【ネタ】転生特典はFateの投影だった (機巧)
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短編
制作秘話「転生特典?Fateの投影ですよ」


 

転生したら、特典はFateの投影だった。

 

順を追って話そう。正月に餅を喉に詰まらせて死んだ俺(一人暮らし)は、いつの間にかこの世界に生を受けていた。

そして俺は気付いた。生まれてきてからずっと聞こえる単語に。

神様。ステイタス。レベル。スキル。魔法。そして、ダンジョン。迷宮都市オラリオ。

 

これ完全に『ダンまち』の世界じゃねーか。

 

そう理解した俺は地力を鍛えるために剣道なんかに手を出した。そして毎日適当に修行をして、本日、晴れて迷宮都市オラリオへと着いたのだった。

 

そして、何とかオラリオの街の中に入った俺は、都市中を駆け巡り、何とかオンボロの教会の前へとたどり着いた。

ヘスティア・ファミリアの本拠地だ。

自分はヘスティア・ファミリアに入るか、それとも他のところに入るか、いろいろ悩んでみたが、取り敢えず人柄を見に行くことにした。

と言っても中に入っていいのか、勝手に入ったら不法侵入だよなと思い、あたりの石に腰掛ける。

 

しばらくすると、白髪の少年が中心街の方角から歩いてきた。すると、さすがはお人好し原作主人公。なんと心配そうな顔して話しかけてきてくれるではないか。

 

「どうかしましたか?」

「いや、今日オラリオに着いたのだけど、どこのファミリアに入ろうかと思っていてね」

 

神様に嘘はつけないため、転生のことは隠し、それ以外のことはそのまま言うつもりだ。

 

「っ! じゃあ、うちはどうです? ヘスティア・ファミリアって言うのですけど」

「じゃあ、見学だけ……」

「よかった! こっちに来てください。僕はベル・クラネルと言います。よろしくお願いします」

「エミヤ・アーチャーです。よろしく」

 

そう言って、オンボロの教会の中へとベルに手を引かれ、俺は冒険への期待を胸に、足どり軽く進んだ。

 

この後、結局主神とベルの好感度が俺の中で爆上がりして、結局俺はヘスティア・ファミリアに入ることになったのだった。

 

 

 

◾︎

 

 

 

「うーん。スキルがあるけど、よくわからないね。君は何か分かりそうかい?」

 

ステイタスが刻み込まれ、初めての主人の言葉がこれだった。神様がわからないと言うことはユニークスキル等か?と期待して、渡された紙を見る。

 

それにはこうあった。

 

Lv:1

力:I0

耐久:I0

器用:I0

敏捷:I0

魔力:I0

 

<魔法>

 

<スキル>

 

【投影】

Fateの投影。多少融通は利く。

 

 

 

うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!

 

俺はそう叫びかけた。はやく試したくてうずうずするのを押さえる。

 

「どうやらその様子を見ると、早くスキルを試したいようだね。教会の裏に行っておいで。そこならあまり壊しちゃうようなものはないから」

「ありがとうございます」

 

そうして、俺は飛び出した。期待を胸に、一目散に外へと向かって行く。

教会の外に出て言われた裏手へ行き、能力を試してみることにした。

 

 

投影、開始(トレース・オン)

 

 

そう言うと、俺の手の先から青い光が伸びて行く。何ができるのか、とてもワクワクする。

しかし、その青い光は一般的な剣の長さを超え、教会の壁へと突き刺さる。

 

「マズっ!」

 

慌てて手の位置を変えるが、壁に映った青い四角形の光は動かない。あたふたしているうちに、その光は強く瞬き、そして、俺は反射的に目をつぶった。

 

ギィイイイイイイイイイイン!という金属がぶつかり合う甲高い音。

恐る恐る目を開けて見ると、そこには。

 

 

 

 

『問おう、貴方が私のマスターか』

 

 

 

 

セイバーがドアップで映っていた。壁には何も穴など開いてはいない。そうこうしているうちに、衛宮士郎の顔や兄貴の顔が次々と映し出される。

……。

…………。

……これって、UBWじゃねーか!

 

そこで俺は気付いた。つまりは、だ。

 

 

「Fateの投影って、アニメを投影するってことかよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◾︎

 

 

 

Fate/Grand Order。

 

それは数週間前にオラリオのバベルの横壁に映し出される形で始まったアニメの名前だ。放送開始からたった数週間しか経っていないのに既にオラリオで大ブームとなっていた。

 

 

ストーリーはこうだ。もともと一般人であった少年が、英雄の力を宿した少女とともに、迷宮神聖譚《ダンジョン・オラトリア》など数々の歴史上の英雄たちと協力し、奪われてしまった未来を取り戻す時代の旅に出る。

 

これが嵌まった。自分が知っている英雄が、活躍するのだ。すごく派手に。

 

自分の種族の英雄が活躍すれば、当然応援したくなる。そして別の種族の英雄が活躍すれば自分の種族のあの英雄も、となり、その英雄が出てきたところで引き込まれる。

 

そして、神がもともと暇であったということにも幸いした。オラリオのほぼ8割の神が毎週金曜5時からバベルの前に集まるというと、そのすごさがわかるだろうか。

 

 

とある神は語る。

 

「ある日、バベルに見たこともない絵画が現れたんだ。そして、その絵画だと思ってたもんは動き出して――ああ、そこからはまさに神がかってた。何を言っているかわからないと思うが俺にも分からねェ。おっと、もう少しで放送の時間だ。俺は行くぜ」

 

 

 

 

そんなわけでオラリオで一大ブームとなったこの作品は様々なところでその影響を及ぼすのだが、それはまた別のお話。

 

今の所、神様総出で作者を探しているらしいが、未だ見つかっておらず、神様グループの中で指名手配されているそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

●おまけ

 

「ふふっ、あの鍛冶師、いいな」

「だから椿さん、この物語はフィクションですと書いてありましたよね」

 

「ナーサリーたーーーーん! 今週も待っとるでーーーーっ!」

「あぁ、暴走が」

「フィン、止めろ」

「ディルムッドか……」

「団長ォ!しっかりして下さ〜い!」

 

「風の鞘……それいいかも」

「確かにアイズにあってるかもね」

 

「オッタル、作者を捕まえなさい」

「仰せの通りに」

 

「このガネーシャ、震えてきたぞおおおおおおおおおおおお!」

 

 

「えっと、エミヤさん。この英雄はこういう能力を持っていてですね」

「なるほど、それにしても融通がきいてよかった。ありがとうベル」

「関連グッズがジャンジャン売れてるよ! 借金も無くなりそうだ!」



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蛇足という名の愛と希望と周回の物語
事前トレーラー「アニメは事前評価が割と重要」


続きじゃい!


「ヘスティア神っ!」

 

そう叫ぶように勢いをつけて教会の地下室へと俺は飛び込んだ。この時間、ベルはダンジョンに潜っているため、呼び間違う心配はない。(ちなみに俺はエイナさんの講習を受けていたため、ダンジョンには潜っていない)

 

そして部屋の中にいたヘスティア神は、よほど驚いたようで、椅子から転げ落ちた。

 

「うわっ、びっくりした! 役に立たないスキルであったそうだから気持ちは察するけど、ドアを勢いよく開けないでおくれ……オンボロで……壊すとほら、借金も嵩んでいくんだよ……」

 

昨日、「Fateの投影」というスキルが、「Fateのアニメを投影する」能力であると理解した俺は、落ち込んだ。それはもう、ものすごく。その落ち込みようが半端でなかったせいで、俺のテンションがおかしくなってしまったとでも考えたのだろう。

 

しかし、そういうことではない。

 

「すみません! でもそういうことじゃないんです。物凄いお金儲けの方法を思いついたんですよ! これなら借金もすぐに無くなります!」

 

その言葉を聞いた神様(内職中)は、今度は自分が転げ落ちるのではなく、ガバッと立った勢いで椅子を後ろへと倒した。

 

 

「な、なんだってーーーーーーっ!」

 

 

 

 

 

◾︎

 

 

 

 

 

団長(昨日話し合いで決まった)ベルが帰ってきたところで、詳しい説明をするため、俺はこう切り出した。

 

「では第一回、円卓会議を始める」

「おーっ!」

 

ベルがノリよく反応してくれる。こういうのは雰囲気が大事なのだ。しかしヘスティア神はというと、

 

「なんかこのネーミングセンス、あいつらに通づるものを感じて、ボクはちょっと……」

「えっ?かっこいいじゃないですか、神様っ!」

「……むぅ」

 

何かしら不満があったようだが、それはすぐにベルによって鎮火された。

そこで、早速ベルが本題に入る。

 

「で、お金儲けの方法を思いついたそうですけど、どんな方法なんですか、エミヤさん」

「ふふっ、それはだなベル君」

「はいっ」

 

(かっこつけるため)わざわざタメを入れて、俺は言う。

 

 

「……アニメだ!」

 

 

言った後の2人の反応とはいうと。

 

「おおっ!アニメですか! …………って、何ですか? ……神様はわかりますか?」

とベル。

 

「ボクにも分からない」

と神様。

 

その様子を見て、ベルがこう言った。

 

「もう少しわかりやすい言葉でお願いします」

 

……ベルくんさぁ、さっきのいかにも分かってますっていうノリなんだったの? まぁ、アニメがこの世界にないことくらいは予想していたけど、このベルの反応が一番予想外だったよ……

さすが、歯磨きであれだけ踊れる主人公だ(一期Op)

 

まぁ、それはともかく。俺は用意しておいた(回りくどい)説明に入る。

 

「……こう言えばいいかな、ほら、オラリオでも流行ってるだろ? 誰それが書いたラブロマンス(恋物語)とかが」

「そうですね……僕は読んだことないですけど、神様達と人間の恋愛ものとかありますね」

 

と、ベル。……ベルのことだから、太古の英雄達の恋愛事情には詳しいのだろうが、オラリオの本は読んでいないようだ。

何やら思考がトリップしていそうなヘスティア神を置いて、話を続ける。

 

「あれは、大体は創作だろ。作者の頭の中でストーリーを作ってる」

「そう……ですね」

「でも、それが何と関係あるんだい?」

 

ようやく戻ってきたヘスティアが、そう聞いてきた。お帰りなさい、ヘスティア神。

そこでまたタメを作って、言う。

 

「おほん、つまりはですね! 自分達で新しい英雄譚を作ろうという話ですよ!」

 

なんだか、無理そうな流れ(口下手)だったけど、言いたいことは言えた。

それに対する2人の反応とは言うと。

 

 

「「……な、な」」

 

「「何だってーーーーーーっ!」」

 

 

仲がいいな、この2人……。

 

 

 

 

 

「……つ、つまり、君は新しい英雄譚の本を出して、その稼ぎで儲けようというのかい?」

「そうなります」

「っ!エミヤさん、それとてもいいと思います!」

 

と、とても興奮した様子で賛同してくれるベル。なんだかとても嬉しそうだ。

だが、ヘスティア神はとても難しい顔をして。

 

「……無理だよ……」

 

と言い放った。

難しい顔をしたままのヘスティア神にベルは尋ねる。

 

「……っ、何でですか?神様。僕は結構いいと思ったんですけど」

「そもそも本を作ったとして、その本を作るお金はどこからくるんだい? それに、無名の作者の本なんて、面白くても買ってもらえないよ……」

「あっ……確かにそうですね……」

 

つらつらと正論を述べるヘスティア。こういうところはしっかりと神様していると思う。だが、そもそも前提が違う。俺の例えが悪かったせいだろうが……。訂正を試みる。

 

「諦めたらそこで試合終了だ! それに、ちゃんとそこも考えてある」

「どうするんだい?」

 

と、ヘスティア神。

それに、俺は、その理由を答える。

 

「そもそも俺は本といったか? ここに紙の束がある。このように素早くめくって見てくれ」

「……? 分かりました」

 

あらかじめ作ってあった紙の束をヘスティア達2人に渡す。ようは、パラパラ漫画(棒人間に武器を付け足したもの)だ。

なにがなんだかわからないよという表情で受け取るベル。それをベルはパラパラとめくる。ヘスティア神は後ろからそれを覗き込む。

 

「「うわっ!」」

「人が、動いてる?」

「すごい! かっこいいですよ、エミヤさんっ!」

 

そして、パラパラ漫画を見ていた間に光を展開しておいたアニメを見せる。

 

「次にこれに音声をつけたい。そこで、俺のスキルの出番だ」

 

 

 

 

 

 

剣戟。

空(くう)に舞う火花。それは、その戦闘が、知覚すらままならない速度で金属が打ち合っているという証左だ。

 

──向かい合うは2人の戦士。

1人は中性的な容姿の騎士のようだ。得物はよくわからない。だが、その振りからして恐らくは剣であろう。

1人は野生的な容姿の槍使い。真紅の槍を携え、圧倒的速さで騎士へと突きを繰り出す。

 

『抜かせ!』

 

そして、2人は向き合い、しばし言葉を交わす。

 

『己の得物を隠すとは何事だ!』

 

そうして、高まる緊張感。

その闘いの決着は間も無くつこうとしていた。張り詰めた空気が、破裂する。

 

……。

最初に動いたのは、槍使いの方であった。

その引き締まった身体を弓のように引き絞り、しなやかな筋肉による反動によって、その槍を放つ。

 

赤色の凄まじいまでの闘気。その全てを乗せた槍が騎士へと迫るーー

 

 

『ゲイーーーー』

 

『ーーーーボルク!!』

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁあああああああああああああああっ!これかっこいいです。やばいです。続きみたいです!」

 

 

別の世界へと文字通りトリップしてしまったベルを放っておき、俺はヘスティア神に向き直る。

 

「このように、バベルにでも映してしまえば否が応でも目に入ります。あとは肝心要のストーリーさえ良ければ、どうとでもなると思います。例え通りバベルに映すなら、お金を払わない人の視聴を制限するのは現実的ではないので、いっそ見るのは誰でも無料として、関連グッズを売り出せば、きっと儲かると思います。グッズは人気が出るにつれて徐々に作っていけばいいし、見るのに良い場所があるなら特等席として、そこでは場所代を取るのもいいかと。映すのはスキルで元手はタダですし、儲けを出す勝算はあります」

 

それを聞いたヘスティア神は暫く考えた上で。

 

「……むぅ、よし、ならやろう!」

 

と言った。それに伴い、和気あいあいとした雰囲気に戻る。

 

「ありがとうございます、ヘスティア神!」

「やりましたね、エミヤさん!」

 

そうして、みんなでアニメを作ることになったところで。

俺は食器を片付ける間にベルへと話しかけた。

 

「あぁ、ベル。そういえば英雄に詳しいのだったな」

「はい。おじいちゃんが英雄譚の絵本書きでしたから。でも新しい英雄なんて、そう簡単には思いつきませんよ」

「それでもいい。聞きたいことがある」

「……新しい英雄譚じゃないんですか?」

「あぁ、そうだ。だが、同時に古くもある……聞いてくれ、設定はこうだ――」

 

そして、説明する。

英霊という概念。過去の英雄たちの幽霊のようなものを呼び出すという設定を。

 

 

「ヤバイです、それ! 面白いです! 自分もお手伝いさせていただきます!」

 

 

そしてベルに太鼓判を貰うレベルにまで各キャラをこの世界のものに変えたプロットを仕上げた。

 

 

 

 

◾︎

 

 

数日後。あの翌日は少し話し込んでしまい、寝不足気味の俺とベルであったが、今日は加減を覚えたので、割とましだ。

 

「では、ダンジョン行ってきます!」

「あぁ、俺はその間に完成したPVを流してくるよ」

「はい!」

 

ちなみにPVはベルと俺、そしてヘスティア神にも協力してもらって仕上げた。

そんな気力満タンの俺らにヘスティア神は、勇気付けるようにいう。

 

「さあ頑張ってきておくれ! ヘスティア・ファミリア、新事業の門出だ! ボクはこのちみキャラのぬいぐるみを縫っておくからさ」

「「お願いします」」

「さぁ、行っておいで!」

 

……本当にいい神様だな、と俺は思った。

 

 

 

バベルと、迷宮の入り口は同じ方向(言わずもがな)なので、ベルとともに歩き出す。俺はエイナさんの講習の後、PVを流す予定だ。

そこで、ベルが何やら忘れ物に気づいたようで。

 

「あ、魔石袋……すみません取りに戻ります」

「わかった、教会の上までは俺も戻るよ。あと、声優探しお願いな」

 

声優探しというのは、ベルと俺で迷宮神聖譚からピックアップした英雄の声にふさわしい人探しだ。

融通を利かせて、世界観が浮かないように作画は変えられたが、さすがにセリフまでは変えられなかったので、演じてくれる声優が必要なのだ。ちなみに声優探しの過程において、一度記録した音声なら投影に登録することもベル達の協力で判明した。要は、画像は随時いじれるけど、それに合わせるための声は録音したファイルの中から選択しなければならないのである――無限の剣声かな?

 

そんなことを考えていると、教会の地下室から、こんな声が聞こえてきた。

 

 

『ああっ神様、ヒモがぬいぐるみに縫い付けられてますよ!』

『うわっ……取れない……どうしようベルくん』

 

 

……大丈夫かこの門出。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◾︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、突然だった。

バベルへ向かう通りの中でも、特に人通りの多い大通り――そこにいた二神の男神が最初の目撃者だった。

 

「……なんだあれ」

「……? どうしたよ」

「いや、あれ……」

 

何やら、青い四角い光が、バベルの横壁で光っているのだ。

それは徐々に像を映し出し、それが完全に黒一色になる頃には辺りの者の半数がそれに気づいていた。

 

そして、黒いところに巻物が開かれていく 。

 

「うわっ! 何だ!」

「何が!」

 

「ギルドは何してる!」

「いや、ギルド職員は慌ててない! これは危険じゃないそうだ!」

 

そして、文字が映し出される。まだあどけなさの残る男の声と、何処か神秘的な音楽とともに。

 

 

『ーー英雄の時代は終わり、神々の降臨を経て様々な種族を含む人類は地上でもっとも栄えた種となった』(CVベル)

 

 

いつもは喧騒の酷い大通りが。何処だろうと構わず話す男神が。今はまるで教会の中にいるように、静まり返っていた。

 

 

『我らは星の行く末を定め、星に碑文を刻むもの。人類をより長く、より確かに、より強く繁栄させる為の理――人類の航海図』

 

 

静寂。

その中で、ただその声だけが、その場を支配していた。

 

 

 

 

『ーーそれを、【人理】と呼ぶ』

 

 

 

 

巻物が、文字通り燃え尽きた。それと同時に、大きく息を吸い込む音が、喉をゴクリと唾を飲む音が、そこらかしらで聞こえる。

 

そして、音楽が切り替わる。何処か心踊る曲へと。

聞こえるのは女の声。何処か神秘的な雰囲気だ。

 

 

『主よ。今一度、この旗を救国の―――いえ、救世の為に振るいます』(CVヘスティア)

 

 

そして映し出されるは炎の中に燃ゆる文字。

 

 

第一の聖杯 救国の聖処女

AD.1431 **百年戦争オルレアン

人理定礎値 C+

 

 

『秩序は燃え尽きた。多くの意味が消失した。わたしたちの未来は、たった一秒で奪われた』

 

第二の聖杯 薔薇の皇帝

AD.0060 永続***国 セプテム

人理定礎値 B+

 

 

『聞け、この領域に集いし一騎当千、万夫不当の英雄たちよ!本来相容れぬ敵同士、本来交わらぬ時代の者であっても、今は互いに背中を預けよ!我は紅蓮の聖女。主の御名のもとに、貴公らの盾となろう!』

 

 

第三の聖杯 嵐の航海者

AD.1573 封鎖終局四海 オケアノス

人理定礎値 A

 

 

『貴方の戦いは、人類史を遡る長い旅路。

ですが、悲観する事はありません。貴方には無数の出会いが待っている』

 

 

第四の聖杯 ロンディニウムの騎士

AD.1888 ********

人理定礎値 A-

 

 

『この惑星(ほし)のすべてが、聖杯戦争という戦場になっていても』

 

 

第五の聖杯 **の白衣

AD.1783 ******イ・プルーリバス・ウナム

人理定礎値 A+

 

 

『この地上のすべてが、とうに失われた廃墟になっていても』

 

 

第六の聖杯 輝けるアガートラム

AD.1273 ******

人理定礎値 EX

 

 

『その行く末に、無数の強敵が立ちはだかっても』

 

 

第七の聖杯 とある英雄の手記

BC.****   絶対魔獣戦線****

人理定礎値 □

 

 

『結末はまだ、誰の手にも渡っていない』

 

 

そして、神秘的な白の草原を駆け抜ける。

 

 

『さあ―――戦いを始めましょう、マスター』

 

 

何処だかもわからない場所。何処か様子のおかしい青空のもと。誰ともしれない3人が立っている。だが、一目でわかる。その者たちは英雄と呼ばれる者であるのだと。

 

 

 

『それは、未来を取り戻す物語』

 

 

 

そして、ロゴが映し出される。

 

 

 

『Fate/Grand Order』

 

『ーー毎週金曜17:00より最も新しい英雄譚がはじまるーー(この物語はフィクションです(小文字))』

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」」」」」

 

 

大喧騒。

 

先程の静寂もあってか、爆音とも呼べる音量の神様の咆哮。

煩いや、けたたましいという言葉すら生温く思えるほどのはしゃぎっぷり。

 

聞こえてくるは、今見たものへの会話。

 

「人理……だと……」

 

「ヤベェよヤベェよ、マジやばい」

 

「かっこよすぎだろ!」

 

「センスあり過ぎィ」

 

「おい、見たかよ、あのふぇいと……何ちゃらってやつ」

 

「あぁ、あぁ、楽しみだな!」

 

「「聞け!この領域に集いし一騎当千、万夫不当の英雄たちよ!」」

 

 

ちなみに、この日の神様たちの集会で、議論が進んだものなど1つもなかったという。

そして、常日頃からエンタメを求めている神様たちの間で金曜まで噂が止まることはなかった。

そして、金曜にさらなる衝撃があることを神たちは知らない。

 

 

 

 

 

 

 

●おまけ

 

「なんやアレ……アイズたんたちは明日帰ってくるし、一緒に誘ってみるとええんちゃう? なんかデートのいい口実出来た気ィするわ」

 

「フム、私が声優を?」

「はい」

「ミアハさま、喋るだけで後払いとはいえ、お金もらえるんですから、やっておいて損はないですよ!」

 

「……っ」

「どうした?アイズ?」

「なんか嫌な予感がして」

 

「エイナさんには悪いけど、明日は5階層くらいまで降りてみようかな……1回だけ」

 

「君たちの物語は終わっていない!」

「ディオニュソス様! きゅ、急に声を上げないでください。びっくりします」

 

「聖女、ですか」

「アミッド様、急患です」

「今行きます」

 

「ウラノス……」

「ふん、外壁くらいは自由に使わせても良かろう」

 

 

「「金曜が楽しみだ!」」

 

 

 

●おまけのおまけ

 

さる日のベル

「やっぱハーレムがいいですよね」

数日後

「ヒロインはマシュだけでいいと思います」

 

 

 

 

 

 

 




予想外に高評価だったもので、勢いに乗せて書いてしまいました。文字数も6000…
か、勘違いしないでよ。今回は特別。か、感想欄がいけないのよ!おだててくるから、少し、少しだけ書きたい気分になっちゃったの!も、もう続きなんて書いて上げないんだからね!


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7日連続TV-CMクラス別英霊編(前編)「事前情報って小出しすぎるよな」

序章の投稿(配信)を延期させてCMやっていくスタイル
挿絵注意です。


「エミヤさぁぁぁん! アイズ・ヴァレンシュタインさんについて何か知っていますかぁああああっ?」

 

PVを初めて流した日の翌日。

ダンジョンにいたはずのベルがこう叫んで帰ってきた。何やら髪が湿っている。

 

「どうしたんだ?」

「……実は……」

 

ベルから聞いた話を纏めると、

ベル五階層に潜る→ミノタウロスに追いかけ回される→【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインに助けられる→ベル、恋をする。

ということだったらしい。

 

ちなみに髪が湿っているのは助けてもらう時に血まみれになってしまったため、シャワーを浴びてきたかららしい。

原作開始は今日だったのか、と思うが、それもそうかと思う。先程買い物に出た時に、ロキ・ファミリアの遠征が終わったということを街で聞いていたからだ。

 

「……で、その……アイズ・ヴァレンシュタイン氏について何か知っていませんか?」

「うーん。知っていることといえば【剣姫】で、割と天然と聞いたことがあったかな?」

 

ベルの目線に負け、なんとか思い出しつつ答える。だけど……。

 

「そんなに聞きたいなら、本人に聞けばいいんじゃないか」

「ええっ! む、無理ですよ! ロキ・ファミリアですよ? 行くのなんてとても無理ですよ!そして話しかけるなんてもっと無理ですううううううううううううううううううううっ!」

 

そのベルの慌てようを見て、対照的に物凄く冷静になる俺は、先程のロキ・ファミリアが遠征から帰ってきたということを聞いたときのことを思い出して、とある事実をベルにいう。

 

 

「無理無理連発してるけど、無理も何も、もうすぐここにくるぞ」

「……へ?」

 

 

呆けたような顔で間抜けな声を出すベル。何やら口をパクパクさせてはいるが、その言葉を脳が拒んでいるらしい。

そしてベルが完全に再起動する前に、教会のドアがコンコン、となった。

 

俺はドアまで歩いて行き、そのドアを開けて歓迎の言葉を述べる。

 

 

「お邪魔します」

 

 

そう言って入ってきたのは、金髪金眼の美しい少女だった。まるで神様たちの整った美貌に匹敵……いや、並のそれすらも超越する様な神秘的美貌。

その名はーー

 

 

「ーーあ、アイズ・ヴァレンシュタインさんんんんんんんんんんんんんんんんんんっ⁉︎」

 

「……あっ」

 

ベルは、気絶した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◾︎

 

 

 

 

 

 

 

 

後に、アイズ・ヴァレンシュタインは、自らにとってその少年は幸運の兎だったと語る。そうはいってもその出会いははっきりいって、微妙だった。

始まりは遠征の帰り道、自分たちの失態で逃げられてしまったミノタウロスに殺されかけたその少年を助けたことだ。

 

「……大丈夫?」

「うわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」

 

あろうことか、その少年は、助けた自分の姿を見て、逃げ出したのだ!

