赤龍帝の幼なじみ達 (THIS)
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連載一周年記念 まだ会わぬ幼馴染共

 連載一周年としてまだ見ぬ幼馴染共を書きたいと思います。

 短いと思いますが・・・どうそ!!


 なお・・・一人は雨宮作品の二つを組み合わせたキャラです。


 

 それはまだイッセ―の中のドライクが目覚めず、クレアとも出会っていない時だった。

 

 イッセ―と弦太郎、イリナはもう四人の幼馴染と一緒にある出会いを果たしていた。

 

 七人で遊んでいた時・・・彼らに向けて車が突っ込んできたのだ。

 

 だが・・・その車はある存在に止められる。

 

「・・・なんだこれ?」

 

 それは銀色のロボットみたいな存在。

 

「・・・どうやら無事のようだな。」

 

 そのロボットは七人を見て無事を確認する。

 

「これって・・・何?」

 

 それは弦太郎達が宇宙を目指すきっかけとなった存在。

 

 そのロボットはトラックへと変形する。

 

「すげええぇぇぇ!!」

 

「おおおっ!!」

 

「これはすごいわ。」

 

「ほわ・・・。」

 

「すっ・・・スーパーロボットだ!!」

 

「参ったわね。」

 

「・・・こりゃ・・・たまげたぜ。」

 

 そして・・・。

 

「君達・・・怯えないでほしい。私の名前はオプティマス・プライム。そして、私の事は秘密にしてほしい。」

 

 それが彼らの一つ目の出会い。

 

 彼ら・・・トランスフォーマーとの・・・。

 

「すげええすげええ!!」

 

「・・・えっと・・・怖くはないのかい?」

 

 イッセ―達は駆けよる。まるで恐れる理由が無いといわんばかりに。

 

「・・・不思議な子供達だな。」

 

 それに最初は戸惑った彼だが・・・すぐにその声が穏やかな者になった。

 

 

 

 

 そして、出会いはまだある。

 

 

 それもまた宇宙からだった。

 

「親父!!」

 

 迷子の男の子。それと出会った七人。

 

 彼は宇宙から来たという。

 

 その意味に首を傾げていたが、その理由は分かった。

 

 彼らはある異形に襲われ、男の子を庇うために必死に逃げる。

 

 街の事は知り尽くしているので必死に逃げた。

 

 そして、数も増えてきて追い詰められた時・・・。

 

 「蒸着!!」

 

 変身したその子の父親が駆け付けたのだ。

 

 銀色のボディを纏った・・・。

 

 銀河警察ギャバン。それが父親の今の姿らしい。

 

「・・・俺の息子を助けてくれてありがとう。」

 

 助けた子の名前は・・・十文字 弾

 

「また会おう!!地球の友達!!」

 

 俺達は確かな友情を得て、弾と別れた。

 

「バイバイ!!イッセ―、弦太郎、イリナ、誠、新、鉱太 イリヤ!!」

 

『ああ!!』

 

 彼ら、七人は新しい友達に向けて別れを告げた。

 

 彼らは知らない。

 

 その後の再会は・・・実に混沌としたものになることを。

 

 

 

 これがドライクやクレアも知らないイッセ―の幼馴染達。

 

 イッセ―の幼馴染は・・・既に地球という枠すら外れている。

 

 

 

 

 そして彼らとの再会は近い。

 

???「久しぶりだな・・・地球。」

 

 一人は地球という星に向かっている。

 

???「まさか初任務が父さんの生まれ故郷か・・・あいつら元気してっかな?」

 

 二人の仲間達と共に。

 

 

 

 

???「・・・あの子達は・・・元気にしているだろうか。」

 

 もう一人は現在逃亡生活中。

 

???「まだ私は・・・人間を信じていいのだろうか?」

 

 その声は疲れていた。

 

???「あの子達に・・・会いたい。」

 

人間という存在にどう向き合うのか迷う彼は・・・その答えを求めて、昔出会った、不思議な子供達の居る街に向かう。

 

 彼らの仲間達と共に。

 

 

 

 

???「まさか・・・この星に来ることになるなんてね。」

 

――――君の生まれ故郷だったか。

 

「私がこんな身体になっても・・・皆、友達でいてくれるかな?」

 

――――コードネームZO・・・お前も因果だな。

 

???「ボブ・・・それは言いっこなしよ。まあ、この星の嫌な事は言うまでもないとしても、逆に楽しみな事と言えば・・・。」

 

 彼女は笑う。

 

???「この星にいる友達・・・かな?」

 

 生まれ故郷であるこの星に色々な想いを馳せて。

 

 

 

 

 これをきっかけに駒王町の魔境化はさらに進行する(笑)

 




 また幼なじみのスペックは後に出します。

 もしかしたらスーパーヒーロー大戦ではなく、スーパー幼馴染大戦が出来る勢いになってきたかもWW

 あくまでも予告です。

 不評なら消すくらいは考えていますが・・・エルロードが驚いた人間代表の登場の仕方はこれで考え付きました。


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連載一周年記念 第二弾 イギリスの大冒険。

 もう一つ連載記念で短編を書きました。

 今回はイギリス編。

 さあ・・・ある意味イッセーの幼なじみ史上最強と言える奴が登場します。


 

 

 

 それはイギリスでの話。

 

 これもまた・・・ドライクやクレアが目覚める前の物語である。

 

 両親の結婚十周年記念の旅行でイギリスにやってきたイッセ―。

 

 そこで迷子になった女の子・・・ルフェイを助けたイッセ―は光と共に現れた不思議な少年と出会った。

 

 その男の子は記憶を失っていた。

 

 そして、起きたと同時に殴ってきたので殴り合いの喧嘩になった。

 

 でも、その後・・・仲良くなったのだ。

 

「俺の名前は・・・ゼロ。それしか思い出せねえ。」

 

 不思議な少年ゼロ。彼とルフェイと共に遊ぶイッセ―。

 

 でも、そんな彼らに迫る影があった。

 

「まっ・・・待ってくれ!!僕はミライ。その子は!!」

 

「ぐぅ…なんて子達だ。このマルチバースの地球。何か可笑しい。」

 

「今のうちに逃げるぞ!!」

 

 ゼロの知り合いという人。その名はミライとセリザワ。

 

「ふふふふ・・・ウルトラマン・・・ここで滅して・・・。」

 

「今のうちに逃げるんだ!!」

 

 その人は最初は敵だと思ったけど・・・僕達を守ってくれた。

 

 そして、その人達とも友達になった。

 

 襲撃してくる謎の怪人達。

 

 それを色々なハプニングがありながらもかわし、逃げ続けるイッセ―達。

 

 そして、イギリスの海でそれは現れた。

 

 それは謎の甲冑。

 

「アーマ―ド・ダークネス。やはりこの地球に・・・。」

 

 それと共に現れる謎の存在。

 

「・・・・・・そうか。俺はこいつを追ってきたんだ。」

 

 それを見たゼロは思い出した様子だ。

 

「なんでガキになっているんだか。だが・・・楽しかったぜ。」

 

 そして、今の姿に苦笑する。

 

「お前・・・一体。」

 

「・・・この地球では馴染みねえだろうな。だがあえて言うなら俺・・・俺達は・・・。」

 

 彼は告げる。

 

 

―――――俺達は・・・ウルトラマンだ。

 

 

 

 

 そして、彼らは光の巨人となったのだ。

 

 

「二人とも・・・がんばれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 足元にアギトの紋章を展開させたイッセ―の叫びが奇跡を生む。

 

 

 

 そして、戦いはルフェイが展開してくれた結界で誰も知らずに終わらせることができた。

 

 

「もう・・・帰っちまうのかよ。」

 

「・・・わりぃ。俺達はまだしないといけないことがある。」

 

「だったら・・・また会おうぜ。どんだけ長生きでも、また会える。俺はそう思ってる。」

 

 イッセ―は拳を突き出す。

 

 それが何を示すのか分からないゼロではなかった。

 

 拳をぶつけ、上、下とさらにぶつけ、最後に握手。

 

 二人は別れの前に交わす。再会のための友達の証を。

 

 その光景をミライとセリザワがまぶしい目で見ていた。

 

「・・・そうか・・・これが地球か。なんか親父達の気持ちが分かった気がする。また遊びに来るからな。」

 

「ああ。待っているぜ!!」

 

「それと・・・ルフェイの事は責任とってやれよ?」

 

「はっ・・・はう///!?」

 

 何故か真っ赤になるルフェイ。

 

「?」

 

 気付いていないイッセ―にずっこけるゼロとセリザワ。ミライは・・・何のことか分かっていないまま首をかしげる。

 

「はあ・・・お前って鈍感だな。事件中にあれだけの事をしておいて。まあ、ルフェイ・・・頑張れよ。」

 

「はい。」

 

「これ・・・もっておけ。再会の記念になるように。」

 

 そしてゼロは二つの石をプレゼントする。

 

 そうして、イギリスでの二人だけのたった一週間の大冒険は終わりを告げた。

 

 このことは、イッセ―とルフェイの二人だけの秘密となった。

 

 

 

 

 そして現在。

 

「この世界を闇に染めてくれる。」

 

 この星に再び魔の手が迫ろうとしていた。

 

「・・・あなたを復活させた理由を忘れないでくださいね。」

 

「ふははははは・・・ああ。感謝しているぞ。お前の願いを終えた後・・・俺は再び光の国に復讐を・・・!!」

 

「・・・この星・・・あなどれねえな。まさかあいつを簡単に蘇らせるなんて。」

 

 それを別の存在が唸りながら見ていた。

 

 

 

 

 それと察し、月に降り立つ者達がいる。

 

???「こんな形でこの星に来たくなかったぜ。もうすぐ休暇をもらえて、それを利用していこうとしたのに。何だこの星は?何か引き寄せるものがあるのか?」

 

???「ゼロが言っていたマルチバースの地球・・・ですか。」

 

???「ほう・・・綺麗な星じゃねえか。」

 

???「???この星・・・どこかおかしいですね。」

 

???「確かに・・・。まだ分析は完璧じゃない。もっと観測しないと。」

 

 その仲間達は星を見て口々に感想を述べる。

 

???「はあ・・・なんであいつがいるだけじゃなく、あいつまで復活してんだ。応援は来るのはありがたいが、俺達だけじゃ手に負えんかもしれんぞ。メビウスとヒカリはまだか?」

 

 その彼らのリーダーは深い溜息をつく。

 

???「・・・だが、あいつら元気にしてっかな?暇があったら会いたいぜ。あっ・・・でもその時どうやって人間に変身しようか?あれから其れなりに時も経っているし、お前らも・・・。」

 

『あっ・・・どうしよう。』

 

 

 ある存在が、余計な物達を復活させた所為で、更に歴代イッセ―の幼馴染中で最もヤバい奴とその愉快な仲間達がやってくることになる。

 

 

 駒王町の未来は・・・どっちだ!?




 予告していた連中・・・ついに参戦決定です。

 スーパー幼馴染大戦でもやろうかなと考えています。


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幼馴染第二弾

 第二弾の設定を簡単に乗せました、


 紫藤 弦太郎

 

 教会のリーサルウェポンと呼ばれし者の一人。

 

 二枚目のジョーカーとして天使に転生。もう一人のジョーカーとは親友。そして、隕石のスイッチは彼に託されている。

 

 フォースを学び、それを彼のもともと優れていた感性と直感を磨き上げている。

 

 実は彼も転生者。本人は全く記憶はない。

 

 だが、多くの絆を結んできたその人生、その記憶を取り戻り時、それが彼の真価を発揮するとき。アストロスイッチは本当の目覚めを迎える。

 

 

 

 

 加々美 新

 

 

 北欧神話・・・半神にしてオーディンの孫というとんでもない状態で三度目の転生を果たした。

 

 

 二度目の転生はなぜか艦これ。そこで名提督として艦娘たちを率いて、ガタックの力をもってともに前線で戦った猛者。世界を救った英雄だったりする。

 

 

 彼の潜在能力は極めて高い。人間である部分は鬼の一族の血で鬼の小手を受け継ぎ、赤の鬼である鋼鬼と対となる黒の鬼となっている。

 

 あと実は目も鬼の目となっている。

 

 

 ロキに殺されかけたことがあるがそれを無意識に救ったのは実は・・・。

 

 

 

 契約・・・艦隊娘たち。

 

 前世でともに戦い、世界の海をすくった者達。

 

 マグナギガとリィンフォースの娘として転生してくる。

 

  大和

 

  榛名

 

  夕立

 

  吹雪

 

 

  実はまだ募集中です、作者は艦これ未プレイゆえに。

 

 

  

 イリア  

 

 ネオ生命体の実験体として改造されるも、父親が奮闘し、脱出。そのまま宇宙に連れてて、探索者として活躍していた。

 

 ただ、改造直後さらわれてから一年間昏睡状態にあり、その間に宇宙の気を蓄えていた

 

 極めて強いフォースと気の素質を持ち、その修行を行うことで彼女の潜在能力は一気に覚醒する。

 

 

 契約モンスター  フェンリル

 

 原作、及び神話大崩壊の要素。彼女は大変犬好きで、それがきっかけ。

 

 ちなみになんの因果かフェンリルの子供は百一匹いるという。

 

 

 

 

 

 弾  宇宙刑事ギャバンの三代目。

 

 父親がポルムの策略により引退を余儀なくされ、一年前に引き継ぐ。

 

 まだまだ新人刑事だが、謎の直感もあり優秀な刑事となっている。

 

 

 その力の正体もまたフォースだったりする。

 

 

 

 

 

 

 オプティマスプライム  

 

 イッセー達が初めてであった宇宙人にして、宇宙でも伝説のトランスフォーマ―

 

 彼はその片方の陣営・・・サイバトロンの総司令官。

 

 その指揮官として能力は極めて高くロキ戦でその手腕を存分に振るうことになる。

 

 

 

 また転生したことで、コアトライビアを取り込み、実質的にドライブと同じシステムをもつことになった。

 

 すべてのシフトカーの能力使用可能。

 

 おまけに・・・

 

 

 

 誠

 

 

 この中で唯一の普通の人間(?}

 

 異常と言えるほどの災難に見舞われ、その護身のために波紋呼吸法や仙術を学び、半ば仙人化しているけど一応普通の人間である(?)

 

 この世界では三国志の劉備の子孫にして、アギトの世界からの転生者。

 

 でも普通の人間・・・なのだろうか?

 

 

 

 現在記憶を取り戻しつつある。

 

 

 

 そしてこの世界で再びG3をまとうことになる。

 

 

 

 G3  この世界のあらゆる技術に、誠専用のシフトカーが合わさって完成することになる人造の神滅具

 

 

 

 



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設定集
イッセーチーム およびグレモリー眷族の現在スペック


多少ネタばれ注意です。そのことを踏まえて読んでください。

 2013 12 23 更新

 2014 4 29 さらに追加

 2014 5 25  ポルムの旅した世界、および新しく参戦した契約モンスター、およびアーシア、ロゼヴァイセにて新たな関係者の予告。


2014 5 28 こっそり旅した世界追加。

2014 9 10 参戦作品を掲載、参戦予定作品も載せました。
 2014 7 18 ポルムのヒロイン決定。なおかつロズヴァイセの魔改造確定。

 ヴァ―リとユウナのプロフィールも載せました。

 後一部、追加。二天龍アギトの現在スペックも書きました。 

2015 2 9 ミラーモンスターの人化時のモデルを追加

2016 6 19 更新。後日幼馴染第二弾も更新します。、

2016 8 21 ロズヴァイセの部分だけ更新。


 現在のスペック。

 

 

 兵藤 一誠(イッセ―)

 

 現在アギトの能力。グランドフォーム

 

          三つのプロモーション的な能力獲得している。

 

       スピードに優れた騎士・・ストームフォーム

 

       パワーと感知能力に優れた戦車・・フレイムフォーム

 

       手にした杖の力で水を操る僧侶・・アクアフォーム。

 

 

 こののちに少なくとも四段階の進化をする予定。

 

 

カルテットフォーム・・・上記の四つのフォームを同時発動させた形態。

 

   水の操作だけでなく、風と炎も超能力で操れる。

 

   スペック的にもいいとこどりとなり、ファイナルベントと併用させた必殺キックは驚異。

 

 

紅のアギト。

 

  アルビオンの力を取り込み、そして禁手化を取り込み進化した新たなフォーム

 

  単純スペックはカルテットフォームの二倍。

 

  あまりに強力な力故に、スタミナの消耗が激しいという難点があり、改善のための修行をする。

 

 

   必殺キックは両足になり、相手は防御しようと、その防御力や相殺のための攻撃力を瞬時の半  減でほぼ無力化する鬼のような一撃になる。まさに「必殺」である。

 

 

   紅のアギトはポーンに当たる。

 

   悪魔の駒に、「緑」、「金」、「銀」、「赤」、「蒼」、「紫」のメダルを取り込み新たなステージに立つ予定。

 

龍神・・・ドラゴングリードの力により新たな力に目覚める。

 

 

 

      騎士・・・???

 

      戦車・・・???

 

      僧侶・・・???

 

 

 

  

 

   

 

 

 

  契約モンスター

 

 赤龍帝ドライグ・・・赤龍帝の篭手。

 

 人化時の姿・・・tiger & bunnyの虎鉄

 

 

 

 ドラグレッター・・・ドラグバイザー

 

 人化時の姿・・・神曲奏界ポリフェニカの大人版のコーティカルテ。それを金髪にしたような姿。

 

 スリーサイズ 90 57 85

 

 

 現在使用可能カード ・・ソードベント

 

             ストライクベント

            

             ガードベント

 

             アドベントカード

 

             リカバリーベント。

 

             第二章よりファイナルベント追加。       

    

 

 ドラグブラッカー  愛称ブランカ

 

 人化時・・・トライアングルハード3の医者・・フィリス

 

 

 

        エクスカリバー編より参戦、召喚機 ブラックバイザー(右足)

 

        力はドラグレッタ―と互角。また彼女にない特殊能力を多数保有。

 

        ワープベント(影から影へと移動)

 

        バインドベント(黒い炎にて相手を固めて拘束)

 

 

        十代半ばの少女の姿を取って行動している。

 

 

 融合モンスター 無双龍帝 ドラグカイザー ジェノサイダーと互角のパワーを誇る。。

 

 

      

       

 四章で原作より進んだ形でアルビオンの力を左足に宿す。その必殺キックは瞬時の倍化に瞬時の半減まで加わり。相手の防御力をほぼ無力化する。

 

 

グレートレッド  彼との契約はおそらくこの世界の根幹を揺るがす・・・契約の証は胸部になる予定。

 

 本格的な契約ではないが、その力の一部をもらい受けている。本格的な契約はのちの予定。

 

 

 ゴジラ  最強の破壊神。単純な戦闘力ではグレートレッドすらしのぐとされている。

 現在はおっぱいに軽くトラウマを抱えて入るが、彼なりにイッセーのことは気に入っている。

 

 父親としての経験があり、意外と父親たちとは話せる。寡黙だが、意外と激情家。

 

 のちに自在に外にでてくるようになる。

 

 

 三枚のサバイブはのちに他の五枚のサバイブと統合されることとなる、

 

 

 

 ドラゴングリード  おっぱいヤミー達の力をアギトの力によって束ね、グレートレッドによりきっかけを与えられて誕生した新たな龍神。

 

 まだ生まれたばかりで、イッセーのことを父親として慕っている。

 

 彼の力により、トリアナが異常なまでに強化されることになる。 

 

 

 なお後に習得するサバイブカードの効果は契約モンスター全てに適用される。

 

 

 

 

 木場 佑斗

 

 ホースオルフェノク・・オリジナル故にオルフェノクの中でも上位の力を持つ。

 

 もうすぐ激情体に進化予定。

 

 

 現在アバン流刀殺法の大地斬と海波斬を習得。

 

 第三章にて空烈斬を習得。アバンストラッシュを完全習得。

 

 

 神器 魔剣創造

 

  原作と同等の手札を持つ

 

    

 

 契約モンスター ダークウイング 

 

         人化時・・・トライアングルハード3およびリリカルなのはの月村忍

 

 召喚機     ウイングバイザー 刀身は魔剣創造で自在に作り出せる。

 

 使用カード     ソードベント

 

           ガードベント

 

           トリックベント

 

           ステルスベント

 

           ファイナルベント

 

 

  オーガギア     オルフェノクだけが使用できる五大ギアの中で最大の防御力とパワー

            出力を誇る。           

            

 

 直死の魔眼  教会の事件がきっかけで潜在的にその素質を持っていた。

 

 夏休みの修行にてその潜在能力が覚醒。神すら殺すこの力はアギトに対する最大の抑止力にもなっている。

 

 

 その力を全開にさせた剣はまさに必殺。

 

 

 サバイブの目覚めは冥界の新たな危機の時。その時、オーガギアも・・・。

 

 

 

 

                     

 

 

 姫島 朱乃

 

 原作との相違点。弟がいることとゲートであること。

 

 そして、命を救うためにある物が体に埋め込まれている事である。

 

 魔法使いとしての力は・・・最上級堕天使や悪魔ですら一蹴できるほどの凄まじい物を秘めている。

 

 ゲットアイテム。

 

 指輪  ソーサレスドライバー。

 

 ソーサリーリングを参考にして作られた専用のドライバー。

 

 彼女の総てを引き出すために設計されている。

 

 

 スペシャル・・・巨大なプラズマで出来た龍を召喚します。

 

 また体内には弟が作り出した賢者の石が入っている。

 

 

 契約モンスター 守護龍神キングギドラ。

 

 

 姫島家が管理していたある祠に眠っていた二体の龍神の一体。

 

 破壊と守護という二つの側面を持つとされていたが、その理由は封印されていたのは二体のキングギドラだからである。

 

 二体はお互いを封印しあっており、そのバランスが崩れると・・・。

 

 

 彼女の賢者の石の中に彼女は眠っている。その命を救うために。

 

 

 契約???

 

 またある怪人も彼女と実は契約していた。

 

 

 小猫

 

 黒歌より仙術、鋼鬼より鬼になるための修行を受けている。

 

 太鼓との相性がよく、響鬼の指導もうけている。

 

 現在はディスクアニマルを使役できる程度だが、全体的な能力が底上げされている。

 

 特にHKKEIは攻撃力、気功により防御力・・縮地により機動力が増している。

 

 すでに拳で大地を割るレベル。

 

 余談だが、異様に攻撃力の増した小猫ちゃんのツッコミを受け続けたイッセ―のタフネスも異様なレベルにまで鍛えられている。

 

 鬼になるには夏休みの合宿が必須となる。鬼となった際・・・白い鬼になる予定。

 

 

 夏休みも事件をきっかけに鬼に目覚める。その潜在能力は期待を上回り、修行を重ねその制御を完璧な物にしている。

 

 次のステップはガメラの力をまとうことと、アームド化。あと仙術にて大人モードになることである。

 

 

  幼少期の時に異世界からこっちの世界にやってきたギャオスを追ってきたガメラと遭遇。

 

 絆を結び、この世界でのガメラの巫女としてギャオス変異体を倒すことに成功。別れる時泣き叫ぶ小猫を見て、仕方なくガメラは彼女の記憶を消すが、また再会をはたす。

 

 

 ガメラ・・・平成三部作のラストシーンの後のガメラ。

 

 瀕死の重傷を負っており、大量のギャオスを全滅させるために力をほぼ使い切り。精神的にも疲弊していた。そこにギャオスの力を狙ったある存在からの衝撃を受け、この世界に迷い込む。

 

 今は傷と失った力を取り戻し、さらなる進化のために眠りについている。

 

 小猫より仙術の練習を兼ねて気を送られているので治りは極めて早いらしい。

 

 

 人化する予定。

 

 

 

 ギャスバー

 

 原作の神器に加えて、サガの鎧をうけつぐことになる。

 

 サガの鎧は彼の力によりさらに凶悪になる予定。

 

 

 サガ―ク。契約の際にギャスパーのライフエナジーと共にある存在が入り込んでしまい突然変異を起こす。

 

 

 マキリゼクター・・白いカマキリは静かなる処刑人の名をもつ。

 

 

 契約モンスター???

 

 ゴジラすら怯む巨体の持ち主。人間大サイズの敵が戦っていい相手では決してない。

 

 

 

 ゼノヴィア。

 

 相方の良太郎と一緒にいて・・・ある存在に取りつかれる。

 

 この世界の特異点。ある意味ではこの世界の時間の流れの要というべき存在故に、命を狙われている。

 

 三章より桜井悠斗の転生体にしてハナと騎士ローランの娘であることが判明。

 

 伝承どおりのローランの力とハナの力を実は両方受け継ぎ、正しい意味で英雄派にいてもおかしくないほどの存在。

 

 いや、素で人外といえる。

 

 そこにゼロノスの力も加わる。

 

 しかも実はゼロライナーを召喚し、単独で時間移動できる状態にある。

 

 

 護衛となっているイマジンは三体

 

 一体は大変お人しだが、凄まじいパワーを誇るイマジン。

 

 その名はデネブ。

 

 

 一体は陽気でお調子者のウサギ、時間停止の力を持つ。

 

 

 最期の一体は彼女の深層意識で眠る最悪の死神ーーデスイマジン。

 

 イマジン達との絆が彼女の聖剣にさらなる進化をもたらす。

 

 

 現在 必殺剣として牙突を習得。木場の師より、秘剣・・・三段突きを習得。

 

 その際、何をどう間違えたのか三つの突きを同時に放つ魔剣となってしまった。

 

 現在、十発同時に放てる。

 

 

 

 

 

 

 

 イリナ・・・宇宙の声を聞き、隕石のスイッチの力を得ている。

 

 そして正体不明のある存在として戦うが・・・実は正体はバレバレ。

 

 またある怪物に助けられ、トランプの力をもつ剣を持っている。この世界の中で唯一、アンデットを使ったライダ―システムの過剰と言えるまでの適合者でもある。 

 

 

 天使に転生する際に、アンデットとしての力も得てしまった。今や天使でもあり、アンデットでもある。

 

 だが、そのおかげで、天使としては熾天使クラスの力を得る。

 

 宇宙の声を聞いた関係か、フォースの素質もあり、テクニックタイプとして順当に成長中。

 

 

 新たな変身ベルトとしてケルベロスの力を得た変身システムを使っている。実はその関係であるとんでもない可能性を秘めている。

 

 

 

 

 

 

 

ロズヴァイセ・・・悪神と主神から存在そのものが「ラグナロク」と恐れられるヴァルキリ―最強の猛者になっている。

 

 

 性格は全く変わらず、残念でなおかつとんでもない才女でもある。

 

 

 追加設定で、父親から水泳を習っており、泳ぎは達者である。

 

 

 彼女は夜天の書を拾い、その主となる。その際にその管制人格が相棒となる。

 

 魔術の研究、そしてその書から異世界の魔法技術も取り入れ。さらに改良。闇の力すらも上手く制御させて色々と魔改造、攻防一体の最強の魔導書となっている。

 

 

 ロキの事件で一度死にかけたが、紫天の書の覚醒とともに、悪魔の駒を仲介し、アギトの因子が目覚め、一命をとりとめる。

 

 その因子は実は彼女の父親からのもの。彼女の父親もまた転生者である。

 

 また母親もまた転生者。違う世界で非業の死を遂げたがこの世界のヴァルキリーとして転生。前世の力もひきつがれており、それがロズヴァイセにも遺伝している

 

 

 のちに紫天の書の覚醒により、彼女たちのチームはさらににぎやかなメンバーが加わることに。

 

 

 契約モンスター・・・マグナギガ

 

 マグナギガの破壊力を書の力と管制人格の制御も借り、さら精密化、改良、効率化させな、火力を十倍以上に高めている。

 

 

 三位一体となった時「一人師団」となり。たった一人で敵対する雲の巨人・・・百体を瞬殺。巨人達から「歩く終末」「最終兵器」「スルド達すら裸足で逃げ出す」などと大変恐れられている。

 

 現に炎の巨人たちですら彼女を恐れている。

 

 

 ただ、強過ぎて彼氏今までゼロ、迎えた勇者もゼロと言う悲劇。

 

 

 そのことを大変気にしており。二人の相方に慰められる日々である。

 

 

 また追記で黄昏のサバイブと言う禁断のカードも作っている。

 

 

 また戦神の異名をもつ弟がいる。

 

 

 

 ??? アギトとなった宿命なのだろうか。彼女は三種を統合する形である存在と契約することとなる。それはキングギドラとはまたもう一種のゴジラの宿命のライバルである。

 

 これにより彼女の火力は以前の十倍になってしまう。

 アーシア

 

 アギトの力の覚醒と共に超能力に目覚める。その力は凄まじく人間の領域を超える。

 

 テレパシー・・・半径二キロまで捕え。レーダー代わりにもなる。

 

 またテレパシーを応用させた異能・・・マジックキャンセラーを習得。

 

 サイコキネシス・・・最大出力時では龍王すら簡単に抑え込む。障壁にもなる。

 

 テレポテーション・・・自分を飛ばすだけでなく、相手を飛ばすこともできる。触れないでできるので、退却や奇襲を円滑にできる。範囲はテレパシーと同じ。

 

 

 アーシアの力の増大は、そのまま彼女のアギトとしての覚醒につながる。 

 

 

 黄金のアギト・・・アーシアの変身体。いまだその全貌は見えず。

 

 

 現在わかっているのは大変強力な回復フィールドを持っているということ。

 

 

 

 

 使い魔を二体追加。後にアザゼルが召喚機を作成し、その力で変身可能に。

 

 カードはアドベントカード以外はまだ不明。

 

 ラッセ―はゴジラとキングギドラの力を取り込む。

 

 その結果雷だけじゃなく、高熱、そして引力を操作するようになる。

 

 首が三つになり色も変化し、白銀となる。

 

 名称は白銀の光龍に変化。

 

 

 

 

  またアーシアには生き別れの兄がいることが後に判明。大変冒険好きらしい。

 

 

 アカリ・・・モスラと呼ばれる存在。

 

 さまざまな特殊能力を持ち、天龍クラスかそれを超えかねない凄まじい潜在能力を秘めている。この世界最大の大樹・・・ユグドラシルの力を得て成虫となる。

 

 

 

 ちなみに女の子。

  

 

 

 

 

 

 リアス

 

 滅びの魔力に加え・・・紅のキバの鎧を得る。

 

 鎧の鍵となるカ―ミラとは使い魔契約を結んだ家族。

 

 鎧の力を封じているカテナは全部で六個ある。

 

 六つすべて解放する事が出来れば世界すら崩壊させる力を得る。

 

 現在解放されているカテナは四つ

 

 右腕・・・滅びの魔爪。

 

 右足・・・滅びの砕牙

 

 左腕・・・滅びの翼刃

 

 左足・・・滅びの鉄槌

 

 胴体・・・???

 

 頭 ・・・???

 

 

 複数のカテナ同時解放技も習得。

 

 右腕と左腕・・・滅びの光矢

 

 四肢のカテナ同時解放・・・滅びの昇龍拳

 

 

 夏の合宿を通して、鬼としての力を得る、そのためパワー系の傾向がさらに顕著に。

 

 

 だが、その分知略も必要だと感じ、勉学に励んでいる。最近になってそれが実を結び始めている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 幼馴染陣営。

 

 ネロ・・・ギルスの力によりパワーアップ。

 

      デビルトリガ―も使える。

 

      また兵士としてのプロポーション能力によりフォームチェンジも行う。

 

      騎士・・・スラッシュフォーム

 

      戦車・・・ギガントフォーム

 

      僧侶・・・ガンフォーム

 

 

  ゲットアイテム

 

    レッドクイーン→アクセルクイーン レッドクイーンがある剣としてさらに強化。

 

     エレキ、スチーム、ジェットの三つのギジメモリを装填。

 

 

    ブルーローズ→ローズマグナム  

 

    カノン(大砲)バルカン(機関銃)スプラッシュ(散弾)などのメモリで弾丸が変化。

 

    アクセルメモリ。

 

       アクセルドライバーを得て変身可能に。・

 

     サイクロン

 

     ヒート

 

     この二つのメモリでアクセルメモリをさらに強化。

 

     トライアル・・・装甲を廃し、軽量化することで極限までの高速行動を可能とする。

 

             防御力は堕ちているが。攻撃力は素のネロの力もあり、全くと言ってい             いほど低下していない。そのため、鬼のように攻撃力が激増している。

 

 

     ビート・・・鼓動の力で相手の弱点や反撃するポイントやタイミングなど、          必殺技を決めるツボを抑える力。

          

           使用の際、体感時間が極限まで引き延ばされるので、タイミン          グも合わせやすい。

           

            最大の特徴は、他のマキシマムドライブや必殺技と組み合わ           せる点。

 

 

 

     この二つが切り札になる。

 

 

 ネロの進化は二つの変身と悪魔の力による物となる予定。

 

 

 現在、魔神化の第一段階を会得。

 

 

 

 

 

 鋼鬼・・・鬼としての最高の力を得ている。打と弦を得意としている。

 

     紅化も可能で、装甲もつかえる。

 

     現在鬼の篭手を使いこなすためのオーラ増強の修行中。

 

    鬼の篭手はまだ鬼武者化を短時間しかできない状態。

 

    真鬼武者化するために日々努力中。

 

 

  契約モンスター・・・ヤマタノオロチ

 

 酒すきな元邪竜。だが、その強さは龍王クラスを軽く超える。その巨体だけでも十分な武器になるうえ、水害を司るだけあって、とてつもない規模の天災を起こせる。

 

  アイテム・・・アームド・クサナギ。

 

 

 

 

 

 

 サイガ・・・龍の紋章を三つも持っている凄まじい潜在能力を秘めている。

 

  だが、あまりの出力に体が耐えられず今は一個を解放させるのがやっとである。それでも、一つだけでも地形を変えるほどの力を発揮。

 

 だが、ある方のおかげで肉体や魔力が飛躍的に向上することとなり、潜在能力がすべて解放され始める。

 

 戦い方はテクニックタイプ。歴代の龍の騎士たちの戦闘経験を実は受け継いでおり、窮地の時、予想もできない戦い方をみせて切り抜ける。(本人は全く自覚なし)

 

魔戒騎士として牙狼の剣を取得し、アバン流刀殺法も極めている。また呪文も一通り習得しており、回復呪文も補助もこなせる。

 

 そして・・・ギガデインも習得済み。

 

 彼のために用意された鎧・・狼龍の鎧は牙狼の鎧と同じで、想いなどにより進化する力を秘めている。その力によって彼の凄まじい潜在能力をすべて受け止めるだけのスペックを誇っている。

 

 

 現在セラフォル―に続き、ツクヨミにもフラグとたてた大変罪深いお方。

 

 

  第四章にて悪魔の駒と月の神の血と祝福、そして龍の血と実はオーフィスの蛇の力も合わさって龍の騎士として生まれ変わる。

 

 その体は極めてドラゴンに近くなっている。

 

 

 まだ紋章は二つだけの解放。

 

 

 

 

 渡

 

 黄金のキバの鎧を持っており、そのスペックの全てを引き出している。

 

 ザンバットソードも装備。

 

 ある意味現時点でも魔王クラスの完成した強さを持っている。

 

 

 エンペラーバット。

 

 

 ザンバットソードが尾羽になっており龍王クラスの実力を発揮。空中戦では無類の力を誇る。

 

 

契約モンスター・・・オ―フィス(ウロボロス・ドラゴン)

 

   彼女との契約が渡を新しい次元へといざなう。

 

 

 

 

 

ハルト

 

 現在ドラゴンフォームまでの力を引き出している。

 

 まだインフィニティにはなれない。だが・・・ドラゴタイムは使用可能。

 

 指輪も自力で作っている。

 

 また・・・・彼の右腕は変身しない状態で握力2トン越えの必殺兵器。

 

 変身した際・・・それがさらに凶悪になる。

 

 呪文を唱えると共にその破壊力はさらに増す(フレイムスタイルで二百トンは超えた。)

 

 右腕に宿るこの世界の神話でもう一つの禁断の存在が原因である。

 

 その名は原初の蛇…サタン。すべての飲み込むとされる龍神。 

 

 

 

 左腕には彼の前世からの相棒の力と禁断の龍殺しの力が宿る。

 

 コキュートスにいるサマエルの力。その冷気ごと得ている。

 

 

 ??? 過去の因縁を清算したとき、前世で使っていた最強の力が目覚める。

 

 

 

 黒歌

 

 奏鬼としての力と仙術を極めている。仙術による強化は特に凄まじく、本気をだせば最上級どころか、魔王クラスと言われるほど。

 

 契約モンスター

 

 ヤタノカラス。

 

 実はすでに契約カードで契約をすませているが、あえてみんなには隠している。

 

 

 

レイナ―レ

 

 原作ならすでに死亡しているはずのある意味最大の原作破壊キャラ。

 

 仮面ライダ―ウィッチとしてハルのサポートをしている。

 

 そして彼女は全く自覚はないがハルトと同じく実は転生者。

 

 しかもハルとは深すぎ関係がある人の転生である。

 

 

 

 四章開始で彼女がコヨミの転生体であることが判明。

 

 

 ウィザード完結の劇場版を見てようやくこの設定を使えました。

 

 

レイヴェル

 

 魔法使いに覚醒。それでいてサイガも師匠となり、ある修行を受ける事に。

 

 魔法使いだけとしてだけでなく、もう一つの力をえる。

 

 

 魔戒法師としての修行中。そして、邪神イリスの巫女となる。

 

 

 イリス・・・生成三部作の最後の激闘にて死亡したと思われたが、幼体に退化することで実は生きていた。しかし自身の爆発の影響で世界の壁を超え、異世界へと飛ばされる。

 

 

 そこでレイヴェルと出会い・・・フェニックスのDNAを摂取し、彼女を新たな契約者にする。

 

 

 巧 スパーダ眷族の兵士【仮面ライダー555】

 

 堕天使総督 アザゼルの息子にして、実は本人は知らないが血のつながりがある。

 

 ウルフオルフェノク・・・オリジナルのオルフェノクで、スピード戦を得意とする。

 

 

 ファイズギア・・・五大ギアの一つにして救世主のベルト。

 

          五大ギア中最弱に見えて、実は進化を続ける最強のベルトである。

 

 

          アクセルフォーム・・・現在十一秒の間千倍の高速行動可能に。

 

           ???

 

           ???

 

           ???

 

 

  総督の努力と他の皆の助力もあり、次々と新しい力を発動させる。

 

  失敗作があるのは・・・ご愛敬としてもらいたい。

 

  例・・・ミニマムフォーム。

 

 

  人造神器の開発で名をあげ、優秀な研究者としても知られるようになってきている

 

 

 

 

 W ベルゼブブ眷族 ポーン。【仮面ライダーW】

 

 

 翔太郎が悪魔、フィリップが一度データに分解されかかるがこの世界の地球のデータと冥界のデータ、天界のデータなどあらゆるデータをエクストリームの力で獲得したために龍神として覚醒。

 

 そして、冥界の技術でダブルドライバーもバージョンアップ済み。

 

 

 

 

 インフィニティーのメモリを生かして、さらに新しいWになる予定。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ポルム・・・ポップとマアムの息子にして大魔王バーンの転生体。【ダイの大冒険より。)

 

 事実上、ポルムとバーンを足したような存在であり、素だけでもとんでもなくチートである。

 

 いわば、あの世界のウィザードの究極のテクニックタイプのポップと同じくウィザードの究極のパワータイプと言えるバーンを併せ持っており。ウィザードタイプとしては神すら逃げる化け物である。

 

 素の肉体は・・・リミッターで大幅に抑えているがもちろん全盛期のバーンそのものである。

 

 そこに四章で悪魔の駒を入れられることで永遠に近い命を得て、おまけに不老となっている。

 

 

 また歴代魔王の例にももれず、彼も実は変身を隠し持っている。本人いわくはあくしているだけで今のところ三回ほど変身を残しているという。

 

 もちろんそれはその変身そのものが、まだまだ伸び代があるからである。  

 

 

 彼はイッセーチームの本当の意味での切札である。

 

 

 ジズの神器・・・あらゆる道具を解析し、複製できる神器。

 

         その神髄は神器、神滅具、聖剣、魔剣などすらコピーするという点。

 

 

          ゲットしている神器

 

           赤龍帝の小手 白龍皇の翼 紫炎の十字架

 

           黒い龍脈 停止の邪眼 追憶の鏡

 

                     他にも・・・。

 

 

 

         解析により、扱い方も知ると言うおまけ。

 

   今も着々と手札を増やす。英雄派との戦いは彼にとって手札の激増を意味する。

 

     特に英雄派の幹部の二人がもっているある神滅具、二つを狙っている。

 

      

 

    禁手化にも至っている。その禁手化は既にさりげなく披露していたりする。

 

 

         またもう二つ。とんでもない禁手化を隠し持っている。

 

 

 また彼はこの世界に行くまでにいくつかの異世界を旅したことがあり、その世界を救ってもいる。

 

 その世界でのアイテムや、魔法もいくつも習得している。

 

 そして、彼のフラグはその時に立てている。

 

 彼を探してあちこち世界を回っている女性がいることを彼は知らない。

 

 

 廻った世界は聖剣伝説3 冒険王ビィト Fateシリーズ 武装連金 恋姫+無双 メトロイド

 

 FFⅥ FFⅩ およびⅩー2 ドラクエ9 るろうに剣心 仮面ライダー真

 

 仮面ライダーblackおよびRX 仮面ライダークウガ ドラゴンクエストロトの紋章。

 

 

 初めに訪れたのはFFⅩ。十三歳の時である。わずか四年でこれだけの世界を巡っている。

 

 まだ世界は募集中である。

 

 

 

 隠れハーレム王である彼を追っている女性達。

 

 

   最強のバウンティーハンターにして銀河の英雄。

 

   良妻賢母な狐。

 

   両親の仲間である最強の戦士と賢者の間に生れし剣士。

 

   風の国の女王。   

 

   彼の姉を称する渦巻の瞳を持つ少女。

 

   人間と幻獣の間に生まれた少女。

 

 

  の超豪華メンバーとなっている。彼女たちは彼を探し、次元の壁を突破して次々と合流している。

 

 

 

 

       

 

  木場 優菜・・・木場 祐斗の双子の妹。

 

 オリジナル・・・クレインオルフェノクでもある。

 

 そして五大ギアの一つ・・・天空の覇者、サイガのベルトを所有。

 

 その関係か、空中戦が特に得意で、そこは彼女の独壇場である。

 

 

 神器・・・魔槍創成(ランス・ブラックスミス)さまざまな槍を作り出すのだが、手槍という解釈で拳銃、そしてライフルなどの銃も作り出す。

 

 

 神や魔王ですらも恐れる最強の魔女・・・ベヨネッタを師匠とし、ウィッチアーツはもちろん、ウィッチタイムをはじめとした魔女の奥義も極める。

 

 

 だが、大魔獣召喚だけは使用したら服が脱げる恐れがあるために使用したがらない。

 

 師匠より。イッセーにその辺りの乙女の恥じらいを抱いてもらって卒業してもらえとからかわれている。

 

 

 

 契約モンスター・・・バトラ

 

 モスラと同じ種族。 彼女は実は魔女として、そしてのちに契約のカードでも悪魔ではないある破壊神と契約している。それは偶然にもアーシアと深いかかわりがある。

 

 だが、その存在はまだ寝たままで起きないので皆に紹介はしていない。

 

 

 

 

 

 ヴァ―リチーム

 

 

 ヴァ―リ 

 

 白龍皇にしてアギト、オルフェノクの因子を持っているのでミラージュアギトとなっている。

 

 

 

 原作よりも性格は比較的常識人。バトルマニアなのは変わっていないが、彼は原作とは違い白龍神帝になって菜したいことがある。そのためまっすぐに己を高めることに余念はない。

 

 また大変義理堅い。王としての素質ももっている。

 

 だが、原作よりも結構天然でかつすごいマイペース。イッセーからよくツッコミをもらっているボケ役でもある。

 

 その関係か。意外とイッセーとは良いコンビである。

 

 

 アギト・・・実はイッセーと同じでいくつかフォームがあるのだが、ミラージュアギトが一つの到達点かつ、基本形態なので他はあまり出ない。

 

 

 白いアギト・・・赤竜帝の力を取り込み、それと共に白龍皇の禁手化も取り込んだ新たな進化のステージ。

 

   恐ろしい点は自身の技を倍化で増幅させるだけでなく、奪い取る力をも倍化で強化している点である。

 

   普段は十秒間で半減だが、必殺技発動の時は瞬時に、しかも一度に十分の一にすることができる。半減の力などに抵抗がなければ必殺技で瞬時に無力化されてしまう。 

 

  故に二天龍か、それに対抗する能力持ちでないと並大抵の相手は勝負にもならない。 

 

 

  デルタギアと相棒のバイク(?)ジェットスライガーを得る。

 

 ここからヴァ―リの進化が始まる。

 

 

 白龍皇アルビオン 二天龍の一角。

 

 人化時・・・???

 

 

 

 契約モンスター ベノスネ―カ― 

 

  クレアの友であり、ライバル。性格は姉御肌で、メタルゲラス、エビルダイバーをひきいる女傑。知略にも長けており、ヴァ―リにとって良き参謀でもある。

 

 人化時・・・恋姫無双の紫苑。

 

 

 キングギドラ・・・二体のキングギドラの内、破壊を司る。こちらは恐竜時代に恐竜を食い尽くし足りなど、暴虐の限りをつくしている。

 

 

 その正体はゴジラが戦った宇宙のギドラと未来世界によるギドラ、そしてモスラが戦った狡猾なギドラの集合体。

 

 ヴァ―リはその制御と対話に苦労することになる。

 

 

 

ヴァ―リチーム 

 

 とりあえず名前だけ・・・。

 

 

 仮面ライダーバロン

 

 仮面ライダーエターナル

 

 仮面ライダーレンゲル

 

 仮面ライダーカイザ。

 

 

 この三体は参戦しております。

 

 

 

 

 

 

 

現在参戦作品 仮面ライダーシリーズ【昭和、平成も含む】DMC ベヨネッタ 鬼武者 ダイの大冒険 ゴジラシリーズ モスラシリーズ 平成三部作ガメラ メトロイド ロトの紋章 るろうに剣心 変身忍者嵐  

 

 

 今後参戦予定  アカメが斬る リリカルなのは 聖剣伝説3 ウルトラマンシリーズ トリコ

 

         バトルスピリッツシリーズ 

 

 

 



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プロローグ
プロローグ 十年前の大冒険


まずはプロローグです。

 お試し版みたいなものです。

 この話だけでどの作品のクロスオーバーかわかってもらえるかもしれません。

 かなり・・・かなりめちゃくちゃです。

 とくにイッセー・・・かなり凄いことになります。7



 それは、まだ俺達が小学五年生くらいの時であった。

 

「・・・なんか変なメンツだな。」

 

 俺・・・兵藤一誠。皆はイッセ―と呼んでくれるわけだが、そんな俺は妙な連中と大冒険を繰り広げていた。

 

「・・・俺・・・そんなに変か?」

 

 銀の髪をした外国人の少年―――ネロが少し拗ねたようにいう。

 

 結構嫌味な奴だが・・なんだかんだ言って俺と同じくらいに熱く良い奴だ。

 

 ただ、少し捻くれているだけのツンデレだと俺は思っているぜ。

 

「おい!!なんだその温かい目は!?まるでやんちゃな弟を見守るような!!?」

 

 気にするな。お前がすっごく良い奴なのはよく分かっているから。

 

 家族想い・・・姉ちゃんみたいな人を大切にしているのもな!!

 

「まあまあ。気にしてもしょうがないと思うよ。」

 

 それに女の子のように長い黒髪をした少年――――晴人が応える。

 

 女の子だったら絶対に良かったのにと思う。

 

 巫女服着ているから女の子だと思ったくらいだ。

 

「女の子みたいなの・・気にしているのに・・。姉様が無理矢理着せてこんな事になるなんて・・・。」

 

 それだけのスペックを誇る羨ましい奴だぜ!!

 

 それを弄る姉って・・・すっごく美人な予感!!

 

 でもなぜだろう、とんでもないSッ気を感じるぜ。

 

「変ねえ・・・勘弁してほしいよ。」

 

 そこに少し気弱な茶髪の少年―――渡が乗ってくる。

 

 こいつ気弱だと思うけど、結構やる時はやる男だ。

 

 それに楽器がすっげえうまい。歌も思わず聞き惚れてしまうくらいだ。

 

 気弱で引っ込み事案・・・まあ根暗だが、俺に無い物を持っている。

 

「ねえ・・・君今僕のことで失礼なこと考えているね。」

 

 それとすごく勘がいいのと地獄耳なのも追記しておくぜ。

 

「はあ・・・。まあ、ここまで来たのも何かの縁かな?」

 

 金髪の少年――――砕牙(サイガ)は少し面倒臭そうだが、笑っている。

 

 堅物なくらい真面目な奴だ。ぶっきらぼうだし。だが、きちんとこちらの言い分も聞いてくれるし、それでいて俺達の事を一番に考えている。

 

 口よりも行動で示す奴なんだろうな。

 

 勘違いされやすいけど、こいつ・・・すっげえ厳しくも優しい。

 

「しかたねえ。なんとかしてやるよ。面倒くさいけど。」

 

 面倒といいながらも頼もしいぜ。

 

「もっと鍛えんとだめのようだな。ハハハハ・・・うん、今からでもマラソンを。」

 

『待てい!!』

 

 そこに白髪に黒い肌の奴――鋼鬼こと鋼兄。陽気に笑うが、どんな困難でも前に立って俺達を引っ張ってくれる頼りになるみんなの兄貴だ!!

 

 鍛えることを第一に考えている筋肉馬鹿だけどな!!

 

「はあ・・・このトレーニング馬鹿が・・・。」

 

 ネロも結構痛烈な皮肉を飛ばす。

 

「すまんネロ。だが、響鬼さんを目指しているからには、日頃から適度な修行は必要なんだよ。」

 

「・・・今でも十分すごいのにか?」

 

「冗談だろ。人間ってすげえな。」

 

 鍛えているおかげか鋼兄。落石を拳で割った。サッカーボールほどの大きさを拳で割るって・・・どんな鍛え方をしている!?

 

「鍛えてますから。」

 

 そう言いながらあいつはシュッと前に出す、どうも師匠の癖らしくてそれが移ったらしい。

 

 一体どんな化け物師匠なんだ?

 

「よっしゃぁぁぁぁぁぁ!!とにかくここから脱出だ。」

 

 まあ、俺がこんな変なメンツと会ったのは本当に偶然であった。

 

 たまたまその場に居合わせ、ある遺跡の崩落に巻き込まれたのだ。

 

 そこで六人は遺跡のトラップや変な怪物に対して力を合わせて戦っていた。

 

 ネロは持ち前の戦闘センスを生かして遺跡の中にあった大型の剣で。

 

 ハルは実家で教わった退魔の力。

 

 王子は細い棒を社交ダンスを踊っているかのように優雅に舞って振るう。

 

 サイは変わった形をしたナイフ。彼が言うに、ソウルメタルという特殊な金属で出来たたものらしい。すっげえ重くて俺達は持てなかったぜ!!

 

 何故か鋼兄とネロは簡単に持てたがな!!

 

 それとその鋼鬼は・・・体一つでそれ以外は何もいらねえ!!

 

 あいつ全身が凶器だ。

 

 そんなあいつらに比べて俺は普通だ・・・普通すぎる!!

 

 そこまですごい事は出来ねえのが悔しいぜ。

 

 まあ、そんな時だったぜ。

 

 とんでもない奴が出てきたのは・・・。

 

 

 

 前代未問の強敵。

 

 まだ子供の俺達に大型のドラゴンゾンビは荷が重すぎる相手。

 

 皆・・・倒れている。

 

「はあ・・・はあ。」

 

 俺を除いてだ。

 

「やらせねえ・・・。」

 

 立っているのは意地だけだ。。

 

 皆・・・一緒に戦って分かっていた。

 

 すっごく良い奴らだとな。

 

 死んでほしくねえ。俺だって命は惜しいし・・・こんな化け物すっごく怖い。

 

 だがよ・・・今が意地を張る時なんじゃねえか?

 

 どうしようもない。何もできないガキとそれを小指で簡単に殺せそうなドラゴンゾンビ。

 

 絶望するしかねえ。

 

 だがよお・・・吠える事くらいは俺にだってできるぜ。

 

「俺の・・・。」

 

 声に出すと・・・不思議だ。身体の震えがなくなる。

 

「俺のダチ公に・・・手をだすんじゃねえええええええぇぇぇぇ!!」

 

 だから力の限り叫ぶ。せめて俺だけ狙えと。

 

 だが、俺の渾身の雄叫びに意外な奴が応えやがった。

 

――――――力が欲しいか?

 

 それは内側から聞こえてくる声。

 

「誰だ?」

 

 それは・・・多分俺にしか聞こえない声。

 

――――――お前は力が欲しいか?

 

 だが、確かに問いかけてきている。

 

 今俺が最も欲しい物を・・・。

 

「・・・ああ。欲しい。」

 

 迷う理由はねえ。

 

「ほしい・・・力が・・・欲しい!!」

 

 このどうしようもなく可笑しくて、どうしようもなくお人好しなダチ公共を守る為の力が欲しい!!

 

―――――いいだろう。ならくれてやる。この赤龍帝の力を。

 

 其の言葉と共に俺の左腕が光る。

 

 すると・・・左腕が赤い篭手に覆われたのだ。

 

――――――確かに面白い。

 

――――――誰だ?

 

 それと同時にもう一つ別の声が聞こえてきた。

 

―――――その熱き魂。私の心にも届きました。

 

―――――お前は何者だ?

 

――――――私は××。もう名も無き神の残滓。

 

―――――カッ・・・神だと!?名もなき神って・・・まさか!?光の・・・。

 

――――――流石は天龍、私の事を知っているようですね。

 

 その言葉と共に、俺の身体に人の形をした光が入っていく。

 

――――――これは私の最後の種。その一つをあなたに。そしてもう一つを・・・。

 

 もう一つの人の形をした者が,ネロの中に入っていく。

 

――――――私の最後の欠片が・・・世界に変革をもたらすことにならんことを・・。

 

 その言葉と共に、俺の腰にベルトが現れる。

 

――――まさかこの力・・・神殺しの竜の力だというのか?

 

 それと同時にもう一体,別の龍が傍に置いてあった銅鏡からでてきた。

 

 それは紅の龍であった。

 

 あいつもどうも俺を見ている。

 

―――――――まさか、あいつと同じ馬鹿がここにもいたか。

 

 声は母さんと同じくらいの歳の女性の声である。威厳溢れる女帝のような声の響きをしている。

 

 おい、人を馬鹿馬鹿言ってんじゃねえ!!

 

 馬鹿なのは認めるが連呼されると腹が立つ。

 

――――――でも・・・あいつと同じ素晴らしい馬鹿。実に心地よい。この世界での私の契約相手にふさわしい。

 

 其の言葉と共に俺の右腕が熱くなる。

 

 右腕を見ると、龍の頭を平べったくしたようなガントレッドが現れた。

 

 なんだ?これ・・・。

 

――――なんだ?お前のような存在・・・私は知らないぞ。

 

―――――知らなくて当然だ。だが、私もこいつが気に入った。契約させてもらうぞ。何・・語る時間はじっくりとある。お前に面白い特典もつけてやれるしな。

 

―――――特典?ほう・・・なら後で話を聞かせてもらおうか。

 

 特典?何にか交渉しているみたいですね?でも・・・俺はどうなるの?

 

 だが、そんな戸惑いもすぐに消える。

 

 腰のベルトが光を放ち始めたからだ。

 

 それに呼応するように

 

 左腕の篭手の宝球も輝く。

 

 右腕のガントレッドの龍の眼も光が灯る。

 

 その光の中、俺は思わず叫ぶ。

 

「・・・変身!!」

 

 

 

 

 そこから先の記憶はない。

 

 気が付いたらドラゴンゾンビの姿は最初から何もなかったように姿が消えていた。

 

 そして、天井に大穴が開いており、そこから助けがきたことだ。

 

 

 

 



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七年後・・・集う者たち。

 とりあえず続きを投稿してみます。

 それぞれの連中のヒロインもここで確定させていきます。

 一人とんでもないことになっている奴がいますがね。

 それともう一作品のクロスも追加しました。


SIDE ネロ

 

 

「・・・懐かしいぜ。」

 

 フォルトアナのデビルメイクライにて俺は片づけをしていた時に懐かしい写真を見ていた。

 

 それは七年前の幼いころ日本である事件に巻き込まれ、共に乗り越えてきた友達と一緒に記念に撮ったものだ。

 

 皆彼方此方汚れ、ボロボロであったが、共に肩を組み合って笑顔だ。

 

「何を見ているの?ああ・・・これってあなたが日本という国に行った時の写真。」

 

 俺が見ている写真を見た女性――――キリエはその写真を見て呆れていた・

 

「あの時は本当に心配したわよ。兄さんと一緒に来ていたあなたが変な遺跡で行方不明になって・・・。」

 

「・・・あの時はホント信じられない冒険をしたもんだぜ。」

 

 あれは俺にとって初めての実戦。そこでの経験は少し前にあった魔剣教団の事件の解決に至るまで生きている。

 

「もう無茶はしないでよ?」

 

「ああ。」

 

 そのおかげで彼は今・・・隣にいる最愛の彼女キリエを助ける事ができた。

 

「じゃあ、買い物にいってくるわ。」

 

 ネロは右手を見ながら思う。

 

「俺はすっかり変っちまったが、他の連中はどうしているのやら。」

 

 小学五年生にしてエロガキだったが、誰よりも熱く真っ直ぐだった一誠ことイッセ―。

 

 おっとりしているが、誰よりも賢く、皆の参謀であり希望だった晴人ことハル。

 

 気弱だが、それでも勇敢で気高さを内に秘めた渡こと王子。

 

 真面目で実直な騎士らしい性格をした砕牙ことサイ。

 

 豪放かつ天真爛漫、それでいて頼れる兄貴だった鋼鬼こと鋼兄。

 

「・・・・・・こっちのごたごたが落ち着いたら会いにいってもいいかもな。だが、そうなるとこの右腕をどういったらいい?」

 

 七年前と今で決定的な違いは右腕にあった。蒼い光を放つ腕に紅い甲殻が纏ったような腕・・悪魔の右腕(デビルブリンガー)となっていたのだ。

 

 それは俺が悪魔の血を引いている証。それも魔界の神を倒した伝説の魔剣士スパーダの血を引いているのだ。

 

 それともう一つ、

 

 あの野郎―――そうダンテの事だ。

 

 あの野郎がある島で消息を絶ちやがった。

 

 どうも魔界の覇王の力を得ようとした魔術師と戦い、魔界に行ってしまったという推測もあるらしい。

 

 だが、俺は不思議とあいつが死んだとは思っていない。

 

 悔しいがあいつは強い。俺なんかよりもはるかに。

 

 少なくとも俺と戦った時は全く本気をだしていねえ。

 

 今度再会した時は必ず本気ださせてやる。

 

 まだ勝てる気はしねえが。

 

「参ったぜ。」

 

 色々と俺なりの悩みにため息をついた時だった。

 

「キャアアアアアアァァァァァァァ!!」

 

 と聞きおぼえのある女性の悲鳴。

 

 いや・・・聞き間違えるはずがねえ!!

 

「キリエ!?」

 

 その悲鳴と共にとっさに愛剣と愛銃をとって外にでる。

 

 そこには気を失ったキリエを抱きかかえた黒い翼を生やした男が空を舞っていた。

 

 細かい状況は分からない。

 

 だが、たった一つだけ重要なことは理解していた。

 

「・・・キリエを離せ。」

 

 あいつらはキリエをさらおうとしていたのだ。

 

「手放すと思ったか?この女には特別な神器が二つも眠っている。」

 

「神器?」

 

 なんだそれは?そんなも今はどうでもいい。

 

 大切なのはこいつらが誰に手をだしたかだ。

 

「フン・・・人間風情が堕天使に勝てるなど・・・。」

 

 黒い羽の天使。悪魔もいれば天使もいてもおかしくはねえな。

 

 俺が思っていたよりも悪そうだ。

 

 そして、実力のほどもわかる。

 

 大した事はねえ。

 

「!?」

 

 それを示すように堕天使の身体は瞬時に伸ばした俺の右手に殴り飛ばされた。

 

 その拍子にキリエを手放す。

 

 そして、そのキリエを抱き止めようとして。

 

「詰めが甘い。」

 

 横から飛んできた光の槍に身体を貫かれながらふっ飛ばされた。

 

 そしてキリエはその光弾をはなった一人の堕天使といった奴が代わりに受け止める。

 

「油断したな。」

 

「すまねえ。だが、目的の女は手に入った。」

 

「ならよし。急いであっちと合流するぞ。」

 

 堕天使たちの足元に転送の魔方陣が形成させる。

 

 だが、あいつらは油断していた。

 

 俺がこの程度でくたばるわけがねえ・・。

 

「キリエエエエエエエ!!」

 

「なっ・・・まだ動けるのか?」

 

 俺は右腕を伸ばし堕天使の足を掴む。

 

 そして右腕を引き戻す勢いでそのまま堕天使の方まで飛ぶ。

 

 このままぶん殴りてえ。だが、あいつらの手の中にキリエがいる。

 

 迂闊に手がだせねえ。

 

躊躇った時だった。俺の周りの光景が一瞬にして変わったのだ。

 

「ぐっ・・・はっ、離れろ!!」

 

 それが転送だと気付く前に堕天使の一体が光の槍を二本発生させ、それで俺の腹にぶっさしやがった。

 

「ぐがはっ!?」

 

「人外だったか。だが・・・これで終わりだ!!」

 

 そして、そのすぐ後に三本目。それを俺の心臓に狙いをさだめ貫いた。

 

「がはっ!?」

 

 俺はそのまま地面に落下する。

 

「悪魔なのか?まあ悪魔ならこれで終わりだ。聖なる力に蝕まれ死んでいくがいい。」

 

 痛てえ。だが・・・まだ立てる。・

 

「まだ・・・まだだ・・・。」

 

「って・・・まだ立つのか?」

 

「おいおいおい。どうする。」

 

 だが、そこに・・・。

 

――――――仕方ない奴らだ。

 

 という言葉と共に無数の光の槍が雨のように降ってきた。

 

「すみません。貴方の手を煩わせてしまって。」

 

 それが全身を貫いていき・・・。

 

 巨大な槍みたいのが俺の胴体を貫く。

 

 それと共に、俺の意識が遠のく。

 

 意識を失う前に見たのは二体の黒い羽をした連中にキリエが連れ去られた姿。

 

 くそ・・・身体が動かねえ・・・。

 

 キリエ・・・キリエ・・・。

 

 そのまま俺は意識を失う。

 

 その前に俺は紅いコートが降り立つのを見た。

 

 

 SIDE???

 

 久しぶりに姿を見たと思えば・・・。

 

 酷いありさまだな。流石に悪魔の血を引いてもこの傷ではもう・・・。

 

 ・・・そうだな。ちょうどこの駒が余っていた。

 

 誰にも使う気にはなれなかったが・・・こいつなら問題無しか。

 

 ん?

 

 兵士の変異の駒が四つだが、そのうち三つを使うことになるか。まあ・・・それが妥当だよな。

 

 これで兵士の駒はあと変異の駒 二つと通常の駒一つ。

 

 こいつはパワーだけなら俺より上なんだから。

 

 勝手にこんなことしてすまねえな。だが、お前は死ぬべきじゃねえ。

 

 だからこういう形で助けてやる。

 

 安心しな。

 

 万が一の事態の時は力を借りるが、それ以外は好き勝手にやればいいさ。

 

 だから・・・死ぬなよ。俺の兵士(ポーン)。

 

 

 

SIDE イッセ―

 

 

 

 俺、兵藤一誠・・・通称イッセ―はため息を突いていた。

 

 学校ではエロ馬鹿三人衆とされた俺に彼女ができた。

 

 それなのにあまり嬉しくない。

 

『念願の彼女ができたというに浮かない顔だな?年がら年じゅう助平なお前にしては?』

 

 我が相棒ながら酷でえ。

 

 まあ間違ってはいねえけど。

 

「だって初めての彼女に嬉しいぜ?まあ・・・訳ありみたいだが。お前も感じているだろ?」

 

 俺の中から相棒がでてくる。

 

 それはすごくデフォルメされたかわいらしいドラゴン。大きさは手のりサイズ。

 

 その名はドライグ。小学五年生の時の大冒険より目覚めた二天龍の片割れである赤龍帝である。

 

 こいつの目覚めと共に俺は色々と神器の使い方を教えてもらっていた。

 

 ちなみに本来なら魂だけの存在らしいが、こいつはもう一人の相方がもたらした技術により自立稼働出来る肉体を得ている。

 

 肉体を得てよかった事を聞くと。

 

――――――うまい飯がくえる。人間はこんなにもおいしい物を食べていたなんてな。

 

 この通り、食いしん坊ドラゴンになっている。

 

 おかげで家でもペット扱い。

 

「馬鹿でも何も考えていないわけはないわね。」

 

 それが俺の首に巻きつくように現れる。

 

 これもまたデフォルメされた赤いヘビの様な龍。

 

 俺の姉貴みたいなこいつの名前はクレア。正確にはクレアーノ・ドラグレッター

 

 種族名はドラグレッタ―らしいのだが、それじゃ味気ない。

 

 だからその・・・名前を与えた。

 

 ドライグと混同する恐れもあったしな!!

 

 ちなみに名前をあげると。

 

――――――もうこの馬鹿から離れられないわね。

 

 となぜか頬を染めていやがる?何か変なことをしたのか?

 

 この二体の変な龍に憑かれている俺。

 

 そんな俺は次の何かに備えるために鍛えている。

 

 まあ直感で感じ取っている。まだ何かが起こると。

 

 あの大冒険の後・・・妙に勘が冴えるようになったんだ。

 

 その勘は必ず当たる。しかも危機的な状況でそれは特に。

 

 もうすぐ何かが起こる。それを察して俺は鍛えている。

 

 今もこうやってランニング。ドライグとクレアの力を生かすために空手もやっている。

 

 魔力もカスで才能は全くねえって相棒から聞いた時は相当へこんだが根性で頑張っているぜ!

 

『根性。相棒は自分に正直だけでなく、根性の塊だな。善くも悪くも。』

 

『言い得て妙。それでこそイッセ―ね。助平根性も含めてだけど。』

 

 相棒達はその辺はよく分かっている。

 

 もうプライベートは無いも同然だぜ。

 

 まだ禁手(バランスブレイカ―)には至っていないが、それなりに戦える程度になっている。

 

 まだあった事はないが悪魔、天使、堕天使の存在も知っている。

 

『そして、あいつは堕天使だ。それでも明日デートにいくのか?』

 

「・・・なんか放っておけねえ。何か・・・・何か内に抱え込んでいる気が・・。」

 

『・・・その感性の鋭さ。やはり・・。』

 

 俺の言葉に相棒達は少し考える。俺の鋭い勘に思うところがあるらしい。

 

『よくも悪くも相棒は真っ直ぐだ。全く・・・しょうが無い奴だ。』

 

『はあ・・本当に馬鹿。救いようが無いくらいにね。だからこそ・・・私達がいるのよ。』

 

 かなり気位の高いドライグだが、七年間の間に口調も砕けた物になっている。

 

 クレアも口調はすごく辛辣だが、色々と頭が上がらない。なんか姉みたいだ。

 

 お互いにもう気心を知った仲である。

 

『だが忘れるな。お前は神滅具を持つ人間。そして・・・。』

 

「アギトの力だろ?今のところ変身なんかしねえぞ?」

 

 どうも俺にはもう一つ変な力があるらしい。

 

 ある一定段階に達すると人としてかけ離れた力を得ることができるのだと。

 

『こういったところは本当に鈍感よね。』

 

『まだ力が完全に目覚めていないだけだ。おそらく相棒はもう力になじんでいる。さっきの会話の中でもそれを確信させられるほどにな。』

 

 今の会話の中にそんなのあったか?

 

「そうか?そんな風にはちっとも・・・」

 

 まったくわからん。そう首をかしげていた時だった。

 

「!?」

 

――――――くそ・・・このままで終われるかよ・・・。

 

 誰かの声が聞こえてきた。

 

『どうした?』

 

 その声がした方向は・・・わかる。あっちだ!!

 

 夢中で山をかける。そして、俺はその声の主を見つける。

 

 そこには俺よりも背の高い青年が腹と胸から血を流して倒れていた。

 

『・・・これを感じ取っていたのか。だが、もう・・・。』

 

「うう・・・。」

 

『!?』

 

『嘘でしょ!?どう見ても致命傷じゃ・・・。』

 

 手遅れと相棒達が言う前にそいつは息をしていた。

 

『・・・こいつ・・・人間ではないのか?』

 

『私達の力を使いなさい。警戒をしたほうが・・・。』

 

 相棒達が言いたい事は分かる。確かにこいつの右腕は普通ではない。

 

「そんなの関係ねえ。」

 

 だが、それは後だ。

 

『助けるというの?』

 

 こいつは悪い奴じゃねえ。何となくだがそう思う。

 

「重い・・・。」

 

 その時俺はしらなかった。

 

 まさかあの時の冒険仲間の一人と再会していたことなんて。

 

 

 

 

 一方他の面々もまるで何かに引き寄せられるかのように集結しつつあった。

 

 

 

SIDE ???

 

 

「情けないとしか・・・いいようがないね。」

 

 俺は今囚われている。

 

 どれだけ痛めつけられたのか覚えていないくらいにぼこぼこにされている。

 

 ははは・・・痛みすら感じない。

 

『怪我と、人質さえなければこんな事にならなかったのにな。』

 

 俺の中であいつが悔しそうに唸る。

 

「・・・レイちゃんを止めないと。あいつ・・俺のために・・・。」

 

 そんな俺を助けるために・・彼女は罪を犯そうとしている。

 

『まだ力も戻らず、傷も癒えない。時を待つしかない。』

 

「くそ・・・。何もできないのか。せっかく姉様の居場所が分かったというのに!!」

 

 俺の名前は晴人こと―――ハル。

 

 傷ついた身体で暗闇につるされた魔法使い。

 

「諦めないぞ。まだ・・・希望はある。」

 

 そして、其の魔法は皆の希望のためにある。

 

「俺が・・・最後の希望だ。」

 

 俺は待つ。必ずチャンスがくると信じて。

 

 

 

 

SIDE???

 

 私はこっそりとこの世界にやってきていた。

 

 それはある目的のために。

 

「ふふふ・・・ついにBDゲット。」

 

 魔法少女☆ミルキー。私が愛してやまない魔法少女の中でも・・・飛びきりのお気に入り!!そのBD(ブルーレイディスク)を買いにきていたのだ!!

 

 眷族や通販でもいいけど、やはり直接買うのに限るのだよ!!こういうのは。

 

「さあて、冥界に帰って思う存分。」

 

 だが、そこで私はある邪悪な気配に気付く。

 

「おかしいな。ここに陰囚なんてあったのかな?」

 

 それは冥界とは違う異界――魔界の住人。

 

 この世界に天界と冥界以外に二つの魔界と幻界がある。

 

 そこには大変危険な住人がおり、私達の世界を脅かそうとしている。

 

 そしてこれは魔界の住人である。

 

 黒くやせ細った身体にヤギの角と蝙蝠の羽を持つそれは私達なんかよりもはるかに悪魔らしい。

 

「なんでホラーが?この地区は出ないように結界などで処理しているのに。」

 

 ホラー。それは人間を喰らう存在。私達からしても忌むべき存在。

 

 いたのはまだ憑依していない素体ホラーである。

 

 それが数体。

 

「・・・・・・ちゃっちゃと元の世界に送り返してくれようかね?」

 

 雑魚もいいところだ。

 

 でも、私は少し油断をしていた。

 

 突然、別のホラーが現れたのだ。

 

 それは因果のシルエットに憑依したホラー。

 

 これは血ぬられた木に憑依した木の化け物のような姿をしている。

 

「ぐっ・・・しっ・・・。」

 

 それが私を蔦で縛り上げる。

 

 縛られた私に向かって無数の素体ホラーが襲いかかろうとするが・・。

 

 それが雷鳴と共に放たれた一閃によりすべて消し飛ばされる。

 

 いたのは黒鋼の鎧を纏った騎士。兜は狼を思わせる作りとなっており、そこに竜を思わせるような角が後ろに向けて伸びている。・。

 

 両腕はヒレのような刃と杭のような物が付いた小手。両足は踵がまるで車輪のようなものがついている具足になっている。

 

 その手には銀の刃と黒に金の文様が書かれた刀身の剣。

鍔元に赤い宝玉の様な物が埋め込まれている。

 

 そして額と両拳には竜の頭を模したような蒼い紋章が光輝いている。

 

「魔戒騎士。」

 

 私はそれがどういう存在が知っている。

 

ホラーを狩り、人々を守ることを使命とする魔戒騎士。

 

 その一人だと。

 

 でも、額と両拳に紋章がある騎士は初めて聞く。

 

 木のホラーが私に向けて先端を槍のように尖らせた触手を素早く突き立ててくる。

 

 それをその騎士は私の前に立ちふさがり、その剣で斬り、そして鎧の身体で受け止めた。

 

「あ・・・。」

 

 助けてもらった。それに気付いた時にはその騎士は軽く剣を振るい、私を縛っていた触手を切り裂いていた。

 

 血が出ないように剣に緑の炎を纏わせている。

 

「逃げろ・・・。」

 

 そして、その騎士はホラーと対峙したまま、背中越しに私に逃げるように促す。

 

「・・・・・・。」

 

 そして黒鋼の騎士は歩く。

 

 ホラーが狂ったように触手を伸ばすが、それを次々と剣で切り払いながらゆっくりと近づく。

 

 相手からしたら絶望するしかない光景だろう。

 

 彼は一本の触手を片手で掴み、そしてそのまま・・大樹のホラーを引っ張る。

 

 巨大な根で地面を支えているホラー。

 

 根が地面からひっこぬかれ、そのままホラーは空中に放り出されたのだ。

 

 片手でそれだけのパワー。どうやったら発揮できるというのか?

 

 彼はとっさに手にした剣を逆手に持ちかえる。

 

 その剣に緑の炎が宿り、そのまま飛び上がり切り裂いたのだ。

 

 炎に包まれながら声なき悲鳴を上げながら消滅していくホラーを背に、着地し剣を鞘に納める彼。

 

 完全に消滅したのを確認してから彼は鎧を解く。

 

 そこにいたのは金色の髪をしたまだあどけなさの残る少年がいた。

 

 白のロングコートのような衣を来て、手には蒼い色の鞘に収まった剣。

 

 額と両拳にあった青い光の竜の紋章はまだ輝いていたが、すぐに光は収まる。

 

「なんでこの地域でホラーが?ここはグレモリ―の領域で、出ないようになっていたはずだろ?」

 

『誰かが人工的に呼び出したとしか考えられない。悪魔達からしても契約対象である人間がホラーに喰われるのは避けたいはずだ。』

 

 少年の言葉に銀の首輪が喋る。ちょうど喉元に顔のようなものがある。

 

「あっ・・・あの・・・。」

 

「・・・はあ。記憶を消すのはどうする?」

 

『やめとけ。あのお嬢ちゃんは悪魔だ。はぐれではないみたいが、記憶消去の術は効かんぞ?』

 

「・・・だから夜もいるというわけか。ホラーも悪魔は食べないし。まあ裏の連中なら問題ない。面倒なことがなくてよかったよ。」

 

 少年はため息を突きつつその私の方を見る。

 

 すごく・・・格好いい。

 

「この件を仲間に伝えるかどうかはあなたにまかせます。でも安心して、こいつらは私が必ず狩る。」

 

 その笑みは頼もしいものである。

 

「/////!?」

 

 その笑みに・・私の心に強烈な一閃が叩き込まれる。

 

「だから少し待ってくれ。すぐに心地いい夜の時間を取り戻してあげるから。」

 

 彼はそう言ってコートを翻してその場から歩き去る。

 

「・・・・・・。」

 

 彼女はそれを黙って見ていることしかできなかった。

 

 その背中、その頼もしさ、私が知っている数多くの猛者と何かが違っていた。

 

 これがのちに数々の武具を使いこなし、異なる世界にもその名を轟かす異界の竜の騎士の力を持つ黒龍騎士・・狼龍(ロウリュウ)の称号を持つサイガ。

 

「・・・・・・格好いい。あんな殿方・・・初めて・・。」

 

 これが彼と私、五大魔王の一人であるセラフォル―・レヴィアタンの馴れ初めである。

 

 私はしばらく呆けたあと・・・冥界の屋敷に戻る。

 

 あまりに惚けていたので抜け出していた事を叱ろうとしていた皆も逆に心配する始末だ。

 

「ねっ・・・姉様?いっ・・・一体どうしたのですか!?」

 

 ソ―ナたんもどうしたものか戸惑っているよ。

 

 はは・・・そうだね。

 

 普通ではないのは分かっている。

 

 これは・・・きっと・・・。

 

 どれだけ呆けていたのだろうか。

 

 時間の感覚すらもあいまいだ。

 

 でも・・・もう私が次にとる行動は決まっていた。

 

「セラフォルー様・・・その食事の用意が・・・気分が悪いようでしたら・・・。」

 

 その声をきっかけにして私は立ち上がる。

 

「・・・決めた。」

 

「えっと・・・何がですか?」

 

「あの子・・・私の物にするわ!!」

 

「へっ?あの子って誰の事ですか?その・・・。」

 

「すぐに調査と交渉に長けた者を集めなさい。今から会議を始めるわ。」

 

「はい?いっ・・・いきなり何を!?」

 

「い・い・か・ら!!集めなさい。集めている間に食事はいただくわ。」

 

 仮にも魔王なのだし、呆けたまま待つのはつまらない。

 

 絶対にみつけだす。

 

 そしてみつけたら堕としてあげる。

 

 そのためにはまず・・・彼の事を徹底的に探して、調べないとね。

 

 元老院に直接聞きにいこうかな?それが手っとり早いわ。

 

 今の内に交渉のカードを考えないと。

 

 ふふふ・・・覚悟して待っていてね。

 

 この私の心を奪った責任・・・取ってもらうから。

 

 

 

SIDE サイガ

 

――――――ゾク!?

 

 言いしれない悪寒と共にとっさに剣を抜き放つ。

 

『どうした?』

 

「いっ・・・いや・・・。なんかものすごいプレッシャーを感じたような。まるで父さんから昔に聞いた大魔王を思わせるような凄まじい何かを・・。」

 

『・・・俺は何となくその原因は分かるような気がする。』

 

 首元で私の相棒、エイガが呆れた声をあげる。

 

「なんだよ。何か悪いことをしたのか?」

 

『悪い事していないからこうなったんだ。はあ・・・恐ろしいまでの勘を持っているのお前の父親と同じで鈍感すぎるぞ。絶対にお前は後で痛い目にあうぞ。』

 

「そうか・・。父さん結構鈍感だったの?」

 

『ああ。母さんもやきもきしていたらしいぞ。』

 

 私の父と母は幼いころに亡くなっている。

 

 だが、二人は確かに私に大切なことを遺してくれた。

 

 母は父と同じ師の持っていた書物。そこには武術だけでなく、心構えも載っていた。

 

 そして父は・・・。私に力を残してくれた。

 

 両腕に宿る光の紋章がそれだ。

 

 そこには力だけでなく父さんや歴代の騎士達の戦いの経験と父さんの想いも宿っている。

 

『この凄まじい力・・だいぶ制御できているな。鎧と剣もうまくなじんでいる。』

 

 其の力は強大で、並の剣や鎧では発動した瞬間に耐えきれずに粉々になってしまう。

 

「まだ一割にも満たないけどね。」

 

 魔戒騎士の中でも異端中の異端とされるほどである。

 

 それで悩んでいた時手を差し伸べてくれた恩人がいる。

 

「鋼牙さん達のおかげだよ。本当に大変だった。でも、まだ完全じゃないから迂闊に全力だせない。成人になったら問題なくなるとは聞いているけど・・。」

 

 其の力は強力すぎる。皆の協力で父さんの剣を使ってこの特性の剣と、それを参考にして新しい鎧も出来上がったくらいだ。

 

 狼龍の鎧は生きている。生きて・・進化をしているのだ。私の力に対応できるように。

 

「とにかく元老院からの指令を果たそうか。ホラーの発生に関してグレモリ―の方々と交渉するようにとだ。」

 

『ああ。確かお前、あの街には思い入れがあったのだな?管轄を希望していたみたいだし。』

 

「・・・ああ。あいつにも会えるな。また会いに行こうか。」

 

 あの街にはイッセ―がいる。数少ない私の友が。

 

 もう一人の友も探している。

 

 風のうわさで悪魔としてここにいると聞いている。

 

 私はあいつにある人達から、そして私自身のプレゼントがある。それを渡したいのだ。

 

 私は二人の友に救われた。今度は私が彼らを守る番だ。

 

 七年間で磨いた騎士としての技と力、そして心をすべて賭して。

 

 

SIDE 渡

 

 僕は引っ越してから傍にあった夜の公園でバイオリンを奏でていた。

 

 満月を照明にして、

 

 奏でられているのはセレナーデ。

 

 満月の下で奏でられるその演奏は幻想的な雰囲気も相まって酔っていく

 

「うん・・・今日もいい音だ。出来もいい。」

 

 その音色に、夜なのに鳥や色々な動物が集まっていた。

 

 そんな彼らに僕は一礼する。

 

「あとは素晴らしい歌姫がいれば完璧なのに残念だよ。」

 

「我・・・唄おうか?」

 

 そんな僕にゴシックロリータ服を着た女の子が現れる。

 

「おや?唄ってくれるのかい?」

 

 僕は少し気障な物言いで言ってみる。

 

「歌という物を覚えてきた。唄ってみる。」

 

 彼女の名前はオ―フィス。どことなく現れる不思議で純粋な心を持つ少女だ。

 

 僕が分かるのはそれだけだが、それだけで十分だった。

 

 共に音楽の楽しさを分かち合えるのだから。

 

「わかったよ。オ―フィス。唄ってみて。それに合わせて演奏するから。」

 

 其の言葉と共に、僕達の小さなライブが始まる。

 

 僕は紅 渡――この街にいると思われる幼馴染からは王子と呼ばれている。

 

 もしかして、明日転校する駒王学園に通っているのかな?

 

「へんなことにならないといいけどな。」

 

 肩に蝙蝠をデフォルメ化したような何かが止まって言う。

 

「ああ。キバット。それに関しては安心してくれ。なんか素晴らしい出会いがあるような気がするんだよ。」

 

「それは一波乱あるな。」

 

 素晴らしい出会いがある予感。それは何かトラブルを伴う僕の中のフラグである。

 

「すばらしいだろ?あっ・・・ルフェイからメールだ。何何・・・へえ・・・アーサーさんも相変わらずのようで。」

 

 僕は明日から始まる色々と素晴らしい予感がする日々に胸をたからせていた。

 

――――――――渡君の探し人・・見つかることを祈っています。

 

 ルフェイからのメールはそう締めくくられていた。彼女は渡がある人を探しているのを知り、応援してくれているのだ。

 

「おっと今度は兄さんからだ?」

 

 その内容は・・非常に心配してくれているメールだ。

 

 全く・・・我が兄ながら過保護すぎるよ。

 

―――もう一人の弟が見つかったらすぐに知らせろ!!兄として仕事を放り出してすぐに駆け付ける!

 

 いやいや、仕事を放りだしたらダメでしょう。

 

 そうツッコミを入れながらも僕は期待してならない。

 

「今度こそ・・・弟に会えるかもしれないな。」

 

 ずっと探していたもう一人の肉親に会える予感に。

 

「サービスだ。もう一曲やるとしようか。」

 

「我も聞きたい。」

 

「そう・・・だったら今度はこれにしようかな?」

 

 彼はバイオリンをしまい、どこからともなく別の楽器を取り出す。・

 

「それ・・・何?」

 

「ギターだよ。こう見えて楽器ならなんでも演奏できる。」

 

 今度はギターを奏でる。

 

 歌詞なき歌と共に。

 

 その音色も優しく、皆の心を穏やかにしていく。

 

 オ―フィスもその演奏を心地よさそうに聞いている。

 

「心地いい。」

 

 僕はこの音楽がある世界に生まれた事をいつも感謝している。

 

 そして、それを聞いてくれる人達がいる事もだ。

 

 幸せを皆で分かち合おう。そして、もっと届けよう。

 

 この幸せが世界のどこかにいる弟にも伝わればいいな。

 

 

SIDE三人称

 

 一方ある山の中では・・・二人の男が大の字になって倒れていた。

 

 木々はへし折れ、岩は粉々。地面のあちこちには大穴がたくさんあいていた。

 

「ぐぐぐ・・・ふはははは・・・。」

 

「ふふふははは・・・。」

 

 二人とも全身ぼこぼこ。でも何故かすっきりした様子で笑っている。

 

「まさか・・・拳でここまで語り合えるとは思いもしなかった。」

 

「こっちもだ・・・ははは・・・・・・どれだけお前は鍛えているのか想像もできんぞ。」

 

「それはこっちのセリフだ。ここまで重い拳は初めてだぜ。」

 

 その様子を見ていた黒い髪をした女性が呆れた様子。

 

 ただし、猫耳に尻尾が生えている辺り彼女は普通ではない。

 

「馬鹿にゃ・・・馬鹿が二人いるにゃ・・・。」

 

 そんな二人を黒髪の猫女こと・・・黒歌は仙術で治療していく。

 

 その間にも二人はすっかり意気投合している。

 

「お前達の事情を聞きたい。」

 

 男――サイラオ―グは青年と黒歌に問う。

 

「お前程の男がSS級・・・いや、お前のおかげでSSS級にまで跳ね上がるまでに実力を高めたはぐれ悪魔―――黒歌を命がけで守っているのには筋の通った理由があるはずだ。」

 

 青年―――鋼の様な銀色の髪と黒い赤銅の様な肌をした彼はサイラオ―グの目を見て、その眼の輝きを確認した後、不敵な笑みを浮かべる。

 

「・・・ああ。あんたになら頼めそうだ。」

 

 先ほどまで殴り合いをしていた二人がえらい息の合いよう。

 

「あっあれ?なんで二人ともそんなに・・・。」

 

 先ほどまで壮絶な殴り合いをしていた二人がすっかり仲良くなっている。

 

 それに戸惑う黒歌だが、難しいことではなかったらしい。

 

『拳で語り合った仲だからだ!!』

 

 細かいことはもう不要である。

 

「・・・はあ。」

 

 黒歌、熱い二人に押され気味である。

 

「だったら話させてもらうぜ。実はな・・・・・・。」

 

 そうして彼はサイラオ―グに二人の事情を話す。

 

 黒歌がどうしてはぐれ悪魔となったのか。その訳を。

 

「そうか・・・なら俺が動こう。なんとかする伝手もある。証拠は・・・。」

 

「これにゃ。それと・・・・・・。」

 

 黒歌は今まで温めていたその証拠を彼に渡す。

 

「それと、妹・・・白音だったか。その件なら耳にしている。今は小猫という名で悪魔の眷族となって暮らしているぞ。」

 

「・・・そうか。幸せかにゃ?」

 

「あそこは眷族を家族として大切する一族だ。例の件も必死で彼女を庇ってくれたらしい。酷い目にあったらしいが。」

 

「・・・・・・・。」

 

 酷い目にあった。その言葉に黒歌の耳がたれる。落ち込んでいる証拠だ。

 

「あと・・・まだあいつは生きているのか?」

 

「生きている。今も小猫を諦めていない。再三トレードをしようと画策している上に、黒歌の捕獲、または殺害に懸賞金までかけているくらいだ。」

 

「だから次々と変な連中が襲いかかってきたわけか。ふざけたことをしてくれる。手段を選ばない奴までいたおかげで俺の身内にまで被害が出たんだぞ!!」

 

 全身から怒気を発する彼。

 

 それだけで山が震える。

 

「凄まじいものだな。どれだけ鍛えればここまでの気を発せられる?」

 

 その怒気に軽く驚くサイラオ―グだが、すぐに気を取り直す。

 

「全員、お前と鬼の修行とした彼女が撃破したのだろ?おかげで俺がここまで出向くことになったが、おかげで裏が読めて助かった。」

 

 むしろサイラオ―グは納得すらしている。これだけの怪物相手なら、今まで討伐に来た連中が全員返り討ちになって当然だと。

 

 現に黒歌の手にはトランペットの様な銃がある。

 

 そして、一通りの事情を話し・・・。

 

「そうだ・・・あんたにならこれを渡せそうだ。」

 

 青年は懐からある物を出し、それを手渡す。

 

 それは・・・音叉のようなものであった。

 

「これは、鬼の変身に使う・・・。」

 

「あんたの鍛え具合から考えて、少し方向性を変えればすぐに使えるなと思ってよ。よかったら受けとってくれ。これも渡す。」

 

 それは金色の石がついた黒塗りの二つの棍棒と、太鼓のようなもの。

 

「俺に話していたあの鬼になれと?」

 

「あんたに使ってほしい。これは鬼になるためにどんな修行をしているのかまとめた書物だ。これも一緒にうけとってくれ。あんた・・もっと強くなれる。」

 

 其の言葉にサイラオ―グは不敵な笑みを浮かべる。

 

「・・・いいだろう。己を鍛え抜いて変身できるという点が気に行った。これで変身できるまで鍛え直してくれる。お前のオーラが良い目安になりそうだしな。」

 

「俺も今度は変身してあんたと戦いたい。」

 

「・・・そうか、それは楽しみだ。」

 

 二人の全身から闘気が発せられ、気温が一気に上がる。

 

「暑苦しいにゃ・・・。あんたたちが鬼に変身して殴りあったら地形が変わりそうだから勘弁してほしいにゃ・・・。」

 

「この案件が解決したら是非冥界に来てくれ。」

 

「ああ。是非寄らせてもらう。」

 

「・・・あの。」

 

「安心しろ。お前の汚名は晴らしてやる。愛する男の傍に・・・愛する妹と堂々と一緒にいれるようにしてやる。」

 

 その言葉に黒歌は驚いている様子。

 

「えっと・・・いいのかにゃ?」

 

「お前はやると言ったのなら必ずやる。そう言う男だ。」

 

「ふっ・・・まかせろ。それに・・・個人的にその外道も許せん。それと・・・その街に向かうのか?指定の解除には魔王との交渉もある故に時間もかかる。その間に追手が来るぞ?」

 

「それでもいく。こいつが叫んでいるんだよ。何か起こるとな。」

 

 青年の右腕に蒼い篭手が現れる。

 

 その篭手を見たサイラオ―グは軽く驚く。

 

「・・・鬼の篭手。まさかこんなところ見ることになるか。」

 

「かなりレアらしいな。」

 

「ああ。神器と同クラスどころか力を引き出せば神滅具クラスと聞く鬼の遺した魔具。」

 

「まだそこまでじゃねえ。だが、そこまで至るつもりだ。それに、こいつは黒歌がちょろまかした悪魔の駒みたいな奴をとりこんでな。身体が少し変化した。」

 

「ほう。悪魔に似た変な気はそのためか。だったらこっちもそれを引き出したお前と戦いたい物だな。こっちも似たような物をもっているのでな。」

 

「ほう・・・まあ深くは聞かねえ。その方が面白そうだ。」

 

『ハハハハハハハっ!!』

 

「もうだめにゃ・・・誰かこの二人と止めて・・・。」

 

 其の言葉に二人は笑う。

 

「ははは・・・お互いにもっと強くなろうぜ。」

 

「ああ。楽しみにしているぞ!!ん?そう言えばお前の名前を聞くのを忘れていたな。」

 

「俺の名は鋼鬼(こうき)。鋼の鬼だ。」

 

「名のごとく頑丈で気骨溢れる漢だな。」

 

「そっちもだぜ、大王様!!そっちもでかい夢があるみたいだしな。応援しているぜ!!」

 

 二人は拳をぶつけ合い、再戦を誓う。

 

――――――また拳を交えよう。友よ!!

 

 この二人はこの瞬間友となる。

 

 そしてサイラオ―グはその場から姿を消した。

 

「では、向かおうか。お前の妹に会うために。」

 

「・・・いいのかにゃ?」

 

「ヴァ―リは許したぞ。こっちは自由に動くだけだ。」

 

「・・・そうにゃね。そしてあんたもヴァ―リの戦ってみたい猛者リストに載っていることを忘れるにゃよ?」

 

「それはそれで面白そうだ。あいつもどれだけ強くなったのかまた試してみたい。」

 

「はあ・・・気楽でいいにゃ。」

 

 どうも不安そうな黒歌の肩を叩く鋼鬼。

 

「安心しろ。きちんと和解させる。俺がついている。いっただろ?責任は取ると。」

 

「・・・・・・うん。」

 

 この二人実は相当深い仲である。

 

「こんな男に惚れてしまった私の負けだにゃ・・・。」

 

「いや・・・そのな。負けという意味では・・・。」

 

 鋼鬼。顔を赤らめて相当照れくさい様子。

 

「ほう・・・えいぃ!!」

 

 それを見ていたずらっぽい笑みをうかべた黒歌が、飛びついてくる。

 

 彼女が着ているのは胸をはだけた大変露出の多い着物である。

 

「なっ、ななな・・・!?」

 

 たちまち顔を真っ赤にさせる鋼鬼。

 

「むう・・・私のほうが圧倒的に年上なのに生意気にゃ・・・えい!!ぐりぐりぐりぐりぐり!」

 

 そのまま胸を押しつける鋼鬼。顔をさらに真っ赤にさせて・・・。

 

「ブハッ!?」

 

 盛大に鼻血を噴き出す。

 

「ふふふ・・・相変わらず純情にゃ。今の内にすこしずつ慣れてもらわないとねん。出ないと子づくり解禁の時に失血で腹上死はいやにゃ!!」

 

「おっ・・・お前、変なところで対抗意識を燃やすブハッ!?・・・ヤメロ・・・血が・・・血が足りなくなるううううううううう!!」

 

 鼻血を噴き出しながらも二人は旅を続ける。

 

 

 今、イッセ―の運命の始まりと共にかつての仲間達が集結しようとしていた。

 




 さて・・・三つの紋章の正体は何でしょう?

 色々とツッコミは多いと思います。

 異様な強化が確定されたキャラもいます。

 他にも色々とネタはあるのでかけたらと思います。


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第一章 旧校舎のディアボロス
再会と転生しました!!


 皆さま評価ありがとうございます。

 実験的作品ですが、ここでもやらせてもらいます。

 もう一つの作品ももちろん書いていますので安心を。

 これからもがんばって連載させます。





SIDE ネロ

 

 

「ここは?」

 

 俺が起きたのは見知らぬ天井。

 

「起きたか?」

 

「起きたかって・・・。」

 

 立ち上がろうとして身体のあちこちに包帯が巻かれていることをしる。

 

 こいつが手当てをしてくれたのか?

 

 っつ、そうだ。俺は・・・。

 

「まだ怪我が治っていない。無理すんなって・・・。」

 

「どれだけ眠っていた?」

 

 包帯を強引に引きちぎり、俺は立ち上がる。

 

 こんなところでじっとしているわけにはいかねえ!!

 

「お前、傷が・・・・・・。」

 

 もう傷は癒えている。早くキリエを!!

 

「いいから答えろ!!俺はどれだけ眠ってきた?」

 

『落ちつけ。一晩眠っていただけだ。』

 

 その時謎の第三者の声が聞こえてくる。

 

「誰だ?」

 

 人とは違う何かがここにいる!?

 

「おっ・・落ち着けって・・!!」

 

 揉み合っている時赤い光がはっせられ、俺は殴り飛ばされる。

 

「ぐ・・・ってなんだその小手・・!?」

 

 その小手はこいつのみ左腕にあった。そしてその赤い小手に見覚えがある。

 

 それは幼いころの大冒険で、俺達を救うために共に戦った仲間が身につけていた。

 

「おまえ・・・まさかイッセ―か?」

 

 忘れるわけがねえ。それと同じ小手ということは・・・・こいつはイッセ―か!!

 

「なんで俺の名前を、」

 

「俺はネロだ。ほら・・・あの遺跡の冒険で・・・。」

 

「はい?ネロ・・・って・・・えええ!?」

 

 どうやら俺と同じで驚いてくれたようだ。こいつも大きくなったよな。

 

 だが、イッセ―は何故か落ち込んでいやがる?

 

 あれ?どうした?

 

「しっ・・・身長・・・軽く超えられている。しかもすっげイケメンにやっていやがるし。」

 

 なんだそんなことか。

 

 まあ・・・七年前よりもでかくなったの間違いねえがそこまで落ち込む事か?

 

「しかしイッセ―がいるという事はここは・・・日本か!?」

 

『ああ。まあじっくりと話そうか。お前のその右腕についてと、普通の人間ならとっくに死んでいるはずの傷が一晩でなかった様に無くなっている件を聞きたい。』

 

『あなたが人間でないのは明らかだからね。じっくりと話をききたいわ。』

 

「・・・ああ。そう言えばお前の名前も聞いていなかったな。」

 

『私はドライグ。私の説明もまたしよう。』

 

『私はクレアよ。よろしくね。』

 

 こうしてネロは仲間の中で誰よりも早くイッセ―と再会する。

 

 まあ、七年間で何があったのかを互いに話す。

 

 まあ・・・魔剣教団。それにまつわる事件を話したら唖然としやがったしな。

 

 よく生きているなと呆れていたぜ。

 

「それで・・・キリエ姉さんが?」

 

 イッセ―はネロを迎えに来たキリエとも面識がある。

 

「ああ・・・せっかく平穏を取り戻したって言うのによ!!」

 

 やりきれない怒りに全身から蒼いオーラを立ち昇らせるネロ。

 

『凄まじい力だ。なるほど・・あのスパーダの血族なら納得もできる。あいつとは白いのと一緒に戦い、決着がつかなかったからな。』

 

 イッセ―の左肩に止まるちびドラゴン・・・ドライグだっけな?

 

 こいつあのスパーダと戦ったことがあるようだ。決着がつかず互いに実力を認めあった仲だったらしい。

 

 意外な繋がりだぜ。

 

『あなたの友達でよかったわ。これだけの実力・・・普通じゃないし。』

 

 右肩のちび龍・・クレア。こいつ・・なんか生意気だぜ。

 

 でもなぜか・・・やりにくい。何故だ?

 

「イッセ―もだ。まさかその身にそんなとんでもない者を宿していたんてよ。ご先祖様がねえ。」

 

 こんな奴に憑かれているイッセ―もそれなりに普通じゃねえ生活をおくっていたのかよ。

 

「はは・・・まあおかげで鍛えないといけなくなった。」

 

「それなりに強くなっているみたいだな。こっちの件が片付いたら一戦やってみるか?」

 

 それなりの実力は感じる。もう少し少しくらいは鍛えておいて損はねえだろう。

 

「勘弁してくれ・・・。」

 

「はは・・・冗談さ。だが、相当強いというのは間違いねえぜ。」

 

 努力もしているみたいだしな。

 

 俺は立ち上がる。

 

「探すのか?キリエ姉さんを?」

 

「ああ。手当てありがとうよ。」

 

「だったら・・・家に泊っていけ。母さんと父さんは俺が説得する。」

 

 おいおい。助けてくれただけで十分なのに、そこまでしなくていいぜ?

 

「そして、探すのを手伝わせろ。」

 

 この件には悪魔とは違う得体のしれない何かが関わってんだ。

 

「この件はお前と関係な・・・」

 

 関わったらお前の身に何が起こるか・・・。

 

「あの時の仲だろ?それに関係ないとは言わせねえ。もうかかわっちまったから。」

 

 はあ・・なるほど。そう言えばこいつはそうだった。

 

 振り払おうとする手を無理やり取ってくるような奴だった。

 

 全くこのおせっかいめ!!

 

 そんなところはまったくかわっていねえ。

 

「・・・・・・ありがとう。」

 

 だがらこそ、感謝してもしきれねえ。

 

 俺は・・・いい友だちをもった。

 

 俺は普通の人間じゃねえ。悪魔の血を引いている。それでもイッセ―はいつも通り友として接しているのだ。

 

 こいつには敵わないぜ。

 

「まあこの街なら任せろ。とりあえず物騒なものはしまっておけよ。」

 

「分かっているって。」

 

 おかげで冷静になれた。まずは情報を集めねえと。

 

 

 

 

SIED イッセ―

 

『相棒・・また厄介事にかかわったな。』

 

 ドライクが何を言いたいのか分かる。

 

 はあ・・

 

「・・・予感がしただけだ。何かとんでもない事が起こりそうな。」

 

『・・・いよいよ嵐が来るということね。いざという時は私達の力・・使いなさい。遠慮は何もいらないわ。』

 

「カードね。そうならないことを祈るよ。」

 

 俺の手にはクレアの力が封じられたカードが数枚。一枚一枚が・・・切り札になる。

 

 俺は時計を見る。

 

「あっ・・そろそろデートの時間。」

 

 今日デートの日だったのだ。

 

 さて・・色々と探りますか。

 

 

SIDE???

 

 いよいよこの日が来た。

 

 待っていてハル君。絶対あなたを助けて見せるから。

 

 私はデートをしながら、何度もそう決意を固める。

 

 隣には楽しそうに喋る彼がいる。

 

 本当に楽しそうに。

 

 初めてのデートなのだろう。精一杯背伸びをして、頑張っているのが分かる。

 

 以前の私なら、これを小馬鹿にしていたことだろう。

 

 子供みたいと。

 

 だが、今の私は違う。

 

 二年前にハル君と出会った私は、その温かさを知っている。

 

 だからこそ・・・胸が痛むのだ。そんな彼を私は。

 

 でも、躊躇ったらハル君が・・・。

 

 迷いを振り切るようにして私は決意を固め直す。

 

 夕暮れ。人気のない公園に予定通り彼を誘い出す。

 

「ねえ・・お願いがあるの。」

 

「ん?」

 

 お願いに彼は笑顔で言う。

 

「何?堕天使さん。」

 

 ・・・・・・・・・今なんていったの?

 

 

 

SIDE イッセ―

 

 おっと、驚いている。

 

 そろそろ何かしかけてくると思った瞬間に言ってやったんだ。

 

 これくらいのいたずらは許してもらえるよな?

 

「あっ・・あなた・・・。」

 

「わりぃ・・。あんたが本気で俺をすいているわけじゃねえのはもう分かってんだ。」

 

 其の言葉に激昂した彼女・・・夕痲が光の槍を手に繰り出して構える。

 

「なんでばれたの?気配は消したと思うのに。」

 

「それは企業秘密ってやつだ。」

 

 相棒達のおかげだが、出来る限り神器の事は隠しておきたい。

 

「・・・でも、あなたをやらないと私は!!」

 

 光の槍を手に彼女は襲いかかる。だが、神器を使う気にはなれない。

 

 やはり・・。

 

 だから、その槍を素手でつかみ、彼女の動きを無理やり止めた。

 

「なっ・・正気なの?ただの人間がその槍に触れる。」

 

 手が焦げるように痛い。

 

『相棒!!無茶するな!』

 

『もう・・・堕天使の槍を素手でつかむなんて何を考えて!!』

 

 中にいる相棒達が悲鳴を上げる。まあ・・・仕方ねえだろう。

 

 俺・・バカなんだからよ。

 

「死にたくはねえ。だが、あんたの力にはなれるぜ?」

 

「・・・何を言っているの?」

 

「誰を人質に取られている?」

 

『!?』

 

 やっぱり当った。こいつの手首を直接つかむと感じられる。

 

 誰かを助けたいという悲痛な思い。

 

「あなた・・・一体何者なの?」

 

 そう聞かれても困るよな。

 

―――――――何をしている。さっさとこいつを片づけないか。

 

 どうやら首謀者があらわれたようだぜ。

 

 現れたのは・・・化け物だった。

 

 黄豹の獣人のような姿をしており、頭に天使のような輪がついている。

 

「あの男がどうなってもいいのか?」

 

「わっ・・・私・・・・。」

 

 弱々しい迷いを見せる彼女を見て確信する。

 

「あんたか。」

 

 この化け物がこの子に酷い事をさせていると。

 

「ふん・・・だが、我らの主の脅威となる存在。見過ごすわけにはいかん。」

 

 奴はそう言って掌から灰色の欠片の様な物を出現させてばらまく。

 

 それは瞬く間に灰色の身体を持つ化け物を次々と生み出す。鬼の様な小さな角を持ち、顔の無い化け物。

 

「グ―ルですって!?まさかルテウス・・・あんたワイズマンと!!」

 

 それを知っているらしい夕痲が凄まじい形相でにらみつける。

 

 切りかかる灰色の連中・・・グ―ルっていったか?

 

 なるほど。、これがその何か・・・

 

『・・・遠慮なく使いなさい。調整はできているわ。』

 

 それを見て俺は右腕に小手を出現させ、そこにカードを差し入れる。

 

―――Sword Vent!!

 

 右小手からの音声共にクレアの尾を模した剣が現れ、それで剣で切り裂く。

 

 化け物は火花を散らしなら吹っ飛んで行ったぜ。

 

「神器か?アギトに神器はさほど珍しいものではないが?」

 

 へえ。そうなのかい。でも・・・俺の場合少し事情が特殊でね。

 

『俺を忘れるなよ?相棒。」

 

 ああ・・・忘れるわけねえだろ。

 

 俺は左腕にも小手――赤龍帝の小手(ブースデット・ギア)を出現。そして・・発動させる。

 

――――BOOST!!BOOST!!BOOST!!

 

 ドライクの力・・。敵の出現と共に半ば発動中にしてためておいた倍化の力。

 

――――Transfer!!

 

 この剣に譲渡して一気に薙ぎ払う!!

 

『Dorgon Storm Slash!!』

 

 鋭さと威力を倍化させた一撃に、周りにいたグ―ルは一斉に切断させ、消滅していく。

 

 豹の怪物も巻き込みたかったが、離脱されている。

 

 なんて足の速さだよ。

 

「ぐっ・・・・神器を二つ持っているだと?なるほど・・・確かにこれは危険だ。どのような力かはよく分からないが、その時点でお前を消すに十分な理由となる。」

 

「まさか、彼を狙ったのは・・・彼が二つ神器を持っているから?そんな事って・・。」

 

 神器が二つねえ。本当はもっとヤバいらしいが。その程度の認識で今はいい。

 

 それよりもまずあいつを逃がさないと。

 

「厄介なアギトだな。覚醒したら手がつけられなくなる。」

 

 其の言葉と共に彼女の後ろにもう一体豹の化け物があらわれる。色は黒だ。

 

 手に槍を持った奴はそのまま夕痲に向けて槍を突き立てようとする。

 

 だが、それと同時に俺は気付く。密かに別の攻撃がされていた事に。

 

 俺は・・・決断を下す。

 

 右の小手にはすでに別のカードが入っている。

 

―――――Guand Vent!!

 

 出現したクレアの胴体を模した二枚の盾で彼女を槍、そしていきなり接近してきた黄色豹の攻撃を受け止めつつ・・。

 

 俺は彼女を庇っていた。

 

 どこからともなく飛んできた矢から。

 

 その矢が俺の腹を貫いていた。

 

 

 

side ???

 

 何がおきているというの?

 

「部長どうしたので・・ッ!?兵士の駒が・・・。」

 

 それは私の悪魔の駒、八つの兵士(ポーン)に起きた異変であった。

 

 さっきまでなにも異常は無かった。だが、突然点滅し始めたのだ。

 

 八つ同時にだ。

 

「このような事態・・・聞いた事が無いわね。」

 

 そして、八つの駒が宙を浮き、そして・・・突然姿を消した。

 

「何かが駒を引き寄せたというのかしら?」

 

 前代未聞と言える事態。一体どんな存在が駒を引き寄せるというの?

 

「すぐに駒の行方を追うわ!!」

 

『はい。』

 

 私は急ぎ駒の行方を追う。

 

 この街で何が起ころうとしているの?

 

 

 side イッセ―。

 

「ごめん・・・なさい。」

 

 あれ?

 

 どうして泣いている?

 

「ごめん・・なさい。」

 

 気付けば俺・・・夕痲の泣き顔を見上げていた。

 

 あれ?身体がうごかねえや・・。

 

『しっ・・・しっかりしろ!!相棒!!』

 

『すぐに治療を・・ドライグ!!止血くらいならあんたもできるでしょ!!』

 

『龍のオーラを応用させてなんとか・・・。』

 

 傍にはああ・・いつもの相棒達が実体化しているぜ。

 

 なんだ?あいつら俺に見せた事のないくらいに必死になっているぜ?

 

 クレアもだ?憎まれ口はどうした?

 

 ああそうか、俺・・・死ぬのかな?

 

「死なないで・・・お願いだから・・・死んだらだめだよ。」

 

 はは・・先ほどまで殺そうとしていた相手のために泣いてくれるのか?

 

 結構いい女じゃねえか。こんな奴に好かれている奴がうらやましいぜ。

 

「まとめて・・逝ね。我が主の脅威となるべき者よ。」

 

 黄色豹の怪物が爪を夕痲達に向けて振り下ろそうとしている。

 

 奴が新たに召喚したたグ―ルと言った化け物も手にした槍のような奴を突き立ててくる。

 

 くそ・・身体が動かねえ。

 

 だが、そいつらを赤い爆炎を伴った斬撃がまとめて跳ね飛ばす。

 

 気持ちいいくらいに弾き飛ばされていく奴ら。

 

「ぐがあっ!?」

 

 そして、俺の目に見知った背中が現れる。

 

「ネ・・ロ・・・。」

 

「すまねえ。遅れた。」

 

 それは昨日再会したばかりの俺の・・・幼馴染だった。

 

 

 

side ネロ。

 

「ぐっ・・・・。なんだ貴様。」

 

 豹の化け物か。なんか、帰天というやつで悪魔化した連中を思い出すぜ。

 

 こいつらどんな存在か・・・考えるのはあとにする。

 

 重要なのは・・・。

 

「よくも人のダチに手を出してくれたな。」

 

 こいつらがイッセ―を手にかけたということだ。

 

「人間ではないか。なら容赦しない。」

 

 容赦しない?それはこっちのセリフだぜ。

 

 黒豹の化け物が槍を手にこっちに襲いかかってくるが、その槍を俺は右手でつかむ。

 

「受け止めただと?ぐぐぐ・・・。」

 

 あくびがでるぜ。そんな程度の攻撃。

 

 その槍ごと・・俺はこの化け物の身体を持ち上げる。

 

「どういう怪力をしている!?」

 

「うおおおおおおらああああああぁぁぁぁぁ!!」

 

「がごっ!?」

 

 そして、そのままこいつごと飛び上がり力任せに地面に叩きつける。

 

 地面を陥没させるほどのパワー・・ってあれ?

 

 なんか力が増しているような?

 

「だったら・・・。」

 

 黄色の豹が凄まじい速度で俺の周囲を走る。

 

 そして、両手に手にナイフを出現させ、それで斬りつけてきたのだ。

 

 右腕や左手のレッドクイーンで防ごうとするが、あまりに早く後手に回る。

 

 浅く腕や背、足が斬られる。

 

「我らが使徒に敵うわけない!!」

 

 痛てえし、うっとうしい・・・。

 

「さあ・・・背中ががらき・・・!?」

 

 だが、そのナイフは俺ではく一回弾き飛ばした灰色の雑魚に突き刺さっていた。

 

 俺が右手でとっさに掴んで盾にしたからな。

 

 そして、動きを止めたあいつに俺の額に懐から抜いたリボルバー式の改造拳銃――ブルーローズを突きつける。

 

 当然・・・魔力をチャージした状態でだ。

 

「やっと止まったか。いい子にはご褒美だ。そら・・・たっぷりくらいな!!」

 

 それと同時に引き金を引くと、二発の弾丸と共にあの化け物が簡単に飲み込めそうなくらいに巨大な魔力弾が解き放たれた。

 

「があああああああああぁぁ!?」

 

 吹き飛ばされ、そのまま爆発に巻き込まれる豹の怪物。

 

 おい?やっぱり気のせいじゃねえ。なんか知らんが力が全体的にあがっているぞ?

 

 魔力を込めたこの銃撃もここまで巨大じゃなかったぜ。

 

 威力は分かんねえが、それを喰らってまだ立てるこいつらも頑丈だよな。

 

「ぐう・・・なんだ?こいつ・・・一体何者だ?」

 

 黄色の豹の元に黒豹が駈けよる。

 

 二体とも相当驚いているぜ。

 

「分からない。だが・・・強い。」

 

「一応結構な修羅場はくぐり抜けてんだ。・・・おいイッセ―はどんな感じだ?」

 

『・・・正直、かなり絶望的だ。だが・・・ここで諦める私でも相棒でもない!』

 

『起きなさいイッセー!!あんたがここで死ぬような根性の持ち主じゃないでしょ!!ハーレム王になるって馬鹿げた夢・・・叶えないてどうするの!?』

 

 腹から血を流すイッセ―の命を必死で告ぎ止めようとする二体の竜。

 

 そしてあいつを庇ったと思われる堕天使も涙を流しながら光を手から発してあがいていた。

 

「お願い・・死なないで。私のために・・死なないでお願いだから!!」

 

・・・・・・何とか頑張ってくれイッセ―。

 

 俺ができることは・・・こいつらを蹴散らす事だけみたいだからな。

 

 そんなイッセ―達に向かって無数の矢が飛んでくる。その数はまるで雨のようだ。

 

 俺はレッドクイーンのアクセルを全開にさせて駆ける。

 

 刀身その物に走る機能が付いている。これで凄まじい速度で駈けつつ、剣を振るう。

 

 その剣圧で矢をすべて薙ぎ払う。

 

 その光景に黄と黒の怪物は驚いていやがる。

 

「まだいやがったか。」

 

 矢を放った相手がいる。そして、そいつを見つけた!!

 

 右手を巨大化させ、それを飛ばす。

 

 それはここから百メートル位離れた木である。

 

 それを掴み、そのまま振り上げる。

 

 持ち上げられた木から今度は白い豹の怪物が飛び出してきた。

 

 そいつは性懲りもなく矢を放つ。それを右腕ではじいたと同時に黒豹の怪物が槍を手に黄豹の怪物もナイフを手にして突進してくる。

 

 右腕一本だけじゃ・・防ぎきれねえ!!

 

 その時・・俺の左腕が異質な何かに変化する。

 

「・・・なんだ?これは・・・。」

 

 それはまるでエビやカニのような緑の甲殻に覆われた左腕。

 

 その腕に付いた突起が黄色の刃に代わった。

 

 高質化した両腕で怪物どもの攻撃を受け止める。

 

「!?」

 

 そして、そのまま巨大かさせた右拳でまとめて殴り飛ばす!!

 

『がごっばっ!?』

 

 俺の身体・・どうなっていやがる?

 

 なんで右腕だけじゃなく、左腕まで変化してんだ?

 

 それにその腕を見たあいつらは驚いているみたいだし。

 

「・・・・・まさかギルス?」

 

「なんだと?だが、なんだこのおかしな力の発現の仕方は?」

 

 ギルスってなんだ?それより、左腕まで変わっちまったら・・ってあれ?

 

 意識したらすぐに元に戻った。よかったぜ。

 

 意識すると・・・おっ・・また変化した?

 

 自在に変わるのか?右腕だけでも隠すのは面倒だから助かるぜ。

 

「不完全故にか?だが、何か可笑しい。部分的に力を出すなんて聞いた事がない。それに力に負荷が無い?滅ぶ気配が・・・。」

 

「ぐっ・・・アギトに致命傷は負わせた。目的は達した。」

 

「ああ。こいつに対する対策はまたあとで考えて・・・。」

 

「おい・・・逃がすと思っているのか?」

 

 俺の全身が蒼いオーラで覆われ。背中に蒼い悪魔が現れる。

 

 これが俺の魔人化。悪魔の力を解放した状態である。

 

 そして、その青い悪魔も姿が少し変わっていた。

 

 上半身だけだった姿が、今回は全身が映っていたのだ。

 

『・・・っ!?』

 

 そのプレッシャーに豹の化け物どもは完全に怯えている。

 

 当然だ。俺の数少ないダチに手を出した落とし前くらいは・・・つけないとな?

 

「さっ・・・最悪だ。素でも我らと互角以上なのにそこにギルスだと!?力に目覚め始めているなんて、どうすればいい?」

 

「不味い・・・エレメンツのお方がいないと対抗できん。」

 

 怯える連中。

 

 片付ける前にギルスって言うやつも聞いておかねえとな。

 

 なんか知っているみたいだし。

 

 そんな時であった。

 

 イッセ―の上に光と共に妙な物が現れたのは。

 

 それはチェスの駒。それが八つ。

 

 それがイッセ―の上で光を放ちながら現れたのだ。

 

 なんだ・・・あの駒?

 

 

 ・・・ってしまった!!その隙にあいつらが逃げた。

 

 足が速い連中だったからな。くそ!!今追っても無駄か。

 

 背中の悪魔を戻し、俺はイッセ―の元に向かう。

 

「・・・まさかイッセ―自身があの駒を呼んだのか?」

 

 何故そう思ったのか?どうやったらそんな発想が唐突に出てくるのか分からねえ。

 

 だが、イッセ―の上で宙を浮いている駒を見たらそんな情報が流れ込んできたのだ。

 

 イッセ―の腰にベルトが現れる。

 

 なんだ?まるでイッセ―の身体の中にあったような・・・

 

 そして、その駒がそのベルトに吸い込まれていく。

 

 その駒が八つすべて吸い込み、イッセ―の身体が光輝く。

 

 その姿は一瞬だが、異形の者に代わっていた。

 

 金色の身体を持つ異形へと。

 

 眼の錯覚だと思い眼をこすると、イッセ―の姿は元に戻っていた。

 

 腹の傷も癒えている。

 

「おい。あんた。何が起こったか説明できるのか?」

 

「・・・気づいていたのね。」

 

 俺の言葉に姿を現したのは紅の髪をした女性だった。

 

「・・・さすがに驚いたわ。駒が自分の方から向って行ったと思ったら。でも・・・どうなっているの?」

 

 彼女は首をかしげる。

 

「この子は私の眷族になったはず。でも・・・悪魔にはなっていない?どういう事なの?」

 

「悪魔だと?」

 

「紹介が遅れたわね。私の名前はリアス・グレモリ―。イッセ―を転生させた悪魔の駒の主よ。」

 

 彼女の後ろに黒い蝙蝠のような翼が現れる。

 

 見た目はともかく、人間ではないか。

 

「なんか俺の知っている悪魔とは違うな。」

 

 だが、敵じゃねえ。話を聞く価値はあるか。

 

 はあ・・・イッセ―。

 

 お前が助かってよかったぜ。だが・・・

 

 どうもすげえややこしくも、面倒臭い事態になったみたいだ。

 

 

 

SIDE  イッセ―

 

 さて・・朝起きた時俺は大変混乱したぜ。

 

 どうして学園の二大お姉様であるリアス先輩に裸で抱きしめられているのかな!?

 

 そして一緒に登校にもびっくりだぜ。

 

「うーん・・今日も朝日が気持ちいいな。」

 

「朝日が気持ちいいか・・・。」

 

 リアス先輩がそれの其の言葉に何か考えている。

 

 何時通り朝日が気持ちいいのが何か可笑しいのかね?

 

 そんなリアス先輩と一緒に登校して・・・いつものあの二人には強烈な嫉妬をうけるなど色々な注目の的。

 

 だが、俺はそれよりもふに落ちない。

 

 俺・・・昨日重傷だったよな?

 

 それなのに今平気で歩いているし。

 

「放課後に使いだすわ。詳しい説明はその時に。」

 

 リアス先輩とはそう言って別れた。

 

 なあドライグ、そしてクレア?何がどうなっているんだ?

 

 あれ?二体とも・・・応答が無い?

 

 どうしたんだ?あの日以来。そんな事一度もなかったのに。

 

 それと・・ネロ・・あいつどこに行った?

 

 昨日の事を聞こうと夕痲のいるクラスを訪ねても・・・あいつは休みだし。

 

 訳がわからん。とにかく朝のHRをうける俺の前に。

 

「今日はみなさんに転校生の紹介をしたいと思います。今回は二人です!」

 

 おっ・・転校生か?男か?それとも女か?

 

「さあ野郎ども悲しめ!女子共喜べ!!2人ともかなり高ランクのイケメンだぞ!!」

 

 なっ・・なんだとぉぉぉぉ!?

 

 その回答に俺だけでなく、松田、元浜も絶望していた。

 

「ああ・・神は俺達にフラグを与えてくれないのか?」

 

 ああ・・これでさらに美女のフラグが遠のくぜ。

 

 まあ今朝、俺には朝フラグがあったがな。

 

 というより、先生の異様にノリには突っ込まないでおくぜ。

 

「さあ・・・入ってくるがいい!!」

 

「あいつの学校だけあって、すげえノリノリだなおい!!」

 

「同意するほかないね。でも・・いい空気だ。心地いい活気に満ちているいい学校だと。」

 

「はあ・・まさか学校に行く羽目になるとは。」

 

 あれ?えっと・・・俺の眼は可笑しくなったのかな?

 

 どうして、ネロが学校の制服を来ているのかね?

 

 それとそのネロがどうしてもう一人の転校生と親しげに話しているのかな?

 

「しかもイッセ―と同じクラスかよ。」

 

「ほんとだ。久しぶりだねイッセ―。」

 

 あれ?もう一人の転校生がどうして俺に話しかけてくるのかな?

 

 すげえ格好いいのはわかるぜ?

 

 でもなんで親しげ?

 

「イッセ―。こいつは渡だ。ほら・・あの時の。」

 

 渡?あの冒険のメンバーの?

 

 あの気弱で、根暗だった?

 

「・・・失礼なことを考えているね?相変わらず分かりやすい。」

 

 はい?その鋭さは間違いなく・・・あいつ?

 

「えええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 もう・・何がどうなっていやがる!?

 




 書いていて反省。もっとD×Dの魅力的なヒロインたちを書いていくべきだと。


 ほぼ男の視点だけだぜ。

 ははは・・・・

 あと展開もがんばってはやめよう。ガンガン書いていきたいですし。

 キャラ設定と世界観設定もまたあげます。

 今後もよろしくお願いします。


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鋼の鬼兄貴・・参上です!前編

 遅くなりましたが、今回は二話投稿したいと思います。

 まず第一弾・・・あのキャラが合流です。


SIDE 渡

 

 昼休み。質問攻めになるのを避けるために僕たちは屋上で昼食を食べていた。

 

 2人目の王子様出現とかいっているけど?まあ気にするほどでもないか。

 

 ちなみにネロは・・・ワイルドなイケメンらしい。

 

「ほんと驚いたぜ!!」

 

「いや・・それはこっちのセリフだよ。職員室に行けばネロと合うし。」

 

 転校初日から再会の嵐だよ。本当に。

 

「二人ともイッセ―の幼馴染か。」

 

「まあ男の幼馴染はうらやましくはねえな。」

 

 イッセ―の中学時代からの友達という元浜君と松田君。

 

「・・・お前達がイッセ―と同類なのはよく分かった。はあ・・・まったく学校の三エロ馬鹿と転校初日からお近づきになれるとはおどろいたぜ。」

 

 ネロは痛烈な皮肉を浴びせる。

 

 相変わらず皮肉屋だね。

 

「エロに関してはむしろ誇りだ。それと、分からない事があったら言えよ。ネロは外国暮らしなんだし。」

 

 その程度・・・イッセ―は聞き流してしまうし。

 

「日本語は確かに分かりにくいな。っていうかそこまで世話せんでもいいだろ!!嬉しいとは思わないぜ。」

 

 いや・・・それは苦し紛れすぎるぞ。ネロ君。

 

 現に日本語に大変苦戦しているじゃないか。

 

 漢字もそうだし。結構あの三人がフォローしていたよ。

 

「・・・ツンデレだ。」

 

「男のツンデレなんて見ても何もおいしくねえぜ。」

 

「だからツンデレじゃねえ!!」

 

 ネロ。すっかりイッセ―達と溶け込んでいる。

 

「お前らには遠慮は無用なのはよくわかった。こっちも手加減はしねえ。」

 

 そのようだね。でも安心した。

 

 仲良くやれそうじゃないか。君の様なタイプは孤立することが多いから、

 

「こっちは音楽特待生なんだ。いや・・・本当に楽しそうで。」

 

 本当はこの学校にいるという悪魔からある事を聞きたいのだけどね。

 

「ほう。じゃあ一曲たのむぜ。」

 

「いいよ。そうだね・・・・うん昼だから・・・。」

 

 僕は一曲演奏することになる。いつものバイオリンで。

 

 曲はオリジナル。

 

 さて・・・一曲行きますか!

 

 昼だから活気が出る曲がいいと思ったけど・・・。

 

『・・・・・・・・・。』

 

 あっ・・あれ?なんで演奏が終わった後四人とも無言?

 

 そんなに変だったかな?

 

「・・・まいったぜ。」

 

『おっ・・・おう。』

 

 ネロの言葉に他も三人も頷く。

 

「はあ・・・皮肉もいえねえ。お前すごすぎるぞ。」

 

「そんなことないけど・・。」

 

 そうなのかな?でも満足してもらったのならそれで良しとしましょう。

 

「これからよろしく!」

 

 さて、こっちも食事を・・・。

 

「・・・本当にいい曲。」

 

「って・・・何時の間に来ていたの?オ―フィス。学校だから皆が驚くって。」

 

『!?』

 

 突然現れたオーフィスに他の四人・・・びっくり。

 

「ごめんなさい。でも・・・渡の奏でる音色。全部聞きたい。」

 

 全く可愛い子だ。思わず頭をなでてやりたくなるよ。

 

 撫でたら撫でたで、心地よさそうな笑みを浮かべるのも可愛いし。

 

「仕方ない子だね。でもいいよ。だったらもう一曲。昨日の夜に寝る前に作った君のための曲を・・・・。」

 

「おっ・・おい。なんだ!!?そっ・・そのゴスロリ娘?」

 

「まるで幽霊のように突然現れたような・・?」

 

『コクコクコク。』

 

 ネロとイッセ―のツッコミも最もだけど・・。

 

「僕の音楽のファンなんだ。そして、二人の妹分の中の一人だよ。」

 

 それ以外何も気にする必要はないと思うけど?

 

 その回答に皆言葉を失っているけどどうしたの?

 

「お前・・・まともに見えて、結構、図太い・・いやイカレた神経をしてやがるな。」

 

「芸術家って案外そうじゃねえのか?」

 

 なんかネロとイッセ―は僕の事で失礼なこと言っているし。

 

 僕はまともだよ。まあ・・・一年前に兄と血なまぐさい戦いという名の大げんかをしたけど、それ以外はねえ。

 

 とにかくもう一曲。

 

 事態はどうも・・・放課後にならないと動かないみたいだし。

 

 僕は後ろに金髪の髪をした悪魔の存在を感じつつも演奏をする。

 

 奏でる題は「小さな龍の女の子のためのポルカ」

 

 喜んでくれたらいいな。何となく龍を思い浮かべたんだよ。

 

 さて・・・どう接触したものか。

 

 

 

SIDE イッセ―。

 

 放課後。使いが来てくれた。

 

「部長より話しは聞いているよ。」

 

「やっぱりてめえか。今日ずっと監視していただろ?」

 

 それは木場佑斗。学園内でイケメン王子と呼ばれた奴だ。

 

 こいつからの視線・・俺も実は感じていた。

 

「はは・・・さすがだね。途方もない猛者というのは一目見て分かったけど。」

 

「そう言うお前もできる奴じゃねえか。どうだ?後で手合わせしねえか?」

 

 おいおい、ネロがかなり好戦的だぞ!?

 

 こいつって意外とバトルマニアなのか?

 

「そうだね。是非。それよりもまずは。」

 

「ああ・・・行こうぜイッセ―。」

 

 俺は木場に案内されて旧校舎。そこにあるオカルト研究部の門をたたく。

 

 そこにはシャワーを浴びたばかりの学園二大お姉様である朱乃先輩がいた。

 

 バスタオル一枚という・・なんとも眼福な姿をしているぜ。

 

 ネロは恥ずかしがって顔をそむけている。

 

 こいつ意外と・・シャイなんだな。

 

 そして、もう一人。

 

 小柄で可愛い後輩・・小猫。

 

 その後、リアス先輩もシャワーを浴び、そしてその後自分たちが悪魔だと明かしてくれた。

 

「さて・・・まあ一通りの事情は聞いているわ。あの子からね。」

 

 あの子・・って・・リアス先輩の後ろから夕痲ちゃんが現れる。

 

「あの・・その・・・。」

 

 彼女はどうも俺を殺そうとしたことと、庇われ、瀕死に陥ったことを気にしているみたいだが・・・。・

 

「よかった。無事だったか。」

 

 それでも怪我が無い様子だ。体張って助けた甲斐はあったぜ。

 

『・・・・・・・・・・・・・。』

 

 その一言に、皆絶句しているぞ?どうした?

 

「ねえ。貴方イッセ―の幼馴染よね?昔からなの?」

 

「ああ・・・。変わらない馬鹿だよ。助平で・・もう馬鹿なくらいに人が良い。」

 

 ネロの一言に皆は納得している。

 

 どうした?一体何に呆れている?

 

「それで、あんたの言う眷族にこいつはなったんだろ?確か兵士だっけ?」

 

「えっ・・ええ。」

 

「じゃあ・・こいつも悪魔というわけか。」

 

 はい?転生?悪魔?

 

 俺・・・悪魔になったのですか?

 

「それが少し変なのよ。あなた・・・身体の変化はどうだった?」

 

「朝すっきり起きる事ができましたよ。朝日が気持ちいいと。身体の調子はむしろすごくいいくらいで。なんか前よりすごく力が湧いてくるというか・・・」

 

『!?』

 

 其の言葉に悪魔のみなさんが驚く。どうした?

 

「悪魔は光を嫌うの。だから朝に弱くなるし、太陽の光にも辛くなるわ。それにあなた・・悪魔の翼はだせる?」

 

「えっと・・いや・・・だせませんけど?」

 

「・・・どうなっているのかしら?」

 

 悪魔の翼すら出せない俺。

 

「あなた・・・確かに私の眷族になっているわ。でも、どういう理屈かわからないけど、悪魔化してない。多分・・・もっと別の何かになっているわ。」

 

 どうもイレギュラー発生のようです。

 

「兄様に報告する必要がありそうね。でも・・・まああなたを歓迎するわ。イッセ―、そしてネロ。私の眷族と、その友人として。」

 

 リアスこと・・部長に歓迎される俺達。

 

「わりぃが俺は目的がある。こんなところでちんたらして・・。」

 

 まあネロからしたらキリエを助けるという目的があるからな。学校にいてもイライラを必死で隠そうとしていたし。

 

「安心しなさい。貴方の事情も聞くわ。貴方だって情報が得られた方がいいでしょうに。」

 

「・・・ずいぶん虫のいい話だな。」

 

「まあ・・・イッセ―と同じく貴方も放置できないのよ。だって・・・。」

 

 その後に続く言葉は信じられないものだった。

 

「あなた・・・誰かの悪魔の駒で転生しているわよ?」

 

 おい。今なんていった?

 

「おいおい・・・俺は確かに悪魔の血は引いているが、そんな馬鹿なことが・・。」

 

「事実だもの。その関係で、あなたを一時保護することになったの。でないと主不明ということではぐれ悪魔としてあなたを討伐しないといけなくなるから。」

 

「・・・・おいおいマジかよ!!何がどうなっていやがる?」

 

 隣にいる悪魔の血を引く幼馴染。いつの間にか悪魔になっていました。

 

 だめだ。訳がわからん。

 

―――――――非常に面白い事になっているよね。

 

 そして、その場に第三者の声まで聞こえてくる。

 

 ッて、この声は、渡か?

 

 どうしてここにいる?というよりどこから声を?

 

「誰なの?どこにいるの!?」

 

「ここですよ?」

 

 そして、その声は突然天井から逆さ吊りで現れる。

 

「ども。あなた達に伺いたい事があってきました。紅 渡です。」

 

 現れたのは俺達の幼馴染にして、本日転校してきた渡。

 

『どああああああぁぁぁぁぁ!?』

 

 何故逆さま!?訳が分からん!!

 

 みんなもあまりの事に驚いてイスから転げ落ちている奴までいるぞ!!

 

 お前本当に愉快な奴になったな!

 

 すげえ心臓にわるいぜ。

 

 

 

 

side 木場 佑斗

 

 どうも僕たちの新しい兵士は愉快な仲間達がいるようだ。

 

 僕達でさえ気配に気付けなかったよ。

 

「あなた・・・確か今日転校してきた。」

 

「紅 渡といいます。そうですね。あなた達悪魔からすれば・・十三魔族ファンガイアの王族と言えば・・・。」

 

 ファンガイアという言葉に皆は驚く。それはそうだろう。

 

 吸血鬼に似た側面を持つが、それでも妖怪に続くこの世界の闇で生きる魔族だ。

 

 その実力は上級悪魔や天使、堕天使にも匹敵する個体も多い上に弱点らしい弱点が無いという厄介さ。

 

 それにライフエナジーを食料としており、その対象は人間だけでなく僕達悪魔を含めた数多くの生物が彼らの捕食対象である。

 

 だが、彼らは性質その物は人間に近く、その多くが人間達に溶け込んで暮らしている。

 

 ライフエナジーもその代替エネルギーの研究と共に掟として人間から吸わないようにという流れになっている。

 

 掟を破った相手はチェックメイトとよばれる処刑部隊か王族が直接裁きを下す。

 

 それだけファンガイアの王族は凄まじい戦闘力をもっているらしい。

 

 一年前までファンガイア同士の戦いがあったと聞いた。その際兄と弟の二人がクイーンの件で争い合い、そして、手を取り合い復活させたキングを共に倒して解決させたとも聞いている。

 

 兄がキングを引き継ぎ、他種族との融和を進めているという話だ。

 

 そして、弟は大変優れた音楽の名手だとも・・・。

 

 表世界でもバイオリンの期待の新星とされるほどである。

 

 つまり渡君は・・・。

 

「急な転校で連絡が間にあわないと思いまして、こうしてこちらから挨拶にと。」

 

「そう。すごい子がやってきたわね。目的は?」

 

 部長も呆れ変えているよ。それはそうだろう。今目の前にいるのは・・。

 

 ファンガイアを治める二人の兄弟の内の片割れだ。

 

 下手したら魔王に匹敵する実力を持っているかもしれない。

 

「人探しです。音楽の勉強も表の理由としてあります。まだ誰かはいえませんが、見つかり次第、それを報告したいかと。あとまだすぐという事ではないですがファンガイアサイドからの和平締結の使者もしたいと思っています。平和が一番ですし。」

 

 彼なりにこの街に来たのは事情があるみたいだ。

 

「おい。渡。俺はまだそっちの事情はまったくわからない。だがよ。もしかしてお前・・・本当に王子なのか?」

 

 一誠君の質問に彼は苦笑する。

 

「あの時は知らなかったけど、そうみたいなんだよ。いや・・変な偶然もあるもんだよ。」

 

 この様子だと、自分の身分が分かった瞬間大層驚いたみたいだ。

 

「ファンガイアの王族で、同盟を結びたいという意思があるのなら、客人として迎えないとね。あなたも歓迎するわ。ファンガイアの第二王子様。」

 

 幼馴染の驚きの身分に二人とも口をポカンと開けたまま呆けている。

 

 察することはできるかな?知り合いの秘密がねえ。

 

 ミステリー研究部。

 

 新たな兵士(ポーン)の誕生と共に一気に色々な人が増えたようだ。

 

「ふふふふ・・・賑やかになりそうだわ。」

 

「・・・一気に人が増えると困る。」

 

 朱乃さんはしばらく静観の構えだし、小猫ちゃんは・・・戸惑っているか。

 

 彼女人見知りだからね。

 

 やれやれ・・一気に男が増えたよ。

 

 でもなんでだろう。まだ・・・これで区切りがつくとは思えないんだけど?

 

 

SIDE イッセ―

 

 どうも!!悪魔?かどうかはわかんねえけど、部長の眷族となったイッセ―だ。

 

 今俺がどんな状態なのかまったくわからねえ。

 

 まあ・・・とにかく長生きできるようになったのは間違いないみたいだぜ。

 

 長く生きて、そして・・俺はハーレム王になる!!

 

 そう決意を述べた時、ネロは呆れかえり、渡まで乾いた笑いをするだけで何もいってこなかったぜ。

 

 それと夕痲・・まあ、本名レイナ―レのことなんだけど、やっぱりあいつ相当込み入った事情があった。

 

 自分の相方が人質に取られているのだと。

 

 今彼がどこにいるのか分からない。

 

 でも助けたいと言っていた。

 

 ネロも堕天使に襲われていたというし、何か関連があるのか?

 

 今二人の証言を元に部長達が調べてくれている。何か分かればいいな。

 

 それと・・俺の相棒・・ドライグとクレアが全く出てこなくなった。

 

 ネロから話を聞くに、俺の中に例の駒が入った後に、ある言葉を残して消えたのだ。

 

 薄れ行く相棒達は急いでネロに話していた。

 

―――――進化が始まる。すまん・・それに備えてこちらも神器の調整などで眠りにつくことになりそうだ。

 

――――イッセ―に伝えておいて。私達はあなたの中にちゃんといるって。必要な時必ず目を覚ますわ。

 

 と、伝言を残してくれた。

 

 進化?あのアギトの力のことか?

 

 そう言えば、ネロから追加の伝言で・・・。

 

―――――アギトの力は神滅具と共に秘密にしてやってくれ。お前の・・ギルスの力もな。いずればれると思うが、それでも今は・・。

 

―――――たぶん、私達の目覚めと共に覚醒する。その時に私達も一緒に説明するわ。

 

 といっていたらしい。

 

 赤龍帝の篭手(ブースデットギア)は何となくわかるけど、アギトの力はそんなにヤバいものなのか?

 

 それと似た力、ギルスの力をネロも持っているらしいぜ。

 

 とりあえずだが、俺は神器を出すことはできる。

 

 能力である倍化は結構制限があるみたいだ。

 

 今は三段階・・十六倍までが限界みたいか・・・・。

 

 すぐにBUSTして解除されるみたいだし。

 

 そんな感じで悪魔稼業に手を出そうとした時だった。

 

 部長の元に連絡がはいる。

 

 はぐれ悪魔がでてきたらしいのだ。

 

 ネロとレイナ―レは今回はいねえ。2人は捜索で街を歩き回っている。

 

 その際に部長が駒の特性を教えるついでに俺達も出る事に。

 

 そこで・・・姫島先輩が究極のドSだったりなど別の意味で勉強になった。

 

 だが、一番の問題はこの後だった。

 

「えっ?はぐれ悪魔が結界を突破して侵入してきた?」

 

 部長の元にとんでもない報告が入ってきたのだ。

 

 それは別のはぐれ悪魔がやってきたというものだ。

 

「相手は・・・SSS級はぐれ悪魔・・黒歌?」

 

「えっ?」

 

 その名を聞いた小猫ちゃんの動揺は凄まじい者があった。

 

「姉・・・様?」

 

「別の悪魔・・五十人が討伐のために戦っているけど・・・全滅しそうだから助けてくれ!?どんな冗談なのよ。って・・・。」

 

 凄まじい轟音と共に街全体が大きく揺れた。

 

 震度四はあるな。

 

「なっ・・・・なななななななな!?」

 

 それと共に連絡が途切れたのだ。

 

「SSS級はぐれ悪魔黒歌。討伐困難な相手で有名よ。ほんの一年前までSS級だったのに、突然謎の強化変身能力を得ちゃってね。ウィザードタイプのはずなのに肉弾戦でも手がつけられなくなったのよ。それに・・・どうも凶悪な相方がいるらしくて・・・。」

 

 部長の言っていることはすべては分からねえ。

 

 だが・・・いきなりヤバい奴がやってきたという事はわかるぜ。

 

 俺達は急ぎ現場に向かった。

 

 

 

 




 えっと・・渡さんが大変フリーダムになっています。

 この時点でキバ本編に相当する修羅場をすべて終えていると思ってください。

 それを乗り越えたらあれだけ面白くなると考えています。

 そこから次話につなぎます!


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鋼の鬼兄貴・・参上です!後編

 いよいよ三人目登場。

 そしてさりげなくリアスも原作と大きく違う点がでてきます。

 


SIDE 黒歌。

 

 彼は今怒りに震えていた。

 

「鋼ちん・・・・。」

 

「ひっ・・ひいいいいいぃぃぃぃぃ・・・。」

 

 完全に怯えきった一人の悪魔。

 

 四十は軽く超える人間が倒れ伏している。

 

 鋼ちんの中心には・・・巨大な地割れができていた。

 

 今、彼は鬼になっている。三本角の鬼。

 

 鋼の様な色の皮膚に覆われた鬼。

 

 私が知る限り・・・最強の存在。

 

「黒歌・・・その子を頼む。」

 

 其の彼が怒っている。それはそうにゃ・・・。

 

 彼は凄く優しい。そして義理に厚く、愛情深い。

 

 そんな彼にとって、子どもは宝にゃ。

 

 種族関係無しに、大切にしている。

 

 それをこいつらは人質にした。

 

 捕まっていたのは妖怪・・・九尾の女の子。

 

 京都で良くしてくれた人の娘。名前は九重(くのう)ちゃん。

 

 追われている立場なのを分かった上で受け入れてくれた妖怪達の長の娘である。

 

 その関わりを知ったのか、あいつらは人質にとってここまで連れてきたのにゃ。

 

 しかも、結構痛めつけた。

 

 それが滅多に怒らない鋼ちんを本気で怒らせてしまったにゃ。

 

 私も怒りたかったけど、それを止めてしまうくらいにあれは凄まじいものがあるにゃ。

 

 鋼ちんの怒りはまさに鬼神降臨。

 

 冷静かつ・・・容赦がなくなる。普段は抑えている力を遠慮なく出して来るにゃ。

 

 助け出した方法は大変シンプル。

 

 地面を思い切り殴りつけ、地震と地割れを起こし、その隙に助けただけにゃ。

 

 仙術を応用させて、破壊力と移動速度を冗談みたいに引き上げている。

 

 今の一撃で山が割れたにゃ。

 

「外道が・・・・。」

 

 ああ・・・もう知らないにゃ。ここまで怒った彼を見るのは久しぶり。

 

 前に世話になった猛の皆さんが私を狙った連中の攻撃で傷ついた時以来だわ。

 

 あの悪魔・・・確実に再起不能にゃ。

 

 そんな時・・別の気配がこっちに向かっているのに気付く。

 

 転送魔法だ。

 

「鋼ちん!!増援が来るにゃ!!」

 

「そうか・・・。」

 

 全く動じないのね。むしろ・・・ぞの増援に同情するにゃ。

 

 今の彼・・・もしかしたら魔王すら超えるかも。

 

 

SIDE 木場 佑斗

 

 ・・・凄まじい怒気。

 

 現場に辿り着いた僕達がまず感じたのはそれだった。

 

 その場にやってきたのは僕と部長、朱乃さんだけである。

 

 小猫ちゃんとイッセ―君はいない。というのもイッセ―君は転送魔法が使えない。全く魔力が無いと言っていい故にだ。

 

 小猫ちゃんと共に何とかいけるようにしている。

 

 でも、二人がいなくて正解だったかもしれない。

 

 これは・・・強すぎる。

 

 その中央にそれは立っていた。

 

 それは異形の鬼といえるのだろうか。その全身から立ち昇る気は・・・圧倒的という言葉すら足りないくらいに恐ろしい。

 

 その鬼の後ろにいた。SSS級はぐれ悪魔・・黒歌が。

 

 その彼女の手の中に何故か女の子がいた。

 

 狐の耳と尻尾があることから・・・妖怪だろうか?

 

 彼方此方酷い怪我をしており、それを術で治療しているようだった。

 

「ほう、中々の猛者だな。こいつらの仲間か?」

 

 鬼はこっちの方を見る。

 

 視線だけで、凄まじい重圧が僕達に降り掛かってくる。

 

「いえ。でも救援があったから来たのよ。しかし・・・。これだけの数を相手に無傷。」

 

 部長も冷や汗を流している。

 

「ならこいつらをさっさと片付けてもらおうか。殺してはいないが・・・怒りで加減が上手くできなかった。」

 

 相対した相手は全てかなり酷い怪我を追っているが、辛うじて生きている。

 

 意識もある。口から悲痛な悲鳴が漏れている。

 

 もしかしたらワザと殺さず、意識を落とさなかったのかもしれない。

 

 殺さず、動けないのに、激痛で苦しむように。

 

「私は黒歌さんに用事があるの。今の私達じゃあなた達には敵わないわ。だから、話しだけでもいいかしら?」

 

 黒歌。部長は彼女に用事があるようだ。

 

「私?私も有名になったにゃ。ん?紅の髪?・・・・もしかしてあんた・・・・グレモリ―の。」

 

「ええ。私はリアス・グレモリ―。貴方の妹について聞きたい事があるの。。」

 

 その名を聞いた黒歌は眼を細める。

 

「そうか・・。いつの間にかそんなところまで来たのか。」

 

 鬼も気を収める。敵ではなくなったらしい。

 

 安心した。

 

 あの怒気は、傍にいるだけでこっちの精神をがりがりと削り取る。

 

 三人とも身体の緊張を漸く解く。

 

「・・・事件の聞きたいのか?まあ・・・一応サイラオーグに頼んでいるのだが・・。」

 

「えっ?サイラオーグ?なんであなたがその名を・・・。」

 

 確かその名は大王バアル家の次期当主の名だったよね?部長の従兄で。

 

「ふっ・・あいつと拳を交えた仲でな。その際に色々と頼んだ。」

 

 拳を交えた仲。その言葉に、部長は眼を飛び出すといわんばかりに驚きながらも納得する。

 

「冗談・・・・じゃなさそうね。」

 

 目の前の男。それだけの強さを持っていたのだ。

 

 そして、その部長の元に使い魔である蝙蝠が飛んでくる。

 

 まるで蝙蝠をデフォルメ化したような本当に凄く変わった蝙蝠だ。

 

 

「リアス―ゥゥゥゥ!!」

 

「どうしたの?カ―ミラ?」

 

 ちなみに変わった蝙蝠・・・カ―ミラは女の子らしい。

 

・・・・・本当に蝙蝠なのか?何か別の生き物としか思えないんだけど?

 

 そもそも、ただの蝙蝠が人間と同じものを食べている時点でおかしい!!

 

 でも本人(人か?)曰く蝙蝠らしい。リアス部長も喋れるとても賢い相方としていて、それ以外全く気にしていない。

 

 その時点でもう僕はツッコミをやめたよ。

 

「サイラオ―グからの手紙よ。急いでほしいみたいだから直接持ってきたわ。」

 

「ちょうどいいわ。読ませて。」

 

 それに目を通して、部長はため息をつく。

 

「今、そのサイラオ―グから連絡が来たわ。そうか・・・これが事件の真相なのね。」

 

「根回しがいいな。今度茶菓子をおごらないと。」

 

 鬼は全身を炎で包みながら姿を元に戻していく。

 

 そこには・・・全裸の男が立っていた。

 

 部長も朱乃先輩も人間の姿に戻った彼に驚いているようだけど、全裸故に少し恥ずかしそうだ。

 

 というより・・服はどうした!?

 

 人の姿をするのは分かるけど、その際どうして全裸なの!?

 

 素早く着物を着こみ、彼は言う。

 

「すまぬな。変身するとその度に服をダメにする。改めて名乗ろう。鋼鬼という。」

 

 身長は二メートル前後。

 

 でかい。しかも・・・相当鍛え込まれている。

 

 やや黒い肌が黒鋼に見えるほどの肉体だ。一方で髪は白鋼のような銀色をしている。

 

 先ほどの威圧はすっかり無くなっている。

 

 いるのは無邪気な笑みを浮かべる青年である。

 

「済まぬが・・・彼女の手当てを頼めるか?」

 

 彼女・・・黒歌に抱かれた女の子のことだろうか?

 

 よく見ると九尾の狐のようだ。

 

「ええ。」

 

「それとこいつらを処分も頼む。痛めつけたがこいつらなのでな。」

 

 そうか。だからこの人は怒っていたのか。

 

 多分・・だけど、この人良い人だ。それも多分、強きをくじき、弱者を助けるほどの。

 

 ただ・・・絶対に怒らせてはいけない事だけは分かる。

 

 絶対に地獄を見る。

 

「あなた達を匿うわ。兄様の承諾も得ているから、安心して。」

 

「そうか。本当にあいつには感謝しないとな。」

 

「・・・・・・。」

 

 黒歌が躊躇う様子を見せている。

 

「はあ・・・お前な。ここに来て臆してどうする?決めたのだろう、妹と和解するって。」

 

「そう・・・これは嬉しいわ。」

 

 和解したいと思っている。それを聞いた部長も嬉しそうだ。

 

「私もその問題を何とかしたいと思っていたの。渡りに船だわ。」

 

 小猫ちゃんの問題が片付くということだから。

 

 部長にとって眷族は家族同然。

 

 自分の事のように喜んでくれるのだ。

 

「さて・・・黒歌。お前は先にリアス殿達と行け。」

 

 突然先に行くように促す鋼鬼さん。

 

 どうし・・・!?

 

 僕もある事に気付いて手に二本の剣を取り出す。

 

「あいつらの仲間か?」

 

「ああ・・・。よくも仲間達をやってくれたな。」

 

 僕たちはいつの間にか無数の悪魔達に囲まれていた。

 

「それはこっちのセリフだ。」

 

 仲間と聞いて、鋼鬼さんから再び怒気があがる。

 

 うっ・・うわ・・。さっきよりも酷い。

 

「俺の妹分を痛めつけてくれた礼はまだ完全に返せていないようだしな!!」

 

 その迫力に怯む連中だったが、すぐに気を取り直す。

 

「なんの。こっちには切り札があるのだ!!」

 

 どうも何か用意しているらしい。

 

「行け・・・バケガニ。」

 

 そして、悪魔達はある存在を召喚する。

 

 それは幅だけでも軽く十メートルを超えるような赤いカニの化け物であった。

 

 何だ?あの怪物は?

 

「魔化魍(まかもう)!?お前ら・・・こいつがどういう存在か知っていて!!」

 

 鋼鬼さんは知っているのか?この怪物を・・・。

 

「育てるのに結構な数の餌が必要だったよ。くくくく・・・。」

 

 餌という言葉に、鋼鬼さんから怒気が引っ込む。

 

 表面上ではそう見えた。・

 

「そうか。おい・・こいつら外道はお前に任せていいか?」

 

「外道って・・・。」

 

「こいつの餌は人間だ。多分・・・これだけの大きさに成長するまでに何十人の人間が犠牲になっている。」

 

・・・・・・ッ!?

 

 そうか。それは確かに堪らないね。

 

 だからこそ、冷静になろうとしたんだ。

 

「そして、こいつを倒せるのは俺達鬼だけだ。」

 

 ああわかったよ。ならここは専門家にお任せしようか。

 

 僕は剣を作り出し、構える。

 

「こんなところで魔化魍と戦う事ににゃるか・・・。」

 

 黒歌も鋼鬼の傍に立つ。

 

「いいのか?もうすぐ妹と再会できるのに?」

 

「・・・こいつらを放り出すなんて、鬼の一人としてできない。白音にも顔向けできないにゃ。それに・・・・。」

 

 黒歌は鋼鬼の方を見て言う。

 

「言ったはずにゃ・・・。私はあんたの相棒だって。いつも隣にいて、一緒に戦うって。背中を預け合うって。」

 

 その瞳に迷いはない。とても・・・とても綺麗なものだった。

 

 そうか。この二人は・・・・。

 

「・・・そうだったな。なら任せるぞ。お前のタイプじゃ相性は良くねえが・・。」

 

「それでもやりようはあるにゃ。」

 

 黒歌さんはそう言いながら小さな笛のような物を取り出し、それを吹く。

 

 鋼鬼さんは小さな琴の様な物だ。その弦を弾いた。

 

 二つの音が響き、それと共に二人の額に鬼の顔の様な物が現れる。

 

 それにそれぞれ響きを奏で続ける笛と琴を重ねる。

 

 それと同時に二人の姿が代わる。

 

 鋼鬼さんは炎と雷に覆われながら先ほどの鬼に。

 

 そして黒歌さんは風と氷に覆われ、それを手刀で切り裂き、鬼となった姿で現れる。

 

 黒い二本角の鬼。黒髪は銀色に変わっている。

 

「黒歌こと・・奏鬼(そうき)。久々に暴れさせてもらうにゃ。」

 

 そしてトランペットのような銃から白い石の様な弾丸を発射する。

 

 それはバケガニの甲羅に命中するが、その硬さに弾かれてしまう。

 

 相性が悪いとはこのことか。

 

 黒歌さんが変身する鬼は見たところスピードに優れた遠距離攻撃タイプ。このような硬い装甲を持つ相手はその弾丸を弾く。それ故にということか。

 

 バケガニのはさみが僕達に襲いかかる。だが、それを鋼鬼が片手で受け止めた。

 

「・・・この程度か。」

 

 バケガニが必死で力を入れるが、全く動かない。

 

 それどころか、そのままその巨体を片手で持ち上げている。

 

 それも軽々と。

 

 常識外の・・・めちゃくちゃな怪力だ。

 

「動き止めてくれてありがとねん。」

 

 その隙に上に飛び上がった黒歌が大きく踵を振り上げ、それをバケガニに向けて思い切り振り下ろす。

 

 その一撃でバケガニの固い甲羅の巨大な亀裂を伴わせながら、地面に叩き伏せる。

 

 並の悪魔を簡単に蹴散らすわけだ。戦闘力の桁が並の悪魔と全く違う。

 

「お見事。仙術の応用で、威力を高めたのか?凄まじい物だな。苦手だとしていたバケガニの殻を打ち砕くか。」

 

「鋼ちんの技の応用にゃ。そして、その砕いたところに弾丸を撃ち込めば・・・。」

 

 砕けた個所に弾丸を撃ち込む黒歌。

 

「これで仕込み完了にゃ・・・。」

 

 それで彼女は腰もベルト中央にある円状何かを銃の先にくっつける。

 

 すると、銃はそのままトランペットのような物に変わる。

 

 そして、そこに息を吹き込み演奏を始めたのだ。

 

 すると演奏に撃ち込まれた弾丸が共鳴し、バケガニは苦しみ出す。

 

 そして、そのまま爆発。落ち葉となってあちらこちらに散ってしまった。

 

 こうやって退治されるのか。

 

「・・・・嘘だろ。バケガニが全く相手にならねえだと?」

 

 召喚した奴らも驚いているよ。まあ・・・こっちも頼まれた仕事をしておきましょうか。

 

 素早く奴らに近づき、剣を振るって仕留めて行く。

 

 だが、残った奴らがひきつった笑いをみせる。

 

「ぐっ・・だが・・・誰が一体だけだと言った?」

 

 其の言葉に対する答えは部長達の悲鳴であった。

 

 そこには・・・もう一体巨大な蜘蛛の様な化け物がいたのだ。

 

「バケグモだと?そんな奴まで・・・。」

 

 雷と滅びの魔力によって二人は応戦している。

 

「何なのこの怪物!!」

 

「でも・・・いじめがいはありそうですね。ほら!!」

 

 特に滅びの魔力は流石に応えているらしく、バケグモと呼ばれた怪物は後ろに下がる。

 

「あの二人・・・やるものだな。ウィザードタイプだったのは分かっていたが。並の悪魔なら食べられてしまうぞ。」

 

 何せ部長と朱乃さんですから。それでも瞬殺出来ないところを見ると相当な怪物だね。

 

「だが、ここでもう一体。」

 

 あの怪物を使役していた悪魔達はまだ嫌らしい笑みを浮かべている。

 

 もう一体だって!?

 

 部長達の上空から迫る巨大なエイのような怪物。翼は普通の鳥のようになっていると異形。

 

「イッタンモメン。こんな奴まで・・・。」

 

 完全に不意を突いた格好の怪物――イッタンモメンが部長達に迫る。

 

「まずいにゃ!!」

 

 銃を撃ちながら黒猫さんが駈けるがそれでもイッタンモメンは止まらない。

 

 僕たちも駈けようにも・・間に合わない。

 

 そう思った時だった。

 

――――――Guard Vent!!

 

 不思議な音声と共に部長の前に二枚の盾が現れ、イッタンモメンの突進を止めたのだ。

 

 止めただけじゃない。赤いオーラに包まれたその盾は異様なまでに固いのか重いのか、まるで巨大な壁に激突したかのようにイッタンモメンが怯み、身体をのけ反らせたのだ。

 

 のけ反ったイッタンモメンの上に彼はいた。

 

―――――Strike Vent!!

 

<BOOSTBOOSTBOOST!!>

 

 右手には竜の頭を模した武器が出現している。

 

――――Transfer!!

 

 その音声と共にその右手が猛烈な赤いエネルギーに包まれる

 

『Dorgon fire break!!』

 

 そして、彼は右手に龍の頭を模した武器を出現させて、そこから炎を噴き出せしながら思い切り、のけ反ったイッタンモメンを殴りつけたのだ。

 

 大爆発と凄まじい衝撃と共に地面に叩きつけられるイッタンモメン。

 

 相当強力だったのだろう。その一撃でぐったりしているイッタンモメンの上で・・・。

 

「あちちちぃぃぃ・・・ちゃ・・着地成功・・・。部長!!朱乃先輩!大丈夫ですか?」

 

「えっ・・ええ・・。」

 

「あらあら・・・思ったよりもやんちゃする子なんだ。」

 

 とんでもない登場をしでかした一誠君がいた。

 

「先輩・・無茶する。」

 

 その後ろで小猫ちゃんがやってくる。

 

「ナイスコントロール。いや・・・気持ちいいくらいに飛べたよ。」

 

 そうか・・・小猫ちゃんにぶん投げてもらったのか。

 

 ・・・・・無茶苦茶としかいいようがないよ!!

 

「小猫ちゃん!!その盾を使って!!」

 

「わかった。」

 

 小猫ちゃんは突然出現した盾を二つ手にとる。

 

「思ったより軽い。これであの怪物の突進を止められるの?」

 

「これがあなたの神器なの?一度に複数の武器を出せるタイプなの?」

 

 僕の神器と似たタイプなのだろうか?後で色々と聞かないといけないね。

 

「凄いな。一撃でイッタンモメンを気絶させるか。」

 

 鋼鬼さんはイッタンモメンの上にいる彼に向けて話しかける。

 

「・・・ってその篭手。お前・・名前は?」

 

 彼の左腕の篭手を見て、彼は声をかける。

 

「兵藤 一誠だ。」

 

「・・・そうか。お前・・・イッセ―だな。」

 

 鋼鬼さんがなぜか、親しげに彼に話しかける。

 

「・・・・えっとだ。俺だ。鋼鬼。」

 

 顔だけ元に戻って見せる鋼鬼をみて、彼は眼を丸くする。

 

「ええええ・・・あんた・・まさか鋼兄か!?」

 

「ああ。強くなったな。驚いたぞ!!」

 

『・・・・・・・。』

 

 二人のやりとりに、僕を初め皆は絶句していた。

 

「また幼馴染なのね。」

 

 ここ二、三日彼の幼馴染である連中に三人も会っている。

 

 部長のその言葉は、それに付随する色々な要素とそれに対する思いを全て凝縮している。

 

「・・・・・・・今度祓ってあげようかしら?何かに憑かれているとしか思えない。」

 

 朱乃さんが何を言いたいのかよく分かるよ。

 

 絶対に可笑しいからね。こんな幼馴染ばっかり!

 

 そんな時だった。

 

 忘れ去られていたバケグモが怒りの雄叫びと共に突進してくる。

 

 皆が迎え撃とうと構えた時だった。

 

――――――Wake UP!!

 

 その声と共にバケグモの上から何かが飛来。

 

月をバックにしてムーンサルトを決めて、そのまま強烈な飛び蹴りを見舞ったのだ。

 

 凄まじい衝撃と共に声なき悲鳴をあげながら、地面に叩き伏せられるバケグモ。

 

 その後に少し時間をおいてから、光と共に地面には巨大な蝙蝠の羽を模したようなマークが刻まれた。

 

 なんだ今の一撃は?

 

「お疲れキバット。」

 

「おう。だが・・・派手な登場したな。」

 

 そして、それをやらかした相手が土ぼこりが舞う中で変身を解く。

 

 それは渡君。

 

 彼の傍には蝙蝠をデフォルメしたかのような何かが飛んでいる。

 

 あれ?部長のカ―ミラとなんか似ているような・・・。

 

「あれ?お前・・・カ―ミラか!?」

 

「久しぶりね。キバット。元気してた?」

 

 二匹の蝙蝠(?)があいさつしあっている。

 

「いや・・・なんかとんでもないことになっているみたいで。助けにきたけど、いらなかったかな?」

 

 呑気な声で、彼はとんでもないことしてくれるよ。

 

「はっ・・はははは・・・いえ、本当に助かったわ。」

 

「バケグモが一撃で行動不能か。」

 

 ああ・・。今僕は思い知ったよ。

 

 彼の幼馴染という存在には気をつけないといけない。

 

 彼の幼馴染全員・・・人外という言葉すら生温い怪物ばかりだ!!

 

「もう私・・・イッセ―の幼馴染と聞いたら人外だと思う事にするわ。」

 

「部っ・・部長!!どうしてそんなこと思うのですか!!」

 

「いえ・・・。リアスの言うとおりだと思うわ。」

 

 悪いけど僕もそう思う。

 

 だって・・・・そのままじゃないか!!

 

 

 




 ここでグレモリ―眷族内にイッセーの幼なじみ=人外という図式がうまれました。


 この図式・・イッセーの中の基本として扱っていく予定です。

 もう人外ばかりです。どれも彼も・・ははは・・。

 


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和解・・しました!!

 さて・・ここで原作崩壊。黒歌の現状が明らかになります。

 多分・・みんなの想像を超える事態になっているかと。


 SIDO  イッセ―。

 

 さて・・・今俺は思っているのだよ。

 

 どうして俺の知り合い・・それも幼馴染とされる連中は人外なのか?

 

 言われてみればそうだよな。

 

「ネロ!渡!!お前達にも会えるとは嬉しいぞ!!」

 

「相変わらず暑っ苦しいやつだぜ。だが・・・すげえ強くなったな。」

 

「俺はまだまだだ。もっと鍛えないといけない。そう言うお前も強くなったじゃないか。」

 

「上から目線気味だが・・・まだあんたに勝てる気がしねえな。」

 

 鋼兄・・・あんたどんだけ怪物になったんだよ?

 

 拳一つで山をかち割って地震を起こすなんて、鍛えたら何でもできるというのですか!?

 

 しかもあれでまだまだって・・・どこまで強くなる気だ?

 

「うん。それでこそ僕たちの兄貴にふさわしいよ。」

 

 ふさわしいって、そこが渡の判断基準なのか!?可笑しいだろ!!

 

 色々とツッコミを入れる中、鋼兄は部長の姿を見て、頭を下げる。

 

「・・・しばらく厄介になる身だ。よろしく頼む。」

 

「ええ。必ずあなた達の無実は晴らしておくわ。しかし・・・並いるはぐれ悪魔ハンターをすべて返り討ちか。すごい子がやって来たものね。」

 

 こいつは黒歌というSSS級のはぐれ悪魔の無実を晴らすために奔走していたらしい。

 

 信頼できる奴を見つけ、彼にすべてを託したというが・・・。

 

「あのサイラオ―グと変身していない状態で互角に殴りあうなんて・・・化け物ね。」

 

「そう・・・ですね。」

 

 サイラオ―グってそんなにすげえのか?

 

 生身で互角に殴りあったというだけで、部長も朱乃さんも笑みをひきつらせているぜ?

 

 鋼兄がすげえのか?それともサイラオ―グという人がすごいのか?

 

 まさかどっちもすごすぎるのか?

 

 ん・・・なんかそいつと近い将来会う気がしてならねえぞ。しかも・・・すげえライバルとして。

 

 こんなときに力が発動するなんてよ。はあ・・・不幸だ。

 

「あいつに今度挨拶に行きたい。茶菓子なども用意しないとな。機会があったら頼めないか?」

 

「いいわ。あのサイラオ―クが認めた男なら誰も文句言わないでしょうし。」

 

 部長も承諾するほどの男か。鋼兄も認めた男らしいし、どんな人があってみたいな。

 

 でも・・・やっぱとんでもない怪物のような気がするぜ。

 

「あの子の手当てもありがとう。感謝してもしきれない。」

 

 九尾の女の子。京都からわざわざ人質として連れされたあの可愛い女の子か。

 

 鋼兄のことを兄として慕っていたモンな。妹分が酷い目にあったら、そりゃ怒るわけだ。

 

「それと後の問題はあれか・・・。」

 

「そうね。」

 

 一方、部室のソファーでは大変きまずい空気が流れていた。

 

「・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・。」

 

 それは黒歌さんと小猫ちゃんである。

 

 この二人の事情は一応聞いている。

 

 黒歌さんと小猫ちゃんがある悪魔の実験の被害にあったこと。

 

 その際黒歌さんが力を暴走させた小猫ちゃんを守るために主に牙をむいて逃走したこともだ。

 

 だが、その事実が歪められ、黒歌さんが妹を守るためではなく、暴走して勝手に襲いかかってきて、主を殺そうとした凶悪な存在とされた事もだ。

 

 小猫ちゃんにいたっては、その際の責任を追及され、酷い言われ方をし、それを部長達が必死に庇った。

 

 だが、その主はまだ小猫ちゃんを狙っていることもだ。

 

 鋼兄はその逃げだした直後で、ボロボロになって倒れた黒歌さんを助けたらしい。

 

 それが縁で今までずっと一緒にいたというのだ。

 

 力をつけるために黒歌さんに鬼の修行をつけたことや、事情を深く知っている辺り、相当深い絆で結ばれた二人だと思ったぜ。

 

 まさか付き合っているのか?

 

 そんな推測まで考えるくらいだ。

 

 鋼兄の大切な目的の中に、黒歌さんと小猫ちゃんの二人の和解もある。

 

 だが、二人の間にある溝は思ったよりも大きい。

 

 気不味い。はっきり言って気まず過ぎる。

 

「・・・ひと肌ぬごうかな。」

 

 それ見かねたのか。渡が楽器を取り出す。

 

 今回はギターであった。

 

 軽く鳴らしながら、ギターのチューンをすぐに終わらせる。

 

「よし・・・。」

 

 そして、静かにギターで奏でる

 

 静かだが、温かい気持ちになれる曲だ。

 

「いい曲ね。」

 

「ああ・・・。」

 

「そうね。」

 

 こいつの音楽は不思議だ。言葉もないのに自然と大切なことを教えてくれる。

 

 その調べは二人にも届いている。

 

「・・・・ごめんにゃ。」

 

「えっ?」

 

 ぽつりと・・・黒歌は話す。

 

「つらい思いをさせて・・・ごめんなさい。私が・・・私がもっとしっかりしていたらこんなことにならなかったのに・・・。」

 

 その旋律はどうも・・・人の心を少しだけ素直にしてくれるみたいだ。

 

「許してとは言わないにゃ。でも・・・これだけは聞きたいにゃ・・。今白音は幸せにゃ?」

 

「・・・・・はい。みんな・・・優しいですから。」

 

「そうか・・・よかったにゃ。それだけが・・・本当に気がかりだった。」

 

 優しい言葉と気持ちが溢れてくる。

 

「私はそれ以外何もいらないにゃ・・。本当によかっ・・・・。」

 

 そんな黒歌に・・・小猫ちゃんが抱きついてきたのだ。

 

「・・・・・・。」

 

「・・・相変わらず甘え下手にゃね。」

 

「おっ・・・お姉様だけにはいわれたくありません!」

 

 それだけで十分だった。

 

 何しろ確かに姉と呼んでくれたのだから。

 

「ありがとうにゃ・・・。」

 

 姉と呼んでくれるだけで嬉しかったのだろう。

 

 小猫を強く抱きしめ返す。

 

「ありがとうにゃ・・・。」

 

 ぽろぽろと涙を流して・・・。

 

「お姉様が泣くなんて・・・今日は・・・雪が降りそうですね。」

 

「そういうあんたは・・・本当は泣き虫なの・・・変わっていないにゃ。」

 

「・・・しっ・・・知りません。」

 

 どうやら・・・和解できたみたいだ。

 

 本当によかったぜ。

 

 鋼鬼は渡の肩に手を置く。

 

「ありがとう。」

 

「いえいえ。兄弟の和解に関してはこっちも思うところがあったから。」

 

 そう言えば渡にもお兄さんがいたっけな?

 

 一体どんな人なんだろう?

 

「結構良いと人だと思う。一見すると爽やかな青年実業家風。」

 

「そうか・・・って・・・またあの時のゴスロリ娘!!?」

 

 またいつの間にか、あの時のゴスロリ娘が渡の傍にいる!?

 

 ネロの声でようやく気付いたぞ。何時の間に?

 

「また来たね。もう・・・演奏すると何時も来るんだから。」

 

「聞き逃したくない。それに渡やルフェイの作るご飯もおいしいし。」

 

 渡にとって可愛い妹みたいな娘なんだろう。そして、餌付けも完了しているとは。

 

「・・・光源氏でもやるつもりなのかしら?」

 

『!?』

 

「?」

 

 部長の言葉に源氏物語を知っている一同が驚き、一斉に渡を見る。

 

 源氏物語を全く知らないネロだけが首をひねっている始末だ。

 

 わっ・・・渡・・・お前・・・何とうらやましいことを・・・。

 

 この子将来・・超絶美人になるぞ。今の何時にキープしているのか?

 

 そうなのか!?

 

「この娘はオ―フィスって言うんだ。半ば家に住んでいる。演奏を聞くとどこにでもやってくるから・・。」

 

「えっと・・・この部室。かなり強固な結界で守られているのに、平然と入ってくるの?転送魔法で?」

 

「僕も行けましたし。」

 

「ごめんなさい。今の発言、「イッセ―の幼馴染共」限定でなかったことにするわ。」

 

 部長・・渡とのやりとりで、頭が痛くなったようだ。

 

 相当このミステリー部の部室は強固に守られているのだろう。簡単に転送できないくらいに。

 

 それをこいつらは平然と・・・。

 

「それにオ―フィスって・・まっ・・まさかね?まさか無限の龍神(ウロポロウス・ドラゴン)がこんなところにいるなんてこと・・・ない・・わね?」

 

 困惑した部長の視線が自然と俺に向けられる。

 

 それだけで何を聞きたいのか分かってしまうぜ。

 

「成長したみたいです。もう愉快な奴に・・・。」

 

「気にするだけ無駄だ。それに、危ないかどうかそれくらいわかっているだろ?」

 

「うむ。王としての器をえたということなのか。成長しているな。」

 

 ネロも鋼兄も簡単に受け入れているよ。

 

「はあ・・・なんか兄様と似た何かを感じるわ。」

 

 部長・・・すみません。変な知り合いばかりで!!

 

「そういう先輩も変人の仲間であることを自覚してほしい。」

 

 って・・小猫ちゃんから痛烈な指摘がきたよ。

 

 俺って変か?エロに関しては認めるがな!!

 

「そうにゃ。これで遠慮なく白音にも紹介できるにゃ。」

 

 黒歌さんは黒歌さんで何かうきうきした様子で鋼兄を手招きしていたし。

 

「姉様この人は?お世話になっていた方なのはわかりますが・・・。」

 

 いささか鋼兄は緊張しているみたいだし。

 

 そんな鋼兄の腕に抱きついて黒歌さんは嬉しそうに言う。

 

 それもう・・・心の底から嬉しそうに

 

「紹介するにゃ。この人は鋼鬼の鋼ちん。私の命の恩人で無二の相棒!」

 

 黒歌さん。鋼兄を鋼ちんと呼んでいるのね。

 

 すごく仲が良い。やっぱり付き合っているのか?

 

「そして、白音の義兄になる人。・・・・・・・私の夫にゃ!!」

 

『・・・・・・・・・・・・。』

 

 皆。黒歌の爆弾発言に固まる。

 

 いや・・ね。俺も耳がいかれたのかね?

 

 幻聴がきこえてきたよ。

 

 想像をはるかに超える発言が聞こえたような。

 

「おっ・・・と?つまり・・・結婚しているの?」

 

 小猫ちゃんの質問に黒歌さんは満面の笑みでいる。

 

「そうにゃ!!将来を誓い合った仲というやつにゃ!!」

 

『・・・・・・・・・。』

 

 

――――い ま な ん と い っ た !?

 

 

 皆の視線が一斉に鋼兄に向けられる。

 

 そうすると・・・鋼兄が照れている!?

 

 あの鋼兄が!?

 

 豪傑なあの鋼兄が・・・デレているだと!?

 

「いや・・その・・・。夫の鋼鬼だ。」

 

 聞き間違いではないのね。

 

 はい・・・。

 

『えええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇ!?』

 

 ようやく発言が本当であることを認識して驚きの声をあげる。

 

 おいおい本当なのか?俺達とそんなに変わらない歳で!?

 

「ちょっ・・ちょとまてい!!鋼兄!!結婚していたのか!?」

 

「正確には・・・契りだがな。その・・まあ。そういうことだ。」

 

 鋼兄の照れ具合から見て間違いねえな。

 

 ここまでデレデレになるとは・・・。

 

「おいおい。まじかよ。俺の同い年で結婚しているのかよ!!」

 

 ネロ。軽く混乱しているが、その気もちよく分かるぞ。

 

信じられん。うそだ。まさか、こんな・・・こんなことが。

 

「いや・・・何と言えばいいのか分からないけど、おめでとうとだけ言わせて。式は上げるのかどうかも後で聞かせてね。是非その日に一曲送りたい。」

 

 渡。お前復帰早いな。

 

 そして、その発言を聞いた小猫ちゃん。完全に固まっている。

 

「俺の家族には挨拶を済ませている・・。黒歌の家族は白音ちゃんだけだ。挨拶をしたいと思ってな。・・・・・んん?」

 

 鋼兄が首をかしげている。

 

「・・・・・・・・・。」

 

 あれ?小猫ちゃん、反応がないよ?

 

 全く動かない事に部長達も気付いたようだ。

 

「・・・きゅ~う・・・。」

 

 大変かわいらしい声で目を回して気を失っちゃったよ!!

 

 よっぽど衝撃的過ぎたのね。そりゃわかるけど!!

 

「ちょっ・・・大丈夫か!?」

 

「にゃははは・・・こりゃ衝撃すぎたかね?」

 

「かねじゃなくて、そうだろうが!!驚かせたいと言っていたが、これはやりすぎだ!!」

 

 二人のやり取りも自然の様で。うん・・・なるほど、夫婦らしいね。

 

 ははは・・・もう色々あり過ぎて可笑しくなりそうだぜ。

 

 

 

 

 SIDE イッセ―。

 

 鋼兄に妻とはな。結構ないたずら好きみてえだが・・・・美人でグラマー、そして猫耳と・・・いい嫁さんもらっているじゃねえか!!

 

 うらましいぜちくしょう!

 

 冷やかしまくったぜ。そりゃもう。

 

 照れた鋼兄が振り回した腕にぶつかって部室の窓の外まで吹っ飛んじまったからもうやめたがよお・・・。

 

 全くなんてパワーだ。

 

 そして、かくまうついでにあの二人まで転校してきやがった!

 

 それも・・・同じクラスだと!?

 

 本当なら、鋼兄が一つだけ年上らしいが、なんか部長が・・。

 

――――――人外どもはなるべく固めておきたいわ。

 

 って、とっても疲れた様子でその理由を話してくれたよ。

 

 ははは・・・なんかごめんなさい。

 

 悪魔の部長に人外と言われる時点でもう色々と俺達は終わっているかも・・。

 

 そして、鋼兄は筋骨隆々の巨体と物静かさと豪快さ、そして迫力を兼ね備えたたたずまいから一日目にして・・・番長となったぜ。

 

 周りが勝手にだけど、それとなく彼はそのまま番長となっていった。

 

 喧嘩をとめ、絡まれた他のみんなを助けたりなど・・・色々とやっているからだ。

 

 多くは語らないが・・・その背中だけで皆が番長とみとめている。

 

 何故か先生からもだ。

 

「・・・なぜ番長?」

 

 本人は本気で首をかしげている。自覚ないのかよ!!

 

 黒歌さんはその容姿(もちろん猫耳尻尾は消しているぜ。)から黒猫姫とよばれるようになった。

 

 性格はすっごくフランクでいたずら好きで、猫っぽいいうのも高ポイント、

 

 小猫ちゃんの姉というのも堂々と言って、あっという間に有名人になった。

 

 そして・・・二人が親を初めとした親類公認の婚約者同士という事を話すと、うんあの二人は涙を流していた。

 

 元浜、松田。残念だったな。

 

 せっかくの美人の転校生が売約済みなのを知らなかったか。

 

 まあ、黒歌さんは鋼兄と堂々と一緒にいるために言ったみたいだけど、その話すたびに巻き起こるみんなのリアクションを明らかに楽しんでいる!!

 

 だってスマホでその時の表情をばっちりとっているもん!!

 

 小猫ちゃんは・・・二人の結婚こそはまあ認めているが、まだ兄と呼ぶのには抵抗があるらしい。

 

 言うのがすごく恥ずかしいのだそうだ。

 

 色々と頼りにはしているみたいだぞ。

 

 いたずら好きな姉の暴走を止められる唯一の存在として。

 

 悪魔の眷族として忙しくも・・・すげえ騒がしい日常だぜ。

 

 その一方で、ネロとレイナ―レの件は皆も仕事の合間を縫って捜索を手伝っている。

 

 特にネロが探しているキリエさんは・・・話を聞くに神器を持っている。

 

 それも二つも。生まれながらに二つの神器は異例中の異例だそうだ。

 

 それが目的で連れ去られたと考えられる。

 

 それとレイナ―レの大切な人は魔法使いらしい。レイナ―レも色々あって魔法は使えるのだが、それに必要な指輪も奪われてしまっている。

 

 名前は晴人というらしいが・・・・なんだ?その名前を聞いてあいつを思い出すのだが・・。

 

 まさか・・な。

 

 囚われているのはあいつだというのか・・・ハル?

 

 ここのところ、あの日の冒険仲間と再会し続けているからもしやと思ってはいるが・・。

 

 そんな事を振り返りつつ、俺は久しぶりの休日を楽しんでいた。

 

 さて・・そこで俺は一人の迷子シスターをみつけてしまったのだ。

 

 外国語で話しているが・・通じなくて困っている。

 

 やれやれ・・かな?

 

SIDE ???

 

 その日。私は運命の出会いを果たしました。

 

「あっ・・・ありがとうございます。」

 

 それは優しそうな男の子でした。

 

「いいよ。」

 

 私は彼の手をとった時・・・運命が見えました。

 

 それは私が死ぬ運命。あの人にみとられて・・そのまま永遠の眠りにつくという。

 

 それは私のもう一つの力。

 

 未来を見ることができる予知の力。

 

 それと触れると相手の心に直接触れることができる力。

 

 癒しの力と共に神様が送ってくれた大切な力。

 

「あっ・・・あの・・・名前は?」

 

「兵藤一誠。まあ・・・イッセ―と呼んでくれ。」

 

 彼との出会い、それが私は運命だと悟った。

 

「はい。私はアーシアです。あの・・・友達になってください!!」

 

 彼はその手をとってくれた。

 

 彼との出会いによって私は死ぬだろう。

 

 でも私は知りたい。どうして未来の私は笑いながら死んでいくのだろうかを。

 

 私はあえてその運命に手をとる決意を固めた。

 




 最後のほうでアーシアがついに登場。

 彼女も彼女で原作にない力を得ています。その力は強力です。

 ここからこの話の終盤へと物語は加速していきます。


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現在地不明の騎士さんです。

 またまとめて投稿させてもらいます。

 タイトル通り・・いま四人目は大幅に到着が遅れています。

 その理由が明かされます。


 


SIDE イッセ―。

 

 なんかほっておけない子だとおもった。

 

 アーシアという子はとても儚い感じがしたからだ。

 

 多くの辛いことを抱えている。そんな気がする。

 

 でも、それでもその心はとても綺麗だ。

 

 世間知らずともいえるが、それでもとても可愛い子だと思う。

 

 なんかこう・・癒されます。

 

 俺にとってどんなに些細なことであっても、感動している。

 

 とてもうれしそうにしてくれる。

 

 今だって、一緒に街を歩き回っているだけだぜ?

 

 ここのところ色々あったからな。

 

 一緒に街を見て回るだけでも十分に楽しい。

 

「本当にこの街って面白いところが一杯ですね。」

 

 とっても楽しそうでよかった。

 

 

SIDE サイガ

 

 

 さて・・・僕は恒例になっている危機に陥っている。

 

「認めたくない物だな・・・。若さ故の過ちというものは。」

 

『阿呆。単なる迷子じゃ!!』

 

 道が分からん!!可笑しい。今回は地図を持ってきたというのに、何故駒王学園に着かないんだ!!?

 

 こっちの道を右じゃなかったのか?

 

 予定の十倍の時間を使ってようやく街にはたどりついたというのに・・。

 

『はあ・・・サイガ。いい加減、一人で出歩くのは止めろ。お前は重度の方向音痴なんだぞ!?』

 

 首元でエイガがぼやいているよ。はあ・・・今度こそ克服できると思ったのにな・・・。

 

「というより・・・今になって気付いたんだけど、どうしてそっちがナビしてくれないの?毎回ぼやくわりには地図見ても無言だし。」

 

『・・・・・・・・・・・。』

 

 エイガ・・・なんでそこでおしだまる?

 

 私の致命的な弱点を知っているのなら、それをフォローするのが君の役目じゃないのか?

 

『あっ・・あのな。ホラーが人間の地図を読めると思うか?ザルバならともかく、俺はまだ魔道輪になってまだ日が浅い。』

 

 そう言えばそうだった。こいつは私が五年前にあの力に目覚めた現場に出会って、それがきっかけで魔道輪になったんだっけ?異界の力を持つ私の行く末を見届けたいと言って。

 

 そんな君を疑ってしまった事を許してほしい。

 

『・・・・すまん。それと俺も方向音痴なのだ。』

 

 おい。私の謝罪を返しなさい。その命ごと神にかえしてやろうか?

 

 方向音痴のホラーってなんだよ!?聞いた事がない個性を持っていやがるな君は!!

 

『ふふふ・・ホラーの間でも有名だぞ。どこにいるのか分からないことで。』

 

「それって絶対に自分自身も含まれているよな?」

 

『当然。それ故に流浪の賢者と言われているぜ・。』

 

 威張って言う事じゃないでしょう!!

 

 自他ともに現在地不明って、色々な意味で終わっている。

 

 あっ、そう言えば私もか。

 

 はあ・・・そうか。私達はいいコンビだ。

 

 だが、致命的なのはお互いに重度の方向音痴。

 

 ははは・・・無事目的地につけるかな?

 

 これまでは何とかついたのが不思議で仕方ない。

 

 

 

SIDE ???

 

 俺は元老院に呼ばれ、急ぎ向った。

 

 わざわざ赤札で呼び出されるほどの事態だ。

 

 そこではかつてないほど混乱しきった場があった。

 

 騎士たちも法師達も走り回っている。

 

「あっ・・・・・・ようやく来てくれましたか。」

 

 そこにはレオがいた。

 

「ああ。それと連絡は本当なのか?」

 

「はっ・・はい。今まで互いに相互不干渉を保ってきた冥界。それも魔王が・・・来ています。」

 

 俺達魔戒騎士と魔戒法師は教会の要請でホラーを狩ることはあるが、はぐれ悪魔の討伐はしておらず、天使、堕天使、そして悪魔。天界と冥界の住人とは基本的に不干渉を保っていた。

 

 だが・・・唐突にそれが破られた。

 

 冥界を治める五大魔王の一人が前触れもなく元老院を訪ねてきたのだ。

 

「あっ・・・あの鋼牙さん。驚かないでくださいね。」

 

 何故かレオがひきつった表情。

 

『おいおい、もう充分におどろいているぞ。』

 

 ザルバの言うとおりだ。

 

 これ以上何を驚けというのだ?

 

 俺は元老院の中に入り、そして・・・レオが言いたかったことの理由が分かったような気がする。

 

「おっ・・・おお。来てくれたか黄金騎士・・・牙狼。」

 

「あっ・・・ああ。」

 

 そこで上役達を戸惑わせているのはたった一人の少女であった。

 

 しかも格好が普通ではない。何と言うか・・・

 

『ほう。あれが噂にきくコスプレという奴か。』

 

 ザルバよ。お前がそんな単語を知っているとは驚きだ。

 

 そう。彼女は俗世でいう魔法少女のコスプレをしていたのだ。名前は知らん。

 

 街を歩いている時に横目で見た程度だが。

 

「へえ・・・あなたがあの黄金騎士・・牙狼なんだ。うんうん・・・確かに強いね。見ていて分かるよ。」

 

「・・・まっ・・まさか。こっ・・こいつが・・。」

 

 信じたくなかった。

 

 魔王襲来と聞いて、どんな奴がやって来たのかと俺はとても身構えていた。

 

 だが・・・やってきたのは一人の可憐な少女。しかも・・コスプレをしている。

 

「ははは・・・面食らいますよね。」

 

 レオ。滅多に驚かない俺の反応を見たかったからぼかしたのか。

 

『無理もない。こっちも信じられねえぜ。』

 

「初めまして。五大魔王が一人・・・セラフォル―・レヴァイアタンだよ。よろしく☆」

 

 無駄に可愛い決めポーズをとる彼女。

 

「・・・・・・・・。」

 

 かっ・・・軽い。

 

 あまりにノリが軽すぎる。

 

 威厳の欠片もない。

 

 俺の中の魔王というイメージが一瞬にして粉砕されたぞ。

 

『鋼牙、気をつけろ。間違いなく彼女は魔王だ。姿、性格はともかく、馬鹿げているくらいの厖大な魔力をもっているぞ。』

 

「へえ・・・・素晴らしい相棒をもっているわね。」

 

 ザルバの言葉を否定しないあたり・・・そのあたりは本物か。

 

「まあ・・・自己紹介はこれくらいにして。単刀直入にきくわ。あなた・・・黒龍騎士・・サイガをしっているわね?」

 

「ああ。俺の弟子だ。独り立ちをしたばかりのな。」

 

 サイガ。これは異界からやってきて息絶えたある夫婦から託された子だ。

 

 ある意味息子も同然なので、冴島の性を与え養子にした愛弟子。

 

 何故異界かというと、身につけている物、そして彼らが残した書物・・「アバンの書」で書かれている文字がこの世界に無い別の文字だったからだ。

 

 それを読めるサイガによって解読はできているが、これは魔戒法師にある革命をもたらそうとしているのは別の話としたい。

 

 そんな彼はそのアバンの書にあった武術と牙狼の剣をものにしている。二つとも覚えようとしたのは、産んでくれた父と育ててくれた俺の二つを受け継ぎたいからだそうだ。

 

 俺を慕ってくれるのは嬉しい。

 

 でも普通ならそれが困難と言える。牙狼の剣もそうだし、説明を見る限りでもあのアバンの書の武術も相当高度だ。一生かかっても難しいほどに。

 

 だが、二つとも五年で可能とするほど、あいつは才能があった。いや才能という言葉ですら生温いほど異常な速度で強くなっていった。

 

 まるで戦神の末裔・・・戦うために生まれた存在と言ってよかった。

 

 異界の呪文も次々と習得し、ある力も目覚めていた。

 

 あれはおそらく魔戒騎士という範疇を大きく逸脱している力だ。

 

 成長し、そのすべて解放されたら・・・世界すら滅ぼしかねない。

 

 剣、そして鎧も其の力に耐えきれないほどの巨大な力。

 

 独り立ちが遅れたのは、それに耐えられる剣と鎧を作るのに時間がかかってしまったからだ。

 

 レオ・・・・本当に感謝している。あいつには特に苦労をかけた。

 

 試作した鎧が次々と破壊されていき、絶望の果てに両手を床につける様子を何度みたことやら。

 

 その中である結論に達したのは流石だよ。牙狼の鎧のある力を参考にして。

 

「あいつなら今・・・指令で出かけている。だが、すまない。居場所までは。」

 

『自他共に現在地不明コンビ。肝心な時までには目的に到着するのもすごいが、今どこまでいっているのか・・・。』

 

 あいつの致命的な弱点は本当に頭痛い。

 

 遊園地で迷子になったあいつを探すのにどれだけ時間がかかったか。

 

 そうやったら超巨大な観覧車のゴンドラの真上で寝ることになる?

 

 訳が分からんかったぞ。

 

 そんな事を振り返りながら、目の前の魔王がどうしてあいつに用があるのか首をかしげる。

 

「もしかして、あいつが何か失礼なことをしたのか?」

 

「いっ・・いえいえ。そんな。むしろ助けてもらったくらいで。」

 

 ん?

 

 どうして、顔を赤らめる?

 

「あっ・・あの。サイガさんの事について教えてください。その・・あの・・・。」

 

 しかも、かわいらしくもじもじとしている?

 

「ひっ・・・一目ぼれしました!!あの方とお付き合いしたくて参上しました!!」

 

『・・・・・・・・・・・・・。』

 

 さて、ここで俺は今までに遭遇した事のない試練に直面したようだ。

 

『サイガ。あいつも中々罪深いことをするじゃないか。魔王様の心を射止めるなんて前代未問だぞ。』

 

 あいつ・・・一体何をやらかした?

 

 どうすれば、この色々と濃すぎる魔王の心を奪える?

 

 確かにあいつは異性を引き付ける。

 

 何人、若手の女魔戒法師の心が奪われていったか・・・思い出すだけでこれも頭が痛い。

 

 ゴンザ仕込みにさりげないレディへの気遣いらしいが・・・。

 

 ゴンザ。余計なことを教えたな。

 

 おまけに、その本人は凄まじいほどの鈍感。よく言えば純粋なのが、本当に鈍感過ぎて。

 

 邪美からどれだけ苦言がきたか分かっているのか?あいつは・・・。

 

「あの方の居場所を教えてください。冥界との交流という外交カードを切るだけの価値があるお方です。是非・・是非!!」

 

 冥界との外交カードまで用意するほどか。

 

 すごいことになってきた。

 

 そこに元老院の女神官・・グレスが微笑みながら指令を告げてくる。

 

「黄金騎士・・牙狼よ。元老院としての指令を伝えます。この方の願いをかなえてさしあげなさい。私達としても、冥界との交流は悪いことではない。」

 

 おい。これが元老院の指令だと?

 

 しかも緊急指令の赤紙で呼びされたのに・・・これだと!?

 

 元老院の騎士となってから初めてだぞ。こんなくだらない指令は。

 

「まあ・・・サイガとレヴァイアタン様を合わせるだけでいいのです。あとは本人が猛攻をしかけるつもりですし。すでに眷族にする許可も与えました。悪魔転生による肉体強化は彼のあの力の制御にも一役買いますし、必要に応じてこっちに力を貸すという条件も確約しました。」

 

「・・・・・・・。」

 

 其の視線をむけると勝利のピースサインを出している自称魔王様がいる。

 

 こいつ・・もしかして、元老院はすでに丸め込んでいたのか?

 

『無茶苦茶だが、やり手のだな。サイガの外堀を埋めにかかっているぞ。そもそも元老院を自力で見つけ出し丸めこめる時点でとんでもない奴だ。』

 

 ザルバの言うとおりだな。これは・・・色々な意味で敵わない。

 

「ふふふ・・・お願いね。あっとそろそろ時間か。話しの続きはそうね・・・あなたの家でいいかな?また訪れる日と時間は連絡する。その時に詳しい話しをしよう。安心して場所はもう分かっているから。元老院のみなさん。これらゆっくりと色々と話し合いましょうね。じゃあね。」

 

 無駄にかわいらしいポーズをとって色々と、めちゃくちゃに振り回してくれた魔王が消える。

 

 それと同時に、元老院全体から力が抜けたように一斉に深いため息が漏れてしまった。

 

 本当に・・・遣りたい放題やってくれたようだな。

 

 ちなみに俺の家の事を知っていることに関してはツッコみを入れるつもりはない。

 

「こんなくだらない指令でもうしわけないとは思っています。ですが、あまりに魅力的な提案に乗ってしまった私達の責任です。流石は五大魔王。外交担当というべきでしょうか。」

 

 クレスが頭を下げる辺り・・・相当うまく交渉をしたようだ。

 

 それこそまさに悪魔の交渉。

 

 やはりその点は魔王らしいのか?

 

「・・・・・・・・・・・・。」

 

 多分、このやりとりだけで下手なホラーを狩るよりもはるかに疲れた気がする。

 

『鋼牙。混沌だな。』

 

「・・・カオルとゴンザにも話すか。」

 

 案外カオルと意気投合しそうで怖い。

 

『こんなこと初めてだぜ。』

 

 ああザルバ。俺も初めてだ。今後こういった事は二度とごめんだ。

 

 サイガ、気をつけろ。

 

 お前・・・凄まじい規模と速度で外堀から埋められているぞ。

 

 だが、悪いが俺にはどうする事も・・できん!!

 

 お前で何とかしろ。お前が撒いた種なんだからな!!

 

 

 

 




 何気に凄い人が登場しております。

 そして・・サイガ君包囲網は彼が知らぬ間に確実に出来上がっています。

 二人の再会はまだ先ですが、日がたつにつれて確実においつめられていきます。

 本人が気付いた時にはもう後の祭りです。


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はぐれ神父を殴ります。

 二話目はついにあの外道神父登場です。

 でも・・・それと同時にもう一人が合流します。

 相手がかわいそうとしか言えない状態になります。


SIDE イッセ―

 

 アーシアと遊び、気持ちいい気分で次の日。悪魔としての仕事をこなす。

 

 本当は悪魔かどうかも疑問な存在だけど、一応眷族なので。

 

 でも・・・チラシ配りとかホ当に大変だよ。

 

 しかも呼び出されようとしたら・・あまりに魔力な無いために転送されないという悲しさ。

 

 ははは・・・自分に魔力が無い同然のカスくらいしかないことくらい分かっていたさ。覚悟はできていたけど・・・やっぱりきついねえ!!

 

 深い悲しみで俺はダッシュで召喚主の所へ走ったさ。ああ・・・。体力には自信があるのだよ。

 

 鋼兄程じゃねえけど鍛えてますから。

 

 しかも呼び出した相手が全部・・変人だったし。

 

 ミルたん?ああ・・・・あの筋肉の塊。漢の娘か。

 

 変態画家もいたねえ。

 

 ははは・・・幼馴染共を見て思ったんだけど、俺の周りにはどうして変人、奇人、そして人外どもばかりが集まってくるんだ!?

 

 もう諦めの域だというのか?ドライクとクレアがまだ起きてこないし・・・くそ・・なんか泣けてきたぜ・・・。

 

 まあ・・・さすがに不憫だと思ってくれた部長より、魔力を分けてもらって初めて転送しました。

 

 そして、そこで俺は血まみれで倒れる男と・・・

 

「ぎゃははははは・・・悪魔だ!!こいつ死ぬ間際に悪魔を召喚しやがったぞ!!」

 

 現れた俺を見て凶悪なまでに笑う奴がいた。

 

「てめえ・・・・何をした?」

 

「何って・・死ぬ間際に悪魔に助けを求めたくそ神父を殺そうとしただけだぜ。」

 

「ぐう・・・うう・・・。」

 

 まだ息がある。助けることができるか?

 

「まだ生きているのですか!!だったら死になさいよおおおおぉぉぉぉぉ!!」

 

 フリードが息の虫になっているそいつにナイフをつきたてようとする。

 

「がばっ!?」

 

 そんなあいつの顔面に俺は拳をぶちこんでやったぜ。

 

 吹っ飛ばされるあいつを尻目に

 

 呼び出された理由が理由だしな。

 

「おっ・・・ま・・・・」

 

「安心しな。助けてやる。」

 

 息の虫であったそいつに話しかけてやる。でも・・・・参ったな。

 

 回復系の力なんて持っていない。

 

 んん?

 

 右腕の小手が?クレアの力が・・・あれ?

 

 クレアの力を発揮するための召喚機・・・ドラグバイザーが出現し、それと共に俺の左手に新しいカードが現れる。

 

 使えということか。久々だな。新しいカードができるのは。

 

 カードをバイザーに装填し、発動させる。

 

―――――――Recover Vent!!

 

 すると右手が赤く輝き、そこから紅く輝く血の様な物が流れてくる。

 

 それを召喚してくれた人にふりかけてみると・・・。

 

「あっ・・・あれ?なっ・・治った!?怪我が治ったよ!」

 

 嘘だろ。死にかけだった人が一瞬で元気になったよ。

 

「あっ・・ありがとうございます。あの・・・その!!」

 

 すげえ力だな。でもよかったぜ。

 

「治癒系の力つかうのですか?ふざけた事をしやがりますねえ!!」

 

 そこであの男があらわれる。

 

 気持ちいいくらいに鼻血をふきだしているが、まだ意識があったか。

 

「それに不意を突かれたとはいえ、そこそこやるようで。よし・・あんたをぶち殺す!!」

 

 そこそこというのはあっている。こう見えても中学、高校。喧嘩に巻き込まれてもあしらう事ができる程度にまでは鍛えている。

 

 あの駒の影響で身体能力もあがっていやがるし。

 

「逃げろ。ここは俺が抑える。」

 

「はっ・・・はい。このご恩は必ず!!」

 

 助けた男を逃がしながら、ふざけた神父と対峙する俺。

 

 そんな俺に向かってあいつは光の様な物を飛ばしてくる。

 

 だが、ただの光なのか、全くダメージがない。

 

「んんん?光が効きませんね?悪魔だと思いましたが?」

 

「色々あって普通じゃねえ。でも、悪魔ではない。知り合いに悪魔はいるがな。」

 

 眷族であっても、悪魔ではない。訳が分からないあいまいさがここで役にたったか。

 

「ほう。だったら遠慮なく殺していいですよね?悪魔に関わるくそ野郎を・・。」

 

 嬉々とした表情を浮かべたそいつは左腕にある物を出現させる。

 

 それは銀色のはさみのようなものであった。

 

 そのはさみを開き、そこにカードを入れるって・・・・まさか!?

 

―――――――Adⅴent!!

 

「でてきなさい・・・キャンサー!!」

 

 その言葉と共に・・・フリードの隣の窓ガラスから黄金のカニの様な化け物が現れた。

 

「今回の贄はこいつか?」

 

 その化け物もクレアと同じように喋っていた。

 

「ええ。ジャンジャンたべてくださいよ。食べたら食べた分だけ、つよくなってねえ。」

 

 こいつ・・・間違いない。

 

 俺の力と同じ・・・異界の召喚獣の力。

 

そして、左腕のはさみがおそらく・・・召喚機。

 

 それも使役しているのがクレアが嫌う、人間などの命を奪っているタイプだ。

 

「どうしてくれよう・・?」

 

 こっちは大した力はない。

 

 だが、その時ありえない人物が俺の前にいた。

 

「彼に・・・手をださないでください!!」

 

 どうしてだ?

 

 どうして・・君がここにいるんだ?アーシア?

 

「邪魔しないでもらいましょうか!!」

 

 そんなアーシアをあいつは殴りとばした。

 

 それだけで理由は十分だった。

 

――――Sword Vent

 

 俺は右腕に召喚機・・ドラグバイザー、そして左腕に赤龍帝の小手を出して、そのままあいつの間に立ちふさがった。

 

「おんや?その小手・・・。そうですか・・・そうですか!!はははは・・僕と同じ力をもつのですね!!面白いです、おもしろすぎますよ!!ははははははは!!」

 

 あいつは狂ったように笑いだす。

 

 そして・・・・。

 

「だったらあの人達も呼びましょうかね!!でてきてください。」

 

 フリードが懐から筆の様なものと取り出す。そして、それを振るうと共にあいつの周りに黒い何かが現れた。

 

 それは部長や朱乃さん達よりも外見的に悪魔らしい悪魔だった。

 

 やせ細った骸骨のようながりがりの身体。何よりも体が真黒だ。

 

「ははは・・・行きなさいホラー!!」

 

 それは本能的に触れてはいけない存在だと理解した。

 

 でも・・・放っておいてもいい存在でもないと。

 

 だが、ホラー達のようすがおかしい。

 

「んん?どうしたのですか?」

 

 ホラー達が俺を見て怯えていたのだ。

 

 まるで・・・天敵にでもあったように。

 

「仕方ない。アギトの力はホラーにとっても脅威なのだから。」

 

 変態神父の隣に見覚えのある奴が姿を現す。

 

 黄色の豹・・・。確かルテウスといった。

 

「なんですかアギトって?確か・・・・。」

 

 フリードの視線がアーシアに向けられる。

 

「アーシアを見て、あなた達も同じことをいいましたね。」

 

「なっ・・・・・。」

 

 アギトの力。俺と同じ力を・・・アーシアが!?

 

「生きていたか。詰めを誤った。」

 

「へっ・・・今更気付いたか?」

 

 まずい。あいつまで来るのは不味い。

 

「ホラー達を因果のあるオブジェに憑依させろ。それだけでだいぶ違う。」

 

「あいよ。だったら商売道具のこれがいいね。」

 

 ルテウスの言葉に従い、フリードが手元から無数のナイフを取り出し、それをホラー達に向かって投げつける。

 

 するとホラー達は文字の様な物に分解し、そのナイフにとりついていく。

 

 ナイフ達はそのままいびつな人型へと変わっていく。

 

「ひゃひゃひゃひゃ・・・まさに陰我だねえ。」

 

 ホラー達は怯えた様子を見せずに、俺に向かっていく。

 

 ぐっ・・・これはまずい。アーシアだけでも逃がして・・・。

 

「女のアギトは殺すな。我らが女王の所望なのでな。」

 

「ひゃひゃひゃ・・・アギトというやつを食べたらキャンサーがどれだけ強くなるのかたのしみですね。」

 

 絶体絶命。

 

 そう思った時であった。

 

・・・・ん?何かが来る?

 

 アーシアも何かを感じたようだ。

 

 俺達は視線でお互いに同じ物を感じた事を知る。

 

 そして・・・それはやってきた。

 

 それは俺の貧相な想像をはるかに超える物だ。

 

 壁をぶち破ってやってきたのは・・・・馬!?

 

 えっと・・順を追って説明するぜ。

 

 壁をぶち破ってきたのは全身黒い鎧のような物に覆われた龍の様な二本の角と一角獣の様な角の三つの角を持つ馬。

 

 そして、狼と竜をかけあわせたような黒い鎧を纏った男が其の背に乗っていて・・・手にした馬鹿でかい剣で駆け抜きざまに襲いかかろうとした連中を全員まとめて斬り払いやがった!!

 

 ホラーと呼ばれる連中の半分は其の斬撃で消滅してしまったぜ。

 

 何を言っているのか分からないかもしれねえ。

 

 言っている俺も可笑しいと思っている。でも・・・それが実際に目の前で起きやがった。

 

 馬鹿でかい剣が縮み、一本の剣にかわる。

 

 鎧の馬から鎧の騎士が下りてくる。

 

「お疲れ、轟龍。」

 

 其の騎士は馬をなで、軽くねぎらう。

 

 そして、視線をフリードに向けた。

 

「貴様がホラーをこの街にばらまいているのか?」

 

「ぐっ・・・まっ、魔戒騎士。しかもその黒い鎧・・・よりによってあの黒龍騎士がこの街にまで来たというのですか!?」

 

 フリードは鎧の騎士を見て苦い表情を見せる。

 

「たかが人間。ソウルメタルの鎧を着ているとはいえ、我ら使徒に敵うわけが・・・。」

 

「ちょっ・・・あいつはただの騎士じゃ・・。」

 

 ルテウスがナイフを手にフリードの制止を聞かずに自慢の俊足で駆ける。

 

 それに対して騎士が動いたのはたった一歩。

 

 すれ違う両者。

 

「・・そんな・・・馬鹿な・・・。」

 

 そして、斬られたのはルテウスの方であった。

 

 たった一閃。でも、その一閃で手にしたナイフが粉々になりルテウスが倒れた。

 

「使徒を一撃。さすがは・・・あの黄金騎士の愛弟子。」

 

 フリードの言うとおりだ。

 

 強い。

 

「急所は外した。正直人と同じ急所とは思えなかったけど・・・案外当たっているみたいでよかった。」

 

 しかも手加減までしているよ!?

 

「聞きたい事があるのでね。そっちのはぐれ神父さんにも。誰からその技をならった?ホラーを召喚なんて・・・魔戒法師の術を誰から得た?」

 

 さっきから何を言っている?魔戒法師や魔戒騎士とか・・・。ホラーがあの化け物である事だけはわかるが・・・。

 

「・・・困りましたねえ。それを話すことはできないのですよ。」

 

 そんな騎士に向かって無数のホラーがいく手を阻む。

 

一方倒れたルテウスをフリードは助け起こす。

 

「ここは撤退ですよ。あなた達時間稼ぎを・・・。」

 

 おい。ただで逃がすと思っているのか?

 

 そこに上空から光の槍が飛んでくる。

 

「何をしている?」

 

 それは黒い翼を持つ堕天使。

 

「見ての通りですよ!!ちょっ・・・逃げるの手伝ってください。」

 

 それが二人も。

 

「ルテウス。大丈夫か?」

 

「何があったらお前がここまで手酷くやられる。」

 

 フリードの傍に黒豹と白豹の怪物まで現れやがった。

 

 ルテウスの両肩を支える二体。

 

「思ったよりも複雑みたい・・・。少し本気を出した方がいいかな?」

 

『やり過ぎて建物を壊すなよ?解放の余波だけで壊れかねん』

 

 あいつから別の声も聞こえるし、本気って・・あれでまだ本気じゃねえのかよ?

 

「君は逃げて。ここは何とか私が抑えるから。」

 

 敵が増えているのにこいつは俺に逃げろという。

 

 実力に自信があるのも多分ある。でも、まずは誰かを逃がそうとする気持ちはまさに騎士なんだろうな

 

「冗談じゃねえよ。」

 

 ありがてえが、俺もここで踏ん張る理由がある。

 

 

―――――Strike Vent!!

 

 俺はドラグセイバーを左手に持ち替えて右腕にドラグヘッダーを召喚。

 

<BOOST!!>

 

 赤龍帝の篭手(ブースデット・ギア)も機動させている。すでに倍化も始まっている。

 

「んん?その篭手・・・。まさか君は・・・イッセ―君?」

 

 あれ?

 

 何で俺の名前を知っている?

 

「・・・その反応からするとそうか。人の縁はわからないものだよ。少々面倒くさいけど。」

 

 その声。そして面倒くさい?

 

 まっ・・・まさか・・・。

 

「お前・・・サイなのか?」

 

 また俺の幼馴染なのか?

 

 悪魔、王子、鬼に続いて、今度は鎧騎士ですか?

 

「ああ。どうして君がホラーや堕天使、そして訳のわからない怪物に襲われているのかは、あとでじっくり聞こうか。その様子なら戦えそうだし。まずは退けてから。」

 

「・・・・はあ。ああ。それとお前に言っておくことがある。」

 

「んん?」

 

「お前で四人目だ。」

 

 その言葉と共にフリードに向かって巨大な魔力弾がどこからともなく飛んでくる。

 

 それは他のホラー達を次々と消滅させていく。ルテウス達はそれを飛んでかわす。

 

 足が本当に速い。仲間を抱えた状態でも残像が残る程のスピードとは。

 

「ちょっ・・・。」

 

――――――Guard Vent!!

 

 フリードの奴がとっさに召喚機の力を発動。

 

 左腕に黄金の盾を装着させて砲撃を受け止めるが・・・

 

「ぬぐおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」

 

 踏ん張り切れず、その砲撃が爆発するとともにフリードが後ろ吹っ飛びそうになる。

 

 それをキャンサーが背後から埋め止め共に堪える。

 

「大丈夫か?」

 

「すっ・・すみませんね。なんですかあのバカげた威力の砲撃は!?」

 

「・・・なんかどんどんブルーローズの威力があがっているぜ。」

 

 やってきたのはネロである。

 

 ネロの姿を見たルテウス達は悲鳴をあげる。

 

「ギッ・・・ギルスだと!?」

 

 肩にレッドクイーンと名付けた巨大な剣を担いでいる。

 

「ようやく見つけたぜ。お前ら・・・・。」

 

 ネロの視線は上空にいた堕天使達に向けられる。

 

「あっ・・・あの時の男!?」

 

「まさか生きていたのか?」

 

「ああ・・・・。冥府から舞い戻って来たぜ。キリエはどこだ?」

 

 ネロはすでに力を解放している。

 

 彼曰く・・・魔人化と言われる現象らしい。

 

 背後から日本刀を持った蒼い魔人が浮かび上がっている。

 

「おっ・・・・お前達のさらってきた奴の関係者だったのか!?」

 

 最初から色々な意味でクライマックスなネロ。はっきり言って怖い。

 

「もう一度いう。キリエはどこだ?」

 

「にっ・・逃げろ。覚醒しかかっている上に、あいつはまともなギルスじゃない。」

 

「生意気な。再び滅してくれる!!

 

 堕天使の一人が光のやりを投げつけるが、ネロの背後の魔人がそれを片手でつかみ取る。

 

「もうお前らの戦い方は見切ってんだよ。」

 

 そして、その槍を握りつぶした。

 

 それを見て堕天使たちも絶句している。こんなに強い奴だったのかといいたげに。

 

―――――Strike Vent!!

 

「調子にのるんじゃありませんよおおおおぉぉぉぉ!!」

 

 フリードが右腕にキャンサーの鋏を装着させ、ネロに向かおうとした。

 

「いい盾だ。あのような砲撃を防げるだけのことはある。」

 

 でも無理だった。

 

 フリードの目の前にいつの間にか、人が立っていたからだ。

 

 それは・・・鋼兄である。

 

 腰を落とし、フリードの手にしている盾に拳を軽く当てていたのだ。

 

「どれだけ素晴らしいか拳で試させ欲しいからしっかり踏ん張ってくれ―――――――踏ん張れるものならな。」

 

 そして、そこから一歩も動かずに拳も全く動かさないのに、凄まじい衝撃音が轟いた。

 

 まあ踏ん張り切れる訳がねえわな。

 

「ぬがあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・!!?」

 

 目にもとまらぬ勢いで壁をぶち抜いて吹っ飛んでいくよ。

 

 あっという間に星になりやがった。

 

 冗談のような光景に俺も含めた皆も驚き固まっているぜ。

 

「HAKKEIというものだ。飯くって映画を見て寝たら覚えた。」

 

・・・・・・あんたどこのOTONAだよ!?

 

 それも鍛えるうちに入るのか?それであれができるのなら誰も苦労しないわ!!

 

「まだ人外がいるのか!?」

 

「アギトではない。だが・・・何だこの尋常じゃない力は?むしろ我らに近いものを・・・。」

 

――――――ええい・・・本当に世話が焼ける連中だ!!

 

 どこからともなく声が聞こえてきて、無数の光の槍が雨のように飛んでくる。

 

 それらは俺達に降り注ぐようにしてきたが・・・。

 

 どこからともなく聞こえてくる笛の音と・・横手から飛んできた無数の泡のような物の弾幕にすべてぶつかり相殺されてしまった。

 

 そこには奇妙な銃を持った渡の姿。

 

「誰か知らないけど、僕の友達をやらせるわけにはいかない・・・キバット!!」

 

「あいよ!!ガブリ。」

 

 あいつの元に現れた妙にデフォルメされた蝙蝠を捕まえ、そいつが噛みつく。

 

 するとあいつの顔にステンドグラスのような模様が浮かび上がり、腰にベルトの様な物が現れる。

 

「・・・変身。」

 

 腰にその蝙蝠を装着するとともに渡は文字通り変身した。

 

 黄色い眼と黒と紅、そして銀の身体。

 

 それはファンガイア王族に伝わる伝説の鎧・・・キバの鎧。

 

「キバまで・・・。このアギトにちょっかい出しただけで・・・こんなにも色々な連中が・・・。」

 

 皆・・・驚いている。その気持ちは分かるぜ。ああ・・・そりゃもう俺も自分のことながらに呆れかえっているところだ。

 

 この様子だとあと一人もとんでもない事になっている。

 

 そんな時。紅の魔方陣が後ろで輝き、そこから部長が現れる。

 

「・・・みんなにイッセ―の危機を伝えたら行動が速いわ。でも・・・なんかまた一人ふえていない?」

 

「四人目登場です。」

 

「・・・・・・また人外が増えたのね。」

 

 部長はすでに諦めの境地。

 

 いやほんとすいません。でもまだまともの方だと・・・思いたい!

 

―――――ほう・・・。悪魔どもと戦争と思っていたが・・・ファンガイアとも戦争出来るのかもしれないな。

 

「・・・やってみろ。そんな事をしようとするなら僕と兄さんが黙っていない。本当の意味の全力で相手になるよ。」

 

「右に同じく。こっちも手加減は一切しないぞ。」

 

 謎の声に対して、渡と鋼兄は強い意思で応える。

 

「それよりもキリエはどこだ!?あいつをさらって何を・・・。」

 

――――――・・・・・・・本来ならこっちも戦いたいところだが、楽しみはまだ後にとっておく事にする。退くぞ!!

 

 その言葉と共に、上空にいた堕天使達も、そしてルテウス達も消える。

 

 そして・・・アーシアも例外ではない。

 

 彼女の足元に魔法陣が展開され、アーシアがそこに閉じ込めらたのだ。

 

「アーシア!?」

 

「だっ・・大丈夫です。私はまだ大丈夫ですから!!」

 

 俺は手を伸ばすが・・・彼女の手をとる前に、アーシアは消えてしまう。

 

「ぐっ・・・・。」

 

 届かなかった。それがただ・・・悔しい。

 

 何も分からず、何もできないまま今回は終わってしまった。

 

 

 

 




 黒幕は実はあるキャラを先出しさせてもらっています。

 その正体はまだ先にならないと判明しません。


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さらわれた友達。

この話を境についに終盤に入ります。

 この話で新しい設定の伏線をいくつも入れます。


 驚くことがあるかもしれません。


SIDE アーシア。

 

 

 アギト。

 

 それは神殺しの力だと私は聞いている。敬愛なる主を殺し得る毒と言える力を私と・・あの人はもっているらしい。

 

 同じ力を持つ人。

 

 もしかして・・・私達が出会い、そしてあのような形だけど再会できたのはその力が互いに引き合ったからなのでしょうか?

 

「神の毒ですか。アーシアちゃんがそんなすごい子にはみえないわ。」

 

 今日も私は牢屋に囚われている二人と楽しくおしゃべり。

 

 一人はキリエさんといいます。

 

 どうもあの堕天使さん達にさらわれてきたみたいです。逃げられないようにしていますが、それでも気丈です。

 

 理由を聞いたら・・・。

 

「絶対に助けに来てくれるから。」

 

 と。

 

 どうしたら、そこまで強く人を信じる事ができるのでしょうか?私にはまだ分かりません。

 

 でも・・・なんかうらやましく感じます。

 

 もう一人は酷い怪我を負った私と同じくらいの歳の人です。

 

 名前は・・ハルト君といいます。

 

 怪我は私が密かに直していて、それがばれないように怪我をしているふりをしています。

 

 拘束が酷くて、動けないのが退屈だと笑う当たり・・・ハルト君も中々の猛者です。

 

「そうか。」

 

 そんな彼は私があったというイッセ―さんについて色々と聞いています。

 

「話からすると・・・あの時のメンバー大集合なのか・・・。それもどれもこれも異様な何かに目覚めているみたいだし・・。」

 

 そして、ハルト君は何かを悟っています。どうもイッセ―さんとは知り合いみたい。

 

「レイちゃん・・どうやら、思いとどまってくれたみたいだ。それだけでもよかったよ。」

 

 イッセ―さんが生きていることに喜んでいますし。

 

「しかし、ネロの事を聞いても驚きましたよ。日本のあの仲間でしたか。」

 

 キリエさんとも知り合いみたいです。

 

「あの子の友達に会えてよかったわ。あの子・・・向うでは友達が全くいなくて。」

 

「・・・相変わらずか。でも安心してください、イッセーが昔通りなら問題ないです。」

 

「ああ・・・。私、ネロが友達と遊んでいる光景を見るのがささやかな夢だったの。それが見れるなら・・・まだ死ねないわ。」

 

 なんかキリエさん・・・すっごく気合いが入っています。

 

 ネロさんって・・・そんなに友達がいない人なのですか。

 

・・・・・私と同じですね。

 

「・・・何を言っているの?すでに君はイッセ―の友達じゃないか。」

 

 落ち込んでいる私を見たのか、ハルトさんが声をかけてくれる。

 

「あいつはそう言うやつだ。すごくエッチだけど。すごくお人好しだ。君の話し邪・・・そこらへんはまったく変わっていない。」

 

「・・・すこし説教がひつようかもしれませんね。エッチなのはいけないと思います。」

 

 キリエさん?そのセリフ・・・どこかで聞いた事がある気がします。

 

「俺たちとももう友達だ。そうでしょ?キリエさん?」

 

「はい。もう私達は友達ですよ。」

 

 まるで天使のような微笑みでキリエさんは私を友達と言ってくれる。

 

 それだけで・・・私は生きていてよかったと思えるくらいに。

 

「あとは指輪さえ取り戻せれば・・・・。ここであの力を使うわけにもいかないし・・・。」

 

 ハルト君は必死で機会をうかがっています。私達を助けてくれるの?

 

「でも・・・私が助かるのも・・・。」

 

「・・・安心して。優しい堕天使にも知り合いがいる。まあ・・・総督初め、幹部皆・・かなり、いやとても・・いや・・・馬鹿と言っていいほど濃い人達だけどいい人たちだよ。その人とも話はついている。元々はその人の内部監査的な立場で動いていたんだ。背景にあいつがいると思われるから。」

 

 堕天使の・・・総督?

 

「イッセ―達の背後にはグレモリ―か・・・・。それとあいつのアギトは一度変身して、そこから一度も変身はできてない。でも・・・この様子だと本格的な覚醒が近づいている?一度詳しく調べたいところだ。それよりうまく連絡をとって介入しても戦争にならないことをつたえないと。」

 

 ハルト君は考える。

 

「俺が・・・いやイッセ―達を含めた俺達が最期の希望だ。安心して。絶対に助ける。帰ったら一緒にドーナッツをたべよう。レイちゃんと一緒にね。」

 

『ドーナッツ?』

 

 私とキリエさんはそろって首をかしげる。おいしいのでしょうか?

 

「おいしい。絶対に食べて欲しい。あと・・・あの机の上に置いてある指輪をレイちゃんに渡してあげて欲しい。ようやく出来たんだ。魔法使いになったレイちゃんのためのドライバーが。彼女の力になる」

 

「・・・・はい。絶対に。」

 

 

SIDE レイナ―レ

 

 

 あのイッセ―先輩の幼馴染達を見て皆はいよいよ諦めの境地にたどりつこうとしていた。

 

「そう。あの魔戒騎士なのね。しかも有名な黒龍騎士が・・・。」

 

 リアス部長は新たに合流した四人目・・サイガさん。

 

 黒龍騎士の名前は裏の業界で大変有名。堕天使の間でも名は知れ渡っている。

 

 その実力は若手の騎士の中で飛び抜けており、まだ何か力を隠し持っていると。

 

「お前も出世したな。あの迷子が・・・。」

 

「・・・それは言わないでくれ。」

 

 イッセ―先輩も知っている通り、彼はもう一つ大変有名なことがある、

 

 それは・・・重度の方向音痴。

 

「本来なら一週間前にたどりつくはずが・・・ここまでかかってしまい申し訳ない!!」

 

「・・・まだ克服できてなかったんかい。」

 

「修行でもなんともならなかったか?」

 

 イッセ―君達の幼馴染一同はすでに知っているみたいだね。

 

「・・・うん。それに相方まで方向音痴だから、もうどうしようもなくて。」

 

『ははは・・・エイガだ。一応ホラー達の中では賢者と言われているぜ?知識面はガンガンフォローしてやるから安心しなよ。』

 

 そのフォロー・・・。方向音痴という一面でも何とかしてほしかったわ。

 

「それで・・はぐれ神父がホラーを使役していたという件は本当なの?私達の結界内はあなた達の指導でホラーがでないように処理していたのに?」

 

「はい。それも魔戒法師の技がつかわれている。その犯人を見つけたんだけど・・・鋼兄さんが吹っ飛ばしてくれたおかげで逃がしちゃったよ。」

 

「むう・・すまぬ。あそこまできれいに吹っ飛ぶ事を予想できなかった。」

 

 どんなパンチ力をもってすれば。人間一人が星になるくらいにふっ飛ばせるのか知りたいところね。

 

「でも、僕たちが集結したのは偶然じゃない。そこに多分・・・ハルもいる。」

 

 ネロさんと私、そしてサイガさんが追っていた事件は繋がっている。

 

「でも堕天使と事を構えるのは・・・。下手したら戦争に。」

 

「それは安心してください。」

 

 そうだ。この件に対して、リアス部長に伝えないといけない事があったんだ。

 

「この件はグレゴリも把握しています。私達の中に、裏切り者がいると。その内部監査を兼ねて私と・・・ハル君はうごいています。レイナ―レの名前で総督に確認してもらってもかまいません。」

 

「・・・まさかグレゴリ。それも総督とあなた達は繋がっているの!?」

 

 あの総督は本当に頭が良い。グレモリ―領内で、彼らが信頼できるのなら、自分の名前を出して、協力してもらいなさいと。

 

 その許可がここで生きている。

 

「はい。ですので、この件に関しては組織の裏切り者と断言できれば、処罰していただいても戦争に発展することはありません。でもまだ調べが・・・。」

 

 悔しい。まだその調べが足りないのだ。

 

 一方、朱乃先輩が私をじっと見ている。

 

 まるで何かを警戒しているように。

 

「・・・朱乃先輩。今は何も言いません。だから安心してください。貴方の事情も把握していますので。」

 

「・・・そう。ありがとう。其れなりに気を使ってくれているのね。」

 

「すみません。あまり堕天使が好きじゃないのはわかっているのですが。」

 

 ようやくこの人を見つけた。この人は彼にとって・・・。

 

「いいわ。その誠意を信じてあげる。それで最後の一人はどんな子なの?なんかいい響きがしてね。」

 

 晴人という名前に・・・多分朱乃先輩は懐かしさを覚えている。でも覚えていないはずだ。

 

 何しろ・・・あなたの記憶は封印されている。でもまだそれを言う事ができない。

 

 ごめんなさい。でも・・・でもいつか。

 

「ハルはただで捕まらないと思う。結構抜け目ないやつだったからな。」

 

 イッセ―先輩の言うとおりです。ハル君は何時だって・・・希望を捨てない。

 

 ひょうひょうとしているのに精神的に誰よりもタフなんです。

 

 少し鈍感ですけど。

 

「それで一つ聞きたいけど・・ハルとはどんな馴れ初めで?」

 

「・・・私が絶望に陥った時にたすけてくれたんです。私もゲートですから。」

 

「ゲート?」

 

 ゲート。それは私の中にファントムと呼ばれる怪物がいて、絶望するとそれが突き破って怪物になる存在。

 

 ハル君もそうだったが、それを自力で抑えこんだらしい。

 

 私もあるファントムに絶望させられ、ファントムになろうとしていた。

 

 仲間である三人の堕天使がすでに死んでおり、ファントムになっていたという事実に。

 

 でもハル君が言ってくれた。

 

「諦めるな!!お前は・・・ここで終わるのか?自分が何者か?それすら分からないままで!!」

 

 と・・・言ってくれた。

 

 私は何故か生まれつき、堕天使だった。天使から堕天したわけじゃなくて・・・生粋の堕天使だったのだ。

 

 多分・・私は堕天使同士の間で生まれた子。でも親の顔が分からない。

 

 どうして私が生まれたのか、それが知りたかった。

 

 知らないまま・・・死ねない。

 

 それだけで私は乗り越えた。

 

 そして・・・私もまたハル君と同じになってしまったのだ。

 

 自分の内にいるあの子との対話も済ませている。

 

 そのことはまだハル君にも明かしていない。

 

 いざという時、その力を私は躊躇いもなくつかうだろう。

 

私はハル君のおかげで・・・命も・・心もすくわれたんだ。今度は私の番だから。

 

 絶対に・・・ハル君を助けて見せる。愛する人を・・・絶対に助ける。

 

 

SIDE アーシア。

 

 私はうまく教会を抜け出す。

 

 手にはハルトさんが託してくれた指輪。

 

 多分・・・これが最後の機会だと私は予感していました。

 

「・・・・アーシア?」

 

 そして、私は三度目の出会いを果たしました。

 

 イッセ―さんと。

 

「アーシア?無事だったのか!?」

 

 イッセ―さんは私を見て・・・無事な私の姿を見て自分の事のように喜んでくれます。

 

 それだけで・・・私はどれだけ救われたのか?分かってくれるでしょうか。

 

 

 

 SIDE イッセ―

 

 無事だった。

 

 それだけがただ・・・嬉しかった。大丈夫と言ってくれた。

 

 言いたい事も、聞きたい事も一杯ある。

 

 でも重要なのはそこじゃない。

 

「遊ぼうか?」

 

「えっ?いいのですか?」

 

「いっただろ?色々と案内してやるって。」

 

 初めてあった時にアーシアはどこかさみしそうな顔をしていた。

 

 それを吹き飛ばしてあげたい。

 

 だから・・・彼女が知らない楽しい事を一杯教えたい。そう思った。

 

 

SIDE アーシア。

 

 イッセ―さんは街のあちこちを案内してくれました。

 

 本当に・・・本当に楽しいです。カラオケも・・・ゲームセンターも。

 

 何から何まで私が今まで知らなかった事だらけです。でも・・多分楽しかったのはイッセ―さんが一緒だったからです。

 

 私・・本当に初めてだったんです。

 

 こうやって誰かと一緒に遊んだのは。

 

 楽しくて・・・楽しすぎて・・・泣けてきました。本当に・・どうしてこんなに楽しいのに・・・泣けてくるのか。

 

「はい・・・ハンカチ。」

 

 そんな私に・・・イッセ―さんはハンカチを渡してくれます。

 

 うん・・本当に優しい。優しすぎます。

 

 私達は公園でゆっくりと話す事にしました。

 

「・・・・私の過去を聞いてくれませんか。」

 

 私は話す事にした。

 

 私がどういった人生を送ってきたのか。

 

 生まれつき孤児だった私。教会で神器と人の心に触れることができる力、そして予知能力に目覚め、一気に聖女とあがめられた。

 

 でも・・そのおかげで全く友達ができなかった。

 

 心に触れることができる能力も、人を遠ざける一因だった。

 

 悪意にも敏感になった。それがより私を孤独にした。

 

 そして・・・ある悪魔が私の元にあらわれる。その傷を私は癒してしまったのだ。

 

 それで私は異端者のらく印を押され。教会から追放。

 

 堕天使たちの組織を頼ってここまで来たと。

 

「・・・・・・・。」

 

 淡々と。ただ・・・淡々と話していました。

 

 悲しいという言葉すらも・・・今はでてきません。

 

「そう・・か。」

 

「私・・・誰も友達がいませんでした。だから・・・こんな楽しいことは初めてで。」

 

「友達ならもういるだろ?」

 

 そんな私にイッセ―さんは笑顔でいってくれます。

 

「・・・はい。」

 

 やっぱり・・・優しいです。あったかいですよ。

 

「ハルトさんの言うとおりの人ですね。」

 

「ハルト・・・?やっぱりハルトの奴。」

 

 その名前にイッセ―さんの心が高鳴ります。そうですか・・。心配してくれていたんですね。

 

 イッセ―さんの手をとり、そこからその気持ちが伝わってきます。

 

「キリエさんもいます。そして、ハルト君からある物を預かっています。これをハルト君が大切に思っている方に渡してほしいと。」

 

 私はある物をイッセ―さんに託します。それは多分・・・希望なのだろうと。

 

「ありがとう。そして、アーシア。君も・・・。」

 

 イッセ―さんは私のてをとってくれます。

 

 私を助けたい。そう思ってくれています。

 

「・・・・・ありがとうございます。」

 

 ここまで・・・優しく、そして温かい思いに触れたのは初めてかもしれません。

 

 ああ。これは友達としての思いなのでしょうか?

