Fate/Revolution (カリアン)
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第一話「キャスターのサーヴァント」
西暦2015年ー日本ー
ある魔術師の男がいた。名を「鎖鐘 昭義」という。魔術の腕は中の下であるが190*90*30の大男であり、彼の素性を知らぬ俗人は「ヤのつく職業の人」と憶測だてるだろう。まあ、魔術師である点で下衆な者という大衆のイメージはさほど変わらないだろうが。しかし彼と天気の話でもした後は皆口をそろえて
「思ったより優しい人だった!!!」
と感想を友人に告げるのであった。
「サーヴァント、キャスターだ。召喚の導きに応じ参上した。よろしくなマスター」
青い髪の青年がにやりと笑ってそういった。俺ならできるっしょと思い敢えて触媒を用意せずに召喚したのだが、キャスターかあ…まあ、バーサーカーになってないだけマシか。手綱も取れないようじゃ聖杯戦争なんてできる気がしないからな。というか何故俺は触媒無しで召喚しようと思ったんだ…
「鎖鐘 昭義。お前のマスターだ。気軽に昭義と呼んでくれ。よろしくな」
スーツに身を包んでいるから、近代の英霊だろう。いや、近代のキャスターってどうなんだ?スーツを着るようになったのっていつぐらいの時代からだったかな…
「いいだろう、昭義。で、セオリー通りなら、キャスターってんのは工房を作るものなんだろうが、あいにく俺の陣地作成スキルはE-だ。まあ、お前さんが望むなら作らんこともないが…」
「おい」
確認してみたが、本当だった。どうやら認識阻害系のスキルや宝具は持っていないらしい。すんなりと読み取れた。前途多難ってレベルじゃないだろこれ。最早6騎でしのぎを削って貰うしかないのか?
「…じゃあ、工房は予め作っておいたここを使うとして、お前は何が出来るんだ?まさか物理アタッカー系キャスターじゃないだろうな」
「有難い、昭義。そうだな、俺は物理系ではないが前線でタイマン張るタイプのキャスターだ」
なんだと!?もうお前キャスターのクラス返還してこいよ…何でキャスターなんだ。
「じゃ、俺は宝具の準備しとくからお前さんもしっかり準備しときな。支度が出来たら娑婆を練り歩くぞ」
「!?、運悪く三騎士に出会ったらどうすんだよ。籠城した方がいいって」
冗談じゃない。街をノー天気に歩くキャスターなんていいカモだ。それこそ気の早い主人を持つ英霊にでも会ってみろ、仲良く聖杯の糧に一番乗りだ。俺の魔術だって攻撃向きじゃない。俺には聖杯で叶えたい夢があるのに…
「あ、そうだ。俺の真名も教えとくぜ」
「無視ですかい」
「まあ、気ぃ落とすなって、いざという時のためにその右手の令呪があるんだろう?しっかり使ってくれりゃあ、まず死ぬこたあねえよ。しっかり守ってやるからよお」
そう言って見せる彼は謎のどや顔を眼面に表していた。
「序盤で令呪切らなきゃいけないのかよ…」
「昭義はエリクサー症候群ってやつだな。そんなこと考えてっとすぐ敗退するぜ。聖杯戦争なんて英霊様の殺し合いなんだから序盤も終盤も修羅場に決まってんだろうがよ」
「はあ、じゃあ準備してくる…」
「チャンと着替えて来いよ昭義ィ!まさかそのカッコでネエチャンたちをナンパできるとは思ってないだろうなあ。しっかりしろよぉ」
「ホントに何しに行くつもりなんだよキャスタア!!」
本当に何をしに行くつもりなんだ…
「英雄色を好むってやつだよ」
先が思いやられる…ていうか真名教えてもらってないし…
CLASS:キャスター
マスター:鎖鐘 昭義
真名:???
性別:男
身長・体重:178*65
属性:混沌・善
筋力C 魔力C 耐久D 幸運A++ 敏捷D 宝具EX
クラス別能力
陣地作成E-:一応持っているがほとんど役に立たない
道具作成A:魔力を帯びた器具を作成出来る。Aランクともなれば割と何でも作れる
保有スキル
直感B:戦闘時における第六感。マスターにとっての最適解が取れるようになる
騎乗EX:騎乗の才能。…は別にないが、キャスターが道具作成によって作った物に限り、乗りこなせる
宝具
??? ランクEX 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:一人
ちょっと端折りすぎたかもしれませんね。
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第二話「接敵」
暗がりの喧騒、酔っ払いの怒号、明るすぎる街灯。夜の繁華街を形容させる言葉とはこんなものだろうか。しかし、今宵は違う酔いつぶれた酒飲みはおらず、客引き嬢も姿を見せない。その空気は一種の不気味さを生んでいた。
「誰もいないじゃねえか!!」
「はっはっは、落ち着けよ昭義。その蛍光ピンクの蝶ネクタイ、似合ってるぜえ」
何故、男二人でこんなところを散歩せねばならないのか。自分の状況を振り返り、そのむさ苦しさで絶叫しそうになった。いや、もうしてた。
「…まあ、綺麗なネエチャンがいねえのは残念だが気ぃぬくなよ。大体誰もいないのは魔術的な要因か、お前さんの顔が怖くて逃げたかの二択だ」
「十中八九前者だな。そうに違いない。そうであってくれ」
その時だった
背中に悪寒が走る。なるほど、これが殺意というものか。やっと聖杯戦争っぽいことが始まったんだと、俺の感想は妙に落ち着いていた。迎え撃つ準備はとうに出来ている。殺意には殺意で。
「フハハハハハ!我こそはライダーのサーヴァント!互い望みを叶える為に血に濡れた夜を作ろうではないか!!」
…笑い声は思っていたよりも高く、姿は少女であった。17、18くらいだろうか。電灯の光で輝く紫色の頭髪は人外っぽさを演出していた。が、はっきり言って拍子抜けだ。
「ライダーのサーヴァントか。…悪かねえな。よし、俺はキャスター、魔術師のクラスだからって舐めてかかると痛い目見るぜ。嬢ちゃん」
「安心しろキャスター。余はクラスや容姿で相手の能力を見限るような真似はしない。そちらのマスターと違ってな」
…ばれてる。
「昭義、お前ってやつは・・・見直したぜ!やっぱあの嬢ちゃん可愛いよなあ!見る目あんじゃねえか」
一緒にすんな!シリアスをぶち壊すな!俺の所為なんだけどね!