 

それはもう、一目散に。虚をつかれたためか、少年の足が予想外の速度だったためか、あっという間に見失ってしまったアイズ。

 

(私、そんなに怖かったかな……)

 

そんなことがあったためか、割とショックを受け、心持ち暗い表情で(もっとも、アイズ自身無表情なので気付く人は少なかったが)オラリオを歩いていたアイズ。

好物のじゃが丸くんを買って気持ちを立て直そうと許可をもらって本拠地を出て、売り場に着いたところで、二度目の出会いがあった。

 

「ヘスティア神。とりあえず、CMの方は作り終わりました。後で放送しに行きます」

「そうかい。いまバイト中だから、見には行けないけど、頑張っておくれよ!」

 

と、会話する2人ではなく、男のほうに背負われているカバンに着く『縫いぐるみ』が、二度目の出会いだった。

 

その縫いぐるみの色は真っ白く、リスの様な、ウサギの様なよくわからない姿に、スカーフを巻いている格好をしていた。その姿が先程の少年を思い出させたため、目に止まったのだろう。しかし、それはきっかけに過ぎない。ただ、アイズが1つだけ思うのは。

 

(……かわいい)

 

その一言だけだった。

近づいてじーっと見る。しっかりとどんなものなのかを覚えて、後で買うために。だが、少し近づき過ぎた様で、男が振り向く。

 

「アイズ・ヴァレンシュタインっ⁉︎」

「……それ」

「……フォウくんがどうかしましたか?」

「……どこで売っているの?」

「ええと、すみません。まだ、発売前なんです。だからどこにも……ごめんなさい」

 

本日二度目の撃沈。

二度目と言うことで、ショックが大きく、顔にいつもよりも出たのか、その女神が察しが良かったのかはわからないが、暗い顔をしているアイズに、こういった。

 

「そんなに欲しいのなら、発売まで誰にも言わないと約束するかい?そうしたらクエスト報酬にして、渡すって言うのはどうだい?」

 

それに対するアイズの反応は即決だった。

 

「……遠征終わりだし、難易度によるけど、たいていのものならすぐやるし、約束もする」

 

そんな訳で。アイズ・ヴァレンシュタインは教会へと来る運びになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそこで、三度目の出会いがあった。先程助けた男の子がいたのだ!その助けた男の子は、自分を見るなり気絶してしまったが。

 

そこで、エミヤという男が、「謝りたいなら膝枕をするといい。そうすればトラウマも和らぐ」と言ったので、その通りにするアイズ。

その兎の子はすぐには起きそうもないので、そのままの状態で依頼のあらましを聞くこととなった。

膝の男の子(ベルというらしい)の頭は、少しだけフサフサでチクチクしたが、あまり気にはならなかった。

 

そして、依頼はというと。

ドン、と音を立てて、紙の束がアイズの目の前の机に置かれる。あわや、その一枚一枚が依頼かと思ったが、どうやら違う様だ。

 

「……ここに書いてある台詞を読み上げて欲しい」

「……そんなことでいいの?」

 

実際、アイズは、三十階層くらいまでなら行ってもいいという気持ちにすらなっていたために、些か拍子抜けだった。

 

「あぁ、読み上げた内容を、放送まで秘密にすれば問題ない……」

「……放送?」

 

そこで、やろうとしていることの説明を受けたアイズ。それを聞いてアイズは。

 

「……やる」

 

その運命となる『マシュ』という役に出会うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにベルはというと。

 

「えっ……アイズさんが僕に膝枕?これは夢…………………」

「……大丈夫?……気絶しちゃった」

「気絶するまでの時間が伸びてただろ? トラウマは薄れてきてる」

「……そっか」

 

 

◾︎

 

 

 

 

 

 

 

 

その2日後。

アイズは、自室で落ち込んでいた。

ベッドにうつ伏せに寝転がりつつ、2日前に台本とともにもらったフォウくんの縫いぐるみ(まくら大)に顔を押し当てる。

昨日の夜。宴会でのことだ。偶然居合わせたベルは、ベートの言葉を聞いて、店を飛び出していった。

無論、知らない顔でもないベルに、何か言わなくてはならないと思い、店を抜け出したが、一緒にいたと思われるエミヤに腕を掴まれ、止められた。

 

『あれは、男としてベルが乗り越えないといけない壁だ。アンタは行かないでやってくれ』

 

そうして躊躇しているうちに、ロキに掴まれ、追いかけることができなかった。

 

(傷つけちゃった、よね……?)

 

そんなアイズの脳裏に、昨日噛んだりして詰まらない様にと、渡された台本の一節を見る。それは、マシュが、とある英雄からかけられる言葉だった。

 

 

『人は、守りたいものがあるとき、本当の意味で強くなれるものだ』

 

 

昨日、あのことが起きるまでは、自らの守りたいものとはなんだろうと思うだけだった。

だが、その言葉は心のしこりのように、心のどこかに残っていたのだろう。心のどこか片隅で考えて続けていた言葉が、今はそれだけが脳内で反響する。

 

アイズの頭にあるのは、こんな思いだった。

 

 

「……わたし、守るどころか、傷つけちゃってるよ……」

 

その白い毛が、アイズの頬をチクリと刺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◾︎

 

 

 

 

 

 

 

2神(ふたり)は、昨日もいた道で呆けていた。間抜け面を晒している、と言っても過言ではない。

というのも、2神を襲っているのは耐え難い虚無感だった。それも無理はなかった。昨日みたトレーラーはそれほど興奮したのだ。

 

故に、今襲っているのは、虚脱感というものだった。一回知ってしまった興奮はそう簡単に忘れられるものでもないのだ。

何度か見返すことができたら、その興奮の状態は今も続いていたことだろう。だが実際、それは再びバベルに映し出されることはなく、金曜の怪物祭が終わったら、みにくるかなーくらいの気持ちにまで虚無っていたそのときだった。

 

再びあの青い絵画がバベルに映し出されたのだ!そして再び、あの画像が映し出されたのだった!

 

ただ、それは昨日と全く同じ、ということではなかった……。

その、ロゴが映し出されたとき、終わりを理解したその神は、消えていく光を見て、視線を下に向け、止めていた息を吐いた。

 

そうして余韻に浸っていると、周りの者達がまだ、バベルを見ていることに気がついた。

 

 

 

 

白い吹雪が舞う、楽園のごとき場所。

 

真っ白。まるで夢のかけらの様なそこにいるのか、不明。いわばそれは夢幻。そんな夢幻の如き場所に、白いローブを被った男の姿が映し出されていた。

 

『ふん、昨日と、全く同じということでは、退屈だろう。故に、僕から少しだけ情報開示といこう』(CVミアハ)

 

その、輪郭がぼやけて正体がはっきりしない男は語る。

 

『ーー聖杯戦争。それは7人の魔術師と、英霊による血塗られた戦い。その勝利者に与えられる聖杯を巡って、過去の英雄達が、しのぎを削るーーっていうのが本来なんだけどね。ほら、今回は違う様だ』

 

そこに映し出されるのは、炎上する都市。その中には、巨大な塔が見られる。

 

 

「オラ……リオ……?」

 

 

1人の神がそう呟くが、それを聴くものなど誰もいない。映像に噛み付く様に皆見ていた。

 

『ここで、今回、この物語に登場する、英雄について放送まで、毎日1人づつ紹介して行こうじゃないか。……最後の1人が紹介されたとき、物語は始まるよ。さぁ、記念すべき、1人目だ!』

 

そうして、ブツン、と音を立てて画面が切り替わる。

 

 

 

 

映し出された画面に映るのは、石に描かれた、全体として丸い紋様。ただ、その周りには草の様なものが巻きついている。

そして、そこに『新たなる英雄、参戦!』と出た瞬間、気弱そうな少年の声が聞こえた。

 

声の主であると目される少年が映し出される。

白い癖毛に、赤色の瞳。雰囲気としては声の通り、気弱そうであるが、それでも、剣を握る腕と、その瞳だけはしっかりとしていた。

 

同時に、切なげな歌。

それでいて芯は固まっている様な、そんな声色の歌が流れ始める。

 

 

『……そうか。後の世で僕は最弱の英雄と……。ならばこそ、私は! 再び綴ろう、英雄日誌!』

servant class:Saber

 

 

そうして、再びロゴとそれを読み上げる声が終わると、バベルには静寂が戻った。

そして、その静寂を破るものが出た途端、一気に騒めきが伝播した。

 

 

「なん……だと?」

 

「おい、最後の誰だ!」

 

「クソッタレ。粋なことしやがる!」

 

「7日連続だと言ってたよな!明日は誰なんだ!」

 

「〜〜♫」

 

「おい明日は誰なんだ!今日は誰だったんだ!」

 

「英雄アルバートじゃないか?」

 

「いや、違うね。俺はこう思う……」

 

「……というか、今の歌なんだ!あんな曲調の曲なんて聞いたことないぞ!」

 

「確かに吟遊詩人の曲とは全然違う!」

 

「妙に心に残る旋律だったな!」

 

 

「「「金曜日はまだなのか!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

次の日映し出されたのは、ドワーフのごとき人間種(ヒューマン)だった。赤い髪に、立派なこれまた赤いヒゲを貯え、その巨躯すらも軽々と支える馬に乗っている。

 

彼もまた、歌とともに語る。

 

 

『余は征服王、イスカンダルなるぞ! 彼方にこそ栄あり! 征服せよーーっ!』

servant class:Rider

 

 

「イスカンダルだって?」

 

「彼は、我々ドワーフすらも認めた豪傑と伝わっているが」

 

「確か、どっか古代の王だったよな!」

 

「おれ、ちょっと図書館行ってくる」

 

「俺も!」

 

「私もよ!」

 

「「俺もだ!」」

 

「「「「「「「「「「俺らもだ!」」」」」」」」」」

 

その日、図書館職員は思い知った。神様達に取り囲まれる恐怖を。包囲網の中に囚われる屈辱を……。

 

 

 

 

 

 

 

そして、その次の日はというと。

曲とともに映し出されたのは、頬に傷のある女の獣人だった。その女が握るのは曲刀か。そして、自信満々という表情で、宣言する。

 

 

『………怪物殺しなら任せるといいさね……一瞬でその命……刈り取ってやるからさぁ』

servant class:Assassin

 

 

「おい、今度は誰だ!」

 

「……盗賊っぽいな。お前はどう思う?」

 

「♫」

 

「歌ってんじゃねえよ!」

 

「いや、つい印象に残るだろう?」

 

「それはそうだが」

 

「……みんないなくなったが、明日からは考察班を立てるのもいいのではないか?」

 

 

そうして帰った神々は、口々に想いを馳せる。冒険者は期待を膨らませ、それを聞いた他のものも観に行こうという気になる。そして、図書館職員は今日もまた屍と化すのであった。

 

 

 

 

●おまけ

 

「あーいずたん!遊びましょ!」

「ロキ……静かにしといてやれ」

「むう、あの縫いぐるみなんだか聞きそびれちゃったよう」

 

「う、うむ。私の声がな、流れるというのは誇らしくもあるが、恥ずかしいな」

「いや、とてもかっこよかったですよ!ミアハ様!」

 

「うおおおおおおおっ!カッコいいぞ!」

「落ち着け、ヴェルフ」

「そうよ。確かに面白そうではあるけどね」

 

「このガネーシャ、怪物祭主催として、負けてはおれんな!」

 

「オッタル、あれについてどう思う?」

 

「英雄か。私には、関係ない……」

「おい、サポーター、行くぞ!」

 

「……何やら上が騒がしいな」

 

「タケミカヅチさま、こんど、あれを観に行きませんか?」

「そうだな。みんなで(・・・・)観に行こか!」

「……」

 

 

 

●おまけのおまけ

 

バイト中のヘスティア

「ロキのところの子とは言え、有名人だ!それを殆ど元手なしで声優やらせられるのはデカイ!」

ステイタス更新後のヘスティア

「……なんてこったい!敵に塩を送ってしまった! あぁ、あぁ、数時間前のボクはなんであんなフォローをしてしまったんだ……ッ!」

 

 

エミヤ「適当に前世の名言混ぜてくスタイルなら、より一層ウケるのでは」{アイズに精神負荷をかけていくスタンス)

 

 






ちなみに今回は、1/3がFate鯖(丸わかり)。
最後の英雄は……ダンまち外伝読めば、なんとなくこれじゃねというのはわかるかも。

短編ランキング一位になったから、嬉しくて投稿したってわけじゃないんだからね!そこ勘違いしないこと!いい?期待しちゃダメなんだからね?感想欄が悪いのよ!あなた達のためなんかじゃないんだからね!……連載に変更したのもあなた達のためなんかじゃないんだからね!


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7日連続TV-CMクラス別英霊編(中編)「真っ先にすること?アレに決まってんだろォ?」

Fgoで新しい鯖が実装される時によく起きること




 

 

その日もまた、青い光がバベルに映し出された。

神々は来たか来たかと準備して待っている。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

「うるさい」

「黙ってろ」

「おい、お前らだってさっきまで叫んでただろうが!」

「今は始まってんだろうが!」

「ふっ、名前当て委員会を発足した俺らは無敵!」

「そういえば作ったんだっけか。あとで教えろよ、真名をさ」

 

青い光は徐々に黒く染まり、画面一色が黒となる。そして、その下の方に一本の線が引かれ、そして、そこには何やら、右下の方に小動物らしき影が走っている。

 

「あの動物は?」

「アイズさんが抱えてたぬいぐるみに似てる……」

「頑張っているなぁ……」

 

しばらくランナーしているのが続いた後、画面が一際眩しく輝く。

 

そこに映し出されたものはーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『臨時メンテナンス予定時刻

●月●日(金)17:00〜未定

 

メンテナンス中は『Fate/Grand Order』を視聴することができません。

 

詳細は関連グッズ委託先であるヘスティア・ファミリアにお問い合わせください』

 

 

 

 

 

 

 

オラリオ中は、阿鼻叫喚となった。

 

 

 

 

 

 

「なんなんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

 

「わかったぞ。これはアレスの策略なんだ」

「「それだぁ!!」」

 

「アレス、滅ぶべし」

「アレスのバカやろーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

「アレス死すべし慈悲はない」

 

「さて、アレスファミリアを蹴散らしてくるとするかのう」

「それ、俺も参加させてくれ」

「うちのファミリアからもほとんど全員だそう」

「うちもだ」

「俺も」

 

「ここに、アレス討伐作戦決行ダァ」

 

 

 

 

 

 

 

●おまけ

 

「なんかオラリオ中の冒険者が攻めて来ました!」

「何人だ?」

 

「それが、少なくともレベル4以上が50人……」

「なん、だと!」

「どうしましょう」

 

「ドウシテコウナッタ!」

 

とばっちりを食らうアレスであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

////////////////////////////////////////////////////////////////////////

 

 

 

「……夢か」

 

エミヤ・アーチャーはむくりと起きた。冷や汗を大量に書いていることを自覚する。

そして、エミヤは一言。

 

 

「開幕メンテはやめよう」

 

 

エミヤは固くそう誓った。

 

 

 

 

 

 

 




注意。この作品は一発ネタです。


こ、この話は悪いけど、ネタなんだから!仕方ないわよね? べ、別に日刊一位が嬉しくないというわけでもなくて……そう、もともと一発ネタなんだから仕方ないじゃない!この話は消すかもしれないから、そこは覚悟すること!いい?


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7日連続TV-CMクラス別英霊編(後編)「真っ先にすること?真名予想に決まってんだろォ?」

ベル覚醒回



 

ベルは逃げていた。

 

ただただひた走る。

頭の中に、先ほど酒場で言われた言葉が何度も何度もリフレインするその言葉を振り払うように。

 

 

『ーー雑魚じゃ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ』

 

 

今日は、ヘスティア・ファミリア全員で、キャラデザ・二章までのマスターアップ記念に今日はどこかで外食するつもりだったのだが、ベルがシルという女性に誘われてると言った瞬間、ただでさえ機嫌の悪かったヘスティア神が爆発。

ベルとエミヤは一緒によろしく、教会を追い出されたのだった。

 

そうして2人でついた酒場に、昨日遠征が終わったロキ・ファミリアの宴会が開催された。

そこで。アイズに助けられた自分のことが話題に挙げられたのだった。

そこで、あの言葉が、ベルに突き刺さった。

 

「……っ」

 

バベルの近く。

もう直ぐダンジョンだというところで、ベルの腕は誰かに掴まれた。

 

 

「ベル」

 

 

その呼びかけに、ベルは後ろを振り向く。

そこにいたのは最近、先ほどまで一緒にいたエミヤだった。

 

飛び出したベルを追いかけてきたのか。

 

「……どうして」

 

「ここ数日、どんだけ神様から逃げる為のルート探ったと思ってるんだ。 抜け道なら把握している……って、そういう意味じゃないよな」

 

あまりダンジョンに入っておらず、ステイタスも上がっていないはずのエミヤが、追いつけたのはそういうことだったようだ。

エミヤは、強くベルの手を握り、

 

「……お前が心配だったからだ、ベル」

 

何故か。その言葉に、ベルは泣きそうになった。

 

そうして、だんだんと冷えてくる夜の空気を考慮してか、エミヤはベルに自らの上着を被せた。

エミヤはベルにこう告げた。

 

 

「……ダンジョンに行くんだろ。それよりも、少し見せたいものがある」

 

 

 

 

 

 

 

 

オンボロ教会。戻ってきたところ、ヘスティアはまだ怒っている様子だったが、ベルの様子に気づいたようで、心配そうな顔を向けてきた。

 

「……ッ!どうしたんだい?」

「悪いけど、ヘスティア神。ベルは少し任せてくれ」

 

エミヤはそう言うと、教会の個室(作業場にするためにこの部屋だけ改修した)に布団とともにベルを、招き入れ、エミヤはその左手を壁にかざしてその青い光を出した。

 

映像が動き出すと、何も言わずに部屋から出て行き、部屋の中にはベル1人となった。

 

ただ、壁には動く絵画のみが残っている。

 

 

 

 

 

──それは雪原とともに、文字を映し出した。

 

『劇場版 Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 雪下の誓い』

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、たった1人、世界に挑んだ少年のお話。

それを見ている時、何故だかはわからないが、ベルは忘れていた祖父の言葉を思い出していた。

 

『もし英雄と呼ばれる資格があるとすれば、

剣をとった者でもなく、

盾をかざした者でもなく、

癒しをもたらした者でもない』

 

そう。

その少年は、一般的に言う、英雄ではなかったのだろう。

ただ、その少年は、ベルにとって。

 

『己を賭(と)した者こそが、英雄と呼ばれるのだ』

 

その祖父の言葉を聞いていた、ベルにとって。

「自らの全て」を賭けて、たった1人の(女の子)を救おうとした、【英雄】に思えた。

 

『仲間を守れ。 女を救え。 己を賭けろ。

折れてもかまわん。 くじけてもよい。 大いに泣け。 勝者はつねに敗者の中にいる。

願いをつらぬき、想いを叫ぶのだ』

 

 

 

 

『そうさ……たったひとつが、すべてを上回ることだって、ある』

 

そう言って、無限とも思える剣を携えたその少年は、圧倒的な1つの武器に押し切られた。

確かに、その少年は、最後に負けてしまった。

 

 

『美遊がもう苦しまなくていい世界になりますように。

やさしい人たちに出会って―――

笑いあえる友達を作って―――

あたたかでささやかな―――

幸せをつかめますように』

 

 

だけど、その少年は、その願いを貫き、妹を守り通したのだった。

少年にとって、全て(世界)を上回るたった1つは美遊()だったのだ。

 

 

 

 

『さすれば、それが一番かっこいい男(お)の子だ!』

『……勝ったよ、切嗣』

 

 

 

 

 

 

ベルは、泣きそうになった。

否、泣いた。

 

確かに、この衛宮士郎という男は、周りから見たら、悪であったのかもしれない。だけど、ベルはそれが間違いであるなんて、思いたくなかった。

ーーーー僕は。僕は、誰かを。世界を敵に回してでも大切な誰かを守る英雄になりたかったのだ。

 

原点を、思い出した。

 

つられて思い出すのは、自分がつい先日、声を割り当てた言葉だ。

『僕は弱い』

そうだ。僕は弱い。だから、アイズさんを守れるくらい、強くならなければいけなかったんだ。何もかもが足りない。衛宮士郎の様な、信念もない。覚悟もない。力もない。

 

だから、全てをやらねばならなかったのだ。

 

『―――だから、これは祈りではなく もっと独善的で矮小で どうしようもなく無価値な自分に向けた―――

 ―――「誓い」だ』

 

だから今はせめて誓おう。

ーー僕は、英雄になりたい。

この言葉を、いつの日か、現実にすることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「神様、僕、強くなりたいです」

 

 

翌日、ベルは、神様に向かって言った。

そして、どうしようもないな、と言う顔をしたヘスティアは、黙って、ステイタスを更新してくれた。

 

そのスキル欄にはこうあった。

 

 

 

 

【スキル】

 

《憧》

 

夢幻召喚(インストール)

・一定条件を満たした自らの武器を触媒に、英雄の武器を一時的に顕現させる。

・使用時には、自らのステイタスに蓄積された経験値《エクセリア》を消費する。但し、能力アビリティがI以下のときは下がらない。

・使用可能な武器はレベルが上がるごとに増える。

 

 

 

 

 

「か、神様! は、初めてのスキルですよ!スキル!」

 

「あーそうだねー」

「……どうしました?」

「……、なんでもないさ」

 

その後、一回限りを条件として、スキルを試すこととなった。本来であればダンジョンで試すのが良いのだろうが、ステイタスが下がると明記されている以上、様子を確認できる神様がいなければいけない。

そして、神様達はダンジョンに入ってはいけないと決まっている。

 

故に教会の裏手に回ってスキルを試すこととなった。

 

そして、結果はというと。

ナイフが燃えたかと思うと、ぐすぐすに折れてしまった。神様曰く、一定条件とやらに満たず、耐えられなかったのだろうとのことだ。ステイタスも軒並み10下がったみたいだ。

 

神様はベルに言った。

 

 

「これは、手の届かないところに無理やり届かせるスキルだね。早く成長する可能性を削って、いまこの瞬間だけ届かせる。どうしても、守りたいものがあって、今では届かない時に使うスキルかな」

「守りたいもの……」

「ただ、強くなりたいんだろう? ステイタスの減りも失敗でこれなんだから、成功したらどのくらい減るのかわからない。確実にそれだけ成長が遅れるってことだ。早く強くなりたいのなら、極力使わないこと!いいね?」

「はい!」

 

ベルは神様の言葉に納得し、このスキルをすぐには使う機会などないだろうと思った。少し勿体無いとは思ったが、それはそれだ。自分にこのスキルが必要なくなるくらい強くなればいいことなのだから。

 

 

だが、その時はすぐに訪れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◾︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルは逃げていた。

怪物祭。そのイベントで、皆和気藹々としている中、ベルは顔をしかめていた。

 

神様を両腕に抱え、ひた走る。

ベルを追いかけるのは大きな野猿のモンスター。

 

その名はシルバーバック。

その身は全身真っ白な体毛に覆われており、 両肩と両腕の筋肉が特に隆起している。銀色の頭髪は背を流れて尻尾のように伸び、ベルを追いかけるたびにその頭髪がゆらりゆらりと揺れる。 

エイナさんに教えてもらった情報によると、本来なら十二階層に生息するモンスター。

 

今のベルには、敵うはずもない。こうして逃げているのさえギリギリで、そもそも反撃の隙などない。あの日から、エミヤさんに剣術を教えてもらったような、努力が無駄なような気がする。

 

そして、アレを思い出す。確かに、アレを使えば、この状況を打破できるかもしれない。だが、できないかもしれない。

グズグズに折れてしまったナイフの代わりに持たせてもらっているエミヤの支給品のナイフがあるが、同じ型の商品だ。また折れる可能性が高い。

発動すらできなかった場合、そして、発動しても打破できなかった場合、ステイタスが今より確実に下がる関係上、逃げることすらできなくなる可能性が高い。

 

何せ、今でさえ、手足が繋がって、神様が無傷であることが、奇跡のようなものなのだから。

 

 

ーー今は、助けが来るまで、逃げるしかないんだッ!

 

 

そこで。

ベルの頭に何かが引っかかった。

 

 

……今は?

 

そこで、思いが蘇る。

 

誓ったんだろ!

思い出したんだろ!

願ったんだろ!

ーーここで、助けを求めてなんになる!

それじゃあ、あの時と、助けられたあの時と、何にも変わらないじゃないか!

 

これでいいのかと。そう思ったら、その思いが止まらない。

 

ーー逃げるのは、もうやめよう。

 

確かに、経験値を失うのは惜しい。それだけ、アイズに追いつくのが確実に遅くなるのだから。

今の装備ではスキルが発動しないかもしれない。そもそも、ステイタスが下がって、この場ですら戦えなくなるかもしれない。

 

だけど。

だけどっ!

 

ーー家族も守れないで、『何がアイズさんを守れる英雄になる』だ!

