After The BLEACH (ぬー(旧名:菊の花の様に))
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ep1:Ten Years Ago

お久しぶりです、お手柔らかにお願いします。
あまりオリキャラ、オリ斬魄刀は出さない方向性(出さないとは言ってない)です。
感想を貰えると跳ねますし、推しを教えてもらうと出す可能性が上がります。
設定は多分矛盾しますが、なるべくないように頑張ります。



 人と、死神と、虚、そして、滅却師。

 

 昔から、これらは相入れることは無かった。

 

 そこには、愛、憎しみ、すれ違い、間違い、様々あった。

 

 その中心にいたのは、黒崎一護。

 

 すべては終わった。

 

 そう、終わってしまったのだ。

 

 終わってしまったのだ。

 

 しかし、彼はその先を残した。

 

 ならば続かない道理がない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かーずーいー!!!」

 

 黒崎診療所。

 かつて、黒崎一護の父、黒崎一心が開業した診療所だ。

 10数年変わらないその出で立ちの建物の前に、一人の女子がいた。

 

 腰に届きそうなポニーテールに、強気そうな目付き。

 年はちょうど17歳……いわゆる華のJK、くらいに見える。

 そんな高校生女子の男勝りな態度と姿勢に、近所のおばさんたちは元気ねぇ、なんて言っている。

 

「はーい、ちょっと待っててね苺花ちゃん」

「あ、織姫さん、おはようございます!」

 

 黒崎診療所から顔を出したのは、エプロンをつけた長く綺麗な茶髪を持った女性……黒崎織姫(くろさきおりひめ)。

 織姫の姿を見るなり、その女子……阿散井苺花(あばらいいちか)は足を揃えて姿勢を正し、綺麗にお辞儀をした。

 そんな畏まらないでねぇー……と言って玄関の扉の奥に消えていって数秒後、

 

「いってきまーす」

「行ってらっしゃい!」

 

 黒崎診療所から出てきたのは、苺花より小さい体躯で、まだ制服に着られている感じが強い男子。

 その髪の色は、オレンジがかった茶髪、その垂れ目を眠そうにこすっていた。

 

 その間延びした言葉に、元気に返す織姫。

 毎朝の事ながら、織姫の元気はどこから湧いてきているのだろうか、と苺花は考えながら、男子……黒崎一勇(くろさきかずい)に声をかける。

 

 

「おはよ」

「おはよぉ〜」

「今日はなんかあるの?」

「うーん、多分小テスト」

「あーと、境の?」

「そうそう、数学ね」

「うっわ、あの人の小テストってむずいんでしょ?」

「むずいむずい」

「いやぁ、学年違ってほんとよかったわ」

 

 

「ほい」

「何このプリント?」

「昨日いなかったでしょ?」

「ふむふむ」

「昨日苺花に宿題持ってきた人がいてさ、いなかったから渡しといて、って言ってたよ」

「あー、ありがと……って全部やってあるんだけど……」

「どうせ忙しいだろうからやっといたよ」

「これ高三のやつなんだけど……」

 

 

「あ、苺花ちゃん!」

「あ、香菜ちゃん!」

「おっと、一勇くんもおはようね」

「……香菜さん今俺の事見失わなかった?」

「そそ、そんなことないよ?!」

 

 

 あくび混じりに返ってくる挨拶。

 他愛もない会話。

 友達との会話、挨拶。

 そんな日常。

 

 黒崎一勇、15歳、高校一年生。

 

 阿散井苺花、17歳、高校三年生。

 

 これは、そんな2人が中心の、物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あ、見っけ)

 

 黒崎一勇。

 垂れ目で、ひょろっとしていて、少し男子としては弱そうな印象を受ける彼。

 そんな彼は、その見た目通り、運動はからっきしだったが、代わりに頭がよかった。

 親が二人とも地頭が良かったのかは知らないが、割と頭の回転は早く、理解が早い方であった。

 

 そんな彼には、人とは違う特徴があった。

 

 一勇の目線の先にいるのは、一人の女性。

 スーツを着て、ハイヒールを履いて、いかにもOLと言わんばかりの格好をしている彼女は、校庭のど真ん中にいた。

 

 普通だったらありえない光景。

 だが、彼女は圧倒的に人とは違う部分がある。

 

 それは左腕がない、という事と、死んでいる、ということだ。

 

 一勇は生まれつき、死んだものの霊が見える。

 

 ちなみに会話もできる……極力しないが。

 

(あの人……苦しんでる?)

 

 何か嫌な予感がするなぁ、と思っていると、その霊の隣に、人影が現れた。

 

(あ、苺花じゃん)

 

 それは朝にも見たばかりの、阿散井苺花であった。

 

 しかし、朝の制服とは違い、その身に黒い装束を纏い、腰には刀を差していた。

 多分普通の人が見たら、コスプレ?なんて思うだろうが、彼女がその刀を抜き、女性の霊と向き合い、その額に柄を押し付けた。

 

(なんとかなったか……)

 

 その瞬間、女性の霊の真下が光り、女性の霊はゆっくりとその光に沈んでいく。

 嫌な予感がしたから警戒はしていたが、杞憂だったことに、一勇は肩の力を抜いた。

 

 阿散井苺花は、死神である。

 

 霊をあるべきところに還す、そんな存在。

 

 普通なら知覚できない、そんな存在である苺花は、この生者の世界で生きている。

 普通ならば、そんなことはしなくてもいいのだが、苺花の両親の決定で、高校生まではこちら側で過ごすことになっている。

 

(あ、気づいた)

 

 一勇がジロジロと見ていたせいもあって、女性の霊を見届けた苺花は、一勇に対して手を振っている。

 一応授業中だし、と誰にもバレないように小さくてを振り返す一勇。

 しばらく手を振ったあと、その場から飛び去っていった。

 そんな苺花を見た一勇は、しばらく何も無い校庭を見つめ、ため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かずいー、勉強教えてー」

 

 放課後、1ーAの教室。

 部活に向かったり、家に帰ったり、遊びに行ったりして、誰もいない教室。

 まだ日が沈まないけど、時間的には夕方という、不思議な時間。

 だが、よく見ると、1人の人影がいる。

 窓際の席に座り、眠そうな目を窓に向けて、オレンジがかった茶髪を触る、黒崎一勇の姿だ。

 

「どうしたの?」

 

 そんな教室に来たのは、3年生の証である緑色のタイを付けた苺花。

 苺花はよろよろと一勇の席に向かう。

 

「見て!」

「は?」

 

 一勇の目の前まできた苺花は、後ろに隠していた紙を見せる。

 その紙は、恐らく今日行われたであろう数学の小テスト。

 既にそれは丸つけを終えていて、点数が記されてあった。

 

「100点じゃん」

「そう!100点なんだよ!」

 

 小テストを一勇の机に叩きつける苺花に、一勇はしばらく考え、

 

「あ、ベリに受けさせたの?」

「…………なかなかお察しの早いことで……」

「あたしゃ別に悪いことはしてないのよさ!」

 

 苺花の落胆の声のあとに聞こえる、甲高い声。

 その声の主を一勇が探すと、苺花の頭の上にいつの間にか猫のぬいぐるみがいた。

 

「あぁ、ベリ、あんまり大声を出しちゃダメだよ」

「あ、あぁ、分かってるのよさ……私……」

「ベリ、別に言わなくてもいいよ、どうせ苺花が逃げたんでしょ?」

 

 一勇がベリに注意すると、ベリは露骨にしょぼんとし始める。

 それを察して一勇がフォローをすると、ベリはあたふたと慌て始め、苺花は下を向いてプルプルと震え始めた。

 

「え?苺花?」

「一勇なんて…………」

「苺花さん……」

「一勇なんて…………」

 

 苺花は唐突に一勇の胸ぐらを掴んで、顔を突き合わせると、頭突きをしてから、

 

 

「大っ嫌い!!!!!!」

 

 

 と言い放ち、教室を出ていった。




もう多分オリキャラは出ないです。


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ep2:Small Beginning

「あー、ベリさん、詳しく、お話を教えてもらえるかな?」

「あ、あの、一勇……さん……やっぱり……やばいのよさ?」

 

 僕は頭を抱える。

 苺花の事だからお菓子でも持っていけば機嫌を直してくれるだろう。

 

 だが、僕が頭を抱えているのは、苺花とは別の問題である。

 

「明らかに恋次さんはキレる」

「そ、それでまた一護さんが怒られて……」

「あぁ、僕が怒られる」

 

 恋次さんとは、苺花の父であり、死神である、極度の親バカだ。

 

 昔は護廷十三隊……死神の総本山であるその隊の四番隊副隊長をしていたのだが、今は期間限定で恋次さんが現世での苺花の保護者をしている。

 

 それで、基本的に阿散井家は、苺花が中心となり、恋次さんが悪ノリをして、母であるルキアさんが怒鳴ってなぁなぁ、となるケースが普通だ。

 

 ……あぁ、ルキアさんは十三隊の隊長で、流石にその席を空白にすることも出来ないから、週二で休みをもらって、こっちに来ている。

 

「一勇さん……なんでいつも怒られているのよさ……?」

「僕だって聞きたいよそんなこと……」

 

 それで、こんな感じに苺花がへそを曲げると、基本的に恋次さんが原因をぶっ飛ばそうとする。

 それを察知したうちの親父が、それを止める。

 結果、近所で賭けが始まるほどの規模となり、ほとんどプロレス状態となる。

 

 そして、最後に現れるうちの母さんによって、何故か親父ともども両成敗を受ける。

 

「止めるには……どうすればいい……」

「ま、まずは恋次さんを止めるのよさ?」

「ベリ、それは悪手だ。

 僕の運動神経のなさは分かっているだろう?」

「あっ………………」

 

 思わず語尾を忘れるほどに動揺し、僕から目をそらす。

 恋次さんはなぜか知らないけど、死神の状態じゃなくても運動神経が凄く、肉体労働でこっちで稼いでるせいか、めちゃくちゃ強い。

 ……まぁ、うちの親父が互角にやり会えるのがほんと不思議なんだけどさ……。

 

 それで、そんな恋次さんに運動神経壊滅的な僕が叶うわけはない。

 

「なら、まずは母さんに知らせるのが一番か……?」

「…………それ、自分だけじゃないのよさ?たすかるのよさ?」

「親父たちがどうなろうが僕の知ったことではない!!!」

「清々しい程に最低のよさ……」

 

 そうと決まれば、まずはうちに帰るしかないか。

 僕はベリとカバンを持ち、颯爽と教室を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、いうことなんだ」

「と、ということってどういうこと?!」

 

 家に帰っての第一声に対して、母さんは驚いていた。

 普通こういうところは察してくれるところではないだろうか、と考えながらも、頭の上にベリが乗っかる。

 

「あ、ベリちゃん、どうしたの?」

「それが…………のよさ……」

「ベリちゃんも一勇と同じ?!」

 

 ベリも深刻そうな顔をして母さんを見つめる。

 それに対して母さんはまたも驚いたリアクションをとってくれる。

 と、話が続きそうになかったので、俺は話を切り出す。

 

「母さん。

 苺花を泣かせちゃった」

「あぁ、そういうことね……」

 

 母さんは、何やら納得した様子で、顎に手を当て、僕の頭に手を乗せ、

 

「浦原商店に行ってきなさい、そこに苺花ちゃんいるから」

「浦原商店?」

 

 なんでまたあんなところに?と疑問を言おうとするが、母さんの真っ直ぐな目を見て、僕は黙って従うことにした。

 

「浦原商店だね?」

「そ、さっき雨(ウルル)ちゃんから連絡があったのよ」

「雨さんから……?」

 