 

 きっと違う。友達としての気持ちじゃない。でも・・・何か分からない。

 

 私はイッセ―さんを・・・。

 

「迎えの時間だ。」

 

 そこで・・・私には残酷な現実が待っていた。

 

 

 

 SIDE  イッセ―。

 

 目の前にいたのは黒いフードと目だし帽で頭と顔を隠した一人の男であった。

 

「だっ・・・誰だてめえ・・・。」

 

 相対するだけで分かる。目の前の相手は・・・相当に強い。

 

「・・・・こいつの力は必要なのだよ。我々にとってね。」

 

 男の腰に変わったベルトが現れる。

 

 バックルの部分が掌のようになっているベルト。それに指輪を当てる。

 

―――プリズン・・ナウ!!

 

 ベルトから変な音声が発せられると同時に・・・アーシアと俺は別々の鳥かごの様な物に閉じ込められてしまった。

 

「なっ・・・なんだこれ!!」

 

 その籠はとても固い。仕方ない。

 

 両手の神器を発動させようとする前に、男は。

 

「アギトは邪魔なのでね。ここまま死んでもらうよ。」

 

 男は指輪を瞬時に付け替え、再び腰のベルトに当てる。

 

「やっ・・やめてええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 アーシアの悲鳴をよそに共にベルトから流れる音声。

 

――――――エクスプロ―ション・・・ナウ!!

 

 籠の中で突然巨大な爆発が起こる。

 

「いっ・・・イッセ―さん!!!」

 

 その爆発に俺は巻き込まれた。

 

 

SIDE ???

 

 我らの計画に邪魔なアギト。それもここで終わりになるだろう。

 

 これで俺は・・・新しい領域に達すれる。ただの堕天使ではない・・・あの力を。

 

「まてよ・・・。」

 

 俺は耳を疑った。

 

「アーシアをどこに連れていくつもりだ。」

 

 あの男・・・立ち上がったというのか!?殺すつもりで放った指輪の魔法を受けて生きているだけでも驚きなのに、それでなお・・・立ち上がってくるとは。

 

「・・・タフなものだな。」

 

「ああ。あんたのいうアギトというやつも・・・そんな感じじゃねえのか?」

 

 立っているのがやっとという状態だが・・・なるほど。これは驚異だ。

 

「さがっていなさい。私達が止めをさせます。」

 

 俺の隣には・・・黒豹の女が立っている。

 

 名前はマギストラ。ジャガーロード達を統べる女王。

 

 その隣には蒼い豹・・・キュアネウスと紅い豹・・ルべオ―がいる。

 

 この二体はマギストラの近衛兵的存在。

 

 マギストラが武器・・神託の杖を手にしアギトとなるあの男を殴りつける。

 

「がっ!?」

 

「いっ・・イッセ―さん!!」

 

 立っているのがやっとだったのだろう。その一撃であいつは沈む。

 

 そして、マギストラがその男の首根っこを片手でつかみ上げ・・・そのまま握りぶつ層とする。

 

「やめて・・・やめてください・・・イッセ―さんを・・・・私の友達を!!」

 

「ここでアギトの摘ませてもらう。覚悟しなさい。」

 

 マギストラがそう告げたと同時であった。

 

「がっ・・・。」

 

 何かが飛んできた。それがマギストラを弾き飛ばす。

 

「なんだ・・・。」

 

「おっと・・・させないぜ?」

 

 その傍には蝙蝠の様な大変奇妙な生命体が二匹いた。

 

 そして、倒れた男を、紅髪の女が助け起こす。

 

 そうか。この女が魔王の妹・・・リアス・グレモリ―か。

 

「ありがとう・・・キバット、カ―ミラ。」

 

 あいつの傍には線の細い青年も立っていた。

 

「・・・・よくもイッセ―君を痛めつけてくれたね。」

 

「部っ・・部長・・。渡・・・。」

 

 二人とも苛烈なまでに怒っていた。

 

 リアスは全身から滅びの魔力を発し、もう一人も魔皇力を発していた。

 

「いきますかキバット三世。」

 

「そうですな。カ―ミラおばさん。」

 

 おばさんを行ったコウモリモドキをもう一匹が翼でおもいっきりどついた。

 

「おばさんじゃない。立場的にそうでも、私はまだ若い!!兄さんの妹とはいえ、あんたとは五歳しか変わらないから、せめてお姉さんとよびなさい。でもしばらく見ないうちにあんたもつよくなったじゃない。その力・・・見せてもらうわよ。」

 

 このコウモリモドキ達・・血縁関係なのか?って・・そうだ、思い出した。あれはキバの鎧のコアユニット!?つまり・・・それが二つあるということは・・・。

 

「遠慮はしないわ。私の眷族をここまで傷つけた罪・・・万死に値する。」

 

 こいつら・・・キバの鎧の装着者!?

 

 しかももう片方は・・・間違いなくファンガイアの黄金のキバ。

 

「こっちも本気でいくから・・・。こい・・タツロット!!」

 

 その言葉と共に・・・小型の変なドラゴンが現れる。

 

「フォルテッシモでいきましょ~!!渡さ~ん、久々に呼んでくれましたね~。」

 

「おっ・・おい。空気を読め。」

 

 黄金のキバの目覚めの鍵まで・・・・間違いないか。

 

・・・・本来なら喜ぶべきなのだろうな。

 

 悪魔とファンガイア族。それぞれ王の身内が目の前にいる。この二人を手にかければ、俺の望む物が手に入るのだが・・・。

 

 だが現時点で黄金のキバと戦うのはリスクが高い。それほどまでの怪物。そこに新たなキバの鎧の担い手。それも・・・魔王の妹が持っている謎のキバの鎧も気になる。

 

「まさかあなたに使われる日が来るなんて思いもしなかったわ。覚悟はいい?」

 

「いつでもできているわ。貴方はの正体を知った時びっくりしたけど。」

 

 彼女の手に収まるコウモリモドキ。

 

 青年の手にも収まる。

 

「ここは退く。」

 

「いっ・・・イッセ―さん!!」

 

 籠に入れられた彼女をマギストラごとアジトへと送る。

 

――――――コネクト・・ナウ!!

 

「ははははは・・・勝負は預けさせてもらう。次会った時を楽しみにしているがいい!!」

 

「まちなさい!!」

 

――――テレポート・・ナウ!!

 

 あの二人の神器所有者の力を・・・我の者に。そして、私は神になってくれる・

 

 私はその瞬間が近づいていることを察しながらその場から去った。

 

 

 

SIDE 木場 佑斗

 

 部室内でリアス部長と渡君が起きた事を説明してくれた。

 

 イッセ―君が襲われたこと。その際に・・・あるシスターと接触し、伝言と指輪を託されていたことををだ。

 

「・・・・・・・・・。」

 

 ネロが黙って立ちあがり、部室から去ろうとする。

 

「おい。どこへ行くつもりだ。」

 

 それを鋼鬼さんが肩を掴んで止める。

 

「どけ。元々俺はキリエを助けるためにここにいる。居場所が分かったなら、じっとしている理由はねえ。」

 

「・・・・・・・・。」

 

「それに・・・そこにはハルトの奴もいる。イッセ―があんな姿になってまで助けたかった人もいる。じっとしていられねえ!!」

 

 ネロは怒っていた。多分・・・イッセ―君を傷つけた連中に。

 

「だからって単独で突っ込むな。」

 

「うるせえぇ!!あんたに俺の気持ちがわかるか!?一度ならず・・二度までも・・・イッセ―を助けられなかったんだぞ!!」

 

 怒りと共に鋼鬼の手を振り払うが・・・。

 

「・・・・・・ッ!?」

 

 ネロは鋼鬼さんを見て言葉を止める。

 

「悔しいのは・・・・お前だけじゃない。」

 

 彼もまた怒っていたのだ。それももう・・・鮮烈に。

 

 それを無理やり封じ込めているだけだ。

 

「すまねえ。」

 

「いい。そうなる気持ちも分かるからな。」

 

 最も・・・部室にいる皆は怒りに震えているのだけどね。

 

 僕だって・・・平気じゃない。

 

 今イッセ―君は保健室で眠っている。

 

「・・・本来ならあなた達を止めるべきでしょうね。でも・・・今回は話が別だわ。」

 

 リアス部長。おそらく鋼鬼さんと同じくらいに怒っている。眷族を家族として愛する人だからこそ・・・だ。

 

「居場所はわかった。あの教会を敵の陣地と断定するわ。ネロ・・・あなたの本当の主じゃないけど、兄様から委任状の様な物をもらっているわ。あそこで昇格(プロポーション)しなさい。」

 

「ああ・・・ありがてえ。」

 

「小猫、佑斗。一緒に行ってあげて。」

 

「うん。」

 

「わかりました。」

 

「・・・・私はここに残ろう。黒歌。術でフォローしてやってほしい。」

 

「はいにゃ。」

 

 なるほど、仙術での探知があるのなら心強い。鋼鬼さんはあえて残るみたいだ。

 

「ありがとう。確認したい事があるから、護衛にあなたがいると助かるわ。渡君もいいかしら?」

 

「はい。」

 

 部長達の護衛か。これ以上に頼りになる漢はいないよね。

 

「私も向います。」

 

 レイナ―レさんは突入に行くみたいだね。

 

「以上が突入メンバーかみんなくれぐれも無茶だけはしないで・・・。」

 

 その時であった。

 

 朱乃さんが慌てた様子で部室に入ってきたのだ。

 

 朱乃さんは冥界から来た医者をイッセ―君のとこまで案内していたはずなのに・・。

 

「いっ・・・イッセ―君が消えました!!」

 

『!!?』

 

「あの野郎・・・。」

 

 ネロ君は頭痛がするのか、頭を押さえたよ。

 

 意識を回復しただけでもすごいのに、立って歩くなんて信じられないほどの大怪我なんだよ?

 

「・・・はあ。手間をさらに増やしちゃうけど。イッセ―もお願い。多分連れ戻すとは言えないから、全て終わってぶっ倒れる時、支えてあげなさい。」

 

『はい。』

 

 全く・・・君も十分人外だよ。

 

 どういうタフネスをしているんだ!?




 イッセー大けがを負った状態での出陣です。


 いよいよ一巻のラストバトルの始まりです。


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みんなで友達・・助けます!!

お待たせしました一章最終決戦の始まりです。


 ボロボロとなったイッセーとそれを助けるために向かった仲間達の活躍を見てください。




SIDE イッセ―

 

 アギトの力は俺の人生に多分影響を与えていた。

 

 その力は・・・今までも多くの災いへと俺を導いていた。

 

 事故や・・・事件。それに実はたくさん巻き込まれていたりする。

 

 危険察知の力。本来なら危険に近づかなければいい。でも・・俺はどうしても見て見ぬふりは出来なかった。

 

 一度、それに従って逃げてしまい・・・身近な人を一人死なせてしまった。

 

 大切な友達だった。そいつを俺は・・・殺してしまったんだ。

 

 気付いて手をさしのばしても手遅れだった。

 

 この力は一人よがりな人間にとってはおそらく素晴らしい力だろう。

 

 でも俺にとっては・・・呪いも同じだ。

 

 俺はあがき続けていた。その呪いから必死で抜け出すために。

 

 今でもそれは続いている。こうやって誰かを助けたいという思いも。

 

 俺のこんな一面・・・ドライグとクレアしか知らねえ。情けねえ物あいつらにみられてばかりだな。いないと結構さみしいぜ。あの二人がいたら・・・。

 

―――――無茶する。だが無茶するなら強気でいけ!!弱気は許さん!!

 

――――熱いわね。ふふふ・・・あんたの数少ない美点なんだから派手にやりなさい。フォローはするわ。

 

 って言ってくれるだろうな・

 

 でも・・出来れば二人とも力を貸してくれ。

 

 助けたいんだ。アーシアだけは。

 

 あいつはずっと・・・ずっと一人だった。でも・・・それで優しい心を持っている。

 

 俺なんかが初めての友達でも・・・泣いて喜んでくれた。

 

 そんな子を死なせたくない。

 

 部長・・・みんなすまねえ。俺・・意地張りにいくわ!!

 

 俺は森を歩いていた。向かう先は最初に出会ったアーシアを送り届けた古い教会。

 

 多分・・・そこにいる。

 

 俺はそう確信してそこに向かっていた。

 

「んあ?やっときましたねえ~。・」

 

 その教会の前には前にあった腐れ神父がいた。

 

 なんかすごくボロボロだった。

 

「ひでえありさまだな。」

 

 まるでミイラ男だ。松葉づえをついているぜ。

 

「君の友達のおかげですよ!!生きていることを何かに感謝したいくらいに。」

 

 まあ・・・普通ならあれだけふっ飛ばされたら死んでもおかしくないはな。

 

 生きているだけでも十分すげえよ?

 

 それで動けるお前・・化け物か?

 

「それに・・・君だってボロボロじゃないですか。」

 

「まあ・・・な。」

 

 はっきり言うと喋るだけで痛い。

 

 歩くのも・・拳を握るのも痛い。

 

 でも、それくらいがちょうどいいぜ。

 

「お前にはわからねえだろうな。」

 

 おかげで決意が鈍らねえからな。

 

「ほう・・・。良い目ですね。なら・・・怪我人同士遠慮なくやり合おうじゃありませんか・・・。」

 

 どうも邪魔をするみたいだ。こいつにかまっている暇は全くねえのに。

 

「もちろん・・・私はまともに戦えませんので・・・行きなさい。」

 

 こいつの言葉と共に・・・ホラーが現れる。

 

 前あった黒いガイコツじゃない。無数の刃が集まり、無理やり人の形を作ったようなタイプだ。

 

 それも軽く見ても三十を超える数。そいつらに俺は一気に囲まれる。

 

 つっ・・・一体なら何とかなるけど・・・。

 

「アギトに対する苦手を克服させるために手ごろなオブジェに憑依さていますよ。さあ・・・一気に喰らいつきなさい。」

 

 ホラー達が俺に向かって一斉に襲いかかる。

 

 だが・・・・。

 

「済まないけど・・・彼は別に用事があるんだ。」

 

「そう言う事だ。それにこっちもお前に用がある。」

 

 その言葉と共に、襲いかかろうとしていたホラー達が一斉に斬り伏せられる。

 

 それを行ったのは見知った二人の顔だった。

 

「ここは僕達に任せてもらおうか。」

 

「先に行って。あとでおいつくよ。」

 

「なんだ・・・もうばれたのか。」

 

 それは木場とサイガだった。

 

「なっ・・・魔戒騎士?それと・・なぜ君がホラーを斬れる?」

 

 フリードの疑問はもっぱら木場に向けられている。

 

「なにって・・・ソウルメタル性の剣を作ったからだよ。」

 

「さすがに驚いたよ。面白い神器があるもんだ。しかも作っていきなる振う事が出来るのだから驚きだ。・・・・思った通り素質があるな。」

 

 ソウルメタル性の剣を作った?

 

 ホラーは通常の物理攻撃は全く効かない。でも、ソウルメタル性の剣なら効果が高い。

 

 でも・・・それって確か普通の人間にとっては超重量の金属でしかないと聞いた事があるような・・・。

 

 作れる以前の問題だよね?

 

「素質ってなんだい?サイガ君?」

 

「いずれ分かることさ。それよりも今は目の前の敵に集中。」

 

 それを・・・木場が軽々と振るっていますよ?一体どういうことです?

 

 まっ・・まさかね。木場にあの素質あるというのかい?

 

「んな無茶苦茶な・・・厄介な事・・・この上ありませんね。でもですね。」

 

 フリードの野郎がもう一つ何かと取り出す。

 

「ホラー以外にも実は隠し玉あったりしますよ!!」

 

 それは小さな球のようなものであった。それを地面に投げると・・・。

 

 地面からでかい何かが現れる。

 

 それはまるで巨大なハリネズミ。頭が牛。手は退化しているが長い尻尾を持っている巨大な怪物。

 

「さあ・・・魔化魍ギュウギ。餌の時間ですよ!!」

 

 おいおい。今度は魔化魍ですかい!!

 

 しかも背中からでかい針をたくさん生やしていやがるし。

 

 まさかその針を飛ばさないよね?

 

 あら・・・針が飛んでいたよ。

 

 ちょちょちょちょ・・・シャレなならねえ。何で投げやりで使うやりよりも太い針に刺されないといけねえ!!

 

 あっ・・でも鋼兄の話だと。ギュウキって針は一度飛ばすと再生に時間がかかるという欠点があったはず。

 

 なら少し時間を稼げば・・・

 

「はははは・・・時間稼ぎなら無駄ですよ。本来なら針は飛ばした後に再生に時間がかかるという欠点がありますが、この子は改良していましてね・・・針はいくらでも、そして瞬時にはえ変わります。」

 

 そっ・・そんなのありかい!!ひでえええええぞ!!

 

 木場とサイガが針を次々と剣で弾き飛ばしているけど・・・これじゃあ・・。

 

「それはすごいな。なあ小猫ちゃん。」

 

 この声は・・ネロ?

 

 そして小猫ちゃんって・・・!?

 

「懐に潜り込んだら流石に針は無理です。」

 

 小柄な体を利用していつの間にか小猫ちゃんがギュウキの真下に・・。

 

「・・・仙術と気の応用。鋼兄さん仕込みのHAKKEI・・いきます!!」

 

 あら?いつの間に小猫ちゃん・・・鋼兄さんと呼ぶようになったの?

 

 って・・・そんな疑問が吹っ飛ぶくらいんかすごい光景を俺は見ているぜ。

 

 凄まじく重い打撃音とともにギュウキが空を舞っている。いや・・・飛び上がっている!?

 

 まるでバレーのトスのようにギュウキが宙を舞っている。

 

 いくら戦車の特性で強化されているとはいえ・・すごい。

 

「いいトスだ。だったらきっちりとスパイクを決めねえとな。」

 

 そして上空には・・ネロがいた。蒼い悪魔の腕で空中のギュウキの頭を掴んで。

 

「そうううらあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 そのまま落下して地面に叩きつけやがった。

 

「よっしゃ・・・・絶望がお前のゴールだ。」

 

 ギュウキ。それだけでまったくうごかなくなったし。

 

「ネロ先輩。それはスパイクじゃなくてダンクシュート。バスケですよ。」

 

「・・・細かい事は気にするな。」

 

「細かいというか・・・ネロ先輩も案外勢い任せですね。」

 

「だったらそのまま振り切るだけだ。」

 

「はあ・・・ツッコミに疲れます。」

 

 ああ・・・小猫ちゃん。ネロに対しても容赦なくツッコミをするようになっているし。

 

 ネロはネロで律義に応えている。

 

 って言うか・・・いつの間にか皆・・・仲良くなっているよな?

 

「姉さま。あと始末よろしく。」

 

「はっ・・はははは・・・あたし・・何のためにきたのにゃ?」

 

 黒歌さん苦笑いしながら痙攣しているギュウキに弾丸撃ち込んで止めの準備にはいっている。

 

「おっ・・お前ら・・・。」

 

―――――コネクト。

 

 その音声と共に無数の銃弾が飛んできてフリードを襲う。

 

 それをいきなり出てきた黄金のカニの怪物が盾となって防ぐ。

 

「固いわね。でもね・・・・私はこれだけじゃないの。」

 

―――――トルネード。

 

「へっ?えっ?」

 

 聞き覚えのある音声と共に、フリードの周りに巨大な竜巻が発生。

 

「ぬぎょおあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

 見事に宙に舞い上がるフリードとカニの化け物・・・確かボルキャンサーといったっけな?

 

 そして、そのまま落下。地面に激突する。

 

 そして、腰に俺を襲った謎の男と同じベルトをつけたレイナ―レの姿。

 

「・・・・・・・・。」

 

 っていうか・・・みんな来たのか?

 

「なんで俺達がここにいるんだっていいたげだな?・・・っつたく。俺だって助けたい奴がいるんだぜ?当然だろうが。」

 

 ネロは俺の背中を半端な力ではない右腕で叩いてくる。

 

 痛いっていうの。

 

「けが人だから今はこれで勘弁してやる。二度も死ぬようなこと・・・許せねえからな。」

 

 ネロの真剣な声色に俺は気付く。お前・・・あの時の事を。

 

「そう言う事だ。帰ったら部長の説教・・・覚悟してね。」

 

 木場・・・。

 

「まだ再会したばかりなんだ。そこで永遠のさようならなんてひどすぎるからやめてよね。そう言うのは面倒すぎるんだから。」

 

 サイガ・・。

 

「私達・・・たよって。」

 

 小猫ちゃん・・・。

 

「・・・あなたを殺そうとしたくせに変だけど。死んじゃだめだよ。生きている。それだけで・・・希望なんだから。」

 

 レイちゃん・・。

 

「おっ・・・おのれらぁぁぁぁぁぁぁ・・・。」

 

 って・・・フリードの野郎。まだ立ちあがってきやがる。

 

「こうなったら・・・やってやろじゃないですか。キャンサー!!」

 

「おう。受け取れ・・・。」

 

 キャンサーの中から・・黒い何かが飛び出し、フリードがそれを手に取る。

 

 それはカニの紋章が書かれたものであった。それは・・カードのデッキのような物。

 

「やっちゃいましょうか・・・禁手(バランスブレイク)いや・・・。」

 

 後ろの窓からベルトの様な物が現れ、フリードの腰に巻きつけられる。

 

「・・・変身・・・。」

 

 手にしたベルトのバックルにそのデッキを差し込む。

 

 それと共にフリードは変身を遂げる。

 

 それはカニを模したような頭をした男。鈍い金のアーマに左腕に銀色のはさみをつけている。

 

 こっ・・・これはクレアが言っていた召喚獣を使役する者達が使える禁手・・・変身。

 

 こいつはそんな領域にいるのか!?俺はまだ・・・使えない領域を。

 

 やばい。あれが使えるという事はあれも使えるということか!?

 

「ふふふふ・・さあ。派手にいこうじゃないですか。」

 

――――――――Adⅴent!!

 

 フリードが左腕の召喚機を発動。

 

 すると・・こいつが契約している金色のカニとは別のカニが現れやがった。

 

 一体は紅いカニ。右のはさみが小さく左が大きい。

 

 もう一体は蒼いカニ。逆に左が小さく、右が大きい。

 

 共通しているのは固い甲羅に覆われていることか。

 

―――Shoot Vent!!

 

 変身したフリードの胴体にボルキャンサーの口が現れる。

 

「受けなさい。バブルボム!!」

 

 その口から次々と泡が発射されたのだ。

 

- その泡を皆は散って避ける。

 

 命中した場所は爆発しながら・・・溶けて行った。

 

 爆発する上に溶ける泡って・・・やばすぎるぞ。

 

「ここから先には・・・俺達に任せろっていったはずだ。海波斬!!」

 

 だが、それを木場とサイガが迎え撃つ。

 

 泡をサイガは素早い斬撃で切り裂いたのだ。

 

 木場も変わった剣をどこからともなく取り出し、それで泡を斬る。

 

 斬った泡は溶けず、そして爆発もせずに凍りついた。

 

「こういう対策は任せて。」

 

「しかたにゃい。あたしも手伝う。」

 

 そこに黒歌さんまで加わる。

 

「わかった。でも・・・気をつけて欲しい事がある。」

 

「?」

 

「ファイナルベントには気をつけろ。発動したら・・・逃げるか、全力で防御しろ。でないと・・・消滅するぞ。」

 

 召喚機使いの禁手(バランスブレイカ―)は契約したモンスターの力を纏って変身するというものだ。

 

 名は・・・魔獣使いの仮面と獣鎧(アーマードマスクドライダ―)

 

 防御力はもちろん、身体能力などの戦闘力のすべてが凄まじいほどあがる。

 

 そして、そうなって初めて解禁される禁断のカードがある。

 

 それが・・・ファイナルベント。

 

 詳細は俺もしらない。だが・・・クレアが言うにはそれは最終兵器と言える威力を誇るらしい。

 

「わかった。それもカードで発動するよね?」

 

 木場達には俺の召喚機がどういった物か説明してある。今は呼べないけど、いずれ契約したクレアを紹介するとも約束している。

 

「ならタイミングは読める。気をつけるさ。これ以上は面倒だね。」

 

 面倒か・・・。照れ隠しの意味だな。サイガの場合は。

 

「頼むぜ。2人とも。」

 

 二人に後を託して俺達は教会の中へと突っ込む。

 

「だから行かせるとおもい・・・。」

 

「あたしをわすれるにゃ!」

 

 動こうとした奴らの足元に突き刺さる弾丸。そして、二人の元にラッパのような銃を持った黒歌があるいてくる。

 

「お姉ちゃんがんばるから、そっちもがんばんなさい。」

 

「・・・・はい。姉様も気をつけて。」

 

 小猫ちゃんの声を最後に俺達は教会へといく。

 

「いい度胸です。だったら・・全力で相手になろうじゃないですか!!」

 

「させると思う?」

 

 背後で黒猫さんが笛を吹く音が聞こえる。

 

「やるからには鎧くらいはだすよ。」

 

 サイガも自分の真上に剣を掲げ、円を描く。

 

 二人とも変身するのか。

 

「こっちも変身してみたいよ。」

 

 木場はそうぼやいた瞬間・・・俺の中で何かが感じる。

 

 違和感程度だが、何かが引っ掛かったのだ。まるで出来るのにしないような・・・?

 

 でも今はそれを詮索する暇はない。そう割り切り、俺達は教会の中へ。

 

 三人とも・・たのんだぞ。

 

 

 

SIDE リアス。

 

 私達は色々な確認作業をしていた。

 

 その後すぐに教会に向かうつもりであったのだが・・・。

 

「やっぱりこっちにも来たのね。」

 

 そこには二体の堕天使。

 

「邪魔をさせたくないのでな。」

 

「死んでもらうぞ。リアス・グレモリ―。」

 

「あらあら・・・物騒ですわね。」

 

 その言葉に朱乃が微笑みながら登場。

 

「やれやれ。世話になっている方なのだ。手を出されるのは困る。」

 

 拳と鳴らし、軽く首を回す鋼鬼さん。最初っから変身しているという反則的な状態。

 

「せっかく友達になれた人達なんだ。やるなら僕を倒してからにしてもらおうかな?」

 

 そしてキバの鎧。それも・・・タツロットの力で黄金のキバとなった渡君。

 

『・・・・・・・・・はい?』

 

 二人とも唖然としているでしょうね。

 

「なっ・・・なんで鬼神と黄金帝がいるんだ!?」

 

「やっ・・やばい。」

 

「・・・・・・・そう言えばこの二人ってそんな二つ名だったか。」

 

「相当大暴れしたのですわね。」

 

 この二人。裏の社会でも結構有名だ。

 

 鋼鬼さんは数多くのはぐれ悪魔ハンター達をすべて返り討ちにしたために。

 

 渡君もそのキバで多くの猛者を倒してきたみたいだし。

 

 それでこの二つ名である。少なくとも二人・・魔王級の力はあるんだし。

 

 上級の悪魔や天使、堕天使ですら・・・その名だけで逃げるわね。

 

 こんな二人と幼馴染で、友達であるイッセ―って何者なのかしら?

 

「恩人の護衛は当然だろうが。」

 

「来ることはすでに読めていたんだ。こっちもすぐにイッセ―君達の所に行きたいのを我慢していたんだよ。だから今回は安心してくれ。苦しむ間も与えずに瞬殺してあげるから。」

 

『ヒッ・・・ヒイイィィィィィ!!』

 

 二人ともえげつないわね。

 

「何をやっている。」

 

「主の応援で我らもいるのだ。しっかりしろ。」

 

 その後ろから豹の姿をした変な獣人があらわれる。

 

 まるで風のように高速で駆けてきたのだ。・

 

「ジャガーロード様達!!」

 

 そうか。話にあった・・・イッセ―を殺した者達の仲間。

 

 悪魔でもない。でも、天使でも、堕天使でもない。妖怪でもない。

 

 まさに・・・アンノウンと呼べる得体のしれない相手。

 

「ぐぐぐ・・おろかなアギト。あのまま目覚めずに死んでいくのだ。」

 

 アギト?

 

 それって・・・人類創造にまつわる神話に出てくるあの・・・アギト?

 

 数多の人の中にその因子が眠り、目覚めるとき神を殺すといわれるあの禁忌の存在が?

 

 存在その物が・・神滅具(ロンギヌス)と同等か、それ以上とされる神でもあり龍でもあり、そして人でもある。そんな神殺しの龍神人が?

 

 今までごく少数が目覚めたという報告がある。それが目覚めているというの?

 

 じゃあ・・・あのアンノウンは古き神の使徒?

 

 アギトの因子を狩る古の存在。

 

 そして、その彼らが狙うアギトの因子を持つ者。私の周りで一人だけ心辺りがあった。

 

「アギトって・・・・イッセ―のこと?」

 

『!?』

 

 アギトの伝説は裏の社会の神話で大変有名だ。人類創造に深くかかわる存在なのだから。

 

 当然鋼鬼さんも・・・渡君も知っているでしょうね。

 

「愚かなアギト。あいつ・・・もう一人のアギトのために・・死ぬ。愚か・・・愚かだ。」

 

「アギトは死ぬ。自分の命を顧みない愚かな行動によってな。はははははは・・・馬鹿なやつだ。はははははは・・・。」

 

 二体のアンノウン・・・いえ、古き神の使徒たちはイッセ―をあざ笑う。

 

 こいつらの目的はイッセ―。

 

 そして、もう一人のアギトって・・・あのシスターね。

 

 そう・・・か。いい度胸しているわね。

 

 地面が大きく揺れ、亀裂が入る。

 

 まるで地震が起きたかのような地響き。その正体は。

 

「そういうことかい。あの時の変身はアギトの力によるものだったのか。」

 

 納得した様子の鋼鬼さんの・・・踏みつけだった。

 

 おそらく彼はただ思い切り地面を踏んだだけなのでしょうね。それだけ地割れと地震が起こるなんてすごいや異常を通り越して・・・呆れてしまうわ。

 

「・・・・ザンバットソード。」

 

 そして、ある斬撃が放たれる。

 

 あいつらはとっさにその場から離れるか。その後・・後ろを見て絶句していた。

 

 何百本もあった森の木が一斉に斬り落とされたのだ。

 

 たった一振りなのに冗談みたいな切れ味。

 

 それを行ったのは水晶のような剣を手にした渡君。剣の刃に噛みついているコウモリを動かし、刃を研がせながら告げる。

 

 あれがファンガイアのキングが使う・・・伝説の魔剣か。

 

「実は知っていたりするんだよ。その力によって僕たちはあの冒険の日からたすかったんだから。」

 

 知っていた?

 

 この子達・・アギトの事を知っている?

 

「命の恩人をバカにされて黙っていられねえ!!」

 

「大切な友達を侮辱した罪・・・万死に値する。王の判決を言い渡してあげるよ。」

 

 そして・・・その上で怒っているのね。2人の怒りだけで・・・大気だけじゃなくて大地すらも震えている。

 

「渡・・・その王の判決を聞かせろ。」

 

「当然・・・死刑。」

 

「シンプルでいいねえ!!全力でつぶしてやる。」

 

 二人の殺気が尋常じゃないわ。あの二体のアンノウンが完全に怯えている。

 

「こいつら・・・アギトではない。だが・・なんだこの異様な力は。」

 

「ジャガーロード様達・・逃げてください。この二人はヤバいです。」

 

「魔王級の相手です。」

 

「・・・ぐっ・・なら仕方ない。」

 

 上空の堕天使が声をかけ、四体が逃げようとしたのを・・・雷が止める。

 

「あらあら・・。あなた達・・もう一人怒らせて行けない人を怒らせていますわ。ねえリアス。」

 

 ありがとう朱乃。感謝するわ。

 

「悪いけど、今回は私がやらせてもらうわ。ねえ?カ―ミラ。」

 

「あいよ。キバっていきましょうか。」

 

 私の傍にカ―ミラがやってくる。

 

「私にとっても家族なの。渡君の判決・・・私に執行させてもらっていいかしら?」

 

 私は全身から滅びの力を解放させつつ、歩きだす。

 

「おっ・・・お前正気か?アギトは全世界の神話に対する禁忌なんだぞ!?」

 

「関係ないわね。あの子は私の眷族・・・家族になった子よ。例えアギトでも私の眷族なら私は彼を助ける義務がある。」

 

 むしろ私は納得しているわ。悪魔の駒でどうして悪魔にならなかったのか。

 

 あれは彼自身が呼び寄せた。本能的に、己自身が助かるためと、アギトの目覚めのために。

 

 悪魔の駒の転生機能を利用して蘇生しつつ身体をつくりかえた。アギトのための身体に。

 

 おそらく彼はもうすぐ・・・覚醒する。

 

 アギトとして。

 

それでも私にとって家族には変わらない。

 

「イッセ―もいい主を見つけた物だ。いいだろう。ここはあなたを立てる。」

 

「刑の執行よろしく。」

 

「ええ。」

 

 鋼鬼さんも渡君も譲ってくれる。ありがたいわ。

 

 私はカ―ミラを手に取る。

 

「言っておくけど、私の鎧はまだカテナで封印されているわ。何しろダークキバの鎧を元に作られた鎧。その封印がすべて解けたら・・・世界を壊滅するだけの力を発揮することになる。そんな危険な力であることを理解して。」

 

 カ―ミラの鎧。それは彼女の兄と同等の力か、それをしのぐほどの凄まじいスペックを秘めたファンガイア一族の禁断の鎧。

 

 私はそんな彼女を使い魔にしていた。

 

 渡君いわく・・・彼女は今まで誰も適合者を選ばなかった。

 

 故にあっても誰も使えなかったのだ。

 

 だからこそ・・・カ―ミラが選んだあなたが使って問題はないと。

 

 彼の兄にも連絡して極秘で了承をえている。

 

 十三魔族ファンガイアの王族から悪魔、グレモリー家へのプレゼントという形で。

 

 プレゼントという形は本当に苦笑してしまうわね。

 

 あまりにも強力すぎて。そして愛しすぎる送り物だ。

 

「一度使ったら、あなたは魔皇力も得てしまう。悪魔・・それも上級のあなたならなじむでしょう。でも。使ったあなたもファンガイアとしての力も得ることになる。」

 

 その鎧は私を悪魔以外の何かもつけてしまう。でも後悔はない。

 

「ええ。覚悟はしているわ。でも・・・私はみんなの王(キング)なの。みんなを率い、守るだけの力を得るられるなら安い物よ。」

 

「そう・・・やはりあなたは私が求めていた王(キング)ね。使いこなす素質だけじゃなくて、その気高い精神もそう。わがままなのも個人的に気にいっているし。・・・きっと私はあなたと出会うために生まれたのね。」

 

 カ―ミラ。この子は気位が高いが同時にさみしがり屋である。

 

 怪我をした状態である小さな箱に封印されていたこの子を私は中学校に入学した時の森で見つけた。

 

 彼女は先代キングが滅ぶ事となったファンガイア同士の争いに巻き込まれ傷つき、元々存在を危険視されていた当時のビショップによって封印されたらしいのだ。

 

 封印が解け怪我に苦しむ彼女を助け、喋る事に驚きつつもゆっくりと私とその眷族達で看病したりして仲良くなった。

 

 その際・・・カ―ミラが恩を返したいといって、私と使い魔契約を結びたいと言ってきたのだ。

 

 私は彼女を家族として受け入れた。その事に・・・カ―ミラは涙を流して喜んでいた。

 

 

「だから・・・私も覚悟を決めるわ。生きるも死ぬのもあなたと共にいる覚悟をね。その証として受け取りなさい、闇のキバ、黄金のキバに続く、禁断の鎧・・滅びをもたらす紅のキバの鎧を。」

 

 カ―ミラが私の左手の甲にキスするように噛みつく。

 

 すると私の腰にベルトが現れる。

 

「ちょっ・・・そんなめちゃくちゃなのありか!?」

 

「三つ目の・・・禁断のキバの鎧!?」

 

 私の腰のベルトにカ―ミラを逆さまにくっつける。

 

 それと同時に・・・私の身体が紅の鎖に包まれていく。

 

 そして・・・私は変身を遂げた。

 

 窓に映るのは渡君のキバの鎧と同じ頭をした鎧に身を包んだ私の姿。

 

 基本的に渡君の封印された状態のキバの鎧と似ているようで違う。

 

 背中を隠すほどの短さの黒いマント。腰には金色の刺繍をした黒いローブを巻いている。

 

 腰からは悪魔の羽を思わせる紅の蝙蝠の羽。

 

 手は紅の篭手。足は紅のロングブーツとなっており、その上から両手足は鎖と蝙蝠の羽を閉じたような銀の装甲で封印されている。

 

 変身を遂げた私に堕天使とアンノウン達は下がる。

 

 私の滅びの力が増しているのがわかるわ。

 

「さあ・・・滅びの始まりよ。」

 

――――――――――ウェイクアップ。

 

 腰のカ―ミラが笛を吹くと同時に封印が一つ解かれた。

 

「今のあなたはカテナを一つしか解く事ができない。いえ、言い換えた方がいいわね。装着したばかりで一つ解くことができるなんてさすがね。」

 

 解かれた封印は右腕。

 

 指先に鋭い爪が生え、そこに滅びの魔力が集束され、赤く輝く。

 

 腕からは紅い二枚のコウモリの羽が広がる。

 

 私は滅びの力を纏った爪を堕天使とアンノウン達に向かって振った。

 

「いい忘れていたけど、全部カテナが解放されたら下手な戦神なんて簡単に一蹴できるほどになってしまうから。」

 

 ・・・・・それはシャレにならないわね。魔王級どころじゃないわ。

 

 

 

 鎧を解き、私は荒れる息を整える。

 

 短い変身だというのに・・・体力と魔力の消費がすごい。

 

 滅びの鎧。まだ本来の力が封印されているとしても、その力は凄まじい物があった。

 

 私の滅びの魔力とあまりにも相性が良すぎる。

 

「これはレ―ディングゲームでは使用できないわね。元々使うつもりはなかったけど。」

 

 ゲームのリタイアシステムを確実にオ―バーする威力がある。

 

 私は二体の堕天使と・・二体のアンノウンを瞬時に消滅。

 

「たった一回のウェイクアップで凄まじいですね。ここまで相性がいいなんて。」

 

「でもまだまだよ。この鎧のスペックはこんなものじゃない。それを引き出し切れていないのは私の未熟さのせいね。」

 

 渡君に言った通り。この鎧の力はまだ底知れない。

 

 もっと・・・もっとつよくならないとね。せっかくカ―ミラが覚悟を決めて私に与えてくれた力。

 

 主として、この力と向き合い、心身共に強くならないと。

 

「・・・なるほど。その向上心もすばらしい。なんなら俺がトレーニングメニューを組んでみようかな?禁手化に至るためのトレーニングという物を考えてみたかった。」

 

・・・・・鋼鬼さん。お手柔らかにね。何しろあなたと同じトレーニングなんて絶対私達にとって拷問以外何ものでもないでしょうから。

 

「リアス・・・。ここで休んでおきますか?あなた・・・初めての変身で相当な消耗を・・。」

 

 朱乃。私を名前で呼ぶなんて相当なものね。

 

「気づかいありがとう。でも・・・イッセ―達が心配なのよ。」

 

 私の予想通りなら・・・アギトの目覚めが近い。

 

 私はそれを見届けないといけない。

 

「ならこれを食べておけ。」

 

 そんな私に鋼鬼さんは飴玉の様な物を渡してくれる。

 

「鬼達の組織・・猛の前身といえる吉野はある変身忍者とも縁があってな。これはその彼らに教えられた忍者食の一つだ。食べるとそれなりにだが、疲労が取れる。気も回復するから魔力にも効果あるかもしれん。」

 

 ありがたく頂くわ。

 

 私はそれを含みながらイッセ―達の元へと駈けつける。

 

 そして、そこで私は驚きの光景を目にすることとなった。

 

 




 原作破壊・・・リアス。キバの鎧の主となってしまいました。

 この鎧はまさにリアスのためにあるような鎧です。その装着許可をだした渡の兄さんの度量の凄さもわかってあげてください。

 ここから教会内部に突入です。


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五人目・・合流です。

いよいよ五人目の参上です。

 彼は今回はそれほど活躍できないかもしれません。

 ですが、次章では大暴れさせたいと思っています。


 


SIDE イッセ―

 

 俺達は教会内に入って違和感を覚える。

 

「なんだ?広すぎるぜ。」

 

 ここは昔ある幼馴染兄妹と一緒に遊んだ場所でもある。

 

 やんちゃな栗色の髪の女の子と、友達を作りまくるリーゼント野郎の変な馬鹿兄妹。

 

 あいつら元気にしているのかと・・ふと思ったが、今はそれどころじゃなかった。

 

 そんな元々の遊び場だったからこそ構造はよく分かる。

 

 こんな・・・まるで体育館の中のように広い空間などなかった。

 

「それはそうだ。私が魔法でひろげている。」

 

 その疑問に答えてくれたのは黒服の男であった。

 

 そう・・・アーシアをさらい、俺をぼこぼこにしてくれたあの男である。

 

 あいつの傍には二つの十字架があり、二人の女が磔にされていた。

 

 一人はアーシア。

 

 そして遠目で分かりにくいが、もう一人はおそらく。

 

「キリエ!!」

 

 ネロが叫ぶなら間違いないだろう。キリエさんだ。

 

「もうすぐで儀式は完了する。邪魔しないでもらおうか。」

 

 男の傍には黒豹の女怪人が現れる。

 

「物ども・・・狩りのはじまりぞ。」

 

『はっ・・。』

 

 号令と共に・・・黒、白、黄、赤、青の五体の豹の怪人が現れる。

 

 俺達を襲った奴らか。

 

「紹介が遅れたな。私の名前はマギストラ。ジャガーロード達の女王を務めておる。」

 

・・・・・っあいつらの親玉ということか。

 

「あいつらの始末は任せたぞ。これもおまけでつけてやる。」

 

―――――――コネクト・・・ナウ!!

 

 男が魔法陣を真横に展開させ、そこから何かを取り出す。

 

 それは人の頭二つ分程の大きさの巨大な灰色の石であった。

 

「お前らはこいつらと遊んでおけ。」

 

 それを俺達の前になげ、粉々に砕け散ったかと思うと。

 

 以前俺達を襲ったグ―ルという化け物に次々と変わっていった。

 

 その数・・・・冗談じゃねえぞ、どう見ても百は下らねえ。

 

「・・・あなた。ワイズマンと通じているのね。」

 

 レイちゃんの言葉に男は笑う。

 

「フハハハハハハその通りだ。あいつのおかげでこっちも色々と準備という者ができるのだよ。さあ・・・思い切り始めようか。この二人から神器を抜き出して、私は神になる。アギトの力も取り込んでな。」

 

「なっ?」

 

「我々としても主の子ではないお前がアギトの力を持っても問題はない。あくまでも人間がそれで進化することが許せないだけなのだ。それに我々にも神器を使っての強化を確約している。故の同盟ということだ。」

 

 マギストラの目的。そんな事のためにアーシアとキリエさんを。

 

「させると思う?」

 

―――――ドライバーオン。

 

 レイちゃんの腰にあの黒服の男と同じベルトが現れる。って・・・このベルト。

 

「・・・・そこの堕天使。まさかお前・・・魔法使いなのか?」

 

「ええ。あなた達のおかげでね。」

 

――――――シャバドゥビタッチヘンシーン

 

 

 なんかそのベルト・・・すごくうるさい。

 

「・・・ここまで同じにしなくていいのに。まったくハル君ったら。」

 

 レイちゃんも少し恥ずかしそうだ。まあ・・・やかましいよな。そのベルト。

 

「変身。」

 

 そして、レイちゃんが黒色の指輪をベルトにかざすと共に、真上から魔法陣が現れ身体を通り過ぎ・・。

 

 レイちゃんは変身をしていた。

 

 頭はまるで真珠のような黒に紫の刺繍を凝らした黒真珠の形をしている。その上から紫のとんがり帽子のような物をかぶり黒いアンダーの上から胴体と足を銀の装甲が多い、そして、その上から紫のローブとショールを纏っていた。

 

 手には・・・箒のような物を持っている。

 

 まさにその姿は・・・おとぎ話に出てくる魔女であった。

 

「ほう・・・ウィザードに続く第二の魔法使いか。名前を聞こうか。」

 

「仮面ライダーウィッチ。さあ・・・終わりの始まりよ。」

 

 その言葉と共にあいつはある指輪をベルトじゃなく箒の様な物にかざす。

 

――――――アンロック!!

 

 そして、箒の先端をまるでライフルのように構えて・・・そこから魔力弾を撃ったのだ。

 

 それは男達の方を向くが・・・大きく外れ、教会の済を貫通して消えてしまった。

 

「はははは・・・どこの狙って・・・んん・・・アンロック?きっ・・・貴様!!」

 

「残念でした。気付くのが遅かったわね。そうよ。これは攻撃じゃなく、拘束を解くための魔力弾。この空間に入ってからすでに彼の位置は魔力の波動で感知すみなの。だから、あとは解き放てばいいだけ。」

 

――――コネクト。

 

「そうでしょ?ハル君。」

 

 そして、その言葉と共にそれは・・・教会の床を突き破って表れていた。

 

 何とバイクに乗った状態でだ。

 

 次々とグ―ル達を跳ね飛ばしながらそれは俺達の方へと向かって止まる。

 

「ウィ―・・・その通りだけど、遅かったじゃないかレイちゃん。」

 

「・・・馬鹿。再会のあいさつがそれなの?」

 

 乗っていたのは金髪の・・イケメンだった。うわ・・・木場や渡に負けねえかっこよさだ。

 

 それがレイちゃんと親しげに話している。

 

 って言うか・・・お前。

 

「久しぶりだなイッセ―。遅れたけど加勢にきた。」

 

「ああ・・・頼むぜハル。」

 

「ったく、派手な登場をしやがって。」

 

 ネロも嬉しそうだ。

 

「五人目登場。人外ども全員集合。」

 

 小猫ちゃん・・全くその通りで。

 

「指輪の魔法使い。傷は癒えていたのか?」

 

「ああ。アーシアちゃんのおかげでね。回復の力をまさか飛ばせるなんて思いもしなかったが、おかげで助かった。」

 

 アーシア。ありがとうな。

 

「一緒に捕まっていた仲でもあるんだ。参加させてもらうよ。」

―――――ドライバーオン。

 

 ハルが腰にベルトを出現させる。そっちがレイちゃんのベルトの本家か。

 

 よりやかましい。

 

「ああ。しかし、どうしてそのベルト・・・そんなにやかましい?」

 

「・・・・・・・そう言う仕様だ。呪文も兼ねているから解除できない。」

 

 さいですか。一応ちゃんとした意味はあったのね。

 

 それとうるさいという自覚はあってよかったよ。

 

「歓迎するぜ。これは派手なパーティーになりそうだ。」

 

 ネロはハルの参戦を心強くおもっているようだな。

 

 まったくだ。こいつも多分・・・強くなっている。

 

「ああ。俺達があの二人を助ける・・・最後の希望だからな。」

 

 そう言って、ハルが紅い指輪を腰にかざす。

 

「変身。」

 

 赤い魔法陣が身体を通り抜け。そしてそこには指輪の魔法使いがいた。

 

「ぐっ・・・ソロモン王の再来と言われた魔法使いが復活するか。」

 

 復活したハルの姿を見て男は忌々しげに言葉を吐く。ソロモン王っておいおい、とんでもない魔法使いになっていないかい?

 

―――コネクト

 

 ハルが魔法陣から変わった剣を取り出す。

 

「さあ・・・みんな。ショータイムだ。」

 

『おう!!』

 

 

 

SIDE 木場

 

 イッセ―君が言ったとんでもない相手の切り札に警戒しつつ僕たちは戦っていた。

 

 黒歌さんもサイガ君もその忠告を守っている。

 

 それでいて終始圧倒していた。

 

 だが、相手はかなり卑劣であった。

 

「なっ・・これは・・・。」

 

「いつの間ににゃ?」

 

 彼らの足元に魔法陣の様な物が展開して、二人を捉えていたのだ。

 

「ぎゃはははははは!!そんなの最初からに決まっているでしょうが!!こうやって確実にお前らを葬るためのね!!」

 

 そう言ってフリードは手にあるカードを出現させる。

 

 それは腰のベルトのバックルに書かれたカニの様な紋章が刻まれたカード。

 

「さあ・・・受けなさいよ。私の必殺技を!!」

 

「まっ・・まずい。あれは」

 

――――FINAL VENT!!

 

 その言葉と共にフリードがとびあがる。その身体はまるでヨーヨーのように高速回転している。二体の赤と青のカニの化け物がそれぞれの巨大なハサミでトス。

 

 さらに回転を増すフリード。その回転は凄まじい。何しろその回転だけで周囲の大気がかき乱され、嵐の様な乱気流が辺りに巻き起こっていたのだ。

 

 そんなフリードに向けて黄金のカニ・・・・ボルキャンサーが飛び上がりながら口から泡を吐き出し、それを拘束回転するフリードの身体に纏わせ、そのまま巨大な両腕のはさみで思いっきり叩きつけたのだ。

 

 バレーボールのスパイクのごとく凄まじい勢いでサイガ君と黒歌さんに突っ込んでくる。

 

僕は・・・・決断を下す。

 

 二人を死なせるわけにはいかない。

 

 

 

SIDE サイガ。

 

 ファイナルベント。イッセ―の警告はまさにその通りだったよ。

 

 あれはまさに最終兵器だ。それも神滅具の禁手クラスの・・。

 

 こっちも危険だけど紋章の力を使うしかない。

 

 そう決断を下す前にそれは僕たちの目の前にいた。

 

 それは・・・木場君のはずだった。

 

 だが・・その身体が異形へと変わっていたのだ。

 

 それは灰色の魔人。頭が馬となっており、灰色の頑強な身体に鎧を纏ったような姿をしていた。

 

 そんな異形と化した木場君が円形の盾を持ってそのファイナルベントを受け止める。

 

「ぐううううううぅぅぅぅ・・・。」

 

 受け止めるが、苦しそうな木場君を見て僕も力を解放させる。

 

「うおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 右手の甲に現れる竜の紋章。その輝きを全開にさせて魔法陣の拘束を無理やり破壊。

 

 そのまま逆手に持った剣での一撃を喰らわせる。

 

 それはアバン流刀殺法の奥義。

 

 その名も・・・・

 

「アバンストラッシュ!!」

 

「うりゃあああああぁぁl!!」

 

 黒歌さんも銃に気を込め・・・凄まじい勢いの氷の弾丸を三連発。

 

 それで高速回転するフリードをふっ飛ばした。

 

「ぐぐうううう!?まっ・・・まさかファイナルベントが!?」

 

 必殺技を破られた事にフリードは驚く。

 

 でも・・・本当に危なかったよ。三人の力を合わせないとできなかった。

 

「はあ・・・はあ・・。」

 

 私達は構えた盾を粉々になり、膝をつく木場君へと駈けよる。

 

「・・・出来れば部長達にはこの姿は内緒にしてほしいかな。」

 

「それが命の恩人の頼みなら守るだけだ。」

 

 この力、そしてその姿。おそらくずっと隠していたんだろう。

 

 その意思を私はくみ取ることにした。

 

「あんたなんでオルフェノクになれるのかにゃ?しかもその力はおそらくオリジナル。」

 

 オルフェノク?なんだそれ?それもオリジナルって・・・。

 

「博識だね。まあ・・色々とあるということさ。悪魔に転生できてなかったらとっくに滅んでいた事だけは言えるけど。」

 

「そうか・・・かなり前から覚醒していたのね。」

 

 木場君の姿が元の人間の姿に戻る。

 

「みたからには面倒臭いけど相談くらいはのる。出来れば後で事情きかせて。」

 

「・・・はあ。イッセ―君の幼馴染だけあって人が良い。でも・・ありがとう。」

 

「悪魔に転生できたのは本当に幸いにゃ。」

 

「きぃぃぃぃ。だったらこのカードをつかうまでです。ユナイトべントを。」

 

 フリードが悔しがりながら、もう一枚切り札を使おうとしていた。

 

 その時だった。

 

 背後でなりやらすさまじいオーラを感じ取ったのは。

 

 そしてフリードがそれを見て一言。

 

「なっ・・・なんですかこれは!!?」

 

 私たちも後ろを見て言葉を失っていた。

 

 何が・・・起きている!?

 

 

SIDE イッセ―

 

 俺達は立ちはだかる連中を次々と蹴散らしながら突っ込んでいく。

 

「やるものだな。だが・・・アギトよ。もうおしまいなのだよ。」

 

 黒の男がアーシアとキリエさんに向け手を伸ばそうとした。

 

 だが、その背後を魔力弾が襲う。

 

「キリエに汚い手でふれんじゃねえ。」

 

「ぐう・・・。」

 

 特大の魔力弾を受けて怯む程度で済む相手。ただものじゃねえが・・チャンスであった。

 

―――――Strike Vent!!

 

 

<BOOSTBOOSTBOOST!!>

 

「させると思って・・・。」

 

「それはこっちのセリフだ。」

 

 ネロがレッドクイーンのアクセルを全開にさせつつさらに高速で突進。

 

「そら・・よおぉ!!」

 

「ぐうぅ!?」

 

 そのまま男を切り上げたのだ。

 

 カードしてもアクセル全開で加速された重い斬撃によって身体が浮き上がるのは防げなかった。

 

 ドラグクロ―を召喚しつつ、今出来る限りの最大限のブーストを駈けながらアッパー気味にして放つ。

 

『Dorgon fire break!!』

 

「ぬぐあっ!?」

 

 大爆発と共に中に吹っ飛ぶ男。

 

「なっ・・・何のこの程度・・・。」

 

 ダメージは通ったが耐えきれたか、だが・・・これで終わりと思うなよ。

 

「いいトスがあがったぜネロ。今度は決めろよな?」

 

「へっ?」

 

「ああ・・いいスパイクを決めてやる。」

 

 それに合わせて飛び上がっていたネロ。

 

「ちょっ・・まっ・・。」

 

 ああ。おもっきりかませや。

 

 巨大化させた拳で男を全身の力を持って思い切り叩きとおすネロ。

 

「ぬぐおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!?」

 

 聖堂の壁を突き破り男は吹っ飛ぶ。

 

「いい気になるな。ちぃ・・・。」

 

 マギストラが杖を手にネロに襲いかかるが・・・。

 

「邪魔は・・・させないよ。」

 

 誘導する銀色の弾丸がそれを邪魔をする。

 

 放ったのはハルだ。

 

「雑魚でも数が多いと厄介。」

 

「でも・・・まだまだやれるわよ。」

 

 グ―ル相手に派手に立ちまわっている小猫ちゃんとレイちゃん。

 

 残り五体の獣人は何とハル一人で立ちまわっていた。

 

「こいつ・・・。」

 

「なんで四人に増えてんだ?」

 

 まあ・・・突っ込まないでおいたが、あえて言わせてもらおう。

 

 なんであいつが四人にふえとる!?

 

「コピーの指輪。効果は単純だけど、手数がいるときは重宝する。」

 

 いや・・魔法ってべんりだね。

 

「ぐそ・・・・分身なんて反則だぞ。」

 

「おまけだ。」

 

――――ビッグ。

 

 別の指輪の力を発動。生まれた魔法陣にハルが手を突っ込むと・・・その魔法陣から手が人間を簡単にはたき落せるくらいの冗談みたいなでかさで現れた。

 

 嘘だろ・・・。

 

「はっ・・えっ!?」

 

 その巨大な掌で四体の獣人どもをまとめてはたき、壁へと叩きつけた。

 

 うわ・・四体を一人で完全に翻弄しているし。

 

 もうなんでもありなんだな。魔法って。

 

 ハルの奴が何をしでかしても俺はもう・・・おどろかないことにしよう。

 

 そんな感じで俺達はキリエさんとアーシアを助け起こす。

 

「来てくれると信じていたわ。」

 

「ああ・・・キリエ。またせてすまねえ。」

 

 キリエさん・・・ネロに助け起こされて喜んでいる。

 

 よかったなネロ。

 

「イッセ―さん。どうして・・・私を助けてくれたのですか?」

 

 一方、アーシアは俺に向けて涙ながらに聞いてくれた。

 

「酷い怪我・・しているのに。どうして・・・。」

 

「友達だろ?助けたいと思うのは当たり前だ。」

 

 だから、なんでそんな簡単なことを聞くのかな?

 

「友達・・・・。」

 

 アーシアの視線がキリエに向けられる。

 

「いったでしょ?もう友達だって。」

 

「はい・・・はい・・・。」

 

 アーシアが腕の中で泣きじゃくる。

 

「っつたく・・・泣くなよ。」

 

 ネロは少し気まずそう。相当気をつかっているのがわかる。

 

 キリエを助け起こし、ネロも俺達の方に向かっていく。

 

 だが・・・・。

 

『!?』

 

 アーシアの顔色が代わる。

 

「ふははは・・・隙ありというべきかな。」

 

――――――コネクト・・・ナウ。

 

 キリエの背後に突然魔法陣が現れる。そしてそこから刃が伸びてきたのだ。

 

 あまりに突然なことに皆・・・反応が遅れる。

 

 そして、その刃は貫いた。

 

「・・・・・・・・。」

 

 キリエを庇って立ちはだかったアーシアの身体を。

 

「アーシア!?」

 

 アーシアの身体から血が噴きした。

 

 




 ここからいよいよ・・あの瞬間です。


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目覚めろ・・その魂!

 いよいよ変身です。

 ここから戦いが終息へと向かいます。

 イッセー達の幼なじみは全員人外。

 でも・・・一番の人外は・・・・。


 SIDE イッセ―

 

 俺は目の前の光景にただ・・・茫然とするだけだった。

 

 助けたはずのアーシアが・・・身体を槍に貫かれている。

 

 その現実を受け入れる事ができなかった。

 

 どうして・・・?

 

「チィ・・・予知の力か。だが・・・仕方ないまずはお前の神器だけでもいただくぞ。」

 

 崩れた壁から魔法陣に向けて長い笛のような槍を突き刺す男。

 

 その言葉に俺はすぐに我にかえった。

 

 そしてその槍が引き抜かれるとともに・・・アーシアの身体から緑色の光が取り出される。

 

 あれは・・・アーシアの神器。

 

 やめろ・・・あれが抜かれたらアーシアが!?

 

 俺がやりを掴むが・・・。

 

「・・・邪魔しないでもらおうか。」

 

――――――エクスプロ―ション・・・ナウ!

 

 突如起こった爆発と共に俺達は吹っ飛ばされた。

 

 それと同時にアーシアから神器が抜き出される。

 

「・・・流石に神器とアギトの力を同時に抜きだすのは無理があるか。俺にとってこの神器は不必要な物だ。契約通り受け取れ。」

 

「ほう・・ありがたい。」

 

 槍の先についた光がマギストラの中へと吸い込まれる。

 

 それとともにマギストラの背中から白い天使の羽のような物が六枚でてくる。

 

 頭にも天使の輪のような物も。

 

「これが・・・神器というのもか・・・いい。力が溢れてくる。物どもよ・・その傷を癒してやる。」

 

 そして、傷ついた俺の五体のしもべ達の傷を・・・淡い光を投げつけて瞬時に癒す。

 

「おお・・・。」

 

「傷がいえたぞ。」

 

「それだけじゃない。力がわいてくる。」

 

 残りの豹の怪物たちも一斉に天使の輪を頂き、背中から四枚の天使の翼を生やす。

 

「力を分け与えてやった。ふはははは・・・ただアギトを狩るだけじゃなく、我らの眷族の強化にもつながったぞ。ありがたく礼をいおう。」

 

 マギストラの言葉に男は鼻で笑う。

 

「本命はあの娘の神器、そしてアギトの力だったのだが・・。確認するがアギトの力は俺がいただいても問題はないな。」

 

「主の神の子ではないお前なら問題ない。人間がアギトの力を持つ事が問題なのでな。特例だ貰っていくがいい・・。」

 

 あいつら・・何をいっていやがるんだ?

 

 俺は腕の中で身体を貫かれ血まみれで倒れるアーシアを抱き起こしていた。

 

「アーシアちゃん・・・どうして!!」

 

 その隣でキリエさんが泣いている。泣いて・・アーシアを抱きしめている。

 

「友達・・・ですから。私・・・キリエさんがあの槍に貫かれるのを予知した瞬間・・・助けたいと思いました。もう・・考えるまでもなく身体が勝手に動いて・・。」

 

 弱々しい微笑みのアーシアの手を・・・俺は握ることしかできなかった。

 

「これが・・・友達なんですね。私・・・ようやく友達がどんなものかよく分かりました。死ぬ前に・・・分かってよかったです。だって・・・。」

 

 彼女はそれでも笑っていた。

 

「私の事でこれだけ泣いてくれる人がいるって・・・・わかったから。」

 

――――そうか・・・。だから私は笑っているんだ。

 

「アーシア?」

 

 俺は握った手から伝わるアーシアの声におどいていた。

 

 伝わってきた情報が信じられなかった。

 

「お前・・・こうなるって予知していたのか?死ぬって分かっていて!!」

 

『?!!』

 

 アーシアは予知の力を持っている。それで俺と出会った瞬間に予知をしていたというのだ。

 

 笑いながら、俺にみとられ死んでいく自分自身を。

 

「知りたかった。どうして私が笑って死ぬことになるのかって・・。でも今ならよくわかります。」

 

 そんなことってありなのかよ。じゃあ・・・アーシアは俺と仲良くなると死ぬってわかっていて!!

 

 そんな俺にアーシアが握り返してくれる。

 

「これが私が選んだ道です。後悔だけは・・・したくなかった。それに後悔もありません。だって・・・イッセ―さん達に出会えたのですから。」

 

 その言葉に俺は涙を堪える事が出来なかった。

 

 できるわけがなかった。

 

「イッセ―さん・・・・ありがとう。私の友達になって・・・くれて。そして・・・こんな私を助けに来てくれてありがとうございます。」

 

 涙を流しながら段々弱々しくなるアーシアの声。

 

「私は・・・幸せです。でも・・・心残りがあるとしたら・・・みんなと一緒にがっこうというものにかよってみたかった。楽しい事もっとしたかった。」

 

「アーシア。おしえてやる、だから・・・。」

 

 死なないでくれ・・・お願いだから・・・。

 

 

 

 

 

「生まれ変わったら・・・・今度はイッセ―さん達と一緒にいれたらいいな・・・・。」

 

 

 そしてアーシアは力尽きる。

 

 

 

 

―――――イッセ―さん・・・大好きです・・。

 

 

 

 

 という言葉を残して・・・彼女は逝った。

 

 

 

SIED ネロ。

 

 キリエが泣いている。

 

「そんな・・・なんで・・・なんであなたみたいな優しい子が死なないといけないの!?」

 

 イッセ―が泣いている。

 

「・・・・・アーシア。」

 

「・・・・・・・・。」

 

 ハルが、立ち止まり何かを堪えているのがわかった。

 

 それだけで・・・このアーシアという子がどんな子が分かった。

 

「てめえ・・・・・・・。」

 

 許せない。

 

「いいねえ。さあ・・・お前達の力でこいつらを蹂躙して・・・。」

 

 そんな理屈など・・・どうでもいいんだよ。

 

 お前らは俺の大切な人を泣かせた。

 

 それだけで十分なんだよ。

 

 てめえら・・・全員・・・ぶっころしてやる。

 

「キリエ・・・。その子を連れて離れろ。」

 

「ネロ・・・。」

 

 涙でぐしゃぐしゃになったキリエが俺を見る。

 

「もう・・・抑制できそうにねえ。イッセ―も逃げろ・・・って。」

 

 だが、イッセ―は立ち上がっていた。

 

 涙を流しながら・・・ただ倒れたアーシアを見ていた。

 

「許せねえ・・・・。」

 

 その言葉に・・・俺の中の何かが胎動し始める。

 

 その胎動に合わせて・・・イッセ―の中の何かもまた胎動し始める。

 

「・・・ッ!?この波動・・まさか・・。」

 

 俺の後ろに現れるもう一人の俺。だが、今回は少しばかり姿が違っていた。

 

 それは頭がまるで昆虫・・・カミキリムシのようになっていたのだ。

 

 そして、イッセ―の腰にはベルトが現れる。

 

 十年前・・・俺達を助けるために力を発動させるためのベルトである。

 

 そうかい。お前も目覚めたのかい。

 

「行くぞ・・・ネロ。あいつら全員・・・ブッ倒す。」

 

「ああ。」

 

 お互いに何が目覚めたのか言葉にする必要はない。

 

「がああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 俺は両手をあげて叫ぶ。すると背後にいたもう一人の俺が解け込むようにして俺と一体化する。

 

「・・・・変身。」

 

 そして・・・隣のイッセ―もまた変身を遂げる。

 

 こうして俺はギルスに・・・そしてイッセーがアギトとなった。

 

 

 

 SIDE ???

 

 目覚めたというのか。アギト・・・そしてギルスが。

 

 しかも・・・二体とも俺が知るのと何かが違う。

 

 黄金の身体を持つ大地の力を持つアギト。だが、その両手には違う何かが付いている。

 

 右腕には竜を模した篭手。左では緑の宝玉が付いた紅い篭手だ。

 

 これは・・・神器だというのか?それも二つも?

 

 それに・・・何だあのギルスは?

 

 普通のキルスは緑色をしている。

 

 だが・・目の前のギルスは・・・蒼と赤の色をしていた。右腕は変身前の異形のまま。

 

 そして背中に禍々しい悪魔の翼のような物を生やしている。

 

 武器を使うのはわかる。だが・・・背後に別の何かがいるのはどういうことだ?

 

 蒼い巨人がいるとはきいていないぞ。

 

「目覚めてしまったか。だが・・・この程度で・・・。」

 

 マギストラがひるみつつも強化された自分自身の力なら問題ないを踏むのだろう。

 

 だが・・・・俺はそうは思えない。

 

 この二体・・・何か可笑しい。

 

 そんな時だった。

 

――――目覚めの時はきた。

 

 アギトの方から声が聞こえてきたのだ。

 

――――それと共に我らもまた復活する。

 

 それは男と女の声である。

 

「お前ら。」

 

―――――すまなかった。お前の危機は分かっていた何もできなかった。

 

―――――あなたがアギトに覚醒するまでずっと出てこれなかったの。ごめんなさい。

 

「お前達は悪くねえ。悪いのはあいつらだ。」

 

 アギトの視線が我々に向けられる。

 

「力を・・・貸してくれ。」

 

―――――だったら我々を召喚しろ。

 

―――――私達を使いなさい。

 

 その言葉と共にアギトの前に二枚のカードが現れる。

 

 一枚は紅の龍。

 

 もう一枚は紅のドラゴンが絵が描かれている。

 

 そのカードを手に取り・・二枚まとめてアギトは右腕の小手に入れる。

 

――――――――――Adⅴent!!

 

 そして・・・もう一回

 

―――――――Adⅴent!!

 

 二回ほど音声が流れたのだ。

 

 それと共に・・・それは現れた。

 

 一体は・・・紅い龍。まるで空を泳ぐようにしてあらわれた。

 

 その長さは軽く見積もって二十メートルは超えている。

 

「ようやく出てこれたわ。」

 

 もう一体が、地面の下に出現したドラゴンの魔方陣の中から現れる。

 

「本当に驚くぞ。まさか生前の肉体を一時的にとはいえ取り戻した状態で俺も戦えるか。」

 

「私の力の恩恵をそっちにも与えた結果よ。感謝しなさいよね。」

 

 もう一体のドラゴンには俺は見覚えがあった。

 

「なっ・・・ななななななななななななななななっ!?」

 

 そっ・・そそそっ・・・・そんな馬鹿な!!あいつはずっと昔に三大勢力によって滅ぼされたはずじゃなかったのか!?

 

「なっ・・なんで赤龍帝がここにいる!?」

 

 それは二天龍が一体・・・赤龍帝ドライク。

 

 肉体は滅ぼされ、その魂は神滅具に封印されたと・・・。

 

 まっ・・・まさかあいつの左腕の篭手。

 

 あれはまさか・・赤龍帝の篭手(ブースデットギア)と呼ばれる物なのか!?

 

 十三ある神滅具の中の一つである・・・あの!?

 

「相棒・・・命令を頼む。」

 

「あなたの思いはくみ取っている。敵と味方の区別も私達はわかるわ。」

 

 なんてことだ。まさかアギトに神滅具がそなわっているなんて・・。

 

「命令は言わなくてもわかるだろ?」

 

 アギトの言葉に二体の龍は頷く。

 

「ああ。そうだな。こいつら・・・焼き尽くしてくれる。」

 

「本命はあなた達でやりなさい。雑魚は引き受けてあげる。良いわねドライグ?」

 

「そうだな、お前も私と同等の力をもつのだからな。頼りにしているぞクレア。」

 

 もう一体の龍も天龍クラスだと!?

 

 そしてその力が・・・あの右手の篭手に宿っているというのか?

 

 じゃあ・・・あいつは・・・。

 

「行くぜネロ。」

 

<BOOST!!>

 

「ああ。派手にいくぜ!!」

 

 神滅具・・・三つ持っているのと同じだというのか!?

 

 とっ・・とんでもなすぎるアギトだ。

 

 そんな無茶苦茶なアギト・・・ありなのか!?

 

 俺は今・・・生まれてこの方滅多に感じない後悔を味わっていた。

 

 

 

 

 




 ついにアギト、そしてキルス覚醒。

 そしておまけといいますか、二体のドラゴンの魂も目覚めてしまいました。

 覚醒したと同時に二体召喚・・・・えげつないかもしれません。

 次話で・・・戦いはすべて終わります。



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優しい女の子を救います!!

 最終決戦もあれます。

 皆大暴れさせますのでよろしくお願いします。

 多分・・・色々と突っ込む処もあるかもしれません。


 SIDE 木場。

 

 教会を粉々に破壊して現れた巨大な赤い龍と赤いドラゴン。

 

 その身体から溢れる凄まじいまでの覇気に皆は驚いていた。

 

 そして・・フリード達が従えていたカニの怪物達が怯え始めていたのだ。

 

「ドッ・・ドラグレッダ―・・・。」

 

「なんであいつがここにいるんだ?」

 

「どっ・・どうしたのです?なんであなた達がおびえているのですか?」

 

 フリードが自身の契約モンスター達の異常に戸惑う。

 

「あれは・・・無双龍ドラグレッダ―。我々の世界の・・・強き者の一体。お前達の世界でいう・・・二天龍に相当する龍だ。」

 

 なっ・・・なんだって?

 

 二天龍クラスのドラゴン?

 

 もう一体教会の壁を突き破って現れたのは巨大なドラゴン。

 

「我が名は二天龍・・・赤龍帝なり。我が相棒と共に・・・お前らを焼き尽くしてくれる。」

 

 彼の咆哮と共に教会は完全に倒壊。

 

 それと共に・・・教会の中に立つ二体の異形がいた。

 

「・・・・・これは驚いたわね。」

 

 そんな時に部長達がやってくる。

 

「何なのよ・・・この異様な覇気。」

 

 部長の周りを飛んでいるカ―ミラはドラゴン達から発せられる覇気に顔をしかめている。

 

―――――<BOOST!!>

 

 金色の異形の左腕の篭手に僕は見覚えがあった。あれは・・・イッセ―君の神器。

 

「そうか。イッセ―はアギトであるだけじゃなくて・・・神滅具も備えていたのね。赤龍帝の篭手(ブースデット・ギア)。持ち主の力を十秒ごとに倍化するあれを・・・。」

 

 ・・・っ神滅具だって!?イッセ―君、君はとんでもない神器を・・・。

 

 そしてアギトって・・・。

 

「・・・そして、もう一体の契約龍も二天龍に相当する異界の龍か。おそらく、その召喚機に眠っている力も神滅具クラスなのは疑う余地はないわね。現に滅んだはずの赤龍帝の肉体を一時的とはいえ・・・復活させている。」

 

 ・・・・そうか。イッセ―君が紹介すると言ってくれた右腕の召喚機の契約相手。

 

 それが・・・あの赤い龍か。

 

 君はとんでもない存在と契約していたんだね。想像を絶する相手と。

 

「はははは・・・まいったわ。あの時の龍だ。」

 

「ああ。俺達を助ける時に現れた赤い龍。久しぶりだな。」

 

 鋼鬼さんと渡君、そしてサイガ君はその龍を知っているというのか?

 

「・・・・ええ。あなた達もあの時よりも強くなっているわね。」

 

 赤い龍が僕達の声に答えてくれた!?

 

「相棒が世話になった、だが・・・ここからは相棒達の戦いだ。手出しはしないでもらおう。」

 

「安心しろ無粋な真似はせん。」

 

「そうか・・・お前とは話が合いそうだな。」

 

「なら後で語ろうじゃないか。」

 

 鋼鬼さんも赤龍帝の言葉に笑みを浮かべて応えているし。

 

「・・・私はとんでもない勘違いをしていたようね。私はイッセ―の幼馴染全員が人外だと思っていた。」

 

 うん・・何が言いたいのか僕も分かった。

 

「でも・・一番とんでもないのは他ならぬイッセ―自身。多分彼が一番の怪物よ。どれだけの潜在能力を秘めているのか想像もできない。」

 

 恐ろしい潜在能力を秘めていたね。イッセ―君。

 

 部長。あなたはとんでもない存在を眷族にしてしまったようですよ。

 

 兵士の駒八つ分でも絶対に釣り合わないくらいに。

 

「それと・・・きっとこの駒も彼女が呼んでいるのね。」

 

 部長は僧侶の駒を取り出す。その駒が・・・光っている!?

 

 その現象はイッセ―君の時と同じ。つまり・・・。

 

「私・・・多分もう一人とんでもない子を眷族にすることになるわ。」

 

 

 

SIDE イッセ―。

 

 炎に包まれ倒壊していく教会。

 

 その中でアギトとなった俺はあの女王と対峙する。

 

「ぐっ・・・我に勝てると思うのか?」

 

 俺の行く手を黄色の奴が阻もうとするが。

 

―――――<BOOST!!>

 

 ブーストされていく力を拳に込める。

 

 そして・・・斬りかかってくるナイフをかわしつつ、カウンターで拳を繰り出す。

 

 それだけで黄色は吹っ飛ぶ。

 

 前とは違い・・・倍化する力の上限が天井知らずになっている。

 

 十秒ごとといったが・・・多分それよりも早く倍化が進んでいるようだしな。

 

「・・・あの時狩れなかったつけが・・・こんな形で・・・。」

 

 そして、そのまま爆発して果てた。

 

「・・・こんなアギトがいていいのか?力が・・・際限なく上がっていく・・・。」

 

 もっと・・もっと力があがる。もう何倍に力が上がったのか数え切れない。

 

 あいつらの前に残り四体が現れようとするが・・・。

 

「おいおい・・・お前らの相手は俺達だぜ。」

 

 青と赤をネロが巨大な拳の一発でふっ飛ばす。

 

 そして・・・擦れ違い様に左腕の黄色い突起がヒレの様なカッタ―に変化し、青を切り裂く。

 

 切り裂かれ爆散するのを見て赤は雄叫びをあげなら剣で斬りかかるが・・その剣を蹴り飛ばし、拳で殴る。

 

 怯んだその隙にネロは叫ぶ。

 

「があああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!1」

 

 その叫びと共に・・・踵から鋭い爪が生えてきたのだ。

 

 そして、踵を振り上げながらネロは飛び上がり、その踵の爪を残った赤に振り下ろしたのだ。

 

「ぐああっ!?」

 

 切り裂かれる赤。それに対して再び叫ぶネロ。

 

 そして、そのまま後転しながら相手を蹴り飛ばす。

 

「がっ・・・ぐ・・・ぐおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

 それと共に赤は爆発して果てる。

 

「・・・・言っておくけど、俺の怒りはこんなものじゃない。でも・・・ここはイッセ―君達の見せ場なんでね。君達で我慢してあげるよ。」

 

 黒と白に向けてはハルが・・・相手になっていた。

 

「・・・・スネークバイト。」

 

黒が付き立てた槍の先端を右手で掴む。そして・・そのまま握り潰してしまった。

 

「そっ・・そんな馬鹿な。私の槍が・・。」

 

「それと・・・もう一つ。まだ俺も、そしてキリエさんも諦めていない。」

 

 その言葉を聞いてアーシア達の方を見てみると、キリエさんが息絶えたアーシアに向けてなにかをしていた。

 

 それは淡い光であった。

 

「どんなにわずかなでもいい。希望があるのなら、俺はそれに賭ける。」

 

 ハルは銃に変形させた武器に指輪を当てる。

 

 それと共に黒が殴り掛かるが・・それをかわしつつ銃口を押し上げたのだ。

 

 引かれる引き金。それお共に黒の身体を厖大なエネルギーが込められた魔力弾が貫き・・そのまま黒が果てる。

 

「さあ・・・フィナーレだ。」

 

――――――キックストライク。

 

 そして再び指輪をベルトにかざし・・・ハルの足が炎に包まれる。

 

 その状態で彼は駈けだし、前転を決めながら飛び上がって・・白い奴を蹴り飛ばす。

 

「わっ・・・我々がここまであっさりと・・・。」

 

「怨むのなら・・・イッセ―の逆鱗に触れた己を恨め。俺の逆鱗も含まれているがな。」

 

 そして、白も果てる。

 

「我の配下が・・・そっ・・・そんな。」

 

 マギストラの驚愕をよそに、俺はゆっくりとあいつに近寄る。

 

「ぐっ・・・おい。おまえ・・・・。」

 

 いつの間にかあの男は消えていた。だが・・・目の前のあいつだけは許せねえ。

 

「くそ・・・我を舐めるな!!」

 

 あいつが杖で殴りかかってくるのを俺は左腕の篭手で受け止める。

 

 そしてそのまま殴る。

 

 その一撃は胴体を捉える。

 

「返してもらうぞ・・・アーシアの魂を!!」

 

 そして俺はあいつの中からアーシアの神器を掴みそのまま取り出した。

 

「がっ・・・バッ・・バカな。神器を取り出したというのか?」

 

 己の身体から無くなった神器を見て茫然とする。

 

「アギト!!」

 

 その神器を取り戻そうとするのをまた殴って潰し・・・その後蹴り飛ばす。

 

「がっ・・・ぐぅ・・・。」

 

 身体が戦い方を教えてくれる。まるで本能のように体が動いてくれる。

 

 神器を取り出せたのも・・・まるで出来るのが当たり前のように感じたからだ。

 

「こんな・・・ただのアギトなら遅れをとらないほどの力を得たというのに・・・。」

 

 俺は止めをさすことに決めた。

 

―――BOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!

 

 倍化させた力を解放させる。

 

――――Explosion!!

 

 そして、それと共に俺はアギトの力も解放させる。

 

 開かれる頭の角。そこから黄金の光が放出される。

 

 それと共に足元に現れる黄金の紋章。大きさは教会の跡地全体に広がるほどの大きさになっていた。多分・・・本来の紋章よりも遥かにでかい。

 

「あ・・・ああ・・・・。」

 

それが全て力に変換され、右足に集束されていく。

 

 倍化した力と共に・・受けてみやがれ。

 

 飛び上がり、俺はマギストラに向けて飛び蹴りを決める。

 

「がごぉぉぉぉぉぉぉ!!?」

 

 轟音と共に吹っ飛ぶマギストラ。

 

 あいつはそのまま立ち上がろうとするが、体から光が漏れだし、消える寸前であった。

 

「わっ・・・我らが主がお前を放置するわけがない。そんな神すら殺す危険なアギトをな!!必ず別の刺客が放たれるだろう。お前らはそいつらに討たれる・・・必ずな!!ははははははははははは!!」

 

 そしてマギストラは倒れ、そのまま爆発する。

 

「だったら・・・そいつらも俺が倒す。もう・・・こんなこと沢山だ。」

 

 

 

 SIDE リアス。

 

 あなたのアギトとしての戦い。見届けさせもらったわ。

 

「先輩・・・泣いている。」

 

 変身しても彼は人の心を忘れていないわね。彼は今・・・泣いている。

 

 泣いて・・・アーシアの身体を抱き寄せている。

 

「うう・・・おおおぉぉ・・・・・。」

 

 泣きながらか変身を解除すると・・・その顔は涙でぐしゃぐしゃだった。

 

 手には神器。おそらく・・・彼女は・・・。

 

「・・・まだ死なせません。」

 

 だが、そんな言葉を否定する者がいた。

 

 それはネロの傍にいた女性であった。

 

 彼女はおそらくキリエさんね。確か神器を二つ持っているって・・・。

 

「絶対に助けます。こんな優しい子が・・・幸せにならないまま死ぬなんて間違っています!!」

 

 彼女は先端が十字架になっている杖からずっと光を発してアーシアに当てていたのだ。

 

「キリエ?それって・・。」

 

「私の神器。」

 

 それがアーシアに当てられていたのだ。

 

「やってくれるな。」

 

 そんな時遥か上空で男の姿があった。あれがイッセ―を襲った男?

 

「恐るべきは流石はアギトとギルスか。他にも厄介な連中が揃っている。一人二人程度なら戦争の火種になるから歓迎するべきなのだが・・・ここまで意味不明な連中が揃うと邪魔でしかない。揃って死んでもらうぞ!!」

 

―――――メテオレイン・・・ナウ!!

 

 男が魔法陣を展開させ・・・無数の隕石を空より召喚。それを私達に向けてぶつけてきたのだ。

 

 一つ一つが直径十メートルは下らないわ。

 

 まっ・・まずい。あれが落ちたら教会どころかここら辺一帯が吹っ飛ぶ。

 

 あんな天変地異を起こす魔法を指輪一つで簡単に起動できるなんてどんな魔法なのよ!!

 

「みんな・・・あれを撃ち落とすわよ。」

 

 私はカ―ミラを手にする。

 

「部っ・・部長俺も・・ぐっ・・・。」

 

 イッセ―は膝をつく。もう・・限界みたいね。

 

 むしろその身体でここまでよく戦ったわ。

 

 この場を切り抜けたら説教くらいはさせてね。

 

「あなたは休んでいなさい。無茶はもういいわ。」

 

「隕石程度で終わる我らではないわ!!」

 

 私達を守るようにして二体の龍が立ちはだかるが・・・。

 

「・・・なに!?なんであいつがここに?」

 

 赤龍帝のようすがおかしい。何かを感じとった様子だ。

 

「安心してください。あの隕石は届きません。」

 

 と・・キリエさんが皆の動揺を止めるように断言する。

 

 どうして聞く前にそれは展開されていた。

 

「何・・・これ?」

 

 巨体な盾のようなものであった。

 

 それが教会上空を覆う。それととも盾に隕石が次々と衝突し、凄まじい轟音が聞こえてくるが・・・それだけであった。

 

 あの盾は降り注ぐ隕石を信じられない事に全て防いでいるのだ。

 

 あれは・・・キリエさんのもう一つの神器なの?確かに彼女の手にもう一つ十字架が刻まれたカイトシールドが出ている。

 

 なんて強力な防御力。隕石を受け止めるなんて・・・並の神器の範疇を超えている。

 

「防がれただと?」

 

「もう・・・誰も死なせない。私がみんなを・・・守る!!」

 

 その言葉と共に・・・キリエさんの身体から聖なる光が・・って!?

 

「キッ・・・キリエ?」

 

 ネロ君の驚きは分かるわ。

 

 キリエさんの背中から生えているのは天使の翼。それも六枚。

 

 そして頭には天使の輪が輝いている。

 

「あれ?何?この翼?」

 

 って・・・キリエさん自身も自覚なかったの?

 

「なんで・・・なんでキリエが天使になってんだああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 ネロの叫び。それが全てであった。

 

 どうして人間が天使に?

 

 

 SIDE ???

 

 くそ・・・。何がどうなっている?

 

 あの女の持っている神器。何か今まで分からなかったが、強力すぎるぞ。

 

 あの力・・・まさか十四番目だというのか?

 

 確かにあのような力を持つ神器は聞いた事がない。そして、天使化という謎のあの盾が関わっているのだとしたら・・・。

 

 手に入れる価値はあるな。

 

 ボロボロのあいつなら倒せるか?

 

「・・・・・・渡達に手を出すの我が許さない。」

 

 ・・・・ツ!?なんだこの威圧感。

 

 俺が振り返るとそこには・・・黒いゴスロリの服を着た娘が・・・。

 

「オッ・・・オ―フィス・・・。」

 

 驚いてばかりだな。どうして無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)がこんなところにいる?!

 

「我・・・渡のことだいすき。渡の音楽・・・我の魂に心地よい響きを与える。いや・・今は渡と一緒にいると・・・それだけでうれしい、楽しい。渡はすべてを教えてくれた。ただいるだけじゃなく、世界を触れる事で、感じる心の全てを。」

 

 渡?あの・・・ファンガイアの王族のことか?

 

 なんでそれにあのオ―フィスが肩入れしている!?

 

「愛しい人・・・渡やその仲間達・・みんなを傷つける事・・我が許さない!!」

 

って・・・怒っているというのか?あのオ―フィスが?

 

「去れ。さもないと・・・消す。魂だけでなく・・・存在その物もなかった事にする。」

 

 彼女の身体から感じるオーラがさらに増す。

 

 戦争を起こすどころじゃない。あいつ一人で三大勢力の一角を簡単に滅ぼせる力をもっているのだぞ。

 

そんな奴を一人で相手にするのは流石にばかげている。

 

「まだ諦めた訳ではない。必ず私は・・・。」

 

 私は大人しく退く事にする。。

 

 恐ろしいぞ。あいつら・・・何時の間にオ―フィスまで手懐けている?

 

 あの勢力の後ろ盾にしては・・・・凶悪すぎる。

 

 

 

 SIDE イッセー

 

 俺は取り戻したアーシアの神器を手にする。

 

 そしてキリエさんが必死で力を送り続けているアーシアへとそれを戻すが・・。

 

 アーシアは目覚めない。

 

「・・・脈は復活している。でも・・・やはり神器を抜かれた事によるダメージが・・。」

 

「・・・・・。」

 

 アーシアはもう戻らないのか?

 

 そんな時だった。

 

「だから・・・この駒が呼んでいたのね。」

 

 部長が光輝く何かを取り出した。

 

 それは悪魔の駒。

 

 それがアーシアに反応して光輝いている。

 

「あなたと同じことが起きている。この子の中のアギトの力が生きるために、悪魔の駒を欲しているのよ。引き寄せる力までは残っていなくても、何をすべきかくらいは私にはわかるわ。」

 

 部長はその駒をアーシアの体の上に置く。

 

 するとアーシアの腰にもベルトが現れ、そこから駒が吸収される。

 

「・・・んん・・んんん・・・・・。」

 

 アーシアの身体が光輝く。

 

 一瞬だけだが、銀色の姿をした異形となり、すぐに元に戻る。

 

 そして・・・そのまま目をあける。

 

「あっ・・・・れ?」

 

「アーシア!?」

 

「みなさん・・どうして・・・?」

 

 アーシアが目を覚ましたのだ。

 

「・・・はあ。これで私・・・二体のアギトを眷族にしちゃったわけね。」

 

 それを見て部長はただ苦笑する。

 

「アーシアちゃん!!」

 

 アーシアに抱きつくキリエさん。泪を流しながら喜んでいる。

 

「どう・・したのですか?みなさん・・・そんなに泣いて・・。」

 

「よかった。」

 

 本当によかった。

 

 アーシアが助かって。

 

 本当に・・よか・・・・

 

「って・・イッセ―!!?」

 

 安堵して、力が抜けたせいだろうな。

 

 急に意識が暗転して・・・。

 

 そのまま俺は気を失ってしまった。

 




 エピローグはまた後日にする予定です。

 本日の更新はここまでです。

 次のエピローグで一章を終わらせます。


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エピローグ そして新しい日々がはじまる

 遅くなりましたがエピローグです。

 注意点はひたすらカオスです。注意してください。

 では・・・どうぞ!


 SIDE イッセ―

 

 俺はこの後ずっと家で寝ていたらしい。

 

 気付けば朝だったし。

 

 まるで昨日の戦いが夢のように思えるぜ。

 

「夢とは失礼だぞ。」

 

 いや訂正だ夢じゃねえ。

 

「そうよ。あんただ私達の力を存分に振るったというのに?」

 

 ドライク、そしてクレアがいる。そして・・。

 

「・・・そうか。もう自在にベルトがだせるのか。」

 

 意識すればすぐにベルトが腰に現れている。

 

「その気になればもう何時でも変身可能か。」

 

 俺は確実にアギトとして覚醒してしまっていた。

 

 そして、ネロの奴も同じような状況なんだろうな。

 

 傍にはデフォルメ化されたドライグとクレアがいる。

 

「でも、力を使う時は慎重にね。あなたの存在は・・・神話に対する反逆なんだから。」

 

 迂闊に変身できないな。でも力の訓練もする必要もあるから・・・。

 

「場所はまた・・・リアス嬢に確認すればいいだろう。」

 

 今度相談しないとな。力の暴発を防ぐためにも色々と試したい。

 

 色々と思うところはあるが・・・とにかく学校へといこうか。

 

「いい忘れたが、あれから二日たっている。お前・・丸一日寝ていたんだぞ。」

 

 まじか?

 

 まあ・・・あれだけの大怪我だったから無理もない・・。

 

 んん?その割には怪我がない。痛みどころか・・・。

 

「詳しくは後で分かるだろう。ただ・・・彼女に感謝するのだな。」

 

 彼女って・・・もしかしなくてもアーシアか?

 

 そう言えば・・・アーシアはどうなったんだろうな?助かった事は見届けたんだが・・・。

 

 そうやっていつもの通り学校にいく。

 

「よお。体の調子はどうだ?」

 

 鋼兄とネロ、そして渡が声をかけてくる。

 

「丸一日寝ていたからね。」

 

「ああ・・・生き返った気分だ。それであれからどうなった?」

 

 俺の質問に三人は結構意地の悪い笑みを浮かべる。

 

「それはもうすぐ分かるぜ。」

 

「そうそう。もうすぐだよ。」

 

「楽しみにしておけ。」

 

 なんだ?すっごく意地が悪いぞ。

 

 そしてHRになると・・・。

 

「なぜか分かりませんが・・・またまた転校生です!!今回は・・・ふふふ・・・ふふふふふ・・・野郎共も子猫ちゃん達もみんな喜べ!!」

 

 おい。なんだ?また転校生か?

 

 ・・・・・・あれ?この流れつい最近もあったような。

 

 ってまさか!?

 

「さあ・・・あなた達は入ってきなさい!!」

 

「・・・面倒臭い。」

 

「ウィ―・・・今回はこのノリに対してはそう思う。」

 

「あわあわあわ・・・。」

 

「・・・・・・はい?」

 

 そこにいたのは・・・なんと俺の知り合いどもだった。

 

「転校生の・・・操真晴人です。」

 

「同じく冴島 砕牙です。」

 

「アーシア・アルシェントです。みなさんよろしくお願いします。」

 

「・・・・・・・・はい?なっ・・なんでみんながここにいるんだ!?」

 

 あいつらが・・・転校生として転入してきやがった。

 

 アーシアの元気そうな顔を見られてよかったけど・・・これは不意を突かれた。

 

「あっ・・驚いた。ふふふ・・・よし。仕返しは完了っと。」

 

「あれだけ心配させてんだ。当然だろうが。」

 

 ネロが笑う。

 

「そうそう。あと副担任ができますのでみなさん仲良くしてください。キリエさん。」

 

 だが、その名前にネロの表情が凍りつく。

 

 入ってきたのは柔らかい白のワンピースを着たキリエさん。眼鏡もかけている。

 

 美人先生の登場に教室内がざわめき立つ。

 

「・・・・・はい?」

 

 ネロ。これはお前も知らなかった事のようだな。

 

「みなさん・・・新しく音楽を教えることになりましたキリエです。よろしくお願いします。ネロ。驚かせてごめんなさいね?」

 

 ネロに向かって微笑むキリエさん。うん・・・おちゃめな表情も見せるのか。

 

 ははははははは・・・・・もうどうにでもなれ!!

 

 

 

 

 その後、部室にて・・・。

 

「おい・・・お前ら・・・よくも俺までだましてくれたな。なんだよ!キリエが学校で働くことは知っているけど、先生になるなんて聞いていないぞ!!」

 

「ドライクとクレア、アギトの事を黙っていた事に対する意趣返しだ。同じくらいに驚いたんだからな。」

 

 ネロ・・・お前の気持ちは分かるぜ。あれは驚いた。

 

「鋼兄も渡・・・サイに、ハルまで・・みんなグルになりやがって・・・。ってそんなにあれ驚いたのか?」

 

「生まれてあれだけ仰天したのは数えるほどしかない。この業界を知らないお前はピンとこないが、お前らはそれだけの重大な秘密をかかえていたんだぞ?」

 

 鋼兄が仰天ね。まあ・・・あいつらと付き合いの長い俺からすると今更なんだが・・。

 

「ふふふふ。」

 

 そんな光景をキリエさんは微笑ましく見ているし。

 

「キリエ。頼むから笑うなよ。俺は怒って・・・・。」

 

「だって・・・あなたにこんなにたくさんの友達ができてうれしくて。魔剣騎士団じゃあはみ出し者だったし嬉しくて。」

 

 やっぱりネロ。向うでは友達はいなかったか。

 

「お前は俺の保護者か?」

 

「姉みたいなものでもあるわよ。違うかな?」

 

「・・・・・そうだったな。はあ・・・。」

 

 ネロ。お前・・・絶対にキリエさんには敵わないな。

 

 あの天使の微笑みには敵わない。今は実際に天使だし。

 

 その後ろで部長は深いため息をつく。

 

「はあ・・・なんかこのオカルト研究部。一気に人外魔境になったわね。」

 

 ってそれは流石に・・。

 

「悪魔だけならともなく。天使、堕天使、そして鬼に騎士、ファンガイアにアギトよ?そこにドラゴンまでいる状態を人外魔境と言わないでなんといえばいいのかしら?」

 

 あら・・・そう言えばそうでしたね。思えば色々なメンツがあつまっているよ。

 

 うん。確かにすごいぜ。

 

「いい得て妙だな。」

 

「くすくす。今後もよろしくお願いね、みなさん。」

 

 ドライクとクレア。お前達も出てきたし。

 

「さて・・・イッセ―。あなたも元気になったところで説教の時間よ?」

 

 あっ・・・あれ?なんか部長・・・怒ってらっしゃる?

 

「あれだけ無茶したのですから・・・しっかりとしつけないとね!!」

 

 木場・・・小猫ちゃん助けて!!

 

「ごめん。でも僕も説教は受けるべきだと思うんだ。」

 

「諦めが肝心。あれは無茶すぎる。」

 

 ああ・・・二人とも見放したし。

 

 えっと・・・なぜか仲良く話し合っている朱乃先輩。そしてレイちゃんは?

 

「・・・ふふ・・今のあなた・・・なんかいじめ甲斐がありそうね。ゾクゾクする。」

 

「えっ・・・と・・・。すごいSですね。・・・今の内に仲良くなっておかないと、今後の将来設計で最大の難関なんだし。」

 

 特にレイちゃんが朱乃先輩に必死でお近づきになろうとしているみたいだけど?

 

「なんか堕天使だけど可愛い妹分ができたわ。よろしくね。」

 

「はっ・・はい。」

 

 というより・・・いじめないでください!今いじめられたら何かに目覚めそうです!

 

「まあまあ・・・慰みに音楽を奏でてあげるから。そうだね・・・。何かリクエストは。」

 

「だったら我ための作ったあれがいい。」

 

『!!?』

 

「まっ・・・また現れやがったな。ゴスロリ娘。」

 

 ネロの言葉通りだった。

 

 渡が何か奏でようとしたら・・・いつの間にかオ―フィスちゃんまで来ているし。

 

「・・・・・・・・・・・・。」

 

 あれ?ドライクさん?どうしたのですか。間抜けなまでに口を開けたまま茫然としていますよ?

 

「なっ・・なんでお前がいるんだオ―フィス!!・・・いやウロ・・・。」

 

 ドライクが何かを言おうとした瞬間だった。

 

「・・・・・ギロ。」

 

 彼女の鋭い視線が俺・・・・いや正確にはドライクに向けられるって・・・オイオイオイオイ!?

 

 睨む仕草はすっげえ可愛い。うんすっごく可愛い。

 

 でもね・・・何かすっげえこわいよ?視線に込められた何かがすっげえこわい!!

 

「ガタガタガタガタガタガタガタガタ・・・・。」

 

 実際に向けられていない俺がこれなのに・・・ドライクなんて小刻みに震えているし。

 

 えっと視線で何か訴えかけているような・・・。

 

「だっ・・黙っていればいいのか?」

 

 ドライクの言葉に頷くオ―フィスちゃん。

 

「わっ・・・わかった。相棒済まぬが彼女についてはそう言う事で頼む。」

 

 あれ?ドライクさん?なんであなたがあっさりと引き下がるのですか?

 

 二天龍なんだろ?どうしてだ?

 

「何が・・・どうなっている?あいつ・・・昔とは性格がまるで違うぞ。」

 

「・・・・・俺に聞くなよ。って・・・クレア?」

 

 クレアがオ―フィスへと向かっていくし。

 

「ねえ・・・同族のよしみで仲良くしたいんだけどいいかな?」

 

「・・・仲良く・・・・・?」

 

 クレアの提案に首をかしげる。うん・・・いちいちかわいい。

 

「愛しい人がいるんでしょ?色々と情報があるから、相談にのるしさ。こっちも色々と教えて欲しいことがあるのよ。どうかしら?」

 

 そう言ったクレアとオ―フィスは見つめ合い。

 

 小さなクレアの手とオ―フィスがかっちり握手。

 

「よろしく。異界の龍。」

 

「クレアってよんで、オ―フィス。あとお近づきの印にどうぞ。」

 

 しかも何かカードを渡しているし!!

 

「分かったクレア。ありがたく受けとる。」

 

・・・・・なんか変な友情が生まれていますよ?というか・・・あの子もしかしてドラゴンなのか?それも相当強力な力を持つ?

 

 ドライグが視線だけで委縮するほどの力って・・・。

 

「うんうん。オ―フィスが色々な人と仲良くなるのはいいことだ。」

 

 感慨深そうに見ている渡・・・お前。何を手懐けた?

 

「私もなかよくしたいです!!」

 

「そうね。私もいいかしら?もうなんだか抱きしめたいくらいに可愛い子だし!!」

 

「我・・・歓迎する。でも苦しい。」

 

 そこになぜかアーシアちゃんとキリエさんまで加わっているよ!!

 

 キリエさんなんか抱きしめて頬すりしているし。

 

 苦しそうに手をじたばたさせている辺りが逆に可愛いのは黙ってやろう。

 

 っていつの間にか体が浮いている。

 

「さてさて・・・お仕置きの時間よ、覚悟しなさい。」

 

 あれって部長の使い魔・・・カ―ミラだよな?俺を掴んで持ち上げられるってどんな力をしてんだよ!!

 

「さて・・・まずはどこから・・・。」

 

 ああ・・・もう。俺・・・これからどうなっていくんだ!?

 

「はあ・・・平和だな。」

 

「そうにゃ・・・。」

 

 鋼兄と黒歌さん・・頼むから夫婦でまったりとしないで!!

 

「お姉さま、鋼鬼さん。お茶がおいしいですね。」

 

「ああ。いいお茶だ。朱乃どの・・いいお手前で。」

 

「あらあら。茶道に心得が?」

 

「世話になった場所が甘処だった故に。またあそこのお茶菓子も買ってくるよ。」

 

「楽しみです。」

 

「おいしいです。朱乃さんもすわってくださいよ。私も手伝いますし。」

 

「悪いわね。ハル君も一緒にいらっしゃいな。おいしいドーナッツも買ってくれたんだし。」

 

「じゃあ・・遠慮なく。」

 

「ってハル君ったら口元が汚れている。ちょとじっとしていて、今拭くから。」

 

 小猫ちゃんも朱乃先輩もお茶を飲みながらまったりしないで!!

 

 レイちゃんとハルの野郎も一緒に楽しんでいやがる。

 

 しかも、さりげなくイチャついているなんて・・・うっ・・うらやましくないからね!

 

 くそ・・泣けてくるぜ。

 

「よし・・・手合わせ願うぜ。サイ・・木場!!」

 

「面倒だけど受けて立つよ。でも・・・変身とデビルトリガ―は無しの方向で。こっちも鎧はつかわないから。」

 

「ねえねえ。サイ君の使うアバン流刀殺法に興味があるんだけど・・・。ネロ君が使うレッドクイーンとあの刀にも。」

 

「ほう興味あるのかい。あれは三つの技から構成されていてね。それを極めて初めて奥義が・・・。」

 

「俺もおしえてくれや。役に立ちそうだ。」

 

 ネロとサイ、木場の三人は手合わせする相談しているし。

 

 そっちはそっちでバトルマニアですね!!

 

 部長こんな状況でいいのですか?

 

「問題ないわ。こうなったら開き直りが肝心よ。」

 

 そうですか。

 

 もう・・・同好会じゃなくて部として成立しますよ。このメンツ。

 

「イッセ―さん・・・ファイトです!!」

 

 アーシアの楽しそうな顔がせめてもの救いだね。

 

 なんかこう・・・癒されるぜ。

 

「さて・・・まずはねえ。」

 

 ああ・・・ここから俺はどれだけの説教を受けることになるのか分からねえ。

 

 でも平和なのは間違いないぜ。

 

「相棒。まあ・・・頑張れ。骨は拾う。」

 

 ありがとうなドライク。俺・・・逝ってくるわ。

 

「ふふ・・・O☆HA☆NA☆SIの始まりよ。」

 

 ああ・・・死亡フラグが見えてきた。

 

 

 

 

 あれ?俺・・・何時の間に帰ったんだろ?

 

 気が付けば俺は家に帰っていた。外はもう夜か。

 

 って八時かよ。

 

「・・・おお・・・ようやく相棒が元に戻ったぞ!!」

 

「恐るべきはリアスさんね。あの子もいい素質をもっているわ。」

 

 ・・・リアス部長。あなたは恐ろしい人だ。

 

 まさか一気に四時間も意識が吹っ飛ぶとか。

 

「本当に帰りは危なっかしくてたいへんだったぜ。」

 

「リアスさんのあれは中々強力ね。」

 

 ネロとキリエさんが付いてきてくれたようだ。

 

「はははは・・・それでも結構精神的にも成長しているようだな。」

 

「私もあれは喰らいたくないにゃ・・・。」

 

鋼兄は嫁さんと一緒にきているし。

 

「ウィ―・・・あきれるほかないね。」

 

「くすくす。あなたと出会わなかったら、あの人に消される未来が見えた気がするわ。」

 

 ハル、レイちゃんも呆れているし。

 

「・・・なんだろう。この疎外感。」

 

 サイ。お前の気持ち何となく分かる。

 

「まあまあ・・・気にするなよ。」

 

 渡。それはお前が無意識のリア充だから言えるんだよ!!

 

「リア充ってなに?」

 

 ああ・・・オ―フィスちゃんまでついてきているし。勝手に心を読まないでくださいよ。

 

・・・って・・。

 

「おい!!なんでみんなここにいるんだ!?」

 

 何時の間にか俺の家に幼馴染共が全員集合しているじゃありませんか!!

 

 相方まで全員一緒だし。

 

「何って・・・みんな一緒に住むからだ。」

 

 鋼兄。そんなとんでもないことをあっさりと言わないでくれ。

 

「みんな家がないし、ネロがお世話になっていることを聞いてね。」

 

 キリエさんが申し訳なさそうに応えてくれますけど・・・どうすんだよ!!明らかに人数オーバーだよ!!

 

「安心しなさい。その点に関してはソロモン王にお願いしてあるわ。」

 

 リアス部長も一緒だったのですね。そして、ソロモン王って・・・。

 

「増改築の魔法。あれは簡単でよかったよ。もう完了したよ。みんなのリクエストにあった部屋にしてあるから。」

 

 そうですか。ハルの野郎がすでに例の指輪の魔法を使っているのですね。

 

 ちょっと見せてもらうと・・・俺が学校に行く前と後で大分変わっていやがる!!

 

 地下室できている上に、二階建だった家が四階建になっていやがる。

 

 しかも一階、二階も全体的に広くなっていませんか!?特にキッチンとリビングが広い!!

 

 五十インチ以上はある超大型のテレビもありますよ!!

 

「土地の購入ありがとうございますね。リアスさん。」

 

 俺が学校に行って、戻ってくるまでの時間の間にやったというのですか!?

 

 すげえな・・・魔法って。

 

「何をいっているの。これくらいお礼にもならない。まあ・・・キリエさんが天使になったという謎の現象もあるし、まだ事件は解決したわけじゃないわ。アギトの件もあるし、みんな一緒にいてもらった方が今後対応がしやすいってね。」

 

 なるほど。それでこんな無茶をしたのね。

 

「ここにいるメンバーは私の眷族だけじゃなく、チームイッセ―として将来は機能させるつもりよ。もちろん各方面の交渉があるから出来るとは限らないけど。」

 

 んん・・・アギトと言えばもう一人いたよな?

 

「それともう一人。」

 

「たっ・・・ただいまです~。」

 

 そこには買い物袋を提げたアーシアがいた、

 

「彼女もここで住むのよ。」

 

「イッセ―さん。よろしくお願いします。」

 

 心から嬉しそうなアーシアの笑顔。

 

 助ける事ができて本当によかった。

 

 これから幸せになってもらわないといけないんだ。

 

「・・・・ああ。よろしくな。」

 

 歓迎するぜ。

 

「大好きなイッセ―さんと一緒に住む事になって本当にうれしいです。」

 

 えっと・・・だ。

 

 あっ・・あれ?

 

 俺ってもしかして・・・アーシアに好かれている?

 

「君の夢の第一歩が彼女なんだね、」

 

 顔を赤らめて笑顔の彼女にドキドキが止まらん!!

 

 とっ・・友達になっただけなんだけど・・・あれ?

 

「大事にしてやれよ。何となくだが近い将来、お前をめぐる争奪戦が始まりそうな気がする。その中でアーシアちゃんは大きな一歩を踏み出したということだ。」

 

 鋼兄。こんな俺をとりあう連中がいるとでも?

 

 はあ・・・すぐにはわからん。勘違いかもしれんし。

 

 でも、一緒に暮らすのか。妹分が増えた気分だぜ。

 

 両親に関しては・・・うん気にしないでおこう。

 

 多分悪魔の交渉をしたと思うから。特に部長、ハル、それと・・・多分渡辺りが参加してそうだし。

 

「ふふふ・・・それとイッセ―。君もだいぶ業が深くなってきたね。」

 

 あれ?ハルの奴が手に持っているやつって・・・おおおおおおい!!

 

 秘蔵のDVDじゃねえか!!もちろんエロの方の。

 

「そうだった。イッセ―さんに説教をしたいと思っていたのですよ。まったく、ネロの教育にもよくないので今後控えてもらおうかなと!!」

 

「いや・・・キリエ。別にそれくらいいいじゃねえか。」

 

 まずい。キリエさんが怒っている。俺に説教ってもういいから!!説教は一度で十分!!

 

 ネロ。頼むから止めてくれ!!お前しかキリエさんを止められない!!

 

「・・・いや良いのあったから借りたにゃ。これを参考に子づくりでも。」

 

「///////。」

 

 黒歌さん・・・たっ・・・たのむから参考書にしないで。それってどんな羞恥プレイなんだよ!!

 

 鋼兄は真っ赤になって顔をそむけているし。

 

「エロもまた生きるには大切なことなんだよ。性欲が強いというのはそれだけ生きる意思もつよい。英雄が好色なのもそう言ったところにあるのかも。」

 

 渡。理解してくれるのはうれしいけど、それはそれできつい!!

 

「・・・エロってなに?子づくりって?」

 

「なんですか?エッチなことってそんなにいけないことなのですか?」

 

『・・・・・・・。』

 

 オ―フィスちゃんとアーシアの言葉に、場の空気が凍りつく。

 

「・・・ええっと・・・そっ・・・そそそそそのね。えっとネロ!!何から説明すればいいかな!?」

 

「そこで俺に振るな!!」

 

「一応堕天使なので色々とおしえてあげようかな?」

 

「冗談でもやめてください!この二人はまだ真っ白なのですよ。あのDVDの内容のような変な知識を与えたら大変なことに!」

 

「じょ・・・冗談ですから。そうなるとどうすればいいでしょうか・・・部長!!」

 

「わっ・・私に振らないでよ!!うわ・・すごいカオス。」

 

 うわ・・・あの二人の質問にみんなが混乱しているよ。

 

 キリエさんがすっごく混乱していて、ネロが呆れかえってるし、レイちゃんが教えようとするのをキリエさんが必死で止めて、とばっちりが部長までくるし・・・。

 

 あれ?その前にキリエさんが顔を真っ赤にさせてDVDの内容を言っているけどそれって・・・

 

 みたのか?

 

 みてしまったのか?あの業が深いあれを!?

 

 あきれ返っている俺の肩を叩くのはサイだ。

 

「頼むから陰我だけは生み出さないでくれ。」

 

 何で俺がホラーを呼ばないといけねえ!!

 

「お前の場合は性欲だけでとんでもないのが出てきそうで怖い。使徒ホラーが出てきてもおかしくない。討伐が面倒すぎるぞ。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

 ひっ・・否定できん。俺の性欲は天井知らず!!それでもしたら・・・。

 

「頼むから否定してくれ。はあ・・・今の内に処理はしたほうがいいかな。後・・・余計なお世話かもしれないけど、DVDやエロ本の隠し場所はもっと工夫した方が良い。おかげで君が目を覚ますまで、大騒ぎだったよ。」

 

 えっと・・・隠し場所の工夫をした方がいいという指摘と大騒ぎ?

 

 嫌な予感しかしません。

 

「キリエさんがイッセ―の部屋を掃除して、DVDを見つけたんだ。パッケージじゃ分からないようにしていたのがあだにでたね。映画だと思って黒歌さんとレイちゃんと一緒にリビングでみてしまったんだよ。届いたばかりの巨大なテレビでね。」

 

「う・・・おおおぉぉぉぉ・・・。」

 

 リビングには五十インチの巨大なテレビがあるが・・・よりによってあそこで見たのかよ!!

 

 そんな大画面でエロDVDって・・・。

 

 音響機器もあるから大音量で実にリアルだったんだろな・・。

 

「アーシアとオ―フィスがいなくてよかったと思っている。」

 

 鋼兄。それはせめてもの・・・救いなのか!?

 

 新調したリビングのテレビで初めてみたのがエロDVDってなんだよ!!

 

「ははははははははは・・・・・。」

 

 もうだめだ。アギトになった時点でしていた覚悟とは別の意味で俺は今までの日常からサヨナラしないとけねえようだ。

 

「エッチのなのは許せません、わっ・・私がネロとあんなことを・・・。」

 

「同じ男としてわからないでもないが・・・頼むからイッセ―自重してやってくれ。キリエが暴走すると色々と厄介だ。」

 

「たのむからもうそれくらいでかんべんしてくれええええええぇぇぇぇぇ!!」

 

 俺に・・・プライバシーを求む!!

 

「相棒今更じゃないのか?」

 

「私達は全部理解しているというのに?」

 

 ははは・・・そう言えばそうだった。泣けるぜ。

 

 こうして俺の家は一気ににぎやかになった。

 

 

 




 最後はイッセーの羞恥プレイでおわりました。

 こんな騒がしい日常が普通になっていきます。


 次話からライザー編。

 リアスの魅力をうまく出せるかがカギですね。がんばらせてもらいます。


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第二章 戦闘校舎のフェニックス
二人の出会いの話です。


番外編的な話からはじめます。

 主役は黒歌です、


 SIDE ???

 

「異界の可能性は本当に恐ろしいな。まさかあのような龍が・・・。」

 

 白いローブを纏った男がある戦闘映像を見ていた。

 

 それはアギトに進化したある神滅具の使い手の姿。

 

「忌々しいスパーダの血族までいるか。それがギルスになるのは私にとって悪夢です。」

 

 その隣では黒髪に黒いマントを纏った男がいる。元々彼はある財閥を経営もしており、その陰で異界の悪魔の力を使って色々とやっていたらしい。

 

 消滅する彼を私は生き返らせた。

 

「こ・・ここっっっ・・ここには同志がおおい。あの時分からなかった・・・あれが分かるか。あいつが言っていた人間の強さという物を!!」

 

 そして、死に絶えたもう一人の男も生き返らせている。

 

 モノクルを賭けた男だ。

 

「うひゃひゃひゃひゃひゃ・・・これは愉快。異界って言うのは本当にあきないねえ。」

 

――――――ユートピア。

 

 その男の手にUSBメモリの様な物が握られている。

 

「よりによってあなたにそのガイアメモリが適合するか。」

 

「もうひとつあるよん!!」

 

――――――テラ―・・・。

 

 その男は同じような物を二つもっている。

 

「まさか三つも選ばれるなんて僕チン・・・感激。」

 

 いや・・・・もう一つ。

 

―――――バイラス。

 

 彼はよりによってこの三つと適合してしまっていた。

 

 この男・・・この三つのメモリがどれだけ危険か知っているのか?

 

 一つ一つが神滅具クラスの怪物メモリだぞ?能力も・・・そしてその被害規模も。

 

 しかも選ばれた者を見ると・・なるほど悪魔にふさわしいメモリばかりだ。

 

「この三つを同時に扱えるドライバー。完成する日が本当に楽しみだわ。」

 

「あなたがこの世界の代表なのですよ。まったく・・・。」

 

 そんな彼らに向けて私は姿をあらわす。

 

「固い事いいなさんな。あんたがあいつらと一緒に来てくれたおかげでこっちはもう楽しくて楽しくて・・・くははははは!!異界への侵攻。楽しみだぜ!!」

 

「まさに悪魔か。アギトよりもあなたの存在の方が危険なのかもしれませんね。」

 

「面白いと思うかな?こっちは十分だと思うよ。」

 

 この世界である男を蘇らせ、その彼を通じて紹介された私。

 

 この男は・・・確かに危険だ。だが・・・だからこそ面白い。

 

 誰よりも悪魔らしくていい。

 

「滅びは美しい。」

 

 その隣では眼鏡をかけ、人形を腕に乗せた男がいる。彼は滅びを求めた男、

 

「楽しめそうだね。殺す価値のある者達がたくさんいるよ!!」

 

 全身を白い殻もの様な物で覆った彼。異世界では究極の闇と呼ばれている。

 

「フン・・・俺はすべてを喰らうまでだ。己の死すら喰らえた。今度は何を喰らおうか。」

 

 後ろでは鋭い牙が生えそろった口を模した仮面をつけた男。

 

「この世界の技術はさらに面白い。これなら超魔を超えた超魔・・・竜の騎士を超えし者を生み出せそうですね。ぎひひひひひ・・・。」

 

 小柄な老人のような彼も張り切っているよ。

 

 私が悪魔のシステムを参考して眷族にした連中はどれも癖が強い。

 

 何か・・・マッドサエティストみたいな連中が多い気がする。

 

「この組織も表は彼女が代表になっているが、裏じゃあ・・・あんただな。安心しな。他の勢力が衰退したら、おれっちが表に出て計画を推し進めてやる。」

 

「他の勢力にも期待しているのですが・・・。どうもあなたが一番やらかしてくれそうです。一番期待していますよ。」

 

 その手始めとして・・・あのガイアメモリである。異世界のある街から得たそれに他にももう一つ流通させようとしているものがある。

 

「スイッチ。私の知らない宇宙からの贈り物の一つか・・・。」

 

 私が寝ている間に世界は広がっていた。異世界は知っていたが宇宙の向うにいる存在は流石に想像もできなかったのだ。

 

 そして、その力とメッセージを受けとった者がこの世界に二人いる。

 

 ある兄妹だ。彼らもまたアギトとは違うが私の想像もできない進化を果たそうとしているのだろう。

 

 それに、喰らう彼を初めとする未来からの来訪者もいる。時間というとんでもない概念が関わるその来訪者があの兄妹と共にいるという。

 

 それだけじゃない。セルメダルという我々ですら考えもしなかった物質を人間が作り出した。欲望のエネルギー化。そして怪物として生み出す。

 

 アマダムという謎の石。

 

 まだ他にもあるのだろう。

 

全く私が寝ている間にこの世界はここまで混沌としてしまったのか。

 

 人を悪魔に転生させる術はまだ見逃せる。だが・・・これ以上の人の進化はされてはこまる。

 

 その先頭にいるのが・・・あのアギトだ。

 

 あれはもう我々神すら恐れを抱かずにはいられない怪物だ。どのような進化を遂げるのか想像もできない。成長する前にその芽を摘み取る必要がある。

 

 人類創造に関わった三つの神、聖書の神と光の神はもういない。いるのは私だけだ。

 

 あれがあの二人が求めたものなのか?

 

 認めたくないものだ。だが・・・あそこまで異常な物を見せられると・・・。

 

 その時ある映像が浮かび上がる。

 

 それは近い未来を見る力。ちょっとした力だ。

 

その力が教えてくれる。そうか・・・・そんな事が起こるか。

 

 私はある者に指示を出す。

 

「今からいう者に接触し、ガイアメモリを渡しなさい。渡すメモリはあなたに任せます。」

 

「かしこまりました・。あの方でいいのですね。」

 

 その言葉に応えるのは・・・白い蝙蝠の姿をした者。

 

「ええ・・・面白い事が起きますよ。それとフェニックスという事で彼も読呼んであげなさい。監視役としてトータスロードも。何しろ彼の所には・・・。」

 

 私の視線に白いローブを纏った彼が頷く。間違いないですね。

 

 こうして・・・近い未来で波乱が起こる事が確定する。

 

 さあ・・・・アギトよ。この私のしかけた罠をぶち破ってみなさい。

 

 私に人という物がどんなものか見せてみるがいい。・

 

「てめえも十分愉快犯じゃねえか。」

 

 失礼な。君と同じにしてもらっては困るよ。

 

 

 

 

 

 

SIDE イッセ―。

 

 まったりとした部室内。

 

 今鋼兄とハルはでかけている。それぞれ鋼兄は自分が所属している猛ともう一つの所属先に報告も兼ねてでかけているのだ。

 

 ハルも同じ感じだ。あいつは堕天使サイド・・・確かグレゴリという組織に報告にいっているんだけっけな?

 

 鋼兄は・・・何か高天原に向かったって言うけどどこの事だ?

 

 なんか日本神話で聞いた事があるような・・・。

 

「うにや・・・今日も鍛錬大変だったにゃ・・・。」

 

「姉様・・・いつもこんな鍛錬を?」

 

 部屋の中にはシャワーを浴びてさっぱりした様子の黒歌さんと小猫ちゃんの二人。

 

 二人とも・・・とくに小猫ちゃんは疲れ切っていた。

 

 相当なトレーニングだったもんな。

 

「まあ・・・これは鬼としての力を維持するためにゃ。向上させる修行は今度の休みにする予定。今の倍以上はしないといけないのにゃ・・・。」

 

「私・・・夏休みはそれに参加するのですよね?」

 

 顔色を蒼くした小猫ちゃん。

 

「サイラオークさんも参加するといっていたにゃ。もう・・・鬼になれる段階に至ったらしいわ。こんな短期間で至るって・・・無茶苦茶もいいところにゃ。」

 

 あの二人が世話になった人だったよな。確かバアル家の次期大王っていう・・・。

 

 ほんの一、二カ月くらいで鬼になった?一体どんな人なんだろう。

 

「厳しいよ。鬼って。なりたいというからにはしっかりと基礎を作らないと力に耐えられない。あの人はその基礎がすでにできていたに違いない。白音はしっかりと基礎からくみたてにゃさい。」

 

「はい・・・。」

 

 でも実際に小猫ちゃん・・・すごく強くなっていないか?

 

 なんかこう・・・オーラの様な物が強くなっているような・・・。

 

「イッセ―君は気付いているみたい。アギトの力はそう言った感覚にもあらわれるにゃ。」

 

「そうですか?先輩。」

 

 実際に強くなっている。まだまだ黒歌さんの持つオーラの方がはるかに上だけどな。

 

「黒歌さん・・・鬼の力に関してはまだ上がるみたいだし?」

 

「!?そこまで読むか・・・・これはまいったにゃ。まあ・・後二つ変身は残してあるにゃ。」

 

 あと二つって・・・それって相手に絶望を与えたいのですか?

 

「どれもしんどいからこうやって鍛えているわけにゃ。響鬼さんだってあれは一時間しかもたないといっていたし。どうして鋼ちんはそのさらに上の領域に足を踏み入れられたのやら・・。」

 

 鋼兄に関してははっきりいって底が見えない。どんだけ上がるのか全く分からないくらいの何かを保有していることはわかるが・・・。

 

「まあ・・・鋼ちんの目標はお義母様達に並ぶということだし・・・。でも、その領域にもう足を踏み入れていると気付いていない辺りは色々とむちゃくちゃ・・。」

 

 あらあら・・・黒歌さんが色々と考えて込んでいるし。

 

「追いかけるのは本当に大変すぎるにゃ・・・。悪魔の駒のせいで寿命も互角になったから余計に・・。」

 

「鋼鬼さんはどんな領域にいるのか・・・想像もできません。」

 

 まったくだ。下手したら人間の身でアギト以上の進化と遂げているのかも。

 

「多分イッセ―の考えていることは的をいているにゃ。」

 

「まじですか?」

 

「普通の人間として生まれたのが本当に信じられないにゃ。神の血を引いているのならまだ分かるのに・・・。」

 

 ええっと・・・無茶苦茶な領域にいるのだけは理解できたぜ。鋼兄の本当の本気・・・俺でもかてるのかな?

 

「そう言えば・・・ずっと気になっていたのですが。姉様はどうして鋼鬼さんとしりあったのですか?あの事件で逃げていたところを助けてもらったのは想像できますが・・・。」

 

「それは気になるわね。」

 

 小猫ちゃんの言葉に部長が乗ってくる。

 

「二人の馴れ初めか・・・参考までに聞きたいものだ。」

 

「どういった出会いをしたのかい?」

 

 渡に木場まで乗ってきたよ。

 

「私も聞きたい!黒歌・・いいでしょ?」

 

 レイちゃんもか。そう言えば黒歌さんとレイちゃんって仲がいいよな・・。

 

「私も聞きたいです!!」

 

 アーシアまで。

 

 アーシアもそう言えばあの二人と仲がいい。一緒に住む仲というのもあるけど・・・?

 

「あらあら・・・・長くなるようでしたらお茶のお代わりをいれましょうか?」

 

 朱乃さんまでやってきたよ。

 

 オカルト研究部・・・女子は全員集合か?

 

「私も興味があります!!」

 

 キリエさんもなぜか一緒にいますし。

 

 先生なんでしょ?仕事はいいのか?

 

「我も興味ある。」

 

 オ―フィスちゃんまで・・・。

 

「わっ・・わかったにゃ。そこまで言うなら話すにゃ。結構ありふれた話だけどいいかにゃ?」

 

 こうして黒歌さん鋼兄の馴れ初めの話が始まった。

 

 

 

SIDE 黒歌

 

 それは私が暴走しながらも、必死で白音を別の場所へ転移で飛ばし、私は館を飛び出した。

 

 私は妹を探しながら彼方此方をさまよった。

 

 でも、手配されたのだろう。

 

 私の命を狙う悪魔から逃げ続ける日々へと変わってしまった。

 

 必死で逃げた。

 

 怪我追っても必死で。

 

 でも・・・心も体も限界にちかづいっていったにゃ。

 

 いつの間にか私は冥界を飛び出し、この世界にやってきて力尽きた。

 

 もう動けない。

 

 そんな時だった。

 

「・・・。」

 

 私を助け起こしてくれた少年がいた。

 

「どうしたのですか?」

 

「猫が倒れていて・・・でもこの猫ただの猫じゃ・・・。」

 

 その少年の後ろから黒髪をした女の人もやってくる。

 

「猫又・・・妖怪の類ですか。でも気配が妙な・・・。」

 

 女の人が私を見ている中、少年は私を抱きかかえる。

 

「助けるというのですか?人に害をなす妖怪かもしれませんよ。鬼であるあなたがそれでいいのですか?

 

 女の人は少年に厳しい問いをかける。

 

 その問いに少年は考え、そして意を決して応える。

 

「・・・母上。俺はどうして強くなりたいかしっているか?」

 

「私達と肩を並べる事が出来るようになりたいから・・・でしたね。それであなたは鬼となった。史上最年少の鬼に・・・。」

 

「でもさ・・・その鬼になった時に気付いた事があるんだ。いや・・・思いだしたというべきか・・。」

 

「?」

 

「この力は・・・助けるためにあるって。三年前・・・何もできなかった。そのままの俺じゃ情けない。今度は俺があいつらを助ける番だって。あいつらだけじゃねえ。どこまできるかわからねえ。でも・・・今度は俺が誰かを助ける側に立つ番だって。」

 

「・・・鋼・・・あなた・・・その歳でもうそんなことを。」

 

 その言葉を聞いた女の人は目に涙を浮かべていた。

 

 そして、そのまま抱きついてきた。

 

「もう・・・・本当にしょうがない子。でも・・・私はあなたの母でよかった。あなたがこんなにいい子に育つなんて!!」

 

「はっ・・母上。あの・・・気持ちは察しますが、まずはこの子を!!」

 

 感激でおかしくなった女の人を必死でたしなめる少年を見ながら私は気をうしなったにゃ・・・。

 

 

 

 気が付いた時には傷が治っており、私はいつの間にか体を洗われていた。

 

「ふっ・・・ふにゃ!?」

 

「おいおい暴れるなよ。基本的に猫だから水は嫌いなのはわかるけど、かなりよごれていたんだぜ。」

 

 風呂場で裸の男の子が私の全身を触って洗いまくっていたって・・・ちょっ・・ちょっとどこさわっているにゃ!!

 

「あれ?喋るのかって・・・妖怪だからおかしくないか。んん?その声からするともしかし・・・・女の・・子?」

 

 全身を洗いまくって・・・その気持ち良すぎて私は変化をといてしまったにゃ。

 

 そう・・・元の人の姿に。もちろん・・・

 

「もう・・・勝手に触らないでほしいにゃ!!」

 

 私は裸にゃ。それを見た男の子は見る見るうちに顔を真っ赤にして・・。

 

「・・・・・・・・・はっ・・ははは・・・裸・・・ぶぶふぁ!」

 

 鼻血を噴き出して、そのまま倒れてしまったにゃ・・。

 

「鋼ぇぇ!!いいわすれていたわ。あの猫又は女の子って、遅かったか・・。」

 

 ちょうど男の子が気を失ったと同時にこの子の母親がきた。

 

 これが私と男の子・・当時十三歳の鋼ちんとの出会いである。

 

 助け出された私の最初の印象は・・・・鼻血男子であった。

 

 



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新しい日本神話です。

振り返りの話は終わりです。

 何気にとんでもない新キャラ登場です。


 SIDE 黒歌

 

「ななななな何・・・・あっ・・・あなたがそんなとんでもないお方だったなんて!!」

 

 鼻血を出して気絶中の鋼ちんを介抱しながら私は鋼ちんの母親と話しこんでいた。

 

 そして・・・あまりにも仰天すぎる正体に唖然としていた。

 

 私達のような日本の妖怪にとってはあまりにも恐れ多い方にゃ!!

 

「久しぶりの親子の団欒ですから。この歳で鋼も鬼として修業を終え独り立ちしようとしています。そこにあなたが・・・。」

 

「そっ・・そうだったのですか。あまり長居しても・・・。」

 

「それに関しては気にしないでください、でももし済まないと思ったら話してくれないかしら?・・・あなたから感じられる悪魔の気配に関して。」

 

「・・・流石にごまかせませんか。わかりました。助けてもらったお礼になるかわからなにゃいけど・・。」

 

「是非・・・聞かせて欲しい。」

 

 そのタイミングで目覚める鋼ちん。ある意味反則。

 

 私は事情を話したにゃ。

 

 悪魔に転生できる駒。一つくすねた物を見せ、私はそれで悪魔になった事をいった。

 

 その悪魔から逃げてきた事、追手を振り切りボロボロの状態でここにきた事もだ。

 

「・・・一度抗議してもいいかも。」

 

「いや母上。それでは外交問題になる。個人的に俺が殴りに行く。」

 

「どうやって冥界にいくの?」

 

「そういえばそうだったな。」

 

 えっと・・・二人とも怒っていますね。それも私じゃなくてその悪魔に対して。

 

「グレモリ―家は情に深い一族。あの家の出身の魔王とは個人的に交渉関係がありまして、よく知っています。そこに妹さんを逃がしたのは良い判断です。」

 

「あとは・・・追手か。」

 

「えっと・・その・・二人とも?」

 

「とにかく猛士の方からは私が話を通しておきます。うまくかくまってやりなさい。」

 

「へっ?あっ・・・その・・・いいのかにゃ?」

 

「いいも何もあなたの言った事は真実です。私の力の一つを忘れましたか?」

 

「鏡の力でしたね。でも・・・私は厄介ものじゃ。」

 

「・・・普通なら追いだすべきです。でも、私も鋼を息子として育てて・・・考えが変わったようです。貴方の家族に対する深い思いやり・・・胸を打たれました。だからこそ、私達はあなたの後ろ盾になりましょう。」

 

「えっと・・・その・・・。」

 

 捨てる神がいれば拾う神ありとはよくいうにゃ。

 

 でも・・・拾う神がすごすぎたにゃ。

 

「おじさん達もそういうだろうな。」

 

「当たり前だろうが!!そうだろうが姉上!!」

 

 もう一人乱入。髭だけでなく、全身の毛が濃い目の中年の男。なんかすごく豪快な人にゃ・・・まっ、まさかあの人って。

 

「・・・あなたのその性格・・・確実に鋼に移っていることを忘れないでください。」

 

「ははははいいではないか。それくらいのが人生は楽しい!!」

 

「おじさんの言うとおりだ!」

 

 なるほど、この豪快さはこのおじさんから受け継いだか。

 

「あとは女の裸に免疫が出来れば完璧なのだがな。嫁ができた時どうする?」

 

「初恋もまだ故になんともいえん!!こっ・・・克服したいと思っているが。」

 

 鋼ちんの弱点はこの歳で酷い物であった。

 

 母とも一緒に風呂に入れぬほど。一種の呪いのように思えるくらいだ。

 

 おじさん・・・はあ。この子すごい家族の中で生きているんだね。

 

「むむむ・・・そうだ。お前・・・こいつの嫁にならんか?」

 

 いきなり嫁って困るにゃ。

 

 私も年頃を迎えていたから考えてもいいのだけど・・・。

 

「いきなり言ったらかわいそうです。全く・・・速く孫の顔を見たいという気持ちは分かりますが、少し抑えなさい!!」

 

 ははは・・・このおじさんも姉には頭があがらないみたいにゃ。

 

 神話の話が本当ならこのおじさん・・・色々とやらかしているはずだし。

 

「うう・・・私・・・影が薄い。」

 

「おっ・・おばさんまで・・。」

 

 あれ?陰でもう一人いる。ああ・・・あの方まで。

 

 ははは・・・すごい子。

 

 

 

 こうして私は鋼ちんが猛に戻るのに一緒についていくこととなり、そこでかくまってもらう事になった。

 

 あの方から勾玉と小さな鏡のような物をもらったにゃ。お守りといってくれたけど?

 

 事情を色々と話、私はすぐにみんなと仲良くなったにゃ。

 

 鋼ちんの師匠である響鬼さんを初め、先輩の鬼達とその関係者達。

 

 その拠点である甘処たちばなで働きながら、私は鋼ちんと一緒に過ごす。

 

 その中で私も鬼の修行を始めていた。

 

「どうして鬼の修行を?」

 

 学校には一緒に通っている。でも・・・私はみんなの働きをみて一緒に戦いたいと思うようになっていたのだ。

 

 妖怪でそれでいて悪魔の私が鬼になろうというのは前代未聞。

 

 でも・・・挑戦してみる価値はあるとい言ってくれ威吹鬼さんが師匠となってくれた。

 

 鋼ちんは響鬼さんと轟鬼さんの二人。

 

 本当に鬼の修行は・・・辛い。何度もめげそういなった。それを支えてくれたのは・・・鋼ちんだった。

 

「本当に黒歌ちゃんって・・・鋼君と仲がいいよね?」

 

「そっ・・そうかにゃ?」

 

「二人でセットか。良い組み合わせになるかもしれないね。うん・・・そうだね、」

 

 多分・・・威吹鬼師匠はこの時点で私が鋼ちんに惹かれている事を察していたんだと思う。

 

 仙術の強化は鬼になっても有効で、治癒も含め鬼達の大きな助けになっていた。

 

 私は恩をかえすために皆に仙術も積極的に教えた。もちろん鋼ちんにも。

 

 その・・・手とり足とり。

 

 それを見てみんなの視線が生温かかったのは仕方にゃいことだったとおもう。

 

 教えている時、顔がにやけてしまうのはどうも・・・止められない。

 

 そんな穏やかな日々が三年つづき、これからも続くのだと思っていた。

 

 私が鬼の力を手に入れ、鋼ちんも十六歳となり、コンビで魔化魍討伐に繰り出す事が多かった。

 

 みんなからも名コンビと呼ばれるほどの活躍ができるようになり、普通になっていたある日・・・事件は突然起こる。

 

 追手が私達の住んでいる店に襲撃をしかけてきたのだ。

 

 しかも・・・私を誘い出すために人質を確保して。

 

 私は自分をせめたにゃ・・・。重傷を負った仲間もいたんだ。

 

 皆・・・私のせいだと分かっていてもだれも責めなかった。

 

 それだけも十分だった。

 

「ごめんね・・・いままで・・・ありがとう。」

 

 お世話になった皆に黙ってでて行こうとした。

 

 でも・・・その先では。

 

「遅かったな。」

 

 鋼ちんが待っていたのだ。

 

「不思議そうな顔をしているな。いい加減お前との付き合いは長くなるんだ。それくらい分かる。」

 

「・・・どいてにゃ。」

 

「駄目だな。」

 

「お願いだからどいてにゃ!!私のせいで・・・私のせいでみんな怪我しちゃった。あの子がさらわれてしまったのも・・・。私が・・私がいなかったらこんなことには。私・・あの時助からなかったらよかった・・。」

 

 鋼ちんはそんな私の頬をはたく。

 

 そして・・その後抱きしめた。

 

「そんな事・・・言わないでくれ!!」

 

 鋼ちんも泣いていたんだ。滅多なことで泣かない鋼ちんが泣いている。それだけでも私は驚いたにゃ。

 

「俺はお前を助けて良かったと思っている。それは今でも・・・そしてこれからも変わらない。いや・・・俺が命を賭けて良かったと思えるようにしてやる!!」

 

 それは鋼ちんの言葉。

 

「俺にとってお前はもう相方なんだよ。無くてはならない大切な人なんだ!!」

 

 大切な・・・人?

 

「こんな時に言うのは可笑しいと思っている。だが・・・言わせてくれ。俺はお前に惚れている。ずっと・・・ずっと好きだった。そんな人がいなくなるなんて俺には耐えれない!!」

 

「・・・鋼ちん・・・。」

 

 はっきり言って・・・反則。

 

 こんな嬉しい言葉で私を止めてくるなんて。

 

 それを振り切れるほど私は強くないにゃ・・・。

 

「返事はあとで良い。一緒に助けにいくぞ。」

 

 ああ・・・もう。本当に卑怯にゃ。

 

 涙も止まらないし。

 

「ほう・・・見せつけてくれるねえ。少年。」

 

「はははは・・・やっぱり二人はベストな組み合わせだったよ。」

 

「幸せゲットしたな・・・俺感激!」

 

 まっ・・まさかその光景を師匠達にみられていた事には思いもしなかったにゃ。

 

 はっ・・・恥ずかしすぎる。

 

「さて・・・いきますか。」

 

 師匠達までいくのですか?あれ?他の鬼のみんなまで。

 

「俺達の仲間に手を出した事を後悔させてやるぞ。」

 

「応!!」

 

 その地域にいる鬼達全員大集合。皆・・・やる気満々でした。

 

 結果だけ言うと・・・。

 

 相手が可哀そうだったにゃ。

 

 鬼というのは悪魔にとっても人外と言えるほどのすごいパワーをもっている。

 

 それを私の仙術や気で強化した結果・・・蹂躙になった。

 

 百人の悪魔が一分で全滅って・・・どんだけなのよ。

 

 相手は誰も殺していないが・・・精神的にはもう死んでいたにゃ。

 

「こっ・・これが日本の悪魔・・・鬼の力だというのか!?」

 

 とんでもないくらいの恐怖だったはず。

 

 人質も助け、万事解決かと思った。

 

 でも・・・その時とんでもない事が起きた。

 

 そこはある邪竜が倒された土地。

 

 それは日本神話でも凄まじい知名度を誇るこの国最大にして最悪の邪竜。

 

 彼らは人質を生贄にして禁断の術・・・反魂の術を使って蘇らせようとしていたのにゃ。

 

 禁術は刺客の一人を生贄にして発動。

 

 そして、復活してしまったのにゃ。

 

 日本神話にでてくる災厄の化身・・・八又ノ大蛇を。

 

 それは私達鬼にとっても最悪の相手。魔化魍の異常発生を伴うオロチとはまた別次元の災厄にゃ。

 

 そいつの周りでは無数の魔化魍達も現れる始末。

 

 私達は必死で戦った。

 

 でも・・・それはあまりにも強く、また一人・・また一人倒れて行った。

 

 切り札として用意された鋼ちんの二本目のアームドセイバーも折れた。

 

 ヤマタノオロチは全くの無傷。

 

 立っているのは私と鋼ちんを含むごく少数。

 

「鋼ちん!!しっかりしてにゃ!!」

 

 そして鋼ちんもまた・・・重傷を負っていた。私を庇ったばかりに。

 

「何の・・・鍛えているからこれくらい・・・。」

 

 それなのに鋼ちんは立ち上がる。

 

「もういいにゃ。お願いだからもう・・・。」

 

「退けねえよ。退いたらこいつは街に向かう。鬼として・・・見過ごせねえ。」

 

「でも・・・。」

 

 鋼ちんの言うとおりあいつは・・・街に向かおうとしている。

 

 こいつが街に向かったらどれだけの被害になるのか想像もできない。

 

「俺はそのために鬼になった。心もそのためにある。今・・その力を出さないで何のための強さだ!!」

 

 鋼ちんは立ち上がる。

 

 そんな鋼ちんに・・・無情にもヤマタノオロチは襲いかかってくる。

 

 その一撃に鋼ちんが跳ね飛ばされ・・・そのまま動かなくなる。

 

「はっ・・・がね・・ちん?」

 

 私は彼を必死で揺する。でも・・・彼は全く動かない。

 

「おきてにゃ・・・お願いだから起きて・・。」

 

 どれだけ揺すっても全然起きない。ピクリとも・・・反応しない。

 

「ねえ・・・わたしからの返事・・・まだなんだよ?それをあんたはまだ聞いていないよ?」

 

 認めたくない。

 

 でも・・・現実はあまりにも非情で・・・。

 

「いやにゃ・・・。鋼ちん・・・いやにゃ・・・・。」

 

 それが涙として溢れだすとともにヤマタノオロチの巨大な口が私と鋼ちんを飲み込もうとする。

 

「黒歌ちゃん!!」

 

「鋼ちん・・・目をさましてよおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 いやにゃ・・・。

 

 鋼ちんが死ぬなんて・・・絶対に。

 

―――――導くが我の役目。

 

 だが、そのオロチの牙を巨大な鏡の様な物が阻んだ。

 

「あのお方の命におり、あなた達を守護します。」

 

 私の前には小さな鴉がいた。しかし・・・ただの鴉じゃない。

 

 足が三本ある。

 

「そして・・・うけとりなさい。あなたの先祖たちが作った鬼武者達の秘宝を。」

 

 鴉の身体から光が発せられ、オロチが封印された祠の傍にあった社にあたる。

 

 そこから出てきたのは・・・蒼い篭手であった。

 

 それが鋼ちんの左腕に装着される。

 

「これは鬼の篭手。遠い昔異界・・・幻界からの侵略者と戦ったあなた達とは違う鬼の一族が使っていた物。」

 

 聞いた事があるにゃ。

 

 幻界からの侵略者と戦う鬼と呼ばれし一族。その切り札である鬼の篭手。

 

 それは倒した物の魂を吸い取り、糧とする篭手。そしてそれをつけた人間は人外の鬼武者となる。

 

 あれ?私がくすねていた悪魔の駒が・・。

 

「この方はその鬼武者達の直系の末裔。由緒正しき鬼の篭手の後継者です。」

 

悪魔の駒が篭手に吸収された?それと共に鋼ちんの身体から鼓動が蘇る。

 

「新しい日本神話の始まりです。我が契約者・・・黒歌様。」

 

 えっと・・・あたしいつの間にかこんなすごい神鳥と契約したのかにゃ?

 

 それよりも篭手が付いた鋼ちんが・・・起きあがった。

 

「・・・・鋼ちん?」

 

 彼は無言で折れたアームドセイバーを手にする。

 

 それを手にした瞬間・・・周囲から無数のディスクアニマル達が集まっていく。

 

 それが鎧となりつぎつぎと鋼ちんの身体を覆っていく。

 

 これは装甲化?いや・・・違う。

 

 原理は似ているけど、そんなレベルじゃない。

 

 鬼に変身しながら鋼ちんは新しい姿になる。

 

 全身から蒼いオーラを噴き出す鬼の姿へと。

 

「これが・・・現代の鬼武者なのですね。」

 

 鋼ちんは伝説の鬼武者となった。

 

 そこからはもう・・・圧倒的だった。

 

 素手で襲いかかってきたヤマタノオロチを殴りとばしたのが始まりだった。山脈のように厖大な巨体を誇るヤマタノオロチの巨体が浮き、ふっ飛ばされ、そのまま倒れる光景は中々見られる物じゃない。

 

 反撃も受け止め、逆にその身体を掴み投げ飛ばす。

 

 途方もない巨体を誇るヤマタノオロチを軽々と投げ飛ばす光景もまた・・・現実とは思えないすごさにゃ。

 

 ヤマタノオロチも初めて恐れを見せた。とるに足らないほどの小さいはずなのにあまりに異質で強大な力を持つ怪物に。

 

 だが・・・逃げる選択肢はもうあいつにはのこされていなったにゃ。

 

 逃がすつもりなど、鋼ちんにはまったくなかったし。

 

 小さな鬼神と強大な邪竜。つぎつぎと攻撃をしかけても鋼ちんは真正面から受け止め、そして拳で殴り返した。

 

 どんな攻撃も通じない。圧倒したすべてが通じない悪夢をあの邪竜は味わっていたのだ。

 

 もちろん私を初めとする師匠達一同は固まっていた。

 

 目の前の光景を現実と受け止めていいのか測りかねているのだ。

 

 それこそ・・・神話で聞くような現実離れした光景だった。

 

 止めの一撃が放たれ、それを受けたヤマタノオロチはぐったりとその山の様な巨体を横たえる。

 

 そして、そいつに向けて折れたアームドセイバーを突き立てる。

 

 それと共にあの巨体が消滅。鬼の篭手に吸収されていく。

 

「・・・力を吸収したというのか?それにあの剣は・・・・。」

 

 折れたアームドセイバーも元に・・いや、其違う剣へと変わっていた。

 

 刀身が前の二倍近くになり、そして赤から緑へと変わっていたのだ。

 

「荒ぶる・・・神。」

 

 誰かがその名を言う。それは・・・かつてヤマタノオロチを倒した神の事だ。

 

 今起こっているのはその再現だった。

 

 それを見届けた後・・・変身を解いた鋼ちんは気絶。

 

 そのまま一週間も眠り続けたにゃ・・・。

 

 

 

「んん・・・ああ・・・あれ?」

 

 そして、一週間後。何事もなく彼は目をさましたにゃ。

 

「よく寝たぜ。うん・・・・爽やかな朝だ。今日も生きている!」

 

「今日も生きているじゃにゃい!!」

 

 本当に呑気なことを言ったので私は思いっきりその頭に拳骨を喰らわせた。

 

「おお・・・・おはよう。って・・・どうした?オロチを倒してその後気を失ったのは分かるが・・・。」

 

「・・・その前に何があったかよくおもいだしなさいにゃ・・・もう。」

 

 本当にいつも通りで泣けてくる。

 

「一度死んだんだよ。あんた・・・・・・。」

 

 どれだけ深い絶望を味わったというのか少しは察してほしい。

 

 私は鋼ちんに抱きついて・・・その胸をポカポカと叩く。

 

「その・・・すまない。」

 

 そんな態度に逆に腹がたって・・・やらかしてしまった。

 

「すまないじゃない!責任とって!」

 

「責任?」

 

「こんだけあたしを虜にした責任にゃ!!一生をかけて償え!!」

 

「とっ・・虜?えっと・・・償うっておまえ何を言って・・・。」

 

「鈍感!!」

 

 私はそのまま口づけをかわす。

 

「はっ・・・はい!?」

 

「これでいいかにゃ?私の気持ち・・・伝わった?」

 

「あっ・・・ああ・・・その・・・。」

 

 顔を真っ赤にさせて混乱の極みにいる鋼ちん。

 

「あたしは鋼ちんの事が好き。いや・・・愛しているにゃ!!だから・・・あたしを嫁にしなさい!!あんたが無茶しないようにあたしが一緒に入れるように!!」

 

「・・・・・・・・・・・・。」

 

 さらに固まった様子。

 

 今気付いたけど・・・鋼ちんの告白の返事が逆プロポーズって私もすごいことをしたような・・・。

 

「わっ・・・わかった・・・。むしろ光栄だ。段階とかいろいろとすっぽかしていると思うけどすごくうれしい。遠慮なく嫁にもらおう。」

 

「約束にゃ。大好き。」

 

 そうやって再び口づけ。

 

『・・・・・・・・・・・・。』

 

 そしてそんな夫婦漫才を。

 

 騒ぎを聞いてかけつけだのだろう。師匠達を初めとする猛一同と・・。

 

「孫・・・たのしみにしていますね。」

 

「あっぱれだ。わしの二代目の誕生とだけじゃく、嫁ができるとは。いや・・・今日は酒がうまそうだ!!」

 

「今年は豊作になりそうですね。」

 

 鋼ちんのお義母さまとおじさま、おばさまがしっかりとみとどけていたにゃ・・。

 

 おかげで家族一同へのあいさつの手間が省けたのは唯一の救いだった。

 

 

 

SIDE イッセ―

 

 色々な意味で想像の遥か斜め上を行く経緯に俺達は唖然としたぜ。

 

「あっ・・・あなた達の背後にあの方たちまでいるというの!?」

 

 部長はある事に気付いた様子で。

 

「義理の親子関係にゃ。血のつながりはないけど育ての親にゃ。」

 

「・・・さらに無茶苦茶よ。」

 

 しかし・・・単独で邪竜を倒した?

 

「一体どんな力を発揮しているというのだ?歴戦の勇者や戦神でもできるのか分からないレベルだぞ。生前の私と互角の力はあるということか?」

 

 ドライクも驚いているから、よっぽどなんだろうな。

 

「日本神話を塗り替えたとみんな驚いていたにゃ。これは極秘事項だからみんな知らないけど知ったら・・・本当の意味で力を解放したら魔王級何処じゃないのがばれちゃうし。まだ本人はその力を制御するための修行を続けているから完全じゃないと思うけど。」

 

 極秘の事を簡単に言わないでくださいよ。でも・・・それが本当なら。

 

「それはそうよ!!それこそ・・・。」

 

 部長が何を言いたいのかわかる。

 

 話が本当なら多分・・・鋼兄は神の領域へと足を踏み入れている。

 

 己が目標としていた領域。

 

 それも戦神や鬼神と言われるカテゴリーにだ。

 

 まさに荒ぶる神の二代目か・・・何時の間にそんな怪物になったんだよ。

 

 全く・・・俺たちより先の領域にいてくれるなんて。

 

 目標になってくれるなんて嬉しすぎるぜ。

 

「それはそうとして・・・逆プロポーズねえ。」

 

「姉様・・・すごい積極的です。これが肉食・・・。」

 

「いっ・・・いやね。勢いは。」

 

 それで告白は鋼兄からはわかったけど、返事が逆プロポーズって・・・爆発しちまえ!!

 

 どんだけなんだ。どんだけ好きあっているんだあんたら!?

 

 「姉様は今・・・幸せですか?」

 

 そんな黒歌に小猫ちゃんは聞く。

 

「うん・・・とっても幸せにゃ。まだまだ色々と事件も多いし、大変だけど・・・なんでもどんと来いといえるくらいにすっごくしあわせにゃ!!」

 

 それは心からの言葉なんだと思う。

 

 アーシアもおそらく彼女の喜びの波動を感じているみたいだし。

 

「今ならはっきりと思える。あの時助けてもらって良かったって。必死であがいてきて良かったって。だからこれからもがんばるにゃ。私もあの領域にたどりつかないといけないし。」

 

 黒歌までそこを目指しているの?

 

「嫁としては当然。足を引っ張るつもりもないし、むしろ助けるくらいの何かは必要。そう言った意味でこの鏡の力はありがたいにゃ。」

 

 召喚するのは一枚の鏡である。

 

「仙術と相性抜群。風水の要素もあるから色々とまだ研究しにゃいと。」

 

「すごい・・・私もまけていられないわ。」

 

「新しい神話はもう始まっているのね。」

 

 朱乃さんは何故か遠い目をしています。

 

「・・・・・・・。」

 

 そして部長?

 

 なんか様子がおかしい。なんか憂いのある表情を見せている。

 

「?」

 

 アーシアもそれに気付いたようだ。どうもアギトになってから人の心の機敏が肌のように感じてしまう。

 

 何か悩みを抱えているのか?

 

「おーい。今帰ったぞ!!」

 

 そんなタイミングで・・・鋼兄が帰ってきた。

 

 いや・・・あんたも相当な修羅場をくぐり抜けてきたねえ。

 

「んんん?なんかみんなの反応が可笑しいぞ?黒歌・・・何をした?」

 

「何って・・・女子同士で鋼ちんとの馴れ初めを・・・。」

 

「・・・そっ・・そうか////。本当に女子はそう言う話が好きだな。」

 

 顔を赤らめる鋼兄。ああ・・・照れくさいのが良く分かる。

 

―――――わしはこんな純情な奴に倒されたというのか。

 

「んん?」

 

「おっ・・・そうだ。クレア殿に礼を言わないとな。ありがとう。」

 

 その言葉に呼応するようにクレアがでてきた。

 

「その様子だと・・・まさかできたというの?私が言った仮説が?」

 

「ああ・・・篭手に封印されていたドライグ殿もできた。ならこっちに封印されているこいつもできて可笑しくないと思ったが大成功だった。みんな紹介するな。でて来い。ヤマタ。」

 

『・・・・・・はい?』

 

 鋼兄の肩の上に・・・頭が八つ、尾も八つある奇妙なデフォルメ化されたヘビが現れる。

 

「・・・話にあった邪竜?」

 

「まさか赤龍帝までいるのは知らなった。ワシもこんな姿だが・・・よろしく頼む。」

 

 まっ・・・まじですか。

 

 日本神話であまりにも有名すぎる存在と鋼兄・・・契約してしまったのか!?

 

 同じくおどいたのだろう。ドライクは小さな翼で空を飛び、ヤマタの方へと向かう。

 

「あっ・・・ああ。だがやけにさっぱりしているな。破壊衝動や自滅願望は消えているのか?」

 

「・・・清めの音の力だそうだ。わしの魂を清めるのには驚いた。」

 

「水害などの災害の化身であるお前がまともになるのに想像もしなかったぞ。」

 

 ドライクとヤマタが話しこんでいるみたいだし。

 

「うまい酒が飲むのが今の生きがいだ。この世界の恵みの結晶と言える酒は素晴らしい。聞けば世界中には色々な酒があると聞く。まずはそれを飲んでみたい。」

 

「酒が好きなのは変わっていないのか。だがおいしいのか?」

 

「癖になるぞ。うまい酒をつくるために気象を操る事もいとわぬ。田畑を近くもらおうと思っているくらいだ。自分でつくってみようかと。」

 

 えっと・・・何か少し変なドラゴンだぞ?

 

「酒ってうまいのか?」

 

「・・・・・・・。」

 

 えっと・・・そこにオ―フィスちゃんが加わるのは勘弁してほしい。

 

「みっ・・未成年はお酒禁止です。」

 

 幼女なんて問題外だ。

 

 キリエさんが丁寧に説明しているし。

 

 そしてオ―フィスをみたヤマタは固まっているし。

 

 固まったままドライグを見て・・・。

 

「黙っておいてやれ。それが彼女の望みだ。」

 

「・・・驚かせる立場なのに・・・逆にワシが驚かされた。」

 

 驚くヤマタにオ―フィスちゃんが興味深そうに近づいてくる。

 

「一つ聞きたい。契約はどんな感じだった?ドライグには聞いた。」

 

「・・・ワシと真正面で戦い圧倒して倒した男だ。力を振るう契約相手としてこれ以上の不足はない。むしろ誇らしいぞ。」

 

 本当にヤマタノオロチを真正面から撃破したのか。

 

 鋼兄・・・すげえな。

 

「そうか・・・。」

 

 オ―フィスちゃんは何やら考え込み・・・。カードを取り出す。

 

「決めた。」

 

 そして、渡の所へ行く。

 

「渡・・・契約を結ぼう。」

 

「契約?なんだいそれ・・・?」

 

「いいから。受け取ってほしい。」

 

 オ―フィスちゃんが差し出したカードを受けとった瞬間・・・カードが代わる。

 

 それは自らの体を喰らうヘビをバックにしたオ―フィスちゃんの姿だ。

 

「契約成立。我・・・渡と共にある。」

 

「あっ・・・ありがとう。このカード大切にするね。タツロット。収納しておいて。」

 

「わかりました!!」

 

『・・・・・・・・・・。』

 

 その光景にドライグとヤマタは何故か驚き固まっているよ。

 

 クレアまで驚いているけど?

 

「おっ、おい。クレア。あの時渡したカードってもしかしなくても契約のカードなのか?」

 

「えっ・・・ええ。でも契約したい相手がいたなんてね。お姉さん・・・驚いちゃった。」

 

「おまえはとんでもないことを仲介してしまったという自覚はあるのか?!前代未聞すぎるぞ!!オ―フィスが特定の個人と契約するなんてな!!」

 

「はっ・・はははは・・・・これは不味いわ。あの渡って言う人も自覚ないけどあの人・・・無限の力を得たも同然ね。」

 

「・・・渡殿を偉く気に言っていたのは知っていたが、躊躇いもなく契約するか。何をしたらそこまで懐くことになる?」

 

 無限ってなんです?もしかして俺達渡のとんでもないパワーアップの現場にたちあったんじゃないのか?

 

「・・・世界の理がかわるな・・・。私も復活した甲斐がある。見届ける価値があるそうで愉快愉快。」

 

 ヤマタさん。意外とたのしんでいますね。

 

「・・・もうどうにでもなって。なんで邪竜まで・・・。」

 

 部長。ごめんなさい。

 

 なんかどんどんと変なのが集まってきます。

 

 

 

 

SIDE 鋼鬼。

 

 思えば・・・黒歌と出会ってから四年。

 

 色々とありすぎたな。

 

 俺は布団の上で寝転がりながら振り返っていた。

 

 思えば・・・姉さん女房みたいなやつだったな。

 

 一緒に修行し、互いに励まし合い、互いに助け合いながらずっと一緒だった。

 

 情けないが・・・何時そうなったのかは分からない。

 

 だが・・・いつの間にか好きになっていた。

 

 多くの問題があった。でも・・・一つ一つ解決していっている。

 

――――主も積み重ねていくタイプということか?

 

「積み重ねは大事だ。まだ鬼武者化の力の制御は完全じゃない。発動時間の強化のための修行をあの方より受け・・・まだ実践している途中だし。」

 

 俺はそんなに才能がある方ではなかった。

 

 だが、鬼としての力はこれまでの積み重ねを通して、確実な力として自信も持てるようになっていたのだ。

 

 だが、そこにあの鬼の篭手の力だ。

 

「暴発したら危険だろうが。まだ真・鬼武者化は出来ていないし、アームド・クサナギも使いこなせていない。」

 

――――ワシの力と鬼武者の力。二つが合わさって誕生したあの剣か。二つの鬼の力の結晶と言える剣。ふふはははは・・・むしろ簡単に使いこなされたら困る。一応ワシの血肉と骨で作られ、そこにワシの魂が封じられているのだぞ?それなりに苦労してもらわんと。

 

「言ってくれる。それでこそ修行しがいがある。」

 

 一人でいてもどうも退屈しない。面白い奴と契約したものだ。

 

「鋼ちんおきているかにゃ?」

 

 そこに黒歌が部屋に入ってくる。来ているのは寝巻代わりの黒い着物だ。

 

 あちこちはだけているぞ・・。

 

 正直・・・スタイルは抜群すぎるくらいにいい。

 

 正直眼の毒・・・本来なら眼福といいたいのだが。

 

――――ふふふ・・・本当に初心なやつだ。

 

 俺の中でヤマタがからかってくる。

 

「隣・・いいかにゃ?」

 

「ああ・・・。」

 

 俺達は二人でまったりとする。

 

「ねえ・・・とりあえず・・ひと段落ついたにゃね。」

 

「そうだな。」

 

 一年間の世界放浪の旅を経て小猫ちゃんを発見。

 

 その際に多くの猛者たちとも知り合えた。

 

 はぐれ悪魔の指定も最近になってようやく解除した。

 

 やっと・・・穏やかに暮らせる。

 

 訳ではないか。まだまだ災難は続きそうだ。

 

「約束・・覚えているかにゃ?」

 

 俺は黒歌とその・・約束をしていた。

 

 妹さんの件とはぐれ悪魔としての件が解決したら・・・その・・。

 

「次の発情期が来たら・・・子づくりしようというものだったな。」

 

 もう夫婦である。子供を作っても問題はない。

 

 レアな種族である黒歌の種の保存もある。それに何より・・母上達が孫の姿が見たいとせがむのだ。

 

 まだ・・・俺の弱点は克服できていないの故に困ったものだが。

 

「覚えていて結構・・・ん。」

 

 そんな俺に向けて黒歌は突然のキス。それも・・ディープな奴をやってくる。

 

「ちょっ・・お・・お前いきなり何を・・・って・・。」

 

 俺はあの振りの時に気付くべきだった。

 

「まっ・・まさかお前・・・・もう来たのか?発情期。」

 

 色っぽく頬を赤く染めた黒歌は頷きながら、俺を押し倒す。

 

 その眼は・・・。

 

「もう・・がまんできない!」

 

 完全に獲物を狙う肉食獣の眼。

 

 そうか獲物は俺なのか。

 

――――喰われる立場になるか。面白い物だ。

 

 ヤマタは俺の中で笑っている始末だ。頼むから黙っていてくれ。

 

 着物を脱いで裸になる黒歌。

 

 当然鼻血はでるが・・・。

 

 あれ?垂れる程度ですんでいるぞ?

 

「ふふふ・・・・弱点克服成功にゃ。私限定だけど一緒に旅する間に慣れさせておいて正解だったにゃ。むしろ限定的なのも・・・・独占できるという意味では好都合!!」

 

「・・・・・・・。」

 

 おいおい。俺の弱点もそう言う形で攻略済みですかい!!お色気みたいなことをなんども旅している間にやっていたのはそういうことか!!

 

 旅の間、俺がどれだけ鼻から血を噴き出したと思っている?

 

 確実に一トン以上は噴き出しているぞ!!

 

 まったく・・・。

 

 俺は黒歌を抱き寄せる。

 

 負けっぱなしは性に合わない。

 

「そうなったら遠慮はしないぞ。俺だって男なのだからな。」

 

「にゅふふふふ・・・大歓迎にゃ。」

 

 艶のある笑みから切なそうな顔をしながら黒歌は止めの一言をいう。

 

「・・・・抱いて。あんたの・・・子供が欲しい。」

 

 理性をふっ飛ばすのに十分だった。

 

 こうして・・・俺達は夫婦としての初夜を迎えることとなる。

 

 子づくりという物を初めて体験することとなったのだった。

 

 

 



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フェニックスさんを歓迎します。

 時間かかりましたが更新です。

 タイトル通りにある連中がやってきた例の彼を歓迎します。

 素晴らしいおもてなしになると思います。


SIDE イッセ―

 

 俺は何故かすぐに目を覚ます。

 

 何だ・・・すごく胸やけがするぞ?濃厚な甘さを感じている。

 

 どこかで誰かが甘いひと時を過ごしているのか!?

 

 そうなのか?なんか呪ってやりたい気分になる。

 

 はあ・・・アギトの力ってこういう時は不便すぎる。

 

 下手に感性が鋭いからねえ。

 

 んん?誰かの気配って・・・

 

「イッセ―。お願い。」

 

 起きればいきなり部長に押し倒されていましたよ。

 

「私を抱いて・・・。」

 

「えっと・・・・・。」

 

 なんかすごく懇願してくる部長。

 

 必至だ、

 

 でも・・・・。

 

「できません。」

 

「私に魅力が無いって言うの?」

 

 部長の言葉に俺は首を横に振るう。

 

「今・・・部長とエッチしたら後悔するからです。俺も・・・そして部長も。」

 

「イッセ―?」

 

「よかったら話してください。後悔するだけは絶対に嫌です。」

 

 後悔する事だけはもうしたくない。

 

 あの時のようにもう・・・後悔だけはいやだ。

 

 だが、その説明をする前にそいつは現れる。

 

「やっと見つけたぜ?俺のフィアンセ。」

 

 それは結構チャらい男だった。

 

 悪魔である事は気配でわかる。

 

「フィアンセ?」

 

 そうして俺は二人の言い合いから事情を知っていく。

 

 部長に婚約者がいる事。其れが目の前にいる男。

 

 だが、部長はそれをいやがっている。

 

 それが分かれば十分。

 

「いい加減にしやがれ!!」

 

 とにかく一発殴らせてもらいました。

 

「てっ・・てめえ・・・。」

 

 殴りとばされ怒りに震えるライザ―。

 

「いい度胸だ。だったらフェニックスの力を見せてやるよ。」

 

 そう言って・・・背中ら炎の翼を出し・・・天井と右隣りの壁を破壊って。

 

「おい・・・よりによって俺の部屋の天井を破壊するか。」

 

 別の意味で俺は戦慄していた。

 

 俺の部屋の真上には・・・。

 

「へっ・・今更怖気づいたか?上級悪魔に喧嘩を売ったのがどういうことかその身であじわ・・・・へっ?」

 

 ああ・・・ものすごく怒っているよ。

 

 怒りに震える存在が降りてくる。

 

「・・・・・何のつもりだ?」

 

「へっ?えっ?」

 

 俺の部屋の真上・・・鋼兄の部屋なんだよ。

 

「・・・・いい度胸にゃ・・・・。」

 

 あっ・・あれ?黒歌さんまで一緒だったんですか?

 

「えっと・・・もしかして・・・。」

 

 二人ともめちゃくちゃ怒っている。・・・濃厚な汗とそれ以外の香りって・・・。

 

 そうですか。お楽しみの最中でしたか。

 

 俺が感じた濃厚な甘い気配って間違いなくこの二人だったのね。

 

 胸やけやむかつきを感じるくらい甘かったからなあ。

 

 それをあいつが邪魔しちゃったというわけかい。

 

 爆発しやがれといいたいが、言ったら馬に蹴られるどころか鬼の拳を同時に喰らいそうだから遠慮するぜ!!

 

「おっ・・・おい。」

 

 ああ・・・この鬼夫婦の怒りを買っちまったか。

 

『とにかく一発殴らせろ(にゃ)!!』

 

「へぶし!?」

 

 凄まじい踏み込みと共に夫婦が同時に拳を繰り出して吹っ飛ばされるライザー。

 

 そして倒れた奴を二人が見下ろす。

 

「貴様に鬼伝統の血祭りという物を教えてやる。その身で存分に味わえ。」

 

「・・・・・生きていることを後悔さてやるにゃ!」

 

「がっ・・ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁ!!!?」

 

 そして・・・ライザ―をフルぼっこに殴っているよ。

 

 血が・・・血が跳びちっとる。

 

 まさに血祭り。俺・・・初めて見たよ。

 

「やっ・・やめろおおおおおおおおぉぉぉぐがああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「えっと・・・イッセ―。」

 

 部長がその光景に表情をひきつらせているのは分かります。

 

「ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「部長は悪くありません。悪いのはあいつ。完全な自業自得です。」

 

 一通り殴りまくった夫婦の息は荒い。まだ眼は殺気だっているし・・・

 

「まだだ・・・まだ殴り足りん。」

 

「・・・二度死んでもらうにゃ・・。」

 

 怖ぇぇぇぇよ。2人とも。

 

「ぐっ・・・ううっ・・・おおお・・・なっ・・・何の・・・不死身のフェニックスはこんな程度では。」

 

はいずりながらその場から逃げようするライザ―。

 

そうか・・・あいつフェニックスの名前の通り不死身か、

 

 普通なら厄介なこと・・・この上ないわな。

 

 でもそんなに大した不死身っぷりじゃない気がする。

 

「へえ・・・だったら苛めがいがありそうだね。」

 

 その頭を掴み上げるのは・・・右隣の部屋にいるハルであった。

 

「よくも俺の工房を破壊してくれたね。これからじっくりと研究しようとしていたのに。」

 

 ああ・・・・こいつの部屋にも被害がでていたのね。

 

 無茶苦茶怒っている。

 

「ギャアアアアア割れる割れる割れる割れる割れる割れる割れる割れる!!!?」

 

 うわ・・・ライザ―の身体を片手でつかみ上げているよ。アイアンクロ―されているライザ―の頭が・・・ミシミシときしみを上げるような音が聞こえるし。

 

「不死身のフェニックスか。そうだね。ちょうどいい。どれだけの耐久性を持つのか実験させてもらおうか。」

 

「止めろ・・いややめてくださいく!!・・・なっ・・中身がでるやめていややめてくださああああああぁぁぁぁぁぁい!!」

 

『うわ・・・・。』

 

 みんな引いているよ。

 

 あの夫婦ですら怒りを引っ込めているし。

 

 鋼兄とは違う怖さだ。何か・・・・黒い。

 

「はあ・・・ハル君を激怒させてしまったのね。運がないわ。」

 

 レイちゃんが寝巻姿で登場。

 

 うん・・・結構可愛いパジャマを着るのね。

 

「えっと・・・もしかして・・・ハルって・・・。」

 

「察しの通りよ。普段はすごく穏やかでどちらかというとMなのよ。でもね・・・怒らせると超絶ドSになるの。あんな風に・・・。」

 

「ふふふふふ・・・再生してくれるからいい実験になるよ。ほらもっとしっかり声をあげたらどうかな?」

 

「ぎゃああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 良い顔して、ライザ―の悲鳴を楽しんでいるよ。

 

 その笑みが黒い・・・黒過ぎて怖ぇぇぇぇぇ・・。

 

 身内に2人目のドSがいたよ。

 

『うわ・・・・・・。』

 

「朱乃といい勝負だわ。まさか究極のドSがもう一人いるなんて・・・。」

 

 この二人・・・姉弟じゃねえのか?

 

 そんな疑問を覚えたぜ。

 

 それはそれで・・・にあっている。

 

でも色々な意味で嫌だよ!!怖すぎるわ!!

 

 それよりもハルってあんなに怪力なのか?

 

「ハル君の右腕はすごいのよ。ウィザードタイプのテクニックとスピードタイプの二つの二つを兼ねているけど・・右腕だけは凄まじいくらいのパワータイプ。変身しない状態なのに握力だけで確か・・二トン軽く超えていたほどの。」

 

『・・・・・・・・・・。』

 

 二トン越えの握力?マジですか。

 

「変身しなくても鉄の塊が発砲スチロールみたいに粉々になった。おまけにある方法を使うとさらに強化されるわ。指輪をしているからパンチは出来ない。その代わりとしてちょうどいいとハル君は言っていたけど。」

 

 ちょうど良いどころか文字通り必殺技じゃねえか!!

 

 じゃあライザ―はその二トン越えの握力でアイアンクロ―をかまされているというわけで・・・。

 

「やっ・・止めてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ、ふっ・・不死身でも死ねるぅぅぅぅぅ・・!!」

 

「それだけのでたらめな握力があれば、ライザ―の頭なんて簡単に壊せるわね。それでもあえて壊さないで一番の激痛を感じ、悲鳴をあげることしかできないくらいの絶妙な力加減で握り続けている。体ではなく、相手の心をへし折るように仕向けているあたり。ますます朱乃と似ているわ。」

 

 部長・・・的確な解説。

 

 さすがドSの朱乃さんと長い付き合いだけはあるわ。

 

 じゃあ・・・相手に最大の苦痛を与えるようにあいつはわざと手加減をしているのか?

 

 うわ・・・怖ええええぇぇぇぇぇ。

 

 そして・・えげつねぇぇぇぇぇぇ・・・。

 

「死にはしないけど・・・脳に一度損傷を折ったら記憶は失うかもねえ。映画でも不死身のミュータントはそうやって記憶をうしなったし。試してみる?」

 

 すっげえいい顔であんた恐ろしい事をいってんじゃねえよ!!

 

「ぎゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

 なんか同情したくなったよ。

 

「とにかく一遍死んでみようか?」

 

「やめろおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉやめてくれえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

あいつ・・希望を大切にしているのはわかるよ。

 

「ひいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 でもさ・・・だからって相手に絶望を与えていいのか話は別だって!!

 

「ひっ・・ひひ・・・ひ・・・・・。」

 

 悲鳴がヤバい。

 

 完全にライザ―さんの心が折れているじゃないですか!!

 

「いつか・・・いじめられたいわ。」

 

 って、頬を染めながらレイちゃんは何をいっているの?

 

 もしかして・・その・・・Mなんですか?

 

「・・・似合いのカップルになりそう。」

 

 部長・・俺もそう思います。

 

「双方矛を収め・・・・・・・・。」

 

 そこに魔法陣を返してメイドさんが登場。

 

 銀髪のとっても綺麗な人だ。

 

「グレイフィア・・・。」

 

 だが、その人も今の光景を見て絶句している。

 

 おそらくは想定していたのは部長とライザ―が対立する光景。

 

 でも今目の前に広がっているのはアイアンクロ―を受けながら末期の悲鳴を上げるライザ―の姿である。

 

「あ・・・ああ・・・もう・・だめ・・・ひっ・・・ひひ・・・ひっ!?・・・・・」

 

 そして・・・しばらくしてからライザ―の口から声がでなくなり、力尽きたようにぐったりと動かなくなる。

 

「・・・・・・。」

 

 かすかに痙攣している辺り・・まだ生きてはいるのか?

 

「何だ・・・もう堕ちたのか。根性が足りない。不死身でも根性は大切なのに・・。」

 

 ここで根性いうな!!

 

 むしろ、お前のあの攻めに耐えられる根性をどうやったら身につけられるのかこっちが聞きたいわ!!

 

「えっと・・・これってどういう状況なのですか?」

 

「グレイフィア・・・ごめんなさい。私も何と言えばいいのか。」

 

 部長。混乱するのはわかります。

 

 おれだってあまりの衝撃にツッコミをしてもきりがなくて疲れたよ。

 

「・・・とにかく止めるか。オメガ、ネガ、マガ手伝って.」

 

 グレイフィアさんが何かの頭を模したものと懐から取り出し、そこに三枚のカードを入れて・・・て!?

 

 それってもしかして召喚機ですか?

 

――――――ADVent!!

 

『承知!!』

 

 グレイフィアの言葉に人型の何かが三体、背後の魔方陣より姿を現す。

 

「・・・ゼ―ルズ達。」

 

 あれ?部長はあいつらの事を知っているの?

 

 色はそれぞれ藍、白、緑の三色。

 

 こいつらもしかして・・・クレアと同じ?

 

 そいつらはハルの元にあるいていき、とても丁寧に頭を下げる。・

 

「すまぬが離してもらえないか?多分・・・この方が迷惑をかけたのだと思う。私達が代わりに謝る故に・・・。」

 

「はあ・・・しかたないねえ。そう言うのには弱いんだ。」

 

 藍色の奴の言葉に気がぬけたのだろう。ライザ―を離すハル。

 

「・・・・・・・。」

 

 ライザ―・・・口から泡を吹き、白目を向いて完全に気絶している。

 

「・・・・フェニックスの者を握力だけで倒すなんて・・・。」

 

 グレイフィアさんが戦慄しているよ。

 

 俺たちだってそうだ。ハル。お前は朱乃さんと並ぶ究極のドSだったんだな。

 

 握力一つでライザ―を倒す辺り・・・えげつなさは超えているのか?

 

 そのドSな技・・・たのむから俺達は絶対に向けないくれ!!

 

 何かに目覚めそうだ。目覚めたくない何かがな!!

 

「仕方ない。当て身で起こす。おら!」

 

 そんなライザ―を手加減なしの当て身で起こす鋼兄・・・。

 

「がばろ!?」

 

 うわ・・・何かすごく鈍い音が・・・。

 

 中身が出そうな音だったぞ?

 

「なっ・・・中身が出るかと思った。」

 

 やっぱりそうなの?

 

 そんな感じでライザ―が復活。

 

「てっ・・てめえら・・・。」

 

「何か文句あるか?」

 

「まだ反省がたりにゃいのか?」

 

「もう一発いっとく?」

 

「ひっ・・・ひいいいいいいいいぃぃぃ!?」

 

 くってかかろうとする前に・・・怒り心頭の鋼兄と黒歌・・そして右手を鳴らすハルの睨みに押し黙る。

 

 特にハルに対してはもう、怯えしかねえ。

 

「・・・はあ。サーゼクス様からの伝言です。レ―ディングゲームで決着をつけろと。」

 

「ゲームで?でも私・・・まだ眷族が・・・。」

 

「へっ・・だったら四人まで追加で入れて来い。こっちは最近絶好調なのでな!!それくらいなんでもないぜ!!」

 

 こいつ・・・すぐに復活しやがったし。

 

それにしても相当な自信を持っているな。

 

 このゲームが得意なのか?

 

「ほう・・・だったら俺は参加だな。戦車代わりにはなるだろう。黒歌が持っていた駒も確か戦車だったからちょうどいい。一度経験してたかった。」

 

 ゲームで決着と聞いて・・鋼兄参戦ですか!?

 

「へっ?まじで?」

 

 ライザ―が表情をひきつらせているし。

 

「当然俺も参加するよ。僧侶の変わりくらいは務まるよ。ふふふふ・・・。安心して変身はしないから。いいよね?今更いやというなら・・・。これの総督殺しバージョンをやってあげようか?」

 

 ハルまで・・・。って言うか・・・総督殺しってなんだよ!?

 

「ちょっ・・・・まって・・・・いっ・・・いやどうぞ。参加してください。だからアイアンクロ―はもうやめてくれたのみますからおねがいしますからおねがいしますから・・・。」

 

『・・・・・・・・。』

 

 ライザ―の心の傷は深そうだ。

 

「だったら俺も参加させてもらうぜ?兵士でな。」

 

 いつの間にかネロまで・・・。

 

「面倒だけど・・・放置はできないか。鎧は使わないけどそれでよかったら。もちろん騎士で。全く・・・すごい絶叫でたたき起こされちゃったよ。」

 

 サイガまでくるか。

 

 まあ・・・あいつの悲鳴はすごかった。近所迷惑になっていないか心配するぜ。

 

「今回は見学といいたいけど、同じキングとして戦術の指南くらいはしようかな。」

 

 渡が最期か。

 

「のぞき見は感心しませんね。」

 

 グレイフィアさんも呆れているよ。

 

「勝手に家でどんぱちやらされるあんたたらにはいわれたくない。」

 

「それもそうですね。しかし・・・・ライザ―。本当にいいのですか?」

 

 ネロの言葉に納得しつつもグレイフィアさんはもう一度確認をライザ―に取る。

 

 俺もそう思う。

 

 本当にいいのか?こいつらを参加させても・・・。

 

「へっ・・・・みんなやってやるぜ。覚悟しな。こっちには切り札があるんだからな!!」

 

「楽しみだよ。ゲームでまたあれをやってあげるから楽しみにしてね。」

 

 ハルが微笑むとライザ―の野郎がまた顔色を変える。

 

「ひっ・・あっ・・あれだけはかんべんしてくれえええええぇぇぇえ!!」

 

 そう言ってライザ―が消えていく。帰っちゃったよ。

 

 知らないぞ。こいつら変身しなくても・・・化け物だぞ?

 

 さすがにハルのあれは予想外だったけどだ。

 

 そんな連中相手にどんな切り札があるというのだ?

 

「はあ・・・でもある意味それでいいのかもしれませんね。」

 

 少し笑みを浮かべるグレイフィアさん。

 

この人・・・もしかして・・。

 

「・・・挨拶くらいはしていきなさいよ。」

 

 あれ?クレアが実体化している。

 

 そしてクレアをみたグレイフィアさんの召喚獣三体が固まっているし。

 

「そうでしたか。貴方様が契約者としてついているのですね。」

 

 クレアに敬意を示す連中。膝をついて挨拶までしていやがる。

 

「あなた達こそ・・・良い契約者を見つけたじゃないの。あなた達の群れを率いるのにふさわしい女傑ね。あなた達の群れのボス・・・銀角の女王アルファはいるの?気配は感じるけど姿がみえない。」

 

「こっちにいるわ。」

 

 グレイフィアさんの肩の上にデフォルメ化した小さな鹿の様な物が現れる。色は銀色だ。

 

「アルファゼ―ル。久しぶりね。ずいぶん前からこの世界に?」

 

「ええ、大体百年くらい前だわ、無双龍ドラグレッタ―。私はもう目的の相手は見つけたし、そして、成就もしたわ。あなたのほうは・・・なるほど、かなりの大物を見つけた様ね。さすがねえ。攻略はまだなの?」

 

「もうそろそろ動く予定。・・・ありがとう。そっちも仕事がんばってね。」

 

 なんかクレアとあのアルファって鹿(?)・・・とっても仲が良いみたいですけど。

 

「・・・驚いたわ。貴方も契約者。それもこの子と知り合いだなんて・・・。」

 

 グレイフィアさんが驚きの表情で見ているけど・・・俺からしたらそっちの方が驚きです。

 

 さっき群れっていいましたよね?どれだけの連中がいるのですか?めちゃくちゃ多くないか?

 

「ゼ―ルズ達は101体・・数年前に102体になったわ。」

 

 部長・・・教えてくれてありがとうございます。

 

 どこかのワンちゃんじゃあるまいし。

 

・・・・まさに群れですな。

 

 それよりも目的があるって・・・。

 

「そろそろ攻略に移ろうかな?七年もたったから・・良いころ合いだし。」

 

 なんだろう。その目的が色々な意味で恐ろしく感じるぞ?

 

 しかもクレアの視線がドライグに向けられているし・・・。

 

「なっ・・・なんだ?」

 

「ふふふ・・・・なんでもないわ。」

 

 ドライク・・もしかしてお前狙われていないか?

 

「黒歌とアルファに負けていられない。私も動くわよ。」

 

 そこでどうして黒歌がでてくるの?

 

「・・・はあ。貴方も難儀ですね。今代の赤龍帝。近いうちに嵐が巻き起こりますよ。」

 

 グレイフィアさん?何か知っているみたいですが、なんで同情の視線をおくってくるのです?

 

 嵐ってなんです?

 

「ゲーム開始は一週間後とします。しかし気をつけなさい。ライザ―の所で不穏なうわさがあります。」

 

「?」

 

「もっとも、本当の力を発揮されてしまったら、関係ないかもしれません。」

 

 そんな忠告だけを残してグレイフィアさんもまた姿を消す。

 

 訳が分からないという状況の皆。

 

 部長は改めて皆に事情を説明する。

 

「・・・・事情説明するわ。」

 

「ああ・・・その前にハル。修理を頼む。」

 

「うぃー。工房はまた後日か。あとで請求書をフェニックス家に送りつけてやろうか?」

 

 ・・・・うん。ハルを怒らせると色々とホント怖い。

 

 みんな・・・そのことだけはしっかりと覚えたようだぜ。

 

 




 さて・・・どうでしたか?

 ハルトの性癖と必殺の右が明らかになった話です。

 その上・・・グレイフィアさんも契約しているというオチがあります。


 彼らミラーワールドの者達がこの世界にやってた理由も徐々に明らかにします。


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合宿です。

 ここにて合宿開始。

 ここでグレモリ―眷族が原作とどれだけかけ離れているのかわかると思います。




SIDE イッセ―。

 

 さて・・・色々あってから一夜明けて。

 

 部長はみんなと合宿行くことに決まった。

 

 学校は休み。

 

 一週間鍛え込むぜ。

 

 でも相手がねえ・・・。

 

 俺・・・小猫ちゃんと一緒に鋼兄と黒歌との修行だよ。

 

「先輩・・・覚悟はいいですか?」

 

 小猫ちゃん。ああ・・・とっくにできているさ!!

 

 凄まじい苦行がまっていることくらいさ。

 

「イッセ―の場合はアギトの本能的な戦い方を今の状態でも引き出せるようにならないといけない。」

 

 俺の戦い方を鋼兄は理解していた。

 

 アギトの力は秘密になっている。まだ召喚機も赤龍帝の篭手も禁手化には至っていない。

 

 そのため大分制限された中で、力を出し切る必要がある。

 

 その一つとしてアギトの時の動きを普通の状態で出来るようにすることだ。

 

 アギトの戦いの時の動きは本能的なものだ。

 

 変身した時の感覚は確かにまるで違う。それを普段でもできるようにするのだ。

 

「お前は術がなあ・・・・。」

 

 仙術も教えてくれようとしたけど・・・まったく俺はその才能はない。

 

「あっ・・・でも一つだけ・・・たった一つだけ編み出せた術があるんだぜ!!」

 

 そう・・俺は悔しかった。魔力が全くないのと術に関する才能が事を。だから・・・その足りない部分を・・・妄想で補ったぜ。それで出来た必殺魔法。

 

 小猫ちゃんを使って実践!!

 

「へっ?」

 

 茫然とする小猫ちゃん。

 

 よし・・・大成功って・・・

 

「ぶぐぶるぶふはぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!?」

 

 あっ・・・あれ?鋼兄が鼻血を噴き出して倒れた?

 

「・・・・これって鋼ちんに対する必殺魔法ね。」

 

 あっ・・・そう言えば鋼兄ってこういうの駄目だって聞いた事があった。

 

 でも・・・ここまでだめとは。

 

「変態撲滅。」

 

 あっ・・・しっ・・しまった。小猫ちゃんが目に涙を浮かべて拳を握っている。

 

「HAKKEIの強化・・・短頚!!」

 

 ちょっ・・・それはしゃれにならなぶるぶるふぐあ!?

 

「阿呆が・・・。」

 

「はははは・・・弁護できないわ。」

 

 ドライグとクレアも呆れているし。ああ・・・俺は今宙を舞っている。

 

 森全体を一望できるくらいの高さでなあああああぁぁぁぁぁぁ!!

 

「だが・・・相棒はもう至ってもおかしくないレベルだぞ?歴代の中ではダントツに遅いが、才能だけでいえば、逆にダントツに高い。」

 

「そうね、アギトとしての力も覚醒している。あとは・・・何かきっかけいや・・もしかしたら・・・。」

 

 2人が相談しているのを耳にしながら俺は落下していく。

 

「一応妹が辱められたお礼はしておくにゃ・・・・。」

 

 下では黒歌が怖い笑みを浮かべながら蹴る準備をしてまちかまえていますしぃぃぃぃぃぃ。

 

 ああ・・・俺・・・終わったわ。

 

 

SIDE 木場。

 

「何やってんだあいつ?」

 

 森の向うでまるでボールのように何度も打ち上げられるイッセ―の姿を見て僕たちは呆れていた。

 

「大方昨日言っていた魔法を・・・多分小猫ちゃん辺りにやらかしちゃって猫又姉妹に蹴鞠のようにやられているといったところか?鋼兄はその際に鼻血を噴き出して気をうしなっているはずだし。あんな卑猥な術・・・見た事ないよ。」

 

 うーん・・・サイガ君の推理はあたっていそうだ。

 

 イッセ―君は一体どんな魔法を?

 

「それよりもこっちも始めようぜ。こっちは大地斬と海波斬は覚えたぜ。」

 

「僕も同じかな。」

 

「・・・・・・すごいね。この二つを覚えるのって結構大変なんだけど。体はもうできていたからコツをつかむだけだったということか。」

 

 最大限の効率で力を込め岩石すらも叩き割る大地斬。

 

 素早く剣を振るい。剣圧で海すらも斬る海波斬。

 

 原理は単純、でも単純だからこそ応用が効く。

 

「パワー自体はおそらくあの力のおかげということかな?」

 

「ネロ君もきづいているよね?僕の力。」

 

「薄々は。悪魔でもない・・・異質な何かは感じている。どうもこれが俺のアギトとしての力のようだな。まあ・・・イッセ―とアーシアには無い力だぜ?」

 

 ネロ君は相手の力を見抜く力を会得している。アギトの力、召喚機の力・・・神器の力。

 

 潜在的な物すら見抜くというのは驚きだ。

 

 そして・・・ネロ君は僕の中のオルフェノクの力まで捕えているということだ。

 

 一度変身して見せる僕。

 

 この姿になれるようになってから・・・実は力がすごく上がっている。

 

 変身したらもっと上がる。剣で鉄球をたたきわれるほどに。

 

 下半身を馬にすれば電車すら楽に追い越すほどの速度で駆けることができる。

 

「ほう・・・部長が知ったらさらに人外魔境度合いが増したと嘆くだろうな。」

 

 僕の異形の姿をネロ君はあっさりと受け入れているし。

 

「いずればれるぜ?それだけは覚えておきな。その力があんたにとって救いなのか呪いなのか分からねえがな。まあ・・・俺も似たようなものだったし。」

 

 ネロ君は右手首のブレスレットを外すと、術が解け彼の悪魔の腕があらわになる。

 

 これは学校に通うための措置だ。さすがに悪魔の腕のままじゃまずいので。

 

 当たり前すぎて忘れていた。

 

 ネロ君も大概異形の存在だったね。

 

「俺もばれた。でも・・・キリエは受け入れてくれたぜ?」

 

 ネロ君がどういった人生を歩んできたかしっている。

 

 この腕が出てからしばらく隠していたけど・・・それがある事件でばれたこともだ。

 

「少なくとも今宙を舞っている馬鹿は平然としていやがる。あいつは信じていいぜ。」

 

 馬鹿みたいに悲鳴を上げながら宙を何度も舞っているイッセ―君を指差すネロ君。

 

「こんな変わり果てた俺を信じるような奴だ。それだけは覚えておきな。」

 

 ああ・・・覚えておくよ。2人は信じられると。

 

「さて・・・二人にはあれを覚えてもらおうか。空の剣、空破斬を。これは力でも技でもない・・・心が何よりも重要。2人とも力量は十分。心はどうかな?」

 

「へっ・・上等だぜ。」

 

「心か・・・・。」

 

 こっちはどうだろうか。今だ心の中にはあの憎しみが・・・。

 

「憎しみがあるのならそれと向き合え・・・かな。悟りに近いものがあるから。」

 

 僕の内心を見透かしたようにサイガ君は言う。

 

「多分・・・木場くんの力はそれを乗り切ってから。簡単じゃない。憎しみを乗り越えるというのは。」

 

 もしかして・・・彼は僕の過去を知っている?

 

 一体何者なんだい?君は・・。

 

「君は・・・誰なんだい?」

 

「さあ?でも・・・さっきネロ君がいっていたじゃないか。いずれ分かることだって。」

 

 サイガ君は多分・・・何かを知っている。

 

 それでもそれを話せないと。でもいずれ分かるといっている。

 

「今はただ・・・部長のためにね。」

 

 でも・・・君も信じられる。どうしてそう思えるのだろうか?

 

 まるでおとぎ話にある勇者のようだ。

 

「ああ・・・。早速やろうぜ。それとこのレッドクイーンのエグシードを知りたいっていっていたな。夜でも教えるぜ?」

 

「頼むよ。ずいぶん暴れん坊な剣になりどうだけど。あとあの刀も・・・。」

 

 互いに色々と抱えている物はありそうだ。それでも僕たちは部長のために頑張る。

 

 サイガ君もまた味方だと・・・信じるよ。

 

 

 side アーシア。

 

 私は部長さん達と術の練習です。

 

 メンバーは私にハルさん、レイちゃん、朱乃さん、リアス部長、そして渡さんに何故かオ―フィスちゃんもいます。

 

 前の私は回復と触れると相手の心を読む力しか使えなかったはずです、

 

 でも・・・・アギトの力が覚醒し始めたこと私もまた変わりました。

 

「あっ・・・アーシアちゃん。こんな力が眠っていたなんて・・・。」

 

「これはまた・・・新しいタイプの僧侶の誕生ですね。回復役だけでもすごいけど・・。」

 

「アギトの力のせいね。元々そっちの素養もあったし。本当に僧侶の駒一ではつり合いが取れないわ。」

 

 リアス部長は苦笑いをしています。

 

「サイコキネシスなんて・・・ねえ。それもすごく強力だわ。」

 

 私は手を使わずに車を持ち上げています。

 

 それも一度に五台もです。

 

 それでも楽ちんです。しかもすごく精密にうごかせます。・・・・私の手よりもです。

 

 私・・・いつの間にかサイコキネシスに目覚めていました。

 

 昨日階段を上るおばあさんを助けようと肩を貸した時・・・おばちゃんの身体を軽く持ち上げてしまった事がきっかけです。

 

 おばあちゃん驚かせちゃったのは失敗でした。

 

「それだけじゃないです。」

 

 私は姿を消す。

 

 瞬時に渡さんの後ろに現れて見せる。

 

「・・・・テレポテーション?!」

 

「まだあります。」

 

―――――みなさーんきこえますか!?

 

 多分みんな頭の中に私の声が直接聞こえているはずです。

 

『!?』

 

「・・・本当にすごいわ。テレパシーも?」

 

「一応みなさんの位置もわかります。何故かイッセ―さんが空高く飛んでいますけど・・。」

 

 この力は連絡だけじゃなくて、相手の位置も分かる。それもかなり広い範囲でわかります。

 

 ちょっとしたレーダーになります。

 

 それにしてもどうしてイッセ―さんは宙を舞っているのですか?

 

 黒歌さんと小猫ちゃんが怒った状態でイッセ―さんを飛ばしているみたいですが?

 

 鋼鬼さんは気をうしなっていますし・・?

 

「・・・これはアーシアちゃんの神器の力も合わせると面白い事ができそうだね。アーシアちゃんは目覚めたこの三つがそれぞれでどこまでできるのか試してみようか。」

 

「はい!!」

 

 渡さんとハルさんが色々を話しあっている。

 

「これは・・・すごい支援役ができそうね。」

 

「ええ。それでハル君?私もあなたの魔法ってつかえるの?」

 

「えっ・・・と・・・その・・・。」

 

 朱乃さんの言葉にハルさんは何故か言いにくそうにしています。

 

「・・・アーシアちゃん。イエスかノーなの?」

 

 それを見た朱乃さんはにっこりと私の方に聞きます。

 

「へっ・・・いっ・・いつの間に!?」

 

 ハルさんの手に触れて答えを知っていたからです。

 

 あるく嘘発見器ともいわれるようになっています。

 

「イエスみたいです。話しにくい理由があるみたいですが・・・。」

 

「おいおいおいおい!!頼むから心を読まないでくれ!!」

 

 あれ?でもこの理由って・・・・。

 

 私は驚いてハルさんの顔を見ます。

 

 ハルさんも私が何を知ったのか察した様子です。

 

「・・・読んだからには共犯になってもらうよ。もう・・・君の力は魔法使いにとって天敵だよ。テレパシーを応用させ、呪文や術式にも介入してキャンセルしてきそうで怖い。」

 

 いつかそれもやってみたいですね。なんか出来そうだと私の中の何かがいってくれていますし。

 

 でも・・今はそんな事より・・・私・・とんでもないことを知ってしまいました。

 

「理由も読み取ったのなら黙っていてくれるかな?」

 

「はい。でも・・・・。」

 

「機会があれば必ず名乗りでる。その時は封印も解けるから。」

 

 私は頷きます。ハルさん・・・実はすごい決意を持ってここにいるのですね。

 

 その理由・・・私はすべて知ってしまいました。それ故に・・・。

 

「その間・・・お姉さんを守るのを手伝います。」

 

「はあ・・・いい子過ぎて困るよ。頼む・・・たった一人の姉さんだから。」

 

 私達が小声で喋っている間に、朱乃さんが近寄ってくる。

 

「それで・・・私も使ってみたいの。貸してくれないかしら?」

 

 ものすごくいい笑顔です。

 

 有無言わせないすごい笑顔です。

 

「うう・・・その・・・あの。」

 

 ハルさんの弱点はこれのようです。姉である朱乃さんには頭が上がらない。

 

 昔も・・・そして今も変わらないみたいです。昔はそれでよく女装させられていたとか。

 

 可愛いがられていたのですね。本当に・・・。

 

 ハルさんはしぶしぶ指輪を渡します。

 

「わかりました、でもドライバーが無いと発動は・・・。」

 

―――――コピー・・・。

 

「あれ?」

 

 朱乃さんが指輪をかざすと・・・魔法が発動しました。

 

 朱乃さんが二人に・・・。

 

「ええええええぇぇぇ!?」

 

『発動できちゃった。これいいわね。私が二人って・・・。』

 

 ご満悦の朱乃さん。

 

「まさか・・・体内にあるあれがドライバーの代わりをしているの?嘘だろう・・・魔法を使えるのは知っていたけど・・・。」

 

 朱乃さん・・・魔法つかえるのですか!?

 

「いくつか指輪を用意してくださいな。良い切り札になりそうですし。」

 

「・・・・・はい。予備があるので幾つかあげますよ。」

 

「もちろんご指導おねがいしますわ。」

 

 ハル君・・・完全に尻に敷かれています。

 

「私はまったくねえ。でもカ―ミラがいるし、渡さん・・・魔皇力の使い方を・・・。」

 

「うーん。僕の友が使う技でいいかな?ドッガハンマーのあれなんかは?バッシャ―やガルルも行けるけど・・・。」

 

 部長も渡さんから指導を受けています。魔法は無理でも・・・あっちはあっちで出来ることをやっています。

 

 私もがんばらなきゃ!!

 

 そんな私にオ―フィスちゃんが話かけてきます。

 

 私とオ―フィスちゃんは仲良しなのです。一緒にお風呂に入るなど・・・何か妹みたいな子になっています。

 

「アーシア。アギトの力に我の加護いるか?」

 

 加護ってなんです?

 

「私はみんなと一緒に頑張れればいいです。オ―フィスちゃんと一緒に。」

 

 その言葉にオ―フィスちゃんは喜んでいるようです。

 

 普段は無表情で分かりにくいですが、結構感情は豊かな子なんですよ?

 

「そう・・・か。なら・・我もできることする。一部だけど譲渡。」

 

 オ―フィスちゃんが何か空に文字を書き、それを私に?

 

 右手の甲に「∞」の文字が浮かび上がっています?

 

「がんばれ。我・・・応援する。」

 

「はい!ありがとうございます!!」

 

 嬉しい応援。私は自身の可能性をもっと追究する事にしました。

 




 とくにアーシアのスペックが恐ろしいことになっているという罠を用意しています。


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俺の罪を語ります。

 ここでイッセーのトラウマが早くも語られます。


 side イッセ―

 

 はあ・・はあ・・・ふっ・・普通に死ねる。

 

 この一週間・・・はっきり言って地獄だった。

 

 特に鋼兄とガチの組手は死ねる。その恐怖のおかげで本能が目覚めてしまったぜ。

 

 圧倒的な力を伴う攻撃を反射的に受け止めたのには驚いた。

 

 考えるよりも先に体が動く。アギトに変身したのと同じ様な動きだったのかもしれない。まだ実感はないけど・・・動きは確かに変わったのだ。

 

 それで何とか鋼兄と辛うじてだけど渡りあえるようになった。

 

 黒歌と小猫ちゃんはそれを見て驚いていたけど。

 

「まっ・・・まともに渡り合っているの?」

 

「すごいです。」

 

 いきなりそこまで出来るのは凄い事らしいが・・・こっちだって必死なんだい!!

 

 拳圧で木がへし折られ、岩が粉々になるのを見たらそうなるわ!!

 

「・・・戦う本能か。」

 

 アギトとしての戦いの本能を人間の時に目覚めて初めて分かる。

 

 アギトは戦うための存在だと。

 

 その動きはそのために洗練されている。

 

 それはどれだけ危険なものなんだろうか?

 

「自分の存在に悩むか?」

 

 ドライクが表に出てきて話しかけてくる。

 

「かもな。アギトって一体なんだろうかなって・・。」

 

「貴方らしくもなく悩んでいるわね。」

 

 クレアもか。

 

「いい加減付き合いは長いの。聞いてあげるわ。」」

 

「まあ・・・そう言う事だ。」

 

 ・・・本当に俺は相棒に恵まれているな。

 

 

 

SIDE リアス

 

 寝付けなくて夜風を浴びに行こうとした時だった。

 

 イッセ―と誰かの話声が聞こえる。

 

 それは・・・ドライクとクレアとの話だった。

 

「アギトって・・・何のために生まれたんだろうな。」

 

 話の内容は・・・自分がアギトである事についてみたいだ。

 

「・・・俺・・・この力と向き合う度に少し怖いんだわ。戦うための存在だっていうことがよお。」

 

「・・・そこまで気付いていたのか?」

 

 ドライクの言葉にイッセ―は頷く。

 

 アギト。その誕生と存在は常に戦いと共に語られる。彼のいるところ・・・戦いは絶えなかった。

 

「俺は・・・あの時救えなかった友達がいる。その時に力が欲しかった。でも・・・どうして今になって目覚めたんだろうって思う時もある。」

 

「・・・十二歳の時のね。」

 

 クレアが深刻そうに話している。

 

「簡単に癒えぬ傷ではあるまい。あの時はお前もまた未熟だったのだ。力というのは呪いに近い。それに対する心構えも・・・そして恐ろしさも。」

 

 イッセ―・・まだ何かあるというの?

 

「・・・あなたがこそこそ聞き耳を立てるなんて珍しいわね。」

 

・・・・ッ!?

 

 って・・・驚かさないでよカ―ミラ!!

 

「でもね?ばれていると思うわよ。ねえ・・・クレア姉さん。」

 

「ふふふ・・・いい仕事よ。」

 

 えっと・・・カ―ミラ。何時の間にクレアの事を姉さん呼ばわりしているの?

 

「だってクレア姉さんの方が年上なんだもん。」

 

 そうなの?でもあなたの年齢もまた今だ不詳だけど?

 

「クレア姉さんにはそれは禁句だからね。それは多分・・・逆鱗だから。」

 

 ありがとう。気をつけるわ。

 

「部長?」

 

 どうも微妙なところで来ちゃったわね。

 

「ごめんなさい。眠れなくて夜風を浴びに来たら話声がして。」

 

「そうですか。」

 

 しっかりと話は聞いてしまった。

 

 彼がアギトの力に悩んでいる事。

 

「あなたは知っちゃったわね。イッセ―のもう一つの側面。」

 

 ええ・・・・エロ馬鹿で熱血な一面しか知らなかった。

 

 彼って・・・相当繊細なのね。

 

 人には見せないけど彼は裏で色々と悩むタイプ。

 

 そしてそれをずっといたドライクとクレアは知っているのだろう。

 

 だからこそ・・なんだろう。

 

 私もさらけ出すことにした。

 

「私・・・魔王の妹というのは知っているわね?」

 

「はい、一応は。」

 

 私の中の悩みを・・・。婚約をどうして破棄したいのか。

 

「私の事を魔王の妹・・・次期当主として見る者は多いわ。でも・・・誰も私を見てくれる人はいない。」

 

 グレモリ―の家に生まれた者の宿命かもしれない。

 

 今回の婚約騒動もその一つだ。

 

「矛盾しているのは分かるわ。でも・・・それから解き放たれたい。そう思うのよ。」

 

 私は自分の力で何かをして見たい。

 

 グレモリ―家の次期当主としてではない。

 

 魔王の妹という立場でもない。

 

 一人の私としてだ。

 

 だからこそ・・・私は明日勝ちたい。

 

SIDE イッセ―

 

 本当に部長は優しい人だ。

 

 俺の話を聞いてしまったお詫びだけじゃなく、こっちを心配してくれる。

 

 そのために自分の悩みを打ち明けてくれた。

 

「部長・・・聞いてほしいことがあります。」

 

 そんな優しい人なら受け止めてくれるだろうか?

 

「これは・・・俺の罪です。深い深い・・・俺の罪の話です。」

 

「ええ・・・。聞くわ。いえ・・・・聞かせてちょうだい。あなたの過去を。」

 

 

 

 それは俺が十二歳の頃・・中学前の春休みの出来事だった。

 

 俺は三人の友達がいた。

 

 一人は六年生の三学期に転校してきて一人ぼっちで孤立していた巧。

 

 後二人はこの街にふらりとやってきた翔太郎とフィリップだ。

 

 学校に通っている様子は見えねえ。でも放課後良く遭遇し、街を案内しながら仲良くなったのだ。

 

 歳のわりにはなんか変なことを言っていた二人。

 

 翔太郎はハードボイルドを気取っているがどう見てもそう見えない。

 

 フィリップが言っていたハーフボイルドの言葉が凄く似合う。

 

 フィリップはフィリップで何でも興味を示すし・・・・。

 

 そんな彼を巧と一緒に止めたのは記憶に新しい。

 

 巧は無口なことが多いけど、実は凄く実直なヤツ。それが過ぎてひんしゅくを買う事が多くて孤立していたらしいけど、俺は逆に気に入った。

 

 翔太郎もその辺を気に入っていた。

 

 フィリップもそうだ。分からないことをしっかりと付き合って教えてくれるのだから。

 

 猫舌という言葉については嫌そうな顔をしていたのは笑えた。

 

 巧・・・度がすぎるくらい猫舌なんだぜ?

 

 フィリップが「猫舌ってどんな気分?」などの色々な質問を受け、拗ねた様子のあいつは本当に面白かった。

 

 翔太郎とフィリップはある事件を追っていると言っていた。

 

 自分たちのいた世界から流れたある物によって事件が起きようとしていると。

 

 危険な事件。だが、俺達の街がそうなっているのに黙っていられない。

 

 その事件の解決に協力したんだ。

 

 でも・・・俺の中のアギトの力が警告を発していたのに気付き、途中で足を止めてしまった。

 

 俺の力は迂闊に教えてはいけないと相棒達に言われていた物もあるし・・・。

 

 でも俺は立ち止まるだけじゃなく、みんなに危険を知らせるべきだった。

 

 警告するべきだったんだ。

 

 足を止めた俺と進む三人。

 

 その三人を・・・・突然の爆発が襲ったのだ。

 

 居たのは両手が武器になった怪物。

 

――――アームズ。

 

 背中には巨大な剣を背負っている。

 

 これは翔太郎達が言っていたガイアメモリで変身した怪物・・・ド―パント何だとすぐに分かった。

 

 でも・・・恐ろし過ぎる。

 

 こんな怪物だったなんて・・。

 

 相棒達が中で警告を発する。

 

 だが・・・足が動かない。

 

 そんな時だった。

 

 別の怪物が現れたのだ。

 

 黒の体をした怪物。手には先端がカブト虫の角のようになった剣を握っている。

 

 触角はまるでカミキリムシだ。

 

 姿だけなら凄くおぞましい。だが、俺はそいつが恐ろしい奴には思えなかった。

 

 その心は・・・どうしようもないくらいに人が良かった。

 

「この世界にも変な奴がいるか。アンデットとは違うが・・・。」

 

 そいつはド―パントの両手から放たれる銃撃を剣で次々と叩き落としながら近づきながら、一閃。

 

 それだけでド―パントは火花を散らしながら吹っ飛ぶ。

 

「安心しろ・・・助けてやる。俺が恐ろしいなら、逃げろ。それがお前のためだ。」

 

 その言葉だけでそいつがどれだけ良い奴がわかる。

 

 悲しいくらいに・・・。

 

「なっ・・何だお前は!?」

 

「俺は・・・怪物だ。元人間のな!!」

 

 そう言ってそいつはド―パントと一緒に姿を消す。

 

 そして、去った後には・・・血の海で沈む巧の姿があった。

 

 必死に巧の名前を呼ぶけど・・・。

 

 巧は何も言ってくれない。

 

 ただ、力なく体を横たえているだけだ。

 

「あっ・・・ああ・・・。」

 

 信じたくない。

 

 いや・・・受け止められなかったのだ・

 

 俺が止めなかったから・・・巧が死んだなんて・・。

 

 俺の所為で死んだという事実に。

 

「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 俺の中の何かが切れた。

 

 その背後から何かが近付いてくる。

 

――――マグマ。

 

 炎の身体をしたド―パントなのだろうか?

 

 そいつが炎の塊を俺に向けて飛ばしてくる。

 

 そこで俺の意識は途絶えた。

 

 気を失う前に俺が見たのは・・・黒い炎であった。

 

 

 

SIDE リアス

 

「・・・気が付くと、俺は病院にいました。腕の中にいたはずの巧も消えていたんです。」

 

 この子は深く傷ついていた。

 

 とても優しくて・・・良い子故に。真っ直ぐ故に。

 

「夢だと思いたかった。でも・・・・服に付いたあいつの血が夢じゃない事を教えてくれました。多分あの二人も・・・。」

 

 目の前で友達の死を彼はずっと責めている。

 

「体の怪我は軽い物だったけど、心の方が全然癒えなくて。みんなの前では隠していたけど・・。」

 

 彼の次の一言はとても・・・・痛々しい物だった。

 

「俺は今でもその傷が消えてない。ずっとその傷口から血が流れ続けている状態なんです。」

 

 それは今でもその痛みに苦しんでいる。

 

「もう・・・涙も出ません。それでもアーシアを救えてこっちも少しは救われた気分です。」

 

 アーシアを助けたかったのはその為だったのね。

 

 今度は友達を救いたい。

 

 後悔だけはしたくないという言葉から・・・過去に何かの深い悔いを抱えている事は予想していた。

 

 でも・・・その後悔があまりにも痛々しい。

 

「この力のおかげで仲良くなるのが・・・絆を深めることが少し怖くて・・・。仲良くなって・・・でもそいつが俺の死んでしまったらと思うと・・・。」

 

 私はその言葉ですでに動き出していた。

 

「ははは・・すみません。ハーレム王になるって言いながら、すっごくヘタれで。」

 

 イッセ―に何が必要なのか良く分かったから。

 

「・・・これが俺の罪です。友達を救えなかった俺の罪です。助ける力があったのに何もできなかった俺の・・・。」

 

「もういい!!」

 

「へっ?」

 

 私はイッセ―を抱きしめていた。

 

「・・・あなたが悪いわけじゃないわ。」

 

 私はこの子を受け止めたいと思った。

 

 アギトの力を持ちながらも・・・ずっと胸に深い傷を抱える彼。

 

「でも・・・俺は。」

 

 これが何かのきっかけになるかもしれない。

 

 そんな予感さえあった。

 

「私はあなたを許すわ。」

 

「あっ・・・・・。」

 

 一筋の涙を流す彼。

 

 ただ・・・その一言を伝えたかった。

 

「・・・罪は消えない。でも許すことはできるわ。私が許す。その罪を。」

 

 その一言が彼の心にどれだけ響いたのか分からない。

 

「ありがとうございます。」

 

 でも・・・彼は笑う。それが答えなのだろう。

 

 その笑顔を私は信じたい。私達の間に生まれた絆を。

 

「明日は勝ちましょう。絶対に!!」

 

「ええ・・・当然だわ。」

 

 私達は笑い合う。

 

 そしてイッセ―は明日の為に寝ると部屋に戻った。

 

 私は一人で思う。

 

「アギトか。彼の戦う理由からしたら・・・・その力は呪いかもしれない。」

 

 アギトの力は未知な部分も多い。それはどんな危険をもたらすのかも分からない。

 

 でもね。

 

「私は信じている。あなたを。アギトじゃなく・・・神滅具使いじゃなく、そして召喚師でもなく・・ただの人であるイッセ―を。」

 

「・・・それはありがとう。」

 

「へっ?」

 

 私の隣には何時の間にかクレアがいました。

 

「ふむふむ・・・あなたなら合格ね。あの子の伴侶として。」

 

 突然何を言っているの?

 

「私はイッセ―がハーレムを作るだけの器とカリスマを持っていると確信しているわ。でも・・・やはり正妻がいないと纏まらないと思うのよ。」

 

 えっと・・・何時の間にか私が正妻候補になっていません?

 

「いやね。私もそろそろ攻略に移る予定だし。一応姉としては弟分の幸せも願っているわけよ。アルファはもう成就させちゃっているし。」

 

 攻略。そう言えばそうだった。グレイフィアが言っていた事を他のみんなは知らないようだけど・・・私は知っている。

 

 アルファ達は家族だし。

 

「アルファやゼ―ルズ達と同じ世界・・・ミラーワールド出身なのには驚いたわ。あなた達がこの

世界にやってきた理由は聞いている。ある意味黒歌や小猫と同じ状態ね。でも・・・その相手がよりによって赤龍帝――ドライクなの?」

 

 彼女達ミラーワールドの者達はある目的があってこの世界にやってきている。

 

 アルファことアルファゼ―ルはグレイフィアと出会った。

 

 そして、一緒にグレモリ―家入りすると同時に・・・アルファは目的を達成した。

 

 今やグレモリ―家を色々と支えているゼ―ルズ。報活動、警備も戦闘、執事やメイドとしての業務はすべて・・・子守もこなします。

 

 私からしても家族同然。

 

「あの子達が家の一員として働くか・・・。面白い事になっている。群れごと世話になるなんて大胆なことをするもんだ。」

 

「あの子達も個々に相手を見つけているわ。」

 

「よしよし。どんどん進出しようじゃないの!!」

 

 まあ・・・悪魔にとっても益が大きいから問題ない。

 

「私も早く子供が欲しいわ。」

 

 クレアさん。あなたのそれを求める相手はあの赤龍帝ドライクですよ?

 

 二天龍の一体で、三勢力が協力して漸く倒した相手。

 

 その間に子供が産まれたら・・・どれだけハイスペックなドラゴンが生まれるの!?

 

 神龍クラスになるんじゃ・・・。

 

 でもドラゴンは気難しいと聞く。簡単に攻略なんて・・・。

 

「もうドライクは私無しでは生きていられない身体にしてあるわ。本人は全くその自覚はないけど。」

 

 すでに攻略済み!?

 

「水面下でそうなるようにしているのよ。ふふふふ・・・。色々とさり気無くね。私がいないと死んじゃうかもしれないくらいに。」

 

 ごっ・・ご愁傷様過ぎる。契約してから七年の間にじわじわと攻略されていたなんて。

 

「力だけじゃなくて絡め手も大切なの。忍耐強さも。覚えておいて損はないわ。」

 

「はい。」

 

 何だろう・・・今のアドバイス後に凄く為になる気がするわ。

 

「良い子ね。うん・・・カ―ミラ。私もこの子が気に入ったわ。」

 

「わかりますか?」

 

「ええ。イッセ―と出会っていなかったら契約者にしていたくらい。」

 

 相当気に入られたわね。

 

「もし私の眷族か知り合いが来たら紹介してあげる。もっともカ―ミラがいるのなら十分過ぎでしょうけど。」

 

 天龍クラスのあなたの知り合いはちょっと遠慮かな?だって・・・それクラスのとんでもない連中が多いと思う。

 

 アルファもあれで龍王クラスかそれ以上の力をもっている。最強の女王であるグレイフィアとコンビで昔は大暴れしていたと聞いている。

 

 それはもう・・・双銀の女王として二人とも恐れられていたくらいよ。

 

 禁手化したら兄様ですら止められない。魔王すら確実に超える。

 

 まあ・・・兄様を始めとして魔王様達も似たような切札があるけどね。

 

 カ―ミラと私のコンビもその領域にいけたらいいかな?

 

「そして・・・今回は特別に見逃した形にしたわ。無粋な真似はしないだけね。」

 

「・・・・流石だな。」

 

 鋼鬼さんを始めとするイッセ―の幼馴染共と・・私の眷族一同まで次々と廊下から現れているわ。

 

 みんなイッセ―の過去を聞いていたのね。

 

「みんな・・・イッセ―をお願いします。私にとって世話のかかる弟みたいな子だから。

 

『当たり前だ。』

 

 みんな当然のように応えてくれた。

 

 

 




イッセーの痛みは目の前で友達である巧を救えなかったことです。その死を目の当たりにしたショックを未だに抱えています。

 ですが、夜の語らいはここで終わりではありません。


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友達のためにみな・・がんばります。

 さて・・あのイッセーのトラウマとなった事件の裏事情がある程度明らかになります。

 ここでイッセーのもう一つの潜在能力があきらかに・・。


SIDE クレア。

 

 みんなが部屋に戻っていく中私は・・・まだその場に残っていた。

 

「・・・無粋な真似をしている奴が他にいるようね。他のみんなは誤魔化せても私は誤魔化せないわ。」

 

 私の言葉にコウモリとカメラを合体させたような機械が屋根の上から現れる。

 

―――――いや・・・驚いたよ。僕達の存在に気づけるなんて・・・。そうなるように色々とこのバットショットは工夫しているのにね。

 

「はあ・・・久しぶりとでもいっておこうかしら?あなたが生きているのには驚いわ。」

 

――――元々の存在が普通じゃなかったんだ。僕は地球という名のサーバーにあるデータの塊だったから。その身体の崩壊に伴い。この世界に来てこの世界の情報と一体になった結果だよ。新しい龍神といわれているかな?もっとも単独の戦闘力は龍王にも劣るか弱い神だよ。

 

――――エクストリーム!!

 

「よくいうわ。全知の龍神様の特殊能力はそれを補って有り余るというのに?あなたの相棒はどうしたの?」

 

――――号泣中。ずっと気にしていたみたいだけど・・・今の話を聞いて色々と噴き出している。

 

―――――ウオオオオオォォ・・・イッセ―ェェェェェェ!!済まねえェェェェ!

 

 あの機械から彼の泣き声がきこえてくるわ。

 

「相変わらずハーフボイルドね。いずれ生きていると名乗り出なさいよ。」

 

――――そうさせてもらうよ。彼は僕たちがこの世界に来て初めて出来た友達なんでね。

 

 出会った時から二人とも普通じゃない事は理解していた。

 

 子供の姿に化けていたこともだ。

 

 イッセ―には言っていないけど彼らが異世界からの訪問者であることは私はしっていたのだ。

 

―――――それと・・・あなたに聞きたい事がある。

 

「なにかしら?」

 

―――――あなたの色違いの黒い龍をしっているかい?黒い炎で相手を焼きながら拘束する・・。

 

「・・・・なんであなたが彼女の事をしっているの?」

 

 私そっくりな黒い龍。黒い炎で相手を焼きながら拘束する力。

 

 そんな力を持つのは・・・彼女しかいない。

 

 ずっと探していたのだけど・・・。

 

――――そうか。なら一つ忠告をしておく。彼の影に彼女がいるとね。

 

「・・・なっ・・なんですって!?私でも感知できないのに?」

 

 確かに彼女は訳の分からない力を持っていた。私と同等の力を持っていながら、私に無い闇の力を彼女は使うのだ。

 

――――多分、この世界にきた衝撃でずっと眠っているのだろう。あの日・・・・イッセ―の絶叫で目覚め、その心の闇にとりついてしまった。でもアギト故にその力と存在は封じ込められていると・・・。

 

「・・・そうか。あの時、怒り狂った私達が動き出そうとして黒い炎が邪魔したので、もしかしたらと思っていたけど・・・。」

 

 あの日は私達も鮮明に覚えている。

 

 イッセ―の悲痛な絶叫に私達は怒り狂っていた。

 

 そう・・・。ドライクも。

 

 イッセ―に襲いかかろうとしたあのマグマド―パントに対しても同じだ。

 

 イッセ―の中にいる私達がそろって実体化しようとした時、私達を黒い炎が邪魔をしてきたのだ。

 

―――――二人とも・・・邪魔しないで。

 

 その炎の向こうから懐かしい声が聞こえた。

 

――――この子の悲鳴が私を呼んだ。

 

 そして彼女は唱える。

 

――――我は鏡の中の闇。

 

 それは私の片割れ。無双龍なのに片割れがいるというのは変な話だろう。

 

―――鏡に映るは己の闇。その闇の中より我は姿を現さん。

 

 でも、鏡の世界が以前の私の契約者を運命のきまぐれでコピーした。その際無双竜が二体になってしまった。

 

――――闇の力は光と共にあり。光あるところに我もまたあり。

 

 すべての戦いが終わり、私達が新しい生き方を模索し始めた時、彼女を保護した。

 

――――さあ・・・・黒き炎で全てを焼きつくそう。己の中の闇のあるがままに。

 

 本来ならありえない妹として。

 

―――――――変身。

 

 そして、それと共に全ては終わっていた。

 

 

 

 倒れ伏せるイッセ―と、姿を消した巧の遺体。

 

 そして周囲のすべてが吹っ飛んでいたのだ。

 

 

「・・・そう。ありがとう。あの子がねえ。」

 

 あの子の力の一つ。それは相手の内面世界に潜り込めるというものだ。

 

 なるほど・・・イッセ―の心の中にひそんでいるというのか。

 

 何とか接触しないと。

 

―――――それともう一つ。巧は生きている。

 

「・・・今なんていったの?」

 

 その言葉は理解できるものではなかった。

 

―――――いや・・・正確には蘇ったというべきだろう。何しろ彼は・・・。

 

 

 

 

SIDE ???

 

 イッセ―・・・。

 

 すまねえ。俺のせいで。

 

 俺が死んだせいでお前・・・あんなに傷ついていたんだな。

 

―――そういうこと。

 

 俺の傍に可憐な少女が現れる。

 

 でもその本性を俺はしっている。

 

 俺はこいつに導かれていてやってきた。

 

「あんたと初めて会った時は訳が分からなかったぜ。」

 

―――気にしない。でも・・・まだ会わないの?

 

「わりぃ・・・俺、多分そんなに長くないから。」

 

 俺は手を見る。

 

 そこから細かい灰の様な物が出ている。

 

 そう・・・細胞組織の崩壊だ。

 

 これが俺に課せられた宿命。

 

―――すまない。我にはお前を癒す力がない。

 

「気にするなって言ってんだろ。むしろ一度死んで、こうやって蘇っただけでも儲けもんだ。辛うじてつなぎ止める手伝いをしてくれてありがとよ。」

 

―――――生きる意思があるからだ。それは強いものだ。我はイッセ―の中に戻る。まだ正式な契約じゃない。でも・・・いつか・・・。

 

 そうやって彼女は姿を消す。

 

 あんたはいい奴だ。

 

 だが、アギトであるイッセ―の内面世界に飛び込んでしまった故に本体が拘束されて自由が効かない。

 

 彼女はイッセ―の心の闇と深く同化してしまったのだ。

 

 もう一度解放してもらってからだな。その時に命があったら手伝ってやる。

 

 あんたに命を救ってもらったんだし。

 

 

 

 

 あの日、俺は確かに死んだ。だが・・・蘇ったのだ。

 

 オルフェノクとして。

 

 マグマド―パントの一撃が黒い炎が阻むと共に・・・俺は駆けていた

 

 全身が人のそれとはまったく違う存在に変えて。

 

「オッ・・・オルフェノクだと!?」

 

 その姿は全身に刃を備えた狼であった。

 

「俺の友達はやらせねえ。」

 

「それに背後の龍はなんだ!?」

 

「・・・んん??うおぅ!?」

 

 俺は後ろを見ると、そこには彼女がいた。

 

 黒い炎でイッセ―を守りながら宙を舞う黒い龍。

 

 ドラグブラッカ―が。

 

「・・・イッセ―を頼むぜ。」

 

――――――任せろ。

 

 俺は高速で駆けてマグマド―パントに殴りとばす。

 

 それは俺が死を経て人から外れ、怪物となって戦う第一歩であった。

 

 後ろでイッセ―が黒い仮面戦士に変身した時も身体は彼女が操っており、二人の力で子の危機をだっした。

 

 

 

 そして俺は戦っている。

 

 イッセ―を危険な目にあわせたあの組織と。

 

 もう命の残りは少ない。

 

 だが・・・それでも俺は戦う。すべての命を燃やしつくそうとも!!

 

 俺の携帯にある人物から連絡が入る。

 

―――――絶好調かい狼君?元気に灰をばらまいているかね?

 

 はあ・・・このノリにはなれねえ。

 

「あんたはあいかわらずだな・・・・親父。」

 

-――――――おうよ・・・怪傑、555(ファイズ)さんよ!それと親父はよせ。俺はまだ若いぞ。

 

 よくいうよ。途方もなく長生きをしたあんたが。

 

「今のところ・・禍の旅団(カオス・フリゲ―ド)の動きは?」

 

――――――どうもな・・・。ガイアメモリ関連で動きが・・。今度フェニックス家とグレモリ―家の婚約を賭けて戦う時に介入があるとみていいぜ。

 

 確か今イッセ―達が巻き込まれている案件だったな。

 

「そうか・・・この命が必要な時がきたか。」

 

 どうやら・・・イッセ―。お前の手助けができそうだ。

 

――――・・・・わりいな。巧。お前の身体をなおしてやれなくてよ。

 

「だから・・・はあ。あんたは普段はお茶らけているのに、なんで肝心な部分は人が良い!?」

 

 ――――性分だ。お前も神器を持つものとして保護したのもきっかけだったが。

 

 あいつは俺の親父だ。まったく・・・・ヴァ―リの野郎だけでも面倒なのに!!なんかこう・・・・頭が上がらねえ。

 

――――これだけは言わせろ。短い命・・・絶対に後悔だけは残すんじゃねえぞ。

 

「わーかっているって!!」

 

 俺は携帯を切る。この携帯が俺の神器。いや・・・異世界からの贈り物というべきか。

 

 それに俺は選ばれた。

 

 まったく・・・いい親父をもったもんだ。

 

「大した親孝行できなくてごめんな。」

 

 そして俺は・・親不幸ものか。

 

「親不幸に関しては俺も同じかな?」

 

 そこにもう一人の声が聞こえてくる。

 

「ハルトか。ちょうど良かった聞きたい事があった。」

 

「それはこっちもだ。総督の息子さん。はあ・・・。」

 

 俺達はそろってため息をついて同時に言う。

 

『お前・・・イッセ―の友達だったんだな。』

 

 全く同じことを聞こうとした事に気付き・・。

 

『ハハハハハハハハ!!』

 

 俺達はそろって笑う。

 

 まったく、同じ組織に属しながら全く分からなかったぜ。

 

 知らない仲じゃねえし、それどころかイッセ―達以来の友達だったのにな。

 

「お互いに、変な縁だ。」

 

「まったく。君の力をあてにさせてもらってもいいかな?赤い閃光さん。」

 

「ああ・・・。」

 

 イッセ―。お前の縁は面白いぜ。

 

 こんなところで繋がっていたなんてな。

 

「あとどれだけ生きられる?」

 

「わかんねえよ。でも・・・一年もない。多分・・・半年は持たねえ。」

 

 俺の残りの命は多分そんなもんだ。

 

 あっさりといった俺に対してハルトはつらそうな顔をする。

 

「・・・心苦しいかな。君が生きている事を伝えられないなんて。」

 

 どうせ俺はもうすぐ二度目の死をむかえる。死体も残らず灰となって消えるだけなんだ。

 

「気にするな。むしろ黙ってもらっているだけでも嬉しい。だが・・お前さんの事情を手伝えないことはもうしわけねえ。」

 

「それこそ気にするな。こっちはこっちで何とかするから。だが・・・お前を助けるために作った二つ目の賢者の石も効果は無かったし。」

 

「しかたねえだろう。俺はゲートじゃねえ。魔力も全くないから石があっても意味がなかっただけのことだ。あんたの姉さんのようにうまくはいかねえ。まあ・・・延命の効果はあったんだ。それだけでも上々だ。」

 

 俺の中のもう一つの石はあの龍の力とともに、俺の寿命を五年で終わるのを辛うじてつなぎ止めてくれている。

 

「もう一つ何とかなりそうな事例は見つけたんだ。でもそれは難しい方法だし。」

 

 ハルトは何か答えを見つけたのか?

