じ水色をしている。
孤児だった渚は柳沢の「触手実験」の実験体用に研究所に買われる。
見事触手との適合を果たした身体は触手を自在に操り常人では相手にならないほどの戦闘力を有するが弱点も存在する。
触手と身体の適合によって本来よりも身体能力が向上している。
※柳沢の実験目的が「生物細胞を利用しての反物質細胞を作製する」から「ただの触手実験」に変わっているのはここだけの話。
なんだかんだあってE組に所属することになる。
E組のみんなとは友好的であり、機会さえあれば仲良くなりたいなーと本人は思っている。
タケノコ派であることが判明。のちに赤青にわれれてクラス内で対決することになる原因となる(大嘘)
〇雪村あぐり
いろいろ考えて悩んだ結果、生存することに。
あの日、触手地雷に当たらなかった傷を負うことなく健在である。
研究所がなくなった後はE組の教師として椚ヶ丘中学校で働くことになる。
現在はE組の副担任をしている。
殺せんせー暗殺期限までにクラス一丸となって暗殺しなければならい。しかし彼女は殺せんせーを助けたいという思いが強く極秘で助ける方法を見つけるべく研究を行っている。
殺せんせーの身体については詳しくしっているが、もともと研究員のため暗殺や戦闘に関する知識は持っていない。
研究所で柳沢の研究を手伝っていたため研究内容の一部を知っている。被検体の一人である渚のことも知っている。
料理が絶望的だということが判明。
Tシャツのセンスも原作通り素晴らしいものがある。
現段階では、原作からの大きな変更点の一つだというのに影が薄いのが本人と作者の悩み
〇雪村あかり(茅野カエデ)
姉が元気なので殺せんせーに対する殺意を持っていない。
とうぜん触手も持っていない。そのため茅野カエデという偽名も意味がないので登場しないかも…?
椚ヶ丘には受験で入学、1年生から在籍していることになる。
以前は磨瀬 榛名という芸名で女優をしていたが、その影響で勉強が手につかなく成績が悪化E組へ…
女優業をしていたため、女子の平均よりは身体能力が高い。
髪の毛は緑色に染めている。女優だということがばれないために。
〇殺せんせー(初代死神)
柳沢の「触手実験」のために捕らえられた実験台。触手を植え付けられたところ過去最高の適合率を叩き出すことになる。
その結果、死神以外の実験台が不要になり処分されることになる…
研究所を破壊した後は、様々な条件を提示し椚ヶ丘中学校3年E組の教師となる。
なぜ破壊予告をしている殺せんせーがE組の担任をしているのかは謎。
あぐりさんの言うことはだいたいなんでもきくらしい。
まだ設定だけですがこれからよろしくお願い致します。
随時設定に関しては加筆修正が行われます。
感想など頂けると嬉しい…かも?
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入学前
接触の時間
----???----
……痛い。苦しい…。僕の身体の中を何かが這いずり回っている…。少しでも気を緩めれば自分が自分じゃなくなってしまう。
なんで僕がこんな目に遭わなければならないのだろう。自分の運命を呪いながら、日が暮れかけた街の中を一人で歩いている。目的もなくふらふらと…
先程、僕と同じくらいの年齢の人達とすれ違った。友達同士で楽しそうに今日の学校の出来事について話していたのだろう。彼らは自分たちが恵まれているということにすら気づいていないんだろう。何も考えないで気楽な日々を送っているんだ。それに比べて僕は…
「これなら、研究所の暮らしのほうがよかったかも…」
つい、そんな言葉を口に出してしまった。研究所の暮らしは実験台として様々な実験に付き合わされる苦痛の日々だったがそれでも食事は出た。まぁ、まともな食事ではなかったけれども…。
(人体実験に使われるのも嫌だけど、痛みに慣れちゃえばそうでもないんだよね…)
常人なら発狂するほどの苦痛も、触手の影響によってか耐えらえることができ傷を負ってもある程度再生することもできる。
「あ、触手を使ってお店から食べ物とか盗めばいいじゃん」
また独り言を口に出してしまった。そして僕は自分の身体の中に住み着いている触手に意識を向ける。こいつは望んで僕の身体に入れたわけじゃないが、慣れるとけっこう便利だ。
「例えば…」
そう呟くと僕の手には少し膨らんだ財布が握られている。さっきすれ違った学生がカバンに入れていたものだ。最初からこうやってお金を稼げばよかったんだ。そうすれば生ごみなんか漁る必要もなかったのに。そんなことを考えながら触手をしまう。そして今までのことを僕は振り返る。
僕の名前は…そうだ、渚にしよう。今思いついた。こんな見た目だし名前も中性的にしちゃえ。その方がいろいろ便利かもしれない…今後生きていくためには女装することだってあるかもしれないしね?……ないと願いたいけど。名字はどうしようか、後で考えておくことにしよう。今すぐ必要になるなんてことないだろうしね。名字はてきとうに、多い名字ランキングTOP20から選ぼうかな。見慣れた名字のほうが溶け込みやすいと思うんだ。
少し話がそれてしまった。僕は渚。元々は捨て子だった…そのため幼少期を孤児院で過ごしていたんだ。孤児院での生活は…あまり良いものではなかったよ。でも人生で一番平和だったかもしれない。孤児院での詳しい話は機会があれば話すことにするよ。
そんな孤児院での生活も数年がたったある日、終わり迎えることになる。僕は売られたんだ。僕だけじゃない、何人もの子供が研究施設に買われていった。僕が売られた理由なんてたいしたことないんだと思う。そして、それが公になることもなく誰も騒がないってことは国がらみなのかと考えてしまう。
連れてこられた研究所では「触手」の研究が行われていた。最初は信じられなかったが、研究所で過ごしているうちに信じるしかなくなった。何人もの研究員が日々「触手」の研究を行っていたんだ。この触手が人の身体に入って適合すれば何やらすごいエネルギーが得られるとか言ってたっけ。僕には、ただの生物兵器を作っているようにしか見えなかったけどね。
でも簡単にエネルギーを得られるわけがない。そもそも人の身体を使っている時点で問題だ。触手と適合できる人間は1%前後らしい。適合できなかった人間は…
僕は適合することができた。触手を体内に入れられるときは恐怖だった。必死に暴れて逃げようとしても簡単に取り押さえられて無理やり口から…。思い出しただけでも吐き気がしてくる。
でも適合してからが苦痛の日々の始まりだったんだ。どんどん触手が自分の身体を蝕んでいくのがわかる。自分の身体なのに自由がきかなくなることもあった。定期的に激痛に襲われて寝ることもできない。もしこの激痛を味わって真顔で…ましてや笑顔なんかで過ごせる…そんな演技力を持っている人間がいたら僕は尊敬する。今は痛みに慣れてしまったから、のたうちまわるなんてことはないけれども、それでも辛いものは辛い。一時期は触手と適合なんかしないで楽になれたらよかったのにと思ったことさえある。
そんな人体実験の日々も、ある日終わりを告げることになる。柳沢はよっぽどお気に入りの実験台を手に入れたのだろう。嬉しそうにしながら他の実験台達を処分するように言ったんだ。僕たちは怒り殺意さえ覚えた。お前たちの都合で苦痛を覚えさせられていたのに、そのうえ不要になれば処分する?ふざけるなと…!
っと…落ち着くんだ渚。過ぎたことじゃないか。僕は運がよかった。日に日に処分されていく被検体。僕が最後の一人だった。何度も抜け出そうとしたが研究所のセキュリティーは強固で本気で触手の力を引き出さないと抜け出せないとわかったとき、研究所が爆発したんだ。どうやら本命の実験台、死神…とか言ったっけ?が暴れだしたらしい。その隙を突いて触手の力を利用して研究所から抜け出した。
本当はあのむかつく柳沢とか他の研究員たちを始末しておきたかった。あ、でも優しくしてくれた女性の研究員…えーっと…あっ、あぐりさんは例外かな。あの人は本心では研究を嫌がっていたのが波長からわかったんだ。ご飯おまけしてくれたこともあったしね。二度と会うこと無いだろうけどお礼が言いたいな…。研究所の人達があの爆発から助かったのかどうか知る由もないけど。
そんなわけで今の僕は逃亡生活をしている。とくに誰かが追いかけているわけでは無いと思うから僕が勝手に、そう思い込んでいるだけなんだけどね?研究所が爆発して、それどころじゃなくなったんだろうけど…本来僕が脱走したら追手が来るはずだからね…
というわけで、今は自由な身の僕。何もかも自由というわけではないけれども。研究所に買われた時点で行方不明扱いか事故死扱いだろう…それが今更生きてましたなんてことになったら大事になってしまう。それがきっかけで足がついて研究所関係者に見つかるのもごめんだ。僕の当面の目標は誰にも干渉されず、静かに平和に生きていくことだ。
ドン…おっと、過去を振り返ることに集中していたら誰かにぶつかっちゃった。謝らないと…
「ごめんなさい…よそみし」
よそ見していた…言い終わる前に手に持っていた財布が奪われた。まぁ、もともとは僕が奪ったんだけども…
「子供が盗みに手を出すとは感心しないな。探したぞ…」
僕を睨みつけるような鋭い目で、ぶつかった男の人は言った。
「お兄さん誰…?それは僕の財布だよ。盗みなんて人聞きの悪いこと言わないでくださいよ。それに探したって、なんのことですか?」
僕を探していた。目の前の男はそう言った。
即座に僕の身体は警戒態勢に入り、周囲の状態を確認する。こいつは只者ではない、ただ立っているように見えるがいつでも動ける態勢をとっている。そもそも僕が財布を盗み取ったことを知っているということは、触手を使っていたのが見えていたということだ。普通の人間には見えない速度で盗んだはずなのに。男の人の口ぶりから察するに僕の身体の秘密を知っている可能性もあるな…。
万が一、触手を使っても誰にも見られる心配はないか。ここは住宅街だ。家の窓から誰か見ているかもしれない。男の次の言動次第では戦闘になる。
そんな思考を張り巡らせていると男は次の言葉を放った。
「私は防衛省の烏間 惟臣というものだ。君と話がしたい…いや、交渉させてほしい」
僕の当面の目標は一瞬にして崩れ去った。
とりあえず1話目投稿完了。
投稿ペースはどうなるのだろう…
何もかも勉強の一作品目です。誤字脱字などがあればご指摘お願いいたします。
Q&Aのコーナー
Q渚の名字は?
A適当にくじ引きで決めます。
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提案の時間
このままだと火金投稿になるのかな…
----烏間----
「私は防衛省の烏間 惟臣というものだ。君と話がしたい…いや、交渉させてほしい」
私が用件を彼に伝えると、彼の目つきが変わった。先ほどまでの温厚な、万人から好まれそうな表情は消えて心の奥底までえぐられるような鋭い目つき…目の色は青く透き通っていて瞳の中に引き込まれそうになる。
気配を消して彼の先ほどの行動を観察していた。油断しているからだろうか、それとも私に気づいていて財布を盗んだのかわからないが話に聞いていた通りに触手を持っていた。早すぎて正確には見えなかったが何かが彼の後ろから現れて、気づいたら彼の手に財布が握られていたのは確認できた。
「場所を変えないか?ここだとお互い不都合だろう。防衛省で手配している店がある。そこなら話を誰かに聞かれる心配もない。君にとっても悪い話ではないよ。」
私としたことが集中を切らすところだった。元空挺所属、現役の自衛官…特殊部隊の私が相手にのまれるところだった…。
彼から目を離してはいけない。見た目は子供だが身体は普通の人間では無いことを知っている。もちろん、なんでそうなってしまったのかも話は聞いている。これは国家機密、知っているのは国のトップの一部と防衛省臨時特務部、E組の教員の中でも私ともう一人だけしかしらないことだ。
あとは彼が提案にのってくれるかどうか。黄色いタコと同じなら、彼も全力を出せばマッハ20とまではいかないがすぐに逃げることが可能だろう。そうなれば再び探すのは至難の業だ。どうにか話を聞いてもらうだけでもいい…
----渚----
烏間さんの波長を見ながら彼の話を聞いてみる。どうやら嘘をついている様子はないようだ。嘘をついていれば波長が乱れる、僕に嘘は通用しない。人の波長を感じ取ることのできる能力は触手が僕の身体に住み着いたことによって得られたものの一つだ。波長を見ることによって相手の感情の起伏を感じ取ることができるんだ。
烏丸さんの先程の話しぶりからして、おそらく僕の身体のことを知っているのだろう。話を聞くだけでもいいかな…何かあれば逃げればいいだけだしね?
