オルガイツカは勇者である (村田殿(ハーメルン版))
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第一話 鉄と血と花

「と言うわけでお前さんは死んでしまった。」

「ああ、分かってる・・・」

ここに来たのはもう何度目か数えるのもやめた。俺オルガ・イツカは隕石に押しつぶされるとかマシンガンにヅタヅタに撃たれる様な、命を落とす様な攻撃にも、とある呪文を唱えることによってこの場所に来て生き返ることができる。

今俺が話している爺さんは世界トップの神様らしい。

今この場には俺と相棒のミカ、そして神様の三人だ。

 

「しかしまあよくあんな子供のイタズラ程度で死ぬもんじゃ(笑)」

「ああ、された瞬間分かったんだ。俺は死ぬなって。・・・なぁ爺さん。どうにか死なない世界ってのはないのか?」

「ふーむ、一応ある事にはあるのじゃが、ゾンビ達の住まう世界なら最初から死んでるから死なんぞ」

「おい、俺は真面目に聞いてるんだ。あんまりふざけるようなら・・・

そう言い放ち隣にいたミカが拳銃を向ける。

「ままま待て、まともな世界で死なない世界じゃな、調べよう・・・おや、あったようじゃ」

「本当か!?」

もしそんな世界があるのなら行ってみたい。生き返れるとはいえ何度も何度も死ぬハメになりたくはねぇからな。

「この世界には精霊と呼ばれる守り神がいてな、どんな攻撃からもその身を守ってくれる優れた神の使いじゃな」

「精霊・・・いいじゃねぇか」

「文明のレベルはお主が最初にいた所より少し低いくらいじゃな。不便はないと思うぞ」

「なるほどなぁ。早速送ってくれ」

「しかしのぉこの世界は・・・

「いいから送れ!少なくともあの鈍感なスマホ野郎がいる場所よりはマシだろ!?」

「オルガ、少しうるさい」

「すまねぇミカ・・・」

ミカの注意に俺は少し落ち着く事にする。

「まあ、そこまで言うなら儂も別の世界に君を送ろう・・・ムムム、アレハレユウシワヌインリエバ・・・放ァ!」

神様の爺さんの謎の呪文の後俺たちは新世界で目覚めた。

 

 

 

昔々あるところに勇者がいました。

勇者は、人々に嫌がらせを続ける魔王を説得するために、旅を続けています。

そしてついに、勇者は魔王の城にたどりついたのです。

 

「やっとここまで着いたぞ魔王!もう悪いことはやめるんだ!」

「私を怖がって悪者扱いを始めたのはお前達ではないか〜!」

 

 

 

・・・なんだこの演劇は?今俺たちがいるのは5歳くらいの沢山の園児達がいる幼稚園ってやつか?

園児達は集まって目の前の人形劇に夢中だ。ちょうど俺たちが座ってるところから舞台裏が見える。

赤髪のセミロングの少女が勇者役、やや黄色かかった茶髪のツインテールの少女が魔王役を演じている。

俺たちの向かいには二人の少女がナレーターを務めている。車椅子に座る黒髪の少女と黄色髪のおとなしそうな小柄の少女だ。

再び劇の様子を確認する。

勇者役が魔王に対して

「話し合えば分かり合えるよ!君を悪者になんかしない!」

と決め台詞を決めたのはいいが少し興奮したのか舞台裏を隠す壁を叩いてしまい倒れ、劇としての体をなさなくなった。

「何や、むぐぅ!?」

俺は思わず突っ込みを入れようとしたがミカに口を押さえられズルズルと廊下に運び出された。

「うるさいなぁ、劇の音が聞こえないでしょ」

俺はいつものやり取りのように胸倉を掴まれ脅された。

「す、すいませんでした」

俺は思わずミカに敬語で謝った。

 

 

 

「勇者キック!」

劇を廊下から覗いてみるとヤケクソ気味になっていた。手で操っていた勇者が魔王を蹴り?かかっている。

話し合えば分かり合えるとは何だったんだ?

「ちょ、ちょっと、それキックじゃないし、話しあおうっていったところじゃないの!」

その後少しごたついた後ナレーションの起点でいかにも魔王との戦いをするようなBGMが流される。

「ふっはっは、ここが貴様の墓場だあ!」

その場の勢いでストーリー変更し話し合いは平行線の彼方に消えていった。

「みんな、勇者を応援して。一緒にグーで勇者にパワーを送ろう!」

ナレーションの車椅子少女が園児達を先導し、園児達が声援を送る。

「ぐわあぁ、皆の声援が私を弱らせるぅ」

「勇者パンチ!」

「ぐわぁ」

「こうして祖国は護られました。めでたしめでたし」

・・・こいつはまあ何というか平和なやり取りだな。それより誰なんだよこいつらは?

 

 

 

「いやぁ一時はどうなることかと思ったけど何とかなったわね」

「ああ、思わず突っ込みそうになったぜ」

俺が置かれた状況を少し聞いてみたが、どうやら俺はこの勇者部っていう人のためになることを率先してやる、いわゆる何でも屋的な部活の顧問らしい。

部長の犬吠埼風、さっきの劇で魔王役の子だ。

勇者役の結城友奈、ナレーションの車椅子の子が東郷美森、もう一人が犬吠埼樹だ。

風と樹は姉妹らしく仲は良さそうだ。しかしそれよりも仲良さそうに見えるのは友奈と美森だ。

少しベタつきすぎじゃないかとも思える。まぁ俺とミカみたいな関係なのだろう。

「オルガ?」

ミカは俺の顔を少し不振そうに見つめる。何だよ俺の笑い顔が変に見えるのか?

「あ、そーだ先生、帰りにうどん食べに行かない?勿論奢りで」

「勘弁してくれよ・・・」

こっちはまだこの世界に慣れ親しんでないんだ。少しくらい考える時間をくれねぇかなどと考えてた矢先、ミカが無慈悲な一言を言い放つ。

「オルガ、連れてってくれるんだろう?」

「・・・ハァ、ああ分かったよ!連れてってやるよ!連れてきゃ良いんだろ!」

「ナイスミカ!さっすが先生をその気にさせるのが上手いわ〜」

しまった、ついついミカに乗せられてしまった。こんなんだから死ぬのも多いんだろうな、俺は・・・

渋々俺はうどん屋へと足を運んだ。

 

 

 

「あれ風先輩?今日はいつものところじゃないんですか?」

「ふっふっふ、私の女子力ともなれば新しいうどんへの探究心も角上なのだ。そろそろね」

そう言ってかれこれ30分程度歩いている。

山道のような上り坂を登った先にその店はポツンと立っていた。

「ここよ。最近リニューアルされた老舗モンタークよ」

モンターク?どこかで聞いたことがあるような名前だな。そんな疑問は店に入った瞬間すぐに消え失せた。

「マクギリスじゃねえか」

「ようこそ、私の店へ」

 




(投稿)止まるんじゃねぇぞ


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第二話 肉を食って帰るぞ!

ここまで二次創作を描くのが難しいとは想定外だった(マッキー感)
キャラが少し変かもしれない。
これがオリジナルと二次創作の差ってやつか(ミカ感)




「マクギリスじゃねぇか」

 

「ようこそ私の店へ」

 

うどん屋「モンターク」への扉を開け、まず目にしたのは生前色々とあったマクギリスだった。

 

容姿端麗で曇りなき金髪、スタイルも優秀と見た目だけならかなりモテる部類だ。しかし前世ではコイツの計画性のなさで俺達は鉄華団を失った。

 

「ん?何々。先生この人と知り合いなの?」

 

風が疑問を率直に聞いてくる。

 

「ああ、まあちょっとした腐れ縁ってとこだ」

 

俺は適当に返事を返す。

 

「ふふ、リニューアル初のお客様、いやお嬢様方だ。石動、村田、盛大に持て成してやれ」

 

「はっ、准将!」

 

「了解っす」

 

「も〜やだな〜お嬢様なんて〜」

 

風はマクギリスのちょっとした口説きにときめいていた。石動・・・確かマクギリスの側近だったか。

あいつが乗るモビルスーツの大剣のお陰でモビルアーマー「ハシュマル」を止めることが出来たんだっけな。

しかし村田?あいつは全く知らねぇ。

 

 

 

マクギリスから詳しい話を聞く為、俺達は事務室に入り話を始めた。

 

「・・・で、なんでアンタがここにいるんだ?」

 

「それを話すにはまず村田のことから話そうか。彼は君や私と同じ世界を旅する者。いわば転

生者と彼は言っていたな」

 

「転生・・・者?」

 

「ああ。別の世界の知識、記憶、経験。それらを持って世界を旅する者。それが転生者だ。

彼は生前その転生者を統括、及び先導する企業に所属していたそうだ。

 

君の感覚で言えば神様と名乗る御老人が私にとっては村田なのだ」

 

俺はあの爺さんが、マクギリスはあの村田って言う奴がそれぞれこの世界に呼んだってことか。

 

「彼はこの店の店員もしていたようだが店長が歳を取り亡くなってしまったため、私が店長としてこの店を引き継いだわけだ」

 

「なるほどな、大体読めてきたぞ」

 

「?、て言うかなんでチョコの人がうどん作ってるの?」

 

ミカお前話聞いてたのか?確かにコイツが人に飯を作る姿など想像もできないけどな・・・

 

「それは私の計画の為の資金調達だよ、三日月オーガス。

私はこの世界でバエルを俺の物にしてみせる。

そうすれば、俺の目的により近く・・・」

 

「マッキー、終わったっすよ」

 

調理が終わったのか例の村田って奴が来た。

 

黒髪短髪に飄々とした印象が残る残るスーツ姿の男だ。

 

「ども、自分村田、忍者っす。

オルガっち、ミカっち、よろしくっす」

 

「ん、ああこちらこそな」

 

俺達はは村田のハイテンションにやや押されながらも握手を交わす。

 

「自分は元々とある人物の護衛として忍者として働いてたっす」

 

忍者?ああ、武田とかいうやつの所にそんな奴はいたな。

 

「まあ今は別任務でこの世界の監視をしてるっす」

 

村田、コイツは一見ペラペラと秘密を喋っているように見えるが実際は肝心な事を言おうとしないように感じた。

 

「と、まあそんな感じでこれプレゼントするっす」

 

そう言って渡されたのはスマートフォンだ。

 

「こいつは?」

 

「ちょっとしたお助けアイテムっす。これがあれば大抵の事はなんとかなるっす」

 

確かにスマホってのは便利だがこいつが役に立つのはせいぜい電話の連絡くらいだろ。

 

 

 

「見ろ、純粋な旨さだけ輝きを放つあのうどんに彼女達は圧倒されれいる!」

 

事務室から出て見えたのはうどんに夢中な勇者部だった。

 

俺も後から食べ始めるがコイツは美味い。いい小麦粉を使ってるんじゃねぇか。

コシはやや硬いがそれがいいアクセントになっている。

 

「何だよ、結構旨えじゃねぇか」

 

「おかわり」

 

「ミカ?勘弁してくれよ・・・」

 

キュピ(胸倉を掴む音)

 

「いいでしょ?」

 

「・・・ああ」

 

もはや諦めるしかなかった。しかし後に財布の中身が足りない事に気付き俺はどうするかと頭を抱えた。

 

「ん?ああ足りないっすか?なら自分が立て替えておくっすよ」

 

「いいのか?」

 

「いいっすいいっす。どーせ自分の金じゃないっすし」

 

「すまねぇ恩に着る」

 

村田の機転により俺はなんとか難を逃れた。

 

 

 

 

モンタークを出た後、現地解散で勇者部の面々は家に戻り俺は一時学校に戻った。

俺は慣れたように自分の席に着く。そこには未処理の書類が結構な量あった。

 

「仕事が終わるまでは帰れないよ?」

 

「ああ、分かってる」

 

俺はミカに急かされ資料に目を通しは処理していく。と言ってもやる事はテスト答案の丸つけくらいだ。昔はこんな読み書きもできなかったもんだが、今はそれなりにはこなせるようになった。

 

そうだ、俺達が今まで積み上げてきたもんは全部無駄じゃなかった。これからも俺達が立ち止まらない限り道は続く。

 

そんな事を考えていた時後ろから首筋に硬くあったかいものが当てられる。いきなりの事に俺は叫びをあげた。

 

「うおお!?オ、オルガ?叫び過ぎたぞ?」

 

当てられたものは缶コーヒーだったようだ。銃弾ではなくてホッとした。

 

「ハァハァ、なんだよ・・・」

 

「落ち着いたか?差し入れだ。」

 

俺に缶コーヒーを渡してくれたのは四十代くらいに見える金髪のおっさんだった。

 

見ようによってはもう少し若くも見える。何処と無くだが名瀬の兄貴を思い出す男だ。

 

「?、なんでタービンズの人がここにいるの?」

 

「タービンズ?なんだそれは?」

 

ミカも同じことを思ったのか素朴に疑問を訪ねた。だがコイツは名瀬の兄貴じゃねえ。

 

「ミカ、そいつは名瀬の兄貴じゃねぇ・・・。アッシュ先生だ」

 

あれ?俺は何でコイツの名前を知ってるんだ?間違えなく初対面の筈だ。何処かで会ったことがあるのかと俺は自問自答してみるが覚えはなかった。

 

「ま、まぁ人違いって事はあるだろう。あんまり煮を詰めるなよ?オルガ」

 

そう言ってアッシュは職員室を出て行った。

俺はマジでおかしくなってんのかもな、記憶にはないが名瀬の兄貴に似た声の先生・・・

どうやら俺の知らないところで何かが動いているのかも知れねぇな。

そんな事を考えながらもせっせと仕事を終える。

 

「さてと、帰るか」

 

「うん」

 

 

 

 

俺の足は自然と学校近くのマンションへと足を運んでいた。

8階建てのマンションの7階まで上がるのは流石にしんどかった。

後にエレベーターがある事を知った俺は軽くため息をつき自分の部屋へと入る。

中は生活感がまるでない。新築に近い感じだった。

生活できる最低限のものは揃っているが使用した後が見られない。

 

今日は色んなことが起きすぎた。

俺が学校の先生になっているとか

マクギリスがうどん屋をやっていたり

村田とかいう胡散臭い忍者店員からスマホを渡されたり・・・スマホ?

 

待てよ確か冬夜の奴はスマホであの爺さんと話していたことがあったな。コイツでもそれができるかもしれない。

そう思った俺は爺さんに電話を

・・・かけられなかった。

 

番号を知らないからだ。色々と聞こうと思ったが話せないのであれば仕方ねぇ。

 

色々とコイツで情報を調べようした矢先、一本の電話が来た。

しかし相手は村田とかいうやつだった。

 

「オルガっち、今時間あるっすか?肉を食いに行くっすよ」

 

時間を見ると既に6時を回っていた。食事には丁度いい時間で断る理由は何もなかった。

 

 

 

 

焼肉店に行くと既に準備を始めていた。

 

「突然呼び出してすまないっすね。今後のことの話を忘れてたっす」

 

そう言いつつカルビを5、6枚焼いていく。

 

「短刀直入に聞くっすよ?ここの世界どう思うっすか?」

 

「そうだな・・・正直平和過ぎてこれっぽっちも面白くねぇな」

 

俺達はこんなところで止まるつもりはない。成り上がる為にはどうすればいいか、まずそこを考える必要がある。

 

「平和っすか

・・・危険を犯してでも鉄華団は成り上がるつもりっすか?」

 

「ああ、決まってるだろ。俺達は鉄華団なんだからな」

 

「なら本格的に話すっすよ。まずは・・・この写真を」

 

村田が見せてきたのは白色の袋のような身体に、触手と巨大な口が付いている怪物だ。

モビルアーマーについてきていた小さい奴らに似た雰囲気を俺は感じた。

 

「これはバーテックスと呼ばれる人類の敵っす。もっとも普通の人には知られてない敵。

この世界は大赦と呼ばれる神樹様を祀る組織とバーテックスと呼ばれる敵が戦っていたっす。

時期にしておよそ三百年・・・

 

「厄祭戦か?」

 

「違うっすよ」

 

「何だよ・・・」

 

三百年という単語についつい反応してしまった。

 

「しかしここ最近になってバーテックスがまた攻めてくる動きが見られるっす。

そして神樹様は自らの力の一部を人に託し勇者と呼ばれる存在を生み出してバーテックスに対抗してるっす」

 

「勇者?まさかあいつらが・・・」

 

「ご明察っす。勇者部は人の助けになることを率先としてやるのが表向き。実際はかのバーテックスと戦う為に集められたメンバーっすよ。

バーテックスには通常兵器は通用せず、勇者じゃなければ対抗できないっすからね」

 

「待ってくれ、あいつらからは戦い慣れてる気配は感じられなかったぞ?」

 

「そりゃ本人達はまだ知らないっすからね。・・・そこでオルガっち、いや鉄華団団長殿。

勇者部に戦い方を教えてやってほしいっす」

 

言われてやるのはそう難しいものではない。だが腑に落ちないことがいくつかあった。

 

「聞きたいことがある。

まず俺は何で先生とかいうのになってんだ?

それと、記憶がおかしい点もだ」

 

「よく知ってる方法っすよ。

元々新任の先生になる予定の人のIDを団長殿に変えて勇者部顧問にしたっす。こうでもしないと団長殿が自然と彼女達に近づけないっすからね。

 

それとその為の記憶も睡眠学習で身につけさせたっす。

分かったっすか?」

 

「正直ピンとこねぇな。お前が何でそんな事をする?」

 

「上からの命令っすよ。自分は所詮伝言役の忍者っすから。

詳しいことは知らないっす」

 

本当に知らないような顔をする。こいつには脅し等をかけても無駄そうだ。

 

「それにこの件は無償って訳じゃないっす。

バーテックスを撃破すればちゃんと大赦から報酬も出るし、

人類を守る勇者の先生・・・って言うのは名声としてはこれ以上ないくらい立派なものだと思うっすよ。

そうすれば・・・

 

「王になる・・・地位も名誉も手に入るってことか」

 

「そうっすね。断る理由はないっすよね?」

 

人類を守る勇者の先生か、柄にもねえが王になる為なら何だってやってやる。

 

「ああ、ミカもやってくれるよな?」

 

今まで喋っていなかったミカに目をやると肉を頬張っていた。

 

「ミカ、お前話聞いてたか?」

 

「ん・・・ちゃんと聞いてたよ。

そのバーなんとかって奴を倒せばオルガは前に進めるんでしょ?

オルガが決めたことならやるよ」

 

ミカもちゃんと聞いていたようで少し安心した。

 

「じゃ、後のことは任せるっすよ」

 

「アンタは協力してくれねぇのか?」

 

「自分これでも忙しいっすからね。後は大赦から来る子に色々と聞くといいっす」

 

そう言って金だけ置いて村田は姿を消した。

さて肉を食うか・・・

 

 

 

その帰り・・・

「うぉぇぇ・・・」

よく焼けてない肉を食って腹を壊し俺は希望の花を咲かせた。

 

キ-ボ-ノ-ハナ-

 

俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!

だからよ、止まるんじゃねぇぞ・・・

 




ここまでオルガのチュートリアルです。
次回からはアニメ基準で書いていきます
友奈ちゃん視点をベースに描く予定です
それと今後村田さんの出番はありません
ついでに言うと宇宙海賊の出番も多分ないです
あれは出したかっただけなので・・・

あとラスカル味方にしようと考えたけど内容が思いつかなかったのでやめます
ダインスレイブだけ残して消えちまいな!(サーシェス感)

明宏とシノどうやって出そう・・・
風先輩と明宏、東郷さんとシノで組ませて戦う予定だが・・・
マッキーは当然二刀流の子と組みます
あれ樹ちゃんと組める人いなくね?


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第三話 乙女の真心 (アニメ一話aパート)

鷲尾須美の章のパンフレット集めて来たので実質初投稿です




勇者

それは勇気のある者

英雄と同一視され、誰もが恐れる困難に立ち向かい偉業を成し遂げた者、

または成し遂げようとしている者に対する敬意として使われる。

 

私はそんな風になれたらいいなって思うんだ。

五月の長い休みも終わり新しい週が始まった。

 

「おはよう友奈ちゃん」

 

「おはよー東郷さん」

 

私は隣に住んでいる東郷さんと一緒に学校に行く。

東郷さんは一昨年私の家の隣に引っ越してきた女の子。

私の親友なんだ。

引っ越してくる前に事故で足が不自由になって、車椅子に乗ってる子。

初めて会った時はその事故のせいで塞ぎ込んでいたけど、一緒に過ごしてるうちに色々と東郷さんの凄い所を知って仲良くなれたんだ。

 

 

 

そして私達は讃州中学勇者部。

勇者部は人のためになることを率先してやる部活

 

具体的には幼稚園でレクリエーションしたり

地域のゴミ拾い

お店の手伝い

他の部活動の助っ人

とにかく色んな事をやっているんだ。

 

学校の皆んなと元気よく挨拶をした後、朝礼をする。

 

「起立!礼!お祈り!」

 

クラス一同が学級長の声に従う。

 

「神樹様のお陰で今日も私達はここにいます」

 

外の窓の方に向き、神樹様にお祈りを捧げる。

神樹様はこの世界の守り神。

神樹様は作物とかお魚とかうどんを恵んでくれたりする神様。

私達は神樹様のお陰で皆んなと一緒に過ごしてるんだ。

 

 

 

授業も終わり私達はいつものように勇者部の部室に足を運ぶ。

部室内には部長の風先輩と妹の樹ちゃん、それと三年生の男の子、ミカと顧問のオルガ先生がいた。

 

「こんにちはー、友奈、東郷、入りまーす」

 

「お疲れ様です」

 

「おう、来たか」

 

出迎えてくれたのは一つ後輩の樹ちゃんとオルガ先生だ。

ミカは・・・チョコレートを頬張っていた。

 

「来たわね友奈、東郷、

今日は捨て猫の飼い主探しをするわよ」

 

言いながら風先輩がボードに子猫の写真を何枚か貼り付ける。

みんな可愛いな〜。

 

「まだこんなにあるんですね」

 

「学校巻き込んで飼い猫を探すわ!まずはホームページの強化準備ね」

 

「学校を巻き込む政治的発想。流石一年先輩です」

 

「あ、ありがと」

 

風先輩はちょっと困った様に東郷さんにお礼を述べる。

 

「と、言うわけで東郷任せた」

 

「了解しました!」

 

東郷さんがビシッと敬礼をした後、机の上にあるパソコンを器用に操作し勇者部のホームページを編集する。

まるで自分の手足を操るように操作し、あっという間に完成させた。

 

「ホームページ完了です!」

 

やっぱり東郷さんは凄いな。

みんなが驚きと喜びの声を上げている中一人だけ不満げな顔をしている人がいた。

オルガ先生だ。

 

「なかなかいいじゃねぇか。

でも鉄華団のマークが足りねぇな」

 

先生は見よう見まねでホームページを編集し、目立つ様にシクラメンの形をした赤いマークをつける。

シクラメンは日に向かって身体ごと伸びていく植物で私達にピッタリだと思った。

・・・そもそもてっかだんって何?

 

「あのお姉ちゃん私達はどうしよう?」

 

「え?まずは今までどおりだけど、今まで以上に頑張る!」

 

風先輩のガッツポーズに樹ちゃんはちょっと呆れ気味だ。

 

「それだったら河原の掃除をやろうよ」

 

「あ、良いですねそれ!」

 

私達は私達に出来ることをするの。

それが勇者部だから。

 

 

 

場面は変わり河原へと場所を移す。

 

「何だよ、結構汚ねえじゃねぇか」

 

オルガ先生の言う通り河原にはペットボトル等のゴミの類が散らばっていた。

 

「まともな仕事ってのは地味だなもんだな」

 

先生が文句を垂れ流しつつも作業を頑張ってくれている。

しかし走り回って作業をしていた先生が河原の石に躓き、盛大に回り回った。

その勢いのまま川の中に入り

その時希望の花が咲いた。

そしてどこからともなく女性の歌がその時聞こえた。

 

俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!

だからよ、止まるんじゃねぇぞ・・・

 

「せ、先生大丈夫!?」

 

「こんくらいなんて事はねえ・・・」

 

大した怪我はしてなかったみたいでみんな安心した顔になる。

でもどうしてだろう?

先生の服は全く濡れてなかった。

 

 

 

 

そんな事もありながらも私達はいつものようにうどん屋へと足を運ぶ。

今日は昨日と違って馴染みのあるうどん屋だ。

食事に手をつけつつ風先輩が話を始める。これで三杯目だ。

 

「いやー労働の後のうどんは美味いわね。うどんは女子力を上げるのよ」

 

「ああ、目の前のもんをひたすら片付けて行かねえと先に進めねぇからな」

 

先生がなんか良い事言った!

 

「あ、そうだ。文化祭の出し物の相談なんだけど・・・」

 

私達の文化祭は10月の初めに行われる。

ちなみに今は五月に入ったばかりだ。

 

「去年は準備が間に合わなくて何も出来なかったんですよね」

 

「そうよ、夏休みに入る前に色々と決めちゃいたいのよね

今年は猫の手も借りられるし」

 

猫の手と言いながら樹ちゃんの頭をを風先輩は撫でる。

 

「私!?」

 

「何それ?」

 

ミカがまるで知らなかったかの様に聞いてくる。

 

「ちょっとちょっと、ミカ?そんな事も知らないの?

文化祭はねこうババーン!と騒ぐお祭りよ!」

 

「正直ピンと来ねえな。ミカ?お前は分かったか?」

 

「当たり前じゃん」

 

「えっ?・・・すげえょミカは・・・」

 

「うーん、先生にも分かるように教えるには女子力が足らなかったか?

すみませーん、おかわりくださーい」

 

「勘弁してくれよ・・・」

 

オルガの懐には昨日村田から貰った金がそれなりはあった。しかしそれでも限りがあるものだった。

 

四杯目もペロリと平らげた後話は持ち越しになってしまった。

 

「それじゃあ皆んな、こうババーン!と行ける勇者部らしい文化祭のお題を考えるのよ。

これ宿題ね」

 

風先輩からの宿題を私達は出された。ババーンと行ける勇者部らしいお題かあ〜

どんなのが良いかな〜

明日までに考えないと!

 

 

 

風先輩や樹ちゃんは帰る方向が違うので私達は車椅子専用の車に乗って家まで帰る。

 

離れていてもスマホのアプリ「ナルコ」を使って休日の過ごし方をどうするかなんていう、たわいもない会話を楽しむ。

 

だらだらするって風先輩に送ったらトドですかってツッコミを東郷さんが送ってきた。

そのツッコミに私達は軽く笑顔を浮かべる。

 

 

 

 

・・・その頃風と樹は自転車を押しながら橋の上を通っていた。

「さて、夕飯何作ろっか?」

 

「まだ食べるの?お姉ちゃん食べすぎだよ〜」

 

そんなたわいもない会話をしていた時風のスマホから一通のメールが来る。

中身を確認するとそれは大赦からのものだった。

それは勇者部が勇者としての適正値が高いことを示すメールだった。

そのメールを見て風は一瞬険しい表情を浮かべる。

それを気にしたのか樹が心配そうに声をかける。

 

「お姉ちゃんどうしたの?」

 

「ううん、何でもない」

 

その場は何でもないと言ってしまったが少し考えた後例え話をするように風は口を開く。

 

「ねえ樹、もしお姉ちゃんに隠し事があったらどうする?

 

「えっと・・・よく分からないけど」

 

「例えばね甲州勝沼の戦いで援軍が来ないのに戦えって言われたら?」

 

「えっと・・・いきなりどうしたの?」

 

「ううん。やっぱり何でもない」

 

我ながら例え話が下手だと思った。しかし勇者適正が高いと言っても実際に勇者になる可能性は低い。

全国には自分達以外にも勇者部が数多く存在する。

もしかしたら別の誰かが知らずのうちに勇者になるかもしれない。

それはそれでみんなを危険に晒さなくて良いと風は考えていた。

 

「・・・ついて行くよ?何があっても」

 

「え?」

 

「お姉ちゃんは唯一の家族だもん」

 

「樹・・・ありがと」

 

犬吠埼姉妹の両親は昔、不慮の事故でこの世を去っている。

なので今はマンションで二人暮らしである。

風だけはその不慮の事故の原因はバーテックスである事を知っている。

風はバーテックスに復讐する為大赦の命令で勇者適性のある友奈や東郷、そして樹を集める為の部活。

勇者部を作った。

しかしいざ戦うかもしれないという現実に苦悩していた。

もし勇者になったら自分がしっかり先導してみんなを守ると決意を新たにした。

 

 

 

 

 

日はまた登り、

神世紀三百年(西暦2318年)

5月7日火曜日

勇者部の面々はいつものように部室に集まっていた。

 

「皆んな!昨日の宿題、ちゃんと考えておいた?」

 

「まだです」

 

「私も・・・」

 

「うん。農業をやってみたい」

 

友奈や東郷が考えがまとまらない中、ミカは一つ発言をした。

 

「農業?」

 

「今は無理だけどいろいろな本を読んで、野菜のこととか勉強したいんだ。

それにうどんの材料も自分達で作ればもっとおいしくなると思うんだ」

 

「なるほどね〜。

勇者部といえばうどん。

うどんといえば勇者部。

切っても切れない関係、運命の赤い糸で結ばれてる関係ね。

いいじゃないミカ!」

 

ミカの提案に風先輩も賛成した。

何故か先生も自慢げな顔を浮かべている。

 

「よーしお前ら!文化祭は勇者部の大仕事だ!気ぃ引き締めていくぞおっ!」

 

「「おおー」」

 

 

勇者部の面子はまずうどん作りの知識を得る為図書館へと行こうとしていた。

 

「先生!車の用意出来ました!」

 

「おう、じゃあ行くぞぉ!」

 

 

先生が車の近くに来たその時だった。

その場にあったそよ風が急に止み、葉っぱが何と空中で静止した。

それだけじゃない、部活をしている人もこれから帰宅しようと準備している人も止まっている。

まるで時間が止まったかの様な感覚に包まれる。

 

そして私達のスマホが聞いたことない音を鳴らした。

見ると画面には赤い文字で

「樹海化警報」

と書かれていた。

 

「えっ?なに?なに?」

 

「友奈ちゃん・・・これは?」

 

「まさか!?・・・皆んなよく聞いて!

・・・私達が当たりだった・・・」

 

風先輩が言い終えると同時くらいに海の向こう側がまるで切り裂かれ一瞬漆黒に染まり、そこから七色の空間が広がっていった。

そして七色の花弁が当たりいっぱいに広がる。

空間が近づくにつれ周りの空気が振動し、私達は強烈な光に包まれた。

 

その時希望の花が咲いた。

 

俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!

だからよ、止まるんじゃねぇぞ・・・

 

 

目を覚ますとそこはカラフルな空間だった。

カラフルな木の根っこがまるで道路のように連なり、細かい模様が入っている。

空を見上げ見ると風鈴のような青く輝いたものや、遠くには薄っすらと巨大な鳥居が並んでいるのが見えた。

 

「これ・・・なにが、起きたの?」

 

この日、私達の日常は一旦終わりました

 

 

 

 

 




投稿ペースを出来るだけ早める為にaパート、bパートに区切って投稿する予定です

余談

ガンダムビルドダイバーズにはミカ(ミカミ・リク)と優奈(の声優)が主人公とヒロインやってるからよ
見逃すんじゃねーぞ・・・


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第四話 災厄の天使と希望の勇者達(アニメ一話bパート)

鉄血全話見返したので執筆遅れました。
本当に申し訳ない。

余談
やったね団長!自己紹介ノルマがあるよ


「うっうっ・・・はっ・・・おうミカ」

 

「おうじゃないよ。何これ?」

 

世界が七色に変わっておよそ10秒後、希望の花を咲かせたオルガは再び蘇る。

 

「何だこりゃ・・・?」

 

オルガの目に広がるのは友奈達とカラフルな世界。

樹木の国と化していた。

 

「私、夢でも見てるの?」

 

「ううん友奈ちゃん、夢じゃないわ」

 

そう言いつつ二人はほっぺを軽くつねる。

 

「いたた、夢じゃないみたい・・・」

 

「風先輩、ここ何処なんですか?

 

東郷は先程の風の口ぶりから、この状況が何なのか知っていると思い質問を飛ばす。

 

「皆、落ち着いて聞いて。

・・・私は大赦から派遣された人間なの」

 

「大赦ってあの神樹様を奉ってる所ですよね?」

 

「お姉ちゃん、ずっと一緒だったのに、そんなの初めて聞いたよ?」

 

「当たらなければずっと黙っているつもりだったからね。

今見えてるこの世界は神樹様が作った結界なの」

 

「神樹様が・・・」

「じゃあ悪いところじゃないんですね」

 

「ええ、けど私達はここで敵と戦わなければならないの」

 

「敵?誰なんだよそいつは?」

 

「何・・・あれ?」

 

「何だありゃ?」

 

オルガ達が目の先に見たのはバーテックスだ。

正確には乙女型、ヴァルゴとも呼ばれる。

 

赤と白を基調とした細長い体に人間の首と腹部部分と見られる部分に白い布が何枚か巻きつかれている。

下腹部には丸い包みを持ち、砲台の役目を果たしている。

約50メートル程の巨体であり、とても人間が対抗できるものには見えなかった。

 

「来たわね・・・あれはバーテックス。世界を滅ぼす人類の敵。あれが神樹様の元へたどり着いた時世界は死ぬ」

 

「は?」

 

オルガはバーテックスの戦いが世界の命運を分けるものだと知らざれていなかった。

その為説明不足があった村田に少し怒りの気持ちが湧いていた。

だが鉄華団のやることは対して変わらない。

 

「どうして私達が・・・」

 

「大赦の調査で最も適性があると判断されたのよ」

 

「そんな、あんなのと戦えるわけない!」

 

「心配すんな、俺達が何とかしてやる。俺とミカは鉄華団だからな」

 

戦意を喪失していた東郷をオルガは励ます。

 

「てっかだん?」

 

「そういえばさっきも言ってましたけど、何ですかそれ?

鉄と火?」

 

「フッ、いや鉄の華だ。決して散ることのない鉄の華。俺たちは上がり続けなきゃいけないんだ。

・・・そうだろ、ミカぁ!」

 

「うん」

 

ミカは勝手が分かってるので早速バルバトスの準備の為下に降りる。

 

「先生!?ミカは何を・・・」

 

東郷達が心配してミカを見送る。

 

「決まってんだろ、俺はアイツにかけてんだ。

俺が本気ならミカはそれに応えてくれる。

あのバーテックスって奴はミカ一人でも大丈夫だ」

 

根拠はないがミカはどんな状況でも止まろうとはしなかった。

意地汚くてだけど潔い。

ミカは矛盾の塊だが、だからこそ強い。

 

「何言ってんのよ、私も付き合うわよ」

 

「いやあんなのミカ一人でも・・・」

 

「バーテックスは封印の儀を行わないと倒せないのよ。

封印の儀は神樹様の力を持った勇者じゃないと出来ないわ」

 

「何!?・・・ほんと肝心な事は喋らねえよな、村田の奴・・・」

 

またもや村田に怒りを覚えたオルガは軽く舌打ちと愚痴をこぼす。

 

「勇者?」

 

友奈が疑問を風にぶつける。

 

「そう、バーテックスは勇者でなければ倒せないの。

戦う意思を示せばこのアプリから神樹様が力を貸して、神樹様の勇者になれるの」

 

そう言いつつ風はスマホのナルコ(会話用のアプリ)を開く。

 

「このアプリにこんな機能が・・・」

 

「この事態になると自動的に発動する様になってるの」

 

ナルコはただのテキストチャットアプリではなかった。

勇者としての様々なサポートや説明が記されている。

今の彼女達の画面には花が描かれたマークが大きく写っている。

 

「ん、俺のはねえのか?」

 

オルガのスマホにはナルコのアプリこそ入っていたが勇者としての機能はなかった。

 

「あれ?そういえば先生やミカは何でこの世界に入れたの?

勇者適正に先生とミカは入ってなかったはず・・・」

 

「は?・・・!その話は後だ!来るぞ!」

 

オルガの大声で一同がバーテックスの方へと向く。

バーテックスはこちらに気づいたのか下腹部の砲台を撃ってきた。

狙いは正確でこのまま直撃するかの様に見えたが、オルガが砲弾に対して走り、先に当たる事で友奈達を庇った。

 

「ぐ・・・うぉぉぉぉ!!!」

パンパンパン!

 

負けずとオルガは懐から拳銃を取り出しバーテックスに銃弾を放つが銃弾がまるで小石の様に弾かれる。

 

「何だよ・・・全然効かねえじゃねえか」

 

その時希望の花が咲いた

 

俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!だからよ、止まるんじゃねぇぞ・・・。

 

 

 

「こっちに気がついてる?」

 

「だ、駄目、あんなのと戦うなんて・・・」

 

「なんて声、出してやがる。東郷」

 

先程の攻撃で完全に怯えきったいた東郷にオルガが声をかける。

 

「先生?大丈夫何ですか?怪我とか・・・

 

「こんくらいなんて事はねえ」

 

「・・・友奈、東郷を連れて逃げて」

 

「えっでも・・・」

 

「早く!」

 

風の勢いに押されたのか友奈はせっせと車椅子を運ぶ。

 

「樹も一緒に行って!」

 

「だ、駄目だよ!お姉ちゃんを残していけないよ!」

 

その問答の最中バーテックスは次弾を装填する様な動きを見せる。

 

「ついて行くよ、何があっても」

 

「・・・よし、樹続いて!」

 

風はナルコに表示されたオキザリスの花を押し、変身する。

全身が黄色いオーラに包まれ、茶色の髪も比例する様に黄色になりツインテールがおさげをツインテール状に大きく纏めたものに変わる。

服装も勇者用の戦闘服に変わる。

身の丈以上の大剣を華麗に振り回し、風はバーテックスへと進んで行った。

 

続いて樹が変身、モチーフは鳴子百合である。

グリーンカラーのの賢者を思わせるようなゆったりとした勇者服を着て、右腕には花と蔦が巻きついたようなわっか状の飾りが付いている。

 

風と違い髪型や髪の色は変わらない。

変身時あざとくウインクをしているのをオルガ以外は見えていた。

 

オルガはモビルワーカーを走らせ弾丸を何発か当てる。

銃弾同様効いている様子はないが注意は引けた。

バーテックスは砲弾をオルガへと放つ。

オルガは二度も同じ手を食らうまいと躱すが地面に当たった砲弾の衝撃でモビルワーカーは吹き飛び、少し離れていた風達も上空に飛び上がる。

しかしモビルワーカーに修理が必要だった。

 

運良くオルガは希望の花を咲かせなかった。

 

爆風で上空に飛んだ風と樹は着地態勢に・・・入れていなかった。

風は落ち着いた顔つきでしっかりと着地するが、樹は海で溺れるような様だ。

そのまま神樹の根へとぶつかる・・・と思いきや、ぶつかる直前で透明なバリアが現れ衝撃を和らげた。

 

うつ伏せで倒れた樹が立ち上がると目の前に精霊「木霊」が現れる。

芽吹いたばかりの新芽を模った精霊である。

先程のバリアはこの精霊が出したものである。

 

「わっ、何これ?かわいい」

 

「これがこの世界を守ってきた勇者の力。そしてそのこは勇者をサポートする精霊よ」

 

風も自分の精霊「犬神」を呼び出す。青くイヌ科の動物に似た謎の浮遊生物である。

 

「また来るわ、樹!手をかざして戦う意思を示して!」

 

「えっ!?こ、こう!?」

 

樹の意思が反映するように腕の蔦についた花からワイヤーが射出される。

バーテックスが再び発射した砲弾をワイヤーで絡め取り、自身に当たる前に爆発させる。

 

その頃のオルガはモビルワーカーを直し終わり二人に指示を出していた。

 

「風、すぐ応援が到着する!もう少し耐えてくれ!樹突っ込み甘い!競り負けんぞ!左に動いて避けろ!」

 

オルガの指示になんとか対応した二人は少しづつだが戦いに余裕ができていた。

風は友奈達が巻き込まれてないかを心配しスマホから連絡を取る。

 

「風先輩!?大丈夫ですか?」

 

「こっちよりそっちこそ大丈夫?」

 

砲弾を回避しつつ電話を続ける。

 

「友奈、東郷、黙っててゴメンね」

 

「・・・風先輩はみんなのことを思って黙っていたんですよね?

なら風先輩は悪くない!」

 

「友奈・・・ありが・・しまった!?」

 

電話に夢中になっていた風は横からきた砲弾に気がつくのが遅れてしまった。

しかしその状況にいち早く気づいたオルガはモビルワーカーを盾にし風を庇った。

その時希望の花が咲いた

 

俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!だからよ、止まるんじゃねぇぞ・・・。

 

「先輩!?」

 

友奈の必死な叫びに答える声はなかった。

指示役がいなくなった風と樹は少しづつ体制を崩されていった。

 

 

バーテックスは次はお前だと言わんばかりに友奈達に砲撃口を向ける。

 

「こっち見てる・・・」

 

「友奈ちゃん、私を置いて今すぐ逃げて!」

 

「な、友達を置いてなんて、そんなこと絶対にしない!」

 

「駄目!逃げて!友奈ちゃんが死んじゃう!」

 

「死なねえ!死んでたまるか!こんなんじゃ、こんなところじゃ、終われねえ!そうだろぉ!ミカぁ!」

 

復活したオルガはそろそろミカの準備が出来た頃合いを見計らいバーテックスの近くでミカの名を叫ぶ。

しかしミカは地下から出てこなかった。

 

「ミカぁ!ミカぁ!何やってんだミカァ!」

ヴェアアアア!!

 

オルガの叫びは届かずまたもや砲弾の餌食となり希望の花を咲かせた。

 

俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!だからよ、止まるんじゃねぇぞ・・・。

 

「駄目、ここで友達を見捨てたら勇者じゃない!」

 

友奈は駆ける。

ただ友達を守りたい。

その一心で彼女は立ち向かう。

 

 

 

砲弾が友奈に直撃したように見えたが左腕から放たれたパンチで相殺する。

それは決意にも似た一撃。

左腕のみが勇者服に変わる。

ピンクを基調とし関節部分や手の甲にプロテクターがつけられる。

 

「嫌なんだ!誰かが傷つくこと、辛い思いをすること!」

 

続けて来る砲弾を右足、左足と蹴り飛ばしながら変身していく。

 

「みんながそんな思いをするくらいなら!私が、頑張る!

私は讃州中学勇者部ニ年、結城友奈!」

 

「俺は鉄華団団長、オルガイツカだぞ・・・」(空気をよんで小声)

 

「私は、勇者になる!」

 

全身に勇者服を身に纏い空を舞う。

向かうはバーテックス。

その姿はまるで鳥のようだった。

 

「うおぉぉぉ!!

勇者ぁ!パァァンチイィィ!」

 

友奈の気合の入った一撃はバーテックスの体を貫く。

これが彼女達の最初の反撃だった。

そしてそれに追い打ちをかけるように上空から砲弾がバーテックスに直撃する。

 

「わわっ!?何?」

 

「来たか・・・やっちまえぇ!ミカぁ!」

 

「慣性制御システム、スラスター全開」

 

バルバトスルプスに乗ったミカが上空から降って来る。

鉄華団の悪魔と恐れられてきたバルバトスは今、希望の星となる。

両手でソードメイスをバーテックスに叩きつけ、衝撃で地面が揺れる。

 

「す、すごい・・・」

 

「アレがミカさん?」

 

怯んでいた風と樹が見たミカはまさに鉄の華。

希望の華だった。

 

「ねえ、次はどうすればいい?オルガ?」

 

ふとミカはオルガと出会った幼少期の頃を思い浮かべる。

 

「決まってんだろ、行くんだよ。

ここじゃないどっか、俺たちの本当の居場所に」

 

「うん、行こう、俺達みんなで」




本文はそれなりに真面目ですが後書きで自分は自重しません

三日月オーガスゥ!
なぜ君が神樹の加護を得ずにバーテックスに対抗できたのか?
何故神樹の世界に入ってこれたのか?
なぜバルバトスを呼び出せたのか?
その答えはただ一つ!
三日月オーガスゥ!
君が世界(異世界オルガ系)で初めて勇者と呼ばれた男だからだぁぁぁぁ!
(エグゼイド感)

団長殿が神樹様の世界に入れた理由?
神樹様に選ばれなくとも団長殿は立派な勇者っす
仲間の為に命張って、団員に慕われて最高に粋がっててカッコいい、それがオルガイツカ。
自分達が求めた力っす!
ま、団長殿が止まらない限りその先に鉄華団はあるっす。
敗者でも鉄華団とマッキーは紛れもなく時代を、歴史を変えた英雄、勇者っすよ
(村田感)

余談
団長は勇者の命を守ってるし実質精霊
オルガ団長精霊説を自分は考えてるっす


下に行ったはずのミカがなぜ上空から来たかを解説する話を書くやる気が起きないので、箇条書きで説明します。

オルガ、ミカと叫ぶ

ミカ、バルバトス(第1形態)で出ようとするが、神樹の根っこが硬すぎて出られない。

そこに通りすがりの忍者(村田さん)登場

忍術でバルバトスを空に飛ばし、更にルプスへと換装させた

本文へ戻る

ライブ感重視で執筆してるからこんな訳の分からんことになるんだよ

この小説のおかしな点や矛盾点はきっと通りすがりの忍者(村田さん)がどうにかしてるんでしょ



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第五話 ろうたけたる思い (アニメ二話aパート)

投稿が遅くなって申し訳ない。
しかしEXVSでバエルとバルバトスとグシオンを星5までやり込んだ私は、その様な瑣末ごとで断罪される身ではないよ(ガリガリ君は使ってません)


「へぇ、まだ生きてる」

 

バーテックスを叩きつけて倒したかと思えたがまだ戦う余力を残していた。

更に友奈やミカがつけた傷が徐々に再生していく。

 

ミカはバルバトスの装備をソードメイスからツインメイスに持ち替え、叩いては再生、叩いては再生を繰り返していた。

 

「硬いな、まあチマチマやるか」

 

渋々とメイスを叩き続けるミカを見て友奈達はバーテックスを囲む。

 

「ミカ!聞こえる?今からそいつを封印する。そのまま叩き続けて!」

 

「分かった。・・・あれ、俺今楽しんでる?・・・ま、いいか。

どうせすぐに消える奴だ」

 

少し自分の気持ちの揺らぎニ気がついたが、ミカはあまり気にもとめなかった。

 

 

 

封印の儀式は三ステップ

一 敵を囲む

ニ 術式を唱える

三 御霊を破壊する

 

これを行うのには本来は敵の攻撃を防ぎながらやるのだが、今はバルバトスが押さえつけているため攻撃を受ける心配はない。

今から行われるのはニ番目のステップだ。

 

「えーと、

かくりよのおおかみ

あわれみたまい」

 

「おおかみ?狼・・・ルプスじゃねぇか」

(違います、正しくは大神です)

 

「さきみたま、くしみたま」

 

「大人しくしてろー!」

 

「何やってんだー!?」

 

友奈と樹は真面目に唱えていたのに対し風はバーテックスを大剣で叩き切っていた。

 

「お、お姉ちゃん!?」

 

「要は魂込めれば言葉はどうでもいいのよ」

 

「何!?・・・つまりは鉄血、いや熱血のオルフェンズじゃねぇか」

 

オルガの静かなツッコミの間にも封印は続く。

バーテックスの周りを七色の葉っぱが竜巻のように回り、バーテックスの頭部分から逆三角錐の物体が出てくる。

これは御霊、バーテックスの心臓部分でありこれを破壊する事で封印は完了する。

 

「なんか出てきた〜」

 

「御霊よ、あれを破壊すれば戦いは終わるわ!

くらえ、私の女子力を込めた渾身の一撃!」

 

風はバルバトスの腰部分を足場にして飛びバーテックスへと剣を振り下ろす。

しかしヒビ程度しか入らなかった。

 

「硬い!?」

 

「なら私が!」

 

次は友奈が仕掛ける。高く空を舞い蹴りを仕掛ける。

 

「勇者ぁぁ!キイッックゥゥゥ!」

 

蹴りは直撃し更にヒビを入れる。しかし破壊するまでには至らなかった。

更に足を滑らせた友奈が地面に落ちていく。

それを見かねたミカは両手のメイスを手放し友奈を手で受け止める。

 

「大丈夫?」

 

「あ、うん。ありがとうミカ」

 

「オルガ、次は俺どうすればいい?」

 

「潰せ」

 

友奈を下ろした後、スラスターを吹かし空中に浮いたバルバトスがルプスレクスに変わる。

ルプスよりも更に大きい超巨大メイスを振り下ろし、御霊をバラバラに破壊する。

メイスはその勢いのまま神樹の根っこに突き刺さった。

その時希望の花は咲かなかったが、誰かの悲鳴が聞こえたような気がした。

 

「終わったの、お姉ちゃん?」

 

「ええ、私達の勝利よ樹、友奈!」

 

「ミカを忘れんじゃねえぞ」

 

バーテックスを倒したことにより樹海化は解けオルガ達は元の位置へと戻った。

 

「戻ってきたのか、俺たちは?」

 

「あ、東郷さん?大丈夫?怪我してない?」

 

「う、うん。友奈ちゃんこそ大丈夫?」

 

「平気だよ、みんなと一緒だったから」

 

「・・・で、ミカ?あれは何?」

 

風は恐る恐るミカに質問を投げる。

 

「バルバトスのこと?」

 

「そうよ、あんなのが使えるなんて聞いてないわよ?」

 

「別に、普通でしょ」

 

「普通って・・・私の中の普通が壊れ始めるぅ〜」

 

「風先輩?」

 

「お姉ちゃん?」

 

風はミカの返事に頭を抱えている。それを心配して友奈達が支える。

 

「言ったはずだぜ?俺達鉄華団はあんなところで止まるわけにはいかねぇんだ。

それにミカのお陰でお前ら大した怪我もなかった。

細かい事は良いじゃねぇか」

 

「オルガ、腹減った」

 

「・・・よーし初勝利の祝いだ!お前らを飯連れてってやるよ!」

 

その後の飯はモンタークでたらふく食べさせました・・・

 

 

 

モンターク店内、友奈達とは別席にて・・・

「先程の戦闘、見事だったぞ。三日月オーガス」

 

「別に、普通でしょ」

 

「マクギリス?あんたバーテックスの事知ってんのか」

 

「ああ、私はこれでも大赦に勤めていてね、目的は君達とほぼ同じだ」

 

「あんた正気か?俺らは王になることを目指してるんだぞ?

あんたも王を目指してるのか?」

 

「言葉にすれば大した話でもない。

私が求めるのは純粋な力だけが輝きを放つ真実の世界だ。

 

バーテックス、あれは人類を滅ぼそうとするモビルアーマーに存在がよく似ている。

バーテックスはモビルアーマーと同じ我々人類の敵だ。

バーテックスを私が葬れば私はよりアグニカ・カイエルに近づける。

そうすれば私はこの世界の英雄となれる!

君達としてもバエルを持つ私と組むことに十分な利益はあると思うが?」

 

「・・・今回(鉄血本編)は不利益を呼び込む話じゃあなさそうだな。

分かった。鉄華団と勇者部はあんたの話に乗ってやる」

 

「では、共に駆け上がろう」

 

オルガとマクギリスが手を組むのを見たミカが割り込むようにお代わりを要求した

 

「チョコ、おかわり」

 

「准将だ!何度言えば分かるのです?三日月オーガス」

 

「めんどくさいなぁ・・・」

 

「いい、石動。私の料理が気に入ったか三日月オーガス?」

 

「うん。アトラの作った料理よりはちょっと下だけど」

 

「アトラか、ちゃんと生き延びたのか?ミカ?」

 

「うん、俺との子供も大きくなってると思う」

 

「は?ミカお前・・・何やって・・・

キュピ(服を掴む音)

 

「普通でしょ?」

 

「え?・・・」

 

「普通でしょ?(威圧)」

 

「ああ」(諦め)

 

オルガはこれ以上踏み込むと希望の花を咲かせかねないと思いそれ以上の追求はやめた。

 

 

次の日・・・

 

 

放課後の勇者部部室にて・・

 

「さて、昨日は色々あったけど私達勇者部の本当の活動目的について話すわよ」

 

風は黒板にチョークで絵を書いた後、これから講義始めるように伊達眼鏡をかける。

 

「戦い方はアプリで見たりすれば分かると思うけど、今は何故戦うのかってのを説明するわね」

 

そう言いつつ風は黒板に書かれていたヘナチョコな顔をした物を指す。

風曰くバーテックスの事らしい。

 

「あ、それ俺がやったやつだったんだ」

 

「センスがねえなぁ、なぁミカ」

 

「そうだね」

 

「そこ、静かにしなさい」

 

「すみませんでした」

 

オルガとミカの茶化しを注意しつつ話は進んで行く。

 

「人類の敵が壁を超えてあっち側から12体攻めてくるのが神樹様のお告げで分かったわ」

 

「あんなのがまだ11体もいやがるのか」

 

「一体一体プチプチ潰してくしかないか」

 

「そうね、そして目的は神樹様の破壊、以前にも襲ってきたらしいんだけどその時は追い返すので精一杯だったみたい。

そこで大赦が作ったのが神樹様の力を借りて勇者に変身してバーテックスに対抗できるシステム。

人智を超えた力にはこっちも人智を超えた力ってわけね」

 

オルガはその言葉を聞いてダインスレイブを思い出してしまった。ナノラミネートアーマーやガンダムフレームを軽々しく蹴散らしてきたあの杭はまさに人智を超えた力だ。

 

「注意事項として樹海が何かしらのダメージを受けると現実世界に災いとして悪い影響が出るって話よ。実際あったわけだけど・・・」

 

「何かあったの?」

 

「詳しい話は聞いてないけど隣町で原因不明の爆発事故があったらしいわ。

規模と場所から考えて恐らくミカがやったものだって。

気をつけてね?アンタの大きさじゃあ私達より被害でかいんだから」

 

「分かった、やれるだけやるよ」

 

「・・・その勇者部のメンバーは先輩が意図的に集めたメンバーだった、という事ですか?」

 

「うん、そうだよ。勇者としての適正値が高い人は分かってたから。まあミカは先生が顧問になった時なし崩し的に入った訳だけどね」

 

東郷と風の会話はどこかぎこちないものだった。それは一人だけ戦いに参加していなかった東郷自身の心から生まれるものだ。

 

「でも変ね、大赦から聞いた話だと樹海に行けるのは勇者だけって聞いたし、一応ミカの適正も調べてもらったけどゼロだったし・・・先生、何か心当たりあります?」

 

「え?・・・散々考えたけど正直心当たりはねぇ。けど勇者に選ばれちまった以上

俺たちにはもう戻る場所はねぇ。

けどたどりつく場所ならある。たどりつくぞ、俺たちみんなで!」

 

「辿り着く場所?そこってどんなところですか?」

 

「そりゃあバーテックスなんていう敵もいなくて、みんなで馬鹿騒ぎ出来るような場所だ。

俺達が立ち止まらない限りそこに行けるはずだ。

それで奴らはいつ来るんだ?」

 

「それは分からないの。明日かもしれないし一週間後かもしれない。そう遠くはない筈よ」

 

「何だよ・・・神樹って神様でも万能じゃあねぇのか」

 

「何でもっと早く勇者部本当の意味を教えてくれなかったんですか?

友奈ちゃんも樹ちゃんも死ぬかもしれなかったんですよ?」

 

「・・・ごめん、でもどのチームが神樹様に選ばれるかは敵が来るまで分からなかったの。

別の地区の学校でも私みたいに大赦から派遣されて候補生を集めているの。

だから神樹様に選ばれて戦う確率の方がよっぽど低くくてね・・・」

 

「正直ピント来ませんね。

俺ら以外にも候補がいるなら何で全員で戦えねぇんだ?」

 

「神樹様にも力を与えられる人数には限りがあるの。

 

友奈の頭に乗ってる精霊達はいわば神樹様の体の一部。

精霊は確かに強力な力だけど神樹様の力を大きく消費しているわ。

だから勇者になれる人数は限られてるの」

 

「・・・こんな大事なこと、ずっと黙っていたんですか・・・」

 

東郷は風を見限ったのか車椅子を動かし部室の外へと出た。

 

「東郷、みんな・・・ごめん」

 

謝って済む問題ではないと風自身も分かっていた。しかし自分の罪悪感を少しでも和らげたかったからその言葉が出た。

 

友奈は東郷の辛そうな表情を見て少しでも力になりたいと思い東郷を追った。

 

「流石に友奈だけってわけにもいかねぇな。行くぞミカ」

 

オルガとミカも団員・・・ではなく部員を励ますため東郷の元へ向かった。

 

 

 

 

廊下で難しい顔をしていた東郷を最初に見つけたのは友奈だ。

東郷が自分の代わりに怒ってくれた事のお礼をしたくて紙パックのお茶を渡した。

 

「東郷さん、はいこれ私からの奢り」

 

「え?でもそんな理由なんて・・・」

 

「ううんあるよ。だって東郷さん、私の為に怒ってくれたもん。

ありがとうね」

 

「あ、なんだか友奈ちゃんが眩しい・・・」

 

東郷は友奈が見せた笑顔に心の靄が少し晴れたような表情を見せる。

 

「どうして?」

 

「えっとね、私昨日の夜ずっとモヤモヤしてたの。みんなが勇者として戦ってたのに私だけ戦えないで足手纏いに・・・

友奈ちゃんはみんなの危機に変身したのに、国が大変な時なのに・・・私は勇者でありながら敵前逃亡・・・」

 

「わ〜〜!そんなくらい顔しちゃダ〜メ〜!」

 

「そうだ、友奈の言う通りだそ?」

 

「先生、ミカさん・・・」

 

会話にオルガとミカも入ってきた。

 

「先生やミカさんは私の事足手纏いとか思ってますよね・・・

敵に怯えて勝てないと思って戦わない私なんて・・・」

 

「勝ち目がないと思って戦わねぇか・・・。俺も昔やったよ」

 

オルガは昔を思い出し、自分の反省を踏まえつつ東郷を諭す。

 

「え?」

 

「勝ち目の無い戦い、負け戦から逃げる事は俺もやったよ。

協力関係にあった奴を裏切ったり、俺の命を投げ捨ててでも鉄華団の団員を、家族を守ろうとしたさ。

結局でっかい嘘ついたまま俺は止まっちまった。

だから俺はもうあんな思いだけはしたくねぇ。

後悔したくねぇ

・・・俺はお前らの勇者っていう力を信じる。

お前らが止まらない限り、その先に俺が連れってやるよ!だからよ、止まるんじゃねえぞ」

 

「先生・・・?先生はどうしてそんな事が言えるんですか?死ぬのが怖く無いんですか?」

 

「死か?全くねぇ!って言ったら嘘になっちまうな。

けどさっきも言ったように後悔する道だけは選びたくねぇんだ。

例え命尽きようとな・・・

だからよぉ、お前らは後悔する道だけは選ぶんじゃねぇぞ・・・」

 

「後悔しない道・・・私が取るべき道は・・・」

 

東郷が答えを出そうとしたその時だった。樹海化警報のアラームが鳴った。

樹海化が始まりオルガは必死の抵抗を見せ希望の花を咲かせなかった。

 

 

 

 

 

 




マクギリスが教官で
三好と楠の訓練シーン書こうと思いましたが時間がなかったのでかけませんでした。


余談
鉄血勢はストーリーに合わせてコメディ分とシリアス分を分けて書いてますが、もっとコメディ風とにしろと言われればそうします

今回のオルガは自分で書いてて違うキャラじゃないかと思ってます
多分スパロボUXやりながら書いていたので、ファフナーキャラの飛鳥真さんの影響受けてたと思います


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第六話 東郷美森の決意 (アニメ二話bパート)

タカキも頑張ってるし俺もガンバラナイト


再び樹海にて現れたバーテックスは三体だった

 

スコーピオン

サジタリアス

キャンサー

 

スコーピオンは蠍の尻尾を模したバーテックスである

胴体下に毒液を貯めた透明なタンクを抱えていて、長い尾によるなぎ払いや刺突を得意とする。

 

サジタリアス

射手座の名の通り、矢による攻撃を得意とし二つの口が付いている。

修正テープを縦にした様な形に顔が付いていて、この一体は他二対よりも後ろにいる

 

キャンサー

蟹の形を凝縮した硬い装甲を持つ顔と、複数の赤い反射板を持つバーテックスである。

 

「三体か、昨日よりも激戦になりそうだな。

だが俺達にやれねぇ訳はねぇ。

行くぞお前ら!」

 

「じゃあバルバトス、出るよ。

俺が先行するから適当についてきて、無理はしなくていいから」

 

バルバトスは先行してスコーピオンの方へ向かう

 

「待っててね東郷さん、倒してくる」

 

「待って友奈ちゃん、私も・・・」

 

その時東郷はふと昨日の戦いを思い出す。

その時の恐怖が体に染み付いていて動きたくても体が動かなかった。

 

「大丈夫だよ東郷さん、行ってくるね」

 

流されるまま友奈達はバルバトスの後を追った。

オルガは何か嫌な予感を感じ取り東郷の側にいた。

 

「怖いのか?」

 

オルガの問いに東郷は無言で頷く。

 

「戦いってのは本来怖いもんだ。それでも俺達鉄華団が戦うのは生き残る為だ」

 

「生き残る・・・為?」

 

「ああ、ただ抗い続け、戦い続け、此処じゃない何処か、もっといい場所に辿り着く為に俺はここにいる。

俺がミカやお前らにできることは迷わねぇ事だ。だからよ、止まるんじゃねぇぞ」

 

「先生・・・私は・・・

 

東郷が何かを言い出そうとした時だった。サジタリアスの上口からダインスレイブによく似た矢が風に向かって放たれた。

しかしその矢は謎の力が働いたようにオルガへと軌道を変える。

オルガは咄嗟に東郷を庇い、その時希望の花が咲いた。

 

俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!だからよ、止まるんじゃねぇぞ・・・。

 

「先生?先生!?」

 

「こんくらいなんて事はねぇ・・・」

 

オルガはいつもの様に復活した。

そして東郷は自分の決意を新たにする。

 

「先生、私、戦います!国を、みんなを守る為に!」

 

東郷の決意に呼応するように精霊が三体現れる。

その後車椅子から浮かせる様に周りから見えない糸が現れる。

縛り付けられる様な感覚と力が溢れる感覚が入れ混じり東郷は勇者へと姿を変える。

スカイブルーを基調とした勇者服を纏い、拳銃を手にする。

元々長めだった髪は更に伸び、膝まで掛かるロングヘアーとなる

足は動かないままだったが、背中にある4本のリボンが地につき東郷の移動を支えている。

 

リボンを使って空を駆ける

 

その姿はまるで天使の様だった。

その姿を見たオルガは東郷のあまりの色気と魅力に体が耐えられず、鼻血を出して仰向け空に左指を掲げながら希望の花を咲かせていた。

 

俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!だからよ、止まるんじゃねぇぞ・・・。

 

その顔はどこか満足げなものだった。

 

 

その頃友奈達は・・・

 

「アイツを止めなきゃ!」

 

友奈は東郷やオルガが無事なのを遠目で確認した後サジタリアスの方へ向かった。

サジタリアスは迎撃の為に下口から細かな矢の雨を降らせるが友奈は難なく躱す。

しかしその矢はキャンサーの反射板を使って友奈を再び襲った。

 

「友奈ちゃん!危ない!」

 

東郷は拳銃をまるでマシンガンの様に乱射し矢の雨を相殺させた。

 

「東郷さん!?」

 

「友奈ちゃん、私も戦うわ。

みんなを守る為に!」

 

 

 

その頃ミカ(バルバトス)はスコーピオンの攻撃を躱しつつ攻撃を加えていく。

しかしスコーピオンも絶妙なタイミングでミカの攻撃を防いでいく。

 

「しつこいな、なら・・・」

 

ミカはあえて攻撃をくらい、バルバトスの装甲の一部を犠牲にしてスコーピオンの尾を捕まえる。

 

「あっぶねぇ・・・なぁ!」

 

掴んだスコーピオンの尾をキャンサーへと放り投げる。その攻撃が二体に効いたのか御霊が飛び出てくる。

 

「ナイスよ、ミカ!」

 

「ところで何これ?エビ?」

 

「サソリでしょ?」

 

「どっちでもいいと思うよお姉ちゃん」

 

ミカと風達の会話してる間に友奈と東郷が合流する。

 

「風先輩、その二体は任せます。私が遠くの奴を狙撃します」

 

「東郷?戦ってくれるの?」

 

東郷は頷く。その顔はどこか自身に溢れたものだった。

 

「援護は任せてください」

 

「・・・あれ?なんかバルバトスが動かなくなった」

 

バルバトスは先程の攻撃で操縦系統に異常が出たのか動けなくなった。しかし今の彼らにそのようなハンデは関係ないものだった。

 

東郷は高い丘にリボンを使って登り武器をスナイパーライフルに変える。それに応じて現れる精霊も変わる。

仰向けに座りライフルの先をサジタリアスに向ける。

 

「コイツが先生を、みんなを苦しめた」

 

二、三発当てた辺りからサジタリアスが東郷に気づき、反撃の為大きい矢を放つ。

その矢を東郷はライフルの弾とで相殺させる。

 

 

 

 

その問答の最中友奈達は二体のバーテックスの封印に入っていた。

スコーピオンの御霊は攻撃に反応して最小の動きで躱す。

対抗する為風は自らの大剣を更に巨大化させる

 

「点がダメなら、面で押しつぶす!」

 

御霊は少しだけ動いて躱す特性があった。

それ故に広範囲の攻撃は避けきれず御霊破壊された。

 

「討ち取ったりー」

 

次にキャンサーの御霊は増殖を始めた。無数の御霊を一つ一つ叩いていくのは時間がかかりすぎる。

それに対し樹は自らの武器である糸を御霊全てに巻きつける

 

「まとめて〜やっつける!」

 

糸により逃げ場をなくしたまま圧縮された御霊は砕け散った。

 

その光景を影から見ていた謎の仮面男は「天使だ」と独り言を呟いていた。

更にその隣にいた黒いスーツを纏った忍者は軽く拍手を披露していた。

 

 

 

サジタリアスの方も東郷の攻撃により御霊を出していた。

しかし御霊は高速で辺りを縦横無尽に周り、とても狙い撃てるようなものではなかった。

 

「オルガ」

 

キュピ

ダン!

 

「ああ分かったよ!止めりゃあいいんだろ!」

 

バルバトスから降りたミカはオルガと合流していた。

ミカは無言の圧力でなんとかしろと言っているようだった。

 

オルガは自暴自棄気味にモビルワーカーで突っ込むが止められる筈もなく弾き飛ばされ希望の花を咲かせた。

 

俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!だからよ、止まるんじゃねぇぞ・・・。

 

「手こずってるようっすね。団長殿」

 

「ん、くっ・・・村田じゃねぇか」

 

「そうっす、忍者村田っす。

手こずってる団長殿にタカキ君からプレゼント預かってきたっす」

 

「タカキが!?あいつもこっちに来てるのか?」

 

「ちょっと大赦で頑張ってもらってるっすよ。で、これが例のプレゼントっす」

 

村田が指をパチンと鳴らすと上空から白い獅電が降りてくる。

 

「俺の獅電じゃねぇか」

 

「そうっすよ、急いで整備済ませて持って来たっすよ。じゃ.自分他の機体達の整備があるっすからこれにて!」

 

一方的に言い放ち村田は姿を消した。

オルガにとって獅電が手に入ったのは嬉しい誤算だった。

早速オルガは搭乗し獅電の体全体を使って御霊の動きを止める。

 

キュイイインと鉄同士が擦れるような音を奏でながらオルガは必死に声を出す。

 

「東郷!撃て!」

 

「東郷美森・・・目標を狙い撃つ!」

 

動きの止まった御霊を撃ち抜くのは東郷にとって朝飯前だ。

御霊は天に帰り、バーテックスは砂のように消えていく。

 

「状況終了、良かったみんな無事で」

 

世界は花びらを散らせ日常へと友奈達を返す。

気がついた時には学校の屋上にいた。

 

「東郷さん!すごいすごい!」

 

「ありがとう、でも本当に凄いのは先生よ」

 

「え?いや俺は・・別に・・・」

 

東郷の満面の笑顔に少々オルガは照れくさい表情になる。

 

「先生が私の事を守ってくれなかったら私はきっとここにはいません。

先生は私に戦う勇気をくれたんです。

ありがとうございます」

 

「・・・ああ」

 

「オルガ、腹減った。飯連れてって」

 

「よーし今日は三体もやったんだ!俺の奢りだ。

みんな遠慮しねぇで思いっ切り楽しめよ!」

 

その後モンタークへと向かいオルガ達は豪遊しました

 

結局お金が足りず村田から借金することになりましたとさ

 

ついでにバルバトスの修理と改修もお願いしましたとさ

 

 

 

 

その頃・・・とある人物が銀行で頭を悩ませていた

「やっぱりおかしい・・・誰かが俺の稼ぎの一部を取ってる?

