アマゾンズチャレンジ!~千翼は仮面ライダーになれるのか!?~ (エボルアマゾン)
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第1話

まだネオにはなりません。
千翼君の「アマゾンッ!」は先になります。


「かあさん、おなかがすいた」

 

「・・・お昼、さっき食べたばかりでしょ?足りなかったの?」

「ううん、でもたべたいんだ」

 

「ねえ、かあさん、たべちゃ、だめ?」

 

「…あのね『千翼』、どんなにお腹が空いても『人間』は絶対に食べちゃダメ」

「どうして?」

 

「『人間』を食べちゃったら、とうさんが千翼を殺しに来ちゃうから」

 

「えっ」

「千翼のとうさんはね、『アマゾン』から人間を守る為に『赤いアマゾン』になって戦ってるの。

アマゾンには容赦しない、それが例え自分の息子でも」

「・・・」

「でもあなたが人間を食べなければ、いつか家族みんなで暮らせるかもしれないの」

「!・・・本当に?」

「・・・えぇ、きっといつか」

「・・・わかったよ」

 

「おれ、やくそくする!

ぜったい、ぜったいに人間をたべないって!

そうすれば、かあさんととうさんといっしょにいられるんでしょ?」

 

「フフッ、千翼はいい子ね。

じゃあ、かあさんとの約束よ?」

「うん!

ねえかあさん、とうさんってどんな人?」

「そうねえ、強くて優しくて、自分の信念を決して曲げない人。

名前は――『鷹山 仁』」

「『たかやま じん』・・・じゃあおれは『たかやま ちひろ』?」

「ええ、そうよ

さ、そろそろ行きましょう?今日の寝場所を探さないと」

「うん!」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

かあさんからとうさんのことを聞いて、1ヶ月ぐらいたった。

ものすごくほしくなるときもあるけど、あの日のやくそくを守ってずっと我慢してる。

それにかあさんのごはんはすごくおいしいからぜんぜん平気。

今日の魚もとってもおいしかった。

 

「千翼ー、お勉強も終わったし、そろそろ寝るわよー」

「うん、かあさん!」

 

今日のねばしょは森の中。見上げれば星空が見える、ベストスポット。

近くに急なしゃめんがあって川までころがってちゃうから、トイレに行くときは気をつけないと。

 

「お休み、千翼」

「おやすみなさい、かあさん」

 

(しばらく・・・ここにいるのかな、魚も・・・とれるしか・・・かあさんも気に入ってるみたい・・・)

 

かあさんにだきしめられ、むねの音を聞きながらそんなことを考えてると、あっという間にねむく・・・なって・・・。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

とつぜん、目がさめた。・・・何か、近づいてきてる?

 

「かあさん、かあさん」

「・・・千翼、眠れないの?」

「かあさん、あっちから何か近づいてくる」

 

川上の方から何か-!

 

「フゥゥゥゥゥァ・・・!」

 

木のかげからそいつはあらわれた。

黒いマントを着たようなシルエットに、頭の両側からは小さなコウモリのような羽根。

コウモリ人間のようなそいつはー!

 

「アマゾン・・・!

千翼、逃げるよ!」

 

すぐさまかあさんがおれをかかえ、にげようとする。

 

「キシャァァァ!」

 

体がういたと思ったら、すぐ何かにぶつかったようなしょうげきをかんじ地面に投げ出された。

飛んできたアイツにかあさんごとけり飛ばされた!

 

「くっ、かあさん!」

 

木の根元にたおれているかあさんにかけよるけど、よびかけても返事がない、気を失ってる!

ど、どうしよう・・・。

 

にげなきゃ、アイツが・・・!

 

「ハァァァァ・・・!

ニク、ニクだァ。

やっと食べられるゥ」

 

来てる、来てる、どうしようどうしよう・・・!『―――やらなきゃ』

かあさんをたべる気だ・・・!『―――殺される』

 

『―――からだがあつい』

 

おれしかいない、『―――喰え』

 

おれしかかあさんを守れない、『―――すべて』

 

おれが、おれが!『―――喰い殺せ』

 

「うおぉぉぉォォォオ!」

 

声にしたがうように、体のおくからわき上がる力を解放する―!

全身からじょうきがふき上がり、おれの体がかわる。

背がのび、全身は青くゴツゴツとした体に。

 

「ゴルルル・・・!」

 

これがおれのアマゾン態、なるのははじめてだけどうまくなれた!

 

「寄こせェ、オレのニクだァ!」

「ちがう、おれのかあさんだァ!」

 

走りよってくるコウモリアマゾンに合わせるように右うでをつき出し、思いっきりなぐりつける!

むねのあたりにパンチがきまり、コウモリのうごきが止まる。

 

「グガアァ・・・!」

「オオオォォォァア!」

 

すかさずラッシュをくりだし、全身をなぐりつける!

 

「ガアァァ・・・!」

(いける・・・!このまま一気に!)

 

ひざをついたコウモリアマゾンをけり飛ばし、おいうちをかけようとし―

 

横からの体当たりで吹き飛ばされた。

 

「ガァッ・・・」

(新手!?)

 

体勢がくずれたところに、糸のようなものがまきつき体をしめつける。

たおれたまま周囲を見回すとーいた。

クモのアマゾンと・・・なんだあれ。

とがった顔につき出したかわらのような肩、するどいかぎ爪・・・ホントになんだあれ、クマ?

クモとクマ(?)はコウモリアマゾンを助け起こし、こちらに向き直る。

 

「クモとクマ・・・」

「!?ボクはモグラだ!」

 

え、どのへんが?

 

「お前らそいつの仲間か!」

「そうだ、君もアマゾンだろ。

どうして邪魔するの?独り占めするつもり?」

「ちがう!おれのかあさんだ!」

「母さん?・・・何を馬鹿な事を。

アマゾンと人間が家族?そんなことはあり得ない」

「うるさい!」

 

力ずくで糸を引きちぎり、アマゾンたちに飛びかかる。

けど、3対1。1体のなぐりかかればほかの2体に背後からおそわれそうになり、うまく戦えなくなる。

 

「やめるんだ、アマゾン同士で戦うつもりはない!」

「でもかあさんを食べるんだろ!」

「人間を喰って何が悪い!」

「じゃあ敵だァ!」

 

後ろにジャンプし、いったん距離をとる。

体をひくくし、いつでも飛びかかれるようにしアマゾンたちをにらむ。

一度に相手をするのはむりだ。1体1体かくじつにー!

 

 

 

 

―――〈ALPHA〉

―――アマゾン!

―――〈Blood&Wild,W・W・W・Wild!〉

 

赤い炎をまきちらしそのアマゾンは現れた。

赤いきずだらけの体、両手両足には黒いグローブとブーツ、そして白い目。

また新手!?

 

「あ、あいつは・・・」

「そんな、死んだんじゃ!?」

「し、死神だ・・・!」

 

あいつらの仲間じゃないみたいだけど・・・、一体?

 

「!ウアァァァア!」

クモアマゾンが赤いアマゾンに飛びかかり――

 

「ーア」

 

赤いアマゾンのうでにより両断された。

 

「糸田くん!よくもオォ!」

「シャァァァ!」

モグラ(?)アマゾンがかぎ爪をふるい、赤いアマゾンがそれを受けつつカウンターをたたきこむ。

正直急展開すぎてついて行けない・・・!

あの赤いのはあいつらの敵みたいだけど―!

 

「グルァ!」

「ガア?!」

 

音もなく飛び、赤いアマゾンの背後からおそいかかろうとしたコウモリアマゾンをたたき落とす。

 

「ー!」

 

赤いアマゾンはちらりとこちらを見て、すぐにモグラ(?)アマゾンと組み合いながら森の奥に消えていった。

その後、何かがころがるような音と水の落ちるような音がした。

たぶん足すべらせて川に落ちたんだろう。それより今はー!

 

「キイィィイ!」

「グガ!」

 

飛行しながら攻撃してくるこいつだ。

軽やかに飛びながらヒットアンドアウェイをくりかえされて、手が届かない・・・!

・・・あの赤いのみたいにできないか?

 

(よし・・・タイミングを合わせて・・・!)

 

正面から飛びかかってきたやつに合わせ、背中からたおれこみながらわきばらに蹴りをたたきこむー!

 

「ゴッ、ア」

「グッ、オオオオオ!」

 

地面にころがったやつが立ち上がる前に飛びかかり、黒いマントごと右腕を引きちぎる。

 

「アァアァァアァ!」

 

いたみからか絶叫を上げるやつの首をつかみ、近くの木にたたきつけ、

 

「ウォオオオオア!」

 

たたきつけた木ごと一気にむねをぶち抜いた。

 

「ゴガッ、アアァァァ・・・」

 

コウモリアマゾンは何度かけいれんしたあと、ドロドロと体をとかしていった。

 

「フー、フー、ッハアァ・・・」

 

何とか、なった。

そうだ、かあさんは・・・!

 

「・・・抜けない」

 

思いっきりぶち込みすぎた。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

腕を引き抜いてかあさんのところへもどる。

かあさんだいじょうぶかな?

ちゃんと守れたからほめて、くれるよね?

かあさんー

 

「ーえ?」

 

かあさんがいない。

かあさんがいたところには、血のようなものとー

 

「―――」

 

水色をしたアマゾンがいた。

 

「ねえ、かあさんはどこ?」

「―――」

「そこに、いた、はず、なんだけど」

「―――」

 

体の中からなにかがわき上がる。

アマゾンはなにも答えず、両手を広げ背中から6枚のつばさを広げた。

 

「・・・おまえか?

おまえが、食ったのか?

かあさんを?」

「―――」

 

「ウゥ、ウォオオオオアアアアア!」

 

わき上がったなにかは肩をつきやぶる。

しかいのはしに新しい2本の腕が見える。

おれはそれをふりかざしー

 

「アアアアア!」

「―――」

 

目の前のアマゾンに飛びかかった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「―――はい、幸い死者は出ませんでしたが、負傷者多数、さらにターゲットもロスト。

一定のダメージは与えましたが、倒し切れませんでした」

 

「―――四肢欠損ほどの重傷者はいませんが、追跡は困難かと。

それと―――」

 

「―――現場で10歳前後の子供を保護しました。

錯乱していますが、どうやら母親をアマゾンに喰われたようで・・・」

 

「―――了解しました。

保護した子供を連れて本部に帰還します」

 

「―――ふう。

全員!これより本部〈4C〉に帰還する!」

 

 

 




いかがでしょうか。
これだけ書くのにほぼ半日・・・

ちらっと仁さんが出ていますが、これは千翼君の回想シーンで仁さんが登場していた事から、「もしかしたら仁さんいたんじゃね?」という妄想です。
もちろんマモルくんもその他アマゾンも妄想です。
クモアマゾンに「糸田くん」と名付けましたがこれも妄想です。

コウモリアマゾンの名前?「内海くん」です。


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第2話

幻の4C収容時代
サクサク行きたい


「橘局長、保護された少年はアマゾンと判明しました」

「・・・それは間違いないのかね?」

「ええこの通り、検査結果が出ています」

「なるほどなるほど・・・つまり彼はアマゾンの幼体ということかね」

「おそらくは」

「なら報告にあった、アマゾンに喰われた母親というのは・・・」

「そこまでは・・・本人の意識が戻り次第聞き取りを行う予定です」

「任せるよ・・・あーそうだ、例の新型レジスター。彼に付けておいてくれ。

万が一ということもある。獣には首輪が必要だ。そうだろう、加納君?」

「―――ええ、そのように」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ぐるりと周りを見渡す。

白い壁。白い天井。白いライト。白いクッション。

 

「・・・どこここ?」

 

視線を下げればいつもとは違う白い服

 

「・・・なにこれ?」

 

よし、落ち着こう。もうこれ3回目だ。

周りを調べようと立ち上がると、うわぁまた・・・

 

「背が伸びてる・・・」

 

アマゾンに、なったから?

頭に乗せようと左手を上げると、違和感がある。

そでをまくり上げると二の腕に鳥の頭がくっついてた。

 

「えっ、なにこれ」

 

赤と銀のメタリックな鳥の横顔・・・か、かっこいい・・・!

あっでもこれ腕に直接刺さってるのか・・・ちょっと痛いな。

 

「目が覚めましたか」

「!だ、だれ?」

 

い、いつの間にか人がいた・・・!

銀色の腕時計を付けて同じ色のケースを持った、黒いスーツにめがねの男の人・・・。

その後ろに二人、手に黒いグローブを付け迷彩柄の服を着た男の人。一人は白いいにおいのする箱を持ってる。

 

「驚かせてしまい申し訳ありません。

ご安心を。我々は君を保護した者です」

「ほ、保護?」

「ええ君を傷つけるつもりはありません

ですので―――そのクッションの山から出てきてくれませんか」

 

即席のクッションバリケードから抜け出し、めがねの人に向き直る。

保護っていてたけどこの人たち一体・・・?

 

「では改めまして。

初めまして、私は〈特定有害生物対策センター〉通称〈4C〉の局長秘書『加納 省吾』と申します。

こちら、名刺となります」

「加納さん・・・?えっとはじめまして、ちひろです」

「ちひろ君、よろしくお願いします。

こちらお近づきの印に・・・」

 

そう言って後ろの人から白い箱を受け取った加納さんは、キビキビとした動きでおれに近づき箱を差し出してきた。

受け取って箱を開けると、中には―――

 

「フライドチキンです。

空腹だと思ったので・・・何せ丸3日も眠り続けていましたから。

まずは腹ごしらえから、どうぞ召し上がってください」

 

そう言われて空腹に気づいた。3日も寝てたとか、ここはどこかとか聞きたいことは一杯あったけど―――。

 

「―――いただきます」

 

食欲(アマゾンの本能)には逆らえない。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「ごちそう、さまでした」

 

フライドチキンっていうのは初めて食べたけど、すごく、おいしかったぁ。

サクサクとした衣にジューシーな鶏肉。それにスパイス。3日ぶりの食事だった事もあるけれど、夢中になっちゃった。

 

「お粗末様でした。

ではこれより君に対して聞き取り調査を行います。

ああ、お二人は退出してください」

「で、ですが、彼と二人きりになるのは―――」

「銃で武装した大人がいれば警戒して情報を聞き出しづらくなりますので」

「・・・わかりました。

ですが、何かあればすぐに」

「ええ、わかっています」

 

そういって後ろにいた二人は部屋から出て行った。

 

「ではちひろ君これより聞き取りを開始します。

まずこちらの質問に答えください。

その後現状の説明をいたします。

ああ、それと言いたくないことがあれば黙っていても構いませんが、お勧めはしません。」

「は、はい」

「では、まず君の名前は」

 

「鷹山 千翼です。

千のつばさで千翼です」

 

「鷹、山、―――では君の父親の名前は」

「鷹山 仁です」

 

そう言うと加納さんは驚いたように―驚いてるよね?表情全然変わらないから分かりづらいけど!

 

「加納さん?」

「―――失礼しました、質問を続けます。

君はアマゾンですよね、母親も?」

「おれはアマゾンだけど、かあさんは人間だよ」

 

その後もどうしてあそこいたのか、どういう暮らしをしてたのか、人を食ったことはあるかという質問が続いた。

そして質問の後に、おれの現状が説明された。

 

〈4C〉はアマゾンを狩る組織であること。

あそこにはアマゾンを追って行き着いたこと。

人間の姿になったおれを保護し、水色のアマゾンと戦闘になったこと。

そしてー

 

「あいつは、逃げたんですか」

「ええ、手傷は負わせたものの逃走を許してしまい―――

君の母親はあのアマゾンに」

「あいつが、アイツがッ、かあさんを―――!」

 

怒りで体が熱くなる。蒸気を上げるほど体が熱くなり―

 

「千翼君、落ち着いてください、千翼君ッ!」

「―――ッあ・・・」

 

「ご、ごめんなさい」

「いえ、気持ちは分かります。

ですがここでは、無闇にアマゾン態にならないように」

 

加納さんはハンカチで鼻と口を押さえながらそういった。

おれ、臭うのかな。

 

「・・・おれ、臭います?」

「いえ、そういうわけでは。

私の癖です」

 

癖だそうです。―――よかった。

 

「ではこれからのことを説明します。

―――ですがその前に幾つか約束してほしいことがあります」

「約束?」

「ええ。

―――君は父親の名前を知らない、ということにしてほしいのです」

「え?ど、どうして―――」

「理由は幾つかありますが、君の身を守る為というのが大きいです」

 

おれを守る?一体どうして・・・?

 

「先ほど我々は君を保護したといいましたが、ここはアマゾンを狩る組織。

君がアマゾンと人間の間に生まれた存在となると、実験動物(モルモット)にされる可能性が極めて高くなります」

「おれを実験動物(モルモット)に!?」

「ええ、おそらくは。

ですが君と私が黙っていればそうはなりません。

それと―――」

 

「君が約束を守ってくれれば、ここを脱走する手助けをしましょう」

「―なっ、なんで!?」

 

ばれてる!?

 

「母親の仇が生きていると聞いて明らかに様子が変わりましたから。

ですが今すぐにとはいきません。

こちらにも都合がありますから」

「都合?」

 

都合―ここでアマゾンの研究に付き合うこと。

おれの左腕に取り付けられたアマゾンの食人衝動をおさえる腕輪〈ネオアマゾンズレジスター〉や、対アマゾン用の武器などをここでは作ってるらしい。

脱走する際にそれらの一部を渡してくれるらしい。

その代わりにおれは実験に協力する。生きたアマゾンは貴重だからって。

その提案を、おれは―――

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「なるほど、分かった。

ご苦労だったね加納君」

「いえ」

「しかし人間に拾われたアマゾンか・・・。

物好きな人間もいた者だ、人喰いの猛獣と家族ごっことはね」

「今のところ千翼に積極的な食人衝動は見られません。通常の食事でも問題ないほどに」

「では腕輪の投薬量は今のままで。

そうだな、後で私も顔を合わせておこう。彼は今どこに?」

「部屋で研究員から明日以降のスケジュール説明を受けています」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「―――以上が保護したアマゾンの詳細になります」

 

 

「―――はい、鷹山仁は今でも生きていると思われます」

 

 

「―――いえ、悠君の行方は未だ」

 

 

「―――はい、引き続き調査を続けます」

 

 

「―――失礼します、本部長」

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

―――それから

 

「君が千翼か。私は『橘 雄吾』。

ここ〈4C〉の局長だ、よろしく」

「タチバナチョチョー?」

「きょ・く・ちょ・う・だ」

「ああ、加納さんが言ってた人か。

研究員の人と一緒にいたからドクターかと」

「局長だよ。

まあ、今日は顔見せだけだ。

これからパトロンの方々とゴルフでね。

それでは良き週末を」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

―――しばらく

 

「あーーー、だあーるーいー」

「千翼君、薬の効果はどうだい?」

「ちからがーはーいーらーなーいー」

「ふむ、この量でこの効果か・・・。

後は効果時間の確認だ」

「んー、ん?

あ、力がだんだん・・・」

「もうかい?ふーむ?

薬の効果が弱いのか、千翼君が強いのか・・・」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「加納さん、これは?」

「ノートパソコンです。

使用方法を教えるので、検査の間にこれを使って勉強してください」

「おぉ」

「それとこちらを。

高濃度のタンパク質を圧縮・ゼリー状に加工したものです

普段の食事や緊急時に使用ください」

「―――ップハァ、ヘンな味ぃ」

「我慢してください。

アマゾン細胞にはご馳走です」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「これは〈ネオアマゾンズドライバー〉、アマゾン専用の装備だ。

装着者のアマゾン細胞に影響を与え、戦闘力を飛躍的に向上させるものだ。

が、あまりに影響が強すぎてね・・・、ほかのアマゾンでは使用出来なかった。

千翼、君ならばあるいはと思うのだが」

「・・・分かった、やるよ」

 

 

 

―――〈NE・O〉

―――アマゾン!

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「では千翼君、脱出の日程はこのように。

レジスターのGPS機能は抑制剤の容量増加に伴い、オミットされています。

抑制剤の投与期間は凡そ3年です。

着替えやゼリーなどはこの場所にありますので。

薬の投与が切れると、アマゾンとして覚醒する可能性があります。

それまでに仇が取れるといいですね」

「ありがと、加納さん。

いままで、お世話になりました」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

―――その日が来た

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「研究室より局長へ!

 

被検体がドライバーの実験中に設備を破壊し逃走しました!」

 

 

 

―――待ってろ、アマゾン

 

―――一匹残らず

 

―――俺が狩ってやる!

 

 

 

 

 

 




幻の4C収容時代編終了です。
次は放浪編、チームXとの出会い編になる予定です。

頭の中にストーリーはあるけど、文章にするのは難しいです。


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第3話

千翼君があっちこちふらふらしながらアマゾンぶっ殺したり、
チームXとヒャッハーする編です。


「まさか千翼が脱走するとは・・・!

しかもドライバー、ジャングレイダーまで持ち去られるとは!」

「追跡班を出しますか」

「・・・いや待て、これはチャンスでは・・・?」

「は?と、言いますと」

「〈ネオ〉への変身と武器生成プロセスの正常動作は確認している・・・。

次は戦闘データの取得だった・・・。

これは『イユ』との戦闘でとるつもりだったが、これにはリスクがある」

「・・・どちらかが再起不能になるほどの損傷を負う可能性ですか」

「そうだ、千翼はともかくイユは〈シグマタイプ〉―――万が一、許容量以上のダメージを負えばそのまま機能を停止する」

「そうなれば駆除班の一時的な戦力低下はまぬがれません」

「ならばこそ、脱走というこの機会を利用する!

イユはここで調整を続行、千翼には外でアマゾンを狩ってもらう!

例の新型の件もある、千翼捜索は後回しにする。

加納君、腕輪の抑制剤は―?」

「おおよそ3年ほどです」

「ならば千翼の回収は3年を目処にする。

その間我々は―――新型の調査・殲滅を行う!」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「いらっしゃいませ!お持ち帰りでしょうか?」

「あ、ここで食べます。」

「ご注文どうぞー」

「えーと、チーズバーガーのセット一つ。

飲み物はコーラ?で」

「ポテトのセットでよろしかったでしょうかー」

「あ、はい」

「お会計600円になります。

ーはい、お待たせ致しました!

チーズバーガーのセットになります。

ごゆっくりどうぞー」

「ありがとうございまーす」

 

 

「いただきます」

うん、コーラって初めて飲んだけど結構いける。

バーガーもポテトもおいしいし、これでジャンクフード?

人間って恵まれてるなぁ、好きに食べれるんだから。

 

さてと、これからどうしよう?

脱走はうまくいったし、加納さんが用意してくれた荷物には現金も入ってたし。

とりあえずアマゾンを追って狩る。そうすればいつかアイツにたどり着けるはずだし。

まあ今はとりあえずこのセットを片付けるか。

うん、おいしい。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「ありがとうございましたー」

「ごちそうさま、さてと・・・」

 

ハンバーガーチェーン店を出て周りを見渡す。

 

「恵まれない子供たちに救いの手をー!」

「なあなあ、恵夢!ゲーセンいこうぜ!『ノックアウトファイター』で勝負だ!」

「ジンジンさせたんで―!」

「振り向くな」

「ロリショージョだ!」

「あっ!ロケットが飛んでいくぅ!」

「ケイスケ、トモダチ」

 

すごい、当たり前なんだろうけど人間がいっぱいだ。酔いそう。

 

けど、アマゾンって何処にいるんだろ。

人間を喰わなきゃいけないから、やっぱり街の中?この人混みに紛れてるとか。

それとも普段は山とかに隠れてるのか?

 

「ネットで目撃情報とか―――」

 

探す必要はないみたいだ。

いる―――この近くに。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

人混みを避けるように移動していると、段々人の数が減ってくる。

それに比例するようにアマゾンの気配が強くなってくる。

 

そしてたどりついたのは人が全くいない―――

 

「ビルの建築現場・・・?」

 

入り口には青いビニールシートがかけられた工事現場。人の気配はないけれど―――

分かる―――この奥から血と、アマゾンの気配がする

 

背中のバックからドライバーを取り出し、腰に巻き付ける。

赤と黒で塗装された、黄色い眼の鳥かトカゲの横顔のように見える、〈ネオアマゾンズドライバー〉。

ポケットから〈アマゾンズインジェクター〉取り出し、シートをくぐる。

 

ほぼ鉄骨だけのビルの下にそいつはいた。

 

―――ぐちゅ、ぐちょ、ぶちり、がちゅ、ぐち、ごり、ぶち

 

俺には気づかず、背を向けたまま一心不乱に『食事』を続ける―――

 

「アマゾン・・・」

 

声に反応したのか『食事』をやめ、ゆっくりとこちらを振り返る。

血で赤く染まった口には鮮やかな腸を咥え、着ているジャケットとジーンズは血で汚れさらに所々破れ、そこから黒い毛皮がのぞいてる。

 

(―――オオカミか?)

 

オオカミアマゾンは咥えた腸を見せつけるように飲み下し、鋭い爪を持つ両腕を構え―――遠吠えを上げる。

 

「ウオォォォォオオン!」

 

・・・近くに人がいなくて良かった。野次馬が寄ってくると面倒だし。

 

前傾姿勢になりこちらを伺うオオカミアマゾンに対し、半身になりつつドライバーのスロットにインジェクターを挿入する。

スロットを起こし内部の特殊タンパク液を注入する。

 

〈NE・O〉

「フゥゥ・・・」

 

認証音が鳴り、ドライバー内部のコアユニットが起動する。

それに合わせるように俺の体も熱くなり、さらに眼もうっすら赤く発光する・・・見えてはないんだけどね?

 

「ガアゥ!」

 

先手必勝とばかりに地を蹴り飛びかかってくるオオカミアマゾンに合わせるように、音声コードを叫ぶ―――。

 

「・・・アマゾン!」

 

瞬間俺の体は赤い爆炎を衝撃波のように放つ。

 

「キャイン?!」

 

飛びかかってきたやつは爆炎に打ち飛ばされ、地面を転がった。

 

何度か放たれた爆炎が収まり、俺の全身が見えるようになる。

青い体、全身走る血管のような赤いライン。

胸部と両手足、それに頭部にも銀色の機械的な装甲を纏う。

赤い垂れ目を隠すような黄色いバイザーを装着したこの姿こそ、俺のもう一つの姿―――

 

〈アマゾン・ネオ〉

 

 

こちらを威嚇するように唸り声を上げるやつに、重心を低くし向かい合う。

しばし睨み合い―――

 

「オオォ!」

「!ガアゥ!」

 

こちらから駆け出すととやつも弾かれたように駆け出す。

頭に向けて突き出された爪を屈み込むように躱し、勢いのまま腹に右拳を叩き込む。

腹を押さえ膝をついたやつの側頭部を回し蹴りで蹴り飛ばす。

 

「ハアアァ!」

 

地面を転がるやつに飛びかかり、首を押さえつけ馬乗りになる。

 

「お前水色のアマゾンを知ってるか!答えろォ!」

「グルゥ!ガアアアアアウゥ!」

(話が通じない・・・理性が本能に喰われたか!?)

 

と、余計な事に気をとられたせいかやつの膝での反撃を脇腹に受け、マウントを解除されてしまう。

やつは体勢を崩した俺から距離をとる。

 

「フウゥゥウ・・・!」

 

油断した・・・!でも答えられないなら・・・もう、こいつに用はない!

ドライバーのスロットを一度下げ、再度上げる操作をする。

 

〈Amazon・Slash〉

 

ドライバーから音声が流れ、呼応するように両腕の『アームカッター』が鋭く伸びる。

両腕を猛禽類のように構え、一気にやつに飛び込み―――

 

「ハアアァァア!」

「ギャアアアア!」

 

―――!

左脇腹から右肩まで両断する―――つもりが直前で躱され、左腕を中程から切り飛ばすに留まった。

必殺技だぞ躱すなよ。

 

黒い体液が噴き出す左腕を押さえたやつは、勝てないと悟ったのか背を向けて一目散に出口に駆け出した―――って!

 

「逃がすかァ!」

 

インジェクターを押し込み、武器生成プロセスを開始する。

 

〈Claw・Loading〉

 

右腕の装甲が一部展開・変化しワイヤーフックとなる。

そのまま右腕を逃げるやつに振るい、ワイヤーを射出する。

同時に再度スロットを操作し、必殺技を発動する。

 

〈Amazon・Break〉

 

逃げるやつを追い越したフックはそのまま一気に引き戻され、

 

「ゴガアァ・・・!」

 

その勢いのまま胸に突き刺さり、やつは背中から地面に倒される。

ワイヤーを再び伸ばしながら、俺は背後の鉄骨ビルに飛び上がる。

三階の鉄骨にワイヤーを引っ掛けながら、再び飛び降りる。今度はワイヤーを引き戻しながら。

 

「―――ギ!―――ガアア!」

 

ワイヤーに引きずられ、やつは胸にフックが刺さってまま宙づりにされる。

背中を向けながら着地した俺は天に伸ばした腕をゆっくり肩の高さまで引き下ろし、

 

―――ビイィィン!

 

左腕で弾いた。

同時にやつの体から肉を引き裂くような音が上がり、そのまま地面に落下した。

 

「―――ァ」

 

武装を解除し、オオカミアマゾンだったものに歩み寄る。

あたりには黒い体液がぶちまけられ、やつの体は水分を一気に失ったように干からびていた。

 

「フウー、フウー、ッハアァ・・・」

 

やつが完全に死亡したことを確認し、ドライバーからインジェクターを引き抜き人間に戻る。

こいつは水色のアマゾンのことを知らなかったのか?

言葉すらまともに発しなかったし、前のコウモリアマゾンみたいにドロドロに溶けなかった。

一体・・・?

―――!

サイレンの音?まだ遠いけど・・・近づいてきてる!

やっばい、はやくここから離れないと!

 

急いで入り口のシートをくぐると―――。

 

―――ゴルルルルー

 

出た直ぐ側で赤いボディに黄色ライトのバイク―――ジャングレイダーが止まっていた。

 

「自分で来てくれたのか?賢いなーお前」

 

ヘッド部分をなでてやりながらヘルメットをかぶる。

獣の唸り声のようなエンジン音を上げながら、ジャングレイダーを走らせ一目散に建設現場から離れる。

 

(水色のアマゾン・・・必ず、必ず見つけてみせる。

そして俺の手で―――狩ってやる!)

 

沈む夕日にそう誓いながら、今日の寝床を探しジャングレイダーを走らせる。

 

この日から始まったんだ。

俺のアマゾンを狩る日々が―――。

 

 

 

 

―――きゅるるるるー

 

・・・寝床の前にご飯だな、うん。

宿より飯だ、うん!

 




~その後~
千翼君「ここをキャンプ地とする!」

次回ぐらいでチームXが出る予定です。


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第4話

Welcome to ようこそアマゾンパーク


〈Amazon・Strike〉

「セェヤアアァー!」

 

鋭く伸びた『フットカッター』を側頭部に叩きつけるように振るい、フクロウアマゾンの大きな頭を粉砕する。

頭を失った体はゆっくりと後ろ向きに倒れ―――そのまま干からびていった。

 

オオカミアマゾンとの戦闘から一週間と少し・・・その間に五体のアマゾンを狩った。

けれど肝心の情報―――水色のアマゾンについては全く手掛かりがなかった。

どいつもこいつも

―――Q:水色のアマゾンを知っていますか?

