それでは、第一話 出会い
序.
満開の桜並木の中、道に落ちた花弁を
踏みしめながら歩く一人の少年。
桜並木は次第に終わり丘から街を見下ろ
せる展望台にたどり着く
「散る桜残る桜も散る桜……」
憂いか悲しみかそんな表情を残して立ち
去ろうとするとザッとつむじ風が吹き
花弁を巻き上げる
「あっ!!」
次いでと言わんばかりに彼の帽子も一緒に巻き上げて行ってしまった
………………………………………………
一.
「見て見て、海未ちゃん!!!桜がこんなに咲いてるよ!!!!!綺麗だね!!」
「穂乃果!!そんなに走ると危ないですよ」
"穂乃果"と呼ばれた茶髪…いやオレンジ色の髪の少女は元気一杯、全速力で桜並木を駆け抜けて行く。その後ろから走りながら長い蒼色の髪を靡かせながら追いかける。
「アレ?そう言えばことりちゃんは?」
穂乃果が不意に立ち止まり周りを見回す
「そう言えば……ことりならさっき、あっちの方へ行きましたが……」
"あっち"の方に視線をやるとその方向
から
「穂乃果ちゃーん!!海未ちゃーん!!ちょっと来てー!!」
"あっち"方から脳トロボイスが飛んでくる。
「何かあるみたいだね、行ってみようよ」
「はい、分かりました。危ない事だと大変なので早く行きましょう」
と階段をタッタッタッと降りて行くと下の方で形容し難い髪の色をした少女が地面を指さす。よく見ると何やら白い物が落ちている
「ねぇ海未ちゃん。ことりちゃんの足元にある白いのってなんだろう?」
「ん…よく分かりませんねぇ…帽子か…ポーチでしょうか?」
「やっぱり早く行こう!!」
「あっちょっと…!!」
一段飛ばしで階段を駆け下りる。
「全く…怪我をしたらどうするのですか?」
心配さと呆れを混ぜた声を漏らす。しかし当の本人はそんな事歯牙にもかけずにことりの元へ行ってしまった
「ねぇねぇ、ことりちゃん。この帽子は一体誰のかな?」
「うーん、周りには誰も居ないから猫ちゃんが勝手に持って来ちゃったのか風で飛ばされたのかな?それにしても……」
すると後ろから海未が遅れて到着する。
「穂乃果……貴女って人は……なんでこうも勝手に一人で行くんですか…」
「ごめん、海未ちゃん。でも何か気になって早く確かめたかったの…ごめんね?」
「はァ……分かりました。何時も貴女はこうですもんね…。
ところでこの帽子ってもしかして……」
三人の足元に落ちている帽子。三人、揃ってまじまじと見つめるその帽子の正体は………
「これって…もしかして兵隊さんが被っている帽子なんじゃ…」
「た、確かにそんな様に見えますね…」
「う、うん…これは兵隊さんの…しかも水兵さんの帽子だね…」
「うーん、何処かに名前とか書いてないかなぁ…?」
と穂乃果がひょいと帽子を拾い上げる。
「いけません、穂乃果!!もし、海軍の中で一二を誇るほど偉い人の物だったらどうするのですか?」
「大丈夫だって海未ちゃん。私たちは落とし物を拾ったんだから寧ろ褒められると思うよ?」
「確かにそうかも知れませんが…」
「大丈夫だよ、海未ちゃん♪もしも凄い偉い人のだったら今頃、大騒ぎしてるはずだから。ね♪」
「ことり…貴女まで……。分かりました。
…ちょっと私に貸してくれませんか?若しかしたら名前が書いてあるかもしれんから」
「ん、分かった!!」
海未は穂乃果から手渡された帽子を前や後ろ上から下と色々な角度で見る
「あっ、それっぽいのがありましたよ」
「えっ?本当!?見せて見せて!!」
「本当?どんな名前なのかなぁ?」
「ええっと今から読みますね。何々…」
三人で小さい帽子の裏側に書いてある、名札を見る
「ええっと…すずみや……まき……鈴宮 真妃。と言う人の物らしいですね」
「へぇ〜真姫ちゃんと同じ名前なんだね。やっぱり女の人なのかなぁ?」
海未の手からひょいと帽子を取り自分の頭に載せる
「あっ、穂乃果!!誰であろうとも勝手に人の帽子を被るのはいけませんよ!!!」
「ムゥ〜海未ちゃんのケチー」
「まぁまぁ、海未ちゃん」
「ことり!!貴女も穂乃果の味方をするのですか?」
そんな調子でワイワイやっていたら階段の上の方から足音がする。
桃色の花弁に紛れて次第に姿が見え始める。
黒い革靴に清潔感のある白いズボン。
白い手袋に白い腕、腹部には金色の七つボタンが眩しく光る。肩には黒と金色の何か…階級章…?が付く。そして顔も…やはり遠くて見えないが男性のようで髪型は軍人らしく短く刈り込んである。
何やら私たちの方を見て少し唇が動いた。そして、とタッタッタッと駆け足でこっちに向かって来る。
やっと顔が見えた。顔はジャニーズや有名な男優の様な凄いイケメン…と言う訳ではなく極々、一般的な日本人男性。だけどもキリッとした眉と瞳。そして真一文字に結ばれた唇からは精悍さと真面目さが感じられる。
「あっ………」
とその水兵さんの動きが一瞬止まる。
「あっ………」
横からも同じ様な声が聞こえる。
「いきなり申し訳ございません。私、大日本帝国海軍 中将 鈴宮 真妃 と申します。
この近辺で私の軍帽を見かけませんでしたでしょうか?もし何かご存知であれば教えて頂けたら嬉しいのですが」
とその"帽子"と全く同じ名前の将校はビシッとお辞儀をする。
「あっ…もしかしてその帽子ってこれの
事ですか?」
海未ちゃんが背中に隠していた帽子を取り出す
「はい!!そうそう、それです!!!あ〜見つかって良かった!!!!!」
とこの顔からは似つかわしい喜び方をし始めた
「あ、あなたは海軍の兵隊さんなの?」
「はい、私は大日本帝国海軍の将校です有事の際には貴女方国民を最前線で守る
のが役目です」
「どうしてあなたはここにいたの?」
「どうして…ですか。それは新しい任地に向かう前なので少し見ておこうかと思いまして」
「なるほど……そう言う事ですか」
と三人が"なるほど"と頷く
「それではこのご恩は何かしらの形で必ず返させて頂きます。今回は誠にありがとうございました」
とその少年将校はザッと敬礼をして更に帽子を脱ぎ深々と最敬礼をする
「い、いやそんな事はしてないから別に良いよ。」
と穂乃果がちょっと困った様に言う。横で二人も"うんうん"と首を縦に振る
「そうですか…まァ良いです。それでは失礼します。また、ご縁がありましたらお合い出来るでしょう。それでは」
とキッと踵を返してタッタッタッと駆けていく
「あっ……!!」
と横で声が聞こえ手が伸びる
「…取り敢えず、帽子の持ち主が見つかって良かったね!!」
海未が頷きながら
「ええ、確かにそうですね」
ことりもにっこり微笑んで
「うん♪ほんとだね穂乃果ちゃん♪」
三人でワイワイ話し合ってると横で
「……格好良かったなぁ……あの人」
とうっとりした声がする
「えっ?」
と聞き返すとその娘は
「う、ううん何でも無いよ」
と誤魔化す
「ほら、そんな事より早く行こうよ!!
