月とウサギ (沙香月 雪音)
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本編
はじまり


友達に見せたら思いの外反応が良かったので載せてみました
文才とかそういうのが家出したまま帰ってこず1話毎もすごく短いものですが楽しんでいただければ幸いです


【一】

「ぼくね、おおきくなったらおつきさまにいきたい!まだとってもとおくにみえるけどぼくがおおきくなったらてがとどくかもしれないもん!」

 

はて…『月に行きたい』そう思い始めたのはいつからだろうかととある兎は考える。初めて月を見た時だろうか。肩車してくれた父が「月に届くかな?」と言ったあの時だろうか。母に月に住む兎の絵本を読んでもらった時からだろうか。

それらの考えを彼は「いつからでもいい。ただ僕は月に行きたいんだ」と呑み込んだ。

 

「おー…さ…。ウ…ギく…。ウサギ君!」

 

呼ばれて(叫ばれて?)ウサギは振り返る。

 

「あ、ゴメンゴメン。ちょっと考え事しちゃってた」

 

ウサギは自分を呼んだ友達に謝った。

 

「もう、呼んでも返事しないからその大きな耳はいらないかと思っちゃったよ」

 

言ってる事が怖い気がする?多分気のせいだ。少なくとも指摘しなければ害は無いだろう。

 

「で?ウサギ君がそんなに熱中する考え事はやっぱり月の事?」

「うん、そうだよ。いつから月を目指すようになったのかなぁって思って。」

「うーん…私も覚えてないかな…気付いたら『月に行きたい!』って言ってたし…。で、結局いつからなの?」

 

それなりに長い付き合いの彼女でもいつからなのかは覚えてないようだ。

 

「んー…結局わからないや。でもやっぱり月に行きたいって事は確かだよ」

「そっか…小さい頃から言ってたもんね」

 

ウサギにはそう言う彼女の様子がどこか寂しそうに見えた。

 

「どうかしたの?」

「え?何が?」

 

見間違いだったかな?とウサギは思った。

 

「あ、いや、ゴメン。勘違いだったみたい」

 

と誤魔化す

 

「ふーん…まぁいっか…で?ウサギ君はいつになったら月に手が届くのかな?」

 

彼女はイタズラっぽく聞いてくる。

 

「うっ…それは…まだです」

 

そう、彼はあまり身体が大きくない…いや、同い年である彼女と比べてもやや小さい。彼は大きくなりたい、と内心ため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【二】

あれ(一)からしばらく経ち、二人とも成長した…ん?ウサギはちゃんと大きくなったかって?

 

「ウサギ君はちっちゃくても可愛いから大丈夫だよ」

「フォローになってないよ…はぁ」

 

つまりはこういう事である。ウサギは大きくなれない星の下に生まれたようだ。

 

「大きくなれない星って何!?」

「?どうしたのウサギ君…」

「え?うーん…どうしたんだろ。つっこまないといけない気がした」

 

ウサギ君…ダメだよ地の文に干渉したら…

 

「ふーん…変なの」

 

こういう反応されるに決まってるじゃん。

 

「誰もやろうとしてない『月に向かう』って事しようとしてる時点で僕が変わってるのは分かってるでしょ?」

 

まさかの開き直りである。

 

「まさかの開き直りだった…それで?その夢は叶いそうなの?」

「うーん…難しいかな…」

「でも出来ないとは言わないんだね」

「そりゃまぁ…まだやれる事をやり尽くしたわけでもないからね。僕だけでは空を飛べないなら僕が飛べるようなモノを造ればいい」

「そっか…でもどうやって飛ぶつもりなの?」

「うーん…まずは鳥の翼をマネした物を作ってみようかな」

 

そう、兎は飛べない。跳ぶ事はできるが跳ぶだけでは落ちてしまう。だからウサギは飛ぶための物を造りたいと考えた。

 

「鳥の翼を…?でもそれをどうやって羽ばたかせるの?」

「うーん…そうだなぁ…手に着けるか…羽ばたかせるための物も造るか…」

「手に着けると疲れそうだね…」

「ずっと腕動かすからねぇ…でもまずは翼を造らないと。軽くて大きめに造ろう!」

 

地道に設計、素材集めをし、二ヶ月かけて翼が出来上がった。

 

「ようやく翼が出来たね」

「うん、でもまだ翼だけ。それにまだこの翼で飛べるかどうかもわからないけどね」

 

嬉しそうな彼女とは反対にウサギはまだ次があると先を観て言う。

 

「まずは腕につけて羽ばたいてみよう」

 

結果から言おう失敗だ。腕に着けた時点で持ち上げる事すら叶わなかった。それでもウサギは挫けない。

【持ち上がらないのなら次だ。元より腕に着けるだけで終わらせるつもりじゃない。なら『次』だ】

と、彼は前を、空に浮かぶ月を見ながらそう言った。

 




楽しめて頂けたでしょうか?
極力気をつけてはいますが誤字脱字、文章の違和感の指摘等があればお申し付けください

それでは失礼します


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そのつぎ

えー…ちらほら過程をすっ飛ばして物が作れるって良いなぁと思う月ウサギでございます
ウサギ君やその器用さを寄越しなさい

と、まぁそんな感じで「そのつぎ」お楽しみください


【三】

翼の完成(二)から三ヶ月経ち胴体部分の作成が終わった。動力とウサギを保護する事が目的の物だ。

 

「ココとココを繋げて…と。そしたらココを…」

 

ウサギは一つ一つ確認しながら胴体部と翼を繋げていく。

 

「よし、繋がった。これで動くはず…」

 

ウサギはそう言い動力部のロックを外す。

 

「まずはゆっくりでもしっかり…丁寧に…」

 

ウサギは胴体部の中で身体を固定しハンドルを握る。そして地面と平行になるように身体を動かすと足下に来た板をゆっくりと脚で押し込んだ。

 

『あの時動かなかった翼が広がる』

 

ウサギが力を緩めるとまた板は上がってくる。そしてまた脚で押し込む。今度はさっきよりも力強く。

 

『翼が持ち上がる』

 

そしてまた緩め三度ウサギは板を押し込む。

 

『持ち上げられた翼は羽ばたきウサギは地面を離れる』

 

はずだった…が、ウサギの見る景色は変わらない。翼の羽ばたく音の代わりに聞こえたのは何かが砕け壊れる音だった。

今回動力部として使われたのは木材だった。そしてウサギはまだ幼い頃に月を目指し、ただ上に、上にまっすぐ跳ねていた。その結果ウサギの跳ぶ力は強くなり、動力部がその力に耐えれなかったのだ。

 

「壊れたのは…板と軸か…今は大丈夫だとしても木材での繋ぎ方も考えないと危ないかもしれない…」

 

ウサギは考える。踏み込むという動作はウサギにとって最善だったはずだ。誤ったのはその力ならばそれに耐えられる物を造るしかない。

 

「木材は組み方を変えてみるとして…軸と板が思い付かない…」

 

ウサギが考えていると

 

「木じゃないとダメなの?」

「うーん…ある程度軽くないと難しいかな…って何時の間に⁉︎」

 

彼女はイタズラが成功したと言わんばかりの笑みを浮かべて

 

「何時の間にかに決まってるじゃん」

 

とはぐらかす。

 

「でもそっかぁ…重いと浮かびにくいもんね」

「そうなんだよ…軽くて丈夫なもの…軽く散歩しながら考えてみようかな」

「そうだね。焦っても仕方ないもんね」

 

ウサギは仕方がないと溜息を吐きつつ出かける準備をし始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【四】

さて、息抜きに散歩をしてはみるが…

 

「うーん…石の中をくり抜いて…でもなぁ…」

 

うん、ウサギ君…一旦辞書で「息抜き」を調べてみようか。

 

「ウサギ君もうちょっとゆっくりしようよ…」

「ん?あー…ゴメン」

 

ウサギはゆっくり深呼吸をして頭を切り替える。

 

「なら、何をしようか…」

 

ウサギは呟く。

 

「うーん…丘に行ってみるのはどう?少しは空に近くなるし」

 

彼女が応える。

 

「そうだね。それに丘の上はきっと涼しくて過ごしやすそうだし」

 

少し遠くに見える小高い丘は今のような暑い時期には程よく涼しい風が吹く。彼らは涼しい丘の上を目指して歩き始めた。

 

「おや、ウサギ君お出かけかな?」

 

もうすぐで丘の麓というところでウサギは声をかけられた。

 

「あ、ラビットおじさん。今日はちょっと息抜きしようと思ってね」

声をかけたのはそこそこに歳をとった「ラビット」という兎だった。

 