 

「あの彼の場合は本当に幸運だった。もしかしたら・・・・。でもどうやって手に入れるかが問題で・・・。」

 

 色々とぶつぶつと考えていやがるし。こいつ親父と同じで研究家だねえ。

 

「俺はまだあきらめていない。お前の命・・・絶対に救って見せる。」

 

「・・・ありがとよ。お前が最期の希望だ。」

 

 感謝してもしきれねえ。俺はイッセ―を助けたつもりだが、あいつから始まった縁は俺を助けようとあがいてくれている。

 

「・・・って人の決め台詞をとらないでくれ。」

 

「たまにはいいだろうが。耳にタコができるくらいに聞いているのだし。」

 

 本当に心安く付き合える。

 

「じゃあな。また生きてあおうぜ。」

 

「ああ。お互いにね。」

 

 俺もまだ・・・生きることをあきらめちゃいねえ。

 

友がいる。そして・・夢も目標もある。

 

 俺は体を異形・・・ウルフオルフェノクへと変えてその場から駆けだす。

 

 さて・・・俺もショータイムに参加しましょうかね。

 

 

 SIDE 鋼牙

 

 俺は今・・・悪夢を見ている。

 

「そうですか。だったら息子の事をよろしくお願いしますね。」

 

 俺の屋敷にとうとう・・・あのコスプレ魔王がやってきたのだ。

 

「鋼牙・・・現実は無情だな。」

 

 しかも・・・カオルと意気投合していやがる!!

 

「よろしくお願いしますね。お義母様。」

 

「・・・・あなたの方が年上なのにねえ。」

 

「ふふふ・・・年齢に関してはしかたありませんわ。」

 

 そして一番脅威は・・・どうしてカオルの手料理を平気で食べている!?

 

 人を殺す毒すら平気で耐える俺達魔戒騎士ですら昏倒するほどの威力があるんだぞ?

 

 サイガにとって最大級のトラウマを・・・あの魔王は平然と・・・。

 

「それでサイガは何の駒で転生させるの?」

 

「それはもちろん・・・女王。いやね・・・イミテーションの女王の駒です。」

 

 悪魔の駒に関しては俺も聞いている。潜在能力によって必要な駒の価値があると聞く。

 

 よりによって・・・あいつが最強の駒・・女王に選ばれようとしている。しかもイミテーション・・・。駒価値が変則的になったあれを?

 

「アシュカちゃんから聞くに・・・軽く三十以上の価値はあるって。多分選ばれた相手のためにあるって。話を聞くに、それだけの価値もあるとみましたけど?」

 

「ええ・・・。そうよね?」

 

 しっかりサイガの潜在能力も調べているか。

 

「ああ。あの紋章の力はそれだけのものがある。アバンの書の最後に書き記された記述な本当なら・・・あいつは異世界で竜の騎士と呼ばれた存在のはずだ。」

 

 竜の騎士についてアバンの書に書かれた考察を教える事にする。

 

 異なる世界で竜の力、魔族の魔力、そして人間の心を兼ね備えた存在が生み出された。

 

 争いを静める究極の戦闘生物・・それが竜の騎士だと。

 

 それはマザードラゴンによる転生で幾重の世代が生まれていたが、ある竜の騎士で例外が起きた。

 

 人間と間に生まれた子供がいたのだ。

 

 その子は生まれつき竜の紋章を持っていた。そこに父の歴代の紋章も受け継いだのだ。

 

 結果・・・二つの竜の紋章を持つ超戦士の誕生。神すら倒す異世界の大魔王を倒した。

 

 そして、その息子が・・・サイガなのだ。

 

 父と母が死に絶える直前・・・泣きじゃくるサイガの手をとり、そこから父親の中からサイガの中へと光と共にある物が継承された。

 

 その際・・・額と両拳に紋章が浮かび上がったのを俺は見た。

 

 だから間違いない。彼は今・・・三つの紋章を持っている。

 

「紋章一つの解放で、鎧を纏わないで使徒ホラーを拳で倒すほどの力だ。」

 

「それが三つも解放されたら・・・あるいはメシアすらも単独で倒すかもな。いや・・・話が本当なら二つで十分か。」

 

 ザルバの推測はおそらく間違っていない。

 

 はっきり言って凄まじすぎるほどの潜在能力を秘めている。だが・・・人間の血が濃いせいか、制御がうまくいっていない。

 

「力が強力すぎるからですか?それが人間に近い彼の身体では制御できないと。」

 

 そう言う事になる。薄まった竜の血がその弊害になっている。

 

「なるほど・・・じゃあ、運命を感じますね。」

 

 セラフォル―は女王の駒を軽くいじりながら思っているだろう。

 

「この駒でより強靭な体に転生できれば多分その力を発揮できそうかな?一応竜の血も用意してみてもいいかしら?そうしたら伝承どおり魔族と竜、人間の三つの要素が揃いそうだし。」

 

 ・・・何か嫌な予感がするぞ?

 

「後・・・出来れば、サイガ君の両親の墓参りもさせてください。挨拶したいので。」

 

「一つだけ質問をさせてくれ。」

 

 俺は肝心なことを聞く事にする。

 

「お前はあいつをどうしたい?」

 

 それは絶対に聞かないといけない。

 

「俺はあの二人からサイガの事を託されている。」

 

 死に絶える直前のあの二人から俺はサイガを託された。

 

 騎士の誓いとして・・・一人の男として。

 

 そんなあいつを眷族にしようとしているのだ。聞かないといけないだろう。

 

「そんなの決まっています。」

 

 だが・・・この悪魔は本当に天真爛漫だ。

 

「一緒に幸せになりたいです。まず・・・私の魅力でメロメロにさせてからですけど。グレイフィアちゃんは幸せになったし・・私もそろそろね。まあ・・・彼女と逆の立場なんだけど。」

 

 ただ幸せになりたいか。

 

「・・・はあ。いいだろう。もう俺達は折れた。あとはあいつに責任とらせる。」

 

 魔王だというのに・・・誰よりも人間味のある人だ。

 

「よろしくお願いします。サイガの事・・。」

 

「俺達よりも長生きすることになるからな。」

 

「もちろんです!!」

 

 そんな彼女の元に変な使者が現れる。

 

「お楽しみのところ悪いけど、迎えに来たわよ。」

 

 それは白鳥のようであった。

 

「スワンちゃん・・・もう時間?」

 

「そう言う事・・・はあ・・なんで私があなたの監視役をやっているのかしら・・・。そりゃ・・契約をしたのはその天真爛漫さが気にいったからだけど、ここまで振り回されることになるとは・・・。」

 

 見た目に反しでとても感情豊かだ。どうも彼女に振り回されている節がある。

 

「最後に墓参りだけさせて。それくらいいいでしょ?」

 

 墓参りだけはするのか。意外と律義なんだな。

 

「どうも・・・セラと契約をしているブラウウイングことスワンといいます。」

 

「丁寧な白鳥さんだな。俺はザルバだ。よろしくな。」

 

 とても丁寧だ。羽ばたきながらおじぎするなんて・・・。

 

 こうして俺達は変な魔王とそのお供と共に墓参りにいくことになる。

 

 サイガ。お前はもう逃げられないぞ。完全に外堀は埋まっているからな!!

 

 なんか死んだはずのあのあいつの生みの親達まで攻略されている気がする。

 

 

 

 




 オチは・・・・サイガの最後の堀が埋められる瞬間でおわりました。

 そして魔王様もまた契約者であるというオチものこしております。


 オリジナルモンスターも考えておくべきかもしれませんね。


  更新はここまでです。

 また会いましょう!!


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戦闘開始です!!

お待たせしました。

 レ―ディングゲーム開始です。

 さっそくですがあの人に大暴れしてもらいます。


 SIDE イッセ―

 

 いよいよ決戦の日がやってきた。

 

 皆・・・気合いは十分。

 

 というより・・・確実に強くなっているのがわかる。

 

 俺もそうだ。大分戦えるようになった。

 

 頭の中でスイッチみたいなのを切り替えれば動ける。

 

「さて・・・大暴れしましょうかね?」

 

 鋼兄がやる気だよ。

 

 人間の姿での本気を出すっていったよね?確かその実力は最上級悪魔クラスだときいているぞ。

 

 サイラオークと言う人と生身で互角に殴りあった仲。その実力がここで分かるのか!?

 

「手入れも十分。ガンガン吹かせるぜ。」

 

 武器の手入れを終えたネロも燃えている。

 

「朱乃さん・・・指輪の確認は大丈夫ですか?」

 

「ええもちろんよ。ありがとう。色々とやれそう。」

 

 ハルは朱乃先輩と色々と確認中。

 

「魔戒騎士の中でも参加するのは僕が初めてかな?」

 

 サイガは剣を見て苦笑している。

 

「緊張しているのかい?」

 

「まさか?楽しみだよ。面倒臭いところはあるけどね。」

 

 木場とのやりとりは自然なものだ。

 

 この修行であいつらすっかり仲良くなったな。

 

「こっちは楽しみにみておりますわ。」

 

「がんばるにゃ。」

 

「無理はしないでくださいね。」

 

 レイちゃんと黒歌、キリエさんは応援に回る、さすがに参加できないしね。

 

「応援・・している。」

 

 何故かオ―フィスちゃんもいるし。

 

「はい!!私達・・・がんばってきます!」

 

 アーシアもやる気満々だ。

 

「リアス部長。しっかり堪えるんだよ。王として一番辛い部分だから。」

 

「ええ。かなり辛い事になるのは覚悟しているわ。」

 

 渡は渡で部長に再確認するようにして何かをつげている。そう言えば王としてこのゲームにおいての大切な心がけを話していたよね。

 

「みんな・・・これだけは確認させて。どんだけ傷ついても今回はリアス部長のために戦う。それでいいよね?」

 

 渡の言葉に不敵な笑みを浮かべて応えるのはネロだ。

 

「何言ってんだ?こっちは色々と世話になってんだよ。恩返しってわけじゃねえが存分にやるだけだ。」

 

 その言葉で十分だった。

 

 皆も笑みでその言葉に応える。

 

 さて・・オカルト研究部の部室よりゲームが開始される。

 

 いよいよだ・・・。

 

 

 

SIDE ライザ―

 

 はあ・・・やっときやがったか。

 

 俺は実はかなり緊張を強いられていた。

 

 俺もこの一週間何もしなかったわけじゃねえ。

 

 あいつらの情報収集に努めていたのだ。

 

 そして・・・とんでもない事が分かった。

 

 まず鋼鬼。

 

 奴は・・・あの鬼神だ。

 

 変身はしないらしいが・・・それでも数多くの悪魔やエクゾシスト共を返り討にした実力は侮れねえ。

 

 それだけでもまず脅威。

 

 そして、俺にアイアンクロ―をかましやがったあいつ・・・操真 晴人。通称ハル。

 

 あいつの正体もはっきり言って驚異だ。

 

 奴は・あのグレゴリの技術顧問、および諜報部の幹部。そしてソロモン王の生まれ変わりとされる稀代の魔法使い。

 

 だが、あんな凶悪なまでの握力は想定外。まだ知らない何かがあると・・・。

 

 他にも厄介な連中ばかりが揃っていやがる。

 

 黒龍騎士に・・スパーダの血を引く奴。

 

 そして赤龍帝か・・・。

 

 くっ・・・あの切り札が無かったら勝ち目は全くないといえたな。

 

「みんな・・・準備はいいか?」

 

「はい・・・・。」

 

 眷族の連中の何人かはある物を手渡している。

 

――――Tレックス

 

―――トライセラトップス

 

「気に行ってくれましたか?」

 

―――――バイオレンス

 

―――――ヒート

 

 白い蝙蝠のような姿をした奴が俺の背後で逆さまになりながらも笑う。

 

「ああ・・・最高だぜ。」

 

 俺はそのメモリを手にして笑う。

 

「他の皆にも配っておけ。あいつらには遠慮は無用だ。」

 

 悪魔である俺達はガイアメモリの毒素に対する耐性は人間のそれとは比べ物にならねえ。

 

「はあ・・兄様。そんな物に手を出してしまって。」

 

 隣で妹が嘆く。

 

 まあ・・・こいつには使わせないがな。

 

「彼女は?」

 

「レイヴェルだ。俺の妹。一応僧侶の駒で眷族にした。」

 

「妹ねえ・・・・。」

 

 ガイアメモリの売人が妹を品定めするように見る。

 

「おい。こいつには手をだすな。でないと・・・。」

 

 その視線が気に食わなく俺は背中から翼を出して威嚇をする。

 

 これでも大切な妹なのでな。

 

「・・・ふふふ・・・ええ。私は手をだしませんわ。」

 

 そう言ってあいつは姿を消す。

 

 どうも何かを企んでいる節がある。警戒にこしたことはないか。

 

「イザベラ。いざという時は・・・頼む。」

 

「はい。」

 

――――――ナックル

 

こいつにもメモリを与えている。

 

 もちろんユーベル―ナにもだ。

 

―――――ボム。

 

「これ・・・私の異名にちなんだチョイス?はあ・・・。」

 

 本人はかなり嫌がっているが、適合率は抜群だ。仕方ねえだろう。

 

 爆弾女王だけにな。

 

「さあ・・・始めるぜ。」

 

 こうして俺もまたゲームに赴く。

 

 そこに俺はあの連中の信じられないスペックを目の当たりにすることになり、予想外の展開が待ち受けることをまだ知らなかった。

 

 

 SIDE イッセ―。

 

 さて・・・戦闘開始だぜ!!

 

 チェーンソー姉妹の戦闘からまずは始まるぜ。

 

 って・・・あいつもしかして綺麗何処ばっかりを眷族にしていやがるのか?

 

 うらやましい奴だ!

 

「なんで・・・・。」

 

「当たらないの!!」

 

 チェーンソーを避けながら俺はこんなことを考える。

 

いや・・・余裕。

 

 攻撃を簡単に見切れる。

 

「いやね。体が勝手に動くんだわ。」

 

 本当に鋼兄との修行の成果は大きいわ。こんな大ぶりの攻撃なんざ簡単に見切れる。

 

―――――本当に強くなったわ。

 

――――男子三日合わずは活目してみるべしというが・・・動きが良くなった。

 

「鋼兄の攻撃に比べたらあくびがでる。」

 

 そして、俺は二人の姉妹に手を当てる。

 

「へっ?」

 

 妄想全開にした俺の必殺技を見てみよ!!

 

『洋服破壊(ドレスブレイク)!!』

 

「きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

 いや・・・綺麗何処ろだけあって眼福眼福。

 

 脳内に彼女達の裸体を保存しようとした時、横から強烈な一撃を受けて俺は吹っ飛ぶ。

 

「・・・変態。」

 

 殴ったのは・・・俺をさげすんだ目でみる小猫様です。

 

 みっ・・味方にダメージを与えてどうすんのよ!!しかも今の一撃、確実に前よりも上がっているよね!?

 

「・・・先輩はその分無駄にしぶとい。」

 

 そう言えばあの一週間、小猫ちゃんに何度もきついツッコミを受けていたな。

 

――――・・・無駄に打たれ強くなった。嘆かわしいことながら・・・。

 

――――ははは・・・煩悩も馬鹿にできないわ。尊敬もしたくもないけど。

 

 相棒共のコメントも結構辛辣だ。

 

「・・・鋼兄と別行動にして正解だったぜ。」

 

「ははは・・・そうだね。」

 

 ネロの言うとおりか。まあ・・・そうだよな。この必殺技は鋼兄には致命的だし。

 

 素っ裸にした連中を魔力弾とかで片付けて行く。

 

「卑猥すぎる。でも・・・これを一度指輪で再現してみても面白くはあるか。あとで原理を解明してみても・・・。」

 

 ハル。俺の必殺技を指輪で再現するのか?

 

 自分で言うのもなんだけど、こんな魔法を再現して何の意味があるの!?

 

「くだらない事と言っていないで・・・行く!!」

 

 小猫ちゃんの言葉で俺達は体育館へと向かう。

 

 俺達はライザ―の本陣へと切り込む役割がある。

 

 メンバーは俺、小猫ちゃん、ネロ、木場、そしてハルの五人だ。

 

 部長の守備には鋼兄とサイガ、朱乃さん、そしてアーシアがいる。

 

 そして、俺達は体育館の前に立つ。

 

 そこで立ち止まる。

 

「どうした?」

 

「多分・・・待ち伏せ。」

 

 アギトの力は本当に便利だ。体育館内に敵が多数いる事がわかる。

 

「へえ・・・だったら面白い魔法がある。一発かましてあげるよ。

 

 ハルがなんか恐ろしい笑みを浮かべているけど・・・何をするつもりだ。

 

 ある指輪を取り出し、それをドライバーに充てる前に皆に警告する。

 

「一応・・・鼻はふさいだほうがいいよ。これ・・・結構きついから。」

 

―――――スメル

 

 その言葉と共に体育館の中央に魔法陣が展開され、そこから煙が・・・って・・・。

 

「臭せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 なんだこの煙の臭いは・・・臭すぎるぞ!!

 

『ぎゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

 体育館の中で待ち構えていた連中が悲鳴をあげている。うわ・・・あれを逃げ場のない密閉された空間内で使ったら・・。

 

「それもう一丁。」

 

――――スメル

 

「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁ!!」

 

「もう一回。」

 

「もっ・・もっやめてくれえええぇぇぇ!!」

 

――――スメル。

 

「アンコールに応えてもう一度。」

 

「誰もそんな事言っていないってええええぇぇ!!」

 

――――スメル

 

『ああっ・・・あああああああっ・・・・。』

 

 もういい・・もうやめてあげなよ!!

 

 内部でのたうちまわっている姿が見えるよ。うわ・・・倒れて、危険な痙攣をおこしている奴までいる。

 

「ふふふふ・・・傷はつけていないよ。ただ臭いだけだから。気絶しそうなくらいにね。」

 

 その悦に浸った笑み。すげえ朱乃さんに似ている。

 

 やっぱ姉弟じゃねえのか!?あの二人。

 

『・・・・・・・・・・・。』

 

 皆改めて思うよ。こいつはやっぱりドSだ。

 

「話にはきいていたけど、朱乃さんといい勝負。」

 

 小猫ちゃんも戦慄しているよ。

 

 そう言えば、ハルの野郎。朱乃さんも指輪の魔法が使える事が分かって幾つか指輪渡したんだよな?

 

 何だろう・・・嫌な予感しかしねえ!!

 

 Sな朱乃さんが恐ろしい事をしでかしそうだ。

 

「ついでにこの煙は可燃性だから・・・。火花を散らすだけで・・・。みんな伏せていて。」

 

 ソードガンを取り出し、内部に向けて三発だけ銃弾を放つ。そこで火花が散ったかと思うと・・・一気に引火。

 

『がああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?』

 

 大爆発が起きて、体育館が吹っ飛んだよ。

 

『・・・・・・。』

 

 もう・・・ツッコミ疲れたよ。

 

「よし・・・いこうか。」

 

 素晴らしい笑みを俺達に向けるハル。

 

 えげつない事をしてその笑みは止めてくれ。逆におそろしいから。

 

「なあ・・・絶対にハルを敵に回さない。そう俺は決めた。」

 

『右に同じ。』

 

 満場一致だった。

 

 こいつを敵に回したらどんな目にあるのかわかったもんじゃねえ。

 

「よくもやってくれたなお前ら・・・・。」

 

 あれ?体育館の中から声が聞こえてくる。

 

「あらら?思ったより打たれ強い。と言うかすごく怒っているけどどうしたの?」

 

 怒らない方がどうかしているぞ。あれは・・・。

 

「ふはははは・・・いきなりメモリを使ってしまう事になるとはな。大丈夫ですか?」

 

 仮面をつけた女性は無傷。その後ろで誰かを庇っていたようだ。

 

「はっ・・はい・・・。うっぷ。気持ち悪いですわ。」

 

 あららら・・・。なんかあの女の子が気の毒に思えてきた。

 

 駆けだしそのまま金髪ドリルの女の子の背中を察すてやる俺。

 

「はや?!」

 

 我ながら結構なスピードだったからな。

 

みんな驚いているが、それに構わずに背中をさすってやる。

 

「あっ・・ありがとうございます。うっ・・・まっ・・・まさかあんな手を使ってくるなんて予想もしなかった。気持ち悪い・・・。」

 

「先輩。その子一応敵。」

 

「ああ・・・それなら気にするな。彼女は戦闘には参加しない。ライザ―様の妹だから。」

 

・・いっ・・妹!?

 

「レイヴェル・フェニックスといいます。うっぷ・・・。」

 

 あの変態。実の妹まで眷族にしているのかよ。

 

―――――業が深い。イッセ―、お前のコレクションの中にあるあれを思い出したぞ。

 

―――――同じ妹がいる身としても・・ちょっとね。

 

 よく俺のコレクションを覚えているなドライクは。

 

 それとクレア。お前・・・妹がいたのか?

 

 初耳だぞ。

 

「うう・・・気持ち悪いですわ。」

 

 ハルの魔法が相当効いているな。真っ青な顔をしているよ。

 

 しかたねえな。

 

 召喚機を出現させて・・・。

 

―――――――――Recover Vent!!

 

 手から出てきた光輝く龍の血をレイヴェルちゃんに与えてやる。

 

「あっ・・あらら?気持ち悪さがなくなった?」

 

「大丈夫か?」

 

「えっ・・そっ・・その・・・はい。でも・・・いいのですか?」

 

「いいも何も一応俺のダチが迷惑かけたお詫びみたいなもんだ。お前は戦うわけじゃねえし。だろ?」

 

『・・・・・・・・。』

 

 その光景にあれ?敵味方共に固まっているよ。

 

「ふっ・・・ふはははは・・・これはすごい。これは大物になるぞ。」

 

 仮面の女の人が笑っているよ。

 

 なんか敵全体が毒気を抜かれたようになっているし。

 

「馬鹿なのは認める。」

 

「もう希少価値クラス。」

 

 小猫ちゃんとネロのコメントはほめているの?それともけなしているの?

 

「本当に・・・でもそこが君の魅力か。」

 

 木場も呆れながらも笑っているし。

 

「そのようだね。それとさすがに・・・すまなかったね。こちらからもお詫びくらいはしておこうか。現代魔法でようやく実現させた希少な治癒魔術なんだけど・・・。」

 

 ハルは指輪を当てる。

 

――――リフレッシュ。

 

 その音と共に敵から気持ち悪いと感情がなくなっていくのが感じられる。

 

「まだ解毒が限界。アーシアちゃんがどれだけすごいのかよく分かるよ。」

 

 あいつが敵に塩を送るなんてな。

 

「でもいい実験になった。」

 

 訂正。実験だったのかい。

 

 こいつ結構酷い奴だな!!

 

「・・・変な連中だ。だが・・・強いのは分かるぞ。」

 

 彼女は笑いながら・・・・ある物を取り出す。

 

 ってそれは・・・ガイアメモリ!?

 

――――ナックル

 

 それを左首筋にあるコネクターに挿入して・・・。

 

 その女性は変身する。

 

 白い体に両手足がトゲトゲのナックルが付いたド―パントに。

 

「我が名はイザベラ。勝負をお願いしよう。」

 

 ここでド―パントが出てくるか。

 

 俺にとって因縁のある・・・。

 

「だったら俺がでようか。」

 

「僕も・・かな?」

 

 そんな俺の前にネロと木場が立ちはだかった。

 

「いいだろう。先ほどの礼だ。二対一で勝負してやる。」

 

 イザベラは拳を鳴らす。

 

「お前達のあいては・・・。」

 

「私達だ。」

 

 おそらく戦車と僧兵に相当する連中なのだろう。その二人の手にもガイアメモリが・・・。

 

 その中身は・・・。

 

―――Tレックス。

 

――――トライセラトップス

 

 それをそれぞれ腕に付けられた生体コネクターに入れる。

 

 現れたのは巨大なTレックスの頭をした怪物と・・・トリケラトプスの頭を持った屈強な怪人だった。

 

「・・・・恐竜かよ・・・。」

 

因縁のあるド―パントとこんな形で戦う事になるとはな。

 

「僕たちの相手はどうやらこの二体のようだよ?」

 

「・・・骨が折れる。」

 

 小猫ちゃんが拳をポキポキならしてやる気を見せる。

 

「レイヴェルちゃんはここから離れるんだ。巻き添えを食うぞ。」

 

「へっ?でっ・・・ですが・・・。」

 

 俺の心配に戸惑う彼女。

 

「ガイアメモリの使用者は毒素にやられて暴走する。悪魔がどれだけ耐性を持っているのかわからないけど、見境がなくなる危険がある。」

 

 ガイアメモリの危険はまさにそこである。ドライバーがあれば話は別だけど。

 

「可愛い女の子にできれば怪我はしてほしくないし、怖い思いもさせたくねえ・・・。」

 

「で、ですが・・・。」

 

「まあ・・・それでも・・・」

 

 戸惑う彼女にあと一押ししておく。

 

「俺が怪我なんてさせねえ。安心しな。」

 

「////!?」

 

 精一杯の笑顔で言ったのだが・・・。

 

「・・・ぽ~////////。」

 

 あっ・・あれ?なんか呆けていませんか?

 

 風邪でも引いているのか顔も赤いし。

 

「いいから早く行けって。安全なところでみておけ。」

 

「はっ・・・・はい////あっ・・・あああ・・ありがとうございすちゅううぅぅ!!」

 

 まるで風のように速く去っていったな。

 

 あと噛んだぞ。

 

 まあ、あの様子なら大丈夫だろう。

 

 よしよし・・・みんな待っていてくれてありがとうよ。

 

 さて戦おうか!!

 

『・・・・・・。』

 

 ・・・・・・あっ、あれ?また敵味方共に固まっていますけど?

 

「・・・はあ・・・・・・この馬鹿が。」

 

 ネロはため息。何か頭痛そうに手で押さえてんぞ?

 

「まさかイッセ―君がここまでのたらしだったなんて。しかも鈍感とは罪深い。」

 

 木場。なんか失礼なこといっていないか?

 

「愉快すぎる。面白い物をみせてもらったぞ。本当に英雄になる器をもっているぞ!!」

 

 イザベラさんまで笑っている?

 

「・・・別の意味でも女の敵だったなんて・・・この女殺し。私も危ない。」

 

「・・・姉さんも何時毒牙にかかるのか心配になってきた。警戒はしておくか。」

 

 小猫ちゃん?別の意味で女の敵って何?なんで身の危険をかんじているの?

 

 それとハル?何を警戒しているの?姉さんって誰のことよ!?

 

――――――救いようがない。

 

――――――だから言ったでしょ。イッセ―はあの夢をかなえるだけの素質があるのよ。それをのばすように教育をしてみたんだけど・・・ここまで酷いレベルになるとは思ってもみなかった。

 

 何時の間に俺を教育したんだ!?クレア?

 

 モテたいと言っても何も言ってくれなかったのに、変なアドバイスばかりしかれなかったのに・・・。

 

――――少し教育を間違えたな。

 

――――いまから修正が必要なのは同意。エロ馬鹿でいままで女子達から見向きもされなかったから私も気付かなかった。ここまでのレベルに成長していたなんて不覚だわ。

 

 エロ馬鹿だけで学校中の女子から敵視されてはいますよ。

 

 モテ無い男で悪かったな!!

 

「おっ・・・おい。お前ら何をいってんだ?」

 

『はあ・・・。やれやれ』

 

 その言葉に敵味方共にそろってため息をつき、俺を指して言う。

 

『・・・・・・さあ、お前の罪を数えろ!!』

 

 しかも敵味方共に満場一致。

 

「なんで!?」

 

 訳が分からん!!

 

―――――――そろそろ鈍感さを直すための教育が必要じゃないのか?

 

――――――ふふふそのようね。多分これで三人目だし。ここから増えて行くわよ。正妻候補はいるし、何とかいまの内に体勢を整えないと。

 

 ドライク。俺って鈍感なのか!?

 

 クレア!!三人目ってなんだよ!!それが俺の罪の数だというのか!?

 

 それと・・・正妻って誰の事よ!!

 

 

 




 この話はイッセーとハル乃やりたい放題回です。

 二人とも敵に回したくないのが個人的な意見です。

 片方が何をしてくるのかわからない。

 もう片方は・・・地獄を見るのは確実だからです。


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見守る者達と介入してくる者たち。

ここでは外野にいる者達の会話が中心になります。


 


SIDE ???

 

「なあ・・・どうして俺達の決め台詞が使われてんだ?」

 

――――――僕に聞かないでくれ。ある意味イッセ―の罪がそうさせたのだろう。

 

 あいつがなあ。

 

 あの様子だと・・・昔言っていたハーレム王になるという夢、叶えるんじゃねえのか?

 

 俺は結界の外からこの戦いを観戦している。

 

 ド―パントがさっそく三体も現れやがった。

 

―――――予想通りか。介入するなら結界を通り抜ける事くらいは簡単だけど?

 

「いや・・・それはいい。」

 

 相棒の力ならこの程度の結界。入ったという事さえ気づかれずに入れるだろう。

 

 だが、今は手を出さない。

 

 これはイッセ―達の戦いだ。俺達が無理やり介入するべきじゃねえ。

 

「相手が反則的な手段をさらに使ってきたら話は別だ。」

 

――――ガイアメモリだけでも十分口実になるはずだけどねえ。

 

「ああ・・・手を出しちゃいけねえ。」

 

 今は堪えよう。

 

――――手が震えているあたり、本当に我慢しているよ。

 

「しっ、しかたねえだろう。それにイッセ―が抱えているもんの一つにあれがあるんだから。」

 

――――――そうだったね。彼の話が本当ならイッセ―はとんでもない存在になっている。

 

「俺の主様の博識には驚くぜ。」

 

 その主のおかげで俺はこうやっていきているんだがな。

 

「・・・改めて言うが一度死んで、気付けば異世界なんてフィリップ。いま考えても冗談きつすぎるぞ。」

 

 俺は一度あの風都の街を守り切って寿命で逝った。フィリップを置いていく事に後悔を残しながら。

 

 だが・・・それをいいように解釈したのかフィリップの野郎。

 

―――――言ったはずだよ。悪魔と相乗りする覚悟はあるかって?まだまだ付き合ってもらうよ。

 

 と、俺の身体を地球のデ―タとして復活させて、異世界に送り込みやがった。

 

 フィリップの野郎と一緒に。

 

 その目的は異世界に広がりを見せているガイアメモリを破壊するためだ。

 

―――――ガイアメモリの誕生はこっちに責任があるのでね。

 

 こいつの罪はまだ終わっていない。ガイアメモリが残っている限り。

 

 まったく、一度死んでまた人生をやり直すなんざ予想もしなかったぜ。

 

 こうなりゃとことん付き合おうじゃねえの!!

 

―――――この世界なら翔太郎の相手も見つかるかな?

 

「・・・お前はお見合いを勧めるおばちゃんか!?」

 

 まあ・・・もう一つ悔いがあるとしたら、独身で生涯を終えた事か。

 

 くそ・・・・照井の野郎がうらやましかった。

 

 そして、俺はこの世界でド―パントに襲われて大怪我を負ったところを・・・ある青年の姿をした悪魔と出会った。

 

 結構妖艶な男だったぜ。

 

 その男から、チェスに使う兵士の駒を与えられ、悪魔になったというわけだ。

 

「ふふふ・・・面白い事になりそうだ。異世界からの訪問者を眷族にできるなんて。」

 

 その男がまさか魔王とは思ってみなかったぜ。

 

 その男を主とし、後ろ盾として俺はこの世界での探偵みたいなことをさせてもらっている。

 

 前は街だったのに、今度はこの世界を守るための探偵、まあエージェントみたいなもんだが、それをやっている格好だ。

 

 色々あって俺の使い魔扱いのフィリップは主とすごく話があうらしく、研究の手伝いもしている始末。

 

 検索好きに研究好きまで加わった故に、暴走する相手が二人に増えた。手間も二倍、いや四倍に増えたぜ。

 

 最近ではレ―ディングゲームに新しいルールを使った物を考えようとしているみたいだし。

 

 主の友のあの人の苦労も分かるぜ。そこが面白いって言う事も含めてだが。

 

 でも・・・おかげでさらに冥界の技術水準があがったらしい。異世界の技術もどんどん使っているからそりゃ当然だわ。

 

 最近では別の世界の情報も引き出し始めていやがるし。

 

 あくまでも参考程度だが、そこから二人で全く新しい何かを作ることを喜びにしている。

 

 いま一番の悪夢は、新しい仮面ライダーのベルトをつくっているということだ。

 

 あのベルトも再現しやがったし。

 

 神器の研究もしたいので、相棒はグレゴリとの接触も考えているらしい。

 

 あの野郎・・・やりたい放題だな。好奇心の赴くままにうごいているし。

 

 この世界のデータの中に龍神と言う概念があり、この世界での死をへて、それをとりこんでしまったあいつはもうすごすぎるぜ。

 

悪魔が龍神になって、それと入れ替わるように悪魔になった俺もめちゃくちゃだが・・。

 

―――愚痴はこれくらいにしておこう。

 

「おう。いまはまずな。」

 

――――せっかくだアドバイザーになってくるよ。それくらいの情報提供くらいはいいだろうし。

 

「頼むぜ。」

 

 愚痴の対象に言われて少し癪だが、今はまずはイッセ―だ。

 

 

 

 

SIDE リアス。

 

「むす~・・・。」

 

 なんかアーシアちゃんが不機嫌だ。

 

「どうしたの?」

 

「なんか、イッセ―さんがとんでもない罪を犯したような気がしました。多分・・・誰かを堕としたような。」

 

『・・・・・・・・・。』

 

 やっ・・・やけに具体的ね。

 

「もう・・・ライバルが増えて行く。」

 

 アッ、アギトの力、恐るべし。

 

 恋する乙女の勘が極限まで高められて、千里眼のレベルになっている。

 

 というより、アーシアちゃんがイッセ―に恋心を抱いている事くらい本人達を除いてすでに周知のことだわ。

 

 分かりやす過ぎるのよ。

 

 あれだけの事があったんだし、むしろ当然ともいえる。

 

「あいつのハーレム道はまた一歩前進か。英雄色好むというが、その典型例になろうとしているのか。」

 

「だったらイッセ―は英雄になるというのか?」

 

「誰よりもエロい男がそうなるのなら、そうなるかもな。」

 

 鋼鬼さん、サイガ君。納得しないでよ。

 

「あらあら・・・そうしたら私達も危ないかも。ねえリアス。」

 

「・・・・・・・・・・・・。」

 

 朱乃。いっ・・・今そのセリフはダメ。

 

「あら?反応がない?まっ・・・まさか・・・。」

 

 昨日のあれからイッセ―の事を考えただけで、鼓動が高鳴って頭が真っ白になるの!!

 

 顔もすごく熱くなっちゃうし。

 

「ちっ・・・ちがうわよ!!べっ・・・別にイッセ―の事が好きとかどうか・・・。」

 

 そっ、そりゃ・・・頑張ってほしいと思うわよ。私何かと比べ物にならないくらい辛い何かを抱えながらも必死であがいている彼を格好良いと思ってもいるし。

 

 それに・・・エロいのも逆に私に魅力があると思うと嬉しいから。

 

「・・・また増えている。しかもよりにもよって・・・リアス姉様なの?」

 

「うっ・・・。」

 

 涙目のアーシアの視線が痛い。

 

 アギトとしての鋭すぎる感性が私の中の何かを敏感にさっしているのでしょうね。

 

 だっ・・・だからその視線が痛すぎるってば。

 

「・・・どうやら罪はもう一つ増えたようだな。」

 

「主様を落とすなんて、なんて罪深い。アーシアちゃんもピンチだねえ。結構スタイルもいいライバルだし。」

 

「・・・・・・。」

 

 余計なことをいったサイガ君をじっと見るアーシアちゃん。

 

「サイガさん。きっとそのセリフに後悔する日が来ると思います。」

 

 そして・・・とんでもない予言をしてしまった。

 

「なっ・・・アッ・・・アーシアちゃん?一体何を予知しているの?」

 

 普通なら気にとめないことだろうけど、アーシアちゃんの場合、話は別だ。

 

 予知能力を持っているから。

 

 それも極めて正確に未来を当てるほどである。

 

「意地悪なサイガさんには秘密です。私も少し訳のわからないワンシーンしか見ていないので迂闊に言えません、多分近日中に分かる事だと思いますけど!!」

 

 完全に拗ねちゃったアーシアちゃん。うん・・・これはこれでかわいいわ。

 

 このような一面を見せるのはそれだけ私達に心を開いている証拠でしょうね。

 

「ちょっ・・・とっても気になるんですけど!?」

 

 アーシアちゃん。なんかとんでもないなにかを予知したわ。

 

「・・・それよりも来たぞ。」

 

 鋼鬼さんの言葉で皆の空気が変わる。

 

「おう・・・来てやったぜ。」

 

 そこにはライザ―・フェニックスとその女王。そしてお供が三人。

 

「王自らくるか。大胆だな。」

 

「お前らの情報収集をしたからな。さすがにとんでもない連中ばかりだ。変身はしねえのか?」

 

「一応やめているぞ。したら強すぎるのでな。」

 

「右に同じく。」

 

「そうかい。それは好都合。だが、こっちは遠慮はしないぜ。」

 

 ライザ―が懐からある物を取り出す。

 

 それは・・USBメモリのような・・・。

 

「まさか・・・ガイアメモリ。」

 

「なんですって!?」

 

 それってイッセ―の話に出てきたあれなの?

 

「私は出来れば変身したくないですわ。」

 

 クイーンである彼女はためらっている様子ね。

 

 後三人は・・・・。

 

――――バイオレンス。

 

――――ヒート

 

――――メタル

 

 それぞれ筋肉の塊のような奴と、見るからに熱そうな赤い奴、そして金属の棒のような物を持った奴に変わった。

 

「いえ・・・もう一体います!!」

 

 アーシアちゃんの警告と共に私の後ろに手をかざす。

 

 私を襲おうとした舌が止まった。

 

 そこにはもう一体。

 

――――カメレオン。

 

 カメレオンの姿をしたド―パントまで。

 

 思ったよりも数を揃えてきたわね。

 

「ガイアメモリを知っているのか?」

 

 私達の反応にライザ―は意外そうな顔をしているわ。

 

「ええ。私の眷族に因縁がある子がいるのでね!!」

 

 私は手に滅びの魔力を炎のようにして燃やす。

 

「そうかい。さあ・・・始めようぜ。」

 

「朱乃はあの女王を。サイガ君、鋼鬼さんはきついと思うけど一人で二体の相手をお願いできないかしら?」

 

「ふふふ・・・いいぞ。」

 

「面倒臭そうだけど・・・腕がなるよ。」

 

「アーシアちゃんは援護。それと私を手伝って・・・。」

 

 私は相対することとなった。

 

「へっ・・・おもしれえ。自信があるのか分からねえが・・。」

 

 王同士の対決がこんなにも早く訪れるか。しかもド―パントといきなり戦闘とはね。

 

―――――アドバイザーはいらないかい?

 

 そこに蝙蝠型の奇妙なロボットみたいなものが私の傍に飛んできた。

 

「・・・あなた誰なの?」

 

―――――――何。ガイアメモリはよく知っていてね。アドバイスをしたいのだよ。

 

「・・・・・・。」

 

 私はアーシアちゃんを見る。

 

「悪意は感じません。」

 

 それで十分。

 

「お願い。情報は欲しいわ。」

 

―――――そうか。それと、その度胸に敬意を表する。君は大物になるよ。僕が保障する。

 

 変なアドバイザーもついて私はド―パントとなったライザ―と戦う。

 

 堪え時ね。私もがんばる。だからみんなも・・・がんばって!!

 

 

SIDE 渡

 

 ゲームを観戦できる場所で僕たちは見守っている。

 

「ハル君・・・やらかしているねえ。」

 

 それでいて、ガイアメモリの存在も確認している。

 

「・・・あれは異世界からの物。災いをもたらす物。」

 

 それをオ―フィスちゃんはそのように表現する。

 

 異世界の物だというのか?あれが?

 

「ふむ・・そっちの君は何か知っているのかい?良かったら一緒にみようよ。」

 

「・・・あいつの関係者って普通の奴はいねえのか?」

 

 現れたのは帽子をかぶった男。

 

「だれにゃ?」

 

「私達を狙う敵?」

 

 黒歌さんとレイちゃんは警戒をあらわにするけど、会えて僕が手で制する。

 

「ガイアメモリについてしっているのかい?」

 

「それについては俺達が専門家みたいなものかな?」

 

 それだけで十分だったよ。君が何者かわかった。

 

 イッセ―繋がりだけあって、君もしぶといね。

 

「そう・・・。君があのハーフボイルドか?」

 

「誰がハーフボイルドだ!?って・・・お前・・・。」

 

 僕が言いたい事を察したのか、その男は僕の方を見る。

 

 僕は手を差し出す。

 

「もう知っていると思うけど僕の名前は紅 渡。よろしく頼むよ。探偵さん・・・いや翔太郎さん。」

 

『!?』

 

 皆は気付いていなかったようだね。

 

「・・・その名、イッセ―の話に出ていた・・・。」

 

「まさか・・・生きていたの?」

 

「悪魔の気配がする。多分・・・悪魔の駒で転生している。」

 

 オ―フィスちゃんの言うとおりだろうね。

 

 なら彼は一度死んで、そこから悪魔の駒で転生したということだろうね。

 

「聞かせてもらってもいいかい?イッセ―の友達として事情を知っておきたい。君の背後にいる魔王とも協力できるはずだから。」

 

「・・・ファンガイアの王子は恐ろしいな。独自の情報網をもっているのか?」

 

 一応、その手の情報は入ってくる。イッセ―君の話から過去に冥界で何が起きていたのかを一週間の間に調べていたんだ。

 

 そこである魔王眷族が一人増えたことを突き止めた。

 

 その名前を見て・・・流石に驚いたよ。その使い魔にもね。

 

―――――そっちは正体がばれちゃったか。でもちょうどいいのかもね。

 

 翔太郎の肩に止まっている蜘蛛型のメカが喋る。

 

 オ―フィスちゃんはその蜘蛛をじっと見る。

 

「お前・・・我と同じなのか?」

 

―――――ああ。その通りだ。安心して・・・君の事は口にしないでおくよ。

 

「・・・気づかい感謝。新しく生まれた同士として歓迎。」

 

――――それは嬉しいね。

 

 オ―フィスちゃんはどうも普通ではないらしい。

 

 何となく察しはついている。

 

 でも・・・そんな事は大きな問題には思えないけどね。

 

「事情を聞く前に・・・訪問者がいるみたいだね。」

 

 突然三台のバイクが結界を突き破って現れる。

 

 その内二台は無人。そして、一台には人が乗っていた。

 

 それが僕たちに向かって突進してきた。

 

「あっ・・・あぶな!!」

 

 とっさにオ―フィスちゃんを初めとする皆を庇う僕はそのバイクにはねられる。

 

「ぐあああああぁぁぁ!?」

 

『渡君!?』

 

「わっ・・・渡?」

 

 いや・・・痛いな。

 

「大丈夫。こう見えて僕も結構頑丈だから。」

 

 全身を震わせながら駆け寄ってくるオ―フィスちゃんに大丈夫とアピールして見せる。

 

「大丈夫か?」

 

 翔太郎さんも駆けつけてくれる。

 

 手に変わった銃を持ち、それを撃ちながらあいつらをけん制してくれた。

 

「他のみんなは大丈夫?」

 

 何とか立ち上がる。いや・・・全身がバラバラになりそうに痛い。

 

「あんたが大丈夫なら他の皆も大丈夫だから自分の心配をしておけ。」

 

 そしてバイクに乗って乱入してきた男と対峙する。

 

「邪魔はされたくないのですよ。」

 

 それは銀髪の男であった。顔は左半分が白、もう半分が黒の仮面で隠している。

 

―――――タブー。

 

 手には禁断のメモリ。

 

―――――ケツアルコアトス。

 

 もう一つはアステカ文明の龍神のメモリ。

 

 腰には・・・

 

「だっ・・・ダブルのドライバーだと!?」

 

 その二つを挿入するためのWの字をもしたベルトが付いていた。

 

 その傍らには・・・バイクから変化した怪物が三体いる。

 

「サイコロ―グ、少し手伝いなさい。」

 

『はっ。』

 

 それはコオロギ型のモンスター、サイコロ―グ。

 

「これは強いね。」

 

 仮面の男の実力は相対しただけで分かる。最上級悪魔クラスは確実だ。

 

 それに・・・あのモンスター。クレアさん達と同類の気配がする。

 

 その上・・・。

 

―――――マスカレイド

 

 十人の仮面をつけた連中も現れたのだ・

 

「どうするフィリップ?」

 

――――足止めか・・・しかし厄介なメモリを二つも持っている。

 

 翔太郎さんもドライバーを取り出す。

 

 それもまたWの字を模したものであった。

 

「ああ・・・厄介極まりないぜ!!」

 

「そう言う事だ。さて・・・。」

 

 後ろでは黒歌さんとレイちゃんもそれぞれ変身の準備をする。

 

「・・・キバット。」

 

 僕もキバットを呼び出す。

 

「変身などさせると思ったか。」

 

 だが、そこにサイコロ―グが高速で突進してきて僕を殴りとばす。

 

「ぐぼっ!?」

 

 すぐに体勢を立て直そうとして、あいつの顔面から無数の針が飛んでくる。

 

 それを避けようとしてあちこちに針が掠り、血が噴き出す。

 

 そこにあいつがまた高速突進。

 

 避けられない。

 

 そう思った時だった。

 

――――ブチ!!

 

 何かが切れる音と共に・・・突進をしかけようとしたサイコロ―グが吹っ飛ばされたのだ。

 

「いい加減にしろ・・・。」

 

 そして、僕の前にオ―フィスちゃんが立ちはだかった。

 

 その声は普段以上に淡々としていた。

 

 ふっ飛ばされたサイコロ―グは倒れたまま全く動かない。

 

 その姿を見た銀髪の男は・・・絶句している。

 

 ものすごく驚いていないかい?

 

 まるでいるはずのないとんでもない存在に遭遇したような・・・。・

 

「・・・どっ・・・どうしてあなた様がここにいて・・・いっ!?」

 

 あっ・・・あれ?

 

 オ―フィスちゃんから凄まじいオーラが感じられる。

 

「なっ・・・何で怒っているのですか!?」

 

 銀髪の男は明らかにうろたえている。

 

「渡に怪我させたな。」

 

 あれ?その・・・僕の事で怒っているの?

 

「・・・渡に・・・みんなに手をだすな。だしたら・・・。」

 

 すごく怒っていないかい?

 

 怒りだけでその場が局地的に揺れているよ。

 

「お前ら・・・消す。」

 

 いや・・・怒りだけで地震って起こる物なんだ。

 

「けっ・・・結界が悲鳴をあげているにゃ!?いっ・・・一体どんな力をもってしたらこんな事ができるの!?このままじゃ壊れるにゃ!!」

 

 黒歌さんの言うとおり、その怒りで結界に亀裂が入っている。

 

―――さっ・・・さすがは無限を司るだけのことはあるよ。途方もなさすぎる。

 

 彼女から感じられる力は本当に途方もない。

 

「もういいよ、オ―フィスちゃん。」

 

 本当にすごい存在なのは分かったよ。

 

「わっ・・・渡。」

 

 そんな彼女の頭をなでてやる。そうしたら怒りが収まった。

 

「こいつらは僕たちが倒すから。君が無理して戦う必要はない。」

 

「・・・・・・。」

 

 その言葉に、我に返ったのだろう。オ―フィスちゃんは少し声を震わせながら聞く。

 

「聞かないのか?」

 

「何をだい?」

 

「我が・・・何者なのかを。」

 

 ああ・・・そのことだよね。

 

「我・・・みなと違う存在。いや・・・異質と言う言葉でも足りないくらいに違う。」

 

 確かにあの力は普通じゃない。あいつらを怒りであらわになったオーラだけで黙らせるのだから。

 

 でもさ・・・聞かれたくないって思っているのだろ?

 

「聞かないよ。そっちが言いたいと思った時には喜んで聞くけど。」

 

 知りたいといったら知りたいとは思う。

 

 でも、それは無理して問い詰めるほど重要じゃない。

 

「・・・・・・渡、優しすぎる。」

 

「そうかな?」

 

 王族なのに甘いとは言われますけど。

 

「・・・うん///。」

 

 あれ?顔を赤らめましたけど・・・。恥ずかしそうに顔をそむけているし。

 

「ちょっ・・・お前・・どうしてその方と?その前にデレる姿なんて誰も見た事がないレアな表情を・・・。」

 

 銀髪の男がうろたえている。

 

 そしてマスクの男の一人がカメラを手に、彼女を激写している。

 

 あとで焼き増しもらおうかな。

 

「分かっているのか。その方はあの・・・。」

 

 そして何かを言おうとして・・・。

 

「黙れ・・・・。」

 

「ひっ・・・はっ・・・はい!!」

 

 オ―フィスちゃんの一睨みであっさり黙る。

 

 足がカタカタと震えているのか、うまく立てないみたいだし。

 

―――――同情はしておこうか。僕の同類の殺意を一身に浴びて気絶しないだけでも君は十分すごいよ。

 

「・・・お前の同類ってことは、まさか・・・・・・まじかよ。」

 

 翔太郎さんは何かに気付いた様子だね。

 

 その睨みに殺意すら感じたのは気のせいかな?

 

「わっ・・・私この子の正体何となくわかってしまったにゃ。」

 

「私もよ。ああもう・・・人外魔境がさらにひどくなっているわ。」

 

 黒歌さんとレイちゃんは何かを察したらしい。

 

「今更ながらだけど、渡さん。とっ・・・とんでもない存在と契約しちゃったのね。」

 

 なんかレイちゃんの声が本気で震えているよ?

 

「お願い・・・ある。」

 

 そんな二人にシュンと落ち込んだ様子のオ―フィスちゃん。

 

 その姿はどう見て年相応の子供にしか見えない。

 

 それを見て、二人は何かに気付いた様子だ。

 

「はあ・・・わかっているにゃ。だまってあげる。」

 

「見た目に騙されましたけど。黙ってあげます。」

 

「・・・二人とも感謝。」

 

 その言葉に今度は・・・花が咲いたような笑顔。

 

 普段は無表情な彼女。でもよほどうれしかったんだね。

 

 心が顔に出てきたよ。

 

『ぐっ・・・・。』

 

 その笑顔の破壊力・・・凄まじい。

 

 普段無表情なだからこそ、その笑みは宝物だと思えるわけで。

 

「・・・まさかあの方の笑顔を見る事になるなんて・・・。生きている事に感謝!!」

 

 あれ?またも仮面の男が写真を撮りまくっているし。

 

 なんかオ―フィスちゃんのファンクラブがいそうな勢い。

 

「・・・精神的には純粋な子供なんだってよく分かった。多分いまの姿が一番似合っているとおもうにゃ。」

 

「力にもだまされて、本質を見失いそうになったわ。ハル君の教えがここで役に立つなんて。」

 

 レイちゃんはハル君から色々と教えてもらっている。

 

 その中に物事の本質を見抜く大切さを合宿で話していたのを思い出したよ。

 

「その眼を当たり前のようにもっているのはイッセ―君、そして渡君だったね。」

 

 その中でその眼を養うなら僕とイッセ―君が手本になるって言うのだから困ったよ。・

 

 大した目じゃないけど、僕は彼女の事で知っていることは少しのことだ。

 

 彼女がどんな存在かはまだ分からないまま。

 

 途方もない力を持っている事もそうだ。

 

 でも・・・その心は、誰よりも純粋。

 

 そして、その心がいまみんなの交流を通じて成長しつつあることもだ。

 

 多分、これからどんどんと成長していくと思う。

 

 それを僕は見ていたい。

 

「・・・君を狙うのはやめておくよ。命がいくつあっても絶対に足りないのがわかったから。」

 

「賢明にゃ。」

 

 銀髪の男の言葉に黒歌さんは何故か納得。

 

「でも・・・一つだけ文句は言わせてくれ。君がこの方に変化をもたらしたおかげでこっちの組織が大変なことになっていることをね!!色々と無駄に可愛くなったおかげで、新たにオ―フィス派と呼ばれる連中が誕生したんだぞ!!」

 

 ・・・ファンクラブが本当にできたみたいだね。

 

「まったく・・・しかも魔王派と英雄派の中にも信者ができるし・・・こっちの連中にも混じっているようだしな!!」

 

 あの仮面男の一人もそうなのね。

 

「合言葉は「可愛いは正義。」ってふざけた連中がどんどん増殖しているのですよ!!その原因があなたなんですよ!?どうしてくれますか!?」

 

「へえ・・・よかった。」

 

 僕からしたらそれは嬉しいことだ。

 

「オ―フィスちゃんの理解者、大切に思ってくれる人が増えて嬉しいよ。」

 

『・・・・・・。』

 

 あれ?どうしたのかな?

 

「・・・・・・だめだ。あなたにはもう勝てない。どんな文句も肯定されてしまう。」

 

『はははは・・・渡君すごい。』

 

「あきれるほかないぜ。」

 

―――うむ。君も果報者だね。

 

「嬉しすぎる////。」

 

 また顔を真っ赤にさせている?

 

 またあの仮面の男は激写しているし。

 

「・・・もうどうにでもなってくれ。」

 

 それにため息をつきながら、銀髪の男は笑みを漏らす。

 

「でも・・・時間稼ぎ自体は終わった。目的は達したよ。」

 

「・・・なるほど。」

 

 してやられたよ。介入のために向うから手を打っていたなんてね。

 

 

 

 




 オ―フィスちゃんの回だったと思ったこのころ。

 翔太郎の事情も・・・むちゃくちゃかもしれませんが、悪魔に相乗りした結果、この世界で彼は悪魔になってしまったという何とも言えない状態になっております。

 介入者は二体。

 それぞれとんでもない連中です。


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二人の介入で終わるゲームです。

 戦いは駆け足になってしまってもうしわけないです。

 ですがレ―ディングゲームそのものはこの話で終わらせます。

 一人・・・酷い目にあうキャラが出ます。


 SIDE イッセ―

 

 さて・・・今俺達はひどいことになっている。

 

 二体のド―パントはそのままじゃそんなに強いとは思えない相手だった。

 

 T-レックスは頭がでかすぎるし。噛みつきさえ気をつければ行動はワンパターンで読みやすい。

 

―――Sword Vent!!

 

<BOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!>

 

 倍化の力をためながら攻撃を避け・・・。

 

 手にしたドラグセイバーで細かく切りつけダメージを蓄積させていく。

 

「ちぃ・・・。ちょこまかと・・・。こいつはテクニックタイプか?」

 

「残念。俺はテクニックタイプじゃねえ。」

 

 そして、ためた力を・・・。

 

―――――Starkc Vent!!

 

――――Transfer!!

 

右腕に召喚したドラグクロ―に譲渡。

 

『Dorgon fire break!!』

 

「ぐがあああああぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 大爆発と共にふっ飛ばす。

 

「俺は・・パワータイプだ!!」

 

 皆言うに、俺は典型的なパワータイプらしい。もっともテクニックもアギトの本能などで補われている故に、一概に言えない部分もある。

 

 変身しなくてもスペック的に反則的な要素が多すぎるって小猫ちゃんがいっていたな。

 

 トライケラトップスは打たれづよさとパワーを併せ持ち中々のものだったが・・・。

 

「ふん!!」

 

 小猫ちゃんの目のも止まらぬ速度からの拳に後ろに下がり、ハルの手にしたソードガンからの銃弾の連射にぼこぼこ。

 

 そこまではよかったんだ。

 

 そう・・・。

 

 その後、とんでもない事が起きた。

 

「やってくれる。」

 

「だったら・・・こっちも遠慮はしないぞ。」

 

 二体が巨大な恐竜になりやがったんだ。

 

 T-レックスはそこらへんの体育館の瓦礫を集めて体をつくり、巨大な頭がそのままくっつく形で巨大な恐竜に。

 

 トライケラトプスの体はそのまま巨大化して、まんまトリケラトプスになりやがった。

 

「おい・・・そんなのありか!?」

 

 巨大化した二体が襲いかかる。

 

「うぃー・・・これはすごい。」

 

「魔化魍戦を想定した修行・・・役に立ちそう。」

 

 二人は前向きだけど。

 

 

 

 SIDE 木場。

 

 ガイアメモリ。話に聞くに、地球全体をサーバーとして、その情報から生まれるメモリらしい。

 

 そして相手は拳の記憶。

 

 なるほど、戦車で格闘家の彼女には相性抜群ってわけだ。

 

「ちい・・・なんて奴だ。」

 

 ネロ君の剣と僕の剣を同時に受け止めるほどの技量が彼女に付加されている。

 

 何しろ手が二本から八本へと増えているのだ。

 

 しかも一つ一つが自在に巨大化する。

 

「ふふふははは・・・いいね。強いよ君達!!」

 

 僕とネロ君の二人の剣を同時に捌くなんてすごい。

 

 その拳は弾幕といっていい。

 

「なんか・・・あいつを思い出す厄介さだ。」

 

 ネロ君はどうも圧倒的な技量を持つ相手と戦った経験があるみたいだ。

 

「だったら・・・どうする?」

 

「・・・流れを変える。」

 

「わかった。」

 

 僕は剣を捨てる。

 

「剣を捨てるのか?その剣がお前の神器じゃ・・・。」

 

 イザベラさんの疑念はもっともだよ。

 

 僕の手に新たな剣が生まれる。

 

「剣が精製されただと?」

 

「僕の神器の名前は魔剣創造(ソード・バース)。色々な属性や特性を付加させた魔剣を作り出すことができる。」

 

 この神器はイッセ―君の幼馴染達と出会ったことでさらに強化された。

 

「いくよ。」

 

 生み出した剣はネロ君の剣。レッドクイーンを参考にしたもの。

 

 つまり・・・・。

 

 持ち手のアクセルを回し・・・剣から爆音が鳴る。

 

 この剣はイグシードシステムが付いている。

 

 それは剣その物が加速するという普通なら可笑しいと思うシステム。

 

 でも暴れん坊ながらもこの剣は面白い。

 

 うまく使いこなせば僕のスピードと剣の重みが飛躍的に増す。

 

 思い切り加速された剣撃を繰り出す。

 

「ぐっ・・・重いっ!?」

 

 そこにサイガ君仕込みのあの技も付加して。

 

―――――大地斬!

 

「ぐがっ!?」

 

 イザベラの手が粉々に砕け散る。

 

「だったらこれで!!」

 

 イザベラは無数の拳を召喚し、それを僕に向けて飛ばす。

 

 数は多く、とても避けられない。

 

 だが、そこに爆音と共にネロ君がレッドクイーンを振るう。

 

―――――海波斬!!

 

「ぐううう!?」

 

 嵐の様な一撃に短剣はすべて落とされ、その衝撃にイザベラも下がる。

 

「まだ甘いよ。」

 

「ちぇっ・・・剣撃の加速がうまく乗せられなかったぜ。」

 

 そもそも剣その物をイグシードシステムで加速させながら、高速で剣を振るう。それをぶっつけ本番でためそうという発想その物が可笑しい!!

 

 普通に振るえば出来る技何だし。

 

 まあ・・・あれだけの衝撃波の嵐が出たのならあながち失敗とは言えないけど。

 

 今回、ネロ君は悪魔の腕の力その物も封じている。あれもあれで結構ややこしい事情がある故にだ。

 

 部長はあえて止めたのだ。スパーダの血族だと聞いて。

 

 まさか・・・五大魔王の一人と血縁関係があるなんて本人も想像もしていないはずだし。

 

 知り合いの可能性はあるけど・・・。

 

「今後の課題か。」

 

「強い・・・本当にお前ら強いな。だが、惜しいのはお前達・・・本当の意味で全力じゃないという事か。」

 

「・・・ちぇ。気付いていやがんな。」

 

 彼女・・・ガイアメモリ無しでも十分強いようだ。

 

 戦いの中で僕たちの潜在能力に気付いている。

 

「こっちも色々と事情がある。」

 

 こっちのオルフェノクの力とネロ君のスパーダとギルスの力を全開にしたらおそらく瞬殺できる。

 

 でも、それができないから苦労している。

 

 どっちも隠しておきたい力であるからだ。

 

「そうか。なら・・・今のお前達の全力を見せてみろ!!」

 

「そうさせてもらうぜ!!」

 

 ネロ君がこっちに視線を合わせる。手には魔力をチャージした銃がある。

 

 分かった。合わせるよ。

 

「うけとれやあああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 ネロの銃から放たれた巨大な魔力弾。

 

「おおお・・・これはまた。すごいものだな。」

 

 それを巨大化させた拳で殴り飛ばそうとするが、その瞬間に大爆発を起こす。

 

「ぐっ、ちい・・・。」

 

 ネロ君のそれは命中と同時に爆発する。

 

 その爆炎を突破するように僕たちは剣を逆手に持ってかけていた。

 

「見せてやるよ。」

 

「まだ空波斬はできないけど。」

 

 僕たちはイグシードシステムによる加速を利用して、高速で迫る。

 

「こっ・・・この剣は!?」

 

 僕たちは同時に繰り出す。

 

 イザベラが巨大化した拳を使ってそれを防御しようとするが・・・それこそが狙い目。

 

 僕たちはサイガ君から教えてもらったあの技を繰り出す。

 

 空は極めていないのでまだ完成していない剣。

 

 でも、イグシードシステムを利用してそれを補う。

 

 ――――――アバンストラッシュ!

 

 そして、二つの剣撃を交差させることでその破壊力は一気に十倍以上になる。

 

 かつてサイガの父が単独で行ったという奇跡の様な必殺剣を僕たちはタイミング合わせて放った。

 

―――――――アバンストラッシュX

 

「ぐぐ・・・があああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

 その一撃はイザベラの拳を粉々に打ち砕き、身体を十字に切り裂く。

 

 イザベラの身体が元に戻っていく。

 

「みっ・・・見事。次会う時は是非・・・本当の全力。こっちも強くならねばな・・・。」

 

 イザベラはそう言って気絶。リタイアシステムにより姿を消す。

 

「・・・はあ。厄介な相手だったぜ。」

 

 ネロ君の言いたい事はわかる。本当の意味で彼女は強かった。

 

 そして、また本気で戦いたいと言ってきた以上・・・前より強くなってまた現れそうで。

 

「お疲れ。イッセ―君達の手伝いを・・・て・・・。」

 

 巨大な恐竜二体に苦戦していると思われるイッセ―君達。

 

『はい!?』

 

 だが、彼があまりに予想外なことをしでかしていた事に僕たちは目を丸くしていた。

 

 

SIDE イッセ―

 

 まじでやべえ。

 

 でかい、速い。それだけでここまで厄介とは。

 

「ちょこまかと動くな!!」

 

―――――アギトの本能は便利だものだ。あいつの攻撃を一応だが見切っているぞ。

 

 ドライク。ほめてくれてありがとう。

 

 だが・・・怖い事に変わりはねえよ。

 

 鋼兄の修行は攻撃をギリギリまで引き付けてみろというものだった。恐怖に耐え・・・ギリギリまで引き付ける事がアギトの本能を呼び覚ます鍵となったのだ。

 

 本当に怖かったぜ。

 

――――あれのおかげで、精神的にもタフになったわ。そう言った意味でも成長したわね。

 

 でもだ。あの攻撃も見切ってかわすのは神経が削られる。

 

 あの俺様師匠の事を思い出すよな。

 

 師匠って言っても料理なんだけどな。

 

 非常にグルメな食いしん坊ドラゴンとなったドライクのために料理スキルを上げようと思ったんだ。

 

 その際に出会った師匠なんだ。

 

 何故かついでに格闘の心得も教えてくれたんだ。

 

 師匠はカウンタータイプだった。ギリギリで避けながら最低限の動きで攻撃を叩き込む。

 

 その見切りは中々できなかった。

 

 いまは自然と出来るのが信じられないねえ。

 

「おばあちゃんは言っていた」から始まる格言の中にあったな。

 

 いまは出来なくても経験を積めばできるようになるって。才能が応えてくれるって。

 

 まさにその通りになったあたり、あの俺様師匠は本当に俺の師匠だ。

 

 そのおかげでこうやって攻撃を見切って交わす動きも様になってきたぜ。

 

 それでも怖い事に変わりはねえ。

 

 カウンターを叩き込みたくてもあの身体じゃ効果はねえし。

 

 あの身体コンクリートや鉄骨を纏って作っている。固すぎる。その上。その一撃をまともに受けたらそれだけで終わりだ。

 

 まるで服みたいに纏いやがって。厄介すぎるぞ。

 

・・・あれ?服?

 

「・・・・・・もしかしたら。」

 

――――――相棒?

 

――――――何を閃いたの?

 

 やってみるか。

 

 俺は・・・俺の煩悩を信じる!!

 

「行くぜドライク!!」

 

<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!>

 

 赤龍帝の篭手に力を集中させ、瞬時の倍化を行う。

 

――――あっ・・・相棒!?禁手化しないでそのような芸当を!?

 

 アギトの力に目覚めた結果だ。神器の力を意図的に上げる事ができるようになったぜ。

 

 気付いたのはいまだし、瞬時にできる倍化は六段階までだけど。

 

――――ドライク。やっぱり私達の推測はまちがっていないようね。

 

―――――そのようだな。おそらくはあのドラグブラッカ―の件ですでにあいつは。

 

――――Explosion!!

 

 そして、その力を解放させる。

 

 行くぜ・・・俺の必殺技。

 

「燃え上がれ俺の煩悩!!その欲望・・・解放させてもらうぜ!!」

 

 妄想全開にして俺はあの恐竜にタッチ。

 

 脳内にはド―パントになる前の可憐な姿。その全裸を妄想したぜ!!

 

『洋服破壊<ドレスブレイク>』

 

 それをカウンター代わりに叩き込んで、実現させてみる・・・っておいおいおいおいおい!!!

 

「うっ・・・嘘!!?」

 

 なんと変身がとけてしまったじゃありませんか。

 

 恐竜の身体もはじけ飛び、恐竜の頭の姿をした体も消えちゃって・・。

 

――――――・・・・・・。

 

――――――・・・・・・。

 

 もちろん全裸は脳内メモリに保存しましたよ。でも・・・ガイアメモリまで排出させて、壊しちゃった。

 

「どっ・・・洋服破壊で・・・メモリブレイク・・・。」

 

―――――助平根性恐るべし。

 

―――――私の想像・・・越えたわ。

 

 いや俺も流石にここまで効果が抜群とは。

 

「・・・・・・。」

 

 この時点で変身した彼女は戦意喪失しちゃっているよ。

 

―――――――ビック

 

「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 唖然としている中、ハルの野郎が指輪の力で右手を巨大化させて、トライケラトップスの頭をわしづかみにしていた。

 

 つかみながら驚いている。

 

「信じられない。あんな卑猥な術がここまでの効果を発揮するなんて。」

 

「はっ・・・離せ!!いっ・・・いや離してくださあああぁぁぁぁぁい!!」

 

 トリケラトップスの頭ってすごく頑丈だよな?

 

 それが握力でみしみしと悲鳴をあげ、亀裂がはいっているし。

 

「ぐぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 あっ・・上の角が二本折れた。

 

 鼻先の角も折れた。うわ・・・痛そう・・・。

 

 そんな事を全く無視しながらあいつは考え込んでいるし。

 

「・・・うん。決めた。この件が解決したらその魔法を指輪にしてみよう。あとでデータをとらせてほしいって・・・。」

 

 そして、改めてトリケラトプスを見て・・。

 

「おっと、すまない。驚きのあまりに力が入り過ぎたよ。」

 

 そう言って、ぽいっと投げ捨てるし。

 

「しっ・・・死ぬかとおもった。」

 

 あの巨体でも死ぬかと思うほどなのか?

 

「そんなわけないだろ?」

 

 ハル。はっきりいって説得力はないぞ。

 

「味方には最期の希望。敵には最悪の絶望を与える魔法使いに決定。」

 

「おいおい、なんてことをいう?」

 

 いっ・・いや小猫様の言うとおりですよ?

 

 味方になると本当にこの上もなく頼もしいけど、敵に回したら地獄を見る。

 

「ぐうう・・・こっ・・この女の敵が!!お前が悪いのだな!」

 

 しかも怒りが俺に向けられている!?

 

 そっ・・そりゃ仲間にしたのはおれだけど。

 

<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!>

 

 仕方ない・・・もう一つの切り札をここで斬らせてもらうぜ。

 

 倍化も十分たまったしな。

 

「ハル!!小猫ちゃん!!受けとれ!!」

 

――――Transfer!!

 

 両手に赤いエネルギーの塊のような物を作り出し・・・それを二人に向けて投げる。

 

 二つは誘導するように激しく動き回る二人に吸い寄せられ、力は譲渡される。

 

「ふふぁああぁぁぁぁ・・・力が?そっ・・・その前にすごくううううあああああぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「こっ・・・この言いしれない快楽・・・癖になりそうだよ。なんて事をしてくれるんだ?!」

 

 なんか二人ともすごく気持ちよさそうな声をあげて震えていますけど?

 

―――――あっ・・・相棒!?何だ今のは!!?

 

 ドライク。驚くのは分かる。

 

 可笑しいな。譲渡って普通直接触らないとできないはずだったよな?

 

 離れた相手にも出来たよ。何となくできる気がしていたけど。

 

―――――アギトの力か。凄まじい進化ね。この様子だと私の力にも影響が出そうね。

 

「でも・・・でもこれならいける。」

 

 小猫ちゃんに向けて突進してくるトリケラトプス。

 

 それを真正面から拳で迎え撃つ暴挙。

 

「ぐががががあああああぁぁぁぁ!?」

 

 でも吹っ飛んだのはトリケラトップスの方で・・・。

 

『うそ!?』

 

 凄まじい強化具合。

 

 そこにハルの手にした銃剣からの砲撃が重なる。

-

―――――シューティングストライク。

 

 それが命中してさらにふっと飛ぶ。

 

 グランドに転がるトリケラトプス。

 

「・・・はあああぁぁぁぁぁ!!」

 

 手に黄金の炎を纏わせた小猫ちゃん。

 

「フィナーレだ。」

 

――――――キックストライク!

 

 ハルも指輪の力で足に炎を纏わせる。

 

 トリケラトプスが立ち上がってそれを迎え撃とうして・・・。

 

「させません!!」

 

 小猫ちゃんが地面をおもいきり踏んで、地割れが生まれた。

 

そこに足がはまってうごけなくなったよ。

 

 踏むだけで地割れって・・・鋼兄のしでかしそうな技を小猫ちゃんがしでかしましたよ?

 

 鋼兄・・・しっかりと小猫ちゃんを鍛え込んでいるな。

 

 ツッコミの威力が増してこっちの被害がまた甚大になりそうだ!!

 

 動けなくなったあいつに向けて二人の必殺技が命中。

 

 グランドで大爆発が起きて、トリケラトプスが消えたよ。

 

 変身していた人も完全に気を失ってリタイアシステムで回収。

 

「・・・・・・イッセ―君って本当に何をしでかすのか読めないね。」

 

 木場の方も片付いたようだな。しかし・・・なぜそんなにも呆れかえっている?

 

 まるで驚きを通り越したような。

 

「助平根性・・・これから侮らないことにするわ。」

 

 ネロの言葉に皆頷いている!?

 

 そんな時だった。

 

 学校の校舎の屋上で大爆発が起きた。

 

『!?』

 

 俺達は部長の元に合流することにした。

 

 だが・・・その行く手を阻む者があらわれる。

 

「わりぃな・・・ここから先は通行止めなんだよ。」

 

 それは赤に金色の混じった服を着た男だった。

 

「・・・ファントム。」

 

 ハルは苦虫をつぶしたような顔でそいつを見る。

 

「俺の名はフェニックス。さあて・・・お前らがどんだけ強いのか確かめさせてもらうぜ。」

 

 そうか。こいつがファントム。

 

「・・・なるほど。ハルと似た力を感じるわけだ。ということは・・・。」

 

 ネロはある事に気付いた様子だ。

 

 そして、いままで気付かなかった事が悔しいのか舌打ちをする。

 

「チィ・・・このフィールドにハルとレイちゃんを除いて、ゲートが三人もいるってわけかい。」

 

 それは衝撃の言葉であった。

 

『なっ・・・なに!?』

 

 その言葉にフェニックスも含めて全員驚いている様子。

 

「へえ・・・二人はターゲットなんだが、もう一人いるのか。あとで教えてくれないか。そいつも絶望させて俺達の仲間に・・・。」

 

 奴の言葉はそこで止まる。

 

「させると思ったか?その一人は・・・大切な人なんでね。」

 

 ソードガンを持ったハルによって。

 

 その顔には明らかな怒りが宿っていた。

 

「ちい・・・グレモリ―眷族内にいるってわけか。おもしれえ、だったら力づくで聞きだしてやるよ。操「魔」晴人。」

 

 その名前にハルが驚いている。

 

「なんでその名前を・・・っておまえまさか・・・。」

 

「そうだよ。あの時はよくも太陽にぶっこんでくれたな。お返しさせてもらいたくて、この世界で復活したんだよ。」

 

 あの世界って・・・ハル。お前はまだ何かの秘密を?

 

「本気を出せない状態でどこまれやれるかな?」

 

 フェニックスの姿が怪人へと変わる。

 

 赤と金色の身体を持つ怪人へと。

 

「一人だったらそうだろうね。」

 

「楽しいパーティの始まりってわけだ。」

 

 木場とネロが剣を構える。いや・・・本当に息があっている。

 

「まあ・・・お前の背負っている物はまだわけんねえが、手伝わせろや。」

 

「みんな仲間。」

 

 はあ・・あいつはまだ何か背負っていやがんな。俺も人の事は言えねえが、

 

「イッセ―君。小猫ちゃん・・・。」

 

 ハルは気分を落ち着かせるために息を吐く。

 

「手伝って。あいつを突破して部長達の応援に行くために!!」

 

「あったりめえよ。クールになってきたな。」

 

「冷静さは大切だよ。」

 

 ネロ君・・・木場君。

 

「僕たちの邪魔をした事を最高に後悔させてやろうか。」

 

 ハルは微笑むがそれが・・・自棄に怖かった。

 

「へっ?」

 

「さあ・・・絶望へのショータイム開始だ。」

 

 ハルの言葉にフェニックスは思い切り戸惑っている。

 

「ちょっと待て!!この世界のお前・・・何か変だぞ?絶望って・・・・。」

 

<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!!>

 

「一気に決める。みんな受け取れ!!」

 

 ――――Transfer!!

 

 俺はみんなに話している間に限界まで高めた力を譲渡!!

 

 四つの力の塊がみんなに体の中にはいる。

 

「うおおおおおこっ・・・これはすげぇぇぇぇ。」

 

 ネロの奴はデビルトリガ―を発動させていないのにもかかわらず目が赤く輝き蒼いオーラを纏い始めた。

 

「たっ・・・たしかに。力が・・・力がみなぎるよ!!」

 

 木場の周りには無数の剣が一気に現れる。

 

「またこれを味わえるなんて・・・うわ・・癖になる。」

 

「ふあああぁぁぁぁぁぁもうっ・・・快感すぎて・・・。」

 

「へっ、ちょっ・・・お前ら・・・?」

 

 みんな力を増強をしたところで行きましょうか。

 

「絶望がお前のゴールだ。」

 

 ネロがレッドクイーンを吹かせながら言ってのける。

 

「いやいや・・・さあ・・ショータイムだ。絶望、いや新しい世界へのね。」

 

「一体この世界のお前になにがあった!?なんでそんなにドSになっていやがる!?」

 

「生まれた家のせいかな?まあ、些細なことだよ。」

 

「全然些細じゃねえ!!一体どんな家に生れたらそんなふうになんだよぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 フェニックスの動揺は最高潮に達しているよ。すごく混乱して、絶叫していやがる。

 

「さあ・・・改めてショータイムだ。」

 

「別名フルぼっこタイム。」

 

 またまた小猫様の言うとおりでございます。

 

「ちょっ・・・まっ・・・待て・・・頼むからまってくれ・・・。」

 

「問答無用。」

 

 心なしか小猫ちゃんのセリフも過激になってきたよ。

 

『ついでにいうなら手加減も無用!!』

 

 皆・・・全力全開もとい・・・。

 

『全力全壊で行かせてもらう!!』

 

「ぎゃああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 あいつの悲鳴は・・・聞こえないふりをする!!

 

 

side リアス

 

 屋上での大爆発は私達の方にも届いていた。

 

「やってくれるわね。フェニックスの涙が無ければ私のまけでしたわ。それに・・」

 

 ライザ―の女王ユーベル―ナが姿を変えた状態で私達の傍に降りてきた。

 

――――――ボム。

 

「よくも私にこれを使わせましたわね。」

 

 それは爆発の記憶のガイアメモリによる変身。

 

 赤と灰色の身体に、手に杖を持つ。頭は爆発を象徴するようなキノコ型のヘルメット。そこから長い髪が流れているという形である。

 

「他のみんなもまとめて・・・・・・。」

 

「感謝するわ。アーシアちゃん。」

 

 でも、さすがに驚いたでしょね。

 

 爆発に巻き込まれたはずの朱乃がアーシアちゃんの傍にいるなんて。

 

「なんで!?確かに爆発に巻き込ませたはずなのに・・・。」

 

「こういう事ですわ。アーシアちゃん。」

 

「はい。2人まとめてグランド上空に!!」

 

 その言葉と共に・・・朱乃とユーベル―ナはグランドの上空に飛ばされた。

 

 あとは任せるわよ。

 

「なっ・・・ななな・・・。」

 

「テレポテーション。万能すぎるわね。」

 

 アーシアちゃんのテレポテーションは一定範囲内なら自在に対象物を飛ばしたり、引き寄せたりできる。

 

 敵味方関係無しにだ。

 

 情報はテレパシーなどで把握している。

 

「それで私の攻撃から逃れたというのね。面白いわ。でも・・・。」

 

「こっちも切り札をつかわせてもらいますわ。」

 

 朱乃が指輪を取り出す。

 

―――――コピー。

 

「へっ?」

 

 その言葉と共に朱乃が二人に。

 

 分かれた朱乃がさらに指輪を使う。

 

――――コピー。

 

「ちょっ・・・そんなのあり!?」

 

 朱乃が四人・・・いえもう一度使って八人になったわ。

 

『ふふふふ・・・あなた達だってフェニックスの涙やガイアメモリを使っているのですからこれくらい問題ないですわ。』

 

 朱乃・・・反撃開始ね。

 

―――――ビック

 

 指輪であの子、手にした鞭を巨大化した状態で打ちつけてきたわ。

 

 それも八つ同時に。

 

「ひっ・・・ぎゃあ・・・やっ・・・やめて・・・・・・。」

 

 しかも絶妙な加減でうちまくっている。

 

「あっ・・・ああ・・・・・・。」

 

 なんか彼女が恍惚とした声を上げ始めたわ。

 

「八人に増えると簡単ですわ。」

 

 朱乃、調子があがっているわ。

 

「そらそら・・・もっとしっかりとしつけてあげますわ。」

 

「ハッ!?・・・わっ、私は犬じゃないわ!!」

 

 目の前に爆発を起こし、それを目くらましにしてユーベル―ナは下がる。

 

「危なかった・・・目覚めてはいけない何かに目覚めそうになった。一度退くわ。」

 

「あらあら、もう少しでしたのに。」

 

 私が言うのはなんだけど・・・退いて正解ね。

 

 私はライザ―とガチで戦っているわ。

 

「ぐっ・・・お前ウィザードタイプだったよな?」

 

「ええ。」

 

 ライザ―は私を簡単に屠れると思ったはずよ。

 

 少なくとも前の私なら簡単にやられていたわね。

 

「なんで格闘が馬鹿みたいに強くなっていやがる?」

 

 でも・・・今の私、私、接近戦でも少しは戦えるの。

 

「がば!?絶・・・絶対少しじゃねえ。こんなの一朝一夕で身につくようなものじゃ・・・。がばろ!!?」」

 

 綺麗に滅びの魔力付きのパンチが決まったわ。拳を痛めないように手袋はつけているけど、良い感じだわ。

 

「ぐっ・・・。」

 

―――――検索させてもらったけど、カ―ミラの力を使いこなすために格闘もならっているのだね。

 

 先生になってくれた鋼鬼さんと渡君に感謝だわ。

 

 兄様は格闘も強いからこっちもやってみて問題ないみたい。

 

「ぐうう・・・やってくれる。がば!?」

 

 綺麗な回しけりも決まったわ。うん・・・よしよし。

 

 素人より強く、本格的なファイタ―タイプには負ける程度かな。

 

―――――カ―ミラの力を使う決意を固めてからいままでの努力がさっそく出ている。

でも気をつけて欲しい。彼の持っているメモリは少々厄介だ。

 

「ちい・・・だったらこれをつかってやる。」

 

――――ナスカ・・・。

 

 ライザ―がガイアメモリを使おうとする。でも・・・

 

「させません!」

 

 それを察したアーシアのサイコキネシスが腕を止める。

 

「ちいいぃぃぃ・・・まっ・・また邪魔を・・・。」

 

 アーシアちゃんのサポートは完璧に近い。

 

「ぐっ・・・おっ、お前ら・・・。」

 

 ライザ―が連れ来た他の四人を見るけど・・・。

 

「ぐあ!?」

 

「ぐう・・・。」

 

 バイオレンスとメタルが吹っ飛ぶ。

 

「どうした?まだまだこっちは行けるぞ。」

 

 鋼鬼さんが悠然と歩いていく。

 

 そんな鋼鬼さんにバイオレンスは鉄球で殴りかかり、それを顔面に受ける。

 

 顔面から軽く血が流れる。

 

 それでも不敵な笑みを浮かべている辺り・・・どういう体をしているの?

 

「その程度か?」

 

「ぐっ・・・まったくきいてねえ。」

 

 逆に拳で殴りとばしたわよ。

 

 その後ろからメタルが棒で突きにかかるけどそれをしたから掬いあげて逸らし、そのまま後ろへと投げ飛ばす。

 

 鋼鬼さんを前後に挟んだ二人はそのまま挟み撃ちにせんと一斉に攻撃をしかけようとするけど、それに対して床に手を当てて・・・。

 

「ふん!!」

 

 床をまるで畳がえしのようにめくりあげた。

 

 それに乗り上げた二体が打ち上げられ、落ちて行く二人を鋼鬼さんはまとめて殴りとばす。

 

 二人がかりなのに、いいようにあしらわれている。

 

「くそ・・・なんだこいつは!?」

 

「鬼に変身していないのに二人で圧倒するところか、一方的に・・・。」

 

「お前ら鍛えが足りん。いい機会だ。しっかりと鍛えなおしてやる。」

 

『ひいいいいいいいいいぃぃぃぃぃ!!』

 

 変身しなくてあれなのね。

 

「なんだ・・・あいつは!?」

 

「まだまだ調べが足りないわね。肝心な部分を知らないじゃないの。彼・・・私のいとこと真正面から互角に殴りあった仲よ。」

 

 私の・・・報告が本当なら鋼鬼さんと互角の怪物になっているであろう、サイラオークの名前をだす。

 

「まさか・・・次期大王のあいつとか!?」

 

 やっぱりそこは知らなかったみたいね。素でも彼は強すぎるのよ。

 

 サイガ君の方はと・・・。

 

「よっ、とはっ・・・と!!」

 

――――メラミ!!

 

 手から火炎球を飛ばすが、ヒートがそれを簡単に薙ぎ払う。

 

 そこに剣を逆手に持って斬りかかるサイガ君。

 

 その剣撃に怯むヒート。

 

 背後からカメレオンド―パントがいきなり現れて舌を伸ばそうとするが・・・。

 

――――ライデイン

 

「があああぁぁぁぁ!?」

 

 突然落ちてきた雷が命中して攻撃が中断された。

 

「すっ・・・隙がない。」

 

「不意を突いたはずなのにどうして!?」

 

 サイガ君はとんでもないテクニックタイプね。魔法と剣を途方もないくらい高いレベルで両立させている。

 

「魔法剣・・・。」

 

 そして、彼の手にした剣が冷気を纏う。

 

「氷結海波斬!!」

 

 凍結の衝撃波が二体を切り裂くと同時に凍らせる。

 

 と言うより・・・魔法剣ってなに?魔法と剣の組み合わせってすごいわ。

 

「魔法まで使うのか。」

 

 魔法に関しては使えるのは知っている。でも・・・剣を組み合わせて使えることはさすがにしらなかったわ。

 

 一体どれだけの力を彼は隠し持っているの?

 

 まだまだとんでもない何かを秘めていそうで怖いわ。

 

「ちい・・・まずい。」

 

 はっきり言って私達が優勢である。

 

 王同士の戦いも、互角以上にもっていけている。

 

 私は皆を信じた。

 

 そして、皆は傷つき倒れても自分のために戦ってくれると誓ってくれた。

 

 だから、私はこうやってみんなのために堪え・・・そして戦える。

 

「投了するならいまの内よ。」

 

 このままいけば勝てる。

 

 そう思っていた。

 

――――――おやおや・・・仕方ありませんね。ここであなた方に負けられるのは計画に支障がくるので。

 

 変な男が現れた。

 

 それを見たアーシアの表情が一気に変わる。

 

「リアス姉様!!逃げてください!!その男は危険です!!」

 

 それは彼女のアギトとしての直感なのだろう。

 

――――――君がこの世界にいるとは思いもしなかったよ。あの陽動のおかげでこっちも気付けなかった。

 

 コウモリ型の機械はその男を知っている様子だった。

 

「一応眷族登録しているのでね。うまくすり変わっただけですけど。」

 

―――――井坂・・・。君の様な怪物がこの世界に。

 

 その手には・・・ガイアメモリ。

 

 字は・・・W

 

――――ウェザー。

 

 そして、男は白いド―パントへと姿を変えた。

 

 次の瞬間・・・

 

 原因不明の災害が起きた。

 

 凄まじい竜巻、そして無数の雷。

 

 それがこの戦いの終わりを告げた。

 

 私は巻き起こる嵐にのまれ、そのままリタイアしてしまったのだった。

 

 

 




 本当の戦いはこの後の例のイベントで起こします。


 みんな・・・本気を出します。

 介入者達の目的もそこで明らかにする予定です。

 フェニックスに関しては・・・ご愁傷さまと言ってあげてください。



 本日の更新はここまでにします。またよろしくお願いします。 


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花嫁をさらいに来ました!!

 いよいよ、本番。

 式場がとんでもない戦場になります。

 イッセー・・・大爆発を起こします。


SIDE ???

 

 計画は順調。フェニックス家を勝たせることに成功。

 

 おまけに、その際にジャミングもかけて、観客がライザ―の強力な攻撃で勝ったとうまく錯覚させることもできた。

 

 これで・・・舞台は整った。

 

「ヒイィィィィ・・・もっ、もうあいつらとは戦いたくねえ!!」

 

 計算外は・・・不死身のフェニックスが再起不能であることだ。

 

 不死身なのにどうした?

 

「もうやめてくれお願いだからやめてくれお願いしますお願いします不死身なのに・・・不死身だからって・・・死なない程度・・・最大限に苦痛を伴うリンチはやめてくれえええええええええぇぇっぇぇぇ!!」

 

「・・・・・・。」

 

 どうも体が不死身でも心に深い痛手を負ったようだね。

 

「しっかりしなさい。あなたは本気を出す前にやられただけ・・・。」

 

 私は一応医者なのでね。カウセリングぐらいはしておこう。

 

 彼がどんな目にあったのかは一応だけど知っている。あの赤龍帝の譲渡の力で大幅に力を増した連中による無限コンボ的なフルぼっこ。

 

 効果が切れる前に瞬時倍化による譲渡を繰り返し・・・十分ほど、息もつく間もないほどの無限コンボを喰らい続けていたのだ。

 

 メンバーの中には彼の特性・・・死ぬたびにその攻撃に耐性を得たうえで強化されて復活することをよく理解したものがいた。

 

 理解していた故に・・・死なない程度に痛めつけ続けたのだ。

 

 人間の発想とは思えないえげつない攻略方法。こちらもそんな方法を思いつきもしなかった。

 

それをされたらたまったものじゃない。

 

 おかげでフェニックスの心が完全に折れたよ。

 

 でもそのおかげで、何とか足止めできた。

 

 あんな連中。こっちだって相手にしたくありませんし。

 

 この身体でも・・・きつすぎる。

 

 その自己犠牲的な働きに報いる事はしないと。

 

 その痛みに対する同情と共感を引き出してからかな?

 

「ユウゴ君も情けないねえ。心を折られちゃってさ。」

 

 そこにソラと言う男まで現れた。ノリは軽いが彼は相当な策士である。

 

「こっちの世界の君なら今度こそ話があうかも・・・ってむりか。」

 

「・・・君も手伝ってくれるのだろ?」

 

「そうだね。そろそろハルトと再会の挨拶をしたかったし。ちょうどいいよ。」

 

 彼は本当に頼りになる。結構気が合うのだよ。本当に色々とな。

 

「君に計画を任せたのは正解だったね。井坂君。」

 

 そんな私に主と言える男―――オーバーロードが現れる。

 

「いえいえ。私を蘇らせ、新たな力を与えてくれたあなたに対する礼にはなりませんよ。もっとも・・・力をつけすぎたらどうなるかわかりませんけど。」

 

 元々持っていたウェザーのメモリ。

 

 それにある力が追加されていた。

 

 それはアップグレードのアダプター。

 

 そしてもう一つのメモリそれはZのメモリである。

 

―――ズ―

 

 それに加えて私の体は人ではなくなった。

 

「神を喰らうのも悪くありません。何処まで私は強くなれるのか・・ははは・・・。」

 

 私はただ・・・楽しみなのだ。

 

 消滅という死すら超えた自分自身がどこまで高みに上がれるのか。

 

 一番大きいのは新しく得たこの身体その物。

 

「・・・この身体は本当に悪くない。」

 

「貴様はどれだけ怪物になればいい?」

 

 私の元に別の存在も姿を現す。

 

 それは黒い壁のような存在であった。

 

「統制者。ふふふ・・・あなたのおかげで井坂くんはさらにメモリに適合しましたよ。」

 

「そうか。」

 

 オーバーロードと彼は同士に近い関係らしい。

 

 その統制者から私はある肉体を与えられた。

 

 もう・・・私は死なない。

 

「ふはははははははは!!」

 

 不死身と言える存在になれた。

 

 愉快だ。私はどんどん強くなっていく。いまじゃ・・・テラ―ですら相手にならないだろう。

 

 まだ力は使いこなせていない。だが・・・これからだ。

 

 これからもっと私は進化する。もっと・・・そう、もっとだ!!

 

「危険な男だな。」

 

「ああ・・・だが、だからこそ、面白い。頼りになるのだよ。」

 

 統率者に危険を言われますが・・・私にとってはむしろ喜ばしい。そんな存在になりつつあることが。

 

 そう言った意味ではまだ余裕のあるこのお方にはまだ勝てない。もっと・・・もっと進化しないと。

 

 楽しいな。本当に楽しいな・・・。

 

「それよりも、この世界のフェニックスのゲート解放計画は順調なのですか?」

 

 それに個人的にこのお方は嫌いじゃない。私も彼の事を主と認めている。

 

 その方の命で私はある計画を進めていた。

 

 今回の計画は・・・すべてあのゲートを解放させるため。

 

「会場が最期の仕上げの場。さあ・・・あの二人を強制的に絶望に叩きこみますよ。」

 

「だったらこれも持って行け。」

 

 いつの間にか現れた白い魔法使いがグ―ルの石を渡す。

 

「それはフェニックスに渡してください。私は・・・自前がありますので。」

 

「そう・・だったな。」

 

 私の周りに灰色のゴキブリの様な物が現れる。

 

 これもまた便利な力の一つ。

 

「最後のパーティの幕開けです。」

 

 仕上げはもうすぐだ。

 

 

 

 

SIDE ライザー

 

 くそったれ!!

 

 俺は確かにこのゲームに勝ちたかった・

 

 だが・・・今回のこれはいくら俺でも納得できねえ!!

 

「兄様・・・。」

 

 レイヴェルは荒れる俺を見て声を震わせる。

 

「すまねえ。少し一人にしてくれ。」

 

「・・・はい。」

 

 妹を怖がらせちまったな。

 

「・・・こんな勝ち方したくねえ。無効だ・・・。」

 

 だが、あいつらの無駄にいいサービスのおかげで誰も俺の眷族じゃない第三者が暴れまわった事は知らねえ。

 

 くそ・・・。

 

 それでも式は進むのかよ。

 

 こんな状態で・・・リアスと結婚なんて俺は納得できねえ!!

 

 

 

SIDE 木場。

 

 

 式は滞りなく進んでいく。

 

 僕たちが謎の襲撃者による一斉リタイア、そして敗北してから一週間。

 

 僕達グレモリ―眷族はイッセ―君とその幼馴染達を除いたメンバーが式に出席していた。

 

「・・・・・・。」

 

 でもあまりと言うより全然嬉しくない。

 

「でも・・・ライザ―さんも嬉しくなさそうです。」

 

 アーシアの言葉に皆は驚く。

 

 彼女はアギト。故に鋭すぎる感性を持っている。

 

 だから・・・彼女が感じた事は間違いないのだろう。

 

 ライザ―も嬉しくないって・・・どうして?

 

「・・・兄様も荒れていましたわ。あの試合に関しては納得できないって。」

 

 そこにライザ―の妹の子がやってくる。

 

 名前はレイヴェルといったかな?

 

「本当に・・・申し訳ございません。兄の代わりに謝らせてください。確かに兄はガイアメモリに手を出しました。でも・・・。」

 

 彼女が言いたい事は分かる。

 

「ライザ―さんは納得できる決着を求めているのですね。」

 

 アーシアちゃんが彼女の手を取って問う。

 

 その言葉にレイヴェルは目を丸くして驚くが、すぐに表情を曇らせる。

 

「はい。でも・・・このままじゃ・・・。」

 

 涙目のレイヴェル。でもそんな彼女にアーシアは笑った。

 

「だったら安心してください。」

 

 そして、その後・・・とんでもないことを言った。

 

「あのイッセ―さんがこのまま終わるわけがありません。」

 

『へっ?』

 

 確信、いやまるで何かが起きると分かり切っていた言葉って・・・。

 

「まさか・・・予知したのか?」

 

「ついさっきです。あと・・・気になる事が幾つか・・・。みなさん準備だけはしておいてください。」

 

 本当に便利すぎるよ。君のその力は。

 

 アーシアちゃんがレイヴェルの手をとる。

 

「一つだけ・・・言わせてください。」

 

「はっ・・・はい。」

 

「どんな事があっても、あなたのお兄さんと、そしてイッセ―さんの事を信じてください。」

 

「へっ?はっ・・・はいですの。」

 

「忘れないでください。」

 

 その一言。きっとこの後、重要になってくる気がするよ。

 

「アーシアちゃん。一体何を見たの?」

 

 僕たちは確信する。

 

 この後とんでもない事が起きると。

 

「・・・もうすぐこの場は大荒れになります。」

 

 その言葉と共に・・・本当にとんでもない事が起きた。

 

「・・・来ます。」

 

 轟音が辺りに響き渡り、それは現れる。

 

 新郎新婦。つまりライザ―と部長のいる席の背後の壁をぶち破って巨大な赤いドラゴンが現れたのだ。

 

「って・・・・・・。」

 

『・・・・・・!?』

 

 そのドラゴンに見覚えがあった。

 

 普段は部室でおいしいお菓子とお茶を口にして満足している意外と愉快な一面を持つ食いしん坊ドラゴンだけど・・・間違いなく二天龍の一角と呼ばれる仲間。

 

『ドッ・・・ドライク!?』

 

 僕達、グレモリ―眷族はその名を。

 

『なっ・・・なんで死んだはずの赤龍帝がここに!?』

 

 そして、一部の悪魔達からも驚きの声があがる。

 

「そう・・・我が名は二天龍・・・赤龍帝ドライク。」

 

『・・・・・・・。』

 

 本当にとんでもない事が起きたよ。

 

「見た事のある顔もいるな。久々にあばれてもいいのだが・・・あいにく今の私はタクシーみたいなものだ。」

 

 ドッ・・・ドラゴンがタクシー?

 

 しかもドライクが?

 

「今代の赤龍帝・・・最高の相棒のために一肌ぬいだだけのことよ!!」

 

 ・・・なっ・・・なるほど。あまりの衝撃で頭がうまく回らなかったけど・・・ようやく分かったよ。

 

 まったく、君はやらかしてくれる。

 

 その彼がドライクの背中から飛び出す。

 

 そして、ライザ―と部長の前に着地する

 

「いっ・・・イッセ―!?」

 

「てっ・・・てめえ・・・!!」

 

 イッセ―の登場に二人も驚いているよ。まあ・・・当然だけど。

 

「・・・勝負だ。ライザ―・フェニックス。勝ったら部長・・・リアスは俺がいただく!!」

 

 ドライクをタクシー代わりに式場ぶっ壊して乱入って・・・。

 

 イッセ―君。無茶苦茶過ぎるって。

 

「////////!?」

 

 それに、何気に殺し文句をいっていないかい?

 

 部長が顔を真っ赤にさせているよ。

 

 

 SIDE グレイフィア。

 

 今代の赤龍帝は過激ねえ。

 

「それはそうよ。でもまあ・・・思い切りすぎるわ。」

 

 クレアさんの言葉が痛み入ります。

 

「すごい契約者ね。こりゃ姉御肌のあんたが気にいるわけだわ。」

 

 アルファも苦笑している。

 

 私は今、あの赤龍帝ドライクの背中に乗ってリアスの式の会場にやってきていた。

 

 二天龍の背中に乗って移動するなんて・・・多分今まで誰もいなかったでしょうね。

 

 貴重な体験に感謝しておきましょうか。

 

 あれ?サーゼクスが唖然としたまま私の方を見ている。

 

 一応・・・手を振っておこうかしら?

 

 焚きつけることに成功はしたって。

 

 でも、必要以上に焚きつけすぎて大爆発しちゃったことも含めて。

 

「爆発力を完全に見誤ったわ。」

 

「ええ。」

 

 アルファの言うとおりだ。まさかここまで過激な事を平然とやらかすなんて。

 

 戦略級の核弾頭に火をつけるような所業をしてしまった。

 

「あははははあは・・・ひい・・・これはおもしれえ。イッセ―の野郎。大馬鹿だ。大馬鹿すぎてすげえぜ!!みっ・・・みんなの唖然とした顔はもう・・・。」

 

 ネロがドライクの背中で笑い転げている。

 

 皆が驚きのあまりに間抜けな顔をしているのがツボにはまったのね。

 

「こっ・・・こらネロ!!笑いすぎよ。ごめんなさいグレイフィアさん。うちのネロがもう・・・。」

 

「いっ・・・いえ。もう今更ですし。」

 

 キリエさんって言ったかしら。

 

 この人とはなんかお友達になれそうな気がする。世話のかかる身内がいるつながりで。

 

「さすがだイッセ―。だが俺達の式ではやらないでほしいな。」

 

「当然にゃ。色々とぶち壊しすぎ。」

 

 鋼鬼さんと黒歌さんは同情しているわね。うん・・・この乱入で会場が雰囲気もそして物理的も破壊だわ。

 

 後始末の段取りは・・・考えるだけ憂鬱だから置いておきましょう。

 

「・・・・・・冥界に行くのは初めてだったけど、こんな形で行くことになるなんて。」

 

「希望あったら、いつでも連れて行く。我を頼め。」

 

 渡さん・・・うん。ファンガイアの王子もこの式に出席するか。こんな形で。

 

 それとオ―フィスって・・・とんでもない戦略級の爆弾までつれてきている。

 

 もう頭が痛すぎる。

 

「感謝してよね。ゲートを指輪で開けることをみんなに明かす事になったんだから。まあ・・・一生の思い出になることをやらかしてくれたから十分だけど。」

 

「こんな形で悪魔の領域に乱入か・・・ドキドキしてきた。」

 

「安心して。何があっても守るから。」

 

「・・・///もう。そんな事を簡単にいう。」

 

「?」

 

 ハル・・・あのソロモン王の再来と言われた魔法使い。

 

 彼・・・単独で自在に冥界にいけるのね。しかもこれだけの人数をまとめて転送できるだけの魔法も使える。

 

 堕天使の彼女はその弟子であり、相棒であると聞いている。堕天使なのに素朴な感想を言ってくるのね。

 

 この二人・・・いつくっつくのかしら?

 

 結構いい二人だと思うのに・・・何かもどかしい。

 

「面白いな。ここでは騎士としてではなく、イッセ―君の友として暴れましょうかね。」

 

 そして・・・黒龍騎士――龍狼こと・・・サイガ。

 

 まっ・・まさかあの彼がこんなところにいたなんて・・・・。

 

 彼は知らないでしょうね。冥界中があなたを探し、そして注目しているなんて。

 

 どうしようか。セラフォル―に伝えるべきかしら?

 

 この場に出席していないからせめて・・・。

 

「安心して。すでにソ―ナが把握しているから。こっちの使いも報告にだしている。それでいいでしょ?」

 

 アルファ。仕事が早すぎでしょう。

 

 でもこれで自他共に現在地不明だった彼の居場所は確定。まさか私達の領域にいたなんて想像もしていなかった。

 

 全然、男に興味を示さなかった彼女が惚れた子か・・・。それも規格外の潜在能力を持つとされる。

 

 彼女の・・・最強の女王になる子か。

 

「アルファ、なんでそんな面白い事を黙っていたのよ。」

 

「いや・・・だって当の本人が近くにいるって知らなかったから。」

 

 クレアとアルファはひそひそとサイガの事で話し合い中。

 

「で・・・黙ってくれるのでしょ?」

 

「当然。面白いのはこれからなのだし。むしろ協力してあげる。」

 

「よし!!ならスワンにつたえなきゃ。心強い味方が出来たって。」

 

「あら?あの子もここに来ていたんだ。近いうちに会えそうね。また三人でお茶会でもしましょうよ。」

 

 アルファとクレアは本当に仲が良いわね。あっちの世界でも友人同士だったと聞いているけど、今の光景を見れば納得。

 

 スワンとも知り合いだったか。

 

「あとはダークとベノスだけよね。妹は見つけてあるの。」

 

 ダークとベノス、そして妹って、まだいるの?

 

「ベノスとはどっちがこの世界ですごい相手を見つけるか勝負しているの。こっちが勝ったかな?」

 

 クレアさん・・・天龍の一角をゲットしているものね。そのベノスがもう一体の天龍をゲットしていれば話は別でしょうけど。

 

「私のこれまでの経験なら・・・また勝負は引き分けだと思うけど。あなた達良い意味でライバルすぎるのよ。」

 

 アルファ。それってもしかしてそのベノスがもう一体の天龍といると予言でもしているの?

 

「そろそろ降りてくれ。背中で騒がれるのはあまり良い気分ではない。」

 

 ドライクの言葉に皆はそろって肩をすくめ背中から降りた。

 

「・・・貴重な体験ありがとうございます。」

 

 私が乗せてくれた礼を言うと、ドライクは少し照れくさそうに鼻をかく。

 

「礼を言われるのもそれはそれで困るな。感謝するなら、またおいしいお茶か菓子でもおごってくれ。」

 

 ふふふ・・・なんか親しみやすくなったわね。

 

 本当に後でおいしいお菓子か何か彼に送ってあげよう。

 

 

 

SIDE イッセ―

 

 結婚式の日。

 

 俺達全員は危険と言う事で謹慎を喰らっていた。

 

 いや・・・ある意味では正しい選択だったのかもしれない。

 

 みんな怒りで爆発寸前だったのだ。

 

 木場達の進言でそうしてくれたのだ。

 

 ある意味ありがたい。おかげで冷静に物事を考えられる。

 

 リビングで一人くすぶっていた俺の元にグレイフィアさんは現れた。

 

「・・・ッ!?」

 

 魔法陣で唐突に入ってきたグレイフィアさんは驚いた様子だ。

 

「なっ・・・なんて怒気。」

 

 家中に充満している俺の怒り。

 

 今でも抑えているのだ。うまく抑制できていない部分はある。

 

「まさに龍の怒りか。ここまですごいとは。」

 

 どうするべきか分からねえ。落ち込んでもいるが、それ以上に色々な怒りでおかしくなりそうになっていた。

 

「そのままでいいのですか?」

 

 そして、グレイフィアさんは俺に声をかけ・・・発破をかけてくれたのだ。

 

「情けない。それでも男ですか。男なら・・・いえ、人として大切な人の何が幸せか分かっているでしょうに。」

 

 大切な何か・・・か。

 

 俺は今までの事を振り返る。

 

 死ぬ間際にあったあの紅の綺麗な髪。

 

 部長は本当に綺麗な人だ。

 

 俺の憧れと言っていい人。

 

 

 

 俺の主で、そして・・・

 

 

 

 俺の罪を許してくれた人。

 

 

 

 あの言葉に俺はどれだけ救われたか、部長は絶対に分かっていない。

 

 

 

 おかげで・・・前に進める気がした。

 

 

 

 あの言葉だけで。

 

 

 

 誰よりもいい女・・・・。

 

 

 

 大切な・・・大切な人

 

 

 

「・・・・・ふふ・・ふははは・・・・。」

 

 

 

 大切な・・人か。

 

 なんだ・・・・俺、ようやく分かったわ。

 

 いつの間にかこんなに惚れていたんだな。部長に。

 

 学園の二大お姉様で。

 

 俺の憧れの人で。

 

 俺にとって・・・大切な主で。

 

 それでいて・・・

 

 情けねえ。でも・・・

 

「今わかってよかったです。」

 

 グレイフィアさんが俺の顔を見て微笑む。

 

 ようやく見た綺麗な微笑みだ。

 

「・・・漢の顔になりましたね。だったら行きなさい。」

 

 グレイフィアさんが懐から出したのは転送用の魔方陣の書かれた紙。

 

「へえ・・・そういうことか。」

 

 何時の間に現れた渡が何かを理解した様子だ。

 

「リアスの兄上の本音がそこにあるということだね。」

 

『!?』

 

 渡の言葉にグレイフィアさんは少し驚いた様子だったが、すぐに取り直す。

 

「そう言う事です。」

 

 そして微笑み。

 

 味方・・・だったんだな。

 

 それが分かっただけでも十分だぜ。

 

「これで大義名分はできたね。」

 

 それに呼応するようにハルがやってくる。

 

「新作の指輪が用意できた。これで冥界に全員まとめていける。ちょっとその魔法陣をかしてもらうよ。」

 

 そして指輪に魔法陣を当てると、紙に書かれた術式が消える。

 

「よし・・・これでいける。みんなお待たせ。時はきたよ。」

 

「へっ?」

 

 グレイフィアさんが間抜けな声を上げる。

 

「いや・・・ずいぶんと待ったぜ。メンテはばっちりだ。」

 

 ネロが完全武装で現れる。

 

「トレーニングも飽きたところだ。良いころ合いだぞ。」

 

 鋼兄もだ。

 

「そろそろだと思っていたよ。いくよね?」

 

 サイガも唐突に現れる。

 

 へっ・・・みんな分かってんじゃねえか。

 

「えっと・・・まさかみんな元から・・・式をぶち壊す気だったの?」

 

 グレイフィアさんはようやく俺達が何を仕出かそうか分かった様子だ。

 

『当たり前だろ。』

 

 みんな・・・本当に大暴れしたくて我慢していたんだ。

 

 一週間もな!!

 

「でも準備が色々と。それに渡の推測が正しかったら大義名分がやってくるはずだから、それまで待つって。それまで皆から自分の事を見つめ直しておけって言われていたんだけど・・・。その理由もようやく合点がいった。」

 

 俺の中で気持ちが色々ともやもやしていたのを見かねた皆が・・・一度自分を見つめ直せと言って待っていたんだ。

 

「答えはでたようだな。」

 

 鋼兄の言葉に俺は不敵な笑みを浮かべて応える。

 

「ああ。ようやくわかったよ。」

 

 もやもやした怒りも、その理由も全てすっきりできた。

 

「・・・あっ、あなた達。」

 

「招待状ももらっていたから、その際に色々と情報を引き出させてもらった。」

 

 渡が思い通りの展開に、大変満足そうな顔をしている。結構こいつも策士だぜ。

 

「さすがは王子か。良い目をもっている。」

 

 グレイフィアさんの肩の上にアルファが実体化する。

 

 クレアとドライクも俺の傍で実体化して・・。

 

「みんな・・・今回は本気を出しなさい。多分・・・邪魔したあの連中もくるわ。私達に手を出した事を心の底から後悔させてやりましょう!!」

 

『おう!!』

 

 みんなやる気満々だぜ!!

 

「主導していたのはあなたね・・・クレアとよばせてもらうけどいいかな?」

 

「ええ。いいわよ、この名前結構気に入っているから。」

 

アルファもクレアと呼ぶ事にしたようだ。・・・俺が名付けたけど、気に行ってくれてうれしいものだぜ。

 

「それとこれは当然の事。だって・・・私達の逆鱗に触れたんだもの――――相応の報いは受けてもらうわ。」

 

「俺達の逆鱗に触れた連中に龍の怒りをみせてやろうじゃないか。」

 

 二人とも・・・なんか俺以上に怒っていないか?ドスが効きすぎているぞ。

 

「・・・ドライクまで・・・。」

 

 グレイフィアさんは冷や汗を流しているけど・・・もう俺達は止まらないぜ。

 

「やっ・・・やばい。必要以上に焚きつけちゃった。」

 

 後悔すでに遅し!!もう俺のハートは燃え上がるのを超えて・・・爆発を続けている!!

 

 部長への想いにな!!

 

「相棒・・・俺を実体化させろ。面白い余興になるぞ。」

 

 ほう・・・いいねえ。

 

 俺は外でドライクを生前の肉体の状態で実体化させる。

 

―――――――Adⅴent!

 

 それにより赤い魔法陣がデフォルメ化していたドライクを包み、その身体をリアル化・・・いやこの場合は生前の肉体を実体化させる。

 

「久々の我が肉体・・・。やはりいい物だな!!」

 

 ドライクが歓喜の雄叫びをあげる。

 

「食事の時はあの姿が一番なのだが、戦いの時はやはりこの姿に限る。」

 

 その光景を見たグレイフィアさんは目を丸くしている。

 

「・・・・・・なんですかこれは!?私は夢でも見ているの?」

 

「クレア・・・これはやりすぎよ。」

 

 何をしでかしたのかアルファさんは分かっているようだね。

 

「はははは・・・面白いから良いじゃない。それにこうもしないと私達とイッセ―、釣り合いが取れない部分があると思うし。」

 

『?』

 

 それって俺の本来の力に関係しているよな?グレイフィアさんは全く分かっていないみたいだし。

 

 戸惑うグレイフィアさんを道案内役として載せ、俺達はドライクごと指輪で転送。

 

 俺達は会場に乱入したというわけだ。

 

 目の前には何故か顔を真っ赤にさせた部長。

 

「ふふふ・・・ふははははは・・・・・・!!」

 

 そして、驚きながらも我を取り戻したのか笑いだすライザ―。

 

「上等だ。さしずめお前は花嫁をさらいに来たということか。」

 

 ドスの効いた声と笑みを見せる。

 

「俺だって納得してねえ部分があった。それを払拭するいい機会だぜ。こっちもメモリを使わせてもらう。遠慮はしねえ。」

 

―――――ナスカ。

 

 あいつが懐からナスカメモリを出してきた。

 

「こっちだって上等だ。ドライク戻れ!」

 

「応。いよいよだな。」

 

 ドライクの実体化が解除される。

 

「話は聞かせてもらったよ。」

 

 そこにリアスそっくりな赤い髪の男性がやってくる。

 

 内包されている力の桁違う。それこそまさに魔王・・。

 

「おっ・・・お兄様!?」

 

・・・ッ。そうか。この人が部長の兄様。そして・・・悪魔達を治める五人の魔王の一人。

 

「初めて会うね・・・赤龍帝。いやイッセ―君と言った方が良いのかな?私はサーゼクス・ルシファー。リアスの兄だ。」

 

 紳士的な物腰。でも・・・隠せない者がある。

 

 この人・・・途方もなく強い。

 

「君の事は聞いているよ赤龍帝・・そして無双竜ドラグレッタ―の契約者。」

 

 その言葉に呼応するようにクレアが肩に現れる。

 

「へえ・・・私の事を聞いていたのね。話したのはアルファなの?・・・それともあなたと契約しているゴルドなのかしら?」

 

 サーゼクス様の肩にも実体化してくる者が現れる。

 

 それは黄金の鳥だった。もちろんデフォルメ化されている。

 

「・・・ふふふ・・・・。そうか。まさか君が彼と契約するなんて。お相手は・・相当な大物を見つけたようだね。」

 

 声は青年。サーゼクス様と同じように穏やかな声だった。

 

「よく言うわ。ミラーワールド最強のあなたまでいるなんて初耳よ。」

 

 おいおい。それってマジか?つまりクレアよりも強い奴が・・・。

 

「無双と言われた二体の龍と共にある君の力を皆は見てみたいとは思わないか?」

 

 その声に結婚式に来ていた悪魔達が一斉に声を荒げる。

 

「下級悪魔風情にそんなことをしていいのですか?」

 

「そんな情けない真似を・・・・。」

 

「黙れ。」

 

「我が主はこの男と話している。口を慎んでもらおうか。」

 

『・・・・・・・。』

 

 サーゼクス様とゴルドの言葉に皆が押し黙ったよ。

 

 まさに魔王の威厳なのか。

 

「望みの報酬は・・・もう言っているね。我が妹でいいのかな?」

 

「はい。花嫁をさらいにここまで来ました!!」

 

 俺は即答した。

 

『・・・・・・。』

 

 あれ?ゴルドとクレアはそろって絶句しているけど?

 

 会場の皆まで絶句しているよ。

 

「はう//////・・・。」

 

 部長は顔真っ赤なままですし。

 

「本当に色々な意味で危険な男を主にしましたねえ。無自覚でとんでもないことを・・・。」

 

「ははは・・・はい。少し教育に失敗しちゃって・・・。」

 

 あきれ果てているゴルドの指摘に、クレアも苦笑して応えている。

 

 教育ってだからいつの間にそんなことをした?

 

それに少し失敗ってなんだ?

 

失敗も嫌だけど、少し失敗って言うのもなんか中途半端な感じがして気になるって!!

 

「いい答えだ。勝ったらリアスを連れて行きたまえ。それでいて・・・責任は取ってもらおうか。」

 

 責任?えっと・・・どういうことですか?

 

「この子は確か・・・リアスの兵士だったかね?」

 

 そこにダンディーな赤髪の男まで・・・。

 

 部長そっくりの女性までいる。

 

 もしかしなくても部っ・・・部長のお父様とお母様!?

 

 おれ・・もしかして今・・とんでもないことをやらかしていないか?

 

――――相棒・・・今更だろう。

 

―――そうそう。もう何も考えずにこのまま突っ走りなさい。今更止まれないでしょ?

 

 ドライクは呆れているし・・・クレアはやけくそ気味だ。

 

 ・・・そうだな。考えるのは後だ。

 

「・・・・おもしれえ。ここまでやらかすなんて・・・誰が想像したか。」

 

 ライザ―まで笑っている。

 

「始めようぜ、お互いが納得できる決着ってやつを!」

 

 そして、あいつも戦いに応じる。

 

 こうして俺はライザ―と一対一の戦いをすることとなった。

 

 

 

SIDE リアス。

 

「・・・・・・・・・・・・・。」

 

 私は今、何と言えばいいのか分からない状態になっているわ。

 

 どうしようもなく沈んでいた気持ちが色々な意味で吹っ飛んだ。

 

「面白い事になったわねえ。」

 

 カ―ミラも私の肩に止まってみている。

 

 私の元にみんなもやってくる。

 

 その顔は驚きじゃなかった。

 

「部長・・一応戦う準備はしておいてください。」

 

 佑斗の言葉に皆も頷いている。

 

「・・・何が起こるというの?」

 

 私はアーシアちゃんに視線を向ける。

 

「もうすぐ会場が戦いの場になります。襲撃者は前のゲームで乱入してきた・・・。」

 

「着替える準備はしているわ。」

 

 朱乃も魔法で瞬時に着替える準備をしている。

 

「・・・・兄様。聞いてのとおりです。」

 

「・・・・・・・・・・。」

 

 兄様は目を丸くしている。

 

「リアス。君の眷族は一体どうなっている?確か彼女は最近になって眷族になったのは聞いたけど・・・。どうして襲撃が来る事がわかるのだい?」

 

「予知能力ですか。」

 

「何?」

 

 ゴルドはアーシアちゃんの力の一端を見抜いたようね。

 

「この会場に悪意を宿した者もまぎれています。本人は自覚ありませんが、それが誰かを教えますのでさりげなく警戒を。避難準備もお願いします。」

 

「あらあら・・・大活躍ね。指輪もはめておこうかな。あの時は試せなかった指輪もあるのよ。」

 

 朱乃はすでに指輪をはめている。

 

「腕が・・鳴る。」

 

 小猫ちゃんも肩を回してつもりをしているようだ。

 

「・・・・・・リアス。君はすごい子を眷族にしたようだ。」

 

 ふふふ・・・本当にすごい子。でもね。

 

「兄様・・・もう一人とんでもない子がいますよ。」

 

 私はもう・・・堕ちてしまったようね。主を堕とすなんて本当に罪な子。

 

 だからこそ、誇りに思うわ。あの子と出会えた私に。

 

 そして、あなたを好きになった私に。

 

「一誠君のことかい?彼はまさに規格外だよ。赤龍帝の力と無双龍の力を二つ同時に持つなんて聞いた事が・・・・。」

 

「いえ・・・もう一つあります。まだ話せませんけど、アーシアの予知が正しいならイッセ―はその力も解放させると思います。」

 

 はっきり言って、あの二つだけでもまだ生温いと感じるほど。

 

「・・・・・・この期に及んで彼にはまだ何かあるというのかい?」

 

「それは興味深い。」

 

 お兄様にはあえて伝えていなかったイッセ―のもう一つの力。

 

「できれば解放してほしくないと思いますけど。」

 

 アーシアの目を見れば分かる。

 

「予知の中にあったのね。イッセ―が変身するところを。」

 

「はい。」

 

 なら・・・覚悟するしかないわ。私はイッセ―の主だから。

 




 もう大爆発です。

 大きすぎる罪を犯してしまいまたイッセ―君は!


 続けて投稿します。


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決着をつけます。

 ライザーと一対一のバトル。

 もう・・・イッセーのやりたい放題です。


 SIDE イッセ―

 

―――――相棒・・分かっていると思うが。

 

「ああ・・・。俺はとっくに至っていたんだろ?」

 

―――――そう。あなたは私達の禁手化をつかえる。ただ何らかの原因で覚醒していた事に気づいていなかっただけ。

 

 何時の間・・・いや、心当たりはある。

 

「きっと・・・巧が死んだ時だな。」

 

――――――イッセ―・・・あなた。

 

 よくあの時は覚えていない。

 

「ただ・・・あの後、何かが解放されたのは覚えている。」

 

――――――そう。あの事件。実は私も色々なことを知ることができたわ。あなたが知らない事も一杯ね。時期を見て説明させてちょうだい。

 

――――辛いと思うが・・・。

 

「問題ねえよ。あの時欲した力で・・・部長を助けられるならな!」

 

――――あらら・・・自分の想いを自覚したとたん、すごく燃えているわ。

 

―――ふふふ・・・世界を否定し、壊すのはいつも愛か。

 

「へっ・・・お前が契約者って言うのにも驚いたぜ。だからこそ・・・これを使わせてもらう!!」

 

――――――ナスカ。

 

 ライザ―はナスカメモリを顎下にあるコネクターから挿入。

 

 蒼い体のナスカド―パントになった。

 

 背中から出てきた幾何学模様の翼が赤く燃えている。

 

「行くぜ・・・覚悟しな!!」

 

「まずはドライク・・・・いくぞ。」

 

 炎の塊を無数飛ばしてくるライザ―。

 

―――ああ・・・みせてやろう。赤龍帝の力を!!

 

 それを俺は目を閉じ、火球をかわしながら俺は叫ぶ。

 

『禁手化(バランスブレイク)!!』

 

 それと共に篭手から音声が流れる。

 

―――Welsh Dragon Balance Breaker!!!!!!

 

 それと共に俺の身体に次々と赤い鎧が装着される。

 

 そのすべてが瞬時に装着され、俺は地面に降り立つ。

 

「バッ・・バランスブレイカ―だと!?」

 

 窓をみるとそこには赤い鎧を纏った竜人がいた。

 

 頭についた二本の角が何となくアギトの角に似ている。

 

―――――その様な角、本来は無いのだが・・・相棒のあの力の関係だろう。

 

 そうか・・・じゃあこの角は俺だからこそ出てきたのか。

 

 名乗ってやろうか。相棒の力を!!

 

「これが赤龍帝の篭手の禁手・・・赤龍帝の鎧(ブースデット・スケイルメイル)だ!」

 

 初めての禁手化・・・成功したぜ!!

 

――――――見事。だが、まさかいきなりカウント無しなのには驚いた。さあ・・・私の力と相棒自身の力をみせてやろう。

 

 本来はカウントが必要だった禁手化。

 

 でも・・・俺は瞬時にできたぜ。

 

「ぐっ・・・だが・・・それがどうした。ナスカメモリの力を持ってすれば!!」

 

 次々と炎の塊を放つライザ―。

 

 それを俺は手で次々と打ち払う。

 

<BOOSTOBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!>

 

 瞬時の倍化を行いながら俺はライザ―に向かって突進。

 

――――――アギトの力に、やはり禁手化に至ったおかげなのだろうな。動きが違う。

 

「ちょっ・・・いっ、いきなり力が増大して・・・がっ!?」

 

 巨大な炎の塊を拳で打ち砕きつつライザ―を殴りとばす。

 

 顔面を捉えた一撃にライザ―は驚きながらも立ち上がる。

 

「ぐうう・・・ちぃ・・・何だ・・・この力は。上級悪魔がド―パント化したというのに・・・。」

 

 再び拳をくりだすが、それが空振りに終わる。

 

「ぐっ?!」

 

 それ共に背中を切りつけられる。

 

 それに反撃しようと振り返るがすぐにライザ―は姿を消す。

 

「速い・・・・。」

 

 目にもとまらぬ速さで動いたのだ。

 

「ナスカメモリの力・・・高速移動。俺を捉えられるかな?」

 

 ライザ―は高速で動きながら手にした刀で斬りかかってくる。

 

 その動きは目で追う事も出来ないほどの速さで、刀が鎧に命中・・火花を散らしながら切り裂く。

 

「ぐっ?」

 

「オラオラ・・・ガンガン行くぜ!!」

 

 高速移動を伴う連続攻撃。

 

「ちぃ・・・。」

 

 それが俺を襲ってくる。何度も切り裂かれる。

 

「このまま押し切って・・・・。」

 

そのまま翻弄されつづける・・・そのはずだった。

 

 でも、その動きに俺はすぐに対応してみせた。

 

 頭を狙った一撃を交わして見せたことからそれは始まる。

 

 それと共に攻撃のタイミングが段々と分かってくる。

 

「なっ・・・・何で攻撃が当らなくなってきてんだ!?」

 

 ライザ―も流石に気付いたようだ。高速移動しながらの攻撃を見切り始めている俺に。

 

―――――アギトの本能か。

 

 ドライクの言うとおりなのだろう。俺は攻撃するタイミングがわかってきたのだ。

 

 その未来位置も。

 

――――予知に極めて近い動き。これだけの高速移動からの攻撃に対応できるレベルって・・・アギトの力は本当に底が知れない。

 

 アギトの本能・・・まさに戦うためにあるのか。いまは、ありがてえ。

 

 俺は手に倍化した力を込め・・・。

 

 その未来位置に拳を置く。

 

「ぐぼっ!?」

 

 その拳がライザ―を捉える。

 

「チィ・・・・なんだ・・・なんだお前?」

 

俺の左を取ったライザ―が斬りかかろうとするが、体をひねりながらの一撃で逆にふっ飛ばす。

 

「しっ・・尻尾だと!?」

 

 そう・・・尻尾の一撃で。

 

「せっかくついてんだ。生かさないと損だろうが。」

 

――――――いきなり尻尾で攻撃する辺りはさすがだよ。

 

 吹っ飛んだライザ―を追いかけ拳で殴る。ライザ―も反撃しようとするが、それをカウンターで手刀や拳、蹴りを入れてダメージを与えながら阻む。何度もライザ―の反撃を拳、足などでつぶしていく。

 

 そう・・・これは師匠の戦い方だ。

 

 必要最小限の動きで相手の攻撃の先に攻撃をおく。

 

 それにより相手は自身の動きとこっちの動きが交差したダメージを与えられる。

 

 それがカウンターの醍醐味。相手は攻撃しようとした瞬間、自身の攻撃をつぶされるだけじゃなく、その攻撃をこっちの攻撃を上乗せしたダメージを受ける。

 

 精神的にも肉体的にも相手を確実に追い詰める戦い方だ。

 

「ぐう・・・なんでこんなに戦いに慣れている?」

 

 いくら早く移動しても。

 

「なんで俺の動きに簡単に対応できる?」

 

 死角を突いても無駄だ。

 

「攻撃が・・・攻撃が全く出来ねえ。」

 

 もうお前の動きはすべて・・・見切った。

 

「そして・・・重い!!」

 

 俺は拳だけで戦って、ライザ―を圧倒していた。接近戦は俺の独壇場だった。

 

 相手はすぐに再生する。

 

 それでも俺が勝っているのは間違いない。

 

 流れを変えようと、高速移動で俺の背後を取ったライザ―。

 

<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!>

 

 その瞬間に俺は右足に倍化した力を集中。

 

―――――Explosion!!

 

 解放と共に頭にあるアギトの角が展開。黄金の光を放出させる。

 

 師匠・・・必殺技を借ります。

 

「ライダ―・・・キック。」

 

 そして、背後で剣を振り上げ斬ろうとするライザ―に向かって振り向きざまに右足による上段回し蹴りを叩き込む。

 

「ぐがっ!?」

 

 それで俺が向き直ると共にライザ―は地面に叩きつけられる。

 

 その衝撃だけで、地面に大きな亀裂が発生するほどに。

 

「がっは!?」

 

 これを俺は必殺居合蹴りと呼んでいるぜ。これほど相手に精神的にもダメージを与える必殺技はそうない。

 

「ががっ・・・な・・・なんて奴だ・・・。」

 

 必死に立ちあがろうとするライザ―。まだ・・・メモリブレイクはできていない。

 

「存外に・・しぶといな。」

 

 その言葉にライザ―は自嘲気味に笑う。

 

「フッ・・ふふふ・・お前もあのハルトと言うやつのあれを喰らってみろ。」

 

 あれって・・・あのアイアンクロ―のことか?

 

「あれを受けたらこの程度の苦痛など・・・屁でもないわ!!」

 

 そして・・・たっ・・立ち上がりやがった。

 

「・・・・・・・。」

 

 ハルの野郎・・・。ライザ―にいらん根性を身につけさせたな。

 

 不死身さにしぶとさが加わって予想以上にやっかいだぞ。

 

 どんだけあのアイアンクロ―は苦痛だった?って・・こいつが気を失うほどだったか。

 

 ・・・・・・確かに根性つくな。

 

―――――何がどう作用するかわからないものだな。

 

―――――良い攻めだったしねえ。人として一皮むけたのかも・・・。

 

 それでも結構なダメージだったようで、あいつの足は細かく震えている。

 

 不死身でも・・・蓄積される物は変わらねえか。

 

「だっ・・・だが・・・流石に接近戦は勝てねえ。」

 

 ライザ―は俺との接近戦は不利だと悟ったのだろう。

 

 空中に逃げる。

 

「これで終わりにしてくれる。」

 

 ライザ―は手に巨大な業火を生み出す。それは幾何学模様をしたエネルギー体に包まれ、さらに熱く・・・エネルギーとしての密度も増す。

 

――――流石にあれをまともに受けたらまずいな。

 

 ドライクがそう感じるのなら間違いないのだろう。

 

――――初めての禁手化は制限時間が短いわね。もうすぐ鎧が解けるわ。だから今度は私の力を使いなさい。

 

<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!>

 

―――――Explosion!!

 

 倍化した力の解放と共に頭の上の角が展開する。黄金の光が噴き出す。

 

 拳に黄金の光が集束されていく。

 

「ああ・・・これをまずは拳で打ち砕く!!」

 

 そして、その拳で・・・目の前の必殺の一撃を破壊する。

 

 あっけなく消え去るライザ―の必殺の一撃。

 

「うっ、嘘・・・だろ・・・。」

 

 それと共に鎧は解除される。

 

「チィ・・・だが・・・もう時間切れのようだな。」

 

 それを見てほくそ笑むライザ―。

 

「ああ・・・だから次はお前だ・・・クレア・ドラグレッタ―!!」

 

――――――ええ。受け取りなさい。私の力・・・龍騎の力を!!

 

 俺の手にクレアの紋章が刻まれた黒いカードデッキが現れる。

 

 それと共に腰にベルトが現れる。

 

「なっ・・・それは召喚師のデッキ、まっ・・・まさか・・・。」

 

 それを腰に装着そして俺は告げる。

 

「・・・変身。」

 

 行くぜ・・・禁手化二連続!!

 

「へっ・・・変身などさせるか!!」

 

 ライザ―が再び巨大な業火を放つが・・・。

 

 変身しながら俺はカードを装填していた。

 

<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!>

 

―――――――――Guard Vent!!

 

――――――――Transfer!!

 

『Dorgon scalc wall!!』

 

その豪火が晴れる。俺の手にはドラグシールド。

 

「防がれたのか?」

 

 そして、突然現れたクレアが赤い光に包まれながら俺を守ってくれていた。

 

「へえ・・・私をこんな形で実体化させるなんてやるじゃないの。譲渡してくれたおかげで全然痛くないわ。」

 

そのクレアに守られる形で俺は変身していた。

 

 赤に黒と銀のアーマーを纏った仮面ライダー・・龍騎に。

 

「行きましょう。飛べないのなら私に乗ればいいわ。」

 

「頼むぜクレア。」

 

 俺はクレアの頭の上に乗って、空中のライザ―に突進。

 

「くっ・・・くるなあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 迫る俺達にライザ―は火球を放ちながら必死で逃げる。

 

 それを俺は手に持ったドラグシールドで撃ち落としながら接近。

 

<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!>

 

「加速してくれクレア!!」

 

 追いつくために俺はクレアに向けて倍化した力を譲渡。

 

―――――――Transfer!!

 

「ふふっ・・ふああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 あっ・・あれ?クレアまで変な声を。

 

「ふっ・・・ふふふ・・なるほど。あの子達の気持ちがよく分かるわ。ドライク・・・あなたの力は麻薬以上に甘美で・・危険よ。」

 

――――お前でさえそう感じるのか。

 

 そんなに快感なのか?

 

「さあて・・・一気にスピードをあげるわよ。」

 

 その言葉と共にクレアが一気に加速。その速度はさっきの倍以上は確実にある。

 

 ―――Sword Vent!!

 

 それと当時にドラグセイバーを召喚。ライザ―を追い越しつつ斬りつける。

 

「がっ!?」

 

 何度のクレアが信じられない速度でライザ―の周りを翔る。そのついでに何度も・・何度も斬る。

 

「ぐっ・・ちぃ・・・がああああぁぁぁぁぁ!?」

 

 何度も何度も・・・斬りつける間にライザ―の足が止まる。

 

「がば!?」

 

 そこにドラグシールドをぶん投げて顔面に命中させるとともに視界をふさぐ!!

 

<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!>

 

 倍化した力をそのままドラグセイバーに譲渡。

 

―――――――Transfer!!

 

 クレアから飛び降りつつ・・・必殺の剣を叩き込む。

 

『Dorgon Storm Slash!!』

 

「ぐぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 そのまま地面へと落下するライザ―と、俺。

 

「ぐうう・・・おっ・・・おのれ・・・。」

 

 だが・・・まだライザ―は健在。

 

「・・・しっ・・・しぶとい。」

 

 メモリブレイクもまだ出来ていない。

 

 何度も必殺技クラスの攻撃を叩き込んだのに・・・恐ろしいほどにしぶとい。

 

「・・・辟易するくらいに根性あるわね。」

 

 クレアの言葉にライザ―は乾いた笑いを上げながらたちあがってくる。

 

「ほめてくれてありがとうよ。このまま時間稼ぎをして・・・禁手化が解ければ俺の勝ちだ!!」

 

 そんな戦略で戦っているのか。

 

 凄まじい粘りだ。でも確かに悪くない戦略だと思う。

 

 だからこそ、俺はあのカードを取り出す。

 

「だったら・・・これで決めてやる。」

 

 それはクレアの紋章が書かれたカード。

 

「げっ・・・まっ、待て!!お前そんな危険なカードも使えるのか!?」

 

 それはファイナルベントのカード。

 

「・・・ついに使うのね。いいわ。」

 

「ドライク・・・お前の力も借りるぞ!!」

 

―――――良いだろう。三身一体でいくぞ!!

 

〈BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!〉

 

「・・・一応だけどあなたに忠告してあげる。多分・・・私でも想像もできないくらいの破壊力になるわ。ファイナルベントの威力を倍化させるなんて正気の沙汰じゃないから。」

 

 クレアの言葉にライザーは本気で怯える。

 

「ヒッ・・・待て!!それは流石に不死身でも・・・・・・。」

 

――――避けることはできないと思え。だから消滅したくなければ・・・全力で防御しろ。

 

ドライクがさらに追い打ち。

 

「ぐっ・・・おのれええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 俺はカードを装填する。

 

――――FINAL VENT!!

 

「はあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 俺は両足に力を込める。

 

―――――Explosion!!

 

 それと同時に・・・倍化の力を解放!!

 

 そのまま飛び上がる。

 

 飛び上がった先ではクレアと・・・あれ?いつの間にか実体化したドライクまで・・・!?

 

「へっ・・・うっ、嘘!?なんでドライクまでいやがる!!」

 

 ライザ―・・・流石にビビるよな。

 

 俺だってびっくりしたもん。

 

 二人の反応に満足したのかドライクは不敵な笑みを浮かべているし。

 

「二龍分のブレスだ。」

 

「存分に受け取りなさい。」

 

 2人が同時に強力なブレスを放ちそれを足に纏わせながら俺は勢いそのままに飛び蹴り

をかます!!

 

 右足にクレア、左足にドライクのブレスの力を宿す。

 

 そしてそのまま二体分の・・・ドラゴンライダ―キック!!!

 

「ぐおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「こうなりゃやけくそだああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 それをライザ―が手にした剣にありったけの力の込めたのだろう。炎を噴き出させて迎え撃つ。

 

 二つが激突。

 

 それと共に大爆発が起きて・・・戦闘用のフィールドがすべて吹っ飛んだ。

 

 

 

side 木場

 

『・・・・・・・・・・・・。』

 

 はっきりいよう。

 

 反則と言う言葉ですら足りないと。

 

 ファイナルベントって本当に凄まじい。戦闘用のフィールドが完全に破壊されたよ。

 

 通常でも計り知れない威力があるというのに、そこにドライクの力を加え、その上倍化ってすごいを通り越して・・・酷い!!

 

 威力だけなら戦略級の核弾頭クラスがあるかもしれない。

 

『・・・・・・・・・・。』

 

 みんなあまりの破壊力に唖然としているし。

 

 むしろライザ―によく頑張ったといいたいくらいだ。

 

「ハッ・・・反則すぎですわ。何ですの・・・イッセ―様は?」

 

「・・・・・こっ・・・これは参った。フィールドを破壊するって考えてもいなかったよ。破壊できる代物じゃないはずだったんだけどな。」

 

 サーゼクス様も驚く威力。

 

 破壊されたフィールドから二人がこちらに転送されてくる。

 

 変身が解除されたイッセ―君と・・まだあちこちから煙をあげ、変身した状態で立っていたライザ―。

 

 そして・・・ライザ―は倒れる。

 

 体からメモリを排出させて。

 

「・・・我ながらよく生き残ったとおもうぜ。」

 

 倒れたまま動けないライザ―。

 

あんな無茶苦茶な一撃を受けて生きているだけでもすごいのに、よく意識があるよね。

 

 イッセ―君は軽く息を吐きライザ―を見る。

 

「俺の勝ちだ。だが・・・あんたも強かったぜ。」

 

「ふははは・・・ああ。だが俺の負けだ。二つの禁手化か。あそこまで完膚無きにやられちゃ・・・いいわけも出来ねえ。この戦いはお前の・・・いやお前達の勝利だ。」

 

 ライザ―は負けを認める。ホント・・・良く戦ったと思う。

 

「ああ。」

 

 だが、負けたわりにはライザ―はすっきりしているよね?

 

「まだ挑ませてもらうぜ。ここまで根性が身につけたら・・・開き直れる。」

 

 根性って・・・あれ?上級悪魔らしかぬ言葉が。

 

「何時でも返り討ちにしてやるよ。」

 

 イッセ―君が手を差し伸べる。

 

「お前・・・・・・。」

 

 そして、ライザ―が驚きながらもその手を取ろうとした時だった。

 

「がっ・・・はっ!?」

 

 ライザ―の体の異変が起きたのだ。

 

 排出されたガイアメモリから黒い魔力のような物が噴出し、ライザ―が苦しみだした。

 

 そして、その身体に紫の亀裂のような物ができる。

 

「・・・・これは、ファントムが生まれる瞬間だと!?」

 

 それを見たハル君は声を荒げる。

 

「絶望もしていないのに・・・どうして。」

 

「ははははははは・・・その答えはこのメモリにあるぜ。」

 

 その言葉に応じて現れたのは・・・前のゲームで介入してきた二体の内の一人。

 

 ファントムのフェニックスだった。

 




 少し原作を変えたのはこの時点でライザーに根性がついたことです。

 これが展開に影響をあたえます。

 
 さて・・・第一ラウンド終わりです。

 次から第二ラウンドの開始です。


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希望のコトバです。

二つのゲート。

 それを救ったのは・・・


 SIDE イッセ―。

 

 苦しむライザ―にフェニックスは笑う。

 

「このメモリには細工があってな。破壊された瞬間、対象者を絶望しファントムを生み出す状態と同じにするようにする。まあ・・魔力の逆流みたいなものだが。」

 

「・・・そういうことか。お前ら、ドレイクが使った方法を応用させたな。」

 

 ハルが怒りに燃えながらフェニックスを睨みつける。

 

「そういうことだ。便利だよな。絶望させる以外にももう一つの方法が確立してんだから。あのおっさんには感謝だぜ。」

 

「ぐっ・・・お前らの背後にドレイクがいるのは確実だな。」

 

「そういうことだ。そして、それと同じ方法をもう一人にも実は起こしている。」

 

 フェニックスの言葉と共にもう一人倒れる。

 

「がっ・・・ああ・・・ああ・・・・・・。」

 

 それはライザ―の妹―――レイヴェルだった。

 

「てっ・・・てめえ・・・。妹にまで手を出しやがって。」

 

「ふふふふ・・・うまくいきましたわ。」

 

 天井に白い蝙蝠の姿をした女が天井でわらっている。

 

 二人の背中から炎の翼が出てくる。

 

「まさか・・・二人とも宿しているのは・・・フェニックスのファントムか?」

 

「そういうことだ。俺の同胞。平行世界の同一のファントム。それが二体もいる。そしてその二体が俺の目的だ。」

 

 フェニックスは笑う。

 

「平行世界の二体のフェニックスと融合するんだよ。そして最強のファントムになってやる。そのためのベルトと指輪もある。」

 

 フェニックスの腰にハルと同じドライバーが・・・。

 

「そんな事のために・・・俺をわざと勝たせたのか?」

 

「そうだ。お前はあの試合でメモリは使っていなかった。この計画にはどうしてもお前にメモリを使わせ、メモリブレイクしてもらわないといけなかった。そう言った意味ではお前はよくや・・・がばら!?」

 

 こいつの無駄口を拳でふさぐ。

 

 こいつらの計画の肩棒をかつがされるなんてな・・・。

 

「もういい・・・お前は黙れ。」

 

「こいつ・・・あれだけ戦ってまだ動けるのか?」

 

 俺はもう我慢の限界だった。

 

「よくも俺の戦いに水を指してくれたな。こいつと拳を交え、そして分かりあえた。それだけで気持ちよく全て終われたと思ったのに!!」

 

 おまけだ。もう一発殴ってやった。

 

「ぐっ・・・こっ・・こいつ・・・」

 

 俺の声にフェニックスは息をのむ。

 

―――――こいつ・・・本当の意味で相棒の逆鱗にふれたな。

 

―――――うっ・・・うん。人が良いのもこういう時は本当に怖いわ。敵だった男のために激怒しているし・・・。

 

「今すぐ二人を助けないと・・・レイちゃんはその子を!!」

 

「わかったわ・・・きゃ!?」

 

 ハルとレイちゃんが二人を助けようと走り出す。

 

 でも・・・それを阻む者がいた。

 

「邪魔はさせませんよ。」

 

 それは・・・謎の大嵐を起こした男。

 

「井坂・・・。」

 

 それがレイヴェルちゃんの傍に。

 

 ハルの目の前には・・・・謎の男がいる。

 

「ひさしぶりだね。ウィザード。」

 

 その彼にハルは驚愕を隠せないでいた。

 

「フェニックスもいたから可笑しくないとは思っていたけど・・・お前まで復活していたか・・・グレムリンいや・・・ソラ!!」

 

「ははははは・・・あの時の礼をしたくて絶望から立ち上がり地獄から戻ってきたよ。」

 

イカレタ笑いをする彼。肌に感じるよ。あいつの異常な何かに・・・。

 

「そして、俺達は新しい力をそれぞれ獲得しているんだ。ねえ・・・。」

 

 グレムリンと呼ばれた男の腰にもベルトがあった。

 

「・・・ドライバーのセールスでもやっているのかな?」

 

 ハルも腰にドライバーを出現させる。

 

「どきなさい。早くしないとその子が!!」

 

 レイちゃんの腰にもドライバーが出現。

 

「へえ・・・でも私に勝てますか・・・ぬう!?」

 

 井坂に向けて数発の弾丸が命中。その隙に拳が放たれ、後ろに下がる。

 

「助太刀するにゃ。」

 

「私も・・・。」

 

 銃を手にした黒歌さんと小猫ちゃんの姉妹。

 

―――――バインド

 

「雷の鎖ですか。」

 

井坂の身体を雷の鎖が縛り、拘束する。

 

「私もですわ。前のゲームでの借りを返していません。」

 

「ははははは・・・いいでしょう、小娘さん達。私が直々にお相手を・・・んん?」

 

 その井坂に鋭い蹴りが放たれる。

 

 拘束された状態でふっ飛ばされる井坂。

 

 蹴りを放ったのはグレイフィアさんだった。

 

「それ以上の無礼は許しません。私も直々に相手にします。」

 

 だが、その蹴りを受けてもあいつは平然と立ち上がる。

 

 雷の拘束を力づくで引きちぎってだ。

 

「こいつ・・・人間じゃない?」

 

「はははははははは・・・そうか。最強の女王までいるか。ならこっちも手駒が必要ですね。」

 

 井坂の影から次々と灰色のゴキブリのような怪物が現れる。

 

「楽しませてもらいますよ。私の新しい力の実験にちょうどいい。」

 

―――――ウェザー

 

―――――ズ―

 

 井坂は笑いながらド―パントへと変身する。

 

 試合に見せた時と同じ白いド―パントの姿をしている。

 

 だが、何かが違う。

 

 その変身に呼応するようにゴキブリ達も変化する。

 

――――アイスエッジ

 

――――サニーライト

 

――――スコール

 

――――サンダ―ボルト。

 

――――マンティス

 

―――――アント

 

―――――ウルフ

 

 などなど・・ゴキブリが次々とド―パントに変化。

 

 あいつの周りに一度に数十体のド―パントが誕生した

 

「上位メモリを持っている故の特権のようなものだよ。下位メモリの力をお前らに付属してやる。」。

 

 ハルの周りには鋼兄とネロ、サイガと木場がいる。

 

「こっちも多い。だったら手駒をだそうか。ねえ・・・カザリ。」

 

――――しかたないよね。手ごろなヤミ―は仕込めたから。

 

 その言葉と共にミイラのような怪物が招待客である悪魔の方々の中から次々と現れる。

 

「なんだこれは?」

 

「ふふふ・・・ふはははは・・・いいねえ。復活のために君を受け入れた甲斐はあるよ。」

 

 グレムリンの肩の上にライオンの姿をした何かが現れる。

 

「これは・・・グリードか!?」

 

 その名を知っている鋼兄が声を荒げる。

 

「詳しいね。そうだよ。そしてこれはヤミ―。ふふふふ・・・・。」

 

 ミイラのヤミ―は姿を変え、猫系のヤミ―へと姿を変える。

 

 二体の怪物が二人を助けるのを邪魔する。

 

「ふははははは・・・これであいつらの絶望は止められねえ。ふはははははは!!」

 

 2人を助けられない状況にフェニックスはさらに笑いやがる。

 

「これで・・・これで俺はさらに強く・・・うぐぶっ!?」

 

 だが、そんなあいつを俺は蹴り飛ばす。

 

「がっ・・・だっ・・・だからてめえ・・・いちいち嫌なタイミングで。」

 

 ついでに茫然としているライザ―の頭におもいきり拳骨を叩き込んだ。

 

「しっかりしやがれ!!」

 

「がばっ!?いっ・・・いてええ!!なにすんだ!!」

 

 正気に戻ったライザーの襟元を掴み俺は叫ぶ。

 

「こんなところで・・・絶望してんじゃねえええ!!」

 

「ハッ!?」

 

「お前は、俺ともう一度戦うんだろ!!俺に勝ちたいんだろ!?」

 

「オッ・・・お前・・・。」

 

 その言葉にライザ―の目に力が戻ってくる。

 

「だったらここで、さっき見せた根性みせないでどうする!!この程度で絶望しているのなら・・・俺には絶対に勝てねえぞ!!分かっているだろ!!」

 

 こいつにさらに言葉を投げかける。

 

「ぐっ・・・そう・・・だったな。」

 

 ライザ―は叫ぶ。絶望している場合じゃない事を思い出したようだ。

 

「この程度で不抜けていたらこいつには勝てねえ。ここで・・・。」

 

 ライザ―の言葉にも熱が戻る。

 

「ここで立ち止まっている場合じゃねえ・・・。」

 

 心の底から湧き上がる思いを叫んだ。

 

「こんちくしょぉぉぉぉぉぉ!!ここで負けられるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁ!!」

 

 そその叫びと共に背中から飛び出そうとしていたファントムがライザ―の身体の中に吸い込まれるように戻る。

 

「なっ・・・何!?」

 

「はあ・・・はあ・・・ちぃ・・・ちくしょ・・・やったぜ。やってやったぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!はあ・・・はあ・・・。」

 

 絶叫したあと、そのまま倒れ込む。

 

「これでまた・・・お前と戦えるな。」

 

 俺は拳を突き出す。ライザ―は力なくだがその拳をぶつけ俺が上、下とあわせていく。

 

「これでお前共ダチだな。」

 

 あのリーゼント馬鹿のダチの印・・・思わずやっちまったぜ。

 

 其の後、笑顔で親指をあげサムズアップをする。

 

これは冒険好きなあいつの好きな仕草。

 

 傷つき沈んだ俺の心に笑顔をくれたあいつが良くやっていた奴だ。

 

 それに、ライザ―も思わずサムズアップを返す。

 

 よく、がんばったな。

 

 後はあの子か。

 

 

SIDE レイヴェル

 

 私の中の全てが崩れて行くのを感じていた。

 

 兄がいなくなる。

 

 そして・・・私自身もだ。

 

 かつての私は夢があった。

 

 小さな頃に執事達が読んでくれた英雄談。それに胸を躍らせ、それを支える女性になりたいという気持ちを抱いていた。

 

 その夢すらも、色あせ崩れ去っていく。

 

 忘れたはずの夢なのに・・・どうして思い出したんだろう。

 

 もう、すべてがどうでもよくなってくる。

 

 私の中から私でない何かが突き破ろうとする。

 

 その時だった。

 

「こんちくしょぉぉぉぉぉぉぉ!!ここで負けられるかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 兄が自力で抑え込んだのだ。

 

 兄が・・・助かった。

 

 そして・・・笑っている。

 

「・・・見ただろ。お前の兄は大丈夫だ。」

 

 助けたのは誰なのか・・・言葉にしないでもわかった。

 

「あっ・・・ああ・・・。」

 

 それはあの時のゲームで私を助けてくれた優しいドラゴン。

 

 直情的、性的、自分の欲望に忠実だけど、それでいて熱く、まっすぐで仲間思いなあの人だった。

 

 その人が不敵な笑みでこっちに向けて声をかけてくれる。

 

「お前もできる。一人でがんばれないなら、ライザ―もいるし・・・俺もいる。」

 

「あ・・・ああ・・・。」

 

 その姿に私の中で色あせ・・・崩れたはずの夢が蘇っていく。

 

 情熱が燃え上がる。

 

「だから・・・絶対にあきらめるな!!俺が・・・俺達が付いている!!」

 

 その一つ一つの言葉が私に力を・・・希望をくれる。

 

「ここで死ぬな。レイヴェル・フェニックス!!」

 

 私は・・・私を突き破ぶり出てこようとした何かを・・・。

 

「ああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 その溢れる希望と蘇った情熱のままに抑え込んだ。

 

 そして・・・崩れ去ろうとした私は蘇る。

 

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・。」

 

 忘れ去ったはずの小さい頃の夢と共に。

 

 この日私は・・・無意識の内にずっと探していた私の英雄(ヒーロー)を見つけた。

 

 私が支えるべき人を。

 

 

 

 

SIDE イッセ―

 

「うっ・・・嘘だろ・・・あいつまで!?」

 

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・・。」

 

 荒い息をしたままレイヴェルは倒れ込む。

 

 心成しか表情が嬉しそうに見えるのは何故だろうか?

 

 一方のフェニックスは思い切りうろたえている。

 

「そっ・・・そんな馬鹿なことがあるか!?二人ともファントムを力づくで抑え込んだだと!?二体ともこの世界の俺だけあって強力なファントムなんだぞ!!この方法なら抗えないはずじゃなかったか!?」

 

 その光景を見たフェニックスは驚きのあまりにうろたえる。

 

 してやったり、絶望から復活すれば乗り越えられると信じた俺の勝ちだ。

 

「ははは・・・まいったね。魔法使いが・・・。」

 

「二人も・・・できちゃった・・・。」

 

 ハルとレイちゃんも驚きのあまりに固まっている。

 

「イッセ―君。君は本当に色々と計り知れない。言葉だけで二人を絶望から救うなんて。」

 

 いや・・・必死なだけだって。

 

 あのままじゃ二人とも死んでいたんだし。

 

「てめえ・・・・余計なことを・・・がばら!?」

 

 俺は怒りに燃えるフェニックスを殴りとばす。

 

「これで遠慮なくお前をぶちのめせるな。」

 

 腰にベルトを出現させる。

 

「いっ・・・イッセ―!?」

 

 部長の声に俺は振り向く。

 

 わかっていますよ。

 

 神殺し――アギトであることを明かすということ。それは神話に対する挑戦になると。

 

 もしかしたら、冥界中の悪魔が敵にまわるかもしれない。

 

 それでも・・・俺は変身する。

 

「部長・・・俺は変身します。他でもない・・・あなたのために。」

 

「えっ?」

 

「俺・・・あの時俺の罪を許してくれた事がすごくうれしかったです。だから俺は・・・あなたのために戦います。」

 

 それは俺のまぎれもない本心。

 

 その決意で変身し、皆に正体がばれるなら・・・むしろ本望!!

 

「見ててください。俺の変身!!」

 

俺は第三の変身をする。

 

「変身!!」

 

 アギトとしての姿に。

 

――――すごい口説き文句だな。リアス殿・・・嬉さのあまりに涙目で口元を覆っているぞ。

 

――――・・・教育の方針の変更、急がないとこれはまずいわ。どんどん罪が増えて行く。このままじゃ数えきれなくなる!!

 

――――俺はすでに数えるのは諦めた。

 

――――ああもう・・・今までモテないのか不思議でしかたなかったけど、それって学校でエロ馬鹿認定されていて女子から見向きもされなかっただけだったのね!!ふたを開けるとここまでのレベルになっていたなんて。我ながら不覚だわ。

 

―――――・・・お前の教育は確かだ。ただ、いささかやり過ぎただけのことさ。もうこいつは正真正銘の女殺しのドラゴンだ。

 

 えっと中でクレアとドライクの嘆きが聞こえてきますけど、俺・・何か悪い事をしたのかな?

 

「おっ・・・お前・・・。アギトだったのか?」

 

 倒れたままのライザ―も驚いているし。まあ・・・仕方ねえか。

 

「わりぃ・・・。本気をだしていなかったわけじゃねえが・・・。」

 

 驚いたライザ―はすぐに落ち着きを取り戻す。

 

「いや・・・別に気にするな。今度戦う時はその力も引き出させてやるだけだ。」

 

 そこまでして俺と戦いたいのか?

 

 一方のフェニックスは舌打ちする。

 

「ちい・・・アギトの力は温存していたということか。仕方ねえ・・・助っ人を呼ぶか。」

 

 その言葉と共に四体の亀型の怪人が現れる。

 

「トータスロードさん達・・・よろしく頼のむぜ。」

 

『御意。』

 

「・・・五対一だと。」

 

 ライザ―がそれを見て悔しそうに唸る。あいつはもう動けない。

 

「こい。相手は俺だろ?」

 

「おっ、お前・・・。」

 

「お前は生き残ることを考えろ。俺なら・・・大丈夫だ。」

 

 かなり不利だけど、やるしかねえ。ここからが本番だぜ。

 

「まだまだ・・・来い、グール共。」

 

 そして百体を軽く超えるグ―ル達が一斉に出現。

 

「おまけをつけてやる。」

 

 そしてフェニックスは腰に付けたベルトにある指輪を当てる。

 

――――アーマードアップ・・・ライオトル―パー!!

 

 そしてグ―ル達の身体を銅の色をした鎧のような物で覆われて行く。

 

 手には銃と短剣を組み合わせたような武器がある。

 

「量産型のギアだ。一つ一つが神器クラスの力があるぜ。そいつを守りながら戦えるかな。」

 

「ぐっ・・・・・・。」

 

 苦しい展開だぜ。一体一体は大したことがないが、それでも無視できないレベルにまで強化されている。

 

 おまけにグ―ル達の動きも雰囲気も変わる。知性は感じられなかったのに、鎧を纏ったとたんにまるで軍隊のように動きが整然とされたものになっている。

 

「前の分も含めて存分にいたぶってやる。覚悟し・・・・・・なっ?」

 

 そこに救援が現れる。

 

 出現したグ―ル達の上に赤い光で出来た三角錐のような物がいくつも現れたのだ。

 

 その数、多分グ―ル達と全く同じ数。

 

「これは・・・クリムソンスマッシュ!?」

 

 そして、それが雨のようにグ―ル達の降り注ぎ、グ―ル達を殲滅させる。

 

 多分一発一発が必殺技クラスの威力がある。それを一斉にはなってくるなんて・・・。

 

「・・・露払いは任せてもらおうか。」

 

 そして、それは俺の隣にいつの間にかいた。

 

 黒と銀の身体に赤い光のラインが走った異形。顔はまるでライトのようになっている。

 

「あっ・・・赤き閃光、555(ファイズ)だと!?オリジナルギアが来るとは・・・。」

 

「お前は・・・・・・。」

 

「味方だ。俺の同志だよ。」

 

 俺の疑問に答えるのはハルであった。

 

「いきなりアクセルを使うなんて赤い閃光に恥じない派手な登場だね。」

 

「・・・ゲームでは暴れなれなかった分のわびだ。俺も加勢させてもらってもいいか?」

 

 ハルの仲間だったのか。ハルの野郎・・・何時の間にこんな奴を伏せていたんだ?

 

「・・・・・・。」

 

 何だろう・・・こいつ。

 

 初めてあったはずなのに・・・。

 

「・・・ああ。頼むぜ。」

 

 初めてって気がしない。俺の中の何かが・・・ざわめく。

 

―――――後であなたに聞きたい事があるわ。ドラグブラッカ―のことで。

 

「・・・!?」

 

 クレアがファイズに話しかけてくる。

 

「・・・出来れば内密に。あとでハルを通して連絡を取る形で。」

 

―――――ええ。頼むわ。

 

「俺達の相手はお前ら二人か?」

 

「いいえ・・・もう一人いるわ。」

 

 そこにもう一人って・・・部長!?

 

 カ―ミラが手に噛みついて・・・って、腰にベルトが出現していますよ!?

 

「変身。」

 

 そして、全身を鎖が包み込み・・・渡が変身するキバと似た姿になった。

 

 これが鋼兄と渡が言っていた紅のキバか。

 

 見るのは初めてだったりする。

 

「・・・噂の滅びのキバか。」

 

 フェニックスは忌々しげに部長を見る。・

 

「あなたばかり格好つけさせるわけにはいかないわ。私もよろしくて?」

 

「あっ・・・ああ。すげえメンツばかりで流石に参っちまうが。あいつの惚れた女もまた普通じゃねえな。」

 

 ファイズもため息をついて何かいっているし。

 

「三人で相手させてもらうわ。」

 

 とにかく頼りになる仲間が二人か・・・悪くねえ。

 

「ちい・・・だったら、こいよ。俺も変身させてもらう。」

 

――――――ドライバーオン!!

 

 そして腰のベルトを起動。本当にハルのベルトとおんなじなんだな・・・。

 

 やかましい。

 

「・・・そこまでハルの奴と同じにしなくてもいいのにな。」

 

 ファイズの言うとおりだぜ。

 

 そして、フェニックスの姿もまた変わる。

 

 朱金の魔法使いに。頭は金色のオパールのようになっている。背中のマントはフェニックスの翼のようになっており、腰のローブはクジャクの尾羽のようである。

 

 手には大剣が握られている。

 

「手駒はまだまだあるんだぜ?」

 

 指輪をベルトに充てるフェニックス。

 

―――コネクト。

 

 魔法陣を横に展開させ、そこから次々とライオトル―パーが出現。

 

「二人ともいくぜ。」

 

「ええ――さあ、滅びの時間よ!!」

 

「いきなりハードだなおい!!」

 

 俺達は三人で戦う事になった。

 

 

side 鋼鬼。

 

 向こうは向こうで派手にやっているな。

 

 拳一発でふとった豚ネコのようなヤミ―を粉々に打ち砕きながら俺は感心したようすでいう。

 

「・・・う・・・嘘でしょ?そのヤミ―・・・打撃を吸収する特性をもっているのに。」

 

「だったら吸収きれない力と技を持って拳をねじ込めばいいだけだ。」

 

 鬼に変身はしているが、その程度の相手だ。

 

「ハルト君・・・とんでもない化け物をつれているね。」

 

「否定はしない。」

 

 ハルよ、せめて化け物の部分を否定してくれ。

 

 それにお前も人の事は言えないぞ?

 

 ハルは別の豹のようなヤミ―に変身した状態でアイアンクロ―をかましている。

 

 必死でもがいているが、全く相手は動けない。

 

「・・・いい加減爆せろ。」

 

 って・・・そのまま頭を握りつぶしやがった。

 

 あの握力だけは俺でも真似できない。変身したら握力は確か百トンは超えていたよな。

 

 まさに必殺。

 

 その光景をソラは唖然とみている。

 

「・・・訂正するよ。君も十分化け物だ。どうやったら握力だけでヤミ―を倒せる?」

 

「ちょっと右腕にタネがある。じっくり調べてみるかい?四人分はあるけど?」

 

 ハルの左腕にタイマーのような物が出現する。なんだあれは?

 

「げっ・・・。」

 

 ソラはそれが何か理解しているようで、慌てて下がる。

 

「えっ・・・遠慮しておくよ。転生して、色々と手ごわくなったね。まだドラゴンスタイルになっていないというのに―――今の君でも戦いたくないよ。」

 

 向うではサイガが鎧を纏った状態で戦っていた。

 

 相手はライオンのようなヤミ―である。

 

 爪で斬りつけようとして、それをかわしつつ逆手に持った剣で斬りつけるサイガ。

 

「そんなもの?」

 

 だが、その背後に別のヤミ―が現れる。

 

 黒い豹のようなヤミ―だ。それが闇を纏いながら無音で接近。

 

 サイガに襲いかかってきたのだ。

 

 黒い闇に包まれ、無数の斬撃音が聞こえる。

 

 そして闇から・・・ボロボロに切り刻まれて吹っ飛ぶ黒豹のヤミ―。

 

「・・・危なかったよ。体が勝手に動かなかったら対応できなかった。」

 

 不意打ち。それも視界を封じられ、音も立てない襲撃にサイガは対応していた。

 

 平然としているのはなぜだろうか?

 

 右手に・・・竜の顔のような紋章が輝く。

 

 ライオンのヤミ―が爪で斬りかかるが、それをけりでふっ飛ばす。

 

「せっかくだ。こっちの秘剣を受けてみるかい?」

 

―――――ギガデイン

 

 剣を掲げると、そこに天から凄まじい雷が落ちてくる。

 

 その剣を持って二体のヤミ―に突進。

 

 途中で逆手に持ち替えつつ・・・剣を振るった。

 

―――――ギガスラッシュ!!

 

 雷の爆発と共にメダルとなって粉々に吹っ飛んで行く二体のヤミ―。

 

「おらおらおらおら!そんなもんかい!!?」

 

 ネロがもう一体・・・虎型のヤミーを投げ飛ばし、そこからレッドクイーンで切り刻む。

 

「そしてこれはおまけだ。」

 

 ネロの手にもう一本の刀・・・次元を切り裂く刀――夜魔刀を出現。

 

 それでさらに切り刻む。

 

――――ショ―ダウン。

 

 そして最後二本で十字に切り、ヤミ―は爆発。

 

 木場も二本の剣で交互にヤミ―を斬りつけて倒した。

 

 あっけなくヤミ―は全滅する。その光景にソラと言うやつは目を丸くする。

 

「・・・・・・まいったね。せっかくのヤミ―をこんなに簡単に倒されるなんて。一応メダルは回収しておくよ。」

 

「よろしく。こっちの力にもなるから。」

 

――――――コレクト。

 

 ソラが腰のベルトに指輪を当てると散らばった大量のセルメダルが集まっていく。

 

 そのメダルをすべてソラが吸収していく。

 

「もともと餌だった。撃破されても得はあるんだよね。」

 

 ソラの肩にいるカザリと言うグリード。

 

「お前は・・・エイジが倒したはずだよな?」

 

「・・・ああ。久しぶりだね。おどろいたよ。ヤミ―を一撃で倒すなんて、あの時よりも強くなったか。」

 

 カザリが笑う。間違いない・・・エイジと共に戦ったグリードの一体。

 

 紫のメダルの力で自我を宿したコアメダルが砕かれ、消滅したはず。

 

「まさかハルの因縁と手を組むか。」

 

「メダルが割れ、自我を保てなくなった所に彼が落ちて来てね。見事にくっついただけだよ。いまは互いに共存共栄している状態さ。彼の欲望も最高でね。セルメダルが定期的に生み出されているから最適だよ。すごく気が合うしさ。」

 

 グリードにファントム。この二つの融合体をみることになるか。

 

「さて・・・メダル一枚。これで面白い手品をみせてあげよう。」

 

 ソラがセルメダル一枚取り出す。

 

――――――コネクト。

 

 そのメダルを緑の魔方陣の中にほうりこむ。

 

―――――サモン。

 

 そして、続いて別の指輪をつかうと、地面の下から怪物が現れたのだ。

 

「・・・なっ・・・。」

 

それはカザリが生み出すネコ科のヤミ―にしては大きい。

 

 いや・・・大きすぎた。

 

 何しろ体高だけでも軽く見て、三十メートルはある。

 

 出現だけで式場の一部が崩落、戦いの舞台が式場の外に変わったくらいだ。

 

「・・・あっ・・・・・・あれ?」

 

「・・・・・・はい?」

 

 それは超巨大な紅の獅子であった。

 

「そっ・・・想像をはるかに超える奴がでてきたね。いきなり成体なのもそうだけど。」

 

「でかすぎる。なんなのこいつ・・・。」

 

 そして、驚いているのはソラもカザリも同じだった。

 

 目を丸くして、召喚したヤミ―を見ている。

 

「おい・・・誰にセルメダルを入れた。」

 

 俺は最悪の事態を覚悟していた。あいつはあの魔法で誰かにセルメダルを入れたのは間違いない。

 

 問題はそれが誰かということだ。

 

「いやね・・・カザリが素晴らしい欲望を持った奴がいるからって、ほらあの現赤龍帝でアギトの彼。」

 

 そして、それは無情にも現実になってしまった。

 

「コネクトの魔法陣越しにメダルを放り込んで、出来たヤミ―を瞬時にこっちに召喚してみたけど・・・なに・・・これ・・・。」

 

 イッセ―に入れたというのか・・・。

 

「お前・・・。」

*

 よりによって・・・イッセ―なのか?

 

「お前なんてことをしてくれたんたあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 俺は頭を抱えて絶叫する。

 

 最悪だ。最悪すぎる。

 

「おっ・・・おい鋼兄。どうした?」

 

 俺の動揺にただならぬ物を感じたのだろう。皆がかけよってくる。

 

「ヤミ―はな。簡単にいえばセルメダルを放り込まれた人間の欲望を元に生まれる怪物だ。」

 

 そして、欲望を満たすために動く。そして、セルメダルをためるのだ。

 

「こっちもエイジから聞いた事があるよ。グリードとヤミ―との戦闘経験もあるし、彼と一緒に戦ったことがある。」

 

 渡。お前もエイジの知り合いだったのか。

 

 後でじっくりと話を聞きたいところだが。

 

「欲望が大きいと強さが増す傾向がある。そしてあれはイッセ―から生まれた。」

 

「・・・・あのでかさはつまりイッセ―君の欲望の途方もないでかさを現していると?」

 

 木場・・・察しがいいな。

 

 怪獣並のでかさか。あいつの業はすごい。

 

「・・・・・・まずい。欲望がでかすぎて制御ができない。なんなの、このヤミ―!!」

 

 ソラも制御しようとはしていたのだろうが・・・無理だろうな。

 

 あいつの欲望は俺達だって制御できねえ。

 

「信じられない。僕たちが制御できないほどの欲望をもっているなんて。セルメダルに変換したらどれだけの量になるの?一体どんな欲望を・・・。」

 

「おっぱい・・・・。」

 

 超巨大ライオンヤミ―は叫ぶ。

 

『へっ?』

 

「おっぱいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

 己の中の欲望を冥界中に轟かせんと。

 

 その轟きを聞いたイッセ―は驚きのあまりに目を丸くしていやがるし。

 

『・・・・・・。』

 

 あまりにも予想通り過ぎて悲しくなる。

 

「もしかして、これ全て煩悩だというのかい?・・・・・・冗談でしょ?」

 

「あっ、呆れて・・・何もいえない。何時から人間はここまで業が深くなったの!?」

 

 ソラとカザリの2人が信じられないって顔しているし。

 

 あと、頼むからイッセ―と俺達を一緒にするな。

 

「このアホみたいな大きさはイッセ―の中の煩悩をそのまま具現化したというわけかい。」

 

 ネロがひきつった笑いを見せる。ああ・・・その通りだろう。

 

「イッセ―君・・・一体どれだけ助平なの。」

 

 渡。全くその通りだ。

 

「あいつの煩悩は本当に恐ろしい。良い意味でも悪い意味でも可能性の塊なのが実証されたよ。」

 

「シャレになっていないって・・・もう面倒な。」

 

 ハルの関心をよそに、サイガはうんざりしている様子。

 

「・・・みんな覚悟はいいか?これは・・・強敵だ。」

 

 俺はアームド・クサナギを出現させる。

 

「はあ・・・ソラ、イッセ―には手を出さないほうがいい。これは忠告だ。こっちだって何が飛び出すのか分からないから。」

 

「・・・・・・そうだね。」

 

「欲望の怪物である僕達が制御できないほどだからね。メダルは少なくとも万単位、馬鹿みたいにがっぽり稼げそうだけど、リスクがでかすぎる。」

 

 まったくあいつらイッセ―の欲望・・・いや煩悩を解放させやがって!!

 

「おっぱいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 冥界のど真ん中で煩悩を叫ぶライオンのヤミ―。

 

「きゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 その叫びと共に逃げようとした女性の服が・・・はじけ・・・。

 

 あれ?視界がまっくらになったぞ。

 

「鋼鬼さん。見ない方が良い。」

 

「この手の大型の敵には鋼兄さんが重要な戦力。鼻血出して倒れられたら困る。」

 

「・・・・・・すまないな。」

 

 木場と渡の気遣いだろう。2人が瞬時に目をふさいでくれたのだ。

 

「状況だけおしえてくれ。」

 

「あのヤミ―の咆哮はそのまま洋服破壊(ドレスブレイク)の効果がある。女子達が裸になって悲鳴を上げて逃げて行った。そにあのヤミ―は満足している。」

 

「・・・泣けるで。」

 

 親が親だけにさすがだ。ああ・・・涙がでてきた。

 

「女子の裸を見て、メダルがすごい勢いで貯まっている!?通常のヤミ―とは比べ物にならない破格の効率だ。」

 

「・・・・・・考えようによっては本当にお買い得なヤミ―の親なのかもね。欲望をかなえるためのハードルも低いし。制御方法さえ確立すれば・・・。」

 

 だからお前ら、もうイッセ―をヤミ―の親にしないでくれ!!

 

 こいつ一体で冥界中を大パニックに陥れかねないスペックを持っているぞ!!

 

 さっきのでさらに一回り巨大化しやがったし。

 

「はあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 ネロがキルスに変身。

 

「来い・・・轟竜!!」

 

 サイガも鎧の馬のような物を召喚。

 

「これ終わったらイッセ―君を殴ろう。僕はそう決めたよ。」

 

『まったくだ!!』

 

 木場の言葉に皆は同意する。あいつの煩悩ごと殴りとばしたい。

 

「俺は悪くねえええええええええぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 向うでイッセ―の悲鳴が聞こえるが、もう決定事項だ。あとで覚悟しておけ。

 

 俺達は今からイッセ―の煩悩の化身―――超巨大おっぱいライオンとの死闘を始める。

 

 我ながらすごく嫌なネーミングだと思うが。

 

 

 

 side 朱乃

 

「・・・・・・・・・。」

 

 みんなイッセ―君のヤミ―の出現に脱力しているわ。

 

 あそこまで溜まっていたなんてすごい子。

 

「ふははははは・・・その欲望、すばらしい!!」

 

 井坂と言う男は逆に称賛すらしているわ。

 

「これだけ巨大な欲望と言う名のエネルギーがあるか。これは手ごわい訳だよ。」

 

 欲望。あれだけの巨大なエネルギ―を持っているのだから確かに手ごわいかも。

 

 井坂と言う男も手ごわいという意味では同じだった。

 

「やりますね。」

 

 グレイフィア様が私達の目の前で井坂に攻撃を仕掛けようとしても全く手を出せないほどだ。

 

 近づこうとすると雷や嵐が阻み、蜃気楼などで幻惑してくる。

 

 それに彼が生み出すゴキブリが変化したド―パント達が邪魔をする。

 

 一体一体が最低でも上級悪魔クラスの力を持つ。その相手に私達は苦戦を強いられている。

 

「・・・・仕方ありませんね。アルファ。」

 

「出し惜しみは無しね。確かにこの男は危険だわ。」

 

 グレイフィア様の手にデッキが現れる。

 

 腰にもベルトが出現していた。

 

「・・・・・・ほう。禁手化か。いいだろう。」

 

「それにようやく専門家が現れましたしね。」

 

―――――サイクロン!!

 

―――――ジョーカー!!

 

「んん?」

 

 二つのガイアメモリの音声、そして巻き起こる突風共にそれは現れる。

 

 右半身が緑、左半身が黒の男。

 

「来たか・・・W(ダブル)。」

 

 それは魔王・・・アシュカ・ベルゼブブ様の眷族。兵士の駒の変異を二つ使った異形の戦士。

 

 戦車や僧侶を超える六つという価値だが、実際の戦闘力はそれすらはるかに上回る。

 

 ガイアメモリと呼ばれる物を使うのだ。上に彼もまた契約者。

 

 それも異世界から来た全知の龍神を相棒としているのだ。

 

 その龍神と合わせて変身した姿があのW(ダブル)。

 

 二人で一人の仮面ライダ―だ。

 

「・・・お前は変わったな。」

 

―――――その身体、人間どころか、悪魔でもない。一体どんな存在になった?

 

 そしてWから聞こえるもう一人の声がその契約した龍神なのだ。

 

「それは戦ってみればわかることじゃないのかな?」

 

 井坂は雷をWに向かって落とすが・・・それを軽々かわしながら飛び蹴りを喰らわせる。

 

「だったらそうさせてもらうぜ!!」

 

「むっうぅ?!」

 

 それは風のように軽やかで、それでいて鋭い一撃。其れを受けて後ろに下がる井坂。

 

「そうですか。あなた方も数々の戦いを潜り抜けてきた。その証拠に今の一撃、鋭くそして重くなった。ガイアメモリとの適合率も上がっている。その上悪魔となった特典で身体能力も上がったと来たものだ。」

 

「へえ・・・受けただけでわかるのかい。」

 

―――――気をつけたまえ。井坂はもう一つのメモリも使っている。動物園の記憶のね。

 

「・・・おい。まじか?」

 

 動物園の記憶?それってそんなに厄介なものかしら?

 

「動植物なら何でもありの上位メモリじゃねえか。」

 

 それは厄介。だから動物園なのね。

 

――――もう一つの力も検索したけど・・・なるほど、厄介すぎる。どうやったら異界のアンデット、ジョーカーの力を得ることができるんだい?

 

「ふははははははははははは!!」

 

 井坂の姿がド―パントのそれからさらに変わる。

 

 白の身体に胸と頭の部分が金色になったカミキリムシや昆虫の化け物のような姿。

 

「三人目が人間からアンデットの融合でジョーカーになったという経緯がある。同じようなことができるのかやってみたらこの通りだよ。」

 

―――――四人目のジョーカーか。それだけで君たちの背後に統制者がいるのは容易に想像できるよ。

 

「アンデットってなんだ?」

 

――――――端的にいえば不死身の怪物。ある方法でしか、封印できない厄介な存在だよ。

 

 ただでさえ厄介なのに、その上不死身になった男。

 

「どうします?エクストリームになりますか?」

 

 井坂の言葉にWは軽く肩をすくめて見せる。

 

「あれは切り札だ。まだ必要はねえ。まあ・・・グレイフィアの姉さんというとっても心強い味方もいるし今回は二人で・・・。」

 

「いや・・・私達もいるにゃ。」

 

 黒歌が笛を吹きながら隣に並ぶ。

 

「そういうこと。」

 

 レイちゃんも腰にベルトを出現させて並ぶ。

 

「私達も・・・・。」

 

「忘れないでほしい。」

 

 そこに私と小猫ちゃんも続く。

 

――――豪華だね。鬼と魔法使いまで戦ってくれるよ。

 

「ふはははは・・・いいでしょう。ここからが本番ということで。」

 

 井坂の姿が白いド―パントのそれに戻る。

 

「いくにゃ・・・。」

 

 拭いた笛の響きを額に当てる黒歌。

 

「変身。」

 

 レイちゃんはベルトに黒真珠の変身用の指輪を当てる。

 

 そして二人は変わる。

 

 黒歌さんが氷と風を切り裂き、奏鬼に。

 

 レイちゃんは仮面ライダーウィッチに。

 

 そして、グレイフィア様も腰のベルトにデッキを装填する。

 

「変身。」

 

 その姿は黒のインナーに銀色の毛皮に似たアーマーと同じ色のローブを腰を纏った姿に変わる。

 

 頭には鹿の角のような物がついている。

 

 そして左胸に黄金の召喚機がついている。

 

 その名は・・・・インぺラ―。

 

 前の大戦で双銀の女王として敵味方共に畏怖されたグレイフィア様の本気の姿。

 

「サバイブは使わないでおきます。」

 

 いえ、正確にはまだ一つ上の姿がある。

 

 それでも素が強すぎるこの方が変身するのはそれだけで反則である。

 

「この六人・・・いや、八人でやらせてもらうぜ。」

 

 Wの彼は皆と戦う事を宣言して見せる。

 

――――僕とアルファを入れる当たり、律義だね。

 

―――――気を使ってくれてありがとう。

 

「どの程度の力かみせてもらおう・・・いぃ!?」

 

 井坂が攻撃する前にグレイフィア様は動いていた。

 

 床を蹴り砕くほどの脚力を持って、井坂を蹴り飛ばしたのだ。

 

 あの姿は特に脚力、それも異様なまでに強化される。

 

 蹴り一発一発が必殺技と言えるくらい。

 

 現に蹴り一発で他のド―パントは爆発して消滅していますし。

 

「反応が甘いです。」

 

「ぐっ・・ふふふ・・・ふはははは・・・・いいねえ。それでこそだ。」

 

 そこにさらにWが追い打ちで蹴りを入れてふっ飛ばす。

 

 それを受けてなお・・・井坂は笑って立ち上がる。

 

 本当に手ごわい。

 

「それくらいでないと・・・この身体になった甲斐がありませんよ。」

 

「っつたく、とうとう人間すらやめちまいやがって。」

 

―――――――この世界でも君は相当なことをしでかしているようだね。

 

 そんな井坂に向かってWは告げる。

 

『さあ・・・お前の罪を数えろ。』

 

 何故か隣でグレイフィア様も一緒に井坂に指差して言っていますし。

 

「・・・・・・グレイフィアの姉さん。頼むから人の決め台詞を取らないでくれ。」

 

「たまにはいいじゃないですか。それに・・・器物破損、傷害など色々と頭の中であの人の罪がどれだけあるのか考えてしまい、あと始末がもう・・・憂鬱で。」

 

―――具体的に数えるとどれくらいになるか・・・。金額でも示してもいいかも。

 

「でも器物破損ならイッセ―もやらかしているぞ。まあ・・・あのヤミ―のせいで分かんなくなったが・・・。」

 

 巨大なライオンヤミ―のおかげで式場は半壊状態。

 

 それに開き直ったのかグレイフィア様は少し笑う。

 

「なら好都合。このまますべての罪をあなた達になすりつけてくれる。」

 

『おい!!』

 

 グレイフィア様。それはさすがに・・・。

 

――――さすがにあの破壊に自分も加担しているなんて分かったら後が面倒なのは目に見えている。合理的な判断だよ。あいつらが破壊の上から破壊してくれたからばれる事もない。

 

「あの・・・・逆にあなた達の罪を数えたくなってくるのですが。」

 

 井坂も結構いい性格をした最強の女王様に呆れている始末。

 

――――これくらいじゃないとルシファー眷族はやっていけないわよ。

 

 アルファさん・・・あなた達苦労していますね。

 

「まあ・・・いいでしょう。その程度の罪など痛くもかゆくもないですし。」

 

 あの人も自分の興味のない音はとことん無頓着なのね。

 

 そんなグダグダな感じで私達は不死身の怪物と戦う事になった。

 

 

 




 今回の更新はここまでです。


 また活動報告でアイディア募集をしたいと思います。

 よろしくおねがいします。


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目覚める新たな力です。

大変お待たせしました。

 今回で二章を完結させます。

 師走が忙しくてなかなかできませんでしたが・・・どうぞ!!


 SIDE イッセ―

 

「不幸だ。俺・・・悪くないよね?」

 

 色々と理不尽な怒りをぶつけられながら俺は今戦っている。

 

「てめえ・・・本当に何者だ?色々とありえないぞ。」

 

 フェニックスが呆れながら聞いてくるけど、俺だって分からねえよ!

 

 何で俺の中からあんな化け物が誕生することになる!?

 

「いまの内に始末してえが、刺激を与えるとどんなふうに暴発するかわからねえ。なんなんだよてめえは!!」

 

 そして危険物扱いされているし!!触る事さえ躊躇われていますよ!?

 

 泣きながら俺は雑魚を蹴り飛ばす。

 

――――――もう・・・フォローできない。あんたの助平さが生み出した罪は特にね。

 

――――――相棒といると色々と飽きない。

 

「ああそうですか!!」

 

<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!>

 

 ライオトル―パーを倍化させた拳で粉々に打ち砕く。

 

 そんな俺に向けてトータスロードの一体が刃のようなヒレで斬りかかってくる。

 

「ぐっ・・・。」

 

 その一撃に怯みながらも俺はカウンターを決めるが、そこを別のトータスロードとライオトル―パー達が邪魔をしてくる。

 

 トータスロード達の固い甲羅による突進でふっ飛ばされ、ライオトル―パー達が手にした短剣のような武器を変形させた銃による攻撃を受けたのだ。

 

「イッセ―!!」

 

「世話やけんな!!」

 

 そんな連中を部長とファイズが攻撃してくれる。

 

「・・・数が多い。」

 

――――――私の武器を使うかしら?

 

―――――それとも我らを召喚するか?

 

「いや・・・・・。」

 

 相棒共の提案に苦笑しながら俺は別の選択を取る。

 

 数の多い雑魚どもを一掃する方法を俺は当たり前のように思いつく。

 

「部長!!」

 

「何かしら?」

 

「勝手で申し訳ないですけど・・・プロモーションやらせてもらいます。」

 

「へっ?」

 

 本来なら主の許可が必要ですが・・・今の俺ならできる。

 

―――――プロモーション・・・騎士(ナイト)

 

 騎士になってみると、ベルトから蒼い棒のような物が現れる。

 

 それを引き抜くと・・・俺の身体が黄金から青に変わった。

 

 そして左肩に蒼いアーマーのような物がつく。

 

「まっ・・まさかエレメントチェンジ?いや・・・この場合はフォームチェンジか。」

 

 フェニックスは姿が変わった俺の姿を見て何か言っている。

 

 変化した俺に向けてライオトル―パー達が銃撃をしかけてくる。

 

 それに対して両先端が展開して刃となり、そして長くなったハルバードを旋回させてすべて防ぐ。

 

 そのまま飛んでくる銃撃をすべてかいくぐりながら一体を殴りとばす。

 

 その感触だけで分かる。

 

「力は落ちているけど・・・速く動ける。」

 

 この武器が落ちた力を補うためにあるようだ。

 

 斬りかかろうとする連中に対して、ハルバードを振るってまとめて斬りとばす。

 

 攻撃して来ても楽に避けられる。たった一歩で、前の三倍以上の距離を動ける。

 

動きが軽く、そして速くなっているためだ。

 

 ――――まさに嵐ね。

 

―――――ああ・・・東方の龍が巻き起こす嵐その物。

 

 突風と共に敵を次々と斬りとばしていく姿をクレアはそう例えた。

 

「音速斬嵐の騎士(マッハスラッシュストーム・ナイト)と言うべきかしらね。」

 

 部長はこの姿に名前すらつけているし。

 

 倍化させた力を使えばさらに速く、そして鋭い攻撃が繰り出せる。

 

「・・・速すぎる!?何だこのスピードは。」

 

 銃を撃とうが斬りかかろうがすべてかわせる。すごく軽く動ける。

 

 あまりの速さに相手を幻惑出来るレベルだ。

 

「残像で分身ができるほど動きか。・・・・・すごいな。」

 

<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!>

 

 加速をさらに倍化、そしてその力を武器に譲渡。

 

――――――――Transfer!!

 

 ライオトル―パーの群れを走り抜けながら俺はハルバードを振るう。

 

 走り抜けると同時にライオトル―パー達は切り裂かれ、全滅する。

 

 そこに・・・四体のタ―トスロード達が急襲。

 

 床をまるで泳ぐようにして攻撃してきたのだ。

 

 それをかわすが、攻撃する前に床に潜られてしまい攻撃ができない。

 

 例え攻撃出来ても・・・亀だけあってその硬い甲羅が刃を弾いてしまう。

 

――――――どうするの?

 

 だったらもう一つ試してみましょうか。

 

「プロモーション・・・戦車(ルーク)!!」

 

 その言葉と共にハルバードが消え、ベルトから剣の柄が出てくる。

 

 それを引き抜くとともに今度は体が赤に変わった。右肩に赤いアーマーもついている。

 

 手には引き抜いた赤い刀。

 

「今度は戦車なの?」

 

 この姿は・・・うん、分かることは二つ。

 

 まず一つ・・・。

 

 背後から襲いかかってきたトータスロードの一撃をあえて受け、拳一発で殴りとばす。

 

「ごぼっ!?」

 

 すごく力が上がり、防御力もあがっている。その分、体が重くなってはいるけど。

 

 そして・・・もう一つ。

 

 あいつらの動きが分かる。

 

 トータスロード四体の位置が手に取るように分かるのだ。目だけじゃなくて、聴覚。振動、そしてそれ以外の第六感みたいなものも増強されている。

 

 それがあいつらの位置を教えてくれたのだ。

 

「なんでだ?」

 

「攻撃がすべて・・・読まれている!?」

 

「全く当たらない。」

 

 動きが鈍くても全然問題ないくらいだ。

 

 そこにこの刀。そうか・・・このフォームの戦い方が分かる。

 

 刀の唾の部分がアギトの角のように展開する。

 

<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!>

 

――――――――Transfer!!

 

 力を送り込むと、刀から凄まじい勢いで炎が噴き出す。

 

 刀を構えたまま・・・その場で動かなくなる。

 

「だったら・・・前後から。」

 

「攻撃してくれる!!」

 

 二体のトータスロードが全く同じタイミングで前後から飛び出してきたのと同時。

 

 俺は横に動きながら剣で弧を描くようにして薙いだ。

 

「がっ・・・。」

 

「なんだと!?」

 

 その一閃は二体のトータスロードの身体を上下に両断。

 

 そのまま二体の身体が炎に包まれながら倒れ・・・爆発する。

 

 横手から飛んでくる三体目。その頭を部長が受け止めていた。

 

――――ウェイクアップ。

 

 わざわざ、カテナを解放させた腕でだ。

 

「その姿・・・炎剣心眼の戦車(フレイムソードアイズ・ルーク)と呼ばせてもらうわ。」

 

 また名前をつけていますし。

 

 顔面を掴まれて動けないトータスロード。

 

「・・・滅びなさい。」

 

「ぎゃあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 その身体に直接滅びの力を送り込み、三体目のトータスロードが絶叫と共に滅される。

 

・・・結構えげつない倒し方ですな。

 

 最後の一体が逃げようとする。

 

「誰が逃がすか。」

 

 だが、そこにファイズが手に赤い光の刃を持つ剣を持つ。

 

 腰の携帯電話みたいになっているベルトのボタンを押す。

 

――――Exceed Charge

 

 そのベルトから延びる赤いラインが剣に向かって赤い輝きのエネルギーを送り込む。

 

 それと同時に剣を振ると、そこから赤いエネルギー波が放たれ、そのまま最後のトータスロードを拘束する。

 

「うっ・・・動けん!?」

 

 そこにエネルギーを全開にさせた刃を持って突進。トータスロードを一刀両断。

 

 こうして・・・ト―タスロード達も全滅した。

 

「・・・マジかよ。」

 

 あっという間に全滅した助っ人達を見てフェニックスは茫然としている。

 

 俺達はフェニックスに詰め寄る。

 

 でも背中から出てきた炎の翼がそれを阻んだ。

 

「俺を舐めるな!!」

 

 炎の翼を剣で切り裂きつつ、俺はフェニックスに詰め寄ろうとする。

 

 刃とフェニックスの大剣がぶつかり合い、俺が弾き飛ばされたところにファイズが詰め寄ってくる。

 

 手に変わった板のような物・・・って何それ?

 

「・・・・・・デジカメだ。」

 

 へえ・・・って!!それデジカメなの!?

 

 よく見るとレンズも確かに見える。

 

 ――――Exceed Charge

 

 電子音と共に充電され・・・赤い閃光と共にデジカメごと強力なパンチを繰り出す。

 

「ぐおっ・・・!?」

 

 最近のデジカメってすごいんだね。パンチの威力が上がる機能付き。

 

 大剣と刃からぶつかって、フェニックスの大剣の方が粉々に砕かれちゃったよ。

 

・・・・・・俺は絶対にそれをデジカメとは認めないぞ。

 

 そこにさらに部長が追い打ち。

 

 滅びの魔力を込めて強烈な回し蹴り。

 

「がはっ!?」

 

「聞いた事があるわ。ファイズは総合ユニット型の神器・・・ファイズギアを使っているって。ベルトと携帯電話が本体だけど、それに付属した神器がいくつもあるらしいわ。追加で色々を付属できるようにグレコリが研究しているのよね?」

 

 そんな変な神器があったの?

 

「単独でも使えるし、組み合わせたら信じられない力を発揮するそうよ。」

 

「癖は強い。使い方も取得するのが大変だった。」

 

 そうだろうね。でも・・・デジカメがパンチ力強化って言うのは未だに衝撃が。

 

 そんなところにフェニックスが立ち上がってくる・

 

「ちい・・・このままじゃ勝てねえ。しかも滅びの魔力とフォトンブラットか。これは俺の力と相性が悪い。しかたねえ。切り札をつかわせてもらうぜ。」

 

 フェニックスはある指輪を発動させる。

 

――――リバイブ。

 

 それは蘇生の魔法。

 

 それと共に四体のタ―トスロードと何体かライオトル―パーが復活。

 

 続いてもう一つの指輪も発動。

 

――――フュージョン。

 

 それと共に蘇生した連中が光となって、フェニックスと一つになる。

 

 現れたのは四メートル位の巨大な亀怪人。

 

「ふはははは・・・リサイクルってやつだ。」

 

 だからって怪人を蘇生させて合体するのはリサイクルとして色々とまちがっていないか!?

 

 亀怪人の前方に巨大な火球が精製される。

 

 当たると不味い。

 

 かわそうとおもった。でも・・・後ろには部長と一緒に戦ってくれているファイズ。そしてまだ逃げようとしている者たちがいる。

 

「・・・・・くそぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 それが放たれ、俺達を飲み込まんと襲いかかってきた。

 

 

 

 

SIDE ネロ。

 

 今俺の腕の中で一人の男が逝こうとしていた。

 

「鋼兄!!」

 

「俺はもう・・・だめだ。」

 

 震える手で俺の手を掴む。ああ・・・あれだけ力強かったのに握った手から伝わる力は赤子のように弱々しい。

 

「鋼鬼さん・・・ごめんなさい。」

 

 その後ろでは白いテーブルクロスを纏ったキリエの姿。

 

 そのテーブルクロスから見える艶めかしい体のラインを見た鋼兄は・・・。

 

「ごぶっ!?」

 

 また血を噴き出した。

 

「はあ・・・は・・・・・・あ・・・ああ・・・黒歌。子ども残してやれなくて・・・ごめんよ。そう・・・つたえてくれ。」

 

「鋼兄ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 巨星が今落ちようとしていた。

 

 

 

 どうしてこうなったかと言うと話はキリエが皆を守るために神器の力を発動させていたことから始まる。

 

「キリエ!!無茶をするな!!」

 

「私だってできることはやらせてほしいわ。だって・・・・・・。」

 

 彼女の背後には子供達がいる。

 

 はあ・・・こういったところは相変わらずだぜ。

 

「俺達が引きつける。その間に逃がしてくれ。」

 

 誰かのために身体を張ることを惜しまない。すごく優しい。いや優しすぎる。

 

 だからこそ・・・守りたいと思う。

 

 愛しいと思うぜ!!

 

 そして目の前では鋼兄が・・・本気をだしていた。

 

「おらああああああぁぁぁ!!」

 

 飛びかかってきたおっぱいライオンを背負い投げで投げた!?

 

 でもおっぱいライオンもすぐに体を翻して着地。あの巨体で音もなく静かにだ。

 

「厄介だな、あの巨体であのしなやかさと機動性か。」

 

 猫の様な敵なだけある。

 

 でかく、怪力も誇るのに、それでいて身が軽く、速い。

 

 でかさも相まって爪の一撃は脅威。

 

 おまけに・・・。

 

「おっぱいぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 タテガミから無数の毛針を飛ばしてきたのだ。

 

「ちぃ!!」

 

 皆が剣を振るいながらそれを防ごうとする前に・・・・

 

「みなさん大丈夫ですか!?」

 

 キリエが神器の力ですべて防いでくれる。

 

「長期戦はさけたいな。」

 

「うん。下手したら街に被害が・・・。」

 

 渡の言うとおり・・・あのままじゃ街に行ってしまう。

 

 あいつの欲望ならよリ美女の多い街に向かうのは必須。

 

 行かせないと俺達は必死で食い止めているのだが・・・それでもこのままじゃ時間の問題かもしれない。

 

「仕方ない・・・本気を出すか。現時点でどこまで力のコントロールができるか試すいい機会だ。」

 

 手にしたアームド・クサナギを発動させる鋼兄。

 

 周りに無数のディスクアニマル達が集まっている。

 

「おっぱいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 あのおっぱいライオンがキリエを見つけて突進してきやがった。

 

 あの野郎・・・キリエを狙いやがったな!!

 

 それはレッドクイーンとブルーローズを交差させて受け止めようとするが・・・。

 

 その爪は常識外に強力で・・・。

 

「ぐぼっ・・・・まじかよ!!」

 

 レッドクイーンの刀身とブルーローズの銃身を粉々にしやがった。

 

 そのまま俺はふっ飛ばされる。

 

「ネロ!!」

 

 そしてキリエに向けて・・・。

 

「おっぱいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 とおっぱいライオンが例の咆哮をかました。

 

「へっ?きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 空中にいたキリエはその咆哮にぶっ飛ばされつつ服が破壊され・・・。

 

「へっ?」

 

 その先にいた鋼兄とキリエが正面衝突したんだ。

 

 真っ裸のキリエと正面から抱き合う様にしてぶつかる鋼兄。

 

 抱きとめてくれたのは感謝だぜ。

 

 顔面にキリエの胸が完全にぶつかっているのがうらやましくもある。

 

 いや・・・本当にスタイル良い。あんな清楚で、かなりわがままな体を。

 

 幼いころから一緒にいるけど・・・これはすごく・・・。

 

「って・・・ネロ!!何じろじろとみているのよ!」

 

「・・・ハッ。」

 

 あっ・・・あぶねえ。俺もイッセ―みたいになるところだったぜ。

 

「・・・・・・。」

 

 たっ・・・頼むキリエ。涙目で俺を睨まないでくれ!!

 

 若さゆえの過ちとしてくれ!!頼む!!

 

 それよりも何か体を隠すものを・・・。・

 

「・・・すっ、すまねえ。って・・・鋼兄?」

 

 真っ裸のキリエと真正面から抱きとめた鋼兄がなんの反応を示さない事に気づいてしまう。

 

「その・・・ごめんなさいね。えっと・・・。」

 

 無言でキリエを下ろす鋼兄。

 

 キリエが恥ずかしそうにもじもじとした時だった。

 

「ごぶばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 鋼兄・・・凄まじい勢いで鼻血をだしたよ。

 

「がおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

 その勢い・・・あのおっぱいライオンの顔面にまで届き、視界をふさぐくらいに。

 

 どんだけの出血なんだよ。

 

 そのまま鋼兄が倒れた。

 

 

 

 今思えば、あのおっぱいライオンって鋼兄の天敵と言える存在じゃねえのか?

 

 くそ・・・そのせいで鋼兄が大量出血(鼻血による)で死にかけていやがる。

 

「俺はもう・・・だめだ。だが・・・せっ・・・せめて・・・。」

 

 鋼兄はあるカードを取り出す。

 

 そしてそれを出現させた鬼の篭手に装填。

 

―――――――Adⅴent!

 

「行け・・・ヤマタ。おっ・・・俺の代わりに皆を・・・頼む!!・・・ガグ。」

 

「鋼兄ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 俺の腕の中で巨星が落ちた。

 

「・・・・・・瀕死の状態でなお皆の事を案じるとは我が主ながらあっぱれな奴よ。」

 

 そして、会場の外に、とっ・・・とんでもない巨体の蛇が召喚される。

 

「この姿になるのも久しぶりだのう。」

 

 ヤマタノオロチ。

 

 かつて邪竜の一体で、それでいて鋼兄が倒したとされる化け物。

 

「・・・・・・。」

 

 でかい。あまりにも。

 

 山一つ以上の大きさはある。

 

 あんな奴を鋼兄って単独で圧倒して倒したのかよ。

 

 その本気を出す前に、今は鼻血による大量出血で死にかけているが。

 

「我が契約者の・・・命を賭した願いだ。存分にやらせてもらうぞ!!」

 

 そして、そのまま超巨大おっぱいライオンを抑え込みにかかった。

 

 山のようにでかいおっぱいライオンが圧倒されている。

 

「みな・・・鋼兄の意思を無駄にするな!!」

 

 上空から渡が飛び上がっている。

 

――――ウェイクアップフィーバー!!

 

 両足から赤い蝙蝠の翼を展開させながらおっぱいライオンを蹴り飛ばす。

 

 うお・・・あのでかい奴が吹っ飛んで行く光景は流石にレアだね。

 

「がっおお・・・・。」

 

 例の咆哮をする前に・・。

 

「・・・黙ってもらうぜ。」

 

 俺は悪魔の力とギルスの力を全開。その頭を巨大化させた右腕の力で抑え込む。

 

 もうあの色々な意味で危険な咆哮はさせねえ。

 

 ついでにタテガミも抑えているから毛針は発射できねえぜ。

 

 もがき苦しむおっぱいライオンの爪が俺に向かって振り下ろされようとした時だった。

 

「その爪・・・封じさせてもらうよ。」

 

 木場が巨大な剣を上空にて召喚。それで右前足を地面に縫い付ける。

 

「だったら・・・動きはこっちが封じようかな?」

 

 そして左前足にはサイガが轟竜に乗ってかけていた。

 

 巨大化させた剣を逆手に持って彼は斜め上に切り上げる。

 

 それはアバンストラッシュによる闘気の刃。

 

そこに追いつくようにして彼は突進。

 

 これは・・・本家本元のアバンストラッシュ。

 

 そこに上から振り下ろすようにして放ったもう一発のアバンストラッシュを十字にクロスさせた・・・奇跡のような超必殺技。

 

 馬に乗った状態、それも巨大化した剣で放つ辺りさらにめちゃくちゃだ。

 

――――――アバンストラッシュX!!

 

 その一撃によって、おっぱいライオンの左腕は切り裂かれ、肩口ごと吹っ飛ぶ。

 

 大きくバランスを崩したおっぱいライオンをヤマタが巻きついて抑え込む。

 

 そこにハルが歩きながら告げる。

 

「止めは任せてもらおうか。鋼兄の弔い込めて。」

 

「いっ・・・いっ、いえまだ死んでいませんよ!!」

 

 倒れた鋼兄。アーシアちゃんとキリエの必死の介抱を受けている。

 

 むしろあれだけの出血があってまだ生きているのはすごいぜ。

 

「冗談だ。それよりも右腕の力・・・解放させてもらう。」

 

 そしてハルは呪文を唱える。

 

 いや、呪文と言うよりそれは詩のようなものであった。

 

―――――我は原初の黒き蛇と契約せし者。

 

 その言葉と共に当たりの空気が一変する。

 

―――――祖は初めての誘惑者。楽園の住人に禁断の果実を教えた者。

 

 それと共に右腕が黒いオーラのような物に覆われる。

 

――――神の最大の憎しみ。それ故に疎ましきもの。

 

 それはまるで黒い蛇のような形をとる。

 

――――その牙に宿るは大罪と言う名の毒。その血すら反逆と言う名の毒となる。

 

 なんだ・・・あれ?

 

あまりに邪悪なオーラにおっぱいライオンですらおびえているぞ。

 

――――さあ・・・その毒により憎しみと大罪すら蝕み、神をも殺し、

 

 その右腕に宿る黒い蛇とハルの声が重なる。

 

『・・・すべて喰らいつくそう。』

 

 その言葉と共にハルは走りだす。

 

『そして・・・あとに残すは、希望なり!!』

 

 最後の言葉と共にその右腕をおっぱいライオンに叩き込む。

 

 その一撃は・・・・。

 

 おっぱいドラゴンの身体を粉々に打ち砕いた。

 

 あの巨大なおっぱいドラゴンの身体をだ。

 

「スネイク・・・バイド。」

 

 凄まじすぎる破壊力。それと必殺技の名前をあとで言うタイプなんだ。

 

「・・・貴様。どうしてそいつを宿している?」

 

 ヤマタはハルをにらみつける。

 

「原初の邪竜と呼べるそいつを・・・・・。」

 

 ハルの右腕に纏った黒い蛇をヤマタは原初の邪竜と呼ぶ。

 

「分からない。でも・・・うまく共存できているよ。こっちには別にドラゴンもいるし。」

 

 ヤマタはハルをしばし見て・・・。

 

「我が主の友もまた・・・とんでもない連中ばかりか。この世界で新しい神話が始まっているのかもしれない。」

 

 ヤマタは何かを悟った様子。

 

「神にとって最も憎いとされた蛇の力。もう一つの異世界の龍と共に使いこなすのは困難な道のりだぞ。」

 

「それでもこいつも見捨てる事ができない。」

 

「見捨てる・・・だと?」

 

「こいつは孤独なだけだ。きっと悪い奴じゃない。まだ会話もできないけど俺にはわかる。いつかしっかりと喋りたいよ。」

 

 黒い蛇を左手で優しく撫でてやるハル。その言葉にウソはない。

 

「・・・そうか。神の憎しみすらお前は救おうというのだな。」

 

 二人の会話。それはおそらくハルの腕に宿っている何か話だろうな。

 

 ハルの腕に宿る蛇が何かを言いたげに唸るが・・・そのまま姿を消す。

 

「こいつも希望だ。俺・・・そしてみんなのな。」

 

 その言葉に満足したのかヤマタの体も透け始める。

 

「ああ・・・こいつらと一緒にいるのも運命だったのだな。おかげで当分退屈しないで済む。新たな神話に関われることを誇りに思おう。主の蘇生・・・頼むぞ。」

 

 ヤマタはそうやって姿を消す。

 

 そうして俺達の無駄に派手で大規模な物となった戦いは終わった。

 

「・・・メダル、頑張って集めないとね。」

 

 辺りに数万・・・いや数億単位はあるかもしれない大量のセルメダルの回収が始まる。

 

「・・・泣けるぜ。」

 

 でも拾わないと何かやばそうだし。

 

 いつのまにかあいつらも消えていやがる。

 

 やりたい放題やって逃げやがった。

 

「あとは鋼兄・・・輸血を急ごう。」

 

「こんな事もあろうか、本人の血を定期的に集めていたから。」

 

 渡。グッジョブだ。とんだけ手回しがいいの!?

 

「オ―フィスちゃんも看病を手伝っている。」

 

 そう言えば・・・確かにあのゴスロリ娘も何やら力を発して鋼兄をささえている。

 

「鋼兄さん血の気が多いから一週間に一回とっても全く問題ないのはすごいね。」

 

 伊達に鼻血を出し続けているわけじゃねえな。

 

 瀕死の鋼兄の介抱と並行して俺達は後始末を開始した。

 

 他は他で勝手に終わるだろうし。

 

 

 

 

 

 




 鋼兄・・・今回は不憫すぎました。

 色々な意味で相手が悪かったとしかいえないです!!

 でも彼は現時点でも本気を出したら最強です。

 別の機会の活躍に期待してください。


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三人で決めます。

 この話で戦闘はすべて終了します。

 まずはグレイフィアさんのストレス解消タイムを楽んでください。


SIDE 朱乃。

 

 敵は手ごわい。

 

「ふはははははははは・・・ほらほらほらほらほらほらほら!!」

 

 無数の雷を一斉に落としてくる井坂。その攻撃は厚く、一切攻撃ができない。

 

 接近しようとしても、突風で吹きとばされ、強烈な日の光を集めたレーザーは悪魔にとっては致命傷になる。

 

 おまけに大量のド―パント達が邪魔する。

 

 ただ一人・・・グレイフィア様は違っていた。

 

「これは恐ろしいですね。かつての照井のトライアルを見ている気分ですよ。」

 

 降りしきる雷の雨とド―パント達。

 

それを森の中で、木々の間を自在に翔まわる鹿のように軽やかに動きながら接近してきたのだ。

 

 もちろん邪魔するド―パントはすべて吹っ飛ばされている。

 

―――――Strike Vent!!

 

 カードを装填。足にアルファの足を模した足甲が現れる。

 

 その足甲にはバッタのような逆関節を模したジャッキが付いている。

 

 その足による飛び蹴りを井坂は腕で防ごうとするが・・・その防御の上から吹き飛ばされた。

 

「なっ・・なんですか?」

 

 それは足のジョッキによるものである。蹴りの瞬間に伸縮し、その破壊力を倍化させるのだ。

 

「さすがは最強の女王。そうでないと面白くありませんよ!!」

 

 それに対して真正面から殴り合う井坂。

 

 二人は格闘戦にもつれ込むが、他の皆が中々接近できない。

 

 頭の上から日光を凝縮させたレーザーが辺りを焼き払う。

 

 あたりが一面火の海になる。

 

 唯一の救いは・・・。

 

「はい!!」

 

「がっぼ!?」

 

 グレイフィア様が接近戦で井坂を圧倒していることだろうか。

 

 周りにいる雑魚は皆で何とか抑えていますので一対一です。

 

 もう・・・フルぼっこに殴りまくっています。

 

 腹に強烈な右ストレートを喰らわせ、頭が下がったところに、井坂の膝を足場にして、下がった頭の横に回し飛びひざ蹴り―――シャイニング・ウィザードをきめる。

 

「がばっ!?」

 

 あんな高難易度なプロレス技を平然と使うあたりさすがです。

 

「ぐっ・・・接近戦は不利だ。化け物ですか・・・あなたは!!」

 

「少なくともあなたにだけはいわれたくありません!!」

 

―――Sword Vent!!

 

 グレイフィア様の両手にギガゼ―ルの両腕にある刃を模した短剣が出現する。

 

 それで斬りつけようとした時だった。

 

周囲を瞬時に凍結させていく井坂。それに対してグレイフィア様は天井へと飛び退きかわす。

 

 でも体の一部が凍りつく。足のジョッキなどが凍りつき、機能しなくなる。

 

「ちぃ・・・。」

 

 その冷気は触れるだけですべて凍てつき、動きが止まるほどだ。

 

 それで先ほどの炎も・・・その形のまま瞬時に凍結する。

 

 その状態で井坂は体から出現させた鳥の翼から冷気を纏った鳥の羽を矢のように放つ。

 

 それを天井に張り付いてかわすグレイフィア様。その脚力で壁や天井を自在に蹴り飛び、羽を避け続ける。

 

 全身に張り付いた氷を叩き割りながら、牽制のために次々と召喚した短剣を投げつける。

 

「・・・忍者みたいですね。どれだけ短剣を召喚できるのかい?」

 

 次々と召喚されて飛んでくる短剣を凍らせながらあきれ果てる井坂。

 

「おいおい、こっちを忘れるなよ。」

 

――――ルナ

 

――――トリガ―!!

 

 Wの身体が変わる。右が黄色、左が青にだ。

 

 そして青い銃を手にして次々と弾丸を放ってきたのだ。

 

「・・・ちぃ・・・ちょこざいな。」

 

 その弾丸は出鱈目な弾道。でもそれは正確に井坂を狙ってくる。

 

 次々と纏った冷気で凍りつくが、それでも視界はふせいでいく。

 

 それにしびれを切らしたのか、井坂は無数の巨大竜巻を起こしながら、下半身を鹿のような物に変えて襲いかかってきた。

 

「風か・・・私程じゃないにゃ!!」

 

 そこに黒歌さんも参戦。

 

 風と冷気を纏った蹴りを井坂にぶつけてきたのだ。

 

「馬鹿め。その程度の攻撃をとどかせることなど・・・がばら!?」

 

 もともと凍っているも同然の状態なのだ。凍る事がなくそのまま井坂を蹴り飛ばす。

 

 そのまま至近距離から冷気を払うために風の力を纏わせた弾丸を連射。

 

「ががが・・・ぐう・・・。」

 

 それを受けて全身から火花を散らしながら後ろに下がる井坂。

 

「無茶苦茶な連中ですよね。まったく・・・。がごっ!?」

 

 井坂が立ち上がったところに追い打ちがやってくる。・

 

 井坂の頭に猛烈な勢いの弾丸が叩き込まれたのだ。

 

「・・・命中。」

 

 放ったのはレイちゃん。手にした箒型のスナイパーライフルから放たれたものだ。

 

 のけ反った瞬間にWがメモリを変えながら突っ込む。

 

――――ヒート

 

――――メタル!!

 

 右が赤、左が銀色になったW。

 

 変な姿の変わり方すると思う。

 

 棒のような武器を振り回し。井坂に殴りかかる。

 

「接近など読めて・・・ぐっ!?」

 

 撃墜しようとするのを・・・レイちゃんの狙撃が頭、腕、足に同時に命中して妨害。

 

――――――ロック。

 

 しかも光の輪で固定させて動けなくなるおまけ付きである。

 

「ぬぐっ・・・ぐあ!?」

 

 殴るたびに爆発が起きている。それが凍結を防いでいるようだった。

 

 そして強烈な突きと共に大爆発が起きたと同時に拘束が解け、井坂は後ろに吹っ飛ぶ。

 

「ぐっ・・・本当に強くなっていますね。メモリの力をさらに引き出している上に棒術の腕まで。」

 

「この世界で最強の女王様と最強の「おやっさん」達にしごかれているのでな!!」

 

――この世界で彼女と彼らのような師ができたのは大きいよ。いつもズタボロだけど。

 

「ふふふ・・・でも確実に強くなっていますよ。」

 

 聞いた事がある。

 

 Wとグレイフィア様がアスタロスト眷族のある男の元で稽古をしていると。

 

 グレイフィア様にとってWは弟分のような存在らしく、もう一人、通称「おやっさん」も彼のことをかつての知り合いに似ていて気にいっているらしい。

 

 そこで相当Wは鍛え込まれているとも。

 

 最もグレイフィア様に相当痛めつけられているとも聞いているわ。

 

 それ故にこの二人は連携もしやすい。

 

「こっちも強くなった甲斐があるというものです!!」

 

 井坂はその棒を片手でつかみ、そして雷を纏った拳でWを殴りとばす。

 

 黒歌さんとレイちゃんの撃ってくる弾丸を・・・手にした武器で薙ぎ払う。

 

 それはまるで雷神が背負っている小太鼓をそのまま繋げて、打撃武器にしたようなもの。

 

 チェーン型の武器といったほうがいいのかしら?

 

「この武器―――ウェザーマインも今では下手な神器よりもはるかに強くなっていましてねえ。いいですよ。」

 

 その武器が急激に伸びる。まるで連結剣のように。しかも、小太鼓の様な部分も急激な勢いで増殖している。

 

「ありがたい事にかゆい所に手が届くようになっているのです。」

 

 それを縦横無尽に振るう。

 

 伸びたウェザーマインはまるで大蛇のごとくあちこちを飛びはね回りながらすべてをはぎ払わんと暴れまわる。

 

「ぐあっ!?」

 

 それだけでWが薙ぎ払われて吹っ飛ぶ。

 

「きゃあ!!?」

 

「ちぃ・・・。」

 

――――ディフェンド!!

 

 黒歌さんがふっとばされ、後方にいた私達にも襲いかかってくる武器。

 

 レイちゃんがそれを魔法を展開させて作った風の壁で防ごうとするが・・・。

 

「無駄です。」

 

「きゃああぁぁぁぁ!?」

 

 一撃で壁がふっ飛ばされ、レイちゃんが吹っ飛ぶ。

 

 それを小猫ちゃんが必死で止めようとして一緒に吹っ飛ぶ。

 

「さて・・・次はお嬢ちゃんた・・・ち!?」

 

 その魔の手がこっちに伸びようとする前に、それをかいくぐってきてグレイフィア様が接近。

 

 ナイフが井坂の肩に刺さる。

 

「ちょこまかと!!」

 

「ふん!!」

 

 ウェザーマインを振るうが、それを蹴り飛ばし、次の一歩で飛びひざ蹴りを井坂の顔面にかましたのだ。

 

「そいや!!」

 

「ばがら!!?」

 

 そして、そのまま三発右、左。そして右のアッパーで殴りあげ、その身体を横に倒してからの強烈な連続蹴りで蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る・・・・・・。

 

「あばばばばばばばばばばばばばばば!!」

 

 足がたくさん見えるほどの蹴り――多分五十は下らない程の回数は受けた井坂はその後の回し蹴りでふっとばされる。

 

 そこからさらに追い打ちで・・・頭を掴み。

 

 その頭を起点にジャンプしながら縦に振り回し・・・そのまま顔面から床にたたきつけた。

 

「がばっ!?」

 

「まだまだ・・・。」

 

 そこからさらに首を極めようとして・・・

 

「いい加減ししてください!!」

 

 と全身から電撃を発して何とか逃れた。

 

 そして・・・立ち上がる井坂だが・・・その立ち上がり方は大変ぎこちない。

 

「うう・・・むっ・・・無茶苦茶ですね。武器を蹴り飛ばすなんて普通考えないし・・・どんだけ私を痛めつければ気が済むのですか!?」

 

 よほど痛かったらしい。かなりフラフラになっている。

 

「ふふふ・・・だったらこっちのキング共会ってみなさい。こっちはあくまでもお話したけで、あっちはもっとすごいから。」

 

 それってサーゼクス様のことですよね?

 

 もっとすごいって・・・どんだけ?

 

 それに今のって肉体言語で話していますよね?それも一方的に。

 

「そうそう・・・それとさっきどれだけ短剣を召喚できるか疑問に思っていましたね。それに応えてあげます。」

 

―――Sword Vent!!×666

 

 電子音と共に・・・グレイフィア様の目の前に無数の短剣が出現。

 

「・・・・・・はっ・・・はい?」

 

 さすがに井坂も驚いているようね。

 

「答えは・・・一度に666本です。行きなさい。」

 

 雨のようにナイフが降ってくる光景。

 

 まさにそれはナイフの弾幕であった。

 

「だったらこれでどうですか!?」

 

 井坂の身体に亀の甲羅のような物が現れ、武器と全身の装甲で短剣を次々とはじき返す。

 

 だが・・・そのナイフはただ降ってくる訳じゃなった。

 

 唐突に甲羅にナイフが刺さる。

 

「ぐっ・・・なんで?」

 

 井坂は見た。

 

 ナイフをはじく際に出来た傷。そこにまたナイフが刺さるのを。

 

 さらに大きくなった傷にさらにナイフが刺さり・・・。

 

 ふさがる前に次々とささり、傷をあっという間に大きくして、それで貫通したのだ。

 

 あまりの速度で繰り出されていたので、井坂も刺さってから気付いたほどだ。

 

 グレイフィア様はあれだけの数のナイフを一本一本、正確に操っているようだ。

 

 あまりに途方もない技術で信じられないけど。

 

 次々と甲羅が貫通され、ナイフが刺さっていく。

 

「・・・ぐおおおおおっぅ!!?」

 

 そこに私が追い打ちをかける。

 

「隙あり。」

 

 天から雷を落としたのだ。

 

「がああああぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 それはナイフを伝い、井坂の中に直接雷が流れ込む。

 

「ぐっ・・・やってくれま・・・す!?」

 

 そこに再び姿を変えたWの姿。

 

――サイクロン

 

―――ジョーカー!!

 

 そして、腰にある黒いメモリを左腰のスロットに、緑のメモリを右腰にあるスロットに入れる。

 

――――――マキシマムドライブ×2

 

 それと共にWの周りで風が吹き荒れ、竜巻となりそれに巻き上げられるように飛び上がる。

 

「なっ・・・バッ・・・馬鹿な単独でダブルマキシマムだと!?」

 

 その光景に井坂は流石に驚いている様子。

 

「悪魔に相乗りし続けている間に、こっちが悪魔になったおかげだ。」

 

――――翔太郎の成長とこっちのシステムの進化だよ。

 

「いくぜ。・・・ジョーカーエクストリーム!!」

 

 Wの身体が半分に割れながら、そのまま空中からの飛び蹴りを放つ。

 

 避けようとする井坂。彼の足元の床に亀裂が走り、そこに足が落ちる。

 

「ちぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

 

「コントロールうまく行った。」

 

 小猫ちゃんが床を叩き・・・絶妙な大きさの亀裂を発生させていたのだ。

 

 それにより避けられず。まともに喰らって吹っ飛ぶ井坂。

 

「グググ・・・痛いですね。流石にこれは効く。」

 

 それでも立ち上がってきたのだ。

 

「まじか。結構自信があったけどな。」

 

―――――予想はしていたけど・・・不死身って厄介だ。ネバーと全く違う。

 

「ぐはははは・・・私の体はもうダブルマキシムすらも耐えられるほどになっているのです。ダメージは入りますが致命傷になるほどでは・・・。」

 

「そう・・・だったら私もとっておきつかってみようかな?」

 

 私はとっておきを使う事にした。

 

 ゲームで使ってみたかったけど、使えなかった指輪。

 

 実はハル君から拝借・・・いえいえ、こっそりと借りたものだったりする。

 

 返す予定は未定だけど。

 

―――――スペシャル。

 

 その発動と共にとんでもない量の魔力が使われる。

 

――――――ドラゴン

 

「うっ・・・なっ・・・なんなの・・・これ・・・て・・・。」

 

「んん??なんですか?その変な音・・・声・・・。」

 

 私の背後にバチバチとでかい何かが現れた。

 

 それは巨大な雷で出来た龍。

 

「あらあら・・・。」

 

 いや・・・あまりに雷が凝縮しすぎて。

 

――――プラズマ化している。どんだけのエネルギーが込められているというだい?

 

 触れるだけですべてを消滅させる超高熱のエネルギー体となっていた。

 

 落ちてきた瓦礫が龍に触れた瞬間音を立てて消滅する。

 

「・・・まっ・・・まさかそれを私にぶつけるなどといいませんよね?」

 

 さすがに井坂も怯えているみたいね。

 

「ふふふふ・・・どうしようかしら?」

 

「いくら不死身でもそれは・・・さすがにありえないと思うのです。」

 

 必死で説得しているわ。いくら不死身でも消滅させられたら終わりですものね。

 

「うんうん・・・。」

 

「わかってくれましたか?」

 

 あなたの気持ちは十分聞いたわ。

 

「ふふふふ・・・。」

 

「なんですか?その笑みは・・・。すごくSの愉悦に浸ったような。」

 

 あら?私ったらそんな笑みをしていたの?

 

 でももう充分。

 

それに、あなたがうろたえる姿はあまり面白くないから・・・。

 

「・・・行け♪」

 

「あなたは鬼だああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 失礼な。私は悪魔よ。

 

 巨大なプラズマの龍が井坂を飲み込む。

 

「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!?」

 

 飲み込んだ龍はすぐに消え、全身から白い煙を上げながらひざをつく井坂の姿があった。

 

「・・・ぐうおお・・・かっ・・・身体が・・・・・・。」

 

 変身も解除されている。

 

 よく見ると全身あちこちが焼けただれ、一部消滅しているほどだ。

 

不死身でも戦闘続行が不可能な大ダメージを彼は受けていた。

 

 むしろ不死身だからこそ、この程度で済んだのかしら?

 

 はあ・・・レ―ディングゲームでは使用禁止確定だわ。

 

 消滅技はさすがに・・・。

 

「そろそろ終わりだな。」

 

――――そっちのお嬢さんのおかげで致命的なダメージが与えられたよ。さっさと封印して・・・。

 

「・・・その前にお仕置きです。」

 

 そう言ってグレイフィア様があるカードって・・・。

 

「あれだけやりたい放題やってさらに・・・死人に鞭を打つ気なのですか!?」

 

 井坂はまたも焦る。

 

 何しろそのカードはファイナルベントのカードじゃないですか!?しかも何枚もある。

 

「不死身なのでしょ?だったら何も問題ありません。・・・あなたのおかげで式場はめちゃくちゃなのです。ふふふ・・・もうどうしてくれるのやら・・・。」

 

 あらあら・・・めちゃくちゃ怒っている。

 

「あっ・・・姉さん。」

 

―――――井坂。君は怒らせて行けない人を怒らせたみたいだね。普段は温厚(?)な彼女が本気で怒ると誰も止められない。

 

 Wもそっとしているあたり、相当だ。

 

「・・・・・・そっ・・・そのようですね。でも何か酷いとはおもいませんか!?戦闘不能になった相手に追い打ち、しかも必殺技ってあなたは悪魔ですか!?」

 

 それ対してグレイフィア様の答えはとてもシンプルであった。

 

「私は悪魔ですか何か問題でも?」

 

「・・・そうだった!!」

 

 井坂はそう言って頭を抱える。

 

 悪魔に悪魔って言うのはちょっと間抜けだと思う。

 

「お覚悟。」

 

 ファイナルベントのカードを装填しようとしたときだった。

 

「全く・・・そっちだけ楽しそうな事をしないでほしいよ。」

 

 膝をつく井坂の傍に唐突に一人の男が現れていた。

 

「・・・。」

 

 それは無邪気な笑みを浮かべる白い服を着た青年。

 

「だれです?」

 

 その青年が軽く床を踏みつけた。

 

 それだけで・・・あたりに私達と彼らを隔てるように床が崩壊。

 

 それだけじゃない。

 

 天井が次々と鋼鉄の槍と化し、それが私達に向けて降り注ぐ。

 

「ちぃ・・・。」

 

 それを前衛にいた人達がすべてはじいてくれるが、床も一斉に鉄の槍とかしたので、私達はさらに後ろに下がった。

 

 何が起きているというの?

 

――――――サイクロン

 

――――――トリガ―!!

 

 Wがとっさに左半身を青に変えて銃撃を放つ。

 

「ふふふ・・・いい狙いだけど残念。」

 

 それが透明の壁に阻まれる。

 

「なっ・・・なんだこれ?」

 

「ふはははははははは!!」

 

 彼の狂った笑いと共に、辺りが一気に炎に包まれる。

 

『!?』 

 

「パッ・・・パイキロネシス!?」

 

――――いや、そんな生易しいものじゃない。

 

 その炎はまるで煉獄にて燃え盛る業火のごとき熱さ。

 

 炎に包まれたパイプ椅子が蒸発するほどである。

 

――――――「究極の闇。」そんな危険な存在がまだいたなんてね。

 

「へえ・・・僕の事を知っているの?」

 

―――――ああ、君がどうやって炎を発生させたかも検索済み。そして・・・

 

 龍神様の言葉にその青年は嬉しそうだ。

 

――――――ある世界で3万人以上の虐殺を一人で笑って行った怪物ということもね。

 

「・・・とんでもない悪じゃねえか。」

 

 三万を超える人達の虐殺。

 

 とてもじゃないけどまともとは思えない。

 

―――――その力が進化、応用させている点は驚きだけどね。その気になれば核融合すらも自在に起こせるだろ?

 

『!?』

 

 核融合の言葉に皆は絶句。

 

 とてもじゃないけど、一存在がやるような所業を超えているからだ。

 

「クククククク・・・でも、そんな事をしてもつまらないだけさ。それに今回は挨拶程度。強化された僕の力がどれだけ通用するのか簡単だけど確認できたし。」

 

「手助け感謝します。」

 

「君の様な殺しがいのある奴は貴重なんだ。ここで死ぬのはもったいないよ。」

 

「・・・・・・本当に相変わらずですね。まだこっちは体になじんでいないので、力を発揮しきれないというのに?」

 

 井坂は呆れながらもまた立ち上がる。

 

「今回はここで退散させてもらいます。それと・・・予言でも残しておきましょうか。」

 

 そして、井坂は去る前に不敵な笑みを見せる。

 

「ジョーカーは私で終わりではありません。究極の・・・五体目のジョーカーがいずれあらわれるでしょう。」

 

「何?」

 

「五人のジョーカーが揃った時、この世界で新たなバトルファイトが巻き起こる。五人目となる者もすでに見つけてある。我々が勝って世界をリセットしてくれる。」

 

「僕たちの新しい世界のためにね。じゃあね。」

 

―――――リル―ラ!!