 とりあえず向かいなさい、という母さんからの言葉に、疑問を頭に浮かべながらも、僕は家を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんくださーーい!」

 

 たどり着いたのは、少しボロい瓦屋根に大きく浦原商店、と書いてある看板を乗っけている店。

 普段は駄菓子を売っているが、その裏では死神相手に胡散臭い商品を色々売りつけているところだ。

 

「はーい……って、一勇ちゃんですか……」

「うん、やっぱりって顔しないでくれますか……喜助さん…………」

 

 奥から出てきたのは、甚平姿に目深に被った帽子で、目元が見えない変な人……浦原商品の店主である、浦原喜助さんだ。

 いつも飄々としていて、掴み所のない人だが、まぁいい人……だと思う。

 色々あった時は割と頼ってしまう人だ。

 

「奥で雨さんとやり合ってますよ」

「やり合ってる?」

「うーん、実際に見てもらった方がいいっすね、ついてきてください」

 

 喜助さんは、ひらりと甚平の裾を翻し、商店の中に入っていく。

 それについていく俺は、店の奥にある地下に連れていかれた。

 

 そこには、

 

「なんで!あいつは!いつも!決めつけるの!」

「うんうん」

「私は!悪いことは!してないのに!」

「うんうん」

 

 苺花より少し背が低い、青髪のジャージの女性……紬屋雨(つむぎやウルル)さんが、死神姿の苺花の剣戟を木刀で受け止めていた。

 そして次々と止まらない呪詛を吐いていく苺花の剣をうんうんと聞いてあげている。

 

 うっわぁ……心がいてぇ……と僕は思っていると、雨さんはこちらに気づいたのか、ウインクをしてきた。

 

 その姿にまたも心が痛くなりながらも、喜助さんの方を見て、

 

「あの、高めのお菓子、用意してくれますか?」

「そういうと思って、用意してますよ、バームクーヘン」

「ほんっと、用意がいいんだから……」

 

 右手にちょっと高そうなバームクーヘンを乗せて返答する喜助さんに苦笑いを向けながら、どうするか考えていると、

 

「おや、困っとるようじゃの」

 

と、どこから現れたのか、肩に猫……今度は本物が、乗っていた。

 

「夜一さん、何してんるんですか?」

「いや、散歩がてらに若いものを見に来たんじゃよ」

 

 カッカッカッ、と笑う夜一さんに額を押さえながら、俺はどう話しかけようか悩んでいると、

 

「ささ、ちゃっちゃっとお菓子食べましょう……よっ!」

 

 後ろから杖で小突かれた感覚。

 

 僕は一瞬の思考の空白と共に、よろけないように前に足を出す。

 

 すると当然、下を向くわけで、

 

 

「これ…………は……」

「久しぶりじゃの」

「えぇ、ちょっと強引でしたかね?」

 

 

 そこには、黒装束を身につけた足があって、

 

 腰には刀を差している。

 

「喜助さんっ!」

 

 俺は思わず怒鳴る。

 

 その声に気づいたのか、雨さんと苺花がこっちを向いたが、知ったことではない。

 

「僕はもうっ!」

 

 その続きを言おうとしたが、後ろを振り向いたそこには、喜助さんと、あるはずの僕の体はなくて、

 

「あやつなら逃げおったぞ」

「あわわ……すいませんのよさ……」

 

 ぬいぐるみと本物の猫が2人?いた。

 

 僕は自身が死神の状態にさせられたことに嫌悪感を覚えながらも、

 

「うぁあぁぁぁぁあ!」

 

 後ろから切りつけようとしている苺花の方を向き、

 

「危ないよ」

 

 指先2本でその剣を受け止めた。



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ep3:Learn White Monkey

「くっ!」

 

 すかさず僕の受け止めていた2本の指を蹴りあげようとしたので、剣を離してあげると、そのままバク宙で後に下がっていく。

 ジャリジャリとなる地面に僕は苺花を止めようとするが、苺花は後ろに下がったその瞬間、目の前から消えて、

 

 頭を下げる。

 

 そこには横薙ぎに通り過ぎた刀があり、背後には苺花がいた。

 そこから袈裟斬りに移行しようとしたので、僕もさっき苺花が使った消える歩法……瞬歩(しゅんぽ)を使って、距離をとる。

 

 空振る苺花の刀に、苺花の本気具合を見ながらも、僕は苺花に話しかける。

 

「いち「うるせぇ!」…………」

 

 苺花は、肩を震わせていた。

 

「色々言いたいことあったけど……あんたのその姿見て全部忘れた……」

 

 そして、僕を見て、

 

「轟け!白猿(しらざる)!!!」

 

 "名"を、口にした。

 

 吹き荒れる大気。

 そして感じる、寒気。

 霊圧が跳ね上がる。

 そして見える、苺花の姿。

 

「始解……できるようになったんだね……」

「うるせぇよ……」

 

 苺花の頭の上に真っ白な小さい猿がいた。

 そして、苺花の握る刀……斬魄刀は、黒一色に染まっていた。

 

「とりあえず……何年越しの決着かは忘れたけど、仕返し、させてもらうよ!」

 

 獰猛な笑みを浮かべた苺花が、飛び込んでくる。

 僕は自分の刀を抜くか迷った挙句、苺花の刀を躱すことに専念することした。

 

 さっきと変わっていることは……剣術は…………環境の変化は…………と考えながら躱していく。

 まわりに変化した様子はない……。

 剣術が高まったり、膂力が変わったりは感じられない……。

 変わっていることといえば、苺花の持っている刀がじわじわと黒から白に変わって言っているってことくらいか。

 

 何回目か分からない太刀筋を躱した後、苺花は僕と距離を離した。

 

 多分刀の色の変化が終わったからだろうと当たりをつけ、僕は身構える。

 その様子に苺花はニヤリと口元を変化させ、

 

「…………ふっ、一勇が舐めた真似してくれたから、ここまで来れたよ」

 

 そしていつの間にかどこかへ行っていた苺花の白い猿は、頭の上に再度乗り、

 

「真似べ(まなべ)、白猿」

 

 苺花のその長いポニーテールは真っ白に変わる。

 明らかに、霊圧が変わった。

 それも、洗練された、という意味で。

 再び黒一色になった斬魄刀を持ち、

 

「教えろ、白猿」

 

 苺花の、姿が消えた。

 考える。

 下!

 

「シっ!」

 

 足元を薙いだ斬魄刀は僕の真下で、急に上を向く。

 腰に差していた刀を鞘から引き抜く暇もなく、自分と苺花の斬魄刀の間に入れ込む。

 

ギィンっ……

 

 僕は苺花の刀を蹴り、一気に後ろに下がる。

 

 苺花の追撃は、止まない。

 

 先を見据えられた攻撃。

 

 突きから薙ぎ、薙ぎから切り上げ、袈裟から突き。

 

 ギリギリで防いでいく。

 

 僕が刀を使わなきゃ避けることが難しく、さっきの苺花から考えると、有り得ない。

 

 その間に、苺花の髪の色は白からだんだんと元の色である赤色に戻っていく。

 しかし、それに反して同じペースで苺花の斬魄刀はその色を白に染め上げていく。

 

 予想が正しければ、これ、もう一段階グレードアップすると思うんだけど……と額に汗をかく。

 

"使えば、いいじゃないか"

 

 それと頭にさっきからチリつく声に少し意識を割かれてしまう。

 

 

「なぁ…………あんた、ほんとに一勇か?」

「……それ、どういう意味だよ」

 

 急に攻勢をやめた苺花は、僕にもう真っ白となった切っ先を向けて話す。

 

「私の知っている一勇は、すげー負けず嫌いで、全力で、かっこよかった」

「…………そんな時もあったかもね」

 

 なんだか、イラッとする。

 僕は何も変わっていない。

 ただ、周りが変わっただけなのだ。

 このチラつく声だって、周りが変わったから聞こえるだけ。

 僕が死神になりたくないのも、周りが変わったせい。

 

「だから、そんな一勇とお別れするために、勝つよ」

 

 勝手に僕を変えるな。

 苺花の言葉に反論しそうになるが、ぐっとこらえる。

 僕は、別に苺花を倒すためにここに来ているわけじゃない。

 

「じゃあね」

 

 苺花の髪色が変わる。

 そして、こちらに向かってくる。

 その顔にあるのは、悲壮。

 

 落胆。

 

 僕は、カチンときた。

 ここで刀を抜くことはしないが、勝たせてはもらう。

 

「破道の四、白雷」

 

 刀を持っていないほうの指から、1本の小さな雷が苺花に向かう。

 当然、苺花はなんなく避けるが、

 

「縛道の四、這縄」

 

 避けた先に待ち受けるのは、縄。

 苺花はそれを避けきれず、縄に斬魄刀を持っている方の腕を取られる。

 しかし、苺花は気にせずこちらに向かってくる。

 

 僕はその縄を一気に手繰り寄せ、足で縄を踏みつける。

 

 そのせいで、苺花は腕を下げられ、頭を下げてこちらに向かってくる。

 

 そして僕はその苺花に対して、

 

「これで終わり!」

 

 ゲンコツをかましてやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、一勇さん、訛ってないっすねぇ」

「…………喜助さん……?」

「あ、あの、一勇さん……?あたしはあなたのためを思って……」

 

 ゲンコツで伸びた苺花を肩に担ぐと、どこからともなく喜助さんが現れた。

 そんな喜助さんを睨みつけると、喜助さんはあたふたと弁明を始める。

 そんな様子に食ってかかってやりたかったが、どうなろうともこの人に先読みで勝てるわけがないので、諦めた。

 

「温泉、どこでしたっけ?」

「…………一勇さん、しばらく見ないうちに頭が回るようになりましたね」

「……諦めてるだけですよ」

 

 喜助さんの案内についていきがてら、雨さんに自分の体を近くに持ってきてもらうように頼む。

 

 ついたのは、馬鹿でかい地下室にも関わらず、存在感を放つ温泉。

 その中に黒装束……死覇装を着たままの苺花を少し雑にお湯につける。

 

 このお湯は回復増進作用があるので、なにか怪我をした場合でもなんとかなるだろうと、僕は高を括り、近くにあった岩に腰掛ける。

 

「あら、一勇は浸からないのか?」

「そうですよ、使っといた方がいいのよさ」

 

 そこに後ろから声をかけるのは、ぬいぐるみと本物の猫2匹。

 俺はその2匹を一瞥して、ため息をついてから、

 

「あの勝負、結局僕一撃も攻撃もらいませんでしたよね?」

「あ、それが不思議なのよさ!」

「不思議?」

 

 俺はベリの言葉に聞き返す。

 一方の夜一さんは、何かを考えているのか、黙ったままこちらを見つめる。

 

「もう多分バレてると思うけど、苺花の斬魄刀の力は……「学習と、実践、ってとこでしよ?」…………そうなのよさ」

 

 斬魄刀には、無二の力が宿る。

 死神見習いにも、当然無二の力が宿っていて、死神はその力を使って戦っていく。

 

「まぁ、露骨に見せちゃったからあれだけど、あの真っ黒の刀身が白に変われば変わるほど、学習していく。

 そしてあの刀が真っ白になれば、その刀を振った時の相手の状況の学習が終わる。

 そして解放すると、それが自分に還元され、相手に合わせた戦い方をできるようになる、ってとこでしょ?」

「さ、さすが一勇さんですのよさ…………」

 

 これでも昔は強かったんだからね、とベリの方から目をそらしながら答える。

 

「ほう、それでは一勇、お主なんで還元した苺花に対応できた?」

「………………」

 

 無言で夜一さんを見返す。

 どうやら喜助さんはもう分かっているのか、遠くからこちらを見ている。

 俺は諦めて、溜息をつきながら答える。

 

「僕はあの時、刀を使わないで、体捌きだけで避けていた。

 あの刀は、それを学習した。

 と、いうことは、僕が刀を使えば、"刀を使っていない僕"に適応した苺花にも対応できる」

「…………なら、お主はあれを何回目まで防げる?」

 

 僕が再度夜一さんを睨むと、

 

「おーい喜助!何回だと思う?」

「えっ?!あたしに話を振りますかい?!