「そうかそうか。ずっと飛ぶための機械と睨めっこしても出来るわけじゃないからね」

「うん、まぁね。それにさっき軸と板の強度が足りなくて動力部が壊れちゃったから材料も考えないと…」

「なるほど…硬くて軽いものが必要なわけだね」

 

ラビットはウサギよりも長く生きている。そして様々なことを経験している。なので

 

「うーん…木の種類も考えてみたらどうだい?木によって硬さも違うからね」

 

こんな知恵、発想も出てくる。

 

「木の種類…そっか。ありがとう!ラビットおじさん!」

 

ウサギはラビットに礼を言い帰ろうとした。が、今日は息抜きだと思い出し一度深呼吸をすると

 

「でも今日は息抜きだから明日から頑張るよ」

 

と、また丘を登るために彼女と歩き出した。

 

「気をつけて行くんだよ」

 

ラビットは笑いながら送り出した。




楽しんでいただけましたでしょうか

ウサギ君ワーカホリックってあだ名付けられるんじゃないですかねいつか…w(因みに私は付けられかけました)

友達に見せたのはもう1話分(【三】とか【四】1つ分)なので次の話から時間がかかると思います(言い訳)

それではまた


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それから

1話毎の文章量がどんどん減っていく…文才が欲しいです。近所のコンビニでも売ってませんでした(あったら凄い)
本読む時間作らなきゃなぁと思いましたまる
それでは【五】【六】お楽しみください


【五】

「よかったね。ウサギ君」

「うん。ラビットおじさんのおかげで別の視点が出来たからね」

 

ウサギは彼女に笑いかける。そんなウサギとは対照的に彼女の表情は明るくない。

 

(やっぱり私じゃウサギ君の力にはなれないのかな…)

 

そう、彼女にはラビットの様な経験やウサギ程の知識が無い。だから彼女はウサギの力になれていない、と悩んでいた。すると

 

「お、そろそろ頂上だね。」

 

とウサギの声が響く。はっとして彼女は前を見る。

 

「綺麗…」

 

彼女は思わず呟いていた。

 

「今日はありがとね。ラビットおじさんに会えたし久しぶりにゆっくり出来た気がするよ…それにこんな綺麗な景色も見れたしね」

 

今は夕暮れ時。周りより高い丘から見下ろす景色は普段では見られない特別なものだった。

そして彼女は思った。経験も知識も無くてもこうやって少しは助けられるかもしれないと。

 

「…こっちこそありがと…」

「え?何?」

 

彼女の溢した感謝は風に遮られてウサギには届かなかったようだ。それで構わないと彼女は思いながら

 

「ん?何でもないよ。もう少ししたら帰ろっか」

 

楽しそうに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【六】

息抜きから2週間

 

「この木なら…大丈夫なはず…」

 

ウサギは自分で作った条件に合う木を見つけた。後は加工して組み立てだ。

 

「慎重に…丁寧に…」

 

自分に耐えれる強度を保たせつつなるべく軽くなるようウサギは丁寧に削っていく。

ヤスリで軽く削り表面を整える。

 

「ココをこうして…」

 

途中で外れたりしないようにしっかりと組み立てる。

 

「よし、出来た!」

 

どうやら試作2号機が出来たようだ。

ウサギは前と同じように身体を固定し板に足を添え、押し込む。

あの時と同じく翼が広がる。

一度緩め次は強く押し込む。

広がった翼が持ち上がる。

再度緩める。そして強く踏み込む。

音がした。あの時とは違う、翼が羽ばたく音(空を飛べる音)が。

景色が落ちる。違う、ウサギが上がる。

「これなら」とウサギは思った。そしてまた踏み込む。飛んでいる。「跳ぶ」のではなく「飛ぶ」

生身では出来ない「宙を駆ける」という行為。

それからも不具合無くしばらく飛び続けゆっくりと地面に降りる。

 

「大きな鳥さんかと思ったらウサ君だったの」

 

ウサギが翼から降りるとそんな声が聞こえた。

 

「あ、ハーゼさん。こんにちは」

「うん、こんにちは。といってももう夕方だけどね」

 

人懐っこそうな笑みを浮かべているのは『ハーゼ』。ウサギに助言をしたあのラビットの奥さんだ。因みにウサギがハーゼおばさんと呼ばないのは女性におばさんと言うのは失礼だからだ。決して『おばさん』と呼んだ時のラビットの笑顔が怖かったからではない。ないったらない。

 

「もうそんな時間かぁ…そろそろ帰らなきゃ」

「そうだね。気をつけて帰るんだよ?」

「はーい」

 

そんな時「きゅるるる」と気の抜ける音がウサギのお腹から鳴った。

 

「………///」

「あはは…あ、そうだウサ君家でご飯食べてく…?」

「…すいません///」

「よし、決まり!それじゃあ行こうか」

 

ウサギ曰くその日ラビットとハーゼと一緒に食べた夕飯はとても美味しいものだったらしい




はぁ…【五】の彼女が可愛い(友達の感想を載せるな)
お楽しみいただけましたでしょうか
気をつけてはいますが誤字や読みづらい等のご指摘ございましたら感想と共にお待ちしております(図々しい)
次はちゃんと文章量増やしたいものです…

それではまた


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つきとかのじょ

友達に見せる時サブタイなんて考えなかったからなぁ…と思いつつサブタイを考えております。雪月ウサギでございます
前書きも何を書こうか悩みながら書いているわけですがこれがまた本編書くより大変だったり…
そんな愚痴が前書きの【七】【八】お楽しみください


【七】

ハーゼとラビットの家で夕飯を食べてから1週間。ウサギは悩んでいた

 

「どうしよう…思ったより上に行かないし疲れる…」

「ウサギ君…普通はあんな軽やかに飛べない(疲れる以前の問題だ)と思うよ…私なんか少し浮くことすらできなかったし…」

 

ウサギが飛んでいるのを見て彼女もどんなものなのか気になって乗ってみたのだがこれがゆっくりとしか羽ばたけなかった。

因みに昨日ラビットも興味本位で試してみて10センチ浮いたが1分ともたなかった。

 

「うーん…全体的にもう少し軽くしなきゃな…動力ももう少し効率よくしないと月に行く前に疲れて落ちちゃうし」

「落ちちゃったら大変だしね…」

「うん。一応ハンドルに付いているレバーで翼を固定して滑空が出来るようにはしたけど結構速くて怖かったからね…」

 

そう言いながらウサギは体を震わせる。地面に向けて真っ逆さまとまではいかなくてもスピードがぐんぐん上がり減速も出来ないなんてきっと誰だって怖い。

 

「うーん…あ、そうだ!滑空して速くなった時に上に行くってのはどうなの?」

 

彼女がたずねる。

 

「うーん…もう少し翼の形を整えたら出来なくはないかな。でも落ち始めた所まで戻れるわけじゃないから軽くする事に変わりはないよ」

「そっか…」

 

少しは近づけた月もまだまだ遠いようだった。

 

 

 

 

 

 

 

【八】

遠い遠い月を見る。手を伸ばしても届かない。

羽音共に巨大な鳥が…いや、「あの子」が月に向かって飛んでいく。

それでも「あの子」は届かない。

翼は凍り付き動かない。開かない。広げられない。

翼が動かない。落ちていく。堕ちていく。地面に向かって…

 

彼女はいつもそこで目を覚ます。

 

「やっぱりダメだった…次…次こそ…」

 

×××××××××××××××××××××××××××××××××××

 

「まずは翼の形を…」

 

ウサギは丁寧に翼の形を整えていく。少しでも軽く、上に、月に行くために。

 

「ウサギ君元気ー?」

「ん、おはよう。元気だよ」

「今日は何するの?」

「まずは翼の形を整えることかな。あとはちょっとずつでも飛ぶ練習しようと思うよ」

「そうなんだ…」

 

彼女は落ちていく翼を思い出す。

 

「ねぇ、ウサギ君…空を飛ぶのって楽しい?」

「…え?…うん、楽しいよ」

 

ウサギは急な質問に驚きながらも返す。

それを聞いた彼女は色々な感情が混ざってしまってる。そんな表情をしていた。

 

「でも怖いよ」

「え…?」

「少しずつ月に近づく反面少しのミスで落ちちゃうかもしれない。途中で翼が壊れてしまうかもしれない。翼じゃなく僕にも何かあるかもしれない」

「…うん」

「それに…」

 

ウサギは少し悩んでから口に出す。

 

「本当は月は僕なんかが行っちゃいけない所…なのかもしれない…」

「そんな事ない!」

 

彼女が否定する。ウサギも彼女自身も驚くほどの声で否定する。

 

「ウサギ君は…うーちゃんはずっと月に向かおうって頑張ってるの!跳んでも手が届かないからって翼まで造って周りが心の何処かで出来ないって決めつけてる事に挑戦してるの!それに…」