 

 

 

「ーー神様。ここで、僕が倒します」

 

 

 

だが、それら全てをベルは無視して、覚悟を決める。ヘスティアは、その透明な炎に包まれた澄んだ瞳を見て、呆れたようにため息を吐く。

 

「ベル君、座って」

 

そう言って、神様はベルに何かを渡しつつ、ステイタスの更新に入る。

ベルはステイタス更新の間、姿勢を低くしたまま、その包みを開ける。その中には見事な剣が入っていた。

その短剣には、オラリオでも一、二を争う鍛治ファミリア、ヘファイストス・ファミリアのロゴが入っていた。

 

「神様……これは……」

「ヘファイストスに作ってもらった」

「へ?」

「君と共に成長するナイフさ。そのナイフなら絶対、君のスキルにも耐えられる! ボクがキミを勝たせてみせる!」

 

ベルは笑う。ヘファイストス本人が作っただって?これでダメなら、この先、どんな武器であろうとダメだろう。発動しないという懸念が、神様によって絶たれた。

 

 

「ーーありがとうございます」

 

 

あとは、ベルの覚悟だけが、勝負を決める。

 

ベルは、神様が、この道を行けと、背中を押してくれた気がした。それは、単にステイタスを更新してくれている現状ではない。そのナイフこそが、ヘスティアがベル自身の魂を後押ししてくれているように感じるのだ。

 

ーー覚悟が決まった。

 

 

この日、己がスキルに、ベルは自らの運命全てを賭けた。

 

 

 

 

 

「よし、終わりだ」

 

ヘスティアが、そう言った瞬間、それはちょうど、シルバーバッグが手前の大通りから、こちらを見つけた。

 

同時、ベルの周りが、ベルの持つ神様のナイフ《ヘスティア・ナイフ》から溢れ出たまばゆいまでの炎に包まれる。ヘスティアはその炎の勢いに一瞬目を瞑るが、不思議と熱くはない。

炎が神様のナイフに収斂し、その形状が形成されていく瞬間、ヘスティアはあるものをみた。その変化の源は、先ほど更新したベルのステイタスだった。

 

ステイタスの低下。それも、軒並みステイタスが五十も下がる。減少値200オーバー。

およそ、あり得ざる光景。神々が見たら、目を疑ったであろう。

 

だけど。

 

 

「ーーいける!全体として、増加の方が勝ってる! 君のここ数日の努力の方が!デメリットを上回ったんだ!行け!ベル君!」

 

 

そう、ベルの成長したステイタスの値は、トータル600オーバーだったのだ。減少分を差し引いても、トータル400オーバーの成長。

 

 

「はいっ!」

 

 

ベルが駆け出すと同時に、ナイフが黒く染まり、その柄のようなものが形成されていく。

 

そして一気に大剣と呼ばれる大きさを超えたその短剣はーーいや、その巨槍をベルは構える。

あまりの重さに、穂先がプルプルと震えている。だが、そんなものは関係ない。一撃。たった一撃当てればいいことをベルは感じ取ったからだ。

そして、ベル自身、再び噴き出した炎に包まれ、一筋の光となる。

 

 

交錯は一瞬だった。

ボロボロに崩れていく巨大な黒い槍。

それを持つ少年の後ろには、眉間から尾まで文字通り一刀両断されたシルバーバックの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢幻召喚(インストール)

・一定条件を満たした自らの武器を触媒に、英雄の武器を一時的に顕現させる。

・使用時には、自らのステイタスに蓄積された経験値《エクセリア》を消費する。但し、能力アビリティがI以下のときは下がらない。

・使用可能な武器はレベルが上がるごとに増える。現在使用可能 無銘の槍(所有者 カルナ)

 

 

 

 

 

 

 

◾︎

 

 

 

 

 

今日もまた、バベルに絵画が映し出された。

青い四角い光は今日もまた一旦黒く染まってから、『新たなる英雄、参戦』の文字とともに新しい人物が映し出される。

神々は、たった3日4日で最早恒例となった位置に陣取り、それを見上げる。

 

だが、今日の様子はいつもと少し違った。

数人の神々が、すぐ話し合える場所に、それぞれ本を持ってきているのだ。

これが、のちに真名予想班の始まりとされる出来事であった。

 

 

 

 

 

その日映し出されたのは、おそらく人間種。

その朱色とも、赤銅色とも取れる色の髪はまるで燃えているようだ。

そして、その右手には一振りの紅く染まった剣。

 

 

 

『俺達のつくるもんは武器だ。だからこそ、打って打って打ちまくらなきゃならねェ。鉄じゃねーよ。てめーの魂をだ』

servant class:Caster

 

 

「むっ、もしや東洋にいるという鍛治師ではないか?」

 

「いや、それなら刀なはずだ。剣とは言わない」

 

「うむ……」

 

「では聖剣の鍛治師ではないか?」

 

「持ってるのが聖剣ってか? どちらかっていうと魔剣だろうよ」

 

「もしやクロッゾか……?」

 

「わんちゃんそれもありそう」

 

 

あまり考えても、真名はそれっぽいのが出てくるだけで、特定には至らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

その次の日といえば。

右目の下に泣き黒子のある美男子の小人族であった。その右手には紅の長槍。左手には黄色の短槍を構えている。

ともすれば華奢な体躯に思われるその者の顔は、静謐な闘気に満ち溢れていた。

 

 

 

『我こそはフィオナ騎士団の一番槍!我が騎士団の前に立つというのなら受けて立とう』

servant class:Lancer

 

 

「なんて美貌なんだ」

 

「貌(かお)が輝いてやがる」

 

「きゃー、かっこいいわ!」

 

「一体何オナ騎士団なんだ」

 

「もう答え言ってんじゃねーか」

 

「なんか幸薄そうな顔してるな」

 

「なんか女運悪そうな顔してるな」

 

「何言ってんだてめーら」

 

 

こうして、真名は瞬く間に知られてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、薄い色素の髪を持つ、赤い軍服の女が言った言葉に、神様たちは度肝を抜かれた。

 

 

 

『あなたは病気です。私の治療を拒むというのなら、あなたを殺してでも救います』

servant class:Berserker

 

「……は?」

 

「どゆこと」

 

「バーサーカーってことは狂ってるということなんじゃないか」

 

「そうか、狂ってるのか」

 

「それなら納得だ」

 

「まさか、英雄本人があんな性格なわけないしな」

 

「殺して救うとか矛盾ww」

 

「おい、結局誰なんだ」

 

「どっかの聖女じゃねww」

 

「んなわけあるか(笑)」

 

 

結局、真名は不明で終わった。

 

 

 

 

 

 

 

そして、怪物祭当日。金曜日。

 

怪物祭のメインステージも終わり、逃げ出した魔獣による騒動も収束した頃。

映像は、再び流れ出した。

バベルの周りには、屋台が置かれていた場所に椅子が並べられており、1話3000ヴァリスと書かれている。

 

映し出されたのは白い髪に褐色の肌。赤い外套に黒いプレートアーマー姿の弓を携えた男だった。

 

 

 

『……ふむ、私を呼んだのかね?物好きなマスターもいたものだ……だが、悪くはない』

servant class:Archer

 

 

「くそ、まったくわからない」

 

「というか、マスターって何なんだ」

 

「呼ばれたことに驚くってことはマイナーな英雄か?」

 

「それじゃあ、調べようがないぞ」

 

「くそっ」

 

「いったいだれなんだよお!」

 

 

結局、今日もまた、真名はわからなかった。

 

 

 

 

 

その放送が終わった後、数日前CMが始まった時のように、花の楽園が映し出された。

その白く、夢のような男は語る。

 

『さて、みんな待たせたね。変な前置きは無しだ。早速始まりといこうじゃないか』

 

 

そして、本編が始まったーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●おまけ

 

「ちっ……全くクロッゾだなんだの……だが、魂を打つ、か……」

「いいこと言うなぁ、うちに欲しいぞ」

 

「ディルムッドだって? フィアナ騎士団の系譜たるフィオナ騎士団の一番槍だった方じゃないか。気になるね」

「親指が疼いているぞフィン」

 

「患者を殺してしまっては意味がありません。その考えは破綻しています」

「戦場の聖女さま、急患です」

 

「ミアハ様、今日もかっこよかったです!」

「ははっ、ありがとう」

 

「ねーねー。アイズーっ!観に行こうよー」

「……ぁ、うん」

「どうした?元気ないよ」

「4000万ヴァリスのレイピア壊した」

 

 

 

「ベル、無事で良かった」

「それにしても、怪物祭の日に放送開始日を合わせたのは正解でしたね。ギルドに収める場所代も屋台料金で安いですし」

「ちょっと売り子の準備、手伝っておくれよー」

 

 

 

 

●おまけのおまけ

スキル獲得後のベル

「あの、エミヤさん。聞きたいんですけど……結局、イリヤって誰だったんですか?」

「あ、うん」

 

 

●最初に考えついた没ネタ

「魔法少年プリズマ☆ベルきゅん、誕生で〜〜す」

「ちょ、やめてルビーっ!」

ルビーの扱いを決めかねて没。

 

 

 

 

 




ヴェルフに軽いジャブ&ベルくんの精神的成長(数巻分)

しゅ、週間ランキング1位になったわよ。一応、ありがとうと言っておくわ。も、もういいでしょ?ぃ、いったんだから……。え、聞こえない?いっ、一回で十分でしょ?え、二回目な気がする? そ、そんな訳ないわよ!一回しか言ってあげないんだから!


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初回スペシャル「アニメってのは1話の出来が大事だよなぁ」

この話は始めは18分、2回目は2分限定で公開する。喜べ少年、見れた君は運がいい。(限定公開、伝説の18分と奇跡の2分は終了しました)


緊急メンテナンス終了のお知らせ。

本日17時から行なっておりました断続的な緊急メンテナンスは終了しました。
今後とも『Fate/Grand Order』をよろしく御願い致します。





 

ティオナ・ヒリュテにとって、これから始まるというFate/Grand Orderとやらは俄然として興味の的だった。

だからこそ、こうなることは当然とも言えよう。

 

 

「チケットをちょうだい!ロキ!」

「イヤや!ウチはアイズたんと見るって決めてるんや!」

 

 

本当ならアイズたんと一緒に見る予定だったのに、という主神から、隠していた特等席チケットをもぎ取ってその座席番号の場所に向かうことにしたティオナ。

 

このチケットとやらは1日前に先行販売されていたもので、ロキがラウルに無理やり買わせに行かせたものだ。

ロキ1人分のお金なら普段世話になっている主神用のお金から出すことは皆、了解していた。……のだが、この主神はあろうことか、先程本人も言っていた通り、2人分買っていやがったのだ。

……ファミリアからくすねたお金で。

 

どうやらアイズとFGOデートする予定だったらしい。

……くすねたお金で!

 

だが、当のアイズはダイダロス通りでモンスターがいるということを聞いて、すぐさま向かっていったらしく見当たらず、チケットが無駄になってしまう。だからせめて有効活用しようと、ティオナはロキからチケットを奪い取ったのだった。

戻って来てこそいないが、そのモンスターは倒されたようなので問題はないだろう。

 

そんなこんなで、アイズは見たかったのかどうか聞けなかったが、結局、主神とティオナが席に向かうこととなった。

 

「ティオネはいいの?」

「私はそんなに英雄譚が好きなわけではないし。別にいいわよ。楽しんできなさい」

「……わ、私は遠くから見ます……別に特等席でなくても見れるみたいですし……」

「そっか、じゃあ、見てくるね〜!」

 

アイズたんと呪われた呪文のように連呼するロキの首元を引きずり、席に向かおうとしたティオナだったが、そこである人影を見つけた。

 

「あ、フィン」

「だ、団長? ……どうしたのですか?」

 

そう聞いたティオネにフィンはバベルを指すことで答える。持っているチケットを見るに、どうやらフィンも特等席チケットを買った上で見にきたみたいだ。

それを理解したティオネは、一瞬でティオナのもとに移動し、鬼気迫る表情でティオナにその要求を告げる。

 

 

「……ねぇ、ティオナ。それ頂戴」

 

 

その姉《ティオネ》の要求に、ティオナはえぇ……という顔をして。

 

「いやだよ! 私見たいもん!」

「姉のいうことが聞けないっての?」

「さっき別に見たくないって言ってたじゃん!」

「さっきはさっき、今は今なの!」

 

一触即発。

フィンと一緒にいたい姉と、純粋に英雄譚を見たい妹のぶつかり合うべくして決闘と相成ったこの闘争は、純粋な気持ちを貫いた妹の勝利となった。

 

 

 

 

 

そんなこんなで特等席の場所に着いた3人。(うち神1柱)

ちなみにティオネは、レフィーヤとともに普通に見ることにしたみたいだ。どうやら話だけでも把握して、フィンとの会話の材料にしたいとのことである。

 

「おーっ! 前から三列目の席! ラウルやるねーっ!」

「そうだね。前の方ほどチケットを手に入れるのは難しかっただろうに、彼はよくやってくれたよ」

 

そんなことを言いつつ、ロキとティオナの隣に座るフィン。どうやら彼もラウルにロキと同時に買わせに行かせたようで、番号的に隣になったようだ。

 

「アイズたん……」

 

愛しのアイズの名を呟いて、未だに落ち込み続けるロキ。そんなロキを見かねたのか、叱責が横から入る。

 

「ロキ、シャキッとしなよ……そんな表情では買ってくれたラウルに申し訳が立たなくない?」

 

その言葉に対し、ロキが何か言おうとする前に再びその横からよく知った声が割り込んできた。

 

「いや、そんなことないっすよ」

「えっっ? リヴェリアとラウルっ? どうして?」

「簡単なことだ。私もラウルに頼んだのだ」

「チケット買うだけ買って自分が見れないとか嫌っすからね」

と、口々に理由を告げるロキ・ファミリアの面々。

 

特にラウルは遠い目をしている。さすがの【超凡夫】と言われる彼でも、前夜から並ぶのはきつかったのだった。余談ではあるが、転売防止に1人分五枚まで(同じファミリアのみ)という制限もあったが、ちょうど5人なので問題なかった。

 

そして、集う面々にショックを受けたのは他の誰でもない、ロキだ。

 

 

「結局、どうあがいても、ウチとアイズたんの2人っきりデートにはならなかったちゅうんか、ボケ!」

 

 

と空に向かって罵声を浴びせるロキ。

と、そこでようやく顔を上げて前を見たロキは、あるものが目に入った。

それは二列先、一番前の席。ラウルですら手に入らなかった特等席中の特等席。

 

そこに揺れる、黒髪ツインテールッ!!! そして謎の青い紐ッ!!!!

 

 

 

 

「なんでドチビそこにおるんじゃボケェッ!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その神、ヘスティアは振り向いて、そこでようやくロキの姿を認めたのか、こう言う。

 

「あぁ、ロキ。君もいたのか。それにしても、そんな後ろでかわいそうに……ぷぷぷ」

「おいそこ代われェ!!!!!!」

「イヤだね〜〜!」

 

そのドヤ顔を見た瞬間、ロキは空へと舞い、ヘスティアに向かって放物線の軌道を描いて飛んでいく。そして……。

 

「か、神様っ?」

「おいドチビ、どんな手を使いおったんじゃ!」

「ふふん、関連グッズはボクんちに委託されているのさ! その特権だよ」

「と、とりあえず取っ組み合いはやめてください!神様!ロキ様!」

 

芸術的なヘッドロック。取っ組み合い。

ヘスティアと一緒にいたベルは、突然空から来襲したこの神様による騒ぎを見て、始まる直前にこの騒ぎはまずいかもしれないと止めようとするが、いかんせん二神(ふたり)とも、話を聞かない。

 

そんな時、救世主が現れた。

 

「……ロキ、人前で喧嘩はいけない」

「アイズたんっ⁈」

「ヴァレン何某っ⁈」

 

救世主こと【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインは、一発でふたりに正気を取り戻させると、ベルがヘスティアを、リヴェリアがロキを宥めて、喧嘩は収まった。

 

 

 

 

 

数分後……。

 

「それにしてもワクワクするね!」

「あまり高ぶりすぎるなよ……大声を出したら迷惑なのだから」

「うん、リヴェリア。気をつけるよ。でも、仕方ないじゃん! イスカンダル――アレキサンダー大王が乗っていた馬の掛物にちゃんとブケファラスって書いてあったり、ちゃんと英雄譚にのっとってるんだもん」

「ほう、そうなのか」

「そして、小人族の持っていた槍……あの朱色と黄色の槍はきっと――」

 

「――ゲイ・ジャルグとゲイ・ボウですよね」

 

そこに先ほどロキが喧嘩していた神の眷属であろう少年がそういった。

 

「おっ! 君わかったんだ!」

「……はい」

 

微妙な顔をして答える白毛の少年であったが、少し自信がないのか、少し遅れて答えていた。

 

「あれ、すごいよね!きっと作っているのはよっぽど英雄譚に詳しい人だよ! ねぇねぇ、君も知ってるってことは詳しいよね!質問いい?」

「は、はい」

 

 

そんなこんなで、これがティオナにとって、英雄譚について唯一対等に語れる、そんな一生の友となるベル・クラネルとの出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにアイズとロキはその時。

 

「なんでアイズたん、一番前の席に――しかもどチビの隣に座っとんのや!」

「……チケットをもらった」

 

 

 

 

 

◾︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――塩基配列 ヒトゲノムと確認

 ―――霊器属性 善性・中立と確認』

 

機械的な声。ただ女性であることしかわからない、そんな声が、CMの後に辺りに響いた。

 

『ようこそ、人類の未来を語る資料館へ。ここは人理継続保障機関 カルデア』

『指紋認証 声帯認証 遺伝子認証 クリア。魔術回路の測定……完了しました。登録名と一致します。貴方を霊長類の一員である事を認めます』

『はじめまして。貴方は本日 最後の来館者です。どうぞ、善き時間をお過ごしください』

 

そして、いきなり始まる様々な戦士、魔術師による戦い。それら全てが英雄であると、誰しもがわかった。誰しもが一騎当千。そんな英雄が互いに戦っている。

そして、その戦いが終わった後、とある少年が目を覚ましたところで物語が始まる。

 

 

「今ので練習用プログラムとか」

「本番とかどんなんなんだよ」

「というか、生体認証とか、このカルデアとかカッコ良すぎィ!」

 

 

そして、少年は、フォウと呼ばれる謎の可愛い生物と、マシュと言われる薄紫色の髪を持つ少女と、レフと呼ばれる教授に出会う。

 

 

「レフさんかっこいいダンディ」

「マシュちゃんか……なんか聞き覚えが」

「俺がガネーシャだ」

「可愛いフォウ」

 

 

そして、所長、オルガマリーに出会い居眠りでミーティングから追放される主人公、フジマル・立花。

自室に戻った彼を待っていたのはピンク色の髪をしたダメそうな男性だった。

 

 

『はーい、入ってまー―――って、うぇええええええ!? 誰だ君は!?』

 

『ここは空き部屋だぞ、ボクのさぼり場だぞ!?誰のことわりがあって入ってくるんだい!?』

 

『所長に“ロマニが現場にいると空気が緩むのよ!”って、追い出されて、仕方なくここで拗ねていたんだ。でも、そんな時にキミが来てくれた。地獄に仏、ぼっちにメル友とはこのコトさ。所在ない同士、ここでのんびり世間話でもして、交友を深めようじゃあないか!』

 

 

「なんだこのダメな大人は……」

「あなたが言いますか、ヘルメス」

「にしても、英霊とはそういうものなのか」

「英雄達の影法師……興味深いな」

「ここで説明が入って助かった」

 

 

 

 

そして、謎の爆破。その場に向かった立花が見たのは瀕死のマシュだった。

 

『…………いい、です……助かりません、から。それより、はやく、逃げないと』

 

 

「マシューーーーーーッ!」

「あの血の量、だと流石に」

「――あれはダメだよ……助からない」

 

 

 

 

『観測スタッフに警告。カルデアスの状態が変化しました。シバによる近未来観測データを書き換えます。近未来百年までの地球において――』

 

『人類の痕跡は 発見 できません』

 

『人類の生存は 確認 できません』

 

『人類の未来は 保証 できません』

 

そうして、真っ赤に映し出されるカルデアス。それを見て、下界に降りて来た時に見たこの星の姿と、その姿を神々は照らし合わせて戦慄する。

 

『レイシフト 定員に 達していません。該当マスターを検索中……発見しました。適応番号48 フジマル・立花をマスターとして再設定します』

『アンサモンプログラム、スタート。霊子変換を開始、します』

 

 

 

『…………あの……………せん、ぱい……手を、握ってもらって、いいですか?』

 

 

 

人間味のないアナウンスが流れる中、主人公は強くマシュの手を握った。それを見た――肌で感じたマシュは少し微笑んだような気がして――

 

 

『レイシフト開始まで、あと3』

 

     『2』

 

     『1』

 

『全工程、完了。ファーストオーダー、実証を開始します』

 

 

 

 

 

瞬間、唐突な変化。

異様な色彩を示す光の通り道を通り抜けて。

 

そして立花は、謎の炎上している都市、オラリオに立っていた

彼は早々に謎の骸骨に襲われる。それを助けたのは……。

 

 

 

「マシュ、だと」

 

「生きてたーっ!」

「なにその格好っ!」

「力を貸した英雄、よくやったぞ!」

「あんな盾振り回せるのすごいなぁ」

 

「ここが、オラリオだって?」

「というか、オラリオってなんだよ!炎上してるじゃねぇか!」

「ファミリアはどこ行ったんだ……」

 

「これが、歴史の破壊というやつなのか……人理焼却……」

 

 

 

 

 

 

そして所長と合流し、謎の黒い人型と戦うマシュたち。そこに現れたのは、青い髪の小人族だった。

 

 

「わかったぞ!この物語は所長とマシュのダブルヒロインなんだ!」

「所長がツンデレ枠」

「マシュが後輩枠ということだなわかります」

 

「謎の小人族かっこええ――――あ、名前バラしやがった!謎じゃなくなってもうた」

 

 

 

 

 

 

そして、宝具をマシュが開放するシーン。

 

『――宝具。仮想展開します!』

 

 

「やれい、マシュ!」

「……人は、大切なものを守ろうとするとき、本当の意味で強くなれる……か」

「おおっ!発動したァ!」

 

 

 

 

 

そして、サーヴァントと戦いつつも、聖杯の元へとたどり着く。そして、セイバーと呼ばれる英霊――アーサー王を倒し、全てを解決する主人公たち。

 

そこに現れたのはレフだった。

 

 

「兄貴かっこよかったなぁ!」

「火の巨人っ!」

 

「よかったレフ生きてた」

「イヤな予感がする」

「えっ、オルガ所長……」

「なにやってんだよ、所長ォ!」

 

 

 

 

 

 

 

『まだ、私は誰にも認められてないの!』

 

そして、カルデアスに吸い込まれる所長。

 

 

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、帰ってきた立花とマシュに、ロマニが告げる。グランドオーダー。その内容を。

そして、やるという立花。それを受けて、近くで守るというマシュと、全力でサポートするというロマニ。

 

 

『作戦名は…、人理守護指定“グランド・オーダー”!』

 

 

そして、その歴史の旅に、立花とマシュの2人は出るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、終わり。

歌が流れ始めた。それはCMにも流れていた歌。

 

どこともしれぬ場所。そこに蝶が舞い、タイトルロゴが白い文字で映し出される。

そして、旗を1人で振る金髪の少女、炎の街にいるマシュ、先ほどとは雰囲気の違う、剣を拭くアーサー王。

今までのCMで出て来た英雄達が次々と映し出される。

 

先ほどの3人が、歩き出し、集う。

3人は、丘を同時に駆け出す。

 

ラスボスのような王気を放つ金色の鎧を持つ騎士が一瞬だけ映し出された後、剣戟が始まる。

 

そして、様々な英雄たちの激突。

情報が飽和する。そして、マシュが傾いて倒れかけたところで、ロゴと、その後ろに異質な光輪を浮かべた空が見える。

 

そして、何カットか入った後、蝶が飛んでいき、歌とともに1話は終了した。

 

 

 

 

 

……イラストガチャという爆弾を残して。

 

 

 

 

 

「次回はどうなるんだ!」

「第一の特異点ってなんなんだ!」

「歴史を変えるのか?いや、元に戻すのか!」

 

「ガチャやろうぜ」

「爆死した」

「あぁ、安心した」

 

「マシュ、頑張れよ、立花も」

 

「所長」

「所長」

「所長」

「所長」

「所長ォ!お前は私の光だった!」

 

「爆死したのだけど」

「心配するな、俺もだ」

 

「「「次の金曜日早くきやがれ!」」」

 

 

 

 

 

 

●おまけ

 

「わたし、ティオナ。よろしく!」

「べ、ベル・クラネルです」

 

「ドチビ、泣かす」

「ふん、やってみるんだね」

 

「アイズはどうしてここに?あまり興味ないと思ったのだが」

「……貰ったから……」

 

「このレフ人形にあいつの名前書いた紙を入れて……」

「人形に釘を打ち付けるとか、おやめください!神様!」

 

「これ、イラストガチャ……やってみようかしら」

「……優雅たれ?この出たやつなんですかね」

「龍脈ってのがでた」

 

「ジャンヌ出た」

「神かっ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「神だっ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

「孔明出た」

「クソじゃん」

「この、マナプリ?とかに交換すればいいんじゃね?」

 

「なぁ、なんか、サーヴァント出ないのだが」

「なんだ……って、か、かれいどすこーぷ……いらね、捨てよう」

 

「なにこれカレイドスコープ?」

「おい、サポーター、サポーターってのはゴミでも拾うのか?」

 

 

 

●おまけのおまけ

バイト中のヘスティア(35年ローン)とヘファイストス

「最近事業を始めて思ったんだ」

「何? ヘスティア」

「働くの楽しいなって」

「(ベルサイユのばらの白目)」

 

 

 

 

 

 

 




リリがガチャ富豪になる予感……。リヴェリアはアイズの様子に少し疑問を抱いたようだ。

み、みんな見てくれてありがとうなんて、思ってないんだからね!これっぽっちも。これっぽっちも、思ってないんだからね。……本当よ? 本当なんだってば! えっ、伝説の18分と奇跡の2分なんて再現しなくてもよかった?……ぅぁ、……ば、バカぁっ! もう知らないんだからね!


