また来て三角 (参号館)
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オリキャラ設定

どうも毎度お世話になっております。
三号館です。
設定と書いてありますが無駄な情報が多いです。
30話位読んでから見ることをお勧めします。


【挿絵表示】



オリキャラ

【真の目サクヤ】

2歳のある日前世を思い出して、白い扉の前に…なんてことはなく知恵熱が出た

前世より今世の記憶のが重くなりそう

馬鹿、適当、思ったより戦えるけど思ったより戦えない

強さは普通。

父似なせいで顔が広くて困っちゃう

どちらかと言うと数学頭なので暗号系が得意と言うか趣味

チャクラを使わない方向に頭を使い過ぎて戦い方が回りくどい

ゲームで効率重視しすぎて無意識に縛りとかやっちゃう系

 

【真の目サザミ】

サクヤの叔父、サキの弟

適当、頭いい、強い

めっちゃ女遊びが激しい。

作間にあこがれて忍びになった。

 

【真の目サキ】

サクヤの母

忍びではないが頭は良い

真の目一族の長を押し付けられた

作間にプロポーズ紛いに真の目に誘われ

プロポーズし返した。

 

【真の目作間】(千手作間)

サクヤの父

扉間3兄弟の三男

この話の最大の被害者で、最大の要因

カラクリが好きすぎて傀儡にまで手をだし一族総出で止められた過去がある(止まらなかった。)

父親や、千手一族にはポンコツの烙印圧されていたが暗殺術、結界、封印術に長けていて戦闘向きではなかっただけ

父似なせいで顔が効きすぎて困る

変化の術をすると2代目になる呪いを受けている。(どうにかなった。)

真面目な顔をすると二代目にそっくりだが、基本アホで、威厳の威の字もない人

二代目の顔で、大笑いしたり鼻の下伸ばしたり泣きべそかくものだから、暗部に突っ込まれた。

 

【千手隙間】

享年12歳

扉間3兄弟の二男

万華鏡を開眼して調子乗って敵に突っ込んだら死んだ人

白い炎を吐く。その炎で組手中に丁度通った初代の髪を燃やした経歴がある。

顔は母似だが、中味は父似

弟の作間を生んで死んだ母と、生まれたばかりの作間を、絶対守るとか誓ったせいで写輪眼開眼しちゃった人

天才と言われた

 

【千手狭間】

享年24歳

扉間3兄弟の長男

晩婚だったので、周りにとっては待望の末の第一子

顔は母と言うよりマダラ系

白い炎を吐く

初めてやった業火球の術が、見事柱間の手製の盆栽に突っ込んだ。

良く笑ってごまかすがプレッシャーヤバイ

弟たち(ポンコツと天才)のおかげで胃潰瘍まっしぐら

 

【千手ニヒト】(旧姓:うちは)

千手扉間の妻

千手から嫁くれ言われて行った

まさか扉間の嫁になるとは思ってなかった

白い炎を吐く

木の葉創設前の戦時中、柱間の樹海降誕の規模にキレて端から燃やしてった人

3男作間を生んで間もなく亡くなる

ニヒト亡きあと3兄弟のやんちゃぶりに扉間は改めてニヒトを尊敬した。

『やはりあいつ、只者では無かった。』

 

【紐縄ホドキ】

サクヤの師匠

そこそこ出世頭

ぽやっとしているが上忍になるほどには実力がある

暗号解読部隊所属

 

 

 

 

【管狐】

真の目によくいる管狐

曰く

燃やす・増える・化けるそう

その管狐によって何が得意かなどある

 

【ピン】

はんなりしている

攻撃専門

口から火を噴く

全力でやると少々の土遁は吹っ飛ばす程度の威力

一応京都弁(のつもり)

サクヤと同じぐらいにポンコツ

 

【ポン】

ガハガハしている

作戦隊長

化けるのが上手い

化けたものと同じ効力を発揮するので、本物と同じ威力の起爆符などに化けたりできる

方言は特に考えてないが時々なまる

サクヤより頭がいい事は確か。

 

【ドン】

モジモジしている

情報担当

カツの分体から派生した管狐

増えるのが得意

最初トンになる所だったところをポンに「いや、流石に狐にブタは無い」と止められた為ドンになった

基本敬語

恥ずかしがり屋でよくどもる

 

【カツ】

真の目棟梁の管狐

モジモジしている

増えるのが得意で大工の間ではインカム代わりに使われている

平行思考のが得意

 

 

 

【かっちゃん・山ちゃん・やっちゃん】

真の目オジサン衆

かっちゃんが一番若い

「流石真の目、変人だ。」と納得される代表衆

彼等のおかげで棟梁が忍者より強かろうが、蔵が魔改造されて居ようが、とんでもなく女にだらしが無かろうが、真の目の藪にべそかいた二代目が飛び込もうが大したお咎めがない

 

 

オリ設定

【千手扉間】

卑劣様。

どういう訳かうちはを嫁にもらった人。

重婚すると思いきや嫁は最後まで一人だった。

3男作間に『なんだ、写輪眼じゃないのか』と言った人。

別に特に意味はなかった。

とりま3男は戦闘中に敵の傀儡讃頌するのやめてくれ

 

【志村ダンゾウ】

大体この人が何かしら起こしている気がしなくもない

思ったより出てこない

サクヤの仇?

 

 




一応家系図
適当なので悪しからず

【挿絵表示】


良く見たら綱手とオビトが又従兄だ…
うわぁ…



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IF話

本編に全く関係なく、『もし○○だったら~』話です
基本適当に書いてあります。
文句は受け付けない。


・もしサクヤが里抜けしていなかったら

 

自来也が残した暗号を見て、綱手はすぐさまサクヤを呼び出した。

暗号と言えばまずサクヤ、それから暗号解読班。そう決まっていたからだ。

しかし、呼び出せど、呼び出せど、その姿は一向に火影室に現れず、痺れを切らした綱手がアカデミーの放送室をジャックしたが、それでも現れなかった。

 

サクヤは、実は先に自来也の訃報を蝦蟇から受け取っていた。

そして綱手が暗号の事で呼び出すことを視野に入れて、結界封印を使って蔵で久しぶりの休暇を謳歌していたのだ。

上忍待機所にも、図書室にも、演習所にも、家にも居ない訳である。

 

 

 

 

「サクヤはこの暗号をどう思う?」

 

サクヤが蔵から自宅のトイレに移動するところを発見し(残念ながら蔵にトイレは無い)

無理やり引っ張ってきて椅子に縛り付けたカカシは、戦功賞を火影からもらっていた。

いわゆる自来也直筆のサイン色紙である。

 

火影の言葉に、取りあえずと言うようにサクヤは「私の休暇はどこに行ったんですか。」と言葉を返す。

態度がふてぶてしいと、一発火影から拳が飛んで来る。

全身を使って、全力で避けた。

床に拳の形をした穴が開いた。

綱手のバカ力にドン引く蛙たちだったが、その意識はサクヤにすぐ持っていかれることとなる。

 

「…その暗号は手書きですか?」

 

「ああ、そうじゃが…?」

 

全力で逃げたサクヤが未だ床に椅子ごと転がっている。

拘束は結構キツかったらしい。

 

サクヤの修行を一時ながらも見ていたが、何故そんな事を聞くのか、フサカクには分からなかった。

実は、このカエルたち

サクヤの性格は理解できていても、サクヤの持つ情報量は把握していなかったため

何故サクヤがここに引きずられてきたのかも、呼び出されたのかも、分かっていなかった。

しかしその疑問に答えは無く、サクヤの思考が冴えるだけであった。

 

 

「とすると、『9.31.8 106.7 207.15』の内『9』『3』『7』『5』を注視してエロ仙人の手書きの書物を洗うのが一番ですね。最悪手がかりがなくても、ナルト君がいますし、比較的暗号自体は早く解けるでしょう。」

 

「サクヤちゃんは、この暗号が何か分かったんかいな?!」

 

フサカクは驚きに声を上げる。

サクヤは、それにはっきり答える。

 

「私は分かっていません。」

 

「なんじゃい!!」

 

ずてっと、器用に椅子の上で滑るフサカクに、台座の蛙は、腰がやられていないか心配していた。

 

「サクヤ、何故9.3.7.5に注視する必要がある?」

 

このままでは話が進まないと、カカシは声をかける。

 

「『手書き』と言う事は、癖字が混ざっている可能性があるからです。

癖字に見える数字は『2.3.5.7.8.9.』『己.ろ.ち.ク.日.タ』

まあ諸説ありますが、この文字感から言って2と8は、この字とは違う癖になるので除外して

この暗号の中でひらがな、カタカナに見える数字は『9.3.7.5』、『タ.ろ.ク.ち』です

弟子であるナルト君に見せることを前提に書いていた場合、その線がもっと濃くなりますが、書き遺したその場の様子では、判断が付かないんで、まだ何とも言えません。」

 

「分かった、すぐにナルトと書物の手配をしよう。」

 

「じゃあ大まかな方向は分かったようなので私はこれにて…」

 

いつの間にか拘束を抜けていたサクヤが、『う~トイレ、トイレ…』と窓に足をかけるが、火影が待ったをかけた。

 

「その後の事もある。サクヤにはこの暗号を解く任務に就いてもらう事にする。」

 

火影邸に嘘だろ―――!!と悲痛な声が響き渡った。

 

 

 

 

・もしオビトが里に帰っていたら

九尾襲撃が起きないので…

 

新連載!!

『さよならシカク』始まるよ☆

 

主人公が、珍妙な友人の子供を、冷静に観測するシカクさんに変わってる。

 

 

 

 

・もしサクヤが男だったら

白い箒「ゴリラ」

髭クマ「ゴリラ」

珍獣「うむ…。」

 

「っるせ!!」

 

 

二代目ファン①扉間小隊「「「「(作間の苦い思い出しか蘇らない。)」」」」

 

二代目ファン②大蛇丸様「冷静に考えて、2代目と同じ顔なのに

何故ああもバカに見えるのか不思議ね。

文字通り、面汚しだわ。」

 

 

 

・もしカカシと同い年だったら

普通にカカシと友人になって、いつの間にか卒業して、暗部にぶっこまれ、サザミにしごかれてる。

おかしいな…オビトを止めるはずだったのに、いつのまにか私が闇落ちフラグ立ててんぞ?

 

…おや ? ! サクヤの ようすが … !

 

デッテデッテデッテデッテー

 

おめでとう ! サクヤは 抜け忍に しんかした !

 



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真の目列伝

それじゃあ、山ちゃん言ったげて!!
そうか聞きたいか俺の武勇伝!!


其の1.

棟梁がめちゃくそ強い。

舐め腐った態度で道場破りに来た、上忍3人を瞬殺した。

その後、噂を聞き付けた当時の『木の葉の上忍』をことごとく下し、名誉一般市民の称号を火の国大名からもらった。

噂を聞き付けた上忍の中に、志村ダンゾウと猿飛ヒルゼン、うちはカガミの名前がある。

体術だけで戦場を横断し、岩の国から3日で木の葉に帰った。

 

 

其の2.

雨でウォータースライダーをしたいと考えたかっちゃん(3歳)が、図書館で見つけた雨乞いの踊りを踊ったら、一月ずっと雨で

木の葉の、川と言う川が氾濫し、火影から直々に雨乞いを禁止された。

 

しかし、当初の予定のウォータースライダーが、川の氾濫で出来ておらず、ごねたかっちゃんにもう一度雨乞いの踊りを踊られそうになり、火影が土下座した。

3代目の水遁の術で、ウォータースライダーをやってもらう事に成功する。

 

後に『火影に土下座させた男』『魔性の水遁使い使い』と言われる。

 

 

其の3.

サザミ七不思議

一、言葉を話すようになるのが遅く、周りを散々心配させたが、一番最初に話した言葉が「おねーさんきれーだね。」

 

二、女性と言う女性を口説いて何又もして、3年バレなかった。

 

三、里中にその噂が広がったら広がったで、今度はおおっぴらに手を出し始める。

 

四、姪にナンパを邪魔され、5歳児とマジな喧嘩をする。

 

五、姉に『いい加減にしなさい。』と怒られ本気でガチ凹みする。

実は結構なシスコン。

 

六、それでも懲りず色んな女性と関係を持ったのに、付き合った女性に恨まれることは無かった。

 

七、死してなお、付き合った人数があまりにも可笑しいので、葬式に誰も呼べない…と唯一の親族に心底呆れた目を向けられる。

 

 

其の4.

やっちゃん戦記

 

5歳で槍に目覚める。

12歳で棟梁に『教えることはもうない。』といわれ道場を追い出される。

孤児だし、行くあてもないので道場破りをする。

金が無いので賞金首狩っていたら、不死身を名乗るひじきと遭遇。

雰囲気でめちゃくそ強いのは分かっていたので、攻撃回数の割合で金額を分けようと交渉、成立。

10割持っていった。

 

その賞金で究極の槍を求め、山に籠って理想の武器を追い求めていた山ちゃんと出会う。

山ちゃんに究極の槍『ロンギヌスの槍』を作ってもらう。

 

究極の槍が完成して満足したので、棟梁に見せびらかしに行ったら、真っ二つに折られる。

教えることが無いだけで、タイマンなら棟梁の方がまだ強い事に気付く。

山ちゃんを連れて木の葉に戻ってくる。

現在も究極の槍を求めて、日夜山ちゃんと研究を続けている。

真の目から『きぇぇぇえええええ!!』『おんっりゃぁぁあああああ!!』等聞こえてきたら大体やっちゃんが棟梁に挑んでいる。

 

 

其の5.

作間

9歳の時、忍術の研究にのめり込みすぎて、寝食を忘れ

吐血して死の淵をさまよった。

 

父である2代目に『これ以上禁術を作るな。』と勧告される。

『チャクラを使わなきゃいんだろ…』と以前から気になっていたカラクリにのめり込む。

 

傀儡欲しさに、相対する砂の傀儡部隊の傀儡封印して全部持ち帰る。

戦利品である傀儡の保管用に、無駄に壮大な蔵を作る。

傀儡(戦利品)を巡ってダンゾウと水面下でバトる。

勝った。

 

妻子が好きすぎて忍び辞める。

3代目に泣き付かれて現場復帰したら、現世からあぼんした。

 

遺言に、『遺影はこれを使ってくれ』としか書かれてなかった。

妻は何の疑問もなく遺影を設置したら、葬式会場で、遺影を見上げた日向一族とうちは一族の『瞬身の術』が止まらない。

 

曰く

『クッ…俺にはっ…我慢が出来なかったっ…。』

『ウッ…あの馬鹿を…何故っ!! 止めなかったっ!! 』

『グッ…そうだったあいつはっ…昔からこういう奴だったじゃないか!!』

『なんでっ!!

2代目火影が!!

 

変顔してる写真を遺影にしたんだぁぁあああああ!!』

 

遺影が、白眼や写輪眼など、特殊な目を持つ人間の、特殊な網膜にしか反応しないインクで、2代目に変化した作間の渾身の変顔を印刷した写真だった。

どちらも真面目な一族で、場の雰囲気を大事にするからこそ、起きた悲劇である。

 

 

其の6.

山ちゃん

由緒正しき武家に生まれる。

算術に強く、御算用者として見初められ、城に仕える。

算術より、武器を作る方が好きだと気付き、城を抜ける。

山ちゃんが城を出て数か月で、城が財政破綻し、国が一つ消えた。

城の残り者に命を狙われ、山奥に隠れるように逃げた――

 

――りしなかった。

 

まずは金だと町で商売を初め、大当たりして一攫千金を手に入れる。

そのまま為替に手をだし更に金を増やす。

このころから他国から金に対する嗅覚を買われ、仕えないかと声がかかるが、軒並み蹴る。

逆恨みで滅茶苦茶命を狙われる。

 

仕方ないので山を買い、隠居紛いの孤城作戦を決行。

己自身は強くないので、カラクリを山中に仕掛ける。

カラクリの為に、特注の武器が必要になり、当初の望みである武器を作るようになる。

序に急所や毒に詳しくなる。

 

手練れの忍びを、ことごとく退ける武器を作ると、巷で有名になる。

山に落ちていた武器をくすねた商人が、目利きの聞く武士相手に一山儲ける。

国中に『凄い武器職人』と噂が広がる。

 

ある日、カラクリを全て躱して、山ちゃんの前に立ちはだかる人間が現れる。

開口一番『最強の槍を作ってくれ!!』とのたまったやっちゃんを気に入る。

 

数年かかって『ロンギヌスの槍』を作る。

やっちゃんが「師匠に見せびらかしてくる!!」と『ロンギヌスの槍』を木の葉に持っていく。

最強の槍だと思って作った『ロンギヌスの槍』が真っ二つに折られる。

『誰だそいつは!!』と、勇み足で木の葉に行ったら、マジでめちゃくちゃ強い棟梁にほれ込む。

『いつかこの棟梁を打ち倒すことが出来る武器が出来たら、それこそ最強の武器だ!!』と木の葉の真の目に入り浸り、いつの間にか真の目になっていた。

 

 

 

 

 

――その後、数項つづく。

 

 

 

 

 

―――

――

 

妙な巻物が転がっているな…と手を出したばかりに…

 

サクヤは後悔していた。

蔵には、満月の明るい光と、行燈の柔かい光しかない。

無駄に凝った荘厳な巻物は、月の光に照らされ、浮かびあがっていた。

 

サクヤは、一体誰がこんなバカみたいなこと書いたんだと、著者を探すが、名前は何処にもない。

字のくせは、数種類の者が混じっている所からみて、何人かで寄せ書いたのだろう…とあたりを付ける。

 

サクヤは「いや、そんな冷静に分析するなよ。」と己に突っ込みつつ

先程から横で爆笑している二匹を見やった。

 

 

「ひっひひひひひひひひっ」

 

「がはっがはがはがはっ!!」

 

 

笑いに溺れて死にそうだった。

大きなため息を吐いて落ち着こうとするが、心の重りが増えるばかりだ。

 

「こんな事…知りとう無かった…」

 

まるで親を殺した仇が、実の兄だったかのように憔悴したサクヤは、全て忘れてふて寝をする事にした。

 

 

 

 

巻物を仕舞い忘れたせいで、爆笑が止まらないピンポンの声が、数日木の葉に響く事になる。

 




フゥゥウ!! 山ちゃんカッコィイイ!!

しおりが500を越え、
お気に入りが1000を超えたので、減らない内にお祝っとく事にしました。

この小説と言ってもいいものか分からない何かが、誰かの面白いや、楽しいに刺さってくれてうれしいです。

もし、この小説が刺さらなかったら、己に刺さる小説を書いて
『しょうせつめっちゃたのしぃーーい!!』と、共に狂人になりましょう。

刺さっていても、書きましょう。
変人、狂人、変態程世の中を楽しく生きれる者はいません。
真の目(変人)の様にね。

これからもこの妙な小説は続きます。
この珍妙な乗り物(小説)が楽しいと思える内に、楽しみましょう。
楽しくなくなったら降りましょう。
振り落とされたら諦めましょう。

では、またどこかで。


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幼少編


 

ある日、私は所謂前世と言う物を思い出した。

まあまあ平凡で、まあまあ非凡な日常が続く前世ダイジェストを、一瞬のうちに頭に叩き込まれた私は、白い扉の前で真理と取引して、右手と左足を犠牲に弟を取り返す

なんて事も無く

知恵熱で数日寝込んだ。

 

 

 

 

当時2歳だった私『サクヤ』は、自分の苗字が真の目(マノメ)と言う孤児の集まりから始まった一族に属していて、父親はすっっっっげ見たことある顔だった。

 

そして意を決して窓の外を見た私は

そこから広がる緑多い街並み、そして()()()に絶望した

 

ナルトかよおおおおおおおおお!!

 

 

 

 

 

 

 

知恵熱で数日寝込んだ末、奇声を発して噎び泣き、吐くほど泣き、終いには脱水症状で入院した私は混雑する病院の中、見事、うちはミコトさんの隣のベットをゲットした。

 

いらねえええええええ

いや、ミコトさんが要らない訳ではないっ

決してそういう訳では決してない!!

なんたってあの綺麗な顔の集団、血液をぐつぐつ煮込んだ位ドロドロしてる愛でいっぱいなうちはの中、唯一の清涼剤ともいえる爽やか、癒し、美人

心なしか点滴に繋がれてげっそりしている自分のベッドまで爽やかフローラルが香ってくる、同じ病衣を着てるとは思えない

良い匂い…

って、ちがう

 

病院の小児科のベッドが今ノロだかインフルかでいっぱいらしく、そこに只の脱水の子供を入れると確実に感染するので、隔離の意味で産婦人科の空ベッドに押し込まれたのだ。

まさか、イタチ君の生まれたばっかりの御顔を、拝むこととなるとは思わなかった私は

呑気に、元気よく、思い切りよく、挨拶、自己紹介を済ませて顔を青くさせた。

 

急に顔色が悪くなった私にミコトさんが心底心配してくれたが大丈夫とおしきり、思いついたように赤ちゃんを見せてくれとたのんだら、普通にほいと渡され、めちゃくちゃ焦った。

あ、赤ちゃんをっ2歳児に、ほいと渡すなぁああああ!!と思いつつ

首が全然座って無い子供相手にドッキドキの私は

「かっかわいいですね~」

と裏返る声で何とか感想を絞り出した。

明日には退院だが私は生きて帰れるのだろうか?

でも、まあ、子供に罪はない。

可愛かった。

顔の頬齢線はまだなかった

 

そこそこ赤ちゃんを堪能したところで点滴を抜くため看護師さんがやってきて

2歳児に新生児を渡すな!!あんたも抱えるな!!

ミコトさん立ち上がらないで下さあああああ危ないいいい!!

と叫ばれたりと悶着あったが、何とかそこは抑え込み(またの名は土下座)点滴を抜いてもらい

翌日私は退院した

迎えに来た母に「あんた、また何かやらかしてないでしょうね」と疑いの目を向けられたが、そこは事前に口裏合わせしていたミコトさんと一芝居うち事なきを経た

 

 

 

 

―――――

――――

―――

 

「ねえ、あなた

私昨日小さな友達が出来たのよ」

 

私は、様子を見に来た夫にそう話しかけた。

昨日出来た小さな友人は、ハキハキと挨拶をし

まだピースが出来ないらしく2歳!!と元気よく指を3本立て、喋る姿はまさしく子供だった。

 

私の名前を聞いた瞬間、真っ青になったが、多分あれは『うちは』という名前に、少し怖い思いをしたのだろう、木の葉警備隊の顔はそろいもそろって怖い顔だから…ちょっと大きな声を出されただけで、大体の子供はひるんでしまう。

 

それでも、その名に恐れずにこにことお話をするその子は、きっと強いのだろう。

そして(うちは)に気を使える、やさしい、良い子だ。

未来を少し見た気がした

 

「そうか、受付の看護婦が色々言っていたがあれか」

 

昨日の騒動はもう病院中に広がってしまったらしい

あれは私も悪いと思うが、駆けつけて叫ぶ看護師もよくないだろう…

事のあらましを話すと、夫は呆れた顔をして文句が10個ぐらい出て来そうだったので

私は小さな友達の話を無理やりする。

こうすると、口下手な夫は黙って聞くしかなくなるのだ。

 

「その子、賢いのよ。お母さんに怒られるからって私と口裏合わせて、明日には噂が尾びれ背びれついて回ってるからって、大まかだけど穴が無いようシナリオ作って。ほんと、私唖然としちゃったわ。」

 

晩御飯のデザートで同室のもう一人のお母さんを懐柔して。

1ストーリー築く、その手腕はまるで先程の3本指を立てた2歳児とは思えなかった

 

「たどたどしい口でね、でも、はっきりしっかり、誰も傷つけない、やさしい方法でお母さん納得させちゃった。」

 

夫は静かに、私の話を聞いている。

どうせ私のお転婆でも思い出しているのだろう。

 

 

 

「その子、この赤ちゃん見てねイタチって呼んだの。」

 

「…」

 

「私、彼女のように、賢く、優しく、柔らかな人になってほしいわ。」

 

「そうか、イタチか、良い名だな」

 

そう言ってほほ笑んでくれる夫に私はこの人の妻であって良かったと思った。

 

 

 




(うろ覚えで)転生なるものを始めてみた
存分に容赦してくれ


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状況を整理したいと思う。

 

拙者、実というと相当な馬鹿でして

『ナルト』読んでないんすよ…

 

オタクの性として、腐女子として

前世、読むべき漫画トップ3にナルトが入る時代に、私は生きていたのだが

まあ、その、マイナー厨でして…

弟がナルトに『うおおおおおお!!』と熱狂している間、拙者ガンガン派で…

ご察しの通りハガレンにハマってますた。

 

 

いやっ、ホント申し訳ないっ

きっと、助けられたかもしれない、しょうもなき民よ

拙者には荷が重すぎるんだよちくしょう

諦めてくれこの野郎

 

と、いうことで

このプニプニな細腕で抱えられるものと言ったら木の葉の未来…

なんて重いものでなく、両親位、ちょっと広げて母さんの弟のおじさんぐらいだ

 

そして俺は一般人になる!!

 

忍びになる場合、ナルトくん降誕までにすることが多すぎる

無理だ!!

イタチとサスケがいくつ違いか忘れたが、弟が晩御飯の時間に見ていたアニナルの兄と弟の話具合からいって、近くて3年遠くて5年は違うだろうと勝手に予想。

内、イタチの誕生は確認できたので間を取って4年

4年の内に何が出来るかっちゅうと

 

 

何もできない。

 

 

馬鹿を舐めるな、出来るはずねえだろ。

はっきり言ってありゃ災害に近い、地震雷火事親父と変わりない規模だ。

故意に起こされたにしろ、そうでないにしろ、今さら何をしたって変わらん

何だっけ?うちはマダラがうちはオビトなんだからそこをごにょごにょすればいい?

まだ間に合う?、今だヤレ?

 

舐めんな

 

拙者まだ2歳!!

2と出そうとして3を出すほどのたどたどしさ!!そしてろれっろっ…ろ!れ!つ!!が回らない2歳児だぞ!!

会ってすぐぱーんだ!!

グサッでも、ザクッでもなく、パーンだ!!

今の私の戦闘力は、そこの窓から私に向かって威嚇しているカマキリさん以下だ!!

53万なんか夢のまた夢だ!!

そして忍術も知らない、過去に体術がめっちゃ強かった、なんていうチートがある訳でもなく、忍び一族でもない 現 在 !!(※真の目は大工一族です)

私はナルト降誕(死亡フラグ)までの短い余生を、一般人でこのナルト世界線のライフを、エンジョイすることにした。

 

ナルト降誕をもし生き延びられれば、次はうちは事件、木の葉崩し、輪廻眼の…まあ、あれは生き返るからいいか。

とまあダイジェスト的に困るのはこのぐらいだ

あと第3次忍界大戦だっけ?

あ、まって今第3次だから次は4次?まあ、数はどうでもいいか。

 

 

大体思いつく(思い出すともいう)限りではこのぐらいだ。

アニナル、それも『弟が見てるときだけ見てた分』と『友人各位の話』を統合するに心配そうなのはここらへん

話のネタとして、一応黒幕とか、成り行きは分かっているが、穴だらけで助けるとか無理である。

一応その穴だらけな記憶を広告の裏に、英単語と学生時のうっすらとした記憶をもとに、漢文混ぜて使って分かりづらくメモっておいたが…うーんこりゃ無理だ。と馬鹿なりに答えが出た。

(散らばった暗号モドキにご飯を呼びに来たおじさんは顔をひきつらせていた。字が汚くて済みません。まだ筆に慣れてないんです。うそ、前世から早筆で読めない字を書いてました。)

 

ので、以前からそれなりに気になってた食文化とか文明とかを知るため、又は自分の前世知識で一山稼ぐため、文字を早目にマスターして、図書館とかに向かいたいところだが、ここで一つ忘れていた問題が

 

そう、今さらですが父親の顔だ

 

死亡フラグ乱立のナルト世界線やミコトさんの事が衝撃過ぎてスポーンと飛んでいたが

自分の父親がね…すっごいね…

 

2代目にそっくりなんすよ

クローンかのように

 

え?何の2代目?

いやいや~解かってるでしょ~

火影の二代目だよ(ゲッソリ

なんか、名前言うと出て来そうだから言わないでおく…

 

真の目なんていう拙者の記憶の中の、ナルト世界線には存在しない一族(もしくはマイナー一族)になんでこんな親近感抱くキャラがいんだよ…

え?穢土転生?流石に目確認したわ

ついでにいたずらと名ばかりの2歳児の攻撃を、何故かあったおもちゃのクナイで仕掛けて血液確認。

全力で返り討ちにあった。

(悪戯には全力で答えるが真の目流!!とかいってこちょこちょされまくって私は死に絶えた)

真剣な顔は2代目そっくりなのだが、この人は良く笑うし、怒るし、泣くし、もう、なんていうか…2代目では絶対ない

あのむすっと顔の卑劣様が笑顔で子供に構っている姿を想像してくれ

ちょっと想像つかないけど、頑張ってくれ

そんな感じだ

 

ここで素直に「2代目そっくりですね…」なんて聞いたら絶対「なんでおめえ2代目知ってんだ?」と言われかねない(火影室にさえ行って無いのにどう確認するんだって話だ。火影岩はちょっと…論外)

ので写真なり何なり、物的証拠が現れない限り聞けないのだが

うちに来る大人、来る大人、皆して「相変わらずだな…」「年々そっくりになって来るよな」「いや、最初からこの顔だったわ。」「お前もう2代目名乗った方がいいんじゃね?」とか話してくので、どう切り込むか逆に悩む

 

が、チャンスが巡ってきた

 

何と3代目火影様が、うちに用事があって寄るらしい!!

お母さんが今朝言ってたので確かな情報だ!!

普通に「外で遊んでなさい。」と言われたが、わたしはその日父にべったり張り付き

ナメクジのように邪魔だと離されては、いつの間にかびっとりくっつく

なんてしていたらおやつの時間

ついに火影様は現れた。

おやつのドーナツに気を取られている間、話は終わってしまったらしい。

しかし、玄関で発見したのでよしとしよう

 

聞き耳を立てていると、なにやら今度アカデミーを改装するらしくそれの打ち合わせらしい会話が聞こえてきた。

今父に見つかるといい加減拳骨が降ってきそうなので廊下から壁を背に話を盗み聞く。

 

 

「作間、お主気付いておるじゃろ…」

 

「いやー可愛くて…ついつい」

 

「そういう所は似とらんな…」

 

気付かれていたらしい

まあ、一日中張り付いていたら、いくら忍びじゃなくても気付くわなと思い。

潔く私は3代目の前に姿を出した

 

「あんたが3代目って人?」

 

って質問したら殴られるだろうこと間違いなしなので大人しく廊下から顔をのぞかせる事にした。

 

「こっちにおいでサクヤ。3代目、彼女が僕の娘サクヤです。

そしてサクヤ、この方は3代目火影様だ、挨拶をなさい。」

 

私は微笑む父親の足の間に顔を突っ込み、そのまま

 

「真の目サクヤ2歳!!」

 

3本指を立てた

 

「ホッホッホ!!ホントお主にそっくりじゃ!!はっはー!!」

 

そう言って3代目は笑って私の頭を撫で瞳を覗きこむ。

 

「だが、お主も2代目とそっくりよの…まっこと不思議な縁じゃな。」

 

微笑む3代目、少し父の雰囲気が固くなる。

追い打ちをかける様に2代目?と聞く私はきっと悪魔だろう

 

「2代目火影様じゃよ、お主の祖父、おじいさんにあたる。」

 

父が、私を足の間から外し、肩に手を置いて3代目を止める

見上げたその顔は、正しく、私の知るところの、2代目火影『千手扉間』の顔だった。

 

「すみません、今日はもう…お引き取り下さい。」

 

「…ああ、すまんかったのう…。

今度は手土産でも持ってくるかの。」

 

それ以降話はお開きとなり、私は父に何も聞けなかった

背中に真の目の家紋をしょって廊下を歩く父は二代目(父親)を誇ってはいなかった。

 

  

 




所詮人間が書いているので…
話しの道筋は自分が決めるし
雰囲気も、会話も、自分で決めます。
自分の欲テンコ盛り丼です。
ハッキリ言って、三号館のスピードに追い付いて来られる者のみが読める話です。
人を選びます。
我こそは選ばれし者だと思う人だけが読んでくれて構いません。
自分はプロとか目指してない人なので、この感じから変わるなんて事は、お坊さんにでもなって、悟り開かない限り無理です。
(未だ小説の書き方分かって無いし、ハーメルンの使い方いまいち分かって無いし…)


ただ、読んでいただいた事は嬉しいのでなるべく感想は返そうと思ってます。
ですが、中には人間が入っているので厳しい言葉を書かれるとへこみます。
『また書いても厳しい言葉しか返ってこんのやろな…』と思うと書くのも嫌になります。
丁寧に話しかけられれば丁寧に返しますし
不躾に話しかけられれば『何やこいつ…』って不躾になります。
そこに留意して感想を書いていただけると嬉しいです。


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まあシリアスな感じで一応2代目孫だという事が確信判明したわけですが

詳しいほにゃほにゃは、またいずれ誰かの口から語られるだろう。

父がクローンであったとしても、穢土転生であったとしても。マジもんで孫であったとしても。

それが遅かれ早かれ、ナル誕で死ぬ私にゃ関係ねえか

と無理やり納得させた

 

そして、父が死んだ。

 

 

どうやら、父は忍びをしつつ大工をしていたらしい

やはりな、とは思った。

戦争中の今、一番忍びが活躍するときだろう

その時、あの顔(かんばせ)は役に立つ、たとえどんなに弱かろうとも、使え無かろうとも、囮には確実になる人材をミスミス逃すほど木の葉は容易くないという事だ

以前3代目にあったときはその話もあったのだろう。

任務内容は機密で、遺体は帰ってこなかった

 

父が死んだ話を聞いて私が最初に思った事が「うわーテンプレー」だったことは勘弁してほしい

今生の父親として慕ってはいたが、まだ3年と言う年月は前世を詰め込まれた私にはあまりに短く儚かった。

良く泣き、良く笑い、良く食べ、良く遊び

いい、父親であった。それだけは確かだ。

 

 

空の棺桶を前に真の目の者は誰一人泣かない

礼服は白

皆で笑い、歌い、踊り

お別れをした

 

 

 

真の目は孤児の集まりから始まった一族

誰もが真の目で、誰もが真の目の手を借りられる

そうやって増えた一族は養子や、孤児が多い

みんな拾って真の目にしちまえとは初代『真の目』の言だ

 

大工になる者もいれば忍者になる者も、商人になる者もいる

(シン)の目を持つものは『捨てる神』じゃない『拾う神』だ

戦乱の時代を生きてきた真の目は世界中に散らばって

今なお『真の目』を増やしている

そうやって増えた真の目はまた誰かの命を拾い

誰かに手を貸す

真の目に里も国も関係ない

 

私は父の死をもって、真の目の真意を受け継いだ

この姓を手放すときはないだろう

 

 

真の目の葬式はどんちゃん騒ぎのお祭り騒ぎだが、基本忍びになるやつは少ないので死亡率は少ない

孤児とはいえ、元は只の村人ACB、忍びの怖さと忍びの厳しさを知っている

なろうって奴はすくないが

まあいる。

 

今私の横でどんちゃん騒ぎから抜け出して、団子をもさもさ食べている叔父だ

 

 

叔父は母サキの弟で、名はサザミという

20代らしいが老け顔の髭面なので30代に見える

真の目で生まれたものは名前のどこかに『サ』をつけるらしい。

が、母たちは別に親が真の目だったわけではない。戦争孤児だったのを真の目の忍びに拾われたと以前言っていた。

それに、真の目にあやかってもし自分たちが死んでも真の目に拾われるようにと『さ行』の名前を付けるなんて習慣もあるところにゃあるので

兄妹でサキ、サザミと続くのは不思議ではないらしい。

 

 

で、この

私の横で団子をもさもさ食うだけ食って一口もくれない叔父は、真の目では珍しい忍びである

拾ってくれた真の目にあこがれて忍になったらしいが、ホント優しくない叔父で

私がミミズが張ったような文字を書いて悩んでいるのを見ては微妙な目で見て来るし

カメハメ派の構想を練っている時出来心で構えた部分を見られたし、からかわれるし

私がどんちゃんやってる真の目をしり目に縁側でこうしてお茶飲んで一人で和んでると

「ジジ臭いな」

と吹っかけてくる

 

「うるさいーさざみはあっちいって。だんごくれないさざみはあっちいってー」

 

ぐいぐいとサザミを圧すが流石忍、(いや、関係ないか)動かざること山の如し

2歳児そろそろ3歳の身では動かせない

 

「お前、解かってんのか?親父死んだんだぞ?」

 

すげー重い話を3歳児にぶっこんでくんな…と半ば感心しつつ

この人は私の泣き所を作ってくれているのだろう。と冷静に分析する自分がいた

 

「わかってる。もう会えないんでしょ?」

 

2歳児(前世持ち)ナメンナ

 

おませさんのように答える私はきっと生意気だろう

案の定デコピンされた

流石忍び、どちゃくそ痛い

 

「もーなに?さざみうざいよ。まるでだめなうざいおっさんだよ。」

 

そうやって文句ぶー垂れてると母が来て私にそろそろ寝る時間よと声をかける

いつもより早い時間だが大人の話し合いでもあるのだろう

二階から聞き耳たてるかとよいこらせっと立ちあがる。

 

「ジジくせぇ…」

 

サザミの言を無視して歯磨きをしに洗面所に向かえば真の目のおじ様たちが玄関でたばこを吸っているらしく赤い光がすりガラス越しに見えた。

 

 

「あーあ、あいつほんと良い奴だったな…」

「ああ、あの顔で笑われるとドッキリするけど、良い奴だったよな…」

 

どうやら父の話をしているらしい

洗面所からでも聞こえるのでそのまま玄関突っ切って洗面所に立つと窓の向こうから煙草の香りが漂ってくる

 

「そういや、あいつ長だったじゃん。次誰になんの?」

 

「順当に行きゃ、次はかっちゃん所だが、あそこは今年結婚したからな、荷が重いだろ。」

 

「真の目の長には一番弱い奴が付くってあるが、子供にゃ無理だしな…」

 

「ああ、あの書類量は無理じゃん…」

 

「時間がある、全部仕事を任せられる奴がなー、いたらいいが。」

 

「棟梁はまだ現役だし、バアさん達にゃ任せられねえしな…」

 

「中間層が今いないのがつれぇ…」

 

「また、作間んところに任せられればいいが。」

 

「奥さん子供いるしな…」

 

 

思ったよりディープ?な会話だった

どうやら真の目のおさ?ってのを父が担ってたらしいが

え?まって、父さん忍びやって大工やってその書類がやばいほどある長もやってたの?

ばけもんかよ…

まあ、家にいることがほとんどだったんで、この人の仕事はデスクワーク系なのかと思ってたがそういうことねと少し納得した

父親が過労で死んでいた場合、私は真の目を恨んだらいいのか、里を恨んだらいいのか分からんな。と遠く意識を飛ばしていたら母に呼ばれた

へいへいとやる気なく台所まで歩いて行く途中、先程までどんちゃんしていた輩がみんなかしこまって座っていた。

 

ああ、会議ね。

 

 

「これより…

第364回、真の目『長』押しつげふん、長決めこいこい大会を始める!!」

 

「おおおおおい!?」

 

思わず突っ込んでしまった。

「なんだ、サクヤ、起きてたのか。

サクヤも参加するか?流石にサクヤに長はさせられないけど一回だけならいいぞ?」

 

「ちっがああああああう!!」

 

近所に住んでるおっさんが何をいきなりと目をぱちくりさせている

誰も疑問に思ってないらしくこの長を花札のこいこいで決める大会は粛々と取り進められていた

「さー張った張った!!山さん今大穴ですよー!!」

 

賭けまではじめている

 

「何してんのサクヤ、歯磨き終ったの?」

 

「え、あ、うん。」

 

「じゃあこれ、明日の服ね、明日は長の就任式あるから、寝起きでぐずらないでよ?」

 

「うえ?えあ、うん」

 

母さんの落ち着き具合から言ってこれが通常なのだろう…

 

真の目一族の自堕落さと言うかズレと言うか、こいつら代表とか絶対なりたくない集まりなのかと納得した

 

 

その日こいこいの声は鳴りやまず

笑い声と、叫び声と、泣き声は朝まで続いた

 

 

「いやー白熱したわ―」

 

玄関から出ていくおじさん達の声は明るく、軽やかだ

昨日の様子を見るにあんなにしこたま酒を飲んで騒いでいたのは、飲ませて判断力を鈍らせる又は、これから起きる阿鼻叫喚を乗り切るブラフだったのだろう

 

朝食をとる叔父さんに最終的に誰がなったの?

と聞いたら「姉さん」と帰って来た

 

「母子家庭になるし、サザミの忍びの収入は有れどいつ死ぬか分からないし…心もとないでしょ?ってことで給金付けてくれたんだけど

私に勤まるかしらね~?」

 

と困った顔で母があらましを話す

 

「タダ働きよりましだろ。」

 

まあ確かに

とその場で母さんは一応納得したらしく今日の午後からの長就任式に参加して

そこでもまた、どんちゃんやってるおっさんたちに微妙な目を向けておいた

一応、父さんが死んでも金に困ることはなさそうだと

3歳の誕生日に、すこし安堵した。

 



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3歳になったので少し一人歩きが許された。

公園で遊んでらっしゃいと御見送りされるが公園にいる奴らの飯事に巻き込まれるのはちょっとご遠慮いただきたいので(精神年齢的に)

本当は最近習った文字をマスターするため家にある巻物と本を片っ端から読みたかったが

ちょっとひねって公園にある石碑巡りでもしようと思う

 

まあいつの時代も遺跡あるところは広く間が取ってあり

不思議と公園や広場となることが多いので母さんの心配する事とはならないだろう

それに石碑の文字を読むのはそこそこ楽しい

木の葉はまあまあそこそこ歴史が浅いのでまだまだそういう所は少ないがあのちょろちょろと伸びる文字になれるにはちょうど良かった

ビバ文字の虫!!とかやっていたらお迎えに来たサザミに

 

「お前…友達作れよ」

 

と胸に痛いお言葉を頂いた

うるせぇ!!俺にはまだ早いんだよ!!もうちょっと論理的思考が出来るようになってから出直せ!!

とは言わなかったが

 

「んー合わなかった。」

 

とだけ返しといた

適当に誤解してくれんだろ。(他力本願)

まあ適当に誤解して微妙な顔を返されたが。

 

まあそんな日々を続けていたらサザミに木の葉図書館なるものを教えてもらった

待ってた

これを 私は 待っていた

 

喜び勇み図書館に飛び込み私は朝から晩まで入り浸っていたらそこに勤める司書の忍者と友人になり「いまちょっと暗号にハマってんすよね~」なんて話しながら毒物全集で木の葉新聞の事件記事で明らかになった新種らしき毒物の確認していたら

 

「じゃあ、僕が教えようか?」

 

と話をくれた

師匠!!

と飛びつきその日から私の師匠は木の葉図書館司書、兼、暗号部班長、紐縄ホドキさんの弟子になった。

ホドキさんは忍びの暗号解読はもちろん各地に散らばっている遺跡研究の方にも手を伸ばしており、「任務で鉄の国付近でうちはの石碑とか発見したときはつい発狂してしまったよ~」

それで敵に見つかっちゃってね~

なんてちょっとやばそうな話をしてくれているが

一応この人も忍者やってんだな…と、ほわんほわんしてるホドキ師匠に手ほどきを受け、フィールドワークと称して今まで行った事の無い遺跡や、神社、仏閣、石碑を解説付きで共にめぐってくれたりと、中々のナルトライフを楽しめた。

 

 

母さんは長の仕事が板についてきたらしく、私が木の葉を網羅するころにはやっさん所とやまちゃんところが喧嘩してるから止めてくれなんて駈け込んで来たかっちゃんに引きずられていったり

近所のおばあの葬式の喪主をしたりと忙しそうに、楽しそうに笑っていた

 

サザミ叔父さんは相変わらず任務に出たり、私に構ったり、母さんを手伝ったりとのんびりしてる

 

そうやって4歳の頃には里外でも火の国の中だったらある程度の出歩きは許された

里外の遺跡は木の葉とは少し違って、封印が良くされていることが多かった

そこで役に立つのが封印術の知識!!

 

持ってない!!

 

いや、大工の真の目ナメンナ?

大工ぞ?我の一族大工ぞ?

封印術なんてあるわきゃねえだろ!!

 

だがわたしは知っている。

前世知識で知っている!!

この鳥居や石碑に良くついてるグルグル模様は渦巻一族らしいと!!

石碑を読み解き、暗号?なのか?まあ暗喩をマスターした私にはわかる!!

グルグルしてるのは大方渦巻一族の封印術だと!!

 

流石におおよそ多分きっとメイビー封印掛けた本人(赤き血潮のハバネロ)に解き方教えてとは言いにくいので私は自分の家の蔵を漁ることにした。

つい数年前だが、父がその手の封印術の巻物を扱っているのを見ていたのだ。

そして発見、今日は母さんは真の目の会合(またの名を飲み会)でいないし、サザミは任務で数日帰ってこないし部屋でゆっくりと巻物の写しを作ることができる

ニシシシシシ…

 

リビングで父が残した封印術のうつしを作っていたのだが

どうやらこれもなにか封印されているらしく、最初は口寄せなのかなともおもっていた私は、うつていく文字が物騒になってきたところで

グルグル系はやはり封印と再認識した

そして、これ全部写すとやばいものが召喚される可能性が出てきたことに気付き

私は筆を止めた

 

 

 

 

 

 

「どうした、もうそれ以上は写さないのカ?」

 

「怖気づくにはまだ早いで?」

 

 

 

 

 

 

自分の背後で何かが喋っていた

確か今日は誰も来ない、誰もいない日

集中しすぎて訪問に気付かなかったのか

いや、でも

 

「ほれほれ、さっさと写しなさいな」

「そうじゃそうじゃ、その知識の強欲さに負けてしまエ。楽になろうて。」

 

「「さあ、さあ、」」

 

「どっどなたでしょうっ」

 

ひゅっと息を吸って出た声はかすれ声で

しかしこの背後で私をそそのかす奴らには聞こえた

こいつらはこれをすべて写し終えればきっと封印されるが

その前に封印が解ける仕様になっている

姿は無く声だけが聞こえるのはその証拠だ

 

「そんなんそこに書いとるやろ?読めへんのか?詠んだろか?」

「そのちっぽけな脳みそで、よく見て声に出しんしゃい。読めるだろう?詠めるであろう?」

 

ああ、詠めた、読めた、ただこの名を私が呼んではならない

それは契約になってしまう

求まれるは臓の腑か、魂か、私は何も手に入れられず弄ばれる

母は家にいないし忍びじゃない、サザミは今は里外任務で数日は帰らない

 

「とうさん…」

 

次いで出た言葉は、この封印術を書いた、封印した、父だった

軽率だった、軽く物事を考えて、写しぐらいどうってことないだろうと高をくくっていた

忍びの父を、軽視していた

 

「助けて!!」

 

 

 

 

 

「良く言えました。」

 

その声と共にやってきたのは父でも母でもなく

サザミだった。

 

「たっく、蔵をあさるなって言ったろ。興味があるなら俺か母さんに許可取って、扱い方を知ってからなさい。」

 

そう言ってサザミは一瞬で写しを燃やし、床に散らばる巻物をしゅるしゅると片づけていく。

 

「さっきのは…」

 

「ああ、ピンポン?」

 

「ぴんぽん?」

インターホンの事か?と訝しく腰の抜けた私はその言葉を繰り返す

 

「あれ?お前知らなかったっけ?ピンとポン。俺の管狐」

 

そう言ってサザミは腰にぶら下げている丈筒の栓を抜いた

 

「はーい御呼ばれしたピンです~」

「ガハハハ!!わしゃポンじゃ!!怖かったろウ怖かったろウ!!」

 

「きっキツネ?」

 

きゅるきゅるとした音と共に

先程の物々しさは何だと言う程に煩い狐2匹が栓を尻尾に巻き付け私の周りをぐるぐるとまわる

 

「ああ、正確には管狐、真の目の使い魔?口寄せ?みたいなもんだ。真の目で忍びになるやつは大体持ってるし、大工の棟梁も持ってるぞ。」

 

曰く、増える、化ける、燃やす力を持っているらしい管狐

九尾とは比較にならない程よわっちい生き物らしいが生命力と繁殖力だけは無駄にあるので絶えることはないそうだ。

 

そうして、勝手に蔵をあさりあまつさえ巻物持ち出して封印解ける寸前だったところをピンとポンに灸を据えられた私は、その後大人しく母さんとサザミに怒られた

 

 

 

どうやら私にはいつもピンポンの分裂体、どちらかがついていたらしく

今まで3歳で公園に放り出されていた理由をやっと理解した

 

そりゃお守りついてりゃほいほい、家の外、況してや里外まで出しても如何にかなるわ

まあ、私が早々危ない事をする人間ではないのは分かっていたらしく、今回も巻物を写す、なんてことをしなければピンポンは表に出ることさえしなかったろう

 

サクヤは ピンとポンを てに いれた!!

レベルが 10 あがった!!

 

1でも3でもなく10な理由は察しの通りピンポンは口うるさくあれど優秀な忍びの口寄せ?だったと言うことだ

扱う方が馬鹿なので今のところおやつの偵察と、道案内、状況整理したい時のイマジナリーフレンドぐらいにしか使っていない。

 

ピンは垂れ目で、ポンは吊り目

ピンははんなりしてて、ポンはガハガハしてる

そしてピンは攻撃専門で少し馬鹿、ポンは罠を張る方専門で炎より頭の方が使える、だそうだ

普通反対だろ

とは言わなかった

ピンポンにはお世話になっているのでこの2匹がどれだけ強いのかよく知っているからだ

 

他にも管狐には種類があるらしいが、未だ棟梁の管狐にしか会った事はない

管狐はパートナーのチャクラを食べて生きるらしく、性格も違ってくるらしい。(棟梁の管狐は1匹で、モジモジしてた)

竹林に囲まれている真の目一族は、竹筒を使って主に管狐を収容している

竹筒は結構な頻度で替えるが吉だそうだ

以前任務で1か月変えずに使ったら家出をされたらしいサザミが言っていた

 

ワシらは増える

増えた姿は見せませんえ~

 

この管狐中々に使える。

 




何弁かは突っ込むな
強いてゆうなら気分だ


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5歳の冬、私はアカデミーに入学した

 

いや、待ってくれ

弁解させてくれ

一般人で貫き通すとか言っておきながら何アカデミー入ってんだよとか言いたいだろうけど待ってくれ

 

事の始まりはサザミの一言だったんだ

 

「お前封印術とか術に興味あるならアカデミー行ったら?あそこならお前の師匠程じゃないけど知識があるやついっぱいいるし、友達もできんだろ。」

 

多分私に未だ友人がいない所を心配してくれてる部分もあったのだろう

行儀見習い的な意味も含めてアカデミーに行く人もいるらしいからちょうどいいと母さんも納得した

その裏にはきっと『そのへんうろうろされるよりはマシか』とゆう思惑が見えなくもなかったが

そこそこ私の事を心配していたのだろう。

 

と、いうことでその善意と好意に甘えて

ちょっと入学する年齢には早いが5歳の冬、忍者アカデミーに入学した

変な時期に入学したせいで編入と言う形になり皆から遠巻きにされている私、サクヤは

 

 

暇である

 

いや、初っ端から忍術でもやんのかな~とか体術とか絶対痛いから無理だな~とか思ってたんですけど

普通に算数と国語から始まった…

うん。行儀見習い納得

 

この暇な時間を何に使うか

体術とゆう名の鬼ごっこの時間をどうするか

悩んだ末に我は飛び級することを決意した

 

一応、母や、サザミにご機嫌伺いして「あの~現状こうでして~全く持ってつまらないんですよ~アカデミー行った大義名分ナッシングなんですよ~」と冷や汗をかきながら説明した

 

「まあ、あんた昔から変な子だったしね~」

「流石作間さんの子供とゆうか…すっとんでるとゆうか…」

 

諸々頭を抱える二人だったが納得していただけた。

ただ、拙者馬鹿ゆえ所々分からない所もあるので、進級試験を全教科で設けて単位制の如く取って行くことに決まった

新任で私の担任になってしまった五日ミカン先生は頭を抱えていた

まあ、飛び級できるのは私の脳みそ的にここだけだろう

これ以上迷惑は掛からない事は確か。

だって今年戦争が終結したからだ

 

戦争が終結した今、うちはオビトは私にはどうする事も出来ないとこにいて、

次に就任する四代目が何年生きてるのか私は知らないが

多分今年か来年にはもう私の命は九尾襲撃によって消えるだろう

また、生き延びても楽に生きて行けるような世界はないだろう

なので今のうちに我儘しとこ、ということで単位ごとで飛び級しているわけである

 

 

 

―――

――

 

 

そんなこんなで、時にポンの手を借り、時にサザミに助けてもらい、私は知識を蓄えて

いざ、忍者が忍者忍者できる印を習う手筈となった

ここで一つ思い出してほしい

真の目は大工一族である。

 

私チャクラ練れるのか?

 

一応転生?だからこっちの人間仕様になってるのは確かなのだが、チャクラなんて今まで感じた事が無く、写輪眼や、白眼なんて特殊能力も持ってねえ

そして神様にも会ってなければ、チート能力もねえ、寧ろ馬鹿である

 

え?チャクラ?何それ?

状態である

一応、アニメのサクラの教えてあ げ る ♡ だったかのやつも、うろ覚えで覚えているが。どう練るのか事態分からないことに気付いた

 

丹がどうのとか中国(だったけ?)の語源となったチャクラもそこそこ触る程度にしか知らない私は困惑していた

 

「さー皆、印は覚えたなー、順番に先生と一緒にやって行くぞ~」

 

ミカン先生の声に我に返り

周りがキャッキャしている中私は取りあえず印をしっかり組むことから始めることとした

綾取りのような感じで印を結んだ私は精一杯心を籠めてミカン先生を思い浮かべた

 

「「「「「変化の術!!」」」」」

 

やはり技名は皆叫びたいらしい。

そこかしこから変化の術!!と声が上がった。

私は、視線が高くなって今どぎまぎしている。

 

「サクヤ!!」

 

ミカン先生の声が聞こえるが現在の姿がミカン先生の姿なのか、どうなっているか鏡が無い限り想像つかない

 

「出来たじゃないか!!」

 

わっと教室が湧くのを私はカチンコチンに固まったまま見るしかできなかった

どうやら成功したらしい

 

「見事な2代目様の変化だ!!流石お孫様だな!!そっくりだよ!!」

 

失敗だ

 

私はその後すぐさま変化の術を解き、ミカン先生をもっと鮮明に思いだし何度も何度もやり直したがどう頑張っても2代目又は父にしかならなかった

呪いかよ!!と私は叫び、その姿のまま教室を、アカデミーを飛び出し家に突撃し母さんに泣きつき心底驚かせた

玄関先から2代目がべそかきながら結構な速さで向かってくるのはさぞ怖かったろう

申し訳ない事をした

 

母曰く父さんも似たようなことやってたらしく

夕方近く帰って来たサザミは、母の膝で泣く2代目の姿にため息を吐いてべりっと私を母からはがした。

 

それからサザミと夜通し続けた猛特訓の末何とか呪いは解けたが

アカデミーからべそかきながら飛び出す2代目は、木の葉の住民にさぞ記憶に残ったろう。

 

 

うっなんか悪寒がする 

 



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最近日課のフィールドワークをしていると、ちらちらと黒髪の少年が現れるようになった。

どこの誰か存じませんが、あまりこうゆうジジ臭いことする奴には関わりたくないので(ブーメラン)見つけたら退避したり隠れたりしていたが、ひと月の攻防の末、今日ついに捕まってしまった

いや、師匠の言ってた訳が気になってだな…その、どうしても、もう一度原文そのまま読みたくてだな…

ぶつぶつとイマジナリーフレンド(ポン)と話してたら声をかけられた。

 

「僕を弟子にしてください!!」

 

「あ、拙者弟子は取らない主義なんで」

 

しつこかった

粘りに粘られた

私の師匠ともいえるホドキ師匠を紹介すると言っても聞かなかった。

格好を見るにうちはに間違いなさげなので、あまり関わりたくなかったのだ

名乗られると名乗らなければならない真の目の仕来り?があるので、

(どういう仕来りだよと無視したらかっちゃんに拳骨喰らったので律儀に守っているが、決して拳骨に負けたわけではない。決して。)

何とか名乗らせずに(名乗らずに)済んだ

しかしこの少年、マジしつこい

 

「わかった、」

 

その言葉に少年はハッと顔を上げほころばせるが

残念だな、師匠にはならん

 

「等価交換だ。」

 

びしっと指を向けた先

推定4歳の少年は等価交換の意味を知らないようで首をもたげる

 

「私は、お前に古代言語、暗号の解き方、を教えよう。

代わりにお前は私に何を教えてくれる?」

 

悪魔の契約はしたくないがこっちが悪魔なのも嫌なんだ

 

「私に何をくれる。」

 

頭一つ分ちがう少年に目線を合わせて言葉を突き付けた。

 

「僕は、…」

 

唾を飲む少年は顎を引いて覚悟したようだ

 

「僕は貴方に、うちは固有忍術を教える!!」

 

……。

ん?

それって写輪眼じゃないの?

私写輪眼持ってないんだけど?

知って意味あるのか?

相手の思惑が分からず私は少年を見つめるだけになる

 

「うちはの固有忍術は知っての通り、血系限界の写輪眼、写輪眼にも3巴の写輪眼があれば、万華鏡写輪眼なんてものまであり、人によって能力が違うものまである。

他にもうちは固有の火遁も…

俺はそのすべてをあなたに教えましょう。」

 

おっ重

対価がでかすぎる…

つか、これって見方によってはうちはの危機じゃね?

 

「…それは君がうちは一族を裏切るのと同じだ。

私はそれを受け取れない。

そして私の条件に対して等価とは言えん。あんたのが重すぎる」

 

「じゃあ、おつりはその時々にもらいます。

僕にあなたの持ちうる知識を教えてください。」

 

こやつ…かしこい

ズルが付くほど賢い…

私にうちはの機密情報をくれてやる代わりに私の持ちうる知識を全てよこせと言っているのだ…

 

『はぁあああああああ』と長く思いため息を吐いた

今すぐこいつとの交渉を打ち切っても何ら問題ないだろう。

こいつは、この交渉()諦めるからだ。

 

…新たなるカードを持って現れた場合、私は面倒くさい事に巻き込まれる事必須だ……。

最悪うちはの連中に目を付けられる可能性が無きにしも非ず…

なんたってあの二代目の孫だからな…

里の隅に追いやった人間の孫がうちはの少年誑かして今度は何をおっぱじめようとしてんだとか

これ以上付きまとわれて、変な噂を立てられるよりはいいか…、

 

画して、私はその交渉を飲んだのだった

 

 

 

 

 

「一つ!!」

「等価交換の期間は僕がアカデミーに入学するまで!!」

 

「二つ!!」

「どちらかの不利になる情報は渡さない!!」

 

「三つ!!」

「この関係は生涯口にしない事!!」

 

「以上を厳守することでこの関係は成立する!!」

「了解であります!!」

 

なにか制限でもつけないと際限なく付きあわなければならなくなりそうなのでこの等価とは言えない等価交換に制限を設けた。

3ヶ条を飲み込ませるのは一苦労だったが、まあうんちく色々立てて飲み込ませた

これは私と、延いては少年を守る3ヶ条でもあるのだ

 

 

 

 

「じゃあさっそくコードネームでも考えるか。おい、ポン出てこい」

 

「ガハハハ!!呼んだカー!!」

 

 

突然現れた狐に、少年は驚く

その顔にしたり顔してやったら睨まれた

「こいつはポン、他にもピンって奴もいるが、基本お前に会うのはポンだけだろう。私の…なんだ?」

 

「あ?ん~そうだナ、口寄せじゃないしナ…まあ友達ってとこカ?」

 

「じゃあ友達で

で、こいつが基本私の周りにいるので、私の近くに来たらこいつが基本案内してくれる。」

 

「待ち合わせはしないんですか?」

 

「誰かに連絡取ってる姿を見られるのは私的に困る。

お前と私は偶然会った、そういう事だ。ポンの声が聞こえたらその方に進め。教材はこれら石碑、紙と鉛筆があればどうにでもなる。」

 

頷く姿は可愛い推定4歳だ

あの賢さが無ければ可愛い4歳…

 

「で、『お前』とか『おい』とか呼ぶのめんどいからコードネームを決める。

何がいい?」

 

「えっ急に言われても…」

 

「…まあそうだよな。

ポン、なんかあるか?」

 

「んー俺たちゃピンポンだシ、2文字が良いナ。呼びやすイ。」

 

「…。じゃ、おまえテン、私マルで。」

 

「どうゆう選び方だヨ」

 

「なんとなく。ダメか?」

 

「…丸はさすがにダセーからコマにしとけヒヒヒ」

 

コマも大概だろと言い合っていたが。

ぽかんと私とポンのやり取りと見つめていた少年は徐々に顔をほころばせていき

 

「全然いい!よろしくコマさん!!」

 

私と友人になった

あ、ちょっと待ってコマさんて何かに引っ掻かったりしね?

 

 



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あれからテンとの交流もそこそこうまくいき、

時には喧嘩をし、時には笑いあい、時には泣いて私たちは教え学び合った。

うちはの虐殺にて殺されるとはいえ、彼はとても賢く、優しく、良い子であった。

少し、惜しく思う。

 

まあ、そんなしんみり考える暇が今の私にはないんだが

 

 

 

「お前…作間のせがれだな?」

 

 

 

めっちゃ怖いおっさんが煙草を咥え

私を上から睨みつけてきているなう(^ω^)

 

私は只、普通に、アカデミー終ったから帰って昼飯でも食って非番らしい師匠のとこ行こうとしただけなんだ。

何も悪いことしてないし、しようともしてない、変化のテストも失敗しなかった。

何も悪くない。

私は 何も 悪くない !!

 

冷や汗をだらだらかいて押し黙っているとその叔父さんは唐突に名乗り出た

 

「おらぁ、奈良シカクってもんだ」

 

真の目一家条

名乗られたら名乗る!!

 

「…」

 

「俺は奈良シカク」

 

名乗る…

 

「…」

 

「おい、聞いてんのか真の目だろ?」

 

名乗れるわきゃねえだろ!!畜生!!

影真似まで使いやがって!!

こちとら雁字搦めのドッキリドッキリドンドンサバイバルだぞ!!

なんで奈良家なんつうメジャーな一族がマイナー一家の真の目の一家条知ってんだよ!!

そうですね!!父親があれですもんね!!

名前ぐらいは知ってますよね!

 

「…真の目…サクヤ、です…。」

 

私は負けた。

 

どうやら、父作間と奈良シカクさんはそこそこ仲が良かったらしく、将棋教えたり囲碁したりの仲で、ライバル?だったらしい

んで、街中でルンルンと歩く私の顔に親近感を覚え背中の真の目家紋でああ、あいつの倅か、と声かけ、術かけ、名乗ったらしい

 

…やめてくれ、心臓に悪いからマジで辞めてくれ

 

 

 

 

「お前、作間の倅なら打てんだろ、ちょっと来い」

 

と言って私は奈良家に拉致され

将棋が全然打てないと知ったシカクさんに1から将棋をたたき込まれ

序に囲碁も叩き込まれ私は生死をさまよった

 

あのね……わたし、ルールとか得意じゃないんですよ…

おおよその世の中のバカと同じで、覚えられないし、イラッと来る性質なんですよ

半分魂抜けた状態でシカクさんに「初めてって聞いたときゃあきれたが、思ったよりやるじゃねえか!」と御世辞を頂きその日私は家に帰された

 

「ねえピン、」

 

「…」

 

「奈良家怖い…」

 

私と同類の、あまり頭の良くないピンは何も答えず私の頬を尻尾?で撫でてくれた

 

 

それからという物、暇があればシカクさんに忍鳥を飛ばされ、捕まり将棋の相手をさせられ、ぼろ負けして、ぐずぐず帰る日々が続いた

 

私の癒しはピンだけだ…

 

 



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最近時間が取れないのかコマさんに会えない。

時々あったと思えば急に空を見て、黙ったと思うと解散

 

すこし、寂しい

 

母さんが弟が出来ると話してくれたのは嬉しかったけど

母さんも父さんも弟ができるからかそっちに一生懸命で僕には構ってくれない

 

やっぱり、寂しい

 

あまりコマさんを困らせるのは良くないからあんまりやらないけど

ごねてみたこともあった

 

「コマさん、僕もつれてってよ」

 

「んーちょっと困るな…また、今度な。」

 

そう言って僕はおでこをビシッと突かれ、やっぱり逃げられた

コマさんは、アカデミーに行っているらしく色々な術に精通している

あと、賢い。

優秀とか、エリートと言われるうちはの大人に聞いても出てこない答えが返ってくる。

そして、僕の意見を否定しない。

上手く言えないけれど、それってすごい。

 

大抵の大人や、同年代の人は反論にまず否定から入る。

自分の意見が正しいと言うのもあるのだろう。

でも、どんなに僕が頓珍漢な事を言っても、コマさんは僕がどうしてそう思ったか、何故そう考えたか、そこから話が始まる。

なんとなくなんて説明じゃコマさんは納得しない。

コマさんは僕の言葉を、僕の意見として聞く。

僕を真っ直ぐ見てくれる。

 

 

母さんは、よく僕の名前を付けてくれた人の話をする。

賢くて、優しくて、柔い人

そうなってほしいと思って僕の名前を付けたらしい。

 

でも、優しくとか、賢くとか…

…僕にはやっぱ、出来ないよ母さん

だって弟が生まれるのが少し怖いし、コマさんみたいに賢くもない。

今日だって、コマさんに逃げられた。

 

『幻術を掛ける時、何を使うか10個以上考えておけ』と言って去って行く背中を追いかけるのは諦めた。

足が速すぎる。全然追いつけないし、すぐ見失う。

 

 

 

うちは何だから幻術とかどうよ?

と言って最近は幻術を主に教えてくれる。

暗号とかは基本だけ教えてあとは解くのみ!!と遺跡の位置をいっぱい教えてくれ、一緒に色んな所に行った。

 

もう、ほとんど僕に構う必要なんかないのに次は幻術を教えてくれるらしい

人生何があるか分からないしな

と言って教えてくれるが僕は少し…幻術が苦手だ。

 

「嘘は本当の中に少し混ぜるのが味噌なんだよ。」

 

と良く騙される僕にアドバイスをくれるが全然コマさんは引っかかってくれない

いくら僕がコマさんを術中に落としても指一本、視線1つで解いちゃうんだ

やる気が無くなる

 

「お前は幻術が苦手だな~」と頭をポンポンなでられた日にはもう

「コマさんがうますぎるんだよ。」

と憎まれ口をたたいてしまう

でも、そうやって卑屈になっているときに限って

コマさんは嬉しい事を言ってくれるんだ

少し困った顔をして

僕のおでことコマさんのおでこをくっつけて

「大丈夫、テンはテンだ。テンの速さで歩きなさい。」

って励ましてくれる

 

僕はそれが大好き

 

1年早いけれどアカデミーから入学の案内が来ている

父さんは嬉しそうに「流石俺の子だ」って褒めてくれるけど、僕は少し怖い…

アカデミーに行ったらコマさんみたいな賢い人がいっぱいいると思うと授業に付いて行けるか心配…

それにアカデミー生になったら、コマさんにはこうして会えなくなってしまう。

凄く嫌だけど…

コマさんの本当の名前と、アカデミーで会えることを考えると少し良いかもなんて思ってしまう僕は現金だ

  

 



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テンにアカデミーの案内書が来たらしい

え?早くね?お前確かまだ4歳じゃね?

家に帰り次第、母さんにアカデミー案内書っていつごろ来るのって聞いたら

 

「大体入学の1年前位ね。

アカデミーに入る半年前には、入学しますって書類を出さないといけないからねぇ…

大体5歳ごろに来るわ

いーい?

あんたの時は異例中の異例だったのよ!

サザミとお父さんと、あとおじい様の立場に感謝しなさいね!!」

 

きっちり釘を刺された。

私がアカデミーに5歳で入れたのはサザミの口の旨さと、父さんと、おじい様(二代目火影)の立場が働いたおかげであるそうな。

一番最後が一番でかい要因な気もしなくもない。

入学試験で合格点は取っているので、大方サザミの入れ知恵というか袖の下というか、口八丁手八丁が効いてこんなに早く入れたのだろう。

 

いや、まあそんな感じはしていた。

一応帰って来たサザミにゴマ擦ったら、気持ち悪いと言われたので最近習得した忍キックという名の、ただの跳び蹴りで膝かっくんをやったら、超絶痛いデコピンを喰らった。

 

 

 

 

師匠が上忍になったのか任務で忙しいらしくあまり会えなくなってしまった。

新しい術と、遺跡の場所を教えてくれると約束したのに全然会えん。

最近はテンの方も特に教える事も無くなってきたし…

母さんもサザミも相変わらずだし…

ここはひとつ

この空いた時間に修行をしてみようと思う。

 

あんま、忍びとして頭角を現すと2代目孫だかなんだかの重りがついてきそうなので修行は控えていた。(まあ中味馬鹿だから多少の修行でレベルアップとか無理だろうが)

もし九尾事件で生き残れたなら12までみっちりアカデミーに行って師匠のように図書館の司書でもしようと考えている。

つか、もうあの変化事件のせいで里中が孫って知っているから重りはついて回っているが、真の目という姓のおかげかそこまで重くなってはいない。

多分一番重かったのは父だろう、私は父のおかげで今日までこの軽さで生きて居られる。

ホント感謝

 

 

 

で、そう、修行修行

取りあえず噂の木登りの術?修行?から始めることにした

 

出来た。

 

いや、まあ、大概予想が付いただろうが、多すぎると木を傷つけ弱すぎるとくっつかないあの修行

要は『火加減を覚えてどれだけガス代を押さえるか』という事だ

それを持続させられればさらに満点ということで耐久水上歩行を風呂場でやっていたら母に「あんた、ほんっっっっとに馬鹿」

と家から追い出された

水たまりでやった

 

その晩母からあらましを聞いたサザミには微妙な目線を頂き「川でやれ」と言われた。

いや、服が濡れるという被害を押さえたかったんですーーー!!

 

という事で服を汚すお許し?がでたので川でやることに。

サザミ曰く『ただ浮くだけだと川の流れに流されるから序に流れに逆らって走ってその無駄なこと思いつく体力削ってこい』とのことだ。

 

これが案外難しく手こずった。

自分の体力と、チャクラの消耗とか色々計算してやんなきゃすぐバテるなと思い

その日から休憩をはさむことを覚えた!

サクヤは ちしきが 2 あがった !!

休憩大事

 

 

 

 

 

3か月かかって『川の流れに対抗して走る』までは、体力が持つ限り何とかなった。

しかし、川の上で静止するのがめちゃくちゃ難しい。

何だこれ超難しい。

サザミにヒントをもらいに行くが

 

「お前…それぐらい自分で考えろ。」

 

と素気無く追い返されている。

おまっ…もうちょっとかわいい姪っ子に優しくしてくれてもいいだろ?!

憤慨に憤慨を重ねブチ切れた私は諦めて

Don’t Think. feeeeeeeeeeell!!方法を試す事にした。

考えるな。感じろ!!感じるんだ!!

 

…まあ出来ませんわな。

こちとら根っからの文系馬鹿

体育会系馬鹿とは馬鹿の種類が違うんだ

 

 

 

 

 

閑話休題

 

チャクラには吸着と反発二つの性質がある

吸着は言わずもがな木登りの術で会得済みである。

そして反発は現在やっている水上歩行の術に使われる性質だ

川を体力が続く限り登れるとこからみて、反発の方の加減はもう習得したのであろう。

 

 

そして今問題なのが流れがある水面での静止。

川の水面に足を一瞬だけ付けるだけでいい川登りは、池の様な場所では静止できるが

川の様な流れのある場所だと流れに沿って流れてしまう。

そこで私は考えた。

チャクラにも流れを付ければ静止が出来るんではないのかと…!!

これは…私天才じゃね?!と伸びた鼻を高々と掲げ、

川の流れに沿って足の裏のチャクラを回転させると…

 

滑った。

 

もう盛大に滑った。

良く考えればそうだよな

面している部分が反発しているうえに、流れに沿ってチャクラを回転させるわけだから摩擦ゼロですやん…

 

川下の溜め池に流される私はまるで産業廃棄物の様である。

 

 

 

 

風の噂(ピンポン情報)でナルト降誕予定日が10月10日だと知った

少しこの世界とお別れするのが寂しくなった

 

 



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10

最近シカマルが生まれたらしく、シカクさんがそっちべったりで私は自由を会得した。

実家の蔵を触っていいとの許可が出たので今は封印術にのめり込んでいる

決して水行の術に飽きたからとかではない。決してない。出来ないから拗ねたとかそーゆんでもねーから!!違うから!!

 

そう、で

蔵の巻物を漁っていたのだが、

ししえんじん?ちがうな、なんだっけあの命使って封印するやつ…

え?ししふうじん?ちがう?

ああ、屍鬼封尽ね

そうそう、それそれ

それのやり方を知った。

 

何時も突然ですまないが、なんでお前がそれ学習してんだよってツッコミはよしてくれ

私だって、なんでこんなおっそろしい封印術学んでんだよって思うんだけど

仕方ないじゃないか!!蔵の封印術系統皆それなんだもん!!

何を封印したかったんだよ!!どんだけ封印する事に命かけてんだよ!!

どんだけやばいものがこの家にあんだよ!!

やめろよ!!

真の目家は只の大工一家だろ!!

YES大工!!NO忍者!!

 

ツッコミが追い付かず私は芋虫となった。

蔵にこもって忍術書や巻物を散らかしていたら、サザミが晩飯だと呼びに来る

 

「さざみ、なんでこんなヤバイの(封印術)ばっかあんの…」

 

「あーお前の父さんだな。ま、このままいけばお前は知らずに済むだろうから安心しとけ。」

 

安心できない要素(九尾)が今、目前に迫ってんだよ(怒)

 

これきっとフラグだ、九尾事件で何か起こるフラグだ…

九尾事件が10月10日の何時に起こるのかは不明だけど、(私のあやふやすぎる記憶では夜な気がしない事も無いがあやふやすぎて確証もてないので無視する)

 

はぁ

何故神は私に平穏をもたらしてくれないのだろうか…

平穏な前世歩いてきた罰が当たったのだろうか…

いや、平穏な人生歩いただけで当たるバチってなんだよ

と切れの無いツッコミを入れて私は起き上がる

 

「時期が来たら教えて…」

 

「…まあ、そうだな。」

 

サザミは私の暗い表情に頭をつんと突いて煙草をふかした

煙い

 

 

 

―――

――

 

 

俺の姪は少し変な奴だ

姉と結婚した作間さんも大概変な人だったがそれを凌ぐかもしれない

いや、あの作間さんの子供なら納得か

 

急によく分からん文字を部屋いっぱいに広げたり、変な技をしようとしたり

変化の術に失敗して、2代目の姿のまま里をべそかきながら走り、藪に突っ込み、姉に泣きついたり

父親が死んだことを解かっていたり

趣味が遺跡巡りなんてじじむさかったり

いつの間にかうちはの固有忍術なんて機密情報を取引してくるわ

チャクラコントロールの修行の仕方をどこからともなく学んでくるわ

馬鹿なのか何なのかチャクラコントロールっていうより形態変化してるし!!

あいつは何なんだ!!頭痛の種か?!

 

作間さんそっくりの顔で何かに一生懸命に打ち込む姿は

俺にはまぶしかった

 

 

ピンポンの分体を付けていたが、あいつらは性格がねじれにねじれてるので、あまりサクヤの様子を教えてくれる事が少ない

姉や、ホドキ、アカデミーの話を聞く限り、友人という友人らしき人はいないらしいが、2代目の名前のせいもあるのだろう

真の目の白い上着に、真の目の赤い紋、あいつは千手ではない

そしてうちはでもない。

作間さんの母『うちはニヒト』の影は木の葉では薄いがうちはでは中々に濃い

あのうちはマダラの右腕だった存在だ。

本人は左腕とのたまってたらしいが弟の『うちはイズナ』が死んでからは名実ともに右腕だったと聞く。

作間さんが遠ざけ、なるべく火の粉をかぶらないよう頑張った結晶があの子だ

 

姉さんは年々作間さん、2代目に似ていくサクヤをみて少し悲し顔をする

そしてしょうがないとでも言うようにため息を小さくつくとサクヤを構いに行くのだ

乳白色だった髪は銀に変わり、あのぼやぼやだった赤ん坊が立って歩く姿を見ると俺は寂しくなる

 

まだ、

まだ、

死なせはしない

 

 



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11

聞いて驚け見て笑え

驚く事に私はあの九尾襲撃を乗り切った

 

そして、母を失った

 

母さんは逃げ遅れたのかなんなのか、家の下敷きになって死んでいた。

サザミと二人で瓦礫をどけて見つけた母は、私の部屋だった場所にいた。

「大方お前を探していたんだろう。馬鹿な事をしたな、俺も、お前も。」

サザミの煙草が目に染みる

 

 

 

九尾襲撃の日私はサザミと修行をしていた。

母さんはその日はアカデミーに用があるとかで家を出ていた

アカデミーにいるなら心配ないだろうと私は母さんを見送ってサザミと西の森へ向かった

終ったのは夜でこのまま里に帰って九尾襲撃を待つかと思っていたら襲撃が始まり

私はサザミによってシェルターへ運ばれ

サザミは母を探しに、里を守りに戦場へ帰った

 

ただ、待つしかできなかった

自分の無力が空しかった

のうのうと生きることになりそうな現実に憤りしか感じない

 

…もがきゃよかった

吐いて、もがいて、苦しんで、あがいて

母を助ければ良かった

私は馬鹿だ、大馬鹿者だ。

両手に抱えているものさえ守れなかった

 

「サザミ、私つよくなる。」

 

「…ああ」

 

「強くなるからね、さざみ」

 

「…ああ」

 

「だから、もう…」

 

「分かってる」

 

「いなくならないでね!!」

 

 

私は強くなる、そして、両手に抱えるものを守れるようになる

シェルターで膝を抱えて待つなんてできない

私はサザミを失わない。

サザミも私を失わない。

私達二人はお互いが弱点であり、強さになる。

 

 

 

私は写輪眼を開眼した。

最初から3巴だった

笑うしかなかった。

 

 

 

 

―――

――

 

 

時期が来たらしく、

サザミは無事だった家の蔵、まるまる結界で覆い

父の事、母の事、サザミの事、祖父の事すべてを話してくれた

 

伏線回収が早いぜとは思っても言わないのが吉

なんたってこれからの話がめちゃ長くなる

 

 

曰く

祖父、千手扉間の妻がうちはニヒトという人物なんだが

何故いがみ合ってる千手と、うちはが結婚する事となったのかはこの里の出来た頃の話から始まる訳だが、そう…有体にいうと

「同盟組んだし友好のしるしにお互いに誰か嫁がせない?」

という柱間の一言があり、物議をかもし

千手からは二番手扉間、うちはからはマダラの右腕(?)ニヒトがそれぞれ出され

政略結婚??したとこから話は始まるのだ

 

 

「え?まって。もしかして、この話、めちゃくちゃ長くない?」

 

「みなまで言うな、色々こじらせた先祖が悪いんだ。俺の先祖じゃねえけど…」

 

 

二人はまあ、いい所の地位にいるので引く手あまたかと思いきや扉間は里の事で忙しくそんなことに構ってられるほど暇じゃなく

ニヒトは先の戦争で体中に傷があり、嫁の貰い手に困っていた。

一瞬マダラの嫁にあがったがニヒト本人が降りたらしい

「私は戦場を歩いてきた、彼の嫁に足りえない」(意訳:戦場ばっかで炊事洗濯、何もできない人を当主の嫁にするのは流石にやばい)

 

とまあ、見事行き遅れた二人が結婚したんだが

子供も千手には柱間の子がいるし、特に望んではおらず

二人して、仕事尽くめの日々を送っていたそうな

 

そんな二人を見た、二人目が出来て嬉しくって仕方が無かった柱間は

「お主もいい加減童貞を捨てるべきぞ?」

と発破をかけ、仕事に追われ3徹目だった扉間はブチ切れ無断で1週間の休みを取り、火影室が書類でいっぱいになる頃、ニヒトがご懐妊した。

 

「…ツッコミは」

「無しの方向で頼む。俺もこれ聴かされた時は端折れと思ったが作間さん曰くここが醍醐味だそうだ…」

 

同一族共にお祝いに沸いたが、次はどちらの孫になるかで争ったそうだ

そんだけいがみ合ってて良く同盟を組めたなと思うがまあ、皆戦争で疲れていたのだろう。子供1人にこんだけ騒げるのはこんときだけだった

 

子供は3人

長男は『狭間』、次いで6年の時を挟んで生まれた二男は『隙間』最後に5年の月日離れて『作間』とそれぞれ名づけられた

長男次男はニヒトに似たうちは顔で

三男だけが扉間にそっくり、生き写しのようだと言われたそうだ。

 

母親ニヒトは3男作間を産んで、そう間をおかず亡くなってしまったらしい。

3兄弟はそれぞれ優秀だったが特に優秀と言われたのが二男の隙間

なんと、5歳で写輪眼を開眼した

 

「え?何それ?写輪眼舐めてんの?」

 

「まあ、母親の死をきっかけに開眼したそうだから、そうもなるだろう。」

 

「…」

 

で、その隙間は12の時亡くなった。

戦場で万華鏡写輪眼を開眼して、調子に乗って敵陣に突入したらぽっくり…

 

「…言い方どうにかならない?こう、もうちょっと…さぁ…」

「俺もそう思ったが作間さんがこうとしか説明してくれなかったんだよ」

 

で、隙間はその万華鏡写輪眼を兄の狭間に託しお亡くなりになり。

兄はそれを譲り受けその3年後、またも戦場で、父である扉間に万華鏡写輪眼渡して亡くなったそうだ。

 

そして、その写輪眼が紆余曲折あり今ここにある

 

 

そういわれ目の前に出された巻物はポンと音を立てピアスに変わった。

 

 

「私思うんだ。紆余曲折、かくかく云々の部分が一番大事って。」

 

「俺もそう思うが紆余曲折は俺からいえん。恨むなら『俺たちのなれ初めは俺たちから話したい』などと宣った父を恨め。」

 

大方、今まで蔵をあさって出てきた封印術の類はこれを封印するために試行錯誤した痕だったのだろう

 

「サザミは使わないの?写輪眼。」

 

「過ぎたる力は滅びをもたらす。俺には必要ない力だ。」

 

言い切るサザミの顔は険しい

 

「前まで作間さんが管理していたが、作間さんが亡くなってからは俺が管理していた。

流石に姉さんにこれを守り切れるほどの力はないからな。

この眼は珍しい。誰とは言わんが狙う輩は多い。

これはお前が一人前になるまで、出来れば俺が死ぬまで俺が持つこととなるだろう。

俺が死んだと同時に俺の体はピンの力で塵も無く燃える契約となっている。

そうなった場合、次の契約者はお前、サクヤだ。」

 

「7歳の姪に話す内容じゃないよそれ。」

 

「7歳でも、お前はお前だ。契約更新と同時に巻物を燃やしたっていい。俺はお前にこの目を届けるまでが仕事だ。」

 

なら、今くれたっていいじゃないか

確かテンの話では都合の悪い事を捻じ曲げる力がこの目にはあるんじゃないのか?

そしたら母だって父だって死んだことにはならないはずだ

 

「俺はこれをサクヤに渡すつもりはなかった。

過ぎたる力は滅びをもたらす。サクヤが滅びるのは見たくなかった。だが俺は契約した身。これ以上は何も言わない。俺が死んだら、静かにこれを受け取ってくれ。」

 

私は頷くしかなかった。

このひとりの人間が渾身の力を籠めて土下座する姿を、私は見てられなかった。

 

 

 

 

「ところで私って超微妙にうちはの血が入ってるってことだよね」

 

「お前の写輪眼を見るに微弱なんてものじゃなさそうだがな。ッテ!!」

 

「夢を持たせろよ。んで、千手の血も入ってるんだよね?」

 

「お前のその2代目そっくりな顔を見て誰もが頷くだろうよ。ッタイ!!」

 

「だから希望を持たせてくれよ!!」

 

ああ、頭が痛い

パトラッシュ、僕もうなんだか眠いよ…

インドラとアシュラの血がこんな所で和合しているとはだれも思うまい

 

その後ピンポンと次の契約者として契約をして竹筒は渡せないが口寄せは結んだ

これでサザミが死んだら自動的にピンポンから私に万華鏡写輪眼(それももしかしたら“永遠の”が付く可能性があることに気付いた)が渡ることになる

 

過ぎたる力は滅びをもたらす

サザミの癖に良い事を言う

受け取った瞬間燃やしてやろう。

血縁関係上全然関係ないはずのサザミを巻き込んだバチだ

精々苦しむがいいフハハハハ

 

はぁ…

 

ねよ

 

 

 



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12

 

アカデミーが里の復興の為休校になり、暇が増えたので水行の修行を再開する事にした。

生きてたし、儲けもんだちくしょう

とがむしゃらに突っ走っていたのだが

私はあることに気付いた

 

なんか体力めっちゃついてる!!

 

今迄の修行の成果なのか写輪眼ぱうわーのおかげなのか知らないが

以前だったら、川上にある滝に着く前に体力が尽き、沈んでいたのが、滝壺まで一気に到達する事が出来るようになったのである!!

 

「ふぉおおおお!!これ成長したんじゃね!?もしかして川の上で静止できるんじゃね?!」

 

とテンション上げ上げで川に挑んだのだが、失敗した。

やはりノリと勢いだけでは出来ないものらしい。

前回は前のめりで滑り顔から突っ込んだので、今回はチャクラの回転を反対方向にしたのだが、普通に突っかかって無理だった。

私のチャクラでは川の流れには逆らえんのか…

うむ、難しい…

 

 

 

 

そんなこんなで修行していたらアカデミーが再開され、テンが春には入学と言う事で

テンのお守りから解放され、更なる自由を手に入れた。

 

「これからは他人だな」

 

と、かっこつけて別れたが

あのうちは一族だしアカデミーで会うと思う。

心根の優しいあいつだ、きっと友達がいっぱい増えて、未だアカデミーロンリー街道を突っ切る私なんかすぐ忘れてしまうだろうが…

少し寂しい…

 

しかし、

テンの用事がなくなったと知ったのか何なのか、シカクさんに捕まる、捕まる。

つか、時間があると図書館に入り浸ってるから、そこそこ図書館に通う性質であるシカクさんの目に止まりやすいのかなんなのか…

 

 

後ろ襟首を引っ張られ、ずるずると引きずられドナドナされて行く

この人上忍のはずなんだが、暇なのだろうか…

我が世の春を謳歌すんぜ!!とか思ってた先にこうであるからして…

文句の一つも二つも言いたくなるものである。

 

「暇なんすか?」

 

「馬鹿垂れ!」

 

拳骨を頂いた。

俺は引っ張りだこなうえに超エリート上忍であり、そんなオレの暇つぶしに付き合えることを光栄に思え…みたいなことを言われた。

 

え?それって要は暇なんだよね?

 

何て言ったら2発目を頂くことになりそうなので大人しく引きずられる事にした

周りの奇異の目が突き刺さるが、私が真の目の白いのだと分かると皆眼をそらす。

おい、ごらぁケンカ売ってんのかわれぇい

 

何てやってると奈良家に着く

奥さんのヨシノさんに出迎えられ、シカクさんはでれでれである。

一言挨拶して私はリビングのシカマル君に会いに行く事にした。

 

「おいごらぁ、てめぇうちのシカマルに用があんなら、手洗ってけよああん?!」

 

訂正、洗面所によってから行く事にした。

勝手知ったる他人の家。

あの通わされた日々が今は懐かしく思える…

 

洗面所で綺麗に手首まで洗ってシカマル君のいるリビングに顔を出すとシカクさんがまたもデレデレしていた。

ちょっとその顔がイラついたので

 

「へぇー、手洗わなくていいんですかー?」

 

と煽るが

 

「ッハ、何も手を洗うところが洗面所だけな訳がねえだろ。」

 

「こっこいつ…

私が洗面所に行っている間にリビングに近い台所で手を洗いやがった…!!

ちくしょう!!あれはブラフか!!」

 

「ハッハッハ!!俺に勝とうなんざ1000年早いわ!!」

 

しょうもない事を大人と子供で言い合っていたらヨシノさんが呆れた顔でお茶を持ってきてくれた。

相変わらず美味しいお茶である。

 

 

「そうだ、シカクさん。動いてる水面の上を静止するのってどうやるんですか?」

 

「ああん?!んなもん水面の動きに合わせてチャクラを添わせるに決まってんだろ。それぐらいお前ならわかるだろ。どうしたんだ急に。」

 

「いやーそう思って川で水面の動きに合わせてそのまま足の裏のチャクラを回転させたんすけど見事に滑りました。」

 

「…は?回転?」

 

「……ん?

…回転、しないの……?」

 

 

しないらしい。

私は足の下でいわばキャタピラの様に回転させていたのだがどうやらそうでは無いらしい。

 

「おまっ…ほんっ……もうバカ…無駄に馬鹿……」

 

言葉も出ないシカクさんが項垂れ頭を抱えるので、取りあえずお茶の御代わりを注いでやった。

急須の最後の一滴まで絞ったので苦さ倍増であろう。

 

「いいか、サクヤ。

体の中をチャクラが巡っている、これは解かるな?」

 

「はい。経絡系とか点穴とか全く覚えてないけど。」

 

「いや、今はそれはいい。

チャクラが巡っていると言う事は、もうチャクラの動きが存在するって事だ。」

 

「あ、なる。

足の下に新たに回転を作るんじゃなくて、もうあるチャクラの流れを使って流れに沿うわけか…。」

 

「…お前って馬鹿なのか何なのか…いや馬鹿ではないのか…でも発想は馬鹿なんだよな…」

 

何か失礼な事を連発している気がするが今はこの新情報を試したいので放置しておく

 

「ヨシノさん!!お茶御馳走様!!シカマル!!またな!!

あばよとっつぁん!!構い過ぎてシカマルに嫌われない事祈っとくぜ!」

 

「うるせぇバカ!!余計なおせっかいだ!!」

 

シカクさんの罵声をバックに、バタバタと奈良家の玄関を飛び出て、私は川に急ぐ。

途中サザミにあったが今は無視だ。

 

「今日のご飯は一楽にするからああああぁあぁぁ!!」

 

「りょうかあああああぁぁぃ」

 

晩飯の心配はいらなくなった。

 

 

 

サテハテ、

さっそく川に入って体の中のチャクラの流れを意識する。

今迄、足の裏に留め置いていたのをゆっくりと流して、水面にチャクラを流す。

 

「うっ浮いた!!止まってる!!止まってるぅぅううう!!」

 

成功である。

今迄の苦労は何だったのか…

この様子から行くと、今までのチャクラを留めていた使い方は余り燃費が良くなさそうだ。

 

サクヤは体の中に流れるチャクラに逆らわず、循環させるよう意識することを覚えた。

レベルが20上がった。

 

丁度通りがかったアカデミー生に目撃された

ボッチ度が50上がった。

 



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13

 

里の復興も表面上は進み、アカデミーも入学式を終え

アカデミーでテンに会うかと思いきや全然会わなかった。

まあ若干カリキュラムちがうし、第一学年2つほど違うしな、いずれどこかで会うだろう。

そん時はそん時だ。

とのんきに構えていたらうちはイタチに最近睨まれている…

ひえっ

 

あいつ流石うちはなだけあって顔がテンと似てるからちょっちひるむんだよな…

つか私、あいつと話したことねえからなんでこんな睨まれてんのかわからん…

なんでだ…気持ち悪いし関わらんとこ…

 

うちはイタチは、私も使っていた飛び級制度で、このままいくと1,2年で卒業できる速さで猛スピードで繰り上がってるらしいから、早々に私の前からいなくなるだろう

うちはイタチやベー

 

例え転生したって勝てねえよ

何だよイタチ様って…

どういう状況下で呼ばれることになるんだよ…

 

つか、ナルトにシスイノ目(カラス)仕込んだり

サスケに木の葉を守るよう幻術をかけるって

なんでそこまで予想できんだよ

まあ、そこまで持ってく為に色々発破掛けたんだろうけど…

にしたってサスケのあつかいェ

 

まあうちはは、うちはで解決してくれ

拙者真の目じゃい

ちなみにほうれい線はもうあった

 

 

―――

――

 

それから月日経ち

私は3年ほど通ったこのアカデミーを巣立つことを決意した。

卒業試験、実はいつでもやっている。

九尾襲撃で里の忍びが減ったので、下忍増し増しキャンペーン中なのだ

 

単位はもう必要科目は取れてるし、どうせ下忍になっても待っているのは修行とDランク任務だけだ。

時間はある

早めにレベルアップできるときにすべしと、かの予知予知歩きのお方も言ってることだし卒業した。

この時期に飛び級卒業したのは『うちはイタチ』と私『真の目サクヤ』だけだった。

 

だよねー!

1年で卒業なんてやばいことしやがるのイタチぐらいしかいないよねー!

そして九尾襲来の爪痕が若干残っている中、下忍昇格試験うける奴ってこうゆう奴しかいねーよなー!!

 

はぁ

…気が重い。

 

重めのため息をついてゲンドウポーズをとる私はさぞ隣のうちはイタチ君に異様に映るだろう。

教室の隅の席で先生を待つ私の空気は重い

だがこれがやってられんのだよ

もし、ここでこいつと同じ班になってしまえば死亡フラグたっぷりだからだ

まあ、原作でなんかうちは君なりに色々あったような気がするので(時間がたちすぎて私の記憶力ではカバーできなくなった。)多分なりえないが警戒する事に越したことはないだろう。

もし名前を知られ、仲良く何てなってしまった場合、私の死亡フラグは跳ね上がる(うちはイタチ里抜けの手助け要因として)

 

「あの」

 

やめてくれ

 

「あの、すみません」

 

ホントマジ辞めてくれ。

 

「俺、うちはイタチと申します。貴方は…?」

 

名前を名乗らないでくれええええええええ!!!

なんで?!すっげギラッギラした目でこっちに話しかけて来るんだけど?!

なんでだお?拙者何かした覚え全然ないお?この話しかけるなオーラ(ゲンドウポーズ)分からないお?!

駄菓子菓子

真の目たるもの名乗られたら名乗り返せ!!(血涙)

 

「…真の目…サクヤです。」

 

視線を向けず答えた私偉い

横でお花が咲いたようにわ~答えてくれた~なんて雰囲気出してるわっぱなんか知らん!!

しらんったら知らん!!

 

「あ、えっとその。今回飛び級卒業したのって俺たちだけだそうですね。一緒の班に成ったりするんですかね?」

 

なんだそれ、断固拒否だ…

 

「…多分ないと思うよ、基本上忍を入れたフォーマンセルで動くらしいから。ここに一人入れるよりバランスを考えて足りない所に補充する方が現実的だ。」

 

「あ、そうですよね」

としょんもりしている兎なんか見えない。断固拒否ったら断固拒否だ!!

 

 

丁度良くミカン先生達が「遅れてごめんね~」と緩く入ってきたので

 

「まったくです。」

 

と答えた。

ミカン先生は泣いた。

 

 

 

やはり班分けはイタチ君と別になるらしい

私はサザミが受け持つ中忍班に組み込まれることとなった

多分これは写輪眼の秘密漏らさないためにサザミが面倒を見る感じだな

サザミ乙

心の中でサザミをいたわりつつ予定されている集合場所へ私は向かった

 

後ろで少しわたわたしている少年を放置して

 

ごめんっ

私、実はちょっと君のサスケくんとの戦いの豹変ぶりが怖いからここは無視させて!!

うちはの顔面崩壊はネタとして見るにはいいが、あれは流石に生で見るのは怖い。

うん。関わり合いになりたくない。

君の赤ん坊姿は可愛かったが、今も可愛いが、君の未来は私には重すぎる

 

 

演習場に付くと丁度サザミ達が話していた

それぞれ自己紹介を進め、そこそこ会話も続く中々いい班になりそうだ

一応演習と称してサザミ対私達で戦ったがやはり負けた。

一応サザミも上忍なんだなと少し見直した

心を読まれたのかデコピン喰らったが、フッフッフ私も今宵から忍者、忍びのデコピンなどへでもねえや!!

と言いつつ今日知り合った医療忍者のカンヌ・エイガ君にたんこぶを治療してもらった

 

この班は防衛、中距離医療忍者のカンヌ君と、超近接戦闘の日向 マシロ君、そして何のとりえもない、又の名を器用貧乏のオールラウンダー真の目サクヤで任務を務めることになるだろう。

中忍昇格試験に必要なD、Cランクの任務を終えたらすぐ適当な班に入れて中忍試験出すつもりらしいサザミは鬼か悪魔だと思う。

彼の予知予知歩きでもそんなことしねえよ。

私にもう少し下忍ライフを楽しませろよ。

 

 



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下忍編
14


 

D、CランクにAランクが混じってたなんて事も無く、必要最低限の任務数を、サザミのおかげでチョッパやで終えた私は、中忍試験に駆り出された

雷の国での試験だったが、流石にこんな鬼か悪魔のような所業をするのはサザミだけだったらしく、私のように下忍になって3か月もしないうちに中忍試験にひきずられてきた奴はいなかった。

同じ班員になった方々とひと時の交流を持って緩く参加した中忍試験の感想は、ホントに試験官によって内容全然違うのね…だった

ふつーにチェックシートのテストに(全部1とかやる気が無いにもほどがある解答しといた。だって、試験中仲間にそう言われたんだもん。)、班対抗迷路の中目があったら巴戦とかマジ私役に立ってねえ。

常に退避の隙を狙っていた私は煙幕係に徹していた。

おかげで煙幕玉すかっぴんだよ

試験だからと思って多く持ってきていたことを感謝するんだな!!

そしてそんな逃げ腰の奴が第2試験突破して一人で戦うとか死ぬる。

相手と適当に打ち合って降参しよーと思ったら何故かシード枠に入れられた。

 

うっ嘘だろハニー

現実だダーリン

 

もうサザミと視線で会話できちゃうほどラブラブな私達は

ありったけの呪詛をハニーに向けた。

視線で殺せるなら今確実にサザミは殺られている。

 

 

トーナメント戦の前、ひと月の休暇をもらい、本選に向けて修行することになったのだが、サザミ達は中忍試験の間班で任務があるらしく、忙しく構えないそうなので

丁度暇してた雲の里の、真の目棟梁(真の目はどこの里に行ってもいる。マジでいる。)に真の目流体術を教えてもらって来い

と宿をほっぽり出された

 

あぁ?!

 

って感じだが曰く、真の目流体術というのは私がアカデミーに行っている間、真の目のちびっ子たちが学ぶ近所の柔道教室みたいな位置的にあるらしく

門は広く、真の目以外の人もよく来るのだそうだ

お前はそれやんなかったし序に習って来い

だそうだ

 

 

『真の目の体術は流す体術なり

全てをいなし、流し、避けた先に力の矛先はある。』

と、長いひげを生やしたお爺さんに言われた。

全く持ってわからん。

 

 

基本朝昼真の目のちびっ子と爺さん婆さん達に混じって基礎を教えてもらい

夜の部にて応用をみっちり

みっっっっちりサザミ(分身が毎日送られてくる)に叩き込まれ

なんとか形にはなった

「お前、体術苦手すぎんだろ。今まで何やってたんだよ。」

凄いあきれた目を向けられたが

前世今世共に本の虫ですがなにか

とは言えないので

「ご存じのとおりです。」と返しておいた

ラリアットで吹っ飛ばされた私を見て、ピンポンが爆笑してた

 

 

 

「ねえ、これかたなくちゃいけない系?」

 

「あ?何言ってんだ当たり前だろ。お前真の目の家紋に泥を塗る気か。」

 

「えー真の目が、んな泥気にすると思うの?寧ろ先んじて泥を塗ってる奴大量にいんじゃん。」

 

「…何も言えねえ」

 

実は、真の目は奇人変人が多いと里中に広がっているので

葬式でどんちゃんしようが、2代目がべそかきながら真の目の藪に入って行こうが、大工の棟梁がメタくそ強かろうが、真の目のもやしが奈良家当主に引きずられようが、大体が『ああ、真の目ね』と納得してしまう。

今更、シード枠で初っ端クナイ弾いて棄権します!!といっても大した泥ではないのだ

 

「だが、まあ……お前の力を、サクヤの本気を、あそこで踏ん反り帰ってる雷影に見せてあげなさい。1回、それでいい。それだけで、木の葉の里の連中は安心するし、火影の力になる。そしてそれがお前の力になる。」

 

この人は真の目だけじゃなく、火影が、里が、世界が見えているのだろう。

最近霧隠の方で何かあったらしいし、今こそって時なのだろう

私という2代目の現身、うちはと千手の友好の証しが活躍するというのは

木の葉の、九尾事件からの復活を表す。

私がここで負けるというのは…いや、辞めておこう。自分で自分の重りを増やす必要はない

 

「木の葉に貸し1つね。」

 

そう言って私は闘牛場のようなコロッセオのような地に足を降した

 

「木の葉隠れが下忍、真の目サクヤ。いざ、推して参る!!」

 



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15

その少年は、この中忍試験で少し目立っていた。

白い装束、背中には雷の国でも珍しくはない真の目赤い紋。

そして周りの下忍達より一回り、いやそれより低い身長。

資料を見るに、まだ9歳という…

 

試験会場に引きずられてきた少年は常に不貞腐れていた

 

仲間も人数合わせなのだろう、不貞腐れている真の目の少年を腫れ物でも触るかのように扱っていたが、少年はその二人に合わせて、良くサポート出来ていた。

第一の試験では仲間からの伝達があったのかスムーズに答えを導き出していた

第二の試験は煙玉を使って撹乱、奪取、遁走、余りにも上手いタイミングで、忍術さえ使わず切り抜けていくので俺たち試験官は目を見張った

 

あの真の目はどこのだ

何処から来た

 

重役の声に必死に資料を集めた俺たちはあることに気付く

「雷影様、あの少年、木の葉の里2代目火影の孫にあたるそうです!!」

 

震撼とともにどこか納得のある事実だった。

みじかくザンバラな髪形にあの灰み掛かった白、そして、あの目。

忘れることはない。

あの千手の忘れ形見だ

 

ひと時千手の忘れ形見は各国に恐れられていた。

雷撃のうちは『狭間』、写輪眼の千手『隙間』、2代目の忘れ形見『作間』

時代を移ろいそのたびに名をはせた。

あの2代目の子孫が残っていたとは思わなかった。

 

「あの顔を見るに『落ちこぼれの作間』の子だろう…フンッほおっておけ。下忍だ。」

 

雷影様に言われ、ハタと気付く

 

そうだ、あの少年はまだ少年なのだ…

 

未だ齢8歳、そして下忍になって1年に満たない。

まるで、そこで死ねばそこまでというような―

木の葉はそこまで切迫しているのだろうか…?

作間の落ちこぼれは知らなかったが、あの少年はそこまで恐るに足るものだっただろうか?

 

先程の緊迫具合が急に覚めるように落ち着いた

 

 

「シード枠はあいつにくれてやれ。」

 

 

里の余裕を見せてやれとばかりに白い少年を見つめる4代目雷影

しかし、それは的を外していたようだ

 

 

 

楕円の闘技場に足を降ろしたその堂々とした姿たるや、まさに2代目火影。

対戦相手をラリアット一発ですっ飛ばした姿は獅子のようだった

壇上の雷影を煽り哂う姿は圧巻としか言いようがない。

 

サポート?、仲間の手を借りた?

ちがう

あれは、サポートに徹していただけだ。仲間の手を使わず答えに行きついていた。

憎しげに真の目の紋をにらみつける雷影を背に少年は段上に帰って行く

周りの視線などもろともせず。

 

九尾事件で木の葉が弱っていると情報が上がっていたが、これはもう一度評価を見直す必要があるようだ。

 



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16

ふえーん雷影が睨みつけてきて怖いよ~

僕棄権するよ~

 

もー!まったくサクヤ君は!すぐそうやってぼくの力に頼るんだから!

 

 

とりま、雷影がめっちゃ怖いので棄権した

さっきので足くじきました~とか何とか嘘言って棄権した

これ以上私は用はないので丁度近くに来ていたサザミ班と合流してさっさと里に帰った

サザミも別に今回合格させようとは思ってはいなかったらしい

インパクトあるやつ一発ぶちかましてくれればあとはこっちでどうにかすんべと3代目から言われていたらしい

まあこれも戦争の縮図、致しかたなかろう。

私はこの貸しを3代目が死ぬその日までに使うことにならない事を祈った

ダンゾウとかダンゾウとかダンゾウとかで使うとなると1つじゃ足りないからだ

 

木の葉に戻り、すぐさま任務を与えられたサザミ班は里外に出ては入ったりを繰り返していた

おやすみ?

あるわけないでしょ

九尾事件が終わって1年半、未だ後片付けに追われている木の葉

私が中忍試験に駆り出されたのもこれを隠すためだ。

雷の里が中忍試験をしたのは只の挑発、その後の戦力調査だし。

私の後続の実力を、私の血の後光で隠すための一発は入れたが、私が何やっても、不安定な事実は変わらない。

 

それでも任務はやって来るしお片付けは終わらない。

一応イタチという優秀な駒が後ろで控えているが、うちはである、それもうちはの族長の第一子、丁重に育てられるだろう。

 

 

そんなこんなで下忍のまま中忍に混じって任務をしていたら

お前、もう中忍で良くね?みたいな扱いになってた

 

流石に隊長を務めることはないが

体術、忍術、幻術、どれをとってもそこそこの成績を持つ私の使い勝手の良さに色んな班に組み込まれ、たらいまわしにされた

あれ、これサザミ班の意味あんの?

 

「あ?元々、中忍昇格までが上忍師の仕事だ。お前もう中忍みたいな扱いだし、別に俺の班にこだわる必要ねえんだよ。第一、お前補充要員だから。

どっかの知らねえ下忍突っ込まれるよか、お前入れた方が変なの引かずに済むから入れただけだし。」

 

サザミ乙なんて思った過去の私死ね

 

そんなこんな、色々な班に補充要員として放り込まれ、知り合いが増え私は2代目の威光と父の強さと序にサザミの性生活のだらしなさを実感した

 

サザミはホント一回後ろから刺されるべきだと思う

誰だよっておねえさんにすっげえ突っかかれるし、サザミ上忍の甥っ子さんですか~とか知らねえ人に話しかけられるし

家に持ち帰ってこないだけまだましだが

ホントいつか後ろから刺されて死ね

つか殺す。

 

何故か木の葉で私がサザミの親戚で広がってるのは許そう。

だが私は姪(女)であって甥(男)じゃねえ!!

姪っ子だ!!

ほんと失礼しちゃう!!

どうやら中忍試験で少年と勘違いされたらしく

確かに、この父さん似の顔はどちらかと言えば男性的だが!!

確かに邪魔だから伸ばすのはやめとことか思って髪の毛は適当だが!!

私は女だ!!

こんな一人で怒ってても仕方がないが誰にこれをぶつけるべきかも、訴えるべきかもわからん私は久しぶりに会ったサザミ班の面々に愚痴っていた

 

「まあまあ、相手が油断してくれるし良いじゃん。二つ名が付いたみたいなもんでしょ?」

 

「サザミの甥っ子とか!!2代目の孫とか!!全然二つ名になりえねえよ!!何だよこの親の七光り具合はよぉ!!

もっと私っぽいの付けろよ!!」

 

「いや、サクヤ、オールラウンダーすぎて、なんか、特徴なくて…端的に言って、無理」

 

「器用貧乏だよねサクヤは」

 

マシロ君の端的に言って無理も刺さるが一番刺さるのは器用貧乏だカンヌこの野郎ちくしょう

 

「でも、私、得意な術とか無い…」

 

「そこだよねーなんか無いの?千手の血系忍術とか。あ、木遁とか!!」

 

「いや、カンヌ君。木遁は初代火影しか使えない固有忍術だから、血系限界とは少し勝手が違うから…」

 

「サクヤは…今のままで、いい。サクヤの、頑張りは、俺たちが、知ってる。それに、このまま頑張っていれば…端的に言って、最強になる」

 

「あ、そうだよね。オールマイティーなんだから、オールマイティー突き詰めるとどんな術でも使える3代目みたいになるよね…

そうじゃん!!サクヤ!!このままのサクヤで十分だよ!!目指すはプロフェッサーだよ!!」

 

「マシロ君…カンヌ君…」

 

私はこの班員の優しさがとても痛い。

 

「それができたら器用貧乏なんて言葉は生まれねぇよ!!バカ!!」

 

とても痛い…

 



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17

 

久しぶりにサザミと任務が入った

サザミ班ではなく、他二人は前任の持越しらしく

任務に関しての情報は二人から聞くよう火影様から言われた

内容は木の葉の情報を草忍の間者に持ってかれたらしく

その情報を取り返す任務だそうだ

 

「その情報っていうのは物なんですか?」

 

「分からん、俺たちが発見したときはもう取引が終わった後だった。」

 

「じゃあ最悪その場にいたやつ皆殺しも有り得るな。何人だ」

 

「5人です」

 

「潜入にしては多いな…」

 

「内、木の葉に潜入していた草忍1人を尋問にかけて聞きだした情報によると草にそのまま帰るわけではなく迂回路を取って雨によってから行くそうだ、次の集合地点は―」

 

滝隠れの里

他里をそのまま集合地点に使うとなるとなかなか争いごとを起こしにくい

 

「滝に入る前に始末しましょう。」

 

「それがいいな。里に入られると後処理めんどくさいし」

 

増援が来る確率は少なそうだが、なんだかきな臭くなってきている

警戒しておこう。

 

 

 

 

 

「前方300m先チャクラ反応有!!額当ては確認できませんが人数から言っておそらく草の物と思われます!!こちらに気付いた様子は有りません!」

 

「先回りしよう。これ以上進まれたら戦闘中滝に入ってしまう」

 

「了解!!」

 

私と、日向の中忍の先輩を陽動に、サザミともう一人の先輩は気配を消した

 

「日向の先輩、前衛お願いします。中遠から援護します。」

 

「了解!!サザミさんの甥っ子の実力、楽しみにしてるよ!!」

 

甥っ子じゃねえつの

取りあえず言葉を飲み込んでそのまま突っ込んだ先輩を起爆符や手裏剣により援護する

未だ、下忍なのはきっとこういう戦闘に積極的ではないからだろうなと考え事をしながら援護を繰り返していたら、いつの間にか自分の背後に回られていた

 

「おい!!」

 

遠くから聞こえたサザミの声と共にハッとした私はとっさに腰の剣を抜き日向先輩に背を向け相手の剣を受け止めた。

 

「受け止めたのは外れだったな」

 

チャクラ刀か!!

 

焦った私は急いで自分の刀にもチャクラを流した

しかし、本当の外れはそこでは無かった

目の前の敵が私の雷遁のチャクラで黒焦げになる中

後ろから血が舞ってきた

 

「えっ―」

 

日向の先輩がやられたのではない

日向の先輩がやったのだ

 

私を守るように構えた、サザミを

 

右腕から血を流し、それでもなお日向先輩の猛攻を凌ぐサザミに圧され、私は少しずつ下がって行く

なぜ、何故先輩が

 

気付いた時にはサザミ共々木に打ちつけられていた

 

「うっっぁ」

 

頭の中には『何故』しか浮かばない

日向先輩の後ろには先ほどから交戦していた敵

そして、情報交換した先輩

 

頭の中によぎったのは幻術

サザミを守るように体を動かしつつ解の印を組む

 

 

 

何も起こらない、

 

 

 

草の間者とやり取りしていたのは今、木の葉にいる奴じゃない。

こいつらだ。

裏切りが、確定した。

 

 

そこからの記憶はほとんどない

サザミの話では

相手はサザミを狙っていたようで、私をおとりに使い里端まで追い込み、暗殺するつもりだったそうだ。

私はただ、同じ里の仲間2人を手にかけ、息も切れ切れのサザミをおぶって、草の忍びを撒き、逃げ切り、木の葉の門の前で倒れただけだった

 

殆どない記憶の中で、私は

死んで変化の解けたカンヌ・エイガと日向マシロを見つめる事しかできなかった

 

 

サザミに守られ無傷の私は、すぐさま新しい班に配属され

入院したサザミの顔もまともに見れず、また怒涛のような任務をこなす

 



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中忍(暗部)編
18


 

「えー第2回家族会議をはじめまーす!」

 

「はい、議長。」

 

「どうぞ隊員ナンバー2」

 

「これ会議じゃなくね?」

 

「それ言っちゃおしまいだよー」

 

サザミが退院したと知らせを受け

結局見舞いには行けなかったし、お迎え位はするかと任務続きで全然帰って無かった家を掃除し、待っていたら

 

帰って来たサザミは私を蔵に引っ張り

蔵を囲う程の結界と、蔵を封印する手筈を始めた。

どうやら、相当な事話すらしい。

察した私はサザミの指示通り動き蔵は見事内側から封印された。

これで良し!と声を上げたサザミは先程の家族会議云々をのたまった

 

「で、今度はどんなやばい事があったの?」

 

「やばい事確定で話すなよ。希望を持とうぜ?」

 

「やばくないの?」

 

「悪い話と、もっと悪い話がある。どっちから聞く?」

 

「いい話から。」

「んなもんねえよ」

 

そう言ってサザミは、笑った。

 

「まず悪い話な。

サザミ班の班員2人の死亡を確認した。お前が証言した通りの場所にあった。遺体は木の葉に帰って来た。」

 

「はい。」

 

「で、もっと悪い話。

あいつらはダンゾウっつう俺らの持ってる写輪眼を狙う根の構成員だった。」

 

はいしんだー

もー

やだー

だからやなんだよダンゾウはー

だからモテないんだよだんぞうはー!!

 

「まあお前の顔を見る限り事の重大さは分かってるだろ。序に言うと俺の推測ではこの話に大蛇丸が関わっている。敢えて断言しよう。絶対そうだ。」

 

断言するなよー

希望を、夢を持たしてくれよー

 

「なんたって元根の忍の俺が保証する。」

 

「え?!まじで?!」

 

絶望した

何だって、この叔父は根なんていう危ない組織にいたんだ!!

まてよ、根にいたって事はサイとかが言ってた呪印が発動するんじゃないのか?

どういうことだ?今、普通にダンゾウの事話せてるぞこいつ…え?どゆこと?

 

 

急に私が考え込んだせいでサザミも黙る

その沈黙のなかどう聞くか考えあぐねる私

 

「サザミぴーんち…て事?」

 

「そう、サザミピンチ。崖っぷち。」

 

崖っぷちのくせしてピンチのくせして

この叔父は何故かニヤニヤと笑っている。

んんん?

 

「…………腕は治る?」

 

「ああ、治る」

 

「………サザミはまだ死なない?」

 

「ああ、死なねえ。」

 

「……そこに置いてあるピンポンは関係ある?」

 

「まあ多少はな。」

 

「…腕の後遺症は?」

 

「残る。」

 

それかああああああああああ!!

こいつ後遺症を理由に忍び引退しようとしてる!!

大工でやってこうとしてる!!

 

「狡い!!ずるい狡い狡い狡い狡い!!自分だけ戦線離脱とか狡い!!私も戦線離脱する!!」

 

「ハッハッハー!!残念だったな!!戦線離脱したきゃ足の一本でも折るんだな!!伝書鳩のサクヤちゃんよぉ!!」

 

「うっせ無駄に語呂悪い通り名で呼ぶなバカ!!どうせ私は伝書鳩に劣りますよぉ!!バカサザミ!!」

 

あの事件以来何があっても絶対に帰ってくる忍びとして二つ名がついてしまった『伝書鳩のサクヤ』

だっっっさい!!めっちゃダサい!!今すぐ辞めてほしい!!

もう愚痴る相手さえいない今の私はボッチまっしぐらだちくしょう

 

その後ブチ切れたサザミと数十分罵り合ったが、息が切れるだけと気付いた私は潔く本題に入ることにした(それは潔くはない、とかいうツッコミはいらない)

 

「サザミがダンゾウの根にいたのは分かった。けど…あそこは機密情報を漏らさないために舌に呪印を施すと聞いてる。

サザミにはないよね?どういうこと?」

 

急に真面目な話に戻ったが、こういうことがままあるので、サザミはなれたように近くに積まれていた本の上に肘をつきゲンドウポーズをする

 

「バックれた。」

 

「は?」

 

「呪印とか聞いて無くって、んなことやってられっかって思ってバックれた。」

 

「…根って結構最初の頃に、呪印施すらしいけど?」

 

「結構最初の頃は口八丁で誤魔化してそこそこレベル上がったからバックれた。」

 

「…お前、良く今まで生きてたな」

 

「俺でもそう思う。」

 

叔父の口の旨さはナンパの時だけだと思っていたが思ったより役に立つようだ。

私はサザミの悪運の強さに重いため息を吐くしかなかった。

 

「んで、あとなんか話しとく事あんの?」

どうせこの際だ全部聞いとこ、と思い私はサザミに目を向ける

 

「んーそーだなー…あ、」

 

「あ?」

 

「お前、あの件から中忍に昇格したから。」

 

「ああ?」

 

「そんでもって本日をもって繰り上がりで火影直轄暗部にしょうかーく。おめでとー。」

 

「あん?!」

 

あと10分で火影様との謁見あるから準備しとけよー

といいつつぱちぱちとやる気のない拍手で祝うサザミ

何っつーことを一番最後に持ってきてんだボケ!!とキレたところで時間は巻き戻らない

私は早急に封印術と結界を解き、急いで火影邸にかけこんだ

 

「なんじゃサクヤ、寝坊でもしたかっハッハッハ」

冷や汗だくだくで火影室に転がり込んできた私をみた3代目は笑って許してくれたが

恥ずかしい思いをしたので今日のサザミの晩御飯は鳥ささみのみだ

覚悟しとけ(怒)

 

「本人も来た事だ。さっさと終わらせるぞ。」

 

いけしゃあしゃあとこの場にいるダンゾウに視線を送るが、どこ吹く風だ

まあ、いい

何処から狙われるか私もよく考えてなかった

敵は本能寺だけではない

次はない

 

「先日の任務、そして中忍試験大義であった。よって、本日より真の目サクヤを中忍とし、火影直属暗部に昇格とする。異論はあるか」

 

誰も何もしゃべらない

だって、きっとこいつらはここまでシナリオ通りだからだ

だから私も手は出さない

こんな狸とキツネとムジナの化け物が揃った化かし合いに手を出したくない

 

「うむ、真の目サクヤ、これより暗部として裏から木の葉を支えてくれ。」

 

「はぁ」

 

「犬の面、そして名を授ける。」

 

「お主は今日からコマと名乗るが良い。」

 

「…ありがたく、頂戴いたします。」

 

全然ありがたくないけど

 

適当に言って火影室を出る。大きなため息を吐くのは仕方のない事だろう

あんなとこ一瞬でも居たくねー

取りあえず根に配属されなかった事だけはサザミに感謝しとこ

 

 

絶対サザミ(前例)のせいで警戒されてる 

 



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19

 

暗部に入って1年

暗部の仕事のおかげで無駄に雑用が上手くなった気がする…げっそりとしていると

最近根から火影直轄暗部に移動してきたテンゾウ先輩に話しかけられる

「コマ、今日の動き、なかなか良かったよ。もしよかったらこの後とか暇ある?ご飯でも食べながら反省会とかどう?」

 

「あースミマセン。私眠いんで帰って寝ます。さいなら」

 

最近任務終わりにテンゾウ先輩にめっちゃ話しかけられるわけは

暗部には珍しい子供だから、と言うのもあるがダンゾウの手先の可能性も捨てられない。

テンゾウ先輩とは年が近いのもあって良く組ませられる

 

私のオールマイティーは相変わらず健在で、体術が少し劣るものの幻術と忍術はそこそこ、暗部にいるおかげか、新しい術を覚えたりと手が増えてきている

そのおかげで雑務が増えるわけだが

いっその事感知タイプの技覚えようかな…とか思い始めてる時点でなんか、人間やめてる感じがしたのでちょっとそこには手を出していない

只先輩たちの「感知は持ってねえのかー」という視線は頂いているのでそこそこ慣れたら何かしらの感知系統は入れることになりそうだ

 

最近『伝書鳩のサクヤ』は

『火影の狛犬』に変わった

 

相変わらず微妙な二つ名だが何故狛犬…

私一人しかいないんだけど…

なんだかなー

と名前をもらった時から思っていたがこれは現況の元凶、ポンに聞いた方がいいだろう

なにせ一番最初にコマの名を付けたのはポンだからだ

 

「んで、コマって何?」

 

「ガハハ!おまえそんな事で悩んでいたのカ!!愛いのう!!ういのう!!」

 

「悩んではない。ただあんまりにも呼ばれるせいで…私ってそんな忠実なる下僕に見えるのかなと…これからもうちょっと、態度替えないとやばいかなとか…思っただけ」

 

段々と小さくなる声に、ポンは反比例して大きく笑う

やめろ、笑うな!!

サザミに気付かれるだろう!!

 

なんとか押し黙らせたポンは何故か父の話を始めた

「ヒヒッ作間はな、それはそれは親父さんにそっくりだったんダ。

生まれた頃は二代目に似てても大人と子供、そこそこ見分けがつくってもんだガ、大人になるにつれてナ…、2代目にあまりにも似すぎてて、ナ……

その頃には2代目も亡くなっていたんだが、あんまりにも似すぎてテ、とゆうかそのまま二代目の顔で、大笑いしたり、鼻の下伸ばしたり、泣きべそかくもんだからチョっと威厳がナ…」

 

「ああ、父さんって威厳の威の字も無い人だもんね…」

 

泣いて笑って怒ってと感情が良く出る父を思い出す

 

「んで、まあ2代目の現身もそれじゃあヤバイってことデ、面で顔が隠れる暗部に配属になったんダ。まあ、作間は『ぜってーダンゾウの奴2代目に顔向けできねえ何かしてる…』とかぼやいてたガ。まあそこであいつの暗部名がコマだっタ。」

 

「え、待って嫌な予感してきた…」

 

痛む頭に眉間をグリグリと親指で押す

 

「ま、大方お前の予想通リ、着いた二つ名が『火影の狛犬』。火影直轄部隊っちゅーのもあるが、ダンゾウとは相いれなさすぎてナ、火影のゆう事しか聞かねえからそう呼ばれとっタ。」

 

「私、全然関係ないじゃあああああああんんん!!」

 

思わず叫んでしまった私は

下で何かやってたのかサザミの「うるせ―――!!静かにしろボケ!!」という声で我に返るが良く考えてみても、どう考えてみても全然私と関係なかった

 

「ワシも聞いたときゃぁ驚いたが

親の七光りも、ここまで来るとあきれて笑うしかないわナ!

ガハハハハハハ!!」

 

ガハガハと笑うポンに私は何も言えず

私はどこまで父と、2代目と同じ扱いをされるのかとこの先に絶望した

 

「サザミがいっとったわ、暗部名決める時ダンゾウが決めたっと!」

 

もうこれ以上あの名前を聞きたくなくなった。

 

 



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20

 

暗部に子供が入った。

珍しく根のものでは無いそうで、たいそう珍しがられた

 

子供でも強い奴は強い

そういう認識が根付いている暗部では珍しく、見た目通りの実力で、期待していた暗部の者は肩透かしを食らった。

しかし、大して尖った実力はないものの暗部で飯を食うほどには実力は足りていて

それでいて様々な術に精通してるのか、思いもよらない援護や、攻撃に未来の期待は大きかった。

そして何より『必ず帰ってくる』

 

表では『伝書鳩のサクヤ』なんて呼ばれているらしいがこの実力は暗部に欠かせない

巻物を奪えても、情報を得ても、帰ってこなければ何の意味もないからだ。

このまま順調に成長すればやがて木の葉の柱の一つになりえよう

聞いてみればあの、うちはイタチと同期で、作間さんの倅、サザミさんの甥、そして極めつけに2代目火影の孫、というので納得の仕上がりだ。

 

本人は「感知が無いんですよね~」

何てのんびり言っていたが、それ以上幅を広げると俺らの出番がなくなるからやめてほしい。

 

この子は出来ない事はやらない、自分の実力をよく分かっている。

今ある材料で足りない部分を自分の技量、知識、経験で埋められ、確実に任務達成をこなせる貴重な人材だ

何処の班に入れようとも馴染むので未だ特定の班所属には至ってない所がまた『火影の狛犬』を彷彿させて苦笑しか出ない。

 

初代の『火影の狛犬』との任務はやったことはない

だが昔から話は幾度も聞いていて

1年ほど暗部時期が重なった先輩のサザミさんに「お前その髪色で狛犬面は絶対被るなよ」と忠告されるほど威光が大きい人材だったらしい。

その倅がこうして同じ名で、暗部で活躍しているのだから3代目も心労が耐えないだろう。

コマと呼んでは我儘を言う姿を見るとそうでもない気がするが

 

最近、根から移動してきた後輩のテンゾウが、コマを良く食事に誘っている姿を見る。

あれあれ?と思い、からかい交じりにつついてみると、自分と年が近いしとか、なんだか目が離せなくてだとか、何時もの無表情から似合わない返答が帰ってきてちょっと面白い事になった

まあ年も近いしいいんじゃナイ?とか思っていたらどうやらその行く先は暗雲を垂れこませているらしい

「ねむい」「だるい」「めんどくさい」と断られているそうだ。

いや、さすがに何回かはもう行ったあとなんだよな?と冷や汗をかきつつ聞くが

無言が帰って来るだけだった。

 

頑張れ若人。まだまだ未来はある。女も男も星の数ほどいる。

肩をたたいてテンゾウの横を通り過ぎたら、好きな人は一人しかいないんです!!と泣き付かれたので変わり身の術をしてさっさと家に帰った。

 

君子危うきに近寄らず。

初恋をこじらせると、ただのめんどくさい奴になるだけだぞ。

 




(オビト然り)

カカシ先生の話し方わかんない


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21

今更だが、性質変化の話をしようと思う。

ナルトでは火遁⇒風遁⇒雷遁⇒土遁⇒水遁⇒…

というふうに強弱があり

一つないし、3つぐらいまでを主に扱う忍びが多い

 

性質変化には相性があり

例えばナルトは風遁、サスケは雷遁、火遁というように人によって扱う性質変化は変わってくる

 

私が主に使っているのは風遁

火や、水のようにチャクラ量がそのまま技の威力に反映されにくいのでチャクラ温存の為良く使う

風は空気がある限りどこでも使える。

水中戦にならない限り無敵だ(鬼鮫とは相性が抜群に悪いだろう)

 

次に使うのが土遁

此れも同じような理由で良く使う

只、空中戦になったら少しめんどいので風遁を使う頻度には劣る

 

そして最後に雷遁

刀に風遁をかけるとめっちゃ切れるが、雷遁は付加価値が大きいので、相手を無力化したい時などに良く使う。(暗部では使う機会は少ないが)

 

以上が私の性質変化だ。

と言いたかった

 

何故か、

いや、さすが2代目の血を引いているだけあって私は、陰陽遁以外全部使える。

良く聞いてくれ。

 

五大性質変化全部使える。

 

 

これが私を器用貧乏を器用貧乏たらしめているところである。

得手、不得手あれど全部使えるので、必要に応じて使い分けているが

使用頻度が高いのが上記の3つ

他水遁と火遁はちょっと色んな意味で大技を使えないのだ

 

私のチャクラ量は一般より少し多い程度のチャクラ量

そう、大して多くはないのだ

戦闘開始早々に、水衝波なんてつかった暁にはもうその日はチャクラはすかんぴん

戦線離脱するしかなくなる

 

それでは困るのだ。

遠足はお家に帰るまでが遠足

任務は里に帰るまで、いや任務報告が終わるまでが任務なのだ

 

そして私の最大の欠点

火遁だ

 

何故か火遁が赤やオレンジではなく、白い…

白い炎が出てくる…

 

まあ、言いたい事は分かる

皆までいうな。超かっけぇ。

だが、火の温度は赤から始まり、青、そして白と温度が上がる

私が全力で業火球なんてした場合…わかるな?

敵味方、土遁も水遁も関係なく、私の前方は跡形もなく散るだろう。

 

そして問題なのがここから

 

何故か私が火遁を使った後は、私から出る息や言葉はすべて白い炎に飲み込まれる。

何話しても出てくるのは白い炎。

ため息が白く燃え上がり前髪を焦がした私をみて笑ったのはピンだったかポンだったか

この珍事にもチャクラは使われ続けるので、そう多くはないチャクラをそれで使うのには惜しい

水遁の場合、自分の技で溺れてた可能性があると思うと、まだ火遁で良かったと思う

数分でこの事態は収まるが、忍びの戦闘中にその数分は痛いので

サザミと火遁の練習をした際「おまえ、それ、一生するなよ」

と真顔で言われたからにはうなずくしかない

 

ちなみに鼻からも出た

 

 

以上が私の性質変化の現状だ

他にも結界とか封印術とかあるが今のところ暗部の先輩のサポートも有りこれで間に合っている

火遁はピンの狐火で十分だし不便はない

でもやっぱり索敵系の術が欲しいな…

 

 

ということで、

アカデミーの図書館で索敵系の術でも探すかと足を運んだらミカン先生に捕まった

なんで捕まってるんだよってつっこみは今回もよしてくれ、私なりのミカン先生との良好な関係を築くためのコミュニケーションなんだ。

 

ミカン先生の話は長い

何かとどんくさく、外れくじ(私の担任)をひいたりと真の悪い先生だが、悪い先生ではないし、一応私なりに慕っているのだが

如何せん話が長い

お前は井戸端会議のおばちゃんかよと思うぐらい長いのであまり捕まりたくないのだ。

と、そこに顔に一文字の傷を付けた中忍とアカデミーで何度か会った事のある先生が通りかかりミカン先生を呼び出した

これはラッキーとその中忍にミカン先生を押し付けようとおもったら、どうやら呼び出したのはミカン先生の上司の方だったようで残ったのは私と中忍

まあ、予定は多少狂ったが図書館の方に行くかを踵を返そうとしたら中忍に声をかけられた

 

「あの、伝書鳩のサクヤさん…ですよね?」

 

「…」

 

出来ればその名で呼んでは欲しくなかったな…

つか狛犬の方は浸透してんの暗部だけなのかと少し不思議に思ったが

取りあえずその人当たりのよさそうな中忍に顔を向けた

 

「ああっと、名乗りもせずすみません!!私、うみのイルカと申します。俺、その伝書鳩のサクヤさんにあこがれててっ!カカシさんからも話を良く聞いていてて…って急にこんな知らない奴から話しかけられても困りますよね!すみません!!」

 

いっいるかせんせいだと?!

私が急な自己紹介に唖然としていると思ったのか謝りだしたイルカ先生

何か喋らねばこれは収まらんと思い私も口を開く

 

「あ、その、大丈夫です。えっと、真の目サクヤです。

あまり、その、二つ名好きじゃないので…普通に名前で呼んでいただけると、助かります。」

 

はい、テンプレボッチ喋り――――!!

でゅふでゅふ言わなかっただけましかと、とりま気持ちを落ち着ける

つかこの人カカシ先生の部下だったんかい!!

エリートまっしぐらやないかい!!

誰だよパッとしない中忍的なこと言ったやつ!!