学校が始まっちゃうよ!!」
「そ、そうですね、穂乃果。ほら、ことりも急ぎますよ!!」
と穂乃果と海未は慌てて走り出す
「穂乃果ちゃんも海未ちゃんも待ってーーっ!!」
とことりが二人に続いて桜並木を駆け抜けて行く。
これから誰も想像してもいなかった、9人ともう1人の物語が始まる
………………………………………………
「……彼女たちの所属校は?…なるほど
ねぇ……学年は?…なるほど、同い年か
道理で。所属している部は?ホゥ…!!面白いなぁ……理由は?…母校が廃校になるからそれを阻止する為…?なるほど、とても健気じゃ無いか…そのお手伝い我々にも出来るだろうか?…何?無理な話で無い?それたら"お手伝い"に行こう。面白くなりそうだね」
久々の小説でしたがいいかがだったでしょうか?慣れていないので中々、上手に行かないなぁ……まだまだ、精進しなくては
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転校生は男の子!?
さて、折からの少子化と近所に新しく出来たUTX学園に入学希望者を取られた挙句、廃校の危機に陥ってしまった国立音ノ木坂学院。そこに一人の転校生がやって来た。名前は……
日本 東京 千代田区 秋葉原。ここに廃校を待つ一つの立派な高校があった。名前は
国立音ノ木坂学院。
昔こそ数多くの優秀な卒業生達を輩出して来たが折からの少子化で入学生が激減。その為、今年、入学した一年生の卒業を以て廃校と決まってしまっていた
「ふわぁぁ眠いや………」
と穂乃果が机に突っ伏しながら気の抜けた情けない声を出す
「穂乃果、そんなにだらし無くて良いのですか?」
「だって昨日、日曜洋画劇場 コマンドーを見てたから…眠くて眠くて……」
「また、ですか?あなたは本当に自己管理がなってませんね。」
「ムー……しょうが無いじゃん!!だって面白いんだもん……」
「いいですか!?貴女は事あるごとにそのような事を言いますがそれでは……」
……………………………………………
永遠よりも長い時間が過ぎて……
………………………………………………
「………なのですよ。分かりましたか?」
「ウー………………分かりました…」
「それなら良かったです♪さぁ、ピシッと背筋を伸ばして
座りましょうね」
「あっ…あのちょっと良い?」
「ん?どうしたの?ことりちゃん。」
「どうかしましたか?ことり」
「昨日お母さんが電話しているのを盗み聞きしたんだけど今日、この学校に転校生が来るんだって」
「えっ!?それって本当!?ことりちゃん!」
「それは本当ですか!?」
ガバッと二人の顔が私に近づく
「う、うん、そうみたいだよ。"えぇ、分かったわ。明日、来るのね。二年A組ね。転入届は受け取ったから後は来るだけよ。
……彼女たちを宜しくね"ってお母さんがそう話してて…よく、聞こえなかったけど」
「うわ〜〜〜どんな子が来るのかな〜!!
若しかしたらスクールアイドル、やってくれるかな〜〜〜」
「それは分かりませんね。でも仲間が増えるのはいい事です。楽しみですね」
「それが……転入する子は女の子じゃ無くて……男の子らしいんだけど……」
「「ええええええええええ!!!!!」」
「こ、ことりそれは一体どう言う事ですか!?」
海未ちゃんが私の肩をがっしり掴んでガクガク揺らす
「そ、そんな事は私も分からないよ〜
だって私はお母さんの電話を盗み聞きしただけだし……」
「しかし……!!」
こんなやり取りを続けていたらガラリと
教室のドアが開いて先生が入って来る
「皆さん、着席して下さい。朝のホームルームを始めます」
ガラリとドアを開け先生が入って来る
「今日、みんなに新しい友達が出来ます。
なんと今日このクラスに転校生が来ます!!」
その瞬間に教室がドッとざわめく。周りの子達は"どんな子だろうか?"とか"可愛い娘かな?"とか思い思いの事を話し
出す
「はい、皆さん静かに〜。
これから転校生を呼ぶから少し待ってて下さいね」
と言い残して先生は廊下に消える。教室は未だ、ざわめきが消えずに残っている
「これから転校生が入って来るので皆、拍手で迎えるように〜。入って来ていいよ」
と廊下にいる"転校生"に指示を出すそしてドアがガラリと勢い良く開き転校生が入って来る。
転校生が着ている学ランの黒い脚がヌッとドアの隙間から現れる。綺麗な行進を行うその人は……私が知っている人
だった
教卓で回れ右して直立不動で仁王立ちする同い年の男の子はこの前、帽子を拾った子だった。服装を変え、眼鏡も外しているが私には分かる。……案外、眼鏡が無い方がいいかも?