「交渉ですか… それって、あれが関係してたりしますよね?」
僕はそう言いながら形の変わった月を指さして烏間さんに聞いてみる。案の定、烏間さんは苦い顔をしながら頷いた。
(やっぱりか…まぁ、だからと言って僕に何の用があるのかわからないけれども。月を壊した原因を殺してこいとか言わないよね。)
「いいですよ?でも、何かあれば逃げますからね。」
当然だ。防衛省が用意したということは、防衛省側にとって有利な状況を作り出しいる可能性の有る場所であることを意味する。相手のフィールドに入るなんて嫌だけど今回はしょうがない。何かあれば全力で逃げるだけのこと。
僕が同行することに承諾すると烏間さんは安堵のため息をついて額の汗をぬぐった。この人もすごい苦労してるんだろうなぁ…。
*
防衛省の用意していた話し合いの場所は、いかにも高級そうな料亭。久しぶりにまともな食事が食べれるんじゃないかと今からワクワクが止まらない。いけない…!涎が垂れてきた…。
和式の部屋に通されて、座布団に座る。しばらくすると目の前に美味しそうな料理が運ばれてきた。白米だって最後に食べたのがいつだったのか思い出せない状態なのに、こんな美味しそうな料理運ばれてきたら我慢できない…。これだけでも烏間さんに着いてきたかいがある。しばらくしてから烏間さんが話し始めた。
「さっそくだが、簡単に状況の説」
ぐぅ~。お腹が鳴ってしまう。
「ごめんなさい…。話の続きを」
我慢できなかった。大事な話の最中だというのに、空腹に耐えきれずお腹がなってしまった。顔が熱くなるのがわかる。僕は顔を真っ赤にしながら話を遮ってしまったこと謝りながら、話の続きを促したが烏間さんは微笑んで
「いや、話はあとでもいい。先に食べてしまおうか。遠慮しないで食べてくれ。」
「いただきます!」
食べていい。許可が出れば我慢できなくなり、箸を持ち最初は白米を口にする。
……美味しい!やっぱり和食が一番だね。味噌汁も一口…漬物も食べて、焼き魚も…
身体は勝手に動いていく。手が止まらない、胃袋が次へ次へと食べ物を要求してくるのがわかる。こんなに食事に集中したのは初めてかもしれない。美味しいものを食べるって幸せなことだなと思ってしまった。
気付いたら食べ終えていた…。とても美味しかった。
食べ終えてから気づいたことがある。窓の外、廊下に何人かの気配を感じる。おそらくは防衛省の人間だろう、素人でないことはわかる。
……いや訂正、一人だけ素人が混ざっている。襖の向こう側に一人だけ雰囲気の違う人間が立っているのがわかった。僕は箸を置いて、手を合わせて
「ごちそうさまでした。とても美味しかったです。」
「気に入ってもらえてよかったよ…。食べ終えて早々ですまないが、そろそろ本題に移ろうか。」
烏間さんは苦笑してから、すぐに表情を切り替えて話を切り出してきた。
----雪村あぐり----
私は襖の隙間から彼をずっと見ていた。その姿は研究所で何度も見てきた…忘れるはずもない、水色の髪をした少年だ。
私は自分の犯した罪の重さを理解している。柳沢の手伝いとして、非人道的な研究に協力していたのだ。そして、その研究によって多くの命を奪ってきた。
今は国に身柄を確保され、ある研究を行っている。その間もずっと後悔してきた。小さいときから、人を救うことをしたかった…なのに婚約者のためとはいえ、あんな研究に加担していたなんて…。
とにかく、この子が助かっただけでもよかった…私がそう思っていると中から声が聞こえた。
「雪村先生、入ってきてください。」
烏間さんの声が聞こえた。私は覚悟を決めて襖を開ける。私が姿を現すと彼の驚いた顔があった。ゆっくりと歩いて、烏間さんの隣に座り彼の顔を見る。
「久しぶりね。生きていてくれてよかった…」
最初はなんて声をかければいいのかわからなかった。しかし彼の目を真っすぐみたとき自然とそんな言葉が口から出た。本当は謝罪した。謝っても許されないことぐらいわかっているが。
----烏間----
雪村先生を見た瞬間、少年は驚いたような顔をした。その後、混乱したような表情を浮かべながら歩いてくる雪村先生を見ていた。
「いろいろ聞きたいこともあるだろうが…まずは君の名前なんだが。」
そう、私も雪村先生も彼の名前を知らない。調べれば孤児院時代までの戸籍は見つかったが、死亡扱いだ。死者が蘇るのはまずい…新しく作ったほうがいいだろう。
「僕の名前ですか?えーっと…渚で。名字はてきとうに…」
「そうか、それでは渚君。さっそくだが君には椚ヶ丘中学校に通って暗殺に協力してほしい。」
いきなりで困るだろうが私は一番の目的を彼にぶつけた。
----渚----
学校にいきなり通い暗殺に協力しろと言われたときは驚いた。しかし、黄色いタコの写真を見せられて説明を聞くと納得することができた。……何点かツッコミたいところもあるけど…
「何点か質問があるんですが…。まず、僕が暗殺に協力してメリットは?別に世界を救いたいとかヒーローになりたいなんて思いは無いんですけど。お金もいらないですし… そもそも僕はこいつみたいに宇宙に飛んで行って月を破壊できるような力も持ってませんよ?戦力なんかにならないと思いますけど。」
「世界を救う気はないか… それでもメリットはあるぞ。協力してくれるなら戸籍を用意しよう。それなりの生活を送れるように国から支援もさせてもらう。それに…君の身体がもとに戻れるように雪村先生が研究してくれる。」
思ったよりもメリットが多かった。そもそもデメリットがないな…。チラッと雪村さんを見ると、僕の目を見て頷いた。そして烏間さんは続ける。
「別にいますぐ暗殺してほしいとは言っていない。1年間共に過ごせばチャンスはいくらでもあるだろう。クラスメイトとも協力すれば作戦の幅も広がるだろう。もちろん触手のことは秘密だが。」
たしかにそうだ。100回失敗しても最後の1回が成功すればいいわけだ。
「仮にE組に編入したとして、クラスの皆には僕の身体のことは秘密ですよね?そしたら触手を使った暗殺もできないわけですし、わざわざ生徒として暗殺に協力する必要は無いんじゃないか…。どうせ外部から暗殺者も送り込んでるんですよね?」
とりあえず疑問に思ったことを烏間さんに聞いてみる。生徒として対象に接触する必要はない。なによりも勉強したくない…
「それはだな…」
「それはね!渚君がまだ子供だからよ…だから学校に通って勉強するべきなの。それに同年代の子と一緒にいるべきだわ…友達もたくさん作って遊ばないと。」
烏間さんの言葉を遮ってあぐりさんが話し始めた。あぐりさんの顔を見ればわかる、僕を必死に説得しようとしている。
「だから私のクラスに来て欲しいな…。私の妹もいるのよ?きっと渚君となら、すぐ仲良くなれると思うわ…それに渚君の身体のことをよく知っている私が近くにいたほうがいいと思うの。」
まだ言葉を続けて説得しようとするあぐりさんに僕は
「わかりました。生徒として暗殺に協力しますよ…」
折れてしまった。
原作からの変更点
・渚君はすでに波長を使いこなしている。
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考える時間
ワールドカップ見ている場合じゃない…!
----渚----
「思ったより広いなー。家電とか家具もほとんど全部揃ってるし。これって僕が烏丸さんの提案を受け入れることを前提で用意してたのかな。」
僕は国が用意してくれたマンションの一室にいた。これから1年間、僕が生活することになる部屋だ。この部屋は僕が暗殺に協力するかわりに国が用意してくれたもので、中学生が一人暮らしするには広すぎる部屋だ。
おまけに家具や家電も最低限揃っているしスマホなんかも支給された。まぁ、使い方よくわかんないんだけど…最低限電話はできるようにしないとね…友達作りたいし。
僕はクラスメイトの暗殺には積極的に参加するつもりはないが、ちゃんと交友関係は築きたいと思っている。独りぼっちはいやだもん、寂しいもん。
「お、ベッドだ!ふかふかのベッド…!」
寝室の扉を開けるとベッドが置いてあった。研究所では硬い床に毛布で寝てたし、脱走した後は路上でホームレスみたいに生活していたから正直に嬉しい。
ベッドにダイブして布団の感触を楽しんでいると意識が遠のいていく…。
「おっと、危ない。シャワーも浴びなきゃ。いっつも公園の水道とか川で洗ってたし、ちゃんと身体を奇麗にしないとね。」
暖かいシャワーで身体を洗いたい。最低限の衣類なども用意されているため、それらを取り出して脱衣所へと向かう。服を脱いで久しぶりの暖かいシャワーで身体を洗い湯船に浸かって自分の身体を見て今日のやりとりを思い出す。
烏丸さんに、戸籍を新しく用意するから名前や生年月日など希望があれば言ってくれと言われた。その際
「ところで…性別は男でいいのか?」
と真顔で言われた。
(複雑だ…。たしかに身体は小さいし髪は長いけどさぁ…面と向かって言われると、けっこうショックなんだよな…)
名字は松本になった。理由は特になく、なんとなくで決めた。誕生日は5月24日、これもてきとうにサイコロを振って決めた。そもそも6面ダイスの時点でやる気がない…。
お風呂から出て身体を拭く。明日から学校だし今日は早く寝ようかなと考えていると本棚に教科書やら参考書がたくさん入っていることに気づいてしまった。
(うっ…、成績が悪かったら国からの支援も減らすって烏丸さんが言ってたな…)
聞いた話によると椚ヶ丘中学校は、この辺では有名な進学校らしい。そんなところに暗殺のために転校したとしても最低限の学力は無いとまずい。今までまともに勉強してこなかった僕が進学校の皆についていけるわけがない。中学1,2年の勉強もしてないのに、いきなり進学校の3年生だからね。そのことを烏丸さんに聞いてみたら
「もちろんわかっている。渚君には申し訳ないが、頑張ってもらうぞ。E組に馴染んでもらうためにも、ある程度の学力は身に着けてもらいたい。もし成績が悪ければ…そうだな、最初の中間テストで1教科どれでもいいから学年で1桁順位をとってもらおう。もし無理なら国から毎月支給するお金を減らすことにする。」
なんて言われた。なかなか鬼畜なこと言ってるよ烏丸さん!お金が減らされたら美味しいものが食べられなくなってしまうじゃないか!ため息をつきながら、てきとうに数学の教科書を開いてみる。
「うわぁ…頭が痛くなってくるなこれ。今日は徹夜で勉強してみるかな…」
ふかふかベッドが遠ざかっていく。
1時間くらい必死に基礎から勉強して小休止を挟む。明日からどうやって過ごそうかなぁ。
(触手を使った暗殺は1年間で1回だけ、最後の最後まで隠しておく奥の手だ。確実にやるためには情報収集が必要だな。避ける癖や弱点なんかを見つけないとね…。明日は手始めにナイフで斬りかかってみるか。あとは特攻か自爆覚悟の攻撃でもしてみるかな、そのときの反応も気になるし。どうやら奴は生徒が最優先らしいからね。あと気を付けなきゃいけないのは僕が触手持ちってことがバレないようにしないとね…。)
そんなことを考えながら烏丸さんに支給されたもの一つであるナイフを手に持つ。
(対触手用ナイフに対触手用BB弾ねぇ…。マッハ20で移動する相手に当たるのかな。そもそも、これって僕の触手にも効くわけだよねぇ。E組の生徒や暗殺者が対触手用の罠や作戦をたてれば僕も行動しにくくなるわけで…やりづらいなぁ。)
対触手用物質は普段僕の肌に触れる分には問題ない。ただ触手に触れてしまうと触手細胞が破壊されてしまう。僕の触手は死神同様再生することができるが、再生速度はそんなに早くないし数回再生したら体力的に限界が来てしまうから要注意だ。
他の弱点としては水かな。触手が水に触れると水分を吸って肥大化してしまう。だから雨の日とかは元気が無くなってしまうんだ…シャワーは別だけどね!
----
「はっ……!もう朝か…って、こんな時間!やばい初日から遅刻はやばいって。変に目立って警戒とかされたくないし急いで行かないと!」
あのまま勉強をしていたら寝落ちしていたようだ。教科書に涎を垂らしながら寝ていた。用意された制服を着て教科書を鞄に詰めると、駆け足で学校へと向かう。
(なんか女子生徒用の制服も入っていた気がするんだけど…性別の判断つかないからって両方用意したな烏丸さん…!)
住宅街を通り抜けて学校に向けて移動する。次第に建物は消えていき山の中へと入る。
(本当に山の上にあるんだ。E組は他のクラスと待遇に明らかな差をつけて差別の対象にしているって言ってたけど、これはなかなかひどい…)
森を抜けると開けた場所に出る。そこにはボロボロのひと昔使われていたような建物が現れる。これが校舎か、不便そうだな。入り口を目指して歩いていると急に背後から
「ぬるふふふ…君が今日からE組に転校してくる松本渚さんですね?先生、楽しみに待ってましたよ!」
(っ…!さっきまで周囲に気配なんて感じなかったのに、化け物め…!)