じゃっかん白目向きかけてると、落ち着いたのか何なのか今度はゆっくりとした返答が帰って来た

 

「あ、すみません…俺、その、真の目さんにあこがれてまして…俺の方が年上なのに変ですよね。」

 

少し顔を赤くして下を向き首の後ろをさする姿は天使であった…

サクヤに 100の 攻撃が 当たった !

 

「い、いえ。里の忍びとしてイルカせ…ゲフン、うみのさんのような人に慕っていただけるなんて光栄です。ありがとうございます。

あの、真の目って多いので私の事は気軽にサクヤと御呼び下さい。」

 

なんとか表情筋を押さえつけ、笑顔は無理でも真顔で答える事は出来た

気が緩むとイルカ先生と呼びかねない現状

今すぐここを離れないとやばい

次の被弾は確実に免れられないだろう。

 

「いっいえ!!そんな、こちらこそ、俺の事なんかイルカと気安く呼んでください。

サクヤさん…にそう言われると嬉しいです。」

 

はあああああああああ!?

天使すぎてブチ切れるわ!!

 

その後私たちはたどたどしくも会話をつづけ(イルカ先生のコミュ力のおかげである)友人となり。美味しい甘味所や、資料室にいくつか索敵系の術があるとか情報を交換して別れた

 

カカシ先生とかは何度か任務で会ってるけど

イルカ先生のように私事であったキャラなんて、あの憎きシカクのクソオヤジ位しかいないので、めちゃくちゃどぎまぎした

すごい、いい人だった。

結婚するならああいうひとがいいな…と思うぐらい良い人だった。

 

 

監視任務中暇すぎてテンゾウ先輩にその話したらめっちゃ怖い顔で結婚はまだ早いと言われた

いや、例えだってば

 



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22

最近チャクラ刀がよく折れる

めんどくさいのでお財布と相談して、ちょっと高くて良いチャクラ刀を買って時間数を伸ばしているが、段々頻度が上がってきているせいで私の財政は傾いている。

サザミに相談したら、もう少し安いの買って使い捨てするぐらいしか思いつかねェな。と言われた

安いチャクラ刀なら俺良い所知ってんぜと隣の元忍び現大工のオッチャンに言われたので3回に一回折れている現状を1回でぶち壊す感じで使えるチャクラ刀を定期契約した。

そんなに使わないが。使うときは使うのでいいものを使いたいがこれも致し方なし…

背に腹は代えられなかった。

何時壊れるか分からない刀を使うよりはましだった。

 

暗部にあのうちはイタチが入ったらしい

暗部名は知らないが私よりちっさいのですぐわかった

うちの家系は無駄に背が高いので、イタチ君が私の身長を抜くのは当分先であろう

だが前まで私が一番チビだったので少しうれしい(暗部はでかい奴が多い)

とか思ってた時期が私にもありました

 

 

 

「サクヤ、お主にはうちはイタチの監視任務を言い渡す。」

 

ダンゾウに急に呼び出されたと思いきやこれだよー

だからモテないんだってばー

今まで2年の自由期間は何だったの…

伏線?伏線だったの?

フラグだったの?

 

取りあえず私火影直轄なんで火影通して命令してくださいとその場を逃れ一応3代目に報告しといたが、多分あいつ根に引きずり込みたいんだろうな~っていうのが見え見えでその裏が読めずやな感じだ。

 

サザミにも一応報告はしたが

「まー大蛇丸に引き渡されてコレクションされるよりはいいだろうけど。使い捨てだけはされないよう気をつけろよ。」

と言われた

サザミの大工ライフは順調らしく今日も棟梁からトンカチが飛んできていた

そこだ!!やれ棟梁!!いっけぇえええ!!

 

 

 

4代目の忘れ形見、九尾の人柱力、そして母の仇がアカデミーに入学するらしい

3代目がウキウキと入学式に参加しようとしていたがその日は湯の国との会食があるので残念ながらいけませーん!!

影分身で参加してくださーい!!

ずるずると引きずって参加した会食で3代目が恨めしそうに私を睨みつけていたが

ッハ、残念だな、そいつぁ影分身だ。

 

もう、そんなに時間がたったのかと少し感慨深く思う。

でもって、うちはイタチの里抜けっていつだったけ?

 

この間のダンゾウの様子からもう2重スパイはしているのだろうが

一応サスケがアカデミー入ってからだし…

アニナルのサスケが苦無を正確にイタチに向かって投げているところを見ると

手裏剣を扱うのが1年目で…苦無を投げるのが2年目だから…飛び級したせいであんまアカデミーカリキュラム詳しくないんだよな…

こんどイルカ先生に聞こ

イルカ先生が『先生』になったらしいので潔くイルカ先生と呼べるようになり私はそう呼ばせて頂いてる

イルカ先生は少し恥ずかしそうに「私は、サクヤさんの先生ではないのですが…」

と言っていたが私はイルカ先生をそうとしか呼べない呪いに掛けられてるので無理だ

諦めてくれ。

 

 

 

会食会場の屋根で暇をつぶしていたら見張りの交代が来た

この交代で私は休暇に入るのでそのまま里に帰るか…

いや、ちょっと温泉でも入ってゆっくりしてくか

せっかくの休暇だし

 

 

途中白髪の覗きがいたのでのして簀巻きにして川に流したら、湯上りに白髪に捕まった。

 

「お前のぉ!取材を邪魔するどころか、川に流すのはないんじゃないかのぉ!」

 

酒を飲みながら私に文句をぶー垂れるはあの伝説の三忍がひとりエロ仙人だ

 

「覗きは重罪なんですよ。見つけ次第簀巻きにしてコンクリに詰めて海に沈めろと私はアカデミーで習いました。」

 

「おま、鬼畜だのぉ…

全く、最近の若者はアカデミーで何教わっとるんだか…」

 

ちょっと引いていたが実はこれ本当だ

白百合先生が拳を握り熱弁していたのでコンクリと海はなかったが、簀巻きにして川に流しておいた

 

「お主、作間ん所の倅だろ?」

 

「そうだけど?」

 

「顔がそっくりだ!」

 

「2代目に?」

 

 

その言葉にふと止まったこの爺はきっと父さんの苦悩を知っている人なのだろう。

 

「今『狛犬』してる。」

 

「そうか…」

 

狛犬でなんやかんやを察したのだろう。微妙な顔をされた

 

 

所で今更なんだが私とこの爺は初対面である

多分あの伝説の三忍が一人エロ仙人だと思うのだが名前は聞いてない。このエロ仙人とあまりかかわり合いになりたくないからだ。

こいつ、地味にキーパーソン的位置にいるのだ…

 

私の祖父、2代目がすべての元凶の位置にいるならば(穢土転開発者、うちはいざこざの元)

この人は渦を作る立場に居る

それが善であれ、悪であれ、その繫がりに私を入れられるとたいそう困る。

なんたって非力な只の中忍である。

あんな妖怪大戦争に巻き込まれるのはごめんだ。

精々、大名の護衛ぐらいが丁度いい。

 

温泉にも入れたし、美味しいごはんも食べれたので(エロ仙人のおごりである)いそいそと帰る準備をしていたら待ったとばかりに腕を掴まれた

 

「お主、作間の術は受け継いだか?」

 

「ああ、ここにある。」

 

胸をポンと叩きそれを皮切りに私たちは分かれた。

 

 

 

 

 

 

 

「いやーお主どんだけ恨み買ってるんだか。こんな人の山を見たのは久しぶりだのう」

 

「私も見るのは初めてですよ。」

 

湯の国から木の葉への道のり、私は木の葉の暗部と思われるものに襲われた

殺しては反逆と言われかねないので丁寧に気絶させていたらエロ仙人も加勢に来てくれた

近くに倒れてる奴の口を開かせ呪印の有無を確認する

チッ根の者か

そいつの意識を無理やり覚醒させ幻術に掛ける

一応、保険だ

 

「首謀者は誰だ。」

 

「うっぐあっ」

 

「言え、首謀者は誰だ。」

 

喋らないだろうなと思いつつ、手を取り、指の骨を一本一本折っていく

絶え間ない叫び声に目が覚めたのかそこらへんに転がしておいた根の者が私に攻撃を仕掛けてくるが、私は結界の中だ。

 

指の7本目で力尽きたのかそいつは誰かの名前を言いかけ、こと切れた

呪印が本物だと確証された

 

手に血が付き汚いのでそいつの服で血を拭っているとエロ仙人が結界の周りの奴らを片づけてくれていた

呪印を見たのか微妙な顔をしていた。

 

「一人生かしておいてください。伝言に使います。」

 

「りょーかい。」

 

久しぶりに使う火遁で1人を残し、すべて、跡形もなく燃やし切る

白い炎に自来也は驚いていたが無視した

残した一人を起こし、白い炎を吐きつつ私は喋る

 

「首謀者に伝えろ。あれはもう燃やした。この世にはない。」

 

それを聞き届けた忍びは静かに闇に溶け気配は遠くへ去っていった。

簡易結界を、私と自来也様の周りに張り、内側から封印をかけ外から悟られないようにする。

 

「結界と封印が無ければ何もしゃべれんとは、お主、も難儀よのぉ」

 

「…それ程のモノですからね。」

 

「作間も、厄介なものを残した。」

 

「どっちかってゆうと2代目がすべての元凶な気がしなくもないですがね。」

 

「フッたしかにの。お主らにかかれば2代目も型なしよ。変化の呪いは解けたか?」

 

「ええ、サザミのおかげで。」

 

「作間もあれには泣くしかなかったからの。最初は変化さえ解けなくてべそかいて2代目に助けてもらっとったが…」

 

「こっちも似たようなものです。もちろん2代目の姿で木の葉を泣いて走りましたよ。」

 

「ハッハッハ!!流石作間の倅じゃ!!良い性格しておる!!2代目も草葉の陰で泣いておろう!!」

 

口のチャクラが落ち着いたのか、このころにはもう口から出る火は落ち着いていた。

言葉まで火に飲まれると任務にならないので特訓した甲斐があった。

顔近くで、火を噴きながら喋られる、という結構スリラーな脅しにもなったから丁度好かったろう。

 

「あの目は今サザミが持っています。」

 

「そうか」

 

「サザミが死ねば自動的に私に譲渡されるので私はその日すべてを燃やそうと思います。」

 

「そうだな、それが良かろう。すこし、寂しくもあるがな。」

 

「叔父の、お知り合いなんですか?」

 

「ん?ああ、狭間と隙間にはちっとばかし恩があっての。それに、作間とは良き友であった。」

 

「そうですか…それはすみません。」

 

「いや、気にするな。作間も言っていた。過ぎたる力は滅びをもたらすと。この目は生まれ来る命が、生き残るための保険だと。」

 

どうやらサザミのあの言葉は父の言葉だったようだ。

どうせ憧れの忍びもこの感じから行くと父なのだろう

父の死は、遺言も何もない突然の事だったが、こうやって話を聞くと父も、私も大して思う事は変わらなさそうだ。

もし、違っても故人の遺志に沿う気はなかったが、同じは同じで嬉しいものだった。

 

それからエロ仙人とはそこで別れ私は木の葉に帰還した。

ダンゾウは何も言ってはこなかったが、また機会があればちょっかいをかけてくるだろう。

今回はエロ仙人がいたからどうにかなったが、この先どうなるかはわからないし。

やはりここでいっちょ修行でもしてバージョンアップするか~

と思いつつ3代目に今回の事報告したら、

「丁度良い。最近ちょっと困っておってな―」

とナルトのお守りを任せられた

 

嘘だろダーリン

マジじゃよハニー

 



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23

ナルトのお守りは圧しに押し切られ

「むりむりむりむり!!」

と言いながら火影にナルトくんの家まで引きずられ

 

「うずまきなると!!5歳だってばよ!!」

と元気よく片手をパーにして自己紹介をされ

 

「真の目…サクヤ…だってばよ…」

自己紹介せざるをえなくなった

 

経緯は

ナルトくんのお世話係はちゃんといたのだが色々あって(まああれですからね)

解雇せざるをえなくなり

丁度アカデミーになれた頃だし一人暮らしでもさせてみるか、とさせているのだが心配なのでちょくちょく様子を見てくれというお達を私が受けたということだ。

そういうのは縁が深そうなカカシ先生とかにやらせろよとか思ったが、私はしがない中忍暗部、そして親の七光り…火影の言うことを大人しく聞くしかないのである

 

取りあえずその日はナルトくんとご飯を作り、三代目も一緒に食べ、今日アカデミーで何やったとか、修行はどんな感じだとかの話を聞きお開きとなった。

 

さすが5歳で独り暮らしさせる気になる子供、包丁は使える様だったのでナルト君宅にある大人用包丁ではなく、私が使っていた子供用包丁を譲ることを約束した。

 

 

 

あれから数日、何といって何もなくナルト君の家に顔を出しては

「部屋が汚い!!掃除しろ!!」

としかり

「なんで野菜買わないんだ!栄養バランス考えてご飯を食べないと忍びなんか夢のまた夢だぞ!!」

と脅し

「はぁ?バケモノって石投げられた?!どこのどいつだその馬鹿は!!私が滅してやる!!」

と怒ったりと色々あったがそこそこ仲良くやっている

 

ナルト君には「ねえちゃんこえーってばよ…」と引かれることが多いが

躾けのなってない子供が嫌いなだけだ。

持論だが躾には痛みが…とは言わんがまあ、一定の恐怖は必要だと思っている。

最近はそんな事より修行だってばよ!!と突っかかられることが多いが(多分私が忍びだとバレたのが大きい。)

今日の晩御飯何しようかな~とか言うだけでころりと変わるので良いように転がして自分だけの修行時間を伸ばしている。

火影にばれたらやばいので、なんちゃって忍者修行は見てやっている。

 

しかし、こうやって里の平和な部分を見ているとなんだか自分が置かれている暗部という部分が途轍もなくブラックに見えて仕方がない。

さっき人を殺した手で幼いナルト君にご飯を作っていると思うと病みそうだ。

もちろん手は洗ったし、今更PTSDのようにフラッシュバックはないが少し落ち込む。

 

「サクヤ!!サクヤ姉ちゃん!!今日のご飯何だってばよ!!」

 

帰ってくるとき家の電気がついているのが嬉しいのかナルト君は不定期で来る私の来訪をとても喜んでくれる。

 

「帰ってきたらただいま!!そして手と喉と…風呂に入ってこい。」

 

どろどろのナルト君が嬉しそうにただいまと声を上げる

お風呂に向かう姿は何時かの私のようなのだろう。

母に呆れられた風呂場の修行を思い出す。

親になるには早いが姉のように私は思っている。

ナルト君の声が耳について離れない

私はそれを大事に、大事に、持っていたいと思う。

 

 



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24

 

さいきん、おれにねえちゃんができたんだってばよ!!

ねえちゃんはこわくて、つよくて、やさしいってばよ!!

ときどきしかこないけど、ねえちゃんが来る日はだいたい月曜日と木曜日!!

それ以外の時も来てるらしいけど俺がアカデミーに行ってるときや寝てる時だったりするから俺がきづいてないだけだってねえちゃんはゆうけど

俺の悪戯に全然引っかかってないから絶対嘘だってばよ!!

 

「ナルトの悪戯なんかに誰が引っ掛かるかよ、めんどくせー」

 

シカマル煩いってばよ!!

俺だってまいにち、しんかしてるんだからなー!!

 

「それをゆうなら進歩だ。なぜなら…」

ねえちゃんの作るご飯は凄く美味しいんだってばよ!!

俺ってば、ラーメンも好きだけどねえちゃんのご飯が一番好きだってばよ!!

時々ねえちゃんのいちぞく?のご飯に誘われるけどその時もすっげすっげぇ美味しいんだってばよ!!

皆でわいわいしていっぱい話していっぱい食べてねえちゃんの横で寝るのがすっごい幸せなんだってばよ!!

 

おれってば…里の奴らに嫌われてるだろ…?

だけどねえちゃんの一族は全然気にしねぇんだ!

俺の話を聞いてくれて、俺の事を見てくれて!!、おれ、すごい大好きなんだってばよ!!

 

なあ…

俺ってば、ねえちゃんの家族になりたいって言ったらだめかな…

 

 

 

 

ナルト君に真の目になりたいと言われた。

大方真の目の集まりに連れてった時に棟梁に気に入られてたから、真の目の話を聞かされたんだろう。

だが申し訳ないが大人の事情でナルト君はうずまきでなければ困るんだ…

ほんと、マジ、申し訳ない。

 

「なんでなれないんだってばよ!!

皆真の目じゃないのかよ!!

俺の父ちゃんと母ちゃんがいなくても!!

真の目になれるんじゃないんだってばよ?!」

 

大泣きに泣かれたがこれは木の葉のパワーバランスの話でもあるのだ

今九尾をどこかの一族が引き入れれば手籠めにしたとでも揶揄されるのは確かだ

真の目は泥をかぶるのを気にしないが、血をかぶるのは嫌う。

ダンゾウが黙ってない

真の目には作間の目がある

これ以上真の目を大工とて、のさぼらせられないのだ

只でさえ奇人変人の集まりに九尾を入れるだなんて、キャンプファイヤーにダイナマイトを投げ入れるようなもんだ。

 

今まで『原作』の話を、あまりしなかったが、あの道筋を通らなければいけないとは私は思ってはいない。

しかし、うちはオビトが九尾事件を無事起こした時から、もう歯車は戻らない事は確定していると思っている。

 

君は真の目では困るのだ

4代目の息子、うずまきナルトでないと話が進まないのだ。

きっと何も知らなければ私もパワーバランスほっぽいて真の目でもいいかと私の兄弟にでも籍を入れてしまっただろう。

しかし、知っているのだ。

全てではないが、大方を知っているのだ

昔広告の裏に書いた大筋は今も変わらず進んでいる。

次はうちはだ

あれを止めたら何が起こるのだろうかとは思うが

所詮、私は家族さえ守れないただの忍びだ。

 

ナルト君があまりにも卑屈になっていたので気晴らしにと真の目の会合に連れてったが失敗だったかもしれない。

あそこは良くも悪くも奇人変人の集まりなのだ。

忘れていたことを思い出したような気がした。

 

泣き付かれてソファーに蹲ったまま眠るナルト君のおでこを突いた。

また泣きそうな顔で眉を寄せ私の名前を呼ぶナルト君。

誕生日を祝う事も出来ない私に、ナルト君を慰める権利はない。

 



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イタチ編
25


最近ダンゾウがまた煩くなってきた

うちはイタチの監視をどうしても私にやらせたいようだ

ダンゾウは私が作間の目を持っていると思っているので

共倒れを狙っているのだろう

 

だが断る!

 

と言っているのだがあまりに煩く、終には3代目も唸るしかなくなり

監視と名ばかりにイタチとペアを組んで任務にあたることが決まった

イタチとの対面時、面で見えなかったろうが私の顔面は蒼白だったろう

 

イタチ君は優秀だ

1を言ったら10了解してくれる

「お前最高の頭してんな」

と言ったら

「コマさんの方が最高にイッてる頭ですよ」

と皮肉られた

以前私の火遁に巻き込まれたのを根に持ってるのだろう。

火力というか温度にびびったイタチ君は写輪眼発動させて私の事をにらんでいたので

相当驚いていたのは確かだ

右腕火傷したんですけど

と、ねちねち、ねちねち、言ってくるので

京女ですかこの野郎と言いたくなるが、イタチ君は多分、京女を知らないので「へーへーすみませんねー」と謝っといた

脛を蹴られた

 

 

基本私とイタチ君のツーマンセルで事に当たっているが時々人員が補充される

それは根の奴らだったり、暗部の先輩だったり、カカシさん達だったりと様々だ

そこそこイタチ君とは気が合うので団子屋で次の任務までの暇をつぶしたり、暗部待機所のソファーを占領して二人でグータラしてたりすると先輩に春が来たな…とつぶやかれ、カカシさんには生ぬるい視線を頂く

何故かテンゾウさんにはイルカさんはどうなったんだ!!と詰め寄られる

だから例え話だっつーの

 

 

任務の帰り雨にやられ橋が崩れたので、日が落ちてるし野宿する事となった

丁度いい木の葉のセーフハウスという名の洞窟を発見したので、そこで休憩を取って服を乾かしていたらイタチ君に髪を触られた。

 

なんだ急に気持ち悪いな、と思いつつ放置していると

「髪、伸びましたね」と言われる。

 

「え?ああ、そう。じゃあ、そろそろ切るか」

そういや、最近目に髪の毛掛かるなと思い、適当に返事を返したら

 

「…伸ばさないんですか?」

 

と聞かれる

 

「伸ばしても邪魔だし、特に髪形に拘ってないからなぁ…」

 

私の髪を見てよく人は綺麗だとか月夜に生えるだとかおべっかを使ってくるが私は別に特に思うところはない

全てそれは父と2代目に掛かるからだ

私の顔は父似で2代目の現身

髪色もそうだった

クリーム色から大人になるにつれ銀になる。

 

「そんなんだから甥っ子なんて呼ばれるんですよ。」

うるせぇ

口が達者な元同期、暗部後輩の手を弾いて私は荷物の確認をする

 

「俺も、初めて会ったときは男だと思ってました」

 

苦無がひぃふぅみぃ…と数えているとまた頭に手を伸ばすのでまた弾く

 

「今度、簪あげるので、伸ばしてください」

 

起爆符また買い足さなきゃなーと、またまた伸びてきた手を弾き、忍具確認を終えると

写輪眼全開のイタチ君と目があった

 

え、なんか怒ってないこの人?

 

「ええっと…どうした?敵襲か?幻術か?」

 

ええい!!ままよ!!取りあえずコミュニケーションだ!!

コミュ力5の私にはこれぐらいしかできないがコミュニケーションを取らないとこいつの怒りは絶対収まらない感じだ

博士もそうおっしゃられている

夜は長いしさっさと見張り番を決めて寝たいがこの様子だと長くなりそうだ

 

「コマさんは分かって無い」

 

「へえ、さようですか。すみません。」

 

目を閉じて写輪眼を解除するイタチ君が、私の返事にイラッときたのか、次いでとばかりに幻術を掛けられる。

ので、目線で菓子折りつけて返す。

つい減らす口で喧嘩腰になってしまうのは御愛嬌だ

 

「テンって知ってます?」

 

何の脈略も無く言われても私にはちんぷんかんぷんだ。

 

「動物のテンなら多少は、知ってます…」

 

ひぃ!!殺気が!!殺気が漏れてますうちはくん!!

 

「あなたはどうせ忘れてるでしょうがね、俺貴方に…

いえ、やっぱり…何でもありません。」

 

えええええええ…

そんな顔で何でもないだなんて言われても困るよ?!

何かある顔だよ!?

 

「あの、何に悩んでるのか全然わからないけど、」

 

「でしょうね。」

 

うっ

後輩の言葉が痛い

察しが悪くてわるーござんしたね!!

 

「…あの、取りあえず、話してみたら?結界と封印掛けてやるし。秘密にしといてやるからさ、ね?」

 

こいつはその日の機嫌で任務の良し悪しがあるわけではないが

チームワークに問題が出そうなので、今日はもう使う予定の無かったチャクラを練って結界を張る事にした。

序にお外で話したらヤバイ事を話す時の封印術も内側から掛ける

するとあら不思議

外からは何の変哲もない洞窟

内からはお外が丸見えの特殊結界がかんせ~い

 

「で、なんだねイタチ君。」

 

腹をくくって私はイタチ君に視線を向けた

イタチ君、私は君がどんな性癖でも受け止めよう。

先輩として出来る限り(そういう経験あんまないけど)アドバイスはしよう!!

最近イタチ君に彼女が出来たという噂を思いだし即席イタチ君お悩み相談コーナーを作った。

 

「あの、そこまでしていただかなくても…いや、その方がいいのか…?」

 

イタチ君はぶつぶつと何か言っていたが私はイタチ君の性癖が何処まで歪んでいるかで頭がいっぱいだ

テンにしか発情しないとかだったらどうしよう…とか考えていた。

幻術で相手をテンに見せるか…いや、さすがにそれは相手が可哀相だよな…

 

「あの、取りあえず動物のテンから離れて下さい。」

 

その言葉に潔く私はさっきの対処法を宇宙のかなたに投げ捨てた

良かった―!!イタチ君は人間相手に発情する人だった―!!

 

 

「で、その、昔の話になるのですが。木の葉の西にある遺跡、覚えていますか?」

 

「え?ああ、知ってるよ。よく行ったよ。まあ遺跡巡り好きだから、西と言わず東西南北里外まで行ってたけど」

 

「それは…気になりますが置いておいて。…そこでうちはの少年に会いませんでした?」

 

私は、その言葉に凍りつく

あの少年の事がばれたか?

いや、私も少年もあれから一度も会っていない。

あの少年が口を滑らしたとして?

あの少年はあれから時間は経っているが会えていない所を見るともう消された後か…

私は頭を急激に冷やし

四股に血液が向かいいつでも動けるようにする

 

真顔のままイタチ君に目を向けるとイタチ君は口を開いた

 

「それ、俺です。」

 

「…は?」

 

「ですから、それ、俺なんです。」

 

「はああああああああああああ?!」

 

超ド級の衝撃発言が出た

 

え?は?なん?

わたしイタチ(幼少)に会ってたってこと?

古代言語、暗号、あまつさえ

あの、幻術のプロと言われるイタチ君に幻術のイロハ教えてたってこと?!

はあああああ?!

それ、すげえ影で鼻で笑われてるやつじゃん!!

幻術苦手とか言ってたあれは嘘かよ!!

私の純情返せよ!

 

唖然として『あ』の口から言葉が出ない私にイタチ君は畳み掛ける

 

「その、やはり、気付いてなかったようですね…一応何度か接点はあったんですけど…

これからは他人だと言われていたので俺も言い出しにくくて…すみません。」

 

あやまられてしまってはこちらも形無しではないか

イタチ君の小さなサインをこれ見よがしに見逃していたとは…

あんまり関わらんとこって思っていたのがあだになった…

 

「こちらこそ、あのテン君だとは気付かず数々の無礼すみませんでした。おかげで元気にやっております。あの情報は一生よそには喋りませんし、出しません。変な取引を持ちかけて ま こ と に、申し訳ありませんでした。」

 

土下座ポーズで冷や汗をかいている私はさぞ間抜けだろう。

 

「いえ、あの、そういうことがしたかったんじゃっ

頭をあげて下さい!!謝るのは俺の方なんです!!寧ろ感謝してるんです!!」

 

はて…感謝…とな?

私は下からイタチ君を見上げるが意味が解らない

そのまま肩を押され、土下座体勢から戻ったものの疑問は晴れない

 

「私なんかした?」

 

ので素直に聞く事にした

 

 

「しました。」

 

 

え、何したんだ私。

とりまファーストは奪ってないはずだ、序に純情も。(最初の話からすると私の事を男と思っていたはずだ。)

変な事をしてないかと3年以上前の記憶を掘り起こしていると、両肩を掴まれる

そのまま顔が近づいて―…

 

「俺に、知識という盾と、幻術という剣と、…何にも代えがたい愛情をくれました。」

 

おでことおでこが、こつんと当たった。

顔が近すぎてイタチ君のまつ毛が数えられそうだ。つかまつ毛なげぇ

2㎝以上あるんじゃねえのこいつ

 

「えっと、その、それはどうも…?」

 

答えといてなんだが、なんて言や良いのか全く分からん私の言葉は弱弱しい

てか、さっきから気になってんだけど…

 

 

メッチャ幻術かけてくんのやめてくれない?!

 

 

こいつ、動く度、瞬きの度、幻術かけてきやがって、返すのめっちゃ大変なんだけど?!

この雰囲気でこいつ何いってんだなんてツッコミは受け付けない!!

だって写輪眼全開のイタチ君を躱すので精一杯だからだ

 

ちなみに、以前私が三つ巴の写輪眼を開眼したと言ったな。ありゃ嘘だ!!

嘘じゃないけど!!

気持ちが高ぶって写輪眼が発動してその姿を誰かに見られ、ダンゾウとかに話が行ったらやばいと思った私は、サザミと相談して封印した。

封印は簡易だが。これで早々、写輪眼をお目にかかることはないだろう

と思っていたが今目の前の写輪眼がグルグル展開され私はその幻術を返すので手いっぱいだ

綺麗に光る赤い目を見ている私の目は死んでいる

 

「あの、辞めてくださりません?めっちゃ怒ってるのは心底理解したので。」

 

そういうとイタチ君、いやテン君は諦めたようだ。

薄く笑って私から手を引いた

 

「やっぱ上手いですね。」

 

「まあ、生きるために必要だったんで…」

 

君の幻術を返す日が、また来るとは思わなかったよ

と幻術返しにげっそりMP持ってかれた私は答える。

 

なんたって、こんなことを…と思ったが

どうやらイタチ君なりの今までの意趣返しらしい

悪戯小僧の顔で小憎たらしく笑っていた。

 

 



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26

 

あれから特にイタチ君との関係が変わることなく(まあ、すこし心理的距離が近くはなったが)、ある意味平和に任務をこなす日々が続いた

途中ナルト君と買い物に行った際、丁度お使いのイタチサスケ兄弟に鉢合わせしたり

サザミの痴情のもつれに巻き込まれたり(10股とかホント死んでほしい。)

棟梁が風邪こじらせて入院したりとあったが

概ね平和に過ごしていた。

過ごしていたんだ。

 

「影真似の術!!」

 

ぴんっと張った影は私につながり目の前の少年と強制的に同じかっこになる

 

「簡潔に言う。おらぁ奈良シカマルってもんだ。俺と勝負しろ!!」

 

シカクさんあんたの息子、あんたそっくりだよ。

 

 

曰く

最初はシカクさんと将棋を打っていたらしいが、あまりにも勝てなくて悔しいので、友達に将棋を教えてそれで勝負をしようとしたのだが、その友達各位がまあ、頭がその、シカマル君よりかは確実に残念なので全然勝負にならず「つまらない、将棋辞める。」と不貞腐れていたら親父さんから「あー…真の目の、白い頭にあったら影真似の術で拘束して名乗れ。多分相手してくれっから。」と言われ私を発見したそうだ。

 

まだまだ未熟な影真似の術は3秒と持たず解除されてしまったが。こんな表通りで勝負挑まれちゃ他の人の目も有り断れないので。

シカマル君に醤油団子をかけて勝負する事を提案した。

最初は奈良家に移動するのか…めんどいなとか思ってたけどそこはさすが奈良家のこども

ばっちり携帯将棋盤を持ってきていた。

んなとこにその無駄に高いIQ使うなよ…

 

此れにて四面楚歌。

その勝負は火ぶたを切られた

 

 

 

 

勝った。

団子は頂いた。

 

まあ、年季が違うよね、年季が

あのシカクのクソジジイに絞られまくった日々が懐かしい。

まあまあいいとこまで行っているのは確かだ

この年で始めてここまで出来るとなると将来は安泰だ。

私の老後は君に掛かっているんだよシカマル君。

 

悔しそうに、もう一回!!というシカマル君をまた今度なとかわし

家まで送ったらシカクさんに捕まった

 

「よぉ、俺の倅はどうだった?」

 

しっっっっぶい声で話しかけられた私はドキドキだ

ぜってーこいつシカマルを私に取られたと思ってる…

その証拠に、良く見える額には青筋が立っている

 

「いい子でしたよ。奈良家も安泰ですね。」

 

始めて3か月とは思えない腕前だった。

「だろぅ。」

シニカルに笑うシカクさんに、正直に喜んだ顔をしたらどうだと、呆れた視線を向けると晩飯に誘われた

「いえ、シカクさんと一局やる羽目になるので遠慮しておきます。明日は任務なんで。」

 

この人とやると長いのだ。

最低3日はかかる

その間任務が入れば行かなければならないし、かといってシカクさん相手に手は抜けないので毎回最後の方がグロイことになるのだ。なるべく対戦は避けたい。

 

クックックと笑う姿はダンディーだ

フフーフ!!とテンションをあげたいところだがこの人は既婚者だし、私の旦那さん候補はイルカ先生みたいないい人である。こんな勝負に意地汚いオヤジではない。

 

じゃあまたね、と廊下から晩御飯に誘ってくれるシカマル君を躱し家に帰る。

多分これからまた奈良家に引きずられるのだろうと思うと少し胃が重くなった気がした。

 

 



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27

うちはの区域に入ると、肯定的な人と否定的な人と、ぱっくり二つに分かれる

お年寄りは比較的普通に接してくれるが、若ければ若いほど私の顔を見ると唾を吐くように接してくる

まあ、今冷戦中だしな…良いけど…

だが

「ッチ、なんで千手がいるんだ」

何て言われたら喜んで買いに行っているのは確かだ。

おぅらそこの若いのの吹き溜まりども、喧嘩なら買うぞごらぁ

なんてしてたら、ミコトさんに会った

 

「あら!!ねえあなた!!もしかしてあの時の真の目の子!」

 

「あ!!ミコトさん!!

シャッス!!

お変わりないようで!!

イタチ君にはお世話になってます!!」

 

恩義には礼儀を、感謝には人情を

私はキッチリ綺麗に90度の礼をした

私、真の目サクヤは、おかんに怒られずに済んだ御恩は忘れません!!

 

うちは唯一の清涼剤のおかげで余計な喧嘩は買わずに済んだが

お前ら命拾いしたなと低い声で囁いておいたので多分ミコトさんには被害はいかないだろう

そのままの流れでミコトさんの荷物を奪うがごとく持ち、イタチの家に行ったらサスケ(小)に睨まれた

うおう、

君、若い時からそんな顔してると疲れるよ

 

「兄さんは今いない!!」

 

と言われたが

あの…その…君の後ろの人物は…

 

 

 

 

あんなに綺麗に拳骨が入いるのを、久しぶりに見た。

超痛そうである。

イタチ君とこれから修行するんだ鼻息巻いて主張するサスケ君、

ちょっくら長い話があったのだが、流石に悪いのでまた次回にした。

どうせ任務で毎日の様に会っているんだ

そん時にしよう。

余り任務でそれ以外のことを話さない人種なので多分声かけたらドモルだろうがそこは容赦してくれ。

 

 

 

 

 

「サクヤさんは虫が苦手じゃないんですね」

 

そう言われたのは何時だったか

イタチと次の任務の話をうちの玄関先でしていたら結構でかいクモが入ってきたので外にぽいと投げたらそう言われた

 

「別に嫌いじゃないけど好きでもないよ」

 

「普通…俺の幼馴染みなら叫んで、その場で潰してますね」

 

 

お前の幼馴染みがどうとかは特に興味もないがまあ、一般的には増えたら困るのでそうするだろう

つかその幼馴染み潰すて…

結構根性あんな…

え?男?

なんだよ、幼馴染みって言うからてっきり、そういうのかと…

叫ぶんだ…

 

玄関先に突っ立って話す内容じゃないがイタチ君の御顔で全てを許されている気がする

さっきから、イタチ君が通るおばちゃんほぼ全員に、飴ちゃんやらなんやら貰ってて…

どうも…ホント真の目がすみません…お恥ずかしい限りです…

通りがかったかっちゃんに小指を立てられ、山ちゃんに口笛拭かれ、帰って来たサザミに「おう、新しい彼女か。やるなら外でやれよ。」なんて言われた暁には殴ったが(イタチの髪の毛が長いから女の子に見えたらしい。決して私が、こいつよりゴツイからとか、そういうんじゃないから。決 し て 違 う か ら。)

 

 

「サクヤさんは優しいですよね。」

 

「私は別に優しいわけじゃないよ」

 

そういうとイタチ君は「?」を頭に浮かべる

まだまだ少年なイタチ君は私の身長を追い越せてないので必然的に上目使いになり非常にキュートだ

 

「虫を殺したくないだけ。」

 

「それを優しいと言うのでは?」

 

少し違う。

殺したくないと言うのは

殺した後の処理をするのが嫌だから殺したくないだけ

その差を感じ取るにはこいつはまだ若いのだろう

 

 

殺せば殺すほど死体は積み上がる

それを処理したくないから、お片付けしたくないから私は殺さないだけ

虫を殺せば死骸が出る

人を殺せば死体が残る

 

「いわば掃除が嫌いなんだ」

 

「嫌いなんですか?」

 

「綺麗になるのは好きだよ。けれど生き物を殺せば体液が出る。それが嫌なんだ。それが自分の体に付くのが嫌い。ばっちいと言うより嫌悪、禁忌している。」

 

「そう言えばサクヤさんは任務ではめったに血を付けませんね。任務終わりは必ず待機所で綺麗にしてから帰りますし…綺麗好きだとは思ってましたよ?」

 

「それは…誰だって血をかぶるのはいやだろ。」

 

まあそうですけどと返すイタチ君の表情は微妙だ

 

「殺してお片付けするより、殺さず片づけをサボってる、それでいいよ。」

 

 

私が終らせた会話に良くないとばかりに眉根を寄せるイタチ君をどついて

私は、さっきから煩いかっちゃんと山ちゃんを黙らせた。

 

「おい、サクヤ。血は流すなよ。」

 

「分かってる。」

 

2階から見てたのかサザミに突っ込まれた

 

 



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28

うちはシスイが亡くなったらしい

イタチ本人から聞いた訳ではないがその情報は忍びの間ではすぐ出回った

『瞬神のシスイ』なんてカッコイイ二つ名がついていたし見なくなればすぐわかる

まして、イタチ君がこんなにやつれていれば。

 

「ねえ、それ、どうにかなんないの?」

 

「無理ですね。俺の親友が亡くなったんです。もうちょっとかける声が違うでしょう。」

 

どよーんした暗雲と、イタチ君の目の下のクマは日に日に増している

皮肉には皮肉で返すイタチ君は口だけは達者だ。

ため息をついて言い渡す。

 

「今日の任務無し。これから私暇なんだけど。あんた暇?」

 

このツーマンセル、実はイタチが隊長だ。

いくら私が暗部で先輩だとしても強さで言ったらイタチの方が強いからだ。(あと家柄ってのもある)

 

だが、任務を受け取るのは私だ。

ダンゾウが駄々をこねたのだ。

木の葉の内情どろどろのせいで部下が苦労する典型的例である。

 

 

暇?と聞いているがその答えは聞いてなかった

今日は私らの任務以外入れていないはずだ

ちゃんと監視はしているんだよ。スケジュールの管理は任せろ。←

 

手を引いて行きついた先は私の家だ。

テン君と解かってから何度かお互いの家を行き来しているからかイタチ君は行き先に疑問を持たない

サザミは友達が出来てよかったなと言うがこれは友達なのだろうか…?

古代文明発掘の同志であるのは確かか…

 

真の目の区画には緩いが結界が張ってある

ちょっとばかし特殊なもので、なければ無いで問題ないけど、無いよりましだろうというものだ

しかし、うちの蔵は違う

父やサザミが集めた色々が詰め込んであり、ある手順で入らないと爆発炎上するというカラクリ蔵だ

父がいじりにいじったらしく、序にとばかりに結界も相当強いのが張ってある

サザミ曰く「まーアレ以上はないけど相当なもん置いてあるしね…何度か3代目に蔵の中のもん譲ってくれとも言われたけど、作間さんからサクヤに任せるとしか聞いて無かったからね。そのままにしてある。」

と内情を語られた

一応私も暇があれば蔵の中を掃除したり整理したりと触って物を確かめているが

まあ、まともなものは無かったよね。

多分これは2代目の遺産も入ってるなとは思ってたけど、あの多重影分身の入っている巻物を発見したときはさすがに木の葉に寄贈した。

写しはうちにあるが

 

そんな物騒な蔵だが、内緒話をするにはうってつけだ

2回の家族会議の通り結界と封印を内側からして私は床に腰を落ち着けた

 

「さあ、腹を掻っ捌いて話そうじゃないか!」

 

私はコマ

君はテン

時々現るはポン

 

何ら昔と変わらない会話から私たちは腹の内をぶちまけた

 

 

 

 

 

 

「成る程、そういうことね。」

 

イタチの現状にすべてを投げ捨てたくなる自分を如何にか押さえ、心なしか痛む頭に、眉間に親指を当てる。

 

「取りあえずお疲れとでも言っておくよ。」

 

「いえ、コマさんの方も、まさかそんなことになっていようとは…」

 

二人して先祖親戚の所業に悩まされるとはこれ如何に

 

「一応の目標はうちはを止める。又はダンゾウを止めるところからだな…」

もう手遅れな気がしなくもない

 

「ああ、そのためにはうちはと木の葉のこじれを如何にかしないとならない…コマさんは何か手、思い付いたか?」

 

「んや、全然。ダンゾウ暗殺計画を練ってるけど。全然無理だ。」

 

「おいまて、何故そっちに行く。」

 

「私、ダンゾウ怖い。テン、ダンゾウ邪魔。合理的な答えだと思うけど?」

 

あれやこれやと計画を練っては崩しを繰り返していると丁度昼なのか二人のお腹がなった

 

 

「取りあえず飯だな。」

「ああ」

 

午前中いっぱい使ってこれとは…

うちは一族滅亡は近いなと思考をめぐらした

 

 



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29

部屋から持ってきた暗号めいたカンペを持ってしても

うちはの天才と、火影の狛犬がどう頭をひねろうとも

滅亡は避けられない答えを導き出したとき、私達はその先に思考を向けた。

 

 

 

「サスケ、残せよ。」

 

「いや、両親でさえだめなんだ。サスケも、無理だろう。」

 

そんなことはない

なんならうちは繁栄を願ってもう一人ぐらいは私のコネと借りで子供を残せるだろう。

だがそれを言うのは無理だ。

命の取捨選択は私達には出来ない

その場合サスケが選ばれるかどうかを神に祈るしかできなくなるのだ

 

「サスケは残せ。私が如何にかする。

そしてお前は生きろ。生きて、最悪を防げ。」

 

前世の記憶も薄まった私が、イタチに送れる言葉はこれぐらいだ。

頭悪くて済みませんねー

馬鹿なんですよー

 

イタチはまだ方法はあるはずだと言う口でサスケを、里を残す方法に頭を回転させている。

私はサスケを残すという口で、サスケをどう動かすか考えている。

ポンは出てこない。

私の思考を先回りしてサザミでも呼びに行ったのだろう。

 

「シナリオはこうだ。」

そう口を開いたのは私だった。

 

「お前はこれから推定うちはマダラに取引を持ちかけろ。

なんでもいい、里の安全とうちはを天秤に掛けろ。」

 

「コマはどうする?」

 

「私はこれからサザミを使って火影と取引をする

最後の光明に見える様、口八丁手八丁は任せろ。」

 

テンが少し笑った。

 

「一族滅亡はお前一人でやったことにしよう。もちろん私も手伝うよ。理由は、そうだな…」

 

「己の力を試すため。それでいいだろ。」

 

「いや、それではサスケはきっと信じられずお前を追う。もっと確実な何かが欲しい…」

 

「昔…うちはマダラは弟のイズナの写輪眼を移植して視力を復活させたらしい…」

 

「…曲げよう。マダラは永遠の写輪眼が欲しいから弟を殺した。

サスケを生かした理由を作れ

とりあえずサスケに…お前を……恨ませろ…。」

 

「まだ言わない方が真実味を持つ…嘘は、少し混ぜるのが味噌なんだろ?」

 

眉を寄せて笑うテンに私は微妙な顔をするしかない。

 

「任せるよ。」

 

あーどっこいせと立ち上がった私はジジ臭いとテンに言われる

煩い

それに自分だって『よっと』なんて声を上げるもんだから笑ってしまう

 

一回笑うとそれは伝染するようで

私が笑い、テンも笑い初め

最後には大笑いで、二人でおでこを付きあわせた

 

「コマさん、俺は何時だって、あんたに助けられてばっかりだ。」

 

「そんなことはないさ。大丈夫、テンにはテンの道がある。ゆっくり歩け。」

 

 

 

イタチは私を裏切るだろう。

 

そしてすべて自分で事を成すだろう。

こいつはそういうやつだ。

だから少しでも心労が少なくなるよう前世のカンペを出した

私の前世は話していない。

ただ、選択の一つとして話に織り交ぜただけだ。

 

きっとその道を、進めるように。

私は応援している。君が死ぬまで。

 

 

 

真の目の入り口で別れたイタチのクマは薄れもしなかった

私はそれを取り除く役割ではない。

 

 




どうでもいいけど『うちはの天才』と『伝書鳩のサクヤ』って並べるとサクヤの間抜けさが顕著に表れるよね。


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30

修正した。
反省はしているが後悔はしていない。7/2参号館


うちは一族抹殺は成した

サスケは生き残り、私は取引を持ちかけ、イタチは里を抜けた。

一応とお守りにポンの分体を一匹付かせたが死ぬまでは連絡は来ないだろう。

イタチもポンの分体に気付いたが、放置してくれている。

何せ私もイタチも元来からの嘘吐きなんだ。

今更嘘をいくつ吐いたって相手にばれてる

そういうように、私がそうした

イタチをそうした

 

 

酷い事をした、そして酷い事をする。

 

うちはイタチの里抜けを手引きしたと嫌疑をかけられ、形骸的にだが拷問を受けたり尋問を受けたりしたがまあ、どうにかなった。

だって私は何もしてないのだから。

拷問中、様子を見に来たダンゾウを挑発したら杖で殴られた。

いや、確かに挑発した私も悪いが杖で殴るこたねえだろ…

 

 

本当にあいつは一人でやってしまった。

さすが天才と呼ばれるだけあるわー。

拷問の後病院のベッドで3代目に謝られたので貸し2つ目ですねと笑っといた。

この貸しはいつ使われるのだろう。

 

 

 

 

うちはが滅び、今まで足りていた警備の忍不足のせいで、サザミがまた忍として駆り出されるらしい

 

「お前、ぜってーなにか噛んでんだろ」

 

と言われたが黙秘した

沈黙が答えになったようで、サザミは鼻を鳴らして任務に出て行った。

 

その年が終る頃、サザミの死亡がピンから知らされた。

体は燃えカスもなく良く燃えたそうだ。

下手人は分からないがやはり体を狙っていたそう。

自殺の様に、ピンに殺させなかったら体はまた奪われていただろう。

父とサザミとおそろいのピアスが赤く鈍く光る姿は慣れない

私は万華鏡写輪眼を開眼した。

 

「ああ、本当だ。良く見える。」

 

 

そう言った私の目は封印が解かれ、ピアスのように赤く鈍く光っていた。

巻物は燃さなかった

 

『これから生まれ来る命の為に、その糧になればいい。』

 

燃やせなかった。

 

 

 

 

 

 

「うちはイタチは来ましたか?」

 

火影室に近寄る足音は一人だ、火影の周りには今誰もいない

 

「ああ。」

 

心痛な顔をする3代目は祈るように両手を組んでいた

私は防音の結界を3重にかけた

 

「取引をしましょう。」

 

嗤う私を3代目は笑わない

 

「サザミが持ってる万華鏡写輪眼、3代目が死ぬまで貸しましょう。」

 

3代目は笑わない

 

「代わりにサザミを忍にしてください。」

 

「…あい、分かった。」

 

私はダンゾウがいかなる手を使ってでも(3代目にシスイの目を使ってでも)これを手に入れる手筈を取るだろうと予想している。

ピンポン曰く大蛇丸の昔の研究所から柱間細胞発見したっぽいから活性化させて如何にか乱発できるようにするだろうし。

これは3代目との交渉ではない

ダンゾウとの交渉だ。

 

だからイタチには言わなかった

それはイタチの領分ではない

私の領分だ

あの日流出したうちはの目は私が全て燃やす。

父の悲劇が繰り返されないよう。

 

 




多分後で大幅修正される
ごめん


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31

サザミが死んだおかげで私に万華鏡写輪眼が回ってきた

わけではない

うちは抹殺前にかくかく云々ありまして…

 

 

正確には、サザミが生きている状態で写輪眼をもらった。

ただ、サザミは

渡すのはいいが、自分が暗部に戻ることで、サザミがまだ写輪眼を持っている状態に見せた方がいい(囮になる)と言うので大喧嘩した。

 

そりゃもう大喧嘩した。

 

大喧嘩(森が少々吹っ飛んだ)の末、私が負け(サザミっょぃ)

サザミがピンポンを持ち、契約は続行。写輪眼本体のピアスだけは私が持つこととなった。

駄菓子菓子、私はサザミを暗部(囮)にするのではなく只の忍びにする事を条件に、私は封印をそのまま、ダンゾウに間接的に、写輪眼を渡す(悪い顔)

出来れば警務部隊とかに放りこんでほしい。

 

表側(3代目側)の理由としては

サザミの暗部復帰は難しいだろうという体で

 

裏側(ダンゾウ側)は

サザミが写輪眼をまだ持っているという嫌疑晴らしに

 

が、あの強さでは無理だろう事はなんとなく察している。(サザミっぉぃ…)

 

 

 

ダンゾウは疑い深い奴だ。

私が『うちは抹殺』の手助けしたと疑っているし

イタチが弟を見張る人員として私を残したと思ってるし

間接的に連絡を取れる状態にいると考えているだろう

まあ実際は殆どそうだけど

 

ココで作間の写輪眼の位置をハッキリさせとかないと、疑いというか疑念?

まあ、言うこと聞かない真の目の力削りたいっていうダンゾウの思いは晴れない。

最悪私は拷問部屋から出れなくなる(ペンは強し…)

だから3代目に作間の写輪眼を渡した。

きっと何かしらの方法で、その情報ないし、モノホンを手に入れるだろう、とダンゾウの頭の良さを信じて。

序にダンゾウも忍びの端くれ、私が封印を解かなければ向こうも封印を解けないなどというジレンマにすぐ気付くだろう。

此れにて双方安心できる状態が保たれるのだ。

 

中々どうして、父の写輪眼は面白い封印をしていて。

この目はどうやら使用者を選ぶようになっているようだった

だから私はダンゾウに渡す事ができたし。安易に取引を持ちかけれたのだ

流石にあんなタダ同然みたいな条件じゃやんねぇよ

そしてこの巻物に実は2対の写輪眼が入っていることに気付いた

あまり触ると複雑なプロテクトが取れてダンゾウに渡している方に何かあったら困るので触っていないが

 

 

 

年の暮れ、サザミが死んだ瞬間自動的に、ピンポンの契約者が私にすり替わり

それと同時にサザミがぼかした紆余曲折の部分が、明かされることになった。

どうやらピンポンの契約がカギとなっていたようだ。

サザミがピンポンの契約を渡さなかった理由もそういう事だろう

道理でサザミが狙われたはずだよ。

 

サザミがぼかした紆余曲折は、写輪眼に刻み込まれていたらしく、契約と同時に幻術が発動、記憶ともいえる膨大な情報が私に詰め込まれた

あの懐かしい、前世ダイジェストを彷彿させる情報量だった。

白い扉も、知恵熱も出なかったが、血涙と絶叫はでた。

前回よりひどいとは言わんが

まあ、自分の記憶ではなく他人の記憶なので仕方がない…

 

 

 

 

父作間は自分の父親『2代目火影千手扉間』に、無理やり写輪眼を移植させられていた。

そして2代目亡きあと千手に幽閉され

うちはの者が父を見つけなければ、一生そこから出ることは叶わなかっただろう。

 

それまでの父は千手では落ちこぼれと通っていた

生まれた時扉間が「なんだ、写輪眼ではないのか。」と言ったらしく、そのことでも卑屈になっていたし、私なら笑いごとだが、その卑屈さにあの変化の呪いはキツイだろう…

親兄弟に似ず、忍術は得意では無かった作間は、カラクリにのめり込んだ。

戦争が始まっても、兄弟が死んでもカラクリにのめり込む姿に一族の者は、よく後ろ指をさし「あの落ちこぼれにはなるなよ」と聞かしたという。

そんな作間に何を思ったのか、扉間は無理やり作間に写輪眼を入れ、自分は戦場で散った。

 

 

父はうちはの告発により千手から逃れ、3代目の恩情にて保護されることになったが

それと同時に、ダンゾウと大蛇丸に目を狙われていることに気付き、ある日下手人に追われ、咄嗟にやぶの中に逃げ込んだそうだ。

そこがちょっと厄介な結界の内で、真の目の結界だったのだ

 

真の目の結界の中では血を流す事ができない

別に普通に過ごすには何ら問題ない只の結界なのだが、事戦闘をするには厄介な結界

血を流すと一定の時間その場から動けなくなるという、ちょっと変な結界だ

だがそれは騒ぎを聞き駆けつけるには十分な時間なのだ。

血を流さないと父の目は抉り出せない。

子供とて、無血で捕えられる程、父は弱くはなかった。

 

真の目の結界の中に運よく逃げ込めた作間は、そのまま真の目の棟梁に会い、真の目に組み込まれることとなった。

そこで出会ったのが母さんで

まだ、真の目ではない母さんたちが戦火を逃れ木の葉に移住してきたところ

じゃあ真の目においでよ最悪俺の嫁さんにすればいいし、と言い真の目に入ったそうだ

幸いその時は嫁にはならず済んだのだが、後日母さんからプロポーズしてた。(ここだけ映像がめちゃくちゃ鮮明だった)

 

真の目に入った後、父は真の目で大工を学び、アカデミーに行かなかったのだが

12を超えた頃、第2次忍界大戦がはじまり、里の上役の総意によって無理やり忍びにならされ

その顔を嫌忌され、暗部で狛犬をすることとなる。

それと同時に、自分の目を、つぼみが閉じる様に一枚一枚封印していき、今の形に落ち着いた。

 

私が生まれた頃には、もう殆ど見えておらず。メガネをかけている姿をよく見たが、私の顔も判別できていたか怪しかったらしい。(ゆうて自分と同じ顔だが)

確かに父さんはよく人を間違えていた。

 

 

二対の目、

一つは渡りにわたって父に行きついた隙間の目

もう一つは祖母うちはニヒトの目であった。

 

私の父作間、の母、

ええっと…私にとっての祖母

は、うちはではそこそこ名の通った人だったらしい

まあ、サザミがマダラの右腕とか言ってたし、そうだろうなとは思っていたが

だが万華鏡写輪眼を開眼していたとは知らなかった。

 

 

アニメ見たとき2代目がやけに写輪眼に詳しいなと思ったがどうやら彼は自分の妻をも手にかけていたらしい。

いや、もしかしたら長男と次男も手にかけている可能性も…

卑劣様などと言われてはいたがここまでとは…

堕ちたな…

 

ピンとポン曰く

残念ながら、作間はんの体は燃やせてないんやわ~

殺した輩の警戒具合から言ってどっかに死体は持って帰ってそうだがなガハハハハ!!

だそうだ。

せめて父と母と、同じ墓に入れてやりたいな。とあの空の棺桶を思い出した。



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32

最近カカシパイセンとテンゾウパイセンのいる班に良く組み込まれる

二人は過保護なのか何なのか、安パイな手を打ってくるので思ったより事の進行具合が遅い。

しかし安パイでここまで進められるのだから天才はいやだ。

そして二人と組まされるときは大体碌でもない任務だと気付いた

カカシさん達もそれに気付いたらしく私と顔を合わせるとまたか…とため息を吐くようになった

私の方がつきてぇよボケ

 

イタチ君が里抜けしてから人員補充とか人事異動とかで私は暗部部隊長になった

そして3代目に上忍推薦されている

蹴った

 

「んなめんどくさい事できません」

 

なんて言えないが

実力不足ですと言ってお断った。

 

 

 

イルカ先生がナルト君の担任になったらしくちょくちょく相談される。

中忍待機所で話す内容でもないので食事でも行きますかと誘ったらテンゾウさんに止められた

 

いや、なんでテンゾウさんに止められてんだよ。

は?言えない?じゃあ私を止めるなボケ!!私はイルカ先生という癒しとお食事するんだよ!!つかそこの物陰にいるカカシさんも止めろ!!

 

イルカ先生を先に店に入れテンゾウさんとカカシさんにしっかり釘を刺して私は癒しタイムを手に入れた。

 

 

 

 

 

人間飲むと誰でも駄目になるんだな~

私が一応未成年なのでお酒は遠慮してくれたんだが、あとから乱入して来たカカシさんに飲めよ飲まれよと注がれイルカ先生は褒め殺しマシーンと化した

 

「おれねぇ、ずっと、ずっと、…サクヤさんにあこがれてたんれすよ!!ずっと!!うらやましかったんれす!

らっていつもまえをむいてて!自分に正直れ!!強くて!!かっこよかったんれす!おれ、あのラリアットいっしょうわすれまへんからね!!」

 

どうやら、私が張った木の葉のプライドは、ちゃんと伝わってたようだ。

私の血という威光でかすませられた人はちゃんと中忍に成れたようだ

 

やはりイルカ先生はいい人だ。

 

「イルカ先生。私もイルカ先生の事を尊敬してるんですよ。」

真っ直ぐ前を向いて、自分に正直で、とってもカッコイイ

 

カカシ先生の背中におぶられているイルカ先生にそう声をかけてその日は解散した。

後日、イルカ先生が謝りに来てくれた

記憶がぶっ飛ぶほど飲んでしまい申し訳ないと言われたので

団子で手を打ちましょうと言った

 

テンゾウさんに止められた

デートはまだ早い!!とかなんとか言っていたが、取りあえずテンゾウさんを防音結界3重に押し込めて、任務の後イルカ先生と団子食べる約束を取り付けた。

 

 

 

 

「生きてるか。」

 

カカシパイセンの援護してたら、技の巻き添え喰らって吹っ飛んだテンゾウさんと私は、一応生きていた。

 

「私イルカ先生と団子食べる約束したんですよ。それまでは絶対死ねません。」

 

「お前のそのイルカ先生への崇拝加減何なのホントに。」

 

逆さまに、瓦礫に張り付いているボロボロの私はさぞ憐れだろう。

その後チャクラ切れで倒れたカカシさんを担ぎ、どこかにいるはずのテンゾウさんを探しにうろうろしてると、一応木遁で身を守れたのか木くずの中から気絶したテンゾウ先輩を発見する

カカシパイセンが倒れることは間々あるが、珍しくテンゾウパイセンも倒れたせいで、二人を抱えて帰る羽目になった

写輪眼のカカシと木遁のテンゾウパイセンがやられるってどんな任務だよって思うけど、最近マジ碌な任務が来ねえ

 

写輪眼(カカシさん)は何としてでも持って帰りたいのがあけすけに見える布陣でもあんよな…

写輪眼一人に対して生命力強い千手二人付けているようなもんだ…(疑似だが)

未だ目を覚まさないテンゾウさんと、目を覚ましてるけど碌に動けないカカシさんを火影室まで抱え、担いで行く…

なんてことするとぜってー後で、コテツさんとかイズモさんらへんにゴリラとか言われるので直接窓から「うぃーっす」と侵入したら

ダンゾウが丁度いて、写輪眼と血継限界はもっと大切に扱え!!この馬鹿者!!と怒られた

 

この人ほんと良くも悪くも写輪眼とか特殊能力しか見えてねえよな…

 

と感心しつつ、へえこらしてたら、聞いてないのがばれたのか拳骨も頂いた

そしてそれは2発目を構えているダンゾウ、を止めている3代目まで飛び火して

大体お前の教育が云々と続き、こりゃ長くなるな…と察したカカシパイセンの機転によりトリマ報告を終わらせ。気絶してるだけのテンゾウさんを起こし、カカシさんを木の葉病院に連れてった

 

「じゃあ私帰ります。」

 

「え、俺のパンツは…」

 

「鷹でも使ってテンゾウさん呼んでくださいよ。私このあとイルカ先生と団子食べるんです。カカシさんの家に寄ってる暇ありません。つか、まがりなりにも女子にパンツを頼むな。」

 

「え?女子…?」

 

明日カカシパイセンの右頬は腫れているだろう

ここが病院で良かったな



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33

怪我も治り、里も落ち着いてきた頃、3代目にナルトの序にサスケも見てくれと頼まれた。

全然ついでじゃねえよ!重さがちげえ!!と文句を垂れたが火影の腕は結構現役らしく、私はうちはサスケの家に引きずられていった

 

「…うちはサスケだ。」

 

「…真の目…サクヤ」

 

記憶の彼方で私の事を思い出しているのか、なんなのか、ずいぶん高圧的に自己紹介をされた。

取りあえずその日はサスケ君とご飯を作り、共に食べサスケ君の就寝と同時に帰った。

 

「あんた、強いのか?」

 

「ふつう。」

 

等会話もあったが

話が弾まな過ぎてナルト君が恋しくなった。

 

未だサスケ君は悪夢にうなされるらしく、任務帰りの夜中に、サスケ宅へ寄ってみると魘されていた

うんうんうるさいので、丁度出ていたデコをデュクシと突いてみたら止まった。

うん、何時も隠れているものが出てると突きたくなるよね…え?そんなことない?いやいやいや…

 

…これ死んでないよね?

 

あまりにも静かに、微動だにしなくなったので流石に焦り、急いで耳を顔に近付けたらスースーと音が聞こえたので多分生きてる。

良かった。夢の中で額をやられたと感じてショック死したかと思った…

なんせ幻術で死ぬ世界である

夢で死んでもおかしくない。

危うくイタチに殺されるところだった、ふー、せふせふ。

 

 

サスケ君は強くなりたいのかなんなのか私に良く勝負を持ちかけてくる

サスケ君は容赦がないのでマジ痛い蹴りを繰り出してきてホントマジ許せん

それに感化されたのかなんなのかナルト君も最近修行修行と煩くなってきたのでここでいっちょ二人を会わせてみることにした

 

「はい、こちらうちはサスケ君」

 

「んで、こちらうずまきナルト君」

 

二人同時にそっぽ向くところは仲がいいのだが

そっぽ向いてる時点でこりゃダメかと勝手に自己紹介を済ませ修行内容を話すことにした

 

「では、君たちに修行を課す。」

 

修行という言葉に両者反応を起こすが大した修行ではない

只の丸太倒しだ

 

「この丸太を二人で倒してね。方法は何でもいいから」

 

ドンっと置いた丸太は丁度ナルト君とサスケ君の身長と太さだ。

そこに私がチャクラを流し込むと

あら不思議

ちょっと(体術)やそっと(忍術)じゃ倒れない魔法の丸太の完成だ

序に二人分の力が加わらないと倒せないよう調節もしておく

真の目流チャクラコントロール会得方法だ。

この話を聞いたのは私が鯉のように滝を上っているときだった。

おせぇ…もっと早めに知りたかった。

 

「じゃあ私そこで寝てるから倒したら起こして。」

 

「ふん、こんなもの一人でできる!!ナルト、お前は下がってろ。」

 

「なにぃ?!俺だって一人でできるってばよ!サスケはそこで見学でもしてろってばよ!!」

 

仲良く喧嘩している姿を見るとこりゃ今日中には無理だなと寝る体制に入った

後ろで私にぎゃいぎゃい何か言ってる気がしなくもないが無視だ無視。

私は貫徹して眠気マックスなんだほっといてくれ。

 

「あ!!サクヤ姉ちゃん本当に寝るなってばよ!!」

 

「そいつに話しかけてる暇があるならさっさと攻撃したほうがいいんじゃないか?」

 

「何をおおおおおお!!」

 

 

 

 

 

西日が顔に当たって目が覚めた

どうやら二人は未だ倒せていないらしくぎゃいぎゃいわいわい騒いでいる

 

原作でチャクラコントロールが苦手らしい描写があったがどんだけ苦手なんだよ

すこし配分間違えたかな…と思考をめぐらし

ホイットな

と地面を蹴り、その勢いでとび蹴り、丸太を倒し二人の喧嘩を止めた

 

「今日はここまで。じゃあまた今度な」

そう言ってさっさと帰ろうとすると二人に道をふさがれる

 

「まままま待つってばよ!!もうちょっと!!もうちょっとで出来そうだからさ!!さ!!」

 

「まだ修行は出来るはずだ!!それに明日はアカデミーは休みだ!!時間は十分にある!!」

 

二人の言い分に私は呆れるしかない。

 

「あのねー君たち。君たちにアカデミーは無くても私に仕事はあるんだよ。

それに修行のやりすぎは良くない。見たところチャクラも尽きたようだし?これ以上何やっても無駄だよ。そんな事より次回に向けて体を鍛えるとか、英気を養うとかした方が得策だと私は思うけどね。」

第一に、そんなに私は君たちの修行を見られるわけではないのだ

 

呆れた視線を二人に向けると、正論だからか「うっ」とひるんだが、サスケ君の一言で、落ちついた火は再熱する

 

「それじゃあ、あんたがいない間の修行メニューをよこせ!!」

 

「そうそう!!そうだってばよ!!師匠のねーちゃんいなきゃ修行もなにも無いってばよ!!」

 

何時私が師匠になった…

白目向きたいのを我慢して眉間に親指を当てる

私今なら白眼開眼できそう…

 

重い溜息と共に私はちょいちょいと二人を招きよせる

二人が『?』を頭につけて寄ってくるので

ズビシッっという音と共に、私の突きは見事額にヒットした

二人とも相当痛かったのかひっくり返っておでこを押さえている。

ナルト君なんか若干涙目だ

 

「私は弟子を取らない主義だ!!

修行内容は自分で考えろ!!それも修行だ!!

相談はアカデミーのイルカ先生が乗る!!

今日は解散!!

各自家に帰り風呂に入り飯を食い英気を養え!!

以上!!」

 

そういうとサクヤは瞬身の術でその場を去り

後に残った二人は顔を見合わせ、ふんっとそっぽを向きそれぞれ駆け足で家に戻ったとかないとか。



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本編一章編
34


原作軸が近いのか少し各里が騒がしい

砂にちょっくら用があり潜入したら大蛇丸の痕跡を発見した。

過去、大蛇丸に会った事はないがサザミが散々言っていたので警戒を強めようと思う。

 

確かカンペだと、砂影は中忍試験の時点でもう死んでいたなと思い出す

 

「そうか、きかんも、ちかいな…」

 

砂嵐に巻き込まれたせいで口の中がじゃりじゃりする

ぺっぺっとつばと共に吐き出すが、これはどうやら水ですすいだ方が早そうだ。

木の葉の森の入り口で、水遁を使って吐き出していたら、イタチに会った。

 

「え?」

 

「あ?」

 

取りあえず苦無を投げたが、あっちもどうやらこの遭遇は予期していたものでは無かったらしく暁の相方(だったはず)の鬼鮫はいなかった。

 

「(え?どうゆうこと?)」

 

「(いや、こっちが聞きたいんだが。)」

 

戦闘するふりをしつつこれ意味あるのか?とお互いに視線を向けて様子を窺っていたら砂の忍びに見つかった

 

やっべーー!!

 

「助太刀します!!」

とかやってきたもので、マジ焦った。

イタチはその場を幻術でやり過ごし、私は「後で校舎裏な」と呼び出しておく。

 

 

砂の忍びとは、お礼の声をかけ、その場でお別れして、イタチを呼び出した場所へ向かう。

結界と目くらましを張っておいてくれたらしく

イタチ君に付けていたポンの声を頼りに洞窟を彷徨っていたら手を握られた。

 

ひっ

 

と心臓が大きく圧縮したが相手がイタチと分かってすぐ振り払う

妙に生ぬるい感触に鳥肌が…私は握られた手を服でごしごしと拭った

 

「酷いな。」

 

「なんで手を握る必要があるんだよ。おかげで心臓止まるかと思ったわ。」

 

 

声をかけろ声を

無駄にいい声してんだから、とイタチ君の野営のスポットに向かいつつ文句を垂れてるとサスケ君の様子を聞かれた

なので正直に

 

「君の弟超生意気だね。」

 

と答えたら足を踏まれた。

そうだ、生意気なのは遺伝だった!!

 

渾身の力を込めて踏まれた私の右足は悲鳴を上げているが、未だイタチ君の左足は上からどかない

 

「超元気!!サスケ君超元気!!毎日修行頑張ってる!!最近女子に人気らしいいいいい痛いいいいい!!」

 

私の悲鳴にイタチ君は満足したのか足をどけてくれた

お前!!乙女ではないがこれでも女の端くれだぞ!!女性の足全力で踏むなよ!!

私より若干高くなった背を睨みつけているとほいっと棒を投げ渡された

 

「なにこれ?」

 

「双剣だ」

 

いや、それは見ればわかるよ

渡された棒状のものは2本、頑丈そうな作りで『切る』より『叩き切る』方が似合う重量だ

 

「この間敵の忍びから奪ってな、名のある双剣らしいから取っといたんだ。

俺は剣は使わないし、サクヤにやる。」

 

いや、ゆうて私もそこまで使わないんだけどとゆう言葉は飲み込んで、無言で使い捨てていたチャクラ刀を抜き双剣を腰に差した

あれは『受け取らなきゃ殺す…』そう顔に書いてあった…

 

「どう?」

 

「まあいいんじゃないか?」

 

抜いたチャクラ刀を地面に突き刺し

双剣を抜き差し繰り返して位置調節していると

イタチ君は地に突き刺した方のチャクラ刀を手に取り「粗悪品だな」と眉を寄せ、その場で折った

 

「ンえ?!」

 

何してくれてんだ!!流石に怒るぞ私も!!

こんなチャクラ刀でも高いんだぞ!!お前らうちはの様に丁度いい武器屋がそこらへんに存在するわけでもないんだぞ!!

 

私の怒りようにイタチ君は不味かったかと頬をかいたが私は許さん!!

せめてその(使い捨ててるものだが)地味にお財布に響く料金を請求したい

 

「悪い…今手持ちが少ない。代わりと言っては難だが、いい武器屋と、うちはの集会所教えるからそれで手を打ってくれ…」

 

舐めるな!!いい武器屋の基本は良いお値段なのだ!!お値段以上だとはいえ、私のチャクラは若干特殊、そこで買ったチャクラ刀がいつまで持つかもわからないんだぞ!!

それにうちはの集会所知って何になるんじゃぼけ――――!!

と憤慨したら天才うちは君、ちゃんと説明してくれた

 

曰く

私のチャクラ刀がすぐボロになるのはチャクラ刀の中に不純物が多いからだそうだ

普通チャクラを練る分には十分なのだが、時たま純度の高いチャクラを練る人がいて、そういうチャクラにはこの刀は耐え切れないそうだ

イタチ君の紹介してくれる武器屋はちゃんとそこんところ解かって作ってくれているので、そう何度も壊さなくてすむらしい

あとその双剣も業物らしいから多分当分持つという。

「本当かテメェ?」と凄んだら「うちはでは常識だぞ」と真顔で言われたので一応納得した

 

そして集会所だが

どうやらその奥にうちは一族の秘密があるらしく

「どうせ写輪眼開眼してるんだろ?写輪眼や、万華鏡写輪眼、そして輪廻眼で見ると遺跡の文字が変わる仕組みになっている。輪廻眼は無理だがサザミさんの力を借りれば如何にか全文見れるだろう。」

と言われ、なんだそのインディージョーンズは!!と遺跡巡りの血が騒いだ

 

「けど、『うちは』じゃないのにそんなこと教えていいのか?」

 

「どうせうちは一族は今や俺とサスケ、推定マダラだけ、あと写輪眼を持っているのはカカシさんと、サクヤ位だ、サクヤぐらいだったら何ら問題はない。血も一応繋がってるしな。等価交換、だろ?」

 

いや、等価じゃねえよ

重めぇよ、釣り合わねえよ。

何て事を教えてくれたんだよ。

 

痛む頭、眉間に親指をにじりと当てて考えるが、馬鹿がいくら考えてもこれ以上のものは、今出せるものはない

仕方なく悔しいのでいつもは額当てで隠れているイタチの晒された額(兄弟していいデコだ)に向かってビッと人差し指を突いた

 

「この借り、いつか返す。それまで大事に持っておけ」

 

この恨み晴らさざるべきかとばかりに殺気つけておいた

イタチは笑っていた。

 

その後情報交換をして(やはりイタチは暁にいるようだ。大蛇丸が抜けて今は次のペアを待っているところだったよう。)その場で解散した。

蛇の次はサメって…イタチって人外に好かれるよなと言ったら、お前もゴリラだしな。と言われた。殴っといた。

イタチに付けているポンの契約者がサザミから私に変わってチャクラを遠隔で補充できるようになったので結構こまめに連絡は取れるようになったが、私もイタチも筆まめな性質ではないので連絡は最低限になるだろう

最悪死亡報告だ

一応ピン(死体焼却要員)つけるか聞いたがサスケに目を渡すからいらんと言われた

まあ、そうだろうな(つけないとは言って無い)



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35

終に原作に突入したらしい

そこそこいい年だし…と余り顔を出さなくなったナルト君に久しぶりに会ったら額当てをしていた

カカシパイセンを暗部で見なくなり、イルカ先生がナルトどうしてるかなーなどとぼやく事が多くなったなとは思っていたがもう再不斬と戦ったあとらしい

 

なっなんだってー?!

わたしが数か月の里外任務に行っていた間にそんなに進むとは思わなかった。

急いでナルト君に秘密で分体のピンを付けて、サスケ君を探した

 

やばい、イタチにサスケ君全然見てなかった事がばれる!

 

証拠隠滅を図りにサスケ君を探すが見つからねェ

演習所のどこかにいると思うんだが…と、見て回るがどこにもいねえ…サスケェ…

まあまて、いったん落ち着こう。今付けても明日付けても変わらない。

要はイタチに会う前にポンの分体を付ければいい話だ。

そう思ったら心が軽くなったのでいったん家に帰ることにした。

 

 

 

家の前でサスケ君が腕を組んで待っていた。

相当待たされたらしくご立腹である。

 

どうやらナルト君に会い、私が探していると聞き、私と入れ違いになるのを恐れて家の前で待っていてくれたらしい。

ありがとうサスケ君…おかげで里中走り回ったよ…

 

で、用件は何だったのだと聞かれたがポンを付けることに注視していて言い訳を考えてなかったので

 

「いっや~最近どうしてるかな~なんて思って~」

と誤魔化しておいた。

無事ポンは付けられたが多分気付く時は一瞬で消されるだろうから里抜けして大蛇丸に気付かれるまでが期限だろうなと思いつつ、サスケ君と久しぶりにご飯を食べた。

ご飯前に手合わせをしたが、以前より強くなっていて思わずニンマリしてしまった

 

「お前、強い…のか?」

 

「ふつう。」

 

という会話を挟んだがやはり会話は弾まなかった。

 

 

 

 

犬塚ハナさんという方とお知り合いになった

 

 

いや、まあ待て。落ち着いてくれ。これには深いわけがあるんだ。

ピンポンが変なもん食ったのか

「「なんか、出る。」」

とか急に言うせいで動物病院に駆け込む羽目になったんだよ。(ピンポンの標準語は珍しかった…)

そこで初めて同年代の女子と知り合った。

 

この方超美人。

やばい、いい香りする。

 

思考がオッサン臭いのは諦めてくれ

おっさんの中(暗部)に今までいたんだ仕方ないだろう。

暗部女子は貴重なんだよ。

そう、私はステータス。

はいそこー、女子じゃなくてゴリラだろなんて言わないー

後で校舎裏なー

 

 

 

そう、で

ピンポンの容体は不明だった

取りあえず出すもんは出したが(なんかコールタールみたいなどす黒い何かが出てきた)

基本管狐は所有者のチャクラを食って貯めて生きているらしく、これはチャクラの塊と説明された

 

もしかして私のチャクラコールタール…

 

とか心配になったがこのコールタールのチャクラは私のものでは無いそうで、安心した。

管狐は動物というより妖怪に近いそうで、ツメさん(獣医)の領域外だが一応コールタール解析に回してくれるそうで、お願いしといた

 

「あのねえさん美人さんやわ~」

「ガハハハハ!!サクヤ!!嫁にもらうならあいつがいいぞ!!あいつにしろ!!」

 

吐くもの吐いてスッキリしたのかピンポンがワイワイ騒ぐが

急に標準語喋ったり、自分の体積以上のコールタール吐いたり、散々心配させたので当分はこいつらを無視することにした。

ホントマジ心配した(自分のチャクラがコールタールってショックだ…)




ねえ知ってる?ここら辺まで実は2日で書きなぐってる…


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36

中忍試験が始まって私の忙しさは天元突破した

私が以前発見した砂での出来事から『砂と大蛇丸が組んでる可能性あり』という情報もあったため、あんこ特別上忍の死の森での援護、保護は比較的速やかに行われたがその分のしわ寄せが、しがない中忍暗部に回ってきて私は死にたい

 

カカシさんに久しぶりに会ったと思ったら大蛇丸と戦闘中だなんて、聞いてないよ~

 

すぐさま気配を消し(元々消えていたが)息をひそめ様子を窺っていたら普通にご退室いただけた

だがしかし、カカシさんはオコである

 

「ちょっとサクヤ、なんで援護に来てくれなかったのヨ。ここは先輩を心配して駆けつけてきてくれるとこでショ!」

 

「んなことしたら私なんて出会い頭にパーンじゃないですか!?後輩を当て馬にして犬死にさせるつもりですか?!ピン本体気付かれずに渡しただけでもまだ戦功労賞ものですよ!!しがない中忍に何求めてんすか?!」

 

ご機嫌が悪いカカシさんはチッと舌を打ってそのまま部屋を急いで出て行った

あれは絶対テンゾウさんに当たりに行った。

テンゾウさん乙

 

そのまま予選は終わりお開きになったらしくカカシ先生はサスケ君と、ナルト君はエロ仙人と修行している

私は、

 

「めんどくせー」

 

シカマル君といる

 

「あの、シカクさん。私これから任務入ってるんですが。」

 

「気にすんな。外しといたから!」

 

私は痛む頭に眉間を寄せる

シカマル君からの中間管理職への憐みの視線が痛い

てめー覚えてろよ、あと数か月後にはお前も同じ立場に付くんだからな!!

 

 

 

 

 

シカマル君はやはり賢い

でもその賢さは狡くはない

影真似の術で真正面からやってきてくれるシカマル君はあの将棋の強さはどこへ行ったのかホントあのシカクさんの息子なのかと思うほど正直者だ

 

シカマル君の奈良一族独特な忍術血系限界?の修行に付きあわされている私は無手の忍術無しで相手しているのだが、なんていうか、申し訳ないんだが、全然シカマル君が攻めれない感じだ

うーん?って感じ

私もっとこの子強いと思ってたんだけどな…まあ下忍だしこんなものなのか…?

いやでもサスケ君と比べるとやはりなんかおかしい…

ナルト君の体術は、九尾の回復力と、無尽蔵なスタミナなおかげで、タイマン泥試合になるので参考にはできないが

あ、でもサスケ君も参考にしちゃやばかったか?

だが容赦に容赦を重ねてる現状でこうとは…

 

無手なので接近戦を主に体術で印を組ませないよう攻める

ちらっとシカクさんに視線を向けるがあの人は盤を挟んでポン相手に次の一手を考えている

序に真の目の体術でもたたき込んどいてくれとも言われたので基本のいなし、躱し、避ける方法を教えて今実践しているんだが

まあ、中忍になるにはこの感じから行くと奈良家の術以外に根本的部分の底上げも必要か…と一応その時は納得したが、これ本当にシカマル君の為になるのだろうか…?

 

私は戦闘を一旦止める

 

「あ?どうした?」

 

鳴り止んだ打撃音に、シカクさんが訝しげに私を見る

お疲れなのか肩で息をしているシカマル君はへばって座り込んでる

 

「いや、無手タイマンやめましょう。現状でシカマル君に体術は何の意味もないですよ。」

 

私の言葉にシカマル君が肩を揺らした

 

「中忍試験の相手は下忍です。大技2,3発でかかってくるのがセオリーです。中忍試験に受かりたいならそれをいなす必要がある。

が、私は君がこの1か月で、付け刃で、それをいなせるようレベルアップできるとは思わない。

 

シカマル君、シカクさんにちゃんと頭を下げなさい。」

 

 

 

この少年は、また、シカクさんに引っ張られてめんどくせーとばかりにされるがままだったんだろう。

そこの意地汚いおっさんはそこまで優しくない。

求めるものにしか与えないわけではないが、寧ろ求めて無くても与えるが

それが必要かどうかはその人に考えさせる

 

シカマル君もこれの意味を察していた。

だが、喧嘩でもしてるのか言い出しにくかったのだろう。

あのクソオヤジはほんとに素直じゃない。

私を挟んで会話しないで欲しい。

はぁ、と息を吐く

 

「そしたら私と修行しましょう。」

 

 

 

諦めは早い方なのだ。

シカマル君の相手をして私の1か月は消えた。



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上忍編
37


木の葉崩しはカンペの通り滞りなく行われた。

3代目にはお世話になったし、一瞬助けようかな~とか思ったが、大戦ラスト1日の戦力が大幅ダウンする事を考えて辞めといた。ごめん3代目、穢土転で会おう。

 

やはり写輪眼の管理管轄はダンゾウが権利を持っていたらしく、根まで取りに行く手筈になった。

一回「写輪眼?はて何の事やら」としらばっくれられそうになったが、3代目がちゃんと書状を残してくれていたらしく、ダンゾウから無事に片目を取り返す事ができた。

渡してくるとき散々文句をぶうたれていたのでこの封印は解けなかったのだろう。

上々だ。

ダンゾウから『もしや大蛇丸と組んで眼を取り返すために3代目を殺したのではないか』と難癖つけられたが

 

それはお前だろう…

 

とは口にはしなかった(横で控えてる暗部がめっちゃ怖かった)

根から出る時、殺気を向けられ、すわ追って来るかと思ったが、ポンの一鳴きでどうにかなったので無事家に帰ることもできた。

サザミや父さんはこれを良く躱していたな…と感心するばかりである。

 

 

 

 

ナルトが5代目探しから帰って来た

5代目に呼び出された私はやる気が無かった

 

「お前、このランク、任務数、達成率、部隊生存率で良く今まで上忍にならなかったな!」

 

「はあ、まあ、そうゆうもんだったので」

 

「それに使用忍術の多さ!!流石2代目の血を引いてるだけはある!!もう、超えてるんじゃないのか?」

 

「そうゆうもんなので。」

 

「あひぃ!!なにこれ怖い!!この人下忍から中忍、暗部になるまで1年もかかってませんよ!!」

 

「そうゆう時代だったので」

 

「ほんっとにお主…女だったんか…」

 

「「エロ仙人は黙ってろ!!」」

 

 

今は人員が足りないし

先代3代目や他上忍数名の推薦もあって私は上忍になった。

 

「私、千手が父にしたことは一生忘れませんから。」

 

私の殺気を千手綱手は真正面から受け取った。

火影の狛犬はこれにて潰えるだろう。

父だって3代目だから狛犬でいたのだ。

 

 

 

 

―――

――

 

 

 

「おーおーこわいのーお主は何もされてないだろうに…」

 

「されて居なくても、私はこの手の話に良い顔はしませんよ。」

 

只でさえ2代目の威光がすごいのだ、5代目も私の顔を見て身構えるほどに。

 

「はー上忍かーめんどくさいなー。

つかいつまで着いて来るんですか。私これから任務なんですけど。」

 

「へいへい…。髪なんか伸ばしちゃって色気づいて…まったく、愛いのぅ…」

 

サスケ君は里抜けした。

シカマルは泣いた。

ポンはやはり大蛇丸に会ってすぐ消されてしまった。

また暇があればつけに行こう。

 

 

明日ナルト君がエロ仙人と修行の旅に出る。



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38

空区で猫バアに会えない

まあ、会えなくてもいいのだが

会えないのは会えないでそれまた寂しい

 

私が管狐を連れているのがどうやらお気に召さないらしく

ピンポンも空区に入るときは

「猫臭くてしゃあないわ~」

「いやじゃいやじゃ、猫がおる…」

と言って入りたがらないのでここに来るときは置いて行っている

 

そこまでして何の用があるかというと、うちはイタチに会うためである。

こいつ、私がサスケをわざと大蛇丸に渡したとか、サスケを売ったとかなんとか言って突っかかって来るのでポンを態々、ダンゾウ⇒カブト⇒大蛇丸経由でサスケに届けたのだ

ホント、メンド、クサイ。

 

「はいはい、今日も元気にサスケ君は修行でしたよ。」

 

「お前本当に分かってるのか?!自分は大蛇丸から逃げておいて!!ポンを付けていたとはいえ!!何故大蛇丸なんかに!!ああもう心配だ!!絶対何か変な薬品を入れられてる!!」

 

「安心しろ、私の予想では二人は融合して大蛇丸の止めはお前が刺す。」

 

「融合!?何馬鹿なこと言ってるんだ!!そんなことさせないに決まってるだろう!!」

 

それがフュージョンしちゃうんだよなー

とあの気持ち悪いのを思い出して吐き気がした。ぅぉぇ

イタチに首元を掴まれシェイクされてるのもあるだろう。

 

大体自分が発破掛けたせいでこうなっているのに気付いているのだろうか…

…気付いてなさそうだな

こいつ素直なサスケ君しか知らねえから…

頭に完全に血が上っているイタチ君は散々うめいて私に当たり散らし、終いには吐血して止まった

 

「おやっさん、今が諦めどきでっせ?」

 

「これ以上突っ込みをさせるな。」

 

聞いた事の無い低い声が聞こえてきて私の顔色はますます悪くなった

定期連絡と情報交換を終わらせ私たちは分かれた

 

一応お前その吐血絶対怪しいからどっか病院かかっとけ、なんならいい闇医者紹介するぞ?と言っておいたが

「結果は知ってるんだ。どうしようもない。あれには間に合わせる」

といって聞かなかった

ので闇医者の所に無理やり投げ込んでおいた。

ふっ病持ちのイタチなんてちょれーちょれー

途中お姫様抱っこがつらくなったので俵に変えたら、我に返ったらしくめちゃくちゃ暴れたがもう遅い。

空区の猫は見ていたぞ。

 

 

 

木の葉に帰って、報告して、さて寝るかと受付を出たら呼び出された

おい、お前。そうゆうのは早めに言え

別段階段を上るのはつらくないし大した労力じゃないが

なんか、こう、空しいんだよ!!

さっき通った廊下で「え、あの人さっきも通ったよね」なんて視線を向けられてみろ!!

そこんところホント分かって無い…

 

呼び出した本人、5代目に用件を聞くと

どうやら今、みたらしアンコ特別上忍率いる中忍班が、ある巻物を巡って草とバトってるらしくそれの援護に行ってくれと言われた

わるい!!小隊は付けられん!!

と断言されたので私はいい加減怒っていいと思う

 

 

 

 

思ったより状況は切迫しているらしい

血の匂いと、何かが爆発する音、ピンとポンが唸るように竹筒を揺らした

死ぬのも嫌なのでピンを後方に展開、ポンを先行させ戦闘の様子を窺っておいてもらうことにした、私は急いで気配の弱い方に向かう

 

岩場の影に医療忍者とけが人の中忍(と思われる)がいた

すぐさま戦闘を邪魔せず近寄り状況を聞くが、中忍になったばかりなのか何なのか、怪我人よりは喋れるはずの、医療忍者がパニックになっており、どうにもならなかったので、結界を張って戦闘の方に行くことにした

チッ後方支援で済ませようとしたのが仇になった…

「医療忍者だろ!!しっかりしろ!!」

と一応声をかけたが、ちゃんと手当出来ているか分からん。私は医療忍者じゃないのでそういうのは詳しくないんだ。ただあのまま血を流し続けると死ぬことは分かる。

 

先に現場に送っておいたポンを戻し状況を聞く

「状況は。」

 

「爆発と煙幕で何も見えやしねぇ。だが一瞬だがなんかエロイ足は見えた。ありゃみたらしアンコの足だ、ヒャヒャ!!」

 

お前は何を見てるんだボケ

というツッコミを入れたいがどうやらマジでやばいらしい

爆音が近づいてきている

このままいくと先ほどの負傷者が戦闘に巻き込まれかねない

流石にこの規模の爆発はあの結界じゃ防げない、ましてや爆発の衝撃を受けるは負傷者

ッチっと打った舌で私は火花を散らした

仕方ないのでいつもは使わない大技を使うことにする

 

 

ふ ん じ ん ば く は つ ~

 

 

大技じゃないなんてツッコミは聞かない

現代知識は使って何ぼ、チャクラは節約して何ぼ!!

視界中に広がっていた煙幕を利用して爆発を起こした私はすぐさま視界の端に捉えたみたらし特上の足を土に埋め込み、止め

壁を作り、火の手から逃げる

 

このまま戦線を離脱したいがこの人が巻物をちゃんと持ってるかどうかによる

私の腰にぶら下げている額当てを見せ、みたらし特上の殺気を押さえる

 

「巻物は。」

 

「隠したわ。中忍は?」

 

「一応結界で隔離したしこの向きの爆発ならあの岩が遮蔽物になる。すぐ回収する。場所を。」

 

ポンが爆発するようにホノウを吐いた

敵に見つかった

取りあえず戦線離脱を目標に

 

「動けるか?」

 

「ええ。と言いたいところだけど、さっきの爆発で足をくじいてるわ、機動は殆どないと思って」

 

「あー分かった。」

 

先程埋め込んだ時にやってしまったのだろう

予定変更。

迎え撃つことにする。




そう言えば戦闘シーンを書いてなかったと急遽足してみた
あんこの口調ってこれで大丈夫だろうか…?


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39

みたらし上忍の得意忍術は何だっけか

 

思考をめぐらしつつ草忍の3人を、ピンの吐く炎に合わせて双剣(風のチャクラ付き)で吹っ飛ばした

片腕で振るったため剣一本分の風になってしまい、あまり距離は取れなかった

岩陰まで退避したいがあの医療忍者が復活しているかどうか…

わずかな希望を持ってポンを分体させ、本体に行ってもらうことにしよう

 

「いややわ~生木は燃えにくいんよ~」

 

ピンがぶつくさ文句を言っている。

草忍はどうやら手練れらしい。

益々面倒くさい事になってる現状に舌打ちを落として、みたらし特上にポンと移動するよう伝える

 

 

向こうはなんか口上を述べているが忍びに言葉は必要ない

煙幕を投げたら相手が激情したが

続いて起爆符を投げ、粉塵が広がる範囲を調節し2発目を期待するが、相手もそれ(同じ轍)に気付いているのか愚策な動きはしてくれない。

 

だから私バカなんだよ。

こういう頭使う事は誰かにやらせるのが一番なんだよ

 

何もないはずの所で草忍が一人こけた

今だ。

 

愚策ではないが、観察が足りない。

みたらし特上が、ポンと私の炎攻撃と同時にかけていた幻術

数センチズラされた視界に先程の爆破でえぐれた箇所をあてがった

一番どんくさそうなやつがハマってくれて私はうれしい

 

ひとり、と首を飛ばす

今度はちゃんと2本抜けたので予断はない

相手が、飛ばされた仲間の首に動揺したのか苦無片手に体術を仕掛けてくる

さっきから思っていたが、さてはこいつ短気だな?

 

スピードが速い。

早々に双剣を勢いよく上に投げ体術に専念する

真の目流体術に不覚は無し

いなし、流し、避けた先に力の矛先はある

 

良くゲームのキャラ設定で、何度も攻撃を入れないとエネミーを倒せない

なんて言われ、いまいち攻撃力に劣るイメージが付いているスピード系

しかしスピードがあるというのは、そのスピードを出している筋肉があるという事だ

その速さを出すには力がいる、

力があるという事はその矛先が存在する

相手のスピードが一番乗った時それが狙い目だ

 

 

すっと綺麗に動いた腕をとらえ、私は折った

苦痛にゆがむ顔に突きを1つ、今度は腹に1発2発3発と蹴りを決めて最後に上から双剣が2本降ってくる

草忍の串刺しの完成だ。と思ったが

 

ちょっとタイミングを間違ったか

…いや、相手が強かったのか。

仲間が援護に、何か技を私に放とうとして、それは矛先を変え剣に当たった。

私の双剣の一本は外れ、一本は機動をズラしきれず草忍の腕を落とした。

 

左腕しか落とせなかったが、まあいい。

これであの忍びは印が結べない

忍術は仕掛けられないだろう。

体術でも片腕ではバランスが取れずに動けない

後は一人だけ。

 

 

片腕を落とした草忍の体から『あああああああ!!』と悲鳴が鳴る

うるさいな

 

弾かれた剣を拾って黙らせようとすると、双剣を外しズラした草忍(多分この人が隊長)に起爆符付きの苦無を投げられた

戦闘初めのみたらし特上を追いつめた爆発はこいつらしい

投げられた数本は避け

一本はついでとばかりに符をはぎ取り、片腕を落とした忍びにチャクラで張り付ける

とんと肩を押して遠ざけ、一瞬の間を置いてそれは爆発する。

付近に落ちた起爆符も同時に爆発したが身代わりの術でその場を抜け出し、

粉塵の中、残った最後の一人に苦無を突き立てた。

 

ピンに吠えさせる、それに呼応するようにポンが鳴き

みたらし特上が結界付近に辿り着いたことを知る。

 

「お前、強いな。」

 

「普通ですよ。」

 

忍びの世界を舐めてもらっちゃ困る

私以上なんかごろごろいる世界だ

 

 

あんたのように

 

 

苦無を持っている手首を握られ咄嗟に腕をひねり外すが遅かった

突き立てていた苦無を奪われ振るわれる

風の性質変化でもつけているのか鎌鼬がいくつも起こる

避けてはいるが、髪紐が切れ広がった髪が切られた

そしてポンの鳴いた方に吸い込まれるように走った草忍は、みたらし特上に両腕で構えた苦無を突き刺す

 

 

「残念。そいつ、爆ぜるんだ。」

 

苦無が爆ぜた

 

 

 

 

ここで思い出してみよう。

管狐の習性を

 

増える

化ける

炎を出す

 

ピンポンは中々使える良い奴なんだ

ピンは火遁が上手い

全力で吐き出す炎は土遁も吹き飛ばす。

別にチャクラが多くない私にとってこんなにうれしいものはない

心強い味方だ

 

じゃあポンは?

頭脳だけ?

 

いやいや、化けるんだよ

本物に

 

 

 

分体のポンを起爆符に化けさせて苦無に仕込み、わざと相手に取らせた。

と言ったら、今抱えているみたらし特上は怒るだろうか

まあ、知らなければ問題ない。

どうせ攻撃を受けたのは影分身だし。

 

 

 

パニクってた医療忍者は私が結界を張った後正気に戻ったらしく増援を呼ぶ手筈を済ませていた

丁度近くを通ったゲンマさんの部隊に拾われ私は里へ無事帰る事ができた。

爆発で両腕を失った草忍はゲンマさん部隊いるし、止血させて木の葉に持って帰る事にした。

情報源は大事

 

いやーよかった良かった。

未だ足の捻挫が治らんみたらし特上を抱えて帰る私にポンがセクハラをかましてくるので無理やり竹筒に押し込んでおいた。

お前1か月は竹の変更無しな




戦闘シーン難しい…これ私ちゃんと大戦シーン書けるのだろうか…?

草忍
首切られた奴:医療忍者
片腕落とされた奴:接近戦を得意とするスピード忍者(短気)
両腕爆破された奴:中距離で風遁、起爆符と煙幕を使った戦闘が得意(隊長)


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40

シカマルの将棋が強くなってきたので盤面をみて相手をしなきゃならなくなり(以前は頭の中で処理できるレベルだった。)

クソ面倒くさかったので新しい遊びを教えることにした。

まあ、あの家はボード系ゲームであれば何でも乗ってくれる。

そしてシカマル君にゲームの説明をしていると大体シカクさんが寄ってくる。

 

「んで、挟むと変わるわけだから…」

 

「成る程、でもこれ一つ角とりゃごり押し行けんじゃねえのか?」

 

「そう思うならやってみるといいよ」

 

という事でシカマル君のエンジンもかかったのでオセロをその日はやったのだが

数時間で負け越した…

 

「やっぱシカクさんの息子だわ…無駄につおい…もうやだ、やりたくない…」

 

「ほんじゃ次俺な!」

 

「「絶対ヤダ」」

 

「つかなんで私ここにいんの?もうシカマル君私より強くなったし要らなくね?私とやっても楽しくないっしょ?」

 

「そうか?俺は楽しいけどな。やっとあんたとライバルになれた気がする。」

 

シカマルとライバルとか死ぬからやめてくれ

私はシカクさんにぶち込まれた知識と経験でしか将棋を打てないんだよ

馬鹿だから!!

 

「暇だしもう一個、教えてやんよ。リバーシ、と似てるけど今度はもうちょっと複雑な陣取りゲーム。囲碁だ」

 

囲碁はシカマルにハマったらしくどんどん新しい手を考えて攻め込んできていた

比較的囲碁は麒麟児が生まれやすいと言われているだけあってシカマル君は防一戦にはならない

将棋が、やった年数が力になるとするなら

囲碁は、どれだけ相手の裏をかけるかという人間的部分が多い

此れならシカクさんに勝てるかもしれないねと話していたら

 

「修行、付き合ってくれるよな?」とシカクさんそっくりの顔でシニカルに笑うので

「ッハ、シカクさんより私の方がつえーっつの。」を盛大に煽ったら、打倒サクヤに切り替わっていた。

将棋はシカクさん一強だが

囲碁は私とシカクさんは五分五分、いやもうちょっとで6、4になりそうなのだ

囲碁だけは手が抜けない。

 

お客さんが来たのか、シカクさんが途中から抜けていたのだが、玄関から大声で私とシカマル君の名前を叫ばれた

どうせ碌でもない事だと二人して聞こえなかったことにしていたら、今度は奥さんまで使って呼ぶもんだから私達は仕方なく重い腰を上げた

 

「はいはいはいはいなんですかー」

 

「お前ら呼んだらすぐ来いよ!ったく。」

 

玄関先にはゲンマさんが佇んでいる

「サクヤ、なんかすげえ奈良家に染まってんな…」と微妙なお言葉を頂くが

我真の目ぞ?そこんとこ間違えんなよ?

何やら面倒くさい事が起きそうだな…帰りたいな…と思案していたがゲンマさんはハンサム面を益々ハンサムにして微笑んだ

 

「おう、ちょっくら頭貸せや。」

 

 

木の葉崩しにて忍びが減り、最近里の警備シフトがままならなくなってきたらしく超効率化の話が出ているらしい

「んな、効率化したって穴が増えるだけじゃないっすか?」

「まあ減らせない事も無いっすけど…めんどくせー…」

 

シカマルと二人で文句をぶーたら言いつつ警備シフトをああでもないこうでもないと話していたらカカシさんが通りかかった

 

「えーまたそれやってんのゲンマ?この前減らしたばっかジャン」

 

「しょうがないじゃないっすか!5代目がこっちに回していると任務の方がままならんって怒るんだから」

 

「もう、5代目一人、門の前に突っ立てるだけでいいんじゃないっすか?」

 

と私が嫌になってきて

 

「あ、ゲンマさん!!今度のシフトなんすけど!!」

と中忍も増え…

 

大所帯となったところで私はフケタ

シカマルは尊い犠牲になった

頑張れ中間管理職

 

ゲンマさんの人気ぶりはすさまじい

団子のようにワイワイやっている姿を見て思った。

コミュ力分けてほしいかも、なんて言った暁にはあの密集地帯にぶち込まれそうだ

くわばらくわばら




40話位で第二部ほんへ行くと思ったけど思ったより長くなった


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41

なにかって言うと呼び出される人がいる

その人は2代目と顔がそっくりらしいが、俺らの世代的には知らない奴らの方が多いので、あの顔はその人のモノになっている

だが上は、無駄に年食ってるやつらが多いからか、上に行けばいくほどその重圧は凄いらしい

 

「この、精一杯の主張が分からんかな5代目は…」

 

とまた上層部会議に呼び出されたのか、館内放送がかかり、ぼやいてた。

その時は会議開始から30分は経っていたはずだが、この人は本当に上忍として自覚があるのだろうか…

そう言えばと思い返すと、俺が中忍になったときも、館内放送で呼ばれ、この人は遅れて来てた。

 

アカデミーを3年で卒業、1年で下忍中忍暗部と移動して、最近やっと、いよいよ、しぶしぶ上忍になったらしい

3代目の時から、上忍推薦はあったらしく、3代目はもちろん、親父や、カカシ先生、アスマに、暗部の上忍も何人か、あと上役もさっさと上忍にしろと煩かったらしい

ただ、2代目の威光も大きく、下忍になって初っ端の中忍試験、試験途中で騒ぎになったので遁走という珍事も起きたらしい。

九尾の襲撃の後などで中忍班に補充されていた為、中忍になったのも、中忍試験で正規で合格したわけではなく、班員が死亡、上忍師が怪我で引退。で、解散の形になり、補充要員として中忍みたいに扱われていた上での中忍移動らしく、今のネジに近い。中忍にあがったと同時に暗部に人がほしいからという理由で暗部にも行ったらしいがそこでの記録は俺の権限では覗けなかった

 

俺の中で中忍ってーとこの人だった

可もなく不可もなくどこにでも入る事ができるオールマイティーな使える駒だろう。

その内情を見るまでは。

 

まず、性質変化5つってなんだよ。

そして良く見てみたらC、D任務が2桁(ギリギリ中忍試験が受けられる数)に対しA、B、が全部3桁中盤ってどういうことだよ。

そしてSが2桁…

この人確か今年で20だったよな…忍び歴が長いってのもあるんだろうが

この年でこの数字はよっぽど優秀でないと無理だ…

イルカ先生と比べるとその優秀さがよく分かる…

 

オヤジの将棋の相手やその他ボードゲームをやっていてそこそこ頭は悪くねェとは思っていたが…

この人は器用貧乏なんて言葉で片付けられる人じゃない

これだけ使えたら、そりゃどこにでも入れられるし、馴染みもするだろう…

 

オヤジに「中忍になったなら、サクヤの情報だけは見ておけよ」

と言われてめんどくせーと思いつつなんとなく眺めていたが

任務達成率、生還率が他の忍びに比べて2倍以上違う

『絶対帰ってくる伝書鳩』などと揶揄られているが。名に恥じない

いや、名前以上の忍びだ。

数字だけ見れば全てカカシ先生の劣化版のような数字だが

あのカカシ先生より高い、班員生存率96%が異様に目に残る。

 

サクヤの任務報告書は暗部履歴がほとんどで、俺が見れる任務内容なんかこれっぽっちもないがどれも見る限りサポートに徹している

俺は、中忍になったからには隊長を担う気概でいたがこれは考えを改めた方がいいかもしれない…

 

 

「こんなとこで何やってんの?」

 

急に背後から掛けられる声に驚き、勢いをつけて資料を閉じたせいでホコリがバンッっという音と共に舞った

それを勢いよく吸ってしまい俺はむせる

 

「え?どうした?シカマル?大丈夫か?

あ、もしかして好きなこの写真でも見てた…?

ごっごめんお楽しみタイム邪魔して…」

 

無駄に変な方向に思考を移動させているサクヤに待ったをかけようとするが、むせて何もこたえられない

誤解そのまま出ていこうとするので腕をつかんで止める

 

「まっごほっ、ち、とまっっっげほげほっっ」

 

ありったけの力を籠めて腕をつかんだので止まってくれたが凄い気まずい勘違いをしているのか微妙な顔で俺の背中をさするので右足を勢いよく踏んでおいた

 

「っっっった―――――!!」

 

取りあえず誤解は解けそうだ



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42

シカマル君に恥ずかしまぎれに、右足を踏まれた

マジ許せん

 

最近、上忍になったせいか隊長を任されることが多く一緒に任務する相手の事(使用忍術や癖)を覚えておかねばならずそこそこ資料室には足を運ぶのだが

まさかシカマル君がいるとは思わなかった

何だこいつ意識たけーことするなと思っていたら、見ていたのは私の資料だったらしい。

いや、本人に聞けよ。

お前みたらし特上や、イビキさん以上に私に会ってんだろ

 

ッは、もしや好きなこって私?!ごめん、年下には興味が無いんだ

 

とか言って遊んでたらすんげー睨まれて

馬鹿とかアホとか散々言ったあげく資料室の扉をすごい音立てて去ってった

そんなに嫌がることないじゃんか…

おねえさん悲しい…

 

シカマル君が去った後、最近組んだ人の資料をまさぐって…

なんでそんなことをしているかって?

 

絶賛みたらし特別上忍に嫌われているからだよ

 

せめて、得意忍術と好物ぐらいは知っておかないと、任務失敗した時どやされるのでちょくちょく寄っているのだが、目ぼしい情報は今のところない。

取りあえず任務に支障はないが、何故にこんなに目を合わせてくれないのか…

アイコンタクトが取り辛くて仕方がない

心当たりはあるにはあるのだが、それがどうしてこうなったか全然分からん

思わず上忍待機所で愚痴る位に分からん

 

「この間の戦闘任務から、ホントこれっぽっちも目を合わせてくれない…」

 

「ま、嫌われてるネ」

 

カカシコロス

 

「おいおい、はっきり言ってやるなよ。サクヤが可哀相だろ」

 

この髭クマは髭を一本一本抜いた後殺ス

 

「そうだぞ、例え本当のことでも言ってもいい事と悪い事ってもんがあるだろ!」

 

ガイさん…濃い。

 

 

「あんたたちの方がサクヤ傷つけてるわよ。

ほら、それとなく聞いてきてあげるからサクヤはその顔拭きなさい…もう…」

 

「…紅先輩…!!

好きです!!

結婚してください!!」

 

「ダメだ!!」

 

「なんでアスマが答えるのよ…」

 

 

まあ、それは聞いちゃだめだよ紅先輩

わたわたと誤解を解いている髭クマを白い目で見て取りあえずカカシさんに渡されたハンカチで鼻水をかんだ

殴られた

 

「流石にちゃんと洗って返しますよ…」

 

「当たり前だヨ。というか普通に女の子が人のハンカチで鼻水かまないの!そういう所が嫌われてるんじゃないの?!」

 

「流石にこういう事はカカシさんにしかしませんよ。」

 

関節きめられた。

何故だ…

 

「にしたって、なんたってあんこなんかに嫌われてるのかねー…?

別にサクヤに問題はなさそうだけどな」

 

カカシさん、貴方って人は!!

ほんと、崖に突き落としてから上げる人なんだから!

 

タップしてもなお関節をキメ続けるカカシさんから関節外して抜け出すとアスマさんに微妙な顔された

いや、この前この人との任務で外れたから今外れやすくなっているだけであって

それを利用してこの変態マスクから逃れるのは自然の摂理であって

てかカカシさんもそれを解かってやっているわけでして

 

と紅先輩に言い訳をしたが、紅先輩に腕の心配された

この差だよ、この差。と髭クマに視線を送っといた

私は紅先輩の彼氏に髭クマは認めないので軽率に煽ってくスタイルである



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43

みたらし特上に何故嫌われているか判明した

つか嫌われてなかった。

 

「あのこね…その、まあ…師匠を見ると分かるけど、綺麗な顔が好きなのよ…

それでその、サクヤって身長高いじゃない?」

 

「確か170以上あったよな?」

「こいつホント男泣かせだな」

「俺最初こいつ男だと思ってたから。」

「だまれ三十路ども」

 

「あの、それで…この前草との戦闘で援護に入った時、あなたあんこ抱えて退避したじゃない…

でもってその時髪の毛切れちゃってたじゃ…ない?」

 

「「「「…。」」」」

 

大体把握した

こりゃどうしようもねえ

申し訳なさそうに眉根を寄せてあの子も悪い子じゃないのよ?って弁解してくれる紅先輩マジ紅様

大丈夫です。と返したついでにプロポーズ挟んだら

「えっと、その…私、決めた人がいるから…」

と頬を赤らめた

髭クマから煽りの視線を頂いたので『すね毛全部抜いてからブチ殺す』と誓った

 

 

みたらし特上の事は投げた。

いや、もう投げるしかなくね?これ?

嫌われているならまだしも好かれてるならいいかと決めたのだ

 

幸い任務に 今 の と こ ろ 支障はないし

 

だが、大蛇丸の顔が綺麗かというと疑問符を禁じ得ないとこから言って、多分目つきの悪い顔が好きなのだろう(自分で言ってて悲しくなってくる…)

穢土転で生卑劣様見た暁にはみたらし特上は死にそうだな

確かカブトに捕まって見れないけど。

あ?まて、穢土転したときは一応いるのか…?

あ、でも意識なかった希ガス。

まあいいや。

 

その場は解散となったが三十路たちの間では笑い話として広がっているらしく後日菓子折りもってみたらし特上が私の家に現れたがやはり目線は合わなかった。

それより君は、服装の方を如何にかした方がいいと思うよ…

 

 

 

 

 

シッッッット!!

やっちまった!!

 

シカマルに多面打ちできることがばれた!!

だから!! 奈良家に!! 行きたく!! なかったんだよ!!

誰だよ書類の記入漏れ発見したやつ!!

私に押し付けるなよ!!

シカクさんと会うと、大体何かしら理由付けられて捕まるんだから!

今度A級任務3連連れてくぞちくしょう!!

 

 

シカマルの「へぇ…」が意味深すぎてめっちゃ怖い…

その場は逃げることが出来たが最悪だ…

これからどんな無体をさせられるのやら…

ガクブルして、8時間しか寝れなかった。

 

後日髭クマと私とシカマルで将棋盤を持ち寄り3面打ち(一人2面の3人打ち)の約束を取り付けられてしまった…

シカクさんはどうしても入れたくなかったので、髭クマは尊い犠牲となった。

 

私は生きて帰ることが出来るのだろうか…



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44

髭クマとシカマルと私の3面打ちだが

髭クマが一番弱かったのですぐ1面に戻ったが、途中からシカクさんが乱入してきたせいで囲碁と将棋の2面打ちになり負けた…

最近負け越していたので勝率が5分に戻ってしまった…

 

「おのれシカマル…買収されたか…」

 

「いや、流石にシカクさんもそこまで暇じゃねえよ。」

 

お前はあのクソオヤジの勝利への意地汚さを知らんのだ!!

正気で狂った手を打てくるからなあいつは!!

そして掌の上でコロコロと転がされるからな私は!!

 

朝帰りするゾンビが奈良家の門から2匹ほど出たとか出ないとか

 

 

 

 

 

「サクヤは将棋も囲碁も打てるのか…凄いな…」

 

闇医者にぶち込んでから症状は落ち着いているらしくイタチは大人しく集合ポイントに現れた

シカマル事案はあまりに不覚で誰かに愚痴りたかったので話したら感心された

私は そういうことを 言いたかったんじゃ ない !!

 

「んなもん持ってても、何もすごくない。思考の整理に時々使える位だ。」

ホントそれぐらいしか使い道ない(それぐらいにしか応用できないとも言う。)

 

「…そうか?俺は今サクヤの話を聞いて、やってみようかと思うぐらい興味が出ているんだが…」

 

辞めとけ

あと、その辺に生ってる柑橘っぽい実を食べるな

そして、私に酸っぱかったからって半分押し付けるな

「すっぱい…」じゃない

もったいないので食べるがやはり酸っぱい…レモンよかましだけど酸っぱい

 

 

実はたわわに実っており、民家の塀の外まで飛び出て今2個目に手を伸ばすイタチの手に収まっている

一応病人だしと、イタチを木陰に押し込んだのは愚策だったか

今度はアタリだったらしく嬉しそうだ

お前いい加減にせえよと睨んでいたら

 

「なんだ?まだ欲しいのか?」

 

とまた半分押し付けられた

一体何なんだ、前から思っていたが、なんか急に呼び捨てになったり、タメ語になったり、お兄さんぶったりと、里を抜けてから慣れ慣れしくて気持ち悪い

いっちょ締めとくか?と思ったが前回の時とはコンディションが違うので辞めといた

さわらぬ神に祟りなし

機嫌が良さげなので今日はそのまま帰ってもらうことにしよう

どうせ今日も変わらずサスケ君は雷遁を極めてるだけだ

もしかしてサスケ君がポンの分体に気付き、ポンに幻術を見せているなんて事が無ければ…特質して何かあるわけでもない。

 

帰り際完全体スサノオが出来たと言われた

まるで殺される気がない仕様になって行くイタチに苦笑するしかない

ポンから聞いたサスケと、私の知っているイタチの力量差が半端ないんだが本当にサスケ君はこいつに勝てるのだろうか…?

是非ポンには幻術に掛かっていてほしい…

私は、相当な鬼畜仕様イタチ君を、サスケ君がのす日が来ることを祈っている

 

 

私はチャクラが少なすぎてスサノオは出来ない

スサノオは発動の時点でめちゃくちゃチャクラを使う。(チャクラの鎧って所でご察し案件である。)

それに永遠の写輪眼でない限り失明のリスクを背負うので、移植しない限り使う事は無いだろう。(未だ父さんが封印した写輪眼は解けてないので実は移植も難しい。)

何れにしても、相当チャクラを使うので全然使ってない。

万華鏡の方の能力は、いざという時使い慣れなくても困るので蔵の下に封印術と結界術で空間を作り、そこで修行をしてはいる。

…戦闘に使えるかどうかは置いといて。

 

父によるカラクリ、叔父による結界封印、私による地下増設…

うちの蔵がどんどん魔改造されていくのは、初期ネジ的に言えば運命である。

 

ネジ君と言えばついこないだツーマンセルで任務をした。

めっちゃやりやすかった。

あやつ、作戦から実行まで全部自分でやってくれるのでマジ最高である。

5代目に部下にくれと我儘を言いたくなるほどに最高である。

ネジ君にあまりにも任せ過ぎて懐疑的な目を向けられているのでそろそろ本気出す

多分、きっと、来週らへんに…めいびー…



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45

私は2代目の顔をゴリラ顔と認知しているのだが

どうやら世間はそうでは無いらしく、『あの顔はクールの方デショ。』『ゴリラはないな。青春的な意味でゴリラならわかるが。』『お前、それって自分の顔がごr(鈍い音が鳴る)』

 

等言われた

ゴリラだと思うんだけどな~(棚上げ)

 

以前の暗部イタチ君と並んだ時の屈辱をわたしは忘れない。

全てこの顔のせいだ。

とは言わんが

 

過去ミコトさんに見せてもらったイタチ君幼少の写真は誠に少女であった…

まあ、会ってるから…少女見紛う少年だったのは知っているが…

写真で見ると分かるっていうか…横に並べてみた自分の幼少(写真)が全く持ってヤンチャ坊主なのがつらかった…

ちな、サスケ君も前世知識無かったら少女だと私は思ってた。

 

うちはの血が千手と同じぐらい入っているなずなのにこの差よ…

何故父は祖母に似なかったんだ…

どんだけ扉間の血が強いんだよ

3兄弟の上二人の扉間成分全部父に入ったことはなんとなくだが分かる。

 

一回穢土転させてもろもろ聞き出したいよな…

拙者弱いので、すぐ謀反されそうだけど

どっぷり暗部にいた時の『火影の狛犬』話しはある意味伝説級だった

 

敵の傀儡を傷付けず持って帰りたいとか無茶言い始めて、敵小隊ごと封印しようとしたり。(傀儡はマジで無傷で持って帰ったらしい。byサザミ)

 

忍具全部家に忘れて、部下からもらったクナイ一本とピンポン(分体)で火影護衛とかやる気ない事したり。(バレてダンゾウに拳骨3発もらったらしいbyシカク)

 

いつの間にか禁術会得、からの改良改悪を繰り返し、挙句作間自身が禁術に指定されたり(あいつにこれ以上術を教えるなとの御触れが火影から出た。by自来也)

 

我が父ながらやばすぎるだろと思った

千手では落ちこぼれだったらしいが、2代目の息子として遺憾なく力を発揮しているようにしか見えない…

忍術苦手とか絶対嘘だろとか思ったが

戦闘に忍術入れるのが得意じゃないだけで、忍術のシステムとしては、十分父の興味対象には入りそうではある事に気付いた私は、あの蔵を綺麗に解体できる人は金輪際現れない事を悟った。

 

あの、地下増設くらいでイキって誠に申し訳ありませんでした。

ちょっと時空間忍術使ってみたかったんです…

そして、これからも既存の術式を破壊しない程度に蔵は改造されていくと思います。

 

九尾事件の際、自宅は崩壊したのに蔵だけ残っている時点で、この蔵が可笑しいと気付くべきだった。

自宅より結界レベルが高い蔵ってもうシェルターだよな…

 

 

―――

――

 

 

久しぶりに師匠に会った

図書館ではなく任務で

 

「ししょおおおおおおおおお!!!」

 

余りに久しぶりすぎる師匠に私は泣き付き、咽び、吐き、吐血、入院と相俟った

ストレス性胃潰瘍による吐血だったので、どうってことなく3日後には退院するが

 

「さくやちゃん、どうしてそんな泣いて―…ってあれえ~??っ大丈夫?!」

 

と心配してくれた師匠は、情緒不安定な私を心配してくれて何度か入院中お見舞いに来てくれ

その度に私は「暗号部に行ぎだいでず…遺跡巡っで…フィールドワークじで…本に囲まれだいでず…」と大泣きし師匠を困らせた

 

「僕も暗号解読部隊、部隊長になったけど流石に人事は動かせないんだよね。」

 

とさらっと出世した話をされて取りあえずお祝いの言葉をかけておいた

今まで簡単な暗号だったら、自分で基本とけちゃうから暗号部行ったことなくって

久しぶりにこりゃやばいぞ案件で暗号部行ったら師匠が出てきてくれた

うれしい。

めちゃくちゃうれしい

 

なんか師匠の横で「ぶっちゃけ誰ですかこの人?!って、吐血した――?!」と驚いていた人には申し訳ない事をした…

急に、上司に飛び付く白い塊(図体がでかい)が咽び泣き、吐き、しまいにゃ吐血したら困るよな…

ホント…ごめん…

師匠とは図書館でしか会った事が無いので、違うところで会えるとは考えておらず、思わず涙が止まらなくなってしまったのだ…

私は悪くない…けどごめん…

 

木の葉の暗号部にトラウマを植え付けてないか心配だったが、後日解析結果が出たため任務帰りに伺ったら暖かく迎えてくれ、私はもう一度泣く事になる。

 

「サクヤちゃんの噂はいっぱい聞いてるよ。鳩なんて縁起のいい名前が付いたね。」

と師匠は言って下さり私は自分の二つ名が少し好きになった

 

 

 

 

「ってわけなんですよ~」

 

20も過ぎたのでお酒も解禁じゃ~とばかりに飲んでいるんだが流石忍者、酔わねえ

確かに多少の毒物耐性は付けたが、酒まで強くなるとは…流石NINJA…(耐性付け過ぎたともいう)

 

しかし、今宵の私は気分がいいので雰囲気酔いするぜ!!

なんと、以前のピンポンコールタール事件で知り合った、犬塚ハナさんと飲んでいるのだ!!

はー良い匂い!!

ハナさんはなんとあのナルト君の同期、犬塚キバ君のお姉さんらしく、笑うと八重歯が見えて可愛い

 

「あんた、男運が良いんだか悪いんだかわからない奴ね…」

 

多分あのサザミの噂でも聞いているのだろう…

大抵私を噂する奴らはあいつが何股だったか分からん話を知っている、又は当事者だ。

あの人のタラシ具合はパナイ

伝説の三忍が一人、エロ仙人もかすむ

私は最後まであの人が何人の女性と付き合っていたのか、関係を持っていたのか全く持ってわからなかった

ので葬式は親戚内で納めた。

変なこと思いだしたので話題を変えよう

 

「そう言えば、あのコールタール解析結果出ました?」

 

「まだ。だけどもうすぐよ。原因分かるといいわね。」

 

そう言ってほほ笑む姿はふつくしい…

女子力上げて出直してきやす

と別れたが今は時間が無いので髪の毛を伸ばすぐらいしかできない

イタチが死ぬまでに、やらないといけない事は山積みなのだ。



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46

コールタールの解析結果が出たらしい

5代目にお呼び出しされた。

 

え、なんか大ごとになってるんですけど…

 

 

 

「お前の管狐が吐きだしたものだが…」

 

火影室は相変わらず書類だらけで鼻がむずむずする

書類の林の向こうには5代目が机に肘をつきゲンドウポーズでうつむいている

なんかすっごい言いにくそうなんですけど

え?何が始まるの?

結構やばめな事?

さっきっからめっちゃ真剣な顔の5代目をしり目に入り口のカカシパイセンにSOSのサインを送っているのだがめっちゃ無視されている

 

あれ?おこ?おこなの?

大蛇丸ん時援護入んなかったのオコなの?!

ねえ!!せめて返事をくれ!!

 

私がその沈黙に内心恐慌に走ってるなど知らず目の前の5代目はやっとその口を開いた

 

「…――九尾のチャクラであった。」

 

「うそーん」

 

あ、やべ

思わず心の声が出てしまった

いや、しかし待て

私これ結構やばめのピンチじゃね今…

 

ご意見番「九尾のチャクラじゃと?!真の目がそういうことをするはずがないが、いやしかし変人の集まりじゃしな…」

 

ダメだ!!

 

ダンゾウ「九尾のチャクラを持っている…?お主さては九尾事件の…」

 

だっ、ダメだ、だめだ!!

 

やばやばのヤバトンじゃねえか!

カカシパイセンがさっきから私の視線を全力で避けてるのはこういう事かよ!

だが思わず出てしまった言葉に嘘はない…

おちつけ、もちつくんだ…

まず、なぜそういう結論に至ったかだ

 

「…お前が信じがたいのも分かるが、私も未だ信じられん。だが15年前確かに感知したチャクラと全く同じ配列、種類のチャクラだったそうだ。」

 

うわー言い逃れできねー

え?まじで?

もうこれダンゾウ延いては木の葉に殺されるフラグ立ってんじゃん…

私は絶対抹殺。

ピンポンは良くて監禁、悪くて実験体だ

えー?せっかく写輪眼取り返したのにー?

ここでー?THE END?

 

初っ端にケンカ売ったせいで5代目のお力添えとかも期待できねえし…

帰ってきて!!3代目!!

今なら四鬼封陣でさえやぶって助けに行くから!!

頼むから!!私に弁解の余地を!!!

 

「…」

 

沈黙が痛い…まじ痛い…

私さっきからマジしか言って無い気がする…マジで…

 

今すぐピンポンを引き出して事情を説明してほしいが、この刺す様な沈黙が痛すぎて、今出したらやばいのは流石の私でも分かる…

くそっピンポンが心配だったから急いで出てきて碌な装備もねぇ…これじゃ里抜けもできねえよ…

私が全力で逃げる方向に頭を回転させているとやっとカカシパイセンが口を開いてくれた

 

「五代目、」

 

「ああ、解かっている。

…お前の働きは3代目の時から良く聞いている。それにそこのカカシからも…。」

 

っとお?お?弁解の余地がワンチャンある…だと?

 

「よってこの事は私とカカシ、そして解析班だけに留めた。」

 

おおおおお!!

って、え?!どうしたん?!

5代目優しい!!

何食べたの?!

急に優しい!!

 

「カカシの話によれば、件の管狐達は作間の時からの付き合いらしいな。」

 

(…そうなの?)

(そうだヨ)

 

そうらしい。

 

「私も作間の活躍は知っている。そしてお前の叔父の話もだ。」

 

うん、で?

結論は?

結論を先にくれ?

我、緊張で心臓が飛び出そうぞ?

 

「よって私はその管狐をこの場に出すことを許可しようと思う。」

 

「あざっっっっっっす!!」

 

ふおおおおおおお!!おまっ5代目!!あんた最高だよ!!

今日から5代目の狛犬になってもいいかもしれん!!

マジファインプレーだよ!!

 

 

 

 

「いやーわてらも分からんのやわ~」

 

「わるい、分からん。とりあえず出そうだから出しタ。」

 

 

 

「…ピンポン、ホントニ、分カラナイノカナ?」

 

「せやから分からんゆうとるやろ。第一出たのが何か分からんゆうて、解析に出したんちゃうんか?」

「ま、諦めて共に死ぬ時を待とうゾ!!ガハハハハ!!」

 

ガハハハ…じゃねぇーよ!!

お前らの命だけじゃなく私の命もかかってんだぞ?!

返答次第では即打ち首ぞ?!

我死ぬぞ?!

父さんと母さんの墓にぶち込まれんぞ?!

真の目の立場スゲーやばいぞ?!

 

だが、珍しくピンの言い分も確かなのだ。

ポンと私なんかジエンド方向に思考放棄しているが、なんで九尾のチャクラがそこに入っていたのか原因が分からないから解析に出したのは確かな事実としてあるのだ。

よし、これで行ける。これで行こう。

 

「あの5代目。

私にもわからない所でして…」

 

取りあえず事の始まりから今までを説明して

私の推測を嘘交じりで話し

何とか丸め込もう。

 

序にコールタールを私の管轄下に置く事ができたらさらに良い…

考えながら話すんだ!!

頑張れ!!私!!

ココが押さえ所だ!!私!!

 

「まず初めのこいつらが吐いた所は、獣医の犬塚ハナさんが見たとおりでして、

私にもわからないから獣医のところへ駆け込んだんです。

そこで、この九尾のチャクラを吐いたのですが、曰く、管狐の習性として宿主のチャクラを吸うようなので、私のチャクラではないという所で不審に思い解析に出しました。

こいつらは、九尾チャクラを持っているから特別強い個体、という訳でもなく、管狐の習性の通り、只普通に火を吐き、化け、増えるだけなんです。

その証拠に木の葉にいる真の目棟梁の管狐も同じことが出来ます。

よってこいつらがただ生きるためだけに九尾の近くにいたとき吸い込んだ可能性もあるわけです。

例えば九尾事件の時、私はシェルターにいたので詳しくは知りませんが、叔父のサザミは暗部で九尾相手に戦った過去があります。そこで吸い込んだ可能性もない事はないのです。

そして何より、管狐は宿主のチャクラを吸いきることはないのです。

宿主には生きてもらわなければ自分が死ぬだけだから。私達真の目は特殊でも何でもない一族ですが多くがこの管狐達と共に増え、栄えてきた者たちです。その中で管狐にチャクラを吸い取られ死んだ者たちはいません。

目算ですが、あの日犬塚ハナさんの前で出した九尾チャクラも、九尾にとってはどうって事の無い数だと思われます。

確かにこの管狐の体に対して体積比が可笑しい量ですが、管狐は妖怪です。動物ではないのではっきり言ってその原理は利きません。」

 

「…その分は納得しよう」

 

「ありがとうございます。

そして次にこいつらが言った『分からない』という言葉ですが、

こいつらが分からないという事が全て答えになっているかと、私は思うのです。

管狐の習性は先程言った通り宿主のチャクラを微弱に吸い、こうして火を噴き、化け、増えることが出来るのです。そこに意思は存在しません。私達人間と同じように息を吸い、真の臓を動かすと同じようチャクラを吸うのです。本人たちはそれが何処から来たものかまでは分からないでしょう。

しかし、私はひと時ナルト君という九尾の人柱力のお世話係をしていた時がありました。その任は3代目の死亡を持って破棄されましたが。ひと時同じ時をこの管狐達は過ごしています。私の推測ではそれが全ての答えかと思います。」

 

「…カカシ」

 

「…筋は通っているかと。」

 

「ところで5代目様。話は変わるのですが、3代目は私に一つ大きな恩があるのです。九尾事件後すぐの中忍試験でのことです。」

 

「ああ、聞き及んでいる。」

 

「それならば話は早いですね。

火影の恩は3代目亡き今、火影に返してもらうのが筋かと思うのです。

この九尾チャクラ、これを私の管轄下においてください。」

 

「ならん!!それは流石にならん!!」

 

「しかし、5代目。これを吸い取ったのは私の管狐ですよ?どなたかから聞いたか分かりませんが、中忍試験の事を知っているのなら、ダンゾウと私の摩擦も多少なりともお耳に入れてるはずです。研究にはこの管狐を必要とするでしょう。私に裸になれとおっしゃるのですか?」

 

「…だが、お前がこれをどう扱えるというのだ。これはナルトに返す。それが一番だろう?」

 

「ナルト君に返すにしても一回封印を緩め、こじ開ける必要があります。その時にまたも九尾が暴れ出したり、うちはサスケやイタチなどに操られるやもしれません。

私の家には父が残した封印術がいくつかあります。そして、2代目の遺産も。封印するならこのチャクラだけでナルト君を、人柱力など必要ない方法で封印すべきです。幸いこのチャクラには意思は有りません。暴れることも有りません。」

 

「うーん…」

 

「5代目、オレもそれがいいかと思います。それに滅多にやる気を出さないこいつが珍しくやる気を出しているので、悪い方にはならないでしょう。」

 

「しかしだな…」

 

「封印出来たら返します。本当はナルト君にそのまま返すのが一番なのでしょうが、私はそこまで安全を保証はできません。幸い5代目様の手腕によってダンゾウ様には話が行って無いようなので表向きこれを奪われ、揮われることはないでしょう。」

 

「…わかった。お前にこれは預ける。だが、あの量すべては無理だ。」

 

「ですがどこに隠すおつもりで?」

 

「…カカシ。なんか無いのか。」

 

「いや、俺らも扱いに困ってるからこうして頭突き合わせてるんでしょう…サクヤに任せましょうヨ、俺もうサクヤがこんな口開いてる姿見たことないですよ?ね?」

 

「さくや、…お前には何か策があるのか?」

 

「ええ、家には父の残した蔵があるので。そこで良ければすべて収容できます。」

 

「作間の蔵か…」

 

「彼のお方たちからあの目を守っている蔵でもあります。」

 

「…はぁ…わかった。任せる。だが定期報告はしろよ?」

 

「もちろんです。」

 

 

 

 

なんとか誤魔化せたが、……もう絶対考えながら喋るとかしない

もう最後の方なし崩し的にカカシパイセンのお力添えで決まったし…

マジこの人に足むけらんねぇ事が出来て後が怖い。絶対碌でもないお願いされる。

 

一生分の頭使った…

もう私は口を開かない。

 

その後ピンポンが吐きだした量をどうやって犬塚家の庭から動かすかでまた揉めたが、『出したんだから入ってたんだよな…?』とピンポンに入れて事なきを経た。

 

 

「ホントに知らないの?」

 

「そうゆうとるやろ~」

「ケケケ知らないネ。」

 

マジでどこで拾ってきたんだ…

一応写輪眼の封印に関係あるかと見てみたが相変わらずその巻物は沈黙するだけだった。 



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47

ああぁぁぁ

原作が始まりそうな雰囲気がするううううぅ…

 

世界各国に点在する真の目一族の情報網で情報が色々入って来るんだがどうやら各地の人柱力が一人また一人と攫われているらしい…

 

うわー…

この感じ絶対あれやん、はじまっとるやん…

イタチ君とは最近連絡が取れてないのでどこまで集められたかは知らないがめっちゃヤバイ…

つかもう原作はじまってる可能性も…

 

とかうだうだ考えてたら緊急の招集がかかった

いつもなら、この上忍召集とか、上層部会議とか絶対行かないが

この情報を持っている私が思うに…多分これ2部始まったんじゃない?

もしかしてナルト君修行から帰ってきてるんでない…?

とか考えて夜しか寝れないので、重い腰を上げてさっさと火影邸に向かった。

 

 

「ナルトか?ああ、帰ってきていたぞ。緊急の任務に就かせたから今はいないがな。」

 

マジで始まってた

クソだるいので上忍会議をばっくれようと、そのまま踵を返したら目の前が緑で埋まった

 

「よお、サクヤぁ。

お前これから会議だって分かっててそっち向いてるんだよなぁ?ああ?」

 

クソだるい奴に見つかった…

シカクさんにそのまま捕まり、前を向かされて、この糞どうでもいい会議を正座で聞く羽目になり私の足はもうガクブルだ。

シカクさんは、私のしびれた足に向かって突きを何度か繰り返し、反応を楽しんだあと、私を解放した

 

「もう一生会議にはいかねぇ」

 

「お前…それが現状を生んでんだぞ?」

 

呆れた視線を髭クマから頂き私はそっぽを向いた

私は上忍になりたいなどという世迷いごとを吐いた記憶はない

全ての責任は私を上忍にした上忍師、相談役、火影各位に掛かるのだ。

真の目の泥に埋まる家紋は健在だぞ、おらぁ

 

 

 

そのままナルト君に会う間もなく任務に追われて居たら、ヘタこいて腕折ったので病院に行った

カカシパイセンが入院していた

 

ぷっふーパイセンまた入院ですか??入院するの何回目ですか??毎度倒れるのって仕様なんですか??