「というかなんだその恰好は。お前何しに来たんだよ…」
ごめんねライダーちゃん!ホント、何でこんな格好してるんだろう!?
「おい、そろそろいいかいライダー?今宵は短い。肩慣らしなら早えうちにしとこうぜ」
「ふむ、、待たせたなら悪かったな。キャスター。マスターからの戦闘許可はとってある。では行くぞ」
そして、火花が散った
圧巻の一声だった。まずライダーが馬を召喚し、騎乗した。芦毛の美しい馬だ。そしてキャスターに突っ込む。これをキャスター懐から出したバッジを投げつけ、相殺する。光が馬の目を貫き、その勢いを無くす。何度でも相殺する。
「くッ、余の愛馬の突進を容易く受け止め続けるか。キャスター」
「ああ、ある程度の知名度補正を受けてるんでね!と、いう訳で…受け止めなあ!『ねらった金庫』!!」
突如金庫が出現し、キャスターがダイヤルを捻る。カチッと音がしたと同時に犬が飛び出す。
「ワン!」
「脆い!『皇帝特権』!!」
ライダーが馬上槍で犬を打ち砕く。無残!犬は爆散する。ネジが散り、魔力の粒子となって消滅する。
「まったく、ひでえことするなあ嬢ちゃん」
「犬には良くない思い出があるからな」
「まあいい、嬢ちゃんもある程度有名な英雄だったみてえだな。皇帝とか言ってたし」
「そういうお前は分かり辛いな。なんだ金庫って。泥棒か?」
「さて、どうだかね!」
キャスター、ライダーに急接近する。そして、拳を振りかざす。が、突然の不意打ちにもしっかり対応するライダー。その拳を蹴り上げる。
「今だ!『地球から来た男』!!」
キャスターが白く輝く光の魔弾を繰り出す。ライダー、これもキャスターの魔弾を弾く!が、無意味!ライダーはその場にドサリと倒れた。随分あっさりと。あれ、キャスタ―強くないか?
「さて、今宵は俺の勝ちみてえだな。よーし、昭義よ今からイケナイことするから先に帰っててくれ。大丈夫、もうすぐ夜明けだ。新手は来ねえよ・・・たぶん」
「なんだよイケナイことって!?通報するぞ、キャスター」
「大切なことだ。分かってくれ」
彼の今までにない紳士的な目に俺は諭されてしまった。許せ、ライダーお前の貞操は早くも無くなりそうだ。
CLASS:ライダー
マスター:???
真名:???
性別:女性
身長・体重:167*54
属性:混沌・中庸
筋力A 魔力B 耐久C 幸運B 敏捷A+ 宝具B
クラス別能力
騎乗B:騎乗の才能。どんなに暴れ馬でも獣なら乗りこなせる。幻想種は該当しない。
対魔力C:二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
保有スキル
戦闘続行B:往生際が悪い
皇帝特権A+:なんでもありのアレ
カリスマA:軍団を指揮する才能。最早死ぬことさえ惜しまずに突撃させられる。一国を運営することすら容易。
宝具
??? ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:2~50 最大捕捉:100人
??? ランク:A 種別:対国宝具 レンジ:100 最大捕捉:700人
??? ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
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第三話「輝き」
走る。別に何かから逃げているわけではないが、走る。やっぱり昇る朝日を背に走る様子って絵になるよね!とか考えながら帰路についている。ところで、キャスターはライダーをどうするつもりなんだろう。やっぱり、えっちな事とかするんだろうか…
『くっ、殺せ!余にこんな辱めをするとは!』
手に拘束具をほどこされ、震えるライダー。脱出を試みるも力が入らない。
『よいではないか~。よいではないか~。ぐえっへっへ』
そこに容赦なく下衆な笑みを浮かべたキャスターが近寄っていく。
『ヤメロォ!そんなところに手を・・・あっ///』
嫌がるものの、めくるめくる快感にまんざらでもなく頬を紅潮させるライダー。
ふう。やっぱりライダーちゃんは最高だぜ!
「あの~、鎖鐘 昭義さんですよね?」
「!?」
漆黒のスーツに身を包んだキャスターとはまた違うタイプの男性が立っていた。彼の目は宇宙のように黒く高貴な雰囲気が漂っていた。そう、形容するならファラオのよう・・・え、もしかしてサーヴァント?やばくね?
「ああ、どうか身構えないで。あなたの考えてることは分かってますので。はい、私はサーヴァント、バーサーカー。正気は既に捨てた身ですが、意味なき殺戮を行う愚帝ではありませんので」
どうする、この男を信用していいものか…令呪を使うべきだろうか。でも、キャスターはお楽しみ中なんだよなぁ(多分)。性欲のはけ口を探す男子中学生の部屋のドアをノックすることは出来ないな…うん。でも、この人怖い。
「信用されないのであれば構いませんが、我々は同盟を結びに来たのです」
いやしかし、ぐへへな事をしている(であろう)キャスターの邪魔をしていいものか。否、信頼関係に関わる。しかし、この男の言う同盟を断れば、恐らく命はない。さて、どう出るべきか…
「ふむ、それではこのままでは埒が明かないので、マスター同士とさせてもらいましょう。ユカリ!出てきていいですよ!」
その言葉の後に、少女がバーサーカーの後ろから顔をのぞかせる。可愛い顔をした俺の胸にすら頭が届かないほど小柄な少女。運命的な愛らしさだ。
「えっと、こ、こんにちは…」
whooooooo!!ドストラーイク!!パツキン!碧眼!ロリ!
「よし、同盟を結びましょう(キリッ」
「まだ概要を言ってないんですけどね…」
苦笑するバーサーカーも神々しくなってる。あなたが神だったのか!
「それもそうだな。で、どんな内容なんだ?」
「共闘です。私とキャスターが共に戦い、あなたがユカリを守る。私一人では守りながら戦うことは難しいのです。」
whoooooo!!これはもう俺がこの聖杯戦争の勝者ってことか!