誰だ?・・・村田さんか!?」

 

続く

 

 




サジタリアスの倒し方は本編と同じようにして
「凄えよ東郷は」
にする予定だったのですがそうすると獅電を渡せなくなる為変更しました

小ネタとしてはガンダムOOのロックオンの台詞を入れてみました
この世界もガンダムOOも定義上は西暦でしたね
なお、武力介入する相手がいない模様

あと最後の人物についてですが彼はラグナルクの旅の主人公です
借金持ちの大金持ちという矛盾した二つ名を持つ学生です
なおオルガや友奈達と絡むことはおそらくありません

オルガ勇者の世界の大赦は赦される気あるんですかね?

余談
英雄や勇者的な活躍をしてバーテックスに対抗でき、鉄血やゆゆゆ勢に絡めやすいキャラっていますかね?
出すかどうかは分かりませんが参考にはします
一人目星をつけていますが「夜の君」チョコとか樹ちゃんとかの絡みあるし声がジュリエッタだからその辺りから関連付けやすそう(出せるとは言ってない)




バーテックスを倒した後の夜・・・

「次のニュースです。
窃盗犯の疑いがあるブルワーズの社長、クダル・カデル容疑者が昨日未明、爆発事故により死亡しました。

クダル・カデル容疑者は事務所にいた際事務所が謎の爆発事故を起こし、警察と大赦は自殺と事件、両方の面から捜査を続けていく方針です」

風「神樹様の根っこはなるべく傷つけないでね。現実世界に戻った時悪い影響が出るから」
(回想)

ミカ「俺達の戦いの影響がこんなところに出てるんだ。
ま、いいか
コイツは死んでいいやつだから」


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第七話 目覚めの時(アニメ三話aパートその1)

今回は全体的に悪ふざけが過ぎました

鉄血やゆゆゆと何の関係もない
「鉄のラインバレル」という作品からゲストで二人出たり
バルバトスがバルバトスになったり
ゆゆゆのキャラがガンダムに乗ったりと色々と暴走してました

すみませんでした

今回はマッキーを主軸として書いてみました
バエルは大赦によって魔改造されている為鉄血本編にはない機能や技が組み込まれています
尚この世界ではバエルの元に集います



新キャラ?紹介

三好花凜(みよしかりん)
五人目の勇者
赤がトレードマークで二刀流の勇者である(バエルだ!)
初登場時に見た人は最近子供向けアニメに出た「アンタバカぁ?」で有名な人を思い出したに違いない
(正直ゆゆゆ勢で一番好きなキャラです)

三好春信(みよしはるのぶ)
花凜の兄、一言で言えば完璧超人である(公式設定)。
が、この作品ではそうでもない
本編には登場していないが名前だけは花凜から出されている
(その為圧倒的に描写が足りておらずこの作品ではほぼオリキャラです)
若くして大赦の重要なポストに着くエリートであり、そんな優秀な兄に花凜はコンプレックスを抱いている
後デスティニーガンダムに乗ったりする

正義の味方を目指す少年(浩一君)
鉄のラインバレルの主人公
正義という言葉につられて参戦した


ナタクのファクター(ごひ)
ラインバレルの敵組織
加藤機関という組織に所属する五番隊隊長。
龍をモチーフにしたガンダムっぽい機体に乗る

バエル
厄祭戦(平成時代)で活躍した勇者(モビルスーツ)
鉄血では集わなかったがこの世界ではれっきとした勇者であり、大赦では慕われている
三百年間動かされなかったのは阿頼耶識技術が衰退していたため、動かせる人物がいなかったからである
(さっさと厄祭戦映像化しろ)

バルバトス
「英雄」を過剰に敵視し、その命を付け狙う苛烈で残忍な狂戦士・・・ではなく鉄華団の悪魔。
この作品では途中で意思が生まれ、強者と戦う事を目的とする。
勇者達は眼中にすらなく、バーテックスをボコボコにする事を楽しみにしている

村田
自分を忍者と呼称し、他作品との繋がりを持たせる為のオリキャラである。
実は・・・

タカキ
いつも頑張っている元鉄華団の団員

明弘・アルトランド
鉄華団筋肉隊隊長
まともさを捨てて戦うミカに次ぐ鉄華団の戦力である
ガンダムグシオンリベイクフルシティ(以降グシオン)に乗りパワー重視の戦い方をする
主な仕事は叫びながら相手をペンチで潰すことである

ノルバ・シノ
鉄華団流星隊隊長
自分の機体をピンクに塗り、流星号と名付ける人
後おっぱいを追い求める男である
ガンダムフラウロス(四代目流星号)に乗り、主な仕事はギャラクシーキャノンという強力な砲撃をする事である

仲良し四人組
「バエルだ!」
「アグニカカイエルの魂!」
と言うだけの人達
今作は大赦に就職した

クダル・カデル
死んでいい奴

村田さんからお金を奪われた人
なろうサイトの小説「ラグナルクの旅」の主人公
16歳、学生です
このサイトの主人公のくせに
・チート持ってない
・異世界転生?何それ食えるのか?
・やたら飯に拘る(特にチョコレートを好む)
・大企業社長の息子だが、自身のミスで借金を背負っている
など不遇な面が強めである
馬鹿正直な性格であり、よくからかわれる男である
当作品の出番は不遇関連しかありません
(ぶっちゃけいらない)



力が必要だった

友と呼べる者もなく親の愛情も知らなかった

力なき者は地べたを這い、力ある者が全てを手に入れる

それが私に見えていた世界の形

それはあの男に拾われたあとも変わらなかった

 

変わったことがあるといえば力にはさまざまな種類があると知った

 

俺はファリド家の跡取りに納まった

しかしそれによって俺の生活が特に変わることもなかった

俺にはまだ力が必要だった

そして見つけた

 

今この世界で最高の力の象徴・・・権力、気力、威力、実力、活力、勢力、神力、そして暴力

全ての力を束ねる存在

アグニカ・カイエルの魂

バエル

真理を・・・

 

三百年だ、もう休暇は充分だろう

厄祭戦、三百年前の勇者

乃木若葉

高嶋友奈

土居球子

伊予島杏

アグニカ・カイエル

そして歴史に消えた勇者

郡千景

目覚めの時だ

 

 

 

あれから一月が過ぎた

 

六月の初めに入り梅雨に入りかけた頃にバーテックスは現れた

 

「久しぶりの戦闘だな

・・・おい村田!バルバトスはまだ動かせねぇのか?」

 

オルガは修理に出していたバルバトスが未だミカの元にないことに怒りの電話をかけた。

 

「あ、団長殿?今それどころじゃないっす!バルバトスが、バルバトスが・・・

 

「ぶるるあぁぁぁぁ!!!屑が!術に頼る雑魚どもが!」

 

電話越しに厳つい声が響いてきてオルガはスマホから少し距離を離す。

 

「な、何だ?」

 

「ザ、ザザザ・・・こうた・・・

 

「男に後退の二文字はねぇ!

絶望のシリングフォール!」

 

爆発音がスピーカーに響き渡りスマホ本体すら震える。

30秒ほど経った後物音が小さく聴こえ、同時に村田の声も聞こえ始めた。

 

「バルバトスはまともに動かせる状況じゃないっすね。

自分達が代わりに行くっす

それまでやられるんじゃないっすよ!」

 

そう言い村田は電話を切る。

一つため息をつき村田は目の前に立ちはだかる悪魔を見上げる。

 

「どうしてこんな事に・・・なんて自分らしくないっすね。

信っち!後は任せるっすよ」

 

信っちと呼ばれた青年はこの悪魔に対しても臆せずいた。

それは無謀でも勇気でもなく自信の表れだ。

彼は目の前の悪魔に対するようにトリコロール色の悪魔的な目つきをした機体に乗り込む。

 

「デスティニー、力を貸してくれ。あの悪魔を止める力を!」

 

 

 

「バルバトスは?」

 

「済まねぇ、この戦いには出れそうにねぇ」

 

「仕方ないわね、ミカの分も私達が頑張るわよ!」

 

「「おー!!」」

 

「ではまずは私が・・・

 

東郷がスナイパーライフルを構えようとしたその時だった。

上空から10メートル近い剣がバーテックスの体に突き刺さる

その衝撃は遠くに離れていた友奈達の元にも届いた。

 

「な、何だ!?」

 

「風先輩、あれ!」

 

最初にその剣の持ち主に気づいたのは友奈だった。

空に浮かぶ青と白の機体。

堂々とした振る舞いはまさに英雄の貫禄だった

 

「聞け!今、三百年の眠りからマクギリス・ファリドの元にバエルは蘇った!」

 

「な、何よアレ?」

 

風の問いに答えるように後ろに仮面をつけた四人組が現れた。

 

「バエルだ!」

 

「アグニカカイエルの魂!」

 

その声に呼応し三機のロボットが現れる。

 

「そうっす、大赦の正義は我々にあるっす!」

 

「正義、正義は俺が決める!弱い奴が戦うな!」

 

「俺は正義の味方になるんだ、コイツはナイスな展開じゃないか!」

 

三機は各々のバーテックスに追撃を仕掛ける。

しかし後に続いた二機の攻撃が重なりお互いの邪魔しあう形になった

 

「貴様!俺の邪魔をするな!」

 

「邪魔はあんただろ!?」

 

「俺に敵対するか?ならば貴様は悪だ!」

 

「いいぜやってやるよ!オーバーライド・・・」

 

二機は喧嘩を始める

鬼のような黒に染まる機体と龍を模した腕が爪のようになっている機体の戦いはバーテックスそっちのけで苛烈を極める

 

「ちょ、ちょっと!?二人とも喧嘩はやめるっす」

 

「「引っ込んでろ!」」

 

二機をなだめるように介入した村田の機体は木っ端微塵爆発した。

しかし村田は忍者なので無事だった。

 

「圧縮転送フィールド、こいつでぇ!!」

 

鬼の機体の腕部から白い光が放たれる。それを阻止しようと龍は発射機構を潰そうとした。

そのタイミングはほぼ同時であり、結果お互いの機体は光に消えた。

 

 

 

「何だったんだありゃ?ガンダムフレームか?」

 

「違うよ」

 

「何だよ・・・」

 

龍の方はガンダムのようにも見えたがミカの言い分だと違うようだ

 

「と、とにかく私達も行くわよ」

 

風が号ま令をかけたがバエルが進路を塞ぐように動く。

 

「その必要はないよ、そこで見ているといい」

 

バエルは剣を抜きバーテックスへと突撃する

 

「見せてやろう!純粋な力だけが見せる本物の暴力を!」

 

バエルは双剣を切っては突き刺す

二本だけかと思いきやバエルが手をかざすと剣がどこからともなく現れ

斬り、刺しを繰り返す

 

16本突き刺しバーテックスの体はボロボロになる。

 

「これで更に扉は開く・・・」

 

「何一人で満足してるのよ。封印するわよ」

 

バエルの迫力に目を奪われていたが、その影にいた赤い服の勇者が呆れるようにバーテックスの足元に剣を投げる。

 

「封印開始!見せてやるわ、私の力!」

 

本来複数人でやる封印の儀を彼女は一人でやろうとしていた。

 

「一人でやろうってのか?」

 

バーテックスは人間の舌に見える部分が上に引っ張られ御霊が出てくる。

御霊はタダではやられまいと目くらましのガスを噴射する。

範囲は広くオルガ達の元にもすぐに届いた。

 

その時オルガは色から毒だと思い込んで吸ってしまった為希望の花が咲いた

 

俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!だからよ、止まるんじゃねぇぞ・・・。

 

 

 

しかし赤服の勇者はそんなガスなどお構いなしと言わんばかりに御霊を双剣で切り裂く

 

「殲滅・・・」

 

「諸行無常」

 

彼女の精霊である○○が語る。

諸行無常

現実の世界のあらゆる事物は,種々の直接的・間接的原因や条件によってつくりだされたもので,絶えず変化し続け,決して永遠のものではないということ。

 

正直ピンと来ませんね(オルガ感)

 

 

 

「見事な封印の儀だった。夏凜。

君の勇者としての活躍祝いとして300アグニカポイントを贈呈しよう」

 

「別にいらないわよ」

 

「バエルを持つ私に背くとは・・・」

 

「それより誰何だよそいつは?」

 

「ああ、彼女は・・・残念だが、どうやら時間のようだ」

 

マクギリスの発言通り樹海化は溶けかけていた。激しい風と花びらが舞い視界を埋めつくそうとしていた。

オルガはそれに負けじとマクギリスの腕を掴もうとする。

 

「待ってくれ!」

 

しかしオルガは風に足を転ばせ倒れこむ。

その時オルガの左手には感じたことのない感触があった。

しかしその感触はすぐに痛みへと変わる。

 

「あっ、な、な、この腐れ外道ぉぉぉ!!!」

 

オルガの左手はちょうど花凜の胸の位置にあった。

花凜に倒れこむように倒れたオルガは花凜からビンタを頬に喰らう。

 

パンパンパン

 

「何をやってるんだ・・・」

 

ビンタだけでも希望の花は咲く威力だったが、ミカはオルガのラッキースケベを許さず銃弾を浴びせた。

 

だからよぉ止まるんじゃねぇぞ・・・

 

「コイツは死んでいいオルガだから」




後書き(反省会)

シノ「嘘だろ?団長!?
団長言ってたじゃねぇか!
『死ぬときはでっけぇおっぱいに埋もれて死にてぇ』って!
おっぱいは柔らけぇんだぞ?
あんなまな板で満足なのかよぉ!?団長!?」

オルガ「言ってねぇよ!」

村田「けど事故でも火星の道程王から遠ざかったのは嬉しかったっすよね?」

オルガ「なっ、俺は・・・別に・・・」

村田「正直に言っていいっすよ?男同士の固い、固ーい約束で秘密にしとくっす
今ならミカっちもいないから撃たれないっすよ?」

オルガ「・・・正直何が起きたかあの時は分からなかった。
けど今思い起こすと・・・

村田「嬉しかったっすよね?」

オルガ「・・・ああ」

村田「聞いたっすか?信っち、撃たれても悔いは無いみたいっすよ」(掌返し)

オルガ「は?」

オルガの後ろにはいつのまにか一人の男性が立っていた。

春信「オルガさん、妹が世話になったケジメ・・・つけさせてもらいます」

オルガ「誰なんだよアンタ?」

春信「三好春信、花凜の兄です。貴方は花凜に卑猥な行為に至った。落とし前をつけさせてもらいます」

春信はデスティニーを呼びだしす
その間僅か1秒だった

オルガ「ままま待ってくれ!」

オルガも遅れて獅電に乗り込んだ。

春信「乗りましたか、では出し惜しみはしません、全力で行きます」

キラキラバシュゥゥゥン!
その時春信の心の種が割れた。

デスティニーの翼から紫の光が
溢れ出す。それはスラスターの出力が異常に高いのを意味していた。
モビルアーマーを倒した時のミカに匹敵する速度と、大剣「アロンタイド」が獅電を切り裂く

オルガ「は?ウェァァァァ!!」

阿頼耶識もない獅電では到底反応できるはずもなく機体は爆発四散、オルガには華を咲かせた

俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!だからよ、止まるんじゃねぇぞ・・・。




村田「満足したっすか、信っち?」

春信「はい
しかしもう一人ケジメをつけなければならない人が出てしまいました。
・・・シノさん、花凜のことまな板などと言った失礼のケジメ、つけさせてもら・・・

シノ「ギャラクシーキャノン!発射!」

言い終える前にシノはフラウロスを変形させギャラクシーキャノンを発射した。
しかしVPS装甲を備えたデスティニーには致命打にならず撃破には至らなかった。
光の翼が残像を作り出しフラウロスを翻弄、一気に距離を詰める。
そのまま左手でフラウロスの頭を取る。

シノ「くっ・・・!」

春信「安心してください、ガンダムファイト国際条約第2条に基づき、コックピットは狙いません。
そしてガンダムファイト国際条約第一条「頭部を破壊された者は失格となる」

デスティニーの掌にあるビーム砲「パルマフィオキーナ」がフラウロスの頭部を破壊。
その威力はシノはグレイズアインに撃破された時の光景を思い出させる威力だった。

春信「ヒートエンド!」
(通り抜けフープ〜)


ここをどんな世界にしたいと思う?

この広い世界友達が他にいないのは寂しいから、ペットを作ってもらう

腑、符、布、附、負〜

ここに僕たちのパラダイスを作ろう〜

涙〜で滲んでこの空を見上げる度〜

「アンタ達は、一体なんなんだー!」

















あ、そうだ

ラインバレルのキャラが二人いると言ったな、あれは嘘だ
一人はガンダムwのキャラだ




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風格ある振る舞い?

正直内容考えるのは楽しいけど書くのめんどい

ってか誰もオルガの死にツッコミ入れねぇ・・・
まぁ異世界オルガではよくあることなんですけどね
後アグニカポイントって何だよ



「すみませんでした!俺に出来る事なら何でもする!

命だって好きに使っていい!

気がすむなら俺ならどうにでも殺してくれ!

何度でも殺してくれ!

首を刎ねてそこら中に晒してくれてもいい!

三架橋の下の財田川に沈めてくれてもいい!

有明浜の砂に埋めてくれてもいい!

勇者部のあいつらだけは許してやってくれ!」

 

「なっ・・・え?え?何でアンタ生きてんの!?」

 

翌日、赤服の勇者「三好花凜」が転校してきて勇者部へと訪れた。

昨日のいざこざは水に流すとまではいかなくても、花凜はそこまで気にしてなかった。

銃弾を浴び、もう会うことはないと思っていたからだ。

想定外の出来事に花凜は色々と困惑していた。

 

花凜や部員達が見たのはオルガの土下座姿だった。

 

「本当に・・・すみませんでした!」

 

「煩いなぁ・・・宿題に集中できないでしょ?」

 

パンパンパン

 

俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!だからよ、止まるんじゃねぇぞ・・・。

 

その後何事も無かったようにオルガは立ち上がり近くの椅子に座り込んだ。

友奈や東郷、風、樹はいつもの光景だったのでミカの行動にそこまで気は止めなかった。

 

「とにかく俺はアンタに相応の詫びを入れなきゃならねぇ。

そうしなきゃあ筋が通らねぇ」

 

「じゃ、じゃあ詫びで一つ答えて。

銃弾に打たれた筈のアンタが何で平気な顔してここにいるの?」

 

「は?俺は、鉄華団団長オルガ・イツカだぞ、あれくらいなんてこたぁねぇ」

 

「ちょっと真面目に聞いてるんだから真面目に答えなさいよ!」

 

「アンタ何言ってるの?オルガなら普通でしょ」

 

「普通って・・・」

 

「ああ、うんうん。私も先月同じような顔してたわね」

 

花凜の困惑した顔に風は、初めてバーテックスと戦った後のミカの発言を思い出した。

友奈や東郷、樹も苦笑いを浮かべていた。

花凜は常識が通用しないオルガとミカに呆れ調子を崩していた。

 

 

 

「もういいわよ。昨日の事も、今の問答も・・・

改めて自己紹介するわ

私は三好花凜、大赦で訓練を重ねた勇者の中の勇者。要はエリートよ」

 

「俺は、鉄華団団長オル・・・

 

「転入生の振りなんて面倒だったけど私が来たからにはもう安心ね。完全勝利よ!」

 

「どうして今まで来てくれなかったのですか?」

 

「私だってすぐ出撃したかったわよ

けど大赦は二重三重に対策を練ってるの。

あなた達先遣隊の戦闘データを元に完璧に調整された完成型勇者。

それが私!

私の勇者システムは対バーテックス用に最新の改良を施されているわ

その上、あなた達トーシロと違って、戦闘訓練を長年受けている!」

 

「黒板に当たってますよ」

 

花凜が近くにあった自由箒の履き側を友奈達に向けて威張る。

花凜は決めポーズのように決めたかったが、色々と台無しである。

 

「躾がいのありそうな子ね」

 

「何ですって!?」

 

「はわわ〜喧嘩は駄目だよ〜」

 

「・・・ま、大船に乗ったつもりでいなさい!」

 

「よろしくね花凜ちゃん」

 

「鉄華団・・・じゃなかった。

勇者部はお前を歓迎するぜ」

 

「は?誰が入るって言ったの?私はあんた達を監視する為にここに来たのよ。

部員になるなんて言ってないわ」

 

「あんた何言ってるの?」

 

「それなら部員になった方が話が早いよね」

 

「そうね」

 

「そうだ」

 

東郷とオルガの助力もありその場は納得させた。

 

「ま、まぁその方があんた達を監視しやすいかもね」

 

「おい、さっきから監視監視って、見てないと俺たちがサボってるような言い方すんじゃねえよ」

 

「は?適当に選ばれたトーシロが大きな顔するんじゃないわよ」

 

「あ?お前状況分かってんのか?

その台詞を言えるのはお前か俺か、どっちだ」

 

流石にオルガもミカも我慢の限界だった。目の前の花凜に舐められているのが相当気に入らなかった。

長年訓練?こっちはずっと実戦してきたんだ。

本当の戦いを知らない奴にデカイ顔されるのは鉄華団の面子にも関わる。

 

「何よトーシロの癖に!」

 

キュピ

 

「お前にだけは言われたくよ」

 

ミカは咄嗟に花凜の胸倉を掴み脅し始める。

 

「な、離しなさいよ!」

 

花凜は必至に抵抗するがミカは離さない。

 

「おいミカ!その辺にしとけ」

 

オルガは苦しそうな花凜を離すようミカに命令する。

オルガの命令だったのでミカは素直に従い手を離した

 

「すまねぇな、けど俺とミカ、鉄華団はただのガキの集まりじゃねぇって事は覚えておいてくれ」

 

「はぁはぁ、ま、まぁあんた達は他とはちょっと違うみたいね。

けど用心しなさい、勇者のお役目はおままごとじゃな

あーーー!!!」

 

花凜が息を整え場を見上げると自分の精霊「義輝」が友奈の精霊「牛鬼」に食われかけていた。

花凜は力一杯義輝を引っ張り牛鬼から離す。

離す事は成功したが食べる対象を失った牛鬼は我慢が出来ず近くにいたオルガの頭を噛み付く

 

「ぐぅ!?離しやがれ!」

 

「あぁ!先生のトレードマークの前髪が取れたぁ!?」

 

その時希望の花が咲いた

 

俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!だからよ、止まるんじゃねぇぞ・・・。

 

その後何事も無かったかのようにオルガの前髪は蘇る

 

「外道メ」

 

「ちょっと自分の精霊の管理くらいしなさいよ!」

 

「ごめんこの子勝手に出て来ちゃうんだ」

 

友奈は牛鬼の食欲を満たす為干し肉を食べさせる。

 

「そういえばこの子喋れるんだね」

 

「そうよ、エリートに相応しい精霊でしょ」

 

「あ、でも東郷さんは三体いるよ」

 

東郷は友奈に言われて自分の精霊を出す。

「刑部狸」「藍坊主」「不知火」の三体である。

 

「私の精霊は一体で最強なのよ!アンタも言ってやりなさい」

 

「諸行無常」

 

「達観してますね」

 

「そ、そこがいいのよ」

 

「か、花凛さん」

 

「今度は何よ?」

 

場を離れてカード占いをしていた樹が不吉な報告をする

 

「花凜さんに死神のカードが・・・」

 

「勝手に占って不吉なレッテル貼らないでよ!」

 

「オルガ」

 

「ああ、分かってる」

 

オルガはそんな不吉な運勢を吸うように希望の花を咲かせる

 

俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!だからよ、止まるんじゃねぇぞ・・・。

 

 

 

「と、とにかくこれからのバーテックス討伐は私の指揮のもと行うのよ!」

 

「おい、団員を指揮するのは団長である俺の仕事だ。それに・・・

 

「学校では上級生の言うことを聞くもんよ。

って先生私達団員になったつもりないわよ?」

 

「うぇ?・・・なら鉄華団の勇者隊ってのはどうだ?」

 

予想外の反応にマヌケな声を出したオルガだったがすぐにリカバーしなんとか勇者部を鉄華団の一員にしようとした。

 

「まあ、それでもいいけどもうちょっとカッコいい名が欲しいわね。

「ダイヤモンドローズ隊」

とか

「アルテミス隊」

とか

 

「アグニカ・カイエル隊というのはどうだろうか」

 

ドガッ!(マクギリスが殴られる音)

 

「おい、何勝手に入ってきてるんだ?マクギリス」

 

「いやすまない。何やら楽しそうな話を聞いていて、私も参加したくなった」

 

「で、アンタがここに来た要件を聞こう」

 

「大した話ではないよ。

これから共に戦う勇者達に正式に挨拶をしに来た。

勇者の諸君、私の名はマクギリス・ファリド。

モンタークの店長、そしてバエルを駆る者だ」

 

「俺は鉄華d

 

「よろしく頼む。特に結城友奈、君には強く期待している」

 

「えっ?私」

 

「そうだ、君の始めてバーテックスと対峙した場面を見させてもらい、私はそこにアグニカ・カイエルの影を見た。

君の英雄ぶりを讃え300アグニカポイント贈呈しよう」

 

「あ、ありがとうございます?」

 

友奈は少し引きながらもアグニカポイントを受け取った。

 

「あの、そのアグニカ・カイエルというのはどういうお方なのですか?」

 

「っフ、よくぞ聞いてくれた東郷美森。

アグニカ・カイエルとは三百年前、平成と呼ばれる時代の終わりの戦い。

厄祭戦でバエルに乗りバーテックスへと対抗した英雄だ。

その英雄の歴史は伝記にも纏められている。

詳しく知りたければ私に聞くかその伝記を読むといい」

 

「は、はぁ、ありがとうございます?」

 

東郷も友奈と同じ様な顔で礼を述べる。

その頃オルガは・・・

 

 

 

 

「なぁミカ、俺はマジでおかしくなってるのかもな」

 

「何言ってるの?あの状況じゃ無視されるのが普通でしょ」

 

「・・・ああ」

 

ミカから励まし(?)を受けていた。

そして今宿題を終えた。

 

「腹減った〜、オル・・・

 

「飯連れてってやるよ!ついでに花凜の歓迎会だ!当然来るよな?」

 

「別にいらないわよ。バーテックスを全部倒したら私がここにいる意味もないしね」

 

「えぇ?花凜ちゃん来ないの?」

 

「短い付き合いになるだろうしね、それに私は特訓があるからそんな時間ないの」

 

「いや花凜、その歓迎会は私としても賛成だ。

他者との協力を得られなければアグニカの意思に背くことになる。

私は君の馴れ合いは好まないが徹底していない所を評価して君を勇者へと任命した。

もし行かなければ君の勇者権限を見直す必要がある」

 

「なっ、脅す気!?」

 

「脅しではないよ。これは私からの些細な願いだ。

・・・過去の私や彼女の様にならない様に・・・」

 

後半はよく聞き取れなかった。

 

マクギリスは大赦に勤めてる際勇者適正の高い者の戦闘訓練の教官として花凜や他の人物を指導していた。

 

訓練を経て行く中、勇者候補生の中には花凜とそのライバル歓迎である楠芽吹という少女がいた。

彼女の勇者になるという夢、力の執着は異常だった。

日が昇る前から訓練場に入り腕が動かなくなるまで剣術の練習を続けた。

病気や筋肉痛になろうと休まず、365日睡眠時間以外の時間を鍛錬に使った。

無理がたたって嘔吐し倒れることがあっても彼女は止まることがなかった。

そんな生活を続けていた彼女は自然と孤立していき、他人に構うことなど一切なかった。

 

そんなストイックな生活を続けた彼女は訓練の成績自体は花凜に僅かながら勝っていた。

しかしマクギリスはそんな彼女を見て過去の自分と照らし合わせた。

残酷な選択かもしれないがこのまま彼女が勇者になれば自分と同じような運命を辿ると予測していた。

なのでマクギリスは彼女を勇者にしなかった。

それが彼女を本当の意味で勇者に成る選択だと信じて。

 

 

「ま、まぁそういうことなら付き合ってあげるわ。食事ついでにあんた達の戦い方の指導もしてあげるわ」

 

「決まりだな、よし行くか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




嘘新番組予告

機動戦士ガンダム 鉄血のジオウとは

火星圏で放送されているクリュセチャンネルの新番組である

あらすじ
厄祭戦からおよそ三百年
王になることを夢見る鉄華団の団長、オルガイツカは未来から突如現れたタイムマシーンに出会う。

そのタイムマシーンから現れた謎の少女は彼に告げる。

「私は未来からやってきた。未来の世界は魔王が君臨し、人々を苦しめ、希望のない世界を創りだしている」

絶望的な未来の世界を変えるためにこの時代にやってきた少女はさらに告げる。

「未来のアナタこそが、いずれ世界を破滅させる魔王にして時の王者“ジオウ”となる」

仮面ライダージオウに変身する運命にあるオルガ、彼はヒーローではなく未来の魔王となってしまうのか…?果たして未来の運命は?

ぜってえ見てくれよな!(サトシ風)

本編もそうだけど後書きのネタ考えるのは楽しい
てか後書きだけなら一期分くらい既にある
後今回構想あんま練ってないから正直雑ですね
楠ちゃん名前だけ出したけどこれ以降の出番は考えないんだよな〜


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勇者部五箇条 止まるんじゃねぇぞ

スマホの力を過信したので投稿が遅れました
すみませんでした
(夜遅くまで執筆作業に没頭していましたが完成間近で寝落ちしてしまい、待機電力で電源が落ちて更新できなかったので一から書き直しました)
後今回花凜ちゃん視点でやります


あの後流れのままうどんを一緒に食べた私は自宅のアパートに戻り一つ溜息をついていた。

 

「バッカみたい・・・」

 

勇者部のお気楽っぷりに正直疲れ果てていた。

勇者なのに危機感がまるで感じられない。

あんな調子でよく今までやってこれたものよ。

私は愚痴含めた定時連絡を大赦に送った後、

トレーニングの為のランニングマシーンの走り込み

調理時間を無駄にせず、かつエネルギー補給できるコンビニ弁当を食べ、補助にサプリを取る

これは訓練時代からやってきた習慣だ。

いつもやってる事をして精神の安定を図った。

 

正直私にとって想定外の事が起きすぎてる。

始めの挨拶はビシッと決めたかったのにあの変な前髪した先生と女みたいな名前の男の子に台無しにされた。

ホントあったま来る!

明日はアイツらを見返してやるんだから!

 

 

 

翌日

体育の授業で100メートル走のタイムを競う授業が始まった。

ここでいいとこ見せてやるんだから!

 

「位置について、ヨーイドン!」

 

ピストルの音が合図となり私は翔ける。

同時に走ったほか二人を置いてけぼりにして半分ほど走る

このままのペースでいけば好タイムが記録できる。

そう思ったその時だった。

後ろから強力な風が走る。

いや風ではない、人だ。

 

「俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!」

 

後ろから猛スピードで追いかけたオルガに私はあっさり抜かされた。

後からついた私は唖然とした顔で希望の花を咲かせたオルガを見下ろした。

 

「だからよぉ止まるんじゃねぇぞ・・・」

 

「な、何よコレ・・・」

 

その後オルガは仕事をサボっていた事がバレ、ミカに引っ張られるように職員室へと向かった。

 

「凄かったねー先生」

 

「あ、アレは規格外よ。それにああいうのは反面教師って言うのよ。

ペース配分もロクに出来ないなんて、勇者部の顧問として恥ずべき問題だわ」

 

「でも花凜ちゃんも凄かったよねー。

ビューって走っていってカッコよかったよ」

 

そう言われて悪い気はしなかった。

結城友奈、勇者部一の楽天家で一番勇者適正が高いって噂の子。

彼女には絶対に負けたくないという思いが私の中で強くあった。

 

「そうよ、勇者は凄くなきゃいけないんだから。

コレくらい当たり前よ」

 

私は説教がてら結城友奈に勇者の重要性を解き始める

 

「勇者の戦闘力は本人の基礎運動能力に大きく左右されるの。

アンタも勇者なら自覚を持ちなさい」

 

「自覚って言っても、先月勇者になったばかりだから・・・えへへ」

 

「な、アンタよくバカだって言われるでしょ?」

 

「実はそうなんだよね〜えへへ」

 

「なっ、アンタよくそんなんで勇者になれたわね・・・」

 

私は呆れて物も言えなくなっていた

やっぱりこのままじゃダメだわ

私がなんとかしないと

 

 

 

放課後勇者部部室にて・・・

 

「アンタ達があまりにも呑気だから今日も来てあげたわよ」

 

私は鞄に入っていた煮干し袋の煮干しを食べながら部室へと足を運んだ

 

「何それ?」

 

「煮干しよ煮干し。これにはビタミン、ミネラル、カルシウム、アグニカ、カイエル、タウリン、DHA、DPA、煮干しは完全食よ!」

 

「・・・?正直ピンと来ませんね」

 

「ピンと来なさいよ!」

 

「あれ?なんでチョコの人もここにいるの?」

 

「「え?」」

 

不自然すぎてむしろ自然に介入したマクギリスに、オルガと花凜は気づくことができなかった。

 

「また来たのかマクギリス、アンタ暇なのか?」

 

「ああ。君達に勇者の正しい力の使い方を教えるために来た」

 

「うどんの方は大丈夫なの?」

 

「モンタークのことなら問題ないよ。石動と最近加入したバイトの少年が頑張っているからな」

 

「タカキか?」

 

「いや、彼を一言で表すならチョコの少年だ」

 

「は?」

 

「兎に角、店の心配は結構。

今日は君達に勇者の力について教えよう」

 

マクギリスは前回風が教師風になった真似をし、モンタークの仮面を被りだした。

 

「先ずは勇者の切り札である満開について教えよう。

満開とは君達が戦い力を研ぎ澄ませることで、花を咲かせるための満開ゲージというのが溜まる。

君達の衣装に着く花のマークがそれだ。

花が満開に咲いた時、内から溢れる力を解放することで君達は人智を超え、神の力を手にすることができる。

これが満開だ」

 

「正直ピンと来ませんね」

 

「要は戦い続ければレベルが上がるってことよ」

 

「そっかぁ。大体わかった」

 

この先生はちゃんと人の話聞いてるのかしら?ホント頼りになりそうにないわね。

 

「この満開を繰り返すことによって君達はより高みへと上り詰めることができる。

だが満開には時間制限がある。ここぞという時に使うといい。

 

次にバーテックスについて話そう

バーテックスとは三百年前に人類を絶滅の危機に追いやった天使だ。

今は神樹の力によってその進行はある程度止まっているが油断をできない状況だ。

バーテックスの襲来は周期的なものとされていたようだが、相当に乱れている。

いつ来てもおかしくないので皆、バエルの元へ集え!」

 

少しばかり錯乱したマクギリスを見てオルガは頬を殴り飛ばす

 

「おい、何ふざけたこと言ってんだ?」

 

「私は真面目に言ったよ。君達勇者は戦士としては未熟だ。私が先導しよう」

 

「そうね、アンタ達は私と違って未熟よ。私ならどんな混戦にも対応できるけど貴方達は気をつけなさい。最悪命を落とすわよ」

 

「大丈夫よ、いざとなれば先生が駆けつけてくるから。ね、先生?」

 

「ああ、団員を守んのは俺の仕事だ」

 

「まぁ、アンタは何しても死ななそうだけど・・・」

 

この先生は銃で撃たれても平気だった。おそらく見えない精霊のバリアでも貼っているんでしょ?

そうでもなきゃ無傷とかおかしいわ

 

「そうね。先生は頑丈さが取り柄ですからね。

まるで大和のよう・・・」

 

「ん、誰だそいつは?」

 

オルガが軽い気持ちで疑問を説いたが東郷はその一言に目を輝かせていた。

 

「知りたいですか!?

大和は我が国が誇る最強の戦艦です!」

 

友奈達はまた始まったと言わんばかりの顔で二人を見ていた

 

「史上最大にして、唯一46センチ砲を搭載した戦艦で、三基九門を備え、400機近い艦載機を釘付けにした起動要塞です!

分かりますか!?この凄さが?」

 

「あ、ああ。よく分かったからその辺で」

 

オルガは珍しく押されていた。東郷の気迫が普段とのギャップを強く感じさせていたのもあるのだろう。

深く語れた東郷は満足気に車椅子に深く腰掛けた。

 

「なんか凄いな。戦ってる時よりも気迫を感じた」

 

ミカも東郷の気迫に関心していた。ミカが深く考えようとした時ふと腹の虫がなった。

 

「腹減った〜。オルガなんかない?」

 

「って言いながらなんで私の方見るのよ!?煮干しは上げないわよ?」

 

「くれないの?」

 

「上げないわよ」

 

「そう」

 

ミカは残念そうな顔をして目を逸らした。まるで捨てられた子犬のようだった。

私はそんな姿がなんとなく見てられなくて自分の為にミカに煮干しを食べさせた。

 

「モグモグ、ありがと」

 

「ふん、どういたしまして」

 

お礼を言われるのはいつぶりだろう?

確か訓練時代にアドバイスした時以来かしら?あの時も自分の為にしたつもりだったけど悪い気はしないわね。

 

「私も欲しくなった」

 

「・・・ハァ〜。はい」

 

渋々私は|教官≪マクギリス≫に煮干しを渡した。なんかもう色々と流されて疲れたわ・・・

 

 

 

「ふむ、ではそろそろ勇者の戦闘訓練のためのメニューを渡そう」

 

渡された訓練メニューには戦うためのものではなく基礎運動しか書かれていなかった。

ランニングやストレッチ等のやり方などの運動部がよくやるようなものだったのだ。

 

「なんだよ、結構楽そうじゃねぇか」

 

「なんか運動部みたいね」

 

「あ、じゃあ運動部みたいに朝練しませんか?」

 

「いいんじゃねぇの?なあミカ?」

 

「そうだね」

 

「いいですね」

 

「って樹?アンタは朝起きられないでしょ?」

 

「友奈ちゃんもでしょ?」

 

「オルガもだろ?」

 

「うぇ?俺はやるぞ!」

 

「では起こす人と起こされる人で頑張りましょう」

 

「「「おー」」」

 

「って私を仲間外れにしないでよ!」

 

「花凜ちゃんも起きれないの?」

 

「起きれるわよ!ハァ、

どうしてこんな連中が勇者に・・・

 

「成せば大抵なんとかなる。だよ」

 

「何それ?」

 

「勇者部五箇条。みんなで力を合わせればなんとかなるよ」

 

友奈が指差した壁には勇者部五箇条が書いてある紙が貼ってあった。

 

挨拶はきちんと

 

なるべく諦めない

 

よく寝てよく食べる

 

悩んだら相談

 

成せば大抵なんとかなる

 

これらが勇者部の基本方針であり心構えでもある

 

「なるべくとかなんとかとか、アンタ達らしい見通しの見えないスローガンね」

 

正直付き合いきれなくてもうこういうものだと受け入れた方が楽な気がして私は諦めがついた。

 

「待ってくれ!俺の「止まるんじゃねぇぞ」が入ってねぇじゃねぇか!?」

 

「えぇ?それって先生の口癖じゃあ?」

 

「頼む!入れてくれ!」

 

「まぁいいけど・・・」

 

こうして鉄華団は勇者部へと本格的に参入するのであった

 

「だからよぉ止まるんじゃねぇぞ」

 

 

 

 

 




今回プール回を運動服回にしたのは六月上旬で長袖着てるのにプールはおかしいと思ったからです

煮干し成分にアグニカ、カイエルを混ぜ込んだのは天啓が来たとした言いようがないです
ま、これっぽっちも面白くなかったがな

チョコの少年はオリキャラ
百錬オルガの名前の分からないおっさん並みにしか出ないので正直覚えても覚えなくてもいいです
端的に言えば「モンタークではたらく頭のおかしい店員」です
まぁ彼が出しゃばると頭イオクかよとか言われそうです

軍艦ですが大和よりも武蔵のほうが耐えてたのに執筆後気づきました(まぁ、いいか)

没案
ぼた餅を巡ってオルガとマッキーが喧嘩するのを東郷さんが止めて吊るし上げて花咲かせる
(流れ的に入れる余地がなかった)



読者様への質問

台詞の「
の部分の前に誰が喋ってるのか分かるように名前入れるのいる?

あとこの作品イセスマ要素いる?
いらないなら放置するけど
いるならバーテックスとの戦闘時に応援として来てもらいます
あ、ハシュマルさんとスマホ太郎はお帰りください


応援予定キャラ

シンケンジャーさん
黄昏の魔弾さん
ストライクガンダムさん
めぐみんさん
サーバルちゃん
ヴェイガン殲滅おじさん
ベルディアさん
通りすがりの仮面ライダーさん
おばあちゃんが言っていたさん
海馬社長様
自称612歳妖精王さん


最近知りましたがゆゆゆのCMは勇者王(檜山修之さん)がやってる事を知りました
ガオガイガー欲しい、欲しくない?





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10話

艦これイベントやったり新作アニメのチェックで忙しかったので結構遅れました
すみませんでした

内容は結構雑で春信さんが暴走してます
だが私は謝らないし反省もしない
でもタカキ休め




風「じゃあ次の話題行くわよ」

 

風が配ったのは今週日曜に行われる幼稚園のレクリエーションの日程表だった。

 

風「勇者として戦うのも大事だけど、こっちもしっかりやらないとね」

 

東郷「具体的には何を?」

 

樹「折り紙を教えたり絵本を読んであげたり、

 

マッキー「アグニカ・カイエルの伝承について教えるのはどうだろう」

 

ミカ「それはダメだ」(時間が

足りない的な意味で)

 

マッキー「ではまたの機会だ」

 

風「花凜と先生にはそうね、暴れ足りない子のドッチボールの的をやってもらうわね」

 

団長「勘弁・・・

 

ミカ「ダメだよオルガ」

 

団長「・・・はい」

 

花凜「って私も参加するの!?」

 

ミカ「当たり前じゃん」

 

風「ほれほれ、この通り入部届けも描いてもらったしね」

 

風はこれ見よがしに花凜の入部届けを見せた。

花凜は形式状入るだけのつもりだったがこのままでは流されると感じ、焦りを見せていた。

 

花凜「なっ、それは形式状でしょ!」

 

団長「お前状況分かってんのか?入団したなら俺たちの仲間だ。鉄華団のやり方に従ってもらうぜ?」

 

花凜「だからって私のスケジュール勝手に決めないでよ!」

 

友奈「じゃあ花凜ちゃんは日曜用事あるの?」

 

花凜「え、いや、別に。

わかったわよ。日曜日ね丁度その日だけ開いてるわ」

 

風「じゃあ決まりね。午前10時現地集合だからね。忘れるんじゃないわよ」

 

マッキー「では、私も同行しよう」

 

団長「は?アンタ・・・まさか。

アンタの要求は飲めねぇ」

 

オルガはマクギリスが何か企んでいると睨み、一度断る。

しかし

 

友奈「えぇ?先生どうして?みんな一緒の方が楽しいよ」

 

風「そうよ。ここまで来ておいて仲間はずれは良くないわ」

 

団長「え?ミ、ミカァ?お前はどう思う」

 

ミカ「面白そうだし、ま、いいか」

 

マッキー「フフフ、ハッハッハッハ!」

 

自分の意見が通ったマクギリスは思わず笑いを浮かべた。

勝利に酔いしれるマクギリスをオルガは殴りかかろうとしたが

、勇者に変身した友奈がマクギリスを庇った。

 

友奈「先生!ダメだよケンカは!」

 

団長「っ、すみませんでした」

 

ミカ「ダメだよ友奈」(殺してでも止めないと)

 

パンパンパン

 

俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!だからよ、止まるんじゃねぇぞ・・・。

 

団長「すみませんでした」

 

マクギリスは再び笑い、それにつられて友奈達も自然と笑いを浮かべた。花凜を除いて。

 

花凜「全く、緊張感のない奴ら・・・」

 

 

 

その後各々日曜の為の準備に入

った。

マクギリスや花凜を除く勇者部がとある企みをしている最中花凜は・・・

 

 

花凜「この非常時にレクリエーションなんて、まぁやるからには全力を尽くすけど・・・」

 

学校帰りに花凜は本屋に寄り、折り紙入門用の本を買っていた。

ここまでいいとこなしの彼女は少しでも自分の優位性を保とうと努力を怠らなかった。

エリートたる者何事も万全の体制でこなさなければならないという使命感が彼女を突き動かす。

そんな彼女に一本の電話が来る。

 

花凜「えっ、あ、兄貴?」

 

その電話の相手は花凜にとって思いがけない者だった。

少し慌てたが電話に出ることにした。

 

春信「もしもし花凜?良かったちゃんと出てくれて」

 

花凜「珍しいわね、兄貴が電話くれるなんて」

 

電話の主は三好春信、花凜の兄だった。本来ならば大赦の重要な役職である彼がこんな電話をする余裕はなかった筈なので、驚きを隠せなかった。

 

花凜「それで何か重要な話?」

 

春信「別に、ただ花凜がちゃんと学校に馴染めてるかちょっと心配になってね」

 

花凜「だ、大丈夫よ。なんの問題もないわ」

 

春信「うん、嘘だね」

 

花凜の虚勢を張った一言はアッサリと見抜かれた。

 

花凜「な、なんで分かるのよ!」

 

春信「分かるよ、家族だから」

 

花凜「うぅぅ・・・」

 

花凜は兄からも軽いジャブをくらい面食らった様な顔をしていた。

 

春信「ゴメンな花凜、でも花凜ならきっとうまくいくよ。なんせ私、いや俺の妹なんだから」

 

花凜「兄貴・・・」

 

春信「っと、そろそろ仕事に戻らないといけない。それじゃ」

 

春信の電話はそこで途切れる。短い電話だったが花凜を励ますには十分な時間だった。

 

花凜「ばか、こっちの気も知らないで・・・」

 

しかし花凜は春信の好意を素直に受け取ることはできなかった。

嫌いという訳ではなく、なんでもテキパキとこなす春信に対して花凜は強いコンプレックスを抱いていた。

彼女が勇者としての使命に執着するのは兄を超えたいという思いもあってこそだった。

 

 

 

春信「さて、悪かったねタカキ君、仕事変わってもらって」

 

タカキ「いえ、妹、家族の心配をするのは誰だってすることですから」

 

春信「ありがとう、タカキ君は休んでていいよ。もう十二時間も働いているんだから」

 

タカキ「はい、ありがとうございます」

 

タカキが休憩室に向かった後、春信もまた仕事に戻った。

 

春信「さて、私も後一日ほど頑張らないといけませんね。このガンダム達の為に。

 

キャリブレーション取りつつ、ゼロ・モーメント・ポイント及びCPGを再設定。

エイハブリアクター出力再調整

疑似皮質の分子イオンポンプに制御モジュール直結

ニュートラルリンケージ・ネットワーク、再構築

メタ運動野パラメータ更新

フィードフォワード制御再起動、伝達関数

コリオリ偏差修正

パワーフロー正常

運動ルーチン接続システム、オンライン

ブートストラップ起動

全システムオールグリーン!」

 

 

 

 

 

 

翌日・・・

 

 

ミカ「オルガ起きて、早く起きないと遅刻するよ」

 

ミカはなかなか起きないオルガを揺らすが起きる気配はなかった。

そこでミカは強硬手段に出た

 

パンパンパン

 

俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!だからよ、止まるんじゃねぇぞ・・・。

 

ミカ「じゃあ俺先行くから」

 

ミカは先に足を運ばせオルガは曲の終わりから準備を始め10時少し前に出ることになった。

 

 

 

団長「ハァハァ、おはようございます」

 

花凜「おはよ」

 

マッキー「おはよう、オルガ団長」

 

オルガが部室へと着くと待っていたのは花凜と仮面をつけたマクギリスだった。時間は10時丁度だった。

 

団長「他の奴らは?いやそれよりその仮面はどうした?」

 

マッキー「ああこれか、良い仕上がりだろう。

中々に遊べる玩具を手に入れてね

この仮面をつけた瞬間、私は違う男の人生を手に入れる

いっそ口調なども、変えて見たりしとくぅ~~ぅ? 」

 

団長「アンタ正気か?」

 

マクギリスの余りにも変化した様子にオルガと花凜は少し引いた目をしていた。

 

マッキー「・・・いや、やはり止めておこう」

 

花凜「に、しても遅いわねアイツら。何やってるのかしら?」

 

団長「おかしいな?ミカは先に出た筈なんだが」

 

一同に違和感を感じもう一度予定表を確認すると現地集合、つまりは幼稚園に集合だった事を思い出す。

 

オルガ「っくそ!今からでも遅くはねぇ。行くぞ!」

 

花凜「ちょ、ちょっと待ってよ!遅刻なんて真似したらその・・・迷惑じゃない?」

 

団長「いいから行くぞぉ!皆が待ってんだ」

 

オルガは花凜を強引に連れ出し

皆が待っている場所へと向かった。

そこで待っていたものは・・・

 

 

 

「「「花凜ちゃんお誕生日おめでとーーー!!!」」」

 

花凜「な、え?ええーーー!?」

 

待ちかねていたのは勇者部の面々に幼稚園の子供達だった。

拍手とクラッカーが鳴り響き花凜を激しく歓迎した。

花凜はこのような事など聞かされている訳もなく激しく動揺していた。

 

花凜「ど、どういうことよ!?説明しなさいよ!」

 

風「今日アンタ誕生日でしょ?入部届にしっかり書いてあったわよ」

 

友奈「だからサプライズで誕生日パーティーしないとって」

 

団長「待ってくれ、俺も聞いてねぇぞ」

 

マッキー「サプライズだからだ。君は口走って言う可能性があるため敢えて言わなかった」

 

団長「なっ、ミカは知ってたのか!?」

 

ミカ「当たり前じゃん」

 

団長「なっ・・・どうやら俺は相当信頼されてねぇようだな」

 

風「そこはホラ?

ある意味信頼されてるんじゃない?反面教師として」

 

団長「うるせぇ!」

 

キュピ

 

ミカ「ごちゃごちゃうるさいよ」

 

団長「すみませんでした」

 

花凜「な、あんたら・・・」

 

風「あれどうしたの?もしかして自分の誕生日も忘れてた?」

 

花凜「アホ・・・バカ!ボケ!誕生日なんて、その祝われた事が無かったから・・・なんて言えばいいか・・・分かんなくて・・・

 

ミカ「笑えばいいんじゃない?」

 

花凜「え?」

 

ミカ「前にオルガがやってた。めでたい事があればたくさん食べて飲んで楽しく騒いでたよ」

 

団長「そうだな、ミカの言う通りだ。今日はとことん祝うぞー!」

 

「「かんぱーい!」」

 

そこからはどんちゃん騒ぎだった。

オルガが矢受けの加護を存分に発揮し避けた方が当たりそうなドッチボールの球に当たり希望の花を咲かせたり、風が酔っ払った気分で花凜をワシワシしたり、オルガが子供達におじさんと呼ばれ精神的ダメージで希望の花を咲かせたりした。

アグニカ・カイエルの布教会として子供達に謎の仮面男「モンターク」が伝記を配ったそうだが、それはまた別の話である・・・

 

 

 

友奈「じゃあねー花凜ちゃん!」

 

幼稚園で解散となり一同はまた明日ね、と希望の種を蒔いた。

オルガとミカは食べ散らかした菓子や飲み物、パーティーグッズの片付けに追われていた。

 

団長「ハァハァハァ・・・」

 

花凜「なんでゴミ捨てでそんな疲れてるのよ?」

 

オルガがゴミ捨ての往復で息を切らしてる中、花凜が手伝いしに来てくれた。

 

団長「サンキューな」

 

花凜「勘違いしないでよね、散らかしっぱなしで帰ったら子供達に迷惑でしょ?」

 

ミカ「そうだね・・・オルガ。コイツで最後だ」

 

ミカも花凜の後に続いて運び最期のゴミ捨てが終わった。

 

団長「さてと、帰るか」

 

花凜「・・・ちょ、ちょっと待ちなさいよ」

 

ミカ「俺?」

 

花凜「そ、そうよ。その、さっきはありがとフォローしてくれて・・・」

 

花凜「別にいいよ、当たり前の事しただけだし」

 

花凜「素直に受け取りなさいよ!」

 

春信「そうだね、花凜はもっと素直の方がいいよ」

 

花凜「え、あ、兄貴?」

 

突然その場に現れたのは春信だった。彼は花束と誕生日プレゼントを抱えていた。

 

花凜「どうしてここに・・・?」

 

春信「いたらダメだった?今回は時間が取れたからちゃんと祝えるよ。

花凜、誕生日おめでとう」

 

花凜「あ、ありがとう?」

 

花凜は困惑しつつもプレゼントを受け取る。複雑な感情が混じり合った二人の事をオルガ達は邪魔しちゃ悪いと静かに見守っていた。

 

春信「ちゃんと喜んでくれないと困るな。仕事の合間合間縫って作ったプレゼントなんだから」

 

花凜「わ、私のために?」

 

春信「うん。父さんや母さんは俺ばかり贔屓するけど、俺は花凜の事家族として大事だと思ってるから」

 

花凜「だ、大事って・・・」

 

春信「それとも愛してるなんて言った方がいいか?」

 

花凜「な、あ、愛〜〜!?バカ!バカ兄貴!もう知らない!」

 

怒った花凜はその場を走って去って行ってしまった。プレゼントは手に抱えたまま。

 

春信「怒らせてしまったみたいですね。すみません、身内のお見苦しい所を。

では失礼します」

 

団長「待ってくれ!アンタ・・・何処かで会った事ないか?」

 

春信「・・・いえ初対面の筈ですよ?しかし今後会うことがあるでしょう。その時は一杯やりましょう」

 

彼もまた去っていく。まるでその後を予見したかのような発言を残して

 

 

 

一方花凜は・・・

 

花凜「リストバンド?まぁ、あれば使うけど・・・」

 

プレゼントの中身はトリコロール色のリストバンドだった。勇者としての訓練で汗をかく彼女にとっては必要なものだった為、

先程は照れ隠しで暴言を吐いたものの、本心で嬉しかった彼女は自然と笑顔になった。

 

そんな彼女にもう一つ嬉しい出来事が起きた。

勇者部からのナルコ、つまりはトークへのお誘いである。

花凜は素直にその誘いを受けることにした。

 

風『これで花凜も名実共に勇者部の仲間入りね』

 

友奈『改めてよろしくね〜花凜ちゃん』

 

樹『よろしくです』

 

ミカ『よろしく』

 

東郷『明日ぼた餅作ってきますね、みんなで食べましょう』

 

団長『いいじゃねえか、ご馳走になるぜ』

 

花凜「あいつら・・・そうね。

こういう時は素直に『ありがと』って送るんだっけ」

 

花凜『ありがと』

 

友奈『わー返事が返ってきたー』

 

団長『結構早いじゃねぇか

これからも止まるんじゃねぇぞ』

 

友奈『わーい』

 

樹『わーい』

 

東郷『ぼた餅』

 

花凜『うっさい!』

 

団長『すみませんでした』

 

風『ふははははは』

 

東郷『ぼた餅』

 

『アグニカ・カイエル』(写真が送られてきました)

 

『モンタークさんが退出しました』

 

トーク内に現れた写真は今日幼稚園で撮った何気ない日常の写真だった。

花凜や勇者部の記念写真、それを受け取った花凜は自然と笑みを浮かべた。

 

花凜「あいつら・・・ほんと能天気なんだから。でも悪くないかな」

 

ゆっくりと寝に入る彼女の顔は今までとは少し違う安心しきった顔だった

 

 

 

一方その頃マクギリスは・・・

 

「ほう、まさか大赦や私の知らない勇者が存在していたとはな。

勇者の王か、その力はガンダムの王であるバエルが受け継ごう・・・」

 




バーテックスを光にする予定なので勇者王要素をオマケ程度に入れます

ネタを挟まないと書いていけない病気にかかり始めてます

後艦これイベントまだクリアできてないので次回の投稿は10月20日予定です






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11話 輝く心

ミカ、やっと分かったんだ
鉄血の2次創作に難しい御託はいらねぇ
ただ進み続けるだけで良い

当初の予定を変更して本筋だけなぞる形でこれからも頑張ります

今回ゲストキャラとして割り切った結果本編ですぐ死んだ歌のうまそうなガンダムキャラも出しました



キ-ボ-ノハナ-

 

団長「なんて声出してやがる・・・樹・・・」

 

花凜の加入からおよそ一週間後

樹のクラスは音楽のテストに向け歌の練習を頑張っていた

樹はクラスの皆の前で歌うが、緊張でオンチになっていた。

 

樹「(私、人前で歌うのはちょっと苦手です)』

 

音楽のテスト練習はいい評価は得られず樹は放課後勇者部の部室で一人落ち込んでいた。

そんな時ミカが心配そうな声で声をかける

 

ミカ「しけた顔してるね、大丈夫?」

 

樹「あ、ミカさん。実はもうすぐ音楽のテストがあって、うまく歌えるかか占ってたのですが・・・

 

占いのタレットにはDEATH!!の文字が刻まれていた。

 

団長「結構酷え結果じゃねぇか」

 

風「これは対策が必要ね。樹の為に人肌脱ぐわよ」

 

樹のオンチを治す為オルガ達一同は人前で歌う緊張を慣らすためカラオケ屋に向かった。

 

 

 

トップバッターは風が仕切り陽気で明るい歌を歌い92点という高得点を出していた

 

樹「お姉ちゃん上手!」

 

団長「凄えよ、風は」

 

お次は友奈がデュエット曲を歌おうとし、その相方として花凜を誘った。しかし花凜はやる意味ないと断った。そんな花凜を見て風はわざとらしく花凜を挑発した

 

風「そうだよね〜私の後じゃ、負けるのが怖いよね〜」

 

その一言を受け負けず嫌いの花凜はその安い挑発に乗った

 

花凜「友奈、マイクを寄越しなさい」

 

友奈と花凜のデュエットも風に負けず劣らないものだった。

点数も風と同じ92点だった

 

団長「凄えよ、二人も」

 

友奈「じゃあ次は樹ちゃんが・・・

 

「待ってくれ!まだ俺とミカがやってねぇぞ。ミカァ!やってくれるか?」

 

「・・・やだ。これはオルガの仕事だよ」

 

「そうやってお前は・・・よーしお前ら!俺の歌を聞けー!」

 

勝ち取りたい!物もない!

無力なバカにはなれない!

それで君は良いんだよ!

ヒリヒリと生き様を!

その為に死ねる何かを

この時代に

 

その同時間、勇者部には関係ないが隣のルームでオレンジ髪の青年がプロ顔負けの歌を歌っていた

 

放つ光 空に墜ちる

望むだけの 熱を捧げて

死に逝く星の 生んだ炎が

最期の夢に 灼かれているよ

 

 

 

オルガが歌を歌い終えた後でた点数はまたも92点だった。

 

団長「ハァハァハァ」

 

風「先生もやるじゃない。あ、先生飲み物おかわり持ってきて」

 

団長「ああ分かったよ!行くよ!」

 

オルガは皆のコップを持ちドリンクバーの場所へと向かった。

そこにはオレンジ髪の青年の姿もあった

 

一方その頃友奈達は樹の出番がきたが、勇者部の前でも緊張感でうまく歌うことはできなかった。

それを見据えてミカは人数分のマイクを用意してきた。

 

ミカ「いこう、俺たち皆んなで」

 

友奈「そうだよ、みんなで歌えばきっとうまく出来るよ」

 

風「樹、ここが踏ん張りどころよ」

 

樹「お姉ちゃん、うん。私やってみる」

 

いつものピアノソロから始まりバラード調の希望を与えるような歌が今始まろうとしていた。

 

 

その時オルガは全員分のドリンクを組み終わって運ぼうとしていた。

しかし皆の歌と連動するように彼の体は苦しみだした。

何かを察した団長はなんとか歌を止めようとする。

 

団長「ま、待ってくれ!」

 

「割り切れよ、今はカラオケ中で俺達は歌と共に死んでんだからさ。

でないと、(本当に)死ぬぞ」

 

団長「ああ、分かってる」(誰だか知らないけどありがとう)

 

キ-ボ-ノハナ-

俺は止まんねぇからよ

 

ツナイダ-キズナガ-

お前らが止まんねえ限り

 

イマボクラノ ムネノナカ-ニアルカラ-

その先に俺はいるぞ

 

キ-ボ-ノハナ-ツナイダ-キズナヲ-

だからよぉ止まるんじゃねえぞ

 

ミカ「オルガ?オルガ!?またこんなところでサボって」

 

団長「すみませんでした」

 

その後何度か歌の練習をし、

花凜のサプリをキメたりして、テストは大成功した

練習の成果もあってクラスでも一番の成績だった。

あがり症さえ克服すれば彼女の歌は素晴らしい物だったからである

そしてその帰り・・・

 

樹「・・・ねぇお姉ちゃん。私やりたい事が出来たよ」

 

風「将来の夢?」

 

樹「うん。でもまだ秘密」

 

やっと分かったんだ

私がやりたいこと

それは・・・歌手になること

 

樹は勇者部に内緒で一人でカラオケ屋で歌を歌っていた。

ただ歌うだけではなく録音してオーディションサイトに送る。

 

「(まだこれは夢なんて言えない…けど、やってみたいことが出来た)」

 

だからよぉ止まるんじゃねぇぞ

 

 

 

 

 

 

 






オーディションサイト運営の人達の会話

「君は彼女の歌を聞いてどう思う?」

「いーじゃないの、頑張ってるってことは良いことよ」

「彼女の歌はそんな言葉では言い表せないよ。あれは天使だ」

「いやいやいやいや、ヒヨッコの身に天使なんて生意気なんだよー」

「バエルを持つ私に背くとは
俺の道を阻むのならば今度こそ殺してやろう!」

「ウオオォォォ!!」

「ハイネ ェェェェェ!!!」



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さらば天神! バーテックス暁に死す!

結構真面目に書いたつもりだったけどやっぱり今回もダメだったよ
この世界の厄祭戦はきっとターンエーの黒歴史に近いものなんだよ
じゃないと最期の方説明できないし

新キャラ

バルバトス
バルバトスを大赦が魔改造してる時に目覚めたAI
喋り方やセリフが某RPGのキャラに酷似しているがあくまでもミカと共に戦ったバルバトスなので英雄(勇者)を殺そうなんてしない
たまにミカの操縦を無視して独断行動することもある

昭弘・アルトランド
鉄華団筋肉隊隊長
筋肉を鍛えすぎた上身内を何人も失った結果まともさを捨てた人

ノルバ・シノ
鉄華団流星隊隊長
鉄華団のムードメーカー的存在
死ぬときはでっけぇおっぱいに埋もれて死にたい人





七月中旬、もうすぐ夏休みという時期にバーテックスの襲来は来た。

その様子を勇者部一同と鉄華団、そしてマクギリスが見ていた。

 

ミカ「すごい数だ」

 

ミカの言う通り残り7体のバーテックス、

アリエス(牡羊座)

タウラス(牡牛座)

リブラ(天秤座)

アクエリアス(水瓶座)

レオ(獅子座)

ジェミニ(双子座)

ピスケス(魚座)

が一度に来てる事が確認できた

七体と言っても一体一体が50メートル程の大きさで、レオに至ってはその2倍近くの大ききだ。ミカの目にはモビルアーマーが複数体同時で来ているようにも見えた

 

団長「だが俺達に倒せねぇ筈がねぇ。そうだろミカ?」

 

ミカ「ああ、邪魔する奴は全部敵だ。俺達の居場所を壊させるわけにはいかない」

 

マッキー「実に分かりやすい状況になったな。ここでヤツらを全滅させれば終了だ」

 

団長「そうだな。・・・いいかお前ら!これが最後の戦いだ

この戦いはただの戦いじゃねぇ

全員で生きて笑って終える為の戦いだ

絶対に死ぬんじゃねぇぞ

こっから先死んだ奴は団長命令違反で俺がぶん殴ってでも起こしてやる

だからいいか!なんとしてでも這ってでも!それこそ死んでも生きやがれ!」

 

東郷「気合い入ってますね先生」

 

風「それだけこの戦いはあたし達にとっても大事な戦いってことよ

いい皆?買ったら好きなもの奢ってあげるから絶対に死ぬんじゃないわよ」

 

彼女達は円陣を組み戦いの気合いを入れ直す。その中にはミカやオルガ、マクギリスの姿もあった。

 

団長「行くぞお前ら!」

 

風「勇者部一同!変身!」

 

ミカ「来い、バルバトス!」

 

勇者部一同が変身しミカとオルガ、マクギリスもそれぞれモビルスーツへと乗り込む。

 

バル「おう、久しぶりだな小僧。

我が名はバルバトス、見せてもらおうか。貴様らのもが・・・

 

ミカ「行くぞバルバトス」

 

バル「ぶるぁぁ!!!(無視すんなよゴラァ!)」

 

ミカが阿頼耶識でバルバトスに繋がった時ミカにだけ渋い男の声が聞こえた気がした。

ミカは特に気にするそぶりもなくバーテックス(アリエス)の元へと近づいていった。

そして真っ先にバーテックスの元へ向かったのは花凜だった

 

花凜「一番槍は頂くわよ!」

 

軽快なステップで突出したバーテックスに近づき、一撃を加えようとした時だった。

後ろから巨大な弾丸がバーテックスを貫き御霊ごと一撃で撃破したのだ。

花凜は持ち前の反射神経で巻き添えににならずにギリギリのタイミングで避けたが、少し遅ければ危険な一撃だった。

 

花凜「ちょ、ちょっと東郷!ちゃんと狙いなさいよ!」

 

花凜はメンバー内唯一の銃使いである東郷に文句を叫んだが、当の本人は撃ったそぶりなどなく弾丸が来たであろう方角を見ていた。

その先にはピンク色をした四足歩行のモビルスーツの姿があった。

 

シノ「見たか!こいつがノルバ・シノの四代目流星号、ギャラクシーキャノンの力だ!」

 

風「四代目?」

 

樹「流星号?」

 

友奈「ギャラクシーキャノン?カッコいい!」

 

東郷「銀河砲、凄い一撃ね」

 

花凜「ちょっとアンタ!よく狙いなさいよ!」

 

シノ「いいじゃねぇか、結果当たんなかったんだから」

 

花凜「な・・・アンタねぇ」

 

団長「すまねぇ、シノも悪気があるわけじゃねぇんだ」

 

シノの代わりにオルガが謝り引き締まった場が一気に壊れた。

そんな時また引き締めようと次なるバーテックスが仕掛けてきた。

非常に高い音を響かせるバーテックス(タウラス)の鐘の音が一同の感覚を狂わせる。

 

団長「ヴェアアアアアア!!」

 

バル「ぶるるぁぁぁぁぁ!!」

 

ミカ「うるさいなぁ、っく、こういう奴とは相性が悪い・・・」

 

ミカはバルバトスを動かそうとするが音による平衡感覚のズレがありうまく動かせずにいた。

そんな時樹が何かを言っているのがミカには見えた。

 

樹「ミカさんここは私に任せて」

 

ミカにその声は聞こえていないが、ミカは口の動きから大体の内容を把握しバルバトスを軽く頷かせる。

 

樹「(音は皆んなを幸せにするもの。こんな音は!」

 

樹は武器のワイヤーをバーテックスに伸ばし複雑に絡ませる。縛り付けた糸は鐘の音を止め、その光景にいち早く気づいた風とマクギリスが斬りかかった。

 

風「ナイスよ樹!うりゃあぁぁ!」

 

マッキー「戦局の糧になってもらおう!」

 

まず風が上から大剣を押しつぶすようにかかり御霊をバーテックスの体内から押し出す。マクギリスはその機を逃さず両手の剣をX状に上から振り下ろし御霊を撃破した。

 

団長「よしこの調子で行くぞ!」

 

バーテックス達は力押しで攻めるのは得策ではないと踏んだのか後退していく

その様子を見てオルガを先頭にミカとシノと友奈、風と花凜は逃げるバーテックスの追撃に向かった。

樹も少し遅れる形で風についていき、東郷は動かずその場でライフルを構えたまま様子を伺った。

そしてマクギリスは何か策があると見て不用意に前に出ようとはしなかった。

 

風「一気に決めるわよ!突撃ぃ!」

 

ミカ「逃がすわけないだろ」

 

バル「男に後退の二文字はねぇ!」

 

ミカ達が追いかけていくとバーテックスはレオを中心にリブラ、ピスケス、アクエリアスと距離を近づけて合体した

 

花凜「アイツら合体し

た!?」

 

風「好都合ね、まとめて倒すわよ!」

 

バル「砕けろぉ!ぶるあぁ!?」

 

風の号令でバルバトスが飛び、超巨大メイスが上から叩きつける。しかし四体が合体したバーテックス

「レオ・スタークラスター」は今までのバーテックスとは強さが桁外れだった。

バルバトスの渾身の一撃ですら

傷一つ与えられないほど硬さにミカは焦りを見せていた

 

ミカ「ヤバイな、コイツ」

 

合体バーテックスは反撃として全方位に太いビームを発射し、傘を振り回すかのような動きで乱射してくる。

その不規則な動きにミカは対応したが、前に出ていた他のメンバーには直撃した。

そして希望の花も咲いた

 

マッキー「これが、厄祭戦で人類を絶滅の危機に追いやったバーテックスの本性か!