―――A:ガアアア!

と、いった感じでそもそも会話が成り立たない。

 

最初の三体は言葉を発していたし、会話も出来てたんだけどなぁ。

確かランクの低いアマゾンはアマゾン態になると言葉を発しなくなる傾向があるって、〈4C〉のデータにあったけど・・・。

偶々、低ランクにしか遭遇していないだけか・・・?

 

―――考え事は後にしよう。

襲われてた、大きなかばんを背負った人は―――大丈夫だな。見た感じどこも喰われてない。

 

 

「あの、大丈夫―――」

「ひぃ!た、食べないでくださぁい!」

 

食べないよー。

 

 

 

落ち着いたらちゃんとお礼を言って帰っていきました。

でも、「ありがとうございます、トカゲさん!」って・・・確かにネオはトカゲっぽいけど。

もう遅い時間だからあまり出歩かないように注意して、その場を離れた。

俺もご飯食べたら寝床に戻ろう。明日はネットで情報収集だ。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「長瀬くーん、再生数ぜーんぜん伸びてないよー」

「やっぱ『メントスコーラ爆弾つくったったwww』は受けが悪いかったなー、ヒロキ」

「クソッ、通行人がビビりまくってめちゃくちゃ笑えたじゃねーかよ。

それなのに『悪趣味だ』とか『不謹慎だ』、『クソガキテロリストw』みたいなコメントばっかじゃねーか!」

「チャンネルのコメ欄も荒れてるねー、囃し立ててもっと過激なことさせようとしてるやつと、それに噛み付くやつで動画のコメントなんかほとんどないよこれ」

「だったらもっとデカいことやって、そいつら黙りゃしゃあいいだるぉ!」

「へー例えば?」

「そりゃお前あれだよ・・・。

つーか、ケンタ!お前もなんかアイディアだせよ!」

「んーじゃあヒロキ、これなんかいいんじゃない?」

「何だよ・・・『人喰い廃ホテル』ゥ?

ここ行って肝試しでもしよーってのかよ」

「違うって、よく読めよー」

「ああん?・・・『肝試しのカップルが損傷の激しい死体を見つけたと警察に駆け込むが、現場には何もなかった。』、何だよただのオカルトじゃねーか」

「だからよく読めって、続きがあるだろ、つ・づ・き!」

「ああ・・・『その後、肝試しに行った者の中から「咀嚼音を聞いた」、「何かを啜るような音を聞いた」という報告が相次ぐ。さらに肝試しを最後に消息を絶った者まで現れた。警察は肝試しとの因果関係は見えないとコメントしており―――』、何だよ神隠しかよ。やっぱオカルトじゃねーか」

「てゆうかこれ町外れのホテルじゃん。ここ行ってオカルト実況でもするの?」

「違う違う、てーか俺これオカルトじゃないと思うんだよねー」

「じゃあ何だよ」

 

「―――アマゾン。ここでアマゾンが人間喰ってんだよ、きっと」

「あ?・・・いや、確かに「咀嚼音」やら「何かを啜るような音」ってのが人喰ってる時の音だとすると・・・」

「今までこっそり喰ってたのが肝試し客が増えて、たくさん喰いだしたってこと?」

「多分ね。で、これを俺たちが―――」

「狩るってわけか!いーじゃねか、アマゾン狩り実況動画!どのグループもやってねえ、登録数爆上げ間違いなしだぜ!」

「でも俺らに狩れるの?あいつら人喰いの化け物なんでしょ?」

「ビビってんじゃねーよ、タク!クマだって人襲うじゃねえか、ようは害獣だ害獣!人間様に勝てるわけねーだろ!俺がボコボコにしてやんよ!」

「じゃあ決まりだね。〈チーム(キス)〉、次の動画はアマゾン狩り実況だ!」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「人が消えるホテル・・・!まさか、アマゾンの仕業か!」

情報収集は大事だな・・・!いきなりあたりっぽい情報がヒットだ。

町外れの人気のないホテル跡地、消える死体、何かを食べる音―――十中八九アマゾン、それもかなりの人数を喰ってる。

情報を見る限り活動時間は日没以降・・・まだ少し早いか。

ご飯食べて準備しておくか・・・。

 

「あっすいません、カツサンドのおかわりお願いします。それとデザートに季節のフルーツバスケット・・・じゃなくてタルトを」

 

はぁ・・・外っておいしい食べ物がいっぱいだなぁ・・・。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「充電ばっちり!じゃ、カメラ回すよー3,2,1-」

 

「イエーイ!」

「どーもー〈チーム(キス)〉でーす!」

「今日は今噂の『人喰い廃ホテル』に来てまーす!」

「今日はここにいるッぽいアマゾンをぉー、おーれたちで退治しちゃいまーす!」

「いえーい!」

 

カメラに向かって金属バットやバール、ゴルフクラブを掲げながらアピールする。

あ、ちなみに生放送じゃねーぞ。これでなにもいませんでしたーじゃカッコ悪過ぎるからな。

取りあえずカメラ回しながら、帰ってから編集して投稿だ。うまくいきゃ、再生数がっぽり稼げんだ。何もありませんでしたーじゃ話にならねーからな。

 

「じゃあ早速、ホテルに突入したいと思いまーす!」

「イェイ!」

 

さあ出てこい化け物!俺たちの収入になってもらうぜ!

 

◆◆◆では、ホテルのなかでそのアマゾンについて朝まで語り明かそうか・・・◆◆◆

 

ホテルつっても全然出来てねーんだな。コンクリむきだしで、建設途中のビルみてーだ。

 

「一階には何もいませんねー」

「ちゃんと探したのかよ」

「探したって!」

「じゃあ二階探すか」

「突撃―!」

 

エレベーターは動かないどころか、設置すらされてねえ。

バット担ぎながら二階に上がると・・・おお、あっちこち壁が崩れてやがる。

 

「なんか雰囲気出てきました!」

「これはマジにでてくるかぁ!?」

 

出てもらわなきゃこまるんだっつー―――

 

「ここで何してるの?」

 

「うおわぁ!」

「あああ、なになに!?」

「出た!?出たの!?」

 

後ろから急に声が!?

ビビってねえけど、振り返って見ると―――。

 

「ここ、危ないよ?物騒な噂もあるし・・・。はやく帰ったほうがいいよ」

 

俺より少し低い身長に童顔の男がいた。年齢は俺と同じぐらいか?地味な色の服にバックを背負ったやつがいた。

こいつがアマゾンか!?

 

「てめぇがアマゾンか!」

「え、なんで分かったの!?」

 

ご丁寧に自分からばらしてくれやがった!よっしゃあ、ぶっ殺す!

 

「死ねや化け物ォ!」

 

両手でバットを握り締め、全力でアイツの頭めがけて振り下ろし―――

 

パァンという軽い音とともに受け止められた・・・左手一本で。

 

「なっ―」

「なんか勘違いしてるみたいだけど、俺はここにいるアマゾンを狩りに来たんだ。君たちには危害を加えるつもりはないよ」

 

嘘だろ・・・押しても引いてもビクともしねえ・・・こっちは両手だぞ!?

 

「えっと、取りあえず離すね?」

 

バットを引き抜こうとした瞬間に、パッと手を離されそのまま尻餅をつかされる。

なめやがって・・・!

 

「ヒロキやばいって、逃げようぜ!」

「ふざけんな!舐められたまま―――」

 

「うわあああ!」

 

立ち上がってもう一発かまそうとしたとき、タクの悲鳴が聞こえた。

慌てて振り返ると、タクが廊下を引きずられていた。足になんか絡みついてやがる・・・!

 

「タクゥ!」

「た、助けてぇ!」

 

引きずられるタクが手を伸ばすけど・・・クソッ、距離がありすぎる!このままじゃ―――

 

真横を風が走り抜けた。

いや違う!アイツだ!さっきまで俺の後ろにいた童顔アマゾンは凄まじい速さでタクに追いつき、タクの手を掴む。

そのまま一気にタクを自分に引き寄せ、足に絡みついていた太い糸のようなものを引き千切った。

 

「え、え、う、うわあ!」

「・・・大丈夫?」

「あ、え、う、うん、だ、大丈夫」

「よかった。さ、はやく逃げて」

 

タクを引き起こしたアイツはそのまま糸が伸びている方へ走っていった。

 

「―って、待ちやがれ!ヒロキ、タク!行くぞォ!」

「マジで言ってんの!?」

「長瀬君やばいって!」

「うるせえ、チャンスだろォ!タク、カメラ回してるよな!?」

 

アイツの後を追って走るとホールのようなところに出た。

アイツは直ぐに見つかった。俺たちから見て右手側・・・バックは足下に落とされ、腰にはごつい赤のベルトを巻いてる。

そして―――その反対側にそいつはいた。

大きな黒い複眼、頭の横には小さな複眼が並び、全身は細かい毛で覆われボロボロのジーンズを履いてる。

大きな複眼の下にはクモの牙のような口がある。

あれが―――

 

「アマゾンだ・・・」

「は、初めてみた・・・」

「な、なに?!何が始まるの!?」

 

動画撮影に決まってるだろォ!取りあえずあのクモみたいなやつブチ殺して―――

 

―――〈NE・O〉

 

突如響いた音に足を止めた。今の音アイツの方から聞こえた。

何の音かと思いアイツの方を見ると・・・目が赤く光ってた。

俺と話してた時とは違う、鋭く赤く光る目でクモヤローを睨みつけてやがる。

深く呼吸をしながらチラリとこちらを見てから―――

 

「―――アマゾンッッ!」

 

叫び、赤い爆炎を放った。

 

「うおわ!」

 

離れてた俺たちは少し煽られるだけだったけど、飛び掛かってたクモヤローは衝撃波みてーな爆炎に吹き飛ばされる。

アイツは爆炎を纏ったまま吹き飛ばされたやつに飛び掛かり、蹴りを繰り出す。

体勢の崩れてたやつは避けられず、蹴り飛ばされる。

そして爆炎が収まり、アイツの姿があらわになる。

 

青い体、全身走る血管のような赤いライン。

胸部と両手足、それに黄色いバイザー付きの頭部も銀色の機械的な装甲が覆ってる。

 

姿を変えたあいつは、獣のような声を上げながらクモヤローに飛び掛かっていった。

 

「あ、あれもアマゾン、なの・・・?」

「知るかよ・・・おい、カメラ回してんだろーな、ちゃんと撮れよ!」

「わかってるって!」

 

すげえ・・・!あいつマジすげえ!

殴りかかってくるクモヤローをそれより速く殴りつけて、反撃させてねえ!

組み付かれてもそのまま相手を持ち上げてぶん投げやがった!

そのせいで距離をとったクモヤローは口から糸を吐き出すけど、両腕のカッターで全部斬り落とす。

全然相手になってねえ・・・!

クモヤローはヤケクソみてーにあいつに飛び掛かり・・・アッパーで天井まで吹き飛ばされた。

そのまま空中で体勢を立て直したやつは天井に着地し、天井を蹴る力と落下速度を合わせ、最後の一撃とばかりに両腕の爪を突き出す。

それに対してあいつは―――

 

〈Amazon・Slash〉

 

ベルトを操作したと思ったらそんな声が聞こえ、あいつの両腕にあるカッターがさらに鋭く伸びる。

獣のような叫び声を上げながら、落ちてくるクモヤローに合わせるよ右腕を突き出す―――!

すれ違うように床に落下したクモヤローはあいつの右腕により、上半身と下半身に分かれていた。

何度か痙攣を繰り返し―――水分が蒸発したかのように、干からびていった。

すげえ・・・!

 

「マジすげえ・・・!マジ、最強-・・・!」

 

しばらく息を荒げていたやつは、ふと思い出したかのように俺たちの方に向き直った。

 

「・・・!」

 

次は俺たちかと一瞬身構えるが―――

 

「危ないから逃げろって言わなかったっけ?」

 

さっきまで獣みてーに暴れてたやつとは別人みてーに、フランクに話しかけてきやがった。

どうやらマジで俺たちをどうこうするつもりはないみてーだ。正直ほっとした。

 

「外まで送って行くから、早く―――」

 

次の瞬間。

こちらに近づいてきたあいつは、黒い影に跳ね飛ばされた。

 

 

アマゾン狩りの夜は、まだ終わらない。

 

 

 

 




書いてて長瀬なのか万丈なのか分からなくなる。

チヒロォ、セントォ、ニゲルルォ!


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第5話

第4話の伏線回収


油断した・・・!

壁をぶち抜いて現れたそいつは勢いのままに俺を跳ね飛ばした。

床を滑りながら体勢を整え、闖入者に向き直る。

 

「―――え?」

 

そいつを視界に納めた瞬間、思わず動きを止めてしまった。

鱗に覆われた太い手足、鋭く生え揃った牙が覗く長い顔を持つアマゾン―――ワニアマゾン。

問題はワニであることじゃない。服だ。

 

どぎついピンクのハーフパンツに同色の「親しみやすさ」とプリントされたTシャツ・・・。

それが逞しい身体によりぱっつんぱっつんになってる・・・。

それが「親しみやすさ」を強調するように胸を張っている。

いや、全然親しめないよこれ・・・。

 

ああクソッ、余計なこと考えるな!相手はアマゾン、狩るだけだ!

頭を振って気持ちを切り替え、やつに向き直ると―――

大きく開いた顎が目の前にあった。

 

「カァァグ!」

「―!ウグアァアァ!」

 

避けるのが一瞬遅れたせいで左腕に噛み付かれる。

幸い装甲のあるところだったけど、顎の力が強すぎる!装甲がバキバキいってる、このままじゃ腕もってかれる―――!

自由になる右腕や膝で胴体を殴打するが、分厚い鱗はそのまま鎧となり衝撃を通さない。

さらにやつは体を沈め、上半身を軽く捻り―――やっばい!

咄嗟にやつの背中に回り付き、そのまましがみつく。

やつは溜めた力を解放するように一気に回転を始める。

 

ワニが噛み付いた獲物を仕留めるために行う必殺技―――デスロール。

腕をねじ切られるのは回避したけど、装甲が軋みを上げ、そのまま持って行かれそうな衝撃が走る。

ワニは獲物が死ぬまでデスロールをやめない・・・まずいこのままじゃ―――。

 

「おっらあ!」

「ギッ―――」

 

車のタイヤを殴ったような音が聞こえ、デスロールが停止する。

顔を上げると―――

 

「っしゃあ!どうだ!」

「長瀬君すげぇー!」

「ばっちり撮れてるよ、ヒロキ!」

 

さっきバッドで殴りかかってきた人がいた。

どうやら思いっきり振ったバッドがやつの目に直撃したみたいだ。

 

「どーよ、俺の上腕二頭筋!」

 

デスロールが止まった、チャンスだ!

 

「オォオォオォオ!」

「うぉ!」

 

やつの体を持ち上げ、全力で走る!向かうのは―――外!

壁をぶち破りそのまま落下する―――やつを下にしてなぁ!

 

「ガッ、フッ―――!」

「よし、抜けたァ!」

 

そのままやつから距離を取り、噛み付かれた腕を確認するけど・・・装甲はボロボロ、力も入らない。

荒く息を吐きながらもやつからは目を離さない。

どうする?堅い鱗はカッターもブレードも通しそうにない。打撃なんてもってのほかだろう。

なにより今度噛み付かれれば、脱出は絶望的だ・・・なら、手は一つ・・・!

 

「追いついた・・・見て、腕抜けてる!」

「長瀬君のおかげだね!」

「たりめーだろ!おい、さっさと片付けちまえよ!」

 

好き勝手言ってくれるなぁ、肝が据わってるって言うか何というか・・・。

・・・まあ、さっさと片付けたいのだけは同意するよ。

 

〈Blade・Loading〉

 

インジェクターを押し込み、ブレードを生成する。

タイミングを間違えば今度こそアウトだけど・・・俺はこんなところで死にたくないし、死ねない・・・!

 

「何だあれ、かっけー」

「武器作れるんだ!」

「でもどうするんだ?あのワニ、すげえ堅そうだけど・・・」

 

右腕を引き、力を溜める。

そして一気に―――!

 

「突っ込んだ!?」

 

弾丸のように地面を駆け、やつに肉薄する!

やつは待ち構えるように少し顎を開き―――

 

(―――今だ!)

 

さらに速度を上げ、やつの顎にブレードをねじ込む・・・口の中に鱗はないだろ!

 

「ギグガガガガガァ!」

「オォォオオオォオ■■■■■■■■!」

 

〈Amazon・Break〉

 

左腕の痛みを無視してスロットを操作する!

 

(ブチコロス―――!)

 

そのまま一気に腕を引き下ろし、やつを下顎から股まで切り開く。

黒い体液が噴き出し体を汚すが構わず、最後まで腕を引き下ろした。

 

「―――――」

 

やつは声もなく崩れ落ち、いつものように干からびていった。

か、勝った・・・!

 

「■■■■■■■■ー!」

 

勝利の歓喜に身を震わせながら夜空の三日月に吠える。

 

「よっしゃ!見たかよ、あいつマジすげーぜ!おい、やるじゃねーかお前!」

「めっちゃいい画が撮れた・・・!再生数爆上げ間違いなしでしょ、これ!」

「名前なんてーの!」

 

息を整えてると、さっきの三人組が寄ってきて俺に触ってきた。

 

「うわちょっとやめて触らないで」

 

もみくちゃにされそうなところから抜け出し、周囲の気配を探る・・・よし、もうここにはアマゾンはいないみたいだな。

ドライバーからインジェクターを引き抜き、人間の姿に戻る。

改めて目の前の三人組に向き直り、お礼を言う。

 

「さっきはありがとう。おかげで助かったよ。お詫びするものなんて何もないけど・・・」

「おお?いいってことよ!タクのこと助けてくれたからな!」

「うん!ホントーにありがと!」

「そっか・・・じゃ、俺はこれで」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

そう言ってあいつはあっさり背中を向けて立ち去ろうとする。

やべえ、このままだと帰っちまう!

 

「おい、お前名前は?」

 

何とか引き留めてチームに引き込まねーと!こいつがいりゃあ、アマゾン狩りもスムーズに進みそうだしな!

 

「名前?・・・千翼だよ。鷹山千翼」

「千翼か!俺は長瀬裕樹、こいつが北村健太でお前が助けたのが山下琢己だ。俺たち三人でチーム(キス)だ!」

「へぇ、三人はチームなんだ。じゃあ縁があればまたどこかで」

 

何だこいつ会話が続かねえ!コミュ障か!?

 

「さっきの戦い、凄かったね。千翼もアマゾンなんだろ?なんで同じアマゾン狩ってるの?」

 

ナイスフォローだ、ケンタァ!そーだ、こいつがアマゾン狩ってる理由が分かれば、チームに引き込みやすくなる!

 

「・・・あいつらと一緒にしないでほしいんだけど・・・。」

「ごめん、気を悪くしたなら謝るよ」

「・・・いいよ、人間から見ればアマゾンはアマゾンだし。えっと、俺がアマゾンを狩る理由だっけ?」

「ああ、ちょっときょーみあるかなーって」

「・・・探してるアマゾンがいるんだ。俺の母さんを喰った水色のアマゾン」

 

・・・!これだ!

 

「じゃあ、俺たちのチームに入れよ!助けになれるぜ!」

「えっ?」

「俺たちがアマゾンを狩るお前を動画に撮って配信する。で、チャンネルの告知でそのアマゾンの目撃情報を視聴者から集めるんだよ!」

「それいいかも!一人で闇雲に探すよりずっと効率的だよ!ヒロキ珍しくさえてるじゃん!」

「珍しくってなんだよ!」

「でも、俺、アマゾンだよ?」

「千翼は俺のこと助けてくれたじゃん!ほかのとは違うんでしょ?」

「それは・・・そうだけど」

 

案外しぶといな、ここは強引でももう一押し・・・!

 

「じゃああれだ、恩返し!お前さっき詫びがどうの言ってたろ!それ返す為にチームに入れ!」

「えっ、さっき気にしなくていいって・・・」

「忘れた忘れた!お前はチームに入る、ハイ決定!」

「・・・強引だなぁ。でも恩返しなら、しょうがない、か・・・」

 

そう言ってこいつ・・・千翼は照れたように笑いながら―――

 

「改めて、鷹山千翼です。俺を、みんなのチームに入れてくれないかな?」

 

そう、いった。

 

「大歓迎だぜ、ようこそチーム(キス)へ!これからよろしくな!千翼!」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

咎人を串刺しにするような三日月の下に〈それ〉はいた。

 

「よーし、チーム(キス)新メンバーの歓迎会やるぞ!」

「イエーイ!」

「別に気を使わなくても・・・」

「まあまあ、千翼の歓迎会を口実に騒ぎたいだけなんだよ。千翼は何か食べたいものある?」

「えっと、焼き肉かな。俺食べたことないんだ」

「オッケー、焼き肉ね。おーい、ヒロキー。千翼が焼き肉食いたいって―」

「よっしゃぁ!今日は奮発するぞぉ!」

「イエーイ!」

 

宙に浮かぶ〈それ〉は眼下の人とアマゾンをしばらく見つめ―――

空間に溶けるように消えた。

 

人とアマゾンは何も気づかず・・・三日月だけが全てを見ていた。

 

 




衝撃の玄さん。
第4話のホテルおじさんは伏線だったのさ・・・!

次はチームの日常とか4Cの様子とか書きたいな。書けるといいな。


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第6話

街に潜む人喰いの怪物―――!
それを狩るアマゾンハンターの実態に迫る!


―――7年前、この世界にある脅威が放たれた。

事故により放たれたその脅威の名は・・・『アマゾン』。

大手製薬会社『野座間製薬』により秘密裏に研究されていたこの生命体は恐るべき身体能力を持ち、人間に擬態することも可能であり、さらには人間のタンパク質を好む―――すなわち、人間を喰らうと言う。

事故により放たれた4000体の怪物・・・我々がこの存在を知るのは5年前、野座間製薬が行ったアマゾン殲滅作戦『トラロック』の後になる。

特殊ガスを街に散布したこの作戦によりアマゾンの大半は死滅―――同時に白昼堂々行われたこの作戦により、アマゾンの存在が世に晒されることとなった。

街行く人が突如悶え苦しみながら怪物へと変貌し、どろどろと溶けゆく姿がSNSに多数投稿されたことは記憶に新しい。

 

『トラロック事件』によりアマゾンの大半は駆除された。

しかし、全てのアマゾンが駆除されたわけではない。

トラロックを生き延び、今も街に潜むアマゾン―――そしてそれを狩る者たち。

今回我々はこのアマゾンを狩る者たちに迫った―――!

 

 

~激撮!アマゾンハンター24時!~

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

アマゾンを狩る者たち・・・彼らを取材するために我々はここ〈特定有害生物対策センター〉通称〈4C〉を訪れた。

 

「ようこそ〈4C〉へ。私がここの局長を務める、橘雄吾です」

 

我々取材班を出迎えてくれたのは大柄な壮年の男性―――ここ〈4C〉の局長である橘雄吾さん。

 

―――今回は我々の密着取材を引き受けてくださり、誠にありがとうございます。

「構いませんよ。国民の皆様に今この街で何が起きているか、そしてアマゾンの脅威をお知らせするいい機会ですから」

 

―――ではまず、〈4C〉の設立理由からご説明いただけますか?

「設立理由・・・と申されましても、5年前の「トラロック事件」を生き延びた実験体を駆除するためです」

―――実験体?

「ああ失礼、野座間製薬では逃げ出した4000体のアマゾンを実験体と呼んでいまして。

この実験体を狩るために野座間製薬では秘密裏に駆除班を結成し、これにあたっていました。

まあ、アマゾンの存在が明るみに出たため、野座間は多額の罰金を払うこととなり、政府の認可を得ていなかった駆除班も解散となりましたがね。

その後、私が政府機関に働きかけ野座間製薬共同でこの〈4C〉設立に至ったというわけです」

―――なるほど。確か橘局長も野座間製薬の元役員だったとお聞きしていますが?

「ええ、国際営業戦略本部長でした」

―――当時はアマゾンとはどのような関わりを?

「直接的な関わりはほぼありませんでしたね。

アマゾンプロジェクトは特殊研究開発部門の主導でしたから。

まあ、ビジネス面から見てもアマゾンは魅力的でした」

―――アマゾンがビジネスに?

「その通り、アマゾン細胞には無限の可能性がある、と私は当時から考えています」

―――アマゾン細胞とはどのようなものなのでしょうか?

「わかりやすく言えば、ウイルスサイズの人工生命体です。極めて高い生命力を持ち、人のタンパク質を好む。

これをヒト型まで成長させたものをアマゾンと呼んでいます。

ヒト型まで成長させたアマゾンは動植物の性質を持ちます。

アマゾン細胞誕生の経緯ですが・・・実験中、偶然誕生したと。

高い生命力から医療分野への転用が期待されていましたが、後に人喰いの性質が判明しいったん保留されていました」

―――〈4C〉はどのような組織なのでしょう?

「〈4C〉はアマゾンを駆除する組織です。

ですので、対アマゾン戦闘部隊の運用が主になります。

まず情報部が入手した情報により機動部隊を展開、アマゾンを発見次第各実戦部隊に連絡しこれを駆除します。

あとは対アマゾン用兵器の研究部門から成り立っています。

実戦部隊には、後ほどインタビューを行うように手配していますので」

―――ありがとうございます。最後に〈4C〉を率いる橘局長の座右の銘、信念などあれば・・・。

「そう、ですね・・・『愛』ですかね」

―――・・・

「・・・」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「赤松隊隊長、赤松竜二です」

「藤尾隊隊長、藤尾信二です」

 

精悍な印象を受ける男性二人。

彼らがアマゾンハンターを率いる部隊の隊長だ。

 

―――今回はお忙しい中、我々の為にお時間を作っていただき、ありがとうございます。

「いえ、とんでもない」

「インタビューということでしたが、具体的にどのようなことを?」

―――アマゾンを狩る部隊は複数あると伺いました。お二人の部隊の特色などを教えていただければ。

「なるほど・・・では私から」

 

赤松さんは一度咳払いをし、赤松隊の特徴を語り始める。

 

「私が率いる赤松隊は迅速な行動と規律をモットーとしています。

アマゾンに対処するにあたって、この二つが最も重要だと私は考えています」

―――と、いうと?

「アマゾンは人を食います。なので発見から対処が遅れればそれだけ被害が増える可能性が高くなります。

また、対アマゾン戦闘において普段から規律正しく行動することで、隊員への被害を押さえることが出来ると考えています」

―――規律を守ること被害を押さえることに繋がる?

「ええ、アマゾンとの戦闘においては不測の事態に陥ることが多々あります。

そもそも人間を遙かに上回る存在です。そのとき各員が好き勝手に動けば、被害が増加します。

それを防ぐ為にも、隊員たちに規律を守りお互いをフォローしあえるように訓練を重ねています」

「実際、対アマゾン戦での赤松隊の負傷率はかなり低いんですよ。

まさしく〈4C〉きってのエリート部隊ですよ」

「おいおいよせよ。

藤尾隊もバロンを使っての急襲はなかなかのもんだろ」

 

部隊のことを説明するときとは打って変わって、和やかに藤尾隊長と会話する赤松隊長。

部隊内部だけでなく、ほかの部隊との関係も良好なようだ。

ここで気になる名前が飛び出した。

 

―――先ほどお話しに上がったバロンというのは、〈4C〉が開発した対アマゾン用兵器のことですか?

「え?ああ、違います。バロンはほら、あいつですよ」

 

そう言って藤尾隊長が指さす先には犬を抱いた男性隊員がいる。

 

「うちの中島です。彼が抱いているのがバロンですよ」

―――犬のことですか!?

「ええ、正確には軍用犬です。

アマゾンの臭いを覚え、追跡するように訓練しています。

あいつのおかげでうちはアマゾンを追跡・急襲しやすいんですよ」

―――犬がアマゾンを追えるのですか?人と間違えることは―――

「バロンは訓練されています!間違えることなどありません!」

「落ち着け中島!

・・・すみません、中島は特にバロンと一緒に行動することが多く、信頼関係も強いんですよ」

―――失礼しました。ですがそんなに便利ならほかの部隊も採用するべきでは?

「訓練自体は多くの犬がクリアしました。

ですが実戦となると怯えるものも多く・・・結局実戦に耐えれるのはバロンだけでした」

―――なるほど。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

―――VTRでアマゾンと戦闘を行っていたのは赤松隊ですよね。鮮やかなお手並みでした。

「ありがとうございます。」

―――それでは最後の質問です。お二人にとってアマゾン狩りとは?

「人を守る為のものです」

「私もおなじですね。

私も赤松も元自衛官でして。人を守りたいという気持ちは強いです」

 

そう語るお二人の目には強い正義感が宿っていた―――。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

アマゾンハンターは〈4C〉だけではない。

ここ半年でアマゾン狩り動画を配信し、圧倒的支持を得ているチームがある。

我々は彼らに接触し、取材の許可を得ることができた。

 

―――失礼します、取材を依頼した「激撮!24時!」です。

 

地下への階段を降りるとこぢんまりとしたクラブがある。

半年前からアマゾン狩り動画を投稿しているチーム(キス)との待ち合わせ場所だ。

 

「おお、きたきた。ようこそ!チーム(キス)でーす!」

 

印象としては最近の若者だ。四人とも赤松隊長や藤尾隊長のように精悍な印象は受けない。

 

―――では早速インタビューを行いたいと思います。まず、自己紹介からお願いします。

「うっす!このチームのリーダーやってます!長瀬裕樹ッス!

動画の編集とかやってます」

「木村健太です。ネットでアマゾンの情報収集してます」

「や、山下琢己です!動画の撮影をしてます!」

―――?あの彼は?

「あ?おい千翼!何してんだこっち来いよテレビもう来てるぞ!」

「・・・」

 

カウンターに腰掛ける最後の一人はイヤホンをして本を読んでいる。

かなり集中しているのかこちらの声どころか存在にすらきづいていないようだ。

 

「なにやってんだッよ!」

「痛て」

 

長瀬君が千翼と呼んだ少年の頭を叩く。

それでようやく彼はイヤホン外し、こちらに気づいたようだ。

 

「テレビ来るって言っただろォ!自己紹介しろ!」

「え、来てたの!?教えてよ!」

 

慌てたようにこちらに来る、「威風堂々」とプリントされたTシャツを着た少年。

 

「千翼ォ!テレビが来るからそのダセェTシャツやめろって言っただろォ!」

「?見る目ないよね、ヒロキって」

「んだとォ!」

 

―――では改めて、君の名前は?

「た・・・千翼です。ええっと、すいません。本に夢中になっちゃって・・・」

―――ずいぶん熱心に読んでいましたが、本のタイトルは?