 

 二人の身体が光に包まれ、どこかへと瞬時に飛ぶ。

 

「ぐっ・・・転送呪文?でも私達が使うのと違う。」

 

 炎だけ撒き散らして去った二人。

 

――――――考えるのはあとにしようか。あの炎で火災が起きている。

 

「・・・やりたい放題やってくれて・・・今度会ったらぶちのめす。ファイナルベントを三連続でくらわせてやるんだから!!」

 

 式場が半壊の上に、火災まで起きている状態にグレイフィア様は怒り心頭。

 

 かなり過激な言葉が出ているわ。

 

「あーあ。姉さん本気でぶち切れている。」

 

―――――次会ったらあいつらもただじゃすまないよね。まだ彼女も本気とはいえないし。

 

 そんな怒りまくったグレイフィア様に皆・・・引いている。

 

「皆・・・消火を・・・。」

 

 私も手伝わないと。

 

 うん・・・あれだけ強力な魔法をつかったのにすぐに魔力が回復している。

 

 また撃てそうね。あれは良い切り札になるわ。

 

 

 

SIDE イッセ―。

 

 

――――プロモーション・・・僧兵(ビショップ)

 

 俺の周りで炎が消えていく。

 

―――――相棒。お前は可能性の塊だな。

 

―――――へえ・・・苦手な分野も進化で補い始めたか。

 

「・・・防いだというのか?今の攻撃を・・・。」

 

「いっ・・・イッセ―?」

 

「お前、どんだけすげえ奴なんだよ。」

 

 皆も驚いている。

 

 今俺は新たな姿になっている。

 

 手に花のように金色の細工に包まれた蒼い宝玉を宿し、反対側が鋭い刃となった短剣と杖を組み合わせたような短い杖。

 

 体のアーマーは緑に変化。背中に白のケープの様な物が伸びている。

 

 これが俺の僧兵としての力。

 

「だっ・・・だったら何度もやってみるだけだ!!」

 

 フェニックスは次々と炎の球を発射する。

 

「無駄だ。」

 

 それを俺は眼前に発生させた巨大な水の膜ですべて消す。

 

「水を操るだと!?」

 

 反撃と言わんばかりに俺は杖の先から凄まじい水を噴出させる。

 

「ぐぼっ!?」

 

 その勢い、四メートルを超える巨体のフェニックスを簡単にふっ飛ばせるほどである。

 

 接近し、逆手の刃で斬りつける俺。

 

 ただの刃じゃない。斬る瞬間に超高圧の水を噴き出し、切れ味を高めてある。

 

 その一撃は容赦なく甲欄を砕く。

 

「生意気なことを!!」

 

 巨大な体で殴りかかるフェニックスだったが、その腕が俺の身体を突き抜ける。

 

「おいおいおいおいおい!?」

 

 液状化した俺の身体が攻撃を受け流し、そのままバラバラになって、あいつの後ろで元に戻る。

 

 そして無数の水の球を放つ。

 

「がっ・・・バッ・・・あばばばばあばばばば!?」

 

 それはただの水の球じゃない。

 

 超圧縮した水の塊だ。

 

 触れた瞬間に圧縮が解けて爆発する使用。それを連続で受けて後ろに吹っ飛んで行くフェニックス。

 

<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!」

 

「そっ・・・そんなのありかよ!!むっ・・・無茶苦茶じゃねえか!!」

 

―――――――――Transfer!!

 

 その言葉と共に杖の宝玉の両端がアギトの角と同じく展開。

 

 だが、まるで円をかくように宝玉の周りで展開。杖の先で黄金の花が咲く。

 

 それと共に杖の先端から巨大な水の龍が精製され、放たれる。

 

「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

 それはフェニックスを容赦なく飲み込み、ふっ飛ばす。

 

 水の龍が消えた後、フェニックスはまだ立ってはいた。だが、甲羅に亀裂が入り、あちこちから血が噴き出し、ボロボロであった。

 

「固いな。凄まじい水圧をかけたのに。」

 

 その必殺技は相手を水の龍の中にのみこませ、深海一万メートルの時を超える凄まじい水圧と鉄すら斬る凄まじい水流の中に閉じ込めてバラバラにするというものだ。

 

 並の相手なら一瞬でバラバラに刻まれながら圧死している。

 

 それに耐えるほどの防御力をフェニックスは会得していた。

 

「ぐっ・・・くそが・・・。」

 

 最ももう瀕死に近い。

 

「縛無水龍の僧兵(アンチェーン・アクアドラゴン・ビショップ)かな?良いネーミングがうかばないわね。」

 

 部長は僧兵時の姿の名前を考えていますし。

 

 俺は姿を元のグランドフォームに戻す。

 

「これで止めだ。」

 

「私も参加させて。」

 

―――――ウェイクアップ。

 

 部長も隣に並ぶ。解放されたのは右腕じゃなくて・・・右足。

 

 渡と同じく赤い蝙蝠の翼と四つの緑の宝玉が解放される。

 

「これって・・・。」

 

 その光景に部長も驚いている。

 

「この結婚式をぶち壊しにした瞬間に目覚めたのよ。あなたの言葉のおかげでね。」

 

 カ―ミラの説明がそこではいる。あの瞬間に目覚めた?

 

 でもなんで俺のおかげなの?

 

「・・・本当に罪な子ね。クレア。あなたと会議をひらきたいからいいかしら?」

 

――――歓迎よ。むしろ私からもそうしたいと思っていた。いつかあなたのお母様にも挨拶したいくらいよ。

 

「・・・やれやれだ。俺も参加するかい。」

 

 ファイズも右足に望遠鏡(?)をセット。

 

 もうツッコむのは止めたぞ。あれで必殺キックが放てるなんてツッコまないからね!!

 

――――Exceed Charge

 

 気を取り直して、俺も一緒にやる事にしよう。

 

<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!>

 

―――――Explosion!!

 

 俺は倍化した力を解放させる。

 

 それと同時に、頭の角が展開。

 

 黄金の光が放出されるとともに足元に巨大なアギトの紋章が出現する。

 

 紋章が足先に集束するのと同時に俺達は飛び上がる。

 

 部長は紅の月を背に空中で身を翻し、ファイズは赤い三角錐の様な物を足から発生させる。

 

 そんな二人と共に俺達はフラフラのフェニックスに蹴りをかます。

 

 トリプルライダーキックを。

 

「がっば!?」

 

 とっさに防ごうとガードするフェニックスだが、耐えきれずに床に叩きつけられるフェニックス。

 

 そのクレーターはキバの紋章が刻まれていた。

 

 ファイズは体を突き抜けてフェニックスの後ろに立っている。

 

 部長と俺はフェニックスから飛び退くが・・・。

 

「ぐが・・ががががが・・・こっ・・・この俺を舐めるな。」

 

 フェニックスはしぶとくも立ち上がる。

 

 でも俺達はすでに追い打ちの準備はしていた。

 

――――ウェイクアップ。

 

 部長は右腕のカテナを解放。

 

―――――Exceed Charge

 

 ファイズは右手に例のデジカメ?(俺は認めていない)を装着。すでに赤い光は充電されているようだ。

 

<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!>

 

―――――Strike Vent!!

 

――――Transfer!!

 

右腕に召喚したドラグクロ―に瞬時の倍化の力を譲渡。

 

『Dorgon fire break!!』

 

「げっ・・・。」

 

 そして俺達三人は同時に、必殺の右を繰り出す。

 

『アッパー!!』

 

 少ししゃがんで屈伸の力も込めた必殺のアッパー三重奏!!

 

「がばらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 三人のアッパーを顎先にうけ、フェニックスの巨体が激しくきりもみ回転しながら空高く宙を舞い・・・後ろの地面に落下。

 

「ヒッ・・・酷い・・・。必殺技二連続って・・・。」

 

 その言葉を残し、大爆発を起こして果てた。

 

―――――おっ・・おのれ・・・。おぼえていやがれ!!

 

 だが・・・フェニックスの声が辺りに轟く。

 

 それと共にフェニックスの気配が消える。

 

・・・不死身のファントムだけあってしぶとい。あれで死なないか。

 

「はあ・・・やっと退けたわね。」

 

「はい・・・疲れました。」

 

 俺と部長は変身を解き座りこむ。

 

「・・・やれやれっ!?」

 

 そしてファイズはそんな俺達に話しかけようとして、己の手を見る。

 

 そこから・・・灰の様な物がでている。

 

「おっ・・・おい?大丈夫か。」

 

 それを見て、俺は直感的に何かを察してしまった。

 

 それは絶対によくないなにかと。

 

―――――テレポート。

 

 そんな彼に向けて足元に赤い魔法陣が展開される。

 

「いったん離脱して、ここじゃ変身は解けないでしょ?」

 

 それはハルの魔法だった。ハルは苦笑しながらファイズに声をかけている。

 

「・・・わりぃ。また報告はあとでするわ。」

 

 ファイズはハルの魔法で姿を消す。

 

「・・・ハル。あいつは一体。」

 

 俺の質問にハルはため息をつく。

 

「いつか話す。でも今はごめんだけど・・・。」

 

 あの感じは・・・以前にあった事のある人の気配だった。

 

 戦いの中でかわしたやり取りもまるで以前からの友達だったようなノリで・・・。

 

 ぶっきらぼうなあのやり取りは・・・。

 

「まっ・・・まさか・・・。」

 

 そんなはず・・・ないよな?あいつは確かに死んで・・・。

 

「あーあ。しかし残念ね。」

 

 ある結論にたどり着こうする前に部長の残念そうな声が響き渡る。

 

「せっかくさらいに来てくれたのに・・・これじゃあ帰れないわね。」

 

 部長の指した先には・・・めちゃくちゃになった酷いありさまの式場。

 

「・・・仕方ない。こっちも魔法で修繕を手伝う。」

 

「お願いするわ。」

 

 ハル・・・ありがとう。本当にいい友だちを持った。

 

「その前に・・・宣言通り一発殴らせてくれ。」

 

「・・・・・・えっと・・・。」

 

 ハルの素晴らしい笑みに俺は下がる。

 

 ものすごく怒っていないか!?

 

 だが後ろから肩を叩かれて気付く。

 

「ははははは・・・安心しろ、記憶ごとふざけたレベルの煩悩を退散させてやる。お前のおかげでレッドクイーンとブルーローズが破壊されたんだからな!!キリエも辱められたし!!」

 

「ははは・・・あと瀕死の鋼兄の分もあるから」

 

 怒っている渡の指差した方向には輸血を受けながら黒歌に膝枕をされている鋼兄の姿。

 

 逃げたい。

 

 でもネロが右手で肩を凄まじい力でつかんでいるから逃げらねえ。

 

 しかもデビルトリガ―を発動させているのだろう。青いオーラが立ち上っていやがる。

 

「面倒すぎた。この際きっちり浄化してくれる。煩悩退散だ。」

 

 サイガさん。何やら術を唱えていますけど・・・何をするつもりなの?

 

「さすがに僕も今回の戦いは色々な意味できつかった。その報いをうけてね。」

 

 木場も怒っていやがる!!手には何故か木刀が!?

 

「いっ・・・いやあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあl!」

 

 

 

 

 




 締まらない形で戦闘終了。

 次がエピローグです。


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第二章エピローグ 動き出す者達。

 エピローグは無駄に長いかもです。


 でも次話への伏線がいくつもあります。、


 それから二時間後。

 

 俺は厨房と言う名の戦場にいた。

 

「・・・辛い罰ゲームだぜ。」

 

 その罰ゲームとは、迷惑をかけた皆様に料理を振る舞えということだ。

 

 俺の料理が美味いと言ったオ―フィスちゃんの言葉でフルぼっこの代わりに、今全力で百人分の料理を作る羽目に・・・。

 

 戦いの余波で厨房の冷蔵庫が破損。腐る前にその中の材料を全部使い切ってほしいとグレイフィアさんからの要望もあったのだ。

 

「とりあえずは豚汁の仕込みは終わったか。すみませんそっちはどうですか?」

 

「こっ・・こっちは何とか。」

 

 一応調理スタッフの人達に手伝って貰っている。

 

「しかしこの材料で和食を作るなんて。」

 

「豆腐があったのが大きいです。大根や良い味噌もあったものそうですね。あえて余らせたのは常温で保存が効くように加工していますので、良かったら持って帰っても。」

 

―――――――――相変わらず女子力が無駄に高いわね。

 

―――――――――ふふふ・・・楽しみだ。色々と動いたからな。美味しく頂くぞ。

 

「それとでかくて新鮮なマグロがあるから・・・生け作りもやるか。でも包丁の切れ味が・・・ドライク、力を貸して。倍化で切れ味を補う。ドラグセイバーも召喚してそれで解体を。」

 

――――ちょっ・・・そんな事の為に私達の力を。

 

―――――心得た!!マグロ、一度食べたかったんだ!!

 

――――ドッ・・・ドライク。あなたねえ。

 

 今の俺は武士の献立に出てくる武士だぜ。

 

 倍化の力で切れ味の増したドラグセイバーでいざ・・・マグロの解体を!!

 

 どうせだ、皆の前でやってやるぜ!!

 

 一度やってみたかったことでもあったり。

 

 素で鉄板を紙のように斬るドラグセイバーじゃ、切れ味過剰なのは否めないけどさ。

 

 

 

 マグロの解体ショ―で場を盛り上げながら、屋外のパーティーが始まった。

 

「血が・・・血が足りん!!」

 

 ボロボロになった式場の外、バイキング形式となった食事会で、鋼兄が食べまくっていた。

 

 文字通り血が足りないらしい。すげえ量の鼻血を出しただけあってそれを補うべく食べている。

 

「へえ・・・そんなにキリエさんの裸が良かったのかにゃ?」

 

「刺激的だった・・・って・・いててててててててててて!?」

 

 黒歌さん。名前の中にあるように黒い笑みを浮かべて鋼兄の頬をつねっているよ。

 

「へえ・・・これは教育が必要にゃね。」

 

「ちょっ・・・俺は死にかけていたんだぞ!!」

 

「それはそれ・・これはこれ。」

 

 あれはかなり嫉妬しているな。

 

「姉様・・・意外と嫉妬深い。」

 

小猫ちゃん。納得した様子で二人を見ているし。

 

「はう・・・恥ずかしい。」

 

「まあまあ・・・あれは事故ですよ。」

 

 別の服・・・白いドレスに着替えたキリエさんはいまだに顔を赤らめている。

 

 でも、一度見てみたかったぜ。鋼兄が瀕死になるほどのそれをな。

 

「ははは・・・でも大変でしたね。」

 

 それを慰めているアーシアとレイちゃんである。

 

「・・・すげえ。」

 

「ええ。」

 

 そして、復活したライザ―とレイヴェルが豚汁を飲んで何故か驚いている。

 

「なあ、お前ってすげえな。どうやったらこれだけ美味いものができる?」

 

「日本の料理でしたね。味噌汁の一種で・・・。」

 

 なんか、すっかり仲良くなった気がする。さっきまで死闘を繰り広げた仲だというのに。

 

「師匠のおかげだ。まあ・・・あとは相方がグルメだから。」

 

 俺は食いしん坊ドラゴンな相棒の方に視線をやる。

 

 相棒は・・・食べまくっていた。

 

「美味い。まさか出汁に魔界の魔鳥の骨を使うか。あれがここまで良いのが取れるなんて思いもしなかったぞ!!」

 

「・・・クレア。あなたが選んだ人も結構愉快ね。」

 

「あの身体を与えてからすっかりグルメになって。イッセ―の・・・イッセ―の女子力が無駄に上がったのよ。でも美味しい。」

 

「うん。一流の料理人クラスはあるわ。」

 

 アルファさんからのお墨付き、ありがとうございます。

 

 その横でデフォルメ化した状態でヤマタもいる。

 

「だが、気持ちはわからないでもない。長い事体がなかった故に、食べる喜びがなかった。酒を楽しむ喜びも同じだ。ドライク、これを飲んでみないか?良いできだと思うが・・・。」

 

 ヤマタがある瓶から酒を注ぎ、ドライクに渡す。

 

「どれどれ・・・むっ!?これは・・・美味いぞ!!」

 

「そうか。ドラゴンアップルの果実酒、ドラゴンには好評のようだな。クレアにアルファ殿もどうだ?」

 

「どれどれ・・・んん?美味しいわね。」

 

「ドラゴンアップルを酒にする発想も驚きですけど・・・美味しいです。悪魔でも多分美味しいというわね。」

 

「好評で良かった。」

 

「いつの間にそんなものを作った?」

 

「兵藤家の地下に酒蔵を作ってそこで作った。温度や湿度が安定する地下は酒蔵に適している。ドラゴンアップルはあいつと連絡をとってわけてもらった。連絡した時は驚いていたが、今ではメールをやり取りする仲だ。インターネットは便利で助かるよ。」

 

 おい、そこの日本神話のドラゴン。

 

 俺の家の地下に何勝手に酒蔵を作っていやがる!?それとパソコンをいつの間に使っている?手もない体でよくキーボードを操れるな!!

 

 それと冥界に繋がっているのか?インターネットって凄いね!!

 

「お礼に一ダース分送らないとな。知り合いと試飲会を開いてくれるらしい。後・・・ドラゴンアップルの栽培の研究で分かった事もだ。」

 

「お前・・・まさかあいつの研究を手伝っているのか?」

 

「ああ。ついでではあるが・・・。昔のよしみで手伝っている。研究がはかどり、栽培の成功例が出始めているらしいぞ。その代わり他の良い酒の材料になりそうな物を探すのを手伝ってもらっている。ある程度作品が貯まったら一緒に酒盛りでもしようか。」

 

「いいな。良いつまみも相棒に用意してもらおうか。」

 

 夜空を見上げてヤマタは告げる。

 

「今ワシの楽しみは・・・究極の酒を作る事。その為の術などあいつの主を通じて色々とな研究を・・・おっと霊薬酒(エリクサ―)の試作品がそろそろ次の工程の頃合いか、少し出る。その酒は好きに飲んでくれ。」

 

 そう言ってヤマタは龍法陣を出して姿を消す。あいつ色々とやっているな。

 

 何かとんでもないアイテムの名前が出てきたような気が・・・。

 

 ヤマタ。お前もまた愉快なドラゴンになったな。

 

「ふふふ・・・ありがとうね。」

 

 隣で部長が微笑んでいる。

 

「あなたは私の問題を一つ、解決してしまったわ。」

 

「そっ・・・そうでしょうか?」

 

 実際は、敵が乱入してくれたおかげで有耶無耶になっただけの様な気もするぜ。

 

「うん。あなたのおかげで私は自由になれた。しかも・・・円満にね、。」

 

 清々しい笑みを浮かべるリアス。

 

「そうなら・・・頑張った甲斐があります。」

 

「些かが過激すぎるけど。あとで説教ね。」

 

「・・・反省しております。はい。」

 

 部長に嗜められて少し落ち込む俺。

 

 後から考えたらドライクを使って式場をぶっ壊しての乱入はやり過ぎましたね。

 

 熱くなりすぎたぜ。

 

「でも・・・もう私はあなた無しでは生きられないわね。」

 

 そんな俺を見て部長は顔を赤らめながら微笑む。

 

「・・・へっ?」

 

「もう逃がさない。絶対に誰にもあなたを渡さないわ。」

 

 そう言って部長が俺の頬に手を当てて・・・へっ?

 

 唇に柔らかい感覚が・・・。

 

『!?』

 

 キッ・・・キスですと!?

 

 マウストウ・・・マウスで?

 

 あれ?

 

 何で・・・その・・・部長にキスされて・・・。

 

「好きよイッセ―。あなたを愛しているわ。」

 

「・・・・・・・・・・・。」

 

 嬉しすぎる展開。

 

 実感していくに連れて、頭に血が上っていく。

 

 惚れた女にそんな事を言われた俺は・・・。

 

「・・・俺もう・・・死んでもいい・・・。」

 

 と激闘の疲れもあってそのままぶっ倒れた。

 

「いっ・・・イッセ―!?」

 

 ああ・・・もう駄目です。

 

 神様・・・俺は初めてアギトに生まれて良かったと思っています。いや本当に。

 

 

 side ハルト

 

 やれやれ・・・今回の主役がぶっ倒れて大騒ぎになっているよ。

 

 俺は豚汁を器に乗せて、式場の裏にやってくる。

 

「ほらよ。イッセ―の会心の出来だ。」

 

「サンキュー。」

 

 そこには巧がいた。

 

「今回はお疲れ様。大暴れしたね。」

 

「まあな。だが・・・危なかったぜ。」

 

 手から灰が滴り落ちる。

 

「・・・本当にもう長くないのか。」

 

 細胞組織の崩壊が確実に進んでいる。

 

「こればかりはしかたねえ。親父も分かっているさ。納得はしてねえだろうがな。」

 

 あの総督は意外と・・・いやすごく子煩悩だから。

 

今でも必死に助かる方法を探しているはず。

 

 こっちもその研究を手伝い、助かった一つの事例を報告している。

 

 木場君には感謝だよ。

 

 でも、そのために悪魔サイドと交渉が。そうなると外交の問題に・・・。

 

「あちぃ・・・おい猫舌なのわかってんだろ!?」

 

 巧が豚汁を飲もうとして熱さに顔をしかめている。

 

「それが生きている証拠だよ。それを見るたびに安心するよ。」

 

「・・・ホントSだな。だがまあ・・・そうだな。」

 

 灰が滴り落ちる手。

 

 そんな手に優しい光が放たれる。

 

「んん?って・・・アーシアちゃん!?」

 

「気休め程度にしかならないと思いますが・・・。」

 

 悲しい表情を浮かべる彼女。

 

「・・・ハル。彼女は確か・・・。」

 

「イッセ―さんは気付いていません。多分・・・私だから気付けた事だと思います。」

 

 本当に彼女には敵わないと思う。

 

 多分・・・すべての事情を察しているのだろう。

 

 心を読まなくてもだ。

 

「・・・出来れば、イッセ―さんに生きていることを教えてあげて欲しいです。」

 

「わりぃ・・・でも、俺はもうすぐ。」

 

「それでも!!・・・です。」

 

 泣きそうな彼女は必死で訴えてくれる。本当に優しい子だ。

 

「・・・本当に、君みたいな優しい奴がイッセ―の傍にいるだけで嬉しいぜ。」

 

 アーシアの頭を巧は撫でてやる。手から灰は・・・止まっている。

 

 確かにある程度だけど、効いているのだ。

 

「・・・サンキュー。また少し長く生きれそうだ。」

 

 神器だけの力じゃない。多分・・・アギトの力も使った癒しなのだろう。

 

 すごい。止めるだけでもすごい効果だ。

 

「後・・・訂正させろ。俺は死ぬために戦っているわけじゃねえ。命はいずれ尽きるが生きることは諦めてねえぜ。」

 

「・・・そうかい。あんたは思ったより骨があるな。」

 

 って・・・もう一人来たよ。

 

 アギトに続いて。

 

「ハル。お前もまた色々とあるな。」

 

 ギルス―――ネロまで来ているよ。

 

「木場と同じ気配。・・・そうかい、お前はオルフェノクってことか。」

 

 はあ・・・こいつに力を隠すことは不可能だからね。

 

「初めましてだな。自己紹介は互いにいらねえか?」

 

「そうだな。楽でいい。」

 

 ネロと巧の初対面。

 

「・・・なんだろうな。お前とは気が合いそうな気がする。」

 

「そうか?まあ・・・悪い奴じゃないのは分かっているから問題はねえか。」

 

「・・・・・・あっ。」

 

 その二人のやり取りを見たアーシアが声を上げる。

 

 その眼に・・・アギトの紋章が浮かび上がっている。

 

「アーシアちゃん?」

 

「あっ・・・言え・・・少し予知の力が・・・。」

 

 今のが予知の力が発動した瞬間なのか?

 

「・・・何を見た?」

 

「この二人が背中合わせで戦っている姿です。何かすごく仲良さそうに愚痴りあいながら。」

 

 そして微笑む。

 

「それ以外は内緒です。」

 

 その笑みは希望に満ちた笑みであった。

 

 彼女には本当に敵わない。

 

 何しろ彼女は本当の意味で聖女になりつつあるのだから。

 

 

 

side 渡

 

 さて・・・僕は今リアス部長の兄様・・・五大魔王の一人のサーゼクス様と一緒にある冥界の街のカフェにいる。

 

「まさかカ―ミラにそんな秘密が。普通のコウモリじゃないって分かってはいたけど、正直驚いたよ。」

 

 変身したリアス部長を見て、この方は卒倒しそうなほどに驚いていたし。

 

「しかし問題はないのかね?キバの鎧はそっちの一族の至宝なのでは?」

 

「それに関しては問題ありません。むしろカ―ミラにとってようやく見つけた運命の相手。それを僕達は尊重します。」

 

「そうか。」

 

「もちろん・・・いい機会なので冥界との外交も、まずはそちら魔王様達とグレモリ―家を中心にやっていきたいと思います。」

 

「やれやれ、王子だけあってしっかりしているよ。でも、良い話だ。カ―ミラの実家なら良い話ができそうだ。」

 

 サーゼクス様も乗ってくれる。

 

「セラにも話を通さないと。」

 

「そうだよ!!これでも外交担当なんだよ!!」

 

 そこに現れたのは・・・あれ?ツインテールで黒髪の美少女が・・・。

 

 魔法少女のコスプレをしていますし・・・。

 

「まさか・・・あなたがセラフォル―様?」

 

「そうだよ!!初めましてだね。」

 

 どうも彼女が五大魔王の一人らしい。厖大な力は確かに感じるけど・・・なんかこうびっくりする。

 

「そうそう・・・あなたに聞きたい事があったのよ!!」

 

 そしてセラフォル―様は何故か僕を問い詰める。

 

「愛しのあの方はどうしたの!?」

 

「えっと・・・。」

 

 愛しのあの方?

 

「君の友達の一人だよ。魔戒騎士のほら・・・。」

 

 サーゼクス様の言う彼って・・・サイガ君のことか?

 

 そう言えば彼・・・食事もそこそこにホラーが出たので狩ってくると轟竜に乗って冥界を駆け抜けたからね。冥界にホラーが現れるなんて本当に大変だねえ。

 

 自他共に現在地不明な彼が・・・無事に帰ってこれるかな?

 

 リルーラがあるから最悪何とかなるけど。

 

 一応そんな形の事情を話して・・・。

 

「むうう・・・せっかく仕事を片付けて駈けつけたのに・・・。」

 

 と本気で拗ねています。

 

「えっと・・・事情を聞かせてもらいませんか?」

 

「それはそれはもう・・・愉快な話だぜ?」

 

 そこに魔王様が三人目登場。

 

「ダンテ君。君まで来たか?」

 

「一応治安維持担当。暴れる前に終わっちまったぜ。」

 

 スパーダの息子にして、冥界最強の戦士。旧魔王派との内戦時、彼はやりたい放題、大暴れしたと聞いている。

 

 そして、スパーダと言う存在が冥界、天界でも伝説的な英雄で、内戦前まで四人だった魔王の枠を一つ増やして、スパーダの名を持つ彼を入れて、五大魔王になったという。

 

 問題は時間を超えて過去の冥界に飛ばされたという無茶苦茶な経緯があるということだが。

 

 ちなみにこの経緯をまだネロ君には話していない。知り合いなのは知っているし、安否も気にしているのもしっている。

 

「それに仕方ないだろ?何しろ俺の自慢の兵士が大暴れしていたからな。」

 

「あの戦いに噂の君の兵士が?へえ・・・。」

 

 これは面白い事が色々と聞けそうだ。多分ネロ君の主って・・・。

 

「あの方サイガ君は今どんな事をしているの!?」

 

 えっとその前にサイガの事で問い詰めてきた魔王様と何とかしないと・・・って・・・。

 

「それ以上渡に近寄るな。」

 

 その前にオ―フィスちゃんまで現れたし。

 

『・・・・・・。』

 

 彼女の登場に三人の魔王は目を丸くしているよ。

 

「我・・・渡と契約している。」

 

『・・・・・・・・・。』

 

「ははは・・・そう事です。」

 

 目を丸くした魔王達・・・いやセラフォル―様はどうも様子が違う。

 

「可愛い・・・ねえ、あなた私の妹になって、それから魔法少女にならない?」

 

『そっちかい!?』

 

 ダンテ様とサーゼクス様は一斉にツッコミを入れる。

 

 お二人ともツッコミのキレが良いですね。

 

「・・・妹になるといいことあるのか?魔法少女になるとどうなる?」

 

「うっ・・・。」

 

 首をかしげるオ―フィスちゃん。それに心を打ち抜かれたのだろう。

 

 顔を赤らめ、全身をプルプルとふるわせている。

 

「もうー・・・だめ。おもっきり愛でさせて!!」

 

 と抱きしめて頬すりをする始末。

 

「くっ・・・苦しい。」

 

「・・・君も大概規格外だね。ゴルドとの契約も性格があったからできたようなものだけど。そっちはどうやって契約したの?」

 

「ふふふ・・・主とは本当に気が合う。」

 

 ゴルドが肩に止まる。

 

「奥さんとはいいのかい?」

 

「すまないな。忙しい中、時間をもらって。娘と息子は元気にしているからいいが・・・・。」

 

 ゴルド氏に妻と娘、息子がいることを確認。

 

「ダンテ。そっちの相方は?」

 

「ここら辺を散歩中。冥界中があいつらの縄張りだからな。」

 

 ダンテ様も何かと契約しているみたいだ。・

 

 ダンテ様は二つの駒を取り出す。

 

「スパーダ眷族もあと兵士の駒が変異二つを含めて三つ。戦車の駒が一つ。いい相手がいたらいいけどな。」

 

「うむ・・・一人心辺りがありますけど・・・。」

 

 僕はある人物の顔写真をダンテ様にみせた。

 

「へえ・・・これは確かに眷族としてほしいわ。でもいいのかい?外交問題は・・・。」

 

「それに関してはこっちの友達がその幹部なので。それに調べている限り、向うからしても渡りに船の話のはず。」

 

「ほう・・・。悪魔以上に交渉が上手い。それでいて・・・。」

 

 ダンテ様は目を細める。

 

「根回しがうまい。本当に友達おもいだな。」

 

「・・・・・・隠しているつもりはありませんけど。これくらいはしないと。」

 

 色々とみんなが隠している事情は多い。翔太郎さんには感謝だよ。おしえてくれてさ。

 

「わかった。是非にやらせてもらおう。問題はどこにいるかだよね?またあの探偵に依頼しようかな。」

 

 その光景を見たサーゼクス様はつぶやく。

 

「絆か。現赤龍帝にしてアギトの彼のためだね。君を含めて彼の周りで色々と動いている。彼は私達が望んだ次世代を担う者達なのだろう。」

 

「だな。お前さんの弟子はすごいぜ。」

 

「・・・当然だ。俺が見込んだ男だぞ?」

 

 ダンテ様の声にこたえるのはカフェの片隅にいた男であった。

 

「戦いは見ていたのだろ?それと・・・そうか彼の料理も食べているようだね。」

 

 彼の手にはイッセ―君の作ったトン汁がある。

 

「腕を上げたな。俺の言うとおりあいつはあいつの道を進んでいる。料理の味もそれをしめしているようだ。」

 

「えっと・・・あなたは?」

 

「俺は・・・。」

 

 男は天を指差して名乗る。

 

「天道総司。天の道を行き総てを司るものだ。そしてあいつの師でもある。悪魔ではないが、四人目の超越者としてここにいる。」

 

 僕はこの場で予想以上の収穫を得ることとなった。

 

 彼の正体。それを教えてもらったからだ。

 

「そうでしたか。本当に面白い縁がありますね。」

 

「これもあいつの道だろう。色々な縁があつまって、そして関わり合う。」

 

 さて・・・この繋がりは何処まで生かせるのやら。

 

「はあ・・・はあ・・・こっ・・・ここなら大丈夫か?」

 

「あれ?ファルビーどうしたの?」

 

 そこに・・・何ともう一人の魔王様が現れる。

 

 確か軍事顧問の方だったよね?

 

 何やら息を切らせているけど。

 

「オッ・・・おやっさんから逃げてきた。」

 

「ああ・・・冥界・・・いや世界最強のトレーナーである立花のおやっさんだね。」

 

「本当にお前は優秀な眷族を集めたよな。本当に・・・。」

 

 ダンテ様はニヤニヤとしているし。

 

「優秀すぎてだらけるのが難しいよ!!主である僕が生かさず殺さずって・・・!!」

 

 そういえば聞いた事がある。

 

 かつて悪の組織を裏切った二人の改造人間を支えた男がいたと。

 

 悪の組織が次々と二人よりも強力な新しい刺客を送り出す。

 

 それに対して、彼がコーチとなったことで何度も危機を乗り越え、そしてその悪組織を壊滅させたと。

 

 そんな名オーナーにして名コーチっぷりはその敵の組織の大幹部自らスカウトにくるほどで、彼のしごきに耐えた結果、かつてない強敵の怪人が出てきたというくらいだ。

 

 現に、堕天使のある特撮の悪役大好きの幹部が彼のスカウトに動き出しているって聞いている。

 

 確かこの方はだらける為に優秀な眷族を探しまっており、当然彼にも目をつけた。兵士の駒一個で彼をスカウトしたらしいよね。

 

 でも、実際は兵士の駒一個どころの相手じゃなったみたいだよ。

 

 別の意味であの人は規格外だ。

 

「はあ・・・これでだらけられる・・・。彼の事だからこの逃走も軍略を鍛える為に生かしている節もあるのが悔しいけど。」

 

「うん・・・でも今回は先手を取られているみたいですよ。」

 

「へっ・・・げっ!?」

 

 僕は指を指すと・・・コウモリ型の機械、バットショットが窓の外に立っていた。

 

「そうことだ・・・わりいな。」

 

 そしていつの間にか翔太郎さんが来ている。

 

「そっちも大変だね。これも依頼なのかい?」

 

 僕の言葉に翔太郎さんは苦笑する。

 

「まあ・・・あの戦闘の後で疲れているが、おやっさんの頼みは断れねえ。あと呼び捨てでいいぜ。こっちもそう呼ぶし。」

 

「イッセ―君繋がりでね。翔太郎君。」

 

「おう、渡。」

 

 翔太郎君と呼ばせて貰うようになって、彼ともコネが更に深まりそうだ。

 

 しかし・・・彼もおやっさんに世話になっているのか。

 

 彼の出現にあの軍事顧問の彼は悲鳴を上げる。

 

「他の魔王眷族を使うのは反則だって!!しかも君は調査や人探し、情報戦に至っては冥界随一じゃないか!!こっちもたまに調査をお願いしているくらいだし!!」

 

 流石探偵。そのスキルは本当に冥界の為に役だっているね。

 

「はははは・・・まだまだ甘いぞ!!ファルビー!!それとタン二―ン、送ってくれてありがとうな!!」

 

「いやいや、何時も世話になっている礼だ。背中くらい何時でも貸してやる。」

 

 そこに豪快な中年のおじさんがカフェのドアを勢いよく開けてやってくる。

 

 カフェの外にはドラゴンがいる。確かあれは最上級悪魔の・・・。

 

「さあ・・・つかの間の自由は楽しんだか?タンニーンが誰かから貰ったすごい酒があってな。その試飲会と販売の打ち合わせをしたい。」

 

 彼が・・・あの有名な立花のおやっさん。

 

 色々な意味で世界最強のトレーナーにして、最高のオーナー。

 

 冥界の上層部すらかなわない別の意味で最強の兵士にして、転生悪魔最強の出世頭。

 

 確か、異様な速さで最上級悪魔までのぼりつめていたっけ・・・。

 

「いやああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 怠惰が好きな魔王の悲鳴がカフェに響き渡った。

 

 そうだね。彼ともコネを持っておこうか。絶対に役に立ちそうだし。

 

「むぎゅう・・・かわいい・・・。ロリ妹系の萌え成分を補充しながらあの方を探すわよ!!」

 

「苦しい・・・助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。」

 

 おっと、セラフォル―様に抱きしめられるオ―フィスを助けないと・・・そのままどこかにいってしまったし。

 

 立花のおやっさんに引きずられ、もう一人の魔王様も消えたか。

 

 サーゼクス様の方を見ると苦笑しながらお手上げしているし、ダンテ様は大爆笑。

 

 天の道の人は我関せず。全然気にしていない。

 

 確信したよ。

 

 これが魔王様達の日常なんだね。

 

 兄さん・・・僕は今立派にファンガイア族の外交を務められているかな?

 

 思ったよりも魔王様達のキャラが濃すぎて少し持て余しています。

 

 みんな良い人達だけど。

 

「はあ・・・ここはどこだ?嫌な予感から逃げて来てここに付いたけど。」

 

 そこに・・・あれ?何でサイガ君がやってくるの?

 

「おお・・・渡!!良かった。これで帰れる。」

 

 見事なくらいに彼女と入れ違いだったね。狙っていないかい?

 

「ほう・・・彼が?」

 

「セラちゃんには悪いけど会えて良かったぜ。」

 

「?」

 

 サーゼクス様とダンテ様は興味深々で彼を見ていますし。

 

「こいつもイッセ―の友達かい。調査依頼も来ていたからちょうどいいか。少し話をいいか?」

 

 翔太郎君はイッセ―繋がりの彼を見て呆れている。

 

「だれ?」

 

 本当に忙しいよ。でも・・・この繋がりは絶対に生きてくる。

 

 僕はそう確信しているよ。

 

 そして、オ―フィス。

 

 待っていてね。すぐに助けにいくから!!

 

 よくわかんないけど、彼女が探し求めていたサイガっていう生贄はここにいるんだし!!

 

「セラの場所なら今・・・。」

 

 いつの間にか現れたグレイフィアさん・・・あなたは本当にできる人です。今すぐ教えてください!!

 

 

 SIDE イッセ―

 

 色々とあった結婚式から数日たったある朝。

 

 俺達はそろって朝食をとっていた。

 

 何故か部長も一緒に。

 

「・・・どうして?」

 

『・・・・・・・。』

 

 その疑問に誰も答えはくれない。

 

――――――聞くだけやぼってものだ。

 

――――――そうそう。いや・・・これでじっくりと腰を据えて話ができるわ。

 

 俺の中のドラゴンズも呆れているだけだし。

 

 まあ・・・端的に言えば部長も一緒に住む事になったのだ。

 

 親達は既に説得済み。

 

 そして、何故か部長の実家からも後押しされているみたいですね。

 

「・・・アーシア。私も一緒に頑張るわ。」

 

「はい!!お姉様!!」

 

 あれ?いつの間にか二人は団結している?

 

「ふう・・・出来れば教育に悪い事だけはしないでね。一緒に寝るくらいなら許します。」

 

 キリエさん。先生としてそれはいいのですか?

 

「ははは・・・でもこうなったらとことん協力します。」

 

「はいにゃ。こうなったらとことん付き合っちゃる。とんでもない男になるのは確定だから。あと何人増えるやら・・・下手したらあんたの眷属女子全員かもねえ。」

 

「黒歌、それはシャレにならないから。」

 

 えっと・・・訂正。家に住む女子共が団結している?

 

 しかも俺を見ていますし。

 

「家の改装またしないといけないわね。」

 

 どうしてこうなったの!?

 

「うぃ・・・はあ・・・さて、修行のメニューを考えないと。サイガ、魔戒法師のあれも教えてもらえないかい?参考にしたい。」

 

 ハルトは食べながらも、眼前に現れたディスプレイにて何やら考えている。

 

「あれは参考になるかな?まあいいよ。」

 

 サイガも一緒になって考え込んでいる。

 

「なにやっているんだ?」

 

「いや・・・レイちゃん以外に弟子が三人もできたから、訓練用のメニューと指輪の開発をね。」

 

 弟子!?

 

「前の騒ぎで、ライザ―さんとレイヴェルさんが魔法使いに覚醒しましたから。」

 

 レイちゃんの言葉で思い出したよ。そういえばあの二人は絶望を乗り越えて・・・自力でファントムを抑え込んだ。

 

 それで魔法使いになる資格をえたらしい。

 

 そして二人は魔法使いになる決意を固めたようだ。

 

「ライザ―が妹の分まで土下座して頼みにきてね。流石に断れなかった。元々魔法使いと言うだけでも何かしらの事は教えようと思っていたけど。」

 

 あいつ・・・妹のためにも頭下げたのか。しかもトラウマ的な相手を前にしてか!?

 

 本当に色々と根性つきやがった。

 

「目標も高い。何しろ・・・。」

 

 ハルトが何故か俺を見ます。

 

「今度は君と戦って勝ちたいっていっていたからねえ。」

 

「・・・はい?」

 

 あっ・・・そう言えば再戦の約束をしていたよな。

 

「段階が進めば、今度はドライバーも考えないと。総督とも相談だな。」

 

 そうか・・・これは色々と手強そうだ。

 

 多分今度闘う時は前のように一方的にはいかないな。

 

「ん?三人?後一人は?」

 

 もう一人弟子がいるよな?

 

 二人は分かったけど、もう一人は?

 

「また紹介するよ。同じ学校だから。でもあいつの生まれ変わりに会うなんて思いもしなかったよ。他にも魔法使い候補もいたから・・・どうなることやら。」

 

「?」

 

「あと、ハル君。大事な話がある。あとでいいかな?」

 

 渡。真剣な顔をしてハルに声をかけている?

 

「なんだ?」

 

「ファイズの件でね。彼の延命に関して朗報があるよ。」

 

「!?」

 

 渡の言葉に今までない程に驚きまくっているハルト。

 

「外交問題になりそうだから、父親と話をつけたい。」

 

「なんでお前がその件を知っているのか疑問だけど、分かった。聞かせてくれ。」

 

 ハルトは気を取り直して、その話にのるようだ。

 

 何故か二人とも俺を非常に気にしているそぶり?

 

「・・・はあ・・・。」

 

 一方ネロは落ち込んでいやがる。それを鋼兄が必死で慰めているし。

 

「レッドクイーンとブルーローズ・・・・。」

 

「元気だせとはいわん。だが、もうすぐ直ってくるだろうが。」

 

 確かあの戦いで・・・俺の生み出したヤミ―によってあいつの武器が破壊されたっけ。

 

 途方もなく頑丈なあれを壊す辺り、我ながらすごいの生み出したわ。

 

 責任を感じていたところ、グレイフィアさんが修理すると言ってきたのは記憶に新しい。

 

 そんな時・・・魔法陣が唐突にあらわれ、そこから何かが届く。

 

「おっ・・・もしかして・・・。」

 

 それはグレイフィアさんからの贈り物である。

 

 リビングの床に落ちたけで亀裂が?

 

 もしかしてものすごく重くないか?

 

「・・・えっと・・・何?」

 

 ネロが駆け寄るのを見ながら、俺は添えた手紙を見る。

 

―――――修理ついでにギルスの力に耐えられるように冥界の最新技術を持って魔改造させてもらいました。

 

・・・・・・・・・。

 

 えっとだ。

 

 冥界の技術で魔改造?

 

「なんじゃこりゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

 ネロの絶叫に振り返ると・・・あいつの手に変わり果てた元レッドクイ―ンの姿。

 

 赤い刀身は変わらないように見えて、メカっぽくなっている。なんかバイクとかのエンジンを思い起こさせる。

 

 持ち手がバイクのアクセルみたいになっているのか変わらねえが・・・。

 

―――――――命名・・・アクセルクイーン。約六十キロの重さですが根性で振り切ってください。

 

 グレイフィアさん。

 

 その説明のどこから突っ込んでいいのかわからないぜ。

 

 六十キロって人間が使う武器の範疇を完璧に超えています。

 

 だが・・・ネロ。流石だぜ。それを片手で当たり前のように持っていやがる。

 

――――スチーム

 

――――エレキ

 

―――ジェット

 

 三つのガイアメモリが付属されている。

 

 そして、もう一つ。

 

 これもまた変わり果てたブルーローズの姿。

 

 銀から青く変わった大型化している上にリボルバー部にメモリが挿し込めるようになっている。

 

 共通しているのは弾丸を発射する口が上下と二つあることくらいか。

 

「・・・げっ・・・原型がまったくねえ・・・。」

 

―――――カノン

 

―――――スプラッシュ

 

―――――スナイプ

 

―――――ボム

 

―――――バルカン

 

 こっちには五つもメモリが添付されている。

 

―――――命名・・ローズダブル。反動は以前の倍ですので気をつけて過激に華麗、派手に使ってやってください。

 

 どうやったら気をつけて過激、そして華麗にかつ派手つかえるの?むしろそこを教えて欲しいわ!!

 

―――――――なお、二つともマニュアルはないので、試行錯誤してください。かなり乱暴に扱っても問題ないくらい頑丈でし、剣はもちろん、銃その物も盾に使えるほどに超絶頑丈です。

 

・・・・・・雑だ。あまりにも説明が雑過ぎる!!

 

――――――ごめんなさい。修理をお願いした方がそのまま何も言わずに渡されたのでどんな機能があるのか私もわからないのです。あとで私がしっかりとその連中をとっちめておくのでその際に必ずマニュアルは送らせます。

 

 訂正。

 

 苦労していますね。グレイフィアさん。

 

 じゃあこの説明もただやけくそなだけか。

 

 結構あなたも愉快です。

 

――――――なお、あなたにこのガイアメモリを託します。後に対応する物を送る・・・いえ蹴り倒してでも必ず送らせるのでもう少し待ってください。

 

 最後に添付されているメモリは・・・。

 

―――アクセル。

 

 これって・・・間違いなくガイアメモリだよな?

 

「部長。あとでグレイフィアさんに連絡を頼む。」

 

「えっと・・・もしかして・・・。」

 

「せめて一緒にとっちめたい。」

 

 あまりの衝撃に打ちのめされているネロを慰めつつ、何か動いているなと思う俺であった。

 

 

 呑気にそう思う俺であったが、それが三つの再会に繋がる事に俺はまだ知らない。

 

 一人はある兄妹

 

 そして後二つは・・・。

 

「嵐が近いかな。」

 

 サイガがあくびをしながら唐突に告げる。

 

 何となくだけどそんな感じがする。

 

 そしてそれは現実となるのであった。

 

 

 

SIDE???

 

『久しぶりの故郷きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

 ある街の駅である兄弟が揃って叫ぶ。

 

「ここがお前達の故郷か。」

 

「へえ・・・案外普通なんだ。」

 

 そのあとに続いてまた二人。

 

「久しぶりだぜ。イッセ―の野郎元気にしているかな?」

 

 そろって叫ぶ二人の一人はリーゼント頭の青年。

 

 もう一人は栗色の髪をツインテールにした美少女であった。

 

「元気に決まっているって。あのイッセ―だよ。」

 

「何だろ・・・君達の幼馴染に会うのがすごく怖いよ。姉さん?」

 

 この暴走兄妹の幼馴染も絶対に普通じゃない。

 

 僕はそう確信しているよ。

 

「ふむ・・・これが和のお持て成しというものか・・・。武士と言う物がいたら是非手合わせを。」

 

 ああもう・・・相変わらず姉さんは脳筋だよな!!

 

 もう一人の水色のショートヘアの彼女は孤児院でこの世界で僕の姉代わりに当たる人だ。

 

 すごく強い。

 

 でも・・・お馬鹿だ。残念なくらいに・・・。

 

 あの二人といい勝負だよ。

 

「三人とも目的を忘れないでよ。」

 

 ああもう・・・この世界の神様!!

 

 なんで僕がこの三人の引率をしないといけないのですか!!何時もいつもコントロールできるのはお前だけだって言っていやがるし!!

 

 教会の暴走最終兵器共(ノンストップ・オーバーキル・リーサルウェポンズ)ってこの三人は言われているんですよ!?

 

そこに何故か僕も含まれている事に憤りを感じる。

 

 まずツッコミが足りない。

 

グリセルダ姉さんもお手上げのこのメンバーを僕一人で何となするって無茶すぎる!!

 

・・・・・・何とかするしかないけど。

 

―――――本当にこの世界でもついていないな。良太郎。

 

 君の慰めを聞くって・・・ホント丸くなったよ。

 

 この街では何が起こるのやら・・・。もう何が起きても僕は驚かないから。

 

 ああ・・・不幸だ。

 

 




 最後に出てきた連中はだれでしょうか(多分モロバレ)

 彼らが次の話で大暴れします。

 なんかとんでもない四人組になって増したが・・・後悔はなし!!

 できれば今年が終わる前にもう一度更新したいです。


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第三章 月光校舎のエクスカリバー
私達の愛馬は凶暴です。


 あけましておめでとうございます。

お待たせしました

 今回は大坂様から頂いたアイディアをもとにイッセーとネロが仮面ライダーの証と言えるバイクを手に入れる話です。

 えっ?

 ただで手に入れるわけないって?

 そんなの当たり前です。さあ・・・モンスターバイク達の登場です。


 最初に言っておく。俺の幼馴染共はか~な~り・・・強い。

 

 経緯はどうあれ、それだけは共通していたと思っていたが・・・もう一つ共通している事があった。

 

 サイガも意外だが、皆・・・バイクの免許持ち。

 

 そして、その多くがバイク持ち。

 

 俺とネロは違っていたけど、最近になってようやくその仲間入りになったんだ!!

 

「このバイク・・・色々あってが俺達の物になったな。」

 

「ああ・・・本当に色々な意味で俺達の物だな。」

 

 ネロは結構慣れた手つきで整備している。こいつはあのブルーローズって言う改造拳銃を作るほどに手先が器用で、それでいて物持ちがいい。

 

「ここはどうすればいい?」

 

「ああ・・・まあここはな・・・。」

 

 整備の仕方も色々と教えてもらっている最中。

 

 ネロはモトクロスタイプのバイク。

 

 俺はオンロードタイプだ。

 

 このバイク・・・本当に色々あったと思うぜ。

 

 

「・・・えっと・・・オカルト研究部のレポート?」

 

 それは結婚式の騒動が落ちついてすぐのこと。

 

「ええ。いわくつきの何かを探しているのよ。何か良いのないかしら?それを悪魔としての部活動報告書であげたいのよ。」

 

 純血悪魔である部長は本来冥界の学校に通わないといけないけど、部長は日本の魔物、妖怪の研究を報告することで単位を修得しているらしい。

 

 部長がこの学校にいることができるように協力しないと。

 

「いわくつきって言われてもよお。俺はこの国に来て日が浅いぜ?悪魔どもとやりあっていたからいわくなんてもん今更だし。」

 

 ネロからしたらそれは本当に今更らしい。

 

「右に同じく。元妖怪と一緒にいるからな。いわくつきって・・・。」

 

 鋼兄からしてもそうだよな。

 

「考えられるとしたら悪霊の類かにゃ?」

 

 そこで黒歌が説明に入る。鋼兄と黒歌は部長のレポートの強力な味方だ。

 

「怪談話では妖怪や悪霊などの出番だからねえ。うん・・・いわくつきの何かねえ。」

 

「私も心辺りといえばねえ。そっちはどんなことが?」

 

「いやねえ。仙術を使って除霊みたいなことしたのよ。そっちは専門家みたいなもんでしょ?」

 

「あらわかる?」

 

「分からない方が可笑しいにゃ。」

 

 

 朱乃さんが黒歌と話し始める。

 

「そうか・・・んん?ちょっと待ってください。:

 

 そんな時、俺のスマホに連絡が入ってきた。

 

「はいはい・・・・。あっ・・・久しぶりです!半年ぶりって・・・へっ?」

 

 それは俺がすっかり忘れていた朗報であった。

 

「見つかったんですか!?」

 

 去年の夏に頼んだあれがついに・・・。

 

 

 

 

 

「久しぶりですおっさん!!」

 

「おっ・・・イッセ―ちゃんきたね。おやおや・・・友達を大勢連れて・・・。」

 

 俺はオカルト研究部と鋼兄を除く幼馴染共を連れて街の車両整備工場にきていた。

 

 鋼兄はちょっとした用事があるらしいぜ。

 

「綺麗どころも多いね。誰が本命なんだ?」

 

 結構愉快なこのおじさんは前のバイトでの常連さん。そのおじさんに頼んだんだ。

 

 バイクが欲しいって!!

 

 師匠がいたバイトで貯めた金を全て叩いて買う決意を固めた。

 

 ちなみに免許は習得済みだぜ。

 

 バイクを欲する理由。

 

  それはもちろんモテたい!!それに尽きる。

 

 まあ実際はそれが三割。

 

 そこにドライク達が万が一のための表の移動手段としてどうだ?と言う提案。

 

 仮面ライダ―のたしなみだって・・・クレアも言っていたし。

 

 仮面ライダ―って誰なの?確か昔悪の組織を壊滅させたヒーローって聞いた事があるけど。

 

 これが三割。

 

 残り?

 

 そんなの、決まっている。

 

 それは・・・男のロマンだぜ!!!

 

「・・・・・・子供みたい。」

 

 くっ・・・

 

 ふっ・・・ふふふ・・・小猫様が一刀両断に切って捨ててくれますよ。

 

 でも・・・だ。それでもロマンが実現しそうな時に俺のハートはこんな事に屈しな・・

 

「ロマンといったわりには今の今まで忘れていたんだよね?」

 

 うお・・・黒歌。お前も痛いところを・・・。

 

「半年以上も放置していた程度のロマンって・・・高が知れています。」

 

「そうにゃね。燃えカスもいいところにゃ。」

 

 がはっ!?

 

『ねー。』

 

 ぐっ、この猫姉妹めえ・・・。

 

 仲良く、それでいて容赦なく俺のガラスのハートを抉ってきやがって。

 

「ははは・・・愉快な仲間みたいだね。あの黒髪の姉ちゃんに見覚えがあるような気がするが・・・まあいい。これがその物さ。」

 

 そこにあったのは二つのバイクであった。

 

 一つはオンロードタイプ。

 

 もう一つはモトクロスタイプだ。

 

 二台も見つけてくれたのだ。

 

「なあイッセ―。よければ片方俺にくれねえか?俺もバイク欲しかったんだ。」

 

 ネロもバイクを見てうずうずしているようだ。

 

「いいぜ。」

 

 同志がここにもいた。こっちの予算の問題もあるけど・・・。

 

『・・・・・・。』

 

「金額はそうだねえ・・車両登録などを含めて・・・これでどうだい?」

 

 おっさんが提示してくれた金額は・・・驚くべき物だった。

 

「本体価格タダ同然っていいのか!?」

 

 登録などの費用などを引けば何と・・・本体はただ同然。

 

「まっ・・・まあ・・・な。」

 

『・・・・・・・・・。』

 

 そんなおっさんの態度に部長を初め皆が鋭い視線を向ける。

 

「そんなに美味しい話があるのかしら?」

 

 部長はおっさんに向けて問う。

 

 確かに話としては・・・おいしすぎるぜ。

 

「あっ・・・いやな。信じてもらえねえかもしれないが。」

 

「その点は安心しろ。」

 

 そこに・・・遅れてやってきた鋼兄が会話に参加してくる。

 

「鋼鬼のあんちゃんかい!?」

 

 あれ?おっさんと知り合いなのか?

 

「こいつらも裏のもんだ。黒歌。お前も知っていただろ?」

 

「あららばれてた?まあ・・・尻尾と耳は普段隠しているにゃからねえ。」

 

 黒歌が笑いながら。尻尾と耳を出す。

 

「やっぱりいたずら猫の姉ちゃんだったのかい。」

 

 おっさんも黒歌と知り合いみたいだな

 

「にゅふふふふ・・・黙っていてごめんね。この人猛士の一員にゃ。工場その物がちょっとした支部になっているのよ。」

 

 猛士って、たしか鋼兄の師匠達・・・魔化魍を倒す鬼を支援する組織のことだよな?

 

「ちなみにグレモリ―の次期当主だ。いい機会だし挨拶しておけばいい。」

 

「へえ・・・あなたが。改めて挨拶を。」

 

「ええ。よろしくね。」

 

「よろしくです。」

 

 小猫ちゃんまで一緒に挨拶って・・・そうか、小猫ちゃんは鬼になるからお世話になる可能性が大だもんね。

 

「この子が噂のいたずら猫ちゃんの妹?可愛いねえ。」

 

 そして、鋼兄は改めて問う。

 

「それで・・・このバイクは一体どんな曰くつきの代物なんだ?」

 

 えっとだ。曰くつきって言葉がきこえましたよ。

 

「実はねえ。この二台・・・憑いているんだよ。」

 

 憑いているってなに!?

 

「あらあら・・・なんかいるとは思いましたけどやはりそうでしたか。」

 

 朱乃さん気付いていたんですか!?

 

 気付いていたら早く言って欲しかったですよ!!

 

「祓おうとしたんだがねえ・・・なぜか出来ずに、でも捨てようとしたら呪いが掛かっているのかできなかった。それであんちゃんに引き取ってもらってもらおうかなって。乗ろうとしたら本来のスペックの三倍以上の出力を発揮し、暴走。誰も乗りこなせないってわけだい。とんだじゃじゃ馬さ、」

 

「はあ・・・あのな。」

 

 そんな危険極まりない代物を俺に引き取ってもらおうとしたわけかい!!

 

「それにイッセ―君なら乗りこなせると思って。あの人の弟子ならね。」

 

 俺なら出来る。

 

 その言葉に皆は一斉に俺を見やがった

 

『何となく分かる。』

 

 それで何故に納得!?

 

「はあ・・・まあいいだろ。」

 

 鋼兄も何も言ってこないし!!

 

 それよりも鋼兄もここに用事があったみたいだな。一体それって・・・。

 

「それよりもあれはどうなっている?」

 

「ああ・・・まだ厳しいな。あんちゃんの怪力に耐えられるハ―レを作るにはフレームから考え直している段階だ。」

 

「そうか・・・。俺の鉄馬はまだできないのか。」

 

 何故か落ち込む鋼兄。

 

「まあまあ・・・また乗せてあげるにゃ。」

 

 黒歌がそれをなぜか慰めている。

 

「へえ・・・ちょうどいいわ。」

 

 部長は色々な意味で怪物バイクを見て瞳を輝かせている?

 

「今回のレポート・・・このバイクにしましょう!!これ以上の逸材はないわ!!」

 

 そうやって俺達はこのモンスターバイク共を題材にレポートを書くこととなった。

 

 

 

 まず結論を言おう。

 

 調べて分かったこと。

 

「この子・・・九十九神化しかけているにゃ。」

 

 それはこのバイクが命を持ちつつあるというという・・・信じられない展開であった。

 

「・・・マジか?」

 

「まだ初期段階だけど、間違いないにゃ。」

 

「へえ・・・鎧とか古い物なら分かるけど、バイクがねえ。」

 

「比較的新しい部類ですのね。でも異様に早い・・・いえ早すぎるわ。」

 

 九十九神。付喪神と書く場合もあるけど、正しくはこっちの方らしい。

 

 まあ・・・鋼兄や黒歌などの日本神話独自の考えで、「神さび」とよばれるように長く、古くなった物には霊魂・・・神様が宿るという物だ。

 

 対象は自然もそうで、人間が作った物も当てはまる。

 

 長く、健在であり続けた物がそうなるらしい。妖怪の中にもこれに当てはまる者がある。

 

 最も、このバイク・・・二つとも結構新しいのに?

 

「よほどの偶然が重なっているのですわね。和御魂と荒御魂のバランスが崩れているのが気になりますけど・・・。」

 

 えっと・・・朱乃さんと黒歌の説明からすると、必ずしも九十九神っていいやつではないらしい。

 

 妖怪もそれに当てはまる連中もいる。

 

「ふむふむ・・・レポートになるわ。これ・・・。」

 

「えっと・・・この二つのバイクの経歴はまだなの?」

 

 そのバイクの経歴を今渡とハルに調べてもらっている。

 

 グレゴリとファンガイアの情報網に、さらにある探偵にも依頼しているほどだ。

 

「もう少しで分かると思いますわ。こんなバイク・・・絶対に普通じゃないですし。」

 

 朱乃さんは何やら確信している。

 

 色々と調べ、次の段階に進む。

 

 結界を張った学校のグランドでそれは行われる。

 

「・・・次は乗ってみましょうか。イッセ―。」

 

 そう・・・実際に乗ってみるてええぇぇぇぇぇぇ!!俺が乗るの!?

 

「だってイッセ―の物でしょ?それに私達は免許持っていないし。」

 

 確かに俺は免許持っていますが・・・はあ・・・。

 

 しかたねえ。覚悟を決めるか。

 

 俺はヘルメットを被り、オンロードの方のバイクに乗ってみる。

 

 うお・・・いいねえ。この感覚。

 

 さてキーを指してエンジンを・・・

 

――――――――んん・・・・んんん・・・。

 

 あれ?キーを指す前にエンジンがかかっていますよ?

 

 それに何やら声が・・・。

 

 結構可愛い女の子の声ですよ?

 

―――――ふあ・・・あれ?なんかいい気分。まるでこう・・・何もない暗闇から抜け出せたような・・・。

 

「バイクが喋った?」

 

「まさか覚醒したの?九十九神に!?」

 

「まだ目覚めるのに早いにゃ!!どうなっているの?」

 

――――うーん。でも、体がだるい。走って暖めないと。暖めて・・・ひゃは♪

 

 こいつ今なんて言った?

 

 あれ?エンジンが全開に・・・?

 

―――――いくよおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!あはははははははははっははははははははははははぁぁぁぁl

 

「ちょっ・・・まっ・・・まてええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 突然笑いながら走り出しやがった。

 

 いきなりフルスロットルで行くなよ!!

 

「おっ、おい待てって!!」

 

 ネロがとっさにもう一つのモトクロスタイプの奴に乗ったら・・・・。

 

―――――よっしゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 そっちからも威勢のいい叫びが聞こえてきやがった。

 

 まるでスポ根タイプの男の子の声が。

 

「・・・まじかよ。」

 

―――――かっ飛ばすぜ!!ついてこれる物なら・・・ついて来な!!

 

「ぬおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」

 

 ネロの乗った奴まで暴走し始めた。

 

「おっ・・・お前もなのか!?」

 

「すまん・・・ミイラ取りがミイラになっちまった!!」

 

 そして、俺とネロは今暴走バイクに乗ってグランドをぐるぐると回っている。

 

――――――ひゃほうい!!いいねえいいねえ!!やっと・・・積りに積ったこの衝動を解消できる!!

 

――――――最高だぜ!!ようやく自由だ!!倒れるまで走ってやるぜ!!

 

「・・・そっちのバイクはずいぶん声が可愛らしいな。」

 

「いえいえ・・・そっちはすごく威勢がいいじゃねえか。」

 

 俺達は仲良く並走しながら互いのバイクから聞こえてきた声について語り合う。

 

『ハハハハハハ・・・・はあ・・・これどうやったら止まるの?』

 

 そして、互いに止める事が出来ない事を知り、ため息をつく。

 

――――今の私は誰にも止められない・・・・迫る~ショッカ―!!

 

――――悪魔の軍団!!

 

 この二台・・・唄い出しやがった!!しかも何やら古い歌のようだが?

 

 ショッカ―?あれ?何か聞いた事があるような・・・。

 

 

 SIDR リアス

 

 

 暴走したバイクを見て唖然としている私達。

 

「部っ・・部長!!」

 

「とんでもない事がわかったよ。」

 

「探偵さんからの調査結果が出たわ。」

 

 そんな時に渡とハル、そしてカ―ミラが持ってきてくれた探偵からの調査結果。

 

 それが同時に揃った。

 

「えっと・・・はい?」

 

 その内容に私は間抜けな声をあげる。

 

「秘密結社ショッカ―が作ったバイク?」

 

 

 

 説明しよう。

 

 秘密結社ショッカ―とは世界征服を企んだ悪の秘密結社の事である。

 

 彼らの最大の特徴は動植物の特性を人間に組み入れた改造人間と呼ばれる怪人を繰り出してきたということだ。

 

 現在の科学技術すら超えた様々なオーバーテクノロジーを有しており、あちこちの世界で破壊工作や暗殺など・・・今で言うテロを行っていた。

 

 全世界規模の悪の組織。

 

 それを壊滅に追い込んだのはその組織から出た二人の改造人間の裏切り者。

 

 その名は・・・仮面ライダー。

 

 最初が技の一号、もう一人が力の二号と呼ばれている。

 

 この二人のおかげなの。

 

 裏の世界では有名な二人よ。たしか誰かが眷族としてスカウトしたって話が・・・。

 

「あの二台バイクはそのショッカ―の遺産なんだって。改造人間用のバイク・・・サイクロンの完成形。確実に人間が使うにはオーバースペック過ぎる性能のバイクだって。」

 

「しかも、そこにさらに新たな試みもしたらしい。それも・・・自立稼働って言う試みをね。そのために色々なオカルトにも手を出した。その中に霊魂召喚の類の術もあってね。多分それによってかつてショッカ―の犠牲になった者達魂が数多く憑けられたようだ。」

 

「それで人工的に魂を宿らせた状態にしたと?」

 

「超科学も行き着くところまで行ったら、オカルトと同じと言う事だ。しかし、そんな滅茶苦茶な術すら成功させたけど、うまく目覚めなかった。でも、つけられた数多くの魂と色々な術式の影響か、徐々に九十九神化が進んでいった。」

 

 魔法使いであるハルの説明はためになる。

 

「じゃあ・・・なぜ目覚めたの?」

 

 異様に早く九十九神になる要素は分かったわ。でも突然覚醒した理由は・・・。

 

「・・・これは僕の推測だけど、イッセ―君とネロ君がそれぞれアギトとギルスだからじゃないのかな?」

 

 渡の推理がそこに入る。

 

「アギトの力は全くの未知。神に近いか、神その物の力を持っている。その力に触れることで一気に覚醒を促されたと考えられないかい?」

 

『・・・・・・・。』

 

 渡の推理に皆は絶句するが・・・

 

「なるほど・・・ね。それなら納得だわ。」

 

 話ではアギトやギルスは手に触れたバイクなどの乗り物を変化させる力がある。また手にした武器にも干渉する力があるらしい。

 

 その力が作用したというのなら・・・。

 

「じゃあ・・・あれだけ無邪気なのも説明がつくわ。多分、無垢な状態のまま一気に覚醒したのだわ。つまりあれは・・・。」

 

 あの二台のバイクは生まれたての子供みたいなものだということ。

 

「それで走り回っているのは、多分憑いた魂の無念が暴走しているからしらね。どれだけの魂を使ったのか分からないけど、それを晴らしたいから暴走していると。」

 

「・・・まじかよ。俺子守は得意じゃねえぞ!!」

 

「右に同じって・・・うああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 二人が乗ったバイクが駐車場に向かう。

 

 一体どんなスピードで走っているの?

 

 そして・・・車に激突。

 

 車が吹っ飛んだわ。

 

 まるで紙のように次々と車を跳ね飛ばしながら二台のモンスターバイクは爆走する。

 

「まじかよ!!なんだよこのバイク!!」

 

「絶対にバイクのスペックじゃねえぞ!!」

 

―――私のパワーを舐めるな!!

 

―――しかもすっごく頑丈なんだぞ!!

 

 そのまま学校の外に出ようとするのを・・・。

 

「学校の外には出させないわ!!」

 

 私はあらかじめ張った結界が二体の行く手を阻もうとする。

 

 この結界はとっても頑丈よ。それこそミサイルの直撃にもびくともしないくらいに。

 

 でも・・・二台のバイクは揃って叫ぶ。

 

―――この程度で私達を止められると思うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 あら・・・まるでガラスのようにあっさりと結界がぶち破られた。

 

『・・・・おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい!!!?』

 

 こいつらバイクと言う名の・・・重戦車よ。

 

 駄目だ、止められないわ。

 

「・・・とんでもない子たちね。」

 

 多分今、私は表情を引き攣つらせているわよね。

 

「仕方ない。追跡するか。」

 

――――コネクト。

 

 ハルがバイクを召喚。

 

「そうだね。」

 

 渡の傍にもバイクがやってくる。

 

「俺も・・・・。」

 

 鋼鬼さんもそのあとに続こうとして、その前に黒歌がバイクに乗ってやってくる。

 

「はいはい私が運転するから気にするにゃ。あんたが乗ったらバイクが乗り潰れるから。」

 

「・・・・・・はあ・・・。俺の怪力を憎むべきか、それともバイクの脆さを憎むべきなのか!?」

 

 鋼鬼さんのパワーだとアクセルを握りつぶし、ハンドルをへし折ってしまう事が多く、それに耐えられるバイクを作り直す必要があるらしいわね。

 

 鋼鬼さんドンマイよ。怪力もここじゃ逆効果ね。

 

 鋼鬼さんは黒歌の後ろに乗る形で追跡開始。

 

「私はディスクアニマルで追跡をします。」

 

 小猫ちゃんが音叉を取り出し、次々とタカ型のディスクアニマルを起動させていく。

 

「仕方ない。こっちも鎧を纏ってあれでいくよ。」

 

 サイガ君は鎧を纏って何をする気なの?

 

 

 

 SIDR イッセー

 

 ははは・・・もう訳が分からねえぜ!!

 

「無茶苦茶クレイジーな奴らだぜ。こいつら!!」

 

 俺達は今爆走しているバイクに乗っている。

 

 左右の景色なんてほとんど分からねえけど、障害物や車、人なんかは勘で俺達は避けているぜ!

 

 アギト最高!!ギルスもいいねえ。

 

「・・・俺達じゃなかったら絶対に大惨事だぞ。」

 

「そうだね。」

 

 ああもう・・・何んてじゃじゃ馬だよ!!

 

――――時速・・・大体三百は超えているわね。

 

 クレアが俺達の現在速度を教えてくれた。

 

「まじかよ。だが慣れてきた。」

 

「ああ・・・本当にだ。」

 

 何とか操縦出来ている自分達を褒めたい。

 

――――お兄ちゃんたちすごいね。

 

――――これならギアをあげても大丈夫かな?

 

『・・・・・・はあ!?』

 

 嫌な会話が聞こえてきましたよ?

 

 こいつらまだこれで・・・。

 

――――目指せ!!音速の壁!!

 

――――青いハリネズミを追い越してやるぜ!!

 

『ぬぎょああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 さらに加速って・・・うお・・・・Gが・・・Gがすげええぇぇぇっぇ!!

 

 

 

 SIDE 渡

 

 無っ・・・無茶苦茶なスピードだ。

 

「どうしようか。さらにスピードを上げたぞ。」

 

 信じられない速度でさらに加速をする二台のバイク。

 

「これ・・・・調べた本来のスペックを大幅に超えているよね!?」

 

 本来のスペックなら時速四百キロが限界のはずだった。

 

 でもすでに今・・・五百を超えている。

 

「九十九神化の影響にゃ。多分・・・あれで想定していたスペックを遥かに超えた性能を叩きだしている。」

 

 後ろから黒歌さんが乗るバイクが追いついてくる。後ろに鋼兄がいるよ。

 

 ちなみに僕達は変身した状態です。

 

 そうでないと、耐えられませんので。

 

「せめてあいつらも変身するように伝えんとな。」

 

「だったら任せて!!」

 

 僕たちの横にサイガ君がって・・・おおおい!!?

 

 

 

 

 SIDE イッセ―

 

「・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・。」

 

 今俺達は信じられない物を見ているぜ。

 

「大丈夫か―!!」

 

―――無っ・・・、無茶苦茶ね。

 

 俺の隣には何と・・・サイガが鎧を纏った状態で轟竜に乗って並走していた。

 

 なんだあの馬。

 

――――聞いた事があるぞ。確か轟竜は風や音すら超え、光すら超えた速さと、大地を叩き割る力強さを兼ね備えた三界最強、最速の名馬だと。だが気位がたかく、乗る人を選ぶ。そうか、もしやと思っていたが、あの魔戒騎士はその最強の名馬に選ばれていたか。

 

 ドライク。それ本当か!?

 

 あれ・・・そんなすごい奴なの?

 

――――すっ・・・すごい。

 

――――僕達と互角、いやそれすら超える速度で走れるの?

 

 純粋な驚きをバイク達は見せている。

 

 何か純粋な憧れみたいなもんを感じるぞ。

 

「んん?轟竜どうしたの?なんかまんざらでもない顔をして。」

 

 轟竜がそれを受けて満足そうな声をあげる。

 

―――ねえねえ・・・どんなことができるの?

 

―――教えて教えて!!

 

 そして二台のバイクはそろって言いやがった。

 

――――お兄ちゃん!!

 

 その言葉に轟竜が固まる。

 

 そして・・・少し間を開けた後・・・。

 

「ふるぶおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「まっ・・・まて!!お前お兄ちゃんキャラだったのか!?落ちついてくれ!!頼むから!!」」

 

 その言葉に轟竜が・・・歓喜の雄叫びをあげている!?

 

「なに?弟、妹共、付いて来いって?世界の果てまで走るという事を教えてやるって・・・まてまてまてまてまてまてまてまて!!!この二人を止めるためにお前を呼んだのにぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 サイガが必死になって説得しようとして・・・轟竜がさらに加速。

 

―――――はい!!

 

――――何処までも付いていきます!!

 

『まてやこらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 俺達は叫ぶぜ。出ないと・・・身体が・・・身体がもう耐えられない・・・。

 

 このままじゃ・・・死ぬ。

 

「言い忘れていた・・・二人とも早く変身して!!出ないと音速に達する前に体がバラバラになるよ!!」

 

 最高速度に達しようとする轟竜の上でサイガが必死になって叫んでいる。

 

 あっ・・・ありがとうな。すっかり忘れていたわ。

 

 俺達はそれぞれ・・・変身をする。

 

 俺はアギトに。

 

 ネロはギルスに。

 

 すると・・・

 

――――へっ?あっ・・・あれ?

 

――――僕たちの身体が・・・変わった?

 

 あのバイク達まで変身した?

 

 俺が乗っているバイクは赤に金が混じったバイクに。

 

 ネロのは緑のカニみたいな殻の付いたバイクにだ。

 

「こんな展開ありかよ!!」

 

―――なんだろ・・・もっと速く走れる。

 

―――うん・・・いくぜ!!すべて・・・振り切ろう!!

 

 状況・・・さらに悪化。

 

「・・・・・・なんでさ。」

 

「ハハ・・・こうなりゃやけだ。とことん付き合ってやる!」

 

 俺の嘆きと開き直ったネロの言葉をよそにさらに加速した一体の馬と二体のバイクは山を越え・・・そして海の上を走り抜けた。

 

 

 

 

 その後俺達は半日かけ超音速で地球を一周して帰ってきた。

 

 いつか世界一周旅行をしたいとは思っていた。

 

 でもさ・・・こんな形で実現するとは思いもしなかった。全然観光どころか、景色も見えなかったよ!!

 

 ただ・・・怖く、それでいてしんどかっただけだ!!

 

「ああ・・・もう・・・疲れた。」

 

「今日は一歩も動きたくないぜ。」

 

「轟竜の・・・馬鹿。」

 

 俺達三人は大の字になって倒れ込んでいる。

 

「ぶふる・・・。」

 

 轟竜が誇らしげに二台のバイクを見ている。

 

――――いや・・・世界は広いです。

 

――――うん。ここまで走れて幸せだよ。

 

「ぶるる・・・。」

 

―――――はい。誰かを乗せて走ること。それが私達の存在意義でした。おかげで走りたいというがむしゃらな衝動を発散できました。

 

―――――元々多くの無念を抱えていた魂の集合体。その無念も今の走りですっかり祓えました。その上、それについていける主も今見つけてよかったです。

 

・・・何かいやな予感がするぜ。

 

 二台のバイクがそれぞれ俺とネロの方にやってくる。

 

――――あの・・・お願いがあります。

 

――――右に同じく。

 

 二台の化け物バイク共は最高にイカレた事を言ってくれる。

 

――――御主人様になってください。

 

「・・・マジか。」

 

――――あんたとなら何処までも行けそうな気がするぜ。

 

「ハハ・・・こりゃクレイジーなバイクに見染められたぜ。」

 

「ぶるるる・・・。」

 

「・・・ん?轟竜どうしたの?」

 

 轟竜がサイガに話しかけてくる。

 

「・・・おい。それは正気か?お前がそんな事を言い出すなんて・・・。」

 

「ぶるるるる・・・。」

 

「はあ・・・分かった。クレアさんに頼んでみるよ。」

 

 

 

 こうやって俺達はオーバースペック過ぎるバイクを得る事となった。

 

 

 現在この色々と元気のいい相棒共を洗車している。

 

―――――いや・・・ご主人さま。ありがとうございます。おかげで気持ちがいいです。

 

「まあ・・・それくらいはしてやらんとな。」

 

 このバイク・・・名前はトルネ。トルネードのごとき走りっぷりだったから俺はそう名付けた。

 

 ネロのほうはレイダ―って名付けている。

 

―――――最高だぜ。

 

 そして、この生きたバイクをそれぞれ俺達は使い魔にしている。

 

 皆が言うには・・・前代未聞にして強力な使い魔だと。

 

 確かにそうだ。だが、強力すぎて体が付いていかねえ。こいつらの馬力も後で計測したいけど、現時点では計測不能と言う恐ろしさ。少なくともダンプカーを超えるのは間違いない。

 

 体も頑丈になっており、戦艦の装甲すらぶち抜ける。

 

 まさにモンスターバイク。

 

 もうあそこまで走りたいという衝動は消えているが、その分好奇心は旺盛だ。

 

 しかも俺達の力の影響でメタモルフォーゼしたついでに半分生物的な存在になっている。

 

 自立稼働はもちろん、自己修復、そして脅威の自己進化機能付き。

 

 おまけにガソリンいらずのすごいエコなんだぜ。

 

 部品も古いのは交換。部品提供は冥界の魔王眷族に詳しい人がいるらしく、部長の伝手でそれをもらっている。

 

 生きたバイクという普通ならまずありえない存在に関しても色々と知っているらしく整備の仕方を教えてもらってすごく助かっている。

 

 いつかお礼をいわないとな。

 

 しかし・・・こいつら整備をする甲斐が結構ある。

 

 実際に喜んでくれるから。

 

―――――やれやれ。その教育が大変なんですけど。

 

―――――まあまあ、こんな面白い連中が弟分と妹分になるのだから。

 

 こいつらはまだ生まれたばかり。色々と教育する必要がある。

 

 教育役として立候補したのはクレアとドライクそして・・・もう一人。

 

――――ふふふ・・・いいものだな。体を洗ってもらうという物は。

 

 それはサイガの轟竜であった。

 

 こいつもサイガに体を洗ってもらっているのだ。今はドライヤ―で体を乾かしているのだけど・・・

 

 こいつ確かに喋っているよね!?

 

――――あなたも私のカードで契約するなんてね。

 

――――この二人のためだ。こいつら・・・私の事を兄と慕ってくれたのでな。

 

「・・・お前のキャラに心の底からびっくりしている。」

 

――――ちなみにお前の事も弟のように思っているぞ。

 

「さいですか。」

 

 サイガは洗い終わり、ミニチュア化した愛馬と語らっている。あいつも相当面白いキャラしてんな。

 

―――そろそろ私も次世代の事を考えたいのでな。今は嫁探し中だ。

 

――――へえ・・・だったらちょうどいいかも。

 

 轟竜の言葉に思うところのがあるのだろう、クレアが声をかける。

 

―――まだいつになるか分からないけどあなたに紹介したい子がいるの、あの子は確かまだのはずだったし。

 

―――楽しみにしています。クレア殿。

 

「・・・しかもお前婚活中かい!!」

 

「やれやれだ。さてと・・・乗りにいきますかね。」

 

「おうともよ。」

 

 そしてネロと俺はそれぞれの相棒に乗る。

 

「さて・・・ようやく乗れるひとっ走り。」

 

「待ちなさい。」

 

 ネロもノリノリで行こうとした時・・・キリエ姉さんがやってきて止める。

 

「あなた・・・この国で運転する際大切な物を忘れていないかしら?」

 

「へっ?」

 

 キリエ姉さんは大切なことを言っていた。

 

「あなた免許ないでしょ!!」

 

「そんなもん必要ねえって。行くぜレイダ―!!」

 

―――――おう。かっとばし・・・。

 

 2人が加速して車庫を飛び出そうとするがその前に。

 

「だから待ちなさい。」

 

 その顔面に結界が発生。それで殴りとばされる。

 

「がばら!?」

 

―――なっ・・・なんですと!?

 

「そんな状態で運転させません!!」

 

 十字架の杖で結界をゴルフのようにかっ飛ばしてぶつけたの?

 

 キリエさんも進化している?

 

「はあ・・・安心しなさい。リアスさんに一日で免許習得できる地獄の合宿を手配してもらったから。死ななければ夜中には免許とれるわ。」

 

 えっと・・・なんで免許取得に命をかけないといけないのです?

 

「ちょ・・・でも。」

 

「安心しなさい。そっちの相棒も道連れだから。」

 

―――――あの・・・僕は遠慮したいかなって・・・。

 

「い・い・か・ら・来なさい。それとイッセ―君あなたもよ。」

 

「なんで!?」

 

「免許取得してからかなり間があいているから、研修と言う形で勘を取り戻させるわ。も・ち・ろ・ん・あなたも来てもらうわ、トルネちゃん。あなた自身にも交通マナーを学んでもらう必要があるから!!」

 

――――はいぃぃぃぃぃ!!?

 

「言っておきますけどこれは先生としての譲歩です。全く・・・相棒であるあなた達もしっかり教育しますから覚悟してくださいね!!」

 

 こうして俺達はまた地獄を見ることとなる。

 

 トルネとレイダ―もまたそうだ。

 

 この件で、この二台がキリエ姉さんに全く頭が上がらなくなったのは仕方のないことである。

 

 そして、この二台のおかげで九十九神に関するオカルト研究部のレポートが出来たのだが、あまりに凄い内容で、冥界の学会で議論の嵐が巻き起こり、後に魔王のある方が訪問したという。

 

 

 

SIDE ハル

 

「というわけだ。」

 

「ははは・・・そりゃ愉快だな。」

 

「はあ・・・イッセ―も苦労してんな。なんて奴を使い魔にしてんだよ。」

 

 俺はリアス部長と共に生徒会にやってきている。

 

 そして俺は今・・・前世からの縁と楽しく喋っているのだ。

 

「仁藤。いや・・・この世界では親しみをこめて攻介と呼ぶが、悪魔としての生活は楽しんでいるか?」

 

「ははは・・・当然。考古学を専攻する身として神器などの歴史に非常に興味がある!!」

 

 仁藤 攻介。前世で共に戦った戦友。

 

 こいつもこの世界にやってきていた。おまけに・・・シトリー眷族になっていた。

 

 相変わらず前向きだな。悪魔になる事も肯定的だし。

 

 それと研究熱心だし。

 

 こっちの提督に紹介してやりたい。

 

 絶対に意気投合する。

 

―――――輪廻を超えた付き合いになるとは愉快だぞ。お前という娯楽が無いと生きていけないようだ。

 

 転生にキマイラまで付いてきたし。

 

 今ではこいつの使い魔扱い。まあ・・・あいつ自身も大切にしている辺り良い相棒関係と思うけどな。

 

「お前が攻介と昔馴染みってことにびっくりしたぜ。」

 

「俺のライバルだ。相棒。」

 

「だからいつからお前の相棒に俺がなった!?」

 

「照れ隠しなのはわかっている。皆まで言うなって!!」

 

「なんでだ!?」

 

 同じ眷族の匙とはすっかり意気の合う相棒らしい。

 

 かなりの凸凹コンビだろうが、相性はいいと思う。

 

「あと勝手にライバルにするなって・・・はあ。それで、匙のあれは具合どうなの?」

 

 俺の言葉に匙は腰についているある物を見せてくれる。

 

 それは・・・ビーストドライバーと同じベルトである。

 

「まあ・・・中にいるあいつとの対話は済ませている。愉快な奴でホントよかった。魔力は自前で何とかなるだけましだな。」

 

――――ふあ・・・そろそろお腹空いたよ。ご飯まだかな?

 

 匙の肩の上に現れたのは虎の身体にどことなく獅子に似た人間の顔を持つ獣。サソリの尻尾に蝙蝠の羽を持っていた。

 

 他にも体には頭の左右には虎とヤギ、頭の下には蛸。後ろ足の付け根の右はコウモリ、左は蜘蛛。尻尾の付け根にはサソリとそれぞれの頭がくっついている。

 

「美味しいお菓子と、美味しい燻製肉もってきたから。」

 

―――――――うむ。許す。うまうま・・・うむ。やはり食べないと。あと野菜チップスも頼む。

 

 匙と攻介はそろってシトリー眷族の兵士。

 

 それぞれ、変異の駒を二つ含む、二つずつの駒が割り振られている。

 

 変異の駒がどれだけの価値か分からないけど、少なくとも六つ分。下手な戦車や僧兵を超える潜在能力を秘めているのだ。

 

 その上に、攻介だけじゃなく、匙にもビーストドライバーと同じ物が・・・。

 

 そして、その中にいるのはキマイラじゃない。ある意味もっととんでもない奴が入っていた。

 

 それは人食いで有名なマンティコア。

 

 それがビーストドライバーの中に入っていたのだ。

 

 他にもかなりの数の魔物が入っていたらしいが、すべてこいつが食べ、その力を取り込み、そのままファントム化。ずっと封印されていたのを匙が身につけてしまい、そのまま装着者になってしまったというわけだ。

 

 ただ色々と取り込んでしまったために、雑食性になってしまい野菜チップスが好物になってしまったという愉快な経緯を持つ。

 

 旺盛な食欲は変わらないけど。

 

 そいつと使い魔契約を匙は結んでいる。

 

 シトリー眷族はWビーストという切り札を持っているも同然。

 

 本当に何をしでかすのか分からないし。

 

「それでお前が持っている神器・・・調べて観たぞ。」

 

「ありがとうな。」

 

 そんでもってこいつはビーストドライバーとミラージュマグナム以外にもこの世界に生まれてきたことで神器を得ていた。

 

 それがこいつの首輪だ。

 

「最初に言うが驚くなよ。それは巨獣の模写首輪(ベヒモス・ラーニング・リング)。簡単にいえば色々な獣の力を身につけることができるというものだ。」

 

「獣?」

 

「この世界なら魔獣、神獣も含まれる。力や能力をラーニング、そして、好きなアイテムに変換させ何時でも使えるようにするらしい。」

 

「へえ・・・あっちの世界ならともかくこの世界なら相当有用だな。」

 

 この能力は俺達魔法使いにとっても確かに有用だ。指輪に変えておけば、魔法としてその力を使う事ができるのだから。

 

「でも問題が、どうやってラーニングするのかわかっていないことだ。」

 

「はい?それ肝心な部分だろうが!!」

 

 だが、この神器の致命的な欠陥はラーニング方法が未だに分かっていないということ。

 

 前の使用者は偶然力を手に入れたらしい。しかも、この神器は一例しか報告がされていないので、詳しいデータがないのだ。

 

「まあまあ・・・その件に関しては総督が非常に興味を示していてね。近々直接会いたいと。レアな神器だから研究したいと言っていたし。」

 

「そうかい。まあ・・・気長に待つとするかねえ。」

 

 こいつの神器は正直どんな力を秘めているのか分からない。何しろ神器の中で唯一三大巨獣の一体「ベヒモス」の力を宿した物だから。

 

 下手したら神滅具クラスに化ける恐れもある。

 

 そうなると他の二つも気になる。

 

 しかもその内の一つを匙が持っている。黒い龍脈以外にあいつはもう一つ神器をもっている。

 

 三大巨獣の一体・・・リヴァイアサンが宿った「巨竜の顎」を。

 

 これもまだ能力が判明していない謎の神器だ。

 

「そして他のメンツまでコーチをつけてくれって言うのだからまいったよ。」

 

「しゃあねえだろうが、魔法使いは同じ眷族に三人もいるし。」

 

 そして、この眷族・・他に何人か魔法使いがいる。

 

「放置するわけにはいかない・・・か。」

 

 俺は出来上がったメイジ用のドライバーと指輪を見せる。

 

「おおっ・・・用意してくれたのかい。」

 

「絶望から救った奴らを大切にしろよ?」

 

 グレゴリからも許可はもらっている。

 

「まったく、お前達眷族の専属コーチになりそうな気がするよ。」

 

「よろしくお願いします・・・師(マスター)」

 

「・・・そんな呼び方、俺には似合わないから勘弁してくれ。」

 

 やれやれだ。

 

「それと・・・また何か抱えているな。何かあったらまた言えよ?」

 

「・・・整理つけたらな。まだどうなるか分からない。」

 

 こういうところも変わらない。今度はすごく長い付き合いになると思うと、少し憂鬱だが、頼もしい。そんな奴だ。

 

 

 

 SIDE リアス。

 

「はあ・・・ついに姉様が動き出したわ。」

 

 私はソ―ナとお茶を楽しみながら聞いてしまった。

 

「そう。もう外堀は埋まったのね。」

 

「ええ。家の中の誰も反対する人はいないし、向うの家も、魔戒騎士たちの総本山、元老院も説得済み。むしろ実家では漸く相手を見つけてくれたって、歓迎の声があがっているくらいです。」

 

 あれだけ天真爛漫に好き勝手やっていたらねえ。

 

「ついにあなたの姉さんも結婚か・・・。」

 

「これで落ち着いてくれればいいですけど。」

 

 ソ―ナはお茶を飲みながら疲れた様子でため息。

 

 相当振り回されたみたいね。

 

「ええ。でも姉様の作戦があまりに緻密で、恐怖を覚えているのもありますが。」

 

 えっと・・・あなたが恐怖を覚えるほど?

 

 あなたは戦略とか凄かったわよね?そのあなたが恐怖を覚えるほど?

 

 ソ―ナのカップを持つ手が微かに震えている。

 

 本気だわ。あの方は・・・。

 

「でも、サイガ君が靡かないとは思わないの?」

 

 でも肝心な穴がある。それはサイガ君自身の気持ちだ。

 

 彼はかなり精神力も強い。そう簡単に籠絡なんて・・・。

 

「・・・その点に関してはお姉様を良い意味でも悪い意味でも信じています。」

 

 何が言いたいのかわかる。

 

 セラフォル―様は欲しいといった物は必ず手に入れる。滅多なことで欲しがらないけど、今回はその滅多にない事態。

 

 しかも、初めての恋だ。その情熱はすごい。

 

 あの方が本気になると・・・色々な意味で敵わないわ。

 

 あの手この手で相手を籠絡させる。多分・・・相当大胆な手をつかってくるのでしょうね。

 

「それで、お姉さまより最期の堀を埋めたいとのことです。」

 

「最後の堀?って私を呼び出したのにも関係がありそうね。」

 

 私の質問にソーナは眼鏡を直しながら告げる。

 

「ええ。その通りです。最期は彼の友人達です。そこを埋めてしまえば完璧です。」

 

「ああ・・・そして、その友人に私も含まれるという事ね。」

 

「当然です。クレアさんもご協力お願いできませんか?あの人の超能力じみた危険察知能力を超えるための策を出すにはあなたの協力がどうしても必要なのです。」

 

「もちよ!!こんな面白い事に参加できるなんて光栄だわ。」

 

 その席に実はクレアまでついてきている。

 

 シ―ナいわく、絶対に押さえておきたいポイントだそうだ。

 

「あなた・・・相当できるわね。あの子の素質を的確に見抜いているじゃない。」

 

「いえいえ。貴方も相当。」

 

 この二人、知略を使うという点では似ているかも。

 

 さて・・・サイガ君。

 

 そろそろあなた、責任を取る時間よ。

 

 私は全力で協力するつもりだから覚悟してよね?

 

 

 

SIDE サイガ

 

 なっ・・・なんだろう。今すごく嫌な予感がした。

 

 何か・・・この先とんでもない事が起きそうな気が・・・。

 

 

 SIDE アーシア

 

 そう言えば・・・サイガ君に言い忘れていました。

 

 前のゲームで見た予知の映像。

 

 でも今更言えませんよね?

 

 魔法少女っていうのですかね?そんなコスプレをしたツインテールの黒髪の美少女と体育館で再会し、そのままキスをさせられる映像だなんて・・・。

 

 悪い事じゃないですし。

 

 それにそのキス・・・その・・・結構エッチっというか・・・ディープな物でしたし。

 

 それを受けて・・・顔を真っ赤にさせたサイガ君がそのキスをした女の子の素敵な笑顔で言ったセリフを受けてそのまま倒れるところで終わりました。

 

 そんなはしたない内容を、私の口から言えません////!!

 

 

SISE ???

 

「それって本当なのですか?ダンテ様。」

 

「そうだ。」

 

「へえ・・・セラ姉様についに。」

 

 私はダンテ様から聞いた朗報を喜んでいた。

 

「でも、その相手がよりってあの事件の時の彼だなんて・・・運命って分からないわ。」

 

「そうだったな。それでどうする?お前の因縁がもうすぐ始まろうとしているが?」

 

 ダンテ様は私の背中を押してくれる。

 

「もちろん・・・参加させてもらいます。ついでに新たなポーン候補も見てきます。」

 

「頼むぜ。ついでにお前の兄さんに会ってきたらどうだ?」

 

「・・・でもそれは難しいかも。兄さん・・・私の事を死んだ者だと思っているから。」

 

「実際一度死んでいるがな。」

 

「それを言われると弱いですね。一度死んだからこそ、この力を得ちゃいましたけど。」

 

 私の背中に灰色の翼が現れる。

 

「でもおかげ様で私は生きています。そして、聖剣に決着をつける事ができます。」

 

「おう。頑張ってこいや」

 

 本当にに優しい方。私も頑張らないと。

 

「仕事が片付いたら向う。あいつが紹介してくれた彼をこの目で見たいからな。」

 

「わかりました。では行ってきます。」

 

 私は姿を変える。

 

 灰色の怪人・・・クレイン・オルフェノクへと変えて。

 

「待っていてね兄さん。サイガ君・・・。」

 

 この事件に決着をつけるために。

 

 

 

 




 あとがきを利用して予告をさせてもらいます。






 僕は聖剣を・・・エクスカリバーを許さない。

 それは今でも、そして変わる事がないだろう。

 復讐してやる。死んだ仲間のために・・・亡くなった双子の妹のために。


 あの時の誓いを忘れない。この剣に誓ったその生きるという思いを。

 その誓いのために僕はこの地にやってきた。彼に手を差し伸べるために。

 そして・・・皆の言葉を伝える。


 俺は生きる。灰となって消えさるその瞬間までずっと。

 今更名乗り出る事なんてしない。だが・・・それでもあいつには幸せになってほしい。

 そのために俺は今・・・戦っている。命を燃やしつくすように。



 僕達は負けない。この世界の時もまた・・・みんなにとってかけがえのない物だから。

 だから僕はこの世界でも戦う決意をした。前の人生よりもはるかに苦しく長いと思う。

 でも、みんながいる。一人じゃないから・・・僕は戦える。


 四人の意思。

 それが交差し、物語が幕をあける。



 私は一度死んだ者。一度死に・・・そしてまた蘇った。

 優しい人達によって私は今生きている。そして力を蓄えている。

 みんな・・・みんな生きている。それを彼に伝えるために私は今・・・立ち上がる。


そこに五人目が加わることで。



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新たな事件の始まりです。

 お待たせしました。エクスカリバー編の始まりです。

 結構色々な要素を詰め込んだ故に原作よりも話のボリュームが多くなる可能性大です。


 まずは・・・意外な連中同士の遭遇が起こります。


 SIDE ???

 

「いや~稼げた稼げた。」

 

「本当にあのヤミ―は格別だよ。たった十分の一くらいで三億枚のセルメダルなんて美味しすぎるでしょ。」

 

「むしろ多すぎてこれ以上持って帰れなかったし。」

 

 あのソラとカザリの二人が愉快そうな声をあげる。

 

 現赤龍帝から生み出したヤミ―のおかげだそうだ。たった十分の一で三億枚って破格もいい所だぞ?一枚で大魔術の触媒にするのに十分なエネルギーになるのにか?

 

 こいつらにとっては今回の戦いは大儲けといったところか。

 

 一体何者だ?アギトでもあるだけでも厄介なのに・・・。

 

 理解に苦しむ。やはりあれは危険すぎる。

 

「お前達はいいよな。こっちは踏んだり蹴ったりだ。」

 

「まあまあ・・・あっ・・・君も僕と同じにならない?」

 

 落ち込むフェニックスに対して、ソラが何かを取り出す。

 

 それは・・・赤のコアメダルと緑のコアメダル。

 

「へえ・・・俺と相性がいいのは・・・んん?」

 

 二つとも割れている。

 

 その内の緑がフェニックスに吸い込まれる。

 

「覚醒のためのセルメダル千枚をあげる。ゆっくり楽しんでおいでよ。」

 

「なんで虫なのかが非常に気になるが、受け取っておく。」

 

「きっと性格的な相性だと思うけどね。似た者同士って意味では良いと思うよ。」

 

 カザリが言うには、その緑のメダルのグリードとフェニックスは性格的な相性はいいらしい。

 

 じゃあ・・・結構キレやすいのか?

 

 なんか二人が鳥頭、虫頭と口喧嘩しあっている光景が見えるぞ。

 

「・・・俺もお前のような愉快な存在になるのか。」

 

「愉快とは失敬な。まあ、水色と灰色は持ち去られ、二つともそれぞれ融合しちゃったからねえ。おっと・・・牙王さん。そっちにも千枚ほどおすそわけ。」

 

―――コネクト。

 

 ソラが出した魔法陣から大量のセルメダルが流れ、牙王に吸い込まれる。

 

「ふん。使ってやっているだけだ。」

 

 牙王の肩にワニと蛇を合体させたような存在が現れる。

 

「お前の欲望おいしいな。いて心地が良い。」

 

「俺に付いてこれるのか?ゲイル」

 

「すべてを喰らうという欲望がある限り。」

 

「ふん。だが左腕程度にはなるか。右腕はかなり生きがいいからな。」

 

 牙王は告げる。

 

「今回は俺も暴れる。すでにイマジンの狙いも見つけてある。お前はどうする?」

 

「そんなのわかっていることだ。俺の悪の美学のために暴れる。」

 

 そこには黒に赤い炎のような物が書かれた鬼のような怪物がいた。

 

「策略家であるお前がいるなら頼もしい。暴れてくれよう。いくぞ。」

 

 今回は私の悲願の成就のためだ。

 

 そのために心強い連中がきている。

 

 さあ・・・戦争の時間だ。

 

 楽しい・・・楽しい戦争を今こそ始めよう。

 

 SIDE イッセ―

 

 木場の様子がおかしい。

 

 昔の幼馴染の写真を見せた時から始まっていた。

 

「・・・あなたの幼馴染。今度はどんな人外なの?」

 

 部長が家で、俺の幼馴染、紫道 イリナと紫道 弦太郎の写真を見て言う。

 

「だから・・・なんで俺の幼馴染がみんなそうだと・・・。」

 

『すでにあいつらという実例があるから。』

 

 グレモリ―眷族が一斉に言いやがる。

 

 そして俺の今いる幼馴染共を見る。

 

 悪魔の血を引いており、完全体なギルスという無茶苦茶な存在であるネロ。

 

 ファンガイアの王族にして、黄金のキバの継承者の渡。

 

 日本神話、二代目の荒神となった上にヤマタノオロチと契約した鋼兄。

 

 剣の達人にして、まだまだ秘密の多そうな魔戒騎士であるサイガ。

 

 多彩な魔法を使い味方に希望、敵に絶望を与えるドSな魔法使いのハル。

 

「・・・・・・。」

 

 振り返ってみたら・・・。

 

 なるほど。確かにそうだ。

 

『おい!!誰が人外だ!!』

 

 幼馴染共は一斉に否定するが・・・。

 

「じゃあお前ら他のメンバーを見てどう思うよ。」

 

『・・・・・・・。』

 

 皆がそれぞれ考え。

 

『確かにそうだ!!』

 

 と俺を指差しやがったし。

 

「俺も人外なのか!?」

 

『それこそ今更。』

 

 はあ・・・さいですか。

 

 俺は普通だと思うのに。

 

――――相棒・・・それはない。

 

―――ええ・・・まったくよ。

 

 中の二人まで拒否されている!?

 

 それでその幼馴染共の回答に納得できない物を感じつつ、俺は変なペンダントのような物を見つけた。

 

「聖剣だよ。」

 

 それが何か答えたのは木場であった。

 

「・・・・・・。」

 

 サイガもそれを知っているのか無言。

 

 二人の心に何かが走るのを俺は感じる。

 

「すまない。少し落ち着かせてくれ。アギトの君なら分かってくれるはずだ。」

 

 特に木場から漏れだす闇は深い。

 

「ああ。」

 

 そこにネロが肩をたたく。

 

「だが無理はするな。」

 

「・・・・・・すまない。」

 

「・・・・・・。」

 

 サイガは黙ってそれを見ている。

 

「?」

 

 俺はアーシアの方を見る。

 

 彼女も首を横に振る。

 

 

SIDE 木場。

 

 それは地獄の光景だった。

 

 僕たちは神様に祈れば救われると思っていた。

 

 囚われた仲間達・・・友達、そして妹。

 

 その彼らが救われると思った。

 

 でも神に見捨てられた。そしてみんな・・・毒ガスで死んだ。

 

 サイ君も・・・そして、僕の妹もだ。

 

 僕に双子の妹がいることは部長すら知らない。口に出すだけでも辛いのだ。

 

「聖剣を破壊したい。そして・・・みんなの無念を晴らしたい。」

 

 僕は寝られずにそう願ってしまった。

 

―――――そうか・・・それがお前の願いか。

 

―――――なら僕達が叶えてあげよう。きゃははははは

 

――――やらせてもらう。

 

「?」

 

 僕はその声に振り返る。だが・・・声の主も気配もすぐに消える。

 

 そして眠りにつく。

 

 その時僕は気付くべきだった。

 

 服の裾から砂のような物がこぼれ出している事に。

 

 そして・・・。

 

―――――面白い子を見つけた。契約者にふさわしいか見定めさせてもらうわ。

 

 鏡に何者かがいた事を。

 

 

 

 

 SIDE ???

 

 おっ・・・ようやくきやがった。

 

 俺っちは今うずうずしていた。足元にはへっ・・・しょうもないくそ野郎が転がっているだけだ。

 

「・・・またせた。」

 

「ひゃははははは!!」

 

「ようやく実体が持てたぜ。」

 

 今回の協力者、三人のイマジン達と合流。

 

「でも僕たちの仕事はもうとられたよ。」

 

「何を言っているのですか、この後にすればいいじゃないか。まだ持ち主はわんさかいるのですから!!」

 

 こいつらとは面白可笑しくできそうだ。

 

「キャンサー・・・死体の処理を・・む!?」

 

 そこに邪魔者が入る。

 

 赤く輝くラインを暗闇に浮かびあらがせながらそれは現れる。

 

「お前たちだな。教会を次々と襲った連中は・・・。」

 

「ファ・・・ファイズですと!?」

 

 それはグレゴリの赤き閃光・・・怪傑555(ファイズ)。

 

 厄介な奴が現れた者ですよね!!

 

「お前達に聞く・・・コカビエルはどこだ!?」

 

「ぐっ・・・。」

 

 やはりコカビエル様の事を嗅ぎつけたのか。

 

 やばい。あいつとまともに戦うのは避けたいです。

 

 エクスカリバーをもってしても相性が悪すぎる。

 

「そして、あいつは何を企んで・・・ぐ!?」

 

 そんなファイズをふっ飛ばす奴が現れるって・・・。

 

「ここは任せろ。いや~今回のゲームは楽しめそうだね。」

 

 現れたのは両腕に龍の頭を模した装甲を身に付けた灰色の魔人。

 

 これは今回の用心棒にして最高の切り札。

 

 はぐれ悪魔にしてドラゴンオルフェノクこと北崎さんです!!

 

「北崎さん。ありがとうございます。」

 

「別に・・・いい暇つぶしになったらいいと思っただけだよ。」

 

 気まぐれですが、彼はファイズ関連なら必ず現れてくれます。

 

 その力はSSS級すら超える。しかも神器を使わないでこれなんだよ。

 

「またお前か・・・。」

 

「ふははは・・・あと何度会えるのか楽しみにしていたよ。でももうそろそろ限界だろ?」

 

「んん?それってどういうことで?」

 

「オルフェノクの寿命さ。もうこいつ・・・限界だよ。」

 

 へえ・・・オルフェノクの寿命は聞いていましたが、ファイズも、もうおしまいですか。

 

「それがどうした。」

 

んん?

 

 でもこいつ・・・それを恐れていない?

 

「それでもお前達を倒す。この街を・・・ふっ飛ばそうとしているイカレタお前達をな!!この街はな・・・俺にとって大切な故郷なんだ!!」

 

 むしろ・・・闘志を燃やしています?どうしてここまで・・・。

 

「ふ~ん。つまんないね。」

 

 そのファイズを北崎は殴りつけてふっ飛ばす。

 

「がっはっ!?」

 

 そしてそこに・・・天から無数の雷を落として追い打ちをかけてきます。

 

「がっ・・・ぐう・・・。」

 

 倒れるファイズ。

 

 きゃははは・・・いいですね。

 

「色々と私達の邪魔をしてくれましたからねえ。こいつは。」

 

 止めをさせるいい機会。

 

「キャンサーの極上の餌にしてくれる・・・。」

 

 これでキャンサーもさらなる強さを・・・。

 

「ライダ―ロケットパーンチ!!」

 

 へっ?

 

「ぐぼっ!?」

 

「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

 今・・・私の目の前で起きた事を説明しましょう。

 

 白いイカみたいな奴が右腕に装着したオレンジ色のでかいロケット(?)で突進してきて北崎さんをふっ飛ばしました!!そのままロケットを点火させ、思い切り雄叫びを上げながら北崎さんの巨体を突きあげ、空中に飛び上がった!?

 

 そしてそのまま空中で一回転。

 

 加速した勢いで、北崎さんを地面に叩きつけましたよ。

 

「がぼっ!?」

 

 ああもう・・・訳が分からない!!

 

 って・・・ロケット?

 

「てえ・・・えっ・・・教会の最終兵器がなんでここにきているの!?」

 

 あいつらがここにきているのですか!?

 

「仮面ライダ―フォーゼ・・・タイマン張らせてもらうぜ!!」

 

 フォーゼ・・・。あの仮面ライダーの名を継ぐ者。

 

 ファイズと同等くらいに厄介な奴が。

 

「見つけたぞ・・・お前がエクスカリバーを奪った犯人だな?」

 

 そこにさらに二人。女か・・・。しかもエクスカリバーを持っています。

 

「ふざけた事をしてくれる。」

 

 北崎さんはあれで立ち上がりますか。いや・・・流石ですよ。

 

 にひひひ・・・数的には有利。あの二人が持っている分も奪って・・・げっ!?

 

「はあ・・はあ・・・もう・・・二人とも突っ込みすぎだって・・・。」

 

 後からやってきた男・・・。見た目はモヤシのようにヒョロい男。

 

 でもその男に私の中のトラウマが蘇ります。

 

 彼一人で・・・・五十体のイマジンが全滅した光景が・・・。

 

「君は・・・。」

 

「はっ・・・はわわわわわわ・・・。」

 

 全身が震えあがり、そして嫌な汗が滝のように流れ落ちてきます。

 

 良太郎。

 

 なんであいつが、いるのですか!?嘘・・・やっ・・・ヤバい!!

 

 フォーゼよりもヤバい!!あいつは数なんて全く関係ないですよ!?

 

「逃げろ・・・。」

 

「なんで?あんなモヤシみたいな男に・・・。」

 

「いいから逃げなさい!!あいつはヤバいです!!瞬殺されたいのですか!!君も聞いた事があるでしょ!!教会の暴走最終兵器共の本当の意味で最終兵器は誰か!?」

 

「・・・それがあの彼なのか。」

 

 北崎もその言葉に冷や汗を流す。

 

「わかった。一度戦ってみたいと思ってはいるけど、今回は止めておくよ。」

 

 私達は逃走を決意。まさか・・・あの教会の最強チームがやってくるなんて思いもしなった。

 

 これは厄介ですよ。特に、良太郎は。あの・・・破壊神だけは・・・。

 

 

 

SIDE ???

 

 逃がしちまったぜ。

 

「もう・・・お兄ちゃん!!詰めが甘いって!!」

 

 我が妹が変身した俺の頭をハリセンに変化させたエクスカリバーでドつく。

 

「いや我が妹ながら鮮やかなツッコミだぜ。」

 

「うん・・・良い剣閃だ。私も精進しないと。」

 

「その前に姉さん、エクスカリバーはツッコミ道具じゃないよ。」

 

 良太郎のツッコミが生きてくるぜ。

 

「でっ・・・ファイズはどうする?」

 

 倒れたままのこいつを見る。

 

「オッ・・・お前ら・・・教会の。」

 

 そして、手を差し伸べる。

 

「手当てする。変身を解け。」

 

「おっ・・・おい助けるのか?こいつは堕天使の・・・。」

 

 ゼノヴィアが声を荒げるがこれは譲れねえ。

 

「こいつは故郷を・・・この街を守りたいといった。同じ街の縁といいこいつは絶対悪い奴じゃねえ。」

 

 俺達の故郷でもあるこの街。

 

 ファイズはそれを守ろうとして戦っていた。ボロボロになりながらも必死にだ。

 

 そんな奴が悪い奴な訳あるか!!

 

「弦太郎の言うとおりだね。それに何が起きているのかも知りたいし、彼から事情を聞こうよ。」

 

 良太郎。さすが分かってくれるな。

 

「まあ・・・こういう時の君の直感は外れた事がないし。それに同じ仮面ライダーと友達になりたいというのもあるのだろ?」

 

「ははは・・・その通りだぜ。」

 

 そこまで分かってくれるか。なんかこいつとは良いダチになれそうな気がするんだ。

 

 こいつならあの人達が言っていた仮面ライダーの名を名乗る資格があると思えるし。

 

「ハハ・・・馬鹿かお前ら。俺は仮面ライダーって名乗るほどそんな大した男じゃねえよ。」

 

 ファイズはその言葉に力なくだが笑っている。もちろんそれは嘲りとかじゃねえ。

 

 意外な言葉を聞いたことによる驚きと、呆れのようだ。

 

「・・・でも信じてみるか。・・・済まねえ・・・後は頼む。」

 

 そう言ってファイズが変身を解きながら気を失う。

 

「まさか・・・こんなに若いの?」

 

「あらら・・・結構格好いい。」

 

「私達と全く変わらないぞ?」

 

 現れたのは俺達と同じ歳くらいの男。

 

 しかしまあ・・・任されちまったな。

 

 だったらしっかりと手当しましょうか。

 

「はあ・・・相変わらずだよね。君は。」

 

「ははは・・・でもそこがお兄ちゃんのいい所。世間の目が広がっているわけよ。」

 

「二人とも喋っていないで手伝って。はあ・・・しかたないね。」

 

 良太郎と一緒にこいつの手当てをしてやる。

 

「・・・って名前を聞くのを忘れていた。」

 

 あとで名前を聞いておかないとな。

 

「でもさ、何処に寝かせるよ?」

 

「そうだな・・・。」

 

 イリナの言うとおりだ。

 

 怪我したままのこいつを野ざらしにするのは避けてえし。

 

「う~ん・・・そうだ!あいつに頼もう!!」

 

「あいつって・・・えっ?まさか・・・イッセ―君に?」

 

 昔の縁。

 

 ここで活用させてもらうじゃねえか!!

 




 教会連中とファイズのまさかの合流。

 ここから巧はとんでもないことになってしまいます。


 ちなみにこの時点で作戦資金はなくなっています(笑)


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お忍びでやってくる魔王様です。

 タイトル通り、ここでまさかの人物が登場。

 戦力過剰な連中が次々と集まってきます。


SIDE イッセ―

 

 今日の朝はとてもびっくりした。

 

 長い間連絡を取り合っていなかった弦太郎とイリナが連絡してきたのだ。

 

 久しぶりだけど、相変わらず無駄に元気そうで本当によかった。

 

 しかし・・・いきなり今日泊めてくれって・・・まあ・・・もう。

 

 許可はしたけどさ。父さん母さん達にも頼んで。

 

 あいつらの事だから荷物も今頃運び込んでいるだろうし。

 

 部長達になんて言えばいい?

 

 そんな悩みともう一つの問題が重なって頭が痛い。

 

 そう、木場の事だ。

 

 球技大会でも危なかった。あいつを狙ったボールが当たるところだったからだ。

 

 やはりおかしい。

 

 聖剣という言葉が出てから。

 

 もっとも・・・。

 

 あいつはボールを片手で受け止めただけど。

 

「危ない危ない・・・。」

 

 何とか辛うじてバランスを取ろうとしているように。

 

 

 

 そして、その日部長からきついビンタを木場は貰っていた。

 

「危惧していたけど・・・これで目が覚めた?」

 

「・・・・・・。」

 

 それでも木場の中の闇は晴れない。

 

「・・・あなたをうしないたくないの。それは分かってちょうだい。」

 

「・・・言いたい事をそれだけですか。」

 

「木場!!」

 

 そんな木場を俺は一発殴りとばす。

 

「・・・ッ!?済みません部長。」

 

 俺の一撃に木場は我を取り戻す。

 

「あなた・・・。」

 

 それを見て部長は悲しそうな目で牙を見る。

 

 木場の中でぬぐい難い何かが葛藤していた。

 

 そんな木場の肩をたたく者がいる。

 

「今がその時だな。」

 

 それはサイガだ。

 

「言ったはずだよ。君の心の闇。それと向き合う事が鍵だって。」

 

「・・・そうだったね。でも・・・僕が生きている理由は・・・。」

 

 木場は葛藤している。どうしようもなく。

 

 そんな木場の肩を・・・ネロが叩いていた・

 

「無理すんな。まあ・・・そう言う思いを俺は否定しないし。」

 

「ネロ君。」

 

 そこに渡がバイオリンで一曲。

 

「・・・渡君まで。」

 

「少し落ち着きなよ。君はすでに君一人の命じゃない。」

 

「・・・参ったな。君の音楽は綺麗事を言っているはずなのに、すごく説得力がある。どうしてだい?」

 

 木場は苦笑する。

 

「僕もそうだったからね。でも、それを晴らしたいという思いは間違っていない。でも、その憎しみにとらわれすぎるな。葛藤してあがかないと意味がない。」

 

 渡の言葉は優しくも厳しい。

 

 あいつは一体どんな苦悩を味わったんだ?説得力があるし。

 

「・・・難しいね。済みません・・・一人にしてください。」

 

 そう言って木場は退場。その前に俺を見る。

 

「・・・君の一撃は効いたよ。ありがとう。」

 

 そう言って一発殴り返してくる。

 

 良い意味で重い拳であった。

 

 俺はそれをあえて受けて応える。

 

「まあ一発ずつってことで勘弁してほしい。」

 

「何、変になりそうならもう一発殴るだけだ。」

 

『・・・はあ。』

 

 めちゃくちゃなやりとりだと思うけど、これでいい。

 

「部長・・・経験者の僕から言わせてください。彼に思いっきり悩み、そして決着をつけるための機会を与えるべきだと思います。彼が前に進むためにも。」

 

 渡は木場の事で部長に進言している。

 

「そうね。忘れて欲しいけど・・・。」

 

「忘れられるわけがないと思う。」

 

 サイガが言う。

 

「私が木場君の立場でも・・・何かしらの決着をつけたいと思う。どんなに面倒でも前に進むためにね。」

 

 そして、サイガもその場から去る。

 

 あいつも何か変だな。

 

「・・・何かが起きようとしています。」

 

 アーシアが告げる。

 

「・・・何か見えたの?」

 

 アーシアは首を横に振る。

 

「でも・・・何人かの過去の因縁がこの街で絡まってきたような気がして。気をつけてください。」

 

 アーシアの言葉に皆に緊張が走る。

 

「わかったわ。はあ・・・また何か起きるのね。」

 

 部長の憂いを含めたため息が空に消えていく。

 

 俺も感じている。視線を合わせるとネロもそうだ。

 

 何か起きる。とてつもなく嫌な何かが・・・。

 

 そこに・・・とんでもない連絡が入った。

 

「リッ、リアス!!大変よ!!」

 

 それはカ―ミラからの連絡である。

 

「教会の連中がやってきたわ!!それも・・・あの噂の暴走最終兵器共が!!」

 

「なんですって!?」

 

 その連絡に部長が声を荒げる。

 

 とっても物騒な名前なんですけど!?

 

「なんで教会最強チームがやってくるの!?」

 

 何それ?そんなヤバい連中がどうして?

 

 

 SIDE ハルト

 

 俺は学校の屋上にいた。

 

 そこで、レイちゃん経由でとんでもない知らせが届いていた。

 

「何!?巧が行方不明だと!?」

 

「ええ。コカビエルの尻尾を掴んだとたんに飛び出しそのまま・・・。」

 

 それは巧が行方不明という知らせだ。

 

「アザゼル様はショックのあまりに・・・倒れました。」

 

 それはそうだろう。あいつはもう・・・いつ灰となって消えてもおかしくないんだぞ!?

 

 生きる希望を総督に伝えた時、あの人がどれだけ喜んだか。

 

 本気で泣いていたぞ?あのいたずら好きの総督が嬉しさのあまりに。

 

 これも交渉してくれた渡のおかげだ。

 

 多分グレゴリ一同、渡に大きすぎる借りができた格好だな。

 

 もちろん総督は即OKを出してくれた。

 

 あとは巧にこの事を伝えるだけだったのだが・・・。

 

 そんな矢先にこの行方不明事件。

 

 総督、あまりのショックに口から泡吹いて気を倒れたらしい。

 

 希望が見つかり上がったとたんに・・・どん底まで落ちたもんな。

 

 レイちゃんにはあとで看病をお願いしている。

 

「・・・ふざけた事をしてくれる。」

 

 それよりも空気を読まない奴がいることに俺のはらわたが煮えくりかえっていた。

 

「ヴァ―リも飛び出したって話よ。あの方も巧君の安否を気にしているし。」

 

 それを聞いたヴァ―リの奴も飛び出したって話だ。あいつにとってライバルでもあり、友の仲。ある意味兄弟分でもある。

 

 なんだかんだ言っても放っておけなかったのかな?

 

 あの人まで気にしていたのか。はあ・・・あの人まで動き出したらとんでもないことになるぞ。悪い人じゃない。むしろ・・・気持ちが良いくらいの武人だ。

 

 異世界の元魔王で色々とあったらしいけど。

 

 ヴァ―リにとって父と慕う人だし、魔王、熾天使クラスかそれをしのぐの実力者だぞ?

 

 あの人の奥さんと親衛隊まで一斉に動いたら・・・。

 

「いきなり来るなんてびっくりしましたよ。キバットの知らせで急いできましたけど。」

 

「ははははは・・・いや、こっちの眷族も実は来ていてな。新しい兵士になる坊やとあいつの顔を久しぶりに見たくなってきたってことだ。仕事はクレドの奴に押しつけておいたし。はははははは!!」

 

 屋上にはとんでもない人が来ていた。

 

 渡がひそかに出迎えていたのは・・・俺にとって最後の希望となる人だった。

 

「よお。あんたがハルトか。」

 

「初めまして、ダンテ様。このたびは本当にありがとうございます。」

 

 それは五大魔王が一人・・ダンテ様。

 

「はははっはははは!!初めまして!!レイナ―レといいます!!」

 

 レイちゃんは思い切り慌てているよ。

 

「それで・・・ただ事じゃない何かがあったみたいだな。」

 

「はい。巧が行方不明で・・・。」

 

 巧が行方不明の知らせにダンテ様と渡の顔つきが変わる。

 

「oh・・・まじかよ。」

 

「それってどこで?」

 

「今、プラモンスターで捜索している。早く見つけないと・・・。」

 

「そうかい。だったら俺も街を歩き回って手伝いをするとしますかね。」

 

「へっ?ですが・・・。」

 

 おいおい。いくらなんでも・・・。

 

「あんたの所の総督と同じだ。トップだって前線はらないとな。それに刺激あるほうが人生は楽しんだぜ?」

 

 どうやらこの人。相当色々な事情に首を突っ込むのが好きな方のようだ。

 

「だったら俺もこっちに参加しようかね。」

 

「鋼兄?」

 

「にゃはははは・・・あたしもいるにゃ。」

 

 黒歌まで・・・。

 

「まさか魔王様が来ているなんて驚きたぞ。いや・・・本当に強い方だ。あなたの領域に達するまで何処まで鍛え、闘えばいいのか分からない。」

 

「それが分かる時点でお前も十分強いさ。」

 

 鋼兄はダンテ様と握手を交わす。

 

「・・・恐れ多い人にゃ。」

 

「ははは・・・いい奥さんを連れているな。今度こっちのカミさんと娘にも合わせたいぜ。」

 

 ダンテ様の笑いに黒歌は顔を真っ赤にさせている。

 

 結構フレンドリーな方だ。

 

「さあ・・・じゃあ、捜索と行こうかい。」

 

 こうやって俺達「巧捜索班」は動き出す。

 

 色々と過剰な連中が集まっただけど。

 

「そうだ・・・捜索だからあいつにも頼もうか。」

 

 ダンテ様が何故か携帯を取り出し、誰かに電話をかける。

 

「もしもし・・・おおっ翔太郎か!!悪いが大至急こっちに来てくれ。急ぎの依頼だ。」

 

 どんどんこの街に過剰戦力が集まっていく気がするよ。

 

 

 

 




 まさかダンテ様登場。

 しかも携帯である方を呼び出すという罠がついています。


 そして次話。いよいよ教会連中が到着です。


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教会の最終兵器達です。

 さて、原作通りに教会からやってきました。

 でも・・・原作通りに話は進みません。

 その理由?

 あの二人と+αがいるせいです。本当に愉快なチームになっております。


SIDE イッセ―

 

 そして、ほどなくし、その連中がやってくる。

 

 渡とハルト、鋼兄は急用ができたらしく、すぐに帰ったが。

 

「・・・・・・・。」

 

 やってきたのはひょろとした細身の男と青いショートヘアをした女。

 

 それに・・・栗色のツインテールにリーゼントって・・・。

 

「オッ・・・お前ら・・・弦太郎にイリナか?」

 

『あっ・・・。』

 

 いや・・・本当にびっくりした。

 

 イリナは綺麗になったし、弦太郎も格好良くなった。

 

 目を丸くする弦太郎は少し考え・・・。

 

 黙って拳を突きだす。

 

 ああ・・・なるほど。あれか。

 

 俺達二人は拳を上下に打ち合わせ、そして最後に真っ直ぐぶつけ合わせる。

 

 そして握手。

 

 そして、イリナにも同じことをする。

 

「久しぶりだなイッセ―!!」

 

「ほんとだよぉぉぉ!!すごく久しぶり!!」

 

「おう!!久しぶりだ弦太郎!!イリナ!!」

 

 それだけでもう十分だった。こいつは弦太郎にイリナだ。

 

「えっと・・・まさかよ。またあなたの幼馴染なの?」

 

 弦太郎は自分の胸を二回叩き、俺達を指差す。

 

 こいつの昔から変わらない自己紹介の仕方だ。

 

「そうだ。俺の名前は紫藤 弦太郎。神様と友達になる男だぜ!!」

 

 かっ・・・神様と友達になると来ましたか。

 

 でもなんだろう。こいつならやりかねんと思う。

 

「はっ・・・はは・・・そうなのね。また人外なのね。」

 

 部長・・・何壊れた笑いを発してるのですか!?

 

 まだ人外と決まったわけじゃ。

 

「先輩、現実を見て。教会の最終兵器と言われる時点で可笑しい。」

 

 ・・・・・・。

 

 そうだな。

 

 小猫ちゃんの言うとおりだぜ。

 

「それで・・・なんでお前が悪魔・・・グレモリ―達と一緒に?」

 

「ああ・・・色々あってな。」

 

 まあ・・・事情を話すわけだ。一応アギトという部分はぼかし、死にかけたところを悪魔の駒で転生して救われたことと、それなのに何故か悪魔になっていない中途半端な状態になっていることをだ。

 

「肝心の部分隠しているな?」

 

「うっ・・・。」

 

 それなのにこいつは無駄に鋭い。アギトの部分を隠しているのを勘で気付きやがった。

 

 こいつの物事の本質を見抜く目はアギト以上だ。小さいころもそうだったけど、それがさらに磨かれている。

 

「悪い。その事情は部長達に止められている。話すととんでもない事に巻き込まれるから。出来れば巻き込みたくない。こっちで何とかしたいから。」

 

 故に正直に白状するしかない。話すことを止められていると。

 

「そうか・・・お前も大変だな。」

 

「わりいな。」

 

 素直に話せないと言えば、分かってくれる奴だからよかったけど。

 

「んん?悪魔の駒で転生したのに悪魔じゃないって・・・訳が分からない?おお神よ!!」

 

 イリナも混乱しているよ。まあ悪魔じゃない。

 

 それでいて祈りやがる。まあ・・・俺とアーシアは別にダメージは受けないけど。

 

「あれ?神の祈りでダメージを受けない?本当に悪魔じゃないのね。」

 

 この野郎・・・狙ってやりやがったな。

 

「でもお前はお前だ。それが分かってよかったぜ。それにお前がそのままってことはこいつらもいい奴らってことがわかるし。」

 

 弦太郎が・・・へっ?部長の所に歩いて行って・・・。

 

「改めてよろしくお願いします!!」

 

 握手したよ!!まじで?

 

「えっ・・・えっと・・・ええ・・・よろしく。」

 

 部長が押されている?交渉上手な部長が。

 

「できればこのままダチになりたいぜ!!」

 

「あっ・・・あのね。私は悪魔よ。仮にも教会の陣営のあなたが悪魔と友達になりたいというのは問題が・・・。」

 

「俺は神と友達になりたいんだ。悪魔と友達になれないでそんな目標は達成できないぜ!!」

 

「・・・・・・これは想像もしなかったベクトルで強敵だわ。さすがイッセ―の幼馴染。」

 

 押されている。部長が押されている。うお・・・相変わらずって言うかさらにパワーアップしている。

 

 友達づくりなあいつのあれが。

 

「まあまあ落ち着こうね弦太郎。」

 

 そんな弦太郎を止める男。手にしたスリッパではたいて止めた。

 

 どうもあいつがストッパーのようだ。

 

「私はゼノヴィアという。」

 

「僕は良太郎。」

 

 あと二人も紹介してくる。

 

「ちなみにこの二人も姉弟だぜ。」

 

 これはまた・・・似ていない姉と弟ですな。

 

「それで、要件を伝えますとあなたの領域で動くことを許してもらいたいのです。」

 

 良太郎がそこで説明を入れてくる。

 

 話によると・・・教会に保管されていたエクスカリバーが強奪されたこと。

 

 それを追って別のエクスカリバーを持った男がいたのだが、逆に殺され、そしてそのエクスカリバーを奪われたのだ。

 

「よりによって・・・エクスカリバーだなんて。」

 

 エクスカリバーという名前は聞いた事がある。

 

 実際は一つの聖剣だったが、それが今では七本に分かれている。

 

 それぞれ一本ずつオリジナルが持っていた力を持っているという話。

 

「へえ・・・君があの魔女・・・アーシアか。噂は聞いているよ悪魔を癒したということで・・・。」

 

 そこでアーシアに気付いたゼノヴィアが魔女と呼んできやがる。

 

 おい。その事を言うか。

 

 そのおかげでアーシアがどれだけ苦労したか・・・。

 

「お前・・・。」

 

 俺が怒りに声を上げようとした時だった。

 

 アーシアがその言葉に前に出てくる。

 

「それがどうしたというのです?」

 

 それは気丈な言葉。

 

「私は自分のやった事に後悔はしていません。助けたい。そう思ったから助けました。それに悪魔も天使も・・・人も関係ありません。」

 

「関係ないって・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

 驚いた。

 

 いつの間にかアーシアが強くなっていた。

 

 俺が想像していたよりもずっと。

 

 初めてあった時よりも確実に強くなっている。

 

 その言葉にみんな驚いているよ。

 

「その点に関しては私も証言させてもらっていいかしら?」

 

 そこに・・・キリエ姉さんまで。

 

「あなたは・・・たしか魔剣教団の。」

 

 キリエさんの事もゼノヴィアが知っている様子だった。

 

「彼女は私が知る限り、誰よりも清らかなで純粋な心の持ち主です。身を呈して・・・友達を助けた子です。彼女が転生した理由はそれです。そんな子を馬鹿にするのは私も聞き逃せません。私にとっても妹の様な子なのですから。」

 

 キリエさんの背中から三対の白い翼と・・・天使の輪が?

 

『テッ・・・天使!?』

 

 改めてみると天使だよな?

 

「・・・・・・・・・。」

 

 ゼノヴィアが唖然としている。まさか天使まで弁護してくるとは思いもしなかったからだろう。

 

「ゼノヴィア。お前の負けだ。この子は魔女じゃねえ。」

 

 弦太郎がやれやれといいながらアーシアの方へと歩み寄る。

 

「わりいな。俺も魔女なのかどうか分からなかったけど、今の言葉でよく分かったぜ。あんたは魔女じゃねえ。すっきりしたぜ。」

 

「えっと・・・。」

 

 あいつはブレねえ。直接目で見て物事を判断する点といい・・・。馬鹿なのに、その点に関しては本当に敵わねえ。

 

「僕から君達に聞きたい事があるけどいいかな?」

 

 そこに木場が入ってくる。

 

「それは・・・エクスカリバーだよね。」

 

「分かるか。」

 

 ゼノヴィアがエクスカリバーを出す。

 

「ちなみに私ももっているわ。」

 

「よりによってこんな時にか・・・。」

 

 頭を抱えがらサイガまで現れる。

 

 その間にも木場とゼノヴィアの間で緊張が走る。彼が聖剣計画の生き残りで、ゼノヴィアの先輩に当たる奴だという事。

 

 そして・・・。

 

「姉さん、挑発は止めてって・・・。」

 

「いいだろう。なら表にでて・・・。」

 

 ゼノヴィアが木場の挑戦を受けようとした時だった。

 

――――喧嘩したら駄目だ!!

 

 とあれ?変な声が聞こえてきたぞ。

 

 それと共に何かがゼノヴィアの中に入り込んで・・・

 

 いきなりゼノヴィアの蒼い髪に金色のメッシュが入った?

 

「ごめんなさい!!やっぱり喧嘩はだめだ!!」

 

『はい?』

 

「これ仲直りの証!!デネブキャンディだ!!」

 

 って木場にキャンディを渡している!?

 

「えっと・・・????」

 

 木場が混乱している。

 

 何?キャラが全く違うのに変わっていますけど!?

 

「フッ・・・ふざけているのか?!」

 

 確かにこれが演技なら侮辱もいい所だよな。

 

 木場の奴もキレそうになっている。

 

「いやいやいやいやふざけてなんかいないよ!!僕は喧嘩が嫌いなんだ!!信じてくれこの通り!!」

 

「・・・・・・?!?!?!?!?!?!??!?!?!?!?」

 

 彼女(?)の言葉と土下座に木場がアーシアの方を見る。

 

 アーシアちゃんは嘘発見器じゃないですよ!!

 

 その力はあるけど。

 

「はい。嘘は・・・言っていませんよ????」

 

 嘘は言っていない。それは分かる。でも・・・何か変だぞ?

 

「??!!どっ・・・どうなっている?」

 

 木場、怒るべきか、それとも許すべきかどうか本気で混乱していた。

 

 あいつがここまでうろたえるなんて・・・。

 

「デネブったらもう・・・。」

 

 良太郎は何か頭を抱えているみたいだし?

 

――――仕方ねえ。俺が出る!!

 

「ちょっ・・・モモタロスが出たら余計ややこしく・・・。」

 

 あれ?今度は良太郎が?

 

「俺・・・参上!!」

 

 髪の毛に赤いメッシュが入った状態で自分を親指で指し、綺麗に見栄を切った!?

 

 いい具合に腰が入っていますな。

 

「ハリセン頼む。」

 

「あいよ。」

 

 手にはイリナがどこからか出したハリセンが?

 

「いい加減に出てきやがれ!!」

 

 それを手に乱暴な口調で叫びながらゼノヴィアをどつく良太郎(?)

 

「乱暴はだめだぞ!!モモタロス!!」

 

「うっせえいいから引っ込んでろ!!お前がいると場が余計ややこしくなるんじゃ!!」

 

 そこからのカオスはもう・・・語りたくもない。

 

 

 

 その騒動から十分後。

 

「あははは・・・・・・どうせ私は脳筋なんだ。馬鹿なんだ。だからエクソシストなのに、教会の戦士なのに変なのに憑かれていいように操られているんだ。でも私からパワーを取ったらあとは何が残るというのか?ああ破壊しか能がない馬鹿なんだ。ああ馬鹿なんだはははは・・・私はもう何にすがって生きて行けば・・・。パワー馬鹿な私は肉体労働しか残っていないのかな?はははははははは・・・・・・。」

 

「まあまあ・・・今回の傷は浅いわ。」

 

 部屋の隅で三角座りしながら落ち込んでいるゼノヴィア。

 

 それを慰めているイリナ。その慰め方から今の様な事が一度や二度じゃない事が良く分かる。

 

 あいつ意外と自虐キャラだったんだな。

 

 さっきのクールなキャラが完全に崩壊しとる。

 

「弦太郎、説明頼む。」

 

 何があったのかと、弦太郎が説明してくれる。

 

「許してやってくれ。ゼノヴィア・・・何かに憑かれているみたいでな。」

 

「良太郎もそうだよ。バリエーションが豊富で、どれも愉快な人なんだ。五種類は確認しているわ。」

 

『・・・・・・・・・。』

 

 イリナの止めの発言に皆絶句。

 

 だって、エクソシストなのに何か変なのに憑かれている!?

 

 しかも四人のうち二人、それ姉弟も揃って!?

 

 なんじゃそりゃ!!

 

 お前達それでいいのか!?

 

「面白いし、何となく悪い奴に思えないから問題ねえ!!いずれきちんと話をつけて幽霊とも友達になってやるぜ!!」

 

「これも主が私に賜った試練よ!!それに愉快なキャラしていると思えば楽しいわ!!」

 

 あっ・・・だめだ。この兄妹は馬鹿だった!!

 

 凄まじく問題あるはずなのに、全然気にしていない!!

 

 むしろ楽しんでいるよ!!

 

「ノーコメントでお願いします。迷惑をかけてごめんなさい。」

 

 苦笑い浮かべている良太郎って人はまともそうだ。

 

・・・・・・いや。あいつも何か憑かれている時点でアウトだ!!

 

 ある程度コントロールは出来ているみたいだけど?

 

 なんだよこのチーム。ブレーキが効いていないぞ!?

 

 あっ・・だから暴走最終兵器なのね。

 

 納得しちゃったわ。

 

 なんでこんな連中を同じチームにしたの!?

 

 やけくそとしか思えないよ!!

 

「・・・・・・。」

 

 ネロの視線が良太郎とゼノヴィアに向けられる。

 

「はあ・・・。何となく分かってきた気がするぞ。」

 

 そして木場の方を見る。

 

「なんか・・・やる気が失せたよ。」

 

 すごく疲れた様子で肩を落としています。

 

「まあ・・・とりあえず許可はだすわ。さすがはイッセ―の幼馴染ね。一味、二味どころの違いじゃないわ。キャラだけで疲れた・・・。」

 

 完全に脱力したのだろう。部長は心底疲れた様子で許可を出しますし。

 

「いや・・・こいつらはまた別格です。はあ・・・。」

 

 なんかおかしいなって・・・。

 

「あらら・・・せっかく手合わせを見たかったのですが。」

 

『!?』

 

 そこにもう一人乱入してきた?

 

 部室に現れたのは・・・鉄仮面のような物で顔を隠した女だった。

 

 着ているのもドレスの上から甲冑を来ているような姿。

 

 声からして女なのは辛うじて分かる。

 

 その姿を見た部長と朱乃さんが本気で驚いている。

 

「なんでユウナ様・・魔王眷属の一人が来ているの?」

 

「魔王眷属!?」

 

「ええ、有名よ。五大魔王スパーダ眷属の僧兵・・・魔槍の魔女――ユウナ様。最強の僧兵と言われているわ。」

 

「スパーダだあ!?」

 

 ネロが驚いているぞ?一体どうした?

 

「なんでスパーダの名が!?」

 

 キリエ姉さんまでって・・・ああ・・・確か魔剣教団ってスパーダを信仰していたっけ。

 

 そして、ネロはそのスパーダの血族・・・。

 

 あれ?なんで五大魔王の一人がそのスパーダなんだ!?

 

「話には聞いている。槍の達人にしてあの「魔女」だってね。」

 

「ふふふふふ・・・私も有名になったわね。」

 

「それはそうだよ。君・・・あちこちでやりたい放題に暴れているから。久しぶりだね。」

 

 良太郎が彼女に向けて久しぶりという。

 

「あら?分かっちゃうんだ。ええ・・・久しぶり。あなたなら私がここにいる理由はわかるでしょ?」

 

 なんだ?良太郎があいつに心当たりがある様子で・・・。

 

「さて・・・私も聖剣に用があるのだけど、そこのあなた?あなたのふがいなさにお仕置きをしにきました。」

 

 えっと・・・その魔女さんのご指名は木場!?

 

「なんのようだ?」

 

「あなたに聖剣を破壊する資格があるかどうかね。今のあなたじゃ・・・罅どころか、傷をつける事すら無理でしょうけど?」

 

「へえ・・・無礼とは思うけどそこまで言われたら剣を交えずにはいられないね。」

 

 木場があいつの挑発に乗る。

 

「オッ・・・おいやめとけ。」

 

 俺は止めようとする。肌でわかるんだ。あいつの・・・その・・・ヤバさが。

 

 あいつの実力は・・・半端じゃねえぞ!?

 

「・・・・・・えっと・・・あの・・・。」

 

 アーシアが何かに気付いたのかそのユウナに声をかけようとしているが・・・

 

 そのアーシアに向けて彼女は人差し指を口元に当てて黙ってほしいという。

 

「あなたの力は分かっているわ。その上で・・・お願い。」

 

「・・・はい。」

 

 なんか二人の間で何かわかりあっちゃいましたよ?

 

「表にでましょう。リアスさん?結界ならこっちが展開しているのでいいですよね?」

 

「はい・・・でもなんで魔王眷属が?」

 

 訳が分からん。

 

 




 最後で僧兵として現れたのがオリキャラにしてあるゲームのクロスキャラでもあるユウナ。

 さて・・・誰の関係者でしょうか(名前の時点でバレバレですね)


 現時点で彼女・・・半端じゃなく強いです。




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蹴散らしてやります。

 原作で決闘だったここで、さっそく敵の襲撃があります。

 ですが・・・相手が悪すぎます(笑)

 ツッコミ所満載の戦闘をお楽しみください。


 SIDE イッセ―

 

 こうして魔王眷属の魔女と木場が闘うことになった。

 

 初めに言おう。

 

 流石魔王眷属というべきなのだろう。

 

 ユウナは圧倒的だった。

 

「ぐっ・・・。」

 

 攻撃がまず当たらない。新体操のような常識はずれの柔軟性でまるで踊るように余裕を持って木場の剣をかわす。

 

「まだまだ・・・ほらほら・・・。」

 

 相手は何の変哲もない棒一本

 

 それで木場の作り出す魔剣を簡単に打ち砕く。

 

 強いとは感じていた。

 

 だが、その強さの次元が木場と違いすぎる。

 

「くそおおおぉぉぉぉぉぉぉ・・・。」

 

「あなたは何のためにあの剣を破壊したいの?」

 

 攻撃を余裕で避けながら、彼女は木場に問いかけている。

 

「死んだ人達のためなの?それとも・・・己の憎しみのため?」

 

「違う・・・俺は・・・俺は聖剣を超えたい!!」

 

「それだけじゃ・・・駄目だよ。」

 

 木場を容赦なく蹴りとばすユウナ。

 

「まだ足りないよ。それだけじゃ。」

 

 そしてその棒を突きだすが・・・。

 

「もういいだろ?君もまだ本気じゃないし。」

 

 それをサイガの剣が止める

 

「あらら・・・。やはり魔戒騎士は一味違うわね。」

 

「木場君もこれ以上はしない方が良い。君にとってもう一つの宿題が終わらないうちには無駄だと思うよ。彼女・・・腕だけなら僕と互角だろうから。」

 

「・・・くっ・・・。」

 

 木場がその場から黙って去っていく。

 

 視線だけで俺とネロはやり取りをかわし、ネロは肩をすくめて木場の後を追う。

 

「しかたねえな。」

 

 悪態は付いているけど、問題ないだろ?

 

「薬が効きすぎるよ?」

 

「いいじゃないの。それと・・・まだお客さんがいるみたいだし?」

 

 魔女の言葉と共にそのお客さんがやってくる。

 

 それは無数のグ―ル達。

 

「そちらもさっきの方の後を頼みますわ。」

 

「はあ・・・わかったよ。あとよろしくね。」

 

 サイガも木場の後を追ってその場から去って行った。

 

「さて、向うもまさかこの程度で足止めになるとは向うも思っていないでしょうけど?」

 

「当たり前じゃ!!」

 

 そこにもう一人・・・変わった怪人が現れる。

 

 黄金の体に豚の頭が付いた怪人。

 

「・・・イマジン。」

 

 良太郎がその怪人をイマジンと呼ぶ。

 

「私の領地に無断侵入とはいい度胸ね。」

 

 部長がカ―ミラを片手に戦おうとする。

 

 他のメンツも戦う気満々だ。

 

 それを・・・ユウナが片手で制する。

 

「ここは私に任せなさいな。見知った相手をようやく見つけたんだし。」

 

「はあ・・・やっぱりイマジンが現れるのか。憑依しているのは間違いなく彼か。」

 

 良太郎がその怪人をイマジンと呼び、そして深くため息。

 

「とりあえずこいつらは俺がやるぜ。」

 

 そう言って弦太郎が懐から変わった物を取り出す。それを腰につけると・・・ベルトとなって装着。そしてそこに付いている四つのスイッチを押していく。

 

 そしてそこからベルトからカウントが?

 

――――・・・3!!・・・2!!・・・1!!

 

「変身!!」

 

 ベルトに付いたレバーを起動させると凄まじいジェットと共に弦太郎は変身する。

 

 まるでイカみたいな頭。多分スペースシャトルをイメージし、宇宙服をベースにしたような白に黒いラインの入った体である。

 

 そして彼は両手を空に上げて叫ぶ。

 

 

 

『宇宙キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!』

 

 

『・・・・・・。』

 

 宇宙ってなに!?そこでなんで神様じゃなくてなんで宇宙が来るの!?

 

 おまけに、隣でイリナも何故か一緒になって叫んでいるし?

 

「ははは・・・新しいタイプの人外ね。宇宙とは思わなかったわ。もう・・・イッセ―の幼馴染は何でもありなのね。」

 

 部長・・・驚きを通り越してもう諦めている?

 

「仮面ライダ―フォーゼ・・・タイマン張らせてもらうぜ!!」

 

「言っておくが、すでにタイマンではないぞ!!」

 

 イマジンがタイマンとは程遠い状況に突っ込む。

 

 確かに無数の雑魚がいるし・・・タイマンじゃねえよな。

 

 それに固まった弦太郎。いちいちお前は反応が馬鹿正直だよな。

 

「・・・えっと・・・ずるいぞ!!名乗った意味がねえだろうが!!」

 

「だったらその名乗りを変えやがれ!!」

 

 子供の様な喧嘩をしやがってもう・・・。

 

 緊張感が全然ないぞ。

 

「こそこそ・・・今の内だわ。」

 

 あれ?イリナがこそこそとどこかへといく?

 

「どうした?イリナ?」

 

「げっ・・・そっ・・・そのね。あの・・・ちょっ・・・ちょっとトイレに・・・。」

 

 こんな修羅場でトイレはないだろ!!

 

 て・・・あ―あ・・・茂みに隠れちゃったし。

 

 なんでトイレなんか・・・んん?

 

 その茂みから青い球体が飛び出して来て・・・。

 

「がばっ!?」

 

 イマジンをふっ飛ばした!?

 

 そして着地した青い球体から現れたのは黒に蒼。特に頭が流星をイメージした顔になった奴だ!?

 

 えっと・・・まさかこいつ。

 

「仮面ライダ―メテオよ。あなたの定めは・・・私が決める。」

 

 と口元を親指で斬るようにして・・・っておいおいおいおいおいおい!!

 

 もしかしなくても声や口調がそのまんまだから分かるぞ!!

 

 こいつ絶対にイリナだろ!?

 

 俺は良太郎の方を見る。

 

「知らないふりをしてあげて。」

 

 良太郎は短くそう言う。

 

「でっ・・・でもよお。」

 

「た・の・む・か・ら・知らないふりをしてあげてくれ・・・スル―もツッコミってことを覚えた方が絶対に良いから!そうでないと色々と持たないし!!」

 

 そして、俺の両肩を掴み、必死で頼む。

 

 まるでサンタの存在を信じる子供達の夢を守ろうとしている親のような・・・。

 

 だがいくらなんでもそれじゃばれるんじゃないのか?

 

 隠しているとは思えないし。

 

「また助けに来てくれたかメテオ!!」

 

「心強い。こっちも頑張らないといけないな。」

 

 って・・・弦太郎とゼノヴィア、気づいていないのか!?

 

 まるわかりだろ!?普通気付くぞ!!

 

「何者なのかしらあのメテオって・・・。」

 

 って部長!?それって本気で言っているのですか!?それってすごく致命的ですよ!?

 

 さっき見たでしょ!?イリナがものすごく不自然にその場から離脱したの!!

 

 会話も聞こえているはずなのに!?

 

『・・・・・・・。』

 

 朱乃さんと小猫ちゃんはとっくに気付いているのに部長の発言に固まっているよ!!

 

「俺はこの状況に何処から、そしてどのようにツッコメばいい?」

 

 敵ですらツッコミができないほどのカオスだよこれ!!

 

「出来ればスル―でお願いします。・・・・・・はあ・・・。」

 

 良太郎のため息が深い。

 

「・・・なあ。お前、相当苦労しているだろ?」

 

「・・・分かってくれるかい。ツッコミが・・・ツッコミが足りないんだよ。姉さんだけでも大変だったのに・・・。」

 

 その言葉に涙目になる良太郎。

 

 だって・・・こんなお馬鹿な連中が三人もいるんじゃ、色々とな。

 

 こっちもツッコミを連発しすぎてすごく疲れたよ。

 

「良太郎って呼んでいいか?」

 

「いいよ。こっちもイッセ―君って呼んでいい?」

 

「もちろんだ。何かあったら相談してくれ。」

 

「・・・ありがとう。君は友達だよ。」

 

 俺達は自然と弦太郎がやっていた友達の印をやってしまう。

 

 ああ・・・良太郎の苦労が伝わってくる。

 

 こいつとも違う意味で仲良くなれそうな気がする。

 

「ははは・・・相変わらず苦労しているね。雑魚はこっちが片付けるからあっちをお願い。」

 

 ユウナが軽やかな言葉と共にハイヒールの踵に・・・いつの間にか拳銃を召喚していますよ!?

 

 ちょっとまてい!!

 

 魔槍の魔女だろ?なんで銃なんか・・・。

 

「拳銃を手槍と書く場合があるのよ。だからこれも私にとっては魔槍なの。」

 

 ・・・・・・この人、漢字に詳しいよな。

 

 その状態で一人蹴りあげる。

 

 そして踏みつけて・・・そのまま踵の銃を発射。踏みつけた足を軸にもう片方の足を後ろの相手に向けて、また銃を放つって・・・すげえバランス感覚。

 

 手に槍を生み出し、軽くその場を薙ぎながら走り抜ける。

 

 槍を投げて、一体を刺し貫いた後・・・両手にも拳銃をっておい!!

 

 この人・・・四丁拳銃なんて無茶苦茶なスタイルで戦っていますよ!?

 

 両手足に拳銃って・・・使いこなせないと思ったけどすごい。

 

 使いこなしていますよ。

 

 四方八方から襲いかかってくる攻撃を避けながら、打撃と共に銃をぶっ放しているし。

 

 あっという間に五十体のグ―ルが消えたよ。

 

「まっ・・まだまだいますよ!!」

 

 追加で現れたグ―ル達・・。

 

「そうだ。これを試してみましょうか。」

 

 彼女の右肩に髑髏に翼の骨組みのような腕が二本付いた変な武器(?)が現れる。

 

 そしていつの間にか口に赤いバラを加えていますよ!?

 

 その腕から一本・・・刃を取り出す。

 

 それはまるで甲殻類の様な節のある直剣。

 

 それを次々とグ―ル達に向けてなげ、突き刺していく。

 

 まるでフラメンコを踊るように情熱的に舞いながら次々と刃を突き刺す。

 

 そして、敵の群れを脱した後、自分の顔のすぐ真横で手を叩く。

 

 うん・・・まさにフラメンコ。

 

 それと共にグ―ル達に指した刃が爆発!?

 

「う~ん、私とこのルシフェルは相性いいわ!!いただいてよかった。」

 

 グ―ル達が一瞬で全滅したよ。

 

「おのれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 イマジンが突進してくる。それを闘牛士のように華麗にかわすユウナ。

 

 かわしながら、バラをイマジンに向けて投げていた。

 

「野暮ですね。情熱的に踊っていたのに。そんな子には・・・お仕置き。」

 

 その言葉と共にイマジンの目の前に先の刃が浮かび上がるように十本以上現れる。

 

「げっ!?」

 

「情熱は大事よ?人生・・・多少は燃え上がった方が楽しいから。貴方も燃えてみたら?」

 

 その言葉と共にバラがイマジンに命中。

 

「うぎゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!もっ、燃える意味が違うぞぉぉぉぉ!!」

 

 それと共に設置した刃が大爆発をおこして吹っ飛んだよ。

 

 相手が物理的に燃えとる。

 

「火力の調整を間違えて、爆発しただけです。爆発も突き詰めたら燃えるのと同じなのだし。でも、つまらないなあ。まだウォーミングアップにもなっていませんし。さて・・・露払いはしておきましたわ。続きをどうぞ。」

 

 それでまだ余裕ってすごいよね?

 

「ありがとよ。これでタイマンだぜ!!」

 

「ファチャ―!!」

 

 弦太郎とイリナがイマジンに向けて走り出す。

 

「二対一の何処がタイマンだ!!?」

 

『細かい事は気にするな!!』

 

「全然細かいことじゃねえだろうがぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 そこら辺は本当兄妹だよな。あいつも可哀そうに。

 

「ぎゃああああああああああぁぁ!!お前ら絶対に何も考えてねえだろぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 敵がツッコミしながらぼこられていくよ。

 

「はあ・・・こっちも参加しないと寂しいじゃないか!!」

 

 そこにゼノヴィアまで加わっていくし。

 

「ぎゃあああああああああぁぁぁぁぁ!!?」

 

 でかいエクスカリバーでイマジンを斬りとばしたよ。

 

「最初に言っておく、俺はか~な~り・・・強い!!」

 

 そして、名乗りを上げてさらに斬りとばした!?

 

 吹っ飛んだイマジンが小刻みに震えながら立ち上がるよ。

 

「お前・・・俺に八つ当たりしていないか?」

 

「ははは・・・何を言っているのかな?気のせいだよ!!ただ、なんかお前を斬り飛ばないといけない気がしているだけだ。八つ当たりでもなければ、憂さ晴らしでも、ストレス解消でもない!!・・・・・・楽しんでいないぞ!!決してな!!」

 

 そう言っておもっきりイマジンを斬りとばしている。

 

 それはもう・・・さっきの鬱な感じを吹っ飛ばすような爽快をともなっている。

 

 顔がもう・・・獰猛な笑みを浮かべていますし。

 

「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁ嘘だ!!絶対に八つ当たりだ!!がばら!?」

 

「ははははははははは!!」

 

 なんていうか・・・三人とも強い、そして酷い。

 

「ぎゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 ゼノヴィア、どう見てもあれっ八つ当たりじゃないのか?

 

 なんでイリナがカンフーを習得しているのか謎だけど。

 

 ファチャ―って・・・可愛い叫びもあげていますし。

 

―――――――ロケット。

 

「ライダ―ロケットパンチ!!」

 

―――――サターン!!

 

 そして弦太郎が右腕にロケット、イリナが右腕に土星の様な物を召喚してイマジンをふっ飛ばす。

 

「がぼっ!?」

 

「さて・・・これで止めだ。」

 

―――リミットブレイク。

 

 その音声と共に右腕にロケット、左足に・・・何とドリルが出現!?

 

 ロケットで飛び上がり、その勢いで急降下しながらドリルで蹴ってきやがった!?

 

「ライダ―ロケットドリルキック!!」

 

 そのままそのイマジンを貫いて倒したよ・・・。

 

 地面に突っ込んだ後ドリルの回転を弱めて着地するあたりも・・・いやこいつすごいな。

 

 なんか俺の中の常識がすべて崩壊するようなキックだったぜ。

 

「ぬうう・・はははは・・・これで終わったと思うなよ。まだ・・・聖剣計画は終わっていない。ぬははははははははははは!!」

 

 その言葉を残したままあいつは爆発。

 

「・・・やっぱり動き出しましたか。」

 

 ユウナがそう言ってその場を後にしようとした時だった。

 

 彼女に向けて飛んでくる一本の矢。

 

「!?」

 

 それに気付くユウナだったが、命中する前に・・・。

 

「余計なことをしたか?」

 

 俺が掴み取っていた。

 

「へえ・・・やるじゃないの。」

 

 仕方ねえだろ。体が勝手に動いたし。

 

「いい子ね。う~ん・・・なるほど。」

 

 そしてそのユウナが俺の方をマジマジと見ていますし。

 

「ふふふ・・・面白い子を見つけたかも。またね。」

 

 無邪気な言葉と共に彼女は無数の灰色の鳥となって姿を消す。

 

「はあ・・・・・・。」

 

 そして部長はため息をつく。

 

「何か起ころうとしているのは間違いないみたいね。私も私で調べてみるわ。皆は何時でも動けるようにして頂戴。」

 

 この戦いがこの街で起きる事件の幕開けとなった。

 

 あると思っていた俺の必殺技・・洋服破壊(ドレスブレイク)の出番がなかったよ。

 

 三人ともスタイルが凄く良さそうだったのに・・・その裸体を拝めないとはなあ。

 

 溜め息つく俺に。

 

「スケベな後悔禁止です。」

 

「どぼっ!?」

 

 小猫ちゃんの鋭く、そして無駄に重いツッコミが入りました。

 

 その破壊力たるや・・・軽く百メートル位は吹っ飛んだよ。

 

「・・・・・・。」

 

 良太郎はそれを驚いた様子で見た後。

 

「そうか、これが君の日常か。よくわかったよ。」

 

 あっさりと受け入れているよ。

 

 なるほど・・・良太郎がこの三人と組んでいる理由がよく分かった気がする。

 

 




 どうでしたか?

 ツッコミ処を一度数えてやってください。

 こっちは多すぎて数え切れませんでしたけど(オイ!!)

 良太郎の苦労・・・みなさんも分かってもらえたかと思います。


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 友達に感謝です。

 ここでとんでもない事態が発生します。

 あと、木場もまた・・・己と向き合うこととなります。
 


SIDE リアス

 

 イッセ―の家に帰ってきた私に予想外の連中がいた。

 

「・・・・・・・・・イッセ―。これはどういう事よ?」

 

「お邪魔しているぜ・・・イッセー!!」

 

 家のリビングでくつろいでいる弦太郎達がいたのだ。

 

「ごめんなさい部長。今日の朝に泊めてくれって電話があったので。」

 

 事情を聞くと今日の朝の時点では事情は知らないか。・・・タイミングが悪いわね。

 

「ホテル代はないの!?」

 

『・・・・・・・・。』

 

 その言葉にイリナ、そしてゼノヴィアが固まる。

 

「この馬鹿二人が作戦資金を悪徳商法でだまし取られてしまってね。」

 

「・・・相変わらずだな。お前ら。」

 

 イッセ―のジト目にイリナが顔をそむけて口笛を吹くというベタなごかましをやっているわ。

 

 本当に馬鹿なのね。この子達。

 

「・・・グレモリ―の家の者としてあなた達を表だって協力はできないわ。でもまあ・・・はあ。仕方ないわね。」

 

 ここまできたら追いかえせないわ。悪魔らしからぬ事と思うかもしれないけど。

 

「家に泊めているのは教会の連中ではなく、イッセ―の幼馴染達という事にしておくから。それと私達の事は教会の人達に話さないでほしい。それで譲歩するわ。」

 

「そうさせてもらいます。はあ・・・もう。」

 

――――グゥゥゥゥゥゥゥー!!

 

――――キュ~。

 

――――ガルルウルウルル!!

 

――――グー。

 

 そんな時に四人のお腹が鳴る。四人ともそれぞれ個性的なお腹の音ね。音だけで誰か判別できそう。

 

「わりぃ・・・昨日から何も食べてねえ。」

 

「ああ・・・ひもじいわ。」

 

「腹が減って戦ができない。」

 

「はは・・・不幸だよ。」

 

 なんか可哀そうに思えてきたわ。

 

「ふふふ・・・そうか。」

 

 そして、その腹の音を聞いたイッセ―が立ち上がる。

 

 あれ?なんか様子が変だわ?

 

―――――イッセ―の前でお腹を空かせた。

 

―――――ふふふ。やってしまったわね。

 

 えっと・・・ドライクさんとクレアさん?

 

 どうしたというのですか?

 

「本当お前ら・・・・・・いい度胸しているぜ。」

 

 イッセ―がエプロンを装備し、袖をまくってご飯の準備をする。

 

「一時間待て。帰ってきた記念に久しぶりの和食をごちそうしてやる。」

 

 その背中は・・・料理人として燃えているわ!?

 

――――相棒は腹を空かせた相手を放置することはできない。こっちも今日は美味しいご飯にありつけそうでなによりだ。

 

――――楽しみで何よりだわ。あの子の師匠も、それがお前の「道」かと笑っていた。イッセ―も空腹の人は本当に美味しく食べてくれるからやりがいがあるって言っていたから。そう言えば。あの三人も美味しく食べていたわね。

 

――――――エイジ殿とユウスケ殿、士殿か。ユウスケ殿は我々ドラゴンの秘密を絶対に解き明かしてやるってヤル気満々だったな。それに加えて妹を探し続けていると便りで言っていた。エイジ殿はまた旅か。士殿は今・・・どんな写真を撮影しているのやら。また話を聞きたい物だ。

 

 イッセ―ってこんなキャラだったの!?

 

 それに今の会話で別の幼馴染共の名前が出てきたわよ!?

 

 まだいるの!?この世界の常識に喧嘩を売っているような滅茶苦茶な連中が!?

 

『おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!神よ感謝します!!』

 

 四人が瞳を涙で濡らしながら歓喜の声をあげているわ。

 

 ぐっ・・・だから悪魔の前で神に祈らないでよ!!

 

 悪魔にとってダメージなのよ!!

 

 それにしても、イッセ―に神の感謝って・・・。

 

 皮肉だけどあながち間違ってもいないのよね。

 

 アギトってそう言う存在だし。

 

「僕も手伝うよ。」

 

 良太郎さんがキッチンにやってくる。

 

「はあ・・・私も手伝うわ。」

 

 仕方ない。この腹ペコどもに食事を作りましょうか。

 

「そうそう・・・空いている部屋に怪我をしている奴を寝かせているんだ。そいつにも何か作ってやってほしい。」

 

「・・・怪我をしているのか?」

 

「今は眠っているけど、酷い怪我をしている。」

 

「・・・厄介事ばかり持ちこむわね。アーシアが帰ってきたらその部屋に行かせるわ。」

 

 この家になんで教会の連中がくるのやら。

 

 頭が痛いけど・・・今はもう考えない方がいいかも。

 

 

 

SIDE アーシア。

 

 家に帰ってきたら教会のみなさんがいてびっくりしました。

 

「うまい・・・うまいよお・・・。」

 

 みんな・・・涙流して食べまくっています。

 

「味噌汁久しぶりだ!!ああ・・・白いご飯も。うおお箸が、涙が止まらないぜ!」

 

「納豆もいい感じだわ。塩焼きのしゃけが・・・ああ・・・きんぴらごぼうがおいしい!」

 

「これが黄金の国ジパングの食事。質素ながらなんて味わい深いだ。もぐもぐもぐもぐもぐ・・・。お代わり!!」

 

「お姉さん落ち付いて食べなよ。もぐもぐ・・・でもおいしい。ああ・・・久しぶりに和食を口にできたよ。」

 

「はあ・・・これはまた愉快なことになっていますね。」

 

 後ろではキリエ姉さんと朱乃さんが買い物袋を持ってやってきています。

 

 三人でイッセ―さんから頼まれた買い物を帰る前にやってきたところなのですが・・・その理由がよく分かった気がします。

 

「オッ・・・アーシア。買い物袋から卵持ってきてくれ。」

 

「はい。」

 

「弦太郎!!怪我人はどの部屋だ?」

 

「えっとな。ああ・・・。」

 

 弦太郎君がその部屋を教えてくれます。

 

「悪いアーシア。こいつら以外に怪我人がいるみたいでな。シチューと雑炊を作ったからお願いできないか?ついでに怪我も見てやってくれ。」

 

「はい。」

 

「・・・本当に君は誰でも癒すのか?」

 

 その言葉にゼノヴィアさんが箸を止めます。

 

 どうも私のことを測りかねているみたいです。

 

「はい。それが私の決めた道です。」

 

「・・・・・・。」

 

 その宣言にゼノヴィアさんは言葉を失う。

 

「なるほど、弦太郎の言うとおりだ。」

 

 でも、そのあと静かな笑みを浮かべる。

 

「あの時はすまなかった。こっちの目が間違っていたようだ。それと・・・あいつの事を頼む。悪い奴じゃないから。」

 

「はい!!分かりました。」

 

 少しぶっきらぼうですけど、悪い気持ちは入ってきません。少なくとも任せてもらえる程度には認めてもらっているみたいです。

 

認めてもらうって何か、嬉しいです。

 

「あらあら・・・私も手伝おうかしら?」

 

 朱乃お姉様はイッセ―さんの手伝いをするみたいです。まだまだ何か作っていますし。

 

 しかし、本当に手際いいですよね。私は味噌汁の極意がまだつかめていません。

 

 密かに毎日研究はしていますけど中々・・・。

 

 いつかイッセ―さんと、その師匠に認めてもらう最高の一杯を作りたいです。

 

「私はアーシアちゃんの手伝いをするわ。怪我の手当てなら心得あるから。」

 

 キリエお姉様も手伝ってくれるみたいだ。

 

「ああ頼む。」

 

 ほどなくして私とキリエお姉様はその怪我人がいる部屋に向かいます。

 

「失礼し・・・まっ・・・。」

 

 そして、私は包帯でぐるぐる巻きになったあの人と再会します。

 

「巧・・・さん。」

 

「・・・君は、イッセ―の所の・・・。」

 

 これは私も予想もしていなかったこと。

 

 どうして、巧さんが家にいるのですか?

 

 

 SIDE 木場。

 

 今僕は森の中にいる。

 

 エクスカリバーを求めて彷徨い歩くのもよかった。

 

 でも、さっきの彼女との手合わせで嫌というほど僕は現実を突きつけられていた。

 

 今のままじゃ・・・偽物とは言えエクスカリバーを砕けない。

 

 超える事ができない。

 

 故に・・・瞑想している。

 

 僕を逃がし、死んでいった者達のために僕は・・・僕一人が生き残って本当によかったのか、本当に後悔しているのだ。

 

 こんな僕がのうのうと生きていいのか?

 

 その答えのために・・・僕はあの剣に挑まないといけない。

 

「修行・・・手伝ってあげるよ。」

 

 僕の目の前にサイガ君が現れる。彼は何か呪文を唱えると、その手に焔の様な何かが現れる。

 

「君にアバン流刀殺法の最期・・・空破斬を伝授させる。心は答えに近づいているみたいだしね。」

 

 そういって、彼は鉢巻を取り出す。

 

「これで目を隠して。そしてその状態でこれを斬るんだ。音もしないこれをね。必要なのは相手の邪悪なエネルギーを感じる事だから。」

 

「ああ・・・。」

 

「その修業。俺も付き合うぜ。」

 

 そこにネロ君まで?

 

「俺も修行をうける。きちんと極めたいから。」

 

 ネロ君は僕たちの手荷物を取り出す。それは弁当箱?

 

「そして、これはイッセ―からの餞別。」

 

 中にはおにぎり。水筒の中身はみそ汁。

 

 簡単なおかずも入っている。

 

「腹が減ったら戦もできねえだろう?」

 

「二人とも・・・。」

 

 僕は涙が出そうになった。

 

 なんでみんなここまで・・・。

 

「いなくなると寂しいだけだ。」

 

・・・それが理由だとしたら本当に人が良すぎる。

 

 ありがとう。

 

 本当に僕は友に恵まれた

 

「じゃあ・・・三人で食べようか。」

 

 僕たちはイッセ―君の差し入れを食べる。

 

 かなり腹が減っていたせいでもあるだろう。そのおにぎりはシンプルなおにぎりはずなのに、とっても美味しかった。

 

 中にイッセ―君が作った大変酸っぱい梅干しが入っている奴があってネロが悶えてたのには笑えたけど。

 

「あの野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉ可笑しいくらいに酸っぱいのを入れやがって!!」

 

 イッセ―君が作った梅干し・・・鬼のように酸っぱいのだよね。

 

 これに慣れると市販品が物足りなくなるというのが恐ろしい。

 

 ネロ君の悲鳴を聞きながら僕は修行に挑む。

 

 

 

 




 今回のエクスカリバーですが、原作と同じように木場が砕かないと意味がないのです。

 今回の事件にかかわっている他のみんなも木場にそれを成し遂げることを望んているゆえ野行動です。


 さて・・・次話でキリエさんとハルトが大活躍(笑)します。


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後悔のないように

 連続投稿はここで終わります。

 ここではまさかのイッセー不在。

 ですが、ある方が大暴れします。


 SIDE キリエ

 

 

「なんで俺・・・正座させられている?一応怪我人なんだが・・・。」

 

 私の目の前には巧君がいる。そして、彼を思いっきり叱りつけて強制的に正座させている。

 

「怪我ならアーシアちゃんが治したから問題ありません!!それよりも事情を聞かせてもらいましたが・・・。」

 

 巧君がアーシアちゃんに助けを求めるように視線を向けるが、アーシアちゃんは苦笑しながら首を横に振る。

 

「・・・はあ。おっかねえな。」

 

「あなたはネロに似ているわ。まあ、ネロは皮肉屋で、あなたは真っ直ぐすぎるという違いはあるけど。」

 

 アーシアちゃんから彼の事情をすべて白状してもらった。

 

 彼女のアギトとしての力なら、すべて知っているはずだからだ。

 

 きちんとお話してもらったけど・・・どうしてアーシアちゃんが震えているのかしら?

 

 その上で説教中。この子・・・相当な無茶をしているからだ。

 

「だが・・・今更名乗り出る事はできない。俺はもうすぐ・・・。」

 

 彼の命がもう何時尽きてもおかしくないのにも関わらずだ。

 

 今でも巧君の手から灰が舞い散っている。

 

「それでもあなたが生きていたことをイッセ―君が知ったら泣いて喜ぶわよ。」

 

「それは分かっている。だが・・・。」

 

 躊躇いを見せる巧君。その理由、アーシアちゃんの様な力が無くても何となく分かる。

 

「はあ・・・。あなた、自分の死がイッセ―君の心に深い傷をつけた事に追い目を感じているのね。」

 

「・・・はっきり言いやがる。」

 

 図星だったみたい。

 

「だったらなおさら、あなたには名乗り出て欲しい。だって・・・もうすぐ死ぬからこそ、後悔は残してほしくない。最期の瞬間まで生きていたいのなら、なおさら。」

 

「・・・・・・。」

 

 その言葉に何も応えない。いえ、できないのだろう。

 

 ・・・しかたないわ。

 

 だったら、こっちの後悔も話そうかしら。

 

「私にも兄がいました。」

 

 私の唯一の血の繋がった肉親。

 

「その兄は裏で色々なことをしていましたけど、私を守る良い兄でした。でも、何も言わず、死んでしまった。何を伝えたかったのかも分からないまま。」

 

 死体すら残さずに消えたらしい。

 

「悲しむことすら、今でもできません。まだ兄の死が実感できていないの。」

 

 だから、泣く事すらできない。

 

「ただあるのは・・・後悔だけ。もっと早くに知っていればという後悔しか残っていないの。もう、言葉を交わす事が出来ないから。」

 

『・・・・・・。』

 

 この話はネロにしかしていない。ネロは・・・その後悔ごと抱きしめてくれたけど。

 

 その時もまだ・・・泣けていない。

 

「だから、どんなに悲しんでも、どんなに苦しんでも、そして・・・すぐに終わることになってもあなたに後悔だけは残してほしくない。」

 

「あんた・・・。」

 

 話すたびに・・・心が痛いわね。いまでも痛む。涙は出ないというのに。

 

「キリエ姉様・・・。」

 

 代わりにアーシアちゃんが泣いてくれているわ。

 

「ごめんなさいね。あなたに、この痛みは辛いというのに。」

 

「いいんです、でも・・・。」

 

 この子の優しさに癒される。

 

「負けたよ。あんたは・・・優しすぎる。」

 

「ネロにも言われているわ。」

 

「あいつか。確かにいいそうだわ。」

 

「あら?ネロと知り合いなの?」

 

 意外なつながりが・・・。

 

「アーシアと同じくあいつも事情を知っている。っていうか、ばれた。まったくあいつの幼馴染共はどうなっていやがる。めちゃくちゃ鋭い上に・・・お人好しばかりだ。」

 

「だからこそ、みんなこの家にいるのよ。」

 

「ははは・・・違いねえ。」

 

 巧君の言葉が柔らかくなる。うん・・・私の言葉は伝わったわね。

 

「ゆっくり休みなさい。今は考えるときよ。」

 

「だが・・・じっとしていたらこの街が消える。俺達の身内のせいで、俺の故郷が。」

 

 巧君はなおも立ち上がろうとする。この街を守りたいと思ってくれるのね。

 

 だからこそ私はいう。

 

「安心して、この街には神様すら恐れるアギトを初め、あなたがさっきいっていたとんでもないイッセ―君の幼馴染達がいるのよ?それに・・・。」

 

 それは私なりの決意。

 

「私が絶対にこの街を・・・みんなを守って見せる。みんな死なせないから。」

 

 私の力は多分この想いに応えてくれる。

 

「・・・・・・。」

 

「それに安心してください。他のみんなも動き出しています。」

 

 アーシアちゃんもそれに続く。

 

「ははは・・・そうかい。コヒカエルの奴もとんでもない街を狙ったもんだ。まあ、それが俺の故郷なんだが・・・。」

 

 巧君は笑った。

 

 

 

 

SIDE 渡

 

 

 さて・・・今僕たちはとんでもないメンバーで動いていた。

 

「まさか、お前が巧と友達だったとは知らなかったぞ。」

 

 ダンテ様に呼び出される形で新たに加わったWの片割れ、翔太郎。

 

 彼も何と・・・巧の友達だったのだ。

 

「しかもイッセ―君の幼馴染かい。世間の狭さに呆れかえるほかないぜ。」

 

 ダンテ様も知らなかった事らしく驚いている。

 

「ははははは・・・イッセ―の縁は本当に面白い。予想もしなかった繋がりが次々と出てくるぞ!!」

 

「まったくだぜ。ネロの奴まで引き寄せやがったし。」

 

「あいつがいるから俺達はここにいる。」

 

「俺もあいつと今度じっくりと話をしてみたいぜ。サーゼクスがあそこまで気にいるだけの物があるということだし。」

 

 鋼兄とダンテ様・・・すっかり打ち解けていますね。

 

 でも・・・イッセ―君って本当にすごい。

 

 彼の周りに次々と人が集まってくる。

 

 もしかして、ダンテ様と翔太郎がやってきたのもイッセ―君の縁の所為かも?

 

「・・・ファイズの正体、そしてオルフェノク。あいつがそう言う形で生き返っていたなんて。」

 

―――すまなかった。こっちはすでにクレアさんから聞いていて検索をして状況は把握していたんだ。どうやったら助かるのかもね。そのために渡と接触した。

 

 翔太郎君の肩の上にはフィリップ君の化身体として蜘蛛型の機械が乗っている。

 

 彼は冥界からこの機械を通じての参戦。

 

 全知の龍神となったフィリップ君。彼のおかげで巧君の生存と彼が助かる方法、そのために魔王が眷族を探しているという情報が得て交渉できたのだ。

 

「後悔しても始まらね。まだ間に合うのならなおさらだ。だからこそ・・・この依頼、やらせてもらうぜ。俺だって巧が生きている事は嬉しいし、消えかけている命を助けられるのなら、参加する理由があっても、断る理由は全くねえからな!!」

 

「いい返事だ。頼むぜ。」

 

―――――それはこっちも同じこと。まあ・・・この事件の後僕たちの生存がイッセ―君にばれるのは確定だけど。

 

 正式にダンテ様の依頼という形で翔太郎君とフィリップ君も参戦。

 

 どんどんイッセ―の幼馴染連中が集まっていくよ。

 

 僕もその一人だけど。

 

―――――早速だけど、検索を開始する。キーワードをお願いするよ。

 

「巧、ファイズ。それに・・・。」

 

「コカビエル。そして戦争だ。」

 

 翔太郎君に続いてハル君がキーワードを言う。

 

「戦争狂のコカビエルが何かを企んでいる。それは俺も、そして巧も掴んでいた。そして、巧は何かに気付いたと思う。そしてこの街に向かったという事までは・・・。」

 

「それじゃ・・・それにこの街も入れよう。」

 

 僕はさらにこの街もキーワードとして入れることを提案する。

 

「少なくともこの街で何か仕出かそうとしているのは間違いない。」

 

――――うん・・・ありがとう。そして絞れたよ。とんでもないことが起ころうとしているみたいだね。

 

 フィリップ君がその結果を言う。

 

―――――結論から言うと、戦争狂のコカビエルは悲願の戦争を起こすためにこの街を消滅させようとしているみたいだ。

 

『!?』

 

 その口からとんでもない事が告げられる。

 

「おい。まじかよ。」

 

「だから巧の奴・・・何時死んでもおかしくないのに無茶を・・・。」

 

 ハルト君は巧君がどうして無茶をしたのか納得している様子だった。

 

 この街は多分巧君にとっても大切な場所なのだろう。

 

 命を賭ける価値があるほどに。

 

―――その方法としてエクスカリバーを使うようだね。その際の術式は・・・。

 

「ちょっと待った。その前にお客さんの様だぜ?」

 

――――――・・・なんでこんな過剰戦力が集結している!?

 

 姿は見えないけど、声だけが辺りに響いてくる。

 

 過剰戦力って・・・そうだよね。

 

「あたしからしても化け物揃いだと思うにゃ。」

 

 その化け物にどうして僕も入っているのかな?

 

「その声・・・コカビエルか。」

 

 ハルト君が反応する。

 

 その声は心底冷たい。

 

――――――げっ!?ハッ・・・ハルトまでいるのか?まさか・・・正体ばれているというのか?

 

 コカビエルもハルト君に気付いた様子だけど、声に怯えが混じっている。

 

 それに比例するようにハルト君の全身から・・・怒気が発せられている。

 

 右手を鳴らしながらコカビエルを探す。

 

「ちょっとそこで待っていろ。挨拶代わりにお前に総督殺しをかましてやる。」

 

―――――かっ・・・勘弁してくれ。あれだけは・・・あれだけは・・・。ヴァ―リがお前だけは絶対に怒らせない理由となったあれだけは止めてくれ!!アザゼルの奴が泡吹き、危険な痙攣をおこして気を失ったあれだけは・・・・!!

 

 コカビエルが本気で怯えている?

 

 たしか、神話に出てくるような伝説的な堕天使だよね?

 

 そのコカビエルがハル君に怯えるって・・・何をしたの?

 

 それに呼応するようにハル君の眼が赤く輝いていますし。

 

「せっかく・・・巧を助けようと色々と苦心し、悩み、絶望すらしかけた。でも、渡のおかげで何とかなりそうになった。それを見事にぶち壊してくれたお礼だ。遠慮なく受け取ってくれ。」

 

 ・・・・うわ。ハルト君が本気で怒っている。右腕から黒い蛇の様な物が出現して激しく暴れている。

 

「思いだしたけど、部下をつかって前に監禁して痛めつけてくれた分で一体分。それにレイちゃんをたっぷり泣かせ、いじめた分を二体分と考えてやる。今回は出血大サービスだ。ドラゴンスタイルに加えてドラゴタイマーを使って四人同時でやってやる。最高だろ?」

 

――――――まて!!・・・あれを強化フォーム、それも四人同時にやるというのか!?それだけは・・・それだけはやめてくれぇぇぇぇぇぇ!!謝るから!!

 

「安心して、生かさず殺さず。現世で出来うる限りの最高の地獄を見せてあげる。お前の心身の耐久実験も兼ねて。」

 

―――――ひいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!

 

「それだけこっちは本気で怒っていることを理解しろ。巧とレイちゃんを狙った罪は重いぞ。」

 

 なんだろう。今回の事件の黒幕なのに、すでに負けている気がする。

 

「・・・ハルトも相当な愉快な奴だ。俺の眷族連中といい勝負か、それすら超えるな。」

 

「コカビエルってやつを捕まえたらハルにお仕置きをお願いして間違いないな。下手な処刑よりも遥かにいい懲らしめになりそうだ。」

 

『うんうん。』

 

 ダンテ様も肩をすくめ、鋼兄もため息ついてハル君にお仕置きをお願いすることを決めているよ。

 

 他のみんなも・・・僕もそう思うけどさ!!

 

 まあ・・・巧君を助けようとこっちも動いて、本当ならハル君と同じくらいに怒ってもよかったけど・・・ハル君の激怒っぷりに押されて怒れなくなったよ。

 

――――――なんてことを言いやがる!!貴様ら鬼か!?悪魔か!?

 

「俺は鬼だがなにか?」

 

「私もにゃ!!ついでも悪魔でもあるけど?」

 

「まあ・・・俺も今じゃ悪魔だ。」

 

「そして俺は魔王だ。悪魔の王様だぜ?ついでに鋼鬼、お前はもう鬼神と名乗って良いぜ?荒神二代目になってんならそのレベルは当然だろうが。」

 

「そのレベルなのかねえ。前の事件では活躍できなかったのに。」

 

「純情も罪ってことさ。だが人間臭くて俺は嫌いじゃねえぜ。」

 

―――――そうだった。同じ鬼、悪魔でも・・・最悪すぎる連中が揃っていやがる。

 

 うん。鋼兄と黒歌は文字通り鬼だし、黒歌は悪魔でもあったね。

 

 翔太郎さんも悪魔だし。

 

 そして鋼兄は鬼神と言っていい存在。

 

 さらに悪魔の親玉――魔王であるダンテ様。

 

 この二人に鬼、悪魔って・・・釈迦に説法と同じだよ。

 

 まさに相手からしたら最悪の相手で。

 

「さて・・・みんなで追い詰めようじゃないか。コカビエル・・・お仕置きの時間だ。」

 

 そして、そんな鬼や悪魔達よりもはるかにおっかないハル君がいるわけで。

 

 コカビエル・・・終わったね。

 

―――――ひっ!?ぐっ・・・ええい・・・もう後には引けん!!悲願成就のためにお前達を閉じ込めてくれる!!

 

―――――――ラビリンス・・ナウ!!

 

―――――――プリズン・・・ナウ!!

 

 その音声と共に僕たちのいる風景が一変する。

 

―――――シ―ル・・・ナウ!!

 

 それは異次元。それも真っ黒な空間に無数の白い階段が配置されたような場だった。

 

「また大規模な空間魔法だな。二つの指輪を組み合わせて合体魔法とするあたりは初めての発想だ。」

 

―――――この魔法は一週間以上は効果が持続する。破壊することも、そして脱出も不能なのだ。はははは・・・そこで指咥えてみているがいい!!俺が戦争の狼煙を上げる瞬間をな!!

 

「・・・あとで覚えておけ。絶対にお仕置きしちゃる。」

 

 うわ・・・さらにハルト君が切れている。

 

――――ぐっ・・・。絶対に逃げ切ってやる。

 

「逃げ切れると思うな。・・・倍返しだ。」

 

『ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ。』

 

 怖い。本当にハル君が怖い。みんな震えあがっているよ。

 

「俺も彼を迂闊に怒らせない方がいいみたいだな。あれは怖い。」

 

 ダンテ様の言葉に皆は何度も頷きます。

 

――――――それでも・・・あれだけは嫌なんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 そのハルト君から逃げるようにコカビエルの反応が消えた。本当にコカビエル(「総督」殺しだから、文脈的にはアザゼルでは?)に何をしでかしたの?

 

「さて・・・どうやってここから出るかだ。丁寧なことに・・・。」

 

―――コネクト・・・。

 

 ハル君が指輪の魔法を発動させるけど・・・発動しない。

 

「こっちの魔法は妨害されている。ワイズマンめ・・・厄介な指輪を。」

 

「・・・やれやれだぜ。」

 

「まあまあ・・・とにかくハル君は落ち着こうね。一曲弾くからさ。」

 

「怒りを鎮める曲ってどんなの?」

 

 あら?オ―フィスちゃんったらこんなところまで来て・・・。

 

「・・・・・・本当にすごいね。結界が張ってあるというのに?」

 

「渡のいるところ、何処でも現れる。」

 

『・・・・・・・・・。』

 

 そして、突然現れたオ―フィスちゃんにみんな目を丸くしている。

 

「ねえ。君はこの結界を突破してきたのかい?」

 

「この程度の結界、ないも当然。」

 

 この程度って・・・神話クラスの魔物をずっと封じられるほどの魔法だよね?これ?

 

 ハル君はそれを見て笑いだす。

 

「ふふふふ・・・ふはははははは・・・これはいい。さっそく突破の鍵を見つけた。」

 

 ああ・・・なるほど。

 

 確かにオ―フィスちゃんなら問題ないね。

 

「外にいるレイちゃんに連絡を取りたい。それで突破の方法は・・・。」

 

―――そうだね。計算をすると・・・。

 

――――なるほど、協力する。この街消えると・・・渡やみんな悲しむ。

 

 ハル君と僕・・そしてフィリップ君とオ―フィスちゃんで作戦会議が始まる

 

「ふはははは・・・よし。どうせ出てくるならあいつが最悪だと思うタイミング、そして場所にしてやる。楽しみだよね。ふははははは・・・・。」

 

 ハル君が極めて邪悪な笑みを浮かべている。コヒカエルにとって最悪なタイミングで出てきてやるって・・・うん。本当にえげつないよ。

 

『・・・・・・。』

 

「なあ・・・あいつ、下手な魔王よりも魔王らしくないか?」

 

「そう・・・だね。怒らせなければ本当にいい奴なんだけど・・・。」

 

 翔太郎君の言葉に僕も苦笑するほかない。

 

「あいつも悪魔を泣かせる様な類か。」

 

「あなたがそれを言わないでほしい。説得力がありすぎる。」

 

 ダンテ様の発言は流石に不味いです。

 

――――ああ・・・そうだ。巧君の現在地も確認したけど・・・面白い事になっているよ。生きているし、何故かイッセ―君の家にいる。ついでにキリエって人の説教を受けている。

 

『はい!?』

 

 その途中でフィリップ君が巧の現在地についての検索結果を話してくれた。

 

 一体どうなっているの?

 

―――――――暇つぶしがてら、その経緯も話そう。外の情報もこれで検索できそうだし。

 

 

 

 

 

 




 結論から言うとコカビエルにこの時点で死亡フラグがたちました。(笑)

 多分・・・原作よりもはるかに酷い目にある予定です。

 ハルトは本当にすごいです(遠目)

 さて今回の投稿はここまでです。

 
 また次の投稿で会いましょう!!


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聖なる剣を砕きに行きます。

 大変お待たせしました。

 さて・・・連続投稿第一弾です。

 


SIDE イッセ―

 

 さて、俺の家には教会のメンバーに加え・・・携帯で呼び出した木場達もいる。

 

「飯の代金代わりっていったら難だけど、俺達にも手伝わせろ。」

 

「へえ・・・いいぜ。」

 

『おい!!』

 

 俺が弦太郎に頼むと、何故か弦太郎があっさりと認める。

 

「いいのか?」

 

「いいも悪いも、人手が欲しい。それに木場のこともあるだろ?」

 

「僕の事まで考慮しての返事なのかい?」

 

 すでに木場を呼び捨てにしている辺り・・・かなりの大物だよ。

 

「回収に至っては砕いても問題はない。教会からもそのように依頼を受けている。」

 

 ゼノヴィアも肯定しているし。

 

「はあ・・・いいのかしらねえ?」

 

「教会からしたら保険の意味で砕いても問題ないって言っていたから。それを弦太郎は拡大解釈しているだけだよ。でもまあ・・・いいと思うよ。」

 

 良太郎も木場を見て頷く。

 

「いよいよだな。お前の悲願。」

 

「・・・・・・頑張ってくれ。あの技を実戦で成功させれば、もう・・・君はあの剣を極める事ができる。」

 

「・・・ああ。」

 

「俺も同じだ。」

 

 二人とも修行の成果はあるみたいだね。

 

「姉様と義兄様が行方不明。それも探したい。」

 

 小猫ちゃんも参戦。鋼兄と黒歌が何故か帰ってきていない事を心配しての参戦だ。

 

 アーシアとキリエ姉さんも会議に参加している。

 

「それで・・・なんで俺達までこの場にいるの!?」

 

「エクスカリバーってやつに興味があって来たのはいいが・・・。」

 

 そこに今回は匙と仁藤も参加させたぜい!!

 

「全く・・・イッセ―も強引だぜ。」

 

「まあ、部長と会長にある事を引き受けることを条件に捜索の許可はもらっている。お前達も聞いているだろう?」

 

「・・・・・・それならいいけどよ。」

 

 会長は厳しい方らしいけど、クレアの言うとおり、交渉してみるもんだぜ。

 

 いや、これが本当の悪魔の交渉。

 

 しかし条件がねえ・・・。

 

 俺はサイガを見る。

 

「なっ・・・何?なんか視線に・・・恨みや嫉妬が感じられるけど?」

 

「いえいえ。なんでもありませよ。そう・・な~んでもないっていったら何でもないから。」

 

「?」

 

 この・・・大罪人が。あんなうらやましけしからん事になっているなんて。

 

 冥界一の美少女、あの会長の姉様に惚れられて?

 

 それで冥界で大騒ぎになっているなんて。

 

 ははははは・・・なんだよ。何処のラブコメだよ。

 

 ははははは・・・あーははははははははははは・・・・・・。

 

 うん・・・決めた。

 

・・・・・・絶対に責任取らす。

 

 死んでも無理やり蘇らせて責任取らす。

 

 とっとと堕とされやがれ。

 

『・・・・・・。』

 

 その条件を聞いていた匙と仁藤も同じような視線をサイガに向けていやがるし。

 

「なっ・・何?自分・・・なんか悪い事をしたの?」

 

 サイガは全く自覚していないのが腹立つぜ。

 

 こっそりと他の連中にも手を回しておくように頼まれているしな。

 

 任せてくれ。きっちりミッションをこなします。

 

 まずはキリエさんかな?それに小猫か。

 

 ここを押さえればネロと鋼兄、シスコンな黒歌も同時に抑えられる。

 

 ひひひひひっ・・・逃げ道を塞いでやるぜ。

 

 部長。俺は今から悪魔になります。お任せを。

 

―――――ふふふ・・・これで最大の障害はなくなった。

 

 クレアいわく、外堀を埋めていくのに好都合って、はあ・・・。

 

――――哀れな。相棒をこんな形で攻略していくなんて。

 

―――そろそろあなたにも責任を取ってもらおうかな?私も子供が・・・。

 

―――えっと・・・まだ俺は独身生活を楽しみたいなと・・・。

 

―――何時までそれが持つかな?私の目的はもうすでに分かっているのに?

 

「・・・・・・。」

 

 こいつら、頼むから俺の中でそんな話をするな。はあ・・・

 

「ドライク。いい加減捕食されてくれ。」

 

クレアの事だ。この事もすでに戦略の内なんだろう。

 

 俺の交渉も、クレアが進めてきたことから察するに、クレアと会長、そして部長は最初からグルだった可能性が大だし。

 

 悪いがドライク、諦めてくれ。

 

 もう止める気が失せた。これすらも計算済みだろうけど。

 

―――相棒!?

 

―――ふふふ・・・計算通り。さあて許可が貰ったので・・・美味しく頂こうかな?

 

―――待て・・・待ってくれえええええええええっぇぇぇ!!

 

 あ―聞こえない。聞こえないったら聞こえない。

 

「どうした?なんか変な顔をして・・・。」

 

 まったくリア充共が多くて困るぜ。あれ?涙が・・・。

 

「すまん。俺の中のドラゴンどもが愉快なことになっていてな。」

 

「お前も大変だよな。」

 

 弦太郎の優しさが身にしみるぜ。

 

「なんか分かるかも。」

 

 良太郎に至ってはどうしてか、同意が来ているぞ?

 

「いよいよ動くのね。」

 

 そして、その場にユウナ様まで!?

 

「私も参加させてもらうわ。あの剣に因縁があるから。」

 

 そう言ってユウナ様は動くとともに何かの甲高い音が部屋に響き渡る。

 

「へえ・・・良くなったじゃないの。」

 

 いつの間にか槍を手にしたユウナ様。

 

 同じようにいつの間にか剣を作り出した木場。

 

 二人の武器がぶつかっていたのだ。

 

 速過ぎて見えなかったぜ。

 

「これなら任せてもよさそうね。」

 

「・・・あなたの目的は。」

 

「あなたに聖剣を砕いてもらう事。それだけよ。そう言う意味ではサイガ君と同じ目的ってことになるわね。」

 

「・・・やっぱりか。」

 

 二人は分かりあっている様子。

 

「父様から話は聞いていた。まさかかと思っていたけど、そうか・・・立派になったね。」

 

「私もそっちの武勇はいつも耳に入っているわ。すごいじゃない。」

 

 二人はがっちり握手。あれ?知り合いなの?

 

「サイガ君。彼女は・・・。」

 

 木場はユウナの事を聞こうとするが、止める。

 

「いや・・・信念を共にするのなら問題ない。よろしく頼むよ。あの時、あなたが僕を叩きのめさなければ、このような力を手にすることはできなかった。」

 

 木場は彼女に手を差し伸べる。

 

「ありがとう。そして・・・よろしくお願いします。」

 

「ええ。叩きのめした甲斐がありました。」

 

 ユウナ様もその手を取り、二人で握手。

 

「えっとだ。わりぃ・・・。」

 

「いい加減エクスカリバーと木場の因縁を教えてくれ。一体何がどうなって・・・。」

 

 事情が全く分かっていない二人に俺達は木場がどのような目にあったのか話す。

 

『うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!』

 

 えっとだ。その結果、二人とも号泣して進んで協力してくれる事になったぜ。

 

「みなまで言うな。俺達も力を貸してやる。」

 

「ああ・・・何でも言ってくれ!!」

 

 いや・・・本当に熱いな。ここまでの反応は流石に・・・。

 

『・・・・ああ・・・こいつらもイッセ―と同類か。』

 

 なんだよ!!こいつらが俺と同類ってどういう事だよ?!

 

「本当に無駄に熱くてお人好しって意味だ。まあ・・・俺も少し似ているかもな。」

 

 ネロの言葉に皆が笑う。

 

 お前も十分熱くてお人好しだよ。

 

「じゃあ・・・動こうか。アーシアちゃんとキリエさんは怪我人の介護をお願いします。」

 

 そういえば・・・この家にいる怪我人って誰だ?

 

 俺まだ会っていないぞ?

 

 何か差し入れに行こうとしたらアーシアが代わりに持っていくし。

 

「えっと・・・また紹介します。」

 

 何かあるのか?なんか・・・変な感じがするんだ。

 

 なんかこう・・・久しぶりの奴にあうよな。

 

 会えないはずの奴がそこにいるような?

 

「えっと・・・とりあえず行きましょうか。」

 

 俺達は何故かアーシアに促される形で動き出す。

 

 

 SIDE 良太郎。

 

 さて・・・うまく木場君と一緒に行動できるようになった。

 

 彼は契約をされている。本人が自覚していないうちに何とかしないと。

 

「さて・・・予想通りお前は木場をずっと監視しているな。」

 

 その隣にネロ君がやってくる。

 

 予想通りって・・・言ったよね?どうしてそれが分かったの?

 

「一つ聞かせてくれ。木場にお前達と同じような変な力が見えるが・・・それが何か知っているか?」

 

「えっ?」

 

「まあ・・・俺もちょっとした異能付きでな。あんたとゼノヴィアと同じ力が木場から発せられている。以前はなかったのに少し前からな。おまけに言うと前に学校を襲ってきた怪人と同じだったぜ。もしかして、あいつらって人間と契約するか何かしているんじゃないか?」

 

 嘘・・・。この人イマジンを見破っているのか?

 

 流石に僕もこれには驚いたよ。

 

 イマジンという存在を認識している。そして、その性質を見抜きつつある。

 

―――良太郎。話すべきだぜ?下手な知識がないよりも・・・。

 

「へえ・・・それがあんたの中にいるイマジンってやつか。」

 

 声まで聞こえますか。これは降参するしかないか。

 

――――他にもいるけどね。

 

―――大したあんさんやで。

 

―――すごいよね。こんな形で僕たちの正体に気付くなんて。

 

――――うむ。下々とは言え感心するぞ。

 

「・・・えっと。想像してはいたが、かなりキャラが濃いな。」

 

「ははは・・・そのようだね。はあ・・・。」

 

―――オーナーからも許可はもらっているぜ?何しろ目の前にいるのはギルス。時の力にすら干渉出来る相手故に、知っても問題ないってさ。

 

「ギルス!?」

 

 それってこの世界の神話にもなっているあの神殺しのアギトの一種?神話でも不完全故にすぐに死ぬって。

 

「色々あって完全体のギルスだ。ついでに言うと俺達のメンツの中にアギトが二人いる。」

 

「アギトがって・・・あっ。」

 

 言われてみれば心当たりが二人程いる。

 

「そうか。みんなの中心に立っている彼と・・・聖女か。」

 

 特に聖女な彼女は力という意味では強い。そして彼。多分戦闘力だけなら・・・。

 

「ずいぶん勘がいいな。それで、あんたは何もんだ?教会に所属しているけど何か違う気がする。なんかこう、違う世界にいるような・・・。」

 

 違う世界にいるような・・・か。なるほど、彼は素晴らしい目をしている。

 

 ははは・・・負けたよ。本当に。

 

「・・・アギトって無駄に鋭いか。いいよ。信じてもらえないかもしれないけど僕も君に事情を話す。でも・・・。」

 

 僕はこの世界で貴重な協力者を得ることになりそうだ。

 

「この話を知るって言う事は、君はこの世界の時間の流れを守る戦いに巻き込まれるってことになる。その覚悟はいいかい?」

 

「ハッ・・・それこそ今更だ。」

 

「そうか。なら話すよ。そして、彼を気にかけて欲しい。何しろ彼はイマジンと契約している。それも本人が気付かないうちに。このままじゃ・・・彼の時間が危ない。」

 

 その覚悟に笑みが消える。

 

 あれ?おじげついたの?

 

「・・・・・・むしろ話せ。あいつの危機なら余計にな。」

 

 むしろ話せって・・・はあ。めちゃくちゃ熱いよ。君。

 

「それには姉さんがどういう存在かも教えることになるよ。」

 

 彼は教会で禁断の存在とされるギルス。でも、悪じゃない。むしろ危険が無いかを確認するために僕に接触してきたのだろう。

 

 むしろ皆のためか。

 

 十分君も人がいいよ。

 

 良いだろう。信じてみよう。

 

 そうでないと始まらないこともある。

 

「ゼノヴィア姉さんはこの世界の特異点。失ってはいけないこの世界の時間の要。そして僕の仲間がこの世界で生まれ変わった存在なんだ。」

 

「特異点?生まれ変わり?この世界だと?それじゃまるでお前は・・・。」

 

 これは誰にも話していない。その理由は二つ。

 

一つはまず普通の相手なら信じてもらえないから。

 

 もう一つは僕という存在の特異性を知られるのは出来る限り避けたい。

 

 ゼノヴィア姉さんを守るためにも。

 

「・・・僕は外の世界の出身。君たちがいう異世界で一度死んで、姉さんを守るためにこの世界に生まれ変わってきた。いわゆる転生者さ。そして、彼らは僕の仲間。姉さん憑いているのもかつて生まれ変わる前に契約していたイマジン・・・仲間なんだよ。」

 

「・・・これはじっくり腰を据えて話す必要がありそうだな。一から説明を頼むぜ。」

 

 僕は彼に話せるだけの事情をすべて話す事になりそうだ。

 

 自分で言うのも変だけど、どうして僕の話を聞いてくれるのか?

 

 頭がおかしいと思うような事なのに?

 

「それだけの根拠がある。普通なら信じられない事でも・・・こっちが目で見たモノを信じないわけにはいかねえだろ。」

 

 君のその力の目覚めは、それまで気付く事がなかった新しい世界の法則を知ることにつながるということだね。

 

 それってつまり、そのまま力が発展していけば・・・。

 

 想像もしたくない事に気づいてしまったよ。

 

 彼は自分の力の特異性にまだ気づいていないのか?時の流れにも踏み込める神のごとき異能に?

 

 全く・・・アギトの力の可能性か。まさに神のごとし。

 

 でもその力をこんな形で使うのだね、君は。

 

「気付いたけど、君って厄介事に自ら首を突っ込む性質でしょ?」

 

「ああ。ったく・・・なんでか分からねけどな。」

 

 どうやら・・・イッセ―君以外にも彼ともいい友達になれそうだ。

 

 素直じゃないのと皮肉屋なのがたまに傷けど・・・いい奴だし。

 

 僕は拳を差し出す。

 

 最初は分からなかった様子のネロ君だけどすぐに思い出す。

 

 それは弦太郎がやってくれた友達の証。

 

 それを二人でやる。

 

「話が本当なら予想外の敵が出そうだな。レイダ―。一応待機しておいてくれ。」

 

――――あいよ。んん?トルネどうしたの?あっ・・・いやね。

 

――――へえ・・・だったら私も。ご主人様のために待機しておくよ。なんか今度は面白い壁を越えて行けそうな気がするんだ。

 

 えっと・・・。

 

 喋るバイクと念話で交信する程度じゃ僕はもう驚かないよ。一度死ぬまで色々あり過ぎましたから。

 

 孫と一緒に戦ったり、子供に退行しちゃったりそりゃもう・・・。

 

 転生なんてものも体験しましたし。赤ちゃんで前世の自我があるって本当に羞恥プレイもいいところだ。

 

 あまりに理不尽な目にあってきたのを思い出すと・・・涙が出てくるよ。

 

「ホントお前って苦労してきたんだな。」

 

「生まれ変わってもそれだけは変わらない。それに関しては開き直ったよ。」

 

 さて、ここからだ。イマジン達の向こうにはおそらく奴がいる。

 

 すべてを喰らおうとするあいつが。

 

 

 




 さて・・・ここでネロが一足先に良太郎の事情をしることになります。


 彼の力はそれだけ大きなものです。


 それともう一つ。

 ついにサイガの最終防衛ラインの要であるイッセーが落とされました(笑)

 こっちはもう・・・諦めるほかないでしょう。


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現れるはすべてを喰らう者。

 この話で・・・おそらくいままでの話の中で最強の敵が現れます。

 その脅威は・・・半端ではありません。


SIDE イッセ―

 

 

 さて、俺達は今バラバラになって街を捜索して集めた情報をもとに集結していた。

 

 フリードの奴も動いているという情報も入っている。

 

 彼がエクスカリバー。それも天閃の奴を持っているとも。

 

 そして教会の連中を次々と屠っているのも聞いている。

 

 そのため、囮捜査をすることになったのだ。

 

「俺が神父って、色々な意味で似合わねえぜ。」

 

「まあまあ・・・。」

 

 このメンツの中で一番頑丈なネロを神父の姿にさせたのだ。

 

 いや・・・実際素でも恐ろしいほどネロって頑丈だよ?素の鋼兄と互角はあるって。

 

 マグナム喰らっても強烈なパンチ程度のダメージだし。

 

 四分の一だけ悪魔ってすごいよね?

 

 そのあと転生しているとは言え・・・どんな身体してんの?

 

「お前ら。あとで覚えておけよ。」

 

 そんなあいつだからこそ囮にしたんだ。

 

「釣れるかねえ?良太郎に憑いている奴が名乗りでよく使う単語だけど。」

 

 あえてバラバラに行動しないように良太郎がみんなに言ってきた。

 

 どんな相手がいるのか分からないからと。

 

 それに対して、ユウナとサイガ、そして意外にもネロまでもが賛成。弦太郎も分かったと言ってきた。

 

 良太郎の警戒に間違いはないという。それで何度も助かったらしい。

 

 イリナもゼノヴィアもそれに従っているあたり、良太郎がこいつらをコントロールしているのが分かるぜ。

 

 まあ本人は確認することがあるからって、現場に来るのは遅れているけど。

 

 そして・・・アーシアの予言。

 

 アーシアが「すべてを喰らう者」に気をつけてと言ってきたのだ。

 

 あの予言はこっちにとって十分説得力がある物だ。アーシアの力は当たる。本人は当たらない方がどんなに幸せかと嘆くくらいの脅威が迫っているらしい。

 

 皆・・・気合いを入れている。

 

 そんな時だった。

 

「ひゃはははははは!!いましたよ?神父様が!!」

 

 現れやがった。フリードの奴が。

 

 そしてネロに斬りかかって。

 

「へっ?」

 

「はあ・・・まったくよお・・・お前さんもう少し警戒しろよ。」

 

 それをアクセルクイーンで受け止めていた。

 

「あなたは・・・あの糞野郎の連れじゃありませんか!!?」

 

「悪かったなくそ野郎で。」

 

 多分それは俺のことだろうな。

 

「げっ!?ギルスだけでも厄介だというに・・・アギトまで。」

 

「ギルス?アギト?」

 

「それって神話のあれよね?禁断とされた神殺しの・・・。」

 

 ゼノヴィアとイリナがその言葉に反応している?

 

 馬鹿なのにこいつら・・・アギトの事を知っているのかよ。

 

「どこにいる?そいつらも友達になりてえぜ!!」

 

 弦太郎。お前は全くブレねえな。

 

「いやいやお兄ちゃん。神殺しのアギトと友達は流石に・・・。」

 

「教会からは見つけたら即滅するようにって・・・。」

 

 即滅って・・・。

 

 はあ・・・こいつらにアギトの事知られるのは避けた方が良いな。 

 

 教会にとって存在そのものが厄介なのかねえ。

 

 俺達って・・・。

 

 ネロもやれやれと肩をすくめているし。

 

「そこんとこ俺は納得できねえぜ。アギトって言うのはただの力に過ぎねえのに。少なくても分かり合えるんだろ?だったら友達になれるぜ?違うか?」

 

「えっと・・・。」

 

「まったく、異端な考えだ。だが、それがお前らしい。」

 

『・・・・・・。』

 

 弦太郎。お前は本当に核心ついてくるな。

 

「・・・・・・。」

 

 あれ?そんな俺達を弦太郎は黙って見ているぞ?

 

 まさか・・・怪しんでいるのか?

 

「そのエクスカリバー砕かせてもらうぞ。」

 

 木場が殺気だった様子であらわれ、その注意がそれる。

 

「へっ・・・ちょっと・・・なんで教会の連中と手を組んでいるのですか!?」

 

「わりぃ・・・こいつは俺のダチなんだ。幼馴染ってやつでな。」

 

「そんな繋がり聞いていませんよ!?」

 

 まあ・・・世間って狭いよね。その気持ち少し分かるわ。

 

「・・・だったら、こっちも助っ人を用意してあるのです。北崎さん!」

 

「へえ・・・面白そうじゃないか。」

 

 そこに現れたのはフリードと同じくらいの年齢、そして華奢な体格をした少年だった。

 

「少しは楽しめそうだね。ふふふ・・・ふはははははははは!!」

 

 そいつは・・・巨体を誇る灰色の化け物に姿を変化させる。そして、同時に周りから無数のはぐれ神父達が現れる。

 

「へえ・・・素晴らしいパーティーになりそうだぜ!こいつの実戦での良いテストになる。」

 

 ネロがアクセルクイーンとローズダブルを手にする。実戦でこの二つを試すのか?

 

 前もおかしかったのに、そこからさらに冥界の技術によってよりありえない武器になったあの二つを?

 

「木場。雑魚は俺が・・・蹴散らす。」

 

「ああ・・・おもいっきり引きまわしてやって。そのありえない武器を。」

 

 木場は少しだけ笑う。笑みその物は獰猛だったが、笑うだけの余裕はあるようだ。

 

「ああ・・・振り切るぜ!!」

 

――――ジェット・・・アクセル!!

 

 その音声と共にアクセルクイーンの反対側から高温の炎が噴き出す。まさにジェットエンジンのごとく。

 

 それによる爆発的な加速で、ネロは瞬きする間に十メートルを軽く超える距離を移動しながら炎を纏わせた剣を振るっていた。

 

 その一閃だけで、炎の嵐が巻き起こり四十人程いたはずのはぐれ神父共がふっ飛ばされていく。

 

 悲鳴を上げらず、燃えながらみんな倒れたよ?

 

 たった一撃で。

 

「・・・・・・なんですか?それ?」

 

 そんなネロに向けて唖然茫然のフリード。

 

「ジェットエンジンの力を搭載した普通の剣だ。さっきの出力はたったジャンボジェット1.575機分。その程度だから気にするな。」

 

「・・・あなた。今の説明が色々と可笑しい事に気づかないのですか!?」

 

 分かる。

 

 でもツッコまないもん。スル―しないときりがない。

 

「おいおい。これにツッコミを入れたらきりがないぜ?これのギミックはまだこれから・・・・・・。」

 

「まだあるのですか。」

 

 ネロの奴。あの武器の無茶さに最初には驚いていたけど・・・たった一時間で自在に使いこなすようになっていやがった。

 

 どういう才能してんの?

 

「・・・はあ・・・いいね。通常の加速機能以外に色々とできるようになったぜ。」

 

 すでにあれって剣と言っていいの?

 

「・・・参りましたね。雑兵とは数で攻めたかったのですが。ここは逃げた方がいいですかね?」

 

 フリードはやれやれと言わんばかりだが、何かに気付いた様子だ。そして笑う。

 

「いや・・・まだ楽しめそうです。」

 

「生きが良い連中がいっぱいいるな。」

 

 その場にもう一人現れる。

 

 その男は・・・毛皮の様な服を身に纏った壮年の男だった。

 

 その男が纏う気は・・・尋常じゃない。

 

「牙王先生まで来てくれるなんて感激ですよ。」

 

「フッ・・・すべてを喰らってやるだけだ。」

 

 何?今の言葉・・・。

 

 アーシアの予言にあった。すべて喰らう者って・・・まさか・・・。

 

「行くぞ。ゲイル。」

 

「ははははは・・・食べがいのある連中だ!!」

 

 その肩に、デフォルメ化したワニとコブラ、そして亀を組み合わせたような化け物が乗っている?

 

「それと・・・情けない連中もこうしたら使い甲斐があるだろう。」

 

 そいつは手から銀色のコインを無数に出し、それをなげる。それは倒れたはぐれ神父の身体に現れた自販機のコイン挿入口みたいな部分に吸い込まれる。

 

 それが入った瞬間、はぐれ神父たちは立ち上がる。

 

 まるでゾンビのように・

 

「あえて寄生型にした。欲望のおむくまま神すら・・・喰らいつくせ。」

 

『があああああぁぁぁぁ!!』

 

 その言葉と共にはぐれ神父達の身体がメダルの様な物に包まれ、そこから白いボロボロの包帯が巻かれたなにかが現れる。

 

「ヤミ―にするなんてなんて素敵な再利用ですか!!」

 

「それとフリード。あの小僧は生かしておけ。」

 

 牙王ってやつの視線が木場に向けられる。その言葉の意味を少し考えたあいつ。

 

「へえ・・・そういうことですか。いいでしょ。こっちも楽しませてもらおうじゃないか。キャンサー!!」

 

 フリードの背後に黄金のカニみたいな怪物・・・ボルキャンサーが現れる。

 

 手には黄金のカニの紋章が刻まれたカードデッキ。

 

「禁手化(バランスブレイク)・・・変身。」

 

 そして、あいつはボルキャンサーの力を纏う。

 

「きゃははははははは!!これにエクスカリバーの力。最高な組み合わせですよ!!」

 

 召喚機の禁手化をいきなり使ってくるか。

 

 その状態で凄まじい速度で斬りかかってきた。

 

 それを辛うじて受け止めようとするけど・・・手にした剣が粉々になって木場が吹っ飛ばされた。

 

 その剣閃が見えないほどに加速されている。

 

 召喚機の禁手化による身体能力、攻撃力と防御力の倍化。

 

 それに天閃の力による加速が合わさった結果だろう。

 

 木場の強みは騎士の転生によって得られた速さだ。

 

 その強みがまったく通用しない。

 

「さあさあさあさあさあさあさあさあさあ!!」

 

 そして、フリードが勢いそのままにエクスカリバーを振り下ろした。

 

 だが、それは・・・木場の腕にいつの間にか出現していた灰色の円盾に阻まれる。

 

「死ぬわけにはいかない。まだ・・・目的は達成できていないからね。」

 

 木場の顔に文様が入る。

 

「だからこっちも・・・本気で行く、うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

そして・・・木場の身体が変わった。

 

 灰色の鎧の様な体に馬の頭を持った怪物に。

 

 って・・・なんだあの姿!?

 

「へえ・・・僕と同類か。君もオルフェノクだったなんて。」

 

 北崎ってやつが同類という。なんだ?オルフェノクって?

 

「お前な。だが・・・それくらいしないと対抗できないか。」

 

「今の君ならその方が力発揮できそうだし。」

 

 そして、ネロとサイガは驚いていない様子からすると・・・知っていたな。

 

 特にネロなら、逆に知っていないとおかしい。

 

「うおおおおおおぉぉぉぉ!!」

 

 そして力任せにフリードを弾き飛ばす。

 

「ちょっ・・・すごい力ですね。オルフェノクになったらパワータイプですかい。それでナイトって反則じゃありません?」

 

 身体能力・・・とくにパワーが飛躍的に上がっている。

 

 盾のおかげで防御も上がっているし・・・。

 

 これなら対抗できるか?

 

 でもその前に・・・。

 

「後で説明してもらうぞ?」

 

「ああ・・・。だが、その前にこの牙王ってやつを何とかしねえとな。変身は出来ねえし。」

 

「しょうがねえ。付き合ってやるよ。」

 

「ほう・・・いいのか?アギトに変身しないで戦うなんて・・・。」

 

 だっ・・・だからその名を出すな!!

 

 教会の連中に取って俺達はヤバいんだぞ!?

 

「だったら俺も付き合ってやる。」

 

 その隣に、弦太郎まで?

 

「こいつ・・・何か止めないとヤバい気がする。特に木場関連で。」

 

「・・・お前。」

 

 もう一度言おう。弦太郎は馬鹿だ。でも・・・核心をよくつく。

 

 あの牙王が動きを止めたところをみると・・・それは図星だったらしい。

 

「いいねえ・・・喰らい甲斐がある連中ばかりだ。」

 

 牙王の腰にベルトが現れる。

 

 それに金色の電車のパスを当てる。

 

 すると・・・黒に電車の線路をモチーフにしたような体に銅色のアーマーが装着。顔に現れたのはワニのような口で、それが開いて仮面になった。

 

こいつも変身を・・・。

 

「基本フォームのみでいいのか?」

 

「今回はこれでいく。お前のおかげで基礎能力がグリード化している上に、偶然得られたあれもどれだけ通用するのか試してみないとな。」

 

 肩の上の変なワニの言葉に牙王は笑う。

 

 あいつが地面を思い切り踏みつけると・・・それだけで地震が起き、亀裂が走った!?

 

 鋼兄といい勝負のパワーをしているというのか?

 

「ふん!!」

 

 こいつが空を叩くと・・・空間に亀裂が!?

 

 その亀裂が崩壊と共に爆発のような衝撃が起きて・・・殴られた方の地面の空間が粉々にふっ飛ばされた。

 

 その惨状はまるで・・・大規模な地滑りが起きたような惨状になっているぞ?

 

「グラグラの実か。これは面白い。」

 

 なんだ・・・こいつは?

 

――――出し惜しみしたらだめよ!!私の力を使って!!

 

――――アーシアが警告するわけだ。こいつ・・・少なく見積もっても生前の我らと互角か・・・。

 

 俺の中の二体が警告を発する理由も分かるぜ。

 

 アギトの本能ってやつが・・・目の前のこいつに対してさっきから最大級の脅威と警告を送ってくれているから。

 

 なんて奴だ。まさに・・・化け物じゃないか。

 

 俺の手にクレアのデッキが出現する。

 

 それと共に腰に現れたベルト。それにデッキを挿入して俺は変身する。

 

「変身!!」

 

 龍騎に。

 

「仕方ねえ・・・この姿で本気を出すぜ。」

 

 ネロもデビルトリガ―を発動。背後に蒼い悪魔が現れる。

 

「タイマンじゃねえが・・・行かせてもらうぜ!」

 

 そして弦太郎もフォーゼに変身。

 

「僕も参戦するよ。これは危ない。」

 

「ええ・・・。まさか牙王が来るなんて思いもしなかった。単独だから討伐のチャンス・・・と言いたいところだけど・・・かなりきついわ。」

 

 サイガとユウナ様まで参戦?いや・・・他のみんなまで?

 

 それと牙王って・・・知っているのですか?

 

「三界をまたぐ最悪の次元海賊。人間のはずなのに・・・人間とは思えない常識はずれな力を持って、好き勝手に暴れ回っている男よ。噂では異世界とも、そして時間すら超えてきた男と言われているわ。未確認の情報だけど、彼はすべてを喰らう巨大な船を所有し・・・三人の鬼をお共にしていると。」

 

「こっちも聞いた事がある。時を翔る魔人。すべてを喰らう魔獣と。」

 

 ゼノヴィアまで・・・。

 

「ははは・・・こんな怪物と合うなんて思いもしなかったわ。主の試練にしては過酷。」

 

 イリナも軽く身体を震わせている。

 

 おいおい・・・なんじゃそりゃ。聞くからにヤバいやつじゃねえのか?

 

「なんでそんなヤバい奴と戦う事になるんだ?」

 

「ビビるな。ピンチこそ・・・チャンスだ!!」

 

「お前な・・・だが、今回はそのポジティブさを見習おうかい!!」

 

 匙と仁藤もビビりながらも立ち向かう気でいる。特に仁藤・・・お前なんかすごいな?

 

 まるでこう言った逆境に慣れている様な気が・・・。

 

「俺達も見習うべきだな。」

 

 でもいい発破になる。そうだな。ビビっても始まらない。

 

 あいつが腰についてある四つのパーツを組み合わせると・・・ノコギリの刃を持つ剣へと変わる。

 

 それを肩に担ぎながら奴は静かに言った。

 

「来い・・・・・・全員俺が喰ってやる。」

 

「みんな・・・いくぞ!!!」

 

 変身した牙王と俺達は戦うことになった。

 

 

 SIDE 良太郎。

 

 まいったね。急いでみんなの元に向かおうとしたら嫌な相手と再会した。

 

「久しぶりだな。」

 

 こいつが出てくるなんてね。

 

 ネガタロス。かつてファンガイアとイマジンの一派を率いた奴だ。

 

「俺は今面白い奴と契約していてな。特異点なのがたまに傷だが、それでも面白い奴だぜ。」

 

 特異点?それでいて面白いって・・・。

 

「牙王か。」

 

「そうそう。あのおっさんだ。しかも同じお前達に倒されたというのだから笑ったぜ。」

 

 あいつは右の角を撫でていう。

 

「今度こそ時は俺達の物だ。あの二人も鬼繋がりで仲良くなれたしな。」

 

「他にもいるの?」

 

「今回はいねえ。だが・・・お前を足止めさせてもらうぜ。」

 

 彼の周りに四体のイマジン・・・赤い目と左腕のかぎづめが特徴のモ―ルイマジンだ。

 

 ネガタロスの腰にベルトが現れる。

 

「さあ・・・単独でどこまで・・・。」

 

 こっちが変身する前に、モールイマジンの一体が襲いかかってくる。

 

「変身などさせない。お前は単独なら極めて弱い・・・・・・。」

 

 その攻撃をうまく足を払い、その勢いで相手をよろめかせながら投げ飛ばすのを見せたらネガタロスは黙ってしまう。

 

「はず・・・?」

 

 そしてもう三体が用心深く囲み、体をわざとよろめかせ、それを隙と見て一斉に襲いかかってくるけどそれをしゃがんでブレイクダンスしながらの蹴りでまとめてふっ飛ばす。

 

「こっ・・・この・・・がは!?」

 

 投げた最初の一体が爪を振り下ろす。それを動かないで待ち受ける。まあ・・・キンタロスのように体で受け止めるのは流石に駄目だから爪を拳で殴り、そのまま張り手でふっ飛ばす。

 

 後ろから二体斬りかかってくるけど、それを素早いフットワークで横に一歩だけ避け、一体に手刀を叩き込み、その勢いのままもう一体を回し蹴りで蹴倒す。

 

「・・・・・・・・・だろ?どうなっている?!」

 

 一人でイマジン四体の襲撃を流した事に驚いているよね?

 

 この程度今更驚く事じゃないって。

 

「転生してもその経験がそのまま残っているって結構大きいよ。」

 

 これでも僕・・・電王としてかなりの戦闘経験を積んでいたんだ。一度ベルトとパスを返却したのに、次から次へと騒動はやって来て、そのたびに闘うことになるし。

 

―――――良太郎の強さにお前が泣く事になるで!!

 

 その戦闘経験と、日ごろの準備が大切だということで、特訓を重ねた甲斐があるよ。おかげで契約しているイマジン達の戦い方を生身でも完璧に再現できるようになってしまった。

 

―――――下々にしてはやるではないか。

 

みんなの戦い方を組み合わせたらそうそう負けることはない。

 

 その結果、変身時の各フォームの際の動きもよくなった。

 

「もう変身しなくても大抵の事は何とかなるよ。」

 

 十人くらいのテロリストによるジャンボジェットのハイジャックくらいなら生身で何とかできる自信があります。

 

―――――最初は俺にやらせろ!!

 

「そうだね。変身。」

 

 僕は腰にベルトを装着し・・・それに黒いパスを当てる。

 

――――ソードフォーム。

 

 その言葉と共に赤い仮面をつけた電王・・・ソードフォームに変身する。

 

 僕の中にいるモモタロスが変身した勢いそのまま、見栄を切る。

 

「俺・・・異世界より参上!!」

 

 今日もモモタロスの決めポーズが決まる。いい感じで年季が入ってきているし。

 

 それに異世界って・・・ねえ。

 

 僕の手で四つのパーツの武器・・・デンガッシャ―を剣へと組み合わせながらモモタロスはネガタロスの方を見る。

 

「お前のミスは良太郎の不幸を舐めていたことだぜ?常にそれに備えないといけない状況になったからな!!」

 

――――それって絶対に褒めていないよね!!

 

 少なくても不幸であることを褒める奴はいない。絶対に!!

 

「そのおかげでこいつは・・・いや、俺達はものすごく強くなった。その強さを見せてやるぜ!!」

 

 先端から赤い刀身伸び、準備は完了する。

 

「ぐっ・・・なんだよそりゃ・・・。」

 

 僕の予想外の成長に流石のネガタロスも焦っているね。

 

「ちい・・・あまりあいつを調子つかせるな!!」

 

「残念だが俺は・・・いや俺達は最初っからクライマックスだぜ!!」

 

 何時も通りのセリフを叫びながら僕とモモタロスは剣を手に駆けだした。

 

 何故最近は俺でなく俺達って言う様になったんだろう?それだけは謎だけど。

 

 

 




牙王に食わせてはいけない悪魔の実を食わせてしまいました。

 あれのせいでもう手がつけられません。

 そして、良太郎が強くなった理由があきらかになりました。

 もう・・・不幸が逆に彼を強くした格好です。


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舞い降りる闇の翼。

ここから急展開。オリジナルの話がでてきます。

 此処であの契約モンスターが登場します。


SIDE イッセ―。

 

 まず初めに言いたい。

 

 本当にこいつは怪物だ。

 

「フン!!」

 

 剣をまるで叩きつけるように振るってくる牙王。その動きは荒々しいのに、力強い。

 

「隙ありだぜ!!」

 

 ネロが右腕の悪魔の腕を巨大化させて掴もうとするが・・・。

 

「その程度か?」

 

 それをあいつは片手で止めやがった。

 

「ちぃ・・・ダンテと鋼兄以来だぜ。受け止められるのはよお!!」

 

 あいつの右腕・・・相当な力だぞ?それを片手で止めるなんてあいつは一体どんな力をしていやがる!?

 

「うおおお!!」

 

 ―――Sword Vent!!

 

 手にドラグセイバーを出現させ、斬りつける。

 

 剣はあいつの身体を捉えたのだが・・・。

 

「がっ!?」

 

 命中の瞬間・・・突然弾き飛ばされた。

 

 全身から発せられる振動みたいなものによって。

 

 グラグラの力って言っていたけど・・・。

 

「無駄だ。その程度でこの俺に・・・。」

 

 弾き飛ばされた所に無数のヤミ―が襲いかかってくる。こいつらも早く片付けないと。

 

 どんな欲望を元に生まれたのか分からないけど、成長したら・・・。

 

「こいつらの動きを止めればいいよな?」

 

 匙は腰にベルトを出現。

 

 そこにある指輪を指し込み発動。

 

――――――スッ・・・スッ・・・スパイダー!!

 

 肩に蜘蛛の頭が現れる。

 

 その肩から発射された無数の糸がまるで網のように張り巡らされ、ヤミ―達を縛り上げる。

 

「それに・・・黒い龍脈(アブソリューション・ライン)を組み合わせて!!」

 

 その糸が黒くなっていき、さらに固くなる。

 

 そして・・・ヤミ―達の動きが鈍くなる。

 

「こいつら欲望ってやつで動く。ならそれを吸い出せば・・・。」

 

 うまい。ヤミ―達の動きを封じつつ、成長を止めたのか。

 

――――――ウリトラの力か。それに、あの指輪の力が組み合わさったことで恐ろしい事になったな。

 

――――確か、後と三つあるのよね?ウリトラの神器って?

 

――――――ああ。四つそろえば神滅具に匹敵する。

 

 だが、全員を封じた訳じゃない。

 

 別のヤミ―がトカゲのように成長した状態で、地面の下から匙を急襲。

 

「おいおい。相棒はやらせねえぞ!!」

 

――――――バッババ・・・バッファロー!!

 

 肩に猛牛を召喚させた仁藤が凄まじいタックルを繰り出し、ふっ飛ばす。

 

「まだお前は変身できない。だから無茶すんな。」

 

「おっ・・・おう。助かった。」

 

「まあ・・・俺も同じだが・・・。おっと!?」

 

 仁藤に別のヤミ―が迫ってくる。陸亀型のヤミ―。

 

 手にした銃・・・ミラージュマグナムで撃ち、牽制をするが弾丸が弾かれる。

 

「おいおい・・・これは・・・。」

 

 打ちながら突進してくる亀型のヤミ―。それに吹っ飛ばされながら仁藤は理解する。

 

 固い甲羅の傷がすぐにふさがることに。

 

「固い・・・だけじゃない。次々と治っているというのか?」

 

 目の前の亀型ヤミ―の防御の秘密を。

 

「なるほど・・・理解したぜ。んん?」

 

 それと同時だった。

 

 首にあいつの神器が現れる。

 

 その神器は告げる。

 

――――――ラーニング・ザ・タートルディフェンス。

 

 そして亀の甲羅の様な指輪が生まれる。

 

「なんじゃこりゃ?」

 

「よそ見とはいい度胸だね!!」

 

 そこに北崎が襲いかかってくる。

 

 とっさに仁藤は生まれた指輪を使用。

 

―――――――・・・・・タートル。

 

 すると仁藤の前に亀の甲羅の形をした半透明の壁が出現。

 

 北崎の攻撃を弾き飛ばした。

 

「なんだい?でもこの程度の結界・・・。」

 

 北崎が怒りのままにその盾を殴り続け、破壊しようとする。

 

 亀裂までは走るが・・・すぐに再生してしまう。

 

「・・・再生する盾?しかも再生するたびに固くなっている?」

 

「あなたの相手は・・・。」

 

「私達だ!!」

 

 その北崎にサイガとユウナが手にした剣と槍を手にかける。

 

 阻もうとした二体のヤミ―をそれぞれ一閃で斬り伏せたよ。

 

 そして、突進の勢いのままにかける。

 

 その一撃に怯み、反撃をしようとするが・・・。

 

「ちょっ・・・なっ・・・反撃できな・・・。」

 

 2人がまるでダンスを踊っているかのように背中合わせに変わりあいながら次々と攻撃してくるのだ。

 

 あいつは見た目からして重装甲タイプなのだろう。動きはそれなりに俊敏だが、あれは何もできない。

 

 そして二人が同時に攻撃を仕掛けた瞬間であった。

 

「舐めないででもらおうか!!」

 

 あいつの身体から灰が爆発したかのように飛び散り、攻撃が外れる。

 

「こっちの姿でやらせてもらおう。」

 

 二人の後ろには重装甲を脱いだ北崎の姿。鎧を脱ぎ、灰色に骨の様な意匠が付いたシンプルな姿をしている。

 

 その動きは早いぞ!?