だが、戦いようはある」

 

団長「だからよぉ・・・

 

ミカ「バルバトス!?」

 

いつもの通りオルガは復活の言葉を言いかけたがバルバトスはそれすら許さなかった

 

バル「この軟弱者が!お前に戦う資格はねぇ!」

 

バルバトスはミカの操縦を無視し、左腕で獅電の足を掴み後方へ投げ飛ばした

錐揉み回転をしながらしでんは樹の近くへと倒れこみ再び花を咲かせた

 

ミカ「おいバルバトス・・・」

 

バル「ぶるあぁ!?」(なんか文句あっか!?」

 

ミカ「・・・ま、いいか」(オルガだし)

 

 

一方その頃花凜はバーテックスの攻撃のダメージがまだ残っていた。そしてバルバトスがオルガと遊んでいる隙にバーテックスは再び花凜を攻撃してきた。

 

花凜「っく・・・こんな所で」

 

マッキー「花凜、今死なれては困る!」

 

バーテックスの大砲から放たれた砲弾は花凜に向かって一直線に飛んできた。しかし前線に飛翔したバエルが砲弾を切り払い事なきを得た。

 

マッキー「無事か?」

 

花凜「アンタに心配されるまでも・・く・・・」

 

花凜は立ち上がろうとするがまだダメージが残っていてうまく立つことはできなかった

花凜は自分の不甲斐なさに歯ぎしりをしながらバエルを見つめていた。

 

マッキー「無理をするな、もう少し休んでいるといい。君の出番は私が作ろう」

 

ミカ「で、どうすんのチョコの人?アイツ相当に硬いよ」

 

マッキー「私にいい考えがある。君は奴の目を引きつけてくれ。その間に私が手を打とう」

 

ミカ「分かった、じゃあ足引っ張んないでね」

 

マッキー「ふ、無論だ」

 

まずバルバトスが正面からメイスで叩いていく。それ自体はダメージにならないが注意が向きバーテックスはバルバトスに攻撃を加えていく。

ギリギリのタイミングで回避を続けるバルバトスにバーテックスは攻撃の手数を増やしてきた。

その隙をついてバエルは合体したバーテックスの隙間隙間に剣を突き刺していく。

その部分は合体前と同じ強度でありバエルの剣でも十分にダメージを与えられた

 

マッキー「やはりここが弱点か」

 

しかしバエルだけでは攻め手の数は足りずバーテックスの傷の再生速度に追いつかない。

そこでマクギリスは彼女達に協力してもらう為演説と言う名の励ましを行った

 

マッキー「少女達よ、革命は終わっていない!君達の気高い理想は決して絶やしてはならない!

アグニカ・カイエルの意思は常に我々と共にある!

皆!バエルの元へ集え!」

 

その演説に最初に反応したのは風だ。

 

風「そうよ、樹を置いて、皆んなを巻き込んでおいてくたばるわけには、いかない!

満開!」

 

彼女が満開を発動すると神樹の結界内の根が煌びやかな輝きを放ち彼女の元へと届く。

次に見えた彼女の姿は白を基調とした羽衣を身にまといより神官風になった姿だった。

 

風「これがアタシの女子力を込めた渾身の一撃だぁぁぁぁ!!」

 

満開した彼女の大剣はする前のおよそ10倍近い大きさになっていた。にもかかわらず彼女は以前と変わらないように振るいバーテックスに怯ませるほどのダメージを与えた。

 

マッキー「これが・・・満開か。凄まじいなその力」

 

 

風の満開したとほぼ同時刻、東郷は友奈の元へと駆けつけていた。

 

東郷「友奈ちゃん!?大丈夫?」

 

友奈「平気だよ、痛たた・・・」

 

東郷は友奈をこんな目に合わせたバーテックスを許してはおけなかった。

 

東郷「バーテックス・・・許さない。満開!」

 

東郷の満開は風と少し違ったものだった。羽衣は同じだが武器が大幅に変わりまるで戦艦の主砲を連想させる八つの砲が彼女の周りに現れ足場にも船の船体のような形のものが現れる。

 

東郷「我、敵軍ニ総攻撃を実施ス

主砲副砲全砲門、発射用意。

測敵完了

誤差修正、右1度上下角3度

うちーかたー始め!」

 

彼女の砲から発射された蒼いビームはマクギリスや風の攻撃も合わさりバーテックスの体を貫き確実に効いていた。

 

 

一方後方にいた樹とオルガは・・・

 

樹「凄い・・・凄いよお姉ちゃん、東郷先輩」

 

団長「凄えよ、二人とも」

 

二人が関心して自分達も加勢しようと足を動かそうとしたそのときだった。

樹を含めて全員のスマホからアラームが鳴り響く。それは今まで姿を見せていなかったバーテックス(ジェミニ)が神樹に近づいている事を示したものだった。

 

樹「先生このバーテックス二体もいます!」

 

団長「何!?なんで今まで発見されなかったんだ!」

 

樹がデータを調べてみるとジェミニは結界内の両サイドから時速250キロで神樹に近づいている事が分かった。

更にこのバーテックスだけ全長3メートルとかなり小さく今まで見つからなかったのも不思議ではなかった。

 

団長「樹はそっちを頼む!俺はもう片方をやる」

 

樹「え、でも・・・」

 

団長「いいから行くぞぉ!俺達がやらなきゃあいつらに顔向けできねぇ」

 

樹「分かりました、やっつけたら私もそちらに行きます」

 

オルガと樹は自分の出来ることをするためお互いの場所へと駆けた。

 

 

 

マクギリス「さて、出番だぞ花凜。もう休暇は充分だろう?」

 

花凜「ええ、殲滅してやるわ!」

 

マクギリスは風達が満開した後も剣を突き刺していく戦法を取っていた。その傷口から花凜はバーテックスの奥に侵入し中で暴れ回っていた。

いくら装甲が固くとも中身までそうとは限らない。

機体が頑丈でもパイロットがやられてしまえば意味はない。

先程オルガが花を咲かせたのもビーム自体は機体の装甲で耐えられるがそれによる熱までは防げずオルガは希望の花を咲かせていた。

このバーテックスも今は花凜という発火剤が暴れまわっていて再生を維持するのが困難になっていた。

 

 

その頃樹も姉同様満開し、ジェミニを数多の糸で縛り細切れにした

 

樹「神樹様をやらせはしない!」

 

樹は簡単にバーテックスを撃破して見せたがオルガは苦戦を強いられていた。

 

団長「待ってろよ!待てって言ってるだろうが!」

 

スラスターを全開で吹かしながら獅電はライフルの弾をバーテックスに乱射していく。しかしオルガの腕では3メートル程度の走り回る標的に当てるのは困難だった。

しかしオルガがやらなければバーテックスが神樹に辿り着き世界は終わる。それだけは絶対に避けなければならない。

 

団長「くそ、くねくねと動きやがって!

っ!?」

 

オルガが次の弾を発射しようとしたがライフルから弾は出なかった。弾切れだ。

ジェミニはしつこく追ってくる獅電相手に弾切れの隙をつきこちらへカウンターの蹴りを入れてきた。

 

団長「ゔぇあああ!!」

 

体勢を崩し出す獅電。

しかしオルガにも意地がある

倒れながらもバックパックに備えていたパルチザンを投げつけ

カウンターが決まる

油断していたジェミニはかわすことが出来ず接触し転んだ。

そこにあの男がやってきた

 

昭弘「ふぅぅ!!おまえかあぁぁぁぁぁ!!!」

 

倒れたジェミニを上から押さえつけグシオンリベイクフルシティがシザーシールドを用いてジェミニを挟み潰す。その威力は御霊を粉々に砕き原型すら分からないものになっていた。

 

昭弘「すまねぇ、筋肉を鍛えてたら遅くなった」

 

団長「いや、いいタイミングだぜ、昭弘!反撃開始と行こうか!」

 

オルガと昭弘はミカ達の元へと向かった。途中樹も合流し、この戦いの決着ももうすぐだと見えてきた。

 

 

 

前線では満開した風と東郷が加わり五分五分の勝負が展開されていた。しかし五分五分では御霊を破壊することもむき出しにする封印の儀も行うのは困難だった。

 

そこに手数で勝るフルシティがロングレンジライフルを4丁持ち彼女達の手助けに入った。

 

昭弘「腕は4本あるんだよ!」

 

更にビームの振動で一時気絶していたシノも意識を戻し再びギャラクシーキャノンを発射した。

 

シノ「唸れぇ!ギャラクシーキャノン、発射ぁ!!」

 

ミカ「ゼロ距離なら!」

 

更にミカがどこからともなく見つけた対艦ランスメイスを突き刺しパイルバンカーでバーテックスの体を貫いた。

 

この攻撃を同時に受けたバーテックスは勇者達への反撃よりも自身の回復に努めていた。

 

風「チャンスね、封印の儀行くわよ!」

 

風の合図でバーテックスの周りに勇者達は立ち封印の儀を行う。

しかし出てきた御霊は通常とは比べものにならないほどの大きさだった。大気圏外にまでその御霊は存在していた。

 

団長「な、なんなんだよありゃ!?」

 

樹「お、大きすぎるよ、あんなのどうやって・・・」

 

友奈「大丈夫、御霊なんだから今まで同じようにすればいいんだよ」

 

東郷「友奈ちゃん行こう!今の私なら友奈ちゃんを運べると思う!」

 

花凜「早く殲滅してきなさいよ」

 

風「頼んだわよ二人とも」

 

樹「ここは私たちに任せてください」

 

友奈は東郷と共に御霊がある空へと飛び立っていった。

 

団長「流石にあいつらだけってわけにはいかねぇな。ミカ!行ってくれるか?」

 

ミカ「え?無理」

 

バル「縮こまってんじゃねぇ!ハアァ!!」

 

ミカは無理だと思ったがバルバトスは恐ろしい跳躍力を見せ宇宙空間へと身を飛び出した。

 

バル「ハッハー!」

 

バルバトスは上機嫌に笑い御霊を破壊していく。その姿はバーテックスから見れば勇者などではなく悪魔そのものだった

 

ミカ「今はとりあえずアンタが邪魔だ!」

 

バル「貴様の死に場所は

ここだぁ!

ここだぁ!!

ここだぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

その頃友奈達は・・・

 

東郷「ごめん友奈ちゃん、ちょっと疲れちゃったみたい・・・」

 

レオの御霊は必死な抵抗を見せ炎の球や爆炎攻撃を東郷へ繰り出していた。

数が多く避けきれないものもあり当たる内に東郷の体力はどんどん削られていった。

 

友奈「ありがとう、東郷さん。見ててねやっつけてくる!

満開!」

 

友奈の満開はシンプルなもので二つの大きな腕が出てきて彼女の動きと連動するものだった。

 

友奈「皆を守って、私は勇者になぁぁぁぁるぅ!!!」

 

東郷「・・・いつも見てるよ、友奈ちゃん・・・ミカ?」

 

ミカ「大丈夫?」

 

ミカはバルバトスの左手に満開を終えた東郷を抱えた

そして友奈は御霊に一発一発魂の叫びを込めていた

 

友奈「勇者部六箇条!

一つ、挨拶はきちんと!

一つ、なるべく諦めない!

一つ、よく寝て、よく食べる!

一つ、悩んだら相談!

一つ、なせば大抵なんとかなる!」

 

彼女の五発のパンチが御霊に直撃しあと一発殴れば終わりが見えてきた。友奈は一層気合いを入れる。

 

その時友奈はふと先日読んだアグニカカイエルの伝記に出ていたある人物を思い出す。

その人物はキングオブハートと呼ばれ自分と同じ徒手空拳を得意とした人物だ。その人物が伝記内で最後に戦った敵がふと今目の前にいるバーテックスと重なって見えた。

友奈はその人物に勇気を貰うかのように叫ぶ。

 

友奈「私は止まらない!みんなと共に前に進む!

私のこの手が真っ赤に燃える!

勝利を掴めと轟き叫ぶ!

ばぁぁぁくねつぅ!勇者ぁぁぁパァァァンチイィィ!!!」

 

その思いが届いたのかこの一発は今までの中で一番威力のある一撃だった。

御霊は砕け散りバーテックスとの戦いは終えた。

 

しかし彼女達がちゃんと帰れるかはまだ分かっていない。

 

ミカ「友奈!」

 

東郷「友奈ちゃん、お疲れ様」

 

友奈「えへへ、おいしいとこだけとっちゃった」

 

友奈もまたバルバトスの左手に入りそのまま東郷と共に眠りについた。

 

ミカ「スラスターのガスは残りわずか、どうするか・・・」

 

バル「小僧、アレをやるぞ」

 

バルバトスの目が光りアレという言葉で提案が来る。阿頼耶識で繋がっていたミカはその言葉だけでもなんのことか分かった。

 

ミカ「ああ、やるぞバルバトス。オルガやみんなの元へ行こう」

 

バルバトスは近くにあった御霊の破片をまるでサーフィンをするかのように乗りこなし大気圏へと落ちていく。

 

 

 

団長「どうなった!?ミカ達は?」

 

花凜「あ、あれ!」

 

花凜が指差した先に見えたのは友奈達を抱えたバルバトスだった。残り少ないスラスターと樹の糸でバルバトスを受け止めた。

樹は最期の力を使い果たしたのか糸が消えたと同時に眠りに入った。

 

団長「ミカァ!」

 

風「友奈!東郷!大丈夫!?・・・そうね・・・あ、あれ?なんか疲れちゃったのかな・・・zzz」

 

風もまた安堵感から緊張の糸が途切れ眠りに入った。

彼女達の眠りと共に樹海化も溶け始める。

 

団長「ミカ、おかえり」

 

ミカ「うん、ただいま」

 

 

 

 

花凜「バーテックスと交戦を終えました

負傷者4名、至急霊的医療班の手配を願います。

なお、今回の戦闘で12体のバーテックスは全て殲滅しました!

私たち 讃州中学勇者部一同が!」

 

春信「うん、おめでとう。そしてお疲れ様花凜」

 

花凜「え?その声兄貴?」

 

花凜が大赦に連絡を入れ出てきたのは花凜の兄だった。花凜は少し動揺しながらも必要な事を言った後たわいもない話をし、電話を切ろうとした。

 

花凜「じゃあ・・・

 

ね、と言いかけた時春信は被せるようにこう話した

 

春信「花凜、満開は使ったのか?」

 

花凜「ううん、使いそびれちゃった。まぁ私はあんなものに頼らなくても戦えるんだから」

 

春信「・・・うん。そっか、花凜は強いもんな・・・じゃあ・・・」

 

 

そこで花凜との電話は切れる。

春信は何か怒りをぶつけるかのように歯を噛み締め近くの壁を殴る

そこに村田が来た。

 

村田「言わなくて良かったっすか?家族にくらい本当のこと・・・

 

春信「言えませんよ!こんな・・・こんなこと・・・っく・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ゆゆゆ 6話は特に面白く作れる気がしないので飛ばします
後今回マクギリスが花凜に言った「今死なれては困る」というのは実はかなりギャグ寄りの発言です


バーテックス一体一体丁寧に描写しようと思いましたが、ゆゆゆ メモリアルブックにバーテックスの情報があまりにも無さすぎたので断念しました

「たかがバーテックス一体、バエルで押し返してやろう」
的な展開も考えましたが没案になりました

後特に関係ないけどオルライブはいいぞ






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彼等の行方

もっと書こうかと思ったけど投稿頻度は大切なので一旦切りました

補足
バーテックスとの決戦後病院での検査の結果、満開した四人に身体の異常が見られました
結城友奈 味覚が感じられない
東郷美森 左耳が聞こえない
犬吠埼風 左目が見えない
犬吠埼風 声が出ない

なおこの症状は現在詳細を調査中ですが肉体に医学的な問題は無く、じきに治るとのと思われます(大赦調べ)


さてみなさん

 

ついにバーテックスを撃破した鉄華団と勇者部は大赦からの褒美で慰安旅行を楽しんでいます

 

綺麗な海を泳いで楽しんだ後に美味な海の幸を食す

これ程の贅沢はなかなかありません

 

しかしそんなお楽しみの彼女達を付け狙う新しい敵が現れたました!

 

その者は自らの目指した世界の扉を開くため彼女達を付け狙ってくるではありませんか!

 

果たしてオルガ団長は、かの敵を撃退し彼女達を守ることはできるのでしょうか!

 

それではガンダムファイト!

レディーゴー!

 

 

 

村田「お疲れっす〜団長殿」

 

春「御役目ご苦労様です、イツカさん」

 

長い時間車で走り散々道を間違えながらもオルガ達は大赦が慰安旅行の為に提供された旅館へと足を踏み入れた。

オルガはたった二人だけの出迎えに少々不満気になった。

 

団長「おいおい王様の登場なのに

出迎えが野郎二人だけかよ」

 

村田「すまないっすね〜。大赦はバーテックスの攻撃によるダメージのケアとか保証手当とかで色々と忙しいっすから。

この旅行もそんななかなんとか行うものっすからね」

 

友奈「王様って?」

 

団長「ああ?俺に決まってんだろ」

 

村田「そうっすよ結城ちゃん、団長殿は大赦から見ればバーテックスを全て撃破した勇者達を率いた王様っす」

 

友奈「おー王様!」

 

風「なんか足元すくわれそうな王様だけどね」

 

花凜「すぐ人を庇う王様がどこにいんのよ・・・」

 

団長「俺に決まってんだろ。団員を守んのは俺の仕事だからよ。それは王様って呼ばれても変わることねぇよ」

 

東郷「でも先生は自分の事もしっかり守れないと大将として相応しくないですよ?」

 

団長「分かってるよ、でも仲間を守れない奴が王様になる資格はねぇと思うんだ。

俺はお前らがいたから止まらず進み続けて来れたんだ。

・・・サンキューな」

 

オルガはやや照れ臭くなりながらも皆に礼を言う。友奈達は素直に受け止めたが若干一名照れていた。

 

花凜「な、何を急に・・・」

 

春「照れてるみたいだね花凜は」

 

花凜「照れてないってば!ば、バカ兄貴・・・」

 

風「え、花凜ってお兄さんがいたの?」

 

東郷「初耳ですね」

 

春「おっと、自己紹介がまだでしたね。私は花凜の兄で春信と申します」

 

村田「じゃあ自分もするっすね」

 

村田「「忍者村田!

ここに見参っす!」」

 

村田は忍者の術として影分身を披露し二人で挨拶する

いつものウザさが倍増したこの模様をオルガはなんなんだよコイツは、と愚痴をこぼしながら

 

団長「俺は、鉄華団団長・・・

 

ミカ「オルガはいいよ」

 

団長「・・・はい」

 

友奈「東郷さん!忍者!忍者だよ!本物の!」

 

東郷「凄いですね、二人とも見分けがつかない」

 

村田「「フハハハハ!凄かろう!

しかも分身からまた分身できるっす!」」

 

村田「「「「さあどれが本物か見分けられるっすか?」」」」

 

自信満々に村田はオルガ達に勝負を挑んでいく

普通の相手ならば見分けられる事はなかった。

しかし勘のいいミカにはあっさりと見抜かれた。

 

村田「な、何で分かったっすか?」

 

ミカ「別に普通でしょ。なんか一人だけ影が少し濃かったから」

 

団長「凄えよミカは」

 

友奈「凄いねミカ!私には何が違うのか分からなかったよ」

 

ミカ「そう?よく見れば友奈でも分かるよ」

 

村田「っく・・・忍者に対して影が濃いとはこれ以上ないくらいの屈辱っす。もっと影を薄くしてから現れるっす」

 

ドロンという音と白い煙と共に村田は姿を消した。

正直あのウザさ全快の喋り方を治さねぇ限り薄くならねぇじゃねえか、などと思いながらもオルガ達は海へ繰り出した

そして・・・

 

 

 

団長「何やってんだぁミカー!!」

 

風「ちょっとミカー、はしゃぎすぎよ」

 

ミカ「俺がはしゃいでる?」

 

バルバ「ハッハー」

 

慰安旅行宿泊先の旅館に着き颯爽と近くの海辺でミカ、というよりバルバトスはサーフィンを楽しんでいた。

 

風「ミカってば顔では分からなかったけど本当は一番楽しみにしてたみたいね」

 

団長「多分違うぞ・・・」

 

風「じゃあ私達も水着に着替えてくるから」

 

風達が水着に着替えに行ってる間オルガは考え事をしていた。

バーテックスは全て倒した。

その結果俺は王になった。

地位も名誉もそして金も手に入った

マクギリスと同列に並べられるのは少々気にくわないが、鉄華団(勇者部)のアイツらが笑顔でいられて飯もたらふく食えて血生臭い戦いもしなくて済む。

コイツはこれ以上ない上がりじゃねえのか?

 

少女「あら?あれはバエル・・・ではありませんわね」

 

団長「ん?誰だお嬢さん?」

 

オルガが考えをまとめたとほぼ同時、後ろから風と同年代に見える少女がバルバトスをバエルと見間違えていた。

何処と無く始めて会った時のクーデリアのようなお嬢様という感じだったが服はジャージと残念なものだった。

 

少女「あら?人に名を尋ねる時は先ずは自分からではありませんか?」

 

団長「ああ、オルガ・イツカ。鉄華団の団長だ」

 

ミカ「だめだよオルガ」

 

パンパンパン

 

団長「俺は鉄華団団長、オルガイツカだぞ・・・」

 

少女「な、ななな何ですの!?この危険な殿方は・・・」

 

オルガがいつもの挨拶ではなかったのでミカは発砲しオルガはいつもの挨拶をし直した。

その発砲音の音を聞きつけたて水着に着替えた勇者部の面々が呆れた顔でオルガの元へと来た。

勇者部はオルガのこの状況に慣れているがこのお嬢様は慣れていなかったためミカの行動に腰を抜かした。

 

友奈「ミカー?また先生がなんかしたの」

 

ミカ「別に大した事じゃないよ。なんかオルガが変だったから」

 

「そうかもな・・・お嬢さんも脅かしてすまなかったな」

 

少女「い、いえいきなりだったので・・・あら三好さんではありませんか。お久しぶりですわ」

 

花凜「えーと・・・誰?」

 

自信満々に久しぶりとお嬢さんは花凜に言い放つが当の花凜は覚えがなかった。

お嬢さんは勢いを挫かれズテンと転ぶ

 

弥勒「わ、私を忘れましたの!?

弥勒家当主の娘にしてあなたのライバルであるこの弥勒夕美子を!?」

 

花凜「・・・ああ。そういえば訓練時代にアイツによく付きまとってた・・・

 

弥勒「な、マクギリス様をそんな呼び方するなんて!マクギリス様とバエルに対する冒涜ですわ!」

 

彼女はどういうわけかマクギリスとバエルに対して崇拝しているようだ。オルガは呆れて言葉も出なかった。

マクギリス様?あいつがそんな呼ばれ方されてんの結構変じゃねぇか

せいぜいマッキーとか言うあだ名の方がいいんじゃねぇの?

 

団長「(何なんだよこのお嬢さんは)」

 

そんな時問題であるマクギリスも来てしまった

 

マッキー「おや、随分と騒がしいと思っていたがやはり君か」

 

弥勒「ま、マクギリス様!?お会いできて光栄・・・じゃありませんわね。私のこんな格好ではマクギリス様に対して無礼ですわね。待っていてくださいね、すぐに準備してきますわー!」

 

彼女は捨て台詞をはいて旅館の中に向かった。

 

マッキー「全く、困った女だ」

 

マクギリスも呆れた顔をして彼女を追いかけるように旅館に向かった。

 

団長「何なんだよあのお嬢さんは」

 

花凜「私が勇者候補の訓練時代にアイツによく付きまとってた子よ。大した能力じゃなかったからライバルっていうのはよく分かんないけど」

 

風「ライバル、ライバルねぇ

ムフフ」

 

花凜「な、何よ風。その不気味な笑いは」

 

風「いや〜花凜もなかなかどうして」

 

団長「どういうことだ?」

 

友奈「え?何、何、どういうこと?」

 

オルガと友奈はことの次第が分からず同じ様な疑問を浮かべていた。

そこをすかさず樹がフォローした

内容は弥勒はマクギリスに恋していて花凜は恋のライバルと思っているというものだ。

 

ミカ「花凜はチョコの人の事好きなの?」

 

花凜「は、はぁ!?バカ言わないでよ!そんなこと・・・そんなことないってば!」

 

花凜は必死に言葉で否定していたが顔は赤くそまった。オルガ達はそんな花凜の反応が面白く追求した。

 

風「あれれ〜?今の動揺は何かな〜」

 

団長「良いんじゃねえの?別に素直に認めても・・・

 

花凜「だからそういうんじゃないってば!」

 

花凜はオルガの追撃の言葉につい手が出てしまいビンタをかまし希望の花が咲いた

 

 

 

風「まぁ花凜弄りはこのくらいにして折角海に来たんだし遊び尽くすわよ〜」

 

ミカ「ねぇオルガ、次は俺何で遊べばいい?何を楽しめばいい?」

 

団長「決まってんだろ。行くんだよ」

 

ミカ「何処に?」

 

団長「俺たちの本当の海にな

・・・よーし、何処まで泳げるか勝負すっぞ!」

 

風「勝負?良いじゃない。瀬戸の人魚といわれた私が格の違いを見せてあげるわ」

 

団長「おお、意味はよく分かんねぇけど結構凄そうじゃねぇか」

 

樹「(自称です)」

 

花凜「風がやるなら私もやるわよ。私が優れてるってこと見せてやるんだから」

 

マッキー「では私も参加しよう。バエルを持つ私が泳ぎでも君達より上だということを示そうか」

 

団長「おいおい、あのお嬢さんはどうした?」

 

マッキー「彼女は今私の為の夕食を作ってくれている。君達と共に食事をできないのは残念だ」

 

団長「なんだよ、結構好かれてるみてえじゃねぇか。花凜も負けんじゃねぇぞ」

 

花凜「また殴るわよ」

 

団長「すいませんでした」

 

花凜にしっかりと謝罪した後オルガ、ミカ、マクギリス、風、花凜の五名は勝負に燃える。

 

友奈「頑張れー皆ー!」

 

風「水泳は得意よ。幼稚園の頃5年くらいやってたわ」

 

花凜「甘いわね。私は10年はやってた」

 

マッキー「私は300年・・・

 

団長「俺は・・・昔素潜りで海底遺跡を見つけたことがあるぞ」

 

ミカ「皆何言ってんの?」

 

お互い冗談交じりの舌戦が繰り広げられる中ミカは一人冷静でいた。

ミカにとってこんな戦いは意味のないものである。

 

ミカ「どうせ決着がつけば一位以外はどうだっていい話だ」

 

ミカの言葉に場に緊張が走る。

最早これはただの勝負ではない。

それぞれの信念をかけた戦いだ。

 

風「言うじゃないミカ、やってやるわ!」

 

マッキー「300年だ、私はこの時の為に体を鍛え続けた。君達やオルガ団長、そして三日月。

私はこの戦いでも負けるわけにはいかないのだよ」

 

団長「ハッ、その言葉。俺のクロールでへし折ってやるぜ」

 

マッキー「いいだろう、受けて立つ」

 

オルガとマクギリスの間に電撃が走る。今ここに負けられない戦いが始まった。

 

団長「行くぞぉぉ!!ヴェアアアアアア!!!」

 

オルガの泳ぎは決して綺麗なものではなかった。腕をオモチャのように同じところしか回さず、バタ足も無駄が多いように見えた。

しかしオルガの止まることのない心が泳ぎの速度を上げる。

オルガ以外には真似できないこの泳ぎこそが水泳の常識を変える。

フォームや波など関係なく己が力を研ぎ澄まし、進み続ける事でこの退屈な世界に嵐を起こすことができる

足蹴にされ良いように扱われれ、遊ばれるばかりのオルガの新しき力が野に放たれる

そうなればオルガの勝ちは決定する。

 

マッキー「そうだオルガ団長!もっとお前の力を見せろ!

見ろ!純粋な力だけが輝きを放つ舞台にヤツらは圧倒されている。お前と私が力を見せることで俺の正しさは更に証明される!」

 

マクギリスのフォームはオルガとは対照的で綺麗で美しいという言葉が似合うものだった。

お手本のようなその泳ぎはミカや風達を魅了しつい泳ぎをやめる程のものだった

 

ミカ「凄いな、チョコの人。あんなのオルガにだってできない」

 

しかしこれは綺麗さを示す勝負ではない。ただひたすら、意地汚くとも遠くへと向かう勝負。

マクギリスも奮闘したがオルガの圧倒的な泳ぎに体力の限界を迎えた。

 

マッキー「ハァ、ハァ・・・見事な泳ぎだ」

 

風「ってアレ、先生何処まで言ったのかしら?」

 

マクギリスに後から追いついた風と花凜がふと疑問を聞いてくる

 

花凜「どうせ「俺は止まんねぇからよ」とか思いながら泳いでんじゃないの?多分自分が勝った事分かっててもまだ泳ぎ続けるんじゃない」

 

風「いや流石にそれは・・・ありえるわね、まぁそのうち帰ってくるでしょ」

 

風と花凜は呆れ気味に見えなくなったオルガの事を案じていた。

 

 

 

 

団長「(俺は止まんねぇからよ、お前らが止まらない限りその先に俺はグゥゥ!!」

 

花凜の言葉通りオルガは自分が勝ったことに気付かずまだ泳いでいた。そんなオルガを止めたのは海上に乗り上げた何かだった。

オルガはぶつかった衝撃で希望の花を咲かせた後、その物を確認した。

それは存在するはずのないものだった。

 

団長「コイツは、モビル・・・アーマー?」

 

オルガが目にしたものはモビルアーマー「ハシュマル」

かつてイオク・クジャンという愚か者がモビルスーツを迂闊に近づけた事で起動した殺戮の天使である。

オルガは泳ぎの疲れも忘れすぐさま浜辺に戻りマクギリスにモビルアーマーの事を話した。

モビルスーツが一般的に普及している世界ではないとはいえ、迂闊に近づければまた起動して自分達の脅威になることを恐れたからだ。

大赦はこのモビルアーマーの解体を慎重に始めるがそれはまた別の話である。

 

 

 

 

風「樹ー!右90度回転、三歩前よー!」

 

多少のいざこざがあったものの彼らの遊びは続き今はスイカ割りの真っ最中である。目隠しをした樹が棒を持ちスイカへと徐々に近づいていく。

 

団長「よーしそこだ!そのまま振りかぶって止めんじゃねぇぞ!」

 

オルガの合図で樹は棒を上に上げる。その構えはまるで大剣を振り下ろす姉のようだった。

声こそ出ないが気合の入った樹の棒振りはスイカに直撃・・・しなかった

 

団長「だからよぉ、止まるんじゃねぇぞ」

 

振り下ろした棒はすっぽ抜け丁度対角線上にいたオルガの顔面にクリーンヒット!

いつも通り希望の花を咲かせる

 

樹がオルガの声を聞き目隠しを外してオルガの事を心配そうに見つめる。声が出なくとも樹の言いたい事はオルガには空耳で聞こえた気がした。

「ごめんなさい!大丈夫ですか」と

 

団長「心配すんな、このくらいなんてこたぁねぇ。お前らが入院中にいた頃との昭弘達とのトレーニングに比べればな」

 

実の所友奈達が戦いの後検査の為病院に入院してた頃、オルガは特にこれといった仕事もなく暇を持て余していた。

その暇つぶしとして行ったのが昭弘やミカの筋トレに付き合う事だった。

最初は疲れからか何度も希望の花を咲かせていたが友奈達全員が退院した頃には、CGSでモビルワーカー動かしていた頃よりも身体が鍛えられていた。

最も持ち前の打たれ弱さは相変わらずだが。

 

団長「ま、今度は気をつけろよ」

 

樹に棒を渡しオルガは景気良く大声で樹の事を応援してやる

その姿は始めて妹の手料理を楽しみにする兄貴のようだった

 

団長「さあ、景気良くいこうじゃねぇか!」

 

「「頑張れぇー樹ー!」」

 

オルガや皆の声援を前に樹は棒を振り上げ一拍おく。そして見えないなか精一杯の速度で棒を振り下ろしスイカを見事割ってみせる。

 

マッキー「見事なスイカ割りだ。まるでアグニカの伝記144ページに載っていたバエルが要塞バルジを叩き斬るかのようだった。

500アグニカポイント贈呈しよう」

 

マクギリスのアグニカ譚に樹は話す以上に笑顔で答えた。

その天使のような微笑みにマクギリスは満足な顔を浮かべた。

 

その後東郷がサンドアートで高松城を作ったり、バルバトスのメイスで山崩し等をしてオルガ達は今までの戦いの疲れを遊び尽くして癒した。

 

 

 

そしてオルガはこれまでの戦いを感傷に浸りながらミカと共に海を眺めていた

 

「ねぇオルガ、ここが俺たちの目指した場所なの?俺たちの本当の居場所」

 

「ああ、ここもその一つだ」

 

「そっか、綺麗な海だね」

 

「ああ・・・なあミカ。俺はちゃんと王様って奴にふさわしくなれてるか?」

 

「どうしたの急に?」

 

「俺は今まで散々吹いてきた。何度何度と挫けそうになりながらも進み続けて遂に王様になることができた。

けどよ、俺が目指した王様は本当にこんなものなのかちょっと疑問に思っちまってよ」

 

「そんなのよく分かんないよ。でも今のオルガは心から笑ってるように見える」

 

「俺がか?」

 

「うん、俺達でオルガが目指した場所に全員でたどり着くことができたから。

皆で何気ない日常を守ることができて金も地位も手に入ってホッとしてるみたい。

今のオルガは地球での仕事をキッチリ終わらせた顔してる」

 

「そうかもな・・・ずっとそうなんだよな。仲間を間違った場所に連れてきちまったんじゃないか、そんな迷いは思い上がりだった。

お前が連れてきてくれた。

みんなが連れてきてくれた。

俺の言葉を実現するために俺達はここまで進み続けてきた。

なら俺があいつらにしてやれることは迷わねぇこと、そしてこの日常とあいつらの笑顔を守ってやることだ」

 

「そうだね」

 

「変わらねぇなお前は」

 

「オルガは?」

 

「俺か?俺は俺だ。

もう命を切った張ったする戦いは終わった。

これからはあいつらにビスケットの妹達みたいな普通の学園生活を楽しませてやりてぇからな。

これからは苦難にも勇ましく立ち向かう姿じゃなくてバカみたいに笑っていられる日常を俺はあいつらと作りてぇ。

そしていずれは・・・

 

「ミカー!先生ー!夕飯の支度ができたってー」

 

「おう、今行く!」

 

そうだ、俺達が今まで積み上げてきた物は全部無駄じゃなかった

これからも俺達が立ち止まらない限り、道は続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ゲストキャラ紹介
弥勒夕海子

大赦元本家の家系の人間
弥勒家はもともと大赦に連なる名家だったが200と30年くらい前にとある事情で没落し分家扱いを受けている

そんな彼女は家の復興の為に花凜と共に五人目の勇者候補争いに参加していたが特に目立つ功績はなかった

だが訓練時代に彼女を指導していたマクギリスに媚を売り、バエルの威光という大赦内の大きな権力をどうにか使って弥勒家を再建しようとするがマクギリスはそんなつもりは全くなかった。
そしてマクギリスの紳士的な態度や振る舞いに魅せられ、後に権力抜きでマクギリスに惚れ込み慕っている。

性格はプライドが高く目立ちたがり屋なお嬢様で功績(マクギリス関連)を上げようとする気概は誰よりも強いのだが、能力は凡庸でありうまくいかないことも多い

運動神経はそこそこあるが、頭が弱くポンコツ気味であり、そういった部分が本人の熱い気持ちに対して足を引っ張ってしまっている。
口調も「~ですわ」と丁寧だが、割と過激になる事も多い。

現在は大赦内の権力絡みには関与していないが、名家の名残だった別荘を改築した旅館を経営している。
鉄華団と勇者部はこの旅館に慰安旅行することになった



彼女の活躍をもっと見たい方は「楠芽吹は勇者である」を読もう
この作品は鉄華団の様に足蹴にされていい様に扱われながらも地を這う様にして必死に生きる雑草達の物語です

なお終盤の台詞に主人公、楠芽吹が「全部今に繋がっていた。無駄なものなんて何一つなかった」
と書かれており自分はそこにオルガ団長の影を見ました

この小説に出てくる彼女達の出番もちゃんと考えています
(ゲスト扱いだけど)

次回は冒頭で書いた新たなる敵の正体が判明します
勘のいい人は気づいているかもしれませんが既にこの小説にガッツリ出ています



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エデンをこの目に

「なんだこりゃ?エビって奴か?」

 

「いや蟹でしょ」

 

「なんだよ・・・」

 

食事に向かったオルガ達が最初に見たのは蟹という物だった。

この赤くて足が6本あってハサミみたいな手が付いているコイツは本当に食えるのか正直思いもしない。

昔ラフタさんにイサリビがエビみたいだと言われたことがあったが、よくよく見ればイサリビには似ても似つかなかった。

 

「オルガ、なんかこれ硬いんだけど本当に食べられるの?」

 

「ああミカ、それはね・・・

 

「食えるに決まってるだろ、見てろよミカ。こいつの食べっぷりを」

 

オルガは風の言葉を遮り行動で示した。

正直蟹の食い方なんてよく分かんねえ。けどミカが期待の眼差しで俺を見てる。

あの目に移る俺はいつだって最高に粋がって、カッコいいオルガ・イツカじゃなきゃいけねぇんだ。

ガリィ!ボリィ!・・・

だからよぉ・・・止まるんじゃねぇぞ

 

「ちょちょっと!?」

 

まともに身を取り出さず殻ごと食べたオルガはあまりの不味さに無言で部屋を立ち去った後、盛大に吐いた。

 

「すみませんでした」

 

食事中に嫌なもん見せそうになったオルガは団員達に謝罪するが、特に気にも止めた様子もなく食事を続けていた。

 

「オルガ、大丈夫?」

 

「問題ねーよ、それにやっと分かったんだ。コイツは殻を剥いて食うもんだって事を」

 

「当たり前じゃん。こんな硬いの口に入れるのはオルガだけだよ」

 

そう言ってミカは教えられてもいないはずなのに器用に殻を壊し、身を食べていく。

食べ方が分からないミカは自分で考えて食べる場所を本能的に感じ取ったようだ。

 

「ミカお前・・・」

 

「変わった味だな・・・チョコレートの方が美味しい」

 

ちゃんと食べたがあまり口に召さなかったのかミカは蟹を食べるのをやめ、懐に持っていたチョコレートを食べようとする

 

「ダメですよミカ。出された御食事はちゃんと食べないと」

 

「そうよ、せっかくのご馳走なんだからもっと味わって食べないと」

 

「だって魚みたいな匂いして苦手だし」

 

「確かにお前魚苦手だったしな。でもよ、これは俺達が進み続けて手に入れた飯なんだぜ?だからよぉ残すんじゃねぇぞ」

 

「・・・分かった。オルガ言うなら食べるよ」

 

渋々とミカはチョコレートと共に蟹の身を頬張る。ミカの表情の変化は分かりづらいが少しだけ笑顔になった様に見えた。

 

 

 

その頃マクギリスは・・・

 

「マクギリス様、私の入れたミルクティー如何でしたか?」

 

「マッキー、私の入れた紅茶の方が美味しいでしょ?」

 

「甲乙つけがたいな、だが・・・アルミリア、君の入れてくれた紅茶の方が私の好みだ」

 

マクギリスはアルミリア、夕海子と共に優雅な一時を楽しんでいた。

そしてマクギリスは時を待つ。

彼の計画の進行は既に第1段階を終えようとしていた

 

「いい味だ、全ての従業員達にもこの茶渡して来てくれたか?」

 

「うんマッキー。みんな喜んでたよ」

 

「私のミルクティーの方がもっと喜ばれてましたわ」

 

「私の方が凄かった!」

 

「いいえ、私の方が貴方の3倍は喜ばれてましたわ!」

 

お互いに譲れない思いが交錯していく。しかしこの状況はマクギリスにとって本意ではない。

 

「フ、二人ともそこまで言うのであればお互いの茶を飲みあうといい。それでハッキリするだろう」

 

マクギリスの提案は分かりやすいものだった。互いの事をもっと知るために互いにの茶を飲む。

平和的な勝負が今幕を開け、そしてすぐに終わる

彼女達が感想を言い終える前に彼女達は眠りに落ちた。

 

「・・・これがモンターク商会新開発の睡眠薬の力か、我ながら恐ろしいものだな」

 

マクギリスはアルミリアと夕海子の入れた茶に睡眠薬を仕込ませ、旅館の従業員達と彼女達を眠らせることに成功した。

これこそがマクギリスがこれから行う計画の前段階の終わりである。

次の計画が本番であり彼はこの時の為にあらゆる準備をしてきた。

マクギリスは事前に睡眠薬を無効にする薬を飲んでいたため効果が現れなかった。

 

「モンタークの売り上げの半分も使ってしまうとは想定以上だったが、俺の求める新世界、エデンを見る為には必要な金だった。

・・・石動、全ての同志達に連絡を、ついに立ち上がるべき時が来たと」

 

マクギリスは計画を実行に移す為石動を含むギャラルホルンの同志達を集結させる。その場所は旅館近くの山の麓付近だった。

 

「大人にはなりきれないものだな。これ程にまで心が躍るとは・・・」

 

マクギリスは不敵な笑みを浮かべながら石動達の元へと向かおうとする。しかしあの男が邪魔をしに来た。

 

「マクギリス!皆を眠らせてお前は何をしようとしているんだ!?」

 

「ガエリオ・・・」

 

マクギリスの前に立ちはだかったのは親友であったガエリオだ。

 

「答えろ!マクギリス!」

 

「答える必要はない・・・が、お前にだけは教えてやろう。

私はかつてアグニカ・カイエルですら成し遂げられなかった理想を成し遂げようとしている」

 

「マクギリス・・・?意味が分からない。理想?お前は何を・・・」

 

「アグニカはかつて見ようとしていた。

天使達が入浴して作り出すエデンを。

アグニカはその光景を一目見ようと様々な手を行った。

しかし結果は失敗に終わった。その原因は行為を良しとしない者達の妨害にあった。

私は彼と同じ道を歩まない為に事前にこちらから仕掛けた。

その結果が今の光景だ。

旅行に相応しい劇的なイベントだろ」

要約(風呂覗きに行くから邪魔するな)

 

「マクギリス・・・お前はアルミリアや弥勒がいながら、そんな事を・・・

たとえ親友でもそんな行動は許される筈がないんだ!」

 

ガエリオは拳を握りしめマクギリスの顔を目掛けて殴りにかかる。しかしマクギリスはその攻撃を読みいなした後足を引っ掛け倒れこむ様に転ばせる。

 

「邪魔だガエリオ」

 

「っくぅ! お前は妹や弥勒の好意を利用してぇ!マクギリスゥ!」

 

ガエリオは激怒する

親友の企みを

妹を見捨てて他の女の所に行こうとしたことを

許せなかった

ガエリオの怒りに任せた攻撃をマクギリスは軽くかわし反撃を加えていく。

それでも負けじとガエリオは立ち上がり何度だって食らいついていく。

 

「弥勒はお前に恋い焦がれているんだぞ!妹も今のお前なら安心して任せられると・・・」

 

「彼女達については安心するといい。彼女達の幸せは保証しよう」

 

「う、嘘だ!嘘だぁ!マクギリスゥゥゥ!!!ガハァ・・・」

 

激昂するガエリオをマクギリスは叩きのめし、鳩尾に拳を入れ込む。

その衝撃でガエリオはその場から崩れて気を失った。

 

「ガエリオ、しばらく眠っているといい。その間に全ては終わる」

 

 

 

その頃オルガは・・・

深い眠りに入っていた。

食後に弥勒から渡されたミルクティーを一人飲んでいたためである

 

「ぐっすり眠ってるわね」

 

「先生ってば一番遊んでたからね」

 

彼女達は飲み物に盛られていることなど知らず、疲労と腹が膨れた事が原因だと思っていた。

 

「さて、私達はお風呂に行きましょ。あ、ミカも一緒に入る?・・・なーんて冗談・・・

 

「いーよー」

 

「えぇ?ミ、ミカ?冗談だからね、本気にしないでね、ね?」

 

「そう?俺は別にみんなと一緒でも構わないけど」

 

「私が困るの!」

 

風は仏頂面なミカの慌てふためく顔を見たくてからかったが、逆に風がおちょくられた。

結局別々に風呂に入ることになったが後に彼女達はこの選択が間違いであったことに思い知るだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




エデンに!エデンに全てを捧げたのだ!悔いなどない!



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夢は夢だからこそ美しい

次から新章へと移るために構成を考え、あらすじを書き溜めていたので(2019年は)初投稿です
ここまで遅くなってしまったのは仮面ライダー1号が殺されてその復讐にガエリオとマクギリスが争うゲームをやっていた際もあります
これからは月二回くらいの更新を頑張ります



 

「・・・遅かったですか」

 

マクギリスの策略に気づき茶を飲まなかった三好春信は眠っているオルガの部屋へと足を運んだ。

熟睡してるオルガを起こすため春信は両肩を掴み激しく揺らす

 

「団長さん!起きてください!団長さん!」

 

しかしその程度ではオルガは起きてくれなかった。春信は困った顔をして深呼吸をした後決意を決めた様な表情をする

 

「こうなれば私だけでもマクギリスさんを止めに・・・

 

「おっと、自分を忘れちゃあ困るっすね」

 

「村田さん?今までどこに・・・」

と、疑問を投げ打ったと同時に村田はオルガの額に手裏剣を投げつけ希望の花を咲かせた。

しかしそんなことは気にせず村田は春信の疑問に答える

 

「ずぅっと春信殿の近くにいたっすよ。気づかれなかったのは自分の影の薄さ故っすね」

 

「影?・・・あ」

 

春信は直感的に見抜いた。村田は自分の影に潜み続けていたことを。

 

「まぁそんなことはどうでもいいっす。さっさと三人で止めに行くっすよ、ねぇ団長殿」

 

「・・・ぅう、いきなり何しやがる」

 

「長々と説明する時間はありません。進みながら説明しますよ」

 

こうしてオルガ、村田、春信の三人はマクギリスの野望を阻止するため動き出すのであった。

 

 

 

その同時刻・・・

 

「石動、今から私は山の頂上で神樹への祈祷儀式を執り行う。誰一人ここを通すな」

 

「はっ!」

 

マクギリスの計画は石動を含む部下全員には偽物の計画を伝えられていた。

この旅館近くの山の頂上から望遠鏡を使い、バレないように覗く事が目的だ。

マクギリスの本当の計画を知っているのはガエリオを含む四人だけ。

ガエリオは先程マクギリスの手により倒された為、実質三人で石動達の警備を突破しマクギリスを止めなければならなくなった。

 

その頃旅館にある露天風呂にて

 

「ふぅ〜いい湯だね東郷さん」

 

「えぇ景色もいいしゆっくりできそうね」

 

「はぁ〜生き返るわ〜」

 

友奈、東郷、風が風呂の感想を言いつつ極楽極楽と露天風呂を楽しんでいた。

 

「ミカー?そっちはどう?」

 

「うん、いいんじゃない。お風呂ってのは気持ちのいいもんだね。オルガも来ればよかったのに」

 

ミカは一人風呂に少々飽き飽きしつつも楽しんでいた。

 

「本当よね〜、しかもここ作ったばかりですごく綺麗だしね〜」

 

この露天風呂は元々あったものではなく大赦が勇者達の為に作った風呂だった。

労いのために作ったといえば聞こえはいいが、実態はマクギリスがバエルの威光を使って権力で作られたものである

マクギリスが覗きの為に作られたとも知らず彼女達の至福の時間は続く。

 

 

 

「っ、まさかマクギリスがそんな計画を立てていたとはな」

 

春信からマクギリスの計画を知ったオルガは強い怒りを覚えながら旅館を出た。

マクギリスが鉄華団の団員である友奈達を狙うのはオルガにとって許せないことである。

共に戦っていた仲とはいえ、今回の一件には通す筋なんてものは最初からない。

団長としての役目を果たす為オルガはマクギリスの元へと進もうとしていた。

 

「戦力差は10倍以上ですね。どうします団長さん?」

 

「決まってんだろ、正面から殴り込みだ」

 

「マジっすか?いやいやいやここは作戦を練って・・・

 

「いいから行くぞぉ!」

 

村田の制止を聞かずオルガは警備の前に足を踏み入れる

 

「オルガ団長?申し訳ありませんが准将の命によりここは立ち入り禁止です」

 

「あぁ?アンタら自分が何してるか分かってんのか?オラァ!」

 

オルガは有無を言わさず警備員に殴り込みをかける。

反撃として警棒を持った何人かがオルガへと襲いかかる。

 

「ああ、もう仕方ないっすね!」

 

「抵抗しないで下さいよ!」

 

しかし春信と村田も加わりここにいた警備員6名のうち3名を気絶させて戦闘不能にした

 

「手加減はしねぇ、死にてぇ奴だけかかってこい!」

 

「ひ、ひぃぃ ・・・」

 

オルガの怒声にビビった警備達は腰を抜かしながら逃げていった。

 

「逃がすわけねぇだろ」

 

「なら自分が行くっすよ。団長殿達はマクギリス殿を追うっす」

 

「分かった、ここはアンタに任せるぞ」

 

「了解っす!」

 

 

 

村田が逃げていった警備員を追う展開になったが村田はただ追うことだけに専念した。

見つかってしまった以上その場に増援を呼ばれる可能性があるが、増援を呼ばれればこちらとしては作戦勝ちである。

一箇所に留まり引き付ければ他の守りが薄くなるのは必然であり彼は追っ手と言う名の囮役を引き受けたのだった。

 

「さてさて今宵は大サービス。忍者としてあるまじき目立ちっぷりを見せてやるっすよ!」

 

その大声と共に取り囲まれた村田の顔はどこか自信に満ち溢れた顔だった。

印を結び八人に分身した村田は五人が五方向から迫る警備員達を足止めし残りの三人が包囲の中心に集まる。

そして一人が掌を広げ残り二人が手をかざす。

掌の上には螺旋を纏った球体が作られていく。

 

「知ってっるすか?厄祭戦が起きる少し前に世界的大人気になった忍者漫画を。

今から見せるのはその代表的な技の更に応用。

目ん玉開いてとくと見るっすよ!」

 

『風遁・螺旋丸』

 

「螺旋を描き続けて圧縮されていく風は進化の過程で重力波を生んでいくっす」

 

言葉通り螺旋丸を中心に重力波が発生しまるで極小のブラックホールを生み出すかのようだった。

竜巻に巻き込まれるような形で警備達は空を舞い上がり村田の分身も同様だった。

台風の目と化した螺旋丸は少しづつ広がっていくように見えた。

 

「さあ、これでフィナーレ・・・ここまでっすか?」

 

刹那、螺旋丸が消失し村田はその場で倒れた。コンセントが抜かれた電化製品のように突如の事だった。

 

「やっぱ慣れないことはするもんじゃないっすね。・・・後は頼んだっすよ、団長殿」

 

そこで彼の意識はとぎれた

 

 

 

「見つけたぜマクギリス!」

 

「ほう、下の騒動は君達か?だが君達の相手をしている時間はない」

 

七分目辺りでオルガ達はマクギリスと鉢合わせた。今にも殴りかかりにいく勢いでオルガはマクギリスに怒りをぶつける。

 

「そっちになくてもこっちにはあるんだよ。団員に手出そうとしているアンタを見逃すわけねぇだろ。落とし前はキッチリつけさせてもらうぜ!」

 

オルガはマクギリスに対して真っ直ぐと走りだす。しかしマクギリスしか目になく、上から迫ってくるヘルムヴィーケリンカーに気づかなかった。

 

「ヴェアアアアアア!!!」

 

「団長さん!?」

 

リンカーの足に潰されながらも希望の花を咲かせたオルガだったが、ずっと踏み潰された状態では復活しても動きようがない。ならばと春信はデスティニーを呼び出しリンカーと対峙する。

 

「石動さん!貴方は騙されてるんだ。話を聞いて・・・

 

「准将、ここは私が」

 

「すまない」

 

石動は春信の言葉に聞く耳もたずマクギリスを先へと向かわせた。

デスティニーの大剣アロンダイトとリンカーのバスターソードが鍔迫り合いを交わし、接触回線で春信は石動を説得しようとする。

 

「石動さん、貴方ほどの人なら分かるでしょ!?マクギリスさんの理想は貴方が求めているものとは違うものだ!」

 

機体のパワーはデスティニーの方が優っておりリンカーは自然と後ずさる。

その影響で足元にいたオルガは復活し少しくたびれながらも山を登り、マクギリスを追っていった。

 

「例えそうだとしてもここで私が准将を見限ればこれまで我々が進んできた道はどうなる!?」

 

「それは・・・」

 

石動の言う事も納得はできないが理解はできる。今ここでマクギリスがオルガに止められれば、石動が今までマクギリスの為にしてきた事が全て無駄になってしまう。

例え間違った理想だとしても彼にはもう戻るという選択肢はなかった。

 

「いや、それでも!」

 

石動の覚悟を理解した上で春信は改めて彼と対峙する。

一旦大剣同士の距離を離し仕切り直す。その後デスティニーの肩に付いているビームブーメランを二本投げる。

その方向は一本はリンカーに向けられたものだったが、もう一本は見当違いのものだった。

 

「どこを狙っている?」

 

リンカーが重武装MSとはいえ真正面の攻撃を避けるのは容易かった。やや右側に来たブーメランを左に避けその勢いで胴切りをしようとした。

が、その動きも春信の読み通りだった。見当違いに放って戻ってくるブーメランを春信は手動で遠隔操作して本物のドラグーンのように的確に動かしていった。

その行き先はリンカーの肩部分にできた僅かな装甲と装甲の隙間だった。

想定外の事態に石動は一瞬だが怯む。その僅かな隙をつき春信はデスティニーの大剣でフレームごとリンカーの左腕を切り裂く。

 

追撃にリンカーの右肩関節をデスティニーは左手に付けられたパルマフィオキーナで狙う。

しかしリンカーもただではやられまいと頭に付けられた二本の電撃角でデスティニーの左腕を狙い付けた。

その間はほぼ同時でありパルマと電撃角の攻撃はほぼ同時に起きた。

その結果の光景は至近距離から繰り出されるエネルギーが生み出す大爆発だった。

お互いの機体はその衝撃で吹き飛び木をなぎ倒しつつ進んでは止まった。

 

爆発による影響は機体に大したダメージを与えるものではなかったがパイロットは無事ではすまなかった。

互いにショックで頭を強く打ち流血を流す。その中でも石動は信念をかけてまだ進み続ける。

 

「准・・・将・・・」

 

もはや体は限界の筈である。

それでも石動は止まろうとしなかった。

意識も朦朧とするなかスラスターも時間差爆発で壊れ、歩いていく。

そして彼は10歩ほど進んだ後意識を失った

 

「石動さん。今の腐敗した大赦を正せるのは貴方達のような新しき風なのかもしれませんね。

・・・ここで貴方を死なせるわけにはいきません」

 

春信はリンカーから石動を引きずり出しデスティニーの手に乗せ空へと飛んで行った。

 

 

 

「オルガ団長、私と共に来ないか?」

 

「は?」

 

マクギリスの奴が俺の事を誘ってきやがった。

そういや前にもミカが誘われたことあったっけな。けど今回はと言うか、今回は全然考えが分からねぇ。

コイツは一体なんでこんな事言ってんだ?

 

「君も男ならば彼女達が作り出すエデンを一目見ようと思わないかね?」

 

・・・成る程な。奴の言ってることは男としちゃこれ以上ないくらいのアガリじゃねぇか。

その為に手を組むってのは分からなくもねぇ。

けどここでコイツと手を組むのは筋が通らねぇ。

さっきまで俺がやってきたことを全てを無駄にして協力してくれた二人や団員達を裏切ることは俺にはできねぇ。

 

「アンタ状況分かってんのか?俺は落とし前をつけに来た、最初にそう言ったよな?

手を組む気なんてねぇんだよ」

 

俺はドス効いた声拳を鳴らしつつマクギリスに言い放つ。するとマクギリスはわざとらしく高笑いし

 

「いいだろう、拳で受けて立つ」

 

と構える。どうやら覚悟はできたみてぇじゃねぇか。

 

「いくぞぉぉ!マクギリス!」

 

ここに彼らの決戦の火蓋が切られる。

しかしオルガ達の妨害で既に時間も経過し、彼女達は既に風呂は上がり布団にこもって恋バナで盛り上がっていた事を二人は知る由もなかった。

 

二人の殴り合いによる戦いは互角とも呼べるものだった。しかしその互角の状況にお互いは驚いていた。

 

「まさかアンタがここまでやるとはな!」

 

二人の殴り蹴り、殴られ蹴られの攻防が続くもお互いなかなか倒れる様子はない。

今のオルガは団長としての意地で立っている。簡単に倒れて希望の花を咲かせるつもりはない。

 

「まだ倒れないか!?俺の行く手を阻むのならば今度こそ殺してやろう!」

 

「イかれてんな!アンタは!」

 

「正気ゆえだ!」

 

自分を殺そうなどとおかしな言動をするマクギリスを見て、オルガは全てを粉砕するかのようにマクギリスの顔に強烈な一撃を浴びせる。

その一撃は弾丸のように強くそして儚い。

が、それでもマクギリスは倒れない。

それどころかタカが外れ懐に入れていた拳銃を取り出しオルガへと放つ。

 

「オルガァァァァ!!!」

 

「ぐぅ・・・うぇああああ!!!」

 

拳で受けて立つと口約束を破ったマクギリスに対し、オルガも負けじと拳銃から三発放ち一発が当たる。

ほぼ相打ち気味に見えた光景だったが先に倒れたのはオルガの方だった。

双方が受けたダメージはお互いが思っているよりも大きく、マクギリスはふらつきながら山の頂上にある展望台へと足を進ませる。

 

 

「ハァ、ハァ、あと少し、あと少しで俺の望んだ新世界。

エデンの扉がもうすぐ・・・もうすぐ開かれるのだ・・・」

 

息をチラつかせながら展望台が見えてくる。しかしここでもまたあの男が先回りしていた。

 

「ガエリオォォォォ!」

 

ヴィダールの仮面を被ったガエリオとマクギリスが頂上で弾丸が行き交う。

その光景はお互いデジャブあるものだ。

 

「ぐっ・・」

 

「まだ死ぬな。お前を勇者と信じ共に戦い、慕ってくれた彼女達の為に」

 

ガエリオは今にも意識を途切れさせそうなマクギリスを支えながら言い放つ。

 

「お前がやろうとしていた事は今までの彼女達の思いを踏みにじり、裏切る事なんだ。

お前ならそれくらいのことは分かるだろ!?」

 

「・・・言われずとも分かっていた。いや・・・分かっていながら裏切ろうとした。

だが、彼女達の好意を無視しなければ俺は前へ進めなかった。

アグニカ・カイエルを越えようと俺は・・・

 

「ふざけるな!そんな事で超えられるとお前は本当に思っていたのか!?お前の信じるバエルとアグニカとはそんなものじゃないだろ!

お前が欲しかったその理想は間違った理想だ!」

 

「理想に、正解や間違いがあるのか?」

 

「そんな事も分かっていなかったのか!お前は!」

 

かつてギャラルホルンを変えようとしたマクギリスの理想はやり方こそ間違っていたが思想こそ間違いではなかった。

そしてマクギリスは理想と呼ばれるものを他に知らなかったが故にガエリオの言う事を理解できなかった。

 

「ガエリオ、俺は本当は・・・」

 

「それ以上言うな!お前が言おうとしている事が俺の想像通りなら言えば俺は…許してしまうかもしれない!」

 

「俺は・・・友でいたかっ・・・

 

 

その言葉は途中で途切れたが、マクギリスが言おうとしていた言葉はガエリオに届いてしまった。

 

 

後にマクギリスファリド事件と呼ばれなかったこの一連の騒動はオルガイツカを含む4名の手によって幕を閉じた。

 

一時は大赦の信用を失いかけたマクギリスだったが石動の意思を受け継いだ三好春信の必死の弁護により地位を奪われる事なく三日間の謹慎処分で済んだ。

これには真実を知ってなお彼を許したアルミリアや夕海子の後押しもあったと言われる。

 

男が誰もが夢見るエデンの光景は夢幻として描かれ続ける。

夢は夢だからこそ美しい。

それはとても現実から遠く、光の速さでも追いつけそうにもない。

それでも男達はいつかは、またいつかはとその夢を見続けていた。

 

 

その頃マクギリスを慕っていた元革命軍達はモンターク店を放り出しマクギリスを擁護すべく大赦へと向かっていた。

そして肝心のモンターク店には革命軍ではない一人の青年が独り言を呟いていた。

 

「さてさて、金髪オーナーさんがなんか大赦に捕まり、店長の石動さんは大怪我か。私としてどうなんだ?俺は正直どっちでもいいけど。

バーテックスは全て倒された。だからもう勇者は必要ない。

そう俺は思ってたんだが、私は違うか。

バーテックスは所詮兵でしかない。将を倒さねば戦は終わらぬ・・・か

 

ああ分かってるよ。私も俺もこの件とはもう関わる気は無いんだろう?

我々が私のように理解力があるなら既に私もいないだろうか。

そしたら俺も消えるのかな?

 

けどどうせ消えるなら最後にでっかい花火上げて俺は消えたいもんだね。そん時は俺は俺として動かせてもらうよ、私よ

 

・・・んん美味え!なんで我々はチョコレートっていう美味いもんまで消そうとするのか俺にも私にも分からねぇな」

 

 

 

 

 

 

 

 




ラストに出てきたモンターク店の青年の台詞はほぼおかしいですが、彼の言ってる「私」と「我々」を別の言葉に置き換えると多分意味が分かるでしょう



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サブストーリー イオク様

イオク様お下がりください!


P.D.325年 後にマクギリスファリド事件と呼ばれる事件の終盤、ダインスレイヴが火星で戦っている2機のガンダムへと放たれた。

確実に仕留めるつもりだった攻撃だったが二機のガンダムは大破しながらもまだ動こうとしていた。

 

「う、嘘だろ?なんなんだよ、こいつら本物の悪魔かよ!?」

 

「うろたえるな!所詮は死に損ない、この私が引導を渡してくれる!」

 

「イオク様!?」

 

予想外の事態にうろたえる一般兵士をセブンスターズクジャン家当主「イオク・クジャン」がグレイズで留めを刺しにいく。

イオクが向かった先には茶色を基調としたガンダム、グシオンリベイクフルシティがいた。

 

「おのれ!死に損ない!」

 

グレイズのソードがグシオン の装甲の一部を弾き飛ばす。

ダインスレイヴの直撃を受けたグシオンにはもう反撃する力は残ってないと思い、勝利を確信したイオクは高らかに宣言する。

それが自らの命を絶つ事と知らずに。

 

「このイオク・クジャンの裁きを受けろ!」

 

「!、その名前!うらぁぁぁぁ!おまえかあぁぁぁぁぁ!!!」

 

イオクが名乗りを上げた途端、グシオンのパイロットが家族の仇を見つけたかのように激昂し最後の力を振り絞ってグレイズを押し倒す。

更にグシオンのシールドをシザースへと変形させ挟み潰そうとする。

 

「な、何だと!?」

 

「おまえがぁぁぁぁ!!!」

 

「あっ・・・あっあっ私はこんなところでぇぇぇ!!!」

 

「イオク様!」

 

イオクの危機に部下も動きグシオンを仕留めた。が、時すでに遅くイオクはグシオンに殺された。

 

 

 

私は、私は何をやっているのだ

こんな無様な死に様をしてクジャン家の名に泥を塗ってしまった

私は、私は・・・

 

「・・・めよ・・・目覚めよ、イオク・クジャン」

 

「な、何者だ!?」

 

一面白い空間にイオクの精神体だけがあった。イオクが自らの死を悔やんでいる時どこかしら声が聞こえてきた。

 

「私は人に天の神と呼ばれるもの。

イオク・クジャン、君に私の世界を救ってほしい」

 

「神が私に?」

 

「そうだ、君はかの凶悪なモビルアーマーにも臆せず立ち向かった勇敢な人物だと知っている。

君のその熱い心意気を買って私は私の世界に紛れ込んだモビルアーマーを退治してほしいのだ」

 

「私を頼りにしてくれいるのか?」

 

「ああ、君にしか出来ない事だ。無論タダではとは言わん。君がモビルアーマーを倒す事に成功した暁には君をクジャン家当主として蘇らせる事を約束しよう」

 

「な、本当か!?そんな事が出来るのか?」

 

「出来る。私は神なのだから」

 

イオクは聞こえてくる神の提案を鵜呑みにした。自分の熱き想いが神にも届き、クジャン家当主として蘇るチャンスを手に入れた。

 

「受けてもらえるか?」

 

「勿論だとも、私には誇りがある!死んだまま汚名を被るわけにはいかない。

モビルアーマーを撃破し汚名を挽回してみせる!」

 

「そうか、期待しているぞイオク・クジャン・・・」

 

そう言いイオクと神の会話は打ち切られる。

その神の真意を知らないまま。

 

「そうだ、愚かな人類殲滅の足がかりとして期待している」

 

 

 

 

 

 




イオク様お下がりください!
イオク様なので汚名を挽回しようとしても仕方ないね
天の神、一体何者なんだ・・・

世界の破壊者!オルガイツカ!
って2次創作だけど仮面ライダー自体は鉄血漫画版の後書きにいるんだよね
作者が二期最終巻で最高最善の魔王っぽくなってるから仮面ライダー自体は関係してるってはっきり分かんだね

漫画版はアニメ版と違って台詞回し等が個人的に好きです
カルタ様の死に様はこっちの方が自然に見えるしタカキも頑張ってるし、止まるんじゃねぇぞがネタにならないポーズになってるしタカキも頑張ってるし、マクギリスがミカをスカウトするシーンが変わって良くなってるし、バエルが最終戦で3本目の剣を使うしバエルの剣が折れるシーンが本編より納得行くものになってる
何より進むごとに作者の技量が上がってるのがわかるマン


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ガンダムサブナック

前回までのあらすじ
火星で発見されたパンドラボックスが引き起こした「スカイウォールの惨劇」から10年。
我が国は、東都、西都、北都の3つに分かれ、混沌を極めていた。
そして今地球を滅ぼす程のエネルギーが眠るパンドラボックスがついに開かれた!
その力を操る地球外生命体・バーテックスの前に勇者達が立ちはだかる!
(注意、上記のあらすじはほぼ関係ありません)

本当のあらすじ
マクギリスファリド事件と呼ばれなかったあの事件から数日後、平和となった勇者部の前に文化祭の準備という名の壁が立ちはだかる。
いつものようにモンターク店で少し変わった日常を楽しむ勇者達。
そんな彼女達の前にモビルアーマーが立ちはだかる!
そしてモンターク新店長を名乗る謎の青年万丈士、彼の目的は一体何なのか!?


マクギリスファリド事件と呼ばれなかったあの騒動から二日後、夏休みも終え日常へ戻ったオルガ達はある問題を抱え混んでいた。

 

「やっぱ今から作るのは無理か?」

 

「無理ね、残念だけど」

 

勇者部の本来の目的であるバーテックスとの戦いは終わった。だが勇者部は終わらない。

11月に控える文化祭に向けて一同は集まっていた。前はミカの提案である自分達が作った小麦でうどん作りを考えていたが、バーテックスとの戦いで時間がとられ栽培期間は実質なかった。

 

「言い出してすぐにやれれば今頃収穫できてたんだけどね」

 

「場合が場合だ、仕方ねぇ」

 

「まあ過ぎた事は仕方ないわよ、今からやって来年の文化祭にやりましょう」

 

「いいんじゃねぇの?」

 

「え?でも来年って事は風先輩は卒業・・・

 

「なーに言ってるの友奈、私は勇者部名誉部長として居座るつもりだからね」

 

「そっか、じゃあ今年の文化祭どうっすか?」

 

一同は悩んだ顔をして考え込む。そしてふと東郷が言い出す

 

「では私の家の秘蔵のコレクションを発表するのはどうでしょう?」

 

「何それ?」

 

「かつて国を守り戦った英霊たちの活動記録まとめです」

 

「おっと今アグニカ・カイエルの話をしなかったか?」

 

「は?」 ブンッ!