 うーーーん…………」

 

 いきなり喜助さんに話を降った。

 話を振られた喜助さんはしばらく考えてから、微笑を浮かべ、

 

「恐らく4回目くらいで殺してしまうんではないでしょうか」

 

 ベリは顔を青ざめさせる。

 当然だ。

 その答えは圧倒的に苺花より俺の方が強い、という事になってしまう。

 そしてその喜助さんの回答に俺は一言、そうですよ、と告げた。



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ep4:Who is mother

「ただいまー」

 

 僕が家に帰ったのは、ちょうど夕飯時の時間帯だ。

 

 結局、苺花は起きた瞬間、俺に謝ってきた。

 それに面食らった僕は、謝り返した。

 

 そして色々謝り合戦が始まった頃に、喜助さんの、残りはケータイでやり取りしたらどうっすか?もう飯時っすよ?、という言葉に救われ、帰ることが叶った。

 

「おかえりー!」

「おかえりー」

 

 ハキハキとした声に、間延びした返事。

 親父ももう仕事終わったのか、と思いながらリビングに入ると、親父がゴゴゴゴ、となりそうな勢いの覇気を醸し出しながら座っていた。

 

 その姿に思わず身構えてしまうが、母さんの表情を見て察した。

 

 僕は観念して、親父とテーブルを挟んで向かい側に座る。

 

「一勇……」

「はい」

「………………言うことは?」

「…………飯食った後になりました」

 

 親父は俺のことをしっかりと分かってる……と思っているからか、苺花と仲良くしないことに敏感だ。

 まぁ、親父の考えていることは分かるし、俺もそれでいいと思っているため、そうしてる。

 

 だから、親父の言いたいことは分かる。

 苺花を泣かせたことに対して、ケジメを付けたのか、というあたりの話だろう。

 

 すると、親父の覇気は、すっと消えていって、その後少し悲しそうな顔をした。

 

「それで、喜助さんから聞いたんだが……」

「あぁ…………成り行きで仕方なく、ね」

 

 やっぱり

 

 親父は俺が死神になることに1番反対している。

 

 というか俺が死神になりたくないのは、1番は親父が原因だ。

 

 親父を見ていればわかる。

 有り得ない霊圧を常にしまって生きている。

 

 そんなことが分からないわけはないので、俺としては親父がどんなことを考えているのか理解したいのだが、親父はほとんど昔のことは話さない。

 

 それに母さんはのらりくらりと話を躱すので、俺は親父たちの馴れ初めとかを聞いたことがない。

 

 でも、気にはなる。

 

「一勇……俺は…………」

「はいはい、お父さんはちょっと違う部屋に行ってて」

 

 親父が下を向きながら俺に話そうとすると、横から母さんが入ってきて、親父を押しやってしまった。

 

 部屋から追い出された親父にボソッと耳打ちした母さんは、こちらを向いた。

 

「ちょっと、散歩しよっか」

「えっと……飯は……」

「うん?今日はお父さんが作ってくれるから、ね」

 

 年甲斐もなくウインクする母さんに俺は苦笑いした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、ここは?」

 

 なんてことない路地裏。

 電柱に飾ってある電灯が、薄暗く光っている。

 虫が飛び回っていて、もうそんな季節か、と思わされた。

 

「うーんと、ちょっと待っててね」

 

 下唇に指を当てる母さんが何かを待っていると思ったら、突如、空からなにかが降ってきた。

 

 吹き荒れる土煙。

 

 思わず母さんの前に立っていると、目を疑った。

 

 霊圧。

 

 しかも、戦闘慣れしている。

 人の形をしている……右腕と左腕からとびきり高い霊圧を感じる……。

 

 右腕は大きな口がついている、赤と黒の腕。

 

 左腕は、肩から角が飛び出している白と赤の腕。

 

 視界が悪いせいか、胸の穴はわからないが、物々しい仮面を付けているため…………こいつは、

 

「虚か!」

 

 僕は母さんを逃がすことを第一に考える。

 母さんが戦えるなんて話は聞いたことがない。

 いくら親父とか阿散井さんに強気でいられるからって、母さんが虚に対しても強いということは……可能性が低い。

 

 "使いなよ"

 

 そうだな、使うっきゃないよな。

 

 僕は右手を虚空に突き出し、集中する。

 

 が、

 

「があぁ!」

 

 速い!?

 思わぬ速度で接近されたことで、判断に迷う。

 僕は母さんの前にいる。

 

 避ければ、母さんに当たる。

 

 仕方がない。

 

 僕が盾になる!

 

 生身の僕は、身体能力が高くない。

 しかし、魂の俺の質が高いせいか、反射神経や感覚神経については自信がある。

 だから僕はその運動神経の悪い体で、前に足を踏み出す。

 

 すこしでも、母さんに危害を加えさせないように。

 

 もう少しで……当たる!

 

 その瞬間、

 

「三天結盾!私は拒絶する!」

 

 僕の目の前に3匹の何かが現れたと思ったら、目の前を光が覆った。

 そしてその光に虚の拳がぶつかる。

 

 ガキィン!

 

 耳を劈くような音と共に、僕の目の前で、虚の拳は止まった。

 苦笑いを浮かべてしまう。

 今の声は確かにそうだった。

 

 後ろを振り返ると、両手を前に突き出したかあさんの姿。

 

「大丈夫だよ、一勇」

 

 その言葉に安心した俺は、頭を冷やした。

 どうすればいいのか、どう動けばいいのか。

 

 すると、一瞬でわかったことがあった。

 

 

「もしかして…………チャドさん?!」

 

 

 目の前の人物の胸には穴なんてなく、それ以前に霊圧だって集中してみると、荒々しいがまるっきりチャドさんだ。

 それに拳に殺気が全然ない……。

 

 これってもしかして…………

 

「僕…………騙されてる?」

 

 後ろにいる母さんの苦笑いは俺の耳に届いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず、話を聞かせてほしいんだけど」

「ん?どういうことだ?」

「風呂、ありがとな」

「おー、チャド、上がったかー?」

「チャドさんすごい鍛えてますねー……って、話戻したいんだけど!」

 

 僕と母さんと、チャドさんは一緒に家に帰り、飯を食い、風呂に入るまでは、僕は終始考えっぱなしだった。

 いや、親父が死神なのは分かってたけど、まさか母さんもだとは思わないし……というかチャドさんもなんかすごかったし…………どういうこと?

 とりあえず、分からないことだらけだった僕は、一回考えるのをやめて、きちんと全部聞くことにした。

 

「うーんと、じゃあどこから話せばいいんだ?」

「えっ…………どこからって…………」

 

 僕はしばらく考える。

 とりあえず、僕が聞きたいことは全部だが、順序はちゃんと聞きたい。

 

 だから考えて考えて、僕が出した結論は、

 

「親父が、死神になったところから」

 

 

 すると親父は、その言葉に眉をあげて、クスリと笑った後に、

 

「明日」

「は?」

「明日、朝早く起きて、1から全部、教えてやるよ」

「だから、今日は苺花ちゃんとちゃんと話しな」

 

 親父の笑い顔は、久しぶりに見た気がした。



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ep5:Those Days

 親父からさっさとケリをつけてこい、と言われて、自室に来た。

 

 特にこれといったものは、まぁ好きなアーティストのポスター貼ってある位で、特徴はこれといってない。

 昔親父が使っていた部屋をそのまま使っているせいか、ところどころボロっちいのが傷だ。

 

 そこで僕はベッドの上に寝転がり、自分のスマホを眺める。

 

「苺花からの返信は…………」

 

 『電話しても大丈夫?』というメッセージからの返信は……返ってきてる。

 えっと……『全然大丈夫だよ』ね。

 全然の使い方違うんだけど……とか言えば絶対に話逸れるだろうし、苺花の機嫌を悪くしちゃう可能性があるから言わないようにしとこ。

 

 俺は苺花に電話をかける。

 

 コール音の1階目が終わるか終わらないか位で、

 

『は、はいもしもし』

「あ、もしもし?苺花?」

『あ、うん……一勇?』

 

 なんだかいつも話す時は面と向かって話しているせいか、なんだか照れくさい。

 僕はぎこちなく返事を返す。

 

 ちょっとの沈黙。

 

 埒が明かない、と思い、話しかける。

 

「あの!」

『はい?!』

「今日は、ごめんなさい!」

『…………うん』

「ベリから聞いた。

 苺花は悪くないって。

 だから、ごめんなさい」

『うん』

「だからお詫びにさ、お菓子持っていくよ。

 んでもって一緒に勉強でもしよ」

『えっ?!マジで?!

 一勇のお菓子好きなんだよねー』

 

 いつもの話し口調に変わった苺花に、ちょっと笑いそうになっていると、

 

『あの、私こそ、ごめん!』

「苺花…………」

『今回の件は私が勝手にキレちゃったのも原因だし…………それに、一勇にいきなり襲ってかかっちまった……』

「…………それに関しては、ちょっと時間頂戴」

『……うん、待ってる』

 

 僕は苺花の優しさに感謝しながらも、話を変える。

 

「あ、それでさ、親父がなんか昔どんなことがあったとか教えてくれるって、言ってくれたんだ」

『一護さんが?!

 なにそれ私も聞いてみたい』

「なんかさ、どうやら母さんも死神……みたいな感じらしかった」

『織姫さんが?!』

「あと…………チャドさん」

『えっ……あの人素ですげー強いじゃん……やばくね?』

 

 そんな風に話は広がっていき、いつの間にか最近のテレビの話になったり、苺花の面白い話とかになっていった。

 なんか、こんな感じが一番心地よくて、僕は好きだった。

 

 明日は学校は休みで、朝早くから父さんは出かけるぞと言っていた。

 なんか話の流れで苺花も行きたいということになり、父さんに聞いたところ、まぁ大丈夫だろ、なんてお気楽に返事していた。

 

 とりあえず、苺花の件についてはなんとか収まった。

 ただ、僕の中で一つ、10年も消すことの出来ないしこりを残して……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かずいー、起きろー」

 

 親父からの声。

 僕はヒヤッとして飛び起き、辺りを見回す。

 親父は起きないとダイビングエルボーを食らわせてくる位には意味がわからない。

 親父曰く、うちの伝統なんて言ってたけど、寝起きにダイビングエルボーは多分伝統とかになる類のものではないのは分かっているつもりだ。

 

「おはよー」

「おはよう!

 今日もバッチリ髪型決まってるね!」

「…………芸術的な寝癖だな、相変わらず」

 

 控えめに言っても僕の寝癖はすごい。

 どのくらいすごいかと言うと、僕のなにかに比例して芸術力的な何かが高まっていくのだ。

 ひどい時は寝癖で鮭をくわえた熊を表現していた時とかもあった…………らしい(その日は流石に親父と母さんが大爆笑していたので速攻直した)。

 

 それで今日は多分超サイ〇人位だろうと思い、後で直そうと席につく。

 

「今日のご飯っはぁ!