「これです、『水の世界』。

『本郷猛』ていう水の研究者さんが出した本です。おもしろいですよ?」

 

そう語る目の前の少年。このチームの中でも一番大人しそうな、「威風堂々」の文字が似合わない彼こそが―――。

 

―――確認したいのですが、動画でアマゾンと直接戦っていたのは・・・?

「はい、俺です」

 

チームのなかで荒事から最も遠そうな少年が、あの動画ように荒々しく戦う青い姿のアマゾンだという。

 

―――千翼君はアマゾンということで間違いありませんか?

「はい。えっと、ほらこれで」

 

そういって突き出された右腕から蒸気を噴き出したと思うと、一瞬のうちに青く凶暴な腕に変わり、思わず身を引いてしまう。

 

「あ・・・ごめんなさい。びっくりさせちゃいました?」

―――い、いえ大丈夫です。ではなぜ君たちはアマゾンを狩っているのですか?

 

アマゾンへのインタビューなど前代未聞・・・ほかのどの局もやっていない・・・ここで逃げ出すわけには行かない。

 

「まーやっぱ、動画のためッスかね。再生数が上がると収入増えるし」

「それにスリルの為ってのもありますね。退屈な日常より刺激的な日常でしょ」

「お、俺も二人と一緒です!」

「・・・」

―――千翼君は三人とは違うのですか?

「俺、小さい頃人間に育てられたんです」

―――人間に!?

「はい。でもその人・・・母さんはアマゾンに喰われて・・・俺はそいつを追ってるんです」

―――つまり復讐?

「はい。その途中でヒロキたちと会って、力を貸してもらってるんです」

―――なるほど、具体的にどのような?

「ええっと・・・」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

その後チーム(キス)のメンバーから様々な話を聞いた。

千翼君がチームに入った経緯、チームが千翼君にどのように力を貸しているか。

興味深いのはアマゾン狩りの方法だ。

なんと千翼君はアマゾンの気配が分かるそうだ。それもかなり距離があっても分かるとのこと。

ネットの情報やチームの掲示板に書き込まれた情報をケンタ君がまとめ、千翼君を情報のあった場所に向かわせる。

当たりであれば襲撃を行い、動画を投稿する。

なるほど、確かに効率的な狩りの仕方だ。

 

「でもそのせいで最近困ったことがあって・・・」

―――困ったこと?

「街とか歩いてると遠くからキャーキャー言われたり、握手してとか写真撮ってとか・・・」

 

そう語る千翼君はげんなりとしている。

 

―――ほかのメンバーもそういうことが?

「あるけど、別に嫌じゃねーよな?」

「まあ、そうですね。嫌ってわけじゃないです」

「俺も俺も!なんか有名人になったみたいで!」

 

やはりアマゾンということで心ない声をぶつける者もいるのか―――?

 

「まあそういうのもありますけど、それは別に平気です。

人間にとってアマゾンは怖いものですし」

―――では何が?

「その、俺、人に触られるのが嫌いっていうか、苦手で・・・。

だからテレビ見てる人にお願いです。街で見かけてもそっとしといてください」

 

案外ユニークな少年だ。

ここで一番気になることを質問する―――。

 

―――千翼君は人間を食べないの?

「―――食べたいと思ったことはあります。

でも母さんと約束したんです。人間は食べないって」

 

亡き母との約束を守る・・・家族や仲間を思う気持ちはアマゾンと人間にそう差はないのかもしれない・・・。

彼らを見ているとそう思う。

 

―――では最後の質問です。最後は若者らしく最近気になったことについて教えてください。

「あー、やっぱファッションかな。チーム一のおしゃれを自負してますから」

「俺はやっぱ動画のことかな。どうやったらもっと視聴者が増えるのか知りたいです」

「彼女ほしいです!」

「やっぱあれかな、ニュースで見たIT企業『エクストリーム』の風見志郎社長が発表した『深海探査プロジェクトX』への投資です」

「「「真面目か!」」」

 

―――三人は若者らしい答えですね。

千翼君が上げた『深海探査プロジェクトX』は今注目を集めていますね。アンドロイドによる、より詳しい深海調査だとか。

「たしか『カイゾーグ』って名前の人間大のロボットだとか。興味あります!」

―――ありがとうございます。本日のインタビューはこれで終了です。放送を楽しみにしていてくださいね。

「「「「ありがとうございました!」」」」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

この放送は

 

幻夢コーポレーション

ユグドラシルカンパニー

鴻上ファウンデーション

スマートブレイン

難波重工

アンブレラ

キサラギ

 

ご覧のスポンサーの提供でお送りしました。

 

 