 

そこまで叫んで彼女はハッとした。

ウサギは叫ばれた事と呼ばれなくなった呼び方で呼ばれた事に驚いているようだった。

自分が叫んでしまった事、驚いたウサギの顔、自分が言おうとした事。その3つを理解した瞬間に彼女の体温が一気に下がる。

 

(どうしよう)

謝らなくちゃ

(どうしよう)

でも受け入れてもらえなかったら

(どうしよう)

逃げたい…怖い

 

考える、いや、もはや怯えている

 

「ありがとう…」

 

そんな彼女の耳に届いたのは感謝の言葉

 

「なん…で…」

「実はね…怖かったんだ…本当に月に行って良いのか…」

「ダメなわけ…ないよ…誰にも…邪魔できないよ…」

「うん…そうやって僕の悩みを否定してくれた…それに…また『うーちゃん』って呼んでくれた」

「それは…」

「だから…ありがとう」

 

ウサギはゆっくりと落ち着かせるかのように彼女に言った。

対する彼女はまだ少し震えている。

 

「…ごめんね…ちょっと落ち着きたいから…今日はもう…」

「…うん、ゆっくり休んでおいで。また明日ね」

「…うん」

 

彼女はそのまま出て行った。




前書きが大変なら後書きも大変でございまして…
ウサギ「僕が呼ばれたのって…」
ネタ切れだからよ
ウサギ「開き直られてもなぁ…名前も似てるし…」
私の名前も適当に考えなきゃね…
長くなりそうだし今回はここまでかな…
それではまた


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うさぎとかのじょ

時間かかったくせに文字数足りなくて3つ詰め込むという…無念也…
いつもと総文章量変わらない気も…文才と文章量が欲しいです、はい
でも良くも悪くも出来は変わらないはずなので(震え声)
【九】【十】【十一】お楽しみください


【九】

彼女が出て行ってからもウサギは作業場にいた。

翼や機体を弄るわけでもなく、設計図を見直すわけでもなく、ただ作業場のイスに座ってぼんやりと考え事をしていた。

 

「『うーちゃん』かぁ…いつからそう呼ばれなくなったっけ…」

 

うーちゃんって呼ばれてた事も忘れかけてたくせに、とウサギは思った(自嘲した)

 

「でも…あそこまで真っ直ぐ感情ぶつけられたのも久しぶりだったなぁ…」

 

ウサギの夢は『月に行くこと』だ。『月が綺麗だから好き』というなら他にもいるだろう。幼心(おさなごころ)に『月に行ってみたい』と思ったこともあっただろう。でも月に行こうとするものは?いない。いなかった。月に行こうとするウサギに彼女やラビット、ハーゼを除いた周りは否定はせずとも応援はしきれなかった。

だからどこか遠巻きに、関わりすぎないようにウサギと接していた。

そんなウサギが真っ直ぐ感情をぶつけられるのは本当に久しぶりすぎてどうしていいかも分からないことだった。

 

「はぁ…どうしたらいいんだろ…」

 

ウサギは答えの出ない問いに頭を悩ませた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【十】

一方、作業場から出て行った彼女は

 

「なんで叫んじゃったんだろ…」

 

丘にいた。彼女も特にどうしようというわけでもない。ただ、怖くなってしまった。

ウサギに嫌われるのが怖くなって、前にウサギが認めてくれた場所に来た。

 

「ウサギ君があんな思いしてたのに気付けなかったし…なのにあんな風に聞いちゃって…」

 

他人の考えなんて分からない。それは理解している。が、傷つけてしまったかもしれないともなればそんな常識も納得できない。彼女から見ればウサギを傷つけた事に変わりはないのだから。

 

「また明日ちゃんと謝らなきゃなぁ…」

 

彼女は暗くなるまでそこにいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【十一】

次の日ウサギは作業場で機体を弄っていた。強度は残しながら少しでも軽くするために丁寧に削っていく。納得がいくまで削りウサギは少し休む事にした。

 

「それにしても遅いなぁ…まさか怪我とかしてないよね…」

 

ウサギは彼女を心配していた。彼女が落ち込んで出て行ったからだ。

 

「こんにちは…えーっと…ウサギ君お疲れさま。昨日はゴメンね急に叫んだりしちゃって…」

 

彼女が来てくれた。ウサギはその事に安堵した。

 

「別に気にしてないよ。ちょっとびっくりしただけだから」

「でも…「それにね」?」

「本気で僕の夢を信じてくれてるって伝わった。だから、もう謝らないで?ね?」

「…うん、ありがとう」

 

ちゃんと仲直りできたようだ。

ウサギは彼女が本気で応援してくれる。彼女はウサギに自分が許されている事が分かった。もう2人とも普段通りのようだ。普段通りは後はもう…

 

「調整も出来たしちょっと飛んでくるね」

「いってらっしゃい」

 

月に向かう為に翼を完成させるだけだ。

ウサギは深呼吸する。ゆっくり吸ってゆっくり吐く。

慣れた手つきで身体を固定し、板を押し込む。

飛べる。前よりも楽に飛べる。

でもまだ少し足りない。これではおそらくまだ届かない。近づけても届きはしない。

ウサギはまだ改良が出来る、とまた一歩近付けたとワクワクしながら地上に戻った。




ウサギ「なんか久しぶりに飛んだ気がする」
なんか久しぶりに飛ばした気がする
ウサギ「そういや友達から路線変更したと思われたんだっけ?」
ウサギと彼女がイチャつくもんで…
ウサギ「?イチャついてはいないよ…?」
アーソウデスネー
ウサギ「次はいつ頃になるの?」
急に話変えなさんな。次は…私の予定と書く速度次第とだけ…
ウサギ「つまり未定と」
うん。あ、そろそろ締めなきゃ
皆さま、それではまた!
ウサギ(逃げたな)


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つきとかれ

新話を投稿するたびにUAがある程度増えるのを見て「一定数の方は見てくださってるんだなぁ」と励みになる雪音でございます
えー…そろそろウサギを月に到達させねばと思う反面この話を終わらせるのもどこか寂しいような気がいたしまして…
それでもやはり完結させてこそとは思いますのでしっかりと終わらせはいたします。
それでは、私がそんなことを改めて感じた上での【十二】【十三】をお楽しみください


【十二】

少しずつ近づく月を見る。手を伸ばせば届きそうな、それでいて届かない。

その大きな翼を羽ばたかせながら少しずつ近づいていく。少しずつ月が大きくなる。

手が届きそうだ…あと少しなんだ…

 

彼はいつもそこで目が覚める。

 

「…お腹すいた…」

 

ウサギの朝は今日も健康的(?)のようだ

 

×××××××××××××××××××××××××××××××××

 

「うーん…これ以上飛ばすにはどうしよう…」

「軽くはしたんだよね?じゃあもっと踏み込んでも大丈夫なようにするとかは?」

「今も結構な力で踏み込んでるよ。疲れるけど」

「うーん…」

「うーん…」

 

月に向かう事は出来るがまだ少し届かないウサギは彼女と一緒に悩んでいた。(機体)を軽くしたことで幾分かは飛びやすくなったようだがまだ少しだけ足りないようだ。因みにどれだけ飛びやすくなったかと言えば彼女でも少し浮かすことが出来るくらいにだ。

 

「そういえば動力の方は弄ったの?」

「え?動力…?……………あっ」

「忘れてたんだね」

「…うん」

 

少しでも浮けるようになったからか彼女もちゃんとアイディアが出せるようだ。あの時「力になれない」と悩んでた彼女はどこへ行ってしまったのか(一足先に月にでも言ったんじゃない?by雪音)

 

「じゃあ少しでも楽に出来る新しい動力部分を作ってみようかな」

「具体的にはどうするの?」

「まずは力の伝え方を変えてみるとかかな」

「力の伝え方…?」

「うん。今は踏み込むと動力部分が『ギュッ』ってなってから『ブワーッ』って翼に力が行くんだけど…」

「ゴメン力以前にウサギ君の説明が伝わらないんだけど…」

「え?だから『ギュッ』ってなって『ブワーッ』って…」

 

どうやらウサギは説明が下手な(擬音語だらけの感覚派の)ようだ。

 

「と、とりあえず新しく作る!」

「う、うん」

 

ウサギは新しい動力部分を作るための準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【十三】

「そういえばウサギ君。今は一回の踏み込みでどれくらい飛べるの?」

「うーん…全力で踏み込みで2往復羽ばたくくらいかな」

「普通に…というか疲れ過ぎないくらいだと?」

「1往復出来るかどうかの瀬戸際くらい」

 