声が聞こえた瞬間僕はとっさに距離をとって、腰に隠してあるナイフに手を伸ばす。警戒心を露わにしながら、いつでも動ける態勢をとっていると
「良い反応ですねぇ~、ただの生徒では無いようですが…。ですが安心してください、先生は生徒には手を出しませんから。それにしても…」
たしかにそうだ。契約では死神は生徒に一切手を出せないことになっているらしい。それを思い出してから構えを解き改めて相手の全体を見る。
(うん、完全に黄色いタコだな。触手の本数も多いな、僕なんて2本…頑張っても4本までしか触手を出せない。マッハ20というのも嘘じゃなさそうだなぁ。というか、とっさに飛び跳ねちゃったよ…)
ファーストコンタクトとしては最悪だ。とっさに飛び跳ねて構えてしまったことで、素人ではないことがばれてしまった。普通の生徒なら振り向きざまに武器に手を伸ばすことなんてできないだろう。
こいつは危険だ、最低限の警戒をしつつも相手の言葉の続きを待つ。
「それにしても、烏間さんからは女子生徒が来ると聞いてましたが松本さんはスカートじゃないんですね?」
僕は盛大にこけた。
----
(どこだ…!どこに烏丸さんはいるんだ!)
僕は校内を早歩きで移動し、烏間さんを探す。
「絶対問い詰めてやる…!」
「落ち着いてください松本さん。あ、ちなみに烏丸さんは職員室にいますよぉ~」
後ろから黄色いタコが焦りながら僕の後を追いかけてくる。さらっと烏丸さんの場所を吐きつつ、職員室の場所まで教えてくれる。
(うざいけど、ありがたいなぁ)
何とも言えない気持ちを抱きタコを無視しながら職員室まで歩いていく。そして力強く職員室の扉を開くと烏丸さんと目があった。そしてすぐに状況を理解したのか
「すまないな松本君。手違いで女子生徒になってしまった。あとで変更の手続きをしておく。」
「手違い!そんな手違い聞いたことありません!」
そんな理由で女にされるなんてたまったもんじゃない。僕は即座につっこみをいれてしまう。ため息をつき、視線を動かすとあぐりさん、いや雪村先生が目に入り
「おはよう、渚君。新学期がはじまってから数日過ぎちゃったけど渚君ならすぐに馴染めると思うわ。皆元気で優しくて真面目で、いい子たちなのよ?」
笑顔で挨拶してくれた。あの純粋な笑顔は癒されるなぁ、生徒の自慢が始まると人が変わることを覗けばいいんだけどね。
「それでは松本君、先生についてきてください。クラスのみなさんに紹介しますので。」
すっかり烏丸さんの件を忘れて僕は死神の後に続いて教室へと向かっていく。
「ぬるふふふ…緊張しなくてもいいんですよ、渚君。それでは先生が先に入りますから呼んだら入ってきてくださいね?自己紹介してもらいますからねぇ」
そう言いながらタコ先生は教室へと入っていった。
烏丸さんはわざとやっているのかもしれない…
あと渚君の身体能力はだいぶチート
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本編
挨拶の時間
どうにか無理やり渚君をE組にぶちこみました。
----雪村あかり----
みんな緊張したような、どこか硬い表情をしながら教壇に立つ暗殺対象である先生を見ている。なかには額に汗を浮かべている人もいる。
(みんな演技が下手だよ。そんなんじゃ暗殺しようとしているのがバレバレ、気持ちはわかるけどさ…)
女優をやっていた私だからわかる、こんな表情じゃこれから暗殺をしますよと言っているようなものだ。
3年E組の全員が机の下にそれぞれの武器を用意している。ハンドガンだったりサブマシンガンだったり。
もちろん装填されているのは実弾ではなく対触手用BB弾。日直の杉野君の号令で一斉射撃を行う予定になっている。
(と言いつつ、私も武器を持つ手に力が入っちゃって緊張してるんだけどね…)
と心の中で苦笑いして一度深呼吸、改めて気持ちを落ち着かせる。そして
「起立!!」
杉野君がいつもより大きな声を出す。全員がそれぞれの武器を構えて
「気を付け!!」
先生に狙いを定める
「れい!!!」
全員が引き金を引いて一斉射撃が始まる。みんな、ほとんど適当に射撃をしている
(マッハ20のスピードを出せるといっても、これだけの人数で射撃すれば1発くらいは…!)
そう、私たちは数で押す作戦に出たのだ。先生の避ける軌道や動きなんて予想できるはずもない。
私たちは素人。狙いを定めたり先生の動きを予想して射撃するよりも、とにかく多くの弾を撃ちこんだ方がいいとう考えに至ったのだ。
しかし先生は余裕そうに私たちの攻撃を避けながら生徒名簿を開き出席をとりはじめる。全員が弾を撃ち終わるのと出席を取り終わるのは同時だった。
暗殺が始まってから数日、先生に傷を負わせたことは一度もない。クラスにだんだん諦めムードが漂い始めると
「だめですね皆さん。数に頼る戦術は個々の思考をおろそかにしてしまいます。もっと工夫をしましょう。」
(自分を殺そうとする相手にアドバイスを送るというのも奇妙な光景だなぁ)
先生の言っていることは正しい。どうやらこの化け物に、数による戦いは無意味らしい。
そんなことを考えていると先生は話を続ける。
「今日はE組に新しい仲間が来ますよ。紹介しますから一度席についてください。それでは渚君、入ってきてください。」
「「「転校生?」」」
全員が驚きの声をあげ、何人かが小声で呟く
「この時期に転校生って…」
「暗殺者じゃねーのか?」
「まさか、かわいい女の子!」
1人変なのがいたが、私もみんなの呟きに頷く。そして開いた扉のほうへ視線を向けて入ってくる転校生を見る。
(うん、私も暗殺者だと思うなぁ。新学期早々転校生ってどう考えたっておかしいもん。どうせ屈強で目つきのするどい野郎…じゃない…!)
そこにいるのは背が低く(おそらくクラスで一番背が低い)緊張した表情を浮かべながらおずおずと教室へと入ってくる青い長髪の男の子?がいた。
まるで小動物みたいで…その…かわいいなと思ってしまった。
(暗殺者じゃ…なさそうだなー…頼りなさそうだし。)
----渚----
僕は緊張したような表情をしながら教室の前に立つ。そして教室を見渡すと皆が興味深そうに僕を見ているのがわかる。
(うーん…わかっていたことだけど、みんな素人なんだなぁ…)
さっきの一斉射撃を扉の隙間から見ていたが僕にも彼らが素人だということがわかるほどひどいものだった。
「は、はじめまして…今日からE組でみんなと一緒に勉強することになる松本渚です。気軽に渚って呼んでくれると嬉しいかな。念のために言っておくけど、こんな見た目だけどちゃんとした男だから間違えないでね。えーっと…暗殺の戦力になるかどうかわからないけど、よろしくお願いします…!」
不安げな…気弱な雰囲気を醸し出しながら自己紹介をする。もちろん先生を油断させるための演技だ。ちらっと横を見ると先生は不用心に右隣に立っている。先生に攻撃を仕掛けるタイミングをうかがう。
そして僕は自己紹介を終えると同時に対先生用のナイフを取り出す。そして素早く切り上げると、ぽとりと触手が一本床に落ちた。
(よし…!不意打ちだけど一本確実に切り落とした。この調子で2本目も…えっ…?)
振り上げた腕をそのまま振り下ろそうとしたとき、目の前に先生がいないこと気づく
(どこに行って……まさか後ろに!)
慌てて身体を反転させるため、ひねりを加えながら前に飛ぶ。案の定、僕の後ろに先生は立っていて
(着地と同時に前に飛び出すか…)
一瞬の滞空時間で次にどうするのかを考える。しかし先生は僕が着地すると同時に距離を一気に詰めてきて僕の目の前に立つ。そして僕の腕を掴み
「ぬるふふふ…素晴らしい動きです。教室に入ってきてからの演技もナイフさばきもクラスの皆さんに見習ってほしいですねぇ~。しかし渚君、敵を目の前にして攻撃が当たったかどうか確認するのはよくないですよ?2撃目は素早く繰り出さないと…先生ならその間に渚君の後ろに回り込み、渚君の髪をツインテールにしちゃいました。長髪はじゃまそうでしたので…ちなみに触手は元通りなのでご心配なく。あ、渚君の席はそこです。」
切り落とした触手は元通りに再生していた。
「みなさん、渚君と仲良くしてあげてくださいね。質問などは休み時間にするように。」
(再生も早い…!僕の再生速度なんか比べ物にならないくらいに。ほんとにツインテールにされてるし…)
もともと長髪で後ろで1つにまとめていただけだったが、気づけばツインテールにされていた。まぁ、こっちのほうが邪魔にならなくていいかも。もともと意味もなく伸ばしてたから髪型にこだわりなんてないし。
「ちっ…マッハ20っていうのは嘘じゃないみたいだね…まぁ、対触手用ナイフが効くってことがわかっただけでもよしとするかな。」
僕は舌打ちしながら指示された席に座るのだった。
ちなみに一斉射撃によって散乱したBB弾の片付けに僕も駆り出されるのだった。
----タコ----
(油断できませんねぇ~。一斉射撃が失敗して元気のないクラスのみんなを元気づける必要がある。そして、先生を暗殺することができる可能性があることもわからせる必要がある。そのために渚君の攻撃に掠る程度に当たるつもりでしたが、まさか触手を一本切り落とされるとは…朝、森の中で出会ってなければ演技にも騙されていたかもしれませんしね。これから楽しくなりそうですね、ぬるふふふ…)
渚君が席に着くのを見届けてから私はBB弾の片づけをするように指示を出す。ついうっかり踏んでしまうかもしれませんからね。
(しかしいったい彼は何者でしょう?暗殺者…ではないと思いますが。私の経験と勘がそう告げています。しかしナイフさばき、身体能力などはとても中学生のものとは考えられない…後でこっそり烏丸さんにでも聞いてみるとしますかぇ。正直に教えてくれるとは思いませんが…。)
クラスメイトと一緒に掃除をする渚君を見ながら考察する。彼がこのE組の言い起爆剤になってくれると信じて。
思ったよりも早くクラスに馴染めそうだと安心しながら今日の授業の準備をする…
----渚----
(意外にもちゃんと授業をやってるんだな…)
今日一日先生の授業を受けて思ったことだ。初めて授業を受ける僕にも工夫と配慮がされていてわかりやすかった。
なんで来年3月に地球を滅ぼそうとする化け物が一生懸命教師をやっているのか理解はできないが…
(そのふざけた見た目と、はちゃめちゃな行動がなければ最高の教師になれると思うんだけどなぁ)
そして僕はクラスのみんなと馴染めるかどうか不安だったけど、まずまずの滑り出しだ。最初の休み時間には何人かが話しかけてきくれた。
なんで一番後ろの席ではなく、前から二番目、窓側から二番目という中途半端な場所が空いていたのかわからないが、そこが僕の席だ。
最初にクラスで僕に話しかけてくれたのは隣の席の雪村あかりさん。雪村あかり先生の妹らしい。髪の毛は緑色だし髪型もどこか僕に似ているし姉妹に見えない。あと胸ないし…
そして後ろの席の杉野君も最初の休み時間に会話した。彼は野球が好きらしい。
それぞれあかりと杉野と呼び捨てすることになった。僕のことは名前を呼び捨てで呼んでもらうことにした。
昼休みには男子何人かと一緒に弁当を食べた。ちなみに今日は急いでいたのでコンビニで弁当を買ってきた。
女たらしっぽい雰囲気を醸し出す前原君とクラス委員の磯貝君と一緒に食べた。この2人も同じ呼び方で僕のことを呼んでくれるようになった。2人とも僕がクラスに早く馴染めるように気を遣ってくれてすごい助かる。
磯貝君は弁当を自分で作っているらしい。しかも安く美味しく…
(僕も自炊できるようにしなきゃな…。国からお金を貰っているとはいえ外食ばかりしているわけにもいかない、食費以外にもお金はかかるし、このままいくとサバイバル生活が始まっちゃう。)
そんな僕は今、放課後の校舎前で杉野とキャッチボールをしている。
なんでもキャッチボールに付き合ってくれる奴がいなくて、ダメもとで僕に声をかけたんだって。帰っても勉強くらいしかすることないし、せっかくの誘いだったからキャッチボールをすることにした。
杉野曰く、仲良くなるにはキャッチボールが一番だとか。野球バカかな?