放送後
一同『アマゾンハンターって何だよ・・・』

後日
「おかしい・・・街で絡まれることが増えた・・・テレビでお願いしたのに・・・」

~~~~~~~

※最後のスポンサーは名前だけ同じの変態企業たちです。


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第7話

長いトンネル(オリジナル前日談)を抜けると、
そこはさっきまで命だったものが辺り一面に散らばる世界(原作)だった。


あの番組『~激撮!アマゾンハンター24時!~』の放送から半年がたった。

放送後の反響はいい意味でも悪い意味でもかなりあったみたいで、チャンネルの登録者数は500万人越えを達成したそうだ。

半年の間に色々なことがあった。その中で一番大きな変化は俺に帰る場所が出来たことだ。

公園や野外を寝床にしていたことがチームにバレてヒロキに滅茶苦茶怒られた。

―――「何で言わねえんだよ!俺たちチームだろォ!」

別に隠してたわけじゃないんだ。物心ついた頃からずっと野外で寝てたから。

でも、本気で怒ってくれたヒロキを見て・・・ちょっと、感動した。

俺のこと心配してくれる人なんて母さん以外にいなかったから。

その後チームの拠点であるクラブのオーナー、志藤さんにヒロキが頭を下げてくれて、クラブに泊まる許可をもらった。

 

みんなに出会ってからだ。

みんなに出会って、寝床が出来た。

みんなに出会って、おいしいものをたくさん教えてもらった。

みんなに出会って、楽しいこともたくさん教えてもらった。

みんなに出会って、俺は一人じゃなくなった。

 

一番大事な目標は、母さんの復讐は変わっていない。

でも・・・でも、俺はチームのみんなとも一緒にいたい。

人喰いの化け物がこんなこと考えるのはおかしいかもしれないけど、俺はチームのみんなを守りたいと思ってる。

 

友達だって、思ってる。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『千翼。おい、千翼?聞こえてんのか?』

「・・・z」

『寝てんじゃねーよ!起きろォ!』

「!?寝てない、寝てないよ!?」

『嘘つけ、ぜってー寝てただろ!

ったく、しっかりしろよ、始めるぞ』

「・・・分かった」

 

何日か前にチームの掲示板に書き込みがあった。

深夜にドライブしてると商店街の近くで警察官の格好をしたアマゾンを見たっていう内容だ。

情報を元に商店街の近くを調査すると、色々みつけた。

人が滅多に立ち入らない路地裏の奥・・・そこに夥しい血痕と血まみれになった片方だけのハイヒール。

この近くにアマゾンが潜んでいることを確信し、情報を頼りに付近の交番を回った。

そして昨日、お目当てのアマゾンを発見し、今日チームで襲撃をかけることになった。

 

やり方はいつも通り。最初に人間態のアマゾンをヒロキたちが襲撃、俺がいるところまで連れてきたアマゾンを狩る。

もう何度も繰り返した狩り。ヒロキたちもすっかり慣れて、今ではアマゾンにビビることもない。

 

そんなことを考えながらジャングレイダーを撫でていると―――来た。

派手な音楽を響かせるバイクを追う、黄色と黒斑の体毛を持つ―――ヒョウアマゾンが。

 

ジャングレイダーを発進させ、三人を追うのに夢中になっているアマゾンを跳ね飛ばしアスファルトを舐めさせる。

奴は即座に起き上がり、威嚇するように唸り声をあげ、右腕を顔の横で構える。

 

〈NE・O〉

「・・・アマゾン!」

 

対する俺は、いつものように爆炎を纏いながらネオへ変身する。

一年以上戦い続けたお陰で、今はこの体を締め付ける窮屈な感じにも大分慣れた。

 

爆炎を払いのけ、飛び掛かってきた奴に拳をカウンターとして打ち込み、叩き落とす。

着地した奴に即座に足払いをかけるけど、素早く後ろに飛び退き躱される。

そのまま殴りかかってきた奴を蹴り飛ばし怯ませる。

足を狙って体勢を崩そうとするけど、ネコ科特有の身のこなしで躱され、背中を蹴り飛ばされる。

 

「グルルル・・・!」

「フゥー・・・、フゥー・・・!」

 

一瞬睨み合いになり、弾かれるようにお互い地面を蹴った。

 

「ハァ!」

「グウ!」

 

連続で蹴りを繰り出すが、右足を抱え込むようにして止められる。

そのまま体勢を崩そうとしてくるので、左足を踏ん張り右足の力だけで奴を地面に叩き付ける。

起き上がった奴の胸を蹴り飛ばし、背中から地面に倒れた奴に追撃をかけようとするけど、奴はネックスプリングのように跳ね上がり両足で蹴りを繰り出してきた。

無防備な状態で胸を蹴り飛ばされた俺は、地面を転がりながら体勢を立て直す。

―――なかなか、やるなぁ・・・!

体の奥からふつふつと、熱が沸き上がる。

その熱を受け入れるように、片膝をついたまま両手を広げ―――

 

「ウォオオアア■■■■■■■■!」

 

天を仰ぎ咆哮する。

 

「■■■ァア!」

 

〈Blade・Loading〉

 

インジェクターを押し込み、右腕にブレードを展開する。

 

「おおーう」

「来た来た、かっけーの!」

 

チームでは武器生成プロセスはかなり好評みたい。単純に見栄えがいいもんな。

 

奴に向かってブレードを振り下ろし、斬り払い、突き出すけど俊敏な動きで回避される。猫強い!

一歩踏み込み胴体を薙ぐように斬りつけると、腕でブレードを抱え込み封じようとしてきた。

そのまま強引に腕の力だけでブレードを引き抜き、後ろ回し蹴りで蹴り飛ばす。

奴に向かって再度突きを繰り出すと、こちらに背中を向け右脇で締め付けるようにブレードを拘束してきた。

―――チャンスだ・・・!

 

こちらも背中を向けながらブレードを持ち上げていく。

肉にブレードが食い込む痛みから呻き声を上げる奴には構わず、ドライバーを操作する。

 

〈Amazon・Break〉

「オオオオォォ!」

「グギイィィイイ!」

 

ブレードの切れ味が強化され、奴の腕を付け根から断ち切る!

俺はブレードを引き抜いた勢いのままに体を捻り―――!

 

「ハアァァァア!」

「ギ―――!」

 

そのまま奴の胴体を両断した。

跳ね飛ばされた奴の上半身は地面に叩き付けられ、何度か腕で空を掻きむしり・・・そして動かなくなった。

 

「ウォオオオオ!」

 

天にブレードを掲げながら勝利の歓声を上げる。

戦いが終わり、体中の熱が冷めていく感覚を楽しんでいると・・・

 

「ハイオッケー!いい画が撮れたよ!」

「よっしゃあ!千翼、撤収撤収ー!」

 

・・・今回の撮影も終了みたいだ。

スロットからインジェクターを引き抜き、人間態に戻る。

歓声を上げながらバイクで走り出した三人を追うように、俺もジャングレイダーを発進させた。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「でさ、その子がめっちゃきれいでさ!

髪もこう長くて、ロング?ロングか!」

「いーじゃねーか!ロング!」

「それで脚もすらーっと長くてさあ!」

「おお、おお!」

「でもなー背がさあ、ちょっと高くてさあ。

俺と同じくらいあったんだよ」

「あー、確かに背が高すぎるのはなあ・・・」

「そそ、俺も小柄な子が好みでさ」

「どじゃ~ん!動画の再生数上がったし、取りあえずはピザ食べ放題!」

「おお!やったー!」

「またピザかよ。

金ならあるんだから焼き肉とかにしようぜ!」

「だってヒロキ外食いに行くのめんどくさがるじゃん。

それにピザうめーし」

「千翼ー、ピザ来たよー」

「ん、はーい」

 

タクの呼ぶ声に応え、ノートPCで見ていた動画を一時停止。

自分の席に着く。

全員で手を合わせ―――。

 

「「「「いただきまーす!」」」」

 

カットされたピースを手に取り口に運ぶ。

絡み合う四種のチーズが生地と絶妙にマッチしている。

 

「うん、おいしい」

「うまい!ってあれ、千翼またチーズ?」

「うん。この前食べた駅前のピザがおいしくってさ」

「おい何の話だよ?

俺そんなの行ってねーぜ」

「あー、この前さジム帰りにばったり千翼と会ってさ。

せっかくだから飯食いに行こーよってなって、駅前の新しく出来たピザ屋にいったんだ。

そこで、千翼がさ・・・」

「何だよ、おもしれーことでもやったのかよ」

「ふふっ、いやね、出て来たピザの写真撮ってたからSNSにでも載せるのって聞いたらさ・・・」

 

タクが手で「言え、言え!」ってやってきたので、そのときのことを思い出しながら・・・

 

「いや、俺、食べログやってんだよね」

「ぶっほ!」

「んぐう!」

「うわ汚!」

 

同じように言うとヒロキとケンタが吹き出した

え、そんなにおかしなこといった?俺?

 

「お、おま、食べログ!?お前がァ?」

「うん、チームのメンバー紹介のところにリンクも貼ってるよ」

「ふふっ・・・ホントだ、いつの間に・・・んふふ・・・」

「ちょ、ちょっと見せろケンタ・・・

『アマゾン食べ歩き紀行』ォ!?ダメだ!は、腹よじれる・・・!」

「笑いすぎじゃない?」

「しかも、けっこー評価たけーじゃねーか!あははは!」

 

笑いすぎでしょ。

 

「じゃあ、さっきパソコンいじってたのも、ブログの更新?」

 

ああ、そっちは・・・。

 

「さっきの狩りの後さ、ヒロキが「もっとクールに格好よく決めたい!」って言ってたでしょ。」

「ああ、言ってたね。それの勉強?」

「うん。

カウボーイビバップ見てた」

「おかしいな。前後の文章が繋がらないぞ」

「それってあれだよね、昔のアニメ!」

「うん。格好いいシーンが多いからさ、動き真似しようと思って」

「勉強資料がアニメかー。

千翼も俗世に染まってきたよなー」

 

そして、笑いすぎて過呼吸みたいになってたヒロキを落ち着かせたり、クラブのオーナーである志藤さんが顔を出して「学校行けよ」って言われたりした。

いいな、学校。俺も言ってみたいな。でも人が多い所はなあ・・・。

 

その後、「やっぱ焼き肉食いてーよ!でも外食めんどくせーよ!」とかヒロキが言い出したので、明日みんなでホットプレートを買いに行くことになった。

肉選びなら任せろ、得意分野だ!

 

 




アマゾンズ・食べログ

千翼・・・肉料理を中心にスイーツやコンビニ飯まで幅広くやる
悠・・・主にハンバーガー中心
仁さん・・・七羽さんの手料理のみ。
     飼ってる鶏の写真をアップした次の日に鶏肉料理をアップする


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第8話

千翼、出会う。


「ホットプレートって結構色々あるんだねー」

「・・・『プレートを入れ替えればたこ焼きが作れます』ただのホットプレートじゃ、売れないのかな」

「お、これいいんじゃねえ。煙吸うんだってよ」

「こーゆのって買ってから後悔することが多いからね。店員さんに聞いた方がいいよ。

すいませーん、店員さーん!」

 

ホットプレートて丸いやつだけだと思ってたけど、色んなタイプがあるんだな。

・・・たこ焼きかぁ・・・。

 

「君もたこ焼きに興味があるのか?」

「うぇ!?」

 

後ろから急に話しかけられた。誰?誰このイケメン!?

 

「驚かせてしまったか。

すまない、ずいぶん熱心にたこ焼きプレートを見ていたからな。

君もたこ焼きが好きなのか?」

 

たこ焼きへの暑い情熱を感じる・・・!

 

「えっと、たこ焼きは好きですけど、別にたこ焼きプレートを見てたわけじゃなくて・・・。

今日は焼き肉用のホットプレートを買いに来たんです。

それで、色んな種類があるなーって・・・」

「そうだったのか・・・だが、たこ焼き好きとは見る目がある。

良ければ一つどうだ」

 

そう言ってその人はスッ、と箱入りのたこ焼きを差し出してきた。

おいどっから出したそれ。

 

「あ、ありがとうございます・・・。おいしいですね」

「そうだろう!私はいつか、たこ焼きで世界中の人々を幸せにしたいんだ」

 

壮大な目標とたこ焼きについてしばし語り合い、友達と来てることを伝えて分かれた。

別れ際に「心を許せる友は一生の宝・・・大切にするべきだ」って言われた。言われなくても、大切にするさ。

 

「千翼、どこ行ってたんだよ」

「うん、知らない人からたこ焼きもらってた」

「なんだそりゃ・・・知らねえ奴からものなんてもらうなよ!」

「長瀬君、母親みたい」

「ああ!?」

「まあまあ・・・店員さんのオススメ幾つか候補を絞ったからさ、良さそうなのをみんなで選ぼう」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

というわけで

 

「買っちゃいましたホットプレートォ!」

「イエーイ!」

 

「夜は焼き肉っしょおーー!」

 

「イエッ・・・!誰だお前!?」

「どーも―!佐藤太郎でーす!これから新薬のバイトなんスよー!」

「お、おう、がんばれよ」

「報酬かなりいいみたいでぇ、終わったら後輩連れて焼き肉行くんすよー!

ひゃほほひゃほーい!」

「あ、なら駅前の焼き肉屋がオススメ。

安いけどそこそこおいしいし、雰囲気もいい感じだよ」

「情報提供、ありがとうございまーす!

それでは佐藤太郎、新薬のバイトに出撃しまーす!

さよーならー!」

 

行っちゃた・・・なんだったんだろ、あの黄色いツナギの人・・・。

 

「なんかこの街もヘンなヤツが増えたよな・・・」

「なんかひったくりとか捕まえてボタン毟り取ってくイケメンとか、ケーキバイキングに出現する目つきのヤベーヤツとか、最近色々聞くよな・・・」

 

大丈夫なのか?この街・・・。

 

「そんなことより肉だよ、肉!」

「おお、そうだな。

千翼、お前いいとこ知ってんだって?」

「うん、この前の商店街にさ・・・」

 

気を取り直して、肉を買いに行こうとしたところで―――

 

細胞に衝撃が走った。

アマゾンだ・・・!

遠い・・・、この近くじゃないみたい!

 

「?どした、千翼?」

「・・・肉は後みたい。ヒロキ、アマゾンだ」

「ああ!?マジかよ、空気読めって!」

「千翼、場所は?」

「結構遠い・・・。先導するからバイクで付いてきて!」

「りょーかい!行こうよ長瀬君!臨時ボーナス、臨時ボーナス!」

「ったく、しゃーねえな!さっさと片付けて、焼き肉パーティーだ!」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

ジャングレイダーでヒロキたちを先導してたどり着いたのは、・・・お城みたいな教会?

入り口を開けると、中は無人・・・微かに音が聞こえる。

 

「なんだよいねーじゃん。

千翼ぉ、勘違いじゃねえの?」

 

講堂には誰もいない・・・でも

 

「いや、気配はする・・・。こっち!」

 

講堂を出て左に進むと、二階への階段があった。

ここだ・・・この上から音が聞こえる。

 

「この上だ・・・。

ヒロキたちは外で待ってて、叩き出すから」

「オッケー、頼むぜ千翼!」

 

頷き返しながら、ドライバーを装着し階段を登る。

・・・音と血のにおいがどんどん強くなる。

階段を登り切ると―――いた。

こちらに背を向け、白いスーツを着た男の人に喰らいついている。

周囲に目線をやると、スーツを着込んだ男女の遺体がある。

結婚式、だったのか・・・?だからこいつは―――。

ドライバーにインジェクターを装填し、内部の薬液を押し込む。

 

〈NE・O〉

 

その音でようやく俺に気づいたようで、くるりと振り向いた。

純白のウェディングドレスを伴侶となるはずだった男の血で汚したそいつは、頭部に大きな鋏を持っていた。

 

「ウゥゥウウゥ・・・!」

 

そいつ・・・クワガタアマゾンが唸り声を上げる。

ハア・・・今日は一段と・・・胸クソ悪い・・・!

 

「アマゾンッ!」

 

赤い爆炎を纏いながらヤツに飛び掛かり、拳で打ち据える。

そのまま組み付き、窓を突き破り外に飛び出す。

再び拳を叩き込むが今度は両腕でガードされる。

昆虫型は外骨格が堅いんだよ、なぁ!

 

「ラァ!」

「グウ」

 

右腕を振り抜き、ヤツのガードを崩す。

その勢いのまま回し蹴りを叩き込む・・・!

ヤツはすぐさま体勢を立て直し、殴り合いになる。

殴り合いながら塀の所までヤツを誘導し、そのまま一階に叩き落とす。

俺もヤツを追って一階へと飛び降りるけど、降りた瞬間を狙ったヤツの拳により野外食堂まで吹き飛ばされた。

 

―――外皮も硬い、それに喰ったばかりだからパワーもある・・・!

 

テーブルの上に立ったヤツを狙うけど、ドレスから伸びる足に蹴り飛ばされる。

足払いをかけようとするが、軽くジャンプされ躱される。

今度は地面に着地したヤツに殴り掛かるが、躱され逆にテーブルに押しつけられ、そのまま―――。

 

「ウウゥウワアァアァ!」

「ウォア!」

 

力任せに投げ飛ばされた。

何とかテーブルの上に着地し、追撃をかけようとしてきたヤツを蹴り飛ばす。

怯んだヤツの右腕を取り―――。

 

「ハアッ!」

「ギイィィ!」

 

ねじ切るように空中で一回転した。

けどヤツは、俺と同時に回転することで腕をねじ切られるのを回避した。

立ち上がったヤツと重心を落とした状態で向き合い、お互いに組み合った。

 

「ウワァァァア!」

「グッ!ウゥウウウ―――!」

 

ヤツに持ち上げられた俺は、抵抗するために足をバタつかせるが、またもや投げ飛ばされる。

背中から地面に落ち、すぐさま姿勢を整えると―――。

 

銃声と共にヤツの頭部から黒い体液が飛び散った。

 

「ギイアアァア!」

「!今のは―――!」

 

銃声のした方を振り向くと・・・十人ほどの銃器で武装した男たちがいた。あいつらは―――!

 

「・・・よお」

「・・・〈4C〉!」

 

銃器で武装した男たち・・・実戦部隊のメンバーは統率の取れた動きで、アマゾンを追い詰めていく。

 

「な、なにあれなにあれ!?」

「うぉおお!?」

「へっ!?」

 

―――ヒロキたちがいてもお構いなしかよ!

 

実戦部隊に追い立てられるヤツを俺も追いかける・・・この状況でもカメラ回せるケンタにはちょっと感心するよ。

 

「ギッ―――!」

 

マシンガン?で足を打ち抜かれたヤツは、膝をつく。

チャンスだ!さっさと決めて逃げないと・・・!

走り寄ろうとすると、ヤツの視線の先・・・噴水の側に人影があることに気づく。

逆光でよく見えないけど・・・女の子?なんでこんな所に・・・?それに―――

 

「なんだ、あの子・・・」

 

人間だけど、人間じゃない・・・でも、アマゾンでもない・・・一体・・・?

 

「ウゥウウ・・・ウワァァァアァ!」

「―!危ない!」

 

そう考えていたからか、ヤツがあの子に襲いかかった時に飛び出すのが遅れた。

しまった、間に合わない―――!

 

「・・・」

 

ふわり、と

あの子はまるで宙を飛ぶように後方に宙返りしアマゾンの攻撃を躱した。

着地したあの子は左袖をめくり上げ・・・『ネオアマゾンズレジスター』を露出させた。

 

「あれは―!?」

 

驚く俺には全く構わずあの子はレジスターの嘴を押し込む。

 

「アマゾン」

 

瞬間あの子は黄色い炎に包まれた。

炎を纏ったままあの子は走り出し、ヤツに鋭い回し蹴りを叩き込んだ。

その勢いで炎が振り払われ、その姿が露わになる。

黒い姿。所々に羽根のような意匠を持ち、鋭い鉤爪を持った・・・カラスアマゾン。

あの子はしなやかな動きでヤツの攻撃を躱し、鋭い反撃を喰らわせる。

 

「あの子もアマゾン!?」

 

後ろからタクの声が聞こえるけど、俺には答えられなかった。

姿はアマゾンだ、でもあの子からは・・・!アマゾンの気配が全くしない・・・!どうなってるんだ!?

 

「グウ・・・アアァァアァ!」

「・・・」

 

そうこうしているうちに、あの子に蹴り飛ばされたヤツはドレスを突き破り、鋭い肢を伸ばす。

あの子はそれを躱し、いったん距離を取った。

ヤツはそれを追うように連続で肢を伸ばしあの子を追い立てる。

 

「・・・」

「キィアァァア!」

 

それをあの子は壁を軽やかに走ることで全て躱す。

それが気に入らなかったのかヤツは癇癪じみた声を上げつつ、自分で突っ込んでくるあの子に向かって再度、肢を突き出した。

カウンターのように突き出された肢を避けることが出来ず、あの子は串刺しにされた。

けど・・・どういうことだ!?体を貫かれてるのに悲鳴どころか呻き声一つ上げないなんて・・・!

しかも、そのまま進んでる!?どういう精神力だ!?

 

再度銃声が響き、伸びていた肢が打ち抜かれる。

少し間を置いて、再度銃声が―――

 

「いって!」

 

俺の頭に当たった。

振り返ると―――メガネをかけた長身の実戦部隊員がスナイパーライフル?を構えていた。

 

「おい!」

「―!言われなくても!」

 

撃つより前に言ってくれればいいのに!

そのままヤツと戦ってるあの子と共闘しようとするけど・・・

ダメだ、この子!俺に息合わせようともしない!

むしろ俺ごと殴ってない!?

 

「クソッ!」

〈Blade・Loading〉

 

コンビネーションが取れない状態で長期戦は危険だ・・・!

ここは一気に・・・!

 

「ハアァ!」

「ギイィア!」

 

あの子の攻撃でがら空きになった胴体にブレードを当て、力任せに引き抜く!

両断は出来なかったけど・・・問題ない!俺はいったん後ろに下がる。

ヤツに出来た致命的なスキをあの子は見逃さず、首筋に回し蹴りを叩き込んだ。

 

「・・・」

「ギイァアア!」

「ハアァァアア!」

 

蹴りの勢いで背中から地面に叩き付けられたヤツが起き上がる前に、胴体に勢いを乗せたブレードを叩き込む―――!

勢いよく叩き込んだブレードを引き抜くと、傷口から黒い体液が飛び散る。

それが致命傷になったのかヤツは動きを止め、干からびていった。

 

「・・・」

「ハア、ハア・・・」

 

ヤツが完全に沈黙したことを確認し、俺はあの子に向き直る。

 

「君は・・・一体・・・?」

「・・・」

「・・・おーい?」

「・・・」

 

無視ですよ。目の前で手を振って見たけど、全く反応しない。あれ、俺嫌われてる?

そうこうしていると、あの子は人間態に戻る。

俺も変身を解除するけど、あの子はノーリアクション。でもまあ取りあえずは・・・

 

「傷の手当てしよっか?

お腹貫かれた後にあんなに激しく動いたら、死んじゃうよ?」

「・・・」

「おーい」

 

全然反応してくれない・・・心が息苦しい・・・!

 

「問題ねーよ」

 

気だるげな声が聞こえ、そちらを見るとあいつ・・・『黒崎武』がいた。

相変わらず目つき怖い・・・。

 

「『イユ』は死体だからなぁ。

その程度の損傷じゃあ、機能停止はねーよ」

「またまたー。死体が動くわけないでしょ」

 

そう言いながらこの子、イユの首筋に手を当てると―――!

 

「脈がない・・・!死んでる・・・!」

「だから言ったじゃねーか。

死んでるから痛みも感じない。

腹ぶち抜かれよーが、腕引き抜かれよーが許容ダメージ内ならイユは戦闘を継続する」

 

死んでる・・・?だからか?俺が―――

 

「君が、死体だからか・・・?

俺が喰いたくないって思うのは・・・?

こんなに触っても、全然平気だ・・・」

 

初めてだ・・・触れても食人衝動が働かないのは。

 

まあ、死体だからか。

 

取りあえずアマゾンは狩ったし、厄介なことになる前に逃げよう―――!

 

「ってわけには、いかないみたいだ・・・」

「ああ?・・・そういうことか」

 

俺と黒崎の目線の先には、三人の女性。

結婚式に参加する予定だったのか、ドレスを着込んでおしゃれな鞄を手に持っている。

問題があるとすれば・・・首筋に浮かんだ黒く太い血管があるってことか。

 

次の瞬間、女性たちは三人とも体から蒸気を吹き上げ、アマゾンへと変貌した。

 

「一度に三体も・・・!」

「黒崎さぁん・・・」

「ハッ、アマゾンの結婚式かよ」

 

そう言って黒崎はしかし、不敵な笑みを浮かべる。

俺もやるしか・・・!

 

「ターゲット、確認」

「ん?」

 

イユはそう言うとアマゾンたちの方へと足を進め・・・

 

「って、待って!その怪我じゃ無理だ!

あいつらは俺と黒崎たちでやるから、君は休んで―――!」

「・・・」

 

無視ですよね!知ってた!

 

「安心しろ、いまのイユでもこいつら位なら問題ねえ。

まあ、少しは苦戦するかもだけどなあ」

 

分かったよ、やればいいんだろ!また慣れない共闘をさあ!

―――今度は後ろから撃つなよ!〈4C〉!

 

 




たこ焼きはいいぞ・・・!


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第9話

千翼「撃つなよ!いいか、絶対撃つなよ!絶対だぞ!」
黒崎「分かった分かった」


お待たせしました、第9話です。
どうぞ。


「アマゾン」

 

掛け声と共に、黄色の爆炎が上がる。

あの子・・・イユは再びカラスアマゾンへと姿を変え、三体のアマゾンへと駆け出す。

俺も駆け出そうとした瞬間、後ろから黒崎に笑いながら肩を掴まれた。

 

「大丈夫だってんだろ?」

 

笑顔が怖い。

 

「連中ならイユだけでやれる。

お前は―――」

 

マフラー越しに何か首に突き刺さる。

驚き視線を下げると、黒崎が左手に持った注射器を突き刺していた。

 

「お家に帰って来いってさ、局長が」

 

―――クスリ!?

 

黒崎を振り払おうと腕を上げようとして、俺は膝から崩れ落ちた。

あ、れ、ちから、はいん、ない・・・?

 

「千翼ォ!

オイ、オッサン!てめえ、なにしてんだよ!」

「うるせえよ、クソガキ。

てめえらどんだけヤベえことに首突っ込んでんのか、わかってんのか?」

 

ヒロキが、なんか、いってる・・・?

あたまが、ぐるぐるして、いしきが―――

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「お帰り、千翼」

 

真っ白な服、真っ白な部屋・・・1年と少し前、俺がいた場所。

 

「何故逃げ出したんだ?

ここはお前の家なのに」

「・・・お前の実家は檻なの?」

「快適な住居じゃないか。

少なくとも衣食住で困ることはなかっただろう?」

「・・・そうだね、モルモットの気持ちがよく分かったよ」

「ふむ。『男子、三日会わざれば刮目して見よ』というが・・・アマゾンにも適用されるようだ。

前の君は、ジョークなど口にしなかったからね」

 

逃げ道は一つ・・・あの出入り口だけ。

でも、外には間違いなく武装した隊員がいる。

じゃないとあの橘が、わざわざ俺のドライバーをもって会いに来るはずない。

 

「脱出の糸口を探っているようだが・・・君はここにいるべきだ。

アマゾン狩りをしているのだろう?

・・・それならここにいた方が都合がいいだろう」

 

橘は手にドライバーを持ったまま歩きながら、俺に語りかける。

よく言うよ・・・。

 

「都合がいいのは、あんたたちにとってだろ」

「・・・もちろんそれは否定しない。

トラロック事件以降、アマゾンを造ることは禁じられていてね・・・。

せっかく改良を重ねたこのドライバーも使える者はいない。

君以外は、だがね」

「・・・あのイユって子は?」

 

さっき見た彼女はドライバーを使えないのか・・・?

すると橘は心底残念そうに首を振った。

 

「ダメだったよ。イユは特別だ。

かなり強力なアマゾンになることは出来るが、ドライバーの使用は出来なかった」

 

そっか、あのとき「君ならば、あるいは」って言ってたのは、そういうことだったのか。

 

「話を戻そう。

当然、このドライバーのメンテナンスはここでしか出来ない。

・・・目的はアマゾンを狩ることだ。お互い都合がいいだろう?

それに、君自身のこともある」

 

俺のこと・・・?

 

「君は人間に育てられたが、君自身も特異な遺伝子を持つアマゾンだ。

もっと調べて、自分の正体を知りたくないか?」

 

ないです。

 

「はあ・・・興味ない、そんなこと。

俺も目的は、母さんの仇を討つことだ。

俺自身のことなんて、後でいい」

 

アマゾン狩りはあくまで手段だ、目標じゃない。

母さんの仇を討つこと・・・それが俺の目的だ。

 

「やれやれ、参った。

ギブアンドテイクで行こうと思っていたのだがね。

君を戦力として運用すれば、また直ぐに逃げ出してしまうだろう。」

「よく分かってるじゃないか。

じゃあ、さっさと俺を―――」

「そんなことになれば!

君の行方を、君のお友達に聞くことになるだろうな・・・多少、強引な手を使ってでも」

 

―――こいつ!

 

「ヒロキたちに手を出すな!」

「もちろんだとも!我々は人を守る為にアマゾンを狩っているのだからね。

君が力を貸してくれれば、そんなことをする必要もないんだよ、千翼」

 

いけしゃあしゃあと!こんなのただの脅迫じゃないか!

 

「まあ、直ぐに答えを出せというわけじゃない。

しばらく時間を上げよう。

食事でもしながら、加納君にこれまでのことを聞くといい。

君がいなくなってから発覚した事実を、ね・・・」

 

・・・事実?何のことだ?

話は済んだとばかりに橘は俺に背を向け、部屋から出ようとする。

 

「では加納君、千翼に食事を用意してくれたまえ。

私は席を外す」

「・・・は」

 

・・・ああ、むかつくな、あの顔!

余裕綽々って感じで!

・・・はあ。

 

「・・・加納さん、お久しぶりです。

迎えがずいぶん早かったですね」

「お久しぶりです、千翼君。

誤解のないように言っておきますが、君と黒崎隊の接触は偶然です」

 

・・・さっさと逃げとけば良かった・・・。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

バイクの前輪を外された俺たちは、いつものクラブまで歩いて帰ってきた。

つ、疲れた・・・。あの教会からここまで結構あるんだよなぁ・・・!

 

「ダメだ、うんともすんともいわねぇ・・・。

これは泣けるわ・・・」

「それより、千翼だよ!

何とかしないと・・・!」

 

スマホを壊された北村君は、かなり落ち込んでる。

俺と長瀬君もバイクやられたしな・・・気持ちはよーくわかるよ・・・。

 

「何とかって、タク、お前連中のとこに乗り込むつもりかよ?」

「だって千翼を助けないと!」

「落ち着けって、千翼なら大丈夫だろ」

「でも・・・!」

 

北村君の言いたいことは分かる。

銃器で武装した連中がいるところに乗り込むのが、どれだけ危険なことか。

あいつらはアマゾン相手にドンパチやるような連中だ。俺たちなんてあっという間に摘まみ出されるってことも・・・!

でも、俺は・・・!

あの時、千翼に助けられたんだ!

アマゾン狩りだってホントは怖かったけど、千翼がいたからやってこれたんだ!

もし俺が攫われたら、千翼なら絶対助けてくれる!

だから―――!

 

「分かった分かった!だから落ち着いて話を聞けって!

いいか?連中は、直ぐに千翼をどうこうするつもりはないはずだ」

「なんで?あいつらアマゾン狩りの組織なんでしょ?」

「だからだよ。始末するだけならあの場でやれるだろ。

そうしなかったてことは、連中、千翼に用があるんだ」

「千翼に・・・?」

「そう。だから大丈夫。

それに千翼は一回逃げ出してるだろ?連中が束になっても、千翼を止められないさ」

「でも!」

 

何されるかわかんないじゃないか、と言おうとする俺の両肩に手を置き、北村君は俺を無理矢理カウンター席に座らせる。

 

「大丈夫だってんだろ・・・!千翼は無事だ・・・絶対帰ってくる・・・!絶対・・・」

「北村君・・・」

 

そう、だよな・・・なんだかんだで一年間一緒にやってきたもんな・・・。

千翼を心配してるのは、俺だけじゃないよな。

 

「そうだよね!じゃあ俺たちは千翼が帰ってくるまでに、バイクとか直さないと!」

「それ。どのみち俺らだけじゃアマゾン狩りなんて出来ないし。な、ヒロキ?」

「・・・ああ」

「長瀬君、どうしたの?さっきから全然しゃべってないけど」

「いや・・・、ちょっとな」

「ヒロキ・・・千翼が攫われたからって、落ち込みすぎでしょ」

「マジで?長瀬君、千翼のこと好きすぎでしょ」

「ちげーよ!いや、千翼のことがどうでもいいわけじゃなくてな!

・・・あの、イユって奴のことだよ」

 

イユってあのアマゾンになった女の子?〈4C〉の仲間みたいだったけど。

 

「あいつ、俺と同じ学校にいたんだよ。

間違いねぇ、星埜イユだ」

「アマゾンが学校に通ってたの!?」

「いや、それ以前の問題だ。

アイツ、一年ぐらい前に・・・死んでんだよ」

「へ?」

「いやいや・・・ゾンビには見えなかったぜ」

「嘘じゃねえよ!・・・アマゾンに喰われたらしい」

 

その言葉に、俺と北村君は思わず顔を見合わせた。

 

「父親の誕生日パーティー中に、一家全員アマゾンに喰われたって・・・。

かなり酷い死に方だったって話だ」

「じゃああの子は、死んでアマゾンとして蘇ったってこと!?」

「そういや、あの目つきのヤベーヒゲがイユは死体だって言ってたな・・・。痛みも感じず、戦えるって・・・」

 

なんだよそれ・・・、やばすぎでしょ・・・!

 

「あの子は連中に従ってた・・・。多分だけど〈4C〉には、死体をアマゾンに作り替える技術があるんだ・・・!」

 

そんなやばいとこに居て、ホントに千翼は大丈夫なのかよ!?

待つことしか出来ないって、もどかしいな・・・!

 

『番組の途中ですが、緊急ニュースをお伝えします』

「ん?」

 

付けっぱなしにしてたテレビから緊急ニュースが流れ始めた・・・ってマジかよ・・・。

 

『・・・人体に有害なカビが検出されました。飲んだ可能性のある人は、速やかに病院で―――』

「うわー、めんどくせえ・・・」

「おう、どした?」

「いや、このウォーターサーバー、俺がバイトしてるジムにもあって・・・マジかよ・・・。めんどくせえ」

 

テレビから視線を切って振り返ると―――

 

「なっ―!」

「タ、タク!お前、そ、それ・・・!」

 

なんか長瀬君と北村君が、化け物を見るような目で俺のことを見てた。

 

「え?なんスか?」

 

ウォーターサーバーにカビが入ってたからって、驚きすぎでしょ。

あア、でも病院行かナいとイけなイのかァ・・・めんどくさイナァ。

 

 

 

トころデ、なンかハラ、ヘらナイッスか?

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

あの後、加納さんに用意してもらった食事を取りながら、色んなことを聞いた。

彼女・・・イユのこととか。

普通とは違うアマゾン細胞を死体に埋め込むことで、アマゾンになったらしい。

食事を必要とせず、記憶こそあるけど死体だから感じることもないそうだ。

・・・思うことはあるけど、人を喰わなくていいのか。なら、狩る必要もない、よな・・・?

そして一番驚いたのが・・・

 

「人間がアマゾンに!?」

「ええ、我々は新種と呼んでいます。

溶原性細胞と呼ばれる特殊なアマゾン細胞、と言うよりはウィルスですが、これに感染すると人間はアマゾンになります」

 

淡々と言ってるけど、それがどれだけヤバい事態かは俺にも分かる・・・!

でも感染ってことは・・・!?

 

「俺たちが今まで狩ってたのは、元人間・・・!?そんなこと、ヒロキたちに言えるかよ・・・!」

「我々はこのウィルスの感染ルートを特定、あるメーカーのウォーターサーバーと判明しました」

「それって、どれだけの人が飲んでるか・・・最低でも万単位のアマゾンが生まれるのか・・・!」

 