 

と煽っていたら今テンゾウさんがナルト君たちと任務に就いているらしく着替えの当てがないので取ってきてと言われたのでガイさんを召喚した。

 

青春がどうたら言っていたが私は何も聞こえなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーんこれはヤバトンな感じに時間が無いぞ」

 

思わず独り言を言ってしまう位時間が無い。

只でさえ、あの日流出した写輪眼の大半が、ダンゾウの管轄に入ってしまい困っているのに…

 

やはりダンゾウを暗殺するしか…

 

って今はツッコミがいないんだった、ボケても虚しくなるだけだ。

気持ちを切り替え切り替え…

 

そう言えば、

ついに感知方法を手に入れた

いやふううううう!!

 

お前こんだけ術知ってて感知一つもないのかよ

なんてゆう視線をもう頂かなくて済むぜイェイ!!

 

どうして先祖のはずの2代目はめっちゃ感知得意なのに、私が感知がダメだったのか全く持ってわからんが。

ある時私は気付いたのだ

拙者の写輪眼応用できるんじゃね?と

 

今更説明で申し訳ないが隠しているわけではないので

私の万華鏡写輪眼の能力をここでざっと説明してしまおうと思う

 

私の万華鏡写輪眼の能力は『自分のチャクラを目印に使って移動する』と言うよく分からない能力なのだが

えーっとあれ、オビト能力に近い

ただ、自分の空間はないが。

あと、瞬身の術とか…あそこら辺。

 

例えば私が火遁業火球をお空に飛ばすとしよう。

んで万華鏡写輪眼を発動したとしよう。

 

業火球と入れ替えに私は空を飛ぶこととなろう…

あいきゃんふらーい

 

なんて言ってられない高さだろうが

まあ、自分と自分のチャクラの入れ替え(スイッチ)ができる。

避雷針の術に近いが全く違う原理で動いている。

ぽい。多分。ごめん馬鹿だからわかんない。

もしかしたら他にも出来るようになるのかもしれないがまだ修行不足過ぎて自分と自分のチャクラでしかできない

何故なら、術の発動が火遁と共に発動するからだ。

 

イタチに見せたら幻術かけられて焦った。

この術してる時幻術返しするのむずいんだよ、辞めてくれ。

「突然友人の体が、あの白い炎で燃え尽きていく様を見る俺の気持ちも考えろ。」

と諭された。

それは…悪かった。

 

 

しかしチャクラを意識して修行をしたおかげか、チャクラの気配を読み取ることが出来るようになって、どれが自分のチャクラかそうでないかぐらいは簡単に感知する事が出来るようになったのだ!!

道程は長かった…

ある日もある日も自分のチャクラと九尾のチャクラの差を感知する日々…

今あるチャクラで、まともに感知できるのが蔵にこれしかないのが問題なのだが

チャクラ感知の話をすると私馬鹿なので準じて万華鏡の話もしなければならなくなりそうなので誰にも相談することが出来なかったのだ…

 

 

ちなみに、能力の名前はまだ考えてない。

ネーミングセンスがゼロなのでこの能力を唯一知ってるイタチらへんに付けてもらおうと思っているが最近なかなか捕まらない。

もしかしたら名前を付けてもらう前にあっちが死んでしまうかもしれんなぁ…

 

 

この能力

私のチャクラがマーキングとなる。

そのチャクラは、管狐に吸収されている私のチャクラでも変わらないらしく

視界にそれが無かろうとも一瞬で移動できる避雷針バリに便利な術である。

なので、隠遁性を高めるためにピンとポンには悪いが新しい管狐を取り入れることにした。

 

てってててっててーててー

棟梁の管狐~(ダミ声)

 

の分体

 

 

分体と言っても侮るなかれ、棟梁の増える力がメタくそある管狐の分体だ

私のチャクラを吸収し続ければそのまま本体にもなり得るらしい彼女は有能だ

 

名前はドンと名付けた

あのモジモジしている棟梁の管狐はカツだったので、パッと思いついたのがトンで、狐にブタはねぇだろとポンに止められたのでドンになった

 

一気に物々しくなったがモジモジ具合は継続しているので可愛い事に変わりはない。

「は~いやし~」とかドンに構っていたらピンポンに家出されそうになったので必死に引き留めた。

高級油揚げをたんまりと強請られたおかげで私のお財布は空っぽだ

 

ドンの住処(竹筒)を腰に据えると、竹筒が3本並んで動くのにちょいと邪魔になってきた…

どうしようかと悩んでいたら、棟梁が色々考えてくれた

しかし、後ろ腰に据えてる剣を一本減らして鞘に下げるとか、口寄せの様に巻物サイズにするとか、利便性の面と、管狐の『口寄せの巻物サイズはごめんだ』という魂の叫びが聞こえてきたので間をとって家(竹筒)を二つ用意する事にする。

 

任務時は竹筒(小)を腰に掛け、通常時は竹筒(大)を蔵に置いてあるのでそこで待機

又はサザミがいた時の様に分体を袖の下に入れる、という感じに管狐の自由度を上げた。

おかげで私の身の危険度(ダンゾウとか、大蛇丸とか)が上がったが、以前よりは私の立場も(不服だが)固まってきているのでおいそれと手を出せなくなってきているし

有事の際以外はどうにかなんだろと楽観視しておいた

 

次いでとばかりに管狐の竹筒の中をちょっといじって蔵とつなげたので、蔵を通して管狐の竹筒移動が可能になった

父さん、今日も蔵が便利です

お世話になってます

マジあざっす

 

 

万華鏡の話に戻るが、私にもオビトの様に自分の空間なんてものがあれば、蔵なんて通さずピンポン出し入れできるのだが

そんなとんでも能力ではないし、しいていうなら移動能力発動中攻撃されてもメラメラの実の様に攻撃が素通りできるぐらい

だが、その移動先に行くまでに少し時間が掛かるという不便極まりない能力なのでマジ移動能力にしか使えねえ

もう少し使い慣れて時間短縮をしておきたいが流石に任務時にこれ使ったら一発でダンゾウその他にバレテ命狙われるんで黙っておこうと思う。

大蛇丸が死んだらワンチャン…とも思うがサスケ君に付けたポンが何も反応ないとこから見ると見事幻術にハマってそうでマジ怖い…

頑張れポン!!

君だけが頼りだポン!

ダンゾウルートで届けるのはリスクが高くて面倒くさいんだポン!!

マジで頑張ってくれポン!!

語尾がポンになりそうだポン!!



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アスマ編
48


任務帰り、大蛇丸ぽいチャクラを感じたのでちょっくら洞窟にお邪魔したら

父親の遺体が今大蛇丸の手元にあることが分かる資料を発見した。

今持って帰る事は出来ないが、いずれは持って帰り母と同じ墓に入れてやるからな、っと静かに父に誓い私は付近の書類を物色した

どうやらダンゾウ経由で手に入れたらしい

最初は柱間細胞目的だったが、父は扉間細胞しか持ってないのでダンゾウは要らなくて、じゃあ頂戴とばかりに大蛇丸の方へ流れていったのだ

父の仇はダンゾウに決定だ。

大蛇丸のところで穢土転されてないといいな…と願うばかりである。

 

貫徹任務の報告を終え家に帰る途中、どうやって取り返そうか、と思案しているとカカシパイセンに声をかけられた。

 

 

「サクヤ、お前アスマにそこそこ世話になってたろ。ちょっと付き合え。」

 

 

「ん?」

 

 

いつの間にかアスマさんが死んでいた

 

嘘だろ?!

何時の間に死んでるんだよ!!

何やってんだよ髭クマのバカ野郎!!

いや、私が大蛇丸のアジトなんかに寄り道したばかりに…

紅様が身重の身で一人生きてくだなんて…

トリマいそいで紅様のところへ馳せ参じようとしたら、襟首を掴まれ先程くぐった門まで引きずられて行った…

 

 

 

「いい加減にしろ!!」

 

 

うわお…5代目めっちゃ怒ってるけどマジココに突っ込んでくの?と視線で問うがカカシパイセンはどこ吹く風

悠々と私を引きずりご登場致した

 

 

「4人いればいいんですよね?」

 

超かっこいい登場しているが私の事を数に入れてくれ

なんで私がここまで引きずられてきたか、分からないではないか

すっげなんか微妙な視線をイノちゃんから頂いているから、すぐさま訂正して5人に増やしてください。お願いします。

 

「第10班には、俺が隊長として同行します

それで、どうですかね?」

 

 

だから私も数に入ってるんだよね?!

なんで私抜きで話し進めてんの?!

私は何の為に連れてこられたの?!

5代目がすげえなんか驚いてるけど

突っ込んで!!

ちゃんとこの意味不明な状況に突っ込んで?!

 

すっげえ気まずい思いをカカシパイセンの後ろでしていたら、カカシパイセンがやっと火影様に「サクヤ付けるんで、無茶はさせませんから」とかなんとかこそこそ耳打ちしてくれた

普通に言ってくれ普通に

3人から微妙な視線頂いてるから。

5代目は熟考した後

 

「ッチ…ああわかった…

好きにしろ!!」

 

と言った

3人の微妙な視線は5代目への決意の視線だったらしい

突っ込まなくて良かった…

しかし、ここで喜んでるアスマ班に悪いんだが大事なお知らせがあります。

んじゃいきますかとかカカシさんが言っている横で私はやっとこさ口を開いた。

 

「水を差す様で悪いんだけど。ごめん、誰か兵糧丸持ってない?」

 

 

良く思い出してくれ。

拙者、先程まで任務で、大蛇丸のアジト物色したせいで貫徹。

兵糧丸も底をつき、起爆符と煙幕、クナイ、手裏剣も今はすかっぴんだ

 

 

後輩3人とカカシさんと5代目に『お前なぁ』と視線を頂いたが仕方がないだろう。

家に装備一式はあるから、それ取って来るんで先行ってて下さい。と言って私は飛雷神の術のマーキングをカカシ先生に付けた。

 

合流したら、カカシパイセンにめっちゃにらまれてるなう。



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49

「シカマル。まずお前の作戦を聞こう」

 

カカシパイセンの言葉を皮切りに、シカマルが頭をフル回転させた作戦を話してくれる

「全員しっかり頭に叩き込んでくれよ」とシカマルに言われたので、ふんふんと私は頷き、それをほとんど聞いてなかった。

 

 

いや、だって私、ほら、作戦はその場で練る派だから…

大方のあらすじ(こいつを殺してあいつを残すとか、状況に応じて巻物を燃やせとか)は決めといてもいいが、そんな細かいのは10班と縁深いわけではないので、はっきり言って無理なのだ。(アスマさんがいれば別だが、あいつはもういない。)

私の出来る事と言ったら精々、邪魔しない程度にイノちゃんの護衛だ

サザミのせいで『医療忍者貴重、大事。』が刷り込まれている私は(サザミのホンキのデコピンは頭蓋骨にヒビが入る位痛い。)今回イノちゃん第一で行こうと思う。

 

 

大方の作戦を把握したので細かいのは聞き流していたら、ばれていたのかカカシパイセンに拳骨を食らった。

 

「何するんですか、痛いじゃないですか。」

 

「あのねぇ…お前が本気出してくれたら、こんなのすぐ終わるはずなんだから、頼むから頑張ってヨネ。」

 

多大なる期待を私に掛けているらしいが

これは弔い合戦であり、シカマルが立てた作戦にて、成功が約束されるんだ。

私がでしゃばったって何くれとはならん。

それにこの後7班も合流するだろうし

遅かれ早かれイノちゃんの身は守ることにかわりはない。

 

「言っときますけど、飛雷神の術は最近覚えたばっかなんで、今の私が戦闘中当てになるのは結界と封印術ぐらいですよ」

 

「十分、十分。」

 

 

 

 

 

 

 

―――

――

 

カカシ先生のほかにサクヤが来てくれたのは良い拾いものだった。

流石カカシ先生、よく分かっている

 

主力はカカシ先生とチョウジが張ってくれる

仕掛けは俺とイノ

だがイノの護衛に俺が付いているとどうしても俺が自由に動く事は出来ない

後から人員が補充されるとはいえ、イノを危険にさらすには少しリスクがありすぎる。

だからオールランウダーのサクヤがイノについてくれれば…

あの人の事だ、期を窺って援護ぐらい護衛の片手間やってくれるだろう。

 

こんな事本人に言ったら「上忍使いが荒い」とか何とか言われそうだが。

何と言われようともサクヤがいるってだけで、命の安心感が全然違う

流石『伝書鳩のサクヤ』と言われるだけはある。

必ず、誰一人も欠けず俺たちは帰れるだろう。

サクヤの力を過信してはいないが、サクヤの能力への信頼だけは無駄にあるんだ。

会議に行かねぇのは、どうかと思うがな

 

 

 

 

 

 

―――

――

 

 

やべぇ…

アスマの仇ってあれじゃん…

暁じゃん…

 

 

 

今更糞どうでもいい事であろうが、敵が不死身コンビだったことを思い出した。

ちゃんとこまめにカンペチェックすべきだった…

ハッキリ言ってナルトって話が長いだけあって、チェック事項が多く、広範囲なんだよな…

これ第4次忍界大戦のりきれっかな~と周りを警戒、護衛に徹していたらイノちゃんが2人を発見したらしい

ちょいまち、早い、早いよイノちゃん。

こっから10分て、私まだ心の準備できてないよイノちゃん。

 

イノちゃんの心転身の術が解けすぐさま向かうらしいので一応、とひそかにピンを5つに分体させ皆の衣服の隙間に滑り込ませた。

これで一回命が助かる位はどうにかなるだろう。

 

2回目はムズイのでイノちゃん以外自分でどうにかしてくれ

野郎の命に構っている暇はねェ

私は自分の命とイノちゃんで精一杯だ

 

 

 

 

 

 

イノちゃんの情報からルートを絞り込み、先回りし待ち伏せする

のんびりと歩いてる半分?服が破けているやつが不死身の変な奴なんだろう。

3日前の情報と変わりない姿って事は3日服が変わってないってことで、いいんだよな…?

暁って金が無いのか…?

 

 

シカマルがまず影で陽動、それに合わせて位置を悟られないよう、起爆符付きクナイを、湾曲した軌道で私が投げる

 

何度も同じ手をうんぬん言っているが、こいつらがこれで死ぬことがない事位シカマルだって解かってるんですー

つか馬鹿(わたし)だって分かりますー

 

いい方向に二手に分かれてくれたので影の方向もばっちりだ

あとは二人が最小限の動きで避けてくれるかどうかだが

 

それもオールOK

シカマルの投げた影真似のチャクラ性質を吸ったチャクラ刀は見事相手の影に刺さっている

 

鎌野郎が馬鹿丸出しの発言をしてたが私は何も聞いてない

ふいてなんかない。無いったらない。

なのでマスクの人…私のいると思われる方を睨みつけないで。

そこに私はいません

 

いい感じになってきたので私はシカマルの援護からイノちゃんの護衛に動く。あとはカカシパイセンがいかようにもフォローしてくれるだろう。

してくれるよね?

ね???

 

―――

――

 

シカマルが影真似の術でじりじりと下がって行く姿を見るとなんだか感慨深い…

あの初めて会った時の3秒と持たなかった影真似の術がここまで進化を…大きくなったな…と感心していると状況が傾いた

 

手が地面から出てきた

 

うへぇ

手がもげて動いてる…

なにこの筋繊維…

多分筋繊維ではないんだろうがもぞもぞ動いてて気持ち悪いので筋繊維と呼ぶことにする。

筋繊維は元の場所に収まるが気持ち悪さは変わらない。

私の目はごまかせない。

地面から生えた手によって半裸?じゃない方は自由になってしまった…

これは…もしかしてやばい感じ…?

あやふやすぎるシカマルの作戦を思い出しつつ状況を探っていると

 

「終わりだと言ってはいても、俺の能力はお前にとっては未知数。

ならば、きちんと距離を取って次の手を仕掛ける。

俺の連れと違って賢い。」

 

あの、ちょっと一ついい?

1つだけ、これ聞いたらちゃんと真面目戦闘パートに移るから

お願い1つだけ。

 

 

黒マスクさんの声ってスネイプ先生の吹き替えじゃね?

 

 

イヤ、ホントこの声すっごい聞いたことあるんだけど

まあ?アニナルと全部同じ声だったら?それはそれで耳が幸せなんだけど?

現実はちょっとばかし違ったりする訳なんだけれど?

 

駄菓子菓子、スネイプ先生の声は別だ

 

このベルベットボイス!!

本家本元のアラン・リックマンに負けない程のつややかな声!!

ささやかれた日には全国の老若男女腰が砕けるあの厭らしい声!!

ヤバイ。

生で聞いてるよ私ヤバイ

もっと喋ってヤバイ

 

若干昇天しかけていると肉弾針戦車がキマってた



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50

「どういうことなの…?!」

 

ごめん訂正、キマってない

シカマルがライドウ先輩の言った通りだとかなんとか言っているが私その情報聞いてないぞちゃんと作戦前にちゃんと喋れよこの野郎(聞いてなかった。)

 

見た感じ鋼錬で言うところのグリードと同じ能力と見て良い

炭素系列かどうかは知らんが最初の爆破の時もうっすらとだが黒くなっていた右手を見たのでこいつはそういう能力なのだろう

めんどいのが来たな…イノちゃんをいつでもフォローできる場所からじっくり観察しよう

と思ったら向さんからどんな物理攻撃も通用しないと種明かししてくれたのでこれ幸いと特攻を仕掛けてみることにした

やはり考えるのはあまり性に合わん

 

雷遁をまとった双剣で心臓を一突き

 

「ばっ馬鹿な、気配もなくこの俺の背後から…!!」

 

ココでおしゃべりに興じてもいいが、私はコミュ力が5なので優しく解説などしてやらん。

こいつ、微妙にしゃべっている余裕があるところから見て、未だ死ななさそうだと思った私は、反撃される前にすぐ距離を取った。

鎌野郎が「てめー物理攻撃効かねーとか言ってたじゃねーか!!」と叫んでいるが無視だ

 

「シカマル!!土遁だ!!」

 

影も気配もないカカシパイセンは、この意味を理解してくれるだろう。

呆けているシカマル達は知らん。

先程の印を見た限り、炭素化の術は土遁で間違いない。

 

 

 

「真の目の紋に、薄灰の髪、…7000万両、伝書鳩のサクヤか。厄介なのが出てきたな。」

 

「まじかよ!!あいつより高けーじゃねえか!!

角都ぅ!!あいつ辞めて、こいつ持って帰ろうぜ!!」

 

うげ、なんか言ってる…

 

「残念だがこいつの賞金が高いのは、こいつが逃げ足の速い奴だからだ。どんなモノでも木の葉に持って帰る。今回の任務が巻物の奪取では無くてよかったな。今頃俺たちは咬ませ犬となって任務失敗していた可能性がある。」

 

「…確かに強そうには見えん。

でも賞金たけぇな。あいつの2倍だぜ?」

 

「…こいつの賞金が跳ね上がった一番大きな理由は2代目火影の孫だからだろう。

そしてうちはの血もある。研究に欲しい奴はごまんといる。大蛇丸とかな…」

 

まって、私そんな話聞いてない

今すぐカカシパイセンに確認を取りたいが

あの人、気配消すの上手すぎてどこにいるかわかんねェ…

マジ使えねェ…

つか、もうこれだけ元気に喋ってれば、こいつも不死身確定だろ

さてどう封印してくれよう…

こんな恐ろしい情報をくれたやつは封印して持ち帰って拷問でもなんでもどうにかしてやりたい。(涙)

 

シカマルの影真似も限界が近い

シカマルに判断を仰ごうとしたら、影縛りから抜けていたマスクに蹴りを入れられ吹っ飛ばされる。

木に衝突し、2撃3撃と来るかと煙の中身構えたがカカシさんが流してくれた

本当はもうちょっと隠れていてくれた方が後々楽そうなのだが、いいや。

これ幸いとカカシさんにマスクを押し付け私はぶつかって止まった木から鎌野郎を殺しに向かう。

 

影分身で。

 

 

 

 

「角都ぅ―――!!」

 

「ッチ、その眼、写輪眼のカカシ!!」

 

 

 

はーいこちら影分身体サクヤでーす!!

 

だいぶ蹴り飛ばされてしまったので距離がうっとおしいです。

飛雷神の術が戦闘に使えたらこんな事にはならないが私はここでチャクラを使うわけにゃあいかねえ

シカマルとチョウジにアイコンタクトを取っておく

 

 

シカマルの影真似が解けて鎌野郎が自由になってしまう

それと同時に向こうではなんか『むぁぁぁぁあああああ!!』とか声が聞こえるがいくらスネイプ先生のベルベットボイスであろうとも、おっさんの叫び声とか、姿とか気持ち悪い光景だろうことは間違いなしなので無視する。

 

「うっやっぱ気持ち悪い…」

 

繊維独特のブチブチ切れる音というか何というか音がヤバイ。

絶対向こうは見ない。落ち着くまで見ない。できれば落ち着いても見たくない。

意識的に視界をシャットダウンする

 

「あ~あ~。やっと動けるようになったぜ。

さてと、

じゃあ、やるか?角都。」

 

「ああ。」

 

 

うわやっぱりキモかった…

黒い化け物が4体、半裸の黒マスク1体、半分はじけ飛んでる服を着ている鎌野郎1体

つか脱ぐなよ。

この二人脱がないと戦闘できねぇのかよ…

オッサンの裸に興味はないから。

頼むから脱ぐな。気持ち悪さが倍増する。

目をふさいだらスネイプ先生という天国なのに…

塞げない現状が混沌を生み出している気がしない事も無い。

 

 

私はシカマル達二人の前に出て後ろ手にグーパーを二回繰り返し、自分が影分身だと手信号で伝える

序に、先程接触した際採取した、この作戦の要と言うべきカプセルを、シカマルに渡しておく。

これは私が持ってても仕方のないものだ

鎌野郎が腸引きずり出すとか言って挑発、興奮しているので取りあえずシカマルに大事な事を伝えようと思う

 

「シカマル、」

 

「なんだ。」

 

「ああはなるなよ。」

 

「ならねェよ!!」

 

ならないらしい

口約束だが少し安心した。

 

 

 

えー、こちら本体。

私(本体)はイノちゃんの近くに馳せ参じることが出来たのでもう準備万端だ。

影分身体、あとは任せた。拙者のチャクラは少なかろうが陽動位にはなれるだろう

シカマルの頭の良さを私は信じてる。

なんかいいように使ってくれ。

 

なんか黒いのがドロドロに溶けたので間近で見てしまった影分身体が「ひぃっ」と悲鳴を上げてしまう

マスクに笑われた

おめぇ悲鳴あげられて喜ぶとかMかよ

いや、この場合Sか?

なんか仲間内で喧嘩していたが、意見がまとまったのか鎌野郎がカカシさんに攻撃を仕掛けた

 

ってうげ!!

このチャクラの量、何かます気だよ!!

 

上空でとんでもないチャクラ量を感知。と共に風遁が炸裂する

急いで分身体が三角錐の結界を立てたが方向を間違ったか風圧に耐え切れずシカマル達と共に飛ばされ影分身が消えた。

流石私。

消えるの早いわ。

 

また何か仕掛けるのか黒いのが一匹チャクラを貯めている

イノちゃんが飛び出そうとするので慌てて押さえ着弾の衝撃に耐える

カカシパイセンがあれぐらいで死ぬわけがないので多分こっちに来てくれるだろう。

 

予想通り雷遁を受けてくれたのでこれ幸いとイノちゃんと共にシカマルと合流。

 

「カカシ先生大丈夫ですか!!」

 

「まっ、なんとかな…」

 

カカシパイセンに『こういう時はお前が止めなさいよ』と視線を頂いたが流石に私の結界でもあれは無理だ。

口笛を吹いてごまかしといた。

蹴られた。

 

「ふ~ん。驚いたなぁ

この段取りで殺せなかったのはお前がはじめてだぜぃ

はたけ、カカシ。」

 

 

名前フルネームで呼ぶとか腐ってる頭にはご褒美です

って違う。今は御腐れ様を召喚している場合ではない。

命の危機だ。

上忍二人付いてて中忍を死なせて帰郷とか、伝書鳩の名折れも激しいので今度こそ防御に徹する事にする。

 

「火遁!頭刻苦!!」

 

「土遁、土流壁!!」

 

化け物の口がパカリと開き、私は何かが出る前にその口をアッパーで閉じるように土遁を当てる。

これが人間なら、かすっただけで顎がくだけてノックアウトだが、やはりそうはいかないらしい。

吐き切らない炎は、化け物自身の体を焼き尽くすかと思いきや、そのまま流れに逆らわず飛び上がりこちらに顔を向けてきた

 

ッチっと舌打ちをこぼす

威力は多少落ちたが結構な威力の炎がこちらに向かってくる

チャクラ量に気付いたイノちゃんが慌てて下がっているのでシカマルとチョウジに声をかけそのまま下がる。

カカシさんは…各々如何にかするだろう



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51

粉塵の中からカカシさんが飛び出したが、やはり鎌野郎に狙われてるのか後を追われている

一旦戦闘の落ち着いたカカシさんの所に集まり情報交換する

グーパーグーパーと手を体の影に隠し二回ほど握る

 

「さっきのサクヤさんのチャクラ刀、絶対当たってたのに。

何で死なないのあいつ…!!」

 

「想像するに、あいつも一種の不死身なんだろう。」

 

「「「っ」」」

 

「ゲームで良くあるだろう。心臓がいくつもあるやつ。

そうだと確信は出来ないが、さっき私が攻撃した心臓付近のお面の化け物だけが崩れて、鎌野郎が死んだと文句をつけていたところを察するに、あのお面の分だけ命がある系

そして、こういうのは往々にして、私たちの命で補充可能という事も有り得る。」

 

「そんな、おとぎ話みたいなこと…」

 

「あの雰囲気から行くと有りそうだがな…

サクヤのチャクラ刀で倒せたのは奴の体から出てきたバケモノのうち一匹、そいつが奴の本体の代わりに死んだと考えられる。」

 

「さっき、奴が影真似手裏剣を外して逃げた時もそうだったが、本体から切り離した腕に心臓のようなものが付いていて、自立して行動していた。」

 

「それって、どういうこと?」

 

「おそらく、奴本体を含め、体から出てきたバケモノに心臓があり、そのすべてが奴のモノ。つまり、サクヤの言った通り、奴には心臓が複数、いや5つあるってことだ。」

 

「え?!」

「そんな事って!!」

 

「まあ、サクヤのチャクラ刀で一つ減ったがな…」

 

「じゃあ、あいつを完全にやっつけるには、あと4つの心臓を潰さなきゃならないって事…」

 

「ああ…」

 

 

ベルベットボイスで角都さんとやらに「よく気付いたな」とお褒め頂いて、やはりご本人様から能力の種明かしをされたんだが、こいつネタバラし激しすぎませんかね?

無駄に能力の弱点とか話さないかな~と思いこの茶番に付きあってはいるが

向こうの鎌野郎も暇そうである。

 

「このそれぞれの心臓は、かつて戦って奪い取った忍び達のものだ。

また、補充は効く。

お前らの心臓でな!!」

 

うげ、やっぱり。

と私はため息をついたら

「ところでよう」と鎌野郎に話しかけられた

 

「木の葉って、死んだら土葬?」

 

何の話だ。

 

「土葬だったらめんどくせぇんだよ~

賞金首掘り起こして換金するぞとか、角都言出しそうだし~」

 

ああ、確かにこのねっちょりボイスのキャラは往々にしてそういう重箱の隅をほじくり返すキャラが多い

こいつよく分かっているな。付きあってるのかお前ら。

とか思ってるとイノちゃんたちが殺気立つ

 

「あの髭野郎、ちょいとは楽しませてくれるかもって期待したのによー!

やっぱ大したことねぇーし!!」

 

シカマルに聞いた話では、髭クマに首をはねられたくせに、良くいうな~こいつ

とか思っていたら全く同じことを黒目が言うのでヒッっとなった

何だこいつ気持ち悪い

前世知識のせいで自分と同じ思考回路してるやつ少ないからマジ気持ち悪い

 

「お前ら、敵討ちのつもりだか知んねぇが、そんなんじゃ無理無理。

ガキどもは見た感じあいつの教え子ってとこか~?

まっあんなカスに教わってたんじゃ、たかが知れてるがな~?」

 

うわ~軽率に煽る~↑

チョウジ君が切れているが、拙者煽り耐性だけは強いのでいくら煽ったって私の目は曇らん

シカマル君達が止めてくれるのをしり目に私は3人の前に出た。

しかしブラフ空しくチョウジ君はデブの言葉を皮切りに飛び出してしまう。

こういう時だけ無駄に早いんだから…

仕方ない…

チョウジ君をシカマル君が影真似の術で止めてる間鎌野郎の鎌をカカシさんが止め

私は襟を引っ張り後ろに投げる

 

「無駄な挑発に乗るな。」

 

後ろからも援護とばかりにシカマルが声をかけるが

こっちはそれどころじゃない

尻もちをついたチョウジを狙ったのか黒目がこちらに来るので、両手で刀を振り、距離を取ろうとするが受け止められた。

2撃3撃と続けるもキッという音が響くだけで相手はあまり動いてくれない

チョウジ君が復活し、前衛後衛交代する。

が、チョウジ君の怪力でも無理なのか飛ばされてしまった。

 

急いで助けに行こうとするが火遁の化け物に道をふさがれる。

ココでさっきのでかい火遁はやらないだろう(さっきの応用で方向をそらされたら、己の心臓ごと燃やされかねない)

と考えた私は火遁に火遁をぶつけることにする

 

「悪い、私の方が火力が強いんだ。」

 

残りのチャクラを十全に使って業火球をかます

業火球は相手の術を飲み込む。

しかしこいつら化け物は、すばしっこいし避けられるだろう。

そして、その奥の黒目野郎に届くだろう

 

白い業火球の術にびびった黒目野郎は上に避けるが無駄だ。

火遁をやり切り、チャクラの切れた影分身体が解けた

私はチョウジ君のいた木の影から出て風遁で白い業火球を上に向けて煽る

 

ゴウッ

 

という音と共に風遁で速度と温度が上がり、白い火柱が天高く立つ。

末端が赤く光ってとてもきれいだ。(温度は置いておいて)

流石に一発でやれはしなかったが、この白い火柱をよけるにしろ耐えるにしろ、目が火の色のせいで、多少はやられるだろう

着地をシカマル君が狙う

 

う~ん強いなこいつ

 

踊るように影を避けていくマスク野郎に感心していると

雷遁の化け物がシカマルを狙い雷を打って来るので捕まえることは出来なさそうだ

チョウジ君の安否確認をしていると、木の影からこちらに駆け寄ってきたイノちゃんに危機が迫る

 

「きゃぁっ!!」

 

チョウジ君を放置してすぐさまイノちゃんの方に向かった

医療忍者大事!!

 

関節から伸びる繊維を、雷遁をまとわせたチャクラ刀でブチ切り、マスク野郎の手をすぐさまイノちゃんの喉元から外し、土遁封印で地中深く埋める。

これでマスク野郎の右手は使えない。

あの触手で印を結べるかは知らないが、一応さっきのグリードっぽいのはもう咄嗟にできないだろう。

 

が逆にチョウジ君が捕まってしまった。

黒いうねうねが牽制とばかりにイノちゃんを狙ってくるのでむやみに動けん。

カカシさんに視線を合わせて頷く

マスク野郎の腕が元の位置に揃ったところでピンに鳴かせる

 

またしてもゴウと音が響く

が、今度は先程より規模が違う。

マスク野郎は急いで手を放すが遅い

 

シカマル君が水を口寄せ、マスク野郎の足元に水を敷き、雷遁の化け物を使って感電させ、動きを止めたところに起爆符と連撃する

 

起爆符が爆破した後カカシさんがチョウジ君を回収、私が保護しているイノちゃんの下へチョウジ君を運んだ。

 

 

 

 

 

 

「だっせぇな、おい。

なんだそのざまっ、ハッ。」

 

「貴様こそ、影分身に気付かないとは。」

 

「ありゃりゃ?見てた?

つか、おめーだって影分身にしてやられてたじゃねェか」

 

「まさか、あそこまでの火遁を、影分身が使うとは思わなかった。欲しいな。」

 

「やっぱ火遁なんだ?あれ。」

 

「見たところそうだろう。その後風遁で煽った時、端の色が赤に変わっていたから相当な熱量だ。近くに寄るだけで火傷する温度だった。」

 

「ハハッ良く見りゃ角都、お前火傷だらけじゃねェか!物理攻撃は効かねえんじゃねえのかよ!!」

 

「うるさい。」

 

 

 

 

がやがやと煩い2人をしり目にこちらは冷静に作戦を立てる

そろそろボケたくなってきたが、流石にここでやったらカカシパイセンに殴られるじゃ済まないので抑え込む

でも人間押しちゃダメってボタンは押したくなるものなんだよね…

 

「シカマル、どう戦う?」

 

「引き離しましょう。あいつら二人を、そして個別に責めるのが得策っすね。」

 

「ああ」

 

「奴らの連携攻撃を封じたうえで、あと四回倒せば殺せる方を先に集中攻撃。」

 

「だとすると、あの飛段って奴を足止めする役が必要ってわけか。」

 

 

…カカシパイセンからの視線が痛い。

腕一本削ったし上々だと思うんだが、ダメすかね…

 

「あたしがやる!!わたしが、今一番チャクラを温存してるし、それに、シンプルな戦闘じゃ役に立てないから、心転身の術でっ」

 

「ダメだ。心転身はそもそも――

 

うう後輩が私の良心をゴリゴリと削ってくるぅ…

凄い…胸が痛い…

腕一本で上々とかナマ言ってすみませんでした…

君たちはそんな命を無駄に捨てるな。

髭クマはそんな事望んじゃいないのだよ。

つか、おまいら木の葉の未来(上層部)担う人間やからな!!

そこんとこ間違えんなよ!!

色々言っているがイノとチョウジ君はもう出番があっても少なかろう。

 

「あいつは、俺一人で捕まえる。」

 

どうやら作戦が決まったらしい。

カカシは黒目野郎が相手

チョウジ君は黒目野郎の為に力を温存

鎌野郎は…

シカマルがやるらしい

 

はー…

マジ死にに行くのだけは辞めてほしい

しかし、シカマルの目は、死ぬ気は無いようだった。

じゃあ、私はぼちぼちと、この黒目野郎の命を削る役目か。

シカマルの事だから心配ないが、残っているピン4匹の内、2つを付けて送り出した。

 

「ピンを二匹付けた。好きに使え。」

 

「…ああ、サンキュー」

 

影真似の術で二人を分断、カカシパイセンと二人がかりで黒マスクに体術を仕掛ける

近距離戦闘は連携が難しいので良く知ってるカカシパイセンの方がやりやすい。

クナイと双剣で追い込むがやはりこいつ、単純に強い

避けられるのを想定で攻撃しなければならんな…

 

どうやら影真似の術は成功したらしい

カカシさんの声に返事をしたシカマルの気配が遠ざかる。

おい、カカシパイセンいい加減こっちに集中してくれ

私ひとりじゃ相手にならん。

 

 

うねうねと腕から触手が伸びて先程削った右手が黒いうねうねで形成された

右手削った意味…

私のとっさの判断(封印)はやはり対策済みらしい

だがイラッと来たのは確か

こいつが初代火影と戦った何て武勇伝語ってくれたので

おおと?おじいちゃんだと自称する言葉が出てきたぞ?とか煽ったらカカシパイセンに脛を蹴られた。

糞痛いが、ここでうずくまったら、敵ではなくパイセンから2撃目が来そうなので涙目で耐える

 

つか前世分合わせると、私とこいつ大体年が同じだ…

考えることが同じなはずだよ…

私も婆さんか…身体能力は転生したせいで何ら問題ないが…(むしろ以前より大幅に改善されている。)

こいつ、ジジイの癖に良くやるな…骨粗鬆症とか大丈夫なんかね…

 

「俺のストックできる心臓は己のを含め5つ。

サクヤ、お前に減らされた分は、お前の心臓を頂く。」

 

きゃー私って人気ー

 

なんて茶化したが

絶対さっきのおじいちゃん発言気にしてるって、これ。

あ、まって

これってもしかして黒目さん積極的に私狙ってくるって事じゃないですが嫌だ。

シカマルの方についてきゃよかった…

さっきの今で、また同じ場所にパイセンから蹴りを頂いたので後悔していると、火遁と風遁のお面が融合し始めた

 

これは…!!

威力二倍って事っすね!

 

 

次回!!

サクヤ死ぬる!!

楽しみにしてろよな!!(ヤケクソ)




今回学んだもの:戦闘シーンを主人公視点で書くと碌なものにならねえ


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52

「私よりそこのカカシさんの方が希少価値高いんでお勧めですよ。心臓も強そうだし。」

 

なんて言った暁にはパイセンによって、敵陣ど真ん中に落とされるだろう。

絶対言わない。

 

 

「二人とも、ちょっと守ってやれなくなった。ピンが一体ずつ君たちについているからもしさっきみたいなことになったらピンと呼べ。1回だけだがさっき以上の炎が出る。」

 

出ません。

出るのはさっきと同じ規模です。

しかし、嘘も方便

二人に命の保証を付けてやってこの緊張を少し和らげてやる

前を向いてカカシさんと二人、久しぶりの戦闘だ

 

「なまってないっすよね」

 

「それをお前が言う?会議に全然出ないってシカクさんめちゃくちゃ怒ってるよ?」

 

「それはそれです。私は上忍になりたいだなんて言った覚えは、一度もないですからね」

 

微妙な視線を後ろからも頂くがこれ以上は向こうも待ってはくれないだろう

 

「取り合えず命第一で行きましょう。」

 

時間稼ぎは得意なんだ

 

 

黒マスクがなんか諸々喋っていて気持ち悪いので、雷の面になにかやられる前に双剣に風遁をまとわせ、面を切りそれぞれ土遁で封印した。

面が本体か、体が本体か、分からなかったので簡易に封印したが、生きている場合すぐこの封印は解かれてしまうだろう

が、時間は稼げる。

封印の隙を狙って風遁と火遁を仕掛けられたが、カカシさんの土流壁により難を逃れる

 

しかし、風遁でそれも崩れたので土遁で地中に潜ったら、カカシパイセンが火風遁の化け物に滅せられそうになってた(笑)

すげえヘルプサインを投げて来るカカシパイセンに仕方ないのでピンをやろうとしたけど

大事な事を忘れていた。

 

あ、カカシさんに付けてたピン、シカマルにつけたんだった…

ごめん、自分でどうにかしてくれ

 

完全に諦めモード

私、カカシパイセンはこんなんじゃ、やられないって信じてますから!!

分かってますからぁ!!と心の中で叫び、黒マスクと火風遁の化け物をカカシパイセンに押し付け、中忍二人を簡易封印を破り出てきた雷遁の化け物から守ることにする

地中から出て、心中斬首の術で雷遁のバケモノを埋めて、首を地面に沿って切り、心臓に向かって一本、切り口から体へ突き刺し。

最後に上にはねた頭を残りの剣を投げて仕留めた

 

黒マスクの方の心臓を、シカマルが如何にかしてくれたらしい

黒マスクはカカシさんに馬乗りでうめいた

 

ヤバイ、今回腐女子の血が騒ぐ…

 

 

 

 

―――

――

 

 

(間に合ったか…)

 

「ウうう…」とうめく敵

敵がシカマルにうまく騙されてくれたようだ

 

「…まさか…!?」

 

「ああそのまさかだ…お前の相方の儀式に、お前自身の血を利用したのさ。」

 

サクヤがチャクラ刀で心臓を貫いた時、序とばかりに取ってきた血は結構早めにシカマルにわたっていた

サクヤは作戦を聞いた時から、シカマルにもう片方の役をやらせるつもりだったのだろう…

 

マスク男の下から起き上がるとイノたちが駆け寄ってくる

「カカシ先生!!」

「大丈夫ですか?!」

 

「ま、何とかな…」と返して体に異変が無いか確認する

心臓以外問題はないだろう

若干遠くからサクヤがこちらを窺っている

なんか距離あるんだけど、なんで…?

何故か今回あまり敵を倒す方向には動いてなかったが…まさか、こいつ…

 

「来る!!」

 

サクヤの一言で俺は心臓付近についていた触手を全て引きちぎった

 

 

 

――

―――

 

 

 

うおおおおやべえええええカカシパイセンに

この黒いの気持ち悪くて、戦闘避けてるのバレてーらああああ

丁度いいタイミングで突撃かましてくれた怪物君たちに感謝をして

私は迎えの構えを取るが風遁一発で素通りされた

嘘マジで

 

チョウジ君が倍化の術で大きくなって超張り手とかやったが空しく空振り

逆に捕まりそうになった

黒い化け物は一匹マスク野郎の体に気持ち悪く入って、面が割れた。

 

うわっ生き返った…気持ちわる…

 

「生き返った…」

 

「あの風遁の化け物の心臓を取りこんだんだ…」

 

そのまま残りの1匹を取りこみ、爆発するように黒い繊維が飛び出てマスクを吹き飛ばす

吐き出した姿はまさにバケモノ

 

「戦線離脱したい…

マジ気持ちわるい…」

 

「お前…」

 

カカシパイセンにこっそりひっそり要望を伝えたが、その願いは叶えられなかった

俺の心臓を3つも…とか言ってるが知らねえ

私はこの口から髪の毛生やしてるような奴は知らねえ

つか良くその口で喋れるよな

 

 

 

一瞬捕まって危機一髪だったがテンゾウさんとナルト君による風遁と水遁のコンビネーションアタックのおかげで事なきを経た

が、水蒸気が熱いのでこういう時は事前に連絡がほしい

捕まった時黒目から一番遠いからか、最初に拘束が解けたので、結界を三角錐に張り、熱風除けをし移動した

 

第7班到着って事は私の役目はここまでだ

カカシさんが、安堵か呆れかため息をついているのが聞こえた。

なんかサイ君?にめっちゃにらまれているんだが何かしただろうか…

イタチ君の時のようなことはもうないと思われるが…

私に根関係のパイプはダンゾウ本人しか無いしな…(一番いらない。)

 

とか思ってたらどうやらシカマルの援護にサイくんとサクラちゃんが行ってしまうらしいので楽が出来なくなってしまった…

チャクラがそろそろやばいんだが…

ナルト君、どちゃんこ泥試合は辞めてくれよ、頼むから…

 

テンゾウパイセンに状況説明を求められたので適当に話す

支離滅裂な説明にこの人は慣れてるので結論から言って大丈夫だろう。

 

「あいつの命が今のところ2つあります。お面1つ分と本人分。面は種類によって使う能力が違います。本体倒しても面が命の補充になるようなので、殺しても警戒はしておいてください。簡易封印は無駄でした。心臓の補充は私達の心臓で可能です。あの黒い触手で心臓を取るようです気を付けて下さい。」

 

これナルト君聞いてねえな。

まあテンゾウさんが如何にかしてくれんだろ。

と投げた。

途中ナルト君が術に失敗して捕まる珍事が起きたがテンゾウさんのフォローのおかげでどうにかなった

 

意外性過ぎるわ

 

ナルト君が一人でやりたいそうなので、出そうとしたその手を降ろした。

ピンから連絡が入った

どうやらシカマルは終わったらしい。

この空気に水を差すのも難なので黙っておく

 

 

ゴオオオオという音と共に爆風よけに三角錐の結界を張る

序にナルトが落ちてきたので分身でキャッチしたが、チャクラが足りず

キャッチだけで術が解けてしまった

爆風が収まっても未だ浮いてる敵に

こりゃ決まったなと口笛を吹いた

 

ナルト君も日々成長してるんだな…

何気にナルト君が帰ってきて初めて会っているのだがこの成長具合には驚きだ。

サスケの成長はポンの報告で止まってるが…

シカマルと言い、誰かの成長を2回も見れるだなんて今日はラッキーだ

 

テンゾウさんがナルト君たちを先に里に返す

私とカカシさんは後始末だ

 

私は封印した右腕を回収。

戦闘痕を土遁で隠して…

この大穴は無理だな。

ほっとこ。

それから、カカシさんが息の根を止めた遺体を、巻物に入れて持って帰る―…

 

 

「あの、この巻物できればもちたくないんですが…」

 

「お前が持って帰れ。」

 

 

世代交代が近いなら

早く私に楽をさせてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

里に帰った瞬間私はチャクラ切れで倒れた

滅多にこういう事を起こさないからか皆して大げさに驚いていたが

 

「徹夜明けナメンナ。

すべての責任はカカシパイセンに着いて来る」

 

と言葉を残して私は意識を飛ばした。



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53

ごめん大幅修正した18/07/20


「この人、毎回会議に遅刻、無断欠席する人だけど、凄い人だったのね。」

 

「まーサクヤも上忍だからネ。会議には出てネ。」(にっこり)

 

あの後普通に入院と合い俟った

5代目には「お前は限度という物を知れ!!」と超痛い拳骨を頂き(超絶痛かった。)

カカシさんには「着替えは大丈夫なの?」とセクハラされ(動けないのは数時間だけだったので普通に近くで買った。)

ナルト君には「やっぱりサクヤ姉ちゃんは強いってばよ!!」と太鼓判を押してもらい(そりゃナルト君よりはな。)

イノちゃんには始終守りに徹していたことがバレ(何であんた強いのにシカマルのフォローに行かなかったのよ!!と言われたので『シカマルを信じていた。』とか適当なこと抜かしておいた。)

 

シカマルは…

 

 

「サクヤ、お前やっぱサクヤだわ。」

 

 

と、わけわからん事をほざくので、感覚が若干戻ってきた腕でアッパーかましといた。

そういえば、ガチンコ戦闘任務でシカマルと組むのは初めてだったか。と後で思いだした。

私が戦闘でまるで役に立たない事に安心したのだろう。

 

 

 

 

 

 

―――

――

 

 

サクヤが任務後倒れた。

それは結構珍しい事で

入院までするというのだからサクヤの知り合いはこぞってサクヤの病室に訪れた。

『前、胃潰瘍で倒れたときは全然病室に来なかったのにな…』

と黄昏る声を聞いて皆一様にぎくりとした。

あの時面会謝絶だったのを理由に、皆最後まで会わなかったらしい。

 

今回あいつは、敵の持っている複数ある心臓の内2つを壊した。

俺が精一杯考えて、ギリギリでこぎつけた心臓一つ分は、カカシ先生の命を救ったが、カカシ先生の命を危険に晒したともいう。

サクラが事のあらましを聞いてそんなに強い人だったんだ…と感心していたが

やはりいつもの遅刻無断欠席が響いているのか微妙な顔をしていた。

ナルトは呑気にサクヤを『流石だってばよ』なんて誉めそやいていたがサクヤの実力を正確には認識していないだろう。

ナルトのような、敵の心臓を一気に壊した威力のある技を使わず。

正当法も何もなく、淡々と隙と弱点を突いて行く。

確かにナルトも新術開発何て凄いが

俺らが目指すところはナルトではなくサクヤであった。

 

サクヤをサポートだと俺は理解していた。

今までの任務、実力、経験を加味して、サクヤをイノのサポートに当てていた。

しかし、今回初めてガチの戦闘って奴にサクヤを入れてやってみて、やっと俺は気付いた。

本当にこいつはオールラウンダーなのだと。

カカシ先生もバランスがいいオールラウンダーだという事は知っているが、雷切を基準に立てた戦闘が多い。

しかし、サクヤは、何を基準になんてものが無い

一応優先順位的には風遁、土遁、雷遁が一番使うと言っているが

 

咄嗟に攻撃の軌道をズラす反射速度

火遁と風遁を使った一人コンビネーション攻撃

結界や封印を使った相手の痛い所を突く戦法

すべてが自分達とはちがっていた。

常に俺たちは守られていた

保険にと、チョウジを助けた管狐のピンを2匹付けられ

俺は敵と共に小隊と離れた

 

絶対、使うものかと思った。

この管狐2匹分は俺とサクヤの力量差だと、サクヤに思われている

やっと並んだと思ったライバルはやはりまだ遠くを歩いていた。

いや、全力疾走していた。

 

「ただ走っても、追いつかねェはずだよ。」

 

ぽつりとつぶやく声はアスマの墓に吸い込まれる。

冷たい墓は何も答えてくれはしない。

あいつはアスマの墓にまだ来れていないらしい。

だが行く気もなさそうだった

 

「あーまあ、私アスマと特別仲が良かったわけでもなかったし、お世話にはなってたけど…私は死人に言う事は何もないしなー。

生きていたら、5,6発は殴ってるだろうけどね。」

 

 

病室で、イノに

「あの心臓2つ壊すほど強いのに、なんでシカマルの援護行かなかったのよ!!」

と詰め寄られたサクヤは、笑ってごまかそうとしていた

めんどくせーことになったと思い病室を抜け出そうとしたが時すでに遅し

ナルトとチョウジに捕まる

「へへへっシカマルー、聞いてくってばよー」

「たまにはシカマルの話も、聞きたいよねー」

その声に調子付いたイノの追及は止まず、終にサクヤはげっそりと言葉を出した。

 

「私が行くまでもないと思ったから。」

 

珍しくサクヤからこぼれる褒め言葉(っぽいなにか)に『それでそれで?』と、良い餌を見つけたかのようにイノと、サクラまでもベットに乗りだしサクヤを追い立てる。

 

「…シカマルの立てた作戦に狂いが無いよう、調節する必要があった。

今回の戦闘にシカマルの作戦は要。それを基準に戦闘を組み立てるには、あの役はシカマルしかなかった。私が行ってもいいがもっと違う形になって、ややこしくなっていただろう。シンプルに丁度良かったんだ。それにシカマルじゃないと弔いにはならん。」

 

サクヤは最初から俺に血液カプセルを渡していた。

最初から俺にやらせるつもりだったのだろう。

俺の、俺たちアスマ班の気が済むように、サクヤは動いていた。

俺たち3人の中で一番あの役に向いているのは俺だった。

今回一番評価されたのは俺だった。

 

「サクヤ、お前やっぱサクヤだわ。」

 

感覚が戻ってきたらしい右腕でアッパーを一発もらったが

今は、認められた嬉しさの方が勝って痛みさえもうれしい。



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54

「サクヤ、着替え、これで良かったかしら?」

 

パンツもどうにかなったし、お見舞いの煩いのは5代目のおかげで、いなくなってくれたし(一括とも言う)

ホクホクと病室に帰ったら、紅様がカカシさんからの伝達で私の着替えを家から持ってきてくれたらしく、(先程のセクハラはそういう訳か…)風呂敷片手にパイプ椅子から立ちあがってくれた。

私はまさかの遭遇に、思わず病室を2度確認してしまった。

 

うん、ちゃんと真の目サクヤの札がかかってる。

 

私の変な行動に紅様はきょとんとしているがそれもまたふつくしい…

っ、とトリップしてる場合じゃなかった

紅様に私の下着なんてものを漁らせてしまった不覚を申し訳なく思い、早々に受け取り。

本日の予定を聞いたら定期検診も終わったし、このままフリーだそうだ。

 

じゃあ序とばかりに、ガイさんからもらった熱く重いお見舞いのフルーツセット特盛(検査入院だし3日ぐらいしか病院にいないと言ったはずなんだがな…)から桃をいくつか出して紅様にお土産を持たせた。

その桃の入った袋を眺めて紅様は憂い顔だ…

 

桃、嫌いだったか…?

一応以前桃系のカクテル飲んでる姿を見たので行けると思ったんだが

先程までいた人たちに食いきれないからと配ったのでもう残っているのはパインとバナナしかないが…

 

 

「私、サクヤに嫉妬していたわ。」

 

「んえ?」

 

「ずっとサクヤがうらやましかったの。」

 

「まて、何の話だ」

 

「あの人の、アスマの心配、全部もってっちゃうあなたが羨ましかったの」

 

 

 

 

 

 

―――

――

 

 

 

 

「サクヤはな、俺の…

いや、俺だったんだ。」

 

そう話してくれたのはつい最近だった

アスマが座っているベットに西日が掛かり、シーツに影が出来る

この時間がたまらなく好きだった私はベットに寄りかかってぼんやりと話を聞くのだ

 

此れでも私はこの嫉妬を隠しているつもりだったの。

でもアスマは分かっていた

全部分かって私と、その嫉妬に付き合ってくれていたの。

 

「俺は自分の後ろにはいつも親父がいて、それで…」

 

言いづらそうに笑うアスマは、何時かの時を思い出す。

 

「あいつの影には常に2代目がいる…

真の目に血の括りは無いに等しい。

帰属意識も、里より一族の方が強い。

でも、周りはそうは見ないんだ。

もう、死んだっていうのに…周りは、里は、血に縋りつく。

そのくせ、真の目ってだけで何かやれば変人扱い、

良いように親の名を背負わせ

良いように、里に帰属しないと、真の目を使って中心から遠ざける…

俺はそれを如何にかしてやりたかったんだ。」

 

アスマと3代目の摩擦はある程度は、隣で見ていたから分っているはずだった。

でも、アスマは解かる

解かって、しまうのだ。

 

「俺が頑張ってもどうにかなるもんでもない事も分かってた

でも、『2代目の孫だから強いはずだ。』『頭がいいはずだ』『さすがサザミの甥っこ』『狛犬の襲来』散々な事を言われてきたサクヤを見ると

悔しくって、悔しくって、

思わず俺、サクヤの二つ名真剣に考えちまったよ、ハハッ。

今思うとヒデー名だよな…伝書鳩だなんて…

でもその時は良い名だと思ったんだ

絶対帰ってくる。

里に帰ってきてくれる。

って…

 

上忍にも推薦しまくった。

オヤジに大した会話もしてねェのに何を考えてるんだと何度も言われた。

でも、誰か、あいつの名前を呼んでやるべきだと、

あいつを知ってやるべきだと思ったんだ。」

 

誰かの名(威光)ではなくサクヤの名前を呼ぶ人は確かにあれから増えた。

 

「俺は、あいつが先祖の威光に、どれだけ目を潰されてきたのかと思うと、今でもやり切れねェ

あいつは自分の実力を普通って言うんだ。

あんだけ術に多彩で、

封印術も、結界も、戦闘に組み込める程頭がいい。

あんなに、あんなに才能があるのに…!!

全部親のせいで!!先祖のせいで!!

その努力が、頑張りが、なかった事にされんだ!!

俺はそれを如何にかしてやりたかった…!!」

 

悲痛に、鎮痛に拳を握り、アスマはうつむく

確かに陰で2代目の劣化版やら、特にパッとしない中忍とか言われていたのは私も覚えていた

『それ』はアスマにとって、かつて自分がされてた事の繰り返しだったのだろう

その声には重みがあった。

 

 

「…でも、最近そうでもねぇんじゃねえかと思ったんだ。」

 

 

掌に爪が食い込んでも握っていた拳の力は、言葉と同時に溶ける

 

「あいつ、笑うんだよ。

あの2代目そっくりの顔で、笑って泣いて怒って睨んで…

それがあいつなんだ。

 

まだ、その威光にすがりつく里の奴らも。

自分の実力も推し量れないままでも。

サクヤはあいつなんだ。ここに生きてるんだって、等身大で…」

 

サクヤは良く笑う。

からかうし、煽るし、会議はサボるし遅刻する。

問題ごとの先にサクヤがいることなんかしょっちゅうだ。

でも、皆サクヤが嫌いにはならない。

嫌いになれない。

 

「俺、あいつの事分かって無かった。

確かにあいつの力は傍目に威光で塗りつぶされてるが、あいつはそれを少なからず、誇りに思ってた。

俺が捨てた、もう、持ってない誇りだ。」

 

「そんな事っ!!」

 

そんなことはない

絶対ない

アスマだって、昔誇りに思ってたし今だって―

 

「実は俺、それを少し分けてもらったんだ。

サクヤの誇りを分けてもらって、俺は

 

サクヤを救ってやるどころか、サクヤに救われちまったんだ。」

 

笑うアスマに影は無かった。

いやーしてやられたわー

なんて言っているアスマは、それはそれは嬉しそうで…

 

やっぱり、私は嫉妬してしまう。

出来るなら私がアスマを救いたかった。

救いたかったし、救ってやりたかった。

でも、アスマを救ってしまったのはサクヤだった。

ゆっくり、じっくり

サクヤは、生きてるだけでアスマを救ってしまった

 

 

 

 

 

―――――

――――

―――

 

 

 

皆聞いてくれ

『伝書鳩のサクヤ』って二つ名、アスマが付けたらしい

全然知らんかったわ

誰が広めたとか付けたとか気にしたことなかったし

第一、二つ名なんて自分が自称しない限り、いくらでも流動してくものだろと思ってたので、

真剣に考えてこれって…センスが無い。

私が言うのも難だがマジセンスナイ

 

私がこの名前のおかげである意味どれだけ被害をこうむっているか…

名前ダサすぎて変な逸話広がるし、賞金が上がってしまうし…上役に良いように名前使われるし…

せめて、もうちょっとかっこいい名前を付けてくれてもいいんじゃないのか…

まあ師匠のおかげで好きにはなったが…

全く、大好きになってしまったではないか。

 

良い名をくれるものだ。

 

 

 

 

 

 

籠の底から発見した、最後と思われる林檎をうさぎさんに剥いて、紅さんに渡す。

静かなお礼の声と、私が無残にも食い散らかしているうさぎさんのシャクシャクという音が病室に響く

 

ひと段落して落ち着いた私は、緑茶を飲んで口をすっきりさせ

泣きながら、笑いながら髭クマの事を話してくれた紅さんに

私は敬意を持ってして答えた

 

「私は以前、紅さんとアスマさんが結婚すると聞いた時

『アスマのすね毛を全部抜いてからブチ殺す』と誓った。」

 

急に何言ってんだこいつという視線が天井から(多分護衛by5代目)刺さるが放置する

 

「でも、私の手で殺す価値もなかった。」

 

紅さんに頬をぶたれた。

だがその手には戸惑いがある

音の割に痛くはない

私は彼方に向いた顔を戻し、もう一度紅さんに目を合わせる。

 

「紅さんを一人置いて死んじまう奴なんて、殺す価値もなかった。」

 

大きく見開いた目は赤く、零れ落ちそうだった。

 

「アスマは、紅さんがとどめを刺してやれ。

天国で、子供の話をいっぱいして、成長が見たかったと泣くアスマの悔し涙握り潰し

里の行く先を託せる次世代の、未来の話をして、あいつが笑う様を嗤い

憤慨する様を煽り、泣きっ面に一発は確実に入れてやれ

一発…いや、一回でいい。

アスマに、

 

 

『もっと生きたかった』と言わせろ。」

 

 

 

小指を差し出す

紅様は泣いても、鼻水が出ていても、美人だった。

もう腫れてきた私の頬とは大違いだ。

 

 

「ええ!!」

 

 

紅様のイイ笑顔と共に私たちは、女の怖さを天国でたっぷり味わせることを暗部の潜む病室で誓った。

 

 

 

 

 

だが上忍推薦勝手にしてくれやがった事だけは許さねぇ

来世で絶対殴る。



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修行編
55


あれから数日もすると普通に回復した私は病院を追い出された

里でエロ仙人に会った。

 

土遁で六方を囲い川に沈めた。

 

 

「ちょいちょいちょいちょい!!わし今回何もしておらんわ!!」

 

「いや、今覗いて無くてもこれから覗くだろうと思って…」

 

やはりエロ仙人、強い。

川から這い上がってきた。

一応、元アカデミーくノ一教師白百合先生の無念は晴らしたとし、その根性に免じて今回はこれで止めておくことにする。

 

「たっく最近の若者は…すぐ痴漢だ覗きだと騒ぎおって…」

 

「もう覗かないんですか?」

 

「それとこれとは、別問題だのぉ。」

 

やっぱり一回死ぬべきだと思う。

 

 

 

 

 

その後、ちょいと大量の油がほしいので『蝦蟇油弾』教えて欲しいと頼んだら

お前が自分で頼めとばかりに蝦蟇と口寄せの契約をさせられ、逆口寄せで蝦蟇の里まで吹っ飛ばされた。

 

「あの糞エロ仙人めぇぇぇぇええええ!!」

 

蝦蟇の里で暴れに暴れてやろうかと思ったが、流石に蝦蟇の里と、この怒りは関係無いので、一応とフサカクさんにご挨拶というか

「不逞な輩が蝦蟇の里に侵入してるんだが、オジキ、どうしやす?殺っちまいやすか?」

的な命の危機に瀕していたところフサカクさんが私の顔を見て思い出された。

 

「作間ちゃんじゃないかい!!」

 

「人違いです。」

 

正に人違いである。

取りあえずエロ仙人に吹っ飛ばされここに来たことと、作間は父であることを説明し、その場はお開きとなったのだが

何故かなれなれしいフサカクさんにより蝦蟇の里の案内をされ、

行きずり的に蝦蟇油弾を教えてほしいと土下座したら、ならまず仙術じゃな!!と何故か仙術を習う羽目になった。

 

…おかしい

油がほしかっただけなのに…

 

しかし流石仙人

私はフサカクさんの口車に良いように乗せられ(私がちょろいともいう)

じゃあやるぅ!!となり、長い仙術の説明をさらっと受け流し、いざ蝦蟇の油で自然チャクラを体験だー!!と思っていたら

 

蝦蟇の油をいくら浴びても蛙にならない

つか自然エネルギーという物をこれっぽっちも感じられない

 

 

私に仙術のセンスはないんだ…と若干落ち込んでいたら(いや、まあ出来なければできないで悲しいじゃん…たとえとくに求めて無くてもさ…ちょっつえー力とか欲しいじゃん…)

フサカクさん曰く

 

「さっきも言ったが、仙術はの、体内にある精神エネルギーと身体エネルギーの他に、外から自然エネルギーを体内に取り込んで成り立つ術じゃ。

サクヤちゃんのチャクラの巡りはどうやら、その腰にぶら下げとるやつらからも廻っている。この気配はちっと分かりにくいが作間ちゃんの管狐じゃろ?」

 

フサカクさんは私の腰元にあるピンポンドンの竹筒を、ちょいちょいとカエル特有の長い指で指す

 

「ああ、ピンポンドンですか。私も、こいつらのメカニズムは良く知らないので何とも言えませんが、私のチャクラを吸ってるらしいんで確かにめぐってるでしょう。」

 

「うーんこれは、言いにくいんじゃが…」

 

え、なんだ急に、言いよどむほどの何かあるのか?

もしかしてまた九尾とか出てこないよな…?

コールタールまだ残してないよな?!おい!!お前らでてこい!!そこの二匹!!目をそらすな!!

一応いざという時、問いただせるようピンポン、序にドンを出して若干泣きながらせかした

 

「なんですか!!そんな溜めないですっぱり言ってくださいよ!!私ドラムロールとか大嫌いなんです!!」

 

ら、考えがまとまったのか、フサカクさんは口を開く

 

「どら…?まあいいわい、落ち着いて聞きんしゃい。これはワシの憶測なんじゃが…

サクヤちゃんのチャクラの巡りが管狐と連動しているのはさっきいったのう。」

 

確かに聞いた。

神妙に黙ってうなずく私と、私のそばを漂うピンポンドン

 

「実はサクヤちゃんのチャクラは殆どが今現在そこの二匹に吸われているんじゃ。いわばサクヤちゃんは常に口寄せの術を行っているような物。」

 

「ほとんど…え、それってチャクラ切れにならないんすか?」

 

「それが驚く事に、それをやってなおチャクラを持っとるのが、サクヤちゃんなんじゃ。流石2代目の孫じゃな…作間ちゃんもそこそこ多かったが…それ以上じゃ。

サクヤちゃんはそこの二匹に吸われてなお、一般の忍びチャクラをわずかじゃが上回る。

その上回るチャクラを使って、サクヤちゃんは今まで忍術をやっとったんじゃ。

そして、仙術チャクラを錬るには膨大なチャクラが必要じゃ、あの自来也ちゃんでも仙術チャクラが多すぎて自分のチャクラが追い付かず少し蛙っぽくなる

しかし、その管狐によってサクヤちゃんは常に、大量のチャクラを使っている状態が維持されておる。

ワシはそこに目を付けてサクヤちゃんが仙術に向いておると考えた

 

…だが、その状態ではサクヤちゃん自身が仙術チャクラを感じ、錬る事が出来ないんじゃ。」

 

「…」

 

口が開いたままふさがらない…

 

え?チャクラが多い?

いや、つか、ここまで来て?

ここまで来て仙術チャクラが錬れないだと?!

 

横で漂うピンポンにげらげらと笑われ、ドンに慰められ、これはもしや無駄足…と白目をむいていたらフサカクさんに

 

「サクヤちゃんは感知がへたじゃろ」

 

と追い打ちをかけられた

いや、まあどちらかというと…たしかに、ヘタです…けど!!ですけど!!今それ関係ありますかね?!

 

「仙術の修行はまず自然エネルギーを感じるところから始まる。

この蝦蟇の油を使えば、どんなにチャクラ感知が下手であってもある程度は感じられるじゃろう。しかし、常時サクヤちゃんの様に大量のチャクラを錬られると感じられるものも感じられん。

サクヤちゃんは言わば滝のようなものじゃ。

普通の人間が、水たまり、一般的忍が川だとすると、サクヤちゃんはずっと滝規模のチャクラを練っているようなもの。滝行している状態で水をかけられても気付きゃあせんじゃろ?」

 

「まあ確かに…。」

 

写輪眼を使ったチャクラ感知は、チャクラが色で見えると言う写輪眼の特性を使って、九尾チャクラと自分のチャクラの見分け方から始めた。

自分のチャクラと他のチャクラを見分けるあの修行方法は、ある意味理にかなっていたとゆう事か…?

 

「サクヤちゃんとそこの二匹の付き合いは、いつからなんじゃ?」

 

「えーっと私が記憶してる分には、たしか3歳ぐらいからだと。」

 

ピンポンを指さすフサカクさん。

突然の脈略の無い質問に私は素直に答える

フサカクさんは同じ質問をピンポンに向けた

 

「わてらはサザミの坊主に『作間の目』(契約)が引き渡されてからやね」

「一応その前から分体がサクヤについてはおったが、本体が付き添うようになったのはその位か。3歳ぐらいじゃないカ?」

 

 

「うーん、やはりか…」

 

フサカクさんは腕を組み目を瞑る。

やはりここでも叔父の写輪眼は有名らしくフサカクさんは『作間の目』(契約)に疑問を持ってはいなかった

私は、なにか救済処置を、救済は有りますか?!とばかりに私はフサカクさんの顔をじっと真剣に見つめる

 

「作間ちゃんに仙術を教えたとき、作間ちゃんはまだ管狐を持っておらんだ。

じゃから作間ちゃんは仙術をちょっとばかしだがマスターする事が出来たんじゃろ。

 

わしも詳しくは分からんが

サクヤちゃんの様子を見るに、その二匹を扱うには膨大なチャクラが必要じゃ。

しかし、

わしゃ作間ちゃんから、サクヤちゃんの叔父さん、サザミちゃんはそんなにチャクラが多くはないと聞いている。」

 

確かに

サザミは忍の家の出でもないので、突然変異でもしてない限りそんなにチャクラは多くは無かったはずだ。

第一、 私のチャクラ節約術のほとんどはサザミの教えだ。

とすると

 

「だのに、自来也ちゃんの話だとサザミちゃんはその二匹を使いこなしていた。

と、いう事はおそらく、その頃からサクヤちゃんの大半のチャクラはこの二匹が吸い、それを使ってサザミちゃんが二匹のチャクラに充てていたのじゃろう。」

 

【速報】サザミ、チャクラドーピングが発覚

あいつっ!!私のチャクラをちょろまかしてやがった!!

あの時(サザミと私の大げんかの時)も!!

あの時(サザミ暗部復帰時)も!!

私のチャクラを使っていたとゆう事か!!

そらつえーわ!!無尽蔵なチャクラタンク2本持ってんだからな!!

死してなお私に碌な事を教えてくれないサザミに青筋を立ててると、フサカクさんが指を一本立てた。

 

「と、いうことはじゃ。サクヤちゃんが仙術チャクラを練るのやのうて、サクヤちゃんの管狐が仙術を練ればサクヤちゃんは仙術を使えるやもしれん。」

 

「フサカクさまぁあああああああ!!」

 

サザミの所業をガン無視して確実なる手を打ってくれたフサカク様は、

感激し、ついに涙し鼻水を垂らす私をフサカク様は

崖に落とした。

 

「しかし、わしゃ管狐の仙術は知らぬ。よってお主は蝦蟇の仙術の会得は難しいじゃろう。」

 

「フサカクさまぁああああ…!!」

 

どうにかならないんですか!!蝦蟇油弾どうしても覚えたいんです!!必要なんです!!と訴えかけたがどうしようもないと諭された…

 

「どうしても蝦蟇の油が必要なときは口寄せしてくれればわしらが行くけいの。それで我慢しんとくりしゃい。

わしゃ管狐の里は知らないが、昔から竹藪に真の目ありとも言うしの、一回、真の目の本家に行ってみんさい。サクヤちゃんの大半のチャクラを吸っている原因が何か分かるかもしれん。」

 

「はい…」

 

そうして私は蝦蟇の里を追い出されたのだった。

 

 

仙人モードにはなれないが、仕組みは理解したので結界や封印に応用できそうなところは随時していくつもりである。

チャクラ節約大事。

その様子を見ていたフサカクさんに

 

「仙術ばそう使い方しよるんは、作間ちゃんの倅らしいわ~」

 

と言われた。

ちょい待ち、

 

父さん何やってんの????




色々考えてたけど、引き延ばして修行パートに移行する事にした。
悪い、イタチさんまだ死にそうにない。


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56

拙者どうやら莫大なチャクラ持ってたらしい事が発覚し

私はチャクラ感知がどういて下手くそなのかを心底理解した。

 

チャクラ感知というのは、チャクラを多く持てばもつ程、他のチャクラを感知する事は難しくなるらしい。

それは自分のチャクラの流れによって邪魔されてしまうからだ。

 

今迄、自分のチャクラは一般の忍びより少し多い位だと思っていたのだが、まさかの膨大な量のチャクラをピンポンに吸われ、その本体が近くに、私とリンクしている状態でいるなら納得だ。

流石千手の血を引くだけあって妙に体が頑丈で、怪我も病気もすぐに治るなぁと思っていたが…

完全に千手の血のおかげですね、はい。

 

 

 

 

 

フサカクさんのおかげで、父さんが私と同じこと考えて封印、結界の術式に仙術を組み込んでいたことがわかり、もう一度蔵をひっくり返す事となった。

結界だけならまだしも封印となるとあの写輪眼に関係してくるからだ。

 

「あんたら本当に何も契約の事知らないの?」

 

私の周りをふよふよと漂うピンポンをうっとおしいと手で散らすがすぐ戻ってくるので一応とばかり聞いてみるが

 

「わてら、先祖さえしらんのやから知るはずないやろ。」

「気付いたら作間の腰に据えられてたからナ!!なーんも覚えとらんワ!!ガハハハハ!!」

 

とやはり知らないもよう

ほんとこいつら…事、記憶に関しては使えねェな…

コールタールと言い、怒り通り越してあきれるわ

 

蔵の隅々まで確認したところ、隠し扉を大量に発見した

休暇が明日で終わりなので、時間もない

一つ一つ開けていくことにする。

 

「これ全部外れとかだったら私泣くな…」

 

「ガハハハ!!流石に作間もそこまで性格曲がってないじゃろ!!」

 

「…サザミは?」

 

「性格はまがっとりましたけど、性根はさすがに曲がって…へん、とわてはおもいたい。」

 

「それ、こっち見ていってみ?ねえ?おい?」

 

「さて、わてらちょっと気晴らしに散歩にでも行ってきますわ~」

「骨は拾うたる。がんばれい。」

 

「え、ねえちょっと!!待って!!不吉な言葉残して一人にしないで!!」

 

 

私の心からのSOSも無視して二匹は仲良くお散歩に出かけてしまったので私は一人寂しく隠し扉を開けることになったのだが。

結論からいうとあった。

 

何がと問われれば答えるが。

まあ、その、サザミの残したラブレターがあった。

 

 

「『拝啓、愛し君

4つ季節が通り過ぎ、貴方の瞳も青から黒に戻りましたね。

そのたおやかな髪、何時もこの里を見下ろす顔、あなたの事を思えば思うほど俺は海に沈んでいくようで、毎日が苦しい。深窓のあなたは俺のことなどこれっぽっちも覚えていないのでしょう。』…ねぇ。」

 

仕掛けは単純なものだった

全ての隠し扉を開ければ初めに開けた隠し扉にこのラブレターが落ちてくると言う寸法だ。

まあすべての隠し扉を開けきるのがまた大変なんだが…

ほんと、カラクリ好きにもほどがあるぜパパン…

命の危機としては、扉や蓋を開けた瞬間サザミの集めた変な忍び道具が飛び交う方が怖かった。

私はその日いっぱい使って何とか隠し扉のすべてを確認してこのラブレターをゲットしたのであった。

 

「親族のラブレターとか絶対読みたくないブツだよね…」

 

「ガハハハ!!こりゃ暗号だな!!」

「わてにはサザミはんの恋文にしか見えんわ~」

 

まあ暗号が暗号って分かっちゃ暗号の名折れだろ。

このラブレターがサザミの文字で書いてある限り、カラクリは父が作ったのは確かだが、ラブレターをカラクリに仕込んだのはサザミで間違いなさそうだ。

ピンポンも帰ってきたので蔵から出て、自分の部屋で考える

 

「サクヤはんは暗号の意味分かりますのん?」

 

「んー分からん。全く持ってわからん!!」

 

四股を畳に投げ私は完全にお手上げ状態だ。

一応、思いつく限りサザミの彼女を思い出してみたのだが全然わからん。

 

「こういう暗号は取りあえず特徴から読み解くに限ル。まずは『目』カ。」

 

「さて、サザミはんの彼女何人いてはるんやか…?」

 

とピンポンが意気込んでいるが

私は、お前らが蔵に私を置き去りにしたことを一生忘れんからな…!!

 

 

 

 

眼というと写輪眼がパッと思いつくが色から言ってありえんだろう。

目の色変わったのか…青から黒ね…碧眼…黒眼…そんな血系限界あったかな…?

 

特徴としては

青から黒に変わった目、たおやかな髪、里を見下ろす顔…

基本サザミはショートヘアが好きだったのか、そんな『たおやか』言うほど長い髪の毛をしてたお姉さんを私は覚えていない。

 

唯一サザミと私の認識の中でたおやかっぽいのは大蛇丸だが、流石に無いと思いたい。

ある意味深窓(研究室の引きこもり)でもあるが無いと思いたい。

思いたい…!!

 

いやだって、あいつ父さんの目を狙ってた奴やぞ?

サザミもカンヌ君達の話の時確実に関わってるって言ってたぞ??

お?お?我忘れぬぞ??

 

「四つの季節ゆうたらもう、1年経ってしまうな~

あの子に1年付きおうた子、なんやいたはった?」

 

「無いのウ。あやつ、ひと月もちゃ良い方だっタ。

それにこんな思っとる娘いたらすぐわかるワ!!

ガハハハハ!!」

 

うーんだよな~

何にしても、サザミの好きな人ではなさそうだ

良かった、サザミの元カノを漁る方向に行かなくって。

 

 

ゴロゴロと部屋を転がり悩む私はふと思い出した

昔、心理(笑)を見た後この部屋から火影岩見て嘆いたなと…

ある意味今生が忙しくなったのはあの時からだ

心理(笑)を思い出して闇落ちしてると

一つ、小さな泡がはじけるように記憶の海から上がってきた

 

そのもの碧き衣を纏いて金色の野に降り立つ…じゃない

そういや、ガマ仙人の予言の子って碧眼だったよな…

一応ナルトがその予言の子だったってことは碧眼ってナルトか…

…ん?

渦巻一族は確か目は赤かった気がするから、ナルトの碧眼って父ちゃんからって事だよな…

 

 

「碧眼……4代目…4?……」

 

私はがばっと起き上がってもう一度考え直す

横でピンポンが騒いでいるが放置する

いけず~とか言ってるが無視だ。

 

 

『青から黒』これを火影の瞳の色とする…

 

初代:黒

2代目:赤

3代目:黒

4代目:青

5代目:金

 

『4つの季節が過ぎた』4代目はもう過ぎたという事

 

4代目亡きあとは3代目が火影をしていたので『青から黒』は4代目から3代目に変わった九尾事件から後…?に書いたと言う事か?

 

『たおやかな髪』

現在火影の中でたおやかな髪は2人。初代と5代目。

その他歴代火影は皆つんつんしているから除外。

そして、5代目はサザミが生きているうちに、存在しなかったので除外。

 

 

という事は残るは初代

 

 

 

『いつも里を見下ろす顔』

 

初代の顔の向く方向は…

窓を勢いよく開けて火影岩を確認するが流石にライトアップされていないので大まかな顔の方向しかわからない

あの方向は元うちはの集落があったな…

 

『あなたの事を思えば思うほど俺は海に沈んでいくよう』

うちはの集落には確か広い池があった

 

『毎日が苦しい。』

川でチャクラ修行していた最初の頃は、スタミナ考えずやっていたので流されてうちはの池まで行ったからよく覚えている

時期的にもあそこら辺だろ…多分。

 

『深窓のあなたは俺のことなどこれっぽっちも覚えていない』

…残りのは分からんがきっと行ってみればわかるだろう!!

 

やや強引だが、サザミが私に宛てて書いた暗号なら私に関連していることは確か

という事で百聞は一見にしかず

もう、日が沈んでしまったが、あのよく流され行き付いた池に向かう事にした。

 

「サクヤはん、あんた頭大丈夫か?」

「ガハハハハ!!川遊びならもう、ちと、暖かくなってからの方がいいぞ!!」

 

うるせえ。

だまってついてこい。




修行編と銘打っておいて難だけど、修行全然しねぇな…


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57

池には何もなかった

潜っても、周りを見渡しても、特に何かヒントになるようなものは何もなかった。

 

んーやっぱ違うのか?

つかこの暗号は第一に何を伝えたいんだ?

 

と、ずぶぬれのまま頭をひねっていると師匠が通りかかった。

 

「あれ?サクヤちゃん?こんな時間にこんな場所で…

って、そんなカッコで何やってるんだい!?

ずぶぬれじゃないか?!」

 

「不審者やってます。」

 

この時期に何やってるんだと怒られ、最近入院したばかりだろと説教され私は家に帰される。

流石師匠、こんな忍びの風上にも置けない風体の私に、送迎を申し出てくれた

瞬身の術使えばすぐ何で大丈夫ですと断ったら「一応、い ち お う 女の子なんだから」と一応を強調されたので

「超女の子なんで送ってください」となった。

師匠は私の事を解かりすぎている。

 

 

 

 

「もう、君はいったい何を…ほんとさくやちゃん…頼むから心臓に悪い事はやめてくれ…」

 

私が池に潜っていたことを知ると説教第2弾が来そうだったので、いや~アハハハハ…と笑ってごまかすがごまかされてはくれなかった。

話を変えることにする

 

「師匠はこんな時間に、こんな所に、何の御用だったんですか?」

 

一応元うちは居住地付近、うちは一族の家はもうほとんど取り壊されて新しくなっているが、余りにも有名すぎて曰く付きとなってしまい、あまりここら辺は治安が良くない。

 

「ああサクヤちゃんは知らなかったっけ?実はこの先に竹藪があるだろ?そこに狐を祀る祠があるんだよ。サザミが亡くなってからは掃除する人いなくて、僕が勝手に引き継いだんだよね~それがさ~面白い事に…―」

 

おっと~?狐の祠だとぅ?

 

これは怪しい。めっちゃ怪しい。

師匠曰く祠自体はここ30年の内に建て替えられ、ここにきたらしいが昔は真の目の集落の中にあったそう。

何故場所を移したかは不明だが、移ってからはサザミが面倒を見ていたらしい。

師匠とサザミは同期らしく、何度か掃除する姿を見ていた師匠が、お手伝いを申し出したとこが師匠の遺跡、伝承オタクへの始まりだったらしい。

と云々話していたが祠が気になりすぎるので師匠にお願いして祠に先に行くことにした

師弟子共に鼻息荒く、テンション上げ上げで祠に向かう姿は、正しく不審者であろう。

 

 

 

 

「これが祠ね。」

 

そう言って案内されたのは里の外れ、うちは一族がよく使っていた演習場の中だった

 

「思ったよりぼろいですね。」

小さな祠は見たことあるような無いような…良くある祠で、一応ご神体も確認したが、それ以外何かあるわけでもなかった。

 

鈍詰まりである。

 

封印術や結界は張られておらず本当にタダの祠だ。

サザミのラブレターの最後の文は

『深窓のあなたは俺のことなどこれっぽっちも覚えていないでしょう』

 

今迄の文章的に、ていうかあの蔵にある限り確実に私宛の暗号であることは確かなので、

ここ来たことあるか?と記憶を掘り返すが

全く覚えていないので、当たりだとは思う…多分。

 

明日から任務だし、当分動けそうもないので取りあえずこのまま放置する事にする。

私が急に不審者如き行いをしたとて気にするのはダンゾウ位…まあダンゾウが問題なのだが、真の目というだけで多少奇行をしても緩く見てくれるだろう…と私は信じている。

 

 

 

 

 

暗号で話しがこんがらがってしまったが、フサカクさんの言うところ

管狐に仙術を錬ってもらうために

真の目発祥の地?雷の国に向かう事にしたのだが、事の顛末を5代目に話し、修行したいと言ったら

 

「修行だと…?!

ならん!!

ただでさえ妙技山に行ったおかげで、お前には溜った任務がこの通り山と来ているんだ!!そんな暇があるならさっさと任務に行け!!」

 

と、机の上の書類の塔をバシバシと叩かれ、却下された。

え?それ全部私の任務じゃないよね?流石に、違うよね?と人払いをしてくれたシズネさんに目線で問うが静かにそらされたあたり、私の社畜具合が分かるであろう…

サクラちゃんという年下が任務でいない今、付け込む隙にはあるだけ突っ込むがモットウなので、駄々をこねることにする。

多少羞恥心が吹っ飛ぼうが私のこれからの計画に必要な過程なのだ!!色んな意味で生死がかかってるんだ!!

 

 

「そこをなんとか~どうせ殆どが大名の慰安旅行でしょ~?わらわは傷ついたとか言って傷心旅行が8割の湯治でしょ~?

それにナルトだって3年位旅したじゃないですかー!!

ナルトがいいなら私だって行きたい!!」

 

「ならん!!ナルトとサクヤじゃ立場と事情が違うだろ!!

と言うか、お前は第一会議に出ろ!!」

 

「私だって日々頑張っているんです。会議には出ないけど情報提供に貢献してます!!ナルトが良くて私がダメな理由になりません!!」

 

「情報貢献は忍びの常識だ馬鹿者!!

ダメったら、ダメだ!!

と言うか、組織体系的に火影に情報を開示しない方が可笑しいんだ!!

良いから会議に出ろ!!お前がいないと話が進まん!!

大名とご意見番相手に、私一人では無理だ!!」

 

最近よく上の会議の呼ばれると思ったら…!!

やっぱり大名と相談役のご機嫌取りかよ!!

確かに時々名前は良いように使わせていただいてはいるが

私は『うちは』でも『千手』でもなく『真の目』だと何度言ったらわかるんだアホンダラ共め!!

火影からの救難サインを聞いてしまった私は、しかし言葉を発する。

 

「確かに、私の血やネームバリューを使えば、ある程度は話がうまく進むだろう…

だが断る!!」

 

それはもうすがすがしく…

5代目から怒気が立ち上がりシズネさんがあひィー!!としているが無視だ。

私は私の意見を押し通す!!

 

「火影なんだからそこは自分でどうにかしてください!!

シカクさんぐらい一人連れてったらどうにかなるでしょ!?

なんですぐネームバリューに頼るんですか!!

大名ぐらいあやせなくて火影が務まるか!

ご意見番黙らせる方法を考えてこそ火影ってもんでしょ!!」

 

「ぬぐぐぐぐぐぐ…!!」

 

散々駄々をこねにコネまくったら、管狐のお見送りまではよいと許可が出た。

ケチ!!と大きく言って火影室の窓から飛び出たら、ダンゾウ、ご意見番各位にその姿を見られていたらしく後で説教を喰らった

もっと早く見るべき場面があったんだがそこは見ていなかったらしい(ッチ

 

「もう火影室いかない…」

 

「いや…それが原因だと…」

 

 

イルカ先生が、憐みを持って驕ってくれた一楽の味噌チャーシューは、気持ちはどうあれ美味しかった。




こいつらは一体いつ修行するんだろう…


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58

雷の国

とある山間に、真の目の本家という物は存在する

その家は、一応初代当主の血を今も受け継いでいるそうなのだが

 

「あんたがサクヤちゃんか―!!よう、来はったなー!!」

 

と玄関先で、買い物帰りの大根が刺さった鞄を持つおばさんに、テンション高く出迎えられ、初っ端からマシンガン如くトークを繰り広げられた。

何だろう、この実家に帰った感…

 

別にそこまで広くもなく狭くもない普通の客間に通され私が最初に見たのは

威厳たっぷりな着物に袖を通し胡坐をかくおっさんと、来客用に据えられたお茶と、無心で羊羹にかぶりつく豆粒サイズの管狐である

 

「ほう、お主が…

ってコラ!!

マメちゃん!!

これはサクヤちゃんの為に買った羊羹!!食べたらあかん!!

すまんなぁ…すぐ新しいの用意するさかいちょっとまっとってや!!

おい!!母さん!!新しい羊羹あるかいな?!

あ、わし真の目サンバと申します。お手紙ありがとうな~

こんな辺鄙なところに遥々来る言うから、わし張り切って雷の国一の羊羹こうてきたさかいゆっくりお茶でも飲んでまっとってや~

マメちゃんも食べるんやったら用意するゆうたやろ!!いい加減にしなさい!!」

 

百面相するおっさんに威厳無く挨拶された。

一応、『真の目』の文字を頂いているので、先にあいさつの文を鷹にて送っておいたのだが、それが裏目に出たのかマジで威厳が無い。

流石真の目

 

管狐は妖怪であり、寿命が存在しない

なので、一家に一体管狐が存在する真の目では、その家にて受け継いでいくのが習わしである。

よってこの管狐、マメちゃんは、血筋から言って初代真の目当主の相棒と言うべき管狐のはずなのだが…

 

「いやや、わてはくう。ようかんは、ぜんぶわてのものや。ぜったいやらん!!」

 

小さい。

今迄生きて?きた時間的にもっとこう、流暢に話してもいいはずなのだが

何故かめっちゃ幼い。

そのフォルムも、精神年齢も小さい。

序に心も小さそうだ。

 

「そこ!!なんかゆうたか?!」

 

「いえ、なんでもありません。」

 

心を読まれたのでしらばっくれといたけど、めっちゃこいつ心狭いな…

 

「何 か ゆ う た か ?」

 

「…いえ…なんでも…」

 

顔ちけぇ…

ずいっと体?(顔?)を寄せてきたせいで圧迫感が半端ない

次いでとばかりにデコに頭突きを喰らった。

 

しっかしなんだ…ホントちっせぇ…

ピンポンドンがバレーボールサイズだとするとこの管狐は豆粒サイズだ

私にガンを垂れたと思ったら羊羹にすっ飛んで行ったのでメンチより羊羹の方が大事らしい。

脳みそも小さそうだ…

 

綺麗に切りそろえられた羊羹がでかく見える。

私は美味しそうな羊羹のご相伴にあずかる事を諦め、一応、未だ威厳を保とうと咳払いで誤魔化している当代の真の目当主真の目サンバさんの対面の座布団に座った。

しかし、

 

「そこは、わての席やああああああ!!」

 

さっきまで羊羹に熱中していたはずの管狐は

すこーん

と良い音を立て、腐っても客のはずな私に、ボディを喰らわせ

かわいい音の割に重い一撃は、客間から見える綺麗な庭に吹き飛ばすほどの威力を発揮し

直線的な軌道を描き、私を池に落とした。

 

「何すんじゃこの豆狐ぇえええええ!!」

 

ばざあああああ

と音を立て、水しぶきを上げ、まき散らし、私は池にいた鯉に餌と間違えられながら勢い付けて起き上がり

ボディくらわした豆狐を一発殴ると視界を広げると

 

そこは竹藪の中であった

 

 

 

 

 

その竹藪はどこまでも続いているようで

霧に紛れて先は全く見えない

 

サクヤは池に落とされた瞬間に時空間忍術が発動していたのを肌で感じて居た

これでも写輪眼は時空間忍術である。自分がどういう忍術に巻き込まれた位はなんとなくであるが分かっていた。(わかっていてもうっぷんを叫ぶかどうかは別問題であるが)

サクヤは、餌と勘違いして齧り付いたせいで共に連れてきてしまった鯉を粗方落とし、びしょ濡れになってしまった服を絞り、取りあえず付近を散策する事にする。

 

このわけ解からぬ忍術が時空間忍術である限りこの場は先程の場所ではない事は確実である

濃い霧が道を迷わせているのか、先ほどから同じ道順を辿っているようにサクヤは感じて居た。

頭によぎったのはまず幻術で、幻術返しを何度もするが違うのかなんなのか、藪から出ることは叶えられていない。

 

「いったい何なんだ…」

 

呆れと、疲れと、怒りが混ざって頭痛がしてくる。

駄々をこねて、5代目に無理言ってピンポンのお見送りまではもぎ取った

だから本当は、真の目本家に顔を出したら、サクヤはさっさと帰らなければならないはずだった。

しかし現状である

このまま1日、いやもしかして数日ここを彷徨う事となれば、帰ったら大目玉どころではないし、なんならその前に食料が尽きて餓死の可能性もある。

最悪、万華鏡写輪眼の力を使えばなんてことはないが、そうなるとサクヤの足取りが急に消えることになり、ダンゾウらへんに怪しまれてしまう。

懸念材料が全く無いのも、それはそれで考えようだが、なるべく少ない方がいい。

 

親指で眉間をぐりぐりとさするが頭痛は変わらずそこに在る。

やはり、あの管狐が何かしら仕掛けたのは確か。

あの池に術が仕掛けてあったのなら、鯉はずっと前からサクヤの落下地点に水と共に落ちていただろう。

という事は時空間忍術の印の類を体に付けられた可能性だ。

そうすると、サクヤにかじりついてきた鯉が、共に来たのも納得できる。

サクヤは一応納得し、先程起こった一連の出来事をよくよく思い出す。

 

時空間忍術の基本は術式にある。

巻物なり、クナイなりに術式を施して、それをアンカーに術を発動させる。

なのでサクヤを飛ばしたと言う事はサクヤのどこかしらに術式を書きこんだか、あるいは術の発動時、術式と間接的にでも接触している状態でなければならない。

先程の豆狐が接触したのは2回。

ガン付けられた時衝突したおでこと、重い一撃をもらったボディーだ

 

デコは鏡も無い今、自分の姿を確認できないので

もぞもぞとボディの確認からすると

そこには豆狐の顔がくっついていた。

 

「なんや~きづくん早いな~つまらん。

もっと弱ってからむさぼり喰ろうたろ思ってたんにな~」

 

豆狐はそう言いにゅっとサクヤの体から尾を引きながら出てくるがその実体は無いようで、捕まえようと伸ばしたサクヤの掌をすり抜けた。

雑巾絞りにしてやろうと思っての行動だったが、この様子から行くと常時透けている可能性も視野に入れておかなければならない。

これから豆狐にどう対処していくかと舌打ちを打ち、考えている顔は凶悪である

 

「お~こわやこわや…何をする気やったんか知らんけど、わての仕事はここまでや。あとはそこの二匹に聞き

1匹は担保としてわてが持って帰るさかい。安心しぃや」

 

安心できない言葉と、虫唾が走るような嫌な笑みを残して、ポンと音を立てるとその豆狐は消え

そして腰にいたはずのドンの気配も消えた。

 

厄介なことになった。

これではドンを助けるまで帰れない。

 

ピンポンなら数年放って置いても問題ないほどにチャクラをサクヤから吸引しているが

ドンは宿主から離れてしまうとそこまでチャクラが持たないのだ

省エネして3日が限度である。

そして厄介な事に、ピンポンは『父の目』のおかげで契約が強固で多少消えても分体から復活が可能だが、ドンはその増える能力のおかげで一度消えたら同じ個体は二度と復活しない。

影分身とは違って、本体がやられたとして、分体が消えることはないが

記憶の引き継ぎが出来ないので、どれ一つとして同じ記憶や、経験を持つ個体がいない

よって、私たちの知るドンは文字通り消える。

棟梁が、これらをどう統括して無線代わりに使っていたのかさっぱり見当がつかないサクヤは、未だドンを一時的なチャクラマーキングとしてしか使えていなかった。

上手く使えてやれない不甲斐なさにギリッと歯ぎしりをするがサクヤにはこの状況を打破する手段はない。

だから、

 

「ピン。」

 

「はいな」

 

「一番いいのを頼む」

 

最後まで言うか言わないかのうちに、ピンは大量のチャクラを錬り、前に向かって最大威力の火遁を見舞った

ゴウとその一帯を燃やし尽くしたピンはこんなモノまだ序の口と言うように鼻を鳴らす

 

「ポン」

 

「おう。問題ないゼ。このまま真っ直ぐダ。」

 

プスプスと音を立てる竹藪はサクヤの向く方向のみ綺麗さっぱり視界が開けていた。



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59

「で?どういうことなんだ?」

 

竹の燃えた匂いが漂う道程

サクヤは走りながらピンとポン、2匹の管狐の尾っぽを渾身の力で握り締めていた

 

「いややわ~わてらかて分からんゆうとるやろ~」

 

「ワシらでさえ分っとらんのにどう説明しろってんダ。」

 

しかし2匹は変わらず呑気で

サクヤ的には、『後は二匹に聞け』とあの豆狐が言っていたので、何か知っているのかと思っていたが

2匹の言葉を信じると、そうでは無いらしい。

 

ポン曰く一応大きな気配がある方に向かっているらしい

走りつつピンポンを握り締めているので、そろそろ

 

「うえっあんさん、ええかげん放してくれんと、わて、出ちゃならんもんでるえ…」

 

「うぷっわしもう限界…」

 

酔ってくるころである。

極め付けにぶんぶん振り回してやったが白状はしなかった…(色んな意味でゲロったが)

嘘にしたってこれ以上やっても信頼関係的にも体力的にも無駄な気がするので辞めることにする。

 

取りあえず今日中に帰る予定だったが、大幅に時間が伸びそうなのでサクヤは5代目に鷹を飛ばす

 

「もっといてよかった…鷹の口寄せ…」

 

サクヤはピンポンがいるのであまり口寄せ契約を結んではいなかったが

鷹だけは重宝していた

報告内容が芳しくない時とか、戦況がやばい時とか、遅刻するときとか…

一旦時間を置いてほとぼりが収まる時を待つときとか…

 

…まあ、取りあえずめちゃくちゃ重宝していた。

一応サザミの形見なのだが、ゆうてこのサクヤの叔父さんである、碌な事に使ってない事は確かだ。

ビジネスライクに付き合っているが鷹の方がどう思っているのかは、神の味噌汁である。

 

鷹が一直線に進む姿を見て、サクヤは木の葉の大体の位置を把握。

これから向かうとされる位置から言って真反対なのは致し方ない。

 

 

 

ピンが燃やして開けた道はしかして、また濃厚な霧に包まれていた

元々霧が濃かった故、一時もたてば元の霧の濃さに戻るのは分かっていたが

一刻で戻るとは思っていなかったサクヤ一行

 

「これ、切りが無いんちゃいます?」

 

「霧だけにカ!!ガハハハ!!」

 

「…何もおもしろくない。」

 

3者三様な疲れた顔をして一人と2匹はその霧の中をまた、さまよっていた

先程確認した木の葉と思われる方向も今では怪しいほどだ

というか、霧が濃すぎて足元さえ見えない

一面真白である

 

「おい、ポン。」

 

「いや、分ってル。分っとるんだガ……」

 

「迷うたな。」

 

「…」

 

返事が返ってこない所を見ると一瞬見えた光明は消えてしまったようだった。

さっきまでの頼もしさは何だったのか

お前ら私のチャクラ半分以上吸い取ってんだろ。摩訶不思議パワーでどうにかしてくれよ。

等サクヤは言いたかったが

ココでこの二匹から聞き出せることはゼロである

散々今まで問い詰めてきて、そのすべてが分かって無かったポンコツどもである。

今現在進行形で現状を全く把握してない1人と2匹は冷や汗をかいていた

 

「いやいやいやいやいや!!

お前!!ホント!!バカか?!

なんで迷子ってんだよ!!ピンの火炎放射と鷹のピーさんのおかげで大体の位置分かったんじゃないのかよ?!」

 

「この濃い霧舐めるな馬鹿者!!ピンの火炎放射は放射線上に広がるかラ竹藪に当たってない所から言って一応わしらは、なんとなくその方向に向かっているのは確かなんダ!!

それに末広がりの術なんぞこうゆう時にするから良くないんダ!!わしゃ悪くねぇ!!」

 

「っな!?あんさんわての所為にするんか?!

そんなん一直線上の火遁の方が少ないわ!!火遁は末広がりがセオリーや!!

末広がりの術の何があきませんの?!一番的に当たりやすいやんか!!

それに、直線状の術にしとったら視界が晴れんで、今頃鷹のピーさん見失うて木の葉の大体の位置さえ危うかったんちゃいます?

わてかて色々考えた末にあの術にしたんやで!!それをそんな言い方されたらたまらんわ!!

第一サクヤはんが最初にわてに指示出したんや!!責任はサクヤはんにあるんちゃいますか?!」

 

「ああ?!確かにお前らの責任は酸いも甘いも私になるけどな!!

これは任務じゃないんだよ!!今は確実なる生存戦略を立てないとならないんだよ!!

このままだと参加者全員プレゼント、餓死一直線なんだよ!!

漏れなくその場で土に還る特典付きなんだよ!!

それをなんとなくその方向に向かってる?!

おまっ、ポンふざけんなよ!!

なんとなくでいいなら私だって、『なんとなくあっち』とかやるわちくしょう!!」

 

散々わめいたせいか、ぜーはーと肩で息をする1人と2匹は取りあえず言いたいことも言い切ったし落ち着く事にした

 

「あかん、らちがあきません。」

 

「そうだナ…もうここは諦めてサクヤの力で戻るしかないんじゃないのカ?木の葉に戻れば、取りあえず火影には怒られずに済むゾ。」

 

「確かに今のままだと、鈍詰まり感パナイ…

つかサザミの暗号の時点でなんか鈍詰まり感はあった。」

 

「「それな。」」

 

二匹の同意を得たサクヤは万華鏡写輪眼を発動させた。

ふつふつと湧きあがるチャクラが白い炎に変わって行くと同時に高温の風が周りに立ち込める

未だ、サクヤはこの術の発動時間を狭められてはいなかった。

高温の風にピンとポンはさっさと竹筒の中に戻り避難をする。

さて空間移動だとばかりにサクヤの体に白い炎がまとわりつき、温度のせいで視界がゆがむ

と同時にその声は聞こえた。

 

「なんや~熱いやないか~

誰かおるんか~?」

 

地面の隆起、同時にサクヤはバランスを崩し、空中に投げ出される

 

「のうわっ!?」

 

ゴゴゴ…と響く地鳴りと共に白い何かが地面の底から隆起する

何とも微妙な声を上げてサクヤは一面の白い草原に降り立った

 

「え?なに?え????」

 

 

 

そこは白い山の上であった。

 

 

 

 

 

 

皆、落ち着いて聞いてくれ

今、驚く事に超でかい狐に会ったんだ…

 

「やべぇ、声メッチャ響く。」

 

ガッハッハッハ!!

と笑うはその大きな小山?いや、ホント何言ってんだよって話なんだけどマジでかい。白い山だ。

原作ではナメクジのカツユ様がめちゃくちゃでかいと考察されてたけれど

その比ではない

マジでかい。

何故に地中に埋まっていたかはわからんが、ハッキリ言って全体が見えなさすぎて辛い

何処から聞こえているのかどこに話しかければいいのかさっぱりである

その白い山が笑う度に、その上にいる私はゆらされ、…若干酔ってきた。

 

先程から足元が濃い霧で見えないと思っていたのはどうやらこの狐の体毛が白いせいで毛に隠れて足元が見えないだけで

この濃い霧はこの狐の吐く息で、

方向感覚が分からなくなるのはこの狐の寝相の所為だった。

そう、それだけ…ただそれだけだったのだ。

 

一応私がいるのが手の上らしいのだが

その時点で小山って事は、胴体の大きさがどれだけなのかは解かるよ…な?

こんなでかいものが住み着いてる雷の国ヤバイ

亀の島もヤバイが雷の国はでかくないと生きて行けない生態系なのだろうか…?

生態系からひも解く雷の歴史とか楽しそうだな…

と色々考えていたら白い小山は急に動きだし、私はその狐の鼻先に下された。

 

「これでちょっとは見えるなぁ。」

 

「いや、鼻先とか逆に近すぎません?

マジで見えてます?」

 

「ガッハッハッハ!!実はなんも見えとらん!!」

 

何が可笑しいのか狐が笑う度に揺れる大地(いや、大地は揺れてないんだけれども…)

いい加減安定したところに落ち着きたい

 

「ん~懐かしい匂いや。」

 

と言って、大きな白い狐は、鼻先にいる私の匂いを、息を大きく吸うことで嗅ぐ

ゴオオオと風が吹き、吹き飛ばされ鼻に入らないようチャクラの吸引力を使ってその場にとどまる

狐の両目は良く見ると白く濁っており、焦点が合ってない。

緑内障か、白内障か

私は医療に詳しくないのでその区別はつかないが、私の顔、ましてや姿は完全に見えていないだろう。

なのにあの大きな手から良く私を認識したな…と感心していると狐はのんびり話し出す

 

「この匂いは…作間のとこにやった子たちの匂いやな?

2匹の匂いは別格やったから、よぉ覚えとる。

懐かしいな~

せやけどお前さんは作間やない。

そっくりのチャクラに、匂いやけど作間やない。

お主名前は何ちゅう?」

 

「あーまあ、十数年前に亡くなっているんで…

私はその倅、サクヤです。」

 

私が答えると一寸の間を持って狐はまた大きく息を吸って吐く。

いい加減風がうっとおしいがここは我慢だ私!!

早く安定した地面に降り立ちたいが我慢だ私!!

 

「なるほどな~マメがうるさいと思うたらそうゆう事かいな…

なら自己紹介から始めた方がええな~

どうもサクヤチャン。ワシは白狐(しろきつね)呼ばれている妖怪や。

初代真の目の管狐とはワシの事。

どうぞよろしく。」

 

そう言って白狐は恭しく鼻先を地面に近付け私を降ろしてくれた。

ふー久しぶりの揺れない地面に感激するぜ…

足が笑って上手く立てないので膝をつく

 

「ゆうて、サクヤチャンがサキチャンのお腹にいる時会うとるんやけどな~

知るはずもないか~!ガッハッハッハ!!」

 

…そら知らねぇわ

だが、これでサザミの怪文章(ラブレター)の意味が分かった。

 

狐の祠で何かしらピンとくるだろとか思ってあれしかけたんだろうけど

何一つピンとこなかったしなんなら全然関係ない蝦蟇の里でもうそのヒント貰ってたってオチである。

 

最初から普通に真の目本家の管狐に会えと言えやごらぁと思わなくもないが、あの写輪眼の封印に関する事であることである。

念には念を入れたのだろう。

それにしては入れすぎな気がしなくもないが…

ガマ仙人に会った時点でここに来るのは確定な気がしなくもないが…

今更文句を言ったって仕方がないので

当初の目的、仙術を教えてもらおうと思う

 

腰の刀を外しそろえて右に置き

素早く3歩ほど後ずさり正座、

三つ指立てて目の前に添え、目線を下げる

 

「出会って早々、誠にぶしつけではありますが!!

管狐の仙術と言う物をこいつらに叩き込んではくれないでしょうか!!」

 

 

キマッた…

何がって土下座が。

土下座の向く方向にはピンポンの竹筒

そして、どでかい老狐だ。




いざ!!やっと!!修行編が始ま――…


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60

「仙術?なんやそれ?」

 

こういう展開かよ―――!!

 

現実は常に私を超えて斜め後ろから答えを突き付けてくる。

首を傾げる狐(山)は可愛くない。

 

取りあえず仙術というものがどういうモノか説明して

その摩訶不思議パワーを知っているか、使えるかどうか、の情報のすり合わせから始める。

この情報のすり合わせが一番大切な事で、ここで何かを見逃すと忍びの世界では直、死へつながる。

 

「はーそんな摩訶不思議チャクラがあるやなんてなー…

まあ、作間の奴も似たような話してた気がしなくもないが…

さっぱり忘れた。」

 

 

 

この狐…マジ使えねェ――!!

もしかして、父が何かしら方法を考えてくれて何か残してくれてくれてるかもと期待した私が馬鹿だった!!

 

もう何もかも嫌になって正座の状態から前へ崩れ、芋虫になった私は

 

「やめた。」

 

諦めることにした

 

いや、だってもうこれ無理でしょ

管狐の親ビンが知らねえんだから分かるはずないだろ。

 

相変わらず目の前のどでかい狐はその濁った眼をどこかしらに向け、私を眺め

霧は増え続け、その白い毛は霧の効果を助長させている。

白狐は口を開く

 

「なんや諦めるんか?」

 

解からぬと、忘れたと言った口で何を言う…

呆れた目を下から向けるが今の私は芋虫

狐の鼻先しか見えない。

 

「あんた知らないんだろ?じゃあ無理じゃないか。それにフサカクさん曰く父さんがこいつらと契約する前は普通に仙術修行できてたらしいし、契約破棄したらワンチャンあるからフサカクさんに相談する方が早い。」

 

まあ契約破棄の場合あの写輪眼二対を燃やすことになるのだが

これからの事を思うと心もとないが

ピンポンの契約が切れることにより私のチャクラが増え仙術もできるようになると思えばマイナスにはなるまい。

 

 

「なんじゃ詰まらん。もっと根性出しいや。」

 

呆れたような鼻息が私に当たる。

前髪が揺れてうっとおしい…里に帰ったら切ってしまおうか…

いや、しかしハナさんに髪を伸ばすとか言った手前前髪ぐらいしか切れんな…

…なんかめんどくさくなってきた

女子力はこんなうっとおしい上に成り立つものなのか…

世の女子は良く生きてられるな…私は邪魔なのに切れない事にイライラし始めてるぞ…

何だかよく分からないイライラに苛まれていると

 

「今代の長は腰抜けか…こんなへっぽこがまかり通るだなんて。」

 

そもそも、私はこういう性格なのだ

つか長になった覚えはねェっつの

根性、ずく、一生懸命、やる気、元気、勇気とは遠い位置にいるのが私だ

 

 

「無理だな。

それを求めたいのなら他を当たってくれ。

私は他真の目一族同様、欲望に忠実なんだ。興味ない事にはとことん食指が動かん。

仙術を知った切っ掛けも、ある術をマスターする過程だった。」

 

そう、元々蝦蟇油弾さえできればよかったんだ。

それがこんな雷の国(多分)のくんだりまで来て…

フサカク様にヨイショされたせいで欲と目的が入れ替わってしまったのもあるが、仙術を必死こいて覚える必要はなかった。

まあこれから現れる世界の敵(笑)とか初代頃の遺物とか色々不安要素は有れど、今現在あのなんちゃってカンペの通りに進んでいるので何ら問題ない。

多くの犠牲はあれど、世界は最終的に救われるだろう。

 

 

「そうか、そうか…ガッハッハッハ!!」

 

急にまた笑い始める山に私は呆れた視線を向ける

だがそんなのお構いなしに狐は言葉を発し空気を震わせ

 

「なんと的を射とる!!

流石真の目と言ったところか!!お前は初代にそっくりや!!

無理と思ったらすぐあきらめる!!

嫌だ嫌だと言いながら、グチグチ文句ゆったと思うたら、急に白ける!!

そして別の道をまた一から辿る!!

そこにいくら無駄な労力を使おうがお前さんはそれを一切無駄とは思っとらんやろ!!そうやろ!!

ガッハッハッハッハ!!ホンに!!ホンに!!あ奴そっくりじゃ!!

気に入った!!気に入ったぞ小娘!!

ワシは白き渓谷に住まう妖狐!!

名は白狐(ビャッコ)!!

初代真の目当主の管狐であり、相棒であり、家族であった!!

もう一度名を聞く!!おんし名前は何ちゅう!!」

 

テンション爆上げで名を聞かれた。

耄碌したか…ハタマタ痴呆か…

その問いは出会い頭に聞いた

二度言うのはタルイ…が、

まあ一応お山の大将である

名乗られもしたし、応えはしてやろう

 

「やあやあ我こそは!!

火の国木の葉隠の里、真の目が一人!!

真の目サクヤ――…」

 

しかし、白い山は唸るように、その馬鹿高いテンションのまま吠える

 

「違う!!」

 

「あ゛ん?」

 

いや、え?

名前全力で否定されても…

マジでこいつ耄碌してるんじゃね?

流石に妖怪で寿命が無いとか言ってても、脳みそはもう付いて行って無いんじゃね?

マジでこの白い狐の脳みそを疑っていたら

テンションをさらに爆上げして私に何の利もないのに要求を重ねてきやがった。

 

「それはおんしの今生の名前や!!

ワシが聞いたいんは前世の名!!

さあ言うて見ろ!!!忘れたとは言わせん!!

おんしはワシの待っとった人間や!!

わしゃこん時を待っとった!!

名を!!

わしにその名をよこせ!!

さあ!!さあ!!さあ!!」

 

私の前世の名前に何の価値があるのか

なんて事も無い、息をして、飯を食い

只、死ぬ時を待つだけに生きた前世の名を。

 

…良いだろう。

欲しいならくれてやる。

私はオタクだ。

こういう展開に熱くなってしまう典型的なオタクだ

ナルトは読んでなかったし、エヴァンゲリオンは理解できなかったし、聖書はジャンプじゃなくってガンガンだったし。

捻くれているせいで王道の漫画そんなに読んでなかったけど嫌いじゃない

何故前世の事を知っているとか色々聞きたいことは有れど、私はオタクの礼儀でもって返そう

 

「私の名前が欲しけりゃくれてやる。」

 

その言葉に、狐は白い毛を欹てて息を吐き出す。

興奮を押さえ切れないかのように前足の爪を立て、尻尾と耳が立ち上がる

 

 

ああ、その眼だ。

狐は思い出していた

あの男が自分に課した呪いを

妖怪成れどここまで生きてこれたのもその呪いの所為であり

死ねなかったのもその男とかわした約束の所為である

 

「だが、等価交換だ。お前は私に何を、もたらす。」

 

サクヤの言葉に白い山は答える。

轟々と響く興奮した心臓の音がサクヤの肌をビリビリと焦がした

 

「いいだろう、良いだろう!!

見返りは記憶だ!!

原初から始まる、最初の最初

お前にワシの記憶を、

お前の『弟』の記憶からお前に続くまでの一から十、すべてをもたらそう!!」

 

最初の昼行燈な雰囲気はどこへやら

辺りは剣呑な雰囲気に包まれ

サクヤは追い込まれていた

今のサクヤには遁走は出来ない

分水嶺に来てしまった。

ちょっとお使いの気分で来た先が、こんな結末になろうとは

 

 

とっくに色あせた記憶に、また色が付き始める。

察しの悪いサクヤでもここまでお膳立てされてしまえば自明の理である

 

 

『サクヤ』の血縁上に弟は存在しない。

だが”過去”に存在していた

過去、それはサクヤにとってでなく

あの日、2歳のあくる日

脳みそに刻み込まれた前世に存在していた。

 

 

「     」




…――らなかった。

修行編無理、長い、ややこしい。


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61

私に、前世の名前を聞いた妖怪は納得したようにフンと鼻を鳴らす。

先程の気迫と興奮はどこへやら、その姿は只の老狐だ

 

「易々と名前を教えよって…やはりあのバカの姉か…」

 

「お前が聞いたんだろうが。

馬鹿は否定しないが失礼だな…

まあ…今はいい、私は名前を答えた。

早く記録をよこせ。」

 

煽るように指先でよこせとジェスチャーするが

せっかちな性格も同じかよと視線が刺さる

ンジャゴラァアと無言でチャクラを錬って威圧する

序に祖父そっくりの顔で凄む、

ある一定層の人間には良く効く顔は、こいつには効かないようで、(そもそも2代目を知ってるかどうかも怪しい)白狐は視線をそらし呆れ、私に向かって緩く息を吐く

この狐にとって緩くなので、私にとっては暴風に近い

テメゴラ!!絶対わざとだろ!!

 

「さて、どこから話したもんか…まずお主の『弟』の生まれから話すべきやろか…?」

 

にたりと笑って『弟』と言う言葉をわざとらしく使う狐は厭らしい

…ん?

いや、ちょっと待って

もしかして…

 

 

「あの~つかぬ事をお聞きいたしますが、もしかしてその記憶ってーのは…口伝…?」

 

「何をゆうとろう。当たり前じゃ。ワシに特殊能力なんて無い。お主の目のような便利なものもない。

なによりこの目やしな、文字も書けんし読めん。残っとるんは口伝だけや。ちっと長い話になるが…ここまで来たんやし、三日ぐらい付き合えるやろ。」

 

ジーザス

 

「いやいやいやいや?!

3日?!無理だよ!!

普通に2泊3日とか無理!!

こちとら仕事が山と待ってるんだよ!?火影が黙ってねェよ!!殺されるよ!!

それに3日も経てば豆狐に攫われたドンが瀕死だよ!!」

 

「2泊3日ぁ?何なまっちょろい事ゆうとる。

三日三晩じゃろ。

火影は…如何にか出来るやろ。

お主、便利な目を持ってるようやし。幻術にでもかけてちょちょいのちょいやで!!」

 

神は死んだ

片目を瞑ってウィンクする狐は可愛くない…全く持ってくぁいくない。

 

「それにどうせ、お主の管狐はマメが攫ったんやろ?

せやったら時間がたてば勝手に戻ってくる。安心せぇ。」

 

何一つ安心できる要素が無いが、私は鷹のピーさんが5代目に雑巾絞りされない事を祈っておいた。

 

 

 

 

生きとし生ける者、大体は忘れる習性があり

私の、弟の記憶は、ほんの少し甦りはしたが、セピアからカラーになったぐらいで声、仕草、形、そのほとんどをピンボケしたように忘れている

そしてこの妖怪もそうであった。

 

「あーなんやったかな…大体…1000年?いや2000年だった気もすんな…まあそこらへんの大昔にワシが生まれて…

んん?まてや…?そうなると、ワシあいつといつおうたんや?…」

 

 

「ダメダメじゃねェか!!」

 

 

 

 

悪魔の証明ではないが

ない事を証明する事はとても難しい

だが、悪魔が存在するならば、悪魔がいない事も証明できる

 

弟がナルト世界線に来ていない事は証明できないが

この狐が私の前世に弟がいるという事実を知っている時点で

私の知り合い範囲の人間が転生している事は確かではある。

まあ、そもそも私以外の誰かと勘違いしてる可能性も否めなくはないので、仮称弟と呼ぶ事にした。

これは本人に確認するまで呼び続けることになるので、もしかして甦ったりしない限り仮称が取れることはあまりなさそうだ。

 

私としては先祖(?)に弟が出てきた時点で眉唾物だったこの話

更に記憶が定かではないときた…

口伝のややこしい所はこういうとこだよな、まあ醍醐味でもあるが。

それに、先人がどう思ってここまでに至ったか興味も有ったので大人しく促す。

 

「まあ、時系列は今は置いておくからさっさと話せ。」

 

「なんや、上から目線に…わかった分かった!!話す話す!!チャクラ練るのやめい!!

めっちゃ昔の話なんやけどなー、」

 

最初の知的な感じどこ行った

思わず突っ込むほどにフランクになり、説明が下手なこの狐

本当に説明が下手で

何故口伝で三日三晩かかるかよぉく分かった。

マジで三日三晩かかってやっと理解した。

 

「ああっ?!

そうじゃないってどうゆうことだよ!!

お前がこう言ったんじゃねえか!!」

「ああもう煩い!!重箱の角突くなや!!

もっかいゆうで?!

良いか?!よう聞けや?!――…」

 

 

 

 

仮称弟は死亡と同時に生と死の狭間の空間に落ちてしまい

そこで長い間魂が彷徨っていたら、丁度通りかかった六道仙人に拾われ

ナルトの輪廻転生の輪に組み込まれたらしい。

そして記念すべき第一回目の転生時

 

『ナルトかよおおおおおおおおお!!!』

 

無事記憶を思いだし、自分の行く末が暗雲に満ち満ちている事に気が付いた

というのもこの弟、やばい事にうちはの分家に当たる男性と、千手の分家に当たるうずまき家の女性が駆け落ちした後に生まれたらしい

どっかで聞いたことあんなー…はは…

 

転生した当初

魂状態で会っている六道仙人や前世の事は忘れていたらしいが

7歳の時無事(?)思い出した弟は自分が今どういう立場に居るのか理解して冷や汗たっぷりに思ったそうな

 

「(今が戦乱期ではありませんように…!!)」

 

しかし、その願いも届かず、無事父と母から、未だうちはマダラと千手柱間が生まれていない事を知った。

両親は駆け落ちしたと言う通り、両一族から結婚を反対される立場にあり

弟は10歳になるまで両親と共に旅をしながら、一族の追手から逃げていたそうな。

その後、弟たち家族は皮肉にも、うちはと千手に同時に見つかり、すったもんだの末、両親は裏切り者として殺され

息も絶え絶えに逃げた先で、弟はこの白狐に出会った。

 

 

「最初は、どこかの迷い子だと思とったが、話を聞いて驚いたわ、まさか両親ともについさっき殺されて息も絶え絶えに逃げてきて、序に妙な知識なんぞもっとるもんだから…

…ワシは妖怪やから時間に詳しくない

やけど、こんな数年、10にも満たぬ幼子が、頭から被った両親の血を見て正気を失わず

に、冷静に逃亡を選択して、血を洗い流すために冬の川を潜って渡り

山の闇にまぎれ、竹藪の中を、ワシのチャクラを感知して迷わず付き進んだときたもんだ…

ワシの正体に気付くまではいかなかったものの、その知識、精神は立派にバケモノ級や」

 

その後、弟はこの狐と旅に出る

未だ、山と成る程大きくなかった白狐は、弟の作った竹筒に入って国を、世界を見て回ったそうだ

そこで、両親を亡くしたり、人さらいから逃げたり、と様々な理由で孤児なった人に出会い、誰かを助け、誰かに助けられ、仲間が増え、好きな人が出来て、家族が増え、真の目が出来た。

 

忍びに両親を殺された弟は、忍びから遠く離れた大工になり

子供に、仲間に、家族に、知識と愛情を与え

大往生して、一族総出で見送られたそうだ。

 

私の前世の記憶にいる弟は結構なオタクであった

何かにハマればそれにのめり込む

だからNARUTOにハマった時点で、既出の印は本人の言う限りは大体結べるし、私と違ってきっちりストーリーや人物、それからなる人物構成を全て記憶しているはずだ。

 

なのでこの狐が言うように弟が私と同じように転生していたのなら、真の目なんて中二な名前を付けてる感じから言って、ぜってーあいつ無双してた…

と思っていたのだが

無双した場合、この狐の他に何かしら(口伝でも書物でも)記録が残ってていても可笑しくないので今生の記憶を掘り返したが、私の遺跡文書の知識を持ってしてもそれに当たるような事柄は思い出せなかった。

風が吹けば桶屋が儲かると言うように、仮称弟が何かしらのバタフライエフェクトを起こしてる可能性もある

一応私の知る範囲で、原作と違うとこをを思い出すが

私の記憶力は頼りにならないらしく、目についておかしい部分は私と父や叔父達だが、

ストーリー的に矛盾する部分は無い。

 

もし仮称弟が起こしたバタフライエフェクトがあるなら

今迄カンペ通りに来た道筋から言って、原作ナルトに集束する力も証明されることになりそうである

私はこの話が嘘であって欲しかった

 

「お主の弟は、まだ両親が殺される前、蝦蟇に会ったそうだ。

そこでとある予言を与えられたと聞く。

蝦蟇は夢を見んそうだな…」

 

「…」

 

「せんじゅつとやらは知らぬが、ワシとてこの話位はちゃんと覚えとる

予言はこうじゃ『お前さんの家族がこちらに来て、大暴れする。』

あ奴はその言葉を聞いてすぐピンと来たようだ。(ヤツ)が来よると。」

 

三日目夜、焚火の前で座り込み、話を聞いていた

薪がぱちぱちと爆ぜあたりを照らすが、相変わらず辺りは濃い霧に包まれていて様子は3日前と変わらない。

膝を抱えている私の横にはもう整理された荷物が置かれ出立の準備はできていた。

 

「…最後に、一つ確認したい。」

 

「別に最後にせえへんでもええやろ…

ああ、分かった分かった!!分かったからチャクラ練るな!!

どうぞどうぞ!!もう何でも聞きや!!」

 

この狐は何か聞くとすぐ屁理屈が帰ってきて話が横にずれる

チャクラで圧すのも慣れてきた。

 

「私の父、作間はあんたに何か渡さなかったか?」

 

「なんや、弟のことちゃうんかいな…薄情な奴やな。

そやなー…ワシは作間にお主のもっとる管狐を渡したんと、嫁はんが身籠ったっちゅう報告の2回しか会っとらんから何も貰っては無いと思うで。心配ならマメに確認させよか?」

 

「いや、いい。

解かった、ありがとう。」

 

「…作間のゆう所の等価交換や。礼は他ん事に取っとき。」

 

「…いや、礼を言わせてくれ。

あんたのおかげで大方の問題は解決した。

感謝する。」

 

「なんや、分かったんか?」

 

「分かってはいない。だが憶測だがこれで大体の事が納得いった。

そうだ、感謝序に一つ情報をやる。」

 

3日前に出した野外焚火セットの火を、足で砂をかけ消す。

途端、辺りが暗くなるが、一気にチャクラを錬り上げ、目を万華鏡にする。

私の放出する光と熱であたりの空間が照らされ捻じ曲がる

 

「お前は、私や仮称弟の真名を知ることで、この世界に私達を縛ろうとしているんだろうが…

その名前、偽名だ。」

 

忍び舐めるな

そう簡単に情報喋るわきゃなかろう。

私は答えた。

 

「山田花子」と

 

日本ではよく使われる偽名らしい偽名だ。

山本とかも考えたが山田が一番わかりやすい

仮称弟もそう思ったのだろう。

山田の姓にこの白い山は納得をした。

つまり外国人の可能性は減った。そして私の弟の可能性が少し上がる。

忍びから遠く離れた大工になったとか言うが、中身は忍びそのものではないか。

名を偽り、姿を偽り、暗躍する。

 

 

 

狐は目を大きく見開き停止している

これ幸いと、私の体が白い炎に溶けるように、燃えるように消えていく。

 

やはりこの術、発動ロスが難点だ

視力が無くなるのはごめんだが、もう少し速度を上げたい。

もっと大量にチャクラを錬り込めば早くなるだろうが、それでは私の方が先にばてる。

 

 

最後に見た顔は、泣き顔だった。




修正される可能性大だが取りあえず乗せておく


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62

かくして、3日目の夜ギリギリに分裂して戻ってきていたドンと、万華鏡写輪眼のおかげで

無事、真の目本家の池に落とされた私は、あの豆狐に文句を言うでもなく帰路に就いた。

 

 

「また来たってやー」

 

「その豆狐が滅んだら考えんでもないです。」

 

豆狐の高笑いをバックに私たちは、当初の目的(仙術会得)も成せず、新たに増えた問題(仮称弟の可能性)を持ち帰る。

途中で息も絶え絶えなピーさんが5代目からの返事を持って合流…

 

「『急ぎ、帰ってくるように。』だってさ…」

 

「あかんな…この感じ…

嫌味が一つも書いてないとこからいって、九尾のチャクラん時と同じぐらいの怒りを感じるで…」

 

「共に死のうぞ…」

 

「ぽっポンさん…!ししししっかりして下さい!!峠はこれからですよ?!」

 

 

里に帰ったら当分は任務を詰め込まれるだろう。

想像に容易くて泣けてくる。

さて、家に帰れるだろうか…?

 

 

 

 

あの白い山のせいで、父作間と、六道仙人にちょっくら用事ができた。

一応方法としては穢土転生を考えてはいるが

 

めっちゃムズイ。

 

穢土転生の巻物は流石に蔵に無い。

しかし、以前蔵をひっくり返した際、2代目直筆の穢土転方面のメモ書きは発見したので

父に会うため穢土転でもするかーと軽い気持ちで解読を始めてはいたが

めっちゃムズイ。

 

2代目も何て術を開発してくれんだ

もっとほかに何か、こう簡単に、ローコスに転生させる方法あったろう。

なんだよ、呼び出すものの体の一部と、生きた人間が必要って。

普通に手に入んないわ、ちくしょう。

 

もうあきらめて大蛇丸に頼むしかないのか…

その場合サスケ君が大蛇丸殺す前に何とかしてコンタクトを取らねば判断が遅れてしまいそうだ

一応研究と父の遺体捜索は続けているが私は大蛇丸の様に天才ではないし…

大蛇丸簡単とか言ってたけど全然簡単じゃない…

大蛇丸の優秀さが垣間見えてつらい…

既存の戦闘忍術を、目的に対して尖った仕様に組み替えて、チャクラを節約して使うのは得意なんだが、今回はそれをやる隙もねェ

 

 

六道仙人は流石に穢土転不可能だろう

そして会える条件がめっさ難しい。

前世、弟に何度も説明されても理解できなかったあのよく分からん設定は、未だ転生してこっちの『理』に慣れてきても尚、分かって無い。

だがこれだけは覚えてる

 

インドラと、アシュラと、十尾がいないと、この世で六道仙人には会えんらしい

 

しかし私はインドラでもアシュラでも、ましてや十尾でもない

カンペの通りに、十尾の人柱力になったマダラに、柱間(輪廻転生体)が触れなければ六道仙人は多分現世に現れないし、会えない。

父には確認したいことがあるだけで、別段会えても、会えなくてもいいのだが

六道仙人には、会って5、6発殴る位の用事があるので原作の修正力?っていうのに頼るしかねェ。

 

そして六道仙人に会うに当たって一番の障壁が無限月詠?だっけか?なんかたくさんの生き物を無限の幻術に掛けるなんていう術だ

それにかかるとストーリーの順番上、六道仙人に会えない

 

一応隅から隅までカンペを確認したが六道仙人がこっちに来るのは後にも先にもその数時間っぽい。

だから最悪マダラの幻術を如何にかして避けなければならない

一応うちはの集会所もチェックしたが輪廻眼持ってないのでつらたんなだけだった。

だが、カンペチェック入れたところで一つ分かったことがある

 

ぶっちゃけ無限月詠って万能ではない。

 

あの術、多分なんだが、月が見えるかどうかが肝なんですよ

サスケ君のスサノオで月光を遮断できるところから見ると

多分これ、

ホント多分なんだが

 

地球の裏側、もしくは月の光が届かない所まで行けばいいんじゃない…?

 

物質を透過する力とすると、この仮説はすぐ消えてしまうのだが

されど、地球の裏側まで届くとしても、チャクラも時間も大量にいるだろうし、多少の時間はかせげそうだ。

 

本当はサスケ君のスサノオに入るのが一番手っ取り早いんだが、ピンポン付けたのバレテおおよそ嫌われているので無理

自分でスサノオ出来るかと思えば、ピンポンにチャクラ半分以上もってかれてるのでやった瞬間死ぬ。

さらに失明のリスクが常に付きまとうのでおいそれと練習できん。

目を移植しようにも父さんのプロテクト強すぎてまず移植できないので無理

父強し。

そのためにも穢土転させないとマジで六道仙人殴るどころじゃなくなる。

 

話しを戻すが

地球の裏、日本で言うブラジル辺りに逃げるためには、まず裏側が存在するのかが肝である。

そう、お忘れだろうがこの世界、世界地図が無い。

一応木の葉の周りを覆う国々の地図は普及しているが、忍びの足で3日から4日の範囲しか記されていない。

なので『地球の裏側』という概念があるのかどうかさえ危うい。

もしかして存在しない場合

コロンブス以前の、地図の様に世界を囲う滝が存在するかもしれない…

こわっ

 

だが昔、3代目とおしゃべりした時、一応宇宙と言う概念は有った。

文明的視点から行くと地球は丸くないとその答えには行き付かないので

地球は丸い…事にする。

 

もし裏側に陸があるなら永住したいが、些か無理があるので(言語とか文明とか)仕方なし。

たとえそこが海であろうが、山であろうが、なんであろうが、術が終わるまでの数時間を稼げばこっちのものである。

つか、もし私の知っている地球と同じならば地軸がゆがんでいるはず(まあ四季があるので多分同じだと思うが)

なので白夜を狙って南か北に逃げれば移動距離が少なくなり、チャクラは多く稼げる。

カンペではナルトの誕生日がどうの書いていたので

月詠当日は10月9日又は10日と確定している。

そして、白夜チャンスの冬至が12月、夏至が6月。

裏側は間に合わなくても地軸のゆがみ的に、白夜は無理でも、精一杯南に逃げれば、横に移動するより距離的にワンチャンある

 

しかし、自分の半分のチャクラを使って影分身したとしても、これから10月10日までの1年位で、影分身1体のチャクラでたどり着けるとは思わない。

だが、ここはあれよほら、便利な忍の術、あるじゃない?

 

 

てってててって、てーててー!

ひらいしんのじゅつ~(ダミ声)

 

 

 

もう必死に覚えました。

 

カカシパイセンと10班にはもうご存知の通りバレテいる

特にバレて困る術でもないしなと思い、髭クマ弔い合戦の時、どうでもいい場面でネムミMAXで使ってしまったが、忍びたるもの使える術はなるべく秘匿すべしと思っているので実は結構痛手だったりする。

まあ、カカシパイセンにはコールタールの恩もあるので容赦をしてやる…

 

 

4代目の飛雷針に対して、私の万華鏡の能力では、一回の移動で目にかかる負荷に対して、対価が少なすぎる

しかし飛雷針の術は、質量が多ければ多いほど、距離が遠ければ遠い程チャクラ使うが、体感だが万華鏡よりチャクラ量が少なくて済む

そして目が見えなくなって行くなんて言うリスクも無い。

 

そんな便利な飛雷針の術を、態々2代目の資料を掘り起こして覚え、4代目を参考に移動用に術を組み替え、チャクラ温存に頑張ったのだ。

万華鏡写輪眼のおかげで一応、い ち お う 時空間忍術には覚えがあるので使えることにゃ使えるが

私も父に似たらしく、黄色い閃光のように上手く戦闘に使えるかと聞かれたらNOと言える忍びになるだろう。

4代目は自分の戦闘用に組み替えて使っていたので、移動用に組み替えんのほんと頑張った…

お疲れ私…

本編ピーク前に燃えつきそうだぜ…

後は蔵から毎日分身の術と飛雷針の術を使ってバケツリレーの様に、地道に南極より向こうを目指すだけだ。

 

やったね!!