 愛の目玉焼きと愛の卵かけご飯と愛のゆで卵!」

「卵多くね?」

「んもう!そこは『ハニー、愛が多すぎて卵が孵化しちゃうぜ』ってブフォっ!」

 

 母さんはいつになくテンションが高く、親父のモノマネに自分で笑っている。

 親父は苦笑いしながら冷蔵庫になんか他のものがあるかを聞き、母さんは別に作ってある、と台所から全く別の朝ごはんを出していた。

 

 騒がしい朝。

 仲のいい夫婦。

 ここにあの殺伐とした世界である死神がいるなんて、誰が思うだろうか。

 俺は母さんがボケ用に作ったゆで卵にマヨネーズをかけながら、そんなことを考えていた。

 

 

 

 

 

「おはようございます!」

「あぁ、おはよ、苺花ちゃん」

「おはよう、苺花ちゃん」

 

 親父と母さんに挨拶をする苺花。

 ここは苺花の家……阿散井家の前だ。

 そこには阿散井家総出で出迎えてくれている。

 

「アァんてめぇ一護さんよぉ、うちのかわいい苺花に手ぇ出したら承知しねぇからな」

「うるせーよパイナップル頭。その頭毟ってやろうか」

「んだと万年ハロウィンヘッド!」

「んだと筋肉バカがよ?!」

 

「コラコラやめんか」

「そうだよ、喧嘩は良くないでしょ」

 

 よく母は強し、なんて聞くけど、家と苺花の家は特にそうだろうなぁ、なんて2人の母の後ろに何故か幻影として見える鬼を見ながら思っていた。

 

「ねぇねぇ、今日ってなにすんの?」

 

 小さな声で聞いてくる苺花。

 

「わからん、多分ほとんど話ばっかりだと思うけど」

「…………ふーん」

 

 僕はその質問に素直に答えながらも、嫌々口喧嘩をやめるオヤジ達を見ている。

 

「それで一護。

 今日は何をするんだ?」

「ん?あぁ、まだ織姫にしか言ってなかったな」

「うーん、私もあんまり詳しくは聞いていないかなぁ」

 

 母さんも首をかしげているあたり、親父の早とちりだったのだろう、親父はあら?という顔をして、しばらく考えてから、

 

「まぁいい、とりあえず話はこれを使ってからだな」

 

 親父が懐から取り出しのは、五角形にドクロのマークが刻まれている、木札。

 親父はそのまま僕の近くに来て、その木札を俺に押し当てると、

 

 

ブワァ!!!!

 

 いきなり俺は死覇装姿になって自分の体から抜けた。

 

「お、おい親父?!」

「ほれ、これ預かっててくれ」

 

 親父は俺が抜けた体をぽーいと恋次さんの方にぶん投げる。

 恋次さんはそれを軽々とキャッチして、阿散井家に放り投げ……

 

「ってだめだめだめ!

 丁寧に扱って?!」

「んん?男なら黙って見てやれよ」

「そういう問題じゃないの!」

 

 と言っているあいだに、苺花、ルキアさん、親父が死覇装姿になる。

 母さんは何やら腕に取り付けていた。

 

「じゃ、体頼むわ」

「おー、任せとけ。

 その代わり「私がいるのだ、心配するな恋次」……わぁったよ」

 

 そのま親父は死覇装姿のまま、付いてこい、と言って歩き始める。

 

「母さん、さっきなにつけてたの?」

「あぁ、これね、一時的に霊体と同じになれるの」

「…………母さんって死神じゃないの?」

「うーん、人間ではあるんだけど……どっちかって言うと…………茶渡くんと同じ?」

「チャドさん、そういえば来てないですね」

「うん?苺花はチャドが関係していることを知っておったか?」

「あー、ルキアさん、苺花には昨日ちょっと話しちゃって……」

 

 僕以外女の人という状態で、話は進んでいく。

 その間、前を歩いてる親父は一言も話さずに、黙々と歩いていく。

 道行く人達は、僕らのことを一切気にしない。

 この死覇装の状態だと、普通の人からは見えなくなる。

 霊感がある人でも、それなりに高い霊感を持っていないとめったに僕達を見ることができない。

 

「茶渡くんは待ち合わせしてる…………んでしょ?」

「そうだな、今あっても仲間はずれにされちまうからな」

 

 母さんの質問に、父さんは何か考え事でもしているのか、少しまったりとした返事をする。

 僕と苺花は顔を見合わせて、なんか分かるか?とお互いにアイコンタクトしたが、結局何を親父が考えているのかは分からずじまいだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ついた」

「ここは…………」

 

 僕達が着いたのは、うちの目の前。

 今日は週に一度の定休日のため、家には誰も来ていない。

 そこでルキアさんはポン、と手を叩き、

 

「ここはお主に力を与えたところか」

「そう、俺が死神になった場所」

 

 死神になった?

 その言葉に僕は疑問を抱いたが、親父の話を遮らないように黙る。

 

「俺は、普通の高校生だった」

「えっ、あれで普通の高校生?」

「いや、始まりくらい普通に始めさせてくれよ」

 

 親父がかっこつけて話そうとしているのに速攻水を指す母さん。

 まぁ、小さい頃からあんな目立っ髪色してたらしいし、普通とは言いづらいよなぁ、と思いながらも、ツッコミはしないでおく。

 

「とりあえず、俺は霊が見えて、話せて、触れることが出来る、普通の高校生だった。

 

 それがある日、こいつと、虚に出会った」

「私は丁度ここに任務で来ていてな、調査というだけだったので油断していた所を、こやつとあった。

 それで、こいつが無謀にも虚に向かっていったのを庇って、死にそうになっていた」

 

 え?あのルキアさんが?

 ってか、親父が虚に死神じゃないのに向かっていった?

 色々な疑問が喉から出そうになったが、それを飲み込む。

 今でこそ強いが、親父が高校生の頃って、だいぶ前だろうから、そういう時もあったんだろう。

 

「あん時は家族が襲われたからムキになったんだよ」

「ま、それで会えなく死ぬわけにも行かず、私はこやつに力の半分を授け、死神にさせることにした」

「そ、そこで俺はこいつから力を受け取って、めでたく死神様になったってこと」

 

 色々聞きたいことはあった。

 が、2人の話している姿は、なんだか楽しそうで、水を指すのが申し訳なくなってくるくらいだった。

 

「ま、そん時あたしも普通の人だったんだけどねー」

 

 はぁ、と溜息をつきながらいう母さんに、親父は苦笑いをして、

 

「まぁまぁ、とりあえず諸々の話は……」

 

 僕と苺花の方に、抜いた斬魄刀の鋒を向け、

 

「こいつで話そうか」

 

 霊圧を飛ばしてきた。



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ep6:Nostalgic

「ちょっ、親父、いきなりなんだよ」

 

 僕は少しおどけて振る舞う。

 親父が刃を振っている姿は、もう10年は見ていない。

 そんな親父の唐突な行動に、馬鹿馬鹿しくなる。

 

 

 しかし、警戒は怠れない。

 

 

 霊圧が、気配が、身のこなしが、言動が、全てが、本気である。

 

 これが…………親父?

 目の前にいる狂ったオレンジ髪の少し老けかけてきた男が、僕の知っている黒崎一護であるならば、それは親父で間違いないのだろうが……

 

 俺は警戒を解かず、横目で母さんと苺花を確認する。

 

 母さんは少し困り顔で、どうしたらいいかまよっている……

 

 苺花は…………駄目だ、この程度の霊圧に当てられて、警戒の針が振り切れてる。

 3分と持たなさそう……だな。

 

「おいおい一護よ、私の娘を困らせるでない」

 

 親父の斬魄刀の峰に手を当て、刀を下げるように振る舞うルキアさん。

 それに対し、親父は少し笑ったあとに、

 

「十三番隊の隊長様の娘さんが、この程度の霊圧に当てられる、なんて大丈夫かぁ?」

 

 そこで気づいた。

 あ、茶番か。

 あの人を斜め上から妙にイラッとくる顔で見下ろす顔は、いつもふざける時に出す顔で、昔はこの顔に散々腹を立ててきた。

 …………根が負けず嫌いだから仕方が無いんだよ。

 

 自分にそんな意味の無い言い訳を放ちつつ、僕は刀に手をかける。

 

「お、やる気か?」

「あぁ……親父がその気なら…………」

 

 刀を握る………フリをする。

 おそらく流れとしては、このまま苺花が飛び出して、それを母さんが止めに入って終わり、という感じだろう。

 戦わなくていいなら……刀を握らなくていいなら……この声を早く止めることが出来るなら、大歓迎だ。

 

「ほう…………それは、私を……十三番隊を侮辱すると捉えてもいいのだな?」

「…………あら?」

 

 と、思っていたのだが、意外や意外、ルキアさんが予想以上にキレていて、これは止めなければいけないと、本能が叫んでいる。

 親父に視線を飛ばすと、あらぁ?、と言わんばかりの阿呆面を表情に出している。

 

 そんな阿呆面に隣にいる母さんは思わず笑っていて、止めろよ……と心の中で思いながらも、霊圧を、鋭く、細くして、親父に向ける。

 

「っ?!」

「ほう……無言は是と捉えるぞぉ……」

 

 ゆらゆらと親父から距離を取り、刀を構えようとするルキアさん。

 対する親父は、少し寂しげな顔をして、僕の方を向いて首を横に振った。

 …………まぁ、そうだよな。

 

 僕は刀を握るフリすら辞める。

 あとは2人の喧嘩だ。

 僕は隣の疲労している苺花に、後ろから近寄り、その長いポニーテールを引っ張る。

 

「いだっ?!

 なにすんのバカズイ!」

「おぉ、珍しく言われたな、それ」

 

 僕は正気に戻った苺花に少し感心しながらも、アレアレ、と指さす。

 

「えっ」

「お前が親父に全神経集中している内に、ルキアさん、ブチ切れてやり合うつもりだぞ」

「いやいやいやいや!母さんの斬魄刀は駄目だって!」

「ふーん、そういえば見たことなかったな」

「ま、まぁあんたの修行は基本的に母さんの隊は受け持ってなかったから、分かんないのは普通だけど……聞いたことないの?」

「聞いたこと?」

 

 苺花はえっ、と顔を少し引き釣らせた。

 

「いやいや、最も美しいとされた斬魄刀の……」

 

 

「舞え『袖白雪』」

 

 

 霊圧が、冷えた。

 こんな表現は珍しいとは思うが、確かにそう感じた。

 そして現れたのは、柄から切っ先まで、それこそ苺花の斬魄刀の変化後のように、真っ白な斬魄刀があった。

 俺はその斬魄刀の放つ霊圧に若干嫌な予感がしてきた。

 

「もしかして、ルキアさんって…………」

「氷雪系の斬魄刀…………」

 

 そんなもんもろに影響出るじゃねぇかよっ!?

 僕は悩ましい顔をしている親父を睨みながらも、どうするか考える。

 母さんに頼る?いや、それでも影響は免れない……なら…………。

 僕は斬魄刀に手を掛け……ようとして、母さんに止められた。

 

「お父さんに任せてみて」

「母さん……」

 

 そこには、唇に指を当てて、ウインクをする母さんの姿があった。

 

「…………母さん、その年でそのポーズはちょっと…………」

「なぬっ?!、お母さんまだまだ若いと思ってたのにショック?!」

「いや、織姫さんは綺麗ですよ?!」

 

 僕はちょっともやもやした気持ちになりながら、母さんにケチをつけてしまった。

 二人が僕の一言で騒ぎ始めてしまうとあれなので、謝りながら静かにさせようとしていると、

 

 ッッッ!

 

 鳴った。

 

 刀のぶつかりあいの音が、鳴った。

 

 しかし、目にも止まらぬ、剣戟が行われ、

 

 音が置き去りにされた。

 

 その音は二人の霊圧に当てられて、消え去った……?

