塵も積もればなんとやら (エタリオウ)
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ゴミを操る男
日本のどこかにある秘境、幻想郷。
そこでは、様々な勢力がひしめき合っているのだが、これはそんな中で一つの勢力の長になってしまった男の話だ。
といっても、彼はそんなに大した男ではない。なんせ、彼が束ねているのはたかがゴミなのだから。
――塵塚怪王という妖怪がいる。
男は塵塚怪王としてこの世に生をうけて以来、ゴミを拾い続けた。自分の能力が、『ゴミを操る程度の能力』と理解していたからだ。
幻想郷の北西の特になにもない辺鄙な地に住み着き、毎日毎日無縁塚によってはゴミを拾う。そんな生活がかれこれ百年続いたとき、彼は気づいた。ゴミが付喪神になっていたことに。
付喪神とは、古い器物に霊が宿って誕生する妖怪のことだ。そのうち風のうわさで、北西の方にたくさん妖怪が群がっているらしいと各地に広まり、彼は一勢力の長に仕立て上げられたわけだ。
「どうしてこうなった」
平穏を愛していたはずだった彼の家の周りは、付喪神で溢れかえり、どこかの人妖がそれを一目見ようとたびたび訪ねる。
賑やかだが、騒がしい。この話はそんな彼の日常を描く。
「よく覚えてないが、たぶん百歳か。誕生日おめでとう、俺」
自分で自分を祝う、そんな寂しい夜。節約だと誕生日でも、食べ物さえ置いていない机。平穏を好み、変わり映えしないこの日々を愛した俺だが、やはり誕生日くらい誰かに祝ってほしい。
一応、塵塚怪王は
そんなこんなでため息をついていると、何かが目の前に現れた。それも一人じゃない。大勢でだ。
流石は幻想郷、美男美女が多い世界だ。目の前の奴らの顔もだいぶ整っていた。しっかし、全員知らない顔だ。あ、俺が知ってるやつなんて指で数えれるほどしかいないんだった。凹む。
「「誕生日、おめでとうございます!」」
俺が一人で傷ついていると、彼らはなぜか一斉に俺の誕生日を祝ってくれた。まさかこれは、俺の願望が生み出した幻覚!?
そんな気がした。まじか、俺はそんなに人が恋しかったのか。
「誰だ、って顔してんで、自己紹介させてもらうぜ」
そんな中、なんだかリーダーシップがありそうな男が前に出た。あとそんな顔はしていない。
「俺たちはアンタに拾われた
あっ、これ幻覚じゃないっぽい。
せっかく、東方求聞史紀買ったんだから、東方の二次創作も書きたいなぁ〜っと思って、無理やり考えた。
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家族が増えたよ
程度の能力――幻想郷に住む者のほとんどは、生まれつきそう呼ばれる異能を持っている。誰がどんな能力を持って生まれるかは、それはもう十人十色であり、個々によってまるで違う。
かく言う俺は、『ゴミを操る程度の能力』を持っている。ゴミの付喪神たちの王とされる塵塚怪王にぴったりな能力、といえば聞こえはいいが、それを知った俺はまず、もっともな疑問が頭に浮かんだ。
「ゴミを操るって、なんだ?」
そういうことだ。
操る、という言葉の通り、自身の思い通りに塵芥を動かすことが出来るのだろうか。不審に思い、実際に不要物を前にして、動け、と念じてみた。
たしかにそいつは宙を縦横無尽に駆けた。重力に逆らい、踊り狂うかのように、それはもう気持ち悪いくらいにヌルヌル動いた。てかきもちわるっ!
俺が止まれと念じると、やはりそれはピタリと動きを止める。やっとこの世に働く重力を思い出したが如く、自由落下を始めた。
「地味だな」
先程まで宙で荒ぶっていたというのに、今は孤独に寂しく地に落ちてしまったごみを眺めて、そう言った。
生涯変わることのない能力なら、いっそもっとこう、なんか派手なやつがよかった……よくない?