「えっと、よろしくお願いします。」
「お任せを。レディー。この不詳鎖鐘、必ずやあなたを守り抜きましょう(キリキリッ」
「はい!!」
朝日が昇り続ける中、一つの同盟が立ち上がったのだった。それは夜明けであり、希望の輝きを含蓄しているのは言うまでもない。はいそこ、ちょろすぎとか言わない。
CLASS:バーサーカー
マスター:不知火 由香利
真名:???
性別:男
身長・体重:195*98
属性:混沌・悪
筋力EX 魔力EX 耐久EX 幸運EX 敏捷EX 宝具EX
クラス別能力
狂化EX:測定不能。やべー奴
保有スキル
無辜の怪物EX:測定不能。やべー奴
宝具
??? ランク:EX 種別:対史宝具 レンジ:― 最大捕捉:100000人
はいそこ、バーサーカーのステータスが安直とか言わない。
あ、感想とかよろしくお願いします!
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第四話「性別とは」
昇りきった朝日は徐々に下降しその憂鬱にも感じられる熱を大地から奪おうとしている。場所は愛しの我が家(工房)、ある程度睡眠をとったにしては頭がスッキリしない。軋む床板を気にしながら居間に向かうと、いつもでは考えつかないほどの客人であふれていた。見慣れないローブの男がいたが、彼は恐らくライダーのマスターだろう。キャスターに見つかって、お持ち帰りされてしまったに違いない。…可哀そうに
「お、昭義が起きたな。じゃあ、情報交換しとこうぜ。こいつがライダーのマスターでガスト・サバラ・ハンドレェっいうらしい。」
キャスターはローブの男を指さした。サバラと呼ばれた男は肯定するように首を縦に振った。
「へえ、で、キャスター。ライダーのマスターをどうするつもりだ?」
聖杯戦争では大抵捕らえられたマスターは令呪を奪われて殺される。それは、聖杯戦争という戦いの中で英霊の手綱を握り続けることが、どれだけ重要な事なのかをよく示すだろう。利用しつくして殺す。俺はあんまり好きじゃないんだけどなあ…
「ああ、殺しはしねえよ。マスターをどうこうしたところでなあ、俺の戦い方には関係無いんだよ」
なるほど、説得力がない。マスターに何もするつもりがないならわざわざここに連れてくる必要がない。だが、キャスターにはキャスターの戦い方があるのだろう。ライダーを退け、捕らえたサーヴァントというだけで俺のキャスターへの信用は、鰻昇りになっていた。
ここで、由香利が生真面目にも手を挙げて発言する。
「あの、それではなぜライダーを縛っているのですか?痛ましく感じます…」
肝心のライダーはというと縛られた状態で不服そうにキャスターのことを睨んでいた。衣服が乱れてる。由香利の言う痛ましいとは、このことだろうか。
「ああ、それはこの嬢ちゃんの真名が解ったからだ。まあ、俺が今はしっかり無力化してるから安心しな」
つまりその縄はサーヴァントを縛る縄ということか。便利だな。
「いや、違うと思いますよ。アキヨシ。あの縄に魔力は感じません。キャスターの宝具かスキルで封印しているのでしょう」
なるほど、バーサーカーさん。ナチュラルに心を読まんでください。…ってあれ?ライダーの真名解ったの?
「で、ライダーの真名は?」
「ああ、今言うぜ」
サバラはキャスターを睨んだが、無力にもキャスターに一瞥されて終わった。
「『ナポレオン』、『ナポレオン・ボナパルト』。知ってるだろう?昭義」
ああ、皇帝ナポレオン…いや、ナポレオンって男だろ。それくらい幼稚園児でも知ってるぞ。
「この際性別はどうでもいいとして、だからあんなにステータスが高かったわけか」
「いや、性別が変更されているのは、この嬢ちゃんの宝具の影響だ。ほら、アレだ『ナポレオン・コンプレックス』」
ええ…。割とどうでもいいことが宝具として昇華されてんのか…
「嬢ちゃんの宝具『ナポレオン・コンプレックス』は召喚された7騎のサーヴァントの平均身長が嬢ちゃんの身長より高ければ、嬢ちゃんの性別を自動的に女性にする宝具だ。残るサーヴァントも身長が高い可能性が高いっつうわけだ」
「皆まで言うな。殺すぞ」
ライダーちゃん怒る。しかし、力が入らないのか、立ち上がることはない。ステータスが下がってるのだ。バーサーカーの言う通り、キャスターのスキルか宝具の影響だろう。そういえば、キャスターの真名をまだ教わってないような…。
「そういえばキャスター、お前の真名って」
「で、だ。昭義。俺はここでライダーを返して恩を売っておきたいんだが」
まあ、あせらなくてもそのうち解るか…。
「まあ、恩を売るのには賛成だ。弱体化させられるなら今すぐ殺す必要もないしな」
「私達からも異存はありません。もとよりあなた方が捕らえたサーヴァント、どうしようとあなた方に口出しする権利は私達にはありませんので」
バーサーカーもバーサーカーっぽくないなあ。キャスターより紳士だし。
そういうことで、ライダーとそのマスターは解放された。話し込んでいたせいですっかり日は傾き、次の夜が顔を見せようとしていた。次の戦にむけて、また準備をするのであった。次の夜は長い、そんな気がする。
「そういや今日は新月か」
魔術師らしくもなく、ニュースで得た情報を口にするのだった。
CLASS:ライダー
マスター:ガスト・サバラ・ハンドレェ
真名:ナポレオン・ボナパルト
性別:女性
身長・体重:167*54
属性:混沌・中庸
筋力C--(A) 魔力D(B) 耐久E+(C) 幸運B(B) 敏捷C-(A+)宝具B(B)
クラス別能力
騎乗D(B):騎乗の才能。大幅に弱体化している。
対魔力E-(C):魔力への防御。ダメージを少し減らす
保有スキル
戦闘続行D(B):往生際が悪いのは変わらない
皇帝特権(A+):消滅した
カリスマE(A):仮スマ
宝具
ナポレオン・コンプレックス
ランクC 種別:対人宝具(自身) レンジ:0 最大捕捉:1人
召喚された7騎のサーヴァントの平均身長がナポレオンの身長より高ければ、ナポレオンの性別を自動的に女性にする。
ランクB 種別:大軍宝具 レンジ:2~50 最大捕捉:100人
???