 

 眼に留らぬ速度で二人に殴りかかる北崎。でも・・・。

 

 サイガはその攻撃を紙一重でかわす。

 

 ユウナに攻撃した瞬間・・・彼女の姿が無数の灰色の鳥となってかわされる。

 

――――ウィッチタイム。

 

 そして、次の瞬間ユウナの姿もまた消える。

 

 耳に入るのは聞き取れないくらい多くの打撃音。そして・・・二人が唐突に現れる。

 

 吹っ飛ばされる北崎と平然と立つユウナ。彼女の傍の空間に穴が開いており、そこから巨大な腕が出現している?

 

 腕を召喚しているのか?

 

「ぐっ・・・何と・・・君も加速能力を?」

 

「ちょっと違うけどね。魔女の奥義の一つよ。この子の召喚も含めてね。」

 

「へえ・・・そっちの彼も僕の動きを見切ったようだけど?」

 

「一応・・・これでも魔戒騎士なので。」

 

 眼にもとまらない動きをサイガはすべて・・・対応していた。あいつの勘って奴か?

 

 勘にしては対応が具体的で、適切すぎる。

 

 まるで誰かの戦闘経験値をそのまま受け継ぎ、無意識のうちに発動させているような。

 

 一方仁藤は出現し続けている亀型の盾を見て唖然としている。

 

「・・・これが・・・巨獣の模写首輪の力なのか?」

 

 茫然とする仁藤に迫ってくるヤミ―達。でもその盾が行く手を阻む。

 

 固い。そして広範囲に攻撃を防いでいる。

 

「仁藤ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 怒声をあげる匙。彼の左腕には青の巨大な蛇の頭がついている。頭の大きさは匙の頭より一回り大きいくらいだ。そこから青い尻尾の様な物が伸びている。

 

「おう。分かったぜ相棒。」

 

――――カメレオン!!

 

 仁藤の右肩にカメレオンの頭が出現。そこから舌が伸び、近くの壁に張り付いてその場から離脱する。

 

 それと共に匙は・・・もう一つの神器を発動させる。

 

 確か名前は巨竜の顎(リヴァイアサンズ・アギト)

 

―――――バキューム!!

 

 龍の頭の口が開き、吸い込み始めた。

 

 ヤミ―達ですら全身をセルメダルに分解させながら・・・吸い込まれていったのだ。

 

 ヤミ―だけじゃなくて周囲の瓦礫ごと吸い込んでいる。

 

 残ったのは寄生されていたはぐれ神父だけ。

 

 なんて神器だ。まさか・・・すべて飲み込むって神器じゃ・・・ないよな?

 

―――なんで、三大巨獣の神器がここに二つ揃っている!?

 

―――――三大巨獣?確か神が創造した最も強力な三体の生物だったわよね?神すら持て余して封印されたって・・・。

 

―――――あいつら・・・神滅具クラスの力を所有している事にきづいていないのか?三大巨獣はそれだけ危険な存在なのだぞ?我らと匹敵するくらいの・・・。

 

 えっ?あいつらが持っている神器ってそんなにヤバいの?

 

「ほう・・・それは面白い。それを奪うのも一興か?」

 

 その話を聞いた牙王が動き出す前に・・・。

 

―――――――ランチャー

 

――――――レ―ダー!!

 

 左腕にパラポラアンテナ、左足に・・・ミサイルランチャー!?

 

 左足から放たれるミサイル。

 

「こしゃくな!!」

 

 出鱈目な起動で飛んでくるそれを牙王は剣で切り払う。そこにゼノヴィアが斬りかかる。

 

 破壊の聖剣の力を発動させた一撃だが・・・剣で受け止めた牙王は全く動じない。

 

「ふん・・・その程度の力で倒せると思ったか?」

 

「思っていないさ。イリナ!!」

 

「あいよ!!」

 

 鎖のように変化させた擬態の聖剣で牙王の腕に巻きついたのだ。

 

 その隙に弦太郎が腰のベルトのスイッチを交換する。

 

―――――ビート オン

 

―――――ウインチ オン

 

 右足にスピーカー、左腕にウインチが出現。

 

 左腕からフックの付いたウインチが発射され、それが牙王のもう片方の腕を封じる。

 

「そしてこれもだぜ!!」

 

 右足のスピーカーから強烈な音が流れ・・・。

 

「ぬうおおお!?」

 

 その音に牙王の動きが止まる。

 

 なんだあのベルト。スイッチを交換することで別の機能が?

 

「くそ・・・やかましい!!」

 

 それに怒ったのだろう。牙王は地面を踏みつけるとともに足元の地面・・・いや正確には足元の空間が崩壊。

 

 それと共に当たりに衝撃波が撒き散らされ、皆が吹っ飛ぶ。

 

「ぐっ・・・だったら・・・。」

 

―――――スピーカー オフ アンカー、オフ

 

 吹っ飛びながらもスイッチを交換する弦太郎。

 

―――――ポッピング オン

 

―――――チェーンソー オン

 

――――――チェーンアレイ オン

 

 って今度は右足にチェーンソー、左足がホッピング?そして、右腕に鎖につながった棘付き鉄球!?

 

 そして吹っ飛ぶ衝撃を左足のホッピングで壁を蹴ることでいなして接近。

 

 不規則に飛びながら横回転しながら鉄球を振り回す弦太郎。その動きがあまりに不規則で牙王も捕えられないでいる。

 

 頑丈な体でもあの鉄球はそれなりに痛いらしく、牙王が呻く。その上接近しようとしたら右足のチェーンソーによる薙ぎ払いがまっている。

 

 あれは・・・痛そうだな。

 

 あれが弦太郎の戦い方か。どれだけのスイッチがあるか分からないけど、それを状況に合わせて組み合わせて戦う。スイッチによって戦い方が変わるから流れを変えるのに適している。

 

「ちい!?うっとうしい。」

 

―――――――――Guard Vent!!

 

 その隙を狙い俺はドラグシールドを手にして突っ込む。

 

 ネロもアクセルクイーンを全開にして突っ込む。

 

―――――――ジェット・・・アクセル。

 

『うおおおらああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!>

 

――――――――――――Transfer!!

 

『Dorgon Storm Slash!!』

 

――――――ジェット・・・マキシマムドライブ。

 

 俺とネロはそれぞれの必殺技を叩き込む。

 

 アクセルクイーンのジェットメモリのマキシマムドライブとドラグセイバーに倍化の力を譲渡したことによる必殺技を。

 

「ふん!!」

 

 それをあいつは・・・片手で止めやがった。

 

 剣もつかわず、素手で止めたのだ。

 

 もちろん・・・震動を纏わせてはいるし、その衝撃であいつの足は地面に陥没。周りが大きく亀裂が走る始末。

 

「いいねえ。それくらいじゃないと・・・。」

 

 予想していたけど・・・必殺技を止めるなんて流石に化け物もいい所だぜ。

 

 だがな・・・。

 

「ゼノヴィア!!」

 

「・・・もう片方の腕は・・・封じさせてもらうぞ。」

 

 破壊の力を全開にさせたエクスカリバーの攻撃を牙王はもう片方・・・剣を手にした剣で受け止める。

 

「だからうっとうしいぞ・・・貴様ら!!」

 

 腰にいつの間にか当てられた黄金のパス。

 

―――プルチャージ。

 

「どううりゃああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 それでエネルギーが充電された剣であたりを一斉に薙ぎ払ってきた。

 

『ぐああああああああぁぁぁぁぁぁっぁ!』

 

 まるで嵐だ。それに俺達は吹っ飛ばされるが・・・何とか皆をドラグシールドで庇う。

 

 一撃で盾が粉々になったけど。

 

 でも、その瞬間あいつは油断していた。

 

―――――カメレオン。

 

「イリナ!!」

 

 それと共に牙王の頭に強烈な打撃が命中する。

 

「おぶうっ!?」

 

 それは仁藤の魔法で姿を消していたイリナが、手にした超巨大ハリセンで牙王の頭をおもっきりはたいたのだ。

 

「おおお・・・おお・・・。」

 

「ツッコミは兄ちゃんで鍛えているのよ!!その威力を舐めないでほしいわ。」

 

 擬態のエクスカリバーをハリセンに変えている辺り・・・流石と思うぜ。

 

 しかし・・・見事なツッコミ。牙王が完全に怯んどる。多分・・・今までの一撃の中で一番ダメージを与えたんじゃねえか?あいつの振動の防御すら撃ち抜いとるし。

 

 それが聖剣の擬態とはいえハリセンによる打撃なのはなんかな・・・。

 

「みんなどけえぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 そして、その隙に匙が右腕の神器の口を開いてみんなに向けて叫ぶ。

 

―――――リバース・・・シュート!!

 

 凄まじい轟音と共に匙の神器から放たれたのはさっき吸い込んだヤミ―達のセルメダルと瓦礫を圧縮した塊。それを三連射!?

 

 その大きさ・・・運動会の大球ころがし用の球よりもでかいぞ?

 

「がばっ!?」

 

「ちょっ・・・ごぼ!?」

 

 それをまともに受ける牙王と北崎が吹っ飛ぶ。

 

 今しかねえ。

 

<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!>

 

 俺は切り札を斬る。

 

――――FINAL VENT!!

 

―――――Explosion!!

 

 両足に倍化の力を解放させた状態での・・・ファイナルベントを。

 

「ぐう・・・ぬう!?なっ・・・何!?」

 

『・・・・・・・・・。』

 

 俺の背後に現れるクレアとドライク。

 

 その姿に流石の牙王も目を丸くしている。

 

「牙王・・・流石にこれはヤバい。手を貸す。」

 

 あいつの肩の上にいるワニモドキも危険を告げるが手遅れだぜ?

 

 かわせないぜ!!

 

 飛び上がり、二人の炎のブレスを両足に纏わせた状態での・・・ドラゴンライダーキックを炸裂させる。

 

「ぬおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

―――――フルチャ―ジ×3

 

 あいつは三回黄金のパスでエネルギーをチャージさせ・・・。

 

 剣にエネルギーと細かい振動を纏わせる。

 

 そして、その状態の剣を振るって・・・。

 

 その二つが激突。その瞬間・・・空間に亀裂が走る。

 

 そして、その崩壊と共に凄まじい大爆発が起きて俺は吹っ飛ばされた。

 

「ぐあ!?」

 

 その衝撃で変身が解けるほどに。

 

「大丈夫か!?」

 

「ああ・・・ちくしょう。」

 

 ファイナルベントが完全に決まらなかった。

 

「ふふふふ・・・ふはははははは・・・今のは効いたぞ。流石の俺も二度目の死を覚悟するほどまでにな。」

 

「調子に乗り過ぎだ。私のフォローが無ければ消滅していたぞ。」

 

 肩に剣を担ぎ爆発の中から現れる牙王。あちこちダメージを受け、罅が入っている。

 

「あれが噂のファイナルベントか。恐ろしいね。」

 

 北崎もまた健在。

 

「まともに入っていたら倒せたのに!!」

 

「退屈しない。本当にお前達は・・・。」

 

「んん?」

 

 そんな牙王の元に黒い鬼のような怪人がふっ飛ばされてくる。

 

「あいつ・・・つええぇぇぇ・・・。」

 

「どうした?どうしてお前が?」

 

「そこまでだよ。」

 

 そこに現れたのは・・・良太郎であった。

 

「遅れてごめん。でも・・・良くあいつにあそこまでダメージを与えたよね?」

 

「んん・・・ほう。お前が来るとはな良太郎。」

 

「ああ・・・放っておくわけにはいかない。この世界をお前に飲み込ませはしない。」

 

 この二人・・・宿命のライバル同士なのか?

 

「しかし単独でネガタロスをふっ飛ばすとは強くなったものだよ。」

 

「ああ・・・あいつ強いぜ?」

 

 ネガタロスと言われた鬼は立ち上がる。

 

「・・・今度は私もいく。」

 

 その言葉と共に牙王の後ろで何かが飛び出してくる。

 

 大量の銀色のメダルだ。それが人の形をとる。

 

 頭がコブラ、両腕と胴体が亀の甲羅のようになっており、下半身はワニの鱗。足はワニの牙のようなものが生え並び尻尾も生えている。

 

 こいつ・・・牙王と同じくらい強いぞ?

 

「ゲイル。お前の本来の姿も久しぶりだな。」

 

「フッ・・・こっちも暴れたいという欲望がうずいていただけだ。それを喰らいたいとな。」

 

「おいおい。ゲイルのあんちゃんまでくるかい。なら・・・牙王。いくか?」

 

「そうだな。こいつらにはそれだけの資格がある。」

 

 ネガタロスが牙王の隣に立つ。

 

「俺達の変身をな。」

 

 牙王とあの怪人が合体?ネガタロスの身体がエネルギー体に変わって・・・。それと共に腰のベルトに黄金のパスをかざす。

 

――――――カラミティ―フォーム。

 

 全身のアーマーが銅から紫と黒の鎧の様な物に変わる。

 

 そして一番驚きなのは・・・腕が六本に増えた事。

 

 そして、牙王の仮面が牙から二本の角が付いた鬼の仮面になったのだ。

 

「そう来たか。これはまったく・・・。」

 

 良太郎は苦笑している。

 

「身体も強いし、連携も取れているんでな。」

 

「前より死角はないと思え。」

 

 俺達は牙王と対峙・・・。

 

「へえ・・・だったらこっちもギアを使わせてもらうよ。五大ギアの一つ・・・デルタを。」

 

 北崎の腰にもベルトの様な物が現れる。こいつもまだ力を?

 

「すまないがここまでにしてもらえないか?流石にこれ以上の大暴れは困る。」

 

 第三者の声でそのあの戦闘が中断された。

 

 

SIDE 木場

 

 僕はフリードを・・・エクスカリバーを追い詰めていた。

 

 天閃のエクスカリバーにより速さは互角。精神的には無理やりだけど冷静。

 

 そしてあとは勝っているパワーで押している。相手の高い防御すら圧倒出来るパワーでごり押しさせてもらっているよ。

 

「大地斬!!」

 

 渾身の一撃でフリードが召喚させた盾を粉々に砕く。

 

「ちぃ・・・キャンサー!!」

 

 召喚されたカニの怪物。

 

 それを僕は下半身を馬に変化させて対応する。

 

「邪魔しないでもらおうか!!」

 

 馬の体による後ろ蹴り。知っているかい?馬の後ろ脚の蹴りって・・・人間なら即死しておかしくない威力あるんだよ?

 

 それで今の僕は普通の馬なんかよりはるかに強い。

 

 その蹴りを受け、ボルキャンサーが吹っ飛ぶ。

 

「・・・へえ・・・これは思いがけない。北崎さんと同じオリジナルと見ていいでしょうね。それにその剣技。なるほど・・・強くなっているということですかい。」

 

 オリジナルのオルフェノク。一度死を経ることで覚醒するタイプはオルフェノクの使徒化の能力で覚醒させたオルフェノクと一線を画す力を誇っている。

 

 フリードは冷静に僕の出方を見ている。思ったより・・・冷静だよね?

 

「ふっ・・・これでもあんな怪物的なあなたの仲間を見たのです。・・・・・・殺戮におぼれたらこっちが瞬殺されますよ。何しろファイナルベントすら防ぎきった連中ですからね。」

 

 こいつは狂っていると思った。でも・・・戦闘に関してはこの上なく冷静でそして・・・謙虚になっているぞ?

 

「あんな強さ・・・私は久しく求めていませんでしたからねえ。もっともっと強くなりたいですよ。そのための命・・・そのための存在として生まれましたから!!」

 

 フリードはまだ切り札を温存している。

 

 切り札のファイナルベント。これは僕単独では防ぐ事すらできない。

 

「私にとってこのエクスカリバーは念願の力。あなた達に対抗できるね。」

 

「すでに其れなりに力を持っているというのに?」

 

「これじゃ足りませんよ。少なくともアギトと対抗するには。」

 

 フリードの周りにもう青と赤の二体のカニの怪物が現れる。

 

「ですが・・・現時点でもあなたに負けるのは勘弁なりませんよ!!」

 

 そして、左腕の召喚機にあるカードを装填する。

 

―――――UNITE VENT

 

 それと共に三体のカニの怪物が合体する。

 

 現れたのは巨大な赤と青の巨大なハサミに黄金の甲羅を持つ巨大なカニ。

 

 その高さ・・・学校の三階建ての校舎程はある。

 

「ここからが本番・・・。私の切り札、ボルガデスキャンサー。」

 

 それは一目で強大な力を持つモンスターである事が分かる。

 

 クレアさん達と引けを取らないか、それすら超えかねない程の。

 

 その瞬間・・・背後で大爆発。

 

「ぬおお!?」

 

 後ろで何か巨大な力がぶつかったみたいだ。

 

 その威力・・・イッセ―君がファイナルベントを使った可能性が高い。

 

「・・・なんですかあれ?」

 

 現れていたのは二体の龍。ああ・・・あれを見たのか。

 

「あっちのファイナルベントは反則もいい所でしょうが!!」

 

「そうだね。二天龍クラスのドラゴン二体同時の一撃だし。でも・・・それで倒せないのか?あいつは・・・。」

 

 イッセ―達と対峙している相手はそれでも健在であった。

 

「さすが牙王様。ですが・・・むしろあの方にあれだけのダメージ。恐るべきはアギトか。」

 

 牙王って男は強い、でも・・・イッセ―君達を信じるしかない。

 

 こっちもそのために一対一にしてもらった。まあ・・・厳密には二対一だけど。

 

「でもよそ見禁物ですよ!!」

 

 ボルガデスキャンサーの巨大なハサミが振り回される。

 

 とっさに盾で防ごうとするけど・・・パワーが違いすぎる!?

 

 堪え切れずに吹っ飛ばされる。

 

 そしてもう片方のはさみで僕の体を挟み込み持ち上げてきた。

 

 体が掴まれ・・・凄まじい力で僕の身体をネジ切ろうとしてくる。

 

 必死で抵抗するけど・・・このままじゃ・・・。

 

「あまり自分で戦っている気になれないので、使いたくありませんでした。でも・・・それを使うだけの相手だった。それを誇りに思いながら逝きなさい!!」

 

―――――さすがにそれは困るわね。せっかくの契約者なのに・・・。

 

 その時、女性の声が響き渡ってきた。どちらかというと・・・クールな声の。

 

 その声と共に、鏡から黒い何かが飛び出し・・・凄まじい音と共に衝撃波が発せられてボルガデスキャンサーをふっ飛ばす。

 

 その隙に僕はハサミから脱出する。

 

――――でも・・・面白い子。あなたが戦う過程はすべて見せてもらっていた。

 

 僕を助けたそれは・・・黒く巨大な翼をしたコウモリであった。

 

「誰だ?君は・・・。」

 

「私の名前はダークウイング。あなたを見定めに来たものよ。」

 

 見定め?

 

「闇の翼まで来たのか。厄介な。」

 

「キャンサー知っているのですか?あのコウモリ。」

 

 キャンサーが喋っている?

 

「闇の翼。数々の特殊能力を持ち、その実力・・・ドラグレッタ―と互角。」

 

「・・・あの龍と互角!?」

 

 あのクレアさんと同等の存在?

 

「手を貸す。」

 

「・・・ああ・・・。ありがとう。」

 

 その言葉と同時に手が光る。

 

 僕の手に・・・神器を発動させていないのに変な剣が現れる。鍔元が閉じたコウモリの羽、刀身は細いレイピアとなっている。

 

「そうか。やはりあなたが私の契約者。」

 

『・・・・・・。』

 

 いきなり契約者って?えっと・・・つまり僕はイッセ―君と同じ存在になったと?

 

 じゃあ・・・これが召喚機?

 

「へえ・・・目の前で契約が行われるなんて。面白くなってきましたね。まさに・・・相手にとって不足無しですよ!!はははは!!」

 

 フリードはむしろ歓喜の声をあげている。あいつ・・・この戦いを楽しみ始めている。

 

「訳が分からないけど・・・協力感謝する!!」

 

「ええ。行きましょうか。我が主。」

 

 状況が五分になったところに・・・辺りが黒い煙が覆う。

 

――――――スモーク。

 

 その煙がまるで意思を持っているかのごとく、僕を弾き飛ばす。

 

「ここまでにしてもらおう。これ以上の大暴れは計画に支障がでる。」

 

 その煙が集合して現れたのは・・・一人の男であった。

 

 僕はこの男を知っている。

 

 この男こそ・・・あの忌まわしき過去の元凶。

 

「バルパー・ガリレイ。」

 

 彼がそこにいた。

 

 手には筆が握られている。

 

 こいつが・・・こいつのせいで同志が・・・。

 




 牙王がつよすぎたかもしれません。

 本当に怪物にしてしまいました。

 


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時の列車参上です。

連続投稿最後になります。

 ここから急展開です。

 オリジナルのエピソードが入ります。

 そして・・・イリナ。隠された恐るべき力が発動します。


SIDE イッセ―

 

 突然現れた男の出現。それに殺気だっているのは木場だけじゃなかった。

 

「とうとう見つけたわよ。」

 

「ああ・・・。堕ちた魔戒法師としてもお前を探していたよ。」

 

 それはユウナとサイガの二人。

 

「・・・魔戒騎士に魔女までいるか。」

 

 上の二人に木場が加わってバルパーに斬りかかる。

 

 三人共ものすごく怒っている。

 

「させませんよ?」

 

 だが、それをフリードの召喚していた巨大なカニのモンスター、ボルガデスキャンサーのはさみが阻む。その硬い装甲に傷一つつける事が出来ずに三人とも弾き飛ばされる。

 

 バルパーの傍に無数の異形。ホラーが現れる。

 

「お前はすでに教会だけじゃなく元老院からも追われている。其れを分かっていてどうして表にでてくる?」

 

 サイガの問いにバルパーは笑う。

 

「ふはははは・・・それこそ強力な後ろ盾があるからに決まっているだろう。」

 

―――――そう言う事だ。

 

 そしてそれは姿を見せる。

 

 黒い十枚の翼を背負った堕天使が。

 

 なんだこいつは?

 

「牙王・・・協力感謝するぞ。」

 

「ふん。喰らう事はできなかった。」

 

 そう言いながら牙王は散らばったセルメダルを吸い込むようにして集める。

 

 あの堕天使の力は・・・相当なものだ。

 

「それとこっちの目的もそろそろ達成させてもらうぞ。」

 

「そうだったな。フリード。」

 

「いや・・・実はもう限界でしたわ。」

 

 フリードの手にしていた天閃のエクスカリバーが・・・独りでに砕かれた?

 

『・・・・・・。』

 

 唖然としている木場。

 

「驚くことはありませんよ。あなたの馬鹿力とこっちの力に耐えられなかっただけです。そして・・・これで契約完了ってことでいいですよね?牙王の旦那。」

 

 フリードの言葉に牙王は変身を解き笑う。

 

「ああ・・・。よくやってくれた。」

 

「やっと行けるぜ。」

 

 木場の身体から二体の怪人が現れる。

 

「きゃははははは・・・!!」

 

 一体は亀の身体に兎の耳を持つ。

 

 もう一体は装甲に包まれたサイみたいなやつだ。

 

「オッ・・・お前達は・・・。」

 

 木場の体に空間の裂け目みたいのが現れる。

 

 そして、その二体の怪人はその裂け目に飛び込んだ。

 

「・・・すぐに追いかけないと。」

 

 良太郎が膝をついた木場の身体にカードの様な物を当てる。

 

 すると・・・そこにさっきの怪人の姿と共に時間が表示される。

 

「よし・・・。」

 

「行かせると思ったか!!」

 

 その良太郎に牙王が襲いかかってくるが・・・。

 

 そこに紅い魔力弾が跳んできて行く手を阻む。

 

「私は調査だけで、ここまで暴れろと言った覚えはないのだけど?」

 

 それは・・・紅のキバの鎧を纏った部長の姿。

 

「ほう・・・これが噂の滅びのキバか。ぬう!?」

 

 牙王を部長は蹴りとばす。って部長・・・さらに強くなっていますよね?

 

「ふふふ・・・もうあなた達と付き合うためには鍛錬して、こっちもサイラオークみたいに人外化するかないって悟ったから。」

 

 えっと・・・何か俺のせいで部長が変な境地に達していませんか?

 

「生意気なことを・・・ぬお!?」

 

 そして、牙王が動き出そうしたけど、いつの間にかその半身が凍結している。

 

「鍛錬と言う意味でこっちもリアスに付き合ったおかげで色々と面白い技がつかえるようになりました。」

 

 後ろからはあれ?生徒会長まで。

 

「ついでに面白い相方も得られましたから。そうでしょ?レイ。」

 

 その言葉と共に・・・何か青い蝙蝠がやってきましたよ?

 

「これは新しいキバット一族にして、新たに作られた四つ目のキバの鎧。蒼のキバ。」

 

 部長が紹介していますけど・・・オイオイオイオイそんなの聞いていないぞ!?

 

「渡君が冥界と交渉した際・・・新しく誕生したこの子のマスターを探している話があってね。特徴からまさかと思ってソーナと合わせたら・・・この通りだもの。」

 

「運命って面白い。私もまた良い相方を得られました。」

 

―――いや・・・そうやな。生まれてすぐに会えるなんて幸せですわ。まだまだ赤ん坊やさかいにこれからよろしくな!!

 

 えっと・・・冷静沈着なソーナ会長の相方・・・ごっつ関西弁ですよ?

 

 しかもノリがいいし!!

 

 そして木場は・・・怪人体から人間へと戻る。

 

「・・・そしてこれはどういうことなの?なんで佑斗がオルフェノクに?その前にどうして倒れたのよ?」

 

 それを見て部長も驚きを隠せない。

 

「彼は僕が救います。ですからその牙王達をお願いできませんか?」

 

 必死の様子の良太郎。

 

「ええ・・・。ソーナ、いい実戦テストになりそうね。」

 

「はあ・・・いきなりですか。レイ!!」

 

――――あいよ。ガブっとな。

 

 蒼い蝙蝠が会長の手の甲を噛み・・・変身した?

 

 蒼いキバに?部長の変身した姿に似ているけど色が蒼だ。

 

「匙、仁藤。こっちの指示通りにおねがいします。彼らを抑えます。」

 

「あいよ。」

 

「分かりました!!」

 

「イッセ―。貴方は良太郎を伝いなさい。ここは私に任せて。」

 

「・・・はい。」

 

「へっ?手伝うって・・・その・・・。いいのかな?アギトでも?」

 

 良太郎が戸惑っているぞ?どうした?

 

『きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 って・・・悲鳴。

 

「ついでだが・・・エクスカリバーを頂いていくぞ!!」

 

 ゼノヴィアが、そしてイリナは巨大なカニみたいなやつに囚われている。

 

 2人が持っていたエクスカリバーが黒い煙に囚われ、宙に浮きバイパーの元に・・・。

 

「さあさあ・・・この二人の命を喰らいなさいキャンサー!!」

 

『やめろおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!』

 

 そのまま二人を喰らおうとするキャンサーだったが・・・。

 

「しかたない・・・か。」

 

 イリナは意を決し、彼女の切り札を出す。

 

 彼女の手にいつの間にか赤色の銃が召喚。

 

 その銃の後ろ部分が展開し、カードが現れる。

 

 そのカードが二枚程浮きあがり、銃の横にある部分にスラッシュ。

 

―――――バレット・・・。

 

―――――ラビット。

 

―――――ラビットバレット。

 

「はあああああああぁぁぁ!!」

 

 そして銃口から強烈な銃弾が数発放たれ・・ボルガデスキャンサーがそれを受けて怯み、イリナを放す。

 

「がっ・・・ごっ・・・ううう・・・。」

 

 銃撃のダメージでよろけるキャンサー。

 

 その隙にイリナは銃に別のカードをスラッシュしながら走りだす。

 

―――――アッパー。

 

―――――バーニング。

 

 それと共にイリナの拳が燃え上がって・・・。

 

――――バーニングアッパー!!

 

「ふあちゃあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 あのキャンサーを・・・殴りとばした!?軽く五十メートルは吹っ飛んだぞ。

 

「!?!?!?!?!?!?!」

 

『・・・・・・。』

 

 あれってとっても固いよね?しかも重そう。

 

 前闘ったバケガニを超える重さは確実だよね。それを・・・殴りとばした!?

 

「ががが・・・ごっ!?」

 

 しかも甲羅に亀裂が入り、起きあがれない程の大ダメージを受けている?どんだけの威力なの?

 

「ちぃ・・・キャンサー、融合を解除しなさい。」

 

 ボルガデスキャンサーは大ダメージを受けて緊急措置のために融合を解除する。

 

 でも三体共ダメージが大きいのか倒れたままだ。

 

「くそ・・・エクスカリバーだけじゃないというのですか!!?」

 

 そこにフリードが襲いかかってくるが・・・。

 

 イリナはフリードの攻撃をかわしつつ、回しけり。

 

「ぐっ・・・。」

 

「ファチャ!アチャ!!アタタタタタタタタタタタタタタ!!」

 

 そして、両手で何度も殴りまくって・・・。

 

「フアチャ!!」

 

 そして、異空間から今度は剣を取り出し斬りつけ、もう片方の銃から追い打ちの弾丸を放った。

 

 あちこち火花散らしながらフリードが後退していく。

 

「ながっ・・・なんですか?なんなんですか?今のは・・・。」

 

「私・・・こう見えて素手でも結構強いの。」

 

 結構ってレベルじゃないって。無茶苦茶強いじゃないか!!

 

「ふっ・・・・さすがイッセ―の幼馴染ね、もはや納得することはあっても・・・驚くことはないわ。」

 

 部長・・・もう驚くことすらできないのですか。

 

 でも気持ち分かるかも。もうこっちも驚く事ができない。

 

 イリナ・・・すごく強い。

 

「今ならあなたの愚痴の理由がわかります。すごい爆発力です。私の中の常識を破壊されかねないほどのものがあります。あれって・・・人間ですか?」

 

 ソーナ会長は冷静ですよね!?

 

 イリナは剣を構えながらいう。

 

「この拳に宿るは赤心小林拳!!」

 

 そう言えばイリナって引っ越す前に道場にかよっていたよな。そして向うでも師匠が時々鍛えてくれてるって・・・。

 

 でも、その鍛えの度合いを完全に見誤った。てっきり護身レベルと思っていたけど明らかに達人クラス、いやそれすら飛び越えて超人クラスじゃないのか?

 

「そして、剣は私を助けてくれた優しい怪物のあの人から貰った物。この銃はその人の友達という人から託された遺品。その優しい怪物と友達になってほしいという思いを受け継いだ証。まだどこにいるのか分からないけど、あたしは今でも探しているわ!!」

 

 それは変わった剣だった。

 

 その剣のナックルガードに当たる部分が展開し、そこからもカードが!?

 

 そこからカードを抜き取り、今度は剣にスラッシュしていますよ?

 

――――――タックル

 

――――――メタル。

 

―――――メタルタックル。

 

「調子に乗るじゃありませんよおおおおぉぉぉぉ!!」

 

 フリードが手にキャンサーのハサミを召喚してイリナを殴りつけようとするけど、その身体がメタル化。攻撃を弾き飛ばしつつ懐に潜り込みすごい勢いのタックルをかました!?

 

 いや、タックルというより今の・・・中国拳法の何かに似ていたぞ。背中から強烈な体当たりをかます・・・八極拳の。

 

「がばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

「使いどころのなさそうなタックルもこうしたら強烈な一撃になるのよ!!」

 

 フリードの禁手が解け、そのまま吹っ飛んで行く。うわ・・・どんだけの破壊力だよ。

 

「・・・貴様、アンデットの力を生身で使いこなしているというのか?」

 

「そんな馬鹿な。人間はおろか、天使や・・・悪魔、堕天使でも不可能だぞ。」

 

 それを見たバイパーとなぜかコカビエルが動揺している。

 

「これって生身で使いこなせないものなの?こっちは普通に使っているけど。」

 

『・・・・・・。』

 

 イリナの反応に黒幕の二人が言葉を失っている。

 

「さすがに驚かせたぞ。小娘・・・思いがけない力を隠していたな。そして・・・見つけたぞ。あいつらが探していた五人目・・・。」

 

 牙王がイリナに驚きながらも五人目という。一体どういう事だ?

 

「とにかく私が押さえるわ。お願い。」

 

「そういうことだぜ。行け良太郎。」

 

 弦太郎も良太郎に任せる事にした様子。

 

「うっ・・うん。ありがとう。」

 

 良太郎の言葉と共に、近くの空間から穴があいて・・・へっ?

 

「何?あれ?」

 

「あれは・・・電車です。」

 

「なんで電車が空中を走っているのかしら?」

 

「そんなの分かるわけないじゃないですか!?」

 

 部長の言葉に会長!?会長のキャラが崩壊している!?

 

「なんですか?あの電車は?如何して何もない空間からでているというのですか!?そして走りながら線路を目の前から次々と生み出しているのはどういう理屈なのですか!?」

 

「・・・ソーナ。落ち着いて。気持ちは分かるわ。」

 

「すみません。でも・・・リアスあなたの気持ちが本当の意味で理解した気がします。いつもこんな摩訶不思議なことに出会っているのですね。」

 

「いえ・・・今回はその中でも最大級よ。私だって混乱しているもの。」

 

 行く先に次々と線路を生み出しながら走る電車。走った後の線路は綺麗に消えているのも不思議だ。

 

 その線路と共に意味不明、理解不能な電車が良太郎に向けて走ってきた。

 

 その電車がやってきて・・・。

 

「行くぞイッセ―!!」

 

「へっ・・・ってなんでトルネが!?」

 

―――――細かい説明は後!!

 

――――一緒に乗り込むよ!!

 

 いつの間にかレイダーに乗ったネロと爆走してきたトルネに乗せられ電車に突撃。

 

 僕たちはその電車の中に突っ込んだ。

 

「・・・さすがにこの展開は想定していなかった。普通ないでしょうね。こんな展開。私もまだ未熟ね。」

 

 呆れかえった部長のつぶやきを耳にしながら。

 

 でもですよ。俺もこの展開は予想していませんでした。

 

 何なのこの電車!?それでどこにいくの?

 

 

 

 SIDE 良太郎

 

 さて、僕は一つ大きなミスをしてしまった。

 

「中も変わっているな。」

 

「ああ・・・。なんかこう・・・SFに出てくるような・・・。」

 

 なんで・・・イッセ―君とネロ君がデンライナーに乗り込んでいるの!?

 

「良太郎。なんだこれは?」

 

 そして・・・よりによってゼノヴィア姉さんまで・・・。

 

「えっと・・・。」

 

「しっかり説明してもらうぞ。ここは何処だ?そして今から何処に行くんだ?」

 

「・・・・・・。」

 

 訳が分からないと混乱気味のゼノヴィア姉さんが僕に問い詰めてくる。

 

 僕はネロ君に助けを求める。

 

「はあ・・・説明ならイマジンのみんなとオーナーを呼んだ方が早いぜ?」

 

「イマジン?オ―ナー?」

 

「なんだそれは?」

 

「俺達の事だ。」

 

 そして現れるのは真っ赤な鬼の姿をした僕の仲間。

 

「オッ・・・鬼だ!!」

 

「東洋の悪魔にこんな早く会うなんて。でもどうして電車の中に。」

 

「・・・もう俺は自分の見た目は認めているから気にはしないぜ。はあ・・。」

 

 いやいや、ため息ついている時点で十分気にしているから。

 

 ため息つきながら席に戻らないでよ。

 

 その背中になんて声をかければいいのかわからなくなる。

 

「やっと会えたぞ!!!」

 

 そしてゼノヴィアの背後からデネブが現れる。

 

「うわ!?なんだお前!?」

 

「やっとだ・・・侑斗が一度死に、生まれ変わってからやっと会えた。」

 

 そしてデネブが感激のあまりに抱きついて来ているよ。

 

「?!?!?!?!?!?」

 

「これは予想外のお客様ですね。いや、パスは持っていないですが特例扱いにするべきみなさんばかりで。」

 

 そこにタキシードを着て杖をつく壮年の男性。このデンライナーのオーナーがやってくる。

 

「少なくともネロ君は自力で時間の秘密に辿り着くことになっていたから。それにイッセ―君もまた。」

 

「それでも困ります。なんとか時の運行に支障が出ないようにいけませんね。まあ・・・このまま外に放り出しても、何とかしてしまいかねないのがアギト達の厄介なところです。」

 

「えっと・・・放りだすって何のことだ?俺は良太郎の手伝いのために、ここに乗り込んだんだのに?」

 

 イッセ―君。事態を飲み込めず大変混乱しています。

 

「説明頼むわ。こっちはダチの時間を守りに来ただけ。改変するつもりはねえ。」

 

 ネロ君の言葉にオーナーは頷く。

 

「・・・いいでしょう。そう言う事なら利害が一致しそうですので。」

 

 ・・・はあ。この世界、デンライナーに干渉できる人達が多くて本当に困るよ。

 

 

 

 




 さて・・・キバ第四の鎧登場と共に、イッセー達は過去に向かいます。

 行く過去はもちろんあそこです。

 連続投稿はここで終わりです。

 また書きあげたら投稿します。


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ゼノヴィアの秘密です。

 ここでゼノヴィアの秘密が公式に明らかになるとともに、新しい謎が追加されます。

 彼女、提案された魔改造案を膨らましてとんでもない娘になりました。

 
 連続投稿第一弾どうぞ!!


 SIDE イッセ―

 

 さて、電車の中で俺は良太郎の色々複雑な事情を知る事になってしまった。

 

「転生者ねえ。」

 

 いや・・・単語は知っているよ。一度死んで、その記憶を持ったまま生まれ変わるという意味だよね?

 

 でもまさか実際に転生してきた人に会うのは初めてだよ。

 

「私も・・・なのか?この電車に乗った途端に色々と蘇ってくるが・・・。」

 

 そして、ゼノヴィアまで転生者だって!?

 

「あなたの前世の記憶はデンライナーに乗った後に蘇るようになっていました。これに乗るという事は貴方の復活の時ということですから。」

 

 このデンライナーのオ―ナーがそう言ってくる。

 

「まあ・・・女に転生する際、精神も肉体に引っ張られる形ですので、安心してください。違和感はないはずです。あなたという人格に桜井侑斗の経験が加わると思ってもらえれば分かりやすいでしょう。」

 

「はあ・・・男の記憶が女の身で持っているのは複雑な気分だ。」

 

 いや、女なのは分かる。すっごくスタイルもいいし。

 

 でもね、そう驚きながらデネブにプロレス技をかけているのはどういう了見だ?

 

「そして、今までどうして変なことになっていたのかも漸くわかった。・・・今までよくも恥をかかせてくれたな、デネブゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」

 

「ああ―――この技・・・やはり侑斗だあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「お前のおせっかいのおかげで私は・・・私はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「あーギブギブギブギブ!!」

 

 見事なさば折り。いや・・・いい具合に極まっている。

 

「ははは・・・ははは・・・。」

 

 多分・・・今までいろんな事があったんだよな?

 

 良太郎の乾いた笑い声で何となく分かる。

 

「あああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 ああもう、ゼノヴィアが泣き叫びながら技をかけているよ。

 

「ああ・・・さっそくじゃれあっていやがる。あいつが女に転生ってなあ。」

 

 赤い鬼・・・モモタロスが呆れた様子でいる。

 

 物言わぬ屍となったデネブを放置して、ゼノヴィアが立ち上がる。

 

 そしてモモタロスがじっくりと見て。

 

「結構美人だ。」

 

「うるさい。」

 

 ゼノヴィアの答えは強烈な拳。モモタロスが殴り飛ばされたよ。

 

「はあ・・・もう。まだ正直混乱している。今で一応女として生きてきたのに前世が男だという記憶が・・・。」

 

「でもでも・・・やっぱりお前だよね?」

 

 そこに子供みたいな口調をした竜の頭をしたイマジンも登場。

 

 そこに蒼い亀みたいなイマジンが現れて、ナンパし始めたぞ?

 

「へえ・・・君・・・僕に釣られてみ・・・がばっ!?」

 

 ナンパに対する答えは・・・腹を打ち抜くような膝蹴りでした。

 

 ウラタロスっていったけ?腹を押さえて崩れ落ちて行くよ。

 

「私と知っていて、それでよくナンパするよな?」

 

 えっと・・・ゼノヴィアがなんか容赦ない。

 

 そんなゼノヴィアの背中を黄色の筋肉の塊みたいなイマジンが叩く。

 

「がばら!?」

 

 すごい力なんだね。ゼノヴィアが壁に叩きつけられたよ。

 

「あいかわらずで安心したで!!」

 

 それに対する答えは・・・。

 

「ああ・・・こっちもな!!」

 

「泣けるで!!」

 

 お返しのドロップキックであった。そのイマジンもまた吹っ飛ばされる。

 

『ぎゃああああああぁぁぁぁぁ!!』

 

 それにモモタロスとさっきナンパしていたウラタロスまで巻き込まれるし。

 

 何このバイオレンスな喜劇は?

 

「予想以上に・・・濃いぞ。こいつら。」

 

 ネロ。分かるよ。

 

「素晴らしい肉体言語だな。」

 

「うん。一部だけど、それだけで十分・・・。」

 

「降臨・・・満を持して・・・。」

 

 そこに白い鳥の様な奴まで降臨してきた!?

 

『まだいるのか・・・。』

 

 もう・・・お腹一杯だ。

 

 

 

 

 まあ・・・色々混乱も収まったところで自己紹介もしてもらった。

 

 良太郎との契約イマジン。いや、良い個性をしていやがる。

 

「・・・まあ、悪い奴らじゃねえというのはわかる。それに、気骨もある連中ばかりみたいだしな。」

 

 ネロは話を聞いてイマジン達を気にいった様子だ。

 

「ほう、言ってくれるじゃねえか。そう言うお前も同類か。」

 

 モモタロスと不敵な笑みを浮かべ会っている。

 

 彼らは、イマジン達の本来の使命を拒否した者達。いわば裏切り者みたいな存在。

 

 イマジン達は自分たちの未来に時間を繋ぐために時間を改変しようとする者達。

 

 だが、彼らは自分たちが消滅することも覚悟で良太郎と共に戦った。

 

 なるほど、そう考えると確かに気骨あるわ。

 

 こいつらは個性だけじゃない・・・覚悟が違う。自分の存在すらかけて戦える奴なんてそうはいないぞ。

 

 その戦いはそれらを率いたカイと呼ばれる男達との戦いに勝つことで決着をつけ、彼らも奇跡的に己の時間を得ることで消滅することもなくすべては解決したはずだった。だが、またイマジン達が大量発生しているらしい。

 

「それが・・・牙王の仕業か。」

 

「うん。どうやったか分からないけど・・・カイの時間を喰らい、彼が数多くのイマジンを率いるボスになった。グリードと融合し、ネガタロスまで率いている最悪の形でね。」

 

 牙王。それはかつて良太郎達が闘った相手だった。

 

 その強さは圧倒的。

 

 そして、ネガタロスもまた同じらしい。

 

「牙王は何者かの元で復活している。それは間違いらしい。誰があんな危険な奴を復活させたのか分からないけど。」

 

 あいつを復活させた奴がいる。

 

 それってつまり・・・あいつよりもヤバい奴がバックにいるということなのか?

 

 勘弁してくれ!!あいつ単体でもラスボスって言っていい怪物だぞ?

 

 本気出していないあれで、中ボス扱いなのか?

 

「それで、どうして私が転生したんだ?」

 

「・・・ハナのおかげだよ。」

 

「ハナが?」

 

「そう言う事。」

 

 そこにもう一人・・・妙齢の女性が現れる。

 

 大人の女性って感じがするし、すごい美人だ。

 

「お前・・・ハナなのか?」

 

「ええ。久しぶり。私が分かるってことは記憶が戻ったみたいね。」

 

「お前・・・小さくなったりしたけど、今度は大人の女性になったな。まあ・・・前世の記憶だけで何とも言えないけど。」

 

 どうもこのハナという女性も関係者らしいが・・・。

 

「元々あなた自身が特異点として生まれる事が分かっていたの。でも牙王たちは貴方を殺し、この世界の時間を我がものにしようとしていた。それを守るために・・・良太郎が己の時間を逆行させる形で転生してやってきたのよ。貴方の弟として。」

 

 そう、良太郎は一度死んだが、己の時間を逆行させる形で転生。

 

 だから最初から記憶があったのだ。

 

「でも、そのあなたに侑斗の魂が宿っているってデネブから聞いた時は流石に驚いたわ。何処の神様のいたずらか分からないけど、契約が切れていないという話なら納得だしね。だから、護衛としてデネブも一緒にしたの。何時でもあなたを守るようにね。」

 

「お前・・・私をずっと見守ってくれていたのか。」

 

「ずっと見守ってきたよ。俺は君を・・・一人にしたくなかったんだ。」

 

 ゼノヴィアはデネブを見る。デネブは密かに彼女を守っていたのだ。

 

 良太郎と共に。

 

「でも安心して、侑斗としての記憶と経験はあっても、貴方はあくまでも貴方。侑斗ではないから。まあ・・・もう人格は融合しちゃっているけど。」

 

 えっと・・・あくまでも生まれ変わりだけで、ゼノヴィア本人には変わりないってこと?

 

 なんかよく分からないけど・・・。

 

「なら、お前も好きにしてもらってもいいぞ。私は桜井侑斗の生まれ変わりだ。でも・・・それでも別人だ。性別だって違うし。」

 

 デネブにそう話しかけるゼノヴィア。

 

「いいや。俺はずっと付いていくと決めていた。生まれ変わってもずっと、死んでも生まれ変わりを探すって決めていたんだ。それが約束だから。」

 

 約束?

 

「小さいころからの約束だった。それを侑斗は守り、死ぬ前にまた会おうと言ってくれた。だから・・・それを待っていたんだ。侑斗は絶対に約束を守ってくれる。」

 

 そのために、こいつはずっとゼノヴィアと一緒にいたというのか?

 

 それだけのために?

 

 その言葉に良太郎とハナさん、そして他のイマジン達もしんみりしている。

 

「お前・・・本当に一途だよな。侑斗が亡くなった時の落ち込みようからしても。」

 

 モモタロスの言葉に皆が頷いている。

 

 そうか。こいつ、それほどまでにその人が好きだったんだな。

 

「・・・そうか。だったら・・・さ。改めて契約してくれ。桜井侑斗としてじゃなく、私。そう、ゼノヴィアとして。」

 

 えっ?契約?

 

 でも契約したら時間が・・・。

 

「安心して。特異点は例外だから。」

 

 そう言えば良太郎も契約していましたな。

 

 それって特異点だからなの?

 

「・・・ああ。よろしく、ゼノヴィア。」

 

「ああ。この世界でも共に戦おう。」

 

「分かった・・・ゼノヴィア。後・・・これを受けとってほしい。」

 

 デネブが渡したのは、ベルト?そしてチケットみたいなものがある。

 

「特異点となった今ならゼロノスの力も回数制限なしで使える。」

 

「そうか。それはよかった。また共に戦おう・・・デネブ。」

 

「そうだな・・ゼノヴィア!!」

 

 感激のあまりに涙を流すデネブ。

 

『・・・・・・。』

 

 俺達は少し泣いています。

 

「はあ・・・何かこう、ここにいるイマジン達って濃いけどいい奴らばかりだな。」

 

「馬鹿みたいだぜ・・・死んでも一緒にいたいという奴、そうはいないぜ。普通重いといわれても仕方ねえのに。」

 

 ネロも呆れながらも少し声が震えている。

 

「さて、ゼロノス復活の景気づけとして、あいつの時間を助けに行こうか!!」

 

 ゼノヴィアが、すごくやる気をだしている。ゼロノスって何?

 

 何かベルトからして、変身しそうで怖いですけど?

 

 今度はゼノヴィアまで変身するのか?

 

「これで戦力的に不安はない。行くよ、木場君の過去を助けに。」

 

 良太郎の言葉に皆が頷く。

 

 なるほど。これだけ濃いメンツを纏めるだけはあるわ。

 

 皆の気持ちが一つになっている。

 

 

 

 

 時の列車の移動中。

 

「わりぃ、ちょっとトイレに行きたい。」

 

「まあいいよ。トイレの車両は・・・。」

 

 良太郎からトイレの場所を聞き、そこに向かう。

 

「・・・連れションは勘弁してほしい。」

 

 ネロも行きたいのかい!!野郎同士はこっちの方が勘弁したいぜ。

 

 だが、俺達は見知った人を見つけて立ち止まった。

 

 トイレのある車両にはちょっとした喫煙室みたいなところにその人はいた。

 

 それはハナさんだった。

 

「・・・・・・。」

 

 そして、ハナさんが泣いている?

 

「はあ・・・そんなに泣くのなら名乗り出たらいいじゃねえか。」

 

 その傍にモモタロスがいるぞ?なんか呆れた様子で?

 

「お前があいつの母親だって・・・。」

 

『・・・・・・。』

 

 なんですと?

 

 俺とネロは互いに顔を見合わせる。

 

「言えないじゃない。生まれ変わったのは私がこの世界で子供を授かり、そこに魂が宿ったからだって・・・。色々な意味で混乱するわ。」

 

「あいつがお前の娘ねえ・・・そのためか、いい拳してやがった。」

 

 殴られたい頬をさするモモタロス。結構痛かったのね。

 

「・・・今や私は時の番人みたいなものよ?私は数多くの時間をつないでいる。この世界だけじゃなく・・・色々な時間を。あの子がこの世界の特異点になったのも、私がこの世界であの人と一緒になって生まれた娘だからって・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

 なっ・・・何を言っているの?

 

「・・・知ってはならない事を知ってしまったね。」

 

『ビク!!』

 

 うっ、後ろにいつの間にか良太郎が?

 

 あれ?他にウラタロスに、キンタロス、リュウタロス、ジ―クまで?

 

 みんな、すごい迫力で俺達に迫ってくる。

 

「安心しな。記憶を物理的になくすだけさかいに。」

 

 キンタロスさん。それって力技で俺達の記憶をなくすってことですよね!しかもその言葉を鉞(まさかり)持った状態で言わないで!!それを使われたら失うのは記憶だけじゃ絶対にすまないから!!

 

「いやいや・・・ここは僕の力で操って。」

 

 リュウタロス。お願いですからショットガン見たいな武器を仕舞って!!どんな力を使うのか知らないけど!!

 

「アギトに力が効くのかな?だったらこっちが催眠か調教でも・・・。」

 

 ウラタロスさん。その調教って、手にしたオールみたいな槍でやるのですか?

 

「・・・・・・・・・姫のために一肌脱ぐか。」

 

 ジ―クさんが両手に刃物を手にしていますよ。一肌脱ぐってそっち!?

 

『いやいやいやいやいやいや・・・!!』

 

 なんかすごい迫力に追い詰められる俺達。

 

 こいつら本当に怖い。気迫が、気迫が違う!!

 

 ネロが言っていた気骨がこういった部分で発揮されているって!!

 

「・・・・・・。」

 

 特に良太郎。何か、黙っているけどそれが一番怖い。

 

「って・・・あんた達何しているのよ!!」

 

 俺達は騒ぎに気付いたハナさんが襲いかかろうとしたみんなを止めてくれて、そこからとんでもない事情を聞くこととなった。

 

 さっきの意味がどういう意味で、どうしてそれを隠していたか。

 

 あれは、流石に驚く。

 

 ゼノヴィアは本人が知っていることの他にすごい秘密を抱えている。

 

 それを口外しないことを俺とネロは誓った。

 

 

 

 

 




 さて・・・ゼノヴィアに伏せられたもう一つの秘密はいかがでしたか?

 これは彼女が持っている聖剣を見て思いついたネタです。

 それが彼女の父親のヒントとなっています。


 彼女は英雄派にスカウトされてもおかしくない娘なのです。


 さて次からは過去編です、


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過去の世界で出会うは黄金騎士と魔王様です。

 連続投稿第二弾。

 ここで彼らは過去の世界でとんでもない人物と出会います。

 過去に何があったのか明らかになる過去編第一弾です。

 どうぞ!!
 


SIDE 良太郎。

 

 余計なことを知ってしまった二人の事も何とかなって、僕達は目的地の時代に辿りついた。

 

 必死で逃げるのはまだ幼い木場君。その彼が倒れ、そこからイマジンが二体現れる。

 

「きゃははは!!予定通り!!」

 

「いくぞ。」

 

 彼らは倒れた木場に止めをさせようとするが・・・。

 

――――カノン。

 

『どぼぐはぁ!?』

 

「ダチに手を出すのは遠慮してもらおうか!!」

 

 二体のイマジンが、ネロ君の手にした銃から轟音と共に発射された砲弾にふっ飛ばされた。

 

 あれ?なんで拳銃から砲弾が出るの?おかしいな?

 

 僕はイッセ―君の方を見るよ。

 

「・・・なんでもありだな。」

 

 そうか。僕が見た光景は現実だったんだね。

 

「全く、素敵でなおかつ過激な奴になりやがって。」

 

 ネロ君は手にした銃を見てぼやいている。素敵で過激って、その言葉だけで済むの!?

 

「あれ、俺のせいで壊れてな。グレイフィアさんが修理に出してくれたんだけど、帰ってきてああなった。原型すら止めないびっくりドッキリメカみたいな銃に。」

 

 イッセ―君も一枚噛んでいるのか。でも、びっくりドッキリメカ。言い得て妙かも。

 

「ぐう・・・貴様ら・・・。」

 

 流石に頑丈だよね。でも・・・。

 

「おいおい。私の出番を取るなよ。良太郎。」

 

 あらら、姉さんがやるの?

 

 腰にゼロノスのベルトを巻いて、戦闘準備ですか。

 

「お前も変身するのか?」

 

「ああ・・・しかも回数制限無しって言うおまけ付きなんだ。うずうずしてな。」

 

 わくわくしている姉さん。

 

「さあ、ゼロノスの復活の時・・・。」

 

 そのベルトにチケットを指し込もうとした時だった

 

「がばら!?」

 

 兎のイマジンが蹴りとばされる。

 

「変な奴がいるな。悪魔でもねえ。それでいて・・・。」

 

 そこに別の人物が現れた。

 

「げっ!?」

 

 銀髪に赤いコートを着た男。何となくなんだけどネロ君と少し似たものを感じる。

 

「なっ、なんであんたがここにいるんだ!?」

 

 その言葉にその男はいたずらっぽい笑みを浮かべる。

 

「ほう・・・なんでここいるいるんだネロ?」

 

「ダンテなのか?」

 

「えっ?それってもしかして・・・ダンテ・スパーダ?五大魔王の?」

 

 それは・・・五大魔王の一人にして冥界最強の剣士。

 

 ダンテその人!?なんでそんなすごい人がこの世界に?

 

 そしてもう一人。

 

「くそ。変な奴め・・・ってがばっ!?」

 

 サイの姿をしたイマジンを斬りとばす金髪の男がいた。

 

 黒い服の上から白く長いコート。手には朱塗りの鞘に入った細身の剣。

 

「・・・こいつら、ホラーじゃないな。」

 

――――ああ。初めて見る怪物だ。こいつら何者だ?

 

 その男が左手にしている銀の指輪が喋る。あれって、魔道輪?

 

「この人、魔界騎士なのか?って、その朱色の剣!!そのコート、まさか黄金騎士牙狼。」

 

 話だけは聞いた事がある。最強の魔戒騎士。黄金騎士牙狼。

 

 その称号を継ぎ、数々の困難を乗り越えた男がいると。

 

「冴島・・・鋼牙。」

 

 それは魔戒騎士を知る物としては、あまりにも有名すぎる名前。

 

 そして、この人はサイガ君の・・・。

 

「俺の名前を知っているのか?」

 

―――――有名人だな。鋼牙。

 

 僕たちは過去を超え、とんでもない二人と出会ってしまった。

 

 

 

SIDE ネロ

 

 さて・・・状況を整理しよう。なんであいつがここにいる?

 

「久しぶりだなって・・・んん?可笑しいな?この時代ならお前はまだ小さいよな?」

 

 確かに飛んできた時間を見ればそうだろう。

 

 だが、その前に良太郎から聞き捨てならないセリフが聞こえてきたぞ。

 

 冥界の五大魔王の一人だと!?

 

 何がどうなっていやがる!?

 

「お前ら、どうやって時間を超えてきた?俺も経験があるんでな。そのおかげで魔王になったみたいなもんだが。」

 

 ダンテは軽く剣を振るう。時間を超えたって、何があったらそんな事に巻き込まれる?

 

―――時間を超えてきた?へえ・・・それは興味深い。

 

「ああ。だが、こいつらの目的は大方検討ついている。」

 

『がばっ!?』

 

 二人が剣を振るい背後から迫っていた二体のイマジンを吹き飛ばす。

 

「まさかこいつらを追ってか?」

 

「時を超える怪物。聞いた事がないな。」

 

 この二人・・・強い。イマジン達を斬り伏せた一太刀だけでわかる。

 

 ダンテの野郎はわかっていたが、あの鋼牙って奴もすごいぞ。

 

「それで、どうして黄金騎士がここにいる?」

 

「それはこっちのセリフだ。五大魔王の一人がどうしてこんな辺境に?」

 

「ちょっとまて。何であんたが冥界の魔王になってんだよ!しかもあんたも時間を超えたみたいな発言があったぞ!?」

 

 まず色々とツッコミたい。聞きたい事がたくさんあるぞ!?

 

「悪いが俺の用事はその怪物じゃない。そっちに任せる事にしよう。俺は急いでいる。」

 

「へえ?それっておまえもあの施設に用事があるってことかい?」

 

 ダンテと鋼牙が指した施設。

 

「あれって・・・。」

 

「聖剣計画。かつてバルパーが非道な実験を行った施設だ。実物は初めて見る。事故か何かで跡形もなく消滅したらしいからな。」

 

 ゼノヴィアがそう答えてくれる。

 

「あそこに息子がいる。」

 

―――――サイガ坊ちゃんがな。未知の因子を持っているがゆえに、バルパーが誘拐を。

 

『サイガだって!?』

 

 ザルバの言葉に俺達は揃って声を上げる。

 

「お前達、未来でのサイガの関係者か?」

 

「えっと・・・。」

 

「俺の友達だ。でも、未来に関わる事だからこれ以上は言えない。」

 

 イッセ―がそこでフォローを入れてくる。

 

「その未来でその息子生きている・・・。なら、助け出せるってことだな。」

 

 それだけで鋼牙の顔に笑みが宿る。

 

「・・・ああ。」

 

―――――だったら急ごう。

 

「っ・・・貴様ら。」

 

「よくもやってくれたな!!」

 

 斬りとばされた二体のイマジンが怒り狂い、武器を手に二人に襲いかかる。

 

 だが・・・。

 

 二人が一睨み。

 

『ヒッ!?』

 

「邪魔だ。」

 

 鋼牙さんが二体を剣で斬り飛ばし

 

「寝んねしてな。」

 

 ダンテが二丁拳銃を取り出し、撃ちまくる。

 

『がばぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 俺の上にトスのように飛んできたのでジャンプして・・・右手で掴み地面におもっきり叩きつけた。

 

『がば!?』

 

 二体とも、完全に気絶した。

 

「良太郎。今のうちこいつらやっておくぜ?」

 

「うん。でも、まさか変身もしないで一蹴なんて。」

 

「・・・変身できなかった。出番取られた。」

 

 後ろでゼノヴィアが三角座りをして落ち込んでいる。

 

「まあまあ・・・まだその時じゃないだけだって。」

 

 それをイッセ―が慰めている。

 

 でも、そこで一つ問題が起こる。

 

 深い霧が出てきたのだ。

 

―――――鋼牙。ホラーだ。

 

「何?」

 

―――――しかもこれは厄介だぞ。

 

「ほう・・・。美味しそうな獲物と不味そうな獲物がいるな。」

 

 そこに現れたのは一体の人間。白衣を来て眼鏡をかけ、不衛生に髭を伸ばした男だ。

 

 いや・・・見た目はそうだが、こいつは!!

 

 横を見るとイッセ―も嫌な物を感じているらしく鋭い目つきになっている。

 

――――――気をつけろ。こいつはミスガチィア。霧を操り、獲物を迷いこませてから喰らうホラーだ。しかも・・・とくに子供が好物。

 

『!!?』

 

「その通りです。・・・私を召喚してくれたあの人には感謝しないと。ここなら美味しそうに絶望に染まった子供がたくさんいますからねえ。ふふふふ・・・。」

 

「・・・外道が。」

 

 吐き気がするぜ。こいつ・・・。

 

「大方、逃げ出したこいつを狙っての事だろうな。」

 

 ダンテの後ろで倒れている木場の姿。

 

「ええ・・・。食べ残しはいけないといわれていますのでね!!」

 

 男の姿が代わる。白い幽霊のようなボロボロの布に赤い一つ目の付いた顔。そして刃のような三つ巨大な爪が付いた手が裾から出ている怪物へと。

 

 首には目玉の付いた不気味なネックレスがでている。

 

 これが、憑依体のホラーか。

 

「あなた達も霧の中で迷い・・・そして果てるがいい!!」

 

 あいつが白い布を気化させるようにして霧を生み出す。

 

 霧の濃度が一気に濃くなり、何も見えなくなった。

 

 

SIDE ミスガチィア

 

 さあ迷うが良い。恐れるがいい。

 

 この霧はただの霧じゃない。私の体の一部を使った霧。その中に私自身も霧となって同化してまぎれている。

 

 この霧は結界であり、私の体内にいるも同然でもあるのだ。

 

 ふはははは・・・さあ、まずは不味そうなあの二人の男からやろうか!!

 

 こいつらは獲物にならない。それでも・・・殺すだけでも十分楽しい。他の奴らは後でじっくりといただいてやる。特に、あの蒼髪の女。とても美味しそうな感じがする。

 

 ヒヒヒヒヒヒ・・・子供が好きですがたまにはいい。

 

 私は気配を消し、霧の中でランダムに実体化して、両手の爪を振るう。

 

 だが・・・・。

 

 あれ?攻撃が外れた?もう一人にもやったのにあれ?

 

 こうなったら体の一部である霧を半分実体化させてあいつらを拘束・・・。

 

「HEY!!」

 

「つまんねえの。」

 

 なんで二人ともそれを見切るのですか!!?

 

「無駄だ。」

 

――――おいおい。仮にも黄金騎士にその程度の攻撃が見切れないと?

 

 へっ?黄金騎士だってええぇぇぇぇぇぇぇ!?

 

 くそ、相手が悪い。

 

 だったら、あのガキと美味しそうな女、それとモヤシを。

 

「ふん!」

 

 女を背後から襲おうとして、振り向きながらの拳で殴られた!?痛てええぇぇぇ!!なんだ!?こいつ聖なる力を!!

 

「とりあえず避ける。」

 

 もやしはもやしで簡単にさけるし。

 

 こうなったら最後の一人に!!あのドラゴンの気配がするあいつに・・・。

 

 全速力で迫って爪を突き立てて・・・。

 

「がばら!?」

 

 いきなり蹴り飛ばされました。

 

 背後から迫ったところに、神業的なタイミングで振り向きながら上段回し蹴りを繰り出してきて・・・私は地面に叩きつけられる。

 

 とっさに霧に戻ってその場をやり過ごしますが、こいつら何だ?!

 

「殺気に反応してつい蹴っちゃったがまた姿を消したな」

 

 獲物としては不都合ということか。仕方ない。

 

 霧だけ残して逃げたあのガキを美味しく・・・。

 

「そうそう、イッセ―そこから動くなよ。あいつを今捉えたから。」

 

 あれ?不味そうな奴がなんか言っていやがる。

 

 私を捉えた?

 

「ようやく実戦でこれを使う事ができるか。うってつけの相手過ぎて笑えるぜ。・・・ここは俺にやらせてくれ。」

 

「?」

 

「何をする気だ?」

 

 あいつは目を閉じたまま剣をこっちに向けて突き出した!?

 

「アバン流刀殺法―――――空裂斬!」

 

 その剣先から光が放たれて私に真っ直ぐ向かって来て!!

 

「ぎゃああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

SIDE 鋼牙

 

 今俺は本来ならありえないはずの技の名前を聞いた。

 

――――おい。今の技ってアバンの書に乗っていた。

 

 サイガの両親が残した異世界の勇者が記したアバンの書。

 

 そこに記してあった「空」の技。

 

 心の眼で相手を捉え、そこに生命エネルギーである闘気を放ち、その邪悪を滅するという技。

 

 それを今、あいつがやったのだ。

 

「がが・・・私の霧化が解けただと!?」

 

―――――すごいな。あいつのペンダントが霧化の鍵だったのだが、それを打ち砕いたというのかい。

 

 ザルバの説明が入る前にあいつはそのペンダントを破壊した。

 

 そのおかげで自分達がホラーを視認できる程度に霧が薄くなった。

 

「だっ、だが私の体の一部である霧がまだ残って・・・。」

 

 おかげで、倒れたままの間抜けな姿のホラーが見える。

 

「・・・木場に悪いが、先にこっちは極めさせてもらったぜ。」

 

 あのネロって男が剣を逆手に構える。

 

―――――おいおい鋼牙!!あれは。

 

「ああ・・・。間違いない。アバンの書に記してあったアバン流刀殺法の奥義。」

 

 それは大地を斬り、海を斬り、そして空を斬る。三つを斬れたものだけが完全な形で放つ事ができる総てを斬る奥義。

 

「ついでだ。一工夫入れてやる。」

 

――――エレクトリック・・・マキシマムドライブ。

 

 その音声と共に、剣がまるで雷が落ちたかのような凄まじい電撃を発する。

 

 その電撃。離れていてもバチバチと俺達の周りでスパークが起こるほど。

 

「受けてみやがれ。」

 

―――――ジェット・・・アクセル!!

 

 そして、それをホラーに向けて凄まじい勢いで突進。

 

「これが俺式ギガスラッシュだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 そして、加速のままに斬りつけると共に凄まじい爆発が起こりホラーは悲鳴を上げる暇すらなく消滅。

 

 その爆発で霧がすべて吹っ飛ぶ。

 

「ひゅ~。いい感じにはじけてきたじゃねえか。いつのまにそんなすごくなった?」

 

 隣にいる魔王ダンテが心底驚いた様子で口笛を吹く。

 

「今の剣、まさかアバンストラッシュ。」

 

――――あの男も使い手。どういうことだ?

 

「何、師匠がいただけの事だ。やっと完成したぜ。」

 

「・・・・・・そういうことか。」

 

 未来でサイガの奴。あれを教えるほどの腕前になっているということか。

 

 神のような才能を秘めているとは思っていたが、そうか。

 

――――鋼牙。お前、未来であいつと剣を交えたいと思っているだろ?

 

 ザルバは俺の事をよく見ている。

 

「当たり前だ。あいつが弟子が持てるほどの強さは楽しみだ。まあ、お前とも剣を交えてみたいものだな。冥界最強の剣士。」

 

 ダンテは笑う。純粋に剣の使い手としても腕を競い合いたい。

 

 そこら辺、ダンテも分かっているようだ。

 

「ああ、いいね。だったら今度の再会の時にやろうじゃねえか。」

 

「楽しみにしている。」

 

 どうやら楽しみが一つ増えたようだ。まだまだ死ねんな。

 

「まあ、まずは突入しましょうか。あの施設にはこっちの因縁もある。」

 

「そうか。って、あのイマジン共が・・・。」

 

「がが・・・ごおおおおおおぉぉぉぉ!!」

 

 倒れていたウサギの怪物が巨大な牛、みたいな怪物へと変化する。

 

「イメージの暴走。こんな時に。」

 

 六つの目に三本の角を持つ怪物。

 

「チィ・・・俺は逃げるぜ。」

 

 サイの奴はよりによって施設に方に!?

 

「あいつを追わないと。」

 

―――――だがこいつは放置しておけない、倒すのは手間だぞ。

 

 そうザルバがつぶやいた時だった。

 

 いきなり空に穴が開き、そこから線路が敷かれて電車が現れたのだ。

 

 

――――なんだあれは?

 

「・・・今更驚くことか?」

 

 俺からしたらその程度驚くに値しない。一応そう言った類は乗った事はある。

 

 だが・・・。

 

「はああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 その電車から女が飛び降り、その怪物をなぐり地面に叩きつけるという光景には流石に度肝を抜かれたが。

 

 殴られた怪物は地面にぐったりしている。

 

「はっ、ハナさん!?」

 

「ここは私が押さえる。早くイマジンを!!」

 

「でも、これ以上の干渉は時間に影響しないか?」

 

 ネロって言った青年が細身の青年、良太郎の方をみる。

 

 あいつらはそれなりに気をつけている様子だな。

 

 戸惑う良太郎。

 

でも、ハナと呼ばれた女性は、気絶から復活し、起き上がろうとする怪物を拳骨で再び黙らせながら叫ぶ。

 

 ものすごく重い打撃音が轟いたぞ。

 

「安心しなさい!!あなた達の干渉もすでに時間の正常な流れに組み込まれているってオーナーが言っていたから。」

 

『それってどういう事だ!?』

 

 ぐったりした怪物の上で喋るハナ。

 

―――――なあ、鋼牙。あいつは人間か?ホラーに憑依されてもあんなのできないぞ。

 

「俺に質問するな。」

 

 見ていて色々と頭が痛くなる。

 

 魔戒騎士でもあんなのできないぞ。何というパワーだ。

 

 再び復活した怪物が上に乗ってハナを跳ね飛ばそうとするが、余裕で耐えるのも可笑しい。

 

 そいつを今度は鈍い打撃音と共に踏みつけてハナは叫ぶ。

 

「い・い・か・ら・さっさと行きなさい!!」

 

 まかせて問題はなさそうだ。

 

 少なくてもあの怪物とあそこまで戦える程なら問題ない。むしろどこに問題があるのかそっちを探す方が大変だ。

 

「オーナー!!デンライナーを使わせてもらいます!!」

 

――仕方ないですね。

 

「リュウタロス、操縦まかせたわよ!」

 

――――了解!!

 

 電車の左側面が展開して色々とでてくる。

 

「俺達は施設に向かおうぜ。あれは専門家に任せた方がよさそうだわ。」

 

「そうだな。」

 

 ダンテの判断も適切だろうな。

 

―――――なんか、変なことに巻き込まれたな。

 

「そう言う事はいつもの事だ。」

 

 魔戒騎士をやっているとそれくらいたくさんある。

 

 今回は特に訳が分からなかったがな!!

 

 

 

 




 ここで過去のダンテと鋼牙と合流。

 そして、出てきたホラーは完全にいけにえになってしました。

 ネロの成長のためのです。


 この事件にこの二人はかなり関わっています。


 そして、この事件でもう一人巻き込まれちゃった人も判明しております。

 その彼からの視点で次は始まります。


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 過去の友達を助けに来ました!!

 連続投稿第三弾

 ここでまだ幼いあの二人が奮闘します。

 そして敵キャラが新しく二人、それ以外にもう一人追加されます。

 過去編第二弾。

 どうぞ!!


 SIDE ???

 

 うまく騒ぎを起こして三人を逃がせた。でも、まだ諦める訳にはいかない。

 

 何時も一緒にいて支えあった大切な同志。

 

 教会の出身ではなかった僕に聖歌を教えてくれた大切な友達。

 

 それを助けられてよかった。皆で抵抗した甲斐がある。

 

 充満する毒ガス。

 

 苦しそうな皆。

 

「・・・兄さん頑張って。」

 

 隣では彼の妹もいる。彼女も含めみんな限界だった。

 

 

 

 僕は攫われた。バルパーという魔戒法師によって。

 

 そして、この施設にぶちこまれたのだ。

 

 そこで僕はみんなと出会った。

 

 苦しい日々を皆で支え合って耐えてきた。

 

 みんな家族に等しいくらい大切な人達。

 

 その皆が、次々と倒れて行く。

 

 防護服を着た男達の横に何も着ていない大変小柄な老人がいる。

 

「ひひひ・・・ですがあなた達はすぐにホラーの餌になります。」

 

「その通り。死してなお生贄になることを誇りに思いなさい。」

 

 その隣には首元にファーがついた白い服に紅のマント、立派なひげとまるでオーガの角を思わせるような髪をした魔術師もいる。

 

「逃げた兄の方も追いなさい。」

 

「それはさせない!!兄さんは私達の希望・・・ゴホゴホ・・・。」

 

 兄を逃がした彼女が抵抗しようとするけど・・・。

 

 それを・・・魔術師が手に持った銃を向け。

 

「やめろおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 無慈悲にそれを放ったのだ。

 

 銃弾に貫かれる彼女。

 

 そしてそのまま倒れる。

 

「ギヒヒヒヒ・・・どうせ死ぬのなら問題ない。」

 

 同志が、友達が死ぬ。

 

 毒ガスにやられて次々と・・・。

 

 俺はそれを黙って見ている事しかできないのか?

 

 嫌・・・違う。

 

 俺の中の何かがそれを教えてくれる。

 

「お前・・・。」

 

 僕は立ち上がる。先ほどまで死ぬほど苦しかったのに、体に力が入る。

 

「おや?まだ立てるというのですか?」

 

「おかしい。常人ならとっくに死んでいるはずだが・・・。」

 

「・・・念のために殺しておきましょうか。」

 

 その言葉と共に防護服を着た男達が一斉に手をかざす。

 

 手から炎が灯っていた。

 

 殺す?ここまでしておいて?

 

 今更そんな事言うの?

 

 こっちは限界だ。

 

 もう怒りしかない。

 

 お前達みたいな外道に対しての怒りしか。

 

 その怒りが自分の中の一線を越える。

 

――――火炎呪文(メラゾーマ)

 

 そこに連中が放った強力な火の球が命中して爆発が起こった。

 

 でも・・・。

 

 僕や周りで倒れている同志たちは無事だった。

 

「どういうことだ?どうしてあいつは無傷・・・。」

 

「あっ・・・ああ・・・そんな馬鹿な。」

 

 小柄な老人の方が僕を見て怯えている。

 

「その額の紋章。・・・なんでですか!?ダイはあの方が倒したはずなのに?」

 

 鏡を見ると僕の額で竜の頭を模した紋章が蒼い光を放っている。

 

「竜の紋章が・・・、竜の騎士がどうしてここに!?」

 

「貴様の世界の?ちぃ・・・。」

 

 もう一人の魔術師が銃弾を放つが、その程度簡単に見切れる。

 

「避けた!?」

 

 そのまま僕は走りだす。

 

「がばっ!?」

 

 武器を手にした男達を拳の圧力だけでふっ飛ばす。

 

「だったらこれを受けなさい。皆・・・メラゾーマを!!」

 

―――――――集束呪文(マポプラス)

 

 残った連中のメラゾーマを受けるあいつ。

 

「この世界でさらに改良を重ねたワシの呪文じゃ。」

 

 その熱量に天井が溶け、蒸発する。

 

「避けれないでしょう。何しろ貴方の後ろには・・・。」

 

 僕の後ろには同志が・・・友達がいる。

 

 僕は彼らを守るために立ち上がっていたのだ。

 

「ヒヒヒ・・・受けてみなさい!!この呪文は目覚めたばかりの貴方が防げるレベルじゃありませんよ!!」

 

 おそらくあいつの言うとおりだろう。これだけの呪文を防ぎきる自信はない。

 

「だったら・・・。」

 

 でも、それに対する答えはシンプルだった。

 

「竜闘気(ドラゴニックオーラ)がさらに増大?」

 

「だったら真正面からぶち破る。」

 

 今出せる最大のパワーで相殺しかない!!

 

 僕のその決意に応えるように両手からも光が出てくる

 

「げぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?両手にも竜の紋章!?」

 

 手の甲に額と同じ紋章が現れたのだ。

 

「お前・・・一体何者?」

 

 その光を放つ両手を手の上で合わせ、力を集める。

 

「それはまさか!?」

 

「ぐっ、厖大なエネルギーが集束しているぞ。」

 

 頭の中で告げている。これが最大の技だと。

 

「そんな馬鹿な。あれを放つというのですか!?しかも従来よりも集束が早い!?」

 

 老人はそれを見て心底怯える。

 

「受けてみろ。多分威力は半端じゃないぞ。」

 

「不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い!!あれをこんな場所でぶっ放すなんてあなた、なっ、何を考えているのですか!!」

 

 あの老人は僕の力の正体を知っているのは間違いない。

 

 これがどんな呪文かこっちはまったく知らないけど、今は相手にとって相当脅威な呪文であるだけで十分。

 

 遠慮なくぶっ放してくれる!!

 

「ひぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 両手をまるで竜の口のように開き、僕はそれを放つ。

 

 僕はこの時知らなかった。

 

 この呪文は父さんやおじいちゃん達竜の騎士の最大最強の切り札。

 

――――――竜闘気砲呪文(ドルオーラ)!!

 

 国一つ滅ぼす程の破壊力がある禁断の呪文であることを。

 

 

 

 SIDE イッセ―

 

 施設に侵入した俺達は突然の轟音にびっくりしていた。

 

 凄まじい力が突然現れたのは感じていた。

 

「なっ・・・なんだ!?」

 

 まるで隕石が落ちてきたかのような凄まじい振動。

 

 建物が大きく震える。

 

「これって・・・あの爆発!?発生源がまさかここだったなんて。」

 

 良太郎は何か別の意味で驚いている。

 

 外を見ると・・・。

 

『・・・・・・・・・・・・・。』

 

 教会の施設の半分が吹き飛び、その先にあった山脈が消滅していた。

 

 雄大な自然の景色が一変していたのだ。

 

「おいおい何があった?!」

 

「聞きたいのはこっちの方だ。」

 

 ダンテさんと鋼牙さんですら唖然茫然のあり様。

 

 一体何があったら、あんな惨状になる?

 

「・・・・・・地下室は。」

 

「こっちです。着いて来てください。」

 

 焦った良太郎が皆に告げる。

 

「お前・・・ここを知っているのか?」

 

「自分でもまだ覚えている事にびっくりしているけど。」

 

 覚えている?それって一体・・・。

 

 良太郎の案内で目的の地下室へと俺達は辿り着く。

 

 そこには一人の少年が立っていた。

 

 両手と額に竜の紋章を輝かせた少年が。

 

 まだ幼いが、間違いない。あいつはサイガだ。

 

 そしてサイガが見ている方向から凄まじい破壊が巻き起こっている。

 

「まさか・・・こいつがやったというのか?」

 

「サイガ?」

 

 だが、両手と額の紋章が消え、サイガが力なく倒れる。

 

「う・・・うう。」

 

 その全身は酷いものだった。

 

「サイガ!!」

 

 鋼牙さんがサイガに駆け寄る。

 

――――こりゃ、全身がボロボロだぜ。一体どんな力を使えばこんなことに。

 

「父・・・様。」

 

「ああ・・・。」

 

 弱々しく震える手で鋼牙さんに手を伸ばすサイガ。鋼牙さんがその手を取る。

 

「助けに・・・来てくれましたか。信じていました。」

 

「・・・・・・よくがんばったな。」

 

 サイガが震える手で今度は倒れている子供達の方を指す。

 

「みんなを・・・友達をお願いします。助けてください。僕の・・・僕の友達を・・・。」

 

「ああ。分かった。」

 

 その言葉を聞き、安堵の笑みを浮かべた後にサイガは気を失う。

 

「・・・・・・。」

 

 その全身は血まみれである。一体何を使ったらここまでボロボロに。

 

―――――速く手当てしないと。流石にヤバいぞ。

 

「・・・・・・。」

 

 鋼牙さんは無言で立ちあがる。その拳は震えていた。

 

 表情は見えないけど・・・背中で語っていた。

 

 どうしようもなく怒り、そして悔いていることに。

 

「俺も手伝うぜ。魔王としての特権、ここで都合よく使わせてもらう。」

 

「・・・感謝する。」

 

 鋼牙とダンテが倒れた子供達の介抱に向かおうとした時だった。

 

「ヒッ・・・ヒィィィ・・・死ぬかと思いました。ワシの腕がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 瓦礫の下から左腕を失った小柄な老人が現れる。

 

「避けれたのが奇跡としかいいようがない。あんなの防げるか・・・。」

 

 その隣には多分豪奢な衣装だったのだろうが、マントが無残に引き千切られ、白い服も血などで汚れ、ずたずたになっていた。

 

「しかし竜の紋章が三つって、どんな化け物ですか!?おかげで、へっ?」

 

『・・・・・・。』

 

 その二人を、無言で見る鋼牙さんとダンテさん。

 

「ダンテ・・・だと?」

 

「やっぱり生きていたか。アリウス。」

 

 片方はダンテさんの知り合いですか?

 

「ちぃ・・・。」

 

「俺の因縁の相手なんだ。倒したはずなんだけどな。」

 

「ふふふ・・・私を必要としてくれている方に復活させてもらったのです。隣にいるザボエラと共に。」

 

「ですが・・・流石に驚きましたよ。黄金騎士の息子がここまでの力を秘めていたなんて。紋章を三つも持つ竜の騎士。捕えて研究でも・・・ひっ!?」

 

「・・・・・・ふざけるな。」

 

 ザボエラと言われた男の言葉に、鋼牙さんが叫ぶ。

 

 かなり怒っている。

 

 我を失わないように抑えているけど、それでも隠しきれないほどに怒っている。

 

 その威圧だけであの二人が下がる。

 

「俺の息子をこれ以上傷つけさせはしない!!」

 

 そこにいるのは一人の父親だった。サイガ・・・お前の父さんってすごい人だよ。

 

 その背中が格好いい。あいつはいつもこの背中を見て育っていたのか。

 

「おいおい。俺もいるぜ。」

 

 ダンテさんも剣を構える。

 

「・・・撤退した方が良い。さすがにあいつとまともに戦うのは避けたい。」

 

「そうですね。あれを回収してから。」

 

 ザボエラが邪悪な笑みを浮かべる。

 

 その言葉と共に気を失ったサイガの傍に影のような怪物が現れる。

 

「竜の騎士。そのサンプルを回収させてもらいますよ!!」

 

『!!?』

 

 誰もそれに反応できない。

 

 だが、影の怪物が動き出す前にその身体が切り裂かれる。

 

「・・・・・・サイガ君に何をするの。」

 

 それは先ほどまで倒れていた金髪の少女だった。

 

 その白い服は血で汚れている。

 

「何で生きている!?確かに私がこの銃で・・・。」

 

「サイガ君に、みんなに手を出すのは私が許さない!!」

 

 戸惑うアリエスの前で少女は顔に文様みたいなものを浮かび上がらせて変身する。

 

 灰色の身体をした怪物。オルフェノクへと。

 

 その名はクレインオルフェノク。鶴の力を持ったオルフェノクだ。

 

 デンライナーに乗っている状態で俺はネロからオルフェノクについて聞いていた。

 

 それは人類の突然変異的な進化系。その資質を持つ者が一度死に、そこから復活することで覚醒するのと、オルフェノクがもつ使徒化の能力でオルフェノクになるパターンがあると。

 

 死を経て覚醒したオルフェノクはオリジナルと呼ばれ、共通して強大な力を持つ。

 

 そして、この少女もオリジナルとして覚醒したということか?

 

「絶対にサイガ君は同志たちは私が守る!」

 

「怪物に姿を変えてもですか?」

 

「何を言って・・・えっ?」

 

 その少女はザボエラの言葉に我に帰り、近くの鏡で己の姿を見る。

 

 そこに移っていたのは灰色の身体となった少女の姿、その背中から灰色の翼が生えてくる。

 

「何、この姿。私なの・・・・・・?」

 

 変わり果てた自分の姿に激しく動揺を示す彼女。

 

「・・・一度死を経て怪物になりましたか。」

 

「違う!!私・・・私は怪物じゃ・・・。」

 

「その姿・・・なるほどオリジナルのオルフェノク。面倒な奴になりましたね。」

 

 その少女は激しく否定しようとするが・・・変わり果てたその姿が事実を突きつけるのか否定できないでいる。

 

「そんな・・・。私は・・・。」

 

「廃棄処分の癖に生意気です。ここで名前の通り灰に変えてくれる!!」

 

 ザボエラが手から閃熱を放つ。

 

―――――閃熱呪文(ベギラマ)!!

 

 放たれた閃熱。それが動けない彼女に放たれる。

 

 変わり果てた自分の姿に茫然としていたあいつを放っておけなくて・・・。

 

「なんですと!?」

 

 俺は前に出てそれを受け止めた。オーラが勝手に出てきてその手で殴り消したのだ。

 

「わりぃ・・・手を出してしまった。良太郎。」

 

 後ろで勝手なことをしてしまった事を良太郎に謝っておく。時間にどのような影響が来るか分からないのに、勝手なことをしてしまった。

 

「いや、君は人として正しい事をしただけだよ。流石にこれは見過ごせない。」

 

 それでいて俺は怒りを抑えて、茫然としているその子の手を取る。

 

 涙を流して自分を見ていた彼女の目を見て言う。

 

「お前、すげえな。」

 

「えっ?」

 

「だって、一度死んで、いきなり蘇ってもなお俺の友達を助けてくれた。」

 

 倒れていたサイガが浚われそうになった所をこの子は無我夢中で助けてくれた。

 

「そんなお前が怪物?俺はその言葉を否定する。」

 

「否定って・・・。」

 

「お前は怪物じゃない。一人の女の子だ。俺の友達を助けてくれた優しく勇気のある女の子だよ。そうでないと・・・・。」

 

 精一杯の気持ちを伝える。

 

 今の俺に共通しているからこそ言いたい。

 

 アギトとなった俺だからこそ。

 

「涙を流して、悲しまないだろうが。」

 

 その異形の姿に、ありえない力に優しい自分の心を失って欲しくない。

 

「・・・・・・。」

 

 その言葉は届いてくれただろうか。

 

 茫然とする彼女はそのまま変身を解く。

 

 その彼女は泣いていた。

 

「私・・・私・・・。」

 

 その頭を撫でてやる。

 

「安心しろ。よく頑張った。あとは俺達に任せろ。お前もサイガも、そしてみんなも守ってやる。」

 

「うん・・・うん・・・・・・・。」

 

 その言葉に安心してくれたのか、その子はそのまま俺にもたれかかるようにして気を失う。

 

 この子をゆっくりと優しく寝かせる。

 

「おい・・・。」

 

 さてと。

 

 俺はあんなことを言った糞ジジイを睨みつけてやる。

 

「とりあえず一発ぶん殴らせろ!!」

 

 俺はその子に攻撃を仕掛けた糞ジジイを睨みつける。。

 

「ガキが生意気をぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

――――――火炎呪文(メラゾーマ)!!

 

 あいつが手から巨大な火球を放つ。

 

「ドライク、拳借りるわ。」

 

―――――ああ。遠慮なく行け。

 

 左腕に赤龍帝の篭手を召喚させながら俺はその炎に突っ込む。

 

 ドラゴンは伊達じゃない。その程度の炎でこの篭手はびくともしない!!

 

 そのまま左腕であいつの放った炎をかき消しながら突進。

 

「なんですと!?がばっ!?」

 

 俺の拳は糞ジジイ―――ザボエラの頬を捉え、そのまま殴りとばす。

 

 とりあえず一発だけ殴り飛ばす事ができたぜ。

 

「あの子は怪物じゃねえ。ただ一度死んで、蘇ってから力を得たただの女の子だ!!」

 

 俺の中で怒りが増大していく。似ているのだ。今の俺と。

 

 アギトという存在になった俺と・・・。

 

「そいつの心を抉るような事を言いやがって。覚悟はいいか?竜の怒りにお前は今触れたんだからな!!」

 

―――――あらあら、この子の怒りに火をつけたのね。あなた達もいい度胸をしているわ。この子の怒り、ちょっとすごいのよ?

 

 怒りで建物全体が震えだす。

 

「・・・・・・ほう。」

 

 ダンテさんも目を細める。

 

――――鋼牙。こいつからドラゴンの力を感じる。

 

「ドラゴン?じゃあ、あの篭手は神器なのか?」

 

 鋼牙さんも少し驚いた様子だ。

 

「なんなんじゃ?こいつ唯者じゃない?」

 

「・・・神器は持っているのは分かっている。だがあれは・・・。まさか神滅具!?」

 

 アリウスが俺の篭手を見てそれが何か気付いた様子だ。

 

―――<BOOSTBOOSTBOOST!!>

 

「赤龍帝の篭手(ブースデット・ギア)。こいつ・・・赤龍帝なのか?」

 

「なんですと!?」

 

 まあ間違っていない。実際はそれだけじゃないけどな!!

 

「おいおい押さえておけよ。逆鱗に触れたのはわかるが、建物が耐えらなくなる・・・。」

 

 ネロが俺の肩を叩いて注意してくれる。そのおかげで少し俺の怒りも収まる。

 

「それにお前だけずるいぞ。・・・俺の分がなくなるだろうが。」

 

 訂正。あいつもブチ切れている。そう言えばネロも似たような境遇だったもんな。

 

「お前ら・・・ぶっ潰す。」

 

「そういうことだ。話には聞いていたが、やはり実際に目にすると許せない者がある。今なら、木場の気持ちが少し分かる。あいつにも謝っておかないといけない。」

 

 ゼノヴィアまで・・・。

 

「貴様ら・・・ひっ!?」

 

 ザボエラの足元に銃弾が命中。

 

 撃ったのは良太郎?手に変な銃を持っていますけど・・・。

 

「ごめん。我慢するつもりだった。この後どうなっていたのかすごく気になっていたから静観しようと思っていた。でも・・・さすがにこれは許せない。」

 

 あれ?

 

 そして良太郎の目つきが大変危険だぞ?

 

「覚悟はいいよね?もちろん、答えは聞いていないから。」

 

 誰よりもすごく怒っている?

 

「・・・ったく若者ばかりにいい格好はさせられねえな。」

 

「ああ・・・。」

 

―――――お前も歳をとったものだ。情にもろくなったか?

 

「仕方ないだろう。だが、この外道どもを野放しにはできん。サイガの事もあるからな!!」

 

 怒り心頭の俺に他の皆の怒りも重なる。

 

「チィ、ここは撤退です。黄金騎士にスパーダと戦うのは分が悪い。そこに赤龍帝もいるのじゃ・・・。」

 

「しかたない。デルパ!」

 

 ザボエラがアリエルと共に逃げる前に手にした黄金の筒を取り出し、そこから何かが出てくる。

 

「行きなさい・・・超魔ゾンビ10号!!」

 

 それは巨大な一つ目の蛇だった。丸太のように太い胴体。体の長さは軽く二十メートル以上はある。

 

「逃がすか!!」

 

――――――ルーラ!!

 

 だが、二人は光となってその場から姿を消す。

 

―――――転送呪文。それも見た事がある呪文ね。

 

―――――ああ。だがその前にあいつをなんとかしないとな。

 

 出てきた蛇の全身から猛烈な瘴気が発せられる。

 

 それは床すら腐食するほどの強烈なもの。

 

「くそ・・・。」

 

――――バルカン。

 

 ネロがブルーローズより無数の弾丸を叩き込むが・・・。

 

 あいつの肉が固いのか総てめり込むだけで全然効果がみられない。

 

 俺も殴ってみるが、衝撃が吸収され、逆に弾き飛ばされる。

 

 良太郎の銃弾もそうだ。全然聞いていない。

 

 なんだこいつ?

 

――――こいつ死肉の凝縮体よ。まるでゴムのように衝撃を吸収するレベルまでのね。

 

 死体で作られている?そう言えばゾンビだってあいつもいっていたよな。

 

 じゃあ痛みすら感じないのか。

 

 時間稼ぎにはもってこいってわけかい。

 

 でも、速く倒さないといけない。でないと毒で弱っているサイガ達の命が・・・。

 

 ・・・仕方ない。

 

 俺とネロが視線をかわし、変身する覚悟を固めた時だった。

 

「逃げ脚だけは早いな。」

 

「ああ。あいつは斬っておくべき外道だったのに。」

 

 鋼牙さんとダンテさんは全然怯まず、むしろ逃がした事を憤っている。

 

 それが気に障ったのか超魔ゾンビとか言っていた蛇の怪物が襲いかかってくるが。

 

『失せろ。』

 

 と二人が一斉に剣を振るって一撃で切り裂いた!?

 

 丸太のように太い胴体が十字に切り裂かれながらそいつは動きを止める。

 

 緑の炎を纏っていた鋼牙さんの剣のせいで、そいつの身体は緑の炎に包まれていく。

 

 強えぇぇぇぇぇ・・・。

 

 あいつ相当頑丈そうだったぞ。それを瞬殺ってどんだけですか?お二人とも。

 

「あっ・・そういえば後一体のイマジンは!?」

 

 そもそも俺達はイマジンを追ってここまで来たのだ。

 

「あそこだ。」

 

 ネロは呆れた様子でサイガがやらかしたと思われる破壊の後を見る。

 

「そんな・・・ばかな・・・。」

 

 そこには全身ボロボロで倒れているサイ型のイマジンの姿。

 

 どうも山脈を吹き飛ばした謎の攻撃に巻き込まれたらしい。

 

 そのまま消滅していく。

 

「なんだそりゃ。」

 

 結局俺達はまともにイマジンと戦っていない。

 

「ははは・・・まあ手間は省けたよ。今のうちにみんなを・・・。」

 

―――――――あなた達には黒の核晶(コア)の実験になってもらいます。

 

 その中、建物内にさっきの老人の声が聞こえてくる。

 

 それはダンテさんと鋼牙さんが斬った蛇の怪物の頭から。その口が動いて喋っている。

 

「黒の核晶だと?お前ら正気か!!」

 

 鋼牙さんが何か知っている様子だ。何それ?

 

「異世界の最悪の兵器だ。アバンの書に後から書き加えられるようにして書かれていた。詳しい製法は知らないが、小型の爆弾一つで大陸一つ吹っ飛ぶくらい禁断の兵器だと・・・。」

 

 おいおい・・・なんてもんを使おうとしている?

 

――――――今回はそれの改良、威力調整型です。それでも建物の周囲二キロは軽く消滅するでしょうけど。まあ、ちょうどここも破棄しようとしていたのでちょうどいいです。この建物もろとも吹っ飛ぶが良い。あなた達だけなら脱出できるかもしれませんがそうなると子供達はどうですかね。ひひひひっ。

 

 あの野郎ぉぉぉぉ!!卑怯にも程がある。

 

 俺達がこの子達を見捨てられないことを見越して・・・。

 

 おまけに逃がすつもりもないみたいだ。

 

 みんなをミラーワールドに逃がそうとしたけど・・・。

 

――――まさか私達の世界への出入りにまで干渉する結界があるなんて。

 

 展開した結界がそれを阻んでいた。

 

―――――さらばじゃ!!はははははははははは!!

 

「少し喋り過ぎだ。」

 

 笑うその頭をダンテさんが銃で撃ち抜く。それと共に頭は消滅。

 

 だが・・・不味いぞ。

 

 倒れている子供達は軽く見て四十人位はいる。

 

 もうすぐに爆発するのにこいつらを助けて行くのは・・・。

 

 凄まじい振動と共に崩壊を始める建物。

 

「おまえさんの言うとおり、外道もいい所だな。あいつめ・・・。」

 

 ダンテさんがかなり怒っている。いつもの余裕がない。

 

――――――どうする?

 

「こうなったら鎧で身を呈して庇うくらいしか・・・。」

 

「すまん。ドライク。クレア、お前達も手伝ってくれ!!」

 

―――ああ。それしかあるまい。

 

―――私達の身体、耐えられないかもね。流石に・・・。

 

「安心しろ。俺も付き合うから。」

 

 相棒達だけに命をかけさせるわけにはいかねえ!!

 

 変身した上でできる限り力を倍化させて皆にそれを譲渡。それで何とかしのぎ切る!!

 

 建物の振動がさらに強まる。いよいよ爆発が起ころうとした時だった。

 

「どうやら間に合ったみたいだな。」

 

 唐突に一人の男が現れる。

 

 丸い銀縁眼鏡をかけ、銀色の長い髪をはためかせた俺達と同じくらいの年の男。

 

白いマントの下の服は緑と黒に白い文様が書かれた法衣を着ている。まるでコスプレを見ているかのような服。    

 

手には先端が二股に分かれた双頭の杖。背中に白いリュック見たいな物が見える。

 

頭には黄色いバンダナ。左腕には篭手みたいな物がある。

 

「誰だあんた?」

 

「誰かの危機に参上した唯の大魔道士だ。よろしく!!」

 

 大魔道士?なんじゃそれ?

 

「さて・・・状況は思ったより悪い。」

 

 でも、彼は眼鏡を手で直しながらいう。

 

「みんな僕の傍に寄ってくれ。」

 

『へっ?』

 

「いいから!!みんなを一斉に飛ばす!!急いで!!壁に大穴があいているのが幸いだ。結界をぶち破りながら逃げる!!」

 

 あいつは手に宝石の付いた羽を取り出し、それを周囲に五本投げつけて方陣を作る。

 

 その指示に従い俺達は一斉にその法陣の中に子供達を急いで運び込んだ。

 

――――極大化発動。

 

 

 

 




 最後に現れたのはだれなのか?

 彼はある世界からやってきたオリキャラです。

 この時点でどの世界かわかる人はわかるかもしれません。

 次話である程度推察できるようにします。 


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元の時代に帰ります。

 連続投稿第四弾にして過去編の最終話。

 ここで木場にまつわる過去は終わりを迎えます。

 
 そしてオリキャラの正体も明らかになります。

 彼はある意味、サイガとは運命の絆で結ばれています。


 SIDE イッセー

 

 建物は光と共に消滅していた。

 

「・・・助かった。」

 

 その光景を俺達は遠く離れた地で眺めていた。

 

 彼が使った転送呪文・・・ルーラ。

 

 それで皆は助かったのだ。

 

 あの糞ジジイ共が使っていた同じ呪文で俺達は九死に一生を得たのだ。でも、その効力は段違いと言える。

 

 四十人以上も者達を一斉に運べたのだ。

 

 そこからが大変だった。

 

 その前に、俺が毒ガスでやられた子達をリカバリーベントで助けたりするなど、色々とやったぜ。

 

 あいつも回復系の魔法が使えるらしく、確かホイミとかキアリーなどを皆に使っていた。

 

 子供達は今すやすやと眠っている。

 

 サイガの傷も治したかったけど、何故か回復呪文を受け付けない。

 

 リカバリーベントですら効かないダメージなのだ。

 

 その理由をそいつは知っているらしく、薬草などで対処していた。

 

 その甲斐があってか、自力で信じられない程の回復を見せ、危険な状態から脱していた。

 

 どんな治癒能力をしているの?

 

「お前達には世話になった。ありがとう。」

 

 鋼牙さんが頭を下げる。

 

「いや、過去とは言え友達を助けるのは当然だぜ。それに礼を言うならあいつに――あれ?」

 

 窮地を助けてくれたあいつの名前を聞き忘れた事に気付き、俺達が振り向くが・・・。・

 

―――何時の間にか消えているか。鮮やかなものだ。

 

「・・・何者か分からないが、いつか礼を言わないとな。あいつの手当てが無かったらサイガは危なかったかもしれん。」

 

 一体何者だ?

 

 あれだけ危機的な状況で建物に乗り込んでいたといい・・・色々と謎が多い。

 

 だが、なんでだろう。

 

 近いうちにまた会えそうな気がする。

 

「こいつも頑張った。みんなをよく守った。」

 

 鋼牙さんは腕の中で眠り続けているサイガを見ている。

 

 あいつも頑張った。みんなを助けるためにあれだけの力を出して・・・。

 

――――あの一撃。多分サイガの潜在能力の一つなのだろう。あれだけの物を秘めているとは思いもしなかったぞ。下手したら戦神クラスはあるかもしれん。

 

――――多分。肉体に出た反動も最小限に抑えてああなっただけ。むしろあれだけの破壊力を発揮して、反動をあそこまで抑えられたと考えるべきね。色々と弱っていた状態で。

 

――――では成長した今、どれだけの力を発揮するというのだ?

 

 あいつ、どんだけの潜在能力を秘めているんだ?

 

 色々と力に謎の多い奴だと思っていたけど、あれほどとは、

 

「あいつめ。戻ったら色々と聞かないといけない事が出来たな。」

 

 そしてダンテさんは先ほどオルフェノクとして復活した女の子を連れていた。

 

「その子はどうするつもりだ?」

 

「俺の眷属にする。」

 

 ダンテさんはその子を眷属にすると言ってきた。

 

「俺はこいつが気に入った。姿が代わっても皆を助けようとする気概を持っている。それにオルフェノクに覚醒してそのままじゃ、こいつは長く生きられないだろうが。」

 

 オルフェノクの寿命は短い。人類の突然変異的な進化のためにだ。

 

「私も承知しました。せっかくの力・・・伸ばしたいので。」

 

「駒は自宅だから一緒に連れて帰るがな。」

 

「本当にありがとうございます。でも、まだ終わっていません。まだあいつらは・・・。」

 

「ああ知っている。」

 

 俺は知っている。この事件が俺達のいる時間でまた顔を出すこと。肝心のバルパーも他に研究に協力していたと思われるさっきの二人も逃げられた。

 

「お前達が逃がした三人だが、一人の所在は確認した。特徴からしてお前の兄だろうな。グレモリ―家に拾われている安心しろ。」

 

「・・・よかった。」

 

 その報告を聞いた彼女は心の底から安堵する。

 

「もう一人はうまく山を下りて、家族、姉達に会えたらしい。まあ、崖から転落したり狼やドラゴンに襲われたりするなど、色々と不幸な目に会いながらの帰還だ。どうやったらそれだけの不幸な目にあって、それで帰れたのか信じられねえぜ。」

 

「良太郎も。はあ、不幸なのは変わっていないのね。でもよかった。」

 

 良太郎という名前に俺とゼノヴィア、そしてネロは一斉に同じ名前の彼を見る。

 

「はははは・・・まあね。」

 

 もしかしてとは思っていたよ

 

 こいつまで巻き込まれていたのかい!!

 

「お前、ちょうどこの時期一週間ほど行方不明になった事があったが、この事件に巻き込まれていたのか!?何で話してくれなかった!!」

 

 ゼノヴィアの話だと、良太郎が何者かに誘拐され、一週間ほど行方不明なった時があったらしい。

 

 誘拐犯の捜索をしていた時、彼がボロボロの状態で戻ってきたのだ。

 

「ちょっとした理由でね、内緒にさせてもらった。施設もああいう風に消滅していたから信じてもらえないと思ったし。もう隠しておく、必要なくなったけど。」

 

「・・・・・・お前がその子の未来の姿なのか。」

 

 ダンテさんと鋼牙さんも成長した良太郎に驚いている。

 

「へっ?あなたが良太郎!?」

 

――――ハハハハハハ!!そいつは驚いた。たくましく育ったものだな。

 

「不幸に負けずに頑張ってきたということか。」

 

「褒めているですか?それ・・・。」

 

 涙目の良太郎に対して、鋼牙さんは呆れているし、ザルバに至ってはもう爆笑している。

 

 女の子は唖然としているし。

 

 そんな様子に笑みつつ、ダンテさんは少し表情を引き締める。

 

 次はあまり良い報告ではない事が確かだった。

 

「最後の一人が・・・・すまない。まだ見つかっていない。」

 

「・・・そんな。ポルムが?」

 

 ダンテの口から告げられた事実に少女は言葉を失う。

 

 最期の一人。名前はポルムという男の子らしい。

 

 逃げたのは三人。そのうち二人は無事。そしてあと一人が行方不明という。

 

「もう一人はこっちでも捜索しよう。あいつが世話になったんだ。礼が言いたい。」

 

「ああ。頼む。」

 

 鋼牙さんも探してくれるらしい。それにダンテも礼をいう。

 

 どうも二人はこの一件で個人的な交流を持ってしまった感じである。

 

「いつかこの事件に決着をつける日がくるだろうな。それまでにお前は力を蓄え解け。」

 

「はい。ポルムも大丈夫だと信じています。だってあの子少々エッチだけど、その分しぶといですから。それと、お兄さん・・・。」

 

 その女の子が俺の傍へとよる。

 

「なんだ?」

 

 よく見るとすごく美人だ。お人形みたいにとても可愛い。将来絶対に美少女になることは間違いなしの女の子。

 

 そんな将来が超有望だと思われる彼女の話を聞くためにしゃがむと・・・。

 

 その女の子が頬にキスをする。

 

「はい?」

 

「いつかあなたのお嫁さんになりに行きます。覚悟しておいてください。何処にいても絶対に探し出しますから!!」

 

 その女の子は顔を真っ赤にさせながらも過激な発言をしでかす。

 

――――この子はまた罪を・・・。

-

―――――ハハハハハハ。もうこうなったら愉快でしかない。相棒、お前の夢であるハーレムへの夢を驀進中ではないか!!

 

 あれ?俺ってそんな大それたことをしたのか?

 

「はははは!!これは愉快だ。そうなったら俺も協力してやらないとな。」

 

 爆笑するダンテをジト目で見ているネロ。

 

「・・・・・・それでどうしてあんたが冥界の魔王になっているのかの説明は?」

 

「フッ、悪いがそれはお前の世界の俺に聞いてくれ。色々あり過ぎて説明に時間がかかる。さすがにもう時間ないだろ?」

 

 ダンテさんの言うとおり、俺達の後ろでデンライナーが現れる。

 

「わかった。この件が終わったら冥界にでも乗りこんで直接問い正すから覚悟しとけ!!」

 

「はははは!!楽しみにしているぜ!!」

 

 えっと、ダンテさんとネロ。結構仲がいいな。

 

「時を越えて来た者達か。未来でのサイガの友となる者達に感謝する。そして、時の秘密はこの胸に留めておく。助けた子達は秘密裏にカンタイの地に住まわせるつもりだ。あの爆発のおかげで死亡扱いになるのは確実だし、それにあいつらはサイガの友達だ。あいつが世話になった礼になればいいが。」

 

「ありがとうございます。そうしてもらえると助かります。」

 

 はあ・・・良かったぜ。

 

―――こっちからしたら本当に愉快な体験をさせてもらった。礼には及ばんさ。

 

 ザルバの陽気な言葉に救われる。

 

「じゃあ・・・また会おう。」

 

 俺達は電車に乗り込む前に、あの女の子が言う。

 

「いつか、本当にいつか会いましょう!!イッセ―お兄ちゃん!」

 

 俺はそれに手を振って応える。

 

 いつかまた俺達の時代で会おうな。

 

 

 

 そして、俺達はデンライナーに乗り込む。

 

 元の時代に帰るために。

 

 

 

 

SIDE ???

 

 いよいよか。

 

 あいつらが電車に乗るのを離れた木の上でじっくりと観察する僕。

 

 僕はこの世界に戻ってきた。

 

 父さんの仲間を探す過程で異世界に入っており、僕はそこで生まれたのだ。

 

 でも、父さんたちは死んでしまった。僕を守るために。

 

 僕の中にこの世界で生まれたがために神器が宿っていたのだ。それも今知ったら驚く存在が宿っている。

 

 奴らはそれを狙っていたらしい。

 

 そして僕はボロボロの状態でバルパーってやつにつかまってここに放り込まれたのだ。

 

 心も体もボロボロだった僕を助けてくれたのは彼らだった。

 

 彼らを助けたかった。逃げている時もそればかり考え、戻る時もこの時代にマーキングしていたくらいだ。

 

 そして、間に合ってよかった。みんなを助けることができた。

 

 そのための力。それが果たせてよかった。

 

 今は行方不明になっている僕。でも見つかるわけがない。

 

 僕は逃走の過程で施設の謎の大爆発の余波でできた次元の裂け目に落ちてしまい、父さんたちの故郷の世界に戻った事なんて誰が想像したか。

 

 そして、そのショックなのか黒かった髪が銀色に変わった。

 

 髪だけじゃない。今は変身呪文(モシャス)で隠さないといけない致命的な変化もある。

 

 どうしたんだろうと思いながら彷徨っていた時に、師匠に出会ったんだ。

 

 スケベな爺に仮病じいさん。そして、ひょうきんだけど実はすごい元勇者な王様。

 

 この三人に占い師のばあちゃんからあるとんでもない事実を知らされた後、父さんたちの仲間達の元でみっちりと修行もさせてもらった。

 

 この身に宿したある宿命を知り、それで僕は立ち向かう事にしたんだ。

 

 なんか阿呆みたいな厖大な魔力を持っているらしいけど、それを引き出し、制御するのが一番大変だった。

 

 それまで魔法の類は一切使ったことなく、それでいて戦闘経験もゼロ。護身程度に母さんから少し習っていた程度だったんだ。

 

 体が少しばかり頑丈だったのが幸いだった。

 

 かなり無茶が効く。おかげで、もう地獄を見た。各魔法の契約から魔力のトレーニング。そこから一からならって、武術などの基礎もそうだし。

 

 スケベジジイ、良い性格していやがって。最近は唖然とさせることが多くなったのは嬉しいところだ。その領域に辿り着くのにどれだけかかったか。

 

 仮病じいさん。あの人も癖があった。まったくもう・・・掴みどころがない。修行にも妥協は全くなし。でも、精神的にもいい修行になったと思う。

 

 それと王様!!

 

 あの人が一番その、底知れない。ひょうきんだし、ふざけている部分もあるのに誰よりも聡明で、それでいて優しい。一番大切なことを学んだ気がする。

 

 なんかその王様にも似てきた自分が恨めしくも誇りに思ってしまう自分がいる。

 

 三人とも多分すごい人。あの三人から学べるだけの事を学んだ。

 

 それでもなんか僕を見て時々と感慨深そうにしていたよね?まるで何かを懐かしんでいるような気がして。

 

 父さんと母さんの死を言ったら、じいちゃんやばあちゃんに当たる人達は泣いていたし。

 

 一応、父さんと母さん達の師匠で、そして彼らがあの世界を救った英雄というのは聞いていた。でも、それ以外の父さんと母さんのことを知っているのかもしれない。今度帰ったら絶対に聞かないと。

 

 そんな風に色々とあったけど、何とか戦える程度にまでにはなったかな?

 

 神器も便利だし。

 

 必要な力は蓄えさせてもらった。時が来たと勘が教えてくれる。

 

 旅立つ前に師匠達からありがたい称号と幾つかの送り物をもらった。

 

 自慢の称号だ。

 

「目的は達成できたけど、このままじゃこの時代に取り残されるから・・・。」

 

 僕は時を超えるという電車の中に入る。

 

―――――合流呪文(リルルーラ)!!

 

 ドラゴンの力を宿したあいつに仕込んだリルルーラ草を使ったある粉。それが車内に落ちるようにうまく調整してある。

 

 それを目印にして電車の中に転送させてもらった。

 

 このまま僕を君たちの時代に連れて行ってもらう。

 

 同じ歳位になった良太郎もみつけた事だし。こいつらのいる時代に行った方がいい。

 

 この様子ならまだ何かあるみたいだ。

 

 そこで僕はもう一つの使命を果たさないと。

 

 行方不明の・・・勇者の捜索。

 

 そして、その勇者にあの世界からメッセージをたくさん託されている。

 

 それを伝える。

 

「三代目大魔道士ポルム。いざ未来の仲間の元へ!!」

 

 待っていてサイガ君、良太郎君!!みんな!!

 

「・・・・・・無賃乗車はお断りしているのですがね。」

 

 そこにステッキを持った素敵なおじさまがやってくる。

 

 ちぇっ、見つかってしまったぜ。まあ、これだけの外観だとばれても仕方ないか。

 

 相当未知なテクノロジーで作られているみたいだし。スキャニングしておこうかな?

 

 僕の背中から白い翼が生えてくる。

 

――――スキャニング

 

「今日はアギトやキルスといい変な客ばかりやって来る日ですね。あなたの場合は別世界からこの世界の時間に飛んできてしまった事例があります。どうしてこうデンライナーに干渉出来る連中ばかりがやってくるのか。」

 

 色々と嘆いているこの人はこの電車のオーナーみたいだ。

 

 どうやらここからもう一つの本領発揮の様ですね。

 

「せっかくですから、何かできる事ありますか?こう見えて結構色々と出来るので。もちろん時間の改変をするつもりはないですから。」

 

「ほう・・・。あなた契約を持ちこんでくるというのですか?あなたもある意味特異点と同じといってもいい存在として?」

 

 さて、ここからか。この人・・・僕の中の最大の秘密に気付いている。

 

 どのようにして話そうかね。そっちの事情も分かっていないからそこから聞かないと。

 

「・・・油断なりませんね。貴方のその叡智はちょっとでもボロを出せば付け込まれそうで。あの方の転生体だけのことはあるのでしょうか?」

 

 そっちの方が上手か。師匠達だけしか知らないあの事を知っているとは。

 

 今でも呪文で色々と隠しているのに。

 

「だったら事情を話してほしい。それくらいの度量はそっちもあるだろ?」

 

 それなら正面からやるまで。力づくで何とかしようとしたら偉い目にあうのはわかっているはずだ。

 

「・・・はあ。いいでしょう。その神器でデンライナーの全貌をスキャンされるのは止めて欲しいですからね。」

 

「あいあい。」

 

 僕は翼をしまう。必要な分はもうスキャン出来たけどね。

 

 向うに行くまで退屈はしないで済みそうだ。

 




 過去編終結。

 そして、イッセー。ここで実はフラグを立ててしまったという罠を用意していました。

 あの子は成長してどうなっているのか楽しみです(黒笑)


 オリキャラもまだまだいろいろと謎の多いキャラです。ですがまた再登場します。

 
 次から現代に戻ります。 


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 復活のゼロノスと狙われた家族です。

 連続投稿第五弾。

 ここから舞台は現代にもどります。


 何気にここで初めてイッセー関連のあるキャラが明確に描かれます。

 今更描かれる彼らですが・・・。

 ヒントは蛙の子は蛙です。


SIDE リアス。

 

 さて・・・何とか私達が粘ってから三分くらいたってから彼らは戻ってきた。

 

「やってくれるな。」

 

 私とソーナの二人なら何とか持ちこたえられる相手でよかったわ。

 

 私の滅びの力とソーナの的確な戦略分析。

 

 それとシトリー眷族の二枚の切り札の力で何とか牙王を抑えている。

 

「二体のキバ。楽しませてくれる!!」

 

 そこに朱乃と小猫ちゃんの援護は大きい。

 

 それでも怪物もいい所よ。足止めが精一杯。

 

「・・・もうそろそろかな?」

 

 そして、なぜかユウナ様が動きを止める。

 

「やっと・・・私のもう一つの目的も果たせそう。」

 

「?」

 

 サイガがそれに対して動きを止める。

 

「まさかここから過去に飛んできたなんてびっくりしたけど。」

 

「ここから?過去?何の話?」

 

 サイガが彼女に何かを聞こうとする前に・・・。

 

「お待たせ!!」

 

「やあ・・・本当色々あったぜ。」

 

「ふふふっふ・・・そうだな。」

 

「チィ・・・あいつらしくじったか。」

 

 牙王は悔しそうにいう。

 

「そもそも、こいつの過去に飛んだことが間違いだったみたいだぜ。あれは・・・あんたでも無事じゃすまない。絶対に。」

 

 ネロが深い溜息と共に振り返る。

 

「ああ・・・あれはやべえ。よく生きて帰ってきたと思うぜ。」

 

 イッセ―ですら心底疲れた様子。

 

 一体過去で、佑斗の過去だからきっとあの事件の事だと思うけど、何があったの?

 

 確か施設は消滅したって聞いたけど・・・。

 

 ゼノヴィアも心底疲れた様子。

 

「そうだな。でもおかげで色々と思い出せた。牙王、お前がどういう存在かもはっきりとな!!デネブ!!」

 

「応!!」

 

 ゼノヴィアの隣に黒いローブに黄金のまるでカラスのような仮面をつけた奴が現れる。

 

「その声・・・。」

 

「ゼノヴィア?こいつ、もしかして・・・。」

 

「迷惑をかけた!!」

 

 弦太郎とイリナに頭を下げる彼。この雰囲気・・・ゼノヴィアに憑いていた時と似ている?

 

「イッセ―、あれって何?」

 

「ゼノヴィアの前世からの相棒です。」

 

 前世からの相棒!?

 

 イッセ―からの返答は理解に苦しむ。だって、それじゃあ彼女は転生者ってことになるじゃない。

 

「んん?僕は一体・・・。」

 

 祐斗も立ち上がってくる。

 

「その様子だと・・・相当暴れてきたのか。」

 

「ああ。後で木場とサイガに色々と聞きたい事が出来たけど。良太郎と一緒にな。」

 

「まったくだ。隠し事が多すぎるぞ。お前達。」

 

 ゼノヴィアがなぜか拗ねている。

 

「??どういうことだ。」

 

「まあ・・・こういう事だ。」

 

 ゼノヴィアが異空間から何かを取り出す。それってベルト!?

 

 牙王がそのベルトを見て声を荒げる。

 

「それはゼロノスの。」

 

「改めてお前に自己紹介してやる。牙王。」

 

 ゼノヴィアはベルトを巻き、そしてチケットを手に言う。

 

「私の名前はゼノヴィア。そして前世の名前は―――桜井侑斗!!」

 

「何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

 

 牙王の言葉に動揺が走る。

 

 彼女はチケットをベルトに指し込む。

 

「変身。」

 

 それと共に彼女は変身する・・・。

 

「くそ、電王だけじゃなく、ゼロノスまで!!」

 

 彼女は腰についている二つのアイテムを組み立てるとそれは一本の大剣になる。

 

「最初に言っておく。私はか~な~り~強い!!」

 

「・・・・・・。」

 

 どうしてゼノヴィアまで変身するの?そして桜井侑斗って誰?

 

 訳が分からず混乱する私にイッセ―は肩に手を置いていう。

 

「後で説明します。全く、教会最強チームだけはありますよ。こいつら、色々と可笑しい!!多分まだ何かありそうで、ああもう頭が痛い。」

 

 相当頭痛そうね。分かるわ。

 

「これだけ訳の分からない連中を引き寄せている要因であるあなたまで頭を痛める状況ですか。」

 

「はい。って言うより一応俺、感覚は常識人のつもりです。」

 

「感覚は・・・そうですか。アギトも楽じゃありませんね。」

 

 しみじみと語りあうイッセ―とソーナ。イッセ―・・・本当に過去で何があったの?

 

「ゼノヴィアお前まで変身するのか!!」

 

 弦太郎は変身したゼノヴィアに駆け寄る。

 

「弟ができてこっちができない理由はないからな。」

 

「って言う事は良太郎も?」

 

 イリナは今更だけど良太郎を見る。

 

 彼の腰にもベルト!?

 

「はは・・・そうだよ。いくよモモタロス。」

 

「またまた俺の出番か?」

 

 あれ?良太郎の傍に赤い鬼みたいな怪人が?

 

「変身。」

 

――――ソードフォーム。

 

 そして、良太郎はその怪人が赤い光となって合体するように変身する。

 

「再び俺・・・参上!!」

 

 変身した彼は見栄を切ってきやがった。

 

「あいつらまた参上しやがった!!」

 

 牙王と合体しているネガタロスが悪態をつく。

 

「あれが噂の電王とゼロノスか。」

 

 上でコカビエルがその様子を眺めていた。

 

「ひいぃぃぃぃぃ電王・・・良太郎が変身した!?」

 

 意識を取り戻したフリードが悲鳴をあげている。

 

「どうした?お前らしくない・・・。」

 

 怯える彼にバルパーがたしなめるが、帰ってきたのは心底怯えた声であった。

 

「だったらあいつと真正面から戦ってみなさいよ!!前にあいつと戦って。色々なフォームでやりたい放題にフルぼっこにされが挙句に、あいつ自身のフォームに止めさせられたのですよ。この私が禁手化した状態で、手も足も出せないほどあいつ強いのですから!!」

 

 それを聞いたバルパーはなんとも言えない様子で良太郎を見る。

 

 変身したフリードがトラウマになるほどフルぼっこ?

 

「全く、厄介な連中ばかりが集まる。」

 

 コカビエルがエクスカリバーが五本の周囲で回しながら愚痴る。

 

「お前が良太郎に憑いていた奴か!!」

 

「えっと、弦太郎だったな?改めて俺はモモタロス。こいつの相棒だ。」

 

 モモタロスって言う人(?)が良太郎に体を借りて弦太郎と喋っている。

 

「これ終わったらダチになってくれ!!」

 

「・・・ふっ、いいぜ。俺もお前のことは気に入っていたんだ。」

 

「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

――――ちょっとモモタロス!!弦太郎を煽らないでよ!!

 

「いいじゃねえか。これで最初っからクライマックスで行けるってもんだ!!」

 

「まったくだぜ。一緒にクライマックスだぁぁぁぁぁ!!」

 

『うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!』

 

 2人が無駄に熱い。

 

「・・・・・・。」

 

 その熱気に皆が呆れかえっているよ。

 

「二人ともいい加減にせんかい!!」

 

 それを抑えるのはイリナのツッコミ。懐からスリッパを出してそれで二人をはたいたわ。

 

 っていうより、なんでスリッパ。

 

「携帯用のツッコミ道具です。」

 

 スリッパって携帯のツッコミ道具だっけ?あそこまで断言されると疑問に思う私が可笑しいのじゃないかと思うわ。

 

「付き合いきれん。そろそろ計画を次の段階に移行するぞ!!」

 

 コカビエルはその場から撤退するつもりだ。

 

「させると思ったか!!」

 

 立ち上がった佑斗が叫ぶ。どうやら立ち直ったらしい。

 

「お前達はこいつらと遊んでいろ。」

 

 その言葉と共に、コカビエルの足元から転送魔法陣が展開する。

 

 そして、現れたのは・・・四体の怪物。

 

「またこいつかよ。」

 

「確かイマジンのイメージの暴走って奴か?」

 

 二体は牛の身体に三本の角と六つの目を持つ巨獣。

 

 後二体は翼の片方が鳥になっている巨大なコウモリ。

 

「ギガンデスヘルとギガンデスヘブンか。」

 

 良太郎はそいつらを正確に把握している。

 

「駒王学園で待つ。兵藤一誠。お前の自宅と両親が心配じゃなければ来るがいい!!」

 

『!?』

 

「ふははは・・・この領域で最大の脅威であるお前達に何も対策をしていないと思ったか!!弱点となる存在を抑えないわけないだろうが!!」

 

「くっ・・・父さんと母さんを!!」

 

 戦争狂のわりに慎重ね。確かにイッセ―の周りが一番厄介な連中ばかり集まっているようだし。

 

 むしろ、それを封じ、戦力を分散させにかかっている。

 

「言っておくが、ハルト達は異世界に閉じ込めてある救出は無駄だと思え!!ふはははははははははは!!」

 

 コカビエルは飛び去り、バルパーと倒れていたフリードも転送されて消えてしまった。

 

 あいつらまで封じているの。通りで戻ってこないわけよ。

 

 あれ?むしろどうして大人しくしているの?

 

「私が知る限り、異世界に閉じ込めた程度で何とかなる程度の連中でしょうか?」

 

 ソーナの言うとおりだ。あんな無茶苦茶な連中が何もしていないわけがない。

 

 確かハルトがいるって・・・。

 

「・・・ハルトの性格を思い出したわ。きっと渡も一緒に閉じ込められていると想像したら答えが出てくる。」

 

 渡の傍には常に彼女が一緒にいる。

 

「・・・なるほど。」

 

 何らかの手段でこっちの現状を把握しているのだとしたら・・・。

 

「想像通りなら、実にいいタイミングでやってくるはずです。」

 

 ソーナの言うとおりね。なら援軍としては期待しておこう。

 

 コカビエルが学園に向かう。

 

 私は指示を出す。

 

「佑斗!!ユウナ様とサイガ君、教会チームと一緒にコカビエルを追いかけなさい!!私とイッセ―、朱乃は自宅に戻りながら義父様と義母様を助ける!!ソーナ。悪いけど残りのメンバーでこいつらをお願いできないかしら?」

 

「いい指示です。ならそれに答えましょう。片付け次第、こっちは学園組と合流します。」

 

「ここは任せろ。」

 

 匙君と仁藤君がそれぞれの神器を構えて言う。

 

「みなまで言うな。ちゃちゃっと片付けて手伝いにいくからよ。」

 

「そう言う事だ。」

 

 この二人。こういう時になると本当コンビね。味方だと非常に頼りになる。

 

「こういう類はこっちの専門でもあるからな。いけ!!」

 

 ネロ君が剣を逆手に持って構える。

 

「頼む!!」

 

「お願い。」

 

 私達はその場をソーナに任せ、急いでイッセ―の自宅に向かった。

 

 イッセ―は焦っている。

 

「無事でいてくれ!!」

 

 相手がこんな卑劣な手に出てくるとは想定しておくべきだった。

 

 イッセ―の父。見た目は青年。歳のわりにすごく若々しい。家庭菜園が趣味で、増改築の際、元の畑をそのままに、面積を増やすように配慮したくらい。

 

 確かレストランの経営もしていると・・・。

 

 そして、イッセ―の母が最大の問題。

 

 桃色の髪を下ろした大変かわいらしい方。

 

 見た目は・・・小猫と同じ歳かそれよりも幼く見える。

 

 大体中学生くらいにしか!!

 

 私もイッセ―の母親を見た時・・・この人本当に経産婦?と思ったわ。

 

 アルバムの写真で妊娠している時の様子も見て、ようやく納得した。

 

 でもね。

 

 悪魔の私が言うのもなんだけど、その写真にすごい背徳感と犯罪臭が・・・。

 

 それでもあの二人は一般人のはず。何としても助けないと。・

 

 自宅にはキリエさんとアーシアがいる。持ちこたえてくれることを祈るしかない。

 

 でも、私はこの時完全に失念していた。

 

 蛙の子は蛙ということを。

 

 それをアギトであるイッセ―に当てはめるとどうなるのか考えるべきだった。

 

 

SIDE コカビエル

 

 私は五本のエクスカリバーを手に駒王学園のグランドにやってきた。

 

 共にやってきたのは牙王、バルパー、そしてフリード。

 

「手はずはどうだ?」

 

「ヒヒヒ、ご安心を。すぐに聖剣融合の手はずを整えます。あとおっしゃっていた例の物も用意していますからご安心を。最期の保険にあれは最高ですよ。」

 

 そこにいたのはザボエラである。

 

 彼の協力も頼んでいたのだ。

 

「あの小僧にこれでようやく仕返しできます。よくもあの時殴り飛ばしてくれましたね。そのお礼をしたかったのですよ。生きていることには驚きましたけど。」

 

 時間を超えた理由に関しては牙王の説明で何となく分かった。

 

 だが、不可解なのはどうしてあの施設の爆発から生き残ったかだ。

 

 アギトとはいえ、黒の核晶の爆発に耐えられるとは思えない。

 

 バイパーも首をかしげていたのを覚えている。

 

 んん?携帯に着信。どうやら始末は終わったらしいな。だが、終わらせたらそのまま合流する手はずになっていたのにどうしてだ?

 

「ああ・・・俺だ。父親の始末は終わったようだな。」

 

―――――ああ。あなたですか。一誠が大変お世話になっているようで。

 

 聞こえてきたのは年若い穏やかな青年の声。だが、その言葉の響きが不敵すぎる。

 

 誰だ?こいつは?

 

「貴様・・・誰だ?」

 

――――――――誰って・・・あなたが命を狙った一誠の父親ですよ。

 

「-――ッ!?」

 

・・・・・・・。

 

 そんな馬鹿な。何でそいつが電話している?

 

 あいつの元には十体程の上級堕天使を送り込んだんだぞ?ガイアメモリ付きで。

 

――――改めて自己紹介を。僕の名前は兵藤翔一。しがないレストランの経営者だけど、これでも降りかかる火の粉を払う程度は出来る。

 

 こいつは・・・あいつらを返り討ちにしたというのか?

 

 しかも声の様子からしても全く疲労していない?

 

―――――あまりうちの家族、そして友達を舐めないでほしい。それだけは伝えておくよ。この街に手を出したのを心の底から後悔するがいいさ。

 

 それと共に携帯が切れる。

 

 そして、母親を狙ったはずの連中からも着信。

 

 極めて嫌な予感がする。

 

 なんだろう・・・。あいつはうちの「家族」を舐めないでほしいといった。つまりそれは息子のあいつだけじゃなく、母親まで含まれているということで・・・。

 

 見た目・・・中学生にしか見えない幼妻。

 

 あれで子持ち?経産婦だというのか?!

 

 そうとしか思えないのが、あいつの母親、兵藤まどかだ。

 

 堕天使が言うのも可笑しいかもしれないが、その事実は犯罪としか思えない!!

 

 だが・・・見た目以外にも何かあるというのか?

 

 おそるおそる出てみると・・・。

 

――――あらあら?やっと電話にでてくれたよ。あの、まどかといいますが、射ぬいちゃったこの人達を引き取ってほしいの。流石に三十人は多すぎて運べな・・・

 

 聞こえてきた可愛らしい声にとっさに電話を切る。

 

「・・・・・・・。」

 

 そして、可愛らしい声で告げられたのは、襲いかかった連中を返り討ちにして、元凶の俺達に引き取ってほしいという想像の斜め上を行くの内容の電話。

 

 ちなみに送り込んだ連中はみんな屈強な男共。誰も・・・あんな可愛らしい声を発しない。

 

 発したら発したらで即滅してやるが、今はそれを置いておく。

 

 

「・・・・・。」

 

「どうしたのですか?」

 

 ザボエラが心配そうに見てくる。

 

 それほどまでに俺は固まっているのだろうな。

 

 俺が言葉を発しようとした時だった。

 

 アギトの紋章が突如現れ、そこから父親を始末するように命令した堕天使たちが転がりでてくる。全員・・・ボロボロだ。

 

 それだけじゃない。一本の矢が地面に突き刺さると共に、その足元から次々と母親を狙った堕天使が出てきた。

 

「げっ!?なんですか?なんで返り討ちに!?」

 

「・・・・・・。」

 

 なんだ・・・あの赤龍帝の家族って一体何だ!?

 

 この様子だと、自宅にも何かとんでもないのが伏せられている可能性が高そうだな。

 

「・・・・・・度し難い。本当に。」

 

 俺は今改めて知った。

 

 この街は危険すぎる事に。

 

 

 

 

 

 




 
 ここにてイッセーの両親が初めて出てきました。

 色々な意味でキャラが濃いです。

 この事実はイッセーがアギトの力を得たという意味に新しい意味が付属されてしまいます。

 

 


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再会の狼と逆鱗の名乗りです。

 連続投稿最終話。

 ここで今回の投稿は終わりです。

 いよいよ、再会の瞬間です。


 side イッセ―

 

 俺達は急ぎ自宅に向かうと・・・。無数の堕天使たちが家を攻撃している光景だった。

 

 それをキリエさんがすべて防いでいる。

 

「なんて固さだ。私達の攻撃が全く通っていない。」

 

 キリエさんが持っている盾の神器の力、さらに防御力が増していないか?

 

 以前でも隕石を防ぐくらいなのに・・・どんだけすごいのです?

 

「この程度、持ちこたえられるわ。」

 

「キリエさん次はあっちから!!」

 

 司令塔となっているのはアーシアである。

 

 攻めになっているのは・・・。

 

「我らの使いが荒いな!!」

 

「だが、酒蔵を破壊されるのは困る。それにこの二人には大変世話になっている故に。」

 

「違いない。全く・・・あの二人には頭が上がらない。」

 

 何とヤマタと轟竜でした。

 

 二体とも掌サイズで奮闘している。

 

「なんだこいつら、がばっ!?」

 

 轟竜、小さくても強い。目にもとまらぬ速度でかけ、掌サイズで屈強な連中が蹴りとばされる光景はシュール過ぎる。

 

 ヤマタ。あの小ささで、噛みついた相手を分回す怪力・・・流石です。

 

 でも、ある怪物の到着で状況は悪化する。

 

『がばっ!?』

 

「おいおい。情けないね。」

 

 そこに一人の男が現れる。ドラゴンオルフェノクの北崎・・・。

 

 ドラゴンオルフェノクの力が二体を弾き飛ばす。

 

「二人とも!?」

 

「ぐっ・・・我らの本来の力が発揮できれば・・・。」

 

「こいつなど蹴散らせるのに。」

 

 この二体の全力なら何とかなったかもしれない。まあ・・・出してもらったら今度は街の被害をどうするか考えないといけないけど!!

 

 特にヤマタの場合はな!!お前の本来の姿は大怪獣並だ!!

 

 歩くだけで街が滅茶苦茶になるって!!

 

「さて・・・お前ら潰させて貰う。」

 

 北崎がアーシア達に迫る。

 

 俺達がそれを見て急ぎ駈けつけようとした時だった。

 

「させねえよ!!」

 

 家の中から何かが現れる。それがドラゴンオルフェノクを蹴り飛ばす。

 

「ぐっ?」

 

 それはウルフオルフェノク。全身を刃で覆い、足が逆関節になったオルフェノク。

 

 なんでオルフェノクが家の中から?

 

「これは幼馴染の家なんだ。あいつらの帰る場所位は守らせてもらわないとな。」

 

 彼の身体から灰が落ちてくる。

 

 あれって・・・オルフェノクの灰化現象。つまりもう限界ってことなのか?

 

「しぶといな。とっくに寿命で逝っていると思ったのにな。ファイズ・・・いや巧!!」

 

「ぐっ・・・。」

 

 北崎の言葉と共にウルフオルフェノクが膝をつき、その姿が人に戻る。

 

「巧さん!!無茶しないでください。貴方の身体はもう!!あ・・・・。」

 

 アーシアが悲鳴を上げ、そして気付く。

 

 俺の存在に。

 

「お前・・・。」

 

 俺は信じられなかった。いや、俺の中のアギトとしての感覚が今・・・はっきりと巧という存在を捉え、それを過去に一緒にいた存在と認識している。

 

「イッセ―・・・。」

 

 そこにいる俺達と同じ歳のあいつを・・・巧が生きている姿に。

 

 だってあいつ・・・確かに俺の目の前で死んだのに?

 

 混乱しながら立ちすくむ俺。

 

「チィ・・・作戦失敗か。」

 

 北崎は走り出す。

 

「・・・元気そうでよかった。」

 

 頭の中が真っ白になっている俺に巧が苦笑しながら話しかける。

 

「・・・最後に話せて良かった。達者でな。」

 

 巧はまたオルフェノクの姿になって走り出す。

 

「もしかして、弦太郎達が連れていた怪我人って彼の事なの?」

 

「はい・・・。」

 

 部長とアーシアの問いに反応出来ずに茫然としている俺。

 

 どうして巧が生きている。オルフェノクとして・・・。

 

 って、まさか!!

 

―――――察しの通りよ。

 

 クレアが俺の傍で実体化して話しかけてくる。

 

「はい。」

 

 アーシアも肯定する。

 

「巧は確かにあの時死んだ。そして蘇ったのよ、オルフェノクとして。そして、その二度目の命も尽きかけようとしている。それを今・・・私の妹が辛うじてつなぎ止めている。」

 

「・・・・・・。」

 

「イッ・・イッセ―!?」

 

 膝をつく俺。あいつ・・・なんでそんな事に。

 

 俺が死なせてしまったばかりにあいつは・・・あいつは・・・。

 

「そして、彼は戦っていた。ファイズとして。」

 

 ファイズ・・・あの結婚式の時の!!通りで・・・変な感じがしたわけだ。

 

 あれは懐かしさから来る感覚。

 

 もっと早く気付くべきだった。

 

「いつもイッセ―さんを気にかけていました。そして、あの事件を起こし、イッセ―さんを泣かせた組織を放置しておけないってずっと闘っていて・・・。」

 

 ・・・・・・。

 

 そう言えばあいつはそんな奴だった。

 

「大方・・・生きていることを今更言えずに、再び死にそうになっている今の今まで引きずってしまったというわけかい。」

 

 気まずいと黙ってしまう。かなり不器用な奴だった。

 

「要約するとそうなります。」

 

 キリエさんが厳しく指摘する。

 

「あの野郎・・・・・・。」

 

 少し呆れが出てくる。

 

「さて・・・イッセ―君はこのまま立ち止まっているつもりですか?彼は最期の命をかけてこの街を守るつもりです。貴方という友達ができ、そして共に過ごした大好きな街だと言っていましたから。」

 

 キリエさんが俺を試す。このまま俺が落ち込んでいるのかそれとも。

 

 俺が今やるべきことは・・・。・

 

「・・・来い!!トルネ。」

 

―――待っていたよ御主人様。

 

 

 

SIDE 巧

 

 俺は北崎を追って駒王学園に。

 

 そこで俺は見知った顔を見つける。

 

「お前・・・怪我はもういいのか?」

 

 弦太郎が俺を心配してくれる。

 

「こんな騒ぎがあって寝ていられねえよ。」

 

 俺は弦太郎達と共にコカビエルを睨みつける。

 

「やっと見つけたぜ。コカビエル!!」

 

「・・・・・・。」

 

 あれ?コカビエルの様子がおかしい。

 

 なんか固まっている。

 

「ふふふ・・ふははははははあ!!予定変更だ。魔王の妹など関係ない。この街は即刻吹き飛ばす!!」

 

 そして笑いながらこの街を消滅させると宣言しただと?

 

「この街は、いや兵藤一誠は危険だ。今確信したよ。あのアギトを中心に次々と猛者が集まり、あいつの味方になっていく。あいつは私の野望の最大の障害だ!!こいつの影響を消すためにこの街ごとあいつを消しさる!」

 

「しかたねえ。だったら、俺も全力で行く。この街はイッセ―と友達になれた思い出の地だからな!!」

 

 俺の腰に五大ギアの一つ、ファイズギアを出す。

 

「イッセ―・・・お前まさか。イッセ―のダチか?」

 

 弦太郎の言葉に俺は笑う。

 

「ああ。」

 

「それならお前はもう変身するな。もう限界なんだろ?」

 

 ゼノヴィアが俺の手を持って告げる。

 

 俺の手から灰が出てきている。

 

「わりぃ・・・それでも命賭けているあいつを倒さないと、イッセ―が、あいつの友達や家族がみんな不幸になる。それにあれでも俺の身内っていうのもある。だから俺が止める。」

 

「・・・仕方ね。だったら付き合う。」

 

 弦太郎は止めない。

 

「ふはははは!!お前達だけで何ができる!?それに援軍は期待するなよ。」

 

「その通り、ここはワシが結界で封じたのじゃからな!!空間ごと切り離す方式故、もう誰もここには入ってこれん!!」

 

 よく見ると駒王学園全体が虹色の結界に閉じ込められている。

 

「・・・あんたは・・・ザボエラ。」

 

 コカビエルの隣に現れた小柄な老人を見たユウナの殺気が増す。

 

「お前までいたのか。ちょうどいい。」

 

 サイガまで怒りを燃やしている。

 

「んん?なんでワシの名を。」

 

「・・・佑斗。覚えておきなさい。」

 

「あいつも聖剣計画に関わっている男だ。」

 

 ゼノヴィアまでが殺気だっている。

 

「・・・そうか。こいつもまた・・・。」

 

「時間を超えてすぐにお前の顔を見るとは思いもしなかった。」

 

「・・・そうじゃのう。でも恨みがあるのはこっちも同じじゃ!!あのイッセ―に対しても・・・。」

 

「なんか分からねえがイッセ―に対してあんたは恨みがあるみたいだな。だがな、一つお前に言っておきたい。巧・・・お前にもだ。」

 

 そのやりとりの中で弦太郎が笑う。

 

「お前ら・・・イッセ―を舐めすぎだぜ?」

 

 その言葉と共に・・・それは派手に現れる。

 

 空中から結界を粉々に粉砕しながら、バイクに乗ってやってきたのはイッセ―であった。

 

 ザボエラ自慢の結界がガラスのように粉々に砕け散る。

 

「そっ・・・そんなワシの結界がこうもあっさりと。」

 

―――結界をぶち破るのはすごく楽しい!!もう癖になるよ。

 

「いい仕事だ。トルネ。でも癖になるなよ。」

 

―――ええ?いつか世界の境界線もぶち破ってみたいのに。

 

「現実になりそうだからそこは勘弁してくれ。まったく・・・。」

 

 なんか緊張感のないやり取りをしながらイッセ―がバイクを降りる。

 

 そして・・・無言で俺の傍にやってきて。

 

「巧ぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 と叫びながら一発ぶん殴ってきた。

 

 その一撃・・・非常に痛い。

 

 殴りとばされた俺の首元を掴み上げるイッセ―。

 

 いきなり何するという言葉は出無かった。

 

「この・・・馬鹿野郎。」

 

 何しろイッセ―の顔は涙でぐちゃぐちゃになっていたからだ。

 

「なんで生きているって言わなかった!!お前が死んで俺がどれだけ落ち込んだと思っているんだ!!」

 

 どれだけ落ち込んだ家は知っている。一時的に自殺すら考えたほど。

 

 それを止めたの・・・俺だったんだぜ?それを見て非常に申し訳なくなって生きているのを言いだせなかった。

 

「馬鹿野郎・・・なんで・・・なんで今更現れやがる。再び死にそうになっている状態で!!」

 

 そのままイッセ―が大泣き。

 

「・・・ごめん。」

 

 その涙は・・・流石に堪えた。

 

 俺の口から素直に言葉が出てくる。

 

「言えなかった。俺のせいであそこまで落ち込んだお前の姿を見て・・・今更言えなかった!!それにお前は狙うやつはまだいた。そいつらを放っておけなかった。許せなったんだ!!」

 

 俺はずっと闘っていた。大切な友のために。

 

「・・・お前の気持ち・・・考えていなくてすまない!!」

 

 ああ・・・俺も泣いている。

 

 涙を流して、みっともなく泣いている。

 

 みっともないくらいに・・・でも、死ぬ前に流しておきたかった涙を流せている。

 

「貴様・・・。消え去るがいい!!」

 

 そんな時コカビエルが巨大な槍を投げつけてくる。

 

 だが・・・。

 

――――――野暮なことはしないで頂戴。

 

 それをあいつの後ろに現れた巨大な紅い龍と

 

―――――いい度胸だな・・・貴様。

 

 同じく現れた巨大な竜が放った火炎弾で打ち消された。

 

『・・・・・・。』

 

 俺の後ろに伝説のドラゴンがいる。

 

 一度見た事があるのに・・・その存在は圧巻だった。

 

―――――本当に楽しい一日だったわ。

 

―――――世界が広がった。だが・・・目まぐるしくもあったが。

 

「・・・俺なんかは今日は色々あり過ぎて疲れたわ。」

 

 イッセ―は心底疲れている。

 

「木場の手伝いで聖剣を砕こうと思ったら化物と戦う羽目になるし、そうしたら何故か過去に飛んでまた死にそうな目にあったし。戻ったら戻ったらで父さんと母さんの命の危機に、死んだはずの巧との再会。人生の中でこれほど濃密な一日を過ごした事はなかったぜ。これ以上何があるんだろうな。なあ・・・。」

 

「・・・本当すまん。」

 

 相当、イッセ―に苦労かけてしまったようだ。今日一日で一体何があった?

 

「父さんと母さんは部長と朱乃さんが無事を確認してくれたからよかったよ。巧・・・お前の事もまだ色々と納得できていないが、大本はすっきりした。後で説教だからな。」

 

「ああ、いくらでも受けてやる。ついでに好きなモン奢ってやる!!」

 

「約束だからな。」

 

 甘んじて受けようか。それくらい。

 

「さあ・・・コカビエル。覚悟してもらおうか。こっちも本気をだす。」

 

 イッセ―の腰にベルトが現れる。

 

「えっ?イッセー君なんなの?そのベルト・・・。」

 

 それを見たイリナが思わず声を上げる。

 

「あっ・・・。」

 

 そうだった。アギトの力は教会からしたら禁断の力・・・。

 

「いいぜ、変身しな。アギトに。」

 

「弦太郎!?」

 

「お兄ちゃん!?」

 

 弦太郎の発言にゼノヴィアとイリナが一斉に驚く。

 

「さっきお前達に言ったはずだ。アギトだってダチになれるって。」

 

 あいつは前の戦いの中でそう言ったのか?

 

「俺は確信していったんだぜ?だってな・・・すでに俺達はアギトとダチになっていただからな。違うか?イッセ―。」

 

 あいつ・・・イッセ―がアギトと知っていて。

 

 イッセ―は信じられないと言わんばかりだ。

 

「・・・お前。気付いていたのか?」

 

「ははは・・・それでこそ弦太郎だよ。」

 

 良太郎は驚くことはなく笑っている。

 

『・・・・・・。』

 

 すでにダチになっているから問題ないって。

 

 すごい理屈だな。

 

 あいつ。相当な大物だ。もしかしたら稀代の聖人になるかもしれん。

 

 なんか俺、すごい奴と知り合ったんじゃねえのか?

 

「・・・ありがとうな。弦太郎。」

 

 イッセ―はその言葉で決意したようだ。

 

「わりぃ・・・イリナ、ゼノヴィア!!これが俺のもう一つの事情だ。だから見えくれ。俺の変身!!」

 

 その姿が変わっていく。

 

 右腕に竜の頭を模した篭手型の召喚機。左腕には神滅具――赤龍帝の篭手を装備したアギトへと。

 

「うそ・・・イッセ―君がアギト?」

 

「赤龍帝に契約者、そして、アギト。なるほど。これは凄まじいわけだ。」

 

 アギトに変身して見せたイッセ―。

 

「そう言えば良太郎達って名乗りをあげていたよな。俺もそろそろそれが欲しいって思っていたんだ。でも、今良い言葉が浮かんだよ。コカビエル!!」

 

 イッセ―はコカビエルを指差して告げる。

 

「この街をお前の好きにさせない。これ以上の悲劇も・・・絶対にさせない。」

 

 その言葉に宿るは怒り。ドラゴンの力を引き出す怒りの言葉。

 

「さあ、お前は俺達竜の怒りに触れた。その意味を思い知れ!!」

 

 それはイッセ―が赤龍帝であり、ドラグレッタ―の契約者、そして神殺しの竜とされるアギトの力を持つが故の名乗り。

 

―――――俺達か・・・最高の名乗りだな、相棒。

 

――――だったら、共に大暴れしましょう。我らの怒り・・・堕天使達に見せてあげるわ。

 

 今・・・最終決戦が始まる。

 

 

 




 ここで初めてイッセーの名乗りを出してしまいました。

 なんとなく思い浮かべ、ドライクがよく言っていたセリフなので採用してみました。

 どうでしたか?


 再会のシーンがこんな形になりましたが。



 さて連続投稿はここまでです。


 授業参観もとんでもないことになることが確定するフラグを立てつつ次話の最終決戦を楽しみにしてください。


 ではまた会いましょう!!


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皆の想いを載せた剣です。

 お待たせしました、連続投稿開始です。

 第一弾・・・いよいよ木場覚醒です。


SIDE ???

 

 元老院からある指令を受け、俺達は現場に向かっていた。

 

 俺からしても因縁のある相手だ。

 

 その名もバルパー。

 

 彼は聖職者でありながら魔戒法師でもあったが、彼は手を出してはいけない領域に手を出した。。

 

 それが聖剣計画。

 

 あれが公になり、バルパーを討伐しようとしたが、煙の魔人に姿を変える謎の能力でことごとく返り討ちにあっていた。

 

 その力の正体はあの事件で、知り合いになった某魔王からの情報で判明している。

 

 そして、その破り方に一つだけ心当たりもあるのだ。

 

 それができるのは・・・。

 

――――まさかみんな来るとは思いもしなかったぞ。

 

 ザルバの言葉に皆が苦笑する。

 

 その数・・・三十人。

 

「そのためにこいつらは頑張ってきた。その思いに応えてやるのは当然だ。それに守りし者としての使命も兼ねている。」

 

 その際、かなりの数の連れが出来てしまった。

 

 だが、皆は足を引っ張ることはない。何しろ彼らは皆優秀な魔戒騎士、または魔戒法師になっていたからだ。他の連中、十二人も裏方で動いている。

 

 皆の指導には俺や邪美、他にも多くの友や仲間達が関わっている。

 

 もちろん、俺の息子もだ。

 

 全員、過酷な修行に耐えきった。俺も鼻が高いと思えるほどに。

 

 まあ、これだけ一度に多くの弟子を持つのは大変だったが。

 

―――そうだったな。だが、元老院も太っ腹だな。皆の思いに応えるなんて。

 

「あの魔王の交渉の一つに入っていた。あそこで彼女に再会するなんて思いもしなかったからな。おかげで、時が来たのが分かったのは僥倖だ。」

 

――その代わりサイガ坊ちゃんが生贄になったがな。

 

「・・・彼らも幸せを願っている。生贄じゃ・・・ない。多分。」

 

 自信ない声なのは気のせいだ。

 

 みんなも苦笑しているぞ。あの件は皆にも知れ渡っているし。

 

 待っていろ。

 

 お前の同志たちが、そっちに向かっているからな。

 

「だったら近道をご案内しますよ?」

 

 そこに見知った顔が現れる。

 

「ほう。現れたか、通りすがりの大魔道士。」

 

 それは俺や皆を救った大魔道士。

 

―――どういうことだ?歳をとっていないなんて・・・。

 

「それこそ今更だろう。時を超えてきたのか?」

 

「・・・鋭い。さすがサイガ君の父上だけのことはあるわ。」

 

 あの時もそう言った連中にあったからな。可笑しくもない。

 

―――鋼牙。色々と耐性がついてきたな。

 

 それくらいの度量がないと、これまでの闘いも乗り越えられなかった。

 

 その大魔道士が告げる。

 

「こっちの時代に来てよかったぜ。さて・・・近道ご案内。」

 

 一体、彼は何者だろうか?

 

 

 

 

 

 

SIDE イッセ―。

 

 

「バルパー。聖剣の融合は終わったのか?」

 

「はい。貴方様が固まっている間に。」

 

「・・・・・・・どれだけ私は固まっていた?」

 

「十分ほどは・・・。でも、仕方ないことだと思います。」

 

 なんか気になる発言が聞こえてきたぞ?

 

「なら・・・さっさと始めよう。」

 

 コカビエルの言葉に、バルパーは五つのエクスカリバーを融合させた剣を魔法陣から取り出す。

 

「フリード、受け取れ!!お前の欲した力だ!!」

 

「待っていましたよ!!」

 

 フリードがその剣を受け取る。

 

「木場・・・。」

 

「ああ、任せて欲しい。今度こそあの剣を折る。」

 

「へえ・・・いいのですか?でも私にとってもこの剣は念願の力なのでね。あの良太郎という悪夢とアギトという阿呆みたいに強い奴に届くためのねえ!!」

 

 再び禁手化で変身したフリード。後ろに控えているボルキャンサー達も回復していた。

 

 しかし、阿呆みたいに強いって・・・。

 

 俺の事をそう思っているのか?あいつは。

 

「木場頑張れ。私も手伝う。」

 

 ゼノヴィアまでもが援護に回っている?

 

「過去に行って、すまないがあのバルパーがやってきたことをしっかりと見せてもらってな。前世の私の性格もあってか、かなり腹立っているんだよ。」

 

「・・・ゼノヴィア。」

 

 そう言えばあいつも前の人格と融合して、あまり教会の理念の囚われなくなったな。

 

「ただ当たり前の事をするだけだ。」

 

 ゼノヴィアの怒り。

 

「・・・ありがとう。怒ってくれて。」

 

 それが木場にとって何よりもうれしいはずだ。

 

「なんであなた達があの黒の核晶から逃れられたのか分かりませんが、今度はこっちが相手です!!」

 

 フリードが融合したエクスカリバーを手にする。

 

「ああ。今度こそへし折る。」

 

―――あらあら、私の事を忘れないでよ。

 

 彼の傍に現れるダークウイング。

 

――――せっかくの契約者。私の力も存分に使って頂戴。

 

「頼もしいよ。」

 

 確かあいつってクレアと同等の力を持っているんだよな?

 

――――まったく、あなたも面白い子を召喚主に選んだものね。

 

――――そりゃもう。ふふふ・・・。・

 

 クレアとダークウイング。この二人もやっぱり知り合いか。

 

「木場。コカビエルは任せろ。」

 

「助かるよ。」

 

 木場はそのままフリードとの戦闘を始める。

 

 二人の剣撃を耳にしながらコカビエルと対峙を続ける。

 

「舐められたものだな!!この私と一対一で戦うなど!」

 

 聖書に記されている伝説的な存在の堕天使。

 

 過去の三大勢力で行われた戦争に生き残った猛者でもある。

 

「それと戦うなんて、メインデッシュにしては上等過ぎるぜ。いよいよ神話に挑戦する日がきたのかね。」

 

 本当に色々あって疲れたのに最期にこれだからな。

 

「イッセ―君だって生きた神話なくせに。」

 

 イリナからの拗ねた様子のツッコミ。そう言えば俺もそうだったか。

 

「はあもう・・・アギトがイッセ―君?イッセ―君がアギト?もう分からなくなる!!後で説明をお願いするわ!!」

 

 混乱気味でも、イリナはいつも通りだ。

 

「ああ。うまい飯ご馳走しながら説明してやる。あいつを倒した後で、二人っきりでじっくりとな。」

 

 

 あれ?なんかイリナが顔を真っ赤にさせて・・・。

 

「もう!!こんな時に何格好つけているのよ!!」

 

 それでいきなり怒りだした!?

 

 だが、すぐにしおらしくなって。

 

「・・・きっとだよ。約束、破ったら嫌。」

 

 不安を必死に堪えてお願いしてくる。

 

 子供のころからこういう可愛いところは確かにあった。

 

「ああ。俺は約束を守る奴だって知っているだろ?」

 

「うん。だったら、あれも覚えている?引っ越す前に話していた事。」

 

 えーと、たしか・・・。

 

―――――今度再会したら伝えたい事があるわ。

 

 って言っていたよな。なんかクリスマス関連で・・・。

 

 思い出した。本当に今更で申し訳ないけど。

 

「覚えてくれたんだ。」

 

 イリナは顔を赤らめていう。

 

「この戦いが終わったらいいかしら?」

 

 正直、面喰らう光景だ。

 

 子供の頃はイリナはお転婆だった。男の子と俺も間違えたくらいだ。

 

 でも、今のイリナは違う。

 

 成長し、綺麗になった。綺麗な、女の子になっていた。

 

 そんな女の子が上目遣い、そして切なそうな涙目で俺を見てくる。

 

 かなりドキドキします。

 

 反則もいいところです。ぐっ・・・イリナめ。

 

 卑怯だぞ。

 

 変身した状態ではあるけど、その頭に手を置き軽くなでてやる。

 

「だから、安心しろって。絶対に勝ってくるから。」

 

「うん!!約束。」

 

 心の底から嬉しそうな笑顔を見せるイリナ。

 

 安心した。絆は変わっていない。

 

 小さい頃から培ってきたものは確かにそこにある。

 

 それだけで俺は・・・戦えるぜ。

 

「頑張ったな、イリナ。」

 

 そんなイリナを弦太郎がねぎらっている?

 

「もう・・・お兄ちゃんったら!!」

 

「のばっ!?」

 

 イリナが顔を真っ赤にさせながらスリッパで弦太郎をはたいているし?

 

 しかもその破壊力が可笑しいぞ?一撃で弦太郎が地面にめり込んでおる。

 

「照れ隠しもお前らしい・・・だが痛てえぇぇ・・・。」

 

「ライバルがそこにいたか。思った以上にタラシだったんだ。そこも魅力なんだけど。」

 

 ユウナ様が何かライバルと言っていますけど?

 

「我が妹ながら、素晴らしい一撃。しかし、イッセ―とコカビエルの戦いって・・・新しい神話になるかもしれないな。」

 

 復活した弦太郎。それは流石に持ち上げすぎだって。

 

 でも・・・それならそれで面白そうだ。

 

「それだったらそのまま任せてくれ。」

 

 俺は走りだす。

 

「・・・ここからは俺の聖戦(ケンカ)だ!!」

 

「上等!!その戦争、買ってやるぞ!!」

 

 手に召喚したクレアの頭を模した武器、ドラグクローとコカビエルの手にした光の槍がぶつかり合う。

 

 そして、巻き起こった爆発する二つのエネルギーに俺達は後ろに飛び退く。

 

 その隙に北崎が動いていた。

 

 無数の雷撃を天から俺に向かって落としてきたのだ。

 

「おいおい、イッセ―。違うだろうが?」

 

 だが、その雷が赤い閃光によって防がれる。

 

 それはファイズに変身した巧の姿。

 

「俺達の、聖戦(ケンカ)だろうが。」

 

 言ってくれるな。

 

 悪態付きながらも笑みが止まらない。こいつらしくていい。

 

 ああ・・・本当に巧と一緒に戦っているんだな。

 

「貴様程度にこの私を倒せるかぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 激昂したコカビエルが上空で巨大な光の槍を無数作り出し、それを放つ。

 

 真っ直ぐ俺達に向かってくるその光の無数の光の槍。

 

 それに気を取られた瞬間に俺はコカビエルの十枚の翼の羽ばたきで巻き起こった突風によって弾き飛ばされ、それを追いかけるようにして槍が飛んでくる。

 

―――――――プロモーション、ナイト!!

 

 その瞬間、俺の姿は蒼い風になる。

 

 ベルトから双刃の武器・・・ストームハルバードを取り出しながら駆ける。

 

 風のような速さと武器にで、次々と光の槍を弾き飛ばしながら接近。

 

「当たらないだと!?」

 

 手にしたハルバードで斬りつけようとしたところ・・・コカビエルは手にした光の槍で受け止めてくる。

 

「速い。報告に聞いてはいたが、フォームチェンジの力を得ていたか。だが・・・鋭いが軽いわ!!」

 

 コカビエルがそのまま力を込めて弾き飛ばそうとするが・・・俺はあえて武器を手放す。

 

――――プロモーション、ルーク

 

「だったら、これでどうだ?」

 

「ちぃ・・・・。」

 

 今度は体を紅に変え、ベルトから別の武器を取り出したのだ。それは片刃の剣――フレイムセイバー。

 

 パワー不足ならこれで補う。ついでに・・・カードを召喚。手を使わずにカードが勝手に召喚機にセットして・・・。

 

――――Sword Vent!!

 

 ドラグセイバーを召喚。

 

「がっ!?」

 

 二刀流で斬り飛ばす。

 

―――――えっ?カードが独りでに動いた?

 

 クレアがなんか驚いているみたいだけど、イリナがやっていたことを真似しただけだぜ?頭撫でた時にあいつがやっていたことのコツが何故か頭の中に流れ込んできて・・・。

 

――――いや、アンデットのカードと私達のカードは性質が違う。・・・はあ、アギトって奴はもう・・・。

 

―――また進化か。カードを装填する弱点を補い始めたのか。

 

――――細かいけど、かなり大きいわよ。この子下手したら、将来召喚機無しでカードの力を使いかねないわ。

 

 手がふさがっている時に便利だけど、そこまで行けるのかね?

 

 手数で押そうとコカビエルが小さな槍をマシンガンのように発射。

 

 でもね、この形態をあいつは舐めている。確かにこれはパワーが格段に上がりスピードは落ちる。

 

 だが、飛躍的に上がっているのはそれだけじゃない。

 

 感知能力も上がっている。ついでに言えば瞬発力も高いぞ!!

 

 それですべての攻撃を捉え、すべて切り裂く。

 

 縦横無尽のように見えて正確無比な剣撃ですべて切り裂いた。

 

「・・・無傷だと?」

 

 細かいダメージを与えるための攻撃だったが、そんな程度で俺に届くと思うな!!

 

「やはりアギトは厄介だ。着実に進化している!!」

 

「ついでに言えばまだ倍化していない。そっちも慢心を捨てて本気で来い!!」

 

<BOOSTBOOST・・・>

 

「ちぃ・・・。だから生意気だといっている!!」

 

 俺だけならここで持ちこたえられる。木場・・・頑張れよ!!

 

 傍らでは巧が北崎を相手に頑張っている。

 

「無茶するなよ?」

 

「当たり前だ。あいつらにも言ったが死ぬつもりはない。」

 

 ファイズに変身した巧との共闘は二度目。完全に背中を預けられる。

 

 牙王は良太郎とイリナ、弦太郎、ゼノヴィアの教会チームが相手をしている。

 

 木場。それでも俺達は繋ぐ。お前の想い・・・届かせろ!!

 

「ならこっちもデルタを使わせてもらおうかな?」

 

 そう言いながら北崎は人間の姿に戻る。その腰にはベルトが出現していた。

 

「・・・五大ギアの一つ。原初の魔王、デルタのベルト。」

 

 北崎はトリガ―みたいな物を取り出してつぶやく。

 

――――――変身。

 

 その言葉と共に北崎は変身する。

 

 黒い体に白のラインが入った戦士。胸に三角形の変な奴が付いている。

 

 そもそも、五大ギアってなんだ?

 

「俺が持っているファイズギアもそうだが、オルフェノクに宿るとされる神滅具みたいな物だ。その五つのギアの内の一つが、原初の魔王、デルタ。」

 

 神器じゃなくて、神滅具みたいな物!?

 

 おいおい、その例えヤバくないか?

 

「例外なく、そのギアは凶悪なまでに強い。あの原初の魔王がいい例だ。」

 

 原初の魔王?

 

「装着者の能力をさらに増幅し、おまけに超能力を得られる。」

 

「この通りにね。」

 

 北崎の周りで巨大な岩が召喚される。

 

「僕の場合は電撃を自在に操る事もできる上に・・・。」

 

 北崎の姿が消え、俺はいつの間にか殴り飛ばされていた。

 

 見えなかった。あまりにも速過ぎて。

 

「竜人態の高速移動もさらに増幅されているのだよ!!」

 

 無防備になったところにコカビエルの槍が迫る。

 

「させると思ったかよ!!」

 

――――――Complete

 

 その音声と共に巧の姿が代わっていた。

 

 赤いラインが銀に変わり、前面の装甲も展開している。

 

 それと共に厖大な熱が発せられ・・・。

 

――――Start Up!!

 

 音声と共に姿を消す。

 

「がっ!?」

 

 そして、コカビエルは槍が粉々に砕かれると共にふっ飛ばされ、あちこちで無数の打撃音が轟く。

 

――――Time Out

 

 その音声と共に二人の姿が現れ・・・。

 

――――Reformation

 

 の音声と共に展開した装甲が元に戻り、ラインが赤に戻った。

 

「へえ・・・やるもんだね。流石赤い閃光。救世主のギアを持つだけはある。惜しいのは体の限界が近いことかな。」

 

「ぐっ・・・。」

 

 膝をつく巧。あいつ・・・無茶しやがって。

 

「やってくれたな。」

 

 そこにコカビエルが槍を突き立ててくるが、そうはさせない。

 

「こっちを忘れるなよ。」

 

 槍を素手で弾き飛ばす。

 

「わりぃ・・・助かった。」

 

「お互い様だ。まあ・・・どうやら二対二になりそうだな。」

 

 ここから俺と巧・・。

 

「せいぜい足を引っ張るな・・・といいたいところだが、頼む。巧は上級堕天使ですら瞬殺する実力者なのでな。」

 

「いいよ。面白そうだね。」

 

 コカビエルと北崎。

 

 二対二のバトル。

 

 俺は援護に適した姿になる。

 

―――プロモーション・・・ビショップ!!

 

「背中預けたぜ?」

 

「誰に言っていやがる?そっちも頼むぜ。」

 

 高速で突っ込んでくる北崎だが・・・。

 

「あっ・・・足が・・・!?」

 

 その足元は凍りついている。

 

「こうしたら高速移動も意味がないだろう?」

 

 コカビエルが飛ばしてくる無数の光の槍。

 

 それも展開させた水の膜で受け止め、氷の槍で反撃にかかる。

 

 電撃も水で引き寄せ、無効化させる。

 

 水の中に地中にある鉄分を含ませているのでな。

 

「この形態・・・不気味な力を使う!!」

 

 こっちはこっちで盛り上がってきた。

 

 弦太郎達は・・・と。

 

「こっちも本気を出す。みんな、久々に行くよ!!」

 

「ほう・・・やってくれるな。」

 

 変身した良太郎とゼノヴィアの二人に、弦太郎が加わる。

 

 四本の腕で暴れまわる牙王の背後にうまく回り込みイリナが攻撃をしかけた。

 

「もうお前のツッコミはこりごりでね。」

 

 それを剣で受け止め、イリナが吹っ飛ばされる!?

 

「・・・・・・ニヤリ。」

 

「!?」

 

 っておおおおおおい!?笑っている?

 

 まるでふっ飛ばされるのを待っていた様な笑みだよ!?

 

 そのまま校舎の影まで吹っ飛んでいき・・・。

 

――――メテオ、レディ?

 

 その陰で何やら音声が聞こえてくる。そこから少したって天からイリナの吹っ飛んだ方向に光が落ちてきて・・・。

 

 そこから青い球体が飛んできた!?

 

 おいおい・・・このパターンは。

 

「ぐお!?」

 

 その青い球体が牙王をふっ飛ばす。

 

 そして球体の中から現れたのは・・・

 

「仮面ライダーメテオよ。貴方の定めは私が、決める。」

 

『・・・・・・・。』

 

 俺とコカビエル。巧と北崎は硬直する。

 

 それだけじゃない。

 

『・・・・・・。』

 

 立ち上がった牙王と良太郎も固まっているぞ。

 

「また来てくれたか!!メテオ。」

 

「イリナは!?無事なのか?」

 

「安心しなさい。気は失っているけど大した怪我では・・・。」

 

 相変わらず全く気付いてないゼノヴィアと弦太郎。

 

 敵達の言いたい事は分かる。

 

 ――――なんで気付かないの?

 

 そう、視線で俺達に訴えているよ。

 

「・・・スル―で頼む。」

 

「突っ込んだら負けだと思って。」

 

『・・・ああ。』

 

 俺と良太郎の言葉に敵が同意した!?

 

「全く・・・度し難い。」

 

「ははははっ!!面白いね!!これって何の喜劇だよ!!」

 

 コカビエルさん?あの・・・ここで度し難いと言われても困るって!!

 

 後、北崎。喜劇ってな・・・。言いたい事はわかるよ。

 

「はあ・・・気が抜けたぞ。」

 

 牙王が脱力し・・・。

 

「そのおかげで融合が解けた。」

 

 その脱力でネガタロスが出てきた!?

 

 基本フォームに戻った牙王。

 

 一応・・・戦力ダウンにはなったのか?

 

「俺・・・こんな愉快な連中に助けられたのか。」

 

 巧が手を地に付けて、落ち込んでいる。

 

 すごい落ち込みようだ。

 

そう言えば。こいつって意外とナイーブだったな。

 

「その分いい奴らなんだ。気にする事じゃない。」

 

 その肩に手を置き、慰めてやる。

 

「グダグダになったけど、続きいくよ。君達をいると色々と飽きなくて楽しいよ!!」

 

 北崎が爆笑しながら迫ってくる。

 

『そんな事言われても、嬉しくねえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』

 

 俺と巧は叫びながら走りだし、爆笑していた北崎を殴り飛ばした。

 

 

 

 SIDE 木場

 

 僕は聖剣を手にしたフリードとバルパーと対峙している。

 

 バルパーの後ろではある魔法陣が展開、起動しつつあった。

 

 それはまちがいなく、この街をふっ飛ばすための魔方陣。

 

「あの起動を何としても止めないと。」

 

「分かっている。」

 

 僕だけじゃない。傍にはサイガ君、ユウナ様までいたのだ。

 

「まさかコカビエルと互角に戦うなんて、信じられませんね。まだまだ私もあの頂きには届かないってことですかい!!」

 

 フリードは聖剣を手にぼやく。でも確かにそうだ。

 

 アギトの力。本格的に目覚めて、まだ三カ月も経っていないはず。それなのにもう・・・イッセ―君はあの聖書に記るされた伝説の堕天使と互角に戦えるまでの強さになっている。

 

 何処まで彼は強くなる?

 

 神滅具(ロンギヌス)を持った神殺しの竜(アギト)は。

 

 その前に、そんな無茶苦茶な存在がどうして・・・?

 

「聖剣計画。その生き残りがこうして揃っているか。だが・・・ここで終わりにしよう。」

 

 だが、僕の考えはそこで中断される。

 

 何しろ目の前には総ての元凶がいるのだから。

 

――――スモーク。

 

 バルパーがガイアメモリを取り出し、それを自分の体に差し込む。

 

 そして、その身体が煙に変わったのだ。

 

「ふはははは・・・聖剣伝説の生き残り。だがその成果は大きな物だった。」

 

 バルパーは巨大な煙の魔人となって俺達に煙の拳を叩きつけてくる。

 

 それをかわし、剣を叩きつけるけど・・・その剣が空を切る。

 

「馬鹿め。この姿になった私は聖剣でも倒せぬわ!!」

 

 煙が巨大な腕となり、俺は吹っ飛ばされる。

 

 オルフェノクの力をもってしても、まったく手も足も出ない。

 

 変身が解け、膝をつく僕。

 

「いくらお前達でも煙を斬る事はできないはずだ。剣士殺しとして愛用させてもらっているよ。魔戒騎士とかは厄介なのでな。」

 

 なるほど・・・自身を討伐に来た魔戒騎士をこうやって返り討ちにしてきたのか。

 

 バルパーは煙になったまま高笑いをする。

 

「佑斗君!?」

 

「ああもう・・・厄介な敵ね!!」

 

「そして、お前達にもふさわしい生贄を用意してある。」

 

 バルパーの言葉共に現れたのは五体の素体ホラー。

 

 ただし、その大きさが尋常ではない。軽く見ても通常の十倍以上はある。

 

「封印し、魔界に転送されるはずだったホラーを強奪させてもらってね。合計百体分。退屈はさせないよ。」

 

「・・・父上が過去に闘った事がある敵だね。」

 

「へえ・・・。上等じゃないの。外道が使う相手にふさわしいわ。」

 

「ふふふ・・・私は外道のつもりはない。ただ夢があっただけだ。」

 

 バルパーは笑う。

 

「聖剣は私の憧れだった。使えないことを知った時は絶望したがね。でも、私は諦めなかったのだよ。」

 

 そして、彼は語るのだ。その夢を。

 

「ここまで生き延びた礼に真実を教えてやる。お前達は因子がなかったわけじゃない。ただ、聖剣の因子が少なかっただけだ。」

 

 僕達が聖剣を使えなかった理由。

 

「だから私は考えたのだよ。因子を抜くことを!!少ない聖剣の因子を抜き出し、集めればいいと!!」

 

 それがバルパーの編み出した画期的な方法だ。

 

 でも・・・だからって・・・。

 

「だからって・・・殺すことはないだろ!!」

 

「実験動物を処分しただけだ。ただ、それだけのことだよ。」

 

『・・・・・。』

 

 それを黙って聞くサイガ君とユウナ様

 

 僕は思わず手をついてしまった。

 

 たったそれだけのことでみんなを・・・。

 

 施設の謎の爆発のおかげで、同志たちは死体も残らずに消滅してしまった。

 

 苦しんだまま・・・何も残さず消された。

 

 悔しい。

 

「そして、これがその残りかすだ。くれやる。せいぜい大切にするがいい。」

 

 そして、それを僕の前に投げ捨てたのだ。

 

「・・・・・・。」

 

 僕の同志が・・・こんな物のために・・・。

 

 膝をつき、僕はその結晶を手に取る。

 

「みんな・・・。」

 

 僕の中で堪えていた物が溢れだす。

 

「僕は・・・僕は自分だけ生きていて良いのかってずっと思っていた。」

 

 ただ・・・ただそれがずっと苦しかった。

 

「みんな死んだのに・・・僕だけ平和を謳歌していいのか。そう思っていたんだ。」

 

 涙が止まらない。

 

「僕がここに居て良い訳けがない。居て良いはずないのにそれ・・・なのに。」

 

『・・・・・・。』

 

――――貴方は一人じゃない。

 

 その言葉と共に瓶の中に残っていた聖剣の因子が光輝く。

 

 その光によって、僕の周りに次々と人が現れたのだ。

 

「みんな・・・。」

 

―――君は僕たちの希望。だからこそ・・・生きて欲しい。

 

―――それがみんなの願い。

 

「どっ・・・どうして。」

 

 そこには死ぬ前の姿をした皆の姿。

 

 生前の姿で僕に語りかけてくれるのだ。

 

「僕は何もできなかった。皆を見捨てたままで平和に暮らすなんてそんなこと!!

 

――――見捨ててなんかいない。

 

――――だって、僕たちの事をこんなにも思ってくれる。

 

―――――嬉しいよ。それがたとえ復讐だとしても僕たちの事を忘れてなんかいなかった。

 

 当たり前だ。

 

 忘れるわけがない。

 

 みんな・・・みんな大切だったんだ!

 

――――だからこそ、私達は今でも貴方を思う。

 

――――貴方は一人じゃない。

 

――――だからこそ・・・受け入れよう。

 

 受け入れるって・・・そんなこと・。

 

―――――歌おう。みんなで歌った歌を。

 

 そして、光の中から歌が聞こえてくる。

 

 それは苦しい時、辛い時、悲しい時に皆で歌った歌詞も、そして題名もない歌。

 

 その歌に、周りで戦っていた皆も動きを止める。

 

 ああ・・・懐かしい歌。

 

 それを皆が・・・同志たちが歌っている。

 

 僕の妹も・・・友達であるりょう君、サイ君・・・ポルムまで・・・。

 

 みんながいてくれた。

 

 例え消えても・・・みんないたんだ。

 

 僕の中に。

 

―――――聖剣を受け入れよう。

 

――――例え神が僕達を見放しても、君は神はいらない。

 

―――――私達がいる。

 

 僕は決意する。

 

―――――例え神が僕達を見ていなくても、僕たちは・・・。

 

 皆がいてくれるから。

 

 だからこそ・・。

 

――――僕たちは一つだ!!

 

 その言葉と共に、グランド一帯に蛍の様な光が現れる。

 

 そして、その光は同志たちからも出てきていた。

 

「なんだ・・・何が起きている!?」

 

 その光景を見たバルパーはうろたえている。

 

「どうして・・・死者が蘇っている!?」

 

 彼もどうやら僕の周りにいる同志たちの姿が見えるらしい。

 

「こりゃ・・・すげえもんみせてもらいましたよ。」

 

 フリードを初め、他のみんなも目を丸くしている。

 

 その同志たちの思いが体の中に入ってくる。

 

「・・・バルパー・ガリレイ。僕の同志たちは復讐なんか望んでいない。みんな優しかったから、そんなこと思うわけなかったんだ。でも・・・あなたはまた第二、第三の犠牲者を生みだす。」

 

 その思いを胸に、僕は宣言する。周りにいる同志たちと共に。

 

『・・・ここであなたを滅する!!』

 

「チィィィィ、死者が生意気を!!」

 

 バルパーが煙の魔人となって襲いかかってくる。

 

――――佑斗君。今こそ、空を極める時だよ。

 

 襲いかかってくる煙の魔人を前に、僕は一本の短剣を作り出し構える。

 

 そして目を閉じる。

 

 相手はド―パント。

 

 だから、その邪悪な力の発信源は!!

 

「死ねえぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 目を閉じたままその殺気をかわす。

 

 そして、剣に溜めた力を解放する。

 

 あいつの邪悪な力の元に!!

 

「アバン流刀殺法!!空裂斬!!」

 

「!?」

 

 放たれた光。それがバルパーのある一点に命中。

 

「なんだ・・・今の技は?だが私はなんともないぞ!!その程度の技で・・・。」

 

 バルパーの技を受けてなんともないというが・・・。

 

「・・・・・・手ごたえあり。」

 

 僕は確信していた。

 

 技は成功していることを。

 

「なんだと!?」

 

 その姿が人の姿に戻る。それと共にバルパーの身体からメモリが排出され、粉々に砕かれた。

 

「いいですな。その意気、その力。ぞくぞくする。ぶっ殺し甲斐があるってもんですわ!!」

 

 倒れたバルパーを尻目にフリードは歓喜の声をあげる。

 

 手にはエクスカリバーがある

 

「死合おうか。これほど戦いがいのある相手らがいるなんて感激。あの聖歌もあるしここまで心躍るなんて嬉しすぎるぜ!!」

 

 フリードが変身した状態で迫ってくる。

 

 いよいよだ。

 

「僕は剣になる。皆を守るための、守りし者としての眷属の剣となる!!」

 

 僕は剣を作り出し、それを天に掲げる。

 

「いけぇぇぇぇぇ木場!!」

 

 そんな僕をイッセ―君が発破をかけてくれる。

 

「そうよ。私のナイトは、エクスカリバーなんかには負けないわ。」

 

 そこに部長まで?

 

 変身した状態で、朱乃さんを伴い学校の校門で仁王立ちしている姿、様になっています。

 

 アーシアとキリエさんまで来ている。

 

 他にも匙君、仁藤、ソーナ会長・・・。

 

「お前もついにやったな!!」

 

 そして、ある意味兄弟弟子といえるネロ君まで。

 

「行きなさい佑斗!!」

 

「・・・・はい!!行くよみんな!!ソードバース!!」

 

 その言葉と共に魔剣に白いオーラと黒いオーラが交互にまとわりつく。

 

 そして、剣が姿を変えた。

 

 僕の件は白と黒、そして・・・。

 

――――私の召喚機と合体した?

 

 鍔元にダークウイングの召喚機がくっつく形の剣となった。

 

 これは僕の新たな力に呼応するために生まれた剣。

 

「双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)。聖と魔を司り、漆黒の翼の力を得た剣!!」

 

「ほうほう・・・いいですな、いいですな!!最高ですよ。これはやり甲斐があるってもんです!!」

 

 フリードはますます笑う。

 

「いくよ。みんな!!」

 

『おう!!』

 

 僕の声にみんなが応える。

 

 ・・・・・・。

 

・・・・・・・。

 

・・・・・・。

 

・・・・・・あれ?

 

なんか変だぞ?

 

 剣が完成するとともに、光が消えていく。

 

 するとそこには・・・。

 

 僕と同じ歳位の人達がいた。

 

「あーあ。もう、みんなったら、おかげで言おうとした事をみんな言われたじゃないか。伝言しようとした意味がないでしょ!!」

 

 そんな皆にサイガ君が呆れた声をあげる。

 

 これって一体・・・。

 

 その時、先ほど浮かび上がった生前の皆の姿と今の皆を重ねる。

 

 サイガ君のところには確かサイ君。その姿と今のサイガ君の姿がって・・・。

 

「やっと名乗れるよ。久しぶりだって。」

 

「・・・・・・。」

 

 まっ・・・まさか。

 

「そして、久しぶりだね、バルパー。そしてザボエラ。」

 

 サイガ君の言葉に僕は震える。

 

「まさか・・・あのサイ君なのか?そんな・・・。」

 

「僕だけじゃないよ。そうだよね!!リョウ君!!」

 

「はっ・・・あはははは・・・。本当に久しぶりだね。」

 

 その呼び声に、教会の良太郎君が笑った?

 

 じゃあ・・・。

 

「ふふふ・・・やっとね。久しぶりね、兄さん。」

 

 そして、ユウナ様が兜をとると・・・。

 

 そこには僕と同じ顔をした女の子の顔があった。

 

「私がユウナって名乗ったの・・・兄さんが佑斗と名乗り、双子だしそれに合わせようと思ったからなのよ。」

 

「・・・・・・。」

 

 妹が・・・生きていた?

 

 じゃっ、じゃあ、ここにいるみんな。

 

『久しぶり。同志!』

 

 みんなが、生きているというのか?

 

「そんな馬鹿な!?なんで貴様らが生きている!?」

 

「そこにいる時を超えたアギトと、ある通りすがりの大魔道士のおかげだ。」

 

 その言葉と共に現れたのは白いコートの様な意匠を纏った男だった。

 

 茶髪の髪に、手には朱塗りの鞘に収まった剣。

 

「ゲエェェェ・・・黄金騎士牙狼だと!?」

 

 ザボエラが彼の姿を見て悲鳴をあげる。

 

 あの、黄金騎士?そして、サイガ君の父親・・・。

 

「父様まで来ていたの?まさか、元老院から?」

 

「ああ。バルパーの討伐にな。そのお供に連れてきた。」

 

「連れて来たって・・・戦闘ができるメンバー全員じゃないの。」

 

「久しぶり!!みんな!!」

 

 妹――ユウナが皆に抱きついては喜びを分かち合っている。

 

 どっ、どうなっているの?

 

「ぐっ・・・どうしてこんなに生き残っている!?」

 

 ザボエラが相当に慌てている。

 

「ええい。だがこの魔法陣が起動したら、お前らなど吹っ飛んで・・・。」

 

 グランドから出てきた魔法陣。

 

 それを脅しにザボエラが迫るが。

 

「わざわざ丁寧な解説どうもありがとうさん。」

 

―――――――極大消滅呪文(メドローア)!!

 

 それがどこか後もなく飛んできた巨大な光の矢。

 

 それがその魔法ごと消滅させた!?

 

 ついでに校舎もが消滅してしまったし!!

 

「・・・その魔法・・・まさか・・・。」

 

 ザボエラはその魔法を知っているらしい。

 

「うんうん。ようやくみんなと再会できたぜ。」

 

 その場に眼鏡をかけた銀髪の青年が現れる。

 

「世界と、時間を超えてやってきた甲斐があるってもんだ。」

 

「なんであなたがその魔法を!?」

 

 ザボエラがその魔法を見てかなり動揺している。

 

「何って・・・あんたの出身世界にいる師匠から教えてもらったからだよ、ザボエラ。」

 

 そして、その彼と・・・。

 

『あっ・・・。』

 

 ここにいない同志の最期の一人の姿と重なる。

 

 髪の色は違うが、間違いない。

 

「改めて名乗らせてもらうぜ。三代目大魔道士、ポルム。ただいま同志たちの元に帰って来たぜ!!」

 

『えええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!?』

 

―――――ややこしいな。どうしてお前さんが過去の仲間を助けられたんだ?

 

『嘘ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?』

 

 もう、何から驚けばいいのか分からないよ。

 

「しまった。・・・嬉しすぎてクールになれなかった。混乱させたな。」

 

 混乱する皆にため息をつくポルム。

 

「まあ、説明は後だ。佑斗でいいのか?行って来い!!」

 

「・・・ああ、見ていてくれみんな。今僕はエクスカリバーを越える!!」

 

―――――――だったら、私からも餞別がある。まさかもう至るなんて思いもしなかったけど。

 

 その言葉と共に僕の手に黒いデッキが現れる。これって召喚機の・・・。

 

――――――存分に使いなさい。私のナイトの力を。

 

 そうか。僕はもう変身できるんだね。

 

 デッキをかざすと腰にベルトが装着される。

 

「変身。」

 

 その言葉と共に僕は変身する。

 

 騎士に似た姿をした仮面ライダーに。

 

「・・・おいおいおい。」

 

 それは漆黒の騎士の姿。

 

――――行きなさい。私のナイト。

 

「これで条件は正しく五分。いくよ。」

 

 僕は剣を手に駆けだす。

 

 僕とフリードの剣がぶつかりあう。

 

「・・・ッ!?」

 

 そのぶつかり合いだけでフリードはすぐに下がる。

 

「違う・・・。なんですか?さっきまでの剣と何かが、違う!?」

 

「当然だ。佑斗君はすでに極めたからね。」

 

 サイガ君の言うとおり、僕は極めた。

 

 空―――心の技を。

 

 その結果が、僕が振るう剣に現れている。

 

「だったら、行きなさい!!」

 

 そんな僕に向けて巨大なホラーが向かおうするけど、それを同志たちが止める。

 

「露払い位はさせてくれ。」

 

「それがサイガや弟子達の願いなのでな。」

 

 その言葉と共に鋼牙さんが巨大ホラーの一体を切り裂く。

 

 黄金の鎧を纏った状態で討ったのだ。。

 

 この人がサイガ君の父親。

 

 強い。巨大なホラーを一蹴なんて・・・。

 

「私も参戦させてもらおう。そっちの悲願を叶えろ。」

 

 ゼロノスに変身していたゼノヴィアが参戦。

 

 牙王達は別の同志たちが当たっている。

 

 良太郎と弦太郎と協力して動きを封じかかっているのだ。

 

「・・・法術。」

 

 筆を持った者達はその筆から光を発し、術の様な物を発動させて、牙王を撹乱しているのだ。

 

「一緒に過去に行っていたという事は同志たちの生存を知っていたのかい?」

 

 下がった僕の隣に立つゼノヴィアは苦笑する。

 

「すまない。言う暇がなかった。だが、それはイッセ―とネロも同罪だぞ?」

 

「・・・・・・。」

 

 僕が横目でイッセ―君とネロ君を見る。

 

 すごく恨みがましい視線を彼らに送りつけてやっているよ。

 

 どうして言ってくれなかったの?同志たちが生きていることを。

 

 イッセ―君もそれに気付いた様子。

 

 ネロ君は笑うだけだ。言う暇がなかったと。

 

 わりぃと謝ってくれているけど・・・今回は流石にねえ。

 

「後で説明をさせてもらうよ。それはもうじっくりと。皆も同じだからね。」

 

『はははははは・・・。』

 

 まったくもう・・・。みんな内緒の事が多すぎる!!何がどうなっているのか本当に後でじっくりと説明をもらおう!!

 

「あと・・・すまん。怒らせてしまって。」

 

 ゼノヴィアの背後からえっと・・・誰ですか?

 

 イマジンって言う存在らしいけど?

 

「私の相棒のデネブだ。さて・・・こっちも本気を出そうか。」

 

 ゼノヴィアが呪文をつぶやく。

 

「ペトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ、我が声に耳を傾けてくれ。」

 

 その呪文と共に手元の空間に罅が入る。その罅から凄まじいオーラが漏れ出している。

 

 なんだ?このオーラは?エクスカリバーのそれとは一線を画している。

 

 そして、彼女はその亀裂から鎖に包まれた一本の大剣を取り出す。

 

「この刃に宿りしセイントの御名において、我は解放する―――デュランダル!!」

 

 その言葉と共に鎖が粉々に砕かれて聖剣―――デュランダルは解放された。

 

『・・・・・・。』

 

その光景に皆が絶句している。

 

 それはエクスカリバーに並ぶ聖剣。かのローラン卿が使っていたという折れぬ不滅の剣。

 

「そっ、そんな馬鹿な!?貴様、エクスカリバーの使い手じゃなかったのか?デュランダルなど、私の研究ではまた扱う事が出来ないはず・・・。」

 

 バルパーがそれを見て驚いている。

 

「私はイリナ達と違って天然ものの聖剣使いでね。」

 

 そういうことか。

 

 彼女は神に祝福されて・・・。

 

「もっとも、こいつが自分から共鳴し私を選んだっていう変な経緯があるけどな。互いの力を増幅し合い、引き出し合う過剰適合者ってやつらしいぞ!!」

 

 デュランダルから、ありえない程の強力なオーラが発せられる。

 

 なんだこれは?そのオーラにホラー達までもが苦しみだしている。

 

 消滅し始める者が現れるほどだ。

 

――――おいおい・・・半端じゃないぞ。俺も少し苦しいくらいだぜ。

 

 魔道輪――ザルバも苦しそうな声をあげる。

 

「おかげか、一薙ぎですべて吹っ飛ばす凄まじい破壊力が出てしまうんだ。制御も何とかできるようになってきたけど・・・それでも阿呆みたいな切れ味が発揮されてね。流石に使いどころを選ぶじゃじゃ馬な相棒だよ!!」

 

 厖大な光をため、その状態でデュランダルを振るうゼノヴィア。

 

 その剣圧で・・・後ろの校舎ごと数体のホラーが切り裂かれていた。

 

 いや、校舎だけじゃない。空間ごと切り裂かれ、ずれていた

 

 ずれた空間は修復されたけど、直ぐに直る。

 

 ホラーと校舎はそのままだけど。

 

 って校舎が!!!?

 

 切断面からずれ落ちる校舎を見て、頭を抱えたくなる。

 

「くっ・・・空間切断。」

 

 切れ味がいいって言ったけど、良いってレベルを超越している。

 

 というより、校舎が崩壊・・・。

 

「どういうことだ?ローランの血族、それも直系か本人の生まれ変わりでもない限りそんなことありえないぞ!!あれの血筋はとっくに耐えているはずなのに!?」

 

「そんな理由は分からないし、今はどうでもいい。それに最初に言ったはずだぞ?」

 

 デュランダルと大剣に変化させているゼロガッシャーの二刀流を構えて言う。

 

「私は、か~な~り~強い!!ってな!!」

 

 これって、かなりってレベルなのか?

 

「そういうわけだ。露払い、こっちもやらせてもらう!!」

 

 フッ・・・心強いよ。

 

 さすが教会最強チームのメンバーだけはある。

 

 常識をぶっ壊す物を彼女も持っているよ。

 

 納得できても、取り乱す時間はごく短時間で済む。

 

 これもイッセ―君のおかげかな。

 

 そして、僕は剣を持ち、駆けだす。

 

「・・・あなた達はどんな化け物なんですかぁぁぁぁぁ!!」

 

 悲鳴を上げるフリード。その気持ち、分かるよ。

 

 せめてもの情けだ。一対一でやらせてもらうぞ。

 

「ちぃ・・・だったら。」

 

 そうつぶやいた瞬間、フリードの姿が増える。

 

 その数は八体。

 

「夢幻のエクスカリバーの力・・・。」

 

 幻を作り出し、あまつさえ実体化させたのか?剣つきで。

 

 あいつ、聖剣の力を使いこなして・・・。

 

「安心しなよ。お前の相手はあくまでも僕だけだ!!」

 

 だったらこっちも対抗しようじゃないか。

 

 分身には分身で・・・。

 

 僕は一枚のカードを取り出し、剣に装填する。

 

―――――Trick Vent!!

 

「何か分かりませんが先手必勝!」

 

 八体のフリードが天閃の力で斬りかかってくるが僕は二つに分かれてそれをかわす。

 

 そして、僕は次々を増え、フリードと同じく八体に増える。

 

 分身の力・・・。

 

「ソード・バース!!」

 

 足元に様々な剣が生え、僕の分身たちがそれを掴み取り、分身同士の戦いが始まる。

 

 この分身の力。僕の神器と相性がいい。色々な剣を一気に使える。体が文字通り増えるおかげでね。

 

「そんなのあり?」

 

「先に分身した君には言われたくないよ!!」

 

「だったら!!これはどうですか!!」

 

 本体のフリードが聖剣を鞭に変えてくる。

 

 それを防ごうとするが、その剣が剣を透過しつつ、半ばで爆発。剣が粉々になる。

 

「ぐっ・・・擬態に、透明、そして破壊の合わせ技。」

 

 鞭のように変化させ、相手の剣の半ばまで抜け、その途中で破壊の力を解放。

 

 内部から剣が破壊されるも同然の、鬼畜なコンボだ。僕じゃなかったらかわせなかった。

 

 彼はやはり天才だ。聖剣使いとしても、剣士としても彼は超一流だろう。

 

 戦闘狂だが、それに才能が追いついているのが何よりも厄介なところだ。

 

「強いですね。それに透明と天閃を合わせたらどうなるかな?」

 

 刀身をとっさに作り直す。

 

 まるで見えない破壊の嵐が迫ってくる。

 

 鞭のようになり、高速、しかも触れるだけで粉々。それも物質透過と透明化の能力付きという・・・反則もいい所のコンボ。

 

 前の僕なら詰んでいたはずだ。

 

 でも・・・僕はもう極めた。

 

 見えないはずの攻撃にも確かに殺気が込められているのが手に取るようにわかる。

 

「げえっ!?なんで当たらないの!?」

 

 歩くだけですべてかわす。こういう時、無駄な動きは不要だ。

 

 アギトのイッセ―君もそうやって動いていたよね。カウンターとしてよくやっていた。

 

 総て見切り、必要最小限の動きと・・・。

 

「海波斬!!」

 

 高速で剣を振い、その衝撃波で防ぐ!!

 

「やっぱり、さっきまでと違う!あの空裂斬って技を成功させてから何かが変わった!?」

 

 フリードは冷静に僕を分析している。

 

 それができる当たり、こっちとしても末恐ろしいよ。

 

 でも、見切られる前にこっちから決めさせてもらう!!

 

 僕はかわすのをやめ、駆けだす。

 

 透過させられないように剣を光喰剣に変え、襲いかかってくるエクスカリバーを力技の剣で叩きつぶす。

 

――大地斬!!

 

「のぱっ!?」

 

 その勢いに体勢を崩すフリード。それを隙と見て僕は走り出す。

 

「この!!」

 

 フリードは強引に体勢を整え直し、剣を振るう。

 

 剣は確かに捉えた。

 

 僕が作り出した魔剣を。

 

「そっ・・そんな!?」

 

 それはさっきのトリックベントで作り出した九体目の分身体。それを僕の魔剣と一緒に融合させたのだ。

 

 その剣は呪いの魔剣。

 

 触れた物質の動きを止める。

 

――――貴方も大概可笑しいわよ。分身の力をいきなりここまで使いこなすなんて。普通は八体までが限界なのに、九体目を遅れて出す芸当を・・・。

 

 いくら聖剣でもその力で一瞬だけなら動きが止まる。

 

 その一瞬で十分だった。

 

 僕のサイガ君より教えてもらった必殺剣を決めるには。

 

 僕は大地を斬った。

 

 次に海を斬った。

 

 最期に、空も斬った。

 

 それだけで、僕は悟っていたんだ。

 

 総てを斬れると。

 

 逆手に持った魔剣。

 

 それを僕は振るう。

 

 今完成した奥義の名を口に。

 

『いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』

 

 皆の思いと声援を受けて放つその技の名は・・・。

 

「アバンストラッシュ!!」

 

 僕は剣を振るいながらフリードの傍を駆け抜けていた。

 

 そして・・・。

 

「・・・男子三日立経てば活目して見るべし。その言葉は私でも知っていますよ。でもですね。」

 

 フリードの手にしたエクスカリバーが真っ二つにずれるようにして折れた。

 

 それと共にフリードの変身が解ける。彼にも先ほどの一撃で大ダメージを与えていたのだ。

 

「些細なきっかけで瞬時に化けるなんて反則もいい所ですよ。」

 

 それを見て、同志たちの間から声が上がる。

 

 みんな、僕はついにやったぞ。

 

 エクスカリバーを越えることができた!!

 

「なんでこんなに強い連中ばかりなのですかね。」

 

 折れたエクスカリバーを見てフリードは薄く笑う。

 

「まだ・・・あのアギトには届かないってことですかい。はははは・・・情けないじゃありませんか!!」

 

 負けた事が悔しいということではない。ただ・・・届かなかった事が悔しいのだ。

 

 彼は力を求めていたというのか?

 

「くそ・・・。」

 

 フリードはそのまま倒れる。

 

 僕たちの悲願は今達成された。

 

 でも戦いはまだ終わっていない。

 

「聖と魔の融合。そんな事が・・・。」

 

 その光景を見たバルパーが何かをつぶやいている。

 

 そして・・・。

 

「そうか!聖と魔。それぞれを司る存在のバランスが大きく崩れているのなら説明がつく。つまりそれは魔王だけじゃなく神の・・・。」

 

 そこまで言いかけたところで、彼に向けて光の矢が飛んでくる。

 

「悪いがこいつを死なせるわけにはいかない。」

 

 それを鋼牙さんが剣で弾き飛ばした。すごい・・・伝説の堕天使の攻撃をあの人は生身でさばききった。

 

 その隙に他の同志達がバルパーを捕える。僕の空裂斬で大ダメージを受けていたから、捕縛も楽なはずだ。

 

「こいつは、きちんと裁きを受けてもらう。」

 

「邪魔をしてくれる・・・。こいつは優秀すぎていらぬことに気づいてしまったというのに。」

 

 コカビエルが上に飛んだ。手には指輪。あれってハルト君が使っているのと同じ物!?

 

――――ドライバーオン。

 

 指輪がベルトに変わる。

 

「ここからはこっちも本気を出させてもらうぞ。」

 

 




かなり長めでもうしわけないです。

 ですが、次話も長めになると思います。


 さて・・・いよいよアギトに関するある事実が明らかになります。

 


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神がいないのなら・・・

 三章の最大の山場です。

 ここでイッセーがやらかします。


 


SIDE イッセ―

 

 コカビエルの腰にあるベルト。それはハルトと同じベルト。

 

 そのやかましい音声もまた全く同じだった。

 

「変身。」

 

 そして、奴は変身する。

 

「お前・・・。」

 

 白いローブを纏ったその姿を見間違うわけがない。

 

 それは俺がアギトに覚醒するきっかけとなった魔法使いの姿。

 

「前の時も邪魔をされた。その借りも返させてもらうぞ。」

 

 奴は別の指輪に切り替える。

 

―――――フォールダウン、ナウ!!

 

 それは堕天の指輪。

 

 その音声と共に奴はさらに変身する。

 

 黒いローブに背中からは十枚の黒い光の翼。その一つ一つに紅い目がついている。

 

「さあ・・・戦争の始まりだ。」

 

―――――ゲート ナウ!!

 

 コカビエルが無数の召喚陣を展開。

 

 そこから、次々と怪物と堕天使たちが出現。しかも堕天使たちも同じようなドライバーを身に付け、変身している。

 

 これだけの戦力をこいつは保有していたのか?

 

「戦争のための戦力だ。さあ・・・お前達は私が直々に相手にしてやる。」

 

―――――――ランスレイン・・・ナウ!!

 

 コカビエルが軽く手を振るうと、巨大な光の槍が一斉に現れる。

 

 その数・・・百以上、いやもっとあるぞ!?しかも一つ一つが電信柱みたいな大きさをしている。その大きさの槍を一度にこれだけ・・・!?

 

「コカビエルの奴・・・厄介な力を!!」

 

「ハルトには感謝しないとな。あいつの研究成果を横取りした結果だ!!私のは違うが、おかげで部下達を魔法で強化できたのだからな!!」

 

 似ていると思ったらあいつの研究をパクリやがったのか。

 

 ハルトが知ったらものすごく怒るぞ。

 

 コカビエルがミサイルの様な槍の雨を上空に発生させたまま降り立つ。

 

 そこに木場達が斬りかかる。

 

 木場だけじゃない。ゼノヴィアもだ。

 

「悪いが、この姿になった私は魔王クラスなのだよ。」

 

 その二人を光の結界を展開させることで弾き飛ばした。

 

 隙がない。

 

 アギトの本能で分かるぞ。

 

「ぐっ・・・。」

 

「さすがに今のお前達と接近戦をしようとは思わない。特に空間すら斬るレベルまでにデュランダルを使いこなすお前は厄介すぎる。小娘の癖に不相応に戦い慣れているのも気になるが・・・。」

 

「あいつは私の因縁だ。この世界に転生してきた故にその腕前は相当なものと考えておけ。」

 

「それはどうも。前世の戦闘経験値。それが上乗せされているというのか。」

 

 ゼノヴィアと牙王。厄介な因縁だよな。

 

「しかし、面白い。そっちもそんな切り札を持っていたのか。変身する上に、その先があるとは。」

 

 牙王がコカビエルの隣にならぶ。

 

 ・・・ラスボスが二体って、反則もいい所だ。

 

「諦めんじゃねえぞイッセ―。」

 

「そう言う事だ。」

 

 そんな俺に弦太郎とゼノヴィアが構える。

 

「これも神の試練ね。かなりしんどいといってやりたいわ。」

 

 イリナも文句を言っているぜ。

 

「ふははははははははは!!」

 

 だが、その文句にコカビエルが笑う。

 

「お前達も健気だな。もうすでにいない主のために戦おうなど!!」

 

「何を言っているの?」

 

 部長がその言葉に反応を示す。

 

「ははははははあは!!そうだった。お前達下々にはあの戦争の真相が伝わっていなかったのだった。ついでだ、教えてやるよ。」

 

 コカビエルは狂ったように笑い、そして告げる。

 

「あの三すくみの戦争で魔王だけじゃなく・・・神も死んだのさ。」

 

『・・・・・・・・。』

 

 あいつは今、なんて言った?

 

 神様が死んだだと!?

 

 その場にいる全員が信じられないという表情を見せている。

 

「そっ・・・そんな。」

 

 アーシアが校門の傍で膝をついている。

 

 アーシアがああなるってことは、あいつが言ったことは真実なのか?

 

「知らなくて当然だ。神が死んだなど誰が言える!!人間は神がいないと心や法も保てない不完全な存在。おまけに他の堕天使や悪魔達も知ったらどうなるか?それを知っているのは各勢力のトップとごく一部の者達だけだ。先ほどバルパーが気付いた様子だったがな。」

 

「やはり・・・そうだったのか。」

 

 膝をつくバルパー。あいつも腐っても聖職者。相当ショックだったのだろう。

 

「そんな・・・じゃあ僕たちは何のためにあの施設で実験を・・・。」

 

 木場も、そしてその同志達も相当ショックだったみたいだ。

 

「神はいない。そして、戦争も種の存続が互いに危ぶまれる故に、それどころじゃなくなったのだ。何しろ神がいない故に、純粋な天使は生まれない。堕天使は天使が堕天しないと生まれないわけだからな。影響は大きい。悪魔サイドでさえ、純粋悪魔は希少な存在。どの種族も、人間を交えなければ存続ができない程まで落ちぶれた!!!」

 

 コカビエルの言葉に俺は気付いてしまった。

 

 アーシアや、木場でさえあれだけショックだったのだ。

 

 なら・・・あいつらはどうなんだ!?

 

「そんな・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

「嘘よ・・・そんなの嘘よ!!」

 

「・・・・・・。」

 

 良太郎はまだ大丈夫みたいだ。でも・・・他の三人が。

 

 弦太郎ですら涙を流しながら膝をついている。

 

「神はいないのか・・・。俺・・・いつか友達になりたいと思っていたのに!!」

 

「・・・・そんな・・・そんな・・・。」

 

「・・・・・・・。」

 

 ゼノヴィア、そしてイリナはもう言うまでもない。2人とも見ていられないほど狼狽している。

 

 三人ともそのショックで変身が解けてしまった。

 

「アーシア!?アーシア!?」

 

「気をしっかりもちなさい!!」

 

 校門では倒れたアーシアを部長と朱乃さんが介抱している。

 

「ミカエルの奴は頑張っていると思うよ。神が残したシステムを代わりに運用し、天使と人間を纏めているのだからな。システムさえあればエクソシストや神への祈りも機能する。だが・・・それでも完全ではない。その聖魔剣がいい例だ。」

 

 木場のあの剣。あれって偶然じゃないのか。

 

「そして、アギト。お前のそのバグの一つといえるな。何しろアギトに神滅具(ロンギヌス)が宿ることは過去に一つもなかった。何しろの神がアギトに神器が宿らないように調整していたのだからな!!お前のような存在がいることこそ、神がいない最大の証拠になるのだよ!!」

 

――――――なるほど。

 

―――――何か可笑しいとは思っていた。だが、そんな背景があったということか。

 

 中の二人が納得した様子を見せる。

 

 だが・・・その前に俺は思う事があるんだ。

 

「さあ・・・戦争を始めよう。お前達を滅ぼし尽くし、今度こそ我らが勝つ!!そのための戦力も整えたのだからな!!!」

 

 圧倒的な強さと、絶望でしかない真実。

 

 それで周りの空気が一気に落ち込む。

 

「それがどうした?」

 

 そんな中、俺はぽつりとそんな事を言ってのける。

 

「な・・・に?」

 

「お前・・・俺のダチ達を絶望させて楽しいのか?」

 

 俺は歩き出す。一歩、一歩、足を踏みしめて。

 

「なぜだ?何故・・・お前は絶望しない?」

 

「絶望なら一度味わっている。それに俺は夢があるんだよ!!ハーレム王になりたいという夢、そして溢れて止まらない欲望がな!!」

 

「おっ・・・お前、こんな時に何を言っていやがる?可笑しいだろ!?」

 

 可笑しいのは分かっている。

 

 まあ、これだけの欲望があるからこそ、俺なんだ!!

 

 たとえば部長のおっぱいを考えてみろ。

 

 それだけでこの程度の絶望などふっ飛ばせるわ!!

 

―――――相棒。こんな時に欲望を爆発させるな。

 

―――――いや、すごいメンタルしているわ。

 

<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!>

 

「それに、前から疑問には思っていたんだ。どうしてアーシアみたいないい子が酷い目に合わないといけないのかって。神様って奴がいたら辛い思いをした分、アーシアの代わりにぶん殴ってやりたいと思った。それもできない事がわかった。だが・・・お前ら、何時まで落ち込んでいやがる。」

 

 俺は後ろで絶望している弦太郎、イリナ、ゼノヴィア、そしてアーシアに向けて声を叫ぶ。

 

「死んでも、その神様の遺志は残っているだろうが!!」

 

『!?』

 

「神様は存在していたんだ。それに変わりはない!!」

 

 俺は一喝する。

 

「それに弦太郎、イリナ!!お前ら、仮面ライダーを名乗るなら、覚えておけ!!」

 

 それもまた師匠の受け売りだった。

 

「例え神様がいなくても・・・俺達仮面ライダーがいるってな!!神様いなくなったびなら、その分、俺達が手を差し伸べればいいだけの事だ!!」

 

 俺に仮面ライダーを名乗る資格があるって言ったのは他でもない師匠だった。

 

 アギトになってからも名乗るのを躊躇っていたが、あえて名乗ってやる。

 

「だから、神様がいなくても俺がいる。仮面ライダーの名を持つ、俺達がいる。神様がいい人だったら、俺達がその遺志を受け継ぐまでだ!!」

 

『!?』

 

 その言葉に皆が驚く。

 

「神の遺志を継ぐだと?ふはははは・・・何をふざけた事を・・・。」

 

「俺は本気だ!!」

 

 コカビエルの嘲笑を一蹴する。

 

『!?』

 

「そりゃ、神様の遺志なんざ、分からねえからそこから知らんとな。その上で継ぐか決める。だが、俺の無限の欲望が面白そうだって後押ししている!!それに・・・。」

 

 俺は思うんだ。

 

「せっかくアギトになれたんだ。ハーレム王ついでに、それくらい欲張った目標があっても罰は当たらねえ!!」

 

『・・・・・・。』

 

 いや、でも俺って今すごい宣言したよね。これってハーレム王に加えて神の後釜になってやるといったような・・・。

 

――――スケベ心。ここまで来ると天晴だ。もう私はとっくに開き直っているがな!!

 

―――――ええ。ここまで来るともうついていくしかないわ。この子、とんでもない領域まで登りそう。

 

「ぐっ、アギト風情が!!神の力を持つからと言って・・・んん?神の力だと?」

 

 コカビエルはそこで言葉を止める。

 

「まさか、アギトが神滅具(ロンギヌス)を持つことになったのは!?そんな・・・そんな馬鹿なことがあってたまるか!!」

 

 あいつがうろたえながら何か言っているが、いい加減俺も怒りが限界なんだよ。

 

「だっ、だったら、俺の軍門に下れ!!戦争に勝った暁に世界の半分をくれてやる!!そうなれば、ハーレム王になるって夢だって自動的に叶う事になるぞ!!」

 

 コカビエルがとっさにそんな事を言う。

 

「・・・・・・。」

 

 その言葉に俺は動きを止めてしまう。

 

 それもいいかもしれないな・・・。

 

『オイ!!』

 

 おっとスマンスマン。

 

「あなたねえ。欲望に忠実すぎるわ。」

 

 部長からありがたいハリセンが入りました。

 

 変身しているおかげで威力が相当あります。

 

―――そこらへんも相棒なのか?

 

―――今のはそのまんま、魔王の誘惑じゃない。

 

「とりあえず・・・ダチを泣かせた分だ!!たっぷり受けとれ!!」

 

 俺は歩きだす。

 

「ぐっ、認めん!!お前ら風情が、神の遺志を継ぐなどと!!」

 

――――エクスプロージョン、ナウ!!

 

 俺は突然巻き起こった爆発を突っ切る。

 

―――――Explosion!!

 

 そして倍化の力を解放させた拳を叩き込む。

 

―――――シールド、ナウ!!

 

 コカビエルは光の盾を展開。

 

 盾と拳がぶつかる。

 

 そして、盾を粉々に砕いた拳がコカビエルの右頬を捉える。

 

「うおおおらあああああぁぁぁぁ!!」

 

爆発させた一撃に、コカビエルが吹っ飛ぶ。

 

「ぐ・・・お・・・。」

 

 へっ、一発かましてやったぜ!

 

「面白い。」

 

 んん?聞きなれない女の子の声が聞こえるぞ?

 

「欲望に忠実なアギト。そんな理由で神の遺志を継ごうというの?」

 

 見ると巧の傍に黒い服を着た少女が現れていた。

 

「ああ。だが、みんなで楽しくしないとだめだ。それに俺一人じゃ無理だって。あいつの言うとおり、人間は完全じゃない。だが、それって天使や堕天使、悪魔も、そして神様も同じじゃねえのか?コカビエルってやつも、ああ見ると俺達とそんなに変わりないように見えるしさ。」

 

「なっ・・・なに!?俺が貴様らと同等だと!?」

 

 コカビエルはその言葉にぎょっとする。

 

「完全な存在なんていない。だってさ、そうでないと神って奴は天使や、人間、アギトを生み出さなかったし、悪魔や堕天使だって生れなかった。それが答えなんだと思うぜ。」

 

「貴様・・・。」

 

 自分たちが完全でない。それを指摘され、怒りをあらわにするコカビエル。

 

「だからこそ、みんな。」

 

 よくよく考えれば、そんな大それたこと、一人でできるか!!

 

「幸いにも身内はみんな無茶苦茶頼りになるメンツばかりだ。一人じゃできないこともできる。むしろ、前の神様ができなかったことすらやり遂げて見せるぜ!!」

 

「なるほど。姉様が主に選んだ理由が良く分かる。」

 

 姉といいましたか?

 

「どうして出てきたの?」

 

 クレアが姿を現す。

 

「時がきたということ。私もあなたをずっと見ていた。あなたが苦しみ、そしてそれを乗り越えていくこともすべて。そして決めた。私は・・・。」

 

 女の子の姿が黒い炎に包まれ、その炎の中からそれは現れる。

 

 それはクレアそっくりな龍だった。

 

 色が黒いという違いがあるだけだ。

 

――――――そう・・・嬉しいわ。

 

 そして、クレアまでもが元の姿となって実体化した?

 

「久しぶり姉様。私もイッセ―と契約してもいい?」

 

 姉って、クレアのことなのか!?

 

「もうとっくに契約しているでしょうが。それに、とんでもない子よ?ハーレム王になる上に、神の後を継ぐってとんでもない発言をしたんだから。」

 

「だからこそ。その行く先を見てみたい。」

 

 その言葉と共に俺の右足に黒い竜の足甲が現れる。

 

「両腕は取られた。故に足に力を宿す。」

 

「カード自体はどちらの召喚機でも可能よ。だから安心して頂戴な。」

 

 えっと・・・。

 

 いつの間にか俺、二体目と契約していたのか?

 

 話からするとクレアの身内、妹みたいな存在と?

 

「俺が一度死んだ瞬間にだ。お前、こいつの力で禁手化したんだぞ?」

 

 巧が死んだ時?あの時にか?

 

 確かに声は聞こえたが・・・。

 

「こいつのおかげで何とか生きながらえてきたんだ。ありがとうな。」

 

 しかも・・・巧の命を繋いでくれていたのか。

 

「こっちからも礼を言わせてくれ。ありがとう。そして・・・よろしく!!」

 

 俺はクレアの妹に拳を差し出す。

 

 初めは首をかしげる彼女だったが、すぐに分かってくれたのだろう。

 

 彼女も拳を突き出し、互いに上、下とぶつけ合って、最後ぶつけ合って握手する。

 

「こっ、この期に及んでまだこんな存在を隠していたのか!?」

 

 コカビエルが本気で驚いている。

 

「自己紹介がまだだった。私の名前はドラグブラッカ―。姉様と対をなすもう一体の無双竜。」

 

 つまり、こいつも天龍クラスのドラゴン!?

 

「相棒。本当にドラゴンづくしで楽しいよ。」

 

 俺の後ろに三体のドラゴンが姿を現す。

 

 せっかくだ、三体共呼び出してやる。

 

―――――AdVent!!

 

 三枚のアドベントカードによって俺の後ろに三体のドラゴンが出現。

 

「今回はまた暴れ甲斐がありそうだな。」

 

「ふふふふ・・・ええ。しかしやっと話せるわ。どういう経緯でイッセ―に憑いたの?一応話は聞いてはいるけど・・・。」

 

「色々あった。巧を助けたいという願いもあったから。」

 

 ドラグブラッカ―とクレアの会話。

 

「・・・悪夢だ。アギトで神滅具だけで厄介なのに、そこにドラグレッタ―と対をなすもう一体の無双龍だと!?」

 

 うん。これならあいつが戦争に用意した軍団も何とかなりそうな気がする。

 

 コカビエルは体を震わせるがその通りだぜ。

 

 そして、俺はもう一つの力が発動する。

 

「私の力、あなたをさらに進化させる。」

 

 ドラグブラッカ―の言葉と共に俺の身体に変化が起きる。

 

――――プロモーション、クイーン。

 

 それは女王への変化。

 

 今まで俺はアギトに変身した状態で女王への昇格ができなかった。

 

 だが、今その昇格が可能となる。

 

 俺はまた進化をする。

 

 前がグランドフォーム。

 

 背中はアクアフォーム。

 

 右肩がフレイムフォーム。

 

 左肩がストームフォーム。

 

 という俺の四つの形態が融合した姿になったのだ。

 

「ほう・・・。」

 

「今までのフォームチェンジの融合。一つの進化の集大成ということね。」

 

「そう・・つまりあれは・・・。」

 

 部長が今の俺の姿に命名をつける。

 

「仮面ライダーアギト、四重奏形態(カルテットフォーム)ってところかしら?」

 

「なんか、てんこ盛りって感じで、親近感わく。」

 

 良太郎が何故か今の俺の姿に親近感を覚えているぞ?

 

「あれ?」

 

 そして部長の目の前に悪魔の駒が?

 

「これってイッセ―に使った兵士の駒の一つじゃない。どうして一つだけ?」

 

「一つ分だけ巧の生命維持のためにとして今まで使わせてもらっていた。もう必要ない故に返却した。おまけをつけて。」

 

 えっと・・・じゃあ、今の俺って駒価値七個分なの?

 

「そもそも悪魔に転生できていないのだから、あなたに駒価値は全く意味ないわ。それに・・・。」

 

 部長は駒を見て告げる。

 

「この駒、変異の駒(ミューテーション・ピース)になっている。これがおまけだというの?」

 

 一つ駒を変異にさせた状態で返却って。

 

「ぐっ、そこでさらに進化だと?アギト、いや兵藤一誠!!お前は本当に恐ろしい存在だよ!!やはり、あの方が言っていた通り、全力で貴様を潰す・・・。」

 

 軍勢が一斉に俺向けられている。でも、もう怖くない。

 

「相棒達・・・多分、この戦い最期の大暴れになるぞ。」

 

「ふははははは、大暴れこそドラゴンの本慮発揮よ!!」

 

「暴れ甲斐があり過ぎて困るわ。」

 

「私も暴れる。巧はどう?」

 

「フッ・・・命の恩人が闘うのにじっとしてられるか。」

 

 巧も立ち上がり、俺の傍に立つ。

 

 二人で言ってやる。

 

『さあ・・・改めて俺達の聖戦(ケンカ)を始めようか!!』

 

「上等だ!!」

 

 その言葉と共にケルベロスが二体程俺達に向けて突進してくる。

 

「イッセ―ったら、何を言っているの?『私達』って言葉が抜けているわ。」

 

 俺の前に現れた部長そのケルベロス二体を一撃で蹴り飛ばす。

 

 部長・・・順調に強くなっていますね。上級悪魔でも苦戦必至なケルベロスを簡単に蹴り飛ばすなんて。

 

「ふふふ・・・まったくやんちゃな子なんだから。」

 

「ったく。違うだろ?」

 

 その後に朱乃さん。そしてネロ。

 

「がああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 ネロは変身する。ギルスに。

 

「貴様ら・・・!!」

 

 コカビエルが上空に展開していた光の槍を雨のように降らせてくる。

 

 一発一発が必殺クラスの威力を誇るそれだったが・・・。

 

「神様がいないのは辛いです。でも、まだ私は手を伸ばせます。誰かの手を掴むことができます。手が届く限り、私はみんなを癒します!!」

 

「出来ることがまだある。だから、私はすべてを守る。」

 

『私達はまだ・・・立ち上がれる!!』

 

 それをすべて光の壁が防いでいた。

 

 アーシアとキリエさんまでやってきていた。キリエさんが神器の盾を使って俺達を守ってくれていたのだ。

 

 そして、俺達の疲労をアーシアの放つ光が癒していく。

 

 アーシアの回復の力。それが強くなっている証拠であった。

 

「・・・あれが噂のアギト。兵藤君の真の姿ですね。ネロ君もギルスの姿を見るのは初めてでしたね。」

 

「あいつら、すげえ力を隠していたんだな。でも・・・兵士の駒八個分の価値を明らかに逸脱しているぞ!?」

 

「アギトって・・・あのアギトかよ!!文献では知っていたが、イッセ―やネロがそうだったなんて、なんで早く教えてくれなかったんだ!?後で詳しい説明をもらうぜ。お前らを研究して、提出したいからな。」

 

「その前にアギトってなんだ?」

 

「あーと説明するとだな・・・。」

 

 そして、蒼のキバとなったソーナ会長と、匙、仁藤のコンビまでやってくる。

 

仁藤の奴、アギトまで興味の対象だったのかい!!俺を研究って・・・。

 

「そうだね。検索してもまだ分からない事だらけでゾクゾクするよ。アギトって言う存在はまさに可能性の塊。じっくりと研究してみたいよ。」

 

 そして、その場に一人の青年が現れる。

 

『・・・・・・・。』

 

 その姿に俺と巧は固まる。だって、ものすごく見覚えのある顔だったから。

 

「久しぶりだねイッセ―。そして、巧。君が無事でよかった。」

 

「えっと・・・えええええもっ・・もしかして!?」

 

 巧が生きている時点でもしかしてとは思っていた。でも、まさか・・・。

 

「そう、フィリップだ。ようやくこうやって語らえる。」

 

 その言葉に俺と巧は互いに視線を向ける。

 

 お互い、フィリップの生存を知らなった様子だ。

 

「なんで、全知の龍神まで来ている!?」

 

『龍神!?』

 

 コカビエルの発言に俺と巧は声を揃えて驚く。

 

 それって確か、ある魔王眷属の相棒だったよな。

 

「このタイミング、この場所が最高ね。それに、たっ君の無事も確認できたし。教えてくれてありがとうございます。フィリップ様。」

 

 フィリップの隣に降り立つのはレイちゃん。

 

「レイちゃん?どうしてここに?」

 

「それはこっちのセリフよ。あなたを探すためにグレゴリ中が大騒ぎになっていたんだから!!」

 

 えっと、巧が行方不明になってグレゴリが大騒ぎ?なんじゃそりゃ?

 

「そのショックで総督は今でも寝込んでいるし!!」

 

「・・・親父・・・。」

 

 レイちゃんの言葉に巧が天を仰いでいる。グレゴリの総督を親父って・・・。

 

「お前に話していなかったが、俺はグレゴリの総督アザゼルの息子なんだ。血は繋がっていないらしいが。」

 

『・・・・・・・。』

 

 その事実に皆が固まる。

 

 おい。今とんでもないことを聞いたぞ!?

 

「あとで、元気な顔を見せに行った方が良いな。」

 

 手から灰を落としながら巧が溜め息をつく。

 

「まったくもう、あなたはグレゴリの王子様でもあるのよ!!」

 

 ファイズとして戦っているのもすごいが、その肩書もすげえ。

 

「俺自身は大したことない。」

 

「・・・ファイズとして前線で大活躍してきたあんたをグレゴリの中のどれだけのメンツが慕っているのか一度じっくりと教えてやりたいわ。」

 

 人望もあるようで・・・。

 

「レイナ―レ。中級堕天使のくせに俺に逆らうのか!?」

 

 グレゴリの幹部であるコカビエルに対しても、レイちゃんはまったく臆していない。

 

「あの時は本当にお世話になりました。そのお礼を言いに来ただけです。ねえ?ハル君。」

 

――――――ゲート。

 

「その通りだよ。コカビエル。」

 

 レイちゃんが開いたゲートからその声は聞こえてくる。

 

 いや・・・、聞こえてしまったというべきだろうか?

 

「ヒッ、ヒイィィィィィ!!?」

 

 その声に、あれ?コカビエルが怯えている?

 

「君はもう二つ罪を追加するのを忘れていたよ。一つは俺の研究成果。よくも勝手に使ってくれたね。」

 

 現れたのはハルトの奴だ。

 

 あいつ・・・なんかめちゃくちゃ怒っていないか?

 

「もう一つ。思いだした事だけど、お前のおかげでイッセ―は一度死に、そのあとも大怪我を負ったとか?」

 

 右手からなんか黒くてヤバいオーラが立ち上っていますよ。

 

「なっ・・・なんでだ!?何故、異空間からこうも早く・・・。」

 

「お前、我の存在忘れている。」

 

「ははは・・・ありがとうねオ―フィス。」

 

「げっ!?無限の龍神まで・・。」

 

 渡。隣にオ―フィスちゃんを伴って登場。

 

「警告したはず。この街に手を出したら滅すると。」

 

 あれ?オ―フィスちゃんがものすごく怒っている?

 

 声色や表情は淡々としているのに、にじみ出るオーラがヤバい!!

 

「・・・・・・オ―フィスからも貴重な話を聞けたんだ。はははは、本当いい度胸しているよね、コカビエル?」

 

 ハルト。どうどう,落ち着こうね。

 

 お前、すげえ恐いぞ!?

 

「ホント・・・どうしたんだろうな?ハルトの奴、この世界で魔王化するなんて。まあ、ある意味、魔法使いの行きつく先としては間違っていないだろうが。」

 

「お前、確かハルトとは古い知り合いだったよな。昔は違ったのか?」

 

「ああ。まあ、基本的なところはそんなに変わっていない。今はただ、キレたらあのようにドS魔王になる程度の違いだ。」

 

「その違い、とてもでかいよな!?あれ、どんだけドSなんだ!?」

 

 首をかしげる呑気な仁藤と匙のやり取りを耳にしながら俺は同意する。

 

 確かにあれは魔王だ。ドS魔王だ。

 

 何この魔王降臨!?

 

『ガタガタガタガタガタガタ・・・。』

 

 敵味方問わず、皆が怯えとる。コカビエルだけじゃない。他の堕天使たちの怯えた様子が尋常じゃない?

 

「ヒッ・・ひいいいやるならせめてひと思いに!!」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」

 

 うわ・・・、相当今のハルトって恐れられているんだな。

 

 だが、そのハルトが怒りを引っ込めこっちを見てくる。

 

「巧、無事でよかった。」

 

「わりぃ。でも、まだ何とか生きているぜ?」 

 

 そして、巧、ハルト。お前ら知り合いだったのかい!

 

「お互いイッセ―繋がりと知ったのはつい最近だがな。」

 

 苦笑する巧。その様子だと、お互いにそれを知った時に驚いたみたいだな。

 

「イッセ―、同じグレゴリの最高幹部の一人として許可する。コカビエルを完膚無きに叩きつぶせ。ただし殺すなよ?」

 

 右手を鳴らしながらハルトは告げる。

 

「処刑はこっちがやるから。他のお前らも同罪だ。覚悟しておけ。」

 

 ああそうですか。あいつもかわいそうだな。

 

「ぐっ・・・ハルトの・・・処刑・・・。」

 

 すでに処刑確定だなんて。

 

 コカビエルがその内容を知っているのかすっかり怯えておる。

 

 というより、ハルト?お前がグレゴリ最高幹部って初耳なんですけど?

 

 幹部であることは聞いたけど、コカビエルと同じ立場なのは初耳だよ!!

 

 どんだけ偉いの?

 

「お前。俺よりもよっぽど魔王らしいぞ。」

 

 そして、その後ろから・・・へっ?なんであんたがいるの?

 

「ダンテ!?」

 

 五大魔王のお一人まで出てきた!?

 

「よう、久しぶりだな若者共。そして、お前まで来ていたか。」

 

「変な巡り合わせだな。お互いに。」

 

「違いねえ。それと小僧たちも元気そうでなりよりだ。」

 

 ダンテ様までなんで出て来たのさ!?

 

 鋼牙さんも親しげに話しているし。

 

「いい師がいて退屈しなかった。いや、修行になった。」

 

「はあ・・・人外どもばかりでこっちは大変だったにゃ!!ハルっちは凄く怖いし。オ―ちゃんも無表情で怒っているし!!まあ、愛で甲斐があったけど。」

 

 鋼兄と黒歌まで・・・。

 

 しかも黒歌、さりげなくオ―フィスちゃんを愛でまくっていたのかい!!

 

「姉様!!お義兄様!!」

 

 そんな二人に小猫ちゃんが駆けより抱きついてくる。

 

 そういえば、小猫ちゃん、二人の事をかなり心配していたもんな。

 

「・・・さて。俺も覚悟決めるか。」

 

 ・・・・・・そうか。流石に三人目になるともう驚かなくなるぞ。

 

 巧が生きていた。

 

 そしてフィリップも生きていた。

 

 なら、もう一人も生きていても全くおかしくないね!!

 

「翔太郎・・・。」

 

 だが、恨めしい声だけは変えられねえぞ!!

 

「すまん。」

 

「すまんじゃねえ!!ったく、後で覚えておけ!!」

 

 はあもう・・・。死んだと思ったあいつらまで生きていて。

 

 何がどうなってんの?

 

 巧の場合はオルフェノクに覚醒したことで蘇ったことは分かるけどさ。

 

「こっちもやらせてもらおうか。なあ・・・相棒。」

 

 翔太郎が腰にベルトを装着。

 

 すると、フィリップの腰に同じ物が出現。

 

―――――サイクロン。

 

―――――ジョーカー!!

 

 二人が手にしているのはガイアメモリ!?