これで1日に使えるチャクラ量が大幅に減り、任務に使えるチャクラが減ったぜ!!(涙)

 

 

 

もし、ダンゾウ率いる暗部に監視されていた場合

毎日影分身を飛雷針でどこかに送り前日から走っていた影分身と交代して、無駄に走った経験値が自分に還元され、朝からげっそりと寝床から起きる姿は異様だろう。

休み欲しーなー…無理かなー…

寝起きしょっぱが一番チャクラがあるので起きたらすぐ影分身する事に決めたのだが少し後悔している。

 

今は、ちょっと人より多いチャクラ量が、影分身1日走らすおかげで半分まで減っているので、任務時マジ体術に頼るしかないのつらたん

一瞬ガイさんに弟子入りしようかと思ったけど

半分に減ったチャクラ量に毎朝還元される丸1日走った経験値、

ここにさらにガイさんの修行が組み込まれることとなると…ちょっと…体力的にも精神的にも無理かなぁ…

後思いつくのはチャクラ節約のコントロールの方だが、九尾チャクラ発覚の件から一応信用は戻ったものの、相変わらず5代目に使われるだけ使われてぽいされてる現状なので、まず5代目系列に弟子入りは無理ぽ

つかその前に怒涛の如き任務が終らねえ…

 

 

 

「あんた、…最近チャクラが少ないが何かあったのか?」

 

お見送りのはずが三日三晩になってしまった雷での出来事は、やはり5代目に大目玉を食らい、私は家どころか里にさえ帰れていなかった。

任務に次ぐ任務で、引き継ぎのガイ班に会うと、ネジ君が訝しげに心配してくれる。

ガイさんに弟子入りなんて一瞬でも考えてしまったのはこれが理由だ。

 

意外と任務報告や引き渡しの時はおとなしいガイさんは、何時もそういう場面では頭脳担当の誰かを引き連れてる。今回はネジ君だった。

やはり白眼を持つだけあって、

私が異様に疲労している事にネジ君は気付き、変な術にでもかかったのかと訝しんで目が白眼だ。

若干意識が朦朧としている私はにっこり笑い、親指をグッと立て答える

 

「ここ数週間里にさえ帰れてない☆」

 

流石にガイさんや他の班員たちも、私が色々崖っぷちなことに気付いたのかドン引きしている。

ネジ君は優秀だし物わかりがいい

ガイさんの様に表にしかいないなんて事は無いだろうからきっと里の裏側も見ることになるだろう

そういう時ガイさんのような人に相談するとか絶対無理なので、先輩から一言アドバイスを添える事にした。

 

「大丈夫。君は優秀だから、遺体は木の葉に持って帰ってくれるよ。きっと。」

 

上忍になった行く末がこれ()だと気付いたネジ君は、引いた顔から絶望に変わって行く。

 

 

 

一応体術の師匠である雷の国の真の目棟梁になんか摩訶不思議パワーとか無いっすっかね―?と書状送付の任務がてら聞いたが

俺にできんのはねえなとほっぽり出された

 

久々に顔を出した道場で、長い髭を生やした爺さんに

 

「真の目の体術を極める、それ、一生の課題なり。

日々精進せよ。」

 

と言われた。

うーんわからん。



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63

大蛇丸がサスケ君に無事吸収されたらしい

付けていたポンがパワーアップしたサスケ君に塵の様に消されたので、こりゃひそかにつけるのはもう無理だなと思い

イタチが殺されるまで放置することにした

流石に兄弟げんか?を止める気はしないので(止めたら確実にイタチに殺される。)

大蛇丸が持っていた写輪眼を回収消滅させることに専念しようと思う。

 

ボッチ任務と並行していくつかの大蛇丸のアジトを襲撃、奪取、破壊、をしたが思ったより写輪眼の収穫が振るわないとこから見ると、どうやらダンゾウもこの浮いた駒(写輪眼や研究内容)を狙っているようだ

 

あの二人はそこそこ利害が合えば仲良しこよしだったところを思うと、そういう取引をしていたとしても不思議ではない。

めんどくさい事に成ったな…

 

 

 

 

 

サスケ君の事で報告があると言うと、思いの外早くイタチに会う事が出来た

あいつブラコンが過ぎるだろ…

通り雨の降る山の中、久しぶりに会ったイタチ君はやつれていた

 

「ええ…これ大丈夫なの…?

ちゃんと戦える?大蛇丸滅せる?」

 

「戦えるとか戦えないとかじゃない。滅す。」

 

「どんな理屈だよ…」

 

うん、まあ…君が思うように動けばいい…

私はもう知らん

イタチ君の我儘には、ほとほと呆れていたが、ここまで来るとあきれ通り越して尊敬の念さえ湧いてくる…

仙術を教えられた時、フサカクさんがど根性がどうの言っていたが確かに、これは根性としか言いようがない

イタチ君、君の方が仙術会得に向いてるよ…

 

うちは一族がクール系だと思ってる奴は考え直せ

こいつらはプライドが高いだけで中味すげぇ暑苦しいぞ。

特にそこの桜色の髪の子と、赤い髪にメガネしてるやつ

あと金髪でうんうん言ってる、そこのお前もだ。

過去、うちは一族を『血液をグツグツ煮詰めた位ドロドロしている』と表現したが訂正しよう

血液で内臓を煮詰めたぐらいドロドロしてる

 

 

この不定期すぎるイタチとの情報のやり取りはこれで終わるだろう。

雨を凌ぐために、何時かの様に駆け込んだ洞窟はよく冷えていた

未だ止みそうにはない雲間にため息を吐いて、ぽつぽつと近状を二人で話すのはいつ振りだろうか

一応タオルを出して渡したが、こいつ絶対風邪こじらせて肺炎になるだろうなと思い、先にくぎを刺しておいた。

 

「お前が風邪をひいた場合、私はまた容赦なく闇医者にぶっこむから、やられたくなくば、くれぐれも体調には注意をするように。」

 

これ以上会う事も無いのにかける脅しは、全く怖く無いだろう。

しかし化けて出そうだと書いてある顔は、傑作だった。

 

思えば、この兄弟には振り回された。

本当はサスケが里を抜けた時点で私の手を離れていた問題だったが

イタチの難癖によってここまで引き延ばされたし、伸ばしてしまった。

こいつとも長い付き合いになったなと感慨に耽っていたら

 

「以前言っていた、お前の万華鏡写輪眼の件だが」

 

と話が切り出された

お、ついに名前が決まったかと思いイタチの声に耳を傾けたが

 

「やっぱ自分で考えるべきだと思う。」

 

「なんだい」

 

がっくりした

当てにしてたのに

 

「…サクヤはあまり術の名を言わないな」

 

「陽動に言ったりするけど、基本何の術かバレたくないし。

私、チャクラ温存するために大した術使ってないから、技名言ったって慄かれる事ないし

リスクとリターンが釣り合わん。」

 

「…サクヤのそういうとこ、俺は好きだった。」

 

「そうか。

私はそういうこと言う、お前が嫌いだ。」

 

過去形で言うな

過去形で

まるで最後みたいじゃないか。

まあ最後になるだろうけど…

どうせ最後なら技の名前ぐらい付けてくれたっていいだろう。

伸びてきた手を弾く

何かついていたかとタオルで顔を拭くが白いタオルは白いままだ

やはり体が冷えるのか、咳き込んだイタチに、新しいタオルを出して渡してやる。

イタチは素直に受け取ったがそのタオルは赤く、よく染まる

 

「俺が名づけると、サクヤはその眼を封印し辛くなるだろう。」

 

もう一度咳こんだ後イタチは苦しそうに笑うが

 

「いや、全く持って無い。必要なくなり次第、すぐに封印滅却する手筈は整ってる。」

 

 

 

イタチは先程の苦しそうな顔は何だったのか、スッと背を伸ばし前を向くと、額に手を当て、ため息を吐いた。

無駄に絵になるのがまたイラつく。

 

「友達甲斐のない奴だな…」

 

「なにを今更」

 

本当に今さらだ。

私は君を友人と思っているが、君は私を一回も友人と扱ったことなかったろう。

私は、常に誰かを当てはめてこいつに扱われていた

 

初めて会ったときは両親

暗部に入ってからはシスイ

里を抜けてからはサスケ

 

友達甲斐が無いのはどっちだ。

ほんと生意気な奴だ。

 

「お前はかっこいい名前を1つ考えるだけでいい。私はかっこいい技名を叫びたい時に叫べばいい。ほら、簡単な事だろ?」

 

「かっこいいって言われると照れるな…」

 

一瞬握った拳が出かけたが、病人だったことを思いだし引っ込めた

流石に私も病人に無体はしない

 

「言っとくが、死ににいくような奴を真の目ではカッコ悪いと言うんだ。」

 

「…忍びの生き方としてはちょっと異質だな」

 

「忍じゃないからな。

忍界大戦が起こる前、里が出来る前

孤児の集まりから始まって、人が増え、物が増え、家族が増え、真の目になった。

捨てられた奴らが、平和を望んで、拾って集めたんだ。一つ一つ大事に。

『泥をすすってでも生きろ。そしたら真の目が拾ってやる。』真の目の子供はそう言われて育つ。

だから人目をはばからず命を、欲を、知識を、経験を優先する。活きることを優先する、

血族でもないのに皆変人臭いのは絶対これのせいだと思う。」

 

おどけて笑っておくがホントマジ絶対これのせいであると私は確信している。

泥をすするというか、泥にまみれるというか、泥と遊ぶというか…

活きている(欲)方向に全力で突っ走るので『耐え忍ぶ』忍者には変人に映る。

泥をかぶるのは良いが、血(死)にまみれるのを極端に嫌うおかげで、真の目は脅威になりえないとして、かろうじで里に睨まれながらも受け入れられている。

 

「元々名前に『サ』を入れるのは逸れた真の目子供が、孤児ではなく真の目に拾われやすいようにと考えた方法だった。

今は殆ど意味をなしてないがな。」

 

真の目が世に浸透したころ、孤児の集まりだからか姓を謀り悪事を働く輩がよく出た

始まりが孤児の出と言うことで血のつながりもない真の目に、その問題をかたずけられるほどの信頼は無かった。

なので初代当主の頭文字から『サ』をとり、子供に付けることにしたのだ

それがいつしか親が死んでも真の目に拾ってもらうために変わった。

 

「サクヤが真の目の話をするのは珍しいな」

 

雨が止んできた

このままいくとあと10数分で雲間も晴れるだろう。

咳き込むイタチに自分のタオルをかけた。

初め、イタチに渡したタオルはもう真っ赤だ

悪いと謝ってくるイタチに、まだあるから安心して咳き込めと返す。

 

「私はある意味真の目とは縁遠い血筋にいたからな…あまり真の目の中心に居なかったせいでそういう話は聞く暇もなかった。私も最近、蔵の掃除途中に書物を発見したんだ。」

 

「あの蔵か…相変わらず何でもあるな。」

 

「何でもはない。ただあるだけだ。」

 

そうだなと頷いたイタチは症状が落ち着いたのか空を見上げる

雨は降っているが雲間から光がさしているので辺りは明るい

イタチの黒が濡れて生える

 

「俺もサスケも、真の目に生まれるべきだったか…」

 

「なんだ、珍しいな。」

 

ある意味血を尊ぶうちはにしちゃ珍しい

一族のプライドの為皆殺しにしたイタチはどこに行ったんだ

 

「俺だって弱音を吐くさ。」

 

まるで弱音を吐いた事が無いとでもいう口調だが

私は知っている、イタチの少年期を…

まあ、死ぬ前位かっこは付けさせてやるか…

と温情で聞かなかったことにする。

妙なテンションのイタチが面倒臭くなったとも言う。

 

「真の目だって何もしがらみが無いわけじゃない。たとえ『真の目』であれ『うちは』であれ、イタチは一族と里の間で苦しんだだろう。誰だって、どこでだって人は苦しいもんなんだ。

ただ、幸せを数えるか、不幸を数えるか、それだけの違いだ。」

 

 

 

「…確かに、そうだな。」

 

イタチは血に濡れたタオルを握る

 

「俺にはサスケがいて、父さんと母さんがいて、シスイと、一族と、里があって、そこに幸せがあったから、生きてこれたんだな…」

 

そうだ、こいつは綺麗に笑う奴だった。

でも、私はくしゃっと、笑ったあんたが好きだった。

だから不安で押しつぶされそうに笑うおでこを突いたし

笑って欲しくて額を突き合わせた

 

「私、今のイタチなら好きだな」

 

「…じゃあ、両思いだな。」

 

「ナメンナ、100年早いわ」

 

私がマジもんの生娘だったらとっくに惚れていたろうが、悪いがこちとら前世合わせると結構な年寄りなんだ。

今更惚れた張れたも無いわ。

 

 

「名前、本当は考えて来てたんだ。」

 

お?お?ついに言う気になったか?

頬をかき、あらぬ方向に目線を向けるイタチに

期待をかける私は、全く持って年寄りには見えないだろう。

精神年齢が低いって?

オタクは大体低いんだよ。2次元に萌え上がってる時点で低いんだよ。

それを楽しむか楽しまないかの差だ。

 

「でも俺は、いずれ呼ばれなくなる名前は付けない主義でな。」

 

膝から崩れ落ちた。

結局教えてくれないのかよ

 

「だから目の封印はしないでくれ。」

 

そう、のたもうイタチの目は黒い。

これは幻術ではない、現実だ。

 

「は?」

 

舐めんじゃねえ、この目がどれだけ私の人生設計を崩してきたと思ってんだ

こちとら少なくとも目のせいで肉親3人亡くしてんだろおらぁ

 

すごんでから気付いたが、イタチは肉親1人残して一族皆殺しだった

いや、命は数じゃない質だ。誰を生き残らせるなんて選択は私には出来ないが、もう少し血縁者が生きててくれてもよかったのではないかと思う。特に父関係

まあ今さらだし、良いけど

 

「分かった。

この目の封印はしない。それでいいだろう。」

 

この目“は”封印しないが、この目に“戻す”とは約束はできない。

 

言外の言葉を理解したのかイタチは苦笑する

もう、以前の様に恥ずかしまぎれに幻術を掛けるような事はしないんだなと、黒い瞳と目を合わせた。

 

「…宇迦之御魂(ウカノミタマ)」

 

「長い。」

 

余りにも出し渋るからアスマの様にセンスゼロを疑ったが、

あれよりは全然いい。全然まとも?だが

 

長い。

 

なぜにそこチョイスかわからん

確かお稲荷さんの神様だったけ…?

あ、ピンポン関係か。

 

 

「頼んでおいて…まあ好きにしろ。

ただ、俺はこれからずっと宇迦之御魂って呼び続けるからな。」

 

そう言って鼻をフンと鳴らす姿は兄弟そっくりだ。

いや、お前もうそろそろ死ぬんだろ?

この名前が活躍するところ絶対見れないと思うぞ?お?お?

と、3分ほどにらみ合ったが私がおれた。

頼んでおいてという部分がなかった事も無い…

 

「あとお前の白い火遁おかしいから『白狐』とか『狐火』とかも考えたんだが」

 

「おい、おかしいってどういう意味じゃごらぁ」

 

「って言われそうだったからやめた。」

 

先を読まれていた

ほんと何かとやらしいやつだなこいつ…

 

 

 

雨が止んだので出立の準備をする。

イタチの吐血に塗れたタオルは目の前で燃やしてやった。

やはり数分口から火は絶えなかった。

本当にこの火遁は使い勝手が悪い…。

 

「やっぱ狐火が妥当だな…」

 

「言ってろ。」

 



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64

妙木山の蛙から緊急で用があると呼ばれた

呼ばれた=妙技山に召喚された。

 

「っおおおおおおい!!

だから呼ぶときはあらかじめ使者をよこしてから呼んでくださいと!!

あれほど言ったじゃないですか?!

私今任務中ですよ?!任 務 中 !!

私一人だったからよかったものを!!マンセルだったら仲間が絶対心配してますよ?!急に消えたら絶対敵襲だとパニクりますよ!?任務失敗したらどうしてくれるんですか?!

部隊全滅は無いでしょうけど負傷者出たらどう責任取ってくれるんですか!!

ちょっと!!ねえ!!」

 

目の前にいたフサカクさんをぐわんぐわんとゆする私はさぞ狂ったように見えるだろう。

だが、このカエルたちは人間の常識を知らないのだ

自分達がいつも急に呼び出される側だからかこちらの都合など構いやしない

フサカクさん達と契約してからというもの、どこでもそこでも呼び出され、最近ではついに風呂中に呼び出され、私はキレて目の前にいたガマブン太をぶん殴った。

そこでやっと何事でも緊急でも使いをよこしてから呼ぶよう約束をしたのだ…

現在マッハで破られたが。

 

「サクヤちゃん、その、悪かった。だがこっちも至急の用事での…」

 

「だから緊急でもなんでも!!せめて使いをよこしてからにしてください!!これが私だったらよかったもののナルト君だったら、すわ誘拐?!とかいって九尾捜索隊組まれかねませんよ?!人柱力舐めるなよ?!ダンゾウもこれ幸いとナルト確保に向かいますよ!!妙木山焼き払われますよ?!」

 

取りあえずナルト君が被害をこうむるのだけは止めてあげたいのが自称姉貴分の言い分だ。

ナルト君は絶対苦労する…

 

「んで、何の用事ですか?これでおやつがなくなったとか下らない事だったら私、意地でも帰りますからね。」

 

いや、流石にそれはない。と言われたので一応安心して話を聞く姿勢になった

呼び出された場所はどうやら妙技山の屋外らしく蛙の視線がとても刺さっていることに気付いた。鬱陶しいのでシャー!!と威嚇をしたらフサカクさんにぽかりと一発頂いて

取りあえず屋内にと大ガマ仙人の間へ案内された。

 

「あれまぁ!!サクヤちゃんやないの!!」

 

「あ、どうもお久しぶりです。」

 

「ホント久しぶりやわー!今まで何しとったん!

あれ、?!血がぎょうさん付いとるやないの!!ほらさっさと脱いで!!洗っちゃるさかいご飯でも食べてゆっくり待ってなさいな!!」

 

「あーその、任務中でして。急に呼び出されたので身綺麗にする時間が無く。すみません。話が終ったらすぐ帰るんで。お構いなく」

 

「そーおぅ?あ、お隣さんからいただいた、果物、ここに置いとくけんな!よかったら食べてな!!」

 

「あーはい。ありがとうございます。」

「あ、そやった、そうそう。サクヤちゃんに聞かなあかんことあったん。この間送ってくれたゼリーやったんやけど…」

「かぁちゃん!!いい加減にせんと話進まんやろ。ちーとくばだまっとりー…」

話しが一向に進まないのでフサカクさんからストップが入る

が、流石シマさん黙らない…

コミュ力の塊であるエロ仙人ならこの二人の間に入って停められそうだが、コミュ力5の私にはこの夫婦喧嘩の間に入るという事は死と同義である故、静かに黙って終わるのを待っていた。

つかこの二人に挟まれる仙人モード辛くね?

よくエロ仙人やろうと思ったな…

世は諸行無常なり。

 

とか思ってたら流石に大ガマ仙人が止めた。

 

「すまんかったのぅ、さくやちゃん。」

 

フサカクさんが申し訳なさそうに謝って来る

一応いつもの事なので許しておく

てか、この夫婦は毎度やってるやり取りな気がしない事も無い

 

「で、今日呼んだわけじゃがな…大ガマ仙人様の夢の話じゃ。」

 

「はぁ…」

 

え?夢?今夢とか糞どうでもいいんすけど。

という言葉を何とか押し込めて返事を返したら、事の重大さを分かって無いと思ったのかフサカクさんが補足の説明を付けてくれた

 

曰く

蝦蟇は夢を見ないそうで

大ガマ仙人が見る夢は未来確実に起こるべきことなんだそうな

 

胡散臭ぇ…

 

いや、まあ…カンペに書いてあったり、白狐が言っていたので分かってはいたが

やっぱり未来視や予知夢という物は古今東西胡散臭い

一応わかったふりをしてへぇこらしてたら頭に一発もらった。

やはり聞いてない事はばれていた

 

「サクヤちゃん!!これはサクヤちゃんにも関わる重要な事なんじゃ!!

ちゃんと話を聞きんしゃい!!」

 

「はぁ…」

 

確実にやる気をなくしている私を見て大ガマ仙人は前説から丁寧に説明するわけでもなく結論を話す事を選択する

 

「単刀直入にいうとだな。

わしは昔夢を見た。

サクヤ、お前はこれから何らかの方法で仙術をマスターする。

そして大きな戦のあと誰かにそれを教授するであろう。

その教授された者は、世界を真に見る者となろう」

 

「…その誰かっていうのは具体的に?」

 

「詳細は分からん。ただ、赤い真の目の紋と、白い意匠に写輪眼が見えたので、現存する真の目で、仙術の存在を認知しており、写輪眼を所有しておるは、お主であることはまず間違いなかろう。」

 

どうやら仮称弟の受けた予言とは別物のようだが…

六道仙人か、何かしら別の大きなる力が関係してくる可能性が出てきた

いよいよ仮称弟の介入を疑わなければならんくなってきたなとうんざりしているとフサカクさんが事の詳細を語ってくれる

 

「実を言うと、この予言を最初ワシ達はサクヤちゃんの父、作間ちゃんの物であると考えておった。

予言の内容は端的に言えば『真の目が誰かに仙術を教える』というだけじゃったからな。

じゃからワシらは自来也ちゃんを口寄せした時、共に来てしまった『真の目』で『写輪眼を持ち』、『白い法被を着た』作間ちゃんに仙術を教えたんじゃ。

しかし、作間ちゃんは誰かに教えるまでもなく死んでしまった。

じゃからサクヤ、お主がここに来て…

予言が作間では無く、お主の事なんじゃないかと考えたのじゃ。」

 

 

赤い真の目の紋に、白い髪に白い服ね…

真の目は正装が白ってだけで普段着から着ている奴は少ない。(そんな事をしたら洗濯物が大変だ)

少ないが居ない事は無い。

常時白い服着ている真の目が何処に居るかと言われたら、大体が大工のあんちゃんたちの法被…

でも大工が仙術を習って何になるわけでもないしな…

力持ちになれるのはチャクラコントロールで十分の範囲だし仙術錬れても大工に利になることはなさそうだし

更に写輪眼…

だから、もしかして私なのかもしれないが

何てつーか…こう…解せない

一応、大蝦蟇仙人の予言なのでこれから先絶対起こる出来事だから起こるっちゃ起こるんだろうけど

それホントに私とは限らんよね…?

 

仙術をマスターする事を半分あきらめている身としては随分ぞんざいな預言だ

これで、私では無く他の誰かだった場合、微妙な雰囲気が流れること間違いなしだろう。

それより、一つ確認せねばならない事を思い出した。

 

 

「あのー予言で思い出したんすけど。真の目の初代当主の予言内容詳しく聞いてもいいですか?」

 

「はて?真の目当主…?」

 

「はい。先日私は初代当主の管狐に会いました。

私は真の目がいつから続いているのかは知りませんが、真の目当主の管狐は結構な長生きでして、今でも生きているんですよ。

先日フサカクさんのアドバイスもあって真の目本家に行ったら、その狐に会う事が出来たのですが、妙な話を聞いたのです。

真の目当主は蝦蟇の仙人から予言を頂いたと。」

 

大ガマ仙人は中途半端に耳が悪いので大きな声で真の目当主の話をしたが、何故か目を瞑り、唸ったと思ったら止まってしまった

え、なんかやばめな事だった??

と困惑していると、大ガマ仙人はその大きな目をゆっくりと開く

 

「悪いがワシは真の目の当主を知らん。」

 

 

 

おい、マジかよ。

 



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65

「蝦蟇はめったに夢を見ない。

ということは見た回数がとても少ないという事。

じゃからワシが見た夢は全て記憶している。

ワシがボケでもせんかぎりこの記憶は薄れん。

 

再三言うが蝦蟇の予言はめったにない。

じゃから予言を話す相手も、時代も、限られる、お前さんに予言の話をした狐がどれだけ長い時間それを記憶していたのかは知らんが、

ワシは真の目の当主と名乗る者に与えた予言はない。」

 

成る程、推測するに真の目だと名乗る者に会って与えた予言は無いとゆう事か…?

一応上げ足とって確認しておくことにする

 

「…真の目と名乗る者に話した事が無いと言う事は、真の目ではない者に何か話したことはあるってことですか?」

 

「…」

 

「でしたら、真の目当主では無く

うちは一族とうずまき一族の間に出来た子供に、託した予言を教えて下さい。」

 

観念したようにガマ仙人は口から息を吐くとフサカクさんとシマさんに視線を滑らせ部屋の中から生き物の気配が消えた。

冷たいと感じるほどの気配の無さにわたしは冷や汗を垂らす

 

なんかやばいこと聞いた気がする

 

 

「昔、わしが―…」

 

やっぱいいですとか撤回をしようとしている私の心情をお構いなしに、シリアスな雰囲気を醸すガマ仙人

 

 

 

「しこたま酒を飲んで酔った時の話だ。」

 

「あ?」

 

え?

まさかのそういう話…?!

真面目な話かと思ったらまさかの失敗談?!

お酒で失敗した感じの話?!

 

「いや、まあまず話を聞いてくれんか。

酔っぱらうのはよくある事なんじゃ。

というかわしだけが酒をたしなむわけではない。

昔馴染みの蛇とナメクジに会うと大体誰が誰が一番かと話していたら喧嘩になってだな…」

 

解かった、わかったから

おまいら三竦みがお酒が好きなのはよく分かったからっ

蛇は酔うと笑い上戸になるとか、ナメクジは管を巻くとかその余計な情報はマジいらないから

三竦みに幻滅する前に本題を…

 

 

 

一応止めたのだが、その後も近くに見栄を張る必要のある部下がいないからか話は続き

私は「(そうだ、爺さん婆さんって話が長い生き物だった…)」と3代目とご意見番の説教を思い出していた。

 

 

 

閑話休題

その日ガマ仙人は久しぶりの人間の世界に浮かれ、お酒をしこたま飲んで森の中で寝てしまったらしい。

そこでガマ仙人は夢を見たそうだ

 

 

「あれは真っこと恐ろしい夢じゃった…」

 

 

夢の内容は『白い狐が蝦蟇の里で悪の限りを尽くす』らしく

今でもあの白色が忘れられないそう。(白い狐…ね)

そしてその狐を止めるのが人間だったらしい。

 

 

「いや、なんか…私の聞いてた予言と全然違うんだけど…」

 

「まあまて、話は長いんじゃ。」

 

 

その夢を見て飛び起きたガマ仙人は赤毛の子供が一人、目の前で鼻を垂らしていることに気付いたそうな。

久しく人間の世界に関わって来なかったからか、その時ガマ仙人には人間の知り合いがいなかった。

という事はこれから人間と誰かしら仲を深めるという事。

目の前には人間の少年…

 

助けてくれるような知り合いがいなければ作ればいいじゃない。

 

ということでガマ仙人はその少年と知り合いになった。

 

 

 

少年の鼻かぜが治った頃

何度か会話を重ねていく内にその少年が妙な記憶を持っていることをガマ仙人は知っていった

 

『お主、もしや前世を知っているな?』

 

『おっと、輪廻を知ってる蛙だなんて驚きだ

お前、もしや妙技山の蛙だな?』

 

少年は言葉の割に大して驚きもせず、ニヤリと笑うと蛙の予言の言葉に耳を傾け

ただの喋る蛙を大いに励まし、慰めてくれ、友人になったそうな。

 

『分かった。じゃあもしその狐を見つけたら、程々にするように言っておくわ。』

 

そう言って別れた少年は、それ以降ガマ仙人に会う事は無かった。

その後幾何かの年月が流れ、いつか来る白い悪鬼に備え色々対策を練り平和な時間が流れていた。

そんな蝦蟇の里に、ある日人間が訪ねて来たそうな

曰くガマ仙人に会わせてくれと

最初は追い払おうとしていたが

その人間は『白い悪鬼だと言ってくれれば通じる』と言って引かなかった

蝦蟇達からの報告にガマ仙人は戦慄して、部屋に閉じこもった

絶対入れるなと言ったが、しかし

外から聞こえる声に思わず耳を傾けてしまった

 

『久しぶりだな。

元気だったか?

お前が言っていた狐に会ったよ。

ちゃんと悪さをしないように言っておいたから安心しろ。

友達になって一緒に旅をしてるんだ。

ちゃんと今はいないからさ

なぁ、少し出て来てくれよ。』

 

これは…もしやあの時の少年ではないか?

そう思ったガマ仙人は部屋の戸を自ら開けてしまった。

扉を開けた先には

あの日の少年が、大きな白い狐を従えて佇んでいた。

 

『やあ。』

 

『あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああ!!』

 

その日蝦蟇仙人は、初めて泡を吹き白目をむいて気絶した

 

 

 

「あの時は、流石のワシも死ぬかと思った…じゃが起きてみれば先程の狐は幻、幻術であり

その少年は、うちはの血を継いでるらしく写輪眼をよく使いこなしておった。」

 

 

 

 

『まさか気絶すると思わなかったマジすまん。』

 

と謝りつつ、蝦蟇の里の者に取り押さえられた少年は近状を話してくれた

久しぶりの人間社会での出来事に蝦蟇の里の者は皆耳を傾ける

最初の剣呑な雰囲気は消えていた。

話しを聞いてみるとガマ仙人と別れた数年後、両親が一族の者に殺され、逃げた先で白い狐に会い、ガマ仙人の言葉を思いだし

見張るためにも、その狐と行動を共にして旅をしていたらしい。

そして旅を経ていく内に、いつの間にか無二の親友になっていたそうな。

少年はこれでもう悪さもできないだろうと思い、ガマ仙人に報告に行こうと蝦蟇の里まで来たらしかった。

 

『遥々、遠い所からようきてくれた…

じゃが残念な知らせじゃ…

蝦蟇の夢は覆せん。

お主が出会った白い狐とは別の者じゃろう。』

 

『いや、大丈夫だ。前言っただろう俺には前世の記憶がある。それもとびっきりのだ。』

 

蝦蟇たちに話してくれたのは、とある少年が生きたおとぎ話だった。

チャクラの存在しない世界で、凄い速さで空を飛ぶ鉄の塊に、宇宙という途轍もない哲学、科学や数学という名の説明難きを説明する方法

蝦蟇たちはその世界に魅入られ、憧れた。

 

「その話の中であ奴はバタフライエフェクトと言う物を話してくれた、簡単に言うと―

 

「風が吹くと桶屋がもうかる。

だろ?」

 

「…やはり知っておったか。」

 

「風が吹くと目に土埃が入る、そうすると盲目の者が増える。盲人は三味線で生計を立てようとすから三味線の胴を張る猫の皮の需要が増える。猫が減るとネズミが増えて、ネズミが桶の底を齧るから桶屋がもうかる。

バタフライ効果これも似たようなもんだ、蝶の羽ばたきが遠い地で竜巻を起こすかどうかって話だ。」

 

「わしは、その話を聞いてもやはりあ奴の事を信じられなかった。

蝦蟇の夢は未来確実起こる事、じゃから予言と言う。覆されればそれは予言ではない。」

 

ガマ仙人は少年に予言の意味を話した。すると少年はある輪廻の話をする

『水はどこからくると思う?』

 

『上からだ。雨となって降り注ぐ。』

 

『そうだな。その雨は大地に吸収され、植物を育てたり、生きる者に水を分け与える。

さらにたくさん集まった水は川となり海へ続き流れる。

海へ渡った水は太陽に暖められ気発、水蒸気になって空に昇り冷やされ雲となる。

雲となった水は大陸へ流れ冷やされまた雨となり大地へ帰り俺たちを生かす。

水はこの循環から逃れることは出来ない。

それを魂の輪廻とするならば

俺は多分、そこに紛れ込んでしまった塩の様なものなんだ。

 

自分を水と思っている塩化カルシウム。

俺はいずれその輪廻から弾き飛ばされる。

土に還った時か、気発する時、はたまた氷になった時かもしれん。

 

だが時として違う輪廻に存在するものは水の輪廻をちょっとばかし狂わせることができる。

純度100%の水がないように、俺は100%の予言を少しずらせる。そしてそのズラした線は時間が経つごとに大きなズレとなって目に見える形で現れるだろう。』

 

 

 

 

「最初のズレはあ奴自身だった。違う輪廻に存在していたからワシに会い、両親が殺される中生き残り、ワシに会った事で白い狐と友人になり、白い狐と友人になったおかげでワシらの未来がズレた。そしてそのズレは大きくなり、あ奴の予言につながる。」

 

あくる日ガマ仙人は夢を見る

少年とよく似たチャクラの気配を持った人が生まれる

その子供はいずれ大きな波紋になり世界を揺らすだろう。

 

ガマ仙人はすぐさま少年に使いをよこす

使わされたのはフサカクさんだった

フサカクさんは人の世界で生きる少年を探して数年彷徨った

そして白い獣に追われ行き倒れたフサカクさんは、小さな少年に拾われた。

その少年は家に蛙を持ち帰り手厚く看病した

曰く『蛙がなにか困っていたら助けてやりなさい』と教えられたそうだ

しかしその看病の甲斐なくフサカクさんは日に日に弱って行った

蛙も死ぬときは死ぬ。

両親にそう説得された少年だったが、

それでもあきらめきれなかった少年は一族の長に蛙を見せて如何にか方法は無いかと相談した。

 

そこでフサカクさんは息も絶え絶えの中あることに気付く

この人間のチャクラは、あの日蝦蟇の里に来た少年と同じだと。

意を決してフサカクさんは普通の蛙のふりをしていたのをやめ口を開いた。

 

『お主、白き悪鬼を追い払った者じゃろう。』

 

『お前は…そうか、妙技山の者か。少し待て、今楽にしてやる。』

 

『いや、ワシとてさすがに解かる。もう時間が無いと。

先に話をさせてくれ。』

 

しかしその長は話を聞かず蛙に手をかざした。

すると碧く光る光に包まれてフサカクさんの傷がみるみる回復していった

 

『チャクラで傷口の細胞を刺激、活性化させて細胞分裂を強制的に行い傷口をふさいだ。って言っても分かんないか…まあガンになる可能性が高くなるからあまりやりたくなかったが緊急だし仕方ない。おい、大丈夫か?何があったんだ?』

 

フサカクさんは

予言を託しに来たがその途中で白い獣に襲われ怪我をしてのたれ死んでいるところを先ほどの少年に拾われたと話した。

 

『そうか、お疲れ様。大変だったな…

それにしても俺とよく似たチャクラを持った人間か…

それは…俺が転生したとかそういうのでもなく?』

 

『ワシが見た夢ではないからそこん所はよう分からん。曰くお主と似た者であるが本質的に違う、いわば兄弟のようなモノ。だそうじゃ。』

 

『兄弟か…なるほど。』

 

長は一言、そう言って黙り

フサカクさんが蝦蟇の里に帰っても、その話を掘り返すことは無かったという

 

 

「どういう変貌を経てお主の聞く予言になったかは知らんが

ワシの知る、人に渡した予言は自来也ちゃん以前はこやつだけだった。」

 

 

ほーん…

あの白狐は白狐に会う前に蝦蟇から予言をもらったと聞いたが…

あのバカは記憶が朦朧としているし間違いか?

確かに取ってつけたような情報だったしな…

つかあいつの話、大体自分の武勇伝だったからいまいち時系列が整頓しきれてねぇんだよな…

時系列的にはこっちの言い分の方が合っていそうだ

 

蝦蟇と狐の話を時系列でまとめると

仮称弟誕生

7歳ごろ前世思い出す

蝦蟇仙人に会う

10歳ごろ両親死亡

白狐に会う

旅に出る

白狐と友人になる

妙技山に、蝦蟇に会いに行く

真の目が出来る

長になる

 

フサカクさんが旅に出る

フサカクさんがのたれ死んでるところを少年に拾われる

長に会う(多分医療忍術と思われるもので施術される)

予言を託される。

 

 

って所か

あー…ややこしい事になったな…

今まで聞いた予言系の話全部忘れてぇ…

つか、実は仙術の時点で頭的に無理だった…

おバカを舐めてもらっては困る…ホント困る…

最近情報を詰め込まれ過ぎじゃないか?

一旦休みがほしい。

 

 

 

「仙術…諦めてたんですよ、半分ぐらい。」

 

唐突に、つぶやくように話し出したサクヤの声を、静かに蝦蟇仙人は聞く

 

「どう考えたって仙術を錬るに向かない性格ですし

ワンチャン狙ってピンポンの契約破棄しても、確実にものにできるかと言われたら頷きは出来ないんです。この通り、やる気元気勇気とは縁のない性格なもんで。」

 

蛙たちは律儀に蝦蟇仙人の言伝を守っているのか、やはり冷たいように気配が無い

 

「あなたの知る、父はどんな性格でした?」

 

「…お主のような、やる気元気勇気とはかけ離れた性格で、毎日文句を言っては根性が無いと怒られ、自分の欲に正直で、

…毎日が楽しいとばかりに生きておった。」

 

「そうですか…。

貴重なお話ありがとうございます。

私から聞く事はもうありません。」

 

任務に戻ろう。

誰を消して、どの情報を持ち帰る、単純な任務に。

私が消えている間も時間は同じように進んでいる。

召喚されてからからどうなったかあまり考えたくないが、未だ修正の効く範囲だろう。

 

私は蝦蟇の里から任務地へ戻った。

 

 

 




結局修行っぽい修行しなかったな…
つか予言編だなこれ…


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幕間編
66


任務の帰り道、大蛇丸のアジト跡を漁りつつ、襲ってきたやつらを適当に殺しつつ、父の亡骸を探していたらサスケに会ってしまった…

門限(任務期限)が迫っていて、メッチャ急いでたので

 

「サスケ?!」

 

「人違いだ」

 

「それは失礼した。」

 

「気にしてない。」

 

という会話をして別れた。

私が去ったあと横にいた少年?と赤い髪の少女?から激しく突っ込まれていたが私は何も聞いてない

 

「「いや、流石に無理があるだろ(でしょ)!!」」

 

 

 

 

 

 

サスケと目があった瞬間、幻術に掛けられ、私はサスケの幻術空間にのこのこと顔を出した。

幻術とは面白いもので、現実での1秒が、幻術では1時間何て便利な事が出来る。

ワケは、いわばアインシュタインの相対性理論にも使えそうな話で

相手に時間の経過を錯覚させることによって1秒が1時間に1時間が1秒になるのだが…

今は取りあえず目の前の仏頂面に声をかけることにしよう。

 

「やあ久しぶり。」

 

右手を上げ、比較的穏やかにご挨拶をしたのだが

サスケはムスッとしたまま私の顔から視線を外すことはない。

これ(右手)につられて視線を外したら、ドギツイ幻術にでも嵌めてやろうかと考えていたが、どうやら以前は引っかかっていた視線誘導も、そう簡単にハマってくれないようで、サスケの成長を感じる。

3年は無駄じゃなかったようだ。

 

「何の用だ。」

 

しかし、私の簡単な視線誘導にも引っかからず、ブスッとしたまま高圧的に質問する姿はある意味3年前と変わらない姿でやはりイタチの弟だなと苦笑を返す。

 

「用があるのはサスケ、お前だろ?ご丁寧にも幻術を掛けてくれちゃって。おねぇさん悲しいわ。」

 

私のわざとらしい演技にいらだたしげに舌打ちを返された…

こんなに邪険にされると終いにゃ泣くぞ。

 

しっかし、うちはにしてはお粗末な幻術空間だな~とイタチの幻術と比べていたら

サスケがもごもごと口を動かす。

はっきり聞こえず「え?なんて?」と3回ぐらい繰り返したので

やっと私にもわかる音量で答えた頃にはサスケ君はオコであった。

がその質問は要領を得ない

 

「お前もイタチを狙ってるのか!!そう言っているんだ!!」

 

「え?いや?とくに?なんで?」

 

なんでこいつは私がイタチを殺すなどと思っているのか…?

私はてんで分からんこの状況にはてなを飛ばしまくる。

 

「それは…その…」

 

またも、もごもごと口を濁すサスケ君は先程までの威圧が消えている…。

え?まじでどうした?変なもんでも食ったのか?大丈夫かこいつ?

 

 

「あー何勘違いしてるか分からんが、私は別に個人的にイタチに恨みはないぞ?」

 

拾い食いしたのなら、お仲間のうずまき一族っぽい奴に相談しろ?今私の手にあるのは虫下しぐらいしかないぞ?と心配してたらサスケ君は声をさらに荒げた。

 

「っなんでだよ!!あんたあいつの恋人だったんだろ!!」

 

 

うーん…

サスケ君、君は一回落ち着こうか。

久しぶりの頭痛に私は腕を組み親指を眉間に当てる。

 

「何を…ほんと、勘違いが大きすぎるわ…いったい何を持ってしてその結論に落ち着いたんだ…」

 

痛む頭にぐりぐりと親指を動かすがそれは気休めでしかなく

諦めて私はサスケ君の言い分を聞く事にした。

私のあきれを含んだ視線に促されてかサスケ君は勘違いした言い訳を口にした。

 

「…あのころ、あんたは毎日の様にあいつと共にいたじゃないか。」

 

あれか

どうやら私の任務と言うべきイタチ君の監視が、どうやらサスケ君の勘違いを招きよせ

 

「それに、あんたは家によく出入りしていた。それは…うちはの当主が認めているという事だ。それに、母さんとも知り合いだった…」

 

何かとイタチの家と自分ちを、お互いに出入りしていたせいで思い込みを加速させていた。

私はサスケ君の勘違いもはなはだしい言葉にイライラと言葉を返す。

 

「あー落ち着け、もちつけ。良く聞けよ、私とあいつはそんな関係じゃない。そりゃ友人ではあったが、そういう関係じゃない。というかあいつにはちゃんとした恋人がいた。よく思い出せ、あいつには婚約者いただろ?なあ?」

 

自分の記憶を手繰り寄せ、あいつの恋人の顔を思い出す。

確か泣き黒子が付いてた気がしなくもない可愛い女の子だった。

 

「知るか。

俺にはそんな詳しい記憶は無い。」

 

しかし、幼きサスケ君の記憶に無かったらしいsit!!

確かにお前、兄さん兄さんって全然まわり見てなかったもんな…

うん、聞いた私が悪かった…

悪びれも無く無駄に高圧的なサスケ君にイタチの血を感じる…

ああ!!もう!!ホントこの兄弟は…!!

 

「まあ、取りあえずそういう事だから。せっかく大蛇丸の管理下から外れたのに、なんでこんなくんだりまで来て仲間作っているのか知らないが、君の好きなようにやるといい。私はこの兄弟喧嘩に手を出す気は無い。」

 

兄妹喧嘩と称されたのは、サスケ君的にはダメだったらしくチャクラが荒立つ。

しかし私は気にせず煽る

 

「はっきり言うと、お前らのその喧嘩に私は糞ほども興味が無い。

こっちは任務の期限(門限)が迫ってる。帰ってもいいか?」

 

その言葉についに堪忍袋の緒が切れたのか、サスケ君は幻術を解きさっさと行けとばかりに『人違いだ』と答えたので、私は知らぬふりを通した。

 

 

しかして、甘っちょろいサスケ君の幻術を抜けた私は

イタチヌッコロのサスケ君が、何故大蛇丸の研究所で仲間を集めて回っているか分からないので

 

報告しとくか…

里に何かあったら困るしな…

 

と一応5代目に義理立てて報告することにしたのだが

そのまま5代目に伝えると、なんか色々飛び火してまた無茶な任務がきそうなので、フサカクさんに伝えといた。

ガマ仙人→エロ仙人→5代目→ナルトとゆう風に情報は渡るだろう。

 

 

 

 

 

大蛇丸も死んだし、父の遺体探しと、あの日流出した写輪眼殲滅の為に、大蛇丸の元アジト(大蛇丸パーク)をおおっぴらに見て回われるのだが

大蛇丸の配下は何かと大蛇丸に心酔している人が多いので

情報をやっと聞き出しても、大蛇丸の隠し部屋はガセ情報が多く

思わずイラッと来たので壁殴ったらモロモロくずれて封印の術式が出てきた。

多分大蛇丸って古文書とか大好きでしょって思った。

 

 

 

隠し部屋の封印は流石天才

それはそれは厄介なものでその場で解けなさそうだったので

その日は取りあえず術式を移して帰り、後日封印の種類を特定して推参した。

 

「これは…大蛇丸の術式では無いな…?」

 

カブトの術式だと思うのだが…

元々カブトの術式は大蛇丸の術式を参考に錬られているのでめっちゃ似てるし

なんならカブトにその気があれば多分大蛇丸の術式を模して錬ることもできそうだ…

今まで大蛇丸の研究所だと思っていたの所がカブトだった可能性が出てきた…

それは父さんでてこねぇわ…

序に大蛇丸にあまり面として会った事が無いので、もしかして大蛇丸のチャクラの気配がカブトだった可能性があるのでまた1から探すことにした。

マジかったるい。

 

 

え?その前に暁の侵攻を如何にかしろよ?

いや、無理無理

イタチとサスケの関係に手を出さないと、イタチと、あと一応サスケ君に約束したので、私は今のところ暁に手を出せない立場にあるのだ。

それに一人で暁とか言うラスボス相手にするのは無理

影分身しても、複数でも無理

すっごく前にもいった気がするが地震雷火事親父ぐらいどうしようもない天災なのだ。

おちてくる隕石は打ち返すが、命あっての物種

真の目がこの件から手を引く条件(命の確約)はそろっている。

 

 

 

 

大蛇丸の研究室系かと思った地下空間で、とある亡骸を回収した。

検死を簡単に行った結果、確実に死亡しており、穢土転生体の可能性もない。

何かに使えるかと思い、取りあえず回収する事にした。

適当に置いておくと、奪取されかねないので蔵で保管する事にしたんだが…

蔵の中身が年々物々しくなってきている…

 

 

・巻物、書物各種

(2代目の遺産から、写輪眼を封印するための研究材料の封印結界忍術、その他趣味興味の行くところいくつか。)

・ピンポンの吐きだしたコールタール(in地下。)

・隅へ転がるカラクリの残骸

・ピンポンのでかい竹筒

(メインエンジンにするため竹筒に大量に術式入れる必要があり、でかくなってしまった)

・遺体

(ミイラとかホルマリンとか保存方法をいろいろ考えたが面倒くさいので、丁度あった液体窒素にて保存)

・その他サザミのよく分かんない忍術グッズ

 

特に、サザミのよく分かんない忍術グッズが怖くて触れないので、ほこりをかぶって酷い事になっている…

そろそろこの蔵も店仕舞いしないとダンゾウに突っつかれかねないし

多分この蔵に色々入れすぎると暁の襲撃の時全部カッ消えそうなので

里外に土地を持つことにした。

 

 

 

木の葉を隠すには森の中ともいうし。

蔵を隠すには…

ということで里外の地域にある、サザミと喧嘩した時ちょっとばかし吹っ飛ばした真の目の土地(山)を買い取り、秘密裏に蔵を立てる事にしたのだ。

 

時間もないし、棟梁に早急に蔵を作りたいと相談したら

「おめぇさんにも、男のロマンが分かる時が来たか…」

と感慨深そうに秘密基地と勘違いされた。

もう、それでいいよ…

 

「いいか、蔵ってもんはな、頑丈であればあるほど簡単な構造になるんだ。

そして簡単であればあるほど、建物ってぇのは技術が必要になる。

人に真円が描けないように、完璧であればあるほどその形は簡単になり、難しくなる。

お前の父さん、作間の蔵だって、構想を練るだけで軽く3年はかかっている。」

 

そうか…そんなに時間が掛かるもんなのか…

と感心してて思ったのだが

もうある物を使えば構想の時間分減るんじゃね?

 

「…父さんの蔵、コピーとかできないの?」

 

ガッ

と勢いよくラリアットを喰らい、序とばかりにギリギリとその太く勇ましい腕で首を締め上げられる

 

「うっ…と棟梁…しまって…る…!!

しま…ってる…からぁ……!!」

 

「お前は馬鹿か?!バカなのか?!その頭に何を詰め込んだらそうなる!?

てめーは紛いなりにも忍びだろーが!!」

 

 

タップしても外してくれそうにないし寧ろ関節きめてきやがった。

丁度前を通ったかっちゃんが助けてくれなければ、私はあのまま死んでいた。

 

「いいか、設計図はいわば城の地図、里の地図、情報なんだ。」

 

「あ、なるほど。

時間をかけないとなると、人を沢山使って建てることになるから設計図を公開するようなものになるのか…」

 

「それだけ分かっといて…いや、良い。なんでもない。

 

設計図は機密情報だ、おいそれと同じものを作ることはできない。

況してや、あの作間の蔵だ。その情報が欲しい奴はごまんといる。

物事には近道なんてものは無い。

『蔵の形をしていればいい』ってーなら話は別だがな。」

 

「なるほど、なるほど…」

 

「ホントに分ってんのかこの馬鹿は…」

 

「そういうのは口に出しちゃいけないモノローグっすよおやっさん

流石にゴリラでも傷つく。」

 

「かっちゃん…てめーもな。」

 

第2ラウンドへ移行するため私たちは睨み合いながら道場へ向かう。

 

 

 

 

『金の流れは物の流れ、人の流れ、政治の流れと繋がって行くもので、外に言えない事をするときは足が付かないよう注意して金を引き出す必要がある。』

 

昔サザミに教えられたことが今役に立つとは…

ちなみにサザミは女の子と遊ぶとき金の流れを悟られないため、お金使わない方向をとる(何をしてるとは言わないがナニだ)

ホントろくでもない事しか教わっていない気が…

 

数週間後、棟梁のアドバイスのおかげでチョッパヤで完成した蔵は

父さん程ではないが、ある程度のカラクリと、結界、封印をかけ、人よけに幻術までつけておいたので結構頑張らないと侵入されないと思われる。

ちなみに、蔵の周りの森には、蔵大捜索の時、私が懇切丁寧に外した『サザミのよく分かんない忍術グッズ』で罠を、『大量』に掛けさせていただいた。



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67

私がせっせと暁対策していると、やはり何を嗅ぎ付けたかダンゾウに呼び出された

3代目が亡き今は、もう狛犬ではないので、任務突っぱねたら職務放棄になりかねん…

ヤバシ…

サクヤぴーんち

 

 

「最近うちはサスケが大蛇丸を倒したらしい…お前イタチに何か聞いておらんか」

 

はいきたー

この手のひっかけねー

良くある引っ掛けだかんなー

テストに出るから気を付けろよー

 

「うちはイタチは抜け忍ですし…

過去戦闘した報告は上げましたがなんとも…。

うちはサスケがどうとかも私の立場では全く情報入ってきてないですし、端的に言って私に聞く理由が分からないっすね。何かあるんですか?」

 

そう、

私はサスケに会ってなければ

イタチが里抜けした理由を全く知らない設定なのだ。

 

だから私がイタチと連絡を取っていたなんて過去は全く持ってない。

無いったら無い。

あったら尋問拷問部屋行き直行便だ。

 

 

上忍という立場もあり、色々私の方で情報操作もできる位置にいるので

ダンゾウがお前何か隠してることはねェよな…と疑ってきているのは以前からだったがまさか露骨に聞かれるとは…

亡き三代目がなにか零したか、それだけうかつに手を出せなくなってきたのであろう。

 

フンッと話を切ったダンゾウは私に、ちょっとお使いにでもと言うようにサスケ暗殺を命じる

そう来たか

 

「私、上忍にもなって年もたってますし、流石にダンゾウ様の私兵にはなりえません。」

(私にも立場ってもんがあるんだよ)

 

「ほう、任務を断ると…」

(今お主の上司は火影ではないはずだが任務断れる立場にあると…?)

 

「うちはサスケは火影の意向で、生きて捕獲と命が出ています。それにナルト延いてはカカシ上忍が黙っていません。」

(そもそも里の規約で暗殺無理って言ってんだよ。)

 

「…うむ…火影から命が出ればいいのだな…?」

 

「出るものならば。」

 

にっこりチャーミング(笑)な笑顔を付けて言ったらダンゾウの横二人の殺気が増した。

「よい」の一声で消えたが、単細胞ピンがいつ飛び出すかとひやひやしてしまった

 

「必ずや火影から許可を取るとしよう。

しからば先んじて、サスケの居場所を突き止めて置け。

まさか出来ないなどと申すなよ?」

 

げ、めんどいの任されたな…

まあ、位置ぐらいなら…いや、でも私が追いかけんといけなくなるな…時間がな…

 

「まず火影の許可を先にとっていただきたいものですが、いいでしょう。

その任務請け負いましょう。

うちはサスケの位置を報告すればいいんですよね?」

 

 

「…ああ、期待しておる。」

 

 

今は、『むやみに里外に出ても怪しまれずに済む』という利点を取るとしよう。

それにサスケ君の位置は随時探すとしても、火影の許可が出てから報告すればいい。

まあ、出るわけなかろうが

頑張って5代目で止めるであろう。

だって愛しのナルトの友達だし。

 

 

 

 

一応コールタールの恩もあるので5代目にこのことを報告しておいた

「また次から次へとおおおおお!!」と筆を折っておられたので、私は静かに部屋を去った。

 

さーおっしごと、おっしごと~

後日嫌がらせの様に渡された任務書類の束は殆どが国外任務で目が死んだ。

 

 

 

以前からドンのインカム方法に悩まされていた私だが

もう、素直に棟梁に聞く事にした。

夕飯後なのか縁側でお茶を飲む棟梁に屋根裏から近づいて上から登場したら呆れた顔をされた。

 

 

「管狐ってーのは、分裂させた時点での記憶は全て受け継がれるから、分裂させた先でもう一度分裂させ、その分裂させた個体を消せば全体に情報が行きわたる。

それの繰り返しだ。

本体は常に自分に付き添わせ、分裂体を出したり消したりすることが肝になる。」

 

「…もうちと優しく説明すると?」

全然わからん。

自分の理解力の無さに、冷や汗と苦笑いを付けて聞くと、棟梁の右手が私の頭蓋骨を鷲掴む。

 

「ぁでででででで!!割れる!!割れるよ!!おやっさん!!」

 

「こっんの!!図体だけ大人になった猿共め!!

良いか!!よく聞けよ!!」

 

曰く

管狐の増える能力は結構稀な能力らしい

大体の管狐が2体から多くて10体位に増えるのに対して、増える能力が得意な管狐は単位が一気に『千』に上がる。

だから棟梁や、長など上につく人間に受け継がれるようになっているのだとか

よって、ドンを持っている限りかっちゃんに今いってる『長』権利がもしかして私に転がり込んでくる可能性があるという事である…

一瞬ドンを手放すことを考えてしまうあたりホント真の目に染まっている。

 

インカム使用の方法は影分身と似たような感じであった

分裂した時本体をA、分裂体をaとする

Aを棟梁、aを私に付ける

この時点ではまだどちらの管狐の記憶は同じである。

 

そこで棟梁が出先でa(私)に用がある時

Aは分裂してA’とゆう新たな分裂体を作って消えてもらう

するとA’の記憶はAにもaにも届き情報が共有されるのだ。

これはA個体とB個体の間では共有は出来ないが

Aの分裂体であれば全員に届く。

個人のやり取りは難しいが、事大工のインカムにとっては便利なものである

 

「お前の管狐はすでに、俺の分裂体ネットワークから外れてしまってるから、ドン本体が消えない限り俺のところには連絡はこねぇ。機密情報とかもあるだろうし安心して使え。」

 

と太鼓判を頂いたのでちょっと張り切って

序に各国に散らばる真の目に頼んで、主要地点にドンの竹筒を置いてもらうことで私のチャクラをつなげ、万華鏡写輪眼の中継地となるようにした。

意外とこれが使えて

国外任務が続く私は、ゲームのワープポイントの如く使わせていただいている。

ピンポンドンの竹筒には避雷針の術式も入れ込んでおいたので目を多用せずに済むし

もし竹筒に何かあったらドンが知らせてくれるし。

まずまずな出来である。

 

たしかなまんぞく。



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68

「遅い!!」

 

アカデミーに隣接する火影邸に5代目火影の声が響く

自来也とサクラが綱手をどうどうと諌める。

 

「す…すいません…ナルトの奴が朝食という名のお昼を食べてまして…」

 

「あれ?エロ仙人?」

 

しかしナルトは綱手よりその隣で綱手をいさめる自来也の方が気になったようだ

これでは話が進まないとサクラは言葉を振る

 

「で…何なんですか話って…?」

 

「……うむ…

各地いたるところである情報が流れていてな

…その事についてだ。」

 

意味深に話を溜める綱手に呼ばれたばかりのサクラとナルトは頭の上にはてなを浮かべる

 

「情報?」

 

「何?何だってばよ?」

 

綱手はひといきの間をおいて答える

 

 

「大蛇丸が死んだ。

どうやら、うちはサスケがやったらしい。」

 

 

ナルトとサクラの時が止まる。

が、サクラより先に復活したナルトは、二人に確認するように言葉を出す。

 

「そ…それって…ホントか…!?」

 

「まず間違いない、確かな情報スジから聞いたからのォ」

 

「…じゃあ、もう…」

 

木の葉に帰ってくるのか

ナルトは二人にさらに詰め寄るが二人の顔は変わらず

そこで初めて、ナルトは他の可能性に気付いた。

 

 

「…どうやら

そうでは無いらしい…」

 

自来也の言葉が重くのしかかる

 

「どういうことだってばよ!?

なんで?!

もう大蛇丸はいねーのに

あいつは里に帰って来ねーんだ?」

 

 

「サスケの奴は復讐に取り憑かれとる。

サスケは兄であるうちはイタチを殺す為に、『暁』に近づく気だのォ

それに…あまりこれは信憑性が無いんだがのぉ…サクヤが任務中サスケに遭遇しておった。」

 

「サクヤねェちゃんが?!」

 

「ワシも詳しくは知らん。サクヤの口寄せ蝦蟇から蝦蟇に伝わりワシまで連絡が入っただけだ。」

 

「なら!!サクヤねぇちゃんにどこで見たか聞いて…!!」

 

ナルトは慌てるように扉に向かうが

自来也の声がナルトを止める。

 

「それが本人を呼び出そうにも、サクヤは今こやつに任務を詰め込まれておってのぉ…その、連絡が取りづらい」

 

『こやつ』綱手は気まずそうに眼をそらす

自来也は視線を綱手からナルトに戻した

 

「そん時は他の任務と重なって手は出せんかったと言っておったらしいが…

本当のところは知らん。

あ奴は昔から秘密主義でのぉ…こっち側にいるのは確かなんだが、中々尻尾を掴ませてはくれん奴でのぉ…

作間の目も、どこにあるのかワシでも「自来也!!」っとすまん。」

 

ナルト達は急に出てきた知らない名前に首を傾げるが綱手の眼力に圧され取りあえず話を先に進める事にした。

 

 

「…サクヤの情報によると、サスケは大蛇丸のアジトを巡って仲間を集めている。

サクヤが見たときは2人いたと聞く。迷いなく進んでおったそうだから、目的地があるのは確か、

とするとサスケは

小隊として一番動きやすい4マンセルを組んでいる、またはイタチの居場所をもう知っているか…

どちらにしろ何か目的があるのは確かだのォ」

 

なら…!!

 

「俺たちも小隊組んでさっさと行くってばよ!

まだ『暁狩り』の任務は継続中なんだろ」

 

「ああ…」

 

「ならサスケに会うために

もっと確立の高い『暁』のメンバーを探すってばよ!

つまり俺たちが狙うのは…」

 

 

―――

――

 

サスケは4人の目的を同じ方向に向けることに成功した。

香燐は元より

水月は刀集め

重吾は、君麻呂が命を賭けて守ったサスケと言う忍びの見極め

 

目的は違えど

同じ方向は向いた。

 

「今後、俺たちは4人で動く

そしてこれより我ら小隊は『蛇』と名乗る

もちろん蛇の目的は只一つ…」

 

 

 

 

『うちはイタチ』

 

 

 

 

 

 

「うちはイタチか…

さて、どうしたものか…」

 

方法が無いわけではない

『暗部』や『サクヤ』を使えば、イタチの居場所は分からずともイタチ、さらにサスケの行動範囲位は突きとめられるだろう。

しかし、それでは遅い。

サクヤの情報から予想するに、サスケはもう行動を起こし、イタチへの目星はついている。

サスケのいそうな場所を突き止めるのでは遅い。

 

「『暁』の身柄を一人でも拘束してしまえば

後はイビキさんが情報を聞き出してくれると思うんですけど」

 

サクラが口を開くが、そういう問題ではないのだ

 

「確かに各小隊には、可能であれば『暁」の身柄を拘束し連行するように命じてはいるが…」

 

「奴らはそう簡単に口を割るような連中じゃないし…

今までやり合った連中の能力を見れば危なすぎて

とてもじゃないが拘束なんて考えられなかった。」

 

「カカシ先生…」

 

戸口に背を持たれ腕を組むカカシは、そのいつもと同じ寝ぼけたような目をサクラとナルトに向ける

 

「不死身の奴らの時

チャクラが少なかったとしても、あのサクヤが躊躇なく、初めから、全力で、心臓を狙っていた。

俺は暗部にいたときサクヤと何度も組んでいたから分るが

サクヤは生け捕りのプロだ。

情報を持って帰るのが仕事な暗部でその力は重宝されたし、その経験が多い分鍛え上げられている。

そのサクヤが初めから生け捕りを諦めた相手だ、早々口を割らないし、況してや捕まってもくれない。」

 

綱手は、サクヤの話をカカシや、暗部、シカク、様々な人から聞いていた。

アスマが妹の様に可愛がっていたのも。

その力が過去、3代目の為に振るわれていたのも。

3代目が表なら、サクヤは日向に居ながら、裏のダンゾウと同じ立ち位置にいた。

これがどれだけ難しいかは自分が火影になってよく分かった。

表の火影が日の当たる所にいるのは、

裏のダンゾウが土の中に居るのは、そうすることが一番動きやすいからだ。

闇に乗じて獲物を取る獣が夜に行動するのは道理

しかし、サクヤは夜行性の獣が昼間に行動しているようなもの。

それは大きなハンデになるだろう。

だがサクヤはそのハンデがあってなお、ダンゾウと『作間の目』を巡って狸と狐の化かし合いが出来る。

実力は折り紙つき

 

その実力を持ってしても

カカシ率いるアスマ小隊から生け捕りの選択肢を奪わせた。

それだけ脅威だということ

 

「じゃあどうするんだってばよ!!」

 

ナルトの声で目の前に話しが戻される綱手

 

「ま、イタチ本人と当たるまで根気よく探すしかないんじゃない?」

 

「サスケと会うためにイタチを追うか

だが…イタチを探し当てたところでどうする?」

 

「サスケの情報を持っているサクヤを呼び戻すにしろ、1小隊じゃどうにもならないですね。」

 

「どういうことだってばよ?」

 

「イタチを倒せばサスケ君の目的は消える

つまり、イタチは拘束するしかない。

だからもっと大人数で隊を組み、動くしかないってことですよね」

 

「その通り…

ただ、大人数と言っても二小隊一チームが望ましいね

拘束すべき対数が少数…

つまり2~3人の場合

こちらが3小隊以上になると相手に見つかりやすいし、命令系統が混乱し逆に機動力が低下するからね」

 

「それに、拘束は殺すよりはるかにテクニックがいるからのォ

隊の連携を考えれば任務をこれまである程度共にしてきた者を選抜した方がよいのォ」

 

「そう思って今回の任務に適した忍び達をここに呼んであります」

 

 

 

 

 

綱手はサクヤに嫌われていることを自覚している

しかし、里を思ってくれているのは解かるので、いっそのことその頭脳と顔と血筋を使って大名や、ご意見番の相手をさせようと画策したが

言うことを聞かない、いらん情報ばっか上げてくる、会議に出ない。

しかも、会議に出ないくせに会議内容はいつの間にか知っているのだから世話がない

 

しかしその実力は折り紙つきだ。

 

任務は殆ど成功して帰ってくるので任務を押し付けるしかサクヤを有効利用できる手が無いのが現状だ。

アスマの時、カカシに押されてサクヤとナルトを同じ任務に充ててしまったが、綱手はサクヤをナルトと共に行動させるつもりはなかった。

ナルト(九尾の人柱力)はサクヤにとって鬼門だ。

親を九尾に殺されているし、作間の目(写輪眼)を持っている。

かつてのうちはでは無いが九尾を操られては困る

カカシの助言で九尾チャクラをサクヤに与えてしまったのは愚策だったか…いや、しかしあの場であれを如何にかできるのは、サザミに似て結界、封印に詳しいサクヤぐらいだった。

 

完全にこっちとは言いづらいものの

黒ではないサクヤの立ち位置は、やはり日向に居ながら、限りなくダンゾウ達のいる裏だ。



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69

※一部下品な所があります
一物は出ていますが形容の説明はありません。


「びえっくしょい!!」

 

これは…誰か私の噂をしているな…?

又は久方ぶりのチームでの任務に浮かれて昨日まくら投げしたのがやばかったか?

 

「お前…もうちょっと淑やかにくしゃみ出来ねえのかよ」

 

「うるさいな…

くしゃみに淑やかも何もあるかよ…

てか、コテツさんちゃんと書状持ってるんですよね?まさか忘れたとかないですよね?」

 

「ああ?!誰が忘れるかっての!!

一体いつの話してんだ!!」

 

「ついこの間5代目に渡す書類、そのままそっくりデスクに忘れて視察に行って、汗だくで火影室に飛び込んできた人のセリフとは思えないですね…」

 

「う゛っあれは…あれだ。あん時だけだ…。」

 

「(コテツ…俺は知っている…実は同じような過ちを何度も犯していることを…)」

 

 

コテツさんから視線を外し、スンっとしてるイズモさんに突っ込もうとしたら鷹が鳴きながら上を通過する

 

「サクヤ?どうした?」

 

ツッコミが来ないので心配そうにサクヤを振り返るイズモさんにつられコテツさんも振り向く

と、コテツさんが鷹に気付く

 

「(まっまさか…?!)さっサクヤ…さっさと受け取れよ…ここここういうのは後輩の仕事だろ…!!」

 

「いやいやいや…!!恐れ多い!!

なんか嫌な予感するんで、部下であるコテツさんが受け取ってくださいよ…」

 

「…流石に今回は…ないだろ…なぁコテツ…?」

 

「…。」

 

イズモの言葉にコテツは凄い勢いで背部にあるポーチに手を突っ込む…

 

 

「…違う。」

 

 

今年一、三点リーダーが長く感じる時間だった。

しかし、用事がコテツさんではないなら誰に用だ?

一応立場上、上司であるが後輩なので、鷹が止まれるように腕を差し出すと、その鷹は大人しく腕に止まる。

 

「ん?…私?」

 

「「え??」」

 

鷹の足についた筒には私の名前が書かれている

筒を開いて中身を確認すると口寄せだったのか鷹はポンという音と共に消えた。

 

『“暁狩り”の任務に参加されよ。至急カカシと連絡をされたし。』

 

ほう…

ふむふむ…

なるほど…

と頷いてはみたが

 

じぇんじぇん分からん。

 

 

取りあえず大名への書状はコテツさん担当だし、私は二人の護衛兼囮なので、この任務は抜けられん…

カカシパイセンにピンポンドン付けてはいないから分体での連絡は無理

至急という事なので、口寄せ蛙の移動速度は犬より当てにならねェので却下。

鷹は今他の任務をやってもらっている…

手が無いな…

 

…あ、まてよ?

たしか以前付けた飛雷神があったか…

飛雷神のマーキングは一生消えることはないから

もしかしていけるか…?

 

「イズモさん、コテツさん。ちょっくら消えますがすぐ帰って来るんでそこら辺で団子でも食べててください。」

 

「日暮れまでには帰ってこいよ。」

 

「書状受付は日が沈んだら無理だからね。」

 

日が沈んだ場合、あの地獄のまくら投げがもう一戦待っているという事か…これは早急に帰らねばならん…

はーいと元気よく返事を返して私はチャクラを錬る。

飛雷神の術!!

 

 

 

 

 

 

バンッ!!

ゴン!!

 

任務前に一風呂行くかと、ゆったり湯船につかっていたカカシは、

二つの音が家に響き、慌ててシャワールームから飛び出てタオルを顔に巻いた。

サスケの捜索、捕縛任務前だっていうのに侵入者とは…いったい何者か…

今、里に侵入できる手練れで目的が思い付くのは『暁』…

せっかくサスケの情報が手に入りそうな今、侵入され木の葉を荒らされるのはとても困る

完全に油断をしていた。

 

乱暴にポーチを漁り取り出した苦無片手に、カカシは素早く音の鳴った部屋を確認する

敵の捕縛を目標にその気配を追う

 

 

―――

――

 

飛雷神で目的の場所に飛んだサクヤは、大きな音共にどこか暗く狭い場所から吹っ飛ばされる

突然の事に受け身も取れなかったサクヤは、どこかわからぬまま頭を勢い良く何かにぶつける

ゴンと響く音、視界が反転

 

「誰だ!!」

 

 

そこにはタオルで顔を半分隠した風呂上りのカカシ

そして箪笥を半壊させて、目を白黒させるサクヤがいた。

寸の間をおいて正気に戻ったサクヤが、目を瞑る。

 

 

 

 

 

 

「取りあえず…前、隠してもらっていいっすか…?」

 

 

「あ、」

 

 

そう、タオルは顔に巻いている。

下に巻くのを忘れた。

 

その日、絹を裂くような悲鳴が木の葉に響いた。

 

 

 

 

――――

―――

 

「お嫁に行けない…」

 

「いや、それこっちのセリフですからね…」

 

飛雷神の術が未だ未完成だったのか、マーキングがカカシパイセンでは無く服に付き

風呂に乱入は免れたが、最悪は免れなかった。

糞最悪な事に先輩の一物を見てしまった私はテンションがガタ落ちだった

つかなんで顔かくして一物隠さねぇんだよ…

優先順位が可笑しすぎだろ…

 

カカシパイセンが上げた絹を裂くような悲鳴は良く響いて

丁度任務の確認の為近くに来ていたテンゾウパイセンを召喚する事となり、その被害は広がった。

 

 

「二人ともいい加減持ち直してくださいよ…」

 

が、テンゾウパイセンは見慣れてるのか木遁にて素早く隠されたらしい

私は目を瞑っていたためそれを確認はしていないが

「木遁樹海降誕!!」

と言っていたので多分見えなくはなったのは確か。

持ち直すの早くない?見慣れてるの?

え?なに?お前らそうゆう関係なの?

とは流石に聞かないでおいた。

 

しかし、テンゾウパイセンがナイスタイミング過ぎて

自分の大きな失態を露呈することになり、辛すぎてカカシパイセンは未だ立ち直れず、パン一でソファーに沈み

 

私は部屋の隅で正座をさせられ首から「私が箪笥を壊しました」というプレート(テンゾウさん作)を下げている。

 

 

「分かりました…

私は何も見てません。

カカシパイセンは風呂には行かず、箪笥を壊し出てきた私に驚いただけ。あの悲鳴は突き立てられた苦無に驚いた私が上げた悲鳴。

テンゾウパイセンはそれを聞きつけて助けに来てくれた。

これでいいでしょ…万事解決!!

箪笥は…テンゾウさんが如何にか出来る!!」

 

箪笥の修理を押し付けられたテンゾウパイセンが「ええ?!ぼくぅ?!」と嘆いているが今は無視だ。

私は急いでいる。

 

 

「なんでさっさと用件話してください!!

今任務中何で時間無いんですよ!!

日が暮れたら受付が閉まって書状が届かないんです!!

午前で終わらせるつもりだったし、次の任務も計画してたからそれが全部おじゃんになる!!

ウェイクアップ!!ハリーアップ!!カカシさん!!」

 

ほれほれと声をかける序に、正座を解き、プレートを外す。

つか、至急連絡取れとか言っておきながら、至急の方法書いてない方が悪くね?

これは事故でしょ

私悪くなくね?

何で正座させられてるわけ?

え?サクヤの鷹めっちゃ早いからそれで連絡来ると思った?

いや、私にも予定ってもんがあんだよ

鷹のピーさんは今お使い中だよ。

砂に行ってるよ。

 

ぼそぼそと元気なく喋るカカシさんの声が聞こえないので、テンゾウさんとカカシさんを覗き込むように耳を傾けるが、カカシパイセンは顔をクッションに突っ込んでいるためマジ聞こえにくい。

良く分かんよな…自分でも感心する。

 

 

 

 

――――

―――

 

「なるほど、あいつ喋りやがったのか…ッチ」

 

「サクヤ?」

 

あの出来事を蛙に口止めしていなかったのがやばかったか…と舌打ちを打ったら

テンゾウパイセンもとい、ヤマトさんに怖い顔をされたのですんっと背を伸ばして何も言わなかったことにする。

 

「あーサスケの情報だけど、若干古いから当てになんないと思うぜ。私が見た感じサスケは何かイタチ以外の目的があったようだったしな。」

 

「今君の意見は聞いてない。

サクヤの手に入れた情報を隅から隅までちゃんと話しなさい。」

 

テンゾウパイセンはやはり怖い。

誤魔化そうとすると釘をグサグサ刺してくる。

マジつらたん。

 

「…任務の途中、サスケに会った。私が捕捉しているうちの一つ、大蛇丸の北のアジト近くだ。進む方向から言って大蛇丸の北アジトに一直線だったのは確か。

仲間と思わしき人間が2人

赤い髪のメガネをかけた女、大きな刀を背に負った細身の男。スピードは徒歩だからそんなに速くなかった。だが、時間に余裕が無いのか男が休もうとするのを赤髪の女がせかしてた。任務期限が迫ってたからそれ以上は追っていない。」

 

「なんでそれをすぐ報告しなかった。」

 

「本物か分からんかった。

ナルトをおびき寄せる罠の可能性もあった。」

 

「それを精査するのは火影だ、今後そういう事はしないように。

蝦蟇に伝えたのは?」

 

「私がもしかして死んだ場合この情報を持つ誰かが必要だった。」

 

「…はぁ」

 

あらかじめ用意していた答えにテンゾウパイセンは大きくため息を吐いた。

服を着たカカシパイセンは何か考え込んでいる。

 

「そろそろ帰らんとやばいんだけど、未だ何か必要?」

 

その言葉にカカシさんは口を開く

 

「うちはイタチの情報でなにかあるか?」

 

「イタチ?…それはプロフィール?経歴?現在位置?」

 

「現在位置を知っているのか?!」

 

ガタッと音を立てて椅子から立ち上がるテンゾウさんはらしくない…。

 

「んや。あいつの事で知っているのはプロフィールと経歴だけだ。

所で私からも一つ聞きたいんだが『暁狩り』ってなんだ?」

 

「テンゾウ…」

 

「…すみません。以前の任務に参加していたので必要かと思いまして…」

 

どうやらテンゾウパイセンの手違いらしい。

この様子から行くと私の鷹のピーさんを当てにしたのはカカシパイセンで、私へ鷹を飛ばしたのはテンゾウパイセンってとこか…

このメンバーで『参加せよ』って書いてあったって事は捕縛任務又は抹殺らへん…

いずれにせよ問題は多そうだ。

 

「はっきり言って私の持つ暁の情報はカカシさん以下だ。精々ビンゴブックの情報ぐらいだな。

前回は捕縛できそうにないから最初からフルスロットル行ったけど、こっちの数を増やせば多分あれより捕縛しやすい奴はいると思う。

だがうちはイタチは無理だ。」

 

「それは…何故?」

 

「私は過去、うちはイタチ里抜けの手助けをしたと嫌疑に掛けられた。

いまん所監視は解かれているが、それ系の任務に私が付けば根が出張ってくることは確かだ。

そんな状態でイタチをとり逃した場合、最初に疑われるのはまず私。

今度こそ首に線が入る。

仲間に刃を向けられた状態での任務は失敗を多く呼ぶ。

そう気軽に請け負えないし、任務に責任も持てない。

それに、カカシさんも根といい私といい、不安因子をこれ以上増やすのは手に余るでしょう。」

 

「…………ハァ…わかった。」

 

長い沈黙の後ため息を吐くとカカシパイセンは言葉を返した。

ヤマトさんがまだなんか言っているが小隊の隊長であるカカシパイセンが承諾したのだ

これ以上何もできはしない。

私はチャクラを錬ってコテツさん達のところに戻り、任務を片づけるだけだ。

 



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少年とイタチ編
70


初めて会った時の事を、俺は覚えていない。

真の目の、薄金の髪の子供が、病室で俺を『イタチ』と呼んで、そう名付けられたことは母から良く聞いていた

前日の珍事の事も。

 

 

 

 

未だ生まれたばかりの新生児を二歳児にほいと渡してしまったミコトと、受け取ってしまったサクヤは看護婦にお灸を据えられた。

しかし二人は後悔はしていても、反省はしていなかった。

 

「おばさん、わたしはこのじかん このびょうしつに いなかった。

そういうことで どうでしょう?」

 

そう言ってプリンを差し出す姿は二歳ながら狡猾である

ミコトは騒ぎに集まってきた野次馬を、お得意の投擲技術で視線を誘導し、幻術を使って病室からホイホイと退けていた。

 

「おばさん…ねぇ…」

 

そう言ってにっこり微笑むは同じ病室になった犬塚さん

検査の為の入院らしく、初めての子供、それも新生児をおろおろと危なげにあやすミコトに色々アドバイスをくれた方である。

サクヤは『おばさん』の真意に気付いたのか子供らしい顔で悪い顔をする

 

「いやだな~ちっさなまちがいですよ~

ね、おねえさん?」

 

「ハッハッハ!そうだろうね!!まあ、そのプリンで手を打とうじゃないのよ!!」

 

「あねさんあざっす!!おんにきります!!」

 

たどたどしい口つきでのあねさんは良くない事をミコトは学んだ。

 

 

 

「サクヤちゃん、取りあえず野次馬は落ち着いてきたわ。あと何かできるかしら?」

 

「だいじょうぶです。

さいくはりゅうりゅう しかけはじょうじょう あとは ははがくれば もうかんぺきです!」

 

そう言って、ベットによじ登る姿は2歳児、

しかしこの2歳児、先程までおやつを持って出かけていたのを忘れてはならない。

ミコトは感知タイプでは無いので、この小さな子供がどこで何をしていたのかはわからなかったが、面白い匂いがすることは感じ取っていた。

ミコトとサクヤの様子を静かに眺めていた犬塚ツメはサクヤに鋭く突っ込む。

 

「病室の廊下に幻術を仕掛ける方が楽じゃないかい?」

 

「うーん…それも かんがえたんですが…

ろうかにかけると、おいしゃさんとか、かんごしさんがこまるし

もしかしたら、なにかあったと、きづかれるかも しれないので しません。

みことさんが たいりょくてきに つらいなら そっちでもいいけど

やじうまっていっても、びょういんだし、そんなにこないので、ほけんです。」

 

たどたどしいながら難しい言葉を使って説明する姿は少しあべこべだ

話しを促す犬塚さんにサクヤは、またゆっくりと話し出す。

ミコトは気付いたらその声に耳を澄ませていた。

 

「できれば こんらんをさけたいので、ひとをえらんで げんじゅつをかけたいんです。

ひとつのめやすとしては、おいしゃさん、かんごしさん、しのびだと わかるひとは ぜったいに かけない。

げんじゅつを かけるひとは、こども、おとなのだんせい、おとなのじょせいの じゅんばんです。」

 

「どうして男性と女性で分けるんだい?」

 

「このびょうしつは、いわゆるメンドクサイのぜんぶつめこんだ へやわりです。」

 

「言うじゃないのさ…。」

 

「ミコトさんはしんせいじ、いぬづかさんは1さいじの こどもがいて、わたしは2さいじ。

このかんじ、どこからどうみてもおかしいへやわりです。」

 

「まあ、たしかに言い得て妙だね。」

 

「わたしはきょう、あのあと へやをみてまわったんですが、

どうやら このびょうしつから、わたりろうかのさきまで、

ひとがはいっていませんでした。

 

わたりろうかのさきは、また、ちがうびょうとうのようなので、

おいしゃさんや かんごふさんが とおることはあっても、

こどもや だんせいが ここをとおることは ないでしょう。

 

いりぐちは なかにわに、 びょうとうごとに ありますから

そっちから はいったほうが はやいです。

だから おみまいは わたしたちの へやまでです。

そして、ふつうのじょせいも あまりとおることはない。

 

けれど、ひとつけねんすべきことは、

にんぷさんが さんぽがてら あるいている ばあいです。

なので じょせいと だんせいを わけました。」

 

「忍を幻術に掛けちゃいけない理由は?」

 

「りゆうは3つあります

ひとつは、げんじゅつのそんざいにきづかれるから。

ふたつめは、げんじゅつにきづいたひとが、てきしゅうと かんちがいする かのうせい、があるから。

3つめは、てきしゅうと かんちがいされて さわがれると、せっかくみことさんにかけてもらった、ひとよけのげんじゅつが、いみをなさないからです。」

 

ミコトは、こんなにものを考えている子供を見たことが無かった。

話を聞いた時はそこまで考えておらず、子供の遊びに付き合う気分で、安請け合いしただけだった。

サクヤが子供に変化した忍びだったとしても、ミコトは何も驚かないだろう。

良く考えている

大人でも、ここまで賢く、優しく、柔軟な人は中々いない

 

 

 

 

次の日、退院手続きを終わらせたサクヤの母、サキは、病室で病衣から服を着替えるサクヤに厳しい目を向けていた。

 

「あんた、また何かやらかしてないでしょうね」

 

「げっばれた…?」

 

ボタンを留める手をギクリと止めたサクヤ。

母に火が付く

 

「バレるわよ!!通る人皆にあいさつされたんだけど!?何やったのよあんた!!」

 

「いや、なんもやってないよ!!ちょっとびょういんたんけんしただけだよ!!ぬれぎぬもいいところだよおかーさん!!」

 

「ほんとに…?」

 

「ほんとほんと。」

 

 

 

サクヤは本当に何もやっておらず、ただあの騒ぎの後すぐ、病院を探検しただけであり

途中、休憩とばかりに様々な病室に顔を出しては、『自己紹介』をして回っただけである。

サクヤの様子に、入院、見舞いに来ていた忍各位は気付いていたが、ここでおやつが活躍する

 

「ボウズ、さっきの騒ぎの主犯だろ?」

 

「…さっき なんかあったとは きいてます。」

 

「そう言う『体』か…」

 

「なんのことでしょう?」

 

「あーあー小腹がすいたなぁ

腹が膨れたら、あることない事言いふらすのになー」

 

「クッキーならありますが…いっこだけですよ…。」

 

「…俺は甘いもんは好かねぇんだ。

この話は無かった。ってー事に…」

 

「おっと こんな ところに ぼんちあげが…」

 

「まいどー」

 

「ああっ!!ぜんぶはなしです!!ぜんぶは!!」

 

なんてやり取りが奈良シカクとカーテン越しに交わされたりなんかもしていたが、サクヤは誰か気付いていなかった。

 

その日、様々な場所でサクヤは目撃され、ミコトの幻術により野次馬は事の真相を誰も知らないまま帰ることになり、さらには買収された忍各位により話を補強された噂は勝手に一人歩きをしだし

通る病室で真の目の紋に挨拶をかけられたサクヤの母は事の真相を知ることなく

サクヤは事の真相を母に知られることなく

同室の犬塚さんはプリン一個分得をし

ミコトは噂が違うものにすり替わるのを夫から聞き

サクヤの仕掛けを知った。

 

 

 

「ばいばいイタチ」

 

帰りがけ母親に背中を押されながら、ベットの横に置いてある籠に向かって静かに口にした名前を、ミコトはもらおうと思った。

彼女の様に賢く、優しく、柔らかな人になることを願って。

 

 

 

 

 

 

余談だが

イタチは長い間サクヤを男だと思っていたので、この少女がサクヤだったことをずいぶん後に知ることとなる。




イタチ過去編始まるよ☆(ゝ´ω`)ゲソッ


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71

2度目はサクヤの方が覚えてないと思う。

俺は、おでこの痛みと、日に透かした髪が白く淡く青い空に広がって、赤い目が俺をとらえて離さなかったことしか覚えてなかった。

 

 

 

「サクヤー!帰んぞー!!」

 

「うぃー」

 

木の葉の公園は子供でにぎわっていた。

親が戦争に出ていることが多く、面倒を見る人が少ないので必然的に公園に集まるのだ。

そこで各々好きなように遊ぶ子供もいれば、仲間を集めて遊ぶ者もいる。

余りに多い子供に木の葉は公園の数を増やす計画を立てたほどだ

中でも一番広い、木の葉成り立ちを書いた石碑の立つ公園は人気であった。

遊具も何もないが、鬼ごっこ、影踏み、氷鬼等走る遊びには最適だったからだ。

そして石碑が丁度障害物となりその遊びは平面では無く立体になる。

 

そんな石碑の陰に一人しゃがんでポツンといる少年は浮いていた

ぶつぶつと何かを唱えながら、ゆっくりと石碑の文字を指で追って行く姿は少し…いや、とても異様だった。

 

「ねえ!!」

「人が足りないんだ。」

「遊ぼう?」

 

様々な子供が少年に声をかけたが、その誰一人にも気のいい返事をしない少年はそのうち相手にされなくなって行った。

 

「なにやってるの?」

 

「やめとけよ、あいつ変な奴だから。話しかけると食われちまうぞ。変人で有名なんだ。」

 

うちはの子供は、うちはの集落の中にすでに公園があるので、そこ以外に行く事は少ないが、無いわけではない。

イタチは、シスイに木の葉石碑公園での立体的な鬼ごっこの話を何度もされており、この公園で遊べることを心待ちにしていた。

しかし、イタチは未だ4歳になったばかり、シスイに連れてこられたものの、来るまでで体力を使い果たしていた。

なので、大人しく公園の隅で立体鬼ごっこを眺める事にしたのだ。

うちはにある公園は、うちはの者しかいないので盆暮れ正月に見る顔ぶれと、あまり変わらない。

だから一族以外に知り合いが居ないイタチにとってはある意味公園デビューになる。

その公園デビューに水を差したのが件の少年である

短く切られた髪はつんつんと秋晴れの空に向かって跳ねているが、本人は気にしていないようだった。

 

「サクヤぁ!!!まだか!!」

 

「んぁー」

 

公園の入り口で、黒い出で立ちの大人が少年をしきりに呼んでいるのだが

その返事は生返事でしかなかった。

イタチは大人の言う事を良く聞く子供だったので、その少年が親に生返事を返して、全然動かない姿を見て、気付いていないのかと、お節介をやく。

しかし、肩をつんつんと突いたみたものの、少年は無図がるように体を揺らしただけでその場を動こうとしない。

 

「ねえ、きみのおとうさんよんでるよ?」

 

「んー」

 

「サクヤぁ!!!先帰っちまうぞ!!良いのか!!」

 

「…。」

 

終いには返事もしなくなった。

と思ったら少年は突然勢い良く立ち上がる。

タイミング悪く少年の手元を覗き込んできたイタチは、視界に白が近づき

頭突きをおでこに喰らい、ゴンッという音と共に倒れた。

 

「って…?誰?」

 

その少年はそこで初めてイタチの存在に気が付いたようだった。

鈍い紅い目をイタチに向ける姿は子供だが、イタチは言い知れぬ恐怖を感じた

そして、じくじくと痛みだすおでこに泣き声を上げたのだ

 

少年は、一部始終見ていた黒い出で立ちの大人に拳骨を喰らい

イタチは公園デビューが、涙の幕開けになった。

 

 

 

おでこの痛みと、紅く鈍く色を発する目

下から見上げた時、青い空に広がる透ける白色を忘れられなかった。

 

あの、恐れを抱いた目の意味を知りたくて

以降イタチはあの日の少年に会いに、何度も、足繁く、公園に通ったが

それ以来少年は公園に姿を現さなくなった

イタチはあの日少年が何を読んでいたのか分からなかったが、あんなに真剣に読んでいるものが面白くない訳がないと一足早く、母や父から文字を習う事にした。

あれを読めば少年の心の内を知れるだろうと考えていた。

 

 



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72

3度目は文字を読めるようになった頃

イタチは公園の石碑の文字を読破し、あの日少年が何を読んでいたのか分かり始めた。

内容はご察しの通りかたっ苦しい文章で木の葉の成り立ちを書かれているだけのただの石碑だった。

イタチは少し、がっかりした。

この話は何度も母や父から聞いていたのでイタチは良く知っていたし、有名な話だったのだ。

 

しかし、イタチは石碑と言う物を読み始めてから、石碑と言う物がいたるところに存在することに気付く。

 

あそこにも、ここにもある。

 

それに気付けば、イタチは、木の葉に散らばる石碑を巡るようになった。

もしかしたら、あの白い少年も読んでいたかもしれない。そう思ったら止まらなかった。

 

 

白い少年の後を追うように

そこに、白い少年の心が書いてあるかのように

一生懸命勉強したイタチは、持ち前の賢さからすぐに、習う文字と、ある石碑の文字が全く違うことに気付く。

その文字は、古代文字に近く、暗号とも、何とも言えないモノで

ある一定の石碑がどうしても読めないことを確信したイタチは『これは如何にか読めるようになりたい、是非このアルゴリズムを解明したい』

と思うようになり足繁くその石碑に通っていた。

 

そこでイタチはあることに気付く。

石碑には自分と同じように誰かが通っているらしく、時々何かしらの気配をイタチは感じて居た。

公開されている場でなので、そういう事もままあるだろうと考えていたが、それはどうやら同一人物でのようで

日影に置いてかれた水筒しかり、踏んで折れた草しかり、時々聞こえる囁くような話し声しかり、様々な所にその気配は見て取れた。

そしてそれは一貫して、姿を現さないのである。

 

囁き声を頼りに進んだりもしてみたが、相手は人の気配に敏いのか、イタチが藪から顔を出すと、まるで誰も居なかったかのように、ひたりと静まり返る。

最初は忍びか、幽霊の類かとイタチはおびえていたが、次の日持って帰られた水筒、足跡はイタチより少し大きい位の子供の足、囁くような話し声は良く聞けば石碑の内容で、その話声から推測するに、イタチよりさらに奥、文字を読むだけでは無く、意訳の方まで進んでいるようだった。

 

図書館で調べても、父さんに聞いても分からなかったこの文字を、この人は知っている!!

 

驚きと共に、イタチの胸には『もしかしたらあの日の少年かもしれない。』という期待が募っていた。

イタチの両親は、毎日の様に一人でどこかに通うようになった姿を見て、「よく分からない子」などと称すが実際は、目の前に落とされた手掛かりを、必死で追いかけていただけである。

 

姿かたちも分からないまま、そんな攻防を一月ほど続けたある日

そこで会ったが百年目、ついにイタチの目に映ったのは

 

あの日の白い少年だった。

 

木枯らしがよく吹く日だった、あの日見た透き通る白は、さらに白さを増して、秋晴れの真っ青な空にくっきりと浮かんでいた。

少年はまだ自分に気付いていないのか一生懸命に石碑の文字を目で追い、あの囁くような声で何かを話している。

何年も月日がたった遺跡跡は、草が良く伸び、風や雨による浸蝕がひどく

しかし、辛うじて読める範囲であったのが少年の不幸で、イタチの幸福であった。

 

「あの!!僕の師匠になってください!!」

 

「あ、拙者弟子は取らない主義何で。」

 

テンションが上がりすぎて、イタチは自分でも何を言ってるか分かって無かった。

でも、ここで何とか繋ぎとめておかなければ、この少年には一生相手にされないだろう。

あの日の様に、イタチがそこに無いように、赤い瞳に映ってしまう。

そう、イタチは思ったのである。

 

粘りに粘って、どうにかこうにか交渉のテーブルに着く事が出来たイタチだったが、その交渉は、『平等でないとならない』という妙なテーブルであった。

 

「等価交換?」

 

「そう、同じ価値どうしを交換する

林檎を買うのにお金を払うのと同じように、林檎と林檎を交換できるように…

 

私はお前に古代言語、暗号の解き方を教えよう。

代わりにお前は何を教えてくれる?

私に何をくれる?」

 

まるで悪魔の契約だった。

イタチには、この人に何かを教える程のものは無い。

文字だって、忍術だって、なんだって、この人に追いつけるようなものは、思いつかなかった。

そして、この交渉のテーブルは、少年に主導権を握られ、少年にそれは値しないと言われればすぐに流れてしまうクソゲーでもあった。

 

ただ、イタチが知っていて、この人が知らない事が一つだけある。

イタチはこの時、皮肉にも『もしかしたらこのレートには足りないかもしれない』などと思っていた。

しかし不幸(ラッキー)なことに、その情報はその後の少年にとって一番必要であり、一番欲しくなかったものであった。

 

「僕は貴方に、うちは固有忍術を教える!!」

 

この交渉は逆方向に危機に瀕したが、粘りに粘った結果少年はついに折れ

条件付きで関係を結ぶこととなった。

名前も知らない、素性も知らない少年の心内を知ることはできなかったが、

イタチは少し近付けた気がした。

 

 

「一つ!!」

「等価交換の期間は僕がアカデミーに入学するまで!!」

 

「二つ!!」

「どちらかの不利になる情報は渡さない!!」

 

「三つ!!」

「この関係は生涯口にしない事!!」

 

「以上を厳守することでこの関係は成立する!!」

「了解であります!!」

 

 

この条件があらゆる意味を含み、少年(コマ)を守るどころか、イタチ(テン)をも守ることになるとは、イタチはその時気付かなかった。

 

 

 

 

サクラが咲き乱れるころ

コマの髪は、光のどけき春の、薄水色の空に混じって溶けて、消えそうで

テンはその髪が溶けてしまわないようじっと見つめるのが日課となっていた。

 

コードネームや、ポンの声による誘導にも慣れてきた二人は、まだ肌寒い木陰の中、会話をしながら視線誘導をしあっていた。

何かを話すごとに、聞いているふりをしながら視線を方々に投げたり、手を振ったり、指を刺したりと様々な方法で相手の視線を自分の思う方向にそらさせる。

イタチが、幻術を習得するに当たって、一番最初にサクヤから習った事だった。

しかし、テンはコマがあまりひっかからないので少しこの遊びに飽きて来ていた。

 

時代は第3次忍界大戦が終わって、半年ぐらいだった。

一人歩きはまだ推奨されない時期だったが、テンは父に連れ添い、見た戦場を忘れられず、一人で様々な場所に行っては物思いにふけることを繰り返していた。

しかし、一番落ち着くのはこの不定期で行われるコマの授業であった。

テンは戦争を体験して、コマの物知りが、只の物知りではない事をうっすらと理解してきていた。

 

 

「コマさんは、なんでそんなにいろんなことを知ってるんですか?」

 

「…?

そんなに知ってるように見えるか?」

 

「…空がなんで青いとか、氷が気発するとか、僕の幼馴染みに同じ質問したけど、まだ習ってないって言います。

大人に聞いても、話をはぐらかされる。父さんは、知っているのはプロフェッサー位だろうって言います。」

 

この時コマは冷や汗をかいていた。

忍びは科学と非常識(チャクラの法則)を混ぜて出来ていると考えていたが

向こう(前世)では常識、又はちょっと調べたら出てくることでも

こっち(今世)ではちょっと頑張らないと出てこない知識だったのだ。

 

成る程。

馬鹿でも忍が務まる訳である。

 

銃が、なぜあんなに早く弾を発射できるかを知らなくても、生きていけるし、原理を知らずとも発砲できる

忍びの術とは『そういうモノ』になっていた。

 

「私は…

色んな事を知っているんじゃなくて、知ったんだ。

これは知らなくても、生きて行ける知識だ。

だけど、知っているとそれは大きなアドバンテージになる…」

 

テンはコマの話に度々出てくる横文字があまり好きではなかった。

コマがまるで違う世界にいるように感じるからだ。

テンの解かっていない様子に気付いたコマが質問をする。

 

「『遺跡』という言葉の意味を知ってるか?」

 

「…確か、『過去に建造物や戦いがあった場所』って意味かと。」

 

「じゃあそこに立っている石碑は?」

 

「これは、先人が過去の出来事を綴った石。遺跡とは少し違う。」

 

サクヤの脈絡の無い質問がイタチは好きであった

こういう話をするときは大体長くなるからだ。

普段のサクヤの口数は多くないが、サクヤの長い話は

まるで母が話すおとぎ話の様に面白く、父の話のように難しかった。

 

「石碑の意味を少し訂正する。

遺跡に石碑は付き物だ。だから石碑だけで存在するものはあまりない。

大体近くに遺跡又はそれに準ずる文明があった事を示唆する。ここの場合西の遺跡だな。」

 

コマが西の遺跡の方向に視線を向けるので、テンは西の遺跡の方を見てしまう。

おでこを付かれた。

視線誘導に引っかかった合図だ。

 

「話を元に戻す。

この石碑に書いてあることは普通の人でも、忍びでも、知って何になるもんじゃない知識だ。

太陽が東から上がって、右下からから消えてった話し

良くある話だ、よくある日食観測の記念石碑。」

 

さっきの今で、『東から』という言葉は我慢できたが、コマの立てた人差し指に目を取られ、またおでこを付かれる。

 

「でも、この石碑があったから、このデータがあったから、今の日食の計算式につながる。

各地で観測された日食のケースや、日取り、時間、時代、から日食ってもんは計算されてきた。

地球が丸いのも、太陽が東から登るのも、地球が太陽の周りを回るのも

全て、様々な場所から発見された石碑、文献、口伝、から予測、観測、分析を繰り返した、膨大なデータから成る事実だ。

私はそれの答えだけを切り取ったに過ぎない。

だが、その答えを持っているだけで、その何世紀かの時間だけ下駄を履く事が出来る。」

 

「…でも、コマさんがいうように、それを知って何になるってものじゃないでしょ?」

 

それ、っと言って石碑を指すがコマの視線は釣られない。

 

「そうだな。

多少下駄を履いていても日食が起こるのを止められはしないし、止める必要はないかもしれん。

だがこれら知識は先駆者からのメッセージで、失敗の知識(データ)だ。」

 

「失敗のでーた…?」

 

人は物を考えるとき自然と左上を見るようになるらしい。

テンは疑問を呈すように首をもたげ、コマが一瞬でも思案するように仕向けるが

コマは考える時左下を見る人だった。外れる。

 

「そうだな…簡単に言うと

土遁に水遁で勝てた資料があったとしよう。

霧隠れの文献にはこう記される

『先の戦争にて、岩の忍びの土遁壁を水牙弾で突破し、名を上げた。』

そして、

岩隠れの文献にはこう記される。

『先の戦争にて、霧の忍びの水遁が土流壁に穴をあけ、貫通させ3名の犠牲を出した。水につけた回転の勢いで削ったようである。気を付けたし。』」

 

「そうか、水遁が成功した資料があれば、土遁が失敗した資料がある…。」

 

「だが、失敗というものは余り後世に伝わらん。

誰も自分の失敗を残したいとは思わないからな。特にこうゆう石碑を残す事が出来る金持ちはプライドが高いし、繁栄を極めた成功しか書かん。

データとしては未完成だ。

だから後世の奴らが苦労する。

ココに乗っている計算式は、計算式自体が間違っている。これも一つの失敗のデータだ。」

 

そう言ってコマは石碑をポンポン叩いた。

テンは石碑の方に視線を向けてしまい、おでこを付かれる

だがテンはやっと解いた石碑の情報が間違っていることの方がショックだった。

恨めしそうに石碑を見るテンを、コマは励ます。

 

「そう落ち込むな。情報は使いようだ。

この石碑を読んだ敵が、日食の影を使った結界術を使用してきたら

そもそも時間と場所を間違えて術に失敗する。」

 

「なるほど。わざと読ませて隙を突くんですね。」

 

「…そう言う方法もある。

だが、そう上手くもいかないのが世の中だ。

相手が賢ければ情報を持ち帰って精査してから使うだろうし

味方の中には敵の言う情報の方を信じる奴もいる

 

忍びは裏の裏を読めと言うが、それは正しくないと私は思っている。

余談だが、戦いというものは、なるべく予測を多く立てて、それに対処できる手が多ければ多いほど勝てる。

戦いは物量だ。

補給ないし、人材ないし、予測ないし、経験ないし、後悔ないし。

量がモノを言う。

物事を多方面から見れる者が生き残る。

 

 

もし、日食の影を使った結界術では無く封印術だったら?

もし、幻術に光の性質を使われたら?

もし、氷遁使いと相対したら?

その時正確なデータがあったら、敵の思惑を阻止する事が出来る。

たとえ間違った情報だったとしても、データと言う下駄をはいたうえで予測、観測、分析ができるから、総じて何も知らないより解決が早くなる。

そして、仲間を犠牲にして

その法則を発見、修正するなんてことは無かったかもしれない…

どういうことか分かるよな?」

 

 

『犠牲』

それがどういうモノかイタチは知っていた。

そこかしこから上がる煙と、うめき声、人が焦げる臭い

あの日見た戦場は、未だイタチをとらえて離さなかった。

 

 

「ただの想像でしかないが

未来、『知っておけば』と思う時が必ず来る。

その後悔をしないために私は知っていたい。

先駆者から受け取ってきたバトンを次に渡せるように。

 

私は物知りなんじゃない。

ただ、私はもらったバトンを次の世代に渡しているだけだ。

それをどう使うかはお前が考えろ。」

 

 

命は死ぬ。命は軽く、重い。命は死にたくない。

命に、意味はない。

戦争というものを見てから、この意味のない堂々巡りの答えをイタチは探していた。

 

「コマさんは…命って、なんだと思いますか?」

 

突拍子もない質問にコマはきょとんとするが、その答えは思いの外早く帰って来た

 

「…私なりに答えを言うならば

『命は守られていくもの』だと思っている。」

 

「その命に意味が無くてもですか?」

 

「ああ、意味のない命でも、誰でも、どこでも。」

 

「…どこでも?」

 

 

「私を守っているものは、知識として今、テンに残っている。

テンが生きている限り、私がお前に渡した知識なり何なりは一生お前と共にいる。

お前を守り続ける。

そしてテンがそれを誰かに渡せば、今度はテンの代わりとなって、その誰かを守る。」

 

テンは父から『忍びたるもの里の為に、一族の為にあれ』と常々言われてきた。

理想の忍びはずっと父親だった。

だが、憧れた人は

どうしようもなく焦がれた人は

 

 

「命は守られるべきで、誰かを守る命だ。」

 

 

賢く、優しい人であった。

 

こんな人に自分はなれるだろうか

こんな人の隣に並べるようになるのだろうか

こんな人を越えられるのだろうか

テンは不安に視線が下がる、コマは只笑って

 

「テン、お前もいつか分かるさ。」

 

テンのおでこをついただけだった。

 



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73

「これからは他人だな」

 

そう言って別れたテンとコマだったが、再会は比較的早かった。

同じアカデミーに通っていたというのもあったし、イタチのクラスが上級生の組手に混ざる機会があったのだ。

 

「それじゃぁ始めようか~。このクラスは忍組手は初めてだったね~まずこうやって印を組んで―…」

 

教師が説明するそばに集まって皆一様に聞いていたが、テン(イタチ)は全く聞いておらず

コマに自分だと気付いて欲しくて視線を送りまくり、そしてそれはすべて不発に終わっていた。

コマが別れ際に発した『他人』という言葉がテンに重くのしかかる。

しかし、神は人に二物も三物も与えるようで

イタチは忍びの才能と、更に諦めないド根性を持っていた。

 

他人になったのならまた1から関係を作り直せばいい。

そう思い、どうにか接点を作ろうと周りにコマの事を聞いて回るが

 

「ああ、あいつ?変人の真の目サクヤだろ。」

「なんか2代目の孫だかで特別らしいよ。」

「特別処置な。飛び級してる授業とそうじゃない授業とあるらしいぜ。」

「あたし、真の目の藪に、2代目がベソかきながら突っ込んだ犯人って聞いたよ。」

「俺この間里の図書館で奈良家の大人に引きずられてくの見たぜ。ぜってーあれ説教だ。」

「僕、あいつが川で流されてるの見た。」

「「「「「…え?どういうこと?」」」」」

 

 

「いい子なんだけどね~なんか子供っぽくないんだよね~いい子なんだけどね~」

 

 

コマ(サクヤ)はアカデミーで浮いていた。

しかし優秀なのは変わらず、飛び級制度を使っていると聞いたのはイタチにとっては朗報であった。

 

「(俺も、早くサクヤさんに追いつこう…。そしてサクヤさんに意識されるくらい優秀になるんだ…!)」

 

アカデミーの授業レベルの低さに嫌気がさしていたイタチは、このつまらない時間をサクヤへのアピールに使おうとしたのだ。

しかし、その作戦はいきなり暗雲を垂れこませることとなる。

当のサクヤが授業にあまり真剣では無かったのだ。

いくら優秀なイタチでも、授業を聞いてない相手に張り合ってもどうしようもない。

そして酷い事に、サクヤは意識どころか、気づく素振りもなかった。

 

 

サクヤに友人という友人はいないらしく

いつも一人でボーっとつまらなそうに授業を聞いては先生に注意されていた。

イタチはサクヤが何故このつまらない授業を大人しく聞いているのか不思議であった。

 

「(遺跡で会ってた時は、あんなに楽しそうだったのに…。)」

 

オタクは得意分野の話をふられると、猛烈に喋りたくなる生き物だと言う事をイタチは知らなかった。

 

 

座学は大体聞いてない。

実践演習では時間稼ぎの捨て駒に使われていることが多い。

投擲の授業はサボっている。

体術の授業では常に避けるばかりで、攻撃に転じるのさえ諦めている様だった。

 

「さ~く~や~」

 

「待ってください、これはデフォルトなんです。仕様です。避けれる攻撃を無理にうけるなんて私には無理です。」

 

「そういう意味じゃな~い!!ちゃんとやらないと居残りさせるよ!!」

 

サクヤはそのまま誰にも勝つことなく、そして負けることなく時間を潰していった。

イタチはその間に5人抜きをしていたが、そのアピールは空振りする。

 

結局体術の授業では、二人が組むことは無かったし

イタチはサクヤの他人のふりに負けて、アカデミーではついに話しかけることが出来無かった。

 

 

 

―――

――

 

九尾襲撃事件の後、飛び級で卒業試験を受けたイタチは、下忍説明会でサクヤも同時期に卒業していたことを初めて知った。

今回飛び級したのはどうやらサクヤとイタチだけだったらしく、12歳以上の子供の中で9歳と7歳の二人はある意味悪目立ちをしていた。

説明会まではまだ時間があり、イタチは思い切ってアカデミーでは話しかけられなかった勇気をここで使う事にする。

 

「俺、うちはイタチと申します。貴方は…?」

「…真の目…サクヤです。」

 

やっと名前を聞けると思い話しかけ、名乗り、名乗られたのだが、その会話は弾むことは無かった。

しかし、答えてくれたことが嬉しかったイタチは、サクヤのテンションがガタ落ちしたことに気付かず、更に話しかけしょんもりする事となる。

 

「あ、えっとその。今回飛び級卒業したのって俺たちだけだそうですね。一緒の班に成ったりするんですかね?」

 

「…多分ないと思うよ、基本上忍を入れたフォーマンセルで動くらしいから。ここに一人入れるよりバランスを考えて足りない所に補充する方が現実的だ。」

 

「あ、そうですよね」

 

そっけない言葉にイタチは自分が何かしてしまったのかと思案するが答えは出なかった。

 

 

 

 

 

 



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74

下忍になってからは二人が会う事は無かった

お互い違う班だったと言うのもあるし

サクヤが優秀であったというのもある。

中忍二人の班に入れて見劣りしない立ち回り、1年もしない内の中忍試験出場、班員の死亡、隊長の負傷により初期班が解散したりと様々な事があった

 

イタチは風の噂でサザミの甥っ子が中忍試験でやらかしたらしいとか、伝書鳩のサクヤが仲間を皆殺しにして帰って来たとか、真の目のモヤシが暗部入りした等聞いていた

しかし、そのすべてが本当ではないとイタチは考えていた。

 

火影の狛犬に会うまでは。

 

 

 

イタチが中忍に上がり、暗部に入る頃

イタチより2年ほど早く暗部にいたサクヤは、どっぷりと暗部に染まっていた。

あの透き通る白が暗部に居ることにイタチはすぐに気付いていたが、下忍説明会の時を思うと、話しかけられないでいた。

 

「今日のメンバーは少し変則で、ロ班から2人、イ班から1人、あと狛犬に入ってもらうから仲よくしてね。」

 

隊長であるカカシにそう言われて、イタチはこくりと頷く。

が、聞きなれない名前を聞いたことに気付き、イタチは疑問を声にする

 

「狛犬…?」

 

「ああ、初めてだっけ?

通称コマ。

火影のいう事しか聞かないから火影の狛犬なんて呼ばれてる。

お前と同じ年ぐらいに暗部に入ったやつだ。

まあこの話は色々長くなるから、本人にでも聞いてみるといい。

丁度来たことだしね。」

 

「…?なんの話っすっか。」

 

待機所に入ってきた狛犬の面を付けたその暗部は、短い髪がつんつんと跳ね上がり、薄暗い照明の中、ポツンと、まるでそこだけ切り取られているように白かった。

イタチはその髪に見覚えがあった。

 

「…今日の作戦に参加するロ班のイタチです。よろしくお願いいたします。」

 

下忍説明会の自己紹介を忘れているかもしれないと思ったイタチの、丁寧なあいさつにコマは、ぼうっとイタチを眺めると「うん」と返事をするだけで、見かねたカカシに肘鉄を喰らった

 

「いたい…暗部は何時から暴力が横行する現場になったんだ…」

 

「うん。じゃない!

挨拶されたらちゃんとあいさつしなさい。

ていうか、暗部に暴力も何もないデショ!!」

 

コマはため息をこれ見よがしに吐く

次いで頭に平手が飛んできたため、大人しく自己紹介する気になったようで口を開く

が、それは叶わなかった

 

「うげっ」

 

「いや~悪いねイタチ君。こいつ常識ってもんを知らないから。」

 

部屋に本日のメンバー最後の一人が来て、コマの頭にどしっと肘を乗せたからだ。

 

「デタラメ人間の万国ビックリショーの先輩らよりは常識有りますよ。

それにこいつが噂のイタチならもう自己紹介は下忍の時にしたんだよ。」

 

「それでも挨拶はするってーもんだ!!」

 

あの自己紹介を覚えている事にイタチは驚き、そして、少しうれしかった。

イ班の忍びに体重をかけられ、序とばかりにカカシに肘を乗せられ

2人分の体重がのり、沈んでいき、うめき声を上げる姿を見ると、コマはこの暗部という薄暗い所にとても馴染んでいるようだった。

 

「…真の目サクヤ…所属班は…特にな…し。

…よろしく…お願…い…しま…す…。」

 

絞り出すような『よろしくお願いします』が出た頃には『火影の狛犬』の威厳は無くなっていた。

 

 

 

「どうした?」

 

カカシ達と別れ、サクヤとツーマンセルで任務に当たったイタチは

まるで囮の様に、敵めがけて飛び出していったコマを追いかけ、辿り着いた先

その光景に唖然とした。

 

血の一滴も付けずにイタチの元へやってくるサクヤの後ろには、その白い髪と真逆の、鮮やかな赤い海が広がる。

まだ息のある者が何人かいるのかヒューヒューとわずかな音が聞こえる。

意識が後ろに取られていることに気付いたサクヤ

 

「あ、悪い。

来る前にどうにかしようと思ってたんだが…ちょっと待て、処理するから。」

 

その言葉と共にサクヤは振り返り、火遁の印を組む

寅の印で止まった手、イタチの目の前が轟音と共に白く染まった。

イタチは咄嗟に写輪眼を発動させたが、それは正しい判断では無かった。

 

()()は、先程まで艶めかしい程鮮やかだった赤い海を乾かし、焦がし、干上がらせ

葬儀の様に粛々と、当たり前の様に温度差に風が通り過ぎ

人の焼ける臭いさえしない。

 

殲滅だとは聞いていた。

だがここまで惨いとは思わなかった。

幼き日見た戦争の光景がフラッシュバックする

サクヤの寸でまえから跡形もなく燃え尽きた光景に思わず嘔吐く。

イタチは胸糞悪い感情を押さえるのでいっぱいであった。

 

 

これでは何も残らないではないか。

 

 

遺体が残るだけ、未だあの戦争の方がましであった。

苦しげに歪んでいた顔が白に燃やし尽くされて行く様をまざまざと、写輪眼で見てしまった。

命の燃え尽きるさまは後には何も残らず、イタチの目には、それがまるで

見られたくないというように

サクヤが、自分の異常性を必死で隠しているようにも見えた。

 

錬られたチャクラが多かったのか、サクヤの呼気は熱を帯び、勢いあまり2、3回と白い閃光が瞬く。

サクヤのチャクラが落ち着き、前方が開けると

視界いっぱいに広がる白い煤けた空間は、すべてを燃やし尽く(なかった事に)した『跡』だった。

サクヤの処理という言葉が耳に残って何度も聞こえる

自分もいつかこう処理されるのだろうか、いやそれ(恐怖)より、さっきまでわずかながらでも生きていた人を、跡形もなく燃やす神経が分からなかった。

どうせ殺すなら何故命を残しておいたのだろう。

残した命でいったい何をするつもりだったのだ

 

「集合の時間だ。行くぞ。」

 

イタチの様子に気付いたサクヤが、この場から離れるのがいいと考えたのか、動けないイタチの腕を引っ張り背中におぶる。

 

今は、そんな気遣いより、その火遁の意味を教えてほしかった。

自分(イタチ)の為にやったのか、何時も()()なのか、

言い訳をしてほしかった。

 

しかし、イタチの心の声など届くはずもなく周りの景色は風の様に早く進み、振動を少なく、忍ぶ足運びは慣れているようで、イタチは無性に、真っ黒なコマ(暗部)では無く、あの真っ白なコマに会いたくなった。

 

 

 

集合場所手前で降ろされたころには吐き気も収まり、普通に歩く事が出来た。

林を抜けたところにはカカシ達がもう集まっていた

怪我はしていないようで、風下である林の中に血の匂いは漂ってはこない。

サクヤは、危なげなく歩くイタチに、後ろ手に声をかける。

 

「暗部は、…胸糞悪い仕事と、肉が食えなくなる仕事と、血の無い地獄を作る仕事で出来ている。それも一つ一つ来るんじゃなくて、全部一気に来る。

お前、暗部に向いてないよ。

優しすぎる。」

 

イタチは、カカシを班長とするロ班に配属された時、試しとばかりに手裏剣や苦無で攻撃された事を思い出した。

あれはそのままの実力を試されていた。

以来そういう事は無かったが、これは、覚悟を試されている。

 

止まった足音にサクヤは振り返る。

イタチは真っ直ぐ前を向いてサクヤに答えを返した。

 

今更戻れない、俺は暗部でいないとならない。

里の為に、一族の為に、自分の幸せ()()()記憶の為に。

 

「向いて無くても、俺はここにいないといけないんです。」

 

何もあの光景を初めて見たわけではない。

本当は吐き気を催す光景なんか何度も見て来ていた。

父に連れ添われ戦争に行った時も

里が九尾に襲われた時も

仮面の男によって仲間が殺された時も

思えば、イタチの節目には血と争いの記憶しかなかった。

忍びの仕事を考えればそれは普通の事なのだろう。

 

しかし

イタチにとって唯一、血と争いの香りが漂ってこない記憶は

サスケや家族の記憶と、コマと過ごしたあの長くも短い記憶だけであった。

 

これ以上、イタチはあの記憶に何のエフェクトもかけたくなかった。

イタチは、あの優しい記憶をそのまま、胸の奥に閉じ込めて置きたかった。

 

 

 

狛犬がどういうモノか分かっているつもりで

しかし、あの優しい日々の、空に溶けだしそうな少年がそのままそこにいると思っていたイタチは

全て優しさで出来た『それ』に、気持ち悪さだけが重く残る。

 

 

 

サクヤの背中で、イタチは『火影の狛犬』の優しさと、柔さに触れた。

 

 



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75

その後特にさしたるエピソードも無く、可もなく不可もなく2年ほど過ぎるのだが、その2年後が問題であった。

 

「えー本日メデタク班員になりました真の目サクヤ通称コマです。ヨロシクオネガイイタシマスー」

 

ふざけたような自己紹介から始まったこれは、サクヤ曰く

 

「あー多分監視。お前が蝙蝠してんのが気に食わないのと、私の事情も含め、面倒くさいの全部まとめたいんだろ。」

 

誰、とは言わなかったがそれが誰かは明白であった。

胃が痛くなるような現状にイタチは顔を青くした。

面の向こう側の顔色が分からないのはお互い様であったが、二人して青い顔をしているとは誰も思わないだろう。

 

「それは…俺に話していい事なんですか…?」

 

「さぁな。ただ、これは私の予測だから里の掟には引っかからねえな。」

 

 

 

そうして始まったツーマンセルは、イタチが隊長なのにもかかわらず、サクヤが任務を請け負ってくるという、里のうちはへの警戒度が大きい事を如実に現す結果となっていた。

 

「俺はいったい何のために隊長を任されたんでしょうね…」

 

「知らんがな…。

強いて言うなら体裁だが、私の知る所でないし、私の考えるべきことでもない。」

 

「コマさん、あんたはいったい何を知っているんですか…?」

 

「私は私の知っている事だけだ。」

 

幼いころ、夏の日差しを逃れるように木陰でコマと遊んだ記憶がよみがえるが

現状とは似ても似つかない。

 

イタチは苦無についた血を腕を振って払うとサクヤに手信号で援護の指示を出す。

どうやら下手人(自分達)に気付かれたらしく、外が騒がしくなってきた。

このまま屋根裏にでも忍び込んで、とんずらしたいが生憎現場は洞窟、この死体を隠す場所も無ければ隠れる場所もない。

そうもしてるうちに扉の前に死体の仲間が来たらしく扉をドンドンと叩かれる。

 

「おい!!返事をしろ!!敵襲だ!!」

 

サクヤの返事を待たずに、イタチはターゲットの仲間と思われる人の、息の根を止めようと一歩出したときそれは横を通った。

 

轟っとイタチの横を通りすぎたのは白い、稲妻のような炎であった。

イタチの視線の先は扉も壁も無く

そして、新たな死体も無かった。

白い炎はやはり温度が高いらしく、すれすれを通り過ぎたはずの右腕は、溶けたのかなんなのか、手甲がごっそり消えていた。

手甲だけでは飽き足らなかったのか、皮膚は真っ赤に染まり、火傷を起こしている

もし手甲が無かったらこんな傷では済まなかっただろう。

イタチは確実に右手を持ってかれていた。

 

あの光景がフラッシュバックする

 

混みあがってくる何かに、口元を覆おうと手を動かすが筋肉が強張り動かない。

信用するのは早計だったか…

サクヤの裏切りを警戒して、最悪幻術を掛けようと写輪眼で振り返ると

 

「あふい。かへん、はひはえは。」

 

コマの面が吹き飛んでいた。

調節がうまく行って無いのか、口から白い火を噴きながら言葉を発するので前髪が燃えている。

以前見た威力を考えると、今回は不発だったらしい。

白い炎は扱うのが難しいと聞いていたが、この人もまだ、失敗をするのか…

急な人間らしさに、イタチは幻術も掛けることもできず、思わず瞬いた。

 

「…いえ、…。

…死体も、今の炎で片付いたようなので…早急にここから立ち去りましょう。」

 

「あい。」

 

帰り際、白い炎をぽつぽつと吐きながら

「おほっへう?おほっへう?」

と聞いて来るのでイタチは笑いを耐えるのに必死だった。

 

3代目が自分に『根の暗部』では無く、『狛犬』を付けた理由が少しわかった気がした。

 



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サクヤとイタチ編
76


画して、コマの威厳は地に落ち、イタチの頭の切れが昇りに上ったころ、

イタチはやっと、サクヤが『イタチとテンが同一人物』だと気付いていない事に、気付いた。

あのコマさんともあろう人がまさか気付いてないなんて事…と思っていたが

アカデミーの時、イタチのサインをこれ見よがしに逃しているところを思いだし、絶対分かって無いと確信した。

まだコマとサクヤが違う人物だった方が現実味がありそうであるが

しかし、イタチの脳に焼き付いている、透けるような白に見間違いは無かった。

 

「前から気になっていたんですが、そのコマって名前誰が付けたんですか?」

 

「…ダンゾウ。

私の父が狛犬と呼ばれててそこから着いた。」

 

それはそれは嫌そうに、説明された内容をまとめると

コマさんの父親は威厳の威の字もない人で、大口開けて笑うし、泣くし、しょうもない事で怒るし、拗ねる人で、

2代目火影の実子であり、顔がそっくりだった為、その顔でそれやられると里の威厳的にも困るので面で顔が隠れる暗部にぶっこんだら、3代目の言う事しか聞かないので『3代目の狛犬』なんて呼ばれていたらしい。

そしてその娘であるサクヤに同じ名前を付けたのがダンゾウである。

 

「何を考えてこの名を付けたのか分からんが、ダンゾウ許さん…。」

 

サクヤふつふつとダンゾウへの怒りを募らせている横で、イタチはあることに驚いていた

 

「(この人…女性だったのか…?!)」

 

『娘』サクヤは確かにそう発音した…

なんか最近先輩たちにサクヤとの様子を観察されているなとは思ったが…

そういう視線だったとは…

ガッテム!!と掌で顔を覆うイタチと

呪詛の様にダンゾウへの恨みつらみを呟くサクヤは木の葉の団子屋で浮いていた。

 

 

 

 

 

 

ハッキリ言って過去から現在に至るまで、サクヤはどう見たって少年であった。

身長が伸びてからも体の凹凸は目立つ程では無かったのでイタチが男だと勘違いするのは致し方ない事であった。

髪形は短髪、顔は2代目そっくりそのまま幼くした感じ、さらにはサザミの甥っ子なんて呼ばれていた。

リーチである。

これは避けようもない間違いであった。

 

「(まあ俺が勘違いしていたのも悪いが、コマさんもコマさんだ…女性然としてないのが悪い…)」

 

人はそれを逆恨みと言う。

 

 

任務終わり、大雨により橋が崩れ、木の葉のセーフティーハウスと言う名の洞窟で一夜を明かす事にした二人は、薪を焚いて衣服を乾かしていた。

つまらなそうに手甲を乾かす体は、確かに細いが、この年代の女性を思うと筋肉質すぎる気もしない事も無い。

炎に照らされたサクヤの髪は薄金色に輝く。

イタチに、不意打ちでも火傷を負わせたサクヤの火遁、で燃えた前髪は

元の通り、いや少し伸びすぎて目にかかっていた

邪魔ではないのかと髪に手を伸ばすと、思いの外それを受け入れられ、イタチはこれ幸いとワサワサと触る事にした。

 

「髪、伸びましたね

…伸ばさないんですか?」

 

「伸ばしても邪魔だし、特に髪形に拘ってないからなぁ…」

 

「そんなんだから甥っ子なんて呼ばれるんですよ。」

 

そしてイタチの様な被害者が生まれるのだ。

鬱陶しかったのか手は弾かれたが、警戒はされていないようで、そのまま手はポーチの中をまさぐり、装備の確認をする事にした様であった。

 

「俺も、初めて会ったときは男だと思ってました」

 

実はつい最近まで男だと思ってました。

なんて言った暁には卍固めを極められるので黙っていたが、話を聞いてるのか聞いてないのか生返事しか帰って来ない。

というか髪形が悪いんじゃないのか…?

顔が綺麗だと言われる二代目に似てるんだし、多少なりとも髪に凝ったら女性に見えなくもない…

本人達に言ったらぶっ飛ばされるだけじゃ済まない事をイタチは思っていたが言わなければ知るはずもなく

 

「今度、簪あげるので、伸ばしてください」

「…。」

 

返事さえ帰って来なかった。

一応名前だけでも隊長であるイタチの言葉を無視して、ひいふうみいと数えているのは起爆符。

そんなに起爆符が大事か…

イタチの逆恨みは底を知らず

「(こ い つ … !!)」と写輪眼を発動させたところで、サクヤはイタチの様子に気づき慌てることとなる。

 

 

「ええっと…どうした?敵襲か?幻術か?」

 

今更慌てたところでもう遅い…

イタチは写輪眼で幻術を掛け揺さぶろうとするが、視線1つでそれは躱された

シレッと躱すので、イタチの頭に怒筋が一つ二つと増えていく

 

「コマさんは分かって無い。」

 

「へえ、さようですか。すみません。」

 

自分がどれだけ…どれだけ白い少年を追いかけるのが大変だったかとか、やっと自己紹介できた時の絶望とか…、あの日の少年の知識にどれだけ助けられたかとか…!!おぶるより、あの火遁の弁解してほしかっただとか!!知らないふりだと思ったらマジで分かって無かった事とか!!

イタチは、写輪眼で何度も何度も幻術や視線誘導をかけるが、それは序とばかりに菓子折りつけて帰され、それがまた怒りを誘う。

 

「テンって知ってます?」

 

「動物のテンなら多少は、知ってます…」

 

何も分かって無いサクヤは呑気に返事を返すが

イタチの頭の血の登りは天元突破していた

 

「あなたはどうせ忘れてるでしょうがね、俺貴方に…」

 

 

しかしその怒りは突如、鳴りを潜めることとなる。

今日の任務でチャクラを使い過ぎたのかひぃひぃ言っているサクヤに気付いた事もあるし、何より、秘密だと約束していた。

 

一つ

等価交換の期間はテンがアカデミーに入学するまで

 

二つ

どちらかの不利になる情報は渡さない

 

三つ

この関係は生涯口にしない事

 

イタチは母にも、父にも、弟にも、この関係を漏らしてはいなかった。

そしてサクヤは別れ際言っていた

 

「これからは他人だな。」

 

 

他人になったなら、そこからまた関係を作ればいい。

そう思っていた。

 

実際はそうも簡単では無かった。

サクヤの庇護下を出てから気付いたが、サクヤは身内に甘い。

そして外向けの顔が厚い。

 

初対面の人間には基本冷たいし、多少会話をするようになっても友人何て夢のまた夢だ。

周りはサクヤの優しさを知らないからか、こういうものだろうと接していたが、イタチの記憶には、あの不器用ながら優しくあろうとしたサクヤが常にいた。

暗部に入り、サクヤとも任務を組むようになり、そこそこ仲良くなれたと思っていた。

しかし以前の様になんでも話せるような関係かと言ったらそうとは言いづらい。

明確な何かかがそこにはあった。

だからイタチはそれを如何にかしたかったが

 

サクヤ自身がテン(イタチ)を探していなかった。

 

サクヤにとって、テン(イタチ)との関係はあそこで終わりだったのだ。

だから探す必要も、サインに気付く必要もなかった。

 

「いえ、やっぱり…何でもないです。」

 

興の削がれたイタチ様子にサクヤは正直に何言ってるのか分からんと口に出す。

 

「でしょうね。」

 

イタチの容赦ない肯定にサクヤは50の衝撃を受ける。

一応暗部の先輩であるはずなのだが作間といいサクヤといい、威厳はどこに置いてきたのであろう。

 

 

 

「…あの、取りあえず、話してみたら?結界と封印掛けてやるし、秘密にしといてやるからさ、ね?」

 

サクヤは残りのチャクラで結界と封印をかけ、隔離空間を作り出した。

写輪眼で見るそれは、サクヤのチャクラで満たされ、幾何学に織りなす結界と封印はまるで芸術品を見ているようだった。

 

こんな術、いったいどこから学ぶのだろうか

またこれもいつか、幻術の様に教えてくれるのだろうか

自分がこの術を発動したとして、こんなにも綺麗に出来るだろうか…

威厳こそないものの、その腕は一流である。

イタチはサクヤの才能を再確認した。

 

そしてサクヤは、それを何とも思っておらず、誰でもこれぐらいできるであろうと考えていた。

実際はサクヤの周りを構成する人たちがハードルを高くしているだけで、サクヤは天才と言うべき才能を持っている。

だから戦争の無い時分飛び級できたし、下忍初っ端から中忍班に組み込まれる成績を持っていたし、下忍から1年もたたず暗部に突っ込まれたのだが。

サクヤはそれら全て威光だと考えていた。

 

 

 

イタチはこんなしょうもない話にこの技術を使うのもどうかと一瞬冷静になるが

良く考えたら昔したあの取引は、イタチにとって今、方々にばれたら立場がやばくなるものであった。

あの取引は、いわばイタチが自分の欲に溺れ、一族を売ったようなものだ。

幼き日のサクヤがそこまで頭を回してたかは定かでは無いが、ある意味あの制限は必要であったのだ。

あのままサクヤと、イタチの思惑通りなし崩しに取引を続けていたら、うちはの諸々は全てサクヤから木の葉に筒抜け、自分にスパイの話しが来る前に一族皆殺しも有りえた。

 

ココで話すべきではない事なのかもしれない。

しかし、チャンスはもう今しかなかった。

これを逃せば、サクヤは何も聞かず『明確なる何か』を保ち続け、イタチの監視と言う任務を遂行し、成し遂げるであろう。

それでは、ダメだった。

サクヤの優しさに、柔さに付け込むのは今しかない。

 

イタチはいい加減動物のテンから離れられないサクヤに声をかける。

 

 

「あの、取りあえず動物のテンから離れて下さい。」

 

「はい。」

 

何を想像していたのか分からないが、潔く離れられたようだ。

 

「で、その、昔の話になるのですが。木の葉の西にある遺跡、覚えていますか?」

 

「え?ああ、知ってるよ。よく行ったよ。まあ遺跡巡り好きだから、西と言わず東西南北里外まで行ってたけど」

 

「それは…気になりますが置いておいて。…そこでうちはの少年に会いませんでした?」

 

その言葉にサクヤは一瞬動揺するが、すぐ表情を繕った。

サクヤが何を考えたか分かるからこそ、その動揺を感じ取れたが、自分が何の情報もなしにサクヤに相対していたらその動揺は感じ取れなかっただろう。

それ程一瞬であった。

そして繕った面の下にはいつでもイタチの口をつぐめるよう考えているのが分かった。

 

緊張が走る

イタチは、極冷静にその言葉を口にする。

 

「それ、俺です。」

 

「…は?」

 

「ですから、それ、俺なんです。」

 

「はああああああああああああ?!」

 

 

結界と封印をかけていてよかった。

もし、この場が戦場であったら、森中に声が響き渡り、敵にすぐ見つかっただろう。

『あ』の口から脱せないサクヤの様子にイタチは色んな意味で胸がすいた

 

「その、やはり、気付いてなかったようですね…一応何度か接点はあったんですけど…

これからは他人だと言われていたので俺も言い出しにくくて…すみません。」

 

イタチの言葉に正気に戻ったのか、サクヤはハッと目の前に焦点を合わせるが、その眼はイタチと合う事は無かった。

 

「こちらこそ、あのテン君だとは気付かず数々の無礼すみませんでした。おかげで元気にやっております。あの情報は一生よそには喋りませんし、出しません。変な取引を持ちかけて ま こ と に、申し訳ありませんでした。」

 

所謂土下座である。

 

「いえ、あの、そういうことがしたかったんじゃっ

頭をあげて下さい!!謝るのは俺の方なんです!!寧ろ感謝してるんです!!」

 

思わぬ謝罪にイタチはあせる

しかし、サクヤは感謝の意味を分かっていなかった。

 

「私なんかした?」

 

「しました。」

 

 

心当たりがないのか腕を組んで考えるサクヤにイタチはそろそろと近づいて肩に手をかける。

やはり、男性では無かったな。

細すぎる。

 

「俺に、知識という盾と、幻術という剣と、…何にも代えがたい愛情をくれました。」

 

 

おでことおでこがこつんと当たりイタチは目を瞑った。

いつか追いつこうとしたその人は、遠いようで近かった。

最初からこうすればよかった気がしない事も無いが、遠回りしてよかったとも思う。

動揺しているのか要領を得ない返事にイタチはサクヤと再度目を合わせる。

 

「あの、辞めてくださりません?めっちゃ怒ってるのは心底理解したので。」

 

かけた幻術はことごとく退けられた。

疲れたようにイタチに返事をするサクヤ

イタチは久しぶりに笑った気がした。



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77

あれから特に何と言う何がある訳でもなく、イタチの監視兼マンセルは続いた。

ただ、イタチの体感だが、サクヤとの間にあった『明確なる何か』は少しは消えていたようだった。

 

「あれ?イタチ君?」

「あー!!お前!!」

 

木の葉のスーパーで鉢合わせたのはサクヤと、九尾の人柱力のナルトであった。

イタチはサスケのアカデミーの帰り、母に頼まれた買い物をしに寄っただけである。

サクヤが3代目の手配により、ナルトの保護者替わりをしているとは聞いていたが、手をつないでスーパーに表れるほど仲がいいとは知らなかった。

 

ナルトはサスケに見覚えがあるのか、初っ端からケンカを売っているが、サスケに相手にされていなかった。

憤慨するナルト

そしてナルトの手を引っ張り止めるサクヤの、長くない堪忍袋の緒は切れ、拳骨は叩き込まれた。

サスケはその様子を煽るので、すぐさまイタチの拳骨も披露する事になる。

 

 

「いやーイタチ君とここで会うとは…」

「今日はキャベツが安いらしいです。」

「あ、やっぱり?」

 

2人はお互い、狙うは同じターゲットだと確認した。

協定が今ここに結ばれた。

 

腐っても現役の忍び、向かうところ敵なしと思いきや、戦いは惨劇の景を呈した。

二人が、サスケとナルトの分までキャベツを手に入れる事が出来たのは、正に奇跡と言って憚らないであろう。

 

「やっぱり主婦は強いな…」

 

「私もうちょっと修行増やそうかな…」

 

何の修行だ。

 

 

 

おひとり様一つまでのキャベツは、無事一人一つずつ買えたが、ナルトとサスケは競うようにキャベツの大きさを自慢し合うので、仲よく二つずつキャベツを持ってもらう事にした。

 

「おぉれってば、まだまだ平気だもんねー!!」

 

「ふっ汗が垂れてるぞ…。」

 

「こっこれは涙だってばよ!!」

 

「泣くほど重いのか…」

 

後ろからの冷静なツッコミにナルトはうっと詰まる。

味方の援護は期待できそうになかった。

 

「サスケ!!お前だって汗ダラダラだってばよ!!」

 

「こっこれは、あれだ!!…冷や汗だ!!。」

 

「いったい何の冷や汗だ…」

 

「うぐっ」

 

兄の呆れた視線はサスケに良く突き刺さった。

未だ5歳の身にはキャベツ2つは重いらしく二人は店から出て数十mでばててしまい、その荷物は地に着く前、イタチとサクヤに持っていかれた。

 

「ナルトくん、今日はロールキャベツだ。手伝ってくれるよな?」

 

「サスケ、母さんが家で待ってる。帰ろう。」

 

ナルトとサスケは元気よく返事を返す。

 

 

 

 

―――

――

 

 

うちはのクーデターが計画されてからというもの、うちは敷地内はよそ者に厳しくなっていた。特にうちはを里の端に追いやったと、千手の者に対しては喧嘩を売るほどであった。

 

うちはの若い衆が真の目の者にケンカを売っていると聞いたイタチはすぐに家を飛び出した。

真の目でうちは用があると言えばサクヤぐらいしか思付かなかった。

事が大きくなる前に、なんとか納めなければ、命が危うい。

イタチは息も切れ切れで現場に付く。

そこには予想通りの元気にメンチを切るサクヤと、サクヤの殺気にやられたのか固まっているうちはの若い衆

 

そして母、ミコトがいた。

 

「あら!!ねえあなた!!もしかしてあの時の真の目の子!」

 

「あ!!ミコトさん!!