ランクA 種別:大国宝具 レンジ:100 最大捕捉:700人
???
ライダーのステータスにおける()が元の数値です。大幅に弱体化しました。
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第五話「大空の王」
電光の如き弓矢を躱す。簡単なことだ。次の矢も、またその次の矢も。単調な戦闘はやはりつまらない。そう考えてしまうのは、相対する英雄に対し失礼な事なのだろう。しかし、魔王と戦った身にとって、つまらないのは事実だ。距離を詰める。相手方のマスターが何か魔術を行使したようだ。が、関係ない。対魔力で弾く。跳躍、相手の顔が見える。中年の男性。髭が立派だ。次の矢を番える。
「ぬかったな、アーチャー!!」
「ぬう、セイバーめ!」
剣振るう腕に迷いなし。されど我が刃はアーチャーには届かなかった。代わりに飛んできた矢が顔を掠める。10字の方向。振り向いた時にはアーチャーの姿はなかった。
「弓兵め…逃げたか…」
辺りを見回して、しまったな、と思う。そういえばここは街中であった。コンクリートは抉れ、街路樹は凹んでいる。隠蔽する係の者がいたはずだが、これは大変なことをしてしまった、と申し訳なく思う。
「おーい、セイバー!大丈夫かー?」
「ああ、契約者よ、我が剣に偽りなし。敗北はするが、貴公を失望をはさせまい」
「つまり負けたのか…セイバー」
「負けたのではない。逃したのだ。契約者よ。訂正を希望する」
「あー、ハイハイ。めんどくせえなあ。訂正するよ」
心底面倒くさいと思ってるであろうこの青年。名をジョージ・クルルァという。使う魔術は降霊術だと言っていたな。数多いであろうセイバーの中から我を引き当てたのは実に幸運と言える。我強いし。
「これが…聖杯戦争なんだな。改めてあんたを敬意を持つべき英雄の一人だと認識するよ、セイバー」
当然だ。ちなみに先ほどからセイバー、セイバーと連呼しているのは、我を引き当てたことがよっぽど嬉しいのだろう、と予測する。
「まあ、我にとって他の英雄と鎬を削るのも朝飯前だということだ」
不意に、気配を察知した。
ジョージを抱えて、跳躍。我々がいた空間に亀裂が走ったように見えた。
「へえ、気づくのか。なら、こいつはどうだい?」
背後か…!またも跳躍。空間が燃え上がる。
「アサシンだな。不意打ちとは卑怯也」
「アサシンが不意打ちしないでどうしろというんだ。そんな奴、アサシンとは言わねー…ヨッ…とぉ」
姿が見えぬ。これが気配遮断というものか。まあ、攻撃時にわずかだが殺気を感じるので躱せないこともない。
「フッ、ハアァ!!とうッ!!」
気配を感じた刹那、蹴りを叩き込んでやった。渾身の蹴りだ。手ごたえはある。…着地。
「手ごたえはあった。まず無事ではあるまい。我は寛大だ。今出てくれば命を奪うだけにしてやろう!」
叫ぶが返事はない。また、逃げられたのだろう。逃げられたということは我の蹴りが効いてないということと同意義。割と傷ついた。
「あの、セイバー…。そろそろ降ろして…」
そういえばジョージを抱えたまま飛んでいたのだった。ただの魔術師では跳躍の連続に耐えられず、酔ってしまったのだろう。次からは気をつけねば。ジョージが顔を真っ赤にして苦し気な表情をしているではないか!
「悪かったな。契約者よ。次からは不意に膝を抱え横倒しにして胴を右の腕で支えたりはせぬ。どうやら酔ったみたいだな。許せ」
「まあ、不足の事態なら仕方ねえよお…オエッ」
ジョージの背中をさすりながら、我もまた、聖杯戦争という強者達と戦い続けられるシステムに感動していた。まあ、我が最強なのは間違いないのだが…。だって、この短期間でサーヴァント2騎と戦い、退け、我は無傷!負ける気がしないとはこのことをさすのだろう。
あの憎き太陽が昇るのすら、早すぎると感じる程に感極まってた。
「契約者よ。そろそろ陣地に戻ろうではないか。そこで横たわっててもなにもよくならんぞ」
そう言ってジョージを担ぐ。彼は軽い。あまりにも軽すぎる。もっとよく食べるべきだ…などと考えながら、さっきまで殺し合いをしていた地をあとにしたのだった。
「…ったく。無茶苦茶なセイバーだな。まったく」
木陰にもたれかかった暗殺者にセイバーは気付かなかった。
CLASS:セイバー
マスター:ジョージ・クルルァ
真名:???