ウォーターサーバーは色んな所にある。例えば図書館などの公共施設。最近じゃ携帯ショップとかでも見かけたぞ・・・!

つまり不特定多数の人間がそれを利用してる・・・。回数は関係ない。一回でも飲んだらアウトだ・・・!

 

「千翼君は理解が早く、助かります。

現在、テレビやネットで飲んだ可能性のある者にカビが混入していたと呼びかけています。また、絶対に飲まないようにとも」

「そうするしかないよな・・・。ある日突然、家族や友達がアマゾンになって襲いかかってくるんだ・・・。

そんな発表があれば、みんなパニックに陥って、手が付けられなくなる!」

 

これはバイオハザードだ・・・!いつ、どこでアマゾンが現れるか分からない!

それどころか、一度に何十体ものアマゾンを相手にしなきゃいけなくなる・・・!

 

「わかっていただけたでしょうか。

現在、ウォーターサーバーの製造元に実戦部隊とイユが向かっています。

これにより、これ以上の感染者の増加は防げますが、すでに感染したものは・・・。

この先のアマゾンとの戦いには千翼君、君の力が必要です」

「・・・わかった。協力するよ。その代わり、幾つか条件を付けてもいいかな」

「可能なものに限り、ですが。お聞きしましょう」

 

ごめん、ヒロキ、ケンタ、タク。帰るのはもう少し後になりそうだ・・・。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「この、離せ!タク、やめろよ!」

「キキィー!」

 

なんでだよ・・・なんでタクがアマゾンに!

 

「キィー!」

「がっ、う、ああぁぁああ!」

 

ケンタの太ももから血が噴き出す。タクが、タクがケンタを喰おうとしてやがる!

 

「ケンタァ!タクやめろォ!

やめろってぇ、いってんだろぉがぁ!」

「ギギャッ!?」

 

近くにあった椅子でタクだったアマゾンの頭を殴り飛ばし、ケンタから引き剥がす。

ケンタの足は・・・大丈夫だよな!?骨とか見えてねーし!

 

「キャアー!」

「ぐっ、があ・・・!」

 

咄嗟に椅子を構え、飛び掛かってきたタクの口を防ぐ。何とか噛み付かれずに済んだけど、勢いのまま、段差に叩き付けられた。

クッソ、背中痛え・・・!

 

「キギィ・・・!」

「この、離れろ・・・!」

「う、うう、ヒロキ・・・」

 

やべえ、このままじゃ二人ともタクに喰われる・・・!ど、どうすりゃあ・・・!?

迫る牙をガードしていると、いきなり銃声が聞こえてきた。な、なんでこの人が!?

 

「立てるか、ヒロキ!」

「オーナー!?なんで!?」

「立てるんなら、ケンタ連れて逃げろ!」

「は、はい!立てるか、逃げるぞケンタァ!」

 

そうしてる間にもオーナーはタクに銃を向けて、引き金を引き続ける。

なんなんだよ、もうわけわかんねーよ・・・!?

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

ヒロキたちが階段を登っていったのを確認しつつ、タクだったアマゾン―――ヒヒアマゾンを蜂の巣にするように、引き金を引き続ける。

まさか、タクも感染していたとはな・・・。

すまねえ、タク。許してくれとは、言わねえ。不甲斐ない俺たちを恨んでくれ・・・。

 

「ギ、ギギィ!・・・ギ、ギ、ロ・・・」

 

なんだ、なにか言おうと・・・?

 

「・・・チ、ヒロォ・・・タス、ケテェ・・・ギイイ・・・」

「・・・」

 

無言で引き金を引き続ける。しばらくすると、タクは動かなくなり、干からびていった。

 

「・・・」

 

お調子者で、人なつっこかったタクはもう居ない。

最後まで、自分にとってのヒーローの名前を呼びながら、死んでいった・・・俺が、殺した

 

 

「・・・クソォ!」

 




本作のタクにとって千翼は自分を助けてくれたヒーローです。
故に千翼との仲も良好で、よく食事に行ったり、オススメのゲームを紹介したりしてました。

二人は本当に仲良しでした。


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アマゾン無法地帯

雨やら身内のゴタゴタで執筆意欲が低下しています。
つなぎとして本編後のストーリー案を投稿します。

タイトルは〈アマゾン無法地帯〉


溶原性細胞、そしてオリジナルを巡る戦いから一年。

実験体が引き起こしたバイオハザードは徐々に終息に向かっている・・・はず、だった。

 

 

ある日突然、万単位の人間がアマゾン化。

〈特定有害生物対策センター〉通称〈4C〉はこれに応戦するが、数の暴力には抗えず拠点を放棄、都市から撤退した。

 

これを受け、政府は非常事態宣言を行う。

都市に通じる道を全て封鎖、アマゾンの拡散を防ごうとした・・・十万以上の人間ごと。

 

当初政府は自衛隊と〈4C〉の共同作戦により残された人間を救出しようとした。

しかしこの作戦は多くの犠牲を出し、失敗した。

本来食欲しか持たないはずの新型アマゾンが明らかに統率された動きをとり、救出ポイントを襲撃したからだ。

 

そして人類は衝撃の事実を知ることとなる・・・アマゾンの『王』達の存在を。

 

 

『我はアマゾンの『王』。この都市を我が『王国』とする!』

 

政府にアマゾンから送られた衝撃の声明。

明らかになる、溶原性細胞に『適合』した4体の『王』。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「本来、溶原性細胞に感染した者は例外なくアマゾンとなり、人間を襲うはずでした」

「しかし、例外が生まれた・・・生まれてしまった!」

「彼らは食欲だけでなく、人としての知性を持ちます」

「これだけなら問題はありませんでした。」

「問題は!」

「彼らが他のアマゾンを自身の支配下に置けること!」

「そう!まさしく、彼らは!」

「アマゾン達の『王』なのです!」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「僕はもう、いじめられない・・・。あいつらより僕の方が優れてるんだ・・・!

僕が・・・我こそが!選ばれた者なのだ!」

 

いじめられていた少年、甲斐志季・・・ライオンアマゾン。

 

 

「食べなくちゃ生きていけないの・・・。だから食べるの。あなたもそうでしょ?

お腹が空いたから、生きたいから、食べるの。

わたしはアマゾンになっちゃったから・・・。

生きるためにあなたを食べるのは仕方ないことなんだよ?」

 

箱入りのお嬢様、平田めぐり・・・ヘラジカアマゾン

 

 

「こりゃいいや・・・。前より殺しやすくなった・・・!生かしながら溶かすなんてサイコーだぜぇ!

オレはアマゾンだからなあ!もう人間の法律に従う理由はねえよなあ!

あはーぁははは!アマゾン様々だぜえ!」

 

連続殺人犯、御倉辰喜・・・コブラアマゾン

 

この3体の『王』によりアマゾン達は統治され、人間は彼らの食料となった。

『王』達により、街は三分割されそれぞれの縄張りとなった。

しかし『王』達はより多くの食料を求め、他の『王』の縄張りを犯す・・・。

 

他の『王』を殺せば、より多くの食料と兵力が手に入る・・・。

ある者は自尊心を満たすため。

ある者は安定した暮らしを手に入れるため。

ある者は歪んだ喜びに浸るため。

『王』達による『アマゾン戦争』が始まろうとしていた。

 

 

そして、もう1体の『王でありながら王でない』アマゾンは・・・

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「最初に申しておきますが、彼の誕生はこちらのミスです」

「我々は新たなシグマタイプを作り出そうとしていました」

「事故で死亡した彼にアマゾン細胞を埋め込んだのですが・・・」

「二つほどミスを犯してしまいました」

「一つは彼が溶原性細胞に感染していたこと」

「もう一つは・・・彼が完全には死亡しておらず、仮死状態だったこと」

「これにより彼は、鷹山仁と似たような状態となりました」

「溶原性細胞により誕生したアマゾンでありながら、知性を持ち、さらに食人衝動も殆どない」

「ですが『王』のようにアマゾン達を支配下に置くことは出来ない・・・」

「故に彼は『王でありながら王ではない』のです」

「その彼も、撤退のどさくさに紛れ、彼用のドライバーとレジスター、ジャングレイダーを持ち出し、逃走しました」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

スロットにインジェクターを装填、薬液を注入する

 

〈DELTA〉

「ッハ・・・アマゾン!」

 

白い爆炎が吹き上がり、周りの有象無象を吹き飛ばす。

炎の中でオレの姿は変わる・・・頭部は白く、黄色のバイザーを装着。

頭以外は褐色に白いラインの入ったスーツとメカニカルな銀色の鎧を装備。

手足の指先は鋭く鉤爪のようになり、腕には羽根のような3枚の刃が並び、脚には蹴爪が生える。

背中の大きな翼が羽ばたき、炎を吹き飛ばす。

 

衝撃から立ち直った有象無象・・・6体のアマゾン達はこちらを威嚇するように構える。

奴らは食料運搬係・・・生きた人間を輸送する奴らだ。

コイツらぶっ殺せば、トラックに寿司詰めにされた人間達を解放できる・・・なんてのはどーでもいい。

 

オレはただ・・・

 

「派手にいこーぜ?クソアマゾンども・・・!」

 

このクソどもをッ、一匹残らずッ、殺し尽くしたい・・・!

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「彼は優れた人間でした。頭の方は並ですが、運動神経においては特に」

「彼には輝かしい未来があるはずでした」

「アマゾンさえ、いなければね」

「アマゾンとなり蘇った彼は、そのことを激しく怒りました」

「彼はアマゾンを憎悪している」

「故に我々と共に撤退するのではなく、徹底抗戦を選んだのでしょう」

「彼・・・『白原天城』は、今もあの街に・・・」

 

 

 

 

 

 

―――〈アマゾン無法地帯〉にいるのでしょう・・・

 

 




頭の中にある案を書き殴ったものです。
連載未定。多分しない。

白原天城・・・ハクトウワシアマゾン


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第10話

お待たせしました。

千翼就活編です。

( OMO)<みんな!ゼリーがあるぞ!ウニもだ!


「・・・加納君、これはなにかな?」

「千翼君の雇用契約書です」

 

食事は後回しにして、俺と加納さんは橘の局長室に来た。

加納さんにまとめてもらった俺の雇用契約書にサインさせるためだ。

 

「・・・つまり、うちで働きたいと・・・?」

「頭大丈夫?ここでやるしかないんだから、せめていい条件でってことだよ」

 

「・・・なるほど、なるほど・・・、ここを離れてからずいぶんと余計な知恵を付けたようだ・・・。

ふむ、条件的には戦闘部隊員と殆ど変わらないね・・・。」

「隊員一人雇うのと同じ条件でアマゾンが雇えるんだ。良心的でしょ?」

「そう、君はアマゾンだ。いつ我々に牙を剥くか分かったものではない」

「あんた達が俺を撃たない限り、俺もあんた達を裏切らない。

俺はここに居る・・・、あんたの元で、アマゾンを狩る」

 

嬉しそうな顔・・・、そんなにアマゾンが怖いのかよ・・・。

でも今は我慢だ。ヒロキ達のためにも・・・!

 

「なるほど、では」

「その代わりに!・・・その代わりに約束しろ」

「・・・なにかな」

「ヒロキ達に、俺の友達に手を出すな・・・!絶対にだ!これだけは、譲れない!」

「・・・彼らのことが相当気に入ってるようだね。いいだろう、彼らに手は出さない。

我々はアマゾンの脅威から人間を守るための組織だ。」

 

そう言って橘は契約書にサインをした。

やったぜ。

これでいいように使い潰されることも無くなったし、ヒロキ達に危害が及ぶことも無い・・・!

後はここでアマゾンを狩り続ける。そうすれば、いつかはあのアマゾンの手掛かりが見つかるはず・・・!

 

「では契約成立ということで」

「改めてよろしく頼むよ、千翼」

「ああ、よろしく」

 

そういえば、あのアマゾンについて何かわかった事とかあるのかな。

ご飯食べながらでも加納さんに聞いてみようかな。

 

「そういえば千翼君は食事がまだでしたね。雇用契約も完了したことですし、社員食堂を利用するのはどうでしょうか」

「へー、〈4C〉って食堂とかあるんだ。前に居たときは行った事無かったな」

「きみが居たときはまだ未完成でね・・・。去年完成したんだよ。職員専用だったんだが・・・。

ちょうどいい。加納君、千翼を案内してくれ。食事の後で色々と話し合おうじゃないか。

・・・おや、連絡が・・・?」

 

ていうか、捕まってから何も食べてないし、そろそろ腹になんか入れときたいな。

焼き肉食べ損ねたし、やっぱり肉かなー。

 

「では千翼君、食堂へ案内します。こちらへ・・・」

「はーい」

 

さあ、ランチタイムだ・・・!

 

「悪いがランチはキャンセルだ、千翼。早速仕事だよ」

「えっ」

「何か問題が?」

「ああ、例のウォーターサーバーの販売元に向かっていた部隊がアマゾンの奇襲を受けて壊滅状態になった」

「イユも同行させていたはずですが・・・苦戦していると?」

「そのようだ。千翼、黒崎隊と共に出撃し、アマゾンを狩ってくれ」

「それはいいけど、ご飯は・・・?」

 

まだ何も喰ってないんだけど。

このままじゃ力でないんだけど。

 

「それについては問題ない。加納君!千翼に例の物を」

「は。千翼君、こちらを・・・」

 

加納さんが差し出した二つのパックを手に取る。てゆーか、これって・・・。

 

「激マズゼリーじゃないか!俺これ苦手なんだよ・・・」

 

高濃度タンパク質ゼリー・・・確かにアマゾン細胞に必要なタンパク質は一気に摂取出来るけど・・・味がなあ・・・。

 

「安心したまえ!君からの要望に答えるためにそのゼリーは改良されている!」

「本当かね、ドクター!」

「局長だ!・・・主に不味いと評判だった味の部分を改善した!」

「おお。ちなみに金色と青色があるけど何味なの?」

 

パッケージには何味か書いてないんだよなあ。ドラゴンやロボットみたいなマークと商品名みたいなのしか書いてないし。『スクラッシュ・ゼリー』?名前だけだとお菓子みたい。

 

「青色はラムネ味、そして金色は・・・」

「金色は?」

 

「 ポ テ ト 味 だ !」

「何でだよ!」

 

ラムネと来てポテトォ!?普通リアルゴ○ルドとかじゃないの!?

 

「アンケート結果だ、何も問題はない」

「問題だらけなんだよなあ」

 

大丈夫か、ここ?契約するの早まったかなぁ。

この分じゃ食堂も怪しいな。スターゲイジー・パイ(イギリスのやべーヤツ)とかウナギのゼリー寄せ(ウナギの無駄遣い)とかでてこないよな?

 

「もちろんタンパク質の改善も行っている。実質以前の二倍だよ」

「後で感想をお願いします。商品として売り出せるか検討中なので」

 

売るつもりなのかよ・・・。タンパク質ゼリーなんて誰が飲むんだよ・・・。

金か青か・・・。

 

「背に腹はかえられない・・・か」

 

青いパックのキャップを外し、中身を吸い出す。

瞬間、口の中にラムネの爽やかな風味が広がり、同時に全身の細胞にエネルギーが充填される。

・・・案外おいしいな、これ。なんか悔しいけど・・・。

 

「ポテトもオススメだよ」

「ラムネの後にポテトとかないから」

 

さて、行きますか―――!

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ジャングレイダーを走らせ、現場に急行・・・その勢いのまま、人間体のイユに襲いかかっていた黒いアマゾンに突撃する。

 

「ゴオアァア!?―――グオアァア!」

 

跳ね飛ばされ地面に転がったアマゾンは体勢を立て直すが―――

 

「ゴアー!?」

 

直後に突っ込んできた黒いバン・・・黒崎隊を乗せた輸送車に再度跳ね飛ばされた。

全身から棘を生やした黒いアマゾン・・・ウニアマゾンを囲むように黒崎隊が展開し、銃弾を浴びせる。

それを見ながらドライバーを取り出していると、ボロボロのイユが脚を引きずりながらアマゾンへと向かうのが目に入った。

その怪我で戦闘はまずいでしょ・・・!

 

「待って、イユ!その体じゃ無理だ!」

「ターゲット、確認」

 

ターゲット確認する前に自分の状態確認しろよ!

腕を掴んで止めようとするけど、全然止まってくれない・・・!クソ、分からないのかよ!これ以上ダメージを負ったら本当に・・・!

痛みがないから止まれないなんて、最悪だろ!ダメージ量で撤退するように教えとけよ橘ァ!

イユの手を握りしめ、声をかけ続ける。

 

「自分の体見てみろよ!痛くなくても分かるだろ!限界だって!・・・イユ!」

「・・・」

 

・・・あれ、止まった?さっきまで俺のこと引っ張ってたのに・・・まあいいや、止まってくれたんなら。

あ、そうだ。

 

「イユ、これ飲んで。足しにはなるはずだよ」

 

そう言って金色のパックをイユに手渡す。高濃度タンパク質ゼリーならアマゾン細胞を活性化させて傷を回復できるかも・・・別にポテトを押しつけるわけじゃないよほんとだよ。

パックをしっかりと握ったのを確認し、アマゾンの方へ向かう。

 

黒いスーツを着たアマゾン・・・もしかしたらここの社員だったのかもしれない。家族が居たのかもしれない。夢があったのかもしれない。

でも、もう戻れなくなった。アマゾンになった、いやアマゾンにされたから。

 

だからせめて、俺が送ってやる。友人や家族を喰う前に・・・これ以上誰かを傷つける前に。

 

〈NE・O〉

「―――アマゾン!」

 

俺があんたを―――狩る。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

手のひらが温かい。

誰かが握ってくれたから。

 

握ってくれていたのは、誰なんだろう。

肩車をしてくれていたのは誰なんだろう。

歌ってくれたのは誰なんだろう。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

格好つけて飛び出したはいいけど・・・なんだこいつ!

 

「・・・フッ!・・・ハァ!」

 

何発か殴り付けたら急に飛び上がって、回転しながら突っ込んで来た。

しかもただの体当たりじゃない。明らかに回転しながら滞空してる・・・!

どうやったらウニが浮くんだよ!体当たりを躱したら地面に着かずに、そのまま浮き上がって行くんだけど!

ウニってUFOじゃないよね!

考えても埒があかない・・・!次のタイミングで―――!

 

「・・・ここだぁ!」

「グゲエ!?」

 

回転しながら浮き上がる奴を逃がす事なく、回し蹴りを叩き込み吹き飛ばす。

ボール状態を解除した奴に駆け寄り、勢いのままドロップキックをぶち込む。

体勢を崩した所にアッパーを叩き込み、開いた胴体に連続で拳を打ち込み続ける―――!

 

「フッ!ハァ!ラア!」

「グ、・・・ガアア!」

 

何発目かの突き出した俺の右腕を奴は抱え込むようにして押さえ込む。そのまま口らしき部位を押しつけて噛み付こうと―――させるかぁ!

 

〈Amazon・Break〉

「ハアァ!」

「グギッ―――!」

 

急速生成されたブレードを腹部に打ち込み、勢いのまま奴を壁まで吹き飛ばす。

息吹と共にブレードを構え、奴に斬りかかる。

すれ違いざまに腹部を切り裂こうとするけど・・・堅い!それに丸みを帯びた甲殻でブレードが滑る!

どこか脆そうな所は・・・あった。

 

振るわれた左腕を右腕の装甲で受け止め、次いで繰り出された右腕を払い奴の体勢を崩す。

俺に背中を向ける形になった奴をそのまま蹴り飛ばし、壁に叩きつける。

壁を背にこちらに振り向いた奴に対し―――

 

「フゥウウウウ、ハア!」

 

内臓部分がむき出しになった頭部に向けて突きを繰り出した。狙い違わず甲殻の無い部分にブレードが突き刺さり、黒い体液が噴き出す。肉が潰される音に構わずブレードを押し込み、抵抗がなくなったところで引き抜いた。

いつものように干からびながら崩れ落ちるのを目に焼き付ける。

ごめん。でも、忘れないから。恨んでくれても、かまわない。

動かなくなったアマゾンを目に焼き付けていると、後ろで何かが倒れる音がした。

 

「・・・イユ!」

 

振り返るとイユが左目を押さえて倒れ込んでいた。慌てて変身を解除し、イユに駆け寄る。

やっぱりポテトは不味かったのか!?アマゾン細胞が受け付け無かったとか!

 

「・・・や、がて」

「なに,イユ?ポテト、ダメだったの?」

 

「ほしが、ふる・・・ほしがふる、ころ」

「・・・え?」

 

これ、歌?たどたどしいけど、歌ってる・・・?

 

「・・・あの時の歌だ・・・」

 

黒崎・・・?何か知ってるのか・・・?

 

「父親が歌ってた・・・」

 

それってイユのお父さんが・・・?あの時ってまさか・・・イユが喰われた時のこと・・・?

あれ、もしかしてイユ・・・死ぬ直前のこと思い出してる・・・?そういえば、イユは左目をえぐられたって・・・。

さっきのアマゾンへとどめの一撃でそれを思い出して・・・?うわあ。

 

「・・・ご、ごめん、イユ。お前のトラウマを掘り起こす気は無かったんだ。ホントにごめん・・・」

 

・・・まだ歌ってる、感情が無いとか嘘だよね。これ怒ってるよね。

どうしよう・・・どうすれば許してくれるかな・・・?

と、取りあえず、〈4C〉に戻って治療しなきゃ・・・それからもう一回謝ろう・・・。

 

座り込んだイユを引き起こそうとして、こちらに近づいてくる音に気付いた。

でもこの音・・・ジャングレイダーのエンジン音・・・?

音のする方に目を向けると、緑色のライトをしたジャングレイダーが近付いてきていた。誰だ・・・?

 

「悠・・・」

 

・・・誰だ?福田さんの知り合い・・・?

その悠さん?は俺たちの横にゆっくりと停車し、ヘルメットを取る。

髪を品良く横に流し、穏やかそうな顔立ちをした二十歳ぐらいの人・・・どこかで見たような・・・?

ブラウンのコートを着たその人は、白いシャツの上からグリップの付いたドライバーを巻いていた。

あれって確か・・・〈アマゾンズドライバー〉!?俺のドライバーの元になったていう・・・?

そうだ・・・近付いてきたときは分からなかったけどこの人・・・アマゾンだ。

無言でこちらを見つめるその人に対して、俺は・・・

 

「・・・初めまして・・・?」

「・・・初めまして」

 

取りあえず挨拶をした。挨拶は大事だからね、それに敵意みたいなのも感じないし・・・敵じゃないのかな?

挨拶を返した悠さんはそのままドライバーのグリップを捻る。

 

〈OMEGA〉

「・・・アマゾン」

〈Evolu・E・Evolution!〉

 

音声と共に悠さんの体は緑色の炎に包まれる。

炎が消え、その姿が露わになる。つり上がった赤い複眼。全身は光沢のある緑色。胸部から腹部は黄色い装甲を纏い、手足には黒いグローブとブーツを装着している。

あの日見た赤いアマゾンに似たシルエットをしている。

その全身から強者のオーラを醸し出す・・・悠さん、いや『アマゾンオメガ』。

 

・・・え、なんで変身するの?

もしかして敵なのか・・・!?

 

今だ立ち上がらないイユをかばうようにしながら、変身の準備を行う。

クソ、何時になったら俺はまともなご飯にありつけるんだ・・・!

 




ドラゴンスクラッシュ・ゼリー(ラムネ味)
ロボットスクラッシュ・ゼリー(ポテト味)

気軽にタンパク質を摂取できる健康飲料として〈4C〉から発売予定!
脂質が含まれていないのでダイエットにもオススメ!


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第11話

お待たせしました。
サイボークになりつつ投稿です。


「ッ!アマゾン!」

〈NE・O〉

 

唐突に振るわれた右腕を腕ごと押さえ込むようにして拘束する。

 

「お前、いきなり何を!」

「・・・どけ」

「なんなんだ・・・!どうしてイユを!」

 

オメガが狙ったのは俺じゃなくてイユだった。でもどうして・・・?

組み付いた腕ごと体を押し込み、座り込んだままのイユから距離を取る。

そのままオメガの腹部に前蹴りを叩き込み、さらに後ろに下がらせる。

 

「どうしてイユを狙うんだ!」

「・・・彼女がシグマタイプだからだ」

「・・・?」

「そもそもシグマタイプっていうのは、死体に特殊なアマゾン細胞を埋め込んだもので―――」

「あっ、それは知ってます」

「・・・そっか。・・・アマゾンになった彼女の父親を殺したのは僕だ」

「―ッ!じゃあアンタは!」

「彼女が死ぬところを見てる。父親に殺されただけでも辛いはずなのに、死んだ後も兵器として利用されてる。何も感じない体に改造されて」

 

この人・・・!淡々と語ってるけど攻撃が全然当たらない・・・!拳も蹴りも上手く力を逸らされてる!

 

「だから、眠らせる。それが僕の役目だから」

「―――!ハアァ!」

 

アームカッターによる一撃は同じくアームカッターで受け止められる。

 

「―――!」

「・・・!」

 

ギリギリと金属音を立てながらカッター同士が擦れ合う。よし、パワーだけなら負けてない!このまま一気に押し切れば・・・!

唐突に体が前に倒れた。・・・押し合っていた腕を引いて、こっちの体勢を崩したのか!まずい・・・!

 

「ハアァ!」

「ガッ―――!」

 

体勢を崩し、無防備になった腹にオメガの脚が突き刺さる。鞭のようにしなる蹴りをもろに食らい、俺は壁際まで吹き飛ばされた。

ぐぬぬ・・・やっぱ連戦はキツい・・・。倒すのは無理でも何とか追い払わないと・・・!

体勢を立て直し、オメガを再度視界に納める。幸いな事に追撃は無かった。・・・この人、なんでここに来たんだ・・・?

 

「なあ、アンタ―――」

「悠・・・!」

「―!?美月!」

 

オメガとイユの間に割り込むように走り寄って来た人は、そのまま銃身が異様に短く太い銃をオメガに向け構えた。あれ・・・?黒崎隊に女性隊員っていたっけ?

オメガは自身に銃を突きつける女性隊員に驚いたようなそぶりを見せ・・・変身を解除した。

知り合いなのか・・・ハッ!これはまさか!

 

「美月、どうして・・・!」

「言ってたでしょ『戦う選択肢は有りだ』って・・・これが、私の選択」

「痴情のもつれってヤツか・・・!昼ドラ的展開・・・!」

「ちょっと静かにしてて。・・・美月、僕を殺すために・・・」

「・・・もし、そうする必要があるなら、私が・・・」

 

複雑な関係なのか・・・。あの人はどこか嬉しそうだし、美月さん?も決意を秘めた表情をしてる。

 

「この銃弾は特別性だから、アマゾンでも確実に粉砕する・・・大人しく私たちに従って」

 

あのピカピカしてるおもちゃみたいなのそんなに強いのか・・・俺とかイユって必要ないんじゃ・・・?いきなりリストラの危機・・・?

まあ、このままあの人が投降してくれればラッキーなんだけど。・・・色々聞きたいこともあるし・・・。

そう考えながら成り行きも見守っていると、昼ドラ空間にイユがエントリーしてきた。・・・え、なんで?

美月さん?も驚いたのか、真横を通り過ぎるイユを呆然と見送るだけ。

ボロボロの体を引きずり、ゆっくりあの人に近づいていき・・・膝から崩れ落ちた。

 

「って、イユ!大丈夫じゃないんだから大人しくしてろって!」

 

慌てて駆け寄り、イユを支え起こす。歩みを止めても目線だけはずっとあの人に向けている・・・まさか!

 

「三角関係だったのか・・・!?やっぱり昼ドラ・・・!」

「千翼、うるさい。・・・美月、ありがとう。いつかはそれを使ってもらうかもしれない。・・・でも今はまだ」

 

そう言ってこっちを見る。あ、変身したままだった・・・解除っと。

 

「じゃあ、また」

「出来れば来ないでほしいな、アンタ強すぎるもん」

 

俺の素直な感想にあっけにとられたように笑うと、あの人はジャングレイダーに乗って帰っていった。

慌てて美月さん?が追いかけようとするけど、メガネの隊員に止められている。

イユは無言であの人が去って行った方に手を伸ばしている・・・やっぱり、生きてる時の記憶に影響されてるのか?

 

「おい、誰でもいいからこの状況を説明しろ」

 

バトルシーン中に昼ドラが始まっただけだろ。心のチャンネルを切り替えろ。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「ご苦労だったね、千翼。想定外のトラブルもあったようだが。まさか水澤悠が現れるとは・・・。彼がイユの前に現れるのはこれで二度目だ・・・ただの偶然では無いだろうね、加納君」

「もう一度、イユの父親について調べるように手配しました」

「相変わらず仕事が早い・・・」

「・・・で、何で俺は局長室に呼ばれたの?」

 

〈4C〉への帰投後、俺は加納さんに局長室まで呼び出された。

 

「実際に水澤悠と交戦した君に色々聞きたくてね。どうだったかね」

「どうって言われても・・・。そうだな、やっぱり強かった。新型のドライバー使ってる分、性能は俺の方が上だったけど、戦い方っていうのかな。こっちの攻撃は上手く流されてカウンターを狙ってるみたいだった」

「なるほど・・・やはりこの五年間でかなり強力になってるようだね」

「あと、気になったんだけど。ずっと手加減されてた気がする」

 

思えば追撃をかけれる場面でも悠さんからの追撃は無かった。それに結構聞いたことには答えてくれてたし。

 

「ふむ・・・となるとやはり狙いはイユだったのか・・・?」

「それは違うと思う。接触自体は多分偶然だよ。イユはアマゾン特有の気配が薄いから。悠さんの察知能力がどの位かは分からないけど、かなり近くに居ないと分からないんじゃ無いかな」

「千翼君が最初に交戦したアマゾンを狙っていたのかもしれません。いずれにせよ、調査は続行いたします」

「頼んだよ加納君。さて千翼、率直に聞くが水澤悠に勝てるかい」

「・・・本気で来られたら厳しいかも。なんか無いの?新開発のパワーアップアイテムとか」

「そうか・・・分かった。強化パーツの研究開発も検討しておくが、当面はイユとの連携で対処してくれ」

「分かった。ああそうだイユのことなんだけど・・・現場で回復する手段があったほうがいいんじゃない?痛みを感じないから限界まで戦い続けるよ、あれ」

「そこがシグマタイプの強みなんだがね・・・そちらも検討しておこう。さて千翼、君はこれから黒崎隊でアマゾンを狩ってもらう。黒崎は気難しい性格をしているが、アマゾンを狩ることにかけては一流だ。上手くやってくれたまえ。加納君」

「では千翼君行きましょうか」

「・・・失礼しましたー」

 

黒崎隊かー。まあどこでもいいんだけど。

 

「あ・・・」

「ん?」

 

局長室から出たところで美月さん?にあった。さっきぶりですね。

 

「どうも、さっきはありがとう。助かりました、えーと美月さん?」

「水澤美月です。よろしくね、千翼君。それで加納さん、私の配属先なんですけど・・・」

 

あれ配属まだ決まってないのか。実戦に出てたからどっかの部隊に所属してるものだと・・・。

 

「彼女が配属されていた青山隊は先ほどの作戦で壊滅してしまいましたから。生き残った隊員は新しい隊に転属となったのです」

「そうなんだ。で、新しい配属先は」

「美月さん、あなたの配属先は黒崎隊となりました。千翼君と同じです。これから待機所に向かうところでした」

「黒崎隊・・・分かりました。同じ隊だね、改めてよろしく」

「えっと、こちらこそよろしく」

「加納さん、後は私が。一緒に挨拶してきます」

「・・・ではお任せします」

 

というわけで美月さんと待機所に向かうことになった。・・・今の内に聞いておこっかな。

 

「あの美月さん、聞きたいことがあるんですけど」

「私と悠のこと?・・・別に三角関係とかじゃ無いよ」

「・・・ごめんなさい、変なこと言っちゃって・・・。それでその名字が一緒なのは・・・」

「私と悠は家族だったの。母が養子として連れてきたのが始まり。その頃は悠がアマゾンだったなんて本人も知らなかったんだけどね」

「家族・・・家族なのに殺すんですか」

 

・・・いけない、また変なこと言っちゃった。アマゾンと人間の家族って聞いてつい・・・。

 

「もしそのときが来たら・・・悠が人間を襲うようになったら、私がって思ってるの。『戦う選択肢は有り』・・・今の私はそう思う」

「凄いな美月さんは・・・辛いこととちゃんと向き合って」

「そんなことないよ。五年前は何も出来なかったから、今度こそはって思ってるだけ。・・・着いたよ」

 

もし母さんが言ったように、父さんが俺を殺しに来たら・・・俺はどうするんだろう・・・?

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「いつからここはアマゾンの保育所になったんだぁ?」

「局長命令だから。文句は橘に言って。・・・何はともあれよろしく。ガンガン狩るよ」

 

全然歓迎されてないぞー、チームXの雰囲気とは大違いだし。やってけるかなぁ。

 

「チッ、まあいい。んで、水澤美月ぃ?・・・おいおい、あの野座間製薬のお偉い様のお嬢様かよ」

「水澤令華本部長。アマゾン研究の推進者で、しかも自分の遺伝子をアマゾン細胞に組み込んだ実験を行ってます」

 

札森さんが端末のデータを読み上げていく。

美月さんってお嬢様だったのか・・・。道理で品があるっていうかなんて言うか・・・。

けど母親がアマゾン細胞で実験かあ。もしかして悠さんって・・・。

 

「それで生まれたのがさっきのアマゾン、水澤悠ってわけです。養子にしてますので、戸籍上は水澤君のお兄さんにあたりますかね」

 

・・・アマゾンの成長速度を考えると明らかに悠さんの方が年下なんだけどなぁ。俺と十歳も離れてないんじゃ・・・。

 

「あんたのママはあれか?」

「・・・」

 

椅子から立ち上がった黒崎が美月さんに近付きながら問いかける。あれってなんだろう。

 

「マッドローグってヤツか?」

「・・・?」

 

?マッドローグ?・・・狂った悪党?美月さんも他の隊員も首傾げてるし・・・どういう意味・・・!も、もしかして

 

「マッドサイエンティストって言いたかったの?」

「あ・・・!?・・・あんたのママはあれか?マッドサイエンティストってヤツか?」

「いやその間違いを無かったことには出来ないでしょ」

 

ほら隊員の方々も笑い堪えてるし。なにさらっとやり直して無かったことにしようとしてるの?

 

「あはっはっはっはっは!く、黒崎さん、その間違いはヤバいですって・・・!は、腹痛いっす!」

「・・・ふぅだぁもぉりぃ!」

「は、はいすいませんでした・・・くくっ」

 

逆ギレだよめっちゃ怖い。んでめっちゃこっち睨み付けてる・・・目をそらしたら因縁つけられる・・・!間違ったのはお前だろー、なんか文句あんのかコラ―。

 

「ゴホン!・・・母のしてきたことになにか言うつもりはありません。私がここに入ったのも母とは関係ありません」

「・・・はぁ、・・・水澤悠をぶっ殺すとか言ってたが?」

 

ナイス美月さん。この状況でよく言った。

 

「彼が人間の敵だった場合です」

「訓練では圧裂弾の扱いを集中して受けてますね」

「ふん・・・本気ってわけだ」

 

圧裂弾・・・?あのピコピコしてたヤツ?

 

「でもなんなんですかね、水澤悠。一時は死亡説も流れてたのに、急にあらわれて。大学の教授だったイユの父親とも繋がりがあったみたいですし」

「それ調べんのはうちじゃねえ。見つけたら殺るだけだ。・・・というわけで水澤、こいつはお前に預けとく。・・・打てるヤツに渡しとかねえと、意味ねえからなあ・・・?」

 