 

 そんな馬鹿なことがあるかよ、と苦笑いしながらも、お互いの位置を交換するように打ち合った後の二人をみる。

 

「おー、追いつけるのか、ルキア」

「お主も老いていなかったようだな」

 

 2人の顔は、笑っていた。

 まるで、俺と苺花がくだらない言い合いをする時のように。

 なんだかそれに、俺は幼いルキアさんと、親父の姿が見えた気がした。

 

「っ…………気のせいか」

「さ、次に行こっか」

 

 パン、と鳴り響いた母さんの手拍子に、その場にいる全員が母さんの方を見る。

 ルキアさんと親父なんて二人揃って呆けてこちらを見ているので、なかなか面白かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それから、俺は死神になったんだ」

「ルキアから仕事を押し付けられて、虚退治に駆けずり回って」

「それはお主が私の力の全部をとるからだろう?」

「いや、それ俺のせいじゃないだろ?」

「いーや、お主のせいだ!」

「まぁまぁ二人とも、そのネタ昔から何回やってるの?」

 

 前を歩く親父を挟んで、ルキアさんと母さんが歩いて、話し始める。

 僕と苺花はその言葉に耳を傾けていた。

 後ろから見る、3人の姿は、なんだか妙に懐かしい感じがしたから。

 

「それで、ここ」

 

 着いたのは、俺らの通っている高校……空座第一高等学校だった。

 そこには、休日の朝早くだと言うのにも関わらず、部活に勤しんでいる学生達の姿があった。

 

「ここ…………なんで?」

「それは、私に関係するから」

 

 母さんが後ろを振り返り、僕達の方を見て話す。

 ここが……母さんの…………?

 俺は母さんに何があったのかを、知らない。

 親父共々、昔のことを避ける風潮があったのだ。

 

「ま、取り敢えず入ろうか」

「えっ?中に学生いるけど?」

「あぁ…………今は、こんなのがあるんだよ」

 

 親父がすんなり学校の中に入ろうとしているのを俺は止めるが、親父は、さっき俺らを死神の状態にさせた木札を取り出し、校門の前に突き出す。

 そして、それを鍵を捻るようにすると、空気が、変わる。

 

「入ってくれ」

 

 そこに現れたのは、扉。

 なんというか、言うなれば、和風どこでもドア、という感じのものがいきなり現れる。

 障子張りの扉、と言うのだろうか、それがいきなり虚空に現れるのは、奇妙な光景だった。

 そこに親父は入ってくれ、と言うと、僕以外のみんなはすんなりと中に入っていく。

 

「え、そんな疑問なく入れるの?」

「何言ってんだよ、一勇以外は入ったことがあるぞ」

「えっ」

 

 …………しばらく考えて、気づく。

 こんな物あれば、昔からいる母さんとルキアさんは知っているだろうし、この地域の管理の一端をになっている苺花が知らないということはないのか、と俺は少し仲間はずれ感を味わいつつも、その扉の中に入っていった。

 

 

 

 人一人として誰もいない、空座第一高等学校が、扉を抜けた先にはあった。



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ep7:Begin Again

「ここは、空座町は特異な場所として死神全てに認知されたことを機に作られた、話し合いの場だ。

 まだ大規模な事件は起こっていないが、その様な事件が起きた時用に、私たち死神が空座町に置く拠点、という意味で作った」

「ま、死神たちの住処、って感じでいいだろ?」

「うむ、そういう貴様は入ったことがないのであろう?」

「あー、作る時にこれを鍵にするからって呼ばれて以来、使ってはねぇな」

 

 親父とルキアさんの話を聞いて、これを作ったやつはどんな奴なんだろう、なんて妄想をしてしまう。

 昔、霊子の使用による空間の作用については、多少は知識があったのだが、これはどう考えても頭がおかしい。

 

 おそらく、十二番隊が絡んでいるのだろうな、と考えている。

 すると、とある気配を感じる。

 

「チャドさん?」

「お、よく分かったな、あいつには先に来てもらったんだよ」

 

 親父からの言葉で、俺は気配の方向に意識を向ける。

 そこに居たのは、筋骨隆々の、浅黒い肌を持った長身の男。

 少し老けてはいるが、その出で立ちは正に強者。

 

 人間の最強が、まさか死神に関係しているとはねぇ……。

 

 前々から特殊な霊圧を持っていると思っていたけど、まさか虚まで相手に出来るとかなのかな……。

 

 茶渡泰虎。

 

 元ボクシングヘビー級世界チャンピオン。

 

 この名前を知らぬ人はいないだろうと言えるくらいには、チャドさんはすごい人だ。

 

「まずは、私達はなんなのか、って言うことについて」

 

 チャドさんが俺たちと合流した所で、母さんが僕達の前に立って、話し始める。

 母さんの説明は何故かところどころわかりやすいのが不思議なくらい意味がわからない。

 だからまたあの説明が始まるのか……と考えていると、チャドさんが織姫さんを止めて、

 

「ちょっと待ってくれ」

 

 すると、小さな気配を感じた。

 チャドさんや母さんと比べると、若干小さいくらいの霊圧。

 しかも周りに親父とルキアさんがいるため、なお場所を探るのが難しかったが、

 

「っととと、待った?」

「あぁ、リルカ呼んでくれたのか」

「昨日のうちに織姫が何をしたいのか聞いていたから、な」

 

 上空から僕達の目の前に降り立ったのは、ピンク色の派手な髪の毛をツインテールにまとめた女性。

 黒を基調とした、ゴシックロリータ的な着こなしをした女性が現れた。

 少し目つきが悪いが、あの目の細め方は多分目が悪いタイプの人なんだろう。

 

「一応昨日チャドに頼まれたから、来てやったけど…………」

 

 その女の人は、僕らのことを見渡して、僕の方を見た瞬間に、視線を止める。

 そしてしばらくじーっと見たあとに、

 

「これがあんたの息子?」

「そういえば、昔会ったっきりだったな」

「そうね、生まれて間もない頃に一回見たくらいかしら」

 

 僕は親父と女の人の話の意味がわからずに、疑問を浮かべていると、

 

「あーっと、そうね、今日はそこの2人に色々と教えたいのよね?」

「うーん、リルカちゃん、私が説明す「あんたが説明とかありえないでしょ?」…………うっ」

 

 母さんは図星をつかれた成果、少し苦い表情をした。

 その間に、女の人は、どこからが取り出した箱。

 

 ピンク色の、ドールハウス。

 

 歪んでいるような霊圧を感じるそれに手を突っ込むと、まるでドラえもんの四次元ポケットのように、ものを出していく。

 

 その一つ一つは、取り出した状態から大きくなり、ピンクが基調のホワイトボード、それにペンとバット。

 

 バットを取り出した理由はわからないけど、あの箱から色々なものを取り出しているあたり、母さんやチャドさんと同じような死神っぽくない能力を持っている可能性が高いのか?

 

 そんな推察をしながらも、バットを投げ捨てた女の人は、大きく息を吸い込んで話す。

 

「はい、それじゃあこの毒ヶ峰リルカ様の、ありがたーい授業を始めてやるわよ!」

 

 コホン、と一息ついてから話す女の人……毒ヶ峰リルカさん。

 俺は母さんの知らないことを知れるこの機会に、少し胸が高鳴っていた。

 

「まず、私、織姫、チャドの3人は、人間であるのに死神の様に虚に対抗出来る人間なのよ!」

 

 そこに描かれていくのは、虚のデフォルメキャラクターに、死神のデフォルメキャラクター。

 おそらく死神の方は親父なんだろう……髪オレンジだし。

 

 その上に書いてあるのは、ピンクのツインテールの、明らかにリルカさんだと分かるようなキャラクター。

 そのキャラクターだけやけに強調されていた。

 

「そして、その人物達に関係するのは、なんらかの理由で虚と関係のあった人間。

 一般的には、親が虚に襲われている人間なんかは、こうなりやすい」

 

 そして、書かれるのは、完現術者。

 

 見たことの無い単語だな、と思っていると、

 

「この力は、物に宿っている魂を増幅させて力。

 名前をを、完現術……フルブリングといい、その力を使うものをフルブリンガー、という」

 

 例えば、とリルカさんはペンでチャドさんを指し、

 

「あそこの大男は、両腕の皮膚を媒介にするし」

 

 母さんを指して、

 

「織姫はアクセサリーを媒介にしてる」

 

 チャドさんは、両腕を変質させ、母さんはニコリと微笑んだ。

 

「基本的にはあたしと雪緒ってやつと一緒に、完現術者を保護してるから安全だろうけど、見つけても戦いを挑んだりはしないでね」

「えっ、僕ですか?」

「あたしはあんたのことを知らないから、仕方が無いでしょ」

「あー、了解です」

 

 隣のやつ(苺花)の方が危険なんだけどな、と心の中で呟きながら、リルカさんの言葉に頷く。

 

「これでいいの?」

 

 リルカさんは、親父の方を向いて尋ねる。

 

「あぁ、今ので十分だ。

 ありがとな」

 

 リルカさんはふん、と親父と反対の方向を向く。

 

「それで」

 

 親父は、僕と苺花の方を見る。

 

「まぁ、なんだ、後あのメガネが滅却師……なのは知ってるよな」

「まぁ、会ったことあるからね」

 

 親父が言うメガネ、と言うのは、石田雨竜さんというお医者さんだ。

 

 親父と同じく医者なのだが、その傍ら滅却師という、霊を駆除する力を持った人間でもある。

 

 親父とは専門が違うから、俺も苺花も偶に石田さんに診てもらう。

 

「それで、後はもう少しいるんだけど……」

 

 親父は、微笑みながら、

 

「これで、全員だ。

 ここにいないやつは沢山いるけど、これが俺の馴染みのやつらだ」

 

「敵になったやつ、一緒に戦ったやつ、裏切ったやつ。

 いろんな奴がいる」

 

「だけど、それら全てが、俺の全てだ」

 

 親父の言葉は、重かった。

 

 そう、親父のその言葉には、俺の知らない過去が存在している。

 

 母さんがその後小走りで親父の元に向かう。

 

 母さんは親父と手を繋ぎ、にこりと微笑むと、

 

「それと、浦原さんに言われて、ようやく決心が着いた」

 

 親父の言葉と共に、親父の霊圧をひしひしと感じていく。

 10年ぶりか……。

 親父の重い霊圧に晒され、微笑む。

 

 懐かしいな、死神の時は……。

 

 それくらいに僕は、死神をしていない。

 

 その事実に、僕は思わず自分の手を見た。

 

 剣だこひとつ無い、綺麗な手だった。

 

「俺は、お前と向き合うよ、一勇」

 

 その言葉に、僕は顔を上げる。

 

 親父は斬魄刀を抜き、俺に向け、左手を顔まで持っていき、

 

 

 

 虚の仮面を自分の顔につけた。

 

 

 跳ね上がる霊圧、僕の見た事のない仮面。

 

 思わず戦闘態勢を取ろうとした瞬間。

 

 

 親父、母さん、ルキアさんは、その場から姿を消した。




1回に出てくる人数多いとと疲れるよね


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ep8:Separate destiny

「チャドさん達は、親父達を追わないんですか?」

 

 俺は警戒を続けながら、チャドさん達の方を見る。

 チャドさんは何やら軽く柔軟を始める。

 

 リルカさんは、なにやら手持ち無沙汰そうに自信の長いピンクのツインテールを弄っている。

 

 そんな様子に、俺は警戒を解こうかと考えていると、

 

「よし」

 

 チャドさんが一言呟く。

 それを聞いたリルカさんは、どこからか取り出した不思議な形の玩具の銃を取り出す。

 

 大きい霊圧は感じない。

 

 しかし、気配はヒシヒシと感じる。

 