 

「変身。」

 

 そして二人がそれをそれぞれのベルトに差し込み、フィリップの方のガイアメモリが翔太郎に転送。

 

 それと共に辺りに突風が巻き起こり、翔太郎は変身する。

 

 魔王眷族の一人・・・Wに。

 

 ってWだと!?

 

 そして、フィリップはそのまま倒れながら転送された。

 

――――――便利だね。体は自動的に転送されるっていうのは。

 

「ああ。」

 

 俺は何となく理解したぞ。

 

 こいつら悪魔に転生して助かったのか?

 

 それも魔王眷属として!!

 

「ねえイッセー。一度あなたの幼馴染についてじっくりと考察してみたいのよ。」

 

 なんか頭痛そうな部長が俺の肩に手を置く。

 

「魔王眷属と全知の龍神、グレゴリの王子にグレゴリ最高幹部の一人って・・・さすがに可笑しいと思うのよね。あなたどんな人脈をしているの?」

 

 いっ、いや!!それに関しては俺も激しく同意ですって!!

 

「もう・・・あなたの身内。何が出てきてもおかしくないと思うべきかも。ははは、神様も出てきているから、もう笑うしかないわ。」

 

 部長!!しっかりしてください!!

 

「お前らまであのアギトの友だというのか?」

 

「そうだ。」

 

「そうだな。共に死線をくぐりぬけたという仲ではあるかな?そっちはどうだ?」

 

「フッ・・・間違ってはいないな。」

 

 なんでその友にダンテ様と鋼牙さんまで入るの?

 

「・・・・・・・ハルトまでそうだというのか?」

 

「当然。」

 

「・・・そんな馬鹿なことが・・・。」

 

 コカビエルがなんか絶望したような声色になっているぞ?

 

「・・・ぐっ・・・この戦争。負けられん!!」

 

「上等。」

 

 もうわけが分からんが、これだけのメンツがいれば負ける要素はねえな!!

 

「では改めて。部長、一緒に。」

 

 俺は皆を見廻し、一緒に宣言してやる。

 

「はあ・・・そうね。ではみんなよろしくお願いするわ。」

 

 部長も一緒に宣言するぞ!!

 

『ここからは俺(私)達の聖戦(ケンカ)だ!!』

 

 お前達・・・この街から生きて帰れると思うなよ。

 

 

 

 




さて、ここで全員集合。

 文字通り戦争開始です。

 この世界でアギトが神滅具を得るというは重大な意味があるのです。

 ハルトはついに魔法使いの行き着く先に行ったと思ってください。


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皆の力を込めます。

 ここでコカビエルとの決着がつきます。

 えげつない止めが待っていますよ。


 あと、あるキャラ達がやりたい放題に暴れまわります。


 SIDE 木場。

 

 さて、色々と可笑しい事が分かったよ。

 

 イッセ―君。君の人脈は本当に可笑しい!!

 

 なんで三大勢力を跨ぐ人脈を作っているのかな!?

 

 新たに進化したイッセ―君はそのままコカビエルに向かう。

 

 そして・・・。

 

「おいそこの牙王とやら。あんたの強さは聞いている。一つ手合せ願えないか?」

 

 鋼鬼さんが、牙王を指名した!?

 

「ほう、いいだろう。俺もお前の事は聞いているからな。」

 

「こっちも全力で行く。ヤマタ!!」

 

――――何処まで強くなったか見せてもらうぞ。

 

 背後に巨大な八頭の蛇のオーラが現れ、それと共に地面から出てきた緑の刀身の剣を抜き放つ。左腕には蒼い篭手も出現している。

 

 その刀から不思議な音が鳴り響き、それと共に無数のディスクアニマル達が集まり、次々と鋼鬼さんの身体にくっつき、鎧となる。

 

 そして、現れるは鎧を纏った鋼の鬼。

 

「鋼鬼・・・鬼武者モード。」

 

 刀を軽く振るうだけで、辺りに突風が巻き起こり、地面が大きく陥没した?

 

「なら、こっちもそれ相応の姿で相手にさせてもらうぞ。ネガタロス!!」

 

「・・・これはすげえことになりそうだ。」

 

――――カラミティフォーム。

 

 牙王の元にグリードであるゲイルとネガタロスが中に入って・・・無数の手がある形態になった。

 

「すべて喰らい尽くす。」

 

「俺は喰えないぞ?」

 

 その言葉だけかわし、二人の剣がぶつかりあう。

 

 その衝撃は凄まじく、二人の周りでグランドに亀裂が走った。

 

『ほう・・・。』

 

 そのたった一つのぶつかり合いでお互いに感じ取ったらしい。

 

 互いに強いと。

 

 そして、二人がぶつかり合う。その度に暴風みたいな衝撃と地震みたいな亀裂があちこちに・・・。

 

「ちょっ、ちょっと二人とも!!どこか別の所で戦いなさいよ!!私達の学校が・・学校が!!」

 

 部長の悲鳴も分かる。既にグランドが地割れなどで崩壊寸前だ。

 

 校舎だってもう。見る影もない。

 

 二人のぶつかり合う度に、まるで砂の城のように崩壊しているし。

 

「あなた達がこれ以上戦うとぶつかると学校が修復不可能なレベルに崩壊してしまいます。って、でも誰も止められませんね。あんなラスボス二人のぶつかり合い、誰が好んで割りこむか。出来る事があると言えば隔絶することくらいしか・・・。」

 

 ソーナ会長ですら匙を投げつつも、ハルト君に視線をやる。

 

 それが何を意味しているのか、察したハルト君が指輪を使用する。

 

「仕方ない。こっちがサービスしておく。はあ・・・魔力温存しておかないと、ここら辺一帯の修繕もやることになりそうだ。」

 

――――フィールド。

 

 その指輪の効果と共に二人の間に結界が展開される。

 

「鋼兄!!二人のぶつかり合いをある程度耐えられる空間を隔絶させるタイプの結界だ。とっとと決めてくれ!!いくら俺でも半時間くらいしか持たない!」

 

『上等。だったら十分で崩壊させてやる!!』

 

「まっ、まさかあの二人、あれで遠慮していたのか?」

 

 更にぶつかり合いが苛烈になる。空間ごと隔絶しているはずのなのに、その振動がこっちにまで伝わってくるって・・・。

 

 あの二人はもう次元が違うよ。

 

「・・・またかけ直すか。魔力はまだまだ余裕あるし。」

 

 ハルト君はもう開き直っている。

 

「イッセ―、ありがとうよ。」

 

 そして、僕は驚く光景を見た。

 

 弦太郎が立ち上がってきたのだ。

 

 あの神の不在というショックから一番に立ち直って。

 

「正直まだ心が痛いし、ぽっかり穴が空いている。これから何をすればいいのかも分かんねえ。だが・・・涙は止まったし、拳も握れる!!」

 

 そして、彼はまた変身する。

 

―――――――ロケット。

 

 体は先ほどの白ではなく橙色の体に変わる。

 

 そして、最大の特徴は、ロケットが両腕にあったということだ。

 

「いくぜえぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 両腕のロケットを点火させて、弦太郎は宙を飛ぶ。

 

「お兄ちゃんの新しい力だというの?」

 

「初めて見る姿だな。」

 

「・・・・・・・。」

 

 正直、僕はこの弦太郎という男を舐めていたと思う。

 

 彼もまたイッセ―の幼馴染だ。

 

 お節介なところもあるけど、精神的にはイッセー君の知り合いの誰よりも強い。

 

 彼は敬虔なクリスチャンのはず。その神の不在は僕達などとは比べ物にならないダメージになったはずだ。

 

 その絶望からこんな短期間で立ち上がってくるなんて。

 

「弦太郎、お前は流石だよ。私は・・・まだ立てないが・・・。」

 

「ごめん、お兄ちゃん。」

 

「気にするな!!俺だって立てた事が信じられねえんだから。」

 

 落ち込む二人を慰める弦太郎。

 

 そこにデネブが現れ・・・。

 

「ゼノヴィア。俺が代わりに戦う。」

 

「そう・・・だな。何もしないで終わるのは癪だ。頼むぞ・・・デネブ!!」

 

 ゼノヴィアは再びゼロノスに変身しつつ、その後ろにデネブが立つ。

 

―――――ベガフォーム。

 

 頭の仮面が取れ、そして胸のパーツが変わる。

 

 それと共にデネブの両手が肩にくっつき、胸にその顔らしきものが現れる。

 

 顔にはドリルのような物が現れ、それが星形に広がり、新しい仮面となる。

 

 そして、背中から黒いマントが伸び、変身は完了する。

 

 変身し、デネブと合体したゼノヴィア。手にしたゼロガッシャーを軽く振るう。

 

 それだけで、辺りに突風が巻き起こり、地面が陥没する。

 

 鋼鬼さんと同じ現象を起こしたというのか!?

 

『!?』

 

 その光景に皆の動きが止まり、一斉に彼と彼女に注目する。

 

 すごいパワーだ。あんな芸当、変身したとしても僕はできないだろう。

 

 デネブの力を得たゼロノス。

 

 天然のように見えて、彼は本当にイマジンの中でも強いみたいだ。

 

 本当に見違えて驚いたよ。

 

 黒いマントをはためかせ、皇帝の如き威厳を見せながらたたずむ彼に皆が息をのむ。

 

 皆がデネブに注目が集まる。

 

「最初に言っておく!!」

 

 そんな皆に対して彼は言う。

 

 彼も最初に何か言うのか?

 

 一体何を・・・。

 

 彼は自分の胸を親指で指して言う。

 

「胸の顔は飾りだ!!」

 

『・・・・・・・・。』

 

・・・・・・・。

 

・・・・・・・。

 

 空気が凍りついた。

 

えっと・・・彼は今何を言ったのかな?

 

胸の顔が飾り?

 

そんなの言わなくても普通分かるでしょ!!

 

 むしろ飾りじゃない場合を知りたいくらいだ。

 

みんなが別の意味で言葉を失っている。

 

―――――こっ、こら馬鹿!!こんな時に何を言っているんだ!!それもこんな大勢の前で・・・。

 

「だって・・・初めての人がたくさんいるから間違えたらいけないと思って。」

 

――――お前なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

 中からゼノヴィアの悲鳴が聞こえてきたよ。

 

 訂正しよう。

 

 やはりデネブのようだね。

 

 訳が分からないよ!!

 

「ありがとうな。親切だなお前!!」

 

「それはどうも。ゼノヴィアが何時もお世話に・・・。」

 

 弦太郎君。それを普通に受け止めて会話を進める君を心の底から尊敬するよ!!

 

 尊敬しても、僕は真似できないし、する気も起きないけど!!

 

「舐めとんかお前ら!!」

 

「そんな卑猥なことはしていない!!それにお前は不味そうだ。」

 

「そう言う意味じゃねええぇぇぇぇぇ!!」

 

 ある堕天使がそのままデネブに突っ込んでいく。

 

「ふん!!」

 

 でも、それを平手で軽くはたく。

 

 それだけでその堕天使は地面に叩きつけられ、そのまま動かなくなる。

 

 まるでハエをはたくように無造作な一撃でだ。

 

 色々とツッコミ何処のある方ですが、実力は本物だ。

 

「どんどん来い!!ゼノヴィアの代わりに相手になるぞ!!」

 

「俺も行くぜぇェェェ!!」

 

 教会組の二人も大暴れ開始か。

 

 特にデネブはゼロガッシャーとデュランダルの二刀流。

 

 あれはえげつない。

 

―――――なら今度はこっちの番やな。

 

「へっ?ちょと待てクマ公!!ここからがクライマックスだろうが!!」

 

―――そう言われても・・・しゃあない。そこの人、体を借りるで!!

 

「へっ?何をするつもり・・・。」

 

 そう言われて、バルパ―の身体に何かが入りこんできた!?

 

 彼の腰に良太郎と同じベルトが出現して・・・。

 

――――アックスフォーム。

 

 黄色のアーマーに黄色に斧の様な刃が付いた仮面を被った姿。

 

 手にしたデンガッシャ―を組み換え、斧の形態にする。

 

 そして、彼の周りで何故か紙吹雪が舞った。

 

 その中で彼は言う。

 

「俺の強さにお前は泣いた!!」

 

 舞う紙吹雪の中の一つを手に取る。

 

「涙はこれで・・・拭いとき。」

 

「別の意味で泣きたいわぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 もちろんそれも相手にとっては挑発もいい所なんだけど・・・。

 

 攻撃を体で受け止められ、斧の一閃で斬り伏せられる光景を見ると、本当に強い。

 

「そんな・・・馬鹿な。」

 

 それこそ相手が泣く位に。

 

―――じゃあ僕は・・・んん。そこの君の身体を借りようか。

 

「へっ?僕?うん・・・面白そうだ。やってみようか?」

 

―――ノリが良いのは嫌いじゃないよ。

 

 ポルムの体にも何か入りこんできた?

 

―――――ロッドフォーム。

 

今度は蒼の、まるで亀の様なアーマーを纏った奴が現れる。

 

――――ふーむ、彼には素質があるね。うんうん。後で色々と教えたい事があるけどいいかな?

 

「へえ・・・いいよ。」

 

 ポルムが変身だなんて・・・。

 

「さて・・・お前、僕に釣られてみる?」

 

 彼は釣りでもするつもりなのかい?

 

――――――じゃあ・・・そこの君!!一緒に戦おうよ。

 

「えっ?」

 

 そして、落ち込んでいるイリナの身体にも何かが入りこみ・・・。

 

―――――ガンフォーム。

 

 今度は龍のような仮面とアーマーを身に付けた姿。

 

 そうなったイリナは言う。手にはデンガッシャ―を組み立てた銃がある。

 

「お前ら倒すけどいいよね?答えは聞いていない!!」

 

『だったら聞くな!!』

 

 いや、確かに質問するのに答えを聞かないのは失礼だ。

 

―――――うーむ。おっ・・・そこの者。体を借りるぞ。

 

「へっ?突然何を・・・。」

 

 鎧を解除した鋼牙さんにも!?

 

 鋼牙さんが変身するのは蒼い白鳥を思わせる仮面と白いアーマーを纏った姿。

 

「降臨・・・満を持して。」

 

――――何が起こったというのだ?鋼牙!?

 

――――体を・・・乗っ取られた。

 

 ザルバが戸惑っているし。

 

――――なんか皆勢揃いだね。

 

 良太郎が苦笑する。

 

「ああもう!!こうなれば、やけくそでクライマックスだぜ!!」

 

 こうやって良太郎軍団(今命名)がゼノヴィアと弦太郎と共に大暴れを開始。

 

 怒涛の勢いとノリで敵が蹂躙されていく。

 

 いや、本当にあれは蹂躙だ。

 

「僕も負けていられないな。」

 

「私も本気出そうか。」

 

 ユウナ。まさかの魔王眷属として生きていた僕の妹の腰に何かが現れる。

 

 その手には白い携帯電話。

 

「へえ・・・ここでもう一つのギアを見ることになるなんてね。」

 

 それを見た北崎が言う。

 

「五大ギアの一つ、天のベルト。天空の覇者、サイガか。つまりお前もまた・・・。」

 

 ユウナの姿が灰色の魔人に変わる。灰色の翼を持ったクレインオルフェノクへと。

 

 妹もまた、オルフェノクだったということか。

 

「なんで僕の名前なの?」

 

 サイガ君が苦笑しながら鎧を纏う。

 

「名前が同志と同じというのにかなり驚いたわ。でも、この力を解放させればあなたのデルタも圧倒出来るかもね。」

 

「やってみろ。こっちが弱いと思ったたら間違いだよ。原初の魔王の力を見せてやる。」

 

 二つのベルトが共鳴する。

 

 すると・・・。

 

「・・・なんだこれ?」

 

 僕の手に一つの携帯電話みたいな物が現れる。

 

 色は黄金色だ。

 

 そして、もう片方の手に変わった短剣が現れる。

 

 唾の部分がΩみたいな文様になっている変な剣だ。

 

『!?』

 

 それを見た北崎とユウナが僕の方を見る。

 

「まさか・・・もう一つ。」

 

「兄妹揃ってオルフェノクって言うのは分かるわ。でも、これってありなの?」

 

 ユウナは言う。

 

「兄さん。それ・・・五大ギアの一つ、冥府の剣帝オーガ。ちょうど私のサイガのベルトと対になるギアなのよ。」

 

 五大ギア?ユウナのと対になっているって・・・。

 

 北崎も軽く混乱している様子。

 

「この場に五大ギアの内、四つも揃う事になるとは。しかもオーガはパワー、そして防御力と出力なら五大ギア最強で白兵戦最強のギア。これは厄介すぎるぞ。」

 

――――――私、すごい主を見つけたのかも。これは面白い事になる。

 

 ダークウイングが笑う。でもね、僕は全くわけが分かっていないよ。

 

 ただ分かる事もある。

 

 僕は眷属を守る剣になると誓いました。

 

 その誓いが、何か僕の中で色々ととんでもない力を目覚めさせるきっかけになったようですと。

 

 

 

 

SIDE コカビエル。

 

 今・・・俺が知りうる限り最強のアギトと戦っている。

 

 存在そのものが神滅具であるアギト。

 

 それがその上に神滅具を得ることなど、神がシステム的に許していないはずだった。

 

 今、そのシステムに多少のバグが起きても、そのプロテクトは強固のはず。

 

 だが、今目の前にそれはいる。

 

 神滅具、しかも他に天龍クラスの異界のドラゴンを二体も契約するとんでもないアギト――兵藤 一誠が。

 

 俺にはその存在が生まれた背景に、そのプロテクトを神が己の死と同時に意図的に解除するようにしていたとしか思えないのだ。

 

 己がいなくなった後の事を考えて。

 

 それはつまり、己の後継者が生まれる事を期待してと。

 

 つまり今目の前にいるアギトは・・・。

 

 その強さ。既に上級堕天使などのレベルじゃない。

 

 今の俺は魔王クラスの実力はある。

 

 だが、その俺が圧倒されているという事は、既にそれと同じかそれを超えるレベルの力をあいつは発揮しているということになる。

 

 風の如き速さで駆け、そして炎の如き怒涛の攻撃を仕掛けてくる。

 

 両手には炎を纏う片刃の剣と風が吹き荒れる双刃のハルバード。

 

 それでまさに炎の嵐の如く攻撃してくるのだ。

 

「がっ・・・・。」

 

 そして攻撃しても、水のように受け流される。

 

 水を操り、それが膜となって光の槍が阻まれる。

 

 いや、操っているのは水だけじゃない。

 

 荒れ狂う風。

 

 燃え盛る炎。

 

 それすらも操り、俺の光の槍を相殺し、攻撃してくるのだ。

 

 今まで見せた四つのフォーム。

 

 それぞれの短所を全部無くし、現時点での最強の形態となったアギト。

 

 本格的な覚醒してから、まだ三カ月も経っていないのに、既にここまでの力を身につけている。

 

 そんな短期間での進化に、脅威という言葉すら通り越し、ただ恐怖だった。

 

 その上・・・。

 

<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!>

 

 戦う度にあいつの力が倍化していく。

 

 それも天井知らずに・・・。

 

 一方的に殴り飛ばされ、距離を離しても全く手も足もでない。

 

「なんだというのだ!!?一体お前はなんだというのだ!!」

 

「お前が言ったはずだぞ?俺の名前は兵藤一誠!!グレモリ―眷属の兵士(ポーン)にしてドラゴン達を相棒とする赤龍帝で・・・アギトだ!!」

 

 俺は空中に逃げる。

 

 あのアギトの唯一の弱点に気付いたからだ。

 

「なら空から一方的に攻撃させてもらう。」

 

 あいつは飛べない。まだ、それが可能になる様な進化はしていない。飛ぶにはドラグレッダ―の頭に乗るしかないが、それを阻むことなど容易だ。

 

 これで戦況を変える。そして・・・強力な一撃で一気に殲滅してやる。

 

―――スペシャル!

 

 俺の目の前で巨大な光を集束させていった。

 

 

SIDE イッセ―

 

 あいつは空中に逃げた。

 

 流石に困ったぞ。俺は・・・飛ぶことができない。

 

「ふははははははは!!」

 

 せっかく追い詰めたのに・・・。

 

 あいつは今大技を放とうとしている。空中で大きな光を集束させているのがその証拠だ。

 

――――御主人様、私を使って!!

 

 その時トルネがやってくる。

 

 ・・・こんな時にお前がやってきても。

 

 そしてトルネが変形しながら俺を乗せたのだ。

 

 平たい板の様なボードの姿に。

 

 それは空中に浮かぶボード。

 

 俺はその上に乗って空中に飛び上がる。

 

 空中ではコカビエルが固まっていた。

 

「それは本当にバイクなのか!?そんなのありか!!」

 

「俺の相棒だ!!文句あるか!!」

 

 まあ、出会った時点でバイクのカテゴリ―から逸脱していたんだ。

 

 この程度、ありえないことではないぜ。

 

 全然予想何かしていなかったから、驚いたけどな!!

 

 空中を走る俺。

 

 そして、そのまま大技を放つ前にあいつに迫る。

 

「くっ・・・くるなぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 集束された光が俺に向かって放たれる。

 

―――――――――Starkc Vent!!×2

 

 右手と右足の召喚機にそれぞれカードを装填。

 

 右に赤、左に黒のドラグクロ―を装備!!

 

<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!

 

――――Transfer!!

 

 両手持ちでの必殺技を受けてみやがれ!!

 

『Dorgon fire break!!』

 

 俺が両手の拳を光の塊に向けて突き出す。

 

 解放される赤と黒の炎。その爆発が光を飲み込み、完全に相殺した。

 

「ぐっ・・・相殺され!?」

 

 その隙に俺はトルネに乗ったまま突進。

 

 そのまま跳ね飛ばす。

 

「がああああぁぁぁぁぁ!?」

 

 地面に落下するコカビエル。

 

「ぐっ・・・だったらこれで・・・。」

 

―――スペシャル、フォールダウンワールド。

 

 コカビエルの背中の羽が紫の光を帯びる。それと共に右手に力が集まって・・・。

 

「これが俺の最大の必殺技。総てを堕天させ、滅する一撃。アギトであってもこれを喰らったら・・・。」

 

 そうか。

 

 それが今のお前の最大の一撃か。

 

―――――だったら、こっちも最高の一撃で応えないといけないよな?相棒。

 

「そうだな。」

 

 俺の手に二枚のカードが現れる。

 

 それは二枚のファイナルベントのカ―ド。

 

―――まさか、この姿でファイナルベントが使えるというの?

 

―――おまけに二枚同時。

 

「受けてみろ、今の俺の最大の必殺技だ。トルネ、お前の力も借りる。」

 

――――あいよ!!

 

 俺はトルネに乗って空高く飛ぶ。

 

 加速をつける為に。

 

 そして、二枚のカードを装填。

 

―――――――FINAL VENT!!

 

<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST・・・。>

 

 それと共に倍化が始まり、俺の頭の角が展開。

 

 俺の足元にアギトの紋章が現れる。

 

 その大きさ、学校のグランドと同じ大きさ。

 

 その光景に下で戦っていた連中が皆、ギョッっと俺の方を見る。

 

 そして、後ろにドライグ、クレア、ドラグブラッカ―の三体の龍が並ぶ。

 

 その光景を見たコカビエルが慌てふためく。

 

「まっ・・・待て!!いくらなんでもそれはやり過ぎだろ!!ファイナルベント二枚だけでもオ―バキルなのに・・・。」

 

<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST>

 

「言ったはずだ。お前は俺達龍の怒りに触れたって。」

 

<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST>

 

「その意味を、今の俺の最大威力を持って思い知れ!!」

 

――――――――――Explosion!!

 

 倍化の力解放と共に、足にアギトの紋章の力が集束。

 

 そして、トルネが落下するよりも遥かに速い速度で突進。

 

 その加速に、三体の口から放たれるブレスを浴びた加速と力が加わり・・・。

 

「ぬぐああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 俺はまさに隕石の如く、超高速でコカビエルに突っ込んでいった。

 

「イッセ―!!俺達の事を考えろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 あっ・・・そう言えば、下で戦っている連中の事を忘れていた。

 

 そのことを思い出した時にはもう手遅れだった。

 

 

 

 




 イマジン達の体のっとりはどうでしたか?

 それと、イッセーのやりすぎた必殺技。

 これはもうライダーキックの領域を超えています。


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守りし思いと、赤と白の語らい。

いよいよ物語も終わりです。

 次話のエピローグで三章はついに完結です。

 いや・・・長かった。


SIDE リアス

 

 みんなとっさに防御したおかげで助かったわ。

 

 まるで隕石の落下のごとき轟音。

 

―――ディフェンド。

 

「・・・外部への被害は何とか抑えたぞ。でも・・・。」

 

 一撃でグランドがすべて吹っ飛び、巨大なクレーターになっていた。

 

 校舎も完全に吹っ飛んでいる。その余波で彼が召喚した軍勢も殆どが全滅。

 

「・・・馬鹿げたというレベルを超越していますね。」

 

 ソーナも変身を解除しながら呆れかえっている。

 

『・・・・・・・・。』

 

 匙と仁藤は空いた口がふさがらず。

 

「えっと・・・すいません。」

 

『やり過ぎだ馬鹿!!』

 

 とんでもないことをやってくれたイッセ―を皆でドつく。

 

「・・・・・・・。」

 

 一方のコカビエルは奇跡的に生きている。どうも彼が言うに、必殺技をまともには命中させていないらしいのだ。

 

 律義にハルトの言うとおり殺すことはしなかったらしい。

 

 もっとも、その余波だけで完全に戦闘不能ね。

 

 まともに命中していたら存在すら消滅していたでしょう。

 

「とにかく、こいつは預らせてもらうよ。はあ・・・あと始末どうしたものだか。」

 

 ハルトがコカビエルをイッセ―から受け取りつつ、跡形も残っていない校舎を見てため息をつく。

 

「ふふふ・・・ふははは・・・・負けた。この私が負けたか。」

 

 コカビエルが意識を取り戻したうえで告げる。

 

「だが・・・このままで終わらぬ・・・ふははははははははは!!」

 

 その笑い声と共にグランドの上にそれは現れる。

 

「ザボエラ!!使わせてもらうぞ!!黒の核晶(コア)を!!」

 

 それは透明の水晶に覆われた禍々しい黒い球体だった。大きさは軽く見て、直系四十センチはあるだろうか。

 

 それを見たイッセ―の顔色が変わる。

 

「お前・・・なんてものを!!」

 

 なんなのあれ・・・。

 

「大陸すらふっ飛ばす禁断の兵器。まさかここで使うつもりなのか!!」

 

 黒の核晶が胎動する。

 

「止めないと・・・街どころか日本列島その物が消滅する。」

 

 そんな危険な物なの!?

 

「ぐっ・・・速く氷結を!」

 

―――――氷結呪文(マヒャド)!!

 

 ポルムが凍らせようとしてするが・・・それが周りに展開された結界に阻まれる。

 

「ぐっ・・・弱点が改良されているなんて・・・。」

 

 だったら私の滅びの力で・・・。

 

「ふははははは・・・・・・吹っ飛べ!!」

 

 だが、一歩遅かった。

 

 黒のコアが光輝く。

 

 そして、その光が私達を含めた総てを飲み込んでいった。

 

 

 

 SIDE ???

 

 私はその光景をスローモーションでみていた。

 

 やっとみんなが笑いあって勝てたと思った。

 

 みんな守れたと思った。

 

 でも・・・それをあれは理不尽にぶち壊そうとしてくる。

 

 みんな・・・ようやく手を取り合って笑えるようになったというのに。

 

 私は皆を見る。

 

 皆・・・私の大切な家族。

 

 そして・・・ネロ。

 

 私の愛しい人。

 

 もう・・・これ以上私の大切な人が消えるなんて耐えらない。

 

 お願い・・・皆を守る力を・・・助ける力をください。

 

 神様がいなくても・・・私は祈られずにはいられない。

 

 助けたい・・・みんなを・・・守りたい。

 

―――――その言葉を待っていました。

 

 その言葉と共に、私の頭の中に声が聞こえてくる。

 

―――今こそ、あなたの中に秘められし力・・・解き放ちなさい。

 

 それは、私そっくりの女性の姿だった。

 

 

 

 SIDE ???

 

 私は遥か上空にて厖大な光が発動される瞬間を見ていた。

 

 総てをふっ飛ばす黒の核晶の光。あれに巻き込まれたら神ですら助からない。

 

「牙王・・・お疲れだったな。」

 

「俺の船に勝手に乗り込んでおいて良い身分だな。井坂。ザボエラ。」

 

「キヒヒヒヒ・・・でも、これで邪魔なアギトは終わりますよ。」

 

 私の後ろではザボエラもじっくりと状況を見ている。

 

 それに北崎までいる。

 

 私がいるのは時を渡る船。いや、一度壊れたその船を我々の技術でガオウライナーと融合させる形で完成させた船。

 

 その名も時を喰らう船。

 

「お疲れ様です。」

 

 皆はボロボロだ。流石にあの連中を舐めていたようですね。

 

「せっかく見つけた五人目も終わってしまう形になったな。」

 

「さすがにそれは残念です。でも・・・邪魔なアギトを消すことができただけ儲けものだと思っていますよ。」

 

 あそこまでの力を身に付けたアギト。

 

 前世の因縁である連中と共に葬ることができたのは僥倖。

 

 そう思っていました。

 

 だが・・・光が止むとともに予想外の光景が広がっていた。

 

「どうなっているのです!?なんで消滅していない!?」

 

 それは全く無傷の日本列島の姿。

 

 日本列島だけじゃない。拡大して見ると・・・。

 

「さすがだ。まだまだ喰らい甲斐がある連中みたいだな。」

 

 牙王が笑う。

 

 それは・・・無傷で立っている皆の姿であった。

 

 そして、彼らを守った存在がそこにいた。

 

 

SIDE ネロ

 

 俺は今、信じられない光景を見ている。

 

「キリエ?」

 

 黒の核晶の破壊力は一度見ている。それに巻き込まれているのに無事だったのだ。

 

 その理由は・・・キリエだった。

 

 白銀の鎧を纏い、黒の核晶に向けて盾を向けていたキリエ。

 

 頭の上には天使の輪っか。

 

 背中には・・・。

 

「十二枚の・・・翼?」

 

 白い十二枚の翼が生えていたのだ。

 

「そんな・・・馬鹿な。熾天使クラスでもないかぎり、十二枚の翼など・・・。」

 

 十枚の翼を持つコカビエルが狼狽していることからしても、尋常ではない事態が起こっているのは間違いないようだ。

 

「・・・あれ?私・・・。」

 

 しかもその姿は・・・おそらくキリエの神器の禁手化によるものだった。

 

「まじかよ。あれを防ぎきったのか?」

 

 ダンテですら唖然茫然していることからしても・・・。

 

「・・・はあ・・・。」

 

 そして、キリエはそのまま落下。

 

 それを俺は受け止める。

 

「なんか・・・疲れました。でも・・・みんな、守れたよ。」

 

「ああ・・・。じっくりと休んでおけ。」

 

 何が起こったのかわからねえ。でも、これだけは確かだった。

 

「ありがとうな。キリエ。」

 

「・・・うん。」

 

 キリエのおかげで助かったということに。

 

 

 

SIDE イッセ―

 

「こんなことが連続で起きていいのか?」

 

 もう叫ぶ気力すら失ったコカビエル。精神的に打ちのめされている。

 

 倒れたキリエさんは意識こそある物のすごく疲弊している。

 

「ぐっ・・・お前らを完全に見誤ったという事か。」

 

「無様だな・・・コカビエル。」

 

 そこにそれは現れる。

 

 白い鎧を纏ったそれが・・・。

 

「ヴァ―リか。」

 

――――――んん、この気配は!!

 

 その姿に俺の中のドライクが叫ぶ。

 

「そして、初めましてというべきかな?宿敵にたりえる赤龍帝。いや・・・神殺しの龍。」

 

「久しぶりだな、白いの。」

 

 デフォルメモードになったドライクがヴァ―リに声をかける。

 

「やはりお前か、赤いの。」

 

 そしてヴァ―リの方からも白いデフォルメ化したドラゴンが現れる。

 

『・・・・・・。』

 

 そして、互いに無言。お互いのデフォルメ化した姿を見て固まってしまったのだろう。

 

 あれ?ということは・・・。

 

「そうか。お前にもいるのだな。」

 

「そういうお前の方にもか・・・。」

 

「アルファの予言が当たるなんてね。そこにいるんでしょ?ベノ。」

 

「ふふふふふ、アルファに会ったんだ。でも、私が白龍皇なら、あなたが赤龍帝だなんて本当に面白い縁ね。」

 

 ミニチュアサイズのクレアに応じて現れたのは、紫色のコブラみたいな蛇だった。

 

 向うもクレアと同じミラーワールドの住人がいる。

 

 だから白龍皇・・・アルビオンがドライクと同じデフォルメ化しているのか。

 

「そうか。ますます面白い。ここまで互いに互角の力をもっているなんてね。」

 

 白龍皇・・・ヴァ―リが禁手化を解く。

 

 そしてその鎧の下から現れたのは・・・。

 

「白い・・・アギト?」

 

 それは頭の角がまるで三日月のようになっている白いアギトの姿。

 

「あなた・・・。」

 

 クレアの驚きに、ベノは笑う。

 

「しかもお互いにアギトを主にしているなんて、分からないわ。」

 

「・・・お前。アギトって・・・。」

 

 それを見たハルトが驚いている。

 

「すまない。これはとっておきでな。力に目覚めたのもつい最近なんだ。まあ、君達の幼馴染が僕と同じアギトって知ったから、僕もあえて明かした。」

 

「お前がオルフェノクの因子を持っているのは知っていたけど・・・アギトの因子も持っているって・・・。」

 

 巧ですら知らなかった事か。その前に、あいつがオルフェノクの因子を持っているだと!?

 

 ネロを見てみると、頷いている。

 

「ミラージュアギトというらしい。古い文献にでてきた。」

 

 俺は緊張を隠せない。

 

 何しろ目の前には白龍皇がいる。

 

 ドライクの話から察するに、歴代の所有者達は互いに血で血を洗うような関係にあったらしい。

 

 それがアギトとして現れるなんて・・・。

 

 だが・・・。

 

「だがよかった。巧、お前が生きていて。」

 

「お前らしくもねえ。まあ・・・何とか生きている。」

 

 ヴァ―リは巧の心配をする。敵意そのものはまったくないだと?

 

 こっちもそんな気はないが・・・。

 

「本当だ。これで安心してあの話を進めることができる。」

 

「ああ。後でお前のアギトとしての力も確認させてくれ。まったく・・・こんな短期間にアギトが四人も・・・。」

 

 ハルトとヴァ―リが仲良さげだし?

 

「・・・他にもいるのか、ってそっちがギルスか。珍しい。」

 

「分かるのか?ほう・・・。」

 

 ヴァ―リはまずネロに気付く。

 

「そして・・・君か。」

 

 そのあとにアーシアにだ。

 

「こっちとは違う方向に進化している。戦うべき相手ではないのは分かるが興味はある。」

 

 今すごい状況になっていないか?

 

 アギトが四人もいるって・・・。

 

 ヴァ―リが俺の方を見る。

 

「挨拶がわりに手合せ願いないかな?赤龍帝。」

 

 そして、挨拶がわりに戦闘を挑まれた!?

 

 巧が呆れかえっている。

 

「・・・お前な。」

 

「なんか予感がするんだ。ずっと求めていた生涯競い合うライバルを見つけたと。親父殿が言っていた自分の人生を変えるような相手、それが見つかった気がする。」

 

 いきなり生涯のライバル宣言されたよ!?

 

「お前の直感は外れた事がなかったな。それもアギト故か?」

 

「多分そうだよ。そして、この力に僕はすごく感謝している。運命の出会いが分かるから。」

 

 本当に仲良いな。お前ら。

 

 だが、運命の出会いって言うのは勘弁してくれ!!

 

 女にもてても、男にもてて嬉しくも何ともねえ!!

 

「はあ・・・お前のバトルジャンキーが始まったか。」

 

「頼むから今は自嘲してくれ・・・・いいかな?」

 

 だが、それを止めてくれたのはハルトだった。

 

 彼は笑っている。でも・・・、その笑顔が怖い。

 

「はあ・・・分かったよ。君だけは色々な意味で敵わない。こっちが戦いたくない数少ない相手だよ。」

 

 大人しく引いてくれる。バトルジャンキーでアギトなあいつが戦いたくないと言わしめるほどの実力って・・・。

 

「戦うならお互いに万全の状態がいいだろう。イッセ―は過去に行ったり、色々な再会と激闘で疲れている。求めに応じて場所と時間はこっちがセッティングするから・・・。」

 

「話分かってくれる。流石ハルト。三日間捜索しっぱなしで流石に疲れている。」

 

 っておおおい!!?

 

「正直、興味があってね。二天龍が揃うのは初めて見たから。まあ、最悪殺し合いになったらこっちが止めてやるから安心しろ。」

 

『・・・・・・・。』

 

 二体のアギトの激突を止める自信があるというのか?ハルトよ。

 

「全く相変わらずだな。お前がアギトという事に驚いたが。」

 

 鋼兄もヴァ―リと知り合いなのか?

 

「さらに強くなったか。軽く見積もっても、主神クラスの力になっている。まだまだこっちも頑張らないとな。あなたはこっちが勝ちたい目標のひとつだ。」

 

「やれやれ・・・まだまだこっちも精進しないと。」

 

 こっちも仲が良いのかい。

 

「それと、イッセ―をライバル認定か。その眼力は流石だが気をつけろよ?こいつは何をしでかすのかこっちも分からない上に、驚異的な爆発力を秘めている。敵として戦うには一番嫌な相手だぞ?」

 

「上等。むしろ楽しみだよ。」

 

 ああもう、訳が分からない。

 

「面白いことになっているな。ヴァ―リにも生涯のライバルが見つかったというのも。」

 

 そこにもう一人現れる。

 

「親父殿。」

 

 ヴァ―リは彼を親父と呼ぶ。

 

「あなたまで来ていたのか。ハドラ―。」

 

 ハルトが彼、ハドラ―に無条件の敬意を払っている。

 

「あんたまで来るなんて、相当心配させたな。」

 

 巧も同じく彼に敬意を払っている。その巧の背中をその男は勢いよく叩く。

 

「ふははははは!!分かっているならいい。だが、よく生きてくれたものだ。個人的にもお前の事は気に入っているのでな!!生きる意思の強さがわかるものだ。」

 

 マントを羽織った彼の肌の色は人のそれではない。

 

「まさか・・・あんたは魔族なのか?それにハドラ―って、アバン先生が言っていた・・・。」

 

 その姿を見たポルムが顔を引きつらせている。

 

「ほう・・・その言葉久しぶりに聞いたぞ。しかもアバンといったな。知り合いか?」

 

 ポルムの言葉に彼は興味を示す。

 

「これが答えだ。」

 

 彼は首からあるネックレスを取り出す。

 

「そうか、この世界にアバンの使徒がやってきているとはな。」

 

「やっぱりか。かつての魔軍司令殿。」

 

「お前は何者だ?」

 

「詳しい話はあとがいいかな?俺は三代目の大魔道士とだけ・・・。」

 

「!?そうか、お前はあいつの・・・。」

 

 ハドラ―と呼ばれる男がポルムを見てなにかに気付いた様子。

 

「そうか。世界は広いようで、案外狭いのもかもしれんな。」

 

「そのようだ。」

 

 ハドラ―とポルムはしみじみとしていた。

 

 あの二人の間に一体何があったの?

 

「赤いの・・・お前に言っておかないといけない。」

 

「なんだ白いの。」

 

 一方、ドライクとアルビオンの対談は進む。

 

「・・・私はもうすぐ父親になる。」

 

「・・・・・・・・・・。」

 

 その対談の内容が予想の斜め上を行く物だった。

 

「・・・今何と言った!?」

 

「あら・・・。」

 

 クレアまで驚いている。

 

「ふふふふ、待望の子供よ。今は卵だけど。」

 

 お前ら、卵生なのか?いや、ドラゴンだから可笑しくないけどさ。

 

 ベノは二つの卵を大事そうに持っている。

 

「今回は負けね。悔しいけど、おめでとうと言わせて貰うわ。」

 

「あなたもがんばりなさいな。」

 

 クレアとベノって本当にライバルなんだね。

 

 ドライクは完全に狼狽しとる。

 

 一方のアルビオンは悟りきった様子だぞ?

 

「しっ、白いの!?」

 

「なあ・・・赤いの。昔がすごく懐かしいと思わないか?二人で喧嘩して、それで神器に封印され、そしてまた肉体を得たら今度は父親だ。」

 

「・・・・・・。」

 

 ドライクさん?完全に固まっていませんか?

 

「安心しろ。お前もすぐに分かるようになる。」

 

「ふふふふ・・・そうね。あなたに言っていなかった事があるけど・・・。」

 

「なっ・・・なんだ?」

 

「出来ちゃったみたい。一発で出来ちゃった。」

 

「・・・・・・・・。」

 

「あら?そっちもなの?」

 

 あれ?ドライクさんが真っ白になったぞ?

 

 そう言えば時の列車に乗っている時こいつら、よろしくやっていたもんな。

 

「赤いの。気持ちは察するぞ。もう我ら、敵意とかそんな場合じゃなくなった。いつまでもあの時のままではいられないようだな。ああ・・・大喧嘩していたあの頃が懐かしい。」

 

「・・・・・・・。」

 

 だめだ。相棒は完全にフリーズしとる。

 

「・・・・・・。」

 

 俺がヴァ―リに視線をやると。

 

 彼は肩をすくめるだけ。そうか、そっちはノータッチなのね。

 

「なんなのかしらね。今世の二天龍って・・・。互いに子持ちって聞いたことが無いわ。」

 

 部長。それって確実にクレア達がこの世界にやってきたせいですって!!

 

 間違いなくドライク達二天龍はこの世界で最も強い生き物に該当するし。

 

「姉さん。迎えに来ましたで。」

 

「ふう・・・。見つけるのに時間かかった。」

 

 そこにデフォルメ化された鋼の装甲に身を包んだ二足歩行のサイみたいな奴と。赤いエイの様な奴があらわれる。

 

「あなたの弟分も来ていたのね。久しぶり、メタルゲラス。エビルダイバー。」

 

『久しぶりです。』

 

 そっちも複数契約しているというのか?

 

「後こっちも妹を見つけたわ。」

 

「そう言う事。」

 

 クレアの隣にドラグブラッカーまで・・・。

 

「ほう。無双龍を二体も契約なんて・・・面白いね。」

 

「成り行きだ、そっちの方がすごいだろうが。三体も契約しているなんて。」

 

 あいつ、三体も契約してんのかい。

 

「では帰ろうか。ポルムとやら、またお前の元に来るぞ。お前には聞きたい事がある。」

 

 ハドラ―と呼ばれた男はコカビエルを回収しにかかる。

 

「アザゼルも本気で怒っているから覚悟した方が良い。流石に息子を巻き込んだのはまずかったぞ。まあ・・・その前にもっと怒らせては不味い奴を怒らせているがな。」

 

「ぐっ・・・くそぉぉぉぉぉ。」

 

「お仕置きの時間、楽しみにしておけよ。今はそれよりも大事なことがあるから。後でじっくりとやってあげる。」

 

「ひいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃ!?」

 

 ハルトは大変良い笑顔でコカビエルに処刑宣言。

 

「まあ、それくらいの懲らしめは必要だということだ。同情はせん!!」

 

 悲鳴をあげるコカビエルをハドラ―がボディブローで黙らせてからその場から転送する。

 

「はははは・・・本当にどうなるかと思ったぜ。」

 

 そして、巧が変身を解きながら、倒れた!?

 

『巧!?』

 

「わりぃ・・・もう限界みたいだわ。」

 

 体から出てくる灰の量が尋常じゃなくなっている?

 

 そんな・・・・。

 

 アーシアがとっさにに駆け寄り回復をかけてくれるがそれでも効果ない。

 

 ドラグブラッカ―を見ても、首を横に振るだけだ。

 

「親父に伝えてくれ・・・親不幸な奴ですまねえと。」

 

「・・・・・・。」

 

 ヴァ―リはそれに無言。

 

「イッセ―・・・。」

 

「嘘だろ・・・おい!!」

 

 灰を止めようと触るが・・・。

 

 触った右腕が崩れ落ちた。

 

「ははは・・・だが、もう本当の意味で悔いはない。この街を守れた。お前にサヨナラってきちんと言える。」

 

「サヨナラって・・・そんな馬鹿なこというな!!」

 

「まあ・・・本当は死にたくはない。だが・・・出来る限りのことはできた。一番の悔いはもうなくなったんだし。」

 

 その笑みは安らかだった。

 

「みんな・・・イッセ―の事を頼むわ。こいつ、スケベだけど熱血で、すげえいい奴なんだ。それでいて繊細な部分があるから、皆で支えてやってくれ。」

 

『・・・・・。』

 

 あいつは残った左手で天にかざす。

 

「イッセ―、・・・悲しんでも悔やまないでくれ。それが俺の願いだ。お前と出会って、俺は生きる意味を知れた。短くても悔いはねえ。」

 

「・・・・・・俺は悔いだらけだぞ!!それにまだお前とは。」

 

 涙が止まらない。いや、止められない。

 

「なあ・・・一つだけ悔いがあるわ。」

 

 巧の身体が灰となって消え前に彼は一つだけの悔いを言う。

 

「俺・・・まだ夢を見つけていなかったわ。将来、何をしたいのか、みんなが持っているような夢。お前がハーレム王に、そして神の後釜になるといったように、俺もそんな夢を持ちたかったぜ・・・。」

 

 巧は少し涙をにじませて言う。

 

「今度生まれ変わったら・・・その夢を見つけて、全力で突き進みたい・・・。」

 

 そして、彼は灰になって消えた。

 

「・・・・・・。」

 

 俺は動けない。

 

「・・・馬鹿野郎。」

 

 勝手に再会し、勝手にいなくなった幼馴染。

 

「そんな悔いを残すなよ。夢を見つけたいというのなら・・・もっとあがけよ。それが生きるって意味だろうが。」

 

 涙が・・・嗚咽がとまらない。

 

「この馬鹿野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 俺の怒号が、辺りに轟いた。

 

 

 

 




 最後の最後でもやらかしてくれるコカビエル。

 そして・・・赤と白の衝撃の出会い。

 この二体のドラゴンの明日はどこなのでしょうか?


 次話がエピローグ。最後の投稿になります。


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エピローグ 夢を探そう。

 いよいよこの長かった話も一区切りがつきます。

 エクスカリバー編の最終話。

 どうぞ!!


 SIDE 木場。

 

 あの事件の後、ハルト君が率いるグレゴリの尽力もあって学校は三日で何とか修復された。

 

 ハルト君は罰ゲーム代わりと、コカビエルの協力した連中の魔力を匙君の黒い龍脈で吸い出して、それを存分に使って修繕していた。

 

 いや・・・もう取りつくしてやるといわんばかりにやってくれましたよ。

 

 彼らが「もう・・許してくれぇぇぇぇ。」といった時にはなるほど、罰だなと納得したよ。

 

 朱乃さんと一緒に、その悲鳴を聞きながら大変いい笑顔で修繕作業していたのはもう突っ込まないよ。

 

 再会した同志達とも学校が休みの間に交流を暖めていた。

 

 みんな、サイガ君と同じ道を歩んでいたことには驚いたよ。

 

 そして妹・・・ユウナが魔王眷属になった経緯もだ。

 

 この学校にはそんなスパーダ眷属が三人いる。

 

 魔王眷属が三人もいるという事が可笑しい事だとは思うよ。

 

 僕がぼんやりと学校の屋上で寝そべっていた時にその一人が現れる。

 

「兄さん、どうしたの?」

 

 一人は我が妹ユウナだ。僧侶の駒を持つ。

 

 顔は僕そっくりで、手足はすらりと伸びている。

 

 スタイルもかなりよく、自慢の美少女になっていた。

 

「いや・・・振り返っているだけだよ。こっちの因縁に一つの区切りがついたから。」

 

 聖剣計画に一つの区切りはついた。

 

 バルパーへの裁きは元老院と教会が相談して決めるらしい。死刑で済ますにはあまりに罪が重すぎる故にだ。

 

 まあ、本人はキンタロスに憑依されて大暴れした反動で腰を痛めたのを初め、全身打撲と重度の筋肉痛で地獄を見ているらしい。

 

 初老の男性に彼の戦い方は相当無茶があったよ。

 

 正直・・・いい気味だとは思った。地味に相手を苦しめている当たりは。

 

 だが、まだ計画に関与した者もいるし、おそらくその計画を引き継いだ者もいる。

 

―――――あなたは真面目ねえ。

 

 僕の傍では小さなデフォルメコウモリと化したダークウイングこと・・・クウがいる。

 

「性分だよ。」

 

「でも、私もそう思うわよ。」

 

 妹の無事も確かめられ、本当に良かった。

 

「おっ、そこにいたのかよ。」

 

 そして、そこに2人目のスパーダ眷属が現れる。

 

 その名はネロである。

 

 何と彼を悪魔に転生させたのはダンテ様だったのだ。

 

 己が持っている兵士の駒を使ったうえでの転生らしい。

 

「おっ・・・私の同僚が来たわ。」

 

「あんたが俺の同僚って、複雑な気分だぜ。」

 

 スパーダ眷属の兵士。

 

 彼は飛んでもすぎる経歴を持っていたのだ。

 

 ついでに言うと・・・。

 

「それとなんであいつが俺の伯父なんだよ!!」

 

 ダンテ様と文字通り血の繋がりがある事も判明。

 

 ネロはダンテ様の兄の息子らしい。

 

 その事実ははっきり言って驚く。

 

 ネロ君・・・君はギルス以外にも色々とすごいね。

 

「今日はカラオケの日なんだからな。あいつのおごりで。」

 

「そうだったね、彼の奢りで。いや・・・ついに同僚が増えたし。」

 

 今日は皆でカラオケに行くことになっていた。

 

 ある方の奢りで。

 

「言っておくが、イッセ―の頼みだからそうなっただけだ。」

 

 ぶっきらぼうな口調の彼がやってくる。

 

 彼がスパーダ眷属の三人目。

 

 つい最近に眷属になった巧君である。

 

「いやいや・・・本当にいい兵士をゲットしましたわ。」

 

 彼はネロ君と同じ兵士。スパーダ眷属二大兵士の誕生だ。

 

「はあ・・・まあみんなによろしくという意味合いも兼ねてだ。お前も行くよな?」

 

「当然。」

 

 彼とは他にも同じオルフェノク。五大ギアの所有者という共通点がある。

 

「ほら行くぞ。ったく・・・すごい大所帯なんだからな。きちんと待ち合わせをしないとだな。」

 

「お前も苦労してんだな。」

 

「はあ・・・お前と同僚とはな。まあ・・・よろしく頼む。」

 

「おう。」

 

 ぶっきらぼうだけど本当にいい人だね。巧君って。

 

「ふふふふ・・・さて、イッセーとも遊ばなきゃ。」

 

 我が妹がイッセ―の名を口にする。

 

 正直複雑な心境であるよ。

 

 何しろ・・・我が妹はやらかしてくれたからだ。

 

 

 

 

 

 それは巧君が灰となって消えた瞬間から始まる。

 

 炎と共に灰となって消えたはずの巧君。

 

「やっぱ、死なすのは惜しいな。」

 

 そこにダーツのように投げられた三つの兵士の駒が入っていき、巧君は助かった。

 

「あっ・・・あれ?」

 

 唖然とする巧君。

 

「・・・はあ・・・もうダンテ様。すでに彼はあなたの眷属入り確定しているのに、意地悪しないでくださいよ!!」

 

 渡君がそこで、水面下で進められていたことを明かしてくれる。

 

 巧の命を救うための動きをすべてだ。

 

「ははは・・・なんだそりゃ。俺の決意って一体・・・。」

 

 巧君はそれを聞いて口元をひきつらせるし。

 

「ああもう!!もう一度いうぞ!!この馬鹿野郎があぁぁぁぁぁ!!」

 

 イッセ―君は巧を抱きしめ、号泣中だし。

 

「ちなみに総督から許可は得ている。むしろもろ手を挙げて賛成してくれたから外交上問題はない。ハルト君のおかげだよ。」

 

「いや・・・でもよかった。間にあって。」

 

 みんなが巧君を助けるために一生懸命だったのだ。己ができることを最大限やり、それで協力出来たからこそ、巧君の命は救われたのだ。

 

「まあ、これでお前は俺の家族だ。よろしく頼むぜ?狼君。」

 

「・・・あっ・・・ああ。」

 

「はあ・・・もう。色々な意味で疲れた!!」

 

 イッセ―君はもう疲労困憊の様子で倒れ込む。

 

 精神的に相当な負担があったみたいだし。

 

「ふふふ・・・それとダンテ様。私のもう一つの目的もいいでしょうか?」

 

 そこにユウナがやってくる。

 

「そうだったな。おいイッセ―。」

 

「なんですか?ダンテ様。」

 

「昔の約束、守ってやれよな。」

 

「昔の?」

 

「ふふふ・・・私のこの姿に見覚えないかしら?」

 

 そう言ってユウナはクレインオルフェノクの姿を見せる。

 

『・・・・・・・・。』

 

 それを見たイッセ―君とネロ君は唖然茫然としていますよ?

 

 良太郎君とゼノヴィアもそうだ。

 

 良太郎君は、そのあと苦笑いを浮かべていますけど。

 

 まるで納得し、この後の展開を見切ったような・・・。

 

「おっ・・・お前あの時の・・・。」

 

「まさか、お前があいつの妹だったのか?」

 

「そうだよ。イッセ―お兄ちゃん。」

 

 ・・・・・今何って言った?

 

 兄である僕を差し置いて・・・お兄ちゃんって・・・。

 

「イッセ―君?これはどういう事かな?」

 

 僕は優しくイッセ―君に質問をする。

 

 優しすぎて、肩に置いている僕の手に凄まじく力が入っているよ。

 

 小刻みに震え、指がイッセ―君の肩に思い切りめり込む位にね!

 

「いっ、いやな。」

 

「・・・俺は知らん。もうどうなるか予知能力なんてなくても分かるからな。」

 

 ネロ君も事情は知っているけど、匙を投げている?

 

 そう言った瞬間・・・。

 

「約束通り、お嫁にもらってください。」

 

 と言ってきて、キスだと!?

 

『なっ・・なななん!?』

 

「・・・・・・。」

 

 皆が固まる。もちろんイッセ―君もだ

 

 妹がやらかしたあまりにも大胆すぎることに。

 

「ふふふふ・・・。リアスさん、アーシア。これは宣戦布告でもありますからね。私は魔王眷属になった時からずっと、このために女を磨いてきたので。」

 

「これは、強敵だわ。」

 

「私、負けません!!」

 

 二人が騒いでいるようだけど、僕はそれどころじゃない。

 

「イッセ―君!!一体過去で君は何をやらかしたの!?妹が・・・僕の妹があんなことになるなんて!!」

 

 イッセ―君を思いっきり問い詰めることにする。

 

「あばうぐぶつばうぐららら!?」

 

「まて!!木場落ちつけ!!首を!!お前首を絞めているぞ!!」

 

 阿鼻驚嘆の終わり。

 

「・・・・・・・・ガク。」

 

 イッセ―君は疲労困憊と酸欠で気を失ったという。

 

 コカビエルを倒したアギトを僕が倒すという変な偉業を成し遂げてしまった。

 

 

 

 後でダンテ様から彼がユウナの命、そして心を救ってくれたことを知って土下座をして謝ったよ。

 

 いや・・・でもですね。それでユウナはイッセ―君に首ったけって・・・。

 

 彼はなんて罪深い。罪が深すぎる。

 

 まあ、エッチだけど、お人好しで、誰よりも熱血な彼ならある意味安心・・・できない!!

 

 エッチ過ぎるのが問題すぎる。

 

「はあ・・・。」

 

「その・・・何と言えばいいのか。」

 

 巧と一緒に来ていたイッセ―君が話しかけてくれる。

 

「いや、そう思ってくれるだけマシだと思う事にする。それに、君は僕にとっても恩人だし。」

 

 イッセ―君は僕にとっても恩人だ。彼がいたからこそ、僕は乗り越えることができた。

 

 聖剣を超える事が出来たのだ。

 

 妹の心も救ってくれた大恩人だけど・・・はあ。

 

「これからじっくりと見極めることにする。」

 

「それで頼むわ。こっちも責任は取るつもりだし。」

 

 そう言うところは律義だし。なんとかなるの・・・かな?

 

「それより・・・遊び倒そうぜ。新しい眷属の歓迎会も兼ねてさ。」

 

 我がグレモリ―眷属も新しく二人加わったのだ。

 

「そうそう。この世界は本当に色々ある。楽しみだよ!!」

 

 ポルムもやってくる。

 

 彼はこの世界でやることがあるらしいが、そのためにこの学校に転入していた。

 

 彼曰く・・・探している人がいると。

 

 彼の探し人は一体誰なのか?

 

 それはまだ彼の口から語られていない。

 

 

 SIDE イッセ―

 

 俺はカラオケに行く前に空港で友と別れを告げていた。

 

「わりぃな。わざわざ見送りなんてしてくれて。」

 

「いや・・・それよりも大丈夫か?」

 

「何言っているの。イッセ―君が言ったのよ?神が死んでも遺志は残っているって。素晴らしい教えがあるのなら、それを信じると。」

 

 弦太郎とイリナは何とか立ち直っていた。

 

「それでゼノヴィア達を頼むぜ。」

 

「ゼノヴィアがそんな重要な存在だったなんて。」

 

 そして、二人にはゼノヴィアと良太郎の事情を実は教えてある。

 

 2人が転生者で、そして、ゼノヴィアが特異点というこの世界の要というべき存在であることを。

 

 ついでにだが、ハナさんの許可をもらって、彼女の生まれた背景を教えた。

 

 さすがにそれを聞いた二人は驚き、言葉を失っていたよ。

 

「教会には異端って言う事でうまく追い出されるようにしたから。」

 

 転生者の時点で色々とヤバいらしい。

 

「悪魔になるのは残念だけど、あなた達で守ってほしいわ。大切な友達だから。」

 

 イリナも納得済み。2人ともしっかりと自分の足で立っている。

 

 神の死を乗り越えたこの二人は・・・再会した時よりもさらに強い。

 

「それに予感がする。また俺達の道は交わるってな。」

 

 弦太郎が拳を突きだす。

 

 何をするのかもう分かっている。友達の証。

 

 俺は弦太郎と別れの前にそれをかわす。

 

「イリナ。その・・・。」

 

 それで約束の件なのだが、まだ聞けずしまいである。

 

「・・・クリスマス。」

 

 だが、イリナは言う。

 

「クリスマスになったら思いだしてくれるはず。その時にお願い。」

 

「ああ・・・。」

 

 クリスマス?一体何を・・・。

 

「また会いましょ。楽しみにしているわ。」

 

 そして、イリナが俺の顔に顔を近づけて、頬にキス?

 

「じゃっ・・・じゃあ!!」

 

 イリナが顔を真っ赤にさせて先にゲートをくぐる。

 

「イッセ―。これだけは言わせてくれ。」

 

 それを微笑ましい様子で見送る弦太郎がいう、

 

「イリナの気持ち、真剣に考えてやってくれ。お前の夢にもそうだが、形だけじゃなく本当の意味であいつには幸せになってほしい。そう言う意味で俺はイッセ―になら任せられると考えている。」

 

 おいおい・・・俺のことをそこまで評価していいのか?

 

 自分で言うのも難だけどハーレム王になるってすげえ欲望まみれな夢を持った俺を?

 

「お前は自分で気付いていないところが一杯あるだけのことだ。頼む・・・あいつの気持ちを無下にしないでやってくれ。頼む!!」

 

 そう言って頭を下げる弦太郎。

 

 こいつは本当にいい奴だ。

 

 いい奴すぎる。

 

「ああ、誓う。俺の龍の魂と誇り、そして俺の夢に誓う。」

 

 その言葉に弦太郎は満足する。名乗りに言った龍の魂と誇りに誓ったのだから。

 

 それくらいの誓いを立てないと、こいつの気持ちに応えられない。

 

「頼むぜ。それと・・・良太郎!!ゼノヴィア。また会おうな!!」

 

「・・・ばれていたか。」

 

「本当にお前って奴は度し難い。」

 

 隠れて見送ろうとしていたゼノヴィアと良太郎にも声をかける弦太郎。

 

「チームは一端解散するが、また再結成すると俺は睨んでいる。その時までしばしの別れだ。また会おうぜ!!」

 

「ああ。」

 

「きっとだよ。」

 

「お前らの相棒達にもよろしく言ってくれ!」

 

 弦太郎はそのまま聖剣の破片を持って空港のゲートをくぐる。

 

「・・・あいつは本当にすごい奴だ。」

 

「うん。気まずいのをすべて見抜いたうえであんなことを言うのは彼らしいよ。」

 

 あいつはもっと大きな男になる。

 

 それこそ神の遺志、いや全世界の意思すら超えるような・・・。

 

「それじゃあ行こうか、二人とも。」

 

「ああ。」

 

 二人は俺達グレモリ―眷属となった。

 

 ゼノヴィアは騎士の駒。

 

 良太郎は俺の中から出てきた兵士の変異駒によってだ。

 

 それぞれ一つずつで済んだことに部長は首をかしげていた。

 

 なんでこの猛者、いや怪物二人を一つずつの駒で眷属にできたのか本当に謎だ。

 

 本当にこの二人は強い。それこそ変異の駒でも足りないほどに。

 

 ただ、グレモリ―眷属の人外魔境化さらに進んだぜ。

 

 何にしろイマジン憑きのお二人。

 

―――――もう、何でも来いって感じよ。

 

 部長はもう開き直っている様子でしたし。

 

「グレモリ―男子が増えたのは嬉しいぜ。良太郎。同じ兵士としてよろしく。」

 

「はははは・・・はあ。今度は悪魔なんだね。」

 

「こっちも破れかぶれで騎士になった。でもな、お前が悪いんだぞ?」

 

 ゼノヴィアがこっちを見てくる。

 

「私はお前についていくと決めた。神の後を継ぐって言ったお前にな。」

 

「へっ?」

 

 えっと・・・何を言っているのですか?

 

「責任は取ってもらうぞ。お前がいるから私は悪魔になったのだからな。はあ・・・ここにきて女としての感情を思い知るとは。前世は男故に少し複雑だぞ?」

 

 顔を紅めてその場から去っていくゼノヴィア。

 

 あれ?何がどうなって・・・。

 

「イッセ―君。ハナさんから伝言があるんだ。」

 

 良太郎が最高のタイミングでハナさんからの伝言を伝えてくる。

 

「うちの娘をどうぞよろしく。責任は、しっかりと取って貰いますのでそのつもりでお願いします。もし無下にしたら、お覚悟を・・・だって。」

 

「oh・・・。」

 

 正直ハナさんだけは敵対したくない。だって・・・あの人、人間を止めている。

 

 とんでもなさすぎ人なんですって!!

 

―――――相棒・・・お前が父親になる日は案外近いかもしれんな。

 

 ドライク、やめてくれ!!

 

 ハーレムの前に父親ってな!!

 

――――――ははは・・・何を言っているお前の相棒はパパドラゴンになったのだぞ。私は・・・ははは・・・。

 

 うわ・・・ドライクが壊れている!

 

 三日経った今でも子どもができた事実を受け入れられていないのか?

 

 食欲は落ちていないが・・・。これは相当重傷だぞ。

 

「こっちも身内としてしっかり監督するからよろしく。」

 

「・・・・・・。」

 

―――――これがイッセ―よ。フラグを次々と立っている。軽く見てもここまでとは・・。

 

―――――もう夢叶える勢い。それより卵はまだなの?

 

―――――まだ時間がかかるわね。後二週間後に産むことになりそう。

 

―――――その間は私が頑張る。無理しないで。でも子供か・・・私もいい相手がいればいいけど。

 

 はあ・・・。

 

 俺はデンライナーでのやり取りを思い出す。

 

 

 

 デンライナーの中で聞いたのは、ゼノヴィアの母親が誰かという事。

 

 そして、彼女の父親が誰かということだ。

 

「私はちょっとした事故でこの世界にやってきた。過去の世界にね。そしてそこであの人と出会ったの。持っていた聖剣を奪われるのを嫌い、岩に叩きつけていた瀕死の彼を。」

 

 それは伝説にもなった人物。

 

「その人を助け、それがきっかけで私と彼は結ばれた。そして、生まれたのがあの子なの。幸いなのは、助けたタイミングが、本来彼が死ぬはずだったタイミングであること。おかげで表の世界から消えても歴史に何も影響はなかったことね。」

 

 それも予言者から神の力を宿らせた人。

 

「まじかよ。マジで・・・そんなとんでもない奴の娘なのか?あいつは・・・。」

 

 いないはずの直系の子孫。いや、娘が時を超え存在していることを知ったら世界が震撼するだろうな。

 

 あのデュランダルの最初の持ち主・・・ローランの娘だとしたら。

 

「それでも・・・いつか本人に言った方が良いぜ。」

 

『・・・・・・。』

 

 その言葉に皆が押し黙る。

 

 率直だが言わせてもらった。空気読まないと言われてもだ。

 

 そしてハナさんも頷く。

 

「ええ。でも・・・私に資格があればね。だって・・・ずっと放っておいて・・・。」

 

「それは違う!」

 

 ハナさんの言葉を誰よりも強く否定したのは良太郎であった。

 

 びっくりした。普段温厚な彼の一言って、すごく強い。

 

「少なくとも・・・放っておいたわけじゃないよ。僕がわざわざ転生してまで姉さんの傍にいる事になったのもハナさんのお願いだし。」

 

 そうか。良太郎がここにいるのはハナさんのおかげなんだ。

 

「それに・・・何時もクリスマスと誕生日にプレゼントをこっそり置き、報告するときだってしつこいくらいに聞いてくるじゃないか。戦闘の報告の時も心配していて、怪我して入院したときだって、こっそりお見舞い。そして・・・戦闘の時こっそりと参戦していたでしょ!!たとえばヘルバウンドの群れ、三十体を素手で瞬時に蹴散らすてハナくらいなものだし。ケルベロスやミノタウロスの討伐の時、そいつらが二体とも白目剥いて泡吹き、危険な痙攣して倒れていたのを見てびっくりしたって!!どうやったら狂戦士化したミノタウロスをボディブローで沈めるのさ!?」

 

「・・・//////。」

 

 顔を真っ赤にさせながら顔を背けるハナさん。図星ですね。

 

「・・・希望ありか?」

 

 そして、俺達は話の最後の方の部分は聞かなかったことにした。

 

『・・・・・・。』

 

 ネロも顔から冷や汗を流しながら視線で同意する。

 

 だって・・・この人滅茶苦茶強いってことになるじゃん!!ホント人類?

 

 一体何者ですかハナさん!!?

 

 父親も怪物と言っていい位に強いけど、ハナさんもいい勝負じゃないか!!

 

 ゼノヴィアってあの二人の娘なんだ・・・。

 

 うわ・・・どんな潜在能力を秘めているのやら。

 

 ハナさんは特異点にして分岐点だが、この世界とも繋がってしまった故にこの世界の分岐点にもなってしまっている。

 

 ゼノヴィアと共に。

 

「もう・・・あなた方には強制的に協力してもらいますよ。」

 

 いつの間にかオーナーまで。はあ、もうとんでもないことを知ってしまった。

 

―――――でも、この世界に来てよかったわ。

 

 そこにクレアが現れる。

 

――――ああ。思いがけない危機を知れた。

 

 ドライクまで・・・。

 

「この世界が無くなるのは私としても困るの。私の同胞がたくさんこの世界で新しい生活を始めているから。だから協力するわ。」

 

 えっとクレアが積極的に話に関与しているぞ?

 

「ほう。でも時に干渉するつもりは?」

 

「こっちは無くても、イッセ―とネロは可能でしょうね。でも、下手して私達のいる時間が消滅だけは避けたい。だからその点は安心してほしい。もっとも・・・ここまで時の流れが繊細とは思わなかったけど。ゴルトにタイムベントの使用を控えるように言わないと。あれは・・・そう言う類の力だし。」

 

「それが分かっているのなら、これ以上はいいません。これを・・・。」

 

 オーナーが投げ渡してくれたのは・・・カード。

 

「これはデンライナーのチケットです。そっちの召喚機で読み込めばデンライナーを呼べます。」

 

「・・・いいのですか?そんなとんでもない物をもらっても。」

 

「あなた達が私達の切り札になると見込んでのことです。」

 

「どうやら利用されるのは決定らしいな。」

 

 ネロと俺はそろって肩をすくめる。

 

 

 

 こうして俺の手にはチケットがある。

 

 いろいろな意味での切り札として。

 

「とにかくカラオケ行こうぜ。」

 

 ゼノヴィアはまだ気が乗らないらしいが、良太郎は連れていく。

 

 新しい眷属の歓迎も兼ねて。

 

「でも・・・。」

 

――――駄目だゼノヴィア!!出会いは最初が肝心!!

 

 って・・・デネブが憑依してきた?

 

「僕が代わりに行こう!!ゼノヴィアがクラスでうまくやっていけるように・・・。」

 

――――待って!!お前がやったら余計事態がややこしく・・・!!

 

 意気揚々とカラオケの会場に向かうゼノヴィア。

 

「・・・行くか良太郎。」

 

「うん。なんとかフォローする。」

 

 なんかこいつとはいい仲間になれそうな気がする。

 

 さて・・・デネブの暴走を止めないと!!

 

 ゼノヴィアの名誉のために!!

 

 

 

 

 カラオケ会場ではもう二人程ゲストが来ていた。

 

「俺も奢る事になるのか。」

 

 それは翔太郎。そしてフィリップである。

 

「当然だ。この野郎共。」

 

 まったく、お前ら生きているなら生きているって連絡くれ!!

 

 まあ、魔王眷属になったのならそれも難しいだろうけど。

 

「それでも結構余裕あったり。はあ・・・かなり余っているんだよな。使うつもりなかったグレゴリの給与が。遊ぶつもりもなかったしちょうどいいわ。軽く一億位は使うか。」

 

「俺もだ。ある意味いい機会だな。」

 

 巧。お前どんだけ金持ちなの?

 

「魔王眷属同志、よろしく頼むぜ。」

 

「ああ。」

 

「デネブ・・・まったくお前は・・・。」

 

 こうやってゼノヴィアも強制参加(デネブのせい)で遊びが始まる。

 

 

 

 

 そして、カラオケで大活躍な人が現れる。

 

 一人は渡だ。

 

 歌っているのは・・・「SUPERNOVA」

 

 開幕に歌ってくれたおかげでみんな盛り上がったよ。しかし・・・何かあれを聞くと渡の黄金のキバの時の姿を思い浮かぶのはなぜ?

 

 それは置いておくけど、すごく歌のレベルが高い。バイオリンの新星なのは知っていたけど歌のレベルもここまですごいとは・・・。

 

 文化祭の時こいつらにバンド組んでもらおうかな?

 

 チケット出して売れるレベルだぞ?バントを組むメンバーは・・・。

 

 ネロはギターの心得あるらしいし、鋼兄はドラムできそうだ。ボードとベースを探さないといけないか。

 

 考えている間に続いてハルトが歌う。

 

 歌う曲は LIFE IS SHOW TIME。黄金爆発をする人達が歌っている曲。

 

 いや様になっている。

 

 何故か隣で仁藤も参加してきたのには驚いたぜ。2人が一緒にこの歌を歌う光景は驚いた。

 

 そのあとはまさかの良太郎。

 

 歌うのは、Doubie Action!!

 

 しかも、歌うパートごとに紅いメッシュが入って声が変わっている!?

 

 あいつ・・・モモタロスとパートごとにスイッチしながら歌っているぞ!

 

 なんて器用な真似を。

 

 他にも皆がガンガン歌う。

 

 ネロと翔太郎がラルクを歌う。

 

 二人ともそう言ったセンスが似ているのか?

 

 サイガとポルムはというと・・・。

 

「カラオケ初めて・・・すごく緊張している。歌が・・・歌が全く分からない!!」

 

「この世界って歌がこんな風になっているか。うん・・・あとでカラオケ機をスキャニングしておこうか。面白そうだ。」

 

 二人ともカラオケ初めてだったのか!?

 

「案ずるな。私も初めてだ!!」

 

 仕方ないか。ゼノヴィアも含めてそうだと思ったよ。

 

「参ったな唄うとなると・・・。」

 

「にゃヒヒ・・・一緒に歌おうにゃ。」

 

 何故か鋼兄は演歌だし。

 

 そこにキンタロスが憑依した良太郎が参戦。

 

 良太郎・・・大活躍だな。

 

「姉様ったら・・・まあこれでも歌いますか?」

 

 小猫ちゃんがコネクトを選択。クラリスの歌だ。

 

 まさかの姉妹でのデュエットですよ。

 

 そのあとノリノリでユウナが歌うし。

 

 あいつ・・・うちのクラスに来てからすぐに学校のアイドルになったぞ。

 

 見た目美人で大変フランク。男女問わず人気者って・・・まさにアイドルだろうが!!

 

 問題はその人気の反動なのか、その嫉妬の視線が俺に向けられているんだ。

 

 はあ・・・不幸だ。

 

 何しろ猛烈なアタックをうけていますので。

 

「なあ・・・お前の幼馴染って本当にすごく多いな。」

 

 ついでに誘った元浜と松田が軽く驚いている。

 

「色々と腐れ縁があってな。一人は帰っちまたが、また来たら紹介する。」

 

 弦太郎とイリナが好きそうだしな、

 

 またあいつらがやってきたら騒ぎたい。

 

 アーシアも精神的に落ちついたのか、積極的に歌っている。

 

 知らない歌もある程度教えてある。この三日間の間でだ。

 

 来ている服は・・・ゴスロリです。いや・・・桐生さんのプロデュース。そして、それをキリエさんとオ―フィスちゃんが用意していたのだ。

 

 三人ともいい仕事です。

 

 皆でガヤガヤと騒ぎ、そしてトイレのために外に出た時だった。

 

「はあ・・・・・。」

 

 少し疲れたのか、巧が座り込んでいたのだ。

 

「大丈夫かい?」

 

 木場がそれを見て飲み物を差し出していた。

 

「サンキュ。」

 

 それを受け取り、軽く飲む巧。

 

「・・・こんなに遊ぶのは久しぶりだ。イッセ―達と昔遊んで以来だ。」

 

「僕もだ。こんな機会はそうそうなかったよ。」

 

 二人は待ったりと語らっている。

 

「俺・・・これからどうすればいいのか分からないんだ。」

 

 そして巧がぽつりと言う。

 

「今まで短い命の間にどれだけの事が出来るか必死になっていた。でも・・・いきなり悪魔になって永遠に近い命だもんな。まいったぜ。」

 

「ははは・・・それに関しては僕も一緒だよ。聖剣に関しての問題が終わってすごくほっとしている。同志達も生きていたりして・・・一気に重しがなくなって、戸惑うばかりだ。」

 

「なるほどな。そっちも同じか。ここから先どうしようかね。」

 

「本当だよ。」

 

 2人がそんな風にしみじみと語らってる。

 

 まったくお前らは・・・。

 

「だったら探せばいいだろう?」

 

 俺はそう言いながら出てくる。

 

「それに巧、自分で言っていたんぜ?夢を持ちたいって。」

 

「そう言えば・・・そうだったな。」

 

「そして、それは木場にも言えることだぜ。せっかく長い時間を持てたんだ、じっくりと、それでいて欲張りながら探そうじゃねえか。俺みたいにさ。」

 

『いや、お前(君)の様な欲望の化身になろうとしても無理だから。』

 

 お前らな・・・。

 

 どうせ俺は欲望の化身ですよ!!

 

「ははははでも・・・ありがとうな。そうだったわ。」

 

「うん。僕からも言わせて、ありがとうと。何もかも君のおかげだ。」

 

 そうやって二人に礼をいわれると、さすがに困るぜ。

 

「ああもう!!だったら歌うぞ!!次、RevoliutonとEGO~eyes glazing over を入れたんだ!!お前らが歌え!!」

 

「なら入れたお前も道ずれだ。」

 

「当然。」

 

 お前ら仲良いな!!

 

 まあ・・・そんな感じで俺達は日常に戻る。

 

 その後。

 

 何故か木場×巧×俺の三角関係かと一部女子が騒いでいたのを見て頭が痛くなったのはどうでもいい話だ。

 

 どうでもよくないがな。

 

 

 

 




 今回の投稿はここまでになります。

 イッセーの学校生活はさらににぎやかになることでしょう(笑)

 ではまたです。

 ドラゴン達の明日だけが今は心配ですけど。


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第四章 停止教室のヴァンパイア
新しい日常と明らかになる繋がり。そして・・。


お待たせしました。

 今回は一話のみ投稿ですが。ものすごく長くなります。


 ポルムの神器の基本性能を初公開。でもこの神器は番外編の神滅具と言わるくらいの危険な神器です。


 SIDE イッセ―

 

さて・・・今俺は貴重な同志を得た。

 

「この欲望素晴らしい!!」

 

 俺は今、貴重な同志を得たのだ。

 

 その同志は鼻血を出しながら我が宝を見ているぞ。

 

 エロ仲間である彼の名前は・・・ポルムだ!!

 

 眼鏡キャラは分かっていたが、俺の同志になるとは思わなかったぜ!!

 

 そして、あいつが持っている神器は非常に便利なことが判明したのだ。

 

巨鳥の解析光翼(ジズ・スキャニング・レイ・ウィング)

 

 あらゆる道具や乗物を翼から出る光で解析。完全に解析できたら、それを翼から自在に作り出すことができる。

 

 また、翼に作り出した物もそうだし、それ以外の物も生き物以外という制約はあるけど、情報化収納。自在に取り出せる。

 

 応用が効き、神器の所有者は解析する際、その構造や使い方を完璧に理解し、その上で複数の道具を組み合わせて作り出せる。上に解析の力を転用させてデータを書きかえることも可能。

 

 また、力のみで作った物はすぐに消えるけど、材料を取り込んで作った場合は、それがそのまま固定化されるというのが驚きだ。

 

 一度情報化して収納した物もそれは同じだ。

 

 今俺の目の前にあるテレビは良い例だろうな。

 

 あいつ、ブルーレイレコーダーと最新の4Kテレビのデータを元にしてHDD搭載、ブルーレイレコーダー付きの4Kテレビを作ったのだ。

 

材料はブラウン管テレビとビデオデッキ。それを原子レベルで変換させるらしい。

 

 比較的近い材料の方が作りやすいと本人は言っている。

 

「もっとも、これはあくまでも個人的しかしないよ。」

 

 まあ、さすがに色々と問題があるので、自重はしている。これもあくまでも個人的に家へのプレゼント代わりに作ってくれたのだ。

 

 力を応用させて、秘蔵のDVDやVHSに入っている分をすべてBDに変化、画質もアップ、おまけに複数を一つにまとめるなどしてコンパクトになったぜ!!

 

 おかげで収納も楽々。

 

「ありがとう、同志。」

 

「この世界は楽園だ。それを知ることができた。」

 

 俺とポルムはがっちりと握手をする。

 

 さあ、今から観賞会へとしゃれこもうじゃないか。

 

 この世界のエロス、存分に教えてやるぜ!!

 

「見つけましたよ。」

 

『!?』

 

 だが、そこに巨大な敵が立ちはだかる。

 

 その名はキリエさん。

 

「エッチすぎるのは行けないと思います。」

 

 エッチなのは良いのか?

 

「あなた達二人は度が過ぎている」

 

「こっちも同等扱い!?」

 

「イッセー君とエロ方面で意気投合する時点で今更・・・。」

 

「客観的に見ればそうか。まあ・・・むしろ名誉よ!!」

 

 うお。こいつ言い切りやがった。

 

 意外とクールな一面と、そして熱い一面を兼ね備えているな。

 

 俺達二人は視線で語り合う。

 

 本当に分かりあった二人なら・・・。

 

―――――いやいや・・・そんな同志いらないぞ。

 

 ドライクからのツッコミが入りました。

 

「隙あり。」

 

 ポルムが隙を見て呪文発動。

 

――――――転送呪文(ルーラ)

 

 だが、発動しない?

 

「なんと!?」

 

「言っておきますけど、転送は無駄ですからね。」

 

 キリエさんがいつの間にか手にしていた神器がそれを邪魔したのか?

 

「この力は便利です。守るだけじゃなく閉じ込める事もできるなんて。」

 

「・・・これは強敵だ。力の性質が完璧に適合している。」

 

 背中から十二枚の翼を展開させたキリエさん、強くなりすぎです!!

 

―――――軽く見積もって、熾天使クラスか・・・。

 

 ちょっと!?ドライクさん何言っているの?

 

 それってキリエさんが天使最高峰クラスの力を持っていることになるって!!

 

――――実際それくらいあると思うわ。

 

―――それに二つの神器。これはすごい。

 

「攻めは得意じゃありませんけど、守りなら負けません!前の戦いで放ったあなたの必殺キックも受け止める事ができる自信があります。」

 

 いやいや!!まず、結界を応用させた攻めもすごいですよ?

 

 キリエさんはそういう荒事を嫌うからしないだけであって、ツッコミ代わりに使う一撃は変身していない鋼兄だって気を失うレベル・・・。

 

 そして、守りの方は俺の必殺キックすら防げるって、鉄壁すぎる!!

 

 でも、それができて可笑しくないのが今のキリエさんだから怖い。

 

「こんな美人な天使がボスだなんて素敵だね。」

 

 ポルムは乾いた笑い発しながら横眼で俺に告げる。

 

―――カウントはゼロからが勝負だ。OK?

 

 分かっているさ。ここからが勝負だって。

 

 今ここに男のロマンを死守するための大戦が始まる。

 

 

 

 まあ、その結果は惨敗である。

 

「くそ・・・。」

 

「まったくもう。イッセ―君だけでも大変なのに、ドスケベな子がもう一人いたなんて迂闊だったわ。」

 

 キリエさんの後ろには我らの秘蔵の・・・。

 

「いや、俺はこういうのは持っていないから!!この世界に来て初めてだよ!!」

 

「そう言うあなたは、そっちも大した神器を持っているのにどうしてこんなくだらないことに使っているのですか!!」

 

「だってさ。これはこれでかなり危険な神器だぜ?あえてこういった面白いことに使わせてもらっているけど。神滅具とされてもおかしくないくらい。ある意味上位クラスすら超える様な番外神器かな?」

 

 そう言いながらポルムは背中から翼を展開させる。白い光で作られた変わった翼だ。

 

 この翼、そんなに危険なのかよ?

 

――――――安心しな。データに関しては翼の中に保管済みだ。すぐに取り出せる。

 

 念話みたいなものでポルムが教えてくれる。

 

 こいつ・・・本当に強かだ。

 

 頼りになる。

 

 なんかそれを冷めた目でキリエさんが見ているけど・・・。

 

「・・・大方、その翼に保管しているのでしょう。どうかな、アーシアちゃん?」

 

「はい。そんな事を言っていました。」

 

『!!?』

 

 しっ、しまったぁぁぁぁぁ!!

 

 アーシアがいるのを忘れていた!!あいつの前で隠し事など無意味だったよ!!

 

「これは予想外。」

 

 目が点になっているポルム。

 

 でもすぐに余裕を取り戻したぞ?

 

「まあ、これくらいは見逃して。無ければ、イッセ―が暴走する危険もあるしさ。」

 

 それで交渉をしてくる。

 

「それに必要悪ではないけど、ある一定以下に抑えるだけでも大分違うかと。」

 

「あなたは弁が立つわね。でもまあ・・・いいでしょ。そのデータを消去することも難しそうですし。」

 

 なんと!!許可が下りただと?

 

「度が過ぎたら整理します。それでいいですか?」

 

 すげえ!!ポルムって、相当頭が良い。機転が効くというべきなのか・・・。

 

「まあ、ある一定以上は必要だから、そこをついただけ。それにそっちも無事じゃないと思う。・・・・・・すでに羞恥プレイを味わっているだろうから。」

 

 羞恥プレイ?

 

「ほうほう・・・なるほどイッセ―ってこんなのが良いんだ。よっしゃ!!ストライクど真ん中だわ!!」

 

「はわ・・・あわわわわあわ・・・すごいです!!」

 

「う~む、勉強になるわ。私はこの手の知識はさっぱりだったから。」

 

「こんなに業が深いだなんて。あらあら。」

 

「女の視線でこういうのを見ると・・・違った感じだ。」

 

 それはユウナを初め、アーシア、部長、朱乃さんそしてゼノヴィアの五人。

 

 ちょっとまてい!!

 

 なんでお前らが・・・うおおおおぉぉぉぉぉぉぉ。

 

 確かにこりゃ羞恥プレイだ!!何が悲しくて、俺のコレクションを女子共に興味深々に見られないといけねえ!!

 

「痛み分けになったわ、これ。いや・・・。」

 

 俺の肩に、ある方が手を置く。

 

 その光景を見てポルムは苦笑する。

 

「藪をつついて蛇どころか暴れ馬を登場させてしまったかな?」

 

 ダンテ様の計らいでユウナがこの家に住む事になり、自動的にこいつも付いてきた。

 

「イッセ―君。少しお話いいかな?・・・・・・なんでユウナが君の如何わしいコレクションを読んでいるのかそのあたりをじっくりと。」

 

 木場さん。後半から声のトーンが明らかに低いです。

 

 判明したことだが、こいつ、結構なシスコンだ。

 

 肩に置かれた手の力が異常に強くて痛いです。

 

 っていつの間にかオルフェノク化していますよ!!

 

 そりゃ、痛くて同然です!!

 

 オルフェノクとなった木場はテクニックとスピードにパワー、タフさまで加わる。

 

 その結果、こいつの弱点が無くなってしまう。

 

「やれやれ、退屈しないわ。」

 

 ポルム、お前、本当に強かだ。

 

「君もだ、ポルム!こんなに色々とやらかすとは。」

 

 怒りの矛先は当然ポルムにも向う。

 

「成長と言ってくれ。それにこれくらいできないと。」

 

 こいつ本当に抜け目ねえぞ。さりげなく木場から間合いを離している。

 

「何時の間に・・・。」

 

 木場も何時の間に空いた距離に軽く面食らっている。

 

「向うの世界で念のために覚えた盗賊のスキルも役に立つという事だ。ははははは!サラバだ!また会おう!!」

 

 そして、逃走。

 

「待ちたまえ!!それにそのセリフに関してはツッコミも入れたい!!」

 

 木場は捕まえるべく追いかける。下半身を馬に変えてって・・・頼むから家の中でそれは止めてくれぇぇぇぇl!!

 

「逃走は重要な戦術なのだよ!故に待つ理由もない!!」

 

 結果として、俺はお話を免れる格好だ。

 

 いや、助かった。

 

「・・・・・・。」

 

 木場。この家ではツッコミか。

 

 今日も家は賑やかだよ。場を引っかき回すのが得意なポルムのキャラも判明し、あいつもこの家に滞在するからもう賑やかさに拍車がかかっている。

 

 そして、アーシアが逃げるポルムを見て一言。

 

「あなたも苦労していますね。」

 

「まあね、互いにフォロー頑張ろう。こっちは器用だからある程度小回りは効くし。」

 

 逃げながらよくもまあそんな会話できるよな。

 

「自分で言うあたりはすごいです。でも色々考えて過ぎて読み切れません。一部しかわからないです。もうそろそろ時間なのでは?」

 

「それが分かる辺り、十分君もすごいよ。あと教えてくれてありがとう。」

 

 アーシアに心を読まれていることに苦笑いしながらも、それを前提として普通にやり取りしているのもすごい。

 

「なっ!?」

 

 そして、ポルムは立ちどまり、そして木場を止める。

 

 いつの間にか氷結させてあった床に木場が転倒したのだ。

 

 しかも転倒しても怪我しないようにうまく布団まで用意されている。

 

「・・・また嵌められた。」

 

 転倒した木場を助け起こすポルム。そのあたりのケアはうまいよな。

 

「ごめん、俺は少し出る。ちょっとある家に行くことになっていてね。サイガ、案内頼む。」

 

「うっ・・・うん、いいよ。」

 

 いつの間にかサイガがやってきていた。

 

 あいつらのやり取りに完璧に呆れている様子だ。

 

「・・・・・・はあ。いい性格をしているよ君は。」

 

 元の姿に戻った木場は軽く涙目になっている。完璧にふりまわされているな。

 

「どこにいくんだ?」

 

「ちょっと鋼牙さんに呼ばれてね。」

 

「父さんがどうしてもポルムと話をしたいって。こっちはすぐに戻るけど。」

 

 そして、サイガは家の庭に召喚する。

 

『・・・・・・・。』

 

 よりによって、轟竜を。

 

「へえ・・・。」

 

 それを見て木場は薄い笑みを浮かべているし。

 

 そしてサイガに向けて親指を立てる。何でグッジョブなの?この仕打ちが本当にグッジョブなのか?!いい仕事してんのか!?

 

 サイガは苦笑いを浮かべているし。

 

 その背の上にポルムが乗る。

 

「・・・乗っておいて今更だけど、馬で行くのか?この世界にはそれよりも早い足はいくらでもあるだろ?たしか、魔戒道を使う手段だって・・・。」

 

「いやいや、速いよ。少なくとも・・・。」

 

 サイガは鎧を纏いながら告げる。

 

「この世界の中で間違いなく最速だからね。それもダントツで。」

 

 処刑宣告を。

 

「・・・・・・はい?」

 

 ポルム。言っておけばよかったぜ。

 

 その轟竜―――馬、いや生き物というカテゴリーを逸脱しすぎた怪物だぞ?

 

「それに轟竜も走りたいって言っていたからちょうどいいよ。全力で行こうか!!」

 

「地球一周の寄り道をおまけしてやる。この世界をじっくりと堪能しな。」

 

 うん。轟竜もやる気満々だ。余計なまでに!!

 

「・・・・・・。」

 

 鼻息も荒い。

 

 止めは木場がします。

 

「もう結果は見えているから僕はここで引き下がる事にする。ポルム、逝っておいで。僕は君の事は一生忘れないから・・・・・・光になれ。」

 

 真っ黒な笑みを木場は浮かべている。

 

 その笑みの意味をポルムは悟ったのか冷や汗を流す。

 

「・・・・・・・・・まじで?」

 

『ハイヤー!!』

 

 サイガと轟竜の口から処刑執行の言葉が放たれる。

 

「ちょっ!?ぎゃあああああああああああああぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・。」

 

 悲鳴を残して姿を消す。

 

 あれは確かに風じゃなく光になる勢いだよな。

 

 ポルム、お前のことは忘れない。光になれ。

 

「はあ・・・おっともうこんな時間か。」

 

 俺も俺で今日は用事がある。

 

「イッセ―、何処に行くの?」

 

「久しぶりに師匠に会いに。」

 

 今日は師匠がこの街にやってきている。

 

 その師匠に会いにいくのだ。

 

 

 

 SIDE 朱乃

 

イッセ―君の師匠に会いに私も付いてきました。

 

「あれだけの和食の腕前。是非会ってみたいですわ。」

 

 イッセ―君からその師匠からあらかじめ連絡を入れており、許可はもらっている。

 

「言っておくけど、かなりの俺様キャラだし、こうオーラが違うし・・・。」

 

 そして、彼は今その師匠について色々と話してくれる。

 

「どんな方なのですか?」

 

「一言でいえば、天の道を行き、総てを司る男・・・かな?」

 

「・・・・・・・。」

 

 訳が分からない。

 

 俺様キャラという事だけは分かりますが。

 

 でも、待ち合わせの街の噴水に到着すると、彼が言っていたことが非常に的を射ていることが分かりました。

 

 簡素な着物に下駄。

 

 大変格好はシンプルだ。

 

 それだけなのに・・・存在その物が違っていたのだ。

 

 ただそこにいるだけで、彼は他のなにかと違う。

 

 理屈ではなく、直感でそれが分かる。

 

 超越者。

 

その言葉が的確だろう。

 

「久しぶりです!!師匠!」

 

「ああ、久しぶりだな。」

 

 彼が天の道を行き、総てを司る男って言った意味が分かった気がする。

 

 この男には何かある。

 

 眷属最大の規格外となったイッセ―君。

 

 その基礎を作り上げた何かが・・・。

 

「それと・・・ほう。珍しいな。」

 

 彼、天道総司さんは私の方を見て言う。

 

 何が珍しいのでしょうか?

 

「俺は俺の道を行く故、大したことは教えられない。だが・・・。」

 

 私とイッセ―を交互に見て・・・。

 

「イッセ―。お前の夢は順調のようだな。呆れもしたし、それでもできるほどの器を持っていることは分かっているが。」

 

 何故か苦笑いで私を見ていました。

 

 イッセ―君の夢って確か・・・。

 

 

 

 SIDE イッセ―。

 

 天道師匠。僕が尊敬する男の一人だ。

 

 最初は俺様キャラの変わった奴かと思うかもしれないが、すぐに違いに気付くだろう。

 

 俺は師匠のようになりたいと思ったけど、他でもない師匠がそれを止めさせた。

 

「俺には俺の道がある。そしてお前にはお前の道が・・・な。」

 

 俺は師匠の様になれない。

 

 それを突きつけた言葉でもあり、違う道を行くべきと諭してくれた。

 

 俺は、そのおかげで今の夢を持てた。

 

 その夢を語った時、さすがに師匠は完璧に呆れていたが、それでも貫いて、今回の言葉をもらったのだ。

 

「お前の場合は皆を幸せにするためのハーレムを作るのだろうな。」

 

 まあ・・・そう言われると照れくさい。

 

 欲望にまみれた夢だけど、幸せになりたい、幸せにしたい気持ちは本物だ。

 

「自ら作るのと自然と作られていく二つのパターンがあると聞く。お前の場合、意思は前者のつもりだが、経過が後者というのがちぐはぐだ。そのあたりもお前らしい。翔一の奴がなんというか。」

 

 師匠は父さんとも友達だ。

 

 今回は父さんと新作料理の打ち合わせをしているらしく、その足で俺達にも会ってくれたのだ。

 

 久しぶりで本当に嬉しい。

 

 誰にでも自慢できる最高の師匠なのだから。

 

「さて・・・なら一つ・・・。」

 

 師匠は朱乃さんを見て一言。

 

「話を聞く限りだと、すでにお前にはお前の料理がある。いや・・・受け継がれているというべきだろうな。イッセ―の言葉からそれが分かる。」

 

「あらら・・・。」

 

 朱乃さんはその言葉に驚く。

 

「それでもまた前に進みたいのなら、己の道を振り返ることだ。」

 

「道を・・・振り返る。」

 

「前に進みたいのなら、自分がどうしたいのかがそこに置いてある。それをもとに前に進むが良い。」

 

 その言葉に、朱乃さんが震える。

 

「あっ・・・・っ。」

 

 その過去に何かがあったからだろう。

 

「怖いはずだ。辛いはずだ。だが・・・それを乗り越えるのが前に進む事。それが料理にも現れる。お前はもうすでにその領域に達している。あとは心次第だ。」

 

「・・・・・・。」

 

 言葉を失う朱乃さん。

 

 それはいつも余裕があるお姉様としての顔ではない。

 

 ただ、道に迷い戸惑う一人の女の子として顔だった。

 

 俺が初めて見る朱乃さんの隠された素顔だった。

 

「・・・師匠。一つ質問。」

 

 それを見て俺は師匠に質問をした。

 

 

SIDE 朱乃。

 

 私は言葉を失っていた。

 

 私の過去に答えがある・・・。

 

 その言葉があまりにも痛すぎたからだ。ずっと隠していた。目を背けていた。

 

 でも、何よりも求めてやまないものがそこにあった。

 

 もうどうにもならないのに。

 

 諦めるしかないのに。

 

 あの人は私を見て、私の核心をついてきたのだ。

 

「・・・・・・。」

 

 何を口にすればいいのだろう。

 

 突きつけられたのは、私にとってあまりに酷なもの。

 

 そんな時だった。

 

 イッセ―君が言ってくれた。

 

「師匠、質問があります。」

 

「なんだ?」

 

「それの強さって、俺が手を差し伸べる形でもいいのですか?」

 

「ほう・・・。」

 

 イッセ―君の言葉は私にとって完全に予想外であった。

 

「誰もが己の道を持っている。ずっと一緒というのはまずない。だが、故に道が重なる。皆が別々の方に歩いているが故にだ。その影響で共に同じ方へ歩きだすこともある。故に可笑しいことではない。」

 

「そうですか。ありがとうございます。」

 

 道に付いて説く天道さん。

 

 そして、イッセー君は私に向かっていう。

 

「手伝います。朱乃さんが前に進むために。」

 

 彼が私に手を差し伸べてきたのだ。

 

「何を抱えているのかまったくわかりませんけど、それで美味しいご飯が作れて、一緒に食べられるのなら安い物です!!」

 

「・・・・・・。」

 

 人が良いとは思っていた。

 

 でも、何も知らないのに私に手を差し伸べてくるなんて・・・。

 

「あなたに・・・。」

 

 それなのに私は言ってしまった。心の奥底に締まってある・・・憎しみとやるせなさに。

 

「あなたに何が分かるというの!?私の何が・・・。」

 

 いつもの私じゃない。

 

 あるのは、心に色々な苦しみを募らせ、それで壊れそうになっている脆く醜い私の心。

 

 それにイッセ―君は驚いていた。

 

 天道さんは黙って見ているだけだ。

 

「・・・・・・あっ。」

 

 やってしまった。

 

 私の嫌な部分を見せてしまって。

 

 でも彼は苦笑いをしながら答えてくれる。

 

「確かに俺は何も知りません。どうしてそんな事になっているのかも知りません。だからこそ、知りたいですし、教えて欲しいです。」

 

 それをイッセ―君は受け止めてくれる。

 

 こんなにも私は醜いのに・・・。

 

「こんなエッチな男でよければ何時でも力になりますよ。気軽にどうぞ。」

 

 優しく、それでいてしっかりと私を見てくれる。

 

 卑怯なくらいにだ。

 

「イッセ―君。」

 

 これがイッセ―君を意識した瞬間だったのかもしれない。

 

 何かとんでもないことをしでかす規格外のアギト。

 

 エッチで、それでいて誰よりも熱血でお人好しな歳下の子。

 

 そんな認識に上書きされたのだ。

 

 私を受け入れてくれる男の子に。

 

 隠していた私の心。

 

 それを察し、その上で手を差し伸べてくれた男の子の言葉に。

 

「ふっ、本当に罪づくりな弟子だ。まあ、ついでだ。一緒に翔一のレストランに行くか?そこでお前の食事も食べてみたい。」

 

「あっ・・・喜んで!!俺も師匠や父さんの食事を食べてみたいし。」

 

 イッセ―君は笑う。

 

 その笑顔が眩しい。

 

「・・・・・・・。」

 

 なぜ、眩しいと感じてしまったのだろう。

 

 まるで太陽のようだ。

 

こんな汚れた私にとってその光は毒のように思えるのに。

 

「朱乃さん。行きましょう!!」

 

 彼はそのまぶしい笑顔で私に手を差し伸べてくれる。

 

 私はその手を取る。

 

 その手を取ったのは他でもない私が光を求めてしまったのからかもしれない。

 

 

 

SIDE  ハルト

 

「・・・・・・はあ。」

 

 俺はその光景を放っていたプラモンスター、ガルーダ越しに見ていた。

 

 心配で監視用に放っていたのだが、それが思わぬことを知らせてくれることとなった。

 

予想はしていたのだ。

 

 イッセ―はそれ程の器と魅力を持つ男なのは十分理解していたのだ。

 

 そして・・・ついにあいつは。

 

「姉上が攻略され始めた。」

 

 頭を抱えてしまう。

 

「ははは・・・大変ですね。ハル君。」

 

 傍ではレイちゃんが苦笑いを浮かべている。

 

「だが・・・同時に期待もしてしまっているかな。あんなこと言われたらなんかこう。」

 

 あいつは手を差し伸べたのだ。

 

 苦しんでいる姉上に対して。

 

「まだ名乗れませんね。」

 

「少なくとも父上と和解してもらわないと。でないと父上にも姉上にも名乗れない。どうしようか悩んでいたけど、もしかしたらイッセ―がきっかけになるかもしれない。」

 

「その結果、イッセ―君があなたの義兄になってもですか。」

 

「・・・・・・意地悪だぞ、レイちゃん。」

 

「ふふふふ。伯父さんになる日も案外すぐ来るかも。」

 

「勘弁してくれ。」

 

 だが、もう一つ俺は抱えている案件がある。

 

 レイちゃんにすら明かしていないこと。

 

 それは・・・。

 

 他でもないレイちゃん自身の最大の秘密についてだ。

 

――――俺は彼女を守らないといけない。

 

 それは前世ではできなかった事。

 

 救う事は出来たが、守ることはできなかった事。

 

 再び巡り合えたことは俺にとってこの世界に転生してきた最大の奇跡だと思っている。

 

 悲劇の中、彼女を救いだせたのだから。

 

――――・・・コヨミ。

 

 まだ本格的に覚醒してはない。少しずつ、徐々に目覚めつつある段階だ。

 

―――――この世界で俺は希望を守れるのだろうか。

 

 前世よりも遥かに危険なこの世界で。

 

 そのための力は・・・まだ足りない。

 

 だからこそ、何故かイッセ―には期待してしまう。彼ならもしかしたら。

 

「・・・姉上との件、しばらく見守るか。」

 

 未来の俺が姉上に施した封印が解け始める可能性すらある。

 

 まだ、解けるのは早過ぎると思うが・・・。

 

 

 

 

SIDE 木場。

 

 今僕と巧はある方と模擬戦をしている。

 

 相手は・・・。

 

「死ぬかと思った。」

 

「あんたって、本当に怪物だよな。ハルトから聞いたとおりだ。」

 

 よりによって鋼鬼さんです。

 

 この人、僕達の中でダントツのパワータイプ。

 

 ダントツというが、そのパワーが尋常じゃない。

 

 それこそ変身前の状態でも上級悪魔を拳一発で倒す程。

 

 変身したらもう・・・最上級悪魔クラスでも瞬殺は確実だろう。

 

 そして主神クラスの力を発揮するもう一つ上の姿がある。

 

 あの牙王と戦いもすぐに中断させてよかった。

 

 本気を出した両者。

 

お互いのパワーとスピード、そして肉体の頑丈さが非常識すぎて、ぶつかり合いの余波で周りに天変地異レベルの災害が発生するほど。

 

 まさにラスボス。

 

 おまけにまだその強さは完成していないという・・・。

 

 まだもう一つ、鋼鬼さんは強くなれるのか確定しているとのこと。

 

まだそこに至るために修行中だとか。

 

 僕達からしたら「ふざけるな!!」と恨み事を言いたいくらいの怪物だ。

 

 そんな相手と変身していないとは言え、まともに闘うのは分が悪すぎる。

 

 しかもテクニックも十分あるのだ。

 

「お前らと戦うのはこっちもいい経験になる。2人とも似ている。典型的なスピードを駆使したテクニックタイプだからな。お互いに合わせるのも上手い。どんどん連携上手くなっている。」

 

 僕達の戦い方を見抜く眼力まで持っているのだから本当に手に負えないよ。

 

 前の合宿の時、よくイッセ―君は彼とまともに組み手できたよね?

 

「アギトの本能がこういう時羨ましくなる。」

 

「違いねえ。」

 

 僕と巧君はその組み手が出来た最大の要因であるアギトの本能が心底羨ましかった。

 

 もっともイッセ―君も何度も死を覚悟したらしいのでなんとも言えないけど。

 

 鋼鬼さんと身内の中でまともにぶつかれるのは噂のサイラオーグさんか、またはアギトのイッセ―君、あとは・・・ギルスとして進化を続けるネロ君。それにまだ底を見せない究極のテクニックタイプと言えるサイガ君と同じく底が見えないハルト君くらいか。

 

 サイガ君とハルト君の力の底はまだ見えないのが不気味だ。

 

 イッセ―君が言うには、サイガ君は山脈をふっ飛ばす何かとんでもない潜在能力があるらしい。

 

 ハルト君はあのコカビエルが心の底から恐怖を覚えるほどの何かを持っている。

 

「ハルトの右腕には神すら恐れる者が宿っている。」

 

 巧はそれが何か知っているらしい。

 

「それを使いこなしているあいつは・・・ホントすげえぞ。あの戦いでも解放しなかったのが救いだ。もう一つ隠している力もあるらしい。」

 

 なんでこう、イッセ―君の幼馴染は例外も無く皆怪物ばかりなのだろうか。

 

 イッセ―君が最大の怪物という罠付きで。

 

「それよりも今度はお前達が戦ったらどうだ?特に木場の場合はもう一つの力を早く禁手化させる必要がある。巧のそれにもまだ先があるのだろ?」

 

 鋼鬼さんの提案ももっともだね。

 

「そうだな。俺もまだ修行する余地はある。」

 

 巧君は手から紅い光を出す。

 

「あなた・・・フォトンブラットを生身で扱えるの?」

 

 それを彼は槍のような形にする。それを見たユウナは軽く驚いた様子だ。

 

 彼女は部長達と修行中で、一休み中にこっちを見に来たのだろう。

 

「何気にあなたも規格外ね。」

 

 フォトンブラットは五大ギアが持つ共通したエネルギー。それでいて、とてつもない猛毒だと聞いている。

 

「まるで堕天使や天使の光のように扱える。理由をして考えられるのは俺の中の堕天使の血かな?」

 

 まさかの激白がきましたよ。巧君って堕天使の血を引いているのかい?

 

「堕天使のクォーターらしい。人間の血の方が濃いから翼はねえけど。おかげで親父達から堕天使の光の使い方を教えてもらう形でフォトンブラットを使う事ができる。まだ大したことはできねえ。」

 

 扱えるのは中級天使程度の規模らしい。それでも十分危険だと思うけど。

 

 フォトンブラットをまるで堕天使の光のように使うってねえ。

 

「これは親父がその研究の成果で作ってくれた強化アイテムみたいなもんだ。人工神器の研究の応用らしい・・・。」

 

 それは左腕の時計である。ファイズアクセルと総督は名付けている。

 

「グレゴリってすごいわね。まさかギアの強化アイテムを作るなんて。」

 

「それができるのが俺のギア・・・ファイズギアの最大の特徴だ。出力は五大ギア中最も低いし、パワーも一番低い。だが、親父が言うには、その理由はエネルギーの安定性とそこからくる拡張性の高さにあると。このギアには他のギアには無い可能性が秘められている。それ引き出すのが俺の仕事ならやりがいがあると親父が張り切っていた。今もこのギアの強化アイテムを開発中らしいぜ。」

 

「・・・・・・・。」

 

 巧君、君のギアってもしかして、しかるべきバックがいる相手に渡っているよね?

 

 ファイズギア。別名、救世主のベルト。

 

 そして、もう一つ・・・可能性のギアと言われているらしい。

 

 その可能性の理由がよくわかったよ。

 

 総督が頑張った結果、発動したと思われるその可能性―――アクセルフォームだけど、はっきり言って脅威の一言に尽きる能力だ。

 

 通常の千倍以上という脅威の超高速行動能力。

 

 必殺技も威力が増大。

 

 同等の加速能力が無ければほぼ対抗できない。前の戦いは北崎が対抗手段を持っていた故に互角だったが、無かったらその時点で相手は積んでいる。

 

 増大した必殺技の嵐を瞬時に何発も叩き込まれるのだから。

 

しかも、まだバージョンアップ中。

 

 現在、巧君が身につけているのはあの戦いの後の改良版。稼働時間がもう一秒追加された上に、冷却効率が三倍になり、一分のインターバルですぐに使えるようになるとか。

 

 もう、驚異でしかない。こんな怪物じみた能力を彼の親父はよく見つけたよ。

 

「会ってみたいわ。ギアの事かなり詳しそうだし。」

 

 ユウナはその話に非常に興味を持っている。彼女もギアの保有者だ。

 

 そして、僕も。

 

「僕もこのギアも知りたい。」

 

 僕の中に秘められたもうオーガギア。

 

 五大ギア中最大のパワーと防御力、そして出力を誇るギア。

 

 その防御力は、核爆発の爆心地にいても無傷でいられるとか。

 

 ある意味では素の僕の戦い方と反対のギアだけど・・・。

 

――――私の禁手化と同時に使えるようになれば、まさしく剣帝の誕生よ。

 

 話にクウも加わる。

 

「私達の召喚機による禁手化はかなり柔軟なの。それこそ神器の禁手化と同じようにね。ギアの禁手化を取りこんで、二つの力を同時に発揮させることも理論上は可能。」

 

 二つの禁手化を同時に使う?

 

「それがあなたの到達点ね。今の神器の手札を増やしつつ、禁手化をさらに深める。手札を多く持っておくと色々と便利よ。私の力もあるし。」

 

 僕の相棒であるクウは本当に多彩な能力を持っている。分身に加え。最近では透明化の能力も発現。本来持っていない能力らしいけど・・。

 

 もっと多くの手札を用意しないと。

 

 僕は今、三つの神器を持っているも同じ状態。

 

 んん・・・?

 

 僕がそうだとしたら・・・。

 

「ねえ・・・それじゃ、イッセ―君の場合はどうなるの?」

 

『あっ・・・。』

 

 僕はとんでもない可能性に気付いてしまった。

 

 それは理論上三つの神器、それも神滅具を持ち、同じく存在その物が神滅具といえるアギトである彼。

 

 イッセ―君の次の進化も、複数の禁手化を同時に発動させる形態になるのじゃないのか?

 

 アギトの力と神器の禁手化の同時発動ということに・・・。

 

「アギトと召喚機、そして赤龍帝の篭手(ブースデットギア)は相性が良すぎる。瞬間的な破壊力なら俺も敵わない。」

 

 鋼鬼さんが告げる。

 

「アギトの通常形態の必殺キック。あれは計測の結果、三十トンの破壊力があるのは皆も知っているはずだ。」

 

 頭のクロスホーンを展開させ、足元にアギトの紋章を発生、その力を足に込めた必殺キック。

 

 それの破壊力は凄まじい。

 

「それをあいつはブースデットギアによって瞬間的に倍化。しかも、総て破壊力の倍化という形に変換させている。仮に十回の倍化を使っていると仮定してみろ。どれだけ倍化されている?」

 

 2の乗数、10回となると・・・・・・1024倍!?

 

『!?』

 

「それだけふざけたレベルまでに倍化された破壊力のキックを受けてみろ。俺だって即死どころか消滅しているわ!!全く、アギトにブースデットギアは反則だ。その力に耐え、なおかつ最大の破壊力を発揮できるように進化しているのだからな。」

 

――――あの二人。本当にとんでもない怪物と契約しわね。

 

 鋼鬼さんの説明に皆が戦慄する。つまりあのイッセ―君が倍化させて放つ必殺キックは少なく見積もっても三万トンの破壊力になる。

 

『・・・・・・・・。』

 

 それは、まさに必殺技。

 

 もう、キックの破壊力じゃない。物理の法則すら超越し、神すら殺せる威力。

 

 それにファイナルベントを併用させ、その分を倍化させているのだ。

 

 本当にふざけた破壊力だ。

 

 コカビエルが余波だけで戦闘不能になった理由が良く分かるよ。むしろそれで戦闘不能で済んだだけ、彼も相当な実力者だったんだね。

 

 そして、自身がその破壊力に耐えられるように悪魔の駒の転生機能を利用して身体を作り変えたのか。

 

 異常なまでに頑丈でタフなのも納得だ。変身前なのに小猫ちゃんの全力のツッコミも平気なのも・・・。

 

 今もそのための進化を続けていると。

 

 一体何処まで強くなるのやら・・・先が見えない。

 

「・・・・・・もうこの話はやめにしましょう。イッセ―とドライク、つまりアギトと赤龍帝の篭手の相性が良すぎる理由が分かっただけでも十分よ。さらに進化する余地もね。」

 

 皆部長の言葉に同意。考えるだけ、寒気がする。

 

 もう夏だというのに・・・。

 

「イッセ―先輩はグレモリ―眷属の最終兵器に決定。」

 

 小猫ちゃん。名言をありがとうございます。

 

 まさにイッセ―君は僕達の最終兵器だよ。

 

「いや~本当にすごすぎるにゃ。」

 

 小猫ちゃんと一緒に仙術修行をしていた黒歌も笑みをひきつらせている。

 

 まあ、その余韻をふっ飛ばすように話題を探す。

 

 そして、巧が僕とユウナの方を見て、その話題を投げかけてくれたのだ・

 

「話は戻るが、お前達のギアだが、親父が是非研究したいって言っていた。天と地。この二つのベルトもさらに強化できるかもしれんと。」

 

『・・・・・・。』

 

「簡単に言わないでよ。まだ三大勢力同士の対立関係は続いているのよ?」

 

 そこに部長が突っ込む。

 

「それなんだが、案外何とかなると思うぞ。何しろ親父が自分から会談を申し入れたから、ここから対立していた関係が変わると思うぜ?」

 

「アザゼルが?あのエゴの塊のような人が?」

 

 部長、総督に関しては辛辣ですね。

 

「まあ・・・親父は確かに神器マニアで、それでいていたずら好きだ。確信犯で愉快犯的なほどのな。だが・・・少なくても戦争を望んでいない。それを止めるために俺が動いていたのがその証拠さ。ヴァ―リやハドラ―の件もそうだ。ただ、身内の幸せを普通に願っているようにな。出ないと俺がこうやって今も生きてはいないし。」

 

 巧君とハルト君のおかげで本格的なグレゴリとの外交ルートができた。それを通じての三大トップ会談だ。

 

 悪魔サイドからはサーゼクス様とダンテ様に加えもう一人、魔王様がやってくる。

 

 天使サイドからもトップと後二人程使者が来るらしい。

 

 他にも元老院から護衛として、あの鋼牙さんが来る。

 

「・・・あなたの事を本当に大事にしているのよね。アザセルって。」

 

「恥ずかしいくらいに。まあ・・・それでも俺にとっても親父なんだ。誰が何と言おうと。」

 

 巧君を助けるために必死だったアザゼル。

 

 そして、他のグレゴリの面々。

 

「身内を大切にするという一点に関してだけは、私も分かるわ。その点だけでも会談に参加する材料にはなるか。」

 

 一体どんな人達なのだろうか?

 

「それよりもまあ、訓練やろうぜ。今度は同じオルフェノクとして。」

 

 巧君の姿がウルフオルフェノクに変わる。

 

「いいよ。こっちもこの力をうまくコントロールしたいからね。」

 

 僕もホースオルフェノクに変わる。

 

「へえ・・・だったら私もやらせておうかな?私のオルフェノクとしての力も知ってもらいたいし。」

 

 ユウナもクレインオルフェノクに。

 

「なら俺はじっくりと見させてもらおうか。んん?」

 

 鋼鬼さんがそれを観戦しようとしたその時だった。

 

「あんさん。相撲しないか?」

 

――――ちょっとキンタロス!!

 

良太郎に憑依したキンタロスの姿が。

 

「相撲か。良い鍛錬になる。」

 

 鋼鬼さんがやる気だ。

 

 二人とも四股を踏んでいる。

 

――――あの・・・身体はひ弱なので・・・。

 

「安心しい・・・。プロモーション、ルークや!!」

 

「へっ?勝手に昇格した!?」

 

 部長は驚いている。

 

 その状態で四股を踏むと、地面が揺れた!?

 

「これで身体は頑丈や!!文句あらへんやろ?」

 

―――――・・・あれ?悪魔の駒ってそういうシステムでしたか?

 

『・・・・・・。』

 

 イマジンってすごいね。悪魔の駒のシステムを逆にのっとっていないかい?

 

「パクパクパクパク・・・。」

 

 その光景に部長は何か言おうとしたが、驚きのあまりに言葉にならない様子だ。

 

 部長の頭痛の種は尽きない。

 

「ああもう・・・何でこううちの眷属はどいつもこいつも常識を平気で破壊するの!!?」

 

 もしかして良太郎君って兵士になるべくしてなったんじゃないの?

 

 複数のイマジンの憑依による戦闘スタイルを各昇格でさらに高める。

 

 そう言う変幻自在な戦闘が可能になっている。

 

 ある時はパワー、ある時はスピード。ある時はテクニック、ある時はウィザード、トリッキーも可能ってことに・・・。

 

 これはこれで無茶苦茶だ。相手に合わせて相性のいい戦い方ができる。

 

 しかも良太郎君本人も戦闘経験豊富で、かなり強い。

 

「うおおおおっ!!!お前良いパワーしているな!!」

 

「そういうあんさんこそ!!どりゃあああああぁぁぁ!」

 

 2人ががっぷり四つに組んでいる。あの二人・・・互角だ。

 

「おまけに強化具合が可笑しいわ!?どうなっているの!?」

 

 流石、良太郎君だ。

 

―――――あははは・・・それは僕のセリフでもあるよ。

 

 良太郎君も相当びっくりしている。でも、驚いても動じていない辺りはすごい。

 

 どうやったら、そんな領域に立てるのか。

 

 同じグレモリ―眷属男子として、そして、苦労人としてご教授を願いたいところだ。

 

「お前さん・・・鬼の修行うけないか!!」

 

 組みながら鋼鬼さんが勧誘しているぞ!?

 

「イマジンにそれが可能なのかいな!?」

 

「少なくとも試す価値はある!!その頑健さ、そして心意気、放置したくない!!」

 

「ええな!!約束やで!!」

 

「ちょっと!!これ以上の怪物にする気なの!?」

 

 部長の悲鳴が轟く。現時点で鋼鬼さんと互角の怪力。それがさらに強化って・・・。

 

あっ・・・悪夢だ。悪夢でしかない。

 

―――――そう言えばウラタロスもポルムさんから魔法を教えてもらってたよね?

 

「他の皆もこの世界での何かを取り入れようとしているみたいやしな。こっちもがんばらないと!!」

 

 他のイマジン達も魔改造され始めているのか。

 

『うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!』

 

 二人の相撲は白熱し、今度は張り手合戦になっている。

 

 無数の張り手がぶつかり合う。

 

「だが、まだ甘いわ!!」

 

 鋼鬼さんが張り手でふっ飛ばした!?

 

「こりゃ、やられたな。」

 

「いや、だが良い修行相手が見つかった。よろしく頼む。なんとかお前達を実体化させたいが・・・。」

 

 ここにまた、鋼鬼さんとまともに組み手をする猛者という名の化け物が誕生しました。

 

「あっ・・・あははは・・・これ、レ―ディングゲームではどういう扱いになるんだろ?こんな怪物ども使用できるのかな?」

 

 部長の嘆きに皆はうんうんと頷いていた。

 

 まずアギトであるアーシアとイッセ―君が問題だよね。イッセ―君は反則もいい所だし。少なくともアギトになるのは封印。あんな大規模破壊兵器としか思えない必殺キックなんて発動した瞬間、ゲームその物がフィールドごと消滅してしまう。

 

 アーシアちゃんだって戦闘力はイッセ―君ほどじゃないけど、その他の能力が異常すぎる。各種超能力の成長が著しい。

 

 神器の回復の力に加え、彼女がサポートに回ったら、下手したら相手は何もできないまま封殺されるかもしれない。

 

 眷属の中で最高のサポート役だ。

 

 僕は制限かからないと思うけど・・・。

 

「他人事じゃないわよ、佑斗!!貴方も間違いなくその怪物達の仲間入りしているから。」

 

 僕も入るってどういう事ですか?

 

「むしろ、佑斗はイッセ―とアーシアを除いたら、現時点でグレモリ―眷属最大の怪物よ?テクニックタイプである点ではある意味もっとすごい事に・・・。」

 

 部長の言葉に流石に僕はショックを受けた。

 

 ・・・・・・そんな馬鹿な。

 

 僕って、そんな怪物?確かに隠していたけどオルフェノクだったし。

 

――――――あなたねえ。応用が効く神器に、私との契約、そこにオーガギアの力もある。成長したら魔王になってもおかしくない程のスペックを誇っているのよ?

 

 クウの指摘を受け、改めて思う。そう言えばクウってクレアさん達と同格のとんでもない存在という事を思い出したよ。

 

 僕はここからどんなふうになっていくのか?

 

 

 

 それが怖くなってきた。

 

 

 

 

 

SIDE ハルト

 

 色々と頭の痛い思いをしながらリビングに行くと、そこには先客がいた。

 

「おじゃましているよ。」

 

「よっ!!」

 

 そこにはフィリップと翔太郎、そしてネロとゼノヴィアがいた。

 

「あんたらが俺の剣と銃をここまで愉快にしてくれたか?素敵過ぎて、現物見てから受け入れるのに二時間はかかったぞ。」

 

 彼の前にはあの魔改造されたアクセルクイーンとローズダブルの姿。

 

 早速ネロはそれに対して文句を言っている。

 

 確かに変わり果てたあれを見て茫然としていたネロは傑作だった。

 

 立ち直るのにかなりの時間もかかったし。

 

「ほう・・・これはまたすごい作りこんでいるな。」

 

 それをゼノヴィアはまじまじと見て、触っている。

 

「それくらいでないとギルスとなり、そしてここからさらに進化する君の力に耐えられないと考えてね。しかし驚いたよ。もう使いこなしているなんて。」

 

 その魔改造の張本人、フィリップははっきりと言う。

 

「そんなにすごいのかよ。」

 

「君はイッセ―と同じく進化をしている。スパーダの力とギルス。そこに新しく僕からプレゼントがある。受け取ってくれたまえ。」

 

 フィリップが出したのは変身ベルト。バイクのハンドルにスピード計が付いたようなデザイン。

 

 そこに中央にそのスピード計をかこむように三つの差し込み口と横にスロットがついている。

 

――――――アクセル。

 

「これはアクセルドライバー。君が持っているアクセルメモリの力を最大限に引き出すためだけ作られたドライバーの改良型だ。そこに人工神器のデータも加え、さらに強化している。そこにいるハルト君のおかげでね。」

 

 俺は巧を助ける際の手土産として、フィリップが欲しがっていたギア関係の人工神器のデータを提供した。

 

 そして、それをもとに彼らはアクセルドライバーを強化、改良したのだ。

 

「いや・・・早いな。もう完成したのか?」

 

 提供者はもちろん俺だ。アザゼルからも許可は貰っている。

 

「早く彼の新しい進化を見たくてね。本当に、楽しみだよ。ガイアメモリとギルスの融合。ゾクゾクするね。アシュカも同じ気持ちだろうし。ふふふふふふ・・・。」

 

「・・・・・・・。」

 

 ネロはそのセリフに軽く寒気を覚えているようだ。

 

「俺はモルモットか?」

 

「データは欲しいかな?これとギルスの力がどのように融合していくのか非常に楽しみなんだよ。ふふふふふふふ・・・。」

 

 そこは否定しないんだ。

 

 うん・・・そこにいるのは神龍じゃない。

 

 マッドサイエンティストという名のイッセ―の幼馴染がいる。

 

「魔王眷属としての初仕事はこのドライバーのテスターだ。もちろん上司であるダンテ様には許可はもらっているよ。」

 

 すでにダンテ様は買収済みか。

 

 ちなみにそのデータはアザゼルも欲しいって言っていたぞ。

 

 巧のギアのさらなる強化のためにもデータが少しでも欲しいって。

 

「ダンテの野郎・・・よりによって初仕事がこれかよ。」

 

 頭が痛い様子のネロ。

 

「はあ・・・それでこのメモリは何だ?」

 

―――トライアル。

 

 それはまるで信号機みたいなヘッドが付いたメモリ。

 

「君にも超音速の世界を体感してもらいたくてね。これも改良済みだよ。面白いくらいにね。これは左腰にあるマキシマムホルダーに装着すれば発動するよ。」

 

「後、三つは?」

 

――――――サイクロン。

 

―――――ヒート

 

 それはWが使っているのと同じメモリ。

 

 そこにもう一つ。

 

――――ビート

 

「アクセルと相性抜群のメモリだよ。このドライバーはこの三つに特化している。三つ同時に使ってくれたまえ。多分・・・そのメモリに合わせたフォームチェンジになると思うから。ビートメモリは右腰のマキシマムホルダーに装着したらいいよ。」

 

 風と熱。

 

 なるほど、加速に深い関わりがある。

 

 でも鼓動の記憶ってどんな効果が?

 

 ここからネロはどのように進化するのか?

 

「僕は今回の会談で三つの勢力が手を取り合う事に期待しているよ。」

 

 フィリップは笑う。

 

「そうしたら、もっと大きなことができる。面白い世界にできそうだ。そう考えるだけでゾクゾクする。」

 

「ほう。そうなったら、こっちもそっちと色々できそうだな。」

 

 そうなると研究者としての俺も面白いことになりそうだ。

 

 この世界に希望を与えるのは悪い話しじゃない。

 

「なんか君とは面白い話ができそうな気がする。」

 

「こっちもそう思う。」

 

『同志!!』

 

 がっちりと握手させてもらおう。

 

「頼むからお前らが手を組むな。嫌な予感しかしねえ。」

 

「同感だ。はあ・・・もう。」

 

 ネロと翔太郎が互いにため息をついている。

 

「・・・こっちは仕事が増えそうだ。なんか天界やグレゴリからも依頼がきそうで。この前だってハルト、お前から個人的に依頼があったからな。ほら、その結果だ。」

 

 翔太郎は俺の依頼を達成してくれた。

 

 俺が探しても見つからなかった相手を見つけてくれたのだ。

 

「うん、噂通り、いやそれ以上にいい仕事している。まさか見つけてくれるなんて。報酬は割り増しで口座に振り込む。もちろん、秘密は厳守で頼むよ。」

 

「分かっているって。しかし割り増しって、よほど手詰まりだったんだな。」

 

 俺の記憶の通りならと信じて探した甲斐があった。

 

「まあ、個人的にまた何かあったら力にはなるぜ?医療に詳しい奴も知っているからな。」

 

「秘密厳守のわりには熱いな、君は。だが、その時は頼む。何としても目覚めさせたい。」

 

 すでにこのイッセ―宅では二つの勢力が交流している。

 

「それがハーフボイルドさ。」

 

「だから誰がハーフボイルドだ!!まあ、同僚、いや後輩が出来たのもう嬉しいが。」

 

「そうですかい。はあ・・・もう。あんたらが先輩なんてな。」

 

 イッセ―を中心とした輪がどんどん広がり、そして重なっていく。

 

 これがどこまで広がるのか、俺には想像もできない。

 

 だが、それが確実に俺にとっていい方向に進んでいる。

 

 それだけは間違いなかった。

 

「あっ・・・みなさんお茶です。」

 

 そこにエプロン姿のデネブがやってくる。

 

 お茶と菓子を持ってきてくれたのだ。

 

 彼は家政婦になっている。おせっかいな部分もあるけど、中々有能。

 

 だが、疑問があるとしたら、それをイッセ―達の両親はあっさりと受け入れている点だ。

 

 おかしい。

 

 イマジンって認識阻害の力でも持っているのか?

 

「・・・それとゼノヴィア君。君に伝えたい事がある。」

 

「なんだ?」

 

 フィリップはゼノヴィアにある事実を伝える。

 

「前世は契約しているイマジンはデネブだけのはずだったよね?」

 

「そうだが?」

 

「だが、イマジンのデータ元に作った測定器をみると・・・。」

 

 イマジンという存在を計測する機能をバットショットに搭載したらしい。

 

 カメラ機能付きのメカコウモリみたいなそれもまた色々と改良中。

 

「君からもう二体、イマジンの反応がある。今はまだ眠っているみたいだけど。」

 

「なん・・・だと?」

 

「全然気付かなかったぞ!!」

 

 その結果に驚くゼノヴィアとデネブ。

 

 まだまだグレモリ―眷属の潜在能力は未知数だ。

 

 ここからどのように成長していくのやら。

 

 

 

 

 

 SIDE 朱乃

 

 

 本当にいい経験をさせてもらった。

 

 天道さんとイッセ―君のお父さんの二人の料理人の競演。

 

 技術もそうだけど、ちょっとした工夫もそうだ。

 

 そして、気付いたことだけど、イッセ―君は二人の技を受け継いでいる。

 

 それを指摘すると。

 

 イッセ―君のお父さんから「君はもうそこまでの領域にいる。」と褒めてくれた。

 

 天道さんも同じことを言ってくれたのだ。

 

 私ってそんなレベルかしら?

 

「少なくとも、俺と引けを取らないかと。」

 

 あらら、イッセ―君から褒められた。

 

 悪い気がしない。

 

 料理人として一定水準以上の技術を会得か。あとは自分の道。

 

 私もそろそろ向き合うべきなのかもしれない。

 

 あの時は一人だった。

 

 でも、私はリアスに出会い、そしてそこから多くの仲間達と出会った。

 

 そして今・・・隣にはイッセ―君がいる。

 

 私はもう一人じゃない。

 

 少なくても、私の味方になってくれる人がいる。

 

 私を受け止めてくれる人がいる。

 

 こんな醜い私でも・・・良いっていてくれる人が。

 

「・・・ふふふ。」

 

 そうなると・・・無性に欲しくなってしまうわ。

 

 私はさりげなくイッセ―君の腕に抱きつく。

 

「わわわわわわっ!?朱乃さん!?」

 

 おもっきり胸を当てると、彼は慌てふためく。

 

「ふふふ。」

 

 可愛い反応ね。ああもう・・・たまらない。

 

「イッセ―君。私と浮気してみない。」

 

「えええええぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 イッセ―君が驚いてくれる。ああもう、そそられるわ。

 

「これからじっくりと・・・。」

 

「何しているのかしら?朱乃?」

 

 そんな私達を見て、ついに現れる。

 

「部っ・・・部長!?」

 

 憤怒の様子のリアス。

 

 あれは完璧に嫉妬しているわね。

 

 そのオーラにアギトのイッセ―君が慌てふためいている。

 

 いくら強くても女の嫉妬には敵わないのね。

 

 ふふふ・・・本当に可愛いんだから。

 

「あらリアス。いい機会だから言っておくけど、私も参戦することにしましたわ。」

 

「朱乃!?」

 

「だって・・・こんなに可愛い子を放っておけないもの。」

 

「へっ!?えっ!?」

 

 イッセ―君。私もあなたの夢に貢献してあげますわ。

 

 ふふふ、覚悟してね。

 

 

 

 そんな時であった。

 

「・・・えっ?」

 

 私の中である光景が蘇る。

 

 その男の事と私の過去である手が重なって見えた。

 

 それは母が私を庇って斬られた時の後の記憶。

 

 絶望に膝をつき、意識がもうろうとなり、倒れた私。

 

 体が・・・心がひび割れ、自分が自分で無くなっていく。

 

 そこに斬りかかる男達。

 

 それを助けた四人の背中。

 

 一人は金髪の小柄な女の子。

 

 一人は変わった指輪をした青年。

 

 一人は・・・赤いカブト虫みたいな男。

 

 そして最後の一人は・・・・・・。

 

―――――イッセ―・・・君?

 

・・・それがイッセ―君の手と重なったのだ。

 

 

 

「・・・・・・・。」

 

 茫然としている私はそのまま倒れる。

 

「朱乃!!朱乃!!?」

 

「朱乃さん!?」

 

 倒れる私を抱きとめるイッセ―君。

 

 心配そうに私を見るイッセ―君の顔と手、それが記憶の中に会ったそれと完全に一致する。

 

「しっかりしなさい!!」

 

 それを見て嫉妬していたはずのリアスまでもが心配して声をかけてくる。

 

「どう・・・して・・・。」

 

 どうして、イッセ―君が私の記憶の中にいるの?

 

 それも目の前にいるイッセ―君と同じ姿で。

 

 薄れ行く意識の中、私は疑問と困惑に溢れていた。

 

 私の過去に何があったの・・・?

 

 

 

SIDE アーシア

 

 私は朱乃さんを見てある事に気付きました。

 

「記憶が封印されている?」

 

 それは外部からの力で記憶が閉じていたのだ。

 

「消せないのか?」

 

「私には無理です。かけた本人か、または自力で解かないと。今回の件はその封印の一部を自力で解いてしまった反動だと思います。」

 

「そうか。まあ・・・後は頼む。みんなにも話してくる。」

 

 イッセ―さんはそのまま部屋を後にします。

 

 その背中にごめんなさいといいたいですけど・・・。

 

「そう言うややこしい事情、色々と頼む。事情説明はうまく纏まった時点か話すべき時が来たらでいい。」

 

「・・・はい。必ず説明します。」

 

 イッセ―さんは分かってくれています。

 

 朱乃さんの記憶にかかった封印。

 

 誰がそれをかけたのか、私が知っていることに。

 

「・・・・・・・。」

 

 私はハルトさんを見る。

 

 神様、許してください。

 

 私はみんなに嘘をついています。

 

 どうして朱乃さんに封印がかかっているのか知っています。

 

 でも、その理由故に言えないのです。

 

「すまない。一つ目の封印がもう解けてしまうなんて・・・。」

 

 皆が去った後にハルトさんがお礼を言いながら朱乃さんの手を取ります。

 

「辛いですね・・・。」

 

「ふっ・・・だが、自力で封印が解けそうになっているのはむしろ良い事らしい。それを乗り越えた時に解けるようにしたからと。そう言う意味ではイッセ―には感謝だな。」

 

 何しろ、未来のハルトさんがかけたという無茶苦茶な話、誰も信じません。

 

「そのための指輪は完成している。これを俺はどうやって過去の姉上に使うのかずっとわからないままだった。母上の行方も。」

 

 死にそうになった朱乃さんの母をどこかに連れて行ったという話もあります。

 

 その行方をずっと探し、先ほど見つけたそうですけど・・・。

 

 この矛盾の最大の問題はどうやって時間を超えるのかという事です。

 

 でも、その時間を超える手段が前の事件で分かってしまった。

 

 それがデンライナーなどの時を超える列車。

 

 そこに未来のイッセ―さんと私まで関わっているとなると・・・。

 

 大変ややこしいです。

 

「ライバルも増えましたし。」

 

 朱乃お姉様まで参戦してくるなんて・・・。

 

「・・・・・・それに関してはこっちも頭が痛い。」

 

「それでも幸せって意味ではいいんじゃないの?」

 

 ハルトさんと私の会話に、レイさんが入りこんでくる。

 

「はあ・・・そうなんだけどな。あいつが義兄になるのは少し問題が・・・。」

 

 頭の痛そうなハルトさんとそれをなだめるレイちゃんを見ながら私はドア越しにいる二人に念話を送ります。

 

――――――すみません。事情はまだ話せませんがフォローお願いします。

 

――――しかたないわね。

 

――――まあ、いいぜ。

 

 心配だったのだろう。様子を見に来てくれたキリエさんと巧さんです。

 

―――――キリエさんは巧さんから事情を聞いてください。その程度なら差し支えないと思いますので。

 

―――――お前、そこまで読み取るのか。

 

 フォロー役はこの二人にお願いしよう。

 

 でも、私一人のエゴでここまでしていいのでしょうか?

 

「いや、君は本当に色々と手をまわしてくれている。こっちからしたら感謝してもしきれない。」

 

「それに関しては俺もだ。あんたにはもう・・・頭が上がらん。」

 

 そう言いながら巧さんが堂々と部屋に入ってきます。

 

「それに一人じゃないですよ。」

 

 キリエさんもです。

 

「・・・はあ。フォロー役か?」

 

 ハルトさんもすべて察したようです。

 

「でも、一人で抱える羽目にならずによかった。」

 

 レイちゃんも笑っています。

 

「まだまだ、イッセ―に隠し事が多いな。俺って。」

 

 ハルトさんが苦笑しながら皆に笑いかけます。

 

「違いねえ。まあ、今回はややこしすぎる事情があるって分かっているからマシだ。」

 

 そんな私にもう一匹の相方もやってきます。

 

「ラッセ―。」

 

 私の使い魔である雷のドラゴン。

 

 私を慰めるように甘えてきます。

 

「本当にイッセ―も規格外だが、アーシアちゃんもすごいよ。」

 

「そうでしょうか?」

 

 それを見たハルトさんが感心した様子を見せます。

 

「うん・・・グレゴリのデータベースを見る限りでも、変身していないのにもかかわらず。ここまで多彩で強力な力を持ったアギトはいない。イッセ―とは確実に別の進化を遂げている。本格的な覚醒を果たしたら・・・どうなるのか想像もできない。」

 

 アギトである私。

 

 神様が残してくれた力。

 

 神様はもういないからわかりませんが、私には何となくこの力の意味が分かるような気がします。

 

 イッセ―さんのあの言葉。

 

 それが事実だと私は思えてなりません。

 

「もしかしたら、純粋な意味で神となれるのはアーシアちゃんだったりして。色々と神様の遺志を継いでいそうだし。」

 

 さすがにそれは恐れ多いです。

 

 キリエさんの言葉に私は謙遜した時でした。

 

――――――・・・・けて・・・。

 

「へっ?」

 

――――――誰か・・・たすけて・・・。

 

 私の頭の中に声が聞こえてきたのです。

 

「誰です?」

 

「どうした?アーシアちゃん?」

 

「声が・・・。」

 

―――――誰か・・・。

 

「テレパシー・・・ですか?」

 

 私はその思念に引き寄せられる。

 

「ちょっと行ってきます。」

 

 いつの間にかテレポテーションしてしまうくらいに。

 

 

 

 そして、そこにいたのは・・・。

 

「お願い・・・します。」

 

 超巨大な蛾のような生き物でした。

 

 それがある洞窟の中で倒れていたのです。

 

「あなたは・・・?」

 

 でも、私は彼女に恐怖を抱くことはありませんでした。

 

 アギトの直感みたいなものでしょうか?

 

 それで彼女が守護者であることを本能的に察しました。

 

「私はモスラ。・・・この世界に故在って迷い込み、もうすぐ私は命を落とします。」

 

 その声は穏やかな女性の声。まるでキリエさんみたいな感じがします。

 

 強い意思と優しさを兼ね備えた方の様です。

 

 そのふわふわした毛の生えた体はあちこちボロボロになっており、一部焼き焦げ、羽も穴があいていたりします。

 

 その命を癒すことは私にはできません。

 

 怪我なら癒せますが、もうこの方の寿命が。

 

 それが分かる故に目から涙がこぼれてしまいます。

 

「優しい子。だからこそ・・・ここに来てくれたのですね。」

 

 助けって言っているのに、何もできません。

 

「あなたに、この子をお願いしたい。純粋な心を持つあなたにならこの子を任せることができます。」

 

 傍には巨大な卵があります。

 

「私はもう、この子に力と経験しか残せません。ですが、あなたにならこの子に愛を教えることができるはずです。」

 

 私にあなたの子供を?

 

「ガ―!!」

 

 あれ?ラッセ―?

 

「ふふふ・・・お兄ちゃんになってくれるのですか?」

 

 優しい子ですね。

 

 あれ?あなたが口にしているのって何?

 

 黒い皮膚がついた肉片と金色の鱗がついた肉片・・・。

 

「あっ・・・あなた!それを食べてはいけません!!それは・・・。」

 

 それを見たて、モスラさんが慌てています。

 

「ガ―!?ががががが!?」

 

 それを食べたラッセ―が苦しそうにしています。体が黒く変わったり、金色に変わったり。

 

「ああ・・・あの二体の肉片が私の体についていたばかりに・・・。」

 

 苦しそうにしているラッセ―を見て嘆き悲しみます。

 

 ラッセ―を私は抱きしめます。

 

「大丈夫。あなたは強い子だから・・・。」

 

 すると・・・。光が・・・。

 

 それは神器の光とはまた違う光になって・・・。

 

 それがラッセ―を包み込み・・・。

 

「ガアアアアァァァ!!」

 

 ラッセ―は姿を変えて、私の腕の中で吠えます。

 

 深い蒼から銀色に近い白。目は蒼くなっています。

 

 そして何より、頭が三つになりました。

 

 そしてラッセ―のカードに書かれた種族名が・・・蒼雷龍から変わっています。

 

 えっと・・・白銀の光龍(プラチナ・レイ・ドラゴン)?

 

「あの二体の力を取り込んだというのですか?どちらも取り込もうとして逆に取り込まれるほどだというのに。」

 

 それを見たてモスラさんが驚いています。

 

「・・・これがあなたの力なのですね。総てを調和させる力。なによりも尊き力。」

 

 ですが、この光の本質を見抜いたのか穏やかな声に戻ります。

 

「私の子が、あなたの力になるように。最期にあなたに会えてよかった。私達の希望となるあなたに・・・。」

 

 モスラさんは光となって消えていきます。

 

――――――私の子を・・・お願いします。

 

 その言葉を残して。

 

 光は卵を包み、すぐに消えました。

 

「・・・・・・。」

 

 安らかに眠ってください。

 

 看取る事が出来て良かったです。

 

 突然なことで戸惑っていますけど、私が頑張らないと!!

 

 でも・・・。

 

「どうしましょう・・・。」

 

 目の前にあるのは体育館みたいな大きさの卵。

 

 さすがにこのまま運べません。

 

「う~ん・・・。」

 

「ガ―!!」

 

 その時。私にラッセ―があるイメージを送っていきます。

 

 それは、契約のカード。

 

 私はラッセ―の分とは別にもう一枚もらっています。

 

 なるほど、これを使えば。

 

 私は卵に契約のカードをかざします。

 

 そして、卵は見る見るうちに縮み、掌に収まる程度の大きさになりました。

 

 スーパーの卵よりも流石に大きいですが。

 

「・・・モスラさん。あなたの子供は大切に育てます。」

 

 私はこの場所を覚えておくことにした。

 

 一度訪れた場所はもうテレポテーションで自在に行ける。

 

 もう、私の力はそんなレベルまでに上がっていた。

 

 ここはどこか分かりませんが、大分遠くまで飛ぶ事も出来るようになっています。

 

 飛んでみて私も初めて気付きました。

 

 相当力が上がっていますね。

 

 私もイッセ―さん達のように変身する日が近いのかもしれません。

 

「後でお墓も立てないと。みんなが待っています。帰りましょう、ラッセ―。」

 

「ガ―!!」

 

 これが私の相方の出会い。虹色の守護神と白銀の聖龍王の始まり。

 

 また近い未来に・・・私を悩ませる困ったドラゴンとも契約します。

 

「・・・嫌な未来を見てしまった・・・。」

 

 なんでパンツなんですか。ああ・・・神よ。

 

 軽くめまいがします。

 

 私の試練はまだまだ続きそうです。

 

 

SIDE ポルム。

 

 鋼牙さんのところで色々な事実が分かった。

 

「この世界にまさかアバン先生の書が流れていたなんて・・・。」

 

「お前の師の本なのか。」

 

 この世界に呪文が使われている理由も納得した。

 

 ハドラーだけじゃなく、この本の存在があったからだ。

 

 おかげで魔戒法師達を中心に呪文が広がった。

 

 アバン流刀殺法をサイガや佑斗達が使っていたのも分かるという物だ。

 

 良い機会なので、魔戒法師達が使っている法術も勉強させてもらっている。色々と実戦的な術も多く、参考になる。

 

―――――――たった一日でいくつもの術を使える当たり、相当な才の持ち主だな。

 

 すでに発動のための魔道筆ももらっている。

 

 それなりの才はあるつもりだ。まあ・・・あの世界に行く際に偶然スキャンして取り込んでしまったあれのおかげなのだが。

 

「・・・あなたに聞きたいことがあります。この世界に来た理由の一つとして。」

 

 それはあの世界の皆、そして今は亡き父と母の悲願。

 

「勇者ダイとレオナ姫をずっと探しています。この名前に心当たりは・・・。」

 

 その名前を出した途端。

 

「・・・・・・。」

 

 鋼牙さんは無言。

 

 いや、覚悟していた様子だった。

 

「やはり、その名前が出てきたか。なら付いてきてほしい。」

 

 俺は鋼牙さんに後を付いていく。

 

 

 

 そこは小高い丘の上。そこにあったのは墓であった。

 

 それが答えだったのだ。

 

「そう・・・でしたか。」

 

「助けたかった。だが・・・到着した時にはもう・・・。」

 

 皆の思いは届かなかった。

 

 もう届けることはできない。

 

「お前はダイの仲間だったのか?」

 

「正確には父と母が盟友でした。同じアバンの使徒にして、共に俺達の世界を救ったと。父と母もずっと探してその旅の途中で亡くなりました。」

 

「そう・・・だったのか。」

 

「竜の騎士であるダイさんにこれを託したくて。」

 

 俺は翼からある剣を取り出す。

 

「・・・何だこの剣は。」

 

―――――ほう。凄まじいものだな。

 

 流石が超一流の剣士。見ただけでこの剣の凄さがわかるか。

 

 塚の部分が竜となっている剣。

 

「これはあの世界の神が作りし最強の剣。竜の騎士のための剣です。その名も真魔剛竜剣。それをさらに強くしようと試行錯誤を重ねられた剣です。ダイさんが持っている二つの紋章の力、全開させても耐えられるように。」

 

「竜の騎士か・・・。」

 

 鋼牙さんがその単語に感慨深そうに呟いている。。

 

「もう竜の騎士は途絶えてしまって・・・んん?」

 

 その時、剣が微かに動くのを見た。

 

「・・・この反応。どういうこと?」

 

「この世界にいるからだろう。竜の騎士が。」

 

――――そうだな。

 

「俺はお前の素性を聞いた時。これほど運命を感じた事はなかった。」

 

――――まったくだ。聖剣計画の時といい、これほどの繋がりが深いのだな。お前達の親の縁が息子の代にまで続いている。

 

「その剣を継ぐべき相手がこの世界にいる。お前もよく知っている相手だ。」

 

 どういうことだ?でも、すぐに分かることは・・・。

 

「いるというのですか?この世界に勇者ダイとレオナ姫の子供が。」

 

 あの二人に子供がいる。

 

 そういうことだろう。しかも、それが誰か鋼牙さんは知っている。

 

「ああ。今は俺の息子だがな。」

 

 鋼牙さんの息子?

 

 って、それってまさか!?

 

「サイガだ。あいつがお前の探していた相手。今代の竜の騎士だ。」

 

「・・・・・・・。」

 

 俺はその名を聞いた時、確かに運命という物を感じだ。

 

 あまりに意地悪な神の巡り合わせに流石に言葉を失ってしまった

 

 俺達はこんな深い縁があった。

 

「そう言う事・・・でしたか。」

 

 そうなると色々と納得できる。

 

 あの山脈をふっ飛ばしたのもおそらく・・・。

 

「探したよ~。鋼牙お義父様。」

 

 そこに非常にノリの軽い美少女がやってくる。

 

「頼むから父は止めてくれ。」

 

―――その前のお前さんのほうが圧倒的に年上じゃないか。

 

「にゃはははは、まあいいのだ。」

 

 先ほどまでのシリアスな空気をぶち壊してやってきたのは・・・。

 

「誰この美少女?」

 

「・・・あれ?この子って前の事件の・・・。」

 

「こいつはセラフォルー・レヴァイアタン。ダンテと同じ五大魔王の一人だ。」

 

 冥界の五大魔王の一人でしたか!!

 

「あれ?でもなんでそんなすごい人が、鋼牙さんをお義父様と?」

 

 その質問に鋼牙さんは大変渋い顔する。

 

――――代わりに俺が説明してやろう。かなり愉快だぞ?

 

 そして、ザルバにより一通りの事情を聴く。

 

 フフフフ、あいつめ。隅に置けない。

 

「へえ・・・ちょうどいいや!!アドバイザーとして協力をお願いしたいの!!」

 

「ええ・・・任せてください。」

 

 なんかこの方とは仲良くなれそうな気がする。

 

 この後イッセ―とある打ち合わせを行う事になる。ええ・・・だったらこっちが思い切りプロデュースしてやる。

 

 ふははははははははははははははははははははは!!

 

「お前、あのハルトという男とは別の意味で魔王だな。」

 

 魔王。ふふふふ・・・魔法をたしなむ者として、それはむしろ褒め言葉なのだよ!!

 

 ハルト君もそう言っていた。そう言った意味でも彼とも意気投合していたりする。

 

 それに、実際、魔王でもあるし。

 

「ヨッシャ。だったらこういう計画はどうかな?」

 

「いいねえ。あとサイガの性格からするなら・・・。」

 

 本当に面白くなってきた。

 

 あとでソーナ会長とイッセ―とも打ち合わせしないと。

 

「・・・もう意気投合しているか。」

 

――――サイガの坊ちゃん。完全に積みだな。

 

 我が運命の盟友のために、面白おかしく一肌脱いでやる!!

 

 

 

SIDE イッセ―

 

 今サイガは家にはいない。

 

 ホラーが出現したらしく、轟竜と共に出ているのだ。

 

 その隙を狙い、俺達は集結している。

 

 サイガを除いた俺の幼馴染連中全員に、グレモリ―眷属全員がだ。

 

 例の計画をいよいよ実行に移すために。

 

「みなには伝えてあると思うが、サイガにはいよいよ責任をとって貰う。」

 

 そう・・・サイガ以外全員があの事実を知っているのだ。

 

 徐々に広めていき、皆の賛同をついに得られた。

 

「僕も同志の幸せのために協力する。ええそりゃもう全力で!!」

 

 木場を抑えたのは非常に大きい。

 

 ユウナ、いい仕事している。

 

「サイガ君。そんな罪深い子だったなんて。これは何とかしないと。」

 

 キリエさんも完璧に抑えたぜ。

 

「小猫から聞いた時はびっくりしたにゃ。罪作りもいいところにゃ。」

 

「ああ。だが、あいつも身を固めてもいい頃合いかもしれん。あいつはそう言ったところは鈍感過ぎる。良い機会だ。」

 

 小猫ちゃんのおかげで鬼夫婦も賛成に回った。

 

「まさか魔王様に惚れられるなんてな。」

 

「不幸なのか幸運なのか分からなくなるよね。」

 

 ゼノヴィアと良太郎は比較的良識的な見解。

 

 でも、協力はしてくれる。

 

「計画の発動時期は追って知らせるらしい。・・・あのポルムが全面プロデュースする。」

 

『!!!?』

 

 あいつの叡智はもう皆が知るところだ。

 

 愉快犯で、確信犯的ないたずら好きなのも含めてだ。

 

「どうも例の魔王様と偶然会って、意気投合したらしい。それで全面協力するって。」

 

 正直説明に困っていたところだ。でも、むしろどうしてこんな面白い事を黙っていたのかと、言っていたくらいだし。

 

 サイガ。もうお前の包囲網は完成しているぞ。

 

 実は轟竜もグルだし。

 

クレアとドライクが二人で説得。

 

 その魔王の契約している相手を将来の嫁相手と紹介する形で買収済み。

 

 轟竜がサイガの帰る前に知らせてくれるので安心して会議が開ける。

 

「皆よろしく頼むわ。」

 

 部長の言葉に、皆は頷く。

 

「ダンテ様からも同じ様な言葉は頂いていますわ。ふふふふ・・・。」

 

 ユウナもやる気だ。

 

 さあ、サイガ。

 

 お前の罪を数える時はもうすぐだぜ。

 

 

SIDE 渡

 

 僕はある取引材料を元にグレイフィアさんとサーゼクス様に会いに行っていた。

 

「ほう・・・これはありがたい。」

 

「いえいえ。」

 

 それは授業参観のお知らせです。

 

 リアス部長、ごめんなさい。

 

 ある情報を得るために、あえて鬼になります。

 

「そして、その対価を君には与えたよ。」

 

「はい。これはリアス部長には内緒にしてほしいことです。」

 

「・・・そうだね。でも、すまなかった。君の身内を悪魔にしてしまって・・・。」

 

 サーゼクス様の言葉を僕は止める。

 

「いえ。命を救ってくれた事に感謝しても、恨む道理はありません。よく生きてくれたと感謝しています。でも・・・。」

 

「・・・リアスの成長は著しい。君の教えや、カ―ミラの存在が大きいのだろう。少し見ない内に体も、そして心も強くなった。まさかケルベロスを蹴り倒すなんて、すごい子になったものだよ。その功績で、彼が封印が解ける。その縁で会いにいけるだろう。」

 

 やっとか。

 

 兄さん。やっと弟を見つける事が出来ます。

 

 引きこもりになっているのは予想外だけど。

 

「ようやく彼にサガの主になってもらえる。」

 

 僕の周りに飛び回るのはサガ―ク。

 

『・・・・・・・。』

 

 それを見たサーゼクス様は固まっています。

 

「ねえ。君はリアスの眷属をどう思うかな?」

 

「へっ?」

 

 どうもサーゼクス様は部長の眷属に不安を持っているらしい。

 

 すごく頼りになるメンツだと思うけど?

 

「・・・はっきり言うと、魔王眷属すら超える面々ばかりなのだよ。アギト二人を初め、この世界の異常な連中ばかりが集まってきたような気がする。」

 

 なるほど。確かに異常なメンツばかりですね。

 

「特にイッセ―君の関係する人物はどれも異常だ。彼を中心にまだ集まってきそうで。」

 

 それって僕も含まれますよね。

 

「君の弟君も僧侶の変異駒でようやく転生できたほどの潜在能力を秘めている。それも通常の僧侶の駒の三倍以上の価値をもってだ。」

 

 さっ、三倍以上!?

 

「今でも十分危険な力を持っているけど、それ以上の何かを秘めている。その答えの手がかりがようやく分かった気がするよ。まさか彼が、ファンガイアの王族の一員だったとは。」

 

「・・・・・・。」

 

 あの子がそこまでの潜在能力を?一体何を秘めている?

 

「ドラゴンは強き物を引き寄せる。赤龍帝、そしてアギトのイッセ―はその傾向が強い。我もそれに引き寄せられた。」

 

 あれ?オ―フィスちゃんもいつの間にか来ている。

 

『・・・・・・・。』

 

 そして、その姿をみたサーゼクス様とグレイフィアさんが目を点にして驚いている?

 

「おかげで渡に会えた。」

 

 そう言いながら腕に抱きついてくる。うん・・・甘えられているのか。

 

「・・・はあ。君がいるとは聞いていたけど、実際に会うとびっくりするよ。」

 

「我の契約者。故に誰も渡さない。」

 

「・・・契約!?」

 

――――クレアったら、よりによってオ―フィスに契約のカードを渡したのよ。

 

――――その結果が、この異常事態か。

 

 アルファさんとゴルトさんまで現れる。

 

「きっ、君は世界を塗り替えるつもりかい?おっと、正体はばらしたらだめだったね。」

 

 僕はオ―フィスちゃんの正体をまだ知らない。

 

 いや、あえて知ろうとしていないのだ。

 

 それを彼女自身の口から聞く日を待っている。

 

 まだそのための準備中だと。

 

 それまで待っている。

 

 それを受け入れた瞬間、初めて彼女の満開の笑顔を見た。

 

 正直見惚れる位の満開の笑顔。

 

 その破壊力を察してほしい。

 

 その結果、前よりも懐くようになった。

 

――――――あなた・・・近い将来覚悟した方がいいかも。

 

「そうですね。」

 

 アルファさんが何を言いたいのか、それが分からないほど僕は鈍感ではない。

 

 オ―フィスちゃんがこっちに向けてくる感情が何かも察している。

 

 本人はまだ自覚が無いみたいだけど。

 

 自覚した時・・・僕もいい加減あれを乗り越えるべきなのかもしれない。

 

 あの辛い過去を。

 

「失礼するよ。」

 

「あなた様に呼ばれるなんて光栄としか言えないね。」

 

 狙ったように現れたのはアシュカ・ベルゼブブ様とフィリップ君。

 

 緑の数式と共に唐突に現れたのだ。

 

「フィリップ君のおかげでデータ転送による移動ができて楽でいいよ。」

 

 一体、今の冥界ってどんな技術水準になっているの?

 

「すまない。オ―フィス様を借りて行くよ。」

 

「行ってくる。夕飯までには戻る。」

 

 そう言ってオ―フィスちゃんは姿を消す。

 

「続きはラボで。」

 

「そっちはゆっくりしてくれたまえ。」

 

「くれぐれも失礼が無いようにお願いしますね!!下手なことをしたら冥界が滅びます。」

 

 グレイフィアさんが必死に念を押している。

 

 オ―フィスちゃんってどんだけすごいの?

 

「さて・・・、会談の場所も決まったところで、授業参観の打ち合わせをしたい。リアスはどんな授業予定なのかね?カメラもそれに合わせて・・・。」

 

 やれやれ。

 

 こうやって個人的な交流を持っていると分かるけど、サーゼクス様はシスコンだ。

 

 それもすごいレベルの。

 

 こちらの兄と仲良くできそうなくらいだよ。

 

 

 

 

 SIDE フィリップ

 

「我決めた。あの組織から離脱する。」

 

「例の組織の事?」

 

 ラボでオ―フィスはそう告げる。

 

 彼女を象徴として担ぎあげている例の組織、そこから降りるというのだ。

 

「だが、我を慕ってくる者がいる。皆と共に離脱したい。そのために全知の龍神と魔王にお願いがある。」

 

 その言葉にオ―フィスちゃんは黒い蛇を作り出す。

 

「これ・・・無限の力を秘めし蛇。これを使って我の駒を作ってほしい。」

 

「君の駒?悪魔に転生させるための?」

 

「いや・・・我の眷属に転生させるための駒がほしい。この駒で。」

 

 彼女の手に現れたのはチェスではなく将棋の駒だった。

 

『!!?』

 

 つまりオ―フィスちゃんは・・・。

 

「我・・・眷属を持つ。」

 

「ほう、将棋を元になんて面白い事を考えるね。王将の駒を悪魔の駒でいうクイーンにするつもりかい?」

 

 オ―フィスが想定している駒は、王将を悪魔の駒であるところの女王と同じ存在とした形にしたいとのことだ。

 

 なんとなくだけど、その王の駒を誰に使いたいのかわかる。

 

 いじらしいね。

 

「でも、無限の力を解析されるのじゃ・・・。」

 

「いやアシュカ。それは難しい。何しろ無限の体現者はあくまでも彼女だ。解析できても再現はまず無理だろう。彼女の存在その物を解析しないとね。」

 

「なるほど。だが、そんな事をすれば・・・。」

 

 僕の中で最悪の未来が思い浮かぶ。

 

「僕としては黄金のキバを敵に回す真似はしたくない。いや、下手したらイッセ―達全員が敵に回るかもね。そうなったらどうかな?僕の相棒も黙っていないし。」

 

 アシュカもそのあたりは分かっているみたいだ。

 

 そんな事すれば冥界は間違いなく滅ぶ。

 

 遊び心と良心のバランス。そのあたりはきちんとしている。

 

「うむ・・・その無限の力を持つ蛇を必要な数だけ提供してほしい。それを加工する形で駒を提供するよ。しかし、悪魔じゃなくてドラゴンに転生か。それはそれで面白いよ。成功したらタンニーンなどで他のタイプの転生駒を試作してみようかな?」

 

 それでも新しい転生システムを作るのにわくわくしている。

 

「フィリップ君。そっちもゾクゾクしているじゃないか。」

 

 当然だ。面白い試みだからね。

 

「あと、無限に関してはこれでどう?」

 

「これって・・・。」

 

 オ―フィスの手に出現した空のガイアメモリ。それに彼女が力を込めた結果・・・メモリが変化する。

 

―――――インフィニティー!!

 

「力になればと思う。」

 

 無限の力を持つガイアメモリへと。

 

「・・・・・・・。」

 

 アシュカが驚きに目を丸くしている光景は新鮮だ。

 

 いや、僕も同じだ。

 

「・・・分かった。大切にさせてもらうよ。これは切り札になる。でもこのままじゃきっとメモリの出力がでかすぎて使えない。そのために色々と調整しないと・・・。」

 

 アシュカはそれを受け取る。とても大切そうに。

 

「・・・冥界の技術がまた上がりそうだ。」

 

 無限の記憶。

 

 確かに切り札だ。

 

「君たちはとんでもない事を企んでいるね。」

 

 そこで現れたのはサーゼクスだ。渡君との会談を終え、こっちに来たようだ。

 

 サーゼクスはオ―フィスに用があるらしい。

 

「一連の事件の黒幕。その象徴として君は担ぎ込まれていたよね?」

 

 その言葉にオ―フィスは首を横に振る。

 

「いや、別の存在が象徴になった。我、それに備えないといけない。」

 

『!!?』

 

「それは異世界の悪魔。我と同等か、それをしのぐ力を持つ魔女。時間と結界みたいな形で空間を操り、無数の白いぬいぐるみみたいな使い魔をしたがえている事までは分かる。正体までは分からない。でも・・・。」

 

 その言葉で、僕はこのメンツの中でいち早くある異常に気付く。

 

「まどかと似た感じの力だった。」

 

『!!?』

 

 僕はもう一つの規格外を誰よりも早く知ることになる。

 

 まどか。

 

 サーゼクスとアシュカは気付いていないけど、それはイッセ―君の母親の名前だ。

 

 それってどういう事だい?

 

 イッセ―君の家族。

 

 オ―フィスはとっくに気付いていたある事に僕も漸く気付くことになる。

 

 

 

 

 SIDE ???

 

 レストランの閉店時間になっても俺達は語らっていた。

 

 久しぶりに友との語らいも悪くないからだ。

 

「これからさらに苛烈になるぞ。アギトの力を持つ者が四人・・・いや、五人現れたのだからな。」

 

「はははは・・・・きっちり僕も含まれるのね。」

 

「当然だ。お前がこの世界で最も進化したアギトだからな。いや、むしろ因子を撒いた異世界の神の後釜と言っていい存在か?お前の進化の到達のおかげで、異世界のアギト騒動は一段落ついた。人間その物が新しいステージに立つという形でな。その気になれば権力などは思いのまま、まさに新たな神として人を統べる立場にもなれただろうに、お前はそれに興味がないというのが笑える。」

 

 目の前の男は神の座をむざむざ捨てた大バカ者だ。

 

 だが、それがあいつらしい。

 

「そんな翔一君と対等に話せるあなたも大概だと思うよ?」

 

 そこに彼の妻―まどかも現れる。

 

「だが、そのおかげで彼女と出会えた。」

 

「お前にとってはそれが最大の幸運か。」

 

「よくいう。君も手伝ってくれたのに?」

 

 二人の出会いの物語に俺ははかなり深く関わっている。

 

 二人の結婚の時、仲人もやっていたと知ったらイッセ―の奴がどんな顔をすることやら。

 

 そして、そのおかげである問題が起きている事もだ。

 

「悪いがまだ見つからない。君の大親友は。」

 

「そう・・・。」

 

 彼女を救うために、彼女の力を奪った存在。

 

 それでもまどかにとって彼女が友なのには変わらないらしい。

 

「またせた。ん?お前・・・だれ?」

 

 そこにもう一人現れる。

 

 無限の龍神であるオ―フィス。

 

 彼女は俺の方を見て首をかしげる。

 

「彼はイッセ―君の師匠だよ。そして超越者。時間を司る神速の神と言える存在かな?」

 

 そして、その隣にはフィリップまで。

 

「さて・・・僕も仮にも神なので、この事態に付いて説明を貰えないかな?気付いたという事は資格あるだろ?もっとも、オ―フィスが迂闊に口を滑らせたせいでもあるけど。」

 

 ついに全知の龍神も気付いたか。

 

「・・・しまった。」

 

 オ―フィスは無表情だが、己の失態に気付く。

 

 その仕草が可愛いのは認める。

 

 だが、まどかよ。それを見てたまらず抱きつくな。

 

 だって可愛いだもんて視線で訴えても困る。

 

「検索でも流石に分からないよね?」

 

「他の皆も順調に進化を重ねて行けば気付くはずだ。特にアーシアちゃんとネロ君はその類の能力は極めて高い。進化の著しいイッセ―もそうだし、近いうちに気付かれる。」

 

「あの子もどんどん強くなっている。そして、ついに神の後を継ぐって言った。」

 

 まどかは我が子の成長に感慨深そうにしている。

 

「皮肉だよね。普通の子として平和に生きて欲しいのに、あの子はこの世界のアギトの因子を得てしまった。元々異世界のアギトの因子を持っていたというのに。」

 

「・・・彼は因子を二重に持っているということか?」

 

 彼はただのアギトじゃない。異なる世界のアギトの因子を持つ変異体。

 

「異様なまでに早い進化も頷ける。それほどまでに濃いアギトの因子を持てばそうなる。ましてや、異世界の神の血まで受け継いでいるとは。力が発現するまで普通の人間と変わらなかったから誰も気づかれない。」

 

「私は元々人間だから。翔一君もそうだし、だから普通の子としてあの子は生まれたの。」

 

 フィリップは気付く。イッセ―の進化の秘密に。

 

「体が普通の人間だから、強過ぎる力にあの子がそれに耐えられない恐れがあった。だから力を封じていたけど・・・。」

 

 まどかはさりげなくイッセ―の力を抑制していた。

 

「それを悪魔の駒が解決してしまった。」

 

 でも、その抑制も意味がなさない。体がそれに耐えられるように転生機能を利用して飛躍的に進化してしまった。

 

「うん。あの子の進化はもう止まらない。でも・・・。」

 

 母親として何を不安に思っているのかは明らかだ。

 

 強過ぎる力はそれだけで不幸になる。

 

「安心したまえ。彼は一人じゃない。」

 

 それをフィリップは会えて否定する。

 

「彼自身も一人で大したことできないことを理解している。だが・・・。」

 

 フィリップは別の事を危惧している。それは俺も一緒だ。

 

「それ故に、その仲間達を失った後の彼の逆鱗が怖い。アギトの力が暴走するとなると・・・それにあの神器には覇龍(ジャガーノートドライブ)がある。それと呼応したら・・・。」

 

 下手したら冥界が滅ぶ。それほどの脅威をイッセ―は秘めている。

 

「その時は俺が止めるさ。あいつの師として。」

 

 彼が怒りで暴走する恐れがある。そうなった時、俺はあいつを倒す形になっても全力で止めるだろう。

 

 他でもないあいつ自身が滅びなんて望まないはずだからだ。

 

「その上で、あいつを怒らせた奴を叩きのめす。」

 

「その時は僕も駈けつけていると思うよ。」

 

 翔一まできたら、相手が可哀そうだな。だが、仕方ない。

 

 あいつの怒りはおそらくそう言った類だ。俺達が怒る理由にはなる程の。

 

「そうだね。私もどうなるのか・・・うっ・・・。」

 

 そこでまどかの様子が変わる。

 

 口元を抑え、そして苦しそうにしたのだ。

 

「・・・えっ?」

 

 翔一もそこである事を感じ取ったようだ。

 

 俺はその類の力はないが、察する事くらいはできる。

 

「おや?」

 

「おめでとうと言わせてくれ。」

 

 フィリップも、オ―フィスも感じ取ったらしい。

 

「ははは・・・そうか。今度は娘か。」

 

「うん。一誠・・・お兄ちゃんになるよ。」

 

 アギト、いや、神の一族がまた一席増えることになる。

 

「だが・・・何かの竜の神器を持っている。イッセーと同じ何かを。」

 

「・・・しかも神器付きか。」

 

 しかも、神器が付いているのは確定付きで。

 

「そうか。」

 

「この子は平和に生きて欲しいけど・・・。」

 

 神の一族と言える彼らの不安は尽きない。

 

「平和を願うのは当たり前の事だ。」

 

 彼は神であっても人でもある。そして普通の家族なのだ。

 

 当たり前のように父と母は息子を心配し、想いやっている。

 

 そんな、暖かい家族。

 

「だからこそ、俺が・・・いや、俺達がいる。今度の夏休み、俺達があいつにさらなる修行を付けやる。アザゼルの奴にも相談してある。」

 

「・・・そっちって堕天使の総督とも交流があるの?可笑しくもないけど。」

 

 夏休み、イッセ―、覚悟しておけ。

 

 俺達先輩ライダーと強力なドラゴン達がお前を徹底的に鍛えてやるからな。

 

 

 

 

 




 色々な事実が明らかになる話。

 ここから停止教室のヴァンパイアを始めたいと思います。

 まだまだポルムのスペックは明らかにしませんが・・・彼は恐ろしいスペックを秘めています。

 ではまた会いましょう!!


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魔王様達の訪問です。

 大変お待たせしました。

 母は・・・・かなり遅くなってしまいましたが更新させてもらいます。

 授業参観、とんでもないことになります。

 まずはドライクさんの開き直りからどうぞ。


SIDE イッセ―

 

 アギトですが一応グレモリ―眷属として、悪魔の仕事もやっている俺。

 

 前日は本当に大変だった。

 

 何故って・・・美少女三人から一斉に迫られたのですから!!

 

 全裸のリアス部長とアーシア、ユウナの三人にな!!

 

 成長途中のアーシアのおっぱいも最高です!!

 

 部長の立派なおっぱいに、ユウナも・・・小さかったあの子がモデル顔負けのレベルまでに立派になって。

 

 でも三人だと・・・ぐぼっ!?

 

 しかもそこに遊びに来ていた朱乃さんまで加わって・・・俺、鼻血を噴き出して倒れました。

 

 そりゃもう・・・このまま死んでも悔いなし。

 

 いや、悔いはあり過ぎる。

 

 まだ部長達とエッチしていないのだから!!

 

 だが、まだ・・・未熟だ。みんなを手玉に取るだけの度量を欲しいものだ。

 

「相棒、お前は子宝の神にでもなるつもりか?」

 

 ドライクはため息をつきながら突っ込む。

 

 俺の隣でデフォルメ化しながらある本を読んでいる。

 

 タイトルは・・・子供の育て方についての本のあれこれだ。

 

 デフォルメドラゴンが子育ての本を読む。

 

 それだけで、もう色々と語らう事ができそうだ。

 

「・・・・・・。」

 

 一週間程うろたえていたドライクさん。

 

 だが、何故か一念発起したようで・・・。

 

「名前をどうしたものか。白いのに負けない良い名前をつけないと。」

 

 父親としてアルビオンに負けんと闘志を燃やし始めたのだ。

 

 きっかけは父さんの言葉。

 

「子供は宝。」

 

 黄昏ていたドライクと父さんが遭遇してしまったのだ。

 

 学校から帰ってきた俺達がその光景に固まっている傍で、父さんは何気なくそれを受け入れ、彼の相談を聞いていたらしい。

 

「お前の父上は立派な方だ。子供って・・・素晴らしい物なのだな。」

 

 そして、子供を受け入れることにした。

 

「強い子になってほしい、いや、強い子になるぞ。何しろ俺の子だからな!!」

 

 そこからドライグが堂々と家の中でクレアと共に飛び回り、父さんとヤマタ、轟竜達と晩酌を楽しむ光景が日常になってしまった。

 

 父さん・・・なんでドライグ達の事を驚かないの?

 

 元々、天然なのは分かっている。でも、あっさり受け入れすぎだろ!!

 

 まあ、ヤマタの作る酒が美味しすぎるのは確かだ。俺も一口飲み、その素晴らしさに言葉が出なかったくらいだぜ。

 

 ヤマタが知り合いを呼びたいと言っていたけど、何かすごく嫌な予感がする。

 

 アギトの直感が告げているんだ。

 

 しかもヤマタはドラゴンだ。来るのは同じドラゴンである可能性が高い。

 

 なんかとんでもないドラゴンが来そうな気がするもん!!龍王クラスが着そうで!!

 

 ドライクはドライクでアルビオンを呼んで飲んでもらいたいって・・・。

 

 喧嘩していた二天龍が共に酒を飲む姿、なんだよそれ!?

 

 そして、父さんと共に父親という物を語り合う光景を想像するとシュ―ルすぎる!!

 

 オ―フィスまで加わる事があってもう・・・。

 

 キリエさんが止めようとしたけど、ドラゴンだから問題ないって皆が一斉に言う者だから言えなくなったし。

 

 俺はそこで初めてオ―フィスがドラゴンだと知ったけどな。

 

 ヤマタの酒、恐るべし。龍殺しと神殺し、総督殺しに魔王殺し、英雄殺しと色々と名前の付く酒を開発している。

 

・・・・・・なんか殺すって字が付く名前の酒が多いのは気のせいかな?

 

 どんな威力を持っているのですか?

 

 一度魔王殺しを知り合いの魔王様達に飲ませてやりたいよ!!

 

 龍殺しはドラゴンどもが美味しく飲んで酔っ払っていやがったし。

 

 天龍達が簡単に酔うほどの力はすごいのかもしれない。

 

 父さんがそれを平然と飲んでいたのはすごく疑問だし!!

 

 そう言えばアーシアが契約していたラッセ―がとんでもない事になって皆驚いていたな。

 

 ラッセ―。ライザ―の前にアーシアが契約を果たした蒼雷龍のオスドラゴン。

 

 前代未聞とガイドに言われるくらい、すごい存在をアーシアは使い魔にしていた。

 

 ふっ・・・こっちはスラ太郎とか触手丸を仲間にしたかったけど・・・

 

 駄目だったぜ。せっかくの同志だったのにな。アギトの本能が、あいつらには脅威だったらしく、逃げられてしまった。

 

 ネロとアーシアもスラ太郎に襲われることはなかったぜ。

 

 部長と朱乃さん、小猫ちゃん、黒歌とキリエさんは犠牲になったがな。

 

 そのあと・・・文字通り鬼になった鋼兄が拳の衝撃波で、めちゃくちゃキレたネロが悪魔の腕で殴りつけ・・・そのショックで消し飛ばした。

 

 あれは怖かった。本当に怖かった。

 

 怒りだけで地震って起きるもんだね。

 

 そのあと鼻血出して鋼兄倒れたのはお約束ということで。

 

 今はトルネがいるから問題は無いが・・・使い魔ゲットできなかったのは残念だった。

 

 

 

 

 そのラッセ―は首が三つに、それでいて体の色も変わった。

 

 それだけじゃなくてこう・・・何か種として根本的な何かが変わった様な気がする。

 

 家のドラゴン達の動揺は半端じゃなかったのを覚えている。

 

―――――――将来、龍神になるかもしれない。

 

 オ―フィスちゃんまで目を丸くしていたのは相当だよね?

 

―――――なんだ?一体何があったらそこまでの力を?天龍クラスは確実な素質をそいつは秘めているぞ?

 

 ドライクが成長したらとんでもない存在になるって言っていたけど・・・。

 

 それともう一体、アーシアが何かと契約した。

 

 モスラと言われる種族らしいけど・・・まだ卵の状態で契約したのだ。

 

 だが、それもまたとんでもない存在だったぜ。

 

 本来の大きさより小さい状態の卵を見せてくれたアーシア。

 

 実際どれくらい大きいのか見るために、召喚してみたら現れたのは・・・体育館よりでかい何かの卵だったからな!!

 

 部長を初めとするグレモリ―眷属一同と俺の幼馴染一同、それにドラゴン共が揃って言葉を失ったのは仕方のない事だぜ。

 

 俺だって空いた口がふさがらなかった。

 

 アーシア。一体どんな存在と契約したの!?

 

 俺からしたら大怪獣の卵にしか見えないって!!

 

 

 

 そんな愉快な相棒と家族を家に残しつつ。俺は今日も契約の依頼のあった場所へ。

 

「一緒に仕事出来て嬉しい。」

 

 産休中のクレアの代わりに今回はドラグブラッカ―が一緒だ。

 

 俺と契約している者として、本格的に悪魔の仕事を教えることになったのだ。

 

 小柄な少女の姿で一緒にいるぜ。背格好は大体、小猫ちゃんと一緒くらいか?

 

 姿は以前とは違い銀色の髪に蒼いリボンをした和風の女の子だ。

 

 今回は黒に金色の花が書かれた着物を着用。

 

 クレアも人間の姿になれるのかな?

 

「よろしくな!!ブランカ!」

 

 そんな彼女に俺は愛称を送っている。せっかくだ。クレアに負けない愛称になったともいたいけど・・・。

 

「うっ・・・うん。」

 

 それに対して反応は薄い。

 

 顔は少し赤らめているようすだけど?

 

 クレアは、自分の妹のことを大変シャイだと言っていたけど・・・。

 

 最近俺はアーシアと同じようにテレポテ―ションができるようになりました。魔法の類は全く駄目でしたが・・・アギトでよかった。ある程度補えるぜ!!

 

 ドレスブレイクも発動強化!!!乗り物も、女が乗っているのなら服ごと破砕します。

 

 フッ・・・・・・なんか無駄に強くなった気がする。

 

 それでも魔法の才能は全くなしと言えるのも悲しい。ホイミ、キアリー、ザメハなどの回復にメラ系とヒャド系は辛うじて契約できたけど、それ以外は全くできず。

 

 しかも契約したのに、全然使う事が出来ず。

 

 手を燃やしたり、凍らせることしかできないのが悲しいです。

 

「おっ!?びっくりしたな。もう現れたのか?」

 

 黒い髪に、少し悪そうな雰囲気のある男だ。木場と同じイケメンな二十代くらいの外国人。

 

 最も本当に悪党っぽい雰囲気がある。それでも俺は問題はないと思っているぜ。

 

「そっちのお嬢さんは付き添いかい?」

 

「うん。」

 

 何となくだけど・・・悪じゃないのはわかるんだ。

 

 アギトとしての直感みたいなものか?最も油断は出来ねえけど。

 

 後、この人って・・・。

 

「今日は一緒にゲームしようぜ!!もう一人も後で来るが、先に三人で始めようぜ!!」

 

 この人に俺は何度も呼び出されている。

 

 夜中にパンを買いに行かさせるなど、本当に色々なことでな。

 

 テレポテーションの力もそれに対応したいと思って、発動したような物だったし。

 

 その際の対価は本当にすごい。

 

 高価な絵など、対価を逸脱した物ばかりですので。

 

 今回はレーシングゲームだ!!有名なマ○オのあれです。

 

 手加減はしませんよ?

 

「うっ・・・妨害が読まれた!?」

 

「あんたの悪意はすでに読めてんだよ!!」

 

 亀の甲羅を華麗にかわす俺。誘導性がある赤色をかわすために他のレーサーには犠牲になってもらったぜ。

 

「うお・・・やっぱりアギトってすげえな。」

 

「・・・・・へっ?」

 

 今この方何といいました?

 

「アギトの研究は流石に進んでいない。だが、ゲームで発動できるなんて反則だろうが。その進化段階なら、さすがに俺の事は少し分かるかな?」

 

「・・・人間じゃない事は分かる。堕天使なのか?」

 

 この人は堕天使だ。レイちゃんと同じ気配がするので何となく分かる。

 

 それもコカビエルすら超えるような厖大な力を持った・・・。

 

「ふははははは・・・それで俺の契約に答えてくれたのかい?」

 

「意図が知りたかっただけだぜって!?」

 

 その会話の隙に、あの人が追い抜いてきた。

 

「やってくれる。」

 

「隙あり。」

 

『おおおい!?』

 

 集中力をそいだ隙に追い越してくるなんて・・・中々せこい真似を使ってくれるじゃないですか!!

 

 そのあと、ブランカの奴が何気なく追い越してきやがったが。

 

「その譲ちゃんやるな!」

 

「ゲームの類は何もしてこなかったけど・・・面白い。」

 

 なんかブランカの目が輝いている。こいつ・・・ゲーマーの素質ありか?

 

「ははは・・・さすが無双龍ってところかい。まあ、今回は息子の大切な友達がどんな人が知りたかったのが大きいぜ。ありがとうな。巧と友達になってくれてよ。」

 

「・・・・・・。」

 

 俺はキノコによる爆発的なダッシュをしながらも驚いている。

 

 だって、その単語が何を意味しているところが分かってしまったからだ。

 

 背中に六対の黒い翼が現れる。

 

 コカビエルよりも多い数の翼だ。

 

 三人が同着でゴールしながら、俺は唖然としていた。

 

「改めてよろしくな。赤龍帝にしてアギトのイッセ―君に無双龍のドラグブラッカ―ちゃん。俺はアザゼル。グレゴリの総督をさせてもらっている。」

 

 にやりといたずらを成功させたような笑みを浮かべるアザゼル。

 

「・・・親父なにしてんだ?」

 

 そこで巧が部屋に入ってくる。

 

「しかもイッセ―にブランカまでいるのか?ああ・・・最近のイッセ―の契約相手って、親父だったのかい!!」

 

 間違いないようだ。巧が親父と呼ぶ相手はこの世で一人しかいねえ。

 

「ふはははは!!まあいいじゃねか。それでどうだお前もやらないか?」

 

「はあ・・・いいぜ。だが来ているのは俺だけじゃねえぞ?」

 

「お前何やっている?」

 

 現れたのはいつか現れたハドラ―さん!?

 

「どうしてあんたまで来てる?」

 

「巧が美味しい酒を持ってきたと聞いて、それを飲んでみたいと思ってな。」

 

 手には・・・ヤマタ特性の酒だと!?

 

「確かにそれはドライク達が絶賛していますよ。」

 

「姉さんもベタ褒めの一品。」

 

 俺とブランカのコメントにアザゼルは笑みを浮かべる。

 

「うおお!?そりゃいい。お前からヤマタノオロチがうまい酒を造っているという話は聞いていたからな。一度飲んでみたかったんだ。」

 

「日本酒ベースらしい。」

 

「ほう。つまみは・・・。」

 

「だったら俺が作ってやる。ブランカ、手伝ってくれ。」

 

 ヤマタの酒に見合うようなつまみ。実は密かに研究中だった。

 

 堕天使の総督なら相当舌も肥えていそうだ。いい意見がでそうだぜ。

 

「んん?巧・・・お前の友達がすごく燃えているぞ?」

 

 ふふふふ・・・楽しみだ。本当に楽しみだ。

 

「料理に関してはイッセ―は妥協しない。期待していいぜ?」

 

 言ってくれるねえ、巧。

 

 こうなったらグレゴリの総督様とハドラ―さんがヤマタの酒を楽しんでもらえるようなモンと作ってやろうじゃねえか!!

 

「冷蔵庫の中身・・・好きに使わせてもらうぞ。それを今回の対価にする。」

 

「ふはははははははは!!こりゃいい。足を運んだ甲斐はありそうでなりよりだ!!」

 

「違いないなハドラ―!!こりゃいい夜になりそうだ!!」

 

「その前にこっちも聞きたい事があるんだけどな・・・アザゼル?」

 

『!?』

 

 そこにもう一人参上。

 

「報告のために本部にいったら、シェムハザから事情を聞いてびっくりしたよ。ブランカから聞かないと何処にいるのかわからなかった。まさかここにやってきているなんてねえ。」

 

 グレゴリの大幹部・・・ハルトさんです!!

 

「連絡しておいた。」

 

 ブランカ、お前いつの間に。

 

「げえェェェ・・・お前まで来てんのかい!!」

 

 アザゼルが引いている。うわ・・・ハルト。お前って・・・。

 

「はあ・・・まあ今回はお仕置きは無し。意図は分かっているし、あなたのやり方は正しい。イッセ―に接触したい理由は分かっている。」

 

 だが、今回は大人しいぞ?

 

「・・・・・・わりぃな。どうしても会っておきたかったんだよ。」

 

 苦笑するアザゼルに対して、ハルトはため息をついている。

 

「何、それだけの事をやろうとしているのはわかる。」

 

 お前って本当に大幹部なんだな。アザゼルと対等に話すなんて。

 

「上手に立ち回ってくれ。せっかくチャンスを作ったんだからそれを生かしてくれないと、本当に怒るぞ?報告は後でするよ。」

 

 ハルトとアザゼルの間で何やら不思議な会話を・・・。

 

「おう。その鍵となるイッセ―とは今のうちに交流を暖めさせてもらうぜ。」

 

「はあ・・・。」

 

 あれ?俺っていつの間にかすごい立場になっていませんか?

 

「それよりも、宴会だ宴会!!いいつまみ・・・期待しているぜ?」

 

 ・・・仕方ない。

 

 こうなったら全力でやってやるぜ!!

 

 

SIDE リアス

 

「あなたねえ・・・。」

 

 私はイッセ―から聞いた事の顛末に頭を抱えたくなった。

 

 彼はよりによってアザゼルと契約していたのだ。

 

 感想欄には・・・。

 

 最高のつまみをありがとう!!素晴らしい宴会になったぜ!!またよろしく頼むわ。もしよかったらグレゴリの専属料理人になってくれても・・・。

 

 と・・・絶賛されていたのだ。

 

「うちの親父がすまん。」

 

 巧君は代わりに謝ってくれる。

 

「あなたのせいではないわ。」

 

「でも、アザゼルの事だ。色々と彼は考えているからな。茶目っけが相当故に頭が痛い部分も多々ある。まあ、暴走しそうになったら止めるから安心しろ。」

 

『・・・・・・。』

 

 ハルト君の言葉に私達は何と言ったらいいのか分からなくなるわ。

 

 アザゼルを止めるって、あなた何者なの!?

 

「しかし、何を企んているのかは・・・ハルトと巧は知っているのね?」

 

『一応。』

 

「この二人が把握しているのなら俺も安心だ。」

 

 いやいや、イッセ―。どうしてそこで無条件に信じられるの?

 

「ハルト君はグレゴリの最強のストッパー。巧君は王子様だけあって、グレゴリの良心でもありますから。」

 

『・・・ははははは・・・はあ・・・何でうちの連中は・・・。』

 

 二人ともなんか黒いオーラを出しながら落ち込んでいるわね。

 

「うちの上司達って、相当濃い方々ばかりで。コカビエルのような戦争狂もいますし他にももう・・・。」

 

 レイナ―レがため息をついている?

 

 グレゴリの幹部ってどんだけすごいのかしら?おもにキャラ的な意味で。

 

「弦太郎達と会わせてやりたいぜ。・・・・・・最高のカオスが見られる。」

 

 巧の表情に陰り!?

 

「・・・堕天した事を楽しんでいるのですね。」

 

 アーシアのコメントがすごい。

 

「ああ、すっごく堪能しているぞ。あいつらは。」

 

 巧のコメント・・・覚えておきましょう。

 

「アザゼルも相変わらずのようだ。彼の紹介で個人的な交流はあるが、また会ってみたいものだよ。」

 

 そして、そこに唐突に現れたのは・・・。

 

 お兄様!?

 

 

SIDE イッセ―

 

 サーゼクス様の突然の登場に皆が唖然となっている。

 

「どっ・・・どうしてお兄様がここに?」

 

 そして、現れた理由は、授業参観のチラシであった。

 

「ぐっ・・・グレイフィア!!?」

 

「ある方のタレこみのおかげで大切なイベントを逃さずに済みました。」

 

「ああ・・・もう。誰なの!?誰が漏らしたの。」

 

 部長の視線がアーシアに向けられる。

 

 アーシアは苦笑しながらある方を見ていました。

 

「・・・・・・・。」

 

 それは渡です。

 

「・・・・・・渡君?あなたなのね。」

 

 部長の言葉に、渡も気付いた様子だ。

 

 アーシアの苦笑がこっちに向けられていることに・

 

「へっ、あっ!?アアアッ・・・アーシアちゃん!!」

 

「あ・・・しまった。」

 

 部長。洞察力すごいですね。アーシアを見て、それだけで犯人を見つけるなんて。

 

 って・・・アーシアは嘘発見器じゃないですって!!

 

「本当にすごい眷属達ばかりで困るわ。便利なのも含めてね。」

 

 部長・・・だいぶ俺達に慣れてきましたよね。

 

「リアス・・・たくましくなって。」

 

 その前にどうして渡がそんな情報を?

 

「まあまあ、彼とは個人的にも交流を持つ友なのだ。許してやってくれ。」

 

「何時の間ににお兄様と仲良くなっているのよ。」

 

「色々と外交的な問題もあったら、話し合っているうちに。いや、すごいコネを得てしまった。」

 

 そう言えば渡ってファンガイアの王族でもあったよな。

 

 何時の間に交渉をしていた?

 

 そして、すごい成果を上げていないか?

 

 こいつ、このまま外交官になれるぞ。

 

「君の兄様も招待しているから安心したまえ。会談の会場もここだし。」

 

『はい!?』

 

 今すごい事を聞いたぞ?

 

 三大勢力の会談をこの学校でやるのかい!!

 

「あの・・・まさかですよ?大牙兄さんも来るのですか?」

 

「張り切っていたよ。例の事と一緒に伝えたら、是非にと。しかも仕事としても行けるので、スケジュールにも優しいって。」

 

「はあ・・・そうか。兄さんも来るのか。」

 

 おい・・・。それってとんでもない事だよな!!

 

「なあ・・・お前の兄って、確かファンガイアのキングだよな?」

 

「そうだけど?」

 

 別勢力の王様がやってくるのかい!!

 

「ああそうだ。鋼ちん、あんたの義兄弟から伝言にゃ。」

 

「あいつからか?」

 

 それと鋼兄の義兄弟?

 

「嵐だ。本場の忍びをやっている。それでなんと?」

 

 また紹介してくれるのかな?

 

「覚悟しておくにゃ。・・・母様と伯父様、伯母様が来る。その護衛に自分も来ると。」

 

「・・・そうか。はあ・・・。」

 

 鋼兄が憂鬱そうにしているぞ?

 

「伯父上・・・羽目を外さなければいいのだが。頼むから母上が井戸にこもるような馬鹿な真似だけはしないでほしい。伯母上も人見知りだから心配だ。」

 

『・・・・・・。』

 

 そのコメントに付いてあれ?他のみんなが固まっている。

 

「ねっ・・・ねえ。本当にあなたの家族がやってくるの?」

 

 部長はそうだし。

 

「こりゃ・・・すごい方までくるもんだ。ハハハハは・・・。」

 

「前代未問の授業参観になりそうですね。」

 

 サーゼクス様もグレイフィアさんも驚いているぞ?

 

「アマテラス様に、スサノオ様、ツクヨミ様まで来るというのですか!?」

 

 朱乃さんが目を丸くしているって・・・はい!?

 

 それってすごく有名な神様じゃないですか!!

 

「日本神話最高神達が・・・授業参観にやってくるってどんだけよ!!」

 

「おっ・・・恐れ多い。」

 

「小猫、安心するにゃ。すぐになれる。」

 

 小猫ちゃん達妖怪からしたら想像を絶する相手だろうな。

 

 授業参観・・・これは荒れるぞ。

 

「・・・そう言えばダンテもナイトを連れてやってくると言っていたか。漸く眷族にできた二人の兵士という事でダンテが会わせたいと必死に彼を説得したらしい。」

 

 スパーダ眷属の騎士ってどんな人だろう?

 

「スパーダ眷属の良心と言われるくらいの方だよ。」

 

 スパーダ眷属の良心か・・・・・・あれ?

 

「あの、スパーダ眷属ってどんな方々なのですか?」

 

 そのナイトが良心なら他の方々は?

 

 ユウナもそうだし。

 

「・・・・・・。」

 

 あれ?サーゼクス様が苦笑い?

 

「・・・・・・・。」

 

 グレイフィアさんは目を伏せている?

 

「ルシファー眷属が最強ならスパーダ眷属は最凶と言われているわ。特にもう一人の僧侶と戦車の過激さはもう、ダンテ様すら持てあます位。それを姉と慕うユウナさんも似た類だわ。彼女の師匠もすごいドSだから・・・仕方ないのだろうけど。」

 

「なんで妹がそんな過激な性格に・・・うう・・・。一体誰なんですか!?ユウナの師匠って!!」

 

「魔女って言えば分かるかしら?あの最強の魔女・・・ベヨネッタよ。」

 

『!?』

 

 魔女?その単語に聞き覚えはありませんが?

 

「そっ・・・そんなぁぁぁぁぁぁぁ!?あの・・・ベヨネッタが師匠だなんて。」

 

「ははは、聞いた時にはびっくりしたけど、あれは強くなって当然だわ。」

 

 部長のコメントと木場の嘆きがすごい。スパーダ眷属って何者!?

 

 そしてその師匠も気になる。

 

 そんな無茶苦茶な連中にネロと巧が加わるんだぞ!?

 

「クレド殿には苦労をかけていますね。あの二人・・・ユウナさんも一緒になって色々とぶっ壊してくれますから。過激に素敵にもう・・・。ユウナさんはまだ乙女で恥じらいがあるからマシだけど。」

 

 グレイフィアさんが遠い目をしている。

 

「俺・・・とんでもない連中の所の眷属になったんじゃないのか?」

 

 絶望した様子の巧。

 

「・・・プッ。」

 

 其れを見てハルトは噴き出す。

 

「お前・・・この事知っていたな。」

 

「ああ。翔太郎からじっくりときいていたからな。もうそれはすごい活躍だそうだよ。それこそ悪魔や天使、堕天使はおろか、神すら泣きだす程に。」

 

「絶対にそれって誉めていないよな!!」

 

「ああ・・・ユウナがそんな・・・ああ!!」

 

 ハルトはこの事を知っていたらしい。同じ魔王眷属である翔太郎から聞いていたのか。

 

 それと木場、嘆きが深すぎる。そんなにショックなのか?

 

 この場にキリエさんとネロがいなくて良かった。あの二人がユウナと共に今回の夕食の当番で先に帰って準備をしているのだ。

 

 あの二人は本当に仲の良い。一見すると夫婦にしか見えないくらいに。

 

 其れをユウナは軽くからかっているのだけど。

 

 実際に思いも伝えあった仲故だが、昔からの付き合いも長い故に今更接し方は変わらないらしい。

 

 まあ・・・時々あいつらは無意識のうちにいちゃついていやがるがな。

 

 ネロがこの事実を知って自棄になる恐れがあるし。

 

 まあ・・・あいつはあいつで無茶苦茶だけどな!!

 

「鋼牙殿も警備の下見も兼ねてやってくると。」

 

「アザゼルも来る気満々だ。息子の授業を見逃すわけにはいかねえってなあ。」

 

 サーゼクス様とハルトは続けて報告してくれる。

 

「父様まで!?」

 

「親父も来るのか。」

 

「ついでだから授業参観にも顔を見せると。」

 

「はあ・・・でも、少し嬉しいかも。父様・・・忙しかったから中々きてくれなかったからなあ。」

 

 嬉しそうな様子のサイガ。魔戒騎士って、それだけハードらしい。

 

 ホラーの脅威はいつ来るか分からない。

 

「あの・・・もしかして・・・レヴァイアタン様も来ますか?」

 

「楽しみにしていたよ。」

 

 この学校の授業参観、親御さんがとんでなさすぎる!!

 

 あっ・・・親という事で大切な方を忘れていました。

 

 俺は良太郎の肩を持ち、小声でたずねる。

 

「なあ・・・もしかしてハナさんも来るの?」

 

 あの娘を大切にしている方が見逃すわけがないだろう。

 

「・・・・・・行く気満々だったよ。」

 

 ・・・・・・授業参観中に事件が起きないことを祈る。

 

 授業参観中に過剰な連中が集まってきやがる。うわ・・・。

 

――――おっと・・・そこから先は内緒で。サーゼクス様。セラフォル―殿から聞いていますので。

 

 そこで何故かポルムから念話で待ったがかかる。

 

 部長が出したあの方の名前・・・ってレヴァイアタン様までくるのか?

 

「彼女より伝言がある。授業参観日が勝負の時だとね。」

 

『・・・・・・・・。』

 

 レヴァイアタン様が直々にそういいますか。

 

「?」

 

 サイガだけは首をかしげる。

 

 他の皆は視線だけで分かりあっています。

 

 もうすぐか・・・はあ。

 

 時は近い。皆・・・覚悟はできていますよ。

 

「それと君たちが新しくリアスの眷属になった・・・。」

 

「ゼノヴィアです。」

 

「良太郎です。」

 

 ゼノヴィアと良太郎の二人はそろって自己紹介。

 

―――――それで・・・。

 

 そんなタイミングで良太郎に紅いイマジンが入りこみ。

 

「俺・・・参上!!」

 

 と、立派な見栄を切った後にいう。・

 

「俺がモモタタロス。言っておくが俺は最初っからクライマックス・・・」

 

――――先輩次々!!

 

 今度は蒼。

 

「初めまして、僕がウラタロス。そっちの美しいお嬢さん・・・僕に釣られて。」

 

 グレイフィアさんをナンパしようとする。

 

――――今度はこっちや!!

 

 今度は黄色。

 

 四股を踏んでいう。

 

「キンタロス。俺に強さにお前は泣い・・・」

 

―――くまちゃん今度は僕だよ!!

 

「泣けるでぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 次は紫。

 

「僕はリュウタロス。へえ・・・この人がリアスの兄ちゃんなんだ・・・。」

 

――――どれ・・・なら私も。

 

 最期は白。

 

「・・・降臨。満を持して。」

 

『・・・・・・・・。』

 

「ジ―クという。高貴な方々。よろしく頼む。」

 

――――だあああお前は邪魔すんな!!

 

 そして、また赤が入る。

 

「そんな感じだ。まあ・・・楽しんでいくぜ。」

 

「俺もついでに・・・。」

 

 最後にゼノヴィアの隣にデネブが。

 

「デネブです。ゼノヴィアの事をよろしくお願いします。あのこれはお近づきの印のデネブキャンディ―。」

 

「だあああお前は!!」

 

 それをドロップキックで止めるゼノヴィア。

 

 吹っ飛ぶデネブ。

 

『・・・・・・・。』

 

 こいつら・・・魔王の前だというのに最初っから全開だな。

 

「・・・・・・リアス。ずいぶん愉快な子を眷属にしたね。」

 

「・・・はい。」

 

 そして、何となくだけど苦労を察してくれたのだろう。

 

「これを超えれば、より器が大きくなると思いなさい。」

 

 何よりもそのサーゼクス様の言葉が優しく感じた。

 

 

 

 

 そして、サーゼクス様達は家で泊ることになった。

 

 部屋ならいくらでも余っていますし。

 

「・・・さぞ、君の家は魔境になっているのだろうね。」

 

「ははは・・・はい。」

 

 イマジンが家政婦になり、ドラゴン共が寛いでいる時点でねえ。

 

 それに車庫では喋るバイクが二体・・・いや、もう一体増えたか。

 

「さて・・・早速だが、あれはなんだい?」

 

 そのもう一体が今、庭にいる。

 

 それは一見すると普通のバイクが三台いるように見える。

 

 一台は俺の相棒であるトルネ。

 

 もう一台はネロの相棒であるレイダ―。

 

「・・・むむむむ・・・。」

 

 もう一体は巧の相棒。グレゴリの最新技術で作られたバイク。

 

 その名はオートバジンというらしい。

 

 古代遺産にギアが使っていたバイクのデータがあり、それを元にアザゼル達が自分たちの技術をふんだんに投入して作ったらしい。

 

 電子音と共にそれは変形する。

 

 人型にだ。

 

「あいつ何やっているんだ。」

 

 巧がその光景を見てぼやくが、流石グレゴリの最新技術。

 

 自立稼働するだけでもすごいのに人型に変形するなんて一味も二味も違う。

 

 だが、あれってバイクというカテゴリーに納めていい物かね?

 

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「すっ・・・すげえ。変形した!?」

 

 俺の相棒共がその光景を尊敬の眼差しで見ている。

 

「・・・・・・。」

 

 電子音で二人に語りかけるオートバジン。

 

「できるのかな?私にも。」

 

「うっ・・・うん。やってみたい。」

 

「お前らな。」

 

 そこに轟竜までやってきた。

 

「スピードの次は人型変形か?」

 

「・・・・・・。」

 

 オートバジンも呆れた様子だ。言葉は電子音で分かりにくいけど、仕草が下手な人間よりも豊かだ。何を思っているのか十分伝わる。

 

 どうも困っている様子らしい。相当懐いるようで。

 

「・・・こいつらままだ子供みたいなものだ。」

 

「・・・・・・。」

 

「ああ。お前もこいつらの保護者役を頼む。相当やんちゃな連中だ。」

 

「・・・・・。」

 

「お前とはいい酒が飲めそうだ。だが負けぬぞ。」

 

「・・・・・・。」

 

 オートバジンが何故かファイティングポーズだと!?

 

「いい度胸だ。機械なのに熱い奴だ!!」

 

 そして、何故か轟竜達と会話が成立しているのが謎だ。

 

 しかもお互いに闘志を燃やし合っている。

 

「よし・・・出来るような気がした。」

 

「うん。」

 

 あれ?あいつらの身体が光って・・・。

 

―――――トランスフォーム!!

 

 人型になった・・・だと!?

 

 バイクの前面を胴体にする形で二体とも人型になった。

 

 現れた頭部は何故かトルネはツインテール。

 

 レイダ―は普通に垂らしているけど。

 

『・・・・・・。』

 

 轟竜とオートバジンは固まる。

 

『・・・・・・。』

 

 俺達も当然固まる。

 

「やったーーー!!」

 

「これでさらに戦略が幅が広がる!!」

 

 おい・・・。確かにトルネは変形しましたよ?

 

 でも、この変形は想定外だ。

 

「・・・・・・お前達は何処に行くつもりだ?」

 

「・・・・・・。」

 

「そうだ。ブランカお姉ちゃんに教えてもらったあれもできる。」

 

「そうそう。今なら出来るかも!!これでもっと色々な事ができる。」

 

ブランカが教えたって・・・お前何を教えた!?

 

「確かに・・・でも手足の感覚がまだ完全じゃない。人型に慣れてからした方がいい。」

 

 いつの間にか現れたブランカが二人をたしなめている。

 

『!?』

 

 突然現れたブランカに轟竜とオートバジンは驚いているけど、トルネとレイダ―は全く驚いていない。

 

 いや~我が相棒ながら大物だわ。

 

『はーい。』

 

 二人ともそれに素直に従ってバイクに戻っているよ。

 

「すまぬ。俺達にも教えてくれ。」

 

「・・・・・・。」

 

「こいつもストッパーがいるので教えて欲しいと言っている。」

 

 一体何を教えようとしているの!?

 

「秘密。でも面白いことになる・・・ふふふふ。」

 

 おい!!ブランカ!!!お前なんか黒いぞ!!

 

『・・・・・・。』

 

 魔王様が固まっているぞ。

 

「お兄様。グレイフィア。これがこの家の日常よ。この程度で驚いたら多分、精神が持たないかと。」

 

「・・・・・・そうか。リアスがたくましくなった理由が分かる気がする。」

 

「かなりクレイジーですね。」

 

 部長、この程度のことなら受け流せるようになっていますね。

 

「おーい。サーゼクスとグレイフィアも来ていたのか。」

 

 そこに・・・ダンテ様まで登場ですかい!!

 

 あれ?そこにもう一人誰かがいる。

 

 キリエさんと同じ栗色の髪に髭を生やした男。

 

 なんだかすごく固そうな方です。腰に下げた剣は・・・あれ?なんでバイクのアクセルみたいなレバ―がついているのですか?

 

それに、なんかキリエさんと似た感じがするぞ?

 

「クレド殿。」

 

 へっ?この人がスパーダ眷属の良心?

 

「よろしく頼む。スパーダ眷属の騎士・・・クレドだ。」

 

「元々ある教団で騎士団長をしていてな。思いのほか優秀で助かっているぜ。」

 

「だったらあなたももう少しちゃんと働いてください!!本来なら私はこんな事をしている場合じゃないのに・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

 そんなクレドを巧は唖然と見ている。

 

 そして、すぐに憐れみの視線を向けたのだ。

 

「あんた・・・苦労してんだな。」

 

「お前は・・・。」

 

「俺は巧だ。つい最近兵士になった・・・。」

 

「・・・そうか。そうか・・・よかった。本当に良かった!!」

 

 クレドが巧を見て安堵のため息をつく。

 

 そして、少し大げさだが、巧の手をとって喜んだのだ。

 

「やっとまともな奴が来てくれた!ユウナもあれで過激なところがあるからな。ダンテ様は新しい眷属の事を何も教えてくれない。兵士がどんな奴か知らないが、兵士がお前のようなまともな奴なら本当に大歓迎だ!!」

 

 同じスパーダ眷属のユウナだが、あれもあれでかなりやらかす。彼女は完全なSだ。

 

 おかげで朱乃さんと交流を始めてもう・・・。

 

 夏休み・・・朱乃さんにユウナが自分の師匠を是非紹介したいって言っていたよ。

 

 何か凄まじく嫌な予感がする。

 

「できる事があったら言ってくれ。いくらでも協力してやる。こう見えて、キャラの濃い連中の相手は慣れている。」

 

「おお・・・口調こそはぶっきらぼうだがお前の優しさが身にしみる・・・うう。」

 

 クレドさんの瞳から涙が・・・。

 

 相当苦労しているのですね。

 

 なんか最凶と言われるスパーダ眷属に会うのが怖くなってきたよ。

 

 しかし、このクレドさんはネロがもう一人の兵士ってこと知らないんだな。

 

 あいつは、普段はまともだけどキレたらかなり過激だぞ。しかも無茶苦茶強いというおまけ付きだ。

 

「ははは・・・それよりも中に入ろうじゃないか。」

 

 サーゼクス様が家に入ろうとすると。

 

「一誠、どうしたの?」

 

 玄関の扉を開けて、外面は二十前後くらいの男が出てきたのだ。

 

 人の良さそうな笑みが特徴の彼。

 

 俺はその彼の事をよく知っている。

 

 何しろ生まれてからの付き合いですので。

 

「ほら。電話で言っていた部長の兄さん達。」

 

「ああ・・・どうも。兵藤翔一です。」

 

「こちらこそ、サーゼクスです。何時も妹がお世話になっているようで。しかし・・・いい弟を持っているようで。」

 

 サーゼクス様は早速勘違いしてくれた。

 

 いや、ある意味当然の認識だろう。

 

「いや~息子の事をそんな風に言ってくれるなんて嬉しいです。」

 

『はい・・・・・・・息子!?』

 

「はははははは・・・。」

 

 でも、ところがどっこい。彼・・・兵藤翔一はれっきとした俺の父さんだ。

 

「父さん。意地が悪い。」

 

 その反応が楽しんでいる辺り、意外とおちゃめだ。

 

「・・・兄様。私達も味わったわ。」

 

 似たようなリアクションを部長達もしている。

 

「Oh・・・流石に驚いたぜ。」

 

「これは何と・・・若々しい。」

 

 ダンテ様もクレドさんも見事に驚かせることができたぜ!!そう言った意味では大成功だ。

 

 だが・・・。

 

 まだここで終わりじゃない。

 

 むしろ本番はここからだ。

 

「さあさあどうぞ。」

 

 父さんが家に案内していく。

 

 そして、玄関を開けるとそこに・・・桃色の髪をした小さな女の子がいた。

 

 そう・・・彼女こそが大本命。

 

「あら?この方々は?」

 

 一見すると中学生にしか見えないだろうな。

 

「・・・えっと、初めまして、イッセ―君の妹さんですか?」

 

 サーゼクス様がその女の子に話しかけている。

 

 うん・・・普通そう思う。

 

『二ヤニヤニヤ・・・。』

 

 ああ・・・部長達も一緒に笑っている。

 

「おい。何となくオチが見えてきたぞ。」

 

 ダンテ様はどうもオチを見切ったらしい。

 

「・・・やっぱりみんな同じような問いかけをするよね。」

 

 苦笑いを浮かべる女の子。

 

「初めまして、兵藤まどかと言います。一誠の母です。」

 

『・・・・・・。』

 

 そして、にこやかに強烈な爆弾を投下してくる。

 

「はは・・・・・そうですか?」

 

「はっ・・・はあ・・・。」

 

 うん。グレイフィアさんも目を点にしている。

 

 それはそうだろう。

 

『・・・・・・・すみません。今なんと言いましたか!?』

 

 そして、二人が揃って問い直す。

 

「一誠の母・・・まどかです。」

 

 俺の妹に見えるけど、れっきとして俺の母さんだ。

 

「しかも、今実は妊娠しております。」

 

『・・・・・・・・はい!?』

 

 でも、そこで俺も予想しなかった爆弾を投下してきた。

 

「かっ・・・母さん。妊娠って?」

 

「また一か月だけど、イッセ―、あなたは兄ちゃんになるのよ。いい機会だし。」

 

「・・・・・・。」

 

 俺・・・この場合なんてリアクションをとればいいのだろう。

 

 何も・・・何も言葉が出ない。

 

 その前によりによってなんでタイミングで言ってくれるの!?

 

――――――兄か。フッ・・・お前が大人になったら共にいい酒が飲めそうだ。

 

 ドライグが二ヒルに笑う。

 

「流石、まどかさん。私達を唖然とさせるのは一流だわ。」

 

 部長のため息にみんな同意している。

 

「ふふふ・・・驚いた?私の勘だけど、今度は女の子よ。」

 

「うっ・・・うん。」

 

 まさか、この歳で兄になるのか?しかも妹になるって・・・。まあ、母さんや父さんのこういった直感は間違いなく当たる。

 

この二人の息子をやっていれば其れは間違いないって分かる。

 

でも、妹ゲ―はやったことがあるけど、リアルに妹ができるなんて・・・。

 

 きっと、母さん似の可愛い妹になる。

 

「本当に経産婦だったとは・・・見た目からはそんなの全然分からないのに。」

 

「・・・流石に不意を突かれた。」

 

「仕方ないわよ。私だって初めてこの家に来た時は本当に驚いたもの。若々しすぎる父親と幼妻としか思えない母親だし。」

 

 この家にいる皆はこの洗礼を受けている。

 

 まさか魔王様二人とグレイフィアさんにそれをやらかすなんて思いもしなかったけど。

 

 幼馴染達は昔の冒険やこの家に遊びに行く過程で免疫はできている。

 

 まあ・・・昔と全く変わっていないことには驚いていたけどな。

 

「ほう・・・。だが、今度はこっちが驚かせる番かな?」

 

 あれ?ダンテ様が不敵な笑みを浮かべていますよ。

 

「・・・あっ・・・ああ。」

 

「んん?なんか騒がしいな。」

 

「もうサーゼクス様が来たみたいね。ダンテ様も来たのかな?」

 

 その騒ぎを聞きつけてネロとキリエさんがリビングよりやってくる。

 

 二人は先に料理などの準備をしてくれていたのだ。

 

「はあ・・・まったくいきなりだ。ダンテも来るなら来るって・・・。」

 

「そうそうクレド。こいつがもう一人の兵士だ。」

 

『・・・・・・・・。』

 

 ダンテが意地悪そうにネロを紹介する。

 

「ねっ・・・ネロ?」

 

「クレド・・・どうしてあんたが?」

 

 ネロと、クレドが固まっている。

 

 あれ?二人とも知り合い?

 

「兄・・・さん?」

 

 一番驚いているのはキリエさんだ。

 

 しかも・・・兄さんだと!?

 

『・・・・・・・。』

 

「・・・・・・ダンテ様。あなたは本当に意地が悪い。」

 

 クレドは頭痛がするのか眉間を抑える。

 

「どっ・・・どうしてあんたが生きて・・・って・・・悪魔の駒か!?」

 

「いや~驚かせっぱなしも癪だったからな。意趣返しにはなったか?」

 

 ダンテはいたずらが成功したのか会心の笑みを浮かべる。

 

「パクパクパクパクパクパクパクパク・・・。」

 

 一方、キリエさんは口をパクパクさせ・・・その後。

 

「きゅ~・・・・。」

 

「キッ・・・キリエ!?」

 

 可愛らしい声と共にそのまま倒れた。それをネロが抱きとめる。

 

「キリエ!?」

 

 クレドさんも慌てて上がり、キリエに駆け寄る。

 

「う~ん。」

 

 完全に目を回している。

 

『・・・・・・・・。』

 

 何が、どうなっているの?

 

 誰か説明をお願いします!!

 

 

 

 




 ついに登場できました。

 実は生きていたキリエの兄、クレド。

 スパーダ眷属の良心にして全魔王眷属の中で断トツの苦労人(オイ!!)

 ここからお泊りの話に入ります。


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魔王様達とのかたらいです。

 復活第一弾

 兵藤家での魔王様達との宴会が始まります。


 side イッセー

 

 我が家のリビングで俺達は魔王サーゼクス様とダンテ様と一緒に食事をしています。

 

「・・・本当に美味しい。なるほど・・・。」

 

「あの方の弟子なだけはある。いや、あの方とは別の道を進んでいる故の美味しさなのですね。」

 

 グレイフィアさんも一緒に味わっているのは恐れ多い。

 

「そう言えばこのメイドさんは?」

 

「彼女は僕の奥さんでね。」

 

『!?』

 

 なんですと?ルシファー眷属の女王が奥さん!?

 

「まったくもう・・・。御冗談を。」

 

 そんな事を言ったサーゼクス様の頬をつねりあげるグレイフィアさん。

 

「あらあら?照れているのかしら?」

 

 アルファさんが現れる。冗談で済ませようとしたのに、問屋を下ろさない。

 

「照れていません!!」

 

 少し顔を赤らめるグレイフィアさん。マジでサーゼクス様の奥さんだったの!?

 

 そんなグレイフィアさんのからかうようにゴルトさんも現れます。

 

「何を言う。あれだけドラマチックな恋愛をしたお前達だ。普段の夫婦漫才も面白いし、プライベートは新婚ほやほやのように・・・ごばられげっ!?」

 

 言葉はそこで止まりました。

 

「ふん!!」

 

 華麗なグレイフィアさんの回し蹴りによってゴルトさんがその言葉ごと吹っ飛んでしまったからです。

 

「最強のミラーモンスターが蹴り飛ばされる光景が見られるなんてね。」

 

 クレアはすっかり呆れかえっている。

 

「やれやれ。」

 

「メイドで奥さんなんだ!!へえへえへえへえ・・・。」

 

 母さんはこういった話題が大好きだもんな。すごい喰い付きようだ。

 

「どんな経緯で知り合ったの!?ドラマチックな恋愛って!?」

 

「語るも涙、聞くも涙だぜ・・・。本当に俺も大変だった。」

 

「ダンテ様もその馴れ初めに関わっていますからねえ。いや・・・何度聞いてもあこがれます。」

 

「そうですね。」

 

 朱乃さんとユウナさんの会話が弾む。この二人は本当に気が合うな。

 

「確か天道の奴もそうだったじゃねえか。あいつもお前ら二人との馴れ初めに俺と一緒に色々と関わって・・・」

 

「ダンテ、そこで彼の名前を出すのは不味いよ。だって・・・弟子がいるのだし。」

 

「そうだった。お前はあいつの弟子だったな。ははははは!!」

 

 ダンテ様が笑うけど、俺は、別に不思議でもなんでもないと思っている。

 

「そうでしたか。師匠がねえ。」

 

 年齢不詳の天道師匠。仙人など、様々な理由で人間止めてもおかしくないもん。

 

「流石師匠。」

 

『まちなさい!!それですませていいの!?』

 

 他のみんなが突っ込むけど、俺からしたらなんとなくやらかしても問題ないと思っている。

 

「あら?そっちもなんですか?」

 

「私達も天道さんが馴れ初めに関わっていて。天道さんに結婚式の仲人までやってもらったのですよ。」

 

『・・・・・・・。』

 

 はい、そこで母さんの爆弾発言が来た~!!

 

 あまりの破壊力に皆が固まっている。

 

 俺もこれは流石に予想外過ぎる。

 

『・・・・・・・・。』

 

 師匠・・・何でうちの親の恋愛にも関わっているんですか。

 

 そうなると俺が生まれたの、師匠のおかげになっちまう!!

 

「彼を知っているって、あなた方は一体・・・。」

 

 サーゼクス様は戸惑いながらも真剣な表情で父さんと母さんを見るが・・・。

 

「おいおい。それは後にしようぜ。あいつの知り合い繋がりができただけだ。」

 

 ダンテ様が酒を片手にうまくそれを制する。

 

「それに、あいつを交えて話した方が面白そうだ。」

 

「それもそうか。彼の関係者ならなおさら。」

 

「・・・なんかとんでもない地雷を見つけた様な気がする。」

 

 グレイフィアさんが冷や汗を流しながら告げる。

 

 何で父さん、母さんが地雷なの?

 

「では、共通の友人を持つ者同士、仲良くやりましょう。」

 

「そうさせてもらうよ。彼の人を見る目は間違いない。何しろ。」

 

『天の道を行き、総てを司る男だから。』

 

 サーゼクス様と父さんの声が重なる。

 

「分かっているじゃないか!!」

 

「そちらこそはははははは・・・今日は飲みましょう!!」

 

「こうなったら朝まで騒ぐぞ!!」

 

 なんかサーゼクス様とダンテ様、父さんと意気投合しちゃった!!

 

 さらにギアを上げてきたぞ!!

 

「・・・羽目を外さないでくださいよ。」

 

「大丈夫だよ。翔一君は酒に強いから。」

 

 心配するグレイフィアに対して母さんは優しく諭す。

 

 でも、グレイフィアさんはそんな母さんをマジマジと見る。

 

「・・・・・・しかし本当に若い。どうしたらそんな若さを?」

 

 グレイフィアさん。母さんの場合は若さというのもなんか可笑しいですよ。

 

 この場合は幼いといった方がいいのでは?

 

「う~ん・・・どうしてかな?それよりもそっちにも子供はいるの?」

 

「はい。息子が一人います。しかも許嫁がついています。」

 

「許嫁!?」

 

 生まれついてのリア充っていうことか!?

 

「その方はダンテ様の愛娘です。」

 

 しかもダンテ様の娘なの!?

 

「それだけ仲がいいのですよ。もうこのままお前ら結婚してしまえ!!ってあの父親二人がやけくそで決めてしまうほどに。」

 

『はーはははははははは・・・・・・・はあ、なんでこうなったの。』

 

「呆れかえるほどですよね。」

 

「呆れるってものじゃないぜ。あの二人のいちゃつきに俺達を含め何人砂糖を吐いたか。」

 

「君の娘と出会ったのはもう運命としか言えない。はははは・・・はあ・・・。」

 

 グレイフィアさんのコメントに魔王様二人は馬鹿みたいに笑った後にため息。

 

「確かに・・・あの二人は仲良いわ。あのままの仲で大人になっても一緒にいるのが容易に想像できるくらいに。」

 

 どんだけ仲がいいの。

 

 部長が遠い目をしながら、そんな事を言うなんて。

 

「そういう許嫁なら問題なしだよ。よかったじゃないの!!あっ、でも・・・年頃になったら逆に色々と二人は大変そうだね。」

 

「わかりますか!!実はそこを心配していまして。私の息子は天然で、あちらの娘さんはませているというか・・・意外と腹黒く・・・。」

 

「すごい独占欲をみせていると?」

 

「そうなんです。おまけにダンテ様の母上の血筋か、魔女の才能まで開花させているので。私も気を抜いたらやられます。最近変な錠前も拾ってもう・・・。」

 

 母さんとグレイフィアさんが母親トークを?

 

 それに今とんでもない事を聞いた気がするぞ。

 

「いや・・・それでどうですかこの魔王殺しの味は?」

 

「う~ん。悪魔にとって劇薬クラスの破壊力だね。下手な悪魔なら一口飲むだけで間違いなく昇天するよ。魔王なら問題ないけど、それでもすぐに酔ってしまう。酒豪には向いているけど一般の皆にも楽しめるように、破壊力を控えた方がいい。味に関しては悪くない。でも、もう少しコクがあったら。」

 

「フムフム。それで。」

 

「後この酒はつまみだな。ピザと合う酒があれば最高だ!!」

 

「それは君の個人的な意見だろう」

 

 その酒の席でヤマタが魔王様から感想を聞いている。

 

「いや、本当にお前の酒、銘酒ばかりだ。」

 

 ドライグも感慨深く飲んでいる。

 

「だったら、ワインもどうだ?良いブドウを手に入れて仕込み、もうそろそろ飲みごろになっているはずだ。少し待っていて欲しい。」

 

「ブドウか。こっちの農園で取れた分かい?」

 

「ああ、それだ。いい酒になっているぞ。」

 

 父さん。レストランだけでなく農場も経営しています。その農場で試験栽培をしていたあるブドウをヤマタが目を付けたのだ。

 

 最高のワインになると。

 

 そこから仕込んだみたいなのだが・・・それができたらしい。

 

 もう酒を楽しむ場になっている。

 

「それなら兄妹共の再会を肴にしてのもうぜ。」

 

 ダンテ様の視線の先には・・・土下座をした状態のクレドさんと明らかに怒ってますよという感じのキリエさんがいます。

 

「・・・兄さん。何か申し開きは?」

 

「何もございません。」

 

「・・・ははは。昔から本気で怒ったキリエにはあんたも俺も逆らえなかったよな。」

 

 ネロですらその光景に苦笑いをする。

 

 キリエさんが本気で怒ると、神ですら正座してしまうほどじゃないのか?

 

 それくらい昔から怒ったら怖かった。当時でも大の大人でも正座してしまうほどに。

 

「ネロ・・・一体何がどうなっている?キリエがどうしてこんなにたくましく。」

 

 クレドさん。

 

 初めて合う事になったキリエさんの兄さんに俺達はびっくりしていたが、

 

「・・・あいつの心の強さのせいかな。キリエ、あれを見せてやったらどうだ?」

 

「・・・これのこと?」

 

 キリエさんの背中から十二枚の白い翼が現れる。

 

「・・・報告には聞いていたけど、本当に熾天使になっている。」

 

「人間が神器の力を得たとは言え、熾天使になれるものですか?」

 

「・・・アザゼルにも聞いてみるべきだろう。巧君、アザゼルから何か?」

 

「すっごく興味深そうにはしていた。だが・・・その答えの一端を絶対に知っている。そんな笑みを浮かべていたぞ。あっ・・・それとどうぞ。」

 

 巧の報告、気になるよな。報告しながらサーゼクス様の酒をついている。

 

「親父とのやり取りで慣れているだけだ。」

 

 酒の席も其れなりに踏んでいるあたり、さすが王子。

 

「・・・キリエが天使に。私が悪魔に・・・ふっ、皮肉なものだな。」

 

「皮肉って者じゃありません!!もう・・・色々といいたい事があります。クドクドクドクド・・・。」

 

 キリエさんが怒っています。泣きながらもう色々と愚痴っているよ。

 

「ははは・・・まあ、俺はギルスだしな。クレド、ここは諦めろ。この家でもキリエのヒエラルキーは最上位だ。まどかさん以外誰も逆らえん。」

 

「・・・まあ、お前なら勝手が分かるだけましだ。それに、其れなりに協調性を身につけているみたいだ。前よりも苦労しなさそうだ。」

 

「おい。協調性って・・・。」

 

 クレドの指摘にネロの語気に怒りがこもる。

 

「お前の事を小さいころから知っているが・・・いい友達じゃないか。」

 

 クレドが俺や巧を見る。

 

「分かる?」

 

「ああ、お前のいい意味で丸くなった。」

 

「あのなあ・・・。」

 

 このやりとりだけで、クレドさんがネロの兄さんみたいな人でキリエさんの兄だとよく分かる。

 

 一緒に友達ができたことで喜んでいる辺りが特に。

 

 ネロが斜に構えた弟のように見える。

 

「はあ・・・本当に良かった。」

 

 感慨深そうに喋るクレドさん。何か、老けこんでいる様な気がする。

 

「・・・そう言うあんたはどうした?なんか疲れてないか?」

 

「大丈夫兄さん?」

 

 ネロとキリエさんもそれに気付いた様子だ。

 

「・・・いい酒がある。飲んでみろ。」

 

 そこにヤマタが一升瓶を差し出す。銘は、愚痴零。

 

 それをクレドさんは受けとり、瓶の口から一気飲み!?

 

『・・・・・・・・。』

 

 その光景をネロとキリエさんは押し黙って見ている。

 

「いい飲みっぷり。」

 

 一升すべて空になったよ。

 

「ふふふふっふ・・・・ふははははは・・・。」

 

 あれだけ一気に飲むと。

 

「ふははははは・・・はっ・・・はははははははははははははははははは!!」

 

 何か壊れたような笑いを浮かべるクレドさん。

 

「なあ、ネロ。クレドさんって酒に強いのか?」

 

 どう見ても大丈夫なようには見えない。

 

「下戸ではないが、ビール一杯で酔っぱらうレベルだ。」

 

「そうか。よく分かった。」

 

 うわ~、めちゃくちゃ弱い。

 

「なんであいつらは任務のたびに必ず何かは壊すか、殺すかしてくるんだろうな。はははは・・あーはははは!!謝罪と後始末を一手に引き受けている私の身になれってもんだ!!一日、何も無ければ私は神に感謝するぞ!!頭が痛いなんてナンボももんじゃい!!日々別の事でより頭の痛い思いをしているんだぞ!!なあ、ネロ!!昔のお前の方がまだ可愛い!!」

 

「あっ、ああ・・・・・・。」

 

 笑いながら、嘆いていやがる。クレドさんって笑い上戸なの?笑いながら怒るってすごく怖いよ。

 

 肩をバンバン叩かれるネロが悪態をつく事もできず戸惑っている位。

 

「・・・相当溜ってんな。」

 

「うっ・・・うん。こんなの初めて見る。」

 

 ネロとキリエさんの戸惑いも分かる。酒を飲んで色々と愚痴だけじゃなく、嘆きすらも吐き出している。

 

「うむ。やはり効果はあるみたいだ。ストレスが溜まっている程美味しく感じ、酔ったらそのストレスを発散させる効果は狙い通り。・・・さすがに水のようにあれだけ一気に飲むなんて思いもしなかった。とんでもない酒を造ったかも。」

 

 作ったヤマタすら戸惑う程の効能。まさに愚痴零。すごい破壊力だ。

 

「これも魔剣教団でやった私の罪なのか!?悪魔の力に手を出し、あがめるべき存在であるスパーダの血を狙い、そしてそれでネロの命を狙う事になり。キリエが巻き込まれた。そんな私の罪なのか!?どうなのですかダンテ様ぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 今度はダンテ様に泣きついている。

 

「いっ・・・いや、お前がいてくれて本当に助かってんだ。それにお前の助けになるだろ?俺の新しい仲間がな。」

 

「そうそう、こっちもグレイフィアが色々と手伝っているし。」

 

 魔王様二人が必死にクレドさんをなだめている。

 

「グレイフィア殿!!本当に感謝しております!!あなた様には本当に頭が上がらず、あなたに足を向けてもう・・・私は寝れません。」

 

 グレイフィアさんの前で跪き、涙を流すクレドさん。

 

「・・・今夜は無礼講にしてあげてください。彼のために。」

 

「そうだね。それに、そうなる事も君の狙いだろ?」

 

「まっ・・まあな。だが、まさかここまでストレスを溜め込んでいたとは・・・。」

 

 グレイフィアさんが憐れみの目でクレドさんを見て、サーゼクス様とダンテ様に進言。

 

 一方のダンテ様にとってこれが狙いだったみたいだけど、想像を超えるレベルだったのだろう。かなりびっくりしている。

 

「愚痴・・・付き合ってあげるよ。」

 

 父さんがクレドさんの肩に手を回し、優しく抱き寄せる。

 

「かたじけない。うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「ははは・・・ごめんなさい、クレド。私も結構やらかしているわ。一緒に愚痴聞いてあげるから。」

 

「あらあら、なら私も付き合ってあげましょう。」

 

 そんなクレドさんに思うところがあったのかユウナと朱乃さんがそこに参加。

 

「・・・僕もいく。妹が世話になっている上に何か同じ騎士として、すごい親近感が・・・。特に同じ眷属共に振り回されている辺りが他人事とは思えない。」

 

 最後に木場もだ。

 

 あれ?何か木場って苦労していたっけ?