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2話「途中のCMほどうざいものはない」

FGOのトレーディングフィギュア(カード?)ゲームが現実で発売されるそうですね。なんてタイムリー。ちょうどいいのでそんな感じだと思ってください。ヴァリスの日本円換算はどのくらいなのだろう。勝手に10円くらいと思ってます。





 

かつて一国の王女であったアスフィにとって、趣味というものは、本を読むことくらいであった。

裁縫は性に合わなかったし、興味のあった魔道具はおよそ一国の王女が持つ趣味ではなかったからだ。

 

読む本の多様さ故にアスフィは東洋のことわざというものにも多少理解があるのだが、その中に今のアスフィの心情を的確に表したものがあったと記憶している。

“開いた口が塞がらない”

それが、まさにアスフィの状況であった。

 

その絵面は、もし【ヘルメス・ファミリア】の団員がその状況だけを見たら、ある程度普通の光景として流したであろう。

依頼人の男に、報酬として支払われる大金。

ただ、それだけの光景でしかない。

 

アスフィ自身、一国の王女であったという来歴から始まり、今やオラリオ中の知る魔法道具創作者《クリエイター》、【万能者(ぺルセウス)】であり、【ヘルメス・ファミリア】の団長だ。

【ヘルメス・ファミリア】はオラリオでも有力なファミリアであり、団長であるアスフィは、今目の前にあるような大金を扱うこともある。

魔法道具の方もそうだ。アスフィ自身、ダンジョンに潜る時に有用な道具のいくつかは奥の手として隠し持っているものの、道具の販売はする。その時にも、割と大金というものは扱う。

 

だから、アスフィが驚きを覚えているのは、その金額に対してではない。

 

アスフィはじっと目の前の赤銅色の髪を持つ少年と、その目の前に出された500万ヴァリスを交互に目線をやって、ようやくその言葉を絞り出した。

 

 

「……どうしてあんな道具で、たった1日でそんなに稼げるんですッ!?」

 

 

◼︎

 

 

 

エミヤ・アーチャーとアスフィが出会ったのはアイズの時のような偶然ではない。

むしろ、ヘルメス・ファミリアに押しかけて行って魔道具製作を依頼しに行ったのが最初である。

 

だが、正直言って、アスフィは奇妙な魔道具には興味を惹かれたものの、支払われる前金を除いては、報酬はCMとかいう訳の分からないものと売り上げによる割合ということを聞いて、契約することを取りやめた。

 

エミヤ・アーチャーは最初、アスフィに3つの道具を作ってもらおうとしていた。だが、報酬が割合ということならば、売れなければ、元手さえ取り戻せないということである。故に、アスフィは前金として用意されていた金額(割と少ない)でも、容易に作ることが出来る道具を1つピックアップし、前金と一回のCM出演の2つを報酬に、お試しとして作ることとなったのだ。

 

本来であればこのような仕事はしないのだが、今PVとやらの神様たちの中で盛り上がっているものの関係ということで、未来への期待を込めて作ったのである。

所謂、商人のカンというものである。

 

そうして完成した道具――コピー機を次の朝に渡し、その翌日の夕方、再びエミヤはアスフィの前に現れたのだった。

あの少ない前金で出せるギリギリだと言っていた男が、500万ヴァリスを携えて。

 

「……なんでって言われてもな。普通に稼いだだけだし。初日だから物珍しさもあったんじゃないか」

「いや、そうだとしても多過ぎます。1日って何ですか……【剣姫】の予備のレイピアで4000万ですよ……8日で返せるじゃありませんか。何売ったんですか……」

 

少し前にあったアイズ・ヴァレンシュタインのことを思い出しつついうアスフィ。

 

普通の冒険者の稼ぎは5人で25000ヴァリス、つまり1人5000ヴァリスくらいである。それにしたって、多すぎであるだろう。

本当に、細かい字はインクで滲んでしまう程度のものでしかないあのコピー機でどうやったというのか。

 

 

「イラストカードかな」

「イラスト?」

 

 

疑問の声を上げるアスフィ。

 

「登場人物の書かれたカードさ」

「そんなものでこんな大金を……」

「いや、開発費も入れてあるとはいえ、これ売り上げの半分くらいなんだよな」

「へ?」

 

「まぁ、それは置いておいて、もう少し細かい字も印刷できるようなものと、他の道具を作ってくれるか?前に話した通り、CMと、魔道具による売り上げの4割を報酬にする……どうだ?」

「なんか大事なことが聞こえたような気がしますが……正直、この500万ヴァリスを出せたことであなたへの信用は十分です。商人として、この契約、乗りましょう」

「よかった。これからよろしく頼む」

 

そうして、エミヤは内心ホッとしつつ、立って手を差し出した。アスフィの方が何とか折れてくれたような形ではあったが、前に断られた時に比べれば、上出来といったところだ。

それに、アスフィも答えて、手を握った。

 

「よろしくお願いします」

 

 

 

小さい文字を印刷する機械の方はとりあえず置いておいて、時間がかかりそうなもう1つの魔道具作りに移行した。小さい文字を印刷できるものの方は、「激闘クラス別鯖戦」とかいうイベントの時までに、作れば良いようだ。

エミヤが口を出し、それにアスフィが案をまとめていく。

 

「そう、見る映像のつながりをボタンによって制御できるか?Aを選んだらAが、Bを選んだらBを見ることができるような感じで」

「多分いけます……ですが単価は高くなりますよ」

「大丈夫だ」

「その根拠はどこから来るんですか」

「とりあえず、その試作品に映像――そうだな、SNでいいか……を入れて持って来るから、いろいろ試してみてくれ」

 

そうして、出来上がった試作品。それを持ち帰ったエミヤが数日後持って帰ってきた。

 

アスフィはとりあえず、中身は見ても周りに言わなければいいとのことだったので、自室にもちこんで再生した。

 

「――ッ」

 

 

 

その数分後、保存のきく食べ物を大量に自室に持ち込み、結界の魔道具を三重に起動させるアスフィの姿があった。

その夜から60時間ほど、アスフィを見たものはいなかった。

 

CMで急に客が増えた【ヘルメス・ファミリア】は、増えた客と団長不在により、一時営業不能となった。

 

 

 

 

 

◼︎

 

 

 

 

 

 

 

「どチビそこを退けえ!(アイズたんの隣はウチが座るんや!)」

「嫌だね(ベルくんとヴァレン何某を隣に座らせてなるものか!)」

 

 

今日も今日で、姦しく始まった動く絵画。前の方で叫ぶ2人に空き瓶やら何やらが飛んでいく。うるさいということだろう。自衛のできるロキ・ファミリアの面々やベルはなんとか自分を守っていたが、互いを攻撃することしかしていなかった二神(ふたり)はあちこちにあざやたんこぶを作り、そんなこんなで映し出される。

 

 

 

第一の聖杯 救国の聖処女

AD.1431 邪竜百年戦争オルレアン

人理定礎値 C+

 

 

 

 

降り立った大地。

そこには大空に白い巨大な光輪のある、不思議な場所だった。周りだけ見れば、普通の草原。しかし、その空だけが異質であった。

 

 

「なんだ……」

「何が起こってやがる!」

「あ、兵士がいるぞ!」

 

 

 

 

そうして、見つけた兵士を追って、砦へ辿り着く。そこでは、兵士たちがワイバーンに襲われていた。そして、そこに乱入してきたのは、【紅蓮の聖女】として、オラリオでも有名なジャンヌだった。

『ひぃ……ジャ、ジャンヌだ!』

助けられた兵士だったが、ジャンヌを見て怯える。邪竜を操っているのは、蘇ったジャンヌなのだと。

 

「……一体どういうことなんだってばよ」

「……一体どういうことなんだってばね」

「じゃんぬううううううううう」

 

 

 

 

 

 

そうして、ジャンヌとともに森へと逃げ込む一行。そこで主人公が召喚したのは、ニメトルにも及ぶ刀を携えた、長髪の着物の剣士だった。

 

『───アサシンのサーヴァント、佐々木小次郎。ここに召喚仕った』

 

「なんだ、かっこええ」

「あんな長くて使えるのか……」

「なんだか、農業やってそうなツラしてるな」

 

 

 

そうして、なんとか1人増えた戦力――マシュとジャンヌと、小次郎で、なんとかワイバーンの追撃をさばいていく。

 

「すげー。ワイバーンをものともしないぞ」

「燕返しとかいってるけど、あれ、ワイバーン返しだよな」

「たしかに」

 

 

 

そうやって、最初は心もとない戦力ではあったものの、旅をしていくうちに仲間が少しずつ増えていく。

そして、最後。敵のサーヴァントが現れた直後、CM。

 

 

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!ここで終わりにするのかよぉ!」

「30分早すぎいいいいいいいい」

「なんでだよおおおおおおおおおおおおおお」

 

「こうなったら衝動ガチャだ!」

 

「ヘルメスファミリアにいってみようかな」

「俺は、刀をこれから使う」

「同時に斬撃放てないかなぁ」

 

「……というかCMで、映像の時間削られてるんじゃ……許さぬ」

 

「……おい、ジャンヌピックアップ来てるぞぉ!」

「「なんだとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」」

 

 

 

●おまけ

 

「ピックアップってなんだ!」

「ジャンヌだとぉ?」

「確率アップ……だと」

「「引くしかないっ」」

 

「おい、サポーター。何拾ってやがる、さっさといくぞ」

「……孔明? ジークフリート?」

 

「修行だ!桜花、命!」

「「はいっ!」」

 

「刀ください」

「刀頼む」

「……なにこれ」

 

「ちょっと燕を見つけてくる」

「ちょっとアイズ、燕を絶滅させる気?」

 

「というか、旅をして仲間を集めるって、めっちゃ王道だな。それがいい!」

「たしかにな!」

 

「ヘルメス、なんだかオラリオが騒がしいようだが」

「もうすぐ帰るさ」

 

「にしても、二側面召喚ってなんだ」

「うーん。運があれば自分と対面できるのか」

 

「……っ!なんだこれっ! 激闘クラス別鯖戦開催?」

「おい、みんなで出るぞ!」

 

「ガチャというものはな、こうやるのだ!」

「あいつ、迷宮神聖譚全巻持ってきてやがる」

「触媒なんだよっ!」

「あっ金」

「なんだと」

「きたーーー!!」

「マリー?だれだ?」

 

「ふっこの俺に不可能はない」

「……」

「な、な、な(確定なし10連礼装ガチャ)」

 

 

 

 

「アスフィ団長、部屋から出てきませんが」

「というか、呼び出しなさい!」

「無理です!三重に結界が」

 

『――決して、間違いなんかじゃないんだから』

「きゃあああああああああああっ!(テンション高め)」

『いくぞ英雄王、武器の貯蔵は十分か』

「きゃあああああああああああっ!(テンション壊れ)」

 

 

 

 

●おまけのおまけ

 

試作品をやったベル「その魔石、貰い受ける!」

周りの冒険者「「あいつ何やってるんだ?」」

 

数ヶ月後

「「その魔石、貰い受ける」」

「「優しく蹴散らしてあげましょう」」

「「束ねるは星の息吹――受けるがいい!」」

 

 

 






決して、貴方たちのために書いたのじゃないのだからね!そこ勘違いしないこと!お気に入り五千件越えが嬉しくなんて…少ししか……な、なんでもないっ!少しも嬉しくないんだから!


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激闘クラス別鯖戦「初イベントってのはメンテが必須だよな」

トレーディングカードゲーム化
主人公はモルドさんです


 

モルド・ラトローにとって、その相手は初め、取るに足らないものだった。

 

ダンジョンのある建物の前の広場で時々、冒険者を探しているサポーター。フリーなのだから、せいぜいレベル1のはじめ程度かつ弱小ファミリア。みすぼらしいなりもそれを表しているようだった。

35歳にしてレベル2で燻っているモルドよりはるかに下の、底辺。その日その日を暮らしていくのも大変な、惨めな生活を送っていることくらいは簡単に想像がつく。

 

結局、どれだけの幸運が訪れたとしても、あのサポーターはせいぜい自分か、それ以下にしかなれないであろう。

そんな程度の、雑魚。

そんな雑魚に、モルドは今追い詰められていた。

 

(どうして、ここまで食らいつく……なぜ、ここまで――)

 

そうして、その目を見た。

 

――あぁ、こいつは俺だ。届かないと知って、それでもまだどこかで希望を持っていた、俺だ。

 

失敗ばかりの人生だった。

15歳で冒険者に憧れて街を飛び出し、オラリオへとたどり着いた。そこでファミリアに入ったものの、レベル2に上がったまま停滞。

自分よりあとに冒険者になったものたちがどんどんレベルアップする姿を見る毎日。

 

【剣姫】などが良い例だろう。

そんな日々を過ごすうちに、幼い頃に憧れたものなど何処かに忘れてきてしまった。

今や、出会いなどなく、稼いだ金はギャンブルで使い果たす。

 

そんな日々に変化があった。

Fate/grand order。突如始まったそれは、モルドにとある思いをもたらした。

すなわち、まだやれるのではないかという思い。

だが、そんなものは幻想だとすぐに気づいた。自分は英雄ではないということなんていうことは、ここ20年で自分がよくわかっていたからだ。

あの登場人物などにはなれない。確かに主人公は一般人であるが、自分にはあのような状況はない。

本当に失敗だらけだ。

 

――どこで、俺は間違えてしまったのだろう。

 

そんな気持ちの中、参加したカードゲーム大会。そこで対戦した相手は、自分のような奴だった。だが、そいつは自分と同じ。そのはずなのに、諦めていなかった。まるで、かつての自分のように。

 

「勝者、リリルカっ!」

 

――ああ。

 

なにかを掴みかけたモルドは負けたにもかかわらず、なぜか懐かしく、少しだけ晴れやかな気持ちになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

FGOトレーディングカードゲーム。

 

ガチャで手に入れたサーヴァントや概念礼装と言ったカードとコマンドカードというものを組み合わせて行うカードゲーム。

 

組み合わせ次第で色々なデッキを組めると言ったところで、「世界にひとつだけの君だけの英雄デッキを作ろう」というキャッチコピーが受けて、また、本家の人気も相まってすぐにオラリオでメジャーとなったものである。

 

エミヤが、アスフィに作ってもらった細かい文字を印刷できる魔道具で、カードを作り、さらにアスフィの魔道具で色々な細工をしつつ、カードゲームを作り上げたものである。

アスフィ酷使しすぎと思われるかもしれないが、本人が喜んでやっていたのでよしとしよう。(右手にホロウチラつかせながら)

また、今までの引いたイラストカードの袋(普段は銀だが、虹、金もある)に同封されていた交換券を見せることで、カードゲームの方のカードをもらえるようにした。

ちなみにこれからはイラストカードとゲームカードは同封されるようになる予定である。

 

そんなこんなで始まったカードゲームであるが、知名度を高めるため、放送が終わった後にゲームのやり方を映像で紹介したところ、売り上げがかなり伸びた。

これもあって、“激闘クラス別鯖戦”と題して大会を開いたのである。ちなみに運営側に強制的に回されたベルは「恨みますよ」と言っていたが、試作品stay nightで60時間耐久しているうちに忘れたようだ。ちなみに部屋から出たベルの耐久値は上昇値400オーバーだった。

 

ちなみにクラス別と言いつつも、全然クラス別に分かれていないのはその場のノリという奴である。

 

 

 

 

 

そして、その決勝戦。

決勝に進出したのはどこぞの神と、リリルカという少女だった。

そして、リリルカ・アーデは絶体絶命のピンチに追いやられていた。

 

(……私は、ここで終わるのか)

 

そんな思いがリリの胸に去来する。その俯いた顔を見て、相手の神はほくそ笑む。

 

「お前はよくやったよ。だが、お前のサーヴァントはジークフリートを除いて全部NP20以下……ジークフリートも宝具以外の攻撃は単体で、お前のジークフリートは宝具は打てない。しかもこちらは全てNP100がずらっといるため、マスターに直接攻撃しても意味はない……さぁ、降参するんだな」

 

確かにそうだ。

サーヴァントを無視してマスターに攻撃するという手もあるが、今の手持ちでは削りきれない。そして次のターン、終わりだろう。

だからこれはいつ死ぬかの問題だ。

今死ぬか、1ターン後に死ぬか。

 

(――もういいや。私はきっと――)

 

諦めかけた、そんな時。リリルカの耳に声が聞こえた。

 

「おい、リリルカっ!俺に勝ったんだから、負けるなんてゆるさねぇぞ!そんなもん、なんでもないだろーが!」

 

なんでもないということはないだろう、とリリは思う。正真正銘、絶体絶命のピンチだ。

だが、その声が、ある言葉を思い出した。

あれは、バベルの前で聞いた言葉。主人公の口癖。

 

『なんでもないよ、マシュ』

(そうだ、こんな程度、なんでもない)

 

そうして、リリは山札へと手を伸ばす、

 

「――諦める、もんか!」

 

叫びとともに、奇跡が、起きた。

いや、引き寄せた。

相手の神は笑いを顔に貼り付けたまま、嘲る。

 

「はっ!サポーターのクズが。なにを引いたが知らないが、笑わせるなよ」

 

だが、その余裕も、そこまでだった。リリがカードをバトルゾーンに出した瞬間、驚愕する。顎が外れたまま、その神は叫ぶ。

 

 

「――カレイド、スコープだとぉ!ど、どこでそんなもの!」

 

 

それにリリは小声で答える。

 

「……カードは拾った(キリ」(小声)

 

そして、リリはそれを孔明へとつける。

 

「1ターンスタン、NP減少だと……そんなバカな。これでは防御宝具が……」

 

そして、この後稼いだ1ターンで、黄金律によってNPを稼いだジークフリートの幻想大剣にて試合は決着した。

 

 

 

 

『――優勝者は、リリルカさんっ!!』

 

 

 

「優勝者には新たなシナリオ優先プレイ権が与えられます」

 

そんな声が遠く聞こえる夢見心地でリリはその後の時間を過ごしたのだった。

それは、人生初の体験であったからか、今までの緊張からか、それとも他のものであるのかは今のリリには分からなかった。

 

そして、ある男は何も言わずにその場を去ったのだった。

 

 

 

 

 

◾︎

 

 

 

 

 

 

「ドゥーーーチィーーービィーーーーっ!」

「なんだいロキ。今日は来ないのかい? やっぱりね。君はボクに負けを認めたということだね!」

「なんじゃとオラ!」

 

 

どこかの神様の喧嘩を背景(バックサウンド)に今日もまた、バベルに絵画が映し出された。

 

襲撃してきた黒い聖女を撃退し、なんとか悪竜殺しの英雄を助ける主人公たち。

王妃と音楽家というなんとも戦闘向きではない仲間だが、なんとか小次郎と聖女のおかげで撤退することに成功するがしかし、そこに巨大な邪竜が現れる。それを、その英雄、ジークフリートは呪いを受けていながら、宝具を解放。なんとか逃げおおすのだった。

 

「くそ、呪いかよ!」

「使えねーな!」

「なんとか逃げ切れたようだな」

「竜って黒龍だよな……どんだけなんだよ。三大クエストのと何か関係があるのか?」

「もはや小次郎の方がドラゴンスレイヤー」

「竜殺し、小次郎っ!」

 

 

 

 

 

そして、キャンプ中。

人間観について、アマデウスはマシュに語る。人間とは汚いものであると。でも、同時に言うのだ。汚いもの?好きだよ、と。汚い事と好き嫌いは関係ないと。

 

『僕が残したものは多くの人々に愛されたけど、僕の人生はどうでもいいものだった。でも、それでいいんだ。人間は醜くて汚い。僕の結論は変わらない。輝くような悪人も、吐き気をもよおす聖人もいる。だから君も、自分の未来を恐れる必要はない。君は世界によって作られ、君は世界を拡張し、成長させる』

 

そう。

 

『人間になる、とはそういうコトだ』

 

 

「――っ、」

「ソーマ様?どうしました」

「なんでもない」

「いいこと言うじゃん。その前の発言クズだけど」

「まあその通りかもな、クズだけど」

 

 

 

 

 

そんなところで、敵に襲われる。

 

『……すまない。君たちがいま素晴らしい話をしているのは理解できる。できるのだが……。敵がやってきたようだ。すまない……空気を読めない男で、本当にすまない……』

 

 

「すまない連呼するな」

「謙虚すぎるだろこの大英雄」

「というか、呪いで動けないのにな……」

「すまないだな」

「もはやすまない」

「すまないさん」

「「それだ」」

 

 

 

 

 

そして、相手のステゴロ聖女が襲ってくる。

 

「聖女って、なんだっけ」

「拳握る人じゃない?」

「脳筋一択だろ常考」

「いや、それ凄女じゃん」

 

 

 

 

そんなこんなでステゴロを倒した主人公たち。なんとか、その情報を頼りに聖人を探す。ジークフリートの呪いを解くために。

 

「やられてないだろうな」

「……聖人は死んでいた!」

「おいバカ」

「人でなしだなお前」

「神ですから」

 

 

 

 

そして謎の娘2人も仲間となり、聖人と出会う。そうして、オルレアンへと向かうことになるのであった。

 

 

「次が決戦か!」

「楽しみだな!」

「ようやくすまないの復活」

「というかヤンデレ怖い」

「大音量であの歌流すとか何考えてんだ」

「おい、ピックアップ2がきてるぞ!」

「「おい、行くぞ!」」

 

「「来週早く来い!」」

 

 

 

 

 

 

 

●おまけ

 

「ドラゴンスレイヤー爆誕」

「そういえば最近オラリオで燕見ないよな」

「なんでだろうな」

 

「エイナー。最近旗持ってダンジョン潜っている人多いのだけど……」

「怪我する人増えそうで、止めないとね」

「それがさぁ、なぜか回復魔法習得した人が増えて負傷者は多いけど死者は減ってるのよね」

「(なんともいえなそうな顔)」

 

「優勝者のstay nightってなんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

「知りたい」

「やりたい」

「見たい」

「「探せぇ」」

 

「せいっ」

「アイズー、なにティオネみたいに、拳固めてるの?」

「失礼ね!私はそんなんじゃないわよ」

「シュシュ(拳を振る音)」

「団長が拳を……し、失礼しました!」

 

「借金、返せちゃいました。ミアハ様」

「ヘスティアたちに感謝をせねばな」

 

「なあランサー、別にこの港の魚を釣りつくしても構わんのだろう?」

「きゃあああああああああ(テンション増しまし)」

「当たり前の幸せは、何より当たり前であるあたりが最高だ」

「…………ひっく、……ぅ(感無量)」

「――さあ、終わりの続きを見に行こう」

「ぁ……ぅ……(放心)」

 

「ヘラクレス3893体も間違えて印刷してしまったんですが、どうしましょう……」

「ベルくんのバカァあああああああああっ!」

「……まぁ、刷ってしまったもんは仕方ないし、プレゼント企画はどうだ?」

 

 

 

 

 

●おまけのおまけ

 

 

カードゲーム大会から数日後のことだ。

カードゲームのボードが置いてある(提携したらしい)とある店にて、2人は再会し、徐々に交友を深めていくことになる。

 

「ふんっ」

「あーーっ!勝手に選択肢を選ばないでください!」

「別に勝手に選んでしまっても構わんのだろう?」

「……それって、死んでるじゃないですか……」

 

モルドには子供がいない。だが、いたとするならば、こんなバカを一緒にやったのかな、とモルドは思う。

そして、少し前のゲームのルートを思い出し、また自分の失敗だらけの人生も回顧する。

 

本当に失敗だらけだ。

 

だが。

その積み重ねで。これまでの選択で。

こいつと出会えたとするならば。

 

モルドは思うのだ。

 

 

 

 

 

『俺は間違ってなどいなかった』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【悲報】モルド34歳未婚さん、子持ちになる




今週のおすすめFate曲「This illusion」
言わずもがな。説明は不要かと思われます。「disillusion」とは違うので注意。(歌詞は同じですが)
モルドさんは、きっと、求めるもの(本当の自分)を取り戻せるとおもいます。ちなみにアスフィさんはこの曲を口ずさみながら魔道具を作っているとか。


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三百万ガチャ記念「あうおが何かくれるそうですよ」

予告メンテは開けた。だが、それ(投稿時間)が延長しないなど、誰が決めた?