 不思議な相手。

 

「一勇、あんたどっちを相手にしたい?」

 

 隣にいる苺花から声をかけられる。

 苺花は今にも走り出しそうなくらいワクワクしている。

 

「なんでワクワクしてんの」

「だってチャドさん生身であんな強いのに、あの霊圧感じたら……ねぇ」

 

 ニヤリと笑う苺花に、将来が不安だな、と思いながら、僕は肩をすくめる。

 苺花の目線はチャドさんをずっと見ている。

 こりゃチャドさんは苺花とやるのか。

 

 僕はリルカさんの方を見て、斬魄刀をチラリと見る。

 囁きは小さく、特に戦うのに支障はない。

 

「じゃあ、苺花はチャ……」

 

 その瞬間、チャドさんの姿が消えた。

 咄嗟の移動に回避を選択する。

 

 しかし、僕はチャドさんの後ろに見えたリルカさんの姿を見て、察した。

 

「集中攻撃、ね」

 

 僕はリルカさんの玩具の銃から放たれたハートの弾丸を腕で受けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一勇……?」

 

 一瞬だった。

 チャドさんの方を警戒していたら、チャドさんが突然一勇に向かって、一勇はチャドさんからの攻撃は避けれたけど、リルカさんの銃に……。

 

 あたしは斬魄刀を構える。

 

 すると、妙なことが起こった。

 

 一勇の姿が消えた。

 

 一勇はリルカさんの銃を受けた瞬間に煙になったようにその場から消えた。

 

 一勇は霊圧を抑えてるからから簡単に見つからないけど、いる、ということは分かる。

 

 けど、今はそれすら分からない。

 

「チャドさん……卑怯じゃないっすか?」

 

 二対一。

 

 いまの状況は分かりやすいくらい不利だ。

 

「リルカが戦うためには仕方が無いからな」

「そうそう、私元々戦うの得意じゃないし」

 

 少し申し訳なさそうにするチャドさんと、ヒラヒラと手を振るリルカさん。

 

 今まで相手にしてきたのは、戦うための存在。

 

 だけど、リルカさんは違う。

 

 戦いと別のところが強い。

 

 あたしは目の前の2人を相手にする、という荷の重さを感じながら、斬魄刀を力強く握る。

 

「じゃ、私は行くわ」

「あぁ」

 

 チャドさんとリルカさんがよくわからないやりとりをした瞬間、いきなりリルカさんは消えた。

 

 さっき一勇が消えたように、煙になったようにその場からいなくなった。

 

 あたしはリルカさんを探すべきか、と考えようとするが、辞める。

 

 目の前のチャドさんから漂う気配を放っておけるわけが無い。

 

 あたしは自身の斬魄刀を見る。

 

 始解すらしていない。

 

 一勇との戦いを思い出す。

 

 終始やられてばかりだった。

 

 きっと本気でやっていたら何回殺されていたのだろうか、というくらいに未だに力の差は歴然としていた。

 

 あたしはまだ、成長しなければならない。

 

「苺花」

「は、はい」

 

 いきなりチャドさんから声をかけられて、少し驚く。

 

「今回は、殺しでもなんでもない。

 ただ、俺たちを知ってもらい、お前らに理解してもらうための、戦いだ」

 

 ゆっくりと取られるファイティングポーズ。

 どうに入ったその構えに、見取れてしまいそうになるが、あたしも刀を構える。

 

「だから、死ぬ気で理解しに来い」

 

 膨れ上がる霊圧。

 さっきも見たけど、チャドさんの両腕からそこらの死神を優に超える霊圧を感じる。

 

 チャドさんはあたしの斬魄刀を知らない。

 

 なら、チャドさんの予想を簡単に超えて見せよう。

 

 だってあたしの斬魄刀は、

 

 

 学ぶ(真似ぶ)斬魄刀なのだから。

 

 

「轟け!白猿!!!」

 

 黒い刀身は、あたしの心。

 

 白くなるのは、償いたいから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っと、死んだわけじゃないのか」

 

 僕が目を覚ますと、そこはファンシーな世界だった。

 犬、猫、兎、熊、といった数々の動物のでぬいぐるみ。

 パステルカラーな机や椅子、はたまたタンスや鏡台なんかもある。

 

 全体的に目に悪そうな色をしている空間に閉じ込められた僕は、感覚を張り巡らせようとして、

 

「はいはい、説明したげるから、壊そうとしないで」

「あっ、リルカさん、いたんですか」

「いたんですか、じゃないわよ。

 さっきから緊張感のないやつねぇ」

 

 そこで現れたリルカさんを見て、辞めた。

 

「やだなぁ、壊すわけないじゃないですか」

「いやいや、あんたいかにも壊す気満々で力解放しようとしてたでしょ」

「あー、確かにここがどこなのか探ろうとしてましたね」

「それだけであんなに怖いくらいになるものなの?」

 

 確かに、霊圧の感知は割と繊細だから、霊圧の抑えが緩くなるけど、そういうふうに感じるんだ。

 僕は立ち上がり、リルカさんの方を見て、軽く聞く。

 

「それで、なんかするんですか?」

「なんかするんですか、ってあんた、もしかしたら殺されるかもしれないのよ」

 

 リルカさんが先程使った銃をこちらに向ける。

 

「いやまぁ、多分リルカさんだけなら大丈夫ですよ」

「大丈夫って、あんたなんの根拠があって言ってるのよ……」

「うーん……」

 

 僕的には初対面の人だし、適当に言っておこうかな。

 

「これ、人を殺すように作られてないな、って感じたからですよ」

「ふーん」

「周りを見ても、殺傷能力を持ったものはないし、リルカさんからはやる気が感じられない」

 

 正直に言うと、この程度の箱庭だったら、本気を出せば内側からでも壊せるだろう、と言うだけなのだけど。

 僕の適当な発言は、リルカさんに何かを感じさせたようで、リルカさんは少し考えてから、

 

「それもそう……だけど」

「はい?」

「殺傷能力がない風に見える、ってのは油断ね」

 

 すると、僕の体は動かなくなる。

 

 なんだ…………?

 

 視点は動くため、下の方を向いたりして、自分の異変を探る。

 

「自分の腕を見なさい」

 

 僕はリルカさんの言葉に従うように自分の腕を見る。

 

 そこは、先程リルカさんの攻撃が当たった所。

 

 そこにあったのは、ハートのマークと、その中に書かれた『0』の数字。

 

「私、13って数字が好きなのよ」

 

 僕は答えることが出来ない。

 それをリルカさんも知ってか、話を続けていく。

 

「そしたら、いつの間にか私の能力に、こんなものが着いていた」

「カウントダウンは13秒」

「それを過ぎたら、私の言いなり」

 

「私もこんなものいらなかったんだけど、まぁ貰っちゃったから名前もつけたの」

 

「『余計な愛』(Unnecessary Love)」

 

 僕はしてやられたなー、と思いながら、どうなるんだろ、このまま殺されちゃう……とかなのかな?と考える。

 

 

 正直、親父が消えてから、僕はやる気を失っていた。

 

 親父は勝手に決めたけど、それは僕を見ていない決断だ。

 

 なにが僕に向き合う、だ。

 

 ふざけんじゃない。

 

 だから僕はやる気が出ない……いや、出さない。

 

「それであんたさ」

 

 そんなことを考えていると、リルカさんから声が掛かる。

 眼球だけでそちらの方を見ると、リルカさんはいつの間にか椅子に座っていた。

 

「あの女の子、なんで一緒にいるの?」

 

 僕からの返答はない。

 

 リルカさんは、少し待ってから、気づいた様に、

 

「発言を許可するわ」

 

 その言葉で、声が出せるようになったことに気づいた。

 僕はリルカさんの方を見ながら、話す。

 

「あの女の子……苺花とは、昔馴染みなんですよ」

「へぇ……だけど、あの子死神になるのよね?」

「えぇ、まぁ」

「で、あんたは死神になる気はない、と」

「それが………約束なんで……」

 

 過去のことを思い出し、顔を歪め……ようとするが、リルカさんのお陰で表情を変えることは叶わない。

 

「約束って、誰との?」

「それは、親父との……」

「はぁ?あんたそんなに強いのに死神にならないって言うの?」

「…………それがなんだって言うんですか」

 

 リルカさんは苦笑いしながらこちらを見る。

 その目はなんだか品定めされているようで、気分が悪い。

 

「ふーん、あんたさ、将来の夢とかあるの?」

「将来の夢?」

「そ、答えなさい」

 

 リルカさんの命令が、僕に聞こえると、僕は自分の意思とは関係なく、話し出す。

 

「昔は、死神になりたかった。

 今は、誰にも迷惑をかけないようになりたい」

「…………あんた、生きてて楽しい?」

 

 口から出た答えに、自分でもハッとする。

 確かに、昔は死神になりたかった。

 だけど今の夢は、確かに誰にも迷惑をかけないように生きる、それだけだ。

 

「生きてて、楽しいわけないじゃないですか」

「じゃあなんで生きてんのよ」

「みんなのためですよ」

「へぇ、言ってみなさい」

「親父や母さん、苺花とか恋次さん、ルキアさんに迷惑はかけたくない」

 

 その言葉に、リルカさんは頭を抑える。

 

「…………あたしは、昔、やりたい放題やって後悔してる」

 

 しばらくの沈黙のあと、リルカさんは話し始める。

 

「それでも、何回も後悔するようなことがあって、それで今、私はこうして楽しく生きてる」

 

 それで何が言いたいのか、と僕はリルカさんを見続ける。

 

「あんたはさ、その後悔する、って大事なことを取られているのよ」

 

 リルカさんは、悲しそうな顔でこちらを見る。

 

「てかこれほどまでに拗らせてるとか、一護、あんたどんな教育したのよ……」

 

 まるで憐れむようにこちらを見る。

 それはまるで、今までの僕に同情している視線のようで、

 

「とりあえず、あんた多分もうこれ以上一護のことを知るのをやめなさい」

 

 なんだか胸のイライラが溜まってきて、

 

「私から一護にキツーく言っておくから」

 

 僕は、耳元に未だ聞こえる囁きに、答える。

 

"使えば…………鏡花水月を、使えばいいじゃないか"

 

 そうして僕の意識は暗転する。



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ep9:Like and Don't Like

 突きは躱される。

 

 薙ぎは変質した右腕で受け止められる。

 

 袈裟が出来るような隙はない。

 

 チャドさんからの攻撃はあたしがギリギリ防げるように放たれる。

 

「お前は……」

 

 少し強めに放たれた右腕からの攻撃を受け止め、軽く吹き飛ばされた後、チャドさんは聞いてくる。

 

「なんの為に戦う」

 

 あたしはその質問に即答することができなかった。

 

 あたしはただ、父さんや母さんに追いつきたくて、一勇に追いつきたくて、必死に走っていた。

 

 だけど、それもある日を境に目標は消えてなくなった。

 

 それからはひたすらに強くなろうとした。

 

 白猿からは呆れられたけど、それでもあたしは前に進みたかった。

 

 一勇は常に私の1歩前にいて、父さんや母さんはその遥かな先にいた。

 

 1歩前すらわからなくなって、あたしは進み方がわからなくなったけど、なんとか、四席くらいまでの力をつけることが出来た。

 

 鬼道はからっきしだったから、座学的にはなれる訳じゃないけど、それは今後頑張ればいい。

 

 だけど、今、その力でさえも叶わない。

 

「わからないです!」

「そうか」

 

 私が少し考えてから結論を出すと、チャドさんは短く答える。

 あたしは白くなった刀身を確認し、叫ぶ。

 

「教えろ!白猿!!!」

 

 あたしの始解は、単純だ。

 