シャッス!!

お変わりないようで!!

イタチ君にはお世話になってます!!」

 

何があった。

 

取りあえず問題にはならなかったようなので先回りして家で待ってる事にしたのだが中々帰って来ない…玄関先がうるさくなったので様子を見に行くと、サスケが道をふさいでいた。

 

「兄さんは今いない!!」

 

 

 

大きなたんこぶを見て、サクヤのサスケを見る目が『生意気』から『可哀相』になっていた。

 

「あー悪いな…今日はこれでお暇するよ。じゃあイタチ君、また任務でな。

ミコトさんもまた機会があったら団子でも食べながら話しましょう。」

 

そう言って、母の持っているはずだった荷物を玄関先に置いて去って行く。

一体二人がどういう関係なのか分からなかったイタチは、サクヤの口をこれから割ろうと考えていた為、まさか帰るとは思っておらず、一歩出遅れる。

サスケは、サクヤが母の荷物持ちをしていてくれたことに、やっと気づき声を上げる。

 

「べっべつに、追い出そうとしたわけじゃない!!

違う時に来たら…飯でも食べて行けよ…!!」

 

「ふふふ、もう外にいるわよ?」

「あっこら!!勝手に帰るな!!じゃあなー!!」

 

イタチはサスケが玄関から飛び出すのを追い、左手を上げて頭をぺこりと下げるサクヤを見つめるしかできなかった。

 

 

 

 

 

「母さん!!何でサクヤと知り合いだって教えてくれなかったんだ!!」

 

「そんなの私だって、サクヤちゃんと貴方が知り合いだったなんて知らなかったわよ。」

 

その日のキッチンは、珍しくイタチがうるさかった。

珍しいイタチの様子にサスケが目を白黒させている。

サクヤが去った後、性急に母とサクヤの関係を聞かれたので『イタチ』の名前を付けた女の子だと説明したのである。

 

「それにしたって!!

ああ!!もっと早く知りたかった!!もうちょっと特徴覚えといてくれてもいいだろ!?」

 

「イタチ、貴方いい加減にしなさい。

過去を悔やんだって仕方ないでしょ!!」

 

家族の前では滅多に感情や表情を崩さないイタチが、こうまで崩すのは珍しかった。

特にサスケが生まれてきてからは顕著であった。

冷静を装っているが、フガクは読んでいる新聞の内容が頭に入って無かったし、そもそも、その文字は上下逆さまであった。

 

「それにしたって、何がそんなに悔しいのよ…」

 

ミコトの言い分はもっともで、イタチ以外の3人は何故ここまでイタチがサクヤに執着するのか全く分かっていなかった。

火影の狛犬がイタチと任務に当たっているとは聞いていたが、特に何かあったとは聞いてない。

家まで来たのも、今回が初めてだったし、街中で暇な時間を潰す姿はちらほらと見たが、そこまで会話が続くような二人ではなさそうであった。

 

「それは…」

 

「兄さんは、あいつが好きなの?」

 

サスケの疑問はストレートであった。

素直で率直で曇りが無く、それに応えるのにはとても勇気が必要であった。

苦い顔をして黙り込む兄に、質問しては良くない事だったかと、サスケはなかった事にしたかったが、それは両親も気になる所であった為、自ずと視線はイタチに集まる。

 

「…何でもない。」

 

中腰で母に文句を言っていた勢いは消え、すとんと正座に戻るイタチは、貝のように口を閉ざす。

大拗ねモード(大いに拗ねてるモード)に入ったイタチに、両親は視線を合わせ、これは聞きだすのは無理だな、と悟った。

 

 



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78

なんやかんや言って、イタチはサクヤの家に通ったし

その後イタチの家に来たサクヤは、サスケの誘うままチャッカリ、夕飯まで食べた。

家族にサクヤは好評で、父であるフガクまで、サクヤと話をしたがってたいる様子を見せた。

サクヤは

 

「私というクッションを置いて家族とコミュニケーションを取りたいだけだよ。」

 

等と言っていたが、あれはどう見たって、サクヤに興味があった。

イタチはあの日、詮索を大拗ねモードで回避した事が切っ掛けで、父や母、サスケがサクヤに興味を持ったことに気付いていなかった。

 

 

 

「最近火遁の成功率が下がってんだよね…まあ前から低いんだけど、どうも力推しでチャクラ練ると失敗するから、コントロールしようと調節するんだけど、そうなると火力が足りなくなるって言うか……

端的に言うと、減速する。」

 

「そんな難しいのか?普通の火遁より、チャクラ比率がだいぶ高いとは思ってたが…」

 

イタチとサクヤの二人が縁側で話していると、決まってフガクはサクヤを挟んで縁側に座る。

イタチはそれが少し嫌であった。サクヤはイタチの客であるのに、フガクを相手にすると、サクヤはイタチをいつも蔑ろにするのだ。

 

その日も変わらず

「あ、お邪魔してます」

「来たか。」

から始まったフガクとサクヤの会話は、イタチを通り過ぎて隣からの声に変わった。

 

 

 

「確か、お前は白い火遁だったか…。うちはではお前の祖母のニヒトさんが有名だったな。」

 

「あーなんか聞いたことはあります。

勢い余って初代の髪燃やした人でしたっけ?

ん?や、違うな…これは叔父さんの方か。

えーっと……樹海降誕を端から燃やしてった人だっけ?」

 

「……概ね合っているが、その簡潔すぎる説明は誤解を呼ぶぞ。」

 

「いや、ブーメラン…。サスケ君、最近フガクさんに構ってもらえないって拗ねてましたよ。フガクさん散々サスケ君の話するのに何言ってんだとか思いましたよ~。」

 

「…。」

 

急な話の転換に着いて行けないフガクは新聞を開いて黙する

後ろでミコトがくすくすと笑い、サスケが顔を真っ赤にしてサクヤに突進する。

サクヤが誰かと話すと、いつも周りが巻き込まれる。

周りを巻き込んで会話をするのに、なぜこの人が友人と言うものを作れないのか不思議であった。

 

「俺は本家筋ではないからな…あまり武勇伝は知らないが、お前はもう少し先祖を敬ったらどうなんだ?」

 

話しを無理やり元に戻すフガクにサクヤは

 

「じゃあフガクさんはもう少し家族を顧みるべきですね。イタチ君にこの前脛蹴られたんですけど。どういう教育をなさっているので?」

 

無い眼鏡を上げるふりをして、教育ママを演じる。

サクヤを真似てサスケが「どういう教育をなさっているので?」と繰り返すので

イタチは笑うしかなかった。

 

「あなた、お茶を入れてきますね。」

 

イタチにつられて、ひとしきり笑ったミコトが席を立つ

と、サクヤはイタチとサスケに目配せをする。

「おいテメェ、まさかミコトさんを顎で使える立場だってゆうんか?ああん?」

とばかりに厳しい視線が刺さるのでイタチとサスケは二人そろって立ち上がるのだ。

 

早々にお菓子を持って、サクヤの隣に移動するサスケは、自分の立場をよく分かっている。

イタチは、まだ余所行きの顔で可愛がられているサスケに、『今の内だけだぞ。』と視線を送ってミコトの手伝いをする。

 

縁側から父の笑い声が響いて、サスケが何かを話す声が聞こえる。

何を話しているのか、そわそわと気にしているイタチを見てミコトが口を押えた。

押さえないと大笑いしてしまいそうになるのだ。

 

「イタチ、いいのよ。あとは私がやるわ…気になるんでしょ?」

 

的確な母の言葉にイタチはなにか負けた様でムッとする。

縁側から今度はサクヤの笑い声が聞こえる。

ずっとこうであればいいのにと願ってしまうのは罪であろうか。

しかし、サクヤが

この家に来るまでの間、掛けられる言葉の数々を思えばそれは願えなかった。

 

 

「千手が何の用だ。」

「うちはを里端に追いやった千手だ…」

「あいつさえいなけりゃ、うちの倅だって活躍できるってのによ…」

「第一あの任務で生き残っているのがあいつだけって本当かよ…全部あいつが殺したんじゃねえのか?」

「目さえなければただの雑魚だろ。」

 

お年寄り相手になればサクヤの祖母の逸話が未だ残っているのか、好意的に接してくるものが多いものの、木の葉にクーデターを仕掛けようとしている一族としては、千手であるサクヤは目の上のタンコブだった。

 

千手とうちはの友好の証しであるサクヤは

千手でも、うちはでもあるサクヤは

どちらかが互いの血を認めない限り

 

どこまで行っても、どちらにも属せない。

 

 

サクヤが真の目であって本当に良かったとイタチは思った。

自分だったらこの板ばさみは、木の葉と一族との板挟みと同じくらいに辛い。

必然的にイタチは、用事があればサクヤの家に行くようになった。

 

 

 

 

―――

――

 

「ねえ、それ、どうにかなんないの?」

 

「無理ですね。俺の親友が亡くなったんです。もうちょっとかける声が違うでしょう。」

 

辛辣ながらも、サクヤがイタチを気遣ってくれている事は明白であった。

イタチの親友たるシスイが自殺したことはもう里中に行き渡っていた。

何せ『瞬身のシスイ』なんて二つ名が通っていたぐらいである、見なくなれば誰だって気付く。

 

「今日の任務無し。これから私暇なんだけど。あんた暇?」

 

イタチは、あまり『うちは』には居たくはないが、サクヤのその言葉に二つ返事で乗るほども元気も無かった。

今は、放って置いて欲しかった。

先日の諍いが頭をよぎる。

身内に疑われるのは辛いものがある。

 

是とも非とも言い難い態度で、言葉を濁していたらイタチの手はサクヤに引かれた。

おおよそ、思っている事を察したのであろう

引れる手の向くまま行く道は、良く通る道のりである。

 

 

 

玄関先で、いつもの如く真の目のお年寄りからもらう飴やクッキー、御饅頭等のお菓子は、イタチの胃袋の中に早急に詰め込まれる。

この量を突っ込んでもまだ飯が入るのだから忍びって凄い。

もはや恒例行事となっている光景に、サクヤは微妙な目を向け、頬袋と、ポケットが菓子でいっぱいになった頃、サクヤはイタチを家に招き入れた。

しかし、玄関でサクヤは靴も脱がず鍵を手に外に出て

庭に向かうと、隣接している蔵の扉を開けた。

 

 

淡々と、何かしらをしていることは分かっていたが、その手元は暗くて、夜目が利くうちはでも見えなかった。

この蔵はどうやらカラクリ屋敷らしく、あちらこちらからカチカチと音が響き、鐘まで鳴るものだからイタチは驚く。

 

「なんだ、この蔵…?」

 

「あれ?イタチ君が知らないなんて珍しい。

こういう時いつも『全て知ってる』とばかりに尊大にふんぞり返ってるのに」

 

煽りの入った言葉に『俺だって知らない事もある』と言わんばかりにイタチは睨むので、サクヤは苦く笑うしかなかった。

その態度自体が尊大であることはイタチは分かっていない。

サクヤは藪蛇をつついたと、話を元に戻す。

 

「…私の父『作間の蔵』だよ。

私も全ては把握してないけど

ここん中、結構貴重忍術の宝庫で、なんだかわからないけど封印されてたり、妙な所に結界があったり、なんとなく集めたカラクリが仕掛けてあったりするから気を付けて。

イタチ君の事だから、無闇矢鱈に触ることはないと思うけど、ここで何起きても自己責任って事で。」

 

そう言ってサクヤは蔵の真ん中

巻物や本、レンジにネジ、歯車、何のためか燃えた竹筒が散らばる中、唯一空いているスペースに腰を下ろした。

 

 

後ろの扉は閉まると同時に、カラクリと結界封印が静かに牙を研いでいる。

天窓があるのか、東から降ってくる光は書物の森を少しばかり照らして、影はサクヤを閉じ込めた。

サクヤの赤い目が、わずかな光を反射して暗い水槽(蔵)の中で浮いて、まるで写輪眼の様に鈍く光っている。

この目をイタチは知っていた。

 

イタチがサクヤと言う人間を、初めて認識した時

恐れを抱いた目

諦めと、戒めと、矛盾を抱えた、イタチを見ていない、空っぽの目だ。

 

これは、逃げられそうにない。

 

前門の虎、後門の狼

イタチは逃げる事を諦めて、これから来るであろうサクヤの質問を、躱すことに神経を注ぐ事にした。

 

「さあ腹を裂いて話そうじゃないか!!」

 

ニヤッと悪い顔で笑うサクヤ。

イタチは知っている。

これは、只笑ったら悪い顔になってしまった時の顔だ。

しかし天井から降る光のコントラストで、悪い顔に拍車がかかって完全に悪い顔である。

イタチは唾を飲んでサクヤを見つめた。

 

 

 

 

 

任務には守秘義務がある。

それが例え師であれ、親であれ、それを口にすることは里に仇なす事とされ、発覚次第、即刻首が物理で落ちる。

況してや、イタチの持つ二重スパイの情報はそう易々話せる内容ではない。

 

が、サクヤには幼き日から今この時、イタチを、延いてはうちはをある意味助けた()がある。

イタチが漏らす情報に待ったをかけたおかげで『うちは』が未だ生きている。

サクヤの優しさと、柔さと、賢さが生んだ恩である。

それを正確に解かっているのはイタチだけだ

そして、うちはの門外不出の機密情報を外に出して、危機に陥れたのもイタチなので

返済義務があるのもイタチ一人である。

 




もしかして自業自得…
もしかしなくても自業自得。


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79

最初に話し出だした(腑を見せた)のはサクヤで、

サクヤの腑は『真の目作間』の持っていた目であった。

 

「『作間の目』の話になるんだが

いや、実際には叔父の目だから隙間の目なんだけど、父さんが封印したあと、あの人死んじゃったから誰も封印が解けてなくって、実を言うと目を移植した事は無いんだ

目の封印が中々解ける代物じゃなくってな、現在持ち主である叔父の目を盗んで、色々やっているんだが未だ研究段階で…」

 

朗々と語るサクヤの話に、イタチは

 

「まて、いったい何の話だ。」

 

待ったをかけた。

 

「……そうか。

そう言えばお前、知らないのか!!」

 

サクヤは何を驚いているのか目を瞬かせるが、イタチはサクヤの言うところの始まりの前、『作間の目』という根本的な所から知らなかった。

 

「まず、『作間の目』ってなんだ。

作間って言うのは…コマさんの父親で合っているんだよな?」

 

イタチが分からないと話している横でサクヤは

「そーかそーか、知らないのかー…そうだよな…知るわけないよな…」

とかなんとか言ってごそごそと背後の紙の山を漁っている。

 

「おい、話を聞け。」

 

どすの利いた声にサクヤは『今、後ろを振り向いたら確実に写輪眼にやられる』と身を固めた。

 

「ままままあ、おおおちつけけよ。」

 

サクヤの分かりやすい動揺に、イタチはため息を吐くと写輪眼を収める。

サクヤはチャクラの荒立ちが収まって行くのを感じ、安堵に力の入っていた肩を落とした。

と、探していたものを発見したのかサクヤが何か大きな布を広げる。

 

 

 

「これは…タペストリー…ですか?」

 

「さぁ?

棟梁に『家系図書きたいんだけど結構でかい紙無い?』って聞いたら、障子紙貰って

やまちゃんに『使いかけでいいから、なんかペンキない?』って聞いたら

『お前の字汚すぎて読めねェから俺が書いてやるよ』ってなって、草案書いて任せたら

何を聞きつけたか真の目の連中がワラワラ集まってきて

『はい』って渡された時には、もうこうなってた。」

 

その布は緑鮮やかで、真ん中には今にも飛び出さんとする白い狐がいた。

狐の面(おもて)には真の目の者の名前がまるで毛並みの様に字体を変えてずらりと並ぶ。

一見しただけで相当な物であると分かる代物だった。

イタチは、その末尾にサクヤの名前を見つける。

 

「監督って言うものは一番最後に名前を持ってくるものなんだと。」

 

イタチの視線を追ってか、サクヤは胡坐に肘をつくと、反対の手で尻尾の先、少し赤が入った灰色で書きこまれた文字を撫でた

真ん中に織り込まれた白い狐の後ろ、竹林の背景に濃い霧が、緑の線を消しては現して

良く見れば節と節の間、一つ一つに名前が刺繍されている

その文字を追っていくと、里の主要一族全ての名前がその竹に書きこまれていた。

 

「あ、あった。ここ、ここ。」

 

そう言ってサクヤが指差したところは『うちは』の竹と、『千手』の竹の間に新たな節が始まっていた。

そこには『狭間、隙間、作間』の名前が連なる。

更にたどると両側の竹には『ニヒト』『扉間』。

 

「話はココから始まる。

うちはニヒトと、千手扉間が結婚した後に生まれたのが第一子狭間、第二子隙間、そして第三子作間。

千手とうちはが結婚するまでも色々あるんだが今は省くな。

このころはまだ、小さい戦争があちらこちらであって、二人は晩婚に次ぎ、子供も生まれるのが遅かったんだ。

長男狭間と、五年挟んで次男隙間、あいだ3年あって三男作間。

作間が生まれるころには第1次忍界大戦がはじまっていた。

 

しかし、作間を生んでそう間をおかず産後の経過が悪かったのか母体であるニヒトは死んでしまう。

それで何を思ったか二男である隙間が5歳にして写輪眼を開眼してな。

更に戦中万華鏡写輪眼を開眼して、調子に乗って敵陣に突っ込んだら死んだ。

そうして隙間の写輪眼は兄である狭間に受け継がれる。

 

しかしその狭間も戦で亡くなる。本人から受け取ったのは父『扉間』、そしてあの雷の国でのクーデター、金銀兄弟の襲撃にて扉間も亡くなり、

目は最後の、『扉間』と『ニヒト』の血を継ぐ作間に渡されることになった。

その眼が紆余曲折あり、真の目のこの家で継がれている。

 

私の父はすでに亡くなっている。

第3次忍界大戦中、任務にて死亡したと里からは聞いた。

父は二代目が残した写輪眼を封印する研究をしていて

現状、目は封印されている状態だ。

この話をされたのは私が7歳の時、九尾襲撃で母が亡くなった時だ。

父の遺言では私に渡すことを頼んでいたらしいんだけど、サザミとしては私が一人前になるまで、又はサザミが死ぬまで契約を継がせることはしたくなかったらしい。

でも、この目を渡せる人間が私しか残ってないから話したんだと私は思っている。

でなければこんな何のとりえもない子供に契約は継がせない。」

 

知らない話だった。

おいそれとは知ってはいけない話でもあったのだろう。

父に聞いても、シスイに聞いても答えられない、サクヤの話しだ

何時だってサクヤはイタチに問いかけては、答えをイタチの中から引き出す話をする。

でも今は、鮮やかな布に鈍く影を落とすだけで、口を挟もうにも、挟めない。

白い狐に落ちる影はイタチの心を表しているかのように濁って見えた。

 

 

「け……い…やく…」

 

 

やっとの思いで出た言葉は、言語にはならず、途切れた単語だけだった。

イタチの様子に一瞥もくれないサクヤは言葉を繰り返す。

 

「契約。

ピンポンとの契約により、この目を受け取るものは、死亡と同時に塵も無く燃え尽きる事になっている

現在、作間の目の所有者である叔父、サザミの体が燃え尽きれば次は私だ。

あの目を狙うものは多い。

敵国、敵里、そして仲間からも…」

 

『仲間』そう言ってイタチにやっと目を向けるサクヤ、しかしそれはすぐそらされた。

 

「事実、分かっているだけで、伝説の三忍『大蛇丸』、根の『ダンゾウ』による襲撃はうけている。

お前も知っているだろう?伝書鳩が仲間を皆殺しにした話を。外向けには任務の伝達不具合により全滅だったが、あれは私とサザミを狙って襲撃して、返り討ちにあっただけにすぎん。

サザミはその時の怪我で忍びを引退した。

 

手負い一人にしがない中忍、今なら奪おうと思えばいつでも奪えられる。

ある意味、未だクーデターを目論む『うちはの者』に襲撃されてない事は奇跡だ。」

 

この人は、うちはの現状まで視野に入れていた。

写輪眼と聞いてうちはが黙っているはずない。

里の上層部も黙って見ているはずがない。

 

「でも、あいつらは『目』自体の場所を知らない。

父さんが封印したことは知っていても、どこに封印したのかは知らない。

サザミが情報を握っているのは確かだが、忍びでない今、無理に口を割らせることもできない。

しがない中忍が、親の七光りが、そんな情報を持っているはずがない。」

 

それを、黙って見ていられるようにこの人達は調整してきたんだ

無力だと嘯き、道化だと笑い、隙に付け入って扉間兄弟の形見を残してきた。

 

「サクヤさんは…未だ、目を…受け継いではいないんですよね、

その、もし…サクヤさんが継いだ場合は、眼をどうするつもりで…?」

 

「どうもしない。

私の父もどうもしなかった。そして叔父のサザミも。二人はただ、次へ続く命の為に残してくれただけであり、私、延いては真の目、里の為にそうした。

これはあるだけで抑止力が働くものだ、行使するべき力では無い。最終的には朽ち果てればいいと思っている。」

 

「さ、くやさんは…なんで俺にその話を…したんですか?

もしかしたら、俺は、うちはに、里に言われて、サクヤさんの優しさに付け込んで、情報を聞き出しているだけかもしれないんですよ?」

 

「そうなるなら、とっくにそうなっていた。私は、イタチ君の持つ情報と等価のモノを提示しただけにすぎん。」

 

 

仕方ないと言うように笑ったサクヤをイタチは何度も見てきた。

幼いころの共にいたいと言うイタチの我儘に、暗部でのイタチの覚悟に、そして

こんな時にも、この人はこの顔をするのだ。

そして、それに眉を寄せるイタチの額を付いて

 

「等価交換だ。」

 

 

あの言葉を口に出す。

 



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80

新たなる80話です。
間に1話入れ忘れました。
ごめんなさい。


イタチは、サクヤの覚悟に、敬意を称して全て話すことを決意した。

 

「サクヤさん…いや、コマさん。」

 

「あ、お前のあれやそれは、実はなんとなく全容は知ってるから、私の話す内容に誤差が無いかとか、継ぎ足す事とか頼む。」

 

 

「俺の覚悟を返して!!」

 

 

 

 

キャラ崩壊も激しい所であるが今さらである。

これからもしかして更に顔面崩壊を起こす君が恐ろしい

サクヤはイタチの覚悟をよそに、のんきに話し出す。

 

「取りあえずクーデターの方からな。

うちはとしては、里での待遇が変わらない限りクーデターを起こす気満々。

現在元々過激派だったマダラの系譜と、それに若い衆が合わさって約半数以上がクーデターに賛成になっている。

穏健派が多く占めていたそれまでは、クーデター反対というか、話し合いでの解決を主に進めていたが、九尾事件にて、里の上層部からの疑惑がいつまでも晴れないのもあってか話し合いは難航していた。

そして時間が経つにつれ、穏健派から、中間の派党が出てきたと。

これにより意見が三分し、数的には過激派に傾く事になっている。若い衆も元々はこのどっちにもない中間にいた者が多い。

私調べによると、『現状に満足は出来ないが、クーデターと言うまでも無いんじゃないか?』と思っていた連中が軒並み過激派に移動している。

この認識で間違いないな?」

 

「何処からそんなことを…いや、もう好きにしてくれ…

序にいくつか情報を足すならば。シスイが身投げしたことによって穏健派までもが腰を上げ始めている。今の状態はそう長くはもたないだろう。」

 

サクヤのあまりの独断専行ぶりにイタチは頭を抱えた。

というか、こんなに状況を把握しているならもっと早くに手を打てたのではないのかとか、なぜ今さらになってこうも話が早く進むのかとか、様々な事が頭を巡るが、イタチはそのどれにも答えを出せなかった。

取りあえずサクヤがやる気になってくれたのなら…少しは事態が好転してくれるだろうと、イタチは思う事にした。

 

「私達の目標としては何がしたいのか、ここで確定しておこう。

このクーデターを止めることを第一として、最終的にはイタチはどうしたい?どうなりたい?」

 

イタチは不謹慎にも、サクヤの言った『私達』と言う言葉に感動していた。

ここ1年、様々な任務を共にやって過ごしてきたが初めて、サクヤがイタチを仲間として認識した瞬間でもあった。

サクヤは、イタチと共に有ってくれると言うのだ。

 

「俺に…どうなりたいという何かはない…。

世界が、とは言わない。ただ、…そう。

うちはの未来であるサスケが、平和であればいいと思う。」

 

「…そうか。

お前…結構強欲だよな。」

 

「なっ、そう言うコマさんはどうなんです!!」

 

「私は、取りあえず木の葉の内に戦争が起きなければいい。

真の目の者が死ななければもっといい。」

 

「そう、変わらないじゃないですか…。」

 

 

「お前の愛が重いって言ってんだよ。」

 

「俺は規模の話をしてるんです。」

 

ぎゃいのぎゃいの話す2人は何時かの木陰より、賑やかであった。

 

 

 

 

 

「まあテンの愛が重くて彼女にフラれる話は置いておいて」

「うるさい!!そんな話してないでしょう!?」

 

「その木の葉の結界に侵入していると思われる奴は気になるな。」

 

「……俺も調べていますが、逃げ足が速いのか、形跡が丸でない。

詳しい事は接触しなければ出てこないと思います。」

 

「接触は最後の手段に取っておきたいけど…内乱の内に動かれる事必須だから、そうも言ってられなくなりそうだし…」

 

「同時に解決すればいいんですが、いや、同時とはいかないけれどクーデターは最優先に阻止したい…そして腰を据えてこの問題には取り組むべきだと俺は思ってる。

あとクーデターの方にダンゾウが身を乗り出していまして、

狙っているのは目です。

シスイの目が一つ奪われました。」

 

「成る程、そう言う事ね…。」

 

 

眉間に親指を当てじっくりと考えるサクヤ。

 

「取りあえずお疲れとでも言っておくよ。」

 

「いえ、コマさんの方も、まさかそんなことになっていようとは…」

 

形だけのお疲れにイタチは反射的に言葉を返すが、サクヤも似たようなこと(血)に悩まされ、似たような厄介(写輪眼を巡る云々)に苛まれていたのを思い出す。

重い溜息が出てくる。

 

「一応の目標はうちはを止める。又はダンゾウを止めるところからだな…」

 

 

もう手遅れな気がしなくもない。

という言葉を飲み込んでイタチは前向きな言葉を返す。

 

「ああ、そのためにはうちはと木の葉のこじれを如何にかしないとならない…コマさんは何か手、思い付いたか?」

 

「んや、全然。ダンゾウ暗殺計画を練ってるけど。全然無理だ。」

 

「おいまて、何故そっちに行く。」

 

「私、ダンゾウ怖い。テン、ダンゾウ邪魔。合理的な答えだと思うけど?」

 

時々出てくるサクヤの突飛な言葉にイタチは突っ込むのを諦めた瞬間であった。

その後も色々策を練っては崩しを繰り返し、昼飯であるそうめんを腹に突っ込んで、蔵にこもり、イタチはさらに呆れる事になる。

 

 

 

「コマさん…

あんたどんだけ情報隠し持ってんだよ!!」

 

「えへ?」

 

あさっての方向を向いて舌を出す姿は可愛いとは形容できず

獲物を前に舌なめずりする獣のそれだった。



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81

時系列的には78話位


夕刻、豆腐屋の笛の音が辺りに響く。

イタチは来る途中サスケに「修行!!」と引っ張られて行き、姿はない。

サクヤはミコトと、夕飯を手伝う約束をしたのでイタチ宅まで来たはいいが、先程ミコトが豆腐を買いに、つっかけをかけて出かけてしまっていた。

サクヤは今日のメニューを冷蔵庫の中身から勝手に推測したり、材料を切ったり、必要そうなものの調味料を測って置いたりと下準備をして待っていたが、それも全て終えてしまって…

端的に言うなれば、暇であった。

 

帰ってくるのが遅い…。

しかしサクヤは、大方ミコトが近所のおばさん衆に捕まり、話に花を咲かせているのは分かっていた。心配は必要なさそうである。

 

そうと分かれば、勝手知ったる何とやら。

人んちの冷凍庫を勝手に漁ってアイスを2つ発見したサクヤは、意気揚々と口に突っ込んで休憩きゅうけーいと腰を下ろした。

しかし、意気揚々と腰を下ろしたは良いものの、じわじわと不安が込みあがってきて、冷や汗が頬を伝った。

 

もしかしてこのアイスはイタチのだったかもしれん…

 

 

どうせ怒られるなら巻き添えを…ともう一人いるはずの家の中を彷徨っていたら縁側にその姿を発見する。

一声かけて近寄るがその人は気分が浮かないようで、返事もなくただ庭を眺めるだけであった。

何かしてしまっただろうか?と一瞬サクヤは思案するが、今のところ心当たりしかないので、考えるのはすっぱり諦めて本人に聞く事にした。

もう一度口を開こうとするがしかし、その言葉は飲み込まれる。

 

 

 

「近いうちに、イタチがお前に助けを求めると思う。

もし、その時が来たらイタチを助けてやってくれ。」

 

鯉を眺めながら話すフガクの表情は見えず、ただ鯉だけが水面を揺らしていた。

サクヤはフガクの頼みに、はっきりと返す。

 

「いやです。」

 

サクヤのあまりな答えにむっとしてフガクは振り返る。

そこには人の家の冷凍庫を漁って出てきた、アイスが差し出されていた。

フガクは人工的な水色を数秒睨みつけ、ため息をついて受け取る。

 

大方一人で食べるのも気が引けたので、家長でもあるフガクに差し出して、イタチの追撃を免れようとしているのだろう。

そう予想したフガク。

大正解。そのままである。

ソーダアイスを咥えたフガクをサクヤは笑う

 

「似合わねー!」

 

フガクは、これからの事考えると、こんな嘲笑どうって事は無かったが、イラついたので嗤うサクヤの脛にチョップを入れた。

あだっ!!

と言う声と共に、蹲り、転がる姿は忍びに非ず。

 

「話し戻しますけど…

イタチ君は自分で勝手に助かるんです。

イタチ君を助けるべきは私じゃない。貴方達『うちは』だ。」

 

ひとしきり転がって痛みが落ち着いたサクヤは、よっこらせとフガクの隣に腰を下ろした。

 

 

「だが、お前も『うちは』だ。

写輪眼が開眼しているだろう。」

 

「…よくご存じで。」

 

サクヤの写輪眼の開眼は、サクヤの内では最極秘事項であった。

知っているのはサザミ位、それも開眼して数日、舌の根も乾かない内に封印されているはずで、もし知っているならば監視の類を付けられる里上層部だろうとサクヤは考えていた。

これはヤバイ事になったな…

どこから漏れたんだか…

サクヤが頭をひねらせていると、フガクが簡潔な答えをくれる。

 

「サザミから簡易的な封印の方法を聞かれた。」

 

「成る程。」

 

思わぬところから漏れたものだ。とサクヤは感心する。

それと同時に、このうちはフガクと言う者が、とても頭の切れる者だと言う事を認識した。

 

サザミとて素直に聞いた訳ではないだろう。

さりげなく、大胆に

しかし、そうと分からぬよう、言葉を使って、視線を使って、ありとあらゆるものを使って、このうちはフガクから聞きだしたに違いなかった。

それをしてなお、フガクは少ない情報からサクヤの写輪眼開眼に辿り着く。

切れ者、それも奈良シカクに引けを取らない。

 

ダンゾウがうちはを、いや、『フガクを族長に収めたうちは』を警戒するのも分かる。

そのキレを持ってして、この人は身内に甘い。

いや、優しさと言うべきか。

一応部外者で、仮にも倒すべき火影のコマであるサクヤに、それを頼むのはお門違いだ。

この者は、クーデターに失敗した場合、イタチだけは助けろと言っているのだ。

 

 

 

「確かに私には、うちはの血が、流れています。

でも千手の血も同じだけ流れてます。

そして、私は真の目です。

どちらでもない、真の目なんです。」

 

サクヤの言葉にフガクはふっと息を溢して笑った

そして過去、狛犬と言われた人を思い出す。

 

『俺は真の目だから…困っていたら、手を貸さざる負えない。

だから俺の前で困るな。』

 

酷い言い様だと思った。

でも同じぐらい優しい言葉だった。

困っていたら絶対手を貸してくれる、一緒に悩んでくれると言うのだ。

 

隣で呑気にアイスを齧っているサクヤは、真の目。

誰にでも手を貸す、真の目。

それは誰も助けないが、誰かに手を貸すことは出来ると言う事。

 

親子そろって言葉遊びが過ぎる。

そして、親子そろって、この『真の目』の手を借りるのだ。

 

 

「イタチを、頼んだ。」

 

 

フガクの持つアイスは溶けて落ちかかっている。

サクヤは、ぼたぼたと落ちていく液体に、気付かないふりをした。




アイスはスタッフ(鯉)が美味しくいただきました。


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82

うちは一族抹殺は成した。

イタチと、()()マダラによって。

 

 

 

サクヤはこの記念すべき(?)第一回情報取引にて、里に侵入している人物をマダラと決定づけるには早計だとイタチに言って聞かせていた。

 

「イタチ…『マダラ説』を信じたい気持ちも分かるが…はっきり言ってそのうちはにある遺跡の目撃情報だけじゃ、それは真実とは言えないんじゃないか?。

『うちはマダラ』じゃあ、話が大きすぎて俯瞰して見れない。

それはとても危ない事だと私は思う。」

 

イタチの話から『マダラ』の言葉が出た時点でサクヤの頭の中にはオビトの名前が浮かんでいた。

しかし、カンペをそのまま伝えることは出来ない。

何故なら、その情報の出所が『前世』と言う、論も証拠も何もない所からだからだ。

よって、このイタチの『マダラ説』を、サクヤはどうにかして、オビトまでは行かないが仮称マダラまでには持っていきたいところであった。

しかし、イタチは1を言って10を理解する者…

イタチには、イタチなりの推測がある。簡単には説得されてくれない。

 

「そうは言っても、現状

木の葉の結界を潜って来られる技術を持っていて、更に里の外から単騎でそこに行く必要のある人物なんて…

かつて里を滅ぼしたがっていた『うちはマダラ』しかありえない。

俺も最初は里外の勢力だとは思ったが…

遺跡には写輪眼を持つものしか通れない仕掛けが付近にたくさんあった。

状況的に写輪眼を持っていることは確実。」

 

「状況証拠だけが証拠じゃない。

真実はいつも一つじゃない。

人間が動いているんだ、それには心理的理由がいくつも絡み合う。

侵入者の目的が何であれ、お前の話は少々…うますぎる。

事実が小説の様に綺麗にまとまる、なんて事はまずない。推測には綻びがどこかしらにある。それを指摘しているんだ。

これしかないと思考を止めたらそこで終わりだ。

安西先生も、諦めたらそこで試合は終了だって言ってただろう?」

 

 

「いや、アンザイ先生って誰ですか。」

 

 

「……うっうん゛っ

…まあ安西先生は置いておくにしても。

叔父の目や、カカシさんの様な移植の前例もある。

『うちはマダラ』と決めつけるのはまだ早いんじゃないのか?」

 

サクヤのわざとらしい咳払いに、イタチの呆れた視線がグサグサと刺さるが、サクヤは白を切ることにした。

応える気のないサクヤにため息を吐くとイタチは自分が集めた情報を一から、馬鹿でも分かるよう、優しく、分かりやすく、サクヤに説明する。

 

「…うちは一族は死体を確実に持って帰るのが掟だ。

里の条約にも記されている。

それは写輪眼という力を敵族に取られないためだと表向きにはなっている。

日向一族は洩らしが無いよう呪印をつけたりするが、写輪眼を持って帰る理由はそれだけでは無い。

写輪眼の扱い辛さは白眼の比じゃない。

たとえ奪えたとしてチャクラも多く使うし、それ相応の人間でないと逆に目に振り回されて自滅する者がほとんどだ。

それ相応の人間は、おいそれと敵から奪った目は入れない。

目自体に幻術を掛けて敵を操る術もうちはにはある。

それを掻い潜り、目が十全に使えているとなると、侵入者は火影級の人物か、『うちは』の者に限ってくる。

影のレベルに成ると、おいそれと一人行動はしないし、出来ない。

そして、過去里抜けしたうちはの血を引くものは『マダラ』一人、だ」

 

 

それは、うちは一族がどれだけ里に貢献してきたか、どれだけ里を守ってくれていたかを表す物的証拠だった。

たとえクーデターを企てていようとも、里に貢献してきた証拠は揺るがない。

 

マダラが里を抜け、襲い、2代目火影となった者に警戒されていようとも

瞳力と言う力を仲間から狙われていようとも

九尾事件の犯人だと睨まれても

ここまで、里を見限る者は『うちはマダラ』以外、誰一人おらず、話し合いで解決しようとしてきた『うちは』の貢献は揺るがない。

 

待遇の停滞は、謀反を呼ぶ。

さりとて待遇は上げ過ぎると力を持ちすぎる。

程良いのは『特別』とする事

 

だから2代目火影は警備隊と言う特殊な位置に『うちは』を置いて中枢で力を持ちすぎないよう調節した。

それを停滞させたのが3代目であり、戦争であった。

まあ、そのすべてが今おじゃんになろうとしているが。

 

「…マダラだとして…年はどうする?

もし生きていたとしても軽く100は超えるぞ。」

 

「マダラは術と言う物に理解が深い。

あの年代、初代柱間の時代は絵物語の様な本当が多く、その中で数々の伝説を残してきた人間だ、

何か特殊な術を使って、生きていてもおかしくはない。」

 

伝説という言葉にサクヤは親指でおでこを押さえ、ため息を吐いた。

伝聞、口伝、伝説全部全部全部、大体の事は嘘が混じっている。

それは故意であったりなかったりするが、あまりそれは重要ではない。

 

古い資料程、絵物語の様な話になる理由が二つある。

 

 

一つ、それを理解する技術が追い付いていなかった場合

資料を残した者がそれを理解している文明に居なかったか、馬鹿だったので理解するに至らなかった。よって伝説の様に語り継がれる。

誰かが日食を予言したとして

日食を『日食』と皆が理解している現代と

日食を悪魔の仕業、神の御業、よく解からない物ととらえている時代の差

と言えば、よく解かるだろう。

 

二つ、マジで強かった場合

語り部自身が負ける話しはこのケースが多い。

そして負けるからこそ、敵の情報が膨大になる。

『己も強かったが、相手の強さが半端なかった、負けるのは致し方なかった。』

または『そんな奴に喉元一歩手前まで迫った』等、己の力を誇示する為に話が膨大になる。

更に、一族、仲間内で語り継いでいる内に話しは変容していき、尾びれ背びれ色々も着く

 

 

 

 

「古今東西、伝聞と言うのは視点が偏りすぎていて当てにならん。私達はその名前の大きさを知らなすぎる。

たとえそいつの血が『うちは』で有ろうと無かろうと、写輪眼の能力を上手く使って、侵入している時点で相当やばい奴だ。

 

『うちはマダラ』の名を騙るなんて、事も無くやって見せるだろう。

 

警戒するに越した事は無い。

この際侵入者が『うちはマダラ』でも何でもいい。

問題はそいつがいつ、どこで、何を起こすかだ。

 

お前は忍びだろう?よく分かっているはずだ。

正面から戦うな、なるべく多くの情報をかすめ取れ。

出来るなら常に警戒を抱かせて相手を疲弊させろ。情報戦は心理戦であり疲弊戦だ。

心は常に変化する、そして人は進歩する生き物

高を括った瞬間、私たちは敗北すると思え。」

 

 

サクヤの最後の授業の様に思えたその時間で、サクヤはイタチに、サクヤが当時してやれるだけの、最高を詰め込んだ。

 

 

―――

――

 

 

イタチは、元々サクヤを巻き込むつもりはなかった。

情報の共有は、サクヤの覚悟に応えたまでで

イタチにとってサクヤは『真の目』であり

『うちは』でも『千手』でもなかったと言う事だ。

里にサクヤを残していく事は、一族以外碌な知り合いがいなかったサスケのためであり、イタチの為でもあった。

 

真の目の結界の淵、袖に潜り込んだ気配にイタチは気付いていた。

そしてイタチはそれを放置する事に決めていた。

仮称マダラに気付かれることを承知で、イタチはそれを付ける必要があったのだ。

 

 

「お主が真の目を利用するのは勝手ダ。

ダガ、里に残ったサクヤがどうなるかは想像つくだロ?

良くて拷問、最悪打ち首。

うちは抹殺が里の命令と言ってもそれは極秘、監視任務の責任追及は逃れられはしなイ

あいつに傷残してタダで死ねると思わん事ダナ…」

 

「…同胞を手に掛けた身だ、今更ただで死ねるとは思ってはいない。サスケが生きる未来になればそれで十分。それ以上は求めてない。」

 

「…ワシはお前が嫌いダ。偏屈で、窮屈で、活きる時間を無駄にしテる。

けど、…ワシはサクヤが好きダ。

サクヤに感謝するんダナ。」

 

 

イタチの目が死後、サスケ以外に埋め込まれる場合、サクヤの命令によってその眼は文字通り焼失するだろう。

 

 

 

明日(みょうにち)イタチは、マダラの推薦により暁に入る。

幼き日から今日(こんにち)までサクヤがイタチに詰め込んだ知識は、イタチを生かし、多くを殺した。

イタチとツーマンセルを組むこととなった枇杷十臓は初め、イタチのその何処からともない知識を才能と考えていたが、そのほとんどがサクヤの入れ知恵であった。

 

『忍の戦争っていうのは基本、チャクラを使った大技を仕掛けることが決め手となることが多い。

この間の(いくさ)では土の国が地面を隆起させて部隊そのまま挟むなんて事をしたらしい。

それが決め手で戦況が土に傾いている。

だが、私はチャクラを使った術は奥の手であり、早々に使うべきでないと思っている。

もし土の国の軍師が私と同じ考えならば、今土の国は奥の手を出さなければならない程窮乏している事になるだろうな。

奥の手が派手で、大掛かりで、恐れられる物あればあるほど、それは如実に表れる。

だから――…』

 

 

 

「お前さぁ…俺がメイン、お前が援護だって言ったろ?

先にターゲット殺すなよ!?」

 

枇杷十蔵は怒っていた。必ず、かの邪知暴虐のイタチを叱らなければならぬと決意した。十蔵には様式美がわからぬ。十蔵は、霧の忍であった。霧を吹き、剣を振い、押すなよ?押すなよ?と言われたら押さない常識を持っていた。けれどもフォーメーションに対しては、人一倍に敏感であった。

しかし、イタチは邪知暴虐であった。

 

 

「だが『相手に(奥の手)を出される前に片づける。』それが基本だと俺は教わった。無駄に時間をかけるより俺が手を下した方が早いと判断した。」

 

「……ほぉ…。んじゃその奥の手とやらが出ちまった時はどぉすんだ?」

 

怒筋が十蔵のこめかみに浮かぶ。

しかしイタチは、さも当然とばかりに、言葉を綴る。

 

「その為に十蔵がいた。こちらの奥の手であるお前が前に出ていれば、まず相手はその威力に怖気づく。相対してお前に尻込んだ時点で決着はついていた。

『最上の勝利は戦わずして勝つこと』だ。」

 

 

サクヤの知識の多くは合戦にて活躍する集団心理と、兵法である。

現代に普及しているものは『子、曰く』から始まる孫子の兵法が有名所である。

 

例にもれず、中二臭いサクヤは、高校で漢文にフィーバーしていたので履修済みである。

現代で、平凡で非凡に生きていたサクヤには、何に役立てると言う物ではなかったが、NARUTO世界線に転生してからは「ああ、これが噂の…」と言う具合に役立っていた。

 

「三十六計逃げるにしかず」で有名な『三十六計』もまた兵法である。

偏見的に見るならば、そのほとんどが()()()の騙し合いと、戦闘からの逃げ方に占められている理論だ。

 

古今東西、『忍』は道具であり、方法であった。

里システムが出来る前からそれが成り立っていた故、その方法(しのび)が出るころにはもう戦う事が前提となっているので、忍び世界ではあまり兵法は活躍しておらず、

忍とは違った視点から切り込むそれは、忍相手の奇襲にはあまりにも効き過ぎた。

 

「前から気になってたんだけどもよぉ。

お前の、その妙ぉな知識は、一体どっからくるんだ?」

 

「妙な…?」

 

「初めはお前の才能とか経験的な物かと考えていたんだが…

お前のその知識は、あの平和ボケした木の葉で、エリートで育った奴の考えるようなもんじゃねェ。

そいつは俺らみたいな泥臭い、血なまぐさい道を、這って生きてきた奴がやるような考え方だ。

お前のその知識はどっから来たんだ?」

 

イタチは暴虐であったが、邪知では無い。

うちはのエリート教育の中に、そんなちゃちな事を考える人はいなかった。

何故ならチャクラを使い、ダダーンと大きい術使って相手を追い込む方が楽だったから。

うちはマダラの武勇伝を聞けば一目瞭然であろう。

木の葉には、いい人材が育つ環境(アカデミー)があった。

そして、3代目によって第2次、3次と忍界戦争の道を、()()()()避けて通ってきた木の葉は、そのトップに習い全体的に(こす)い事を嫌う習性があった。

『最上の勝利は戦わずして勝つこと。』なんて言い出す輩はダンゾウか、奈良シカク、真の目サクヤ位だった。

いや、この狸とムジナと狐が出てきた時点で、一見お綺麗にも聞こえる()()は「最上の勝利は、戦う前から雌雄が決している状態にもって行く事」に意訳される。

 

イタチが情報の出所を喋れば、サクヤを(こす)い、ちゃち、狐と認めることになり、

もしかして、この情報がサクヤに渡れば――…

イタチは、確実にどこかしらで殺されることを悟る。

 

「…黙秘権を行使する。」

 

「お前…それで俺が納得するとか思うなよ。」

 

大拗ねモードは『黙秘権』という市民権を手に入れた。

 




文中に出てくる、兵法や、伝聞伝説に関しては只の私見であり、事実とは異なる部分が多いです。
気になった方はググるか、各々で調べて下さい。


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83

暁は戦争を代理で受ける傭兵集団で

暁に属する者は、皆どれも戦時中恐れられた名であり、実力のある顔ぶれであり

そして、とても人間臭い組織であった。

 

 

霧隠れ国境付近

暁での最初の相棒と言うべきマンセル相手、枇杷十蔵の最後を見届けたイタチは、サクヤの言葉を思い返していた。

 

「未来、『知っておけば』と思う時が必ず来る。

その後悔をしないために私は知っていたい。」

 

サクヤはこの言葉をどういう意味で使ったのだろう?

イタチは、もっと十蔵の事を『知っておけば』と思った。

知って何になるってものではないけれど、知りたかった。

 

知らないイタチは、冷たくなった十蔵に、首斬り包丁を握らせる事しかできなかったし、それはイタチの自己満足であった。

サクヤの言葉が、イタチの胸にはよく刺さった。

 

 

―――

――

 

 

「贈り物をしたい。」

 

そう声をかけたのはイタチからだった。

サソリは勢い良く開いた扉に、極冷静に言葉を返す

 

「扉を閉めろ。そして出ていけ。」

 

アジトの一つで備品整理をしていたサソリは、その突然の訪問者を取りあえず放置して、風圧で飛ばされたネジやバネをまた揃える。

イタチが静かに扉を閉めると、部屋は元の暗さに戻る。

が、扉を開け放った本人は未だ居座るらしく、消えない気配にサソリは舌打ちした。

 

綺麗に並べられたいくつもの小さい備品にイタチは近親感を持つ。

この部品…どこかで…

しかし、イタチの思考はサソリの声に戻された。

 

「誰にだ。」

 

「…それは、答えられない。」

 

イタチの贈り物の相手を、サソリが恋人と勘違いするのは必然だった。

イタチに家族はいない。一族同胞全て殺したことになっているからだ。

残るは外因的要素、友人又は恋人である。

 

「ッハ、望みの物は何だ?櫛か?簪か?お前も妙なものにうつつを抜かすんだな。」

 

しかし、イタチは別にそれでもよかった。

贈る物が、少し特殊であったし、相手に会えるかもわからなかったからだ。

もしかしたら、会えないままこの贈り物は永遠に、日の目を見れない。なんて事もあるだろう。

それでも贈らなければならなかった。

 

「刀を打ってほしい。」

 

「刀鍛冶に頼め。畑違いだ。

俺は傀儡の仕掛けに使うものしか作らねェ。」

 

「サソリ、あんたの傀儡は全て手作りだと聞く。当然そこに付随している刀も手作りなんだろう?」

 

「そりゃまあ、これは己そのものだからな。誰かの鈍じゃ、この切れ味は再現しきれねぇ」

 

「金はある。チャクラ濃度が濃くても折れない一級品のチャクラ刀を売ってくれ。」

 

「…だから刀鍛冶に頼め。

傀儡師として、物を作って売る者として言うがな

俺は俺のチューニングでしか鉄は打てない。そんな誰ともわからねェ奴のチャクラ比に合わせるのは無理だ。」

 

「そうか…あんたなら出来ると思ったんだがな…一応サンプルのチャクラも持ってきたが、流石にそれじゃあ無理そうか。

芸術品はやはり芸術だったと言う事か…実践には向かなそうな刀をよこされ、すぐ折れても困るし、諦めることにする。

時間を取らせたな。今度なにか送ろう。団子でいいか?」

 

謝っているようで謝っていない、絶妙な煽りにサソリはイラつく。

先の戦闘でデイダラに()()()()、飛ばされ、

()()()()、木っ端みじんにされた傀儡の調整

リーダーの采配により、アジトの一つで店開きをすることは出来たが、圧倒的に足りない部品

更にイタチの突然の訪問(再三言うが悪意はない)、専門でもない分野の注文、そして自分のモットウを煽るような物言い。

サソリは気が短い。待たせるのも待つのも嫌いである。

 

「……よこせ」

 

「…生憎今だんごは「サンプルよこせって言ってんだよ!!」

 

その言葉に、イタチがポケットから出した小瓶を、サソリは分捕り、解析機と思われる物を口寄せすると、そこに小瓶の中身を乱暴に突っ込んだ。

 

「いいか、俺はな芸術は永遠に続いて行くものだと思ってる。

すぐ折れるだと?!サソリ印の傀儡は繊細と、頑丈で、有名なんだよ!!

俺にケンカ売ったことを後悔するんだな!!」

 

 

トビ曰く、デイダラの堪忍袋は常に爆発している

そしてサソリの堪忍袋は、緒がとても短かった。

 

 

 

 

 

約半年ほどかけられて完成した刀は2本であった。

黒く濁っていて、つや消しがなされ、重い見た目の割に軽い仕上がり、多少刃こぼれしていても、力押しでぶった切れそうなその刀は

鍔が無く代わりに持ち手部分は奇妙な形をしていた。

刀からそのまま鋼が続き、まるで柄が生えているような…

 

「普通の形でいいと言ったんだが…」

 

「ああ?!俺は刀鍛冶じゃねえんだよ!!普通の刀なんか作ってられっか!!文句あんなら返せ!!

ちゃんと注文通りにチャクラ圧に耐えきれるチャクラ刀だ。

さらに諸刃の黒、つや消し、重みも付いてる。対価は払ってもらうぜ。」

 

一体どれだけ吹っかけられるのか…

しかしまあ、半年かけてこれだけの業物を作ったのだから払ってもいいか

ニヤッと悪い顔をするサソリにイタチは嫌な予感がした。

 

「…まあ一応もらっておく。金はいつものところでいいか…?」

 

「いや、等価交換だ。

金じゃそいつは渡せん。

代わりに、そいつを誰に渡すか教えろ。」

 

そう来たか…

等価とは言うものの、全然等価でない。

サクヤと自分との接点がもし他国、木の葉にばれたら命の危機に瀕する

もちろん、サクヤの手によって、自分(イタチ)の命が。

 

「…金でいいだろ。」

 

「だめだ。この俺をこき使った刀だ。金なんかで満足できるはずもねェ。

誰だ?誰にこの俺の、()()()で、()()に使える、()()な作品を渡す?」

 

ダメだ、この人めっちゃ怒ってる…

思い付きで、サソリに頼んだは良いものの、ここまで()ってくれるとは思わなかったイタチはサソリの考えが読めてなかった。

ブラフは今、回収されている…

すまない、サスケ。俺はここまでだ。

間3秒も無く飛び出た答えがイタチの答えだった。

 

「真の目サクヤだ。」

 

アッサリと潔く、なんの躊躇いもなくサクヤの名前を売ったイタチは、次にどんな言葉が来るか…と身構えたがしかし

サソリは顎を指でなぞると、イタチから視線を外した。

なにか思案しているようである。

考えがまとまったのか出た言葉は、イタチの思わぬ所へ話が飛ぶ。

 

「真の目…そいつの父親は名前を何てーんだ」

 

「…俺もそこまで詳しくは知らないが…真の目作間と聞いた。二代目火影の倅だと。」

 

「はっ…ははは…ハハハハハハハ!!」

 

イタチの言葉に帰ってきたのは嘲笑で、冷笑であった。

急に狂ったかと、イタチはサソリを眺めるがその笑いは止まらないらしく終いには頭を抱えて笑っている。

 

「親子そろって俺の作品をねだるとはな!!ハハハハ!!まったくあいつら狂ってんじゃねェのか!?」

 

「…何か因縁でもあるのか?」

 

様子の可笑しいサソリに取りあえず話を合わせてみるが、帰ってきたのは圧倒的熱量の怨念であった。

 

「因縁?!

そんなもの…あるさ!!

ある!!大ありだ!!

因縁で終わらない執念と侮蔑の塊がな!!

昔、砂の傀儡部隊が白い暗部にコテンパンにやられ、ごっそり傀儡を持っていかれた事があってな…俺はあの屈辱を忘れねェ。

だが、それ以上に許せねえのが、次に対峙した時、そいつおれの顔を見てなんていったっと思う?

 

『あんた凄いな!!まさか油圧で動いているとは思わんかった!!これならあの合金の弓も引けるってもんだ!!

あと球体関節での可動域の方が高くないか?二段関節にも驚いたが、そこに手を入れると重くなって機動力がなくなるんじゃないのか?何を他に削ったんだ?

とゆーか元々の形じゃないだろあれ!!凄いな!!あそこまで原型が無い物も初めてみたぞ!!

傀儡ってーのは代々受け継がれるもんなのか?!いや、それとも基本形から変化させてく感じの方か!

なあ!!どうなんだ!』

 

一言一句間違いなく覚えてる!!

あいつは…あいつは、俺の傀儡の種を一から十まで、戦場で、全部明かしてくれやがった!!

俺は死ぬほど恨んだ!!

傀儡子であればある程度全様を見ただけでどんなものが入ってるか大方の想像は出来るし、そんな可動域かっていうのも大体わかる。だがあいつは!!

只の暗部だとのざばった口で、その傀儡のすべての意思をも理解しやがたんだよ!!

どうしてこれにしたのか、何を目当てにこの毒を仕込んだか、可動域による使用用途、全て当てやがった!!傀儡子の名折れだ!!

俺は悔しかった…これ以上ない位…!!

誰かに理解してほしいなどと思った事は無かったが、理解されると言う事がこんなにも気持ち悪い事とは思わなかったぜ!!

それも正確無比にだ!!

 

ああああああああ!!

たまらなくイラつく!!

そんな鈍らどこへでもやれ!!

もうその刀は見たくねぇ!!…ちくしょう!!ムカつく!!」

 

その後大いに騒いだサソリは、イタチから代金を受け取ることなく去って行った。

サクヤの父の話は今まであまり聞いて来なかったが、サクヤと似て、何かとんでもない事をやらかしていそうであった。

あまりむやみにこの名を口にすることは辞めておこう。イタチは肝に銘じた。

 

この刀は素っ頓狂な出会いからサクヤに廻ることになる。

あのサソリのご機嫌を損ねてまで手に入れた刀であるからして、サクヤの腰に刺さっている刀が粗悪品であれ何であれ、後戻りできないようブチ折ることはイタチの中では決定していた。

 



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84

サクヤとの再会はあっけなかった。

というか、大体サクヤとの再会はあっけない気がする。

幼少然り、アカデミー然り、暗部然り。

 

だからまた、どうせ再会もあっけないのだろう、そう思っていたので

本当に、その間抜け面を見た時、思わず声が漏れ出てしまったぐらいであった。

 

砂と火の国境線で、大きい砂嵐が去ったと思ったら現れたその白は、一つに括られ、陽炎に霞み、やはり切り取ったように白かった。

人をおちょくったような喋り方をするのは変わらず、黒い暗部衣装に包まれていた。

 

見せかけの戦闘の後、サクヤがセーフポイントにしている洞窟によびだされ、目くらましと幻術を掛けて待っていたイタチは

虚ろ眼で、イタチに付いているポンの声を頼りに、手探りで洞窟を歩いてくる姿を捕えた。

 

 

「(……なんでこの人は、こんなに馬鹿……無防備なんだ。)」

 

取りあえず、在らぬ方を探っている手を握って、目くらましを解いてやると、サクヤは「ひっ」と漏れ出た声と同時に3mほど後ずさった。

そしてイタチを目に捉えると、叫びとも、呻きとも言い難い声を出してイタチが握った手を拭う。

 

「酷いな。」

 

「なんで手を握る必要があるんだよ。おかげで心臓止まるかと思ったわ。」

 

親切心からやった行動だったが、

逆に恐怖心をあおってしまったようだ。

そして、イタチはあることに気付く。

 

サクヤと目線が近い。

 

洞窟の斜平のせいかとも思ったが、それはイタチの野営スポットについても同じであった。

あの見上げていた透ける白は、隣にいた。

 

 

イタチは、どこまでも停滞している世界にいた。

暁と言う組織で、護衛、暗殺、戦争、薄暗い事を請け負ってきていた。

自分の身長を気にすることが無かった。

成長を、気にするものが居なかったし、イタチ自身、見込むことが無かった。

 

サクヤからサスケの様子や里の事、木の葉の仲間たちの事を聞く度、イタチは停滞していたことを実感する。

うちはマダラという時間の流れを持たない者と、共にいたと言うのもあるかもしれない。だが、サクヤと並んで気付いた。

自分もまた、時を確実に歩んでおり、進んでいるのだと。

 

 

 

 

ベース地点で、イタチはサソリの機嫌を損ねて手に入れた双剣を、サクヤに放る。

危なげなく受け取ったサクヤはイタチに訝しげな視線を向けた。

 

「なにこれ?」

 

「双剣だ。」

 

そんな事は分かっている。

サクヤには、それを受け取ってもらわなければならなかった。

これを逃したら、サクヤに年単位で会わないだろうことは分かっていた。

その頃にはサクヤの身長を追い抜かしているだろうことも。

 

「この間敵の忍びから奪ってな、名のある双剣らしいから取っといたんだ。

俺は剣は使わないし、サクヤにやる。」

 

え…いらないんですけど…と言う顔をにらんで黙らせる。

嘘を吐いてまで渡す必要があっただろうか?

いや、嘘を吐かなきゃサクヤは受け取らなかっただろう

無償の施しに疑心を向ける人である。

『タダより高いものは無い。』サクヤは良くそう口にしていた。

等価交換もそれに準ずる。

悪魔と契約するのは嫌だが、自分が悪魔の立場なのも好きではないらしい。

 

 

(チャクラ)を籠めて膝に打ち付けた剣は、あっけなく折れた。

え…これ…安物過ぎないか…?

サクヤの財布の悲鳴に、イタチは頬をかいてごまかすが、そう簡単に誤魔化されてはくれなかった。

 

 

だがイタチの目的は叶いそうだ。

イタチは等価交換をモットウにするサクヤに一つ、明らかな貸しを作らなければならなかった。

そのためのブラフであったがそれは妙な方向に進み、しかしてイタチの思惑通りに進んだ。

 

イタチは、サクヤにいかようにしても、うちはの集会所の場所を伝える必要があった。

サクヤなら、イタチとは違った視点から、石碑の真実へたどり着けると信じていたからだ。

しかし、サクヤならば

うちはの集会所を教えた時点で、イタチの思惑にも気付いて「だから私を巻き込むなよ!!」とブチ切れられることは必須だった。

その前にお布施を渡して、黙らす(気を逸らす)必要があった。

序に言うならば、サクヤが未だ、自分のチャクラの濃縮還元具合を分かって無い方が、イタチ的には驚きであったが、まあそれは置いておく。

 

 

 

「この借り、いつか返す。それまで大事に持っておけ。」

 

この借りは、必ず、返してもらう。

でもそれは『今』でも、『イタチ』でも無かった。

 




イタチが死なない…


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里抜け編
85


雷鳴が響き渡り、雨が止んだりふったりと忙しい天気が辺りを包む

 

かつて繁栄を極めたうちはのアジトは崩れていた。

山の頂にあったその建物は、先程落ちた大きな雷で山ごと崩れ、幸いにも残ったうちはの紋様は、それが彫られている壁だけ心細く聳え立つ。

その壁の足元には、うちはの最後の生き残りであった二人が、いみじくも並んで倒れている。

 

チリっと何かが壁の上方からのぞく

ちらちらと光るのは炎だ

落ちてくる雨を溶かすかのように揺れるそれは白い。

ひかりの呼応を皮切りに手、腕、足、とまるで人の様に形を成していく白い炎。

 

サスケとイタチ、それ以外存在しないはずの場所に、独り立つ

薄銀の髪、白い装束、黒い双剣を後ろ腰に据え、その眼は赤く、幾何学を描いている。

人はゆっくりとイタチの枕元に降り立つと、何事かをつぶやき、撫でるように、左手で静かにイタチの目を閉じた

 

サスケの気配を追って様々な忍がこの近くにはいる

長居は禁物だというように、また白い炎が人を包む。

溶ける様に消えた後には、何も残っていなかった

 

 

 

―――

――

 

 

木の葉は、サスケの捜索、保護の為に

ナルトをはじめとした新7班の4人、カカシを隊長とした元紅班4人、計8人を、『暁』のうちはイタチ捕縛の任務に就かせていた。

しかし、

 

 

「サスケの勝ちだよ!

うちはイタチは死亡。」

 

 

暁の妨害に会い、時間稼ぎをされ、足場の木から生えてきた暁のトゲトゲアロエヤローことゼツからの情報は、カカシ達を震撼させた

 

 

 

サスケを追い、崩壊した建物に行き付いたものの、そこはもぬけの殻。

すでに先程の暁の奴らがサスケを手に入れたのは明白だった。

しかし、そこには少ないながらもいくつかの匂いが残っていた。

 

キバはまるでルーティーンの様にその場で匂いを追う。

 

 

1つはサスケ

次にサスケと似た匂いが一つ

更に先程あった暁のアロエと、面の男の匂い

最後に、

 

真の目サクヤの匂い

 

 

キバの、姉の友人であるサクヤは、何度か共にいるところを見ているし匂いもしっかり覚えている。

彼女が何故ここに訪れたのかはわからないが、微かだが確実に匂いがある

彼女はどうやってこの場所を当てたのか

あるいは暁と仲間なのか…

付近に匂いが無い所を見ると時空間忍術か口寄せの類で来た事は分かる。

 

「カカシ先生。」

 

一瞬姉の友人に限って…と思い、黙っておこうかと考えたがしかし、キバは上忍の指示を仰ぐことにした。

小さくカカシ以外に聞こえないよう匂いの種類を話すキバ

カカシはわずかに顔を強張らせた

キバの報告を聞いて数秒、口を開いたが言葉は出ず、首を振る。

 

「…もし、本当に居たのなら…あいつの事だ、これ以上ここで得られる情報はないだろう。このことは里で精査する。」

 

カカシとキバの雰囲気に気付いたナルト達が何事かと顔を向けるのを躱してカカシは忍犬を一匹木の葉に遣わした。

 

 

 

 

その日、木の葉の里から忍が一人、そして真の目の蔵が一つ消えた。

カカシの忍犬の報告を聞き5代目火影はすぐさま使いを出したが、その姿はもう、どこにも無かった。

消えた蔵のあった、家の玄関には木の葉の額当て、辞職届だけが残り

あとは全て無かったかのように綺麗さっぱり片付けられていた。

 

『真の目サクヤ』

その『人』を表す記号は忍界ではそこそこ有名であった。

『2代目の忘れ形見』『木の葉の狛犬』『サザミの甥子』『伝書鳩のサクヤ』

どれも言えば大体あいつかとビンゴブックを開けるほど有名ではあった

一時、うちはの血筋が途絶えた時は写輪眼目当てに金額が吊り上った名残で賞金は高めに設定されているが

得意忍術、性質、特になく平坦な歴々であることも、2代目火影の孫という威光がまぶしすぎてそれさえも覆う事も有名であった

 

『ここに額当てを返します。辞められないようであれば抜け忍として扱っていただいて構いません。それでは。』

 

業務的に書かれた辞職届の裏に、メモ書きの様に記されていた文字は特に感情もなく

ただ、あるだけである。

蔵が消えた説明もなく、家が整理された意味もなく、行き先も、未来も、希望も落胆もなく

只あるだけの文字は、解読にてこずるほどの汚さだが、それがまた如実に真の目サクヤを示していて、これ以上どうにもならない程の現実であった。

 

それを最初に発見したのは紐縄ホドキと言う忍びであった。

解読班に属する彼はおっとりとして抜けているがその頭脳は確かで、サクヤの幼いころからの知り合いで、師匠である。

 

呼び出されて行った先に、これがあるとは思わなかったホドキだったが、予期していなかったわけでは無かった。

心底嫌そうに会議室に向かう姿を見なくなってずいぶん経つ。

国外任務が続いているとは聞いていた、家に帰る姿を見れたことは内数回しかない

木の葉崩しから里が落ち着いて3年経つが、彼女の任務の忙しさは木の葉崩しから変わらず、寧ろ里にいる時間の方が少ないようだった。

このまま使い潰すのはサクヤの為にも、里の為にもならないと思い火影様に直談判もしたが依然変わらず。

サクヤが目の前で倒れた時にはホドキは拳を握る位しかできなかった。

 

いつか、里も彼女の御役目を終わらしてくれるだろう。彼女を手放すだろう。

と思っていたが、先に彼女が里を手放すとは…

 

親、親戚の威光のせいでもあるが、サクヤはそこそこに重要な位置にいた。

3代目、5代目火影、共に密命多く、相談役からの信頼厚く、上層部会議に呼び出され

姿を現す頻度は少ないながらも、3代目火影からは古参の暗部をも、凌ぐ頻度で呼ばれていた

上忍班長奈良シカクの息子、シカマルは「何かとしょっちゅうよばれる中忍」などと認識していた、言えて妙なり

それは上忍になっても変わらなかった

寧ろ昇格にかこつけて雑用が増えたぐらいである。

 

サクヤは滅多に会議に出ない。

アカデミーの館内放送を使って、火影直々に威圧のある声で呼ばれて初めて行くぐらいである。

ちょっとやそっとの会議には参加しないし、姿さえも見せない

その実、会議内容を知っているのだから質が悪い。

何処から持ってきたか正確な情報を、会議が終わった後、個人個人に足していく姿を見ると

その労力を会議に注げと言いたくなるのも仕方がなかろう。

今日も館内放送で呼ばれた名前は結局会議室に来ることはなかった。

 

 

辞表を開いたホドキの目が赤く鈍く反射する

幻術に陥っていることは分かっていたがホドキの心臓は落ち着いていた。

 

「驚かないんですね。」

 

「まあ、小さいころからサクヤちゃんの師匠やってるからね。写輪眼を持っている事は知っていたよ。

えっと…作間さんのだったけ?」

 

「…正確には父方の叔父ですが、里では作間の写輪眼で有名ですね。」

 

ホドキの目の前に映るサクヤは薄く笑っている

ここ最近この笑みが目に付いた。

 

「そう、そうだったね…。」

 

ホドキは哂う

 

「そんなに幻術空間で落ち着かれるとこっちが落ち着かないんですけど…」

 

「だってサクヤちゃんの幻術だからね。

僕には解く力もないし、それにそこまで幻術に詳しくはないんだ。トラップとかは得意だけどね。

でも、詳しくても解かないと思うよ。サクヤちゃんの幻術は優しくて、柔くて、強い幻術だから。」

 

やはり微笑む姿は自然体だ。

幻術のサクヤは、師匠にはかなわんとばかりにため息を吐く

 

「伝言があります。5代目火影、千手綱手に届けて下さい。『約束を守れずすみません。アレは必ずお返しします。』」

 

「しかと聞き届けた。」

 

ホドキの声を聴き終わるか否かの間に姿は掻き消え、ホドキの赤い目は、元の目の色に戻る。

 

 

 

「サクヤちゃん。遺書でも、もうちょっと捻るよ。暗号解読班としては3点かな。」

それって10点中ですよね?と言う声は聞こえなかった。

無論100点中である。

 




写輪眼の能力にこんなのねぇよとか言うツッコミはよしてくれ。
これは二次創作だ。
そう、ストーリーも、技も、関係も二次創作なんだ!!


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86

ダンゾウはサクヤ里抜けの知らせを受け、真っ先に最近怪しい動きをしていた真の目の棟梁に話を聞きだし、金の流れから言ってもここら辺が妥当だろうと

木の葉の里の外、新しく建てられた建造物(蔵)にあたりを付ける

 

しかし、追手を向かわせたが、それはことごとく退けられた。

 

「ダンゾウ様、あの蔵はどうやら結界と封印はもちろん、その隙間を縫ってトラップが足の踏み場もなく張られているので足では到底入れません。

空からの侵入も試みましたが、どうやらあそこ一体に幻術がかかっているらしく、気付いたら蔵の位置と思われる場所を通り過ぎてしまい、近くでは侵入はもちろん視認も難しいかと。」

 

部下の『どうしようもないんですけど』という視線にダンゾウは封印と結界に詳しいはずの子飼いの人材が、こうも根を上げる事態に、内心舌打ちをこぼす。

流石腐っても2代目の孫であるとでも言うのか

写輪眼を巡っての、狸と狐の化かし合いで、力量を測ってはいたが、まだ力を隠していそうである。

第一幻術が得意などと言う情報はこちらに来ていない。

作間の写輪眼の恩恵かと思ったが、あの封印…どうせ戦闘に使える代物ではないだろう。

とダンゾウはあたりを付ける。

サクヤは、禁術開発ばかりで戦ではてんで役に立たなかった父親と似ている。

今、その戦闘に使えない代物に悩まされている身としては笑えもしないが

 

しかしこれだけ警戒された包囲網は

2代目の忘れ形見、作間一党が持っていたものに価値があると言う事。

 

「よい、おのが行こう。」

 

サスケ抹殺の件で、あれだけ煽られた上での敵前逃亡にダンゾウはイラついていた。

幻術には写輪眼。

昔からそう決まっている。

さっさとこのややこしい問題を終わらせたかったダンゾウは、人気のない里外からか、口寄せのバクを召喚、風により、空から蔵に向かって飛び。

以前より実験を繰り返していた柱間細胞にて活性化された写輪眼を発動させる。

 

 

が、しかし

 

それと同時に蔵が爆発炎上

突然の爆風にあおられたダンゾウは、体勢が崩れ落下、その黒煙の立つ火の海に沈んだ。

 

 

 

 

 

 

「やったか?」

 

スコープを覗いて確認する声

迷彩のマントに包まる姿は森に溶け込む

木々の間からのぞくその顔には丁寧にも木の虚と似たようなものがペイントされており視認性はとても悪い。

側には白い狐が3匹控えているがその姿は半透明で、後ろ足が無く、あるはずの場所からはチーズの様に長く伸びた線が迷彩マントの内側から伸びていた。

 

「あかん、まだ気配のこっとる…これ風遁で飛んだんちゃう?」

 

「ガハハ、やはり一筋縄ではいかねーナ。」

 

「あ、あの、今分体が消えて、その、ダンゾウ様の生存を確認しました。」

 

「了解。これで無理となると、あとはサスケとかそこら辺から横取りするっきゃねえな。」

 

いくつかぼそぼそと話すその影は、跡もなく一瞬で消えた。

 

 

 

 

―――

――

 

洞窟にその声は良く響いた。

ふざけたようなオレンジ色の『面の男』から発せられる声は落ち着き、乱れ無く淡々と語る。そのギャップがサスケをとてもイラつかせていた

 

「なぜなら、お前は、生きている!!」

 

池底に沈む藻をひっくり返すような言葉に、サスケの心は濁っていた

何を信じたら、どれが本当か

 

「お前の目は

イタチの事を何一つ見抜けていなっかった。

イタチの作りだした幻術(まぼろし)を、何一つ見抜けなかった。

 

イタチは

友を殺し…上司を殺し、恋人を殺し、父を殺し、母を殺した…。

だが殺せなかった…弟だけは。

血の涙を流しながら、感情の一切を殺して、里の為に同胞を殺しまくった男が…

どうしてもお前を殺せなかった。

その意味がお前に分かるか?」

 

サスケを縛る縄をクナイで切った仮面の男は、サスケを静かに見つめ、問いかける

 

「あいつにとって、お前の命は、

里よりも重かったのだ。」

 

最初に在った抵抗心は消えていた

 

「あいつは死ぬ間際まで

いや、死んでも尚お前の為に…

お前に新しい力を授けるために

お前に倒されることで

うちはの仇を討った

木の葉の英雄にお前を仕立てあげるために

病に蝕まれ、己に近付く死期を感じながら…薬で無理に延命してでも…最愛の弟の為に…お前と戦い

 

お前の前で死なねばならなかった。」

 

 

 

 

『イタチの全て』を聞き終えたサスケに感じられることは何もなかった。

未だ、何も。

 

「一つ、聞きたい。」

 

「…答えうるものなら答えよう。」

 

「あいつ…『真の目サクヤ』はこのことに関係しているのか?」

 

飛んで出てきた名前に『面の男』自称マダラは感心していた。

確かにあの真の目の小娘の話には手を付けていなかった。

マダラとしては、サスケの憎しみを、里にすべてをぶつけてもらうために、その方向を分散させてしまう真の目の話はあまりしたくなかったからだ。

精々イタチの金魚のフン程度の実力にサスケが注目するとは…

 

「ああ、まあ関係はしているな。」

 

その肯定の言葉に、サスケは一つも驚かなかった、おおよその見解はついたのだろう。

それがマダラの提唱する言葉の信憑性を上げる

 

「イタチは、全て一人で計画したわけではない。

元々の計画では、里との間に真の目を入れて、うちはの待遇を見直してもらう事にしていた。

そこで白羽の矢が立ったのがサクヤだ。

腐っても2代目の孫、3代目の狛犬だからな…顔も効く方だし、あいつの叔父は口も上手い。真の目を使うとなるとさらに棟梁も手を貸すだろう、そうなれば確実に里に意見は通る。

もし通らずとも、サクヤの、その立場は多少の事では揺るがないし丁度良い。

あの一族はどこにでもいるし、誰にでも手を貸す。

しかし、シスイが目を奪われ、死んだことでその計画もおじゃんになった。

シスイが穏健派だったおかげで、穏健派までもがクーデターに乗り出したんだ。

あとはお前に話した通りだ。」

 

「サクヤは、イタチの情報をどこまで知っていたんだ…」

 

サスケが

 

「当時のサクヤはイタチの行動範囲の監視が任務だった。

ダンゾウ達ご意見番各位から推薦、火影から承認され、その位置についたらしい。

あの立ち位置から言って、イタチの真実を知っているのは確実だ。

丁度家族ぐるみで仲よくしてたそうだしな…

あいつが『うちは』に出入りして、疑問に思われない口実を作るのに一役買ったろう」

 

サスケがサクヤをイタチの恋人だと思っていたのさえブラフだったのであろうか

洞窟の壁に、ろうそくの揺らぎに合わせて影が映し出され

オレンジ色の仮面の向こうから、サスケに視線が降り注ぐ。

その眼は黒い。

これは幻術では無い。幻聴でもない。

 

 

「真の目は管狐と口寄せ契約をしている。

竹藪があるところに真の目ありと言われるように、管狐と直に契約するおかげで、腰に竹筒を下げるだけでチャクラも必要なく管狐を呼べる。管狐の分体は多重影分身と大体システムは同じだ。

あまりむやみに管狐を消すなよ?

そいつが消えれば本体に情報が行くようになっている。

それに宿主のチャクラを喰らい生きて行く管狐は、宿主のチャクラに染まって行く、長い間共にいた管狐の分体は見つけるのは至難だ。

お前も覚えがあるだろう。

常にまとわりつく影に。」

 

確かに、サスケは写輪眼が三つ巴になってから自分に妙な気配が纏わり付いているのが分かっていた

それは大蛇丸に会った時一回消えて、その後いつの間にか付きまとっていた。

大蛇丸を倒した後うっとおしく、散り散りにしてやったが

今見ると、また自分に付きまとっている…

 

「俺たち写輪眼や、白眼でも、手練れでなければすぐに気付く事は出来ない。気付いた頃には根こそぎ情報を取られた後だったなんて事もある。今消せば本体に情報が行ってしまう。くれぐれも取扱いに気を付けろ。」

 

サスケにはある記憶があった

大蛇丸を倒してしばらく、重吾のいるアジトに向かう途中、声をかけられて人違いだと返した

あの時は害にも得にもならないと思い、ごまかされてくれたのを良い事にほおっておいたが、この気配はその時付けられたのだろう。

鬱陶しい。そして忌々しい。

誰の命(めい)だか知らないが、自分に監視が付いていることは良くあることだった。里にいても、里を出ても監視されていたとは…

思えばサクヤを紹介された時も火影の命で、自分の他にナルトの面倒を見ていると言っていた。

()()()にもどうせついているのだろう…

妙な確信があった

 

 

「イタチが里を出てからも、イタチの近くには常に管狐の気配があった。

もっとも、イタチは管狐の気配を大して警戒はしていなかったがな。

大体、あの中途半端な忍びに、イタチは倒せなかっただろう。

イタチの影には常に真の目があり、イタチは里を抜けてからも不定期だが木の葉の情報を得るため、サクヤを通してやり取りをしていた。

取引の内容は“暁”の情報と、お前の情報の交換だ。」

 

 

何を聞いてもマダラの言葉の信憑性が増すだけだった。

信じていたもの(現実)が全てひっくり返ったサスケは

この男の言葉だけが、本当に見えて

今までの、どれもこれもが嘘に見えて仕方がない。

 

しかし、一つだけサスケは引っかかっていた。

だが、それを口にするほど愚かでもない

サスケは黙ってそれを受け入れた。

 

聞くは本人だ。

あの嘘吐きの兄と似て、煙に巻くのが得意な世話係の顔を思い出す。

返答によっては殺すこともいとわない。

 

 

 

 

 

「我らは蛇を脱した。

これより我ら小隊は名を『鷹』と改め行動する。」

 

海原に煽られ鷹が空高く舞う

だがサスケには何も見えなかった。

きつく結んだ瞼が、サスケの視界を覆っている

 

「鷹の目的は只一つ、我々は…」

 

暁の空にサスケは誓う。

 

「木の葉を潰す。」

 

 

 

 

 

 

 

イタチは確かに、話しかけたのだ

チャクラが切れ弱った自分から出た、大蛇丸を封印した後

イタチの目に宿る管狐(チャクラ)に向かって『後は頼んだ』と

 

サクヤは確かに、言ったのだ

サクヤの背後に広がるうちはの家紋を白い炎であぶる中

イタチに

いや、サスケに向かって『真実は一つではない。』と

 

マダラの言葉が『真実』なら、事情は変わってくる

この違和感が払拭されることはないだろう。

 

イタチの瞼を閉じたサクヤは一つの答え(真実)だった。

 

おぼろげな視界、揺らいだ白い炎の中に、サクヤはいた。

炎があいつの髪を照らして、揺らしていた。

 

やはりあいつは害にも得にもならん。何色にもなれはしない奴だった。

だから白い炎何て微妙な色なのだ

 

フッとサスケが笑った。

 

 

 



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87

「ハ?!サクヤが里抜け?!」

「いったい何のために…」

 

「なんの為かはわからん。

自慢じゃないが、私があいつの真意を測れたことは今までの一度もない。」

 

火影室は喧騒で包まれていた。

サクヤとかかわりのある物を集めて足取りを追ってはいるが

明確な逃亡経路は浮かんでこず。

目撃情報はイズモとコテツが火の国書状受付所で、次の任務へ向かうと言って笑顔で去ったところで切れている。

 

 

がしかし、集められた上忍、特上メンバーはそこまで真剣にものを考えていなかった。

 

 

「…なんか、ひょっこり帰ってきそうだよな…『起きたら日が暮れてたんですけど、これって遅刻に入りますか?』とか言って。」

「あいつの事だから『遺跡が私を呼んでいる』とか、ふざけた理由で里抜しそうだよな…」

「いや、古物商にちょっと面白れぇもんが入ったんだが…とか言って物陰に連れ込まれて誘拐されたと言う事も有り得る。」

「厨房でつまみ食いした料理がおいしすぎて食べ過ぎたって言って、潜伏してる城の押入れで寝たやつだからな…妙なところ大胆で…警戒ってもんを知らないから…。」

 

上忍班長である奈良シカクは、友でありライバルであった作間のハチャメチャっぷりを思い出して、それらを否定できないでいた。

似ている、似ている、とは思っていたが、こんなところまで似なくてもいいだろう…

 

「先ほどカカシの忍犬が報告に来た。

隊員の犬塚キバが、うちはイタチとサスケの戦闘があった場所から、サクヤの匂いをわずかだが探知したそうだ。付近にそれらしい臭いは無く、時空間忍術で来たと考えられる。」

 

「あ、それなら。

俺たちの任務の時

あいつ、一回途中で抜けたんですけど、サクヤが瞬神の術使って跳ぶの見たのでそれかと思います。」

 

瞬神の術

その名は広く凡庸される名であり、身近では『散』の合図で使う初歩的術であり、他にも今は亡きうちはである『瞬身のシスイ』が使っていた幻術の類や、果てはあの二代目が作り4代目がものにした時空間忍術まで様々である。

よって、その言葉は意味を成す様で成していない。

意味が広義過ぎて答えになっていないのだ。

 

イズモとコテツからの報告に、火影の席に座る綱手はため息を吐いた。

意味を成す様で成していない。

サクヤを説明する言葉は、こういう言葉が多い。

火影の狛犬、賞金7千万、木の葉の伝書鳩、サザミの甥…あとは何があったか…

散々通り名に文句を言っていたと聞くが、自分から何か名を名乗ったと聞いたことは無かった。

それは通り名をどうとも思っていないとも同義だ。

 

 

綱手として一番惜しい所は、なんやかんや文句を言いながらも、あの手この手で問題を解決できる、使える人材であったところだ。

流石2代目の血縁者と言うべきか…

しかし、色んな意味であの手この手過ぎて結果を素直に喜べるかと言われたらそうでは無いが…

扉間3兄弟は親戚であったし、綱手も世話になっていたので何とかしてやりたいところだ。

 

 

 

「ただ、一つ言えることは

この辞職届と返された額当てを見るに、木の葉に仇成すつもりはないと言う事だ。」

 

「忍びを…辞めたという認識でいいのですね?」

 

奈良上忍班長が鋭く綱手の言葉に突っ込むのは、そこが重要であるからだ。

サクヤが忍びを辞めたという認識を里が取るかどうかでこの場の雰囲気は一気に変わるであろう。

なんせあの顔を使ってあれやこれやと里の中枢に引っ張り込んだせいで、今サクヤは情報のるつぼと化しているからだ。

木の葉のちょっと言えない事のあれやこれをピンポイントで詰め込まれている。

他里に行かれると主に防衛力的意味でヤバイ。

最悪、木の葉対世界…

なんて戦争起こそうと思ったら起こせ、そして確実に勝ってしまう奴だ。

そんな奴を木の葉は放置はできないのを解かっている。

だがその情報ないし、色んな意味でひょっこり帰ってきそうなので殺すには惜しい人材である。

誰かあいつを留めれる人材、又はひきつける人材がいてくれれば御の字なのだが

実際あのサクヤが妄信的に慕っているイルカが木の葉に居ても()()である。

 

 

「私は概ねそうとらえている。

あいつは馬鹿だがボケてはいない。

自分がどういう状況にいるかということだけはよく分かっているだろう。

何れ帰ってくると踏んでいる。」

 

あの、紐縄ホドキによってもたらされた伝言はそういう意味であった

『アレは必ずお返しします。』

綱手はこの伝言を、『返す気がある』としてとらえた。

綱手とカカシとサクヤの間で躱された密約は今も続行中と言う事。

必ず木の葉に()()()()()と言う事、だ。

 

 

「そうとはかぎらんのぅ…」

 

 

 

不穏な空気を醸し出しながら火影室に現るはダンゾウ。

後ろに根の忍を控えさせ、相変わらず物騒な見た目をしている。

 

「何の用だ。ダンゾウ。

私は貴方に自宅で待機するよう言ったはずだが?」

 

「なに、年寄りの冷や水だ。忠告しておいてやろうと思ってな。あの小娘の酷薄な性格をの。」

 

「…何を知っている。」

 

初っ端からケンカ売りに来ているとしか言えない剣呑な雰囲気に上忍たちは身を固めた。

ダンゾウがよこす情報が良い事であったためしがないのだ。

ダンゾウにはいい情報でも自分達にはしこりが残るような報告である。

里にとっては悪くはないが、良しとは言えない報告をいくつも受けてきた。

 

「なに、あ奴が不穏な動きをしていたのを先ほど思い出しての。

様子見がてら調べさせたら…里の外、真の目の所有する森に妙な蔵が建っておった。

捜索にワシの手の者を送ったが…素気無く退けられた。

数多の死傷者を出しての…

これは里に対する反逆だ。無視できん。

綱手、いい加減火影なら、その甘っちょろい考えを捨てることだ。自ら離れた駒は元に戻ることはない。よく分かっているはずだ。

大蛇丸然り…他里のコマになる位ならば、今のうちに手を打ち

そろそろあ奴に見切りをつけるべきだ。」

 

反逆、手を打つ、見切りをつける、言葉の節々にサクヤを殺すことを匂わせる。

報告内容は要領を得ないが死傷者が出ていることは無視できない。

 

 

綱手は片手で目を覆い、ダンゾウに問うた。

 

「真の目の者は血を嫌う。

ダンゾウ、あんたはそれがどういう意味か分かるか…?」

 

「…ただの一族内の規律であろう。血で解決する争いごとを避けよ。そういう意味だ。」

 

ダンゾウにとって過去、作間と写輪眼を巡って争った時、逃げられた先でもある。

その規律に良い記憶はない。

真の目の棟梁たる人物が間に入ってきたからこそ、あの話は大きくなり、ややこしくなった。

あれを逃せばもう作間いや、『うちはニヒト』の目を手に入れることは無い。

そう思って手を出したが…さてはて…

 

質問に答えたと言うのに綱手は未だうつむき、その眼を下に落とし、手で影を作っていた。

 

「綱手、ワシは質問に答えた。お前はさっさと結論を出せ。今長引かせるとあ奴を見失う事になるぞ。」

 

「違う。」

 

「…なんの話だ。」

 

「真の目の血液嫌いはそうでは無い。そうでは無かったんだ。」

 

「今そんな話をしている場合か!!

あのアホが木の葉の機密情報を持って敵国に逃亡しようとしておるのだぞ!?

さっさとせねば木の葉は戦に巻き込まれ多くの死人が出る!!

暁の動きが活発な今、九尾の人柱力と言う問題も抱えている!!

里を崩壊させるつもりか?!」

 

 

 

「…サクヤは真の目だ。」

 

あいつは真の目なのだ

どうしようもなく真の目なのだ。

あのお人よしの集団に居る、真の目なのだ。

血を嫌い、助けを求められれば手を貸さざる負えない、孤児が集まって始まった、あの真の目なのだ。

綱手はサクヤの事を調べるうちに真の目の歴史が『千手』や『うちは』に届くほど長い事を知った。

 

真の目に生まれた子供の名前に『サ』を入れるのは逸れた子供が真の目の目に止まりやすいように、逸れても、死に別れても、また家族を得られるように、願いを込めて付けられる。

竹藪に真の目在りと言うまでに真の目が竹をよく使うのは、管狐が竹筒に忍び込みやすいように、子供の持つ竹筒に忍び込み、家族を守りやすいように。

誰にでも手を貸すのは、皆まとめて真の目にしてしまえと初代が言ったから。

血の繫がりが薄いのに皆変人なのは、生きることに一生懸命だから。

真の目が持つのは捨てる神じゃなく、拾う神だ

サクヤは木の葉を捨てたのではない

 

棚上げしたのだ。

 

 

「サクヤは辞表も提出しているし、額当ても返している。

そしてそれを私が受理した。サクヤはもう、忍びを辞した。

追い忍は向かわせない。これが里に貢献してくれた、忍への答えだ。」

 

「何を馬鹿な事を…!!木の葉に被害が出ておるのだぞ!!

あ奴が木の葉の忍びでは無くなったからと言って、あ奴の持つ情報が消えて無くなるなんて事は無い!!寝言は寝てから言え!!」

 

ダンゾウは綱手の言葉に牙をむく。

しかし、綱手は首を縦には降らなかった。

 

「ダンゾウ。私は言った。自宅で大人しくしろと。

火影命令を無視して、真の目(ひとんち)の蔵に勝手に入ったお前が悪い。

よって、この五代目火影から謹慎を命ずる。」

 

 

 

真の目が過去、歴史の上でその姿を現すのは決まって協定を結ぶ場所であった

真の目の結界は血を嫌う

そこで血を流せば、一時(ひととき)の間、時が止まる

協定を結んだ相手が真の目の敷地内で暴れれば時は止まる。

目撃者は真の目、

血を流せば、真の目の者から者へ伝えられていき、その一族は真の目の庇護から外れる。

今より横のつながりが少ない時代、真の目の庇護が外れるのはどの一族も避けたかった。

何故なら、商いと、大工、木材管理は殆どが真の目で占められていたからだ。

真の目を制する者が世界を制する、そうまで言われた。

 

木の葉設立に真の目が立ち会ったのも、必然だったのだろう。

協定の書状には『千手柱間』と『うちはマダラ』の、サインと拇印、当時の真の目の当主たる字で『うちはと千手の協定に、血は一滴も流れなかった。』と記されていた。

 



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88

色々諸々考えた結果、暁による木の葉襲撃は私が里抜けすることが一番被害が少なく、ストーリーを外れず進むと思い

私はイタチ死亡の時点で里を抜けた

 

もし、道を外れた場合、修正がすぐできるナルトの近くにいれない里にいるのと、多少強引でも修正が効く外にいるのではおおよそ違うのでそうしたに過ぎない。

が、ダンゾウの反応を見るに、ある程度動揺を誘えたので得策だったろう。

決断は速く、潔くが鉄則だ。

後悔する事もあるだろうが、それも織り込んで選択していくしかない

誰もが自分の走る方向に確信が持てないもので、常にこの選択で良かったのだろうかと疑念を抱いている。

良かったのかではない

良くするためにそれを選択したのだ

 

 

 

これから起こることを要約すると

暁による木の葉襲撃

サスケ八尾殺害

ダンゾウ火影就任

五影会談

ダンゾウ死亡

第4次忍界大戦へ~

 

となるのだが、ホント人災しかないな…

未来を良くするんだ的な事を言ったが、良くなるのは無理ってもんよ…

憎しみが多すぎるわ…

イタチは里を思い、選択したが

私は自分を、延いては一族を思い、選択した

 

うん。無理ぽ!!

 

 

 

私欲まみれな目的としては今のところ

『写輪眼全部燃やす』

『穢土転で父さん尋問』

『六道仙人殴る』

なので、大筋が変わることは無いだろう

てか変わると目的達成さえ危うい

 

只でさえ、写輪眼根絶はダンゾウおびき寄せが失敗して後が無い状態である

六道仙人は…

マダラ復活の、柱間穢土転でなければ無理=戦争始まらないと無理

 

そして、穢土転

 

無理。

 

 

 

いや、ほんと

マジでこいつ分からん

一応口寄せの類なので

時空間忍術を酷使して蔵1つ口寄せする身としてはココが腕の見せ所で、頑張って如何にかしたいがこれは余りにも資料が少なすぎる。

木の葉を抜けた身としては今更戻って禁術の資料漁るのは危険すぎる、ダンゾウ的な意味で。

と、いう事で私は投げた

 

全てを大蛇丸の弟子『カブト』に

 

 

おそらく大蛇丸の不死の研究を引き継いでいるだろうし、カンペ曰く1,2,3,4代目は大蛇丸が口寄せしたが、戦争の主な戦力のその他諸々はカブトが穢土転させたらしいのでもう本職に頼るべきと判断した

餅は餅屋に限る。

大蛇丸パークを無駄に散策しているおかげでカブトがどうやら大蛇丸のチャクラを吸収していることが分かり、やはり私のチャクラ感知に狂いは無かった事が判明した。

よって、大蛇丸パーク散策してれば比較的早くカブトを見つける事が出来るだろう。

見つかる…だろう…

だろう…

と、いいな~…

 

…見つからん。

 

出来ればアンコ隊より早く見つけたいものだが

一体どこにいるんだか…全然気配が無い。

大蛇丸の何かを凝縮したエキスを絞ったっぽい点滴を発見以降、形跡がパタッと止んでいる。

 

「どうすんべやーこのまま里に帰るのは流石にやばいべー」

 

「寝言いっとらんで、さっさときめ。」

 

「…カブトと大蛇丸どっちの方が話が通じると思う?」

 

「わしゃ推定マダラだナ」

 

「ワテもマダラやな」

 

「私は、その…ごめんなさい!!マダラさんで!!」

 

 

以前大蛇丸パーク内と思わしき隠し部屋から発見した遺体を使って取引をしようと思うのだが、その相手がまだ決まっていなかった。

私的にはさっさと父の遺体と交換でカブトに渡してしまいたい代物なのだが…

居ないし…

大蛇丸…も余すところなく吸収されてしまったようだし…

 

ええ…これ手詰まりやん…

 

ということで

カブト通り越して推定マダラ(と言う名のオビト)に取引でもする…?

…一体何を?

状態なのである。

 

「せやかて、あれ持っとったら呪われそうやろ…」

 

「風水的に良くない気がしんでもなイ」

 

「え、えっと…ふっ風水は解かりませんが、あれを拾ってからあまりいい方向に流れていない事は確かですね…」

 

「だからってタダであげるわけにはいかないでしょうよ…」

 

 

取りあえず保留とする事にした。

カブトが見つかれば全て解決するのだが、この様子から行くと、カブトは私の存在に気付いて大戦まで逃げられそうである。

この不運…ここで待ったをかけたい…

 

 

 

「めんどくさい事になった…」

 

 

ホントに。

いや、マジで。

面倒臭い事になった。

 



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89

『サクヤの忍辞職』は混乱を避けるため上層部によって、秘匿とされた。

何故なら、三忍の一人である自来也が、雨隠れにて死亡した情報が木の葉に舞い込んできたからだ。

 

サクヤは、3代続いて同じ顔のおかげで顔が広い。

よってサクヤが行方不明となると取り込もうとする輩、口止めしようとする輩どちらもも多くなるだろう。

『木の葉の忍』に属していたおかげで歯止めがかかっていたそれは、当の本人が辞したおかげで、そこから小さな小競り合い、戦争になってもおかしくはない状態となっていた。

自来也が死亡した現在、これ以上火の国大名、里の者を混乱に陥れるわけにはいかず、サクヤの忍辞職の情報は、あの日火影室に集まった上忍、特上、中忍の内に秘められることとなった。

 

サクヤを使って2代目の名をそこかしこで使ってきた上層部は、結構な痛手であった。

一応、サクヤは今のところ任務に出ていると言う事で処理されているが、時期が来れば火影の名のもと、里に公開されることとなっている。

それが上層部と、火影の間で決めた約束だった。

 

 

 

 

「それで、本当にサクヤを逆口寄せする事が出来ないんですか?」

 

「ああ、ワシらもサクヤちゃんの里抜けを聞いてまず最初に試したんだがの…契約の名前自体がそこから消えておった。」

 

 

火影室にはカエルが4匹と、火影とその付き人がいる。

綱手は、自来也からサクヤを蝦蟇の里に招待した旨を聞いていたので、会う機会があれば蝦蟇の里に逆口寄せをしてもらうよう頼むつもりであった。

それがまさか自来也の訃報と重なるとは思わなかったが…

 

たとえ里の忍びを辞したとしても、サクヤは里の者であることには変わりが無かったし、サクヤに詰め込まれた、あれや、これや、それの、処分を決めなければならなかった。

しかし、やはりと言うべきか、サクヤはその対策はちゃんとしていたようで妙木山の二大仙蝦蟇の力を持ってしても呼び出せなかった。

 

契約の名前が消えることはまずない。契約の名前が消えるなんて事に成ればその契約自身無効となってしまい、信頼も何もないからだ。

口寄せ契約と言うのは、口約束から始まり、管狐の様に家に付くものもあれば、契約書を書いて呼び出したりと様々物があるが、基本血文字、拇印、それにチャクラまでつけるのが普通で、正式に契約を解きたいなら、破棄するのが常識である。

よってその文字が消えることはないはずで、死んでもその名前は残るはずなのだが、何故かサクヤの名はその巻物から消えていた。

 

「自来也ちゃんのごたごたの後だったで、そこまでまだ詳しくは調べてなかったけんの…帰ったらもう一度調べなおしてみるけ。」

 

「ええ、そうしていただけると助かります。」

 

フサカクの真摯な対応に5代目火影は憂い顔である。

なにせ、あの自来也が死んだのである。受け答えが上の空でもおかしくはない。

これから、どういう方針を木の葉が取って行くのかはわからないが、フサカクは少しでも下向きの心が回復すればと声をかける。

 

「まあ、あの作間ちゃんの倅で、サクヤちゃんだからのう…いずれ何か忘れ物でもしたと、帰ってくるだろう。

その時、たっぷり旅の話でも聞きだしたらええんじゃないか?」

 

「ええ、そうですね…

あのサクヤですからね…とんでもないお土産話に腰を抜かさないよう、今から警戒しておきます。」

 

 

綱手はフサカクの優しさに、シシッと笑って答えた。

 

 

―――

――

 

 

 

「ドウダ?」

 

「上手くいった…」

 

「ソレハ良カッタナ」

 

池のほとりで、会話をするオレンジの仮面の男と、形容しがたい恰好をした男(ナルト曰く『トゲトゲアロエヤロー』)は目立っていた。

しかし、その場を見ている人はおらず、ただ鯉だけが池を彷徨っている。

 

「イタチも死んだ――目の上の瘤はもういない

“木の葉に手を出さない”という条件もこれで白紙だ」

 

正確には、まだイタチと取引していたと思われるサクヤが残っていたが、サスケに手を出しても、何もしてこない所から見ると、イタチが死んでから後の事は取引に含まれ無いようであった。

 

 

「ずいぶん待ったね…」

 

「計画通りに進めるためだ…これでいい

イタチはやはりサスケに保険をかけていた“天照”だ。」

 

「イタチのヤツ、自分の真相を知られているとは思ってなかったんだろ…

何でそこまで…?」

 

「真相うんぬんは抜きにしても、オレがサスケを仲間に引き入れることも危惧していたんだろう」

 

 

天照による傷はもう癒えていたが、サスケに近づく度に『ああ』であっては困る。

イタチは何を警戒していたのか、サスケの眼は天照の自動連射機となっていた。

最後っ屁どころではない。

面をしていても発動するようで、他人の写輪眼に反応しているのか、マダラの写輪眼に反応しているのかはわからないが

うかつにサスケの前で目を発動すると天照が勝手に発動し、その度にサスケが無いチャクラを消耗するし、仮称マダラも柱間細胞で復活するが大きくチャクラを消耗するので、写輪眼を仕舞わざる終えなかった。

 

 

「じゃあ、あの真の目の人も、何かしてくるんじゃないの?」

 

「そう思ったが、どうやら違うらしい。サスケに近づいても管狐の気配は動かなかった。

それに真の目サクヤは木の葉の忍びを辞して、今行方不明だ。」

 

「え…それってやばくない?真の目の人今フリーって事じゃん。オビトが仕掛けなくても木の葉の機密情報巡って戦争起こっちゃうんじゃないの?」

 

「…金魚のフンであれ何であれ、あのイタチの影にいた奴だ、逃げ足だけは早い。

おそらく、やろうとしない限り、それは起こらん。

だが、警戒するに越したことは無い。どこにいるか位は掴んでおけ。」

 

はーいと緩く返事をする声と共に低くしゃがれた声が聞こえる。

 

「シカシ…ココマデ来ルノニ、コレホド“暁”ノ、メンバーガ、ヤラレルトハナ」

 

「どこかしらに問題はあったが、皆己の意思で“暁”に貢献してくれた。

デイダラ

サソリ

飛段

角都…

彼ら無くしてここまでの進展は無かった。

そのおかげでオレのシナリオ通りに事は進んでいる。」

 

仮面の下で発動させた写輪眼が、赤く鈍く瞬く。

サスケの前では写輪眼を発動できない故、久しぶりに見たその視界は、鮮やかであった。

 

「何より、サスケを手なずけた。」

 

 

 

―――

――

 

 

 

火影室に用があったシカマルは、5代目に体良く暗号班までの使いっパシリにされていた。

本来、こういう暗号系はサクヤの聞くのが一番手っ取り早いのだが、そのサクヤは里外に任務に出ていて当分は帰って来ないと言う。

確かに、最近サクヤを里内で見ることは無くなっていた。忙しいのだろう。

 

「だからって俺に持ってくるこたねぇだろ…もっとこう…誰かいるはずだろ…」

 

シカマルは、自分で言っていて、その『誰か』にサクヤの名前しか浮かんでこなかった。

しかしその場にいるサクラもそうであったらしく、『誰か』は二人の間でサクヤに確定していた。

 

「サクヤさんが居ないんだから、地道に聞くしかないじゃない。

それにこれはナルト、延いては里の危機に関する事よ?もうちょっとまじめに取り組みなさいよ…」

 

暗号と言ったら、まずサクヤにヒントを貰うのが、中忍の間では常識であった。

サクヤの暗号、封印、結界への理解は深い。たとえ分からずとも、サクヤには人脈がある。

暗号班の誰に聞けばいいとか、それだったらイビキさんの方が詳しいなど、振り分けが上手いのだ。

相手もサクヤの名前を出すとあからさまに態度を変える…なんて事は無かったが、初対面でも変な勘繰りが無く、受け答えがスムーズになる。

何処から拾ってくるのか分からない情報で、サクヤは木の葉の全体の人物をなんとなくではあったが把握しているようだった。

 

 

今考えると、この里はサクヤの情報察知能力によって物事が滞りなく進むことが多い。

ホント何処から拾ってくるのか…大方サクヤの腰にある竹筒に住まう狐なのは分かっていたが、その真相は明かされてはいなかった。

 

「あー…あの人早く帰って来ねーかな…」

 

「なに?あんた、まだ言うの?

もしかしてシカマル、サクヤさんの事好きなの?」

 

サクラの煽りの入ったその話に、シカマルは乗るわけにいかなかった。

あの人はそう言う人では無い。

ずぼらで、変人で、親父にさえ時々勝ってしまう頭脳を持つあの人は、シカマルのライバルで、一つの目標である。

 

「俺はあの人の事を、何時か、越えなきゃならんと思ってる。

…まだライバルに成れてるかも分からねえけどな。」

 

いつもの様に、めんどくせーとマイナスな言葉が帰って来るかと思っていたサクラは、ちゃんとした答えに面食らう。

 

 

 

「まあ取りあえず、暗号班に行ってヒント貰ってくるわ。」



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90

サクヤ御一行は林の国にいた。

ちょっとばかし、そこの物騒な集団と取引するためである。

しかし予想に反して、その姿は毛むくじゃらで、白く、大きく、山の様な姿だった。

 

……サクヤの目の前には白い山がいた。

 

 

 

「お主に用があって来た。」

 

「そうか、そうだろうと思う。」

 

サクヤには、こんな無駄話をしている時間は無い。頭痛に親指を添えた。

さっさとこの『白く』、『目立つ』、『狐』を如何にかして移動させないと、通報されすぐさま何奴?!されて捕まる事位は分かっていた。分かっているが…

こやつ、めっちゃ怒ってる…

 

「(やややばいよぉぉおおお

めっちゃ怒ってるよぉおおおお)」

「(当たり前やろ…あんな別れ方しといて…)」

「(むしロ、まだワシらがこいつの腹の中に納まってない方が可笑しイ…)」

「(…ノーコメントでおねがいします。)」

 

「あの日、話した内容

お主はあの名を偽名と言ったが、何故そう言い切れる。」

 

 

 

 

来ると思ったよこの質問…

 

つか、こいつに見つかりたくないがために色々逃げていたりもしたのだが

全て無に帰ってしまわれた…

この質問に答えるには前世の事から話さなければならず

そうなると蝦蟇の予言も説明せねばならず

更に、もしかしたら叔父さんの目の色々を話さなければならず

 

「場所を…移動しよう。」

 

そう言ってサクヤは、セーフハウスにこの狐を招待せねばならなくなった。

 

 

 

―――

――

 

 

何重にも編まれたその結界はまるで封印のようで、封印と言うにはその蝶番は緩かった。

 

「まず、言わなければならない事がある。

私の前世の記憶と、お前の言う真の目初代当主の前世の記憶が同じ記憶だとは限らん。

生まれ変わったと言う根拠が、お前の記憶と、予言だけではあまりにも拙い。

もしかして前世があっても、同じ時代、同じ国に生まれてたか怪しいし、同じ世界から転生したのかも危うい。

それは解かるな?」

 

「それぐらいわかるわ…」

 

拗ねたように答える狐は現在小さくなっている。

そうしないと屋内には入れないからだ。

地面にそのまま腰を落ち着けるサクヤと、普通サイズになった白い狐は向かい合う。

 

「次に、そもそもの情報が錯誤している。

お前の記憶を疑っているわけじゃないんだが、余りにもあやふや何で、お前以上に生きている妙木山の蝦蟇の仙人に確認したところ、その話はお前の話す内容と大きく乖離していた。」

 

「蝦蟇におうたんか?」

 

「ああ。今はあちらから呼び出せないように色々細工しているが、私は蝦蟇と口寄せの契約を結んでいる。

蝦蟇仙人から聞いた話では、お前と旅をしてからその予言を貰っている。話が合わない。」

 

「…やけ、あの時はそん話は知らんかったはずや。

それは、あいつの名前が偽名の説明にはならん。」

 

早くというように本題にずばずばと切り込んでいく狐は、少しでも嘘を言えば、喉元に噛みつかれそうなほど尖っていた

 

「そうだな。

じゃあ、話を戻そう。

偽名と言うのは古今東西『良くある名前』が付けられる。

雷の国では最後に『イ』が付く名前が多いと聞く。

もし、雷の国で『私の名前はトロイです。』と言われたら、取りあえずは信じるが、偽名だと言われてもそれを疑わないだろう?」

 

「…せやな。けど、時代もあるやろ。今は『イ』が多い。けど、ワシの知っとる範囲では違う言葉が多い時代もあった。」

 

「それと同じで、私の前世では『山田花子』は偽名に多く使われる名前だった。一昔前の名前で、そこそこ多い『苗字』。

学校の書類説明で使われる名前はいつも『山田花子』か『山田太郎』だった。

 

当主の前世の名は『山田太郎』…だろ?」

 

 

サクヤの言葉に狐は息をのむ。

その様子を見て、サクヤは自分の予想が大方当たっていたことを確信する。

 

 

「あとは、あの場でお前の動揺を誘ってこの話自体が嘘か本当かを確かめれられればよかった。」

 

「…ワシの嘘を初めから見抜いてたっちゅうことか…。」

 

 

嘘と認めた。

 

 

「初めからじゃないがな。ある程度嘘は入るだろうと思っていた。口伝と言うのはそう言うものだ。」

 

「せや、あの話は、嘘が多い…

ワシまでたどり着いた者に話す内容や。」

 

 

そう話し出す狐にサクヤは、続きを促す。

 

 

「この世界に、転生者は多い。その記憶を持った者も多い。

せやから、ワシに辿り着いた時点では、そう言うように初代真の目当主と約束したんや。

あいつのチャクラをすべて喰ろうてワシは今まで生きている。

いや、生かされている。

初代当主は自分と同じ時代、同じ国、同じ世界から来るものを待っていた。

あ奴が探していたのは、あ奴と同じ世界から来る、あいつと同じ『常識』を持った人間や。

やから、その為に少しでも()()()が生きられるよう、真の目を作り、子を拾い、人を増やした。真の目の者に拾われずとも、その存在に疑問を持つようにした。

 

ワシは、()()()の見つけ方を知らん。

じゃが、お前が、見つけた…あ奴の、名を、…見つけた。

ワシは…名前の他は……姉がいたことしか知らんかった…」

 

そう言いながら、狐はおろおろと涙を流し、地面を湿らした。

サクヤは、無感動にそれを眺める。

 

「最初に言った通り、ワシはお前にすべてを話すことにしよう。

…それが、約束の全てや。」

 

前を向いた狐は前足の甲で涙をふき取り、古く、ホコリをかぶった記憶を話し始めた。



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91

昔々

六道仙人も死んで、まだ間もない頃

と言っても命の尽きが無い尾獣感覚での、間もない時間になるので、人間感覚的には途轍もなく時間が経った頃

九尾と言う9本の尾を持つ狐がおりました。

 

 

九尾は『パワーこそ力、尾獣は尾の数だけ強い』と思っていたので、同じ尾獣の仲間である、一尾をとても馬鹿にしてました。

ある日、九尾があまりにも馬鹿にするので、ついに一尾がキレ

どちらが強いか、取っ組み合いで勝負をすることにしました。

 

2匹が喧嘩をする事を聞き、他の尾獣は焦ります。

六道仙人に皆仲良くするよう言われていたからです。

こんな事をしたら空にいる六道仙人が黙ってない。今すぐやめるように二匹を説得しますが、二匹は聞く耳を持ちませんでした。

 

そうして明日(みょうじつ)始まった喧嘩は、決着が中々付かず

三日三晩が経ち、天から落っこちてきた落雷によって、引き分けに終わりました。

その時の落雷で、九尾の毛が一部灰になり、近くの竹やぶに潜んでいた死に掛けの子狐に降りかかり、それは白狐と呼ばれる妖怪になります。

 

最初はとても小さかった白狐は、竹藪に潜み、そこに隠れる小動物を食べて、生きていました。

小山程の大きさになった頃、白狐は、ある子供に会います。

その子供はとても

 

おいしそうでした。

 

美味しそうな匂いに、柔かそうな肉、軟骨はコリコリとおいしそうで、骨の髄まですすれそうでした。

しかし、一番おいしそうなのは、その魂でした。

面白い事に、この齢10もいかなそうな子供が、100年生きたような熟成した魂を持っている。

その魂は器と比べてあべこべで、其れがまた美味しそうな香りを引き立て

多少妙でも構わない、今すぐこいつを喰ろうてやりたい。そう、思わせます。

 

駄菓子菓子待て、

この生き物はいわば幼体、基本生き物は大きく成長する。

成長したら肉が増える。更に、魂ももっと熟成される…

 

そう考えた白狐は少年と共に、旅に出ることを決意します。

 

 

 

旅をして幾星霜

少年は様々な場所を巡っては、誰かを探しているようでした。

 

「のう、おんしは、誰を探しとるんや?」

 

あくる日、思い切って聞いてみた白狐ですがその答えは、要領を経ない答えでした。

 

「…俺は、仲間を探してるんだ。」

 

その仲間は誰でもいいわけではないようで、人間と話をしては、違ったと肩を落とす姿が続きます。

まだ少年を食べるには幼く、体積もそんなに増えていないので、白狐はその少年の探し人を暇つぶしに手伝う事にします。

 

「人手は増やすべきや。一人で探したってしゃあない。人海戦術は人間の十八番やろ?」

 

白狐の助言にそれもそうか、と納得した少年は仲間を増やします。

増やして、増えた仲間はまた仲間を呼び、何時しか『真の目』と呼ばれるようになります。

 

 

時も経ち、成長した少年は真の目の当主になっていました。

しかし、真の目を作ったものの、探し人には会えていませんでした。

 

もしかしたら、自分が生きている内に会えないのかもしれない。そう思った真の目当主は、妖怪であり、寿命が存在しない白狐に頼みごとをします。

 

自分の魂と体をあげるから、探し人を見つけてくれないか?

 

白狐はその話に飛びつきます。

何故なら、当初食べる予定だった少年は大きくなるにつれて、その命は洗練されて行き、白狐では到底かなわない相手になっていたからです。

 

真の目当主は自分の命を使って白狐と約束をします。

遙か先の未来、白狐を訪ねてきた者に名前を聞き、当主の真名と同じ姓を名乗った者に、本当を伝えよと。

 

しかし、白狐はその人生の中で一瞬だった日々に、常に付きまとう探し人が好きではありませんでした。

なので、同じ姓を名乗った者には、嘘を教えよう。

そう、考えたのですが、

その時が来て、白狐は大きなシッペ返しを喰らいます。

 

当主の真名が嘘だったのです。

 

 

魂を喰らうにはやらないといけない事が1つあります。

真名を知る事です。

真名を知って、食べることでその魂は白狐に食べられるのです。

もし真名が嘘となれば、ただ、その者のチャクラが残るだけ

それでは只、動物を喰らうのと変わりありません。

当主の魂はもう、輪廻の歯車に戻ってしまっていたのです。

 

偽名と知った白狐は、当主を恨みます。

自分は約束を果たしたと言うのに、あいつは嘘を吐いたと。

しかし、それと同時に、とても悲しく思いました。

当主にとって、自分は特別だと思っていたからです。

 

 

白狐は、当主を食べたいとは思ってはいましたが、嫌いなわけではありませんでした。

長い旅路の中で白狐は、当主を助け、助けられ、共に道を歩み、家族の様に大切に思うようになっていました。

寧ろ好きだからこそ、当主の魂とずっと共にいれる、食べると言う方法を望んでいて

だから真名で縛り、魂を喰らう大義名分が出来ることが嬉しかったのです。

それ程、信頼されていると思ったのです。

 

しかし、その真名が嘘となればその信頼は崩壊します。

白狐はただ、いたずらに、当主を喰らっただけだった。

信じていた魂も名も無く、あとにはその事実が残るだけでした。

 

 

 

 

 

 

狐から語られる真実は、多くは無かったが、短くもなかった。

殆どが前回のままの話だったのは確かで、サクヤの知らない、話されなかった事実もあった。

あの下手な説明はどこへやら、朗々と語られる物語に何時しかサクヤは引き込まれ

サクヤは頷きと、視線以外のコンタクトを取れず話は終わった。

 

初め在った狐への疑心は薄れていた。

腰に据えていた管狐がいつの間にか外に出てサクヤの後ろで『わかるわ~』『いい話でした…』『…ズズッ。』など言っていたがサクヤには気にはならなかった。

其れよりも大事なことを確認しないとならなかったからだ。

 

「じゃあ、お前は初代の前世は、偽名と、姉がいたことしか、知らないんだな?」

 

「ああ、ワシは前世の事はそれしか知らん。」

 

「初代とした約束は、これで終わりか?」

 

「ああ、終わりや。あとは初代の残した、残りのチャクラを消費して、死ぬ時を待つだけや。今まで、何時現れるか分からんかったから、当主のチャクラを節約して、寝て過ごしてきたが、それともおさらばや、いっその事旅にでも出るかの。ガハハハハ!!」

 

話し終えた白狐は、約束を果たしたからか、どこか、すっきりした顔であった。

が、しかし。サクヤの表情は晴れてはいなかった。

 

 

 

「ところで、当主はその探し人に何を求めてたんだ?」

 

 

 

そう、当主の『人を探していた目的』が未だ分かっていない。

当主の目的が何か、世界を救えだとか、凄い力を手に入れろとか、とんでもない事だった場合

サクヤはこんな忙しいときに、こんなくんだりまで来た、面倒臭い性格をした白狐を、御断りして追い返さなければならない。

それはとても疲れる事であろう…。

しかし、白狐から零れた言葉はサクヤの予想に反していた。

 

 

 

 

「いや、知らん。」

 

 

 

 

 

 

どうするよ…

藪をつついたら中身空っぽだったんだけど…

 

とんでもなく昔から探されてきた当主には悪いが

全然目的が見えてこないこの話に、サクヤは人選ミスじゃね?と思い始めていた。

 



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92

いや、まあ…時代から考えて、管狐を使う結論に行き付くのはいいとして…

一番チョイスしちゃいけないとこをチョイスしている気がする…

 

まず、命の長さ的に九尾の白髪を使うのは妥当だと言えよう。

しかし、自分の命狙ってた獣と契約するなよ…

あと感情論で説明する奴に伝言頼むと大体本来の道筋外れるから気を付けた方がいいぞ…

 

だから、父と言う調整役が必要になってくるのだ。

 

 

 

 

 

 

サクヤは特段、仏教に興味がある訳でも、輪廻信望者でもない。

しかし、この世界には輪廻が存在する。

六道仙人の子供が、ナルトとサスケがいる限り存在する。

だから輪廻が存在する『常識』でサクヤは考えた。

 

とても都合がいい事に、二次創作において、輪廻転生と言うのは避けては通れない道である。

サクヤはオタクで腐っている。もちろん学生時、クフフフ笑う奴からウィキを辿って履修済みである。

 

 

サクヤは自分が『偶発的』な異世界転生者であることを自覚していた。

タダでは、そうホイホイ異世界からの転生者は生まれないと考えていたからだ。

さらにサクヤは2歳から前世分の記憶を持っている。

二次創作では良くある設定だが、現実的に考えてレアケースが過ぎる。

些か、特別視しすぎな気がしない事も無いが、そう思わざるをえない生まれであるのは確かだ。

誰(六道仙人若しくは神か何か)がやるにしても、他の世界から生き物を一匹持ってきて転生させるには、結構な(チャクラ)が必要だと思っていた。

 

しかしこの狐、前回の話では仮称弟が異世界転生者で

更に今回の話では、異世界転生者という者は、結構生まれていると言う…

 

人の記憶を、魂を、個人的な理由で、身元不明の力を使って、違う世界に転生させたあげく

そんな大きなエネルギーを使って転生した転生者を、そのまま野放しとか…

目的が無いにしても、非効率がすぎる。

 

 

だから、サクヤは

それを仕掛けた誰かがいて

何かしら真の目(ここ)につながるようメッセンジャーまたは、調整役を残していると

その役割が父、作間だと考えていた。

 

 

 

サクヤは元々、父作間が何を考えて『目』を残したか、詳しくは分かっていなかった。

それも、直でも、口寄せでもなく、ご丁寧に開かずの金庫(封印)に入れてくれてまで残した『ワケ』と言う物を分かって無かった。

サクヤは自来也や、サザミから聞いた範囲では『良い様に力を使ってくれ』と言う意味だと勝手に判断していたし、何ならこれは開かずの金庫だからこそ効力を発揮する、物だと思っていた。

が、管狐の『等価交換』の言葉によってその考えは吹っ飛んだ。

 

さらに蝦蟇仙人の父の(くだり)、サクヤと似すぎていた。

同じ常識を持った…まるでサクヤがもう一人いるような…

もしかして、作間が転生した弟だった可能性まで考えていた。

 

それも無駄になったが。

 

 

 

 

噂の真の目当主の魂が、今もナルトの輪廻に組み込まれ転生しているとなると、話は変わってくる。

ナルトの輪廻に組み込まれた、当主の転生に合わせて転生させれば、エネルギーは少なくて済む。

そして多少(親戚や、親子などの)齟齬は有れど、同じ時代に生まれてくる。

更に自分が調整役として真の目に入るよう持っていけば後から生まれてくる転生者の白狐への道は開け、話は終わる。

 

父が、当主の転生体だった場合

母のお腹にいる時一度顔を見せに行ったのも

ピンポンを貰いに行ったのも

サザミに、ピンポンの契約を半端に継がせたのも

全て、サクヤに『同じ常識を持った異世界転生者』の可能性を与えるためだった。

と言う事になるが、

しかしそこまで当主(転生体)が生きていればでの話しである。

 

サクヤの父は、サクヤが白狐を知る前に亡くなっている。

 

その本当の目的は分からず仕舞いである。

何にせよ、当人は死んでいるから考察するだけ無駄。

という結論に落ち着いたサクヤは他の問題に目を付ける。

 

 

当主が、本当にただ、『仲間を探していた』だけなのであれば、他の転生者でもよかったはず。

何か、この常識(原作知識)を持った人がやりそうな目的でもないと、ここまで大がかりな仕掛けはしないし、サキや、サザミは亡くなった意味が無い。

 

 

「(自意識過剰な気もしないが、ここまでおぜん立てされたら、エクスカリバーも抜くしかないのか…

やはり、父は穢土転生させる必要があるな…。)」

 

サクヤの物騒なやることリストがまた一つ増えた。

 

 

「よし。

親父も殴る。」

 

 

―――

――

 

 

 

シカマルの暗号解読は難航していた。

暗号部でヒントを貰おうとするも、里の暗号ではないため情報は手に入らず。綱手様にも、カカシ先生にも、聞いても答えが出てこないばかりか、ナルトの心理的問題も抱えることとなってしまったのだ。

しかし、それも紅先生のおかげで持ち直したようだし、さあ、やっと解読と思われたが、それは迷路の入口だった。

暗号解読がここまで時間のかかるものだと知らなかった故、シカマルとしてはサクヤが恋しくなるのも必然である。

 

「サクヤが居やぁ今頃ヒントの一つや二つ出て来るのに…

そう思うとホントあの人って万能だよな…」

 

居ない人を憂いても仕方がない。

そう思ってナルトをせかすが

 

「そんなのサクヤ姉ちゃんに聞いてくれってばよー!!サクヤ姉ちゃん暗号解くのが趣味だろー!

大体こんな一大事に…どこに行ったんだってばよぉ!!」

 

「そんなん俺が知りてぇわ!!」

 

と二人で居ない人に当たり散らす始末。

暗号部のシホに宥められ、二人は気付くところを片っ端から上げていくことになった。

 

「何か少しでも気になることがあったら、言ってみて下さい…

いきなり暗号を解読しろだなんて、言いませんから。」

 

落ち着いたシホの声にナルトは正気に戻って考える

 

「……

見た時から気になってる事はあっけど…」

 

「なんだ?」

 

シカマルはやっと議論が出来ると、ナルトを促す。

しかし、それは議論にはならなかった。

 

「うん…

何で数字のばっかの中に、一文字だけカタカナが入ってんのかと思ってさ?」

 

「は?」

 

「カタカナ?」

 

 

 

暗号を解くカギはごく簡単であった。

『癖字』と言う、古今東西ミスリードに良く使われるトリックである。

数字だけでいうと『2.3.4.5.7.8.9』が人によっては『己(乙).ろ.↑.ち.ク(り).日.タ』に読めるのである。

今回は、逆であった。

 

「自来也様は、カタカナの『タ』を書く時、手癖で一画目を短く書く癖があって

1画目のオシリに3画目がくっついてしまう。

それに2画目が丸くなるから…」

 

暗号班のシホによって、紙の上で説明されて行くのを見て、『なるほど』とナルトとシカマルは納得をする。

 

「ぶっちゃけそれが、自来也様とうずまき君との共通のカギだったんですよ!」

 

暗号を解くカギがやっと現れ、嬉しそうなシホに対して、ナルトとシカマルはまたも言い合いを始めていた。

 

「なんでそんな大事な事、気付いた時点でさっさと言わねーんだ?」

 

「だって『タ』って分かったからって、それが何だってばよ?」

 

ナルトの言葉にシカマルはカチンとくるが、目を瞑り、おでこに指を当てて落ち着いて考える。

 

今サクヤはいない。

サクヤの助言がもらえないなら、取りあえずサクヤの様に思考するべきだ。

ナルトの言葉にいちいち突っかかっている時間は無い。

 

 

『人が関わる場合、物事には常に感情と言う物が付き添う。誰かの思考をトレースするなら感情を第一に考えて、そのうえで、相手がどういう状況で育ってきたか、こういう時どうするかなどの環境を添えると分かりやすい。

まあ、時々諸々ぶっ飛んで考える奴もいるが。』

 

父であるシカクの言葉を思いだしサクヤを思いうかべ、盤上に駒を並べる。

サクヤならどう考える?

サクヤならどう答えを出す?

サクヤなら…

サクヤなら…

目を開けたシカマルは、

 

 

全然、何も、思いつかなかった。

 

里の頭脳とも言われるシカクの言葉を持ってして、何の解決にもならなかった。

そもそも、サクヤの思考をトレースすること自体が無理難題である。

シカマルの思考は、100手先まで読めても、理路整然としていて、『これだから、こうである。』と簡潔に出来ていた。

しかし、サクヤの思考はどう考えても、理路整然としてはいなかった。

シカク曰く『諸々ぶっ飛んで考える奴』が、サクヤであった。

 

 

「…『タ』って分かっても…何も進歩は――」

 

 

しかし、暗号を書き残したのは伝説の三忍自来也。

シカマルがトレースするべきはサクヤでは無く、自来也である。

それなら、簡単である。

自来也は『エロ』で出来ている。

 

「…いや、アレだ!