「それでは、自己紹介をして貰います」
彼は短く"分かりました"と言うと黒板に
綺麗な文字で名前を書き始めた
「私の名前は美波 治孝 年齢は十六歳 北海道 夕張市 北炭第一高校より転入して参りました。慣れぬ事ばかりではございますが何卒、宜しくお願い致します」
と初対面時と同じ様に深々と頭を下げる
すると穂乃果ちゃんが
「あの…鈴!!……美波君は、何部に入るつもりなんですか!?」
すると彼は一瞬ニヤッと笑い口角が持ち上がる
「私ですか?私は……そうですね、スクールアイドル部への入部を希望するつもりです。
私は北海道の片田舎の出身ですがそこでもスクールアイドルの話しはよく聞き友達と放課後は下校時間ギリギリまで語り合ったものです。
そんな憧れでもあるスクールアイドル部がある学校に転入出来たのですから入部届を出さない手はありません。
しかし……実際にら入れるかどうかは分かりません。私は見ての通り、男性で歌もダンスも拙いと来たものですから……」
「そんな事無いよ!!きっと、あなたなら入れると思うよ!!」
「本当ですか?それは嬉しいですね」
と彼は穂乃果にこやかに彼は微笑む。
……羨ましい
「南さんの席の隣が空いているからそこに座って。あそこの真ん中辺りの場所…分かる?」
「ええ、分かります。ありがとうございます」
手提げ鞄を片手に彼が私の方にツカツカと歩いて来て、そして私の隣に座る
「南さんですか?これからどうぞ宜しくお願い致しますね」
と小声で私に話し掛ける
「う、うん…こちらこそ宜しくね」
と最と普通に返すつもりだったけど何でだろう…緊張しちゃって上手く返せなかった。
「私の…正体はもう分かってますよね?」
「!?……う、うん……」
「それなら良かった」
"それはどう言う事?"と聞き返そうとしたらもう彼は前を向いて先生の話しを聞き込んでいた。そんな重要な話しでも無
いのに……
………………………………………………
黒い学ランから純白の軍服に着替えた彼は相変わらずスクールアイドル部の長机に向かったまま一切動じず座っている。
九人全員で研究部のドアに付いた窓を覗き込む
「ねぇ、アレが入部を希望してるって転校生?」
と赤いリボンで艶がかかった綺麗な黒髪を二つに縛った小さい少女が部室のドアに付いている窓を覗きながら懐疑的な声を漏らす
「うん、そうだよ♪真面目そうだし良い人だと思うけど…」
それに対して穂乃果はにっこり笑って彼を擁護する発言をする。
「でも、さっきの歌とダンスのテストじゃグダグダだったじゃ無いの?」
また小さい少女が不満気な意見を漏らす
「にこ…確かにそうですが……それは彼自身も理解している様ですしここまで熱烈に入部を希望している方を無下に追い返すのも失礼に当たるかと……」
すると今度は海未が"にこ"と呼ばれた黒髪ツインテールの小さい少女を宥めながら彼を擁護する
「それは確かにそうですね…でも、歌やダンスが出来なくても別の活躍の仕方もあると思いますよ!!」
突然、にこの隣りに立っていた見るからに優しい、柔らかそうな少女がハッと顔を上げて手を叩く
「かよちんそれって一体なんだにゃ?」
オレンジ色の髪と猫の真似が可愛い別の娘が"かよちん"に聞き返す(笑顔も十分にめんこいんだけどね)
「マネージャーさんやプロデューサーさんとして働いて貰うんです!!」
するとかよちんはビシッと人差し指を指しながら元気よく言う
「確かにそうね。今までμ'sにはそう言う人が居なかったからそう言う人が出来るのは悪くないわね」
若干、後ろの方でいかにも賢そうで綺麗な赤髪の毛先を指で弄りながら賛同する
が、しかし…
「えぇ、花陽の提案は悪くないと思うけど彼、本当に私達の事を信用しているかしら?」
金髪ポニテに碧眼の少女がここで待ったをかける
「ねぇ、それは何でなの?絵里ちゃん」
ことりが軽く首を捻って訳を問う。かわいい
「だって彼、軍帽を脱いで無いわ。本来なら将校は会談時は被っている軍帽を脱ぐのが規則なの。それをして無いと言うことは……」
「"私達がまだ100%信用出来ていない"
と言うことなのね…」
「なんでなのかなぁ?そんな私達はスパイとか悪い人じゃ無いんだよ?」
「調べてみたんだけども彼は今まで沢山の海戦や上陸作戦などの様々な作戦の指揮を取った百戦練磨の強者よ。
だからそれが原因なのか分からないけども軽い人間不信に陥っているみたいで、人に心を開く事が出来なくなってしまったみたいね」
「なるほどぉ……そう言う事ならウチに任しとき♪」
「えっ?大丈夫なの?希」
「もちろん♪彼みたいな人は何かかしら心に穴が空いとるんや。だからそれを埋める事が出来れば必ずウチらの事を信用してくれるはずやと思うよ」
「なるほど……でも出来るの?」
「まァ、見とき♪」
希は部室のドアをガチャリと開け中に入っていった。
…………………………………………
国立音ノ木坂学院に転入して来た海軍中将 鈴宮 真紀。
彼が何故、国立音ノ木坂学院に転入を決意したのか。そしてある少女が動き出す
……………………………………………………………………
スクフェスのシール交換所でバクった前の配布のURが覚醒したSSRの希に負けるって………
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狂気と理由
音ノ木坂学院に新しく入って来た子はなんと前に帽子を拾った海軍の兵隊さんだったの!!!