 相手と戦って、学び、実践する。

 

 あたし自身の力は上がらないが、戦えば戦うほどあたしは相手を倒すためだけの戦い方を出来る。

 

 だから戦えば戦うほど、相手を圧倒できるはずなのに、

 

「温い(ぬるい)」

 

 チャドさんが目の前に現れる。

 

 速いとかじゃない。

 

 技術だ。

 

 足運び、体の使い方、それらが速いように見せている。

 

 一度白猿を使わなかったら分からなかっただろう。

 

 あたしはチャドさんの左腕のパンチを刀で受け止める。

 先程吹っ飛ばされた威力だったが、今は受け止められる。

 

「苺花、と言ったな」

「な、なんですか」

 

 白猿の解放は、一度目と二度目で溜まるまでの時間が違う。

 次の解放までチャドさんを相手にできるとは、思えない。

 

「お前の刀は、軽い」

「そりゃあ、あたしは力が弱い方ですけど……」

「違う」

「じゃあ、なにが軽っ?!」

 

 その途端、チャドさんが両腕の変身が解ける。

 

 あたしはすぐさま刀を避けようとしたが、チャドさんはすぐさま右腕であたしの腹を殴る。

 

「かはっ」

 

 先程とは違い、弱い。

 

 それは分かるのだが、なんだろう、この威力は。

 

 痛くはないのに、痛い。

 

「分かったか?」

「なん……ですか……チャドさん……」

「…………」

「なんで……なんでこんなに強いんですか?!」

 

 なんだか、チャドさんを見ていると、苛立って来る。

 あたしよりきっと強いんだけど、チャドさんはあたしより弱くなるように手加減している。

 けど、その拳の一発一発は重くて、受け止めるのさえ難しい。

 

「それが理解するための」

 

 チャドさんは、ファイティングポーズを取る。

 両腕の変身はしない。

 それがなければ、チャドさんはただの人間と同じだって言うのに。

 

「来い」

 

 まだあたしは、チャドさんに叶わないと思う。

 だから。

 

 

 あたしは、始解を解く。

 

「チャドさん」

「なんだ?」

「胸、お借りします」

 

 構える。

 

 息を吐く。

 

 一つ一つの動作を、しっかりと行う。

 

 チャドさんの話を全部理解出来たとは、思えない。

 だけど、確かに今、あたしには足りないものがある。

 

 その何かは、きっとすぐには見つけられないものだろう。

 けど、チャドさんは持っている。

 

 なら、あたしは学びたい。

 

 白猿を使わないで、自分の力で。

 

 白猿が、鼻で笑ったような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、一勇君」

 

 そこは、和の部屋。

 

 畳、障子の戸、掛け軸等。

 

 まさに日本人が考える、正に和の風景、と言えるような場所だった。

 

 そこに、一勇はいた。

 

 一勇の目の前には、温厚そうな笑みを浮かべた、メガネの男性。

 髪はくせっ毛なのか、クルクルとしている。

 

 服装は、苺花達と同じような死覇装。

 

 だが、その死覇装の上に、更に羽織を着ている。

 

 その羽織は、白を基調としたもので、背中には大きく、五、と書かれている。

 

「久しぶりだな」

「あはは……そんなに警戒しないでおくれよ」

「警戒してないよ」

 

 部屋の中心に置かれた机を挟んで、一勇は座る。

 一勇の目の前の男……鏡花水月は、どこからか出現させた湯呑みを差し出す。

 

「どうぞ」

「どうせ現実じゃないから、いいよ」

「……連れないなぁ……」

 

 鏡花水月は、一勇に差し出した湯呑みを持ち、ゆったりとした動作で飲み始める。

 

「それで、なんでここに呼んだの?」

「急いては事を仕損じる、よ」

「……確かにそうだな」

 

 一勇は、鏡花水月の言葉に頷き、数秒沈黙したあとに、

 

「待ったよ」

「それは言葉の綾、屁理屈、と呼ばれるものだよ」

「あんたにそんなことを言われるとは光栄だね」

「それは褒めてる、と取っていいかな?」

「それが出来るなら是非そうして頂ければ」

 

 一勇が一方的に鏡花水月に噛み付く。

 その攻撃的な言葉を鏡花水月には、暖簾に腕押し状態だった。

 

「……それで、君をここに呼んだ理由だけど」

 

 無言で返す一勇。

 鏡花水月は、一勇の表情を見て、話を続ける。

 

「ちょいと、力を貸してあげよう、と思ってね」

「力を貸す?」

「君、ピンチだろう?」

 

 一勇を通して見ていたのであろう事を、まるで予想していたかの様に話す。

 その事実を知っている一勇からしたら、つまらない茶番。

 

「で、本心は?」

「……君に、全てに魅せたい、そう思ってねぇ」

「……昔から変わらないな、あんたは」

 

 一勇は鏡花水月の変わらない表情に寒気を覚える。

 確かに鏡花水月のせいで今でさえ地獄のような人生を進もうとしているのに、これ以上地獄を見せる、などと言ってくる。

 

「変わるわけがないじゃないですか」

 

 一勇の一言に、鏡花水月はにこりと微笑む。

 そして、またもどこから取り出したかわからない筆と半紙を取り出し、何かを書く。

 

「君こそ、いや、君だからこそ、この文字は似合う」

 

 達筆に書かれたその文字を見て、一勇はため息をつく。

 

 そこには、全ナル一、と書かれていた。

 

 

 一勇は、その鏡花水月を見て一言、

 

「流石に冗談が過ぎるぞ、鏡花水月」

「いやいや、この姿だからこそ、こうなんじゃないか」

「確かに、俺は実際には知らないが、そうらしいな」

「はは、我ながらいい文字だと思うんだけど、どうかな?」

 

 半紙を自分の方に向け、ニコニコとしている鏡花水月。

 

「お前……その藍染惣右介の姿で、そんなことしてるから、僕から嫌われるんだよ」

 

「ふふふ、嫌われなきゃいけないから、この姿なんだよ」

 

「…………」

 

 正直、一勇と鏡花水月では見ている世界そのものが違うのか、というレベルで話が噛み合ってはいない。

 

 だが、一勇は分かる。

 

 鏡花水月は、絶対的に、自分の味方だと。

 

 感覚でしかないその直感は、誰にも信じてもらえない。

 

 だから、敢えて一勇は鏡花水月を嫌い、

 

「行くぞ」

 

 鏡花水月を振るう。

 



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ep10:Hallucination

 水の中から顔を出したような感覚と共に、一勇は意識を取り戻す。

 

 目の前にはリルカがいる。

 

「あんた、なんかした?」

「…………まぁ」

 

 一勇はぶっきらぼうに答える。

 

「なんかしたってことは、逆らう意思がある、って捉えてもいいの?」

「逆らう、ってのはリルカさんにですか?」

 

 リルカの霊圧が高まる。

 一勇はその様子を察して、霊圧を同等まで引き上げる。

 

「あんた……やる気なの……?」

 

 一勇は何も答えない。

 

 その様子に、リルカは痺れを切らしたのか、大声で命じる。

 

 

「意識を失いなさい!」

 

 

 しかし、一勇の瞳は一向に閉じることも無く、その場に倒れることも無い。

 

「…………ふぅ」

 

 だが、リルカは何かが終わったかのように息を吐き、近くにあったパステルカラーの椅子に座る。

 

「ったく、一護……ほんとにあんたは……」

 

 リルカが手を振ると、一勇の体から桃色の光が飛び出る。

 一勇の足元(・・)を見つめるリルカは、頬杖をつく。

 

 一勇はリルカが自分の足元を見つめていることになんら発言することは無く、無言で歩き始める。

 

 音もなく歩く様は、まるで幽霊であるかのように不気味に見える。

 

 リルカは依然として、先程まで一勇がいた場所の地面を見ている。

 

 

 まるでその場所に、意識を失った一勇が倒れているのを見るかのようで、

 

 

 今リルカの後ろにいる一勇の姿が、一切見えていないようで、

 

 

 一勇は、ゆったりとした動作で、リルカの背中に触れた瞬間、

 

「あ"ぅ"っ……」

 

 ビクリとリルカは身体をはね上げ、その場に倒れる。

 リルカの目はまだ同じところを見つめ続けている。

 

「リルカさん、知らされてなかったんですね」

 

 一勇はリルカの様子を見て、憐れんだ表情を浮かべる。

 

 リルカが完全に意識を失い、倒れ伏せると、一勇は一言、

 

 

 

「砕けろ、鏡花水月」

 

 

 

 いつの間にか一勇の腰には、鞘から抜けた刀があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ?!」

 

 一勇の霊圧……。

 

 いつもより大きいその霊圧に、あたしはチャドさんから距離を取る。

 

 あたしの体はボロボロで、チャドさんは傷一つない。

 

 成長しているのを実感しながらの戦いだったが、唐突な気配にあたしは戦いの手を休めざるを得なかった。

 

「リルカ……」

 

 チャドさんも、一勇の霊圧がする方を見て、寂しそうな顔をした。

 

「……向かってきている?」

 

 しばらく動かなかった一勇の霊圧に、唐突に動きが出た。

 

 こちらに向かってきている。

 

 あたしは特に始解すらしていないので、霊圧が分かるほどには高まっていない。

 

 チャドさんも両腕の変質は解いているので、分かるわけはない。

 

 なのに、一勇の霊圧はたしかにこちらに向かってきている。

 

「苺花」

「っ……はい!」

 

 チャドさんから一言だけ声をかけられる。

 チャドさんは一勇の来る方に体を向け、ファイティングポーズを取る。

 

「見ていろ」

 

 吹き出る殺意。

 

 チャドさんの……殺意……。

 

 後ろにいるだけなのに感じられるこの霊圧の高まり……。

 

 一方、一勇の霊圧は乱れることなくこちらに向かってくる。

 

 意味がわからない。

 

 これじゃあまるで、

 

「一勇を殺すつもりですか?!」

「そのつもりだ」

 

 両腕の変質は一瞬で終わり、

 

 ゆっくりと左腕を引く。

 

 あと数秒で一勇はここにたどり着く。

 

 なのに、未だに一勇の霊圧は、

 

 一点の揺らぎなく、

 

 乱すことなく、

 

 同じ速度で向かってきている。

 

「魔人の一撃(ラ・ムエルテ)」

 

 そして一勇が視認できると思った瞬間、その一撃は放たれ……

 

 ない。

 

 あたしは思わずチャドさんの方を見る。

 

 チャドさんは、悔しそうに一勇の方を見ている。

 

 あたしはチャドさんの表情の意味が分からず、視線の先を見る。

 

「一勇っ?!」

 

 そこには、死覇装をまとい、いつもとは微妙に形の違う斬魄刀を持つ一勇と、

 

 

 その一勇の肩に乗せられているリルカさん。

 

 

 確かに、あんな状況で大技を打ったとしても、巻き込んでしまうかもしれない。

 

 まぁ、一勇のことだから、リルカさんを気絶させちゃって、運んできてくれたのだろう、と考えていると、

 

 言いようのない感覚に襲われる。

 

「チャドさんっ!