「それにしても…渚はすげーな、あの先生の触手を一本切り落とすなんて。俺たちなんて全員で襲い掛かっても傷一つ負わせられないのに。」
「ははは…そんなことないよ。みんなもそのうちできるようになるって。」
僕たちは会話をしながらキャッチボールを続ける。
「そうか?なぁ、一つ質問していいか?」
(きたか。だいたい何を聞かれるのかは想像できるんだけど。)
ボールをキャッチしてから頷く。僕は力強く投げ返しながら
「渚は何者なんだ?みんなプロの殺し屋とか特殊部隊の隊員だとか推測してるんだけどさー。俺も気になっちゃって。」
「やっぱ普通の学生だとは思われないよね。詳しくは秘密だけど、普通の中学生じゃないよ。今言えるのはこれくらいかな。」
「そっか…。まぁ、詳しくは言えないよな。よっと…」
杉野はキャッチしたボールを見て、そして僕を見る。
「んじゃ今日はこのくらいにして帰るとしますか。明日からもよろしくな渚。」
「うん。こちらこそよろしくね杉野。」
すでに暗くなり始めている中、僕たちは一緒に帰っていくのだった。
文量も安定しないし、日々小説を書くことの難しさを学んでおります。
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命名の時間
今回も投稿間に合った…!
最低でも火金に投稿することをルールとしています。
----渚----
二日目、今日も問題なく学生として周囲に溶け込んで過ごせている、と思う…
昨日も家に帰った後、皆に追いつけるように勉強に打ち込んだ。進学校っては大変だね、周囲に置いていかれないようにっていう焦りが常にどこかに生じてしまっている。
何かに集中すると時間はあっという間に過ぎていて日付が変わったあたりで寝たのを覚えている。
昨日の挨拶で先生の身体能力の高さを思い知った僕は、今日一日とくに暗殺をしかけるつもりはなかった。
(まずは情報収集からしないとなぁ。できれば弱点なんかを探りたいんだけど、触手に対する弱点は僕と同じなのかな?)
他の人が暗殺をするのを観察して、少しでも先生に関する情報が欲しい。
だが皆シンプルな暗殺ばかりで情報を得ることができない。
(工夫しろって言われてたのにさ…)
そして、あっという間に時間は過ぎて気づけば午前中の授業は終わり昼休みの時間。
(今日は簡単な弁当を作ってきたんだー。ほとんどおかずは冷食なんだけどね…)
「おい松本…ちょっと来い。」
楽しみのご飯タイム。弁当を取り出そうとすると急に3人組に声をかけられた。
(たしか寺坂に吉田、村松だっけか。正直めんどくさいやつらだよな。苦手なタイプだなぁ)
このクラスに来て2日目だが、その短い時間でわかった。こいつらはクラスの中で浮いている。周囲とよろしくやるのが嫌いらしい。
「なんの用かな?僕、お腹すているんだけど。」
「うるせーよ。暗殺者なんかと一つ屋根の下で授業なんか受けるつもりはないんだ。猫被っても暗殺者ってバレバレなんだよ。」
(いきなり何を言い出すんだ…。本当にみんな僕のこと暗殺者だと思い込んでるんだ。)
「こちとら、早く平穏な生活に戻りたいんでね。これ使って早くあいつのこと暗殺してくれや、お前ならよゆーだろ。金は半分やるからよ。」
(手榴弾か…、おもちゃを改良しているな。これを使えば周囲に対触手用BB弾を大量にばらまくができる。上手く使えば案外やれるかも?)
お金はいらないんだけどね。
「あいつを暗殺できれば、お前だって学生ごっこする必要もないし本職に戻れるぜ?」
(………。僕って暗殺が終わったら…どうなるんだろ…何が残るんだろう?)
そんなことを考えてしまった。
--------
初めての手作り弁当はまぁまぁ美味しかった。これからは料理の勉強もしないとね…
そんなこんなで昼休みは終わって5時間目。今は国語の時間で先生の出した条件を満たすように短歌を作っている。
「ぬるふふふ。書き終わったら先生に見せに来てくださいね。」
(触手なりけりで終われって…どんな短歌だよ!そんな短歌聞いたことないし聞きたくもないし…)
そもそも触手って季語なの?難しすぎるよ…短歌を書き終わったら短冊の後ろにナイフを隠し持って先生に近づく。
そしてナイフで切りかかって相手の態勢が崩れた所に抱き着き、手榴弾を起爆する。よし、その作戦で行こう。完璧じゃないか!
(その作戦でいきたいんだけど、そもそも短歌を完成させないとだめじゃないか…!あ、別に短歌を作り終えなくても攻撃はできるのか…)
僕は先生の様子をうかがう。どうやら先生も食後は眠いのか、どこか油断していて反応も悪いように思える。
ちなみに食後に反応が悪いという情報はあかりから聞いた。他に数日間で集めた先生の情報を聞かせてもらった。
(あんな見た目でも、けっこう人間っぽいところあるんだよな。まぁ元々は人間なわけだしね。よし、作戦を実行するなら今しかないな…)
僕は短冊の後ろにナイフを隠し持って静かに立ち上がる。クラスの視線が僕に集まる。そして僕は寺坂にチラッと視線を向けて合図を送った。手榴弾の起爆スイッチは遠隔で寺坂が握っている。
先生からはナイフが見えないが、みんなには見えているはず。みんなが固唾を飲んで僕の暗殺を見守る。
「……おや渚君、完成しましたか?はやいですねぇ~」
(やっぱり反応が鈍い。今も僕が立ち上がってから先生が反応するまでに間があった…可能性はあるな…)
僕は心の中であかりに情報をくれたことに対してお礼を言いながら、ゆっくりと教室の前へと歩いていく。
そして先生の前に立つと、昨日と同じように手にナイフを握り一連の流れのように自然な動きでナイフを振り上げた。しかしナイフは先生に当たることなく
「おっとっと、危ないですねぇ。ですが渚君、昨日の一件で君のナイフ攻撃は常に警戒されていると思った方がいいですよ~。先生にナイフをあてたいなら、もっと工夫をしないといけませんよ。」
(そんなことくらいわかってるよ。正面からの馬鹿正直な攻撃は先生に通用しない。本命はこれからさ…)
ナイフを握っていた手の力を抜いて自由にする。そして両手を開いて自然な運びで先生へと肉薄、抱き着くようにする。先生の慌てる顔が見え、僕は微笑む。
次の瞬間、凄まじい音とともに僕の身体は後ろへと吹き飛ばされる。
「よし、やったぞ!0距離で大量に弾をバラまいたんだ、これで金は俺のものだぜ!」
「ちょっと!何を渚に持たせてるのよ!」
煙の外で寺坂たちが何か言い合っているのが聞こえる。だが今の僕にはそんなことはどうでもいい…
(避けられた!爆発する瞬間、腕の中から触手が抜け出すのがわかった…それに、僕の身体を覆っているこの膜みたいのはなんだ?)
だんだん煙が晴れてくると僕も寺坂たちも状況が理解できてくる。まず僕が無傷だったことと、僕を覆っている膜を見てみんなが驚いた。
次にみんなの視線は天井へと移る。そこには肌の色が真っ黒に変化させた先生がいた。誰が見ても怒っていることがわかる表情を浮かべて。
怒っている先生を見てみんなの表情が凍り付いた。
----
「はぁ~、やっと解放されたよ…先生を殺すまで帰れませんなんて無理だって…」
あのあと、いろいろあって放課後数時間教室にみんな拘束されていた。
結果からいうと暗殺は失敗だ。首謀者の3人組は先生の脅しに怯えていた。僕たち生徒に手は出せなくても家族や大切な人には手を出せるぞと。
教卓の上に大量に積み上げられた全員分の表札が物語っていた。
「あ、渚君の家に表札がありませんでしたので先生作っておきました。見てください、檜でつくった先生こだわりの一品です。」
松本と書かれた檜で作られた表札を見せながら先生はそう言った。
地球上どこにいても、この先生からは逃げられない。その事実を僕たちは一瞬にして理解してしまった。
もし助かりたいなら暗殺するしかない。
そのあとは先生によるお説教タイム。
「人に笑顔で胸を張れる暗殺をしましょう」
とのことらしい。人に胸を張れる暗殺があるなら、ぜひ聞いてみたいと思ったが大人しく説教をうける。
とても異様な教育風景だが、そのうちこれが当たり前になるのであろう。これから1年間僕たちは暗殺を続ける。続けるしか選択肢はないのだ。
他の人は気づいていないかもれしないが僕たちE組が最もターゲットに近く、多くのチャンスに巡り合える可能性を持っているのだ。
ちなみに僕も、もっと自分を大切にするようにと説教をくらった。ただ殺意を隠して近づいてくる技術は褒められた。
(殺意を隠してっていうか…そもそも殺そうとしてないんだけどなぁ…)
作戦は失敗だったが得られたものもある。まずは先生の脱皮に関する情報だ。
月に一回ほど脱皮できるらしい。先生の奥の手らしい。
あの一瞬で脱皮して爆弾に皮を被せて、爆破の威力を減らすことによって守ってくれたらしい。
(脱皮ね…僕の身体は脱皮なんてしないから知らなかった。この情報を引き出せたのは大きいな。本気の暗殺をしかけるなら脱皮後を狙うしかないな…)
他に得られたものといえば表札。これを扉に飾ろう。
(まぁ、マンションの扉に檜の表札って似合わない気がするけど…)
そして最後に先生の名前が決まった。命名者はあかりだ。
「殺せない先生だから…殺せんせーは?」
(名前が無いのは不便だし呼びやすいからいいと思うな)
異論が出ることはなく、タコの名前は殺せんせーと正式に決まった。
渚君は脱皮しないのです。脱皮設定を付け加えても良かったけど…
次回は杉野の野球…かもしれない!
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野球の時間
----渚----
僕がE組に来てから、すでに1週間がたっていた。時間というのはあっという間にすぎるもので、この1週間は新鮮な気持ちで過ごすことができた。
暗殺に関しては1歩も進んでいないが…
手榴弾暗殺事件(不破さん命名)から一度も僕は殺せんせーに暗殺を仕掛けていない。
マッハ20の怪物に警戒されたらナイフすら握らせてくれないだろう。しばらくは大人しく観察をすることにしよう。
この1週間は今まで経験したことが無いくらい平和な日々だった。みんなと他愛ない話をしたり勉強したり料理の研究をしたり…
寺坂組とは手榴弾の一件から必要最低限の会話しかしていない。それ以外のクラスメートとは仲良くやれていると思う。
不破さんには料理漫画を借りて読んでるし、岡島君とは、女子に聞かせられないよな内容の会話で盛り上がった。
僕自身は趣味も兼ねて料理は始めることした。最近気づいたんだけど僕は美味しいものを食べることが大好きみたいだ。原さんとも、そのおかげで会話をよくするし。美味しいお店や料理の仕方なんかを…
食べることが大好きで、美味しいものを求めているうちに自分でも作ることにしたんだ。
(といっても始めたばかりです人前に出せるものじゃないんだけどね…)
あとは先生の観察についてだ。まだ1週間しか観察をしていないが、それでもたくさんの情報を得ることができた。
毎朝HRの前に英字新聞を読む習慣がある。マッハ20でハワイまで飛んでドリンクとセットで仕入れてくるらしい。
その習慣を利用して今、僕と杉野は殺せんせーを暗殺をしようとしている。正確には杉野だけが暗殺をしようとして僕は応援するために横で見ている。
杉野の手には野球のボールが握られている。だが、ただのボールではない。対先生BB弾をボールの表面にたくさん埋め込んだお手製となっている。
杉野お得意の投球でこのボールを新聞に夢中の先生に投げつけるのである。
(これなら銃と違って発砲音もないからバレる可能性も低い…!弾速は圧倒的に遅いけど試す価値はあるね…。先生は最近、工夫をしなさいって口が酸っぱくなるほど言ってたし丁度いいと思うな。)
杉野がいつもの投球モーションに入り振りかぶる、そして先生目掛けてボールを放った。
ボールが真っすぐ先生目掛けて飛んでいくと、途中で先生の姿が消えた。そして僕は暗殺が失敗したことを理解して振り向いて先生に挨拶をする。
「おはようございます殺せんせー」
「おはようございます、渚君に杉野君」
「え!?ええ!?」
いきなり挨拶をした僕に殺せんせー少し驚いたようにするが、即座に挨拶を返した。杉野驚いて挨拶をするどころではないのか、さっきまで先生が座っていたイスと背後を交互に見ていた。
「特殊な野球ボールで暗殺ですか。よく考えられた素晴らしい暗殺です!最近みなさんが暗殺に工夫をくわえるようになってきたので先生嬉しいです。ですが…」
先生曰く弾が遅すぎたのでボールが届くまでに、用具室にグローブを取りに行ってたらしい。
「殺せるといいですねぇ、卒業までに…」
殺せんせーはそう言い残して校舎のほうに姿を消してった。僕はチラッと杉野を見る。
(完全に自信を無くしちゃって落ち込んでるよ…どうするのさ殺せんせー、杉野をここから元気づけないと教師失格だよ?)