μ'sに入ってくれそうな感じなんだけども男の子はどうするんだろう?ねぇねぇ、どうするの?……ねぇ、どうするの?
ねぇ……聞いてるの?
取り敢えず、μ'sのメンバー構成は理解出来た。各学年三人ずつの計九人。
悪い人はいなさそうだがまだ100%信用するのは些か早すぎると思う。人間、何処で変貌するか分からないから……取り敢えず、一ヶ月は様子見してそれから判断しよう。
それでも遅くは無いはずだ。
「真紀君?ちょっと良い?」
ガラリとドアを開け三年の……東條希だっけ?が入って来る。そして僕の真向かいに座る
「ねぇ…君がスクールアイドル部に入りたいって言ってる子やね?」
「はい、確かにそうですよ。」
「なんでそう思ったん?」
「私は確かにダンスや歌はグダグダです。しかし、私には"ステージには立たなくても別の方法で支える方法"があります。」
「それは一体、どんな風に?」
「貴女方のライブ会場の確保やそれの警備や厄介ごとなど多岐にわたる仕事で活躍出来るかと思います」
「なるほど……それは確かにいい考えやね」
「はい、もし入部した暁には出来ることなら何でも行う所存でございます」
「おぉ〜その心意気は素晴らしいやん」
彼女は普通に僕の入部理由を聞いてるのか?それならさっきも散々、言ったはずだしわざわざ、もう一度聞く必要も無かろう。
それとも、この様な当たり障りの無い質問をして僕の心を推し量っているのだろうか?分からない
前もって情報は集めた筈だが……
「ちょっと私にも話しを聞かせてくれないかしら?」
またドアがガラッと開き金髪ポニテの高身長…高身長?大体、僕と同じくらいの少女が入って来る。
名前は…確か絢瀬絵里。学年は三年、音ノ木坂学院の生徒会長μ'sの中ではダンスの技量はトップクラス。
理由は幼い頃に行っていたバレエの経験があるから……性格は真面目その物しかしその反面、煽りには滅法弱いだろうなぁ…軽く突つけば直ぐに食いつくだろう…。
しかし、実際には違うかも知れないから気を引き締めて行こう
「はい、話しとは何でしょうか?」
「単刀直入に聞くわ。貴方は"私達の事を信用してる"の?」
その瞬間、部室の空気が凍る。東條希が"えりち!!なんて事を聞くんや!!"と言った顔で絢瀬絵里の方を向く
絢瀬絵里、本人は何か噛んだ様な微妙な顔をする。ははァさては僕がどんな答えを出すか推し量っているな?まァ、僕の
答えは決まっているのだけども
「信用……ですか。それは非常に面白い質問ですね。
例えば…例えば貴女が会って数時間何某しか経っていない人達の事を信用出来ますか?」
「私は出来ないわね。それよりも私の質問に答えてちょうだい」
かなりグイグイ来る。そんなに僕の事が信用出来ないのだろうか?
「分かりました。まだ、信用出来るかどうかはまだ分かりません。でも貴女方は"嘘はつかない"と言うことが分かりました。
まだ、情報が足りないので何とも言えませんが"全く信用出来ない"と言うわけでは無いので信用出来ると思います」
「それじゃあ何で貴方は部屋の中で人と話しているのに帽子を被っているの?」
「それは……それはですね。ちょっと私情がありまして……」
「私情?どんな?」
「私、幼い頃から他人よりも比べ物に成らない苦労を重ねた為に頭の毛と言わず全身の毛が抜け落ちてしまったのですよ。ほら、この通り」
と言って彼は帽子を取る。すると彼の頭は彼の言った通り髪一本生えていない綺麗なスキンヘッドであった
「「…………………………」」
二人がポカーンと口を開ける
「だから、流石にお年頃の女子高生に会うのに禿頭で行くのは衝撃が強いと思いこの様な対応を取ってしまった-と言うわけなのです」
「な、なるほど……でもカツラとかでも良かったんじゃ無いの?」
「私はカツラは大が付くほど嫌いなんです。だからカツラを被らなかったのです。
貴女方に無礼な態度を取ってしまった事を謹んで謝罪致します。」
と彼はガタッと椅子から立ち上がり深々と頭を下げる
「えっえぇ……理由が分かったから別に構わないわ……これから気を付けてね」
「はい、ありがとうございます。ちょっと前までは生えていたのですが、急に抜けてしまって……あっ、ところで私の入部の件は?」
「あっ…ちょっと待っててねッ直ぐに決めて来るから///」
と絢瀬絵里はガタッと椅子から立ち上がり転がる様に部室を出て行った
「……忙しそうな人ですね…」
「確かにそうやね。でも、いい人なんよ。初対面の人からは"厳しそう"とか"怖そう"とか言われるけどもそうじゃ無いことをウチは良く知ってるんよ」
「…良い人ですね」
「そうやろ?えりちはああ見えて……」
「絵里さんもそうですが貴女もです」
「えっ?」
と聞き返され返そうとした瞬間、絢瀬絵里がガチャッとドアを開け後ろに他の部員もぞろぞろと入って来る。
「話が決まったわ。鈴宮 真紀。貴方を正式にスクールアイドル部への入部を認めます」
と部長である矢澤にこがちょっと苦々しく喋る
「本当ですか!?ありがとうございます!!」
彼はガタリッと勢い良く立ち上がり机に頭を打つける程の速さでお辞儀をする
「それじゃあ、鈴宮君には改めて…いや初めてなのかな?う〜ん、まぁ、良いや。自己紹介をして貰います!!」
リーダーである高坂穂乃果が元気よく
言う。所で、リーダー格の人物が二名も居るけど有事の際にはどちらの命令が優先されるのであろうか?