自転車で言えば普段平坦な道を鼻歌歌いながら漕ぐくらいの力か上り坂を座って漕ぐくらいの力かと言ったところだろう。上り坂は立ち漕ぎしろって?踏み込み動作に立ち漕ぎ扱いになるものはないのである。

 

「なら最低でも…1往復半くらい?」

「それくらいは欲しいかな…問題はどうやって力を伝えるかなんだけど…」

「今は踏み込むと動力がどうなるの?」

「えーっと…ギュッって板を踏み込むと板に付いてる棒が…----------(作者の都合で省略)…って感じかな」

(擬音混じりとは言え大分まともな答えが返ってきた…でも改善点が分からない…あっ)

「板押し込む時のガタガタって音動力だったんだ…」

「そうなんだよね…模型作った時はもう少し静かだったんだけど…」

「そうなんだ……ん?模型?」

「うん、模型」

「模型あるなら模型の動力だけ見せてくれても良かったじゃん!」

「あっ…」

 

彼女の言う事は尤もだ。文章にすればアレコレ誤魔化して一行も無いが喋るとなると結構時間がかかっていたのだから。

 

「とりあえず…これがその模型だよ」

「動力部分…アレ?板のところ押しても凄い静か…」

「それにちゃんと羽ばたけるしね〜」

「ウサギ君…ちょっと模型じゃない方の翼の動力見せて」

「ん、いいよ〜…よいしょ」

 

そう言ってウサギは翼の動力部を開ける。そしてガタガタ音の理由を見つけた。

 

「ウサギ君…これって…」

「うん…これのせいだね…」

 

ウサギは彼女からそっと目をそらす

 

「なんで模型と違うの⁉︎」

「造ってる時にこっちの方が飛びそうに感じたんだもん!」

「模型意味ないじゃん!」

「はい…すぐに直します…」

 

どうやら少しウサギが弄っていたようだ。つまり模型の形での飛行はまだしていないという事だった。




ウサギ「なんか僕がちょっと残念な子みたいになってない?」
ん?チャームポイント程度でしょ
「ホントは?」
友達とツイッターで話してたら食いしん坊キャラが定着したし本編でも出そうかと…あっ
ウサギ「それが本音だよね…ついでにツイッターの人増やそうとしてない?」
ちょっとずつでも認めてくれる人が増えたら嬉しいとは思ってます、はい。
それではまた


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もうすぐ

あー…最初に比べてウサギと彼女もなんか性格変わってる気がする…そして話のテンポとか流れもちょっと重いというか暗いというか…そんな事を思いながら書いてます。雪音でございます。

さて、もうすぐ最終回になるわけですが…今回話に関係するのは【十四】だけです。【幕間】はちょっとこんなオチもアリかなと書いたもので…白状すると最終話とその1つ前は1話ずつ行きたくてここに幕間入れましたゴメンナサイ

それでも仕方ないから見てやろうという方いらっしゃいましたら【十四】、【幕間】お楽しみください


【十四】

「ここを…こっちに…」

「ウサギ君また変な付け方しようとしてないよね?」

「し、してないよ。もちろん」

 

動力部分を模型の通りにする為にウサギは頑張っている。因みに今に至るまでに2度付け方を変え彼女に怒られている。ウサギは彼女に尻に敷かれる運命なのだ。きっと。

 

「よし、出来た!」

「あっ…ホントだ…」

「『あっ』て僕疑われてたの⁉︎」

「ちゃんと2回も変な付け方した事実を認識したうえで言ってる?」

「うぐっ…スイマセン」

 

ウサギは言い返せないので素直に謝る。

 

「ま、まぁとりあえずは飛行テストしなくちゃ」

「ちゃんと飛べそう?」

「それを確かめるのも飛行テストだよ」

「それもそうだね」

「それにこの翼なら絶対に飛べるよ。きっとこれまでよりもずっと高く」

 

そう言ってウサギは飛ぶ準備をする。ゆっくり深呼吸をする。《この翼なら行ける》飛ぶ前からウサギはその確信があった。

踏み込む。飛ぶ。これまでとは違う軽さがあった。

 

(ずっと近くにあったのに…他の方が良いかもしれないって遠回りしてた…)

 

ウサギは新しいから、自分がそんな気がするから、ただ漠然とそんな判断材料にすらならない判断材料で近道に見えた遠回りをしていた。

 

(でも今は飛べる…これなら届く!月に行ける!)

 

今の翼は前の翼を超えた。ウサギは雲を超えた。下から見るだけだった、今まで来れなかった、もう何物にも月を隠されない場所へ。

 

「あは、あはははは!ようやく届く!」

 

もうすぐ月に行ける。長い間待ち望んでいた。でもまだ今は地上に戻ろう。やる事は残っているのだから。

 

 

 

 

 

【幕間】

もう月に届く。準備も出来た。ウサギは月を見上げる。長い間目指した月だ。それにもうすぐ手が届く。

 

「手段は出来た。後は向かうだけだ…」

「長かったねぇ…」

「うん…長かった」

 

ウサギは翼に乗り込み身体を固定する。もう慣れた手つきだ。

 

「じゃあ、いってきます」

「お土産は月の石でいいよ」

「ん、わかった」

 

ウサギは笑いながらその『翼』で月に向かって飛んでいった

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「っての書いてみたんだけど…どうかな?」

「登場人物少なくない…?というか『彼女』の名前は⁉︎」

「………て、てへ?」

「てへ?じゃないよ…ラビットもハーゼも兎の他国語じゃん!」

「名前考えるのめんどくさかったんだよね」

「ならもう書かなきゃいいじゃん!」

「もう完だから!書かないよ!」

「あ、そっか」

「うん」

「で?彼女の名前は?」

「それは…いや、辞めとこ」

「思いつかなかったの?」

「いや、ちゃんと考えたよ」

「じゃあ教えてよ〜」

「いーやーだー」

「けーちー!」

「ケチで結構!」(名前借りた本人に言えるわけないじゃんか…)

「ねー、うー君〜」

「その呼び方恥ずかしいからやめてって言ったじゃん…恥ずかしい…」

「じゃあちゃんとウサギ君って呼ぶから教えてよ〜」

「ちゃんと呼んでくれるのはいいけどやっぱり教えれない!はい、この話おしまい!」




ウサギ「雪音!なんで【幕間】で僕が書いてることになってるの!」
ん?あー…ホントはウサギでも誰でも無い名無しの予定だったんだけどね〜ウサギの名前借りて「らぶこめちっく」?にしてみた
ウサギ「なんか納得いかない…」
そうね〜ウサギは好きな子いるもんね〜幼稚園の時はハーゼ先生だっけ?
ウサギ「な、なんで知って…っていうかラビットおじさんの笑顔がちょっと怖いんだけど⁉︎」
素敵な愛妻家じゃないの。さて、そろそろ締めるかな
ウサギ(あ、逃げる気だ)

それでは皆様、御機嫌よう


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じゅんび

次で最終話…のはず…(おい)
何気に最近文書くのが遅くて申し訳ないです
スカスカでもスカスカなりに頑張ってるんでスカスカ…語尾じゃないよね
さて、【十五】お楽しみくださいませ


【十五】

ずっと昔…

 

「ねぇ、■■■■■。ホントに月に行くの?」

「うん、行くよ」

「でも危ないよ?失敗したら落ちちゃうんだよ?」

「わかってるよ。落ちたら死んじゃうし、死んじゃうのは怖いよ。でも月に行きたいから落ちないように頑張るの」

「そっか…じゃあ…待ってるね。■■■■■が帰ってくるまでずっと待ってる」

「そっか…ありがとね■■。待っててくれるなら絶対会うために帰ってくるよ」

 

そう言って彼は月に向かった。彼女に必ず帰ると約束して。

 

しかし彼女はもう彼とは会えなかった。彼は月に向かう途中で落ちてしまった。

 

彼女は泣いた。彼が焦がれた月を想って(呪って)泣いた。その後も彼女は彼を忘れることは無かった。

 

ここまでは昔の話。さて、今の話に戻ろうか…

 

×××××××××××××××××××××××××××××××××××

 

「最後は…ラビットおじさんとハーゼさんの家か…」

 

ウサギは月に行く準備として周りに月に行く事、帰ってくるかわからないことを話しに行った。

 

「ふぅ…ラビットおじさーん、ハーゼさーん」

「ん?おや、ウサギ君か。今日はどうしたのかな?」

「今日はちょっと大事な事を話しに来たんだ。ハーゼさんもいる?」

「もちろんいるよ。上がっていきなさい。時間は大丈夫かい?」

「ラビットおじさんとハーゼさんが最後だから大丈夫だよ。」

「そうかい…ならちょっと早いけどおやつにしようか」

 