僕は杉野にありきたりの言葉をかけて朝のHRに遅れないように連れていくのだった。
----
時間は過ぎて次の日。今日もまた杉野は元気がなく、ときたま後ろの席からため息が聞こえてくるほどだった。
隣のあかりも心配していた。
(そんな落ち込むことないと思うんだけどなぁ。でも、それだけ杉野が野球に真剣だってことなんだろうな。)
そう思いながら僕は先生に課題である英語で書かれた日記を見せに行こうとしていた。
すると校舎の外で杉野に話しかけている殺せんせーを見つけた。
(殺せんせーのことだから、昨日の暗殺を根に持ってからんでたりはしないと思うけど…念のために。)
有用な情報でも得られればラッキーだしね。僕は物陰に隠れて二人の会話を盗み聞きする。どうやら僕には気づいてないようだ。
殺せんせーはヤシの実を食べながら杉野に部活についての質問をする。いや、飲めよ…
どうやらE組は、とにかく勉強に集中しろという理由で部活動禁止らしい。
(とんでもない教育方針の学校に来ちゃったな…)
わかってたことだけど、この学校は異常だ。差別対象のE組を作り上げて他のクラスの生徒のやる気を出す。E組以外の生徒は優越感と危機感をもつことができる。合理的だけどE組の生徒にとってはたまったもんじゃないだろう。
そんなことを考えてると殺せんせーは触手を杉野に絡ませて締め上げていた。
僕は慌てて止めに入ろうと、物陰から飛び出そうとすると殺せんせーは
「今の投球ホームは君に向いていません…メジャーの有田選手の真似をしてますね?ですが君には彼のような剛速球は投げれないのです」
(たしかに人には得意不得意があるけど、なんでそんなことが断言できるんだ?真実を突き付けるのも大切だけど今の杉野には逆効果じゃないか…)
「先生、直接会って確認してきましたから」
「「確かめたんならしょうがない!!」」
「おや渚君、どうしたんですか?」
「しかもサインまで貰ってるの!?あ、やべ…」
サインまで貰っていることについ突っ込んでしまうと自分が物陰から身体を出して隠れることをやめていたことに気づく。
僕はあきらめて物陰から出てきて杉野の横に並ぶ。僕は先生のはちゃめちゃな行動に苦笑いをするしかないかったが、横の杉野にはそんな余裕はないようだ。
今まで頑張ってきた物が否定されたこと。そして自分でもわかっていたことを証拠とともに突き付けられたこと。いろんなものが重なってしまった。
「やっぱ俺には才能がないのか…」
「一方で、肘や手首の柔らかさは君の方が優れている。鍛えれば有田投手を大きく上回る選手になれるでしょう。」
「俺の…俺にしかない才能…」
杉野は先生の言葉にどこか自信を取り戻したような表情をして自分の手首を動かしている…
どうやら殺せんせーの言葉によっていい方向に傾いたようだ。
僕は杉野を置き去りにして校舎へと去ろうとする先生を追いかけていき。
「殺せんせー、わざわざ杉野にアドバイスをするためにアメリカに行ってきたの?」
「もちろん、先生ですからね。」
(そんなことしてくれる先生なんて、地球上どこを探し回っても殺せんせーだけだよ…)
「普通の先生ってそこまでしないもんじゃない?まして、これから地球を滅ぼそうとしている殺せんせーがさ」
僕がそう言うと殺せんせーは振り返って少し考えてから僕の目を真っすぐ見る。
「先生はね、渚君。ある人との約束を守るために君たちの先生になりました。私は来年3月に地球を滅ぼしますが、その前に君たちの先生です。君たちと真剣に向き合う事は地球の終わりよりも大事なことなのです。」
そう台詞を言い放って決めポーズをとる殺せんせー。
「ある人って雪村先生のこと?」
「なっ、なんでそこで雪村先生の名前が出てくるんですか…!けっして私は雪村先生とそんな大事な約束なんてしませんから!いいですか、これはですね…」
雪村先生の名前を試しに出してみると慌てふためく先生。
(こりゃ何かあるなー。まさか雪村先生と殺せんせーが付き合ってるなんてことは…さすがにないよね…?研究者と被検体だった二人の間に一体何があったんだろう…)
「ま、そういうことにしておくよ。それじゃ僕は教室に戻るね?」
「あ、こら待ちなさい渚君!先生の話はまだ終わってませんよ!」
採点の終わった英語のノートを先生の触手から奪い取り、慌てて取り繕う先生を無視して僕は教室へと戻っていくのだった。
----
数日後、杉野はすっかり調子を取り戻して以前のように元気になっていた。
そして今、空いた時間に2人でキャッチボールをしているわけだが…
「うおっ…ボールが曲がった!今の変化球?」
「へっへ~。殺せんせーのアドバイスから肘と手首をフルに活用した変化球を習得中なんだ!!」
杉野は腐ることなく、殺せんせーのアドバイスを活用して自分の武器を開発していた。
あのとき殺せんせーは杉野と僕に自分の才能にあった方法で暗殺をしなさいと伝えたかったんだと思う。
(正直あのバケモノを倒せる気がしない。超スピードだし万能だし…)
「よし、今日は日が暮れるまで練習だぞ渚!」
「うん!晩御飯おごってくれるならいいよ。」
(…でも不思議と僕らをやる気にさせてくれる。学校生活って楽しいかも…!)
殺せんせー×あぐりさん説濃厚に
ほとんど原作通りなのでスルーしようと思ったのですが書きました。
次回は二次小説っぽくオリジナルな話になります。たぶん…
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閑話の時間①
今回は本編にないオリジナル要素の強い話です。
『烏間襲来の巻』
----渚----
ある日、僕は学校帰りにスーパーに寄って食材を買っていた。
(今日の夕飯はカレーで…明日の昼の弁当のおかずはどうしようかな…。あ、今日は豚肉が安いのか…それなら生姜焼きとか作ってみようか)
完全に思考が主婦だが僕は料理にはまっていた。自分で作った料理は格別に美味しいし、作れば作るほど上達しているのがわかるからとても楽しい。自炊はお財布にも優しいからいいことばっかりだね。
(まだ人に食べさせられるほどでは無いんだけどね…)
エコバッグに食品を詰め込みスーパーから出る。
(このスーパーは住んでるマンションから遠いんだけど野菜が安いんだよな…今日は肉も安かったし、これで卵も安ければ文句なしなんだけどなぁ。)
スマホでカレーのレシピを再確認しようと検索しながら家へと近づいていく。良い子のみんなは歩きスマホ禁止ですよ!
(………ん?誰だ…)
そこで僕は背後に誰かの気配を感じた。
(只者じゃないな、誰だ?殺せんせーではなさそうだけど)
僕はゆっくりと振り返る。へたにいい反応を見せたら、ただの中学生とは思われなくなっちゃうからね。
ゆっくりと振り返ってみる。
「……烏間さん、何してるんですか?」
「気にしないでくれ。あぁ、あと歩きスマホは危ないからダメだぞ。」
「はぁ…」
(気にしないでって言っても背後にぴったり着いてこられたら気になるって!)
何故か背後に烏丸さんがいた。僕は再び帰路につく。もちろんスマホはしまって烏丸さんから逃げるように早足でだ。
マンションが見えてくるとあることに気が付く。
(あれ、誰か引っ越ししてきたのかな。空き部屋なんてなかった気がするけど…)
いまだに背後に烏丸さんの気配を感じながら歩いていると、マンションの前に引っ越し業者のトラックが止まっていることに気が付いた。
引っ越しのトラックを不審に思いながら…もっと不審なのが背後にいるけどマンションへと入り部屋の前までくる。
(烏丸さんが何がしたいのか結局わからないけど家の中に入ってしまえば関係ないもんね。)
僕は扉を開けると少しだけ開いて、隙間に身体をいれて部屋の中へと入る。そして鍵をかけて一息、目を開くと
「あ、渚君おかえりなさい。」
あぐりさんがいた。
----
テーブルを挟んで向かい側に烏丸さんとあぐりさんが座っている。
あの後、びっくりして慌てて飛び出そうと扉を開けたら烏丸さんが目の前にいて…よくわからない板挟みにあって、てんぱってしまった。
「で…なんで雪村先生は僕の家にいたんですか?烏丸さんもなんで後ろにいたのかわからないし…それにこの荷物は?」
とりあえず気になった点をいくつかぶつけてみる。荷物というのは僕の部屋に置かれている大量の段ボールだ。
マンションの前にいた引っ越し業者はどうやらこの家に用があったらしい。
そもそも僕の家は鍵がかかっていたはずだし。どうやって入ったんだ。まさか合鍵…!