 

「少なくとも私と同じくらいに眷属達のめちゃくちゃさに振り回されているわ。」

 

 へ~そうですか。こっちの身内って結構滅茶苦茶だし。

 

「あなたがその筆頭であることを忘れないでね。もう、私はあなたにどんな人脈があって、そしてどんな事をしても驚かない事にしたから。」

 

 あれ?そうなの?

 

「あとはあなた自身に自覚があればねえ。まったく、そんな天然具合は親子そっくりだわ。本当にイッセ―ってあの二人の子供・・・・・・。」

 

 部長がそこまで言いかけて言葉を止める。

 

「・・・イッセ―はあの二人の子供?」

 

 俺と父さん、母さんを何度も見比べる。どうしたんだ?

 

「イッセ―があれだけの力?なら、その親は・・・・。」

 

 そして、何かの結論に至った瞬間。

 

「・・・・・・。」

 

 部長の全身から油汗が・・・。

 

 だっ、だから、どっ、どうしたのですか!?

 

 一体何を考えているというのだ!?

 

「まっ、まさかね!!そんなことはないわ!!・・・・・そんなことがあったら世界の勢力図が崩壊するわ。」

 

 その結論をかき消すように笑う。

 

 一体何を?

 

「・・・・・・。」

 

 一方、アーシアは驚いたように部長を見た後、父さんと母さんの方を見る。

 

「あらら。」

 

「予想よりも早い。」

 

 そのアーシアを見た父さんと母さんは少し驚いた様子で、微笑みかける。

 

「パクパクパクパクパク・・・。」

 

あれ?顔を真っ青にさせてアーシアが口をパクパクさせている!?

 

「なんて・・・恐れ多い・・・。」

 

 家の親が恐れ多いって何?

 

「はははは・・・かしこまらないでいいよ。君もその一席に加わるのは確定だし。」

 

「そうそう、ようこそ私達の領域へ。ここまでくればもうすぐあれも覚醒するね。」

 

 母さんがアーシアの手をとる。一体何を言ってんだ?

 

「私ってそんな資格があるのでしょうか?イッセ―さんは気付いていないようですけど・・・。」

 

「イッセ―の場合は生まれついてからの慣れみたいな物もあるから気にしないでいいよ。」

 

「それでも近いうちにばれるだろうが。」

 

「・・・それまでは黙っています。はあ、私ってどこまで行くのかな?」

 

「その分、色々相談に乗るから、安心しなさい。あなたは私にとって娘みたいなものなのだし。」

 

 何かわけの分からない話をしている。だが、母さんとアーシアがさらに仲良くなっているのはわかる。

 

「うんうん・・・苦労していますね。」

 

「分かってくれるか!!」

 

「・・・俺はこれからあんな滅茶苦茶な連中を相手にしないといけないのか。互いにがんばろう。ネロも手伝ってくれるはずだ。」

 

「まあな。」

 

「こっちも微力ながら力になるよ。」

 

 そして、何故かクレドさんと木場、そして巧と良太郎が意気投合している。

 

「君の師匠とは仲良くさせてもらっている。剣の友でもある。」

 

「そうですか。だったらあとで手合わせを。」

 

「おいおい、俺も忘れるな。俺も拳で戦う事が多いが、剣も銃も使える。」

 

「モモタロス達も退屈せずに済むかな?」

 

 自分よりも若く、それでいて血気盛んな同じ騎士と兵士にクレドは笑う。

 

「ふははははは・・・こうなれば私達で銃士でも作らないか?ダルタニアンとかの役割を決めて。」

 

『いいですね!!』

 

「でもダルタニアンは正確に違いますよ。それにせっかくなのだし、三銃士ではなく別の名前にした方がいいのでは?」

 

「そうか。そうだな・・・。」

 

「うちのおやじに聞いてみるか。こういったノリが大好きだったし。ラウンズとか七人の侍とかいろいろな引き出しを持っているぜ。」

 

 クレドさんがノリノリで言った提案に二人が喰いついただと!?

 

「ははは・・・ますますモモタロスが喜びそうな展開だ。」

 

 俺はこの時予感はしていたんだ。このノリが後々とんでもない事になるってな。・・・まさか冥界全土を巻き込むとんでもない流れになることなんて思いもしないだろう?

 

 

 

 

「ええ~・・・そっ・・・そんな~!!」

 

 その日の夜。俺は部長の絶望した悲鳴を聞いていた。

 

「すまないねリアス。どうしても彼と一緒に寝たくてね。」

 

 どうも俺とサーゼクス様は一緒の部屋に眠りたいということらしいのだ。

 

「わりぃな。ユウナ。」

 

 それにダンテ様も一緒だ。

 

 語るのは送れましたが部長とアーシア、そしてユウナに抱きつかれて眠っております。

 

 あの柔らかさ・・・本当に眠る心地最高だよ。

 

 でも、理性を抑えるのがすごく大変です。俺だって・・・かなりエッチですよ。

 

 それでも・・・それでも堪えないといけない時があると思うのです。

 

「ははははは!!本当にハーレム生活を始めているな。」

 

 俺よりも部長達が依存していたのにびっくりしたけど。

 

「さみしいです!!ダンテ様殺生ですよ!!」

 

 ユウナが必死に懇願するが・・・。

 

「ユウナ、あなたには同じ魔王眷属として私から色々とお話があります。リアス様にもね。」

 

「あは・・・ははははは・・・。」

 

 部長達はグレイフィアさんと、母さんと一緒に寝ることになりそうだ。

 

「ああ・・・イッセ―ェェェェェ!!」

 

「無情です!!無情すぎますよおおおおぉぉぉ!!」

 

 部長とユウナ、グレイフィアさんに連れられて俺の部屋から退場していく。

 

 哀れだぜ。

 

 そんな三人を見かねたのか、母さんが飛んでんでもない発言を。

 

「その代わり、息子の攻略方法を教えてあげるから。」

 

『是非に!!』

 

 代わり身早!!

 

 母さん。息子の攻略方法ってなんだよ!!

 

「エロゲの傾向からして・・・。」

 

 止めてくれ!!母さん、お願いだからこれ以上のプライベートを暴露しないで!!

 

 木場と巧、良太郎は酔いつぶれたクレドさんをネロとキリエさんと一緒に介抱してそのまま寝ている。

 

 クレドさん・・・すごいはっちゃけていたからな。

 

 そんな感じで俺は魔王様二人と一緒の部屋。

 

「・・・本当にすまないねえ。」

 

「ククク、モテるじゃねえか、この色男。責任はとってやれよ?」

 

 朱乃さんが言うには部長の俺に対する依存が高まっているらしい。

 

 部長だけじゃない。ユウナも俺にべったり。

 

 長年の思いをようやく叶えられたという気持ちに、まるで猫みたいに甘えてくる。

 

 アーシアに至っては言うまでもないだろう。

 

 だが・・・あえて言おう。

 

 俺は理性と必死に戦っていると!!

 

――――――相棒・・・。

 

 ドライグが呆れた声を上げるが、仕方ないだろう!!まだきちんと責任と取れる状態で三人を抱けるか!!

 

――――――なんで?あなたの夢はハーレム王って・・・。

 

 そう言わないでくれクレア。

 

 ハーレム王になるとは言った。だが、そこから順序ってものがあるんだ!!

 

――――妙なところでお前は律義というか・・・繊細というか。

 

――――あなたの目指すハーレムって・・・愛があるのね。

 

 俺のハーレムはそう言う物にする予定なので。

 

―――――私も入りたいかも・・・。

 

 あれ?そこで何故かブランカさんがとんでもない事を!!

 

「お前・・・毎回そんな形で話し合っているのか?」

 

「おかげで退屈しません。」

 

「退屈しないって・・・お前も面白い奴だな。」

 

 ドライグとクレアに関してはもう、俺のプライベートなんてない物だと思っているよ。

 

 それでも、こいつらと一緒にいるのがすでに当たり前になっている。

 

 ブランカに至っても長い間俺の中に居ただけあって、一緒にいて違和感が無い。

 

「中々の器の持ち主なのはわかったよ。」

 

 そんな感じで俺は魔王様二人と一緒に寝ることとなった。

 

 いや・・・本当に緊張します。

 

 いくらフレンドリーなお方でも、魔王様なのだから。

 

 優雅なたたずまいのサーゼクス様。

 

 何気ない仕草がスタイリッシュなダンテ様。

 

 俺・・・すごい二人と一緒にいるのだね。

 

 寝ようとしてもうまく寝れない。

 

 明りを消しても中々寝れないのだ。

 

「・・・君には感謝してもしきれないよ。」

 

 そんな時にサーゼクス様が話しかけてくる。

 

「リアスの件・・・色々と君に助けられている。悪魔でなく、アギトであっても私達の身内に変わりはない。これからもリアスを頼む。」

 

「そっ・・・そんな、恐縮です。」

 

 魔王様直々にそんな事を言われると、流石に委縮します。

 

「俺なんてまさかお前が時間を遡ってくるなんて思ってもいなかった。その後、サーゼクスからリアスの新しい兵士の名前と顔を見て驚いたぜ。」

 

 それに関してはこっちも同じセリフです。元の時代に戻ってきたら早速再会ですし。

 

「ユウナなんて、俺の元で修行しながら必死でおまえの事を探していた。時間を超えてやってきたのは分かっていたが、一体どの時代からやってきたのが分からないでやきもきしていたらしいからな。見つかった時・・・泣いていたぞ。」

 

 えっと・・・。

 

 そのあと、俺はダンテ様よりユウナがどのように成長して言ったのか聞かされる。

 

 俺が未来から来た事を知って、ずっと探していたらしいのだ。

 

 赤龍帝であることを唯一の手掛かりとしてだ。

 

 そして、俺が部長の眷属になって、そこで判明したのだ。

 

 あのライザ―・フェニックスとの大立ち回りの際、密かに顔を確認して確信。

 

 聖剣の騒動も重なり、ユウナはついに行動に移したのだ。

 

「大切にしてやってほしい。あいつの心の支えなんだぞ。おまえは。」

 

「はい。」

 

 責任はとってやらないといけないか。

 

 何処まで俺は行けるのか分からない。だが・・・。

 

「君は本当に神になるつもりかい?」

 

「そうそう、俺もそれが気になっていた。実際のところはどうなんだ?」

 

「はあ、確かに俺は神の後を継ぐといいましたが、神その物になろうとは思っていません。」

 

 魔王様二人の質問に俺は答える。

 

 不思議と素直に。

 

「元々人間であった俺一人で出来ることは限られていると思っています。奇跡すら起こすこともできない、闘う事しか力を持っていないそんな存在です。」

 

 アギトとして、戦闘力は飛躍的に高くなった。だが・・・それだけだ。

 

 それだけで神になれるとは思えない。

 

「でも、奇跡を超える物を俺は知っています。巧との再会、そして命を救ってくれた物を。」

 

「それはなんだい?」

 

「人の和です。なんか話を聞くと、色々な出会いと繋がりが巧を助けてくれたみたいで。」

 

 俺が巧の存命を知ったとしても、俺一人じゃ助けられなかった。

 

 ハルや、渡、ダンテ様・・・みんながそれに向かって動いてくれたおかげで手を差し伸べてくれたおかげで巧は助かった。

 

「アザゼルにも会いましたけど・・・すごく感謝されていました。でも・・・俺からしたら一番助けたかったあの人もできる事を最大限したからこそだと思いましたがね。」

 

 

 

 アザゼルに召喚され、そのあと、巧が持ってきたヤマタの酒で宴会をしている先であったことだ。

 

 部長達には話していなかったけど。

 

「・・・本当に感謝している。巧を助けてくれて。」

 

 グレゴリ総督に・・・土下座をされたのだ。

 

 あまりに予想外の光景に俺は流石に慌てた。

 

「ちょっ・・・親父!!」

 

「ふーむ。お前ほどの男が土下座とはな。」

 

 巧が驚き、ハドラ―さんも軽く戸惑っている様子だ。

 

「何とでも言え。お前を助けたいという宿願を漸く出来たんだ。総督じゃなくて一人の父親として・・・頭を下げたい。本当に・・・ありがとう。」

 

「あー・・・だから、俺は確かに巧を助けたいと思ったけど・・・。」

 

 

 

 

「まあ・・そんな感じだったんですよ。そして、そのあと俺自身は大したことはしていないといって、同じ話をしたんです。俺のおかげじゃない。人の和みたいな物のおかげだと。それを話したあと・・・。なぜかアザゼルがぽかんとした様子で俺を見て・・・。」

 

 

 

「・・・・・・なるほどな。お前が神の後を継ぐ候補になった理由が良く分かったぜ。むしろおまえが神になった方が、この世界が面白くなるな。・・・・・・よし決めた!!グレゴリから推すか。お前・・・本当に神になれよ。」

 

 

 

「って、言われちゃって。」

 

『・・・・・・。』

 

 その言葉に何故か、魔王様二人は絶句。

 

「そうか・・・僕も今納得したよ。」

 

「ああ・・・冥界全体でお前を推して、損はないな。」

 

「今度の三大勢力の会談で天界側の意向も聞きたいところだ。」

 

「ああ。」

 

 へっ?冥界全体で俺を推す!?

 

「あの・・・何か話が大きくなっていませんか?」

 

「はははは・・・そうそう。」

 

 話をそらす用意サーゼクス様はとんでもない事を言ってくれる。

 

 その内容は部長のあのおっぱいに譲渡をしたら何が起こるかというもの。

 

 それで混乱してしまい、この場はお開きになってしまった。

 

 だが・・・何か話が大きくなってきたのは気のせいかな?

 




 すみません、クレドさんのキャラが完全崩壊してしまいました(笑)

 これが酒の魔力です。


 


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プール開きと白いのと、ラスボス同士の会合です。

 この話では新キャラが何人か登場します。

 正体不明が何人かいますが、一人だけヒントをだしました。

 マイナーですのでわかるかどうか不明です。


 side イッセ―

 

 次の日。色々とすっきりしたクレドさんを見た。

 

「・・・ああ・・・朝御飯が美味しい。」

 

 ストレスから解放され、朝御飯の美味しさに涙するクレドさん。

 

 そして、そのあとサーゼクス様とダンテ様はこの街の観光に行くこととなった。

 

 ホテルに泊まる予定らしいが、そこでダンテ様は奥さんも呼んだ様子。

 

 クレドさんも相当安らぎを覚えている様子で。

 

 あちこち魔王様二人は観光をしている様子。

 

 ハンバーガーショップやピザの店(ダンテ様はピザが大好物らしい)を回っており、それを冥界でもはやらせようとしているなど、ツッコミ何処はたくさんあった。

 

 巧や木場、良太郎はたまにクレドさんの手伝いとして出ている。クレドさんとの交流を深めているようだ。

 

 そして、今俺達は・・・プールの掃除をしている。

 

 生徒会からプールの掃除をする代わりに、真っ先に俺達が使っていいという許可を得たのだ。

 

 部長達の水着が楽しみで、プール掃除を張りきっています。

 

「凄まじいスピードね。」

 

 それこそ・・・三十分で掃除を終わらせる位には。

 

――――――人間の姿をしても、その力はすでに人間どころか、悪魔すら軽く超えている。日頃の努力も実を結んでいるな。

 

 ドライグが言うには、力の覚醒前から続けてきた努力と数々の戦いで進化を続けた俺は素の状態でも結構強くなっているらしいのだ。

 

 こっちの課題は禁手化やアギトへの変身をしない素の自分の弱さだ。それ故に色々とあがいているけど・・・少しはましになったか。魔法が使えない弱点を補わないと。

 

―――――いやいやいや、あなたは素でも、魔法無しで十分強いわよ!!

 

―――――低級のドラゴン程度なら片手で倒せる。この前、ワイバ―ンを殴り倒した事をもう忘れたか?

 

 ああ、そんな事もあったか、

 

 夜の闇に乗じて、奇襲をしかけてきた奴がいたんだ。

 

 ワイバ―ンに乗ってだ。

 

 迫りくるワイバ―ンにドライグ達。一緒に帰っていた部長、アーシア、ユウナもそれに気付き構える中・・・俺は振り向きながらワイバ―ンごと襲撃者を殴ったんだ。

 

 師匠直伝の居合蹴りを裏拳で応用させてみました。遠心力と全身の力をうまく乗せて俺なりのアレンジを加えた上で!!

 

 殺気を感じてとっさに放ったのは良かったけど、殴った後に何故か部長達が絶句し、どうしたもんか振り向いたら、こっちも驚いたぜ。

 

 地面に叩きつけられて気を失っていたのは翼長だけで二十メートル位はあるようなでかさのワイバ―ンだったし。

 

 でも、あれってドライグの倍化のおかげじゃ・・・。

 

――――俺は一切倍化をしていないぞ。あれはお前の素の力だ。

 

 素の力?でもまあ、ワイバ―ンを殴り飛ばすなんて今更珍しくもないと思うけど。

 

 そんな回答にドライグが深い溜息をつく。

 

――――相棒。今のおまえなら禁手化やアギトに変身しない状態でも途方もない回数の倍化ができそうだ。その上アギトの力による進化もあるのだからな。歴代赤龍帝の中でもお前は異端すぎる。間違いなく歴代の中で最強にして最も危険な赤龍帝だな。

 

「・・・うむ。」

 

 なんか常識外れな連中が周りにいて、また無茶苦茶な連中と戦っていくうちにこっちも可笑しくなってきたようだ。

 

 うん・・・それでも俺はまともな方だと。

 

『一番可笑しいのはあんただ!!』

 

「・・・アギトの神秘がここにある。」

 

 相棒二人から同時に突っ込まれ、ブランカからは感心させられる始末。

 

 そんなやりとりをしながら、ついにプール開きとなった。

 

 

 

 俺は今現実から逃げたいと思っている。

 

『ふふふふふふふふふ・・・。』

 

 学校に二大お姉様が水着姿で対峙しているのだ。不穏な笑い声と厖大な殺気を伴って。

 

 理由は単純に俺の取り合いだ。

 

 部長の体にオイルをぬっていたところに朱乃さんが誘惑してきたのが事の始まりです。

 

 二人ともすごくエロい水着を着ているのに、それを堪能する余裕が全くない。

 

「いい度胸ね。一度主と下僕の差という物を教えてあげる。カ―ミラ!!」

 

「ここで私を使うの!?流石に可愛そうじゃないの?」

 

 戸惑いながら、カ―ミラが部長の元にやってくる。

 

 それに対抗するように、朱乃さんの手には掌を模した指輪!?

 

 あれって確か。

 

――――――ドライバーオン!!

 

「ふふふ、私もみんなを見て、流行に乗らないといけないと思ってね。ハルトに作ってもらっちゃった。」

 

「貴方もついに変身するようになったのね。」

 

 朱乃さんまで変身するのですか!?

 

「中々良い性能のドライバーよ。どうも私専用としてハルトが前々から設計していたみたいで、それをうまく問い詰めて作ってくれたの。名前はソーサレスドライバー。」

 

 ハルト・・・お前どんだけ朱乃さんに弱いの!?

 

「私のソーサレスとあなたの紅のキバ。どっちが強いかしらね?」

 

「なら互いに加減は無用ね。カ―ミラ、貴方の方が上であることを証明しないと。」

 

「そこを突かれたら、誇りあるキバット一族としては退けないか、ガブ。」

 

 カ―ミラが部長の掌に噛みつく。

 

 それと共に腰にベルトが出現。

 

『変身!!』

 

 朱乃さんは白の指輪をドライバーにかざし、部長はカ―ミラを腰のベルトに装着。

 

 そして、二人が変身する。

 

 鎖に全身を覆った部長は紅のキバに。

 

 そして、足元に黄金の魔法陣を出現させた朱乃さんはその魔法陣を透過させながら変身する。

 

 頭の宝石が白い真珠のようになっており、黒いインナーと白銀の装甲の上から白紅の巫女服を模したような衣装を纏っている。

 

 腕は巫女服のように裾が付いている。

 

 これが、朱乃さんの新しい姿。仮面ライダ―ソーサレス。

 

―――――途方もない魔力を感じる。まさかここまでの潜在能力を秘めていたとは・・・無限に匹敵するほどの魔力を持っているぞ。

 

 無限に匹敵する程の魔力?どんだけですか?

 

―――――ええ。それにあのドライバー、朱乃さんの女王としての全てを引き出すように作られている。弱点である戦車の特性はもちろん、騎士としての特性、僧侶としての特性に謎の要素もすべて・・・。彼女専用に作りこまれている。神滅具としても十分通用するくらいに。

 

 そんなにとんでもないドライバーなの?

 

「さあ、滅びの時間よ。」

 

「ふふふ、おしおきタイムですわ。」

 

 二人ともしっかりと決め台詞を言い放ってから空中でバトル開始。

 

―――ウェイクアップ!!

 

―――パンチストライク!!

 

 二人の魔力を込めた拳がぶつかり合う。

 

 そこから次々と空中で大爆発。

 

 間合いを取る二人。

 

「やるわね。」

 

「ふふふ・・・下克上くらいはしないと。」

 

朱乃さんはその裾に手を突っ込み、そこから数枚の札を取り出す。あの裾・・・収納ボックスみたいになっているのか。

 

 そのまま空中大決戦となった二人のお姉様方。

 

「大体なんでイッセ―なの!?あなたは男嫌いのはずだったでしょ!!」

 

「私のすべてを受け入れてくれる大切な男の子を見つけたからよ!!それにリアスだって男に興味ないのにどうしてイッセ―には執着するのかしら?」

 

「だって可愛いだもん!!あの子の貞操は私が管理したいくらいに!!」

 

「独占欲の強い女は嫌われますわよ?」

 

「うっさいわね!!嫉妬深いのは分かっているわよ!!まあ、アーシアなら仕方ないとは思っているけどね!!」

 

――――段々お前の周りが可笑しい事になってきたな。

 

―――――ええ。

 

 俺の中で二人の龍がしみじみと語りあっている。

 

「イッセ―、こっちこっち。」

 

 そこにユウナが手招きをしてくる。

 

 俺は更衣室の中に避難することとなったが・・・。

 

「いや~あの二人も無茶苦茶になってきたわ。」

 

 苦笑しながらユウナは俺に体を密着させてくる。白いシンプルなビキニがまぶしいぜ。

 

「あの・・・当たっていますが。」

 

「当てているのです。」

 

 柔らかいおっぱいの感触に俺の気が変になりそう。

 

「イッセ―。うんうん・・・イッセ―お兄ちゃん。」

 

 そして、上目遣いで言ってきやがった。こいつ・・・昔のあれのせいか時々俺のことを「お兄ちゃん」って呼んでくる。

 

「私・・・イッセ―お兄ちゃんの子供が欲しい。」

 

「・・・・・・・ブッフア!?」

 

 この発言の破壊力を察してほしい。

 

 俺が鼻血を噴き出してしまう程に。

 

―――――あっ・・・相棒!?

 

―――――まさに会心の一撃。

 

「ふふふふ・・・エロに興味があっても意外とこういうのに免疫ないよね。」

 

 魔性の笑みを浮かべるユウナだが、俺と足をもつれさせて倒れてしまう。

 

 結果として俺がユウナを押し倒してしまい・・・。

 

『あっ・・・。』

 

 そして、ユウナは顔を真っ赤にさせて・・・。

 

「その・・・私初めてですので。」

 

 ちょちょちょ!?あんなことをして初めてですか!!

 

「・・・・・・優しくしてください。」

 

 乙女の恥じらいを見せてきた。

 

 はっきり言おう。反則もいい所だ。今度はすごい乙女で・・・可愛すぎる!!

 

 まずいまずいまずい・・・このままじゃ流れに身を任せて・・・。

 

「待って!!」

 

 そこに待ったをかけて現れたのはブランカだ。

 

 何故かスクール水着。アーシアと小猫ちゃんと意気投合していたらしく、同じ水着を来ていたのだ。

 

 そんな俺の三人目の相棒の姿を見て、残念と思いつつも安堵したところだった。

 

「イッセ―の子供が欲しいのは私も一緒!!」

 

 聞き間違いかな?

 

 ブランカの口から俺の子供が欲しいという発言が聞こえたような。

 

「あなたも参戦するつもりなの?」

 

 ユウナの質問にブランカが強く頷く。

 

―――――――あらら・・・。

 

――――――おい。クレアいいのか?

 

――――――あの子が決めた相手ですからねえ。

 

「・・・それじゃあ・・・こうしない?あなたの子供ってことは間違いなくドラゴンになるよね?私の子供が産まれたらその子と契約してパートナーにしてくれない?」

 

 そしてユウナがとんでもない事を行ってきたぞ。

 

「いいの?」

 

「ハーレム王を目指す人を好きになったんだもん。むしろそう言った契約があっても面白いじゃない?」

 

 その提案にブランカはしばし考える。ブランカの愛称はドラグブラッカ―の文字から綺麗な名前を出したいと考え抜いた贈り物だ。

 

「その提案乗った。」

 

「うんうん。ありがとう。一緒に初体験頑張ろうね。一人じゃ不安で不安で。」

 

 ・・・・・。

 

 もう俺に逃げ場はない。魔王眷属に天龍クラスのドラゴンが相手だし。

 

「・・・何をしていると思ったら。」

 

 そこにゼノヴィアが参戦。彼女もまた水着だ。

 

 ゼノヴィアは更衣室のベンチにどっしりと腰かけてこっちを見てくる。

 

「あ~気にせずに続けてくれ。参考に見学させてもらうが。」

 

 ッて、そっちは見学する気満々かい!!

 

「しかたないだろう。前世は男だったんだ。女としての営み、喜びなんて教会にいた時は全く知らなかったんだぞ。そのための勉強を・・・。」

 

 とんでもない勉強方法だ!!教会に所属していて世俗に疎いからってこんな形で勉強しなくても。

 

「ちなみに女としての喜び、あとで私にも教えてもらうからなイッセ―。」

 

「ほう・・・ライバルっていうことね。」

 

「先手は譲るさ。だが・・・。」

 

 ゼノヴァアの目がヤバい。まるで・・・獲物を狙う雌ライオンの様な目をしている。

 

「こっちも子供は欲しいからな!!そのための参考にさせてもらう!!」

 

 どうしよう。

 

 俺ってそんなに魅力的ですか?ハーレムを作りたいとは思いましたが、どうしてこう肉食系女子ばかりに襲われているのでしょうか?

 

 そんな疑問を覚えていた時だった。

 

 突然、更衣室の壁が吹き飛ばされる。

 

「・・・あなた達、良い度胸しているわね。」

 

「あらあら、うふふふふ・・・抜け駆けなんて。」

 

 その壁の向こうからは変身した状態の部長と朱乃さん。

 

「流石に誤魔化せないか。でも、二人共に言っておくわ。イッセ―の貞操は早い者勝ちよ。」

 

 ユウナの腰にもベルトが現れる。

 

 それはサイガギア。

 

 いつの間に手にしていたサイガフォンに「315」と入力してENTERを推す。

 

―――――――Standing by

 

「そして、一番は私。ハーレムにおいて一番は大切なの。故に、私が最初に愛してもらって一番になるんだから・・・変身!!」

 

―――――――Complete

 

 サイガフォンをギアに装着して変身するユウナ。

 

白に蒼い二つのラインが走った天空の覇者・・・サイガへと。

 

「いくらユウナ様でもこれだけは譲れません。」

 

「ふふふふ・・・いくら友でもこれは話が別。」

 

 今度は三大決戦に!?

 

「私も参戦・・・する。」

 

『はい?』

 

 ブランカの発言に傍にいた皆が呆ける。

 

 ブランカが黒い炎に包まれて・・・ドラグブラッカ―の姿に戻りました。

 

「私もイッセ―の一番の為に頑張る!!」

 

『えええええぇぇぇぇぇぇ!?』

 

 ドラグブラッカ―の参戦に流石の三人も悲鳴をあげる。

 

 というか待ってくれ!!天龍クラスのお前が暴れられたら不味いって!!

 

「イッセ―君、後でお話があるけど良いかな。」

 

 そこに木場までやってくる。

 

「まずはあれを何とかしないとね。はあ~。」

 

 良太郎まで。

 

「ねえ、祐斗君。僕達ってこんなポジションなのかな?」

 

「何も言わないで。こっちはもうすべて悟っているから。」

 

 二人ともすっかり仲が良いね。

 

「二人はグレモリ―眷属の苦労人コンビに決定。」

 

 小猫ちゃん。相変わらず名言ですな。師匠といい勝負かも。

 

『決定されても嬉しくないって!!』

 

「四人とも落ちついてください!!」

 

 アーシアが何とかわたわたしながら場を治めようと奮闘していた。

 

「へっ?」

 

 その全身が黄金に輝き。

 

「争いは駄目です!!」

 

『うわあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?』

 

 暴れ出そうとする四人を強制テレポートさせてその場から遥か上空に飛ばす形で解決させたのには流石に驚いたぜ。

 

 アーシア・・・恐ろしい子!!

 

 

 

 そんな疲労感全開で帰宅しようとした時だった。

 

 何かを感じ俺が校門を見る。

 

 その予感は大当たりだった。

 

「久しぶりだね、赤龍帝。」

 

 校門の前になんと・・・白龍皇、ヴァ―リがいたのだから。

 

 学校の前で相対する二天龍。

 

「・・・三人とも、警戒はいい。」

 

 そして、機先を制して走りだそうとする木場とゼノヴィア、そして良太郎を止める。

 

「ほう。わかっているのだね。」

 

「敵意はないのはわかっているからな。それに・・・、お前の実力からして今の三人じゃ、さすがに荷が重い。無理をさせるわけにもいかない。」

 

「ほう・・・。」

 

 俺の発言に木場とゼノヴィア、良太郎は驚いた様子で俺を見る。

 

 この三人は鈍いわけではない。ヴァ―リの圧倒的な実力を分かっていて、その上で剣を突き立ててくるはずだ。

 

 ヴァ―リの方は感心した様子で俺をみる。

 

「この三人はまだまだこれからってところだからね。その点では手合わせはまだ先の方が面白そうだ。グレモリ―は良い騎士と兵士を持っている。称賛に値するほどにね。」

 

―――――そんな事よりも赤いのはいるか!!

 

 そんなヴァ―リの言葉を遮るようにしてデフォルメ化したドラゴン・・・白龍皇アルビオンが現れる。

 

――――――ああ。今現れよう。

 

 それに呼応する形でドライグも出現。

 

「どうだ?父親になる気分は?」

 

「フッ・・・最初は戸惑ったが今は悪くないと思っている。そしてお前が手にしている二つの卵が・・・そうなのか?」

 

 アルビオンの手には二つの卵。

 

「ああ・・・我が子だ。もうすぐ生まれる予定なのだよ。」

 

 二つの卵を愛おしそうに頬すりするアルビオン。

 

「早く生まれるようにベノと交代で暖めているぞ!!」

 

 うむ、すっかり親バカになっとる。なんかアルビオンもドライグと似た部分があるよね。

 

「ほう・・・。奇遇だな。こっちも双子らしい。」

 

 二体の天龍がお互いの近況を報告しあっている。

 

「なら・・・。」

 

「ああ、さすがに分かっているな。」

 

 二体は同時に宣言する。

 

『今度は生まれた子供のどちらが優秀か勝負・・・。』

 

『やめんか!!』

 

『ぶぐあ!?』

 

 そんな事を言おうとした二体を、クレアとベノがデフォルメ化した状態で同時に尾でぶったたいてきたのだ。

 

「全く、子供にあんたらの因縁を持ちこむな!!」

 

「私達はのびのびと育てたいの。分かる?」

 

『・・・だが、こいつとの決着がまだ。』

 

『何か文句ある!?』

 

『いっ・・・いえ、何もありません。』

 

「そもそも喧嘩馬鹿にならないようにしないといけないと思っているの。なまじ強力な力を持ってしまう故に分別も覚えさせないと。」

 

「奇遇ね、私もそう考えていたところで。何しろ父親がねえ。」

 

『喧嘩に明け暮れて身を滅ぼしたバカ者ですから。』

 

『がはっ!?』

 

 うわ・・・痛烈な一言が入りました。

 

 二天龍に大ダメージが。

 

「子供はその辺りは器用になってもらいたいわね。」

 

「父親のように喧嘩っ早いのはねえ。邪竜の様になって欲しくもないし。」

 

 ベノとクレアは口々に教育方針を相談しあっています。

 

『・・・・・・・。』

 

 その方針によって二天龍に次々と痛恨の一撃が入っています。

 

「あっ、赤いの。私達は愚かだったのか?邪竜と比べられるなんて屈辱もいい所・・・。」

 

「わっ、わからぬ。だが・・・何のために喧嘩をしていたのだ?」

 

『そんなの知らないわよ。喧嘩するならあんた達だけで好き勝手にやっといて!!まあそんなことしたら・・・離婚だけど?』

 

『・・・・・・。』

 

 もうやめてあげて!!こいつらのライフはもう・・・とっくにゼロだ!!

 

『・・・・・・。』

 

 そんな漫才を茫然と見ている他三人。

 

 二天龍が奥さんズに尻に敷かれる瞬間は流石になんともいえないだろう。

 

 なんとも言えねえ。まあ、言うなら母は強しってか?

 

「お前も賑やかだろ?」

 

「フッ・・・もう慣れた。こいつらがいると退屈しなくていい。」

 

 ヴァ―リはそのあたりは既に受け入れているようだ。中々いい器を持っている。

 

 似た状態のこいつとはなんか仲良くなれる気がする。

 

「相変わらずだな。あいつらも。」

 

 ヴァ―リのあとからハドラ―さんまでやってきたよ。

 

「会場の下見に来ただけだというのに。お前のせいで下見もばれてしまった。」

 

「・・・すまない。どうしても同じアギトであり、宿命のライバルである赤龍帝と会いたくてな。」

 

「血気盛んな奴よのう。そう言ったところは嫌いではないがな。」

 

「しかたありません。あなたの息子ですよ?」

 

『!!?』

 

 いつの間にかもう一人、その場にいた。

 

 金属で出来たマントをはおっている。

 

 白い肌に銀色の金属のように固く長い髪をした女性だった。

 

 すごい美人だ。まるで天才芸術家が作ったような美しさがある。

 

「お袋、少し趣味が悪いぞ?」

 

「アルビナス。」

 

「ごめんなさい。ふふふふ・・・。」

 

 ハドラ―さんの咎める声に彼女は笑う。

 

 しかし、お袋って、こいつがヴァ―リの母親だというのか?

 

「アルビナスといいます。あなた達悪魔からしたら「閃刃の女王」といった方がわかりやすいかしら?」

 

『なっ・・・何?!』

 

 その名を聞いた木場とゼノヴィア、良太郎の顔がこわばる。

 

「気をつけて。閃刃の女王と言ったら熾天使、または魔王と同等の力を持つことで有名なグレゴリの怪物の一人だよ。彼女一人で国一個が壊滅したほどだ。噂では攻撃魔法はもちろん、物理攻撃も効かず、姿が消えた途端、何をしたのか全く分からないままに敵は葬りさられるとね。」

 

 冷や汗を流す木場。

 

「・・・う~ん・・・速過ぎると、硬過ぎるのが主な理由か?」

 

『!?』

 

 俺の発言に、今度はハドラ―さん達が驚く。何となくだけど、こいつの戦い方は見抜いたぞ。

 

 見抜いたところでかなり厄介だけどな。

 

「さすが、ヴァ―リが見染めたライバルね。褒めてあげてもいいかしら?」

 

「揃いも揃って化け物が揃ってやってくる。これは俺もうかうかしてはいられんな。」

 

 化け物って・・・ハドラ―さんにだけは言われたくない。

 

 このように対峙してわかる。この人・・・途方もなく強い。

 

「アザゼルの頼みでな。こっちもあの話を進めていたので都合も良かったのだが。」

 

「ヴァ―リ様!!」

 

「やっと見つけました。」

 

 ヴァ―リの元に黒いローブを纏った人が四人現れ、駆け寄る。

 

 こいつらもいきなり現れたぞ?

 

「勝手にあちこち行かないでください!!心配しましたよ。」

 

「ヴァ―リ様は勝手にあちこちに行くので目を離せません。」

 

「しかたない。こやつはそういう男よ。」

 

「ヴァ―リ様らしいですが、兄様も苦労しています。同じ兄を持つルフェイの気持ちも分かるかも。」

 

『そうだね、池袋ちゃん。』

 

「池袋言わないでー!!もう、ヴァ―リ様のせいですよ!!池袋に行った時にあんなことをいうから!!」

 

「ああ・・・すまないな。」

 

 四人の声は、どうも女の子のようです。なんかすげえ姦しい。

 

・・・何故に池袋?

 

『以後気をつけて下さい!!』

 

「おお・・・。」

 

 その彼女らにヴァ―リがたじたじになっている?

 

 その光景にハドラ―さんとアルビナスも苦笑しているし。

 

「ハドラ―様、アルビナス様、帰りますよ?他の親衛隊の方達は送りました。」

 

 池袋ちゃん(仮)が場を仕切る。

 

「そうか、すまないな。」

 

「よろしくたのむわね。私の娘達。」

 

――――――ドライバーオン!!

 

 へっ?なんで腰にハルと同じドライバーが?

 

 他の子達にも同じ物が現れているぞ!!

 

―――――ワープ。

 

「また会おう。今度は手合わせを願いたい。同じ目標を持つライバルとしてな。」

 

「同じ目標?・・・何か分からねえが、いいぜ。受けて立ってやる。」

 

 不敵な笑みを浮かべ会う俺達。

 

 こいつ・・・拳で語らう方が分かりやすいタイプだな。

 

 こういうやつは個人的に嫌いじゃない。

 

 そんな感じでヴァ―リとの二度目の会合は終わった。

 

 色々な謎を残して。

 

 

 SIDE ポルム

 

「へえ・・・面白い事になっているね。」

 

 その光景を学校の上から僕は眺めていた。

 

「・・・いい隙があったから上手く出来た。でも使用は本人の許可を得てからした方がいいか。流石にあの二人のプライドを考えると、あなたはどう思います?」

 

「・・・お前、なんて神器を持っている。」

 

 僕の後ろにいるのは堕天使だった。

 

「えっと・・・確かアザゼルさんでしたね。神器マニアで巧君の親父さん。」

 

「ああ。」

 

 その神器マニアだからこそ、彼は僕に会いに来たのだろう。

 

「ジスの神器。お前・・・その神器の本当の恐ろしさに気付いているのか?」

 

「まだみんなに明かしていませんけど、すでにいくつかはゲットしています。」

 

 俺の手に現れる黒い龍脈。そして、目の前には一枚の鏡。

 

「・・・ッ!?」

 

 それを見て、アサゼルは目を丸くする。

 

「・・・俺も初めて其れが出て、まさかと思っていたがな。何しろ神器ですら解析し、そしてコピーしてしまう神器なんてあるのかってな。あったら、どんだけふざけた能力を持っているのかと思ったぜ。神器の真髄を知ることができる禁断の神器なのだからな。」

 

 流石言ったところか。よく理解している。

 

 この翼の本当の恐ろしさはそこだ。

 

 能力そのものは何も変わっていない。ただ、その中に神器、ひいては神滅具が加わっている事だけだ。複製したくても、材料が分からない故に今はまだ無理だけど。

 

「すべての技や能力を理解し、コピーするベヒモスの力。あらゆる物やエネルギーを無尽蔵に吸い込み、無尽蔵に蓄え、自在に吐き出せるリヴァイアサンの力。そして、あらゆる武具、神器すら解析し、コピーするジスの力。俺は三大巨獣の神器を神滅具と認知するべきだと思っている。上級神器の域をとっくに超えたものばかりだからな。」

 

 その意見に関しては僕も同じだと思っている。他二つの所有者も見つけ、その能力に僕も戦慄したのだから。

 

「初めてだぜ?三つ揃うなんてよお。そこから何が起こるのかまだ分からねえ。何しろ三つとも禁手化がどんな力を発揮するのかまったくの不明なのだからな。」

 

 へえ・・・三つともそうなんだ。

 

「だが、俺はそれ以外にも聞きたいことがある。お前・・・一体何者だ?」

 

「・・・異世界からやってきた三代目大魔道士、ポルムですが?」

 

「異世界の人間。そして英雄の息子だというのは理解できる。巧やハルトからの報告で分かっている。だがな・・・。」

 

 アサゼルはある物を取り出す。それは銃に鏡のような物が付いた形をしている。

 

「これは俺の研究の成果、人工神器だ。」

 

 さすがはグレゴリの技術力といったところか。そんなものまで作ったのか?

 

「へえ・・・能力はオーラや魔力などの力の測定か・・・。」

 

「もう解析したのかい。どういった手段か分からないが、解析だけなら翼無しで出来るのか?大方、その眼鏡がかな?」

 

 おっと・・・ばれてしまったか。この眼鏡はすごく便利でね。ジズの能力で解析した能力を色々と付加させているのですよ。でも、これは好都合。

 

 材料が漸く見つかった。

 

「これでお前を測定しようとしたらエラーが出た。だから改良して今測らせてもらうと・・・。」

 

 やらない方がいいと思うけど。

 

 銃をこっちに向けた瞬間。

 

 アサゼルが手にしていた神器が爆発を起こす。

 

 だが、アザゼルはそれを見て何も驚かない。

 

「やっぱりか。これ・・・俺の能力すら測定できるほどなんだぜ?」

 

 流石に高性能だったんじゃ、ばれてしまうか。

 

「お前・・・本当にただの人間か?俺はラスボスみたいな立場だが、それすら軽く逸脱するよなもんをお前がもっている。これじゃまるで・・・。」

 

 彼が言えたのはそこまでだった。

 

「がっ・・・!?」

 

 僕が手を軽くかざす。ただそれだけで吹っ飛んだからだ。

 

 すぐに空中で翼を広げて、体勢を整えるアサゼル。流石にこの程度じゃ駄目か。

 

「・・・今のはなんだ?」

 

「ただの掌圧ですが?」

 

 ただ、掌で空気を押し出しただけだ。

 

「・・・おい。それが本当ならお前は・・・。」

 

 アサゼルの驚愕をよそに僕は語る。

 

「いっ・・・何時の間に結界を。」

 

 この話は他のみなさんに聞かれるのは避けたいので。

 

「ジスの神器すら手札の一つにすぎないってところです。でも、何が起こるのかわかりませんから今はその手札を伏せておきたい。」

 

「ジョーカーにでもなるつもりか?能ある鷹は爪を隠すって言うが、神すら恐れる大魔王が普通の魔法使いを装うなんて無茶苦茶すぎるぞ?」

 

 面白い例えです。しかも、例えが的確すぎて笑える。

 

「・・・何しろ僕はラスボスのさらに裏にいる隠しボスみたいな存在。なら存在を知らない方が相手にとっても、味方にとっても面白いじゃないですか。」

 

 それと共に僕は常時かかっている変身呪文(モシャス)を一時的に解く。

 

 そして、本当の姿を見せる。

 

 この世界からあっちの世界に行く時の事故みたいなものだった。

 

 だが、そのおかげで僕の中にあったある存在の魂が目覚めた。

 

 その遺骸を禁手化で取り込んでしまい、僕は変質してしまった。

 

 大魔道士でありながら、ある存在の生まれ変わり。そして、遺骸を取り込むことで、叡智を初めその総てを受け継いだ存在へと。

 

 その証と言える二つの外見的特徴を僕は常に変身呪文で隠している。

 

 ついでに言えば、本来の力を常に封印している。そのための術式を編み出すのに苦労したものだ。

 

 本来の力は、はっきり言って天災クラスなので。

 

「・・・なるほどな。まさにラスボスのさらに上をいく裏ボス。まさかそんな存在がいるとは思わないわな。敵も味方も。」

 

 流石に察しが良い方だ。何となく僕の正体に気付いている。

 

「この世界の同志や、イッセ―達のためなら何でもできる。そのために自由に動けるようにしたいのです。」

 

「いいぜ。それにお前さんは神器に関しては・・・。」

 

「大切な研究テーマです。そう言った意味ではあなたとは同志になる。」

 

「そうかい。・・・とんでもない器の持ち主だぜ。」

 

 神器でどうやら面白い繋がりを見つけた。

 

「色々とよろしく頼むぜ。アギト以外にもこっちも抑えて良かった。」

 

「ふふふ・・・。ラスボス同士、楽しんでいきましょう。」

 

 がっちりと握手する僕とアザゼル。

 

 このコネクション、有効に使わないと。

 

 それに、この人は悪じゃない。この人は部下である堕天使達の命運を背負って、神の候補であるイッセ―と接触している。

 

 堕天使の総督だけあって、数多くの命運を背負えるだけの器がある。

 

「それはそうと、こっちの研究テーマのために協力をお願いしたい。」

 

「なんだい?」

 

「人工太陽を作りたい。この世界では理論的に可能と聞いている。神器のデータもあるし、それを応用させて作れないか?」

 

「はあ?人工太陽!?なんでそんなもんを?」

 

「こっちの夢の一つなのでね。もう一人の僕のためにもかなえておきたい。」

 

 前世の僕の夢。ここなら別の形で叶えられそうだ。

 

「それとついでだ。貴方も協力してほしい。」

 

「まだ何かあるのかい?」

 

「ええ、魔王様と伝説の竜の騎士の恋愛模様さ。」

 

「・・・詳しく話を聞かせな。」

 

 おっ、乗ってくれた。中々いい笑みを浮かべてくれる。

 

 さて、どんなことになるのやら。

 

 

SIDE ???

 

 この学園で魔王がやってくる。

 

 これは是非もない機会だ。

 

 あいつらは魔王にふさわしくない。生徒達にまぎれて、抹殺してくれる。

 

 ターゲットは・・・決まっている。

 

「まっていろよ、セラフォル―。偽りのレヴァイアタンよ!!」

 

 俺達は笑う。あの方のために我らはやる。

 

 皆でこの暗殺が成功すると。計画は入念にやっているんだ。

 

 最悪、学園を消滅させても目的は達成できる。

 

 だが、俺達は知らなかった。

 

 この日の学園に襲撃をしかけるほど、愚かなことはないと。

 

 あんな事知っていれば俺達は襲撃しなかった。

 




 この時点でポルムに新たな設定を追加です。編集に手付け加えます。

 彼は、実はとんでもない怪物です。アサゼルだけがとんでもなさに気付くという異常事態です。

 その真価を発揮するのは英雄派との戦いですね。英雄派にとっては色々な意味で最悪過ぎる敵です。

 彼を倒せれば、本当の意味で英雄になれると思いますよ?出来たらの話ですがね。

 大魔王の力に大魔導師の技を加えたらどうなるのか?其れが裏テーマでもあります。

 


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嵐の授業参観です。

 いよいよ授業参観の始まりです。

 さて・・・さっそくみんなは大暴れしますよ。


 


 

 SIDE イッセ―

 

 いよいよやってきました授業参観。簡単に言えば公開授業といった方がいいかもしれない。

 

 だが、この日の駒王学園の裏の事情を知る者達は大変ピリピリしています。

 

 何しろ・・・。

 

 俺の幼馴染連中のとんでもない身内が大集合するのですから。

 

「・・・俺、悪魔になったばかりなのに、なんでこんな目に合わないとといけないの?」

 

「まあまあ、ある意味いい機会じゃねえか。今のうちに苦労しておけば絶対に役に立つ!!一緒に顔を覚えてもらおうぜ。」

 

 匙の奴なんて顔色を蒼くしながらも必死にあっちこっち巡回しまわっています。何かあったら大問題必須だからなあ。

 

 仁藤の前向きさがこういう時羨ましいだろう。

 

「ある意味俺の所為でもあるのかな?」

 

――――――かもしれんな。ドラゴンは例外なく強い者を呼び寄せる。ましてやアギトであるお前の場合は、その傾向がさらに強い。まるで強者と出会い、更に自身の進化を促そうとするようにな。

 

 俺、そんなつもりないけど。

 

――――――でもいい機会ね。神を目指すのなら、そう言った者達との出会いは大切にしなさい。

 

「義兄も元気そうで。」

 

 鋼兄からやってきやがった。目の前にいるのは俺達と同じ制服を着たまさに純日本人といった風貌の青年。

 

 細身で、一見すると普通にしか見えないけど、どことなく猛禽類を思わせるような鋭い眼差しをしている。

 

 どうも鋼兄の知り合いのようです。

 

「紹介する。俺の義兄弟の契りを交わした弟分、嵐だ。本場の忍びでもある。」

 

「そういうことです。常々話は義兄より聞いています。」

 

 忍者って、現代でもいるの?

 

「丹波殿も含めて極少数いる。まあ、嵐の場合は特殊でな。俺達鬼との付き合いがかなり長い。何しろ俺達と同じく変身できるのだからな。しかも強いぞ?」

 

 変身する忍者なんて初耳ですよ?

 

「変身忍者というべきだな。お前の方の鬼の篭手はどんな感じだ?」

 

「まあまあというべきかな?鬼の眼はようやく慣れてきたが。まだまだ・・・新生した状態に慣れていないのがきつい。」

 

「修行のやり直しだからな。だが、せっかくお前の兄から貰った命だ。大切にしろよ。」

 

 二人のやり取りからして、あの嵐って人も色々あったみたいだな。

 

「なあ・・・それって、二つの魂と命が感じられることと関係あるのか?」

 

『!?』

 

 どうもこの人からそれが感じられる。

 

 二つの魂と命。それを同時に宿しているみたいなのだ。

 

「なるほど。神の資格を持つ男。義兄の言う意味が良く分かった。」

 

「こいつの転生にはちょっとした理由があってな。黒歌がまだ悪魔の駒をちょろまかしていたせいで・・・。」

 

 それ以上は聞くのは野暮みたいだな。

 

「それはそうと・・・母上達はどうした?」

 

「・・・好き勝手に行動されている。実は探している最中で。」

 

「それを早く言え!!」

 

 ちょっと待てい!!既に日本神話の最高神達が学校を徘徊しているのか!!

 

 思ったよりもフリーダムな神様達だな!!

 

「・・・・・・。」

 

 あっ、匙が固まっている。

 

「流石にこれは不味いな。」

 

「不味いってもんじゃないって!!」

 

「こっちは母上と伯父、伯母を探してくる。」

 

「すまん。だが、義兄が苦労しているのはよく分かるよ。」

 

「お前でも振り回されるか・・・まあ、伯父は有名だが、母上はあれでかなり自由奔放なところがある。人見知りの伯母上は別の意味で心配だ!!」

 

 2人が走り出す。その後に匙と仁藤まで続く。

 

「・・・そうか。頭が痛い話だな。」

 

 そこにやってくるのは鋼牙さんです。

 

 その隣には・・・。

 

「会ったら取材と、スケッチしてみたいかも。創作意欲がわくわ。」

 

―――――カオル・・・お前、いい度胸をしているな。

 

 明るい感じの女性がいます。

 

「妻のカオルだ。黄金の騎士の物語って知っているかな?」

 

 あっ、懐かしい。子供の頃、何回も読んだ。

 

「その原作者だ。」

 

「ちなみにモデルは鋼牙。」

 

「・・・・・・。」

 

 何と言えばいいのか。小さい頃大好きな絵本の作者と出会い、その絵本のモデルとなった既に会っていた事を知るなんて。

 

「握手してください。」

 

 とりあえず、二人と改めて握手することにした。

 

 俺・・・感激だ。

 

――――――今でもその絵本を大切にしている辺り、すごく好きだったのね。

 

 子供ができたら読ませたいと思っているくらいだ。

 

「それはそうとサイガは知らんか?」

 

「例の計画のために、ポルムがあちこちに連れ回しています。」

 

「そうか。ついにサイガも年貢の納め時か。」

 

―――――あの坊ちゃん、ついに男になるのかねえ。

 

 魔道輪であるザルバのコメントが面白いです。

 

「ははは・・・そう言えばセラさんも来ているのだったわ。」

 

 予想通り、母であるカオルさんも買収済みか。

 

 だが、どんな方なんだろう?まだこっちは会ったことないけど。

 

――――カオルは今度の絵本のモデルに、よりによってあの魔王とサイガをモデルにするつもりらしいからな。

 

 魔王とサイガをモデルにした絵本?

 

「出版したら是非買います。」

 

 一ファンとしては買ってみたいものだ。

 

「さて・・・。」

 

 あれ?鋼牙さん緊張している?

 

「クスクス、中々授業参観に行けなかったのを気にしてね。行くのは行くので緊張しているのよ。」

 

「・・・行くぞ。」

 

―――――はははは・・・お前も人の親だな。

 

 恥ずかしいのだろう。そのままその場から去っていく鋼牙さんとカオルさん。

 

 微笑ましい限りだ。

 

「やあ。なんかすごい面々が集まってきているね。」

 

 そこにサーゼクス様とその後ろに見覚えのある顔が二人。

 

 あっ・・・確か結婚式で!!

 

 思い出したぞ。

 

 この二人、部長のご両親だ!!

 

「・・・・・・。」

 

 俺は知らない間に背筋に冷たい汗が落ちてくるのを感じた。

 

 結婚式の時、俺は相当やらかしたからなあ。

 

「おう・・・ここで魔王様に会おうなんてな。」

 

 そこに堕天使の総督、アザセルまで来ましたよ!!?

 

「可笑しい事じゃねえだろうが。俺だって息子の授業参観くらい行く。」

 

「それもそうだね。」

 

「なら弟子の様子を見に行くのは可笑しい事じゃないか。」

 

 何で天道師匠まで来ているんですか!?

 

「久しぶりだね。」

 

「わりぃな、総司。」

 

「フッ・・・何かあったらこっちが動くだけのことだ。」

 

「今回の会談での立会人になってくれるからね。」

 

「はあ・・・。」

 

 まさか師匠まで会談にやってくるなんて。

 

「安心してくれ。総司がいる場で変なことはしねえから。したら、総司とハルトのやつにお仕置きされる。」

 

「そういうことだ。護衛とストッパーも兼ねて俺もいるから安心しろ。」

 

 ハルトも傍にいる。グレゴリの幹部だけあって、会談に参加する。

 

「ふっ・・・それに今のこいつは青春を送っている息子の事で頭が一杯だ。悪巧みして、息子に嫌われるようなことは絶対しないさ。」

 

「ちょっ!?」

 

 師匠の発言に、アサゼルの顔に動揺が走る。

 

『ほう・・・。』

 

 なんだかんだ言って・・・やっぱりこの方は子煩悩だね。

 

「何だお前ら!?なんでニマニマ俺の事を見ていやがる!!?」

 

 いや・・・微笑ましい。

 

「はははは!!いいじゃねえか。俺やサーゼクスにも子供がいる。その気持ちはわかるってもんだ。」

 

 そこに、ダンテ様まで。

 

「おっ・・・あんたにはしっかりと挨拶したいと思っていたんだ。遅れてすまねえな。」

 

「いやいや。気にするな。だが・・・こんな形だが、素晴らしい若者の命を救うのに貢献できて嬉しいものだ。」

 

「ははは・・・そりゃ自慢の息子だからな!!」

 

 ダンテ様とアサゼル・・・何かすごく息が合っていないかい?

 

「似た部分があるということだ。まったくお前達は。」

 

 師匠が呆れています。

 

「ふっ・・・だが、この様子なら会談の際先も明るいな。」

 

 サーゼクス様は微笑む。

 

「しかし巧の奴も結構すごいモテるよな。なあ?イッセ―。」

 

「そうですね。あいつ・・・今日もラブレターを十枚も貰っていたし。」

 

「・・・その話、詳しく聞かせな。」

 

 おっ・・・おお!?あっ、アサゼルさん。何で俺に詰め寄ってくるの?

 

「いいから・・・聞・か・せ・な!」

 

 なんか、視線だけで人を殺せそうな位に殺気だっている。

 

 すごく怖い。

 

「いっ、いや巧は、王子様キャラだったみたいで、木場、渡に続く三人目の王子として、学園内の女子に大人気で・・・。ファンクラブもできたと。」

 

「ファンクラブだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

 ちょちょちょ、襟元を握り締めないで!!首が・・・しまって息が・・息が出来ない。

 

 それに顔が近い!!近いから!!

 

 男に迫られても全く嬉しくないって!!

 

「・・・離してやれ。俺の弟子の首を絞めているぞ。」

 

 師匠、うまく諭して、助けくれてありがとうございます。俺、本当に師匠の弟子でよかったです。

 

「あいつら・・・勝手にファンクラブを作りやがって!!」

 

 アサゼルの憤慨は収まらない。

 

「作るなら、まず俺様に言いやがれ!!グレゴリ公式のファングラブ以外は認めんぞ!!」

 

 しかも、怒るポイントはそっちかい!!

 

「イッセ―。今すぐファンクラブと、今までラブレターを渡した連中の情報を教えな。」

 

 おっ・・・おい。何を言っているんですかあんたは!?

 

「あいつの本命は誰か調べるんだよ!!あいつ・・・そう言った話は無いから心配で心配で。下手な女は絶対に近づけんぞ!!」

 

 何と言う親バカ根性。

 

「デッ・・・でも、最初は大変だったんですよ。みんな無愛想でとっつきにくい奴だと勘違いしていて。友達が作るのが結構大変で。」

 

「巧の良さが分からん奴らぶっここすううううううううううぅぅぅ!!」

 

 ああもう!!このバカ親提督、すごく面倒くせぇぇ!!

 

 誰か助けてぇぇぇぇぇ!!

 

「はいはい。暴走の時間は終わりですよ。」

 

 そんな時に救いの手が差し伸べられた。

 

「ぎゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 アザゼルの顔面に向けてだ。

 

 悲鳴から分かってもらえると思うが、アサゼルの顔面に手を差し伸べたのは我らが幼馴染のハルトさんです。

 

 ハルトは右手でアサゼルの顔面を掴んだまま持ち上げる。

 

 その顔はすごく憂鬱そうだ。

 

「はあ・・・巧、すまん。またお前の親父に総督殺しをやってしまう俺を許してくれ。」

 

 そして、すごく胡散くさいセリフを。

 

「そうこれはしかたないことなんだ。学校の平和のため、イッセ―のため、そして俺の平穏と快楽のため。そうこれはしかたないことなんです。うん・・・大義名分は十分かな?」

 

 いや、お前誰に言い訳している?

 

 言っていることが無茶苦茶だぞ。

 

「ハッ・・・放せ!!いっ・・・いや離してくださいハルト様!!」

 

 その言葉に対する答えは・・・

 

「はははっ・・・一度暴走したら、シャットダウンさせて止めるのが流儀なんだよ。」

 

 まるで虫も殺さないような儚い笑みで語るドS発言でした。

 

「シャッ、シャットダウン?」

 

「・・・・・・盛大な悲鳴を期待しているよ?」

 

「ははははは、そうかい。毎度おなじみのパターンってやつか。」

 

 アサゼルさん、すでに諦めとる。

 

「・・・秘技、総督殺し。」

 

「ぎゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 アザゼルの絶叫が校内に轟く。

 

「これはただ掴むだけじゃなく、指先、いや爪を喰い込ませるように力を込め、面じゃなくて点で相手の内部から苦痛を与えることがコツ。よい子は真似したら駄目だよ。」

 

 悲鳴をBGM代わりにして、解説しなくていいから!!

 

 それに誰も真似できんわ!!そんな、外道技。

 

 良い子が真似したら、この世は絶対に終わりだ。

 

「・・・・・・・・ガク。」

 

 ああ、アサゼルの全身から力が抜け、ぐったりとしている。

 

 手足が力なく垂れ下がっている。

 

 その光景に魔王様一同に、天道師匠まで顔を蒼くしているって!!

 

「魔力無しの純粋な握力でやるのが大切です。このように絶妙な力加減で頭をつぶさずに相手を気絶させることができようになったら一人前です。応用させれば、これだけで都合の悪い記憶を握りぶつ・・・いや、消去できます。」

 

 変身前の素の握力だけで堕天使総督を気絶させるなんて誰が出来んの!!

 

 誰も一人前になれない事をここで断言してやる!!

 

 それに、最期の方で握りつぶすって言おうとしたよな?それって力技で記憶ごと頭を握りつぶすってことじゃないよな!?そうだと言ってくれ。頼むから!!

 

「うちの総督が失礼しました。授業開始まで、少しの間保健室でも寝てもらいます。また会いましょう。」

 

『あっ・・・ああ。彼にお大事にって伝えておいてくれ。』

 

 ハルトは去っていく。

 

 顔面をわし掴みした状態アサゼルを引きずったまま。

 

「・・・・・・。」

 

 怖いよ。すごく怖いよ!!

 

 あまり異様な光景にまるでモーゼの滝のようにみんなが廊下の壁にへばりついて怯えておる。

 

 今のこいつは希望をもたらす魔法使いじゃない。

 

 恐怖の化身、大魔王だ!!

 

「ははは・・・こっ・・・これは凄まじい。」

 

「OH・・・本当だぜ。まだ、震えが止まんねえ。魔帝と戦った時以来の恐怖を感じた。」

 

 ほら!!現職の魔王様二人が震えあがっているし!!

 

「世界は広いな。」

 

 師匠にまでこんなことを言わせるのか、おのれハルト!!

 

 今なら断言できる。お前は可笑しい!!

 

「流石グレゴリ最強のストッパー。」

 

 それと何となくだけど、分かってきたことがあるんだ。

 

 ハルトって、グレゴリ最強にして最凶なんじゃないかって。

 

 いや、間違いない。あの総督殺しがすべてを物語っている。

 

 

 

 

「あっ、イッセ―!!」

 

 恐怖の化身と会った後に、俺は癒しと出会った。

 

 アーシアと母さんだ。楽しそうに語らっているこの二人は癒されるんだよな。

 

 あれ?もう一人いますよ。

 

「ここで会ったの。」

 

 黒髪の美しい方です。大和撫子って感じの清楚な女性だけど、同時に内側から溢れるばかりの輝かしい力を感じる。着ているのはカジュアルだけど、まるで太陽のようだ。

 

「あっ・・・イッセ―にアーシアにゃ。あっ・・・。」

 

 そこに黒歌がやってきて、固まる。

 

「おっ・・・お義母様!?」

 

 はい?そしてその口から出てきたのはお義母様?!

 

 ってことは・・・。

 

「初めまして、アマテラスといいます。鋼鬼がいつもお世話になって・・・。」

 

「あははははは・・・。」

 

 アーシアの苦笑が俺の中の驚きが本物であることを教えてくれる。

 

 うわ~こんなところで日本神話の神様と会うなんて思いもしなかった。

 

 ありがたやありがたや。なんかすごい御利益が貰えそうだ。

 

「また今度遊びに行ってもいいですか?」

 

「大歓迎だよ。」

 

「はっ・・・あはははは・・・。」

 

 しかも、母さんと意気投合しとる。母さん・・・その方は唯の人じゃないですよ?

 

 日本神話の女神様ですよ!!

 

 そんな方とママ友にならないで!!

 

「ははは・・・流石イッセ―の母上。何かすごいものを感じるにゃ。」

 

「へえ・・・そうなんですか。」

 

 その後ろからもう一人参戦していますよ。

 

 ってハナさん!!

 

「今度試してみたら?」

 

「是非に。」

 

「・・・あなたがハナさんでしたか。」

 

 そこにもう一人参戦。

 

 グレイフィアさんです。

 

「一度話を聞いてみたくて。いいでしょうか?」

 

「持ちよ。」

 

『・・・・・・。』

 

 なんかママさんズが集まってきています。

 

「・・・なあ。あの子って誰だ?」

 

 匙が今更に、そのママさんズの中にいる桃色の髪をした我が母を指す。

 

「・・・まあ、驚くなというのも無理だろうが。」

 

 俺の母を紹介した後、匙は卒倒してしまった。

 

 それほどまでに驚くことだったのか?

 

 

 

 

 そんな感じで教室に入ったら、母さんの事で似たような混沌を味わう事になった。

 

「そっ・・・そんな馬鹿なことが!!」

 

「・・・これが合法ロリという奴か。」

 

 我が悪友二人の発言。母さんじゃなかったら許していたが、流石に見過ごせないので一発ドついてやりました。

 

「母さんをロリゆうな。」

 

 事実だけどな。母さんが涙目で睨んで来たら、手が出てしまうんだ。

 

 全然迫力なくて、可愛いくらいだし。

 

 その隣にはオ―フィスがいるけど、二人が並んでいると・・・仲良し姉妹にしか見えんのが恐ろしい。

 

 アーシアまで加わったら・・・アーシアがお姉ちゃんになってしまうし。

 

「でも、あれは仕方ねえよな。」

 

「うん。どうして昔から姿が変わっていないの?」

 

 ネロと良太郎の会話ももっともだ。

 

「僕もそう思うよ。でもイッセ―の母親だとすると話は別かも・・・。」

 

 渡の奴が何かを考えている。

 

「可能性としては極めて高いと思っているけど。イッセ―の力の根源としてね。」

 

 渡・・・一体お前は何を?

 

「思慮深くなったな。渡。」

 

「渡の思慮深さにはいつも助かっています。巧が助かった物、渡が影で動いてくれたからで。本当に感謝してもしきれない。」

 

「ああ。俺もあいつには頭が上がらない。」

 

「それに関してはこっちも同じかな?」

 

 巧やハルトですら、渡には感謝しているほどなのだ。

 

 俺達の身内は全員、渡とキリエさん、そしてアーシアには頭が上がらない。

 

 この三人の中で渡は外交で大活躍。着々と人脈を作り上げている。

 

 この様子だと、次は堕天使総督との人脈作りかな?

 

「そうか・・・うんうん、万が一俺が倒れてもこれは安心だな。」

 

・・・・あれ?誰か会話に割り込んできている。

 

「我が弟ながら鼻が高いよ。うん。」

 

 いつの間にか、俺達の傍にいたのは二十代前半くらいの男だった。

 

 細身だが、まるでベンチャー企業の若い社長といった感じだ。

 

「・・・兄さん。直接学校に来るとは聞いていたけど、いきなり教室なの?」

 

「はははははは。そうそう、そうでないと面白くなくてね。そうですよね、サ―ゼクス殿。」

 

「うお!?」

 

「聡いねえ。噂の王様に会ってみたくて、こっそり近づいたのだが。」

 

 いつの間にかサーゼクス様まで。

 

―――――だからってタイムベントで時を止めないでほしいわ。

 

 へっ?俺の中で、クレアが何か言っているぞ?

 

――――――すまん、サーゼクスは普段は良識あるのだが、リアスやミリキャスの事になると手段を・・・。

 

 ゴルトさんの言葉が本当ならすごいシスコンだわ。サーゼクス様

 

 そのために時すら止めるなんて、どんだけだよ!!

 

「弟より、話は聞いていました。大牙です。」

 

「サーゼクスだ。」

 

『・・・・・・・。』

 

 今俺の教室にいる連中の何人が気付いているのかな?

 

 冥界の魔王様とファンガイアの王様が出会っていることに。

 

 二人は無言でただお互いを見つめ・・・。

 

『フッ・・・。』

 

 笑みをこぼす。

 

「君は、弟は好きかい?」

 

「ええ・・・大切な家族。愛していますとも。あなたは妹の事は。」

 

「シスコン・・・それは私にとって名誉なのだよ。」

 

「ブラコンな私も同じです。」

 

『・・・・・・。』

 

 再びお二人はじっと見つめ合っております。

 

『同志!!』

 

 って、ブラコンとシスコン繋がりで二人が力強く握手しちゃったよ!!

 

 こんなのでいいのか!?ファンガイアと冥界の外交って!?

 

「兄さんたらもう・・・。」

 

 二人はがっちりと握手している。

 

 いや、俺はこの時外交の奥深さを思い知ったよ。

 

 何が繋がりを生むのか全く読めない。

 

―――――そんなの私でも読めるか!!

 

 クレアさんが何故か投げやりなお言葉を。

 

「二人の新たな出会いに乾杯ときませんか?」

 

 そこに何故か父さんが加わってきた!?

 

『いいねえ!!今晩は宴会という形で。』

 

 ああもう!!これ以上ややこしくしないで!!

 

 

 

 

 カオス過ぎる出会いが終わり、やっと授業だ。

 

「さて・・・これはどういう事は説明してくれませんか?」

 

 そこでキリエさんが、英語の先生に対して仁王立ちで叱りつけている。

 

 英語の先生は・・・土下座中。

 

「私はただ、生徒達の才能を引き出したいだけだ!!」

 

「だからって・・・英語で美術をやるのですか!!」

 

 キリエさんのツッコミももっともだ。

 

 英語の授業で、出てきたのは何故か紙粘土と画板なのだから。

 

 まあ、そんな事より俺は今、面白い事になっている。

 

「でっ・・・出来た。」

 

 出来たのは、三体の人間。

 

 部長、アーシア、ユウナの三人。

 

 目を閉じて作ってみたら、いつの間にか三人の超絶リアルなフィギュアを作ってしまった。

 

 体の感触・・・手や肌に残っていてそれを再現したらこれだよ!!

 

「・・・イッセ―君のエロも馬鹿にできないわね。」

 

 キリエさんの言葉に皆は何度も頷く。

 

 それで・・・オークションが始まったけど。

 

「きゃああああぁぁぁぁぁ頼むから止めてぇぇぇぇ!!」

 

 顔を真っ赤にしたユウナがそれを必死で止めていた。

 

 あいつ、意外と乙女だよな。あいつの身体の細部まで再現してしまったのが相当恥ずかしいらしい。

 

「すごいです。」

 

「我が息子ながらすごい才能を見たわ。」

 

 アーシアと母さんは感心しているし。

 

 はあ・・・俺は終わった。近くのネロを見てみると。

 

「!?」

 

 あまりにすごい光景に俺は固まった。

 

「・・・・・・。」

 

 ネロは画板で鉛筆を使って絵を描いていた。

 

 書いているのはキリエさん何だけど・・・。

 

 その絵がすごい。

 

『・・・うわ・・・。』

 

 素晴らしすぎるのだ。その絵は、写真では伝えきれない愛までも伝えてくるくらいに。

 

「・・・・・・。」

 

 当のネロは熱中しているのか全く気付かない。

 

 そう言えば、ブル―ローズの刻印は自分でやっていたと聞いている。。

 

 新しくなったローズダブルとアクセルクイーンも自分で装飾を施していたし。

 

『・・・・・・。』

 

 もちろんその絵を見たサーゼクス様もダンテ様、大牙様まで固まっている。

 

「意外にして、とんでもない才能だな。」

 

「うっ・・・うん。」

 

 芸術をたしなむ渡は特にそのすごさが分かる様子だ。

 

「こりゃ、今のうちにコレクションに加えておくべきかねえ。百年後には阿呆みたいな価値が付くぞ。」

 

「親父がそう言うのなら相当だな。」

 

 あれれ?いつの間にか復活したアザゼルさん。絵をマジマジと見て極めてすごい評価を出しているぞ。

 

 巧が言うとおり、この人ってそう言う眼は確かそうだし。

 

「こりゃ、参ったよ。」

 

 ハルト、お前が言いたい事は分かる。

 

「今度俺も書いてもらってもいいかも。」

 

「そうにゃね。いい記念になるわ。絶対に。」

 

 鬼夫婦よ、お前らはそこでのろけるな!!

 

「よし・・・ってうお!?」

 

 一通り書き終えたネロは、皆の注目を浴びていることに今更に気付いたようだ。

 

「ネッ・・・ネロったらもう////。」

 

 顔を真っ赤にさせているキリエさん。なんだか嬉しそうだ。

 

「そんなに出来は良くないぜ?」

 

 いやいや、どの口で言う!?

 

 滅茶苦茶素晴らしいじゃないですか。俺は芸術とかはよく知らねえけど、それでもどれだけすごい絵なのか分かってしまうレベルだって。

 

 しかも、キリエさんに対する愛を感じるね。いや・・・愛がダダ漏れている。

 

 ちなみに、ネロとキリエさんの仲は学園内公認だったりする。

 

 教師と生徒の関係?そんなの関係ねえって言わんばかりの二人だ。

 

 まあ、二人は学校では生徒と先生という立場をわきまえている。

 

 少なくとも本人達はそう思っているだろうな。

 

 だがな、実際はだだ漏れている!!

 

 むしろ控え目な分、さりげないワンシーンで濃厚な甘さが伝わってくるんだ。

 

 視線だけでの以心伝心は当然として、勉強で困っているネロに話しかけるキリエさんや、力仕事でやれやれと言いながら進んで助けに行くネロの二人を見るともう・・・。

 

 俺を含めた何人のも人間が砂糖を吐いたか数えて欲しいものだ!!

 

 その気持ちが籠っているだけあって、素晴らしい絵だったけどな!

 

 

 

 

 

 どうでもいい話だが、この絵は百年後にオークションにて二十億ドルというとんでもない値がつくことになる。

 

 これが戦闘と芸術を司るギルスのプロローグだなんて誰が思ったか。

 

 あの先生。本当にとんでもない才能を発掘しやがった。

 

 この後皆の薦めで、ネロが美術部に入ることになるのは当然の事である。

 

 

 そして、昼休み。

 

 運命のあれが始まる。

 

 

 




 私はこの話を書いていて・・・匙に非常に同情してしまいました。

 だってそうでしょ?

 フリーダムな神様と魔王様達の大暴れっぷりです。

 でも本当のカオスはここからです。

 


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責任をとってもらいます。

 連続投稿最終です。

 いよいよ運命の瞬間です。

 そして、この話の冒頭が究極のカオスです。

 あと実は戦闘シーンは一応あるのですが・・・すでに戦闘にすらなっていないような気がします。


side イッセ―

 

 俺達は唖然としていた。

 

 昼休み、体育館で魔女のコスプレをしている女の子がいると聞いたからだ。

 

 駈けつけてみれば・・・。

 

 いましたよ。チョー美少女が。

 

 そして、その方が・・・。

 

 魔王様だったなんて誰が思ったか!?

 

「やほー!!」

 

 いやいや、俺は女の魔王と聞いて、ナイスバディな妖艶な方を想像していましたが、美少女だったなんて想定外ですって。

 

「あの方が・・・会長のお姉様だ・・・と?」

 

 注意に入った匙が完全に固まっているけど、その気持ちはよく分かるぜ。

 

 ・・・そうか。サイガの奴、絶対に魔王とは知らずに助けたな。

 

 悪魔とは見抜いても、か弱い女の子を当然のように助けた感覚だ!!絶対。

 

「お姉様・・・。」

 

 大変頭の痛そうな様子の会長がやってきた。

 

 そこから始まるセラフォル―様のトークは・・・。

 

 うん、真正のシスコンだ。

 

 会長が顔を真っ赤にさせて悶えている。

 

 そしてあと一歩で逃げだそうとした瞬間だった。

 

「そうそう、私、ここで同志に会ったの!!出て来てツクヨミちゃん!!」

 

「はいはいはーい。」

 

 えっと・・・今度は誰ですか?

 

 出てきたのは同じコスプレをしたセラフォル―様より少し年上・・・大体二十代手前の姿をした女性だった。蒼く艶やかな髪、細身の身体。

 

 先ほどのアマテラス様とはまた違う、静けさを称えた大和撫子。

 

 それが、コスプレしている。セラフォル―様が使っているミルキーとはまた別の、着物を改造した魔法少女だ!

 

「はいはいは~い。ツクヨミです!!みんなよろしく!!」

 

 気のせいだろうか?日本神話の神様の名前が出てきたような気が・・・。

 

「まさか同じく魔女っ子を愛する同志がいるなんて。コスプレする度胸は今までなかったけど・・・今日からは違うわ!!私も同志と一緒にこの素晴らしさを広める!!」

 

「えへへへへ・・・お互い仲良くしようね。」

 

「ええ!!是非に!!」

 

「おっ・・・伯母上。」

 

 鋼兄・・・・今なんっていった?とても聞きたくない言葉を聞いたよ。

 

「・・・伯母上は大変人見知りで、引きもこりがち。それゆえかアニメは好きだった。だが・・・こっ・・・コスプレ願望があっただなんて・・・。」

 

 鋼兄がショックで固まっている。

 

 嘘・・・あれってマジで神様?

 

 しかも、日本神話最高神のお一人なの!?

 

 何で神様が魔王と一緒にコスプレをしているのですか!?

 

「他にも見つけた同志を紹介するわ。オ―フィスちゃん!!ブランカちゃん!!」

 

『はーい!!』

 

 って、おまえらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 なんでオ―フィスとブランカまでコスプレして登場してんだよ!!

 

 オ―フィスはゴスロリに魔道書みたいなものと魔女のとんがり帽子。

 

 ブランカは黒に金色の竜の刺繍がされたチャイナドレスだと!?

 

「たまには新しい衣装が着たいと思った。」

 

 確かにオ―フィスっていつもゴスロリ衣装でしたけど・・・だからって魔法少女のコスプレをしなくても。

 

「アニメ見ていて、実は興味が・・・。」

 

 ブランカ。お前って意外とオタクだったんだな。確かにアニメをオ―フィスやトルネ達と一緒によく見ているなと思っていたよ。

 

 だが、こんな領域に足を踏み入れるなんて予想外だった!!

 

「これで魔法少女戦隊は四人まで揃った!!まだまだ・・・募集中よ☆。」

 

 そう言って四人が決めポーズをとる。

 

「魔法少女と聞いたら私も参戦せずにはいられないね。」

 

 そこに止めは・・・なぜ母さんがいるの!?

 

「おおっ・・・ここで五人目だ!!よっしゃ!!目安の五人が揃ったぞ!!」

 

 母さんは・・・あれって自前なのか分からないけど、すごい可愛らしい服を着ている。

 

 白とピンクの衣装。母さんにとっても合っている。

 

 手には何故か弓矢。見た目だけなら・・・まさに魔法少女だ!!

 

 それでカメラのフラッシュがさらに増えるけど、皆知っているのだろうか。

 

 母さんを除く皆人外なのに。

 

 セラフォル―様!!その魔法少女戦隊は明らかに戦力過剰過ぎると思います!!

 

 母さん・・・なんでそんな人外連中の魔法少女戦隊に参加するかな!?

 

「うっ・・・う~ん。」

 

 ほら!!妹である会長が卒倒したぞ!!

 

「ソーナ!?」

 

「かっ・・・会長ぉぉぉぉぉ!!?」

 

 部長と匙が悲鳴をあげている。そりゃそうだろう。

 

「う~ん・・・う~ん。」

 

 実の姉が、とんでもない連中を魔法少女戦隊に引きこんでしまったのだから。

 

「・・・イッセ―。貴方の行く所、こんなカオスばかりなのかしら?」

 

 部長、それを俺に聞かないで。

 

 俺もカオス過ぎて泣けてきますから。

 

 そんな時だった。

 

――――・・・!!?皆さん!!何か悪意が!!

 

 アーシアのテレパシ―によって皆に警告がはいったと同時にだった。

 

「覚悟しろ!!偽りの魔王!!」

 

 セラフォル―様の後ろに黒いローブを纏った連中が現れ、手に持ったナイフを突きたてようとしていた。

 

 その狙いはセラフォル―様だけじゃない。他の面々にも向けられようとしている。

 

 かっ、母さんまで!?

 

 まっ・・・間に合わない。

 

 そう思った瞬間だった。

 

 あいつは現れたのだ。

 

 

 

SIDE  セラフォル―

 

 二つの意味で、完全な不意打ちだった。

 

 一つは私の命を狙う者達の襲撃。

 

 もう一つは私達を助けた存在だった。

 

「・・・・・・か弱い女の子に失礼だ。」

 

 その一閃はナイフをすべて叩き落とす。

 

「もっと、大切に扱うべきだと父様と母様、ゴンザから聞いている。」

 

 彼はあの時と同じ背中を見せていた。

 

 誇り高き、騎士としての背中を。

 

「・・・それと、久しぶりだね。あの時の悪魔さん。いや、この場合は可憐な魔法少女と言ってあげた方がいいのか?」

 

「はっ・・・はわっ///!?」

 

 あの時と同じ優しい眼差しを送ってくれる。

 

「安心して。今回も守るから。」

 

 その眼差しにやはり、鼓動は激しくなる。

 

「はっ・・・はい。」

 

 相変わらずだった。

 

 そして、悔しいけど私は改めて自覚する。

 

 ああ・・・私はこのお方に心を奪われていると。

 

 白いコートをはためかせ、彼は走り出す。

 

 その一閃で、私達を襲おうとした連中はすべて切り飛ばされた。

 

 だが、その次の一言は面白くない。

 

「そこの麗人も大丈夫ですか?」

 

「えっと・・・ええ。」

 

 ツクヨミちゃんにまで気を使っているよ。

 

「安心してください。楽しい撮影会をまたできるようにしますから。輝けるあなたも素敵です。存分に輝けるように剣を震わせてもらいます!!」

 

「すっ・・・素敵ですか。ほう・・・。」

 

 思わぬ対応にあの子までドキマキしているってどんだけ!?

 

 流石に嫉妬しちゃうよ!!

 

 

 

SIDE ポルム

 

なんて神がかり的なタイミングなんだろうか。

 

 予想外のアクシデントだったけど、それを逆にこんな形で活かしてしまうなんて・・・危険な子だと思うよ。サイガは。

 

 だって、あのツクヨミって人まで顔を赤らめているじゃないですか。

 

 後三人は、サイガの人なりをよく知っているから変化無しだけど。

 

 罪がまた増えるなんてやるねえ、流石英雄。

 

 こっちの予想をことごとく超えてくれる。そうでないとつまらないってものだ!!

 

「おっ・・・おい、これって計画通りじゃ・・・ないよな?」

 

 イッセ―が電話で僕に確認してくる。

 

「う~ん。アドリブで行くしかないね。それに、下手な計画よりもお膳立てが揃っているんだし。」

 

 むしろ好都合。参った、本当に面白い。

 

「障害を排除しましょう、この学校にいる全戦力を使って。ふふふふふ。」

 

「おっ・・・おい。お前、すごく邪悪な笑みを浮かべているぞ。」

 

 邪悪な笑み?何を言っているのかな?

 

 僕はせっかく立てた計画を台無しにした連中に怒りなんてこれっぽっちも持っていないから。

 

「褒め言葉として受け取っておく。ふははっ・・・ははははっはははははは!!」

 

「おい・・・ハルトに続いて、お前まで魔王化してないか?」

 

 イッセ―。君は的確な指摘をするね。今の僕はまさに魔王なのだよ!!

 

「余は大魔王だぞ?」

 

 さあ、覚悟するがいい!!

 

 この学校に来ている阿呆みたいにとんでもない連中共がお前らの相手だ!!

 

 

 SIDE ???

 

 こっ・・・こんはずでは?

 

 第一の奇襲は失敗。

 

 何だあいつは。

 

 たった一人で暗殺の訓練を受けた者達を一掃しただと?

 

 だったら、魔化魍でも・・・。

 

 そして体育館を消滅させるための魔法発動準備を・・・。

 

「こんなところに司令塔がいたか。」

 

 あれ?バイオリンの音色と共にコウモリを従えた奴が俺の眼に前に?そして、なんかが俺の頭を掴み上げて・・・。

 

「総督殺し、二発目いきまーす。」

 

「ぎゃああああああああああああぁぁっぁぁぁぁ!!」

 

 俺は壮絶な激痛と共に気を失った。

 

 

 

 

 SIDE イッセ―

 

 あまりに狙い澄ましたサイガの登場に唖然としながら体育館に新手が来た。

 

「これならどうだ!?」

 

 前見た魔化魍ってやつだ。

 

 出てきたのは・・・アミキリと呼ばれるバケガニの変種らしい。

 

 それに他に十体ものバケガニが体育館の中と外に出現。

 

 そして、同時に襲撃者達が三十人に増える。

 

「この場で魔化魍か。皆の避難と記憶の処理は?」

 

「騒動が起きた瞬間に一般生徒は眠らせ・・・。」

 

「私が別の場所にテレポテ―ションで送りました。」

 

 会長とアーシアの見事な連携。

 

「結界の展開もしたわ。みんな・・・暴れてちょうだい。」

 

 と、部長言った瞬間だった。一体のバケガニが強烈な打撃音と共にふっ飛ばされていく。

 

「おー!!喧嘩の会場はここか!!なら俺も混ぜろ!!」

 

 現れたのは濃い髭をした毛深いおっさん。着ているのは・・・なぜか紋付袴。

 

「伯父上。」

 

 鋼兄・・・あんたも苦労する身内を抱えてんだな。

 

 あの人、スサノオだ。いい歳したおっさんがわくわくしながら拳を打ち鳴らしている。

 

「鋼!!せっかくだ一緒に大暴れしようぜ!!喧嘩って江戸の華なんだろう?」

 

「ふっ・・・それもいいか。だが、ここは江戸ではないぞ?」

 

「細かい事は気にするな!!」

 

 おおおい!!お前らがタッグで暴れるの?一代目と二代目の荒ぶる神のタッグって。

 

「へっ・・・?荒ぶる神の一代目と二代目?あの・・・ヤマタノオロチを倒した?」

 

 襲撃者は不幸にも知っていたのか。

 

 顔色が蒼くなったぞ。

 

「やれやれ・・・騒がしいぜ。」

 

「まったくだね。せっかくリアスの授業を観賞したかったのに。」

 

「巧の雄姿が見られる授業参観が中止にならないように速やかに処理ことを提案するぜ?」

 

「この程度、俺達なら訳もない。そうだろ?翔一?」

 

「はははは・・・はあ。戦いたくはないな。」

 

 ダンテ様にサーゼクス様、そして・・・アサゼルさん!?

 

 そこに師匠と、何で父さんがやってくるの?

 

「出番はないかもな。」

 

 騒ぎを聞いて来てくれたのでしょう。いつの間にか俺の傍にいた嵐さん。それはこっちのセリフですよ。

 

「なっ・・・なんで他の魔王やグレゴリの総督まで来ているのだ!?」

 

 体育館にどんどんこの学校に来ていた怪物たちが集まっていく。

 

「厄介事か。」

 

 ああ・・・鋼牙さんまできた。

 

「あらあら・・・すごい怪物達。創作意欲がわくわ。」

 

 カオルさん、あなたは一般人!!だから早く逃げて!!

 

「王の判決を言い渡そうか?判決は決めているがな。」

 

 大牙さんも。手になんか鞭みたいなものを手にして・・・すごく禍々しいオーラを発している。

 

 アミキリがそれにビビって逃走。その先に一人の女性がって、危ない!!

 

「きゃ!?」

 

 あれ?

 

 可笑しいな。

 

 何で悲鳴と共にふっ飛ばされたのが女性じゃなくてアミキリなんだろう。

 

 あっ・・・あの女性ってハナさんだ。

 

 アミキリをアッパーで思いっきりふっ飛ばしたんだ。

 

 体育館の天井をぶち抜き。そのまま落ちてきて・・・。

 

 体育館の床に出来たクレーターの上でそのままKOだよ。相手が全身痙攣、口から泡吹いて沈黙しておる。

 

『・・・・・・・。』

 

 信じられない光景だと思う。

 

 でも、残念ながら事実だ。他の皆も目を点にしてハナさんを見ている。

 

「あーびっくりした。」

 

 アッパーかましてから言うセリフじゃないですよ!!ハナさん。

 

「腕っ節ならママさん一番かな?しかし、なんでツクヨミがあんな格好を?」

 

 後ろからアマテラスさんまでやってくる。

 

「はあ・・・ここまで愚かな襲撃者がいるなんて。」

 

 グレイフィアさんも後から続いてきたぞ。

 

「ぐっ・・・せめて魔王の一人を・・・うお!?」

 

「駄目だよ。そんな事をしたら。」

 

 襲撃者の一人がサーゼクス様にナイフを投げるが、それを横から飛んできた矢が撃ち落とした!?

 

 撃ったの・・・母さんだよ。どんな神技なの。

 

 唖然茫然している襲撃者達に言う事は一つ。

 

「なんで、最悪な時期に襲撃をかけるかな・・・。」

 

 よりによって、学校に最強戦力が集結している時に。

 

「さて・・・そろそろ役者は揃ったかな?」

 

 皆の中で大牙さんが判決を言い渡す。

 

「王として、お前らに判決を言い渡す。・・・・・・私刑(リンチ)!!」

 

『じゃあ、とっとと逝け。雑魚が!!』

 

『ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』

 

 襲撃者達に対する魔王、神様連合軍によるリンチを開始。

 

「おっと、ここから先はR指定だぜ?」

 

 ダンテ様・・・いちいちそんな事言わなくていいですから!!

 

『ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁl!!」

 

 悲鳴なんて俺は聞いていない。聞こえていない。

 

 聞こえないから見えてもいないんだ。ああ・・・数の暴力すら生温いぜ。

 

「はあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 残ったバケガニ達をサイガが格好良く剣を振るって倒す。

 

 魔化魍に対抗するための清めの音。それをサイガは実は会得していた。剣を音叉のように鳴らす形でだ。

 

 次々と華麗にバケガニを斬り伏せるサイガ。

 

 流石木場やネロ達の剣の師匠だ。危な気ない。

 

 相手が振り下ろしてくるハサミや巨体を活かした体当たりを舞う様に紙一重でかわしていく。

 

 その様は・・・まるでフィギュアスケートのようだ。

 

 お偉いさんの前で大活躍だな。

 

―――――アバンストラッシュ!!

 

 そして、あの必殺剣でバケガニ達に止めをさします。

 

「ふううう・・・。思ったよりも楽に終わったか。」

 

「・・・・ポ~///。」

 

 セラフォル―様・・・そんなサイガの雄姿に見惚れていらっしゃる。

 

「・・・・・・美しい。こんな心が綺麗な御方がこの世にいるなんて。」

 

 あれ?ツクヨミ様まで似たような熱い視線を。

 

 そんな彼女にサイガは剣を収めてから駆け寄る。

 

 

 

 

 side サイガ

 

 僕は久しぶりに会った少女に駆け寄る。

 

「怪我はないみたいだね。」

 

「はっ・・・はい!!」

 

 見たところ全く怪我はない。呪いの類も受けていないか。

 

「しかし、なんで君が・・・って、そう言えば名前を聞いていなかった。」

 

 そう言えばあの夜の時は名前を聞かずに帰ったか。

 

「セラフォル―。」

 

「ん?」

 

「セラフォル―です。」

 

「そうか、私の名前は・・・。」

 

「サイガ君・・・だよね?」

 

 あれ?なんで名前を知っているの?

 

「あなたは反則。サイガ君を逃がさないようにずっと計画を練っていたのに、ほんの小さなトラブルを利用して更に私を惚れさせるなんて・・・ホント反則もいいところだよ。」

 

 計画?なんのこと?

 

 なんかぶつぶつ言っていますけど?

 

「姉様、少し落ち着いてください。すっ・・・すみません、私の姉が・・・。」

 

 ソーナさんが駆け寄ってくる。

 

 あれ?ソーナさんの姉?

 

 確かソーナさんは魔王レヴィアタンの妹だったよね?

 

 そのソーナさんがセラフォル―さんを姉と呼ぶことは・・・。

 

 あるとんでもない事実に気付く前にセラさんが私の首をこっちに向けて・・・。

 

 そのまま唇を重ねてきた。

 

 って・・・くっ・・・くクククク・・・唇!?

 

 人生初のキスをセラさんに奪われた。触れた柔らかい唇の感触。

 

 そのことを実感する前に彼女は今度は私を抱きしめてきた。

 

「ふふふふ・・・もうこうなったら絶対に離さない。私の心を奪った罪は重いんだよ?」

 

「あう・・あう・・・。」

 

 頭の中が真っ白になる。あれ?どうしてキスなんかされるの?

 

 そして抱きしめられるの?むっ・・・胸があたって!?

 

 混乱する私の耳元でセラさんは囁く。

 

「改めて自己紹介するね。私の名前はセラフォル―・レヴィアタン。五大魔王の一人。」

 

 五五五・・・五大魔王!?冥界のあの!?

 

 その後、セラさんは私と顔を見合わせる。その瞳は涙でぬれ、顔は乙女の恥じらいにより赤く染まっていた。

 

「そして、あなたはその魔王のハートを奪う大罪を犯したの。」

 

 そう言いながら妖艶な笑みを浮かべるセラさん。

 

「責任は取って貰うから。」

 

 再びキスをしてくる。

 

 今度は、舌が入ってきた!?

 

 人生二度目のキスは・・・ディ―プキスだった。

 

 

SIED イッセ―

 

 あまりに情熱的で官能的な愛の告白に、体育館にいた一同顔を真っ赤にさせています。

 

 これって純情なサイガには刺激が強すぎないか?

 

 サイガは鋼兄の次に純情だ。エロ本見るだけで鼻血は出ないけど、顔を真っ赤にさせてフリーズするほど。

 

 ついでに事故で婦女子の裸を見てもフリーズして気を失うほどのレベルなのだ!!

 

 鋼兄と並んで純情コンビと密か認定していたりする。

 

「やっぱりこうなったのですね。」

 

 アーシアは顔を真っ赤にしながらも苦笑している。お前・・・この事を予知したのか!?

 

「ハイ・・・一部だけですけど。」

 

 サイガの奴は完全に固まっている。

 

 本当は皆で連絡を取り合って上手くここまで誘導して、セラ様が捕まえる予定だったけど、予想外のアクシデントでまるで王子様のようにサイガが駆け付けてしまったので、何もすることが無くなってしまったのだ。

 

 深い深い口づけを交わした後、セラフォル―様はいう。

 

「好きだよ、サイガ君。あなたはもう・・・私の物よ?」

 

 瞳を潤ませてからの止めの告白。

 

「あう・・・あう////。」

 

 それは純情なサイガにとってとてつもない破壊力だったのだろう。

 

 爆発でもしたかのように一気に顔を真っ赤にさせ、そのまま倒れてしまったのだから。

 

「もう・・・倒れちゃだめだって。まだ好きだって伝えきれていないのに!!」

 

 いやいやいやもういいですって!!サイガはすでに限界超えていたから!!

 

 セラフォル―様ってどんだけサイガに惚れているの!?

 

「あら?ツクヨミちゃんどうしたの?」

 

「ふふふふ・・・。」

 

 頬を朱に染めて不敵に笑っていますよ?倒れたサイガを抱き寄せ、ヒッ、膝枕だと!?

 

「いい子見つけた。セラちゃん。この子なんだけど・・・。」

 

「えっ・・・まままままさかツクヨミちゃん。サイガ君の事・・・。」

 

「すっごく気に行っちゃった。なんか可愛い弟みたい。」

 

 と、ツクヨミ様がサイガの唇にキスだと!?

 

「はう!?」

 

 今度はツクヨミ様なの?

 

「うう・・・同志だけど、サイガ君の事は譲れないよ!!」

 

 もう一つの計算外は・・・サイガ。お前はもう一つとんでもない罪を重ねようとしていることだ!!

 

 何で神様まで気にいられてしまうのかな?

 

「あうあうあうあう・・・・。」

 

 あまりのショックだったのだろう。

 

「・・・・・・ガク。」

 

 完全にサイガは気を失った。

 

「う~ん・・・う~ん・・・・。」

 

「・・・ってサイガ!?」

 

 そんなサイガにカオルさんが駆け寄ります。

 

「はあ・・・セラフォル―様、ツクヨミ様。落ちついてください。サイガはこの手の事に全く免疫が無いのは分かっているでしょう。」

 

 鋼牙さんも流石に嗜めますか。

 

「あははは・・・はあ、まだ返事聞けていないのに・・・。」

 

「まあ、破壊力は抜群でしたし。」

 

「私、二番目でいいからねえ?まずは弟感覚で色々と交流を・・・長年いなかった相手の候補にしたいのよ。」

 

「そう言う事ならう~ん。」

 

 いやいや、セラフォル―様!ツクヨミ様!本人がいないところで話を進めないで!!

 

「う~ん・・・う~んう~ん。」

 

 責任を取らそうと決めていたサイガ捕獲計画。

 

 あまりに情熱すぎるセラフォル―様のアピールにより、サイガがKO負けし、日本神話の神様に大変気に入られる形で幕を下ろした。

 

 本当にお前は罪深い!!

 




 ここで連続投稿は終わりました。

 卒倒したソーナさんとサイガ君に哀悼の意を送ってやってください。

 みんながあまりに好き勝手にやりすぎたゆえです。

 また次話で会いましょう。


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新しい後輩はトライアングル

いよいよ彼の登場です。

 ドンナ魔改造になっているのやら。


 SIDE ポルム

 

 さて、色々なアクシデントやカオスが合った授業参観が終わりを告げた。

 

 皆期待通りの大暴れをしてくれたよ。

 

 だが、その大暴れはまだ続いている。

 

 イッセ―君達の家で行われる大宴会という形でな!!

 

「早く終わって欲しいわ。」

 

「ええ・・・。」

 

「俺もだぜ。」

 

「右に同じく・・・。」

 

 まず行われたのは授業参観の撮影会。主な被害者はリアス部長、ソーナ会長に加え・・・巧と鋼鬼!!

 

「はあ・・・相変わらずだよ兄さん。」

 

 そして最後は渡だ!!

 

 あれは羞恥プレイもいい所というところか。

 

 大の大人が・・・息子や妹達の雄姿を見ていたのだが・・・。

 

「母上・・・何でこんなに撮影が上手なの?」

 

「ふふふ、これでもマイカメラはたくさんあるよ。私、カメラ大好きで。それに太陽神の特典で、光の屈折も上手く操作できるし。」

 

 日本神話の女神様・・・カメラ撮影が趣味ですか。でも・・・太陽神だけあって光の加減と上手く調整して撮影している。

 

 まさに力の無駄使・・・いや有効に活用していると言っておこうか。

 

 ホームページで高天原の景色を撮影して載せているらしい。

 

 検索をして見たらホントに出てきたのには驚いたよ。

 

 インターネットであの神々の世界が見れるって感慨深い。

 

 インターネット万歳!!

 

「上手く撮影するにはですね。」

 

 アマテラスによるハンディカムやデジカメによる撮影のコツの講座まで開かれている。

 

 それを・・・魔王様と堕天使の総督が真剣に聞いている。

 

 こっちも実は興味あってちゃっかり聞いて勉強させてもらっていますがね。

 

「ねえ・・・私達で同盟組まない?」

 

「そうだな。被害者の会くらい作ってもバチは当たらん。」

 

「ふふふふ・・・お互いに身内で苦労しているということで。」

 

「ええ。あなた達とはいい友人になれそうです。」

 

 あれ?リアス部長達の友情が深まっているぞ?

 

「まあ・・・僕も同じくかな?」

 

 見たところ、渡がまとめ役になりそうだ。

 

ここにシスコン・ブラコン・親バカ苦労人同盟が結成されたようだね。

 

「・・・何で俺、こんなとんでもないとこに来てんの?」

 

 招待された匙君はかちこちに固まっています。

 

「いいじゃねえか。それに見どころあるって言われたんだぜ?もっと誇れ!!」

 

「お前の前向きさが欲しい!!是非分けてくれ!!」

 

 匙君と仁藤君の二人は・・・どうもスサノオさんが気に入ったらしい。

 

 そして、今回の宴会に強制的に引きずり込まれた被害者だ(笑)。

 

「まあまあ。同志よ。」

 

「同志っておまえな。」

 

「だって、共に三大巨獣の神器を持つ者同士なんだし。」

 

「そうだったよな。」

 

 僕にとっても大切な同志だ。同じ三大巨獣の神器を持つ者が勢揃いするのは初めてのことらしい。

 

 二つ同時に同じ時代にあることすら今までなかった事らしいのに。

 

 僕の神器は一つだけ例外はある。それは、神器でも同じ三大巨獣の神器は解析出来ても、コピーはできないという事だ。

 

 まあ、この三つの神器は収集型の神器なので、可笑しくもない。

 

「お前さんの神器・・・本当はすごく恐ろしいじゃねえ?」

 

「そうかな?」

 

 仁藤は鋭い。匙はイッセ―と似たタイプで敵になるなら厄介だが、仁藤は違う意味で敵に回したくない。

 

 根性という名のしぶとさはイッセ―と匙に匹敵する上に、楽天家のように見えて色々と視ているのだ。匙がシトリー眷属の精神的な柱だとすれば、仁藤は皆のフォロー役。

 

 なるほど、それに指輪の力などを加えれば、シトリー眷属の二枚の切り札となるわけだ。

 

「・・・切り札はたくさんあるという事だけ言っておく。そっちも色々と用意していると見たけど?」

 

 遠まわしに肯定しつつ、あちらの手札も聞いてみる。

 

「定期的に魔界の森や色々な場所に連れて行ってもらっているからな。手札が増えたぜ。」

 

 彼の持っているベヒモスの神器。これは僕の神器ではできない事を平然としでかす。

 

 そして、リヴァイアサンの神器。

 

 これはまだ隠された力がある。これに僕は最近になって気付いたのだ。

 

「匙君はあれの修行中?」

 

「ああ・・・。あれってただ吸い込むだけじゃなかったんだな。」

 

 リヴァイアサンの神器。あれの本当の力もまた驚異だ。

 

 僕の考えが正しければ、星一つすら消滅させるスペックを秘めている。

 

「三大巨獣の神器ってどうしてみんな収集型なんだろうね?」

 

「さあ?」

 

「俺はポルムとアザゼルさんには感謝しているぜ。これでイッセ―の神器やアギトの力にようやく対抗できる。あれだけ阿呆みたいな強さにあれでようやく対抗できるって言える辺り、本当にイッセ―はすごいぜ。」

 

 匙はどうもイッセ―にライバル意識を燃やしている。そして、その思いに応えるように、黒い龍脈とリヴァイアサン、二つの神器は、イッセ―の持つ赤龍帝の篭手、そしてアギトの力に対抗できるだけのスペックを開花させ始めているのだ。

 

「こっちも手札を揃えておかないと。まだまだほしいし。」

 

 アザゼルのおかげで、こっち最優先で狙うべき神滅具を二つ見つけた。特に片方はこの神器のもう一つの制約を実質的になくしてしまうのだ。

 

 あれはのどから手が出るほど欲しい。

 

 あれがあればあの世界で得たあるデータを再現できる。

 

「お互いに、まだまだこれからってことだ。」

 

「おう。どんどん強くなってやるぜ。」

 

 僕の同志であるこの二人はまだまだこれから強くなる。

 

 何処まで強くなるのか・・・楽しみにさせてもらおう。

 

「がはははははは!!お前ら!!楽しんでいるか!!」

 

「おう!」

 

「こうなりゃやけだ!!」

 

 スサノオさんがこっちやってきた。

 

 差し出された酒に、仁藤も、匙までもが飲み始める。

 

「お前に酒をふるまう日が来るなんてな。」

 

 スサノオの傍には、ヤマタノオロチがいる。

 

「なら俺を酔わせるだけの一品はあるのか?」

 

「フッ・・・だったら飲め。」

 

 ヤマタノオロチが差し出した一升瓶を受け取り、それを一気に飲むスサノオ。

 

「・・・うめえ。お前さん、俺がお前を倒した事を恨んではいないのか?」

 

「おかげでこの道に進めた。」

 

「そうかい。好きな酒を造る龍っていうのもおもしれえ。」

 

「どんどん飲め。今度は俺がお前を酔い潰させる。」

 

 そう言えばヤマタノオロチを退治したのはかのスサノオだった。酒で酔い潰して、その隙に全ての首と尾を切り落とした。

 

 なるほど、殺された事を恨んではいないが意趣返し位はやらせてもいいか。

 

「上等。じゃんじゃん持ってこい。だが、お前さんも付き合え、今度も俺が潰してやる。」

 

 スサノオは大笑いながらじゃんじゃん酒を飲んでいく。

 

「それこそ上等。」

 

「お前ら、頼むからそんなところで昔の因縁を爆発させるな・・・って仕方ない!!」

 

 そこに鋼鬼さんまでやってきたのか?

 

 彼の力はこっちも興味深い。こっちに近い領域にいる存在だからね。

 

「だったら俺も付き合う。酒には少し自身がある!!」

 

『えっ?』

 

 そして、スサノオとヤマタはこの後思い知る。本当の酒豪は誰かを。

 

 一時間後、一柱の神と一体の龍が倒れていた。

 

 ついでに匙と仁藤もだ。

 

「お前・・・酒の神になれ・・・。」

 

「それに仕える龍として・・・誇りに思うぞ・・・。」

 

 鋼鬼さんがスサノオとヤマタの二人を酔い潰させるなんて誰が思ったか。

 

 いや、荒神と竜王を酔い潰させるって、どんだけですか!?

 

 流石にこっちも空いた口が塞がらないよ。

 

「鍛えていますから。ふははははは!!ついに伯父上を越えたぞ。」

 

 流石に酔っぱらっているが、豪快に笑い飛ばす鋼鬼さん。

 

「あんたはもう神を名乗れ!!もう・・・神様を酔い潰すってどんだけにゃ。」

 

 黒歌さん、貴方も苦労していますね。

 

 流石二代目ということですか。酒では僕も勝てそうにない。

 

 

 

 side イッセ―

 

 真の酒豪が誰かはっきりしたところでサーゼクス様が部長に向けて真剣な表情を向けた。

 

「君達の活躍を聞いて、いよいよもう一人の僧侶の封印を解こうと思う。」

 

「ほっ・・・本当ですか?」

 

「むしろ決断が遅すぎるくらいだぜ。あれだけのメンツを率いる事が出来ている時点であいつくらい何とかなるだろ?」

 

「イッセ―君を眷属にした日を境に、皆の力や資質が急上昇したからね。今なら使いこなせるかな?」

 

 あれ?俺が入ってきてからそんなに皆の力が上がったの?

 

「・・・きっとイッセ―自身には自覚は無いと思います。私、ほんの数カ月でずいぶん遠いところまで来たと思いますよ。もう私最上級悪魔クラスじゃないかしら。」

 

『うんうん。』

 

 部長の言葉に眷属一同が何故か頷いとる!?

 

「私もこんなところにまで来ちゃったのね。なんかすごい濃い日々を過ごしているわ。」

 

 部長に至っては遠い目をしているし。そんなに濃いですか?

 

「私も、今のリアスならそれくらいの実力に達しているとみている。なら問題ないね。」

 

「楽しい日々になりそうだ。だが、あいつの件で少々込み入った事情が入りこんできてな。」

 

 ダンテ様の言葉に、何故か渡と大牙様が頷く。

 

「サガ―クを連れてきたのに、姿を消したのだよね?」

 

「ああ。だが、あれはすでに自分で主を見つけたと思うべきだろう。その該当者はおそらく・・・。」

 

 サガ―クって何?それが姿を消したって、

 

「・・・ねえ。もしかしてだけど、あの子もまたイッセ―の幼馴染の関係者じゃないでしょうね?」

 

 それを見て部長が表情ひきつらせているぜ。

 

 まさかそんなことは・・・。

 

「・・・その通りだよ。流石リアスだね。」

 

 あれ?サーゼクス様がそれを肯定したぞ!?もう一人の僧侶って・・・まさか渡と大牙様の関係者なのか?

 

「そうか・・・はははは・・・駄目だ。私の眷属はもう人外化が止まらない・・・。あの子がまだまともに見えていたのに、これでもう・・・。私の眷属、皆イッセ―繋がりじゃない!ははははは!!」

 

 部長!!なんで壊れているのですか!?

 

 まだ人外化するって決まっていませんよ!!

 

「・・・いいえ、それに関しては確信があるわ。渡、そして大牙様、事情を教えてください。私は大抵の事は受け入れる覚悟があります。どのような成長をするのか見極める事も含めて出来る限り正確に把握したいです。」

 

 しかも、人外化する前提で早くも開き直った!?

 

「はあ、眷属の怪物化がますます進むことになりそうですね。どうやって勝つのか研究してしますけど、今の時点でも何も制限がない状態ではほぼ不可能に近い。蹂躙されるのがオチか。早く切り札の育成を進めないと。」

 

 ソーナ会長が眼鏡を直しながらその話を興味深そうに聞いて分析しています。

 

「どんな人外になるのか情報収集はさせてもらいますよ。」

 

「好きにしなさいソーナ。でも・・・何となく予感がするのよ。祐斗を超える様なとんでもない人外になりそうな・・・。」

 

 部長、何でそんな事を思うの?

 

 祐斗だって魔王になってもおかしくない程の潜在能力を持っているのですよ!?

 

「・・・怖い事言わないでください。泣けてきます。ただでさえ、姉の事で卒倒しそうなのに・・・。」

 

 そう言えば、今魔王少女ことセラ様は・・・。

 

「ふふふふ・・・。」

 

 右腕に抱きついて来てサイガに甘えております。

 

「ふふふふふ・・・。」

 

 もう片方にはツクヨミ様もです。

 

 美少女、美女に甘えられて固まっているサイガ。

 

 うらやましい・・・といいたいが、妬むのは止めてやった方がいいな。

 

「もう完全に積んでいますか?」

 

「ああ・・・。お前以外の全員は轟竜を含めて全員買収済みだ。」

 

 魔王少女様が、俺達を含めて全てに根回ししたことを父である鋼牙さんの口から今更知ったサイガ。

 

「流石に、神様まで気に入られるなんて思ってもみなかったが。」

 

「いや~いい取材になったよ。なんか色々な話のアイディアが浮かぶわ。」

 

 カオルさん・・・あなたって一般人ですよね?どうして神様や魔王などと平気で話しているの?

 

「ホラーの悪意に比べたらねえ。あちらに悪意も無く普通に話せるのなら怖くない。それに、知らない世界を知れるっていいことだし。」

 

「・・・お前も図太くなったものだ。」

 

――――魔戒竜の稚魚を絵本の題材にする猛者だからな。こいつは一生の間にどれだけの問題作を生み出すのやら。

 

 感覚だけならもうすでに一般人じゃないのね。芸術家ってそんな感じなのですかね?

 

「やっと見つけたもん。姉様や弟は結婚したけど、私だけ何千年も独身だったし。」

 

 ツクヨミ様・・・何か執念みたいなものを感じますよ。

 

「・・・駄目だ・・・ドキドキしすぎて・・・。」

 

 サイガが顔真っ赤にして完全に固まっている。

 

「このまま攻めようか。」

 

「おっし。私も手加減しないわ。」

 

 二人で更に甘えてきたぞ!!

 

「おっ・・・そっ・・・その!?」

 

 完全に手玉に取られていますな。

 

「はあ・・・あのっですね。」

 

 二人をうまく振りほどくサイガ。

 

 傍から見たらただ立ち上がっただけ。

 

『えっ?』

 

 その動き・・・自然なのに全然分からなかった。

 

 魔王様と神様が揃って驚いている。

 

「お二人の気持ちは分かりました。そっ・・・その。こっちはまだそう言ったことはわかりません。だって・・・その初恋すらまだなんです!!」

 

 ええええええぇぇぇ!!?あいつそう言った事まだだったの!?

 

―――――サイガの坊ちゃんは純粋過ぎるんだ。故に異性という感覚は希薄に近かったんだ。まあ、そこに嬢ちゃん達による強烈な一撃が叩き込まれたということだが。

 

「ザルバ・・・。」

 

「サイガ・・・出来れば受け入れて欲しい。何しろ・・・。」

 

「うんうん。こっちはお見合い成立したから。」

 

 ミニチュアサイズの轟竜さんと同じサイズのミニチュアサイズの白鳥みたいな奴が仲良くしています。

 

「轟竜・・・お前・・・。」

 

 それを見て、サイガの表情がひきつる。

 

「いい相手だったのでな。うん・・・いいお嬢さんで。」

 

「いや・・・その照れます。お嬢さんだなんて。」

 

 確かあれって、セラフォル―様の契約モンスターでしたよね。名前はスワンとか。

 

 この騒がしい宴会の席でお前らお見合いしていたのか!!

 

 しかも、成功しているじゃないですか!

 

「いや・・・ここまで上手く行くなんて。」

 

「少しびっくり。」

 

「はははは・・・スワン。貴方もこれで完了ね。」

 

 契約モンスターズがぞろぞろ出てきたぞ。ヤマタは酔い潰れているので他が。

 

「ほう・・・。後はマグナを探しておかないと。あいつは不器用だからな。」

 

 ゴルドさんが新しい存在の名前を言っていますよ!?

 

「いや、不器用だけどあいつは破壊神よ。彼の相手っているのかしら。貴方だってまともに戦いたくない相手でしょうが。」

 

「破壊力と規模だけなら私すら遥かに上回る奴だからな。この世界でどんな奴に契約したのやら。敵でない事を切に祈っている。」

 

『うんうん。私達もあいつとは戦いたくない。』

 

 ミラーモンスター最強のゴルトさんを始め、皆が戦いたくない相手ってなんですか!?

 

 ・・・そんな危険な奴がまだいるのか。

 

「話を戻します。まあ、恋はまだしていませんので、そう言ったことはまだわかりません。」

 

 サイガははっきり言う。

 

 だが、その後恥ずかしそうに小声になりながらいう。

 

「ですから・・・まずは友達としてのお付き合いという形でそこから始めたい・・・です。」

 

 精一杯の返事なのだろう。

 

「あなた達二人が思うほど立派な男だと私はどうしても思えません。だから、一緒にいてそれをゆっくり見極めてほしい。私もあなた達二人を知っていって・・・。」

 

 告白された上での必死に考えた上での返事。

 

 なのだが・・・。

 

 お前気付いていないだろう。

 

 ある意味その返事は。

 

「上等だよ。覚悟してよね。それにあなたの人柄はリサーチ完璧だから。」

 

「そのリサーチはこっちも見せてもらったし。可愛いわね、ぬいぐるみが大好きだなんて。」

 

「なっ////!?」

 

 えっ?お前、ぬいぐるみ好きなの?

 

「部屋に密かにコレクションが。可愛い物が大好きで、猫とかをよく愛でているのをみているわ。動物も好きよね。よくそう言った物をもふって癒されているとか。」

 

 母さんそれを見ていたの?

 

「ちょっ・・・二人とも何こっちのプライベート暴露してんの!!」

 

 こいつって結構可愛いところがあったんだな。男だけど。

 

「そう言う意味ではこっちの勝ちだよ。」

 

 セラフォル―様はおそらく本日最高の笑顔を見せて断言する。

 

「だって・・・そこまで気持ちが届いたのならもう一歩だもん。」

 

「・・・・あう////」

 

 その笑顔にサイガが顔を真っ赤にさせてノックアウト寸前だぞ!?

 

 こりゃ・・・もう時間の問題じゃないのか?ガンガン攻めているな。

 

「ふふふ、そういうことです。姉様、私はしばらくこの家に滞在すますわ。女としては今が勝負ですので。ついでにここで観光して、三大勢力の会談にも出たらどうです?」

 

「あら?いいかしら、サーゼクス殿。」

 

 ツクヨミ様の発言にアマテラス様が面白そうな笑みで聞いてきたぞ。

 

「・・・こちらの神の件だっていずれ知られることだし、良いじゃねえのか?少なくともあいつの息子は知っていることだ。そう言った意味では都合もいい。」

 

 アザゼルがそこに助言を入れる。

 

「それもそうか。総司はどうだい?」

 

「必然というものだろう。断る理由はない。」

 

 三大勢力会談がカオスになってきたぞ。日本神話勢力まで来るなんて。

 

 そしてその時、グラスを落とす音が聞こえてきたぞ。

 

 落としたのは部長、そして会長だ。

 

 余程の衝撃を受けたのだろう。部長の手が細かく震えとるぞ!?

 

「そっ・・・そんな。あの子が・・・。」

 

 そして、がっくりと膝から崩れ落ち、手を床につく。

 

「駄目だ。この時点でもう・・・人外決定だわ。私・・・なんて子を眷属にしたの。しかも、話が本当なら・・・もうそれは始まっているのよね?ああ・・・そんなの私は使いこなせるのかしら?」

 

「リアス・・・気を確かに。気持ちは分かりますが。」

 

 あまりの部長の狼狽っぷりにグレモリ―眷属全員の表情が固まる。

 

 部長!!一体渡と大牙様から何を聞いたのですか!?

 

 

 

 

 次の日、俺達は封印された区画に入った。

 

 かなり厳重な封印がされているよな。

 

 ちなみにかなり多人数で押しかけている。

 

 俺達の幼馴染連中はもちろん、今回は大牙様まで一緒だ。

 

「かなり厳重な封印がされていますね。」

 

 上から封印を言い渡されたとんでもない眷属。

 

 いよいよそれが見られる。

 

 皆の脳裏によぎるのは昨晩の部長が膝を突いて絶望する姿だけどな。

 

 まだ合った事のない連中は俺も含めてこう思っているだろう。

 

――――― 一体どんな化け物なの?

 

「あの子は引き籠りでねえ。」

 

 へっ?引き籠り?

 

「でもネットとかで一番の稼ぎ頭なのよ。」

 

そう言いながら部長は彼方此方<KEEP  OUT!>と書かれた封印を解き、そして俺達はある扉の前にでる。そこの封印を解いて、部長と朱乃さんは入って行く。

 

 中から中性的な声が聞こえてくる。男の子なの?女の子なの?

 

 次々と訳の分からん情報に耳をかしげる俺達。

 

 木場と小猫ちゃんは事情を知っている様子でしたけど?

 

 中を開け見るとびっくり仰天。

 

 いたのはアーシア以来の金髪の美少女じゃないですか!!

 

「いや、この子男の子だから。」

 

 でも、部長の言葉に皆は固まった。

 

 おっ・・・男だと!?そんな馬鹿な。

 

「おい、俺はアーシアと含めて僧侶のダブル美少女コンビの誕生を喜んでいたんだぞ!!」

 

「ひぃぃぃごめんなさいぃぃぃ!!」

 

「なるほど、これがこの世界で生まれた新しいジャンル。男の娘ということか。いや・・・業が深い。」

 

 ポルム。お前、この世界の色々なことを覚えるな。でもそれはきっと余計なことだよ!!

 

「はあ・・・情報で聞いてはいたけど、流石に驚いたよ。」

 

 渡がその男の子をマジマジと見る。

 

「安心しろ渡。俺はこれもありだと思っている。」

 

「兄さん。それはどうかと思うよ。」

 

 あれ?大牙様は何故か鼻血をだして親指を立てているぞ!?何でグッジョブなの!?

 

「ひっ・・・なっ・・・なんです!?あなたは誰です!?」

 

「えっと・・・僕の名前は紅渡。とりあえず、その名前だけ覚えておいて。」

 

「俺は大牙だ。」

 

 流石に鼻血をたらしながらの紹介は怖い。

 

「ひぃぃぃぃぃ!!」

 

 怯えて後ずさる彼が、机の上にあったコップを落とすのと同時に彼の眼が白く光った。

 

 落ちる途中のコップが止まる。

 

「あっ・・・あれ?なんで皆さん止まらないの!?」

 

―――――これは?

 

―――――時間を停止させている。それもこの部屋全体を・・・。

 

 クレアの説明に俺達は驚く。

 

「・・・なるほど、封印されていた理由が良く分かった気がする。その力をこいつは制御できないのだな。」

 

 鋼兄の説明に朱乃さんが頷く。

 

「ええ、ですが流石というべきなのか皆様は出鱈目ですね。」

 

「まあ、俺達はそれぞれそれに対して対抗できる程度の物を持っているというわけだ。」

 

 ネロの言うとおりだな。

 

 アギトやギルスはもちろん、他の面々もそれに並ぶもんをもっている。

 

「本当の意味で使いこなされたら俺もそうだが、アギトですらも止まってしまうだろうがな。まだまだそう言った意味では未熟というわけか。」

 

 修行という意味では鋼兄の言葉は的確だ。誰よりも激しい修練を重ね、今でもそれを己に課しているのだから。

 

 俺も鋼兄の修行に付き合うけど、あれは転生してからでも死ぬほどきつい。

 

「・・・・・・。」

 

 そして、良太郎は黙って彼を見ている。何か思うところがある様子みたいだ。

 

「改めて紹介するわ。この子はギャスパー・ヴラディ。私の僧侶にして、一応駒王学園の一年生。そして、転生前は、前までは私はバンパイアと人間のハーフだと思っていたわ。」

 

 部長の紹介の最後の部分が変だった。ハーフだと思っていた?

 

「いい機会だから他のみんなへの訂正も兼ねて紹介するわ。この子はヴァンパイアと人間、そして、ファンガイアの三つの血を引いたトライアングルなの。」

 

 その言葉は、ギャスパー本人も驚いた様子だ。

 

「あの・・・それ僕も初耳です。それとファンガイアってなんですか?」

 

「後でじっくりと説明してあげるから安心しなさい。私も昨日初めて聞いたから。だからなのね。変異の駒を使った転生なのに、何か変なのは。」

 

 部長の嘆きは止まらない。

 

「そして・・・やっぱりいたのね。サガ―クが。」

 

 ギャスパーを庇うようにして現れたのは円盤と蝙蝠をくっつけたような変な奴だった。

 

 色は黒色だ。

 

「はっ・・・はいぃぃぃぃ。その・・・いきなり出てきたと思ったら噛みついて来て、その後何か仲良くなってしまって。」

 

 それを見た渡が絶句している。

 

「・・・色が変わっている。何故銀色だったのに何で真っ黒になっているの?それになんか人に変な眼みたいなものが浮かび上がっているし。これって何?」

 

「どうやら登録は完了しているとみていい。だが、その際に色々と変化が起きたようだ。一度調べてみないと何とも言えないが・・・。性能その物がおそらく飛躍的に上がっている。特に知性の向上が著しい。まるで人格を得たかのように。こんなケースは初めて見る。」

 

 渡と大牙様の驚きが尋常じゃない。あれってきっと、キバの鎧みたいなもんだよな?

 

 そう考えると、部長の嘆きの理由が段々分かってきたぞ。

 

 もしかしなくても、こいつはもしかして渡達・・・ファンガイア王族の・・・。

 

「それとその白いカマキリみたいなモノって何?」

 

「僕にもわからないですぅぅぅぅぅぅぅぅ!!でも、この子とはもっと前からずっといます。紹介していませんでしたけど。」

 

 もう一つ、ギャスパーの傍には変な奴がいた。それはやたらメタリックな白いカマキリだったのだ。鋭い刃となった鎌をがちがち鳴らして、こっちを威嚇している。

 

「・・・何か嫌な予感がする。」

 

 部長すら想定していなかったその存在はなんですかね?

 

 

 

 




 さて・・・もう一話投稿します。


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憧れの先輩たちです。

 ギャスパーの特訓編。

 原作と違ってスペシャリストぞろいです。


 そこから俺達によるギャスパーの特訓計画を練ることになった。

 

 ギャスパーの持っている神器、「停止世界の邪眼」。

 

 それを使いこなすためにだ。

 

「巧、早速だがお前の親父を頼らせてもらうぞ。」

 

 その際に鋼兄はそんな事を言いだしてきた。

 

 特訓と言えばこのメンツでいえば鋼兄が専門家だ。部長もその点は認めている。そして、そのための大前提を行ってきた。

 

「ちょっとどうしていきなり・・・。」

 

「神器の知識が必要だ。修行の大前提が己を知る事。幸いなことに色々な経緯があって、俺達にはアザゼルへのコネクションがある。そのためにアドバイスが欲しい。」

 

「はあ・・・まさか堕天使の総督を頼る日が来るなんて。」

 

 部長はあまり乗り気ではないが、否定する事も出来ない様子でもあった。

 

「はっ・・・はいいぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 腕組みをした鋼兄の迫力にびっくりしているキャスパー。

 

 隣では匙もいる。あいつにも今回付き合ってもらっているのだ。

 

「とにかく走りまわらせるのはだめだという事か?」

 

「当たり前でしょう。」

 

 デュランダルを手にしていたゼノヴィアだ。それで追い回して根性つけさせようと試みていたのをドついて止めたのも鋼兄だ。

 

 ハリセンで人が数百メートルも吹っ飛ぶのは初めて見たぜ。

 

 それを受けて平然と戻ってくるゼノヴィアもおかしいけど。

 

「私達・・・もうあの頃には戻れないと思うべき。」

 

 小猫ちゃん。あの頃っていつの頃よ。遠い目をして懐かしまないで!!

 

「いや~うち姉が迷惑を。」

 

 良太郎が何度も謝っているけど。

 

「そのためにもまずは精神的な部分だな。そのための座禅だ。まあ・・・仙術の修行で小猫にやらせているあれと似たような物だが。」

 

「・・・・・・。」

 

「いや、悪くない修行だと思うぜ。足りないモノをすぐに見抜くなんて、お前さんトレーナーとしての才能があるぜ。是非機会があったら、グレゴリの連中も鍛えて欲しいところだぜ。」

 

 ッて、いつの間にか件のアザゼルさんが来ましたよ!!?

 

「流石に冥界一のトレーナーであるあの方には敵わないがな。」

 

「ああ・・・。グレゴリとしてもあの方は是非欲しい逸材だ。ったく、魔王連中もいい人材に眼をつけやがったもんだ。あれで悪魔サイドには屈強な軍隊ができたらしいからな。まあ、そう言う意味でも今回の会談は円満に進めたいもんだ。色々と交流したい。」

 

「俺もそれを期待している。」

 

「実は鬼になる術も興味あったりだが、あれって相当な修行が前提なんだろ?」

 

「その通り。言うは易しだが、なるのは大変だぞ?そして、そのための維持もな。」

 

「だが、神器の制御のための一つの方法としては悪くないと考えている。」

 

「面白いことをいうものだ。でも、そうかもしれないな。神器持ちが鬼になれるか試してみるか。妖怪でも悪魔でも変身できることはすでに実証された。小猫ももうすぐだ。夏休みには変身できそうだ。」

 

「おいおい。あのバアル家の大王が鬼になったことで冥界中大騒ぎになっているぜ?元々強かったパワーが十倍増って偉い事になったしな。そう言えばあいつはお前さんの盟友だったか。」

 

 あれ?鋼兄とアザゼルさんが詳しく話しこんでいるぞ。

 

 なんか意外な組み合わせだ。

 

「お前らには返しても返しきれない借りがある。手を貸してやるよ。」

 

「親父・・・。」

 

 巧の件、相当感謝されていますな。だが・・・俺はただ友達を助けたいと思っただけなのに。

 

「まあ、お前達はただ友達を助けた感覚なんだろうがな。その恩に応える意味ではお前さんはすでに俺にとっても身内と扱う事にしたぜ。」

 

 身内・・・。堕天使総督の身内になるって相当心強いですな。

 

「それに、少し気になる者もな・・・。」

 

 アザゼルの視線の先には黒いサガ―クと謎の白いカマキリがあった。

 

「なあ、ポルム。あの二体を解析できるか?」

 

「ファンガイアの王族一同に許可をもらった後でよければね。その点の分別を持つことがこの神器と付き合うコツだよ。」

 

 ポルムの神器ってすげえな。あれも解析可能か。

 

 もしかして神器もできたりして。

 

―――――・・・・・・。

 

 あれ?俺の中のドラゴン共が何故かポルムを警戒している。

 

――――何で今までその危険性に気付かなかったのかしら。

 

――――あの神器は謎の多い番外扱いの神器だ。可笑しくも無いか。

 

―――――私は出来ると見ている。そして、禁手化になったら・・・。

 

 あの神器になんの危険性を感じとっているのだ?

 

「あらら・・・はあ。何でこう聡い人が多いのやら。ねえ・・・アーシアちゃん?」

 

「はあ・・・、安心してください。分別はきちんと分かっていますので。」

 

―――この子・・・できるわね。そして、それは肯定と見ていいわね。

 

「少なくともあなたの力を使うときは許可をもらいます。それが筋かと。」

 

―――――そうか。それがお前なりのけじめか。

 

 そのやりとりを聞いていたアザゼルさんは笑みをひきつらせていた。

 

「本当に恐ろしい連中だな、ポルムよ。あとすまねえな。今回は俺の失言だ。それで、渡君はどうだ?あの件でお前さんにも大きすぎる借りもある。悪いようにはしないが・・・。」

 

「あ~そうだね。最高機密ではあるからまだ答えは出せないという形でいいかな。」

 

 その頃アザゼルの提案に対して、渡はその件は保留としたようだ。

 

「そうそう。まずそこの坊主の持っている黒い龍脈で力を吸い出しな。それで暴走の危険はなくなるはずだから。」

 

 アザゼルはその上で早速のアドバイス。

 

「・・・そんなことができんのかよ?」

 

「ああ。その力の吸い出しはリヴァイアサンの神器の収集の足しにもなる。いい力のはずだぜ?」

 

「・・・なるほど。これは面白い事になったぜ。」

 

「正しい使い方を教えるのは研究者としてもやぶさかでも無いんだわ。だが、そう考えると、お前さんの二つの神器も相性抜群だな。」

 

 匙の二つの神器が相性抜群だと?

 

「そして・・・お前の血を飲んでみるのがいいだろうな。」

 

 その上でアザゼルはもう一つのアドバイスを送ってくれた。

 

 それが俺の血を飲ませるという事だ。

 

「ドラゴンの血だからな。だが・・・不確定要素としてアギトとしての神性がある。吸血鬼が血を媒介にして、そしてファンガイアがライフエナジーという形で神性の因子をドラゴンの因子と共に取り込んだらどうなるのか想像もつかない。まあ、神性の因子を取り込んで復活するような力があったら面白くもあるが・・・。そんなのとりこんでいるわけないわな!・・・あの神の名前を取った神器であってもな。」

 

 えっと・・・俺の血を飲ませるってそんなに危険なのですか?

 

「お前って本当に色々な意味ですごい奴だな。」

 

「ははは・・・はあ。本当に。」

 

 そんな感じで修行を続ける。

 

 

 

 

 まあ、そんなアドバイスと的確な修行の成果もあったのだろう。ある程度だけど神器の制御に成功している。

 

 四回に一回程度は狙った物を止められるようになったのだ。

 

「すっ・・・すごいです!!」

 

「まだまだここからだ。」

 

 あと、重度の引き込もあり出会った精神面も少しずつ改善してきているのも大きい。

 

 メンタル面の修行から入るべきだという鋼兄の方針は正解だったのだ。

 

 だが、一つ大きな失敗があった。

 

 俺の悪魔の仕事を手伝わせたのだが、その際にものすごい濃い人に会ってしまい、ギャスパーは力を暴走させてしまい、ひきこもりが再発してしまったのだ。

 

 皆がどうしたものか考えている中、

 

「しまったわね、」

 

 部長が部屋の前でため息をついている。

 

「・・・・・・リアス部長。報告は聞いています。どうしてあの子がこうなったのか理解しています。」

 

「ええ・・・あなたの弟を勝手に眷属にしたことは悪いとは思っているけど。」

 

「いいえ、前にもいいましたが、兄も、そして僕も弟の命を助けてくれたことに感謝しているのです。ギャスパーの命・・・改めて助けてくれてありがとうございます。」

 

 二人の会話の内容は・・・ある意味俺の、正確には俺達の想像通り家、それを少し超える内容だった。

 

「やっぱ、キャスパーって渡の身内か?」

 

 俺達はあえて堂々と部屋に入ってくる。

 

「やっぱり、勘づいていたか。」

 

「まあ、カ―ミラやキバットを知っているのならわかるものよ。あの子は確かに渡達の家族なの。」

 

 部長の言葉に対して、渡が立ち上がる。

 

「僕がこの街にやってきた理由でもある。生き別れの弟を探すというね。」

 

『弟!?』

 

 流石に弟というのは予想外だった。

 

「ギャスパーはファンガイアの第三王子なの。私・・・あの時とんでもない子を眷属にしたのよね。」

 

「正確には代理出産というべきかな。母・・・まあ、ファンガイアの先代クイーンがあるヴァンパイアと人間の子供を魔術で代わりに身ごもった。その際・・・魔術の影響か母さんの血まで受け継いでしまって、人間とヴァンパイア、そしてファンガイアのトライアングルとなったんだ。」

 

 代理出産。

 

「どうしてそんな事をする必要があったのか不明。でも・・・母さんは会いたがっていたし、僕達もずっと探していた。でも・・・。」

 

 渡の探していた弟だったのか。それなら・・・あのサガ―クって奴をギャスパーが従えていたのも納得だ。王族だからこそ・・・。

 

「本当はすぐに兄だと名乗りでたいけど、その前にまず・・・あの子に当たり前の幸せを知ってほしい。何でひきこもりになったかも、理由は知っているから。」

 

 渡の言葉の最期の方にわずかだが、怒りがこもっている。

 

「・・・元気出して、渡。」

 

 そこに現れたのはオ―フィスだった。彼女がここに現れるのは少し意外だった。

 

「私はずっと一緒にいた。渡がもう一人の家族をどれだけ探していたのか知っている。調べて行く中で、弟が受けた仕打ちにどれだけ怒っていたのかも。」

 

『・・・・・・・。』

 

 話を聞くに、家から追われ、ヴァンパイアハンター達に追いまわされる日々を過ごしていたらしい。

 

 そのヴァンパイアハンターによって殺されたところを部長が助けたと。

 

 そんなとんでもないことをしでかしたヴァンパイアハンターの組織の末路だが、すでにファンガイアの某王様より死刑の判決を下され、壊滅どころか、この世界から完全に消滅させられている。

 

 その怒りの凄まじさ・・・すでに全世界に轟いている。

 

 ヴァンパイアの専売特許だったはずの串刺し公の名を拝命したほどに。

 

 本来ならギャスパーをいじめた連中にも乗り込む勢いだった。実際、一度キャスパーの実家に殴り込みをかけ、兄弟二人で大暴れをしたらしい。

 

 そのため、二人は吸血鬼達から大変恐れられている。

 

 正直この話を聞いて、俺は渡を見直した。

 

「お前・・・すごく熱いところあったんだな。」

 

「よしてくれ。あの子のためになっていない。」

 

 それでもこいつはまだ会ったことのなかった弟のためにそこまで怒った。

 

「しゃあねえな。」

 

「ああ・・・。」

 

 俺達が動かない理由はなかった。

 

「もちろん、弟を他人任せにするつもりはないけどね。」

 

 渡もまたバイオリンを手にしていた。

 

 やっぱりこいつ・・・精神的には誰よりもタフだ。

 

 さあ・・・一つ乗り込みますか!!

 

 

 

 SIDE ギャスパー

 

 外は怖い。

 

 ずっと閉じ込められていたのに、いきなり追い出され、怖い人達に追いまわされ・・・。

 

 親兄弟からは苛められ、人間達には化け物と言われた。

 

 そして、僕は殺された。

 

 散々苦しい目に・・・酷い目にあわされてだ。

 

 この眼の力のせいで・・・・。

 

 どうして僕はこんな力をもったの?こんな力・・・いらないのに!!

 

 どうしてなの?

 

 外は怖い。

 

 出てみたけど、僕の力でまた人を傷つけてしまった。

 

 僕なんていなくなれば・・・。

 

 そんな時だった。

 

 扉の外から不思議なバイオリンの音が聞こえてきた。

 

 この音は最近聞こえるようになっていた。

 

 僕の心を慰めてくれるような温かい音色。もしかして、イッセ―先輩達の中にいるのだろか?

 

 心が安らぐ。

 

「よお・・・俺達はお前が出てくるまで一歩も動かない事にしたぜ。」

 

 扉の向こうから声が聞こえてきたのだ。

 

「俺ってバカだからさ、こんなことしかできないんだわ。呆れてくれていい。」

 

 あれは・・・イッセ―先輩だった。

 

「一方的な話になるが、まあ聞いてくれや。俺ってさ、相棒達とは長い付き合いだが、本格的にアギトの力が目覚めたのはつい最近なんだ。こんな怪物みたいな力に目覚める前は一応・・・普通の高校生活を送っていたんだぜ?」

 

 それを聞いて僕は流石に驚いた。

 

 アギトの話と、その活躍は僕も知っている。

 

「ドラゴンの力、そしてどんどん進化していく俺のアギト。正直怖いんだわ。このまま俺は何処まで行ってしまうのか、まったく先が見えねえ。俺が俺でいられるのかもわからねえんだからな。それでも・・・俺は前に進むことにしてんだわ。」

 

「どうして・・・ですか?」

 

 僕は思わず聞いてしまった。

 

「部長達のため・・・かな?ずっと昔、俺の初めての変身した時の気持ちを今でも俺は忘れていねえ。あの時もみんなを守りたい・・・みんなのために何かしたい、そんな気持ちで戦っている。今のそれは変わらねえ。」

 

 みんなのために戦う?そんな事のために。

 

「もう一度言っておくが、俺は馬鹿だ。あまり難しいことは考えているわけじゃない。だが、部長や木場の奴も辛い何かを抱えていた。そして、それはおそらく他の眷属の面々も同じだろう。部長の辛い顔なんかは特に応えたよな・・・。あんな顔、もう二度と見たくない。」

 

 僕は先輩の話を聞いて何となく分かってしまった。

 

 いろいろな話に出てくる英雄(ヒーロー)がいるのならそれはきっと先輩みたいな人の事を言うのだろうと。

 

「俺のせいで一度死なせてしまったダチもいる。そいつも俺に負けない馬鹿だったぜ。残り少なかった命を俺のために使いやがって。助かったから良かったけど、今でも申し訳なさと怒りを感じているぜ・・・他でもない自分自身に。」

 

 その悔しさや辛さを飲み込んで、前に進んでいる。

 

「そんな中、俺は一つの目標ができたんだわ。それが・・・神になりたいってな。」

 

 先輩はとんでもない目標を持っていた。

 

「まあ、元々ハーレムを作りたいって欲望まみれた夢から始まったんだわ。だが、ある事件をきっかけにして、俺はこの理不尽な何かを変えてみたいとも思っていた。だからこそ俺は神になる。ハーレムを作って自分も幸せになって、他のみんなもついでになるが幸せにしてやると。」

 

―――――・・・我が相棒ながら何と欲にまみれた夢。

 

「お前の力・・・俺は正直うらやましいところがあるぜ?」

 

「――――――っ!?」

 

 何でこんな力がうらやましいの?

 

「だって、それが使えれば、いやらしいこと、やりたい放題じゃん!!いや、この学校中の女子達にやりたい放題。がばっ!?」

 

――――それは私が許さず。小猫ちゃんの代わりに私が止める。

 

 そこに黒い龍みたいなモノが現れて先輩をどついて、すぐに姿を消す。

 

 そんな間抜けな光景に・・・。

 

「ブランカ・・・いいタイミングでツッコミ入れやがって。」

 

「・・・・・プッ。」

 

 僕は思わず笑ってしまった。

 

「やっと笑いやがったな。」

 

 そして、そのあと見せた先輩の笑顔を見て分かる。

 

「・・・先輩って優しいですね。」

 

「おう。神様になるんだ。これくらいできないとな。」

 

―――――神になるか、契約者としてこれほど高い目標を持つことを誇りに思う。

 

「アギトの力は怖い。でもせっかく持って生まれた力なんだ。どうせならそれを生かして、もっとでかい事を成し遂げても面白いじゃねえか?」

 

 その一言は僕にとってあまりに衝撃的な言葉だった。

 

 僕にとってこの力は呪いに等しい。おそらく先輩の力は僕の力よりも遥かに大きな呪いと言っていい力を有している。

 

 それなのに、それすら受け入れて前に進もうとしている。

 

「僕にも・・・できるでしょうか?あの時も何もしなかった僕が・・・。」

 

 ライザ―の一件。僕は動かなかった。いや・・・動けなかったんだ。

 

 外に出るのが怖くて・・・。

 

「それに関しては仕方ねえさ。大事なのは今からどうするかだ。」

 

 イッセ―先輩は俺の頭を撫でるながら瞳を覗き込んでくる。

 

「だが、今回ばかりはアギトでよかったと思うぜ。お前の力の暴走も俺には効かねえし。」

 

 そうだった。イッセ―先輩には僕の力の暴走は通用しない。

 

 暴走した力程度じゃ、イッセ―先輩を止めることはない。その事実だけでもどれだけ安心できるのか。

 

「だから安心しろ。俺の幼馴染の連中も含めて色々と可笑しいメンツには慣れている。そんな俺がお前を嫌う事は決してないぜ。」

 

 その上で、とんでもないことを平然と言ってくる。

 

「むしろ俺を止めることができるようになれ。そうしたらお前も神器を使いこなした事になる。それに、制御方法として俺の血を飲むって言う選択もあるぜ?どうだ・・・ドラゴンに神の因子とやらが含まれるらしいが、飲んでみるか?」

 

 えっと・・・そんなとんでもない血を飲んだらどうなってしまうのでしょうか?

 

「流石に・・・色々な意味で怖いので保留させてください。」

 

 なんか、吸血鬼が飲むにはあまりにぜいたくすぎる血の様な気がします。元々血を飲むのは好まないですし。

 

「まあ・・・そう言った意味でお前も力を貸してくれ。さっき言った大それた目標も俺一人じゃ無理だからさ。部長を支えたいし、俺の夢を叶えたい。でも、それは一人じゃ絶対にできないんだ。アギトとして覚醒してからも、それを何度も思い知らされた。どんなにでかい力をもっても・・・一人じゃできることはあまりねえ。最期は人の和で解決したみたいなもんだ、みんなが一つの目標に必死になり、その必死さをうまく合わせてそれが結果として奇跡のような成果を出しただけだし。」

 

 僕は先輩と話して驚かされることばかりだった。

 

 あれだけの力を持ったうえで一人で出来ることはあまりないと断言したのだから。

 

「下手な神様の奇跡何かよりも価値があると思っているぜ。なあ・・・お前ら?」

 

 その言葉と共に・・・何と木場先輩に加え、イッセ―先輩の幼馴染の面々がいます。

 

「ったく、恥ずかしい話を黙って聞きやがって。」

 

「今さらだろうが、はあ・・・まあ俺じゃ苛立って乱暴にしてしまうから、面倒見のいいお前に先陣を切らせただけだぜ。」

 

 ネロ先輩は待っていたのか僕の方を見る。

 

「正直お前を見るとイライラする。だが、まだお前に見込みがある。こうやって外に出てきたんだ。だから・・・あまりがっかりさせるなよ?」

 

 この後、僕はネロ先輩の経歴を知ってそう言った言葉の意味を知ることになります。

 

 ネロ先輩も僕と同じ混血。悪魔と人間の。それ故に周囲から孤立していた事も。

 

 似た部分があるからこそ・・・こうやってイライラしてくれている事も。

 

「お前もずいぶんストレートになってきたな。まあ・・・それでも希望はあるものさ。ネロもそして俺もな。その希望は一人じゃ決して掴めない。それだけは忘れないれくれ。」

 

 そんなネロ先輩に続いて、今度はハルト先輩が話す。

 

 希望と言う言葉、僕はあまり使った事が無い。でも、ハルト先輩の希望は重みがある。おそらくそれは・・・自負という名の重み。

 

「その希望で俺は助かったわけだ。人の和って分からないねえもんだ。まあ・・・照れくさいが今度は俺がこの和に応える番だと思っている。」

 

 巧先輩が照れくさそうに話す。この人が絶望的な状況からみんなで救われた人なんだ。

 

「こいつは俺が認める敵に回したら最も危険な男だ。故に頼りになる。俺もまだまだ強くならないといけないと思わせる、世話の焼ける弟分だ。だが、こいつらが今後の世界を支える重要なカギになると俺は見ている。そんな奴らを守るために、もっと強くならないとな。」

 

 鋼鬼先輩。この人はすでに主神クラスの力を得ている。それでもなおさらに上に行こうとしている。イッセ―先輩という成長株がいるのを嬉しく思って。

 

「確かに。力という意味では僕はこのメンバーの中で一番弱いかな。はあ・・・こっちは最近色々とドキドキしすぎて困っているよ。ギャスパー、実は私も君と同じなんだ。」

 

 サイガ先輩が苦笑しながらある事をいってくれる。

 

「私も実は自分の力を使いこなせていない。出せて三分の一の力のさらに一割も出せない。せっかく父さんから受け継いだ力なのに使いこなせない。前まではそこまで力は必要じゃなかったけど、敵の強さを考えるとこっちも本当の意味で全力を使う必要がでてきた。」

 

 サイガ先輩ってみなさんの中で最強のテクニックタイプでしたよね?そんな腕を持つ先輩が使いこなせない程の力って。

 

「そう言った意味ではライバルかもね。どっちが先に力を制御できるか、共に競い合ってみようよ。その方が張り合いがでる。」

 

 この先輩もとても優しい。あえて自分の悩みを打ち明け、そして手を差し伸べてくる。

 

「はははは・・・まあ安心しろ。暴走に対抗する術式も構築済みだ。せっかくの力を持ち腐れにしてほしくないし、私も君を見込んでいる。とんでもない男に化けるとな。」

 

 ポルム先輩の僕に対する評価が高いです。そんなすごい男になれるのでしょうか?

 

「なれるじゃない。私達がそうなるように育ててやるさ。」

 

 そこまで推されると照れます。

 

「はい・・・。」

 

 そして、良太郎先輩がこっちを見てくる。

 

「君は、まだみんなが怖い?」

 

「いえ?でも・・・。」

 

「そうだね。みんなを停めてしまうのが怖いんだね。」

 

「―――っ。」

 

 まさに図星でした。僕が本当に怖いのは己自身であることを良太郎先輩は見抜いている。

 

「みんな優しいというけど、君も十分優しいよ。意図していないのに時間を停めてしまうことに傷つくことができるくらいに。」

 

 僕が・・・優しい?そんなこと考えた事もなかった。

 

「だから、その優しさを、傷つけるのが怖いと思う気持ちは忘れないでほしい。そして、難しいけどその上で強くなってほしい。今すぐじゃなくていい、その力を使う覚悟、そして傷つく覚悟を身につけてほしい。この世界は優しいままですごせない残酷な世界だと思う。それでも、優しさを失ってほしくないから。」

 

 この先輩はきっと…一杯傷ついて、そして悩んできたんだろうな。

 

 だからこそ、嬉しかった。僕を認め、その上でさらに道を示してくれた事に。

 

「はあ、みんな言いたい事を先に言ってくれるおかげで、僕の言う事がなくなってしまったよ。」

 

 最期は渡先輩です。

 

「・・・君にはまだ言っていないことが正直ある。でもまだそれを打ち明けることはできない。でも、その上でこれだけは言わせて。君は一人じゃない。」

 

 どうして渡先輩が締めくくるのか分かりません。

 

 でも、そうするべきだと他のみんなが促した節があるみたいで。

 

「少なくても力の暴走に対抗できる程度の猛者ぞろいだ。僕が言うのは難だけど相当無茶な連中だよ。そんな僕たちが君を支える。」

 

 見るだけでも豪勢なメンバーだと何となく思う。僕・・・とんでもない先輩連中を得たのかもしれない。

 

「はあ~渡君。本当の意味ではそれは僕のセリフだよ。」

 

 そこに木場先輩がやってくる。

 

「まあ、新しい眷属に加え、お人好しな人外どもばかりが来たんだ。多少の事は何とかしてくれるから安心して。」

 

『オイ!!誰が人外だ!!』

 

 木場先輩って、こんな風に軽い冗談を言えるんだ。

 

「少なくても、佑斗君。君もその人外の仲間入りを果たしているよ。」

 

「はははは・・・そんな冗談を言わないでくれ、渡君。」

 

『・・・・・・。』

 

「えっと・・・本当なのかい?」

 

「少なくとも、敵に回したらグレモリ―眷属内でイッセ―とアーシアの次に厄介だと思っている。」

 

 鋼鬼先輩の一言に皆がうんうんと頷いているよ。

 

「そんな・・・馬鹿な!?」

 

 何故にショックを受けているの?

 

「ふははは・・・まあ、気楽にやって行こうぜ。」

 

「はい!!」

 

 この先輩達と出会えたこと、きっと僕の人生の中で最大の幸運なのだろう。

 

「それでだ、お前の力と俺の倍化の力、そしてみんなで女子を触りたい放題する連携をだ・・・。」

 

『・・・・・・。』

 

 あまりに勇気溢れる煩悩にまみれたイッセ―先輩の連携案にみんなが白い目を向けています。

 

「鋼兄には見せられねえぜ。」

 

「それ以前の問題だよ!!僕は同志を救ってくれた君のためならどんな事をすると決めているけど・・・・もう少し力の使い方を考えようよ!!ドライクが可哀そうだよ!!」

 

―――おお・・・木場はいい奴だな。ああ・・・このままじゃ煩悩にまみれたゼウスみたいな神になりそうで頭が痛いところだった。

 

―――あのゼウスですか。なるほど・・・ありえそうで怖いわ。

 

「・・・あのな。お前は女を喰いたい放題だから言えるセリフだって!!こっちはそうじゃないし。」

 

「・・・・・・本当にそう思うのかな?僕の妹の件を忘れたといわせないよ?」

 

「うっ・・・。」

 

 木場先輩の双子の妹の話題になるとイッセ―先輩が気まずそうに背ける。

 

 木場先輩はモテモテと思うけど、もしかしてイッセ―先輩もモテモテだったりします?

 

「まあ、自覚しているだけでも良しとするよ。自覚ない状態で説明すると後が怖いけど、今は部長達を含めて誰が一番に貞操を取るのか牽制し合っている状態だし。」

 

「・・・うう、手玉に取られてばかりだ。エロいことしたいのに、迂闊に動けん。」

 

 イッセ―先輩って意外と苦労しているのですね。

 

「ああもう、こうなったらみんなで夜まで語りあかそうぜ!!男同志の猥談だ!!」

 

 そこでどうして猥談なのですか?

 

 それに僕の力の暴走が・・・。

 

「そういうことなら・・・はい。」

 

 ポルム先輩が眼鏡を渡してくれます。

 

「アザゼルさんから聞いている。この神器は視線を媒体にして発動する。その仕組みを解明させ、抑えるための機能をその伊達眼鏡につけている。」

 

 ・・・そんなものをいつの間に。

 

「すまなかったね。初めての試みだったから作るのに時間がかかった。でも、これである程度は大丈夫だ。安心したまえ。」

 

 その気づかいに涙が出そうになった。

 

「おーし。まずはサイガ!!お前の羨ましくもけしからん事を聞かせやがれ!!」

 

「その件に関してはこっちも聞きたかったんだ。何時の間に根回しをされていたのかも含めて!!多分、部長達はクレアさんとイッセ―から抑えたでしょ!!そして、キリエさん辺りに回して・・・。」

 

「おおっ、鋭いな。それでその成果である本日のダブルデートを聞かせろ!!」

 

 何かやかましいけど、本当に楽しい。

 

「その上でお題は女子のこんなところがたまらなく好きな選手権だ!!ああ・・・ネロと鋼兄はいいぜ。答えは分かり切っている。絶対に二人の場合は嫁自慢になるから!!」

 

『ちょっとまった!!それは聞き捨てならないぞ!!』

 

「まあ、でも気持ち分かるかも、この場合は好みを聞いたら、黒歌さんとキリエさんその物を二人は口にしていそうだし。」

 

「そうだ。それ故に今だ特定の相手がいない、木場!巧!良太郎!ハルト!ポルム!!お前達が生贄だ。俺が話してもおっぱいとしかいえんし!!サイガは疎いからな。渡に関しては・・・うん、なんか聞くのが怖いからいいや。」

 

『そんな生贄やだよ!!』

 

「その前になんで僕に聞くのが怖いのか、その辺りを説明をしてほしい!!」

 

 そんな感じでその夜はお祭り騒ぎみたいにやかましくなった。

 

 ちなみに・・・僕も白状させられたのは当然だった。うう・・・恥ずかしい。

 

 でも、みなさん意外とスケベなんですね。なんか男子一同、ものすごく結束が強くなった気がする。

 

 そして僕は思った。みなさんみたいな立派な漢になりたいって。

 

 

 

 side ???

 

 まったく、あの子ったら本当にエッチなのにお人良しなんだから。

 

「心配で見に来たのかい?」

 

「うん・・・。」

 

「・・・泣いているのか?」

 

「グス・・・うん。」

 

 だってあの子・・・、人の和って言ったのよ。

 

 色々と苦しんでいるのは分かっていた。

 

 私は見守り、知らないふりをしながらもさりげなく支える事しか出来なかった。

 

 でも、あの子はその苦しみを自分から解き放った。

 

 人の和によって。

 

 それは私の言葉を聞いた私はいつの間にか涙を零していた。

 

 置き去りにした昔の日々を思い出すようで・・・。

 

「本当にあの子って私達の息子だよね。」

 

「そうだね。」

 

 本当に大きくなった。立派になった。

 

 エッチだけど、親としては誇りに思うよ。

 

「ふふふふ・・・師としても誇りに思う。」

 

 そこに天道さんまでやってくる。

 

「あいつはもうあいつの道が出来ている。もう道を指し示す必要すらない。」

 

「はい・・・。あの子を鍛えてくれてありがとうございます。」

 

「何・・・こっちも情はある。それにここに来たのはもう一つ。」

 

 天道さんは私の方を見てつげる。

 

「まどか、お前の探し人はやはりあの組織にいる。」

 

「そう・・・ですか。」

 

 それはある程度予測し、覚悟していたことだった。

 

「・・・いざとなったら僕も止めるのを手伝う。」

 

 翔一君がそう言ってくれる。

 

「すれ違ってばかりだな。だが、真っ直ぐ進め。迷わす進めば、おのずと道は交わる。」

 

「はい。」

 

「そろそろ僕達も動き出そうと思います。三勢力会談・・・君がそこの仲介役にしたのはそれを見越しての事だと思うけど。」

 

「・・・フッ。そう言う事だ。まどかも覚悟はいいか?」

 

「うん・・・。私もゆっくりと休むことは出来たから。」

 

 あの子が前に進んでいる。それなのに私が立ち止まっていいわけがない。

 

「ほむらちゃん・・・。」

 

 私達は動き出す。

 

「私はもう幸せだよ?だからもう・・・。」

 

 一番の親友を止めるために。

 

 

 




 ギャスパーですが、この話ではイッセー之根性だけでなく、その幼なじみ連中乃色々な部分ね異教を受けます。

 精神的にさらに成長する予定としております。

 今回は二話投稿です。

 また会いましょう!!


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聖なる剣と二天龍大喧嘩です。

お待たせしました。まだデジモンの方は時間がかかりますが一週間後には投稿するようにします。


 まずはこっちのほうから。

 ミカエルさん・・・大変な目に会います。


SIDE イッセ―

 

 俺は朱乃さんに呼び出されてある神社にやってきていた。

 

 この神社は朱乃さんが管理しており。悪魔でも入れるようにしている物らしい。

 

 アギトも問題ないか。

 

 一応、一緒にいる人達はいないはず。

 

 部長も行きたがっていたが、今回はサーゼクス様との打ち合わせで外せないと。

 

 それでも何故かあとで駆けつけそうな勢いだった。

 

 女王である朱乃さんも行かなくていいのかと聞いたけど、それに関してはグレイフィアさんやユウナがフォローしてくれるから大丈夫だと言っていた。ユウナはあれで秘書的な役割もこなせるらしい。

 

 そこで俺はある方に呼び出されていた。

 

 誰かは内緒にされていたけど・・・鳥居に入った瞬間俺は気付いてしまった。

 

「・・・キリエさんと同じ感じがする。」

 

「あらら?」

 

 清浄なオーラがそこにはあった。

 

「そしてその強さ・・・いるのは。」

 

 振り向くと予想通りの人物が立っていた。

 

 金色の翼を十二枚背負った端正な顔立ちの青年。

 

 豪華な白いローブを纏い頭に輪っかが乗っていた。

 

「熾天使様に呼び出されるなんて光栄と思うべきなのかな?」

 

「・・・流石に驚きましたね。」

 

 俺の発言にその天使は苦笑していた。

 

「流石は神の後継。私がどういう存在がすぐに見抜くとは・・・。」

 

 まあ、近くにキリエさんという分かりやすい実例があるからですけど。

 

 でも・・・それにしてもあまりにも似すぎているのは気のせいだろうか?他の天使に会ったことがないので何とも言えないけど。

 

「なんか・・・知り合いとすごく似たオーラを放っていたので。」

 

「そう・・・ですか。自己紹介を、私はミカエル。貴方の察しの通り熾天使の一人です。まあ、あなたの中にいる赤龍帝に必要ありませんでしたかね?」

 

 神に最も近いとされる天使の一人。

 

――――ほう。懐かしい奴が来たものだな。

 

 それに呼応するようにドライクもデフォルメ化した状態で現れる。

 

「とりあえず握手を。」

 

 こうして俺はチョー大物と会談することとなった。

 

 

 

 

 俺達はミカエルさんと共に本殿に入る。

 

 そこから、俺達にとって少し嫌な感じのするオーラが漂っていた。

 

「・・・聖剣・・・があるのか?」

 

「ふふふ。やはり気付いた。言ったはずですよ?イッセ―君に下手な小細工は無意味ですわ。一緒に考える頭も他の三つもありますし。」

 

―――――その頭って俺達の事か?

 

―――――まあ、良い知恵袋にはなるかな?戦略には自信あるし。

 

―――――そう言ったことは苦手だけど直感には実は自信あり。

 

 まあ・・・こいつらとは一緒にいるのが当たり前って感じの相棒達だし。

 

 それぞれ担当が分かれているのも大きい。

 

 ドライクが戦闘指南なら、クレアが戦略、そしてブランカは鋭い感性と洞察力を持っている。

 

「・・・神が死ぬ間際に外した神器の制限。それがこんな赤龍帝を生み出すとは想像もしませんでした。私達もシステムを調べてみて今初めて判明した事態ですので。でも、それがあなたの様な方でよかった。」

 

 ミカエルさんは胸をなでおろしている。

 

「あなたになら・・・新しい世界を託せます。この聖剣アスカロンは贈り物です。」

 

 えっと、その聖剣を俺にですか?

 

―――――しかもドラゴンスレイヤーか。ククク、面白い物を送ってくれるものだ。

 

――――――あなたは知らないでしょうけど龍殺しの英雄が使っていた一品よ。あなたはドラゴンを初め、多くの猛者を引き寄せるあなたの力になるでしょう。

 

 うむむ・・・龍殺しの英雄の剣か。

 

―――――相棒、もっと勉強しておけ。我らという知恵袋があるとは言え、お前自身ももっとこの世界を知った方がいい。

 

―――知識は力。これまでもドラゴンやそれにまつわる英雄を色々と教えたけど、今後の参考にするために、色々と知ることは神の後継としても大切なことよ。

 

 そう言った意味では冥界での悪魔の勉強に加えて、堕天使、天使達の勉強も必要だな。

 

 堕天使達の勉強は巧やハルトが教えてくれるけど。

 

「あの・・・自分で言うのもなんですけど、俺って相当欲望まみれな男ですよ?」

 

 少なくともエロという欲望ならこの世の誰にも負けない自信があるね!!

 

 そんな俺に期待なんかしていいのですか?神様の跡継ぎとして。

 

「それを含めてです。あなたは新しい世界を作ってくれそうな気がしますので。・・・すでに知っていると思いますが、他の神話勢力のこともあります。日本神話勢力とはうまくやって行けそうですが、他の勢力はそうもいきません。でもあなたが後を継いだら・・・。」

 

 他の神話勢力か・・・。

 

「私としては、他の神話勢力にもイッセ―君の幼馴染共がいることを懸念していますわ。すでに日本神話勢力の二代目荒神がそうですし。」

 

 そこで朱乃さんが憂鬱そうにとんでもない発言をした!?

 

「・・・ある意味好都合といえますが・・・。」

 

「私としてはまだどんな人外どもがいるのか気が気でないくらいで。しかもイッセ―君って交友関係広そうですし。」

 

―――――そうね。幼馴染に該当する連中はまだ何人も知っているわ。

 

―――――あいつらもまさか・・・って思わせる物を持っている。

 

『・・・・・・・。』

 

 相棒二人の言葉にミカエル様と朱乃さんが固まっている。

 

「・・・一つアドバイスを送るのなら、イッセ―君を幼い頃からの友達――つまり幼馴染に該当する連中は人外だと思うべきかと。下手な手出し無用。対応はイッセ―君に任せるのが適当です。」

 

「覚えておきます。あの子達との関係性も知ってこっちもびっくりしたものですし。弦太郎とイリナともねえ。」

 

 その様子だとイリナや弦太郎と、俺の関係も知っているみたいだな。

 

 その前に俺の幼馴染はみな人外って・・・。まさかあいつらもそうだというのか?

 

 ははは・・・まっ、まさかな。

 

 エイジ兄さんやユウスケ兄さん、士さんに弟分のコウタ、マコトとアラタの三人がそうだったりするのか?

 

 俺達を助けてくれた謎の怪物の事もあるし・・・。

 

 他にも該当者がいる・・・。

 

 まっ・・・まさかな・・・ははは・・・そっ・・・そんなことありえないよな!!

 

「イッセ―君。すごい脂汗。」

 

「・・・・・・。」

 

 なんだろう。アギトとしての第六感が極めて嫌な予感を・・・。

 

 あいつらは普通だよな!?そうだよな!?

 

 頼むから俺の予感よ、外れてくれ!!

 

「その話は置いておきましょう。まあ、私達としても、そんなあなたを後継にしたい。それだけの素質も分かっていますので。その力の助けとなるのなら・・・。」

 

 俺の力の制御の助けとなる剣をマジマジと見る俺。

 

 龍殺しのオーラと聖なるオーラ。それがひしひしと感じられますな。

 

「特別な術式は・・・実はどうしようかと悩んだのです。何しろアギトが聖剣を持つという事例はまったくないものですから。」

 

「私も知り合いと頼んで術式を考えていましたけど・・・答えがでないままイッセ―君が来たのです。まあ、私が必要ないと答えてそのままにしていましたし。」

 

 アギトに聖剣か。

 

「こういう時はとりあえず手にとってみれば?」

 

 いきなりブランカが現れて、俺にこの剣を手にするように促す。

 

「アギトに聖剣。その力はきっと一つになれるから。同じ神様の贈り物のドライクだって一つになれた。だから・・・。」

 

「・・・そうだな。」

 

 それも一理ある。

 

神器に宿った相棒とも一心同体みたいなものだし。

 

 ただのアギトとしてじゃなく、ドライクやクレア、ブランカ達に出会えてよかった。

 

 俺一人じゃ、闘い抜けなかった。

 

―――――ふっ・・・お前達と出会えたことこそ、我が人生最大の幸運だというのに。

 

――――あら、イッセ―だけじゃなくて私も含まれるの?

 

―――――・・・今更言わせるな。

 

「おやおや・・・噂には聞いていましたが、本当にドライクが所帯をもつことになるなんて信じられません。」

 

「もうすぐ子供も生まれる。まあ・・・あの時の様なことは起こさんさ。」

 

 ドライクがデフォルメ化した状態で飛び出してきた。

 

「子供まで・・・。また興味深いことで・・・。」

 

「・・・・・・我が子に手を出した時はどうなるかわかっているか?」

 

 おいおい・・・デフォルメ状態でドライクさんが殺気を放っていますよ?

 

 しかも殺気だけで神社の境内全体が震えあがっていますし!?

 

「・・・ッ!?生前のあなたよりもさらに迫力が増しています。精神的にもさらなる成長を遂げたというのですか?あっ・・・安心してください。あなたの逆鱗にふれるような真似は絶対にしませんので!!」

 

 ミカエルさんは必死にドライクをなだめる。

 

「親になるというのはそう言う事だ。生前の時より、心がなぜか強い。白いのも同じ様なことが言えるから気をつけるが良い。」

 

 そうだね。アルビオンもすごい親馬鹿っぷりだったもんね。

 

「肝に銘じておきます。以前は私達三つの勢力が手を取り合ってあなた達を倒せましたが、親となったあなた達を倒せる自信はまったくありません。精神的な何かが別人と言っていいほどに強くなっていますので。」

 

 あの二体を子供関連で同時に怒らせたら・・・世界が滅ぶかも。

 

「単なる親バカの様な・・・うっ!?」

 

 クレアが出てきて呆れ得た声を上げるけど、すぐに苦しそうにお腹を抑える。

 

「おっ・・・おいどうした!?」

 

「うっ・・・生まれる・・・。」

 

『!?』

 

 そこから先は阿鼻驚嘆の大騒ぎでした。

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・本当に貴重な体験をさせてもらいました。まさか二天龍の卵が生まれる瞬間に立ち会う事になるとは・・・。」

 

 ミカエルさんは心底疲れていた。

 

 ドライクも同じ様子だ。

 

 まあ・・・どこか満足そうな様子もあったが。

 

「すまぬな。手伝ってもらって。」

 

「いえ・・・同僚にこう言った事を司る方がいまして、レクチャーを受けていて良かったです。実際に行うのは初めてでしたが、ガブリエルに心の底から感謝したい。こんなに慌てたのは初めてかもしれません。」

 

「・・・・・・私も疲れましたわ。こんなの知識では知っていても初めてですし。しかもドラゴンなんて普通ありません。」

 

 朱乃さん、ミカエルさん。本当にありがとうございます。

 

 卵なのに結構難産でしたので、クレアが苦しそうだったのだ。

 

 こっちは覚えたてのホイミなどで支援することしかできなかった。

 

 ミカエルさんは流石大物。戸惑っていましたけど何とか動いています。

 

 俺も・・・まあ、出来ることは出来たけど。

 

「あなた達はすごいです。普通なら男はうろたえて何も出来ないのに。」

 

 朱乃さんはむしろ呆れかえっている。そんなにすごいのか?俺なんか頭真っ白で痛み止め程度の魔法しか使っていないぞ?

 

「・・・良く頑張った。済まん・・・手を握る事しかできんかった。」

 

「・・・それだけでも十分よ。ありがとう。」

 

 ドライクも必死で声をかけ、手を握っていましたし。

 

「・・・これが卵なんだ。」

 

 ブランカはきらきらした目で卵を見つめている。

 

 生まれた卵は二つだ。

 

「ええ・・・。」

 

「・・・温かい。これが命なんだ・・・。」

 

 そんなやりとりを俺達は微笑みながら見ている。

 

「・・・こんな当たり前の事が・・・実は大切だったりするんだな。」

 

「はい。私も改めて思い知りました。もう・・・争いは起こせませんね。」

 

 ミカエルさんは改めて決意したようだ。

 

「私はこの三勢力会談で和解を提案するつもりです。あちら側もいい話を聞いています。それに何より、あなたという存在がきっかけですでに悪魔と堕天使の交流が始まっていると聞きます。」

 

 その話しを聞いて俺は思わず微笑んだ。

 

「よかった。」

 

 それは目の前で新しい命が生まれる瞬間を見たからこその言葉だった。

 

 まだ卵だけど、この子達を、争いに巻き込みたくない。

 

 サーゼクス様を初め魔王達全員も悪魔の存続のためにもう闘いたくないと言っていますし、アザセルさんに至ってもすでに巧とハルト繋がりで俺達との交流が始まっている。

 

「そんなあなたへの送り物として、受け取ってください。平和の証として。」

 

 俺はもうこの剣を受け取ることに躊躇わなかった。

 

 この剣に託された思いが分かるからだ。

 

「はい。」

 

 そして、俺がその剣を手に取る。その剣は見た目より重い。

 

 だが、この重さが今の俺には大切だった。剣から漏れるオーラも龍殺しの力もすべてを受け止める。

 

 平和をもたらすための剣。

 

「これからよろしくな。相棒。」

 

 そう声をかけた時だった。剣が胎動を始めたのだ。

 

「へっ?」

 

 最初はゆっくり。だが、徐々に速くなり、そしてそれと共に剣に亀裂が入っていく。その亀裂の隙間から光が溢れだす。

 

「こっ・・・これは!?」

 

 そして光の爆発と共に、アスカロンが変わったのだ。

 

 前も十分綺麗な剣だったけど、銀の刀身が朱金へと。

 

 そして鍔元がアギトの角と同じ様な物に・・・。

 

「・・・信じられない。アスカロンが進化したというのですか?」

 

 剣が進化した?

 

「・・・アギトが神の力を持つとは聞いていましたが。その理由が良く分かった気がします。まさか、剣と呼応し、剣が選んだ瞬間にお互いの力に耐えられるようにするなんて。」

 

 ミカエルさんは心底驚いた様子で告げる。

 

「それはもう聖剣アスカロンではありません。強いていうなら神剣アギト・アスカロンというべきでしょうか。」

 

『・・・・・・。』

 

 とんでもないことをやらかしてしまった俺に対して、朱乃さんだけじゃなくドライクやクレアまでもが目を丸くして俺を見ている。

 

 いやいやいや・・・俺自身が一番驚いているんっだって!!

 

「すご~い。さすがイッセ―。」

 

 ブランカだけは直感が当たっただけなので、喜んでいる始末。

 

「今ほど相棒・・・お前の無茶苦茶さを思い知ったことはない。」

 

「龍殺しに神殺しまで加わるか・・・はあ、頼むから卵を産んだ余韻に浸らせてよ。」

 

 ごめんなさいクレアさん。

 

「その代わり・・・この剣を捧げるよ。ドライクとクレアの子供に。ついでにあいつらの子供にも祝福してやろうか。子は宝って父さんが言っていたらしいし。」

 

 俺は騎士の礼にならって剣を掲げる。

 

「二天龍の子に祝福を!!・・・まあ、形だけだけど。」

 

 こういうのは気持ちが大切だって・・・あれ?

 

 何か卵が光輝いて・・・。卵の殻にアギトの紋章が浮かび上がっているぞ!?

 

「・・・どうやら本当に祝福しちゃったようですね。この子達・・・相当恵まれた子になると思います。まさか剣を通じて神のシステムに介入してくるなんて・・・。」

 

 ミカエルさんは微笑みをひきつらせながら説明をしてくれます。

 

 いや・・・その気持ち分かりますわ。驚きすぎてこっちも表情が追いつかない。

 

『・・・・・・。』

 

 俺、どこから驚いて、どのように反応すればいいのかもう分からないし!!

 

 そんなとんでもない事をしたの!?

 

「相棒・・・嬉しいと思う。だが・・・驚きが勝ってなんといえばいいのか・・・。」

 

「私も同じ意見。でも・・・ありがとう。あんたの祝福、良いプレゼントだわ。」

 

 まあ、喜んでくれているしいいか。

 

「効能は・・・ささやかですけど幸運が増えます。この子達の道は幸多いですよ。」

 

『おおぉぉぉ・・・。』

 

 そんなありがたい効果があるのか?

 

 何か神様やっている気がしてきたぞ。

 

 あれ?そうなると、あっちの卵はどうなっているの?

 

 俺・・・二天龍の子って言っちゃったんだぞ!?

 

「ドライクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

 あれ?天から何かが叫んで突っ込んできた!?

 

 そして、神社の敷地に凄まじい轟音と震動と共に何かが落下したぞ!?

 

 ッて、あれってアルビオン!?

 

 何故か本来の姿であろう、でかく白い龍の姿でやってきたぞ!?

 

「あっ・・・アルビオン!?」

 

「・・・・・・・・。」

 

 これにはさすがに度肝抜かれた。ミカエルさんは辛うじて立っていますけど、朱乃さんなんか流石に腰抜かしていますよ!!

 

「お前・・・うちの子の卵に何をしてくれる!!?何の恨みがあって呪いをかけた!?」

 

 そして、背中に乗っていたヴァ―リが手にしていた卵には・・・ああやっぱりアギトの紋章が・・・。

 

「落ちつけアルビオン!!まだ呪いを決まったわけじゃない。むしろそのアギトの紋章からはそう言った類の力は感じられないって何度も・・・。すまん、アルビオンを抑えきれなかった。まさか自力で元の姿に戻るなんて・・・。」

 

 必死でアルビオンを説得しているヴァ―リ。

 

「・・・ってほう・・・お前もそんな剣を得たのか。」

 

 あいつは俺が手にしているアスカロンを見て笑みを浮かべる。

 

「なら俺も会得したこれを披露しないと・・・おい!!アルビオン落ちつけ!!うおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

 だが、暴れまわるアルビオンに振り落とされてしまう。

 

「お前は卵を守っていてくれ。」

 

 非常に怖い声でアルビオンはヴァ―リにそう言う。

 

 アルビオンはそのあたりは分かっているのか?

 

「大丈夫か!?」

 

「ああ・・・まったく、あいつがここまで親馬鹿だったなんて。」

 

 暴れまわるアルビオン。それに呼応する様に別の方から凄まじい怒気が感じられますよ!?

 

「・・・暴れるな。暴れると俺の卵が危険にさらされる。」

 

『って・・・でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!?』

 

 その暴れっぷりにドライクが建物を突き破りながら自力で元の姿に戻ったぞ!?

 

「・・・二天龍・・・こんな形で再会するなんて・・・。」

 

 あのミカエルさんがガタガタ震えている。

 

 その気持ち分かるモン!!誰だって怒れるドラゴン、それもとんでもない強さが確定している奴らだと怖いから!!

 

 三勢力が力を合わせてようやく倒せた怪物だし!!

 

「こうなったら、生前の喧嘩の再開だ。」

 

「いいだろう!!我が子はやらせんぞ!!」

 

「それはこっちのセリフだ!!」

 

 ちょっと待ってくれ!!二人ともここで喧嘩しないで!!デフォルメ状態ならまだ可愛いけど、本来の姿で喧嘩なんかされちゃ・・・。

 

『グルオォォォォォォォォォ!!』

 

「まずい。二体とも完全にブチ切れている。」

 

 しかも、親となったせいで、色々と生前よりもさらに強くなった状態ですよ!?

 

「ヴァ―リ。なんとか止めるぞ。」

 

「・・・ああ。さすがに互いの相棒が暴れようとするのは止めないと。」

 

 これって、この街最大の危機じゃないのか?

 

 今のこいつらの喧嘩の余波だけで街が壊滅する!!

 

「卵・・・お前達頼むぞ。」

 

 ヴァ―リは卵をベノ達に託す。

 

「ブランカ、クレアを頼む。それとトルネを急いで呼んでくれ。」

 

「わかった。」

 

 クレアはブランカにまかせる。

 

 ヴァ―リの奴が右腕から剣を展開させる。

 

 鍔元が俺と同じアギトの角の形をしている。あっちは白だが。

 

 こいつも剣を?

 

「・・・アギト・ミッドナイトという。元々二振りの剣だったのを俺がアギトの力で融合させてしまってな。親父を真似して普段は俺の右腕にあるってわけさ。」

 

 こいつも俺と同じく剣を・・・。

 

 まあ、それは置いておこうか。まずこの怒れる親馬鹿ドラゴン共を止めるぞ!!

 

「親馬鹿なのは認める。だが、お前とこんな形で共に戦う事になるとは思いもしなかったぞ。・・・・・・これはこれで楽しむことにするよ。」

 

 どんだけお前はバトルマニアなの。

 

 まあ、それでもいい意味で前向きだと思う事にしようか!!

 

「じゃあ、二天龍の強さってやらを体験しに行きますか!!」

 

 俺達が闘う決意を固めた時だった。

 

 アルビオンが口を開き、そこから白い光が集束していく。

 

 アルビオンだけじゃない。ドライクも一緒だ。

 

 ドライクは口に紅い光を集束している。・

 

「って・・・おいおいおいおいおいおいおいおい!!」

 

「ドラゴンのブレス?いや・・・それにしては感じる力が脅威すぎるぞ!?まっ・・・まさかあれを放つというのか!?」

 

 慌てふためく俺達。何しろ集束しているパワーはあまりにも膨大すぎるからだ。

 

 そして、それが何なのかヴァ―リは知っている様子だ。知っていて相当驚いている。

 

「ロッ・・・ロンギヌススマッシャ―を・・・。」

 

 何ですか?その名前は・・・。

 

「ほう・・・お前もその姿でそれが放てるというのか?」

 

「赤いのこそ・・・ふふふふふふ・・・。」

 

『ふははははははははははははははははっ!!』

 

 ドライクの力が倍化していき、アルビオンは周囲の力を半減させながら吸収していく。

 

 この時俺達は知らなかったんだ。

 

 二人はブレスという形で放とうとしていたのは俺達が覇龍となった時に使える二天龍禁断の必殺技であることを。

 

 それは神滅具の名前を取った必殺技。

 

 厖大な龍のオーラを解放させる放出系の必殺技だ。それが・・・。

 

『ロンギヌススマッシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!』

 

 赤と白の光が轟音と共に放たれる。

 

 そのオーラ量はあまりにも膨大。

 

 それのぶつかりあいだけでこの街が焦土に変わるのは必至だった。

 

 だが・・・まさかその必殺技を・・・。

 

「フン!!」

 

 衝突する間に割り込んで同時に防ぐ猛者がこの街にいたなんて誰が思ったか。

 

『・・・・・・。』

 

 それは神々しい白い十二枚の翼を持った鎧を纏いし乙女。

 

「何をしているのですかあなたたちは?」

 

 その名は・・・キリエさん。

 

 みんな別の意味で唖然としている。

 

「・・・・・・あっ、あれを防いだというのか?」

 

「しっ、信じられません。しかも熾天使って・・・あんなことをしでかす熾天使なんて聞いたことがありません!!」

 

 ヴァ―リ、ミカエルさんの順に驚きの声が上がっております。いや・・・キリエさんがどんどんすごい方になっていく。

 

『ロッ、ロンギヌススマッシャ―を防いだだと!?』

 

 ドライクとアルビオンは固まっている。

 

 まあ、それが一発だけなら分かるかもしれない。でも、キリエさんはその間に割り込んで二発同時に止めたのだ。

 

 はっきり言って、神業というレベルすら超越している。

 

「なんとなくですが、あなた達は生前の喧嘩を繰り返そうとしていたのはわかりました。」

 

 キリエさんが手にしていた十字架を頂いた杖を振り上げる。

 

 それと共に・・・ドライクとアルビオンの身体が光の輪のような物で拘束される。

 

「ぬおっ!?なっ・・・なんだこれは!?ぐう・・・半減が効かないだと?」

 

「ぬうううう・・・固い。まさか盾を拘束具に使ってくるなんて。ぬおおおおおぉぉぉ!!」

 

 必死でもがくドライク達。でも、その光の輪は相当頑丈らしくびくともしない。

 

「あなた達・・・。」

 

頭上に黒い影が入る。

 

「少し頭を・・・・冷やそうか?」

 

 その影の正体は二枚の超巨大な十字架が書かれた盾。その大きさは学校のクランドどころか学校の敷地全体位の超巨大な盾だ。盾の厚みだけで学校の校舎の横幅くらいはあるぞ。

 

『げっ!?がばっ!?』

 

 それがドライクとアルビオンに直撃。

 

 轟音と共にそのまま押し潰したのだ。

 

『きゅ~う。』

 

 二人ともその一撃に気絶してしまっている。

 

「・・・コカビエルがこの街は危険だといった理由がよく分かった。ここまで猛者がひしめきあっているのなら、絶対に退屈しないね。」

 

「ええ・・・。ここまで常識を破壊する様なことが連続で起きると流石に・・・。二天龍は三勢力が協力してようやく討てた相手なのに・・・それを単独で止めるなんて。」

 

 ヴァ―リとミカエルさんの言葉の通りだ。いや~キリエさん・・・すげえ。

 

 それと可笑しいな。何時からこの街ってこんな人外魔境になったのだろう!?

 

 二天龍が暴れ、それを止める天使がいるなんて・・・頭が可笑しくなったかな?

 

 

 

 

「全くあなた達は!!イッセ―君がかけてくれた祝福の効果で私がすぐに駈けつけられたから良かったものを!!子供達まで危険だったのですよ。」

 

『ずーん。』

 

 子供達を自分自身が危険に陥れてしまった。キリエさんの説教を受け、その事実に気付いて大いにへこんでいるデフォルメ状態の二天龍達。

 

 なんか可愛いな。

 

 それとキリエさん、ついに二天龍を叱りつける立場になりましたか。

 

「・・・俺達・・・今度絶対に喧嘩しないと誓おう。取り返しのつかない事が起こる前に。」

 

「ああ・・・。子は宝だ。我らが互いに子を傷つけてしまったら、本当の意味で歯止めが効かなくなる。」

 

 二体とも・・・流石に可愛い子供を危険にさらして喧嘩をするつもりはすっかり失せたようすだ。

 

「問題は神器内のあいつらか。」

 

「何とか説得しないと、せっかくの我らの幸せが・・・。」

 

 むしろ相当ショックだったんだろうな。今後の対応を話し合っています。

 

「・・・そこまで悔いているのならまあ・・・大丈夫ですね。なんだかんだ言って子供が出来た事で自重するようになって助かりました。」

 

「いや、ありがとうね。こっちはこっちで何とか守れたけど。」

 

「まさか自力で生前の姿に戻るなんて流石に予想できなかったわ。それと卵おめでとう。」

 

 クレアとベノさんは落ち込んでいる互いの夫に軽く呆れつつ卵を産んだことを祝福している。

 

「それと・・・祝福ありがとうね。その幸運のおかげか大事に至らずにすんだわ。」

 

「本当に申し訳ない!!感謝こそすれ、怒るのはさすがに道理として間違っていた!」

 

 ベノさんは俺のアギトの紋章が書かれた卵を見て微笑み、アルビオンが土下座をして謝っている。

 

 いや、白龍皇に土下座の謝罪を受ける日が来るなんて・・・。

 

「そうか。ならこっちも同じ様な形で返礼しないとな。お前に出来て俺に出来ない道理もない。」

 

 ヴァ―リがその光景に呆れつつ、右腕の剣を掲げる。

 

「二天龍の子にアギトの加護を!!」

 

 その言葉と共に四つの卵に、今度はヴァ―リのアギトの紋章が!?

 

「俺はこの子達の健康を守ることにした。運に健やかな体。あとは健やかな心を育めばあれば真っ直ぐに育つだろうな。」

 

「・・・ヴァ―リ、感謝する。」

 

「こちらからもお礼を言わせてもらいたいわ。」

 

 何か相棒達の子がどんどんすごい事になっていく。

 

「・・・なあ。赤いの。あとでゆっくりと語り合いたい。父親として我らがこれからどうあるべきなのか考えないといけないようだ。」

 

「わかった。なら、相棒の家に来い。ヤマタやオ―フィスがいるからあそこが色々な意味で最適だ。あいつらが良い仲介役になる。」

 

「・・・お前の家は一体どうなっている?」

 

「それについてはもう考えるのは諦めた。だが、あそこではうまい酒が飲めるぞ。」

 

「ほう・・・美食家であるお前がうまいというのだから、相当だな。いいだろう、今晩あたりに・・・。」

 

『・・・・・・。』

 

 そして、積極的に交流を始めた!?

 

「まあ、私と弟分たちもお邪魔するわ。そこで久々に勝負もしない?」

 

「いいわね。ならブランカがゲームにはまっているからそれを一緒にしようじゃないの。」

 

 今夜はドラゴンづくしの宴になりそうだ。まさか本当に二天龍が共に酒を酌み交わす日が来るなんて・・・。

 

「若様!!」

 

 そんなヴァ―リの傍に二人の男が現れる。

 

「大丈夫でしたか?」

 

 二人とも黒いスーツ姿。

 

一人は銀色のポニーテールをした男。顔つきは静観で、生真面目さがにじみ出ている。

 

 もう一人はまるで剣先のように固めた銀色の髪をしている。

 

 顔つきは刃の様に鋭く、眼は糸目。それでいて意地悪そうな笑みが似合う男だった。

 

「シグマにフェンブレンか。すまない心配をかけた。」

 

「そりゃワシだって驚きましたよ。いきなりアルビオンが巨大な龍になって若様を背に乗せたまま飛び去ったのですから。ハドラ―様ですら「一体何が起きた!?ヴァ―リは!?」唖然茫然としていた有様で。」

 

「流石の親父もそりゃ驚くか。」

 

 ヴァ―リはため息つきながら神器を発動。翼を出現させて宙に浮いた。

 

「こちらの相棒が迷惑かけた。いずれ詫びを入れたい。」

 

「いえいえ・・・本当に色々な意味で貴重な体験になりましたので。」

 

「はっ・・・はい・・・。怖かったです。」

 

 朱乃さんは座り込んだままカタカタと体を震わせている。

 

 あれが一般人の反応なんだろうな。

 

「まったく、また喧嘩をするのなら私は全力で止めますからね。」

 

「・・・しかし、世界は広いな。貴方の様な猛者がまだ隠れていたとは。まあ・・・あなたの力の性質上、闘争は好まないという点はいささか残念―――それでもいつかあなたの神すら超えるであろう守りに挑戦させてもらいたい。」

 

「私はそんなに強くないわ。ただ、守りたいだけなの。」

 

 そう言いながらキリエさんは禁手化を解除する。

 

「フッ・・・あなたの強力な守りの力、それを制圧力という形で攻撃力に変えているというのに・・・。これは本当に猛者だな。」

 

「・・・・・・・・。」

 

 一方、ミカエルさんはキリエさんの素顔を見て、固まっている。

 

 眼を見開き、その姿をじっと見ているのだ。

 

「・・・・・・クッ・・・クリスティ?」

 

 そして、その名を呟いた。

 

「えっ?どうしてあなたが・・・。」

 

 キリエさんは驚く。

 

「私の母の名前を?」

 

「・・・・・・・・・・・・・。」

 

 その言葉にさらにミカエルさんは固まる。

 

「まっ・・・まさかあなたはクリスティの娘だというのですか!?」

 

「はい。キリエといいます。兄もいますよ。」

 

「・・・・・・・・・キッ・・・キリエ・・・。」

 

 あれ?ミカエルさんが凄まじいショックを受けている。

 

「あの・・・もしかして、私の母の事を知っているのですか?母は私が幼い頃に無くなってしまい、父親も誰か分からない状態で・・・。まるで天使の様な素晴らしい方だったとは聞いていましたが。よければ話を・・・。」

 

「・・・・・・・・てっ・・・天使のような・・・ちっ・・・父親。」

 

 気を失いそうにふらつくミカエルさん。

 

 二天龍との遭遇にも気丈に立ち続けたあの方が気を失いそうになるほどの動揺って一体何があったの!?

 

「こっ、これは確認しないといけませんね。」

 

 何とか踏ん張ったみたいですけど。

 

「あっ・・・あの、そう言えば頼みたい事が。」

 

 俺は一つ頼みたい事があった事を思い出した。でも、さすがに今回は無理だろうなと何となくだけど思っていたんだ。

 

 何しろ、ミカエルさんの動揺が半端ではなかったからだ。

 

「すみません、急用ができました。その要件に関しては三勢力会談で聞きます。私用で申し訳ございません。では・・・――さやかさん、杏さん、大至急調べてもらいたい事が・・・。」

 

 スマホで急いで誰かに連絡取りながらその場から消えて行ったミカエルさん。

 

「ではな、兵藤一誠。また今夜そっちの家にお邪魔する。」

 

 えっ?ヴァ―リも来るの?

 

「相棒が行くというのだ。俺も行くべきだろう。」

 

 こいつ、律義だな。

 

「・・・・・・ならお前の好きな食べ物は何だ?アルビオンとベノ、あとその弟分達の分もだ。」

 

「・・・なるほど。作ってくれるのか?親父とアザゼルが称賛したお前の料理を。」

 

「ああ・・・堪能させてやる。嫌いな食べ物でもいいぜ?その嫌いな理由も教えてもらえれば、それを大好物に変えてやる。」

 

 だったら、こっちももてなしてやるよ。

 

「楽しみにしている。後・・・そっちの奴を運んでやれ。気を失わなっただけでも相当気丈だが、腰が抜けて立てない見たいだぞ。」

 

 へっ?あらら・・・朱乃さんが座り込んだままだ。

 

「はっ・・・恥ずかしいです。」

 

 

 

 




さて・・・あまりにもくだらない駒王町最大の危機はどうでしたか?

 二天龍喧嘩未遂事件、それを単独で止め、制圧しえ見せた天使さん。


 ミカエルさんはどうして焦ったのか、それはこの章の終りで明らかにします。


 後一話投稿します。


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異世界の守護神と邪神

 実はまだ三勢力会談はスタートしません。

 なんか駒王朝が人外魔境という言葉すら生ぬるい魔都になってきたような気が。


 さて・・・いよいよ敵が動き出します。


SIDE 朱乃

 

 ・・・何だか今日はどっと疲れましたわ。

 

 私の神社はもはや半壊状態。

 

 むしろこの神社だけ半壊するだけで済んでよかったと思うべきか。

 

「イッセ―君。あなたと出会ってから、非常識な事が多すぎると思いますわ。」

 

「そうですかね?」

 

 それでも、今私は別の理由で気を失いそうになっている。

 

 腰が抜けて立てなくなった私をイッセ―君がお姫様だっこで運んでもらっているのですから。

 

「あの・・・重くないですか?」

 

「鍛えていますから。」

 

 それって答えになっていませんし、鋼鬼さんの口調が移っていますわ、

 

 まあ、それでもイッセ―君は相当鍛えられています。

 

アギトに変身しない状態だとそんなに強くないからと、自ら律しているのですが・・・今のイッセ―君は変身しなくても十分強いと思いますわ。

 

今なら狂戦士化したミノタウロス位ならガチで殴り合い、勝つ事が出来るくらいに。

 

 ただ身内がそれを超える怪物ぞろいばかりで本人は全く自覚なしですけど。

 

 それでもいいと思います。

 

 その・・・男らしいですし。

 

 お姫様だっこされる日が来るなんて思いもしませんでしたわ。

 

「そう言えば・・・朱乃さん。」

 

 そこでイッセ―君は私に問います。

 

「その・・・いや、なんでもないです。」

 

「・・・・・・・。」

 

 でも、それを止めます。何を聞こうとしていたのか・・・。

 

「私から感じる気配ですよね?堕天使の。」

 

 もう、私には分かってしまいます。彼はミカエル様の気配にキリエさんと似ているからと気付いてしまうレベル。

 

 なら、私の事も気付いてもおかしくないです。

 

 比較する対象はいますし。

 

「・・・はい。もう一人に似た奴はいましたけど・・・。」

 

 似た人?・・・気になりますけど、何となく心当たりが・・・。

 

 そう・・・か。そして、記憶を封じたのもやはり彼なのね・・・。

 

「ええ・・・あなたの感覚は正確ですわ。私はグレゴリの幹部バラキエルの娘。バラキエルと人間の間に生まれた娘です。」

 

 私は極めて簡潔に語る。

 

 傷つき、倒れたバラキエルをある場所で神社の巫女をしていた私の母が助けて、それが縁で私を宿したと。

 

 私はついに明かす事にした。

 

 私の生まれを。どうして私が悪魔に転生したのかもだ。

 

「・・・私はあなたを殺した堕天使の血を流しています。いえ、あなただけじゃなく、アーシアちゃんも一度殺し、この街を消滅させようとしたコカビエルと同じ血を・・・。」

 

「・・・本当に穢れているのですかね?」

 

 そんな言葉に対して、イッセ―君の言葉は簡単だった。

 

「堕天使全体を俺は嫌いとは今のところ思っていません。レイちゃんや親馬鹿な総督、その息子を知っているのもありますし。それに・・・。」

 

 彼は本当に罪な子だ。

 

「俺は朱乃さんのこと好きですから。」

 

 そんな事を言われてしまうと・・・。

 

「あっ・・・まあ、それ以上は深くは聞きません。むしろ無神経な事をしてしまったと後悔しているくらいで。」

 

 何であなたは何でも受け入れてくれるの?

 

「私・・・それでも汚れた血を持つのに変わりないのよ?あなたを殺した堕天使と同じ血を引き、それを察して嫌われたくないから近づいているような・・・最低な女なの・・・。」

 

「最低じゃありません。」

 

 どうして許してくれるの?

 

「少なくともそれで朱乃さんが変わる事じゃないです。朱乃さんは朱乃さんだと思いますし・・・俺は一度でも朱乃さんを嫌いになったことがありません。朱乃さんから今の話を聞いても嫌いになりませんでした。いまでも変わらずに好きですから問題ないと・・・あれ?俺って何を言っているのでしょうか?すみません、その・・・気の利いた言葉が見つからなくて・・・ってあれ?」

 

 嬉しすぎて・・・涙が止まりません。

 

 何であなたは・・・そんなに優しいのですか?

 

「そっ・・・その。ごめんなさい!!」

 

「・・・本当に罪ですわ。」

 

 私は思い知ります。

 

「・・・殺し文句を言われてしまいましたね。・・・・・・そんなの言われたら・・・本当の本当に、本気になってしまうじゃないの・・・。」

 

「あっ・・・あれ?」

 

 後半小声で話しましたけど・・・きこえているかしら?

 

 あなたは私を本気にさせたことに。

 

 確かに参戦するとは前に言った。でも・・・もう私は本気だ。

 

 この子を・・・私の物にしたいと。

 

 でも・・・リアスもアーシア、そしてユウナも本気だし。

 

 少なくとも本妻は無理ね。あの三人の思いは強いわ。

 

「そうなると・・・はあ、四番目になるのかしらねえ。でもそれはそれで微妙ね。せめて三番目には食い込みたいけど。」

 

「えっと・・・何をぶつぶつと?」

 

 私も何とかしないと、ライバルは手ごわいわ。

 

「あの・・・本妻や何で順位を?」

 

「あらら~それをイッセ―君がいうのかしら?」

 

「・・・うっ・・・。」

 

――――――あーあ。これで七人目。

 

 ブランカがため息をついている。

 

「六人目?一人はゼノヴィアなのは分かるけど・・・。」

 

―――――私がいる。それに幼馴染のイリナが・・・。幼馴染特権を存分に生かして押してきている。油断できない。

 

「・・・ほう。」

 

 思ったよりもライバルが多すぎる。これは早く何とかしないと。

 

 確固たる地位を築かないとね。彼のハーレムに。

 

「ねえイッセ―君、これからはどんどん私に甘えてもいいのよ。」

 

「えっと・・・それってつまり・・・。」

 

 顔を真っ赤にさせてわたわた慌てるイッセ―君。

 

 うん・・・可愛いわ。ふふふおっぱい大きくてよかったわ。

 

「膝枕もいいし・・・そうだ!!」

 

 ここで一つ爆弾を落としましょう。

 

「私の事・・・朱乃ってよんでくれないかしら?」

 

「へっ・・・えええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 もう完璧に慌てています。

 

「そっ・・・その・・・そんな馴れ馴れしく・・・。」

 

「一度だけでいいから・・・お・ね・が・い。」

 

 さて・・・上目使い。アーシアちゃん、必殺技を借りるわ。

 

「そっ・・・それでしたら、あっ・・・朱乃。」

 

 そう言ってもらえた瞬間・・・

 

「うれしぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 抜けていた腰がもう治りましたわ!!そのままイッセ―君を抱きしめ、膝枕を・・・。

 

「うわわわわわわわわわわ・・・。」

 

 もう幸せですわ。撫で甲斐のある頭もそうですし。

 

「ふふふふふ・・・。」

 

「こっ・・・この場面を部長に見られたら・・・。」

 

「部長に見られたら・・・何かな?」

 

 その言葉と共にイッセ―君が固まりました。

 

 振り向くとそこにはリアスの姿が・・・。

 

 いえ、リアスだけじゃありません。

 

 他の面々も一緒です。イッセ―君の幼馴染一同に魔王様たちまで・・・。

 

「なっ・・・何でみんな来ているの!?」

 

「あのな・・・。二天龍が喧嘩しようとしているのに、来ない方が可笑しいだろうが!!ったく血相をかいて来て見ればお前らよろしくやりやがって。」

 

 ネロ君が代表で叫びます。それもそうよね。

 

「まあ、喧嘩そのものをキリエが単独で制圧するなんて思いもしなかったがな。」

 

「うん。このメンツなら何とかなるとは思っていたけど、一人で止めたし。」

 

「いざとなれば我・・・本気出していた。」

 

 オ―フィスちゃんまで拳を作ってヤル気だったのですか!?

 

 無限の龍神様がいれば制圧も簡単だったわね。

 

 いなくても、彼の幼馴染全員が揃えばなんとかなると思えるのが怖い。

 

「イッセ―・・・ちょっとお話いいかな?」

 

 膝枕をしていたイッセ―君の顔面にハルトの手が差し伸べられる。

 

「ぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 素晴らしいアイアンクロ―ですわ。

 

「部長、イッセ―君を連行してもいいでしょうか?」

 

 イッセ―君の顔面を片手で掴み上げたままハルトは素晴らしい笑みを浮かべている。

 

「私も同行するわ。さっさと行きましょう!!」

 

 プンプン怒っている様子のリアス。

 

「一番がうらやましいですわ。」

 

 そう私が漏らしてしまう。

 

 するとリアスもまた漏らしてしまう。

 

「・・・私の事まだ部長って呼んでいるし。私が一番遠いじゃないのよ。」

 

 本人は小声で言っているつもりでしょうね。

 

『・・・・・・クス。』

 

 そんな嫉妬が少し可愛く感じたのは私だけじゃない。

 

 その証拠に其れが耳に入った全員が微笑ましい笑みを浮かべていた。

 

「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁ。」

 

 イッセ―君の悲鳴は聞き流して。

 

 

 

 

SIDE イッセ―

 

 俺は今・・・人生最大の苦痛を味わっている。

 

「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」

 

 こっ・・・これが提督殺し・・・。

 

 脳・・・脳がつぶれる・・・。首も痛てえええ。

 

 なるほど・・・これは記憶が失うかもしれん・・・。

 

 ああ・・・痛みのあまりにいっ・・・意識が・・・。

 

 だが、すぐに離してくれた。

 

 一応だけど、気絶しているふりをする。

 

「はあ・・・まったく、お前も複雑なのは分かるがやり過ぎだぞ?」

 

 そんな様子を見たネロがたしなめる。

 

「そうです。嫉妬はするのは仕方ないとは言え・・・。」

 

「うっ・・・ネロはともかくキリエさんに言われるのは何か弱いな。」

 

「ハルトって姉属性に弱い傾向にありますから。」

 

「レイちゃん!?さりげなく暴露は止めようよ!!」

 

 どうやら今いるメンバーは部長、ハルト、ネロ、巧、そしてレイちゃんとキリエさんらしい。

 

 他の面々は・・・多分神社の修理だろうな。

 

 それはそうとハルトって姉萌なのか。

 

 いや・・・前の猥談の時もそんな傾向が見られた。まあ・・・本命はまた別のようだが?

 

「・・・仕方ないだろう。姉上がとうとう攻略されてしまったんだ。これくらいの事は許してほしい。」

 

『・・・・・・・。』

 

「ちょっとハルト!!」

 

 レイちゃんの悲鳴に似た指摘。

 

「あっ・・・。」

 

 ハルトは仕舞ったと言いたげに口を抑える。

 

「ちょっと!!それってどういうことなのよ!!姉上って・・・もしかして朱乃の事!!?」

 

 部長が必死にハルトを問い詰める。

 

「・・・ネロ。お前は気付いているだろ?俺も・・・。」

 

 俺は気絶しているふりを止めて立ち上がる。

 

「一度聞きたかったんだ。どうして朱乃さんとハルトから似た気配が感じるのか。だが、そう言う事か。お前ら・・・。」

 

「・・・手加減したとはいえ、気絶する振りをされていたのに気付かないなんて、俺らしくもないか。」

 

 ハルトはため息をついて指を鳴らす。

 

 それと共にあいつの背中から、黒い翼が出てくる。

 

『・・・・・・。』

 

「察しの通りだよ。俺は堕天使バラキエルと人間の間に生まれた子。そして本当の名前は姫島晴人。」

 

 また隠れた人間関係が明らかになった。

 

「姫島朱乃の実の弟だ。」

 

 まさか・・・本当にハルトが朱乃さんの弟だったなんて。

 

「ここに来たのも生き別れの姉上――朱乃姉さんを探してきたんだ。あまりに綺麗になったのでびっくりし、まさか・・・イッセ―が姉上を落としたなんて予想外もいい所だ。」

 

 まっ・・・まさか、ハルトが朱乃さんに弱いのも・・・家族だったからか!!

 

 思い出したぞ、確かこいつは幼い頃、姉によって巫女服という女装をさせられていた。

 

 こいつは姉・・・朱乃さんには逆らえない部分があるんだ!!

 

「それは事実だぜ?俺も色々とフォローして大変だった。」

 

「ははは・・・朱乃さんに嫌われないように細心の注意を払っていました。」

 

「・・・・・・・。」

 

 そして、部長はまた固まっている。

 

 渡に続き、ハルトもか。

 

 そして俺はもう一つツッコミたいところがあった。

 

「・・・なあ、ハルト。何でお前の翼は十二枚ある?」

 

 それはハルトの堕天使の翼の数だ。ハーフなのにアザゼルと同じ六対十二枚あるのだ。

 

「俺の中にあるファントムの力のせいだ。前にも話したはずだけど、指輪の魔法使いになるには、俺の中にファントムを宿し、それを自力で抑え込む事が条件だ。そのファントムが大変強力でね。おかげで素の力だけでもアザゼルと互角なんだ。右腕と左腕に宿る力を別にしてね。」

 

「・・・・・・・。」

 

 堕天使総督よりも強いというのか?ハルトって・・・。

 

「高い戦闘センスも含め、実力でいうならハルトは間違いなくグレゴリの中でダントツ最強だ。親父も認めている。」

 

 巧の言葉に俺達はさらに固まる。

 

 薄々感じていたけど、やっぱりハルトってグレゴリ最強だったのか。それもダントツと言わしめるくらいに。

 

「それでも器量や人生経験では遠く及ばないさ。流石に生きている年月が違いすぎる。ついでにいうなら、姉上の中にも強力なファントムがいる。姉上自身今は未来の俺による記憶の封印のために忘れているけど、すでに魔法使いとしても覚醒している。あれが体内にあるおかげでスペック的には俺と同じく十二枚になることができる―――そうだな、潜在魔力だけなら俺よりもさらに上。少なくとも1・5倍はあると思ってくれ。」

 

 未来のハルトによる記憶封印!?

 

 じゃあ・・・朱乃さんにかけられた記憶の封印は・・・。

 

 その前に潜在魔力だけならハルトより上って・・・朱乃さんってどんだけの力を秘めているの!?

 

「・・・・・・・。」

 

 あれ?

 

 部長から反応がない。

 

「う~ん・・・・・・。」

 

 えええええええぇぇ!!そのまま倒れた!!?

 

 何か可愛い悲鳴をあげて!?

 

「う~ん・・・う~ん・・・。」

 

 そのまま何かうわごとのようにうなされている。

 

「まさか・・・朱乃・・・あなたまで・・・。」

 

 これって卒倒なのか!?あまりに衝撃的な事実に部長が卒倒したというのか!?

 

 幼い頃からの親友のまさかの事実に部長が受け入れきれなかったために!!?

 

「・・・・・・グレモリ―眷属、これで全員がお前繋がりのイカレタ連中ばかりってことが証明されたな。こりゃ・・・敵対した相手はあの世逝き確定だぜ。」

 

 ネロがしみじみと言っている。そんなの俺も今は初めて分かったって言うの!!

 

 俺だって今のあいつらと敵対したくないわ!!

 

「こら、ネロ。いくら今更どうしようもない事実でもそれは言ってはいけません。」

 

 キリエさん、それってフォローしてくれているようで・・・止めになっています。

 

 ほら!!部長が「うっ・・・・。」と呻き声をあげたじゃないですか!!

 

「部長しっかりしてください!!」

 

 俺は部長の名を何度も呼ぶけど、部長はうわの空でつぶやいているだけだった。

 

 でも微かに意識が戻ったらしく俺の腕の中で問いかけてきた。

 

「私達・・・レ―ディングゲームに出場できるのからしら・・。」

 

 済みません、それに関しては俺も自信ありません。

 

「小猫・・・小猫だけが・・・唯一の希望・・・。」

 

 そうだね。まだ小猫ちゃんは比較的普通だし!!

 

 それが唯一の希望だ!!

 

 きっと・・・時間の問題だろうけど。

 

 

 

SIDE 鋼鬼。

 

「よし・・・今日はここまでにしよう。」

 

 俺は日課となった黒歌と小猫ちゃんとのトレーニングを終える。

 

 昼の二天龍大ゲンカ未遂事件もすぐに片付き、夕方、いつも通りのトレーニングを行う事が出来た。

 

「はあ・・・疲れたにゃ。」

 

「そう・・・ですね。でも、大分体が楽です。」

 

 仙術の修行と鬼としての修行。

 

 それを小猫ちゃんにワンツーマンでやっていた。

 

 仙術に至っては黒歌が師匠となる。

 

「・・・私だけみなさんとは違い普通ですからね。なんとか追いつかないと。」

 

 小猫ちゃんはやる気だ。

 

「まあ、他のメンツが可笑しいだけだ。」

 

「そうにゃ。むしろ普通なのがリアスっちの心の支えになっている気がするくらい・・・。」

 

 最近のリアス殿は眷属の異常な進化に頭を痛めている位だ。

 

 一人くらい普通に強くなる子がいてもいい。

 

 まあ・・・、小猫ちゃんは現時点で相当なレベルなのだが。

 

 上級悪魔クラスに手が届いているのは確実だ。

 

「そうにゃ。小猫はしっかり強くなっているにゃ。まあ・・・足りない要素があるとしたら・・・。」

 

「契約する存在だろ?」

 

 そこに伯父上が突然やってくる。

 

「黒歌ちゃんはすでにヤタガラスと契約をしている。あのカードを使ったんだろ?」

 

「にゃはははは・・・うん。出てきて。」

 

 黒歌の方に止まるのは三本の脚が生えたカラス。

 

 母上の眷属でもある太陽のカラス。

 

 言葉は喋らないが、俺に続いて頼りになる相方を黒歌は得ている。

 

「そう言えば小猫って、あの勾玉もっているの?」

 

「うん。私の大切な物。」

 

 小猫ちゃんは首元から一つの勾玉を出す。

 

 それは銀色の勾玉だ。

 

「大切にしてくれて嬉しいにゃ。」

 

 話に聞くと、それは俺達と出会う前、まだ悪魔に目をつけられる前の幼い小猫ちゃんが拾ったものらしい。それを首飾りにして黒歌がプレゼントしたのだ。

 

「変わった勾玉ですね。ヒヒイロノカネで出来ているのですか?」

 

「いや・・・これは少し違うな。」

 

 日本神話の神としてその勾玉が何かを興味を持ったらしくいつの間にか来ていた母上と伯母上もそれを見る。

 

「私達の世界の物じゃない?これ・・・。」

 

 そして、母上はとんでもない事に気付く。

 

「これ・・・異世界の勾玉よ!?」

 

「・・・異世界?」

 

 こことは違う別の世界があるとは聞いている。ポルムもあちこち旅をしてきたらしく、その存在はほぼ間違いないだろう。

 

「しかも、この勾玉は・・・。」

 

 突然、勾玉が焔の様な色の光を帯びる。

 

「・・・温かい。最近たまに光る。温かい光を宿して。」

 

 その光と共に・・・小猫ちゃんの周りに凄まじい気が集まっている事に気付く。

 

 仙術で気を集めると共にその光は大きくなる。

 

「・・・・・・いつからにゃ?」

 

「姉さまと義兄様との修行を始めた時から、この勾玉が赤く光を帯びるようになったの。今回はさらに強い。」

 

 その勾玉は間違いなく小猫の気を増幅している。

 

「それだけじゃないにゃ!!自然界の気まで取り込んでいる。それも邪気なども浄化して・・・。」

 

 自然界の気を取り込む際には邪気の類に気をつけないといけない。ホラーなども出ることから分かるように邪気は危険だ。だが、小猫ちゃんの手にした勾玉はその邪気を浄化しているのだ。普通の現象ではありえない。

 

「気って、ある世界ではマナと呼ばれている場合があるにゃ。気をより純粋に高めた星の命の力がそれに該当する。今白音が発している力はそのマナそのものにゃ!!」

 

 そんな純粋過ぎる力を・・・どうして?

 

「・・・呼んでいる。」

 

 小猫ちゃんは呟く。

 

「彼が・・・私を読んでいる。」

 

 母上はうわの空になった子猫ちゃんを見て、叫ぶ。

 

「あの勾玉は何かとてつもない存在との繋がりを得るためのものです。そう・・・守護神クラスのとんでもない何かと!!」

 

 しゅっ・・守護神クラスだと!?

 

 それは世界の法則の一部と言っていい存在。それは世界その物を守るために存在する神々とはさらに一線を画した存在。

 

「・・・ああ、忘れていた。私・・・彼を知っている。ずっと昔、友達になった彼を。酷い・・・なんで私の記憶を消していたの。」

 

 涙を流す小猫ちゃん。

 

「この子はすでにその巫女となっている。」

 

 守護神の巫女だと!?

 

 小猫ちゃんはすぐに気付く。

 

「この世界に来ているの!?どうして!?この世界のギャオスはもう・・・。」

 

 ギャオスだと?なんだそれは・・・。

 

「・・・上で戦っているというの?」

 

 その言葉共に上空で大爆発が起きていた。

 

 それと共に何か黒く巨大な物が落下してくる。

 

 それは俺達の傍に轟音と共に落下した。

 

「ガメラ!?」

 

 小猫ちゃんは名を叫びながら駆けだす。

 

 そして・・・それは落下の衝撃で舞いあがった土煙りの中から姿を見せる。

 

 それは巨大な黒い亀だった。

 

 甲羅だけで八十メートル位はあると思われるくらいの。

 

「なんで・・・どうしてあなたがこんなにボロボロに。」

 

 ガメラと呼ばれし存在は酷い怪我を追っていた。右腕がちぎれ、胴体にも大穴があいている。

 

――――久しぶり・・・だな、白音ちゃん。まさかまた君の世界に来る事になるとは。

 

 鋭い牙に不釣り合いな優しい眼が小猫ちゃんを見る。その声は優しげだが、明らかに弱っている。むしろ意識があるのが信じられない位というべきか。

 

「久しぶりじゃない!!勝手に出て行って!!姉様といいガメラといい、みんな勝手すぎるよ!!どうしてそんな酷い怪我を!?如何して・・・心も体もそんなにボロボロになっているの!!?」

 

 そんな彼に向って抱きつき泣き叫ぶ小猫ちゃん。

 

 どうなっている?記憶を失っていた件もそうだが、

 

 見た目だけじゃなく、心のダメージまで読み取ったというのか?

 

―――――ははは・・・ごめん。繋がりが予想以上に強いみたいで・・・。魂まで読まれているのか。どうしてここまで強くなったの?

 

「どうやら・・・この子の身内でいいみたいだな。」

 

俺はガメラと呼ばれし存在に話しかける。

 

――――――君は・・・?

 

「小猫・・・いや白音ちゃんの兄貴分みたいなものだ。・・・事情は後で聞く。まずは怪我の手当てをするぞ。」

 

「ガメラを渡してもらおうかしら?」

 

 そこに何者かの声が響き渡ってくる。

 

 振り向くと羽音と共に黒い甲羅に一つ目、そして鋭い刃の様な四肢を持つ異形。

 

 全長だけで三メートル程あろうか。まるで一つ目の虫だ。よく見ると左右にもふたつずつ眼の様な物もついている。まるで昆虫やエビなどの甲殻類の物の怪。

 

 それがこっちに話しかけてきたのだ。

 

「どうしてだ?こいつは死にかけているのにか?」

 

「こいつがいると私の邪魔になるの。だから・・・殺す。」

 

「ガメラはやらせない!!」

 

 小猫ちゃんが必死になって庇う。

 

 それだけで俺達がやるべきことは分かった。

 

「・・・そう言う事だ。」

 

「帰ってくれないかにゃ?」

 

 それに俺と黒歌が続く。

 

 いや、俺達だけじゃない。

 

 母上と伯父上、伯母上まで加わったのだ。

 

「この国で勝手なことはさせないわよ?」

 

「そういうこと。この子は私達の娘も同然。」

 

「そいつの大切な存在に手を出すなら・・・覚悟はできているか?」

 

 三人とも厖大な気を発している。これは・・・本気だ。

 

「そう・・・なら残念だけど・・・。」

 

 それを意に返す様子を見せずに物の怪は話す。

 

「みんな死んでもらうわ。」

 

 その言葉と共に・・・地面や空中から次々と同じ奴らが現れる。

 

 その数は軽く見て百体を超えている。

 

――――――我が名はレギオン。我は大勢であるがゆえに・・・。

 

 そいつらは一斉に名を口にする。

 

 レギオンという名を。

 

「すっ・・・凄まじい数にゃ。」

 

「まだまだ・・・現れているというの?それにこの気配、この星のものじゃない!!」

 

「・・・さあ・・・後悔するが・・・。」

 

 先ほどから喋っていた奴がこっちに向かって鋭い刃の様な足を振り上げて襲いかかろうとしていたが・・・。

 

「・・・義は我らにあり。」

 

『!?』

 

 そいつがバラバラになる。

 

「嵐、加勢してくれるのか?」

 

 それをやったのは俺の前に日本刀を逆手に持ちながら現れた嵐だ。

 

「当然・・・。」

 

「なら久々に義兄弟同士で大暴れしようか。」

 

 俺は音叉を打ち鳴らす。

 

「小猫ちゃん・・・お前ブランカから契約のカードをもらっていただろ?それをガメラとやらに使ってやれ。このままの大きさじゃ運ぶのは無理な上に、格好の的だ。」

 

「っ・・・はい!!」

 

 小猫ちゃんは持っていた契約のカードをガメラにかざす。

 

「契約・・・もうしているからいいよね?」

 

―――うん・・・わかった。

 

 その言葉と共に、カードにガメラの絵が現れる。それと共にガメラが手で抱きかかえる事が出来るほどまでに小さくなる。

 

 腕の中でガメラはぐったりとして気を失った

 

「お前達、逃がさないで!ガメラを・・・。」

 

 レギオンと呼ばれた連中は小猫ちゃん達に殺到しようとしていた。

 

 だが、それを俺は強制的に止めてやった。

 

 拳圧で空中の連中をふっ飛ばし、地面を踏みつけ地響きを起こして地面の上、そして下にいる連中を足止めしたのだ。

 

「っ!?なんでパワーなの?」

 

「おい・・・さっきから言ったはずだぞ。」

 

 俺はいい加減怒っている。

 

「俺の妹分に手を出そうとしたんだ。それ相応の覚悟は・・・出来ているよな?」

 

 怒りのあまりに、大気を大きく震わせる。

 

「ほう・・・お前、さらに強くなったな。怒りの覇気だけでここまでになるとは。」

 

 伯父上は感心した様子で俺達の横に並ぶ。

 

「ったく退屈しないぜ。黒歌ちゃん、姉上達は小猫ちゃんを頼む!!」

 

「・・・分かりました。すぐに応援を・・・。」

 

 母上がそう言おうとして・・・。

 

「いらないとは思いますけどね。みなさん・・・イッセ―さんの家に転送します。」

 

 何故か苦笑しつつ、皆を転送させた。

 

「ぐっ・・・お前達、私の邪魔を・・・。覚悟はいいかしら?」

 

「覚悟?それはお前達の方だ。」

 

「そう言う事です。」

 

 俺は鬼に変身する。そして・・・嵐も刀を鞘に戻し、その音を鍵として変身する。

 

 鷹の眼と頭、そして方から鷹の羽を無数生やした異形の変身忍者へと。

 

「この街に来てから二度目の大暴れか・・・こりゃ三度目も期待していいな。二度あることは三度あるっていうしな!!しかもどんどん派手になってきているじゃねえか!!」

 

 伯父上、それは言わないでくれ。現実になりそうで頭が痛い。

 

「・・・お前達この国の神話勢力!?なんでこんな場所に!?」

 

 そこで声の主も俺達の正体に気付く。まあ、授業参観で来ているとは誰も思わないか。

 

『さあ・・・派手な喧嘩を始めるぞ!!お前ら覚悟はいいか!?』

 

 その言葉と共に俺達はレギオン軍団に向けて走り出した。

 

 その瞬間・・・レギオンと呼ばれた連中が次々と宙を舞っていく。

 

「義兄上・・・。」

 

 戦いながら嵐は俺に聞いてくる。

 

「なんだ!?」

 

「小猫ちゃんもまた・・・すごい事になっていたんですね。まさか・・・あんなとてつもない存在と契約を・・・。」

 

「・・・いうな。出来ればその現実を直視したくなかった。」

 

 頭が痛いのだから。小猫ちゃんはまともな方だと思っていた矢先に・・・。

 

 あの存在のせいで小猫ちゃんの浄化の力が恐ろしい事になっている。

 

「これでまともな部類なのは朱乃殿だけになったか・・・。だが・・・この様子だと。」

 

 俺はもう確信せずにはいられない。

 

 朱乃殿もリアス部長が卒倒しかねない何かを持っていると。

 

「グレモリ―眷属・・・恐るべし。いや・・・イッセ―、お前の絆は一体どこまで俺達を強くする?いい加減怖くなってきたぞ。」

 

 俺はイッセ―の運命という名の力に戦慄すらしていた。

 

 

 

 

 

SIDE ???

 

 これは計算外だった。

 

 この子達を使って異世界より取り寄せたギャオスを追ってきた満身創痍のガメラを殺そうと思ったのに・・・。

 

 止めに放った四百体のソルジャーレギオンが全滅するなんて。

 

 それもたった五分で。

 

「・・・この街にて三勢力会談が開かれるのよね?」

 

――――そう聞いているわ。

 

 マザーレギオンである彼女は私の声に応えてくれる。

 

 手乗りサイズで私の傍を飛んでいる。

 

 代々のマザーレギオンの知識をDNAレベルで受け継いでおり、いい相談役になってくれて私としては助かっている。あちこちの惑星を飛んで回ってくれた経験は伊達じゃない。

 

「そう・・・きゅうべい。」

 

 私の声に応えるように一体の白いヌイグルミみたいなナマモノが現れる。

 

 無駄に長い耳と紅い宝玉の様なつぶらな瞳を持っている。

 

「あの街を調べて来て頂戴。」

 

「え~・・・面倒くさ・・・。」

 

 だだをこねる生意気な子に手から銃を取り出してそれを突きつけてあげる。

 

「い・い・か・ら、行きなさい。」

 

「は~い。」

 

 そう言ってあいつは姿を消す。

 

「斬新なコミニケーションね。」

 

 生意気な子にはこれが一番ですから。

 

 あっ・・・そう言えば、あの子が三勢力会談にちょっかいをかけようとしていたのよね。

 

 まどかを探すのであまり気にしていなかったけど・・・少し力を貸してもいいかもしれない。

 

「おーい、ほむらのお嬢ちゃん!!」

 

 そこに精神年齢悪意全開の幼児といっていいジジイがやってくる。

 

「おーい・・・おーい。」

 

 あえて無視。

 

「ほむらちゃん?ほむほむ・・・ほむりん!?」

 

 こんなジジイにかまけている暇はないというのに。

 

 はやくまどかを・・・。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ツルペタ、」

 

「レ・ギ・オ・ン(怒)。」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」

 

 この糞ジジイ、元の姿に戻ったレギオンの前足でつかみ上げてやったわ。

 

 削岩機にもなっている前足の力・・・一度人体実験をしてもいいわね。

 

「レギオン・・・ふざけた事を言ったらそのままにぎりつぶしてあげなさい。じっくり、ちぎれる瞬間までその感触をねぶるように味わって。」

 

「あいあいさ~。」

 

「ちょっと!!ノリが軽いよ!?そう言ったところもゾクゾクするけど、流石に命が関わると勘弁してほしいぞ!!」

 

「早くふざけたことしないかな~。ウズウズ。」

 

「しかもお前は握りつぶす事を楽しみにしてんのかい!!ギャアアアアアすっ・・・少し力入れているだろ!!?」

 

「それでも駄目ならディススパイダーが大歓迎してくれるから。」

 

 足元では糸で出来た巣の上で巨大な蜘蛛が待っている。人くらい簡単に飲み込めそうな巨大な蜘蛛だ。

 

「一度魔王の血を引く者の味を確かめたいと思っていた。さあ・・・我が腹の中へ、私は大歓迎だぞ。丸のみもまたいいものだしな。じっくりと味わってやろう。」

 

「そんなの死んでもお断りだ!!」

 

 彼は食いしん坊だからねえ。

 

でも、そんなの食べてお腹を壊さないでよ?美味しいご飯の店・・・また探さないと。

 

 それにそれくらいで今のあんたは死なないでしょうが。

 

「君も過激だねえ。いや・・・ドSだ。」

 

 そこに私をこの世界の招待してくれた存在が現れる。

 

 この世界の闇の神。

 

「あら?裏で色々と暗躍しているあなたほどではないと思うけど?」

 

「・・・本当に面白い子を呼んだものだ。君が表に立ってくれると動きやすくなるしね。異世界の悪魔さん?」

 

 何言っているの?私はほんの一部だけ神の力を得ただけよ?

 

「ったく殺すつもりですかい?」

 

――バイラス

 

 生身の姿のまま体を粒子ウィルスに変換させて糞ジジイは私の傍に降り立った。

 

「・・・バトルファイトの開催はいつできそうだ?」

 

 そこにモノリスみたいな奴も現れる。

 

「五人目も見つかったからね。近いうちに・・・そうだね・・・夏休み明け位には出来ると思うよ?」

 

「そうか・・・。井坂、お前も存分に暴れろ。あと二人ももうすぐ参戦する。」

 

「さらに私は進化した。二体のジョーカーなどに遅れは取らんぞ。」

 

「へえ・・・。」

 

 井坂と呼ばれた男の傍に現れるのは白いカミキリ虫みたいな存在がいた。

 

「五人目・・・紫藤イリナを捕えろ!!あいつを我らの陣営に呼びこめば・・・勝てる!!」

 

『御意。』

 

 そう言って二体のジョーカーは姿を消す。

 

「へえ・・・それはそれで面白そうね。ならアンデットの解放はあそこでやったらどうかしら?」

 

 私の提案にモノリスみたいな奴は少し黙るが・・・。

 

「面白い。あの街の恐怖と混沌に陥れてくれる。

 

 面白い余興が始まりそうね。

 

「もうすぐ私達の存在は表にでる。宣戦布告の時よ。」

 

 この世界を私の物にしてみせる。そしてまどか・・・あなたを・・・。

 

 

 

side レイヴェル

 

 私はただいま、忙しい日々を過ごしております。

 

 ハルト様から魔法使いとしての修行・・・グレゴリの通信教育という形でやっています。

 

 兄と共に専用のドライバーも貰っています。

 

 しかも、勉強しているのや指輪の魔法だけじゃないのです。

 

「・・・魔戒筆って扱いが大変です。」

 

 私は今・・・魔戒法師としての修行も受けております。その関係でカンタイの地に足を運ぶ事が多いですわ。

 

 まだ見習い程度ですが、上達は早いらしいです。悪魔が魔戒法師になるという事自体が前代未聞のことでしたけど。

 

 邪美師匠達には大変お世話になっています。みなさん共仲良くできて本当にいいです。

 

 柔軟体操も欠かさない日々が続いています。新体操顔負けの動きが求められます故に。

 

 こっちの学校で新体操部やっていてよかったですわ。

 

 そんな私にある声が聞こえてきました。

 

――――私の進化は・・・間違っていたというの?

 

 それは女の子の声です。

 

――――――助けて・・・

 

 それは屋敷の外にいました。

 

 小さなカタツムリみたいな外見をした不思議な生き物です。

 

―――だっ・・・だれ・・・か・・・。

 

 その子は傷つき弱っています。

 

「・・・大変。」

 

 つぶらな瞳をしたその子を私は抱き起こします。

 

 

side ???

 

 私の進化は間違っていたのだろうか?

 

 あの子の憎しみに呼応して私は蘇った。そして強くなった。

 

 その力を持ってその対象を倒そうとした。私達の敵でもあったあいつを・・・。

 

 でも、最後になって拒絶された。共に戦おうと、一つになろうとして。

 

 それが間違っていたというの?強くなるためにたくさんの贄を得てきたというのに。

 

 私は死ぬ前にそう己に問う。答えを考える前に意識を失って。

 

「・・・あれ?」

 

 でも私は生きていた。

 

 気付けばふかふかのベットの上で寝かされていたのだ。

 

「ここ・・・は?」

 

「あら?起きましたか?」

 

 助けれてくれたのは金髪にドリルロールの女の子だ。年は・・・あの子に近い。

 

「・・・あなた・・・人の言葉は分かるみたいね。」

 

 そりゃ、人間のDNAを取り込んでいますから。

 

 一応あいつの体液も摂取したので、身体はさらに変わっているかもしれない。

 

 でも・・・。

 

「幼体に戻っている」

 

 私の姿は幼い頃の姿に戻っていた。

 

 ついでに言えば・・・以前にはなかった口が出来ていた。そのため喋れたのだ。

 

「幼体?んん・・・こういった専門家の方を私は知りませんし。そうだ、あの指輪をつかってみましょう。」

 

 いえいえ、わたしの専門家なんていないわ。一応ギャオスではあったけど、もう完全な別物になっている。

 

んん?あれ?私ってこんなに知能が高かった?