「分かりました。それでは………
私の名前は鈴宮 真紀 と言います。所属は大日本帝国海軍 第一艦隊兼聯合艦隊司令長官 を務めております。階級は大将です。
此処ではダンスや歌はしませんが会場の確保や貴女方の身辺警護に歌や踊り、衣装作成に関しての意見提供等を行う所存でございます。
最初は拙い所ばかりお見せする事になると思いますが粉骨砕身の念で行いますので何卒、宜しくお願い致します。」
言い終わると直ぐに小さい部室に拍手の音が響いた
「あの……この前、お会いした時は階級は"中将"ではありませんでしたか?」
「はい、確かにそうですね。それはこの前お会いした後すぐに階級が進級したんです。そしてその時に此処に配属される様に命じられました」
「なるほど……と言うことは此処に来たのは"自らの意思"では無く"上官の命令だから"…ですか?」
「いや、それは違いますね。ここに来たのは私の意思です」
「貴方の意思?」
「はい、私の事を心底、可愛がってくれている"親代り"の上官にこの旨を伝えた所
"最近、中央は何かと物騒であるし君が義理堅くどんな小さな恩でもしっかり返したいと言う気持ちは十分に分かる。
そうだ、物は相談だが君、音ノ木坂学院に行ってみないかね?その学校の理事長と私は知り合いでね君の心意気次第では転入出来る様に計らって上げよう"と言われました。その為、これは"私の意思"でもあり"上官の命令"でもあるのです」
「なるほど……所で"中央が物騒"とは?」
と言った瞬間に今まで温和だった顔つきが一変に鋭い顔つきに変貌する
「私も口が滑りましたが世の中には知らない方が良いと言うこともあるのですよ。特にシビアな話しは……」
とかなり低い声に変わる
「は、はい……分かりました」
「あっ、ごめんなさい。声と目付きが悪くなりましたね。すいません、悪い癖なんです……」
と元の温和な顔つきに戻って謝る
「いえ……別に大丈夫です」
一体、どっちが彼の本当の顔なんだろう?温和な方なのか厳しい方なのか…
「所で皆さん、本日の活動はどうするのですか?もう、こんな時間ですが。」
と左手に嵌められた腕時計を見ながら聞く
「えっ?」
全員が腕時計やスマートフォン、掛け時計を見る。
「あっ…鈴宮君の事を話していたらもうこんな時間に……今日はどうしましょう……」
「そうね。もうこんな時間だし……帰りましょうか」
全員がため息に似たようなのを付く。一部の人は"やった♪"と言った顔になっていたが……
「所でその"家"の話しなんですが……実は私、宿無しなんですよ」
「「「「「えっ!?」」」」」」
「はい、宿無しですよ」
と彼はしれっと言うがそれが一体、どう言う意味か理解しているの?
「あ、貴方本当に帰る所が無いの!?」
「はい、この通り」
とペラリと命令書を懐から出し私達の顔の前で広げる
「何々……"鈴宮 真紀 右の者……"そこじゃ無くて"尚、これより作戦中の寝床は自分で確保する事……"ほ、本当です……」
「ち、近くのビジネスホテルとかに泊まれば良いんじゃないの!?」
「それも考えたのですがホテルだと直ぐに足がつきますし何より、盗聴や暗殺される恐れがあるので成る可く利用したくないですね」
「なるほど……それじゃあ……」
「君、帰るとこ無いん?」
横から優しい関西弁が聞こえる
「えぇ…この通り」
「なるほど……それならウチに来る?」
「えっ?」
「の、希!!彼は男性よ!!年頃の男子を年頃の女子の家に入れるなんて……」
「ウチは一人暮らしやし別に構わへんよそれに変な事はせんしな…ふふふ♡」
「そうですか…それは嬉しいですね♪
希さんがよろしいならばお言葉に甘えさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「うん♪ええよ♪」
「それでは…お言葉に甘えさせて頂きます。これからよろし……」
「いけません!!真紀!!!希!!!」
横から急に耳を劈くほど大きな罵声が飛ぶ。その場にいる全員の体が一瞬、ビクッと強ばらせ声の主の方へ勢い良く首を振る
「海未ちゃん……」
そこには鋭い目付きでこちらを睨み肩で息をしている、園田 海未がいた。そして彼女がゆっくりと顔を上げて僕と目が合った。その瞳は怒りに燃えていた
「う、海未さん…?なんで怒っているのですか……?」
「当たり前です!!!!!!殿方が独り身の女性の家に転がり込むのはいけない事だと思いませんか?」
「は、はい…それはごもっともです。」
「と、言う訳で貴方は私の家に来てください。いいですか?」
「えっ?」
しれっと微笑みながらとんでもない事を言い出した。僕は勿論、他の人達も同時に聞き返す
「う、海未ちゃん?流石にそれはマズいと思うよ?」
「そうだよ!!海未ちゃん!!!一人だけ抜け駆けなんてズルいよ!!」
ことりと穂乃果の猛烈な抗議に対して周りの皆も"そうだそうだ"と頷く。しかし当の本人は……
「?皆さん何を言っているのですか?」
と全く悪びれる様子も無く寧ろ開き直るくらいの態度を取っている
「……泊めさせてさえ頂ければ何処でも良いのですが……理由を教えて頂ければ私的には嬉しいのですが……」
これは飛んでもない所に脚を突っ込んでしまった。と思いながら恐る恐る聞くと彼女は
「理由?そんな事はどうだっていいではありませんか?……貴方はもう忘れてしまったのですか…?」
彼女はしれっとさも当たり前の様に言う。しかし、そのすぐ後に何か言った様だがよく聞こえなかった
「………ねぇねぇ海未ちゃんってこんなに積極的にアプローチする娘じゃ無かったよね?」
「……今までの海未ちゃんを思うに男の子とは喋れるとは思うけどこんなに果敢に攻めないよね」
脇でボソボソ、穂乃果と ことりがお互いに耳打ちをし合う。
「穂乃果、ことり。何か言いましたか?」
とドスの効いた低い声でジロっと穂乃果たちの方を睨む
「ん、んんんん何でもないよ!!!」
「う、うん何も言ってないよ!海未ちゃん…♪」
「……それなら良いですよ♪」
と先ほど迄のドスの効いた低い声と睨み顔がまるで嘘のように何時もの声のトーンと笑顔に戻った。
「それで……貴方も構いませんよね?」
と笑顔で僕の方に振り向くがその顔は少しおかしかった。目が笑ってない。
そう………ハイライトが掛かってないと言えばいいのか冷たく光ると言うべきか。どっちにせよ、彼女の言いたいことははっきりと分かった。
"必ず私の家に来なさい。さもなくば強硬手段も辞しません"
今ここで下手に逆らって事を荒立ても面倒だ。ここは素直に従っとこう
「分かりました。希さんには申し訳ありませんが海未さんの家にお世話にならせて貰います。
炊事洗濯その他の日常業務は何なりとお申し付け下さい。粉骨砕身の念で挑みますので何卒……」
と真紀ちゃんは"海未"の方を向いて深々と最敬礼をした。
何で?