 

何処からともなく現れた大赦で謹慎中のはずのマクギリスをオルガは一発ぶん殴る。

 

「アンタどのツラ下げて来た?」

 

「その件についてはすまなかった。ところで先程アグニカカイエルの話をしなかったか?」

 

「してません。私の言った英霊達は厄祭戦よりも前の英霊です」

 

「つまりはアグニカカイエルの先祖の話という訳か」

 

「アンタ何言ってんの?」

 

「残念ですがアグニカさんとは関係ありません

 

「そうか、残念だ」

 

と残念がるマクギリスに対し村田と春信が追って来た。

 

「私達の監視を掻い潜ってこんな所まで来ますか、貴方は」

 

「大人しく大赦に帰ってくれれば今回の件は不問にするっすよ?」

 

「すまなかった、アグニカカイエルの話と思い、つい抜け出してしまったよ」

 

「さ、戻るっすよ」

 

マクギリスはアグニカの話ではなかった為か素直に二人の言うことを・・・聞かなかった。

 

「だがせっかく手に入れた自由を手放す気はない」

 

「あくまでも抵抗する気ですか?」

 

「君達こそバエルを持つ私に逆らうか?」

 

「貴方は謹慎中の身です。これ以上罪を重ねないでください」

 

「バエルを持つ私はそのような些末事で断罪される身ではないよ。さらばだ」

 

マクギリスはバエルの力を見せつけてこの場を逃れようとしていた。窓から身を投げ出しマクギリスはバエルに乗り込む。

それから空を飛び、その後を村田と春信は追いかけていった。

隣の部屋からは「バエルだ!」「アグニカカイエルの魂!」などの生徒の歓声声が上がっていた。

アグニカカイエルの布教活動は確実に進んでいるようだった。

しかしそんな事などオルガ達には些細な問題であり文化祭の話は続く。

 

「と、とにかくその英雄譚ってのは候補の一つだ。ほかにないか?」

 

「じゃあ分かりやすくアニメとかになってる方がいいな〜」

 

「成る程な世間に見せつけるなら分かりやすい方がいいか。けどそれだけじゃあ俺達は王にはなれねぇ」

 

「何言ってるのオルガ?」

 

「俺は文化祭を通じて学園の王にもなる。そうすりゃ地位も名誉も全部手に入れられるんだ。

コイツはコレ以上ないくらいの一勝負だ。もっとインパクトあるものを考えねぇとな」

 

「インパクト・・・ですか?」

 

「ああ、何かないか?」

 

オルガが行う文化祭はただの文化祭ではいけない。更に上を目指す為には学園で最も良い評判を集める必要がある。

 

「だったら俺達がやってきた事を劇としてやれば良いと思う」

 

「勇者部の活動記録まとめってこと?」

 

「いや、違うな。ミカが言いたいのはバーテックスとの戦いのほうだろ。俺たちの戦いはその英霊とか言う奴らと負けずと劣らねぇだろ。

そのまま世間に見せつけるのは禁止されてるが、劇として扱うなとは言われてねぇ。

この案は勇者部としても鉄華団としてもコレ以上ないくらいの名案じゃねぇのか?」

 

「確かに良い案ね。やるじゃないミカ」

 

「別に、普通でしょ、それよりオルガ、腹減った」

 

キュピ(オルガの胸ぐらを掴む音

ダン!(振りほどく音)

 

「ああわかってるよ!飯連れてってやるよ!途中にどんな事が待っていようとお前らを連れてってやるよ!」

 

「ああそうだよオルガ、連れて行ってくれ。次は何を食べれば良い?何を味わえば良い?オルガが奢ってくれるならなんだって食ってやる」

 

 

 

 

その後なし崩しでオルガ達はモンタークへと足を運んだ。

しかし・・・

 

「なんだよ、開いてねぇじゃねぇかよ」

 

気合い入れてモンタークへとたどり着いた一行だったがマクギリス不在の今、モンタークは休日日となっていた。

しかしミカはそんな事など御構い無しにオルガに言い放つ。

 

「オルガ、食べさせてくれるんだろ?」

 

「勘弁してくれよミカ・・・」

 

ミカは止まる事をしようとしない。だがこの状況下ではモンタークでうどんを食べる事は不可能だと思われていた。

彼が来るまでは。

 

「前髪が特徴的な銀髪で褐色の肌をしてワインレッドのスーツを着た背高めの男・・・見つけたって、あれ若い・・・?」

 

後ろからオルガと同年代と見られる青年がオルガを指差して話しかけてきた。全体的にサバサバした雰囲気だが彼の目はオルガに敵意を向けてるようだ。

 

「誰なんだよアンタは?」

 

その問いに対し男は腕を上げ、指を空へと向け高らかに宣言する。

 

「俺は天の道を行き、全ての頂点に立つ男。

万丈士だ!」

 

「アンタ何言ってるの?」

 

「うわぁ・・・あそこまでのナルシスト初めて見たわ〜」

 

ミカや風の辛辣かつ呆れた態度に彼は気にすることもなく自分の言いたい事を言い放つ。

 

「なんでアンタがそんなんでいるのかはこの際どうでもいい。奪った金は耳を揃えて返してもらうぜ」

 

「は?」

 

オルガは彼の行っていることが理解できなかった。

意味の分からない自己紹介や、お金を泥棒した覚えはこれっぽっちもない。

が、初対面の奴に泥棒呼ばわりされ、オルガはこの状況に困惑する

 

「しら切る気かぁ!」

 

挙句彼はこちらに殴りかかってきた。しかしそんな真っ直ぐに敵意をミカは先手を打ち銃を一発放つ。

威嚇射撃で肩を狙った一発を彼は間一髪のところでかわして見せる。

 

「あれ?外れ?」

 

「っ、チャカまで持ってるとはどうやら泥棒に間違いなさそうだな」

 

「待ってくれ!俺は泥棒なんて真似はした覚えがねぇ!」

 

「そうだよ、先生はそんなことしないよ!」

 

オルガと友奈は必死に彼の言葉を否定する。見に覚えのないことで殴られるなんてたまったものではない。

 

「本当か?」

 

「ああ。俺は強くてクールで度胸もあって、最高に粋がってカッコいい王様、オルガイツカだぞ。

盗みなんて卑怯な真似はしねぇ」

 

「何言ってるのよ?盗みなんて真似はしてないけど強くはないでしょ」

 

「え!?」

 

「クールとかって柄でもないでしょ」

 

「カッコいいって自分で言うのか?正直カッコ悪いぜ。

・・・だがお前の事は大体わかった。俺が知ってるオルガイツカじゃねぇみてえだな」

 

といい去りそうになったがオルガは青年を止める。

 

「待てよ、人のこと泥棒呼ばわりして去る気か?この落とし前アンタどうつけるつもりだ?」

 

「・・・めんどくせぇな」

 

「あ、お前状況分かってんのか?俺は・・・

 

「オルガ、俺腹減ったんだけどさっさと食わせて」

 

オルガと青年の話が長くなりそうなの見込み、ミカはオルガの腕を掴み力を込める。

 

「痛い痛い痛い!離しやがれ!」

 

オルガの必死の抵抗でミカは掴んでいた手を離す。

 

「なんだ少年、腹減ってるのか?なら詫びとして一杯作ってやるよ。

俺は・・・モンターク店長代理だからな」

 

 

 

青年は閉まっていたモンタークの扉を開けカウンター側につく。その後手際良くうどん調理の準備をする。

 

「さてさて、調理を始めようか」

 

包丁捌きや麺の茹で方等に無駄が一切見られず、一人で常人の三倍分ほど働いていた。

その流れは演舞を披露するかのようだった。

 

「ゾクゾクするねぇ」

 

鼻歌を歌いながら万丈は仕上げの茹でに入る。

 

「ねぇ、まだなの?」

 

ミカは不機嫌そうにうどんの到着を待っていた。今にも厨房に入り込み調理途中のうどんにかぶりつきそうな眼光で見つめるが、彼は臆せずミカをなだめる

 

「待ってろよ。美味しい物を食べるのは楽しいが、一番楽しいのはそれを待っている間だろ?」

 

「そういうもんか?」

 

厨房からは出汁のいい匂いが漂ってきている。その匂いこそが彼が言いたいことだった。

 

「いい匂いだ。友奈もそう思うだろ?」

 

「え?私?」

 

唐突に友奈は彼に呼ばれ驚いた顔をする。友奈には料理をしている彼との面識はないはずだが、彼は何故か友奈を知っているようだった。

 

「友奈?・・・ああそっか。君は俺の知ってる友奈じゃなかったな」

 

「どういうことです?友奈ちゃんのお知り合いなのですか?」

 

「私は・・・分かんないかな。多分初めて会ったと思うよ」

 

勇者部一同にも鉄華団にも彼を知る者はいなかった。

 

「大した話じゃないよ、車椅子のお嬢さん。

まぁ言ってしまえば俺の同志によく似た子の名前も友奈だったってこと」

 

「似てる奴に間違えたって事か?」

 

「そゆこと」

 

「友奈ちゃんによく似た友奈ちゃん・・・まさか生き別れの姉妹とか!?」

 

「えー?そんな覚えないげどな〜。でもそんなに似てるって言われると気になるな〜」

 

「会えるよ。会おうと思えばいつでもな」

 

「ふぅ〜ん」

 

友奈や東郷は彼の言葉を軽く流したがミカだけは彼の言葉の意味をちゃんと理解していた。

彼が知っている友奈はもうこの世にいないという事を。

ミカはどこか重い顔をしていた。

 

「・・・しゃあ!出来たぜ」

 

そんなミカの感傷を消すかのように七人分のうどんが運ばれてくる。

漂ってくる匂いが近づいてくるにつれてミカは無意識に舌なめずりをする。

 

「あれ?なんか花の匂いがするような・・・

 

「そう、山桜。その意味は純潔。

おばあちゃんが言っていた。花は全ての女性を輝かせる。そして美味しい料理とはさりげなく粋なものってね」

 

アサガオ、オキザリス、鳴子百合、ヤマツツジと花の香り通わせるうどんに彼女達は普段と違う楽しさを感じていた。

 

「俺はモンタークをあの金髪さんから受け継いで新生モンタークとしてのスタートを切る。その為の新しいうどんなんだが気に入ってもらえたかな?」

 

「良いんじゃねぇの?なぁミカ?」

 

「おかわり」

 

各々が香りを楽しみながら食べている中、ミカは特に香りを気にする様子もなくおかわりを要求してきた。

 

「はっはっは、良いじゃないの。食べるという字は人に良いと書く。

よく食べる子はそれだけで良い子だって分かる」

 

万丈はミカの食べっぷりに満足気に笑いを浮かべおかわりを取りに行く。

更に腹を満たそうと楽しみにしていたがその小さな夢はあの音によって消える

 

テレレンテレレン

テレレンテレレン

と彼女達のスマホからはもう聞くはずもないであろう樹海化警報のアラーム音が部屋へと鳴り響く。

その音に対し全員が困惑した顔を浮かべる。

しかし樹海化はそんな彼女達の事など知る由もなく世界へと広がっていった。

 

「おかわりおまた・・・あれ、どこ行ったんだ?」

 

そして樹海化の中何故か万丈は平然とうどんのおかわりを持ってきていた。

万丈は辺りを見回し、店の外にも目を配ったが特に樹海化された事に気にもせず部屋へと戻り一人うどんを食べていた。

 

「んんー!うめー!やっぱ俺の作ったうどんは最高だ!

・・・あれ?おかしいな?俺金取られた覚えないのになんであんな発言したんだっけ?

んん〜?大きな星がついたり

消えたりしてる。あはは、大きい!彗星かな?いや違う、違うな。

彗星はもっとバァーって動くもんな

じゃああれは何だ?あれはバエル・・・

っ!いかんいかんまたあの症状か。こんなもんを体に入れてるから精神がおかしくなって幻覚なんか見るんだ」

 

 

彼が見ていたのは厄祭戦の記憶。それはおばあちゃん達から聞いただけの言伝の記録だった。

だが彼は体感している。大赦が腐敗していく様を体感している。

それでも彼は大赦を変えようとはしなかった。彼自身もまた大赦が作り出した腐敗の象徴なのだから。

 

少し落ち着いた表情でうどんを完食し終えた後、万丈は村田へと連絡を取った。

 

「もしもし、村ちゃん?バーテックスが攻めてくるには早すぎるんじゃないの?

ん、例のモビルアーマーが起動した?そ、大体分かった。人が起こした災厄なら俺が動いても問題ないよな?ないよね」

 

強引に決めつけた万丈は奥にしまいこんであった未使用冷蔵庫の扉を開けた。その中はなんと地下へと続く隠し階段だった。

先へ進んでいくと現れたのは青を基調とし砲撃戦仕様のガンダムフレームだった。

 

「ガンダムサブナック、いやカラミティ。まさかまたお前を使うことになるとはな。

まぁ人が起こしてしまった災厄は大赦の穢れである俺が鎮圧しないとな。

そうだろ、蓮ちゃん・・・

ガンダムサブナック、万丈士!行くぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




新キャラ紹介
万丈士
以前マクギリスにチョコの青年と比喩されていた人物。
自分を天才だと思い込んでいる天才
およそ二ヶ月前にモンタークに入社し天才的な料理センスで店の副店長にまで登りつめていた。
石動が現在病院送りの中一人モンターク店を切り盛りしている
本編ではまだ明かしてないけどアグニカ大好きマン

ミカの銃を初見で避ける
友奈という名前と何かしらの繋がりがある
樹海化の中普通に動き自らを大赦の穢れと称する
精神が不安定であり日常的に幻覚や記憶障害を起こしている
おばあちゃんっ子
名前からして某世界の破壊者と関係してるかもしれない
ついでに火星からの侵略者で地球を滅ぼそうとしている奴の遺伝子とか持ってるかもしれない
ガンダムフレーム(カラミティ)を所持しており以前使った発言がある
蓮ちゃんという名前とどこか親しげな雰囲気である

といったことから彼の正体は・・・一体何者なんだ
てかオルガ機をこんなよく分からないオリキャラに乗せるとか正気の沙汰じゃねぇぞ!
一つヒントを出すなら彼は人間ではありません

次回予告 「真実の入り口」

「愚かにも程がある」
「撃っちゃうんだよなぁ!これが!」
「ぶるるああああ!!!」
「デスティニーならこういう戦いも出来る」
「モビルアーマーとはバーテックスが対勇者様に作り上げた機械仕掛けの天使だ」
「これいらないからあげる」
「なんか似てない?台所の黒い奴に?」
「借りるよ」
「私だけ新たな精霊なしって…どういうことなのよ」
「行ってビット!」
「会いたかったよ〜わっしー」


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バエルだ!アグニカカイエルの魂!

今までの弱い自分とはお別れし、クランク二尉を手にかけた罪深き子供を討つことができたので投稿しました

あと2月1日投稿せずサボりました、やはり書くのおっそいなぁと自負しています
土管からコンテニューしたり鉄パイプを膝で折ろうとして失敗したり、うどんの研究をしていたり、くめゆ(防人組)をどうにか本編にうまく絡めようと考えていたためです。(絡められるとは言っていない)

あと万丈、あんたいい加減にしろよいい加減・・・って思ったので次回はフルボッコにする予定です




どうもどうも
私は全ての頂点に立つ存在、地球外生命体のバーテックスです

何故我々バーテックスが人類を滅ぼそうと考えたか知りたいと思うけど人は多いことでしょう。しかしそれを語るのはまた今度の機会にしましょう

さてさて今回のあらすじは我々バーテックス12体を倒し学園生活を謳歌する勇者部と鉄華団の前にモビルアーマー「ハシュマル」が立ちはだかる!
って内容です

このモビルアーマーを起こしたのは愛されない馬鹿ことイオク様っていう愚かにもほどがある人ですね
そもそもイオク様がこの世界にきてしまったのは我々の生みの親である天の神って奴の仕業なんだ。
あと厄祭戦を引き起こしたのは人間の仕業だ
実を言うと詳しいことは私も覚えていませんがね〜

そもそもモビルアーマーって奴は300年前の厄祭戦で我々が人類に攻め込んでいた時、モビルスーツを見つけたのが始まりです
このモビルスーツって奴は我々にとって厄介な存在になりそうだったので我々が手を加えてモビルアーマーという殺戮兵器に変えたのだ!ハッハッハ!

だがこのモビルアーマー融通が効かなかくて困りましたよ
たった一人の勇者を始末するために辺り一面広がる牧場ごとビームで焼き払って、罪のない豚や牛等の家畜も滅ぼしました
流石にあれは我々でもちょっと引きました

さらにさらに、我々が人類に攻め込んでいる時に我々もろともビームで人類を滅ぼそうとするから手に負えない
全く一体誰がこんなもんを作ったんだ?・・・我々だったな。ハッハッハ

では話を戻しましょう
こんな危険なモビルアーマーが目覚めてしまったがバエルお兄さんはどこか楽しそうな表情でモビルアーマーを見つめている
果たしてバエルお兄さんは何を考えているのか!?
本編をどうぞ

次のあらすじ紹介は誰にするかはまだ考え中だ
ではまた会おう。ちゃろ〜



「これは!?」

 

樹海化警報が鳴り辺り一面花弁に包まれて現れた神樹の結界。

その光景にここにいる全員が困惑、疑問等の声を上げていた。

 

「どういうこと?だってバーテックスは全部倒したんじゃ?」

 

「いいや違う。これはあの時と同じ感覚だ」

 

風の疑問にミカがポツリと呟くと遠くから咆哮が鳴り響きそれとほぼ同時にこちら側へとビームが放たれる。

 

「っ不味い!伏せろぉ!」

 

オルガの叫びに一同が伏せる。更にオルガは自らの獅電を盾代わりとして呼び出し団員達の盾になろうとした。

 

しかしオルガ達へ放たれたビームとはまた別方からビーム攻撃がぶつかり合い、爆発を起こしてお互いのビームは消しあった。

 

「な、なんだ!?何処からの砲撃だ!?」

 

オルガの疑問を答えるかのように来たのは春信が乗るデスティニーとマクギリスが乗るバエル、妙にやつれた顔をした村田の三人だった。

デスティニーの背中にはモビルアーマーと同等クラスのビーム砲を装備している。

オルガはデスティニーが放ったものだと思っていたが実際は違うものであった。

 

 

 

ビームが放たれる少し前、オルガ達とはまた別の場所にて、カラミティに乗った万丈とそれを心配そうに見守る村田の姿があった

 

「いいっすか?使えるのはバズーカだけっすよ。ビーム兵器は勇者の子達にも被害が及ぶ可能性が高いっすからね」

 

「分かってるってば。でも・・・

 

万丈は村田の警告を完全に無視してビーム発射スイッチに手をかける。

 

「撃っちゃんだよなぁこれが!」

 

「まっ!?」

 

放たれたビームは水平線の彼方へと消えていくようだった。しかしこのビームこそが敵のビームをかき消したビームだった。

 

「何やってるっすか!?モビルアーマーが撃って来なきゃ神樹が大きく傷ついて・・・

 

「撃つと分かったから俺も撃ったんだぜ?そこ勘違いすんなよ」

 

万丈の自分勝手だが結果だけは出す行為に村田は深く溜息をつく。

 

「全く、なんでこんなのを大赦は大事にしてるっすか」

 

「当たり前だろぉ?俺は凄くて!最高で!天才だからだ!

それにあの事件の生き証人を簡単に手放すとは思えないよなぁ!これが!」

 

新しいおもちゃを手にした子供のようなテンションで万丈はカラミティを動かそうとする。しかしカラミティが動くことはなかった。

 

「な、このバカモビルスーツ!もうパワーがねぇ!?

誰だよこいつの整備してなかったのぉ!?

・・・俺だったわ」

 

「馬鹿っすか?」

 

「馬鹿とはなんだ!馬鹿とは!?大馬鹿と呼べ!」

 

「・・・大馬鹿」

 

「だれが大馬鹿だってぇ!?」

 

 

 

 

「って事があったっす」

 

「は?」

 

万丈の意味不明な言動に一同は困惑した表情を浮かべる。

自称大馬鹿のお陰で助かったのは事実だが万丈は馬鹿は馬鹿でも手のつけようがないタイプの馬鹿であることが露見した。

そんな中ミカは辛辣な言葉をこの場所にいない万丈に言う。

 

「でも、その大馬鹿の人のお陰で俺たちは大した被害もなかったんでしょ?だったら大馬鹿の人は味方って事でしょ?」

 

「まぁ一応、そうっす。手がつけられないっすけどね。

今はおとなしくしてるっすよあの大馬鹿の人は」

 

「そっかぁ。それよりなんでまた樹海化が起きた?もうバーテックスの野郎は全部倒したはずだろ。・・・まさか」

 

その時オルガの頭に浮かんできたのは先日自分が見つけたモビルアーマーだ。

 

「ああ、そのまさかだ」

 

 

樹海化が発生する少し前、天の神の導きによりイオク様はモビルアーマーの付近の砂浜へ突如現れた。

イオク様の乗っているグレイズの背後には立ち入り禁止の看板がデカデカと貼ってあったが、イオク様は目の前にいるであろうモビルアーマーの一部にしか目をやらなかった。

 

「あれか、どうやらまだ眠っているようだな」

 

イオク様はモビルアーマーの様子を慎重に伺った。生前は300年前の遺物と侮っていたが今回は油断も慢心もせずダインスレイヴを装備してきた。

一度深呼吸をして狙いをモビルアーマー定め、トリガーに手をかける。

 

「このイオク・クジャンの制裁を受けろ!」

 

放たれた一撃はモビルアーマーへと向かっていった。しかしイオク様はダインスレイヴの発射で反動で生じる銃口のズレを計算に入れてなかった為、直撃せず掠めた。

 

「避けただと!?ならば私自ら裁きを下す!」

 

グレイズのソードを振るいイオク様はモビルアーマー「ハシュマル」へと近づいていく

だが接近したことでハシュマルは起動してしまった。

 

「これが私の一撃だぁぁぁぁ!!!」

 

イオク様の渾身の一撃はハシュマルへとクリーンヒットした・・・が、ハシュマルは気にもとめず反撃にイオク様の乗るグレイズを押し倒し、押し潰す。

 

「あっ、あああ!私はぁ!こんなところでぇぇぇ!!!」

 

イオク様はコックピット内で必死に潰されまいと抵抗するものの、ハシュマルは無慈悲にグレイズを砕く。

これがモビルアーマー起動の第一歩だった。

 

 

 

「こういう事態を避けるために慎重に事を運んだというのに。イオクめ、愚かにも程がある」

 

「あの鳥みたいに飛んでるのがモビルアーマーって奴なの?」

 

「鳥ではないよ。あれは天使だ。

天使の名を持つ人類の災厄。かつて人類に敵対し、当時の人口の4分の1を殺戮したという化け物だ」

 

「要するにバーテックスと同類ってわけね。それなら・・・

 

風が意気込み勇者へと変身しようとしたがその行為をマクギリスは止めた。

 

「やめておけ、あれは君達勇者が対抗できるような生易しい存在ではない。

奴の相手は私がしよう」

 

「あんた、風達の為に?」

 

「勘違いしないでほしい。君達にバエルの力を見せつけるいい機会というだけだ。君達はそこで見ているといい」

 

 

 

 

マクギリスはバエルを駆りハシュマルへと近づいていく。

一定まで近づいていくとガンダムフレーム特有のシステムが発動しバエルのリミッターが外れる。

それと同時にマクギリスの意識は飛びそうになるものの何とか堪える。口と鼻から吐血しながらもマクギリスはどこか笑顔を浮かべていた。

 

「これ程とは・・・だがこの状況下でこそ俺が本当に手にしたかった勇者の称号を手に入れられるかもしれない」

 

バエルが飛翔しハシュマルへと剣を二本突き刺す。ハシュマルは反撃として尻尾を突き刺そうとするもリミッターを解放したバエルは難なく躱した。

 

「見せてやろう!アグニカ・カイエルの戦いを!」

 

バエルが素手で構えるとバエルの翼からスラスターの光とはまた違う光がバエルを覆った。

その光は蒼くバルバトスのリミッターを外した時に肩から出た光と同じだ。

光を纏ったバエルは剣を使わず徒手空拳でハシュマルに殴りにかかっていく。

ハシュマルの装甲はバエルの拳により破砕する

バエルへの反撃はおろか修理する為のプルーマすら呼び出せないほど苛烈な攻撃だった。

その姿はまるで宇宙で巨大バーテックスと対峙した結城友奈を想像させるものだった

 

「厄祭戦の勇者が!バエルが!俺が!モビルアーマーを一人で葬る!

その行為が世界を変革する!」

 

リミッターを外したバエルの前にはハシュマルといえど太刀打ちできない・・・がそれは一対一の前提があってこそだ。

 

突如バエルの背後から人間大の何者かの蹴りが飛んでくる。威力自体は大したことはなかったがその影響でバランスを一瞬崩す。

その一瞬をハシュマルは見逃さなかった。尾をバエルのコックピット目掛けて突っ込ませる。

マクギリスがギリギリの所で直撃は免れるようバエルを動かしたが攻撃によって破砕したバエルの装甲が飛び散り、左半身に強烈な痛みが来た。

 

「ぐっ!?俺が、負ける?・・・っ、まだだ!もっとお前の力を見せろおぉぉぉ!!!」

 

マクギリスはバエルの右腕を動かし尾を掴んで両足でハシュマル蹴り、強引に尾を引き剥がした。

その影響でバエルの剣が一本飛び出し、その剣を逆手持ちで掴みハシュマルの頭部下にある露出した制御中枢ユニットへと突き刺した

さらに半壊したバエルのスラスターを蒸し、上空から足の裏を使って剣を押し込んでいく

 

「これがアグニカカイエルの力!」

 

バエルの剣により制御中枢ユニットは放電を起こし辺り一面に爆風が舞い散る。

バエルはその場を離脱し覆っていた光も消えマクギリスは緊張の糸が途切れたかのように意識を失った。

 

 

その頃万丈は・・・

 

「あれがバエルの本当の力・・・真にアグニカカイエルの再来と呼ばれるに相応しいか。

でも、俺のアグニカポイントは200年前から下がり続けてばかり。なあタマ、お前はやりたいのか?こんな仕事。俺は・・・やだね」

 

 

 

「あれが厄祭戦を終わらせた力・・・」

 

「すごい、すごいよ。あれがバエルの本当の力なんだ!」

 

「・・・・・・」

 

「どうしたミカ?浮かない顔して」

 

東郷と友奈が勝利に喜ぶ中ミカはどこか浮かない表情を浮かべる。

 

「なんか変だな。チョコの人が戦ってる時誰かが邪魔してたように見えた」

 

「誰か?誰だそいつは?」

 

「分かんない。確かめてくるよ」

 

「じゃあ自分も行くっすよ。マクギリス殿を病院に送らないといけないっすから」

 

 

 

ミカは得体の知れない何かを探しにマクギリスの側に向かった。

しかしその得体の知れない何かが分かったのはミカがマクギリスの元に着いた直後だった。

 

 

「・・・なんか変じゃない?なんで樹海化が解けないの?」

 

花凛がぽそりと呟くとそれに反応するかのように全員のスマホがアラーム音を鳴らした。

 

「な!?これバーテックス!?」

 

花凛が見た画面には神樹へもうすぐ辿り着くバーテックス(双子座)の姿が映し出されていた。

 

「どういうことだ?こいつは俺と樹が倒した奴じゃねぇか?」

 

「考えても仕方ありません!花凛!友奈さん手に捕まってください。飛ばしますよ」

 

春信は少し強引気味にデスティニーの手に花凛と友奈を掴みスラスターの出力を最大限にする

 

「デスティニーならこれくらいの距離!」

 

バエルよりは遅いものの残像を見せるほどのスピードでデスティニーは飛び立った。

 

 

 

「見つけた」

 

バーテックスの元へ着くのにそう時間はかからなかった。二人は上空から飛び降りつつ勇者へと変身する。

 

「一番槍ぃ!」

 

花凛はいち早くバーテックスに切り込む。初撃はかわされたが花凛は小刀を投げ足に命中させて動きを止めた

そこに友奈は追撃の一撃として先ほどのバエルと同じ動きで炎を纏った蹴りを入れる

 

「勇者ぁキイッックゥゥ!」

 

炎に包まれたバーテックスは砂と化しなにもなかったかのように消え去った

 

「ふぅなんとかなったね花凛ちゃん」

 

「そうね、ところで友奈?いつの間にあんな技を?」

 

「え?えっと何かこう頭の中にバーってイメージが湧いてきてそれを形にしようと思ったら出来ちゃった」

 

「・・・何それ?」

 

「新しい精霊の力です。

・・・満開した勇者には神樹様の加護を受けるための器が広くなりますから。今のは友奈さんの新しい精霊「火車」の力です」

 

「新しい精霊、私も満開したらあの力・・・

 

「使わない方がいい、いや使うな花凛。アレは・・・

 

春信が珍しく声を荒げて花凛に忠告し、次の言葉を言いかけた

が、そこで樹海化は解けた

 

 

 

「終わったかお疲れさん二人とも」

 

樹海化が解けて全員で元の場所に戻ったと思ったオルガは二人の労いの声をかけたが、元の場所に戻ることもなかった。

今いるのは大橋と呼ばれる大赦が管理している場所でいるのはオルガと友奈、東郷の三人だけだった

 

いつもとは違う状況に困惑する三人に後ろから少女の声が聞こえてきた

 

「会いたかったよ〜わっしー」

 

 

 

 




もうね次の話あらかた書いたんだよ
でもオルガでもどうにも出来ないくらい辛い話で書いてるこっちも辛い
とりあえず「バエルを持つ私の言葉に背くとは」がまともな台詞になるくらい大赦はクソです
あとタカキは妹の学費の分稼げたのでもう大赦をやめてモンタークの営業部に再就職しました。
タカキ休め

ピロロロ…アイガラビリィー

通りすがりのゲーム会社社長「東郷美森ぃ!
何故君が乃木園子にわっしーという名前で呼ばれていたのか(アロワナノ-)
何故君が初めての変身なのに精霊が三体いたのか
何故足が不自由で2年前の記憶が曖昧なのか
何故変身後に頭が痛むのかぁ!(痛んでません)」

通りすがりの医者「それ以上言うな!」

社長「その答えはただ一つ」

医者「やめろぉぉ!」

社長「アハァー…♡東郷美森ぃ!君が二年前に鷲尾須美という名で勇者として戦い、満開を二度したからだぁぁぁ
(ターニッォン)アーハハハハハハハハハ、アーハハハハ(ソウトウエキサーイエキサーイ)ハハハハハ!!」






次回予告「真実は時に魅了し時に残酷である」

「鉄の華でもなければ華は散る」
「そうしないとみんな死んじゃうから」
「よっ!」
「お前がぁぁぁぁぁ!」
「騙して悪いなぁとも思ったよ」
「今更何になるっていうんです!」
「私達だけなんだよ」





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真実

先の先の先のストーリーはバンバン思いつくのに次の話を書く時どうにも悩み続ける癖が自分にはあるようです
自分のやる気さえ出てくれればエタルことはないでしょう
だって最後の戦いまで構想あらかたできてるんだから
一つネタバレを書くなら
「國を守りし正義の魂!
国防戦隊!シュゴレンジャー!」
ってネタは考えついてます

さて今回のあらすじは友奈ちゃんにやってもらいます

モビルアーアーっていう鳥みたいな機械をマクギリスさんはバーって行ってバババーンって感じで倒したの。
それはとっても勇ましくて私もあんな風にみんなの為に戦える様になりたいな

でもその後私と花凛ちゃんの二人で何処からか来たバーテックスも倒した。
あれは一体何だったんだろう?
ふたご座なのに三人目なんて不思議だよね?
もしかしたらバーテックスにも難しい家庭の事情とかあるのかな?

そんな私の疑問がすぐに飛び去ってしまう様な出来事が今回のおはなし
そこで語られる真実は私達の知りたいことでもあり残酷なものだった
でもこんな事で挫けちゃダメだ
だって私は勇者なんだから



「会いたかったよーわっしー」

 

瀬戸大橋の近くの小さな社にて友奈達と同年代と思わしき少女が声をかけてきた。

どこかのんびりとした雰囲気の少女だ。しかし彼女の姿は普通のものではなかった

頭に包帯を巻きつけ口と左眼だけを露出し、服装は患者衣でベットを椅子のように腰掛けていた。

 

オルガは彼女を見て声も出なかった。患者衣の服の下にあるであろう足の部分が無かったからだ。

 

「アンタその体・・・」

 

「わっしー?って誰の事?鷲?鳥?」

 

オルガと友奈が彼女に疑問の声をかけるがそれをあえて無視したのか彼女は言いたいことを話し出した。

 

「あなたが戦っているのを感じてずっと呼んでたんだよ。わっしー」

 

彼女が言うわっしーと呼ばれる人物に三人に心当たりはなかった。が、彼女の目線は東郷へと向いていた

 

「東郷さんの知り合い?」

 

「・・・いいえ初対面だわ」

 

「・・・はぁー。あははは」

 

彼女はどこか残念そうな顔をして溜息をつきながらも説明しだす

 

「わっしーって言うのはね、私の大切なお友達の名前なんだ。いつもその子のことを考えていてね、つい口に出ちゃうんだよ。ごめんね」

 

「あの、私達を呼んだんですか?その後ろの祠で?」

 

友奈は彼女の背中にある祠に目をかける。その祠は学校の屋上にも同じものがあり大抵戦闘が終わるとこの祠の近くに戻される仕組みだった。

 

「うんそうだよ。バーテックスとの戦いが終わった後ならこの祠を使って呼べると思ってね」

 

「バーテックスを知ってるのか、お嬢さん?」

 

「うん、二年前にもバーテックスの襲来があってね。

一応貴方の先輩ってことになるのかな。

私は乃木園子って言うんだよ」

 

「讃州中学、結城友奈です」

 

「同じく、東郷美森です」

 

「俺は・・・

 

「鉄華団団長オルガ・イツカさんだよね?」

 

「俺を知ってるのか?」

 

「春信さんから色々聞いているよ。貴方がみんなを率いて、時には守ってくれてたんだよね」

 

「ああそうだ、団員を守んのは俺の仕事だからな。・・・それより2年前にもバーテックスの奴は来たのか?

奴がお嬢さんをそんな目に?」

 

「うん。私も勇者として戦ってたんだ。二人のお友達と一緒に、えいえいおーってね。今は、こんなになっちゃったけどね・・・」

 

オルガ達はどこか腑に落ちなかった。自分達が戦っているなか精霊が大抵の攻撃は防いでくれていた為自分が彼女の様になるとは思えなかったからだ。その疑問を深く追求する為友奈は更に聞く

 

「バーテックスが先輩をこんなヒドイ目に合わせたんですか?精霊は?」

 

「ああ、うーんとね、敵じゃないよ。私、これでもそこそこ強かったんだから。

勿論精霊はちゃんといたよ

今は離れてるけどね」

 

「なら何でそんな身体に?」

 

「えっと・・・そうだそうだ。友奈ちゃんとわ・・・美森ちゃんは満開、したんだよね?」

 

「しました。わーって強くなってばーんとバーテックスを倒しました」

 

「そっか、じゃあその後咲き誇った花はどうなると思う?」

 

「そんなの決まってるだろ?鉄の華でもなければ散って・・・まさか!?」

 

オルガは自分で言って嫌な予感を感じた。そしてその予感は的中する。

 

「そうだよ、花は散る。満開の後には散華という隠してた機能があるんだよ。

満開の後、体のどこかが不自由になったはずだよ」

 

「っ!?」

 

「え?それって・・・」

 

園子から出た発言は三人にとって衝撃的なものだった。咲いた花が元には戻らないように散華で失われたものは元には戻らない。その真実は彼女の身体が物語っていた。

 

「それが散華。神の力を振るった代償。華一つ咲けば、一つ散る。華二つ咲けば、二つ散る。

その代わり、決して勇者は死ぬことはないんだよ」

 

「死なない?どういうことだ?」

 

「精霊のお陰だよ。それは貴方が一番よく分かってるんじゃない?」

 

「は?」

 

オルガには精霊などいない。だというのに銃弾を浴びようがビームを浴びようが何をされても一息おけば何事も無かったかのように立ち上がる。

それが当たり前だと思っていた。そう、誰も間違いだと気づかなかった。

 

「貴方もまた勇者なんだ。ううん少し違うかな?こういう時なんて言うのかな?よく分かんないや。あはは〜」

 

園子はなにか考え事をして乾いた笑いをする。オルガに特別な何かを感じてはいるがうまく言葉には言い表せないようだ。

オルガもまた彼女に言われた言葉を自分の中でよく考え込んでいた。

 

「・・・私はねいっぱいいっぱい戦って今みたいになっちゃったんだ。

元からぼーっとするのが特技で良かったかなって。全然動けないのはきついからね」

 

「い、痛むんですか?」

 

友奈は自分が彼女のようになっていたかもしれないという恐怖に手を震えながら尋ねる。

 

「痛みはないよ。敵にやられたものじゃないから。満開して、戦い続けてこうなっちゃっただけ。

  敵はちゃんと撃退したよ」

 

「なんだよそれ!?じゃあアンタは世界を守る為にそんな身体になったって言うのかよ!」

 

「うん。そうしないとみんな死んじゃうから」

 

彼女の発言は平静に聞こえたが大きな哀しみと少しの怒りに満ち溢れたものだった。

 

「どうして・・・どうして私達が・・・」

 

「いつの時代だって、神様に見初められて供物となったのは・・・無垢な少女だから。

穢れなき身だからこそ、大いなる力を宿せる。

その力の代償として、身体の一部を神樹様に供物として捧げていく。それが勇者システムの真実」

 

「供物・・・それじゃあ俺たちは生贄みたいなもんじゃねぇか」

 

「生贄か、そうだね。ヒドイ話だよね」

 

「それじゃあ私達がバーテックスを倒せてなかったら・・・」

 

東郷は彼女のようになっていたかもしれない、という恐怖に顔を伏せる。そんな東郷を見て友奈は震えた東郷の手に自分の手を重ねる。

 

「でも、バーテックス全部倒したんだから大丈夫だよ、東郷さん」

 

「友奈ちゃん・・・」

 

「ああ、もう戦う必要はねぇ、ねぇんだ」

 

「・・・そうだといいね」

 

オルガは自分がもっとしっかりしてれば彼女達に満開をさせることはなかった。

その事実にオルガは強い自責の念を刻む。

全員が哀しみに暮れ、辺りに心地良い風が吹く。その風すら今のオルガ達には痛いものだった。

そんなオルガ達の静寂を破り、仮面を被った大赦の職員達と万丈が現れた。

彼は特に悪びれた顔もせず堂々とオルガ達に話しかけた。

 

「よっ!

どうしたどうした?せっかくモビルアーマー撃破して祝勝会でもやろうかっての思ったのなんだそのお通夜みたいな顔は?

そんなんじゃせっかくアグニカらしいところを見せたマッキーが報われないぞ〜?

それにさ、全部が全部悪い事じゃなかっただろ?

精霊のお陰で死なずに今日までずっと生きていけてるんだからそれでいいんじゃないか?」

 

「・・・お前はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

友奈と東郷が意気消沈している中、オルガは激昂し力の限り万丈へ殴りにかかる。万丈は特に躱すこともなく無抵抗で殴られる。その様子はまるでサンドバックのようだった。

 

「テメェも!テメェらもふざけんな!

何が勇者だ!何が王様だ!

俺たちは足蹴にされていいように扱われていただけじゃねぇか!」

 

「そうだよ。人類を守る為にぐぅっ、仕方なかった。だってがはぁ、散華を知ってたら満開なんて使わなごほぉ・・・

だから隠してた」

 

殴られながらも万丈は弁明をしだす。しかしどんなに綺麗事を並べてもどんな理屈を駆使しても今のオルガに聞く耳は持たない。

立つ力も残らず万丈はその場に倒れこむ。

 

「ハァハァ、・・・まぁ大赦もさ悪意を持って騙してた訳じゃないから。

少なくとも俺や春ちゃん、村ちゃんは騙していて悪いなぁと思ってたし、バーテックスと戦う勇者の勇ましさにウルッと感動して春ちゃんはウッカリ真実を話しそうになったこともあったなぁ」

 

「何で、何でこんな大事なことを隠してた!」

 

「そりゃ簡単だ。それは・・・

 

「それは残酷な真実を隠すためです」

 

声の主は今まで万丈を助けもせずただ見ているだけだった大赦の連中の中からだった。一人飛び出してオルガの問いに答えた。

 

「っ、その声アンタは・・・」

 

オルガの声とほぼ同時にかの者は仮面は外す。

その顔はオルガも見知った顔だった。

 

「花凛の兄貴・・・」

 

「オルガさん、これが今の大赦です。大赦の最優先目的は人類の生存圏を守る事なんです。

その為なら非情な選択も辞さない。

散華の事を伝えれば貴方達は戦う事を躊躇うでしょう?

そうなれば広がる戦火はもっと大きなものになっていました。

だから誰かがやらなければならなかった。・・・ならないんです」

 

「・・・それがアンタ達の考えだって言うのか?

アンタらは家族にすら真実を伝えられないほどの組織なのか?」

 

「・・・私・・・俺だって!伝えようと何度も何度も思いましたよ!

けどこんな残酷な真実を伝えて今更何になるって言うんです!

俺は妹にすら嘘をついた最低な、最低な!

ハァ、ハァハァ、ガバァ・・・」

 

春信はその場で過呼吸を起こし泣き崩れる。今まで溜まっていた悲しみを全て吐き捨てるかの様な光景だった。

友奈は春信の近くへ行き、少しでも早く泣き止むように寄り添った。

そんな春信を見ても仮面を被った大赦の連中は涙一つ流そうとしない。

泣いているのならば水滴の一つや二つ仮面の間から出てきてもおかしくないが、そんなものは誰一人いなかった。

大赦はただ頭を下げ許しを乞うことしかしなかった。

オルガはまるで人形を相手にしているような感覚だった。

誰かが極端に悪いわけではない。大赦にだって葛藤や後悔はある。

オルガはぶつけようのない怒りを感じ地面を殴りつける。

 

「悲しませてごめんね。大赦の人たちも、このシステムを隠すのは一つの思いやりでもあると思うんだよ。

・・・でも私はそういうの、ちゃんと・・・言って欲しかったから・・・」

 

園子は今までの淡々とした声口から悲しく震えた声で大赦に訴える。それと同時に園子の着物に涙が落ちた。

 

「わかってたら、友達と、もっともっとたくさん遊んで・・・・。だから、伝えておきたくて・・・」

 

東郷は彼女の元へ車椅子を動かして涙を拭う。少しでも悲しい思いを一緒に受け止めてあげたいと思ったからだ。

園子は東郷が近くに来た時、彼女の髪につけている青色のリボンを見つめる。

そのリボンを見て園子は少しだけ笑った様に見えた。

 

「そのリボン似合ってるね」

 

「このリボンは・・・とても大事なもの。それだけはちゃんと覚えてる。でもなんで大事なのか思い出せなくて・・・」

 

「ふふ、いいよ。それが大事なものだってちゃんと分かってればね」

 

「・・・どうにもならなかったのか?これ以外に方法が無かったのかよ・・・」

 

「バーテックスをやっつけるには神樹様の力を使える勇者と阿頼耶識っていう危険な手術を受けて悪魔と契約した勇者だけ。

でも阿頼耶識は今の時代、非人道的なものだとしてその技術は忘れられちゃった。

だからガンダムという天使を狩る悪魔がいなくなったら私達だけなんだよ、戦えるのは」

 

阿頼耶識、それは脊髄にピアスと呼ばれるインプラント機器を埋め込み、その部分でナノマシンを介して操縦席側の端子と接続することで、パイロットの神経と機体のシステムを直結させる

ガンダムの性能を最大限に引き出しバーテックスと対抗するには阿頼耶識という手段が最良である。

だがその為の人体改造はリスクが非常に高く失敗すれば日常生活もまともに行えない廃人状態になってしまう。

三百年近い平和な時間と共に阿頼耶識システムは不必要なシステムとして廃れていった。

 

「そろそろ日が落ちるね。今日は色んなことがあって私も疲れちゃったよ」

 

園子は落ち着きを取り戻した春信の目を見て、淡々とした口調で大赦全てを警告するかのように話す。

 

「春信さん、帰してあげて彼女達の街へ。それとこれ以上みんなを悲しませたら私怒っちゃうからね?」

 

「はい!肝に命じておきます!」

 

 

春信が運転する車の中にてオルガは助手席に座り友奈と東郷は後ろの席へと座っていた。

重苦しい雰囲気で会話はない。

 

友奈は下を向いて俯いている東郷を少しでも励まそうと肩に手を回して抱き締める。そうしていないと友奈自身も辛さで俯いてしそうだった。

 

「友奈ちゃん?」

 

「大丈夫だよ、私がずっと一緒にいるから。何とかする方法を

きっと見つけて見せるから」

 

「友奈ちゃん、うっ、うう・・・うわぁぁぁぁ!!」

 

東郷はその場で泣き崩れる。涙を流さなければ心が壊れるかもしれない。今まで溜め込んでいた悲しみは涙と共に少しづつだが消えていった。

オルガはただ二人を見守ることしか出来なかった。団長として何かしてやれないかと必死で考えたがいい案が何も浮かばなかった。

団長として何もしてやれない悔しさからオルガは拳を強く握りしめる。

 

「・・・友奈さん、先程はありがとうございました。貴方が神樹様に勇者として選ばれたのか、少し分かった気がします。

・・・明日勇者部の皆さんにちゃんとこの事は話します」

 

「・・・分かった」

 

 

 

 

 

 




次回予告 反撃の狼煙
「俺さ、七人まで分身できるんだ」
「秋は肉うどんっしょ」
「私は大赦の人間です。そこに個人の感情は持ち得ません」
「会いたかったよ〜勇者の子達」
「三十年も前の勇者か」
「いい言葉だな、感動的だな
「俺はもう二百年も大赦の闇として生きている」
「おばあちゃんが言っていた。子供は宝物、この世で最も罪深いのは、その宝物を傷つける者だ」

あと万丈士には気をつけろ
奴の正体はバーテックスだ


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大赦の番人 黒い鳥

衛生省にサボっていたことが嗅ぎつけられ、ガサ入れの危機にあったので投稿しました
今回は大赦の徹底した秘密主義について解説していく回です
なおこの話の設定はオリジナルです。あまりにも大赦が説明しないため勝手に考えました



オルガ「最近俺の扱いがどうもおかしい。
俺の胃痛が悪化する出来事が多いうえに話の主導権も握れねぇし他の世界みたいに彼女もできねぇ」

「これも全て大赦の万丈士って奴の仕業なんだ」

オルガ「この落とし前、アンタどうつけるつもりだ?」

作者「正直すまなかった。彼の命は精々あと2話といった所で、彼にはさっさと消えてもらいたいと本心から思ってるよ。
それと彼がバーテックスという情報は誤りだ、まだな。
それと今回の話樹ちゃんは765プロ行ってていないから」

村田「厄祭戦なんてなければ勇者部のみんなは歌って踊れて農業もする農家系アイドルになれたかもしれないっすね」

「ああ、それってTO※このコメントは削除されました



前回のあらすじ
忘れた

今回のあらすじ

昔話をしてあげよう
世界が破滅を迎えそうになっておよそ100年後の話だ

神様は人間を救いたいと思っていた。だから、手を差し伸べた

でもその度に、人間の中から邪魔者が現れた

神様の作る秩序を、壊してしまうもの

神様は困惑した
人間は救われることを望んでいないのかって

でも、神様は人間を救ってあげたかった。

だから

先に邪魔者を見つけ出して、始末することにした

そいつは「黒い鳥」って呼ばれいるらしい
何もかもを黒く焼き尽くす、死を告げる鳥

その正体とは・・・





「今がチャンスっすね」

 

オルガ達が大赦の人達から話を聞いている最中、村田は大赦の深層部へと足を運んでいた。

マクギリスを病院まで運んだ後に彼はすぐ動いた。

今大赦本部の警備は手薄。

偶然だが千載一遇のチャンスをモノにしようと彼はここにいる。彼の本当の目的を果たすために。

 

 

「この先にあるのが厄祭戦時代の資料なら勇者システムの開発元もきっとここに・・・」

 

「よっ!やっぱりここに来たか村ちゃん」

 

村田がいよいよと意気込んでいる中声をかけてきたのはここにいるはずのない万丈だった。

 

「っ!?・・・何でここに?」

 

「あれ、忘れてた?俺さ七人まで分身できちゃったりするんだ

力も七当分だけど」

 

そう言うと彼は六人に増えた。

今オルガの会話相手と足すと七人である。

彼の表情は余裕に満ちたものだった。

 

「・・・思い出したっす。二年前もその手でやられたっすね」

 

「そういうことだ。思い出すなぁ〜二年前に異世界から来た忍者とか馬鹿げた話を聞く耳持たず俺に排除しろと命令した大赦のお偉いさん達の顔が。

その命令を実行に移して俺たち殺りあったよな〜?

なかなか有意義な時間だったなぁ〜

俺も仕事だって事を忘れて久々に楽しい時間を過ごしてたよ」

 

「・・・自分はちっとも楽しくなかったすけどね」

 

「あっはっはっは・・・でこの先に用があるんだろ?行きなよ」

 

「止めないっすか?」

 

「止める理由がねぇな。だって村ちゃんは悪いことする為こんな所に来た訳じゃないだろ?

奥にあるデータちゃんと扱えよ?」

 

 

翌日、オルガ達は春信からの呼び出しでお昼頃モンタークへと足を運んだ。だが・・・

 

「ちゃろ〜、じゃなかった。

いらっしゃいませ鉄華団の皆様方、今日から肉うどんフェア開催しまーす!

やはり秋は肉うどんっしょ!

ささ、席へご案内しますよ」

 

「・・・いらねぇ。アンタどの面下げて俺に顔見せに来たんだ?」

 

モンタークへ足を運ぶと迎えに来たのは万丈だった。彼は昨日の事など気にも止めないようなハイテンションっぷりを見せつけてきた。

店の中にいたのは彼と村田の二人だけだった。

 

「まーまー、昨日は言いすぎて悪かったって思ってるよ。

それとも許す気なんてさらさらないから土下座でもさせるか?いーよ?俺は土下座くらい平気でやるよ。仲直りする為ならさ」

 

「いらねぇ。だがこの落とし前は後でちゃんとつけさせてもらう」

 

「オーケーオーケー。俺ができる落とし前は腹一杯食わせてやるくらいだ。今日の俺は機嫌が良い。お代は結構結構。

ひ、ふ、み・・・んん?一人足りないな〜一番ちっこいのが」

 

「風?樹の奴はどうした?」

 

「樹?樹は別の用事があるって来てないわ」

 

「そうかそうか〜。・・・村ちゃんは先に皆様を奥の部屋にお連れして。俺はちょっと野暮用を済ませてくる」

 

「了解っす」

 

何か腑に落ちないものをオルガは感じながらもモンタークの奥の方へと足を運んだ。

 

 

 

「よう、そこで見てる大赦の人出てきなよ」

 

万丈は店を出た後少し歩き、隠れていた大赦の人へと声をかけた。

 

「狙いは俺・・・じゃなくて春ちゃんか?大方機能の件がキッカケで大赦を辞めるんじゃないか心配になって来たんでしょ?」

 

万丈の問いかけに対し大赦の人は姿を見せるわけでもなく答えることもなかった。

 

「だんまりか?なら質問を変えよう。勇者の子達の様子を見に来たのか?」

 

「・・・・・・」

 

「目的を話す気もなしか?まあ大赦が秘密至上主義になったの原因は俺にもあるから仕方ないか。

・・・俺たちが大赦に内緒でしようとしていることは彼女達の心のカウンセリングだ。俺達大赦は無意識に傲慢な印象を彼女達に与えてしまった。

その影響で彼女達が大赦に対し牙を剥くか心配してるんだろ?

その責任は俺や春ちゃんが取るよ。俺達なりのやり方でな」

 

「一体何を?」

 

「おばあちゃんか言っていた

辛い時こそ飯を食えって。

よく食べ、よく寝て、よく動く。

そうすれば自然と人ってのは辛い思いや気持ちが忘れられる。

今の俺に出来るのは精々美味しいうどんをたらふく食わせてやる事くらいだ。

 

人は忘れるからこそ生きていける。 苦しいことや悲しいことを全部鮮明に覚えていたんじゃ辛くて仕方ないだろ?

でも貴方は二年前その辛さを仮面と共に心の奥にしまった。

そういう思いを背負ったままの生き方って辛くはないのか?」

 

「・・・私は大赦の人間です。個人の感情など・・・ありません」

 

彼女の声は冷淡なものだがどこか悲しみや葛藤がある様にも聞こえた。

 

「感情はない・・・か。それならそれでもいいや。

彼女達の事は春ちゃんに任せておけばいい。貴方もその気があるなら仮面を外して来てくださいね。

ちゃろ〜」

 

万丈がモンタークへと戻ると彼女は仮面を外し、自分に言い聞かせる様に独り言を放った。

 

「私はもう決めた。この時代を生きる為にはこの道だと・・・決めたんです」

 

彼女は決意を新たにし仮面を再び被ってその場を立ち去った。

 

 

 

一方その頃オルガ達はモンタークの冷蔵庫型隠し扉の先へ足を運び、地下へと下っていった。

その内装は鉄華団本部の地下空間の様な小汚さがあった。

机や椅子が不規則に並びその上には見たこともない実験道具や機械があった。

 

「ここは一体・・・」

 

「自分が作った秘密研究施設っすよ。新たな勇者システムの開発の為の」

 

「新しい・・・勇者システム?」

 

「そうっすよ東郷殿。尤も自分が作ろうとしているのは対バーテックス用では無いっすがね」

 

「どう言う事だ?バーテックスの他にまだ敵がいるってのか?」

 

「あ〜・・・いるといえばいるっけど少なくともまだいないっすね、まぁちょっとしたお遊びっすよ」

 

村田との会話をしていき地下の部屋の奥へと進むと、待っていたのは春信と四十代くらいの女性だった。

セミロングの黒髪に白ふちメガネと白衣を身につけ何かの科学者といった印象だ。

彼女はふわふわとした雰囲気を醸し出しオルガ達へと声をかけた。

 

「やあ、会いたかったよ〜今の勇者の子達」

 

「花凛の兄貴に、誰だ?そっちのおばさんは?」

 

「・・・ガハァ!!」

 

「桐生さん!?大丈夫ですか」

 

オルガにおばさんと呼ばれた女性は何かが壊れたかのようにその場で倒れブツブツと独り言を言い始めた。

 

「いいんだよ、分かってるよ。

もうおばさんなんて呼ばれる歳だって事ぐらい分かってるよ

でもこう面と向かって直接言われると想像以上に傷つくなぁ・・・あは、アハハはハはは・・・はぁ」

 

「す、すみませんでした!お嬢さん」

 

オルガは自分なりに最大限の謝罪をするが彼女は壊れた機械のようになんの反応も示さなかった。ただ遠い目をして空を見上げるだけだった。

 

「桐生さん?桐生さん?・・・ダメみたいですね。村田さんここは頼みます」

 

「了解、了解っす。・・・団長殿〜?アレはダメっすよ。ダメダメ。

桐生殿はメンタル弱いっすから」

 

「誰なんだよ?あのおば・・・

 

カチャ(銃を構える音)

 

「ダメだよオルガ」

 

「そうっすよ団長殿、彼女はあんなんでも大赦じゃかなり高い地位っすから。

彼女の名前は桐生静|きりゅう静|、勇者システム開発部門所長にして、三十年前の勇者っす」

 

「三十年前の勇者?そんな昔からバーテックスと戦っていた人がいたの?」

 

「いいや違うな。桐生ちゃんは勇者ではなく、凄くてて最高でてぇんさい科学者だ」

 

村田の代わりにオルガの質問に答えたのは階段を何段か飛ばしつつ降りてきた万丈だった。

 

「おばあちゃんが言っていた、勇者とは力がある者ではなく戦う心を持った者だって。

でも桐生ちゃんはご覧の通り豆腐メンタルだ。

だからバーテックスからは逃げの一手で戦う道は選ばなかった」

 

「選ばなかった?」

 

「そう、三十年前バーテックスは厄祭戦以降再び姿を現した。

その目的は人類が勇者システムを再び使用し、反逆の意思がないかを監視するためだ。

もし奴らに勇者システムの存在がバレていたら人類は天の神の怒りを買い三十年前にも被害が出ていただろう、今以上のな。

桐生ちゃんは奴らの侵攻を阻止しようとまだ君達と同じくらいの歳の時に科学者として戦い、勝利した。

あん時は俺も色々とお仕事大変だったな〜」

 

「?、アンタはオルガと同じくらいの歳じゃないの?」

 

「俺の歳なんて今はどうだっていいだろ?

桐生ちゃんは大事な話をする為にここに来たんだが・・・ありゃダメだな。

俺が代わりに話してやるよ。

あ、一応聞くけどこれからする話は対して面白い話じゃない。それでも聞きたいか?」

 

「なになに?そんな言い方余計気になるじゃない。聞かせてよ」

 

「威勢がいいな、勇者部部長。ならハッキリ言うよ。

君の目もう治らないから」

 

「・・・え?」

 

万丈の言葉は唐突に放たれた弾丸の様に風の心に突き刺さる。

それは花凛やミカも同様だった。

 

「ど、どういうこと?もう治らないって?」

 

「言葉の通りだよ煮干し子。部長の妹さんの声、車椅子のお嬢さんの聴覚、友奈、いや結城ちゃんの味覚も治ることはないって言ったの」

 

「あんた何言ってるの?大赦からは治るって言って・・・

 

「ああそれ嘘。大赦の優しくも残酷な嘘だよ。改めて話をしよう」

 

 

「な・・・何よ、それ・・・返してよ!私の目を返してよ!」

 

昨日とオルガ達が効いた話と同じ話を聞き、風は怒りを万丈へと向ける。

 

「まあまあ落ち着けよ。俺を攻めたところで治るもの治らないから。

落ち着いて話を・・・

 

「話なんて聞く必要あるの?」

 

「なんだ少年?そんな怖い顔すんなよ。コレには訳が・・・

 

「アンタは大赦の人間で、大赦は俺達を騙して戦わせていた。そうでしょ?」

 

「そうだよ・・・っ!

 

パンパンパン!

 

ミカは懐から銃を取り出し有無を言わせず万丈の頭に三発撃ち込んだ。

 

「ちょ!?ミカ何して・・・

 

「ダメだよ風。これはケジメだ。ここでコイツを撃たなきゃケジメがつかない。

ねぇオルガ次は俺どうすればいい?どうすれば大赦って奴を潰せるの?」

 

「ミカお前・・・

 

ミカの瞳には真っ直ぐだが狂気に満ちたものだった。だがオルガには今のミカにどう答えていいものか分からなかった。

 

「・・・痛ててて

 

「アレ、おかしいな?ちゃんと当たった筈なのに」

 

確実に絶命していた筈の万丈は何事もなかったかのように喋り、立ち上がった。

 

「ん、何をそんなに驚いてるんだ少年?君のすぐそばにもいるだろ俺と同じような奴」

 

「アンタは一体何者なんだ?」

 

オルガは万丈が自分と同じ不死の力を持っていると確信し警戒しつつ彼に聞く。

 

「そいつは・・・

 

「人の手で作られた人口精霊だよ」

 

その問いに答えたのは先程退散したてぇんさい科学者こと桐生静だ。先程の精神的ダメージはもう見られずにいた。

 

「作った言うな、俺はまだ人間のつもりだ。

 

「なーに言ってるの?人間は250年も生きられないから」

 

「「250!?」

 

「ちょ!?俺の歳なんて言うなよ!桐生ちゃん!」

 

「言うよ?や〜い年寄り〜」

 

「年寄り扱いすんな!ヒドォチョグテルトヴッドバスゾ!(ひとをおちょくってるとぶっとばすぞ)」

 

万丈の動揺ぶりはこれまで積み上げてきた重苦しい空気さえぶっ飛ばすものだった。彼の一件陽気に見えて話す内容は恐ろしいというレッテルが崩れ去った瞬間である。

 

「大体年齢なんて概念は人間が勝手に定めたものであって 本来成長ってのは人それぞれなんだよ 。

それを一様に年齢で判断するのは愚かとしか言えない。

俺はまだ子供の頃の夢を叶えようと頑張る大人なんだよ。

250歳とか関係ないね。

・・・大事なのはこれからだ」

 

一息置き彼のテンションはまたシリアスなものへと急激に戻った。

 

「確かに大赦は君達に隠し事をしていた。だが散華のことを言えば満開を使うのを躊躇った筈だ」

 

「・・・・・・」

 

一同は万丈の言葉に反論する事は出来なかった。

 

「だが満開システムを採用したのは悪意があってやったわけじゃない。だよな、桐生ちゃん?」

 

「うん、ここから先は私が話すよ。君達勇者にはその権利があるから。

大赦が満開システムを採用したキッカケはこれ以上勇者がいなくなる事を防ぐためなんだ」

 

「勇者が、いなくなる?」

 

「そうだよわ・・・東郷さん。二年前にもバーテックスが攻めてきた事は話したよね。

その時バーテックスと果敢に戦ったのは三人の少女達。

乃木園子をリーダーとする西暦298年頃の勇者は幾多に攻めよせるバーテックスと戦った。

でもある日三体ものバーテックスが攻め寄せてきた。その頃は満開システムは実装していなかったんだ。

本来一体ずつ戦うことを想定していた私達大赦の予感はいとも簡単に崩れ去った。

そんな予想外の状況で三人のうち二人が戦闘不能になった。そんな状況下の中一人の勇者が命をかけて世界を守ってみせた。

まるで三百年前の勇者、アグニカカイエルの様にね」

 

「命をかけて?と言う事はその人は・・・

 

「うん、東郷さんの予想通りだよ。彼女はその戦いで命を落とした。

だから私たち大赦はこれ以上の犠牲を出さない為に勇者を守るための精霊とその力を振るう為の満開システムを実装した。

冷たい言い方だと思うけど私は貴方達の命を守る為に体の一部を犠牲にしてしまったんだ。

ゴメンね」

 

「・・・アンタの言い分は分かった。確かに命よりも大事なものはねぇ。

死んじまったら自分の足で進む事はできねぇからな。

けどな、なんでアンタも春信もはそう思ってるのにもっと早く言わなかったんだ!?」

 

「そりゃ簡単だ。黒い鳥に殺されるのを怖がったからだ。そうだろ、桐生ちゃん?」

 

「士君!?それは・・・うん」

 

「黒い・・・鳥?なんだそりゃ?」

 

「大赦の秘密主義を守る番人の通称だ、本当に鳥って訳じゃない。

聞いた事はないか?大赦の秘密を知ったものは消されるって言う噂を。

その正体こそ黒い鳥っていう奴で少年、君が倒すべき本当の敵だ」

 

「その黒い鳥って奴のせいでみんながこんな目にあったの?」

 

「そうだ。今の大赦の秘密主義を支えているのは黒い鳥って奴の仕業なんだ。

今の大赦は奴のせいで腐敗している。アイツは、狡猾で残忍で自分の命さえ良ければ平気で人殺しも辞さない非道な奴だ。人の形をした悪魔だよアレは。

俺はな、虫けらの様に人を殺すバーテックスも黒い鳥も許せないんだ。

 

正直危険で関わらない方がいいかもしれない。だが黒い鳥は大赦に誰よりも深く精通している。

もしかすれば奴は散華で失われた物を元に戻す方法を知っているか知れない」

 

「っ!それ本当なの!?」

 

「嘘ではないよ勇者部部長、あくまでも希望的観測だ。だが望みは捨てない方がいいだろ?勇者なんだからさ」

 

その言葉を受け風の顔つきが少しだけ緩んだ様に見えた。

それはほかの子達もだ。

 

団長、少年、そして勇者の子達。俺の事は信用できないかもしれない。

けど今は、今だけは腐敗した大赦を潰しあるべき姿の大赦を取り戻す為に、黒い鳥を倒すのに協力してくれないか?」

 

万丈が嘘を言っている様には見えなかった。彼の今までの行動を考えれば大赦同様信用できるだけのものはない。しかし彼が持っている情報がなければこれからの行動を決められなかったのも事実だ。

オルガは半信半疑ながらも了承した。

 

「・・・分かった」

 

「いーよー」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ二人とも!大赦を潰す?本気なの!?」

 

「何?花凛は何か文句があるの?」

 

「大有りよ!だって私は大赦の勇者だから・・・

 

「じゃあ花凛は俺達と大赦、どっちの方が大切なの?」

 

「っ、そ、それは・・・

 

「ねぇ?」

 

「わ、私は・・・私は・・・

 

花凛は自分の立場と自分の気持ちが心の中でぶつかり合った。

大赦の人間として止めるべきか友達として共に進むか複雑な感情が入り混じり今にも逃げ出しそうになっていた。

そんな花凛に春信は一人の兄として声をかけた。

 

「いいんだ。花凛、もう俺の影を追わなくてもいいんだ」

 

「あ、兄貴・・・」

 

「花凛が大赦に入ったのは俺と両親を見返す為、そうだろ?

でも俺はもう大赦失格だよ。自分の想いを抑えきれず大赦としての立場を忘れた。

俺は石動さんを見て少し分かったんだ。本当に迷った時は自分の心に従えって。

だから花凛もそうしてほしい。後悔だけはしてほしくないんだ」

 

「心に従う・・」

 

「大丈夫だよ花凛ちゃん!

なせば大抵なんとかなる!だよ」

 

「友奈・・・」

 

「なんて情けない声出してやがる、花凛。お前が本当にやりたい事はもう決まってるじゃねぇのか?」

 

「・・・いたい」

 

「ん、聞こえねぇぞ?」

 

「うっさいバカ!ああそうよ!アンタ達と一緒にいたいわよ!でも私だけ満開してなくて、仲間はずれみたいで居づらいんじゃないかと思ったけどやっぱりここが私が一番居たい場所よ!

って全部言わへんなこのバカーーー!!」

 

「「・・・あっはっはっは!!」」

 

「笑うなぁぁあーー!」

 

「いいじゃないか、君は大赦の秩序より友達との友愛を選んだ、正直感動した

おばあちゃんが言っていた

感情で行動することに異論はない、私はそう学んだってな。

実に、実に人間らしく素晴らしい!その勇気ある行動に対し500アグニカポイント贈呈しよう」

 

「いらないから」

 

「ならば代わりにうどん大盛り無料券を贈呈しよう。

そして結城ちゃん。君の彼女へと向けた言葉と笑顔はまるで太陽の如き輝きだった。

500、いいや700アグニカポイントと半額券を贈呈しよう」

 

贈呈と同時に誰かの腹の虫がなった。音は二箇所から鳴り響いた。

 

「・・・すみません私です。実は昨日から何も食べてなくて・・・」

 

一つ目の音を出していたのは春信だった。彼は情けない所を見せてしまい軽く溜息をついた。

そして二人目はミカだ。

 

「腹減った。ねぇ250歳の人、飯作ってよ」

 

「歳言うな。俺の心はまだ19だ。永遠の19歳、大人になりきれない子供って年齢なんだよ」

 

「アンタ何言ってるの?」

 

「少年、覚えておけ。いくら歳を取ろうとも子供の頃の純粋な夢を叶えられるまで本当の大人にはなれないんだ。

だから夢というものものを持ち、それを守りぬいていけ。それが子供の特権だ」

 

 

 

「へぇ、大赦の人にしては随分変わってるね」

 

「変わってるか、確かに。

実を言うと俺は大赦をやめたいんだ。けど人口精霊という特殊な立場や仕事柄から何千回退職届を出しても上層部の奴らは何度だって破り捨てる。

人を道具みたいに扱うアイツらはアグニカの意思を継ぐに相応しくない

・・・相応しくないんだ!」

 

突如万丈は突沸した水のように激昂しだした。その変化に場にいる全員が引いた。

 

「アイツらは何なんだ!何も知らないくせに!バカの一つ覚えみたいに命令下して!秘密を守る為とか言い出して!

やりたくもない仕事ばっか押し付けて!そのくせ残業代もまともに出しやがらねぇ!

俺がまともな人間じゃないから何やってもいいってのか!そんなブラックな組織は俺がぁあ!