……あうおが悪い。





 

 

「……ベル・クラネル被告。君の部屋から押収されたものがこれらだ。──弁明はあるかね?」

「……ありません」

 

古びた教会の懺悔室。少し前までは薔薇が茂ると言ってもいいほど荒れ果てていた部屋だが、ここ1ヶ月のエミヤの懸命な掃除によって多少は見れるようになっている。

そんな風に、ついこの前まで植物の肥やしにしかなっていなかった部屋が今日、久方ぶりに本来(?)の用途で使われていた。

 

そこの部屋にいるは、2人の人間族の男。名をベル・クラネル、エミヤ・アーチャーと言った。

懺悔するは白髪赤目の少年、ベル。その眼前には、

 

「一体全体、どうしたらこうなるんだね……」

 

──四千枚に及ぼうとする金色のカードの山があった。

 

 

 

 

 

エミヤとベルがこうしている事の発端はこうだ。

総枚数、3893枚もの金カード。しかも同じサーヴァント。

 

その名は、「ヘラクレス」。

(下界を混迷に陥れることしか考えていなかった頃の)神々による12もの試練を【恩恵】もなしに乗り越えた、迷宮神聖譚の英雄。

そのカードが、そこらへんにある書類のように乱雑に積まれるようになる程、ベルが刷ってしまったのだ。おそらくボタンの押し間違いか何かだと思われる。

別にその内刷ることになるだろうし、ちびちび出していけば問題ないと思う、というベルであったが、それがエミヤのある琴線に触れてしまったのだ。

 

それすなわち、日本人に宿る勿体無い精神。

 

「──だからな、多少儲かったからと言って驕ってはいけないのだ、紙の無駄使いなど、勿体無いにもほどがあろう」

 

かれこれ数時間に及ぶ懺悔室での問答の後、すっかりと自分の中に勿体無い精神を宿してしまったベルは、エミヤの声を遮るように言った。

 

「あっ、エミヤさん」

「なんだね、ベル。言い訳なら後で聞こう」

 

別に言い訳をするつもりなど、ベルにはなかった。なぜなら、ベルにはすでに自身のやったことが勿体無いことだと理解していたからだ。

だから、問題はそうではない。

 

「そうじゃなくて……玄関鳴っているようです」

 

玄関に俗に言うピンポンをつけたのはエミヤだ。店ではよくベル(人間の方ではない)をつけているが、エミヤにとってこっちの方が馴染み深かったので、魔道具として作って貰った。まぁ、そのピンポンが設置された後、数枚のシロウという英雄のタペストリーの試作品が教会の中からその姿を見せなくなっていたが、それは瑣末なことである。

 

なぜベルではなくピンポンにしたかというと、今の教会には機密事項が多すぎるのが理由の1つでもある。

ベルでは入った後にしかならないが、ピンポンであるならば入る前に人物を確かめられる。そんなこんなで入る人を厳重に選んでいるのであった。

そんなわけで、今日誰かが来るかといえば、1人しか思い浮かばない。なんたって今日はアフレコの日なのであるから。

 

「ふむ、そんな時間か。ではこれまでにしよう」

 

そうしてエミヤはドアへと近づいて、レンズから金髪の髪の少女、アイズ・ヴァレンシュタインであることを確認。ドアの中から返事をした。

 

「今開けます」

 

だが、この時ベルへの説教で気がそれていたのがいけなかったのであろう。いつもは確認していた別の人物がいるかどうかを忘れていた……。

 

そう。扉の前には2人いたのだ。

 

「……ごめんなさい、つけられてたみたいで……」

 

その名は──

 

「リヴェリア・リヨス・アールヴっ!???」

 

いつしかのベルの如く、エミヤは叫ぶのであった。

 

 

 

 

アイズとリヴェリアがこうしている事の発端はこうだ。

近頃時々いなくなることが多いアイズに不信感を持ったリヴェリア。

最初はツバメを探しにいっているのかと思っていたものの、バベルでの番組の前後で少しずつその不信感は育ち、ついに今日つけることにしたらしい。

 

そんなリヴェリアの誤解を解くため、制作場所を見せる。というのも中途半端にしておくとどんどん変な方向に行くような気がしたからである。それよりも協力者になって貰った方がいいとヘスティアファミリア三人は考えた。

 

「ふむ、その声優とやら、私にも興味があるな」

「ならばやります?報酬もお支払い致します。……まぁ。守秘はしてもらいますが」

「いいだろう」

 

そして、数日後、なし崩し的に何処かのブリテンの王様役をやることになったリヴェリアはというと。

 

 

 

 

 

 

「『──別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?』」

「きゃあああああああああああああああああああああああっ!!」

 

──貰った台本をそこらへんに放り投げ、stay nightを遊んでいた……。

 

 

 

 

 

 

数ヶ月後、バベルに貯金を切り崩してコルキスの王女を当てた緑髪のエルフは、その美貌とは裏腹に、こう叫んだという。

 

「キタ─────────っ!」

 

幸運にも、その変装と叫び声から、まさかな、と思われるくらいで個人は特定されなかったようであるが。

 

 

 

 

 

 

 

◾︎

 

 

 

 

オルレアンに進撃する一行。

その行く手には竜の魔女や、黒龍といったものが立ちふさがっている。

だんだんと絆を紡いだ仲間が、敵を足止めするために、立花を先に進ませるために、減っていく。

 

「マリーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

「死んじゃいやあああ!」

「……ぐずっ」

「なんて、気高い……」

 

 

 

 

そして対面するジャンヌとジャンヌ。

そして、ジャンヌは気づく。それは、ジャンヌではないと。

 

『では、幼い頃のことは覚えていますか』

『……そんなこと……。…………ッ!』

 

 

 

 

 

それと同時にジークフリートは黒龍と戦っていた。

 

「ジークフリート……」

「やりやがった……影とはいえ、黒龍を」

「すげぇ」

 

 

 

 

 

そして、ジャンヌを倒す主人公達。

そこに現れたのは、前にその生前とあった、ジル・ド・レェであった。ただ、その姿は、立花達の知っているものとは違っていた。

 

『ジャンヌは、恨んでいたはずなのです!』

『いいえ』

 

「……正しくはない」

「だが、人間らしくはあったのだ……今は怪物だけど」

「人間なら仕方ない……今はギョロ目だけど」

 

 

 

 

 

『定礎復元』

 

そして、人間らしくあったが故に、聖女を人間が見てしまったが故に狂ってしまった男を倒し、聖杯を手に入れ、第1の探索は終わった。

 

 

「よくやった!」

「やったぞ!」

「1個目終わったああああああああ」

「ジャンヌ……」

「ジャ↑ンヌ↓」

「ピックアップ来てるかもしれないな!」

「「来週が………………………………っ⁈」」

 

 

 

 

だが、そんな余韻に浸る暇などなかった。

急に暗くなった画面に再び画像が映し出されたのだ。

 

それは、教会の中であった。

夜の教会の漆黒の中に、2人の男がいる。

1人は闇に溶け込むような、黒い神父服の男。

1人は闇の中でも自身が輝いているような金髪の男。

 

金髪の男はいった。

 

『カードゲーム大会だと?我に黙って開催するとはどういう了見だ?』

『だって、お前、ルール守らないじゃん』

『それがどうした!我がルールだ!──(ガチャガチャ)』

『どうかしたのか、ギルガメッシュ』

『ふむ、セイバーが出ぬというだけだ』

『……愉悦⤴︎(小声)』

 

 

「くそ、そんなこと言いつつあんなに金鯖当てやがって」

「目当てのものじゃないならくれくれ」

「くれよおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

「くれよおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!」

 

 

 

『どうやら死にたいようだな、言峰』

『そんなことはない。それよりもギルガメッシュ、このようなことで腹を立てているのか?』

『ふん、我にとってはそのようなこと、瑣末なことよ。……そうだな、だが、何もしないというのもつまらん。ルール上、この大量の金カードもさほど必要はあるまい。オラリオの奴らにカードをくれてやるとしよう』

『……(ルール上という言葉を聞いてガラスの仮面の白眼をする言峰綺礼)』

 

一拍おいて、テロップが映し出される。

 

『【英雄王からのプレゼント】』

『お好きなサーヴァントをプレゼント!』

 

 

「ああああああああああああああああああああああああっ!」

「あああああああああああああああああああああッ!」

「あああああああああああああさあああああああああッ」

「あああああああああああああああああああいうえお!」

「なん、だと」

「夢か……」

「英雄王バンザーイっ」

「英雄王万歳」

「英! 雄! 王!」

「英! 雄! 王!」

「英! 雄! 王!」

「英! 雄! 王!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

「A! U! O!」

 

 

 

 

 

 

 

 

●おまけ

 

「なんですかこれ……」

「ベル……これが集団ヒステリー……集団洗脳というやつだ……」

「…………A! U! O!」

「ベルうううううううっ!気持ちを強く持てえええええええええええーっ!ゆーっ!おーっ!」

 

「ここはヘラクレス一択です!」

「リリ坊、そんなんじゃあ、いけねぇ。ここはロマンをとってシロウに決まっているだろう」

「ちーがーいーまーすー」

「いいや、違うね」

「ちーがーいーまーすー」

「だーかーらーなー」

 

「ふふっ、僕はこのランサーにするつもりさ」

「団長がそうするなら私もそうします」

「……ううっ!どうにも決められないよお!」

 

「……なぁ、アイズ。少し給金がおかしくないか? 給金深層に行ったくらいのヴァリスがあるのだが」

「……フツーじゃないの?」

 

「聖女、ですか」

「アミッド様!急患です!どうやらダンジョンで振り回した仲間の旗が刺さったらしく!」

 

「ジークフリート……戦いたいものだ……そう思わないか?ミノタウロス」

「ヴゥ……」

 

「ヘファイストス! 契約をしないかい?」

「聞くだけならタダだし、内容だけなら聞いてあげるわ」

 

「♪(処刑用BGMシロウを口ずさむ)」

「アスフィ団長が、鼻歌だと……」

 

 

 

 

 

●おまけのおまけ

 

 

数ヶ月後、ガチャの前にて。

 

「……あなたはまさか……ナイン──」

「……少し口を塞いでいただけるか、ペルセ──」

 

言いかけた口を話しかけられた方が塞ぐ。

それに反応し、今度は立場が逆転して、先ほど口を塞がれていた方が、もう片方の口を塞いだ。

 

「……貴方もこれを?」

「そういう貴殿もか」

 

「「ガシッ(手と手を強く握る音)」」

 

 

 

 

 

 

 

 




集団洗脳って怖いですねええええええええゆううううううううおおおおおおおおお!
そして心強い味方、【王女(笑)】2人目登場!


本日の一曲「黄金の王」
A! U! O! ええと、詳しく説明すると『Fate/stay night』でのギルガメッシュのテーマ曲。アレンジバージョンとして、CCCとFGOでの宝具BGM「cosmic air」、FGO1部7章での「黄金の王〜FGO〜」がある。1つ目はフレンドからギル借りて宝具を打てば、2つ目はマイルームのサウンドプレーヤーから聞けるので、ぜひ聞かれたし。というか、アニメでのこれが流れるシーン楽しみすぎる。


えっ。私?私はこんな王女(笑)なんかになったことなんかないわよ……えっ?だからなってないの!ほ、本当なんだからね! 嘘じゃないんだからね!



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2章1話「ローマ、ローマ、ローマっ!(ゲシュタルト崩壊)」

この前のメンテで連続ログイン切らして抜け殻になってた。





 

 

 

ここ最近、ベルの成長が著しい。

それをヘスティアは、スキルの効果によるものであると思って嫉妬心を強めていたが、別の要因も大きかった。

 

その要因とは何か。

ここで、ベルのとある1日を見てみよう。

 

 

 

 

 

ベル・クラネルの朝は早い。

 

起きて最初にすることといえば、印刷機の起動だ。『英雄王のプレゼント』のために大量の金カードが必要になったので刷らなければいけないのだ。この前までは、夜中に起動していたのだが、寝ぼけて操作を間違ってしまったので、活動時間中にするように変えたのだ。

夜という有り余る時間が使えないのは印刷としては非効率であるが、この前のような勿体無いことをするよりマシとの合意に至ったのである。

 

そして、早めの朝食(エミヤが作ってくれた)を食べ、オラリオの外周の壁の上へと向かう。食べる間、何か良い英雄のことについて思いついたら設定をメモっておいたりもする。

 

「行ってきます」

「行ってらっしゃいだ、ベル。気をつけろ」

 

 

 

 

 

 

そして、出かける。ここで、注意したいのが、とあるエルフの存在だ。何やら自分を敵視して来て、追いかけてくるのだ。この早朝の訓練については秘密なのでバレるわけにはいかない。故に、なんとかして撒くしかないのである。

 

「まちなさ───い!」

「はぁ、はぁ、……ま、待てません!」

 

そうしてなんとかしてかなり息切れした状態で外壁の上にたどり着く。

 

ここで、ベル自身は気付いていなかったが、後衛職とはいえ、レベル3の冒険者に追いかけられ、それをかわして来たことから、俊敏性がかなり上昇していた。

 

 

 

 

 

 

そして、アイズとの訓練が始まる。

 

「……じゃあ、行くよ」

「お願いしますっ!」

 

この訓練は、ある時、アフレコに来ていたアイズに強くなりたいと頼んだのが始まりだ。ベルの知らないところでエミヤが『訓練するとベルは気絶しなくなるかもな』と言ったり、アイズ自身ベルの成長の速度に興味を持ったことも訓練が行われている要因でもあろう。

だが、ここで考えて欲しいことがある。アイズ・ヴァレンシュタインとは、天然であるのである。

 

天然であるのである。

 

故に、エミヤの言っていることは達成されなかった……いや、達成されたのだが、達成されなかった。

簡単に言うと、アイズに膝枕等されていても気絶はしなくなったものの、アイズの手加減下手の訓練による気絶がベルに待っていたのである。

 

「ひでぶっ!」

「あひでっ!」

 

そんな奇声をあげて気絶するベルであるが、なんと、それすらも許されない。

 

「回復しよう」

「………………はっ」

 

そこにいるのは、リヴェリア・リヨス・アールヴ。

気絶したベルを回復魔法で回復させ、起こすことをしている。もっとも彼女自身、なんでこんなことをしているのかと言うと、この訓練が他人にバレないよう見張る役目と、アイズを見ておく役目………………などは建前であり、この訓練中だけ貸し出されるextra(携帯端末の試作品)が目的である。

 

ちなみに間違えて最初に狐耳の女性を選んでしまい、無銘の男性を選ぶために周回プレイを目指しているとか……もっとも、キャスターを選んでしまったせい(難易度高い)で時間だけが過ぎ去って行っているようであるが。

 

そんなこんなで、実戦形式の体で覚えさせられる訓練→気絶→回復→訓練のループが続き、日が昇る頃、早朝の訓練は終わる。

 

ここでもベルは気付いていなかったが、ここでは全体的なステイタスの底上げや、戦闘におけるカンのようなものや、格上に対する戦い方、覚醒直後(平衡感覚がないとき)の状況把握能力などが大きく鍛えられていた。

もっとも体に覚えさせるような強引なやり方であったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

ロキ・ファミリアの面々と別れを告げ、疲れた体で謎のエルフから逃げ切り、ヘルメス・ファミリアの裏手の酒場に顔を出す。

 

「これがエミヤさんに渡された契約金で、こちらが例のものです」

「……確かに、受け取りました」

 

ローブを深く被り、顔を隠した人物にものを渡してお使いを済ませる。この人物について、ベルが知ることは少ない。知っていることといえば、ヘルメス・ファミリアの団員で個人的に契約してくださっていて、青系統の髪色であると言うことだけだ。

そんな人物に例のもの──シロウのタペストリーを渡し、その場を去るベル。

 

こんなことをしているのは、早朝訓練場所からバベルの途中にヘルメス・ファミリアのホームがあることから、お使いを頼まれているのだ。

用事を済ませて大通りに出たベルは偶然出勤中であったシルと暫しの会話をしてバベルを目指す。

 

そして、ダンジョン前の広場に着いたベルはここ数日、サポーターとして契約している少女の元へと向かう。

 

「あれ?ベルさん、疲れてませんか?」

「うん、リリ、少しね……」

 

ちらほらと通りに出てくる人も増えて来た時間帯、2人はダンジョンへと潜り始める。

 

 

ここでもまたベルは気付いていなかったが、疲労した時にどうして戦うか、バッドコンディションの時の戦闘の方法を学んだり、適度に力が抜けていたこともあり、学んだことを実践に活かしたりもできていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、ベルさん。私はこれで」

「ありがとう、リリ」

 

そうして夕方近くになって来た頃、ベルとサポーターの少女は地上へと戻る。ドロップアイテムの換金が済んだあと、2人は別れる。

そうして遠くなるリリの後ろ姿を見送ったベルに声がかかる。

 

「おい、外壁行くぞ」

「……、は、はい」

 

そう声をかけて来たの強面のごつい男性だ。名をモルドという。彼との出会いはリリと出会った2日後だ。どうやらリリの保護者みたいなものらしく、リリを預けるに足りるよう、鍛えてやると有無を言わさず連れてかれ、訓練をされられているのだ。

 

「違う!槍は突くもんじゃねぇ!薙ぎ払うもんだ!そりゃあ、レベルが上がれば別だが、突いたら攻撃が点にしかならねぇだろうが!」

「はい!」

「いいか! 大剣ていうのはな、それ自体に重量がある。それを叩きつけるだけでもそれなりの威力は出るが、それだけじゃあ、それまでだ! 体の使い方を覚えろ!そんなんじゃ、リリを預けらんねぇぞ!」

「はい!」

 

そうして、色々な武器の経験に基づいた各武器の扱い方を覚えさせられるベル。モルド曰く、武器はいつ壊れるのかわからないのだから、仲間の武器を使うこともある。故に一応あらゆる武器を扱えるようにしておかねばならないらしい。

 

「ぜぇ、ぜぇ……」

「よし、今日はここまでだ!」

 

ここでもまたまたベルは気付いていなかったが各武器の特性などを学んだことにより、武器の活かし方を学ぶことができていた。

また、才能は無くとも苦労してきた先輩の言葉には一定の説得力と、才能を埋める理論があり、ベルの糧となっていた。その前の疲れにより、力が抜けていて、物事を吸収しやすくなっていたのも良かったのであろう。

 

図らずもこれから英雄の武器を扱う時に色々な形状の武器を扱うことになるベルにとって、うってつけの訓練であったことがのちに判明する。

 

これのせいでのちに戦争遊戯を仕掛けたファミリアがかなり痛い目にあうことになるのだが、それは別の話だ。

 

 

 

 

 

 

 

そうして身が食われ、大根の芯だけになってしまったようなベルはホームへと帰る。そこに待っていたものとは……

 

「よし、ベル! 冒険者たるもの、食生活についてはバランスよく食わねばならない! バランスについては私が考えて作っておいた!お残しは許さんぞ!」

「美味しいので大丈夫です!」

「エミヤくんのは絶品だからね!」

 

ここでもベルは気付いていなかったが(もっとも気付けるわけがないのだが)、聞きかじっただけとはいえ現代栄養学を知っていたエミヤの栄養バランスの取れた食事により、ベルの肉体は内側から変化していた。

 

 

 

 

 

 

そうして夕食を食べ終え、ベルは印刷していたカードの枚数数えを行う。丁寧に仕分けをして、確認したあと、印刷機の停止を行う。

 

「にしても、エミヤさん。真昼間から投影お疲れ様です。バベルで召喚されるカードに合わせて召喚演出をガチャの箱に投影しているのですよね」

「あぁ、ベル。問題ない。ただ神々が、いつくるかもわからんから、迂闊に休憩できないだけの話だ。ここ最近、君こそ無茶のしすぎではないのかね? ステイタスが空中浮遊しているとヘスティア神が言っていたぞ」

 

カードなどの元絵や設定画を書きつつ、円卓会議(2話参照)を行う。絵については祖父が絵本作家だったこともあり、すぐに馴染むことができた。このとき注意したいのが、会話をしつつ、カードの描く絵はエミヤのいう、マルチタスクの要領で行うことだ。これが時間短縮につながる。

 

ここでもまたまたベルは自覚していないが、複数の敵を相手にした時の処理能力や、繊細な絵を描く時の器用さなどが鍛えられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうしてようやく就寝の時間──ではない。

 

SNのお時間である。

 

いつも寝落ちするまでやるが、体は疲れているため、規則正しい時間帯に就寝していた。ベルは気付いていなかったが以下略、耐久値が爆上がりしているのだった。

 

「ふっ、鉄心エンドか」

「どこで僕は間違えたんですか!教えてくださいエミヤさん!」

「人生に攻略本なんてものはないのだよ……」

 

 

 

 

 

 

◾︎

 

 

 

 

 

オープニング曲の前のアバンタイトルでマシュと同じ夢を見た立花。契約しているとそういうこともあるらしい、そして明かされる特異点。

 

────ローマ。

 

「キタキタキタキタ───ッ!」

「ローマだぞう!」

「いったい誰がでてくんだ」

「終わったらガチャ突撃な!」

「無論だ」

 

 

 

『第二の聖杯 薔薇の皇帝

   AD.0060 永続狂気帝国 セプテム

             人理定礎値 B+』

 

 

フランスの空と同じ光の輪。それはローマにもあった。調査を開始し、何やら音がする方へ向かう2人。大部隊と小部隊の争いがそこにあった。

小部隊を率いているのはどことなくジャンヌに似ているとマシュが言う若い女性。

その女性は、愛しき妹の子と呼びかけられる。叔父上と言った男性を、カリギュラと呼ぶ。だが、彼女は人間で、カリギュラはサーヴァントらしい。

 

 

「サーヴァントと血縁関係だと……」

「というか話きかねぇなこいつ」

「寝ろおおおおおおおおおおおおっ!ってどんだけ眠いんだこいつ」

「目が充血してるもんな」

「むしろ白目黒いもんな」

 

 

 

 

なんとか2人の協力もあり、カリギュラを倒す。落ち着いたところで、女性と話す。

女性は曰く、真のローマを守護するもの、ローマを再建する者、ローマ帝国第五代皇帝、ネロ・クラウディウス。

 

『って、ええええええええっ? ネロは男のはずだぞう!』

『……男装の女性が男としてのちに伝わることもあると教えてくれたのはDr.ロマンだったような気が……』

『……あ、うん。確かにボクはそんなこと言ったかも』

 

 

「あ、寝ろってネロだったのね」

「把握」

「…………じゃあなんで目が充血してんのさ」

「え、ネロはサーヴァントじゃないの?」

「Dr.ロマン痴呆症疑惑」

 

 

 

 

 

ローマは、この時代の世界の中心で、世界そのもの。故に敵がいないはずなので、本来ならば首都が脅かされるわけがない。聖杯の影響と考えた2人とカルデアは、ローマ帝国の崩壊を防ぐことイコール時代の修正になると結論を出した。

 

 

「なるほどなぁ」

「ひとすじのこうめいがみえてきたぞ!」

「そうと決まればやっちまえ!」

「……まずは味方を増やさないとだろ?」

 

 

 

 

ネロを助けた2人は館へ招待される。

そこで明かされる今のローマの状況。

突然現れた、ネロではない複数の皇帝が統べる連合──連合ローマ帝国は、帝国の半分を奪っていった。

皇帝を名乗る大逆者の一人が先ほどのカリギュラ──すでに死んだはずのネロの叔父であった。

皇帝の誰かが聖杯を手にしている可能性が高いため、ネロとの協力の提案を立花は受け入れ、総督となった。

 

 

「アレスよりきっと強い」

「アレス涙目」

「ネロかわいい」

「いきなり総督とか笑」

「というかローマ皇帝とか強すぎね?」

 

 

 

 

 

 

ターミナルポイントの作成のため、ネロの許可を得て、エトナ山へ向かう2人。

霊脈に巣食う悪霊を倒し、当初の目的の1つを達成した2人は召喚を行う。

 

『──おれはしがねぇ鍛治士だ。よろしく頼むよ、マスター』

 

 

「おおっ! CMに出てたサーヴァントだ! 」

「一体誰なんだ」

「一体何ッゾなんだ」

「早く真名あかせよ」

 

 

 

 

 

戻った2人はネロとともにガリアへの遠征に向かう。その時、兵士たちに檄を飛ばすネロ。民衆は皆、ネロを慕っていることが読み取れる。

 

 

「カリスマぱない」

「アレスよりは上」

「四アレスくらいじゃね?」

「百アレスは硬い」

「アレスってなんだろう(哲学)」

 

 

 

 

 

 

遠征軍の将軍のブーディカ、はぐれサーヴァントのスパルタクスが現れる。前者はブリタニアの元女王。彼女は、生前の経緯から、ネロとローマを許せないみたいであるがしかし、連合に侵略されていくローマを見ていたら、勝手に体が動いたとのことだ。

2人とブーディカは協力して敵を撃退する。また、マシュが気に入った様子のブーディカはいう。

 

『まぁ、妹みたいなものだよ』

 

 

「マシュの中の英霊って、一体誰なのかって話だよな」

「アッセイ」

「アッセイ」

「汝を抱擁せん!」

「ヤメロォ!」

「つーか、バーサーカーって、言葉通じないんだなホント。ランサーあたりを召喚したいぜ」

 

 

 

 

 

カ エ サ ル 登 場。

 

「「太っ!」」

「うん。太いな」

「えぇ……」

 

 

 

 

 

 

カエサルと対峙するネロたち。死んだ者が現れているのは本物だと言われる。聖杯は連合帝国首都の城にあり、宮廷魔術師が保持しているようであるという情報も得る。

倒されたカエサルはあの御方という謎の言葉を残して逝く。

 

そしてカットが変わり、あの御方が登場する。そして宮廷魔術師、レフが隣にいるのが見える。

 

 

「レフよ死すべし慈悲はない」

「というかあの方、両手ずっとあげてたような……」

「バカいうな、なんか背負っていたものがシルエットだったからそう見えただけだよ」

「そうだな。そんなわけないよな!」

 

 

 

 

 

 

 

そしてエンディングの後、視点は戻り、地中海のある島に古き神が現れたと言う噂が。

 

それと同時にカットインが入る

 

 

『次回、あの「神」が特異点に登場⁉︎』

 

 

「……いつから神がFGOに出ないと錯覚していた……?」

「なん……だと」

 

 

その日、オラリオは悲鳴をあげた。無事だったのは普段から奇声を聴き慣れている図書館の職員くらいだった。

 

 

 

 

 

 

 

●おまけ

 

「クラネルさんはどこに向かうつもりなんでしょうか」

「……さぁ? どうなんでしょう」

 

「ネロよこい!」

「金回転!(エミヤの投影)」

「デオン……だと」

 

「リリ坊、この金で一回回すといい」

「(ガチャガチャ)」

「……虹回転(エミヤの投影)……だと」

 

「ツバメ……帰ってきて……」

「……うーん、そうして待ってる限り帰ってこないんじゃ」

 

「アミッド様、急患です。どうやらアッセイとかいう人にやられたらしく……」

「……今行きます」

 

「遠征に行こうにもいけないね……」

「フィン、こんなものが張り出されているのだが」

「限定的な再放送……だって?」

 

「うーん。このタペストリーどこがいいかしら」

「また団長が部屋にこもっています」

「魔道具がなかなかできないのでしょう」

 

「シンジになかなか勝てない」

「キャスターを育てるしかないさ」

 

「衛宮さんちの今日のごはんを参考に作るのはかなりいいかもしれないな」

「エミヤくん、追加頼む」

 

 

●おまけのおまけ

 

1週間後、とあるモンスターと戦い、大手ファミリアの団員によってダンジョンから運び出されたベルを見舞いに来て、その生活を聞いたミアハは、こう言ったと言う。

「ベルよ……君は修行僧にでもなりたいのか?」

 

 

 

 

 

 




エミヤによる現代栄養学(聞きかじり)による内側からの肉体改造。
アイズ(天才)による戦闘のカンを鍛える戦闘技術。
モルド(ベテラン)による経験と理論に基づいた武器を扱う方法。
絵を描くことによる器用さの上昇、マルチタスクの技術。
毎日修行前にレフィーヤに追いかけられたことによる俊敏性の上昇。
ゲーム耐久による耐久の上昇。

友達に最後がおかしいと指摘されたがおかしくないよなぁ(錯乱)


今週の一曲
「ARCADIA」
vita版stay nightのFateルートオープニング。UFOの映像の出来に感動したことが印象的に覚えている。個人的にはイントロと三番あたりがお気に入り。桜ルートのオープニングが一番好きだが、それはのちにとっておく。


そ、その……時間通りに投稿できなくてごめんない……うっ…………ひっく…………本当に……。……でも、四半期三位はとても嬉しかったわ……ありがとう…………。
…………。…………っ!べ、別にただ感謝してるだけで他意なんかはないんだからね!