 逃げてっ!」

 

 咄嗟に出た言葉。

 しかしチャドさんは、知っていたかのように、戦闘態勢を解かない。

 

 一勇はそんなチャドさんに対して、リルカさんを担いだまま突進していく。

 

「一勇っ!」

 

 その言葉と共に、一勇はリルカさんに隠れるように、チャドさんを間合いに入れる。

 そしてリルカさんの体の横から、斬魄刀を突き出す。

 

「ふんっ!」

 

 チャドさんは気合いの込めた右腕で、その斬魄刀を受け止める。

 が、その瞬間一勇はチャドさんに向かってリルカさんを投げる。

 

 チャドさんは投げられたリルカさんを受け止める。

 

 が、その瞬間、チャドさんの首には刀が添えられていた。

 

「チャドさん、やる気なの?」

 

 いつの間にかチャドさんの後ろにいた一勇は、問いかけていた。

 

「…………」

「父さんからは、なんて?」

 

 一勇の質問に、チャドさんはしばらく黙ってから、

 

「一護からは、2人を見極めて欲しい、と」

「…………親父はそれでどうしろと?」

「本当に一護を追わせてもいいと思ったら、行かせろ」

「そう親父が言っていたのか?」

 

 一勇の口調は、聞いたことの無いくらいに平坦な口調だった。

 

「それで、チャドさんはどう思ったの?」

「…………まだ決めかねている」

「ふーん……」

 

 一勇はチャドさんの首から斬魄刀を離す。

 

「苺花はどうなの?」

「……行かせてもいい、と感じた」

 

 チャドさんはその行動で、リルカさんを静かに地面に寝かせる。

 あたしは不用意にリルカさんを回収しに行こうと決められない。

 

 あの二人の間に大きな霊圧の衝突を感じられる。

 

 あたしが無闇に入ろうとした途端、戦いの火花は上がるだろう。

 

「僕は…………」

 

 一勇が少し考え込むようなポーズをする。

 

「じゃあ、僕はチャドさんをボコボコにしたらいいですかね?」

 

 まるでコンビニに行ってくる、と言うような気軽さでそんなことを言った。

 チャドさんは動じない。

 

「そうすれば、あのクソ親父の顔面を一発殴れますからね」

 

 斬魄刀を担ぐ一勇から、やる気は感じられない。

 ただ、全く揺らぐことのない霊圧が、ここまで来ると不気味に感じてきた。

 

「あ、その前に」

 

 一勇は何かを思い出したかのように、その場から消え、

 

「おやすみ」

 

 耳元から聞こえた一勇の声に、私の視界は唐突に暗くなり、意識を失った。



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ep11:fear

今回はちょっと長めのまえがきを書きます。
先ず、ここまで読んでくださりありがとうございます。
10話までこの比較的読みづらい物語を読んで下さり、本当にありがとうございます。
自分でも割と気になる点は幾つかあるんですが、設定の関係上、書ける内容が凄く断片的になってしまうのは仕方が無いのです。
そこで、感想にてお聞きくだされば、ある程度答える所存であります。
まえがきはここで一旦終了させて頂きますが、後書きにて予想される質問の答えをします。
それでは、11話、よろしくお願い致します。


「一勇、苺花をどうするつもりだ」

「どうするも何も、これから起こることを苺花に見られたくないからですよ」

 

 眉間にシワを寄せるチャド。

 

 その様子から、一勇は一つ質問をする。

 

「チャドさん、親父から俺らを見極めてくれ、的なことを言われたんですよね?」

 

 無言で頷くチャド。

 一勇はその様子に、しばらく考える。

 

「ボコボコにするのは変わらないんですけど、チャドさんをボコボコにしてしまったら親父の所に行けなくなる可能性があるのでは、と考えていました」

 

「だけど、親父のことだからそうやって詰む要素はないとは思うんですよ」

 

「そこでルキアさんあたりはきっと、どつかのアホに作らせた道具をもって来てチャドさんに持たせているはず……」

 

 チャドは、恐怖した。

 

 ペラペラと話されていく言葉。

 

 それが全部当たっているのは、まぁ秀才だから、ということにしておくとして、

 

 霊圧が揺らがない。

 

 感情が見えない。

 

 目の前の人間が本当に生きているのか怪しい。

 

「今、疑いましたね?」

 

 そして、フラフラと歩きながら話していた一勇は、唐突にチャドへと顔を向けた。

 

「僕のことを、僕の息遣いを、霊圧を、肉体を、生死を、存在を」

 

「信じてください」

 

「見えているもの、聞こえているもの、触れているもの、感じていること、全てをありのままに信じてください」

 

 チャドはその場から動いていないはずの一勇が、近づいているような恐怖を感じた。

 そうして、チャドは、防御の姿勢をとった。

 

「肯定、でよろしいですか?」

 

 その途端、一勇の声がやけに鮮明に聞こえる、とチャドは感じた。

 そんなことはないはずなのに、そう感じる。

 

「怖がらないでください」

 

 そうして、チャドは気づいた。

 

 もう既に一勇はその自分と同等の霊圧なんて発せずに、

 

 気配を消し、

 

 音を消し、

 

 存在を薄め、

 

 自分の目の前にいた事を。

 

 

 足がすくむ。

 

 チャドは得体の知れない恐怖に怯えていた。

 

「さぁ、チャドさん、認めてください」

「…………俺は…………」

 

 チャドは黙る。

 

 もう、チャドに精神的に立ち上がる力は、ない。

 

 

 

 だから、

 

 

 チャドは、変わる。

 

「ぐべっ」

 

 汚い音と共に轟音。

 

 チャドは、拳を振り抜いていた。

 両の腕を変質させ、ただ静かに揺らぐ霊圧と共に、拳を振り抜いていた。

 

 数メートル飛ばされた一勇は、ユラユラと立ち上がる。

 

「なんで…………」

「恐怖は、慣れた」

 

 チャドはポツリと言葉を発する。

 

 チャドはいくつもの戦闘、修行を終え、気づいた。

 

 己の弱さに、限界に。

 

 だからこそ、チャドは極限までチャドは恐怖と隣り合わせだった。

 

 そうして身についたのは、慣れ。

 

 恐怖はそもそももう逃れられない。

 

 だからこそ、恐怖に慣れることによって、恐怖を持ちながら最高のパフォーマンスを発揮できるようになった。

 

 揺らぐ霊圧に、揺るがない霊圧。

 

「…………腐っても歴戦、ね」

 

 チャドに聞こえない声量で言った一勇は、深呼吸をする。

 

 一勇としては、精神的にボコボコにする、というつもりで恐怖をチャドに擦り付けたのに、チャドはそれで屈しなかった。

 

 それどころか、恐怖が一定のラインを超えた所から、チャドは恐怖による障害が無くなっていた。

 

 足の震え、手の震え、目線、考え方。

 

 恐怖による様々な障害は確かにチャドに現れていたが、チャドが拳を振り抜いていた時には、それらのものは無くなっていた。

 

 一勇は死神でも恐怖を克服できるやつなんかいないのに、一端の人間もどきが恐怖を克服できるとか、流石親父の友達、と考えた。

 

「一勇」

 

 一言。

 一勇は黙って立ち上がる。

 

「お前のことを、認める」

 

 チャドから溢れる霊圧は、どんどん洗練されていく。

 

「だが」

 

 それはもう死神で言うなら副隊長レベルはあるであろうその霊圧に、一勇は霊圧を同等まで解放する。

 

「お前はここで退場してもらう」

 

 チャドの姿が消える。

 

 一勇は斬魄刀を構え、真正面に振り下ろす。

 

 すると、チャドの拳と一勇の斬魄刀が激突する。

 

 2人を中心として、風が吹き荒れる。

 

 一勇が斬魄刀を斜めにし、受け流そうとするが、チャドは拳を引く。

 

 チャドの拳の引きに合わせて切りかかろうとした一勇だったが、チャドの右腕を盾にされる。

 

 チャドは受け止めた瞬間、一勇に向け左の拳を振るう。

 

 右腕に受け止められたせいで生まれた一瞬の隙で、拳は一勇の顔面に吸い込まれる。

 

 一勇が無様に吹き飛ぶ。

 

 一勇が地面に着いた瞬間上がる土煙。

 

 そして1秒と経たないうちに、顔面を腫らした一勇がチャドに突進する。

 

 数度の打ち合い。

 

 左腕。

 

 数度の打ち合い。

 

 腹。

 

 数度の打ち合い。

 

 右足。

 

 

 一勇がチャドに立ち向かい、隙を作らされ、反撃を食らう。

 

 それを何度か繰り返した頃、チャドにとある疑問が生まれる。

 

 

 手応えがありすぎる。

 

 

 悪いことなんてない。

 

 いい事だ。

 

 チャドからしたら一勇は今のうちに摘まなければいけない危険な芽であり、

 

 ダメージを与えなければならない。

 

 だけど、疑問は拭えない。

 

「疑いましたね」

 

 既に目の前の一勇はボロボロ。

 

 片足が砕け、片腕も砕け、内臓がやられ、顔は腫れ上がり、

 

 死に体のはずだ。

 

 チャドは初めて自分から距離を詰め、拳を振るう。

 

 一勇は避けることも無くその拳を受け、

 

 

 チャドは気づいた。

 

 

 1番最初と変わらない手応え?

 

「気づきましたね」

 

 拳を受けたはずの一勇は、その場から微動だにせず、チャドの拳に触れていた。

 

「疑問に」

 

 チャドは目を疑う。

 大怪我をしていて立つのすらやっとなはずの一勇の怪我が、全て消えていることに。

 

「なんで、どうして」

 

 そうして、チャドは見た。

 

「同じ霊圧。

 疑問。

 手応え」

 

 目の前に、自分が立っている。

 

 紛うことなき、自分。

 

 その自分は、一勇に付けたはずの傷が全てある。

 片足が砕け、片腕も砕け、内臓がやられ、顔は腫れ上がり、ボロボロな姿。

 

「あなた、自分を傷つけてどうするんですか?」

 

 痛む。

 

 片足が、

 

 片腕が、

 

 内臓が、

 

 顔が、

 

 そうして、チャドは気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ」

 

 チャドさんから受けた傷を癒しながら、僕は空を見上げる。

 

 リルカさんとチャドさんは無傷で気を失っている。

 

 苺花は多少傷はついてるけど、大丈夫で、気を失っている。

 

 やりすぎた感じもあったけど、それくらいしなきゃ行けない人達だったから、仕方がないとして、

 

 親父の目的が分からない。

 

 僕は自分の斬魄刀を見ながらため息をつく。

 

 別になんかしたいわけじゃないんだけどなぁ。

 

 リルカさんもチャドさんも、鏡花水月について、知っている様子はなかった。

 

 なのに、僕と対峙させた。

 

 確かに、僕の斬魄刀について知っているのは、隊長副隊長たちと、親父と母さん、それに一部の関係者の人達だけ。

 

 意味がわからない。

 

 けど、もしこの斬魄刀を使わせること自体に意味があるなら、僕は親父の考えにまんまとハマっている。

 

 だからほんとは逃げ出したい気持ちもあるが、僕はそれ以上に、親父たちのことを知りたかった。

 

 知識として知っているが、僕はこの斬魄刀の本当の歴史を知らない。

 

 10年前、あの時から、僕の死神としての時間は止まっていたはずだったのに。

 

 親父がまた動かした。

 

 僕はまだ覚悟も決意も出来てないけど、知りたいことはたくさんある。

 

 だから、親父の望むとおり、親父の用意する全てに、対峙してやろう。

 

 そうして、一発親父の顔を殴ってやる。




設定の予想質問(と言う名の言い訳)
Q:主人公が情緒不安定。
A:思春期、死神としての屈折、苺花の存在、鏡花水月(始解が出来るということは……?)という点から、主人公は情緒不安定です。

Q:なんで一勇無双しないの?
A:鏡花水月にある程度の縛りを付与しています、後に明かします

Q:チャド弱すぎん?
A:一勇が化け物すぎます。

Q:リルカの力『余計な愛』(Unnecessary Love)ってあったっけ?
A:各キャラに10年での成長補正を加えております。
 しかし、大きく成長すると別人になるので細かい成長にとどめております(チャドは恐怖に慣れた、等)


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