性別:男性
身長・体重:185*105
属性:秩序・善
筋力A+ 魔力B 耐久B- 幸運A- 敏捷A++ 宝具A+++
クラス別能力
対魔力A;現代の魔術師では、彼に傷をつけることはできない
騎乗C:騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。(一部を除く)
保有スキル
神性B:かなり高い神性を有している。実際強い。
仕切り直しC:戦闘からの離脱能力。
カリスマC:志を共にしたものからは、激しく慕われるようになる。
大空の王A+:重力の影響を受けずに行動できる。鳥やその他の飛行生命体を使い魔として扱える。
決意の守護者EX:守るべき者と判断した対象を死んでも守り抜く。このスキルが発動している限り、対象には傷一つつかない。使用対象選択は一度きりなので、ご利用は計画的に
宝具
??? ランクA+++ 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
??? ランクA+ 種別:対神宝具 レンジ:50 最大捕捉:1柱
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第六話「街灯と夢と愛」
いかに太陽のない時間帯であっても、人は月明かりで生活を営むことが出来た。手元をよく光らせる、小さな太陽がまだ発明されていなかったころ、新月の日とはまた恐ろしくも早く床に就くべき暗がりの日であった。古き昔の英霊にとって、今宵、月明かりのない日に当たり前のように街灯が道路を照らすのはどのような気分なのだろうか。
「なあ、キャスターは聖杯に何を願うんだ?」
聖杯戦争において当たり前の理由。他の英傑を退けてでも叶えたい願いがこのサーヴァントにもあるはずだ。正義の英霊であれば、平和を願うだろうか。王たる英霊なら永遠を願うだろうか。世界に未練のある英霊は破滅を願うだろうか…
「そうだな…。特にないと言えばないんだろうが、まあ強いて言うなら人が夢を見続けられる世界を望むだろうな…」
「へえ、女関係だと思ってたが、割とまともな願いなんだな」
「英霊だからな。未来に希望を持ってるんだぜ。これでも」
未来…。彼のことを近代的な英霊だと思ってたが割と古い英霊なのかもしれない。彼が生前見た夢とはどんなものだったのだろう。
「きっと、素敵な世界になるさ。…多分」
「はっはっは。まあ、世界が絶望色だけしかなくなるなんてそうそうねえよ。この星が戦火に巻かれて黒い煙が空を覆ったとしても、その上にはちゃんと空が、美しい空があるらな。上だけ見てりゃあ、絶対空が見える。……あっ、太陽が滅んだ時とかは別だぞ」
俺はこの英雄を召喚した。未来に光を求める過去の残像を。聞くに触媒無しの召喚では、自分と精神性の似通った英霊が召喚されるらしい。俺にも、誰かに語れる夢があるのだろうか…。魔術師として、自分の出自を憎んでしかいなかった男がいつか、自分の、自分だけの夢を誰かに語れるようになるのだろうか。…それはきっと素晴らしい事なのだろう。
「おっと、昭義。注意しな。お客さんが来なすったぜ」
ランサーなのだろうか。槍と盾を持った闇に蕩けるような黒い肌の青年が、こちらを見据えて近寄ってくる。
「サーヴァント、キャスターとそのマスターだな。では構えろ。殺してやろう。我が真名はシャカ。ズールー族の長だ。誇り高き戦士だ」
うわあ、真名言っちゃったよこの人。まあ、シャカって、ゴーダマシッダぐらいしか知らないけども。知らないけども!ていうかどうしよう今バーサーカ達と待ち合わせしていたからキャスターしかいないし…三騎士にも勝てる…よな。
「落ち着けよ。昭義。大丈夫、俺がついてる。ライダーの時みたいにうまくはいかないかもしれんが、まあ大丈夫さ」
「笑止。キャスター如きに我に勝てる所以はない。では、参る!!」
ランサーが突っ込んでくる。まるで雄牛のような迫力だ。まともに食らえばただでは済まないだろう。
「『もてなし』!!」
キャスターがバッジを取り出し、投げる。極度の魔力を帯びたソレは満月色の光を発し、ランサーの洗練された突きをいとも容易く相殺した。
「ふん。魔術師のクラスが我が突きを受ける術を持ち合わせているとはな」
「生憎、まだくたばる訳にはいかないんでね」
刹那、ランサーから殺気が零れる。憎悪の類の粘っこく、中々堕ちない殺気だ。熱き情熱が彼の槍を朱く染め上げた。不気味なほどの殺気が空気を沸騰させる。
「では、疾く死ね。宝具を開帳してやろう『
――我が生涯に正しき愛などない。母を敬愛していたが彼女の愛は贖罪だったのだろう。妻を溺愛していたが彼女の愛は恐怖からくるものだったのだろう。憎め、恐れろ。蹂躙だ。殺せ。殺せ…これは
「オオオオオォ!!侵…略ゥ!虐殺!この世界に
世界が、変わった。朱色に染められていく。
CLASS:ランサー
マスター:???
真名:シャカ・ズールー
性別:男性
身長・体重:185*89
属性:秩序・混沌
筋力A 魔力D 耐久C 幸運E 敏捷EX 宝具B+
クラス別能力
対魔力D: 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
保有スキル
戦闘続行D:往生際が悪い。
仕切り直しB:戦線から離脱し、軍を立て直すことに特化している。
狂化B:彼の半生は狂気に満ちていた。自身の真名を勝手に明かしたりする。
軍略C:軍を率いる才能
カリスマ(偽)A:彼の部下は彼と志を共にしなければならない。
宝具
???
???
???
第六話でした。これでサーヴァントは全員登場したかな。真名当て、楽しんでください。アーチャーとアサシンは情報が少ないからこれで解ったらすごいと思います(こなみ)
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第7話「狂王」
そこはカラッとした暑さに噎せ返る様な腐臭、錆びた鉄に捨て置かれた死体の山であった。そして植民地時代のアフリカを想起させる風景であり、自分とキャスターの服装だけが異端で、先ほどまでの暗い夜道が懐かしいほどに太陽が燦燦と広野を照らしていた。
――固有結界。ある一種の伝説であり、歴史に名を刻む大英雄だけが持ち得る、己の心象風景の具現化。つまるところ、ランサー、シャカ・ズールーが大英雄であり、それほどに有名であることを意味している。
「ふむ、固有結界か。珍しいじゃねえか。まあ、おめえさんがシャカ・ズールーってんなら手の打ちようは如何様にもあるんだけどな」
「…シャカ・ズールーって何をした英雄なんだ?」
「そうだな…。新しい戦闘スタイルを持ち出し、英軍と戦った革新的なアフリカ救国の英雄…って言えば聞こえはいいが、そいつの伝説はほとんどが恨みつらみに塗れている」