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二章2話「アニオリってさ、当たり外れ多すぎ」

 

 

 

その1週間は、ヴェルフにとって転換点とも呼べるものであった。

 

ヴェルフはダンジョンに同行する仲間、ベルとエミヤとリリを見つつも、少し前のことを思い出す。

 

ヴェルフがベル達とパーティを組むことになった理由は単純だ。

ヴェルフはベルに鍛治の専属契約を結ぶことを提案し、ベルがそれを承諾することになり、それによりヴェルフがレベル2になるまでパーティに入ることとなったのだ。

 

なぜヴェルフがレベル1の、それも戦闘にかんしては無名ファミリアのベルと専属契約を結ぶことになったのか。

 

それは「Fgo」というアニメが大きく関係していた。

 

 

◾︎

 

 

クロッゾの魔剣。

それは、エルフでは忌み名として、それ以外の種族でも、ほとんどのものが知っている魔剣である。

 

その魔剣から放たれる魔法は──

曰く、エルフの森を焼き尽くした。

曰く、盆地を湖に変えた。

曰く、一撃で怪物を灰燼へきした。

そして。

曰く、本物(オリジナル)の魔法を超えている。

 

こんな途方も無い空想のような実話がクロッゾの魔剣にはつきまとう。

そのような魔剣を打てる理由は初代のクロッゾが、とある精霊を助けた時、恩を感じた精霊に血を与えられたこと起因するという。

 

【魔剣血統(クロッゾ・ブラッド)】。

それが、ヴェルフの持つスキルの名だ。

クロッゾ家の一族にのみ、Lvに関係なく発現し、魔剣限定だがオラリオ最高の鍛冶師を超えるほどの一品を作り出す事が出来るスキル。

ヴェルフはそのクロッゾという()鍛治師の家系に生まれた。

 

だが。

元、と言った通り、今現在、クロッゾで魔剣を打てるものは存在しない。

 

唯一、──ヴェルフを除いては。

 

とある時代のことだ。

クロッゾの一族は、王国に魔剣を売り込みに行き、そして戦争によって精霊の住処を焼き払ってしまった。

それが精霊の怒りに触れ一族は魔剣を打てなくなってしまった、──はずだった。

 

だが、なんの因果か、そのスキルはヴェルフに宿った。

それを知った一族の者は、ヴェルフに魔剣を打たせようとしたが、ヴェルフはそれに反対して出奔し、今に至る。

ヴェルフが魔剣を打たない理由は一族がどうのとか、クロッゾの魔剣がどうのとか、そういうことは関係ない。

 

たが、ヴェルフは許せないのだ。使い手を置き去りにして逝ってしまう、【魔剣】が。

「剣は使い手と共に成長してこそ」。それがヴェルフの信念だ。

それもわからず、親族も、オラリオでさえも、【クロッゾの魔剣】だけを求めるものしかいなかった。

 

 

───嗚呼。

 

 

レベル2に。

一人前の鍛治師になれば、何かが変わるのだろうか。【クロッゾの魔剣】ではなく、【ヴェルフの剣】を求めてくれるものが現れるのだろうか。

 

そんなことを考えていた折、今オラリオで人気のアニメとやらに鍛治師が出ていると聞いて、何とは無しに見に行ったのだ。

 

 

 

 

 

2章、ローマの地において主人公が召喚した鍛治師のサーヴァント。

 

その言葉が。

鍛治に生き、鍛治に死んだ男の言葉が強く、しかし確かにヴェルフの心を撃ちぬいた。

 

 

『刀なんぞ 所詮人斬り包丁。

どんだけ魂込めて打とうが コイツは変わらねェ。だが、だからといって俺達ゃ槌を止める訳にはいかねェ。おまんま食いっぱぐれちまう。

いやいやそれだけじゃねえ、俺達鍛治師の作るもんは武器だ。だからこそ、打って打って打ちまくらなきゃならねぇ』

 

『……鉄じゃねぇよ? ──てめえの魂だ』

 

『鉄を叩きながら、てめえの魂を叩きあげろ、優しく清廉な人になれ、美しく生きろ。

お前らがちったあマシになりゃ、それに応えて剣(コイツ)を少しはマシに使ってくれる奴が集まってくるだろうよ』

 

 

なんだか、周りの喧騒が遠く聞こえた。全ての音が遠ざかり、心が静まっていた。まるで、セピア色の世界にいるような、そんな感覚を覚える。

そんな中、ヴェルフはその男の言葉だけが鮮明に聞こえる。

 

 

『刀ってのはただ切れ味がいいやつがいい刀というわけじゃねぇ。使い手が切りたいものだけを切れるか、つーのが重要だ。触れたもの何もかも切っちまうようじゃ、【名刀】とは呼べねぇ……そりゃ、ただの【妖刀】だ。つまりはだな、敵を切ることじゃなく、使い手が守りたいもの守れるかという方が重要ということだ。守ることができりゃ、どんなボンクラ刀で、すぐに折れちまったとしても、一端(いっぱし)の刀なんだよ』

 

 

ヴェルフは言葉にならないような、でも確かに喉元に。心臓からこみあげるものを感じていた。それが何かはヴェルフには分からなかったが、居ても立っても居られない、そんな気持ちにヴェルフは襲われたのだった。

 

 

『オレが目指す究極の一刀ってのはな、肉やら骨やらを断つ刃じゃねえ。

ンなものはなんでもできるンだよ。斧でも包丁でもな。

刀に生涯をささげるって人間がな、その程度のモンで満足していい筈がねぇ。

なんで、オレが求めたものは怨恨の清算――縁を切り、定めを切り、業を切る名刀だ』

 

 

 

 

 

 

…………………………

………………

…………

……

 

 

 

 

 

いつのまにか。

自分でも気づかないうちに、ヴェルフはオラリオの隅に移動していた。無意識のうちに放浪していたようだった。

近くにあった手頃な石に腰掛けながら、ヴェルフは物思いに浸る。

 

レベルがどうのとかそういうことじゃない。ただ、自分が変わっていなかっただけだ。

 

──レベル2になったら。

──クロッゾじゃなかったら。

──一人前の鍛治師になったら。

 

そんなことを言って、自分の理想を他人にだけ押し付けて。自分は変わろうとしていなかった。

 

 

武器はいつか終わるものだ。

どれだけ大事に扱おうと、どれだけ手入れしようと。いつかは毀れ、散ってゆく。

──魔剣も同じだ。

ただ、持ち主に寄り添うことのできない魔剣が、ヴェルフにとってとても許せなかった。

 

──それは何故だったのか。

それは。

寄り添って【守る】ことができなかったからなのではないのか。

 

そして、自分がちっとはましになれば、ましに使ってくれる人が現れる、と彼は言った。

つまり。自分は魔剣が折れるから嫌だとか、そういうことを言って、考えもしていなかったのだ。

それは──

 

 

そこで。

ヴェルフはあるものを見た。いや、強制的に目に惹きつけられた。

 

「……つまりね、君はランクアップに必要な上位の経験値は溜まっているのだけど、そもそもの下位の経験値が足りてないわけ……本当なら、こんなことないはずなんだけどね……」

「つまり、普通にダンジョン潜ればいいということか、ヘスティア神」

 

何やら教会の前で話し合いをしている2人──ではなく、ちょうど帰ってきたところの、白毛の少年だ。

 

ニコッと屈託のない笑顔で笑う少年の胴体には、自分の作った軽鎧があった。

 

「ははっ」

思わず笑いが漏れる。レベル2になってないとか、そんなの関係ないじゃないか。魔剣でなくとも俺の鎧を買ってくれる奴がいる。

 

「おい!」

思わず声をかけてしまう。そして、その少年──ベルと幾分か話した後、ヴェルフはこう切り出した。

 

 

 

「──オレを、お前の専属鍛治師にしてくれないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

──決して折れない魔剣をいつかお前に作ってやる。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎

 

 

 

 

 

 

地中海のある島に古き神が現れたとのことだが、「英霊の上位である神霊が地上へ来るなんて……現代ならともかく、この時代は神々が降りてくる前……万が一にもありえないぞ……神霊の現界なんてものはほぼ不可能だ!」的なことを(長々と)いうDr.ロマン。

 

だが、確認しておこうと、地中海へ行き、海路を使って帰路ということになる一行。

普通のサーヴァント反応ではないものが、島について確認される。

 

 

「おいおい……神ってなんなんだ……誰なんだよお!」

「…………(真顔)」

「ぶつぶつぶつ……」

「はっ、きっとただの噂だよ……」

「……ふふっ」

 

 

 

 

 

女神ステンノ登場。

 

 

「「「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!?」」」

「ふふっ」

「「「「ステンノおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」

「抜け駆けしやがったあいつ!」

「あっちにいるわ!」

「「「ステンノおおおおおおおおおお……何処だ……そこか」」」

「とっちめろ」

「御用だ御用だ!」

「「「ステンノおおおおおおおおおお!」」」

「おまわりさんこっちです」

「おい、エウリュアレ、お前の姉貴どういうことだ!」

「し、知らないわよ!」

「「「おい何処にいるうううううううううう!」」」

「ダマシタナ!」

「あり得ない」

「クソが……」

「「「ステンノおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」

「ねぇ、アスフィー、なんか拘束する系の魔道具持ってない?」

「持ってません」

「アイズたん、みんな〜! …………ステンノをとっちめろ」

「落ち着けロキ」

「「「ステンノちゃん、出ておいで。今ならちょっと痛い思いをするだけで済むよ?」」」

「おい、てめーらウルセェ!」

 

 

 

 

 

 

そんな騒動が起こっている間も物語は進む。

せっかく来たので、褒美をくれるといいつつも、昔ならメデューサをけしかけたとかいうステンノ。

 

女神の祝福を求め、一行は洞窟の中へ。

だが、どうやら嵌められたようで、洞窟の奥には幻想種がいた。

 

 

「「「「「ろくな女神じゃねぇな」」」」」

「「「「まったく、神ってやつは」」」」

「あんた達、その神ってやつじゃなかったっけ?」

 

 

 

 

 

 

 

倒して戻ると、エリザベートとタマモキャットがいた。現界するときに二人も連れてきたとのことだ。

 

 

「マシュたちは……なんの成果も! 得られませんでした!」

「というかなんでエリザ二回目でてきてんの?」

 

 

 

 

 

 

 

そこでカリギュラ襲撃。なんとか下し、ステンノから本当の褒美として、連合首都の位置を知る一行。

 

 

「「「確保─────っ!」」」

「金曜日、17時17分。FGO勝手に出演した罪で尋問する」

「ちょ……ちょっと待って……?」

「ネタは上がってるんだ! さぁ、吐け!」

「わ、私は……」

「さぁ、さぁっ!!」

「私は……エウリュアレよっ‼︎‼︎」

 

「「…………へ?」」

 

「恨むわよ……ステンノ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

そうこうしている間に、一行はもうすぐ凱旋となる。だが、

ガリアを制圧したのに、敵性存在がかなりいる。これは優れた軍団がいるとの証左であると予想していたところに、スパルタのレオニダスが現れる。

なんとか食らいつき、凱旋する一行。

 

 

「すごい人だかりの中よくマシュを守りきった!」

「偉い!」

「我らがフジマル世界一イイ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

そこで情報が入る。特別遠征軍がローマへの帰途中に連合に足止めされているとの事で助けに向かい。荊軻と呂布と合流する。

 

そして、レフ視点。新たなサーヴァントを呼び、ネロの抹殺を申し付けるのだった……!

 

 

 

「レフめ……余計なことしやがって……」

「おい、なんか気になるところで止めんなや」

「いや、これはむしろステンノを問い詰めるチャンスなのでは?」

「……で、私はいつ解放されるのかしら?」

「うん。お前のねぇちゃん捕まえたら解放するよ。捕まえたらね」

「…………ぁ…………」

 

 

 

●おまけ

 

「ガチャ更新遅えんだよお!!」

「ようやくピックアップ変わったか……」

「ピックアップ情報と……次回イベント情報?」

「「「イベントだと?」」」

「何やらハロウィンイベントみたいだ……」

「おお……」

「バーナーは……エリちゃん?」

「……何回も出てくるな……」

「何度も出てきて恥ずかしくないのかな?」

 

「姉さんは次会ったらコロスわ」

「落ち着きなさい」

「でも! ヘファイストス!」

 

「出演するための献金……一体何ヴァリスなんだ……」

 

「ベルさんが最近疲れているようなんですけど」

「さぁ、なんでだろうな」

 

「え、明日の予告になんか征服王とかいう文字出てませんでした?」

「あぁ」

「「きゃああああああああああっ!」」

 

「星4配布だとおおおおおおお!!」

「え……うっそだー……ほんとじゃねえか!」

 

「爆死」

「うん。お前はよくやったよ。で、何が出たんだ?」

「確定枠優雅たれ」

 

「なんというか、ものすごいことになったな」

「……制度の見直しが必要ですかね……神様……」

「うん。ボクもあんなになるとはね……」

 

 

 

 

●おまけのおまけ。

 

ダンジョン探索中。

 

「避けてみせるがいい」

「ヴォッ!?」

 

アルマジロ型のモンスター、ハードアーマードは対峙した赤銅色の髪を持つ少年から、剣が飛んでくるのが見え、とっさに避けた。

 

遠くでその剣が地面に落ちた、からんという音が聞こえる前に、その少年は再び剣を投げた。

今度は、その剣は3本。

しかも、それはただの剣ではなかった。その剣は、炎や氷、雷といった魔法を纏っている。

 

そういった【魔法】の力を持つ剣はこの階層にいる冒険者程度の放ったものでも、自らを致命傷に追い込むことを本能で知る怪物はそれを避ける。

だが、安全と思って逃げ込んだ場所にはすでにその剣を放った少年がいた。

 

「これで終わりだ」

 

そうして、モンスターは黒白の双剣で叩き切られた。

 

 

 

 

その戦闘を後ろから見ていたヴェルフとリリは。

 

「「……は?」」と声を合わせて言った。

 

 

 

 

 




エミヤ覚醒……だと?

本日の一曲。
【集いし英雄〜Battle 1〜】
おそらくこの作品を見ている人は飽きるほど聞いたと思われる。なので説明は省かせていただきます。初期はのろのろとした動きの鯖とこの曲をよく聞いたものです。

す、少し遅れてしまってごめんなさいと思ってなんかないんだから!申し訳ないとかも、思ってなんかないんだからね!


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定期メンテナンス終了のお知らせ

毎週水曜日、定期メンテ直前のギリギリまで追い込み周回していたあの頃。
なつかしいので初投稿です。尚、今日は水曜日でない模様。


定期メンテナンス終了のお知らせ(毎週水曜日13:00実施)

 

【水曜日18:00追記】

ご利用いただきありがとうございます。

「Fate/Grand Order」運営のヘスティア・ファミリア代表の障子です。

下記の期間実施しておりました、一部不具合修正およびバベルに設置されておりますカードガチャ機能、オラリオ各地のゲーム機能の改修のためのメンテナンスが終了いたしました。

日時

約1年3ヶ月

メンテナンスのお詫び

メンテナンスのお詫びといたしまして、対象のみなさまへ以下の対応をさせていただきます。

【対象】

全話投稿時点で「Fate/Grand Order」をプレイされているすべてのみなさま

【対応内容】

聖晶石 4869個

【配布方法】

プレゼントボックスに配布

【配布期間】

木曜日4:00~火曜日23:59

 

ご利用のみなさまには、長い間大変ご迷惑をおかけいたしました。感想、評価等のご協力ありがとうございました。

今後とも「Fate/Grand Order」をよろしくお願いいたします。

 

【水曜日18:00掲載】

ご利用いただきありがとうございます。

「Fate/Grand Order」運営のヘスティア・ファミリア代表の障子です。

下記の期間、一部不具合修正およびバベルに設置されておりますガチャ機能、オラリオ各地におけるゲーム機能の改修のためのメンテナンスを実施いたします。

メンテナンス中は、「Fate/Grand Order」をプレイすることができません。

メンテナンス開始前にクエストおよびバトル、ガチャを終了していただきますようお願いいたします。

※クエストおよびバトルの進行中にメンテナンスが開始した場合、正常に終了できない場合や、報酬を受け取ることができない場合がございます。

メンテナンス直後はアクセス集中が予想されます。
誠にお手数ですが、その際には暫く時間をおいてお試しくださいますようお願いいたします。

 

日時

水曜日13:00~18:00(予定)

※時間は前後することがございます。

 

 

 

 

▼FGOカードゲーム端末の更新

メンテナンス終了後、端末の更新をお願いいたします。

(ヘルメスロイド)

最新のバージョンは以下となります。
ヘルメスロイド:【Ver.1.1.0】

※ヘルメスプレイでのアップデートが必要になります。アンインストールをしないようご注意ください。更新ボタンが表示されない場合、しばらく時間をおいてお試しいただきますようお願いいたします。

※ヘルメスプレイにて更新ボタンが表示されない場合、ヘルメスプレイの「キャッシュを消去」を実行していただきますようお願いいたします。

1.ホーム画面からメニューキーを押し、「設定」を選択

2.「アプリ」→「ヘルメスプレイ ストア」を選択

3.「キャッシュを消去」を選択

注意)「アプリケーションのアンインストール」は押さないでください。

※メニューの表現、操作方法は、端末により少々異なりますのでご了承ください。

※キャッシュ消去後もヘルメスプレイにて更新ボタンが表示されない場合、しばらく時間をおいてお試しいただきますようお願いいたします。

 

 

 

対応内容

 

▼ゲームの更新

1.期間限定イベント「歌うカボチャ城の冒険~マッドパーティinオラリオ〜」の準備

2.聖晶石召喚(期間限定)「歌うカボチャ城の冒険~マッドパーティinオラリオ〜ピックアップ召喚(日替り)」の準備

3.聖晶石召喚「二章放送記念ピックアップ召喚2」の実施

 

▼不具合の修正

1.バトルにおいて、特定のサーヴァントの宝具演出時に、表示されるサーヴァントのカットインとバトルキャラのグラフィックが霊基再臨段階によって相違している場合がある不具合を修正
※対象のサーヴァントは以下となります。
・マリー・アントワネット

・佐々木小次郎

・ジークフリート

・アンデルセン

・ヘラクレス

・諸葛孔明

2.オラリオの各地に設置されている端末にカードをかざすと挑戦できる特定のサーヴァント、概念礼装の幕間の物語クエストのパーティ確認画面において、「戻る」ボタンをタッチした際、遷移先が意図しない設定になっている不具合を修正
※対象の幕間の物語は以下となります。


・諸葛孔明 第1節


・優雅たれ 第1節

・カレイドスコープ 第1節

3.マテリアルの「イベントクエストでの記録」において、特定のアドベンチャーパートを再生中に進行不能となる不具合を修正
※対象のアドベンチャーパートは以下となります。

・月の聖女はお月見の夢を見るか?

4. 『7日連続TV-CMクラス別英霊編(前編)「事前情報って小出しすぎるよな」』に登場するセイバーのセリフの変更

5.章管理設定の変更

6.各種誤字報告の適用

7.BGM、ボイス、効果音、誤字報告が正しく適用されない場合がある不具合を修正

▼ゲームの改修

1.倍速戦闘機能の実装

2.宝具演出カット機能の実装

3.種火クエストに超級を実装

4.各種UIおよびグラフィックの調整

 

ご利用のみなさまには、ご迷惑をおかけいたしますことをお詫び申し上げます。

今後とも「Fate/Grand Order」をよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

 

 

ヘルメスプレイ

ここからダウンロード

 

デイアスフィーワークス

 

 

 

 

 

 

 

●おまけ

 

もしもの2部。とある海の中

 

「どうして貴方はそこまで……我々に抗ったのですか……?」

「さてな。オレにもよく分からん。だが、あいつはオレにこう言ったんだよ。オレのことを……『アルゴノゥトみたいだ』ってな」

 

「アルゴノゥト……最弱の英雄、でしたか」

 

「そうだ。最弱で、情けなくて、最後には守るべき姫にも尻ひっぱたかれるような英雄だ。だが、よく分からんことにオレはヤツのような英雄に憧れてたのさ。自分の船にアルゴノーツとつけるくらいにはな」

「……強いものならわかります。我々の神々への敬意のようなものでしょう。ですが、なぜそのようなものに憧れるのですか?」

「……たしかにヤツは情けなくて、弱くて、ともすれば指揮官たるオレよりも弱いかもしれん。ただ……【冒険】した。ともすれば、最も偉大な冒険かもしれん。……まぁ、オレとヘラクレスの冒険には及ばないがな!」

「……」

 

「ともかく、聞いたとかだけならともかく、実際にヤツに会ったアイツが──マスターが、オレと似ているというのだったら、オレはここで冒険しないわけにはいかんだろうさ。……認めたくないことだが、本当に認めたくないことだが、オレにとってのアリアドネも居たようだしな!」

 

 

・知らない人へのアリアドネの解説

アルゴノゥトに出てくるヒロイン。お姫様。助けに来たものの、情けない姿を見せるアルゴノゥトを叱責し、偉業の後押しをする。

もしかして:メディアリリィ

 




もしかして…私、忘れられちゃった?そんな、そんなことってないわよね! ねぇ! 何か言ってよ! ねぇ、なんか言ってくれないと、私…………、ね?

ということで、長い間忙しく、投稿できずに申し訳ありませんでした。ランキングに面白い作品が沢山乗っかっていて、意欲を触発され、なんとか時間を作り戻ってきた次第です。信用はないとは思いますが、これから少しずつ更新はしていく予定です。

あと、神様増えすぎ問題(2部5章)一体どうしたらいいんだ(オリュンポス神々の設定齟齬)


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ハロウィンイベント「自分が触媒教って最早なにがなんだかわかんねぇな」

一応忘れてる方もいらっしゃると思うので、まとめです。


●前回までのあらすじ

ダンまちの世界に転生したエミヤ・アーチャーは、転生特典の【投影】というスキルを手に入れるが、それは「Fateのアニメの投影」というものだった。がっかりするエミヤだったが一晩で立ち直り、オラリオにFateを布教することに決める。
こうして、英雄オタクのベル・クラネル監修のFGOのアニメが始まり、暇な神様たちのガチャ(カードゲーム)への投資もあり、ヘスティア・ファミリアの借金はほぼ完済される。
そして、その過程で様々な人が影響を受けまくったり、沼に落ちたりしていた……

現在ダンまち本編の2巻。Fateのアニメは一部二章の途中。



●影響を受けた人物、変更点(抜粋)

ベル
ステイタスを犠牲に一時的に英霊の武具を手に入れるスキルを発現。ハードワーク修行漬けの日々を送る。なんかハーレムに興味なくなってマシュ(アイズ)推しになった模様。間違いなく人生を一番楽しんでる。声優はフジマル・立花役。

ヘスティア
ジャガ丸くんのバイトはやめたが、FGOの小物作りの内職で忙しい。ジャンヌ役。

アイズ
自分のあり方について思案中。最近考え事をしながら、オラリオの燕を絶滅一歩手前に追い込んでいるかもしれない。最近ヘスティアファミリアと仲がいい。マシュ役。

ミアハとナァーザ。
借金完済。

アスフィ・リヴェリア
沼に落ちた。アスフィは魔道具を提供し、リヴェリアはアルトリア役を務める。

ヴェルフ
村正に憧れ、原作より早く壊れない魔剣という着想に至る。あと心境が色々変わったらしい。

リリとモルド
FGOカードゲーム上級者。大会で出会い、親子のように仲良くなる。なお、モルドはリリを預ける男としてベルを鍛える。さらにカードゲームに夢中だが、リリの制止もあり、ガチャで爆死はするもののカジノよりは散財しなくなったらしい。

アミッド
過労

カジノ
商売上がったりだと思いきや、FGOカードゲームまで賭け事の対象にする始末。むしろ売り上げは上がっているらしい。

冒険者
FGOを真似て無茶をするものも増える。だが、全体の死亡率は下がったらしい。『「来週の金曜までは絶対死なない」という気持ちが生きることにつながった』と、怪我したとある冒険者は語る。

神様たち。
Fateオタクとなる。ファミリアのお金を散財する神もいるらしい。ガチャのカードの所有権をめぐる小規模の戦争遊戯(と言う名のカードゲーム対決)が各地で起こっているらしいが……。
毎週水曜の定期メンテが憎いらしい。

ウラノス
一体全体、何が起こっていると言うのだ……。(困惑)

FGO
少し現地にそったように改変(英雄オタクのベルのおかげで矛盾点はほとんど存在しない)されている。例えば、ケルト系は小人族となっている。主人公の藤丸立香も、ヤマト・命のように、東方の名前としてフジマル・立花となっている。

FGOアニメ
アニメはバベルの壁に写す形で毎週金曜に放送中。放送が始まってから、どのファミリアも遠征に出ていないらしいが……?FGOを見逃したくないために数ヶ月かかる遠征は行わないとの噂も。ちなみにリヴェラの町で見かける人の数が少ないという噂もFGOと関係あるらしい。

FGOカードゲーム(詳しい設定は初出)
トレーディングカードゲームに近いが、アーケードの要素も入っている感じである。
個人端末に登録されたマスターデータをオラリオ中に散らばっている設置端末にかざすことで、周回ないしは再臨、礼装の限凸などが可能になる。(流石にアーケードと違って周回するのはタダである。個人端末が年会費のような形)
ガチャで出たカードだけでカードゲームすることは可能であるが、再臨できないので少し不利になる。だが、黎明期と言うこともあり、この時は最終再臨なんてみんなできないのであんま差はない。むしろカレスコかジャンヌ(最終再臨割と容易)持ってるものがフレンドに重宝されるゲーム。(なお、フレンド枠はクラスごとに分かれていない模様)




そして今回……

えうえう(ダンまち)参戦!