例えばお前の言っていた本だ!」

 

 

 

 

シカマルのIQは冴えわたり、カカシのムッツリもしっかり公開され、色々人としての尊厳を無くし、ナルトの自来也によって育まれたスルー力も活躍し、解かれた暗号を見て、シカマルは達成感に浸っていた。

 

「(サクヤの力を使わなくても、解けるときは解けるもんだな…)」

 

サクヤが居ればここまでの時間を使わず答えに行き付く事は確かであったが

自分たちで行き付いた答えにシカマルは満足していた。

また一つ、サクヤに追いついたような、そんな気がしていた。

 

 

 

 

『ほんものはいない』と言う暗号の答えはその後、フサカクの『分からん』によって無に帰る。




色々こねくり回してこんな長くなってるけど
結論:真の目当主はサクヤに用があった
それの表向きの伝達方法を狐に一任してたせいで情報の齟齬が生まれた。
って事です。

ナルトって絶対自来也にスルー力を鍛え上げられたと思うんだよね…。
と44巻読んでて思った。


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ペイン襲撃編
93


迷宮の入口へようこそ


『戦った分だけ、経験は溜るが、その分情報は敵側にも漏れていることを考えて駒は動かせ。

お前は自分の頭に自負があるからこそ、弱者の思考に弱い所がある。

サクヤは負けた分も強くなる。

なぜなら、自分の情報をなるべく洩らさないよう注意して指すからだ。

それは次につながる。

一つの盤面だけが全てじゃない。勝った、負けた、その後の事も考えて指せ。』

 

 

シカマルの幼いころから、シカクの話しには『サクヤ』と言う人がよく出てきた。

そして話に出てくる割に、奈良家に顔を出した回数は微々たるもので

シカクの話に出て来る度に、シカマルの母であるヨシノから「ああ、あの白い子。」などと呼ばれていた。

 

親子ほど離れているシカクの友人の話は、大体いつも文句から始まり、最後は大笑いして終わる。

シカマルは、どういう経緯でシカクの友人の位置にいるのかは知らなかったが

父に認められているようで、とてもとても眩しかったのを、覚えている。

 

 

 

 

父親の将棋の相手が嫌になり、『真の目の白いの』に突撃した事件から

サクヤは良く、シカマルに付き合って将棋をしてくれた。

 

しかし、シカマルに『何か』を教えてはくれなかった。

シカクのように、追い込み学ばせる将棋でなく

アスマの様に、将棋談義を挟み指導する将棋でもなく

ただ直向きに、シカマルの将棋に答えるだけだった。

 

そしてそれは、シカマルがサクヤとの『経験の差』を測るにはちょうどいい物差しだった。

サクヤが、シカマル相手に盤面を見ずに(そら)で将棋を指せたのも、シカマルの付け刃の戦術では何も誘われてくれないのも、全て経験の差によるものであった。

 

実力でも、才能でもなく、経験の差である。

 

 

 

サクヤの戦い方は、決してかっこ良くは無い。

良く言えば慎重、悪く言えば迫力が無い。

誰かにサイコロを振らせないそれは、将棋にもよく出ていて、撤退が早く、あと一歩の思いきりに欠けるとシカマルは常に思っていた。

 

シカクは、シカマルがサクヤと勝負するようになってから『サクヤを見本にしろ』とよく言った。

『お前はヒーローでは無い。お前には出来ない。サクヤの様に()()()やれ。』そう言われているようで

シカマルは、それがあまり好きでは無かった。

 

 

 

―――

――

 

木の葉隠の里は、ナルトが妙木山に修行に出て、一時の平穏が訪れていた。

あの、渦の中心であるナルトが居ない里が、静かで穏やかな事は、ナルトが修行でいない3年で分かっていたが、居ないなら居ないでそれは、少し寂しかった。

 

しかし、時機に寂しいなどとは言ってられなくなる。

あの暁が、尾獣の人柱力であるナルトを狙って、木の葉を襲う事は明確であった。

 

「暗号の『ホンモノハナイ』…

それなら、そのペインとかって言う6人は幻術で、もう一人いたって言う女の“暁”の術かもな…

そいつが影から物理攻撃で自来也様を…」

 

「イヤ…そうは考えにくいわ

フサカクっていう蛙のかしらが言うには、自来也様は実際にその六人に武器で刺されて亡くなられたそうよ。」

 

暗号部のテーブルでシカマルとサクラ、シホは

ペインの情報をありったけ集めて、検死の結果が出るのを待っていた。

里を襲う可能性がある以上、ある程度パターンを予想しておく必要があったからだ。

 

「まあ…

そのペインを三人倒したけど、生き返ったって言うし…

信じがたい幻術の中のような話だけど…」

 

「“暁”相手に常識は通じねーよ

不死の奴らまでいたんだからな」

 

「とにかくほかの情報が出てくるまで、ある程度のパターンを出来るだけ推測しておきましょう。」

 

現実は将棋と違って、戦った分相手の情報を持ち帰れるわけではない。

負ける時もあるし、()()()()()()()()もある。

自来也様が命を賭けて残してくれた情報は何としてでも、活用したいところであったが、その情報は、その場に居たわけでもないシカマル達には少なく、もどかしい思いをするだけであった。

 

 

 

「しっかし、こんな大変な時にサクヤはホント、何してんだか…

自分の弟分ぐれぇ守ってほしいもんだよな…」

 

「シカマル、またサクヤさんの話?」

 

サクラはこの手の話に飽き飽きしていた。

シカマルはサクヤのいない間に何度もサクヤと現状を比べるのだ。

サクヤが居れば、サクヤだったら、その言葉はもう聞き飽きてきた。

 

しかし、その名前に逐一反応している人がいた。

シホである。

 

「サクヤさんには、ある意味お世話になっている身ですが、ここまで里に帰って来ないほど忙しい人だとは思いませんでした。」

 

サクヤが

暗号解読“班”を“部隊”まで作り上げた、暗号解読部隊、部隊長『紐縄ホドキ』の弟子である

と言うのは暗号部では有名であった。

 

 

 

元々暗号と言うのは『暗号部』が解読、作成を担っていて

暗号部の中に解読班、作成班が存在するわけである。

暗号と言うのは、解読、作成、どちらにしても時間が掛かる物として今まで処理されてきていたので

戦時中、忍びは暗号で指示を送られてきても、解き方を知ってる人が死んでいれば、これが何の連絡なのかわからない、などと言う事態に陥っていた。

いわば、サクヤのいた現代の戦争の様に、暗号を効率よく使えていなかったのだ

更に、暗号を作成解読できる人材は常に敵国から情報を狙われ、味方からは情報が漏れないように命まで狙われる始末であった。

 

よって第3次忍界大戦中、暗号部は常に人員不足で、新しく人が入ってもすぐ前線に駆り出され、伝令に駆け回り、ある意味人材の墓場を化していたのだ。

 

そこでホドキが考えたのは、各班に暗号解読できる人材を一人作り、それを暗号解読部隊として召集、セミナーを設け教育を施す事だった。

暗号は里の機密に関わる情報なので、情報の規制は多かったが

さわりを教えるだけの、アカデミーではカバーしきれない範囲を、補うことは充分出来た。

 

セミナーを受けた者は表向き解読部隊に配置されている人材となるが、その隊員を各班に貸し出す体にすることで班行動の規律には接せず、暗号部の人員不足は解消される。

さらにセミナーを受けた者は、里から送られてきた暗号がその場で解けるよう教育されるので、

場面によって、止む負えない理由で暗号を急に変更したとして、送る相手にも同じセミナーを受けた隊員が居れば通じるようになる、時短が可能になるようにした。

もちろん敵国の暗号も簡単であれば、その場で解けてしまう。

後進を育てるきっかけにもなった。

 

 

 

そんな、頭脳集団の部隊長、の1番弟子サクヤは、あの吐血事件から暗号部に顔を出すようになっていた。

サクヤは並大抵の暗号は自分で解けてしまうので、あまり用はないが

思い出した様にほいっと仕事を投げて来るので、暗号部(作成班)とは顔なじみである。

シホは時々飛び込みでサクヤから振り分けられる仕事に疑問を持たなかったし、不満も無かったが、ここまで里を空けた事は初めてであった。

大体一月に一度は家に帰ってくると言うのに、ここ数か月は里にさえ帰っていないようだった。

 

 

 

「いったいどこまで任務に行ったんですかね…?」

 

シホの疑問にシカマルは、ここ最近の不審な動きを思い出していた。

 

「サクヤの姿を、ここ数か月見ねぇんだよな…」

 

「それ、私も思ってた。綱手様が言うには、ある任務に就いてもらってるって…」

 

サクラの同意の声に、シカマルはあることを話す決意をする。

 

「こんな踏み込んだ仕事、今迄俺に振られることはあんまりなかったんだが

最近それも多くなってきてて…おかしいと思って、実はサクヤの家まで行ったんだよ。」

 

シカマルの話に、サクラとシホはそれで?と促す。

 

「家具から何から、もぬけの殻だった。序に蔵までもない。

蔵は最近撤去したのか、まだ、建ってたあとが残ってけど…いつか家の方も撤去されかねんぞあれ…」

 

全て確認したわけでもないが、サクヤの家は窓から様子を見た限り家具一つ無く、蔵は完全に撤去されていた。

引っ越しの路線も考えたが、シカマルにはあの蔵を動かす意味が解らなかった。

サクヤが困っている姿は想像がつかないが、何か変なことに巻き込まれていないといいが…と心配はしていた。

 

 

「……夜逃げでもしたんですか?」

 

シホの言ったことが一番の正解であるが、話は横にそれていく。

 

「さあな…

ただ、サクラにも話してねーって事は、上がそれを隠したがっているのは確かだ。」

 

 

 

「え、それって…」

 

「もう死んでいるってことですか…?」

 

サクヤをここ数か月見てない。

何から何まで片づけてある家。

上が知られて困る事

 

サクラとシホの頭の中には『真の目サクヤ、他殺か?!自殺か?!監禁か?!』の見出しがひらひらととはためいていた。

 

 

「いや…真の目の連中がお祭り騒ぎをしてないとこから見ると、死んでないのは確かだ。」

 

サクラとシホは安堵のため息を吐く。

が、この有事におけるサクヤの不在に答えが出たわけではない。

ここ数か月、シカマルだけでなく、サクラ達は

『サクヤが居れば…』、と思う場面に数多く遭遇していた。

木の葉は、早くもサクヤが居ない事による弊害が出始めていた。 




時系列とにらめっこして、過去の自分が書いた文章を恨み、私は諦めた。
もうどうにでもなれ。(˘ω˘)スヤァ…


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94

サクヤが、幼いころからシカクを相手に奮闘していたと聞くと、聞こえはいい。

が、シカマルと同じように、将棋で遊ばれていた事は確かである。

そこから学ぶことは、何もなかったわけではない。

しかしサクヤは、シカクやシカマル程に頭がいいわけではないので戦術、戦略の『見本』には成れど

それを使うタイミングも、やり方も、すべてが『お手本』にはならなかった。

シカク程の頭脳を有してないサクヤには、その戦術が使えなかったのだ。

 

だからサクヤは、その戦術を凌ぐ方法を編み出した。

シカクに準ずるのではなく、シカクに立ちふさがる方向にシフトした。

 

シカクは里の頭脳で

よその国相手に、戦争をして生きて帰って来た

思慮、経験、共に深い頭脳で

サクヤは、そのシカク相手に、凌ぎ方を一から編み出してきた。

 

戦争が終わって間もなくの、冴えた頭を相手に、立ちはだかり続ける経験は

当時のサクヤ以外もう、できない経験で

それを編み出す経験は、シカクと同じで『頭のいい』シカマルだからこそ、出来ない経験だった。

付け刃の戦術で、幼いながら()()シカマルが相手にされない訳である。

 

その経験の価値をシカマルは知らない。

 

 

 

 

サクヤは『サクヤの持つ経験』を、シカマルが知る必要は無い、と考えていた。

その経験はある意味、戦争遺物であり、後の世代に残す必要性を感じなかったと言う部分もあったが、一番大きい部分は

 

サクヤが『シカマルはそういう場面に会う必要がない』と判断したためであった。

 

 

シカマルに団子屋で捕まった当時、サクヤはまだナルト世界線に生まれて十数年。

両親を亡くし、仲間を亡くし、命を狙われて、ココがどういう世界かは分かってきていたが、それは天災の様なもので、一方的な暴力であり

戦争と言う、陰謀渦巻く政治的な暴力を、サクヤはまだ、机上でしか知らなかった。

 

戦争を知らない現代人にとって、将棋と言う疑似でも

幼い子供を追いつめ、逃げ道をふさぎ、苦汁を飲ませる事は、出来無かった。

いや、したくなかった。

 

追いつめると言うのは絶妙なさじ加減が必要である。

相手の様子をつぶさに観察して、その日の出来事と掛け合わせて、過去を加算して、心がおれる寸前で止めなければならない。

親でも敵でもないサクヤは、ともすれば勢い余って心を完全に壊しかねないそれを、コントロールしきる自信は

 

無かった。

 

 

よって利己的で、偽善な感情で『だたのゲームなんだし…』とサクヤは手を抜き

シカマルと並び、シカマルの手の届く場所に位置取り成長を促した。

 

それが普通だ。

誰もが適切な鬼教官にはなれないし、誰かの敵になりたくない。

そして、まだ幼いシカマルを、容赦ないシカクの矢面に立たせるならば

いくつもの苦渋の中で、何かを編み出すような盤面に立たせるならば

 

『自分の代で、こんな経験は終わらせてしまうべきだ。』

 

という、現代的で、堕落した優しさによって、サクヤはシカマルの相手を引き受ける事にした。

 

 

きっとサクヤのいた元の世界線では、サクヤの判断は英断として語り継がれる物であっただろう。

戦争の体験をさせるべきではないと感じるように、受験戦争を抜けて何も得なかった虚無を抱えさせたくないと思うように、後の世代にこの経験を残してしまわないように…

 

しかし、そういう世界であるから、

もう戦争が起きる心配も、明日死ぬことを考える必要もない世界であったから、

()()()()()()()()()()()()英断になるのである。

 

残念ながらサクヤが今生きている世界は、戦争がいつ起きても可笑しくない世界で

シカマルは、それに否応なく巻き込まれる立場に居た。

 

 

 

 

―――

――

 

 

木の葉の感知結界に、人間が一人感知された。

感知結界を張っている結界師は、声を上げる。

 

「侵入者だ!目標は一人、西口イのB地点だ。」

 

それを聞いた、その場に居る中忍や上忍達は、いっせいに状況把握と伝令に走る。

 

 

 

いくつもの大きな爆発音の後

ゴゴゴゴッと振動が建物に伝わる

結界班は屋根の上を伝って現場に向かったものの、これはどう考えても一人で成せる攻撃範囲では無い。

あたりの黒煙立つ光景に、状況が思っているより深刻なことを悟る。

 

「こう、あちこちで!

どうなってる!!侵入者は一人じゃなかったのか?」

 

「すぐに白眼で確認します!!」

 

結界班に所属する日向家の者が白眼を発動するが、規模が大きすぎて一人では把握しきれない事は明白であった。

 

「ええい!結界班だけでは間に合わん!他の部隊に連絡して救援を要請しろ!

それから、火影様にも連絡だ!!急げ!!」

 

この規模の攻撃に、いつもなら、もう来ていてもおかしくない救援、援護が全く、連絡さえよこしてこなかった

その事に結界班の日向家の者は少し首を傾げるが隊長に従い、火影邸に伝令を走らせた。

 

 

 

 

 

地下に併設されている検死室に、ガイガーカウンターのような機器音が鳴る。

シズネは音の出所である、チャクラ計機を手に取り、死体についていた複数の黒い棒の内を一本持ち上げそれに近付ける。

すると途切れ途切れだった音が、断続的な音に変わって行く

 

「急にチャクラの計機が反応して、黒い棒が過熱したから、おかしいと思ったんだ

コレ、高周波チャクラを受ける復調装置だったんだ。」

 

他の作業をしていた研究員が振り返り質問する

「フクチョウ装置…?

つまり、なんです?」

 

復調装置事態分かって無い様子にシズネは言葉を重ねる

 

「つまりコレは、チャクラの、受信機って事!

今まさに受信してる!」

 

未だ概要を理解できていない研究員に説明しようとするが

説明の途中で、其れより今は5代目に報告する事の方が先だと気付く。

受信機だと言う事は、今受信していると言う事は、

 

今まさに、どこからか送信されている信号が、()()にも受信されていると言う事だ。

 

ズズズズ…ン

と建物が揺れた

 

 

 

 

 

―暗号部

 

シカマル達は暗号部のテーブルに広げていた資料を一旦置き、窓の外を覗き込む

黒煙がそこかしこから上がっている

 

「これって…?」

 

冷や汗をかいてサクラは事実を飲み込もうとするが、シカマルの声に冷静になる。

 

「行くぞ!」

 

何者かが里で暴れている。

ならば木の葉の忍びはそれを止めるまでだ。

 

取りあえずサクラは医療班が活躍できる病院に向かい、シカマルは状況の把握と里の者の避難誘導、シホは上司と共に、万が一の為に火影邸へ、

それぞれが適材適所へ向かう事となった。




ねむみ


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95

シカク相手にしのぎ切る実力がどれだけ凄いのか、知らなかったシカマルは

中忍試験、二次試験が終わり、家で激励の声をかける家族に、解かりやすく拗ねていた。

父、シカクのサクヤ話が長いのだ。

 

「サクヤはな~中忍試験で途中退場してな~…

当時木の葉の大名護衛小隊隊長をしてたんだが、第2の試験で敵前逃亡ばっかすっから、『お前ら…中忍試験に来たんだよな…?』ってめっちゃにらまれたんだよ…ホント、あいつ…

まあそれが逆に評価されてシードに入れたのは良かったが…」

 

酔っぱらった人間の話は大体要領を得ないが、シカマルはシカクが『サクヤが中忍試験で実力を隠すことは真(正解)であった』と言いたいのは分かった。

分かったが、それはシカマルの神経をとても逆立てる。

 

「(手の内もっと隠せばよかったってか?

もうやっちまったのは仕方ねぇろ…

んな説教より、次のアドバイス位よこせよ…)」

 

この糞おやじは、次がある息子にアドバイスするどころか、酔っ払いの説教で時間を潰そうとしてるのではないか

シカマルはそう思えて仕方が無かった。

 

「今日疲れたし、寝るわ。」

 

そう言って話しもほどほどに、ふて寝するのも仕方がない事だ。

この冷戦はシカクの大人げない拗ねによって思いの外長く引きずることになり、

後日、奈良家の森に現れた白色に、シカマルは気まずい思いをする。

 

 

 

聞こえていると分かっていても『めんどくせー』とつぶやいてしまうのは口癖だから仕方がない。

と、心の中で弁解するが、奈良家の森に、シカクに引きずられてきたサクヤは、全くそれを気にしてはいなかった。

他に注視すべき問題があったからだ。

 

「あの、シカクさん。私これから任務入ってるんですが。」

 

「気にすんな。外しといたから!」

 

あの二代目に似ているサクヤの顔で、眉間にしわをこれでもかと集めている姿は、迫力だけはあった。

上官であるシカクに異議を申し立てられるかと言ったら、そうでもないが。

 

 

 

将棋の様に、サクヤは忍びとしての戦い方も、迫力に欠けた。

それは、レクチャーもソコソコに始まった忍び組手で、さらに確信を持った。

サクヤの体術は基本避けの方向を取る。

決定的な一手も無く、ただ術を邪魔するだけの攻撃にシカマルは

 

なんだ。中忍ってこんなものか。

 

そう思わなかったと言ったら、嘘になる。

術の発動の邪魔は体術の基本で、アカデミーで比較的初めの方に習う事で

これぐらいできて当然で、なぜ父親であるシカクが、今更体術を教えろなんて言ったのか、シカマルには理解できてなかった。

またオヤジの暇つぶしに付き合わされているのか、とさえ思っていた。

 

簡単に言えば、シカマルはサクヤを侮っていた。

それはサクヤが女性であったと言うのもあったし、自分がサクヤより頭がいいと言う自負もあったからだ。

 

 

急に、組手を止めたサクヤに、シカクが声をかける

荒くなった息を整えるシカマル。

 

「(思ったより体力を使っちまった…。)」

 

シカマルは、これ以上は流石にやらないだろうと、どさっと座り込んだ。

その様子を見下ろしたサクヤはシカクに声をかけた。

 

「いや、無手タイマンやめましょう。現状でシカマル君に体術は何の意味もないですよ。」

 

 

その言葉にシカマルは肩を揺らす。

 

 

測られていた。

それもだいぶ甘く。

 

「中忍試験の相手は下忍です。大技2,3発でかかってくるのがセオリーです。中忍試験に受かりたいならそれをいなす必要がある。

が、私は君がこの1か月で、付け刃で、それをいなせるようレベルアップできるとは思わない。」

 

シカマルがサクヤの実力を測っているのと同時に、サクヤもシカマルの実力を測っていた。

深淵を覗く時、また深淵も覗いていた。

 

ただ、それだけ。

 

小手調べだったのだ。

策に、易々と引っかかってくれるわけである。

 

 

幼いころからサクヤと盤上で睨み合って来たシカマルは『サクヤが手の内を隠している』とは、全く考えていなかった

いや、全くって程ではないのかもしれない。

昔シカクに言われたとおり、頭の片隅にちゃんと存在していたのかもしれない。

しかし、視野に入っていなかった。

 

 

それは『二歩』程、初歩的なミスで

それを指摘しない優しさは、確実にシカマルの判断を鈍らせ、シカマルに『堕落した優しさ』を甘受させていた。

初歩的なミスと言うのは、致命的なミスだから初歩の段階で学ぶものである。

この初歩的なミスの、遅すぎる指摘は、シカマルに大きな衝撃を与えた。

 

『そうさせられた。』そう言ってもいい位、見事な手際だった。

 

 

 

 

「シカマル君、シカクさんにちゃんと頭を下げなさい。」

 

さらに、あの日の事で、親父が地味に拗ねているのも、喧嘩みたいになっている事もばれている。

シカマルは気まずそうにサクヤを見上げると、『はぁ』っとサクヤから大きい溜息が出た。

落胆を含んだそれに、シカマルの視線はゆるゆると下がって行き

 

 

「そしたら私と修行しましょう。」

 

 

サクヤの、『しょうがない』と言う顔が浮かぶ声に、視線を上げる。

苦笑の奥に、シカクの苦い顔が見えた。

 

 

 

この時シカマルは、サクヤの実力がすぐそこに在るものだと、信じて疑がっていなかった。

いつか倒せる、倒す位置にいると思っていた。

シカマルは、『サクヤをいつか倒すべき目標、追い抜くもの』と位置付けてはいたが、それがいつであるかは明確には決めていなかった。

だから、サクヤの堕落した優しさに、何時までも浸っていられたのである。

 

 

―――

――

 

火影室に駆け込んだシズネは御意見番の二人が火影室にいることを不審に思いながらも5代目に声をかける。

 

「綱手様!」

 

「シズネか!

何か分かったのか?」

 

綱手は数秒前の怒りを抑え、シズネに歩み寄る。

 

「コレです!

チャクラの信号を受け取る受信機の様なものが、ペインの検死体のあちこちに刺さっていました。」

 

そう言って差し出した黒い杭は、今もまだ受信しているのか熱を持っている。

 

「フサカク様のお話からすると、ペイン六人全員、体や顔にこれと同じものが刺さっていたことになります。」

 

綱手は、シズネの言葉を補足するように、初歩的な質問をいくつか訪ね、推測のすり合わせをする。

 

「つまり六人とも何かしらのチャクラ信号を、全身で受け取り、行動していると言う事か?」

 

「…受信機か…それとも互いにチャクラを送信し合う無線の様なものか…

そしてこれが今まさに反応していて…

これがペインの強さの秘密につながっている筈です。

尋問班からの情報と合せて、解明します!」

 

 

「情報部からの連絡によると、敵はナルトを探している…

この里に侵入してきた敵はまず間違いなくペインだ。」

 

シズネから得た情報に、綱手は結論を付け、

デスクに振りかえり、指示を飛ばす。

 

「全てを、フサカク様にも連絡しておいた方がいいな。

連絡蛙よ、ナルトを呼ぶついでに、このことも伝えてくれ!」

 

「分かった!」

 

「シズネは検死の情報を持って尋問班と接触し、ペインが何者か解明しろ!」

 

「はい!」

 

「暗部『炉』班はシズネの護衛!

そのついでに尋問班のガードに回れ!

奴らを近づけるな!」

 

「ハッ!」

 

「私は屋上で情報を待ちつつ、カツユを通して全けが人の治療を行う!

里を全力で守る!」

 

 

「行くぞ!」

 

 

 

 

木の葉火影邸の庭に巨大なナメクジが煙とともに姿を現す

建物の屋上から見るとそれはちょうど顔の位置らしき部分が見える。

そこに向かって綱手は、声を張り上げた。

 

「これから木の葉にいる忍びや、一般の者も含めて全員に付け!

私のチャクラを受け取り、全員の怪我を治癒しろ!」

 

ナメクジはその風貌に似あわず澄んだ声を出して状況を把握する。

 

「里のピンチみたいですね…」

 

その一言の時間も惜しいとばかりに綱手はさっさとしろとせかすと、そのナメクジはバラバラと崩れ、分裂

里中に張って進む。

 

 

景気よく声を上げたが、綱手は奥底に何かが(わだかま)っていた。

それが何かわからないが、今は里だとすぐさま思考を立て直す。

とにかく、情報を集めなければ。

 

口寄せナメクジ、カツユから集められる情報に、その蟠った何かが、明確に形になって行くのを感じた。

 




サクヤが何故無手だったのか、シカマルは知る由もないが
読者ならば大体ヒント3つほどで答えに行き付くだろう。
1サクヤは当時暗部だった
2任務に行く前だった
3そんな装備で(奈良家御曹司相手にして)大丈夫か…?

サクヤ「(うっ…勝利に貪欲なおっさんから殺気が…!!)」 


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96

シカクは、サクヤの実力を隠す『癖』が、サクヤ自身を守っているのに気付いていた。

しかし、サクヤの特殊な環境の問題であったが故、シカク自身がそれに言及する事は無かった。

作間もそうであったからだ。

 

年の功と言うのか何なのか、作間の『それ』はサクヤよりもっと厄介で

だからこそまだ、若いサクヤのそれは見抜く事が出来た。

サクヤが成長するにしたがって、それはもっと自然になり、見抜く事が困難になって行くことは想像に易い。

 

そしてシカクは、サクヤの本性と言うべき、『シカクと相対できる実力』を、サクヤの『堕落した優しさ』で隠されている状態が、シカマルには良くはない事も分かっていた。

がしかし、シカマル自身が堕落した優しさを甘受していることに気付かない限り、それはどうする事も出来なかった。

 

シカクは、サクヤの『シカクと相対できる実力』を中忍試験、本戦前の1か月でシカマルに引き出させ、マスターさせるつもりであったが

サクヤに、さりげなくシカマルが相対すべき人物を、サクヤからシカクにズラされ

それが現在的に見て、的外れでない事に内心舌打ちを打っていた。

確かに中忍試験合格は、血系限界(特技)を伸ばす方が先決だし、手堅い。

 

だが、シカクは長期的に見て、サクヤと相対する方が、シカマルの利になると考えていた。

だから幼少のシカマルが、盤上で自分と相対するのを嫌がった時に、サクヤをあてがったのだ。

まあ、その目論みはサクヤの堕落した優しさによって無に還られたが。

 

 

サクヤの堕落した優しさは、中忍になって初めての任務で

シカマルに、とてもしょっぱい涙を流させる理由に十分なった。

 

シカクは、ほら見ろと思う反面、こんな思いをさせるべきでは無かったのかもしれないと、少し…爪の先程の後悔はしていた。

サスケ奪還任務の隊長に、書類上の暫定的保護者であるサクヤでは無く、シカマルを

最後に推薦(後押し)したのはシカクであった。

あの日、朝早く飛んできた忍鳥に『是』を返した。

 

上忍になったばかりの、サクヤの忙しさも含めて勘定した部分もあったが

シカマルが、サクヤとの差を理解するのに丁度いいのではないのかと思ったのだ。

そして、それは大きくシカマルの心に残ることになる。

 

 

編成した中では年長者で、一番強いと思われたネジ、重体

親友であるチョウジ、一族の秘伝役を使った丸薬により重体

キバ、傷が深いが命に別状はなし、重傷

赤丸、キバを庇った事により神経を損傷、重傷

ナルト、重傷、命に別状はなし。

 

応援に駆け付けて来てくれた砂の者やリー、迅速な対応をした医療班がいなければ、この内何人かは確実に死んでいた。

シカマルの自負と思い上がりの犠牲になった親友たち

 

もっと、ましな作戦は無かったのか、()()()()()()上手くできなかったのか

 

オペ室の前で、ついこの間敵だった砂のテマリに発破をかけられ、シカクに活を入れられ、5代目に声かけられ、一応立ち直ったものの

その酷い思い上がりはシカマルについて回った。

 

 

 

―――

――

 

「クソッ!!」

 

小さく声を上げて、少なくなってきたチャクラを錬る。影がしなり、ガコンッという音と共に、目の前の瓦礫が持ち上がった。しかし、それも長くはもちそうもない。

隙間から聞こえた僅かな声を頼りに、控えていた下忍が瓦礫から人を助け起こす。

 

「息子が!!1階に!!」

 

母親だったのか、乱れる髪もそのままに必死に訴えて来るが、『1階』は無い。

 

静かに首を振るシカマルに母親は泣き崩れた。

母親が生きていただけでも、まだ良い方だった。

説得して病院に連れて行こうとするが、口を開いて、閉じることしかできなかった。

シカマルは、この母親を慰める言葉を持っていない。

母親を助け起こした忍が、無言で母親を背におぶる。少しばかり暴れたが、動き始めると大人しくなった。

 

母親を見送ったシカマルは

他の、崩壊が始まっている建物から一人、二人と拾い避難所である火影岩、アカデミーへと急ぐよう伝える。

 

 

襲撃が始まってもう、30分は経っている。

サクラの様な医療忍者が病院に集結し、本部の体制が整い、手すきの者がちらほら出ても良い頃なのに

依然と一般人の誘導がはかどっていなかった。

 

更には間違った避難所情報まで民間人に広がっている。

そろそろ敵が『誰』で、『何人』いて、『何』をしているか、と言う基本情報がシカマル達下っ端の中忍に回って来てもいいはずだが、何も来ていなかった。

敵は多分、と言うより9割の確率で『暁』のはずなのだが…

正確な情報が回って来ない限り、シカマルの立場上、一般人の避難誘導以外出来ることはない。

煙の立ち方から言って中心から外に向かっていけばある程度凌げる事は分かっているので、確実な火影邸、アカデミー、火影岩の方へ避難誘導させているが

にしたって、遅い。

 

指示が遅い。

 

 

 

指示にはレベルがある。

行きつけのお店で「何時もの!」と頼むのと

リストランテで「シェフのおすすめで。」と言うのと

チェーン店で「コレ」と指さすのでは

だいぶ違う。

 

このレベルは様々な方向に難易度がある。

カウンターしかない居酒屋で調理している店長に「これ」と指さしたら見えないと言われるし。

突然入ったリストランテで「いつもの」と頼むと「どのコースにいたしましょうか?」と帰って来るし。

チェーン店で「シェフのおすすめ」とは言えないだろう。

 

忍びも同じで、その階級レベルに合った指示を出すべきなのだ。

 

 

 

今まさに、下忍向けの指示が無い。

 

 

木の葉の里は、ペインの襲撃予測に置いて、奇襲の確率が高かったため

事前の訓練では、奇襲の犯人が発覚した後に各々動く手筈だった。

が、シカマルの見た現状では、戦況が分からず下忍は立往生しているし、指示を与えるはずの中忍以上の忍びは、戦闘のある中心部に向かって行って、帰って来ず

シカマルが指示を出して、やっと少し機能してきたところだった。

 

この状況を簡単に言うならば、下忍の統率がとれていなかった。

 

情報の齟齬が激しい、火影に何かあったのか…

普通なら一度本部に確認するところだが、ここで事前の手筈が火を噴く

 

『奇襲の犯人が発覚した後、動く手筈。』

 

そう、シカマル達は『伝令が来ない限り、下っ端は一般人を避難させる』命令が最優先になってしまう。

 

中忍試験の時はあんなにスムーズに伝令が行きわたっていたのに…何故…?

前回の襲撃とは違うからか…?

いや、前回も今回も奇襲、規模、共に変わらないはずだ…むしろ襲撃人数は少ない。

違うと言えば、目的人物が今回は火影でなくナルトで、目の前では無く、(ナルトの位置が敵に洩れてない限り)どこにいるのか分からないと言う部分だ。

それによってナルトを探す、又はあぶりだす為に被害が大きくなっているのか…?

いや、木の葉崩しもそこかしこで煙は上がっていたし、しっちゃかめっちゃかだった

でも一般人の避難誘導はもっとスムーズだったはずだ。

でなければあの被害で済むはずがない。

 

ああでもない、こうでもないと木の葉崩しと比べていたが、シカマルの奥底にずっといる違和感が、何かはもうわかっていた。

サクヤの不在がシカマルが考えるより、ずっともっと大きい。

 

 

サクヤがいれば、事前に伝令の穴に気付けてた。

サクヤがいれば、もう少し下忍の統率がとれていたかもしれない。

サクヤがいれば、木の葉の中心から敵を移動させるぐらいの案を思い付くはず。

いや、もっと言えば…サクヤだったら…

 

こうなる前に、敵に標的を絞らせ木の葉で無い場所でペインを迎え撃てただろう。

 

 

自分は一体何をやっていたのだろう。

シカマルは、つい、1時間前までのペイン戦に向けた戦略の数々が流れていくようだった

暗号解明に奔走し、いい気分に浸っていただけで

何一つ、成し得ていなかった気さえしてきた。

 

反省は後だ。とシカマルは頭を振るが、思考は上手く切り替わってくれない。

この問題は、まるでサクヤを相手取っているようだった。

 

簡単なようで難しい。

 

 

こういう時、どうしていただろうか…

もやもやとした何かが、シカマルの胸のあたりから沸き立つ。

 

 

「早く、帰ってこい…。」

 

誰がとは言わないが、誰かは明白であった。




大事な事を書き忘れてて…
私、将棋にも、戦略にも詳しくないので、そこら辺詳しい人はイライラすると思いますが、ふわっとした話しか書けません。
許してちょ。


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97

シカマルは、サスケ奪還任務の後、サクヤの実力を見誤っていたと、反省していた。

 

 

「あ、そう言えばあの団子屋の看板娘、今度結婚するらしい。」

 

「ああ?!嘘だろ!!まだ6歳だぞ?!」

 

「王手。」

 

 

何度か暇を見つけてはサクヤと打ってサクヤの実力を測ろうとしていたシカマルだったが、

サクヤとの盤上での勝負は、一朝一夕では結論を出せない物だった。

何故か、今回は勝てても次回は確実に負ける。

必ず5分に持っていく勝率に、シカマルはコントロールされているとしか思えなかった。

 

 

「あ゛っまてまてまて!! 6歳で結婚とかおやっさん泣くぜ?!」

 

「ホント。

隣の八百屋のオヤジと仲直りして、ゆーこーの印に婚約結んだんだと。」

 

「なんだよ…八百屋の倅とかよ…」

 

「後でまた大ゲンカしようと、それによって婚約が破棄されようと、今の段階では本当だ。」

 

「殆どガセじゃねーか…王手」

 

「げっ」

 

シカマルは今迄、『シカク』と『サクヤ』の勝負を何度も見てきた。

サクヤは、全敗のシカマルと違って、何度かシカクに勝ってはいた

が、それは結構ギリギリな勝利で、シカマルはその薄氷の上を滑る姿が、好きでは無かった。

それに、シカクとサクヤの勝負はどうでもいい話が多すぎるのだ。

最低でも3回は行う勝負の途中に、次お茶を持ってくるのは誰だとか、鳥の名前でしりとりだとか一見してどうでもいい勝負や話しを二人でもちかけている姿に呆れていた。

 

しかし、サクヤ達の勝負はそこに在った。

 

 

「んぐぐぐぅ…あっ!!UFO!!」

 

「その手は何度も乗ってやったろ。飽きたわ。するなら早く降参しろ。」

 

 

ここまでアホな会話ではないが、気を逸らす、集中力を切らす、視線を逸らせる…

それは明確なルールの無い野良試合では

シカクとサクヤの勝負には、不可欠であった。

 

 

残念ながらサクヤが、普通にやって勝率がゼロに近い相手に勝つには、場外乱闘しかない。

そして、あくまで場外の乱闘、将棋盤に触れもしない乱闘には、サクヤに分があった。

 

シカクが考えている横で、庭にある手裏剣の的に向かって、わざわざ中心から外れて苦無を打ったり

お茶を持ってきたヨシノさんに無駄に絡んだり

鼻歌歌ったり、意味深な事を言ったり

あえて打てる手を打たずに相手の混乱を誘った事もあった。

 

それはシカクの集中力を欠き、視線を誘導され、油断を作らせた。

実はシカクも、作間相手に使った事がある手である。

しかし、『その手』では作間やサクヤの方が一枚上手だった

引っかかったように見せて、乗せられ、乗せられたように見せて降りて…

 

シカクとサクヤの場合、余りにも負けが越してイラついたサクヤから始めた事だったが、

シカクはノッてきた

場外乱闘が『あり』だと、認めたのだ。

 

 

シカマルは盤上の勝負ばかりに目が行っていた

しかし、薄氷の上を滑るような盤上の勝負は、場外乱闘まで視野に入れると

 

 

「よっしゃ勝った!勝った!」

 

「あっ?!

嘘だろくそっ!!もう一回だ!!もう一回!!」

 

「…いや、勝ち逃げさせろよ。我年下ぞ?ぞ?」

 

「奈良家の男が勝ち逃げさせんのは、嫁さんだけだ。」

 

「真顔でのろけんな」

 

 

 

「(何やってんだ…この人達…)」

 

 

しょうもない意地の張り合いにしか見えなかった。

 

 

シカマルは中忍になって知った、どうでもいい真実に、半ば呆れてものも言えなかった。

しかし、シカマルが場外乱闘ありでも、勝てない相手であるシカクに、サクヤが勝利しているのは紛れもない事実である。

そしてそれは、囲碁に限り5分まで持って行ける『確実』な手であった。

 

 

―――

――

 

シカマルがサクヤの帰還を祈っている頃、木の葉の中枢部である火影邸屋上――…

 

からズレて情報部は、てんやわんやしていた。

 

伝令に走る人員が足りないのである。

そこかしこで起こる爆発と崩壊に、逃げ足の遅い一般人の足では追いつかず、被害は広がり、それを助けるのに忍びが必要で、その中枢にいるのは暁を相手にする中忍ばかりで、暁を足止めするどころか、一般人や怪我人に気を取られ、捕えられ情報を取られる。

完全な悪循環。

 

それに気付かない火影では無く、綱手は里が機能していない事をカツユから察知、原因を探るよう手を打ったが、その答えはあやふやな物だった。

 

「前は、もう少しわかりやすい伝令だった。」

 

「指令内容があやふやすぎてかみ砕くのに時間が掛かる。」

 

「俺たちは指示通りに動いているはずだ。」

 

不満をまとめると「以前より指令内容の説明が劣る」と言うのに限った。

 

これだけで?

たったこれだけで、この有事に里の情報網が機能しなくなるのか?

 

綱手は思考をめぐらすが、どうもピンとこない。

しかし、確実にここに問題があるのは確かだ。

何故木の葉崩しでは問題が無くて、今なのか…

何故以前からこの問題が注視されてこなかったのか…

 

「あのっ」

 

 

屋上でカツユから集められる情報をまとめる綱手に声をかけたのは、医療班の中忍であった。

綱手も病院を束ねた事のある身、その顔には見覚えがあった。

持ち場である病院を離れて何をやっているのかと鋭く視線を向けるとその忍びは委縮する

 

「以前、から…えっと…」

 

「なんだ、もっとハッキリ!!結論から喋ってくれ!」

 

委縮させるのが良くないとは分かるが、しかし今は余裕が無い。

もそもそと喋る医療忍者に結論から言うよう綱手はせかす。

 

「以前から!!サクヤさんが会議終わりに手を貸してくださっていて!!」

 

「…サクヤ?」

 

「あっはい…。

真の目上忍が会議の後、一人一人にアドバイスや、多分役に立つかもと情報を足してくれていて…今回サクヤさんが里に居ないので、皆手探りの状態でして…現場は自分の情報を精査するのが精一杯で指揮まで…その…気が行っていないのだと…」

 

「そんなことで…いや、…なんでサクヤに頼っていた!!」

 

医療班の彼女を責める必要は無く、彼女のせいでは全くないが、綱手は責められずにはいられなかった。

この問題は、サクヤが里に居れば、すべて解決していた、問題にもならなかったはずの事で

サクヤが忍びを辞めなければ機能していたと言う事だ。

悔しい事に里側は、サクヤが何故忍びを辞めてまで里を抜けたかったのか、皆目見当がついていなかった。

こういう驚きのプレゼントはいらない。

 

 

「あっその…すみません…。でもどこから情報を出したらいいのか分からなくて…一応自分たちで補完し合ったりはもちろんしていたのですが、サクヤさんの情報には遠く及ばず…申し訳ありません…。」

 

 

「(今ここに居たら一 発 は 絶 対 入 れ て や る の に …!!)」

 

サクヤは知らぬところで命拾いしていた。

 

 

額を片手で隠し

はぁぁぁぁああああ

と大きなため息を吐くと綱手は指示を出す。

 

「これから全指揮は私が全てだす。とりあえずそれにしたがって動いてくれ。」

 

応急処置でしかない。

 

綱手は、こんな所で、サクヤの名前を聞くとは思っていなかった。

会議に出ず、何時も何かしら忙しそうにしてはいたが、そんな馬鹿みたいな事をしていたとは…

一体下忍中忍特別上忍上忍何人いると思っているんだ…

あの詰め込んだ任務の間、何に首を突っ込んでいたんだ…

どれだけの情報をあいつは持っていたんだ…

暗号ならサクヤと言って呼ばれていたのも、術に詳しい3代目の代わりにそこら中から声をかけられていたのも分かっていたが、どれだけ多くの問題に首を突っ込んでいた…?

里も機能しなくなるわけである。

 

偏頭痛が綱手を襲うが、今それを悔やんでも意味が無い。

サクヤを呼んでも帰っては来ない…

 

この結構大きな穴を誰かに委任できればいいが

綱手は、応急処置で自身が指示を出す方法しか思いつかなかった。

事前の予定では『襲撃の犯人、人数、目的が判明するまで上忍中忍は敵索。下忍は一般人の護衛、保護、避難。』と決めていた。

まさか、あれだけの数がいる下忍がいて避難が間に合わないとは思わなかった。

 

これは計算ミスである。

前回の木の葉崩しより、万全に事に入る時間は合ったし、準備は出来ていた。

そのはずであった。

 

 

サクヤの穴の大きさを考えてはいなかった。

 

痛恨のミスである。

 




後日修正する
取りあえずストレスを発散させてくれ…(死)


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98

『サクヤは、肥大した妄想に影を隠して、侮れば侮るほど道化を演じる。

忍びの基本と言うべき行動理念だが、それを維持するのは難しい。

何故なら虚言は虚言を呼び、最後には背中を預けるべき仲間に対しても、吐かなければならないからだ。

虚言は信用を無くす。切羽詰っても、仲間にそれだけはするなよ。』

 

 

 

癖と言うべきそれに、シカマルが気付いたのは、上忍のサクヤと、いくつか任務をするようになってからだった。

良く見れば『サクヤの癖』は、私生活にも徹底されていて

シカマルやシカク相手に、手を隠すのはもちろん、里の仲間にまで、出来る術や、実力を隠す姿を見て、

シカマルは、サクヤの本質を垣間見た気がした。

 

「あんた、何をそんな警戒してるんだ…同じ里の、仲間だろ…」

 

「……そう見えるなら、そうなんだろうな

…私はいつもこうだよ、敵でも、味方でも。」

 

 

それはサクヤの強さで、弱さでもあった。

しかしシカマルには、シカクが忠告する様に、仲間との信頼関係が崩壊している様には見えなかった。

 

 

 

 

シカマルはその後中忍になってしばらく、潔くサクヤに追いつく。

諳でもなく、まやかしの実力でもなく、サクヤの勝率を追い抜かした。

 

将棋で勝ち越してはいるものの、サクヤはシカクと相対する時の様に()()()()来なかった。

ただ直向きに、シカマルの将棋に答える。

それはサクヤがそうしたと言う部分もあったし、シカマルがそう望んだ部分もあった。

シカマルはサクヤの力の一端を把握してはいたものの、理解してはいなかった。

将棋はコマがすべてそろって、相対してやるものだと、思っていた。

 

 

 

シカマルは、サクヤから囲碁を直接教えてもらって、やっと同じ土俵に上れたと、じわじわと実感して来ていた。

飛び上がるほどの喜びはないものの、サクヤと盤を挟んで向かい合う約束をする度に、その日が楽しみで、夜しか寝れなくなるほどではあった。

やっとライバルになれたと思っていた。

 

 

「おい、久々に多面打ちすっぞ。」

 

「えーあれ嫌なんだよな…逸らすの結構大変だし…」

 

「そう言って囲碁だけめちゃくちゃ早く終わらせんじゃねェか…」

 

「だって将棋で死ぬし、まだ得意分野をチョッパヤで終わらせる方が楽じゃないっすか…」

 

サクヤが奈良家の夕飯に、任務の序に誘われることは間々あり、その後囲碁将棋となるのはサクヤとシカクの間では多々あった。

そして多面打ちを久しぶりにしようと声をかけるのも、いつもの事だった。

問題は、それが誰の前で発せられたかと言う事だ。

 

 

「多面打ち…?」

 

「「あっ」」

 

 

シカマルは、サクヤとシカクの勝負を何度も見てきたが、二人が多面打ちをしている姿を見た事が無かった。

何故なら、サクヤとシカクはシカマルに多面打ちする姿を見せた事が無いからで

その多面と言うのは、囲碁と将棋での『多面』であり、『他面』であった。

シカクとサクヤが、初めて他面打ちをしたのはシカマルが将棋を始めてからである。

そのとき二人は思った

 

「「(これは、シカマルには見せられねェ…。)」」

 

流石に囲碁将棋、どちらも嗜んでいる2人でも

違う面で、違うゲームで、意識逸らしあうのは難しかったし

更に言うならば

他の事に意識を割くのが得意なサクヤであっても、相手はシカク

シカクの優秀な頭脳を持ってしても、相手はあのサクヤである

ある意味で実力が拮抗している2人は、面の上は辛うじて形になっているものの、勝負にはなっていなかった。

 

 

 

「…っとゆう間にすぐに沸く、てぃふぁーる。と言う事で用事思い出したんで今日はこれで失礼します。」

 

そそくさと、今日の晩御飯のメインである天ぷらを口に入れ、立ち去ろうとするサクヤを、止めたのはシカクであった。

 

「おいおいおい、待てよ。夜はこれからだぜ?

テメェまさか晩飯だけ食って帰るなんてこたぁ、しねえだろうな……あぁ゛ん゛?」

 

『俺だけ置いて逃げられると思うなよ…』と言う幻聴が聞こえたサクヤは、

目つきと、柄の悪さを全面に出した牽制に

 

「イヤダナ~ソンナ事スルワケナイジャナイデスカ~」

 

折れた。

 

 

 

その日、シカマルの前で披露された囲碁と将棋の多面打ちはシカマルの「へぇ…。」と言う言葉で終わり、サクヤは家に帰された。

後日シカマルによって提案された多面打ちは、開き直ったシカクによって魔改造され

3人で6面使うと言う、地獄絵図必須な鬼畜ゲームと化していた。

 

サクヤの必死の説得により

『シカクでは無く、アスマ。』『6面では無く、将棋3面。』

に変更する事ができ、サクヤは一命を取り留めるが

そこまで読んでいたシカクの、囲碁乱入により、囲碁将棋の2面打ちとなり

6分まで行っていた囲碁の勝率は5分に引き戻された。

 

「おのれシカマル…買収されたか…」

 

「いや、流石にシカクさんもそこまで暇じゃねぇよ。」

 

奈良家の門からでるゾンビこと、猿飛アスマの予想に反して、シカクは暇であった。

そして、シカクは計略が好きで、さらに勝利が大好きであった。

 

 

 

 

 

シカマルがサクヤを侮らなくなった所為か、多面打ちを見せてしまった所為か

サクヤは、その手の内から、諸々を零さずにはいられない状況に追い込まれていき

シカマルのその手は、シカクの将棋に似て来ていた。

 

 

 

 

―――

――

 

 

シカマルは中枢がやっと機能してきたのか、巡って来た情報に

すぐさま近くにいた下忍を集め、班行動をするように他の下忍に言ってくれと伝えた。

そして、班長を一人決めて、綱手によって一人一人に付いたカツユを利用して自分に連絡を取るよう全体に指示を出す。

 

下忍の支度が整う間にシカマルはカツユを通して綱手と連絡を取る。

 

 

「カツユさん。綱手様に、下忍の指示を一通り俺に任せてもらえないか、聞いてもらえますか?」

 

「えっ…些かそれには無理があるんじゃ…?

一人で全員に指示を出すには私がいるとしても難しいですよ?」

 

「いや。やらなきゃこの混乱は収まらねェ。

敵の位置情報と、一般人のシェルターの位置、全て俺によこしてくれ。

俺一人じゃどうにもならねーが、下忍がいたらどうにかなる。

いや、どうにかする。その間、中忍以上は一般人に構う必要が無くなって余裕ができるはずだ。」

 

「…そうですね。機能していない部分を動かす事には一理あります。

今は、そちらの方が先決かもしれません。

ですが私の方から連絡を取りますが、期待しない方がいいとも、言っておきますね…。今他の指示で気が立ってるので…」

 

「あの人も火影だ、今がどういう状況で、何が必要かぐらいもう見当がついてるだろう。」

 

そう言うとシカマルは班長の決まった下忍の群れに走って行き担当地域を決めて、援護がほしい場合シカマルに連絡をよこすように言った。

 

 

 

 

「何?シカマルが下忍を束ねるだと?」

 

火影邸屋上で綱手はカツユの報告を聞いて一考、後答えを出した。

 

「……分かったシカマルに下忍の全権を任せる。

ただし、もう何人か中忍を付けろ。一般人の避難が終ったら次は若い忍をシェルターに入れる。その時、説得役に成る顔の広い者がいい…そうだな…今暇しているはずの暗号解読部隊の中忍から…イズモとコテツを付ける。いいな?」

 

「はい!了解しました!!」

 

そう言ってカツユは急いで情報をカツユ体、全体に共有させ、下忍、シカマル、イズモとコテツと連絡を取った。

 

 

 

 

 

イズモとコテツは建物の下敷きになっていた一般人を抱え、病院に行く途中であった。

 

「了解。」

 

この負傷者を置いてから向かうと返事を返し、足を速める。

 

「シカマルも出世したもんだな…」

 

「しょうがないだろ、サクヤの後釜に入るやつが居ないんだから…コテツは出来るってか?」

 

「…ぜってー無理だな。」

 

「だろ?俺も無理だ。」

 

 

シカマルの下に付く事に文句がない事は無いが、二人は一応大人であった。

奇しくも綱手は、サクヤの行動の一端を理解していて、命に逆らう事なく、シカマルと任務を遂行してくれる、ある意味一番信頼しうる者を送っていた。

 

 

 

 

 

「イズモさん、コテツさん、来てくれてありがとうございます。とりあえず地域をいくつか分けたので、これから戦闘の有った場所と、崩壊している建物の位置、を確認していきます。」

 

シカマルがいた場所は、戦闘から少し外れた場所であった。

戦闘に近くもないが、もし遠距離の攻撃が飛んできたら一発で終わってしまう。

イズモは本拠位置は決めているのかと口を挿んだがシカマルはそれには答えない。

 

「下忍は3~5人の班に分かれて3班ずつで行動させ、負傷者を発見したら1班が連絡、1班が救護、1班が敵索をしてもらっています。これで木の葉崩しの時と変わらない配置には戻っていますが、敵の位置が中心に向かっているので、避難は木の葉の中心から外に向かってもらいます。」

 

「おい、じゃあそしたらアカデミーにいる一般人も動かすのか?」

 

「最終的には動いてもらう事になります。敵は西口、イのB地点と言う中途半端な場所から侵入しました。そこから中心に向かっている。

と言う事は敵は中心で何かを仕掛けるつもりです。

これだけ大きな被害を出す攻撃、木の葉の里内に収まる攻撃だけではないだろうと予測を立てました。外れていても、問題はない、取りこし苦労なだけです。多くの人は死なない。」

 

「まあ、そうか…」

 

そこでやっと、シカマルはイズモの質問に答えを返す。

 

「今俺たちは5代目の口寄せであるカツユ様の能力を借りて連絡を取っています。

これは5代目のチャクラが使われている事と言う事です。

5代目は他に救護者を治療する役も担っている。これ以上チャクラを使うわけにもいかないので、ここで独自の連絡方法を決めておきます。

その為に、

 

本拠地は作らない。」

 

 

「「ハ?!」」

 

シカマルの言葉にイズモとコテツは揃って声を返す。

 

 

「本拠地を作らなきゃ下忍はどこに報告を上げりゃあ良いんだよ!!」

 

「俺たちだって、シカマルとコンタクトとれないと困るんじゃないのか?!」

 

わあわあとまくし立てる二人にシカマルは簡潔に言葉を返した。

 

 

「俺は歩く司令塔になる。

指揮を執る人間が、敵に見つかることが一番の厄介だからだ。

本拠地作って、人が入れ代わり立ち代わりしていたら流石に気付かれる。

そこで、真の目棟梁に手を借りて、ある口寄せを借りた。」

 

「大工の管狐が何できるってんだよ…」

 

コテツは頭に手を添えて空を仰ぐが、イズモはサクヤの管狐を思い出していた。

 

「いやまて、真の目の大工は管狐を伝令に使うと聞いてる…。」

 

イズモの返答にシカマルは頷く。

 

「はい、もうすべての下忍に管狐を付けてあります。何人かの中忍にも。

あいつらは宿主のチャクラを吸って、化けたり、火を噴いたり、増えたりする。

今回借りたのは増える狐。

カツユ様の様に、同時進行で連絡を取る物じゃないですが、これで下忍の統率は取れるし、ある程度細かい指示も送れる。

イズモさんとコテツさんには敵と遭遇した班に援護に行ってほしい。

一応優先順位として逃げる、捕まらない、時間稼ぎをするように全体に連絡は行っている。イズモさんとコテツさんの足なら可能だと俺は考えている。」

 

ここまでひといきで言うとシカマルはイズモとコテツに目を向ける。

 

「できますか?」

 

班3つ分の人数は10人を超す、それはもう小隊に入る。敵の遭遇を小隊で引き延ばして、足止めしてくれている所に助けに向かうのだ。

只の中忍には荷が重い…。

それももしかしたら1か所だけでなく2か所3か所同時にヘルプが来る可能性もある。

 

「俺たちも敵の意識を一瞬下忍から引きはがすぐらいしかできねェが、それでいいんだな?」

 

「ええ。十分です。一瞬でも引きはがしてくれたら中上忍がワラワラと集まりますよ。

そこで抜けてもらって構いません。」

 

 

イズモとコテツには何故、直接中上忍達に助けに行かせず、自分達を挟む必要があるのかが分からなかったが、今はシカマルの言う事を聞こうと二人で頷きあった。




あのシカマルが夜しか寝れないのである…
その喜びは推して知るべし。


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99

一般的に、一芸に秀でている方が、世の中に受け入れられやすい。

欠陥があった方が親しみを持ちやすいと言うのもあるが、その大きな理由の一つに

『あれっと思ったらその人に頼ればいい。』と言うのがある

そこにあの人は知っているだろうかと気をもむ必要はない。

彼の専門分野で、知っているはずだからである。

その思考を放棄した分だけ時間は短縮され、物事が早く進む。

 

サクヤは全方位であった。

 

 

 

「(にしたって…プロフェッサーも驚きのカバー範囲だよな…)」

 

三代目がプロフェッサーと呼ばれていたのは記憶に新しい。

木の葉の中で、発動できない忍術は無いと言われた。

今は亡い。

 

だからこそサクヤは上忍になってから、その埋め合わせの様に色々な場所で呼ばれていた。

中忍の時から、その傾向はあった。

しかし、何かとしょっちゅう呼ばれている中忍は、何もサクヤだけでは無い。

イルカもそうであったし、イズモとコテツも、理由はどうであれ何かと呼ばれていた。

 

三代目が亡くなってすぐ

その穴を埋められるだけの知識を持った忍びは当時、サクヤしかいなかった。

 

『あの真の目が大人しく会議に出席するならば。』の話である。

 

 

 

シカマルが中忍になって初めての大仕事、砂との合同の中忍試験開催に当たって、木の葉は砂に独自のパイプがある真の目一族の手を少し借りていた。

砂の真の目一族は快く手を貸してくれ、第2次試験の準備は滞りなく進んでいた。

 

真の目の手を借りる、と言う事は『真の目』で、『木の葉の忍』であるサクヤに、『つなぎ役』が回ってくると言う事である。

砂側の貧乏くじを引いた真の目はいないらしく「よろしくお願いします」と挨拶してきた者は真の目では無かった。

よって、真の目と里との仲介は、サクヤに殆どを押し付けられることとなる。

 

 

サクヤを仲介して開催された砂での進行報告会議は、滞りなく進んでいる。

全く問題なく。

そして、いっそすがすがしいほどに、館内放送がせわしなく鳴り響いていた。

 

 

 

「…前から思ってたんだが、なんで会議に行かねぇんだ?

さっさと行った方が、後でめんどくせー事になんないんじゃないか?」

 

サクヤとは同じ件だが、ある意味別件で砂に来ていたシカマルは

隣に佇み、館内放送の呼び出しに全く答える気のないサクヤを見上げる。

鳴り響く館内放送に気付いてはいたが、サクヤを無理に会議室に入れるつもりはなかった。

貴重な勝負相手を失うわけにはいかない。

 

シカマルは、サクヤを相変わらず白いなとひそかに眺めるが、

その視線は、すぐバチッと合わさり、また手元の本に戻される。

何の本かはわからない、表紙の『私はマジックだ』と言う謳い文句に見覚えは無かった。どうせ砂の国の本屋で適当に買って来たものだとあたりを付ける。

 

「…たとえば、私が今死んだとして、里はどうなると思う?」

 

「……急に何だよ…。ふつーに葬式上げんじゃねえの?」

 

暗すぎる質問に、シカマルは引いたが、サクヤはそのまま話を続ける。

 

「まあ、そうなるよな。その後私の後釜が出てきて、私の穴は埋まる。」

 

「…。」

 

答えようのない沈黙が通る。

しかし話は妙な方向へ進んだ。

 

「今は、それぐらいの穴で済む。だが、私が会議に出ると、それじゃ済まない事が一つある。」

 

「…?」

 

「それぐらいのものを私は一つ持ってる、今はそれだけ知ってればいい。」

 

サクヤが何かを隠している。

それは木の葉の上層部にとって自明の理なのかもしれない。

忍びとして、その行為は正常で、むしろ推奨すべきこととはアカデミーでも習う。

シカマルはこの時

 

『サクヤはもしかしたら、消える気なのでは?』

 

ホンの少し、頭の片隅で考えてしまった。

それを打ち消す様に、シカマルは生意気な言葉を連ねる。

 

「…サクヤぐらいの穴ならすぐ埋まりそうだけどな。」

 

生意気な返事に、サクヤはムッとするどころか、ハハハッと軽快に笑って答える。

シカマルには何故かそれが、口に出さなかった考えを、肯定しているように感じた。

 

 

 

 

「じゃあそれは、シカマルに埋めてもらおうかな。」

 

 

 

―――

――

 

 

 

シカマルの作戦は大方上手くいった。

下忍の司令塔は機能したし、下忍に相対すると必ず現れる、二人の中忍に敵の目は欺かれた。

 

ペインの目は繋がっている。

自来也の残した情報に在ったそれは、シカマルのブラフに良く役立ってくれた。

 

ペインが、視界に度々現れる2人の中忍に目が行くのは必然だった。

ペインはこの忍びの多くを束ねているのはこの中忍だと勘違いする。

シカマルの狙いはココにあった。

 

まさか自分が囮に使われているとは思わないイズモとコテツは

呑気に『何故か、姿をあらわすだけで視線がずれるから楽だ』などと考えていた。

 

 

リスクの分担は、チームや組織の利点である。

責任や、職務を細分化する事で

一人一人が仕事に集中でき、その範囲のみの責任だけを負うだけでいいので、リスクを少なく挑戦が出来る。

 

シカマルは一つの班に負傷者の発見、連絡、敵索をやらせるのではなく、一つの班に一つの仕事を負わせることでリスクと、職務の細分化を図り

中忍二人を、ペインの視線を一瞬でもズラすことに注視させることで負担を減らし

更にその効果を、相手をする中上忍にもかかるようにした。

 

 

しかし、それも機能したのはペインが引くまでだった。

 

「敵が一斉に引いた?」

 

真の目の棟梁から借り受けた、管狐の情報を聞いてシカマルは、『来る』と思った。

 

「全員退避!!近くのシェルター又は里外に向かって逃げろ!!大きい攻撃が来るぞ!!」

 

シカマルは、この戦闘が始まってから感じて居た、もやもやが消えていなかった。

 

これで良かっただろうか…?

サクヤの様に上手くできているだろうか?

取りあえず一般人をシェルターに避難させることは出来たから被害は少ないはず

後は機を見て、里の外側に少しずつ移動させるだけだと思った矢先

それは起きた。

 

 

 

 

 

ゴゴゴゴ

 

 

と響く音にシカマルは振り返るがそこは壁のはず。

しかし、気付いた時には、青い空が広がっていた。

 




次回、100話
ヒロイン☆シカマル


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100

今回は短め


中忍3年目にして、シカマルはやっとサクヤの使い方と言うのを知った。

アスマの弔いと、復讐も含んだ戦い…

初めてサクヤが指し、示した方向だった。

 

 

『遊撃』と『乱戦』、それがサクヤの得意とする、いや

サクヤの一番活きる場であった。

シカマルが信じて居た、護衛、援護、サポート、全てが妄想で、サクヤの道化の結果だった。

 

 

あの、盤の上では慎重なサクヤが、失敗のリスクを考えずにそのまま突っ込む

そこから広がる波紋を使って更に仕掛ける。その陰でサクヤがまた何かを企み、カカシ先生がカバーに回る。

シカマルは、サクヤの初撃から動く、めまぐるしい戦況に追いつくのがやっとだった。

多くのチャクラも必要なく、小手先の技で相手の痛い所を突いて、情報を集め、決して油断させず、敵の神経を消耗させる。

 

多彩な忍術、それを活かす技術と発想

名家の様な特殊な血も無く、ナルトの様なチャクラも、術のリスクも無く、シカマルの様な頭脳も無く

適性があれば、誰でも出来る簡単な術で

あの不死身で、脅威であった敵の命を削ってしまった。

 

 

 

一つ一つは大した驚異の無い只の術だった。

ともすれば、シカマルでも打ち破れてしまうものだった。

 

しかしそれは、使い所と技術の問題であって、それは(すべ)であり、脅威となった。

火遁と風遁の一人コンビネーションはそれの最たるものだった。

スプレー缶の吹き出し口にライターをかざす様なもの

更にいうなら、付加価値である『発光』を上手く使って目くらましにもなっていた。

格闘ゲームで言うならばハメ技に入るだろう。

あれで捕まえられなかったのは、シカマルの技能の問題であった。

 

 

まるでパズルのように当てはめていく手腕

不死の敵と相対してなお、シカマル達に意識を割く余裕

確かに、上忍に値する実力だった。

目指すべきはココだと思った。

 

シカマルは、前を歩いていたと思っていたサクヤが、全力疾走していたことに気づいた。

やっと追いついたと思った背中は

広く、大きく、遠かった。

 

 

 

―――

――

 

「なっなんだよこれ…」

 

カツユの分裂体の体内からはじき出され、シカマルはあたりを見回すが、先程まで居た忍は一人も立っていない。

 

「どういう事だよ…なんで…こんな早く…」

 

大きな術をするには相当な時間がいる。

だからその気配は察知できるはずだ。そう思っていた。

 

しかし現実はこれである。

 

 

シカマルの見える範囲、で状況を把握するのは難しいが

取りあえず見える範囲の状況は芳しくない。

 

里の中心はえぐれて、すり鉢状に土が見えている。

風圧により建物が端に飛ばされ、その姿形さえ残っていない。

これではシェルターに入れた一般人は根こそぎやられていても可笑しくない。

 

むき出しのコンクリがシカマルや、さっきそこにいた下忍の上に乗っかっている。

痛みに呻く声が聞こえるが

医療の知識を持たないシカマルには、誰も助けられない。

綱手の口寄せであるカツユの分裂体だけが頼りである。

しかしそれも、これだけの被害ならチャクラの維持に問題が出て、いつ消えてもおかしくない。

現にシカマルについていたカツユはもう小さくなりつつある。

火影邸や病院の形が残っているかも怪しい。

 

 

どうしてこうなった?

予兆はあった。

それも冷静に分析できたはずだ。

 

しかしこれを予測する事は出来無かった。

 

敵が引いていく姿を捕えた忍びは何人居た?

敵はどうやって引いていた?

敵を捕えた者は?

敵はこれから何をするつもりだ?

 

シカマルの頭には疑問符ばかりが並び、答えは一つも湧きあがらなかった。

瓦礫をどけて立ち上がろうとしたところで自分の足が折れていることに気付く。

目視したからか、痛みが主張してくる。

今シカマルは、一人で答えを見つける事も出来なければ、一人で立ち上がれもしない

何とも情けない姿に涙が溢れそうになるのを、シカマルは唇を噛んでこらえる。

 

 

「なんで、居ないんだよ……」

 

 

修行とか、資料室とか、どうでもいい時はやってくるのに。

 

 

「さっさと帰ってこいよ…!!」

 

 

こういう時に限って来ない。

シカマルは八つ当たりだと気付いていても止まりそうになかった。

 

 

「お願いだから…返事しろよ…!!」

 

 

シカマルの声に返事はない。

サクヤは任務なのだ。いるはずがない。分かってる。

 

「サクヤぁ…!!」

 

真の目が騒いでないからまだ死んでない。

それに里に気配が無くとも、サクヤの忍び登録はまだ残っていた。

 

死んだわけでも、里を抜けたわけでもない。

生きているはずだ、いるはずだ。

何故なら

 

 

 

こういう情けないときにしか、あの人は現れないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつは忍びを辞した。

……助けには、来ない。」

 

 

シカマルの情けない声に、返事をしたのは

 

サクヤでは無かった。

 



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101

ココからの3話にめちゃくちゃリソースを取られた。
シリアスは一生書かないと決めた。(と言いつつシリアスまっしぐらのナルト、サスケ編が待っている…)


サクヤの頭に詰め込まれた情報は、どうでもいい話ばかりである。

情報を手堅く扱う忍びから見ても、至極どうでもいい話がほとんどだ。

 

誰と誰が友人だ

あそことあそこは昔から仲が悪い

ライバルで、互いを認め合っている

あの人は素直じゃない

 

しかし、その数が問題であった。

どうでもいい話も、国内、他国から集まれば、里を動かす情報にも行き付く。

 

友人の実家は他国の商人らしい。

仲が悪いのは見せかけで、それを餌に網を張っている。

どっちもプライドが高いから、どっちか煽れば二人釣れる可能性が高い。

煽てれば大体折れる。

 

3代目の狛犬だった時から、その閻魔帳に匹敵する情報は、里の為にいかんなく発揮されていた。

そして5代目の時も、サクヤは綱手と相対しつつも氷面下で動き回っていた。

 

しかし、薄氷なので見える者には見える。

特に敵対した者や、観察眼の鋭い者には。

 

ダンゾウはその脅威に相対し

シカクはサクヤの七光の一つと考え利用しようとし

3代目は傘下に入れ

自来也は見守り

シカマルはそれを、アホらしいと断じた。

 

 

惜しむらくは、そこに5代目が入っていない所である。

綱手は薄氷が割れてから気付いた。

割れても気付かず、呑気に寝ているよりましだが

気付けば、薄氷の下で起こっていた事は、後に引けない事態になっていた。

 

 

―――

――

 

『あいつは忍びを辞した。…助けには来ない。』

 

その言葉にシカマルは、もやもやした何かが、ゆっくりと腑に落ちるのを感じた。

 

 

 

 

「シカマルさん!!」

 

瓦礫の山を越えて、駆け寄ってきた声は高かった。

シカマルの片膝を抱える様子に、声の持ち主、シホは負傷に気付く。

 

「いいいいまっ!!救護班呼びます!!」

 

「いや、…今は、どこも機能してない。呼んでも混乱を招くだけだ。」

 

シカマルの動揺をよそに、その頭はしっかりと機能しているらしく、正確に情報を精査して、怪我を心配するシホに言葉を返す。

 

シカマルは目を瞑り、一頻り息を吐くと後ろに向き直った。

 

 

 

「本当に、辞めたんだな…?」

 

「…ああ。

辞表は提出されたし、額当ても返され、どちらも受理された。

里の混乱を避けるために今は秘匿とされているが、サクヤはもう忍びでは無い。」

 

 

険しい顔でシカマルを見下ろすのはシカク。

シカマルの情けない声に返したのもシカクであった。

シカクの言葉に思い当たるふしがあるのかシホが声を上げる。

 

「そう!!そうです!

私それをシカマルさんに伝えなきゃって思って!

暗号解読部隊のホドキさんから聞いたんですけどっ」

 

「いい。」

 

しかし、遮ったのはシカマルだった。

 

「いい。なんとなく、予想は付いてた…。いつか、里を出るんじゃないのかって…。」

 

掌で目元を覆い、俯き、表情が見えないシカマルに、シホは口を噤むしかない。

 

 

 

 

ゴゴゴッ

 

っと、すり鉢の底で起きた爆発に、シカマルの視線が上がる。

 

おかしい

先程の風圧で、ほとんどの忍びが里の端に追いやられたはずだ。

何故中心で爆発が起きる?

5代目か?いや、先程のカツユ様のクッションを起動するのに多くのチャクラを使ってしまったはずだ。戦闘が出来るはずがない…じゃあ誰が?

 

「何の音だ?!

まだ誰か戦ってるのか?!」

 

シカマルは、自分がサクヤの衝撃よりも焦っていることに気付く。

疑問に答えたのは綱手の口寄せ、カツユだった。

 

「ナルト君です。」

 

「ナルトが帰ってきたのか?!」

 

シカマルは背後にいるカツユに視線を向ける。

 

「ハイ…仙術を身に着けて

今一人でペインと戦っています…」

 

咄嗟に、助太刀に行かねばと足が出るが、激痛が走る。

 

「(この足じゃ…)」

 

舌打ちを打つシカマルの姿に、シカクは焦りを察した。

いつもチャッカリしているシカマルが、珍しく負傷した足を軸に、踏み出すほど焦っている

更にカツユの一言がシカマルの不安をあおった。

 

「ナルト君に、手を出さないように言われました。」

 

「何カッコつけてやがんだアイツ!

里をこんなにしたやつだぞ!!

一人で戦えると…」

 

6人相手に一人では、数で有利が取れない

あのペインを倒すには仲間が必要だ。

ナルトには自分の力が必要だ。

そうシカマルは考えていた。

しかし、冷静なシカクの声が、それを否定する。

 

 

「イヤ……」

 

眉間にしわを寄せて、シカマルを見下ろすその頭は、冷静に分析していた。

 

「仙術を身に着けたという事はもう、レベルが違う。

足手まといにならない事が、今あいつにしてやれるチームワークだ。

ここは我慢しろ、シカマル。」

 

シカマルは、仙術がどれ程のものか知らなかった。

大凡、螺旋手裏剣の様な『技』だと考えていた。

しかしシカマルの予想に反して、仙術は

自然チャクラを取りこみ効率よく錬ることで、相対的にチャクラを増やし、戦闘レベルを一気に底上げする『(すべ)』であった。

シカマルには、そこに届く『レベル』も、『(すべ)』も無かった。

 

これは『戦術』でどうこうなる話では無い。

シカマルが立てた戦術も何もかもぶち壊す規模で、木の葉の里を、すり鉢状に抉ったペインに匹敵するレベル

戦術でシカマル以上と言われる、あのシカクも諦めている事が何よりの証拠だった。

将棋でシカクに勝てもしないシカマルが、何かナルトの助けになるとは思えない。

 

シカマルの頭に、白い影が過り、顔を上げる

いや、サクヤならもしかしたら…

と思考し、先程のシカクの言葉を思い出す。

 

『サクヤはもう忍びでは無い。』

 

「くそっ…」

 

シカマルは、サクヤの処遇を聞いて未だ尚、影を追う自分に嫌気がさす。

里がこんなになっているのに自分は何もできない

ナルトの様な、力を付けたわけでも

サクヤの様な、埒外の知識経験から賄える、何かがあるわけでもない。

シカマルは、納得と言う形で治まった焦りと不安が、また湧き上がってくるのを感じた。

不安から、苛立たしげなシカマルの姿に、シホがおろおろと声をかける

 

「ナルト君なら大丈夫ですよ!!

ぶっちゃけ仙術がどんな物か分かって無いですけど…ナルト君ならやってくれますって!!

それにサクヤさんならきっと、寝坊したとか何とか言って帰ってきますよ!!

忍を辞めただけですし!! 里のピンチにはきっと――…」

 

シホの言葉を止めたのは、シカクだった。

目線の先に立てた手は下がらない。

シカクは、シホの言葉に『サクヤが帰ってくる保証など、何処にもない』と、気付かされた。

自分がどれだけ楽観的に事を捉えていたのか、外から見ることでやっと、気付いたのだ。

 

 

サクヤは忍びを辞した。

たとえサクヤが里のピンチを察知して来ても、そこにもう里の意思はない。

あるのはサクヤの慈悲だけだ。

 

話しが一向に進まない会議

臨機応変に情報を取捨選択できない中忍

不測の事態に、迅速に対応できない情報伝達システム

中枢には、負の連鎖に気付く者さえいなかった。

シカマルや、5代目が気付いて応急処置をしなければこの傷口はさらに広がっていただろう。

その5代目も、現場を抜けてきた医療忍者に、サクヤの不在を指摘されて気付いた。

 

忍びを辞めた理由が何かあるはずだ。

何時か帰って来るだろう。

何かしら里の危機には手を貸してくれるだろう。

そう、思っていた。

 

しかし、サクヤの忍びを辞めた理由が、あっても無くても、『サクヤが有事に来ない』と言う事を、今回シカクは、まざまざと見せつけられた。

 

サクヤに慈悲は無かった。

 

 

 

 

 

「お前はサクヤに頼り過ぎた

そして、オレも、里も、サクヤを過信しすぎた

サクヤが居ないだけで、ここまで情報が錯誤し、ここまで…事が起こるとは思っていなかった。」

 

更に言葉をつなげようと一呼吸おく

シカマルにとって、大きい柱が一本無くなったのだ。

その混乱も一入(ひとしお)である

ナルトによって戦線が保たれている今のうちに、その混乱を念入りに止める必要があった。

 

「シカマル、お前は良くやった。

もう、報いは受けた。

サクヤの影を追うのはやめろ。」

 

 

その為には、この混乱の責任を全て、サクヤに押し付ける必要があった。

 

 

 

 

 

 

 

「『報い』…?

ふざけるなよ?」

 

しかしシカマルは

混乱してなどしておらず

 

前を向いていた。

 

 

 



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102

『良いこと教えてやるよ。』

 

悪い顔で笑うサクヤを見上げる。

サクヤの視線の先は、話しかける相手である自分は居ないのだが、サクヤの言葉はシカマルを指していた。

 

その日、珍しく会議が始まる前から、サクヤが会議室にいた。

明日は雨だと会議室の端で噂をされていたが

サクヤは、今日の昼から雨が降ると、夕飯を賭ける位には気にしてないようだった。

そんなことしてるから、上忍のくせに威厳が無いのだ…と苦言を呈していた時に、そんな話をされるものだから、シカマルは聞く気がすっかり失せていた。

話を聞く気が無い人間の、話を聞く道理は無い。

しかし、シカマルの重い溜息を無視して、サクヤは話を続ける。

 

『人間は労力に見合う報酬が無ければ簡単につぶれる。

例えば、会議に費やした労力に見合う報酬が無ければ、会議に行きたくなくなるって所だ。

じゃあ報酬とは何だと思う?』

 

『議題が終息する事』

 

何を今更な…と呆れ、シカマルが即答する。

サクヤはそれにうなずく。

 

『確かに。

議題が片付く事が一番の報酬だな。

だが、議題と言う物は簡単に終息しないから議題になるんだ。

そこに答えを求めたら何時までも報酬は得られない。殆どの物事は、思い通りにはならないからな。

だが、もう起った事実を認めることは簡単だ。』

 

『事実?起こっちまったもんは報酬にならねえじゃねェか。』

 

何言ってんだこいつ、とあきれた視線がサクヤに刺さるが

サクヤの目は、右に左に忙しなく走る中忍たちを、飄々と眺めている。

 

『起こった問題の方じゃない。事実の方だ

いわば…そうだな、会議室までの労力に対する報酬だ。』

 

『…?

それは…議題が片付いたら全部チャラになるんじゃねェのかよ。』

 

『いいや、会議の報酬は会議室から会議室までで、会議室の外の労力は殆ど入って無い。

今回で言うならば、私が会議前にレジュメをまとめるのも、司会進行のカンペを作るのも労力には入ってないんだよ。

更にいうなら、シカマル達がやってる仕事のほとんどが、会議にくるお偉いさん方には端事なんだ。

それは用意されてて当たり前のことで、仕事の範囲で、誰かがやっているはずの事だからな。』

 

『…』

 

シカマルは話を聞いていて、おもしろくなかった。

確かに、仕事の範囲なのかもしれない。

けれど仕事だからと言って、その努力が無くなる様な物言いには、納得が出来なかった。

自分は今回の会議で、何か大それたことをやっていた覚えはないが、確かに会議に参加していたはずである。

サクヤが端から教えてくれたすべてを、次回に活かせるよう記憶もできている。

その努力を無かった事にされた気分だった。

 

 

『だから、会議室に来る奴は片っ端から労え。

それが会議を、事を進めるコツだ。』

 

訝しげなシカマルに、やっとサクヤが視線を合わせる。

 

『いいか、謙ったりするなよ、煽ても絶対するな。

誰に対しても、何に対しても

ただ、労うんだ。』

 

『…報酬が無いのにか?』

 

口をへの字に曲げるシカマルにサクヤはハハッと笑った。

その姿に何時かの姿が重なる。

 

『まあ、やってみりゃ分かる。

それが一番の近道で、報酬だったってな。』

 

 

その日の会議は、いつもの通り滞りなく進み、雨は昼から降り始め

サクヤは昼飯に出かけたまま、議論の飛び交う会議室には帰って来なかった。

 

 

―――

――

 

土煙が上がる、瓦礫の山間に、シカマル達はいた。

すり鉢状に削れた木の葉の中心では今、仙術を身に着けたナルトが、ペインと戦っている。

シカマルは折れた足を抱えながら、キレていた。

 

木の葉をすり鉢にしてしまったペインに

内からの崩壊を予測できなかった自分に

 

そしてすべての責任をサクヤに押し付ける気でいたシカクに。

 

 

 

 

「親父、あんたの感情を、あいつの所為にするなよ

これは報いでもなんでもない。

只の事実だ。

サクヤの影を追っていたのは俺だけじゃない。

里の皆だ。」

 

 

シカマルの言葉にシカクはぎくりとした。

『当然の報い』という懺悔の感情は、サクヤの所為では無い。

影を追っていたのもシカマルだけじゃない。

シカクもそうであった。

 

 

「サクヤが居ないから事が起こったんじゃない。

これはシステム上の問題で、サクヤの仕事を無視して来たから起こった、当然の結果だ。」

 

サクヤはただ、普通に不足部分を補う仕事をしていただけ。

問題は、サクヤのやっていたことを把握できなかった里にある。

 

「これは個人の問題じゃない。里で向かうべき問題だった。

それを全てサクヤに頼って、押し付けてた今迄が可笑しかったんだ。

サクヤが優秀だったから、今迄何も起こらずに来れただけだ。」

 

 

サクヤを良い様に使って消費して来たのは、仲間である自分達であった。

サクヤの力の一端に期待をして、勝手に失望して

こんなものだと侮り、妄想を肥大させ、サクヤの道化を笑って見ていた。

その陰で何をしているかも無視して…

 

真の目だから、変人で、中立。

作間が出来たのだから、サクヤに出来ないはずがない。

2代目火影の家系なのだから忍びになる。

あの目を持っている限り信用がならない。

火影の狛犬だから、命令には逆らわない。

千手の血筋だから、里を出るのはあり得ない。

サクヤは必ず里に帰ってくる。

 

奇しくもサクヤの外側は、作間と同じもので出来ていた。

一見きらびやかに見える宝石のようなそれは、鉛より重たかったはずである。

そして作間がその通りだったからこそ、サクヤの重りは2倍に増えた。

誰もサクヤを見ていなかった。

里の皆で、サクヤを通り越して誰かを見ていた。

 

 

「俺たちはサクヤが居なくなるリスクを計算に入れてなかった。

たとえサクヤがそのリスクを意識していようとも、なかろうとも、事が起こったのはサクヤの所為じゃない。

サクヤの価値を甘く見ていた、俺たちの計算違いだ。

再三言うが、これはサクヤ云々の問題じゃない、里が認識すべき問題だ。」

 

 

この奇襲に対して、忍び各位、良くやったと思う。

 

暗号解読に手を貸してくれたシホ

ペインの不死の秘密を暴こうとした情報部各位

ピリピリした現場に臆せず、問題の根本的原因を指摘した医療班の中忍

対応策を考えたシカマル

5代目の的確な采配

変則的な指示に迷わずついてきた下忍

ナルトの情報を吐いた者はいなかった

無事仙術を身に着けたナルトが、未曽有の敵に相対する事も出来た。

 

しかしそれは、ナルトの人望で、木の葉の忍びが()()()()()()結束した結果だ。

 

この先、里が襲われて、このような被害で収まるかも怪しい。

シカクは、サクヤの不在によって、里の貯金(余裕)がどんどん無くなっていくのが解かった。

いや、サクヤが貯金だったのだ。

サクヤが里を出た時点でそれは消えていた。

 

 

 

 

 

「問題は早急に片づける必要がある。」

 

シカマルは前を見据えている。

サクヤの抜けた穴を埋める方向にちゃんと頭を動かせている。

 

「幸い、穴の一つ一つは小さい。

数は多いが里の皆で埋めれば、埋められないもんじゃ無い。

そのためにも」

 

対してシカクは、この緊急事態に、どうしようもない後悔に苛まれていた。

 

「今はまず、ペインを片づける!」

 

 

 

 

 

ともすれば、誰もサクヤの事を見てない中で、サクヤはいつも里の人間を見ていた。

最高機密になる国内外の個人情報を、良心とモラルによって操作していた。

3代目も狛犬を手放さない訳である。

 

木の葉の頭脳であるシカクは

氷下に泳いでいた、とんでもない(人材)を逃した事実に、後悔しかなかった。

 




逃した魚はでかかった…
実際は、只の白いモヤシなのに…


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103

父親より先にサクヤショックから持ち直したシカマルだったが、何か手があるわけでは無かった。

取りあえず情報だと、下忍各位に付けた管狐から情報を集めようとし、真の目の棟梁から借りた管狐を探すが、管狐は先程の衝撃で全て消えていた。

 

「カツユ様!!待ったぁっ!!」

 

一応5代目の口寄せはまだ残っていたが、倒れた5代目のチャクラを消費し続けるのはまずいと考え、消えてもらうつもりであった為、慌てて止める破目になった。

 

 

 

何とかカツユから情報を集めたが、全カツユから集約された情報は、情報部が真相に迫っていたと言う情報以外、ヒントになる事実は無かった。

 

「くそっ情報部って…アカデミー消し飛んだはずだぞ…

残ってんのか…」

 

この里の惨状を見て、殆ど里が機能してない事は明白であった。

シカマルも、中心付近からこの里端まで飛ばされてきたのである。真相に迫った情報部が生きてるかどうかも分からなかった。

何か他に方法は無いのか、と頭を抱えるシカマル。

 

だが、神はまだ死んではいなかった。

 

 

「シカマル!!」

 

「イノ!!無事だったのか?!」

 

幼馴染みの生存にシカマルは光明を見た気がする

しかし、続くイノの言葉に宛てがひとつ消えたことを知る。

 

 

 

「うん…でも…シズネさんが…」

 

「おい…それって…」

 

 

 

 

―――

――

 

イノや、いのいち、そして護衛の暗部によって補足されて行く情報は決して良いものだけでは無かった。

シズネに起こった事の全容に、シカマルは舌打ちを打ちたかったが、何とか押し込める。

 

「そうか…そんなことが…」

 

「私たちがもっとしっかりしてたら…こんな事には…」

 

シカマルは自分を責めるイノに声をかける

今イノにつぶれてもらっては困るのだ。

しかし、シカマルは苛立ちを押しとどめる努力はしたが、とどめきれてはいなかった。

 

「シズネ先輩の死を無駄にはできねェ…

先輩が解こうとした、ペインの謎を解き明かして、その本体って言うのを見つけるまでは泣き言は無しだ!」

 

 

「…シカマル、もう少しやんわりとだな…」

 

その様子を見ていたシカクは摩擦が起きないかと、冷や冷やしながら止めるが

いのいちの方が今は冷静であった。

 

 

「いや、シカマルの言う通りだ。シカク。

我々の出来ることは、すぐにでもペインの本体の居場所を探し出す事だ。」

 

しかし、シカクが幼馴染みの意見を聞ける心境にあるかと言われたら、そうでもないので

特段長くもない導火線が一気に短くなり、

 

「いのいち…

お前ほどの術者なら、敵のチャクラを拾って逆探できるはずだろ?!」

 

逆切れを起こすことになる。

が、いのいちは出来た人間で、シカクが冷静でない事にとっくに気づいていた。

 

「…すでにやってみた。

が、敵は常にチャクラの周波を変えていやがる。

逆探は無理だ。

かなりのやり手だよ」

 

いのいちが出来た人でなければ、抗論が起きるのだが

シカクはここでいのいちが引く事を解かって、こういう甘えを見せるのであって、シカクの短気と頭脳には呆れ返る。

サクヤがこの場にいたなら、シカクとイノイチを交互に見た後、『成る程…そう言う事か。』と訳知り顔で納得するところであった。

 

シカマルは続きそうにない議題に終止符を打つ。

 

「ペインと接触した人達からカツユを通して、なるべく詳しい情報を集めたが、どうやら真相に一番迫っていたのはシズネさんだけだったみたいだ。

だが、オレらの知らない所で真相に迫っていた可能性もある。

ココからは人海戦術だが

トップが動けない今、情報を一人一人確認して集めるしかねェ。

たとえ死体を運び出してでも、徹底的にやるぞ!」

 

「待てよ…

そうか、分かってきたぞ!ペインの本体の居場所が!」

 

 

 

 

 

 

いのいちによって、解き明かされたペインの秘密はさっそくカツユの情報網によって里の動ける忍びへと繋がれた。

しかし、ここでナルトの中に封印してあった九尾の暴走が始まる。

 

 

―――

――

 

 

大きな音を立てて、里中心から起きた爆発は顔岩から向かって右にズレて、すり鉢の面積を増やした。

 

「今度は何だ?」

 

多少の爆発ではもう驚かないと思ってはいたが、まさかすり鉢の面積が増えるとは…

シカマル達は爆発の方向に顔を向けるが、やはり状況は分からない。

 

「ぶっちゃけもう、木の葉の原型がなくなちゃってます!」

 

シホの言う事はごもっともだが、最初の大きい攻撃により、すり鉢になった時点で、原型も何もなかった。

カツユが触角を動かし、声を上げる。

 

「急いでここからなるべく遠くへ、避難してください。」

 

この規模の攻撃に距離も何もないだろうと、冷静にシカマルは考えるが、あの爆発が誰によって起こったモノなのかを聞いて、思考が停止した。

 

「これはナルト君の九尾の力です。

私の分身がナルト君にくっついているので分かります。」

 

 

「九尾化か…」

 

頭痛にうつむくシカクに対し

いのいちはすぐさま封印の有無を確認する。

 

「ヤマトとカカシで封印術をナルトに施していたはずだぞ?!どういう事だ?」

 

「ヒナタさんです…ヒナタさんがナルト君を庇って目の前で倒されました。

其れでナルト君が…」

 

「それが引き金か…」

 

「ハイ…おそらく」

 

シカマルは眉間に親指を押し付け、シカクはあちゃーとばかりに空を仰ぐが、状況は変わらない。

この中でも一番冷静だったいのいちが口を開く。

 

「ヤマトはどうなった?こんな時にどこにいるんだ?

それにサクヤが居れば、何とか九尾の力を封印まで行かなくても、何かしら手を打ち、止めることが出来るだろ?

サクヤはどこだ?!」

 

 

サクヤは来ない

里抜け同然に忍びを辞し、秘匿であるが現状一般人の枠に入るサクヤを、無理に招集は出来ない。そしてその手立ても見立てもない。

シカクはこれ以上隠すのは無理か…と口を開こうとした。

が、しかし

 

「ヤマト隊長とサクヤは別の任務で今は居ない。

封印した本人であるヤマト隊長は、ナルトと物理的距離は取らないだろうから、今頃異変に気付いて駆けつけて来るかもしれない。可能性はあるが、間に合うかどうかは分からない。綱手様の意識があればその判断も付くんだが…。」

 

口を開いたのはシカマルだった。

しかし、ヤマトの状態は分かれど、サクヤの説明は無かった。

眉間に親指を当て何かを耐える様子に気付いてはいたが、言及する時間が惜しかったいのいちは、それを取りあえずそのまま受け入れた。

 

「ヤマトを待つか…木の葉壊滅を待つか…

どちらにせよ、俺たちに今できる事は、敵の本拠地を探る位だな…。」

 

シカクはシカマルの言葉を補足する様に、ごまかす様に、視線を逸らす様に言葉を重ねる。

 

「出来ることは少ないが、これはナルトのおかげで出来た大事な隙だ。

この時間は有効活用しないと意味が無い。

まだ動ける奴らで怪我人を里の外に移して、敵の捜索はなるべく少数隠密で行おう。」

 

 

 

 

 

いのいち達がカツユを通して集めた忍び達に指示を与えている横でシカクはシカマルに声をかけた。

 

「シカマル…どうするんだ。」

 

その言葉は牽制だった。

これ以上先延ばしにしてもどうにもならないと言う意味と、ナルトはどうするんだと言う意味の。

サクヤがナルトの精神的支柱であったかどうかは、シカクには分からない。

しかし、ナルトがサクヤを親の様に慕っていたのは、里の誰から見ても、明らかだった。

三代目の命であっても、親の仇であっても、たとえ見かけ上であったとしても

サクヤがナルトを大切に思っているのも、明らかだった。

里全体への一報はなるべく早い方が良いと、シカクは考えた。

そして、これからどう勝負がつくか分からないペインとの戦い

どう転んでも、里がナルトに構う余裕がある内に、()()()()()()だとも。

 

しかしシカマルは現状、シカクより冷静で、シカクより、里の者が見えていた。

 

「この情報は今の木の葉には必要のない情報だ。これ以上里に混乱は広げるべきじゃねェ。

そして、ナルトへは俺が話す。

ペインの事がある程度終息してからだ。

たとえ、今回の事でナルトにヘイトが集まっていようとも、ナルトに里への疑心が生まれようとも、まず最初に話す。

それから里に公表するのがスジってものだろ?」

 

 

 

 

眉間から親指を外し、鋭くシカクを見上げる姿に、白い影が揺蕩う。

 



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104

ペインによる木の葉襲撃の知らせを、ドンから聞いたサクヤは

ただ、目を瞑って

生まれ続ける後悔と、湧き出る懺悔と、自分の内から襲ってくる詰問に、耐えることしかできなかった。

 

 

サクヤはこのペインの襲撃を、リハーサルのような物と捉えていた。

本格的な戦争の前に

意見をぶつけ合い、現状を俯瞰して見る事の出来る人材の把握、

更に、これから起こることへの警鐘にもなると…

どうせ、自分が去った後の穴に気付く事が遅くても、今回の事で死亡者は0だからと考えていた。

軽い気持ちで、サクヤは考えていた。

『生き返るから』と。

 

実際は、サクヤの想像する遙か手前で大きくこけ

その傷は、軽くも無ければ、簡単な事でもなかった。

サクヤは、自分が居ない事で起こるあれこれを、ある程度把握はしていたが、まさかここまで事が大きくなるとは考えていなかった。

 

サクヤなりに後輩育成をしてきたつもりだった。

だから会議を抜けれたし、呑気に怒られていたのだ。

しかし、サクヤの思っているよりも、事は深刻で、無様であった。

 

一向に進まない会議

情報を取捨選択できない中忍

侵攻前の段取りで、気付くはずの穴は放置され

不測の事態に、対応できない情報伝達システムは麻痺したまま復旧されることなく

サクヤが手塩にかけたはずの中枢には、負の連鎖に気付く者さえいなかった。

 

自分が起こしたバタフライエフェクトの大きさを関知できていない事が

どれほど恐ろしいのか、よく解かってしまった。

 

 

 

サクヤは、誰かの前世と言う物を白狐から聞いたことで、より()()を意識するようになっていた。

もしかしたら、自分は初めからいない方が良かったのではないのか。

出しゃばって色々やったことが裏目に出たのではないのか…

自分が里を弱くしてしまったのではないのか

頭の中を色んな声が巡る

 

 

それでもサクヤには、二つに一つしかなかった

起こった事実は変わらない。時間を巻き戻すことは出来ない。

ならば、

 

このまま雲隠れして原作に戻ることを祈るか

それとも、戦争が終わるまで調節するべきか

 

 

サクヤはその答えを未だ出せてはいない。

しかし、ペインによる木の葉襲撃の結末が、判断材料の一つになることは確かであった。

 

 

 

 

辺り一面真っ暗で、光の一つも見えない空間でサクヤは知らせを待つ。

 

ペインの神羅天征により、棟梁に渡してきたドンの分体が一気に消え

残り少ないドンの分体も情報伝達の為に消え、

もしかして足りなかったかと思ったその時

吉報は来た。

 

「ナルト君が帰ってきました!!カカシ先生に負われていますが、五体満足です!!

里の皆さんも無事、全員生き返ったことを確認しました!!」

 

 

ドンの少し高い声がサクヤの耳に入る。

結末は原作通りだった。

良かったと思う反面、『なんてひどい人間なのだろう。』と、心が囁いた。

 

 

 

 

―――

――

 

 

木の葉は、ペインの襲撃により、壊滅状態にあったが

ナルトのおかげで死亡者は一人もおらず、里の皆で平和のありがたさを甘受していた。

 

一部を除いて。

 

「どうした?」

 

「急を要する会議になりました。上忍班長として、シカク様もただちに大名殿へ。」

 

ナルトの帰還に、歓声が上がる中、音もなく後ろに控えた暗部の声に

シカクは「来たか…」と覚悟を決めた。

この場に、もしサクヤが居たなら、確実に引っ張り込んで縛り上げて持ち上げて、逃げられないようするのに。とシカクは想像して、舌打ちを打った。

この甘い考えが、今回のシステム崩壊を生んだのだ。

だからと言って、生贄を用意しないと、始まらない議題だと言う事は分かっていた。

 

5代目火影である綱手の意識が戻らない今

実は、急を要する会議を開く意味は無い。

 

と言うのも

里と言う組織体系は、『火影』をトップにして出来ているからだ。

 

 

命令は火影が下さなければ意味をなさない。

火の国大名がいくら支援してくれているとしても、火影がこれからの里を先導していかねばならない。

火影が意思決定を下せない状態にある今、会議を開けども、最終決定を下す人間が居ないのならば、会議で討論する意味もないのだ。

しかし、火影より偉い人間を持って来れば、それも覆る。

 

この急すぎる大名会議は、火影のいない所で何か進めてしまいたいものがあると言う事だ。

 

ナルトを持ち上げて恩を作っておきたいだとか

新しい里内地図で、一族の区画を広げたいだとか

里の権力(火影の座)をどうするとか…

 

 

火影の位を虎視眈々と狙う獣が居る事を、シカクはよく知っていた。

だから生贄(次代火影)が必要なのである。

かといってその生贄に、シカクがなれる器かと聞かれたら『断固NO』である。

シカクは自分の心が狭い事を知っていたし、シカクでは他里に対して抑止力になりえないと言うのも、分かっていた。

内面的にも、外面的にも『断固NO』なのだ。

 

 

と、言う事は

現在、ナルトによって株が上がり、外面的に大丈夫そうな、5代目陣営に話しが行くのは至極当然で

カカシに話が持っていかれるのも、自然の摂理であった。

 

 

 

 

「…オレ、ですか。」

 

 

数刻経っても、未だ盛り上がりの消えない里

テントが建ち、野営の準備も進んでいる。

仮本部とした場所には、ぼちぼちと大工が集まりだしてきた。

二つの影は、そこから離れた木立の間で、未だ冷めやらぬ(ナルト)を眺めている。

 

 

「ああ。

アスマやサクヤが居ない今、血縁に頼れねぇのは辛いが、4代目火影の師弟子と言う意味でお前に話しを持って行くのは当然だ。」

 

「まあ、薄々気配は感じて居ましたけど…

もうですか。」

 

カカシが早すぎる展開に、ついに気でも触れたかと、冷や汗をかきつつ返事を返すが

話を振ってきたシカクは冷静そのものである。

 

「…これは未だ俺の予想だが、ダンゾウが急いている。

5代目が目覚める前に方を付けたい、サクヤが何かする前に手を打ちたい…他にも色々あるだろうが、これだけでも急く理由にはなる。

本当は5代目が目を覚ますことが一番の近道なんだが…時間を稼げるだけでもいい。

カカシ、名前だけでいい。6代目火影になれ。」

 

 

カカシは、自分の名前が『里の誉れ』と呼ばれ、使われることに不満は無い。

しかし、自分の名前がダンゾウやサクヤ程に、大名たちに馴染みがあるか問われれば頷けなかった。

ダンゾウは言わずもがな、サクヤは背後にいる名前が、大きすぎる。

それに、サクヤは暗部にいた時から、大名直々に、名指しで指名を受ける程に覚えが良かった。

 

カカシもサクヤとの任務をいくつも受けて、うっすらと分かってきた事であるが、サクヤは気の使い方が上手い。

護衛対象を守るに限らず、護衛対象が安心する様な声掛けはもちろん、隊員の士気を上げる言葉を選び、護衛対象も含め一丸となって事に挑めるよう役割を配分していた。

 

ごまを磨るとは言い難い。

だがその気使いは、常に命を狙われる大名にとって、必要な事で

仲間内での摩擦が少ないというのは、任務を遂行の為に、壊さなければなければならい壁を、軽く3つほど飛び越せるものである。

 

 

対してカカシは、自身の武勇で名指しされる事は有れど、大名たちになにか恩を売ったかといったら、カカシの性格的にゴマをするのは無理だった。

この小さい、しかし無視できない数のアドバンテージは大きい。

カカシや、シカク、その他里上層部の想像していたサクヤの穴はココにあった。

 

 

しかしまあ、門外漢であれど、助けを求められれば、里の為に『写輪眼のカカシ』の名を明け渡すことも吝かでは無い。

カカシを守ったオビトの為に、オビトに頼まれたリンの為に、リンが守った里の為に…

息を吐くと、カカシはその箒の様な髪を上下に振る。

 

 

「仕方ありません。

多少ホコリが被っていますが…この名前、使って下さい。」

 

 

 

「すまねぇな…恩に着る。」

 

何時もドンッと構えているシカクが、しおらしく礼を述べる姿は珍しかった。

早々に踵を返し、話は終わったとばかりに去ろうとする背中に、カカシは声をかけた。

 

 

「あいつは…

約束にはうるさいんで、どうとでもなりますよ。

サスケの様な何もかもを捨てる根性もないし、ナルトの様に意地を張る程の感情も有りません。

必要なら、帰ってきます。」

 

シカクはその言葉に苦い顔をして振り返り

『それって帰る必要性を感じなければ帰って来ねェって事じゃねえか』と口を出しそうになって、言葉の裏(心配)に気付く。

 

 

 

「…そんなに出てたか?」

 

カカシは、あまりにも苦そうな表情に、思わず噴き出す。

続ける咳払いで誤魔化そうとするが、出来てはいなかった。

シカクのじっとりとした視線にカカシはごまかす事を諦める。

 

 

「まあ…真の目の管狐が、俺に声をかける位には。」

 

「ガキが…その前に自分の事を如何にかしろってんだ…。」

 

 

シカクがいつもの調子に戻るのには、それで十分だった。

 



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105

うちの大名は、カッコ良くないし、イケメンでもない。
クールは死んだ。
もういない。


トビ、またの名をマダラ、は焦っていた。

サスケを幻術に落とし込めないから、ではなく

懐柔しきったと思っていた長門が裏切って、木の葉の連中を生き返らせたから、でもなく

小南が輪廻眼を持って蒸発したから、でもなく

 

真の目サクヤの行方が全くつかめないから。である。

 

 

「まだ掴めないのか?」

 

「僕らのチャクラ探知にも全然引っかからないんだよ。」

 

「何カ、術ヲ使ッテイルカ

地上ニハ イナイカ…

オレ達ノ索敵範囲ヲ 何処マデ知ッテイルノカ 分カラナイガ

ソウトウ警戒シテイルノハ確カダ」

 

少ない松明に照らされ、派手な仮面と、派手な形相と、派手な剣を持った3人は浮いていた。

薄暗い洞窟の壁には、外道魔像が指を構えている姿が影になって不気味に映る。

派手な形相、トゲトゲアロエヤロー事ゼツは、幾度も探して結局チャクラの欠片も見つからなかった白い忍びを思い出す。

あれだけイタチのそばをうろうろとしていたチャクラなので、一発で分かると考えていたが

何故かサクヤが里を抜ける前にあった『大蛇丸のアジトを虱潰しにしている』噂もぱたりと止んでいた。

 

「流石に死んでたり…なんてことは無いですよね?」

 

まさか…と言いたげな上ずった声が、派手な刀を持った影、鬼鮫から発せられる。

対して、派手な仮面を付けたマダラはふんっと鼻を鳴らした。

 

「仮にも、お前の相棒と手を組んでいた奴だぞ?早々死ぬとは思えん。」

 

だから、ここまで警戒しているのだと、マダラの言葉の裏に、鬼鮫はうなずく。

マダラは、サクヤが(里の命令か否は判断が付かないが)大蛇丸のアジトを潰して回っていたと聞いていた。

 

暁から個人的に恨みを買って尚、逃げ遂せている、()()大蛇丸のアジトである。

アジトを突き止めるだけでも手こずる代物なのは確かだ。

 

「まあ、確かに。

どういう関係だったのかは終ぞ聞けませんでしたけど、イタチさんの駒なら相当お強いんでしょうね…。」

 

鬼鮫の言葉にゼツは、『一応』と、撮って置いたサクヤのいくつかの戦闘を思い浮かべる。

体術:並

幻術:まあまあ

忍術:そこそこ

知識:結構ある

悪知恵:ご察し

 

「…強いとは聞かないけど、知恵は回るようだね。僕程じゃないけど。」

 

「オ前ハ、知恵トイウヨリ、クチダロ。」

 

 

しょうもない掛け合いが始まる横で、マダラは考えをめぐらす。

人間生きてても、死んでいても、どこかしらで噂や消息は流れるものであり

チャクラや、気配、噂、消息も消えるのは不自然極まりない。

意識して隠れている証拠であり

あるいはそのミスリードを使った罠の可能性も…

と一通り損害を計算したが、里を抜けた今、仲間のいないサクヤ一人では大した損害も出るわけもなく。

マダラは、サクヤが何処までの情報を得ているかは分からなかったが

接触を図って来ない所から見ると、やはり、今のところ邪魔をするつもりもないらしい。

と、結論を出した。

 

「(ならば、何かされる前に、手を出せない所まで駒を進めてしまうのが楽か…。)」

 

 

マダラの様子に気付いた鬼鮫はちらりと視線を向けた。

それにこたえるようにマダラは結論を口に出す。

 

「鬼鮫……お前は八尾を探せ。

ゼツはこのまま奴の探知を続けつつ

俺と共に来い。」

 

「おや。貴方はどこに向かうんです?」

 

 

 

 

「俺は家出少年を、正しく非行させねばならん。」

 

 

 

―――

――

 

 

 

火の国、大名屋敷

装飾が少なく、しかし他国に劣らない壮観な建物に、火の国の大名は居た。

目の前には、茶も菓子も無く、水だけ置かれたテーブル

この装飾の少ない会議室で会議をする事に多少の文句は有れど、緊急とのことだったので言葉は、大名の目の前に置かれた水と共に飲み込んだ。

 

 

「まず、襲撃を受けた里の状態についてだが…」

 

 

木の葉の忍びから上げられる報告を聞きつつ、流しつつ、大名の部下である大臣が被害の大きさを測る。

里側は、少しでも多く支援金を出してもらおうと、色を付けて話すのが通例であり、

国側は、少しでも予算を削ろうと、その色をなるべく少なくすべく被害の大きさを正確に、出来れば小さく測りたがるのが、通例である。

 

よってこの話が長くなるのは必然なのだが

今回は被害が、明らかに害で終わらない内容だったので、事実を淡々と確認する短いものとなった。

大名が飽きる前に終わった一連のやり取りは、襲撃をしてきた“暁”のこれからの対処で締められる。

 

 

「暁の対処は、我々と同盟国とで、これからも続けていくつもりだ。」

 

「…里がああなってはな」

 

 

国は里が無ければ成り立たないし、里は国が無ければ、やっていけない。

里というシステムが出来てからというもの、火の国には、持ちつ持たれつ付き合ってきた歴史がある。

 

もし今、木の葉を諦めて、他里に頼ればその分予算は浮くだろう。

しかし現在雇っている火の国の護衛は、ほぼ木の葉の忍びで賄われている。

 

単純に、新しく護衛を雇うのにお金がいる。

一応この世界の『兵』と言う物は存在するが、傭兵集団の暁然り、忍びがほとんどである。

よって忍びを雇う事と大体変わらない。

ただ、もし他国の忍びを使ったとして、木の葉の忍びより人件費は確実に安いのは確かである。

しかしその雇った分のお金は、火の国と契約し、火の国に所属している木の葉とは違い、他国にいずれ流れる。

 

他国と戦争になった場合

火の国が他国の忍びを雇う為に払った金が、敵国の軍備()に行き付くことは、自明の理であった。

どうせ戦争に使われるのならば、自国の里につぎ込んで、大きくして、自分達を護ってもらうよう取引する方が賢い。

そうなれば、予算を多少多く取られたとして、

 

 

「……我々火の国としても、里の復興を全力で支援する。」

 

 

全面支援に舵を切るのは、火の国の財政的に、決してプラスになりはしないが、マイナスに傾く事は無かった。

そしてなにより、『国民』である里へのパフォーマンスになり

延いては他国への豊かさのアピールになり

それは隙を突かれる形で起こる戦争を、柔くも回避することになり

戦争の被害と、見積もりを考えれば

総合的にマイナスにはならない。

 

 

 

家臣がそんなこまごまとした事を考えている横で大名は、やっと話が終ると息をついて、あくびを誤魔化した。

しかしそれさえも、鋭く睨めつける家臣に気付き、慌てて口元を扇子で覆う。

 

「(全く…おちおち息もつけぬとは…)」

 

大名は、家臣から目をそらす様に、なんとなしに木の葉の忍び達を眺める。

そして、何時もこういう会議に遅れて登場する、二代目そっくりの顔が見当たらない事に気付く。

 

「(なんじゃ、サクヤがおらぬと話が長く感じるのぉ…)」

 

毎回、五代目火影が直々に、首根っこを摑まえて、引きずってやってくる姿を笑いながら見ていたのだが

今回は火影が居ないから捕まらなかったのかと、楽しみにしていた恒例行事が無くなったことに少し落胆する。

不謹慎だが、火の国大名にとって、五代目火影の意識が戻らない事は、それぐらいの価値であった。

 

そんな不謹慎な事を考えているとはつゆ知らず、大臣たちは話を終わりに持っていく。

 

「まずは予算を組んで…それから他国との緊張を…」

 

しかし、通例通りこれで予算の見積もりを付けるため、いったん持ち帰りで終わりかと思った会議は、ダンゾウの声により、大名のあずかり知らぬ所へ向かう。

 

 

「それより先にやることがある

新たな火影を誰にするかだ。」

 

 

話しの趣旨がいまいち掴めない大名は、家臣たちの「(無駄な事を言うな)」という目線を無視して、疑問を口に出す。

 

「綱手の体調が戻るまで、待てばよいではないかえ?」

 

その言葉に対して、木の葉の御意見番であるコハルは思わず口を吐く。

 

「大名様…

綱手は昏睡状態が続いております。

里がこの状態で、何時目が覚めるやも分からぬのでは、里の方針も上手く決めかねますのでな…

それに木の葉を壊滅させた責任もある。」

 

ご意見番であるコハルの説明に、そういう物か…と納得をする。

 

「今度こそ、自来也だと思ったがのう。

余はあ奴が好きじゃったが、今はもうおらん。」

 

あの恒例行事もこれで終わりか…と考え、次の火影が誰になるのかと問いかける。

大名としては、『あの二代目孫を引きずって来れる忍びが、面白くていいんじゃないか』と、考えるが、それを見つけてくるのは大名ではないので、取りあえず候補を上げてもらう事にする。

 

 

「…で、他に誰がおるのかえ?」

 

「それならば、この……」

 

しかし、それは愚策であった。

 

 

「はたけカカシを、推薦する!」

 

ご意見番の一人であるダンゾウの言葉をさえぎるように

突然話し出した、上忍班長であるシカクの言葉に大名は頷く

 

 

「ほほう、あの“白い牙”の息子かえ。」

 

 

白い牙の息子なら大名もよく知る人物である。

あの写輪眼も持っているし、分かりやすい。

同意を求めるように家臣に大名は問う。

 

 

「うむ!ええじゃないかえ。

皆はどうじゃ?」

 

 

大名の、話をさっさと終わらせてしまいたい欲が出ていた事に気付いた家臣が、居ない事も無かったが、おおむね賛成の様で

 

「はたけカカシは、誰の弟子だったかの?」

 

「四代目火影の弟子だ。」

 

という質問の答えに満足した。

 

大名は

これは早々に会議を終える事が出来そうだ。と言葉を畳み込む。

大名は、自分が『何でもない関連ごとを理由付ける』ことが得意なのを自負していた。

 

「四代目は自来也の弟子で

自来也は三代目の弟子であったの!

問題ないではないかえ。

よし、では――」

 

 

しかし意気揚々と出た言葉は、ダンゾウの凄みに負ける。

 

「三代目のその教えが――

里を壊滅させたも同然なのですぞ!!」

 

 

大きい声ではないが、低く響く声は大名を怖気づかせるには十分だった。

 

 

「里を潰した“暁”のリーダーは、かつて自来也の弟子だった男だ。

他国に同情し、戦力を与えた結果がこれだ!

甘いのだ!何もかもが!!

 

代々続くその甘さが、同盟国の砂の裏切り…そして大蛇丸の木の葉崩しを許し

“暁”の台頭

うちはの残党サスケがぬけ忍として暗躍し

更には大名様もよく知る、真の目サクヤの里抜けを許すことになった!!」

 

「なんと…」

「まあ……」

 

突然出てきた良く知る名前に、大名一同は感嘆符しか出ない

まさか、あの真の目が、里を抜けるだなんて大それたことをするとは…と各々家臣たち同士で小さく情報を取り合う。

サクヤの穴の大きさが、ダンゾウの言葉の重みを作る。

その様子を一通り眺めたダンゾウはさらに言葉を畳み掛けた。

 

「今こそ必要な火影とは?!

この最悪の事態の後始末をし

忍びの世界に変革を成し

忍びの掟を徹底させる

 

稀代の火影

このワシだ!!」

 

 

 

 

選択を迫る空気が、大名の周りに漂う。

大名は自分が、木の葉の政権争いに巻き込まれた事を、やっと、今、理解した。

 

 

「この際ダンゾウに任せてみてはどうでしょう?大名様。」

 

「………」

 

 

家臣の声が聞こえる。

この家臣はダンゾウの仕込みで間違いないだろう。

 

 

「合理的に、凝り固まった一方的なやり方では―――」

 

思考をめぐらすのが遅かった、と反省をして

大名は議論が続きそうな言葉を遮った。

 

 

「うむ、決めた」

 

何故なら

 

「ダンゾウお前を、六代目火影に任命する!」

 

 

これ以上は、大名の膀胱が持ちそうになかったからである。



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大海編
106


大海編、始まるよ☆


 

光の一切届かない場所に私は居た。

息が詰まるような閉塞感と、微睡の中で私は

 

「ああああああ!!外に出せぇぇぇ!!太陽の光を浴びさせろぉ!!そして私に光合成をさせろぉおおおお!!

しんどい…色々重くてしんどい…なんでこんな所にアジトを作ろうとか考えたんだ私…でも外に出た瞬間に、あの白いのに補足され、推定マダラに連絡が行き、私の命と木の葉が握り潰される…

THE ENDは見えてる…」

 

外に出たい欲と、外に出ると漏れなく晒される命との間で、葛藤していた。

 

躁鬱みたいになっているが、マジで人間には太陽の光が必要な事が、よく解かる事だろう。

なんたって私がいるのは海底2万マイル…かもしれない所だ。

 

 

―――

――

 

この意味不明な現状を説明するには、まず

時は遡りまして、林の国での白狐の襲撃後になるのだが

その前に

覚えているだろうか?

私が計画した、無限月詠回避のための原始的な策を…

 

 

無限月詠が月の光を使って発動する術ならば、地球の裏側に行けばワンチャン行けんじゃね?

もしダメでも、掛かるまでのロスは確実に起こるのでその間に何かしら策を打てるだろ!!

 

と言う原始的…いや物理的すぎる解決策なのだが

それを実行するに当たって大切なのが地球の裏に行く方法である。

トリマその方法に万華鏡写輪眼なりなんなりを使うとして、思考を放棄したのだが、

そも、地球の裏側にアンカーを置いておかなければ、行く事も帰ってくることもままならない。

なので

飛雷神をちょこっとばかり改良させていただき、長距離の移動に特化させた飛雷神を作り

そのマーキングを施した苦無を持たせて

とりま、あるかもしれない南極大陸へ向かって、海に旅立っていった影分身さん。

そう、()()影分身さんである。

なんと彼女、優秀な事に

 

『海溝』を発見してくれました。

 

流石私…脈略が無い…

その知らせが来たとき、白狐が帰る寸前で

私は思わず目元を覆ってしまい、白狐に訝しげな目を向けられた。

 

「なんや?」

 

「いや、まあ…色々あって…なんというか…その……」

 

「ん?」

 

「海溝を…発見しまして…」

 

「かいこう…?」

 

「そっからかよ。

海溝って言うのはプレートとプレートの隙間で…ってこの説明しても分からんか…

あー…うん。」

 

取ってつけた説明に、更にはてなを増やした白い狐を見下ろして、私は

 

「まあ、あれだ。

ちょっと音信不通になるわ。」

 

説明を放棄した。

 

 

「ハ?!えっちょっまっ――」

 

詳しい説明が来ると構えていた白狐は、チャキチャキとお出かけの準備をし始める私と管狐を交互に眺める。

あれよこれよと文句を言って詳しい説明を私からひき出そうとするが、私の頭の中は海溝の事でいっぱいである。

よって興奮マックスで、本人には分かる言葉でも、他人には支離滅裂な言葉しか帰って来ない。

さて行くかと、早々に準備を終えた私がチャクラを錬る段階で白狐は、鼻頭にしわ寄せて結論を出した。

 

「ええいっ!!ワシも行く!!」

 

「30秒で支度しな!!」

 

画して我々は、海溝と言う未知の世界に心躍らせ、アマゾンの奥地へ飛んだのだった…

 



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107

今回は諄い。
※ありとあらゆる嘔吐表現が使われます。


海溝を『海溝』と呼べる区切りは海底6000m地点からである。

ちなみに、富士山が標高3776m、エベレストが標高8848m、日本海溝の最も深い部分が水面下8020mである。(ウィキより)

 

しかし私(影分身体)は、海溝の深さを正確には測れていなかった。

『なんかめっちゃ深い所を発見したので、これは海溝ではないのか?』と思って影分身を解いたのである。

よって、海溝か否かを知るためにも

取りあえず深さを測る方法を模索しなければならず…

 

その為に管狐の分裂体を入れた竹筒に、重しを付けて沈め、『沈む時間』と、『距離』を測り、『速さ』を算出し

先程算出した『速さ』と、底に到達するまでの『時間』を使って、『距離』を測ろうとしたのだが…

 

相手は海溝

簡単には事が運ばなかった

海溝…彼には…

『水圧』と言う物が存在する…

 

竹筒なんかすぐつぶれる…

更に中身は管狐…

管狐の耐久度はほぼ紙…

 

アンカーの意味ぃっ…!!

 

 

でも…最初は海溝なんかにアジトを作ろうとはしていなかったんです…。

ただ、ちょっと海溝がどんなものなのか知りたかったと言うか…アンカーとしてドンの竹筒を1つ沈めれれば何でもよかったんです。

ほんとに、深さを知りたかっただけなんです…

生命の神秘を解明したかったんです…!!

邪な考え何てこれっぽっちしか無かったんです!!

『水遁、水陣壁』をせずとも、口寄せした海水で出来そうとか、ちょろっと思っただけなんですぅううう!!

 

 

一応『飛雷神』でも試したのだが

マーキング(術式)が書かれた物体自体が崩壊する結果となり泣く泣く断念。

当然結界とか、封印も色々試した。

 

しかしゆうて、私のチャクラで可能な範囲…

圧倒的圧力(文字通り)の前では塵に等しかった…

 

さらにダメ押しで、ピンポンと、ついてきた白狐も使って、あの3代目を閉じ込めた四紫炎陣を組んで落ちてもみた

が、それも途中で崩壊。

崩壊寸前に、海面に浮かせていたマーキングに瞬身しなければ我々は、死んでいた…

 

死因:圧死

原因:海の深さを測るため

 

なんて末代まで笑われること間違いなしなので、まじ…ホント…焦った…

真の目には結構、末代まで笑われるエピソードが多いのだが、これは…シャレにならん…

黒歴史ノート並みにシャレにならん…うっ頭痛が痛い…

 

序に言うと、四紫炎陣という術は、結界面に当たる物全て燃やす術なので

結界に接触する海水が沸騰、蒸発し

海面に上がっていく大量の泡を見たら…もう、普通にアウトだった。

 

思わず「忍べよ…」と突っ込んでしまった。

流石海溝パイセン……自然の力ぱねぇ…

海水中の水分が蒸発して、結界にこびりつく塩が溶けていく姿は溶岩を彷彿させた。

もしかしたら、死因に焼死もありえたかもしれないと考えると、二重の意味で、あの時我々は死ぬところであったと言う事だ…

 

 

その後、海面に蔵を口寄せして、禁書棚ひっくり返して、ああでもないこうでもないと3匹と1人で議論した結果

『四赤陽陣』が、現存している術で、一番耐久度が高い。

という結論が出た。

 

一体どこから出て来たって思うだろ?

普通に置いてあるんだなーこれが、蔵に…

 

ほんとに…

なんであるんだよ…

私の方が聞きたいわ…

 

 

説明書?である巻物には『影クラスのチャクラが4人分必要』とか書いてあったので、里設立以降の巻物になる…

多分2代目の所有物か、二代目が保管していた禁書を父、作間が写したか…

何で、そんな里の規律に接触メッチャしているやばいもんが、置いてあるのかというのは、取りあえず置いておいて

四赤陽陣に話を戻す。

 

 

 

四赤陽陣に必要な、『影クラスのチャクラ4人分』がどれだけの物かというと

約、『私のチャクラ2人分』である。

 

え?お前のチャクラは、普通の忍びよりちょっと多い位だから計算が合わない?

まあ、そう思うだろうが、二大仙蝦蟇のフサカクさんの言葉を良く思い出してみてくれ。

 

『実はサクヤちゃんのチャクラは殆どが今現在そこの二匹に吸われているんじゃ。』

 

『サクヤちゃんはそこの二匹に吸われてなお、一般の忍びチャクラをわずかじゃが上回る。

その上回るチャクラを使って、サクヤちゃんは今まで忍術をやっとったんじゃ。』

 

…私の生成するチャクラをほぼ吸っている『ピン』と『ポン』が、どれだけのチャクラを内包しているかは、私は感知タイプでは無いので、正確には分からないが

仙術扱う二大仙蝦蟇、フサカクさんに聞いた所によると

 

『そうじゃの…丁度自来也ちゃん1人ずつ……ぐらいかの?』

 

らしいので

エロ仙人は火影候補に名前が上がるほどだから、ピンポンの2匹で『私(火影二人分)が、二人分』である。

 

 

そうして、この不思議なパーティーメンバーで迎えた吉日、

我々は四赤陽陣を

私の膨大なチャクラをほぼ吸っているらしい管狐の『ピン』と『ポン』

膨大のチャクラを持つうずまき一族と、うちはの血を引く、真の目の御先祖。

の、チャクラ全部食べちゃった『白狐』

そして第一発見者『私』、で試行運転する事にした。

 

 

 

しかし、ご存じのとおり()()今使えるチャクラは、平均を少し上まる位の、ほぼ平均値…

よって

 

 

「ちゃっちゃくらが…私にチャクラを…飯を…睡眠を……」

 

「だから!!言うたやろっ!!

この術チャクラの消費が激しそうやから、お前やと無理やて!!」

 

 

開始三分で干からびる結果となる。

 

 

一応、兵糧丸とか、大蛇丸パークにて発見し「何かに役立つだろう…」とくすねた、チャクラのブーストの薬剤をいくつか打っているのだが…

それでも、足りない…!!

チャクラ生成が消費に追いついてない…!!

 

大蛇丸の薬剤が不能だったのか、私のチャクラ生成に問題があるのか、いささか疑問が尽きない程チャクラを吸収されていて、まじ干からびる。

誰だよ!!こんなチャクラ効率の悪い術開発したのはっ!!

チャクラに物言わせてんじゃないよ!!

 

 

「でっでも…せめて何処まで行けるかだけでも知りたいっ…耐久度を…」

 

「術の耐久度何ちゅう物は『術』に対して測る物であって!!『自然』相手に測るもんちゃうやろ!!」

 

「でもでもでもっ…対術に関してはチャクラの消費が大まかで…あんまり正確性がっ…」

 

白い小山がぎゃんぎゃんと私に説教をかましてくるが、私は今ちょっとうぷっ…

二日酔い並みにしんどい……おえっふぅ…

この世に転生してから24年、薬剤、毒耐性を付け過ぎたせいでアルコールが効かないので

初めて二日酔い並みに調子悪い…

それも小山が全力で突っ込みをしてくれるおかげで、三半規管にダイレクトに攻撃が当たる…おぼろろrrr――

 

 

~一部映像が乱れております~

 

 

 

―――

――

 

四赤陽陣という術は

内側、外側どちらからでもかけられる便利な術で

3匹と一人を内側に入れ、海面から下に術を展開する事が出来る。

よって、内側にいる術者の六方は海面に覆われ

もし、下に降りていく際に、この壁が崩壊した場合

四紫炎陣の時の様に生き埋めになってしまうので、往復分のチャクラが必要になるのだが、開始3分で私が死んでいるので……

 

端的に言うならば、白狐が己の命惜しさに、日和った。

 

まあ、己の命惜しさに日和る事は、真の目には日常茶飯事なので構わないのだが

まだ六方を囲っただけで、下に降りてもいないのにそんな事を言われると、日和ったとも言いたくもなる。

暇していた白狐誘ったのは間違いだったか…こんなに肝が小さい奴だったとは…(薄々気づいてはいたけど

しかし、何もひよったのは白狐だけでは無かったらしく、私の思わぬところから抗議の声が上がる。

 

「サクヤはん…

流石にわても白狐さんに賛成するわ…

このまま下に展開しても、底に付くまでチャクラは絶対持たへんやろ…

耐久も何もないんとちゃいます?

四紫炎陣もあわや圧死の憂き目に会ったんやし…今回は辞めときまひょ?な?」

 

「ゆうて、ワシらのチャクラも結構ヤバイから、そろそろ解きたい所でもあるがナ…」

 

 

うぶぶぶぶぶ…

まさかのピンポンに正論を突き付けられるとは…

仕方ない…

大蛇丸ブーストも結構体に負担掛かるし…

 

「仕切りなおすか…」

 

 

 

 

―――

――

 

画して、術を解いた私達だったが、飛雷神で陸地に飛ぶにしろ何にしろ、術者である私のチャクラが尽きているので、戻る前にチャクラを回復せねばならず

太陽が燦々と照る海上で、少し休憩する事にしたのだった。

 

 

「まじ…兵糧丸じゃ賄えないこの空腹感…」

 

「ガハハハハ!!チャクラ尽きて死んでないだけましダロ!!」

 

「なんか食べもんでも、口寄せで呼びはったら?」

 

「今は…口寄せのチャクラさえ惜しい…何か…炭水化物…コメが食いたい…米…こ…め……」

 

 

 

チャクラ節約の為に小山程になった白狐の背中で私は、空腹と三半規管の揺れに耐える。

吐き気が収まるまで何もできないので、丁度手元にある『蔵』を仕舞ってある口寄せの巻物を、手に取り眺めた。

 

 

「今まで気にしてなかったけど、こいつの結界封印って結構強いよな…」

 

「確かに…

九尾の襲撃で、家は崩壊しよったけど、これだけ傷一つ無く残ってたぐらいやしな…」

 

「ほぉワシはそんなに術というもんに詳しくは無いが、九尾は流石にすごいな…」

 

 

ドンには私自身のチャクラ節約の為、竹筒に戻ってもらっているのだが

ドンが居ないという事は『まともな神経をした奴がおらず、ツッコミ不在で話しが進んでいく』と言う事である。

 

 

「ガハハハハ!!蔵の方が四赤封陣より耐えたりしてナ!!」

 

ポンの言葉に一瞬静寂が通り、

 

 

 

 

「んな馬鹿なww」

 

「流石にそこまでや、あらしまへんやろww」

 

「四赤封陣以上て、どんだけチャクラ使うんやww」

 

何て笑っていたら、落とした。

 

何を?

 

 

『作間の蔵』が入った口寄せの巻物を

 

 

 

 

「あ」

 

という声と共に、とっとっとっ、と白い白狐の体をはねて滑り落ちる巻物は

そのまま海面に、ぼちゃんと若干鈍い音を立て、見る間に深淵に飲み込まれた。

 

 

 

「「「「ああああああああああああああああああああ!?」」」」

 



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108

「さっ、サクヤはん早う!!

はよう取りにいきなはれ!!」

 

「沈む!!作間の蔵ガ!!禁術の森ガ!!」

 

あわあわと叫ぶ二匹の管狐にせかされるが、私は今空腹と、チャクラ切れで死んでいる所である。

 

「ままって…うえっチャクラが…」

 

「「今、そんなんしとる(吐いてる)場合(ジャ)ないやろ(ダロ)!!」」

 

まさかのピンポンのダブルサウンドでノックアウトされた私は、白狐の背中から、そのまま蒼い深淵に落ちた。

 

 

―――

――

 

鈍い音を立てて、私の周りの気泡は上へ上へと進んでいき

体は鉛の様に重く、関節が錆びているように動きが鈍い

私より先に沈んでいた巻物は、はらりとでも言いたげにその内を晒し、更に深く沈んでいった。

一応、と手を伸ばすものの、全然届く距離では無い。

 

「(こんな事なら、鉄芯じゃなくて木芯にすりゃ良かった…)」

 

などと今更しても遅い反省をし、海水が沁みる目を閉じる。

チャクラが尽きている私は現在、写輪眼を使い過ぎたカカシパイセン並みに使えない人間であり、泳げもしないので、自分の浮力で浮かぶ事しかできない。

 

 

海面に、死体の様に浮かんできた、白地に赤の紋。

白狐は器用にも、それに爪を引っ掛け、上に打ち上げ背中で受け止める。

べしゃりと、大凡綺麗な音とは言い難い着地音を立てて、私は空気がある世界へ帰って来た。

三半規管がやられている上の、更なる振動に私は、白く輝く毛皮の上で

 

吐しゃ物をばらまく事になる。

 

 

「いやぁっ―――――!!」

 

 

 

―――

――

 

 

「ワシの背中で吐いた奴は、お前が初めてやわ…」

 

「そりゃどうも…うぷっ」

 

再びげろりんちょした私は、白狐の情けない叫び声と共に、再び海に落とされ

産業廃棄物の様に浮かんだところを、ピンポン拾われ、大人しく干されている。

ピンとポンは、わざとでは無いながらもダブルサウンドにさらしてしまい、この参事を起こしたことを反省し、死んでいるサクヤを気遣って声をかけてくれるが、

 

「蔵は…諦めまひょ…

作間はんの形見なんて結構あるやないか、そんな気にせんでも………全部蔵に入れたわ。」

 

「蔵は…しかたないことだっタ…それも運命…

ワシらなんだかんだ身一つで生きてきたやないカ…ねぐらさえあれバ…………全部蔵ダ…。」

 

事態の深刻さが明白になるだけだった。

未だダメージが残る三半規管を、如何にか鎮め

しっとり絶望しているピンポンに説明するべく、私は口を開いた。

 

「蔵は口寄せできる。」

 

しかしピンポン達は、その突飛な言葉に、先程まで極わずかながら存在していた優しさを捨てた。

 

 

「いや何ゆうてますのん?!」

「馬鹿なのカ?!」

 

「「そもそも!!」」

 

「口寄せする巻物無いから!!わてら焦ってんのやで?!」

「あの巻物ガ無いト!!蔵を口寄せ出来ないだロ!!」

 

「アホちゃいます?! この馬鹿!!考え無し!!」

「笑おうに笑えんワ!!このド阿呆!!」

 

「もう一度海に落ちて、頭冷やした方がええんとちゃいます?!」

「今なら間に合ウ!!飛び込メ!!そして拾って来イ!!逝ケ!!」

 

 

キレている。

左右に、交互に、ぐわんぐわんと襲ってくるサウンド

もう一度吐かれてはこまると、白狐の低い声がまあまあと止めた。

 

「ワシはお主ら、『忍び』が使う口寄せがどんなもんか分からんが、あれはワシらで言う契約書みたいなものちゃうんか?」

 

ブチ切れの二匹にどん引きしながらも、白狐が議論をしようとしているのがよく解かる…

優しさに私は思わず涙が出そうだ…

 

しかし、私にも考えがある。

何も考えなしにはこんな事は言わない。

そも口寄せと言う物は時空間忍術である。

 

 

「うぷっ…正しくは…

蔵を、術式で、時空間に縛っているだけで、あの巻物でなければならない理由にはならない…おえっふ…

んで、あの巻物は紙でできている。

濡れた時点で術式が崩れて使えはしない。

取りに行っても意味が無い。げふっ…」

 

現代でいうクラウドに近い

私の使っている口寄せの巻物は、USBのような、個々に巻物から出し入れする物では無く、

時空間というクラウドを使い、巻物(術式)チャクラ(DNA)を媒体として、物を出し入れする術である。

 

 

「せやかて!!あの巻物無いと呼べもしないやないか!!

巻物の予備は、皆蔵の中やで!!」

 

 

「そこが問題で、解決の糸口でもある。」

 

 

私は胃酸ですっぱい口内を、真水ですすいで間を取り、産業廃棄物になっている途中思いついた方法を反芻し、自分の理論が間違っていないか確認する。

 

あの巻物は海に沈んでいる。

しかし蔵は時空間に固定されている。

蔵の中に予備の巻物(術式)が存在する。

そしてピンポンの寝床である竹筒も蔵の中である。

 

という事は、『避雷針の術式』も蔵の中にある。

 

 

そもそも、避雷針の術式は、各地に置いた()()()()()についているので、当然本体である蔵の竹筒にも入っているのだ。

だから蔵の中にある、竹筒についている避雷針に飛んで

蔵から巻物を拝借して現在地にまた飛べばこの問題は解決する事が出来る。

しかし問題と言うか…

懸念が一つある。

 

基本的に、巻物を使った時空間忍術は、『物』専用であって

時空間に生き物を『生きたまま』出し入れする事は出来ない。

 

要は、生きたまま入れても、死体となって出てきてしまう。

「え?口寄せは?」とか「避雷針の術は??」と思うであろうが

この時空間忍術と種類が違うとだけ言っておく。

そも術式が違うし、生きたまま出し入れするとなると、チャクラコントロールがより繊細になり、難易度が格段に上がるのだ。

 

口寄せは、術で寄せる相手の許可が必要で、そのための『契約』である。

許可があるからチャクラを使えば安易に口寄せできる。

更にいうなら飛雷神の『マーキング』も『契約』に当たる。

あれはいわば「これから私が通す者の許可は、全部貰いましたよ~」という時空間側の認知を緩くさせるフリーパスに近い。

しかし、時空間側の認知が甘いかといったらそうでもなく、

行先のマーキングと

術者のチャクラに触れるか、空間を囲うかして、()()()()()飛ばなければフリーパスが有効にならない。

だが、まあ便利なもので、接触するのが本人でなくとも、チャクラを対象に持たせたり、チャクラを介し間接的に接触出来れば、対象だけを送る事も可能でもある。

その場合残念ながら私は、飛雷神で『物』しか送れないが。(コントロールが繊細過ぎんだよっ!!)