「へえ、じゃあ、ランサーは軍の大将ってところか」
「いや、間違ってはいないが、奴はなあ、狂王だよ。ズールーの王だ」
王か…。狂った王の乱政を受けたことのない自分にとっては、狂王といえば、愚王のイメージがある。民から思い税収を毟り取り、自分は毎夜浪費に尽くす、誰の目から見ても悪。そんな王だ。だが、彼は違う。この世界の主たる彼は、決してそんな王ではない。そんな愚の骨頂たる者が、英霊足りえるはずもなく、固有結界を持っている筈もない。
「俺は、俺は、未来のため、誇りのために戦い続けてきただけなのに…何故、殺されねばならなかったのか…。何故、母上も妻も誰も彼も、俺を愛さないのだ…」
屍の丘に佇む彼は絶望と狂気に塗り替えられた顔で、キャスターをただ一点、見つめていた。
「愛が、欲しくて戦ったのか?手前は…」
「当たり前だ。俺は…忌子だった。それでも努力して、戦ってきて、認められて、王になったのだ。それなのに、それなのに…どうして誰も俺を愛してくれないんだっ!?」
国を救った王の問いは激しく、しかし、人が持って当たり前の疑問だった。
「母上でさえ、俺のことを愛しはしなかった。父上は俺を蔑視した。許せぬ。俺が、間違っていたとでもいうのか。俺は、生まれてきてはならなかったのか?」
その声は時に激しく、抒情的な熱を孕んでいた。狂人と呼ぶには、あまりに同情に足る…そんな英雄とは思えない、自らと同じ人間だとさえ、錯覚した。
「だからッ!俺は聖杯に問う!俺は何がいけなかったのかをッ!どうすれば、愛を手に入れられるのかをッ!!負けてはならない。俺が王として生きた意味を得る為にッ!!!」
「…そうか。手前は…寂しかったのか?それでも、槍を、振るうのか?」
「当たり前だ!だからまずは貴様が俺の礎になれ。キャスタアアッ!『雄牛のォ腰ィ』」
一瞬で、キャスターの前に下級の霊が出現した。
「っつ!?」
それはキャスターの懐からバッジを奪うと、ランサーに手渡した。カチャリと、手に握る音が響く。
「手前ェ…」
「これで、防ぐことはできまい。では、これで死んでくれるな?」
大量の霊がランサーの周りに出現する。無数の霊は皆、槍と盾を持ち、戦闘態勢に入っている。
「『雄牛の角』の神髄を見せてやろう。突撃!!」
全ての霊が一斉にキャスターに突っ込んでくる。それは、防ぐ手立てのない、所謂詰みに等しい状況だと言えよう。七日かけても数えきれないほどの槍が目前まで、迫っている。
「…手前は、その願いで満足なのか…?」
手が、止まる。
「どういう…意味だ」
「手前は、死んだ後に人生に意味を求めてるって、ことだよッ!手前の考えは実に正しい。俺が同じ境遇だったなら、絶望のどん底で、手前みたいに這い上がろうともしないだろうよ!だがなあ、だがなあ、英霊なら願うとこは其処じゃねえ!意味なんて手前で考えやがれ!暗い顔して人を殺そうとするんじゃねえ!」
「っ!貴様だから言えるのだ!貴様は知らないだろうが、我々の部族は元々戦いを好む質じゃない!先進国の鬘付きどもが、植民地にしようと、我々を隷属させようとしたから、武器をとったのだ。戦い方を変えたのだ。裏切りなど起きぬよう、反逆の芽を潰し続けたのだ!規則を強くし、最善を尽くしたのだ。だが、民は俺を恨んでいた。仕方なかったのだ。欧州の禿どもに隷従していろとでも言うのかっ?」
彼の問いは彼の苦悩は、きっと正しい。暗殺されたのは気の毒なことだ。
「そういうことじゃねえ!やっぱり手前は気付いてさえいねえ!ンな事、昭義でも分かることだぞ!」
え?何が?
「…いや、もういい。埒が明かん。貴様を殺して俺の正しさを証明する!」
再び、ランサーの霊達が、突撃準備に入る。
――キャスターのマスターにでも分かること、だと?……いや、俺は王だ。惑わされてはならない。どうせ、奴の言葉は意味のない時間稼ぎに他ならない。魔術師とは、そういう生き物なのだと知っている。俺の願い、愛を求めることは人間として、否定される筈のない真っ当な願いなのだから。
「キャスタアアア!!!」
殺めることは簡単なこと。ただ霊に命令をすればいい。王自ら彼奴の臓腑を貫くでもいい。負けるはずがない。意味を求めて何が悪い!!
今回は鯖紹介はありません。アーチャーとアサシンは今後の彼らの話で紹介する予定です。あ、感想とかお待ちしてまーす。
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第8話「黄金の夜」
「キャスター、キャスタアアア!!!」
「手前に見えて無いモン、ソレは…」
太陽の輝く荒野の下、2騎の英雄の押し問答。願う事とは、生きる意味とは、果たしてなにを求めるべきなのだろうか。
聖杯に願うこと
夢
未来
希望
雪辱
矜持
何を願うかは、自分の自由なのだろう。だから、決して、後悔のないように…。
「『******』!!」
未来永劫続くかと思われた空間は一瞬で、時が止まり、動き出すことなく破壊された。
荒野は道路に、太陽は街灯に。光の出力は落ち、暗さに目が耐えられなかった。
「!?」
「キャスター、アキヨシ!助けに来ましたよ!」
ここに集うは3騎の英雄。
ランサー、シャカ・ズールー
キャスター
バーサーカー
「おい、ランサー!撤退だ!」
「ぐう、承知した」
ランサーとそのマスターだろうか。彼らは闇に消えてゆく。俺は追うつもりはなかったし、キャスターも同じだろう。
バーサーカー、彼は紳士であるが、狂戦士のクラスを冠するもの。…ランサーよりも狂っているとは思えない。
「バーサーカー、助けてくれて有難う」
「いえいえ、戦うのは私の役目ですので、お気になさらず」
彼の真名は予想だにしない。サーヴァントとしては理想的な立ち回りを、彼はしている。宝具の情報を与えないスキルか宝具を所持しているのであろう。先ほどの彼の使用した宝具名は、聞き覚えのない言葉に変換されていた。まあ、単純に知らない言語圏出身のサーヴァントという可能性もあるのだが。
「ふうん、バーサーカー。助けに来るにしては随分遅れてきたじゃねえか。」
「おい、キャスター。失礼だろ」
「いえ、いえいえ、遅れてきたのは事実ですので。ええ」
不意に、彼の顔に目をやる。先ほどまでついていなかった月明かりもなしに光り輝く王冠。虹色のマントを身に着けていた。やはり、ファラオのような優雅さを秘めている。
「こりゃまあ、随分と重装備なことで。ランサーは撤退したんだ。何のための装備だい?」
彼の顔が裂けた笑みを映し出す。
「ふふふ、もう…分かるでしょう?」
「ぐっ!?」
途端、時空が裂けた様な痛みが腕から腰に掛けてまで現れる。
「昭義ッ!!」
体が萎える。力が入らない。目が霞んで…
ああ、怖い怖い怖い怖い怖い辛い辛い辛い寒い寒い吐きそうだ…
嗚呼、キャスター…助けて…くれ…
あれ、そういえば、由香利ちゃんは…?