そう言ってラビットはウサギの頭を撫でる。そうしてハーゼにおやつを出してもらっている間にお茶を淹れる。

 

「ウサ君こんにちは。おやつと言っても昨日作ったクッキーだけど良かったかな?」

「ハーゼさんこんにちは。ハーゼさんのクッキーなら大歓迎だよ!」

「ふふ、よかった。ラビ君は『ハーゼが作ったものならなんでも美味しいよ』としか言わないから時々心配になっちゃうのよ」

「は、ハーゼ…わざわざウサギ君に言わなくったって…」

「あははは、ラビットおじさんらしいね。それに僕もハーゼさんの料理は大好きだよ」

「なら良かった。ありがとウサ君」

 

美味しいクッキーとお茶を楽しみながら、3人は楽しそうに話し、笑い合う。ウサギはとても心地良くてずっと浸っていたくなる。そんな暖かさを感じていた。それでも、ウサギにはやる事がある。その為に今日は来たのだ。

 

「ねぇ、ラビットおじさん、ハーゼさん。今日はね、大事な話をしに来たんだ…」

 

2人はしっかりとウサギの方を向く。ウサギが真剣な表情をしているからだ。

 

「明日の夜にね…月に行こうと思うんだ」

「明日の夜に…」

「とうとう行けるんだね?ウサギ君」

「うん。一昨日月に行くための翼が完成したんだ」

「そうか…完成させるまで1人で頑張ったね、ウサギ君」

「そうね…あまりウサ君の夢は受け入れられなかったから…」

「確かにね…でも1人じゃないよ。ラビットおじさんにもハーゼさんにもたくさんお世話になっちゃったし」

「それでも、ちゃんと成し遂げた事は誇っていい、いや、誇るべき事だよ。時間をかけても完成させる事が出来たのはウサギ君の力だからね」

 

そう言いラビットはまたウサギを撫でる。

 

「ウサ君の頑張りはちゃんと見てたよ」

 

ハーゼはウサギを抱きしめる。

 

「ラビットおじさん…ハーゼさん…ありがとう」

 

ウサギも2人を抱きしめる。

 

「それじゃあそろそろ帰るね。色々と準備しないといけないから」

「うん、そうだね。また帰って来たらお土産話聞かせてね」

「お土産は月の石でいいからね」

「あはは…月の石かぁ…頑張るね」

 

2人はお土産を持って帰ってくる約束に(言外にちゃんと帰って来てと)願いを込めた、ウサギはそれを感じながら家に帰っていった。




ウサギ「雪音、雪音。最初の方文字化けしてない?」
《雪音式ぷらいばしーぽりしー》のせいだね
ウサギ「どういうこと?」
最終話までお待ちくださいお願いしますってこと
ウサギ「へー…それと今回彼女が出てないのは関係あるの?」
彼女が出てないのはね…ラビットとハーゼの家に訪問しただけだから入れれなかったのさ
ウサギ「一緒に行きたかったなぁ…」
月から帰って来たら2人でクッキーでも食べに行きなよ
ウサギ「クッキー…」ジュルリ
ウサギ、ヨダレ出てるから拭いたきなさい

さて、次で話は最終話…ひょっとしたら後日談もやるかもしれませんがウサギが月に行くためのお話は次で最後でございます
それでは、また


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つきとうさぎ

とうとう最終話…
ちゃんと終わらせたい反面どこか寂しいような…
そんな【最終話】です
お楽しみくださいませ!


【最終話】

「ん…起きなきゃ…」

 

もう朝だ。月に行くための翼は出来ている。ちゃんと帰ってくる手段もある。後は月が出るまで待とう。今夜は満月だ。

 

----------------------

 

「おーい、ウサギくーん」

「いないよー」

「いるじゃん」

「いるよ」

 

ウサギがいる作業場に彼女が入ってくる。彼女の表情は嬉しそうな、それでいて不安そうなものだった。

 

「ねぇ、ウサギ君。怖くはない?」

「ん?そうだなぁ…怖くない…わけでもないかな。でもちゃんと行って…帰って来なきゃね」

「うん、そうだね。じゃあ私もちゃんと待ってるから」

「うん、ちゃんと迎えに行くよ」

「今度こそは」

「今日こそは」

『生きて月に行って生きて帰ってこよう』

 

2人はしっかりと約束する。ラビットやハーゼの時とは違いしっかりと、言葉で。

 

「よし、じゃあちょっと早いけど私はそろそろ行こうかな。じゃあ、ちゃんと迎えに来てね、ウサギ君」

「うん、ちゃんと迎えに行くよ。だから待っててね」

 

2人は笑いながら分かれていく。

 

「どうやって時間を潰そうか…」

 

彼女と別れたウサギは何もすることが無くなってしまった。

 

「うーん…よし、翼で丘まで行ってちょっとのんびりしよう」

 

そうと決めたウサギは翼に載せてる重りを荷物と入れ替え丘へと向かった。

 

「♪〜♪〜」

 

これまでは「月に届くため」と必死だったが今はもうそれは目の前まで来ている。だからウサギは珍しく鼻歌交じりに飛んで行った。

 

「〜♪…着いた〜。割といい時間かな」

 

もう月は東の空に出ている。欠けてのいない綺麗な満月だ。

 

「さっき飛んだけど最後のチェックだな…よし、よし……よし」

 

最後の確認は済んだようだ。なら後は飛ぶだけだ。

ウサギはもうすっかり慣れた動作で翼に身体を固定する。目を瞑ってゆっくり深呼吸をする。

板に脚を添え押し込む。緩めて再度押し込む。強く月に向かって飛んでいく。

 

「ちゃんと帰ってこなきゃ…」

 

ウサギは自分の生まれた村を見て呟いた。そして踏み込む力を強め、雲を突き抜け月に近づく。

 

「あと少し…」

 

一層踏み込む力を強める。それでもその『あと少し』が遠い。

 

「待っててくれてるんだから…届け!」

(もう…仕方ないなぁうーちゃんは…。ほら、あと少し、頑張って)

 

彼女の声が聞こえたと思った途端月が大きく、近くなる。

 

「ようやく…届いた…」

 

ウサギはとうとう月に着いた。

 

----------------------

 

大きな羽音と共にウサギ達は村に帰って来た。

 

「ねぇ()()()()()?」

「何?()()

「なんで私の体重知ってたのさ…」

「ん?もしかして持っていった荷物と体重一緒だったの…?」

「…う、うん」

「危なかったぁ…身長とかから適当に計算して大体「わーわー!」kgくらいだと思ったけどあと少しでも軽く見積もってたら2人して危なかったね」

 

ウサギはそう言ってあはははと笑った。

 

「笑い事じゃないよ…もう…」

「そうだね…でもまぁまずは…おかえり」

「うん…ただいま」

「それにしても長い間待たせちゃったみたいで…ホントにゴメンね」

「ホントだよ…体感時間なら200年は待ったんだよ?」

「僕ももっと早くに迎えに行きたかったよ…確か最初は雷で落ちたんだよなぁ…」

「そうだったね…あの時はホントに月が恨めしかったよ」

 

ウサギはそう言い思い出す。ずっと昔に落ちた記憶を。そして彼女、ルナも思い出す。ウサギが落ちた原因となった月を呪い自分自身が月に囚われてしまった事を。そして永い年月を繰り返したことも。

 

「でもちゃんとうーちゃんが月に迎えに来てくれたから許してあげよう!」

「ありがたきお言葉ー」

 

2人はおちゃらけて笑い合う。今まで出来なかったこともしてやろう。そう思いながら。

 

「よし、まずは父さんと母さんの墓参りだね。ちゃんと報告して、それからラビットおじさんとハーゼさんにも会いに行こう」

「うーちゃんのお父さんとお母さんのお墓?」

「父さんと母さんは僕とルナの事は知ってたからね…『想像もつかないし大変としか分からないけど無理だけはしないでね』って言われたっけ…」

「そっか…突拍子も無いことなのに受け止めてくれたんだ…」

「うん、きっと起こった事は理解出来てないだろうけどちゃんと受け入れてくれた事は嬉しかったよ」

「じゃあちゃんと報告しないとね。あ、そういえばラビットさんとハーゼさんにはどうやって説明するの?」

「い、今言わなきゃダメ?」

「だーめ♪」

「ちゃんと月で指輪渡したじゃん…」

「ちゃんとうーちゃんが何て紹介するか聞きたいな〜」

「うぅ…こ、婚約者…」

「そっかそっかぁ♪じゃあそろそろ行こっか、旦那さま♪」

 

ウサギは照れながら、ルナは楽しそうに、でも2人とも嬉しそうに歩いていった。




ウサギ〜ルナ〜挨拶するよ
ウサギ「ちょっと待ってー」
ルナ「というか私の名前ようやく出たんだけど!ここに来るのも初めてだし!」
ルナの名前は意図的に出してないからねぇ…仕方ない
ウサギ「ゴメン、おまたせ」
ウサギ遅いよ。ちゃんと並んで並んで…

それでは皆さま、月とウサギお楽しみいただけましたでしょうか。
拙いところなど多々あったかもしれませんが読んでくださった方に少しでも楽しんでいただると嬉しいです
それでは、皆さま
ウサギ、ルナ、雪音『ありがとうございました!』


挿絵をツイッターでねこのすさんから頂きました

【挿絵表示】



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番外
番外編!