 

 

「あぁぁ──────────っ! もうっ !不幸だわっ!」

 

オラリオにおいて、2章ピックアップ──つまりステンノのピックアップが開始された日。

1人の小柄な女神が、般若の表情をした3桁を超える神に追いかけ回されていた。

 

「ぜぇ、待てや! ステンノぉ!」

「だからステンノじゃない! エウリュアレよぉ!」

「嘘をつきなさい!」

「あんたがそうやって入れ替わるってのをこの前の騒動でみんな知ってるんだからね!」

「……うぅ……聞く耳を持たない……あぁ、空はこんなに蒼いのにお先は真っ暗闇ね……」

 

裏道から裏道へ、バベルへと続く大通りを横切りながら、真横に見えるバベルに恨めしそうな顔を向けるエウリュアレ。かれこれ追いかけ回されること数時間。その前に起きたことを思い出すと、こうだ。

 

 

 

……

 

 

 

楽しく神友(しんゆう)と一緒にバベルの上階で買い物していたエウリュアレは、御目当ての服を購入し、一息ついたところで下の方が騒がしいことに気がついた。

 

どうやら張り紙を見る限り、新しいピックアップが始まるということだった。ここ最近の神の嗜みとして、FGOカードゲームをそれなりにやり込んでいる二神(ふたり)は、時間に余裕があったこともあり、ガチャコーナーに行ってみたのだ。

お金も服のお釣りが少し余っていたので、何回かガチャを引いてみようという気すらあったくらいだ。

 

神友と一緒にガチャコーナーの近くに着くと、近くの陰に金色の髪が見えた。少し近づくと、それは最近色々なものを放ってガチャコーナーに通い詰めているというディオニュソスだった。声をかけて次のピックアップについて語ったこと以外で特筆すべきことはなかったが。

 

 

そして始まったピックアップは実の姉だった──ところまでは、まぁ、よかった。

 

ピックアップガチャを引く気がかなり失せて、苦い顔をしていたエウリュアレを見かねてか「帰ろう」と神友が提案してくれた……その後が、本当の問題だった。

 

とぼとぼと帰ろうとするエウリュアレたちの後ろに群がる人だかりの中心あたりが騒がしくなったと思ったら、人混みの中、自分と瓜二つの女神(・・・・・・・・)がこう叫んだのだ。

 

 

「ーーだ、か、ら! 私はエウリュアレ(・・・・・・)よ!」

 

 

 

 

「ぅへ?」

 

思わずエウリュアレは変な声が出た。

だって自分(エウリュアレ)はここにいる。

状況が飲み込めないでぽかんとしているエウリュアレだったが、ギロッと多数の視線が自分に向いたのが分かると、その驚きは恐怖へと転じた。

 

その視線に共にガチャコーナーに背を向けて帰路についていた神友も気づいたのか、くるりとたくさんの神がいる後ろに向き直り、エウリュアレに背を向けて、

 

「……行きなさい」

「え……でも! スカジ……貴女は⁉︎」

「いいから! ここは私が食い止めておくから、早く!」

 

後方から見る神友の顔はエウリュアレにはよく見えなかったが、覚悟が決まっていることだけは伝わってきた。

 

 

そうなれば取るべき答えはひとつだった。

 

 

 

………

……

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……」

 

エウリュアレは裏道から裏道へ。しかしダイタロス通りのような袋小路には迷い込まないように大通りから着かず離れずの位置を逃げ回っていた。

 

そして、とある角を曲がろうとした時、目の前に急に出てきた人影にぶつかってしまった。

 

「あっ……」

 

エウリュアレの前に立っていたのは2人の人族の少年だった。位置関係からして、白髪の少年ではなく、オレンジに近い髪色をした少年の方にぶつかったのだろう。

 

「大丈夫ですか?」

 

白髪の少年が倒れたエウリュアレに手を差し伸べてくる。どうやら赤銅色とでもいうのだろうか、もう片方の少年は前がほとんど見えないような機材の横から頭を傾けてこちらを見て謝罪してきた。

 

「──すまない。む……貴女はステンノ神か?」

 

その瞬間、大丈夫です、と言おうとしていたエウリュアレの口は爆発した。正確には爆発はしていないのだが、音爆弾と言われても納得するような声量だった。

 

 

「──誰がステンノよ! 」

 

 

我慢ならなかった。他の誰と間違われるのは許せても、少なくともその女神だけはダメだった。既に逃走中は三時間を経過していた。その原因だ。許せるはずもなかった。

 

「あんな性悪女と一緒にしないでもらえる? 私はエウリュアレよ!……痛っ……逃げなきゃいけないのに……」

 

半ば魂の叫びというべき大音量で抗議した結果、エウリュアレは自分が怪我をしていることに気がついた。先程大丈夫だと思っていたが、どうやら怪我をしていたらしい。

 

エウリュアレは絶望した。この痛みを抱えたまま、あの神の濁流(比喩にあらず、それだけの神がいる)に耐え切れるはずもない。涙さえ出てくる。

 

そんなエウリュアレを見かねてか、赤銅色の髪の少年は機材の中から白いツルツルとした布を取り出して、もう1人の白髪の少年に渡した。

 

「ベル、この布を」

「はい、わかりました! アレですね?」

「きゃっ……何なのよこれ!」

 

すっかり涙を拭うためのハンカチだと思っていたその白い布を、いきなり頭にかぶせられたエウリュアレはあわや誘拐かと、びっくりして暴れようとするが、赤銅色の髪の少年は存外落ち着いた声で。

 

「ああ、こちらに害意はない。いいから、被ってそのままじっとしていて貰えると助かる」

 

エウリュアレは神ゆえに、子供達の嘘がわかる。その害意はないという言葉と、それを発した少年の目を見たエウリュアレは、一応黙って従うことにした。

 

そうして大人しく被った瞬間、静かな路地裏は一気に騒がしくなった。

 

 

 

「「「そこかぁ!」」」

 

 

 

神供が乱入してきたのだ。気配で感じるだけでも凄まじい数。エウリュアレは絶望を深めた。この2人が庇ってくれるにしても、誰か1人くらいは気づいてしまう、そんな神の数だ。ましてや自分は白い布を被っただけ。誤魔化しようもない。

 

「あれ?こっちで女神を見なかったか、そこのお前!」

「あちらの方へ行ったが……」

 

庇ってくれるものの、こんな白い布なんて怪しすぎる。かなり近くまで来て、絶体絶命。そう思った瞬間だった。

 

「待てやおら!」

「待てヤァ」

 

神の大群は、少年の言った方向に走っていった。

 

「へ?」

 

呆けているエウリュアレは、周りにもう誰もいないことを確認した赤銅色の少年によって布を取られた。

 

「大丈夫か?」

「今の何?」

 

お礼を言う前にエウリュアレの口から出たのは純粋な疑問だった。あの状況、確実に布を取り払われたりして、エウリュアレ(神にとってはステンノ)がここにいると発覚していたはずだ。

 

それに答えたのは、白髪の少年だった。

 

「こちらのエミヤさんのスキルです。こうやって、白い布にですね」

 

横のショルダーポーチにくくりつけてあったナイフに小さめの白い布を被せ、エウリュアレに渡してきた。それに赤銅色の髪の少年が何やら呟いて手をかざすと……なんと言うことだろう。

 

剣が炎を纏った。

 

慌てて布が燃えると布を取ろうとしたエウリュアレは、熱くないことに気がついた。ふと赤銅色のエミヤと呼ばれた少年の方を向くと、エミヤはしたり顔で、

 

「こうして、幻影を映し出せる訳だ。先程は失礼ながら被させていただいた布に別人の幻影を映したということだな」

「その進化したスキル、本当に便利ですよね。体格とかは誤魔化せないですが、リリのスキルを使えばほぼコスできない人なんていないんですから!」

 

なるほど、白い布を透けた布のように見せて、中に別の髪色の神がいるように見せたのだろう。エウリュアレの髪色は特徴的だ。髪色が違うだけで、完全に意識外となるだろう。助かったと言う安堵とともに、ふと息をつくと、先程から礼を言っていないことに気がついた。

 

 

「その………………ありがと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで何で追われていたんですか?」

 

白髪の少年、ベルがそう尋ねてきた。当然の疑問だ。巻き込んでしまったのだから、その疑問には答えるのが誠意というものだろう。

ここで、誠意というものを持ち出したりするのが、エウリュアレがオラリオで神格者(じんかくしゃ)と言われる所以でもある。

 

「それは……」

 

こうなった理由を最初から話すと、2人はなんとも言えない表情をした。何やら心当たりみたいなものがあるのかもしれない。ステンノとあったことがあるのだろうか、と考えていると、少し間を置いてエミヤは気難しい顔をしたまま、言葉を発した。

 

「私たちもステンノ神とは多少交流があるのでな。こちらからも見かけたら注意しておこう。それはそうと、この状況では本拠地(ホーム)までの道中も危険だろう。ベル、エスコート頼めるか?」

「は、はい、大丈夫です。……立てますか?」

 

どうやらやはり、ステンノと交流があったらしい。エウリュアレは絶対に報いを受けさせると、決意しながら、ベルの差し出した手を取ろうとする。だが。

 

「あ、あの……腰が抜けちゃって……立てないかも……」

「……え」

「だから、私を抱っこする栄誉を貴方たちに与えるわ……そ、その、送って下さらないかしら……」

「む、無理ですぅうううう!」

 

ベルは叫んだ。

 

「……」

「すまないが、この通りベルは純情なのでな。身内以外の女性にあまり触れたことがないので勘弁してやってほしい」

「わ、分かったわ」

 

そんなに拒否られるほど、私ダメかしらと一瞬思ってしまったエウリュアレだったが、どうやら違うようだ。少し安心して、許しを与える。

 

「と、いうことなので申し訳ないが私が送ろう」

「た、頼みます」

 

そういうとエウリュアレの近くにエミヤは近づいてきて、

 

「エウリュアレ神、失礼する」

 

と言って抱え上げた。少年にしては意外と安定感のある腕で、軽々とエウリュアレをかかえ、そのまま他愛のない話をしながらエウリュアレの本拠地へと無事送り届けた。

ついたときに一悶着あったが、エウリュアレの言葉もあり、騒動は収まった。

 

 

こうしてヘスティア・ファミリアとエウリュアレ・ファミリアの交流は始まったのだった。

この数週間後、エウリュアレは別の意味でオラリオ中の注目を浴びるのだが、それはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

───

 

 

 

 

 

 

今日も今日とてバベルに映し出されるFGO。

 

レフに新たに呼び出されたのは赤髪の少年だった。そして黒い長髪の男もいる。

 

「1人は孔明なのはわかるが?」

「あの使えないやつな!」

「赤毛、マジ誰?」

「うっ…………ひっく、ひっく」

「おいどうした!」

「お前らzero読めよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!読んでないから泣けねぇーんだよほら泣けよ!」

「いや、急に言われても……」

 

 

 

 

 

 

一方ネロの状況が説明される。

 

「今、敵の首都に進撃中なのか!」

「ふっ、有利だな!」

「ロマン、マシュに戦記のような日記を書けと言うとか、余裕ありすぎぃ!」

「ロマン勝利の美酒は良いとか……現代人のくせに草。冒険者には見えないし、どうせカジノで勝った時の酒みたいな感じだろ笑」

「呂布とスパルタクスが誘導されそうになってるのも止められたし、あと問題は新しい英霊だな!」

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、連鎖召喚と言うものをされたらしいダレイオス3世登場。

 

「へ?赤毛と黒髪じゃないの?」

「え?なんで黒いの?」

「え?なんで変な乗り物に乗ってるの?」

「真っ黒すぎなんで?」

「連鎖召喚というと、この前のジークフリートとファブニールとかと同じ?」

 

 

 

 

 

 

 

相手をしている間に奇襲を受け、呂布とダレイオス離脱。そしてブーディカは囚われてしまう。取り戻すために砦に行くと、そこには赤髪の少年。赤毛の名はアレキサンダー三世、黒毛はエルメロイ二世というらしい。

 

「アレキサンダー?」

「え? アレキサンダー? アレキサンダーなんで?」

「CMで出てきたやつやんけ! でも違う? なんで?」

「なんで?」

「全盛期で召喚されるということは、これが全盛期ということ?」

「へ?」

「いや、なんか特殊と言ってるし……」

「どうせレフの召喚失敗やろ」

「「「それだ!」」」

 

 

 

 

 

 

 

アレキサンダーはどうやらネロと話したいだけだったようだ。積極的に敵対する気はないとのことらしい。

なぜ戦うのかと問うアレキサンダー。アレキサンダー曰く、連合に協力してそのうちの1人になれば、この戦いは起こらなかったと。そしてローマは続くと。

 

「確かにな。今現在、ローマ帝国は滅びている。ネロが連合に入っていたら、きっとフジマルにとっては不利だろうが、それでもローマは生き残るわけだ」

「なるほどな」

「じゃあなんで?」

「王様としては連合に入るのが正しいんじゃ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、その言葉をネロは跳ね除けた。今この時、皇帝として立つ存在は、ネロ・クラウディウスただ独りと宣言する。

それにアレキサンダーは、満足げに、その答えが聞きたかったと語る。キミは皇帝たる資格を持っている。きっと魔王にだってなれると語り、だが気に入ったがゆえに立ち塞がる。

 

「そうか。連合に入ってしまったら、その時点で王ではない。その矜持こそが、英雄たる所以ということか」

「アレキサンダーかっこいいじゃん」

「……なんでこれがアレになるんだ?」

「どうした?」

「なんでもない。というかはよゼロ読め」

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、アレキサンダーに打ち勝つ一行。その誇り高さは尊いものだが、危険なものでもあるはずだとアレキサンダーは言い残す。そして、開けるは首都への道。目指すは王宮。ロマンはレフがいるかもしれないという。

決戦に向け、出陣する一行の前に立ち塞がったのは……

 

 

『ローマである!』

 

 

神祖ロムルス。ローマそのもの、ローマ建国王、ロムルス。ネロは動揺し、うろたえる。

 

『ロムルスは、ローマを作った英雄で、神の力(アルカナム)による恩恵の前身となるような加護を纏っている!もはや半分神と言っても良いほどの神の力だ!』と叫ぶロマン。

ロムルスに加護を与えているのは軍神マルスらしい。

 

 

「マルス?」

「え?」

「……」

「「「「「「「「…………」」」」」」」」

「「「アレスの野郎だああああああああああああああっ!」」」

「ふざけんなあいつ」

「ざけんじゃねえ!」

「次きたらぶっ潰す!」

「むしろこっちから打って出るか?」

「バーロー! 一週間でいってこれねーだろうが!次回見逃すつもりか!」

 

 

 

 

 

 

 

ネロは、アレキサンダーに見栄を張ったが、今神祖に下りたくて仕方がないという。だがそれでも、神祖は間違っているというネロ。だってついてくる民が誰1人笑っていないのだから。

 

「よく決心したネロ!」

「勇気を褒めたい」

「アレキサンダー……ぐずっ」

「いつまで泣いてるつもりだ……わかった首絞めるな読むから許して」

 

 

 

 

 

ロムルスと決戦する一行。

 

「何そのポーズ」

「Vの体勢を取れ!」

「ローマ!」

「ローマ!」

「ローマ!」

「ローマ!」

「お前ら立って変なポーズするんじゃない!見えないんだよ!後ろのやつが!」

 

 

 

 

ロムルスを倒す一行。ロムルスはローマをネロたちに託すと言って、ローマは永遠だという。

 

「そうだ。ローマは永遠なり……」

「「「「「「ローマッ!」」」」」」

「だから見えないのよ!」

 

 

 

そして最後かと思ったら……

 

 

 

 

レ    フ    登    場 

 

 

 

 

「「あぁあぁああああああああああああああああああああッ!」」

「諸悪の根元きた!」

「やーい、召喚失敗野郎!」

「所長を返せよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「ここで終わりとかないだろうがああッ!」

「タヒねレフ」

「くたばれ」

「マナプリになれよレフ」

「とっとと消えるんだな。ぶっ飛ばされんうちにな」

「数週間……ぶりだな」

「この腐れ緑が!」

「消えろ」

「オメェ一番ローマじゃねぇ!」

「いま良いとこだったろ、空気読め!」

「ろーまのちから、くらええええええ」

「フジマルぶちかませ!」

 

 

 

 

 

最後に、イベント開催情報と、マップが映し出される。エリちゃんのイベントで、星4配布。しかもゲリラクエストがあるそうだ。

 

「あれ?なんかマップに数字書いてない?……はっ、まさか!」

「本当だ! これは!」

「「ゲリラクエストの時間か?」」

「「「「「「「ダニィ!」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●おまけ

 

「時間は分かってもどの端末かはわからない! みんなで手分けして見張っておくんだ! 分かり次第すぐに伝えること! 遠征の経験を生かすときだ、みんな!」

「分かりました団長!」

「しかし、リヴェリアはどこにいるんだ?」

 

「エミヤさん……僕はここまでみたいです……ゲリラクエストを、よろしくお願いします……」

「べ、ベル!! しっかりしろ! くそっ、ベルが人混みに押しつぶされた! しかもサーバーが落ちた! このままでは人が多すぎてゲリラクエストどころではないぞ!」

「……ベルくんが! エミヤくん、こうなったら仕方ない。……………………メンテしよう」

 

「ゲリラクエストだと思ったら、げりらめんてだったでござる」

「詫び石今回どのくらいだろうな」

「おいはやくあけろよおら」

「仕方ない。障子(しょ◯じ)のコラでも作るか」

「そうだな」

「いいの待ってる」

 

「私だってクエストしたいのになんでサーバーの強化なんてしなくてはならないんですか……」

「頑張れアスフィー、君の手にオラリオの明日がかかっているよ」

 

「星4サーヴァント配布!ハロエリゲットだぜ!え、この無辜の怪物スキル強ない?防御下がるどころか回復してんだけど!」

「アルトリアリリィの星4(笑)とは違う完全なる星4しかも宝具5確定」

「むしろバスター全体キャスターとか強すぎ乙。星五の孔明食ってるどころか、明らかに上」

 

「え?この四章で出てくるっていう先行実装の玉藻の前って強くね? ジャンヌと組み合わせたらかなり強い」

「寧ろ火力補助なのでは?」

「いや、強すぎやろ!完全に孔明よりは上だな!」

「孔明新実装の2人に完全に負けてて草。しかも片方配布星4だし笑。つまり孔明はアルトリアリリィと同じく実質星3.5」

 

「ハロウィン・プチデビルつええええええええええええ!」

「いや寧ろ、ハロウィンプリンセスやろ!限凸でNP 50に宝具威力アップやぞ! 今まで限凸龍脈、カレスコ、虚数くらいしかまともなチャージ礼装ないんやから、ここで 50……しかも配布はデカすぎる!」

「どこで手に入るのそれ? 交換しても一枚足りんやけど」

「どこって……? それはなぁ、周回に決まってるだろ!」

 

「アミッド様!急患です!」

「分かりました。準備してすぐに向かいます。人数はどのくらいでしょうか?」

「そ、それが今回はいつもの倍くらいで……」

 

「交換アイテムはなぁ!第一に未実装素材ら!第二に種火が鉄板なんだよおおおおおおおおおおおたおおおおっ!」

「種火は集まりにくいからな」

「私としてはシロウが再臨に未実装素材を使うのは本当に謎だな」

「おまえだれ?」

「私か?私は謎の美魔女Lとでも名乗っておこうか」

「こいつ、話しながらも、歯車を狂ったように集めてやがる……」

 

「ヴラドがハロプリ落とすらしいぞ!」

「落とせえ!」

「落ちない!」

「落ちんぞ!」

「落ちん!」

「この障子のコラ画像を触媒に!……落ちるわけがなかった……」

「こいつこのドスケベ礼装大事に抱えてやがるな!」

「こいつ大公なんだろう?なら、ドスケベ公だな!」

「まさにふさわしい呼び名であるな!」

 

 

 

 

「ここまでエリちゃんのハートフルなハロウィン・ストーリーを誰も話題にしてないの草」

 

 

 

 

 

 

●おまけのおまけの次回予告

 

憧れの人(アイズ)に修行をほっぽらかしにされたレフィーヤは、助けを借り、なんとか平行詠唱を成功させる。

協力してくれた《27階層の悪夢》の唯一の生き残り、フィルヴィスをお礼にと、映画(アイズからのお詫びチケット)に誘うのだが……。

 

「楽しみですね!」

「相手は逃げないのだから、そんなにはしゃぐな、……レフィーヤ」

「今公開されてる前編のみならず、後編の試写会まで見れるんですよ! まとめて見ちゃいましょう!」

「……わかったから落ち着こうか」

 

 

『俺は何の為に、お前は何の為に、あの地獄を生き延び──そして、見送られたのか……』

 

 

劇場版Fate/stay night [unlimited blade works]後編 理想の果て(答え)

 

 

 

 

 

 

えうえうのイメージ

(あくまで自分の想像です。あなたの心で思い描いたえうえうが貴方のえうえうであることを忘れないでください。)

 

 

【挿絵表示】

 

 

えうえうの噂

数週間後、ツインテール以外は認めないと言う同調圧力によって常時ツインテールになるらしい。

 

 

 

 

 







本日の一曲
〈kaleidscope〉
プリヤ映画の主題歌も同じ曲名で良い曲だが、今回オススメしたいのはそちらの方ではない。vita版 stay nightの主題歌アルバム、ARCADIAについてくるearthmindのkaleidscopeである。個人的に六章のベティにとても合う曲だと思っていて、めっちゃ好きです。


そう言えば、前書きのメモでケルトは小人族といったな!
つまりメイヴはロリだ!

追記。
えうえうのことを尋ねられた時、なんでエミヤが嘘をつけたのかという質問がありましたので、エミヤは嘘をついていませんと答えておきます。特定の個人について聞かれたわけではなかったというのがミソですね。人名を出されていたらアウトでした。


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二章4話「不意にくるアニオリで泣かせてくるのは卑怯」

シリアス注意。
今回話の構成上、FGOアニメの話の方を先に持って来させていただきます。後ちょっといつもと雰囲気違います。
あと、オラリオの皆さんは、アニメなどというものに耐性がないので、深く感情移入します。

追記・今回状況描写が少なくて分かりづらいという意見を頂きました。オラリオの皆さんは上記の理由で感情移入し切ってしまって、自分とアニメの境界が曖昧になっていると言った感じです。分かりづらくて申し訳ございません。


 

 

『我らが王は人間を憐れみ、死から救うと言うが、人間には──特に現代の人間には、それだけの価値があるのか分からない』

 

レフ・ライノールの言葉だ。

自らを72の魔神の一柱、魔神フラウロスと称した男の言葉。

 

自らが呼び出した白髪の女の英雄に両断されることに神々や子供達が沸く中、とある女神はその言葉に。

その男の言葉に共感を覚えてしまった。

 

──則ち、現代の人間には価値があるのか否か。

無論、人間そのものには興味はあるし、愛しくも思っているし、蔑ろにしたいなどとは思っていない。

ただ、それでも思うのだ。現代の──【神代】のこの状況は、この時代に置かれている子供達の冒険に価値はあるのか、と。

 

 

 

 

神は『超越存在(デウスデア)』である。

人間とは根本的に考え方が違う。

 

無論、神の中にも色々神格(じんかく)がある故、人間らしい感性を持つ神もいるが(この前【神会】にタッパーを持ち込んだツインテールの女神がいたらしい!!)、それでも分かり合えない壁というモノが存在する。

 

その一つが時間感覚であろう。

神は文字通り【不変】だ。確かに下界に降りてきて丸くなった神もいる。だが、それは心の持ちようの問題で、神が不変であることには変わりないのだ。

そして不変であるが故に、今の子供達が生まれるずっと昔のことも把握している。

 

つまり言い換えるならば、下界の流れという者を見ている神は、文字通り『視点』が違う。

 

故に、子供達が一見理解できないことも、善意からやってしまえるのが神なのである。

いわゆる『神の愛(アガペー)』。子供達を傷付けてでも、若しくはあえて傷つけて子供たちの魅力を引き出し、愛するというそのあり方。

 

そんな神から見るとたまに思うことがある。

 

 

──今の下界は、不純ではないのか、と。

 

 

今の下界は、神々がいい様にのさばっている。故に、子供達が本来の輝きを失っているのではないかと。

それは、『古代』と言われる時代から、『英傑の時代』への変革期に子供達が持っていた輝きを、奪ってしまったのは神々なのではないか、ということである。

 

──『古代』。

 

『大穴』より這い出る怪物達に蹂躙された人間は、とあるブレイクスルーを経て、時間と共に力を技を知識を魔力を磨き、次第に怪物を追い返していった。

そうして見つけた全ての原因たる『大穴』。子供達は、下界の住人は、人間は、その大穴を塞ぐ様に、オラリオの前身たる砦を築いた。

 

それを為したのは、『英雄』と言われるもの達。

彼らは、『器』の可能性を引き出す『神の恩恵(ファルナ)』の力を借りずとも、尊き血と涙、何者にも変えがたい強き意志を持って、そうして暗黒の時世を切り開いていった。

そう……英雄達は自らの力で『人』たる限界をことごとく超えていったのだ!!