海未ちゃんばっかりずるいよ……
「ふふ♪そんなに硬くならなくても大丈夫ですよ♪母も、もう存知していて貴方に対してはかなり好印象を抱いている様なので全くのアウェーという訳では無いので安心して大丈夫ですよ♪」
「本当ですか…!それは良かったです」
「さて、話しも付きましたしもう時間も押していますから帰りましょう!」
「そ、そうね、帰りますか……」
「う、うん…か、帰ろう…!!」
何やら皆んなの反応が挙動不審気味だがそれはやむを得ない事だろう。何せ年頃の男子を同じく年頃の女子の家に寝泊まりさせるのだから……冗談じゃない。
「海未さんはどんな家に住んでいるんですか?」
「私ですか?私の家は弓道の道場などもあるのでそれなりに広い家ですよ」
「なるほど。それならガレージや駐車場などはありますか?」
「門下生の送迎用に使う駐車場は有りますが個人の駐車場にはアルティマが停まってますから……ガレージもアルティマ用で…」
「分かりました。ところで……アルティマとはあの日産 アルティマですか?」
「自動車会社の事は疎いのですが…多分日産で合っているかと思います」
「実はアルティマは北米で日産が販売しているセダンで日本では発売していないのですよ」
「えっ…?それでは購入するにはどうすれば良いのですか?」
「それは至って簡単。逆輸入をしているのですよ」
「逆輸入…ですか?」
「そうです。一般的な輸入車は海外メーカー……例えばベンツやBMW等の自動車を日本に輸出させて販売する。そして逆輸入は海外にある日本の会社が製造している自動車を日本に輸出して販売するのを逆輸入と言います。」
「なるほど……これは知りませんでしたね…!!どうりでお父様が"今回、買った自動車は国産車よりも値が張るなぁ…"とボヤいてましたね」
「やっぱり輸入車だから少しなり輸入費は掛かりますからね。それは仕方ありません。ところで……」
「……どうかしましたか?……真紀」
「確かμ'sは九人ですよね?」
「はい、そうですよ」
「あっ……やっぱり乗ってきた自動車じゃ乗り切らないか…」
「…そうなのですか?所で貴方は何に乗ってきたのですか?」
「僕が乗ってきたのは日産 GTR 35nismo ですがアレは"一応"4シーターなのですが…」
すると突然、後ろから肩をチョンチョンとつつかれる。
何事かと思って後ろを振り返るとそこには"顔だけ"ニッコリ笑った ことりがいた。
「真紀さんはまだ十八歳じゃ無いのになんで自動車を運転出来るんですか?」
「僕は見ての通り軍人ですので軍的にも免許が無いと何かと面倒で確かに歳は足りないけども取らせたのですよ」
「なるほど……やっぱり、軍人さんって大変なんですねぇ…」
「正門前に自動車を回すので良かったらこれに乗って帰りませんか?十分ほどで到着する様なので」
「本当!?わーい!!これで早く帰れるね!!」
元気全開の三人組が勢い良く廊下を走って先に行ってしまった
「コラ、廊下を走ったら危ないわよ!!」
と絵里が三人組を追いかける。
一時的な狂騒は直ぐに収まり静かになる。しかし、その時、僕の右斜め後ろから何か聞こえた。
最初は空耳かと思ったがこれは空耳では無かった。
チッチッチッチッと断続的に舌打ちが聞こえてきたのだ。
ゆっくり視線を舌打ちの音源の方へずらして行くとそこには幽鬼の様に立ち尽くし色がない瞳で僕の事だけをジットリ見つめる。そして親指の爪を剥がれんばかりに勢い良く激しく噛んでいる
「………海未さん?」
恐る恐る声をかける。が、彼女は何の反応もせず、ただひたすらに爪を噛む。
仕方ない。女子に触りたくは無かったけどもやむを得ない。
「海未さん?大丈夫ですか?どうしたんですか?」
と肩を掴んで激しく揺らす
「…アッ……いえ………その…………どうかしましたか?」
彼女は直ぐに意識が戻った様だが恐ろしい事に彼女には"爪を噛んでいた記憶が無い"そしてさっき言っていた事も引っかかる。もしかして……彼女は僕の事を知ってる…………?でも、何処で?僕の思い出にはこんな可愛い女の子なんて知らな………いや、一つだけ心当たりがある。それは………
「真紀さん…どうかしましたか?」
また僕に話し掛けてくる"僕の知り合い?"を横目にしながら一つの恐ろしい予感を胸に秘め背中に冷たい汗を流しながら和気藹々と会話に戻った
海未を除く他のメンバーを家に送り届けた彼女の家の居候になった真紀。そして部屋で海未から衝撃的な事実を耳にする事になる。
次回 「傑作」
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うへぇ………今回は普段の倍近い文字数となってしまいました。流石に六千は多いかなぁ……
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傑作
なんとμ'sに新しいメンバーが入ってくれました。しかし、彼は宿無しで最初は希の家に泊まる筈でしたが無理を言って私の家に泊めることにしました。何故って………それは…
フフフフ………………
……………………………………………………………………
今回ちょっと時間が無くて急ぎ気味でしたのでちょっと変な所があるかも………