そう言って黒崎は懐中電灯ぐらいの弾丸を美月さんに手渡した。あれが圧裂弾か、どういう効果なんだろう?

 

「ちょっといいかな。圧裂弾ってなんなの?」

「まあものすごく簡単に言うと、着弾した対象を液体爆薬にして吹き飛ばす」

「液体爆薬にして」

「んで、飛散した液体爆薬が付着したヤツも液体爆薬にして吹き飛ばす。だから人工密集地で使うとアマゾンだけじゃ無く、人間も連鎖的に吹き飛ばしちゃうんだよ」

「なんでそんなヤバいもん作ったんだよ・・・」

「アマゾンをぶっ殺すために決まってんだろ。・・・千翼、お前もここでやるならここのやり方に従ってもらうぞ。ガキ共のお遊びと同じ気分でいられると思うなよ」

「・・・分かってるよ。でも圧裂弾撃つときは言ってね。俺そんな死に方したくないし」

「・・・」

 

ニヤニヤすんなよ。分かったって言ってくれよ・・・。

 

「んじゃ、次の任務があるまで全員待機だ。任務が入り次第、端末に連絡入るようになってるから今の内に飯でも喰ってこい」

 

・・・やっとだ、一日ぶりにご飯にありつける・・・!

 

 

あ、そういえば・・・なんで悠さん、俺の名前知ってたんだろ?

 




カズミンもウツミンもかっこ良かったで・・・!
映画も良かったで・・・!


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第12話

(^U^)<(遅くなって)申し訳ありません!このような(全然進んでない)投稿で!


「すいません、サバ味噌定食一つ」

「ああ、座って待ってろ」

 

・・・すごく偉そうなコックさんだな・・・。

 

――――――――

 

「待たせたな、サバ味噌定食だ」

「おお、おいしそう。―――いただきます」

 

箸でサバの身を切り取り口に運ぶ。一日ぶりのご飯だ―――

 

「―――」

「フッ―」

 

なに、これ・・・?口に入れた瞬間から違う・・・今までのどんな料理より―――

 

「美味しい・・・!」

「当然だ。俺が作ったからな」

 

箸が、止まらない・・・!サバも、ご飯も、味噌汁も!美味すぎる!

美味しすぎて涙が・・・!

 

「泣くほど美味いか。料理人冥利に尽きるな・・・涙はこれで拭いておけ」

「あ、ありがとうございます・・・!」

 

美食の歓喜にこぼれ落ちる涙を差し出されたハンカチで拭う。

食事に涙はいらない・・・!万謝をもって味わい尽くすのみ―――!

 

「しっかり食べるといい。・・・おばあちゃんが言っていた、『食べる』という字は人が良くなると書くってな」

 

いい台詞だな。感動的だ。ご飯美味しい・・・!

 

――――――――――――

 

「ご馳走様でした・・・!凄く、凄く美味しかったです・・・!」

「お粗末様・・・いい食べっぷりだった。作った甲斐があるというものだ」

 

米粒一つ無い食器を流しに付けながらコックさんは微笑む。

これから毎日こんな美味しいご飯が食べられるなんて・・・〈4C〉は天国だった・・・?

 

「そうか、お前は今日から実戦部隊に配属されたんだな」

「はい。やむにやまれぬ事情があって・・・」

「橘か・・・有能な臆病者ほど厄介な者はいないからな・・・」

 

局長の人望がヤバい。

 

「・・・俺に出来るのはここで美味い飯を作ってやるだけだ。いつでも来い」

「ありがとうございます!・・・えーと」

 

そういえば食べるのに夢中で名前も聞いて無かった・・・。

 

「あの、俺、千翼っていいます。コックさんの名前は・・・?」

「・・・」

 

コックさんは、スッ・・・と天を指すように手を伸ばし、こう言った。

 

 

「おばあちゃんが言っていた・・・『天の道を行き、全てを司る男』・・・」

 

「俺の名は・・・『天道総司』」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「明日は和風ステーキ定食だ・・・また来い」と言ってくれた天道さんに別れを告げ、待機所に戻る。

天道さんかー、変わった人だな。ちょっと話したけど不思議な人だったな。

料理の腕はもちろんだけど・・・あの人かなり強い。

鍛えに鍛え上げ、修羅場をくぐり抜けた・・・悠さん、もしくはそれ以上の強者だ。

その天道さんが何でこんなところでコックさんを・・・?ううむ、謎だ。

そんなことを考えてたら待機所に着いた。

 

「・・・ただいまー」

「ここはテメエの家じゃねえぞ」

 

黒崎ケンカ売ってんの?

 

「まあまあ、黒崎さん。・・・ちょうど今からミーティング始めるところだったから。千翼も聞いて」

「え、もう次の任務?早くない?」

「うちの技術部は優秀だからな。そっからの情報だ・・・札森」

「はーい聞いてくださーい。

検証の結果、制圧したウォーターサーバーの販売元および製造設備から溶原性細胞が検出されました。

ただ、製造工程で溶原性細胞が混入した形跡が無いことから、水を採取した時点で溶原性細胞が混入していた可能性が高まりました。」

「湧き水自体が汚染されてたってこと?」

「うん。おそらくはそこに『オリジナル』がいるはず」

「『オリジナル』?」

「そ。溶原性細胞は二次感染しないからね。ばらまいてる個体がいるはずなんだよ。それが『オリジナル』」

「変異したアマゾン細胞を持った特異個体って噂だ。

5年前のトラロックを生き延び、ガスにより細胞が変異したってのが上の予想だ。

・・・まあなんだろうとアマゾンはぶっ殺すだけだけどなあ?」

「そうだね、アマゾン死すべし慈悲は無い」

「ハッ・・・」

「(ひょっとして仲いいのか)で、今回の任務は水源の調査ともう一つ」

 

札森は手に持ったタブレットを操作し、一枚の画像を呼び出す。

病院・・・耳鼻科だね。えっと『野々森耳鼻科医院』?

 

「この耳鼻科を受診した患者の中から何人か行方不明者が出てます。ウォーターサーバーの販売元から吸い出したデータで『アロマオゾン』を納品されていることからおそらくは・・・」

「医者が、アマゾンに?」

「だろうな・・・待ってりゃ餌が来るんだ。楽して喰ってたんだろうよ」

 

知能の高いタイプか・・・厄介だな。人間社会に溶け込んでるアマゾンってのは総じて狡猾で戦闘能力も高い傾向がある(チームX(キス)調べ)。

注意しないと・・・。

 

「よし・・・チームを分けるぞ。水源の調査は福田、お前と水澤でいけ。」

「ああ・・・」

「なんだぁ福田ぁ、昔のお仲間に会えるかもしれねーんだぞ。もっと喜べよ」

「・・・!」

「黒崎の福田さんイジりが今日も冴えるなぁ」

「・・・水澤、調査中に『オリジナル』でも実験体の生き残りでもいい。条件さえクリア出来てりゃ、圧裂弾ぶち込め」

「了解しました」

 

虎の子の圧裂弾か。実際に見てみたかったな。

 

「残りは病院の方のヤツを狩るぞ。千翼、お前とイユが主体でやるぞ。病院の間取り、頭に叩き込んどけよ」

「分かった」

「それとお前、なんで福田は『さん』付けで俺は呼び捨てなんだ」

「え、自分が『さん』付けで呼ばれるような人間だと・・・?」

「・・・後ろと流れ弾のは気をつけろよ?」

「なにケンカ売ってんの?」

「はいはーい、仲がいいのは分かりましたから作戦―」

 

「良くねーよ、脳みそ腐ってんのか」

「良くないよ、メガネ曇ってんのか」

 

「ええ・・・息ぴったりじゃないですか・・・」

「やめろ札森、気持ち悪い」

 

こっちの台詞だよ。だれが黒崎なんかと・・・。

いきなり人の首に注射器ぶち込むようなヤツだよ?そんなヤツと仲がいいだろうか。いやよくない。

 

「はいはい・・・」

「全員、武器と携行品の確認しとけ。直ぐに出るぞ」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「戻ったぞ」

「ああ天道、お帰り。それで目的のものは・・・?」

「これだ」

 

そう言って俺を出迎えた男に真空パックしたハンカチを手渡す。

 

「これ、かい・・・?何もないように見えるけど・・・?」

 

だが目の前の男は察しが悪いようで気付かない。

そのハンカチがアイツ・・・千翼の体液()が染みこんだものだと。

 

「涙・・・!?いや確かに体液だが、どうやって?

『わざわざ力を振るう必要は無い、俺に任せておけ』って君は言ったはずだけど・・・?」

「俺がアイツを傷つけたと思っているのか・・・。フッ、甘いな『本郷』。

涙とは痛みや悲しみだけで流れるものでは無い。心を震わせるような経験をしたときに流れるものだ」

「えっと、つまり?」

「美味い飯を振る舞った。アイツは泣いて喜んだぞ」

 

俺の言葉を聞いた本郷はきょとんとした後、笑い出した。

フッ・・・俺の偉大な言葉に心打たれたようだな。

 

「フフフ、すまない。君は大したヤツだな、天道」

「なんだ、今更気付いたのか」

「いや、再認識したのさ」

 

困ったものだな。太陽とは遍く照らすもの・・・俺の輝きにまた一人魅せられてしまったか・・・。

 

「じゃあこのサンプルの半分は『風見』にもまわさせてもらおう。

『奴等』の息がかかっていない研究者にも秘密裏に調査を依頼しよう」

「ああ、だが取り扱いには細心の注意を払わせろ。たったそれだけでも人をアマゾンに変貌させる代物だ」

「もちろん、分かっているとも―――」

 

「足りないだろ、それ」

 

窓際のソファーから声が上がる。視線を向けると足を組み、不敵な笑みを浮かべる男がいた。

 

「何が足りない」

「大本だよ。そいつは変異した細胞を含んだ体液だろ。必要なのはもう一つ、変異する前の細胞だろ」

 

男は首からぶら下げた二眼のトイカメラをのぞき込みながら、シャッターを切る。

・・・なるほど、確かにな。

 

「だがどうするんだ、彼はもう〈4C〉に確保されているんだろ。接触は難しい」

「ああ、大体分かった」

「え」

 

ほう・・・、幾つもの世界を巡った経験は伊達では無いようだな。

 

「いいだろう、変異する前の細胞はお前に任せる」

「ああ・・・。天道お前はこれからどうするんだ」

「俺は戻るぞ。明日の仕込みがあるからな」

 

すると男は呆気にとられたような顔をした。なんだおかしなことでも言ったか。

 

「仕込みって・・・お前の仕事は終わっただろ!?まだあそこでコックやるのかよ!」

「何を当然のことを・・・。アイツと約束した、『明日も美味い飯を食わせてやる』ってな」

「ああそうかよ、好きにしろよ・・・」

「当然だ、『門矢』お前もしくじるなよ」

 

俺がそう言うとアイツはいつものような不敵な笑みを浮かべ、ソファーから立ち上がり言った。

 

「誰に言ってるんだ?

俺は―――」

 

 

 

―――通りすがりの仮面ライダーだぞ?

 

 




なんでこうなった。
おかしい、初期案では通りすがったりしない予定だったのに・・・?
これではアマゾンズの世界も破壊されてしまう・・・!
おのれ○○○○○!(ネタバレの為、伏せ字)


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第13話

間に合った!


〈FINAL ATTACK RIDE:DE・DE・DE・DECADE!〉

〈Amazon・Break〉

 

「「ハアァァァ!」」

 

ゾウアマゾンの胴体をブレードで斬り付けながら走り抜ける。

反対側からはアイツが、カード状のホログラムを突き抜けながらピンクの光を纏った剣で斬り抜ける。

前後から挟み斬られたゾウアマゾンは断末魔を上げながら爆発した。

燃え上がる炎を挟んで俺たちは再び対峙する。

白と黒、そしてピンクの装甲に、グリーンの複眼とバーコードのような模様のマスク。

腹部には赤いレンズが埋め込まれたバックルのようなものを付けている。

突然現れ、共闘した謎の人物に俺は問いかける。

 

「お前は、誰だ」

 

アイツは手のひらで剣を根元から撫で上げ、ハンッと鼻で笑って答える。

 

「さっきも言っただろ。

俺は通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ」

 

仮面、ライダー・・・・・・?

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ターイムマッジーン◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

院内の間取りを確認した俺たちは、治療(?)の終わったイユと合流し目的地に向かった。

 

そして現地、黒いバンの中から病院・・・『野々森耳鼻科医院』の様子を窺う。

昼過ぎにも関わらず入り口にはカーテンが引かれ、『休診』の札がかけられている。

 

「休みか・・・・・・?」

「今日は休診日じゃなかったはずですけど」

 

運転席と助手席から建物の様子を確認した黒崎と札森が訝しむ。

確かに『休診』の札は掛かっているけど・・・・・・。

 

「いるよ。中に、二体」

 

後部座席から身を乗り出し、俺も建物を視認する。

感じる気配は二体・・・もっと意識を建物に集中させて・・・・・・。

 

「遅かったみたい・・・『食事中』だ・・・」

「チッ・・・」

 

感じる気配は攻撃的なものじゃない。捕食中のアマゾンが出す気配を感じる。

 

「はぁー、千翼君そんなことまで分かるんだ」

「イユとは大違いだな。視認してアマゾンか判断するのがやっとだ」

「まあ俺は感知能力高い方だし?個体差ってあるんじゃないかな。

そんなことより見取り図出して。

・・・・・・ここだ、診察室。二体ともここから動いてない」

 

多分ここで・・・。

 

「・・・出入り口は二つあるな。

よし、千翼。お前は正面玄関から突入しろ。お前が戦闘に入ったのを確認したら裏口からイユを突入させる。

中は狭い、分断して対処するぞ。

俺たちは裏口周囲で待機する。イユ、分断した一体を連れてこい」

「了解」

「千翼、お前は残りの方をやれ」

「分かった」

 

黒崎ってやっぱり隊長ってだけはあるんだな。普段がアレだから心配だったけど、問題なさそう。

 

「よし、配置につけ。千翼、連絡したら突入しろ」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

物陰に隠れ、病院のドアが見える位置で俺は待機していた。

病院内では特に動きはない・・・まだ気付かれてはいないみたいだ。

 

≪千翼、聞こえるか≫

「聞こえてるよ」

≪配置が完了した。突入しろ≫

「分かった」

 

物陰から出てドアに近付き、手をかける。

どうやら鍵は掛かっていなかったようでドアはすんなり開いた。

物音を立てないように注意しながら病院内に踏み込む。

入ってすぐ所に受付があり、右手側には待合室がある。

どちらにも人はいない。

無人の院内にゴポゴポとウォーターサーバー『アロマオゾン』の駆動音のみが響く・・・・・・いや。

 

「 ッ ァ   ァ」

 

駆動音に紛れるように音が聞こえる。

何かを啜るような音と、これは、女の人の声・・・?

頭の中に間取りを浮かべながらアマゾンが陣取る診察室へ向かう。

 

「ァ  ァ ッ ア」

 

扉は無く、カーテンで仕切りがされ玄関や待合室からは診察室の様子は見えないようにされている。

近づくたびに鉄臭い臭いが強まる。

 

「ア ァアッ ア」

 

ドライバーのスロットにインジェクターをセットしながらカーテンに手をかけ、一気に左に引く。

 

「アッ、ァッ、アッ、アッ、アッ」

 

診察台には女性が一人。幅広のベルトで拘束され、口からは意味の無い言葉が漏れている。

腕がびくびくと痙攣し、見開かれた目は助けを求めることも無く天井を見つめ続ける。

耳には細い管のようなものが突き刺さり、ずるずると『中身』を啜っている。

管は両脇に立つ二体の異形から伸びている。

 

「んー?・・・先生ェ?」

 

カーテンを引いた音で気付いたのか、ナースキャップをかぶった昆虫タイプのアマゾン・・・ゾウムシアマゾンが耳から管を引き抜きながら振り返る。

管が引き抜かれた耳からは、赤い血の混じった薄橙色の『中身』がこぼれ落ちる。

熱心に『中身』を啜っていたもう一体のアマゾン、長い鼻と牙を持つゾウアマゾンも顔をあげ、こちらを見る。

 

「んん?・・・二人分しかない。欲しいなら自分で獲れ」

 

・・・・・・ああ、俺が『獲物』を横取りしに来たと思ってるのか。

 

「俺が、『ハイエナ』に、見えるのか?」

「・・・違うのか?」

 

違うとも。俺は・・・・・・!

 

「俺はお前らを狩りに来たんだ・・・!アマゾンッ!」

 

〈NE・O〉

 

俺は蒼い爆炎を放ち、『ネオ』へと変身する。

そこでようやく俺が『同胞』じゃないことに気付いた連中は襲いかかってくる。けど・・・。

 

「ハアァ!」

「グガァ・・・!」

 

飛び掛かって来たゾウムシアマゾンを左のフックで壁に叩き付け、突進してきたゾウアマゾンを回し蹴りで吹き飛ばす。

ゾウアマゾンが体勢を立て直す前に接近し、拳を繰り出す。

・・・・・・ダメだ!言っても分からないと思うけど、言わせてもらうぞ!

 

「俺は今!無性に腹が立っている!」

「ガッ・・・!?」

「この手でお前らを、ブチのめしたい!」

 

体勢を立て直し、後ろから襲いかかって来たゾウムシアマゾンを後ろ蹴りで吹き飛ばす。

その隙にハンマーのような拳を振るうゾウアマゾンからいったん距離を取る。

ん、いいタイミングだ。

 

「ターゲット確認。アマゾン」

「イユ!」

 

裏口から突入してきたイユが変身しながら、ゾウムシアマゾンに襲いかかる。

不意打ちを受けた相方を助けようとしたのか、俺から目を離し駆け出そうとするゾウアマゾンにヤクザキックを叩き込む。

ゾウムシアマゾンはイユの攻撃に対応仕切れず、裏口に通じる廊下にまで追いやられた。

不利を悟ったのかゾウムシアマゾンはそのまま裏口に向かい逃走した・・・・・・よし!計画通り!

 

「イユ、追って!」

「うるさい・・・」

 

この子俺に冷たくない?

 

「待て・・・!」

「待つのはお前だぁ!」

 

裏口に向かおうとするヤツに飛び掛かり、足止めする。

ゾウムシアマゾンの気配はどんどん離れていく・・・あとは黒崎達に任せよう。こっちはこっちの狩りを・・・!

 

「パァァォオン!」

「あぶな!」

 

咆哮とともに頭を大きく回し、長い鼻でなぎ払ってくる。

しゃがみ込んで回避したところに牙を突き出して突進してくる。

咄嗟に飛び上がりバク宙しながら突進を躱す。

着地しヤツの背中を狙おうと振り返ると、ヤツはすでにこちらに向き直り鼻先を向けていた。

長い鼻の根元がボコリと膨らみ・・・・・・

 

「フンッ!」

 

鼻の先端から黒い粘液が噴き出された・・・・・・鼻水!?

 

「うわ、きったなあ!」

 

床を転がり鼻水噴射を回避する・・・・・・くっさあ!

 

「オエ・・・!お前!」

 

体勢を立て直し、立ち上がるとヤツはこちらに背中を向け玄関口に向けて走り出した。

逃げる気か・・・させない!

 

「待て!」

 

ヤツを追って玄関から飛び出す。意外に足が速い・・・でもまだ追いつける!

病院の周りには民家はないけど人通りはゼロじゃない・・・逃がすわけには!

そう思い追いかけようとすると、ヤツの前方からヘッド部分がピンクで塗装されたバイクがこちらに向かってーーー!?

 

「ウグワァ!?」

 

減速せずにゾウアマゾンに突っ込んだー!?

そのままゾウアマゾンを吹き飛ばしたバイクは俺の少し手前で停まる。

乗っているのは黒いコートの二十歳ぐらいの男の人・・・首からピンク色の二眼レフのトイカメラをぶら下げているのが印象的だ。

その人はバイクに乗ったままトイカメラをのぞき込み、こちらに向けてシャッターを切った。

 

「フッ!」

「・・・案外ノリがいいな。自分でポーズを取ってくれるとは」

 

・・・しまった!ついチーム(キス)の頃の癖が!

 

「あの、ここは危険です!早くーーー」

「ああ、大体分かった」

 

よかった、話の分かる人みたいだ・・・。

でもなんでバイクから降りてるんですか?そのまま乗って逃げてくださいよ。

 

「あれが『この世界』のアマゾンか。俺が知ってるのとは大分違うな」

 

そう言ってあの人はゾウアマゾンをレンズに収め、シャッターを切る。

『この世界』・・・?アマゾンは個体ごとに姿が異なるけど・・・?

てゆーか、速く逃げて!?

のんびり写真撮ってる間にアイツ体勢立て直しちゃったじゃないですかー!やだー!

 

「グウゥゥ・・・よくも・・・お前も、アマゾンか」

「俺が?おいおい、お前らみたいなバケモノと一緒にするなよ?俺はーーー」

 

その人は懐から何かを取り出し、腹部に当てる。

するとそこからベルトが伸び、腹部に固定され、左側に四角いケースのようなものが現れる。

ケースを開き中からカードを取り出し、ゾウアマゾンに見せつけるように前にかざす。

 

「『通りすがりの仮面ライダー』だ!覚えておけ!『変身』!」

 

カードを腹部のバックルに差し込み、バックル両側のパーツを押し込む。するとバックルが90度回転しーーー

 

≪KAMEN RIDE:DECADE!≫

 

機械音声が響き渡ると同時にあの人の周りに幾つかの幻影が現れる。

幻影はあの人に重なり、アーマーのようになる。

そして頭部に何枚かのカードのようなものが突き刺さると、灰色だったアーマーに白と黒、そしてピンクの色が付いた。

 

「『ディケイド』・・・?なんなんだ、一体?」

 

ゾウアマゾンはその姿に脅威を感じたのか牙を振りかざし、突進を行う。

しかし、その突進は軽やかな動きで躱され、カウンターを受ける。

そのまま腰のケースを手に取ると取っ手部分を120度回転させると、ケースから刃が伸び、剣となった。

剣を振るい、ゾウアマゾンを斬り付ける『ディケイド(仮)』。

〈4C〉の新兵器じゃ、ないよな・・・。あの人アマゾンじゃないみたいだし。

・・・・・・分からないけど今はとにかく!

 

〈Blade・Loading〉

「アマゾンを狩る!」

 

ブレードを振るいヤツに飛び掛かる。あの人に合わせてヤツを追い詰める!

 

「フウゥゥゥ・・・ハアァ!」

「へえ、なかなかやるじゃないか。先輩として鼻が高いぜ?」

「先輩・・・?なんの?」

「それはお前ーーーうお!?」

 

油断したのかヤツの伸ばした鼻が『ディケイド(仮)先輩(自称)』の片足に巻き付く。

 

「パァァォオン!」

「うおおおぉぉぉぉ!?」

 

そのまま振り回され、空高く投げ上げられーーー

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

そのとき、千翼の脳内に電流が走った!

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

〈Claw・Loading〉

 

左腕にワイヤークローを生成し、空中遊泳を楽しむ『ディケイド(仮)先輩(自称)』の足めがけて射出する。

 

「獲った!」

「今度はなんだ!?おい、千翼!何する気だ!?」

 

ワイヤーを巻き取りながら左腕を大きく回す。すると『ディケイド(仮)先輩(自称)』は大きく円を描く。

 

「ハアァァァァァ!」

「うおおおぉぉぉ!?」

 

俺と『ディケイド(仮)先輩(自称)』で二人、つまりいつもの二倍!

さらに落下エネルギーにより二倍!

そして回転エネルギーを加えることでさらに三倍!

つまりーーー!

 

「十二倍だぁ!発射ぁ!」

「こうなりゃ自棄だぁ!」

 

十二倍パワーで打ち出された『ディケイド(仮)先輩(自称)』はすれ違いざまに剣でゾウアマゾンを切り裂く。

 

「グガアアア!」

「チャンスだ!決めるぞ、千翼!」

「ああ!」

 

『ディケイド(仮)先輩(自称)』はバックルの両側パーツを引き、バックルを90度回転させる。

剣となったケースを開き、取り出したカードをバックルに挿入し両側のパーツを押し込む。

俺はドライバーのスロットを操作し、ブレイクを繰り出す。

 

〈FINAL ATTACK RIDE:DE・DE・DE・DECADE!〉

〈Amazon・Break〉

 

「「ハアァァァ!」」

 

ゾウアマゾンの胴体をブレードで斬り上げながら走り抜ける。

ヤツの背後からは『ディケイド(仮)先輩(自称)』が、カード状のホログラムを突き抜けながらピンクの光を纏った剣で斬り抜ける。

 

「ガアガガガアアアアアーーー!」

 

前後から挟み斬られたゾウアマゾンは断末魔を上げながら爆発した。

燃え上がる炎を挟んで俺たちは再び対峙する。

白と黒、そしてピンクの装甲に、グリーンの複眼とバーコードのような模様のマスク。

腹部には赤いレンズが埋め込まれたバックルを付けている。

突然現れ、共闘した謎の人物に俺は問いかける。

 

「お前は、誰だ」

 

アイツは手のひらで剣を根元から撫で上げ、ハンッと鼻で笑って答える。

 

「さっきも言っただろ。

俺は通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ」

 

仮面、ライダー・・・・・・?

 




もやし「ところで俺のドライバーの色ってどうなってんだ?」

◆本編の性能がまだ分からないからあえて色の記述は省きました。賢い!◆

◆そんなことより髪の心配をしなさい◆


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第14話

これまでの仮面ライダーディケイドは(例のBGM)

「休みか・・・・・・?」
「今日は休診日じゃなかったはずですけど」
「いるよ。中に、二体」

「アッ、ァッ、アッ、アッ、アッ」
「んー?・・・先生ェ?」
「んん?・・・二人分しかない。欲しいなら自分で獲れ」
「俺はお前らを狩りに来たんだ・・・!アマゾンッ!」
〈NE・O〉
「ターゲット確認。アマゾン」

「あれが『この世界』のアマゾンか。俺が知ってるのとは大分違うな」
「おいおい、お前らみたいなバケモノと一緒にするなよ?俺はーーー」
「『通りすがりの仮面ライダー』だ!覚えておけ!『変身』!」
≪KAMEN RIDE:DECADE!≫

「チャンスだ!決めるぞ、千翼!」
「ああ!」
〈FINAL ATTACK RIDE:DE・DE・DE・DECADE!〉
〈Amazon・Break〉
「「ハアァァァ!」」
「ガアガガガアアアアアーーー!」

「お前は、誰だ」
「さっきも言っただろ。俺は通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ」



「仮面、ライダー・・・?」

「俺は『仮面ライダーディケイド』、世界の破壊者だ」

「世界の破壊者・・・」

 

厨二病かな?

 

「お前今変なこと考えてただろ・・・まあいい。

俺はお前に用があるんだ」

 

そう言いながらこちらに近付いてくるディケイド。

 

「・・・大丈夫?凄くふらふらしてるけど」

「お前、自分が何したかもう忘れたみたいだなぁ・・・!」

「最適解だったでしょ?コラテラルダメージ、コラテラルダメージ」

「いい性格してんじゃねえか・・・!」

「そうかな?で。えっと、俺に用があるっていうのは」

「ああ、ちょっとお前とーーー」

 

反射的に右腕のブレードを掲げ、振るわれた剣を火花を散らしながら受け止める。

 

「遊ぼうと思ってな?」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

世界の破壊者『ディケイド』

数多の世界を巡り、その瞳に何を見るーーー

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

繰り返し振るわれる剣をブレードで受け止めつつ、左腕のワイヤークローで牽制する。

目の前の相手ーーーディケイドはバックステップでワイヤークローを回避、距離を取り新たなカードを取り出す。

 

「へえ、なかなかやるじゃないか?」

「・・・遊びに誘うにしては乱暴だね。友達いないんじゃないの?」

「バケモノに心配されるとはな。お前こそ『トモダチは、ご馳走!』なんて思ってるんじゃないのか」

「あんなエイみたいなのと一緒にするな!友達は、友達だ!」

「けっこう熱血なんだな。かっこいいぞ?まあ・・・」

 

軽口を叩くディケイドが取り出したカードをバックルに挿入する。

 

≪KAMEN RIDE:FAIZ!≫

≪COMPLETE≫

 

「俺の方が格好いいけどな!」

「うお、眩し」

 

バックルから伸びた紅く輝くラインがディケイドの体を包み、眩い光を放つ。

光が収まると、そこには大きな黄色の複眼と紅いラインの走る黒いスーツに銀色の装甲を纏った戦士が佇んでいた。

 

「・・・ディケイド!どこに行った!?」

「目の前にいるぞ!よく見ろ、ドライバーが一緒だろ!」

 

思わずキョロキョロしながら声を上げると、しっかりとツッコミを入れてくれた。

いや分かってるよ。でも・・・

 

「姿が変わった・・・?あんた一体何なんだ?」

「さあな。それより第二ラウンドだ。しっかり付いて来いよ!」

 

カシャッと、小気味のいい音をたてて手首をスナップさせ、こちらに接近するディケイド。

振るわれる剣に合わせるようにブレードを振るい、ディケイドの剣を弾く。

その隙を狙い、クローで胸部を殴り付け吹き飛ばした。

 

「・・・あれ?さっきのバーコードよりパワーが落ちてない?

・・・『第二ラウンドだ。しっかり付いて来いよ!』」

「馬鹿にしてんだろ、お前!・・・いいぜ、もう付いてこられると思うなよ!」

 

≪FOAM RIDE:AXEL!≫

 

ディケイドが取り出した新たなカードを挿入すると、胸部のプロテクターが展開し、複眼の色は赤に、紅いラインは点滅しながら銀色に変化した。

 

「また変わった・・・。でも、何度やったって同じでしょ!」

「どうかな!付き合ってもらうぞ、10秒間だけな!」

 

≪START UP≫

 

姿の変わったディケイドに向けて、ワイヤークローを射出する。

クローはまっすぐ対象に向けて飛び、当たる瞬間にディケイドの姿が掻き消えた。

 

「!消え」

 

瞬間、体中に衝撃が走り、俺は空中でピンボールみたいに弾き飛ばされた。

 

≪3...2...1...TIME OUT≫

≪RE:FORMATION≫

 

「ガッ・・・!カハッ!」

「しっかり付いてこいって言ったけどな。ま、無理だったか」

 

地面に叩き付けられた俺を見ながら、紅い姿に戻ったディケイドが軽口を叩く。

高速移動・・・!それも目に映らないほどの・・・!

 

「まだ、まだぁ・・・!」

「いいや、終わりだ」

 

≪FINAL ATTACK RIDE:FA・FA・FA・FAIZ!≫

 

新たなカードを挿入すると音声と共にディケイドが持つ剣に紅い光が宿る。

 

「ッ・・・!ウォオオオオオオオ!」

 

〈Amazon・Break〉

 

こちらもドライバーを操作し、ブレードの強化を行う。

腰を落としてこちらを待ち受けるディケイドに駆け寄り、唐竹割りの要領でブレードを叩き付ける。

ブレードは紅く輝く剣によって受け止められたけど、関係ない・・・このまま!

武器ごと切断しようと力を込め・・・剣がぐるりとブレードを巻き込むように滑りーーー

 

「え」

「ハアァ!」

 

ガランと言う音と共にブレードが地面に落ちる。

その直ぐ後にぼとり、と俺の手首が落ちた。

 

「あ・・・、う、ぐああああああ!?」

 

それを認識した直後、右手首から激痛が走る。

まるで焼けた鉄をずっと押し当てられてるような痛みに耐えつつ、目の前のディケイドから距離を取る。

追撃はなく、ディケイドは落ちた俺の手首を拾い上げる。

 

「・・・まあこんなもんか」

 

拾い上げた手首をしばらく眺め、ディケイドはこちらに向き直る。

マズい・・・このままじゃ、やられる・・・!早く・・・!

 

「今日のところは・・・なんだ?」

「ウウゥゥゥウアアアアア!」

 

腕のアマゾン細胞を活性化させる・・・!斬り落とされた手首の断面にグジュグジュと細胞が集まり、新たな手を生成する。

生成した手の上に装甲を再度纏い、斬り落とされる前と同じように修復された。

 

「はあ、はあ・・・!」

「驚いたな。トカゲもびっくりの再生力だな、お前」

 

こいつは強い・・・!さっきから姿がコロコロ変わってるけど、あれは姿に応じて能力が変わるのか・・・?

片膝を付いた状態で油断なくディケイドを観察する。

いつの間にか、元のバーコード姿に変わってる。でもまたあんな高速移動を使われたら、今度こそ・・・!

 

「クソッ・・・!」

「ん?後ろのヤツはお友達か?」

「え・・・?イユ!」

 

後ろを振り返るとイユがいた。ナイスタイミング・・・!これで・・・!

 

「これで二対一だな!」

「二対一か、俺は構わないぞ。このまま続けるか?」

「行くよイユ!」

「ターゲット、確認」

 

背後から振るわれた鉤爪を咄嗟に受け止める。

イユ、何をするんですか!

 

「・・・驚いたな、お前が一だったのか。それとも裏切りか?」

「イユ、俺は味方だって!本当に裏切ったんですか!?」

 

なおも振るわれる鉤爪を躱し、隙を突いて腕を取り、肩関節を極める。

 

「暴れんなよ、暴れんなよ・・・!腕が取れちゃうだろ!」

「・・・お取り込み中みたいだから俺は帰るぜ?じゃあな」

「ま、待って!イユを止めるのを手伝って!」

「また会おうぜ、千翼」

「一人にしないでー!うぉあぶな!」

 

肩を外しながらこちらに襲いかかるイユをいなしながら、ディケイドを呼び止めようとするが、すでにバイクに乗って走り出していた。

 

「うわ、あぶな!なんだ今のピンク色の・・・」

「アマゾンじゃあねーよな、今の。千翼、なんだアイツは・・・お前何遊んでんだ?」

「これが遊んでるように見えるのか!?襲われてんだよイユに!」

 

そんなこと言ってる間にバイクはどんどん遠ざかり、ついに見えなくなった。

 

「いっちゃた・・・。そんでお前はいい加減に・・・!」

 

後ろから襲いかかろうとしていたイユに向けて、

 

「しろぉ!」

 

振り返りながら腹部に右ストレートを打ち込み、吹き飛ばした。

倒れたイユの変身が解除されるのを確認し、黒崎達に詰め寄る。

 

「黒崎、どうなってるんだ!イユ、見境無しに襲いかかってくるよ!お陰でディケイドに逃げられたじゃん!」

「ディケイドってのはさっきのピンクのヤツか?まあいい。アマゾンは始末したのか?」

「殺ったよ、ちゃんと!それより・・・!」

「イユのことだろ。時間が無かったからな、お前が狩っちゃいけないヤツだって教えて無かったんだよ」

「こっちのミスですねー、ごめんねー千翼君?」

「マジかよ・・・おのれディケイドォ!」

「で、アマゾンの死体は」

「爆発したよ!」

「何言ってんだこいつ」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「クッシュン!・・・風邪か?」

 

最近冷えるからな。今日は暖かい物でも食うか。

バイクを降りて、ジュラルミンケースを持ってアジトの扉を開く。

中にはPCとごちゃごちゃした機械に向かう本郷がいた。

 

「本郷、戻ったぞ」

「ああ、お帰り、門矢。それでどうだった?」

 

成果を確認する本郷の前にケースを置き、蓋を開く。

白い煙が溢れだし、ケースの中身が露わになる。

 

「これは・・・!」

「アイツの手首だ。斬り落として直ぐに冷凍保存したからな、細胞の変化はないはずだ」

「手首って・・・!?やり過ぎだろ!彼は無事なのか!?」

 

泡を食ったように俺に問いかける本郷を鼻で笑いながら答えてやる。

 

「ああ、問題ない。あっという間に、元通りになってたぜ」

「元通りって・・・、その場で修復したのか!?凄まじい回復力だな」