 

神がこういうのもおかしいかもしれないが、あれこそまさに『英雄神話』であった。

 

 

ゆえに、思ってしまうのだ。

我々は不要なのではないかと。

『恩恵』などではなく、子供達自らの力でもって、怪物を撃退する。

 

それが本来のあるべき形なのではないか、と。そしてそのあるべき形に戻すべきではないのかと。

 

そんな考えに囚われた時だった。

かの赤き皇帝の言葉があたりに響いたのは。

それは文明を破壊するという白髪の女に立ち向かうときの激励。

 

 

『今できることを、精一杯にやるのだ。さすれば、それが新たな偉業となろう』

 

『たとえそれが下らぬことでも良い。小さなことでもよい。他人が既にやったことでもよい。何かを精一杯やって、それを繋ぐのだ』

 

『それぞれの時代のものが、持ちうる限り、使える限りのものを使って。そうして、人類は繁栄してきたのだ』

 

『確かに神に与えられた試練を達成し、英雄となったものもいる。

だが、中には神々が想像もし得なかった偉業というものもあろう。』

 

『それは神の意思によって与えられた試練などというものではない。我々の意志によってなされる偉業なのだ。そしてその多くは我々人類を次のステップへと押し上げてきた』

 

『そして豊かになることで、さらに新しい冒険が生まれ、偉業が生まれていく』

 

 

赤き皇帝は、かの始まりの英雄の名を挙げ、さらに士気を高める。

 

 

『あのアルゴノゥトとかいう英雄の示した勇気が『今』の我々につながっているように。願いというものはつながっているのだ……フジマル、マシュ』

 

『そして、それはあの様に訳のわからぬ者に破壊されるべきものでは、決してない』

 

 

ドキリ、とした。

まるで見透かされている様な、その様な感覚。本来であれば神が人に覚えるべきでない感覚。

 

 

 

『皇帝が変わり、国が変わり、名が変わろうと、永遠の帝国はあり続ける。それが人の繁栄というもの』

 

 

 

そうして、人理は受け継がれてきたと、赤き皇帝は語る。

神々が何かをせずとも、新しい冒険を見つけては乗り越えていくのが、人類なのだと。

それは現代のオラリオもそうであるのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終わったのをその女神が気づいたのは、周りに殆ど誰もいなくなってからであった。

周りの席には興奮冷めやらぬ様子の神や人が数人いるだけで、あの熱狂は既に消えていた。

 

フジマルたちが破壊の大王を撃破したことは覚えている。その時、彼女は自分の剣でも破壊されぬ力というものを感じ取ったらしかった。

それは、きっとネロの時代からフジマルの時代まで繋いできた力というものなのだろう。

 

 

子供たちを見ていた様で、理解していなかった。

違う。見ていただけで、理解できていなかったのだ。

 

 

ふと気がつくと、その女神は自身のホームの机に座っていた。帰り道の間もぼうっとしていた様だ。

ようやくはっきりしてきた意識を動かすと、目の前の机には見たこともない料理がある。

いつもと違う主人の様子に気を使ってか、ファミリアの料理担当が何やら違う料理を出してくれたらしかった。

 

『美味しい……』

『それは良かったです。近頃近くのバイト先で赤い髪の料理人に出会いましてね。こいつが奇抜な料理を作るやつで、インスピレーションを受けて、ちょっと冒険した料理を作ってみました』

 

それは確かに聞いたことも味わったこともない様な味。だがしかし、自分の料理として落とし込んでいる。

 

(──これが、繋がっていくということ。そして、挑戦する『冒険』。彼女が言った、繋がっていくことで生まれる、冒険の多様性……)

 

「そう……」

「ど、どうかしました? お口にあいませんでしたか?」

 

様子の変わった自らの主人にやはり後味などが口に合わなかったのかと焦る眷族。それに何でもない、美味しかったわと返す。

 

よかった、と胸を撫で下ろす眷族に、その女神は優しい微笑みを向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

穢れた自分にとって、それは自分に関係ない世界のものだとそう思っていた。

愛と希望の物語。まさにFGOはそんな物語だった。

だから(・・・)、自分には関係ないものであると。

 

故に、同じFateと冠されているこのUBWという映画を、自分1人であったのならば、見ようとは決してしなかったに違いない。

そう思考を巡らせながら、自分がこの映画を見る原因となった少女の顔を見る。

 

レフィーヤ・ウィリディス。

詠唱連結によって、多数の同族の魔法を使いこなす類稀なる魔法を有する、【千の妖精《サウザンド・エルフ》】。

【ロキ・ファミリア】のレベル三にして、次代の第一線を担うであろう、若手のホープとでもいうべき存在。

 

最初はそう。ただの巡り合わせのようなものだった。ひょんなことから修行を見ることになり、いつの間にか懐かれて。

そして自分のことを汚れておらず、美しいといった少女。

この少女との関係を、フィルヴィスは言葉にすることができない。

 

いや、してはいけない。

間違っても、友人や……姉妹のような関係だとは。

 

 

何故なら、レフィーヤは純粋で健気で努力家で。打算もなく、こんな自分を避けずに話しかけてくる優しさをもっていて──

 

 

 

 

 

 

──そして、穢れ切った今の自分とは違う、

かつてのフィルヴィス・シャリア(高潔な少女)なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──地獄を見た。

 

生き恥を晒して未だのうのうと生きている自分。

誰1人救えず、拾ってすらいない変貌したこの命。

あの時(つい)えずに残った、高潔な少女の残骸(レムナント)

諦めは自らを満たし、そして絶望は手を差し伸べてくる。

自らの祈り()は届かず、彼らのところに行くことすら許されない。

耳を塞いでも、すり抜けて届く甘い(いざな)い。

その声に、私は──

 

 

 

 

──地獄を見た。

 

人型をしたものが散乱している。

先程まで共に『冒険』していた『物』。

自分が下した。

自分が『者』から『物』にした。

知っている。

打算はあるにせよ、彼らが死妖精と呼ばれる者とすらパーティを組む優しさを持っていることを。

知っている。

そのうちの1人は、もうすぐ結婚だと喜んでいたことを。

嗚呼。

墜ちる。堕ちていく。

彼の指し示す『楽園(じごく)』へと。

そして、私は──

 

 

 

 

──いずれ辿る、地獄を見た。

 

彼の指し示す『狂乱』。

皆、苦しんでいる。

冒険者は潰え、再び世界に『大穴』が解き放たれる。

皆、嘆いている。

大事な者が、友人が、家族が、仲間が、恋人が。倒れていく。

皆、縋っている。

だが縋るべき次世代の冒険者は、その才能は、すでに消えて存在しない。

皆、悲劇に踊り狂っている。

だが。

──だけど。

その中で、私は嗤っている。まるでそれが、喜劇であるかのように。

彼のためになったからと。

そう。

彼のためにならねばという強迫観念は、いつの間にやら私に溶けて、混ざりきっているのだ。

もう、かつてのフィルヴィス・シャリア(高潔な少女)に戻ることなど──

 

 

 

 

 

 

 

 

──できやしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

時間感覚が麻痺していた。

ずっと映画を見ているからか、頭が痛い。だがそんな頭にすっと、抵抗するものなどないかのように、その男の声が響いてくる。

 

 

『この身は誰かのためにならねばと、強迫観念に突き動かされてきた。──その結果が、これだ。初めから救う術を知らず、救う物を持たず、醜悪な正義の体現者がお前のなれの果てと知れ』

 

『誰もが幸福であって欲しいと言う願いなど、空想のおとぎ話だ。そんな夢でしか生きられないのであれば、抱いたまま溺死しろ』

 

 

そうだ。

もうそんな空想のお伽話は捨て去った。燃え尽きた。焼失した。残骸さえももはや、残ってはいない。

ここにいるのは醜悪な、かつて人間であったモンスターでしかない。

 

ふと、隣に座る少女の顔を見る。

 

だから。

私がそれを望むわけにはいかない。何故なら、その思いを抱いたら最後。思いに挟まれて、理想に押し潰れて、溺死するだけなのだから。

 

だから。

私がレフィーヤを友だと思うなど、それで幸せを感じるなど、許されるはずもない。

 

幸せとは私にとって、最も理解から遠い感情なのだから。そう思うことなど許されないのだから。そうでなくてはならないのだから。

 

 

 

 

 

 

『やつの言い分はほとんどが正しかったけれど、どうも何かを忘れている気がした』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あんたはその……正しかったな』

『……器用ではなかったんだ』

『多くの物を、失ったように見える』

『それは違う。なにも失わないように意地を張ったから、私はここにいる。なにも失ったものはない』

 

男は背を向けたまま語る。少年はその背中に問いを投げかける。

帰ってきたのは、ただの確認。その少年の極まった偽善の果て。

何もなければそうなってしまうだろうその背中。

しかし、男は言葉を続ける。

 

 

──あぁ、でも……確かに一つ。忘れてしまったものがある。

 

 

 

 

 

最初に──その地獄を見た。

 

子供が炎の中、歩いている。

足元に積み重なるは、人影。

気丈な顔で、逃げてと叫ぶ仲間。

姉のように慕っていた同族の魔道士。

兄貴ぶっていた小人族の戦士。

ドワーフにしては友好的だった弓使い。

冴えない叔父さんだが、みんなをよく見てくれていたサブリーダー。

そして、誰よりも高潔で、優しかった団長。

彼らは皆、私を逃すために残った。

だけど、聞いてしまったから。聞こえてしまったから。そのリーダーの紡いだ振動の意味がわかってしまったから。

私は──

 

 

 

『おい、その先は地獄だぞ』

 

 

 

画面の中で少年がかつての少年に声をかけるのと同時、自分もフィルヴィス・シャリア(かつての少女)に声をかける。

団長の震えを聞いてしまって、振り返ろうとするかつてのフィルヴィス・シャリア(高潔な少女)に。

そこで立ち向かってしまっては、仲間の気持ちが無駄になると。そもそも敵うはずもないと。

その先は、絶望しかないと。

 

だが、フィルヴィス・シャリア(高潔な少女)は──かつての自分は。

 

 

 

 

 

──相対した。

敵わぬと知って、無駄死にになると悟って。

仲間の頑張りを無駄にすると理解してなお、躊躇もなく。

その少女は異形に立ち向かい、そして────

 

……。

…………。

 

 

嗚呼。私は何のために。かつての高潔な少女(おまえ)は何のために。あの地獄を、醜悪な体となってまで生き延び、そして見送られたのか。

思わず手を伸ばし足を踏み出して、進もうとしてしまう。

 

 

 

「おい、その先は地獄だぞ」

 

 

 

声が、それを引き止める。それは、目の前の映像の男の声だ。褐色の……。

 

 

違う(・・)。これは自分(・・)だ。

もう1人の仮面の女(自分)(自分)に問うているのだ。

 

──今更止めるのか、と。

──ここで例外を作ってしまうのか、と。

──【27階層の悪夢】で残ったフィルヴィス・シャリアの残骸を、集めて作られた偽物が、そんなことを望めるはずもない、と。

 

 

「私は──」

 

 

 

空白。

止まる思考。言うなれば意識の断絶。だが、そんななかでも聞こえてくる少年の独白は、強い意思に満ちたものだった。

 

 

 

『これがお前の忘れたものだ。

 確かに、始まりは憧れだった。けど、根底にあったものは願いなんだよ。この地獄を覆してほしいという願い。

 誰かの為になりたかったのに―――結局、何もかも取りこぼしてしまった男の果たされなかった願いだ』

 

 

 

それは、地獄を歩み続けた答え。そして、男が忘れてしまった原点。

偽物だらけの中でも、少年の内にあった確かな願い。その願いがあったからこそ憧れ、そしてその夢を追う為に、少年はその理想(じごく)を、その先に待つものを見た上で、それでも歩むことを決めた。

 

 

 

 

 

意識が────流転する。

 

 

 

 

 

 

 

 

どうやらファミリアのテラスにいるようだった。ここ暫くは寄り付かなかったので、ずいぶん久しぶりである気がする。

視界に入る範囲で視線を動かすと、何やら違和感を感じた。いつもと違う。

再び注意深く見回すと、違いに気づく。

 

あの花壇は、彼女が大事に手入れしていたものだ。彼女がいなくなってからは誰も管理するものがいなくなってしまった、あの。

そして、自らも違う。着ている服が、いつもの穢れ隠しの天衣ではない。先程は気付かなかったが、今より少し、視線が低いし手も小さい。子供になってしまったということなのだろうか? 夢を見ているのだろうか?

 

いや、違う。これは記憶だ。かつての記憶。

 

 

 

『お前は生真面目すぎんだよ、フィルヴィス。もっと人生を楽しめよ、お前は早熟してるっつっても、子供なんだからよ』

 

 

 

フィルヴィスの後ろ。テラスに設置されている席から聞こえてきたのは懐かしい声だ。

──本当に懐かしい、あの声。

 

『そうよ。フィルヴィス、息抜きも大事よ』

『こんなむさ苦しいやつと、ディオニュソス様の顔に惹かれてやってきた者しかいねぇファミリアの唯一の良心だからな、フィルヴィスは』

『ちょっと!誰がむさ苦しいよ!』

『あれ?お前はディオニュソス様の顔に惹かれて入団してきたと思ってたんだが?』

『ちょっとねぇ!』

『痴話喧嘩は他所でやってくれ! お前らいつくっつくんだよ!』

 

続く会話に、響く笑い声。

そうだ。かつてのファミリアの仲間はこんな風に互いに冗談を言い合いながらも、結束だけは人一倍強かった。あの2人の痴話喧嘩は日常茶飯事だったし、サブリーダーはいつも飲んだくれていた。

 

そんな小競り合いをいつも団長は笑いながら見ていて。そしてこの時も2人をなだめたあと、フィルヴィスの肩に手を置いて(・・・・・)言った。

 

 

 

『フィルヴィス、お前は幸せになれよ。友達でも作ってさ。俺らみたいに馬鹿やって。そして、たとえどうなろうと幸せになれよ。なんたって、お前の幸せがファミリアみんなの幸せになんだからな』

 

 

 

肩に乗せられた手は、エルフとして払い除けるような、そんなものではなくて。ただ優しい目がフィルヴィスを捉えていた。

 

『分かったか?』

 

そう。この問いかけを分かったつもりになって。

 

『は、はい。分かりました……』

 

 

そうだ。

これが私の忘れたものだ。

 

あの日あの時あの瞬間あの場所で。

異形に立ち向かった私に満ちていたものは──根底にあったものは願いだった。この地獄を覆して、みんなで一緒に帰りたいという願い。自分の幸せが、みんなの幸せになって欲しいという願い。

そう。それこそが。

ファミリアのみんなのためになりたかったのに──結局何もかも取りこぼしてしまった女の果たされなかった願いだ。

 

 

 

この身は変わり果てていても。

穢れ切っていたとしても。

あの日砕けた残骸の寄せ集めで、偽物であったとしても。

あの時、リーダーが言ったことは、間違いなんかではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この夢は、間違いなんかじゃないんだから!』

 

 

少年は未来に打ち勝った。そんな少年を見て、私は──

そんな自分を見てか、仮面の女(自分)は。

 

「──あの方の計画に支障が出るぞ……。その原因として、お前は切り捨てられる。失望される。そうしたら、今度こそ、お前の心は壊れるぞ」

 

「確かにこの想いは矛盾している。真の意味では叶わないかもしれない。こんな体の私では。お前のいうことは正しい。こんな体を受け入れてくれるのはあのお方だけだろうさ」

「なら!」

「だが。言葉を借りるなら、お前の正しさはただ道理として正しいだけのものだ」

「何を……」

 

「──どれだけ間違ったとしても、たとえ矛盾していても、今までの行いからそれは許されないことだと思ったとしても。そうありたいと思うことは、願うことは。それだけは、間違いじゃないんだ」

「お前は残骸! かつてのフィルヴィス・シャリアの偽物だ! そんな奴が新たな拠り所を求める? 笑止千万! そんな奴に未来などない!」

 

激しく迫る自分に私は。再びとある男の言葉を借りる。まるで、それが当然とでも言うかの様に。

 

 

「だが、偽物が本物に敵わないという道理は、ないのだろう?」

 

 

呆けた顔をする自分。それに背を向け、少女は歩き出す。

 

決別することなんてできやしない。

誘惑を跳ね除ける決意などない。

絶望を乗り越える勇気などない。

朽ち果てた運命に戦う意志などない。

 

あるのは、ただのありふれた願いだ。

 

 

ここが一歩。壊れかけの少女が願い、選ぶ最初の一歩だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

映画館の外に出ると、レフィーヤは、凝り固まった肩をほぐす様に数回回して、深呼吸した。この前からずっと言いたかったことを、言うつもりなのだ。

 

「あ、あの!フィルヴィスさん。私達その、一緒に映画館行って、一緒に過ごして……だからその……」

「どうした?」

 

「その、私達、もう友達ですよね!」

 

疑問形ですらない、断定。

本来であれば厚かましいと思われても仕方のないような、その言葉に。フィルヴィス・シャリアは少し眉を上げて。

 

 

 

 

 

 

 

「……そうだな、レフィーヤ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アニメを見たからといって、特に変わったことは何もない。
所詮ただの映像。ただの幻想。
だが、少女の心のうちに遺されるものは確かにあった━━。


後書き。

みんなが望んでいたかもしれないレ/フをそっちのけでシリアス二本立て。難産で文字数多くて遅れて申し訳ない……。
あと多分これからFGOアニメパートについて、半分サザエさん時空を取らせたいただくことになるかと思います。原作に合わせようとすると成長早過ぎなんだよね世界最速兎。

【LAST STARDUST】
UBWの挿入歌。あとは言うまい。聞いてくだされ。











●おまけ

バベル。数々の施設があるこの塔のある階に、最近一際賑わう一画があった。ガチャコーナーと言われるその区画は、連日様々な神々や人々が押し寄せていた。

そんなガチャコーナーが見える位置。自分からはガチャコーナーをよくみれるが、ガチャコーナーからはよく見えない様な位置どり。ガチャコーナーを盤上とするなら、その外と言える場所に他人のガチャを覗きし神がいた。

その金髪の神は、すでに数週間ほど毎日ここに通い詰めていた。自分がガチャをするのでもなく、ガチャコーナーを訪れる者を見ているのだ。

とある者が爆死した。その苦痛に歪みきった顔を見て、その神は小声で叫んだ。


「ガチャを爆死した後の神どもや、子供たちの顔! これだ! これこそ我が愉悦! 我が人生! もはや十数年越しの計画などどうでも良い! もっとその絶望の表情を見せろ!」













祝・ディオニュソス様愉悦部入部!
あ、フィルヴィスさんは主神がこうなってること気づいていません。しばらく気づきません。その間フィルヴィスさんは葛藤し続けると思います。(愉悦部案件)


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エイプリールフールand三章CM「1日でサ終はまじ草生え散らかす」

アミッド・テアサナーレは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の【FGOgo】を除かなければならぬと決意した。

 

アミッドにはアニメというものがわからぬ。

 

アミッドは、【戦場の聖女】である。人を魔法、はたまたポーションを売ることで、人を癒し暮らして来た。それゆえ邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。

 

きょう未明アミッドは本拠地(ホーム)を出発し多少の面倒な区画を越え、街の中心部にやって来た。

 

アミッドには、最近、ダンジョンに潜ることがない。まとまった休暇もない。人を癒すだけで精一杯だ。というのも、ここのところ運び込まれるケガ人の多さは、例年の数倍にも至っていた。

アミッドは、それゆえ、この久しぶりの休日を楽しみなさいという同僚の意見に従い、はるばる市にやって来たのだ。

 

先ず、同僚に指示された品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。アミッド自身、「貴女は本拠地(ホーム)にいると否が応でも気を張っちゃうんだから、どっか行って来なさい」という同僚の言葉に今更ながら納得し、冬のつんと張り詰める朝の清涼な空気を吸って、すがすがしい気持ちを胸に抱いた。

 

アミッドには竹馬の友と言うほどのものでないが、いわゆる腐れ縁という言葉に当たる知人があった。ナァーザである。今は此のオラリオの街で、細々と主神と2人でポーション職人をしている。これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。

 

歩いているうちにアミッドは、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。まだ日が上がりきってはいないため、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、早朝のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。あまり周りを気にしないアミッドも、だんだん不安になって来た。

 

路で逢った若い二人組をつかまえて、何かあったのか、少しまえに此の周りに来たときは、早朝でも皆が売りの準備をして、まちは賑やかであった筈だが、と質問した。二人組は、首を振って答えなかったばかりか、なにやら手元を見ると一目散に駆けて行った。

 

 

しばらく歩いて白髪の少年に逢い、こんどはもっと、語勢を先程よりも強くして質問した。少年は答えなかった。アミッドは両手で少年の肩に手をおき、再び逃げ去れないようにしながら質問を重ねた。少年は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。

 

「FGOGOは、人の心を壊します」

 

 どうやら、少年がいうには、そのFGOgoとやらが原因らしかった。巷で流行っているというFGOとやらと何か関係があるのか、と聞くと少年は肯定した。

 どうやら聞くと、そのFGOgoとやらは少年のファミリアが作ったものらしかった。アミッドが少年に詰め寄ろうとすると、少年は先を制するかの如く、静かに語り始めた。

 

「悪心を抱いている、と思われるかもしれませんが、誰もそんな、悪心を持って作ったわけではありませぬ」

「それは……どういう?」

 

少年がいうには、FGOgoとやらは元々、人々の心の安らぎと、娯楽の提供のために作られた物らしかった。だが、その娯楽を普通に楽しむはずが、神々が騒ぎ立てたことにより、オラリオ中を巻き込む大騒動に発展してしまったのだという。

 

 聞いて、アミッドは静かに激怒した。最初は善意で始まったものが、このように悪意に満ちた使われ方をするなど、到底許せるものではなかった。「呆れた物です。このまま捨て置けません」

 アミッドはある意味、単純な女であった。

 

 その静かに燃えるアミッドを見て、白髪の少年は、

 

「どうやら貴女はFGOgoに染まっていないご様子。この事態の解決に力を貸してはいただけませんか?」

 

対するアミッドの返答は決まりきっていた。

 

 

 

◾️

 

 

 

そうして、アミッドが連れてこられたのは、オンボロな教会であった。そこの一室で、対策会議とやらが行われているという。

 

そこで出会ったのは赤に近い髪の少年と、長い黒髪をツインテールに纏めた少女──おそらく彼らの主神だろう──だった。

 

彼らの状況を聞くと、相当にひどい状況であった。

 

始まりは今日の午前〇時。

FGOgoを今日配信すると決まったのが先週のこと。そこからサービス開始の今日の〇時までに専用の端末をかなりの数売っておいたらしい。だが、広まりすぎたのが仇となったのか、〇時になった瞬間、FGOgoを起動する者が多数いて、1人しかゲットできないシステムだと判明した時、鯖(なんで魚が会議に出てくるのだろうか?)を捕まえるための暴動が発生したらしいのだ。

 

慌てて一旦配信を止めようとしたものの、通信と位置情報を管理する親機が謎の仮面の冒険者AとLを名乗る2人組に奪われ、止められなくなってしまったらしい。

 

今午前5:30時現在、先にカプセルサーヴァントとやらを捕まえるために、妨害行為があちらこちらで多発。死傷者は出ていないものの、むしろ出ていない方がおかしい状態であるらしい。

 

しかも、今起きている騒動は夜中起きていた物好きのみの騒ぎであり、このまま昼になってしまうと、さらに人が増え死人が出るかもしれないという。その前に止めなければならないらしい。

 

 

 

勝利条件は2つ。

 

タイムリミットを過ぎる前に仮面の2人組の持つ親機を壊すこと。

もしくは通信している子機(個人が持つ端末ではなく中継機とやららしい)を全て壊し切ること。

 

 

 

後者の解決方法であると親機の周辺でのみ通信が残ってしまうが、親機は子機との通信が優先されているため、端末との通信機能はそこまで高くはなく、せいぜい50mといったところで、オラリオ中の騒動は一応は止められるということで、それでも一応は良いそうである。

 

そして、白髪の少年はアミッドと会った時、丁度子機を壊して回りつつ、敵の拠点を探し終えて、戻る最中であったという。

 

 

「私が潜入して、親機の魔道具を壊す」

「といっても、どうするんだい?」

「エミヤさん。どうやって……」

「これで気を引く」

「なっ……なんですかこれ……」

「スキルが進化したんだね。要は、立体映像って書いてあったヤツってことなのかい?」

「いや、ホログラムじゃないのだが、結果的にはそう思ってもらって構わない……3DSの立体視に近いのだが、うまく説明できないのでな」

 

 

そうして対策会議が進む中、アミッドは静かに決意を固めた。

仮面の冒険者AとL……首を洗ってまっていなさい!

アミッドは強く拳を握りしめ、敵の拠点へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死闘は混迷を極めた。

既に死人が出ぬよう、人の身に余りあると言われた精神力を多大に使い、疲労は極限に達していた。

膝を何度もつきそうになったが、いまは、自分のからだで、自分のものでは無い。ままならぬ事である。アミッドは、わが身に鞭打ち、再び戦い続けることを決意した。タイムリミットまでには、まだ十分の時が在る。ぶるんと両腕を大きく振って、人の波に逆らい、矢の如く走り出た。

私は、倒れるだろう。倒れる為に走るのだ。まだ見ぬオラリオ住人を救う為に走るのだ。仮面の冒険者の邪智を打ち破る為に走るのだ。

走らなければならぬ。そうして、私は倒れる。

 

連日人を癒してきたアミッドは、つらかった。幾度か、立ちどまりそうになった。えい、えいと大声挙げて自身を叱りながら走った。

少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。私は、信じられている。私の命なぞは、問題ではない。死んでお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。走れ! アミッド!

ああ、陽が昇る。ずんずん昇る。待ってくれ、ティアンケヒト様よ。

 

 

アミッドが心で主神に願ったその時だった。近くのオラリオの外壁から緑色の煙が昇っていく。それは、勝利したときにあげると言っていた狼煙だった。

 

 

そしてその壁から降りてくる戦友たち。アミッド達は自然と一箇所に集まった。

そして、人知れずオラリオの危機を救った勇者たちは互いのボロボロの姿を見て、皆一様に破顔した。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

今日は、いつもの放送日ではないものの、バベルの外壁には光が映し出されていた。

自然と集まる人や神達。様々な会話をしていた。

 

「FGO GOは、ウラノスによってサービス停止にされたらしいぞ」

「まじかよ」

「ウラノスくそだな」

「なんでも騒ぎを起こしすぎたからだとか」

「誰だ、そいつ!」

「ふざけんなよ」

 

 

そして、青色の画面が、動き出す。

 

 

 

 

 

『三章、開幕』

 

映し出される剣を持った2人の顔。

 

『二つの時代を越え、物語は新たなる航海へ』

 

二人は剣を振り回し、その真名を解放する。知った顔の登場に、つい先週別れたばかりの顔に皆湧き立つ。

 

 

「ネロぉおおおおおおぉおおおおおおまおお」

「ここにカリギュラの二世登場」

「「「ねろおおおおおおおおおおおおお」」」

「まるでカリギュラのバーゲンセールだな」

 

あちらこちらで歓声が上がる。

 

「というか青い方の人誰?」

「フェイトgoの顔さんだよ」

「あぁ、アプリのアイコンの…………二つの時代って言ったけど、出番あった?」

「ない」

 

 

 

 

 

 

 

『それは封鎖された有限の海』

 

映し出されるは、蒼き海。映し出されるは、前回登場した気がする紫色の髪を持つ神を肩に乗せる大男。

そしてその大男とマシュの前に、さらに巨大な巌の如き漢が対峙する。

 

 

「誰だよ!」

「「「ステンノまたやりやがったなぁ!!!!」」」

「ふざけるな、ふざけるな、バカやろー!」

 

 

 

 

 

 

 

『立ち塞がる最強の英雄を前に、海賊達は無限の海(ゆめ)を目指し続ける』

 

そうして最後にピンク色髪を持つ海賊女を映し出して、CMは終了した。

 

 

 

「また追いかけられないように遠くから見てたのは正解みたいね、エウ」

「…………」

「なんで目をそらすの?」

 

 

 

 

 

 

 

『Fate/grand order 第三特異点 封鎖終局四海オケアノス まもなく放送開始』

 

 

「三章きたぁーーーっ!これでかつる!」

「やったー!」

「三章楽しみだなぁ!」

「「「「「「「「「「それな!」」」」」」」」」」

 

 

熱気は暫く落ち着くことはなかったという。

 

 

 

 

 

 

●おまけ

 

「なんか三章開始時にバランス調整入るらしいぞ」

「まじか」

「まさか難しくなる方じゃないよな」

 

「また孔明やん……使えないからマナプリにしよう」

「出ただけマシやろ……捨てるならくれよ」

「ほらよ」

 

「FGO……恐ろしいものだな」

「つまるところ、人間の愚かさということさ」

 

「1日で配信終了するなんてなぁ」

「うん、起きているべきだったね」

「あの朝、アイズが部屋で縛りつけられてたそうだけど……」

「えっ?怪我とかあったの?」

「いや、ただ縛りつけられてただけみたい」

「どうせリヴェリア様とかに抜け出そうとしてたところを見つかったんじゃない?」

 

「アスフィー団長、そんな怪我してどうしたんですか?」

「少し色々ありまして」

 

「リヴェリア、なんでそんなボロボロなんだい?」

「アイズが寝ぼけて迷宮に行こうとしたのでな、止めようとしたまでだ」

 

「爆死」

「親の顔よりも見た優雅」

 

 

「あ、そういえばなんだけど。種火周回で金種火出たぜ!」

「コラ画像やめろ」

 




後書き
バビロニアアニメ終わりましたね。多分ダンまち版絶対魔獣戦線(作中作)を別に上げていくかもです。


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