「私はね、渚君がちゃんと生活できてるか見に来たんだよー?コンビニのご飯ばっか食べてないかなーって。」
(大丈夫。あぐりさんより料理できるから…本人には言わないけどね。)
あかり情報より、あぐりさんは料理が絶望的と…貴女に心配されたくないと内心思いながら
「大丈夫ですよ。最近料理にはまってまして、それなりに作れるようになってきましたから。で、この荷物は…?」
「あぁ、その荷物は俺のだ。今日からこの部屋に一緒に住むことになる、よろしくな渚君。」
「………へ?」
どうやら僕の平和な一人暮らし生活は一か月も続かないらしい。
「で、なんで急に烏丸さんが僕と一緒に住むんですか?」
「逆に考えて欲しい、中学生が一人暮らしできると思うか?」
「……だめなの?たしかに中学生で一人暮らしって聞いたことないけど。」
「不可能ではない。が、保証人が必要だ。いろいろ法律関係でめんどくさいが他にも保護責任者とかが必要なんだ。君は少し特殊だが、今は普通の中学生と同じ扱いになっている。まぁ、ぶっちゃけてしまうと手続きがめんどくさいから一緒に住むことになった。」
ぶっちゃけすぎでしょ。
「わかりやすい説明ありがとうございました。で、保護責任者ってだれなんですか?」
「俺だ。」
「あ、はい…」
どうやら烏丸さんが僕の保護責任者らしい。それに僕の身体のこともあって一人にさせるのは不安なのと監視の意味合いもあって同居することになったらしい。
ちなみに同居することはずっと前から決まっていて、だから広い部屋が用意されていたんだとか。
(それならもっと早く言ってくれればいいじゃないか…)
話し合いが終われば僕は夕飯を作り始める。多めに作って、作り置きしておこうと思ったけど烏丸さんの分も必要になってしまった。
そしてテーブルのほうをちらっと見るとあぐりさんがスプーンを握りしめてカレーライスを待っている。おまけに涎を垂らして…
「なんで雪村先生も夕飯を食べようとしてるのさ…はぁ…」
3人分のカレーを用意する。食事前の挨拶をするとカレーにがっつく一人の女性…
「美味しいよ渚君!これならどこにでもお嫁さんに出せますね烏丸先生。」
「あぁ、美味しいな。」
「はいはい…つっこみませんからねー。ん、烏丸先生?」
あぐりさんの、烏丸先生という呼び方が気になって質問してみた。どうやら次回から烏間さんが体育教師になるらしい。
たしかに殺せんせーでは体育の授業にならないなと考えながらカレーを食べる。うん、美味しい。
烏丸先生は体育の時間を使って暗殺の基本を教えるつもりだとか。正しい判断だと思います。
「それとね渚君、君の身体のことなんだけど。これから毎週検査させてね?」
「検査ですか…別にいいですけど僕のこと検査してどうするんですか?」
僕はあぐりさんの目をまっすぐ見ながら聞き返す。どこかで嘘をついていないかのチェックだ。
「もちろん君の身体から触手をなくすのが目的だよ。すでに君の身体は触手と同化してしまってるから難しいけど…いつか治さないと…」
嘘をついてはいないけど、波長に乱れがある。あぐりさんが何を思っているのかわからないが…
ちなみに研究所はE組の校舎の地下にあるらしい。そんなバカな…
----------------
『やつとの遭遇』
----渚----
なぜか椚ヶ丘周辺はヤンキーが多い。進学校の生徒を妬む連中なのだろうか。
今も僕の周りにたくさんいる、というか絶賛絡まれ中。
学生服姿で買い物に行ってしまったのが悪かったのかな。次から気を付けよう。
椚ヶ丘は私立の中学校。特待生制度などがあるとはいえ、通っている生徒はほとんどぼんぼんだろう。
ただ歩いていただけなのに腕を掴まれてビルとビルの間に連れ込まれてしまった。
(もちろん、抵抗しようと思えば抵抗できたし…でも面倒ごとは起こしたくないからなぁ)
てきとうに追い払って、早く家に帰ろう。そして夕飯を作るんだ。家にはお腹をすかせた烏丸さんが待っている。
「ごめんなさい、急いでるから…家にペット(烏間)が待ってるし」
「なぁ嬢ちゃん、怪我したくなかったら出すもん出しなよぉ…」
「てかこの子可愛くね?ペットなんかよりお兄ちゃんたちと気持ちいいことしようよ」
やっぱ追い払うんじゃなくて潰そう。とっとと潰そう。
ついキレて思いっきり壁を殴ると拳が壁にめり込みひびが入ってしまう。
ヤンキーたちはビビッて逃げていく。そんなやつらの背中に中指を立てる。すっきりして帰ろうとすると
「あれれ、終わっちゃったの?せっかく正義のヒーローになって君を助けて、ヤンキーからお金を巻き上げようとしたのにさ。」
後ろから男の声がした。振り返ってみると、そこには赤い髪の同年代くらいの男の子がいて
「それにしても君強いねー…もしかして俺より強いんじゃない?あ、ちなみに俺の名前は赤羽業って言うんだ。君と同じ椚ヶ丘の生徒なんだけどさ。」
聞いたことある名前だ。たしか暴力沙汰で停学をくらっているE組の生徒と同じ名前。後ろに誰も座っていない机がある、きっとそこの席の主だ。
(他の人と違うな…。素人だとは思うけど身体の動かし方や洞察力が段違いだ…仲良くしといたほうがいいかな。)
「業…?変わった名前だね、僕の名前は渚。助けようとしてくれてありがとね?」
「もしかして僕っ子?それに男子用の制服着てるし実在するんだね~。助けようとしたことは気にすることないって。僕と同じ学校の生徒、それもこんなかわいい子が襲われてたんだからさ~。ほんとの目的はヤンキーから巻き上げることだったし。」
僕の頭に手を置いてそんなことを言う業君。人を馬鹿にするような話し方をするということがわかった。
訂正、こいつとは仲よくしなくていいわ。
たまーに閑話は挟むことがあります。
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カルマの時間
----渚----
今日は天気がいい。このままずっとここで寝ていたいが。だがさっきからすごい気になっているものがある。
「んー…何が起きてるんだ?殺せんせーが縛られてつるされてる…?」
僕はなんとなく昼休みに校舎の屋根の上に登っていた。天気もよかったし、ほど良い風が吹いていたから気持ちよくてつい寝てしまったんだけど。
目を覚ましたら午後の授業が始まる時間だったが、このまま午後はさぼろうかなと思ったら、殺せんせーが縛られて木からつるされているのが目に入った。
しばらく屋根の上から観察していると皆が縛られている殺せんせーを攻撃し始めた。
どうやらハンディキャップ暗殺大会なるものを開催しているらしい。
(なんでそうなったんだ…烏間さんも呆れてるし…)
どういった経緯で暗殺大会が開かれたのかはわからないが、烏丸さんは呆れた表情をした後に、怒りの表情を浮かべて身を震わせていた。
(なんでこんなことになっているのかは…後であかりか杉野にでも聞けばいいや。とりあえず僕も参加だけはしとこうかな…)
僕はハンドガンを取り出して殺せんせーに狙いを定める。殺せんせーの顔は縞々模様になっていて完全に僕たちのことを舐めていた。
(まぁ、実際攻撃は縛られてるのに全部避けれてるからな…)
何発か引き金を引いて射撃を行う。最近わかったことだけど僕は射撃のセンスが無い。今も全然弾は先生のところに飛んでいくことはなく、僕と同じくさぼって遠巻きに暗殺をみていた寺坂の頭に全部当たった。
寺坂はどこから弾が飛んできたのか気づいていないようだけど…
(うーん…まったく狙った所に行かないなぁ、やっぱ僕にはナイフが合ってるのかな?)
また試しに引き金を引いてみる。奇跡的に弾は全て寺坂の頭へと吸い込まれていった。
(こりゃ今回も暗殺はだめかな?でも殺せんせーのパターンからいくと、カッコつけるとボロが出るはずだからそろそろ…)
先生が吊るされていた木の枝が折れた。言わんこっちゃない…
しばらく沈黙がおとずれる。殺せんせーも烏間さんもE組の皆も固まるが…
「「「今だ、やれー!!」」」
容赦なく皆は殺せんせーに襲い掛かる。
「ちょっ…待って!待ってください!縄と触手が絡まって…」
殺せんせーは避けながらもてんぱっている。しかし、ようやく縄から抜け出すと校舎の上へと飛んで逃げる。
そう、僕がいる校舎の上へ…しかも僕の真横へと。
「はぁ…はぁ…ここまでは来れないでしょ!基本性能が違うんですよバーカバーカ!ぬぉっ…!」
隣で子供みたいに叫ぶ殺せんせーに僕は容赦なくナイフを振るう。ハンドガン?知らない子ですね。
疲れ切っててんぱってた殺せんせーに不意打ちを仕掛けたことで触手を一本切り落とすことに成功したが、驚いた殺せんせーはいつも以上に距離をとる。
「にゅあっ!なんで渚君がここに…!全く君は油断できませんねぇ…。」
「ちっ…せっかくのチャンスだったのになぁ…」
下からも「惜しかったなぁ」なんていう呟きが聞こえてくる。
「ふぅ、危なかったですね……。あ、みなさんの明日出す宿題を2倍にします。」
「「「器小せぇ!!」」」
「渚君は3倍です。」
「理不尽!」
------------
時間は流れて次の日。今日から体育の授業は烏間さん、いや烏間先生が教えることになった。
殺せんせーの体育は体育とは言えないからね。マッハ20で授業やられても誰もついていけないからね…
それに烏間先生の体育は暗殺の基礎を教えてくれる。ナイフの振り方から、基本的な体の動かし方なんかを。
(慣れたから何も思わないけど、普通に考えたら異常な光景だよなぁ…)
みんなが掛け声に合わせてナイフを振っているのは非常に異様な光景だ。
烏間先生はさすが特殊部隊出身なだけあって動きはプロだ。磯貝君と前原君の2人がかりで攻撃を仕掛けても簡単に攻撃を躱してしまった。
先生の実力がわかると皆は素直に従い、先生の話を静かに聞いて教えをどんどん吸収していく。
女子の一人、えーっと…そうそう倉橋さんは目を輝かせて喜んでたけどね。
烏間先生の体育が終わって皆が教室に戻ろうとしていると、校舎の前に見覚えのある赤い髪の青年がたっていた。
「……誰?」
「赤羽業君だよ。暴力沙汰で停学くらってたんだよ。」
知らないふりをして、隣にいたあかりに聞いてみる。
「赤羽業君ですね?初日から遅刻とはいけませんねぇ」
そんなことをしていると先生と業君が話し始める。先生は顔を赤くして業君に注意するが業君は気にすることなく先生に近づいて握手を求める。
「気軽に業って呼んでよ、殺せんせー」
「こちらこそ、1年間よろしくお願いしますね。」
そう言って業君と握手する殺せんせー。次の瞬間殺せんせーの触手は溶けて、業君のナイフ攻撃に焦って距離をとる。
どうやら握手をする手に細工を仕組んでいたようだ。そして殺せんせーに挑発をする業君。見事に殺せんせーは怒っている。
「たしかに、君の暗殺は見事ですが…渚君のほうが君より上ですよ?彼は私の触手を累計2本、切り落としていますからねぇ~」
(ちょっ…!言い返すにしても、なんで人の名前出すのさ!)
「へぇ…その渚ってやつ、誰?」
「僕だよ…」
僕が仕方がなく、おずおずと手を挙げると
「こんな女みたいなやつが?先生ちょろすぎでしょー…さすがにそれはないって。」
なんと彼は僕にまで挑発してきた。僕はつい業君に飛び掛かる。業君も、そんな僕に反応して反撃をしようとするが殺せんせーが間に入って喧嘩を止める。
「だめですよ2人とも…業君、いきなりそのようなことを言ってはいけません!こう見えても渚君は男の子なんです!」
「……殺せんせー嫌い」
とにかく僕と業君の学校での出会いは最悪のものとなってしまった。
----あかり----
教室の空気が重い。体育が終わって6時間目の時間、小テスト中なのに業君が後ろから紙飛行機を渚に飛ばしてちょっかいをだしていた。
帰りのホームルーム前の休み時間でも、渚が廊下を歩いていた業君に足を引っ掛けようとしたり…
(完全に2人の仲悪いよぉ…殺せんせーもちょっと心配してたし。)
間違いなく業君の「女みたい」っていう言葉が原因なのだが…
(いつも以上に渚は過剰に反応している気がするな。普段、みんなにからかわれてるのに。)
途中で転校してきた渚は、とても友好的ですぐにE組に溶け込むことができた。そんな渚があからさまに嫌悪して威嚇してるんだから珍しい。
お互い身体能力が高いから、喧嘩がガチな格闘戦になってるあたり流石だけどね。
そしてホームルームが終わった今、教室の後ろで取っ組み合う二人。
もともと身体能力の高い渚と互角に戦っているあたり業君もなかなかのものだ。彼の復活はこのくらすにとって、ありがたいものになるかもしれない。素行がよければ文句なしなんだけどね。
「あ、ジャーマンスープレックス…」
なぜか近くでヤジをとばしていた寺坂君に格闘技をきめる渚。
2人の喧嘩を見かねたお姉ちゃんと烏間先生が止めに入る。
「いいか君たち、仲間同士で争っている場合じゃない。しかも、そんなつまらない理由で。やつを暗殺するためには一丸となるしかないんだぞ?」
なんとか2人を諭そうとする烏間先生。先生の言っていることはごもっともだ。
「その通りです、そんなんでは私を殺せまっ…にゅあぁあ!先生の足が!」
さらにそこに加わる殺せんせー。2人に近づいていくと突如、殺せんせーの脚が溶ける。いつの間にか床にBB弾がばらまかれていて、殺せんせーが気づかないで踏んだのだ。
「あっはー、また引っ掛かったー」
どうやらBB弾を仕掛けたのは業君らしい。
業君が殺せんせーに向けて銃を撃とうとすると、射線上に渚が立つ。
「ちょっと…渚君邪魔なんだけどさ…わざとやってるでしょ?」
「え、僕と喧嘩して先生を誘い出そうとしたんでしょ?なんかむかつくし…なにか問題でもある?」
どうやら渚はわざと射線上に立っているらしい。また2人は睨み合う。
(これじゃ暗殺どころじゃないよ…主力の2人をどうにかしないと…先が思いやれるなぁ。)
殺せんせー暗殺を成功させるためには2人の力が必要不可欠。
殺せんせーを含む教室にいる全員が溜息をつくのだった。
最近忙しくなってきた…!