書きたい欲はありました…
2つで迷ってました…
ウサギは言いました
ウサギ「ツイッターのアンケート?使えばいいじゃん」
私は言いました
「フォロワーさん少ないけどやるか…」
そして出たのがこの話でございます

ではでは【番外編!】お楽しみください


「ほら、ヨウ、ユキ起きるよ」

「もうすこしだけぇ…」

「あと5ふん…」

 

母親が2人の子供を起こそうと声をかけた。

 

「パパが美味しい朝ご飯作ってくれたんだけどな〜…仕方ないからママだけパパと一緒に食べちゃおうかな〜」

 

母親がいたずらっ子のような笑顔を浮かべそう言うと…

 

「ごはん!」 「おとうさん…」

 

2人はそれぞれの反応を示しながら起きた。

 

「はい、2人ともおはよう」

『お母さん、おはよう!』

「よし、じゃあまずは顔洗っておいで。そしたらみんなで朝ご飯食べよ〜」

『はーい』

 

『ヨウ』と『ユキ』そう呼ばれた2人はワクワクとした足取りで顔を洗いに行った。

 

「♪〜♪♪〜〜♪」

 

父親は鼻歌を歌いながら楽しそうに作った料理を盛り付けている。するとそこへ

 

「お父さん!おはよー!」ギュ-

 

双子の兄、ヨウが父親に元気な挨拶と共に抱きついた。

 

「お兄ちゃんずるい…。お父さんおはよう…」ギュ

 

双子の妹のユキは静かに父親に挨拶しながら抱きついた。

 

「2人ともおはよ〜。でもお料理中は危ないから次からは気をつけてね」ギュ-

 

父親も挨拶を返し2人を注意しながら抱きしめ返した。

 

「よし、じゃあご飯食べようか。2人とも手を『洗ったよ』。じゃあママを「呼んだ?」。ルナいつのまに…」

「ん?うーちゃんが2人にハグを返した時にはいたよ」

「気付かなかった…。よし、じゃあみんな手を合わせて…」

『いただきます』

 

月に行ったウサギは月に捕まっていたルナと一緒に帰ってきた。それからウサギの両親のお墓まいりをしてラビットとハーゼの家に月に行ったことを言いに行った。2人はルナが婚約者だという事を説明された時、驚きながらも祝福していた。ルナは月に居た時には日が出ている時のウサギと翼にしか干渉出来なかったんだから仕方ない。

それからしばらくして双子のヨウ()ユキ()が生まれた。元気いっぱいなヨウと静かだけど負けず嫌いなユキ。天然だけどしっかりしたウサギにちょっといたずら好きで優しいルナ。そんな仲良し4人家族は今日は何をするのかな?

 

『ごちそうさまでした!』

「ふぅ…うーちゃんの美味しいご飯も食べたし…今日はどうしようか?」

「えーっとね…おにごっこ!」

「かくれんぼがいい…」

「えー、かくれんぼあまりうごかないじゃん」

「だってユキはお父さんやお兄ちゃんみたいにはしるのはやくないもん…」

「うーん…あ、なら缶蹴りは?」

「あー、懐かしいね〜」

「カンケリ…?」

「なにそれ!」

「まず鬼を決めてね。空き缶を用意して鬼はその缶を守って他の人は缶を倒す遊びだよ。鬼は見つけてから缶を踏まないといけないから足が速くなくても勝てるんだ」

「面白そう!」

「それならユキもできそう…」

「うーちゃんそろそろスチール缶破裂させたり地面に埋めたりしないでね?」

「はれつ…?」

「お父さんかんうめちゃった…?」

「パパがちっちゃい時にね…友達とやっててパパが慌てて蹴ったら缶がお茶碗落とした時みたいに粉々になっちゃったり踏んだら埋まっちゃって倒せなくなっちゃった事があったの」

『お父さん…すごい…』

「も、もう大丈夫だもん!…多分。と、とにかく細かいルールは後で教えるから準備して外行こう!」

『はーい』

 

4人はそれぞれ準備をして外に出た。途中で細かいルール説明を済ませ、丘に着いた。

 

「じゃあ最初はパパが鬼やるから…ルナ最初よろしく」

「はいはーい。ユキ、ヨウ逃げる準備はいい?」

「だいじょうぶ!」

「頑張る…!」

「よし、じゃあ…スタート!」

 

その声と共にルナは缶を蹴り飛ばす。ユキとヨウは急いで隠れに行く。ルナも笑いながら動き始める。鬼のウサギは苦笑いしながら缶を取り、円の中心に立て十数える。

 

「…9…10。さて、どこかなー」

 

そう言いながら円から出る。

ウサギの後ろの茂みから音がする。カサカサと移動しているようだ。

ウサギは音とは反対方向に歩き始める。

茂みからヨウが飛び出し缶を狙う。

 

「はい、ヨウ見つけたー」

「へ?」

 

子供っぽい笑顔で缶を踏むウサギにヨウはつい気の抜けた声を出してしまった。

 

「音が聞こえてたからね〜次はもう少し上手にがんばろっか」

「音のせいかぁ…よし、次は頑張る!」

 

因みにウサギが全員見つけたらヨウが鬼だが気付いていない。

 

「あとは…あっちかな…」

 

そう言いながらウサギは歩いて行く。

 

(?…お父さん…あるいてる…?ちかくなってる…!)

「やっほー」

「あっ…お父さん…」

 

目が合ったユキとウサギは数秒固まる。ウサギの耳が誰かの足音を拾う。

 

「うーちゃんの負けー!」

 

隠れていたルナが飛び出し缶を蹴飛ばす。

 

「あっ…」

「お母さんすごい…」

「うーちゃん気抜いちゃったね〜」

「ルナ出てきちゃったかぁ…もっと後からだと思ってたのに…」

「ふっふっふー残念でしたー。じゃあもう一回うーちゃんが鬼ね〜。2人とも隠れよ〜」

『おー」

 

因みにこの後5回やったが鬼が変わることは無かったとかなんとか…

 

「ふー、楽しかったー!うーちゃん全敗だったね〜♪」

「ルナだけでも大変だったのにユキもヨウもどんどん学習してたからねぇ…」

「月に行こうとしてた時のうーちゃんにそっくりだったね〜。『なんでダメだったのか。どうすればいいのか。それでダメなら次はどうするか。』って」

「2人で頑張って考えてたもんね。発想はルナみたいに柔軟でどこか突拍子なくてビックリさせられる事も多かったよ」

「流石に木の皮使って紐作って茂みから音出すとはねぇ…」

「将来が楽しみだよ」

「うーちゃんみたいに『月に行くんだ!』って言い出したりして」

「言っちゃうかなぁ…」

「言っちゃうかもねぇ…」

 

2人(ウサギとルナ)は楽しそうに喋りながら遊び疲れて寝てる2人(ヨウとユキ)を眺める。

 

「じゃあそろそろ帰ろうか」

「そうだね。ご飯の準備もしなきゃいけないし」

「お腹すいたな〜」

「夜ご飯はシチューにしようかな〜」

「いいね〜」

「ヨウ、ユキそろそろ帰るよ」

 

ルナが2人を起こそうとするが全く起きる気配は無い。

 

「はぁ…仕方ないからおんぶして帰ろうか」

「だね…」

 

ウサギはヨウを、ルナはユキを背負う。

 

「ん、少し重くなったなぁ…」

「ホントだ…ふふ♪」

 

2人()2人()の成長を感じながら楽しそうに帰っていった。




缶破裂ってなに!?
ウサギ「蹴ったらぱぁん!って」
埋めたのは?
ルナ「踏んだらメキャって」
潰れずに?
ウサギ・ルナ『潰れずに』
なにそれ…いつのまにか子供出来てるし…
ウサギ「ユキもヨウも可愛いでしょ?」
養子にしたい
ルナ「ゆきねーダメだよ?」
は、はい(目が笑ってない…)
ルナ「よろしい♪」
ウサギ(ルナの気持ちは分かる…)
やっぱり親は強いねぇ…そろそろ締めようか
ウサギ(ネタ切れだね…)
それでは読んでくださった方々!