しかしまあ、定まってしまった能力は変えようがないので、とりあえず俺はゴミを集めることにした。ひとまずこの能力を使うには、それが必要不可欠であったからである。
三週間続けば習慣となるとはよく言うが、このときの俺は、まさか百年もその生活を続けることになるとは思わなかったことだろう。
そして時は流れて百年後。端的に言うと、家族が増えた。もの凄く。
長年俺が広い続けてきたゴミは、揃いも揃って人の形をした付喪神に変わっていった。本当に、本当に久しぶりに会話できる生命に出会ったことで、少々舞い上がっていた俺は、細かいことなんてまるで気にしていなかった。
しかし、冷静になってから思ったことが一つある。
雨風さえ凌ぐこともできず、もはや家としての機能を果たせていないこんなボロ家に、大人数は住めませーん。そんな衝撃の事実にたどり着いてしまったのだ。
手足を生やし、やっと自由の身になったゴミたちを見渡す。彼らは皆、同じように視線をこちらに向けており、俺が何かを言い出すのを待っているようであった。
いつの間にか緊張感がこの場に張り付いていた。期待や不安の視線を感じながら、俺は口を開ける。それと同時に、付喪神たちがゴクリと唾を飲み込んだ。
「じゃ、みんなで家作るか」
俺たちの大規模建築が今、始まる……!
めっちゃ久しぶりの投稿でこの短さ。この小説、見切り発車で始めてしまったので、全然あとの展開が思い浮かばないんですよね。
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お前だったのか
山を彷徨い早3時間弱。ついに、ついに見つけた。
草木の間から見えるのは、木の葉を放棄で掃いている少女の姿だった。
なんか想像より若そうだし、赤と白の装いは巫女服に見えるが、こんな山奥にいるのだから、間違いないはず。向かって右側にある朱色の鳥居は見なかったことにした。
間違いねえ……、彼女こそ、
一説によると、塵塚怪王は山姥の王であるとされているのだが、なぜか俺は山姥を一度も目にしたことがない。嫌われているのかもしれないが、さすがに一度も会ったことがないというのはどうだろう? と思い、今に至る。
九割は暇つぶしで探してた、ということは伏せておこう。
俺は草木から飛び出そうとしたが、寸でのところで止めた。なんかはじめての対面で高揚していたが、一旦冷静に考えてみよう。
まず山姥ってさ、山の奥に住む老婆の妖怪で知られてんじゃん? 立ち寄ったやつを包丁片手に襲うような。
しかし眼の前にいる山姥(仮)はどうだ。シワひとつない、まだ十代に見える少女ではないか。本当に彼女が山姥なのか? もし勘違いして出ていったら、めちゃくちゃ恥ずかしいことではないか。
俺は座り直して、また草木の隙間から様子を伺うことにした。いやぁ、危うく恥をかくところだった。
と、安堵の息をついたとき、あることを思い出した。
とある地域に伝わる山姥(ヤマヒメ)は、見た目二十歳ほどの女性で、眉目秀麗で珍しい色の小袖に黒髪だったと伝わっている。出会った猟師が鉄砲で撃ったが、弾を手でつかんで微笑んだらしい。
山姥(仮)とそれを比べてみる。
見た目二十歳ほどの女性――わからなくはない。個人的には十代に見えるが、まあ誤差の範囲ってことで。
眉目秀麗――これに関してはかなり当てはまっている。確かに目の前の彼女の容姿はかなり優れていた。
美しい色の小袖――うーん? まあ誤差の範囲だろう。きっと。
黒髪――まごうことなき黒髪だ。
鉄砲の弾を掴んで微笑む――これが一番当てはまっている気がする。なぜだかはわからかいが、目の前の彼女は凄く怖い方の笑みを浮かべそうなイメージがある。きっとそう思わせる『スゴ味』があるのだろう。
いやもうこれ山姥でしょ。Q.E.D.証明終了だよ。
確信を得て、俺は彼女の前に姿を現す。すごい神社っぽい家に住んでるな、と思った。
「初めまして、山姥さん」
正面から山姥(確信)を見ると、やはりその装いは巫女服を彷彿させる。周りもよく見なくとも完全に神社だが、だがきっとたぶんおそらく違うのだろうmaybe(希望的推測)。
それはそれとして、俺の言葉に山姥(確信)は思いっきり顔をしかめた。
「は?」
怖い。
3ヶ月ぶりの更新でこの文字数&クオリティ……。救いようがねえな。
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