ぐぁぁぁぁぁぁァァァァ!!」

 

大赦への不満や文句を言い放った途中、万丈の体から電撃が放たれ体を蝕んだ。絶叫が鳴り響きその後彼は壊れた機械のように倒れた。

その光景に鉄華団と勇者達はただ呆然とするしかなかった。

 

「士君?士君ってば」

 

桐生は彼に寄り添い様子を伺ったが、万丈がそれに応えることはなかった。

オルガ達には彼の容体は溜まりに溜まったストレスが爆発したと説明されその場はおさまった。

 

 

 

その後オルガ達は春信、村田と共に地下を出て表へと出た。

 

「先程は見苦しい所を見せてしまい申し訳ありませんでした、勇者の皆さん」

 

「あの、大丈夫何ですか?あの人の容体は・・・

 

「大丈夫っすよ東郷殿。あれは感情の昂りが精霊の力で少々暴走しただけっすから。ちょっと休めば治るっすよ。

でも黒い鳥に会い、倒すには万丈殿の協力と戦力としてバエルの力が不可欠っす。

やるにしてもマクギリス殿の怪我が完治する一週間後っすね」

 

「分かった。鉄華団はアイツの策に乗ってやる。お前達もそれでいいか?」

 

散華でなくなったものが戻るかもしれない、真実を知りたいという希望を胸に勇者部一同はオルガの声に頷いた。

絶望した中に見つけた一筋の光を求め、彼女達は足を進めようとしていた。

 

 

 

 

・・・黒い鳥、それは大赦が秘密にしようとしているものを守る者。

その秘密とはバーテックス関連が殆どだ。

バーテックスなき今、黒い鳥は必要ない存在。

 

だから俺は消えなくてはならない。万丈士という首輪に毒を仕込まれている番犬(黒い鳥)は、次の黒い鳥が現れないよう表舞台で惨たらしく死ぬこと。

それが今できる精一杯の俺の夢だ。

 




散華したものは治らないという絶望を与えられた。
しかし治る術があるかもしれない。
一筋の光を見つけた時、彼女とてもいい笑顔をした
しかし黒い鳥が知っている術は勇者達を更に苦しめる方法だった。
少女よ、涙を流して強くなれ

今回何か足りないと思ったらバエル成分がまるで足りてないじゃないか!
マクギリスは散華のこと知らされてないのでもし知ったら「バエルを持つ私を騙すとは・・・」とか言ってクーデター企みそうですね。
てかしようとしてますね



正直書いていて万丈君にはルプスレクスの超巨大メイス
叩きつけた後グシオンのニッパーで挟み潰して、流星号のスーパーギャラクシーキャノンで貫いた後、ルプスのツインメイスでくたばるまで太鼓の達人したいくらいの感情が湧きました。
まぁ次か次の次回辺りでそれくらいの目に合うでしょう。

新キャラ紹介

桐生静
神世紀270年ごろ勇者として一人の天才科学者として勇者システムの存在をバーテックスから守ってきた影の勇者。
現在は勇者システム開発部門所長でありおばさんである。
なお所長でも勇者システムに関する全ての情報を知っているわけではなく、新しい勇者システム開発の為に村田に潜入任務を依頼したのは彼女である。



今回の没ネタ

「まだ分かってないようだな
大赦の考えってやつをさ
いいか?大赦のお偉いさんの頭でっかちのお年寄りの爺さん婆さんはなとことん考えが固い」

「阿頼耶識でガンダムフレームを操る鉄華団、そして神樹の力を授かり勇者として戦う勇者部。
君達を戦うことを決めた時点で人ではなく人を守る半神的存在としか見ていない。
だから満開をした後散華した君達を神様に貢物を捧げた神聖な存在と思い人として見ちゃいない。と言うか、見たくないんだよ」

「自分達が大赦の思想でありアグニカの理想としている「人が人らしく平等に生き、競いあえる世界作り」には反していないと思いたいからだ。
大赦の理想は三百年という長い歴史の中で湾曲し、腐敗した体勢と成り果てた。
・・・おばあちゃんはこんな大赦を作る為に働いていた訳じゃないのに・・・」


「それに、散華の事を知っていたとしても満開は使わざるおえなかっただろ?バーテックスが神樹様に触れれば世界は終わる。
満開なしでバーテックスの猛攻から神樹様を守ることが出来たと本気で思っているなら、能天気にもほどがあるよ」

「もっと言えばな満開せず戦えばいいって考えも無駄だ。
満開が発動するのは戦って満開ゲージが満タンになれば勇者本人の意思だと思っている様だが少し違う。
神樹様が勇者に発動させてるんだ。だから自分の意思では発動自体止めることはできない。
戦うなら勇者は戦いの果てに体の機能を失っていくという生き地獄を味わう宿命にある。
その実態が乃木園子という先代勇者だ。
まぁ進軍してくるバーテックス全て倒したんだ。こんな言い方は悪いと思うけどまだマシだったんじゃないか?」


「もし君達が勇者として戦わなかったとしよう。そして前の大戦が起きたとしよう。
戦わなければ世界は滅びてた
もしそうなった場合、誰が代わり君達の分まで戦ってたと思う?」

「少年(三日月)だ
少年は仲間の為なら自分の命も惜しまず戦いに臨むだろう
でも少年を含む鉄華団とマッキー殿だけじゃあ手数が足りない。
バーテックスが神樹様に辿り着き世界は終わっていた筈だ」

「そうなれば大赦の連中はよってたかってクローズを責める
戦うしか道はなかったんだよ」

「何をためらってる!お前には守る物があるんじゃないのか?」
「失いたくないから戦うんじゃないのか?」
「それともその想いは全部嘘だったて言うのか!?」

「いや誰だよクローズって」
「俺にもわからん」

次の投稿は村田殿が新しい勇者システムを完成させたらです


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犬吠埼風

前書き
けもフレ2で荒んだ心をケムリクサで浄化し終えたので(令和)初投稿です

なお次の話の内容は鉄華団(ミカ)が好き放題やってくれたため考えついてません

今回のあらすじは
「何やっての私」
「何やってんだミカァ」
「何やってんだ俺ぇ」
の三本です

前回シリアス説明会だったので、今回はコメディっぽくしてみました
後今回東郷さんは園っちの所に行っているため出番はないです

とりあえず書き終えた感想ですが「祝え!新たなるカップルの誕生を!」


前回までの間違ったあらすじ

「俺が阿頼耶識システムの手術を受ける事になったのは全て計画の内・・・(大嘘)

全てはこの世界のために俺は散りゆく定め(本当)

結城友奈ァ!

君は水晶のようだな
人の心の光を自分自身の中に映し出し、優しく輝きを放つ(おもむろに着ていたシャツを脱ぎ出す)

しかし、そんな君が心配でならない
すべての人間が善人とは限らない(舌なめずりをしながら)

もし、悪意を持つ人間によって君の優しい想いが踏みにじられてしまったら

水晶の輝きが失われ、跡形もなく砕け散る危険がある

14年前から君は、透き通るように純心だった(天の道を示しながら)

その太陽の如き眩しい笑顔が!輝きが!
俺の人生に活力を与えてくれた!(シャフ度しながら)

君は最高の勇者だぁ!

俺の人生はァ!
君のォ!
その手の上でェ・・転がされていたんだよぉ!

だぁぁぁぁぁははははははっはーはははは!

ブゥン!(ガッチョーン)
(ベルトを締める音)

カシャカシャカシャカシャ(何かを振る音)

『ブラックサレナ!』
『勇者システム!』
(ベルトにフルボトルを刺す音)

『evolution!』

『Are you ready?』

「できてるよ」

『curse love!
黒鉄の疾風鳥!』

「これが新しい勇者システムの性能・・・
何という性能だやはりこの勇者システム
弱い!
絶望した!
自爆するしかねぇ!」

ドカーン!!

「・・・何だよ、随分と変な夢じゃねぇか」




 

「(私のせいだ。

私が勇者になんかなろうとしなければ、みんなを勇者部に誘わなければこんな惨事にはならなかった。

私が、私の・・・

 

「では次のページを犬吠埼さん読んでください」

 

授業中にもかかわらず風は勇者部のことを考え授業に集中していなかった。そんな中先生は風のことを名指した。

 

「犬吠埼さん?犬吠埼さん!?」

 

「え?あっ、はい!教科書ですね。ええと・・・

 

風の慌てぶりに先生は溜息をついた。

 

「犬吠埼さん、今は国語の時間ですよ。英語の教科書なんか開いてどこを読むつもりですか?」

 

「あは、あははは」

 

風は誤魔化すように乾いた笑いをし教科書を取り替えた。その光景にクラス全体からクスクスと笑い声が聞こえてきた。

 

 

「(こんな状況で授業に集中なんてできないわよ。

・・・ダメダメ、ちゃんと切り替えないと」

 

風は心に残る不安を払おうと上っ面ではあるが授業を受けた。

その様子をミカはただじっと見つめていた。

そのまま時間だけが流れていき放課後へと移る。

風はミカに心配かけまいと空元気を出し、二人は一年の教室に行き樹の事を迎えに行った

樹の姿が見えた時彼女は廊下で同学年の友達と何やら話をしていた。

樹が友達に会話代わりにスケッチブックを見せると「また今度ね」とその場を去っていった。

樹は友達に遊びに誘われたようだが日曜に用事があると断ったようだ。

だが風はその日に用事があることは聞いておらず少々疑問に思いながら樹に話しかけた。

 

「用事?そんなのあった?」

 

樹は風の問いかけに首を振り少し困った顔をした後スケッチブックに書き足した。

 

「(カラオケで歌うのが好きな人達なんだ。私がいると気を使ってカラオケ行けないから」

 

樹は微笑んで答えたが風には寂しそうに見えてしまった。

 

「(散華の事は私が樹にちゃんと話すって決めた。でも・・・私は・・・まだ伝えられてない。

樹の笑顔を壊したくない、けどこのままでいいの?私はどうすれば・・・」

 

悩み全開の風を見て樹は心配そうに見つめる。風は何でもないと答えるがミカは風のその答えに不満げな顔を浮かべていた。

そんな中樹のクラス担任が風に二者面談を頼みに来た。

 

 

 

「ハッキリ言います、樹さんの今の状態は一部の授業に支障かわ出ています」

 

「えっ!?樹が誰かに迷惑をかけたんですか?」

 

「いえ、他の子ではなく樹さんご自身の問題で・・・

音楽の歌の練習などに参加出来ませんし、ある程度授業内容を変えることで対応していますが、あまり露骨な変更は逆に樹さんが気に病むでしょうし」

 

「だ、大丈夫です!医者だってちゃんと治るって言っていましたから。、私の目も樹の声も時期治ります」

 

「そう、ですか。分かりましたもう暫くこのまま進行させていただきます」

 

「(治るから、きっと治るから。医者だって治るって言ってたしそれが嘘でも治る方法は大赦から直接聞き出す。

でも、もしそれでも治る方法がなかったら私は大赦を許せない・・・」

 

 

面談が終わり教室から出ると樹は先に部室に向かっていたがミカは風の事を待っていた。

 

「終わった?なんか疲れた顔してるけど?」

 

「え?そ、そんなことないってばアハハ。行こっかミカ」

 

再び空元気を飛ばして行く風に対しミカは風の左腕を掴む。

 

「待って」

 

「ミカ?」

 

「今の風を勇者部に行かせるわけにはいかない。

ちょっと大事な話があるんだけどいい?」

 

「大事な・・・話?」

 

「うん、二人で話がしたい。

着いてきて」

 

「ちょちょっと!?ミカどこに・・・

ミカは煮え切らない風の態度に強引に切り込み風をある場所へと連れて行った。

その光景を当然の様に見ていた二人組がいた。

村田と万丈だ。

 

 

 

「村ちゃん、あれはいわゆるデートというやつか?」

 

「そうっすねあれは誰がどう見てもデートっす。あれくらいの年頃の男女の大事な話なんて愛の告白以外考えられないっす」

 

「随分と面白くなってきたじゃないか、そう思わないか?」

 

「後をつけるつもりっすか?」

 

「そうしたい気持ちはある。けど計画の準備があるから後は頼むよ村ちゃん」

 

「・・・本当にやる気っすか?」

 

「当然!俺の理想とする大赦に黒い鳥である俺は不必要だ。

盛大に!そして残酷に!

悪役として!敵役として!

散りゆく定めなのは二百年前から覚悟してたよ」

 

「死ぬのが、怖くないっすか?」

 

「怖くないね、俺が死んでも肉体が朽ちるだけ。その魂は神樹様のもとへ行き、いずれ俺は精霊の様になれるだろう。

そうなれば俺は俺のついてる精霊の様に陰から陽へと移れる。新しい時代の幕開けだ。

・・・俺の精霊のタマちゃんも俺なんかから離れられて清々するだろうよ」

 

「清々?」

 

「そ、あの子俺と同じで愛ゆえに悪と言われた子でさ、似た者同士喧嘩が絶えなくてなぁ」

 

「タマちゃんってもしかして玉藻・・・

 

「ご明察!

タマちゃんは悪い子だって思ってる人も多いけど、俺からすれば可愛いペットみたいなもんだ、少々イタズラがすぎるけどな」

 

「日本三大妖怪の悪事をイタズラ呼ばわりっすか?随分とまぁ大胆というか不敵というか・・・」

 

「何か言ったかしら?忍び崩れ」

 

「っ、いえ何も!」

 

唐突な万丈の言葉の変化は彼に憑いている精霊「玉藻の前」が表に現れたからだ。

玉藻の前は白面金毛九尾の狐という二つ名を持つ精霊である。

金色に輝く9本の尾を攻防に扱い勇者をサポートする精霊だが、扱える勇者が厄祭戦の時代からいなかった為勇者がこの精霊を使うことはなかった。

玉藻の前が彼に憑いたのは神世紀100年頃の話だがここで語るには文が足りない。

 

彼女(?)の出す禍々しいオーラに村田は普段の態度を崩し真面目な態度になってしまった。

 

「妾をあまり怒らすな、貴様など三尾あれば一瞬であの世行きよ」

 

「ってタマちゃんは言うけど三尾までしか出せないんだよな。

それ以上は俺の身体が持たないから」

 

さっきまで玉藻前に乗っ取られていたように見えた万丈はあっさりと入れ替わった。

 

「・・・それは阿頼耶識で無理矢理精霊の力を引き出してる代償っすか?」

 

「まあな、精霊をずっと憑かせてるせいか幻覚や幻聴といったものも偶にあるけど、阿頼耶識によって俺は精霊の力を身に宿すことができて二百五十年も生きてる。

でも、バーテックスなき今もう俺は消えていい存在だ。

勇者が生き様を語り継ぐように俺のような悪役は死に様をしっかりと語らせて、こんな奴はいちゃいけないって事を大赦の奴らに見せるつけなきゃな。

・・・計画に変更はない、ないんだ」

 

万丈の態度は先ほどのハイテンションと打って変わり真剣な態度だった。彼は心の何処かでは死なずに済む方法があるかもしれないと淡い期待を寄せていた。

 

 

 

 

その頃勇者部部室にて・・・

 

「遅いな、ミカと風の奴何やってんだ?」

 

部室にはオルガと友奈、花凛、樹の四人が暇を持て余していた。東郷は何やら用事があると先に帰り、勇者部宛ての頼み事等もなかった。

樹は退屈凌ぎにカバンの中に入っていたタロットカードを出し今の二人の運勢を占いはじめた

 

「当たんのかそれ?」

 

「樹ちゃんの占いはよく当たるって評判だよ、樹ちゃんどう?」

 

「・・・・・・♪」

 

樹は真剣な顔をして並べられたカードを一枚一枚めくっていく。

 

「占いねぇ、私はそんな願掛けみたいなものよりサプリの方が断然信じられるけど」

 

「そうか?願掛けってのは大事だと思うぜ。何事も気持ちで負けてちゃ話にならねえからよ」

 

「何よ?サプリが意味ないっていうの!」

 

「そうとは言わねぇけどよ、サプリで身体が万全でも心の持ちがなきゃ意味ねぇ。

・・・俺は昔、力があっても心が折れかけてたことがあってよ。そんな時後押ししてくれたのがミカだった」

 

オルガはビスケットの件を思い出しながら語っていた

 

「え!?先生が心折れそうになるの?考えられないなぁ」

 

「もうだいぶ前の話だ、今は違う。

俺は今までも散々吹いてきた、

王になる、とにかくのし上がる

その度にアイツが、ミカが俺の言葉を実現するために俺の事を支えてくれたんだ。

俺にとってミカは花凛にとってのサプリなんだ。

まぁアレだ、想いだけでも力だでもダメって事だな」

 

 

「想いだけでも力だけでも・・・ねぇ、アンタにしちゃ珍しくいい事言うじゃない」

 

「珍しくは余計だって・・・

 

オルガと花凛の軽い言い争いを終わり同時に樹の占いも終わったようだ。しかし樹の様子が何やらおかしかった。

急に椅子から立ち上がり目の前のカードの結果に驚きを隠しきれていなかった。

 

「ど、どうしたの樹ちゃん?」

 

友奈の問いに樹は手を震えさせながらTHE LOVERSと書かれたカードを正位置で見せてきた。

 

「え?これって・・・ええ!?」

 

「どういうことだ、そのカードはどういう意味があるんだ?」

 

「え〜と・・・その・・・」

 

友奈は答えにくそうに言葉を濁す。その助け舟に樹がスケッチブックに書き込んでいく。

 

「(お姉ちゃんとミカさんが恋人同士になってるかもってことです」

 

「・・・え?ミカお前・・・」

 

「何本気でショック受けてんのよ、あくまでも占いでしょ?

本当かどうかは分からな・・・

 

 

 

「それが本当かもしれないっすよ、団長殿」

 

会話に突如入ってきたのは姿が見えぬ男の声、そう彼は

 

「忍び村田、天井裏から参戦っす!」

 

「アンタもう少し普通に入ってこれねぇのか?」

 

「忍びにとってはコレが普通っす、ってなんで自分が上から突如現れたのに誰も驚かないっすか!?」

 

「だって忍者の人だし」

 

「もう慣れっこだから」

 

「(私は驚きましたよ、ちょこっとだけ)」

 

「っく、今ので自分の忍び力がかなり削られたっす、このままだと確実に自分の存在が危ういっす」

 

「んな大袈裟な・・・

 

「自分から忍びをとったら何が残るって言うっすか!?」

 

「残らねぇな。それよりミカと風のことアンタは知ってるのか?」

 

「ふっふっふ、それを伝えに来たっすよ」

 

村田はそう言うと懐から手裏剣型の小型カメラを持ち出し壁に映像を映し出した。

その映像はミカが風の腕を掴み校外へと出て行ってる映像だった。

 

「ミカお前・・・何やってんだぁミカァァ!!」

 

「うっさい!黙って!」

 

花凛はオルガの大きな怒声を止めるため劇で使う予定の剣をハリセンのようにツッコミに使った。

久しぶりにオルガは希望の華を咲かせた。

 

キーボーノハナー

 

「すみませんでした」

 

「ったく、落ち着きなさいよ、そう落ち着いて落ち着いてサプリでもっとと!?」

 

花凛は態度こそ落ち着いているようだったが、内心はかなり焦っていた。その証拠と言わんばかりにサプリを取る手が震えていくつか粒が落ちてしまった。

 

「か、花凛ちゃん、大丈夫?」

 

「大丈夫よ・・・見に行けば」

 

「なんだかんだ言って花凛も二人のこと気になってるじゃねぇか?

友奈、樹、お前らも気になってんじゃねぇのか?」

 

二人はオルガの問いかけに頷く。程度の差はあれ誰もが二人の進展を気にしていた。

 

「決まりだな、じゃあ行くぞ!」

 

 

 

一方その頃問題の二人は数十分歩き観音市の稲積山の山道を登っていた。

ミカはこの上にある高屋神社という場所を目指していた。

 

「(これってアレよね?もしかして、ううんもしかしなくてもアレよね。

二人で大事な話って言われてこんな遠くまで連れてこられたって事は・・・告白以外考えられない!

ううぅどうしよう?ミカのことはぶっきらぼうだけど頼りになる弟みたいに見てたからあんまり意識してなかった。

そんな気持ちでミカの想いを受けてもミカに失礼だしかといって断ったらミカと顔会わせられないし・・・ああぁ私はどうすれば

 

「風?」

 

「ひゃ、ひゃい!?」

 

「大丈夫?さっきからぶつぶつ何か言ってるしなんか顔赤いよ?熱でもあるの?」

 

「なななないから!大丈夫!大丈夫・・・」

 

「そう?分かった。でも辛かったらすぐに言って」

 

「(うう、なんでミカはこんな状況でこんなに冷静なのよ。

・・・もしかしてミカ慣れてる!?

・・・イヤイヤイヤ、ミカにそんな浮いた話は聞かないし仲のいい女子なんて勇者部以外に見たことないし、でもミカだったら告白くらいで動揺する姿は考えられない・・・

っておかしいな私、落ちつくのよ犬吠埼風!

男の人から告白なんて今まで何度かされた事あったけどその時はこんなに焦ってなかった

(そして丁重にお断りした)

でも今の私は顔が赤い、現に心臓もバクバク言ってるし少しばかり暑いような感じがする。

これって一体何なの?

も、もしかして・・・)」

 

「着いたよ風」

 

風が悩み続けつつも足を進めていた結果山の天辺である高屋神社に辿り着いた。風は山登りと胸の高鳴りで軽い息切れを起こしていたため

深呼吸をし息を整えた。

その間風も心の整理をしっかりとつけた。

 

「うん大丈夫ミカ、ドーンと来て」

 

「その前にあっちを見て」

 

ミカが指差したのは今まで登ってきた道を指差した。正確にはそこから見える景色だ。

太陽が少し沈みそうな夕刻な時間は夕日と徐々に煌きだす町の夜景が鳥居ごしに広がり幻想的な光景だった。

 

「キレイ・・・」

 

「そうだね、俺たちが守ってきた町が一望できる、風も少しは気分が晴れたんじゃないの?」

 

「うん、ありがとミカ」

 

風の顔色は先程と変わり希望に満ちた笑顔だった。そしてこれから二人の関係が変わる大事な選択の時間をオルガ達は付近の雑木林に身を潜めていた。

 

 

「っ、 ここからじゃ全然聞き取れねぇぞ、もっと近づけねぇのか?」

 

「無茶言わないでくれっす、これ以上近づいたらいくら自分の隠れ蓑の術でもミカっちに気づかれるっす」

 

「花凛ちゃんは何か聞こえてる?」

 

「全然分かんないわよ」

 

「(私もです、でも何かいい雰囲気です)」

 

 

 

「それでミカ話って?」

 

「風の事、風は

 

「(ああ遂に言われちゃうんだ私の心はもうちゃんと決めたからはっきり言わないと)」

 

「みんなを戦いに巻き込んだことに責任を感じてるでしょ?」

 

「え?あ、う、うん」

 

「(な〜んだ。話ってそういう話だったんだ、ちょっとガッカリ。

でもミカ私のこと心配してくれてたんだ、嬉しいな)」

 

「隠してたつもりだけどミカには分かっちゃった?」

 

「分かるよ、前に今の風と同じ目をしていた人がいたから」

 

今の風の目つきはかつて鉄華団と共にいたフミタンという女性にそっくりだった。

 

「風はみんなを勇者部に誘って戦って、散華させた責任を感じていて凄く悩んでる、そうでしょ?」

 

「うん、もし治る方法が無かったらって考えたら・・・こんな事相談するのも誰にしていいか分かんなくて・・・」

 

「でも今は出来てるでしょ、だったらここに連れてきた意味はあったね。

俺はそういう責任ってのはオルガに任せてきたけど、オルガなら筋を通して動くと思う」

 

「筋を、通す・・・?」

 

「オルガはいつもそうしてきた、もし風が責任を取るつもりならよく考えて最後は風自身が自分の行動を決める事だよ。

でもそれは風のこれからの全部を決めるような大事な決断だ。

だから不安なら俺も力になるよ。それが風やオルガ、皆んなの為になる事なら」

 

「ミカ・・・」

 

「(そうだ私は一人で戦ってきた訳じゃない、ミカや友奈、東郷に花凛そして樹。

鉄華団として勇者部として、私達は団長の心の支えがあったからこそ私はバーテックスという強大な敵にも立ち向かえた。

そして・・・

 

「ありがとミカ・・・ねぇミカ、私ミカにお礼がしたいんだけど」

 

「礼される様な事した?」

 

「私がしたいの、目瞑って」

 

「?、分かった」

 

「(・・・あぁ〜!!私何してるの!?ムードに流されて私ミカにキスとかしちゃおうとしてる!?

・・・駄目、私そこまで決意が出来てない、でも何かしないと、何か・・・」

 

風は冷静さを隠しきれず誰が見ても動揺していた。それは隠れていたオルガ達にも伝わっていた。

遂に二人が結ばれる瞬間を今や今やと待ちわびていた。

 

「(落ち着いて、今までミカのことは弟みたいに思ってたじゃない。いつも通りいつも通り・・・無理!

もうどうにでもなれ!」

 

風はミカに対してうえから覆いかぶさる様に抱きしめた。

それと同時にギャラリーもざわつき始めるが風は勿論ミカも風の行動に驚いたのか気づいていない。

 

「ふ、風。ちょっと苦しいんだけだど」

 

「あ、・・・そうよねこんなのがお礼なんてその・・・

 

風はミカの苦言に対し少し距離を置いてしおらしくなった。

ミカはどこか懐かしさを覚えつつも風に対しキスをした。

その時世界にオルフェンズの涙が溢れた。

 

「ん!?んん・・・ミ、ミカ!?何!?何!?・・・何?」

 

風は誰かさんと同じような反応で見たことないような勢いでバックステップし、口に手をつけた。

 

「可愛いと思ったから。あれ、嫌だった?」

 

「 ああ〜うあぁぁぁ!?」

 

風は今まで心に溜め込んでいたものが崩れ去るかのように狼狽した

それはオルガ達も同様だった。隠れ蓑で隠しきれないほど激しい動きにミカが視線を向けた。

 

「誰?」

 

いるとバレれば見つかるのも時間の問題のため友奈、花凛、樹の三人は出てきた。

 

「み、皆んな・・・」

 

「(おめでとうお姉ちゃん!)」

 

「え?」

 

「おめでとうございます!風先輩!」

 

「ええ!?」

 

「まぁ今は素直に祝ってあげる。おめでと風」

 

「えええ!?い、いつからいたの?」

 

「(最初からだよ、お姉ちゃんとミカさんに愛のタロットカードがでてつい・・・)」

 

「全部聞かれてたの!?」

 

「よく聞こませんでしたよ、でもでも二人が恋人同士になるなんてビックリしちゃいました!」

 

「は?」

 

「なんでアンタがそんな反応なのよ?風にその、したならちゃんと責任とってやりなさいよ」

 

「どうすればいい?」

 

「えっ?そんなの・・・そんなの・・・分かんないわよ。

風、なんとかしなさいよ!アンタの彼氏でしょ!」

 

「わ、私!?私の・・・

ねぇミカ、さっき私の力になってくれるって言ったわよね?

なら・・・私の恋人になってくれる?」

 

「いーよ、それが風の望みなら」

 

こうして世界にまた一つ新たなるカップルが生まれた。

友奈の提案で今週の休みにお祝いパーティーを開く事が決まったが、それはのちのお話である。

勇者部はまた一つ進む事が出来た

 

 

「あれ?そういえば何か忘れてるような・・・」

 

 

 

 

「団長殿?お〜い団長殿〜?」

 

「・・・ハッ!?アイツらどこに?」

 

「ミカ殿達ならとっくに山降りたっすよ」

 

「ミカ・・・くっ・・うぅうあぁぁぁぁぁぁぁ!!

ミカァ!俺は絶対!お前を超えてぇ!名瀬の兄貴みたいになってやるぞぉぉぉぉ!!!」

 

今ここにオルガは新たなる王を目指す宣言をした。

 

 

 

 

 




後書き

おのれ鉄華団!
貴様らの活躍のせいで風先輩に心の余裕が生まれ風先輩が大赦に反逆するルートが無くなってしまった!
つまりこの世界(ゆゆゆオリジナル)もお前に破壊されてしまった!
おのれ鉄華団!恋愛ってのはなんて素晴らしいんだ!

それはそれとして、そこにいる忍び崩れと大バカをバケガニで始末してくれる!



今回の話ですがある条件を満たすと樹ルートが解放されます
この話の時点で
犬吠埼風の好感度60〜70
犬吠埼樹の好感度80以上
だと風の面談時に樹がミカに対して相談をしにきます
相談後散華についてちゃんと話を聞くために二人でモンタークへ向かう事になります
(この移動中に財団Rからの刺客「謎の忍者M」と戦闘イベントあり)
話を聞いた後の選択肢で「約束を破り引き金を引く」を選択すると散華で失われたものが戻り樹が彼女になります
ただしこの後の「バーテックス大進行戦」で戦力が減るため注意しましょう


このルートに入る条件を満たすのには通常プレイでは難しく、追加DLC「運命の種」を手に入れるとよいでしょう。

「ハイネイベント」を発生させ進める過程で樹の芸能活動をサポートする選択肢が追加されるため樹の好感度を上げやすくなります
またこの同DLCの「無限の正義」や「運命の翼」を進めておくとバーテックスとの戦いで味方が増える為余裕があればやっておくことをオススメします

風の好感度はランダムイベントである「勉強会」や「昼の聖戦」等で風が喜ぶ選択肢を適度に選択するとよいでしょう


・・・これそういうゲームですらねぇから!




この小説は平和な時代を作る企業「大赦」と

鉄華団
ギャラルホルン
モンターク商会
ビシディアン
ヴェイガン
ザフト
バーテックス
我が魔王一の家臣
幻夢コーポレーション
nascita
難波重工
ユグドラシルコーポレーション
野座間製薬
BOARD
ZECT
素晴らしき青空の会
鳴滝
財団x
財団R
財団B


の提供でお送りしました







???「風さんも作りましょう!三日月の赤ちゃん!」


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22話

正直言います、自分にはストーリーを考えつく能力はあってもそれを纏める能力が圧倒的に不足しています
つまりは編集力がないという事です
今回、そして次回も書いた自分ですらちゃんとストーリー及び設定関連把握しきれていない為
「なんなの・・・この話・・・」みたいな感じで読んでもらって結構です
どうせこの辺りの説明話は東郷さんがぶち壊す可能性が高いためです
なお今回及び次回に鉄華団と勇者部は出番ないです



今回のあらすじ


全国のうどん店を閉店に追い込むほどの旨さを持つ蕎麦店がついに開かれた!
その蕎麦屋のオーナー、ゴッド・オブ・ザ・そばキングの前に全国のうどん店が立ちはだかる!

そして今!
そばキングの脅威はモンタークにも迫っていた
急遽対決を迫られた店長代理兼店番の玉藻前とその下僕兼雑用係トド・ミルコネン!
特に出番もなくやられた石動!
存在していたのか・・・ライザ!(誰なんだよコイツは)
いつも頑張っているタカキも頑張ってるし、その妹フウカとアルミリアは看板娘として頑張ってるし、タカキも頑張ってるし俺も頑張らないと

モンターク商会の命運をかけた決戦の時を迎えようとしていた!




「はぁ〜〜良いよね若いってさ。・・・どうせ私なんて生き遅れた婆さんだよ〜アハ、アハハハハハ」

 

「良いよなぁアイツらは、好きな人同士で付き合えて。

どうせ俺なんか・・・」

 

風とミカが恋人になって三日が過ぎ金曜日となった。

お昼頃この三日間ずっと大赦で仕事をしていた春信は一息いれようとモンターク地下へと行き、食事ついでに風とミカが恋人になった事を桐生と万丈に伝えた。

その結果がコレである

桐生は奥の研究室へと引きこもり、万丈はその場で少しうずくまった後ポツリと聞いてきた。

 

「なあ春ちゃんは恋人いた事あるのか?」

 

「いえ、そういった話は大抵断っています。花凛の事が心配でしたから」

 

「そうか春ちゃんはいいな家族愛がしっかり守れてて。

俺は愛を自分で壊しちゃったから・・・」

 

「万丈さん?」

 

「いや何でもない、ないんだ。

それよりここ三日間村ちゃんの姿を見てないが何か知らないか?」

 

「村田さんですか?彼には少し仕事を頼んでいます」

 

「仕事、何だ?」

 

「14体目のバーテックスについての調査です。以前モビルアーマーと同時に出た三体目の双子座は神樹様の神託にもないバーテックスです。

この事態は明らかに大赦の想定を超えています。私達の知り得ない何かが動いていると思うんです。

その件について何か知りませんか万丈さん?いいえ黒い鳥」

 

「・・・知らないなぁ?初耳だぞその情報」

 

「知らないって、貴方ほどの人が知らない訳ないでしょ!?」

 

「ホントホント、俺は嘘はつかない主義なんだ。それにこんな場でわざわざ嘘をつく理由もないしな。

しかしそうだな、双子のなのに三体目か・・・

もしかしたらバーテックスにも隠し子って概念が有るのかもしれんな

俺のおばあちゃんみたいにさ」

 

「隠し子・・・ですか?」

 

「あんまり考えたくないけどさ、もしそんな概念があるなら奴等との戦いはまだ終わってないかもしれない。

考えうる最悪のパターンは奴等は倒されると新しい個体を作り出しまた攻めてくるって所だ」

 

「そうでない事を、切に願うしかないですね」

 

「・・・願うだけでいいのか?もし今の話が本当だったらまた戦いになるぞ?

もし春ちゃんにその気があるなら・・・悪魔と契約する勇気。

春ちゃんにあるかな?」

 

そう言うと万丈は背中の阿頼耶識から玉藻前の尻尾を一本出し、その尾の先に白い光球を乗せて春信の前に運んだ。

よく見るとその光の中には春信の機体であるデスティニーが映されていた。

 

「バーテックスに対抗するには神樹様の力を借り受けて戦う勇者か、ガンダムフレームに採用されるツインリアクターシステムによる圧倒的出力で叩き潰す。

この二択しかない・・・と思ってたんだがとある財団の協力である事実が判明した」

 

「財団?」

 

「財団R、村ちゃんが元々いた企業らしい。いや違うな、村ちゃんはそこからきた企業スパイだ。大方勇者システムがほしいんだろうよ」

 

「スパイだと分かっていて、貴方は野放しにしているのですか?」

 

「おばあちゃんが言ってた、上に立つものは清濁合わせ持てって。利用できる内は利用するさ。

で、肝心の方法だがMSに精霊を組み込む事で擬似的にだがMSの出力と合わせて勇者システムに近い性能を発揮する事ができる」

 

「そんな事が出来るのですか?」

 

「実際既にバルバトスがその実験に成功している。

もし命をかけてでも戦う気があるなら用意しとくけどどうする?」

 

「やります」

 

春信の答えは即答だった。戦える手があるならばと飛びつく勢いだ。

 

「決意は固いようだな?分かった、タカキ君に仕事頼んでおくよ。

だが一つ聞くぞ?何故そうまでして戦おうとする?」

 

「平和な世を作るためです、争いのない世界より幸せな世界なんてあるはずがないです。

私はその為に大赦に入ったのですから」

 

「なるほどなるほど、合格点だが満点じゃないな。

本当は妹の力になりたいからじゃないのか?」

 

「それは・・・はい、少し恥ずかしいですね」

 

「恥ずかしい?何を躊躇う必要がある?

妹の為に共に戦おうとする。

実に愛に溢れていて人間らしく素晴らしい理由じゃないか

その愛は大切にしておけよ、人間は愛がなければ死ぬ生き物だからさ」

 

「愛・・・ですか。では万丈さんにとって愛って何ですか?」

 

「そんなもんうどん愛以外無くしちまったよ。みんな俺より先に逝っちまったから

 

万丈の発言は彼に似合わない平坦なものだった。彼のハイテンション振りは悲しみを紛らわせるための振りでしか過ぎない。

次の喜びもまた偽りにしか過ぎない

 

「出来たよ〜眠い、寝る」

 

先程まで研究室にこもっていた桐生は何かを作り上げていたようだ。それを終えたら吸い込まれるように部屋のすぐ外にあったベットへと倒れこみ睡魔へと落ちた。

 

「来たかぁ!ふむふむ・・・最高だ!最高だよこの力で俺は世界を変えられる!

あは、あっはっはっはっは!!」

 

 

万丈のその狂気の様な笑い、それを影で見ていたガエリオとアインの姿があった

 

 

 

「マクギリス・・・お前は一体何をしようとしているんだ?その真意を見定めさせてもらうぞ」

 

「・・・ボードウィン特務三佐、何やら上が騒がしいようですが?」

 

万丈達が作り上げた物も気になるが上、つまりは店から何やら悲鳴のようなものが聞こえてきて二人は表へと出た。

その光景はまるで戦場とかしていた。

マクギリスの部下である石動やライザを含む数名が倒れていた。立っていたのは2名、万丈の精霊であり店番をしていた玉藻、そしてこの惨状を引き起こした仮面をつけた者だ。

 

「貴様か?この惨状を引き起こしたのは?」

 

「そば、そばそばそば、そばそばそばそば(そうだ、我が名はそばキング、うどんと人類を粛清するものなり)」

 

変な喋りと共に周囲にテレパシーとして言葉が伝わってきた。

彼(?)からは得体の知れない不気味なオーラが出ていた。

が、そんなものを払拭するようにあの機体が姿を現した。

 

「マクギリスゥゥゥ!」

 




何なの、この人達・・・


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23話

前回までのあらすじ
突如モンタークに襲来したそばキングの前に左右田正義、バエル同好会仲良し四人組、石動、ライザ(女の名前なのになんだ男か)はあっけなく敗れた
更に玉藻の椅子代わりに使っていたトドも倒れ、何とあのタカキ君も過労で倒れ頑張れなくなってしまった!

もう後がないと思われたその時、あの男達が姿を現した!


「聞けぇ!そして祝え!皆の衆!

今!五日間の眠りからマクギリス・ファリド公と共にバエルは蘇った!」

 

「バエルだ!」

 

「アグニカ・カイエルの魂!」

 

「そうだ、ギャラルホルンの正義は我々にあるーー!!!」

 

「准将ぉぉぉぉ!!!」

 

「マッキー!!」

 

「マクギリスゥゥゥ!!」

 

玉藻の号令で先ほどまであった焦燥感は消え革命の時が始まろうとしていた。

 

そしてうどんを愛して愛して止まらない万丈はまたそばはうどんの足元にも及ばないという事を示すため地下より姿を現した

 

「おばあちゃんが言っていた。

うどんは麺類界で最高の一品だと。

うどんがそば如きに負けるわけにはいかねぇんだよ!」

 

「我が主人の言葉に付け加えよう、このモンターク店はバエルを持つファリド公の店。この店を襲うということバエルに逆らうということじゃ」

 

「そうだ、バエルを持つ私に背くということは私だけではなくアグニカの魂をも侮辱する行為、君はそれがどれほどの大罪か分かっているのか?」

 

三人の睨み顔にそばキングは睨む返すように顔を下げた。仮面を被っているせいで表情は見えず、そばのようにしなやかな髪は風で揺れるばかりだ。

やがて風は止みそばキングはその場で首が折れる程の勢いで顔を上げ独特の高笑いを上げた

 

「そばそばそばそばそば!」

 

「何がおかしい?」

 

「そばそば!?そばそばそば!?そばそば、そばそばそばそば!(うどんだと?バエルの威光だと!?そんなものがバーテックスに通用するものか!)」

 

「・・・貴様、バエルの事をそこまで侮辱するとは愚かにもほどがある・・・」

 

「何て事だ、君の罪は止まらない!加速する!」

 

「なんと言うことを・・・そんな非道は許されるはずが無いんだ!」

 

堪忍袋の尾が切れたのかアインとガエリオはそれぞれ自分の機体を呼び出そうとしたが、その前に万丈はそばキング相手に殴りかかった

 

「バーテックスの事を知りバエルを蔑むその行為、絶対許さねぇ!」

 

「許さないだと?それは我々バー・・・

 

「黙ってろよ屑!お前は俺が倒す!それだけだぁぁぁ!」

 

続いて飛んで左足右足と回し蹴りを繰り出し追撃をかける。そばキングはそばのようにしなやかな両腕でいなしたが、それも想定内である。

いなすと同時に後方に控えていた玉藻がお得意の妖術でエネルギー弾をそばキングの足を狙った。同時攻撃に防ぐ事はできない・・・と思いきやそばキングは足元にバリアを展開して防いだ。

更に反撃として万丈の腹に掌底を決め玉藻諸共モンターク店内へと吹っ飛ばした。

そのバリアに万丈は見覚えがあった。

 

「うぉぉぉ!?・・・今の力・・・知ってる奴だ。何でまた現れた?俺の仕事は完璧だった筈・・・

 

「主人よ!はよ退かぬか!重いのじゃ」

 

「重いなら俺の中に入ればいいだろ?力を貸せよタマちゃん、この手で奴を倒すぞ」

 

「・・・うむ」

 

玉藻は少々不機嫌な顔をしながらも阿頼耶識を通して万丈の精神空間の中へと入っていった。

先程の力は約270年前に万丈が対峙した人間とほぼ同じものであり、因縁の強い力だ。

 

「主人よ、何をそんなに怒っているのじゃ?」

 

「怒るに決まってるだろ。

アイツのせいで、あんな力のせいで・・・俺も弥勒家も蓮ちゃんもおかしくなっちまった。

アイツさえいなければ・・・っ!?」

 

万丈は自分の中の怒りを露わにし立ち上がろうとしつつ首を横に振る。その時視界の片隅に有り得ないものが見えた。

 

「タカキ・・・君?どうして、どうしてタカキ君が休んだりしてるんだ!」

 

タカキは妹のフウカに見守られながら深い眠りについていた。

万丈の大きな声にフウカは口元に人差し指を置き「しー」と注意した

過労によりこんな事になったタカキは数時間は目を覚まさないだろう。

 

「すまない・・・タカキ君、仇は俺が討つ」

 

万丈はその言葉を言った後桐生が作った新しい勇者システムの機能を持つスマホを店から持ち出した。

 

再び外へ出た光景は酷い有様だった。アインとガリガリはモビルスーツに乗り込む間も無く倒されていた。

 

「ガエリオ・・・だ」

 

更にバエルのコックピットブロックが念入りに攻撃されなんとか脱出したマクギリスが絶対絶命の危機に陥っていた

 

「マッキー!?」

 

アルミリアは今にも駆け出しそうにマクギリスに声をかける。だが彼女の足は動かない、恐怖で足がすくんでしまっているからだ。しかしその恐怖は強烈な睡魔と共に消えた

 

「主人よ、お嬢は店の中に退避させておくぞ?」

 

玉藻の妖術によりアルミリアは眠りに入り尻尾を器用に使って店の中へと彼女を入れた

そばキング、その正体は人間がかつてバーテックスの力を得ようと人体実験をした果ての姿。

人としての自我をほぼ失いバーテックスの目的である人類殲滅を目的とした存在でありかつて万丈自身もあのような存在になっていた。

その存在を決して認めるわけにはいかず、生かしてもおけない。

 

「こっちを見ろ!バーテックスもどき!」

 

万丈が右手で差し出したのは先程持ち出したスマホである。画面には黒百合の花が描かれていた。

 

「そ、そば!?(それは!?)」

 

『ブラックサレナ!』

 

万丈は黒百合で描かれたボタンを押すと変身・・・せずベルトが腰に巻きつけられた。

そのベルトにはちょうどスマホが入るような隙間があり、そこにいれると同時に万丈の周りに黒羽が竜巻のように現れる

 

「蒸着」

 

発言と同時に羽が服を覆う様に集まりやがて顔を含む全身を覆い尽くす。

その状態で両腕を鳥が羽ばたく様に広げると装甲が全身に取り付き、まるで人間大のMSの様な姿を見せる

背中に付いた羽は黒い鳥と呼ぶに相応しい姿でまるで暗黒面に落ちたバエルの様にも見えた。

 

「その禁忌の力、神に返せ・・・返せよなぁ!」

 

黒い鳥となった万丈は先程とは比べ物にならない速度で近づき、蹴りの連打を浴びせる。四方八方からくる攻撃に一発一発精霊の力を乗せていく。

やがてその攻撃は勇者のパンチ一発分に相当する威力になった。

 

「9.8秒、それが俺の勝利までの時間だ」

 

「そばーーー!!!(グワァァァァァ)」

 

最後の一蹴りでそばキングを爆発させそれと同時に蒸着を解いた。

 

「これが、これこそが黒い鳥としての本当の力・・・あは、あははは

あっはっはっハッハハハ!!

あ・・・

 

彼が喜び叫んだ、しかしその後崩れる様にその場に倒れこんだ。体に激痛が走りそのままうつ伏せに倒れた。

 

 

 

 

モンターク地下にて傷の手当てを済ませマクギリス、ガエリオ、アイン、静、そしてベットで横になって眠っている万丈の五人は今にも一触触発な雰囲気の中にいた。

理由は新開発の勇者システムの為に大赦本部から盗んできたデータだ。

ガエリオとアインがここに来たのはそのデータ奪還とデータの使い道を探る為だ。

 

「貴様らの発明のお陰で訳の分からん敵を撃退できた事には礼を言う。だがマクギリス、お前はあの力を何に使うつもりだ!?あの力を量産して世界を戦乱にでもしようとしてるのか!?」

 

「フッ、勘違いするなよガエリオ。俺はそんな事に興味は無い。

あの力は大赦を本来あるべき姿へと戻す為に撃破すべき存在、いわば革命の礎の為の犠牲だ」

 

「か、革命?犠牲?意味が分からない?マクギリスお前は何を・・・」

 

「簡単な事だよ、彼は彼自身の追い求める理想を具現化する為に自らを犠牲にしてその理想を叶えようとしている。

かつてアグニカは誰もが平等に競いあい、成長していつかはバーテックスから世界を取り戻そうという願いの元大赦という組織を作り上げた。

しかし、その世界作りを邪魔する人物が過去の歴史に現れた。彼はその人物を排除し大赦へと貢献する行為を200年は続けてきた、いわばアグニカとは真逆の影の英雄だ。

 

彼の追い求める理想はアグニカと同じ・・・筈だった。

300年という長い歴史の中で大赦の理想は腐敗し自分達のとって不必要なものは次々と排除していった。

その手段として使われたのが彼自身だ」

 

「・・・士君の役目は本来ならば赤嶺という家の者達が受け持つ予定だったんだよ。

彼は昔赤嶺家の人に助けられて恩義を感じているみたいだからね。

自らを犠牲にしてまで腐敗を進めていると知りつつも次々と彼は仕事を果たしてきた

正直その心意気は子供の頃から当たり前の様に一緒にいた私にも分かんない」

 

「彼は組織の腐敗した内情を示す生きた証拠だ、先程の力を使い大赦の腐敗を世間に知らしめつつ彼はこの世界を破壊しようとする。

その行為は多くの人の目に忌むべき存在と映るだろう。

その唾棄すべき存在と戦い、勝利するのが彼女達勇者だ。

特に結城友奈、彼女の存在は民衆にとって英雄とみられるだろう。

そこから先は私の出番だ、彼の言伝を使い大赦が世界を守る為の組織という評価を崩す

彼女達を支援しバエルを持つ俺が大赦のトップに成り代わりアグニカの理想とする世界の扉を開く。

劇的な舞台に似つかわしい劇的な演出だろ?」

 

「マクギリス・・・お前は、お前は人の命を何だと思っているんだ!」

 

「人じゃないですよガリガリさん」

 

「ガエリオだ!っ貴様起きたのか?」

 

「寝てましたよ、でも話の内容は大体分かってます。組織を腐敗させちまったのは俺だ。だからそのケジメキッチリつけないといけない。俺はもう死を恐れてない、俺が本当に恐れるのは何もなせずに死ぬ事だけだ」

 

「何もなせずに死ぬ事、かつてのクランク二尉と同じようにですか」

 

「クランクのじいさんか、確か君や春ちゃんの上司だった人か?」

 

「はい、クランク二尉は立派な志しを持っていました。

なのにバーテックスの奴らはあの人が救助活動の最中に再び攻撃をしかけクランク二尉諸共殺めた。

奴ら|きゃつら|は全て倒したと言われていたのにまだ残っている可能性があると貴方言っていた。俺にも奴らと戦う術をください」

 

「・・・話聞かれてたか、その危険性も分かっていて頼んでだよな?」

 

アインは静かに頷く。ガエリオは意外にも反対する意見はなかった。

 

「分かった、タカキ君・・・は駄目か。仕方ないあの連中を頼るか」

 

万丈はどこかに連絡をつけフランクそうに会話した後春信とアイン用のMSにバーテックスに対抗しうる戦力に改造する約束を取り付けた

 

「これで良し、ガエリオさん。計画の邪魔はしないで下さいよ?これは俺自身が望んでる事なんですから」

 

ガエリオは納得いかない顔を見せた。望んでいるとはいえこれから死のうとする者を見過ごせと言われれば無理もない。

 

しかしここまで来てしまった以上彼の死はもう止められない。

黒い鳥を撃破する事が散華で失われた物を手に入れる方法だからだ

 

 

 

 




大赦!
テメェを詐欺罪と傷害罪で訴える!理由はもちろん分かってんだろうな?
アンタが俺達をこんなウラ技(満開と散華)で騙して、アイツらの体を破壊したからだ!覚悟の準備はできてんだろうな?
近い内にマクギリスと共にテメエらに報復しに行く。裁判なんて起こさせねえ、全て根こそぎ叩き潰す。
慰謝料の準備なんていらねぇ、アンタらは犯罪者だ
あの世にぶち込まれるのを待ってろよ、いいな!


もうさ全部大赦の奴らのせいにしてもいいんじゃないかな。
実は自分達の知らない所で起こした行動がバーテックスの怒りを買って厄祭戦引き起こしたとか



ネタバレ
自由を奪った状態で嫌がる女の子と無理矢理結婚しようとした挙句、命を奪おうだなんてやめろよ卑怯者!


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若き日の私よ、その女はやめておけ

前書き
時間が空いた割に合わない文章量と進まない話だ

原因は積み重なる残業。
それと設定や世界観がバラバラな異世界オルガを美しくないとか醜いとか言い張り、鉄血という時代を1から美しく作り直そうとする組織が現れたからです

今現在、鉄血の世界で瞬間瞬間を必死で生きようとしている鉄華団を守っています

多くの異世界オルガの世界を救う為、君達の協力を要請する!

それはそれとしてヴェイガンは殲滅する!





「・・・いづらい」

 

「ああ、いづらいよな花凛」

 

「あはは」

 

金曜の授業も終わり文化祭の用意も六割がた終わっていた。

部内にはオルガ、友奈、花凛、樹、そして部屋の奥でイチャイチャした雰囲気のミカと風の姿があった。

イチャイチャと言っても風が一方的にミカを好くようにして妙に距離感が近い状態であり用意を進めて・・・いられるわけがない。

 

「風、そんなに密着されると進められないんだけど」

 

「え〜いいじゃない、そんなの後でもさ〜」

 

風は教室内ではミカとはただの同級生で同じ部活仲間の距離感でいるが、いざ部室に入るとコレだ。

部長としての責任に対してのストレス発散も兼ねてミカに甘えた表情を見せる。

風がここまで暴走してしまったのは樹が変に焚きつけてしまったせいだ。樹はというと風に彼氏ができた嬉しさと少々やりすぎなくらいの愛情表現で呆れつつ風を見ている。

当然この光景は部員も見ており、花凛とオルガはなるべく視界に入れようとしないが二人の事が気になり、友奈は苦笑いを浮かべるばかりだった。

そんな間が続き作業が一段落した所で休憩に入った。

樹が全員分のお茶を用意してくれてオルガは真っ先に飲み干した。

 

「ぷはぁ〜美味いな」

 

「さっすが私の妹だけあるわ、お茶なら私よりも美味しい」

 

「そうですね、ちょうどいい温度で飲みやすくて良いですね」

 

「しかしこんな美味な茶を満足に味合わせぬとは神樹も罪つくりよのぉ」

 

「ああ・・・ん?誰だアンタ!?いつからいた!?どっから来た!?」

 

 

 

勇者部の会話に唐突に紛れ込みオルガの隣で茶を飲んでいたのは緑色の着物に身を包んだ美女、玉藻前だ。

オルガ達は突然の出来事に動揺して彼女に距離を置くが、彼女はゆっくりと茶を飲み干しお代わりを要求しだした。

樹は流されるまま用意しようとするが、オルガは強引に間に入った。

 

「誰なんだアンタ一体・・・

 

「そう急くでない、食事の時間とは神聖なものじゃ。何人たりとも邪魔は許されぬ、と我が主人ならば言うじゃろうな」

 

「その台詞もしかして万丈さんの?」

 

「うむ、それはそうと早く茶を持って参れ、妾は我が主人ほど我慢強くないぞ?」

 

このままでは埒があかないと見たオルガはポットからお茶を汲んでやり投げやりな態度で渡した。その態度にこれといって反応もせず玉藻は二杯目も飲み干した。

 

「ふむ、こちらも中々の美味であったぞ。鉄火の長よ褒美をやろう」

 

玉藻は指をパチンと鳴らした。するとオルガは眠るように椅子に座り込んだ。

最初は心地よいほどの笑顔を見せていたが、その10秒後鼻から血を流し希望の花を咲かせてしまった。

 

「オルガ!?」

 

「ふむ、刺激が少々強すぎたようじゃな」

 

玉藻は悪びれるような顔もせずケラケラと軽い笑いを見せた。

それに対してミカは拳銃を突きつけた。

 

「オルガに何をした?」

 

「褒美と言ったであろう、妾は春を売る夢を見せてやっただけじゃ」

 

「何それ?」

 

ミカは意味が分からず首を傾げていたが、隣にいた風はその意味を知っていたのか顔を赤らめた

 

「風は知ってるの?」

 

「えっ!?いや・・・その・・・

 

ミカの質問にタジタジになる風に追撃をかけるように花凛は聞き出した

 

「・・・ねぇ風、いや風先輩?先輩なら勿論知ってるでしょ?教えなさいよ」

 

花凛は少々意地悪そうな声で風を追い詰める。しかしこの一言を玉藻は嘲り笑った。

 

「ほう、エリートたる完成型勇者が知らぬと申すか?これは驚きじゃのう」

 

「なっ、知ってるわよこのくらい!・・・あ・・・」

 

玉藻の挑発にいとも容易く引っかかり追い詰められたのは風から花凛へと変わった。

ぐぬぬと悔しそうな顔をした花凛は背水の陣を敷かれた、がそれを救ったのは意外にもミカだった

 

「言いたくないなら言わなくてもいいよ?それに二人が喧嘩するのは嫌だ。

 

「け、喧嘩じゃないわよこのくらい、ねぇ花凛?」

 

「そうね喧嘩なんかしてない」

 

「そう?それならいいや。言葉の意味はオルガに聞くから」

 

「え?ちょっと待・・・

 

風の制止も止む無くミカはオルガを揺すり強引に起こして問いただした。

 

「ねぇオルガ、何があったの?」

 

「俺は・・・散々達しちまった。俺は・・・あいつに殺されたって事だよな」

 

「・・・風、なんかオルガがおかしくなったんだけどどうすればいい?」

 

「え〜と・・・とりあえず放っておけばその内治るんじゃない?」

 

「うむ、妾もそう思うぞ。なんせ妾の仕業じゃからな。この男は大切なものを失い、そしてまた大切なものを得たからの。

割り切るにはそう簡単なものではない」

 

玉藻は悪びれた様子もなく微笑し何処からともなく取り出した扇で口元を隠した

 

「へぇ、じゃあアンタは俺達にとって敵なの?」

 

「安心せい敵になるつもりはない。そしてそろそろ役者も揃い踏みになる頃じゃ」

 

広げた扇を閉じると同時に勇者部の部屋の扉が開いた。開いた人物は東郷とそれに付き添う仮面を被った大赦の人だった。

大赦の人は一礼した後部屋を出て職員室の方へと向かった。

 

 

「お久しぶりです、風先輩、三日月先輩、樹ちゃん」

 

「あれ?東郷さん?今日も予定があって先に帰ってたんじゃないの?」

 

「一度はね、けど宿題を家に忘れてきて取りに戻ってたの」

 

「珍しいわね、東郷が宿題を忘れてくるなんて。はっ!?これは嵐の前触れ!?」

 

「なんじゃ鷲・・・青き勇者よ、好きな男でもできたかの?」

 

「ち、違います!玉藻さん知っててからかわないで下さい!」

 

「東郷さん?この人知り合いなの?」

 

「そうじゃぞちょっとした縁という奴じゃ。そうあれは今から一万年と二千年前の・・・というのは冗談じゃ。

知り合ったのは二年前のちょっとした期間の話じゃ、面白みもないがの。

さて、役者は揃い踏みった!

今こそ名乗ろう妾の名を

妾は玉藻の前!精霊にして愛の探求者じゃ」

 

「愛の・・・

 

「探求者?」

 

友奈と風が呆気に取られる間も少なく玉藻は言いたいこと好き勝手に言い出す

閉じた扇を上に掲げ派手なパフォーマンスをしだす

 

「そう、愛とは時に国をも破滅させる事もあれば救うこともあり。

人間の愛という感情には神にも完全には理解できぬ特別な力を持っている、故に愛の力で花は再び咲き誇る」

 

「それって戻る方法が見つかったってこと?私の目や樹の声とかも?」

 

「そう、その通りじゃ。では勇者達に教えようか、略奪の愛というモノを」

 

 

 

一方その頃先程東郷を連れた大赦の人物は職員室を出た後アッシュ先生と共に校長室にいた

大赦の人は校長に書状を渡し相手の出方を伺った

校長の姿は青い髪に立派な青髭、そして校長という立場には似合わないゴーグルをつけている。書状を読み終わり校長は軽く溜息をつき口を開く。

 

「成る程、バーテックスという化け物がこの世界には存在していたというのか」

 

「していたというのは間違いかもしれない、今も結界の外で潜伏し次の攻撃の準備をしている可能性がある。

そういった文章だな」

 

「現役を退いた身である私を再び戦いに駆り出そうというのか貴様は?」

 

「無礼であることは重々承知しています。しかし私には手段を選んでいられる程余裕はありません」

 

「組織の秘密を外部に漏らすという裏切りをしてでもか?」

 

その問いに対し大赦の人は仮面を外す。大赦の人間ではなく勇者部部員三好花凛の兄として春信は頷いた。

 

「私には例え道を踏み外しているとしても守りたい家族がいます。

もしかのものが再び攻め込んできたご助力をどうかお願い致します」

 

組織を裏切ってでも家族を守ろうとする春信の姿勢に校長は覚えがあった。

家族を大切にしようとするその姿勢と根気に負け校長、フリット・アスノ、及びアッシュは再び戦火に身を入れる覚悟と準備に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 




やられたっす
投稿者 変人謎忍者 10月16日水曜日 7時14分22秒
昨日の10月15日にクソださいtシャツ好きのヒゲのおじさん(38歳)と先日メールくれたドルオタで農家のにいちゃん(28歳)と自分(2歳)の3人で県北にある川の土手の先へと進んで神樹の結界の外へ調査に出たっす

昨日は今日の調査の為にコンビニでスクラッシュドライバーとフルボトルを買ってしっかり準備した後、ネビュラガスを飲んでしこたま調査やりはじめたっす
3人で結界の外へ出ると辺り一面に炎がドバーッと吹き出ていた空間だったっす

しばらくしたら、空間に無数にある穴がひくひくしてバーテックス星屑体が出口を求めてうじゃうじゃと出てきたっす

奴らがこちらに気付き襲いかかってきたので同時にドライバーを使って変身してもうめちゃくちゃっす
3人で出したキックを浴びせたっすけどまるで効果が無いように見えたっす
ああ~~ここにいると暑いっす

しばらくやりまくってたらダメージが蓄積して変身が解けて、もう気が狂う程キツイっす

ヒゲのおじさんは「大義の為の犠牲なれ」とか言いながら懐から自分の知らないドライバーを取り出して白いマントを付けたカッコイイ紫色のヒーローみたいに変身したっす

農家のにいちゃんもおじさんにつられるようにドライバーを取り出しドライバーから出てきた音声「Are You Ready?」という問いかけに
「できてるよ」と答えて、先程の黄色い姿から氷のように冷たい青色の姿へと変わったっす
それからは、もうめちゃくちゃにおじさんと兄ちゃんのサポートをして二回も死にかけたっすもう二度とやりたくないっす

何とか結界の内側へと戻ってこれた頃にはもう真夜中で全員満身創痍で身体中火傷だらけっす
何とか死人なしで済んだと思ったらヒゲのおじさんと農家の兄ちゃんが変身を解除したら体全身が散華して消えてしまったっす
自分の身体もこのままでは二人と同じになると思いつつも立ち上がる力すらなく、深い眠りへと入っていったっす
眠る直前、人に翼が生えたような黒い者が結界外に行くように見えたっすがアレは何だったっすかね?

自分の代わりに調査やりたいやつ、至急、メールくれっす
楽しみに待ってるっすよ〜


タイトルと後書きの内容を考えるだけで10日は投稿できずにいました
後この作品に出てくるオリジナル勢は「このキャラはここで死んだ方が幸せだと思うので生かしておきました」などという展開はまずないでしょう
まともな奴は一人もいないので


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うどんと偽悪と真夜

??「早く投稿しろよ」

「うう・・出来ません!私の仕事は布団に包まっていろんな異世界オルガを見て楽しむことだから・・・

「違うよ、君の仕事は自分の作品を1日でも早く完結させることだよ」

「うわーーー!」(ハーメルンへ接続)



先日ウルズハントの追加情報がやっと出たので投稿します
そしてスパロボ の世界でもオルガは異世界とは切っても切り離せないのか・・・

参戦作品の認識

鉄血
メインシナリオであり人気ガンダム作品

レイズナー
地球は狙われている

ゼーガペイン
知らない作品だ

ヴァルヴレイヴ
名前くらいしか知らない

ボトムズ
アストラギウス銀河を二分するギルガメスとバララントはもはや開戦の理由など誰も知らない戦争を100年も続けていた。
その“百年戦争”の末期、ギルガメス軍の一兵士キリコ・キュービィーは味方の基地を強襲するという不可解な作戦に参加させられる。
その作戦でキリコは軍の最高機密「素体」を目にしたため軍から追われる身となり町から町へ、星から星へと逃亡の旅を続ける。
その逃亡と戦いの中で、やがて陰謀の闇を突きとめ
自分の出生に関わるさらなる謎の核心へと迫っていく

ちなみに今回の話のテーマはその人の当たり前が別の人の当たり前ではない、ということです



「略奪の愛、それは愛ゆえに何かを奪おうとする行為。本来略奪という行為は悪と認識されておるが愛を持って行う行為には悪にはなりきれぬ。

じゃが・・・今から話すこの行為は確実に正義の味方である勇者様が行うべきものじゃ」

 

玉藻は椅子に寄りかかりこの部屋を我が物顔にいた。

その態度を崩さず右手に持っていた扇を広げ左から右に振り払う。すると勇者部の黒板ボード近くに立体映像で映し出されたもの、それは・・・

 

「黒い鳥・・・?」

 

「そう、その通りじゃ。妾と我が主人は多大な努力の末、遂に黒い鳥の姿を見ることに成功した、それがこの姿じゃ」

 

「へぇこんな人間みたいな姿の鳥もいるんだ?」

 

「いやいやミカ、これは多分私達の勇者システムの変身に近いものだわ」

 

風が指差したのはベルトに刺されたスマホと描かれた黒百合の花だ。

 

「よく気がついたの黄色の勇者よ。そうこの者こそが黒い鳥と呼ばれる真の姿じゃ」

 

「私らが使っているものとだいぶ違うわね?」

 

「うむ、これは静嬢が試作していた量産仕様の勇者システムじゃ」

 

「?何であの白衣の人が作った勇者システムをコイツが持ってんの?」

 

「奪われたのじゃ、静嬢が眠っている隙を突き奴はこれを使って変身、蒸着と言うべきかの?

妾と我が主人の二人でこの者の動向を探っていたところ、世にも恐ろしい計画を知ってしまった」

 

「恐ろしい計画?」

 

花凛が尋ねると玉藻は一度深呼吸をおき黒い鳥の立体映像を消し計画の簡潔な文章を黒板に移していく

 

「その計画の名はプロジェクトエデン。簡潔に言ってしまえば大赦の極一部が行おうとしているテロじゃ。

 

「「テロ!?」」

 

 

「・・・この計画はバーテックスなき今、人類を新たなステージへと向かわせる為の試練のようなもの、

黒い鳥が今から2日後に四国全土に無差別テロを引き起こそうとしている」

 

「どうして、どうしてそんな酷いことを?」

 

「人には残念じゃが優劣というものが確実に存在しておる、

今は神樹様の恵みが十分に全員に行き渡っておるが、バーテックスなき今大赦は外敵をなくし人類の繁栄を優先するじゃろう。

それ自体は悪いことではない。

が、人口増加に伴い一人当りの恵みの量は減り、奪い合おうとする思考の人間が現れるのじゃ

 

そこで奴らは計画したのじゃ、自分たちの手でそういった芽を確実に排除する事を

テロという極限状況下に置かれ、その中でも生き延びる者達はテロという痛みを強く覚える。

そうなれば争いを嫌い、穏やかで平和な理想の楽園、つまりはエデンを作り出そうとするじゃろう」

 

「その為に能力の低い人は死んでもいい人達だと思ってるの?」

 

「そうであろうな、大いなる理想実現の為の犠牲は付き物程度に考えておるのじゃろう」

 

「へぇ、じゃあ・・・

 

ミカは自然な流れで懐から拳銃を取り出し玉藻に向かって銃弾を放つ

玉藻はミカの殺気のない攻撃に反応が遅れたものの紙一重で躱した

 

「何をするのじゃ!?小童!当たれば妾とて痛いのじゃぞ!」

 

「何やってんのミカー!?」

 

ミカの思いもよらない行動に風は大声で叫んだ。ミカは少し不機嫌そうな顔をした後淡々と質問に答えた

 

「だってその計画を実行する黒い鳥っていうのはあのうどんの人でしょ?」

 

ミカの淡々とした物言いでのその発言に一同は静まり返る。まるで深夜の学校のような静けさだ。

 

「ミカ、それ本気で言ってるの?あんな美味しいうどんを作れる人が!こんな恐ろしい計画できるわけないでしょ!」

 

「は?」

 

「そうですよ!いくらなんでも失礼ですよ!」

 

「そうね、あのバカ店長は口は悪いけどうどんの味は一流のそれだわ」

 

「美味しくなかったの?あのうどんは味がよく分からない私でもいいものだって分かったよ」

 

樹も無言で頷く、ミカはみんなの思いもよらない発言に珍しくたじろいオルガに助けを求めた

 

「ねぇオルガもなんか言い返してよ」

 

「・・・正直ありえねぇ、アイツがミカの言う通りならアイツは自分で立てた計画を止めてくれって言ってるようなもんじゃねぇか。

そんな奴がいるはずがねぇ」

 

「・・・それもそうか?」

 

「そうだそうだ、俺はそんな極悪非道な人間じゃない。それに俺は忙しいんだ」

 

ミカの疑問に唐突に相打ちを打ったのは疑われている万丈の声だった。しかし姿も見えず声も部屋全体に響くようでどこにいるかも分からなかった。

 

「へぇ、いたんだ。アンタは黒い鳥って奴じゃないの?」

 

「・・・ハァ〜、あのな団長も俺も黒い鳥の計画を止める為に動いてるんだぞ?それに俺がこんな恐ろしい計画実行できるわけないだろ」

 

「そう?アンタとさっき見た黒い鳥は似てるように見えたけど?」

 

「似てるか・・・そうかもな。俺も一歩間違えばそっち側にいたかもな・・・」

 

「ミカ〜?あんまり人を疑うのは良くないわよ?」

 

「・・・分かった」

 

勇者部やオルガの否定的な意見にミカは渋々とその場は引き下がった

できた重い空気を壊すかのように玉藻は動いた

 

「ところで我が主人よ、神のうどんとやらの調理は順調かの?」

 

「・・・・・・制作途中で何故かカツオのたたきができてしまった。俺には理解できない。誰か説明してくれよ・・・」

 

「あんた何言ってるの?」

 

「っ!?うどんからカツオのたたきを作るですって?都市伝説の類かと思っていたけど実在してたの・・・?」

 

「風先輩知っているんですか?」

 

「とある都市伝説によればうどんから別の物を作り出す謎に包まれた家系があるという話があるの」

 

「ああ、それガセ。実際は目にも留まらぬ早業ですり替えてるだけだから」

 

「!??」

 

都市伝説の種をあっさりとバラし困惑する風を置き去りにしつつ、万丈は玉藻の背中の尾からワープするかのように出てきた

そしてその手にはカツオのたたきが乗った皿があった。

 

「・・・ちゃろ、食べるか?味については保証するぞ」

 

割り箸を全員に差し出し勇者部五人は疑いの目もありながらも口の中に入れる。味わった瞬間、その顔は不安から笑顔へと変わった。

 

「んん〜美味しい!まるで本物のカツオだわコレ」

 

「食感もうどんから作ったとは思えないね、東郷さん?」

 

「・・・本物だわ、コレは高知の海で取れたカツオを使った料理だわ。私の舌がそう言っている」

 

「つまり、俺は無意識の内に高知へと行きカツオを取り、無意識の内にうどんとカツオを入れ替えて君達に渡した。

やはりそういうことか!」

 

「「納得した!?」」

 

「だってそうとしか説明できないだろ?その無意識の正体を問いただし、俺の中に眠る俺を目覚めさせた時神のうどんを作ることができるはずだ」

 

「その神のうどんって言うのは何なんです?」

 

友奈のキラキラした瞳の質問には同じくキラキラした瞳で答える

 

「フッ、よく聞いてくれたな友奈、俺は今日の昼頃謎の蕎麦屋と料理対決をして死闘を繰り広げた」

 

「(はて?そんな話じゃったかの?)」

 

「その時俺は痺れるような痛みと共に確信した、俺のうどんはまだ進化できる。神の領域に達することが俺の夢の一つだ。

楽しみに待っていろ勇者部諸君!