ありがとうございました!


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瞳石症候群【ワガママ】

ツイッターでちょっと来てたリクエストと企画を使わせていただいての番外編でございます。
いやー、良い企画に参加させていただきましてホント久しぶりに筆が進んだ…。
ウサギ「月ウサギ書く気無かったって噂あったんだけど…。」
まぁ本編終わったしネタもなかったからねぇ。
ルナ「その代わり絵を描くって噂も…。」
頑張るわ…。
さて、話はこれくらいにして…どうぞ!


「また雨だー。」

「雨だー…。」

 

村に雨季がやってきた。ユキもヨウもここ最近の雨のせいで外で遊べず退屈そうにしている。

 

「今年もよく降るねー。」

「だねー。」

「暇だねー。」

「6日目だもんねー。」

「かくれんぼし尽くしたしねー。」

「しまいには鬼の死角突いて移動したりトラップもあったね。」

「子供が一人で留守番する映画見せたのがいけなかったかなぁ。」

「ドア開けた途端に羽毛はびっくりしたねー。」

「糊とか付いてなくて助かったよ。」

 

羽毛布団は見るも無惨な姿になっていたがそれはいいようだ。

 

「それにしても…。」

「暇だね~。」

「絵本も全部読んじゃったし…。」

「つまんなーい。」

 

4人揃って退屈がピークらしい。

 

「二人には小説とかはまだ早いだろうし…。」

「だねー…あ、ちょっとした昔話ならあるよ?」

「昔話?」

「お姫様とか出てくる?」

「あー…ユキが考えてるようなお城のお姫様はいないかなぁ。」

「じゃあ不思議な道具は?」

「不思議な道具は出ないけど不思議なことはあるよ。」

「…あ、うーちゃんもしかしてその『昔話』って…」

「うん、ルナのほうが途中まではよく知ってると思うよ?」

「だよねぇ…。」

「お母さんも知ってるの?」

「知ってるというか覚えてるというか…。」

「?」

「二人にはまだちょっと早いかもしれないけどね。」

「これは昔のある二人の兎の恋と病気のお話だよ。」

「恋と」

「病気?」

「そう、二人の兎の恋と病気のちょっと悲しいお話。」

 

そう言ってウサギとルナ(二人)はどこか懐かしそうな顔で笑いながら話はじめた。

 

 

 

 

 

………

……………

…………………

 

 

 

「月までまだ遠いなぁ…。」

「遠いねぇ。」

 

幼馴染のウサギ君の隣で一緒に月を眺める。最初月に行きたいと聞いた時は驚いた。翼を造るなんて言ったときはおかしいと思った。でもウサギ君はすると言ったし、やらない事を言わないってことも昔から知ってる。

 

「ねぇ、ウサギ君。」

「なに?」

「どこまで出来たの?」

「まだ胴体の骨組みだけかな~、」

「なかなかかかるね~。」

「設計から資材の調達から全部自力だからね。大変だけど今すっごい楽しいんだ!」

 

本当に楽しそうに笑うなぁ…。そういえば…

 

「ねぇ、ウサギ君。なんで月に行こうと思ったの?」

「どうしたの?急に。」

「なんでウサギ君が月に行こうと思ったのか聞いたことなかったなぁと思って。」

「あー…そうだっけ?まぁなんて事はないんだけどね?」

「うん。」

「月に行ったらお婿さんにしてあげるって村一番の美人さんが昨日言ってた。」

「造り始めたの一年前だよね?あと美人さん相手なら誰でもいいの?もっとこう、幼馴染とかいるよね?ね?」

「ちょ、ちょっと怖いよ…。誰でもいい訳じゃないし冗談だから…。」

 

世の中言っていい冗談といけない冗談があるでしょ。

 

「まぁホントになんて事無いんだけどね…。ココから見える月が綺麗で行ってみたいって思っただけなんだ。」

「そうなんだ…。理由に面白みがないというかありきたりというか。」

「やっぱりそう思う?」

 

ちょっと困ったように笑ってるけど。

 

「そうとしか思えないなぁ。」

 

仕方ないよね。

 

「ならどんな理由だったらよかったのさ。」

「うーん…実は誰かの病気を治すために月の石がいるとか?」

「大変だ。それなら早く月に行かなきゃね。」

 

二人して笑い合う。月の石が必要な病気なんてないの知ってるし。つきのいしなんて進化に使えばいいのだ。

 

 

 

それから一か月後、ウサギ君が胴体を完成させた。動力、胴体ときて次は翼らしい。

 

「やっほー、ウサギ君。」

「やっほー。」

 

ホントに楽しそうに笑うなぁ…。………今一瞬だけ視界が変だったけど…疲れてるのかな。

 

「どうかしたの?」

「ん?ううん、なんでもないよ。」

 

ただの気のせいかもしれないのにこんなにワクワクしてるウサギ君の邪魔は出来ないよね…。

 

「なんでもないならいいけど…無理はしないでね?」

「うん、大丈夫。なにか手伝えることある?」

「そうだなぁ…あ、ノコギリ貸すからそこの木を印のところで切ってくれる?」

「分かったよ。」

 

ノコギリは…あ、あった。けど…

 

「ウサギ君…このノコギリ重すぎない…?」

 

重すぎて持ち上がらないんだけど⁉︎

 

「ちょっと女の子には重いかもね…。ごめんね、気付かなくて。」

「う、ううん。いいよ、大丈夫。」

 

ちょっとってなんだっけ…。あ、でもウサギ君は片手で持ってるし…私の筋力の問題なのかなぁ?

 

「ふぅ、切れた切れた。」

「お疲れ様〜。お茶飲む?」

「うん、ありがとう。その前にノコギリ置いてくるね。」

「…え?ちょっと待って⁉︎そんな置く時に『ドスン』とか音のするノコギリとか初めて見たんだけど⁉︎」

「でも軽くしようとするとすぐに刃が欠けちゃうんだよね〜。」

「そ、そっかー。なら仕方ないねー。」

 

私の筋力が足りないとかじゃなくてウサギ君の筋力が可笑しいんだね…。

 

「美味しいお茶も飲んだしもう少し頑張るかな。」

「私はそろそろ帰ろうかな。ウサギ君も無理はしないでよ?」

「わかってるよー。」

「ばいばーい。」

「また明日〜。」

 

うーん…ウサギ君の使ってる工具とかが重すぎて使えないし他に何か手伝えないかなぁ。明日はおやつ持って行ってみようかな。

 

 

次の日おやつを持って行ったら喜んでくれた。偶に視界がぼやける気がする。ちょっと疲れたのかな。

その次の日からはお弁当も持って行ったら美味しそうに食べてくれた。

 

「今日は煮込みハンバーグにしてみたよ〜。」

「おぉ〜、美味しそうだね。」

「今日は自信作なんだよね♪」

「ほんとだ、美味しい!」

 

あぁ、そっか。ウサギ君はどこまでも素直なんだなぁ。感情を真っ直ぐ向けてくるから……うん、なんでもないナンデモナイ。ソンナワケナイナイ。

 

「顔赤いけど大丈夫…?」

「へ?あ、あぁ、うん、大丈夫大丈夫!大丈夫だからなんでもないよー!うん!」

「そんなに目をキラキラさせて言うことかなぁ…。まぁ大丈夫ならいっか。」

「あははー…。」

 

うん、変なこと考えちゃったけどもう大丈夫なはず。…目をキラキラってそんなに楽しそうに見えたのかな…?

 

「でも今日は一回帰ろうかな。おやつは置いてくから食べてね!」

「やっぱりどこか悪いの?一人で大丈夫?」

「ちょっと用事思い出しちゃっただけだから一人で大丈夫だよ。ありがと。じゃ、また明日ね〜。」

「うん、また明日〜。」

 

確か家に本があったはず…。

 

「どこらへんだっけ…。」

 

医学書…医学書…。あった。

 

「視界のぼやけと…くしゃみで胸が痛くなるのは…。」

 

あれ?どっちかしか見つからない…。2つが同時に起こってるのかな?