週2投稿…きついかも
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仲良しの時間
----渚----
カルマ君の停学が明けてから1日が過ぎた。
昨日は散々な1日だったなぁ。まぁ過剰にカルマ君の挑発に反応して噛みついていた僕も悪いんだけどさ。
みんな、僕が温厚な性格だったり友好的なキャラだと思い込んでいたからカルマ君に掴みかかったときは驚いていた。
あかりや杉野はとくに驚いていて、すぐに止めに入ろうとしていた。
(そこまで理由はないけど、つい掴みかかっちゃたよ。やりすぎたかなー?逆に不審に思われていないといいんだけど。)
今日はどうしようかな、少し抑えめにカルマ君と接しようかな。そんなことを考えて教室の扉を開けると
(んっ?空気が重いな…みんな視線を下に向けてるしどうしたのかな?寺坂あたりが何かしでかしたかな)
そう思って教室を見渡す。その答えは教卓の上を見るとすぐにわかった。そこには先生のトレードマークの元になった本物のタコがナイフに刺された状態で置いてった。
(はっはーん、カルマ君の仕業だな?先生に精神攻撃でもかけるつもりなのかな?成功するとは思わないけど。)
僕はチラッとカルマ君の方を見るが、彼はどこ吹く風で…
カルマ君は頭の回転が凄く速い。先生が先生であるための、越えられない一線を理解して見抜いたうえで駆け引きを仕掛けている。
(さーって、どうなるかな。あとは殺せんせーを待つだけだね。)
席に座り。殺せんせーが来るのを待つ。しばらくすると殺せんせーが朝のホームルームのために扉を開けて入ってくる。
いつもと違う教室の雰囲気を感じ取る殺せんせー。そして教卓の上のタコに気づくとカルマ君が殺せんせーに挑発をする。
が、殺せんせーは怒ることなく、そのタコとミサイルを使って即席のたこ焼きを作ってカルマ君に食べさせる。
(そのミサイル、どうしたのさ…)
どうやらカルマ君は殺せんせーを怒らせたのではなく、本気にさせてしまったのだ。
今日一日、殺せんせーは本気でカルマ君を手入れするつもりだ。
(本気で警戒されたら何もできないだろう…こっからがお互い見物だね。)
どうやってカルマ君を手入れするのか、どうやって本気になった殺せんせーに暗殺を仕掛けるのかt年
たこ焼きを食べさせる光景を見て僕は笑ってしまう。
「カルマ君が昨日商店街でタコ買ってたのはこのためだったんだね。魚屋のおじさんに値切ってたし、お金ないなら無理しなきゃいいのにー」
僕はちょびっとネタバレしてみる。カルマ君の顔が恥ずかしさからか余計に赤くなるのがわかった。
それから、その日、1日中ずっとカルマ君は殺せんせーに手入れされ続けた。
数学の時間では黒板に数式を書いている殺せんせーの後ろから銃で撃とうと、引き抜こうとした瞬間に先生に手を抑えられてしまう。おまけにかわいいネイルアートまでされて。
「カルマ君、銃を抜いてから撃つまでのスピードが遅すぎますよ。」
クスクス笑っていたらカルマ君に睨まれてしまった。
家庭科の時間は、不破さんの班が作ったスープを犠牲にしてナイフ攻撃をしかけるも失敗。おまけに、またかわいいエプロンを着せられてしまう。
こぼしたスープは殺せんせーが丁寧にスポイトで回収して味まで調整するというおまけつき。
(食べ物を粗末に扱うカルマ君。許すまじ…)
ちなみに僕のスープは完璧。簡単な料理なら自分流にアレンジするくらいにまで料理の腕前は上達していた。
国語の時間には少し身体を動かしただけで先生に止められてしまう。髪の毛を整えられてたし…
だんだんカルマ君がイライラしていくのがわかってしまう。
そして暗殺の手段も雑な物へとなっていってしまう。暗殺に工夫するほどの余裕も無くなってしまっているんだろう。
----
そして放課後…僕はカルマ君に呼び出されて、山の中にある崖まで来ていた。
「渚君さぁ…正直邪魔なんだよね。昨日は暗殺の邪魔してくれたし、今日はずっと俺のことバカにしてたでしょ?」
「そんなことないけどなぁ…別にバカにしてないよ?でも、今のカルマ君だったらどんな手を使っても1人じゃ暗殺できないと思うよ?」
「知ったような口を利くね渚君。そういえば渚君って暗殺者なんでしょ?みんな噂で言ってたよ。その割には殺せんせーを殺せてないみたいだけど…もしかして、しょぼい暗殺者なんじゃないの?」
イライラして怒りの矛先が僕に向いてきた。2人で話し合っていると段々言い合いになってきて売り言葉に買い言葉、昨日みたいに掴み合いに発展する。そもそも暗殺者じゃないんだけどね。
「そこまでですよ2人とも。なんで君たち2人の仲がそんなに悪いんですかね…」
気づくと殺せんせーが僕たちの間に割って入って喧嘩をとめる。殺せんせーだけじゃない、クラスのみんなも心配そうに僕たちを見ていた。
----あかり----
今日は1日中、E組の中が慌ただしかった。カルマ君が殺せんせーを暗殺をしようとして失敗するという光景が続いていたからだ。
というのも、朝いちばんにタコを使った挑発なのか精神攻撃をしようとしたのが原因だ。たしかに道徳的にはあまりよろしくない手段だと私は思う。
その結果、殺せんせーを本気にさせてしまったのである。常にカルマ君に対してアンテナを張っていた殺せんせーは、カルマ君が武器を取り出そうとしたときにはすでに反応していて、取り押さえてしまう。
しかも、恥ずかしい恰好に着替えさせたりダメなところを指摘したりして…
それだけならいい。今日のE組にはもう一つ問題があった。渚である。あからさまにカルマ君に挑発をしていた。暗殺が失敗するたびにカルマ君を辱めるようなこと言ったりして…
(渚ってこんなキャラだったかなー…なーんか、わざとやってるように見えるんだけど…)
だんだん2人のやり取りが仕組まれたもののように思えてきた。他の人達は疑ってないようだけど、女優をやってきた私ならなんとなくわかる。
ちなみにカルマ君は暗殺の失敗、殺せんせーのお手入れ、そして渚の挑発にだんだんイライラしていくのが見て取れた。
そして…ついに放課後、カルマ君の怒りが爆発したのか喧嘩に発展。つかみ合いからの殴り合い、対先生用のナイフを取り出したところで殺せんせーが止めにはいる。
2人のことが心配でみんな草むらから見ていた。殺せんせーが止めに入った時は、みんなホッとしていた。いくら人に無害だからといえ、ナイフは鋭利だから場所によっては無傷では済まないからね。
そして今は、殺せんせーとカルマ君が会話している。
「殺せんせーって先生だよね?先生って命をかけて生徒を守ってくれる人?」
「もちろん先生ですから。」
(カルマ君、何を考えているの?もしかして…!)
次の瞬間、カルマ君は銃を構えたまま後ろの崖から落ちていった。
殺せんせーが助けに行けば、その瞬間撃たれて暗殺されてしまう。見殺しにすれば殺せんせーは社会的に殺される。
頭のいいカルマ君だからこそ思いつく方法。そもそも自分を犠牲にすることができる時点で私たちとは違う。
だがカルマ君の暗殺は失敗に終わる。私たちが慌てて崖まで走ってのぞき込むと蜘蛛の巣状に変形して、下からネバネバしてカルマ君を受け止めていた。
これならカルマ君は手足を動かすことができないから今の状態では暗殺することもできない。カルマ君の完全敗北、だと思っていた。
そこで私たちの立っている崖に渚がいないこと気が付く。そして再び下をみると、そこに渚は居た。
渚はナイフを突き立てるようにして真っすぐ落ちていく。
殺せんせーはカルマ君の真下にいるから上が見えない。そう、渚が近づいていることに気づいていないのである。
そして渚が近づくと同時に、カルマ君が唯一動かせる首から上を動かす。そこには殺せんせーの頭があり。
「にゅあっ…!」
殺せんせーが気づいた時には目の前にナイフの先端が迫っていた。慌てたことと、今下手に動けばカルマ君の身の安全が保障できないこともあって…
(いった…!最初から2人の連携した暗殺だったんだ…!)
----渚----
「あ~あ…暗殺失敗するとはね。まさか、あそこで蜘蛛の巣を張り巡らされてた木が折れて攻撃が掠るなんて…」
僕とカルマの連携暗殺は失敗してしまった。蜘蛛の巣状の先生は木や崖の岩に触手をくっつけていたが、そのうちの木の一本が折れてしまったのだ。
そうしたことによって蜘蛛の巣がたわむように動いて攻撃が掠るだけに終わってしまった。
その後は僕も蜘蛛の巣に引っかかって2人まとめて捕まってしまった。
「このために、わざわざ昨日から渚と演技してたのにさー。」
そう、僕たちはカルマが復帰する前から知り合いだった。相性もよくてお互い呼び捨てだし。そのことを皆に話したら「ふざけるな」とか「見てるこっちがドキドキした」とか怒られちゃった。
殺せんせーには、もし暗殺が成功してそのあと真っすぐ落ちていったらどうするんだと怒られてしまった。
そのときは自分の触手を使えば助かるけど、そこは秘密で…
「渚、すごい嘘つくからびっくりしちゃったよー。ほんとは渚おすすめの魚屋に一緒に買いにいったのにさぁ。」
さてさて、これから暗殺の本番だね。クラス一丸となって…
カルマと渚の仲の悪さを演出するのが難しすぎて、まだまだだなと実感した回でした。
あ、今日ボーナスだ…
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殺し屋の時間
----渚----
ある日のこと、クラスの地味な眼鏡の女の子。えっと…そう、奥田さんが先生に毒を作ったので飲んでくださいと、ダイレクトにお願いしていた。
(いったい…そんな渡し方で誰がのむんだよ…)
クラス一同唖然としていた。僕が苦笑いしながら見ていると先生は3種類の毒を受け取った。
(飲むんだ!毒だって言われてるのに飲むんだ!)
つい心の中で突っ込んでしまった。ちなみに今はお菓子から着色料を取り出す授業だが、僕はタケノコの〇を持ってきていた。着色料なんて無さそうだけど、気にしてはいけない。
はっきり言おう、僕はタケノコ派だ!キノコも捨てがたいけどね。先にチョコの部分だけ食べちゃうんだよねー…
おっと、話がそれてしまった。先生は渡された毒を飲んでいく。
(完全触手生物に普通の毒なんて効くのかな?そもそも中学生がどうやって作ったのさ…)
1つ目を飲むと先生の頭に角が生えた。どうやら水酸化ナトリウムだったらしい。
2つ目は酢酸タリウムで羽が生える。最後は王水らしくて真顔になった。
「先生のことは嫌いでも、暗殺のことは嫌いにならないでください。」
某アイドルみたいなことを言っている。
(変化の法則性がわからないよ!てか触手にそんな機能あったの?え?僕ももしかしら、ああなっちゃうわけ?)
ツッコミながら嫌な汗をかいてしまう。
----
そして次の日、どうやら殺せんせーと奥田さんは昨日一緒に毒を作っていたらしい。
暗殺対象が自分を殺す毒を作るって意味がわからないんだけど…。
そして奥田さんから渡された毒を飲むと殺せんせーの容態は変化。なんとはぐれメタルみたいになってしまった。
どうやら殺せんせーは奥田さんを騙していたみたい。
どんなに優れた毒を作れても正直に渡しては意味がない。上手な毒の盛り方には国語力が必要不可欠だと先生は言う。
(結局今回も、先生に授業されちゃったわけかー…生徒の才能を伸ばしながら欠点を補おうとする、さすがだね。)
先生の手腕に内心拍手をおくりながら僕はあることに気づく。もしかして僕もあれをのんだらはぐれ渚になるんじゃないかって…
(いやいや…まさかね…?)
----
そしてさらに日は過ぎて5月。なんだかんだE組が始まって1か月が過ぎてしまった。
(あと11か月しかないのか…はやいなー…で、あれ誰よ?)
教室の前では殺せんせーに抱き着くスタイルのいい外人のお姉さん。
殺せんせーは鼻の下を伸ばしてまんざらでもない様子。
どうやら今日から外国語の先生になるらしい。なるらしいが…明らかに
(まぁ、暗殺者だろうね。この時期にくるって怪しいし…僕も人のこと言えないけど。)
クラスのみんなもわかっていた、彼女が殺し屋であるということが。
しかし、殺せんせーは人間もありなんだ。谷間みてデレデレしてるし…
(あ、そっか…元が人間だからか…)
そんなことを考えているとHRは終わっていた。
(あの先生嫌いだなー…)
僕の最初の先生への感想である。英語の時間、初の女先生の授業だが内容はひどいもの。まともに授業する気はないみたいだったので僕はトイレにいくと教室を抜け出してそのままさぼりへ…
ちなみに先生の呼び方はビッチ先生にきまった。お似合いだと思う。
外の森でさぼっていると、体育倉庫に怪しい男3人組が入っていくのが見えた。全員大きな荷物を抱えている、おそらく武器だろう。
(ビッチ先生が手配した人達かな?用意周到なのはさすがプロってところだね…ん…?)
そこで僕は近くに人が居ることに気が付く。僕がさぼっていた茂みの近くに身を隠すようにして、僕と同じく体育倉庫を見ていたのだ。
(気配を感じなかった。この人もビッチ先生関連の暗殺者かな?)