そして正門前に大型バスを横付けさせて家主の海未以外のメンバー全員を一悶着あったけども送り届けてこれから海未の家に向かうところだ。そう言えば…なんで穂乃果と、ことりは僕のことを降りる時に若干、ジト目でチラッと見たのだろうか…?とか考えていると海未の素朴な疑問で我に返る
「ねぇ、真紀。確か……私の記憶が正しければこのバスは誰も乗ってませんでしたよね?」
バスガイドの席に腰掛けて彼女は僕の方を不思議な顔でじっと見る
「そうですよ。だってこのバスには自動運転の装置が組み込まれていますからね」
「自動運転……ですか?時々、ニュースでその様な単語は耳にしますがどの様なものなのですか?」
「自動運転!!それは文字通り人の代わりにAIが自動車を運転する装置のことです。ちょっと前まではAIの処理速度や処理件数の多さなどがネックとなり中々、普及しませんでしたが最近、帝国重工の自動車専用の最新型ソフトウェアとOSが発売されましたからね。それで飛躍的に技術力が上がりました。」
「なるほど……それは興味深いですね。確か……都内を走るタクシーと路線バスには殆ど自動運転に切り替わったと聞きましたが」
「よくご存知ですね。その通り、現在、都内を走っている数百万台のタクシーと路線バスはその全てが自動運転化されています。ぼちぼち市販車やレンタカーにも導入するとかしないとかと何かと噂に事欠かきませんね」
「…その話しは初耳ですね。これからは私たちの様な人も買う自動車が自動運転が可能になるのですかね。技術の進歩とは素晴らしいものですね…!…………突然ですが…少しいいですか?」
ここまでずっと興味深そうに聞いていた彼女であるがここで急にしおらしい顔に変わる
「ん?どうかしましたか?私は別に構いませんが」
「これからは………これからその………
私にはタメ口で喋って欲しくて………後…………もし…………もし良ければ名前は呼び捨てで…………」
蚊が鳴くような小さな声だった為、よく聞き取れ無かったが何を言わんとしてるかは何となくは分かった。
「分かったよ。海未……」
たぶん、これで合っていたのだと思う。何故ならば横で彼女が耳まで真っ赤にして顔を両手で抑えて悶絶しているからだ。
「海未、大丈夫かい?何だか飛んでもない事になってるけど………」
「わ、私はな、ななな何でも無いので大丈夫……!!……です!!」
「う、うん…分かった…」
十中八九、だいじょばない。こんなに顔を赤くした人間なんて僕は生まれて始めてみた。まるでまるで赤く熟れた林檎すらもかくやとするほどだ。
僕は彼女に出会ってまだ数時間何某しか経ってないがこの状態はまともじゃない事くらいは直ぐに察しがつく。穂乃果やことりが見たらなんて言うだろう?
「あっ、もしかしてこの大きな屋敷?海未の家は」
「あっ、はい!!その屋敷が私の家です!!」
「うわーこりゃ大きいなぁ……」
「私の家には弓道場や舞の教室等もあるので大きいのですよ…」
やっぱりまだ彼女の耳は赤かった。
玄関の前にバスを止め自動運転に切り替えてバスから荷物を下ろす。
赤いテールランプを煌々と輝かせた自動運転のバスを二人で見送り改めて園田家の立派な門を見上げる。状態よく劣化した木材や色褪せた金具、重々しく伸し掛る瓦屋根…一目見るだけでこの家の歴史はとても長い事がすぐに分かる
「私の家は昔はそれなりに名の通った名家だったのですが明治維新の折に零落して様々な特権がほぼ剥奪され残されたのはこの屋敷と先祖代々のガラクタだけが残され、その後は先程も言いましたが舞や弓道などを教えたり等をして今に至っている……と幼い頃にお父様がそう言っていました」
馬鹿みたいにポカーンと口を開けて門を眺める俺に海未は家の歴史を教えてくれた。そう言えば俺の実家もこんな感じで無駄に広かった思い出があり、時々、帰ってきた時はトイレに行くだけで迷子になった。
「なるほどねぇ………それは道理でこんなに重々しく歴史が感じられる雰囲気な理由だ……いやはや……素晴らしい
………全く」
と呆気に取られて門を見ながらべた褒めすると彼女はまるで自分が褒められたかのように顔を赤くして目を逸らした。
「さ、さぁ早く行きましょう//」
とそこら辺の寺よりも立派な門を潜るとそこにあったのはとても立派な、お屋敷だった。
母屋らしき平屋の屋敷は由緒正しい日本家屋であり、後ろの方には離れと思わしき小さめの建物も二〜三個ほど立ち並んでいる。今日日、東京のど真ん中にこんなに歴史を感じさせてくれる建物なんか他にはきっと無いだろう…と誰が見ても僕と同じように思うだろう。
「これは……凄いね」
「そうですか…!!自慢の家ですからね!!」
とやっぱり彼女は頬を赤らめている。でも、彼女は何処か誇らしげでとても嬉しそうだった
「所で貴方の荷物はこれくらいしか無いのですか?」
ガラガラと引っ張っている一般的なサイズのオレンジ色のキャリーバッグを怪訝そうな顔で僕の方を見る
「そうだよ。帝国軍人は余計な荷物は持たないので」
「…………」
一分弱、歩いて園田邸の玄関にたどり着く。海未がただいま帰りました。と言うと奥から蒼色を中心に染め上げられ金や白等がアクセントに入った和服を着た年齢三十代後半の女性がスタスタと静かに歩いて来た。その三十代後半の女性は軽くお辞儀をして"お帰りなさいませ。海未さん。"と言った。