 

「流石に冷めちゃった…。」

 

帰ってきてから淹れたコーヒーは冷めてる。あんまり美味しくないけど飲んじゃおう。うん、不味い。…何か光ったように見えたけどなんだろ。

 

「もしかして…。」

 

洗面所で鏡を見る。今光ったように見えたって事は多分…

 

「やっぱり…目が周りから宝石みたいになってる…。御伽噺の物だと思ってたのに…。」

 

『瞳石症候群』昔好きだった絵本に出てきた病気の名前。

絵本の中では主な症状は文字通り瞳が徐々に宝石に変わっていって発症から20日程で目の宝石だけを残して灰になる病気で発症例が少ないんだっけ…。

話は確か…お姫様に身分違いの恋をした男の子が発症して、眼が少しずつ宝石になった。時々見せる宝石の眼を見たお姫様はその男の子の宝石の眼を欲しがったけど実はお姫様も気付かないうちに男の子に恋をしていて…男の子が目の宝石を遺して灰になった時、宝石が色褪せて見えたことから自分の恋に気付いて3日後にお姫様も灰になってしまう…これって悲恋なのかな?二人の目はそれぞれ一つずつ王冠とティアラに付けられたのはある意味結ばれてると思うけど。

絵本の通りだと他に骨が脆くなるんだっけ?もしそうなら今のうちにウサギ君に何か伝えないといけないかなぁ。……さっきからウサギ君が基準になってる気がするけど気のせいだよね。うん、黙って居なくなったら月に行く予定が狂っちゃうといけないしね!

もういいや!(狂うのかな…)お弁当の準備だけして早く寝ちゃお!…もうあまり会えないんだなぁ。

 

 

 

起きたはいいけどヤな夢見たなぁ。とりあえず朝ごはんとお弁当作るかな。

 

 

「〜♪〜〜♪〜♪♪」

「鼻歌まで歌ってごきげんだねぇ。」

「まぁね〜。だいぶ出来てきたし。にしても今日はちょっと遅かったね。」

「ちょっといろいろあってね。準備に手間取っちゃった。」

「そうなんだ。」

「その代わり今日のお弁当は唐揚げとシャケチャーハンだよ。」

「今日クリスマスじゃないよ?」

「クリスマスは関係なくない?」

「そうだった。」

「それにウサギ君どっちも好きだったでしょ?」

「まあね。」

「ちょっとしばらく会えなくなるからねぇ。存分に味わいたまえ!」

「ははー!…ってちょっと待って?今会えなくなるって言った?」

「言った。」

「急にどうしたのさ。」

「ちょっとした病気らしくてね〜。明後日からしばらく入院だって。」

「へー…え?急すぎない?昨日まではあんなに元気だったのに…。」

「それが急に悪くなったりするんじゃなくて患者本人も気づかないうちに進行してくんだってさ。」

「そんな病気もあるんだね…。どれくらいで治るの?」

「うーん…人と進行具合によるらしくてまだ分からないんだよね。もしかしたら大きな病院に移るかもしれないらしいし。」

「そうなんだ…。なら今度お見舞い行くよ。何か欲しいものある?」

「お見舞いはいいよ。ウサギ君が月に行くことの方が楽しみだし。あ、でも渡したいものはあるからそうだなぁ…10日後に私の家に来てよ。」

「10日後?いいけど下手したらまだ入院してるんじゃないの?」

「荷物が届く予定なんだよね。ウサギ君へのちょっとしたプレゼント。」

「ん、分かったよ。取りに行くね。」

「うん、ありがとう。じゃあ今日はもう帰るね。明日は来れるか分からないけどウサギ君は頑張ってね。」

「無理に来なくて大丈夫だからね。治ったら一緒に月に行くのもいいかもね。」

「…うん、なら私はちゃんと治して、ウサギ君は翼を完成させて一回月に行かなきゃね。」

「もちろん!だから焦らなくていいからちゃんと治すこと。待ってるからね。」

 

優しいなぁ…ウサギ君は…。ごめんね。

 

「うん、頑張るよ。じゃあ、またね(・・・)。」

「うん、またね (・・・)。」

 

もう会えないのになぁ…。嘘つきでごめんね…。

 

 

最初に視界が変になってから20日だとすると…

私が宝石になるまで残り7日。昨日10日って伝えておいてよかったと思う。まず動けるうちに服をある程度捨てないと入院が怪しまれちゃうからなぁ。そういや骨が脆くなるってどれくらい脆くなるんだろ…。

 

残り6日。布団に潰される夢見たけどシャレにならないかも。手紙書いといたほうがいいかな。7日後に大きな病院に行ってるから置き手紙みたいにしとけばいいよね。なんて書こうか…。

 

残り5日。布団重いしくしゃみしたらあばらに響く。わたしゃぁもう歳じゃ……うん、違うね。手紙書けるかな。

 

残り4日。痛い。起きるのもちょっと苦しいな…。

 

残り3日。起きれない。天井の掃除しとけばよかったなぁ。

 

残り2日。痛いというか苦しい。宝石机に置こうと思ったけど余裕ないや。

 

残り1日。明日かぁ。ウサギ君はちゃんと月に行く準備できてるかな…。いつも月に夢中で…私はそんなウサギ君が好きで…そんなウサギ君を邪魔したくないから言えなかったけど…最期に少しワガママ書くくらいはいいよね。

 

もうすぐ私消えちゃうんだなぁ。

遠くに行くって書いたけどもし本当に治ったらウサギ君は迎えに来てくれるのかなぁ。

どうせ遠くなら月に居たいなぁ…。そしたらウサギ君は必ず来てくれるし…。

あぁ…ずるいなぁ月は。もしも私が居られるなら…月でウサギ君を…

 

 

 

…………………

……………

………

 

「それから、その宝石を首飾りにしたウサギは翼を完成させて月に向かって飛びました。でも、途中で雷に撃たれてしまいウサギも死んでしまいました。プレゼントのオニキスを握り締めながら。」

 

ウサギはそう締め括って話を終わらせる。

 

「うぅ…お父さんが雷で落ちた〜。」

「え?いや、そうだけど違うからね⁉︎ウサギってクラスに三人いるじゃん!その子らみんなお父さんって呼ぶの⁉︎」

「呼ばないけど…お父さんが三人になるにはきっと楽しい。」

「ユキも何考えてるの⁉︎」

「ほら、一人に一うーちゃん!みたいなさぁ。」

「ならルナだって一人に一ルナちゃん!してみてよ。」

「なんか久しぶりにちゃん付けで呼ばれた気がするなぁ♪」

「あっ…えっと、言葉の綾というか、語呂合わせというか…。」

「お父さん照れてる…。」

「珍しいね〜。」

「う、も、もうおしまい!夜ご飯の準備して来る!」

「あ、お父さん逃げた!」

「逃げたー。」

「じゃあお母さんも準備のお手伝いしてこようかなぁ。ユキとヨウはお片付け!いい?」

「「うん!」」

 

大人二人は台所で料理、子ども二人は部屋の片付けとちゃんと動き始めた。

 

「ねぇ、ルナ?」

「ん?なに?」

「宝石になったのになんで月を恨めたの?」

「へ?あー、それはね?宝石の中でしばらく意識が残ってたみたいでね〜。瞳石症候群の症状の1つなのかは知らないけど。」

「じゃ、じゃあもしかして…。」

「なに?」

「聞いてた?」

「何を?」

「聞いてないならいいよ!うん!…ヨウ、ユキ!そろそろご飯できるよー!」

「「はーい!」」

 

ウサギが子どもたちに呼びかけて様子を見に行く。1人になったルナは…

 

「ちゃんと見てたし聞いてたもんね〜。でもせっかくのワガママだしうーちゃんにもこの事は秘密だよ。」

 

照れ臭そうに笑って呟いた。

 

「ルナ、ご飯冷めちゃうよー。」

「うん、今行くね。」

 

あの時(最期)のワガママのおかげで今の幸せがあるならたまにはワガママもいいのかな。そんな事をルナは思った。

 

「ん、うーちゃんの唐揚げ美味しい!今度お弁当にしてピクニック行こうよ!」

「でもルナの方が美味しいじゃんか〜。シャケチャーハンも…。」

「でも私はうーちゃんの唐揚げが好きなの。だから作ってよ〜。」

「仕方ないなぁ。」

「流石うーちゃん。」

「ピクニックー!」

「ピクニックー。」

 

まずはこんなちょっとした事でもいいよね。

 




恋愛とかシリアスとか描けねぇ…。
ウサギ「雪音価値観歪んでるもんね…。」
ルナ「シリアスとかすると蕁麻疹出るんだっけ?」
価値観なんて主観で変わるから歪んでる云々では無い!…といいなぁ。シリアスは心が持たない。ネタ入れたくなるのよ。
ルナ「なるほど…。そういえば手紙の内容とか無かったんだけどなんで?」
手紙の内容とその反応は活動報告の方に載せようと思ってるよ。この中に入れるとなんかしっくり来なかった。
ウサギ「ちょっと待って!反応は載せないで!ねぇ!恥ずかしいからホントに!」
い☆や
さて、だらだら書いてもアレだし締めるかな。
それでは皆様、お読みいただきありがとうございました。


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