そこで意識はフェードアウトした。
******
黄金の蜂蜜酒
時空を超えるアーティファクト
萎縮
相手の体を萎えさせる強力な魔術の一種
******
「っ、ガハッ!何だったんだ今の…」
目が、覚めた。不愉快な文字列が脳裏をよぎったかと思うと、いきなり覚醒世界に引きずりだされた。
「おお、起きたな。キャスターのマスターよ」
そこには中年の髭が立派な男性と、20代程の女性がいた。…サーヴァントだ。
「キャスターッ!」
呼んでみたが、応える声はしない。
「落ち着け、まだ害は与えん。それとキャスターならワシらは知らんぞ」
どうやら、本当に害を与える気はないらしい。目の前にマスターがいて、殺さないというのはそういうことだろう。
「ワシらがしたいのは情報交換だ。お前さんが持っているサーヴァントの情報をできるだけ寄越してくれ」
サーヴァントの情報…
ライダー、ランサー、バーサーカー…、キャスター…
思えば真名を知っているサーヴァントは内2騎。割と出来るマスターなのでは?
「分かった。交換しよう」
――――
サーヴァント、セイバー。大空の王…。って、アーチャーの交戦したサーヴァントってセイバーとバーサーカーだけかい。
「ほーん、ナポレオンにシャカねえ…。お前さん、自分のサーヴァントの真名教わってないって…いや、割れる口は少ない方がいいってことかな」
「いや、嘘って可能性も考えましょうよ。アーチャー…」
ここはアーチャーとそのマスターの工房。というより貸し宿。どうやら、魔術協会出身のマスターらしい。
「まあ、取り敢えず、お前さんは捕虜だ。逃げようなんて…考えんなよ?」
陽気にアーチャーは笑う。釣られて俺も笑う。わっはっは…ハァ…
CLASS:アーチャ―
マスター:サビル・ヴィザビネア
真名:???
性別:男性
身長・体重:174*70
属性:秩序・中庸
筋力C 魔力C 耐久B 幸運A 敏捷D 宝具A
クラス別能力
対魔力C:二小節以下の魔術をキャンセルする
単独行動A:マスター不在でも3日間現界出来る
騎乗D;騎乗の才能
保有スキル
神性E:神に近しい者である証明。ランクダウンしている。
大陸の覇者EX:大陸にかけて領土を広げた者。軍略とカリスマを兼ね備えている。
宝具
??? ランクA 種別:対国宝具 レンジ:600 最大捕捉:30人
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第9話「ギンと毒」
…ドサリと肉の地に落ちる音が響いた。己がマスターの頭が飛んだのを把握する。対面しているのはバーサーカー。狂戦士のクラス。
「チッ。嫌に紳士的だと思っていたが所詮は狂戦士か。作戦だったのかは知らねえが、まさかいきなり裏切ってくるなんてなぁ」
「聖杯戦争で、他のサーヴァントと手を結ぶのは阿呆のすることですよ。…貴方のマスターはとてもとても阿呆なようですね」
「ようし、よく言ったバーサーカー。…かかってきな」
しかしまあ、あまり、マスターの好きにやらせておくのは下策だったな。これなら、一人の人間としてではなく、ただの魔力タンクとして扱った方がよかったか…?
「えぇ。では行きますよ。キャスター」
相対するは狂人となっても英霊であり、英雄であった男だ。…正面切って戦ったとして、どれくらい拮抗するだろうか。『もてなし』はランサーに奪われたし、『ねらった金庫』もライダーに壊された。さあて、いつ、切り札を使うべきか…。
バーサーカーがその漆黒に包まれた呪文を吐き出す。 疾風が吹きすさび、彼の虹色のマントを芳しくはためかせる。ソレは夜だというのに自らの力だけで発光し、その存在を主張する。黄金の冠はこのサーヴァントが王であることを証明するかのように、威光を穿つ。
――見たことのない容貌であり、どこにでもあるかのような邪悪さを孕んでいたソレは狂気を吐き出し、暴走する。魔力が集まり、極光は神々への門を開帳する
耐久する術は存在せず、援軍もない。更に己のみが生き残っても後に消滅は免れない。何より、その狂気の所為で正常な思考はロックされている。今、手持ちの
「…厄介なモンを、引っ張り出してきやがったな。神、と形容するには余りにも冒涜的だ」
「嘆くならご自由にどうぞ。結末はどうせ変わりませんので。えぇ、えぇ!貴方がどんな英雄であったとしても、いや、物書きに何かできるとは到底思っておりませんが。あがくのも興が醒めない程度にお願いしますよ」
門から触手が投げ出され、タコのような怪物は己を喰らい、ゼリー状の、いや、ヨーグルト状に変形していく。色んなモノを見てきたつもりだったが、コレはヤバイ。ハッキリとわかる。人が触れてはならないモノ。ソレに当たって跳ね返ってきた光さえ目に入れてはならない。人類には必要ないモノだ。昭義が先に倒れてくれてて幸いだった、というべきなのだろう。
先方が何かする前に蹴りを付ける。それが…最善策!!