「まあ、さすがにちょっとふらついてたがな。で、そっちはどうだ?

天道が持ってきたサンプルからなんか分かったのか?」

 

そう問いかけると本郷は顔をしかめる。

 

「なんだ、何も分からなかったのか」

「いや、分かったことはある。確証はないし、仮説になるが・・・、聞くか?」

「・・・どうやら、面倒な話題みたいだな。いいぜ、聞かせてくれ」

「天道が持ち帰ったサンプルの大半は溶原性細胞に変異していた。だが極わずかに変異前の細胞も残されていたんだ。

そこから分かったことが一つ」

「・・・」

 

 

 

 

「アマゾン細胞は突然変異的に発生したものじゃない。人為的に造り出されたものだ」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「ホントだって!俺とディケイドが斬り付けたら断末魔上げながら爆発したんだって!信じてくれよ!」

「ははは、千翼君夢でも見てたんじゃないの?」

「千翼ォ、お前は一週間の謹慎だ」

「そんな!」

 

その後、爆発したアマゾンの灰を調べていた隊員から、溶原性細胞が検出されたと報告を受け、謹慎は10分で解除されました。

 

「いやーごめんね、千翼君。でもアマゾンが爆発するなんて思わないでしょ?」

「・・・これもディケイドってヤツのせいなんだ」

「まあ、それっぽいよね」

「・・・」

「なに千翼君?空気読めないヤツを見るような目してるよ?」

「いや別に」

「ふーん。あ、黒崎さん、イユ来ましたよ」

 

タンパク質を摂取し、傷を修復したイユが隊員に連れられ、こちらに近付いてきた。

アマゾン戦では殆ど傷を負わなかったけど、肩の脱臼と内臓にダメージを負っていたらしい。

俺は悪くねえ。

 

「来たか、イユ。いいか?こいつは千翼。アマゾンだ」

「千翼、アマゾン」

「そうだ。でも狩っちゃだめなヤツだ」

「千翼、狩っちゃダメなヤツ」

「・・・よぉし、これで今度から千翼に襲いかかることはないだろ」

「え、これだけで大丈夫なの?・・・イユ、これからよろしくね」

「よろしく」

「挨拶を返してくれた・・・!?ちょっと、感動した・・・!」

「大げさだろ。まあいい、そんなに元気なら病院の中調べてこい」

「まだ何かあるの?」

「それを探すんだろ。行け」

「りょーかい」

 

さて、探せっていってもな。

病院内は隊員も入ってるし、プロに任せた方がいいんじゃないかな。

ラムネ味のタンパク質ゼリーを吸いながら病院内を見回る。

 

「・・・遺体の損傷は少なかったな」

「ああ、中身は大分減ってたみたいだけどな」

「内臓だけを喰うアマゾンか・・・。まあ、他のアマゾンに食い散らかされた遺体よりましだな」

「遺族に返すときに色々足りないと、きついもんな」

 

このカーテン血まみれだな・・・。

 

「数ヶ月前からアロマオゾンのメーカーと契約してたみたいだな」

「行方不明者が出た頃から逆算すれば発症までの期間が分かるかもな。資料押収っと」

 

この部屋は、っと・・・

 

「うわ、なんだこれ」

「どうした千翼。・・・これは空のアロマオゾン?」

「何ヶ月分あるんだよ、これ」

「メーカー元があのザマだったからな・・・回収するヤツいたのか?」

「一番古いタンクを調べれば、いつからメーカーがアマゾンの巣になったか分かるかもな。調べてみよう」

 

ふーむ・・・。

血まみれのカーテン。

内臓のみを喰うアマゾン。

回収されないタンク。

 

これは、もしかしたら・・・?

 

「千翼ォ、なにぼさっとしてんだ。もういいから引き上げるぞ」

「ああうん、わかった」

 

 

 

 

 

もしかしたら、もう一体いたのか・・・?




あけましたおめでとうございます。
2018年からやってきたアマゾンワロスです。
艦これのイベントやウルバトやらFGOイベントやらでてんてこ舞いでした。
年末年始は忙しいですね。
ジオウも、もやしどっか行っちゃうし、映画最高やし、ゲイツ君救世主になるし。
16周年目に龍騎のスピンオフとはこのワロスの目をもってしても云々。
今年も何とか投稿して行くのでどうぞよろしくお願いします。


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第15話

こっそり投稿してもバレへんか・・・。


「『仮面ライダーディケイド』、ねぇ・・・・・・」

「千翼にそう名乗ったとのことです。明らかに、我々が保有するアマゾン技術を超えた存在だったと」

「千翼一人の証言なら白昼夢と切り捨てるが、黒崎君達も目撃しているとなると否定できない案件だよこれは・・・・・・」

「旧野座間や政府が造りだしたとも考えづらいかと」

「ここに来て第三勢力の介入か。国内の勢力ではないとすると・・・・・・米国か?」

「確か、アマゾン細胞の兵器転用に興味を示していましたね。それもアマゾン細胞の持ち出し禁止法案が成立したことで手を引いたはずですが・・・」

「『表向きは』ね。彼の国は大国であるが故に抱える問題も我が国以上だ。強力な兵器を簡単に諦めることは無いだろう」

「・・・旧野座間研究者達の動向を確認致します」

「そうしてくれ。全員が、ここにいるワケではないからね」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「へー、それでその『ディケイド』とか言うのに負けちゃったんだー」

「・・・別に負けてないし。あっちが逃げたんだから、俺の勝ちだよ」

「でも腕持っていかれたんでしょ?」

「手首から先だけだよ。直ぐに生えたからセーフセーフ」

 

〈4C〉の食堂で千翼はハンバーグ定食を食べながら目の前に座る研究員に言葉を返す。

「いや~その理屈はおかしいよ~」とヘラヘラ笑う研究員・・・『浅木』。

彼は元野座間製薬の研究者であり、現在は〈4C〉でアマゾン細胞の兵器運用を専門としているチームのトップである。

 

「ねえ浅木さん。あのディケイドって、アマゾン関係の」

「違うと思うよ、僕は?」

 

千翼の問いかけに喰い気味で返す浅木。

グイッとお冷やをあおり、いいかい、と語り始める。

 

「アマゾン細胞はアーマーには出来ないんだよ」

「ネオはアーマー付いてるけど」

「あれは千翼君のアマゾン細胞が変質したモノだよ。ドライバーから発される特殊パルスでアマゾン細胞を金属レベルまで強化・変質させたもので、元となるアマゾン細胞の性質を引き継いでいるんだ」

「ディケイドは違うの?」

「おそらくね。千翼君の話を聞く限りではディケイドは自身の体を変質させているというよりは、アーマーを瞬時に装着しているものと考えられる。事実、千翼君の超感覚は変身後も全く反応がなかったんだろう?

仮にディケイドのアーマーがアマゾン細胞から作られているとしても、そんなモノを人間が纏えばどうなると思う?」

「・・・アーマーに喰われる?」

「その通り!アマゾン細胞とは、すなわち人喰い細胞だ。少量なら問題なくとも、全身を覆うほどの量があれば瞬く間に喰い尽くされるだろう」

 

そこまで語った浅木は再びお冷やを煽り、僕のまだかなーと厨房に視線を送る。

千翼は自分の定食をほぼ食べきり、でもさーと浅木に問いかける。

 

「ならディケイドって何者なんだろ。『仮面ライダー』って言ってたけど」

「ふむ。『仮面ライダー』は確か都市伝説だね。知ってるかい?」

「初耳だよ。どんな都市伝説なの?」

「文字通り、『仮面』の『ライダー』さ。異形の怪物と戦う、仮面を付けたバイクライダーの噂だよ」

「少し前のアマゾンみたいだね」

「あー、アマゾンも噂になってたからねー。

で、ディケイドが何者かだっけ?突飛な話になるけど、別世界から来たとか?物質の瞬間生成なんてこの世界では発明されてないからね」

「確かに突飛だけど・・・それなら未来から来た可能性もあるんじゃないの?」

「・・・ああ、確かにそうだね!いやー千翼君は目の付け所が違うなあ!」

「それほどでもー。ふう、ご馳走様でした!」

「あれ、僕のカレーうどんは?・・・ああ、来た来た」

「待たせたな、カレーうどんだ」

「白衣のままカレーうどんを食べるのか・・・」

「ふっふっ・・・何を隠そう僕はカレーうどんを食べる達人!この白衣を汚さずに食べきって魅せよう!」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「千翼君、最後まで見ないで行っちゃったよ・・・」

「残念だったな。・・・本当に汚さずに食べ終えたのか」

 

「ちょっと気になることがあるから」と千翼が去った後の食堂。

厨房の主である天道は浅木に食後のお茶を出していた。

 

「ふうー、美味しかったよ。君が厨房を取り仕切るようになってから、ご飯が楽しみになったよー」

「お粗末様・・・料理人冥利に尽きる言葉だ」

「・・・」

「・・・」

 

しばらく無言の時間が続き

 

「浅木、とか言ったな」

「うーん?」

 

天道が口火を切った。

 

「何が目的で千翼に近付いた」

「フフッ」

「お前が野座間でアマゾン細胞の研究をしていたことは知っている。さらに言えばアマゾン細胞を発見したチームにいたことも、な」

「よく調べたね。大体は鷹山さんの情報しか出てこないはずなのに」

「・・・何が目的だ」

「何がって言われてもなあ・・・。まあ強いて言うなら、千翼君の観察?かな?」

「それだけか」

「そうだよ?」

「お前は≪組織≫と繋がっているんだろう」

「まあそうだけど」

「千翼の観察は≪組織≫からの命令か」

「いや、完全に僕の趣味だ。≪組織≫の命令はアマゾン細胞の研究・兵器転用ぐらいだよ」

「それを信じろと?」

「信じてもらうしかないよ。僕は千翼君のことは興味深い観察対象兼友達と思っているんだから」

 

天道はニコニコ笑う浅木をしばらく睨み付けた後、ため息を吐いた。

 

「・・・嘘は言っていないようだな」

「おや、信じてくれるのかい」

「これでも人を見る目はある。お前は善人ではないが、嘘はついていない」

「さすがは≪太陽の神≫、お目が高いね!」

「最後に一つだけ聞かせろ・・・お前は、敵か味方か」

 

天道の問いかけに首を捻りながら浅木は答える。

 

「なんとも言いがたいね・・・。君達にとってはどうか分からないけど、僕は千翼君の味方のつもりだよ」

「そうか・・・」

「そうとも!千翼君は敵だらけだからね、彼を気に入ってる僕くらいは味方でいないと!

ああ、そうだ。君のことは≪組織≫には報告しないでおくよ。そっちのほうが面白そうだからね!」

「変わったヤツだ。・・・そういえば千翼はどこに行った?」

「さあ?気になることがあるーって言ってたけど?今回の事件のことかな?」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

野々森耳鼻科医院の近く。

すでに現場は片付けられ、つい数時間前まで悍ましい食事や激しい戦闘があったとは思えない。

周辺住民にはアマゾンが住み着いていたことが説明された為、近付く者もない。

そんな病院を近くの生け垣から監視する人物がいた。

 

「張り込みは捜査の基本・・・!そして張り込みにはあんパンが基本・・・!」

 

頭悪そうなことを呟きながら、千翼はあんパンを食べながら病院を監視していた。

 

「俺の考えが正しければ、犯人はここに来るはずだ・・・!」

「お前はコナン君かよ」

「そうそう、見た目は高校生ぐらいだけど、実年齢は5歳なんだ。・・・あれ?」

「あんパンしかないのかよ。クリームパンも買ってこい」

 

ジャングレイダーのハンドルに引っ掛けてあるコンビニの袋を勝手にあさる男がいつの間にかいた。

 

「お前は・・・ディケイドの人!俺からまた奪うつもりか!」

「あんパン一個に大げさだろ・・・」

「何しに来たんだ、ディケイドの人!」

「そのディケイドの人っての止めろ!俺には≪門矢士≫って名前があるんだよ!」

「もやし・・・?」

「なんでそうなる!?」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「で?何しに来たの?人の食べ物とったら泥棒なんだよお巡りさんこいつです」

「まだ取ってねぇよ!誤解だお巡りさん!」

 

何とか巡回中のお巡りさんを追い払った士。

恨めしげに千翼を睨む彼に千翼は再度何をしに来たのか問いかける。

 

「別に。偶々お前を見かけたから来ただけだ。お前こそ何しに来たんだ?おこぼれでも漁りにきたのか?」

「違う。俺はおこぼれを漁るヤツを探しに来たんだ」

「ハァ?どういうことだ」

「それは・・・来たみたいだ、隠れて!」

 

何かを感じ取った千翼は士を生け垣の陰に引きずり込む。

そっと病院を覗き込むと、病院の前には一台のトラックが止まっていた。

どこにでもある平凡なトラック。食品や荷物を運ぶようなよくあるトラックだ。

 

「なんだあのトラック」

「荷物を運んで来たんでしょ」

「誰もいない病院にか?一体何運んで来たんだ」

「多分、ウォーターサーバーのタンクだ。運転手が病院に入った!行くよ!」

「おい、千翼!」

 

裏口から病院に入っていく運転手に気付かれないようについて行く二人。

頑丈そうな大きな黒い袋を持った運転手は治療室に入り、辺りを見回していた。

 

「おかしいなあおかしいなあ。誰もいない。においはあるのに」

「何があるんですか?」

「ここは今日付で閉院だぜ」

 

バッと振り返る運転手。目深に被った帽子で目元はよく見えない。

 

「どちらさまですか。閉院って」

「ここの医者と看護師、アマゾンだったんだよ。今日死んだけど」

「そうなんですか。じゃあ私は失礼しま」

「捜し物って食べ残しでしょ?」

「・・・」

「どういうことだ千翼」

 

千翼は士の問いかけに自信ありげに答える。

 

「新型のアマゾンは偏食なんだよ。人間の特定部位に異常なまでの執着を持ってるんだ。その部位だけを好んで食べる。逆に言えば、それ以外の部位にはあまり手を付けないんだ」

「だから偏食か。確かここのアマゾンは人間の内臓だったか」

「そ。人間一人で二人分。なら余った外側は?当然処理するしかない。遺体は腐る、傷があれば腐敗速度も速くなって異臭騒ぎでアマゾンの存在がバレる」

「つまりコイツは」

 

話し始めてから二人に背を向け、診療台に手を付く運転手を見ながら千翼の話は続く。

 

「コイツは≪腐肉食アマゾン≫(スカベンジャー)だ。食べ終わった後のおこぼれをターゲットにして、自分の食料調達とアマゾン達の存在を隠すことが目的だ」

「なるほど。食い荒らされた遺体が見つかれば当然アマゾンの仕業だってバレる。コイツはそれを掃除してんのか」

「そういうこと。自然界のスカベンジャーも死骸を分解して自然に還る手助けをしてる。コイツは遺体を食べることでアマゾンの存在を隠す手助けをしてるんだ。どのタイミングでアマゾンになったのかは分からないけど、感染源のタンクを運搬するコイツは人目に付かないように遺体を処理するにはうってつけだったんだろうね」

「・・・・・・ゥゥ」

 

背を向けた運転手は小さく唸り声を上げる。

二人は油断なく構え、男の動向を監視する。

 

「さあ、年貢の納め時だ。大人しくぶっころ・・・」

 

「ウウウゥオオオオオオオ!」

 

「「危な!」」

 

運転手は咆哮と共に振り返りつつ、診療台を引き抜き二人目がけて投げつけた。

間一髪、診療台を躱した二人だが、その隙に運転手は走り出す。

 

「無事か、千翼!」

「大丈夫!アイツは」

 

走り出した運転手はガラス張りのドアを突き破り、トラックに乗り込み逃走を開始した。

 

「アイツ・・・!逃がすか!」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「自分のバイクは!?」

「悪い!置いてきた!」

「乗って!」

「助かる!」

 

明らかに法定速度を無視した速度で走るトラック。

千翼と士はジャングレイダーに二人乗りし、それを追っていた。

 

「飛び移って、引きずり出そう!」

「んな危ないこと出来るか!タイヤを撃ち抜く!そのまま近づけろ!」

「了解!」

 

爆走するトラックから引き離されないようにスピードを上げる千翼。

士は懐から取り出した≪ライドブッカー≫をガンモードに変形させ構えーーー破裂音。

 

「一発で当たった!」

「この距離で外すわけ無いだろ!倒れるぞ!」

 

後輪を撃ち抜かれたトラックはバランスを崩し転倒ーーーその直前にフロンドガラスが割れ、黒い影が飛び出す。

 

「逃げたぞ!」

「逃がさないよ!」

 

走行している車の上を飛び移りながら逃走を続ける黒い影。

千翼達は天井への衝撃でブレーキやハンドルを切った車をすり抜けながら追跡を続ける。

やがて黒い影は道路脇の立体駐車場に飛び込むが---

 

「ハイどーん!」

「ギャイン!」

 

スピードを緩めず突っ込んできたジャングレイダーに跳ね飛ばされ、地面を転がる。

体勢を立て直す頃には、千翼と士はジャングレイダーから降りそれぞれのドライバーをセットしていた。

 

「へぇ、コイツは・・・」

 

士が体勢を立て直したアマゾンを見て納得したような声を上げる。

褐色の毛皮にイヌ科の動物のような顔。全身の骨格に沿うように白い骨のようなものが突き出し、鎧のようになっている。そして明らかに短い脚・・・

 

「ハイエナだね。なるほど死体を片付けるには適任だ。彼らは屍肉を漁るだけじゃなく、骨まで食べるからね」

「お前の予想通りか、さすがアマゾン王子だな」

「それ俺のこと?っと」

 

自分の目の前で話し続ける獲物に業を煮やしたのか飛び掛かったハイエナアマゾンは、咄嗟に繰り出した千翼の上段蹴りに吹き飛ばされる。

 

「あっちも待ちきれないみたいだな」

「うん、行こうか!」

 

士がドライバーにカードを、千翼がインジェクターを装填する。

 

〈NE・O〉

 

アマゾン!

変身!

 

≪KAMEN RIDE:DECADE!≫

 

千翼の体を紅い爆炎が覆い、士に九つの影が重なりその姿を戦うための身体へと変える。

世界を渡る破壊者『仮面ライダーディケイド』、そして新世代のアマゾンでありアマゾンを狩る者『アマゾンネオ』。

ネオは静かな息吹と共に腰を低く落とし、ディケイドはライドブッカーをブレードモードに切り替え左手で撫で上げる。

 

「さあ」

「征くぞぉ!」

 

「ガアァアァァア!」

 

咆哮と共にディケイドに向かい飛び掛かるハイエナアマゾン。それに同じく咆哮を上げながらネオが飛び掛かり、空中で組み付き背中から地面に叩き落とす。

即座に体勢を立て直したハイエナアマゾンはネオを切り裂こうと鋭い爪を閃かせるが、両腕の装甲に受け流され逆に腹にカウンターを打ち込まれる。

体勢を崩したハイエナアマゾンから一度距離を取るネオと入れ替わるようにディケイドが踏み込み、胴体目がけてブレードを振るうが・・・

 

「なにッ・・・!」

 

クロスさせた両手に甲高い音と共に弾かれる。骨格に沿う骨の鎧は予想以上の硬度を誇っており、カードにより強化されていないブレードでは切り裂くことが出来なかった。

ブレードを弾かれ体勢を崩したディケイドに向かい、牙を剥きだし噛み付こうとするハイエナアマゾン。

咄嗟にブレードを構え、噛み付きを刀身で受けるが・・・

 

「グギギギギィ!」

「嘘だろッ、!」

 

牙を突き立てられた刀身からミシミシと軋むような音が響き出す。引き抜こうとするがビクともせず、あわやそのまま刀身が砕け散るかと思われた瞬間、

 

「ハアァ!」

「ギァイン!」

 

ネオの拳が骨の鎧がない腹部の再び突き刺さる。その衝撃に顎の力が一瞬緩まり、その隙にブレードを引き抜きハイエナアマゾンを蹴り飛ばすディケイド。

 

「どんだけ顎の力強いんだよ・・・」

「フゥゥゥ・・・ハイエナの顎の力は、かなり強いんだよ。彼らはその咬合力で骨まで噛み砕くんだ」

 

呆れたように呟くディケイドにネオが返し、再び唸り声を上げながらハイエナアマゾンに躍りかかる。

アマゾンは実在する動植物の特性を強く受け継ぐ。その特性を知るために千翼は多くの動植物の特性を調べ、対象がどのような戦いをするか予想を立てて戦闘を行っている。

最も、このハイエナアマゾンのように捕食した骨を鎧して纏うといった自然界にはない能力を持つアマゾンも存在するのだが。

そのハイエナアマゾンに噛み付かれたブレードの刀身には亀裂が走り、骨の鎧を斬り付ければ折れてしまいそうだ。

 

「コイツは使えないな。なら・・・コイツだ」

 

ブレードを折り畳み、ライドブッカーから一枚のカードを取り出し、ドライバーに装填する。

 

≪KAMEN RIDE:AMAZON!≫

 

「今なんて?」

 

ドライバーから流れる音声に思わず聞き返すネオを無視し、ディケイドの額にある『シグナルポインター』から赤い光が走りその姿を変える。

機械的だったアーマーは緑に赤いラインが走る有機的な姿に。両手足には鋭利なヒレが生えた手袋とブーツを。首元には白いスカーフを巻き、左腕には銀色の腕輪が。そしてその顔は、装甲を取っ払ったネオとよく似たものになっていた。

その姿こそ・・・

 

「アァマァゾォオン!・・・ってな」

「は?」

「グル?」

「・・・は?」

 

仮面ライダーディケイド・アマゾンである。

ネオは見事な二度見を披露し、ハイエナアマゾンでさえネオ越しにディケイド・アマゾンを覗き込む。

そんな両者を置き去りに、ハイエナアマゾンに飛び掛かるディケイド・アマゾン。

手足のヒレを振るい、ハイエナアマゾンを斬り付けていく。

我に返ったネオも同じくヒレ刃で斬り付けていく。

ブレードの斬撃には耐えた骨の鎧も、岩盤さえ切り裂く刃の前には効果を成さなかったようで、瞬く間に切り傷が増えていく。

抵抗しようと手足を振るおうとしても、ネオとディケイド・アマゾンの息の合った連携により弾かれ、カウンターを受け吹き飛ばされる。

 

「目には目を、アマゾンにはアマゾンを、ってな」

「いやいや、なにそれ!?アマゾンってアマゾン!?アマゾンにもなれるの!?」

「ああ。お前らの言うアマゾンとは別物だけどな。それよりチャンスだ、決めるぞ!」

「よくわかんないけど・・・分かった、いくよ!」

 

フラフラと立ち上がるハイエナアマゾンを向き直りながら、ディケイド・アマゾンは金色の紋章が描かれたカードをバックルに装填し、ネオもドライバーのスロットを操作する。

 

≪FINAL ATTACK RIDE:A・A・A・AMAZONN!≫

〈Amazon・Strike〉

 

「「ハアァーー!」」

 

ドライバーから音声が流れると共にネオとディケイド・アマゾンは飛び上がり、ハイエナアマゾンに腕を振り下ろす。

 

「ダアァァァア!」

「大・切・断!」

「ギイアアアアァァア!!」

 

振り下ろされたギロチンの如き腕はハイエナアマゾンの両肩を捉え、そこから一気に切り裂かれた。

絶叫を上がるハイエナアマゾンに、着地し沈み込んだ体を伸ばすように繰り出すダブルアッパーが炸裂し、吹き飛ばす。

天井にぶつかり、地面に叩き付けられたハイエナアマゾンは弱々しい断末魔を上げながら、粉々に爆発した。

 

「また爆発した・・・」

「当然だろ、怪人だからな」

「てゆーか『大切断』って・・・」

「なんだ。文句でもあるのか?」

「めっちゃ格好いいじゃん・・・!俺も使っていい!?」

「お、おう」

 

変身を解除しながら、向き合う千翼と士。

士が叫んだ必殺技が5歳児の心の琴線に触れたのか、自分も使っていいか確認を取る千翼と、引き気味にOKを出す士。

 

「やった・・・!そういえば、士はなんであそこに来たの?」

「・・・偶々だ。そしたら怪しいヤツがいたからな。それだけだ」

「ふうん・・・まあいいや。アマゾンは倒したし、帰るんでしょ?バイク置いてるとこまで送っていくよ」

「いやいい。俺には『コレ』があるからな」

 

そう言って士がスッと右手を上げると、士の背後に銀色のオーロラのようなものが現れる。

驚愕に目を見開く千翼に苦笑しつつ、オーロラへと足を進める士。

 

「じゃあまたな、千翼。そのうち会えると思うぜ?」

「待っーーー」

 

引き留めようと声を上げる千翼だが、士がくぐり抜けた瞬間オーロラは揺らめいて消える。

 

「なんだったんだ、あのオーロラ・・・ん?」

 

呆然とする千翼の耳にここ最近聞き慣れたエンジン音が届く。

〈4C〉が使う黒いトラックが目の前に停車し、黒崎が顔を出す。

 

「・・・道路をアマゾンが暴走してるっていうから来てみれば・・・千翼ォお前だったのか」

「・・・え?いやいや俺はその暴走してたアマゾンを追ってたんだけど・・・」

「言い訳は本部で聞いてやる」

「・・・・・・弁護士!弁護士を呼んでくれ!」

「アマゾンに人権はねーよ」

 

 

その後、アマゾンの爆死体が確認されたことで千翼の冤罪は晴らされたが、独断専行を咎められ〈4C〉が所有する車両の洗車を命じられる事となり、さらに≪腐肉食アマゾン≫(スカベンジャー)についての報告書の提出を求められる事になった。

 

 

 

 

なお提出した報告書は浅木がコーヒーをぶちまけた事により書き直しとなり、徹夜明けで切れた千翼が浅木にコブラツイストをかける姿が研究室で目撃されたそうだ。

 

「あぁぁぁさぁぁぁあぎいぃぃぃぃい!!」

「いだだだだだだだだだ、もげる!腕やら首やらもげるぅ!!」




>ダブル大切断
ディケイド出したのでやりたかった。

ノロノロ書いてる間に平成も終わり、ジオウも終盤。
コレでめでたく千翼君も令和ライダーですね!

・・・待ってってくれた人いるのかな?いたら遅くなって申し訳ないです。


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第16話

昨日までの作者―――
エボルアマゾン「最近アマチャレ書いてないな・・・まあいいか。面白いライダー物書く人たくさんいるし・・・」

今朝―――
或人社長「もっと情熱を持って漫画を書いてください!」

エボルアマゾン「(めっちゃ刺さる音)」

というわけで第16話です。
待ってた人には申し訳ないです・・・・・・
ではどうぞ。


―――影が、赤いシミと向き合っていた。

 

異様な光景である。

月明かりに照らされる影は肩から胸部、そして頭部に何枚ものプレートを差し込んだ様な出で立ちであり、目の前に浮かぶ赤いシミを油断なく睨みつつ手にした大型の拳銃の様な武器で肩を叩いている。

 

―――どこからか、悲鳴が聞こえる。女性のもののようだ。

 

対する赤いシミはなんの動きもないように見えるが、よく見るとシミから同色の滴が流れ落ちており、その流れが人の形を映し出す。

赤いシミの(おそらくは)足下には、胸を裂かれ肋をこじ開けられた女性の遺体が転がっている。

 

想像を絶する激痛(もしくは恐怖)を味わったのだろう女性の顔は歪み、涙や鼻水、涎でべたついている。

 

胸に納まるべき心臓はそこになく、宙に浮いている―――正しくは赤いシミが握りしめているのだろう。シミ―――返り血が五指と腕の一部を浮かび上がらせている。

不意にその腕が数十センチ上に向かい、次の瞬間心臓はきれいに消失した。

 

グチャグチャと咀嚼音が鳴り響く中、影は品がないな、とでも言うように鼻を鳴らし―――手にした大型の拳銃をシミに突きつけ、引き金を引いた。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「被害者は相森瑠璃子、26歳。OLですね。二日前の夜10時過ぎに会社の同僚と帰宅途中に攫われて、そのまま食べられちゃったみたいですね」

「二日前?うちに連絡があるまで随分掛かったね。同僚さんは無事だったんでしょ?」

 

まだ日も高い午後。黒い服で統一した(不審者の様な)集団と赤いストールを巻いた少年が公園の脇にある道路から数階建てのビルを眺めていた。

 

「どーも被害者、以前からストーカー被害を訴えてたみたいでね。警察はろくな対応してなかったのに、『ストーカー被害の可能性がある』なーんていって、自分たちで捜査しようとしてたみたい」

「ハッ・・・・・・、こっから向こうのビルの屋上まで人間引っ掴んで飛んでくストーカー?んなヤツいたらどっちにしろ警察の手に負えねぇだろ。連中、アマゾン絡みじゃ役立たずって言われてんの相当気にしてんだな」

「・・・・・・なにそれ。市民を守る警察が、自分たちの面子優先?その間に被害者が増えたら誰が責任取るの?」

「国家権力なんてそんなもんだろ。こっちがテメエら以上に優秀なのが気に入らねえから足引っ張る。末端はともかく、上はそんな感じだ」

「マジかよ国家権力ってサイテーだな!」

「お二人さーん?僕が国からの出向って忘れてませーん?」

 

まあ否定はしませんけど、と札森は呟き手に持ったタブレットを見ながら当時の状況説明を開始する。

 

「被害者の相森さんはストーカー被害を受けており、事件当日は会社の同僚・・・・・・あぁ女性の方ですねー。同僚とファミレスに向かいストーカー被害の相談をしてたそうです」

「OLが夜10時に何してんのかと思ったら・・・・・・女二人でそのストーカーに襲われたらどうするつもりだったんだぁ?」

「同僚は合気道習ってたそうです。二段だそうで。んで、相談が終わって帰りにこの道を通ってたら・・・・・・」

 

ちょうどそこです、と公園の入り口前を指さし

 

「そこを通り過ぎた時、同僚は被害者の少し前を歩いてたんですけど『ぐぇ』って声が聞こえて振り返ると」

 

つぃっと指を滑らせビルの屋上付近を指し

 

「あの辺に浮いてたそうです」

「浮いてたぁ?」

「ええ。当時公園でたむろしてた奴らが動画撮ってるんですけど・・・・・・見ます?」

 

気乗りしなさそうにタブレットの画面を黒崎と千翼に向け、動画を再生する札森。

 

「・・・・・・ほーう、マジで浮いてんじゃねえか」

「首を掻きむしってるね・・・・・・見えないロープで吊られてるみたいだね」

 

タブレットの画面にはビルの屋上付近に浮かぶ被害者の姿が映し出され、女性の悲鳴や若者の喧噪が聞こえてくる。

街灯にライトアップされた被害者は足をバタつかせ首の辺りを掻きむしっている。その顔は赤く染まり、口の端に泡が浮かんでいる。

そしてゆっくりと被害者の体が上昇し、腰の位置が屋上の手すりを少し超えた辺りで髪を振り乱しながら頭を振るい―――

 

胸元にパッと赤い華が咲いた。

 

「うわ」

「えげつねえな」

 

タブレットからは悲鳴と絶叫。映像がブレ、暗転。

 

「えー以上が当時の状況になります。この後の流れは通報を受けた警察が屋上で死亡している被害者を発見。死体には心臓がなかったそうです」

「え?死体って屋上で見つかったの?」

「妙な話だな、そりゃ・・・・・・」

「え・・・・・・なんかおかしなとこでもありましたか?」

「いやほら、ここおかしいでしょここ」

「あーやめてやめて、スプラッターとかゴアとかいきなりはダメでしょ!」

「〈4C〉にいるヤツが何言ってんだ」

 

タブレットの画面を操作し千翼が映し出したのは、ちょうど被害者の胸が裂かれるシーン。

 

「うえぇ、やっぱキツいでしょ・・・・・・でコレが何なんですか」

「ここで殺す必要ないよね、これ」

 

アマゾンの『殺人』とはイコール『食事』である。獲物を捕らえ喰らう、その結果として殺人になるのだと千翼は言う。

被害者が宙づりにされて殺され、心臓つまり偏食部位を取り出したのなら残りの死体はそのまま放り出され、ビルの下に墜ちるはずだと。

 

「それにこの殺し方だ。餌にありつきたいアマゾンが態々こんな風に見せつけるように殺すか?」

「攫った人を安全な場所で食べたいんなら、屋上に引きずり込んでそこでバラすでしょ。それを態々見せ付けるような殺し方をしてる・・・・・・コイツは殺し方が人間的な意味で猟奇的なんだよ」

「はー、気持ち悪いくらい冴えてますね」

「なんで馬鹿にされてんだ」

「・・・・・・つまりコイツはこういう風に殺すってことだ。こんな見せつけるような殺り方してたらもっと前にうちの情報部が拾ってくるだろ」

「それがなかったって事は、コイツはつい最近アマゾン化したって事ですかね?」

「もしくは、前のハイエナ野郎がコイツの食い残しを回収してた可能性もあるな・・・・・・千翼ぉ、この辺にアマゾンの気配とかねえのか」

 

黒崎から問いかけられた千翼は周囲をしばらく見渡していたがややあって首を振った。

 

「少なくともこの辺にアマゾンはいないよ」

「まぁそうだろうなぁ。二日も同じ所に居座る間抜けはいねえよな」

「それに透明になるアマゾンですよ。どーやって見つけるんですかね」

「取りあえず藤尾隊に追わせる。バロンなら見えなくても匂いで追えるだろ、っと・・・・・・」

 

黒崎はおもむろに時間を確認し、「今日はここまでだな」と呟く。

 

「時間だ、あがるぞ。札森、藤尾隊に引き継ぎだけしとけ」

「はーい、お疲れ様でーす」

「じゃあ俺先に帰るね。今日検査の日だから」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「いやあ、検査は大変でしたね・・・・・・」

 

数時間後、〈4C〉の一室で検査を終えた千翼が肩のコリをほぐすように腕を回していた。

千翼は〈4C〉にとって貴重な生きたアマゾンである。そのため定期的に薬物の投与における生体反応を観る検査が行われている。アマゾンにはどんな薬物が効果的なのか、食人衝動を抑えるまたは取り除くことが可能なのかといった研究が日夜行われている。

もっとも食人衝動に関する実験は、千翼自身に現状ではそこまで強い食人衝動が発生している様子が見られないため、あまり進んではいないようだ。

 

「千翼君、君の検査が長引いたのは私の責任だ。だが私は謝らない。何時の日かこの検査がきっと君の食人衝動を止めてくれると信じているからだ」

「別に怒ってないですよ、柳生さん。俺にもメリットのある検査ですし」

「そう言ってもらえると気が楽だ。局長からは早く結果を出せとせっつかれていてな。・・・・・・次は浅木君のところに向かってくれたまえ。ドライバーの強化プランについて意見を聞きたいそうだ」

「分かりました、失礼します」

 

検査室を出て浅木の研究室に向かう千翼。廊下の窓からは夕日が差し込み、外を見ると木々や建物が長い影を引いている。昔、母と野山で暮らしていたときに見た夕日を思い出しながら廊下を進んでいき、しばらくして浅木の研究室まで辿り着いた。

 

「浅木さーん、入るよー」

 

ノックをすることなく扉を開くと、そこには一人の男がいた。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・えっ、と。誰?」

 

見たことのない男だった。180㎝はあるであろうすらりとした金色に近い茶髪の青年で、不敵な笑みえを浮かべながら横目で千翼を見ている。

右手に持った青い大型拳銃の様なもので肩を叩き、左手には―――

 

「俺の、ドライバー・・・・・・!〈4C〉の人じゃないな、あんた一体・・・・・・!?」

「・・・・・・」

 

男は答えず、代わりに千翼の左手側に視線をやった。つられて千翼がそこに視線を向けると―――

 

「ぅぅ・・・・・・」

「!浅木さん、大丈夫!?しっかり!」

 

この研究室の主であるはずの浅木が床に倒れていた。慌てて駆け寄ると意識はあった様で、血の匂いもしなかった。

 

「彼が・・・・・・急に、入ってきて、殴られて、調整、中の、ドライバーを」

「ッ!お前・・・・・・!」

 

浅木も言葉を受けた千翼は男を敵と認識し、ドライバーを取り返そうとするが、男はすでに銃をこちらに向けていた。

ただの銃なら迷い無く飛び込んでいただろうが、照準は千翼ではなく倒れた浅木に合わせられていた。

動けば撃つーーー男の無言の警告の前に歯がみする千翼。銃を構えたまま視線と照準を外すことなく、男は研究室を横切り、最後まで一言も発することなく扉をくぐり、姿を消した。

すぐさま追いかけ様とする千翼だったが、浅木に引き留められる。

浅木は机の上を指さし、「持って、行きなさい」という。机の上を千翼が見ると、そこには―――

 