 

 

更に4代目のように、戦闘中に飛雷神の術を使うには、相当な努力と、センスが無ければ無理である。

私が飛雷神の術を会得できたのは、似たような感覚で発動できる万華鏡写輪眼の能力『宇迦之御魂』があってこそ。

それでも飛雷神を戦闘に使えはしない。

だから飛雷神の術を、4代目の得意とする『速さ』より、『距離』に特化させた。

 

話しを戻そう。

飛雷神の術で蔵の中に入れたとして問題なのが

 

 

私と言う体が蔵に入ってから、もう一度飛雷神で飛ぶまで、持つか、否か。

 

 

物専用で、入れても中で何かしら命を落とすと言う事は

誰も原因である『何故、物しか出せないのか』を、正確に分かっていないと言う事だ。

一説には魂的な物を取られるとか、時空間に辿り着く前に圧縮がかかるから、とか言われているが

どれも論理的で、明瞭であるかと言われたら怪しい所である。

なので一か八かの賭けになるが

 

物理的に接触不可能となる宇迦之御魂を()()発動したまま、飛雷神で飛ぶ。

 

遠い記憶過ぎて、お忘れであろうと思うが、私の万華鏡写輪眼の能力は

『自分と、自分のチャクラをスイッチする』事の出来る能力である。

そして、

 

術の発動中は物理的攻撃が効かない。

 

この術『宇迦之御魂』と『飛雷神』の違いはそこにある

時空間忍術として飛雷神と比べれば、不便ではあるが、飛雷神とは違う部分で役に立つ

その大部分を占めているのが『物理攻撃不可』という付加価値だ。

 

もし、飛雷神で視界の届かない場所に飛んだ場合。

もし、敵が目の前で刀構えて待ち構えていたら。

私だったら確実に死ぬ。やばい。

飛雷神と言う術は結構リスキーな術なのだ。

そのリスクを回避できるのが『宇迦之御魂』である

 

私の推測では、A地点からB地点に移動する場合

『A地点にいる自分をチャクラに変換させ、時空間忍術でB地点にチャクラを送り、B地点で実体を再構築する』と言うシステムなのではないのかと考えている。

そのため、術の途中段階であるチャクラの塊状態(白い炎)の私には物理攻撃が効かない。

さらに、おちゃめなイタチ君によって発動中、幻術がよく、良く、(大事な事なのでry)利く事は身を持って証明されている。

 

 

よって、蔵に入って幻術のような精神攻撃を、その場でかけられない限り私が死ぬことは無いと言う事だ。

やや強引な手段だが、蔵を時空間に入れたまま何処からも出せないよりは幾分良いだろう。

もしかしたら時空のゆがみによって、蔵が崩壊する可能性も無きにしも非ず…という部分もあるが、これが一番ましで、被害が少ないと考えた。

 

 

しかし、どうやら二匹はこの案が気に入らないらしい

二匹は頑なに反対をする。

 

「いや、サクヤはん…わて、これだけは言えますわ。

あんた馬鹿なんとちゃいます?

そんなややこしい事せんと、わてらの分裂体、飛雷神で飛ばせばええやないか。」

 

「流石ニ、危険すぎル。ワシは反対ダ。

サクヤが影分身したら十分だと、ワシは思うゾ。」

 

危険て…

カブトすっ飛ばしてマダラに取引持ちかけようと進言するくせに…危険て……

まあ、ピンポンの言いたいことが分からない訳ではない。

が、それでは意味が無いのだ。

 

「それも考えた。

確かに飛雷神は術者のチャクラを伴う事により、対象物だけを飛ばす事もできる。

だが、残念なことに私は、対象だけを移動させることが出来ない。

 

となると、どうしても私自身が同行することになる。

第一、 もしお前らだけで行けたとして、帰りはどうするんだ。

情報持って帰って来るだけならまだしも、巻物を持って帰ってこなきゃ意味が無い。

それにお前たち管狐の耐久は紙以下だし。やるだけ無駄。

影分身も同上。

影分身で、時空間の不思議が解明できるなら、プロフェッサーである3代目が発見していて可笑しくない。

しかしそう言う資料が里に一切ないとこから見れば、影分身でも無理だったことが分かる。

 

それに危険と言うが、私も命が惜しいからこの手段を考えた。

もし他に安全な案があるならそちらの方が良い。」

 

そう言って『何か思いつくのか?』とばかりにピンとポンを見つめたが、それ以上何か方法が出てくるわけではないらしく、二匹は口籠る。

 

「白狐は何か思いついたか?」

 

これ以上やんや言われると、せっかくの光明が消えそうなので、白狐に話を振る。

一応これでも何百年生きてきた妖怪である、何かしらヒントが得られる可能性はある。

 

 

「ん~…ワシはそう言うこまごましたんは得意やないからな…

影分身でその万華鏡…なんとかは、発動できひんのか?」

 

「出来ないな。

写輪眼は本物でなければ意味ない。

それに、最終的には半分私が向こうに行く事になるから、危険度は同じだし。

なら本体がやった方が早い。」

 

「ほなら、諦めるしか思いつかんな。

ゆうて、このまま放置すれば、誰かに取られる心配も消えるちゅーものやけど…

それやと意味ない…やろ?」

 

ニヤッと口の端を上げる白狐に、私も悪い笑みを返した。

あの蔵の中の物は、コレクションしても意味が無い物だらけだ。

 

『使ってこそ真価を得る。』

『在るだけでは何もならない。』

 

そう言う物が多い

価値は人によって変わるものだが

忍びにとっては、喉から手が出る位には貴重な資料庫である事は確かである。

だから、忍びが少ない真の目で腐らせるならば…と、3代目が蔵の中の物を欲しがったし、ダンゾウが目を光らせた。

 

 

 

「じゃーそう言う手筈で!!

取りあえず陸に帰ろう!!

それから飯!!米!!炭水化物だ!!」

 

胃に残った兵糧丸も効いてきたし。

チャクラも一回分の瞬身の術ぐらいは賄えそうだし。

さっさと帰ろう!!帰ったら飯だ!!昼寝だ!!と私はチャクラを錬った。

 

しかし、期待通りには事は運ばず

 

突然

ゴゴゴゴ…という音と、ボコボコと空気がぬけるような音が足下から響き

大きな水しぶき、爆発するような音と共に、海面から蔵が発現

白い蔵の外壁にある、朱い真の目の紋を晒した―――

 

 

 

 

 

と思ったら、沈んでいった。

 

 

 

「……は?」

 

 




8月まで投稿を停止します。
詳しくは活動報告で


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109

おまた


「………え…蔵?」

 

「…蔵、なんか……?」

 

「……蔵…で合ってるハズ…多分。」

 

 

 

 

「いや、

蔵としか言いようがないやろ?!

何しとるんや!!

さっきまで喧嘩しとったんは蔵の為やないのか?!

今直ぐ如何にかせんとほんま…蔵の中身もやばいんちゃうんか?!」

 

白狐が怒涛の如く突っ込む横で

目を点にしたまま、なすすべなく、泡立つ海面を眺める我々(私、ピン、ポン)は、じわじわと状況を理解してきた。

 

今、青海に沈んだのは蔵だった。

紛う事なき『作間の蔵』であった。

 

 

そもそも、何故蔵が召喚されたのか分かっていない私は、現実を受け止めるのに時間がかかり

白狐のツッコミから幾分か経った後

ピンポンの叫びをBGMに、事の重大さを理解し

先程錬ったチャクラを、蔵に飛雷神する方向に、やっとシフトさせた。

 

 

 

―――

――

 

 

急いで蔵の中に飛雷神したのだが、勢いを付け過ぎて、床に散らばった巻物に足を取られ

私は、無様にも本棚に突っ込んだ。

ちゃんと普段から整理整頓すればよかった…と、ドコドコと自分めがけて落ちてくる巻物、書物の雪崩を如何にか治め、あたりを確認する。

思ったより蔵の中は静かで、揺れも少なく、いつもと変わり映えしない薄暗さだ。

 

おかしい…

 

普通建物には隙間と言う物が存在する。

それは空気穴(換気口)と言う意味合いもあるし、建て付けの問題でもあったりする。

真の目製の蔵は漆喰が塗ってあるものの、基本木造の土蔵のはずである…。

更にはこの家にはカラクリまで仕掛けてある。

上下左右前後、六方を水に囲まれておきながら、建物の損傷、水漏れ、雨漏り、浸水が()()()()のはおかしすぎる

 

遠くの方からゴウゴウと音が聞こえるので、一応…沈んではいるのだろう…。

近くにあった行燈に火を点け、室内の様子を窺う。

 

「水気なし…」

 

ありえないとは思うが、オートで結界が仕掛けてあるとして…

普通の結界では、水圧に耐えきられなくなるラインなんかすぐそこだ。

ならばミシミシと結界の崩壊する音が鳴ってもいいはずだが…それらしき音は何も聞こえず…

蔵はゴウゴウと沈むだけ…。

 

「蔵って…結構気密性が高い…?」

 

なんて馬鹿な事を口にしながら、一応目を万華鏡写輪眼にして、蔵の出口である扉に手を掛けてみる。

もし開け放った扉の向こうが、本当に青海だった場合

飛雷神で、すぐさま蔵と共に、陸地へ移動しなければならない。

写輪眼はそれに失敗した場合の保険である。

しかし、そこで私はあることに気付く。

 

「赤…?」

 

 

写輪眼は、白眼の様に透視する能力は無いので、外の様子は窺えないのだが、扉が…

いや、良く見れば蔵全体が赤く淡く光っている。

何処からそこまで、まるで赤シートをかぶせた視界の様に…

 

写輪眼は透視することは出来ないが、チャクラを視認する事は出来る。

そして私は、この『赤』に見覚えがあった。

 

 

先程私がリバースしたために頓挫した『四赤陽陣』である

 

 

 

何故ここに四赤陽陣が張られているのか

いつ、誰が、何故、張ったのか

四赤陽陣が張れる程のチャクラはどこから調達しているのか…?

疑問は尽きないがそこでふと、ポンの言葉を思い出した。

 

 

『ガハハハハ!!蔵の方が四赤封陣より耐えたりしてナ!!』

 

 

 

 

「…ドン。」

 

「お呼びですか?」

 

にゅっと腰に据えてあった竹筒から白い影が上がる。

私は写輪眼を仕舞い、視界を元に戻して一考

方針を決めた。

 

「ピンポンと白狐に、自力で外からこちらに来れるか聞いてくれ。

無理だったら、潜って外からどう見えたかの報告と、蔵の沈む速さを測ってくれ。

そうだな…出来れば時速を出したいが、無理だったら分速で構わない。」

 

「それは…ええっと、白狐さんに付けてた分体で良いですか?」

 

「ああ、構わない。

保険に付けていただけだし。

白狐はお前の気配に気付いている。

どうせ、あのまま別れていたら消されていただろうから、問題ない。」

 

「わっ分かりました!」

 

白い影は分裂した後、一体が消えた。

 

 

―――

――

 

 

「――っと言う事で、外からの接触を試みることは、可能ですか?」

 

突然、白狐の毛皮から現れたドンに、三者は取り立てて何の反応も無く、サクヤの指示が可能かどうか協議する。

 

「んーわてら狐は泳ぐんは得意やけど…」

 

「潜るのハ初めてだナ…。」

 

「お前さんら管狐やから…人間より耐久度低そうやし、ワシが行こか?」

 

白狐の提案に二匹は頷く。

今なお、問題なく沈んでいる蔵は結構深い所まで来ていた。

流石にそこまで潜るのは管狐では少し難しい。

ドンも、3者の名前があがっていたので「えっと、外から確認したいことがあるようだったので、どなたでも構わないと思います…多分…。」と返す。

 

 

結論から言えば

白狐は、蔵に張られた結界を四赤陽陣と結論付けた。

 

 

白狐の目は、見えていない。

緑内障か、白内障かは分からないが、視界にもやもやしたものが映るだけで

ほぼ、見えていない。

しかし、白狐にはとんでもない感知能力がある。

 

千里を見晴らす感知、そして千里の内にいるチャクラを()()()()区別できる精度。

それにより、あの大きい体躯で、体に触れたサクヤ達の位置を正確に把握できたし

気配と言う物がほとんどない管狐を探知する事ができ

木の葉の追手を巻き、逃げ切った私を、捕捉する事が出来た。

 

こんなモノが備わっていたら、そりゃいくら隠れようとも見つかる訳である。

発見が遅れたのは、私が里抜けして飛雷神でホイホイ動いたせいであり

飛雷神のアンカーに、私のチャクラを吸ったドンが居たせいで、誤魔化されたからである。

それでも本物に行き付く精度のチャクラ感知能力である。

 

 

その感知能力を持ってして

 

「こりゃ…さっきの術やないか。」

 

と言わしめた。

完全に四赤陽陣である。

更には

 

「結界には触れてへんから、正確には分からんけど

二重に結界が張ってある…こんな厳重な蔵やったら、そら、九尾も壊せんわ…」

 

と呆れた視線も頂いた。

 

 

いいか、私が作ったんじゃない

父が、『作間』が作ったのであって、私じゃない。

その呆れた視線は父さんに向けてくれ。

 

 

残念ながら、白狐の探知を持ってしても

「なんや、知ってるチャクラとは思うんやけど…さっぱり分からん。」

と結論付けられて

結局四赤陽陣のチャクラが何処から賄われてるのかまでは突き止められなかったが

白狐を蔵に口寄せして確かめたところ

驚く事に、()()()()()二枚張りしてあるところまでは突き止めた。

 

 

 

その情報に私の頭の中は、只一つの事でいっぱいだった。

 

「よっしゃ!!

取りあえずどっかに引っかかるまでこのまま沈もうゼ!!」

 

 

四赤陽陣2枚張りと言う、多少の事では壊れない布陣

幸いにも白狐が居ることで、肉眼ではないが、外の様子がある程度は窺える。

たとえ海溝途中に引っかかっても

生物のチャクラ反応を見て未だ先があるかどうかは測れるので、ある程度まで落ちれるであろう。

 

と言う事で

 

私は蔵に、『レーダー(白狐)』と『インカム(ドン)』を搭載して、海底まで様子見する事にしたのだ。(私は、もし結界が崩壊した場合の脱出経路である)

 

 

御役目御免のピンポンは、分裂体が今ギリギリの数なので、海上から一旦消えてもらい

この情報と、これからの予定を陸地に置いてきた他のピンポンに受け継ぎ

陸地での情報操作、収集に、いそしんでもらう事となった。

 

 

 

―――

――

 

白狐レーダーのおかげで、蔵はスムーズに進んでいるのだが

サクヤには心残りが一つあった。

 

 

「外の様子が見れない…(泣)」

 

 

ぶえぶえと、顔中をぬっとり濡らしながら、現在の水深を計算しているサクヤを、白狐が引いた目で眺める。

白狐は、先程の海上で学んだ事を思い出していた。

 

常識(ドン)がいない空間は、総じてカオスになる。』

 

 

 

「窓がぼじい゛…(涙)」

 

「窓あったらあかんやろ…この蔵の機密情報一発で盗まれるやん…」

 

己の欲にまっしぐらなサクヤの言葉に、ここで自分が折れたらまた、あのカオスに突入する…と気を引き締め、極冷静に白狐は言葉を返すが、カオスの元凶は黙らない。

 

「そんなん…こんな結界掛けてあるならいけるも゛ん゛…

せめて…外の様子が窺えるようにしてほしかった…

頑張っても天井の通気口しかないよ…

あの通気口よく解かんない設計してて、外は見えないのに日差しだけ入ってくるんだよ?!

どこに力入れてんだよ…!!(唾)」

 

「ちょっ唾飛ばすなや…汚いな…

まあ…あれや、妙な方向にふざけた真の目の、粋を集めた蔵なんやし、

多少変態じみた技術が、ただの蔵に使われとってもワシは驚かん。」

 

白狐は、「一体どういう仕掛けになってるんや、それは…」とそわっとしたが、先程のカオスを思い出して、どうにか心を落ち着かせた。

序に飛んできた唾をサクヤの服で拭いた。

 

「つか!!

海中は日が差してないからその仕掛け機能してないし!!

そも!!

海中で空気の循環もないから通気口の意味ないし!!

こんなの…こんなの設計ミスだぁ!!(鼻水)」

 

「…いや

蔵が海に沈むとか、誰が予測できるっちゅうねん!!

設計ミスはお前の頭や!!」

 

 

ゴィンッという、狐と人の、頭がい骨どうしの衝突音とは思えない音が、蔵に響く。

サクヤは、白狐に辛辣な言葉(頭突き)を貰いくじけそうになるが

 

「でも゛、海溝に居ながら持って帰れる成果が

大まか過ぎる水深と!!

四赤陽陣の強度のみっ!!

大した成果も持って帰れないのぐや゛じい゛」

 

「ええっ…結構持って帰っとるやないか…それの何が不満なんや…」

 

 

わだじだっで(私だって)!!ぜいめいのじんびざぐり゛だい゛(生命の神秘探りたい)!!」

 

 

更にぬっとりと顔を濡らすサクヤに、白狐はドン引きしつつ慰めの言葉を吐く事にした。

いい加減ぬっとり顔にも飽きてきたからだ。

 

 

「まぁ、別の機会に人間誘って潜ればええやろ…

真の目の連中ならきっと喜んで投資するで。」

 

「生ぎで帰っだら…やる…

ぜっだい…や゛る゛…!!

いぎで、ぜいめいのじんびざぐる!!」

 

 

 

こんな所で、おちおち死ねない理由が出来た。

 

 




画像一覧のキャラカオノマトペで110話って書いたけど、ぶえぶえは109話だったわ。


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110

今回の投稿までの時間が空いたし、一瞬108話までのダイジェスト的な導入にしようか迷ったんですが、続きで読むと違和感しかない感じだったので諦めました。



蔵が海に沈み始めて、結構な時間が経っていた。

 

空気の入れ替えの為に、空間を一時的に外につなげたり、食料補給やら、排泄やらの問題を如何にかする方法を探したり…と色々やった為

蔵と言う『貯蔵空間』は以前より確実に『住居空間』に特化し、

「今なら1年位、蔵から一歩も出ずに過ごせそう…」とか思うぐらい、快適になっていた。

 

蔵の水深は、目に見えて分かる物ではないが、時間の経過が深さを知らせてくれる。

摩擦やら、慣性の法則やら、なんやらがあって、最初に測った時より確実に速度は落ちているので正確ではないが、深さを時間で測る作業にも慣れてきた。

 

一通り落ち着いてくると、細かい事が気になって来るものである。

 

 

 

「そも、おんしなんでこの『かいこう』?を発見したたんや?」

 

白狐の言葉に、私は「そう言えば…」と、話していなかった概要を思い出す。

サクヤ達は、陸地から飛雷神のマーキングをいくつか経由して一番近いマーキング地点に飛び

そこから全力で走ってこの地点に立ったので

白狐は詳しい説明がゼロのまま、海上に立ったと言って過言では無い。

疑問に思う事は可笑しくない。

寧ろ今まで空気読んで黙ってくれていた方が私は驚きだ。

しかし、それ(無限月詠云々)を説明するのは少し…いや、結構かなり面倒くさい。

 

 

「あー…まあちょっと地球の裏側に御用がありまして…。」

 

「…御用とは。」

 

目的を誤魔化そうとほにゃほにゃするが、流石に途方もない時間を生きてきた妖怪相手に、これは悪手だった。

しかし、ここで全部話せるような信頼できる相手かと言われたら頷けないので、私はぼかした目的をさらにぼかす。

 

「…約半年後生命の危機に瀕するので、予防線その①『脱出路:地球の裏』…的な…。」

 

サクヤのもにょもにょとした要領を得ない言葉に、白狐は呆れた視線を向ける

が、しかし

白狐の思考は思わぬ方向に進んだらしい。

 

 

 

「…それ、ワシは咬んだらあかんやつなんか?」

 

「え…うーん……」

 

窺うような提案に、サクヤは算盤をはじくように損得を数える。

 

悪くはない。

悪くはないが、良くもない。

白狐と言う埒外(妖怪)の手を借りれるのは、悪くはない…

しかし白狐突撃の際、誤魔化せたあれこれを話さなくてはならなくなる点に置いては、良くはない…

 

 

「悪か無いけど…もしお前がコレに噛んでも、何もお前に利益は無い。

私が白狐にやれるものも無ければ、寧ろ私が貰う方になりそうだし、単純に命を狙われる。

今回(海溝)みたいに楽しいものでは無い。

第一、ツケても返せるか怪しい。ツケを払うべき私が死んでいる場合もあるからな。」

 

利益が無い事を前面に出して、マイナスアピールをするが、それは白狐には無駄であった。

 

「いや、ちきゅうの裏?ってだけでおもろそうやと思うんやけどな……ワシも行ってみたい。

世界一周したい。」

 

 

こいつ…

完全に興味関心知識欲に突き動かされている…

今度は私が白狐に呆れた視線を向けた。

 

「そういえば、あんたこれから旅する予定なんだっけ?」

 

「まあな…チャクラ節約しとったから、初代のチャクラがまだ残っとるし…時間だけはある。

それにワシは妖怪やから、初代のチャクラ尽きても、他のチャクラを集めて、時間は増やせるしな。

今まで約束を守るために動けんかった分、世界を見るのも悪ないな…とは思うとる。」

 

はーそれで…

手頃にまず私について行って、適当に技術とかそういうものを手に入れようとしてる感じか…

技術提供は別にかまわないが、こいつに付いて来られるのはウザそうだ…

 

 

「……ちゅうか、初代の魂もらえるから言いつけ守っとったけど…それが嘘て!!

約束がちゃうやろぉ!!

あのボケのせいで、その間に起こった、めっちゃおもろい事逃しまくったやないか!!

何してくれんねんドアホ!!!!

今迄の時間返せ!!」

 

老人の話(愚痴)は長い。

荒ぶる白狐が、天に向かって言い足りないとばかりにボロ糞言うので

私は時間稼ぎに聞き流しつつ、頭の算盤をはじく。

ようやっと算盤が止まった頃には、白狐の息は切れていた。

無理すんな…結構な年寄りなんだから…

 

 

「ちなみにピンポン換算でいくと、あとどの位チャクラ残ってんの?」

 

私の声に、怒りでトリップしていた思考をこちらに戻す事が出来た様で、冷静な言葉が帰ってくる。

 

「あー…あの結界でけっこう使ったし…ピンポンの2匹に流れとる、お前さんのチャクラよりは少ないな。

大体、ピンポン合わせて1.5倍ってとこやろか。」

 

「結構少ないんだな…。」

 

うちはと千手の血を引く、真の目初代のチャクラで今まで生きてきたと聞いていたので、結構あるだろうと予想していたが、思ったより少ない…四赤陽陣は当分の間できんな…と予測を立てる。

 

しかし、後に続いた白狐の言葉にサクヤは耳を疑う。

 

 

「いや此れなら、普通に過ごして、あと500年は余裕やで。」

 

 

 

「…いや、それ…計算間違えてない?」

 

 

ピンポン合わせて1.5倍と言う事は、火影のチャクラ3人分と言う事である。

更に言うなら火影一人のチャクラは、私のようなごく一般的な忍びのチャクラ量の5倍である。

よって忍び30人分…ん?この計算いるか?

管狐はチャクラの生成が出来ないので忍び30人分のチャクラで…500年?

んんんん?

 

サクヤが必要のない計算までしはじめたあたりで白狐はサクヤが管狐の生態に詳しくない事を察した。

 

「元々管狐は、術使わん限り低燃費やねん。

チャクラが少ない動物に憑いても、その(チャクラ)を枯らさない程度で生きていける。

ワシみたいに節約に節約して過ごせば、ピンポンのチャクラで……多分、世紀末まで生きれるんとちゃうんか?」

 

「え…管狐の燃費良すぎか…」

 

人間一人生きているだけで、どれだけチャクラを消費していると思っているんだ…

 

「せやから、ピンポンにお前さんのチャクラが半分以上流れとって余らんて、どんだけ無駄使いしてんねん。とか思っとった。」

 

「いや、我忍びぞ??

任務にチャクラは付き物ぞ??

私のチャクラ、ほぼピンポンに吸い取られてるぞ??

よって任務ではピンポン頼みぞ??

お??お??」

 

「いやそこ、威張るとこちゃうから!!

開き直んなや!!

たっく…妙な所であ奴に似おって……

あのアホに似とると思うだけでイラつくぅっ!!」

 

とばっちりが来そうだったので、私は話しを戻す事にした。

 

「ま、お前が本当に世界を旅したいなら、私も手助けするのは別にかまわん。

地球の裏側への行き方とか、ポインターの間隔とか目印になる物の共有も吝かじゃぁ…ない。

あんたが行った先で飛雷神ポインター増やしてくれれば、こっちとしても利が得られるしな。」

 

「ほならっ!!」

 

先程までの、白狐の荒んだ表情に、あっと言う間に光が差し込み、花が咲く。

 

「海底二万マイルに着くまで時間はかかるし、飛雷神とか、私のポインターのリンクとか、一つ一つ可能かどうか精査してこう。」

 

「流石サクヤ!! 太っ腹ぁ!!

よっ!!世界一!!

あのドアホとは大違いや!!

やっぱ持つべきものは家族やなくて、友やな!!

なんならワシの師匠になってもかめへんぞ!!

大妖怪白狐様の師匠として方々に噂広めたるで!!」

 

 

調子のいい白狐に、サクヤは優しい笑みを返した。

 

「私は弟子は取らん主義だ。

噂なんぞ広めてみろ

 

 

次に広がるのは貴様の生き血だ。」

 

 




火影一人分のチャクラ云々は私の妄想であって、正確なものではありません。
もし知っておられる方がいらっしゃったら、ご連絡ください。
ソースを確認次第、修正いたします。


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111

 

我々は、白狐の感知により、四赤陽陣が2枚貼られている事までは分かっていたが

恐ろしい事に、7000m過ぎたところで、何故か外側の一枚を残し、内側が消えた。

 

「いやああああああ!!なんでここで解けるの?!

ここからじゃないの?!どうじでぇぇ!」

 

「嘘やろ!!

外側のん崩壊したらっ…!!

一間の終わりやないかあああああ!?」

 

「もう一枚自分たちで張れってか?!」

 

「チャクラ不足で圧死の前に死ぬわ!!」

 

等々、悶着あったが、取りあえず最後の1枚は何の問題も無く張られ続け、ズンズクと蔵は沈んだ。

白狐が帰ろう帰ろうと五月蠅かったが、帰りたきゃ自分で飛雷神して帰れ、と言ったら黙った。

 

己の飛雷神の成功率が低いのもあるが、ここまで潜っておいて、今更一人で上に帰るのが癪だったのだろう。

 

そんなこんなで、数日も経てば阿鼻叫喚から若干落ち着いて来るが

心が落ち着いているかは別問題である。

 

 

 

 

「あっあの…

お二人とも…落ち着いて…

いや、冷静に…」

 

 

「へへへ…このスリルがたまんねぇぜ…」

 

「あかん…死ぬ…あかん…死ぬ…」

 

中毒者の様に手を震わしながら筆を握り、机に項垂れる人間と

その側でブツブツと同じ言葉を吐き震える白い毛玉…

 

私と白狐は正気を失い、ドンの優しい声に返事をする元気は無かった。

しかし、ドンは優しい…

そんな混乱真っ只中の私たちの為に、冷静になる材料をくれた。

 

 

 

「おお落ち着くために、なっなにか…他の事考えましょう…?」

 

「「他の事…」」

 

沈んだ顔で、ドンを見つめ返す2対の目は死んでいる

その死んだ目に「ひっ」と声を上げ、怯えながらも、優しいドンは案を出す。

 

 

「ええっと…なっなんで四赤陽陣がお蔵に掛かってるとか…」

 

「それがわかったら、こんな怖い思いしてないわ…」

 

「なんで…なんで結界解いてしもたんや…蔵よ…ワシはまだ死にとうない言うとるやろ…」

 

今この話題は良くなかった。

反省し、心優しいドンは、次なる話題を探す。

 

 

「なっなら!!

えっと…海溝の深さは今どの位かとか…!!」

 

「深さ…

そろそろ…大体10000m超える…」

 

「ひぃっ、深さで聞いたことない数字でてきたぁっ!! 」

 

白狐はサクヤの言葉に、頭を抱え体を極限まで縮こませた。

それを見たサクヤはニヤリと嫌な笑みを浮かべる。

ドンは嫌な予感がした。

 

「へへへ…

ちなみに…今蔵に掛かってる圧力…聞きたい?」

 

「嫌やっ!!嫌やっ!!」

 

「えーとぉー、大体ぃ…」

 

「わ―――!!あああ――――!

ワシは何も聞きとうない!!まだ死にとうない!!

神さん仏さんえべっさん頼んます!!

ワシこいつの飛雷神つこうて地球一周するんや!!

今死にとうない!!」

 

更に混乱する事を言い、落ち着こうとしているサクヤ

ドツボにハマる白狐

状況は更に悪化した。

 

サクヤの言動にドンは、「またこの人は…」と頭を抱えたくなったが

今はこの混乱を止めるのが先決。

ドンは、負の連鎖を止めるために声を張った。

 

 

「じゃ、じゃあっ!!

なんでお蔵が口寄せされちゃったとか!!」

 

 

ドンの声に、一人と一匹は、一気に冷静になった。

 

 

 

「…巻物が関係していることは確かだな。

でも、海に落ちた時巻物が開いたのは見えた。

その時点で術式が崩壊してる。」

 

「いや、崩壊してたら口寄せは出来ひんやろ。

一回海面に蔵が上がってきたんは、口寄せ特有の勢いや。

やから、そん時点では、崩壊しとらんかった。」

 

「でも、その後どうやって遺伝子情報なしで時空間と繋がったか分からん…

あれはチャクラと、私の遺伝子情報が鍵となって開くから、他の何でも開かんぞ。」

 

「……うーん

…チャクラは、水上歩行のチャクラが、海に多少流れていても可笑しくないと考えられるとして…

問題は『血』か…」

 

術式が崩壊していたら、時空間にもしかして繋がったかもしれないが、そもそも正確に蔵を持ってこれるかと言ったら、疑問が湧く。

しかし、崩壊していなければ鍵が無く、開かない。

どちらが正しいのか…いや、蔵自体がそもそもおかしいからな…

…もしかして蔵自身に意思があって、生きてても可笑しくは―――

いやいやいや、流石に父さんやサザミでも、生物は作り出してないと信じたい…

流石にない…よな…?

 

サクヤの思考が、若干大蛇丸よりになってきたころ、白狐が言葉を発する。

 

「もしかして…いや、でもなぁ…」

 

「なんだ。」

 

サクヤは、頭の中で蔵の妙な所をあげつらうのを辞めて、白狐の言葉に耳を傾ける。

一瞬、白狐も蔵が生きてる方に思考が走ったかとサクヤは考えたが、杞憂であった。

 

「いや…お前さんがゲボった中に、血が混じっとればワンチャンあったかと思ったんやけど…

流石に吐血はしとらんかと思って―――」

 

 

 

「それだ!!」

 

 

エウレカ!!とでも言いたげに、立ち上がった私の声と同時に

ズズッっと蔵全体が響き

蔵が、何かに引っかかった、又は底に付いたことを知らせた。

 

 

―――

――

 

「時間」

「約602時間です。」

 

振動と共にドンに時間を聞き、白狐が測った時速から計算して、深さを測る。

何度もした計算は、思考の余地なく答えを導き出す。

 

「ってことは…約12040mか。下は?」

 

「下は亀裂以外無い。あたりもあんま変わらんな。

未だ結構続きそうやけど…

蔵が入れるスペースはもう無いやろ。」

 

「万事休す…か。」

 

海溝途中という中途半端な位置に着地した蔵の中は、静かだ。

隙間風が無いので、行燈の灯は揺れない。

サクヤは写輪眼を発動し、天井を見上げ赤を確認する。

 

「四赤陽陣、強いな…。」

 

写輪眼は、今日も正常に稼働しているらしく、サクヤの視界は赤に染まった。

白狐も同じ様に、天を仰いで確認するが、白狐の探知も、依然とそこに四赤陽陣があることを知らせていた。

 

 

「まあ、めっちゃチャクラ使うしな…早々、壊れはせん。

あれやろ?現存する結界の中で、最強なんやろ?

強いに決まってるやーん。」

 

「の割に、白狐はギャーギャーうるさかったな。」

 

「いやいや、何ゆうとんの。

サクヤのがグダグダ五月蠅かった。」

 

 

 

「「……あ゛ぁ?」」

 

 

ドンは、睨み合う二人が、どっちもどっちであったと言う事実は、墓まで持っていこうと思った。

またあのカオスが誕生して、ドンはそれを制御できる自信は無かった。

 

 

―――

――

 

「まあ、ここまで来たら流石に何も起こらないとは思うけど、妙なチャクラ持った超でかい生物とかいる?」

 

お忘れだろうが、私(わたくし)サクヤが生きるこの世界は、NARUTO世界線である。

海溝に『主』なる存在が居ても可笑しくは無い。

未知なる生命が居ても可笑しくはない!!(鼻息)

 

「周囲に特出した気配なし。

妙なチャクラも無し。

…ちゅうことで、さっきの話に戻るけど、何が『それだ』なんや?

吐いた中に、血の気配は無かったやろ。」

 

 

話しを元に戻す白狐は、どうやら四赤陽陣が保たれている水深で、蔵が止まったことで、海溝よりそちらに意識が向いたようだ。

私は白狐に「そんなはずはない」と詰め寄りたかったが、またパニクられても困るので、今はその案に乗ることにする。

 

「ああ、吐血はしてない。

吐いたのはゲロだけだ。」

 

「せやったらなんで」

 

「そもそも、口寄せに必要なのは『遺伝子情報』であって『血液』じゃないんだ。

そして、その『遺伝子情報』ってのは『嘔吐物』にも含まれんだよ。

正確には胃液によって溶けだした食道の粘膜ら辺だろうけど…。」

 

大凡、四赤陽陣を展開した時のゲボに、鉄芯により加速された巻物が接触。

口寄せ…と言った所だろう。

それに、追いゲボまでしているので、その線が一番濃厚である…

 

 

「ほー…ってことは―――」

 

と言って黙った白狐に、私は頷きを返した。

言葉を発せずともこの結論は変わらない。

 

 

この蔵は、()()によって口寄せされた蔵である。

 

 

 

 

「「………」」

 

 

何だか知りたくなかったことを知った私たちは

静かに腰を落ち着け

出た結論を気付かなかった事にした。



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112

 

一通り白狐の近くにいる気配に関しての事を聞き落ち着いたので、ドンに竹筒に戻ってもらい

散らかした部屋を整理していたら、白狐が問う。

 

「んで、此れから何するんや?

一応行けるところまでは行ったし、ワシの目的、飛雷神は習得したし……サクヤの目的である、外の様子はお前さん自身がうかがえんし…」

 

これ以上、一体何をするんだ?

と、紙束を抱える私を見つめる白狐。

 

一応、() ()() ()() ()()

白狐は飛雷神の術をマスターできたので

さっさと長距離で試したいようで、ウズウズと落ち着きのない動きをしている。

「おニューのパンツを次の日に穿く小学生か。」と突っ込みを入れたかったが

白狐にパンツと言う概念は無いので黙って置いた。

 

「うーん…その事でちょっとご相談がございまして…。」

 

手元の紙束をトントンと床に突いて端を整え、まとめる。

白狐は私の周りをうろうろと、落ち着き無く動いて鬱陶しい…

 

 

「なんや、かしこまって…相談?

水臭いなー

もっと早う言わんかいなー。

ちゅうか、どんだけ時間あったと思ってんねん。

ほんま、はよ言えや、今迄何しとってん。」

 

「テメーに飛雷神教えてたんだろーが!!」

 

 

サクヤの拳が、普通の狐サイズの、白狐の頭にクリーンヒットし

鈍い音がゴングの様に、蔵に響く。

 

「いっっっ!!

何すんねんこのドアホ!!」

 

「アホはテメーだボケェ!!

てめーの理解度が!! あ ま り に も ド底辺なせいで!!

()()()()時間喰ったんだよ!!ド馬鹿!!」

 

そうなのである。

この狐、説明が下手なのはまだしも、人の説明を全く聞かない、理解していない事を放置する、話が延々と逸れる…等々生徒として最悪な狐だったのである。

おかげでこの潜っていたひと月弱の、大半を白狐に使う羽目になり、私は大いに時間をロスしていた。

他にもっとやりたいことがあったのに…

あったのに!!

 

「ばっ…

確かに結構時間費やしたけども!!

そやかて飯食いながらでも、…なんか時間あったやろ?!

ワシのせいにすなや!!

そもそもお前さんの教え方が悪いんとちゃうんか?!ああん?!

この…えーっと…あ…バカ!!アホ!!ドジ!!間抜け!!」

 

「罵り方小学三年生かよ!!

語彙力lv3かよ!!

私だってもう少し捻るわ!!

馬鹿かよ!!

こんなアホの為に…どれだけ時間を……!!

返せよ!!

飯食いながら!!お前の理解度に合わせて!!毎回修行のプラン立て直す羽目になった私の時間を!!

返せよぉ!!」

 

「うっ五月蠅いねん!!今、語彙力関係ないやろ!!

修行プランに関しては誠に申し訳ありませんでした!!

ちゅうか、お前さんがさっき殴った所為で、ワシの希少な脳細胞減ったわ!!

どう落とし前付けてくれんねん!!」

 

希少:少なくて珍しいこと。きわめてまれなこと。また、そのさま。

貴重:非常に大切なさま。得がたいものであるさま。

(デジタル大辞泉より)

 

「『希少』て…

自分の脳細胞の少なさ認めちゃダメだろ…

使うならせめて『貴重』にしてくれよ…

ばかだ馬鹿だとは思ってたけど…ここまで馬鹿だとは…

ハッ…いっその事殴って記憶喪失になった方が身のためじゃないのか…?」

 

白狐をちらりと見詰める。

良い毛皮をしている。

 

「ハッそんな暴論が、まかり通るとかおもっ…!!」

 

素早く降ろした拳を、寸のところで避けた白狐。

床に走った、チャクラも練っていない只の拳から続くヒビに、白い毛皮が、さらに白くなったように見える。

 

 

「おっおまっ

本当に殴るやつがいるか!!

ひっやめっ来るな!!馬鹿力!!

動物虐待反対!!

弁護士を!!

弁護士を呼んでくれ!!」

 

みたいなことを言いあってプロレスしていたら、肘が近くの机に当たり

机上に置いていた竹筒が倒れた。

机の上を転がり、床に落ちた竹筒からは、白い影が静かに出てきて

すっ…と私と白狐の耳元で低くささやく。

 

「いい加減にしてください。

また先程の様にカオスな空間にしたいんですか?」

 

 

私と白狐は静かに平伏した。

 

 

―――

――

 

 

「…話を戻すけど、相談があってな

私の痕跡をピンポンに消してもらっていて、その痕跡の源ともいえる

お前の感知を惑わせた、私のチャクラを吸って分裂し、各地の真の目に預けた『ドン』にも

実は、全て消えてもらうつもりでして…」

 

自分の気配を消すと言う事は、足がかりを消すと言う事であり、完全に消息を絶つと言う事である。

 

「そんなんしたらやばいやろ!!

お前さんが陸に帰ったら、感知で一発やん!!

居場所がモロバレやないんか?!

追手すぐに来よるで!!」

 

白狐がぎゃんぎゃんと反対意見を述べるが、サクヤは意にも介していなかった。

 

 

「居場所がモロバレっというか

最終的には、向こうにこちらの居場所を感知させるのが目的だ。」

 

「…ん?どういう事や?」

 

「まあ、もう少し待て、情報が来る。

話しはそれからだ。」

 

そう言っておもむろにサクヤは、背後のごちゃごちゃしたスペースから地図を取り出して、先程開けたスペース(床)に広げる。

丸まっていたからか、広げた先から端が曲がるので、そこら辺に放ってある裁断鋏やら、改造ネズミ取りやらを四隅に置いていると、竹筒に戻っていたピンから連絡が入る。

 

「指定分裂体の消滅、全て確認しました。

どうやら分裂体を見つけたのは木の葉の追い忍だけでは無いようです。

管狐の習性を知っているのか、その時点では、どの分裂体も消されていませんでした。」

 

「そうか。

場所を地図に書き込みたい。

発見された形跡のある分だけ教えてくれ。」

 

「了解しました。」

 

―――

――

 

ドンの声と共にサクヤは、広げた地図の上からプッシュピンを指していく。

 

ドンの竹筒は、任務序に世界各国に置いてきた。

更には真の目の伝手を使って、人の手から人の手に渡らせたので

()()()()()()()()()()()()()にあるはずである。

 

しかし、分布には偏りが無かった。

僅かに草の国周辺が多いが、特出してはいない。

 

 

白狐が地図上に刺された、おびただしい量のプッシュピンにどん引き。

「ドン…こいつが嫌になったら、いつでもワシん所きぃや?

絶対動物虐待で訴えたるからな…安心せえ…」

「えっ…ええっと…」

などと、ドンとサクヤの仲を裂こうと、画策している横でサクヤは

「矢張り…」と思考の渦に飛び込む。

 

 

 

基本的に、管狐の習性は周知では無い。

火を吹く、化ける位は忍びに知られてはいるが、広くは知られていない。

更に『増える』、はインカムの様な役割としか周知されていない。

と言う事は、管狐の『分体が消えると、親機に記憶が共有される』と言う特性はあまり知られていない事になる。

もっと言うなら、『管狐に()()()()()()()()があることは、ほぼ知られていない。』が正しいだろう。

 

 

例題

本体から分裂した分体が、時系列順にA、B、Cとあったとして

Cが消えれば

AとB 、本体に記憶が共有され

Bが消えれば

Aと本体に共有、分体Cには共有されない

とする

 

Q.

本体とABC分裂体を消さずにどう情報共有をすればいいでしょうか?

 

A.

情報共有の度に、本体とABC分裂体が、それぞれ新しい分裂体を作り出して消す。

 

 

棟梁の言う『本体を常に控えておく』というのは

『本体を常に控えておき、分裂体を増やしたり消したりして

時系列中の、()()()()()()()を繰り返す』と言う事

 

時系列による序列なので、A分体が、C分体より後に分裂した場合

序列は、本体→A→B→C→A’ になる。

よって『C』 より下となるので

A分体の記憶を持った『A’』が消えれば、A分体の情報が全体に行き渡ることになる。

 

棟梁の様にインカムに使う場合

共有したい情報が出て来る度に、管狐を分体させて消して、を繰り返すことにより

最初に分けられた分体のみが、等しく情報を持つ事が出来るようになるのだ。

 

 

ちなみに

ピンポンは写輪眼の封印に使われているからか、そのルールから外れ

何故かどれを消しても全体に共有されてしまう特性があるおかげで、分体一体いればいくらでも復活が出来るのだが

普通の管狐やドンの場合、本体が消えれば、分体での代替えが利かない。

よってドン本体が消えれば、今迄の記憶の引き継ぎが出来ない。

 

 

この、時系列の序列まで知っている人間は、ほぼいない。

其れこそ、棟梁や長などの、千単位で増える管狐を持つ人ぐらいだろう。

 

しかし、『分体が消えると、記憶が共有される』と言う特性を知る一般の人間は、結構多い。

それこそ真の目の大工たちはもちろん、忍びの内いくらかは聞き及んだことはあるだろう

人の口に戸を立てているわけでは無い。

かく言う私も、任務に何度か使った折り、シカマルや、カカシさんに軽くだが使い方を教えていた。

あの二人なら、もしかしたら時系列の序列に気付いる可能性の方が多い。

 

 

しかし、態々サクヤのチャクラを持つ管狐を探しだし

且つ、そのまま放置して、それを悟られたくないとする人間は限られる。

 

 

 

サクヤは、取りあえず思考の渦から脱出し

白狐に絡まれ、冷や汗をかくポンに声をかける。

 

「特徴は。」

 

ぶっきらぼうなサクヤの言葉に、ドンはホッと息をついて返事を返した。

 

「あまり詳細は分かりませんが、根の側近服を着た者が数人、紅い髪でメガネをした女性、オレンジの仮面を付けた人…多分男性です、あと

…白?

人間だとは思うのですが…なにか人とは言えない感じの白い皮膚の…

これが一番多いですね。

見つかった分体は殆ど白い人です。」

 

「あー大体わかった。」

 

サクヤはドンの説明に、思い当たる節を遠い記憶から呼び起こしてくる。

 

ダンゾウの側近(根)が動いていると言う事は、木の葉から正式に追い忍が出たわけではないだろう。

紅い髪にメガネは、多分サスケの所の…

草の国周辺は彼女のチャクラ探知に引っかかったやつだろう。

オレンジの仮面はオビトら辺…

そして、だいぶ記憶が薄れているが、白いのは多分あのオビトの助っ人的な…アロエっぽいの着た奴…ら辺だろう。

今生で遭遇を果たしてはいないが、まさか私のチャクラを知っているとは…

大凡サスケ、またはイタチに付けたピンポンから、私のチャクラを記憶したか…?

もう少し警戒をした方が良かったかな…

いや、アレは必要な過程だったし…

 

 

「そんで、何が相談なんや?」

 

「んーあー……」

 

白狐は、サクヤの迷走しそうな思考を本筋に戻した。

言いにくそうに、サクヤは一呼吸おいて声を出す。

 

 

 

「白狐、死んでくれ。」

 



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113

白狐が絶句した。

そしてドンも驚くように止まっている。

 

二匹の反応にサクヤは、自分が失言したことに気付いた。

 

 

「あ、いやっ死んでほしいわけじゃないんだ!!

いや、死んでもらうんだけども!!

死ぬわけじゃなくてっ!!

えーっと…どう言えば…」

 

数秒の沈黙をもって言葉を発したのは白狐だった。

 

 

「…ワシが邪魔になったんか。」

 

「えぇ…確かに邪魔ではあるけど…

そうだけど…それもあるけど…そうじゃなくて…」

 

今、サクヤの情報を持っているのは、ピンポンドンの他に白狐のみだ。

必然的に、別行動をした場合、裏切る可能性の高い『白狐』が邪魔になるのもわかる。

 

サクヤの答えに、白狐の喉はグルグルと震え、殺気と共に白い霧が蔵に立ち込めた。

 

 

「それは、ワシと敵対する事と取っても構わんのか…?」

 

牙をむき、眉間と鼻頭に皺をよせ、紛う事なき臨戦態勢だ。

 

「イヤイヤ!!!違う違うっ!!

あんたと対立するつもりは無い!!

あんたの命はとりはしない。

血も流れない!!」

 

 

「……ハァ?!」

 

命を取らないのに、どう殺すと言うのだ

血を流さずに、どう死ねと言うのだ

余りの頓珍漢具合に、声に怒気が混ざる。

おちょくっとんのかわれぇ…と言わんばかりの変顔に、サクヤは苦笑いをし、説明を付け足した。

 

「色々考えたんだけど…

白狐、あんたには私の目的の一つである、地球の裏側に行ってもらうのが、一番いいかと思って。」

 

やっと頭の中が整頓されたのか、サクヤは腰を落ち着けた。

その様子に白狐は、一応臨戦態勢を解き、大人しく話を聞く事にする。

 

「今、『暁』という傭兵集団が尾獣のチャクラを探していてな。

あんたにも多少なりとも尾獣である、『九尾のチャクラ』が入っているなら、狙われる可能性はあるだろうし…

あんたが、その目立つ白い狐姿で、私を探してくれていたおかげで、確実に私の命を狙う者はお前の存在に気付いていると取っていい。

例え暁から逃げ果せたとしても、私に手を貸した、

又は、会って話したとなると、確実に人間に命を狙われる。

 

だから、あんたにはこれから地球の裏側を、私の代わりに目指してもらおうと思ってて――」

 

 

「そんなん、ワシが死ぬことと、何の関係があるねん。」

 

「正確には、『死んだ』という噂を流すだけで、白狐が死ぬ必要はない。

ただ、『死んだ』からには、そこら辺をうろちょろしてもらっては困るから

私の目的の一つである、地球の裏側にポインターを作ることを頼みたい。

そう言う相談事だ。

 

私は、お前の居場所がある程度分かるし、状況的に白狐が生き返る事もない、目的である地球の裏への通路が出来る。

お前は地球の裏側に行きたがっていたし、世界旅行もできる。

飛雷神も一応だがマスターしたから可能だろう?」

 

サクヤの言葉はもちろん理解できるが、白狐には一つ懸念があった

 

「マスターしたゆうたかて……

悔しいけど、ワシが飛雷神の術式が作れるわけでは無い。

飛雷神の術式を作るやつがおらんと、ワシはポインターを増やせん。

それに、ワシが死んだゆうても

サクヤの敵が、それを信じるかは怪しいやないか。」

 

白狐は、()()()()マーカーに飛雷神することは出来るが

白狐自身が、飛雷神のマーカーを作ることは、まだ出来ていなかった。

それは、白狐の頭脳の問題であり、体質の問題でもあった。

 

管狐は自分でチャクラを錬れない。

管狐が何故宿主のチャクラを吸い取るのかと言えば、自分でチャクラを錬れないからだ。

 

そして管狐の親玉ともいえる白狐は、錬れない事はないが、誰かのチャクラを吸収する方が得意だった。

 

流石にこの問題はサクヤにはどうする事も出来なかった。

お手上げだ。

しかし、幸いにも白狐は、他人のチャクラを吸収して、そのまま使える才能が有った。

人間や、チャクラを錬る動物には、まず出来ない芸当が白狐には出来た。

だから、術式を作るのではなく、リンクする方向に伸ばした。

飯時に、文机にかじりついた成果だ。

 

 

「――飛雷神の術式は、白狐がポインターの竹筒を口寄せすれば問題ない。

それに、信じる信じない以前に、真の目の妖怪が死んでしまったぐらいで、誰も地球の裏側まであんたを探しにはいかないだろうよ。

其れだったら、私自身を捕まえた方が早い。

あと、九尾のチャクラは、人柱力が居る限り、そっちから取る方が効率が良いからな。

暁対策はものの序みたいなもんだ。」

 

 

一通りの説明を受けて、成る程、と白狐は頷く。

その様子を見て、サクヤは話を進める。

 

「一応、期限は今年の10月10日。

それまでは、何が何でも地球の裏に居てもらわなければ困る。

10月10日からは自由にしていてもらって構わない。

何処で何をして、何を言おうともな。

元の名前を名乗っても構わないし、あんたなら姿や名を偽ることは屁でもないだろ。

こっちに帰ってきてもいいし、そのまま探検してもいい。

好きにしてくれ。」

 

まるで、10月10日に全てが終わる(サクヤが死ぬ)ような、投げやりな言葉だった。

 

 

 

「…お前さんについて行くことは出来んのか?」

 

白狐はサクヤの危うさに、思わず口を吐いた。

しかし、サクヤは否定の言葉を返す。

 

「出来れば、私は一人で行動したい。

ドンは私の傍に控えさせるが、ドンの強みである伝達は、気配を消す限り、これからあまり使えなくなる。

それに、残す予定の分裂体は今、忍ばせた相手のチャクラ吸ってるから、そう時間もかからず私のチャクラから、そのチャクラに染まる。

その後、そこから増やすから―――間もなく、()()()()私のチャクラは消える。」

 

「…せやかて直ぐ、ここを出るわけやないやろ?

空気の入れ替えや、衣食の為に陸に帰る時はどうするんや。

今迄やったら、何度か陸に繋げてもドンのチャクラが有ったからどうにか誤魔化されたようなものを…

気配消してチャクラも消したんじゃ、相手にこの場所を気付かせるようなものやないか。

よしんば逃げおうせても、確実にあちらさんに居場所がばれて、襲撃されるで?」

 

「ああ、そうだな。

だから期間も設けてある。」

 

「期間て?」

 

「私の予想では、ここ数日の内に五影会議が開かれる。

そしたら私は、この穴蔵から出る。

穴蔵から出たら、私はここに戻る(隠れる)気は無い。」

 

サクヤは何でもない事のように答えるが

それは死ににいくようなものだと言う事を分かっているのだろうか…?

白狐はサクヤの真意を測れないでいた。

 

穴蔵から出ても何も問題は解決しないし

敵に見つかって、何をしたいのかもわからない。

何の為にそこまで命を張るのか、何のために白狐を生かすのか…

何の為に()()()()()()()のか

 

 

 

「…サクヤ、お前の目的は何や。」

 

 

白狐の出した霧は消えていた。

蔵独特の暗闇の中、行燈だけがサクヤ達を照らす。

意を決したようにサクヤが声を出した。

 

 

 

「…五影会議には、父と叔父を殺した奴も現れる。」

 

「目的は仇討か…。」

 

短い溜息を吐いて白狐は、どうにか思考をめぐらす。

今更止めても遅いのは明白だ。

そして、復讐を止める言葉が、酷く薄っぺらくなることも

何故なら、白狐の嘘を見破り、真相に行き付く頭脳を持ったサクヤが

考え抜いた末の今なのだから――

 

「復讐の連鎖を生ませへん為に、里を抜け

己を追わせん為に、情報を消し

もし、復讐にヘタこいた場合、生きたまま消えたら、自身が生きていることを示唆できる。

地球の裏に逃げれば、探してすぐには見つからん。

家族(大切な人)もおらんから『人質』なんて、安易な行動も出来ん。

よしんばサクヤをあぶりだそうとしても、サクヤを知るもんは、誰もおらんから尋問も無駄。

そうゆう事か。」

 

白狐の言葉に、サクヤは肩をすくめた。

 

 

「ま、そう簡単にいくとは思っては無い。

切羽詰っていれば、相手も何かしら手を打ってくるだろう…

で、どうするんだ?

私の人質として、命を狙われながら動くか。

私の駒として地球の裏に行くか。」

 

行燈の光がサクヤを照らす。

照らされた髪は、薄金に輝き、サクヤの顔に影を作る。

白狐にはサクヤの表情は詳しく見えないが、真剣な空気は、充分伝わってきた。

 

血を嫌う『真の目』が、忍びになってまで、殺したい相手なのだろう。

サクヤの覚悟を止めることは、白狐には出来なかった。

いや、したくなかった。

 

サクヤの目に『死ぬ気』は無い。

 

 

「ええで

その話乗ったるわ。

好きにワシを動かし。

お使いでも、お片付けでも何でもやったる。

 

この、初代真の目の口寄せ『白狐様』が

地獄の底まで付きおうたるわ。」

 

「地獄まで一緒は嫌だ」とばかりの苦い顔に、白狐はガハガハと笑いを返した。

 

 

 

 

 

白狐は、こんな不条理な条件さっさと蹴って逃げてしまえばいいものを…と自分の返答に不満を持つと同時に

自分が、このどうしようもなく『優しい』小娘を愛していると、心底思い知った。

 

己の為と謳うなら、白狐をどこへでも、捨て置けばよかったのだ。

そうしたら、サクヤの情報を持つ白狐は、人間に捕まり、尋問なり、拷問なりを受けて

サクヤの情報を吐いて、人質にもならないと、殺される。

その頃にはもう、サクヤにとって『その情報』は、充分古くなって価値が無くなっている

サクヤはどこへなりと逃げる事なんか簡単だ。

 

白狐のよく知らない、海上に置き去るのもいい

知らない土地、慣れない環境に置いて行けば、白狐もあきらめがつく。

近くの飛雷神の術式を壊してしまえば、大海で白狐は泳ぐ位しかできない。

 

なんなら、ここで白狐を殺してしまってもよかった

白狐に何も言わず、息の根を止めてしまえば、多少の抵抗もあれど、簡単に殺せただろう。

忍びなら、それも可能だ。

 

でも、サクヤはそうしなかった。

白狐が『生きる』未来を探した。

きっと必死に、白狐が納得する方法を探したのだろう。

だから安易に相談できなかった。

 

このひと月弱、白狐は観察されていたのだ。

白狐がどういう考えをしているか、何を判断基準にしているか。

その上で、白狐が『生きる選択』をしやすいよう言葉を選び、話運びをし、白狐に選ばせた。

いや、選ばされた。

 

白狐はサクヤの優しさに、あの憎ったらしい『初代真の目当主』を見た気がした。

あいつは昔から、身内に甘かった。

 

 

どうせ妖怪などと言う、簡単には死ねない体だ

地の果てまで、この初代そっくりな小娘と共に

サクヤと共に笑いながら死んでいこうと

白狐は覚悟を決めた。

 



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114

この数か月何をしていたかって?
仕事してた(死んだ目)


 

白狐は、私との会話の後「何事も早い方がええやろ。」と、すぐさま出発した。

 

まあ、目的遂行のためにはそうなのかもしれないが…

飛雷神がある限り、普通の旅よりかは楽が出来るし、速さにあまり波がなく、最終的に普通に船で行くよりか早く着く事は分かっているので、実はそこまで速さは求めて無かったりする…。

 

そもそもこの策は、白狐をこの大陸に戻さないための策であり

『予定より早よう着いたし、暇やった。』とこっちの問題に顔を突っ込まれても困る。

 

とは流石に言えないので、曖昧に笑って置いた。

 

 

海上に飛雷神した白狐は、スコールの中、北へ走り出した。

これから私の耳に入ってくる白狐の情報は、分裂体のドンだけが頼りとなる。

 

 

 

―――

――

 

白狐が出て行ったあと、サクヤとドンは、蔵の片づけをしていた。

 

サクヤには初っ端、沈む蔵に慌てて飛雷神した時、

散らかった書物により、ダイナミックに転び、棚に突っ込み

常日頃から散らかっている蔵を、更に散らかした自覚があった。

 

更には、白狐の為に色々調べ上げたため、(ドンが)そこそこ片づけてはいたものの、全くもって収拾がついていなかった。

大げさでもなく、真実をそのまま言って、蔵は『書と物のジャングル』と化していた。

 

なのでサクヤは、このジャングルを、どうにか荒野レベルに戻すため(序に、白狐と喧嘩した際、床にひびを入れてしまったため、一応不備がないか見るために)

太い根が張った腰を持ち上げたのだ。

 

 

しかし、思わぬところでその根は、また太く深く張ることになる。

 

 

「………ん?」

 

「どうされましたか?」

 

ドンの声に、サクヤは適当に返事を返し

上を見上げ、手元の巻物を見る。

そしてまた柱に沿って、視線を動かした。

 

「……ここに、結界が付いていなかったか?」

 

「ええっと…すみません。

分かりません……。」

 

ドンがとても申し訳なさそうに謝った。

サクヤは気にすんなとばかりに手を振って、何の警戒も無く、手に持った巻物をするりと開く。

 

そして数秒、眉間にしわを寄せて

唸り、首を傾げ、いったん床に腰を落ち着け

また、するすると巻物を読み始めた。

 

サクヤの足が、行儀悪くも近くの行燈を引き寄せる。

ドンは、こうなっては片づけも進まないだろうと、サクヤの手を止める事を諦めた。

座布団も引かず直に床に座り、薄暗い照明に眉をひそめて、するすると巻物を広げる蔵の持ち主を放置して、ドンは近くに落ちていたよく解からない装置から片づける。

 

 

 

 

 

 

―――

――

 

42週5日

夜も更けた丑三つ時

サキの陣痛が始まった。

大雨の中、病院に運び込まれたらしい。

私も仕事場から急いで病院に駆け付けたが、その頃には随分と時間が経っていた。

 

やはりあのバカは間に合っていない。

木の葉に送り込んだ刺客が軒並み潰されるので敵側は一小隊送ってきたらしく、おおきな戦闘に入ってしまったらしい。

だから程々にしろと忠告したのに…

あのバカには、ほとほと呆れる。

応援は行ったはずだが、間に合うか怪しい。

 

 

 

 

午前3時

痛みを堪える、壮絶な声が病室には響き渡っている。

数時間おきに痛みが治まるので、それに合わせて水分や、栄養をとり、次の波に堪えるための備えをする。

男である私はただ、その様子を見て、うろたえるばかりで、何もしてやることは出来ない。

両親は夫婦共にいないものだから、弟であるサザミがサキにつきっきりで

私は、背中をさすったり、時間を測る指示をされた時だけしか動けない事がもどかしい。

指示をよこす看護婦の存在がありがたい。

妊娠の資料だけで、出産に関してあまり勉強してこなかったのが仇となった。

 

 

 

 

明け方近く

陣痛の間隔が短くなってきた。

一昨日から降り続けている雨は止まず、風がしきりに窓を叩いている。

あ奴が無事着くか心配だ。

 

集中治療室に入ったサキに、付き添いで私が入ることになった。

サザミは、急な任務に出るらしく、いつの間にか暗部服に着替えていた。

こんな時に任務を入れたのは誰だと調べようとしたら、さっさと行けとサザミにICUに蹴り込まれた。

あとで覚えていろ。

 

私がこんな貴重な体験をしてもいいのだろうかと少し怖くもある。

 

 

 

 

陣痛が途切れない。

赤ん坊の頭まで見えているのであと一息だとは思うが

痛みを感じているのも、これから赤ん坊を生むのも、私では無く、サキである

私がせかしても何にもならない事は分かっているので、手を握って、現状を言葉短く、正確に、報告する事しかできない。

産婆曰く、この様子だとまだ時間がかかるそうだ。

 

 

男である己が恨めしい。

男という、痛みに強い体に生まれてきた。

強くなり、地位も手に入れた。

しかし、それを変わってやることも出来なければ意味が無い。

何でも守れると思った人の背中はまだ遠い。

守りたいものは目の前にいるのに、何もできない

あの時もそうだった…

己の存在の、何と小さきことか

私は無力だ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梅雨明けの朝日と共に、赤ん坊の産声が響いた。

真っ赤な顔をして、一生懸命泣いていた。

産婆が体に着いた羊膜を、ガーゼで拭ってやると少し落ち着いたようだった。

しかし、へその緒を切ったらまた声を上げた。

 

やはり胎盤と切り離された感覚や、へその緒にも痛覚があるのだろうか…?

神経は通っていないと聞くが、いやしかし、これだけ泣き叫ばれれば気になるものだ…。

産婆に無理やり渡された、首も座っていない赤ん坊を、泣きやむまで抱いてやったが、気を抜いたらごろりと、頭が千切れそうな位ふにゃふにゃで、気が気でなかった。

首が座るまで、絶対に持ち上げない事を決意した。

 

皺皺の産婆が2代目様にそっくりな元気な女の子ですよ、とサキに声をかけるが、体力を消衰したサキはその言葉に笑顔を見せて眠ってしまった。

流石に疲かれたのだろう。

危険なお産になるのは百も承知だった。

張りつめていた緊張も解けはする。

しかしここで死んでしまっては意味が無いので、サキの手を握ると、ゆっくりと

弱弱しくだが、握り返された。

 

 

一通り落ち着いた後

ふと、集中治療室にある窓から外を眺めたら

昨夜の雨が嘘みたいに晴れ、見るも鮮やかに朝日を覗かせていた。

 

何をかもを照らすこの光は、とても眩しく、美しいものだと思う。

しかし

 

この赤ん坊が生まれるまでに費やしたいくつもの試みも

サキの痛みも、苦労もすべてが本当で、得難く、忘れて良いものでは無い。

 

 

この赤ん坊が、希望の太陽だとして、

私達は、必死に祈った昨夜の嵐を、忘れることが出来ようか?

 

あの、嵐は嘘では無い。

嘘にはさせない。

 

 

 

 

 

 

 

 

昼、あ奴が帰って来た。

ドロドロになりながら病室に転がるように入ってきたあ奴に、看護師が怒鳴るが、あ奴は、手を振るサキを見て、安堵したようにその場で腰を抜かした。

そして空気が変わって、泣き出した赤ん坊の声を聴いて、終には大の大人がみっともなく、嗚咽を上げて泣きだした。

 

あまりの情けない姿に、叱咤し、起き上がらせるが

しきりに負けちゃったと泣き、その顔はとても

嬉しそうであった。

 

 

 

この小さい、息も満足に出来なさそうな生き物が、忍びや、大工や、人になって行くのだと思うと、ありきたりな言葉だが、感慨深い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『サクヤ』

と呼んだら、まだ輪郭もつかめないであろう目を必死に瞬く。

己の名前がわかるのだろうか?

赤ん坊が、瞬きを繰り返す内に、この出来事も、小さな、些細なことになって昨夜の嵐に変わって行くのだろう。

それでいい。

我々の苦労を知らず大きく育てばいい。

そして、しかるべき時、知りたい時に知ることが出来ればいいのだ。

 

 

 

―――

――

 

 

 

 

あーはーーん?

ほぉーーーん……?

 

 

いい感じに終わらせてあるが

多分と言うか、絶対、(サクヤ)が生まれる時の日記?なのだろう。

つか、サキ(母)とサザミ(叔父)が出ている時点で結構な確率で私だし、『サクヤ』と書かれているので、確実に私なのだろうが…

 

なんだかしょっちゅう出てくる「あ奴」が誰なのかさっぱり分からん。

 

筆跡は父さんと似ているので、この書物の筆者は、父である『作間』なのだろうけれど

サキ、サザミ、父(筆者)、と来て、これ以上誰が増えるのが自然かと考えるが、今の所『棟梁』ぐらいしか出てこない。

しかし『あ奴』が棟梁なら普通に『棟梁』と書くだろうし…

そもそも、あの棟梁がメソメソ泣く姿が想像がつかない…

一応、巻物の一人称が『私』で、確か父さんは一人称『僕』だったはずだから――

 

書いたのが棟梁で、メソっていたのが父の方がしっくりくる…

 

 

いやでも、書物に出てくる一人称は基本『私』で統一していたから、そこは問題ではないのか…?

 

それに棟梁の筆跡にしては、筆に力が無いし

お手本の様に綺麗とは言い難いが、そろそろと綴られる字は、棟梁の力強い文字とは雰囲気が違い過ぎる。

やはり、一番近い筆跡は父だな…

 

 

数分ごにょごにょと考えたが、何の糸口も見つからないので

何とも言い難いこの日記のようなものを、もう一度よく見直した。

そこで、私は在ることに気付く。

 

 

 

「ほーー…なるほど……。」

 

無意識のうちに零れた言葉に、ドンが気付いて、棚の向こうから声をかける

 

「何かわかりましたか?」

 

「いや、この巻物、どうやら何か他の巻物から芯を変えて持ってきたみたいでな…。

ほら、ここ。

分かりにくいが、継いだ跡がある。」

 

どれどれとばかりに、ドンが本が抜かれて空いた棚の隙間から、こちらにやってくると、私の手元を覗く。

 

「あ、本当ですね。

分かりにくいですけど、紙の色が若干違います。」

 

「この、巻物の表紙も多分後から付けたものだろうな…

とすると、これ以前の巻物もこの蔵に在るのかもしれないな…。」

 

紙や糊の成分やら探せば、比較的すぐ見つかりそうではある…。

 

写輪眼で見ると分かるが、『四赤陽陣』以外にも、いくつもの結界やカラクリが仕掛けてあり、どれが何に作用するのかは、パッと見では解からないようになっている。

今迄面倒くさいからと、無駄に仕掛けてある結界やカラクリに、あまり目を向けなかったが、これはもう一度、解けそうな結界を試してみる価値は有りそうだ。

しかし、これは陸に戻ってからの方が良いだろう。

ここで何かして、今なお安定して張られている四赤陽陣が緩みでもしたら、私たちは死ぬ。

マジで死ぬ。

圧死する。

 

また、面倒な物を見つけてしまったな…

だが今生の『名付け親』が誰か、探る暇位はあるかな…?

 

感慨にふける時間はあまりないが、これぐらいは良いだろう。



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115

巻物を見つけてから数日、ついに『その日』は来た。

 

滞りなく

予定通りに

カンペ通りに

 

暁の、木の葉襲撃は終わった。

 

色々思うところは有れど

最低ラインである『木の葉に残したドンの仕掛け』は、シカマルにより予想以上に動いてくれているようだし、

あとはドンの、五影会議の連絡を、待つだけである。

しかし、私はある問題にぶち当たっていた。

 

 

『~五影会談開催のお知らせ~』byドン が来ないのである。

 

 

何度でも言おう!!

 

木の葉襲撃の最後の一報『全員無事』からっ!!

 

木の葉のドンから連絡がっ!!

 

 

全く無いのだ………。(スンッ

 

 

元々、『五影会談開催』の連絡が来たら、ここ()を出る予定だったので、我々は早々に外に出る準備していた。

しかし、準備している間にもう2,3報来るかと思いきや、何の音沙汰もなし…

 

蛇足だが

木の葉のドンは、棟梁や他のチャクラを吸って増えてしまったのでドン本体とはリンクが切れている。

なので、今更こちらのドンを分裂させ、消そうとも、木の葉のドンには連絡が行かない。

 

流石に嫌な予感がした私は、五影会談開催の一報を大人しく蔵で待ってみたところ、これである…

 

 

 

 

 

「何故だ!!

何故連絡が来ない!!

どれだけ私を、この暗くて空気の悪い蔵に閉じ込める気だ!!」

 

髪を振り乱し、叫ぶ私。

ドンは、申し訳なさげに蔵の中央に佇んでいる。

いくら気持ちを叫んだって解決はしないし、喉が枯れるだけなのは分かってはいるが、叫ばずにはいられなかった。

しかし、ドンを委縮させるのは流石に良くないので、ため息とともに額に親指を当て、落ち着くために、考え得る損害をあげつらう事にする。

 

そこで私はある『可能性』に気付く。

『木の葉のドン』が全てダンゾウに捕まったか、情報が漏れたか…何かした可能性に。

 

 

……ドンは…大丈夫なのだろうか…。

 

 

なにもダンゾウだけが敵では無いのは分かっているが

私の頭は、ダンゾウに捕まって、涙目でこちらに助けを求めるドンしか想像できない……

取りあえず脳内のダンゾウをメッタメッタにして、思考をドンに戻す。

 

ドンが捕まったとして

海上にいるドンからは何も連絡が無い所を見ると、相手側に流す情報が無いので『消されていない』

又は、流す情報はあるが『消せない』状況に居ることは確か…。

 

一応まだ、取っといて損は無かろう。

それよか、うかつに動いて『こちら側』の情報が漏れる方が危険である…。

 

もし、何者かにドンが捕まっていた場合

急に予定と関係なくドンを消したり

事情を話したりなんかして海上のドンを消し、情報を木の葉に返せば

私が、ドンが捕まったと言う事に気付いたと、『向こう側』に気付かれてしまう。

 

私は額に押し当てていた親指を降ろし、ドンを見つめた。

 

 

「…………ドン…。」

 

「はい。」

 

「海上のドンには、何も知らないまま消えてもらおう。

木の葉勢には『予定通りそのまま待機』と伝えろ。

私のチャクラを持っているドンは、白狐のと、本体以外は全て消してくれ。」

 

「了解しました。」

 

 

そもそも、当初の予定としては『仮称マダラ』が、ダンゾウの持つシスイの写輪眼に気を取られている内に陸上して、ピンポンと合流。

ダンゾウとサスケの戦闘が始まったら、そのままサスケにつけているピンに宇迦之御魂して、ダンゾウの首を刈り取り、すべてを置き去りにして、蝦蟇の里に宇迦之御魂するつもりであった。

 

陸に置いてきたピンポンの主な任務は、その避難先の『妙技山』にアンカーを作る事であり

つい最近やっと正確な位置が割り出せたのだ。

迂闊に動いて今の所最大に警戒すべき敵である『ダンゾウ』に手の内が漏れるのだけは避けたい。

 

 

 

ちなみに何故、()()()が『蝦蟇の里』なのか要約して言うと

木の葉と蝦蟇の里は、『エロ仙人』や『ナルト』のおかげで縁が深いが

口寄せ契約者が殺されると知って、木の葉に強制送還できる程には、『木の葉』と『蝦蟇の里』に縁は無いからだ。

 

エロ仙人や、ナルトと言う、口寄せ契約を結んだ相手がいるからこその、『木の葉』と『妙技山』であって

『木の葉』と『妙技山』の間には何の契約も結ばれてはいない所が味噌となる。

 

基本的に口寄せ契約は『個人』と結ばれるものであり、『里』同士では結ばれない。

よって5代目が何か、特別な契約を結んで無い限り、私の安全は、ある程度は確保できると言うわけだ。

まあ5代目程度であれば多少成れど漏れても…いや……拳が飛んできそうだから出来れば漏れて欲しくないけれど…

…口が堅いと信じてるぜ…5代目……

 

 

 

 

ちなみに

態々白狐に地球の裏側に行ってもらう大きな理由は、この『避難先』にあった。

 

流石に蝦蟇仙人の所に…白い悪鬼は連れてけないだろ…

 

『白い悪鬼』が狐であれ、なんであれ、其れにつながりそうな白狐を連れて行くのは、流石に申し訳ない…。

だから多少なりとも知り合いであるピンポンを、妙技山捜索に駆り出したのだ……。

まさか、ここ(暁襲撃)まで見つからないとは思わなかったが…。

木の葉付近に、いくつか口寄せポイントがあることに気付けなかったら、未だ蝦蟇の里を探し回っていただろう…

 

ありがとう、暁。

ありがとう、ナルト。

 

暁の侵攻があったからこその、ナルトが契約していたからこその現在である。

この成果は喜ぶべきではないのは分かってはいるが、感謝位は許してくれ。

 

私は一呼吸置いて眉間から親指を外し、ドンに視線を向けた。

 

 

 

「予定変更だ。

私達は仮称マダラと取引してから五影会議に行く。」

 

「はい。」

 

「五影会議開催の知らせが木の葉から着き次第、出るぞ。」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

―――

――

 

 

「雷から、忍鷹にて『五影会談の知らせ』が出たとのことです。

現在木の葉に着く前で止めておりますが、そう時間は持たないでしょう。」

 

 

地下深くに落ち込んだ建物は、人の気配がない。

しかし閑散としている筈が、どこかおどろおどろしい空気が漂っていた。

唯一の飾り付けの様に天幕が垂れ下がる入り口には、気配無く二人の忍びが片膝をついて、頭を垂れている。

天幕の下に、厳重に保護された隻腕が浮かび上がった。

 

 

「…そうか。

他にその鷹に気付いた者はいたか?」

 

「いえ、白眼で確認いたしましたが、付近にそれらしいチャクラは有りませんでした。

何れも、数週間前の真の目サクヤの管狐()()()()から、閑散としています。」

 

 

隻腕の影が、名前に反応して揺れた。

二人の忍びは、其れに気付いたが、何も言わず、只静かに口を噤む。

 

 

「……よい。

あ奴相手に、数日遅らせられれば十分だ。

これ以上遅れれば外交問題に発展しかねん。

5代目が倒れてくれた今、これ以上好機を逃したくはない。」

 

「御意。」

 

 

 

膝間付く二つの影は、音も無く消えた。

後に残った隻腕の影も、一つ息を吐くと、ゆらゆらと天幕の奥に下がって行く。

 

 

「いったい誰に似たんだか…」

 

呆れた声だけが、その場に残された。

 

 

 

 

―――

――

 

そして現在に戻る。

 

 

そう。

現在に戻るのだ。

 

 

 

 

 

「ああああああ!!

外に出せぇぇぇぇ!!

太陽の光を浴びさせろぉ!!

そして私に光合成をさせろぉおおおお!!」

 

 

あれからも蔵に閉じこもり、その時を待っていたのだが、あまりにも動けない日々が続きすぎて、日光が不足し、ビタミンBが体内で生成できないので、キューティクルは死滅し、お肌はボロボロの、躁鬱状態で最悪な事になってた。

 

はい、そこー

いつもと変わらないとか言わないー。

 

 

 

「しんどい…色々重くてしんどい…

なんでこんな所にアジトを作ろうとか考えたんだ私…

でも外に出た瞬間に、あの白いのに補足され、推定マダラに連絡が行き、私の命と木の葉が握り潰される…

THE ENDは見えてる…」

 

こうも暗い視界ばかりだと、誰でも暗い方向に思考が進む物で

 

「きっとドンはダンゾウに使い潰され…

ピンポンは私の死体を燃やしたせいで、残った目を付け狙う蛇に丸のみされ…木の葉は滅びっ…

分かってんだよおじさんと、クレイジーサイコホモに負けた世界は無限月詠に掛かってっ!

白いオバはんが復活して世界は破滅するんだあああああああああ!!」

 

 

半狂乱どころか、狂乱そのものなサクヤに、ドンは引いている。

どう声をかけようにも、最終的にマイナス方向に思考がぶっ飛ぶので、ドンはもう、サクヤを如何にかするのを諦めていた。

 

長い事サクヤと共にいた弊害か、唯一正気なドンさえも、若干この狂気に飲まれつつある状況で、幸いなことに一筋の光が差した。

 

 

 

「っ!!

続報です!!

木の葉に五影会談の知らせが届きました!!

そして…5代目は、まだ目が覚めていないそうです…。」

 

「ほ――ん…?」

 

5代目の回復力から言って、目覚めても可笑しくは無いはずだが…とサクヤは思考し、剣呑な気配を感じる。

しかし、ここでいくら思考しようとも答えは出ないと、サクヤはすっぱり諦める。

うだうだ考えるのに飽きたとも言う。

 

 

「ま、出てみれば分かるだろ。」

 

 

心配を返せと、ドンの冷たい視線がサクヤに刺さった。

 




大海編おわっっっったぁあああああああああああああああああ!!


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五影会談前哨編
116


みんなー
五影会談編始まるよー(死


暁の木の葉襲撃から、何日か経ち、ヤマト隊長の奮闘もあり、建物もある程度復興されてきた木の葉は

 

木材と、大工と、忍にあふれていた。

 

里の復興に一般人はもちろん、里に常駐する忍びが全てつぎ込まれたため、里に忍が溢れることとなっているのだが…。

幸いにも溢れる忍のおかげで、木の葉の情報伝達はある程度は回復したので、一介の中忍であるシカマルやキバの元にも、情報が回ってくるようになった。

 

「―――っと言う事だ。

こちらの情報は、混乱を避けるために、公開はもう少し時間が経ってからになる。

扱いには気を付けるように。」

 

「「はっ!!」」

 

しかし、当の回ってきた情報が情報であった。

シカマルと並んで話を聞いていたキバは内心、とんでもねェことに顔突っ込んじまった…と冷や汗をかいていた。

 

取りあえず…と、キバは足早に人ごみを抜ける。

早く速くと足を動かすので、屋外で待っていた赤丸の下に来るころには全速力になっていた。

キバは逸る足のまま、その大きな背に飛び乗る。

主人の焦りを感じた赤丸は、攣られるように、早く速くと足を動かした。

 

―――

――

 

木材が大量に置いてある広場を抜けた先に、一人と一匹は、目的の3人を発見する。

 

「いた! いた! おい! 」

 

キバの声に気付いた御一行の一人、サクラは

忍犬の赤丸に乗って、駆けてくるキバに声をかける。

 

「キバ!

どうしたの?」

 

慌てた様子に、三人の頭に『?』が浮かぶ。

キバを吹き飛ばすかのように、赤丸が急停止して、土ぼこりが舞った。

慣性の法則から、勢いよく赤丸の背を飛び降りた(投げ出された)キバは、乱雑に着地して大きく声を張る。

 

「いいか!! 落ち着いて聞けよ!」

 

一番落ち着くべきなのはお前ではないのか?

と言いたいぐらい、汗を滴らせ、焦っている様子に7班3人は尋常じゃない事だと察する。

 

「綱手様が火影を解任された!」

 

「なっ」

「えっ」

 

三者三様に驚くが、この言葉で事の重大さを十分に理解したのはカカシ一人だった。

しかし、理解する前にキバは言葉を積み重ねていく。

 

「六代目はダンゾウって人に決まったみてーだ!

オレは良く知ねーんだけど、裏の人間らしい!」

 

「ダンゾウだって!」

「ダンゾウって…!」

「…いやな予感がするな…」

 

何故なら、もっと7班に知らせるべき重要な情報があるからだ。

 

「そう、驚くのはこれだけじゃねェ!

その六代目は、抜け忍として、『サスケを始末する』許可を出しやがった。」

 

 

「どういうことだってばよ!?」

 

 

ナルトがキバに吠えるが、実はその一報を聞いたキバも、よく解かってはいなかった。

この一報を聞き、シカマルを置き去りにして、すぐさま走ってきたからだ。

未だ混乱する頭を整理する為にキバは、頭の中の情報を洗いざらい声に出す。

 

 

「俺だってよく解かんねーよ!

伝説の三忍自来也様が亡くなって

サクヤさんが里を抜けて

5代目である綱手様も倒れたと思ったら

最悪な方向にどんどん転がっていきやがる!!」

 

 

「…えっ」

 

その場に、サクラの声が嫌に響く。

ナルトが恐る恐ると言ったように声をかけた。

 

「今…なんて言ったんだってばよ…キバ…」

 

「あ?

だから自来也様が亡くなって、()()()()()()()()…」

 

 

改めてサクヤの名を口に出したところで、キバは己の犯した失態に気付く。

サクヤの事に関しては、ナルトにはまだ口を開くべきでは無いと、重々言われていた。

一応、サクヤの里抜け後、唯一明確な足取りをつかんだ忍びであるキバは、火影の判断を下したあの場で事の概要を聞いてる。

そして、先程シカマルから、『シカマルからナルトに話す』という言伝も…

 

 

「ナルトッ!!」

 

サクラの声と共に、目の前に迫る黄色、締まる首元

キバは胸倉をつかまれた事を察する。

 

 

「どういうことだってばよ!!

サクヤねェちゃんは任務で里に居ねーんじゃねェのか?!」

 

「まてまてまて、俺を殴ってもサクヤさんの情報は出てこねぇから!!

俺が話せるのは、サクヤさんは今、木の葉に居ないって事だけだ!!

詳しい事はシカマルに聞け!!」

 

叫ぶように今更な弁解をするが、ナルトは更にキバに迫ろうと息を吸う。

それを止めたのは、ナルトの行動を見守っていたカカシだった。

 

 

「…うちはイタチと、サスケの戦いの場に、サクヤがいた形跡があった。

それに気付いたのがキバだった。

その時はまだ、サクヤが任務をやっている可能性もあったたから、混乱を避けるために俺は、内密に綱手様へ報告を上げたんだ。

キバは悪くない、俺の判断だ。」

 

ナルトはカカシの方へ視線を向けるものの、声に耳を傾けるだけで、逃さないとばかりに、キバの拘束は緩まない。

しかし

 

「里内でサクヤの足取りを追ったが

頼んだ任務がすべて終了している事と、真の目にあった『作間の蔵』が、こつ然と消えた以外の手掛かりはつかめず」

 

重なる言葉に、首元の拘束は緩んでいき、

 

「家は、玄関に辞表届と額当てだけ残されていて

家具、道具、その他、すべての痕跡と言う痕跡が消えていた…」

 

終いには力なく腕が降ろされる。

 

 

 

 

「……サクヤねぇちゃんは、どこにいるんだってばよ…?」

 

 

先程キバに迫った気迫は消え、ナルトの声は細く、弱弱しくなっていた。

 

怒りの矛先をどこに向けたら良いか分からず、戸惑い、落ち込み、どうすればいのかと、自分に助けを求める姿は、まるで迷子の子供だった。

 

カカシは暁襲撃後、サクヤの里抜けを知ったシカマルが、カカシにさした(言葉)を思い出す。

 

『ナルトには、様子を見て俺から話します。

ナルトにとってサクヤは、唯一の肉親みてーなもんなんです…

ゆっくり落ち着いた時に話す方が、…まだ、立ち直る余裕がある。』

 

もし、サクヤが敵対した場合

たとえ7班として絆を深めた(カカシ)であっても、ナルトの暴走を止められるかと聞かれたら頷けない。

カカシはそう確信した。

 

ならばせめて、誠実であろう。

誠実に、サクヤを()()()()()()()

 

 

カカシは、ナルトの助けを求める眼に言葉を返した。

 

 

「サクヤがどこにいるかは分からない。

綱手様は、辞職届を書いて、額当てまで置いていったサクヤを

『忍びを辞した』とした。んだが…

ダンゾウとサクヤには、大きな固執がある。

火影になったダンゾウは、確実にサクヤを『抜け忍』として扱うだろう。

俺の見立てなら今頃、これ幸いとダンゾウの追い忍が里を出てるはずだ…。」

 

サクラは、ナルトの視線が落ち、有り所を無くしたような、寂しい背中に、思わず手を添えようとするが、カカシの返答に我に返る。

 

 

「だが、皮肉なことに

ダンゾウの中でサスケは、サクヤよりは優先順位が落ちる。

サスケが大きな問題を起こさない限り、サスケへの追手は二の次になる。

サスケを、生きて連れ戻すなら、今しかない。」

 

 

サクラは、『事実』と言う名のオウンゴールを決めるカカシに、決意を固める。

今、ナルトに必要なのは寄り添う事では無い。

前を向く『力』だ。

 

サクヤの問題が、サスケより急を要する事態になっていることは、事情をよく知らないサクラにもわかる。

サクラはナルトに聞こえるように息を吸った。

 

「私…ダンゾウに会ってくる!!」

 

サクラの声に、ナルトは視線を上げる。

カカシの剣呑な視線が刺さるが、サクラは無視を決め込み、声を張り上げた。

 

「綱手様が目を覚ましてないのに…こんなのっ!!

サクヤさんもそうだし、何よりサスケ君のことだって!!

このまま黙っている訳には行かないでしょ!!」

 

サクラの強気な言葉に、ナルトは我に返る。

ギュッと掌を握りなおして、決意を言葉にした。

 

「…俺も!!

行くってばよっ!!」

 

 

 

しかし、そうは問屋が卸さない

 

「二人とも落着け!

こんな時こそ冷静にならなきゃ、上手く事は運ばん。」

 

カカシの言葉がナルトの決意をさえぎる。

が、ナルトには、『諦めないど根性』があった。

 

「冷静になんて、なれっかよ!!

サクヤねェちゃんが殺されるかもしれねーんだぞ!!

サスケだってあぶねェ!!」

 

カカシの声に、ナルトは果敢に反論するがしかし、カカシの方が上手であった。

 

「待てって言ってるでしょ!!

ダンゾウはお前たちが、そう行動に出ると予測済みだ。

そしてサクヤもそうなった時の為に、静かに痕跡を残さないように里を去った。

なるべく穏便になるよう、額当てまで置いて…

今、波風立てて、お前が捕まりでもしたら、

サクヤをおびき寄せる餌が、一つ増えるだけだ!!」

 

カカシの的確な指摘に、ナルトは一時言葉に詰まる。

しかし、見えた光明を逃したくは無かった。

 

「それでも!!

俺はじっとなんかしてらんねェ!!

サクヤねェちゃんが俺をどう思っていようとも!!

俺は、サクヤねェちゃんが好きなんだってばよ!

サスケだって諦められねェ!!

黙ってサクヤ姉ちゃんが殺されるのを待つなんて俺は嫌だってばよ!!

俺は行く!!

ダンゾウを説得する!!」

 

「私だってっ!!」

 

 

「お…おい…おまえら…」

 

仰々しく足を踏み出す二人にキバは、己が仕出かした事の罪悪感に溺れながら、せめてシカマルが来るまで止めようと声を掛けるが、あまり意味をなしてなかった。

 

 

 

 

「ナルト」

 

 

二人の足をまたもや止めたのはカカシだった。

低く落ち着いた声が二人の足を止める。

それは、二人の班の上忍だからと言うのもあるだろう。

しかし二人にはその声が、絞り出した声に聞こえた。

 

「お前はサクヤと縁が深い…

誰が見たってサクヤは、ナルトと、サスケを大事にしていた。

更にお前は、『木の葉』にいて、『九尾』のチャクラを持っている…

ダンゾウは他でもない()()を、この里に拘束しておきたいと思っているんだ。

お前らが何を言ったって、『政治の道具』にされたあげく、『サクヤの餌』にもされる。

相手の思うつぼだ。」

 

 

サクラにはその声が何故だか、自分達では無い所への怒りを含んでいるように感じる。

 

 

「お前やサクラが迂闊にもダンゾウと、何か不利な約束をして捕まったりしたら――――」

 

何時ものやる気のない目が、剣呑にナルト達を貫いた。

 

「―――お前らはサクヤを探す事も、サスケを木の葉に連れて帰る事も難しくなる。

それ程、厄介な相手なんだ。

今はあまりはしゃぐな。」

 

「……分かってるってばよ。」

 

 

ナルトは、一つ頷くと、また歩き出した。

サクラがナルトの後を追う。

 

「(カカシ先生の事も気になるけど、今はナルトを一人にはできない。

取りあえず、キバが初め言ってたシカマルに話を聞こう。

策を練るのはそれからの方が良い…。)」

 

何時も、何をしてても五月蠅いナルトが、静かに傷つき、怒る姿は

サクラにとって初めてだった。



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117

 

「どーもおそろいで。」

 

 

まず、声が聞こえた。

それと同時に、派手な色の仮面を付けた男は、時空間忍術の気配を感じ取っていた。

気配のする方へ視線を向けるが姿は無い。

 

道行き、珍妙な格好をした2人は、計画を聞かれたかと警戒、一人は写輪眼を発動させる。

いつの間にか目と鼻の先

()()()()()、その白はいた。

 

 

 

 

「お初にお目にかかります。

木遁の人と、うちは一族の誰かさん。」

 

相対する白は、戸惑いなく

核心(トリガー)に手を掛けた。

 

 

 

―――

――

 

「ナルト!! ナルトっ!!」

 

何度も声をかけるが、どこに行くつもりなのか、ナルトは確かな足取りで先に進んでいく。

サクラは、事情をよく知ってそうなシカマルに声をかけようと提案したが、ナルトはただ、シカマルが居るはずの火影邸から離れて行くばかりだ。

 

そこに、最近馴染んだ顔が道の向こうから来ることに気付く。

サイだ。

 

「サイ!!」

 

サクラは、助かったとばかりに声をかけると、駆け寄る。

 

「綱手様の話は聞いた?」

 

「ああ、聞いたよ。」

 

落ち着いた様子でナルトとサクラの元に歩くサイ。

 

「そしてナルト、サクラ、君達が聞きたいことも、大体予想が出来る。

ダンゾウ様の情報が欲しいんだろう?」

 

「ああ。」

 

決意したかのように、ナルトは深く、重く、頷く。

しかし、その決意とは裏腹に、サイは無理だと返した。

 

「なんでだってばよ!!」

「あんたまさか、またあいつの側に!!」

 

また大蛇丸のアジト時のようなことがまた起こるのか

と、サクラは焦るが、サイは冷静にそれを否定する。

 

 

「イヤ…そう言う事じゃない。

僕はダンゾウ様の事を一切話せないようになってるんだ。

この呪印のせいで。」

 

そう言ってサイは口を大きく開き、舌をナルト達に見せた。

 

「なん、だってばよ……それ?」

 

全く持ってわかっていないナルトに対して

サクラは病院の診察で何人か、そういった人を見たことがあった。

 

「『呪印』と言う物だ。

かつて根にいた人で、ただ一人これを逃れた人がいるとは聞いてるけど

その人以外の根の者は、この呪印でダンゾウ様についての言葉を一切封じられている。」

 

「用心深い人なのね…」

 

サクラは、ダンゾウに対しての当てが外れたと知り、意気消沈する。

二人の様子に、サイは、まだ用件は終わってないと口を開く。

 

「けど、僕が話せることが一つある。」

 

「なんだってばよ…。」

 

封じられているのに、話せることがあると言うのはどういうことだと、ナルトとサクラは疑問符を浮かべる。

 

 

「『真の目サクヤ』の話だ。」

 

 

 

―――

――

 

木の葉を潰さんとするサスケを、止めに行く道中だった『うちはマダラ』は余りにも見事なまでのタイミングに、舌を巻く。

 

潜伏している状態で、ここまで早く情報を手に入れるには相応なパイプが必要だ。

マダラとゼツは、ターゲットが思ったより近くにいたと予測した。

 

 

「ほー…。

俺が『うちは』と予測した上で、その言葉を紡ぐか。」

 

マダラが、行けとばかりにゼツに手を振ると、ゼツは、地面に溶けるように消えて行った。

二人に相対していた白色は、ちらりと視線を向けただけで、そちらに用は無いようだった。

 

 

マダラは、その様子を見て一応、牽制に写輪眼で幻術を掛けるが、危なげなく跳ね返される。

突然の殺気と幻術に、何の惑いもなく、にこりと微笑んだ白は、トッと一歩引いて、そのままの流れで、もう二歩三歩と下がった。

まるで身軽なその仕草に誤魔化されそうになるが、その腰元には黒く重そうな双剣が据えられている。

 

 

木立を風が通り過ぎる。

殺気も何もなく、手を伸ばせば届くような距離に佇む白

方や、殺気を充満させ、隙あらば仕掛けようとしている黒

 

得物に添えられている手を見れば、警戒がゼロでは無いのは窺えた。

一旦距離を取れたことにより余裕が出来、相対する白の動向を探る余裕が出来てきた。

 

「(機を衒う事は上手いが、間を持たせるのは下手だな…。)」

 

 

マダラはここで

無闇に神威を発動しても、先程登場した時空間忍術で逃げられてしまう可能性に気付き、発動しかけた万華鏡写輪眼を戻す。

 

奇襲には自分のフィールドである、()()()()に引きずり込むのが一番楽だが、

この白が、マダラが想像する『真の目サクヤ』ならば、先程登場した時の時空間印術がなんであれ、飛雷神の術並みの速度を誇る術を会得していると言う事である。

寧ろ、あの()()()()()()だ。

飛雷神でなければ何になる。

 

飛雷神を使える人間は限られる。

まず、時空間忍術のセンスが必要だ。

そして、時空間忍術を学べるだけの知識が必要で

最後に、時空間忍術を己の技に落とし込む『技術』が必要だ。

 

いくら守備範囲の広いゼツ情報でも、ここまでややこしい相手になるとは誰も予測できないだろう。

ここまで術をモノにしている相手に、同じ土俵で相対してはならないと経験則から答えを導き出す。

あの天才、4代目火影である『黄色い閃光』を相手にした自分だからこそ分かる、と言ってもいい。

 

これは長丁場になりそうだと、警戒心をめいいっぱい引き上げた。

しかし、そんな警戒をよそに、白色は呑気に口を開く。

 

「まずは…

お互い初対面な事だし、自己紹介といこうか。」

 

その言葉に、仮面の男は静かに構えを解き余裕を見せた。

それを了承と取った目の前の白色は、なるべく自然に胸元に手を持っていく。

 

 

 

「私の名は真の目サクヤ。

千手扉間とうちはニヒトの間に生まれた第三子、真の目作間の一人娘だ。

で、私の予想通りならば、あんたは『うちは』で間違いないんだな?」

 

 

「…ああ。

こちらも改めて自己紹介させてほしい。

なにせ貴様を探し、見つけるのに途方もない労力を喰ったからな。」

 

 

おかげで、サスケ達に八尾の居場所を伝えるのが遅くなってしまった程には、労力を使わせてもらったのだ…。

 

原作と違い、暁の予定が若干押しているのはこのせいであった。

 

怒気が立ち上る相手に、好きにしろとばかりに肩をすくめるサクヤ。

記憶にある、千手扉間のムカつく表情が重なり怒筋が浮かぶが、ここで取り乱しても何も得ることは出来ないと、仮面の男は心を落ち着かせる。

 

「俺は、第24代目うちは当主、うちはタジマの第一子

姓はうちは、そして名は『マダラ』だ。」

 

 

自称『うちはマダラ』は自分が発した『名』に慄くかと期待したが、サクヤの様子は依然変わらず

にっこりと笑みを返すだけだった。

千手扉間の名を知っていて、うちはマダラの名の大きさを知らないはずがない…

マダラは、その様子を訝しむ。

しかし、サクヤは自称マダラの疑問に答えず話を進める。

 

「じゃあ自己紹介も終わったところだし、本題に入りますか。」

 

そう言って真の目サクヤは印を結んだ。

お手本の様に綺麗な印が連なって行く。

印のスピードは一流と言ってもいい速さだ。

 

しかし、写輪眼に見切れない速さでは無い。

自称うちはマダラは『口寄せの印』を黙って見つめた。

多少の口寄せでは、自分に攻撃が当たらない事をよく知っていたからだ。

 

そして残念なことに、サクヤの口寄せは『多少』では無かった。

確実に、『自称うちはマダラ』に衝撃を与える代物だった。

 

 



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118

サイと合流したナルト達は、取りあえずというように掘立小屋の壁に背を向けて話し出す。

『サクヤ』と『ダンゾウ』になんの繫がりがあるのか

ナルトとサクラは静かにサイを見つめた。

しかし、サイが発する言葉は、二人の期待するような話では無かった。

 

「僕から言えることは只一つ。

『真の目サクヤ』は、途轍もなく危険な人間だと言う事だ。」

 

「なっ…!!

サクヤ姉ちゃんは危なくないし!!

優しい!!

怖くないってばよ!!」

 

初っ端からケンカを売っているサイに、サクラはまたか…と痛い頭を押さえる。

 

「それはナルトが『真の目サクヤ』を知らないからだ。」

 

しかしサイは、真剣にその話を続けるらしい。

いつものうすら寒い笑顔では無く、凪いだ眼で、ナルトと、サクラの目を真っ直ぐに見つめる。

 

「そんなはずねえってばよ!!

サイこそ!!

サクヤ姉ちゃんの何を知ってそんなこと言うんだってばよ!!」

 

ナルトはサイの言葉にそのまま、ナルトの知るサクヤを返す。

サイにとって、その様子は少し異様ではあった。

 

ナルトの必死さは、第7班に入ってから、何度も見てきた。

しかし、ここまで妄信的な必死さは、サスケ以上だった。

もし他の、ナルト以外の人間だったなら捨て置く妄信を、サイは『ナルト』という『仲間』の為に理解しようとするが

それはサイにとって持っていない(理解できない)ものだった。

 

サクラには、ナルトの気持ちが少しだけわかった。

自分だって、親が里を抜けたり、犯罪を起こしたら、信じることが出来ない。

これは、親と言う物を知らない、サイだからこそ感じる『妄信』さだった。

 

サイは、それをごく自然に受け入れているサクラを見て、『自分だけが分からない何か』なのだろうと理解する(分かる)と、それを溜息一つで受け入れ、話を戻す為に言葉を連ねる。

 

 

「昔、僕達『根』の忍びは『真の目サクヤ』によって、壊滅の憂き目に会っている。」

 

『根』の言葉にナルトは本題を思い出して、我に返る。

 

 

「当時僕は、6歳ぐらいで殆ど記憶は無いんだけど。

その悲惨さだけは聞いていた。

それに、僕の知る先輩は、ある年齢から急激に人が少なくなってるんだ。

そして根の忍びは、それこそ僕の様な兄弟同士の殺し合いで忍びになった人が殆どだが、ある一定の世代は、()()をしていない。」

 

二人は過去、相対した桃地再不斬の話した内容を思い出す。

そして最近知ったサイの兄の事も。

 

 

「なぜなら、根の構成員が真の目サクヤによって急激に減ったからだ。」

 

 

根の構成員は、表向きは徴収制だ。

それはダンゾウの名家の血の欲しさだったり、パイプの為だったりするが

素地としては、ダンゾウが拾ってくる、『忍びの素養がある孤児』だけでは構成員の死亡率を上回らないからだ。

 

確かに、優秀な構成員を育てる下地があるし、どんな人間であろうとも、忍びの素養があれば、『根』に入れるが

そこで生き残れる人間は一握りしかいない。

 

それだけ過酷な任務であるし、それだけ構成員の成長に、『任務数』が追い付いてないのである。

単純にダンゾウが想像するより、根の抱える任務範囲が多すぎたのだ。

だから、()()()サクヤが屠った程度の人数で、サイの『先輩』が急激に減ることになる。

 

 

「根は、ダンゾウ様が立ち上げた当初から、基本的に『兄弟の殺し合い』で根に召し抱えあげられてきた。

だが、唯一それを免除された世代が、僕より3つ4つ上の世代。

先輩によれば、その年代より上の年代の忍びが一斉に命を受けた仕事があって、それでほとんどが命を落としたそうだ。

 

その受けた仕事が『真の目サクヤの暗殺』

僕もあの人自身の事を、詳しくは知らないんだけど、あの人は結構重要な物を隠し持っているらしくてね。

それこそ『写輪眼』とかね。」

 

飛んで出てきた『写輪眼』の言葉に、ナルトとサクラは驚く。

 

「写輪眼?!」

 

「なんでうちは一族でもないのに写輪眼を持ってるのよ!!」

 

「そう、そこが味噌なんだ。

実は、『真の目サクヤ』は『真の目作間』という、『うちは』と『千手』の血を引いた人の一人娘なんだ。

正確には、二代目火影『千手扉間』と『うちはニヒト』の子供3人の内の一人なんだけどね。

根では、『うちは』の血を持つサクヤがその『3人分の写輪眼』を持ってるとされてる。」

 

ということは、3人とも()()()()()()()()または、()()()()と言う事だと気付き、サクラは息をのむ。

サクラは、ナルトをそろっと覗く。

視線を落として、眉間にしわを寄せている姿は、その事を知らなかったのだと如実に表していた。

 

 

「で、それらの奪還の為に、真の目サクヤを偵察していた折り、そのありかを知り、奇襲を掛けたらしい。」

 

里の仲間に奇襲を掛けたと知り、停止したサクラとナルトに、サイは笑いかける。

 

「安心しなよ。

根の『5割』を使って掛けた奇襲は失敗に終わってる。

でなきゃ真の目サクヤは存在してない。」

 

余りのアッサリとしたサイの表情に、『根』では()()()()なのだと二人は改めて理解する。

引いている二人を置いて、サイはサクサクと話を進める。

 

 

「その場に、三忍の自来也様も居たらしいんだけど、僕は、ほとんどを真の目サクヤが殺したと聞いてる。

唯一生きて帰って来れたのは、たった一人。

その一人も、ダンゾウ様に真の目サクヤからの伝言を伝えたきり、気が狂ってしまった。」

 

感情を無くす訓練を受けているはずの『根』の構成員が、狂う程の事をサクヤはやったのだと、サイの無機質な目は語る。

さらに、もうその人は自ら命を絶ってる。とサイは付け足した。

 

「僕は機会があって、一時その人のお世話係になったことがあって…。

お世話している間彼は、真の目サクヤが何をしたのかを、ずっと呟いてるんだ。

きっと、ずっと彼の頭から離れないんだ。

その人よく拷問の最中の事を話すんだけどさ…

幻術、爪剥ぎ、指折り…イビキ中忍を笑えない、実にさまざまな方法だったよ。」

 

 

「何人もの根の忍びが、そのあまりの姿に助けようと真の目サクヤに襲い掛かる。

でも、真の目サクヤの周囲には結界が張っていて、髪の毛一本も入れない。

強力な結界に行く手を阻まれ、弾かれ

内側から漏れる血や、助けようとして弾かれた忍びの血で、その結界や周りの地面は、赤く染まっていたと言っていた。」

 

無機質な眼で、光景を口遊むサイに、二人は息をのむ。

サイにとって、その光景は余りに容易く想像が付く。

何度も見てきたし、やってきた事だからである。

だからこそ、そういう人間(拷問を受けた人)がどういう顛末を辿るかもよく知っている。

 

「真の目サクヤは、拷問をされた忍びが、耐えきれずダンゾウ様の名前を出そうとして呪印で息絶えたころ、やっと立ち上がったらしい。

根も馬鹿じゃない。

結界を解くのを手ぐすね引いて待っていたらしいけど、まるでゴミの様に、まだ息のある彼を燃やしたあと、一人を残してその場に居る『根』の忍び、全てを燃やしたそうだ。」

 

サイの話す内容に、ナルトとサクラは閉口する。

あの呑気な人間から、そんな残虐性は垣間見れない。

会議に遅刻し、綱手に引きずられる姿と、サイの話す姿が、全く持って合致しなかった。

しかし、続けられた言葉によって、更に二人は驚く。

 

「ひどく言おうとすればいくらでも言えるだろう。

それ程の事を、真の目サクヤは齢12で成し遂げた。」

 

サクヤの経歴を、思わぬところで知ることとなった二人は己の12の頃を思い出す。

『12歳』

カカシの持ってくる任務に文句を言い、下忍という環境に甘えていた。

 

そして皮肉にも、丁度ナルトは、12歳のサクヤに出会っていた。

あの笑顔の下で、優しい言葉の裏で、何を思っていたのか。

何故、里中から恨まれていた自分を育ててくれたのか…

ナルトは、サクヤの事が分からなくなってしまった。

 

「僕の知ってる真の目サクヤの情報は規制されてない。

ダンゾウ様が何を思って、僕ら『根』に規制を掛けてないかは分からないけど

僕は、この話は一生忘れたくはない。

 

ナルトはこれを知っても

まだ、真の目サクヤを追うの?」

 

サイの鏡の様に凪いだ目がナルトに問いかける。

そこに『怒り』は無い。

只、『己』の判断で、この話を忘れたくない。

それだけだった。

 

しかしナルトは、皮肉にもその()()に気付く。

 

 

「…俺ってば……馬鹿だから…

今の話が全部本当かどうかなんて分かんねェけど」

 

サイの、感情とは呼べない程の、薄い、薄い感情に

ナルトは本気でぶち当たろうと思った。

サクヤだけが悪く言われることに、イラついたと言うのもあるが、ミジンコ一匹程

サイに、その感情に気付いてほしかった。

自分が反論する事で、その感情を大きくしてほしかった。

 

「けど、サクヤ姉ちゃんは意味も無くそう言う事をする人じゃないって事は分かるってばよ。

それに、俺ってば、サクヤ姉ちゃんを信じてるんだってばよ。

サクヤ姉ちゃんの優しさを、強さを、信じてるんだってば。

だから

サスケも、サクヤ姉ちゃんも

どっちも、連れ戻すんだってばよ!!」

 

 

ナルトの言葉の裏に、サイが気付いたかどうかは分からない。

ただ、サイにとってナルトが『大切な仲間』だという事は、揺らがなかった。

 

 

 

「おい!!

そのサスケってのについて、色々教えてもらおうか!

どうやらお友達みてーだからな!!」

 

 

 

―――

――

 

 

鬱蒼とした森の中

相対する二人の間に、ぼんっと口寄せ特有の煙が上がる。

煙の中から出てきたのは、木で出来た棺であった。

 

 

 

「じゃーん。」

 

限りなく棒読みの態度に、自称うちはマダラの額に、怒筋が浮かび上がる。

やるならしっかりやれ。と舌打ちを打ったが

しかし、それが開かれた時から、『自称うちはマダラ』はそれどころでは無くなる。

 

 

「『うちはマダラ』のご遺体でーす。」

 

 

それは一時期、己の顔より見た顔であった。

 

 

 

「――――貴様、それをどこで手に入れた。」

 

地獄の底から上がって来た怨嗟のような

返答によっては今、ここで命ごと口を噤んでしまう事を想像させる声に

サクヤは、呑気に与太話しを始めた。

 

 

「わたしさー

おとんが2代目に眼を埋め込まれたの結構頭にきててさー

もう、絶対こういう事は起こさないぞー…って思ってとりま、うちはの目を持ってると噂の大蛇丸の研究室を片っ端からひっくり返してたんだよね。

でもさー、大蛇丸って結構逃げ足速いからさー

全然捕まらなくて、終いには管狐使ってそこらじゅうにポイントを置く羽目になったのよ。

そんで、これを発見してしまった訳。

そしてこれを発見した場所が三忍が一人、大蛇丸の腹心

『薬師カブト』君の実験室でーす。

いやー私も、これ発見した時は驚いたわー」

 

自称うちはマダラは、記憶にある千手扉間と全く同じ顔をしておいて、全く持ってナメた言動(姿)に、おちょくっているのかと、イライラがつのる。

 

「何せ入れ物にしっかり『うちはマダラ』って書いてあって、横にカルテまで添えられてるんだもん。

完全に無視できないよね。

それでまあ、カブトがこの遺体を何に使うかは分からんかったけど

あの大蛇丸の腹心だし、碌な事に使いそうになかったし、私が頂戴したわけです。」

 

 

いえーいと棒読みで説明されたところで、自称うちはマダラには、サクヤの驚きは理解できないし、イライラと切迫するだけである。

回りくどい脅迫に結論を急く。

 

「それを出して来たって事は、俺と取引すると言う事でいいんだな?」

 

 

目の前で笑っていた白は、その言葉を待ってましたとばかりに、やる気のない顔から、仮面の男の記憶に色濃く残る、『邪悪な扉間の顔』を見せた。

 

「御明察。

いやはや、話が早くて助かるよ

うちはオビト。」

 

 




ねむい


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119

アニメーション映画『羅小黒戦記』にドハマりして、原作漫画を買いたくて
これから大嫌いな漢字をどうにかこうにかして読めるようになって、喋れなくてもいいから読めるようになるための修行に出る為、音信不通になります。

日本語版『羅小黒戦記』と『藍溪鎮』『羅小黑戰記妖靈簿』が出たら帰ってくると思うので、また来て三角の続きが読みたい場合は『羅小黒戦記』を見て
日本でめっちゃ人気あるよ…日本語版出たら売れるよ…的な雰囲気にしてくれ。
頼む。
一生のお願いだ。

絶対また来て三角読んでるモノ好きは『羅小黒戦記』好きだから。
損はさせないから。
映画をみてくれ。
今なら日本語字幕と初期字幕で見れるから。若干の違いを楽しめるから。
ホント見てくれ。

また来て三角の内容忘れて良いから。
つか、忘れて『羅小黒戦記』見てくれ。

いいか『羅 小黒 戦記(ルオ シャオヘイ ジャンシー)』だ
この映画では主人公は名前の『小黒』しか出てこなくて、オリジナルアニメで『羅』という苗字が付くんだが、考察すればするほどうおおおおおおってなるから。他にもいろいろはわあああああああってなる場所あるから
マジ見てくれろ。

すまん、長くなった。
だが安心してくれ。
今回の119話は無駄に長い。


「そもそも、イタチの話を聞いていた時から可笑しいと思っていたんだ。

いくら何かしらの術で、不死身だったとして

不死身だからこそ、『今迄潜伏していた意味』っていう物が、全くないって事に。」

 

 

静かなる風が吹く中、サクヤは

先程よりも、()()()説明をし始める

より邪魔者らしく

より、悪役らしく――

 

 

「永遠の命がどんなものか、によるのかもしれないが

マダラ程の力を持って、永遠の命があるなら、()()()()()()も、()()()()()()もないんだ。

木の葉を潰したいなら、常に木の葉を脅かす『己』の存在をほのめかせば

勝手に深読みして、勝手に自滅してくれる奴らが、組織には必ずいる。

組織と言う物は、外から叩くより、内から崩壊させる方が容易い。」

 

お前にも心当たりがあるだろう、とばかりにサクヤは片眉を上げ相手の様子を窺う。

 

「ある意味では、あんた等の思い通りに、事は進んではいるんだろう。

流石に第2次忍界大戦、第3次忍界大戦に『うちはマダラ』の手引きが無かったとは言わせないぜ?

真の目を舐めてもらっちゃ困る。

壁に耳あり、障子にメアリー。

真の目の管狐はどこにでもいるのが特徴だ。」

 

おどけるように肩をすくめるが、続く言葉は何もかもが笑えない物である。

ぱんっ

っと柏手を打つと、サクヤは真っ直ぐと『自称マダラ』を見つめた。

 

「岩の両天秤が『誰』に会って

水のクーデターが『どのようにして起こった』のか

雨隠で『何』が起きたか

それぐらいは分かる情報を持ってる。」

 

 

――そしてその『らしく』は、サクヤの言葉を『真実』に変えていく。

 

 

自称マダラの、ぴりぴりとした殺気が林を覆い、まるで戦場であるのに

サクヤの態度は一環として、余裕を貫いている。

これが、たとえ口から出任せであっても、この空間に平気な顔をしていられるのは『馬鹿』か『強者』、二者択一だ。

 

自称マダラは、サクヤ(只の小娘)に

『うちはマダラ』のやり口ではないと暗に言われるが、己よりマダラを知る者は、もうこの世には居ないと確信していた。

 

世代は変わった。

それだけの時間が経ったのだ。

ならば、この白い悪魔が、どれだけそこを突こうとも、根拠はない。

己で見て、聞いて、触れても居ない奴が、何を言おうとも、証拠には成りえない。

自称マダラは、そう自分を鼓舞し、口を挿む。

 

「だが何故この俺が『うちはオビト』になる?

いくらなんでも、どこぞで犬死したジャリに、『うちはマダラの野望』とやらは押しつけられまい。」

 

 

あの『うちはマダラ』が、己に圧しつけた野望は、犬死するジャリに押し付けるだけの仕事分しかない。

サクヤ(只の小娘)に見抜けるような仕事はない。

 

 

しかし、自称マダラは勘違いしていた。

サクヤが誰に育てられて、誰に何を教わり、誰と相対して、どんな環境で生きてきたのか。

 

あの、()()()に生まれ育ち

あの、()()()()()に暗号、史実、歴史を教わり

あの、()()()()()()()()()()()(それも戦帰り)と相対し

あの、()()()()()()()()で活躍してきた人間が

 

 

岩の国の真の目棟梁がオオノキと酒飲み友達で、毎夜騒いでいるのを見逃す訳もなく。

それをサクヤが置いて行った管狐が聞いていない訳もなく。

 

水の国が、過去の歴史から急激に政治転換が起きている事に気付き、水の国の真の目にコンタクトを取らない訳もなく。

 

戦場になってしまった雨隠れから、逃げてきた真の目が木の葉に訪れて

土産話をサクヤにしていかない訳がないのだ。

 

そしてサクヤは

 

そう易々と()()を野放しにするような教育を受けていない。

 

 

 

「『犬死にしたジャリ』?」

 

まるで面白い事をいうものだとばかりに、醜悪に笑いかけたサクヤに

仮面の男は、己が失言をしたことにやっと気付いた。

 

 

乗せられた。

それもまんまと。

 

ここまでの無駄な会話は無駄では無く、己から真実を導き出す(情報を引き出す)ためのブラフだった。

 

一呼吸置いたのち、サクヤは全く持ってつまらないとばかりに冷めた目を向けた。

 

「何故『うちはオビト』が『犬死』した『ジャリ』と決めつけられるのか?

もしかしたら、まだ生きてるかもしれないじゃないか?

もしかしたら、立派なレディーかもしれないじゃないか?

まるで、うちはのジャリが、犬死した姿を、その眼で見てきた様じゃないか?

なあ?」

 

あまりにもわざとらしい科白に、自称マダラは盛大な舌打ちを打ち、

殺気を全開にし、今すぐにでも黙らせようと、サクヤに向かって左手を伸ばした。

 

しかし、その手はサクヤに唐突に握り締められ、その後何本かの骨の折れる音と共に、サクヤによって更に引き寄せられ、自称マダラはバランスを崩す。

 

「っ!!」

 

突然の攻撃ともいえる接近に、自称マダラは寸で前の目に向かって万華鏡写輪眼を発動するが、サクヤに先手を打たれる。

 

 

 

「逃げるのか?

『うちはマダラ』とあろうものが?」

 

 

近付いた目と目がガッチリと合う。

その眼は雄弁に語っていた『こんな小娘から逃げるのか?』と。

赤い、赤い写輪眼が、二対

 

同時に幻術を発動した。

 

 

―――

――

 

静かな衝突だった。

幻術の掛け合いと、解き合いが続く。

自称マダラは、幻術が得意とまでは行かなかったが、其れなりに幻術に対して自負があった。

が、その自負がぽっきりと折れる位に素早い対応に、冷や汗をかく。

しかし自称マダラが対処できない技量では無い……

 

 

得てして、戦闘が長引いて壮絶になったためしがない。

どちらも全身全力の戦いならば、それが高度であればある程、短くなる物である。

 

数秒の、しかし永遠にも感じる幻術の掛け合いに

終止符を打ったのは、サクヤだった。

 

 

「…こんなクソみたいな応酬をしても、お前は私を倒せない。

そして、私もお前を倒す必要はない。」

 

 

手を緩めたサクヤは距離を取る。

好機と見たマダラは、折れた手をそのままに、追撃をしようとするが、

目の前に、透明な壁があることに気付いて急停止する。

 

「( 結界っ?! )」

 

もしやあの幻術の間に?!

いやそんな隙は毛ほども無かった。

イタチ程の使い手ならまだしも、どう頑張ろうともサクヤは、只のイタチのフンである。

 

幻術の応酬時でないならば、残るはひとつである。

初撃の際、()()()()()()()()()を使って、()()()『印』を組んだのだ。

 

 

自称マダラは、おおよそ女とは思えない単細胞な力技にドン引きしつつ

結界を立てに、あまりの重傷に痛覚が鈍くなっている左手を確認する

 

血が滴り、骨が妙な方向から飛び出している。

それも指を()()()()()()()全滅である。

 

成る程、妙な折れ方をするものだ。

そのためだけに、初撃で握りつぶしたことがまざまざと分かる。

痛覚に鈍いのが裏目に出たか…

 

 

―――

――

 

サクヤは、急停止したマダラが先程張った結界の存在に気付いたことを認識する。

 

「チッ(そのまま突っ込んだら面白い絵面になったろうに…)」

 

あの速度で突っ込んだなら、まず技を繰り出そうとしていた腕の骨が折れ、次に顔面から衝突し仮面が割れ、その無様なご尊顔をナルト達より先に拝見できるかと期待していたが……

しかし、サクヤの当ては外れた。

 

「(今回はうちはマダラじゃないという事を回収できただけで良しとするか…。

なにせ、これからいくらでも時間は有るしな…。)」

 

自称マダラがまじまじと確認する指の骨が、徐々に再生するのを気持ち悪そうに眺めるサクヤ。

気持ち悪さを前面に出しながら、話を進める事にしたらしく、サクヤはドン引きした顔のまま口を開く。

 

「私には今、殺したい奴がいる。

だが()()うちはサスケとターゲットがかぶってるとなっちゃ―――

 

―――全力で阻止するしかないだろう?」

 

 

自称マダラは、この『只の真の目』『金魚のフン』程度の戦闘能力など、どうとでもなる。

そう考えていたがしかし、自称マダラはその考えを改めないとならない所まで来てしまったようだ。

 

 

「別に私はあんたを『倒し』に来たわけでもないし、『脅迫』に来たわけでもない。

あんたと『交渉』しに来たんだよ。

知ってるだろう?」

 

そう言って口に出した名前に、()()()サクヤの殺気がこもった。

 

 

「『志村 ダンゾウ』」

 

 

感情や気配を上手く隠すサクヤから発せられる、明確な殺気に、自称うちはマダラは確信を持つ。

 

「私は、こいつを必ず殺す。

邪魔した場合は手段をいとわず、あんたら『暁』の計画を邪魔する。」

 

 

自分はまんまと、戦闘能力以外の土俵に乗せられ、

この『真の目サクヤ』は本当に、交渉しに来たのだと。

 

 

 

―――

――

 

 

「しかし、もし私の前に立ちはだからなければ、この私にとって荷物でしかない遺体はあんたに返そう。」

 

先程の殺気を嘘の様に消したサクヤが、誤魔化す様に微笑みかけるが、それは只の脅しでしかなかった。

冷や汗を誤魔化す様に自称マダラはその提案にケチをつける。

 

 

 

「…良いだろう。

だが、その死体だけではサスケの交渉を取り持つことは出来ん。」

 

高圧的な物言いにサクヤは少しカチンときた。

 

「ほぅ、私は『暁の』サスケ君を止めて欲しいと言っているんだがな…?

仮にも先輩である『うちはマダラ』とあろうものが、たかが小僧一人止められないと…」

 

完全に馬鹿にした物言いに、自称うちはマダラの額に怒筋がメキッと浮かび上がる。

 

「…悪いな、暁は各々優秀なもので

細かい指示なんぞ与えなくても、()()()()()は解決してくれるんでなぁ。」

 

サクヤの『手段をいとわない』『全力の邪魔』を、『多少の問題』と片づけたマダラ。

今度はサクヤの額にメキリッと、怒筋が現れた。

 

「ほう、なるほど、なるほど……多少の問題はどうにかなるなら

――こいつを五影会談中に()()()()落とされても大丈夫だと……。」

 

コンコンとノックするのは件の口寄せである。

 

それは『うっかり』とは言わない。

というか五影会談の鷹が飛ばされて数日もないのに、こいつはどこから情報を引っ掛けて来るんだ

自称マダラは、元来の(ツッコミ)が飛び出す前に息を吐いた。

 

 

「…そうは言っていない。

俺には、まだお前を交渉の相手として信用たる人物とはとらえられない。

疑心がある。と言っているんだ。」

 

「ふん…。イタチか。」

 

「…」

 

自称マダラはサクヤをにらみつけた。

そこまで分かっているなら煽るな。

 

 

イタチの仲間であったサクヤが、()()()()()()によってサスケの復讐を止めに来る可能性を、予期していなかったと言ったら嘘になる。

更に言うなら

 

「序にサスケもか。」

 

 

 

つづけられた言葉に自称マダラは、イタチの里抜けの際、袖口に潜む気配に警戒をしていた折り、イタチが漏らしたいくつかの言葉を思い出す。

 

『あの人は…交渉に対しては()()だ。

期待と信頼に関しては何とも言えないが…』

 

 

 

サクヤは、マダラ陣営の『サスケが、うちはマダラとの契約を破る』と言う警戒を、正確にとらえている。

そして、それを知った上で、『交渉』に来たのだ。

確信犯と言っても変わりない。

 

ならば、『うちはマダラ』はそれを利用するまで。

 

 

「…そのためにも、お前には誠意を見せてもらいたい…。

そう、言わば保障だ。」

 

「サスケが私に獲物をカッ攫われて、あんたを裏切らない保障?」

 

…………ここまで頭のまわる人間だとは思わなかった。

 

自称マダラは今一度、その白い姿を眺めなおした。

態度は自然体そのもの、どこから来るのか、口端が上がる位には自分の言葉に自信があるらしい。

自意識過剰ともいえる自信だが、その自信は的を射ているし、自称マダラにとってはこの上なく()()()()()自信であった。

 

「察しが早くて助かる…

サスケの中で、木の葉への復讐は確定している。

しかしサスケは、己の計画の邪魔になるならば、俺を裏切る、…のも吝かではないだろう。

現に、サスケに任せ、回収された八尾は分身だった。

暁はその落とし前を『サスケ』にきっかりつけてもらうつもりだ。」

 

サスケ(渦中)の命を曝す言葉を吐いて、様子を窺う。

マダラは、相手の沸点を考えて賭けてみたが、サクヤ表情は変わらず、先程の事が嘘のように全く挑発に乗って来なかった。

成る程、分を弁えている…大名にも気に入られるわけだ。

 

だが、自称マダラにとって、一つだけ解せない部分が有った。

この、『うちはマダラ』を騙れるほどの人間を、察せる奴は中々いない。

そもそも、生きていた時間から言って、違うはずの人間を相手にするに

サクヤは年に合わず、()()()()()()()()()

 

 

「成る程…要はあれか。

ダンゾウの代わりに、サスケの憎まれ役を担って欲しいのか。」

 

しかし、この言葉(結論)を声に出すのは、賢い人間のする事では無かった。

この交渉の結論を簡単にするならば『ダンゾウを殺すのは勝手だ、ただし自分の尻は自分で拭け』と言う事である。

分かっていても、それを口にはしない事がお約束である。

 

濁して曖昧にしてしまえば、後でどうとでも取れると言うのに

しかし、サクヤはそれを察して、口にしてしまった。

 

 

「(もし黙っていたら、もう少し交渉は楽に進んだだろう…

言葉の裏を読むのに長けているが、少々残念な頭だな…

流石あの九尾のガキを育てただけは有る…)」

 

 

秘すれば花

とは言わないが、交渉という物はカードを一気に切るものでは無い。

小出しに、一枚ずつ切って行き、なるべく相手に多くカードを切らせ、自分の手元は見せないようにするのが良しとされる。

マダラはこれからの交渉に、不利な発言を繰り替えすサクヤを憐むが、サクヤはあっけらかんとしていた。

 

 

 

 

「いいよ。

サスケは元々そのつもりだったし。

あんたら『暁』が手を出さなければそれでいい。」

 

 

「……。」

 

 

もう、なんと形容すればいいのか分からない長い沈黙が降りた。

天使なんて通らない。

通ったとするならば、ぬらりひょん位の不気味さで

数秒とも数分とも取れない微妙な時間だけが通り過ぎる。

 

良い所までは、来ている。

交渉ごとに向いている、利口で、回転の速い、賢い人間である。

この世界には存在しないが、真理と言う白い扉の向こうの世界では『賢いガキは云々』と言われる程の頭脳を有しているであろう。

しかし

詰めが甘いと言うか、表裏が無いと言うか、正直と言うか…

 

 

何 故 こ こ で 手 の 内 を 明 か し た !!

 

 

()()()()取引をするのではないのか?!

()()()()っサスケの所在を巡って取引するんじゃないのか?!

お前、一応里の中枢で情報を集めて、狸とムジナ相手になんか薄暗い事してたんじゃないのか?!

何の為にお前の口は付いているんだ!!

この!!

借りにも!!

『うちはマダラ』を騙れる輩から、更なる情報を引き出すためではないのか?!

目的が相反するから交渉に来たんじゃないのか!!

今迄の応酬は何だったんだ!!

饅頭が欲しいから正直に饅頭を買いに行くならまだしも

敵に饅頭をねだりに行くような交渉があってたまるかっ!!

 

もう取りあえず、この返答により、真の目サクヤが、()()に交渉取引に向いていないのは、火を見るより明らかになってしまっていた。

 

 

「じゃあ、サスケへの説明はあんたらの好きなようにしてくれ。

存在を明かすのもよし、ほのめかすのもよし、隠すのもよし。

『暁』と三竦みになるのを防げれば、あとはどうでもいいしな。」

 

続けられた言葉に、自称マダラは、呆れてモノも言えない。

もしここに綱手やシカクが居たら、頭を抱えて唸っているであろう程、交渉下手だ。

自称マダラの呆れてモノも言えない姿にサクヤは、何を満足したのか、チャクラを錬り、さっさと帰る準備までし始めている。

 

自称マダラは何か黒幕らしく、物騒な忠告をする事を諦めた。

 

 

「もうそれでいい……かえれ。」

 

「んじゃ、そんな感じで!」

 

 

去り際、にこにこ手を振っている姿に仮称マダラは、声なきツッコミを飲み込み、姿が消えた後、やっとため息が出た。

 

 

「あいつの相手は今後ゼツにやらせよ…」

 

 




明日も仕事だぉ…
前後不覚だから修正しても許してぉ…


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120

猛スピードで進む森は、緑が生い茂り、少しの湿気と、土の匂いで溢れていた。

忍びである『鷹』の御一行が砂埃など立てるわけもなく、只粛々と前に進む。

木立の中を気配薄く進む姿は、誰の目にも映っている筈が無かった。

何故なら常日頃ここら辺を警戒している『木の葉の忍び』は里の復興の為人員を里に取られているからだ。

此れならちょろいと感知タイプの香燐は、サスケに的確に誰の目にも映らない道を示していく。

 

しかし、世の中にはハプニングが付き物だ。

 

 

「ハーーイーーーー!!」

 

 

軽やかな声に、粘着質な気配を漂わせ

その白い人間の様なものは、木の葉に向かっていたサスケ達の前に現れた。

 

サスケはその姿に身構えるが、あまり強そうでは無かったので、

取りあえず土遁っぽいから、千鳥で攻撃を仕掛けた。

 

兄弟であるイタチならば、そんな単細胞な攻撃を仕掛けるはずは無いが

最悪にもサスケは事、戦闘に関してのみ、たとえ一時でも師事していたサクヤの癖を受け継いでしまったらしく

 

とっさの判断が結構適当な仕上がりになっている。

 

恐ろしい事に、仲間である鷹の3人はその判断にカリスマを感じているが、この癖は経験と運任せの“最悪な癖”である。

その最悪な癖のせいで、『はじめてのおつかい!!~暁編~』で苦戦を強いられ、油断を呼び、贋作の人柱力をつかまされた事を、彼らはまだ知らない。

しかし今回、その“最悪な癖”は見事に当たったのち、あらぬ方向へ飛んだらしい。

 

ちちちっと鳥の様な鳴き声を上げながら、サスケの予想通り、呆気なく、その白は砕け散った。

そして攻撃を機に、スピードを上げて進むサスケに、()()白色が立ちはだかる。

 

木の幹から、そのまま生えてくるように出てきた白を写輪眼で見切ったサスケは、危なげなく回避を選択し、それに合わせて後続の水月が切りかかる。

 

水月の首切り包丁は、あっさりとそれを二つに割いて、

 

 

「いきなり攻撃なんて酷いなぁ」

 

 

と次なる白を生み出した。

『にゅっ』とでも効果音が付きそうな現れ方、そして―――

 

「っ?!」

 

「2回も倒したのに?!」

 

 

―――そして、気付けば

サスケ達の周りは、白い、人らしきもので埋め尽くされている。

 

一行は急停止して、状況の確認に努める。

此れだけ人数がいるならば、感知を得意とする香燐が真っ先に気付くはずだ。

と、香燐に意識を向けるがしかし、当の香燐は冷や汗をかいていた。

 

 

「なんだ、こいつら…?!

いや、そもそも、ひっ人なのか?!

めちゃくちゃチャクラを感じにくいじゃねーか…!!」

 

人気のない方向へ進んでいたのは、人気のない方向へ誘導されていたと言う事だった…。

 

香燐の預かり知らぬことだが、この白ゼツ達は完全なる木遁分身である。

どこぞのラスボス兎が量産した、元が人間の大量生産品ゼツと違って、本当に只の『木』である。

 

更に言うなら己のチャクラ100%の『分身』や『影分身』と違って

傷口をふさぐ要領で、生きている木をチャクラで刺激し出来た瘤、いわば『癌』を、ごく薄いチャクラで動かしているだけである。

 

気配があるはずがない。

 

唯一感じられる物と言ったら『木』を操るために使われる多少のチャクラだけである

更には『木』だって生きてる。

其処ら中に流れているチャクラと混ざってしまえば、香燐は感知する事も出来ない。

他に『木』の無い所ならばまだしも、この森の中では、『自然の気配とほぼ同化している』と言って過言では無い。

 

写輪眼と言う、チャクラを『色で見る』サスケは、唯一色の違いを若干『見る』事が出来るが

残念ながらカマイユ配色とフォカマイユ配色どっちかと聞かれたら『カマイユ配色』なので、ほんのわずか、微妙に、そう言われたらそう見える位の差しかない。

 

張りぼてと言うならば張りぼてなのだろう。

しかし、術者の思う通りに動く、大量の張りぼてが、脅威にならないはずは無い。

全て襲ってきたら?

木遁分身全部爆発したら?

一体一体片づけたとして、この森を出るころには流石に体力が尽きる…

思考の渦にのまれる香凜に、サスケは声をかける

 

「香燐!! 敵は今何体だ!!」

 

「っサスケ……悪い…。

こいつらチャクラを感じにく過ぎて、私の感知じゃ数さえわからねぇっ……!!」

 

 

サスケ達『鷹』は、頼みの香燐のセンサーがダメとなり、戦闘の規模を測れない事態に陥ってしまった。

香燐は時間があれば、こいつらの気配全て感知できるのに!!と叫んで弁解するが、この危機に間に合わない事は変わらない。

 

しかし鷹一行は、何故か敵側である白い軍団が、囲むだけで何もしかけてこない事に気付く。

最初に気付いた重吾は、低い声で先程から自分たちの行き先である、木の葉方面の守りを固めているリーダーらしき白い姿に声をかける。

 

「お前たちの目的は何だ。」

 

「お?やっと聞いてくれた?