「『ボッコちゃん』!頼んだぜ!」
彼女はボッコちゃん。そう名付けられているロボットだ。毒殺に使うが、彼女は無垢で決められた言葉しか吐かなかった。宝具の一部として昇華されてから、微妙に性能が向上し、会話や戦闘もこなせるようになった。もっとも、あまり信用できる性能ではないのだが。だが、この状況において彼の狂気に中てられないぶん、最も頼りになる。
「はい。命令をどうぞ。マスター」
「アイツの正体を探せ。…アレは何だ?」
ボッコちゃんには未来のコンピュータがインストールされている。何かを見ただけで、ソレが宇宙の何であろうとも、見つけることが出来る。…本当はもっと砕けた話し方をするのだが、未来のシステムは青少年育成における有害物として許してくれなかった。
「…検索完了。インストールされたデータを基に噛み砕きます。言語翻訳完了。拡大解釈開始…終了。表現がレーティングに引っかかりました。優和表現適応…終了。」
「アレは、神です。異星の神と表現するのが正しいでしょう。沢山の人格を内包しています」
真名の特定に関しては、最高峰のソースを用意してくれる。…コレでハッキリした。奴の真名は…。
「破壊しろ。******」
急にヨーグルトが飛んできた。
「ッマスター!!」
刹那、ボッコちゃんの首が飛ぶ。いや、首から下が消滅した。当たり前だが血は出ない。血液を毒にするとかいう魔改造をしていなくてよかった…。
「…ハハッ。融解性のある、ヨーグルトとはなぁ。腐らせすぎだと思うぜ」
「御冗談を。貴方はヨーグルトはお嫌いで?」
「冗談でも言ってねえとやってられないってことだよ。ったく、決死の覚悟で特攻でもしてやろうか?」
「ふふ、ならやってみてはどうです?貴方が命を捨てて、願いを捨てられるなら、どうぞ」
「なら、手前はないのか?死ぬほど大事なキョージってやつをよぉ。持ってないのか?救う未来も見つけられないか?」
「生憎、私は自分が楽しめればそれでいい質ですので」
とことんまで気が合わない奴だ。…やることは三つ。そういや昭義はまだ一画も令呪を使っていない。まさか、マスターより早く切ることになるとはな。やっぱり俺にはマスターを裏切ることは出来ない。
覚悟を決めろ。誰かの前にアイツを出させるな。
「じゃあ、そろそろ決着を付けようぜ」
前に出る。自分にできることは決まっている。後は通用するかどうか。…自分の世界を信用しなくてどうする。俺の物語はいつだってハッピーエンドではないが、人を否定するものではない。
人の可能性を模索する。
「いつでもどうぞ」
…楽しもうとして居やがる。ならやってやろうか。どうせ誰かがやらなきゃ斃せない相手なのだろう。
マイブレイン…もう少し、理解を拒んでくれ。
「…『ゲーム』を開始する」
「へぇ、ゲームですか。楽しませてくださいよ?」
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第10話「命と誇り」
「…令呪が…消えた?」
光を失ってゆく手の甲にある主の証。それが消滅するということはサーヴァントとの契約がなくなるということを示している。マスターが変更されたか、キャスターが敗退したか、どちらにしても自分はマスターの権限を失った、つまり敗北したということになる。
「…まあ、仕方ない」
命があるだけマシなのだろう。どちらにしろサーヴァント達の戦いを見て、到底自分がついていけるようなものだとは思えなかった。キャスターには悪いがここはきっぱりと諦めてしまおう。聖杯にかける願いも英雄たちと比べたら大したことではない。時間をかければ自分自身の力で手が届く星だ。ランサーのように悲しい過去と立ち向かえずキャスターのような正義の英雄にはなろうとも思っていない。きっとそれが正しいことなのだ。誰かを押しのけて願いを叶えるなら、覚悟が必要で俺にはソレがない。どうしたって腕試し感覚で参戦した自分は一度苦汁を飲むべきはずだった。死ななかっただけ儲けもの。よーし、アーチャーに見つからないようにこの町から脱出しよ…
「おい、小僧、どこに行く」
「うお、ア…アーチャー。いや、俺小僧っていう歳じゃないんだが」
「…む?お前さん令呪はどうした」
早速勘付かれました。最悪なパターンですねこれ。サーヴァントを失った敗北者とか生かしておく意味、ないよね。どうやって誤魔化そう…。いやー、死にたくない。
「……敗北者になったのか」
「…はい」
間が怖い。いや、まあうん、はぐれたサーヴァントが生きるか死ぬかって俺悪くないよね。運だよね。ああ、恨むぞ神よ。こんな理不尽なことが…そういや聖杯戦争に参加したのは自分だった。神様助けて…。
「ワシは神性持ちなんだけどね」
今回の聖杯戦争心読んでくる人多くない?サーヴァントの通常スキルか何かなの?
「で、アーチャーは俺を殺すのか?」
「どうして欲しい?」
にやにやしながら聞いてくる。酷い奴だ。生きるか死ぬか聞かれたら、誰だって生きるっていう答えを出すだろう。
「…命乞いが聞きたいのか?」
「そう言えば、そうなる。ぶっちゃけワシ今弱体化しているし、お前さんが役に立つならしっかり利用してやるが。」
「……」
弱体化ってなんだよ…どう頑張ってもアーチャーから逃げることは出来ないだろうし。今一番生存率が高いことはプライドをどぶに捨てること。魔術師の家に生まれて、胸糞悪い事ばかり強要されてきた。それに耐え続けてきた自分にもプライドがある。最終奥義はプライドを粉々にさせられる。天秤にかけろ!
「ぐっ…くぅ…」
「うおおおお…オオオオ」
「ガアアア…ハア…ハア…くっ…工房作りが得意です…」
我ながら天晴なDO☆GE☆ZAだ。俺がもしビジネスマンとして生きていたのなら取引先は思わず交渉の握手をしたくなり、成績がうなぎのぼり…そんな完璧なものだ。
「小僧よ…まさか土下座するとは。生前捕虜に土下座されたこともあったが首飛ばしたんだよな…」
「ヒエッ」
「まあ、いいもの見れたし殺さないでおいてやろう。…ふっ。それに、まあ、優秀な陣地は必要だからな。せいぜい利用してやろう。ぶふっ」
あ、これDO☆GE☆ZAしなくても良かったやつなのでは。アイツ…。
CLASS:アサシン
マスター:???
真名:???
性別:男
身長・体重:167*59
属性:秩序・悪
筋力D 魔力C 耐久D 幸運A 敏捷B 宝具A+++
クラス別能力
気配遮断C:気配をある程度消すことが出来る。攻撃するときには解除される。
保有スキル
自己暗示A:肉体すら変化させる強力な暗示スキル。
宝具
??? ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
??? ランク:E~EX 種別:大軍宝具 レンジ:??? 最大捕捉:???
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