「旧型のドライバー・・・・・・!?」

「予備として、君が使える様に、調整してあるから、気を、付けるんだ・・・・・・!彼は何か、普通じゃ、ない・・・・・・!」

「わかった、気をつける!すぐ、戻るから!」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

いいお宝を手に入れたと男は思う。

この世界に来た時はいきなり殺人現場に出くわしたが、些細なことだった。襲いかかって来た姿の見えない怪物も簡単に撃退できた。

この世界に一つしかないこのドライバーも手に入れることが出来た。後は自分の街に帰るだけだ―――。

 

―――無論、そんなことを許す千翼ではないのだが。

 

正面ゲートから悠々と逃げ出した男を追うため、千翼は三階のガラスを突き破り男の数メートル後ろに着地した。

ドライバーを返せと気炎を上げる千翼に対し男は呆れたように首を振ると、一枚のカードを取り出した。

見覚えのあるカードに千翼が門矢司の関与を疑うまもなく、男はカードを銃―――<ディエンドライバー>に装填、銃身をスライドさせトリガーを引いた。

 

≪KAMEN RIDE≫

―――変身

≪DIEND!≫

 

銃口から青いプレートが射出され、男の周りに赤・青・緑の影が現れる。三色の影は交差しつつ男と重なり、黒いアーマーとなった。

射出され滞空していた青いプレートが頭に突き刺さると同時に黒一色だったアーマーに青い色が生まれ、変身が完了する。

仮面ライダーディエンド、別世界から現れたディケイドと同システムのライダーだ。

対する千翼も浅木より託された旧式のアマゾンズドライバーを装着、アクセラーグリップを回すと垂れ目の様に見えるコンドラーコアが赤く発光し、特殊パルスが千翼のアマゾン細胞を刺激する。

 

〈ZETA〉

「アマゾン!」

 

いつものように叫ぶと千翼の体が紅い爆炎を一度だけ放ち、その姿を変える。青い体に血管のような赤いラインが走り、手足には黒いグローブとブーツを装着、胸部は銀色の鱗が集まり鎧のような質感を持っている。頭部はネオの時に装着されていた銀色と黒のプロテクターは全て取り払われ、バイザーによって隠されていた紅い垂れ目が露わになり、さらに顎の拘束も解かれクラッシャーが自由に開閉できる様になっている。

もしもこの場に水澤悠がいたならば千翼の姿を見てこう言うだろう。「前の仁さんみたいだ・・・・・・」と。

ゼータへの変身を完了した千翼はネオの時より軽い体に少し驚くが、すぐさま腰を落とし戦闘態勢を取る。

そしてディエンドがゼータに銃口を向け引き金を引くより早く、その体をバネの様に縮めると一気に相手の懐まで飛び込んだ。

 

「体が・・・・・・!」

「―――!」

「軽い!」

 

ゼータのスピードに対応出来ないディエンドを腕の≪シェルカットグローブ≫に備えた≪アームカッター≫を振り上げ、斬り付ける。その場でゼータは軽く飛び上がり、ドロップキックでディエンドを蹴り飛ばす。

吹き飛ばされたディエンドは素早く体勢を立て直し、ゼータに銃口を向け引き金を引く。青いエネルギー弾がゼータに迫るが、プロテクターと拘束具を排除したゼータを捉えることはできず、横っ飛びに躱される。

ゼータが離れた隙にディエンドは銃身を引き戻し、新たに取り出したカードを装填し再度銃身をスライドさせ、銃口をゼータへと向け引き金を引く。

 

≪KAMEN RIDE:RIOTOROOPER's!≫

 

銃口からエネルギー弾は赤・青・緑三色の影となり、交錯することで実体化し三体のライオトルーパーとなる。

 

「増えた!?」

 

ディケイドとの違いに驚くゼータに対してライオトルーパー達は≪アクセレイガン≫を構え、突撃してくる。

しかしそれより早くゼータは跳んでいた。一番前にいたライオトルーパーを殴り飛ばし、勢いを殺さず後ろ回し蹴りで次のライオトルーパーを吹き飛ばす。

最後のライオトルーパーが突き出した≪アクセレイガン≫を持つ腕を左腕で押さえ込み、右手で相手の頭部を鷲掴みにし、咆哮と共にクラッシャーを開くと装甲のない首筋に噛み付き、そのまま噛み千切った。

首筋を食いちぎられ許容量を超えるダメージを受け消えゆくライオトルーパーを尻目に、ゼータは両手を天に掲げ咆哮を上げる。

 

〈Violent・Slash〉

 

アクセラーグリップを回すことでコアユニットから特殊パルスが再度発生し、両手足のカッターが強化され鋭利に伸びる。

再度突撃してきた二体のライオトルーパーをすれ違いざまに両断し、発生した爆炎をくぐり抜けディエンドに飛び掛かろうとし、

 

「・・・ッア!?」

 

ガクン、とゼータが不自然に停止した。

 

「な、なにが・・・・・・!?」

「・・・・・・残念だったな」

「ッ!ジャングレイダー・・・!」

≪ATTACK RIDE:BLAST!≫

 

その場に縫い付けられたかのように身動きが取れず困惑するゼータに銃口を向けるディエンド。咄嗟にジャングレイダーを呼び出そうとするゼータだったが、ライオトルーパーとの戦闘中に装填していたカードが発動された。

至近距離から無数の青いエネルギー弾に撃ち抜かれ吹き飛ばされるゼータ。致命傷ではないが直ぐには起き上がれない事を確認したディエンドはゼータに背を向け、無いもない空間に手をかざす。しばらくすると銀色に揺らめくオーロラが現れる。

ディエンドはオーロラに向け足を進め、潜る直前で立ち上がったゼータを肩越しに振り返る。

 

「待て・・・!」

「さようなら、怪物クン(モンスター)

 

その言葉を最後にオーロラを潜るディエンド。それを追おうとするゼータだがダメージが大きくスピードが出せない。

このままではオーロラが消えてしまうと焦るゼータの耳に獣の唸り声の如きエンジン音が届く。振り返るとジャングレイダーがゼータに向けて走ってきていた。ディエンドに撃ち抜かれる前に呼んでいたのが今まさに到着したのだ。

 

「ラッキー・・・・・・!これで!」

 

ジャングレイダーにスピードを緩めずに突っ込んで来るように指令を出し、すれ違いざまに飛び乗る。

そのままアクセルを開き全速で消えゆくオーロラに突っ込んでいくゼータ。

 

「間に合えぇぇ!!」

 

そしてこの日より千翼はしばらくの間、この世界より姿を消すこととなる。

来訪者を追い、彼が辿り着いた世界は―――

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「いやぁ参ったな・・・・・・」

 

三階の廊下から一部始終を見ていた浅木は困った様に笑いながら殴られた腹部に手を当てながら呟く。

 

「海東大樹・・・・・・まさかネオアマゾンズドライバーを狙って来るとはね。流石に予測できなかったよ。」

 

しかし、と浅木は思考する。ディエンド、海東大樹はターゲットにしたものを手に入れるためなら手段を選ばない男である。

 

「けれど彼にしてはスマートさに欠ける。さっきの戦い方もどこか妙なものがあるような・・・・・・?」

 

自身が所属する組織で情報を見ただけだからだろうか。こそ泥だの何だのひどい書き方だったが、百聞は一見にしかずと言うし。それよりも・・・・・・。

 

「千翼君まで行っちゃうとはねぇ。まあディケイドがいるから帰って来られるとは思うけど。さてと、今回の件を報告してさっさと千翼君とイユの強化プランを形にしないと」

 

困った困ったと笑いながら浅木はその場を後にする。階下では戦闘音を聞きつけた者たちが今更集まって来ている。そんな者たちにはまるで興味が無いように浅木は歩む。

今、彼の頭の中を占めているのは千翼とイユの強化プランの事と、廊下の先で腕組みをしながらこちらを睨み付ける天道総司にどう言い訳をするかだけだった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

オーロラを抜けると、そこは薄暗い廃倉庫だった。

 

ジャングレイダーはスピードに乗ったまま倉庫内を走り、目の前にはドラム缶や古い木箱が積み上げられた壁が迫る。

慌ててブレーキを掛けたが、時すでに遅し。バイクは急には止まれない。

「アッーーーー!」という悲鳴と共に轟音が倉庫内に鳴り響く。ホコリが舞い上がり、一時的に視界が遮られる。

ホコリが収まるとゲホゲホと咳き込みながらホコリまみれのゼータが廃材の山から這い出してくる。そこで限界が来たのか変身が解け、ゼータから千翼へと姿が戻る。

ごろりと寝転がった千翼は周囲に人の気配がないことを確認する。どうやらディエンドには逃げられたようだ。

それでもここがどこか確認しなくてはならない。なにせ〈4C〉の正面ゲート付近からいきなりどこともしれない倉庫の移動したのだ。

倉庫の中に吹き込む風は肌寒く、天窓から星空が見えることから夜になっているようだ。

 

「さっきまで夕方だったはずなのに・・・」

 

よいしょっ、と廃材の山からジャングレイダーを引きずり出す。そのまま異常が無いことを確認し、ジャングレイダーを押しながら倉庫の出口を目指す。

 

「けっこう時間が経ってるみたいだ・・・・・・取りあえず〈4C〉に連絡しないと・・・・・・!?」

 

倉庫からでた千翼の目に外の景色が飛び込んでくる。

船着き場にある倉庫だったらしく波の音が響いている。これはいい、自分の鼻はホコリっぽい場所でも問題なく磯の匂いを嗅ぎ取っていた。

空には満月が浮かんでいる。これはどうだろう?昨日見た限りでは月は三日月だったような気がする。自分の記憶違いかもしれないが。

船着き場の向こうには街が見える。見知った自分の街とは少し違う町並みの中に一際大きな建造物が見える。あれは―――

 

「風車・・・?あんなに、大きな・・・・・・!?」

 

驚愕する千翼の横をふわりと風が通り抜け、近くに設置されていた風車をカラカラと回す。

異なる世界からの来訪者である千翼を歓迎するような優しい風が吹く。

 

―――ビルが溶け、人が死ぬ。

―――それは、この街では良くある出来事。

―――だが、この街には探偵がいる。

―――どんな時でも助けてくれる、

―――二人で一人の名探偵が―――

 

―――ここは小さな幸運も、大きな不幸も常に風が運んでくる、風の街。

―――≪風都≫




書き終えたエボルアマゾン「(書き終え内容を見ながら)どういうことなの・・・?」

どうしてこうなったのかも作者には分かりません。
分かりませんが≪風都編≫開幕です。

次回≪Aが駆け抜ける!/風の街より≫をお楽しみに(自らハードルを上げるポンコツ作者)。


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第17話

風都編はっじまっるよー⤴


「一体どういうことだね・・・・・・!」

「こっちが聞きたいくらいですよぉ・・・・・・!なんなんすかこの動画ァ!」

 

〈4C〉の無駄に広い局長室に困惑した声と怒鳴り声が響く。橘、黒崎、札森、加納の四名はモニターに映し出された昨日の正面ゲート監視カメラの映像を前に頭を抱える。

 

「賊が侵入したのは、まあいいとしよう。新型のドライバーが賊の手に渡ってしまったのも百歩譲ってよしだ。それを追った千翼と賊が戦闘になったのもまあ仕方ない。が!最後ぉ!賊ごと千翼が消えたのはどういうことだね!?」

「こっちが聞きたいっていってんだろぉ!―――ッァ、頭、痛え・・・・・・!」

 

苛立ちを隠すように室内を行ったり来たりしていた橘だったが、限界を迎えたのか声を荒げる。同じく既に限界を迎えていた黒崎が橘に対し怒鳴り返し、持病の頭痛が発生したのか片手で額を押さえ、ピルケースから取り出した錠剤を飲み込む。

 

「いやぁ、でも正直これは僕らの手に負える問題じゃ無さそうですよ・・・・・・?」

「ええ、私もそう思います。腕輪の信号はあの銀色のオーロラを潜った瞬間から完全に消失しています」

「何ですかねあのオーロラ。あの世にでも通じてるんですかね?」

「くだらない冗談を言ってる場合かね、札森!捕獲したアマゾンが脱走したとでも一部の政府関係者に知られてみたまえ!妙な横やりを入れられてこちらの足を引っ張ろうとするのは目に見えている!」

「やっぱ国家権力ってサイテーなんですね」

 

他人事のようにのたまう札森に「君の出向元だろう!」と顔を真っ赤にして怒鳴ろうとした橘だったが、すんの所で思いとどまり、一度深呼吸を行い気持ちを落ち着け「兎も角だ」と切り出す。

 

「先ほども言ったように千翼が行方不明となった事は、政府には報告しない。業務は通常通り行い、選抜した最小メンバーで千翼の捜索を行う事とする。黒崎、先日の事件だが千翼がいなくとも解決は出来るだろうの?」

「・・・・・・はぁ。ええ、問題無いです。元々、アイツが来る前からチームは問題無く機能してましたから」

「それならいいが、今回ターゲットは透明なアマゾンという報告を受けてるが・・・・・・」

「藤尾隊がバロンにヤツの匂いを追わせてるとこです」

 

頭痛薬が早くも効いてきたのか、米神を揉みながら答える黒崎。

 

「なるほど。姿が消せても匂いまでは、と言うことかね」

「バロンに大体の居場所を特定させてドローンで塗料をぶちまけて、ターゲットを視認可能状態にする。そのうえで特殊ペイント弾をぶち込んで、万が一逃がした場合も継続してバロンが追跡出来るようにしてやりますよ」

「よし。では引き続き進めてくれ。千翼の件は追って連絡する」

「了解、行くぞ札森」

「失礼しまーす」

 

黒崎と札森が局長室より退出し、後には橘と加納が残される。モニターには正面ゲートでの千翼と侵入者の戦闘がループ再生されている。

加納は感情の読めない目でそれを見ながら呟く。

 

「無事だといいのですが、千翼君」

「全くだ」

 

でなければ自分の立場が危うくなる、橘はそう独りごちた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

≪Aが駆け抜ける!/風の街より≫

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

この街では風が様々なものを運んでくる。幸福、不幸、喜び、悲しみ―――力。

風が運ぶものたちはときにすれ違い、ぶつかり、混ざり合って新たな風になる。悲しいかな、それがいい物とは限らないのが世の常ってやつだ。

そんな『良くない風』は時としてこの街の住人を傷つけ、悲しみの涙を流させる。じゃあ誰がその涙を拭うか、分かるか?

警察?ああそうだな。大概の事件は警察が何とかしてくれる。けれど―――それでもどうにもならないとき、街の住人はこの事務所のドアを叩く―――この『鳴海探偵事務所』のドアを!

そしてまた、今朝の爽やかな風が一人の依頼人を運んで来た―――

 

「―――と、いった感じのモノローグをしていたね、翔太郎?」

 

二十歳よりかは下だろうか、髪をクリップで止めハードカバーの本を持った美青年の指摘に、ブッと飲んでいたコーヒーを吹き出す帽子を被った青年。ゴホゴホと咳き込みつつ、くつくつと笑う美青年を睨み付ける。

 

「おいフィリップ!お前いつから人の頭ン中が読めるようになったんだ!?」

「フフッ、実は昨日新しい検索対象を見つけてね・・・君は知っているかい?『読心術』というものを!」

「読心術ゥ!?」

「ああ!顔の表情の動きや仕草、体の筋肉の動きなどから相手の考えを直感的に相手の心の中を読み取る術さ。特に君とは長い付き合いだから僕との相性もバッチリだ。考えていることは手に取るように分かったよ。さらにこの読心術を使えば―――」

「分かった!分かったからちょーっと黙っててくれるか相棒!依頼人の前だから、な!?」

 

渋々といった様子で部屋の中央にある椅子に腰掛けるフィリップを横目に見ながら、ッンンっと咳払いをしながら対面のソファーに腰掛ける女性に意識を戻す翔太郎。二十歳前半の気の弱そうというか儚そうな印象を受けるスカーフを巻いた女性だ。二人のやりとりを聞いてナニを想像したのか顔を赤らめながら、両手で包み込んだコーヒーカップを啜っている。

 

「失礼、お嬢さん。相棒は優秀なんですがちょっとばかり変わってましてね」

「いえその、た、大変『仲がよろしい』んですね・・・・・・?」

「お嬢さんが想像しているのとは多分、いや絶対違うと思いますけど!?」

 

慌てて疑惑を否定する翔太郎。ただでさえイレギュラーズから疑惑の視線を向けられる事があるのだ。勘弁して欲しい、自分も相棒もノーマルだ。

翔太郎の力強い否定に驚いたのか縮こまり、「す、すみません・・・・・・」と小さく謝罪の言葉をこぼす女性。

 

「ええっとそれで、どこまでお話したんでしたっけ・・・・・・?」

「ウチに依頼をしたいってところまでですね。良ければ美しい貴女の名前を教えてくれませんか・・・・・・?」

「う、美しいなんて・・・・・・私は『崎下あや』といいます」

「あやさんですか、美しい貴女にぴったりの名前ですね」

「翔太郎、話が進んでないよ。それと彼女は僕の『読心術』によれば、君に媚びを売って―――」

「シャラーップ、フィリーップ!お口チャーック!いやーすいませんね、ウチの相棒が!続きをどうぞ!」

「は、はい。左さんは数日前に起きた殺人事件をご存じですか・・・・・・?」

「数日前っていうと、確か夜の人通りの少ない路地で男性が殺された事件のことですか?確か目撃者がいたって話でしたけど」

「・・・・・・その目撃者が、私なんです。殺されたのは私の会社の上司なんです・・・・・・!」

 

彼女の話はこうだ。

普段から良くしてもらっていた上司にお礼のつもりで、あるバーに案内していた途中で襲われたこと。

上司が自分をかばってくれ、凶刃に倒れたこと。

何とか逃げ出し、人通りのあるところで助けを求め、駆けつけた警察と現場に戻ると犯人の姿は既に無く、冷たくなった上司だけが残されていたこと。

そして、彼女が目撃した犯人は『怪物』だったこと。

 

「突然だったんです・・・・・・!青い体に、真っ赤な目をしたトカゲのような怪物が暗がりから襲いかかってきて・・・・・・!彼が私の盾になってくれて・・・・・・!ナイフのような指が彼の体を・・・・・・!」

「それは・・・・・・お辛かったでしょう。愛する人を目の前で・・・・・・」

「スン・・・・・・いえ、彼とはそういう関係じゃなくて・・・・・・彼は結婚していて、奥さんと共にお酒が大好きだそうで・・・・・・。だから私、お礼のつもりで奥さんと一緒にお酒を楽しめる所を紹介しようと・・・・・・!でもそのせいで、彼は・・・・・・!」

「あやさん、貴女のせいじゃない。貴女は善意から行動しただけだ。本当に悪いのは彼の命を奪った怪物だ」

「左さん・・・・・・ありがとう、ございます。警察にも相談したんですが、その後の事件の進捗が著しくないようで・・・・・・私いてもたってもいられれなくなって・・・・・・」

「ウチに来た、というワケですか」

「はい。この探偵事務所はそういった事件の専門家だと聞いて・・・・・・左さん!」

 

突如、話を聞いていた翔太郎の手を取り、自分の両手で包み込むあや。

 

「お願いです!彼を殺した犯人を見つけてください!」

「・・・・・・もちろんです。必ず犯人を見つけて、あやさん貴女の涙を止めて見せましょう!このハードボイルド探偵、左翔太郎にお任せください!」

「・・・・・・翔太郎さん・・・・・・!ありがとうございます・・・・・・!」

 

潤んだ瞳で見つめられ、崩れそうな表情筋をキリッと引き締め、そう告げる翔太郎。その後、あやは勤めている会社や被害者の名前―――『杉山野憲次』を告げ、進捗があれば連絡をお願いします、と言い残し事務所を後にした。まだ精神的なショックが大きく会社は休んでいるそうだ。

 

「彼女が目撃したという怪物、恐らくは―――」

「ああ、『ドーパント』だろうな」

 

この街に潜む力『ガイアメモリ』!人を超人―――いや怪人に変えてしまう魔性の小箱!これを使って怪人となったものを『ドーパント』と呼ぶ。ドーパントとなった人間は異能の力を手に入れ、警察でも手に負えなくなる。

顎に手をやりながらフィリップが翔太郎に問いかける。

 

「通り魔、怨恨。翔太郎、君はどちらだと思う?」

「俺は怨恨の可能性が高いと思うぜ」

「なるほど。通り魔なら逃げた彼女も追いかけるだろう。彼女がドーパントから逃げられる程の脚力を持っているようには見えなかったしね。彼女が見たのはあくまでドーパントとしての姿だ、変身前の犯人を見たわけではない」

「だから態々追って殺害する必要は無かったって事だな。よっし、早速捜査開始だな。俺は杉山野さんが務めてた会社に行ってくる」

「僕は使用されたメモリを検索するよ。といっても、見た目とナイフのような指だけで絞りきれるとは思えないけど」

「何か情報を掴んだら連絡するさ。じゃ、亜樹子が来たら伝えといてくれ」

「春奈ちゃんを幼稚園に連れて行ってからだから、お昼頃かな?兎も角、伝えておくよ。いってらっしゃい」

「おう」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「全然ッ、分からねえ!」

「なーにが『全然ッ、分からねえ!』よー!」

「あ痛ー!」

 

『真面目にせい!』と書かれたスリッパがスパーンと翔太郎の頭を叩く。ふんすとふんすと鼻息荒くスリッパを翔太郎に突きつけ、問い詰める鳴海探偵事務所所長である彼女。

 

「朝に依頼を受けて、もう午後4時です!そんだけ調べて全然分からないとは何事じゃー!弛んどるぞー!」

「いや亜樹子、違うんだよ!被害者に恨みを抱いてそうな人間を調べたんだけどよお」

「え・・・・・・もしかして」

「ああ。みんな口を揃えて『あんないい人いない』ってよ。実際聴けば聴くほど、出るわ出るわいい人エピソード。上にも下にも慕われるいい人だよ。奥さんとの仲も良好そのものだ。社内にはファンクラブもあったみたいだぜ」

 

頭を抱えて告げる翔太郎。怨恨殺人だと思っていた事件だが、被害者に恨まれる要素がまるでなし。無論、本人の与り知らぬところで恨みを買っている線も考えたが―――

 

「少なくとも会社内には殺す程恨んでる人間はいねえ。事件があった次の日、警察の取り調べがあったらしいんで刃さんに聞いてみたんだが、奥さんと社内の人間はほぼ白だそうだ。全員アリバイが確認出来たってよ」

「うーむ。・・・・・・閃いた!じゃあさ、杉山野さんを襲ったドーパントは!依頼人が姿を見てるって!」

「そっちもダメだ。襲われた路地に防犯カメラの類いはなかったし、他に事件当時周囲で怪しい人物を見たって証言もねえ」

「そんな~・・・・・・そだ!フィリップクン、メモリの正体、分かったの?」

 

ペラペラと白紙の本をめくっていたフィリップに一縷の望みを掛けて、亜樹子が問いかける。が、フィリップは首を横に振った。

 

「ダメだ・・・・・・崎下あやの目撃証言だけでは絞りきれない。殺害方法も特殊なものじゃないから、そこからメモリの能力を割り出すことも出来ない」

「手詰まりだな・・・・・・。しゃあない、明日また現場に行ってみるか!」

「うん、そうだね!まだ諦めるには早い!現場百編だ!オー!」

 

気炎を上げる亜樹子と翔太郎。と亜樹子が思い出したかのように二人に告げる。

 

「あ、そうだ翔太郎クン、フィリップクン。竜クンがね、また手を貸して欲しいって」

「照井竜が?何か別の事件かい、アキちゃん?」

「まだ人が襲われたってワケじゃないけど、廃車置き場の車が一晩で全部ぺしゃんこになってたんだって!こっちは防犯カメラで犯人がドーパントで、メモリの正体まで分かってるそうなんだけど」

「なるほど、んで?何のメモリなんだ?」

「『ビースト』だって!」

 

亜樹子の言葉に翔太郎は顔をしかめ、フィリップは納得がいったと頷く。

 

「なるほど。『ビースト』は怪力と強力な自己再生能力のメモリだ。照井竜は『エクストリーム』による短期決着をお望みのようだね」

「『ビースト』かぁ。体は青っぽいけど、目は赤くねえしなぁ。今回の事件とは別口だな」

「世の中そー上手くはいかないよー。使用者と居場所が分かったら連絡するって!」

「りょーかい。ま、依頼とは別とはいえ、街を泣かせるヤツを野放しには出来ねえからな。ところで亜樹子、そろそろ春奈ちゃん迎えに行く時間じゃねえのか」

「おろ、もうそんな時間!?翔太郎クン、送っていって!」

「はぁ?歩いてすぐの所じゃねえか」

 

何言ってんだコイツ、といった顔で自分を見る翔太郎に対し、何言ってんだこのハーフボイルド、といった顔をする亜樹子。

 

「あのねー翔太郎クン、正体不明の殺人鬼と居場所不明の野獣が彷徨いてるのよ!うっかり帰り道でそんなのと出くわしたらどーするのよ!」

「あーはいはい、わかったわかった。春奈ちゃんになんかあったら照井が街ひっくり返す勢いで犯人探し出しかねねえからな。つーワケで、ちょっといって来るぜ、フィリップ」

「ああ。そうだついでにミックのキャットフードを買ってきてくれ」

「あいよ。亜樹子、どっか寄ってく予定とかあるか?」

 

買い物の予定をお互い確認しながら事務所を後にする二人を見送るフィリップ。事務所に一人となった彼は隠し扉を開き、自身のラボへと引っ込んだ。そこで彼は今回の依頼について整理する。

 

「犯人を見たのは崎下あやのみ。被害者の杉山野憲次は人に恨みを買うような人間ではなかった。・・・・・・そういえば彼女について検索していなかったな」

 

ホワイトボードに事件の要点を書き込むのを止め、白紙の本を片手に目を閉じ意識を集中するフィリップ。

 

「さあ、検索を始めよう」

 

次の瞬間、彼の意志は膨大な数の本棚が存在する空間『地球の本棚』に存在していた。ここは地球の全てが記録された場所。

 

「キーワードは『風都』『女性』『崎下あや』」

 

膨大な本の中から必要な情報を閲覧するため、キーワードで情報を絞り込む。該当しない情報が除外され、数冊の本のみが残った。その中から一冊を手に取ると、お目当ての情報だったようでフィリップは顔を綻ばせ―――

 

「・・・・・・なるほど。興味深い情報だ」

 

自身の『読心術』が間違っていない事を確信した。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「お兄さん、ちょっとすいませんね?私たちこういうものです」

「警察・・・・・・?刑事さん?」

「風都署超常犯罪捜査課の刃野です」

「同じく超常犯罪捜査課の照井です、君はここで何をしているんだ」

「え、これ職質ってやつ?」

「俺に質問するな」

「えっ」

 

風都にある公園で一人の少年が二人の刑事に職質を受けていた。赤い革ジャンを着た若い男とツボ押し器をもった中年の男だ。

少年は赤いストールを巻き、左腕に鳥の横顔をモチーフにした腕輪を付けている。トングで空き缶をビニール袋に詰めている。よく見るとスチールとアルミに分別されている。

 

「なにって、空き缶拾いですけど。小遣い稼ぎです」

「はあー、若いのに感心ですな課長」

「ああ、今時珍しいな。君、名前と住所を教えてくれるか」

「千翼です。住所はちょっと・・・・・・今はホームレスやってます」

「はあー、若いのに大変ですな課長・・・・・・ってホームレス!?お兄さん歳幾つ?」

「5歳です」

「・・・・・・馬鹿にしてるのか?」

「え、あ、ごめんなさい、(肉体年齢は)15歳です」

 

そんな会話を繰り広げているところに新たに一人近付いてくる人物がいた。身なりからしてホームレスであろう男性は、刑事二人にフレンドリーに話しかけた。

 

「刃野刑事に照井刑事じゃあありませんか。坊主が何かしましたか?」

「ああ、秀造さん。この子ホームレスってホントかい?」

「ええ、数日前からの付き合いですよ」

 

そう言って千翼が来た時のことを説明するホームレスの男性、秀造。

 

「数日前にね、ホームレス狩りみたいな目に遭いましてね。相手は一人だったんですけど大柄なヤツで金属バットまで持ってましてね」

「おいおい、物騒だなぁ。大丈夫だったのかい、秀造さん達」

「そこにこの坊主がやってきてね、『止めなよ、怪我じゃ済まないよ』って相手を止めようとしたんだよ。そしたらそいつ顔真っ赤にしてなんか喚き散らして、坊主に殴り掛かったんですよ!」

「おいおい坊主、大丈夫だったのか?」

「大丈夫だからここにいるんだけど」

 

それもそうだと納得する刃野を尻目に秀造に先を促す照井。

 

「俺たちも危ない!と思ったんですけど次の瞬間、坊主が振り下ろされた金属バットを片手でパシッと受け止めたんですよ!んでグイッと手を捻ってバットを奪い取ると、呆気にとられた大男を持ち上げてポーンと投げ飛ばしたんですよ!」

「へーこんな坊主がねぇ・・・・・・?」

 

疑うような目で見る刃野に対し千翼は近づくと、腰を掴みよいしょと持ち上げて見せた。

 

「高い高ーい」

「あ、コラ!降ろしなさい!降ろして!」

「おお・・・・・・どうやら本当のようだな」

「ね?でその投げ飛ばされたヤツ、その後もまだ喚いてたんですけど坊主が取り上げたバットをぶん投げて、そいつの頭の上の壁に突き刺さったの見たら、顔真っ青にしちまって『怪我じゃ済まないって言ったよね?』って坊主が言うと泡食って逃げ出したんですよ!」

「なるほど。だが何故君はホームレスを?親は心配しているんじゃないか?」

 

刃野を高い高いしていた千翼は照井の言葉にピタリと動きを止めると、刃野を地面に降ろし困ったような表情を浮かべる。

 

「いやぁ高い高いなんかされたの何十年ぶりだろうな、親父にやってもらった頃思い出しちまったぜ。・・・・・・どうした坊主?」

「・・・・・・親はもういません。母さんは少し前に死んで、父さんとは会ったこともありません」

「ッそうか、すまない軽率だった」

 

照井からの謝罪に「大丈夫です」と困ったような表情で答える千翼。若干重くなった空気を払拭するように刃野がわざとらしく「あーそうだそうだ!」と声を上げる。

 

「課長、秀造さんの話に聞き入ってこっちの話忘れてますよ!ほらほら!」

「ああ、そうだったな。すまない刃野刑事・・・・・・二人ともこの男に見覚えはないか」

 

そう言って照井が懐から取り出したのは画質の荒い一枚の写真だった。夜中に取られたのか暗い写真だが、はっきりと大柄な男が移っている。横顔しか見えないが、千翼と秀造には見覚えがあった。

 

「俺が投げ飛ばしたヤツだ」

「ああ間違えねえ!コイツ、なんかしでかしたんですかい?」

「ああ。この男にはガイアメモリ違法所持の疑いと器物損壊の疑いが掛かっている」

「ガイアメモリ!コイツそんなとんでもねえモンを!」

「非常に危険な男だ。見かけたら直ぐ警察に連絡を。特に千翼君、君に逆恨みしている可能性もある。十分に気をつけてくれ」

「わかりました(わからない)」

「(わかって無さそうだな・・・)君は―――」

 

どことなく話を理解していなさそうな千翼に照井が注意を重ねようとしたとき―――

 

「パパー!」

「おーい、りゅーくーん♡」

 

公園の入り口から照井を呼ぶ声が聞こえてきた。そちらを見ると小さな女の子と亜樹子が走ってきていた。

それを見た照井は仏頂面を一気に崩し、そちらに駆け寄り女の子を抱き上げる。

 

「春奈ちゃ~ん、どうしたんだこんな所で?幼稚園からの帰りかい?」

「うん!しょーたろーおじさんがママといっしょにむかえにきてくれたのー!」

「そっかー、よかったねー。」

 

デレデレ顔からスッと表情を戻すと翔太郎に向き直り

 

「礼を言うぞ、左。態々所長と春奈ちゃんの護衛をしてもらって」

「お、おう。いいって事よ。ていうかお前、急に真顔になるの止めろよな!ちょっと怖ぇだろ!後春奈ちゃん、翔太郎『お兄さん』だよ」

「おじさーん!」

「諦めろ左。君もそういう歳だ」

「まだ若ぇよ!」

「所長、すまないが今夜は遅くなりそうだ。安全の為、左とフィリップを夕食に招待するのはどうだ?」

 

無視かよ!と荒ぶる翔太郎をスルーして亜樹子に春奈を渡す照井。夫の過保護ぶりに苦笑いしながら春奈を抱きかかえる亜樹子。

 

「りゅーくんは心配性だなー。春奈ちゃーん、今夜は翔太郎おじさんとフィリップお兄ちゃんに遊んでもらおーねー」

「わーい!」

「おじさんっていうなぁ、亜樹子ォ!ていうかなんでフィリップはお兄ちゃんなんだよ!」

「うーんと、若さ?」

 

無慈悲な亜樹子の言葉に大ダメージを負う翔太郎。

 

「ところで左、所長から話は聞いているか」

「・・・・・・ああ、聞いてるよ。『ビースト』だろ?居場所がわかったら連絡してくれ・・・・・・」

「そう落ち込むな。大人びて来たと考えればいいだろう」

「大人びて・・・・・・そうだよな!ハードボイルって考えれば、悪くねぇよな!」

「翔太郎、お前・・・・・・」

「翔ちゃん、相変わらずだね・・・・・・鳴海の旦那、翔ちゃんは翔ちゃんのままですよ・・・・・・」

「あれ、秀さん。いたんですか?それにそっちの坊主は・・・・・・見ない顔だな」

 

空き缶をクシャクシャと潰していた千翼に気づいた翔太郎。新顔だなと声を掛ける。

 

「よう坊主。この辺じゃ見ない顔だな。俺は左翔太郎、鳴海探偵事務所のハードボイルドな探偵さ」

「探偵?すごい、初めて見た!俺は千翼です。よろしくお願いします、左さん!」

 

生まれて初めて見る探偵という職業の男。本やテレビの中でしか見たような所謂探偵ファッションに目を輝かせる千翼に気をよくする翔太郎。

 

「ああ、よろしくな。なんか困ったことがあれば、ウチのドアを叩きな。この街は俺の庭みたいなもんだ。どんな依頼でもたちどころに解決してみせるぜ」

「格好いい・・・・・・!これがハードボイルドってヤツかぁ・・・・・・!」

「~~~ッ!よせよせ、俺なんてまだまださ」

 

慣れない褒め殺しに帽子のツバを引っ張って緩んだ表情を隠す翔太郎。本当は飛び上がるほど喜びたいがグッと我慢だ、ハードボイルドってのはそういうもんだろ?と考えていることは照井たちには筒抜けであるが、初対面の千翼にはニヒルな口元しか見えず、格好いい大人だな、橘は見習え、と思っていた。

 

「おじさんうれしそー」

「そうねー春奈ちゃん。ハーフボイルドも初対面にはハードに見えるのかー。フィリップクンに教えてあげなきゃ!」

 

「―――へえ、じゃあ千翼はこの街の出身じゃないのか。風都には何をしにきたんだ?」

「ちょっと、追いかけてるヤツがいて。そうだ左さん、こういうヤツ見たことありませんか?」

 

と手に持ったトングで地面に絵を描く千翼。何枚ものプレートが突き刺さった人物―――ディエンドだ。

 

「なんだコイツ。人間か?」

「多分人間です。銃を使って変身してました」

「いや、見たことねえな・・・・・・なんでコイツを追っかけてんだ?」

「大切なものを盗まれちゃって・・・・・・それを取り返すために追いかけて来たんです」

 

なるほど、と納得する翔太郎。この世界にはガイアメモリ以外にも危険なテクノロジーが蠢いている。コイツもその類いだろうと判断した。

 

「すまねえな、今は別の依頼を受けててな。それが済んだら、俺たちがコイツを探してやるよ」

「本当!ありがとう、左さん!」

「まーた安請け合いして。目の前の依頼に集中しなさいよー」

「わーってるよ亜樹子。このハードボイルド探偵、左翔太郎に任せときな・・・・・・ってあれ、照井と刃さんは?」

「もう行っちゃたわよ、ビーストの居場所をさがすんだって。さ、私たちも帰るわよー。事務所でフィリップクン拾って、今夜は鍋パーティーよ!」

「おう。じゃあな秀さん、千翼」

「またね、左さん」

「じゃあな、翔ちゃん。さて坊主、俺たちも空き缶換金して帰るか」

「・・・・・・ねえ秀造さん、ちょっとお願いがあるんだけど―――」

 

 

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斯くて、日は落ち、夜がくる。野獣唸り、火花散らす出会いと戦いの夜が―――!

 




一万字オーバーでバトルシーンどころか変身シーンすら無しとはたまげたなぁ。
ライダー二次創作作者の屑がこの野郎・・・!

次話も来週中には投稿したいですねぇ!


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