そして少年!君のうどん愛は俺の神のうどんを食すに耐えられるレベルに達していない!

残念だったな少年!」

 

「は?」

 

「そうだね、神のうどんと呼ばれるくらいだから食べるのに愛が必要なのは当然だね」

 

「ミカ悪いわね、このうどん五人用なの」

 

「さて、じゃあそろそろ神のうどんを食す為の準備について話そう」

 

万丈は黒板に白いチョークで地図を書いていく、その場所は現在大赦が管理している地域のとある廃墟の間取り図だ。

 

「いいか?神のうどんをフルに味わうには五感、特に味覚は最重要で必要な感覚だ。

散華で失われた感覚を再び取り戻すには他の人から手に入れる方法が最適だと俺は思っている」

 

「他の人から?それって・・・

 

友奈の疑問に万丈はドヤ顔を見せ、平成と呼ばれた時代に放送されていた青ダヌキがポケットから道具を取り出すかのような音楽を口笛で吹きつつ、sfでありそうな二対の銃を取り出した。

 

「じゃあ実証して見せるか?・・・団長〜ちょっとくすぐったいぞ?」

 

万丈は特に悪びれる様子もなく右手の銃をオルガに向けて発射する。銃口から放たれたビームはクネクネと螺旋状に回り直撃する。

 

「ヴェアアアアアア!」

 

「あ、アレ?コイツにそんな威力はないはず・・・まあいいか」

 

いつものことなのでそこまで気にもせず左手の銃を東郷へと発射した。それは祝福を得るように優しい光で東郷を包んでいった。

 

「東郷さん!?大丈夫?」

 

「ん・・・大丈夫よ友奈ちゃん」

 

「その様子だと成功だな。さあ立って見せろ、君にはその力があるはずだ」

 

東郷は半信半疑の様子で車椅子から立とうとする。左腕で車椅子を支え代わりにし右腕は友奈の支えで立った。

 

「東郷さん離すよ?」

 

友奈が手を離すと同時に東郷は車椅子から手を離す。

本来であれば支え無しに立つことも出来ないはずの足は今、大地に立つ。

 

「立った!東郷さんが立った!」

 

今の足の状態であれば違和感はあるが歩くことができる。そう感じた東郷はゆっくりと踏み出す。

 

「歩いた!?東郷さん大丈夫なの?」

 

「不思議ね、今まで歩けなかったのが嘘みたい・・・でも

 

東郷はオルガの方に目線を向ける。オルガは真っ白に燃え尽きたような状態になっていた。

 

「その銃、貸してもらえますか?」

 

「どーぞ、そいつは元々プレゼント用だ。

明後日奴のテロを止めて勇者部全員で奴を封印の儀で縛り付け、そいつを使って散華で失ったモノを手に入れる。

大赦は黒い部分を実行しうる能力を失い、君達は体の不自由を無くせる。

最高にいいさくせ・・・

 

「ふざけないでください!」

 

車椅子へと戻り足の状態を元に戻した後東郷は激怒した。

その表情は今まで勇者部でも見ないような怒り顔だった。

他のメンツは万丈の話に不信感を募らせるような顔ぶれだ

 

「ふざけるな?こっちは真面目に散華のこと考えて・・・

 

「こんな盗っ人の様なやり方で治したいと思うんですか!?貴方は!」

 

「っ!?」

 

東郷の発言に万丈は強く動揺する。自分が当たり前だと思っていた行為を強く否定されて、彼の中の負の感情が精霊の悪影響と共に増大する。

今にも消えかけそうな声で床にうずくまる。

 

「ううぅ、うあぁぁ・・・

 

彼の耳には「役立たず」「大赦の恥」「死ね」「お前は無価値」「壊せ」「潰せ」などといった罵声が幻聴として聞こえてくる

 

「やめてくれ!俺はあんな事はもうしたくない!止まれ!止まれってんだよ!」

 

幻聴と共に彼の体から赤白い炎のような物が現れる。

それと同時に勇者部一同のスマホから樹海化警報のアラームが鳴り響く。

その様子を見て少しでも彼を落ち着かせようと玉藻は彼の精神内へと入り込む。彼の精神は極寒の地に一枚着るものが増えるように暖まる。

 

その安心感からか彼はその場で眠った。それと同時にアラームの音が止まり樹海化ーーはせず時間も止まる事はなかった。

 

「今のは一体・・・

 

「考えられるのは一つだ。コイツはバーテックスかもしれねぇ」

 

復活したオルガの一声に部室内全員が息を飲む。

 

 

 

 

「ミカ、そいつの事を見張っとけ。あの様子じゃあ何しでかすか分からねぇからよ」

 

ミカはコクリと頷き万丈を部屋の隅へと引きずるように動かした。その後両手両足を縛り付ける

 

「びっくりしたわね、また想定外のアラームが鳴るなんて」

 

「(本当に樹海化しなくて良かったね)」

 

風と樹がホッとしている中、ドアが突き破るかのような勢いで開かれる。そうしたのは春信だ。

 

「花凛!他の勇者殿達も無事ですか」

 

「あ、兄貴?何でここに」

 

「仕事、それより今の樹海化は一体・・・

 

「おそらくソイツが原因だ」

 

オルガは万丈の事を指差す。それに対して春信は疑問な表情で聞いた。

 

「どうして彼が原因何ですか?」

 

「さっきこの人の回りに炎みたいな奴が出てた。あの色合いと気配は知ってる奴だ」

 

「兄貴、知ってる事話してよ。大赦はバーテックスと手を組んでる・・・なんてことない?」

 

「それは絶対にあり得ない!」

 

「けどソイツからバーテックスの反応が出たのは間違いねぇ。事と次第によってはアンタでも敵と見なすしかねぇ」

 

「そんな・・・

 

ミカとオルガ、花凛ですら春信を疑うような事態になってしまうが、そこに助け舟ならぬ助けアグニカが姿を現した。

 

「マクギリスじゃねぇか」

 

「会えて嬉しいよ、とは素直に言えない状況か。先程の警報は想定外の事態だからな」

 

「ああ、けど原因は分かってる」

 

「分かっているのであればもう少し警戒するのだな勇者の王(笑)」

 

その声はオルガの後ろから聞こえてきた。すぐさま振り返ると刹那の内にミカが見張っていたはずの万丈が縄を解いていた。

しかしその声は普段のものとは違い高い声のものだった。

 

「いつの間に!?」

 

「うどんの人じゃない?誰?」

 

ミカは銃口を突きつけたまま尋ねる。それを気にもせず万丈(?)は返答する

 

「ふむ、人で言うところの名前を聞かれているのか?では真なる闇、いや夜と書いて真夜(まや)とでも呼ぶといい」

 

真夜と名乗る人物は全員を見渡すように見て特定の誰かと目を合わせようとはしなかった。バーテックスだと思われる筈の存在なのにこちらには敵意一つ見せず次の言葉を放つ

 

「安心しろ、私は既にバーテックスではない。私は人間の観察者にすぎんよ」

 

「観察者?」

 

「私はかつて・・・人間の歴史で言えば二百三十年ほど前この人間にバーテックスとして取り付き人類を破滅へ向かわせようとした。

しかしそこの赤髪の少女によく似た人物に止められてしまってな。

今はこうしてこの宿主のもう一つの人格として存在することがやっと、とでも言えば分かるかね?

 

この200年間の中で私は人類が天の神と使いたるバーテックスにいかに抗うかを見ていた。

その姿はなかなかに実物であったぞ?」

 

「ハッキリ言えよ、アンタは俺たちの敵か味方かどっちだ?」

 

「敵か味方か、か。では中立寄りの味方とでも言っておこう。人類が滅びるのは私の楽しみが消えてしまうからな」

 

その言葉を聞いてミカは警戒しつつ銃口を下げる。

 

「ふむ、まだ警戒をとかぬか?では宿主に譲ってやろう」

 

その言葉と共に彼は人形のように倒れ静かに意識を取り戻す。

 

「ん、んんアレ?俺なんで倒れてたんだ?」

 

「何も覚えてないのですか?」

 

「ああ、その銃を君に渡した辺りから一切記憶がない」

 

「なら真夜って奴を知ってるか?」

 

「誰、聞いたこともないけど?名前から察するに女性名、俺のイメージなら20代のちょっと影がある美人さんってとこかな?

・・・大赦本部にそういう人がいたような・・・

 

「いや、詳しく知らないならいいんだ」

 

「そう、じゃあ春ちゃん後よろしくぅ!」

 

 

 

 

まるで逃げるかのように彼は窓から飛び降りた。

ミカはその後を追い、春信も追おうとするが、飛び降りる直前に掌サイズの物が投げられる。

春信はそれを手にしてモノを確認した。

 

「これは・・・オルガさん、貴方向けの物みたいです」

 

「俺か?」

 

渡された物はガンダムフレームASWーGー43 サブナック、別名カラミティの呼び出しキーだった。

 

「それは貴方が使ってください。もしもの時があれば・・・ですがね」

 

「ああ。アンタは追いかけなくていいのか?」

 

オルガの素朴な疑問にはマクギリスが答えた

 

「彼ならば問題ないだろう。

あの真夜という存在が彼に居座っていたのは想定外だったが、彼らが我々の敵になるような事はないだろう

それに何かあれば三日月・オーガスが対処するのだろう?」

 

「ああ、アイツはどうも完全には信用しきれねぇ」

 

オルガは万丈にマクギリスに似た何かを感じ取っていた。

話がどうもうまくいきすぎていかのような覚えがあった。

部室内にギスギスとした空気が流れて友奈はその空気をどうにかしたいと思った

 

「信じてあげようよ」

 

「友奈ちゃん?」

 

「私達が万丈さんを信じてあげなきゃ万丈さんも私達の事信じてもらえないと思うから・・・え〜と・・・

 

友奈は次何言えばいいか困った様子だ。そこに風が助け部長として意見を出した

 

「そうね友奈の言う通りだわ。やり方こそ悪かったけど、私達の散華のことどうにかしようと考えてその銃を作ってくれたんだから」

 

「風先輩・・・」

 

東郷は自分が押収した銃に目を向ける。方法こそ泥棒のそれだがこのような悪の方法に手を染めなければ戻る見込みもなかったのは事実だ。

もっともその方法ですら完全ではないのが東郷は身をもって感じていた。オルガに一時貰った足の感覚は彼女の細い足のものではなくオルガの長い足の感覚だった。

完全に戻るわけでもなく犠牲を強いるようなやり方には東郷は素直に賛同はできない

 

「この銃は必要だと思いますか?」

 

東郷は風に重く尋ねる。すると風は首を横へと降る

 

「私も東郷と同じ。そんなやり方じゃ戻ったとしても嬉しくないわよ。誰かから奪ってなんてね」

 

少し固まってきたような団結に春信はあえて壊すかのように踏み込む

 

「・・・その誰かというのが黒い鳥と呼ばれる悪人でもですか?」

 

「相手が悪人とかそんなの関係ないですよ、誰だって自分のものを奪われたら悲しい思いはするから。

だから、そんなことしちゃダメなんです」

 

「・・・そうでしたね、勇者部は人のためになることをする部活ですからね。

万丈さんには後で私からキツく叱っておきます、もっと貴方達の事を考えて下さいって」

 

「ったく、お前らがそんな考えじゃ俺も信じるしかなくなるじゃねえか」

 

オルガもまた友奈達の心意気に感化されたのか今は信じてやる事にした

思えばカラミティを渡してきたのはオルガから信頼を勝ち取ろうとした行為だ。

オルガはここまでした万丈を疑うのは筋違いじゃないかとも思えてしまった

何か問題があれば追ったミカが手を打っていると信じてもいた

 

「では、明後日の計画について詳しく話していきますよ」

 

春信は万丈の大雑把な説明を詳しく解説していく。

しかし、この計画自体が無意味になるという事を誰一人予想していなかった

 




やったねオルガ君
ガンダムフレームゲットだよ
これで次の戦いの戦力は
バルバトス、バエル、グシオン 、フラウロス、カラミティ、キマリスヴィダール
更にデスティニー、グレイズアイン、フルグランサにダークハウンドまでいるよ

あれ?これ勇者の子達いらなくね?
(+皿+)私もそう思う。次に私達が来た時勇者の子達は多分必要以上に戦うことはないでしょう
そもそも攻撃する前に三日月君に潰されそう(天神感)

次回はオルガ側とミカ側両方投稿する予定なので遅くなるかも

後今回玉藻が言ったプロジェクトエデンなる計画はほぼデタラメです
そもそも実行する気ないので

それと桐生静氏の扱いですが公式で神世紀70年代ごろの巫女として出てしまいました。
その為この作品の彼女は名前が同じだけの別人とします
(まさかこのタイミングで同じ名前のキャラが出るとは想定外だった)

次回のあらすじ(予定)
オルガ側
襲来ロリコーン

ミカ側
ならばぁぁ!答えは一つだ!貴方に反逆を誓おおぉぉおう!




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欲望がお前の果てのゴールになる

よくこの小説を読みに来てくれた
残念だがうどん三銃士なんて者は本編には登場しない
騙して悪いが仕事なんでな
この小説の続きを読んでもらう

今回は万丈君回ですは
次は今回の時間軸と同時間の勇者部部室内の話をコメディに書こうと思います



「・・・少年?そんなに無言で見つめられると作業しにくいんだが?」

 

「俺はオルガに言われたんだ。アンタを見張ってろって」

 

モンターク地下室にて万丈とミカは対峙していた。

ミカのその瞳は彼の指の先の針を見つめていた。神のうどん作りをするわけでもなく糸は進んでいきやがて30センチほどの人型のぬいぐるみの姿になる

そこから服と髪をイメージした布を付け足していく。

出来上がったぬいぐるみは彼が蓮と呼ぶ少女のぬいぐるみだ。セミロングの黒髪に白いベレー帽をかぶり、アマリリスの花をつけている。

服装は黒いワンピースを基調とし胸元は白のモコモコとした生地を詰め込んでいる。

ぬいぐるみでデフォルメされているがどこか凛々しさを感じる一品だ。

 

「うんうん、我ながらいい出来だ」

 

「誰それ?」

 

「これか?これは蓮ちゃんのぬいぐるみだ。俺の・・・大切な人のね」

 

「へぇ」

 

ミカは特に興味もなさそうに相槌を打つ。そこから沈黙が始まろうとした時おかしな質問をミカに問いかけた。

 

 

「なあ少年、もしもの話だけど春ちゃんが敵になってしまったら君は討てるか?

 

「何それ?そんなのありえないでしょ?」

 

「ありえないよな、でもそうなった時やれるのか?」

 

「おれはどんな理由があってもやりたくはないな。でも、オルガが本気の目で俺に言ってきたら俺はそれを全力でやる」

 

「・・・そうか、なら安心だな。少年なら明後日の戦いに俺を討てるな」

 

「うん・・・え?」

 

「え?じゃないよ。少年の見立て通り俺は黒い鳥だ」

 

『ブラックサレナァ!』

 

あっさりと正体をバラした万丈はブラックサレナが描かれた勇者システムをミカに見せつける

しかしミカはいつものように銃を向けなかった

 

「どうした少年?何故銃を向けない?」

 

「・・・アンタを撃っても何も変わらない、それくらい俺にも分かる。

アンタは明後日にアンタの立てた計画で倒さないと意味がないんでしょ?」

 

「イグザクトリー!よく分かってるじゃないか少年。

明後日俺は大赦の黒い部分を世間に公表し町を荒らそうとする。それを止めるのは大赦の正義を示し、国防をなす君達だ

大赦の現体制は崩れて勇者達の地位は急上昇するだろう?

 

ここまでは俺の夢、その計画の中で俺の体を皆んなに明け渡す為の銃を作ったんだか、まさか断れるとは想定外だったよ」

 

「当たり前じゃん」

 

ミカの辛辣な一言に万丈は苦笑した

 

「当たり前か、俺はそんな事も分からなくなったのかな。

俺は勇者の同級生や家族、先輩後輩と大赦関係者等、変な情報を知ってしまったのを何人も始末してきた。

下手な真実なら知らない方が良いのにさ

 

事故死に見せかけたり、誘拐して記憶を抹消したりバーテックスの存在を知られないよう汚い手をよくやってきた。

こんな俺に消える以外の価値があると思うか?」

 

「あるでしょ?アンタが作る飯は美味しいし、神のうどんってのを作るんでしょ?」

 

「・・・ありがとう最高の褒め言葉だ。少年、礼に三つほど良いことを教えてやろう

まずは散華の戻し方だ」

 

「やっぱりあるの?皆んなが元どおりになる方法が」

 

「ああ、あるよ。簡単な事だ、神樹様から奪えば良い」

 

「へぇ、具体的にどうすればいいの?」

 

ミカの素朴な疑問に万丈は深い溜息をつく

 

「少年、そんな事をしてみろ。死ぬぞ?神樹様から奪うということは神樹様の怒りを買うこと。

そいつはもう結界内では生きてはいけない

得体の知れない結界外で生きるか、神樹様に殺されるか、二択しかないんだよ

だから少年、間違ってもそんな事はするな」

 

「じゃあ結局方法は無いの?」

 

「死ぬ気でやれば大抵の事は出来ない事はない。そう、死ぬ気でやればね」

 

「そうだね」

 

ミカのその対応に万丈はどこか自分に似たものを感じた。まるで一度死んだかのような発言だったからだ。

その重苦しい空気をはらう様にテンション上げた声で次の話題へと移行する

 

「ではでは二つ目と参ろう。少年、千景殿という建物を知っているか?」

 

「何それ?」

 

「別名ゴールドタワー、大赦が管理している霊的国防装置の一種だ。展望台から千々の景色を見られるゆえに千景殿と、上里っていう大赦名家のおばあちゃんが名付けたらしい。

でだ、そのタワーには天使と呼ばれる存在がいるらしい」

 

「天使?それってモビルアーマーなの?」

 

「ノンノンノン、神樹から信託を受け取る巫女の少女こそが天使と呼ばれる存在だ

マクギリス殿が絶賛するほどの天使っぷりらしい」

 

「ふぅん」

 

「興味なさそうだな?ならとっておきの情報を教えてやろう。

あの塔の動力源には黄金の輝きを放つガンダムのツインエイハブリアクターが使われているって噂だ」

 

「黄金のガンダム?なんだか凄く目立ちそうだね」

 

「目立つだけじゃない、あの機体には乗る者の魂を天国へ連れ去ってしまうなんていう世にも奇妙な噂まで立ってる。だから厄祭戦でも使われた形跡もなんでそんな物を作ったのか、分かっちゃいないんだ」

 

「ようは使えない機体って事?じゃあ意味ないじゃん」

 

「そうさ意味なんかない。だけどもしその機体を扱えたとしたらそいつはバエルをも超える力を手にする事ができるだろう

中々夢のある話だろ?」

 

「・・・そうだね、でも俺はいらないかな。バルバトスは俺の一部みたいなもんだから」

 

「そうか、なら俺が乗るのチャレンジしようかな〜・・・なーんてね」

 

本気の目もせず軽く笑う程度の冗談だった。もしそんな人物がいるのであればその者は自らの死すらも超越した存在だろう

そして三つ目の話題に入ろうとした時ミカに一本の電話が入った、風からだ。

 

「あっもしもしミカ!?明日予定ある?ないわよね!一緒にデート行きましょ!それじゃ早く戻ってきてね」

 

有無を言わせぬ風の早口にミカは珍しく唖然とした顔でいた

 

「ど、どうした少年」

 

「いや、なんか風がデートしようって」

 

「デートかぁ〜いいよなぁ少年、一つアドバイスをしてやろう。好きな人を抱きしめる時あんまり力入れすぎるなよ、ハグは愛情表現の一つだが強すぎる力は相手を傷つけるだけだ

よく覚えておけよ?」

 

「それもアンタがよく言ってるおばあちゃんの言葉ってやつ?」

 

「いや、俺の言葉だ。相手を大事に思う心意気があるのならその優しさが本当に相手の為になっているのか、よく考えろよ?俺はそれが出来なくて彼女達を傷つけたから・・・」

 

どこか遠い目をし昔を思い浮かべるその瞳には映るものは悲しみとやりきれない思いであった

彼自身の善意ある行動は弥勒家を没落の道へ追い込んだ。変えようのない事実による忌まわしき過去の記憶のイメージが彼には見えていた。

 

「・・・蓮ちゃん・・・俺は・・・

 

過去を振り返ってそのまま妄想の世界に入り込もうとした、その時彼の携帯がジャズを鳴らす、それは彼の電話呼び出し音だ

 

「トドさんか?俺だ。・・・そうか、ついに集まったかうどん三銃士が。ああ、連れてきてくれ」

 

電話を切ると軽く溜息をつきミカに脅すように声をかける

 

「少年、ここはもうじき料理の戦場と化す、早く彼女の元へ行きなさい。いいや行くんだ早く!」

 

必死な掛け声にミカは渋々階段を登り始めようとした時去り際にもう一言ミカに呟いた

 

「少年、分かってると思うが俺の正体は彼女達には秘密な。それは俺なりの優しさだ」

 

 

ミカは軽く頷きその場を後にした

 

 

 

 

 

「どこで道を間違えたんだろうな?俺はただ蓮ちゃんや友奈、静ちゃんと一緒に漫才しあって笑ったり友奈のこと悪戯心で煽ったり、蓮ちゃんの成長を見守り続けて楽しくも普通に生き続けたかった・・・俺のような間違いはするなよ少年」

 

思い返しを終えて現実へと帰った万丈はふとモニターに映されたモンタークの駐車場を見た。そこには荒々しくドリフト駐車する春信の車があった

明らかに平常心を保てていない運転に息を呑んだ。

 

「まさか・・・ねぇ」

 

真実を知りたい気持ちは強い、だが真実ほど残酷なものなどこの世界にはほぼ存在しなかった

モンターク入口にて万丈と春信は相対する

春信の顔は後悔とやりきれなさが滲み出ていた

 

「いたのか?」

 

春信はゆっくりと首を縦に振る。口に出すことが恐ろしかった。認めたくなかった。それでも現実は変わらない

村田が壁の外への調査に向かい、バーテックスに倒されたという現実は

 

「分かった、本部へは俺が報告しに行く。少し休んでろ

ハァ〜全くバーテックスはいつもいつも俺の邪魔ばかりしてホント困っちゃうな〜」

 

口振りはかなり軽くまるで絵空事のように話す。しかしその心境にある怒りは今まで喚き散らしていた発散していたものを遥かに凌駕するものだった

バイクに跨り彼は一呼吸置いた後勢いよく走らせる。その目的地は大赦・・・ではなく彼の出身地である高知県だ

 

 

 

 

「フフフ、随分と焦っているようだな我が宿主よ」

 

「うるさいよ。誰のせいでこうなったと思ってんだ?真夜さんよぉ」

 

万丈は自分の中にいる元バーテックスである真夜の存在を知りながら知らない振りをしていた

 

「バーテックスが人類に対して攻勢を仕掛けたのは愚かな人間が天の神の怒りを買う行為をしたため、つまり全部人間のせいだ」

 

「ああそうかよ!それでも俺は、はいそうですかと納得できるほど大人じゃねぇんだ。バーテックスが存在してたら俺は死ねない。

まだ生き地獄を味合わせるならバーテックスを殱滅する

その為の力を得る為なら・・・ぐうぅああ・・・

 

彼の大赦に向ける反逆の感情が阿頼耶識を通して彼の体を蝕む痛みとなる。

大通りを避け林道へとバイクを動かし誰もいない獣道へと足を踏み込んだ

あのままでは救急車でも呼ばれかねない

 

「ぐ・・・あぁ・・・あ」

 

バイクからゆっくり降りる気力も起きずバイクごと倒れ込む。体を蝕むその痛みは脊髄を中心に電気ショックのような痛みをで身体を縛り付ける

その痛みを取り除く為に彼が行なった行動は・・・

 

「玉藻、阿頼耶識を破壊しろ」

 

「主人よ正気か!?」

 

「ほう、命をかけるか?」

 

「俺は、俺は死なない。目的をなす為に人の身が余るなら捨ててでも生きて目的を果たしてやろうじゃないの」

 

覚悟は既に出来ていた。自分の身がどうなろうとも目的は果たす。彼は200年という長い年月で精神は表向きはマトモでも実際は壊れていた

神樹様を襲おうとする愚考をする程に

玉藻は自らの尾を束ねドリルの様に阿頼耶識と彼の体を貫いた

血は出ないが彼の全身が散華し光に包まれる。そして彼はもがく間もなく消え去った

 

 




神樹様「この男って醜くなかったか?」
?「そうか?奴には勇者達の変わりに戦おうとする覚悟がある」
神樹「それが醜いと言っているのだ。あんな醜い奴が活躍する話は正直嫌いだ」
?「嫌いか?少なくとも醜いって意見は自分も思う。
でもそれでいいんだ。コイツにはもっと醜い反面教師になってもらわないと。
あと初期のプロットだと彼は次のバーテックス戦で死んで幸せになりそうなので生かしておきます。


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遊 勇 園 者

前回までのあらすじ


バーテックスがまだ存在していると知った板状は神に近づくため力を手にする為に大赦に反逆しようと阿頼耶識を破壊したが失敗に終わり消滅した

しかしその行動は彼の阿頼耶識手術の基礎設計をしたイオリアの計画通りであった
イオリアは神世紀百年頃、二世紀も前からバーテックスが再び侵攻を再開することを予測して彼の阿頼耶識の有機サイコデバイスに自分の最高傑作の戦闘データを密かに忍ばせていたのであった
彼にこのデータを忍ばせていたのは彼をまともに扱えるほどの人物ならば世界を変革するだけの力を持つ者だと信じていたからである
このデータの存在にいち早く気づいたマクギリスは部下の石動に彼を見張られ続け、遂に彼が消えた事でそのデータを手にしたのであった


尤も彼はあの程度で完全に消えてはくれなかった
数時間後、玉藻前と真夜、さらに七人御先の協力で彼は霊体、つまりは精霊としてこの世に再び生を受けた
その生まれ変わりで彼は七人御先となりこの精霊がかつて厄祭戦で勇者とともに戦った事、そしてその勇者が自分のおばあちゃんの父親違いの姉という事を知った
何故彼女が歴史に名を残していないのかを詳しく調べる為彼は高知県の寂れた村へと足を運んだのであった

一方その頃勇者部には可愛いお嬢様が来訪するのであった


春信の説明が終わった頃窓は夕日に完全に染まっていた。

眩しいくらいの日が窓から降り注ぐ。

 

「では次は君達にアグニカの凄さを教え・・・

 

「マッキー!」

 

マクギリスが次は私だと当然の顔で黒板側に向かおうとした時、突如部室のドアが開き一人の女の子がマクギリスめがけて飛びついてきた

マクギリスは彼女を受け止め抱き上げた。

 

「もうマッキーったらいきなりいなくなるから心配したのよ」

 

「それはすまなかったねアルミリア」

 

「誰?」

 

「妹・・・っぽい感じじゃないわね」

 

「誰なんだよその子は?」

 

友奈、風、オルガと聞き出すとアルミリアは元気に答える

 

「初めまして私の名前はアルミリア・ボードウィン。マッキーの妻です!」

 

その一言に一同はある者は聞き間違い、ある者は意味を分かろうとせず知らないフリをする。

その中で風は恐る恐る

 

「あ、あの〜アルミリアちゃん?妻ってあの妻?物の端とかじゃなくて?」

 

「はい!私は正真正銘マッキーの妻です!」

 

「そうだ私は紛れもなくアルミリアの夫だよ」

 

二人して笑顔で勇者部全員に答える。

その笑顔にこれ以上踏み込むのは野暮だと思った。

 

「なぁ花凛の兄貴、これって・・・

 

「犯罪ですよ、特例がなければ」

 

「そっかぁ、でも驚いたぜアイツ嫁さんがいたのかよ・・・別に悔しくもなんともねぇけど」

 

オルガは口のトーンとは裏腹に内心かなり悔しがって春信は苦笑いをした

 

 

 

 

「ねぇマッキー、さっきの話の続きだけど明日は一緒に遊園地に行ってくれるよね?」

 

「ああ、それは楽しみだ」

 

「もうチケットもちゃんと取ったのよ」

 

アルミリアはポケットからペアチケットを二枚取り出す。しかし、このチケットは一枚で二人分様のものであり余分に購入していた

 

「コレは・・・トドめ買い物もまともにこなせんとは愚かにも程がある」

 

そのチケットを無駄にするのはよくない。そう思ったオルガは機転をきかせチケットを買い風へと渡した。

 

「ホラよ。ミカとでも一緒に行ったらどうだ?」

 

「え、でも・・」

 

「いいってことよ、コイツは団長としての俺の祝いの品だ。ミカをよろしくな」

 

「え!?いや、そのまだそういうのは早いっていうか・・・物事には順序というのが・・・

 

風は何か重い責任と勘違いしたらしく珍しくしおらしい反応を見せる

 

「よかったですね風先輩!」

 

「恋人同士の遊園地へ赴く、まるで逢引ですね。私もいずれ友・・ゃんと・・・

 

今!東郷が一人妄想の世界へと旅立った。

マクギリスとアルミリアもその場を去り明日の準備を楽しみにしているようだった

それと同時刻春信の携帯が鳴った

 

「はいもしもし、・・・え?村田さんが・・・」

 

春信は顔を青ざめ携帯から耳を離して切る

 

「どうしたの兄貴、顔色相当悪いけど?」

 

「えっと・・・

 

伝えられた内容はバーテックスはまだ存在している、そしてそれを知った村田は自分の最後を悟った連絡をしていた。

その事実を伝えまいと春信は嘘をついてしまう

 

「村田さんが銀行強盗して行方不明になりました」

 

その報告に一同は驚愕する

信じられないはずもない

だって嘘なのだから

それでも春信は嘘を貫きそうとする

 

「しかし問題ではないでしょう。大赦には裏切り者に厳しい処罰を降す為の特設部隊がいます。

皆さんが心配する事は、何もありません!」

 

春信は平静を保とうと嘘を重ねる。特設部隊なんてものは昔担当の家があったが今は存在していない

その役目は彼一人だけに引き継がれた。

 

「そうか?正直実感湧かねぇな。アイツはそこまで悪い奴とは思ってなかったんだが」

 

「私も半信半疑ですよ。でもよく考えてください、彼は忍者です。私達に内緒で何かを企んでいたとしてもおかしくはないですよ」

 

「妙に説得力あるわね、まぁもし見つけたら私が引っ捕らえやるんだから」

 

「はは、もしもの時は頼りにしてるよ花凛」

 

春信は苦笑いをした後村田捜索の手伝いをしに行くとその場を去り車へと足を運んだ

 

 

 

「・・・・・・」

 

ダンっとハンドルを強く叩く音が春信の乗る車を揺らす。

まだ戦いは続くという事実

それを伝える勇気が無かった自分

同僚を無くしてしまった出来事

それらが積み重なり春信は自責の念に強く囚われる

バーテックスがまだいるという情報を持っているのは自分だけ、それを本当に大赦本部に持っていっていいものかと悩み続ける

その時、春信の頭にある言葉が出てきた

 

「悩んだら、相談・・・」

 

勇者部五箇条の一つであり人として大切なことの一つである。相談相手としてまずは黒い鳥こと万丈士の元へと車を走らせた

 

 

一方その頃部室にて・・・

 

風はもらった遊園地のチケットと睨めっこしていた。う〜う〜と呻き声を上げながらなやんでいたからだ。

 

「ふ、風先輩?どうしたんですか?」

 

「友奈、聞いてよ。ミカってばどういう誘い方すればいいの!?」

 

風はデート等に誘われた事はあっても部活が忙しいやら家事があるやらで大抵断ってきた

と、いうのは建前で中学生の男子というのはいわば欲望の塊で我儘で子供っぽいという理由で断ってきた。

 

しかしミカはどうだろうか?自分と同年代と疑うくらい達観しているようでどこか世間知らずのように抜けていて大人っぽさと子供っぽさが入り混じっている。

故にそんなミカをどうやってデートに誘い、かつ自分の女子力をアピールしつつミカと楽しむことができるのかという答えを見つけるには風の女子力はまるで足りていない

 

「う〜ん、そうだ付き合いの長い先生なら・・・

 

「俺か?・・・

 

 

 

オルガは目を閉じ自分がミカを遊園地に誘う姿を想像する

 

「ミカー!俺と遊園地に行ってくれるかー!?」

 

「・・・やだ」

 

「ミカお前・・・」

 

妄想の世界のミカに辛辣な態度を取られたオルガは頭を抱えた。

 

 

 

「悪りぃ風、俺じゃ参考になりそうにねぇ。けど一つ言える事はある

風が本気ならミカはそれに応えてくれる」

 

「私が本気なら?」

 

「ああ、これだけはハッキリアドバイスできる」

 

「成る程・・・よーし女は度胸ついでに愛嬌!勢いでやってやるわ!」

 

「あっもしもしミカ!?明日予定ある?ないわよね!一緒にデート行きましょ!それじゃ早く戻ってきてね」

 

風は有無を言わさない。言わせれば張り詰めた神経が簡単に途切れる。言いたい事だけいって電話を切った風は軽く溜息をついた

 

「あ〜緊張した〜。大丈夫よね」

 

「良いんじゃねぇの?なぁ樹」

 

オルガの問いに樹は首を縦に振る。それに対し花凛は厳しい評価をする

 

「いいの、そんな悠長に遊びになんか行って?明後日のこともあるし今頃銀行強盗犯がのさばっているんだけど?」

 

「いいじゃない決戦前にリフレッシュして気持ちを整えるのも」

 

「そこは賛成、ならわたしは強盗犯捕まえてリフレッシュしに行ってくるわ」

 

花凛はそう言うと部室を後にした。それと入れ替わる様にミカが帰ってきた。

 

「おう、ミカ。・・・どうだった?」

 

「どうって?」

 

「あの男とバーテックスもどきについてだ」

 

「大丈夫なんじゃない?少なくともあの人は俺達の為動いているみたい。それに・・・

 

ミカは散華で失われた物を取り戻す方法も言おうとしたがやめた。出来ないことを言っても仕方ない上、そんな方法で取り戻して風達が喜ぶとは思えなかったからだ

 

「何でもないよ。それより風ちょっと聞きたいんだけど」

 

「何何!?明日のことよね?大丈夫あたしがちゃーんとエスコートしてあげるから」

 

「デートって何?」

 

ミカの何気ない質問に風のハイテンションは一気にクールダウンした。

 

「ミ、ミカ?・・・と、とにかく明日は私と一緒に遊園地に遊びに行くの!ちゃんと説明してあげるから家に来て」

 

風はミカの手を引き連れ出す。手を取った時風の顔は若干赤らんだ様子だった。それを心配そうに見かねた樹も姉の後を追った。

 

今部室に残ったのはオルガ、友奈、東郷の三人だ

今は勇者部表向きの活動も文化祭の準備で受けておらず三人ではそのための準備もトントンと進めるには難しい。

外も太陽が沈みかけオルガが出した答えは帰宅だった

 

「さてと、帰るか」

 

「お〜い東郷さん?」

 

友奈は妄想の世界に入っていた東郷を連れ戻すため目の前で手を横に振る。ハッとすぐさま意識を取り戻した東郷は友奈の顔を認識した後赤面する

 

「あ・・・友奈ちゃん」

 

「東郷さん?顔赤いけど大丈夫?熱でもあるの?」

 

そう言って友奈は東郷のおでこと自分のおでこをくっつける。その行動がどんな結末を呼び起こすかも予想せずにだ

案の定東郷は興奮の余り失神した

 

「わわ!?と、東郷さん?」

 

「はぁ〜友奈、お前もちょっと席を外しとけ。このままじゃまた失神しちまうからよ」

 

そう言われた友奈はあまり納得しない顔で部室を出た。その後・・・

 

 

 

 

「よう調子はどうだ東郷?」

 

「あ・・・あれ?友奈ちゃんは?」

 

「部室の外にいるからよ安心しとけよ。

・・・東郷、お前に聞きたいことがある」

 

オルガは真剣な眼差しで東郷を見つめる。これから聞くことはこれからの東郷の行動を決める物だった

 

「今週部活休んでいたけどよ一体何をしていたんだ?」

 

「え、それは色々・・・

 

「色々と自分が死ねる方法を探していたってことかよ」

 

オルガの問いに東郷は驚きを隠すことなく動揺し、それを部屋の外から聞いていた友奈は勢いよくドアを開けた

 

「東郷さん!?今の話って一体どういうこと!?」

 

「友奈ちゃん・・・その・・・

 

「いい東郷、俺が話すからよ。・・・

試したのは切腹、首吊り、飛び降り、一酸化炭素中毒、服毒、焼身ってとこか?

しかもそれを全部精霊によって止められたって事じゃねえのか?」

 

東郷は静かに頷く。何故それを知っているのか?

まるで見透かされた様なオルガの態度に東郷は唾を飲む

 

「・・・友奈ちゃん・・・その、黙っててごめんな・・・

 

「ううん!謝るのは私のほうだよ。東郷さんが危ない事してるのに気付いてあげられなくてごめんね」

 

友奈は内心怒っていた。親友の危機に何も気づいてあげられなかった自分自身に対する怒りがあったが、それ以上に東郷の事を大切にしたい思いが強く友奈は東郷をギュッと抱きしめた

流石に今度は安心感を得るためなのか失神はせず呼吸はむしろ落ち着いた

 

「けど俺がわかんのはそんくらいだ。なんでそんな危ないことした!」

 

「・・・確かめたかったんです。大赦の人達が言うことが本当かどうか。

勇者はけっして死ねない、それはバーテックスの攻撃から身を守りたいという私の意思で精霊が動いていると思っていました。

しかし実際は精霊は勇者のお役目を助けるものなんかじゃなく勇者をお役目に縛り付けるものだったんです」

 

「つまりそれはあの乃木というかお嬢さんの言うことは全部本当の事だったって言うのか?

・・・俺はそうは思えねぇ。だって一時的とはいえアイツのよく分からねぇ銃でお前の足は治ったじゃねぇか?」

 

「アレは・・・

 

東郷は言葉に詰まる。自分の友達と言ってくれた乃木の言う言葉を信じたいが信じられない事も起こってしまっている。

 

「東郷さん悩んだら相談、だよ?明日園ちゃんに会いに行こう?」

 

「友奈ちゃん・・・うん、そうね」

 

「先生も一緒に行きませんか?」

 

「いや俺は行けねぇ、先約があるからよ。けど何か新しい事実が分かったら相談忘れんじゃねぇぞ」

 

「はい。・・・でもどうして私のしていた事が分かったですか?」

 

「俺が団長だからだ。団員がおかしなことやってるのに気づいてやれるのは団長としての俺の責務だからよ」

 

「そう、ですか。もし覗いていたりなんかしていたら・・・吊るしますよ?」

 

「し、してねぇよ」

 

東郷は笑顔でオルガに聞いてくる。その笑顔はオルガをビビらせるには十分すぎるものだ。その後三人は解散し明日友奈と東郷は大赦へ、オルガはミカの背を追うのであった

 

 

 

一方その頃異世界から門を開きこの世界へとやってきた青年がいた

 

「ここが神世紀の世界か、姉さんの報告どおりだいぶ時空が歪んでいる。ま、そんな事は俺には関係ないか。

村田さん、あの人はあの人だけは許せない」

 

「・・・時乃、自分の仕事を忘れないでくださいね」

 

「分かってるよ姉さん。時空の歪みの原因調べて後音信不通になった村田さん探すのが仕事でしょ?優先順位は俺が決める」

 

電話を通して時乃という青年と姉は会話をし姉は溜息をついた後

 

「分かってると思いますが私達は「企業」です。

対価に見合うだけの成果を挙げること

、これは当然の義務だと私は考えます」

 

「分かってるってば、会社の名に泥を塗る様な真似はしませんよ」

 

「ならいいのですが・・・まずはエイゼン商会へと向かってください。去年新しくできた事務所があるのですぐ分かるでしょう」

 

「了解・・・行ってきます」

 




前回までのあらすじ2

「うどん三銃士を連れてきたよ」

「うどん三銃士!?」

麺の専門家 「吉田麺十郎」

あの初代勇者「乃木若葉」も認めた伝説のうどん職人「吉田麺蔵」の子孫
その技術は世代と共に受け継がれ、進化をして繰り返し変わっていく
信じていたうどんのコシに今日も囚わながらも迷い、時に後悔をしてそれでも進んでいく
生き続ける過去の職人の魂は麺十郎に使命を与え錆びない様に馳せる力となっている


食材の専門家 「白鳥悠」

まるで養殖のように野菜を育てる農家
彼の作った食材は最高傑作と呼ばれ若くて「NOZAMA」という農業組合のリーダーでもある


汁の専門家 「及川惣一」

普段は大して売れない喫茶店のマスターだが、その裏の顔は天才科学者であり科学的に美味しいスープを作る やはり天才か
最近は科学では解明しようがない人の感情というものに興味を持ち「だから人間は面白い」とか言ってる 多分
ついでにこの世界の北海道が滅んだのは及川って言うやつの仕業なんだ



追記
最後に出てきた青年は本筋に関わる事はないモブなので忘れていいです


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遊園地のマスコットはキャストをどんな手を使ってでも守らなければならないよね それこそが最後の希望

2020年 あけおめ(激遅)
ということで今回は書きたいエピソードを一話にまとめ過ぎて書いてて面白くなくなってしまいました
面白くなくて話も重くなったわね
最近知ったのですが四国は自動車の事故が県別だとかなり高いそうですね。今回は事故らない対策と方法をこの話に書いたので「絶対に真似しないでください」

西暦時代の新キャラが二人も増えたおかげで次の話の小ネタが増えたので満足です
今回の話を読んだ時きっと「なんなの・・・この人達・・・」という感想をいだくでしょう

前書きと後書きにキレがないのは仕事始めて2日目でバックれた後輩(12歳年上)って奴の仕業なんだ

これまでのあらすじ
前回特になんの説明もなく現れた青年時乃は村田から奪われたお金を取り戻すためエイゼン商会へと向かうはずだったが、途中村田さんによく似た人を遊園地に見かけスタッフに偽装して潜入した。
偶然スタッフではない怪しい三人組を控室で見つけた時乃は警戒されないよう園内のマスコット「クン太くん」を着て近づきその三人組が銀行強盗犯だということを知り捕まえようとするのであった



「・・・は?」

 

「・・・げぇ!?」

 

「・・・!」

 

次の日、オルガはミカがちゃんとデートできるか見守る為ミカの後を追って遊園地へと来ていた。が、そこで会ったのは花凛と樹だった

 

「なんでアンタがこんな場所いるのよ!?」

 

「それはこっちの台詞だろ!?俺はミカが心配だから来たけどよ」

 

「(私もお姉ちゃんの様子見に来ました)」

 

「何だよ、お前も実は遊びたかったんじゃねぇか」

 

「勘違いしないでよね!この辺りに三人組の犯人が潜伏してるって情報があったから探しに来ただけよ」

 

「そっか、けど普通こんな活気のある場所来るか?」

 

「いるわね、間違いなく。その証拠にあの人達を見なさい」

 

花凛が指差した方には遊園地には不釣り合いな四人組の男性だ。

目立つ赤い革ジャンを来た30代くらいの男に全身白でコーデされた堅物そうな男、それについて来るように後輩らしき二人組がいる

ギザなナルシストにその態度に呆れる優しそうな青年だ。

 

「アイツらがどうかしたか?」

 

「あの赤いのは兄貴の知り合いで警官よ。多分他の三人もね」

 

「そっかなら情報を聞き出すには丁度いいじゃねぇか。・・・なぁアンタ昨日の強盗について何か知らねぇか?」

 

「俺に質問するな、こう見えても忙しいんだ」

 

「そうだその件は我々に任せなさい」

 

赤ジャン男と白男はオルガの問いに一切答える気はないようだ

 

「何よ少しくらい教えてくれても・・・

 

「やめなさい、君のような子供が関わるべき事ではない」

 

「な、何を。私は強盗犯を捕まえるために・・・

 

「黙りなさい!俺に逆らうな!

俺は常に正しい俺が間違う事はない!」

 

「な・・・

 

花凛は地団駄を踏み白男を睨みつける。まるで牙を見せる狼のようにと本人は思っていたがオルガから見ればその態度は子猫当然だった

 

「やめろ花凛、ここは抑えろよ。・・・すいませんでしたウチのじゃじゃ馬が余計な事を」

 

花凛は不満顔を露わにしつつもその場を離れていった。

 

「何よアイツ!私の実力も知らずに・・・って誰がじゃじゃ馬よ!」

 

「落ち着けよ。見返してやりてぇなら実力を見せつけてやればいい。その為の策はちゃんと考えてあるからよ」

 

オルガは珍しく賢い態度で花凛を諭した。実はオルガは去り際に盗聴器を仕掛けていたのだ

しかし・・・

 

 

 

「福井刑事、これは盗聴器の類いですか?」

 

「舐めたマネをしてくれる。嶋、念の為彼女を見張れ。連れの男は強盗犯と何か関係しているかもしれない」

 

赤ジャン男、福井刑事は白男の嶋に命令を下す。盗聴器を手で砕きかかってきた電話に出た

それは別働隊の部下からかかってきたものだ。

 

「福井です・・・強盗犯を二人を捕らえたか?よくやった。

何?園のマスコットキャラ、クン太くんがかめは○はに似た技で犯人を倒した?

何を馬鹿なことを言っている!ちゃんと仕事をしろ!」

 

部下の悪ふざけとしか思えないような報告に福井は苛立ちながら電話を切り溜息を吐く

 

「・・・みんな疲れているのか?」

 

再び息を吸い込もうとしたその時事件は起きた。園内で軽トラの暴走し入場口に向かって走ってきた。運転していたのは犯行グループのリーダーだった

 

「のけろ!のけろってんだよ!」

 

犯人は付近の人間に退くように叫んだ。大半の人は逃げるように道を譲ったがそのなかで樹は突然のことに対応できず転んでしまった

 

「樹ぃ!?」

 

「っく、間にあぇぇ!!」

 

オルガは転んだ樹を助けようと全速力で駆ける。しかし一瞬の判断が遅れ、もうダメかと思われた。

だが樹が車と衝突する事はなかった。

電柱に衝突でもしたかのような音を上げ車は止まった。この場に高速で現れた園のマスコット「クン太くん」がパンチ1発で車の勢いを完全に殺した。

 

「クンクン、クンクン?」

 

自動ボイスチェンジャーで聞こえた声の意味はよく分からなかったが、樹を気遣うような感情だけは読み取れた。樹はお礼を述べた後すぐ様オルガ達の元へと戻った。

 

「強盗犯の矢追政孝だな?君に相応しい場所がある。警察署におとなしく来なさい」

 

事故の衝撃で矢追は酷く疲労し逃げる気力すらなく捕まった。先程捕まった二人も合流し三人は覆面パトカーに乗せられ署に連れて行かれるのであった。

これにて銀行強盗の件は一件落着したのであった。

 

 

 

「君にも感謝しなければならないな、ありがとうクン太くん」

 

「クゥン」

 

クン太くんは嶋に対しサムズアップを見せる。しかしそのいい雰囲気は一瞬で壊される。

 

「お前かぁぁぁぁ!」

 

遠くで叫ぶ野太い男の声が近づいて来る。その声は昭弘だった。それに呼応するようにクン太君はその場を去ろうとし昭弘は追いかけて行った。

その様子を見て警察官の兄さん達も流れで捕まえに行った。

特に足が早かったのは後輩の若い二人組だ。後から走ったのにも関わらず昭弘をあっという間に追い抜き、曲がり角を曲がったその時クン太君は「クウゥゥン!」と悲鳴のようなものを上げ数分後には中の人は着ぐるみ窃盗の容疑で逮捕されたのであった。

 

「離せぇ!俺を誰だと思っている!?俺は、俺は時乃だぞ!」

 

「なんだそれは・・・?」

 

「おとなしくしたまえ、これ以上罪を重ねると神に代わってこの僕がお仕置きをするぞ?」

 

後輩二人組は呆れながらも覆面パトカーに彼を乗せようとした。

 

「俺は何も悪いことはしていない!おれはただ泥棒を退治しただけなのに・・・」

 

「黙りなさい!君が誰であろうと善行をしようと罪は罪だ!窃盗は立派な犯罪だ。

反省しなさい、そして罪を神に懺悔しなさい

罪を償う気があるなら君にもまだチャンスはある。今はおとなしくしてなさい」

 

うまく諭してやったと思いきや時乃と名乗る青年はまだ抵抗を続けた

 

「早く乗りなさい、の・り・な・さ・い!」

 

「っくなんでこうなるんだよ。俺はただあの人を探していただけなのに・・・」

 

さすがにパトカーに押し込まれて観念したのかその後の彼はおとなしく連行されたのであった。残ったのは赤ジャケットの男、福井刑事だけだった。

 

「・・・なぁアンタに聞きてぇ事がある」

 

「俺に質問するなと言ったはずだが?」

 

「さっきの事件に関わる事なんだが

 

「それを早く言え」

 

福井は態度を一転しオルガの話に耳を傾けた。オルガは福井に対し村田の写真を見せた

 

「この男に見覚えはねぇか、コイツも強盗したはずなんだか」

 

「・・・いやこんな男は知らん」

 

「え?じゃあ兄・・・三好春信から何も聞いてないの?」

 

「そんな連絡はない。時間の無駄だったな失礼させてもらう」

 

 

 

 

「何なのよ、あの人達・・・それに事件の事全く知らないって」

 

「大方組織の悪い話を外に持ち出したくないっていう大赦の奴の判断だろ。似た様な覚えがあるぜ。

それより、これからどうする?」

 

「どうするって・・・」

 

花凛は言葉に詰まった。春信から得た情報が誤情報であった今手がかり無しで手詰まりで焦っていた。そう思った彼女は春信に電話をかける。

しかし電話は繋がらず送られてきたのは留守番電話による一言だけだった

 

「遊びに行っておいで、不始末はちゃんとつけておいたよ」

 

思いがけない返信に花凛は耳を疑う。事態が解決していた事もそうだがそれを知りつつ黙っていて遊びに行かせた兄に対しどういう感情をしていいか分からなかった。

 

「どうした?そんな変な顔して?」

 

「変にもなるでしょ、よく分かんない内に事件が全部解決してて兄貴から遊んでいいなんて言われたら」

 

「何だよ、だったら思いっきり遊べばいいじゃねぇか」

 

「花凛さん、一緒に行きませんか?」

 

「・・・分かったわよ付き合ってあげる。さぁそうと決まればさっさと風の元へ行くわよ」

 

「どこへ行く気だ?ミカがいるのはそっちじゃねぇぞ・・・。」

 

オルガはタブレットを取り出しアプリを起動させ耳にイヤホンを挿す。画面にはこの辺りの地図のデータが映っていた。

 

「何してんのよ?」

 

「ミカの現状の確認だ。あいつの服には盗聴器とGPS発信器をつけておいたからよ・・・なんでマクギリスの声が聞こえてんだ?」

 

 

 

 

「では共に駆け上がろうか」

 

マクギリスにアルミリア、風とミカはジェットコースターの乗り込み口の前まで来ていた。風とアルミリアは女子トークで盛り上がっていたがミカはそこまで乗り気には見えなかった。結構な時間待たされて不満顔になっていたミカは渋々とコースターに乗った。

そしてその顔は発進と共に崩れた。急な加速に驚きを隠すことなくミカは混乱した様子を見せる。

風とアルミリアはお決まりのように喜びの奇声をあげマクギリスもまた笑い声をあげる

そんな中ミカは黙ってただコースターに身を任せてるしかなかった

 

 

「あ〜楽しかったぁ〜アレ?ミカ、もしかして楽しくなかった?」

 

「正直よく分かんないや。ただ動くだけのモノなのに自分の意思じゃ無いだけであんなにも心臓の鼓動が早くなって、でも嫌じゃ無い気分だ」

 

「な〜んだ、ミカもちゃんと楽しんでるじゃない」

 

「楽しんでるじ?そっか。アレが楽しいってことなんだ。ねぇもう一度乗ってもいい?」

 

風はミカの態度の変化に少々戸惑いを感じた。まるで新しいおもちゃを買ってもらおうとする子供のような目で見られた。

次はどんなワクワクすることを教えてくれるんだとでも言いたげな目を風は裏切れなかった。

 

「ではここから先は別行動とさせてもらおう」

 

「またね風のお姉さん」

 

マクギリスとアルミリアは別行動として次の日アトラクションへ向かった。そして風ミカもまた列へと並んでいった。

当然その様子を遠目で見ている三人組もいた

オルガと樹は少々ハラハラさせた顔だったが花凛は仕方なく付き合ってる様子だった

 

 

 

「へっ、なんだよ。いい雰囲気じゃねぇか」

 

「(いい感じです。よかった)」

 

「しかし随分と人気みてぇじゃねぇかこのジョットコースターっていうやつはわ」

 

「そりゃそうでしょ?普段は味わえないスリルと興奮を味わえるんだから」

 

「ん、その言い方だともしかしてビビってるのか?」

 

「は、はぁ!?そんなわけないでしょ!あくまで一般論よ一般論」

 

「本当か?実は苦手だったりするんじゃねぇのか?」

 

「バカにしないでよね、乗ってやろうじゃないの!」

 

オルガは図らずとも不満げな花凛をその気にさせる事に成功した。しかしオルガにとって恐ろしかったのはスリルではなかった

 

「うう、くぅ・・・痛え・・・」

 

モビルワーカーと同じようなモノだとオルガは思っていたが自分の意思ではないことやモビルワーカーにはできない変則起動に乗り物酔いをおこしベンチに座り頭を抱えていた

そんなオルガをみて花凛はだらしないと文句を言いつつも酔い改善のサプリを渡した。数分たった後症状が改善したオルガはミカの現在地を確認した。

 

「こっから12時の方向、距離5メートル・・・え?」

 

「オルガ何してんの?」

 

オルガが下の画面から目を離し正面へ向くとそこにはミカと風の姿があった。ミカはいつも通りで風は苦笑いを浮かべつつこちらへと来た。

 

「ちょっとちょっと後をつけてくるなんて趣味悪いんじゃない?」

 

「それは・・・はい。すみませんでした」

 

弁解の余地もない風の正論にオルガは頭を下げる。

 

「それにしても樹は来ると思ってたけどまさか花凛までいるとはね〜犯人探しはどうなったのかな〜?」

 

「つ、捕まったわよ!なんかよく分かんない内に全部終わってたのよ・・・」

 

「それってさっき下の方であった騒ぎのこと?なんかクマっぽい人がパンチで車を止めてたでしょ?」

 

「え?ミカ、何それ知らない・・・」

 

「えっと・・・あそこにいる奴」

 

ミカは近くを通りがかったクマの着ぐるみ、クン太くんを指差す。その隣には見知った顔、ノルバ・シノが園のスタッフとしての姿もあった

 

「よお団長ら、久しぶりじゃねぇか」

 

「シノ!?お前なんでこんなところに」

 

「そりゃこっちの台詞だぜ。団長〜いつの間にそんなモテモテになったんだ〜?」

 

「え?いや俺は別にそんなつもりじゃ・・・」

 

「は、はぁ!?誰がこんな奴とそんな関係に。てゆーか久しぶりってどういうことよ」

 

「・・・ギャラクシーキャノンって言ったらもう分かるだろ?」

 

「思い出した、あの時のピンクの機体に乗ってた・・・

 

「四代目流星号だ。そこんとこちゃんと覚えておけよな」

 

「でも驚いたぜシノがまさかこんな場所で働いてるなんてよ」

 

「まあこっちも色々あったってことよ」

 

「クゥン、クンクンクン」

 

いつの間にかクン太君も会話に混ざり始めた。

 

「ん?その動き、中にいるのはあき・・・

 

「ミ、ミカー!それ以上は言っちゃダメ!」

 

「え?なんで?」

 

「いいから!ほら私達は別の場所に行きましょ」

 

風はこれ以上ミカに喋られるのはいけないと悟り、強引に連れ出した。

 

 

 

 

「風、アレは何?なんか他の奴とは雰囲気が違うけど」

 

「ミ、ミカ!あれはやめておきましょう!これっぽっちも面白いモノじゃないから」

 

「そう?その割にはけっこう並んでるけど」

 

ミカが雰囲気が違うと言ったもの、それはお化け屋敷だった。風はお化けというものをとても苦手としていた。あんな場所に入れば恐怖で失神するのは目に見えてる。

嫌がる風と興味を持つミカの態度は平行線を辿っていた。そんな時近くに高校生くらいの年と思われるカップルがやってきた。

活発そうな女性がやや気弱に見える同年代の青年を引っ張っていた。

 

 

「ホラホラ早く来なさいよ!」

 

「ハァちょっと待ってよ!僕が怖いの苦手だって知ってて行こうとしないでよ〜」

 

「じゃあ来てくれないの?そんなのヤダ。別れよっか」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ」

 

「冗談よ、でも私のこと本気で好きなら・・・ここでチューしれ」

 

「で、できないよぉ〜」

 

「じゃあ、変わりにあたしをお化けからちゃーんと守ってね」

 

「うう、分かったよ行くから!」

 

こうして高校生カップルはお化け屋敷へ突入するのであった。

 

 

「・・・風」

 

「やらないし行かないからね!」

 

「うん、知ってる。風が嫌って言うなら無理には行かないから」

 

「ミカ・・・」

 

「へぇ〜勇者部のリーダーともあろう者がまさかお化けごときにヒビってるとはね〜」

 

と、風を煽ってきたのは花凛だった。

 

「おいおい、誰にだって怖いものの一つや二つあるだろ?無理に行かなくていいんじゃねぇか?」

 

「行ってやろうじゃないの!行くわよミカ」

 

オルガは無理強いをさせないように動いたが今の風にとっては逆効果だった。ミカの手を連れて風はお化け屋敷へと足を踏み入れた。

そして出た頃にはミカは風のことをお米様抱っこしていた。

 

「ただいま」

 

「あ、ああ。おかえり」

 

ミカは風をベンチに下ろすと肩を揺らす。しかし風はスースーと寝息をたてるだけだった。

 

「風の奴ここまで苦手だったのかよ」

 

「(お姉ちゃんはこういうのからっきしダメなんです)」

 

「ちょっとやり過ぎたわね・・・」

 

「オルガ、俺腹減ったんだけど」

 

「ああ、分かってるよ。俺が連れてってやるからよ。だからよ・・・

 

と言いかけた時その次の言葉を遮るように全員の携帯が一斉に鳴った。まさかの樹海化警報かと思いきや実際は春信による一斉電話だった。

 

「もしもし、皆さんは今そこにいますか?」

 

「あぁ?何言ってんだ花凛の兄貴は?」

 

「・・・上を向いてください。ヘリで迎えに来ていますから」

 

見上げると同時に体が風を感じる。見上げると上から言った通りにヘリが遊園地の中にも関わらず降りてきた。春信の顔は遊園地に遊びに来たとは言い難い険しい顔つきだった

 

「乗ってください、お早く」

 

「え、でもまだ昼飯が・・・

 

「我慢して下さい三日月さん、緊急の用件です」

 

「何かあったの?」

 

「大赦が・・・大赦本部が黒い鳥により崩壊の危機にあいました」

 

 

 




次回は例の黒い鳥視点の話を書く
鉄華団も勇者部も出てくる気配一切ないな
アレ?これ二次創作だよな?


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禁断の神樹の行方


これまでのあらすじだったもの

新型コロナウイルスにより混迷を極める世界
収束の目処は立たず感染者は増加の一途
世界各地でロックダウンが発令
医療、そして経済は崩壊寸前
我々の世界は無象の危機に瀕している
乗り越えた先に待つ世界とは

一方その頃神世紀では人類とバーテックスはもはや開戦の理由など誰も知らない戦争を300年も続けていた。
その戦争の末期、大赦の一兵士万丈士は味方である筈の神樹を強襲するという不可解な作戦に参加させられる(?)
その作戦で万丈は最高機密手にしたため大赦から追われる身となり町から町へ、国から国へと逃亡の旅を続ける。
その逃亡と戦いの中でやがて陰謀の闇を突きとめ、自分の出生に関わるさらなる謎の核心へと迫っていく

上里ひなたは巫女である完結記念に投稿しました
決して執筆をサボっていたわけではありません
情報が出るのが待ち遠しかったけどなかなか出してこない
コレも全てタカヒロって奴の仕業なんだ
あと赤嶺友奈が筋肉ばかり言うようになったのは絶対に私の責任じゃないと思うから私は謝らない



次回投稿予定は15日


小さな者の話をしよう。

あれは今から300年前・・・より数年ほど前のか、君たち人間にとっては大昔の出来事のように感じるが私にとっては一月程度前の出来事だ

私はその時人間というものと融合した。

いや、奴らにさせられたというのが正しいか

 

奴らはその時表向きは親をなくした子供や捨てられた子供の保護等をする慈善団体として活動していた。だが裏では教育という名の洗脳行為や風邪薬と称しての投薬人体実験をも行う集団だった

 

私が人間と共に生きる事になったのもその人体実験の一環だ。

親に捨てられたまだ1歳にも満たない赤ん坊に対して私は取り入った。神たる私が人間と交わるなど禁忌の代物。

私の上位の存在たる天の神と呼ばれる存在がだまっているわけもなく天の神はバーテックスと呼ばれる存在として人間達に侵攻を開始した

それが厄祭戦と呼ばれる戦いの始まりだ

 

そしてその侵攻からおよそ5年、西暦2020年に戦いは奉火祭と呼ばれる国譲りの儀式により厄祭戦は終わり、神世紀と呼ばれる新しい世紀が始まった。その時私が取り入っていた子供は死の運命から何度も逃れることができた。あの白い機械人形の力によってな

それから歴史は流れ子は親となり親は祖母となった。私はその祖母の孫へと宿主を移し替えた。

 

 

 

 

それが俺、万丈士という男だ。最悪だよな、自分が尊敬していたおばあちゃんが厄祭戦を引き起こした人間だと知ってしまった時俺は涙に濡れた。

その事実を知ったのはいまから二百年ほど前、特殊な阿頼耶識手術によって生命維持装置から出てきた時だ。

 

その時だ、私という人格。真夜という存在が生まれたのも

生まれた時から人と神の両方の面を持ち、本来それはあってはならない。

言うなればこの世に生まれたことが罪である

ならば生きていることもまた罪だと思えた

折角延命した生命も俺は断とうとした。そんな俺を止めたのは赤嶺友奈だった。あのテロ事件から三十年近く経てば少女だった彼女も立派な大人の女性だ。

彼女はその時汚れ仕事専門の部隊の設立に携わっており俺をその部隊にスカウトしに来た。弥勒家を没落させた罪を償う気があるならやれと言われれば、俺は断ることなどできなかった。

 

 

 

「ゆ・・・許してくれぇ!頼む!この通りだ!」

 

「許す?まぁ俺個人がアンタを憎んでるわけじゃないし・・・許してやってもいいぞ?」

 

「ほ、本当か!?」

 

「ああ本当だ。これから俺がいう台詞を元気よくハキハキと言えたならな。じゃあ言うぞ、『どうが』」

 

「どうか!」

 

「私を」

 

「私を!」

 

「殺して」

 

「えっ?」

 

「聞こえなかったか?『どうか私を殺して下さい』そう言えば許してやるよ」

 

「い、嫌だ!そんなこと言えない!」

 

「そう、じゃぁ・・・さようなら」

 

「ま・・・

 

パンパンパン

 

 

こんな仕事をまともに続けられる筈もなく自分でも気づかないうちに少しづつ壊れていった。

両親とおばあちゃんを事故と病気で失った時よりも酷い荒れ方をしていた時もあった。

その荒れていた頃、14歳の時だ。きっとここに来ることもなければ大赦と深く関係することも蓮ちゃんと会うこともなかっただろう。

 

「ごめん、花本の婆ちゃん。あの時入るなって言いつけは破るよ。俺は・・・悪い子だから」

 

俺が今いるのは高知のとある村にある大赦管理地区の立ち入り禁止エリアの奥に潜む神社の境内だ。14の時にもここにムシャクシャして入ったことが最初で今が2回目だ。ここに来た目的はある物を取るためだ。

根の葉草の葉を掻き分けて彼岸花を探す。

無数の赤い彼岸花の中に一本だけ白い彼岸花が植えられている。その近くには探し求めていた神器、「大葉刈」があった。だが既に刃をなくし持ち手の部分も半分も残っていなかった

そこはかつて厄災戦で戦った勇者が眠っていると聞いている。そう教えてくれたのは彼女を勇者として導いた巫女の花本美佳という女性だ。

 

郡千景、大鎌の大葉刈を振るい精霊「七人御前」を身に纏い戦い、歴史に葬られた勇者。

どうして葬られたかは教えてくれなかったが今ならば分かる。

英雄であるために一人でも戦おうとしたその志は歪んでいても尊敬に値する。

俺は誰も英雄と認めることなくとも、世界を救う者になれればいい。汚れに手を染めようとも成すべきことを成す

 

 

 

 

「おやおや、これでは折角見つけたというのに使えんのぉ?」

 

「いやまだこれにも使い道はある。花本の婆ちゃんから聞いたことが正しければ・・・

 

そう言いながら半壊した大葉刈を掴み持ち上げる。側から見れば30センチ程度しかない棒だが彼にとっては十分過ぎるくらいの力を秘めた物だ。

 

「不思議だな。初めてコレを手にした筈なのに何故か懐かしさを感じてる。・・・新銘『神度剣』よ!その姿を現出しろ!」

 

まるで剣を振るうかのように天へと向ける。するとどういうわけか棒は姿を変えビームの刃を出す剣へと生まれ変わった。それと同時に万丈の脳裏にあるビションが浮かんできた

荒れ放題なっている夜の神社とそこで錆びた大葉刈の刃を手にし何故か涙を流す長い黒髪の少女、それを見守る眼鏡をかけた三つ編みの少女がいる光景。

そこがどこなのかいつの時代の光景なのかは分からない。

それでも一つだけ分かった、この光景は神度剣が見せる光景。

その光景が消えて現実へと戻った時彼もまた涙を流していた

 

「おかしいな、涙が流れてる?悲しい訳でもないのに」

 

頭をぶんぶんと振るい涙も振るう。しかし体の芯から溢れ出る謎の思いは消えずこのままではいけないと思い、気持ちを整理する為に場所を移動した。

 

 

 

そこは墓地、彼の訪れた墓には桐生家と書かれていた。

 

「乙音さん、俺はこれから三十年前あなたがしようとしていたことをします。変ですよね、俺は貴方を殺してでも止めたのに同じことをしようとするなんて。

・・・でも決めたんです」

 

自身の感情の高ぶりを抑えるかのように墓石に水をかけ一泊置き次の台詞へと繋げた。

 

「力を得てバーテックスを全てぶっ潰す。たとえ大赦が貴方を否定しても俺だけは貴方がやろうとしたことは間違いではなかった。

そう信じてやりますよ」

 

決意を胸に秘めて青年は桐生家の墓から離れの弥勒家へと足を運ぶ。手にはカサブランカの花束が握られていた。ゆっくりと花を置き空を見上げてその場から立ち去った。

 

「さようなら・・・俺の未練」

 

花束と共に彼女への想いもそこに残した。墓から去るその者はこれから紛争を目指す為に大罪を犯す。

 

 

 

手始めに勇者システムに手をつけるため桐生の勇者システム開発室に向かった。勇者システムの大元は厳重に巫女様達が管理しており俺クラスじゃどこにあるかも分かってない。だが問題にはならない。

目的は勇者システムの警報装置の細工だ。樹海化警報とは別にあのシステムには大赦が襲撃された時用の警報も存在している。その警報を切るくらいならここでもできる。誰もいない事を確認して侵入、そしてスピード細工!スピード退出!