僕は気になって背後に近づいていく。
「イリーナのやつ…準備は上手くいっているみたいだな。まさか超生物に色仕掛けが効くとは思わなかったが…」
ビッチ先生の名前を知っている。ビンゴだ…僕は試しに
「ねぇおじさん。そこで何をしているのさ…」
「っ…!少年、いったいいつのまに…」
僕が声をかけるとおじさんは驚いたような顔をしていた。
----ロヴロ----
私の名前はロヴロ・ブロフスキ。元凄腕の殺し屋であり、今は殺し屋の育成と斡旋を行っている。
日本政府の依頼で、超生物に暗殺者を仕向けることになったのだが…
(まさか、あのような生物がこの地球上に存在するとはな…)
日本政府から聞かされた話は、とてもじゃないが信じられるものではなかった。マッハ20で移動できる生物など存在していいはずがない。
だが見せられた映像や、研究資料。そして今日1日観察していると信じるしかなかった。
今はイリーナの暗殺を見届けている。やつに色仕掛けが通用するかどうかはイチかバチかだったが賭けに買った。
こうなったらイリーナを超える暗殺者は地球上にいないだろう…。
そして、仮にイリーナの暗殺が失敗したとしても、次の暗殺者を手配できるようにこうして直接見に来ているわけである。
(ふむ…男たちを先に倉庫で待機させておくのか…さすがはプロ、準備は完璧だな。)
この暗殺の成功確率が高いと確信した私は握っていた拳に力が入ってしまう。
「ねぇおじさん。そこで何をしているのさ…」
一瞬で心臓が鷲掴みにされるような感覚に襲われる。つい私は背後に立つ何者かに向かってナイフを突き出すと、そこにはリストにのっていた生徒がいて
「っ…!少年、いったいいつのまに…」
寸前でナイフを止めることができた。引退しとはいえ、この私に気づかれることなく背後まで近寄るとは…
それにナイフを突き刺そうとしても物怖じしない…何者だ?この少年は…
(そういえば…渡された資料の中に、転校生のものがあったな…)
最近新しく渡された情報には、かれは転校生であり暗殺対象の触手を切り落とすことに成功しているらしい。
今の私の背後へと近づいてくるスキルといい…きっと彼は
(凄腕の暗殺者だろう…ぜひ私の弟子に欲しいものだ…)
彼をプロの暗殺者だと決めつけてしまった。
「これは失礼した。私はイリーナを斡旋したもの。殺し屋屋のロヴロだ少年。」
「ロヴロさんね…へぇ…僕の名前は渚だよ。で、何してたのさ。」
私の名前を聞くと眉が一瞬ピクリと動いた。私のことを知っているな…
「なに、たいしたことではないさ。イリーナの暗殺を見届けていただけだ。」
「ふーん…たぶん、ビッチ先生の暗殺失敗するよ?」
「ほぉ、なぜそう思うのかね?」
(これはなかなか面白い話が聞けそうだ。あと、あいつ…ビッチと呼ばれているのか…)
内心ため息をつきながら、私は彼に続きを促す。
「まず臭いでばれてると思う。あの超生物さ、すごい鼻がいいんだよね。だから倉庫に男3人がいることにすぐに気づくと思う、もしかしたら森の中にロヴロさんと僕がいることもばれてるかもしれない。」
「では、あの先生はイリーナ美に呼び出されても倉庫には近づかないかね?」
まさか、そこまで鼻がいいとは誤算だった。そもそも写真を見る限りでは目以外の器官がないように思えたが…
「いや、倉庫には行くと思う。至近距離で撃たれてもマッハ20なら避けれると思うし。相手の暗殺を全て受けてから、失敗させるのがあの人のスタイル。事前にイベントを回避するようなことは基本的にしないよ。」
「ふむ…不意打ちで3人がかりの銃弾の雨でもだめなのかね…」
「そもそも、あの男の人達が持ち込んだのって実弾だよね?殺せんせーに実弾は一切効かないよ?体内で全部溶けてしまうらしいから。」
「なんだと…」
私は絶句していた。まさかここまでとは…私も、イリーナもあの超生物を舐めていた。
「ほら見てよ。」
彼の言葉に体育倉庫に視線を移す。そこには暗殺を失敗して手入れされたイリーナと手下3人組の姿があった。
「ふむ…どうやら君の言っていたことは全て本当のようだな。できれば君とはもっと早く出会いたかったものだ…」
イリーナの暗殺が失敗したとわかれば、もうこの場にいる意味もない。私は去り際に渚という少年に名刺を渡す。
「もし興味があれば…私に連絡をしてくれ。他のやつらよりもいい仕事を手配しよう。訓練にも付き合うぞ。」
彼へのアプローチも忘れない。まだ中学生なのにこのレベル。この金の卵を逃すわけにはいかないからな。
最近タグに勘違いを付けるべきだと思ってきました。
ただそれだけ…
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勉強の時間
ものすごくお久しぶりです…
待っていてくれる人がいるのかもわからないですが、他の方の作品を読んでたらまた自分も書きたくなってしまいまして…
いつ失踪するのかもわからないですが、よければお付き合いください。
----渚----
ビッチ先生の暗殺計画が見事に失敗し殺せんせーに手入れされてしまい…時代遅れの体操服姿にされてしまった事件から次の日。
今日もまた英語の授業はまもとに行われることはなかった。
タブレット端末を操作しながらなにやらブツブツ呟きながら考え事をしているビッチ先生。
よほど昨日の一件が頭にきているのだろう、イライラしているのは明白だった。
(次の暗殺のプランでも考えているのかな?でも、もう暗殺者だっていうのはバレてるわけだし簡単にはいかないよね…暗殺者であることを隠して普通の教師を装う、これが1番の武器であったのに今はその武器がもうないわけで…てか普通に授業してくれないと困るんですけど)
今のビッチ先生は、暗殺者だ。だが暗殺者である前に椚ヶ丘中学校E組の英語の教師でもある。そっちのほうの仕事をしてもらわないと僕たちは困るのだ。
(まぁ、英語はけっこう得意だってことが最近判明したからいいんだけど…。)
僕はもともと教育を受けていない。算数や理科など、皆が小学校で学んできた知識が無い分出遅れてはいる。
だが英語は小学校で勉強するところも増えているようだが、3年生からスタートした僕とほとんど変わらない。
頭の中が空っぽな分、どんどん吸収していっている…と思いたい。
自分で言うのもなんだが、けっこういい感じに勉強にくらいついていけてると思ってる。早くテストで試してみたいな。
最近では家に烏丸先生がいるから、わからなところがあれば家で聞くこともできるしね。
(っと…そんなこと考えてたら何か始まったぞ?)
カルマと磯貝君の言葉を皮切りにビッチ先生とE組の溝が深まっていく。もともとE組のみんなはビッチ先生に対してい不満を募らせていたが、ついにその不満が爆発。
そりゃそうだ。あんな見下されたような目で見られて、E組のことをばかにしたような言葉を口にしたのだ。皆の怒りを買うには十分すぎた。
「出てけよ…」
だれかがそう呟く。そしてビッチ先生目掛けて飛んでいく消しゴム。一度不満が噴出すればそれは止まることなくどんどん膨らんでいき…みんながどんどん物を投げたり言いたいことを言ったりしている。
僕も面白がってつい空のペットボトルを投げてみる。
「あ、逃げた…」
ビッチ先生は耐えきれなくなったのか教室から出ていってしまった。
ちなみに隣にいたあかりは『脱巨乳』の看板を掲げていた。中学生なんだからそんなに気にしなくていいじゃん…なんて思ったら睨まれたので土下座しました。
----
その後、再び英語の時間が来ると改心したのかちゃんと授業をするビッチ先生。
いや、ちゃんとは授業していない。生徒にとんでもない英文を読ませたりしているから…
なんだかんだ言って、ビッチ先生はうまくE組に溶け込んだようだ。
(これも殺せんせーの計算のうちなのかな?)
ビッチ先生の授業はとてもためになる。そこらへんの英語の先生の授業じゃ実践的な会話ができるようにはならないからね。もし今後海外で活動するようなことがあれば、この経験は絶対に役に立つ…
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どうやら今日は全校集会があるらしい。わざわざ山の上から本校舎に行くなんてばからしい。
どうせ行ったってE組は晒しものだろうし。いやな思いをするだけだ。
(めんどくさー。さぼろうかな…カルマもさぼるだろうし)
こっそりと本校舎へ向かって歩いているE組の一団から抜け出そうとすると
「こら、渚君!だめでしょ?気持ちはわかるけど参加しないと…最近さぼりが目立ってるわよ。もしこれ以上さぼったら…」
あぐりさんに見つかってしまった。これ以上さぼったら、支援のお金を減らしてもらうとか言いたいのだろう。そこから先を言わないのは、みんなに聞かれたくないから。
僕はあぐりさんにヘッドロックを決められて引きずられるように本校舎へと連れていかれる…胸…あたってるんだけどな…
「妹さんは胸無いのに不公平だね…」
そんなことを僕が呟くと、あぐりさんとあかりからダブルパンチを頂いた。解せぬ
「おぉ、体育館広いなー…さすが運動部にも力入れてるだけはあるな」
さすがは名門私立校。本校舎の設備はすごいものだ。周りからの視線だけが凄い気になるが…
まぁ、他の皆に比べたら今年からこの学校に来た僕にはあんまり気にならないのかもしれない。だけどずっと晒し者にされてきたE組のみんなにとっては耐え難い屈辱なんだろう…
「ねぇ、あんな青い髪の子いたっけ?すごいかわいいんだけど。」
「ねー、性別どっちなんだろ。E組にもったいないからうちに1匹きてくれないかなー…」
訂正、ものすごく気になる。そんなこと言ったやつに飛び掛かかろうとしたけどクラスメートにめちゃくちゃ抑え込まれた…今のやつ、顔覚えたから…
「しかし陰湿だねー…僕たちの分のプリント持ってこなかったり、ほとんど名指しでばかにしたりと…」
「毎年あんなもんよ。この学校の教育方針だからなー…」
そんなこんなでぼーっとしてたら集会は終わっていた…ようやく、あの場所から解放された僕は杉野と会話しながら山の上を目指す。今日の集会でこの学校がどんな場所なのかをだいたい理解することができた。E組を晒し者にする事で他の奴らのやる気を出す…E組のようになりたくない…そう言った思考を植え付けるのである。もはや洗脳に近い…間違いない、この学校はやばい。
「今日は殺せんせーやビッチ先生たちのおかげでましだったけどな?」
僕は頷く。殺せんせーがすぐにプリントを用意してくれたりビッチ先生達が騒いでくれたおかげで雰囲気が和らいだ。他のクラスから反感を買っていたようだけども。
----
「おっ…あれは?」
学校から帰ろうと職員室の前を通ると見慣れない人がいることに気が付く。
(たしか理事長だっけか…というか、殺せんせーすごい媚び売ってるし…。)
あの理事長が今のE組の制度を作った張本人。少しちょっかいかけようかなと近づけば殺せんせーの情けない姿が目に入ってしまった。大の大人がなさけなく上司にこびへつらっている。見たくない一面だった。
聞き耳をたてて理事長の話を聞く。
(っと…理事長がこっちに来る。)
話が終われば理事長は扉の方へと向かってくる。ほとんど話を聞くことができなかったものの僕は偶然その場に居合わせた様にすると。
「おや、君が噂の転校生ですか。そろそろ中間テストです。訳ありとはいえ、それなりの点数はとってくださいね?頑張りなさい。」
そう言い残して去っていく。
(なんて乾いた言葉だろう…)
一瞬にして肝が冷える…どん底に突き落とすような顔と言葉。真のラスボスといった感じの人だった。
----
と、まぁ昨日の理事長との一件があり、殺せんせーは中間に向けて猛勉強を始めた。殺せんせーの言動から昨日理事長と何かあったことは明白…でもまぁ僕らのためにもなるのでむしろこれは好都合だ…
クラス全員分の分身を作り出して、マンツーマン指導。ちなみに僕の分身は理科のハチマキをつけている。
英語以外が苦手だ。まぁ国語も読解とかならなんとかなるかな。漢字は苦手だけども…
そして勉強してれば突如殺せんせーの分身が乱れは。何事かと視線を移せばカルマが殺せんせーに対してナイフを突き刺そうとしていて…
(あ、僕もやろう。最近暗殺全然してなかったし…完全に学業に専念しちゃってた…)
何のためにここにきたのかを思い出せば体は自然と動いて…視線は机の上に向けたままナイフを持った手は正面に立つ殺せんせーへと…
残念、触手1本しか切り落とせなかった…
(やっぱり一筋縄ではいかないね。勉強しよーっと)
----殺せんせー----
(えっ…?切り落とされたことに気が付かなかった…)
分身を教え子の人数分だけ瞬間移動により作り出した勉強を教えていれば突如カルマくんが攻撃を仕掛けてきて。しかしそれは殺意はあるものの半分ふざけたような攻撃…しかしそれによって分身が乱れてしまった…そこまではよかった。突如私の触手が一本切り落とされて、反応的にやばいと察して天井に張り付きましたが…
カルマくんではない…となると。私は渚くんをみると彼の手にはナイフが握られていて。さっきまで彼は教科書を見ていてとても暗殺をするような様子はなかった。だがそれはまだいい…演技という可能性もある。問題なのは殺意が全くなかったこと。触手を切り落とした彼は今も、何事もなかったかのように勉強をしていて…
(彼はいったい…以前よりもナイフを振る速度も早かった。私が認識できないくらいに…)
以前の自己紹介のときは抑えていた…?いや、そもそもこんな速度で動けるのは触手人間しか…
(彼はいったい…)
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