この人はお手伝いさんだろうかと顎に手を当て首を捻っている僕の横で海未も同じように返した。この方はどちら様で?と海未に聞こうとするとその女性が俺の方に視線をズラした
「貴方が真紀さんですね。海未さんから話しは聞いております。帝国海軍の将校さんになって居たのですね。お部屋へ案内するのでお荷物はお預かりしますよ」
「わざわざ、お出迎えまでして頂いて申し訳ございません。荷物は私が一人で持てるので結構です。ありがとうございます」
「そうですか…。分かりました。それではこちらへ……」
と和服を着た女性が手招きする方へ着いていく。
家の外観も確かに素晴らしいが内装もそれに劣らない程に良いものが溢れている。
廊下はキチンと掃き清められチリ一つ落ちていない。所々の壁に掛けてある読めない習字の作品や水墨画もそう言う方を少し噛んでいる僕でも分かるほど上等な物が揃っている。
そして尚、驚いたのは庭が日本庭園をもかくやとする程、大きく立派で美しいのだ。暗い中で良く見えなかったが手前には紺や紫色の杜若や菖蒲が植えてあり広々した池には馨しい香りの白や桃色の蓮が咲き誇り後ろには大小様々な苔むした岩が置かれその上には松が力強く枝を四方に伸ばしていた。
「……………」
「ふふ♪どうですか?我が家、自慢の庭園は。この家は江戸時代からずっと引き継いでいてこの庭も当時から引き継いでいるものです」
「へぇ……だから………」
と彼が何か言いかける。
そして用意された部屋に彼を通し荷解きを手伝う。とは言ってもキャリーバッグ一個分の荷物だから大した量では無かったが…
「真紀は何時もこんな少量の荷物で旅行や出張に行ってるのですか?」
「そりゃあ、そうですよ。死に行くのに大荷物なんか不要ですよ。必要最低限で構いません。まぁ、理解しろと言われても
"人殺しの兵隊"なんかの思考なんか理解したいとは思わないでしょうが……」
僕のバッグから替えの制服や小説本を手に取りながらマジマジとそれらを見つめる彼女はバッと顔を上げ僕の方へ視線をずらす
「そんな…!!私はそんな事は微塵も思っていませんよ!!思っている事と言えば……昔の貴方はこんなに自嘲はしなかったのに……ですかね。
私には理解出来ますよ。大荷物を抱えて旅に出るのはとても大変ですから。でも…流石に少なさ過ぎると思いますよ」
「うーん……そうかなぁ…?普段から荷物なんてこれくらいの量しか持ったことが無いからなぁ……その癖、武器は多いとかやっぱり色々、狂ってるな。」
と彼は自嘲気味に吐き捨てるが事実日用品や着替えよりも銃火器の方が多い。何故なら
拳銃 三丁
マガジン 50個
ライフル 一丁
短刀 一振
以上の武器が彼の鞄の中から出てきたのものだからである
「それは……そうだと言わざるを得ませんね」
三八式機関銃を手に取りながら苦笑いする。
「所で海未。ちょっと気になっている事があるんだけどいい?」
「……はい、貴方が何を知りたいかは分かっています。なんで"初対面であるはずの私が貴方の事を知っていて、ここまで貴方に対してフレンドリーなのか"……ですよね?」
「ええ、後、先程の女性は一体何者ですか?」
「先程の女性ですか…それは私の母親ですよ。……やはり貴方はそれすらも忘れてしまったようですね……。仕方ありません。説明しますね。
昔……私がまだ幼稚園児だった頃、私には一人の男の子の友達がいました。その家とは親ぐるみの付き合いで親同士も非常に仲が良く子供同士、仲良く遊んでいました。
しかし、ある日その子は遠い所に引っ越してしまいました。少女は心の底から悲しみましたが彼はある約束をしました。
それは"僕たちは少しの間お別れをするけども、もし今度また会えたら今度はずっと一緒にいたいなぁ…貴女はそれでもいい…………?"
と聞かれました。勿論、少女は嬉しくて強く頷きました。
そして、少女と少年は別れました」
それを話す海未の表情は何処か寂しげだった。しかし、うっすらと喜びと希望も感じられた
「……そんな、話しが昔に合ったんだね。
所でその話しのヒーローとヒロインは…
もしかして……」
出された冷たい緑茶をゆっくり喉に流しながら彼女の反応を見る。下手すりゃ、漫画みたいな傑作、過ぎて涙も出る様な驚くオチが待っているかもしれないから……
「はい。それは………私と貴方ですよ」
そう言われた瞬間に俺は口の中のお茶を全て噴き出してしまった。
突然、海未から"私は貴方の幼馴染みって言われたけど俺はこんな可愛い娘に何処で出会ったっけ………ダメだ。さっぱり思い出せない。
さて、そんな事よりも次回はμ'sをプロデュースをする事になった彼ですが…μ'sはまだまだ、駆け出しの状態でプロデュースをする少年に至っては完全に素人。
そして彼女たちは"ラブライブ"の厳しさと苦しさを味わう事になります。 次回「現実」
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前回も忙しいで今回も忙しい。首相は真面目に小説を投稿する気はあるのかね?国民の皆様にもしっかりとご納得頂ける説明をしていだきたい。
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