そうそう、話し合いは大事だよ。

何たって、僕ら

 

人間なんだし!」

 

 

 

胡散臭さたっぷりに、胸を張って人間宣言されては、サスケ達はその白を、人間と認め(呼ば)ざるを得なくなった。

 

 

 

―――

――

 

 

 

渓谷に並ぶ建物は、火の国とは意匠の違った建造物

岩に埋まるように建てられた家々の中で、とびきり大きい建造物こそが雷影邸である。

 

その一番上の、見晴らしのいい場所で見晴らすは雷影、とその部下であるシー、ダルイ、マブイである。

 

雷影の秘書であるマブイは、無駄に目立つ岩をカモフラージュに、無駄に目立つ建物をめり込ませている雷影邸に、思うところが無い事は無いが、秘書と言う立場的にぐっとこらえて口を開いた。

 

「木の葉の間者から、情報があったのですが

()()真の目サクヤが、木の葉を抜けたそうです。」

 

「何っ!?」

 

「へぇ…ついにね…」

 

「だりぃ…」

 

 

三者三様のアクションをした後に、雷影はかねてより、決めていた事柄を口に出す。

 

 

 

「ヨシッ!!攫うぞ!!」

 

 

 

雲隠れが、人を攫うのは時々…しばしば……良くあることで

千手の血が欲しいと思うのは何ら可笑しいことなどないのだが、サクヤが暴れた中忍試験で睨み合っていたあれから何があったのか、雷影は

『サクヤ』を雲隠れに入れる方向にシフトしていた。

 

 

 

 

 

『下忍とはいえ、ワシら雲隠れの精鋭を下し、この雷影たるワシに啖呵切れるような下忍が、木の葉に未だいるとは驚いたわ!!

流石あの金銀部隊をひきつけた2代目火影の系譜!!

だがしかし!!

あのまま木の葉にいては、しがらみが多く『真の目サクヤ』も全力を出せぬであろう!!

 

ならば!!

ワシら、雷の国、雲隠れにいる方があの『真の目』には都合がいいはず!!

何っ?!

千手系譜、それも二代目直系の『サクヤ』を木の葉が手放さない!?

ならば攫って来い!!

 

ああん?!

いうことを聞くはずがない??

流石『真の目』よ!!

なおさら攫って来いっ!!

 

扉間3兄弟に恨みが多い奴らが多すぎる?!

今更だ!!

噂に聞く『真の目サクヤ』なら顔位しか似とらんわ!!

 

今戦争が起こると財政がヤバイ?!

ぐぬぬぬぬぬ……ならば…あ奴が里から抜けるか、里があ奴を貶めるかどちらかが起こったなら、ワシらが掠め取る!!

それまでよ!!

がはっはっはっはっは!!』

 

 

 

 

 

サクヤの思わぬところで、サクヤの評価が上がっていることは多々あるが、『サクヤ自身』をここまで評価されることは中々ないので

サクヤが聞いていたら『やめてくれえええええええ!!』っと色んな意味で叫んでいたこと間違いなしだ。

 

しかしまあ、サクヤの思いとは裏腹に、サクヤが『真の目』である限り、雷の国に縁があるのは確かではある。

なにせ雷の国が『真の目』の発祥の地であるからだ。

 

 

あの扉間3兄弟に手を焼いた過去があるからこそ、最初は目がかすんだが

寧ろ、どれだけサクヤが似てようとも、『真の目』であると言うだけで、雷の国ではすべての血縁をぶった切って、『真の目』が最優先になるのが普段である。

それほどまでに『真の目』と『雷の国』は縁が深い。

 

サクヤが唯一参加したあの中忍試験で、ラリアット一発で吹っ飛ばされ、意識を失ったダルイ(推定13歳)が、現在雷影に一番近い『雷』を彫ることを許されている時点で、無駄に箔がついているが

それはダルイと、同じ中忍試験に参加したシーだけの秘密である。

 

ちなみに、あの中忍試験の後シーは、元来の真面目さと、同年代で一番強かったダルイを下したと言う好奇心が合い俟って、『サクヤ』を調べた折り、サクヤが

少年ではなく、少女で

当時8歳だった事を知り、墓まで持っていくものが増えた。

 

13歳と8歳である。

現代で言うならば、小2と中1の差である。

小2女児に、初っ端ラリアット一発で下された中一男子である。

受ける傷の大きさは想像に容易い。

 

 

 

 

「よし!!ワシらも出発するぞ!!」

 

木の葉に送ったサムイ小隊の現状を聞き、方針が決まった雷影は、連れて行く護衛に声をかける

 

「行くぞ!!

シー!

ダルイ!!」

 

感傷の暇もなく、3人は三者三様の返事を返し

雷影が突き破った窓を見下ろす。

 

 

「ハァ~~~~~~…っ

またっ…!!」

 

マブイは無駄に積み重なって行く修理費に頭に手を添える。

 

いつもの事の様にシーはその窓から飛び降り

ダルイは扉から雷影邸を後にした。

 

 




私だっで自宅待機じだい゛。


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121

「サクヤさん、これからどこに行く予定なんですか?

先程から合流地点である蝦蟇の里から離れていくようですが…」

 

 

サクヤの腰元についた竹筒から出て、サクヤの肩口に留まるドンは、不安そうに、サクヤに問いかけるが、サクヤはやり忘れたことがあったとしか返さず、その姿は焦っているようだった。

 

なにか、重大な事を忘れてしまったのであろう。

ドンは自分をそう納得させ、その行く先に思いをはせた。

 

 

 

―――

――

 

よれよれの、しわしわの、ぼこぼこで、顔を腫らしたナルトが帰ってきた時、カカシは

意外性ナンバー1のナルトが、またやらかしたことを察知した。

 

しかし、話す気が全くないのは見て取れたので、サイに声をかけ外で事情を聞きだす。

 

 

「ナルトとサクラと、サクヤさんの事を話していた途中、サスケくんの名前を出したら、雲隠れの使いに絡まれまして

ナルトがサクラを庇って、雲隠れの使いに『サスケの情報を教える』と嘘をついて、報復に会いました。」

 

 

案の定である。

 

 

カカシはサクヤの何を話していたかを聞き出し、そう来たか…と思考をめぐらす。

サイと共にテントに戻り、手酷くやられたナルトに声をかけるが、その心は折れてはいないらしく、次は『雷影に会いたい』とのさばる。

 

その真意を聞こうと声をかけるが、その声はヤマトの声にかき消された。

が、その声も、ナルトの言葉に止まることとなる。

 

「4代目に会ったんだ。」

 

 

その言葉に純粋な驚きと、4代目の知恵の深さ、そして少しの羨ましさがあった。

そしてナルトの発した言葉に、カカシは何かがつながった音がした。

 

『四代目が教えてくれたんだ。

16年前の九尾事件は“暁”の面をしてる奴がやったって!!

それに四代目も手が出ないくらい強かったって!!』

 

 

 

 

「里に恨みを持ち、里を抜けたうちは一族で、九尾を口寄せできるのは“マダラ”位だ。」

 

一瞬過った白に、カカシは頭を振る。

サクヤの口寄せから出てきた九尾のチャクラ、話を聞いてサクヤが発した『うそーん』は素であった。

信じるには、いささか心許無いかもしれないが、必ずナルトに返すと約束している限り、サクヤならば返すとカカシは信じている。

 

それに九尾襲撃の当時サクヤは忍びにもなってない子供だ。

父である作間さんは死んでいたし、叔父のサザミさんは、あのバケモノと対峙しているのをこの目で見ている。

 

 

“マダラ”を知らないナルトに簡単な説明をしながらカカシはこれからの予定を立てる。

 

「サイ!

火影にはお前が連絡をしてくれ。

ナルト!

四代目はお前になんて言った?」

 

困惑するナルトに言葉を続けて、4代目の面影を感じる金色を見つめる。

 

「俺を信じてるって…言ってくれた!!」

 

良し!!と頷くと、カカシはヤマトに仕事を押し付け、ナルトの監視をくぐる方法にあたりを付ける。

 

ナルトが、『サクヤ』からいったん離れてくれてありがたい。

と4代目に感謝しながら。

 

―――

――

 

サクヤは焦っていた。

途轍もなく。

 

林の国で白狐に会う前、サクヤは有る計画を企てていた。

『ダンゾウに恨みを募らせている者たちを使った連続奇襲』という、えげつない計画を―――…

 

その為に態々各国に出向き、『般若衆』などのダンゾウに捨て駒に使われた小さい忍び集団や、ダンゾウに嵌められ、後に引けなくなり戦争を仕掛けるしかなくなった『小さい城』を煽ったのだ。

()()()()()()()()、ダンゾウの情報をたんまりと持って。

 

 

木の葉の里でのダンゾウの仕事と言えば、相談役と言う物もあるが、ダンゾウのお抱えの『根』の特性を利用しての怪しい国、組織、団体を発見し、火影に助言する事がほぼだった。

 

そして、その助言の真意を精査するのが、『コマ』の役目であった。

残念ながら、サクヤの鼻の効き具合は、暗部ではぴか一であった。

あのカカシをも下すほどにぴか一であった。

 

無駄にある知識、無駄にある情報、無駄にある体力。

すべてがサクヤの希望を打ち壊した。

特定の班に所属しておらず、無駄に班を転々としていたのは、ダンゾウの情報を、ほかならぬサクヤが全て精査していたからである。

 

悲しきかな……

こうしてサクヤはダンゾウのやり口も、思考も読めるようになってしまったのだ。

 

 

 

海に潜っていたひと月が有れば、サクヤのえげつない計画を知る、棟梁の懐に忍ばせたドンが、各地に辿り着いている筈である。

したれば、ダンゾウが木の葉を出発したと同時に、木の葉のドンが一匹消えれば、あとは各々が予定通り動くかどうかの問題である。

 

 

しかし、サクヤは焦っていた。

それも、途轍もなく。

 

何故なら

 

肝心要の林の国の『般若衆』に釘を刺すのを忘れていたから。

 

 

いや、そもそも、怨み、辛み、哀惜あれど

国も、里も、城も違う人が、サクヤの言う通りに動いてくれるとか全然考えていなかった。

だからそれも織り込んで、ロスや、巻きを計算していたが、

サクヤはまさか、己の奇襲ポイントを間違えてくれるとは思わなかった。

 

『林の国般若衆』が『地図を読めない衆』とサクヤの頭にインプットされたところで、事情を察していないドンが不安そうにサクヤを見ていることに気付く。

 

 

「大丈夫だ、修正は効く。

()が修正すれば問題ない。」

 

そう言って、微笑みサクヤは影分身をする。

 

 

 

サクヤは激怒した。

必ず、彼の邪知暴虐の『般若衆』を除かなければならぬと決意した。

サクヤには政治的取引が分からぬ。サクヤは只の忍びである。影を忍び、情報を集めて人を殺してきた。

けれども裏切りに対しては、人一番に敏感であった。

未明、サクヤは海溝を出発し、野を越え山を越え、いくらも離れたこの地面に帰って来た。

サクヤには父も、母も無い。生まれてこの方彼氏もいなければ、今は唯一の血縁者もいない。

ただ、馴染みのピンポンと、こちらを不安そうに見つめるドンがいた。

 

こんな事で計画をおじゃんにされ、死ぬつもりはない。

死ぬのはせめてすべてを成してからだと、サクヤは猛スピードで走りながら、ドンに現状を説明した。

そして、結論を話す。

 

「林の国『般若衆』の本拠地に仕掛ける。

ポン。」

 

「はい…。」

 

「これから片っ端から般若衆に付けたマークに転送させる。

“当たり”を引いたらこう言え」

 

 

 

『たしか今の本拠地、――でしたよね?

…襲われていますよ?』

 



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122

おかしいな…こんなに話を積む予定は無かったはずなんだけどな…
あっと言う間に120話過ぎたよ…。
忙しすぎて特に何も考えてなかったので連投で許してくれ。


「だーかーらー!!

もう少し待ってって言ってるでしょ!!」

 

白い人間と思しき者に足止めを食らい、更にはその口調にイライラしている鷹の御一行に

その指示は余りにもあやふやだった。

イラつくサスケが飛び出そうとしたその時、サスケの知る低い声が鷹一行を止めた。

「今木の葉に行っても無意味だ。」

 

 

急に、場に現れたオレンジに、香燐は驚きを隠せなかった。

白い奴らでも、まだ少しは予兆なり何なりを少しはつかめるのに、このオレンジは気配も、チャクラも無かった。

まるで本当に急に表れたかのようで、うちはマダラの底知れない強さを感じる。

 

 

「今更何の用だ。

俺たち鷹は暁を抜けたはずだ。

お前らには用は無い。」

 

人が増えるのはもう飽きたとばかりに、サスケがマダラに喧嘩を売る姿に

終にやったか…と水月は口笛を吹く。

 

しかし、暁には暁の掟があった。

 

「暁を裏切れば死んでもらう。そう言ったはずだ。

だがお前ら俺との約束を裏切った。」

 

「何の話だ。尾獣は渡したはずだ。」

 

確かにサスケ達は尾獣を渡した。

倒したはずだ。

しかし

 

「あれは変わり身だ。」

 

 

八尾の身代わりをつかまされていた

1つ訂正するなら、彼ら『鷹』は無能では無い。

香燐のチャクラ探知は切り株から現れるゼツの予兆を感知するぐらいには優秀だし

サスケの写輪眼も偽物と本物を見分けること位容易い。

 

しかし、八尾達の方が、強く、賢かった。

 

ただ、それだけだ。

サスケ達の方が弱く、経験も無く、疲弊していた。

 

「正直、お前らにはがっかりだ。」

 

マダラの言葉に水月がキレる。

強者の矜持、プライドがそれを認めないのは分かるが、それが青さを、未熟さを決定づけている。

ならばどうしろと言うのだ、という難癖にマダラはチャンスを見せつける。

 

「いや、暁として、キッチリと仕事はしてもらう。別の用事でな。」

 

「断る、と言ったら…?」

 

「裏切りには死を。」

 

 

その一言に一息を置いて、サスケは鳥の音と共に放電した。

 

「押し通る」

 

 

 

しかしマダラは不思議な事に、当たっているはずの攻撃をすり抜けた。

鷹一行が驚き、思考が止まったのを皮切りにマダラは浪々と語る。

 

 

「だから()()木の葉に向かっても、無意味だと言っている。

 

……木の葉隠の里はもうない。」

 

 

 

「どういう意味だっ!!」

 

サスケはその真意を測れなかった。

それはそうだ。

サスケの目的である、兄を、()()()()()()()()()()木の葉が、()()と言うのだ。

 

 

 

サスケの目的がつぶれてしまった危機感か、どういうことだよ!!と香燐が声を上げる。

しかし、そこに新たなカードが現れる。

 

「ソレハ オレガ 説明シテヤル」

 

 

 

新たな刺客に殺気立つサスケたちに、マダラは安心しろと声をかける。

あの白い奴とチャクラは似ているが、あれらより断然気配が濃い…

香燐はとっかかりを掴もうと、この話し合いの間に、慎重に、じっくり気配を覚える。

 

「火影は誰がなった。」

 

「“ダンゾウ”ダ」

 

「あいつの所在は。」

 

「無理ダ

時空間忍術ハ 追イニクイ

アト、“ダンゾウ”ガ“真の目サクヤ”ヲ抜ケ忍トシ 追イ忍ガ 放タレタ」

 

「大方予想通りだな…。」

 

 

サスケは『新しい火影』、聞き覚えのない『ダンゾウ』の言う名前、そして急に飛び込んできた『真の目サクヤ』『追い忍』の言葉に困惑する。

困惑を見切ったマダラは、さらに捕捉を加える。

 

「ああ、言って無かったな。

“ダンゾウ”はお前の兄を追いつめた木の葉の上層部の一人で

“真の目サクヤ”は友をその茨の道に引きずり込んだ、張本人だ。」

 

「どういうことだ?!

木の葉で何があった…?!

何であの馬鹿がっ?!」

 

 

いともなさげに、仮面は騙る

 

「俺の部下のペインが木の葉を潰した。

そして、真の目サクヤが数か月前から世界から気配を消した。

先程あの小娘に会ったが、『五影会談』で何か大きい花火を上げるらしい。

暁の計画をどこから手に入れたのか釘を刺されてしまった。」

 

 

次いでとばかりに五影会談の話を付け加えてマダラはサスケに判断を迫る。

 

「里から抜けた“真の目サクヤ”のターゲットは、十中八九ダンゾウだろう。

でなければ、あのタイミングで抜ける意味が解らん。

あいつら狛犬は火影贔屓で有名だからな、気に入らないダンゾウが火影になってもらっては困るだろう。」

 

サスケは

暗に『お前が殺さずともサクヤが殺せる』と急かし、『今しかない』と発破を掛けるマダラの術中にハマってしまう。

 

 

「行先を変更する。」

 

 

矛を収めたサスケの視線の先は

 

「五影会談で“真の目サクヤ”より先に“ダンゾウ”を殺す。

あの馬鹿はそれからだ。」

 

 

五影会談だ。

 

 

 

 

―――

――

 

突然現れた、いけ好かない小娘の使いは、とんでもない言葉を発した。

 

サクヤが林の国を旅立ってから、何度か本拠地を変えている筈で

もし、このような間者が居ようとも、般若衆にいる感知タイプや、本拠地を変える度に行う般若衆特有の感知結界はごまかせないはずだ。

 

そのはずだった。

 

 

『たしか今の本拠地、――でしたよね?

襲われていますよ?』

 

 

続いて、独自の伝達方法で飛んできた情報に、般若衆は更に目を剥く事になる。

 

「首を握られました!!

本拠地占領済みでっ

要求はっ……けっ『計画通り動け方向音痴ども。』だそうです!!」

 

伝令の者の言葉に、隊長の額には怒筋が浮かぶが、伝令に怒鳴っても仕方がない。

其れよりも先程の白々しく嘯いた口寄せに怒りを向ける方が早いと、視線が白色を探すが、その姿は、影も形も無かった。

 

『計画』と発したからには、あの小娘で間違いないだろう。

そして『方向音痴』だと()()()()()()()()()()、これだけだろう。

次は無い。

 

「チッ…」

 

突然現れて、こつ然と消える手際の良さに、大きな舌打ちを打った隊長は苦渋の決断をする。

ここで『ダンゾウ』を討てれば手柄は全て自分のはずだったが、頭たる『首領』を人質に取られてしまっては、自分を評価する者も、価値も何もない。

報告する先がないのは、ダンゾウで飽きた。

 

「B計画を諦める…。

各位、元のA計画に戻れ。」

 

 

 

物陰から様子をうかがっていた棟梁のチャクラを持つピンと、サクヤのチャクラを持つピンはそれぞれ分裂し、

それぞれ、報告すべき相手へと消えた

 

 

―――

――

 

妙に連携のある、小国の忍び達の攻撃に、ダンゾウは訝しむ。

お供である。フーとトルネでさえも違和感を感じている。

 

「…ダンゾウ様が表に出たからと言って、こんなにも早く情報が回る物なんでしょうか?」

 

フーが違和感を言葉にすると、トルネは更に考える。

 

「ダンゾウ様、もしかして…」

 

 

トルネの出した答えにダンゾウは肯定を返す。

 

「あ奴が来る。

心しておけ。」

 

 

久しく見ていない白を懐かしむ間もなく“これ”であれば、会うのも近いであろうとダンゾウは予測を立てる。

姿を見せてはいないので、五影会談前にけりをつける気はなさそうだが…

 

「会談が始まってからが肝だ。ワシはチャクラの温存をする。

フーとトルネはこのゴミを片しておけ。」

 

しかし

意図も容易く片づけられていく忍び達のように見えたが

何故かこちらの情報を詳しく知っているようで、無駄に時間がかかり

最終的にはダンゾウの『目』が使われるが、使った途端に襲撃が止んだ。

 

 

丁度あの馬鹿の計画が止まったらしい。

そう納得しで先に進む。

フーは去り際に周囲の気配を探ったが、自分達以外に生きている者は人っ子一人いない。

 

「進むぞ。」

 

トルネが遅れているフーに声をかける。

 

 

少しの違和感と共に3人はまた歩き始めた。

 




3連休がほしいな…(›´ω`‹ )


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123

糞みたいに忙しいが、ギリギリ生きてます。
会社よ……頼む…新しく人を雇ってくれ…
このままだとブラックまっしぐらだぞ…


「ナルト

出発する前に、話さなきゃならん事がある。」

 

 

 

雷影に会うために、すべての準備が整った時、カカシが神妙な顔をしてナルトに話しかける。

しかしナルトは、何故かカカシの言葉の続きを拒否した。

 

ナルトとカカシとテンゾウの3人は、木立に隠れるように顔をあわせていた。

里を出る許可を取っていないので、完全なるお忍びだからだ。

 

「サクヤ姉ちゃんの事なんだろ。

俺ってば、馬鹿だから……サクヤ姉ちゃんが何を考えて、どうしてこんなことをやってるのか分からないけど

でも、俺は…」

 

ナルトの言葉は弱弱しい。

ヤマトは、下がった視線を痛々しく感じ、つい口を出しそうになったが、しかし

その『目』に、何も言えなくなった。

 

 

「サクヤ姉ちゃんの口から、全部を聞きたいんだってばよ。」

 

 

ナルトなりに、考えた結果だった。

 

キバから知らされた事、カカシから聞かされた事、サイから聞いたこと、そして

ナルト自身が幼い頃から『サクヤ』と関わって感じたこと。

 

 

きっとナルトが見てきたサクヤは、『サクヤ』の一つの側面でしかないのだろう。

それでも、ナルトが今まで見聞きした中でそれが、一番信憑性がある情報だった。

 

笑い合って、喧嘩して、泣いて

カカシ達と比べれば、相まみえた時間は遙かに少ないのかもしれないけれど、色々な事をサクヤと話し、経験し、共に生きた。

ナルトにとっての今までが、全て、嘘だとは思えなかった。

 

だから、本人に問いただす事にしたのだ。

絶対に会えると信じて。

 

何故か分からないが、ナルトはこのまま進めば、サクヤに会えると思った。

あの神出鬼没のサクヤに、何れ会えると思えた。

それが根拠のない自信でも、このまま『ナルト』と言う道を進めば会える気がするのだ。

 

 

 

カカシはナルトの瞳に静かに萌ゆる『火の意思』を見て、小さく息を吐く。

成長を感じた。

確かに自来也と旅に出た3年を経て、成長したと思う。

だが今は一番、『心』が成長したように感じた。

 

『心技体』すべてが揃って一人前の忍びになる。

自来也の旅で『体』が成長し

カカシとの修行や、妙技山で『技』が成長し

今やっと、ナルトの『心』が追い付いた。

 

 

 

テンゾウが、雷の一行の移動を確認し、声を出す。

 

「尾行を開始します!」

 

オッス!!という元気な声と共にナルト達は、木の葉を出発した。

 

 

―――

――

 

 

全滅かと、戦況を眺めるサクヤは

各国から集めた忍びの5割を失って尚、冷静だった。

 

 

自分の部隊でもなければ、有り合わせの何か特別な作戦があったわけでは無い部隊をごまんと用意しただけだったので、そのほとんどに期待して無かったからだ。

 

いわば、『己の手で復讐したい奴ら』を誰彼かまわず集めたに過ぎない。

そこら辺のチンピラよりはましだが、忍びの中のチンピラの様なものである。

なので、

 

あの穴蔵に閉じこもって何か薄暗い事をしている警戒心の強い狸が、穴蔵から出てくるタイミングを用意してやる。

他の奴らと手を組む必要はない。

このポイントから君たちは攻撃をすることが出来る。

 

と、言えば乗ってくるし、

乗ってきた奴らを、宛ら流れてくる寿司を待つ客の様に、配置をしただけである。

 

一見簡単そうに思えるが、『木の葉のダンゾウ』という人物の所在地や、通るルートを正確に()()できる人間は、現状『真の目サクヤ』しか居ない。

 

3代目直属の暗部で培った、技術…?と言うべきか怪しい何かを、サクヤは十全に使う。

 

(ホント…これって、復讐以外どこで応用できるんだよ……。)

 

3代目の采配がすごいのか、サクヤの無駄なスキルがすごいのか何とも言えない所だが

そんなしょっぱい何かを味わいつつも、サクヤは冷静に

半分撃破されのこのこと帰って行く忍び達に、手土産として情報を流していく。

 

 

『木の葉の綱手姫は、未だ生きているらしい。』

 

 

チンピラでもヤーさんでも、なんちゃってでも、一応彼らとて『忍』。

戦闘でダメなら、『マジで火影になってしまう前に、不祥事暴露して、その座から引きずり降ろして、木の葉内々で処理してもらう』作戦位思いつく。

 

成功率は置いておいて。

 

 

その中に良い情報でもあれば

針孔を、クレーターまで広げてやる位の甲斐性はサクヤにはある。

 

針の先程の期待だが。

 

 

 

さて、とサクヤは立ち上がる。

サクヤは、今日集まる役者の最後の一人である、雷影が堂々と建物に入って行く姿を見つめた。

 

 

「びえっくしゅぉおおい!!

…あ゛ぁぁ……さむ……。」

 

 

締まらないくしゃみをして、サクヤは鼻をすする。

ダンゾウはもう、三狼の籠の中だ。

 

―――

――

 

深々と降り注ぐ雪、凛とした室内に恐ろしく響く声

色も音もすべて吸い取られたのではないのか、と思うぐらい白い外に対して

室内は色鮮やかであった。

 

鉄の国 大将

ミフネ

 

火の国 木の葉隠の里 火影

志村 ダンゾウ

 

水の国 霧隠れの里 水影

照美 メイ

 

雷の国 雲隠れの里 雷影

エー

 

土の国 岩隠れの里 土影

オオノキ

 

風の国 砂隠れの里 風影

我愛羅

 

「五影の笠を前へ…

雷影殿の呼び掛けにより、今ここに、五影が集った。」

 

ミフネの声を皮切りに、各国の影達は各々傘を前に出す。

この、歴戦の強者しか居ない空間で始まるは

 

 

「これより、五影会談を始める。」

 

 

五影会談である。

 



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124

五影会談開催の地、鉄の国、三狼の中

それぞれの垂れ幕に気配を纏わせ、影たちが向かい合う。

風の文字が揺れると同時に、赤髪の青年が口を開いた。

 

 

「オレから話す。聞け。」

 

主導権を握るには、第一声がインパクトのあるモノでないとならない。

人は、印象に残らなければ見向きもしない。

 

 

「随分と五影も様変わりしたのォ」

 

このように、インパクトを手に入れられなかったものが後から何を言ったってガヤになるだけである。

 

完全に出遅れた土影は、今回の五影会談ではガヤになる気満々であった。

何故ならこの五影会談に参加する気は無かったからだ。

元々人柱力を奪われても問題ない国富を有する国であったし、それ以上に、今回の五影会談の中心である、"暁"の事に関して突っ込まれなくなかったからだ。

しかし、雷影が腰を上げたせいで、初めから五影会談を呼びかけていた砂はもちろん、そこに迎合する様に火影、水影が五影会談に参加する事になり、ここで拒否しても何か勘繰られると考え、なし崩しに参加するしかなかったのだ。

 

ここで何か大きな口を叩くと、これ幸いに突っ込まれ、土影の立場というか、尊厳が危うかった。

いかにしても、この会談を乗り切らねばならない。

 

いっそここに隕石でも落ちて来てくれたら、日が悪かっただのなんだの言ってのらりくらり躱せるのに…と考えてしまうのも無理はないだろう。

 

「土影様、チャチャを入れないでください。」

 

にべもなく、水影にガヤを詰られたのでいったん黙る事にした土影をしり目に、風影は、淡々と身の上を話し出す。

しかし息づきに開いた間に、また土影がガヤを入れ、このままグダグダと続くのかと辟易する雰囲気の中

一瞬で、大きなチャクラが錬られ、机に叩き付けられた。

 

 

「グダグダといいかげんに しろ!!!」

 

ドゴッ

という音と共に雷影の拳が机を破壊し、天幕から影を守らんと残像達が動く。

 

一触即発

 

揃い踏みの中、獲物が動くかと思われたその一瞬に

鉄の国大将 ミフネが口を挟んだ。

 

 

 

「ここは話し合いの場でござる。

礼を欠いた行動は慎んでいただきたい。」

 

 

冷静な言葉に、火影を初めとした影達は、己をさえぎる部下を下がらせた。

この場でそれを抜くのは『恥』であると、開催地である鉄の国大将ミフネに言われてしまっては、里を背負う物である影は下げざる負えない。

 

そもそも、影と相対するに当たって、部下は肉壁位にしかならないものである。

それ程『影』と言う者は抜きんでていた。

 

今は、それ(部下)の使い所では無かった。

 

 

―――

――

 

「木の葉! 岩! 砂! 霧!

お前らの里の抜け忍で、構成されとるのが”暁”だ!」

 

各々の場所に戻り、落ち着きを取り戻した空間に雷影の声が響いた。

お前は言葉の端に『!』が無いと話せんのかと、岩影は呆れた目を向けるが

ここで、一番突っ込んでほしくない所に話しを持っていかれた。

 

「それだけでは無いぞ!

前任者の影も含めたお前らの中には、暁を利用してきた者がおることも、調べは付いとる!!」

 

大変に痛い所を突かれたが、ここで顔に出さないだけ岩影は賢く、強かだった。

 

戦争は金を喰う。

軍備、兵器、そして何より『人件費』がかかる。

人件費と一言に言ってもその中には『衣食住』も含めば『教育費』『生産ライン』など人が生きる為のライフラインまで含んでいる。

それは戦争に勝っても負けても付きまとう物だ。

 

この、必要経費と言うべきものまで削らないとならない程に、今『里』と言う物は軍縮を迫られている。

 

平和が続いているからとか、しょぼい任務しか無いからだとか色々あるであろうが

その大きな要因は元に帰れば『忍界大戦』に在った。

 

第3次まで続いてしまった忍界大戦は、『国』を消耗させるには十分であった。

 

国だって

民の声を無視していいように金を絞り出せば――

必要経費を別に回せば――

他の国から奪えば――

手段をいとわないのであれば、出せるだろう。

だが、そんな国に人が住めるかと言えば、無理である。

簡単に資金を繰り出せるかと言ったら、そうでは無いのが常だ。

 

しかし、軍縮に当たってあるリスクが浮上してしまう。

もし、軍縮により戦力が落ちている状態で、『戦争』が起きてしまったら?

 

他国から攻撃されてしまったら?

 

「そのリスクを回避する一つの方法が……、”暁”だったということか。」

 

どの国にもそのリスクはあった。

だから岩同様に、砂も、霧も、木の葉だって、軍縮の憂き目に会っている。

『雷』が軍事開発を辞めなかったことは、それも一端にある。

 

雷影が声を荒げ、糾弾するも、どの里一つに絞れるはずもなかったのだ。

それが暁の、『長門』の狙いだったのだから。

()()で戦争が無くなる予定だったのだから。

 

長門の野望のおかげもあって、各里は疲弊しているに等しかった。

それだけ長門の考えた『戦争をなくす方法』は革新的で

暴力的な物だったのだ。

 

逆上する雷影に、だんまりを決め込んでいた火影が声をかける。

やんやと前置きが続くが、その後の言葉に、名前に、驚きを隠せなくなる。

 

「”暁”のリーダーはおそらく、『うちはマダラ』だ。」

 

 

死んだはずの名前が挙がった。

死んでなかったとしても、もう現役では無い年齢の名前が挙がった。

 

しかし

いくら有りえない理由を上げようとも、それを如何にかしてしまえるほどの、名前が挙がってしまった。

 

その名前にミフネは意を決して声を上げた。

 

「中立国の長の立場から言わせていただこう。

“暁”のリーダーは次代の流れを読んでいた…

国々の安定…そして国々の不信感の隙を突き力の拡大を謀った。

このままでは鉄の国も…」

 

かつての『侍』の世界から『忍び』のはびこる世に変わって、鉄の国が未だ残っていられることこそが奇跡だった。

そこには様々な苦節苦難があっただろう。

たとえミフネ以前の世代の話であろうとも、ミフネ達、鉄の国の侍にとっては無視できる問題では無かった。

 

「しかし、災い転じて福となす。

五影が全員そろう事も、滅多にあることではない。

どうであろう……

”暁”を処理するまでの間、世界初の五大隠れ里…

 

『忍連合軍』をつくってみては 」

 

 

ミフネの言葉にそれぞれの思惑が交差する。

連合軍と成れば、指揮系統は統一するのが望ましく、混乱が少ない。

そしてこの中で、決定権が唯一あるのは

 

「あなた方だけでは揉め事になる……

それゆえ中立国の拙者の立場を尊重して頂いたうえで、拙者が提案したい。

この五影の中で誰が適任なのか。」

 

火の国、火影のダンゾウは確信を得た。

これで5代目の時代は終わり、6代目である己の基盤は安泰であると。

 

 

「火影に、忍び連合軍の大権を任せてみては如何か?」

 

 

粛々と受け入れる火影に待ったを掛けるのは雷影だが、先程の一撃で粉砕された机を指差されては、どうしようもなく

風影は若く頼りなく

岩影は逆に年を取り過ぎた

水影は暁発祥の地であるとして信頼がおけない。

そして、消去法で残ったのが『火影』だったと言う事だ。

 

しかし消去法で、忍の行方を担う『大将』を、決めてもいい物なのだろうか?

 

―――

――

 

どうにも違和感をぬぐえない者が居た。

唯一、この中で『白眼』を持つ霧隠れの『青』は、白眼を発動すると同時に、後輩である長十郎に声をかける。

青にはその決定が、思慮深い侍の長である『ミフネ』の言葉とは思えなかった。

 

 

「火影殿

その包帯の下の右目を見せていただこう!!」

 

注意深く、白眼を発動したまま水影の後ろで事を見つめる青の言葉に影達は何事かと疑問符を投げかけた。

 

「その右目……うちはシスイの目を奪って移植したようですな。」

 

先の戦争で、青は『うちはシスイ』という天才のチャクラを見ている。

そしてその瞳術のすさまじさも

 

シスイの瞳術は幻術の中でも稀な、『認識の齟齬』を『隠す』事に特化している

『隠す』事に特化しすぎて、幻術をかけられた者は操られている事にすら気づかない

 

 

「――瞳術でも最高クラス!!」

 

 

青の言葉に視線がダンゾウに向かう。

『闇の忍び』と言われたダンゾウに、言い訳はできない。

それだけの実績がある。

更に青は『白眼』を持っている。今更言い逃れは出来ない。

不正が明らかになり、このまま連合軍の話がとん挫する事になるかと思われたがそこに

 

邪魔が入った。

 

 

「ハロー~~~~~~ぐぼはっ」

「はい、お疲れさん。」

 

 

それも2度

 

白い棘を持つ生き物が床から生えたかと思えば、上から白い装飾の忍びがクリーンヒットし、一瞬で燃やし尽くした。

まったく、忍べよ。とばかりに潰して燃やしつくした跡を眺め呆れたため息を晒す忍びが、三狼に集まっている忍び達の視線に気付いた。

 

 

「あ、ども。

そこの……うちはシスイから奪った別天神使って、印象操作なんてみみっちい事したけど、白眼なんていう身から出た錆に種を暴かれて、己の信頼どころか、中立国である侍の株まで落とした『志村ダンゾウ』をサクッと殺しに来ました、真の目サクヤです。

よろぴく☆」

 

各里の影達を前にしての殺害予告、完全に舐めてる口上、そして仮にも火影であるダンゾウに中指を立て、煽ってる姿は、聞きしに勝る

紛れようもない『真の目 サクヤ』そのものだった。



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酷薄なる対戦編
125


今年の投稿数が滅茶苦茶少なかったから、明ける前に投稿しようとか思ってたけど、明けちった。
みんご

PS,表題wwww付けるの忘れたwwwww


突然床から生えてきた、妙な出で立ちの白い生き物

を燃やした、とても見覚えのある白い影

 

見紛う事なき敵襲の2コンボに、影に付き従う者たちが慌て上司の前に肉壁として立ちはだかるが、かわいそうな事に雷影に限って、その壁は意味を成す事が出来なかった。

 

 

 

「真の目サクヤあああああああ!!」

 

サクヤの言葉のあと、間髪開けず雷を纏った雷影がサクヤへと攻撃する。

とんでもないスピードで飛び出した拳を受けるかと思えば、サクヤの体は白く燃え上がる。

勢いを殺し切れなかった雷影は、すわ燃えるかと構えたが、火傷一つ負わずに、勢いそのまますり抜けた。

そしてその白は雷影に一瞥もくれず言葉を発する。

 

「あんたの弟を殺したらしい『うちはサスケ』が、この建物内に侵入しているらしいぞ?

行かなくて良いのか?」

 

「なんだとぉぉおおおおおお?!」

 

突然の言葉に各里がどよめく中でも、雷影の声は良く響いた。

そしてこの会談を開くきっかけになった『うちはサスケ』の名前は『真の目サクヤ』より、雷影の琴線に触れたらしく、激情し雄叫びを上げている。

サクヤはその五月蠅い姿に一瞥もせず、腰に添なう竹筒のふたを開けた

 

 

「場所は。」

 

冷静な声に、竹筒から現れた白い影は答える。

 

「一階、東の天井付近。4人。

うち一人感知タイプが居ます。以前見たあのうずまきの子でしょう。」

 

あまりに早い状況報告に影達は、随分と前からこの狐はこの国に潜り込んでいた事を知る。

管狐の言葉に雷影が最短で答えを出した。

 

「っシー!!ダルイ!!行くぞ!!後れを取るな!!」

 

目の前の餌より、誰かに先を越される可能性のある『うちはサスケ』への復讐の方が優先順位が先だ。

サクヤは、がやがやと、この五影会談の開催国である鉄の国の侍たちが動き出す姿を視界の端に捉え

しかし、その背が飛び出す前に声をかける。

 

「まあまてよ」

 

そう言うとサクヤは竹筒を今にも飛び出す雷影に向かって投げた。

危なげなく受け取った雷影は訝しむ。

真の目にとっての相棒を、投げ渡すということは…

 

「もってけ」

 

「貴様、これを渡すと言う事はっ!!」

 

「ああ、そうか。雷の国だったか…じゃあ真の目にも詳しいよな。

そう、そいつは管狐だ。

増えたり、化けたり、火を吹く狐。

真の目の管狐がどういう物か分かってるなら、蓋が開いたままのそれを受け取った時点であんたはもう、()()()()()事も察しているだろう?」

 

管狐は生き物に取りつき、チャクラを貰うからこそ生きている。

それゆえに、ある一定の層からは、幽霊やバケモノ、妖とも言われ、山奥の閉鎖的な集落では管狐を連れている者を付き物とも呼んでいた時代があった。

その一端で差別用語として、孤児の集まりである真の目を、真の目の管狐を触ると『憑かれる』とも言われる。

しかし、真の目が大人しくその差別用語で傷つくわけもなく、そんな面白く怯えてくれるならば…と積極的に使ったがゆえに、『憑く』は真の目が相手を挑発する際によく使われる常用句である。

 

「雷影様!」

 

サクヤの言葉に側近のシーが声を上げるが、雷影は意にも介していなかった。

あの、真の目が

自分の身内ともいえる管狐を自分に渡したのである。

 

「がっはっはっはっはっはっ!!」

 

まるで笑いが止まらないかのように大きな声で胸を張り、笑う姿は敵を前にする姿では無かった。

コレ(管狐)に殺意が含まれていようとも、何であろうとも、身内である管狐を取りに帰ってくることは明白であった。

 

 

うちはサスケを殺して、真の目サクヤが手に入る。

 

 

どちらにも手が届くとは強運である。

それに比べたら、ちょっとばかし呪われるぐらい些細な事だ。

 

「このワシにそんな猪口才手が通用すると思うなよ?!」

 

笑い続きに、しかし獰猛に咆え、他の忍び達が生唾を飲み込んで見つめる。

雷影が向けている視線の先とサクヤは、ちらりとも合わなかった

 

「ああ。あんたに興味はない。

私が用があるのは、『志村 ダンゾウ』だけだ。

 

邪魔する者は、すべからく殺す。

 

例え『影』であろうと、忍界最強であろうと、誰であろうとも。」

 

 

サクヤの明確な怒りと共に、赤い瞳が瞬いた。

 

―――

――

 

クソッ!!あの役立たず共!!

一人デ●ズニー!! プリンセスの方!!

水素水!! 干上がれ!!

 

心の中で付けるだけの悪態をつきつつ、香燐は物陰で息をひそめる。

水月も重吾も、先程乱入した雷影の側近にやられて、今はサスケしか動けない。

そしてその”サスケ”が、香燐にとって問題であった。

 

チャクラがおかしいのだ。

 

初め雷影に襲撃を受け、一人デ●ズニーと水素水のおかげと言っては難だが、いい動きをして、翻弄出来ていたが、やはり影を相手するには、経験が足りなかった。

 

そも、『鷹』は短期決戦、襲撃向きで、持久戦や防衛戦に向いていない。

感知タイプである香燐で相手の位置を探り、重吾と水月が暴れ注目を集め、サスケがターゲットを殺す。

 

それがどうだ。

 

香燐がターゲットを見つける前になぜか雷影が正確な位置に、的確に攻撃を仕掛け

重吾と水月が錯乱する前に、相性が悪い相手に完封され、身動きが取れなくなり

サスケが雷影相手に奮闘するも、砂と侍の絶妙な援護に足場を崩され、雷影に首を吊し上げられ

体力を消耗するためあまり使っていなかった天照でその包囲網から逃げ出せたものの、追いつめられたことにかわりはなく、そして

 

そして、このチャクラで出来た骸骨だ。

 

 

サスケは骸骨の鎧を出したころから、いつものチャクラより、冷たく、禍々しく変化している。

香燐はダンゾウの居場所を見つけることが出来たが、そのチャクラの様子に話しかけられないでいた。

 

「(クソッ クソォッ!!

今ここでウチがサスケに声をかけても絶対に、正気には戻らない!!

本来の目的を覚えているかさえ分からねェ!!

重吾と水月は身動きが取れなければ、サスケは完全に雷影にロックオンされてるし、サスケも雷影の腕一本捥ぐ位のことしなきゃ、気が済みそうにねェ!!)」

 

冷たい目をしていた。

香燐の知る、あのお腹が暖かくなる様なチャクラとはとど遠い

冷たいチャクラをしていた。

 

 

―――

――

 

「さて、」

 

 

雷影が扉があるにもかかわらず壁をぶち破って出て行ったあと

砂影が心配だからとその後を追い

鉄の首領が援護を送りだした後

 

サクヤは散歩にでも行くように一歩を踏み出し、

 

「水影ってこんな美人だったんですね。」

 

 

水影を口説き始めた。

 

 

サクヤの声に構えていた水影の側近は、メガネが盛大にズレ、白眼が一瞬解け、ノリのいい岩影とその側近が綺麗にずっこけた。

その姿にサクヤはいやはやと頭をさすりながら言い訳の様に言葉を連ねる。

 

「いや~色々霧であったって真の目の奴らから聞いてて、其れなら木の葉の真の目も手を貸そうじゃないかと、色々裏から手をまわしていたんですけど、こんなにきれいな人が上に立つなら、もう少し表沙汰にして手伝って媚び売っとけばよかったなぁ~って。

こんな美人で強くてかっこいい人初めて見たから、思わず声かけちゃいました。

すみません。」

 

たははと話しかけ、賛美を送るサクヤに、水影はにっこりと笑い返す。

 

「わわわわわわたしはまままmのめがてつだってくくkれててえたことにきづいえましゅたよ」

 

「成る程、おまけに可愛いときた。」

 

ド真面目に水影を口説くサクヤに、水影はあからさまに動揺し、そのほかの影は引いてていた。

 

 

水影は口説かれたことが無かった。

女性にしては高い身長のおかげで、いくら美人でも一般人はまず道端で口説こうと思わない。

自分の身長がもう少しでも小さければかわいらしさがあったやもしれんと水影は思っているが、その顔とプロポーションの良さに、逆に大抵の男は尻込みするだろう。

更には影になる程に頭がいい。そん所そこらの人では釣り合わないと天秤にさえかけない。

水影になってからはその地位も相俟って、さらにそう言う声をかけられることは難しくなる。

 

側近の長十郎はドストレートな言葉を水影に掛けれるような度胸はないし

青は忍びに、それも上司に対してそのような言葉をかけるような浮ついた人間ではないし

その他里の者が、あの圧政を敷いていた3代目水影を打ち倒して、影に君臨した女性、それも見るからに美人な人に、分かり切った事を言うはずもなかった。

 

更に言うなら、サクヤは顔が良かった。

女性うけ方向に。

 

祖父2代目火影とそっくりな顔に、身長はヒールを履いている水影に及ばないが水影が華奢に見える程度(ゴリラも納得)の筋肉量。

サザミにより鍛えられた口説きテクに、女性に対しての紳士的な対応。

あまり笑う事のなかった2代目にそっくりの切れ長の目が、優しくニッコリと微笑みかけられれば、其処らの男性じゃ歯が立たないイケメンの出来上がりだ。

笑みを深くしたとき出来る、目の下にできる2本線のえくぼが入れば愛嬌も抜群である。

 

この顔面とテクニックでどれほどの、みたらしアンコを落としたか…

 

些か一極に偏りすぎている気がしなくもないが、残念ながら木の葉の(アンコ以外の)くノ一は、普段のサクヤを知りすぎて、キメサクヤは気持ち悪いと不評であった。

一応アンコ以外にもサクヤにどきりとして落ちた人が居るのは確かだ。

任務や見知らぬ人での話になるが……。

 

サクヤは、顔を真っ赤な林檎に変えて、羞恥に今にも泣きそうな顔をしている水影に、フォローする様に優しく微笑みかけると

 

 

露と消えた。

 

 

 

それと同時に、すぐそこにいたはずのダンゾウと、その側近までも忽然と消えていることにその場の者たちは一拍遅れて気付いたのだった。

 



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126

聡明なる読者諸君に対して失礼かとは思うが、今回は少し長い文章にて説いておかねばならない事がある。
我らが愛するダンゾウ様の頭脳に、誤解を招くような文言が、下記にて筆述されているからだ。

英明なる頭脳をお持ちの読者は、『何を今更』と、思ってしまわれる内容かとは思うが
こと、ダンゾウ様とサクヤを語る上では外せないものとなる故、お付き合いいただけたらありがたい。


ダンゾウはイザナギを使って飛び出た三狼の檻を顧みず、只々距離と時間を稼いでいた。

道中襲われた時点で救援の指示を木の葉の根に送ってはいるが、自分たちで歩いた通り時間がかかる。

それまで、持ちこたえなければならない。

時間的にも体力的にも、ダンゾウにとって厳しいものとなるが、

 

しかしこれはチャンスでもあった。

 

 

 

 

あの『真の目サクヤ』を土産に五影会談に帰れば、次こそ五影の代表に成れる。

もし代表に成れずとも――最悪参謀には就ける。

 

取らぬ狸の皮算用の様に聞こえるが、それ程に()()()()()()()()()()()()()を無力化する事に意味が有る。

なんなら、あわよくばサクヤを傀儡(かいらい)にできれば、マダラ一人どうとでもなるし、木の葉の勝利は確実となる。

その戦果を木の葉に持って帰れば、里の忍びも『志村ダンゾウ』を火影と認めざる負えない。

 

よって、()()()を手なずける事、曰く、『火影に成る』ことに等しい。

 

 

――ダンゾウが、いくら私利私欲にまみれていようとも、邪知暴虐であろうとも、卵と鶏のような頭の悪い水掛け論を持ち出そうとも、目先の欲だけでそう判断したわけではない。

暁、うちはサスケの台頭、軍縮、そして今回の五影会談……今後変化するであろう忍界にとって、『真の目サクヤ』という駒が、忍界や木の葉の里に必要不可欠であったから、総じてその思考、判断に行き付いただけである。

 

 

―――

――

 

3回の大戦を経た忍界を見てきて、

忍びが国の戦力の要となってから、地域に限らず里に属する大多数の忍びは『兵士』に近くなったとダンゾウは感じていた。

兵站業務延いては戦争に向けた財政、任務管理、次代を育てるなどの環境の整備

戦う以外の機能を持った者に額当てを……いや『忍』と育てた者に、その業務を負わせるのは、ダンゾウが見ているだけでも門外漢が過ぎた。

 

その場所にいるべき人員は、『忍』である必要はない。

そこに『忍』を割くならば、そこまでの知識と、経験と、専門性を求めるならばもっと別の人材が必要で、それ(別の人材)は現代で言う正しく『兵站』で

『兵』を運営するならば、その長たる『影』が見極めるべきは『兵法』だ。

 

 

―――

――

ダンゾウにとって、『兵法』と言われれば真っ先に思い当たるのが

師匠の属する『千手』ではなく

忍び最強を謳う『うちは』でもなく

飛類なき頭脳を持つ『奈良』でもなく

 

常に戦から逃げ続けてきた『真の目』だった。

 

 

 

誤解を恐れず言うならば、『兵法』とは

どれだけコストを掛けずに勝利するかを極めた、方法論だ。

 

そして、古今東西どんな兵法にも共通する事は、一番コストがかからないのは『外交により平和が続く状態を維持する』という事。

――そう言う意味では『兵法』に一番造詣が深いのは『真の目』とも言えるだろう。

何せ、平和あるところに真の目あり。

真の目の戦嫌いは、昔から有名であるからだ。

 

しかしどうやって

戦う力を持たない真の目が、この幾度と続いた忍界大戦を生き残ったのか。

 

 

・戦ったから?

ある一点ならばそうだろう。

しかし、いくら真の目の体術が一般的に有名で、どれだけ強かろうと真の目の人間が全てそう言う訓練を受けて、強いわけでは無いので、忍び一族の様な戦闘など無理である。

(なんなら真の目には戦時中捨て置かれる確率の高い老人、女、子供、障がい者が多い。)

 

 

・逃げたから?

それもあるだろう。

しかし理由の1つでしかない。

 

 

 

ダンゾウは、そのすべては()()()()()()()()に集約すると見ている。

 

 

 

 

―――

――

 

過去、『真の目』自身が戦争を起こしたことは無いが、吹っかけられたり、巻き込まれた戦争はいくつかある。

真の目が巻き込まれる戦争の内容は、基本的に『市場』を独占する為に起きる物が多い。

その理由は大きく分けて2つの視点から発生する。

 

 

一つ目は侵略される側、『市場』の視点である。

 

経済はある程度の安全が確保されていなければ、発展のしようが無い。

看板を立てた端から壊されるような情勢では健全な商売は生まれない。

 

真の目が血を、戦を嫌う限り、真の目在る所に安全が有り、その安全を担保された状態で経済活動が行える―――

必然と市場に出入りする商人の目が、真の目を追うのも致し方ない。

『真の目が居る=安全』の方程式ほど確かな物はないからだ。

 

よって真の目が介在する市場は総じて発展が早く、大きくなりやすい。

 

 

 

二つ目の視点は侵略側の視点となる。

 

戦争は常に起こる物では無いが、戦争が起こる可能性が一粒でもある限り、それを無視できないのが『世界情勢』である。

最低でも防衛のための軍備は常に最新鋭でないと、仮想敵国に蹂躙されるのが関の山だ。

その軍備には膨大な金が必要で、兵器の研究費や材料費が、人件費より嵩張るのは常である。

 

そんな金欠財政のお国が

もし『真の目』が介在する市場を手に入れたのなら

 

『真の目一族』自体数が多い為、市場が大きく多少重い税を課しても、発展した市場は早々につぶれない、いい金蔓を手に入れることになる。

 

さらには、徴兵制を導入すれば人数が馬鹿みたいに多いので、いくらでも人材は出てくる。

 

なんなら相手は真の目だ。

只の一市民たる真の目に戦闘など到底無理。

内戦や紛争は有りえない。

市場を手に入れる=良い奴隷制度を手に入れたに等しい。

 

 

 

上記2つの視点から過去、この膨大な市場を巡って、幾度か戦争が起き

そして、上記理由から真の目のいる組織との戦争は、殲滅、亡国などの終わり方では無く、必ず吸収や合併など『組織』がある程度残った状態で完結し、その後速やかに原状回復が行われ市場が再開する。

 

 

 

しかし、真の目の交易、貿易は、そのまま取り込むには自然発生が過ぎる物であった。

 

戦後、官軍に有利な貿易や交易が敷かれるが

真の目の真骨頂は、国や組織に関わらず、世界各地に広がった伝手による()()貿()()である。

その自由貿易を失った市場の顛末など想像に容易いだろう。

高い関税という貿易の門により自由貿易の旨味である勢いは失せ、さらには今後また生活を脅かされる可能性があるという、安全が保障されない場に真の目が居つくはずもなく……

真の目と言うブランドを失った市場が崩壊するのは致し方がない事だ。

 

それに気付く政府ならば、真の目の出入りを制限するなどするだろうが、

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

真の目にとって、一端の組織に対してどれだけ有利に立とうと、それは本当に一端でしかなく

一端の発したSOSに対して、真の目のコネからなるネットワークは正しく作動する。

 

真の目のネットワークにより成り立つはずの国の交易や貿易は

いつの間にか敷かれた周辺国の経済的制裁により閉じていき

外交が立ち行かなくなり

きな臭さから更に周辺国や商人は手を引き

最後、仮想敵国は物資、人員困窮により組織が、国が

 

 

内側から瓦解する。

 

 

 

真の目が『うちは』や『千手』などの一族程度のモノであれば、どれだけ話が簡単だったろうか。

こと世界各国に散り、日々数を増やしていき、一国単位まで膨れ上がってしまった『真の目』を相手にするに当たっては、よっぽど自給率が高く、自国で完結できる資源、工業力、科学力があり、永年続いて行けるほどの国力が無ければ

真の目という()()を敵に回して生き残るのは難しい。

 

まだ『国』としてなら、ギリギリ時間稼ぎ位は出来ただろう。

しかし、こと村社会が長かった忍びは、忍経済のシルクロードたる真の目が居なければ、外交もままならない状況に陥るのは目に見えていた。

 

 

 

よっぽど時の指導者が優秀なのかと思いきや、どの時代の戦争でも、真の目の動きは一律として変わらず、真っ向から武力行使を避けて世界を渡り歩いてきている。

記録の数は少ないが、ダンゾウが知るこれまでの『真の目』の戦い方は『外交から成る兵法』を綺麗に踏襲しており、

普段の仮想敵国への交易の細りから始まり、外部からの圧力、新たな敵による疲弊、施政の振わなさによる民の疑心暗鬼、内部崩壊等々、外交により可能な手法全てを用い

『数の多さ』と言う兵法に最も重要な部分を使って緩やかに、しかして確実に滅亡へと追いやる。

 

追いつめられた仮想敵国の、起死回生、ジャイアントキリング、大番狂わせ、針の先程の希望を

武力をもたないからこそ、全て端から丁寧に、確実に潰していく様は、もはや狂っていると言っていいだろう。

 

須く『兵法』である。

 

 

 

 

 

『真の目が、そう大人しく言う事を聞くはずがない。』

真の目が浸透した今、その言葉を皆が語るだろう。

だが、戦国、忍界大戦、幾つもの()を経ての『真の目が大人しく言う事を聞くはずがない。』である。

 

嘗て血涙を絞り、泥水をすすりながら、『真の目』を護り、時代を活きてきた先達の称号ともいえる言葉。

『嘗て』を知る者は多くはないが、その言葉は『真の目の誉れ』と言って、過言では無い。

 

 

――

―――

 

 

閑話休題

 

王道あってこその、邪道とも言うが、古から忍びは邪道をいく者。

真の目の様な戦闘を避ける方法ならまだしも、真っ向勝負などもっての外

忍びたる者、正道たる兵法の裏をついてこそである。

例え里がどの立場(平和主義)にいたとしても『忍』びである限り、『兵法の裏を突く』ことを他でもない、『忍』が解かっておくべきで―――

 

相反する『兵法』も知らねば、裏も突けない。

 

 

『火の国』は幸いにも木の葉の里各位の奮闘により、第3次忍界大戦では戦勝国になった。

しかし戦後、忍界大戦にて疲弊した里は、戦争を回避し、平和を解き、争い自体を避けるようになってしまった。

それ自体は何一つ問題はない。

 

()()()()()()()のであれば。

 

 

ずっとこの平和が続くならば、そのような事を考えなくても何一つ問題ない。

それにダンゾウは現在の平和主義の木の葉が全て悪いとは流石に思っていない。(それはそれで使いようがある。)

ただ今後、

 

大規模な戦闘が()()に起きないとは、世界情勢を相手取る立場の人間として、正気では言えない。

 

さらにはダンゾウの見立てでは、火影の言う『平和』は薄氷の上だった。

各里が第3次に及ぶ戦争に疲弊しており、各国もまた、ここらで手を打たないと民草の蜂起が起こっても可笑しくない状態だったから『和平』に及んだにすぎず、いつ戦闘が、戦が起こっても可笑しくない状態を、お互いに引き延ばしているにすぎなかった。

 

 

国から仕事を請け負うにしたって、木の葉の為にしたって、忍びの仕事である間諜や戦闘はいずれ戦争となり

『忍』として里に所属している限り、己の意思に限らずその戦火に必ず関わることになる。

 

 

 

 

もし、先の大戦を知らない世代がトップに立った時、

『戦争を準備してきた仮想敵国』に会敵した時、

 

いったい何が出来るのであろうか。

 

 

戦争の正当化を済ませた相手に、平和を説くのだろうか?

馬鹿正直に相手の挑発に乗って戦争をして、着々と戦闘準備してきた仮想敵国から里を守れるのだろうか?

己より多くの時間を兵法に費やしてきた相手に、付け焼刃でうまく立ち回れのるだろうか?

 

ダンゾウとて無闇矢鱈に戦争を推しているいるわけではない。

戦争には犠牲が付き物で、精神面、コスト面から言っても避けるべきであることは重々承知だ。

しかし、今後大戦が起こってしまったとして

今の木の葉が、各国それぞれの『兵法』に相対したとして、その兵法の裏を突ける人材が育っているかと聞かれたら、首を横に振るしかないだろう。

 

 

だからこそ、兵法の王道たる『真の目』を横に据え、『忍』として判断をする『火影』が必要だった。

だからこそ『()連合軍』には『真の目』の視点たる『真の目サクヤ』が必要で、持って帰ればリーダに返り咲ける可能性があり、

 

他の影からの信用と、里の信頼を失った今でさえ、()()参謀だ。

 

 

―――

――

 

以上がダンゾウの建前であり、ダンゾウから見た『真の目サクヤ』の要点である。

各里が『真の目サクヤ』を重要視する点とも言えるだろう。

 

本音を言うならば、散々おちょくってくれたサクヤの苦い顔を見ながら、猿さえ成し得なかった更なる高みたる『忍び連合軍の大隊長』を冠したい。である。

過去、金角銀角部隊の接敵前、師である二代目火影が残したダンゾウへの言葉を思うに、人間そうそう変わらない物である。




戦争を題に語るに当たって、どうしても昨今の情勢とかする部分もあり、このような稚拙な文章を投稿するか悩んだのだが、こうなる前に大筋が書き終わっていたので、今更変えようがなく、致し方なく衆目に晒すことになった。
この話は100%フィクションであり、筆者の独断と偏見により作成されている。

敢えて明記するが
筆者は戦争に反対であるし、平和だからこそ、このような戦争を題に筆述することができ、コンテンツとして楽しめると考えている故、現在の某国の状況には誠に遺憾であることをご留意頂きたい。


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127

鉄の国をまたぐ渓谷にかかる橋の上で、その白は佇んでいた。

幽霊の様に、それでいてその白色は存在感を際立たせて。

 

側近であるフーとトルネの二人は考えた。

罠をいくつか仕掛けたし、それを潜り抜けたとて、追いつかれるような距離では無いはずだ。ましてや追い越すなんて……

ということは、何かしらカラクリがある。

五影会談へ乱入時の白い炎の様に……

 

 

間髪入れず攻撃のモーションに入った『根』の2人。

自分達ではきっと良い様に翻弄されるだけであろうが、上司であるダンゾウに繋ぐため、情報を少しでも残そうと動く。

しかし、フーとトルネは碌にダメージを与えず、サクヤの白い炎で焼かれる。

影も無く消えて行くのをダンゾウは静かに眺めた。

 

 

「ん?ああ……手塩にかけて育てた肉壁を、こうもアッサリと倒されちゃたまらないよな。」

 

2代目火影にそっくりの顔だが、その表情は作間そのものだとダンゾウは憎らしげに見つめた。

へらへらとした緊張感のない表情にイラつきながらもそれを押し込めて声を出す。

 

「何故ここで出しゃばった。

貴様にはワシを殺す目的以外ないであろう。」

 

わおっ、とわざとらしく驚くモーションをするサクヤに怒筋が浮かぶ。

サクヤにとっては、こんな『影』という最高戦力が集まる会合に、リスクを冒してまで顔を出す必要はないはずだ。

行く前に殺せばいいし、なんなら一番気が緩む会談終わりの帰路で襲えばいい。

狙いが志村ダンゾウ()()()()()

 

「そう、あんたを殺しに来た。

そんな面白い事にはオーディエンスは必要だろ?

五影の中の天秤が、あんたの命に傾く限り、誰かしら見にくるだろ。」

 

投げやりに言葉を発したサクヤに練り込まれるチャクラ。

ダンゾウはその姿にイラつきながら、己の腕に付けている枷を乱暴に外した。

しかし外した枷は、乱暴すぎて腕ごと外れてしまったらしい。

 

びゃっ

という水っぽい音と、ガンカラガンと転がって行く枷。

 

「なっ…!!」

 

そんな脆い癒着をするわけがない、と飛んで行った腕に眼をやった瞬間が、分かれ目だった。

 

 

 

 

「おや、大事な腕を落とすとは、あんた結構うっかりさんだね。」

 

気付いた時にはサクヤはダンゾウの後ろにいた。

 

ぬるりと擬音が付きそうな気配。

咄嗟にサクヤの攻撃を苦無で弾いたもの、片腕が無い為バランスが取れず、更にサクヤの双剣を使った連続的な攻撃に足はどんどんと橋の真ん中へ進んでいく。

 

このままサクヤの思う通りに動き、何かしらの罠にはまるの不味い……。

サクヤの事だ、連鎖的に発動する罠を仕掛けていても可笑しくない。

ダンゾウはそう考え、サクヤの攻撃の隙をついてなんとか―――爆発した

 

ダンゾウの右目が

 

ゴッという音を立てて、痛みさえ、違和感さえなく白い火を噴いた右目。

そしてダンゾウはやっと、これが幻術であると気付いた。

咄嗟にチャクラを乱して幻術を解いたが

もう、すべてが遅かった。

 

 

 

――――――

―――

 

目前の、根の精鋭たるフーとトルネの真っ黒な体。

ギリギリ生きているのか、浅い呼吸に合わせて背中が上下することが確かめられたが、動けない状態であることは確かだ。

一応腕は付いているので、ダンゾウ自身は未だ戦える。

 

「(押さえたかった消耗を、ここまで迫られるとは……。)」

 

燦々たる状況にダンゾウはやっとサクヤを、万華鏡写輪眼を開眼したサクヤを見た。

 

 

「お主……その眼は…――」

 

「ん?

ああ、目が覚めたのか。

おはようございます。ダンゾウ様(笑)

 

そんでもって、―――よく間に合ったな。

いや、分身かな? 自称マダラサン。」

 

 

亜空間のゆがみから飛び出た自称マダラは、ダンゾウを無視して、不機嫌そうにサクヤに取引の内容を確認する。

 

「……約束の物は何処だ。」

 

 

「まあ待てよ。

まだこいつを殺してない。」

 

不意を突いて、ダンゾウのチャクラが瞬間的に練り上げられたと思ったら、そのままダンゾウの首が()げた。

サクヤの焦点はマダラに合わせ微笑んだまま、獲物さえ見ずに一瞬の間に首が吹っ飛び、頭部と胴体から白い炎が立ち昇る。

 

それと同時にまるで幻覚の様にダンゾウが少し遠くで復活した。

が、幻覚かどうか確認する前に、サクヤは苦無を振り投げ、またも正確に首を飛ばす。

ダンゾウは何か印を組む前に絶命、また燃えあがった。

 

 

「残念ながら、五影の天秤は『志村ダンゾウ』に傾かなかったらしい。」

 

ダンゾウはイザナギで一瞬途切れる意識の中、何とか現状を好転させる策をめぐらす。

何故ならオーディエンスが誰であろうと、今の内にサクヤを殺さなければならないからだ。

サクヤの言葉の通り、五影の応援を見込めなければ、よしんば来たとて状況によりサクヤの協力なんてされたら堪らない。

況してや、今来たのはサクヤと何かしらの取引をした『うちはマダラ』を騙る人間だ。

サクヤの後に相手取る可能性も考えてチャクラに余裕を持たなければならない。

 

 

しかし、そうダンゾウの思うようにはいかない。

一瞬の間に首が吹っ飛び、炎で燃やされ絶命。

ダンゾウが何度目かの術を発動するも、瞬く間に命が刈り取られて行く。

 

 

 

「(これは……うちはの中でも禁術にされていた『イザナギ』……

イザナギ相手に何度殺そうとも術の発動中は死ぬことはない。

そしてダンゾウの腕を見るに、失明するはずの目は、十分あるらしいな……。)」

 

写輪眼を使って突然始まった戦闘を解析するマダラ

腕に埋め込まれた写輪眼を使い、イザナギを何度も発動するダンゾウ。

サクヤから距離が離れようとも、死角に移動しようとも、一瞬の間に正確無比に殺していくサクヤ。

 

逃げようと一歩出せば段差につまずき、腕が飛び、心臓に一突き。

避けようとすれば突然の爆風でバランスを崩し、火遁で絶命。

往なそうと構えれば飛んできた刀を目隠しに、鳩尾から心臓にかけて一薙ぎ。

堪えようと踏ん張れば足元が崩れ、背後の影分身に胴体と泣き別れさせられる。

起死回生を目標にいくら動いても、何もかもが上手くいかない。

 

余裕をもっての戦闘なぞ、出来るはずが無かった。

 

ダンゾウは、イザナギを発動し続けるしかない攻撃に『合理的だ』と師の言葉がよみがえる。

そして攻撃と攻撃の合間に続く、致命傷になりえない布石に、『効率的だ』と、弟子の言葉が過ぎた。

 

 

―――

――

 

サクヤの猛攻が続く中、発動しっぱなしのイザナギによるチャクラの減少に耐え切れなくなったのか、ダンゾウの体に埋め込まれた柱間細胞が、制御しきれずにただの木材に成り果て、サクヤはそれすらも全て燃やして跡もない。

術の根源である写輪眼はこれで無くなった。

残るは右目の写輪眼のみだが、先の政に使ってしまい、只の飾りと化している。(何なら水影の部下によって不発となった。)

最後のイザナギが解ける頃には、もう、相対するサクヤの目は写輪眼でさえなくなっていた。

 

 

 

完全に追い込み、血反吐を吐いている姿を一拍置いて眺めるサクヤ。

ただの老人と成り果てたダンゾウが、最後の頼みの綱と言わんばかりに、何かを呟いた後、封印術を発動しようとするが、

サクヤは術を冷静に分析したあと、発動一歩手前で再度首をはねとばして術の根源たる体を燃やし、発動途中の術までも殺した。

ごろりと転がる老人の頭。

 

今度こそ戦場に静寂が訪れた。

 

―――

――

 

 

血を吸った真の目の白い衣装が赤く染まり、飽和量を越えた血が滴る。

息切れもないサクヤの様子を眺めていたオビトが声をかけた。

 

「そこまでダンゾウを恨んでいるとは知らなかった……

やはり父の名は偉大か?」

 

取引時からのサクヤの並々ならぬダンゾウ暗殺への姿勢、そしてこの惨状を見れば誰もがその結論(仇討)に行き付くだろう。

橋の上は、おびただしい血液が滴り、サクヤもろとも赤く染まっていた。

死体こそ燃やされて跡形も無いが、そのすべてはダンゾウの血液で、

端に転がされている焼死体に成ろうとしている2対の体以外に、息をしているのはサクヤだけだった。

しかしマダラの言葉にサクヤは、何の話か思い当っていないようだった。

 

 

「父……? 何の話だ?」

 

 

マダラはサクヤの返答を鼻で笑った。

 

「お前、知らないのか?」

 

自称マダラは、この鬱陶しい女狐に知らない情報があるという事に優越感を隠しきれず

面で隠れたあごと思わしき場所に手を添え、くつくつと含み笑いをする。

その上機嫌な姿に、サクヤは気持ち悪いなと眉をひそめた。

 

「ダンゾウは、お前の父親を任務と偽り里外に呼び出し、自らの手で殺した。

その後、お目当ての写輪眼が手に入らないと分かると、実験材料を求めていた大蛇丸に流し、死してなお遺体を切り刻み、監獄で虫巣食う体にした後適当な山中に廃棄させた本人だ。」

 

サクヤは数秒眉に皺を寄せた後、血に濡れた手を顎に当て思案し、やっとマダラの言わんとしていることに思い当たったと、晴れやかな顔でポンと手を打った。

(ポンなんて可愛い音では無く、血を含んだ黒い手袋はビチャッと汚い音を鳴らし、更に赤をまき散らしただけだったが。)

 

 

「あっ、復讐的なあれか。」

 

 

 

あまりにも爽やかに、やっと答えに行き付いたとばかりに声を上げるサクヤ。

マダラの頭上には、はてなが複数浮かんだ。

 

「すまん、すまん。

いやぁ、何の話か分からんかった。」

 

こいつ頭おかしいのか?マダラは先の取引場面を思い出して正気を疑った。

そんな姿に、サクヤは更に言葉を重ねる。

 

 

「特に何って大きな理由はないよ。

そりゃ命狙われてるし、いろんなこと妨害されるしで、ダンゾウ死ねとか常日頃から思ってるけど……

残念ながら、一族復興とか、弟の為にとか、どっかのうちはさんみたいに何か大層な心意気なんて持って無いよ。

父親の情報も大体はもう知ってたし、母と同じ墓に入れたいとは思ってるけど、それは今殺した理由にはならないかな。」

 

 

ならば取引の際の殺気は?乗り込んだ時の大見得は?全てブラフだったのか?

一体、何に対しての?

マダラは疑問を感じつつも、思ったリアクションをサクヤから得られなかった溜息を吐いて思考をめぐらす。

 

(真の目サクヤは矢張り、ダンゾウと大蛇丸のパイプラインを知っていたか……。

大蛇丸の研究所を漁ってそこに行き付くほどには賢いと考えて警戒した方が良いな。)

 

「ならサスケに任せればよかった。

サスケの実力なら今殺せなくとも、何れ殺してる。

復讐でないならば、お前の出る幕では無かったはずだ。」

 

警戒を見せないように話の続きを促すマダラに、サクヤはこたえる。

 

「今殺したのは、言うなればタイミングが良かったに過ぎない。

これ以降、私が手を下せるタイミングが無かった。

別に生かしておいてもいいけど、とうに退場するべき演者が舞台で踊り続けていたら邪魔だろ。

だから殺した。

 

自分の手で殺すのは、生死の判断が一番自分に納得いくからだ。

全て能率的な問題だ。」

 

引っ掛かりを覚える言動の答えにはなっていないが、これ以上の問答は無駄だと考え自称マダラはチャクラを錬った。

 

 

「では俺は約束を果たした。

次はお前の番だ。

―――ああ、こいつは殺すなよ。」

 

真っ赤に染まり殺戮の限りを尽くしたサクヤの姿に、一応とばかりに嫌がらせのくぎを刺して、マダラは時空間忍術を発動させた。

 

 

 

 

―――

――

この場にて、死したダンゾウを語るのは少し憚られるが、もう少しお付き合いいただきたい。

 

実はダンゾウは、『真の目サクヤ』と相対するに当たって、チャクラと体力を消費する予定はなかった。

兵法を駆使してくる『真の目』に相対するならば

圧倒的物量から持久戦が出来る『真の目』と相対するならば

長期戦や体力勝負になることは必須だからだ。

 

 

だから、サクヤが里を抜けた際、初手からダンゾウが赴いて手を下した。

だから、火影の口から『抜け忍』という言葉を引き出そうとした。

だから、サクヤの()()を第一とし秘密裏に捜索隊を放った。

だから、火影になった時、ごたごたに紛れて真の目に内密で()()()()にサクヤの抜け忍を通達した。

だから、五影会談に向かう序盤でサクヤの打ってきた手(回転寿司)を己自身で即刻で潰した。

だから、自分の命を使う封印まで使って、すべてを闇に葬ろうとした。

だから、作間とサザミの死亡理由すべてを真の目には内密にしてきた。

 

全ては、この問題が一族間では無く当人同士の諍いであるとする為。

全ては、木の葉が真の目に敵認定されないために。

 

 

 

奇しくも、このダンゾウの思惑に、サクヤは全く気付いておらず。

ダンゾウの策略通り、今迄散々邪魔しやがってこの野郎、前に立つな邪魔、さっさと地獄に隠居しろクソじじい、という超個人的な観点からダンゾウは、生涯に幕を降ろす事となった。

 



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128

ギリギリ生きてます。


 

「オイ、

 

 

 

オマエガ白ゼツ殺シタセイデ、オレガサスケ達ヲ回収スル事ニナッタンダガ。

コッチニモ計画ガアル。余計ナ事ヲスルナ。」

 

 

 

「シャッ……シャァベッタァァァァァァ!!!」

 

 

 

「おい。」

 

「さーせん。」

 

 

 

 

時空のゆがみから、顔をのぞかせたのは黒ゼツであった。

サクヤの完全なるボケに、思わず突っ込んでしまった自称マダラだが、さらなるボケを阻止する為にも話を進める事にした。

 

「サスケはどうなった。」

 

「本体ハ マダラガ回収シテ 香燐ヲ使ッテ今回復サセテイルガ、全快ハ無理ソウダ。

マッタク……五影相手ニヨクヤル。」

 

未だ時間がかかりそうな現状に、先にサクヤの方を片づけるかと思案するマダラ。

指示を待つ黒ゼツは補足的に情報を付け足す。

 

「本体ハ今五影トオ話シ中。

コイツガ白ゼツヲ殺シタカラ時間ガカカッテイル。」

 

白ゼツを倒されたのが結構痛手だったのか妙に黒ゼツが突っかかる姿を見て、マダラは別の違和感を覚える。

 

確かにあの場で白ゼツを倒す意味は無かった。

強いて言うなら黒ゼツをサスケ回収に向かわせたせいで自身が分身をこちらに送る羽目になったが……とここまで考えて、マダラはある一つの答えに行き付いた。

 

 

もしかして俺たち、

ダンゾウ殺害の布石に使われてるぅーーー?!

 

自称マダラの長い沈黙に、黒ゼツはなんだと視線をおくる。

そして、やや時間をかけて口を開いたマダラはサクヤに声をかけた。

 

「おい、」

 

「へい?」

 

間抜けな返事を返すサクヤに、マダラは確信を突く言葉を告げた。

 

 

「お前、オレらを布石に使っただろ。」

 

 

その一言に、サクヤはにんまりと嗤った。

 

 

 

「成る程、うちはマダラを騙るだけはあるなぁ。」

 

 

 

 

布石と言う言葉に、ピンと来ていない黒ゼツは、マダラとサクヤを交互に見やったが、それ以後何もしゃべらずに考え出したマダラに、どういうことだと声をかける。

マダラはサクヤを剣呑に眺めながら言葉を吐いた。

 

「どうもこうもない。

五影会談前のダンゾウ襲撃も、会談中の白ゼツ襲撃も、襲撃時のこいつの言動も、俺がここに来た、全てが布石で、ダンゾウを殺すためだった。

そういうことだ。」

 

 

 

 

 

「序にサスケの疲弊も入れといてくれよ。」

 

飄々と嘯くサクヤにマダラは更に厳しい目を向けた。

 

 

―――

――

 

雷影は元気だった。

 

 

元気で片づけてよいものか怪しいが、とりあえず日本語的表現をするなら元気だった。

それはもう、とんでもなく、飛び切りに。

 

ドンの察知能力と情報整理の速さ、そして何よりそのあまりな規模に、年甲斐もなくはしゃぐぐらいに。

 

雷影の護衛兼側近として、遠路遥々侍の国に来たシーの面目は丸つぶれであった。

まあ幸いにもシーは、まったく微塵もこれっぽっちも露ほども気にしてはいなかったが、一応護衛として雷影に一言苦言は呈した。

 

「雷影様、その野干を信じるのはいいですけど、侍の国で八茶けるのだけはやめてくださいよ。」

 

 

しかしその元気すぎる雷影は、ワシは冷静だとのたまった上、上がるテンションをそのままに、ドンの案内の通りに進み。

ドンの案内通りにサスケ達、”鷹”に爆速で邂逅した。

 

 

雷影御一行の数人に見つかったサスケ達は、そのまま戦闘に移り、雷影の護衛(シーとダルイ)によってD社と水素水は撃沈させられ、サスケ一人で雷影と応戦する。

砂影が到着したり2,3悶着あり、一時はピンチに陥ったが、キレたサスケはあの冷たいチャクラによって形勢を逆転させ、雷影の片腕をもぎ―――

 

――問題はそこからだった。

何故なら、自分たち鷹ではこの雷影を止めることはできない。

明白な事実だ。

 

 

 

雷影が元気すぎた。

 

 

片腕をもいだはずなのに、なぜか後衛の砂影が雷影を砂漠葬送で止めるほどに雷影のテンションが爆上がりで

サスケを戦線離脱させるために水月と重吾と合わせて畳みかけた攻撃は、振り向きざまに砂漠葬送をぶち抜いて繰り出された雷影の雷虐水平千代舞により、相性的にも水月にクリーンヒットしていた。

 

水素水こと水月は思った

 

 

「(だれかこの元気すぎるジジイをどうにかしてくれ ‼ )」

 

 

今ここで2人の影を相手取るより、ここをスルーして先に進んでしまった方がはるかに合理的な判断だが、問題は

(なぜか)雷影の側近と風影によって抑えられている雷影が、素直にスルーさせてくれるかどうかだった。

 

「風影ぇ‼なぜ止める‼」

 

「「「あんたの腕がもげてるからだ(よ‼)」」」

 

誰が敵味方か分からなくなるほどに、雷影以外の心が一つになった瞬間だった。

しかし、思いのほか冷静だったサスケ(片腕もいで満足したともいう)は、その間に唯一見つかってない、いや

お目こぼしされていた香燐を二階で回収、香燐の索敵によって戦線を離脱

 

――と思いきや、ついには砂瀑葬送を自力で抜け出した二度目の雷影の襲撃により再度須佐能乎を組み立てる羽目になる。

 

「待たんかぁああああ‼」

 

「しつこいっ!」

 

「こちらには幸運の狐がいるんでな‼

どこまでも――」

 

「その幸運の狐はもういなさそうダガナ。」

 

 

そんなはずと雷影と側近が意識を外したその時、サスケと香燐は床に飲み込まれていった。

 

 

―――

――

時は少し戻り、五影会談が連続の乱入者により中断されたあと。

雷影と砂影が出ていき、侵入者の幻術のすきにより火影さえも消え、残るは水影と土影、そして侍の長の陣営。

 

 

 

その場には気まずい空気が漂っていた。

遠くから聞こえる鈍い音や、ドゴンという何かを破壊する音、爆発音を無視すればとても静かな空間だった。

あと雷影のでかい声もかすかだが聞こえてくるのを会議室内のものは感じていたが、とても、とてつもなく静かで冷えている。

侍たちは空気に徹し、土影の側近赤ツチと黒ツチはお前が行けよとばかりに水影の側近青と長十郎をにらみつけるまでである。

しかしそこにサクヤ、そして追求すべき火影が忽然と消えた会議室に、はっきりとした声が響いた。

 

 

 

「さて、――――」

 

 

水、岩、鉄の者たちが声の響いた方に顔を向けて、しかし慌てて目をそらした。

 

 

「―――どうしてやりましょうか?」

 

 

 

 

みずかげは おにのぎょうそう だった。

 

笑みをたたえた目元から額に向けて大きく浮き出た血管、弧を描いているはずの口端は僅かに痙攣し、怒りに握ったこぶしが行き場なく震えている。

今、彼女を刺激してはならない。

さすがのガヤ担当、岩影も理解した。

だが、このまま水影を放おっておくと、さらにヤバイくなることも重々承知している。

どうにかして、一旦頭を冷やす必要がある。

 

「土影様?

私は至って冷静ですよ、ええ、至って。

とても冷静ですもの。」

 

思わず言葉を漏らしてしまったかと、手を口元に持っていった土影だが、それが如実に言葉を肯定していることに、土影は気づいていない。

側近のものは『何やってんだこのジジイィィィィィイ!!』と心の中で心の限り罵倒するが土影に届くはずもなく、

ゆっくりと般若が振り返るのを見た土影たちは、ひゅっとした音と共に、息を呑むことしかできなかった。

 

「こんなに頭が冴えてるのは何年ぶりかしら。」

 

土影たちはサクヤが戻ってくる、または女性の相手に長けている忍びが来ることを祈ることしかできない。

しかし岩影達の祈りむなしく一人、女性経験の浅い若造(それも空気がとんでもなく読めない)が来てしまった。

 

サスケである。

 

 

 

 

爆発音のような音と共に壁が壊される。

瞬間、熱風と火遁の炎が空間に広がった。

気配を追って各々神経をとがらせる中

一人天井を見上げた水影はつぶやく。

 

「やっぱり、いい男ねうちはの一族って……あの2代目の忘れ形見とは違って。」

 

チャクラ吸着により、天井のちょうど真ん中に立つ。

険しい顔で会場を見渡すサスケを影達が視認した時、侍の長、ミフネが動いた。

チャクラ反発を使って己の間合いまで迫ったミフネは、その勢いのまま首を狙って横なぎに刀を振るうが、危なげなく防がれる。

一太刀で実力を悟ったミフネは、背後で臨戦態勢を整えた忍び達に場を譲る。

しかし香燐の方が早かった。

 

「サスケっ‼

ダンゾウはここにいない‼

火の国の方向だ‼」

 

ちゃんと扉から登場した香燐の言葉と同時にサスケが動くがしかし

壁に空いた大穴を背後の扉ごと、粘着質な液体がふさいだ。

 

踏み出した一歩は普通の一歩だった。

 

「ハァ、やっぱりもったいないわ…せっかくの男前なのに……」

 

ただ、その一歩のなんと恐ろしいことか。

 

 

「溶かしてしまうなんて。」

 

妖美な笑みを浮かべる姿はげに美しき。

視線はさすけを舐めるように下から上へ。

香燐は声を上げようとするが水影のほうが早かった。

 

「土影様? やはり捕まえて吐き出させた方が得ではなくて?」

 

急に話を振られた土影は冷静だった。

苦節七十云年、今は亡き妻との思い出が走馬灯のごとく脳裏によぎるぐらいには冷静だった。

その冷静さをもって

 

「……あの煩いのが黙っているかが問題じゃぜ。」

 

他人に責任を押し付けた。

それを聞いて水影は一応思案するが、答えはもうはじめから決まっている。

 

「そう、ならせめて

とろけるようなキスで、眠らせてあげるわ。」

 

妖美というべき笑みであり、不穏を感じる光があった。

香燐は思わずサスケの御尊顔を見て精神を安定させようとするが、もうその場には影もなかった。

 

―――

――

 

恐ろしく怒っていることは分かった。

さすがに人の機微に鈍感なサスケも怒気は分かる。

しかし、2代目の忘れ形見が誰を指すかはわからないし、何があったかも察せなかった。

そして最悪なことに誰に似たのかサスケは、()()()()()口が悪かった。

 

「邪魔するな。

あんたら老害に用はない。」

 

水影の後ろに稲妻がどんぴしゃりと落ちた。

 

 

 

「ろ…う……がい…」

 

 

 

岩影は文字通り頭を抱えた。

そして諦めた。

きっとうちはサスケは死体さえ残らず、自分は雷影にどやされることを。

 

 

 

両者あれよあれよという間に組みあがった印と共に術を繰り出す。

 

〈火遁・豪火滅却〉

 

通常より横に広がった火遁が、会議室へ更に赤い絨毯を広げる。

豪火滅却の高さを犠牲にした、部屋全体に早く、そして一歩の後退を迫る攻撃に、千々に乱れる影や侍、その側近たちだったが、ここは五影会談の会場である

 

〈土遁・土流壁〉

〈水遁・水陣壁〉

 

冷静な声が各所で上がり

水遁と火遁のぶつかりにより水蒸気が部屋一面を埋める中、

 

 

〈溶遁・溶怪の術‼〉

 

 

サスケの火遁を上に飛んで避けた水影は、すかさず炎を噴き出している恰好の的へ、術を繰り出した。

 

粘着質な液体がサスケに向かうが、サスケはそれを易々とさけ、千鳥を携えさらなる追撃をかける。

サスケの背後にいる()()()()()()

 

 

 

香燐は熱さと痛みと人が溶けるにおい、そして炎が広がる世界を背景に戦うサスケを目に入れた。

あまりの痛さに思わず呻きを上げるが、サスケはそれを気にした様子もない。

 

香燐は気づいていた。

もうサスケにとって自分の存在価値は、回復機構を残すのみということを。

 

そして、現在の戦闘を最後に、香燐達とサスケは仮面の男、マダラによって千々になることも。

 

 

だから、どうした。

 

回復機構がなんだ、赤毛が何だ、渦巻きが何だ、雑魚が何だ、弱くて何だ

私は私として惚れた人につきまとってんだ、

サスケがピンチなら助けたいし、サスケが死にそうなら生かしたいし、サスケがその道を進むなら私だって進むんだよっ!!

 

『生きてるな。』

 

近くに仮面の男の気配がする。

生死の確認か、つま先で脇腹をつつかれ香燐はうめき声を上げた。

 

ああ生きてるよ。

生きてサスケにつきまとうんだよ。

 

メガネが取れぼやける視界、サスケが廊下に飛び出た姿を最後に香燐の意識は暗闇に途切れた。

 

 

 



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129

あ、時系列について突っ込むのはよしてくれ。
私は今酒を飲んでいる。
理由はわかるな?


 

「そもそも、こいつがダンゾウを殺せる実力があると考える方が可笑しいんだ。」

 

 

 

 

血にまみれた橋の真上で行われる謎解き。

まるで探偵が推理を披露するかのように、白昼堂々と行われる答え合わせ。

犯人は真っ赤に染まったサクヤで確定であり、しかし眼の前で殺人を見たのにもかかわらず、どうしてもその手口の全てが分からなかった。

 

大層に話しだした自称マダラに、サクヤは嗤いが止まらない。

流石に顔に出す程愚かでは無いが、心の中ではニチャリとした厭らしい笑みが浮かんでいるだろう。

 

そんな内心も知らず、黒ゼツの何言ってんだこいつと言う視線をもろともせず、マダラは言葉を綴って行く。

 

 

 

前提としてダンゾウはサクヤより強い。

これは自明である。

 

いくらサクヤが幻術に強かろうが、写輪眼を持っていようが、真の目の体術をやっていようが、兵力とか、財力とか、そういう意味でも無く、

普通にダンゾウとサクヤは、サシで、全力で、駆け引き無しで戦ったら

 

ダンゾウが勝つ。

 

よって自爆特攻又は、ダンゾウが『手加減せざる負えない状況』に追い込まないとサクヤはダンゾウを殺すことが絶対できない。

 

マダラの言う前提条件はサクヤがダンゾウを殺すまでは自明の理であった。

だが、

 

「ダガ殺セタ。

アノ死体ハ幻覚ジャナイ。」

 

「だが、こいつ一人で殺してはいない。」

 

目前の滴る赤が二人に見えるのかと、頭でもイカれたのかと黒ゼツはマダラを見るが、マダラは至極当然とまでにサクヤを見やった。

サクヤはその視線ににっこりと返答を返す。

 

「簡単な話だ、一人で殺せないなら自分より強い奴を作ればいい。

相手が強いなら、『次』を用意して体力を温存させ、手加減させればいい。」

 

 

マダラは、サクヤのその言葉に確信を抱き、己の持っている情報を使ってさらなる推論を述べる。

 

 

「なるべく多くの種類の忍びを使って、五影会談に向かうダンゾウに攻撃させる。

これにより、いつこのような攻撃がまたあるやもしれんと警戒を上げる事が出来る。」

 

一本立った指に黒ゼツは、何か始まったと辛気臭い目を向けた。

その視線を受けてマダラは指を2本に増やす。

 

「五影会談の『真の目サクヤ』自身を使っての襲撃。

ダンゾウから見れば一応、ここで確証の持てる勢力は2つに成る。

最初の襲撃衆と、サクヤだ。

只、ここ見逃すダンゾウでは無い、最初の勢力とサクヤがつながっているのではないかとあたりを付けるだろう。

だが、これでもまだダンゾウだけで対応出来うる範囲だ。」

 

まあそうであろう。

黒ゼツは、仮想敵にとサクヤを入れて妥当だと判断する。

 

「道中の襲撃は、襲撃側にとってはチャンスで大々的だったが、あれだけ統制が取れていれば誰かしら裏で糸を引いていると想像がつく。

誰が糸を引いているのか特定するのは簡単だ、あれだけの、里も思想も全く違う忍びを統率できるのは、現状真の目サクヤぐらいであろう。

大方ダンゾウを餌に、『2代目』と『真の目作間』の顔でごり押ししたのだろうが……」

 

黒ゼツは一つ頷いて話を続けるようにマダラに視線を向けた。

マダラは3本目の指を立てた

 

「五影会談でダンゾウの悪事をバラし、五影からの追及も逃れられない状況を作る。

まあその前に水の部下に見破られていたため、その説を補強したにすぎなかったがな。」

 

そう、そこで白ゼツが倒されたせいで自分が動く羽目になったのだ。

ややこしい事をしおってと、其処まで考えてようやく黒ゼツはマダラの言葉に納得がいく。

 

仮想敵であるサクヤと、多数の忍び程度ならどうにかなるが、五影(+側近)が出てくるとなると逃げ一択になる。

さらには―――

 

「白ゼツヲ殺シテ オレヲ動カス事デ、『ココ』ニ マダラヲ引キズリ出シタッテコトカ……。」

 

その言葉に自称マダラは頷いて更なる推論を重ねた。

 

「他にもある。

サスケを使って、不穏分子をほのめかす……とかな。

 

ダンゾウは、イタチの事情を知っているが故、サスケの『宿敵のイタチを倒したにもかかわらず、五影会談を襲撃する理由』、にあたりを付けることが出来る。

ダンゾウはイタチの実力と、イタチが何を思ってうちはを滅ぼしたか、全て知っている。

ダンゾウは、サスケがダンゾウを狙うならばイタチがしくじったか、又はこいつ(サクヤ)木の葉(イタチ)を裏切ったように見えただろう。

『知っている』が布石となって、『イタチと言うストッパーを失ったサスケに狙われる可能性』はダンゾウにとって捨てきれなくなる。」

 

うちはイタチの成したことをマダラと共に見ていた黒ゼツにとって、保身の塊であるダンゾウがその結論に行き付く事は、想像に容易い。

 

 

 

ここまでの間でダンゾウは、敵対勢力が大まかに4つ(五影、サクヤ、サスケ、マダラ)いる状態。

そして、目の前の無視できない脅威として、五影、サクヤ、サスケの3勢力を相手取らないといけなくなった=『敵を作り過ぎた』状況になり

――敵の数が自勢力だけでは処理できなくなった為、一旦引いて体制を立て直さなければならない状況に陥った。

ダンゾウは必然的にその場から逃げ出さなければならなくなっている。

 

ここでダンゾウは五影に対して、自分の持っている情報を元に助けを求める事(いわゆる司法取引)、も出来る

が、そもそも『里の為』をモットウに暴れた過去があるダンゾウが、自国の情報を他国に簡単に流す訳がないので、選択肢は『逃げる』以外ないと同義だった。

よしんばその道を選んだとて、今までのダンゾウの行動を振り返って、本当にその情報が正しいかは他国の影達に判断はつかないので、交渉自体決裂してもおかしくはない。

 

にっこりと辛気臭い笑みを浮かべ続けるサクヤ。

マダラは気味が悪いと視線を外した。

 

 

「最後に

仲間として換算されるように、新たな勢力が、様子を見に来るまで待った。

俺たちだな。

白ゼツを殺された俺たちはこいつ(サクヤ)を監視する為に動かざる負えない。

先の口調だと、こいつが裏で手を引いて隙を作った可能性が高くなったがな。

もしかしたら五影がダンゾウを追う方が先かと思ったが、サスケの劣勢に予定が早まった。

俺が出るしかなくなる。」

 

サクヤは向こうで何が起こったか、雷影に渡したドンを介して常に情報を得る事が出来る。

なんなら雷影をサポートしてサスケ達を早々に行動不能にすることにも成功した。

 

 

「俺という不穏因子が近くにいることで、経験深いダンゾウだ、どうしても注意を逸らす事になる。

ここで俺たちのした取引が利いてくる。

こいつは

 

サクヤにとってはダンゾウとの一対一

ダンゾウにとっては、サクヤ以外にも敵がいる二対一

 

という、自身の安全を確保しつつ、相手には『次』がある状態にした。

そうする為に、あの日サスケ以外の『ダンゾウ』を狙う勢力=俺たちと取引をし、

五影会談で白ゼツを殺して俺たちを呼び出した。」

 

 

マダラは先程のサクヤの言葉を思い出す。

 

『今殺したのは、言うなればタイミングが良かったに過ぎない。

これ以降、私が手を下せるタイミングが無かった。』

 

 

「タイミングが良かった。

ああ、 そうだろうよ。

これだけの『敵』が一堂に会せるタイミングは今しかないんだからな!!」

 

 

 

そうだろう、そうであろう!!

此れだけ舞台が揃っていれば、そうもなるだろう!!

何時からこの時を狙っていたのか、いや、何時からこの『ダンゾウ暗殺』の舞台を作っていたのか。

思い出せば、あれもこれもそれもとすべてが疑わしくなってくる。

 

 

マダラとて、いや

『うちはオビト』とて、『うちはマダラ』やゼツ達と今、同じように舞台を整えている者になる。

しかしこれらの計画を、己一人で考え、成せる力はオビトにもマダラにもゼツにも無かった。

ある意味で、オビトが羨望して止まない『力』を持っているサクヤに

未だにっこりと笑いかけるサクヤに、オビトは畏怖しか湧かなかった。

 

深淵を覗いたような薄気味悪い不気味さに、オビトはお手上げだと言うように、両手を掲げ己を嘲笑する。

だが、マダラの言葉に黒ゼツは疑問を投げた。

 

 

「マテ、ソレナラ直接サスケと取引ヲスレバイイ。

アマリ言イタクハナイガ、サスケト交渉スレバ取引材料ヲ他ノ事ニ使エタ。」

 

 

当然というべき疑問に、マダラは冷静に返す。

 

「いや、ここで『うちはサスケ』に直接取引を持ちかけるのは悪手だ。

何故なら『うちはサスケ』は未熟で感情論で動く駒だからだ。

策略をめぐらし、損得で勘定を取れる相手ではない、こいつが必要な取引相手として最悪だった。

 

だから、『うちはサスケ』を制御でき、次に脅威足りえる、俺たちに取引を持ちかけた。

あれ(マダラの遺体)をひっぱり出してきて、自分の土俵に引きずり下ろす。」

 

うちはサスケをコントロールする為に『暁』に取引を持ちかけたところまでは予想が付いた。

だが、まさか誰があの『暁』を布石にすると思うのだろうか。

 

「相手にとってのデメリットで取引する場合、一番避けなければならないのは、口封じに殺される事だ。

そのための『五影会談の真ん中に落とす』と言う脅迫、そして、

俺の本体が今()()()()の五影達だ。

 

今、五影は俺の話を()()()()聞いている。

大人しく聞いている限り、こちらには来れないだろう。

だが、何れ俺とダンゾウとこいつを追って、五影は確実に動く。

俺たちが忍びで、五影が全てを知っているべき(おさ)という地位にいる限り、立場が誰かしらこちらに向かわせ、現状確認を必須にさせる。

 

俺との最初の取引で、俺が付け加えた用件も容易に飲めるはずだ。

目標(ダンゾウ暗殺)を失ったサスケのヘイトを稼ぐ』用件で時間稼ぎが出来る……。」

 

ダンゾウの()()時間に追われるのは、自分たちであった。

 

なんなら今、呑気に話をしている状況も時間稼ぎだろう。

マダラは、ダンゾウと同じ罠にかかったことを確信する。

一応『マダラの計画』には全く接触しない部分ではあるが、取引に置いては絶望的な状況である。

マダラはイタチのかつての言葉を思い出す。

 

『あの人は…交渉に対しては確実だ。』

 

成る程、確実だろう。

()()()()()()()()()()、確実だろう!!

 

 

 

上記取引により「うちはサスケ」を止めることでサクヤ対ダンゾウ対サスケ、オビトの三つ巴を避ける事ができ

五影という横やりの可能性によりマダラたちは取引が終わり次第早々に退却せねばならなくなり、サクヤの命は保障されることとなる。

 

ここまで言えば分るだろうと言う様なマダラの視線に、黒ゼツは唖然とするしかない。

 

サクヤは、

自分と、五影と、サスケと、自称マダラを使って、周り全員敵という地獄の様な状況を作り出すことにより、ダンゾウは力を温存(手加減)せねばならなくなり

 

五影を相手取るマダラ相手に、時間稼ぎをすることで、三つ巴を誘発させ、命を長らえさせる。

 

敗因は完全に、真の目サクヤの力量を見誤っていた事に限るだろう。

只の七光りでは無い、女狐でもなければ、愚か者でもない。

真の目サクヤは『忍』だ。

 

 

―――

――

 

「さっさと取引を終わらせる。

これ以上こいつに関わると碌な事になら無い。」

 

それが残された最後の最善手だった。

利用するならまだしも、利用されるのはごめんとばかりに空間をゆがませ、黒ゼツに指示するマダラ。

 

「酷いな、愛しのサスケ君が回復するまで待ってあげようと思ったのに。」

 

サスケの疲弊を察している言動、残念を装うサクヤに、マダラは無視を決め込む

燃え尽きたダンゾウの右腕(炭と化した柱間細胞の残骸)を眺め、この様子を見るに回収できるのはカガミの目だけだろう、とサクヤの足元でごろりと転がる頭に鼻を鳴らした。

 

―――

――

「ほいよ」という軽い言葉と共に渡された取引の要

このまま殺してしまうのも手だが、真の目サクヤにはサスケに関しての落とし前をつけてもらわなければ、この損害を取り戻せない。

 

自称マダラは、取引内容である『うちはマダラ』の遺体の入った巻物を受け取ると懐に入れ、歪んだ空間を出現させた。

 

 

 

マダラの横から2つの影が地面に落ちる―――

 

 

突然の痛みに二つの影である、サスケと香燐は呻く。

サクヤの想像よりひどい怪我に、早々に向こうの幻術を解いたのは悪手だったかと爪の先程反省したが、起こってしまった事は仕方がない。

(サスケの疲弊は、サクヤが中途半端に水影を口説いたせいで、水影がブチギレ、ヘイトが一番近い敵『うちはサスケ』に向いてしまったのが8割である。)

 

サスケが起き上がったことを察し、サクヤはそちらに顔を向ける。

しかし、サクヤはサスケの様子がおかしい事に気付く。

サクヤに気が付いたはずのサスケは、殺気では無く、困惑を向けていた。

 

「よう。ひさしぶり。」

 

「お前、なんでここにいる。」

 

サクヤは、自称マダラの入れ知恵により会的瞬時に敵認定されると思っていた。

しかし、サスケの表情は変わらず、何かを迷っているようだった。

 

「なんでって、志村ダンゾウ殺すためだよ。

この通り、目的も達成したからそろそろ帰ろうかと思ってたけどね。」

 

そう言ってサクヤはサスケに笑いかけ、足元に転がる老人の頭を文字通り踏み潰した。

 

 

―――

――

 

サスケは、かつて人だったものを踏み潰し、全身に赤をしたたらせている姿に上手く言葉が出ないでいた。

 

 

 

 

 

 

「どういうことだ……」

 

「あ?」

 

 

サスケの知ってるサクヤは、どこか抜けていて、何時も適当で、イルカ先生みたいに朗らかに笑う中忍で、血の気配なんて1mmも感じさせなくて

こんな惨状で嗤えるような神経をした人間では無いはずだ。

 

 

「どういうことだって聞いてんだよ!!」

 

やっと発露した感情、怒りに任せた一歩を、橋の手前からサクヤに向け咆えるが、

裏腹に、この現状を理解したくないともサスケは叫びたかった。

 

 

 

「お前イタチに操られてたんじゃないのかよ!!」

 

 

 

 

心からの叫びをあげたサスケは、このツッコミで体力を使い果たし、頭から地面に着地する。

香燐のチャクラを貰い少しは回復したが、五影との戦闘で疲弊した事には変わりない体は限界が近かった。

 

サスケの言葉にサクヤ()は言葉を返す。

 

 

「「「は?」」」 

 



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鮮度良好血戦編
130


サクヤと周りの認識は時々大きく乖離している。


「なんで、あんたは俺の面倒を見るんだ…。」

 

どこから引っ張り出してきたのか、見たことない表紙の本から顔を上げたサクヤ。

この本はまず背表紙を優しく撫でないと噛みつかれると、子供騙しの嘘で脅されたのは記憶に新しい。

西日が、サクヤの白い髪を薄金色に染めて、直接窓から差し込んでいる。

夕ご飯を作る前の一休みのひと時。

サスケはその光景を何度も見てきた。

 

 

「頼まれたから。」

 

 

 

優しい目が西日と共によく、よく刺さった。

 

―――

――

 

 

うちは一族で起こった『あの事件』があってから、サスケがサクヤを初めて見たのは、病院だった。

 

 

多少のかすり傷は有れど、外的損傷がほとんどなかったサスケと比べて

サクヤは夜中、人っ子一人起きていないはずの時間に

ストレッチャーで、慌ただしく病院に運ばれてきた。

 

「先生反応がありません!!」

「いいから続けて!! 除細動の準備!!」

「瞳孔の反応なし!! 弛緩剤の可能性あり!!」

「先にルート通します!!」

「出血が多い!! 輸血パックを!!」

 

サスケは初め、()()が誰かわからなかった。

何かに殴られたのか、腫れた顔は原型を殆ど留めていなかったからだ。

かろうじで赤い目がちらちらと見えたが、それは焦点が合っておらず、宙をわずかに行き来するだけ。

 

大した傷もないのに押し込められたICUのベットから、ぼんやりと眺めたその人間は

血だらけで、その髪はドス黒く染まっていた。

腕は火傷がひどく、赤く脈打ち

背中に刻み込まれた多くの切り傷は、毒か何かでふさがらないのか、赤色が脱脂綿でふき取る間から零れていく。

医師たちは懸命に毒抜きをして、原因の特定を続けている。

彼等の声はとどまることを知らない。

 

この人は、このまま死んでしまうのか。

自分はまた、人の死ぬ姿を見るのか。

 

濁った黒い瞳で、サスケはそれを眺める。

途中、サスケの様子に気付いた看護師がカーテンを閉めようとしたが、医師がそれを止める。

 

「その子、ついさっきまで何の反応も無かったの……。

良くも悪くも反応があるって事は、持ち直すかもしれない。

だから今は、好きなようにさせて。」

 

 

―――

――

 

明け方、やっと医師たちの声は落ち着きを取り戻し、機械音とICUを行き来する医師と看護師の足音だけに戻った。

隙を見てそのベッドに近付くと、どこか懐かしい気配がする。

そしてサスケは、ちらりとカルテから見えた名前で、『これ』はサクヤなのだと理解した。

 

 

 

顔中に張られたガーゼが包帯で固定されて、首元には仰々しいコルセットもまかれている。

腫れは未だ引いておらず、ギリギリサクヤと認識できるのは、時々開くぼやぼやと宙を行き来する赤い目だけ。目は開いているのに、それは鈍く反射するだけで何をもとらえていなかった。

赤黒い血の塊が落ち、多少は綺麗になった白い髪は頭部のけがの治療の為に短く切られている。

 

心臓に合わせて聞こえる電子音だけでは不安になり、唯一肌が露出している足首を握るが、鼓動は感じず、僅かな生暖かさだけで、更に生きているのか分からなくなる。

サスケはサクヤのベッドへ乗り込み、背中の傷のせいで横を向いている胸に、静かに耳を当てた。

小さくとも、しっかり動く肺と、電子音よりコンマ数秒早く聞こえた心音に、やっと安堵の息を吐く。

サスケの中で、サクヤの鼓動がこんなにも嬉しかった事は、後にも先にもこれだけだった。

 

 

 

―――

――

月詠のせいで安定しなかった精神が、サクヤのおかげか落ち着いたサスケは、一般病棟に移された。

しかし、騒々しいICUから一般病棟に移されても、サスケの足はICUに通い続けた。

 

サクヤの意識が無くても、心臓が止まりそうでも、今、サクヤの隣にいるべき人は自分でないといけない気がしたからだ。

医師たちがせわしなく動き回る部屋に忍び込んでは、何をするでもなく邪魔にならない場所で、ただ静かに患者を眺める、死にそうな顔色の子供を止められる者はいなかった。

 

全てを亡くしたサスケは、誰でもいいから自分の隣にいて

生きて欲しかった。

 

 

 

「誰か…いるのか…?」

 

かすかすの声で正気に戻ったサクヤが、声を掛けたのはサスケだった。

背中の傷に触らないよう、俯せに寝かせられ、呼吸の為に横を向けられた顔はサスケの方を向いているが、どうやら視力はまだ回復してないようで、サクヤの赤い目は宙をさまよう。

 

「……いる。」

 

何度か短いながらも意識が戻ることがあると看護師に聞いていたサスケは、そのサクヤの声に、返事を返すので精一杯だった。

本当は素直に意識が戻った事を、喜べればよかったんだ。

 

確かにうれしかった。

生きていて、意識が戻った。それに勝ることは無い。

サスケにとって、生きていたことがこれほど嬉しい事が無いと思うぐらい、嬉しかった。

救いだった。

 

しかし、それと同時にサスケの頭にはあの日の光景が廻って—―

 

何故サクヤが生きる事が出来て

家族は……両親は生きられなかったのだろう……

 

—―声が固くなるばかりだった。

サスケの低い声に何の疑問も持たず、サクヤはかすれた声で返事をする。

 

 

「そうか…心配をかけたな。もう行って大丈夫だ。」

 

「別に……俺が、勝手にやってることだし。今日はココにいる。」

 

「……?

そうか。見つからないように気を付けろよ。」

 

何だか妙な違和感を抱いたが、気にせずサスケは声をかける事にした。

サクヤの意識が、またどこかに行ってしまわないように

両親の様に、物言わぬ骸にならないように

 

 

「相当ひどいけがだったけど…」

 

「ああ、大丈夫。ちょっとした尋問の様なもんだ。

命を取りたいわけじゃなかったのは知ってた。

私の立場上、僅かでも生きていることに価値がある…って今更こんな話をしても意味ないか。」

 

顔中を包帯で巻かれている中、唯一見える左の赤い目を、初めてサスケに向ける。

そして石膏で固定されていた包帯だらけの腕をサスケの頭の上に乗せて囁いた。

 

「どうした?

元気ないな、イタチ。」

 

 

その眼はサスケを見ているようで、何も見えてはいなかった。

 

 

 

サスケはサクヤの怪我の、本当の意味を知らなかった。

知らなかった故この傷が、イタチとの戦闘で着いた傷で、

先程の言葉が、イタチの幻術にかかって心を壊してしまっての言葉だったのだろうと

考えてしまった。

 

そもそもの勘違いはそこからであった。

 

 

本当はダンゾウらの尋問と名ばかりの、拷問で出来た傷で、

朦朧とした意識と視界の中でサスケとイタチのよく似た姿を見分けるのは至難の業で、

一通り周りの気配を探って問題なかったからこそ出た安堵の一声で、

いつもより低いサスケの声はイタチの声とそっくりだった。

 

更に、情緒をぶち壊していく(モク)、真の目()、サクヤ(ゾク)にとって

この夢うつつの記憶を頭の片隅に留めておくのはとても難しい事で、次の日にはすっかり綺麗に忘れることなど、お茶の子さいさいであった。

 

 

サスケはこの会話以降、サクヤの病室に行くのを辞める。

壊れた(訳ではないがサスケにはそう見えた)サクヤに会いたくはなかったからだ。

なんならその原因を自分の兄とも思っているわけで、普通にどの面して会えばいいのか分からなかった。

 

 

―――

――

 

退院当初、立ち入り禁止のテープを跨いで勝手に侵入した集落は、自分の記憶そのままで

 

自分を裏切ったのはイタチ

生まれ育った家で両親を殺したのもイタチ

木の葉に住まう一族郎党殺したのもイタチ

関係ない(とサスケが勝手に思っている)サクヤを壊したのもイタチ

 

イタチの罪を数える度に、お腹の底に何か黒いモノが溜って行くようだった。

 

 

 

 

怪我が快方に向かい、意識が1日もつようになってからサクヤは

一般病棟に移され、元気にお見舞いのフルーツをむさぼり、自責の念に駆られる火影をいびっていた。

本人的には、拷問尋問はこのぐらいやるだろうし、ダンゾウが自分を殺すつもりも、使えなくするつもりも、血筋の利用価値的には全くないことに気づいていたので

のんきにこの程度で済んでよかったなどと思っていたが、サスケにとっては、知り合いの人間がここまで傷つく、それも自分の兄のせい(と勝手にサスケが思っている)……

はたから見ればサスケの心労は言わずもがなで、3代目火影が不自由ない生活をサスケに約束するのも納得の立場である。

 

 

サクヤが一般病棟に移った頃には退院していたサスケは、実家が事件現場のせいで一人暮らしをせざる負えなくなっていた。

 

一応子供が一人暮らしをするにあたって、里から火影の命で、何人かお手伝いさんが訪ねて来てはいる。

しかし

最初はお手伝いさんを家に入れてはいたが、段々とその腫物を触るような言動や、自分にやかましく話しかける存在が気に障るようになり、半年経った頃にはサスケはそれをすべて追い返していた。

 

勝手にサスケの心を推し量り、価値観を押し付け、かわいそうや大変等と評価を貼り付けられ、果にはうちはの遺産があるのだろうと迫ってくる輩までてきており、他人というものに辟易していたからだ。

 

一人で暮らそうと思えば、ぎりぎり暮らせる教育を両親から受けていたサスケは、一人に戸惑いながらも、一応は暮らせてはいた。

しかし経験のある大人の様に、知恵を働かせたり、情報を周りから集めたりできるかと言ったらそうでもなく

洗濯物が間に合わなかったり、お弁当を作り忘れてアカデミーで食いっぱぐれたり、演習場で疲れ果てて寝てしまいそのまま一夜を明かしたりと、段々一人で生きる大変さに耐え切れなくなっていた。

 

イタチに『サスケに何不自由ない生活を』と約束した3代目は、その姿に頭を悩ませ、ある一人の忍びを紹介する事とした。

やいのやいの言いながら、火影に引きずられて行く真の目のモヤシはいつかのようで、里の者は「またか……」と眺めるだけであった。

 

 

「毎日は無理となろうが、お主の面倒を当分の間見てもらう事となる。

互いに知己であろうが、しかし当分の間世話になる身じゃ、自己紹介しておきなさい。」

 

 

サスケの家に引きずられてきたのは、病院以来会っていなかったサクヤであった。

病院での出来事から1年ほどたっていた為、顔の腫れは引き、髪も元の長さに戻っている。

籠手や服で、怪我の様子は窺えなかったが、動きになにか制限があるように見え無かったので、その怪我ももう治ったのであろう。

サクヤがいつ退院したのか、怪我が全快したのか、サスケは知らなかったが、何故か『サクヤは病院での会話を覚えていないだろう』という妙な確信がサスケにはあった。

 

そしてサスケはそれを掘り返す気が無かった。

掘り返してサクヤがまた、あの日の様に壊れてしまう事が怖かったのだ。

あの、サスケを見ているようで、何も見ていない目は、もう二度と視たくなかった。

 

―――

――

 

サスケの家からの帰り、報告とばかりに火影室に顔を出したサクヤの顔は晴れてはいなかった。

 

「お主も、思うところがあるだろうが、サスケの世話係にはコマ、お前が一番いいと思っておる。」

 

「傷の舐めあいは出来ませんよ。」

 

「そう言う事ではない。環境の問題じゃ。

ナルトの様に、お前の思う通りに動いてもらって構わん。ワシはそれが一番じゃと思おとる。」

 

「御命令であれば。」

 

 

「……サスケを頼んだ。」

 

 

3代目が、どういう思考を経て、その言葉に辿り着いたのかは分からないが

その言葉は忌みじくも、イタチを心配するフガクと同じ言葉だった。

 



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131

 

任務で忙しいのか週に1,2回しか来ないサクヤは、1年の間は何だったのか、サスケを今迄通りに扱った。

まるで家族がいた時の様に扱うので、サスケは横にイタチがいるような気がして、振り返るといない、と言う事を繰り返す。

サスケはそれが、未だイタチを憎め切れていないように感じて、苦い顔をするしかなかった。

 

両親を殺したのはイタチで、一族を殺したのもイタチで、サクヤを壊してしまった(とサスケが勝手に思っている)のも、イタチだ。

サスケはサクヤと会うたびに、それを再三心の中で唱えなければならない程、サクヤは普通にやってきた。

 

 

サクヤは他の大人と違って、事件の事を憶測で語らなかったし

可哀相などと同情を匂わす言葉を、サスケに一切使わなかった。

サスケに対する態度は以前と全く同じで、そしてサクヤとの会話には

 

イタチの名前すら出てこなかった。

 

あれほど仲が良かった、その面影はどこにもなく、

サスケには、それがイタチの付けた傷を忘れようとしているように見えた。

(実際は置いておいて。)

 

 

 

 

 

サスケは時々、修行が夜遅くなった時に捕まり、真の目の大浴場に突っ込まれて、乱雑に洗われた。

自分でやると言っても「背中に手が届くならそうしてる。」とスポンジと、泡を乗せた両手を掲げ、肩をすくめながら論破され、その日は決まって風呂上りのストレッチを念入りにする。

 

親が居ないナルトも似たような環境であったようで、小脇に抱えられ真の目の銭湯に突っ込まれる姿を里でよく見かけた。

(流石にナルトと放置された修行にて、相性が悪いと判断したのか、ナルトと同じ風呂に突っ込まれる事は無かった。)

 

ナルトと同列に扱われるのはサスケとしては少し嫌だったが、サクヤが誰にでもこうだという目安にもなっていて、サスケは少し安堵した。

気を使われてこんな対応をされているのであれば、いたたまれないからだ。

 

 

真の目の大浴場は広く、時間帯で男女分けており、子供は保護者と入ることが義務付けられていたので、女湯の時間にサクヤと共に入った時もあった。

サクヤにとっては、イモ洗いの気分だったのだろう。

 

共に湯船につかった時見えた背中は、あの日よりマシになっていたが、処置が遅かったからなのか、傷跡が大きく残っていた。

特に、腕から指先に続く火傷跡(ケロイド)と、背中の切り傷、体中についている裂傷。

一体何をしてあんな傷を負ったのか…

 

再三の事だが、サスケはこれらすべての傷がイタチによるものだと思っている。

一応、傷自体は根の拷問で着いたものもあるのだが、その原因がイタチの里抜け、手助けの嫌疑によるものだった所を考えると、その考えはあながち外れてはない。

 

サスケはアカデミーの教室で、同じくサクヤの傷を見たであろうナルトが、能天気にかっこいい、強そう、と誉めそやす、その言葉が許せなかった。

 

 

―――

――

 

「おい、起きろ。」

 

アルトの静かで、落ち着いた声がサスケの耳に良くなじむ

しかし声の持ち主はサスケの意識を覚醒させたいらしく、ゆらゆらとサスケを揺らす。

乱暴な手つきに、母さんでは無いとあたりを付ける。

そして文句でも言おうと目を開けると、サクヤがいた。

 

目を丸くしたサスケは勢いよく飛び起きる

あたりの確認をするために目を凝らして首を回す。

 

ココは……第13修練所だ。

修行場所にしていたところでチャクラが切れてそのまま寝てしまったのだろう。

辺りは黒に塗られている。

最後の記憶の時はまだ明るかったはずだから、ずいぶんと寝ていたらしい。

 

サスケの様子にサクヤは、白い髪を揺らして下を向くと同時に深く息を吐き、鈍い赤を鋭くしてサスケに向けた。

 

「三回目だ」

 

サクヤの目は冷たい。

何の三回目かは分かっていた。

こんな時間になるまで演習場で寝ていたところを()()()()()『3回目』だ

 

「修行もいいが、日々の生活あってこその修行だ。

日々の生活もままならない奴には、修行をする資格はない。」

 

サクヤの断定する言葉にサスケはひるむが、『資格が無くても、俺は修行をしなければならない。サクヤの言葉を無視しようと思えばできる。』と心を持ち直す

 

しかし、「あまり言いたくは無いんだが……」から始まったサクヤの言葉に、サスケの心はぽっきりと枯れ枝の様に折れた。

 

 

「お前は今、()()だ。

一応世話係である私や、保護者の火影様が居るとはいえ、何時も見ていられるわけじゃない。

私にも火影様にも仕事がある。

お前の両親が生きてた時の様に、常に誰かが見ていて、助けてくれるわけじゃない。

お前は、今、正しく『一人』なんだよ。」

 

サスケは、同じうちはの記憶を持っているサクヤから繰り出される”一人”に、自分以外はもう、『うちは』が居ない事を、嫌と言う程思い知らされる。

 

「サスケ、お前は賢い……。

一人に慣れろとは言わない

だが、一人で出来る範囲の事をしろ。」

 

分かっているだろうとばかりに付けられた『賢い』がサスケにとっての救いであると同時に、続く言葉がもう共に支え合う家族がいない事を明示していた。

 

サスケが、一人に慣れていない事は明白であった。

間に合わない洗濯

空っぽの冷蔵庫

メニューの変わらない食事

分別の出来ていないゴミ箱

演習場で夜が更けるまで気絶。

 

はっきり言って、『3回目』と言うのも発見された数が3回であって

今迄ももっと、数えきれない数、森で街で演習場で、無防備に命を晒してきた。

それが元で体調を崩した数も少なくは無い。

家族が居たなら、(うちは一族が滅びて無ければ)こんなことはありえなかった。

 

何時も誰かしらサスケの所在を知っていて、遅かったら誰かしら迎えに来てくれた。

自分で買い足さなくとも必要な物が何時も十分用意されていた。

家に帰ったら明かりが燈っていた。

困っている時の後ろには、必ず誰かが見守ってくれていた。

 

一人で生きたことが無かったサスケは、一人の裁量を知らなさすぎた。

サスケは今、『うちはサスケ』は一人なのだ。

 

どうしようもない事実を、突き付けられた。

目をそらしてきた事実であり、確実にサスケの頭に居る事実だ。

 

 

 

―――

――

 

いつもだったら、元気よく反発が帰ってくるタイミングにサスケが大人しい。

サクヤは言い過ぎたか…と爪の先程の反省はしたが、言葉を撤回する気は無かった。

 

 

ナルトが唯一幸いだったのは、最初から一人だった部分であろう。

サスケの様に『喪失』を知らずに済んだ。

それに、凝らなければ多少なりとも『愛情』は、周りの人間が補填する事が出来る。

血がつながっていなくとも、仇であろうとも、死にやすい赤ん坊から生き続けた事実がある限り、誰にも愛されてないとは言えない場所にナルトはいる。

だからサクヤは、ナルトが出生の秘密を知って尚里を愛する事が出来るように、真の目を使って、信頼関係を作る方法も教えた。

 

 

しかし、サスケは元々あったそれらを、今になって喪失した。

それと同時に家族の愛情も失った。

ナルトの様に補填が利くかと言ったら、そうでは無い。

愛情が欲しいのは彼ら(両親)であって、もう二度と会う事の出来ない彼等(家族)であって、誰でもいいわけでは無いのだ。

 

サクヤが生まれて幾何か、忍界大戦が終わる頃なれば、サスケの様に一族壊滅なんて話はざらだった。

そういう人間が、その後どう生きてきたかも、サクヤは良く知っている。

生き残ってしまった子供が、どうしようもなくなって、真の目に拾われることも多かったし、戦後の破壊された建造物の補修に出た真の目に、流れてくる情報はそんなものばかりだった。

 

だから、今(サクヤや三代目がいる)のうちに一人の裁量を知っておかないと、本当に一人になった時、一人の重さに耐えきれなくなる。

そう、サクヤは思ったのだ。

 

 

 

サクヤは帰るぞと、サスケに立つように促すがどうやらガス欠らしく、静かな森にお腹の虫の鳴き声が響いた。

耳まで真っ赤にしたサスケに、サクヤは腰のポーチから兵糧丸を出して差し出す。

しかし、サスケはそれを受取ろうとはしなかった。

 

「食えるときに食わないと死ぬぞ。」

 

サクヤはサスケを急かすが、何やらかすれた小さな声で言い訳をする声が聞こえる。

 

「…い……ら」

 

「は?もっと大きい声で言ってくれ。」

 

「…いから…」

 

これは無理だと、サクヤはサスケに近寄り耳を極限まで傾ける。

 

「あんだって????」

 

何だかどこぞの白塗りの殿様の言葉を彷彿させる馬鹿にした物言いにサスケはカチンときたが、答えなければサクヤはひかないだろう。

サスケは渋々サクヤに聞こえる声の大きさで答える。

 

「…………甘いから…食べたくない…。」

 

 

サスケのその言葉に、サクヤは大きな、大きなため息を吐くと、腰のポーチをもう一度漁った。

 

兵糧丸は結構甘い。

保存目的に甘いコーティングがされているし、栄養価の高いはちみつや、砂糖、甜菜糖などの糖分がふんだんに入っているからだ。

そして薬膳の甘みも相成り、あまいモノ嫌いな人間には、不味さが増す。

甘くない兵糧丸も存在するが、得てして、口に入れる用では無い、拷問用と言わしめるほど苦く、且つ値段が高い。

アカデミー、それも一人暮らしの生計には辛いものがある。

ちなみに売れ行きは良くない。

 

ポーチを漁る手は、目的の物を手にしたらしく、サクヤがサスケの前にそれを晒す。

 

「ほれ。」

 

兵糧丸だった。

 

「だからっ」

 

文句を言おうとした『ら』の口に、サクヤは無理やりそれを突っ込んだ。

サスケは、口に入れた食べ物を出さない躾けは、両親から受けていたので

唐突なそれに、吐き出す事はしなかったが、嫌そうに口をもごもごと動かす。

しかし予想していた、いつもの妙な甘さがやって来ず、サスケはサクヤを見上げた。

 

「それの作り方はまた今度教えてやる。

もう1粒口に入れたら行くぞ。」

 

そう言ってサクヤは袋ごと兵糧丸をサスケに投げる。

置いて行かれると、サスケが慌てて口にもう一つ分入れたところで、サクヤは屈みこみサスケに片腕を伸ばし

 

そのまま肩に担いだ。

 

「っな!?」

 

「ふいー…重くなったなぁ……」

 

「っ一人で歩ける!!」

 

突然の事にサスケは暴れるが、なんてことないように往なされる。

それと同時に、連勤帰りの中忍にさえ後れをとる自分の実力に、嫌気がさした。

 

「それは糖分の分量が少ないから普通の兵糧丸より栄養価は落ちる。

いずれにしろ消化して栄養が体に回るまで待ってる暇はない。

私はこの後も仕事が入ってる。

お前を家に帰したら、また出なきゃならん。」

 

其れならば置いていけばいいじゃないかと言いかけて、サクヤが自分の為に夜を掛けて来てくれたことを思い出した。

申し訳なさに一言謝ったサスケは、思考をサクヤの予定に切り替える。

 

「次に帰ってくるのはいつなんだよ…。」

 

「…多少前後するが大体1週間後だ。

その後休みを1週間貰った。兵糧丸はその時に教える。

それまでは、それで我慢しなさい。」

 

『それ』っと言った袋には結構な量が入っている。

サクヤの分は大丈夫なのかと思い聞くが、皮肉が帰って来るだけだった。

 

「お前と違って、私は普通の兵糧丸も食えるからな。」

 

むっすりと黙ったサスケにサクヤは何も声をかけず夜の森を掛ける。

このままサスケの家まで行くかと思われたが、街中に入ったあたりでサクヤはサスケを降ろした。

暗くて分かりにくかったが、空に梟が飛んでいる。

 

「すまん、予定が早まった。

ここからは一人で行けるな?」

 

目線を合わせて問いかけてくるサクヤに、サスケは頷きを返す。

サクヤは沈んだ頭に手を伸ばし、ワサワサとサスケの髪をかき乱した。

 

「今日は寒くなる、時間も遅いし風呂で暖まって、ちゃんと消化に良いもの食べて、早めに寝ろ。」

 

その言葉と同時にサクヤは、サスケの返事も聞かず、一瞬の内に夜に沈む。

後に残ったのはぬるい優しさで、熱くも冷たくもないぬるさは、何時かの西日に照らされたサクヤそのものだった。

 

 

サクヤはサスケに『ぬるい』一人を作り上げる。

 

サスケがもし、『本当に』一人になっても生きていけるよう。

イタチの思う方に進むよう。

 

フガクに頼まれたイタチに、サスケの不自由ない生活を頼まれた火影に、頼まれたから。

 

 

 

サクヤの思惑を知らないサスケにとって、それは救いであり、同時に

未だにイタチを思い自分と接する、どちらにも振り切れないサクヤの気持ちを表しているようで、好きでは無かった。

 



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132

 

「あー……。なんか勘違いしているようだが訂正しておくと、

私は木の葉で働いていた期間のうち、大半が暗部だった。

そしてお前の兄の監視を、直接火影と、一応こいつにも任されていた。」

 

先程踏み潰した原型も無くなりそうな頭部を指すサクヤは困惑していた。

前々から、なんだかサスケの様子的にいいように美化されているなぁとは思ってはいたが、ここまでとは思わなかったからだ。

 

話はそれるが

サスケ達『うちは』がシリアス時空とすれば、サクヤはギャグ漫画時空の人間である。

死ぬようなことがあっても次のコマでツッコんでる側の人間で

爆発落ちなんてサイテー!と言われる側の人間だ。

喧嘩は、土埃の中から腕や足が見える感じの喧嘩をするし

たんこぶは3段アイスのように積まれる。

 

端的に言うと

 

 

「(なんか考えるのめんど……。)」

 

 

シリアスパートはさっきのマダラの謎解きで使い切っているし。

サクヤにとって、サスケの人生はめんどかった。

その目は、あの優しいイタチをして『空っぽの目』と言わしめた、冷たい目。

 

 

諦めと、戒めと、矛盾を抱えた、サクヤの興味を失った目だった。

 

 

 

サクヤの姿に、言い様の無い虚しさがサスケの頭に広がり、一瞬で冷たく脳みそがスパークした。

 

 

「なるほど、そうだな……

イタチに裏切られて捨てられた可哀そうな人だったのが

実はイタチと共謀してたなんて言われて、更には本当はイタチの敵側の人間で、イタチを使ってうちは一族を滅亡に追いやったなんて信じられないよな。

ああ、あと辛気臭いうちはマダラとかと言う奴と手を組んでるとか、イタチが任せたはずの里をぬけたのかとか、そういうことか。」

 

 

真っ赤に染まった袖と、手袋の飽和量を越した指先から垂れる鮮血を見せつけるように両手を開いて、サクヤは肩をすくめる。

その姿にサスケの息が止まった。

 

 

そのサクヤの姿は、表情は、

サスケの記憶の中となんら変わりなかった。

 

変わりないからこそ、その姿が途轍もなく不気味に思え、今迄縋ってきたと言ってもいいサクヤ像が、全て嘘だったと気付いてしまったのだ。

 

 

サクヤはまるで慣れたこととばかりに、言葉を並べてサスケの思考が追い付くのを待つが、サスケは余りにも現状やサクヤの目的が不明すぎて、何も言えないでいた。

 

「水影がすぐそこまで来てるか……ちょっと早めに行こう。

一応の訂正だが、私はマダラと合意の上、一時的に手を組んだに過ぎない。

ダンゾウを殺すのにお前が少し目障りだったからな。

暗殺では無く敢えて五影会談を襲撃するよう示唆して、足止めさせた。」

 

困ったように笑う姿はいつものサクヤで、サスケの知るサクヤで、

浴びる様に血に濡れたサクヤは、空っぽの何も見ていない目は、サスケの知らない姿で

戸惑いに声が出ないサスケを放置して、サクヤは印を組み始める。

 

「そちらさんもサスケに本懐を遂げさせるためダンゾウを殺させたいようだったけど、ちょっと伝手で良い情報が入ってな。

そいつをちらつかせて、無理やり取引した。」

 

 

話しながら丁寧に組まれる印はサスケの知らない物ばかりだった。

唯一読み取れた印の傾向から、目くらまし系の術なのは分かった。

 

また、逃げられる

 

そう思ったサスケは重い体を引きずり、今度は腰の獲物を投げようと手を持っていくが、五影を相手取る際に投げた事を思い出す。

舌打ちをしながら、それでも逃がすまいと何の術か分からない所に飛び込むサスケ。

後ろで座り込んでいた香燐が悲鳴をあげるが、サスケは止められなかった。

 

 

 

 

サスケは術の効果で視界が暗転していくのを無視して、気配と声を頼りに更にサクヤに走り寄る。

距離が遠い。

もっと早く、速くと、雷影の様に雷遁を身にまとい筋肉を無理やり動かした。

視界がおぼつかないながら、疲弊した写輪眼を発動させる。

 

 

「私が過去うちは一族滅亡に一役買ったのも本当。

あの時は背景が忙しくてね。詳しい話は怠いから死人にでも聞いてくれ。」

 

 

草薙の剣の代わりに、床に落ちていた黒い剣をチャクラで拾って

術の効果か暗転した視界の中、消えそうな気配に突き立て、何とかして引き止める。

あのおちゃらけていて、どっちつかずで、無責任なサクヤに聞かなければならない事がいっぱいあったからだ。

 

「私は「じゃあっ!!」

 

サクヤの言葉の辛気臭さに、何一つサスケの求める答えをくれないサクヤに、いらだちから言葉をさえぎる。

 

「なんであの時俺にっ!! 何で兄さんとっ!! なんでっ

 

俺を、生かしたぁっ!! 」

 

 

 

 

本当にイタチを裏切っていたのか。

なぜ、幼少のサスケを中途半端に生かしたのか。

なんで、そんな冷たい目をするのか

なんで、イタチに全てを話さなかったのか

なんで、自分に全てを話さなかったのか

 

全てを知っておきながら

行先を、わかっておきながら

回避する方法を知っておきながら

なんで、なんで、なんで、なんで

 

幼き日の出来事が泡沫の様に浮き出ては弾ける。

聞きたいことはいっぱいあった。

 

けれど口を吐いて出たのは、自分ひとりを置いて行った、恨み言の様な言葉ばかりだった。

 

乱暴に突き立てた切っ先は、まっくらな視界の中、グッと何かを捉え静止した。

途端に暗闇が溶けるように消え、黒に順応した視界に光が入り、サスケは眩しさに目を細める

すぐ近くに血の匂い、そして死の気配を関知する。

 

 

「頼まれたからだよ。」

 

 

ぽたぽたと口端から血を垂らして、あのおびただしい返り血では無く

正真正銘のサクヤの

 

 

「さよならだ。

イタチを追え。そのさきで待ってる。」

 

 

サスケが付きたてた刀剣はサクヤの心臓を見事に射抜き

サクヤの体は、白い炎によって燃えカスも無くほろほろと燃え尽き、消えて行った。

 

 

そしてサクヤはその時、終始サスケの良く知る優しい目だった。

 

 

 

 



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