 

完璧な作戦だった

 

大赦を襲撃して神樹様からバーテックスに対抗できるだけの力を得るための作戦はこうだ。

まず俺が黒鳥に変身して大赦を襲う、それに対抗する形で七人御前で分身した体で真夜が戦う。

そして形ばかりの抵抗をして負けて本物の俺は神樹様に辿り着く。

即興だがこの作戦ならばまさか襲撃犯が対抗する俺(真夜)とグルだと思うことはないだろう

早速実行へと移った。

 

「お前何者だ!?ぬうぅ!?」

 

俺に化けた真夜がお決まりの台詞のように言い放つ。俺はそれに対し無言の蹴りを放ち戦闘不能へと追いやった。今の大赦は対人に対しては俺に任せっきりだった為か腑抜けの集まりであり、実践経験のなさが露骨に現れた哀れなほど薄っぺらな抵抗に俺は軽く溜息をつきつつも無力化して神樹様への元へ向かう。

 

だが問題が起きてしまった。

 

「神樹様の元へは行かせないよ〜」

 

俺は彼女の登場に息を飲む。現状最大最強の力を持つ勇者「乃木園子」が変身後の姿で現れたのだ。更に結城友奈、東郷美森といった勇者まで現れた。

乃木が出てくることは想定内だがあの二人までいるのは想定外だ。兎にも角にも対応する為には手数が必要になり気配を隠していた残り五人の七人御前を呼び出す。

 

「増えたぁ!?」

 

「幻術?それとも妖術?友奈ちゃん、慎重にいきましょう」

 

分身した五人のうち四人を乃木に残り一人を結城と東郷へと向かわせる。もっともこれは時間稼ぎ、四人分じゃあ乃木相手に1分持たないだろうが30秒は持たせられるだろう。

残り一人でも結城、東郷クラスなら目を惹きつける程度はできる。

 

実際この作戦は良く行った、いや行き過ぎたというべきか。俺の予測よりも長く三人の相手が務まったお陰もあって余裕を持って神樹様の元へ続く扉と辿り着いた。

 

「良いのか?この扉はいわば運命の扉、この先へ進めばもう後戻りできなくなるぞ?」

 

「・・・俺はそれを望んでいる」

 

そして彼は手に入れた。禁断の果実という名の神力を、たとえ悪魔と蔑まれようとも為すべき事を為す為に。

 

 

 

 

 

オルガ達が大赦本部に辿り着いたのは騒動からおよそ1時間ほど経った後だ。風もその頃には気絶から目を覚ましていた。

 

「コイツはひでぇな、ここで戦闘があったのか?」

 

オルガは辺りの惨状に目を向けた。まるで野戦病院さながらの光景に勇者たち、特に樹は不安がり胸に手を当ててゆっくりと深呼吸をした。

 

「樹大丈夫?嫌だったら見なくてもいいからね」

 

「っ、流石にこの状況で効くサプリなんてないわね」

 

「あの人は、どうして・・・」

 

春信は黒い鳥こと万丈のことを探すようキョロキョロと辺りを見回す。姿は見えなかったが仮面をつけた大赦の職員が近づいてきた

 

「勇者様達を連れてきてくれたか、お勤めご苦労。三好春信」

 

「どうも、貴方はどちら様ですか?」

 

「大赦サイバー課セキリュティ部門主任の呉島という者です。失礼ですが勇者様、端末をお借りしてもよろしいですか?」

 

呉島と名乗る堅物という言葉が似合う若い男性は風達からスマホを受け取りpcへ繋いで1分ほど操作した。

 

「ハッキングの形跡はない・・・つまり正規の手順で警報が解除された。やはりそういうことですか」

 

呉島はスマホを風達に返し仮面越しでも分かるような溜息をついた

 

「勇者様方、残念ですが大赦内部に裏切り者が存在する様です」

 

「ええ分かってます、分かってますよ。裏切り者は・・・裏切り者は・・・

 

「花凛の兄貴?知ってんのか犯人を?」

 

春信は言うべきか少し悩んだ。ここで言ってしまえば楽にはなるが言えば混乱は避けられない。しかしそこに混乱のもとである万丈(真夜)が来てしまった。

 

「よぉ、来たか春信に団長さん」

 

「アンタか、一体何が・・・

 

オルガの声を遮るように春信は万丈を殴った。

 

「ちょっと兄貴!?いきなり何を・・・

 

「貴方は何やってるんですか!?こんな所で!」

 

「・・・無様に敗北して黒い鳥ですらなくなった、落ちた鳥になったよ」

 

「へぇ、それ言っちゃうんだ」

 

「うぇ?アンタ自分は黒鳥じゃないって・・・

 

「言ってないから、俺は明日君達勇者様達御一行に倒されるための計画を作ってたんだよ。俺は自分が黒鳥じゃないなんて一言も言ってないぞ?」

 

オルガはこれまでの過去の発言を思い出していた

 

(「俺がこんな恐ろしい計画実行できるわけないだろ」)

 

「そういうことかよ。アンタは自分の身を犠牲にしてでも大赦を改革しようとしてたってことかよ」

 

「そういうことだ。大勢の正義のためには小さな犠牲は必要悪、大赦ってのはそういう組織なんだよ。俺もその一部だ」

 

「なるほど、少し怪しいとは思ってたけど納得したわ。風もそう思うでしょ?」

 

「え?あぁうん。そうね私も前々から怪しいとは思ってた」

 

「(絶対ウソだ!)」と一同は心の中で叫んだ

春信は事態を良く把握する為に話を戻そうとした

 

「・・・万丈さん、貴方は神樹様を襲ってはいないんですか?」

 

「襲ってない、俺はむしろ襲われた側だよ。こんなことになっちまった以上全部洗いざらい話すよ。全部ね」

 

 

 

 

場所は変わり被害のなかった小会議室に移る。友奈達三人も合流し、呉島主任が大赦内部の監視カメラの過去映像をだしながら話を始めた。

映像には黒い鳥が万丈を一撃で倒した所だ

その後には友奈達が戦った映像が流れた

 

「何、このデタラメな強さ?」

 

風は園子の強さに驚いた顔を見せた。槍を振り回した風圧だけで敵三人が吹っ飛び壁に亀裂が入る程の衝撃で倒したり、精霊21体をふんだんに使ったまさに一騎当千の無双で七人御前が消えるたびに現れては消えていった。

倒すたび大赦内部がすこしつづ崩れていく光景は防衛という名の破壊行為になっていた。

 

「あはは〜凄いね〜、やり過ぎないように手加減してたけどちょっとやり過ぎちゃったかも」

 

「この強さで手加減してたとか・・・」

 

花凛もまた風同様驚きを隠し切れていなかった。

 

「満開20回ぶんの戦闘能力は伊達じゃないということか。・・・(手加減されていたとはまさか目的がバレている?)」

 

「この黒鳥の正体は俺にも分からん。桐生ちゃんの研究室で後ろから襲われて気がついた時にはもう変身していたからな」

 

「あの妖術のような分身術は勇者システムとしての能力何ですか?」

 

「そんな機能はない・・・分身?いやまさかな・・・」

 

「まさか?」

 

「分身といえば村ちゃんだろ?だが村ちゃんがそこまで愚かな事をするとは思いたくない。手練れのテロリストの線を見ておいた方が現実的だろう」

 

「テロ・・・リスト?どういう意味なんですか?」

 

友奈は天然気味に質問した。神世紀はバーテックスが現れる前に比べれば神樹様への信仰心ゆえか民度は高く犯罪事態が少ない。

テロリストなんてものは都市伝説の類いである

 

「組織ぐるみで犯罪行為をして得を得ようとする最低最悪の集団のことだ。今の時代にそんな奴らがいるとは到底思いたくないけどな」

 

「・・・」

 

オルガにとってその一言は突き刺さった。自分もかつて世間から犯罪者の存在にしたてあげられていたことを思い出した。

 

「とにかくだ、そのテロリストの行方は桐生ちゃん達が追っている。そのうち・・・

 

言いかけた途端狙いすましたかのように電話がなる。

 

「よぉ、見つけたか桐生ちゃん?」

 

「すべての準備は整ったよ、後はお客さんをお迎えするだけ」

 

「なるほど、うんうん。分かった、そう伝えておく」

 

どこか噛み合わない電話を切り万丈(真夜)は平然と誤情報を話した

 

「襲撃犯が見つかった、だがお亡くなりになってしまったようだ」

 

「亡くなった?じゃあ一体誰だったんですかその襲撃犯っていうのは?」

 

「・・・信じたくはなかったが村ちゃんだよ、でも考えられなくはない。前々から神樹様の力について色々と嗅ぎ回っていた。その力を自分の身にしたいと思っての行動だったんだろう。

だが神樹様の力に体が耐えられずに肉体ごと砂となって消滅したみたいだ」

 

「村田さんが・・・?」

 

「信じられないか?だが忍びとか隠密部隊の類は隠し事も多いんだよ」

 

「・・・そう・・・ですか」

 

春信はどこか納得がいかない顔を見せてその場を引いた。オルガ達からすれば知らない間にヤバイ事態が起きて知らない間に収束していたことになる。どこか仕組まれているような感覚をオルガは感じていた。

 

「なぁ本当にアイツが犯人なのか?」

 

「まず間違いないです。今の大赦においてあの分身の類いの技を使えるのは彼だけです」

 

「大赦外でもそんなことができる奴は数十年聞いたことないしな。いたら俺が何らかの対処してるから」

 

呉島と万丈がオルガに反論する。万丈はどうも信用出来ないが呉島という男がこの場でわざわざ嘘をつくとも思えなかった。

 

「忍者さん・・・どうして?」

 

友奈はとても信じられないといった様子だった。友奈だけではないが他の勇者部の面子もだ

 

「アイツは間違った道を進んじまったんだ。こんな思いをもう二度としたくねぇって言うなら次はちゃんと止めてやれれば良い。

間違った奴に言ってやるんだ、「間違ってるから私が止めるってな」」

 

「そうだ、間違ってる奴はぶん殴ってでも止めてやるのがそいつの為にもなる。そんな時が来ないのが一番だけどな」

 

「それアンタが言うのか?俺にぶん殴らせるようなことしたくせに」

 

「しょうがないだろ、あの時は怒りの矛先が他の人に向かわないように挑発しろって上から言われてたんだから。

被害は大きかったが幸い重症者や死者は出なかったんだ。暗い話はここらで切って明るい話でもしようじゃないか」

 

深い溜息を吐き、切り捨てるように息を吸って気持ちを整える。周りがまだ完全に割り切れていない中たった1人ニヤニヤと笑いながら話し出した

 

「喜べよ、神のうどんのレシピが完成したと襲撃前連絡があった」

 

「何それ!?私聞いてないよ!?」

 

その大声を出したのは園子だ。半神と大赦で崇められていても中身はれっきとした女の子であり好物のうどんの神とも聞けば彼女が黙っているはずはなかった。

 

「今初めて言いましたから」

 

「その神のうどん私のもあるよね!?」

 

「残念なが・・・

 

「あるよね?」

 

「な・・・

 

「あるよね?」

 

「は、はい!ありますありますとも!ですが一日だけお待ち下さい!」

 

「約束だよ〜」

 

その笑顔は敵との対峙よりも柔らかく、そして破った時の恐ろしさを感じさせた。

それと同時に緊張も晴れたのか風の腹の虫がなった

 

「あはは、そういやあたし達お昼食べそこねてたわね」

 

「うぅうなんか気が抜けたらお腹減ってきちゃった」

 

「大丈夫友奈ちゃん?ぼた餅食べる?」

 

「う〜ん今はいいや。うどんを美味しく味わう為に空腹を味わっておきたいから」

 

「そうだ、空腹は時に最高の調味料となる。君達五人は先にモンタークへと向かうといい。タマちゃんが出迎えてくれる筈だ」

 

その一言は何気ない会話の返し、だが春信だけはその言葉の本当の意味を理解できてしまった。

勇者部五人はモンタークへと向かい、ミカはうどんを食べられないと拗ねてオルガはそのフォローをする様に食料を探しに行った。

園子は立場上自由に動くことはできず大赦の奥の院へと戻され呉島はセキリュティチェックの為に別部屋へ行った。

残ったのは春信と万丈の二人だけだ。春信はまるで賊と対峙するかのような態勢で万丈を見つめていたが万丈はそれを意にも返さない態度でリラックスしていた。

 

 

 

「ふぅ、・・・それじゃあ改めて話をしようか春、信、君」

 

「貴方は万丈さんじゃない、真夜・・・?」

 

「さてさて誰だろうなぁと意地悪は良くないか?真夜である。今回の襲撃は万丈士と私が仕組んだ謀りよ」

 

「やはり万丈さんが・・・」

 

「うむ、今からでも止めに向かうか?殺してでも奴は止まりそうにないがな」

 

「・・・何故こんな事を?」

 

「何故?決まっている。バーテックスを殲滅しあるべき正しい世界を作り上げる。その為の力を得る為に神樹様を襲撃した。

それだけのことよ」

 

それだけと言うには大きすぎることを万丈はした。世界の守り神たる神樹を傷つけるのは一歩間違えば世界そのものを壊しかねない行為である

 

「大赦の人間としては止めるべきなんでしょうね。でも本当にそれが正しいのか・・・」

 

「本心に従うべきだと思うんよ〜」

 

春信がどうすべきか迷っていた時勇者の服を纏った園子がひょこっと飛び出してきた

 

「えへへ〜色々と気になって抜け出してみたら面白いことが聞けたんよ〜」

 

「私もろとも万丈士を始末する気か?それもまた一興・・・

 

「みんなを救う勇者になろうとしてるんだね?それを止める気はないよ。それでも悪い事をしたなら罪は償わなきゃ。明日のうどん美味しくなかったら・・・許さないからね?」

 

園子はそれだけ言い放ち奥の院へと戻っていった

 

「一つ聞かせてください。あの人はこれが正しいことだと思っているんですか?」

 

「思っている。思わなければ世界を救う英雄になどなろうとは思わんよ」

 

「・・・こんな方法で英雄になろうとしたって誰も認めませんよ!」

 

「奴はそれを望んでいる、誰からも必要とされずそして忘れ去られても戦い続ける道をな」

 

「そんなの悲しすぎますよ!どうしてそこまでして・・・

 

「そのような正常な感情は残念ながら奴には届かない。奴は黒い鳥になった時から既に壊れていたのよ」

 

並行線を辿った話し合いはそこで終わりを迎えた。だが次の話題を持ってきたのは意外にも真夜の方だった

 

「だがその正常さは今の時代貴重だ、褒美をくれてやろう」

 

懐から取り出して見せてきたのは「73」と書かれた白い御守りだ。まるで野球ボールを渡すかのように下手投げで春信へ渡してきた

 

「なに、そこらで拾った守りよ。ただの御守りとでも思っておくがいい」

 

 それを捨て台詞に真夜は指を鳴らし幽霊のように消えていった。それと入れ替わるように桐生か部屋へと来た

 

「私は・・・

 

「いいんだよ許してあげて、あの人を許せないと思う君自身を。私は今になってようやく許すことができたから」

 

「許すことは・・・できません」

 

「じゃあどうしたら許してあげられる?目的を成し遂げたら許す?許さない?」

 

「・・・分かりません」

 

「今はそれでいいと思うよ。昔の私もそんな感じだったから・・・」

 

 

 

どんな苦難の道であろうとそれ以外の道を進む事を彼は知らなかった

理想通りに進むことなく

苦しむ道だとしても咲いていたかった

愛なくとも絶えず退廃せず一人のファイターとして戦い続けるのである

 

 

 

 




桐生家については次回解説します


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行っていいってさ

サプライズ
世界中がフレイム
バックギアはない
All we need is"DRIVE

神世紀270年、バーテックスは再び姿を現した
人類が再び反旗を翻そうとした気配を感知しその監視のためだ
その状況に立ち上がったのは一人の気怠げな勇者だった
桐生静音、それが彼女の名前だ。彼女には姉「乙音」と親友の六車瑠璃、通称「シャル」の二人がいた。この二人が支えてくれたお陰で静音は元々ないやる気をこれ以上失わず勇者としての役目を担うことができた。
だが、静音はある日を境に病にかかりお役目を果たせる身体ではなくなってしまった。ここで姉乙音は考えた。
自分が勇者になれば妹の変わりができると思い彼女はそんな軽い善意で神樹へと手を触れてしまった。
勇者でも巫女でも無いただの少女が神樹へ直接触れることは禁忌、彼女の体は自らの制御を失い台風の目のような役割を担い大赦を壊して行った。
それを殺して止めたのは黒鳥、万丈士だった




モンターク店内にて待っていたのは玉藻前一人だ。彼女は尾を軽く振り回しご機嫌が良さそうに友奈達を迎えた

 

「参ったか。此度の一件ご苦労じゃったな、勇者達よ褒美をやろう」

 

そう言って五本の尾を手のように使い彼女達の前に渡されたのは水の入ったコップだった。

褒美と聞いて大層な物を想像していた友奈はキョトンとした顔を浮かべた

 

「なに前菜のような物じゃ、本命はうどんにある。この水もよく味わって飲むが良い」

 

味わって飲めと言われてコップに口をつけゆっくりと飲み干していく。友奈が出した言葉はただ単純な一言だ

 

「・・・おいしい」

 

「そうじゃろうて、その水は山奥のさらに奥から取ってきた天然水に妾の魔術を加えた特別製じゃ」

 

残り4本の尾を人が通れるくらいの正方形なるよう動かして門を作る。門に映る青い空のような色はまるで希望の光のような雰囲気だった。

 

「さあさあ通るがよいこれが、このゲートこそが、其方達の希望となろう」

 

演じるような言い回しで玉藻は勇者達をゲートの先へと誘導する。だがゲートの先に待っていたのは希望と絶望、その両方だった

 

待っていたのは大赦に居るはずの万丈だった

モンターク店内とそう景色は変わらないがVIPサービスと称するに大テーブル一つと椅子5つのみが置かれていた

 

「いらっしゃませぇ!最初で最後のモンタークVIPサービスへようこそおいでくださいましたぁ!」

 

万丈もまた演技かかった声で勇者達を迎えた。服装は料理人とは掛け離れたもので、黒をベースとしたスポーティなスーツ姿でこれから何処かに出るような格好だ。それは過去、鏑矢と呼ばれる者達が仕事着に着ていたものによく似ていた。

 

「あれ?どうしてここに」

 

「何を言う、料理人がいなきゃ料理は作れんだろ?・・・今ここでは食こそ全てだ」

 

指をパチンと鳴らすと厨房の方から光が溢れる。それと同時に香ばしい匂いも近づいてくる。

 

「こ、これは!?この輝きは!?これはまさしく神の名を称するうどんだぁ!」

 

興奮する風をみて樹は「お姉ちゃんそんなに興奮しなくてもうどんは逃げないよ」と書いた。だが神のうどんに注意を向けられたせいで自分が小声でそれを言えたことに気づかなかった

 

友奈に出されたのは肉ぶっかけうどんだ。ただのお肉ではなくうどん三銃士が一人「白鳥悠」が選びに選び抜いた普通に手に入る牛肉と玉ねぎ、それに合わせるよう三銃士の残り二人「吉田麺十郎」「及川惣一」が麺、汁共に合わせた至高のうどんが一つ

 

東郷には和を前面的に押し出した一品だ。監修には大赦の名門鷲尾家が関与しており彼女の好みを完全に知り尽くした彼女の為の一品だ

 

風は七色のうどんならぬ七味を持つうどんである。監修は天才科学者(笑)の桐生ちゃんである

風はこのメンバーの中でも一番食べる量が多い、なので食べ飽きがないよう麺一本一本に具材を混ぜ込み味変をとことん楽しめるよう、そして不味くならないよう工夫に工夫を重ねた一品である

科学の力ってスゲー

 

樹にはそれと対するかのようないたって普通のかけうどんである、見た目は。

実際には集中して見ないと分からないレベルでスープに野菜がたっぷりと入っており非常に体に優しく一番つくるのに苦労した一品だ

 

夏凜には当然の如く煮干しうどんである

細かいことは春ちゃんにでも聞くといい

 

「ってなんで私だけ説明が雑なの!?」

 

「夏凜も早く座った座った。一口目はみんなで一緒に味わうわよ」

 

風が目をキラキラさせながら夏凛を催促しだす。その目に対してはちょっとやそっとの文句はいえなかった。文句を言った自分ですらこのいい匂いに当てられて少しずつ文句を言う気持ちが薄れ、席に座った

 

「さぁ神のうどんをありがたく食すといい」

 

万丈の号令で「いただきます」と部屋が響く。お昼ご飯を食べていなかったことも相まって友奈達はかぶりつくように頬張った。空腹と味の良しが相まって言葉も出てこない内に完食した

 

一番初めに異変に気付いたのは味覚を失っていた友奈だった。一口目から肉特有の甘味が舌全体に広がっていた。最初は神のうどんなんて大層な名前がそう感じさせているのかと思っていた。だが食べ進むたびに本当に味覚が戻ったことに気付かされた

 

「ごちそうさま、美味しかったです」

 

「そっか、素直に嬉しいよ・・・味覚が奪われてなきゃもっと美味しく食わせてやれたんだがな」

 

後半の方は独り言として小さな声だったが友奈はそれを聞き逃さなかった

 

「聞こえちゃったか?でも料理人としては失格だよな。お客を満足させられないのはさ」

 

友奈はその問いに対し首を横に振る。

 

「みんなも美味しかったよね?この神うどん?」

 

「そうね、これ程までに私の好みに合わせて作るのは中々出来る芸当じゃないわね。どこか懐かしいような味わいで安心する味でした」

 

「見た目は奇抜で味も奇抜だけど美味しかったことに間違いはないわね」

 

「・・悪くわなかったわよ」

 

「もう夏凜ちゃんは素直じゃないんだから」

 

「顔に出てるわよ?美味しかったって」

 

「な、美味しくないなんて言ってないでしょ!私はちょっと信じられないだけよ」

 

「俺の作ったうどんが美味しいことが?そんなの決まってるだろ?」

 

そういうと左腕を上げ人差し指を空に向ける

 

「おばあちゃんが言っていた、レシピ通りに料理を作ることは誰でもできる。本当に価値があるのは、新しいレシピを作ろうとする挑戦だってな

うどん三銃士やその他もろもろの協力者が作り上げたレシピを俺好みにアレンジしなきゃその味は出せんよ。

どんな調味料にも食材にも勝るものがある。それは料理を作る人の愛情だよ」

 

 

そして左腕を下ろし人でいう心臓のある部分へと手を置いて叫んだ。もっとも彼に心臓はないが

 

「言うなれば・・・愛してるんだぁ君達をぉぉ!」

 

唐突で大胆な告白に部屋すらも揺れる。恋的な意味合いでないにせよ唐突な告白に勇者部一同は困惑した顔を見せる。それは何故か万丈自身も困惑していた

 

「えっ?何、何!?」

 

「ふむ、どうやら神樹に気づかれたようじゃな」

 

空から玉藻の声が聞こえた。それと同時に困惑した表情が一変して苦難の表情に変わる

 

「・・・どのくらい持つ?」

 

「五分は持たせてみせよう」

 

「分かったそれまでに済ます」

 

 

 

 

友奈以外はその会話で神樹を襲った犯人が万丈と関係していることを察して警戒態勢に入る

万丈は大きく溜息をつく。予定外といった表情で先程までの高い声から一気に低い声へと移る

 

「ま、そういうことだ」

 

「え?どういうこと?」

 

「友奈ちゃん、この人は多分神樹様を襲った側の人間よ」

 

「えっ、東郷さん何言ってるの?だって一緒に神樹様を守ろうと・・・

 

「それは間違い、あれは俺ではなく真夜だ。神樹を襲ったのは俺だよ」

 

ハッキリとした物言いでも友奈はまだ信じられないといった表情だった。懐から神度剣を取り出してなおその表情は変わらなかった。

友奈以外は勇者へと変身し戦闘態勢へと入る。

 

「では始めようか、神樹を襲った罪人と正義の勇者様の戦いを」

 

指をパチンと鳴らすとモンターク店内が一転夜の樹海へと移り変わる。この樹海は本物ではなく玉藻が作り出した擬似樹海である

 

初めに仕掛けたのは東郷だった。新しい精霊「川蛍」が持つ能力、遠隔誘導攻撃兵器で包囲射撃を行う。しかし難なくかわされて東郷へと接近していく。

 

「動きが鈍いぞ?・・・散華を恐れたか!?」

 

万丈の指摘にも動揺を抑えようとするも抑えきれず接近戦用の拳銃の銃口が定まらずそのまま剣でやられて

 

「どこ見てんのよ!」

 

と間に入ってきたのは夏凜だった。縦振りの一撃を二刀で交差する様にガードして止め、そこに風が横槍ならぬ横剣を上から振りかぶる。

そのカウンターは当たらずとも仕切り直しには十分な攻撃でお互い距離を離すのであった。

 

「成る程な、なら次の手を使わせてもらう」

 

バックステップと同時に剣を横に振りだした。するとどういうカラクリか剣は蛇腹剣のように伸びて風の死角である左側に回り込んできた

来ると思っていなかった攻撃に風は反応できなかった。

 

「お姉ちゃん!」

 

その攻撃を止めたのは樹だ。ワイヤーを雁字搦めにして蛇腹剣の動きを完全に止めた。止められたことは予想外であり強引にワイヤーを引き裂いた反動で遠くへと一人飛んでいった

 

「いつ・・き?どうして喋って・・・」

 

「え、あれ?どうして?」

 

「どういう事よ?散華した機能は治らないんじゃなかったの?」

 

「治したのではない戻ったのじゃ」

 

みんなの疑問に答えたのは後ろから現れた玉藻だ。万丈の味方であれば自分達の敵であると判断した東郷は自然と銃口を向けた。

 

「おやおや恩人に対してその態度はなかろうて、銃を下げよ」

 

「恩人?・・・あの水!」

 

「そうじゃ、あれは神樹に供えられた其方達の体機能を入れた水。それを飲めば戻るのは自然の摂理じゃ」

 

風は恐る恐る左目にかかっていた眼帯を外す。するとぼやけるようだが少しづつ見えるようになっていた

東郷も聞こえなくなっていた左耳に手を当てる。こちらも微かにだが聞こえていた。

更に自分の足が動くかどうか確かめるも、こちらは歩く筋力が足りておらずフラフラとして結局いつもの4本のリボンスタイルに戻した

 

「どういうつもり、敵に塩でも送ったつもりなの?」

 

夏凜は東郷とは対角線になるように玉藻を囲み刀の先を向ける。絶体絶命とも見れるこの状況でも彼女は不敵な笑みを崩さなかった

 

「フッフッフ何故?ただの気まぐれじゃよ」

 

「なっ、ふざけてるの!?」

 

「そうじゃ妾は玉藻前、この世界を混沌に染め上げ革新を望む者。何も変わらぬ世界など退屈で退屈でつまらぬものじゃろ?」

 

「それはまぁそうだけど・・・」

 

風が言い淀むと玉藻はその隙を見逃さずに畳み掛ける。

 

「そうじゃろうそうじゃろう?妾の気まぐれで其方達の身体は元に戻った。いい事尽くめで良い子ではないか」

 

「やはりそういう事か、余計な事を」

 

飛ばされていた万丈は再び戻りその拳にはナックルダスターが握られていた。その声に反応して勇者達も戦闘態勢に戻る

 

「余計とは心外じゃな、この前まで彼女らの為にも作戦を立てたというのに

 

「黙っていろよ裏切り者、こうなりゃお前も裏切り者だ。・・・少しだけ本気を見せてやる」

 

ファイティングポーズをとりじわりじわりとした雰囲気が広がる。まだ一歩も近づいていないというのに先程以上の威圧感が風達に息を呑ます

 

「一つ」

 

一番先に狙われたのは夏凜だ。予備動作なしに一気に近づいてきた万丈の左パンチを二刀でなんとかいなすが次の一撃の右ストレートを腹に叩き込む。精霊のバリアがあったため直撃はしないが勢いは封じ込められず数十メートル吹っ飛んだ

 

「夏凛!っこぉのぉぉお!!」

 

風が反撃と大剣を上から覆いかぶせるように攻撃する。それの対抗策は右アッパーだ。どう見たって分が風にあったにもかかわらず結果は相打ち、風の大剣は弾かれ右手のメリケンサックはボロボロに崩れた。

素早さで劣る風に対し万丈は右回し蹴りを披露し夏凛と同方向にすっ飛ばした

 

「二つ」

 

樹はその悪魔的な強さに恐怖を覚えつつもどうにか反撃とワイヤーを伸ばそうとした。だがその手には震えがあり対象を捉えきれずにいた

対して東郷は狙撃銃で弾速の速い弾を放った。

 

「甘い」

 

だがその狙い放った一撃を左手に嵌めていたサックを手裏剣の様に投げ軌道を逸らした。

 

「良くないなぁそういう恐怖心は!」

 

そして当たらない樹のワイヤーを敢えて掴み先程の意趣返しのように風の方へ投げ飛ばすのであった

 

「三つ、残るは君だけだ」

 

機動力がほぼない東郷にとって万丈とタイマンでやるのは悪手中の悪手、迎撃と拳銃を放つも躱されやられた・・・

 

「よっつ・・・

 

「東郷さん!」

 

と思いきや間に入ってきたのは友奈だった。彼女はカウンターとばかりに万丈の左頬に強烈な勇者パンチをかます。

まるでマグロが跳ねるがように万丈は地面へバウンドし5回目で止まった。

 

「友奈ちゃん・・・」

 

「嫌だよこんなの!こんな戦い誰も望んで無いのに、どうして私達が戦う必要があるんですか!?」

 

友奈の叫びは心の底から出てきたものだった。だがその魂の叫びも届きはしない

 

「今のは効いた、でも足りない」

 

万丈は奥の手と言わんばかりに擬似勇者システム「黒い鳥」を発動しようと端末を取り出す

 

「させない!」

 

東郷は中距離銃を乱射して阻止しようとした。だが真夜が出した炎の壁に阻まれ変身を許してしまった

 

「蒸着」

 

辺りに黒羽が舞い羽に炎が移る。その炎も彼の体へと張り付きまるで不死鳥のように姿を見せる

 

『アメイジング・ブラックサレナ』

 

「赤くなった・・・」

 

万丈は左手の甲を見ながら言う。神樹の力を更に受け、実戦経験豊富な彼に擬似とはいえ勇者システムを使えばその力は彼女達五人が万全の状態でも勝つことは難しい相手だ。

その余りにも大きな力を持て余しそうと万丈は降伏を持ちかける

 

「なぁ二人とも、ここらで手打ちとして俺を見逃す気はないか?」

 

「仕方ない」

 

「何を!」

 

東郷は狙撃銃で撃つもその弾丸を右手で掴み、流れるように投げ返す。その弾丸を精霊のバリアが守るも、一瞬隙を作らせればその隙につけ込むのは容易だった。

 

「四つ」

 

その攻撃は走りの勢いを生かしたタックルだ。だが彼の予想以上に吹っ飛んでしまったのか自分で飛ばして自分で受け止めて気絶した東郷を風達が吹っ飛ばされた場所あたりまで運び友奈の方へ戻った。

 

「残りは一人。さてどうする勇者?」

 

「どうして・・・どうしてこんなひどい事を!?」

 

友奈は再び叫ぶ。その叫びは友達を傷つけられた怒り、そして信用したいと思っていた人の裏切りによる悲しみ、戸惑い、そんな物が詰まった一言だった。

 

「どうして?知りたければ俺を撃破でもしてみるんだな。最も・・・

 

と言いかけたその時再び地震が起きた。その地震は先程よりも大きく立つ事もままならないほどのもので空は割れた。その割れた空から人影が現れる。その姿は赤鬼を彷彿とさせる女傑、1メートルを超える大きさの瓢箪を紐で繋いで持ち万丈の事を睨みつけてきた。

その姿をみて玉藻はクスクスと笑顔を浮かべ、友奈は何故かその女性を懐かしいと感じて見つめていた。

 

「魑魅魍魎跋扈するこの地獄変、混迷たるその幻想を打ち破り、根之堅洲國を護るため、鬼となりて大和魂を・・・

 

その無駄に長い口上に飽き飽きしたのか万丈は神度剣を蛇腹に変えて彼女の首筋を狙った。口上に夢中になって避けられない・・・と思いきや彼女はすんでのところで瓢箪を振るって弾き返した。

 

「お前ぇ!人が喋ってる時に遮るなんて卑怯・・・

 

「もう一撃」

 

彼女の文句に耳もかさずもう一撃加えようする。しかし臨戦態勢に入った彼女の勢いはバーテックスと対峙する時の友奈と同等かそれ以上のものだった。

蛇腹剣を次々と弾かれ埒外が開かないと見た万丈は更に奥の手として真夜に呼びかける

 

「圧裂銃を・・・出せ」

 

「正気か!?あれは対バーテックスの切り札として・・・

 

「分かっている、出力は一割と使わん。それでも逃げるくらいの時間は稼げ・・・何!?」

 

驚いた原因は自分の足が急に重くなったからだ。足を見ると透明なツタが絡まっていた。こんな芸当を出来るのはただ一人、玉藻前だ。

 

「どういうつもりだ玉藻?本気で裏切る気か」

 

「裏切り?アッハッハおかしな事を言う。妾は初めから誰の味方でもない、妾は妾の味方。ここで倒されなければシューちゃんは地獄の果てまで追ってくるからの、大人しく倒されておくがよい」

 

「ちょ、誰がシューちゃんよ!あたしにはもっとカッコいい名前があるんだから!」

 

「っ、真夜!圧裂銃を」

 

地表より圧裂銃と呼ばれるバズーカが飛び出てくる。いやバズーカと言えば生優しいものか、6メートルはある全長はとても人一人で担ぐようなものではなかった。それでも肩へと担ぎエネルギーチャージを始めた。

 

「いよいよ本気ってわけね、それじゃああたし達も行くよ友奈!」

 

「えっ、何を?」

 

シューちゃんと呼ばれた彼女は友奈に手を差し出した。

 

「決まってるでしょ!あいつをやっつけるのよ!ホラ手を出して」

 

友奈は状況を半分くらいしか読めなかったがここで彼女の手を取らなければ自分も倒されて万丈を止められないと思い手を伸ばす。

彼女の手を握ると自分の息が苦しくなってきた。負の感情が流れ込んでくる、自分の中にあった怒りや悲しみが増幅されるような感覚に心臓が苦しくなり自分の手で握りつぶそうとすら思えてきた。

そんな友奈に対し彼女は後ろからその手を止めるように抱き締めてきた

 

「大丈夫、あたしはあんたの味方だよ。落ち着いて考えるの、イメージするのは勝利した後の自分、戦いってのはノリのいい方が勝つの!上を向いてただ貪欲に成すべきことを目指すの!」

 

「イメージする・・・」

 

抱きしめられた事で少し落ち着いたのか息も深呼吸になり彼女から言伝が心の中に響いてきた

 

「摂津の門開きて熊を獅子と従えし、鬼と化して真の鬼討つ我が神名は

 

「「酒呑童子!」」

 

彼女の名を叫び友奈は満開とはまた違う変身を遂げる。彼女の特徴的な二本角をつけ満開で現れる時と同じ巨大な腕は前の満開した時よりも更に大きい数十メートル単位のものだった。そしてその攻撃方法は武道というものとはかけ離れた一撃だった

 

「「くらえ鉄拳!ロケットパァァァァァンチ!!」」

 

巨大なアームがロケットとなり飛ぶ、その軌跡は星が如く。圧裂銃を発射する間もなくあたり一面は爆発の光に包まれた。

友奈本人もその光に巻き込まれて一時的にだが意識を失った。

 

 

 

「・・・ちゃん!友奈ちゃん!」

 

友奈が目を覚ますと後頭部に柔らかい感触が伝わる。自分のおかれてる状況を確認すると東郷に膝枕されていた。

他の勇者部のメンバーも変身を解いて揃っていた。

身体を起こそうとしても力が入らず酷い筋肉疲労を起こしていた。

 

「良かったぁこのまま目覚めないんじゃないかと心配したんだから」

 

「どっか痛い所はない?サプリ決めとく?」

 

「・・・どうなったの?」

 

風と夏凛の心配は振り切るように首を横に向けて自分がパンチを放った方向を向く。その光景を見て絶句した。まるで隕石でも落ちたかのような光景、それが物語るは一つの結論だった

自分の力をコントロール出来ずにやり過ぎた

 

「私は・・・うぅぅ、止めたかっただけなのに・・・殺したくなんか、なかったのに」

 

自然と彼女は涙目になる。例え悪人だとしても殺せばそれは彼女の罪、そんな涙目の友奈を見ていられず一同は目を逸らした。

そんな涙を拭いたのは青空模様が刺繍されたハンカチだった。

 

「勝手に殺すんじゃないよ」

 

「え?」

 

そのハンカチを渡してくれたのは死んだと思っていた万丈その人だった。

急な出現に風は

 

「ギャァァァァァ出たぁぁ!!?」

 

と樹の後ろに隠れてしまった、姉の威厳台無しである。

 

「死んでないわ!足だってちゃんとあ・・・

 

「ギャァァァァァ喋ったァァァァァ!・・・」

 

「お、お姉ちゃん・・・」

 

と、ひとしきり叫んだら尾が切れたように気絶してしまった。東郷は警戒するような目で見て、夏凛は再変身して刀を突きつけ友奈はまだこの光景が現実味を帯びていなかった。

 

「どういうこと?あれほどの規模の攻撃、避けられる筈がない」

 

「ああ食らったよ、モロにね。一度死んだ。

でも復活できるんだよ、今の俺は」

 

「大赦でも使った分身術・・・ですか?」

 

「大正解!その正解と勇者達の勇気ある振舞と戦いぶりに対して俺は降伏しよう」

 

そう言うと胡座をかいてリラックスするような態勢になった。今の万丈には先程のような威圧感は微塵も感じられなかった

 

「夏凛ちゃんもやめて、その人は嘘はついてないと思うから」

 

友奈の目には既に涙は流れておらずその顔には安堵の表情が少しづつ戻っていた。その表情を再び悲しみにしたくなかった夏凛は変身を解いた

顔を下げて深呼吸をした万丈は呟く様に話しかけてきた

 

「なぁ、普段の空って何色に見える?」

 

「空の色?そんなの青に決まってるじゃない」

 

「そっか、そう見えるのか。・・・だが、普段君達が見てる青空は神樹様が見せている幻だ、本当は赤いんだよ、炎にように真っ赤にね」

 

「空が・・・真っ赤?どういう意味ですか?」

 

「それは・・・

 

と次の言葉を言いかけると三度目の地震、今度は空が割れるなんてものではすまなかった。神樹様が普段作り出す樹海空間がこの世界を染めようとしていた

玉藻はその影響に彼女達を巻き込むまいと閉じ込める様に新たな結界を作った。

そして一人結界の外にいる万丈は彼女達に警告する

 

「俺はこの赤い空を破壊し本当の青空を取り戻す!俺には成すべきことがある

・・・さよならだ」

 

「待って・・・」

 

友奈の小さな制止の言葉は届かず聞こえず無に帰り、樹海化はいつものように溶けた。それと同じ様に友奈の意識もまた途切れた

 

 

 

 

次の日、円舞中央病院にて入院した友奈をオルガと東郷の二人で見舞に来ていた。彼女はぐっすりとベットで寝ていた

 

「それで大丈夫なのか友奈の様子は?」

 

「お医者様がいうには一週間も有れば退院できるそうです。ただ、大きく疲労して肉体的にダメージが蓄積していたのが表に出たみたいです」

 

「そっか」

 

東郷からそう聞いてオルガはホット息をつく。

昨日大赦の復旧作業中に友奈の意識がなくなったと電話で聞いた時は気が気でなく作業を放り出してまでモンターク、更には病院にまで付き添った。

ようやく緊張の糸が途切れた様でオルガは近くに椅子に座り寄り掛かった。

 

「大丈夫ですか、随分と疲れてる様に見えますが?」

 

「こんくらいどうって事はねぇ、けど昨日いろんなことがありすぎて頭の中こんがらがってる感じだ。東郷は大丈夫か?」

 

「私は大丈夫です。先生は風先輩達の方へ行ってあげてください。多分ショックを受けてるのは私よりみんなの方だと思いますから」

 

「分かった。けどあんまり煮詰めんじゃねぇぞ?今回の一件でアイツを止められなかったのはお前達だけの責任じゃねぇよ。あんまり気を落とすんじゃねぇぞ?」

 

オルガは励ましの言葉を送って病院を後にする。その後春信が運転手として待っていた車に乗り込むとオルガは再び溜息を吐いた。

こんなことしかできない自分の無力さに正直苛立ちも感じていた

 

「なぁ夏凜の兄貴、アイツがどこに行ったか知らねぇか?」

 

「死ってどうするんですか?」

 

「決まってんだろ、友奈達をあんな風にした詫びを入れさせる」

 

「詫び・・・ですか?それなら検討違いではありますね」

 

「は?」

 

「友奈さんがああなったのは精霊をその身に取り込んだせい、だと言われています。過去の文献によれば厄祭戦でバーテックスとの戦いで勇者の切り札としてその方法が使われていたそうです。

最も、その代償は満開ほどではないですがね」

 

「じゃあ俺が詫びさせるのはそいつか、何処にいる?」

 

「・・・もうすぐ会えますよ」

 

そう言って着いた勇者部部室にはミカ、風、樹、夏凛に玉藻前、そして他の精霊と同じチンマリとしたなりの酒呑童子が玉藻の尻尾で遊ばれていた。

 

「ムギュ、ギュギュギュ・・・は・・・な・・」

 

「いかんのぉシューちゃん、説明もなしに勇者に取り付くなど妾がちゃんと擁護せねばお主は神樹様の世界から追放されておったぞ?」

 

酒呑童子は一つの尾で体周りを縛られて他の尻尾の先でくすぐるようにいじられていた。

 

「ミカ、これはどういう事だ?なんでアイツがここにいるんだ?てかあのちっこいのは誰だ?」

 

「さあ?俺達が来た時にはもうこうなってた」

 

「しかもなんか私達以外には二人?は新任の特別教師に見えるみたい」

 

「その通り、妾は前田環(まえだたまき)という名の古文担当特別教師、そしてシューちゃんは堂島神酒(どうじまみき)の名の体育教師としてここにおる」

 

言い終えると同時に開いていた扇子を閉じ姿を変える。玉藻は六十代程に見える婆さん、童子は・・・変わらなかった

姿を変えて尻尾から解放された童子はハアハァと息を整えテーブルに座り持っていた瓢箪から酒を飲み始めた

 

「うぅ、辛い、飲まないとやってらんない・・・お酒お酒・・・」

 

その様子はまるでウサギが水を飲むかのような光景だった。ウサギに失礼だが。

まるで酔っ払いの人間そのものといった童子をオルガはイロモノを見るような眼で見ていた。

 

「あぁん?兄ちゃん何見てんだよ。あ、お前も呑みたいんだな?」

 

「いや、俺は別・・・

 

「あたしの酒が飲めねぇってのか!?いいから飲めよ!」

 

オルガは強引に瓢箪からコップに移された酒をのんだ。その時オルガの顔が一気に青ざめた。

そしてオルガはアルコール中毒で希望の花となった

 

「だからよぉ止まるんじゃねぇぞ」

 

「アッハッハ見てたよぉ兄ちゃん、いい呑みっぷりじゃないか。大ちゃんほどじゃないけどな」

 

「大ちゃん?誰だそいつは?」

 

「知らないのアンタ?神樹界精霊四天王の一人大天狗よそして同じく四天王が一人酒呑童子様たーあたしのことよ!」

 

「いやいや、そんなナリで言われても説得力ないし」

 

「言うなぁ!あたしだって好きでこんなふうになってないんだから!久々に友奈と共に戦って力を消費しすぎただけなんだから〜!」

 

「え!?じゃあアンタが友奈をあんな目に?」

 

「う、そ、そうよ。あたしが軽率だったせいよ、悪かったわね」

 

オルガは頭を抱えた。既に玉藻により落とし前はつけられており本人から詫びももらった。何よりその話を聞いても風達がいっさい動揺した素振りを見せてないことから風達も許しているのだろう。

 

「これでもまだ彼女を責めますか?」

 

「いや、いい。それより風達は怪我の具合はどうだ?」

 

「大丈夫よ私も樹もね」

 

「心配される程じゃないわ。けど次会ったらただじゃおかないんだから!」

 

「やる気充分みたいですね夏凜さん」

 

「夏凜の言う通りね今度こそ部長として聞き正さないと」

 

「また幽霊だー!って気絶しないでよね?風・先・輩」

 

「それを言うな〜!」

 

辺りには笑いが溢れた。だがそれは形だけだと感じたオルガはミカと春信を連れて部屋を出て話を始めた

 

「ミカお前はどう思う?」

 

「みんな無理してる。大丈夫そう振る舞ってるだけだ」

 

「お前もそう思うか?・・・せめてアイツのが今何してるか分かりゃ話は楽なんだが・・・」

 

「じゃあ知ってる人から聞きますか?」

 

春信は再び車を出した。これから行動を知っている内通者に会わせようと大赦へ向かった。

 

「内通者ってのは誰なんだ?」

 

「桐生さんです、今は大赦の地下研究所で軟禁されています。ただ・・・本人は今辛い時期でしょうね」

 

春信は部屋へ着くとマクギリスに用があると別の場所へと向かった。

地下研究所と呼ばれる部屋は大きなガラスで透けており更に外部からのみ鍵がかけられる部屋だった。部屋自体はマシな牢屋といった印象だったが、オルガが驚いたのは桐生自身の格好だった。

左目に光はなく車椅子に座り、車椅子の右側面にはパソコンを置くための台とパソコン、左にはその画面が相手に見えるように映されていた。

 

『やあやあよく来たね、お茶も出せないけど歓迎するよ』

 

画面に彼女が打った文字が映り音声が機械で読み上げられる。その光景は少し違えど前の樹そっくりだった。

 

「アンタ・・・まさか」

 

『うんそうだよ。彼女達が神樹様に貢ぎ物として捧げていた体機能は戻った、なら誰かがその埋め合わせをしなければならなかった』

 

オルガが哀れむような眼で見ると再び文字を打ち込んでいく

 

『まぁそんなに気にしないでよ。コレは私が望んで進んだ道、未来ある若人よりはこっちの方がいいでしょ?それに科学者は頭脳が有れば生きていけるから』

 

「何でだよ!何でアンタら大赦はそうやって誰も彼も平気で自己犠牲ができるんだよ!?」

 

『平気じゃないと思うよ、少なくとも私以外はね』

 

「っ、どういう意味だ?」

 

『聞きたい?なら士君の目的を話そうか』

 

そうして彼女は事の荒筋を話した。バーテックスが未だ存在しそれを全て駆逐する為に彼は力を得て戦い続ける道を選んだことを

 

『それと昔話をしよう、神世紀270年10月10日、ちょうど三十年前の今日私は勇者の御役目中の事故で命を失った』

 

「・・・は?」

 

『死んだの、一度』

 

彼女の表情は深刻な物でもなくまるで他人事のように自らの死を語る。

 

『けど神樹様が私をこの世界に誘い助けてくれた。私が元いた場所はね、アグニカもモビルスーツもない士君もいない世界だったんだ。

コレが厄災戦時一部界隈で流行った異世界転生?ってやつなのかな?』

 

 

 

『私は転生して神樹様に生かされている。それは、貴方も同じなんでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 




次回投稿予定は宴が始まったら
『ナンバーズアヴァロン』


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花火のように命燃やすエグゾダス

今回は丁寧に東郷さんの心を折りにいきました

本当はもっとひどい描写描こうと思いましたがやりすぎたと思ったのでマイルドにしました



今回までのあらすじとは関係ないもの

十三世紀クライマックス、緑の海の国帝国(帝国150万の兵を統率する大元)はアインハンダー混沌の災禍に堕ちた世界の征服をアルティマニア、立ちふさがるマクロコスモスのサンクチュアリスを蹂躙していた。
東のワールドエンド、日本に侵攻す、宿命を前にオプティマされたゼニー軍の大帝国武装商船団を率いるのは、冷酷にしてチョコボの不思議なデータディスクなグルガン族智将、コトゥン・ド・ハーン。ハーンは、侵攻の足掛かりとして対馬に上陸するほど、愛してる──。
これを防ぐべく集結した対馬の武士闇ギルドは、初めて睥睨する元軍の兵略によって初戦で壊滅。コクーンはたちまち『再配置』の究極履行「インフェルノ」に不可視世界の混沌に飲み込まれる、すなわち我と同等の実力を持つ。
だが、かろうじて生き延びた一人の武士がいた。
境井 仁(…つまり俺達さかい …さあて、じんコレ…ガ…答エ…ナノカ?)。
仁は、サクァ・イン独時の時間が流れる閉鎖的空間通称”HOUSE”の終曲《フィナーレ》の新人類として、たとえ侍の浄罪の路に反した戦い方に《神手》を染めるイデアに…君はもうクラウドになっても対馬の民を守ろうと決意する。冥府零式改・通称“ラグナロク”…無限に存在する並行世界から蘇ったグルガン族魔王「アビスキャラクター(…これが帝国の……くろうど…噂には聞いていたが、これ程とはな……)ね?」
として、あらゆる手段を使ってニブルヘイムを他国の凶賊の手!…大丈夫、必ず戻るから取り戻すのだ。
始めようかセフィロス!
──男たちは己の悲運より、友のために涙を流した──

それからおよそ千年、人類はまたイデアへと手を伸ばし禁忌を冒してでも奪われし故郷対馬を奪還するため四国より出国するのであった
無限に存在するであろう勇者達の存在、ラグナロクを完遂する
ただそれだけを目指して(ふ、強くなったな)
帝国史上の予言書にはそう描かれていた


「結城友奈!ただいま到着しましたー!」

 

「おう、やっと復帰したか!おかえり」

 

あれから一週間経ち、病院もちゃんと退院できた友奈は早速部室へと来た。しかし部室で待っていたのはオルが一人だった。

 

「あれ他のみんなは?」

 

「勇者部の仕事だよ、考えてみれば俺達表向きの仕事サボってたからよ。バーテックスとももう戦うことはねぇだろうし俺もこういう書類仕事にいい加減慣れねぇとな」

 

そう言ってオルガは書類仕事を進めていく。友奈は手持ち無沙汰な気持ちになったのか何か手伝えるかと書類を一目見たが、ちんぷんかんぷんといった顔で目を離す。

 

「病み上がりなんだから無理すんな。ほら東郷が作ってくれたぼた餅があるぜ」

 

「いただきます!」

 

友奈は頬張りつくようにぼた餅に手をつける。昨日まで病院食で食欲もやや不満気味なのも相まってその勢いは止まることを知らない。なので当然

 

 

「むぐ、むぐぐ・・・

 

「何やってんだ友奈ぁぁ!!?」

 

オルガは急いでコップに水を注ぎ友奈に渡した。あと数秒遅れていたら命の危機に瀕していたかもしれない。

 

「ハァハァハァ、大丈夫か友奈?」

 

「ゴクン、・・・もう大丈夫!」

 

「あれ、そういやこうゆう命の危機の時精霊が助けてくれるんじゃねぇのか?」

 

「そういえば・・・牛鬼!」

 

友奈が牛鬼を呼ぶと口に何かを頬張り呼び出てきた。その何かとは・・・

 

「たひゅ・け・・・

 

「わぁぁ!?牛鬼!それは食べちゃダメー!!」

 

小さくなって食べ頃になった酒呑童子を頭からガッツリ噛み付いていた。必死に抵抗するも二等身の体では抵抗虚しく友奈が引っ張ると変にもげそうだった

 

「ったく、離しやがれ!」

 

オルガが牛鬼の口元を強引に開くと酒呑童子は干からびた人参のように倒れた。そして口の開いた牛鬼が再び口を閉じると

 

「ウェアアア!!離せぇ!離しやがれ!」

 

オルガの手を噛んできた。食いちぎるような痛みではなく甘噛みする程度の力だったためか何とか振り解き噛まれた手をフーフーとした。

 

「痛てぇ・・・」

 

牛鬼は満足したのか消えた。オルガはまだ痛みが引かずに左手を氷水の中へとつけた、お陰で片手しか使えずこれでは書類仕事もままならない。

 

「ハァ〜お互い災難だったな。なんか盛り上がる話題でもねぇかな?」

 

とオルガがぼやくと廊下から足音が聞こえてきた。その足音のリズムでオルガは誰が来たか分かっていた。

 

「おかえりミカ」

 

「うん、ただいま」

 

ミカは両手に大きなビニール袋をもって部室へと入った。その中身は一月後に控える文化祭の衣装だ。文化祭の演目は勇者とバーテックスの戦いをデフォルメに再現した劇である。

ミカが取り出したのは友奈用の紅蓮の騎士をイメージした衣装である

友奈は早速手に取り自分の前に合わせてみた。

 

「どうかな?似合う似合う?」

 

「いいんじゃねぇの?」

 

「うん、すごくカッコいい、バルバトスみたいだ」

 

「あはは、褒められてるのかな?早速合わせてみるね」

 

と友奈は着替える為に部室から二人を出した。

 

 

 

「ハァ〜・・・やっぱり友奈にも言うべきじゃねぇよな?」

 

オルガは再びバーテックスが進行の準備をしていた事を言えずにいた。それを誰にも知らせず一人炎の中抗い続ける万丈に協力することオルガ達にはできなかった。

厄災戦の約定により人類は神樹の結界内にのみ生存を許されていることを春信より聞いた。故にオルガやミカが出れば約定を破ることになり今まで以上に進行する口実を作ってしまうため手助けもできない状況だ

 

「これじゃあやってる事大赦と同じじゃねぇか」

 

オルガは行き場のない怒りを部員達には見せないようしていた。春信はこんな思いをずっと続けながら接していたと思うと彼の重圧も少しはわかる気がしてきていた。

 

「後悔してる?」

 

「いや・・・ずっとこのまま何もなければいいんだけどな」

 

「そうだね。オルガ?ここが俺達のいるべき場所なんだよね」

 

「ああ!俺達はこの居場所を守っていく。何があろうとな」

 

「だね」

 

「二人とも何話してるの?」

 

「ウェアアア!!?

 

「ウェアアア!!?」

 

「・・・なんだよ友奈か。ビックリさせやがって」

 

「びっくりしたのはこっちですよ。それで二人で何話してたの?」

 

「ああ、えっと・・・

 

「文化祭のこと、うまくいくと良いっねって」

 

「あ、ああ、そうだ。俺達はこの文化祭を確実に成功させる。その為に話をしてたんだ」

 

「へぇ〜流石勇者部の団長さんだね。私達に内緒で自分も役に出るくらい張り切ってますしね」

 

「は?」

 

「え?あの大きなバーテックス役の服先生のじゃないの?」

 

オルガが袋を確認するとそこには四人分の衣装が入っていた。友奈の勇者袋に風のバーテックス役、東郷の勇者を導く巫女役兼ナレーターは予定通りだが、オルガは本来裏方として回るつもりでいた。

そんな時オルガに服が用意されているなど誰も想定していなかった。服をよく調べてみるとポケットに小さな紙が入っていた。

 

『鉄華団団長様、劇に是非是非役立ててとことん盛り上げると良いっす

その為のプレゼントを用意したっす

謎の忍者Mより』

 

と書かれていた。

 

「謎の忍者M?誰だこいつ?」

 

「忍者!?忍者に知り合いがいるの!?」

 

「正直ピンときませんね。ミカお前は?」

 

「知らないよ、そもそも忍者って何?」

 

「そのレベルだったんだ・・・」

 

友奈が呆れた顔でいるとガラガラと部室のドアが開く。他の四人も勇者部の活動から戻りオルガ用の衣装をまじまじと見た。

 

「おお?何その大きいの?鯉のぼり?」

 

「いえ風先輩アレは獅子舞でしょう?」

 

「どっちにしろ不気味な顔ね、結局何よそれ?」

 

「正直オレも分からねぇ。けどいいんじゃねぇか?こいつで劇に出れば注目の的になれる。そうすれば勇者部は文化祭の人気物になれる。

地位も名誉も全部手に入れられるんだ。こいつはこれ以上ないくらいの上がりじゃねぇのか?」

 

「確かにそうね、よーしみんな文化祭に向けて張り切っていくわよー!」

 

「「おー!!」」

 

 

 

翌日、オルガは春信に呼ばれて大赦に出向き東郷は足のリハビリの為病院へと向かっていた。他五人はお昼で腹が減り何となくモンタークにたどり着いていた。

 

「あれここ締めたはずじゃあ?」

 

「見るからに開いてるわね、戻ってきたとは思えないけど」

 

「どっちにしろお腹減ったしさっさと入りましょ」

 

モンターク店に入るとそこに万丈の姿も影もない。いるのはいくらかの客と店員のアルミリアにトド、更にタカキの三人がいた。

 

「三日月さん、いらっしゃいませ」

 

「タカキ?ここまだやってるんだ」

 

「はい吉田のおやっさんが継いでくれたんです」

 

「吉田?まさかあの吉田家!?」

 

風先輩は興奮したようにタカキに詰め寄る。それに対しミカは落ち着けと言わんばかりに間に入った

 

「風落ち着いて・・・

 

「これが落ち着いていられるわけないでしょ!吉田家といえば讃岐うどんの申し家!

かの家が作り出すうどんの喉越しは愉悦を極め大地を丸ごし食したような恍惚感が得られるという逸話もあるあの吉田家を知らないの!?」

 

「え?おやっさんそんなすごい人だったんですか?」

 

「知らなかったの!?」

 

風は驚愕の顔を見せる。しかしその顔はさらに驚愕感を強ませる。

 

「知らんくても無理やない。儂は吉田家でもおちこぼれじゃからの」

 

出てきたのは六十代と見える爺さんだ。いかにもうどん作りに命かけてるような白いエプロンは彼の強面な顔と相まって威厳強気顔だった。しかしその顔とは裏腹に彼は弱音を吐いていた。

 

「え?天下の吉田家がそんな弱音・・・

 

「食えば分かる。注文は五人前でええな」

 

そう言い切ると吉田は厨房へと戻りうどんを作り上げていく。その道50年ともなればまさに一流。無駄のないその動きは一種の芸術とも呼べる代物だった。

 

「坊主!7番テーブルに」

 

坊主と呼ばれ、タカキは3往復して鉢を運び終える。何の変哲もない普通のうどん、だが一口すすれば感動の一途を辿る。

 

「んん〜!美味しい!先週食べたのより美味しいわ!」

 

風の食べる速度はいつもの1.5倍となりほっぺも落ちる。そのままのスピードを維持して当然のようにおかわりを頼んだ

 

「・・・もう少し味わって食いな」

 

吉田は彼女の食べっぷりに呆れながらも内心少しだけ嬉しかった。だがそれを表に出さずにいた

今度はちゃんと奥歯でしっかりと噛んで食べる。

噛むことでより深い味わいが口の中に広がり食欲を満たしていく。

二杯目を半分くらい食べた所で風はある質問をなけがける

 

「一つ相談なんだけどいい?なんか最近の先生の様子変じゃない」

 

「そうかな、いつも通りでしょ?」

 

「ミカが言うの?どう見たって変でしょ」

 

「そうよ昨日だって前に比べて元気無かったし、とくに変なのは裏切り者の万丈について気にするなとか言ってきたしうん。とにかく変!」

 

ミカは風と夏凜の押しに黙る。春信がバーテックスについては語らないよう強く言われているため返答に困った。それを助けてくれたのは意外な人物だった。

 

「万丈?オタクらが一週間神のうどんを食べたお客さんか?」

 

「え?そうだけど知ってるのあいつのこと?」

 

新しく店長となった吉田は何かを知っているような口調で話に混ざる。

 

「ああ知っておる。この店の前の店長でうどんの腕を極めたから次は別の料理を極めると叫んで四国外に出た奴じゃ。

儂よりも劣るくせに極めたなどと言うとはとんだ大馬鹿者じゃろ?」

 

予想外の答えを出されて夏凜は困惑しつつもその意見に肯定する。その会話に興味を引いたのかマクギリスがモンターク地下から飛び出してきた

 

「ほう、私が聞いていた理由とだいぶ違うな」

 

「あ、チョコの人だ。なんでここに?」

 

「私はここのオーナーだ。いてもおかしくはないだろう?

私が聞いた話では奴は私を出し抜いて第二のアグニカになろうとしていると聞いたな。困った奴だ」

 

「それってつまりアグニカのような英雄になろうとしてるってこと?」

 

「フッ、勉強不足だな三好夏凜。アグニカは英雄になろうとしてなったわけではない。厄祭戦を終わらせるという純粋な願いで彼は命をかけて戦い後に英雄と呼ばれる存在となったのだ。

それに比べて奴はどうだ?アグニカのような英雄を目指していながら世界に反旗を翻してなお英雄になろうとは・・・愚かにも程がある

 

だからこそ人はアグニカのような清廉たる英雄を目指すのだよ。君達はその為に戦ってきたのであろう?」

 

「別に、俺はただオルガに言われてやれる事を全力でやっただけだから」

マクギリスが彼女達に問いかけるが夏凜以外はうどんに夢中であまり聞いておらず夏凜もジト目で呆れたようにマクギリスを見ており、ミカはどうでもいいといった表情だ。

マクギリスは少々不満気な顔をして捨て台詞を吐いた

 

「君達にもいずれ見せてやろう。私こそが真にアグニカの後継者であるということを」

 

マクギリスはスタスタと地下へと戻ろうとしたその時だった。ミカが何かとてつもないものが近く気配を感じ取り店の外へと出る。風達もミカの異変についていくと異様な光景が目に見えてしまった。

 

「空が・・・割れる?」

 

ミカの見た方向は北、つまり海のある方角である。その頭上の空がまるでガラスの様に割れて砕ける。そこから見える空模様は赤いものだった

それと同時にスマホから特別警報発令と画面に表示され、高音な警告音が辺りに響く。これから天変地異でも起きるかの様なその音と共に辺り一面に花びらが舞い樹海化が始まった。

 

「そんな・・・バーテックスは全部倒した。倒したはずなのに?」

 

「落ち着いて友奈、まずは現状確認。想定外の状況でも落ち着いて・・・え?なに・・・これ?」

 

夏凜の変身してナルコの地図機能を確認した。そこには上の画面を赤い点が覆い尽くしていた。

 

「見てあれ!」

 

友奈が指を指した方角は赤い点が覆い尽くしていた方角、そこには友奈達がバーテックスと呼ぶ者の細胞である星屑、白い体に大きな口を持つ敵が

無地蔵に樹海へと入ってきていた。

 

「っく・・・この状況は完全に想定外だ」

 

マクギリスが舌打ちをする。自分の考えが及ばない何かがこの結果を示したのだ。

 

「そうだ、東郷さんは!?」

 

友奈は冷や汗で画面を指でスライドする。赤い点、ならぬ赤い面の中に彼女はいた。

そうバーテックスの群れの中に勇者「東郷美森」は呆然とバーテックスの群れを見ていた。

その手には神樹の結界の一部を破壊した狙撃銃が力なく握られていた

 

 

 

 

 

数十分前・・・

 

病院の奥底の地下に勇者「乃木園子」は祀られるように病室内にいた。東郷は鳥居を潜り園子へとおぼつかない足を運ぶ

 

「来てくれたんだねわっしー。あ、今は東郷さんか」

 

「わっしーでもいいわ。記憶は飛んじゃってるけどその約2年間私は鷲尾という苗字だったのだから」

 

「っ、よく分かったね」

 

「適正検査で勇者の資格を持っていると判断された私は、大赦の中でも力を持つ鷲尾家に養女として入ることになりそこでお役目についた」

 

「鷲尾家は立派な家柄だからね。高い適正値を出したあなたを娘に欲しかったんだよ」

 

「今思えばただの生贄じゃない。大赦はずっとこんなことを続けて・・・

 

「生贄・・・酷い言い方だけど間違ってはいないかもね。2年前の戦いで私はこんな風になっちゃったしわっしーも記憶が飛んじゃってまともに戦える状態じゃなかった。

だから大赦は身内だけでやっていけなくなって

勇者の素質を持つ人を全国で調べたんだよ」

 

「戦いの後事故で記憶喪失と嘘までついて、引っ越しの場所が友奈ちゃんの家の隣だったのも仕組まれたもの・・・」

 

「彼女、検査で勇者の適正値が一番高かったんだって。大赦側も彼女が神樹様に選ばれるってわかってたんだろうね」

 

「っ・・・仕方ない事だって分かってる。分かってるつもりだけど友奈ちゃん達をこんな事に付き合わせるなんて・・・

 

「親は娘が神樹様に選ばれたのだから喜ばしいことだって納得したんだろうね。それは大赦もね。

・・・でもあの人はこれ以上わっしー達を苦しめる姿を見ていられなくて大赦と神樹様を裏切って生贄に出たんだよ」

 

「どういうこと?いったい黒い鳥・・・万丈さんは何をしてるか知ってるの?」

 

「落ち着いて聞いてね」

 

園子は東郷に全てを話す。バーテックスが未だ壁の外に存在している事実を、その侵攻を止める為に戦い続けている事を

 

「その事実を分かっていながら大赦は私に改めて彼の討伐をお願いしてきたんだ。」

 

「乃木さんがここにいるって事は・・・

 

「うん、断っちゃった。私久々に怒っちゃった。何も痛い思いをしてない貴方達に何が分かるのって、痛みを負っていない人はそれを負っている私達の苦しみを理解できないよって。

彼も苦渋の決断だったんだろうね」

 

東郷は黙りこくる。思いが正しくともやった行為は大罪そのもの。どうしていいか分からなくてなってしまった。

 

「悩んでるみたいだね、春信さんもそんな顔してたよ。わっしー、そんな時は自分の心に従うのがいいと思うんよ。

どんな決断をしても私はわっしーの味方だからね」

 

「そのっち・・・ありがとう」

 

「わっしー?記憶が・・・

 

「そう呼んでいた様な覚えが微かにあるの。そのっち、私は行ってくる。自分自身の目で真実を確かめに」

 

「そっか・・・気をつけてね」

 

 

 

そうして別れた東郷は神樹が作りし世界の壁際に来ていた。壁の向こうは海と山が広がった綺麗な景色だがその光景は彼女の一歩と共に一瞬に崩れ去る。

燃える世界、全てを焼き尽くす地獄の業火ともいえる世界が一面に広がっていた。

バーテックスが無数に世界を覆い尽くし口だけの幼体バーテックスは少しづつ星座で呼ばれる完成形へと集まろうとする。

完成形を生み出さない黒い鳥は七人で抵抗を続けていた

 

一人が指揮官役として後方に立ち、五人は前方で神度剣を振るい戦っていた。残る一人はというと指揮官役が持つ圧裂銃の弾倉と見える部分に触れると体が砂のようなり神力の弾丸と化した

 

「ゴラゲゼギヂランゴゲンザミミャブババジュグソブビンレ、ゴゴセスバ。ギブジバングビダザベザ」

(お前で15876人目、恐るな。死ぬ時間が来ただけだ)

 

発射された弾丸は前方にいる五人の所へ到達し、まるで花火の様に炸裂した。五人もろともバーテックスを撃破するその光景は敵味方の区別のない残虐なものだった。

それが自分殺しであるにも関わらず態度一つ変えず、前線を押し上げる為に蘇る六人が死地へと向かった。

 

 

「バゼビンゲングボンジョグバダギョビギス?ビリパギスデビダギョゼロゾシバガギ」

(何故人間がこの様な場所にいる?君はいるべき場所へ戻りなさい)

 

残った一人は背中ごしにややノイズがかかった謎の言語で警告する。すでにまともな会話ができなくなるまで狂っていた。

東郷に対して敵意はないものの、その右手にはバーテックスの特徴である白い部分が移っていた。

 

残った一人も前線へ飛び右手を上へ掲げるとその手が50メートルはある爪へと変貌し空を切り裂く。右から左に、そして左から右に薙ぎ払う

それはまさにバーテックスを殺すバーテックスと言えるものだった。

そしてその腕が元の大きさに戻ろうとしたその時だった。

上空から蠍座の3メートルはある大針が腕の付け根を突き刺し、腕を飛ばす。更に射手座と蟹座がそれぞれの武器である針と反射板で彼の身体を全身から貫いた。

コレが15877人目の死だった。彼にとってはなんて事ない死。その死を囮にし6人が逆包囲し殲滅戦へ入る。

 

その光景を見ていた東郷は頭を抱えて息を荒くする。消したはずの記憶が蘇えった。

あの死に方はかつて共に戦った友達の死に方とほぼ同じだったからだ。

その場にへたれこみ左手で胸を押さえる

 

「うっぅぅぅ・・・銀・・・」

 

東郷はこれ以上ここにはいられないと思いバランスを崩しながらも神樹の結界内へと戻った。

泣き崩れる東郷の元に玉藻は不意に現れた。

 

「見てしまったようじゃな。奴の変わり果てた姿を」

 

玉藻は慰めることはせず現実に起こっていることの再確認をするよう説明を始めた。

 

「奴は元々人とバーテックスの入り混じった存在、化物が人間のフリをしていただけなのじゃよ。

そしてバーテックスの力を使えば当然そちら側にどんどん染まりいずれは戦う為だけの悪鬼へと成り果てるじゃろうな」

 

「・・・そうなったら次はわたし達の番?」

 

「む?・・・ふむそうなるじゃろうな。さてお主はどうやって奴らと戦う?」

 

「私は・・・

 

「戦いというものには主に五つの方法がおる

攻めるか守るか、出来なければ逃げるか、降る…それも許されなければ死あるのみじゃ」

 

死、という言葉に東郷は息を飲む。自分は死ぬことすら許されない身、そして残った選択肢すら選ぶ余地もない

攻めるか守ることを選べばいずれ園っちのよう何回も体をボロボロにして祀られるようになる

逃げれば友奈ちゃんやみんなはきっと自分の分まで頑張ってしまう

そんなこと私は耐えられない

 

だったら私達がこれ以上苦しまずに済む方法は・・・答えは一つしかない

 

 

東郷は決意を決め神樹の結界に銃弾で大穴を開けた。それは全てを終わらせる一発、死にかけの世界を死なす呪いのように彼女はバーテックスを茫然と見ていた

 

「ごめん銀、園っち。でも私はもうこれ以上失いたくないの。皆んなをもう苦しめない、こんな世界は私が終わらせる!」

 

東郷は更にもう一発神樹の結界に銃弾を撃ち込んだ。

 

「(やはり人類はその道を選ぶか。まぁ、だからこそ人間というものは面白い。さてさてここから花を結う未来に辿り着けるかは人のみぞ知る・・・か)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




吉田さんと謎の忍者Mの出番はこれ以降の予定は今のところありません
謎の忍者M一体何者なんだ


ストックが切れたので次回の投稿は一から書くことになります
次回投稿予定はハーンからツシマを守れたら


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勇者の宿命は私達で変える

前回投稿した時夏だったはずだ
夏の暑い中すだちうどんでサッパリさせてさあ書くぞとなったら既に暖房器具を出していた

何を言ってるのか分からないと思う。自分も分からない
何故こんなに執筆が長かったのか
書きたい事バンバン書いていたら一万と二千文字くらい書いていた
これでもまだ本来の予定の六割くらいの執筆量なのだから小説を書くというのは案外大変なのだ

今回は真面目な戦闘回の筈


という事で今回は四ヶ月ぶりのオルガ勇者という事で前回までのあらすじをサッパリやっていく



3分と100秒で大体分かる(?)オルガイツカは勇者である

「オルガイツカは勇者である」はお馴染み「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」と勇者であるシリーズの「結城友奈は勇者である」のクロス作品
内容は結城友奈は勇者であるの舞台である神世紀300年の舞台に鉄血キャラが入り込むという話である
とはいえオリジナル要素も多めで全く先が読めない(面白いとは言っていないし作者も先が読めない)

「三百年だ、君達にアグニカ・カイエルという厄祭戦の英雄の話をしよう」


人類が第二次世界大戦が終えて約70年・・・

ドカーーーーーン
ってなわけで西暦2015年の7月30日始まった神と人間の第三次世界大戦

勇者シリーズのことを語り出すと早口なっちゃうおじさん達が大好きな勇者エクスカ・・・ではなく
勇者であるシリーズの始まりである乃木若葉は勇者であるってやつだ


お前達人類醜くないか的な理由で天の神の使いであるバーテックスが人類を滅ぼうそうとした
そんなバーテックス相手にふざけんなって噛み付いたのは負け組代表の大社である

当初は大社が祀っている神樹様のなんかすげーパワーを宿す勇者たちの活躍で国を防衛できていたものの、基本的には防戦一方の戦い。
戦いは数だよ兄貴とか言ってた大社のお偉いさんの言う通り、数で勝るバーテックスが大勝利。
勇者7人のうち5人が戦死しバーテックスに降伏して根之堅州國とかいう敗戦国ができちまった
どっかで聞いた話だよな


それから七十年後、「バーテックス様凄い!オラに力を分けてくれ〜!」
とか言うイカれたカルト教団なんかが生まれてきちまった
人類の愚かさは進むよどこまでも!

