理解不能なこの世界、どう生きようか (がやポン)
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1話

黒川花な私


 

 

 

「脳と肺への転移が見つかりました。」

 

いつもは冷たい声が悲しそうに木霊し、私の耳にはやけに大きく聞こえて耳を塞ぎたくなった。

 

主治医は少し無愛想な人間だがこんな声も出せるのかと逃避のようなことを脳裏に巡らせるが如何せん言葉のインパクトが大きく、それは大きく私は固まるしか出来なかった。

無機質な白い部屋に薬品の匂いが霞んで次第に景色が歪む。

 

思い残すような事が無いなんて言わない。

そんなお話の主人公のような大層な人生は送っていない、ただそうしたかった訳でもない。

 

だが今年中、いや半年の間に自身の命が散ってしまうのだと思えば恐怖に慄き怯えながら死期を待つしか出来ない自分よりは、何かをしてみたかったと馬鹿げたことを今更思うのだ。

後の祭りや後悔という言葉だけでは表せないやりきれない思いは拭えない。

 

 

 

結局は何も出来ずにその数週間後に私はあっさりと死んでしまったのだが。

 

なにがどうしてか私は謂わば第二の人生を、歩み始めることとなるのだ。

 

 

 

所詮今世の私の名を 黒川 花 というらしい。

 

 

________________________

 

 

転生というものを容易に想像出来るほど私は死後の事を考えていた訳でもない、何方かと言えば生きているうちに何がしてみたいとか、何を食べたいだとか、積極的にポジティブシンキングをしようとしていた。

 

まぁ確かに死んだはずの私が第二の生を受け、のうのうと黒川花として暮らしている事に私自身が理解不能であり他に不明な点をあげるのなら、私が本当に死亡したのかすら不明なのだ。

 

私は病室で不意に意識を失い、次に目覚めたのは黒川花として、だったのだ。つまり意識を失った事を私が勝手に死と捉え今のこれは私の下らない夢かも知れないと言うことだ。まぁ、今は死んだと仮定しておこう。

 

そして黒川花として、というのは目覚めた瞬間に黒川花の記憶が流れてきたことから黒川花には元々は別の人格、もしくは黒川花本人がいたと思われる。

そして私は何らかの理由によって黒川花になったのだ。

 

産まれた時から私が黒川花なら疑問など持たずに生活していただろうに、全くもって理解出来ないこの状況。

 

そして何より私には前世の記憶がある。

 

両親が海が好きだということから名前は白波と書いてそのまましらなみ。

 

名字は海原、海原白波だった。

 

産まれて両親がいて、友達がいて、小中高大学生と成長、市役所へ就職、その後発病、闘病し、28歳で病死した記憶。

どれも鮮明過ぎる。私の記憶そのものだ。

 

 

 

本当に面倒なものを色々持ってきてしまったのだ。

 

 

 




執筆初心者ですので、温かく見守って頂ければ幸いです。


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2話

あづいぃぃ それだけ。
もう、暑すぎ。


幼児の体にも慣れ始めた頃、同年代の子と同じように心からはしゃいだりすることは流石に躊躇われるが、話を合せたり同じ遊びをすることに抵抗はなくなった。

これは一種の諦めともいえる。

 

最初には絵を描いたり本を読んでひたすら時間を潰していたが、これから小学校というある程度カーストのある所に進むため友達を作ろうと奮闘しているのである。

 

たが、友達をつくるにあたり私にはいくつかの難点がある。

 

まず、表情。

私は基本的に泣くことが極めて少ない、他の同年代の子のようにおもちゃの取り合い等ではまず泣かない上に転んだってそうそう泣かない、そのうえあまり笑わない。

これだけ無表情ならば気味悪がられても仕方ないと思うのだが。

 

黒川花となってからもうすぐ三ヶ月がたとうとしているが元々感情の奮起の薄い子だったのかまわりからのアクションは未だ何もない。

 

そして言葉だ。

幼児の語彙では到底発しえない言葉が度々出そうになるが必死に幼く繕っている。必死に。

何より一番困るのは現両親に対しての接し方だ。

年齢的には私と同じくらいのご夫婦にどう接すればいいと言うんだ?しかも相手はこちらを幼児扱いと言うか娘として見ているわけだ。食い違いのレベルではない。

 

と言うわけで、両親といることが苦痛とまではいかないが私自身にストレスがかかるいう理由で私は幼稚園へ入りたいとねだった。

我ながら最悪な理由だが考えてみて欲しい、自分とほぼ同年代の夫婦によしよしされるのだ何か色々と持たない。

それから順調に事は進み黒川花3歳で幼稚園へと入園。

 

号泣しながら私を幼稚園へと送り届けた父には悪いが入園位で何をそんな感動しているのか全く理解できない。

幼稚園の入園でこれなら小学校卒業など涙どころか色々と垂れ流してしまう気がする。汚い。

 

矢張り園の中は幼い子供ばかりで、落ち着かないが入園式が始まれば多少静かにはなった、途中で父がまた泣き出していたが何事もなく式は終わり、お祝いのお菓子を受け取ってその日はそのまま帰宅で終わった。

父は結局最後まで泣いていて、つられたのか母も泣き出していた。

 

 

 

「「いってきます。」」

と、翌日父と声を合わせて家を出て幼稚園へと向かった。

昨日と同様に園内は幼児たちの声で騒音にまみれていたが少したてばそれも収まった。

基本的に朝園に来て朝の会をして遊んでお昼御飯、昼寝したらまた遊び、お迎えというスケジュール。

私は朝の会が終わればすぐに持参した本を持って比較的静かなお昼寝部屋へいき本を読む事をして一日を過ごす。

 

そんな過ごし方をしていれば大抵一人だと思うだろう、だが私にはもう既に友達第一号ができたのだ。

 

「花ちゃん、花ちゃん!ご飯食べたらお外でお花摘みしよ!」

 

私の隣のマットで可愛らしい絵を描いているこの可愛い幼女、名前を笹川京子と言うらしい。

京子ちゃんは明るめの茶髪ロングをツインテールにしている可愛い子で、性格も積極的だが引き際をしっかりと理解している、この年の子にしては良くできた子であるとわかる。

 

何より他の子のように私が幼く話さなくても不思議がらない天然要員だ、貴重な人材だとおもう。

 

「いいよ。折角だし一緒に花冠つくろう。」

 

そして何よりも可愛い。冷静に可愛い。

 

「うん!京子はおにいちゃんにつくってあげるの!花ちゃんはだれに作るの?」

 

ほらね、可愛い。首をコテンとかしげて尋ねる京子ちゃんをみていれば、今だけはポリゴンの気持ちも少し理解できなくもない。

 

「京子ちゃんにあげる、きっとよく似合うよ。」

 

花冠と美幼女なんて似合うに違いないと私の勘が告げているんだ、なんとしてでもきれいな花冠をつくらねば。

 

「わぁ!うれしい!」

 

こんなに可愛らしく頬笑む美幼女のために。

 

 

 

 

 

 

数年後にこの美少女「並盛のマドンナ」と呼ばれる事になるのだが。

 

 

 

 

 

 

 




他の人はどうして毎日投稿なんてできるんだ..
なんで、なんで..


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