大社改め大赦はコレを阻止するため鏑矢と呼ばれる対人版勇者で対応しようとする

でもこのお嬢様(弥勒蓮華)自分のこと大好きすぎてダメ!
この子(赤嶺友奈)は筋肉の話になると周りが見えなくなってダメ!
この巫女(桐生静)は静って名前なのに喧しすぎてダメ!
じゃあってんでお嬢様の付き人がなんとかしようとしたら敵の銃弾浴びて死んじまった、と思ったらバーテックスとして蘇りやがった!

オイオイこれ別の作品なんじゃないの!?


実はこの作品の過去で度々語られる「アグニカ・カイエル」は乃木若葉は勇者であるの本来の話には登場しないしガンダムなんてイカした兵器も存在しない
アグニカがバーテックスとの戦いで助けた赤ん坊がいたんだが実はそいつバーテックスと融合しようと人体実験したけど失敗作になっちまった赤ん坊だった
そしてお嬢様の付き人、そいつはその赤ん坊の孫だったんだなぁコレが!

過去の人助けをした善意が後に悲劇を生むことになるとは皮肉なもんだね
失敗作の孫だって見捨てられたら傷つくし腹も立つんだがね

結局半人半神となって大赦に首輪をつけられた青年は大赦のやりたくないけどやらなきゃいけないいわゆる汚れ仕事を押しつけられる黒い鳥って呼ばれる役職についた



それから数百年後の神世紀298年
この頃にはバーテックスの存在は大昔の御伽話とも思われて戦いのない幸せな時を過ごしていた・・・
ところがどっこい!?なんかよく分からない理由でバーテックスの進行は再開されちゃうんだなぁコレが!?
この時代の勇者達三人は力を合わせて撃退するも数百年ぶりの戦いだがら戦闘経験も少なくて予想外の事故だって起こる。

ホ〜ラ、死んじゃった

「何でだよ!?なんでこんなに苦しまなければならないんだよ!生まれなきゃ良かったんだ!バーテックスなんて最初から!」

「そうだよバーテックスなんて全て抹殺すればいいんだ!」

的な思想が大赦上層部に広がり諸刃の剣である満開を実装しちゃう
満開に秘められた秘密、それは使うたびに絶大な力を与えると共に体の一部を神樹様の供物として捧げる
オイオイこれ欠陥システムじゃないの!?
各方面大丈夫!?
ところがぎっちょん!
大赦の上層部はこのデメリットを伝えずメリットだけを伝えた結果、この子(乃木園子)を筆頭に、
この子(東郷美森)もこの子(犬吠埼風)もこの子(犬吠埼樹)もそしてこの子(結城友奈)も満開しちゃうんだなぁ!

その甲斐もあってバーテックスは12体倒して大円団、束の間の楽園を楽しむのであった



その後黒い鳥は立場を利用して勇者達に真実を話し大赦の腐敗を正そうと結託しようとするも事はそう単純ではなく振られ
ミカと風は恋人になっていい感じ
オルガ、妬む

ここでターニングポイント。実はバーテックスは全12体かと思われていたが全12種類の間違いであり全滅していない事を黒い鳥は知ってしまう
黒い鳥はこれ以上彼女達勇者を苦しめまいと方法を探す

探すと見つからない?なら作ればいいじゃん的なノリで彼は自分自身が勇者になればいいじゃんと神樹様から無理矢理力を強奪、ついでに供物も取り返しちゃう
でもでもそんなことしたら世界のバランスが崩れちゃって決して散らない鉄の華も少しずつ散っていく

しかもこの暴動を起こした黒い鳥、二年前戦死した勇者と同じ死に方を東郷の前でしちゃったもんだから友の死のトラウマが蘇ってさぁ大変!
そのトラウマで彼女は自暴自棄に陥り苦しむだけの命ならいらないと神樹様が作る結界壊しちゃった。
果たして鉄華団団長オルガイツカと仲間達は彼女を説得して世界を守れるのか!?見逃すなよ諸君



戦いの中にしか、私の存在する場所はない。

 

好きなように生き、好きなように死ぬ。それが私だ、肉体の有無ではない。

 

戦いはいい。私には、いや我々バーテックスにはそれが必要なんだ。

 

ただそう作られた本能の元にバーテックスは彼女の壊した壁を越え人類へと侵攻を開始する

圧倒的な戦力差を見せつけるバーテックス

だが人類は、鉄華団はこの程度の絶望に屈する気などこれっぽっちもなかった

 

「お前ら下がってろ!アイツらだけは許せねぇ!」

 

樹海化した中オルガ搭乗のカラミティがフロントスカートとふくらはぎ部分のスラスターをふかしながら着地した。

カラミティは大幅な改修が施されていた

鉄華団の赤い華をイメージした赤に塗り直され

二挺持ちの大型バズーカを肩に担ぎながら両肩には翼のようにある連装衝角砲のビーム砲、更にはシノのフラウロスを超える四門の長射程ビーム砲を備えておりその姿はまるでMSというよりMAと呼ぶにふさわしいものだった。

 

「な、何よあのバカでかいMS?」

 

「フッ、辿り着いたようだな。奴らの進行がこれほど早いとは想定外だったがこの程度の数は想定の範囲内だよ

さぁ見せてもらおうかオルガ・イツカ、君の新たなる力を!」

 

バーテックスの人類滅亡というくだらない計画など絶対に実現させない強い意志を見せるためオルガの機体「カラミティ・ジエンド」は行動を開始する

 

『システムスキャンモード。敵部隊を感知、想定通りのルートを進行中。

推定戦力比は7対3、情報より少ない楽勝です』

 

カラミティに搭載されたAI「エイト」が戦況を報告する。更にオルガの行動をサポートするよう自動でモードが変更される

 

『システム戦闘モード。全エネルギーチャージング完了、いつでも撃てます』

 

「よし景気良く前を向こうじゃねぇか!」

 

四門のビーム砲と連装衝角砲から発射された砲撃が辺りをなぎ払う。結界内を傷つけないギリギリの威力で発射されたビーム砲は無限とも思える星屑を消すには十分だった

 

「ミカァ!コイツはすげぇ!凄すぎて俺一人でどうにかなっちま・・・

 

オルガがミカに自慢げに叫んでいたその時だった。星屑の奥の方から機械仕掛けの鞭がカラミティへと伸びてきた。

油断していたオルガはそれに気付かず被弾・・・しなかった

オルガの後方から黒い機体が扱う鞭が飛んできて相手の鞭を縛り、更にもう一機の重装甲の機体が二門のビーム砲で鞭を消しとばした

 

「フッ、機体は凄くてもパイロットとしてまだまだ未熟だな」

 

援軍として参戦した二機の機体はガンダムフレームではないが顔はまさしくそのものだ。

黒い機体、「ダークハウンド」はキマリスよりやや小振りのランスを持った近接仕様の機体

重装甲「フルグランサ」はシールド兼ライフルを腕とし背面にはグラストロランチャーと呼ばれる、大型ミサイルとシグマシスキャノン、スラスターを内臓した複合装備が付いていた。

 

「ほう、彼らの協力まで得られるとは想定外だった」

 

「凄いなあれ。二機とも隙が見当たらない」

 

「ちょちょっと!?一体何がどうなっているのよ!?全然分からん説明しなさいよ!」

 

夏凜が食い気味にマクギリスに聞く。

 

「見ての通り頼もしい援軍のご到着だ。戦いは我々に任せ、君達は友の側へと向かうといい」

 

「な!?たった五機であんな大群を止めるつもり!?」

 

「五機ではないよ、我々の戦力は十機だ」

 

マクギリスの発言と共にバーテックスに攻撃する機影が二機現れた

 

グシオンリベイクフルシティが四丁のライフルを持ち考え無しに乱射し撃ち切ったら地面に落とす。すると後方にある神樹様からライフルが飛んできて更に乱射していく

フラウロスも負け時と二丁の専用マシンガンとショートバレルキャノンで応戦していく

 

「これだけ数が多いと目を瞑ってても当たるぜ!」

 

「まだライフルはあるんだよ!全部・・・持ってけぇぇぇ!!」

 

 

 

その頃大赦本部には三機の機体が待機していた。ガエリオの機体「キマリスヴィダール」に対バーテックス仕様のアインの機体「グレイズアインR」、そして三好春信の「デスティニー」だ

ガエリオは今か今かと出撃を待ちきれず二十代後半と見える女性オペレーターに声をかける

 

「出撃の手筈はどうなっている?」

 

「ゴメンゴメン、二人の新システムの調整に時間がかかっちゃってさ。でももう出せるよ」

 

「よし、準備はいいかアイン?」

 

「はっ!このグレイズアインRでクランク二尉の仇を俺はやります!」(必ずやり遂げます、クランク二尉見ていてください!」

 

「・・・」

 

やる気満々の二人と違い春信は恐怖で押しつぶされそうになっていた。恐れていたことが想像以上の規模で迫ってきたため、平静を装いきれなかった。

 

「大丈夫か?デスティニーのパイロット?」

 

「え?は、はい!お気遣いありがとうございます」

 

「不安なら、俺の後ろから援護してくれればいい。今は目の前の障害を叩くこと尽力しよう」

 

自分は一人ではない。ともに戦う仲間がいる。

その思いを胸に夏凜の分まで戦うと決めたじゃないか

 

「・・・戦いを止める、止めてみせる。絶対諦めない!三好春信、デスティニー行きます!」

 

バーテックス、何故貴方達は2年前も攻めてきた?まだ犠牲が足りないと言うんですか!?貴方達は!

 

春信の出撃と同じ頃、結界の外で赤き機体が動き出すのであった

 

 

 

 

その頃友奈達は東郷の元へと向かう途中だった。バーテックスの妨害はあったもののミカとダークハウンドの二機が露払いをして勇者の戦闘はなかった

 

「へぇ、阿頼耶識なしでそこまで動けるのか?」

 

「スーパーパイロットを舐めるなよ?」

 

フルグランサはオルガと共に遠くから戦場全体を見回して神樹に迫ってくる敵を迎撃していた。

 

「やるじゃねえか爺さん」

 

「私はまだまだ現役だ!まだ腕は衰えておらん」

 

その頃マクギリスは何か嫌な予感を感じ取っていた。先ほどのオルガへ向けられた鞭攻撃はバーテックスの物とは少し違うものだった。

ではあれは何だったのか?その正体が結界内へと入り込んできた。

 

「新たなモビルアーマーか。あれは確かアグニカの伝記第二巻九一ページより登場する・・・

 

「お花のモビルアーマー・・・

 

「っへ随分と大きな図体してるじゃねぇか」

 

「オルガ団長、奴は私に任せてもらおう。世界の扉を荒らす奴らには私が対処しよう」

 

自信満々にバエルを駆るマクギリスだったがその表情はすぐに崩れた。前線に向かう途中大型口径の二連装ビーム砲がきた。それ単体なら避けるのは容易かったが、避けた先にバエルを囲むように白いワームホールが三つ現れそこから小型攻撃端末がバエルを襲う。

 

一体一体は雑魚だが二本の剣だけで対処するのは困難だった。そしてバエルの左手の剣側に攻撃が集中され態勢を崩す。そのまま左腕を獣のように喰われそうになったその時だった

 

「穿てぇ!」

 

バエルの左腕ギリギリを掠めるように禁忌の兵器、ダインスレイブが攻撃端末を貫く。さらに周りにいた残りの敵もランス内蔵のマシンガンで撃破した

 

「どうしたマクギリス!?お前の信じるバエルの力はその程度のものだったのか!?」

 

「フ、言ってくれるな」

 

バエルは左腕に持っていたボロボロの剣を相手に投げつけ代わりにキマリスの刀を装備する。

 

「使わせてもらうぞ、ガエリオ!」

 

バエルは花の形をしたモビルアーマー、キマリスはワームホールを生み出した謎のモビルアーマーへ向かった

またダークハウンドもバエルに合流し、デスティニーとグレイズアインは大型口径のビーム砲を撃ってきたモビルアーマーに向かおうとする。

しかし倒しても倒しても壁の外から湧いてくるバーテックスに邪魔され、アインは苛立っていた。

 

 

 

「バーテックス・・・いいや罪深き化け物供が。駆逐してやる!」

 

アインの気合いに呼応する様に新システム「ロストプライティスク」が発動する。機体のエイハブリアクターから青白い粒子が飛び出てパイロットの目も呼応するように青く光る。

このシステムは神樹の眷属たる精霊をモビルスーツを介してパイロットと同化させるものであり、グレイズでもバーテックス限定だがガンダムフレームと同等の力で戦うことができるものだ。

 

「クランクさんはお前達と争うつもりなどなかった!ただ被災した子供達を助けようとしただけだ。なのにィ!」

 

グレイズアインが上空に飛びかかり追加コンテナの多連装ミサイルと機関銃で穴を作り敵の群れの中に飛び込む

 

「あろうことか貴様は!貴様らは!その救いの手を踏みにじるかのように再び進行し、子供達もろともクランクさんを冷たい墓標の下へと引き摺り込んだ」

 

群れの中を縦横無尽に駆け回り専用の大型アックス4本を両手と追加されたサブアーム二本を使って演武のように薙ぎ払う。

 

春信からはバーテックスの群れにしか見えなかった辺りが少しづつ晴れグレイズアインの姿が見え出した。春信の目にはアインは鬼神のように畏怖の対象に見えてしまった

 

「もはや貴様達は救えない、救う価値もない

その身にこびりついた罪は貴様達の存在もろとも祓う!」

 

バーテックスは散らばって包囲するのは難しいと判断し巨大な蛇のような姿へと融合し正面衝突してきた

 

「死んで贖えぇぇぇ!!」

 

グレイズアインは対抗するため両腕でバーテックスの攻撃を白刃取りするよう受け止めパイルバンカーを使い爆破、撃破する。景気付けと言わんばかりに残っていたミサイルポットを撃ち尽くす

そのミサイルには春信も危うく巻き込まれかけた。

 

「ハハハハハハ!やりましたよクランクさん!」

 

「・・・酷い、こんなのただの八つ当たりだ。それに・・・

 

春信はグレイズアインの関節部に目を向ける。パイロットと機体の限界を一時的に超えるこのシステムはどちらにも負荷が強くかかる。

機体もボロボロ、パイロットに至っては精神をかなり痛めているのか敵もいないにも関わらずアックスを振り続けている。

 

春信が気がかりなのはその奇行ぶりだ。あんな状態でまともに戦えるわけもない。アインの様子を見て春信はこのシステムを使うのに躊躇いを感じた、いや感じてしまった。

アインはその状態のまま本来の目的であるモビルアーマーの元へ進んだ。春信はこの戦場に恐れをなしつつもアインと共に進むのであった

 

 

 

戦況が膠着状態となりミカ達はついに神樹の結界の青白い樹木の壁上にいる東郷の元へと辿り着いた。

東郷はミカ達に背中を向けて、自分に攻撃してくるだけバーテックスを迎撃するだけであり、消極的な戦いぶりだ

そして東郷の隣には玉藻前がこちらを見て薄ら笑いを浮かべていた。

 

「東郷さん!」

 

「来て・・・しまったのね」

 

東郷が振り返り友奈の方へ向く。その目には戸惑いが見られた

 

「どうして・・・自分から進んで戦おうとするの?いくら戦っても終わらないというのに」

 

「東郷?あんた何言って・・・」

 

「風先輩達も見れば分かるでしょう?神樹様の結界の外はバーテックスで溢れている。奴らは復活して何度も何度も侵攻してくる

その度にみんな傷ついていくならこんな世界なんていらない」

 

東郷は更に神樹の結界に穴を開ける。

 

「東郷!アンタ何しでかしたか分かってんの!?」

 

夏凜が怒った形相で東郷に刃を向ける。しかし東郷はそれに臆さず叫ぶ

 

「分かってる。分かってるわ!だから世界はもう終わらせなきゃいけないの!

この世界に私達が幸せになれる未来はない!私達が戦えば戦う程満開を繰り返してボロボロになっていくだけ!

勇者という聞こえの良い生贄から逃れる術はコレしかないの!」

 

「東郷さん・・・」

 

友奈にはどうしていいか分からなかった。親友が自分の為を思って起こした行動を止めるべきなのかその思いを尊重するべきなのかと

しかしその考えは纏まりきらないまま中断された

ミカがバーテックスの迎撃をしていたが全てを処理しきれず乙女座型のバーテックスが弾丸を飛ばしてきた。

 

「みんな!さが・・・

 

風が合図を出そうとしたその時だった。

真紅のガンダムフレームが持っていた刀で弾丸を切り裂いた。

更に乙女座に追い討ちとして背負っていたハンマーを投げつけ態勢を崩し高速で接近して二丁のショットガンの弾を体の内部に叩き込む

その間は五秒もなかった。

 

「!・・・今の動き・・・まさか

 

友奈はそのガンダムの名も知らないし見たこともない。それでもその機体が味方である事はハッキリと分かった

そしてアレを使っている人物もだ

その予感は確信に変わった

あろうことかその機体は7機へ分身し辺りの敵を一掃した後次の標的を探して去っていったのであった

 

「この状況下でもまだ抗うなんて。みんな・・・どうして?」

 

「そんなの決まってるじゃない!私には守りたい場所が、勇者部を守る為に戦うの!

東郷!言い分は分かるけどそんな勝手な理屈で世界を滅ぼされてたまるもんですか!」

 

風は大剣を構えて東郷と対峙する。それに続いて樹も構える

 

「東郷先輩、勇者部はいつも誰かの為になる事をやってきたじゃないですか!こんなこと誰が望んだって言うんですか!」

 

「樹・・・」

 

「よく言ったわね、東郷!誰もこんな結果なんて求めちゃいない!

勇者部に、アンタの居場所に戻ってきなさい!」

 

夏凜も激を飛ばして説得する。しかし東郷にその思いは届かない。そして受け取ろうともしない

 

「もう無理よ。もう私は選んだのこの道を、なら進むしかないんです!」

 

「東郷さん!やめて!」

 

友奈の静止にすら東郷は言葉を蹴り銃撃を開始する。足が自由に動かすことが出来るようになった東郷は三人をおびき込むようにビットを使いつつ誘導した

そしておびきこんだ先には罠が待っていた。

 

「風!樹!とん・・・

 

いち早く気づいた夏凜は地面から飛んだがワンテンポ遅れた二人は罠にかかった

無数の白い獣の尾が二人の全身を縛り付ける

 

「何よコレ!?動けない?」

 

「風!」

 

ミカがその尾をバルバトスの爪で断ち切ろうとしたがその尾は二人と共に消え去った。

 

「!」

 

ミカはすかさず獲物を術者である玉藻に切り替え爪で貫かんとする

しかし玉藻は弄ぶようにゆらゆらと空を飛び東郷の近くから離し神樹の元へと誘導するのであった

 

 

 

いよいよ友奈は東郷は二人きりで相見えることとなった。

 

「東郷さん、本当にこれが東郷さんが望んだことなの!?」

 

「・・・えぇそうよ、これは私が選んだ道。いいのよ友奈ちゃん。全部終わらせてさっぱりさせましょう」

 

「違う!絶対に違う!東郷さんは、わたしの大好きだった東郷さんはこんなこと望んでない!」

 

「あ・・・」

 

そう、本当は分かっていたはずだ。現実はどうにもならなくてこんな妥協した道を選んでいたことに。

でも白線の書かれていない道を選ぶのはとても怖くて、そんな自分が悔しくて苦しくて悲しかった。

寂しかった

恋しかった

だから私は目の前のどうにもならない現実を見ずに本心でその名を叫び出した

 

「友奈ちゃん・・・私は・・・本当は・・・

 

私の目の前が曇る

涙が流れていたからだ

 

「みんなとこれからも一緒にいたいの!」

 

その一言を言った瞬間、私の中から重荷が落ちていく。身体が軽くなってバランスを崩す。

わたしを受け止めて抱きしめてくれたのは友奈ちゃんだった

 

「本当は分かっていたの、こんな事は誰も望んでないって。でも私は・・私は・・・

 

「良いんだよ、許してあげて。東郷さん自身を。東郷さんは間違ってたけどちゃんと間違いを認められた。

だから行こう、私達が望んだ未来を」

 

「うん、うん!」

 

今ならばわかる

たとえ苦しくても辛くても、私はまだ生きる事を選ぶだろう

みんなと離れたくない

私はここにいたい

友奈ちゃんの側に、ずっと・・・

 

その思いを叶える為に彼らは覚悟を問わなくとも戦い続ける

 

 

 

「花のモビルアーマー、ラフレシアか」

 

バエルと対峙するモビルアーマーは星座の名を持つバーテックスよりやや小型だがそれでもバエルの二倍近くの大きさである。赤い五枚羽から何十本とtロッドと呼ばれる触手のようなものがバエルに向かってくる

だが今のマクギリスにとってそれは烏合の衆と呼ぶべきものでありあっさりと切り捨てる

 

「烏合の衆が、このバエルを止めることはできんよ!」

 

飛んでくるロッドを切りつけつつ左右に高速移動しながら接近していくその様はまるで分身してるかのような動きで、捉えきれずにいた。

敵が無人のモビルアーマーではなく有人であるならバエルは畏怖であっただろう

だがラフレシアは思いもよらない攻撃を繰り出してきた。何もない場所から紫色の円盤が十数機程バエルの背後から近づいてきた。その円盤はバエルと同じくらいの大きさで宙を飛び備付けの回転刃が襲い掛かろうとしていた。

しかしその襲撃は思いもよらぬ攻撃で失敗に終わる

 

円盤がバエルへと向かう途中下から青い稲妻が飛び出て円盤の装甲を焼き切って撃破する

その攻撃主は中世の鎧騎士の様な白く、大型ランスを持ったモビルスーツですらないロボットだった。

その大型ランスから稲妻が飛び出たのかランス自体に稲妻が帯びておりやがてその稲妻が機体全身を覆い最初からいなかった様に消え去った

一秒にも満たない出来事だったので近くにいたマクギリスはその機体の存在にすら気づかなかった

 

「この機体ではこの辺りが限界ですか。あとは頼みましたよ五飛」

 

その頃バエルはラフレシアがだすビームの雨を掻い潜りあっさりと機体をバラバラバラにした。

 

「これこそがバエルの本当の力!私が世界を変える!」

 

モビルアーマーを撃破したバエルは更に快進撃を続けるのであった

 

 

 

それと同時刻、アインと春信は・・・

 

「牽制くらいは・・・」

 

デスティニーは移動砲台に見えるモビルアーマーにビームライフルを撃つ。しかしその攻撃は敵の電磁シールドによって弾かれてしまう。

 

「ビームが!効かない!?」

 

「射撃がダメならぁぁ!」

 

その事を見かねたアインは敵のミサイルを機関銃で迎撃しつつ

 

「懐にぃぃ!」

 

飛び込み主砲をアックスで切り飛ばしドリルキックで内部動力部を抉った。返り血ならぬ返りオイルがグレイズを濡らす。

既に機能停止寸前になったモビルアーマーに対し両腕に持った二本のアックスで八つ当たりをするかのように攻撃する

そこにかつてのアインの面影は感じられなかった

そして春信はあることに気付いた。グレイズの足が先程の攻撃で破損している事に、更にもっと危険な事もだ。

 

「離れてください!そいつ自爆する気です!」

 

しかし春信の声は今のアインには届かない。それでもアインを助けようと機体を近づける

 

「早く脱出を!ハッチを開けてください!」

 

「邪魔を・・・するなァァァァァ!!」

 

アインは味方であるはずの春信のデスティニーに機関銃の弾丸を浴びせようとする。間一髪の所で避けた矢先、モビルアーマーは自爆しグレイズ諸共粉々になる。

そして春信の見るメインカメラにはとんでもないものが飛んできた

 

「え・・・あ、・・・ああ・・・?」

 

それはさっきまで命をかけて戦っていたアインの焼死体の一部だ。

こんな風になりたくない

生きたい

逃げ出したい

 

しかしその思いは叶えられない。

地面の下から被弾を免れていたピスケス(魚座)バーテックスが襲いかかる。生きたいという人間が持つ純粋かつ強い願いが春信を戦いに駆り立ててしまう

 

「うわぁァァァァァ!!」

 

システムが起動しデスティニーの主兵装の剣「アロンタイド」が緑色の結晶に包まれ姿を変える。

翼を翻してピスケスの攻撃にカウンターを決め、剣を突き刺す。

 

「こんぬぉぉぉぉ!」

 

更に突き刺した剣が中心から二つに割れて内部から高火力の青いビーム砲を発射した。

しかしそれでは決定打には至らずピスケスは逃れようと地面に潜る

しかしそれを逃す程今の春信は甘くなかった

 

「戦いを終わらせる、その為に!」

 

アロンタイドを地面に突き刺した、ピスケスの体諸共に。

 

「私はここにいる!」

 

ビームのエネルギーが逃れる場所もなく地面が爆発を起こした。

その近くにはバーテックスの群れと共に夏凜もいた。

 

「・・・満開を使うしか・・ないか!」

 

夏凜はバーテックスの突撃を避けつつ左肩に付いている華を見る。既に満開寸前のところまで花弁がついていてあと一太刀入れれば満開してしまう。

それを恐れて夏凜は交戦を避けていたが、先程の爆発で態勢を崩し今まさに攻撃を受けようとしていた

だがその攻撃は届かせない。

 

「来い!」

 

デスティニーが腕を振るうと肩に付いている筈のビームブーメランがどこからともなく無数に出現し自らの手足を動かす様にバーテックスの大群を撃破する

 

「花凛!怪我はないか?」

 

「兄貴!?今のは?」

 

「これが俺の・・・っく

 

春信は力を使った代償なのか右目から出血する。精霊が戦いを欲している

その狂気じみた想いを抑えようと冷静であろうとする

 

「兄貴?」

 

「大丈夫だ。・・・これが私の望んだ道、望んだ力、未来を切り開く翼。夏凜は後方に下がって風さん達と合流しろ」

 

「風が?」

 

「今なら分かる、玉藻前は呪術で勇者達を戦わせないようにしている。大赦の意向に背く気だ。

私もこれ以上夏凜戦わせるわけにはいかない」

 

そう言うとデスティニーは羽を広げ更に前方へと飛んでいった。多くを語らずとも夏凜には兄の現状が分かってしまった。

 

「兄貴・・・凄く無理してる」

 

 

 

 

 

場所は映り大赦本部、春信が駆るデスティニーの戦いはあまりにも異常事態で大赦本部でオペレーターを務めていた女性が静音に連絡した

 

「(デスティニーの予備兵装が緑色の結晶に包まれて勝手に動いてる!?そんな機能は搭載されてない、ちゃんと探しなさい!( *`ω´))」

 

静音は少し間を置き頭を抱えた。

 

(どういうことなの?いくらこの新システムが実験段階の急造品とはいえあんな物理法則を無視した現象はありえない。もしかして大赦にスパイか何か紛れこん・・・

 

静音が考え込んでいたその時だった。後ろから誰かが大きな布を巻かれ目の前が真っ暗になる。

その後二人の男が彼女を縛り動けなくなった

 

「(ちょっとちょっとどういうつもり!?だれなのあなたたち!?)」

 

「黙っていろ、あんな年端もいかぬ女どもを戦場に立たせる大赦は元々気に喰わなかった

奴らが戦いを拒否しておきながら戦場に立たせる大赦にもはや正義はない!」

 

「こういうのは趣味じゃないけど俺は俺のやり方であの子達の正義の味方になりにきたんだ」

 

声は十代半ばといった感じでただの大赦関係者ではない事を物語っていた。

 

「安心しろ命を奪う気はない。弱いやつと女を俺は殺さない」

 

その言葉を言い捨て二人は勇者システムの設定にハッキングを開始した

 

 

 

「っく、まさかここまで苦戦させられるとはな」

 

「EXA-DBを完全に制御している、あの頃より更に力が増しているな!」

 

黒い翼を持つモビルアーマーはキマリスとダークハウンド二機相手でも優勢を保っていた。

それでも二人はここを突破させないよう戦局を膠着状態にしていた。が、その拮抗した状態は一気に崩れ去った。

 

そう遠くない場所で大爆発が起きアインの反応が消える。その出来事はガエリオが隙を作るには十分すぎる出来事だった

 

「アイン!?」

 

その隙に敵が飽和のビーム射撃で視界が奪われる。視界が見えないままシド・スレイヴがキマリスの顔を攻撃して半壊させた

 

「まだだ!たかがメインカメラをやられただけだ!」

 

よく見えず避けるのが難しいのであれば弾けばいい。そう考えて右手にランス、左手に刀を持って振るおうとする

しかし刀をバエルに渡した事を忘れていたガエリオは被弾直前にそのことに気づいた。

 

「ガエリオォォォ!」

 

しかしその攻撃を阻止しにバエルは駆けつける。バエルは白い閃光が雷のように落ちるよう斬り下ろす。それを敵は読んでいたようにバエルの進行方向に尻尾のように装備されている大型ビーム砲が発射される

しかしその攻撃は当たる直前に同じビームによって相殺された

 

「今の攻撃にあの出力、本来のデスティニーか!?」

 

バエルは体制を立て直しキマリスの横へと着く。デスティニーも続くように横並びになった。

ガエリオはその姿を見て春信に恐る恐る聞く

 

「お前か、アインは・・・

 

「・・・もういません」

 

春信の無情な一言にガエリオは拳を強く握った。歯を噛み締めやるせない思いに囚われそうになる

 

「でも、まだ私はここにいます。生きているんです。だから戦います。

人として戦士として!」

 

「お前は・・・ならば必ず生き残れ」

 

「はい!」

 

そうだ、お前は死なせない。俺のようにはなるな

家族を悲しませるな

 

命、生きる場所、友人、誇り

奴らはそれらを奪ってくる

ただ奪われないために、俺達は多くのものを敵から奪い続ける

そんな日々は終わられなければならない。

俺達の手で終わらせる

俺がここにいるのが間違いではなかった証の為に!

 

「気をつけろマクギリス。あのモビルアーマーは普通じゃない。厄災戦の中でも一二を争う強さだ」

 

「だろうな、お前が二人がかりここまで苦戦するとは」

 

「だが、俺達四人ならやれる、俺に考えがある。時間を稼いでもらうぞ」

 

マクギリスは少し黙りこくって考えた。そしてガエリオの考えを読み解いた

 

「なるほど、確かにあれならば奴を倒すことができるだろう。いいだろう引き受けよう」

 

四機はフォーメーションを組み前衛にバエル、デスティニー、ダークハウンド、キマリスは距離を置いて下り地面へと足を着ける。

ガエリオは背中の盾に仕込んであるダインスレイヴを確認した

 

「チャンスは一度きりか、だがそれでこの戦いを終わらせる。

失った全ての者の為に!」

 

「では我々も共に突き進もうか」

 

「フッ、海賊流のやり方で奴の攻撃を全て叩き潰すか」

 

「行きましょう皆さん、私達の未来の為に。

勇者の宿命は、・・・私達で変える!」

 

「先行する!遅れをとるなよ!」

 

「仕掛けるか」

 

ダークハウンドは左からバエルは右から攻めかかる。マシンガンで牽制しつつレールガンも放ち敵の目を釘付けにする

そこから春信は自身に起きた超常現象を完全に理解したのか両腕を開くと背中に装備されている大型ビーム砲が左腕に、そして右腕にはそれと同じシルエットの白い結晶体が現れては割れる

割れた結晶から現れたのはもう一つ同じ物だ

 

「今の私なら、こういう戦い方もできる」

 

大振りのビーム砲では中々狙いをつけるのは難しい。だが狙いは当てる事ではなく逃げ道を塞ぐ事だ。二機の機体に2門のビーム砲に上下左右に防がれれば流石のモビルアーマーも防御に徹した。だが敵も黙ってやられるわけでもなくデスティニーの後方から白いワームホールを出しスレイヴに攻撃させる。

 

「邪魔」

 

しかしこの攻撃は強襲したミカが左腕の砲に右腕の超大型メイス、尻尾の三つを巧みに使い迎撃した

ミカの目には映るモビルアーマーは鳥ではなく天使に見えた。何もかもを焼き尽くす死を告げる殺戮の天使のようだった

こんなものばかりを生身で戦わせようとする大赦に正直ミカは前前からイライラしていた。

 

「しつこいな。いい加減消えてくれないかな」

 

ミカは苛立ちながら他のメンツの動きから何か策があると見て辺りを見回す。すると最初に気になったのは地上でランスを構えていたキマリスだ

 

「あの機体、たしかガリガリの?」

 

ミカが呟き終わると同時にキマリスから蒸気が溢れる。エイハブリアクターに直結した圧縮回路と冷却回路が稼働していた。

そこからキマリスは本来一本で十分なダインスレイヴを二つの盾で2本取り付けた

その姿勢は大型機銃を操作する戦士のようだ

 

「スティングシステム起動、・・・今だ!」

 

キマリスのランスはダインスレイヴの運動エネルギーと共に螺旋を描き発射されモビルアーマーに直撃する。その螺旋回転は止まらず機体を中心から抉る・・・はずだった。

 

「失敗した・・・俺が?」

 

カメラの不調による僅かなズレ、それが中心からズレて当たった原因だった。羽の一部をむしり取るようにランスは壁の外へと消えた

当たれば一撃必殺の一撃を成功できなかったガエリオは意気消沈する

しかし敵にダメージを与え、機動力を奪った事に違いはない。そこに春信が切り込む

 

「まだだ!」

 

アロンタイドを上から大振りする。敵も必死に抵抗しアロンタイドは折れる

 

「それでも!」

 

と言い続けてゼロ距離からデスティニーの奥の手である「パルマフィオキーナ」が両手から潰すように発射される。

 

「これで最後だあぁぁぁ!」

 

青白い光がモビルアーマーを包む。至近距離から戦艦をも一撃で撃破する攻撃を二発食らえば流石のモビルアーマーも装甲の再生が追いつかずに消滅した。

だがその被害はデスティニー側も大きく両腕が肘から先が無くなり機体のあらゆる部分にモビルアーマーの残骸らしきものが刺さっている

幸いな事にコックピット周りは無事だったが、度重なる力の使用と疲労で春信は気絶した

落下するデスティニーをバエルとダークハウンドで拾いキマリスと合流した

 

「気絶している・・・だけか?」

 

「ああ、彼の活躍は素晴らしいものだった。まるでアグニカ・カイエルの伝承の一場面のようだったな」

 

マクギリスは春信の様子を確認した後空を飛び敵の様子を確認する。近くには東郷と友奈の姿も見えた。

 

「見ろガエリオ!俺達の圧倒的な活躍に奴らは尻尾を巻いて引いていく!俺達が力を示した事で俺の正しさはここに証明されたのだ!」

 

マクギリスは高笑いをする。前代未聞の危機を仲間達と共に防いたこの戦いはマクギリスにとってアグニカらしい英雄となれた何よりの証だ

 

「君達も見たか!?我々はここに勝利したのだ

皆!バエルの元に集・・・

 

しかしその勝利宣言は早すぎだ

 

君は知るだろう。

本当の悲劇は、・・・によって生まれるのではないことを

運命に抗うことで見出された希望

それを簡単に打ち砕かれた時、私達の瞳に映ったのは絶望という名の巨人だった

 

赤と白が入り混じりモビルアーマーとバーテックスが融合したその者は近くを通り過ぎただけでモビルスーツの動きを殺した。

その機体から溢れ出る虹のようなものが触れた瞬間、阿頼耶識に繋がれたマクギリスとミカは意識を失いダークハウンドは動かなくなった。

 

巨人は一歩一歩少しづつ神樹様に近づいていく

 

機械殺しの神様の進行がここに始まった

 




自分で書いててツッコミどころ満載だから一応解説する

カラミティジエンドとは
ほぼほぼブラウカラミティです

「お前ら下がってろ!アイツらだけは許せねぇ!」
みんなよけろ おうじゃだけはゆるせないのパロディ

「システムスキャンモード。敵部隊を感知、想定通りのルートを進行中。
推定戦力比は7対3、情報より少ない楽勝です」
絶対に楽勝じゃない

女性のオペレーター
今作オリジナルキャラでもないただのモブ
一応六車瑠璃という名前で桐生静音の友人だが喋らないため原作の春信君よりマシ程度のモブである

グレイズアインR
対モビルアーマー用グレイズアイン
装備は今までの弱い自分とお別れした人のを参考にした

真紅のガンダム
鉄血のオルフェンズ 月鋼に出てくる主人公機であるアスタロトの厄祭戦モデルの機体
この世界では現存するガンダムの七機に含まれてはいないため壁の外にあった機体を拾った状況にある
なお分類上はバーテックス扱いである


ラフレシア
ガンダムf91のラスボス、理論上のスペックは高いが最高潮のマクギリスとバエルの敵ではなかった

円盤
ガンダムf91に出てくる無人兵器であり誰の良心も痛めることはない良い作戦に使用される

中世の鎧騎士のようなロボット
見た目は若いが中身はお爺ちゃんがパイロットらしい
アニメと原作で立ち位置がまるで違う
正式名称はタリスマン
何故何の伏線も無しに出てきたのかは私にも分からん。
何故消えたのかは神樹様が完全なる異物と感知したからである

五飛
とある組織の5番隊隊長、今回は1番と共に勇者システムに改良を加え始めた
ちなみに二人とも異物扱いの為戦ったらまず消える


移動砲台型のモビルアーマー
その正体はデストロイガンダム、今回は本編通り噛ませである

二つに割れたアロンタイドのビーム砲
あ、これデスティニーガンダムじゃないですね。ガンダムじゃなくてファフナーの武器ですね 今回の話で春信君はゆゆゆのキャラなのか怪しくなってきた

EXA-DB
軍事技術、戦術関連データが保管されたデータバンクで、そこに収められている技術力の高さ故に「呪われた秘宝」と称されている。

羽を持つモビルアーマー
前述の秘宝を守る機体、ガンダムAGEのラスボス機で出ているのは小説版の方なのでかなり強さを盛りました
装甲の超速再生とかはオリジナルですがワームホール出してくるのは原作通りです

スティングシステム
本来キマリストルーパーに搭載されたマルチスロットアクセラレーターと呼ばれる謎の装置の名称、今作ではドリルランスそのものを発射する装置として使った
なお公式設定ではない

機械殺しの神様
とにかくヤベー奴、人が操縦するモビルスーツが対抗できる相手ではない

次回投稿予定は結城友奈は勇者である第三期、大満開の賞が放送されるよりは前


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We"ll take darkness into brightness yeah

まさか五ヶ月も更新していなかったとは想定外だった
これも最近アニメが面白いって奴の仕業なんだ

そしてゆゆゆいでは刀使の巫女コラボ、外伝では神世紀168年ごろの巫女かつ敵登場ともう二期への設定と構想が滅茶苦茶になってしまった為、また構想考えるのにも時間かかりそうです


戦いを終わらせる為に力を得た

 

戦うための力、神力の力、ガンダムと呼ばれる力の象徴。

 

力には正義も悪もない。故にバーテックスの存在そのものは悪ではない。だが人類から見れば自分達の命を脅かす悪と映る。

もしも人類の味方となりバーテックスを倒すバーテックスが現れたのなら、それは果たしてバーテックスと呼ぶべき存在なのか?

 

人もバーテックスも戦うための意思があるのであればいずれは我が身・・・

けど人は戦いが良いというバーテックスのようにあってはならない

だからこそ戦うことは混ざり者である俺に相応しい

 

俺は誰も戦わなくてもいい世界が欲しかった

自分はどこまでも闇に堕ちてもいい

それが悪いことなど思わない、思いたくはない

そのためなら俺はもっと強くなってもっと彼女達を笑顔にして見せる

・・・彼女達の名前?覚えてないな。

 

 

 

「風先輩!」

 

巨人が樹海内に入って数分後、友奈は東郷と共に神樹様の近くへと向かった。その途中に巨人を追い越し数キロ離れた場所で勇者5人は合流した。

 

「友奈に・・・東郷。戻ってきてくれたのね?」

 

「・・・戦えるかどうかはまだ分かりません。でも私はもう逃げたりなんかするつもりはありません。この世界を、友奈ちゃん達との世界を守りたい。それが私のたった一つの望みだって気付かせてくれたんです。私の親友が」

 

「そっか。ならもう東郷の事は心配いらないわね。問題は・・・

 

風は見たくない物を見るように敵の姿を見る。バーテックスはもう一体しか攻めてきていない。その一体は自分達の100倍近い大きさをした巨人であり今までの自分の常識が通用しない相手だった

 

虹の膜のようなバリアで近づくことすら許されず触れた機体は動かなくなる。更に阿頼耶識付きのミカとマクギリスは機体と繋がっていた反動か意識すらもない状態だ

合流するまでの間に残った三機のガンダムとフルグランサが一斉射撃をしてみたものの傷一つつくことはなかった。

 

ただ唯一の弱点は足が非常に遅く敵が神樹様に辿り着くまでの時間はおよそ1時間。

それを見て玉藻は後方にいながら苛立ちの表情を浮かべていた

 

「あんなものを作って喜ぶか、バーテックスめ。つくづく奴以外とはウマが合いそうにない。

・・・さてどう出る?勇者達よ?」

 

 

 

 

「あの野郎どうなってやがる!?こっちの攻撃が全く効いてねぇぞ!」

 

「スーパーギャラクシーキャノンが効かないなんてそんなのアリかよ!?」

 

シノが放った虎の子のスーパーギャラクシーキャノンですらあのバリアを破る事はできず一同は打つ手に欠けていた。

 

「諦めるなまだ戦いは終わっていない!」

 

そんななかでも老兵は諦めることをしなかった。ミサイルとグラストロランチャーで一点を集中放火した結果バリアに一部ではあるが割れが見られた。

 

だがその割れは一瞬。数十年戦ってきた熟練の戦士がやっと気付く程度の時間しかなかった。

すぐ様貼り直されたが破れる事に気づいたことで彼の士気は下がることはなかった

 

「いいか!悲しみから皆を守る為には戦うしかない!

それが、ガンダムに乗る者の使命だ!」

 

「爺さん・・・そうだよなまだ何も終わっちゃいねぇ。まだ道は終わらねぇ、そうだろう?

ミカァ!」

 

オルガは通信でミカを呼び出すがそれに答えはなかった。

 

「ミカ!?どうなってやがる。風!ミカの様子を見に行ってくれ!」

 

風はオルガの指示を聞き激戦区を避け少し遠回りしながらミカの元へと急いだ

 

「なんて大きさよ、私の100倍くらいはあるんじゃないの?攻撃も効いてないしあんなのどうやって・・・

 

と風が愚痴を溢していたその時だった。

自分の上を何かが通り過ぎた。白い閃光は稲妻の如き速さで空を飛び雷が落ちるように敵に斬りかかった。

 

「マクギリス・・・なのか?けどあんな動きは・・・

 

オルガはバエルの様子がおかしい事に気づいた。いくら阿頼耶識で繋がれているとはいえここまで急行してきた速度は異常だった。

羽から青い炎が出てミカがモビルアーマーと戦った時と同じ速度でバエルは剣を斬っていく。

敵も反撃として全身から細いビームを無数に出すがバエルは間一髪のところでかわしていく。

 

「どうなってやがる?あんな動きでパイロットが無事なわけがない。おい!返事をしろマクギリス!?」

 

オルガの問いにマクギリスは答えない。それもその筈、今のバエルには誰も乗っていないからだ。

 

 

 

数分前・・・

 

「・・・やはりダメか?プラズマバッテリーが壊れている。いや・・・分解されている?

 

ダークハウンドの動力源を調べてみた結果機械そのものがまるで組立前の状態になっていた。調べても調べても埒があかずふとバエルの方を見ると赤い機体が近くに来ていた。

 

その期待は気絶したマクギリスをコックピットから引き摺り下ろすように脱出させ、手で回収すると落ちないよう気をつけながらデスティニーとダークハウンドがいたポイントへと向かった。

そこには後方から合流したキマリスの姿もあった

 

「マクギリス・・・それにお前は・・・

 

パイロットである黒い鳥は姿を見せず声だけをガエリオに聞かせた。最もその意味など分かるはずもないが

 

「ショビリェカジョファミュ(彼を頼む)」

 

言葉は分からないが気絶したマクギリスをガエリオに任せるように彼の機体の手からキマリスの手に移す。

その後彼はデスティニーに目を向ける。

 

「ボエバリャジュジャションエフォエ?ゾグギグボドザ?・・・ギジャ、ミョデュンロゴジュカフォムジャショデュブリョファションデョシェショ」

(パイロットがいない?どういう事だ?・・・いやまずは奴をなんとかするのが先か)

 

黒い鳥は自分の機体を走らせる

かの者の機体はバーテックスとして認識されている。言い換えれば彼が今までやってきた行動は仲間割れとしか思われていないのである

つまり、この状況下で接近戦を仕掛けられる二機目の切り札になる

しかし彼の目論はそれ程容易く成功しなかった

 

「・・・・・・」

 

目標へと一直線に走りモビルアーマーの分厚い装甲を抉り取ろうとバリアへと突っ込む。彼の機体であればバーテックスから見れば味方と思わせることができる。その認識ならバリアは彼を阻まない。

しかし巨人のモビルアーマーは黒い鳥を踏みつけようとに攻撃を加えだした。動き自体はノロノロとした動きだったため普通に躱せたがバリアをすんなりとは通してくれなかった。

黒い鳥は舌打ちと共に距離を取る。それは自分のこの戦場における優位性を失った自分自身に対するストレスのせいだ。

 

 

 

 

打つ手に欠けるこの状況、打開するのは誰一人として予想しない者達だった。

 

「電話?こんな時に・・・」

 

友奈はいち早くかかってきた電話に出た。非通知扱いのものだったがこの状況下でかけてくるのは大赦の関係者だと思い友奈は迷わず電話に出る

しかしその声色は大きく言葉遣いも大赦の人のものとは思えなかった

 

「おい聞こえるか!女!」

 

友奈はその大きな声に驚いてる耳からスマホを少し遠ざける。その声は周りにいた東郷達にも響いていた。

 

「わわ、なに!?」

 

「若い男の声?友奈ちゃん変わって私が話すわ」

 

東郷は友奈を威圧するような声にも屈せず友奈の電話を受け取った。

 

「聞こえているのか!」

 

東郷は一つ深呼吸を置き男の気迫に負けないようハキハキと答えた。

 

「聞こえているわ、貴方は大赦の人間じゃないわね。一体何者?」

 

「時間がない。貴様らに戦う覚悟と正義はあるのか!?」

 

男は早口で東郷の質問も無視して自分の話を押し通す。その声には不安と期待の二重の感情が込められていた

 

「貴様らに覚悟と正義があるのならそれを見せてみろ!」

 

そう言い放ち男は電話を切る。それと同時に上空から二機の機体が現れる。

一機は20メートル程の大きさで白を基調とした装甲をついている人型の機体だった。体のあちこちに三つ巴のマークを付け、その顔は鬼を連想させるものだった。

その機体はバエルのように二刀の太刀を抜き後腰部にある大小六枚の翼を展開して巨人モビルアーマーへと一直線に飛んでいった。

 

もう一機は前者の機体より一回り小さい龍を連想させる機体だ。上半身はやや暗い緑に下半身は白を基調としている。両腕には普通の腕とは別にバルバトスルプスレクスのような爪の形をしている装備を付けていた。

その機体は爪を前面に出すと腕がヨーヨーの様に伸ばし神樹の根を掴んで前へと飛び、腕が縮んでは伸ばしては掴んでを繰り返し進んだ。

 

「なんだあの機体!?ガンダムフレーム・・・じゃあねぇみたいだが・・・

 

「馴れ合うつもりはない。好きにやらせてもらうぞ!」

 

龍の機体はその爪を伸ばし敵のバリアへと食い込ませる。その威力は強く、まるで卵にヒビを入れるかの様にバリアにヒビを入れる

 

「今だ!一!」

 

「これが!正義の味方の一撃だぁ!!」

 

鬼の機体は二刀をそのヒビを広げる様に切り開き空いた隙間に刀を投げ入れた。その一撃で敵のバリアが消滅した。

 

「良し更にもう一撃!」

 

と勢いづいた鬼の機体は背中についている尻尾のようなものからビームサーベルを取り出し本体へと斬りかかろうとする

 

「これが俺の正義だぁぁぁぁ!!」

 

これで決まる、その場にいる誰もがそう思っていた。しかしその二機は攻撃の途中で身体が砂の様に消えていった

 

「なっ!?時間・・・ぎ・・・れ

 

結局彼らは何者だったのか。それは神すらも知らぬ人物、だがそれを知っている人物は後にこう言った。

「光が消えた」と

 

 

 

 

「何が起きたか分からねぇがチャンスだ!昭弘!シノ!爺さん!一気に決めるぞ」

 

オルガの号令で全機が攻勢に転じる。しかしこちらの余力はなく射撃では手数こそあるが決め手は既になかった。

そうなると必然的に頼れるのはバエルと黒い鳥が乗る赤い機体だ。

 

二機が左右から仕掛けて行く。バエルは二刀を脚装甲と装甲の間に入れては切り裂き、赤い機体はハンマーで脚を叩き進行を止める。

しかし巨人はただやられる訳ではなく肩の装甲が変形するとそこからミサイルの雨が降りかかる。

 

「っ!回避だ!」

 

オルガのところにもそのミサイルは来ていた。距離があったのと数が少なかったため回避は容易かったが本命のバエル達のところに来たミサイルは多くバエルは避けたが赤い機体は避けきれず左脚に被弾した。バランスを崩し仰向けに倒れる。そこを巨人は機会を逃さず踏み潰す。

 

5倍近い巨人に踏み潰されれば普通はそのままペシャンコになる。だが踏み潰す直前に巨人の脚は無数の小さな穴が空き崩れ倒れる。

赤い機体が使っていたスレッジハンマーが異形の変化をし巨大なショットガンへと変貌していた。

その武器はバーテックスのように沢山の星屑が集まってできたものであり、もはやガンダムどころか機械の枠を外れた存在だ。

 

「ボセゼドゾレ(これでトドメ)」

 

追撃と言わんばかりに脚の付け根だったものにスレッジハンマーを無理やりぶち込みまたショットガンの弾を炸裂させる。

オルガ達もこの気に乗じ残り少ない弾を使いはたす。

バエルが巨人の首を掻っ切り吹き飛ばした辺りでそのモビルアーマーは完全に動きを停止した

それと同時にバエルはモビルアーマーを討伐したためか青い炎は消え可動停止した

 

 

 

 

 

「勝った・・・のか?ハァ・・・ハァ」

 

「ああ団長、俺たち鉄華団の勝利だ」

 

「マジかよ・・・俺らあんなバケモノによく勝て・・た」

 

オルガと昭弘、シノの三人は満身創痍で意識が遠のき阿頼耶識が外れる

 

「我々の勝利か。だがまだまだ長い休暇は・・・とれそうにない・・・か」

 

そう言いながらも御老体には応えたのかプツンと緊張の糸が切れ眠りに入った

 

だが、まだ敵は残っている

 

バーテックスはそこにいる

 

だが彼は敵じゃない

 

バーテックスがここから出ていけば樹海化は解けて本当の意味で闘いは終わるのだ

 

しかしその期待は予想もできずに裏切られる

 

「な、何!?苦しんでる?」

 

赤い機体の様子がおかしい。頭がガクガクと震えてその場に倒れ込む。そして服に炎が付いてどうにか消そうと暴れる様にもがきだした

尤もその炎とはバーテックスの星屑そのものだが

 

「嫌な予感がする。全員気引き締めなさい!」

 

夏凜が号令をかけると東郷は銃を機体に向け樹も真剣に見つめた。しかし友奈は一人突っ込んで行った。

 

「友奈ちゃん!?」

 

「友奈!?ったく仕方ないわね!」

 

「夏凜ちゃん?」

 

「助けたいんでしょ?アイツのこと」

 

追いかけてきた夏凜の問いに友奈は頷く。例え悪人と世界から罵られようとも目の前で苦しんでる者を目の前で見て見ぬふりをするなど友奈にはできなかった。

 

「アイツのこと一発殴り返して目覚まさせてやるんだから!」

 

 

 

「なんだ!?どうなっている!?何をした真夜!」

 

「何をしたか?それは自分が良くわかっている筈。お前はあの巨人を倒す為に力を欲した、その結果この機体はバーテックスと同化しその本能が人類を絶滅させようとしているのだ。」

 

「っ、止まれ!止まれよ!」

 

「何を恐れている?お前は戦うための力をあれほどにまで欲していただろう?私はそれを叶えただけだ。感謝はされてもそのような目で恨まれる筋合いはないぞ?」

 

万丈と真夜は問答を繰り返すが話は平行線を辿る

そんな時でも勇者達は近づいてくるのであった

 

「やめろ、やめろ・・・やめろぉぉぉぉ!!」

 

彼の静止の声は機体に届かず降りることすら機体は拒否する。強力な武器となり得たガンダムは今は忌まわしく彼を縛る牢獄と化した

 

「出せよ!出してくれよ!俺は・・・なんの・・・為に?」

 

もはや自分が何者なのかも定かではない。

ただバーテックスを倒すこと、それだけが自分がここにいる理由だから

それを為せず、出来ず、ただうずくまることはできても彼の目には涙はとっくに枯れ果てていた

 

「(折れた・・・か。だが、大赦を恨みながらも一番大赦らしい行動をしたお前の人生は、見ていて愉悦だったぞ。人間という物は愛すべき愚かな存在ということがよーく理解できたよ)」

 

 

 

 

先に友奈が飛び出していたにもかかわらず夏凜は先行する。狙いは当然コックピット回り、何故いきなり暴れ出したのかは夏凜には検討も付かないが機体から降ろせば脅威は一気に落ちる。

樹海の根を生かして飛び回り真横からハッチを斬り開こうとする

 

「取った!」

 

しかしその動きは読まれていた。それどころか勇者に明確に敵対し夏凜の後ろに回りハンマーを振り下ろしてきた。阿頼耶識の反応にはついていけずそのまま叩き潰されそうになる。

しかしその攻撃は意外な人物によって弾かれた

 

「よっと」

 

突如友奈の後方から数十メートルはあろう棒が現れる。よく見ればそれは槍でありその持ち主はまるでテニスラケットでボールを撃ち返すくらいの意気込みでハンマーを弾き、飛ばした。

得物を飛ばされた赤い機体だがすぐに後方に下がって距離をとり右手を突き出すと星屑が集まりライフルの形をした武器ができた。

そのライフルを放とうとしたが今度は上空から一気のMSが邪魔をした

 

「銃なんぞ使ってんじゃねぇ!」

 

バルバトスが戦線へと復帰し自分は腕部200ミリ方でライフルを破壊する。バルバトスは更に追撃としてテイルブレードとメイスでまるでダンスでも踊る様に攻撃し友奈達から距離を離す。

だがそれをしていたのはミカではなくバルバトスだ。

 

「ちょっとミカ!起きなさいよ!」

 

コックピットの中に揺られながらも入っていた風はミカの方を揺る。ミカの様子を見に行ったはいいが気絶していて、なんとか起こそうとしてみたら勝手にコックピットのハッチが閉じてバルバトスは暴れ出したのだ

 

「残念だったな。英雄になり損ねて」

 

 

 

「待たせたねゆーゆに、にぼっしー」

 

「園ちゃん!?」

 

ここにきて大赦は最強最大の戦力である乃木園子を投入した。その右手には先程まで如意棒の如く伸びていた槍は通常サイズに戻り左手には丈夫そうな袋を持っている。

 

園子の登場に驚きつつも笑顔を見せる東郷に樹も合流したのを見計らって園子が袋の中身を取り出すと中には五人分の勇者システムが入った端末があった

 

「じゃ〜ん、新しい勇者システムの端末なんよ〜」

 

「新しい・・・勇者システム?」

 

「そうなんよ〜」

 

数分前・・・

 

 

 

「しーちゃん!」

 

大赦本部の司令室にて縛られていた静音の元に来たのは彼女の幼馴染の六社瑠璃、通称シャルは勇者服を纏った乃木園子の二人だ

この頃には既に侵入者の姿はなくあるのは新しい勇者システムの端末のみだった

既にインストール作業が八割方完了しており後は時間を待つばかりだった

 

 

「ん、ありがとうねシャル」

 

「お安い御用だよ。しーちゃんのためなら例え火の中水の中ってね」

 

シャルは静音の縛られていた縄を解き三人は彼らが残した端末を確認する

 

「これは・・・凄い。現勇者システムの4倍以上のパワーがある」

 

「厄祭戦時代のモノに似てる。でもこれは違う、数世紀先の代物・・・」

 

シャルと静音の二人は端末の最終調整を行った。二人がシステム構築に夢中になってる間園子は別の方角を見ていた

 

「まるで手のひらの上で踊らされるよう、・・・ん〜でも今はとりあえずアレをやっつけないとね〜」

 

「園子様〜これを」

 

シャルは少し軽い態度で園子に完成した端末を渡す。

 

「ありがとうね〜」

 

「気休めかもしれませんけど園子様なら・・・いえみんなと一緒ならきっと勝てますよ」

 

園子は新しい勇者システムの端末のバラの花に触れる。すると新しい勇者としての姿を現す。

既存の勇者服をベースにし、まず目についたのは白菫色の大きな四枚の羽だ。

空中戦すら可能にする機能を追加し更に脚には青

、両腕には赤と銀の装甲が付けられた

友達の魂を受け継ぎ、彼女は戦場へと羽ばたいたのであった

 

 

 

新しい勇者システムには満開を必要としていない。何故なら満開する必要がないレベルで基礎能力が向上されているからである。

その言葉を園子から聞いた一同は安堵しそして笑顔を見せ、その後覚悟を決めた。

 

たとえ散華に怯えることはなくとも戦うということに対する恐れは変わらない

何よりも戦う必要がない筈の相手は辛い。

それでも私は止まらない

もう一度会ってちゃんと話をしたい

 

その為に今は戦う、勇者としてあの人を救い出す!

 

そして戦局は動く。しかし悪い方向に。

 

「馬鹿な!あり得ん!あり得んぞぉぉ!」

 

新しい勇者として変身した友奈達はミカの元へと向かう。しかしその途中金属の塊二つほどが飛んできた

当たるようなコースではなかったがそれを見た時勇者達は冷や汗をかいた

なんせそれはrナノラミネート粒子が乗った赤い機体の太刀が切り飛ばしたバルバトスのメイスと左腕だったからだ

 

東郷の射程圏内に入ったときにはバルバトスは止めを刺されようとしていた

 

 

 

 

ガァンと機体が揺れる。オルガの意識は薄れていて眠りに入っていた。しかし何かがぶつかり意識は無理矢理覚醒する

 

「なんだ・・・?」

 

オルガが薄めで確認するとそれはバルバトスの左腕だった

 

「!」

 

その時オルガの頭の中には嫌な想像しか浮かばなかった。ミカがやられたという最悪な想定をしたくはないが想像してしまった

 

「ミカ・・・」

 

「待ってるよみんな」

 

そうミカが言った気がした。近くにはいない筈なのに。

 

「ダメだよオルガは俺は、俺達はまだ止まれない」

 

「ミカ、お前・・・」

 

「オルガが止まるなら俺もそれを選ぶよ。でもオルガが進みづづけるなら、どこへだってついて行くよ」

 

そんな事を言いつつもミカは止まる事を許さないような怖さと期待の目で見てきた

 

「ったく、お前はどうして俺を・・・止まらせちゃくれねんだ」

 

ガタのきてる体を起こしコックピットから一度降りる

近くにミカの機体はない。届くはずもない。

それでもオルガは叫ばずにはいられなかった

 

「何やってんだミカァァァァァ」

 

「!」

 

赤い機体の太刀がコックピットに当たる直前、ミカの意識は覚醒した。

尻尾を使い、振られた刀をコックピットスレスレでいなして躱す。

コックピットの左半分が剥き出しになりながら、その後尻尾が戻る勢いを利用して頭突きをかます

 

「ミカ!?」

 

「いいから捕まってて!」

 

頭突きされた勢いで赤い機体の方もコックピットの装甲が剥がれ落ちた。

そのなかには赤い炎に包み込まれ、囚われるように彼はいた

その姿を見てミカは舌打ちする

 

「もう・・・意識が・・・」

 

その姿を確認すると炎は無常にも彼を完全に飲み込んだ。

 

「あ、ああ・・・」

 

「友奈ちゃん!?大丈夫?」

 

もう助けられない。その事実が勇者達に衝撃を与える。

だがその衝撃を掻き消すかのように機体とそして神樹が強烈な光を発する

 

「(神樹め、随分と大胆な事をする。だが壁が破壊されている今、それを天の神が易々と見過ごすとでも思ったか?)」

 

 

 

 

光が消えて再び視界が正常に戻った時目の前には六機の赤い機体が刀を持ってこちらの様子を伺っていた

 

「これが、本当に最後の敵・・・。みんなで勝とう。勝って私達の勇者部へと帰ろう!」

 

友奈の号令に一同が返事をする

最もミカは何か強烈な違和感を感じていた

 

「俺は・・・コイツを知っている?」

 

記憶が混濁している。先程まで死闘を繰り広げていた記憶、それと別に目の前にいる赤い機体とは今初めて会った記憶。

ミカの脳内には同時に存在しない筈の二種類の記憶が存在していた

 

「ミカ?大丈夫?」

 

「・・・ああ。風!剣貸して!」

 

「ええ!私の力アンタに預けるわ!」

 

風が念じると20メートル級の大剣がバルバトスの右手に握られる。

 

「うん。丁度いい」

 

ミカはバルバトスの両腕と右肩で大剣を支え一機へ迫っていった。

それに続いたのは東郷だった。右腕を横に振ると地面より46センチ三連装砲塔が現れる

 

「主砲全砲塔、徹甲弾装填!友奈ちゃんと夏凜ちゃんは敵の目を引き付けて!」

 

友奈と夏凜が東郷に頷き回避重視で敵に近づいていく。

二機に狙われようともパワーアップした今の友奈達にはかわすのは容易かった。

 

「目標補足、距離600、照準誤差修正、プラス二度。超弩級護国輝光砲、斉射!」

 

東郷の声で砲弾が斉射する。二機とも狙いを定めたが一機は盾代わりとしてもう一機を犠牲にして難を得た。だが

 

「これで二つ目」

 

斉射で煙舞う上でミカのバルバトスは上空より重い振り下ろしをかまし潰すがように敵を撃破した

 

 

その場と少し離れた場所で樹と夏凛は一機を相手にしていた

 

「動きを封じます!」

 

樹が上空に飛び糸の嵐を降り注がせる。まるで鉄糸の雨の様に降ったそれはモビルスーツサイズの動きを封じるには十分すぎた。

 

「ナイスよ樹!はぁぁぁぁぁ!」

 

動きを制限された敵機体を夏凛はパワーアップした速度で四肢を切っていく

 

「ラスト!粉微塵となりなさい!」

 

そして胸元に隠れていたバーテックスのコアを新しく手に入れた刀身を伸ばす能力で機体ごと三枚に下ろし大きく切り裂いた

 

残り三機という中園子は全滅の準備を完了していた。園子は後方へと下がり自分の能力の確認をしていた。

その力は持っていた槍を地面へと刺すと根に吸い込まれていく。その後背中側の空から無数の穴が飛び出てきた。

 

「いっくよ〜総攻撃いぃ!!」

 

園子が両腕を前に振るうと穴から槍が一、十、百、千と飛び出て空を覆い敵を全滅する。

その様は滅刃の矛、敵に反撃する余力も体制を立て直す暇も与えない。それで全て倒した・・・訳ではなかった。

 

「あれは・・・人?」

 

赤きモビルスーツを六機全部倒し矛の雨の中から飛び出てきたのは自分らと大きさはそれほど変わらない人型のバーテックスだった。しかしその姿はすぐに形を変えて星屑が集まり腕となり友奈へと一直線へ向かった

 

「友奈ちゃん!」

 

「大丈夫!」

 

その動きを見切ることはできた。だが避けずにカウンターを食らわせようとしたのは間違いだった。

 

バーテックスは友奈を喰うかの様に腕に食らい付いてきた。

 

「友奈ちゃん!?っ取れない!?」

 

東郷、夏凛、樹、それにバルバトスから降りてきた風はバーテックスを引き離そうと引っ張る。

だがバーテックスは千切れもせず友奈の右腕に張り付いた

 

「うぅぁぁぁ!!?」

 

友奈は悲鳴にもならない声をあげる

 

そしてそのまま樹海化は解除されるのであった

 




正直最後の方はとりあえず投稿しようとした為かなり急足で書きました
あと真夜のモデルはマイルドになったエボルトです
二期では彼(?)に大活躍してもらう予定です

余談ですが二期への布石の為次の更新は序盤の大幅加筆修正になると思います


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