 

 そうか、私こんなに進化を・・・。人と変わらない知能を得るまでに。

 

「ねえ・・・あなたって名前は何というの?」

 

 私の名・・・名乗る名は一つしかない。

 

「・・・イリス。」

 

 それはあの子が名付けてくれた名前。

 

 かつて私の巫女出会ったあの子から残ったDNA以外の唯一の贈り物だ。

 

「そうか。私はレイヴェル・フェニックス。ねえ・・・あなたこれを知っている?」

 

 レイヴェルと名乗った女の子の手には・・・私の勾玉があった。

 

 それが淡い光を放っている。

 

「そう・・・か。今度はあなたなんだ。」

 

 私は無意識に新しい巫女を見つけてしまった。

 

 この子が今度の巫女なんだ。

 

「・・・ちょっとあなたの情報を読み取らせて。」

 

 そう言って私はその子の腕に私の触手を浅く斬るように突き刺す。

 

「・・・ッ!?」

 

 そして、私は知る。そして取り込んでしまう。

 

「ここ・・・異世界なの?それも・・・あなたは・・・。」

 

「あなた・・・悪魔を知らないの?私は不死身だからよかったですけど。このコミニケ―ションは止めることをお勧めしますわ。」

 

 レイヴェルに付けた傷はすぐに治る。

 

 そして、私はその情報を取り込んでしまった。

 

 フェニックスの不死身のDNAを。

 

「・・・でも、私のあなたの情報を逆に読ませてもらったわ。そう・・・あなたってとんでもない存在なのね。相手のDNAを取り込み、遺伝子の構造を変化させながら進化を続ける生命体。」

 

 えっ?私の情報をあなたが読み取ったって・・・。

 

―――――スキャニング。

 

 いつの間にかレイヴェルの腰には掌を模したベルト、そして、左腕には指輪があった。

 

「ねえ・・・あなたの事を聞かせてくれないかしら?この魔法じゃ、あなたの生態しか分からないの。」

 

 私の事を知りたい?

 

 あの指輪の効力には驚いていたけど、その情報以外で何を知りたいの?

 

「そう・・・私も自分の事を教えるから。」

 

「・・・えっと、それって一体化するじゃわからないことなの?」

 

 その言葉に対してレイヴェルは首を横に振る。

 

「それじゃつまらないですわ。」

 

 そして、その行為をつまらないと言い捨てたのだ。

 

「私を助けてくださったあの方・・・イッセ―様ならそのように断言しますわ。」

 

 その彼女の出会いが私の第二の人生、そして進化のリ・スタートとなる。

 

 私はそこで本当の意味で朱雀となる。

 

「友達の証として・・・ブランカさんから貰ったこれを・・・。」

 

 そして、私はこの子と契約のカードで契約することになった。

 

 

 

SIDE サイガ

 

 

 俺は魔戒騎士としてのゲートの見回りをしながらため息をついていた。

 

 あれだけの大混乱の後だ、色々と気が乱れている。

 

 現れたホラーを今日だけ十体も斬った。

 

―――――どうした?サイガ。

 

 久々にエイガとゆっくりと語らう事になった。

 

「今の僕のままでいいのかなって・・・。」

 

―――――ああ・・・それか。全くこっちは黙って見ていたが・・・。

 

「いや・・・そのね。」

 

 僕はセラさんから誘われていた。

 

――――私の女王になってくれないかな?

 

 ついでに言えばツクヨミさんからは・・・。

 

――――私の巫女になってくれない?

 

 さて・・・まずツッコミ何処かな?

 

―――お前・・・男だよな?って俺も思ったぜ。

 

「そうなんだよ。」

 

 男なのに女王と巫女になってくれて・・・。まあ、あとあと聞いたら女王は魔王眷属の女王の駒の事。

 

 巫女も・・・巫子で問題ないこと。

 

 そして、それはすでに元老院を初め、父様達も承諾しているとのこと。

 

 その二つは同時になることができる。セラさんが女王の駒、ツクヨミさんが神としての力を・・・それぞれ同時に分け与えることで。

 

―――――でもサイガにとっても悪くない話だろ?お前の本来の力が発揮できるようになるのだからな。

 

 そう、その際の特典があまりにもすごすぎた。

 

 その際に特殊なことをすることで、僕は今発揮できていない本来の力を発揮できるようになるということだ。

 

 そう・・・私の中の三つの竜の紋章の力を。

 

 その結果転生しても悪魔ではなくなるが、セラさん曰く「そんな程度、問題ないって。」事らしい。

 

 ツクヨミさんからも転生することで永い時を共に生きる事ができるようになるなら諸手を挙げて賛成らしい。

 

 むしろ二人が協力することになったのは、セラさんの三倍の価値がある女王の変異の駒だけでは私を転生させることができないと判明したらしい。

 

 魔王の女王の駒・・・それも通常の三倍の駒で転生出来ない私って一体・・・。

 

 でも私は・・・納得ができないでいた。

 

「いいことだと思う。でも・・・私は騎士だ。なんか納得できない。」

 

 騎士としての性分なのか・・・このまま流されるようにしていくのが我慢ならならなかったのだ。

 

 もちろん・・・あのお二人の事は好いている。

 

 必死でアピールしてくれるのもそうだ。

 

 私なんかにもったいないくらいに素晴らしいと思う。

 

 それに惹かれているものわかる。

 

 でも・・・それだけじゃ足りない。

 

 この話を承諾するには・・・。

 

―――お前も意外と頑固だな。

 

「人生の中の重大な決断になると思うんだ。だからこそ・・・仕えるだけの何かを見出したい。変だと思うだろうけど・・・。」

 

――――でも、俺はお前さんと長い付き合いになったらそれはそれで嬉しいぜ?

 

「そうかな?」

 

――――お前さんの他の幼馴染共もそうだろう。あいつらも永い時を生きる。

 

「そうだよね。だからこそ・・・悩ませて欲しい。」

 

 私はじっくりと考えさせもらう。

 

 後悔が無いように。

 

―――――だが、何となくだがサイガは選ぶと思うぜ?

 

 だが、エイガは何となく予感をしているようだ。

 

―――お前さんが近いうちに絶対にその探している答えを見つけるとな。そうなると俺が管理している狼竜の鎧も本来の機能を発揮できるというわけだ。俺としては其れが楽しみでしかたない。いや・・・最近出番が無くて困っていたくらいだし。

 

 私が、その答えにたどりつくと。

 

―――――予感してんだ。あの時あの魔王のお嬢さんとサイガが出会ったのは運命だったんじゃないかって。

 

「運命・・・。」

 

 確かにあの時私はセラさんを助けた。危機に陥った彼女を助けるのは守りし者として当然だと思っただけなのに・・・。

 

 でも、それが今こういう形で繋がっている。

 

 確かに運命めいたものを感じる。

 

―――――頑張れ・・・。お前さんの迷いが解けた時、俺はお前さんの力を全力で受け止める。そのために俺はお前に付いているのだからな。俺に、面白い世界をみせてくれ。

 

 そうだった。

 

 エイガは私のために魔道輪になった。

 

 狼竜の鎧の管理、この鎧はただの鎧じゃない。私のために作られた竜の騎士のための鎧。

 

 ソウルメタルという金属による奇跡と可能性を竜の紋章の力のために使われている。

 

 実際、父上は牙狼の鎧にて様々な人の心や力を借り、鎧を変化させて戦ったらしい。

 

 いや・・・変化というよりあれは奇跡だ。その力はホラーの祖、メシアを単独で倒すという誰もなしえなかった偉業を成したほど。

 

 理論的に、それと同じような現象が竜の騎士の力で、鎧に起きるというものだ。

 

 オリハルコンと呼ばれる異世界の超金属も取り込んだソウルメタルという金属の奇跡によって。

 

―――――――ポルムとやらにも相談済みだ。あいつは面白い物を持っていたぞ。そのための改良案も提出済み。鎧も、あれもすでに改良すみだ。

 

 そう言えば、今回の黒幕ってポルムでもあったよね。徐々に皆に広げて行ったのはイッセ―達だけど、結果的に元締めはポルムだ。

 

 どんな結果になっても、このまま何もお咎め無しというのも癪だよね。

 

 ・・・よし。ここまで巻き込んでもらったんだから、あれをお願いしようか。

 

 こうなったら引きずり込んでやる。

 

「こっちからも二人に聞かないと。見極めるためにはこっちからも問うよ。」

 

――――へえ・・・何をだい?

 

 僕の中で引っ掛かっていたこと。

 

「あなた達は・・・この世界をどうしたいのかって。」

 

―――――・・・・・・そりゃ・・・お前さん。またすごい質問を。

 

 エイガは呆れているかもしれないが私は本気だ。

 

「当然の質問だよ。2人ともそれぞれの勢力のトップの一人。そして・・・私は平和を望んでいる。だからこそ・・・。」

 

 勇者だった父さんと母さんの遺志。

 

 父様と母様からの守りし者としての意思。

 

 二組の両親から受け継いだ心は私にとって何よりもかけがえのないものだから。

 

「まあ・・・少々面倒臭いことになっているけどね。」

 

―――――面倒臭いで済むか?

 

――――まあ・・・違うものだな。

 

 そこにもう一体、私の相棒がくる。

 

「・・・来たな裏切り者。」

 

「うっ・・・そこを言われると・・・。」

 

 轟竜はすっかりセラさんの所のスワンさんと仲が良くやっている様子だ。

 

「冗談だよ。でも・・・安心して。悪い話には絶対にしないから。」

 

 人々を守る。それが守りし者としての私の使命。

 

「すまないな。」

 

「いや、責任を取るのは大切だし・・・それに・・・。」

 

 私自身・・・あの二人に惹かれている。

 

 天真爛漫なセラさん。

 

 引っ込み思案気味だけど、清楚なツクヨミさん。

 

 初めは振り回されたけど、あの二人ともっと一緒にいたいと思うようになっていた。

 

「・・・はあ・・・どうなのかな?」

 

 魔戒騎士として、私はもうすぐ大きな決断を強いられようとしていた。

 

 そして、いよいよ三勢力会談が始まる。

 

 開始前に色々な事件が起き過ぎだと思うけど。

 

 その処理でこっちはあちこち行って正直疲れたよ。

 

 見回り終えて帰ってきたら二天龍と翔一さん、アザゼルさんにサーゼクスさん、ダンテさんに父様を加え、父親とはどういう物かという真剣な議論中。もちろん酒を飲みながら盛大にぶっちゃけていた。

 

 母親達は家の中にいる女子連中を巻き込んで・・・なんでマ○オパーティーでゲーム大会をやっているのですか!?

 

 グレイフィアさんとセラさんが昔のライバル関係を再燃させて燃え上がってましたし。

 

 ベノさんは手足が無いのに、尻尾で達人的な技を見せてきた。

 

 何故か・・・母上が一番になっていたし、頭が痛かった。

 

 その横で・・・イッセ―とヴァ―リって方が天道さんやイッセ―の幼馴染連中としみじみと色々と語り合っていたのが印象的だった。

 

 その内容は目の前のカオスな光景と運ばれてきたガメラという謎生物についてだけど!!

 

 プラズマ火球を吐き、ジェット噴射で空を飛ぶ亀って初めてだ。

 

 しかも小猫ちゃんの昔馴染みの友達らしい。

 

 彼は瀕死の重傷を負っていたが、皆の回復魔法などの甲斐も会って峠は超えた。

 

 それを聞いて小猫ちゃんが泣きながら喜んでいる。

 

 そして、事情を知ったリアス部長は再び卒倒したのは仕方のない事だと思う。

 

 流石に守護神の巫女だったなんて・・・ねえ。

 




異世界よりの訪問者達。

 平成三部シリーズからの参戦です。

 今後邪竜としてギャオスが登場することは確定しました。


 そして・・・リアスの明日はどっちだ?そう心配させていまったオチです。

 今回の投稿はここまでです。

 次でようやく会談開始です。・・・書いていて思うのは一体この街はどうなっているのか?

 作者自身も戸惑う事態になっています。

 ではまた会いましょう!!


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三勢力会談と神の後継

 ここであるキャラがこの街をおとれていることが判明します。

 さあ・・・やっと三勢力会談の始まりです。

 最初から皆・・・グダグダですが。


SIDE 渡

 

「僕に話したい事がある?」

 

「・・・うん。」

 

 三勢力会談開催の日。

 

 僕はオ―フィスちゃんに呼びとめられていた。

 

「我・・・渡に打ち明けたい事、そして、プレゼントがある。」

 

 打ち明けたい事?

 

「君が何者であるかってこと?」

 

 その言葉に彼女は頷く。

 

 強大な力を持つ彼女の正体。

 

 それを話したいと言ってきたのだ。

 

「三勢力会談。この場で我・・・名乗らないといけないから。」

 

「・・・そうか。」

 

 オ―フィスちゃんは相当な存在だというのはわかっている。

 

 なら・・・僕は。

 

「楽しみにしているよ。そのプレゼントも。」

 

「・・・うっ・・・うん///。」

 

 その言葉に何故か顔を紅くしてもじもじするオ―フィスちゃん。

 

「我を受け入れてくれるなら、渡に必ずプレゼント渡す。我の最大の贈り物。」

 

 相当勇気を振り絞っているのだろう。

 

「待っている。」

 

 オ―フィスちゃんは姿を消す。

 

 いよいよだ。さて・・・僕はその正体を聞いて、どう答えるのだろうか。

 

 全く分からない。

 

 でも・・・これでまた彼女の一面を知ることになる。

 

 それだけは確かだった。

 

 

 

SIDE ???

 

 久しぶりにこの街を訪れた。

 

「・・・イリナちゃん。向うでも元気にしているかな?」

 

 この街は俺のこの世界で出来た初めての友達の出身の街。この街で俺は彼女と友達になった。

 

 この世界の裏では様々な勢力が戦いを繰り広げている。

 

 昔だが、恐らくその勢力の争いに巻き込まれたであろう少年を助けたこともある。

 

「・・・さて。この街で何が起こる?」

 

 あれからどれだけの時がたったのかもう分からない。

 

 でも、この街を俺が訪れたのは気まぐれでも無ければ、偶然でもない。

 

 アンデットとしての本能がこの街に俺の足を向けたのだ。

 

 それはつまり・・・。

 

「この街でバトルファイトが行われようとしているのか?」

 

 と言う事だ。

 

「・・・統制者。お前は俺が倒す。始を・・・俺も呪縛から解き放つために。」

 

 それは同時にチャンスでもあった。

 

 永き時を経て、俺の戦いに決着をつける事が出来る。

 

 戦闘本能の導きに従い俺は・・・歩いていく。その視線の先には学校があった。

 

 

 SIDE イッセ―

 

 会談が行われる部屋には神の不在を知るメンツが勢ぞろいしていた。

 

 グレゴリからはアザセルさん、そこにハルトが一緒にいる。

 

 天界からはミカエルさんだけだ。他の連れの方は後で来るそうだ。

 

 悪魔からはサーゼクス様にダンテ様、そしてレヴァイアタン様。そこにグレモリ―眷属とシトリー眷属に各眷属達がキャスパーを除いた全員。

 

 そこに日本神話勢力に属する五人に天道師匠、ファンガイアの二人の王と魔戒騎士のお二人が仲介役。

 

 なぜか、俺の幼馴染連中と関係者がオ―ル参戦というのにはな。

 

 そんなメンバーで三勢力会談がいよいよ始まった・・・のはいいが、初めに言っておこう。

 

 皆がもうくたくたになっていた。俺達全員疲労困憊だぜ。

 

「当たり前だろうが!!二天龍の大喧嘩に、ガメラとやらの存在の来訪、それにレギオンとかという奴まで現れて、日本神話の連中が大暴れ・・・他にも色々と起こりやがったし、その処理しながら会談の準備なんて流石に疲れたわ!!この街は一体どうなっている!!?トラブルとツッコミ何処が多すぎて、スル―すらしきれねえ!!」

 

 アザセルさんの悲鳴はもっともだ。

 

「刺激的で素敵だったぜ。」

 

 ダンテ様だけは違います。むしろ艶々しているのは何故!?

 

「人生刺激があってこそだ。」

 

「同意する。退屈しなかった。」

 

 ヴァ―リよ。頼むからそこでダンテ様と意気投合しないで!!

 

 あいつも一緒に戦ったけど、すごく楽しそうだったぞ!!

 

「その刺激がしつこい上に強すぎてこっちはう・ん・ざ・り・だ。」

 

 アザゼルさん・・・本当に疲れていますね。

 

「・・・この街・・・本当に私達の領地として問題ないのか?本気で私は実家と話しあっている。ここまで危険な領地を私達は管理しきれるのかと。」

 

 サーゼクス様まで頭を抱えている。

 

「そんな街での三勢力会談・・・なるほど、今更ですけど、正気の沙汰とは思えなくなってきました。この街に住む彼らはまさに猛者です。良い記念になるのは間違いないですね。」

 

 ミカエルさんまでお疲れの様で。いや・・・どうしてこの街にいるだけで猛者なんですか!?

 

「・・・はあ・・・色々あり過ぎて退屈はしなかった。」

 

 ごめんなさい、こちらの相棒達がやらかしたせいですよね?それで次の日はホラー大量発生という事態に起きたし、その次の日は夏の魔化魍・・・バケネコとカッパが出現して、大増殖しながら山から次々と街にやってくるという大騒ぎ。

 

 そして次の日は・・・なぜか季節外れの蝗の大量発生と思いきや、またレギオンという連中で、八千体が街のあちこちに散ってその駆除などなど。

 

 本当に災いという名の祭りだった。いや・・・みなさん偉い三勢力会談を歓迎してくれれて嬉しい・・・訳ないだろうが!!

 

 もうへとへとだ!!

 

『面目ない!!』

 

 そのおかげかデフォルメした二天龍が揃って土下座する光景が見れました。

 

 そして、もう一つ気になる事があった。

 

 部屋に入ってきたミカエルさんが妙に緊張していたのだ。

 

 その視線は何故か、キリエさんに向けられているけどどうしたの?

 

「・・・あっ・・・失礼します。」

 

 会談の開始前に、フード付きの白いローブを纏った二人の女の子が入ってくる。

 

 顔は見えないけど、どうやらミカエルさんのお付きの二人の様です。

 

 でも・・・天使とは違う何かを感じる。

 

「お待たせ。覚悟はしておいた方がいいぜ。」

 

「・・・はい。ゴク・・・。」

 

 その報告書を受け取り、目にするミカエルさん。

 

「・・・・・・・!!!」

 

 そして、その目が大きく見開かれる。

 

「やはり・・・そうでしたか。」

 

 その内容は見えない。でもミカエルさんの手が大げさなくらいに震えている。

 

「ほう・・・とうとう知っちまったか。」

 

 だが、驚くミカエルさんを見てアザゼルがため息をつく。

 

「・・・・・・知ってしましたね?」

 

「偶然だがな。まあ、安心しろ昔馴染みの縁だ、手出しは一切していない。」

 

「その縁に今ほど感謝したことはないです。」

 

「でも・・・流石にあれは驚いたぞ。何しろ持っているのは二つとも俺が神滅具と認定したとんでもない神器だ。名前は聖域守護の十字盾(クルス ザ サンクチュアリ)と神涙の祝福(ティアーズ プレス)、と名付けさせてもらったぜ。特に盾なんかは上位神滅具なのは疑いようがねえ。あれ・・・防げない物はねえぞ。冗談抜きで。」

 

「・・・そうですか。あれは今まで出た事が無い神滅具でしたね?」

 

「ああ・・・。それを二つ持って生まれた時点でもう運命的だぜ。この場にいる事も含めてな。」

 

 アザゼルさんとミカエルさんは揃ってキリエさんを見る。

 

「?」

 

「・・・・えっ?」

 

 戸惑うキリエさんに対して、アーシアがなぜかびっくりしている。

 

「二人とも、こちらの身内には心を読める子がいるのを忘れないでくれ。しかし、あの二人の心まで読むレベルになっているのか。アーシアちゃんは。」

 

 サーゼクス様はそれを見て苦笑する。

 

『・・・・・・。』

 

 固まるお二人。

 

「その・・・頑張ってください。」

 

 何を知ったというのだアーシアよ!!どうしてミカエルさんを応援しているの?

 

「・・・ありがとうございます。この会談後にでも私は名乗るつもりです。こうなったら早い方がいい。」

 

「開き直りやがったな・・・まあ、それでいいじゃねえの?だが天界が荒れるぞ。あれはなあ・・・。スキャンダルもいいところだ。」

 

「ふっ・・・。さて、みんな準備はいいか?」

 

 天道師匠がその場を仕切る。

 

 どうも、三勢力のトップとはそれぞれ知り合いらしい。それだけでなく天照さんとも知り合いらしいし・・・。

 

「あなたの師匠・・・何者?」

 

 部長の疑問ももっともです。でも部長は一味違ってきたみたいだ。

 

「いえ、もう認識を改めるわ。・・・・・・さすがあなたの師匠ね。他の勢力とのコネとかもあったら是非活用したいわ。」

 

 部長も分かってきましたね。

 

「それが天の道を行く男だと、ようやく認める事が出来たから。」

 

 部長も分かってきましたよ。

 

 その上で会談が始まる。

 

 

 

 神の不在。それでも、世界は回っている。

 

 それが今の現実だった。

 

 それが、三勢力とも共通した認識だったのだ。

 

「だが、そこに神の後継となる存在が現れた。」

 

「それがアギト。そうだよな、赤龍帝・・・兵藤一誠?」

 

 そこで俺に話が振られる。

 

「なあ・・・総司。いい加減教えてくれないか?俺達三勢力は揃ってこいつを神の後継として推す。それはもう一致しているんだ。」

 

『・・・へっ?イッセ―が神の後継!?』

 

「・・・天界からも推薦されるなんて初耳ですよ!?」

 

 部長の流石に驚いている。

 

「お前・・・最初からこいつが神の後継たる器だと知っていて鍛えていただろ?」

 

 アザゼルの指摘に他の方々も頷く。

 

「私も一目会いましたけど、彼ほどの男はそうはいません。今までの世界のやり方を変え、三勢力が和解して暮らせる世界にするには・・・彼の他おいていないと。これは私以外の他の熾天使達も全員一致の意見です。」

 

 そして、ミカエルさんは改めていう。

 

「私達天界は兵藤一誠を神の後継者として指名します。悪魔、堕天使双方の方々の信任もえる方はそうはいません。」

 

『・・・・・・・。』

 

 えっと・・・、神として推すとは聞いていた。

 

 でも、早速指名されるなんて思いもしなかった。

 

「おいおい、それは気が早すぎるぞ。」

 

 でも、それに対して待ったをかけてくれたのは他でもない師匠だった。

 

「まだそれは早い。神の後継となるには賛成だが、まだこいつば未熟だ。よくも悪くもまだ十七年しか生きていない。」

 

「そう・・・でしたね。」

 

 ミカエルさんも少し肩を落とす。

 

「正直、神が残したシステムを我ら熾天使が協力して行っているのですが、困難を極めていまして。」

 

 神のいない世界では奇跡や祝福の力も弱まっている。

 

 それ故に、アーシアとゼノヴィア、そして良太郎も異端扱いされた。不安定なシステムに影響が及ぼすのを避けるためにだ。

 

 その点に関してはすでにミカエルさんから謝罪を受けている。

 

 だが、相当神のシステムに苦戦しているようだ。

 

「すでに彼は神のシステムに剣を通じて介入できています。出来れば手伝っていただけるとありがたい。」

 

「・・・その点に関しては安心しろ。」

 

 困っているミカエルさんに対して、師匠は不敵な笑みを浮かべていう。

 

「俺の弟子よりもその点に関して遥かに秀でた奴を紹介する。神のシステムなら全然問題ないと言っているからな。」

 

『!?』

 

 師匠の爆弾発言に皆・・・固まる。

 

「だっ・・・誰ですか!?そんなすごい方がいると・・・。」

 

「君の事だから相当な大物なのだろうな。」

 

「・・・ぜひ紹介してほしいくらいだぜ。」

 

「安心しろ。三勢力会談もいい機会だと、先方も接触したいと言ってきている。その代わり直接会う人物と時間、場所はこちらが指定させてもらう。会う人はミカエル、アザゼル、サーゼクス、ダンテ、あと天照、この五人だけとしたい。何しろこれは世界の根幹を破壊しかねない存在だ。そこに知っている存在も集結させる予定だ。お前達の問いもそこでわかるはずだ。」

 

 師匠の言葉に皆が息をのむ。

 

 それはそうだろう。師匠がそう言うのだから、よほどの方ということになる。

 

「・・・・・・・いや、アーシアちゃん。君も来てほしい。君とキリエさんはもうその資格をえている。」

 

 そして、そこにキリエさんとアーシアまで指名された!?

 

「えっ?どうして私が?」

 

 キリエさんは戸惑うが、アーシアは落ちついている。

 

「流石です。」

 

 指名された事に納得している様子だったのだ。

 

「進化の度合いでは君はイッセ―すらしのぐ。この世界で最も神に近いアギトはアーシアだからな。変身できないのが不思議でなくらいだ。だから、彼女だけが俺が誰を紹介するのか知っている。それにおそらくだが、彼女は単独で神のシステムに介入をし始めている。俺は紹介するあいつのサブとしてアーシアを推薦する。」

 

『!!!?』

 

 アーシアが最も進化したアギト!?そして、神のシステムを扱う人ってアーシアが知っている人だというのか?

 

 アーシアが最近、すごくなってきたと思うけど、そこまでに。

 

「私・・・本当に規格外ばかりを眷属にしたのね。」

 

 部長の嘆きは分かる。アーシア、お前大出世だな。

 

「・・・サーゼクス。お前の妹さんの出会いの才能は異常を通り越して、すでに奇跡だ。ここまで怪物連中達と出会い、よく眷属にできたな。」

 

「私も脱帽してばかりだよ。」

 

 アザゼルさんの指摘も間違っていない。

 

「私・・・これだけのメンツを集めて何を成せというのよ!?」

 

 部長の混乱はまだ続くようで。

 

「アーシア?その人って誰なの?」

 

 皆の質問が、師匠が神のシステムの制御のために紹介する方が誰かとなるが、アーシアは申し訳なさそうに首を横に振る。

 

「・・・ごめんなさい。まだ教えることはできません。本人達が自力で気付くことが条件だと言っているので。」

 

 でも本人は教える事が出来ないか。一体誰だ?

 

「・・・なんか心当たりあるぞ。」

 

「・・・うん。」

 

「私も・・・当たって欲しくないと思っていた予感が。はあ・・・多分この予感は当たっているのよね?私もいい加減学んできたわ。」

 

 その言葉にネロと渡、部長までもが反応を示す。

 

 その様子を見て師匠は珍しく苦笑している。

 

「・・・流石だな。特にリアスは良い目をしている。まあ、お前達はまた次の機会としよう。さて・・・アザゼル、この会談の肝心な提案をお前からして欲しい。お前からした方が一番だろ?」

 

「おうおう、分かっているね。まあ、グレゴリが三勢力の中で一番信用ないはずなのに、いつの間にか和気あいあいとやっちまっているから締まらねえ部分もあるが・・・。」

 

 アザゼルさんは改めて提案をする。

 

「和解しようぜ?このとんでもない街で共に語らい、苦労を共にしてきた仲でさ。」

 

 その提案にサーゼクス様もミカエル様も頷く。

 

「後安心しな。戦争を起こさないかと懸念していたヴァ―リ達だが、実は独立する話になっている。アギトであることにはびっくりしているが、こいつらはもう・・・グレゴリじゃねえ。身内に変わりはないがな。」

 

 その発言に皆は驚く。

 

「そう言う事だ。そろそろ独り立ちをしないと。そのための土台も整った。」

 

 それと共にハドラ―さんがその場に現れる。

 

「それとあれもだ。あいつを倒すために俺達は動き出すぞ。」

 

「ああ・・・分かっているぜ。」

 

 ハドラ―さんとアザゼルさんが何やら分からない単語を話しあっている。

 

「和平の邪魔になると思ってな。いい機会だし、独立させてもらった。白龍皇でアギトのヴァ―リと俺達の存在で皆が警戒しているのもある。それに・・・、そろそろ俺達も動くべきだ。」

 

「確かに・・・グレゴリが白龍皇、悪魔に赤龍帝、しかも揃ってアギトというのを知って、天界は大慌てをしたものです。こっちも切り札である彼らがいるとはいえ。」

 

「戦力の増強は戦争のためじゃねえよ。・・・あいつらと戦うためだ。もうイッセ―達は何度もその連中と戦い、巧もその組織を追って動いていた。」

 

 そう言えば巧がオルフェノクとして覚醒するきっかけとなったあの事件。

 

 その組織を追う事になったと。

 

「その名な・・・。」

 

「渦の旅団(カオス・ブリゲート)。」

 

 といきなり現れたオ―フィスちゃんが告げる。

 

「・・・そう言えば、お前さんがそのボス・・・だったな。」

 

『!?』

 

 その言葉に皆が固まる。

 

 でも、オ―フィスちゃんはそれに対して首を横に振って否定する。

 

「我・・・担がれただけ。もうあの組織はあいつが仕切っている。異世界からの悪魔・・・いや、魔神と言えるあいつが。」

 

 今その組織はオ―フィスちゃんの支配下ではないらしい。

 

「そいつ・・・時間、そして空間を自在に操る。名はホムラ。」

 

『!?』

 

 その名に・・・あれ?ミカエルさんの連れの人が驚いている。

 

 その怪物の名前・・・ホムラか。なんか人の名前のような?

 

「おいおい・・・お前さんに匹敵する上に、ヤバい力を持っているだ?冗談にも程があるぜ?お前さんだって神なのに。」

 

 はい?オ―フィスちゃんが神!?

 

 なんかすごい力を秘めているのは分かっていたけど。

 

「・・・アザゼル。」

 

 でも、その発言をしたアザゼルにオ―フィスちゃんが凄まじい怒りで睨みつけている。

 

「・・・・滅されたい?」

 

「あっ・・・ごっ、ごめんなさい!?」

 

「君ねえ。彼女は必死でそれを隠していたというのに。」

 

「はあ・・・やってくれるぜ。」

 

 サーゼクス様とダンテ様は知っていた様子だけど?

 

「・・・・・・・。」

 

 まさかの暴露。

 

 俺達の視線はその契約者である渡に向けられる。

 

「やっぱりそうだったのね。無限の龍神(ウロポロス・ドラゴン)。聞かないでおいたけど覚悟はしていたわ。はははは!もうこの程度なら覚悟していたらなんともないわ!!」

 

 部長はすでに気づいていた様子。

 

 しかも、すでに覚悟完了済み。

 

――――相棒。お前が鈍感なだけだ。

 

―――――そう言う事。みんなが驚いていたのはここにあったのよ。

 

「無限の龍神・・・はあ。」

 

 渡は・・・驚いていない。ただ、溜息をついただけだった。

 

「わっ・・・渡・・・その違うの。その・・・我は隠していたのは・・・その。」

 

 慌てるオ―フィス。表情はあまり変わらないけど、その分仕草でおもっきり動揺している。もう・・・無駄に可愛いくらいに。

 

「・・・なあ、本当にあのオ―フィスなのか?喜怒哀楽がはっきりと。すごく可愛いぞ。俺はそっちの気は全くないのに。」

 

「私も・・・信じられません。そして、あなたがそのオ―フィスの契約者、いえ、彼女が選んだ男ということですね。どうして世界を単独で滅しかねない連中がこの駒王町に集まっているのやら。」

 

 アザゼルさんとミカエルさんがため息をつく。

 

 緊迫していたはずの空気があっという間に弛緩してしまう。

 

「う~む。会社のマスコットに是非。」

 

 大牙さん・・・なぜ写真を。しかもまた鼻血を!!

 

 そんな光景を見て、渡は溜息をつく。そして、その頭をなでてやる。

 

「渡?」

 

「とにかく落ちつこうよ。色々とみんながヤバい。」

 

「?」

 

 オ―フィスちゃんの最大の罪は己自身の可愛さを全く自覚していないということか?

 

「・・・・・・あのね。僕は。」

 

 渡がそこで何かを言おうとした時だった。

 

 

 

 

 その瞬間・・・すべての時が止まった。

 

 

 

 だが、それを感覚として分かっている上で俺達は動いていた。

 

 他のメンツも次々と動き出している。

 

「なんだ今のは?」

 

「・・・ッ?外から襲撃?」

 

 アーシアの言葉で皆は間隔を研ぎ澄ませると・・・校舎が微妙に揺れていた。

 

 その上で俺達は気付く。

 

 ギャスパーの時間静止の力が働いたと。

 

「どうやらテロ連中のお出ましだぜ?しかも魔法使いばかりだ。しかしやられた・・・キャスパーを利用されたか。おかげで待機させていた俺達の軍勢が一斉に止まってしまった。」

 

「ええ・・・。でも・・・ここにいる皆さんは止まらないのですね。」

 

 ミカエルさんはため息をついている。

 

「もう、この程度で私は嘆かないわ。こんな子たちだからギャスパーも安心していたのだし。」

 

 部長の言うとおりだ。最近ではギャスパーは少しずつだけど明るくなってきた。

 

 日の下で歩くようにもなっていたのだ。そして、神器の使い方も徐々にだけどモノにしてきたという進歩っぷり。

 

 その理由として俺達はそう簡単に止められないということなんだけど。

 

「さすがグレモリ―眷属。和平を結んで良かった。こんな方々と戦いたくないです。」

 

 和平万歳なのはこっちも同じです。はやく平和な世界をプリーズといいたいのに!!

 

 そういえば、ミカエルさんのお付きの人達二人も止まっていないぞ。

 

「恐ろしくもとんでもない連中ばかりだ。だが・・・ぐずぐずしていたら出力が上がり続けて誰かが止まってしまうか、その前にギャスパーの方が限界を・・・。」

 

「・・・もう一度説明してくれないか?俺の弟が利用された件について?」

 

 アザゼルさんの言葉に大牙さんがゆっくりと問い直す。

 

「弟ッて、まさかあの子、ファンガイアの王子なのかい?ああ。ありゃ・・・何かの手段で無理やり禁手化させたな。大方倍化ができる神器と譲渡が出来る神器を使い。トラウマを蘇らせるなどして暴走させて・・・ヒッ!?」

 

 アザゼルさんの神器マニアと言うべき説明をしてくれたけど・・・その説明があまりにもヤバかった。

 

「・・・・・・・。」

 

 何しろ大牙さんから凄まじい怒気と共に黒い蛇みたいなオーラが。

 

「・・・・・・・・・・・・へえ。」

 

 大牙さんだけじゃない。わっ・・・渡まで!?

 

「はあ・・・そっちも大変だね。」

 

『・・・・・・・。』

 

 怒りを抑えてもらいながら俺達はギャスパー救出作戦を始めようとしていた。

 

 悪魔の駒のキャスリングを利用した転送を利用するというものだ。

 

 行くのは・・・部長と俺だ。

 

 行けるのは二人だけという事で、眷属内の最大戦力を使う事にしたのだ。

 

 俺って・・・その最大戦力らしいです。

 

「行ったれや。おもっきり暴れて来い。」

 

「結界の補強は私が受け持ちます。だから安心を!!」

 

 ネロの激励と、キリエさんの頼もしい言葉に俺は安心する。

 

 そっちは大丈夫だな。信じているぜ!!

 

 敵陣中央へ突入・・・開始です!!

 




 いよいよ四章もクライマックス。

 ここから怒涛の展開が待っています。

 連続投稿・・・まだ続きます。


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さらわれた龍神と怒りのキバです。

 ここでおそらく皆が予想もしなかった展開が起こります。

 そして・・・ある方が本気でブチ切れて大暴れ開始です。


SIDE 渡

 

 イッセ―君達が転送すると同時だった。

 

 魔法陣の展開と共に一人の女性が現れる。

 

「あれは・・・レヴィアタンの魔方陣!?やはり今回の黒幕は・・・。」

 

 サーゼクス様の言葉と共にその魔法陣から何かがでてくる。

 

「・・・ごきげんよう。みなさま。」

 

 現れたのは胸元が大きく開き、太ももにもスリットが入ったドレスを着た女性。

 

 この人は・・・悪魔なのか?

 

「初めましての方々も多いようですね。私の名前はカテレア・レヴァイアタン。先代レヴァイアタンの血を引く者です。」

 

 先代?

 

「・・・旧魔王派は渦の旅団(カオス・ブリゲ―ド)に協力することを決めましたわ。」

 

「かっ・・・カテレアちゃん!?私は!!」

 

 それを聞いたセラフォル―様が悲痛な声をあげる。

 

「私から魔王の座を奪っておいてぬけぬけと。安心して、あなたは私が殺すから。そして、私達が魔王になって、新しい世界を作ります。・・・・そこの無限の龍神の力を使ってね!!」

 

 カテレアの言葉と共にオ―フィスちゃんとセラフォル―様の体が何かに拘束される。

 

 それは・・・黒い帯みたいなもの。それに拘束されるとともにカテレアの傍にまで転送される。セラフォル―様はそのままだ。

 

「・・・動けない。」

 

「おほほほほ・・・当然です。ホムラ様より頂いた拘束具です。あなたにはまだいてもらなわないと困りますの。無限の蛇の力がこれからどんどん必要になるのですから。人間のくせに神の力を振るうアギトを殲滅するには。」

 

 彼女は言う。三勢力の和平とは全く違う結論に至り、彼らはこの世界を滅ぼそうとしていると。

 

「我・・・もうお前達に利用されるのは嫌。」

 

 そんなことに彼女は嫌がっている

 

「あなたの意見など聞いていない。」

 

「我・・・みんなと一緒にいたいだけ。静寂とは違う宝・・・この街で見つけた。それを壊すなんて絶対に・・・嫌。」

 

 その言葉を聞いて僕は声を荒げる。

 

「・・・いい加減にしろ。」

 

 僕はいい加減怒りが限界だった。

 

 ただでさえ、ギャスパーが酷い目にあっている。その上でさらにオ―フィスちゃんまで。

 

「オ―フィスちゃんはお前の道具なのか?」

 

 僕はいつの間にか変身していた。

 

 黄金のキバに。

 

「噂に名高い黄金のキバ。へえ・・・でも、真なる魔王である私と戦えるのかしら?」

 

 その言葉と共にカテレアは懐から二つの物を取り出す。

 

 一つは黒い蛇みたいな物。

 

 もう一つは・・・スイッチみたいな物だった。

 

 それを見て、前の事件で弦太郎とイリナが使っていたアストロスイッチを想い浮かべたであろう皆。

 

 それを押すとともにカテレアの身体が黒い靄に覆われ、そこに星座が浮かび上がる。

 

 その靄の中から現れたのは頭にサソリをかぶせ、両腕にサソリの尾針の様な装甲を持った怪人。

 

「ふははははははは!!我らの新たな力・・・ゾティア―ツの力を見るが良い。」

 

 それはおそらく蠍座。

 

 さそり座の怪人だった

 

 だが、その程度のことだ。

 

「僕の弟まで道具みたいに扱い、そしてオ―フィスちゃんまで・・・。」

 

 僕はザンバットソードを片手に歩きだす。

 

「渡・・・我・・・。」

 

 涙を零すオ―フィスちゃん。

 

「・・・無限の龍神が涙を?」

 

 それを見たカテレアも驚いている。

 

「ごめん・・・なさい。我、皆と違う存在。あまりに異質なのは・・・分かっていた。」

 

 泣いているオ―フィスちゃん。

 

 その事実を見て僕は・・・。

 

「いいんだ。」

 

「えっ?」

 

「君が龍神だなんて、そんな程度のことはどうでもいい。」

 

 そんな彼女の涙を止めるためにいう。

 

「君は君で変わらない。そして、今重要なのは、あいつが君を泣かせている。それだけだ!!」

 

「渡・・・。」

 

 オ―フィスちゃんは涙をさらにこぼす。

 

 その姿が・・・少し変わる。

 

 幼い少女だった姿が少しだけ成長したのだ。

 

「嬉しい・・・我・・・嬉しい。」

 

 十代前半の姿に。

 

「・・・噂に聞いていたけど、本当に無限の龍神が変化、いや進化を始めているというの?そんな・・・。」

 

「渡・・・渡!!」

 

 オ―フィスちゃんはじたばたともがきながら僕の名前を呼ぶ。

 

「・・・ふん。さっさと消えなさい。」

 

「やめろおおおおぉぉぉ!!」

 

 俺が剣を手に転送しようとするのを止めようとするが・・・。

 

「あなたには特別。」

 

 カテレアが黒い蛇の様な物を飲み込む。

 

 それと共にいきなり力が増大。

 

 そして、カテレアが巨大な氷の塊を放つが・・・。

 

「邪魔だ。」

 

渡はそれを無造作にザンバットソードを振るい、切り裂く。

 

「げっ!?私の一撃を・・・がばっ!?」

 

「うおおおおおぉぉぉぉぉ!!」

 

 そして、拳でカテレアを殴りとばし、オ―フィスちゃんの手足を拘束している輪を破壊しようとした時だった。

 

―――――しかたないねえ。

 

 その言葉とも、僕の身体を突然の炎が覆う。

 

「ぐっああっ!?」

 

「渡!?」

 

――――――彼女はバトルファイトでも邪魔な存在故に、手伝わせてもらう。

 

 そこに天空から雷撃がこっちの体を穿つ。

 

「ぐっ・・・。」

 

 他の皆も動こうとしたが、その行く手を突如現れた白いゴキブリみたいな連中が阻む。

 

「ぐあ!?」

 

 そして、白いカミキリ虫みたいな奴が僕の目の前に現れ、赤い刃の鎌を振り下ろし、僕の身体を切り裂いてふっ飛ばす。

 

「渡ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

 体を切り裂かれながら僕は見た。

 

 そして、涙をこぼし悲鳴を上げるオ―フィスちゃんの姿を。

 

「離せ・・・渡を・・・渡を!!」

 

「今のうちに・・・送ってしまえ。」

 

 白いカミキリムシみたいな奴がカテレアにつげる。

 

「ええ。感謝するわ。」

 

姿を消してしまった。

 

「おほほほほほほ・・・ホムラ様、存分につかってやってください、あなたは必要ないと言っていましたけど。無限の力は凄まじいものです。しかも、変化、いえ進化をしている彼女の力は想像ができない。さあ、彼女の力を使って私は新たな力を・・・。」

 

「あ・・・・・。」

 

 消えたオ―フィスちゃん。

 

 それと共にある光景が蘇ってくる。

 

 僕の胸の中で・・・死んでいくあの子の事を・・・。

 

 それを思い出し、まるでバイオリンの弦が切れるかのように僕の中の何かが切れ・・・

 

「あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 雄叫びをあげていた。

 

 

SIDE アザゼル。

 

「ここでまた君の邪魔がはいるか。」

 

 サーゼクスの奴が険しい顔をする。

 

「くくく・・・まあ、足止めなら定評があるのでね。」

 

 俺達も駈けつけようとしたが、それをいきなり現れた無数のゴキブリみたいな連中が邪魔をしてきたのだ。

 

「・・・井坂。」

 

 それは井坂と呼ばれた男。巧から報告があったが、彼は元人間。今はアンデットと呼ばれる不死身の化け物になっているらしい。

 

 その上、ふたつのガイアメモリを使う。

 

「今回は素晴らしい日になると思ってね。さあ・・・記念すべき日を三勢力の皆様にみせようじゃない・・・。」

 

 井坂がそこまで言いかけた時だった。

 

 渡の悲鳴。

 

 そして、それと共に渡が変身したのだ。

 

 黄金の体に紅の翼を持つ翼竜へと。

 

「・・・何・・・あれは?」

 

 あとでそれはファンガイアのハーフのみが変身できるもう一つの変身だと知った。

 

 その名はエンペラーバット。

 

「・・・ふん。ならこっちも相手をしてあげるわ。」

 

 しかも、尾がザンバットソードになっている。

 

「醜い奴・・・消えなさい。」

 

 放たれた無数の氷の刃が渡を貫いたと思った瞬間。

 

「がっ!?」

 

「速い・・・だと!?」

 

 突進で粉々に打ち砕きながらカテレアと白いカミキリムシみたいな奴を翼で斬り飛ばしていた。

 

「なっ・・・なんで?無限の力を得た私が、しかもホロスコープの力を得た私がこうもあっさり!?」

 

 あいつには分かんねえだろうな。

 

 今の渡の怒りは。

 

 あいつはオ―フィスを無限の龍神としてではなく、一人の女の子として見ていた。

 

 そして、それに応じてオ―フィスも成長していたのだ。ずっと変わらなかった存在である彼女が、女の子として一個の存在を進化し始めていた。

 

 その絆は・・・俺なんかが想像していたよりもずっと強い。

 

 この胸に突き刺さる。この光景は他人事じゃねえからな。

 

 四十年前の事・・・まさか今更胸を痛める日がくるとはねえ。

 

 まだまだ俺も青いぜ。

 

 斬り飛ばされたカテレアは体制を立て直し、必死に攻撃を仕掛けようとするが残像を伴う速度で次々とかわし、足で蹴り飛ばす。

 

「がぶっ!?」

 

 暴走体となった渡の眼から涙が流れている。

 

 あいつは・・・・その絆を引き裂いたのだ。

 

 無残にも。

 

「ぐっ・・・。」

 

 そして、カテレアに突っ込もうとする渡を・・・。

 

 上空から飛来した無数の影が阻む。その大きさは翼竜に変身した渡の奴よりも翼長だけでも三倍はある。

 

 それは・・・翼竜といえばいいのか?だが、あんな翼竜はみたことが・・・。

 

 まるで頭が自動車運転の初心者マークみたいな形になっている奴なんて初めて見る。

 

「ギャオス!!」

 

 だが、俺達の中で小猫ちゃんだけが知っていた。その存在を。

 

 ギャオスと呼ばれた存在は甲高い音と共に口から何かを放つ。

 

 光線みたいなそれが横切った瞬間、校舎の一部が結界ごと切り裂かれた。

 

 渡の奴はそれを浴び、切り裂かれはしなかったが、墜落する。

 

「超音波のメスです。まだ成体になっていないけど、あいつら・・・本当にこの世界を滅ぼすつもりなんだ。」

 

「カテレアちゃんもうやめて!!そんな事をしても・・・何も救えないのは貴方も分かっているでしょう!!」

 

 セラフォル―は拘束され動けない状態でも、必死で彼女を説得しようとしている。

 

「徹底抗戦なんかしても・・・あとに何が残るのって・・・あの時私は言ったよ!!みんな疲れ果て、どうしようもない苦しみと悲しみ、そして憎しみが募っていくばかりのあの戦いはもう無駄だって!!ちっちゃなプライドで・・・何が残るというの!!」

 

「・・・悪魔は悪魔たる故にだ。いい加減お前も死ね!!偽りのレヴァイアタン!!」

 

 セラフォル―の周りには無数のホラーが現れる。

 

「お前はこいつらに喰い尽くされるがお似合い。さあ・・・・。」

 

「私はただ・・・みんなが楽しく暮らせる世界が欲しかっただけなの!!それを守りたかったの!!」

 

 セラフォル―は叫ぶ。その気迫に皆が息をのむ。

 

「・・・つっ・・・。」

 

 その穢れ無き瞳に射ぬかれたカテレアが動きを止める。

 

「・・・止めろ。」

 

 そして彼女は叫ぶ。

 

「悪魔なのに・・・同じ・・・悪魔なのに・・・。」

 

 その瞳を怖がるように。

 

「その目でその曇りなき目で私を見るなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 彼女の絶叫と共にホラー達がセラフォル―を喰い殺そうとして・・・。

 

 二人の剣士がそれをすべて切り払った。

 

「・・・セラさんはやらせない。」

 

 それは冴島親子。

 

 その息子であるサイガがいう。

 

「・・・あなたは守りし者だった。」

 

 そして、セラフォル―に問う。

 

「その上で聞く。あなたはみんなの笑顔のため、みんなが楽しく暮らせる世界を作り、それを守る。その信念に偽りはないか?」

 

「・・・偽りどころじゃない。」

 

 セラフォル―は断言する。

 

「それが魔王になった理由だから。私は自分も楽しむし、みんなも幸せする。悪魔らしからぬ部分はあると思うけど、それが、私の魔王よ!!」

 

「そうか・・・。なら・・・。」

 

 それを聞いたサイガはセラフォルーの奴を見て言う。

 

「・・・なら、そんなあなたを私が守ります。あなたの騎士として。」

 

「あっ・・・。」

 

 満面の笑みで。

 

「・・・正式に私達日本神話も三勢力の和平に協力したいと思います。」

 

 そして、セラフォルーに駆け寄るアマテラスとツクヨミ。

 

「セラちゃん。・・・あなたの言葉で私達は決意できた。同志として・・・共に世界を盛り上げましょう!!」

 

「みんな・・・。」

 

 二人の神がセラフォル―の体にかけられた呪縛を必死で解きにかかる。

 

 その光景に彼女は涙を流す。

 

「・・・許せぬ。」

 

 隣ではいよいよ王様が動き出そうとしていた。

 

「何とか体制は整えたか。」

 

「そうですよ。せっかくのバトルファイトの開催をこの街で行おうとしていたのに、あっさりやられてたまりません。」

 

「今日は僕も大暴れさせてもらおうか。」

 

 そこにもう一人別の男まで現れる。

 

 白い体を持つそいつは・・・前の事件で井坂を助けに来た奴らしい。

 

 ダグバと呼ばれているやつらしい。

 

「さあて・・・誰が実験台になってくれるかな?僕のヤミヤミの力を!!」

 

 ダグバの周りで黒くドス黒い闇が発生する。

 

「ほう・・・だったら俺が相手にやってやる。」

 

 その闘志に呼応するようにヴァ―リが歩きだす。あいつ・・・同系統の臭いをかぎつけてやる気だしやがったな。

 

「はははは・・・なんとかなった。あいつはギャオスの餌になってもらうわ。そして、あなた達は私がじっくりと。」

 

 二十を超えるギャオスが渡を囲む様子を見たカテレアが笑う。

 

 その笑いに反して大牙は告げる。

 

「我が弟達を侮辱してくれて、いつまでも笑っていられると思うな。三下が!!」

 

「さっ・・・三下!?・・・お前まで私を侮辱して。」

 

「はははははははは!!いいねえ。あんたのその言葉、好きだぜ。」

 

 俺はあえて軽く大牙の方を叩いてやる。

 

「・・・カテレア、下る気はないのだな。」

 

 サーゼクスの奴は悲しげ、いや・・・それだけじゃない。怒りも込めて言っていやがる。

 

「ふん。これだけの戦力を前にして、まだいうの?あなたも好きね。」

 

「だから三下と言われるんだこのやろう。」

 

 だからこそ、俺はあえて挑発する。

 

「お前の理想はな!!あまりにも陳腐で醜すぎる!!そんな奴を三下と言わないでなんというんだ?」

 

「同感だ。お前のやろうとしていることはただ、逃げにすぎない。思い通りにならない世界を否定し、どうして隅に追いやられたか、その反省すらしていない!!」

 

「ぐっ・・・。」

 

 大牙、言ってくれるねえ。

 

「・・・なら、お前は俺達が直々にぼこぼこにしてくれる。」

 

「おう。一緒にやってやろうじゃねえか!!」

 

「ほう・・・だったら、かかってきなさい・・・超・新・星!!」

 

 その言葉と共にカテレアの手に輝く星の様な物が出現。

 

 それを体内に吸収するとともに、カテレアの姿がさらに変わる。

 

 下半身が巨大な蠍となったのだ。

 

「へえ・・・だったらこっちも切り札その一をだしますか。なあ、相棒。」

 

 俺の呼びかけに応えて現れたのは二体の俺の契約モンスター。

 

 緑の人に近い四肢と縦巻きの尻尾を持つカメレオン型のバイオクリ―ザ―。

 

 紅い人の四肢に吸盤の付いた手足。背中に巨大な十字手裏剣型の刃を背負うヤモリ型のゲルニュート。

 

 そして、もう一つ。

 

「頼むぜ、ファーニ二ル。」

 

 人工神器に封じた黄金の竜王の神器。

 

「君までミラーワールドのモンスターを契約していたのか?」

 

 それを見たサーゼクスの奴もゴルトフェニックスを召喚している。

 

「こいつらはステルス性が極めて高い。故に気付かなかった。だが、お前達まで来ていたか。」

 

 この二体は俺のお庭番みたいな奴らでな。付き合いも結構長い。

 

 やつらはゴルト氏を見て一斉にいう。

 

『久しぶりでござる。』

 

「・・・ごっ・・・ござる?」

 

 ゴルト氏が面食らうのは分かる。

 

 こいつらはグレゴリ幹部連中の影響を最大限に受けていやがる。何の因果か、忍者マニアになりやがって。

 

 まあ、おかげこいつらは強くなったからいいけど。

 

「・・・メダトロンと意気投合するのは間違いなしですね。私もなら変身しようか、バチス達!!」

 

 そして、ミカエルの傍に三体のミラーモンスターだと!?

 

「私もまた契約しているのですよ。三体のバチス達とね。彼らも止まっていなくて良かった。」

 

 あいつはそれぞれ、三体のハチ型のモンスターを率いていた。三体はレイピア、両腕のニードル、弓矢とそれぞれ武器をもっている。

 

『我ら・・・バチス三銃士!!』

 

 えっと、そっちは三銃士?

 

「へえへえ、上等じゃねえか。そろってトップを張る連中は皆ミラーモンスター持ちってか?」

 

「そう言う事だ。なあ・・・ケロちゃんズ?」

 

 ダンテの奴もどうやら契約モンスターを呼びだす。

 

 ケロちゃんって・・・蛙か?

 

 それは牛程の大きさの三体の犬。

 

 二体は前足が巨大なかぎづめになっており、頭が燃えている。背中の毛は高質化して金属の装甲板となり尾は蛇を模したボーガンになっている。

 

 最期の一体は黒い炎で全身を覆った奴で、背中から二本の刃、尻尾は鋭い槍のようになっている。

 

 ッてケロちゃんってケルベロスのことかい!?

 

「俺の猟犬はしびれるぜ?まだ魔人化と魔剣スパーダは使わないでおいてやる。」

 

 どうやら皆・・・やる気満々の様だ。

 

「ぐっ・・・結界の維持はどうするの?あなた達全員で動いたら、結界を維持するなんて。」

 

 カテレアはリサーチ不足のようだな。

 

「そんなの・・・私が引き受けます!!」

 

 その声がする方を見てカテレアは固まっていやがる。

 

「バッ・・・馬鹿な。まさかあなたが一人で結界を維持しているというの?魔王や熾天使達が協力して維持する様な規模の結界を!?」

 

「この程度・・・補助術式がある分むしろ楽です。」

 

 二天龍の攻撃を防ぎきった猛者ならまあ簡単だろうな。

 

 キリエ。まさに猛者だな。

 

「・・・彼女のおかげで皆が大暴れできる。行くぞ・・・。」

 

 部屋にいる連中が次々と変身する。

 

 俺も・・・バイオクリ―ザ―の力を得た仮面ライダーベルテへ。

 

 ミカエルの奴は黄色と黒の虎のような装甲に覆われ、頭がハチの様になった仮面ライダービーズ。

 

 そして、サーゼクスは・・・。

 

「・・・おっ・・・黄金の魔王。」

 

 最強のミラーモンスターの力を纏った姿・・・仮面ライダーオーディーンへと変身。

 

「・・・なあ、よくよく考えてみれば、お前さんのその名前、北欧神話に喧嘩売っているぞ。」

 

 あそこの主神と同じ名前だしな。

 

「・・・はっ・・・そんなの今更だぜ。なあ?」

 

 ダンテの奴は紅い装甲に黄色の毛皮みたいなパーツで身体を覆った姿――仮面ライダーヘルガに。

 

「ぐっ・・・だったらあのキリエって子を!!」

 

 キリエに向って多くの敵が向かおうとするが。

 

「行かせると思いましたか!?」

 

 結界の維持に全力を費やしているキリエをグレイフィアがインペラ―に変身してカバー。

 

「キリエはやらせねえ。」

 

 そこにネロが防衛に加わる。

 

――――アクセル。

 

「このメモリの力を使ってな!!」

 

 そして、あいつもまた変身をする。

 

 ガイアメモリを使った仮面ライダーアクセルへと。

 

「さあ・・・振り切るぜ。」

 

 ネロはそのままアクセルクイーンを手にしてキリエに向ってくる連中に踊りかかる

 

「ぐっ・・・だったらギャオス達の力で。」

 

「・・・貴様、私の弟を舐めすぎていないか?」

 

「えっ?げっ!?」

 

 大牙の言葉にカテレアが振り返ると・・・二十体のギャオス達が全滅していた。

 

「ぐるるるる・・・。」

 

「馬鹿な・・・。足止めどころか、すでに全滅だなんて。」

 

 その怒りはカテレアに向けられる。

 

「おーい。まだ追加はこないのか?」

 

 そして、グランドでは・・・魔術師達が蹂躙されていた。

 

 巧を初め、皆が大暴れしていたのだ。

 

 その結果・・・全滅し、次々と転送されてきても瞬殺という。

 

「さやかさん達に転送の大本を狙う様にいっています。時期に転送もできなくなるでしょう。」

 

「念のためにポルムも付いている。最悪なんとかなる。」

 

 ミカエルと俺はすでに手を打っている。

 

 キャスパー君もイッセ―達が助けてくれるだろうし。

 

―――――流石に風向きが悪そうだな。

 

 その言葉と共に、その場に変な存在が現れる。

 

 一言で言うならモノリス。

 

 黒い壁である。

 

――――ごきげんよう。私は統制者と呼ばれし者。渦の旅団の幹部みたいな立場にいると思ってくれればいい。

 

統制者。その名を聞いた俺達は驚きを隠せない。

 

「太古のバトルファイトを引き起こした邪神が今更何の用だ。」

 

 古文書に残されていた存在。あまりの身勝手さに昔の神により封印された存在。

 

―――何、カテレア、お前に増援を送る。

 

 その言葉と共に天より巨大なギャオスが現れる。

 

「・・・成体のギャオス。」

 

 そこにさらに・・・。

 

―――――行け。お前をアンデットの細胞で再生させた意味を見せろ。

 

 モノリスの身体から、黒い鎧を纏った魔戒騎士が現れたのだ。

 

「・・・御意。」

 

「ひひひひひ・・・なら俺も参上しましょうかね!!」

 

 そこに、もう一人。モノリスの身体から現れたのは・・・一人の人間だった。

 

「フリードだと?」

 

 それは前の事件で倒されたはずのフリードだった。

 

「くくくくく・・・さあ、楽しみましょうか。」

 

 だが、あいつが纏っている空気が以前とは違う。

 

「お前・・・人間を止めたのか?」

 

「ぎゃはははははははははあははは!!」

 

 俺の問いにあいつは笑う。そして・・・。

 

「ええ。あなた達を倒すため、ただそれだけのために俺は人間をやめました。あの糞ジジイの力を借りましてねえ。ぎゃはははははははははは!!」

 

 フードを取ったあいつの姿は以前とは大きく変わっていた。

 

 頭に冠の様な角が生えた姿に。ローブを着ていたが、頭だけでも、すでに彼が人間を止めていた事に疑いの余地はなかった。

 

「・・・超魔生物になったというのか?お前は・・・。」

 

 ハドラ―がその姿に反応を示す。

 

「ええ。ドラゴンや天使、悪魔を初めとするこの世界のあらゆる生物サンプルに、アンデット、ワーム、ファンガイアや使徒、グロンギなどのデータも加えてねえ。人間を超えた存在を倒すためなら・・・。」

 

 フリードの奴がふっきれた様子でいう。彼の傍には改造され、下半身がカニその物になったボルキャンサーの姿。

 

「私も人間を止めるくらいの事はしないといけないと悟ったのですよ!!悪魔、エクソシスト、そんなつまらない事にこだわるのはもう止めた!!」

 

 フリードは剣を手にする。

 

――――そして・・・この世界でのバトルファイトの開催を宣言する。蘇れ、アンデット達。

 

 モノリスの言葉と共に学校のあちこちでそれは現れる。

 

 それはアンデット。あらゆる世界の生物たちの始祖とされる連中。

 

―――――手始めに二十体。そして、倒れた連中にもサービスだ。

 

 その言葉共に倒れ伏した魔術師達が起きあがる。

 

 その姿が・・その姿は包帯の代わりに黒いベルトで全身を拘束させたミイラのようだ。

 

―――あらかじめアンデットの細胞を受けつけておいた。行け・・・不死の軍団、量産型トライアルたちよ。ふははははははははははは!!・・・さあ、この世界を破壊するための楽しいゲームのスタートだ。お前も新しい力を使うが良い。

 

「はい・・・いかせてもらいますよ。」

 

 アルビノジョーカー・・・彼は懐からメモリを取り出す。

 

 それはガイアメモリ。

 

――――――ケミストリー!!

 

――――――クラフト!!

 

――――――ファクトリー!!

 

 それは科学と作成、そして工場のメモリ。

 

 それを自分の体に指して、彼もまたド―パント化したのだ。

 

 世界を滅ぼそうとする最大級の悪意。

 

 邪神と言える存在を前に俺達は揃って剣を取る。

 




 さて・・・魔王連中のバトル開始。

 いよいよ統制者が本格参戦と・・・まさかのフリードの登場。

 彼・・・実はある方と同じ状態になっております。

 連続投稿まだ続きます。


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覚醒する魔眼の魔王です。

 いよいよギャー助覚醒です。

 書いていて思うのは・・・やりすぎたということです。

 相手がかわいそう過ぎた。


SIDE イッセ―

 

 俺達はギャスパーを拘束していた連中は驚いていた。

 

 俺達がやってきたのだから。

 

「ふっ・・・ふん。アギトと紅のキバなど。私達の魔法で。」

 

 俺の後輩は・・・。

 

「僕を・・・殺してください。僕は・・・僕は・・・。」

 

 心身共に弱り切っていた。

 

「私はあなたを見捨てない。あなたを助けた時、私はあなたにあなたの生き方も見つけなさいといったのよ!!」

 

「ふん!!こんな危ないハーフヴァンパイアを使うなんて、あなた達も愚かよね。」

 

 そんなギャスパーを殴り、女魔術師は言う・・・。

 

「こんなのさっさと洗脳させてしまえばいいというのに・・・。」

 

 それを俺の前で言う事を早速後悔していた。

 

「・・・へえ・・・。」

 

―――――お前達・・・さっそくこいつの怒りに触れたか。

 

―――――でも抑えなさい。こいつにはたっぷりと怖がってもらわないと。

 

「・・・ヒッ!?」

 

 こいつは心のそこから辛い思いをしてきた。

 

 それこそ・・・引き篭もってしまうくらいに。

 

 そのせいだろう、少しだけ龍のオーラが漏れてしまったぜ。

 

「私は絶対に見捨てない。」

 

 その言葉と共に部長は歩きだす。

 

「ぐっ・・・この!!お前の眷属がどうなっても。」

 

 無抵抗のまま歩いている部長。

 

 それに向けて魔術師たちは魔法を放つが・・・。

 

「・・・その程度なの?あくびがでるわ。」

 

 まったく効いていない。

 

「この程度の魔法、片腹痛いわ。」

 

 服も全く傷ついていない。

 

「そん・・・な。中級悪魔クラスの威力はあるのよ!?なんで無傷。何もしていないのに!?」

 

 部長の頬と腕にステンドグラスのような文様が走る。

 

 そして、背中から出た悪魔の翼が紅になっている。

 

「皇魔力・・・渡と大牙から習っておいてよかったわ。まさか私もファンガイアの王族に極めて近いことになっていたなんてね。なんでバットファンガイアの力を得ているのやら。何もしていない無防備の状態でこの防御力。ふふふ・・・まあこの程度なら驚く事も無いか。」

 

「ちょっ、ファンガイアの王族の力!?」

 

「しかもバットファンガイアって、あの最強のファンガイアのこと!?」

 

―――――・・・えっと、リアス。あなた色々とふっきれていますね。あなた今どれだけとんでもない事になっているのか自覚があるの?

 

 部長は御身にバットファンガイアと同じ力を宿している。カ―ミラによる変身を繰り返し、なんか俺の身体からドラゴン、アーシアからもだが、アギトのオーラを受け続けた結果の起こった部長の変化だ。

 

「私の変化なんて軽いものよ。この程度のことなんて・・・変身しなくても指一本で対処できるわ。他の人外どもでも可能でしょう?」

 

 カ―ミラのコメントに部長はこの程度と断言しちゃった。

 

 飛んできた超巨大な火球をでこピンではじき返しながら。

 

 って!?

 

「デッ・・・でこピン。私の魔法が・・・でこピンで・・・。」

 

 言っていて思うけど、部長が可笑しい!?

 

―――――うん。この子も順調に強くなっているわ。おかげで大切な何かがマヒしている気がしなくもないけど。

 

―――――この調子ならこの後もさらなる何かを得る。そんな予感がする。

 

――――まあ、それは良いだろう、それより相棒。ここまで引きつけておけば十分だろう?

 

「ああ・・・。」

 

 部長・・・ただ立っていて、でこピンするだけですがありがとうございます。

 

『なっ・・・何!?』

 

 この程度の危機、変身するまでもなかった。

 

 部長が皆の気を引きつけている間に俺はテレポテーションでギャスパーを傍に来ていた。

 

 殴っていた魔術師を殴りとばしながら。

 

「・・・先輩。」

 

「ギャスパー、お前はもっと自分を誇って良い。お前を大切に思っている奴らはたくさんいる。俺も・・・俺のダチ達も、そして部長達も!!!」

 

「ううう・・・ううう・・・。」

 

「だから、俺の血を飲め!!今度はお前の凄さをあいつらに見せつけてやれ!!」

 

 俺はあらかじめ腕をアスカロンで傷つけており、それをギャスパーに出しだす

 

「はい!!」

 

「ぐっ・・・させるか!!ぐあ!?」

 

 ギャスパーが俺の血を口にするのを止めようとする魔術師達。

 

 だが、魔術師達の邪魔を飛来してきたふたつの影が邪魔する。

 

 一体はサガ―ク。

 

 もう一体は白いメカカマキリだ。

 

 そして、そいつらが血を飲んだキャスパーの前で止まった。

 

 

SIDE ギャスパー

 

 イッセ―先輩の血を飲んだ瞬間。

 

 僕の意識は白い空間にやってきていた。

 

「まさかこうやって君と直接離す事が出来るなんて思いもしなかったよ。」

 

 その空間には黒い靄みたいなもので覆われた何かがいた。

 

「あの・・・あなたは誰です?」

 

「う~ん。そうだね。」

 

 見た目はすごく怖い。でも・・・。

 

「怖がらなくていいよ。僕はもう一人の君だから。」

 

 彼の声は優しい。

 

「本来なら、僕と君はこうやって話す事がなかった。でも、サガ―クとアギトの血のおかげで可能になっちゃったよ。」

 

 黒い靄の姿がサガ―クの姿に変わる。

 

「・・・僕はおかげで独自の器を持てた。もっともお互いの繋がりはそのままにだから、テレパシーで話せる。」

 

 サガ―クが喋っているというの?

 

「僕の中の神性が蘇った。故に、僕は君と共に魔眼の王となることができる。そこで君に問いたい。」

 

 サガ―クは僕に問う。

 

「この力をどう使いたい?」

 

 力をどう使うのかについて。

 

「僕の本来の力は、最悪と言っていい。すべて発揮できるようになったら単独でこの場、学校にいる全員の息の根を止める事くらい簡単にできる。その気になれば世界を取る事すらできるよ?どうする?」

 

「・・・・・・。」

 

 僕は思う。

 

「・・・世界なんていらない。欲しいのは、ただ・・・。」

 

 力を求める気持ちはどうしてくるのか?

 

「ただ・・・部長やイッセ―先輩達の思いにこたえたい。みんなの・・・みんなの役に立ちたい!!そう思っている!!!」

 

 それは優しさに応えたいから。

 

 必死になってくれるみんなのために。

 

「・・・そうか。」

 

 それを聞いたサガ―クは笑ったような気がした。

 

「君もその話を聞けて満足かい?マギナさん。」

 

 その隣にはいつの間にか白いカマキリの姿も。

 

―――――ええ。あの子も強くなった。今なら私の力も使いこなせるでしょう。

 

 白いカマキリからは女性の声が聞こえてくる。

 

「そうか。なら望み通り力を与えてあげる。」

 

 その言葉に僕は首を横に振る。

 

 何か違う気がしたからだ。

 

「違う・・・と思う。」

 

「・・・んん?」

 

「一緒に戦おう。それがしっくりくると思う。その・・・あの・・・。せっかく僕と一緒にいてくれている。頼り無い僕だけじゃ不安だからその・・・。」

 

『・・・・・・。』

 

 その言葉にサガ―クとマギナは固まり、そして・・・。

 

「そう・・・か。」

 

「ふふふ・・・ほんの数日でここまで成長したのね。それをあなたの二人の兄が知ったらどれだけ喜ぶか。」

 

 二人は笑ってくれた。

 

「兄・・・さん?」

 

 マキリから兄がいるという言葉を聞く。

 

「誰があなたの兄か、その答えは自分で考えなさい。あなたには家族もいる。あなたを心配する家族も、友も、仲間もいる。それを忘れずに戦いなさい。」

 

「・・・はい!!」

 

「・・・君もおしゃべりだね。でも、僕も前世の過ちは繰り返すつもりもない。だからこそ、僕も手を貸すよ。もう一人の君としてね。」

 

 サガ―クの姿がかわる。それは・・・もう一人の自分の姿だった。

 

 そしてマキリは・・・優しげな女性の姿だった。僕と同じ金色の髪をした・・・。

 

『・・・共に戦おう。ギャスパー!!』

 

「はい!!よっ・・・よろしくお願いします!!」

 

 僕はどもりながらも二人を受け入れる。

 

 

 

「・・・なん・・・だと?」

 

 そして目をあけるとともに、僕は笛の音色と共に変身していた。

 

「サガの鎧・・・なんでハーフバンパイアごときが!?」

 

 驚く魔術師達。

 

『さあ、魔眼の王が、お前達の刑を執行しにきたぞ。』

 

 そして、僕たちは無意識のうちに名乗りをあげていた。

 

「ぐっ・・・みんな囲って一斉に・・・。」

 

 魔術師達が僕を囲み魔法を放つけど。

 

――――今の君なら見えるはずだよね?

 

 もう一人の僕の言葉の通りだった。

 

 僕は周囲・・・イッセ―先輩や部長を除く部屋全体の時間を止めた。

 

「なっ・・・に?」

 

 相手の意識はあえて止めていない。

 

「ギャスパー!?あなた・・・。」

 

「すげえな・・・。」

 

 種を明かすと視線が周囲360℃全体になっただけのことだ。

 

―――――でも糧が足りない、覚醒したのはいいけど腹が空いて仕方ない。せっかく獲物がたくさんいるのだからだから、あいつらから貰おうか?

 

「・・・死なない程度なら。」

 

――――全く君も甘いね。でも・・・わかったよ。

 

 僕の周囲から無数のコウモリ、そして黒い光のキバが現れ、その部屋にいる魔術師達に突き刺さる。

 

 どれも僕の体の一部が変化したものだ。

 

「ぐああ・・・私達の血が・・・魔力が!!それに・・・力が・・・力が抜けて行く。」

 

――――――お前達のライフエナジーもついでに頂く。半年以上は衰弱して何もできない程度にしてあげるから。魔法は二度と使えないだろうけど。

 

「何・・・この声?」

 

―――――むしろこの子にした仕打ちに対する罰に対しては軽いくらい。それに言ったわね?お前達の刑を執行しにきたと。死刑じゃないだけ・・・マシと思いなさい!!

 

「ぐっあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 瞬く間に気を失う魔術師達。

 

 骨と皮に近い状態にまでやつれている。

 

―――うん。これだけの糧があれば十分。

 

 こっちも十分満たされたという感覚がある。

 

 でも、明らかに吸いすぎのような。

 

―――心臓動いているから問題なし。

 

・・・・・・もう一人の僕って結構酷い。

 

「ギャー助?なんかもう一人声が聞こえてくるけど?」

 

「あなたまでWみたいなことになったというの?」

 

 部長や先輩にも彼らの声が聞こえるらしい。

 

――――クスクス名乗るべきじゃない?

 

―――そうね。この魔眼の魔王の復活に。

 

 魔眼の魔王?

 

「えっと・・・一応魔眼の魔王的な存在らしいです。」

 

 なんじゃそりゃ!?的なリアクションをイッセ―先輩と部長が表情だけでしている。

 

 僕の手に白い骨の様な柄に黒い光すら吸い込むような刃をもつ機械仕掛けの鎌が現れる。

 

 その持ち手の中心にマキリが接続。

 

 その鎌を振るいながら僕たちは宣言する。

 

『さあ・・・死刑執行の時だ!!』

 

 鏡で見ると僕の頭は門の様な銀色の拘束具に鎖で厳重に縛られていた。

 

 胸部は獣の口みたいになっており、それも鎖で厳重に封印されている。

 

―――――――いこうか。外が騒がしい。

 

「うん!!」

 

 もう一人の僕が鎌を軽く回すようにして振るう。

 

 それだけで部屋の壁がまるで紙切れのようにバラバラに散って行った。

 

「えっと・・・マキリ?切れ味良すぎだけど。」

 

―――これでもまだ高周波振動の最小モードなのに?

 

 高周波って・・・この鎌、高周波カッタ―になっているのか。最小で部屋の壁が紙のようにって、すごいにもほどがある。

 

―――――私の力はまだあとにしておくわ。楽しみにしてね。

 

―――――今の変身はあくまでも僕単独だから。

 

『・・・・・・・。』

 

 部長達は唖然と僕を見る。

 

「じゃ・・・じゃあ・・・行ってきます。」

 

――――私達がサポートするので、ご安心を。

 

―――――さあ・・・ついでにあいつらのエナジーも全部頂こうじゃないか。獲物がたくさんいるから腹が満たせる。

 

「ふ・・・ら・・・。」

 

 って・・・部長が倒れましたよ!?

 

「ぶちょおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」

 

 それを受けとめるイッセ―先輩。ぐったりとした部長を見て叫んでいる。

 

 まるで死にかけのように弱々しく

 

「ははは・・・今度は死神が見えてきたわ。気のせいかしら?あの大人しいギャスパーが外にいる魔術師達を獲物呼ばわりしたような。ハハハハ・・・」

 

―――――僕からしたらリアスさんも大概だと思うけど。まあ、それは置いておいて外にいる連中のライフエナジーを根こそぎ頂く!!こっちは底無しでね。食べられるときに食べておかないと。あとでイッセ―先輩の血ももう少し貰いたいね。あれは濃厚だ。アギトの血があれほど美味しいとは思わなった。あれを定期的に飲めれば十分だよ。

 

「・・・イッセ―先輩の血は美味しいですからね。」

 

 一口飲んだだけですけど、すごく美味しい血だった。血だけじゃない。魔力も、そしてライフエナジーも芳醇。ドラゴンの血とアギトの血も入っているから栄養も満点そうだし。うん、あれは毎日飲んでも飽きない。

 

 本来なら血を飲むのがあまり好きじゃありませんでしたけど、あれは別だね。うん。

 

「・・・ジュル。」

 

 おっと、先輩を見ていると思わずよだれが・・・。

 

「・・・!?」

 

 あれ?今度はイッセ―先輩が顔色蒼くして震えていますけど?

 

 今度、他のアギトのみなさんの血も頂いてみようかな?

 

――――それは良いアイディアだ。色々と飲んでみよう。お勧めは白龍皇辺り・・・。オルフェノクって燻製みたいな香りがしてねえ。

 

――――あなた達、少しは自重しなさい。

 

 マキリさんにストップがかかったのは残念だった。

 




 肉食系どころの話でなくなったギャー助はどうだったでしょうか?


 しかも変身して彼の頭と胸部がおかしいことになっている気付いた方もいると思います・

 彼はここからさらに化けます。

 連続投稿さらに続きます。


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命の恩人に限界突破の部長です。

 ここでついにあの方が登場。

 彼はどの勢力にも属していないので出しやすかったです。でも・・・今回は対して活躍させていないのが残念です。

 そして・・・部長の雄姿を見てやってください。


 

 

side 木場

 

 不死身に近い体となった魔術師達。トライアルβと呼ばれる連中は、復活前よりも少し強力になった魔法とさほど変わらない速さの動きで攻撃だったのでその点では苦戦しなかった。

 

 でも彼らには厄介な特性がある。

 

「もう・・・しつこいにゃ!!」

 

 全く死なないということ。それに尽きた。

 

 上空では巨大なギャオスと呼ばれる怪物と変身した渡君が戦いを繰り広げている。

 

 小回りでは渡君が上、でも他にもレギオンと呼ばれる黒い虫のような怪物が軽く見ても百体以上にギャオスの別の幼体も二十体現れ、渡君は苦戦を強いられていた。

 

 いや、むしろ空中戦で渡君は互角に持ちこんでいる辺りは、無茶苦茶だと言える。

 

 よくあれだけの数を相手に戦える。しかも次々と撃墜もしている。でも、次々と補充が来てキリが無い状態になっている。

 

 空中戦ができる奴はあまりいない。ギャオスの専門家と言えるガメラもダメージが大きく眠ったまま。

 

 空中にギャオス。グランドには不死と化した魔術師達。

 

 魔王様達は今、敵の幹部達と戦っている。

 

「・・・だが、案外難しい方法でもないぞ。」

 

 そう言いながら鋼鬼さんが渾身の力を込めた拳でトライアルと化した魔術師を一体殴る。

 

 あまりの破壊力にトライアルは一撃で粉々になりながら消えていく。

 

「再生できないレベルにまで粉々にすればいい。それだけだ。」

 

『・・・いやいやいやいやいや!!それできるのはあんただけだから!!』

 

 不死だけでなく、身体が鬼のように頑丈なこいつらを一撃で粉々って・・・。

 

「そうだぞ。こっちができるのはフルチャージしたデュランダルで空間ごと斬り飛ばして再生できないようにするしか。」

 

『そっちもおかしいだろう!!』

 

 何ともならない・・・訳ではなかったようだ。

 

 何?この化け者達。

 

 並の不死じゃ、雑魚扱いって。

 

――――だったら、あなたもあれを使ったら?剣だけなら使えるでしょ?

 

「・・・ああ。」

 

 クウの提案により僕はある剣を呼び出す。それはオーガトランサ―と呼ばれるものだ。

 

 それにミッションメモリーを嵌めて、エネルギーをチャージさせると・・・。

 

 刀身が巨大なエネルギーの大剣となる。

 

 それを見た皆が固まる中、それでアバンストラッシュを放ってみる。

 

 ・・・・・・破壊力の桁が違っていた。

 

 その一振りで、トライアル達を消滅させてしまったからだ。

 

「・・・・・・・・。」

 

「木場君。君も大概可笑しいよね?」

 

 後ろで呆れた声を上げる良太郎君に僕は何も反論できず。

 

――――おっ・・・恐ろしい威力ね。これは使いどころが難しいわ。しかもまだオーガギアの禁手化をしていない状態でこれか・・・。

 

 オーガトランサ―の本来の破壊力は禁手化した時に発揮される。そうでないと力が大幅におちてしまうらしいけど・・・今のままで十分すぎる。

 

 クウと共に今後も調整を続けないと。

 

 可笑しい、僕ってテクニックタイプのはずだよね。

 

 これじゃイッセ―君達にも負けないパワータイプになってしまう!!

 

「一撃で消滅か、なら俺もクサナギを使うか?」

 

 いやいや、鋼鬼さん。あなたがそれを使うと学校が壊れます。

 

 ゼノヴィアにデュランダルを抑えて使う様に行っている意味が無くなるから!!

 

「はあ・・・面倒臭い。今後の事も考えて魔力を温存しないといけないから力技で倒さないと。」

 

 ハルトもうんざりしながら右手で粉々に破壊していく。

 

 次々と別のトライアル達が補充されてくるが、こっちが倒すペースの方が勝っており、数が減ってきている。

 

 何とかなるかもしれない。

 

 いや、ならない方がおかしい。

 

「・・・・・。」

 

 そうなると後はアンデットと呼ばれる連中になる。

 

 巧君の目の前には黒いカブト虫の様な奴がいる。手に盾とカブトムシの角を模した剣。

 

 明らかなパワータイプ。

 

 そのパワーに巧君が苦戦しながらも・・・手にしたファイズエッジで一刀両断。

 

 倒れ伏し、中央のベルトが開くが・・・。

 

 少ししてすぐにそのカブト虫型のアンデットは起きあがってくる。

 

「・・・こいつら不死身か?」

 

「面倒だね。消滅すら受けつけないあたりは流石アンデットか。」

 

 三葉虫みたいなアンデットを右手でアイアンクロ―を決めながら持ち上げて溜息つくハルト君。

 

 頭を握りつぶした後に溜息を突かれても相手が可哀そう過ぎます!!

 

 いくら不死身でも危険な痙攣をおこして全く動きませんし!!

 

 強さはそこそこだが、とにかく死なない。止めさせたと思ってもすぐに復活。

 

「きりが無い。」

 

 先ほどのトライアルを遥かに超えるしぶとさに辟易するみんな。

 

 コウモリとそして蛍みたいなやつもいる。

 

 他のも蛇みたいな奴も。

 

「まだいるの・・・。って・・・。」

 

 そこで僕達は見る。

 

 小猫ちゃんがムカデみたいな奴に跳ね飛ばされる姿を。

 

 そして、そこにムカデと蠍みたいな奴の二体で追い打ちがかけられようとする。

 

「白音ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 黒歌が手にした銃を連射しながらかけようとするがアンデットの動きは止まらない。

 

「はああああぁぁぁぁぁ!!」

 

 だが、それを一人の青年が止めた。

 

「・・・えっ?」

 

 それは優しそうな青年だった。

 

 だが、あの怪物の攻撃を生身で受け止めるのが普通ではありえない。

 

 それに攻撃を受け止め、流れ出た血が赤ではなく、緑色だった。

 

「・・・早く逃げろ。」

 

「あっ・・・あなたは?」

 

「あんた・・・あの時の。」

 

 そこで巧が声をあげる。

 

「・・・こいつらは俺が専門家だ。」

 

 青年のベルトに蒼いスペードのような物が描かれたベルトが現れる。

 

 そして、青年は変身する。

 

 魔王様達と戦っているのと同じジョーカーと呼ばれる存在に。

 

『!?』

 

 皆が驚いて攻撃しようとするが・・・。

 

「待ってくれ!!この人は違う!!」

 

 それを止めたのは巧君だった。

 

 

 

 

side イッセ―

 

 うう・・・怖かった。あれが獲物を前にした捕食者の目って奴か。

 

―――――あれは恐ろしい生き物だ。まさかアギトの血に味を占めてしまうとは。おっ・・・俺でさえ、寒気を感じたぞ。二天龍すら獲物呼ばわりって、一体なんだあいつは!?

 

 ドライクですらも怯えている。いや・・・マジで怖かった。

 

――――アギトにドラゴンの血。そう言った意味ではあんたの血は吸血鬼にとっては極上でしょうね。はあ・・・厄介な子になったわ。

 

 不死のアンデットとなった魔術師達の前におどりでるギャー助。

 

 そいつらに一斉に黒いキバを撃ちこんでいく。

 

 そして・・・。

 

 あいつらから次々とライフエナジーを吸い取っている。

 

「不味い。でも青汁みたいな物と思えば、糧としては悪くない。」

 

 そして、吸いつくした魔術師は・・・ステンドグラスのように粉々に砕け散る。

 

―――――どこが不死身なの?吸いつくしたら消えちゃうじゃないか。これ一体だけじゃ物足りない。おっと次々と・・・大漁大漁。でもアンデット連中は糧にならない。不味いってレベルを超えているからパス。

 

「あは・・・ははは・・・うちのギャスパーが・・・ギャスパーが・・・。」

 

 それを部長が虚ろな目と乾いた声で笑っている。

 

 部長!!しっかりしてください!!

 

 ギャー助が敵を無双するだけでなく、食べているという光景に衝撃を覚えるのは仕方ない事だけど!!

 

「まだまだいっぱいいるし。それと・・・あの上の人を助けて欲しい。」

 

 ギャスパーの視線が上空で巨大な翼竜みたいなのと戦っている黄金の翼竜・・・ってあれは渡か!?

 

「なんであんな姿に!?」

 

「・・・アーシア?応えて、一体何が・・・ッ!?」

 

 俺達はアーシアからの連絡で、何が起きたかを知る。

 

 渡の怒りの凄まじさを。現に、傷つきながらも大暴れして敵を次々と倒している。

 

「・・・そうか。へえ・・・あいつら上等な事をしてくれるじゃねか。」

 

 俺達がいながら、防げなかった事態。

 

「どうしてか分からない。でも、僕はあの人を助けないといけない気がする。」

 

『っ・・・!?』

 

 ギャスパーの言葉は俺達だけじゃなく、彼の中にいる誰かも驚かせる。

 

――――――わかった。頭のカテナを一段階だけ解放させる。

 

 ギャスパーは笛を取り出し、それを腰のサガ―クに吹かせる。

 

―――ウェイクアップ 1!!

 

 その言葉共に頭の鎖が粉々に砕かれ、門があらわになる。その門から不気味な瞳が浮かびあがりギャスパーは上を睨みけると・・・。

 

 次々と渡と巨大なギャオスと呼ばれる個体以外が落下してきたのだ。

 

 みんなステンドグラスみたいになって粉々に砕け散っていく。

 

 その際現れた光をギャスパーの胴体の口が次々と吸い込んでいく。

 

―――――――うむ。あの化け物達・・・昆虫みたいな物は不味い。翼竜みたいなやつは結構美味しかった。

 

 しかも味の感想を言っているのかい!!

 

「ライフエナジーをこんな形で吸い込むなんて変な気分。」

 

「・・・きゅ~。」

 

 部長がまた倒れた。すぐに俺が抱きとめるけど・・・。

 

「ギャスパーが・・・ギャスパーが・・・。」

 

 部長・・・もう色々と限界の様な・・・。

 

―――――――まだまだ食べ足りない。

 

 しかもまだ食べるつもりかい!!

 

「・・・えっ?」

 

 だが、俺はすぐに悪寒を覚える。

 

 その答えはすぐ上にあった。

 

 何もない虚空から常識外にでかい腕が現れ、俺達を叩きつぶそうとしていたのだ。

 

 とっさにかわす俺。

 

 だが、もう一つの腕が後ろから・・・。拳が出現して俺を殴り飛ばそうとして。

 

「うぇぇぇぇぇぇぇぇい!!」

 

 俺と部長は誰かにつきとばされ、そのつき飛ばした誰かが代わりに殴り飛ばれる。

 

「あっ・・・。」

 

 緑の血をまき散らしながら跳ね飛ばされるのは青いバイザーをした黒いカミキリ虫みたいな怪物。

 

 俺の・・・恩人と言える怪物。

 

「ぐああっ!?」

 

――――――クッ・・・アギトをつぶすチャンスを・・・。

 

 聞き覚えのあるくそジジイの言葉共に、それが虚空より姿を見せる。

 

 それは巨大な城をそのまま人の形にしたような奴だった。

 

 そのでかさは・・・校舎をそのまま人型にしたようなでかさ。

 

 全身は銀色のレンガのような物で覆われている。

 

「・・・今回のメインデッシュと言うやつだ。これで邪魔者を叩きつぶしてくれる。」

 

 俺達の目の前にモノリスのような物が現れる。

 

――――ひーひひひひひ!!その通り!!

 

 その中から因縁のあるジジイの声が聞こえてくる。

 

―――これはあの世界の鬼岩城をミスリルで構成し直した逸品。戦闘力重視に改良しているので本家本元より小型ですが戦闘力ではこっちが上ですよ?まあ、あなた達は以前のあれの恐ろしさは知らない。この力でお前らを叩き潰してくれる。

 

「・・・統制者。ようやく見つけた。ぐっ」

 

 そんなモノリスに対して苦しそうに呻きながら立ち上がってきた奴がいる。

 

「貴様か・・・剣崎!!」

 

 跳ね飛ばされた怪物だった。全身から緑の血を噴き出しながら、ぎこちなく立ち上がってくる。

 

「この世界でバトルファイトは起こさせない。俺が・・・本当の意味で終わらせる。お前を倒すことで!!」

 

「倒す?満身創痍。それもたった一人、ただのジョーカ―ごときが私達を倒すと。笑わせてくれる。ザボエラ・・・やってしてしまえ。死なないが死なない事を後悔する様な地獄の苦しみを味あわせろ。」

 

―――――ヒヒ・・・了解でございます・

 

 振り下ろされる拳。それを・・・。

 

「もういい・・・・いい加減私も限界よ。」

 

 部長が滅びの魔力を纏わせた左腕で繰り出されるパンチで弾き飛ばしたのだ。

 

――――へっ?ちょっと!?

 

「うぇ!?」

 

「・・・ただの悪魔がこれほどのパワーをだと?信じられん。」

 

 部長、自分の質量の十倍は軽く超える様な拳を正面ぶつけて、勝ってしまったよ!?

 

 しかも変身しないで。

 

「ああもう!!なんでどいつもこいつも人外ばかりなの!?」

 

 いっ・・・いや、部長。あなたも十分人外のような・・・。

 

「そこの人・・・剣崎といったわね!!」

 

「うぇ!?はっ・・・はい。」

 

「あなたはイッセ―とどんな関係なの?」

 

「・・・イッセー?」

 

 部長の意味不明の威圧にびくびくしながら、その怪物は俺の方を見る。

 

――――・・・久しいというべき?

 

―――・・・そうか。あなたもアンデットだったのね。

 

 俺達の中からクレアとブランカも姿を見せる。

 

「・・・うぇ!?ドッ・・・ドラゴン!?」

 

 何か特徴的な驚き方をする。

 

「あの時の黒い龍?じゃあ・・・君はこの街で助けた・・・。」

 

「俺です!!覚えていますか?」

 

 その怪物は俺をじっと見る。

 

「・・・そうか。あの子と出会ったこの街に久しぶりに寄って君に再会するなんて。もうそんなに時間がたったか。」

 

「そう・・・やっぱりイッセ―繋がりか。はははは・・・今度は命の恩人と来たものだ。あなたの知り合いって、みんなこうなのね。」

 

 部長は悟りを開いたように笑う。

 

「ねえ。イッセ―、私は今こう思う事にしたわ。」

 

 何をです?

 

「これって運命なのよ。前代未聞の脅威連発と、イッセ―の幼馴染共がこの街に集っていくのと重なる。そこで私がアギトを眷属・・・いえ、イッセ―の関係者、朱乃を初め、みんなを眷属にしたのも、運命。私がこいつらをまとめて倒すためのね!!ふはははははもうこうなったらとことんやるしかないわ。何でも来いってもんよ!!」

 

―――――あなたついに開き直っちゃったわね。

 

「だってそうでしょう。でもね、王として人外達に振り回されるだけなのも癪だわ。」

 

――――――ええい、生意気な小娘が!!

 

 鬼岩城改が拳を振り上げる。

 

「だから・・・私も強くなる事にしたわ。」

 

 部長の手にカ―ミラが噛みつき、いつの間にか変身をしていた。

 

―――ウェイクアップ3!!

 

―――ちょっと!!ここで三つ目のカテナが解放!?

 

 部長の左腕のカテナが解放。篭手に紅の色をした光の翼が出現。

 

――――ウェイクアップ 1!!

 

―――しかも・・・もう片方の腕のカテナまで同時に解放したの!?

 

 左腕の光の翼が上下、まるで弓のように展開。

 

 そして右手に超強力な紅い滅びの力が集束。

 

 その状態の右手で左腕の弓の光の弦が引き絞られ・・・。

 

「・・・アロ―・レイ・シュトローム。」

 

 それを解き放つと同時に、紅のコウモリの翼でV字を作った様な光の刃が轟音と共に発射。

 

 それをまともに食らった鬼岩城の巨体。

 

 その巨体に巨大なV字の穴が空いたのだ。

 

――――なんですとぉぉぉぉぉぉぉぉ!?

 

 そして、その矢は上空にいた巨大ギャオスにも命中。

 

 絶叫と共に紅い光と共に爆発を起こす鬼岩城とギャオス。

 

 ギャオスに至ってはそのまま紅い光に包まれながら落下し、消滅して言った。

 

 それを冷静に見つめる部長。

 

 二体まとめてって・・・。

 

「ふん。こんな程度の芸当。誰だってできるわ。」

 

――――だれでもって・・・あなた本格的におかしいわよ。あなた普通じゃないって自覚はあるの?

 

「普通?そうか普通か・・・・ふふふ・・・あははははははははははは。」

 

 あれ?カ―ミラの指摘に何で部長は笑うのですか?

 

『・・・・・・。』

 

「ねえイッセ―?・・・『普通』って何?」

 

 なんでしょうね。俺も普通って分からないし。

 

「あなた達と一緒にいて、私はもう・・・何が普通か分からなくなってしまったの。」

 

 うわ・・・それは・・・。

 

「最早、何が普通なのかな?アハハハハハハハ!!」

 

 本当に壊れてしまっている。

 

―――――あまりに人外どもに振り回されすぎて、頭をやられてしまったのね。

 

「開き直ったといってくれないかしら?それ故にあなた程度の存在、今更驚くことはないの。たかがアンデット程度で驚いていたら、やっていけないわ!!」

 

「うぇ・・・・・。」

 

 えっと・・・剣崎さんでいいのかな?

 

 かなり戸惑っているぞ。部長の勢いに。

 

―――――リアスも王として器が大きくなったわね。こんな形で成長するなんて予想外もいい所だけど。

 

 そう言えばクレアが定期的にリアスに色々と教えていたのを思い出した。

 

「あれ・・・渡は!?」

 

「あっ・・・。」

 

 そして、今更だけど渡の事を思い出した時だった。

 

 空中から落下してくる影。凄まじい勢いで落下したそれは・・・黄金のキバに戻った渡だった。

 

 そのあとすぐに変身を解き、目を回している。

 

「わたるぅっぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」

 

「・・・・やりすぎちゃったわ。急いで治療しないと!!」

 

 それを見て顔色を青くしながら渡に駆け寄る俺と部長。

 

「おのれええええええぇぇぇぇぇ!!」

 

 瓦礫の中から現れるザボエラ。

 

「だったら、これでどうです!」

 

 瓦礫が再構成され、さらに外から似たような破片が出てきて・・・。

 

 ザボエラを取り込む形でさらに巨大な鬼岩城が出てきました。

 

 その大きさ・・・まさに巨人。

 

―――――本来の大きさの鬼岩城じゃ!!覚悟するがいい!!

 

 さっきのよりもさらに十倍を超える様な巨体。まるでそびえる山脈を見上げる様な・・・。

 

 下手したら踏むだけで校舎が粉々に破壊されかねない。

 

『・・・・これはないだろ。』

 

 あまりにでかい。

 

 まさに歩く城。

 

―――――ぎゃはははははははははははは!薙ぎ払ってくれる!!

 

 無数の大砲がこっちに向けられる。

 

 だが・・・それが放たれる前に、校舎から何かの光が突っ込んできて

 

―――――うぎょあ!?

 

 その常識外れな巨体を弾き飛ばした。

 

 それを見た部長は溜息をつく。

 

「ねえ。本当にあなたの幼馴染共は人外ばかりでもう私は呆れと溜息しかでないわ。」

 

「うう・・・。」

 

 渡・・・とりあえずお前、今日はこのまま眠っておけ。

 




 鬼岩城。断言します。これはあるイベントのおぜん立てとして急遽だしました。

 あるイベントとは・・・もちろんアレです。


 連続投稿、まだ続きます。


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竜の騎士の目覚め

 いよいよサイガの覚醒です。

 彼の無双っぷりを見てやってください。




 SIDE サイガ

 

 僕達の戦いは予想外の展開を迎えていた。

 

「さて・・・僕達も動かさせてもらおうかな?」

 

「くくく、そうだな。」

 

 それは白龍皇とハドラ―の裏切りである。

 

「・・・このタイミングで動くかね。はあ・・・お前らもっと考えて欲しい。」

 

「むしろこのタイミングがちょうど良いだろうが。」

 

 ハドラ―の右腕の剣と唾座り合いをしながらぼやくアザゼル。

 

「動くのが遅いぞ貴様・・・うお!?」

 

 カテレアはその裏切りを知っていたらしく喜ぶと思いきや・・・。

 

「ふんふんふんふん!!」

 

 大牙様に滅多打ちにされてそれどころではなかった。

 

 笛方の武器であるそれは細剣にもなり、鞭にもなるその武器。

 

 今鞭になったそれで撃ちすえられている。

 

「ぐそ・・・いい加減にしろ!!」

 

「それはこっちのセリフだ馬鹿もの!!」

 

 単独で強化されたカテレアを圧倒って・・・。

 

 闇のキバの鎧を纏っているのは伊達ではないのね。

 

「だっ・・・だが、このまま私を倒していいのかしら?」

 

「何?」

 

「私の体は今や超高エネルギー体、倒したらこの校舎位結界ごと吹き飛んでしまう位には・・・。」

 

 大牙様はそれを聞いて動きを止める。

 

 少し考えたようだ。

 

「だったら・・・。」

 

―――――ウェイクアップ 1

 

 だが、すぐに動き出す。

 

「お前を・・・。」

 

「がっ!?」

 

 皇魔力を宿した拳でカテレアの身体を浮かし・・・。

 

「遥か上空で倒せばいいだけの事だ!!」

 

――――――――ウェイクアップ 2

 

 そこに向かって強烈なキックを繰り出そうとして、

 

「それはやらせないよ。」

 

 それを一体のド―パントが阻む。

 

 それは赤い体に黒い爆弾のような頭をしたボムド―パント。

 

 そのキックを受け、自爆をすることでカテレアを庇ったのだ。

 

 変身していたのは白いゴキブリみたいなやつ。

 

 アルビノジョーカーもまた下位ド―パントを量産する力を持っていたのだ。

 

「・・・ありがとうね。」

 

「いえいえ。君は死なせるのは惜しいから。」

 

 アルビノジョーカーに礼を言うカテレア。

 

 この二人は意外なほどに良いコンビネーションで大牙様とダンテ様と互角に戦っていたのだ。

 

 視線だけでお互いの状況をしり、フォローし合っている。

 

「ひゅ~う。もしかして御宅ら・・・・。」

 

『・・・ふっ・・・ふん!!何をいっているのやら!!』

 

 ダンテ様の茶化しに二人が息ぴったりな反論を見せたのは何か理由があるのだろうか?

 

 そして、井坂はキリエにターゲットを絞ろうとして・・・

 

 ネロの猛攻を受けていた。

 

「ううう・・・因縁のアクセル。しかもこんな無茶苦茶な。」

 

「おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 アクセルクイーンを振り回し、井坂を強引に跳ね飛ばす。

 

「だが・・・私は二度もアクセルに敗れるつもりはありません!弱点はわかっていますので。」 

 

 その言葉と同時であった。

 

 結界を維持しているキリエさんの傍に二体のド―パントが現れたのだ。

 

 それは三体のキャットド―パント。

 

 無防備になったキリエさんを狙っていたのだ。

 

 ド―パントの爪がキリエさんを狙うが、それをキリエさんは盾を展開させて防ぐ。

 

 だが・・・

 

 そのキリエさんの周りを霧みたいな物が囲む。

 

「ぐっ・・・ううう・・・。」

 

 それはもう一体のド―パント、ミストド―パント。キリエさんが本当の意味で無防備な時を狙って潜伏していたのだ。

 

 キリエさんを拘束するミストド―パント。そこに三体のキャットド―パントの爪が迫るが、その爪はキリエさんには届かなかった。

 

「ぐああああぁぁぁぁ!」

 

 いつの間にか現れたミカエル様が身を呈して庇ったからだ。

 

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 変身を解除させながら倒れるミカエル様を助けるべくネロはかける。

 

「いかせな・・・ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

――――――御主人!!援護するぜ!!

 

 井坂は妨害しようとするがそれとレイダ―が凄まじい勢いで体当たりしてサポート。まるで銃弾のように眼にもとまらぬ速度でレイダ―と共に校舎の壁をぶち抜きながら消えていく井坂。

 

 それと同時にネロはあるメモリの力を発動させていた。

 

――――トライアル。

 

 それを発動させると同時に、身体の装甲が吹っ飛び青い軽量化されたボディになる。

 

 それとトライアルメモリを発動し、放り投げながら駆ける。

 

 デビルトリガ―を発動させ、後ろに蒼い巨大な分身を出した状態で。

 

「うらららららららららららららららららららららららららららら!!!」

 

 そこから目のも止まらぬ拳によるラッシュ。しかも後ろの巨大な分身も一緒にやる形でだ。

 

 猛烈な打撃の四重奏に雨になすすべのなく殴られ続ける四体のド―パント。

 

 最後に巨大化した拳で四体まとめて殴りとばす。

 

――――――トライアル、マキシマムドライブ!!

 

 そして、放り投げたメモリを受け止める。

 

「9、6秒、それがお前らの絶望へのタイムだ。」

 

 その言葉共に四体のド―パントは粉々に砕け散る。

 

「ぐっ・・・本家アクセルとは比べ物にならない破壊力。デビルトリガ―と併用させるとは・・・。」

 

 戻ってきた井坂は驚いていた様子。しかも、さっきの体当たりが相当効いているのか緑の血をあちこちから噴き出している。

 

 相当なダメージを受けておる。

 

「だが・・・トライアルに関して対策はすでにできています。いくら速くても・・・。」

 

 井坂は雹やツララ、そして電撃を纏わせた猛烈な衝撃波を放つ。

 

 いくら高速で動けても同時多数の目標は確かにかわせない。あの形態は軽量化した分。攻撃力と防御力が犠牲になっている。攻撃力はネロの素の力で補えているけど、防御はそうはいかない。

 

「これは防げないでしょう!!」

 

 でも、ネロにはもう一つの切り札がある。

 

「だったら今度はこいつだ・・・。」

 

――――――ビート、マキシマムドライブ。

 

 それと共に通常形態に戻ったネロは走り出す。

 

 彼の認識している世界は今大変ゆっくりになっている。

 

 すべての物が極めてスローで動いているような状態だ。彼自身の動きもそうだ。

 

 ただ、認識と聞こえてくる鼓動だけは普段通りだ。

 

 その中で彼はある一点の鼓動をローズダブルで撃ち抜く。それと共に・・・雹雷の嵐が真っ二つになり、井坂に跳ね返される。

 

「なっ・・・なにぃぃぃぃぃぃぃ!?」

 

 ビートのメモリはマキシマム専用だが、その効果は強力だ。

 

 すべての動きがゆっくりに見えるだけじゃなく、鼓動を聞くことで攻撃すべき個所を瞬時に知る事が出来る必殺のメモリ。鼓動による体感速度の増加と弱点発見の効果。鼓動はまだ色々と応用が効くとネロは言っている。

 

 それは防御にも使え、あのような常識はずれもいい所の神技も可能となる。

 

 そしてそれの最も恐ろしい点は・・・まだあるのだが。

 

「キリエ!!もう結界はいい。その人は!?」

 

「今アーシアちゃんに癒してもらっています。でもどうして・・・。」

 

「・・・無茶します。もう・・・。」

 

 倒れたミカエル様を守るキリエさんとアーシアちゃん。

 

 サーゼクス様、グレイフィアさんとアザゼルさんは裏切ったヴァ―リとハドラ―、そしてダグバと相対している状態。

 

 そして・・・。

 

 私と父様はそれぞれ暗黒騎士とフリードと戦っていた。

 

「まさかお前とまた戦う事になるか!!!」

 

 暗黒騎士キバ。

 

 かつて父様の師、おじい様の元弟子にして殺した仇だった存在。

 

 力を求め、暗黒騎士となりメシアの力を取り込もうとして逆に取り込まれた。

 

 そして、キバはすでに父様が倒したはずの存在。

 

「・・・今の私は統制者様の忠実なる騎士。あの方の力で不死である番犬――ケルベロスの肉体を得て私は蘇った。」

 

――――こいつ・・・とうとうそんなところまで堕ちたのか。

 

「ふははははははは・・・さあ、この力で黄金騎士を討ってくれる。」

 

 鎧を纏った父様が苦戦している。

 

 でも、僕も助けることができない状態だった。

 

 何しろ、生まれ変わったフリードがあまりにも強すぎたからだ。

 

「おらおらおらおらおら!!」

 

 力が圧倒的すぎる。

 

「ぐっ・・・なんの!!」

 

 元々彼の技量は相当なものだった。戦闘狂として振るわれるだけではあまりにもったいなすぎる位戦いの腕は高かった。

 

「・・・あなたはすごいですね。正直力は圧倒的な差があるというのに、攻めきれません。」

 

 不意に離れたフリードは私を見て褒める。

 

 その姿に私も驚いていた。

 

「君こそどうしたの?以前は狂っていたけど、今の君はどう見ても・・・。」

 

「ふっ・・・だから言ったじゃありませんか、私はあなた達に勝つために人外になったと。このまま負けっぱなしじゃあ、悔しくて仕方ないのですよ。あれだけの怪物どもに一矢報いるまで、私は・・・。」

 

 フリードは依然と違うのが本当にわかる。

 

「死んでも死にきれませんからねえ!!」

 

 彼は武人として一皮むけてしまった。

 

 私達を倒すために、人であることを捨てたのに、心が逆に武人となってしまったのだ。

 

 口調はそのままなのに、以前よりも遥かに強い。

 

「だからこそ・・・あなたをそのまま倒すのは惜しい。」

 

 その上で剣を引く。

 

「まだ力を発揮できていない。そう聞いているぜ?」

 

「・・・・・・。」

 

「私は人を捨て、魔獣となった。だからこそ、心行くまでお前達と戦い、そして勝ちたい。だが、そのためには本当の意味で全力をだしてもらわないと帳尻があいません。だから・・・。」

 

 フリードは剣をこっちに向けて言う。

 

「全力をだしやがれ。といってやる。」

 

「・・・。」

 

 そのための方法はある。

 

 でも、それは今すぐできることなのか?

 

「ほんの少しだけ時間をくれないかな?」

 

 そんな私に対してセラさんが代わりに応える。

 

 拘束もどうやら解けたみたいでアマテラス様とツクヨミさんを伴っている。

 

「へえ・・・何をするのか分かりませんが、いいですよ。他の奴らは手をだすんじゃありませんよ。こいつは私と戦う。」

 

 フリードは皆に言う。

 

 だが・・・いいのか?

 

「その・・・こんな場でごめんだけど・・・その・・・。」

 

 セラさんがもじもじとして私を見る。

 

「あの時の返事・・・私も決めました。」

 

 彼女のあの一言で私はもう決めてしまった。

 

「こんな私でよければ、お願いします。」

 

 セラさんと共にいたいと。

 

「あっ・・・。」

 

「ツクヨミさん。あなたもです。とりあえず時間はありますので仲はおいおい深めていく事にしましょう。」

 

「それって・・・。」

 

 そのために私も人間を止める決意をしたのだ。

 

「だからこそ・・・お願いします。私を二人の女王と巫女に。」

 

 驚きのあまりに口元を覆うセラさん。

 

 その瞳から涙がぽろぽろと零れ落ちていた。

 

「・・・はい。これから長い付き合いにあると思うけど・・・・よろしくね。サイガ君。」

 

「あなたが日本神話と悪魔の架け橋となる存在にならん事を。その・・・よろしくお願いします。」

 

「うん・・・よろしく。」

 

 私はそんな二人に向けて返事を兼ねた挨拶を交わす。

 

 唇にそれぞれキスをする形で。

 

『////。』

 

「もっ・・・もう・・・だったら私だって。」

 

 懐から紅い血の様な液体が入った瓶を取り出しそれを口に含むセラさん。

 

 セラさんが私に抱きつきながら女王の駒を中に入れ、それと共に私に口づけをかわす。

 

 その際に含まれていた紅い液体・・・赤い血が私に送られ、私はそれを飲みほしていく。

 

「そして・・・今度は私ですね・・・。」

 

 ツクヨミさんも私に抱きつき、口づけをしてくる。それ共に体に何か力が流れ込んでいく。

 

―――――いよいよか・・・サイガ、俺はこうなる事を予想していたぜ?

 

 私の喉元でエイガが苦笑している。

 

 ああ・・・もう私は迷わない。この二人と共に在ろう!!

 

 

 

SIDE ハドラ―

 

 戦闘中の口づけ連発に最初は呆れたものだったが、すぐにただの口づけじゃない事に気付く。

 

 それだけで場の空気が一変したのだ。

 

「・・・なっ・・・なんだ?」

 

 それはある意味懐かしい空気だった。

 

「お待たせフリード。今まで渋っていたけど、ここから本当の意味で全力だ。」

 

 その言葉と共にあいつの右拳が光る。

 

 それは・・・

 

「竜の・・・紋章だと!?」

 

 それは俺の生涯のライバルと言えた勇者ダイが持っていた竜の騎士の証である紋章。

 

「・・・ほうほう。ようやく復活してくれましたか。竜の騎士が。」

 

 その場に、いつの間にかポルムが現れていた。

 

「うげ?なっ・・・何なのこの力は!?」

 

「・・・人間の力なのか?」

 

 一緒に現れた天界の使者である二人の少女も目を丸くしている。

 

「おい・・・ポルム。まさかとは思うがサイガは・・・。」

 

 竜の騎士はマザードラゴンによる誕生が基本だが、もう一つだけ例外があった。

 

 それは・・・人間との混血児。

 

 かつてのダイがそうだった。

 

「ご明察。サイガは僕の両親の盟友、勇者ダイとレオナ姫の遺児。そして今代の竜の騎士だ。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

 ダイは死んだ。だが・・・

 

「ふふふふ・・・・。」

 

 あいつはとんでもない息子を残していた。

 

 あのレオナ姫との子か。

 

「ふははははははははははははははははははははは!!!」

 

 それが嬉しくてたまらない。

 

 あいつとの縁がまだこの世界でいい意味で繋がっていた事に。

 

「愉快だ・・・愉快だぞ。だったらこっちもこいつらを呼び出してくれる。」

 

 こっちも惜しんではいられんな。

 

「出て来いアビスクラッシャ―、アビスハンマー!!」

 

 俺もまた契約モンスターを出させてもらおう。

 

「げええええ、ハドラ―!!お前そいつらを呼び出すのか!?」

 

 アザゼルは知っていたよな。俺がこいつらと最近出会って契約した事に。

 

「まさか、あなたまで契約者だったなんて。」

 

「安心しろ禁手化はつかわん。そうなったら互いに無事ではいられんからな。」

 

「親父殿。すまないが、俺は俺で戦うべき相手がいる。ここはまかせていいか?」

 

 ヴァ―リが闘うべき相手。

 

 そんなの一人しかいない。

 

「ああ・・・行って来い。こっちは俺達が抑えてやる。なあ・・・ブローム。」

 

「ブローム。」

 

 その言葉と主に三メートル程の巨体に全身を分厚い鎧で守った騎士団の一人が現れる。

 

「ハドラ―様とヴァ―リ様の邪魔・・・させない。」

 

「ちょっ・・・ここでブロームがでてくるのかよ。」

 

「ブロームだけじゃないですよ。アザゼル殿。」

 

「ヒヒヒヒ・・・悪いですが、動かないでもらいます。」

 

 あいつらの後ろにはシグマとフェンブレンがいる。

 

 三体共前世の姿、オリハルコン生命体としての姿でここにいる。しかも前世とは違って仮ではなく、本物の命を持った状態でだ。

 

 それ故の特典があいつらには備わっている。

 

「こちらの女王以外は勢ぞろいと言う事だ。あいつはあいつでやることがあるのでな。このまま動かない方がお互いに消耗は無くて済む。」

 

「・・・うまく考えやがって。」

 

 アザゼルは肩をすくめる。

 

「・・・それならついでに聞きたい事があるがいいかね?」

 

 その状態でサーゼクスは聞く。

 

「あのヴァ―リと言う者。もしや・・・旧ルシファーの関係者じゃないのか?」

 

「・・・ほう。」

 

「お前何でそれに気付いた?」

 

 その指摘に俺だけでなくアザゼルまでもが驚く。

 

「私がいるからです。ルキフグスの私の勘があの者からルシファーの臭いを感じました。」

 

・・・そうか。グレイフィアの存在か。

 

「いいだろう。確かにあいつは普通の人間じゃない。悪魔と人間。それもルシファーの血を引く者だ。」

 

「・・・やはりか。」

 

「母がオルフェノクの因子をもつミラージュアギトだったのだよ。それに加えあいつは白龍皇としての力も得た。まさに最強の白龍皇としてな。全くはこっちもそれを知った時は度肝を抜かれたもんだぜ。」

 

 アザゼルもその辺の事情は知っている。

 

「そして、あいつはルシファーの実家で虐待されていてな。この世界に来たばかりの俺がそれと出会い、助けた。死にかけていたあいつをあいつの父親が持っていた悪魔の駒をこっちの物にし、すべての兵士の駒を注ぎ込んであいつを転生させた。まさかあの時点で悪魔ではなく、アギトとして転生していたなんて思いもしなかった。」

 

 その日からヴァ―リは俺の息子となった。虐待した父を殴りとばしてその場から連れ去り、そこから色々な世界を共に回った。

 

 そこで俺は再びこの世界に同じようにやってきていた仲間と巡り合えたのだ。

 

 そいつらにもあの悪魔の駒を弄り、生命体として全員を転生させている。

 

「・・・そう・・・だったのか。」

 

「だが安心しろ。あいつ自身は魔王の地位に興味はない。何しろ自分自身で新たな勢力を作るといいだしたはあいつだからな。アギトとして、そして王としてあいつは新たな勢力を作るつもりだ。その行く先を俺は見守るつもりだ。」

 

 俺の自慢の息子としてな。

 

 あいつは今・・・多くの仲間を得ている。

 

「・・・どうしてそんな高潔なあなた達が裏切りを・・・んん?」

 

 アザゼルが隣のサーゼクスを膝でつく。

 

 そして小声で・・・。

 

――――話を会わせてくれ。これも俺とハドラ―で決めた予定だ。ミカエルも含めて俺が説明する。

 

 ほう、アザゼルの奴、サーゼクスまで巻き込むか。

 

「はあ・・・まあこっちは別にいいよ。むしろ楽しみが増えて面白い。」

 

 一緒にいるのがダグバのような戦闘狂で本当に良かった。

 

 こういった事に一切気にしていないのだからな。

 

 だが、この後俺達はさらに驚く事になる。

 

 

 

SIDE イッセ―

 

 ひっくり返る鬼岩城。

 

 そして・・・。

 

 校舎の穴から敵がまとめて弾き飛ばされたのだ。

 

『ぐおおおおおぉぉぉぉぉ!?』

 

「ぬう・・・ふはははは!!なるほどこれはこの時点でダイを超えておるな。」

 

 ハドラ―さんが驚きながらも笑っている。

 

「なんて化け物なんですか。これでないと楽しめないというものです!!せっかく魔獣となったこの体、さらに熱く燃えるという物だ!!」

 

 フリードに至っては爆笑している始末。

 

「お前ら・・・何で喜んでいる!?」

 

「化け物・・・。ぐっ・・・。」

 

「何でこう次々と怪物が出てくるのかしら!?」

 

「・・・嫌になりますねえ。何故こう怪物が次々と・・・。」

 

 他にふっ飛ばされた連中が戦慄している。

 

 一体誰がこんなことを・・・ってあれはサイガか?

 

 全身に蒼い光を纏わせているぞ。

 

「えっと・・・この剣で海波斬を放っただけなのに・・・なんてパワーなの。」

 

 本人も驚いているぞ?何故か・・・。

 

――――――ちょっと・・・なんで竜の騎士が・・・って・・・まさかまっ・・・まさかあああああああなた・・・。

 

 それをみたザボエラが恐れおののいている。

 

「改めて久しぶり。あの研究所ではすごく御世話になったよ。あの時分かったあの力を一部だけどモノにできたよ。本当、まだ紋章は一つだけだけどね。」

 

―――――・・・・・・・。

 

 その言葉にあれ?ザボエラが逃げ腰だ。

 

「どうした?なんでお前がそこまで怯えている?」

 

 それに気付いたモノリスみたいな奴、確か統制者と呼ばれたあいつが動揺しているぞ。

 

―――――あああああなたは竜の騎士の常識はずれな力を知らないからですよ!!しかもあいつはただ竜の騎士じゃありません。なっ・・・なななななにしろあいつは・・・あいつは・・・みっ・・・三つも三つもあれを!!!

 

 三つってああ・・・あいつ確か小さな頃あの紋章を三つだしていたっけ?

 

 今発動しているのは一つだけだけど、それだけでも十分化け物だぞ?

 

 これで三つ同時に発動したら・・・。

 

「なっ・・・あの竜の騎士だと?!神々の最終兵器と言われた・・・あれが?」

 

 統制者って奴までもが戦慄している。

 

 その前に、神々の最終兵器ってなに!?

 

「・・・さあて、こっちはもう一つ試す。行くよエイガ!!」

 

―――――いよいよか。我が狼竜の鎧に、竜の騎士の力を合わせる時!!

 

 サイガは手にした剣で空中に円を描く。

 

 そして、あいつは黒い鎧を纏った。

 

 だが・・・その鎧の右手の甲から青い光が溢れだし・・・その全身を覆う。

 

 そして、鎧が代わる。

 

 黒から・・・黄金へと。

 

 それは黄金騎士と同じ黄金。

 

―――――――なっ・・・なんで!!竜の騎士の力は凄まじく、オリハルコン性の武器しか使えないはずじゃ・・・。

 

「おいおい。元老院はサイガの秘めた力を最初から見抜き、それに対する備えもずっとしてきたんだぜ?」

 

 そこにポルムが現れる。

 

「ソウルメタルとオリハルコンの融合。まさか紋章一個とはいえ、鎧をむしろ強化させる結果になったなんて、これだから異世界は面白い。竜の騎士が纏える鎧なんて前代未聞もいい所だ。」

 

 そして彼は翼を出す。

 

「生まれ変わった君に餞別だ。受け取れ・・・歴代竜の騎士が使いし伝説の武器を。」

 

 翼から出てきたのは一本の剣。柄が竜の頭になっている剣。」

 

 それを見たハドラ―さんとザボエラが揃って声を上げる。

 

『しっ・・・真魔剛竜剣だと!?』

 

「これは君のおじいさんが使っていた剣。そして・・・。」

 

 サイガの持っていた剣が変わる。

 

「君の剣もまた真の姿・・・ダイの剣へと変わる。剣として一度死んだその剣もまた君専用として生まれ変わった。剣に込められたその魂がそう選んでくれた。」

 

 手にしていた魔戒剣もドラゴンの翼の様な鍔に宝玉が埋め込まれた小ぶりの直剣へと変わった。

 

「・・・君はこの二つの剣を使う権利がある。君の祖父と父の遺志を継いだ君がね」

 

「・・・わかった。」

 

 そしてサイガは右手に真魔剛竜剣、左手にダイの剣を手にする。

 

「ならこれから私は、二刀流でいく!!二人の遺志を継ぎ竜の騎士となるために!!魔戒騎士として、そして竜の騎士として私はこの二本の剣を振るおう!!」

 

――――――・・・何の悪夢ですかこれは!?

 

「オリハルコンの剣に、ソウルメタルを含ませたか。しかも、それと同等の鎧まで纏うなんて、こっ・・・これは流石に相手にしたくないぞ。」

 

 ハドラ―さんですら冷や汗を流している。

 

――――だったら、先制攻撃をしかけるまでです!!

 

 その言葉と共に鬼岩城から無数の砲撃が放たれ、サイガに次々と命中。

 

 それこそ結界が無ければ校舎がとっくに吹っ飛ぶくらいに。

 

 むしろ結界にもダメージが入ったのか亀裂すら入っている。

 

 でも・・・。

 

「・・・・・・・そんなものか?」

 

 現れたサイガは・・・無傷。

 

「ふん!!」

 

 サイガが二本の剣を振るう。

 

 それと同時に剣閃が走り・・・鬼岩城の両腕を縦一閃に切断。

 

 あんなでかい奴の腕を二本同時に両断ですか。

 

――――そんな!?

 

「・・・威力が強すぎる。これは使いどころを選ぶな。しかもまだ残りの紋章ふたつも覚醒していない状態でこれだし・・・はあ、また修行のやり直しか。」

 

 サイガは剣にそれぞれ闘気を纏わせて行く。拳から溢れる青い凄まじい闘気を。

 

「せっかくだからもう一発試すよ。竜闘気を纏わせた一撃がどんなものになるのかまだわかっていないし。そうだな・・・試しに大地斬でやってみようか?」

 

――――くそおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!

 

 鬼岩城がやけくそ気味に走りだすがその前にサイガが黄金の光を纏わせながら宙を飛び、懐に潜り込む。

 

 いや・・・体内に入り込んだというべきか。

 

――――うおっ?あいつが中に?一体どういうことです?今いる位置は・・・げええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ私の真下ですと!?

 

 その悲鳴が聞こえてきたと同時だった。

 

 鬼岩城に縦・・・そして横に剣閃が走る。

 

――――――そっ・・・そんな!?

 

 そしてそのまま崩落していったのだ。

 

『!?』

 

 粉々になって崩壊していく鬼岩城。

 

「・・・・ぐう・・・なんて奴ですか!?」

 

 脱出したザボエラが心底恐怖する。

 

「・・・ふう。これは凄まじい。でも、ちょっと疲れたかな。スタミナの配分も考えないと。」

 

 その瓦礫の中で二本の剣を構えたサイガの姿。

 

 黄金の竜の鎧が光を放っている。

 

「・・・今度はお前の番か?」

 

 その剣がモノリスみたいなやつに向けられる。

 

「ぐうう・・・お前も確か赤龍帝の幼馴染だったか。」

 

「そうだけど?」

 

 モノリスみたいなやつの驚きは何故か俺の方へ。

 

「剣崎といい、お前といい、どうしてお前の周りには非常識な人外ばかりが集まってくる!!?まともなバトルファイトが行えないではないか!!」

 

 そんなの俺が聞きたいわ!!

 

その前に俺の街で勝手にそんな物騒な事を起こさないでくれ!!

 

 ああもう!!どいつもこいつもやりたい放題やっているな!!

 

「アギトとして、そしてドラゴンとしての強者を呼び寄せる特性が誰よりも強い結果だろう。全くこの街にいると退屈しないで済むよ。」

 

 そして、そんな俺の前にヴァ―リが現れる。

 

 そっちは退屈しないというけど、その分こっちはツッコミばかりで疲れます。

 

「さて、お互いにほぼ力は使っていない。こんな状況だからこそ・・・手合わせをしてもらうよ。」

 

「・・・・・・。」

 

 ヴァ―リの裏切りはアーシアより聞いている。

 

 だが・・・その裏の事情もだ。

 

「どうしてもここで戦うのか?そのまま撤退した方がいいんじゃ?」

 

「むしろ今がいい。信頼を得るためにな。こっちの都合・・・彼女より聞いているだろ?」

 

 向うもアーシアより事情を知っているという前提で話にきてやがる。

 

 こいつ・・・良い性格していやがるぜ。

 

 だが、なんか気が合う。

 

「・・・いいぜ。一度お前とは戦ってみたかった。」

 

「ありがたい。こんな状況とは言えお前とようやく手合せができる。」

 

 心底嬉しそうなヴァ―リ。そんなに俺と戦いたかったのかよ。

 

「こっちはそんな戦闘狂じゃねえがやるからには本気でやるぞ!!」

 

「フッ・・・それは嬉しいね。我が生涯のライバルとなる者よ!!」

 

 お互いの身体から闘気が噴出される。

 

―――――おっ・・・お前ら。自棄にやる気だな。

 

―――――なんか俺達よりも燃えているよな?

 

 むしろ俺達の中の二天龍達がびっくりするくらいに俺達はヤル気満々だった。

 

――――まあ、殺し合う関係というよりこれって・・・。

 

―――――互いに高め合う良い相手を見つけたという意味かな?むしろスポ根に近い物を感じる。まさに好敵手。強敵と書いて「とも」と呼ぶ間柄。

 

―――――ヴァ―リはそう言う相手を渇望していたから。そう言った意味でも感謝だわ。

 

―――――主のためになら俺達はどこまでやりまっせ!!

 

―――――運命の出会い・・・これもまたおもしろい。

 

 俺達の中から契約モンスターズ達が一気に現れやがった。

 

「統制者。この戦いは手出し無用。巻き込まれたくなければ、今のうちに退散するといい。」

 

「・・・分かった。その言葉に甘えさせてもらおう。アンデット共を退散・・・って、ビートルアンデットとスパイダーアンデットが!?」

 

「こいつは封印させてもらうぞ・・・。」

 

 剣崎さんが満身創痍の状態で倒れたビートルアンデットとスパイダーアンデットにカードを投げつけ、そのカードに吸い込まれて封印する事ができた。

 

 アンデットはこうやって倒すのか。

 

「ぐっ・・・よりによってカテゴリーAを・・・。」

 

 悔しそうに唸りながら統制者は消えていく。

 

「サイガ・・・お前も同じだ。」

 

「安心して、そんな野暮なことはしない。騎士としても一騎打ちを邪魔することはしない。フリード・・・君はどうする?今の君なら邪魔しないと思うけど?」

 

 鎧を解除したサイガは苦笑している。

 

「私は見届けさせてもらいますよ!!あなた達の戦いは見ていて飽きないですからねえ。」

 

「そうか。ならこっちの戦いは後日にしよう。」

 

「ええ。私もまだまだ強くなるので楽しみにしてください!!」

 

 フリードの奴・・・何かふっきれているな。

 

「ポルム、キリエさん、ハルトに朱乃。このフィールド全体に結界を張りなさい。私達は結界の外から見守るわ。」

 

 それを見た部長は告げる。

 

「はやくしなさい!!アギト、それも二天龍を持つ二人の激突は何が起こるか分からないわ!!イッセ―の壊滅的な破壊力をヴァ―リも持っていると考えるべきだわ!!そんな破壊の権化と言える二人が激突したら・・・。」

 

 あの・・・壊滅的な破壊力や破壊の権化って流石に言い過ぎですって!!

 

 その言葉に皆が顔色を青くして必死に準備始めたし!!

 

 みんなそこは否定してくれ!!

 

『お前のコカビエルを倒したファイナルベントを見たら誰だってそうなるわ!!』

 

 えーと、あの隕石落下みたいな必殺キックのことでしょうか?

 

 いっ・・・いや、あれは例外だって!!あんな無茶苦茶な一撃なんてそう何度も・・・。

 

――――悪いが相棒。あいつらの言うとおりだ。

 

――――あなたはすでに人間核弾頭と言っていい存在になっているのよ。

 

 何それ!?そんなに危なくなんてないやい!!

 

―――――現実を見ようよ。必殺技が隕石落下と同じ威力の時点で。

 

・・・・・・確かにそうかも。

 

「この一帯だけ空間を切り離す。こっちも二人の戦いは見てみたかった。データもとるから、みんなはサポートよろしく。でもね、ヴァ―リ。いきなりなのは流石に困るよ!!貸し一つだぞ。まったく、お前達の戦いの被害を修繕する身になってくれ!!」

 

「フッ・・・そんなお前だから信用している。あとで埋め合わせはやらせてもらうよ。」

 

―――――フィールド。

 

 ハルトがある指輪を発動。

 

「・・・これでも万全とは言えないのが怖いよ。だが、まあ・・・遠慮なくやりたまえ。」

 

 まあ、これで遠慮はいらねえか。

 

「なら最初はこれでいこうか?結界の強度もはかるために。」

 

 ヴァ―リはコブラが描かれたデッキを取り出す。

 

「いいぜ。」

 

 俺も竜が描かれたデッキを出す。

 

『・・・変身!!』

 

 そして俺達は変身する。

 

 俺は龍騎。

 

 ヴァ―リは王蛇に。

 

 そして互いにカードを装填。

 

――――Sword Vent!!

 

 俺は二本のドラグセイバー。

 

 むこうは螺旋のようにねじ曲がった刀身を持つ剣・・・ベノサーベルと紅い尻尾の様な鞭――エビルウィップを召喚。

 

 俺達は互いに二刀流でまずは手合わせをする事になった。

 




 サイガ・・・これで紋章は一つという恐ろしさです。

 ここからサイガは二刀流が基本となります。ある意味夢の二刀流。

 そして・・・いよいよヴァ―リとの戦闘開始。

 原作と違うのは、二人はただ純粋に戦いたいと思っている点。

 その結果・・とんでもないことが起きます。


 連続投稿まだ続きます。 


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紅のアギトと白のアギトです。

 二天龍なアギト激突。

 ここで原作崩壊確定のとんでもないことが起きます。

 後・・・前々からリクエストがあったことをイッセーにやらせています。


 


SIDE アザゼル

 

 さて、俺達は二体のアギトの対決を高みの見物としゃれこんでいた。

 

「ねえ・・・何で裏切ったはずなのに君たちは仲良く御茶を飲みながら見ているのかね?」

 

 隣ではサーゼクスの奴が呆れた様子を見せている。

 

 まあふっ飛ばされたハドラ―も一緒にこっちにきて戦いを見ているのだから仕方ない。

 

「がはははははは・・・お主ほどの男なら俺達の目論みは分かっているはずだが?」

 

「・・・はあ。そうかお前達、わざと渦の旅団に入るつもりだな。スパイとして。」

 

 サーゼクスも流石に分かったか。

 

「中々大胆な事をしますね・・・。」

 

 ミカエルの奴も復活したらしい。

 

「お前さんはもう少し寝ておけ。」

 

「そうも言っていられませんよ。何しろ二体のアギトの激突は滅多に見られる物じゃありません。」

 

 ミカエルの奴も物好きだよな。

 

 だが、二体のアギトの激突・・・俺もそう何度も見れるものじゃない。ましてや二天龍の力を持つこいつらが・・・。

 

 今は契約者の禁手化で二人は激突している。

 

「お前達はどうしてあえてあの組織に潜入する?」

 

「あの組織で倒すべき男がいる。最悪な男が一人いてな、そいつがヴァ―リの母親も殺した。俺も世話になった恩もある女性だ。それを殺したあいつと決着をつける。」

 

「・・・それが誰か、サーゼクス、お前も心当たりがあるはずだぜ?」

 

「・・・ああ。やはり彼か。備えてはいたが、当たって欲しくないと思っていた。」

 

「我々にとっても他人事じゃありませんね。」

 

 ミカエルも誰か察したらしい。

 

「・・・そうですか。あの糞ジジイが・・・。」

 

 グレイフィアの奴・・・結構辛辣なコメントだな。

 

「おっと・・・動き出したぜ?」

 

 今二体のアギト・・・一誠とヴァ―リは二刀流で渡り合っていた。

 

 二本のドラグセイバーのバランスの良さで立ち回る一誠。

 

 それに対してヴァ―リはベノサーベルの破壊力とエビルウィップのしなやかさを駆使してうまく攻めているのだ。

 

 二人ともアギトの本能を全開にし、まるで踊るように斬り合っている。

 

 その立ち振舞いは美しくもある。

 

 そして二人は揃って激しく打ち合って離れる。

 

「本来ならイッセ―は倍化させた一撃を叩きこみたいところだろうが・・・それをヴァ―リの半減が邪魔している。」

 

 二人の持つ力はまさに反対の力。お互いの力を打ち消し合う。故にイッセ―は強みである倍化による必殺技を封じられる形となる。

 

「さあ・・・どうす・・・る!?」

 

 そこでイッセ―の奴が動き出した。

 

 

SIDE ヴァ―リ

 

「アバン流刀殺法・・・ダブル大地斬!!」

 

「ぬぐっ!?」

 

 突然放たれた強烈な一撃に、俺は後ろにふっ飛ばされる。

 

「・・・ほう。まさかアバン流刀殺法を習得していたか。」

 

「ああ・・・サイガの奴から剣を使うのなら損はないといってな。しかも拳でも出来るように研究中だ。思ったより接近戦で使えるぜ?」

 

 彼はとことん俺との因縁が深い。親父殿と対峙したアバン流まで使い始めたか。

 

「だったらこっちもつかわせてもらおうか・・・閃熱呪文(ベギラマ)!!」

 

「ぬお!?あいつらの世界の呪文・・・海波斬!!」

 

 左手から放った熱線を慌てて、剣で切り払うイッセ―。

 

 こちらも親父殿からあの世界の呪文を習得させてもらっている。

 

「まだまだ・・・。」

 

「くそ・・・お前卑怯だぞ!!」

 

「何をいう?せっかくルシファーとしての厖大な魔力を持っているのだ。それを生かすのは普通だろう?そっちが剣を覚えたのと同じようにこっちは色々な呪文、魔法の類を使えるのだよ。」

 

 今代の赤龍帝は魔法の類の才能は乏しいと聞いている。

 

 だが、それをカバーする方法を見つけているのは嬉しい物だ。

 

「だったら、これを使ってみるか。」

 

―――――FINAL VENT!!

 

 俺は必殺を兼ねて、ベノを使ったファイナルベントを決めようとしていた。

 

「だったらこっちもだ!!」

 

――――FINAL VENT!!

 

 それに対して向うもクレアを使ったファイナルベントを発動。

 

 しかも・・・。

 

―――――BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!

 

 瞬時の倍化つき。

 

 だが、俺の攻撃はすでにあいつに触れている。

 

 俺の半減の力は触れることから攻撃を当てるというだけに条件が進化している。

 

――――――DIVIDEDIVIDEDIVIDEDIVIDE!!

 

 それを利用して半減させつつこっちの威力に加える。

 

――――ぐっ・・・だが、必殺技の瞬間の倍化の度合いが凄まじい。威力を殺しきれん。

 

 彼は必殺技発動の時、凄まじい勢いで瞬時の倍化を行っている。こちらの半減が追いつかないくらいに。

 

 なるほど・・・これは壊滅的な破壊力になるわけだ。

 

「問題ない。こっちの威力は十分あがっている。」

 

 それでも半減した力をこっちに加えることで対抗できる。

 

 そして、二つのファイナルベントが発動。

 

 ドラグレッタ―とドライクのブレスを受けたキックに俺のベノの毒液とアルビオンのブレスが加わったキックが激突。

 

 それの衝突の余波で互いに吹き飛ぶ。

 

『ぐっ・・・・。』

 

 その余波で互いの禁手化が解ける。

 

 元々制限時間も近かったのもあるが・・・。

 

 しかし、凄まじい破壊力だね。こっちが防御のためにファイナルベントと半減をつかうことになるなんて。

 

「へっ・・・今度は二天龍としていこうか?」

 

「上等。」

 

 次は通常の禁手化で戦う事になった。

 

 

 

 side イッセ―

 

 通常の禁手化。厄介なのはヴァ―リの速さだった。

 

 眼にもとまらぬ速さで近づき、相手に触れる事が前提。

 

 だが、速い敵に関しての対策はすでにできている。

 

 ヴァ―リが右腕から出した剣と俺の左腕から出したアスカロンが激突する。

 

「ほう・・・素早さでかく乱する程度じゃ倒せないか。危うくカウンターをもらうところだった。それがお前の戦い方か。なるほど、これは厄介だ。」

 

「それはこっちのセリフだ。」

 

 だが、相手は厖大な魔力を持っている。

 

―――爆裂呪文(イオラ)!

 

 とっさに放った爆発する光の球が俺のカウンターを邪魔する。

 

「・・・さあて、喰らってもらうか。」

 

 そして、両手が空く事であいつはより強力な呪文をバンバン放ってきている。

 

 両手から閃熱が走り、上空で厖大な閃熱エネルギーの渦ができる。

 

「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおい!!」

 

 両手を合わせ圧縮させ、奴は放つ。

 

「行くぞ・・・極・大・閃・熱・呪・文(ベ・ギ・ラ・ゴ・ン)!!」

 

 厖大な閃熱エネルギーが解放され、こっちに向けて放たれる。

 

 かわす事が出来ずに俺はそれを防御。

 

「ぐうううう・・・。」

 

「耐えきるか。いくら鎧が熱に強くても、呆れた頑丈さだ。だが・・・これのさらに上の呪文があるとしたら・・・どうかな?」

 

 ヴァ―リはもう一度上に飛ぶ。そして、その周囲に凄まじい閃熱エネルギーが渦を巻く。

 

 さっきのベギラゴンが両手の間の道を通っているのに対して、それはヴァ―リの周囲で無数の厖大な流れがヴァ―リの両手を中心に渦を巻いているのだ。

 

――――――どうする?あんなのを喰らったらいくら相棒でも・・・。

 

 必殺技を放ちたくてもあいつの半減の力で威力が大幅に落ちてしまう。

 

 とてもあんな非常識な呪文を相殺できるような・・・。

 

 そこで俺の眼はヴァ―リの翼から力が出ている事に気付く。

 

「なあ、半減させた力はすべてあいつの力になるのか?」

 

―――――いや、流石にキャパシティの限界がある。故に、余分な力は翼から解放されるが?それがどうした?

 

 ほう・・・、なら良いこと思いついた。

 

「・・・なら・・・これしかねえだろう。」

 

 俺はアギト・アスカロンを腕から取り出し、逆手に構える。

 

―――BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!

 

「・・・なんと!?それを使えるというのかい?」

 

「一応、空の技も成功させたんでな。俺からしたら必殺技ってこれくらいか?」

 

「くははっはははははははは!!いいねえ!!いいねえ!!だったら、こっちも全力を持って応えるよ。いくよ?」

 

 それを集束させたうえで両腕を合わせて圧縮。周りの厖大な閃熱と共にあいつは放つ。

 

「ベギラゴンをさらに強化した究極のギラ系呪文・・・。受けてみるが良い。」

 

―――――真・極・大・閃・熱・呪・文(ギ・ラ・グ・レ・イ・ド!!)

 

 放たれた厖大な閃熱エネルギーは先ほどの十倍以上!!

 

―――――なっ・・・なんて呪文を・・・。

 

 中にいるドライクは戦慄しているが・・・。

 

 俺はこの瞬間を待っていた。

 

 着弾し、グランドが厖大な閃熱で溶岩のようにドロドロに紅く溶けたクレーターと化す。

 

 だが、俺はそこにはいない。

 

「・・・・!?」

 

 テレポテーションであいつの上を取ったからだ。

 

――――アバンストラッシュ!!

 

 それであいつの上から逆手に持った剣を叩きこもうとする。

 

「フッ・・・あれをそんな形でかわすか。あれは結構魔力を使うのでかわされるのは残念でしかたないのにな。」

 

 だが、ヴァ―リはそれを読んでいた。

 

 右腕の剣に厖大な閃熱エネルギーと燃えるような熱いエネルギーを纏わせていたのだ。

 

――――超魔爆炎覇!!

 

 俺の必殺剣を受け止めたのだ。

 

「残念。こっちも魔法剣は研究していてね。ベギラゴンとイオナズンを同時に剣に纏わせる事が出来るようになったところなんだ。今回はとっさだったからベギラゴンのみだが。」

 

 おいおい・・・それはシャレにならないぜ。

 

 ・・・でもな

 

「ニヤリ。」

 

「!?」

 

それも含めて、狙い通りだ。中々近づけなかったこいつを、これで捕まえる事が出来た。

 

 俺はあいつの翼をもう片方の手で捕える。

 

「なっ・・・何?」

 

「さて問題です。どうして俺はこのアバンストラッシュに譲渡をしていなかったでしょうか?」

 

「・・・まっ・・・まさか!?」

 

「答えは・・・お前の吸い取る力と排出する力に思い切り譲渡するためだ!!」

 

――――――Transfer!!

 

「ぐおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

 処理しきれない程の力に、翻弄されるヴァ―リ。瞬時の倍化でおまけをつけたんだ。

 

 力もかなり落ちているのもわかる。

 

――――――ぐっ・・・まさかこんな方法でこちらの力を停めにかかるとは!?ヴァ―リ離れろ!!一度体制を立て直して・・・。

 

「おいおい・・・逃がすかよ。」

 

 俺はヴァ―リを捕まえる。左腕にアスカロンを収納させた状態で。

 

「俺ってさ、確かに呪文の才能は全くないんだわ。だがな・・・。」

 

 左腕に炎が噴きでる。

 

「炎を出す事くらいはできるし、この場合はこれで十分だ。威力だけなら簡単に倍増できる。」

 

―――――BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!

 

――――――Transfer!!

 

 その左腕に倍化の力を譲渡!!

 

 それと共に炎が爆発的な勢いになる。

 

「・・・・ッ!?」

 

 その炎はただの炎じゃない。左腕に一度格納したアスカロンの龍殺しのオーラを纏わせた一撃だ。

 

 その破壊力を察したのだろう。ヴァ―リもうろたえている。

 

「これが本当の・・・。」

 

「くっ・・・爆発呪文(イオラ)!!」

 

 とっさに呪文を放つヴァ―リ。

 

「ヤケクソだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 俺の拳とヴァ―リの至近距離の爆発呪文により、大爆発が起こった。

 

 

SIDE アザゼル

 

 何なんだあいつらの戦いは。

 

 無っ・・・無茶苦茶すぎる。

 

 二人とも禁手化の鎧が粉々に砕け、吹っ飛ぶ。

 

 そこら辺に互いの鎧の破片が巻かれたのだ。

 

「くくくくく・・・くははははははははいい・・・これだよ。こっちの予想を上回るその戦いかた。そして根性。どれをとっても素晴らしい。」

 

 頭から血を流しながらヴァ―リは笑う。心の底から。

 

「へっ・・・無茶はこっちの専売特許だ。だが・・・そっちの半減の力は厄介だな。」

 

 イッセ―も同じ様に笑う。その上で何かを拾い上げる。

 

「・・・なあ。ドライク。神器ってさ、俺達の思いに応えてくれるよな?」

 

―――――ああ・・・。

 

「なら・・・試してみないか?」

 

 その手にはアルビオンの鎧の宝玉。

 

―――――何をする気だ!?

 

「お前の力を頂くことにする。ドライク、クレア、ブランカ手伝ってくれ!!」

 

――――手伝えって・・・あなたまさか!?

 

――――ぐはははははいいだろう!!やってみろ。

 

―――――出来ると思うよ。アギトなら、イッセ―なら常識を破壊できる。

 

 イッセ―の奴はその宝玉を左足に埋め込んだのだ。

 

「うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 そんな事をすれば、普通なら死ぬ。半減の力と倍化の力は全く反対の力なのだから。

 

 だが・・・俺はアギトと言う存在を完全に舐めていた。

 

――――Vanishing Dragon power is taken !!

 

 あいつは・・・たやすく反対の力を取り込みやがったのだ。

 

 左足が白くなり、そしてドラゴンの翼をたたんだような姿になる。

 

――――そっ・・・そんな馬鹿な!?

 

 アルビオンが驚いている。

 

「神のシステムのバグをついた。ということか。」

 

「ああ。そして、俺達アギトはそのシステムそのものに干渉できる。故にバグと言う抜け穴があるのなら、そこから俺達の力でシステムそのものを書き換えられるとな・・・。強いているなら白龍皇の足具(ディバイディング・ギア)と言うべきか?まるで渡のキバの鎧みたいになったがな。」

 

 その言葉と共に足の翼が展開する。

 

 通常形態の渡のキバの鎧の右足と同じ様な状態だ。

 

・・・・うわ。こいつら本当にヤバい。

 

 今まであった神器に対する常識を根本から破壊しやがった。

 

――――アルビオン・・・俺はこの相棒と付き合って学んだよ。どんな馬鹿も貫き通せば可能になるとな!!これだけ色々と無茶苦茶な相棒と一緒に入れる事を誇りに思うぞ!!

 

 ドライクの言葉にアルビオンは固まる。

 

「はははははははは・・・そうか。そうして君は半減の力を使え、対抗することができるようになったということか。アルビオン、頭が固いままではいけないようだぞ?」

 

 ヴァ―リの言葉にアルビオンは少し戸惑いながらも、すぐに悟ったようにいう。

 

――――――その通りのようだな。だが、どうする?相手の倍化は脅威だぞ?

 

「そんなの決まっている。」

 

 ヴァ―リの手には・・・今度はドライクの鎧の宝玉だと!?

 

「アルビオン。赤龍帝に出来て白龍皇ができない・・・なんて言わないよな?」

 

―――――――フッ

 

 アルビオンは悟ったように噴き出す。

 

――――――ふははははははは!!ア―ハハハハハハ!!そうだな・・・それもそうだ!!我もこのような常識外の主を持っているのをすっかり忘れていたよ。

 

「常識外とは言ってくれる。」

 

―――――その通りだろう。だが、このままでは負けるのは間違いない。なら我らも次のステージに進む事にしよう。見るがいいドライク!!皆・・・手伝ってくれ。

 

 まっ・・・まさかあいつ・・・。

 

 ヴァ―リは左腕に宝玉を押しつける。

 

「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

――――Welsh Dragon power is taken !!

 

 そして、あいつの左腕が赤くなり、そこから紅い龍の翼が現れる。

 

「ふふふふ・・・意外と簡単だったじゃないか。こっちは赤龍帝の翼(ブースデット・ウィング)と名付けさせてもらうぞ。」

 

『・・・・・・・。』

 

・・・・・もうヤダ。このアギト共。

 

 どうしてこう神器の常識をこいつらはやすやすと破壊するのかな!?

 

「アザゼル。お前が頭を抱えるというのは余ほどの事態なのか?」

 

「当たり前だ!!あんなの本来なら寿命が縮むほどの対価が必要だ。それで十分機能するかどうか疑問なくらいにな。だが、あいつらはノーリスクでそれをやりやがった!!頭抱えて当然だろうが!!」

 

 おそらくこんな事態、前代未聞だろうな。

 

 あの様子だと互いの力の行使すらノ―リスク。おそらくそれぞれ倍化と半減のみしか使えないだろうが、それでも十分な脅威だ。

 

「気をつけろ、わかってはいたがあいつらはただの二天龍じゃねえ。互いの力すら取り込んだ戦神の化け物だ。何処まで進化するのか想像が出来ねえ。」

 

 まさにアギト、戦神の子ってわけかい!!

 

―――BOOST!!

 

「いいね。この倍化の力。力が急速にあがってくるよ。この力で半分に出来たらどうかな?」

 

―――Half Dimension!!

 

 その音声と共にヴァ―リはこの学校その物を半分にしやがった!?

 

 グランドや校舎ごと半分。しかも俺達はあえて無傷ってすごいことを。

 

「・・・これは・・・すごい。」

 

「おい・・・ヴァ―リ。」

 

 外では・・・ああハルトがすごく怒っている。

 

 それを見てヴァ―リも気付く。やり過ぎた事に。

 

 何しろ学校の校舎その物をグランドごと半減させたからな。

 

「すっ、すまない。試してみたがここまでとは。」

 

 釈明するヴァ―リだが、その気持ちはわかるぞ。ハルトが怒るのは俺だって避けたい。

 

「そうだな。イッセ―、ヴァ―リのあれはすごいぞ。その気になれば部長のおっぱいですら半分にできるぞ。アーシアやユウナのも。」

 

 おいおい、ハルト、何でそんな腹黒い笑みでイッセ―にいう?

 

「あいつは半分にするのが大好きだからな。お前の大切な物と聞いて半分にするだろな・・・。お前の大好きな・・・。」

 

 そんな事をして・・・・。

 

「なんだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!?」

 

―――――BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!

 

 あれ!?何でそれで激昂し、パワーが爆発的にあがるの!?

 

 あまりに唐突な現象にヴァ―リですら驚いている。

 

「なんだ?ハルト!!お前何をした?」

 

「イッセ―にとっておっぱいは宝物なんだ。故にそれをお前が半分になるといっただけだ。」

 

「俺はそんなつまらないものを半分にするつもりはないぞ?」

 

「誰がつまらないだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?俺にとっては命よりも大切なものなんだぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

――――BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!

 

 ヴァ―リの言葉にさらに激昂して力が上がった!?

 

「こっちの手間を増やした罰だ。煩悩の塊であるこいつの怒りはちょっとすごいぞ?」

 

「それだけで・・・ここまでパワーが上がるというのか?」

 

 ヴァ―リは表情をひきつらせている。

 

―――――おいドライク!!お前はどういう主にと共にいる!?色々と無茶苦茶だぞ!?

 

――――そんなのこっちが聞きたい!!はあ・・・もうこいつは立派なおっぱいドラゴン。いや、おっぱいアギトだ!!ちくちょう!!

 

 やけくそ気味のドライク。

 

――――まあ・・・頑張れ。主に振り回されるのはこっちも同じだ。

 

 それに対してアルビオンが優しい。

 

 それにしても、凄まじい龍の気。

 

 いや・・・なんて馬鹿で、なんてすごいアギトだ。なるほど、確かにこれは歴代最強にして、最も危険な赤龍帝だわ。

 

「はは・・・あははは・・・。」

 

 もう笑うしかできん!!

 

 何が飛び出してくるかまったくわからん。

 

 んん?イッセ―の左腕から何かが出てくるぞ。

 

 あれって・・・アスカロンだと?

 

 イッセ―の怒りに呼応するように胎動している。

 

 そして・・・。

 

「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 あいつはアギトに変身する。だが・・・その過程が少し違っていた。

 

 黄金、赤、青、緑。そしてその四つのてんこ盛り。

 

 それを経て・・・。

 

―――――Welsh Dragon over drive !!

 

ドライクの禁手化が発動。

 

 そして現れたのは紅のアギトだった。

 

 見た目は基本形態である金のアギトを紅に染めたような姿。それに禁手化の手足のパーツと緑の宝玉が禁手化と同じ位置についている。

 

 そして、尻尾もあり、背中のブースターも付いている。

 

「そうか・・・これがアギトの進化。神滅具のプログラムを自力で書き換えたことで、禁手化を取り込みやがった。」

 

 俺達は、アギトの新たな進化のステージに立ち会う事になった。

 

 本当に・・・何が飛び出してくるのかわからん。

 

 

 

 SIDE イッセ―

 

「・・・新しい変身?」

 

―――お前な・・・おっぱいで進化ってどういう了見をしている!?

 

 そんなの知るか!?

 

 ドライクさん、俺だって戸惑っているのですよ!?

 

「・・・本当に驚かせてくれる。新たなアギトへの進化。だが、やはり俺達は相当影響しあう関係にあるらしいな。」

 

 ヴァ―リの右腕の剣・・・ミッドナイトもまた胎動していた。

 

「それにライバルである君に先を越されるのも・・・こっちとしても腹が立つのでね!!うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

―――Vanishing Dragon over drive !!

 

 その言葉と共にミラージュアギトであったヴァ―リもまた進化を果たす。

 

 それは俺と同じ進化。

 

 アギトがアルビオンの鎧を取り込んだのだ。

 

 背中の翼が光る。

 

「君のその姿は紅のアギトというべきだろうね。そして、そっちが紅なら、こっちは白・・・そう白のアギトというべきか。」

 

――――お互いとんでもない主をえたものだな。頭が痛い。

 

―――――ああ。これで憎しみ合う関係じゃないというのが不思議で仕方ない。

 

「ふふふふ・・・。」

 

 思わず笑い声が漏れる。

 

「ふはははははは・・・。」

 

 それはヴァ―リの奴も同じ様子だった。

 

『アーハハハハハハハハハハッ!!』

 

 お互いに歓喜していた。これほどまでに競い合える相手がいたとは。

 

「本来なら覇龍を使ってみてもいいが、今は無粋だろう。今の状態はなったばかりなのでね。何が起こるのかわからないのだよ。」

 

――――自重してくれて助かる。予想もつかない進化、お前は覇龍を使いこなせる猛者だが、今の姿にもう少し慣れてくれてからがいい。

 

 覇龍だと?

 

―――――そっちも大概ではないか!!化け者め。こっちはそれを行ったらとんでもない事になるというのに。

 

「へえ・・・そうか。それはますます楽しみだ。」

 

 どうやらまだこの神器には知らない何かがありそうだ。

 

 俺達はゆっくりと歩き出す。

 

「試させてもらおうか?」

 

「そっちこそ!!」

 

 そしてお互いに拳を繰り出す。

 

 お互いに倍化も、半減も使っていないのに・・・。

 

 拳の衝突だけで周囲の地面に大きな亀裂が走った。

 

『うお!?』

 

 そして、俺達は間合いを取り、またお互いに拳を繰り出し合う。

 

 ただの肉弾戦。

 

 それなのには破壊力は以前とはケタが違う。

 

「・・・すばらしい。そうなるとこれも試してみたくなるな。」

 

 お互いに離れた瞬間、ヴァ―リの足元にアギトの紋章が現れる。

 

「おおおおおおっ!!」

 

 俺の脚元にもアギトの紋章が現れる。

 

 左足のディバイディングギアも発動。翼が展開される。

 

「いいねえ。だったらお互いの必殺技を試し合おうじゃないか!!行くぞベノスネ―カ―、メタルゲラス、エビルダイバー、アルビオン!!」

 

『おおう!!』

 

―――――Unite Vent!!

 

 その言葉と共に三体のミラーモンスター、ベノスネ―カ―とメタルゲラス、そしてエビルダイバーが合体。

 

 一体の巨大で凄まじい力を発するモンスターが誕生する。

 

「行くぞ・・・獣帝ジェノサイダ―!!」

 

 その隣にアルビオンが並ぶ。

 

「・・・そんなのありか!?」

 

 合体して誕生したジェノサイダ―。

 

「・・・二天龍クラス何処じゃないぞ。下手したら龍神クラスの・・・。」

 

 そんな怪物を出現させるなよ!!

 

 こんなのどうやって対抗すれば・・・。

 

「ならこちらも使うまでよ。いいわね、ブランカ?」

 

「うん。受け取って、イッセ―。」

 

 その言葉と共に俺の手に磁石が描かれたカードが現れる。

 

 このカードは・・・。

 

 だが、本当にいいのか?お前ら?

 

――――遠慮はなしよ。

 

―――姉様とならむしろ歓迎!!

 

「じゃあ・・・こっちもいくぜ!!ドラグレッタ―、ドラグブラッカ―そして、ドライク!!」

 

『おおう!!』

 

――――Unite Vent!!

 

 そのカードを装填させると同時にクレアとブランカが合体。

 

 赤と黒が混じり合い、真紅の強大な大きさの龍が誕生する。大きさは個々のクレア、ブランカの三倍を超える。王冠のような物をかぶるそれは・・・まさに竜の女帝。

 

『我が名は無双龍帝・・・ドラグカイザー!!我が力、活目するがいい!!』

 

 その咆哮が辺りに轟く。その咆哮だけで大気だけでなく地面すらも揺れた。

 

「ふふふ・・・これは凄まじいな白いの。」

 

「お互い、すごい嫁を貰った物だ。」

 

 実体化した二天龍が軽く語らう。

 

「さあ・・・行こうか。互いの全力全開のファイナルベントを。」

 

「いいぜ?どうせこの姿は長くは持たねえ。すごく疲れるよな?」

 

「違いない。こっちも修行のやり直しだよ。だが・・・その前に現時点での最強の一撃を試させてもらおうか!!」

 

――――FINAL VENT!!

 

 俺達は揃ってファイナルベントを発動。

 

 それと同時に・・・。

 

――――BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!

 

 互いに瞬時の倍化を繰り出し

 

――――――DIVIDEDIVIDEDIVIDEDIVIDE!!

 

 漏れ出た周囲の力を奪い合い、糧にしていく。

 

 その結果お互いの力が以前とは比べ物にならないくらいに爆発的に増える。

 

「ちょっ・・・ちょっと!!そんな危険な一撃を放つの!?やめてやめて!!いや止めなさい!!あなた達闘うたびに破壊力が!!」

 

「うわ・・・まてまてまてまてまてまてまてまてまてまて!!そんなの結界が持たない!!キリエさん結界の強化を急いで!!」

 

 部長が顔色を青ざめ、そしてハルトが急いで結界の強化を指示する。

 

『行くぜ!!』

 

――――――――――EXPLOSION!!

 

 お互いに吸収し、高めた力を全部解放!!

 

 俺達は飛び上がり渾身の力を込めたキックを放つ。

 

 ドライクのブレスとドラグカイザーの放つ太陽の如き超高熱のエネルギー球を受けたキックを繰り出す俺。

 

 それがアルビオンのブレスとジェノサイダ―が放ったブラックホールを受けたキックを繰り出すヴァ―リと激突する。

 

 その瞬間・・・。

 

 辺りの景色が真っ白になった。

 

 

 

 




 さて・・・ここでもやりすぎました。

 これがこの二人の新たな進化、赤と白のアギトです。

 それぞれ禁主化の力を剣の力で取り込んだ結果起きた異常事態です。

 その上でのユナイトベントの初披露。

 もう・・・破壊力がどこまで上がるのかこっちも想像出来ず。

 連続投稿・・・あと一話だけ続きます。


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 激闘の後の再会と希望です。

連続投稿最後の話しです。

 この世界でのヴァ―リチームは大変増強されております。

 その一端がここで明らかになります。

 どの作品とのクロスが分かりにくいキャラもいると思いますので、また近日中にプロフィールを更新させたいと思います。


 これが終われば後はエピローグのみです。

 


SIDE アザゼル。

 

 今起きた事を正直に話すぜ?

 

 二体のアギトの必殺技の激突に結界が耐えきれなくなり、まるで間近で核爆発をみるかのような凄まじい爆発と衝撃があちこちに広がりやがった!!

 

 俺達は全力で防御。

 

『うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?』

 

 もう皆必死だったぜ。必死でその破壊の嵐を耐えたぜ。

 

 そして耐えきった後には何も残っていなかった。

 

 焼け野原だけが広がっていやがる。

 

「あははは・・・はははは・・・もうだめだ。こいつらの破壊力は何処まで上がるの?このままじゃ・・・こいつらの必殺技で世界が滅ぶわ。」

 

 ボロボロのリアスが座り込みうつろな笑いを上げるし。

 

 ってか、爆心地近くにいたのにその程度で済むお前も十分すげえぞ!!?

 

「・・・お前達・・・やり過ぎという言葉を知らないのかな?!かな!?かなぁ!?」

 

 変身を解けた二人に対して激怒しているハルトの姿。

 

 彼もボロボロだが、その程度で済んでいる。

 

『うごごご・・・ごっ・・・ごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?』

 

―――ダブル。

 

 ハルトは分身という荒技を使い変身した状態で二人に同時に総督殺しをかましている。

 

「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」

 

「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

「ハルト・・・とりあえずこの二人をそのまま落として。これ以上戦わせるのは危険よ。」

 

「俺もそう思う。」

 

 リアスの言葉は賛成だ。

 

 もうこいつらをこれ以上戦わせるな!!

 

 こいつらは戦いの相乗効果でとんでもなく強くなりやがる。しかも厄介な事に特に破壊力が著しい。

 

 おそらくこの場にいる皆はそれで心を一つにしている!!間違いないね!!

 

 学校の外で待機していた三勢力の軍勢達もみろ!!

 

 あまりに常識外なことに大半が腰抜かしていやがる。

 

 そして全員が唖然茫然していやがるし。

 

 無理もないがな。

 

「それ以前にもう戦えないって!!」

 

「その通りだ!!あの姿にまだ慣れていない故、スタミナ切れになっている!!」

 

 それに対して二人は先ほどの激闘はどこにいったのか、共に必死になってもう戦う意思はない事を共にアピールしている。

 

「はあ・・・そうかい!!まったく、学校が消し飛んでしまったじゃないか!!」

 

 辺り一面更地。学校の外側にも結界を厳重に張っていた。キリエの結界だ。

 

 それが無ければ周囲にまで被害が及んでいただろう。

 

「ハドラ―、ヴァ―リの新たな訓練を考え直さないといけないみたいだ。サーゼクス!!例の伝説のトレ―ナ―と至急相談したい。天道の奴も頼む。あの人間核弾頭共のあの破壊力を制御させないと危険で仕方ないぞ。」

 

 人間核弾頭。

 

 それが比喩ではなく、そのままの意味となっているのは大問題だ!!

 

「すまないな。うちの息子が・・・。」

 

「それに関してはこっちも謝らないといけない。こっちの身内がすまない。」

 

「二人とも・・・あの子たちが強大な力を持ってしまったが故です。幸いなのは二人とも悪ではない。善の心をもっているということです。」

 

 ミカエルの言うとおりだ。

 

 だが、そうなると怖いのはこいつら以外の神滅具を持ち、なおかつ悪意を持つアギトがいた時だ。

 

 他の神滅具の行方は分かっていない物が多い。

 

「そろそろ向かわせてもらうぞ?」

 

「おう。何かあったらすぐに言え。盟友。」

 

「ふっ・・・ああ。お前さんを裏切ることはしないさ。」

 

 ハドラ―は地面に倒れ込んだヴァ―リの元に向けて歩きだす。

 

 俺も続く。

 

 二人とも消耗しきっており倒れたまま起きあがってこない。

 

「こっ・・・今度はあの姿に慣れてから再戦だな。やりすぎた。」

 

「分かった。これは凄まじいが疲れる。もっと鍛えないといけないな。」

 

 こいつらまだ強くなる気だぞ。

 

 その会話に皆が表情をひきつらせるのは仕方のないことだ。

 

『ヴァ―リ様!!』

 

 そこに、突如四人の黒いフードを纏った少女達がやってきた。

 

 

 

SIDE イッセ―

 

 ヴァ―リの傍に現れたのは美少女だった。

 

 青白い髪をした少女だ。その髪はまるで鬼火のように淡い光を発しながらゆらめいている。

 

 その髪を紅いバンダナみたいなものでとめている。

 

「疲労困憊じゃないですか!!」

 

「なんだよロックブーケ。今俺はいい気分なんだ。」

 

「・・・なんでそれだけボロボロでいい気分なのです?」

 

 あきれ果てるロックブーケ。世話の焼ける弟気分なのだろう。

 

 あの姿はまさに姉であった。

 

「はあ・・・ある意味ヴァ―リ君は青春しているというわけだ。」

 

 そこにもう二人現れる。

 

「あーあ。でもあんたらしい、と言えばそうなのも。」

 

 その二人がフードを取ると・・・。

 

「・・・・・・・。」

 

 何故かハルトが目を点にしていた。

 

「マユちゃん?」

 

「ふふふ、久しぶりですハルトさん。」

 

 そして同じ顔がもう一人。

 

「じゃっ・・・じゃあ、隣にいるのは・・・メデューサ!?」

 

「半分外れです。私はその記憶を受け継いだ正真正銘のミサです。」

 

 二人は双子だったらしくそっくりだった。マユの方は髪をポニーテイルにし、ミサの方は髪をおろしているので、それで見分けがつく。

 

「・・・・・・ヴァ―リ。これってどういうこと?」

 

 ハルトはヴァ―リを睨みつける。

 

「マユ、ミサ、お前達・・・ハルトの知り合いか?」

 

「えっ・・・ええ。このベルトを貰った時、まさかとは思いましたが。」

 

「まあ・・・色々とありまして。」

 

 ヴァ―リの奴は今初めて知った事らしい。

 

「・・・はあ。あとで事情を聞かせてくれ。とりあえずやり過ぎた馬鹿の片割れをとっとと回収してくれ。」

 

 ハルトの指摘に、マユとミサは辺りを見回し。

 

「・・・あとで修繕を手伝います。」

 

「私も・・・。うちのヴァ―リが本当に申し訳なくて。」

 

「・・・ブフアッ・・・助かるよ。前世と同じくいい子で助かった。」

 

 涙目のハルト。相当二人の気遣いが心に染みたようだ。

 

「なあ・・・闘う場所を今度は考えようぜ。」

 

「そうだな・・・。流石に申し訳なく思えてきた。」

 

 俺とヴァ―リは流石に反省することになる。

 

 俺達って・・・すごい領域にいるみたいだ。

 

「おいおいヴァ―リ。ボロボロじゃ・・・うわっ!?なっ・・・なんだこりゃ!?」

 

 その隣に爽やかそうな顔をした美青年が現れる。

 

「美猴か。いや・・・久々に壮絶にやったよ。」

 

「・・・そうかい。だが、お前やり過ぎだぞ。俺も戦闘狂に近いものはあるがどうなったら焼野原になるのかね?」

 

「強さを求める者としていい顔をしている。さらなる強さを得たのか?」

 

 その隣に茶髪の気の強そうな青年が現れる。

 

「戒斗・・・確かにその通りだ。生涯のライバルをついに見つけてね。その結果、お互いの力が想像以上に高まってしまったよ。お前もそんな存在がみつかればいいな。」

 

「お前な・・・。過剰なまでに強くなるのも問題だな。」

 

「なんだ・・・お前らは?」

 

「闘闘勝仏の末裔、いや・・・お前が分かりやすいところの孫悟空の子孫だ。美猴って奴は。だが・・・戒斗といったな?お前は一体・・・。」

 

 孫悟空だと?すげえ奴がきたもんだ。

 

 そしてアザゼルさんの疑問に応えるように戒斗の腰に黒いドライバーが出現。

 

 その手には・・・変な錠前があった。何故かバナナが描かれた。

 

「そっ・・・その錠前。ミリキャスが持っていた・・・!!」

 

 それを見たサーゼクス様が驚く。

 

―――ロック・オン!!

 

 その錠前を腰のドライバーにつけ、日本刀みたいな物を動かすとバナナが割れ、戒斗と呼ばれた奴が変身。

 

 それと同時に頭の上にチャックが円状に開き、そこから・・・・。

 

『バッ・・・バナナ!?』

 

 超巨大なバナナが出現。それが落ちてきて、頭からかぶったのだ。

 

「バナナじゃない!!バロンだ!!」

 

 そう言いながら奴は変身する。

 

――――バナナアームズ!!Knight of Spear!!

 

 被ったバナナが展開し、肩や胴体のアーマーとなったのだ。

 

 手には突撃槍。

 

「果物で変身しただと?」

 

 ますます訳が分からん!?

 

「お前さんの変身、うらやましいと思っていたんだぜ?だが、俺もようやく見つけたんだ。運命のカードって奴を。」

 

 美猴がそう言うとともに手には・・・蜘蛛が描かれたカード。

 

「うぇ!?いっ・・・何時の間に?」

 

 それを見て剣崎さんが手を見ると二枚あったカードの内片方が無くなっている。

 

「クローバーのカテゴリーA。やっと見つけたぜ。封印してくれてありがとな。これで俺も変身できるってわけだ。」

 

 その手にはクローバーが描かれたベルト。

 

「レンゲルのベルトだと?お前・・・それをどこで?」

 

「さあってね?だが、俺はこれに選ばれたんだ。」

 

 にししと笑う美猴。

 

「お前達遅いぞ。」

 

「もう少し大人しくできないのか?」

 

 そこにもう二人現れる。

 

 一人は体格のいい優しげな青年。

 

 もう一人は漆黒の丸みを帯びたパワードスーツを言う物を着ている奴。

 

 その右腕はエネルギーカノンっていうのか?変わった奴になっている。

 

「・・・ノエルにダースか。お前達夫婦まで迎えに来たのか。」

 

「夫婦は余計だ。」

 

 って・・・まさかあのパワードスーツの中身は・・・女だというのか!?

 

 あまりにごつごつしたスーツで分からなかった。

 

「世話の焼ける奴だ。よっと。」

 

 ノエルがヴァ―リを抱きかかえる。

 

「すまないな。動くこともできん。」

 

「兄様!?それに義姉様まで」

 

「だから何故義姉なのだ!?」

 

「ロックブーケ、それはいい。それよりもサクラ、早くこの場から離脱を。」

 

 ノエルはロックブーケと言うやつの兄のようだ。

 

 だが、なんで義姉って呼ぶのか?本人のツッコミは華麗にスル―されとる。

 

「さて・・・このままこの場を堂々と去らせてもらう。」

 

「逃げられると思っているのか?」

 

 それを俺の幼馴染共が阻もうとする。

 

「押し通る準備はできている。何処からでも来い。この辺りをさらに破壊しつくされたくなければな。」

 

「そういうことだ。こっちも加減はせんぞ?」

 

 ダースとノエルが俺達の前に立ちはだかる。

 

 やっ・・・やばい。あの二人・・・半端じゃない位に強いぞ?

 

「・・・ダークサムス。いや・・・解析の結果だけど、それにあのXが加わった存在か。ある意味久しぶりと言うべきなのかな?」

 

 そこにポルムがやってくる。

 

「・・・・イッ!?きっ・・・貴様はポルム!?」

 

 ポルムを見た奴は・・・酷くうろたえている。

 

「どうやら人格あの時の君みたいだね。この世界に流れ着いたあげく、まさかフェイゾンを自力で生み出せるようになったなんてあきれ果てるよ。本当にしぶとい。・・・・・・サムスに変わって、余が直々に引導を渡してやろうか?」

 

 ポルムの声色が変わる。

 

『!?』

 

 その一言だけで、辺りに冷たい空気が走る。

 

「・・・っ・・・皆、急いで逃げるぞ!!あいつは・・・あいつだけは絶対に敵にまわしてはいけない!!」

 

 ダースは皆に必死で言う。

 

「どうした?お前がそこまで警戒するとは・・・。」

 

「いいから!!あいつは単独で銀河連邦軍、全艦隊を壊滅寸前にまで追い込んだ怪物だぞ!!しかも本人がこれ以上はやる意味がないと、途中で止めたおかげで皆が助かった位にな!!」

 

 何それ?ポルムがそんなことを?

 

「あいつを絶対に怒らせるな。滅多なことで怒らんが、一度怒らせたら文字通り宇宙規模で世界が滅ぶ!!知略、単純な力、あらゆる手段を使ってな!!」

 

『・・・お前の出身世界の軍隊を壊滅・・・。』

 

 ヴァ―リとノエルがその話を聞いて表情をひきつらせている。

 

 ロックブーケに至っては青ざめている始末。

 

「何言っているの?向うが勝手に自滅しただけじゃないか。でも・・・・・・そっちも色々とあったようだな。皆を気遣うとは。引導を渡すかどうかはもう少し見極めるとしようか。」

 

「・・・見逃すというのか?」

 

「お前の今後の行い次第だ。これでも人を見る目はあるつもりだ。」

 

・・・・おいおい。ポルムよ。お前、異世界を旅していたそうだが、相当暴れ回ったらしいな!!

 

 どんな世界か知らないが、あいつの見た目からすると相当なテクノロジーのある世界とおもうぞ!!

 

 それこそいくつもの銀河をめぐるようなSF世界としか考えられねえ。

 

 その艦隊を単独で壊滅寸前って・・・。

 

 みんながすごく驚いた目でポルムを見ているぞ。

 

「・・・ある意味今更だ。もういいだろう。親父殿も帰るぞ。」

 

 その言葉と共に黒い煙のような物があいつらを包む。

 

 それを放っているのは四人目のローブを纏っていた少女だった。

 

 紫に近い髪をした清爽な少女だった。

 

「サクラ・・・すまない。」

 

「気にしないで。プログラム確認・・・発動させます。」

 

「お前も大概だな。」

 

 そう言いながら、あいつらはハドラ―さんと共に消えていく。

 

「次会った時は互いにもっと強くなっておこう。それと・・・渡殿に伝言を頼みたい。」

 

 消えていく中、あいつは俺に伝言を頼んだ。

 

 内容は。ある意味呆れた物だった。

 

「・・・お前な。・・・でも、ありがとう。」

 

「ふっ・・・借りは返す。それだけだ。じゃ・・・少し休ませてもらうよ。」

 

 ただ一つ、あいつは変なレベルにまですさまじく律義な奴だということだ。

 

 消えながらあいつは気を失う。あいつの意地っ張りだな。疲れきっていたのに・・。

 

「あ・・・・つっ・・・つかれ・・・た・・・。」

 

 俺もまたそのまま気を失ってしまった。

 

 

 

SIDE 渡

 

 僕が目覚めた時には保健室のベットの上だった。

 

「・・・起きたか。」

 

 それを見た大牙兄さんが安堵の声を漏らす。

 

「兄さん?僕は・・・あれ?」

 

 僕の隣ではミカエル様、もう隣ではイッセ―君が寝ていた。

 

「疲れた・・・。マユちゃんとミサちゃんに手伝ってもらって何とか直った。」

 

 そして、疲れた様子のハルトが入ってくる。

 

「・・・盛大にぶっ壊したか。」

 

 そこで僕は思い出す。

 

「・・・助けられなかった。」

 

 攫われたオ―フィスちゃんを助けられなかった事に。

 

「渡・・・。」

 

「そのことだが・・・。あいつから伝言があるぜ。」

 

 そこでイッセ―が目を覚ます。

 

「ああ・・・眠い。だが・・・ここは根性・・・。」

 

 大分消耗していたのか、相当眠そうだ。そのまままた眠りそうな位に。

 

「オ―フィスの事はこっちが何とかする。任せてくれ。」

 

「えっ?」

 

「ヴァ―リからの伝言だ。友を助けてくれた恩・・・このような形だが必ず返す。だから安心して欲しいと。」

 

「・・・・・・。」

 

「ヴァ―リにとっても巧は無二の友だ。俺もそうだが・・・。彼も巧を助けるために色々としてくれた。その友を救う事が出来たのは他でもない・・・渡、お前のおかげなんだ。」

 

 あの時はただ、助けたかったからなのに。

 

「その恩。返す機会をずっと窺っていたみたいでな。安心しろ、あいつはバトルマニアだが、それと同時にすごく誠実で、律義だ。オ―フィスの事、あいつに任せてくれ。」

 

「・・・俺もあいつと拳を交えてわかる。あいつは・・・信じられる。渡、お前のやった事が、良い意味で返ってきたぞ。」

 

「・・・・・。」

 

 僕は思わず涙を流してしまう。

 

 僕のした事が・・・こんな形で巡って来るなんて。

 

「だから・・・お前もまずは寝ておけ。ガク。」

 

 そこでまた気を失うイッセ―君。

 

 どうしたらそこまで消耗を?

 

「まあ・・・手紙くらいならすぐに送れる。また用意してくれ。まったくあいつは。」

 

 まだ僕とオ―フィスちゃんとのつながりは切れていない。

 

 「・・・絶対に彼女を助ける。」

 

 僕は改めて立ち上がった。

 

 まだ、失ったわけじゃないから。今度こそ・・・。

 




 最後にちょっとした希望を残して終わりとしました。

 あとイッセーにとっての合宿はあの新たな進化の制御と持続するためのスタミナづくりが中心になります。

 本人達は気付いていませんが、あの力は下手な神なら真正面から殴りあえるほどのスペックです。

 

 連続投稿はここで終わりです。

 次回・・・エピローグで会いましょう!!


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エピローグ 神様の代理は・・・。

 お待たせしました。

 一話だけですがエピローグ更新です。

 いよいよ・・・あのイベント開始です。




SIDE イッセ―

 

 さて、俺は少し眠り、また起きた。

 

 隣では渡も起きている。

 

 そして、そこでもう一人寝かされている人がいる事に驚いた。

 

「なんでミカエルさんまで?」

 

 すやすやと寝ているミカエルさん。包帯が巻かれ、相当な怪我を負った事が分かる。

 

 でも、見たところアーシアのおかげで傷その物は治っているみたいだ。

 

 ただ、相当体力を消耗していて、その回復に勤めているという感じだ。

 

「どうもキリエさんを庇ったみたいで。」

 

 キリエさんを庇った!?

 

「・・・えっと・・・。」

 

 保健室の扉が開かれるのを聞き、俺達はとっさに寝たふりをする。

 

 入ってきたのはそのキリエさんだったからだ。ネロとクレドさんも伴っている。

 

「・・・おや?来てくれたのですか?」

 

「当然です。私を庇ってくれた方の見舞いです。」

 

「まあ、キリエなら当然だ。」

 

「私の妹を助けてくれてありがとう。」

 

 ミカエルさんはクレドさんの方も見る。

 

「そうか・・・確か、彼女には息子もいましたね。」

 

 ミカエルさんはクレドさんの方も見てそう言った。

 

 そしてネロは当然のように気付く。

 

「・・・んん?なあ・・・。何でキリエとあんたから、同じ気配がする?クレドとも似ているぞ?」

 

 俺も気付いた事だ。ネロなら当然気付く。

 

「・・・本当に、あなた達アギトは鋭い。そして・・・いい機会ですね。では昔話をしましょうか。誰も知らない話なので内密にお願いしますよ?」

 

 それに苦笑しながらミカエルさんは話す。

 

「私は・・・実はある人間と恋に落ちた事があります。」

 

『・・・えっ?』

 

 ミカエルさんほどの天使が人間と恋!?

 

「その人はとても優しい女性でした。まるで聖母のような素晴らしい方でした。天使ですらも心奪われるような・・・とても暖かくて、優しい女性でした。恋に落ちるのは一瞬でした。でも・・・私は天使、彼女は人間。儚い恋となるのは確実でした。それでも私達はわずかな時間を惜しんで・・・誰にも秘密で愛を育みました。一年以上も会えない時もありましたが、それでも私は彼女の事を忘れた事はありません。」

 

 どれだけ情熱的で素敵な恋をしたのだろう。

 

 ミカエルさんの表情が人間臭くて・・・それでいて優しい。

 

「でも・・・その彼女はある事件で死んでしまいました。私が知らないところで、魂すらも確認できず、天界でも会えませんでした。」

 

 唐突な死に別れだったのだろう。ミカエル様の瞳から涙が零れ落ちる。

 

「私はその魂を奪った存在を探しています。また彼女に会いたいと願って。おっと・・・すみません。話が脱線してしまって。」

 

「いや・・・いいぜ。だが、後でそいつが誰か教えな。」

 

 ネロが構える。

 

「キリエの命を助けてくれた礼代わりだ。そいつをぶっ倒してやる。」

 

 その言葉に目を丸くするミカエルさん。

 

「・・・そう・・・ですか。なるほど、キリエさん、あなたが選んだ人だけあって、とても暖かい方ですね。少々捻ねていて、素直じゃない部分はありそうですが。」

 

 そして、納得した様子を見せる。

 

「後はクレドさん、あなたにも素晴らしい人がいれば安心できるのですが・・・。」

 

 あっ・・・あれ?なんか会話の流れが変だぞ!?

 

 まるで身内のように・・・。

 

「おっと・・・すみません。まだ肝心なことを。私が生涯唯一愛した女性の名前はクリスティといいます。」

 

『・・・・・・・・えっ?』

 

 あれ?その名前にクレドさんとキリエさんが呆けたような声をあげたぞ?

 

「おっ・・・おい。それってお前達の母親の名前じゃなかったか!?」

 

 ネロはその名前が何を意味するのか分かっていたようだ。

 

「はい・・・。まさか、クリスティは私に隠し事をしていたなんて、少々ショックです。」

 

 ・・・・なんかとんでもない事がわかってきたぞ。

 

 渡も同じ考えに至ったのか、お互いに視線で確認し合う。

 

「今こそ名乗りましょう。クレドさん・・・キリエさん。私は・・・。」

 

 そして、ミカエル様は名乗る。

 

「私はあなた達の父親です。」

 

『・・・・・・・・・・。』

 

 その答えに三人とも呆けている。

 

 受け入れるのに相当な時間がかかっている様子だ。

 

 いや・・・その前に、とんでもない事を聞いたぞ!?

 

 キリエさんとクレドさんの父親がミカエルさん!?

 

「えっと・・・。」

 

「そっ・・・その・・・。」

 

「DNA鑑定でも間違いないようです。私も今日・・・初めて知った事です。」

 

「おいおい・・・まじかよ。その前に天使でもDNA鑑定で血縁分かんのかい!!」

 

 ネロは天を仰いながらツッコミを入れる。

 

「キリエは確かに天使みたいだと思っていた。だが・・・マジで天使だったなんて想像外もいいところだぞ!?」

 

「それだけじゃありません。あなた達の母親クリスティですが・・・かの聖人、キリストの子孫である事もわかっちゃいました。」

 

『・・・・・・・。』

 

 おい・・・頼むから俺達をこれ以上驚かせないで。

 

 あの二人が俺だって知っている位に有名なキリストの子孫だと!?

 

―――これは・・・驚きだな。だが、同時に納得もしている。そんなとんでもない存在がこの世にいたとは。あのロンギヌスにも関わる偉大なる聖人の子孫だったか。

 

「・・・はあ・・・そうかい。そういうことかい。だが・・・知らなかった事とは言え、よく名乗る気になったな。殴られる事も覚悟したのか?」

 

「・・・それに関しては・・・あなた達に何もできませんでしたから。あなた達を助けたのはネロさん・・・あなたです。本当に・・・ありがとうございます。」

 

「おっ・・・おいおい。それこそ今更だ。俺だってキリエを愛しているからこそ助けたわけで・・・。」

 

 ネロはすごく戸惑っている。まあ・・・恋人の父親が熾天使だなんて動揺しない方が可笑しい。

 

 動揺しすぎてとんでもない事を言っている事にネロは気付いていない!!

 

 キリエさんが顔を真っ赤にさせていますし。クレドさんとミカエルさんは何度も瞬きしているくらいに驚いている。

 

「自爆するなんて珍しいな。」

 

「ええ・・・。でもかなり情熱的な一面があるようで。」

 

「しっ・・・しまった!?////」

 

 顔を真っ赤にするネロ。気付くのが遅すぎる!!

 

「話は戻りますが、・・・その・・・あなた達を私の息子と娘として認知していいでしょうか?今まで知らなかったこと、突然のことですし、私も初めてのことで何をすればいいのか分からない事だらけで・・・。」

 

 うん・・・ミカエルさんも盛大に動揺している。

 

「・・・顔をあげてください。それと、私達は良かったと思います。」

 

 そこに歩み寄ってきたのはキリエさんだった。

 

「私や兄さんが愛されて生まれた事がわかりましたから。」

 

 心の底から良かったと思っている。

 

「驚きはしましたけど、また実感が無いのはお互い様です。でも、お互いにじっくりと時間はありますよ。」

 

 ・・・そうだな。キリエさんは天使、クレドさんは悪魔としてだけど、時間はまだじっくりとある。

 

「そう・・・だな。私からもそう言う形でお願いしたい。私は咎人でもあるが、それでよければ・・・。」

 

「いいえ・・・あなた達は私の自慢の子ですよ。」

 

「あ~・・・こりゃまいったな。」

 

 ネロは居心地悪そうだ。

 

「まあ・・・あんたとは色々な意味で長い付き合いになりそうだ。よろしく頼む。」

 

「ええ。あなたに義父さんと呼ばれる日を・・・覚悟しておきます。」

 

「うっ・・・・。」

 

 ミカエルさん・・・結構意地悪い。

 

 でも見ていて面白い。

 

「・・・スパーダ眷属。我ながらすげえぜ。」

 

 そこに堂々とダンテ様が入ってきた!?

 

「いや~天道の奴が例の事で連絡したいと言ってきたから、ミカエルを呼ぼうとしたんだが・・・はあ、グレゴリといい天界といい、中々愉快なメンバーを俺は眷属にしたみたいだな。こりゃ退屈はしねえな。」

 

「・・・そういうあんたが一番愉快だ。」

 

「ははははははっ!!」

 

 ネロのツッコミをダンテ様が笑っていう。すごい陽気にやってくる。

 

「・・・息子の事をよろしくお願いしますね。」

 

「ああ。安心しな。身内には優しいことで定評があるんでな。まあ・・・こっちが色々とお世話になりっぱなしなんだが。」

 

「・・・クレドさん。よければまた天界に休み来てください。癒されますよ。」

 

「・・・・ありがとうございます。」

 

「少し待遇はよくなるさ・・・新しく入ったメンツが何とかカバーしてくれるから。」

 

「おいおいおいおい!!頼むから勘弁してくれ。って、はあ・・・巧もいるからなとかなるか。出来る事があればいえ。可能な限りなんとかしてやる。」

 

「・・・はあ。私も手伝います。話し合えばきっと分かってくれますから。」

 

「おお・・・ネロ、キリエ・・・。」

 

「OHANASI。してあげますから。兄さんがお世話になっているので色々と。」

 

『・・・・・・。』

 

 なんだろう。同じ話なのに何か含まれている威圧が違う。

 

 にこにことほほ笑んでいるのに怖い・・・。

 

「ああ・・・キリエが・・・キリエまでもが・・・。おお・・・神よ!!」

 

 クレドさんの苦労は絶えない。

 

 神に祈ることでの頭痛で涙を流しながらも祈らずにはやっていられないらしい。

 

「・・・こっ・・・これが二天龍を単独で制圧してしまった娘の実力だというのか?」

 

「・・・俺だって怒らせたくないぜ。何でこんなすごい事になったのやら。」

 

 ミカエルさんの驚きに対してネロは溜息を突いて同意している。

 

 いや・・・もう熾天使最強と名乗ってもいいんじゃないですかね!?

 

「そうそう・・・。禁手化をあいつは無意識のうちにいくつも生み出していやがる。何種類の盾を生み出せば気が済むのか分からねえ。」

 

 そこに唐突に会話に割り込んでくるのはアザゼルさん。

 

「遅いから迎えに来たぜ。それと・・・まあ、何とかなりそうだな。」

 

「まったく、あなたは最初からすべてを知っていましたね。」

 

「おう。だが、お前は自分でケリをつけた。それでいいじゃねえか。」

 

 どうもアザゼルさんはミカエルさんの事情を知っていた様子。

 

「・・・はあ。ええ。そっちも本当の事を言ったらどうなのですか巧さんに。」

 

「・・・おいおい。そっちはそっちで俺の事情を知っているのかい。」

 

「そりゃそうですよ。あなたと巧さんは義理でもなんでもなく血の繋がった正真正銘の家族。あなたの孫だってことを。」

 

『!!!?』

 

 まっ・・・孫!?

 

「おいおい。俺は親父で十分だ。じいさん呼ばわりしたら歳が気になるじゃねえか。それと、ネロ達だけじゃなく、そこの二人が起きているのを知った上で言いやがったな。」

 

 あら?起きている事はばれていましたか。

 

「えっと・・・。」

 

「今の話、内密にしておいた方がいいですか?」

 

 渡の言葉にアザゼルさんは「ありがとうな」と言って

 

「・・・まあ、今は黙ってくれ。俺もいつか話さないといけないと覚悟はしている。」

 

「・・・あなたの奥さんと娘の話になりますからね。」

 

 ミカエルさんもまたアザゼルさんの事情を色々と知っているようだ。

 

「ああ・・・。覚悟はしている。わりぃ・・・俺がケリつけないといけない案件だ。あいつ、アリスと娘レディア、その夫の死についてもな。ほら・・・行くぞお前ら。」

 

 アザゼルさんはそう言って他の二人をせかす。

 

 ミカエルさんはまだ本調子ではないのかふらつきながら立ち上がり、キリエさんとクレドさんに支えられながらいく。

 

「・・・お前はよくやったと俺は思うがな。」

 

 その後を、静かな笑みを浮かべたダンテ様も続く。どうも、ダンテ様も事情を知っている様子だ。

 

「お前はあの時、精一杯の事をした。俺も認める。ミカエルもそう思っているぞ。」

 

「ええ。」

 

「よせやい。礼は言っておくが、俺はそうは思えねえ。」

 

 アザゼルさんは肩をすくめてあえて軽い口調でいう。

 

「俺は・・・知らなかったとはいえ、あいつも、娘も救えなかったんだぜ?」

 

 そして、アザゼルさんは最後に部屋を後にする。

 

「・・・・・・・・・。」

 

 その背中がとても悲しそうに見えたのは俺だけじゃないはずだ。その悲しみの深さはおそらく、まだ若造の俺達には想像もできないものなんだろうとも。

 

 堕天使総督・・・その背中に一体どれだけの物を背負っているのか?

 

 

SIDE ???

 

 私達二人は学校内を歩き回っていた。

 

「この世界は私達ですら普通扱いって言うのが怖いな。」

 

「ああ。」

 

 私達は突然記憶を取り戻した。

 

 本来なら死に別れて二度と会えないはずの彼女とこうして相棒として歩いているのもそのためだ。

 

「私達って・・・天使みたいな存在になってんだろ?」

 

「うん。まあ神の使いという意味ではそうだよ。でも私があいつの使徒になるなんて変な気分だぜ。あいつに会ったら色々といいたい事もあるし。」

 

 彼女は元々教会出身。ある意味では神の徒と言える。それが今・・・使徒となっている。

 

 使徒としての特典は・・・魔法の無制限使用。そして・・・不老不死。

 

 私達は神となった彼女と同じく世界の法則の一部となっていた。

 

 私達は力を奪われ、何故かこの世界にやってきてしまった彼女を探してこの世界に来た。

 

 私達が元いた世界よりも更に混沌とした世界に。

 

 そこで幸運にもミカエル様に拾ってもらい、事情を話した上で彼らの仕事を手伝いながら必死に探していたのだ。

 

「私、大魔王なんて初めて見た。」

 

「うん。こっちも。」

 

 でも私達、この世界でまともにやっていけるのだろうか?

 

 そんな不安がある。

 

 

 

 それは先ほどの戦い。私達は魔術師達の転送を断つために動いていた。

 

 でも、それこそが罠だった。

 

 私達は無数の魔術師達に取り囲まれていたのだ。

 

「へえ・・・あの世界の魔法少女が来るなんて面白いのねん。」

 

 それを率いるのは・・・黒いゴスロリの衣装を着た魔女。

 

 紫炎のヴァルブルガ。

 

 しかもあいつはどういう経緯なのか分からないが・・・こちらの世界の魔女の力を持ってしまっている。

 

「いい加減、どういう手品かおしえてくれないか?どうして、お前は魔女になっている?」

 

「それでいて、人間の姿を保つことができるのかもな!」

 

 私達は彼女と因縁がある。彼女が・・・この世界で魔女や魔獣を次々と生み出している元凶だからだ。

 

 それを私達は討っている。

 

「それはできないのん。それにいい加減あなた達が邪魔だから・・・。」

 

 魔術師達が変化していく。

 

 魔獣と呼ばれる連中にだ。そこにホラーと呼ばれる奴らまで・・・。

 

「いい加減、焼き尽くしてくれるのん。」

 

 私達に巨大な十字架の紫の炎が迫る。

 

 炎だけじゃない・・・無数の魔力が私達に一斉に飛んでくる。

 

 不死身の私達を消滅という形で倒すために。

 

 でも・・・。

 

「無粋だな。」

 

 轟音と共にそれがすべて跳ね返された。

 

「ん!?」

 

 現れたのは銀色の髪と二本の角を持った仮面の男。

 

「・・・だれなのん?私の炎を素手で弾き飛ばすなんてただものじゃない。」

 

 私達の前に突然現れたその男は左手だけですべての攻撃をはたき返したのだ。

 

 摩擦熱で手が不死鳥のごとく燃え上がる程の速度で。

 

「余はただの通りすがりの大魔王だ。」

 

 手に残る炎を軽く振り払いながら、通りすがりの大魔王はいう。

 

「大魔王?」

 

「そうだ・・・。」

 

「通りすがりって・・・そんなふざけた名乗りがあるのかしらん?」

 

 そして、彼が軽く腕を振るうと共に無数の火の粉があちこちに巻かれる。

 

 それが魔術師達や地面などに接触した瞬間・・・。

 

 巨大な火柱が次々と上がったのだ。

 

 燃え上がった魔術師達は灰すら残さずに焼きつくされる。

 

「こっ・・・これは火炎呪文(メラゾーマ)!?異世界からの呪文!?」

 

「ふっ・・・ふははははははははははは。」

 

 メラゾーマ。異世界より伝わる呪文だと聞いている。魔戒法師を中心に広がっている。

 

 だが、その名を聞いた彼は可笑しそうに笑う。

 

「お主、何を勘違いしておる。」

 

 そして彼は告げる。

 

「今のはメラゾーマではない・・・メラだ。」

 

『!?』

 

 メラ。それはメラ系の最下級の呪文。小さな火の球を放つ呪文。

 

 それも火の玉ではなく、火の粉として放つだけであの威力。

 

「・・・どっ、どんな魔力をしているのん?あんなカスみたいな呪文でこの威力・・・。」

 

「だから最初から名乗っているだろう。」

 

 その男はもう一度言う。

 

「余は通りすがりの・・・大魔王だと。」

 

『っ!?』

 

 それだけで私達は理解した。

 

 今私達の目の前にいる男は・・・まさに大魔王だと。

 

「ついでに氷結呪文(ヒャド)も見せてやる。前世は全く使わなかったが、ある理由でこっちも相当な者にさせてもらっている。」

 

「ヒャド?」

 

 その言葉と共に無数の粉雪が落ちてくる。

 

 それが地面や相手に触れると共に・・・一瞬で凍結。

 

 それが倒れると共に粉々に砕け散る。

 

「・・・なるほどねん。これは・・・。」

 

 私達は理解する。

 

 次元が全く違うと。

 

 たった二つの最下級の呪文だけで私達を囲っていた連中の大半が殲滅されていた。

 

「そして、これが余のメラゾーマ・・・いや、異世界で習得した・・・。」

 

 彼の右手が炎を発する。

 

「最上級火炎呪文(メラガイアー)だ」

 

 その炎は不死鳥へと姿を変えたのだ。

 

 しかもその不死鳥は凄まじくでかい。それこそ翼長だけで二十メートルは超える様な超巨大な・・・。

 

「・・・・・・・・。」

 

 それを見たヴァルブルガは目を点にしていた。

 

 いえ・・・私達だって目を点にしていた。

 

「前世から余の最上級の火炎呪文はこう呼ばれている。」

 

 そして、不死鳥は放たれる。

 

「カイザーフェニックスと。」

 

「・・・じょ・・・冗談じゃないわよ!!」

 

 それを十字の紫の炎で受け止めるヴァルブルガ。

 

 でも、それを炎の不死鳥は噛みつき、次々と食い破っていく。

 

「嘘!?私の炎を!?」

 

 あの単体の呪文で神滅具を圧倒しているというのか?

 

「前世のそれから改良済みだ。召喚獣って言う物の要素も組み込んであるからのう。そして・・・もう一つおまけだ。」

 

 あいつの左手に膨大な冷気が宿る。

 

「へっ?嘘!?もう次の呪文!?」

 

「今度は最上級氷結呪文(マヒャドデス)だ。」

 

 手に現れたのは巨大な氷の龍。姿は東洋の胴体の長い龍だった。

 

「竜の騎士にやられてから、ドラゴンという物にも執着してしまってね。気付いたらヒャドがこんな呪文になった。名はまだないがな・・・。」

 

 放たれる超巨大な氷の龍。

 

「ああああああああぁぁぁっぁ!?」

 

 流石のあいつの悲鳴をあげる。

 

 炎の不死鳥と氷の龍を同時に受け、大爆発を起こす。

 

 でも・・・。

 

「・・・逃げたか。致命的なダメージは与えたが、主らと同じ不死身の体ならそれすらも意味はないのだろうな。」

 

 彼女が落とした腕を見て、それを背中から出した翼の光に当てる大魔王。

 

「だが・・・これで神滅具を一つ読み取らせてもらった。お前達も戻るがいい、すでに転送術式は破壊してある。」

 

 その言葉と共に彼はいつの間にか姿を消していた。

 

 最初からいなかったかのように。

 

 でも・・・彼が撒き散らした破壊の跡が夢でないと教えてくれた。

 

 

 

 

 

「・・・この世界って、規格外ばかりだよ。」

 

 あの通りすがりの大魔王の姿を思い出し、私達は深い溜息をつく。

 

「とりあえずミカエルのおっさんを探して、天界に戻ろうぜ。流石に疲れ・・・。」

 

 そこで私達の言葉は止まる。

 

「ねえ・・・何でこの学校に魔女の結界が?」

 

 突如魔女の結界が現れたからだ。

 

「そんなの知らねえよ。だが・・・。」

 

「中に誰か閉じ込められているかもしれない。入口を見つけるか、強引に切り裂いて突入するよ!!」

 

 私達は武器を構え走りだした。

 

 

 

 

 

SIDE アザゼル

 

 ったく、ミカエルの奴。俺の背中を押すためにあいつらに聞こえるように言いやがったな。

 

「・・・ふふふ。私も前に進めました。あの子達といると一歩前に足を出せる。それは貴方も知っているはずですよ?」

 

・・・確かにな。あいつらには異常なまでの力だけじゃなく、いや、それすら超える物まで引き寄せられている。

 

 それが人の和。そして、そこから生まれる無限の勇気と希望だ。

 

 そのおかげで巧を娘の後を追わせる事を防げた。

 

 この街には何かがある。それだけの大きな力が・・・。

 

「その何かが・・・今わかるってか?」

 

 そして、俺達は集まっている。そう・・・天道が集めたメンバーだ。

 

「まさかいきなり会わせてくれるとは思わなかったぜ。」

 

 それは神の代理を務める者との会合だ。

 

 天道はすぐに行ってきた。

 

 あの事件のすぐ後である今、会わせると。

 

「流石に驚いたよ。でも・・・そこが狙いか。」

 

「ああ。彼らに会う事はこの街の根幹を知る事にも繋がるからな。」

 

 この街の根幹?

 

 それだけの人物と合う事になるのか。

 

「・・・もったいつけてくれるね。それだけの大物ってわけかい?」

 

「へっ・・・早く会わせろ。その神様の代理って奴に。」

 

 サーゼクスの奴とダンテもせかす。

 

「あらあら・・・。私も会えるなんて光栄ですわ。」

 

 アマテラス様は悠然と構えている。なんか楽しみでもあるみたいだ。

 

「・・・いよいよですね。」

 

「私・・・そんな人に会っていいのかしら?」

 

「それに関しては私もだぞ!?」

 

 そう言えば本来予定に入っていないクレドも来ているが・・・。

 

「問題ないだろう。それにフォローを任せる事もできる。」

 

「・・・・・・あんた、悪魔か?」

 

「ハハハハ!!魔王に悪魔って、釈迦に説法も同じだぜ?それもお前も今は悪魔だろうが。」

 

 恨めしそうに皮肉を言うクレドだが・・・皮肉に関してはダンテの奴の方が一枚上だ。

 

 クレド。お前って本当に苦労してんな。まさかの事態に、頭を抱えている。

 

「さて・・・そろそろ来てもらお・・・・。」

 

「そんなに固くなられても困るけどな・・・。」

 

 天道が言い終わる前にそれは現れた。

 

 あれ?俺は今・・・夢を見ているのかね?

 

 それとも幻覚でも見ているのか?

 

 みんなも同じ様子で瞬きを何度もしている。

 

「・・・いたずらが過ぎるぞ。」

 

「テヘヘ・・・。」

 

 可笑しい。桃色の髪をツインテールにした外見は中学生位の女の子がここにいるのだろうか?

 

 しかも、つい最近顔見知りになったばかりの。

 

「あれ?・・・なんでまどかさんが?」

 

 キリエ!!そこではっきりと現実を突きつけるな!!

 

「あらま・・・ママ友がまさかの再登場だなんて・・・。」

 

 ああもう・・どうしてこの場にイッセ―の母親の幼女(?)まどかさんがいる!?

 

「・・・彼女が神の代理だ。」

 

『・・・・・・・・・・・・。』

 

 えっと・・・

 

 えっと・・・。

 

 えっと・・・。

 

 すみません!!総司さん!?今なんて言いましたか!?

 

 今、まどかさんが神の代理って聞こえたような気がしましたが!?

 

 まっ・・・まさかそんなことはないですよね!?

 

「・・・予想通りか、それを上回るリアクションだな。」

 

「ははは・・・まあ、仕方ないよね。」

 

 総司の奴は呆れながらもう一度言う。

 

「兵藤まどか。彼女が紹介しようとしていた神の代理人だ。俺はこういう時は冗談を言わな・・・。」

 

『えええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?』

 

 あまりに衝撃的過ぎる話に俺達は揃って叫んだ。

 

 ああいや、本当に久しぶりに叫んだぜ!!

 

「・・・・・・頼むからお前ら最期まで話をさせてくれ。」

 

 それどころじゃないっての!!

 

「あの赤龍帝の母親が・・・?」

 

 しかも、殆どのメンツが兵藤家で宴会をしていたので、まどかさんの事を知っている、ミカエルの奴も調べてはいたみたいだしな。

 

「・・・あまり叫ぶと外に聞こえちゃうよ。いくら結界を使っても心配だよ。」

 

 そこで俺達は初めて気付いてしまった。

 

 いつの間にか俺達は異世界にいる事に。

 

『!?』

 

 それは大変メルヘンチックな世界。

 

 世界その物が・・・まるでヌイグルミやケーキの山などで出来た非現実的な世界に変わったのだ。

 

 俺達の傍にぬいぐるみで出来たイスが現れる。

 

「魔女の力を少々利用させてもらってね。ちょっとした世界だよ。」

 

「大した御持て成しだな。」

 

 はあ・・・こうなりゃ、開き直るしかねえ。

 

 赤龍帝の母親もまた普通ではない!!

 

 それで納得して話を進めようか!!

 

「そりゃ・・・息子がお世話になっている方達ですから。ねえ、翔一君?」

 

「ははは・・・。」

 

 その隣にはイッセ―の父親だと!?

 

 おいおい頼むぜ。ようやく俺達は開き直ったというのに、そこに更なる爆弾を投下してくるかい!!

 

「みんなやっぱり驚きますよね?」

 

 アーシアも一緒に現れてとんでもない事を言いやがる。

 

 彼女は全部知っているのは間違いないみたいだ。アギトとしての力がそこまでのレベルにあるということか!!

 

「まどかさんが神様だなんて誰が思うか。」

 

「・・・ほう。大体読めてきたぞ。」

 

 そこまで言って、俺達もようやく飲み込めてきた。

 

「総司。お前ってどんな人脈をしているんだ!?どうして異世界の神様と知り合っている。」

 

「ふふふ・・・言ったじゃないか。2人の馴れ初めに関わりがあるって。」

 

 目の前にいるまどかさんは間違いない。

 

 異世界の神と言っていい存在。

 

「そして、僕も正体を見せようか。」

 

 翔一も変身をする。

 

 銀色の鎧に紅い頭を持った・・・・。

 

「あっ・・・アギトだと!?」

 

 しかもその力は・・・隣にいるまどかに匹敵する。

 

「アザゼル。会談の時に俺に聞いたな。イッセ―が神の後継たる器だと知っていて俺が鍛えたと。」

 

 ああ・・・だが、なるほど。

 

「この二人がその答えだ。異世界で神となりしアギトと、異世界の法則その物となった神にして最強の魔法少女。イッセ―はその二人の息子だ。」

 

 俺達はようやくこの街が人外魔境となったのと、イッセ―の馬鹿みたいな力の根源を知ることができた。

 

 この親達がこの街に来てから・・・すべてが始まったという事か!?

 

「そして、イッセ―は異世界のアギトの因子に加え、この世界の神の遺志と出会い、この世界のアギトの因子も与えられている。」

 

 なん・・・だと!?

 

 異世界のアギトの因子に、この世界のアギトの因子を同時に持っているだあ!?

 

「つまり・・・なんだ。あいつは二重にアギトの因子を持っているということか?それがあのバカみたいな進化に繋がっていると!?」

 

『!?』

 

「・・・流石だアザゼル。察しが良い。それにまどか魔法少女としての力も男なのに、神としての器と共に実は受け継いでいる。」

 

 そっ・・・そりゃとんでもないってレベルを超越しているぞ!!

 

 そこに赤龍帝、そして無双龍。

 

 あいつの力の根源に触れてぞっとするぞ。

 

 なんだ・・・あいつって神すら恐れるレベルの力が幾つも寄り集まった怪物じゃねえか!?

 

「・・・恐ろしいってもんじゃねぇ!!サーゼクス。さっきの話を早めるぞ!!」

 

「そうだな。早く新たなトレーニングを考えないと。君も当然手伝ってくれるか?」

 

「ふっ・・・そのためにこの世界の先輩達に打診している。ぬかりはない。」

 

 あの赤龍帝は進化する怪物。

 

 ヴァ―リもあれがある。巧とも繋がりのあの血が・・・。

 

 あの二人は知らないことがある。

 

それはヴァ―リと巧には血の繋がりがある。

 

 その繋がりには眠ったままの灰の王の存在があると。

 

 その王の血を引く者がアギトになるのもおかしいが・・・あいつの生涯のライバルはもっと怪物だ!!

 

「・・・はあ。そうなるとエッチな事を全力で止めないと。」

 

「それですませていいのかキリエよ!?」

 

「もう慣れています。」

 

 キリエの奴は動じず。

 

「・・・多分、今後もイッセ―さんに対するキリエさんの絶対的な精神的優位は変わらないかと。」

 

 アーシアの言葉は正しいだろう。そう言った意味ではキリエがこの場に来たのは意味があった。

 

 ・・・うん。キリエはアギトのストッパー、今後も重要な役割を担ってくれそうだ。

 

 彼女のトレーニングメニューも考えておかないと。

 

「何でここに魔女の結界が!?」

 

「ミカエルのおっさん達が巻き込まれ・・・。」

 

 その時、結界を切り裂いて二人の少女が現れる。

 

「ほう・・・。」

 

「この二人やるな。まさか結界を切り裂いてきたか。」

 

「ミカエル様!!大丈夫ですか?」

 

「他の勢力のトップもみんなも一応無事か。」

 

 確かあいつらはミカエルの連れだったか。

 

 実力はあるとは分かっていたが、相当なものだな。

 

「さて・・・魔女はどこ!?」

 

「ここで魔女に出くわすなんて分かんねえよな!?」

 

 そして二人はフードを脱ぎ捨てる。

 

 現れたのは・・・。

 

「まっ・・・魔法少女。」

 

 ザーゼクスの奴が言ったように、魔法少女だった。

 

 セラの奴のおかげで色々と慣れたからな。

 

 ショートカットをしたボーイッシュな青の魔法少女は剣を。

 

 長い髪をリボンで停めたやんちゃそうな赤の魔法少女は槍。

 

 それを構えるが・・・。

 

「・・・さやかちゃん、杏子ちゃん。」

 

『へっ?』

 

 まどかを見て固まってしまった。

 

 いや・・・まどかの方まで固まっている。

 

「なんでお前の世界の魔法少女がこの世界にいる!?」

 

「あらら・・・。」

 

 総司まで驚いている始末。翔一に至っても目を丸くしている。

 

「あの・・・お二人とも。もしかしてずっと探していた友達って・・・。」

 

 ミカエルの奴が二人に話しかける。

 

「まどか・・・まどかなの?」

 

「うん・・・。」

 

「・・・はあ・・・やっと見つけたぜ。」

 

 まどかに抱きつく二人。

 

「二人とも・・・また会えるなんて・・・。」

 

『・・・・・・・。』

 

 さて・・・場が固まってしまっているのはどうすればいい?

 

「・・・すまん。どうやら面白いことになったそうだ。」

 

 総司の奴は状況を理解したらしく笑みを浮かべる。

 

 その頃三人は笑みを浮かべ会い、涙を流しながら再会を喜び会っていた。

 

「そうそう・・・二人に紹介しないと。翔一君。」

 

「そうだったね。どうも、兵藤翔一です。えっと・・・まどかの友達ですよね?」

 

「はい。」

 

「えっと・・・お前誰だ?」

 

 翔一の登場にいぶかしむ二人の魔法少女。

 

「私の夫なの。」

 

『・・・・・・。』

 

 ピシッ!!

 

 まどかの満面の笑みで言った発言に音を立てて固まる二人。

 

「まっ・・・まどか?今夫って聞こえたけど。まさか・・・結婚しているわけじゃ・・・ないよね?」

 

「そっ・・・そうだぜ!!まさか中二で結婚だなんて・・・。」

 

「ちゃんと結婚しているよ。式も上げたし。」

 

『・・・・・・・。』

 

 その答えはまどかが見せた結婚指輪だった。

 

「しかも息子もいて、実は娘も妊娠中・・・。」

 

『・・・・・・。』

 

 のろけ話のように話しているまどかさんだけど、その友達お二人の反応を見て欲しい。

 

 気を失いそうなくらいに口をパクパクさせているぞ。

 

 もう理解が追いついていないって感じだ。

 

「・・・まどかが結婚?」

 

「しかも子持ちで現在も妊娠中だぁ!?」

 

 二人ともあまりの衝撃に思考ら混乱しているのだろう。

 

 だが、二人は揃って大きく深呼吸。考えを無理やりまとめる。

 

 2人が出した結論は・・・。

 

『あんた!!なにしとんじゃ!!この犯罪者!!』

 

 とりあえず夫を殴り倒すことだった。

 

「ふご!?」

 

 アギトに変身した状態の翔一が吹っ飛ぶ程の全力での拳。

 

 いい拳持っていやがるぜ。

 

「なんでそこで僕に矛先が!?しかも犯罪者って何!?」

 

「うっさいわ!!このロリコン!!」

 

「ロリコン!?」

 

「まどかを傷ものにした変態を私は斬る!!」

 

「変態って・・・わわあわわわわわ二人とも落ちついて!!」

 

 しかも二人とも武器繰り出してくる始末。必死に腕の装甲の厚い部分で受け止めるなどでやり過ごす。

 

「僕はまどかを愛しているから結婚したわけで!!」

 

『その時点で犯罪じゃ!!』

 

 説得しようにも二人は完全に頭に血が上っており止まらない、止められない。

 

「ちょっ・・・他のみなさんもなんかフォローを!!僕はロリコンでもないし、変態でもないって・・・。」

 

 そこであいつが俺達に口添えを頼むけど・・・なあ。

 

「なぜ皆そこで僕から目をそらすの!?」

 

 誰もフォローできんわな。

 

「・・・すまない。」

 

「俺って自分に正直だからさ・・・思っていない事を反対の事を言うのは嫌なんだわ。」

 

「・・・罪深き者に神の慈悲を。」

 

「まあ・・・俺が言うのもなんだが業が深すぎる。」

 

「・・・・・・なにもいえません。」

 

「ノーコメントでお願いしたい。」

 

「ははは・・・あははは・・・愛って偉大です。」

 

「ちょっと!?」

 

 二人の怒りもなんかわかってしまうから・・・フォロー出来んのだわ。

 

 いや、堕天使がフォローできないほどの業の深さと言うべきか。

 

「翔一。」

 

 そこに総司の奴が肩に手を置く。

 

 流石は友だな。

 

「俺は・・・お前がロリコンでも変態でも、犯罪者でも友達だと思ってい・・・。」

 

「だあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 酷い止めだ。

 

「もう二人とも落ちついてって!!ロリコンじゃないのは小猫ちゃん達が来ても全く反応しない点などで分かっているから!!」

 

 まどかよ。そこで一応だけど確認はしているのだな。

 

「だって・・・こんな子供の姿のままの私を好きでいてくれる事に不安だったんだもん!!」

 

「だからってこの場でそれを激白しないでよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 いや・・・女心は複雑なものですな。おかげでさらに暴走が酷くなったぜ。

 

『お前の罪を数えやがれぇぇぇぇっぇぇぇぇぇ!!』

 

「だから罪ってなにぃぃぃぃぃぃぃ!?」

 

 二人の猛攻はさらに過激になってきやがった。

 

 まあ・・・あれだけ火に油どころか、より燃焼効率のいいハイオクを入れるような発言をしたからな。

 

 ああもう・・・収集がつかねえ・・・って。

 

「とりあえず落ち着け。」

 

 そこに現れたのは仮面をつけた一人の男だった。

 

 彼は行ったのは単純な事。

 

『わっ!?』

 

 二人の目の前に紫の炎をだして驚かせ・・・。

 

「これって便利だ。」

 

 いきなり二人の身体を停めたのだ。

 

「じっ・・・時間操作系の能力!?」

 

「・・・お前、まさか・・・。それにその紫の炎・・・ってまさか!?」

 

 こいつ当然のように停止の魔眼をコピーしていやがった。

 

そして、もしかして紫の炎って神滅具の・・・。

 

「落ち抜かぬか、娘ども。これ以上騒ぐと余も少し・・・暴れてくれようか?」

 

 彼の謎の威圧に皆が息をのむ。

 

「あんた・・・あの時の・・・。」

 

「この場にまで現れるなんて、一体何者なの!?どうして私達の動きが・・・。」

 

 二人は一応彼の事を知っているらしい

 

「これは・・・。」

 

「なんです?まるで大魔王を相手にしているかのような・・・。」

 

「ははは・・・やっぱり君は自力で来たか。」

 

 彼を見たまどかさんは驚いた様子はない。

 

「さすが・・・異世界で神すら封印した大魔王だけはあるよ。」

 

『!?』

 

「あなたこそ流石です。」

 

 彼は仮面を外す。

 

 そこに現れたのは・・・銀色の髪に、雄牛の様な二本の角、そして、額に三つ目の目が付いたポルムの真の姿だった。

 

「大魔王バーン。あなたの前世。まさか・・・異世界の勇者パーティの一員の息子として生まれていたのには驚きました。」

 

『・・・・・・・。』

 

 おいおい・・・。マジで大魔王だったのか?

 

 その名前、ハドラ―から何度も聞いているぜ!!あちらの世界で魔界を納めていた絶対的な存在。

 

 まさに魔界の神ともいえる存在だとな!!

 

 ある意味、あいつも神クラス。

 

それも、スサノオ達のような主神クラスは疑いようがねえ。

 

「はい。私は三代目大魔道士にして・・・大魔王です。そして・・・一応だけど、今日からサイガの女王となりました。」

 

『はい!?』

 

 そのポルムの背中から悪魔の翼だと!?しかも・・・ルシファーのような十二枚の黒い翼!?

 

「さて・・・私・・・いや余もこの会談に加えさせてもらうよ?安心して・・・悪巧みなら数千年単位の長期から数秒すぐ後でもなんでも得意だから。」

 

 こうして異世界の大魔王も加えて、非公式の会談は始まった。

 

 

 

 SIDE サイガ

 

「まったくもう・・・みんなやりたい放題やってくれて。」

 

「ははは・・・でも、あなたの願いをかなえたけど・・・本当に面白い事をするね。」

 

 セラさんの苦笑も分かる。

 

「ポルムには僕に黙って色々と暗躍してくれたお礼を兼ねてね。強制的に眷属にしてやっただけだよ。」

 

 セラさんに一つお願いしたのは、前借りで女王の駒が欲しいというものだ。

 

 上級悪魔としての実力は疑う余地もないらしく、セラさんも特例として急いで調達してくれた。

 

 まあ・・・フィリップさんがこっちに用事があったらしく、そのついでに持ってきてくれただけなんだけど。

 

 そして、ポルムを呼びつけて、私の責任を取ってもらった。

 

 変異の女王の駒。かなり特別な物になったらしいけど・・・それを埋め込んでやったのだ。

 

 

 

 

 その時のポルムの驚き方は印象的だった。

 

 でも私達も驚いた。

 

 転生した時に現れたのが・・・十二枚の黒い翼だったからだ。

 

「ルシファー・・・みたい。」

 

 セラさん曰く、元々のルシファーが持っている翼そっくりだそうだ。

 

「流石というか・・・まさか私を転生させるとは。おそらく竜の騎士、それも紋章三つの実力に変異の駒まで加わった結果ということか。まったく、イッセ―といいお前といい余を驚かせてくれる。」

 

 想定外の何かに目を丸くしていたポルム。

 

「だが・・・まあいい。おかげでこっちも寿命や老化の問題も、そして前世の肉体を取り戻す事も偶然ながらできた。悪魔の駒で転生できないと思っていたけど、個々にそれを覆す規格外がいてくれて助かったよ。」

 

 前世の肉体?

 

「それどころか・・・なるほどな。こりゃ・・・あの力も使えるか。」

 

 あれ?そして、なぜ腰にベルトみたいな物が現れているのですか?

 

 あと、手が黒の甲殻と鋭い刃みたいな棘、そして鋭い爪に変わっているのですか?

 

「いずれまた見せるさ。・・・ある世界で瀕死の重傷を負った際に偶然に得た強化兵士レベル3の力に三つの石の力、これは正真正銘の切り札なのでな。もしかしたら、この力を全開にして、お前と戦う日がくるかもな。ハハハハハハ!!」

 

 ・・・どうもポルムには謎が多い。

 

 まだまだ何かを隠している。

 

 でも・・・。

 

「お前は前の道を全力で進め。盟友として・・・最後まで付き合ってやる。」

 

 だまし討ちにする形で眷属にしたのに・・・こう言ってくるのだからさ。

 

「はあ・・・うん。よろしく。」

 

「ああ・・・こうなったらとことんやってやる。」

 

 

 と、いきなりすごい謎の多い友を眷属にしてしまったわけで。

 

「魔王眷属の眷属って面白いわ。」

 

「うん。今度の夏休みの時に早速冥界のみなさんに披露しないとね。日本神話との友好関係も示すために招待するよ。」

 

 ツクヨミさんとセラさんは色々と打ち合わせをしている。

 

「・・・そうだな。こうなったら冥界でやってみるか。」

 

 私はそこであること思いついていた。

 

『何を?』

 

「僕の本質は父様と同じ守りし者。それは父さんも、そして会った事がないけどおじい様も同じだと思うんだ。」

 

 私は冥界を中心にして一つ夢を作った。

 

「でも守りし者としての使命は一人じゃできない。だから・・・作ろうと思うんだ。」

 

 冥界を変えてやる気持ちを込めて。

 

「魔戒騎士団。正確には魔戒騎士だけじゃなくそれ以外でも騎士達を作りたい。冥界に魔戒騎士と父様達の守りし者としての技と精神を広めていきたい。」

 

『・・・・・。』

 

「まあ・・・せっかくやるのなら、でっかい事をしたいわけで。まだメンバーはわかりませんが。」

 

 まあ、夢と言うより冥界でこんな事をやってみたいという提案みたいなものだ。

 

「うん・・・応援する。」

 

「私達の世界からもいいのですか?妖怪や神でも。」

 

「そんなことで区別しない。それこそ堕天使や天使だって、ドラゴンや人間だって大歓迎だよ。私だってある意味ドラゴンなんだし。それに皆を率いるためにももっと強くならないと。」

 

 竜の紋章を使って分かった事だが、相当なオーラを使う。

 

 竜のオーラというものを体感して初めてわかったことだ。

 

 ほんの五分の戦いで相当疲れた。

 

 一応、力のコントロールはしており、配分もばっちり。それでももっとスタミナが欲しい。

 

「・・・夏休み・・・それこそ山ごもりでもしないといけないかもね。」

 

「・・・え~。せっかく一緒に入れると思ったのに?」

 

「そうですよ!!デートもしたいのに。」

 

「これはこっちのけじめ。デートはデートできちんと時間を取るから。まだ力を使うにもスタミナが不足しているんだ。体も別物になったから鍛え直さないと。」

 

 この時僕はこの先二つの出来事が待ち受けているのを知らない。

 

 一つは、この夏、イッセ―ともう二人と共に地獄とも言える想像を絶する過酷な修行をやる羽目になること。

 

 もう一つは・・・私の夢だ。

 

 その夢・・・ある方々が賛同して、そのトップ、騎士団長なってしまう事など誰が思うか。

 

 黄金の竜騎士。

 

 これが私の未来での二つ名となる。

 

 黒の大魔王を相方とすることでも有名となるのは未来の話だ。

 

「よっしゃ、なら一緒に夏のコミケにでてくれない?」

 

 ・・・コミケ?なんですかそれ?

 

「私もいいのですか?」

 

「ヨミちゃんの参加は当然だよ。もちろんサイガ君にもコスプレしてもらうからね。もちろん、魔法少女の!!」

 

「サイガ君の魔法少女のコスプレ・・・楽しみですね。」

 

「・・・・・・。」

 

 どうして、初デートで女装する話になっているのかな!?

 

 いっ・・・いや、私の未来は一体どうなることやら。

 

 

 

SIDE ヴァ―リ

 

 潜入を果たした俺は彼女を探していたのだが・・・。

 

 探して見つけたのは想像を絶する光景だった。

 

 そこには確かにオ―フィスがいた。

 

「う~んかわいいわ・・・いいわ~。」

 

「むぐぐぐぐぐぐ!?」

 

 じたばたしているオ―フィスを恍惚とした表情で愛している存在がいたのだ。

 

「まどかと再会した時は二人で愛でまくりたいわね。」

 

 黒髪の少女は成長したオ―フィスを精一杯可愛がっている。

 

「しかし・・・どうして姿が変わったの?あなたは確かに自在に姿を変えられるとは聞いていたけど・・・。」

 

 その問いに対して彼女は首を横に振る。

 

「我・・・もうこの姿以外になれなくなった。」

 

「えっ?」

 

 それはオ―フィスと言う一柱の神の在り方が根底から変わってしまったと言える事態だった。

 

「我・・・渡と一緒にいたいと思った。一人の女として。そう思った時・・・我はこの姿で固定されてしまった。そして・・・成長した。」

 

「・・・あなたという存在が変質、いえ・・・もともと未分化だった自我が選択した性に固定されたというの?あなたという存在その物を変えてしまうほどに・・・その渡って子を愛しているというの?」

 

 ほむらの問いにオ―フィスは頷く。

 

 恥じらいで顔を真っ赤にし、もじもじしながらだ。

 

「・・・もう///可愛いわ!!よし・・・何とかしてあげる。今は難しいけど、手紙位は私が何とかしてあげるわ!!」

 

 精一杯、可愛がられるオ―フィス。

 

「なあ・・・もしかしてだが、あいつが・・・。」

 

 認めたくない物だ。

 

 信じたくないものだ。

 

 変態的にまでオ―フィスを愛でている黒髪の少女が・・・あのホムラだと。

 

 渦の旅団の首領などと!!

 

「・・・ふう・・・大胆な事をする子ね。」

 

 そのホムラの様子が一瞬で変わる。

 

「私達の組織にスパイ目的で潜入。しかも堂々とプライベート空間に入りこんでくるなんてねえ。」

 

――――――流石と言うか、もうばれたか。早すぎるわね。

 

「ふん。上等というものだ。それくらいでないとつまらん。」

 

 ベノの苦笑も分かる。

 

 だが、この程度はある意味では想定内だ。

 

 まあ・・・あのキャラの壊れっぷりは完全に想定外だが。

 

 ホムラが指を鳴らすとともに周囲が黒い闇のような空間で覆われる。

 

「まあ・・・丁度いいわ。貴方の目的は何となく分かる。だからこそ・・・交渉しない?」

 

 だが、俺がスパイと分かった上で彼女は取引を持ちかけてきた。

 

――――――いいのか、ほむらよ?

 

「問題ないわ。ドラゴンって律義なのでしょ?それにスパイとばれても堂々としている辺りが気に言ったわ。逆に信頼できる。」

 

 ホムラの足元から浮かびあがるように現れるのは巨大な金属製の蜘蛛。

 

―――――ディ・・・ディスパイダー!?

 

「久しぶりだな、ベノスネ―カ―。」

 

 ミラーワールドのモンスターか?

 

―――ええ・・・。暴食のディスパイダー。あらゆる蜘蛛系モンスターの王にして・・・・。

 

 猛者なのだな。だったら早速手合わせを・・・。

 

――――ミラーワールド一の食いしん坊よ。

 

「・・・・・・・。」

 

 すまない。何故食いしん坊なのだ?

 

 勝負を挑もうとしたのに・・・いきなり躓いてしまったぞ。

 

「この世界には美味しい物がたくさんある。それをもっと食べたくてやってきた。現にこの世界は美味しい物で満ちている。来てよかった!!」

 

「面白い願いでね。意気投合して契約しちゃった。紅茶も好きだし一緒に飲んでいるの。このなりでお茶を入れるのがすごく上手でねえ。古今東西あらゆるお茶を研究しているくらいで・・・。」

 

 ほむらの手には蜘蛛が描かれた契約者のカードデッキがある。

 

―――――――ティースパイダーというのか!?

 

 アルビオンのツッコミが最近増えてきた。こっちはボケているつもりはないのに。

 

――――――はあ・・・うん。そうなのよ。でも気をつけなさい。彼もまた天龍クラスの猛者。特に食欲に身を任せて暴走した時には私にとっても脅威だから。食べられる物は何でも食べるとんでもない蜘蛛よ。

 

 驚くアルビオンに説明するベノ。そこにゲラスとエビルまでもが説明に参加。

 

――――――喰い意地は間違いなくミラーモンスター随一。そのパワーは瞬時に街全体を己の領域にしてしまうくらいには。

 

―――――でも、意外と太っ腹で美味しいと思った物を分けて、一緒に食べさせてくれる気の良い人でもある。

 

―――――・・・世界は広いな。

 

 アルビオン。こんなやりとりで世界の広さを実感しないでくれ。

 

 頭が痛いぞ。

 

「あなたはもう・・・。もう少し食べることを抑えなさい・・・。」

 

 その隣に空飛んでくる白いカブト虫に似た何かが現れる。

 

「レギオン。そう言うな。私にとっては大切な楽しみなのだぞ?」

 

 レギオン・・・って、あの校舎や街で現れた黒い虫みたいな連中。

 

「初めまして。我らの名はレギオン。星海の彼方より訪れし者。」

 

 星海の彼方?つまりこいつ・・・宇宙生物だというのか?

 

「彼女がその女王。無数の兵士を生み出したのが・・・この子達よ。あなた達も戦ったわね。」

 

 その言葉と共に黒い空間に無数の瞳が浮かび上がってくる。

 

「もう囲まれていたか。」

 

―――――ッ・・・。

 

―――――前に八千、あの戦いでもかなりの数を相手にしたというのに・・・まだこれだけ・・・。

 

「圧倒的な兵力。それを組織的に運用できるという事はかなりの脅威と言う事か。」

 

「・・・私がいることでこの子達が組織立って行動する事も見抜くか。面白い子ね。」

 

「これだけの聡明さなら取引の相手にふさわしいってことでしょ?」

 

 レギオンと親しげに話すほむら。

 

「私はある子を探している。名前はまどか。あの街・・・駒王町が怪しいと睨んでいるわ。」

 

 誰かを探している?まどかと言う名の?

 

「私としてはその子さえ見つかればこの組織なんてどうでもいいの。だから、あなたのスパイ活動も認めてあげる。・・・あの糞ジジイも好きにすればいいわ。」

 

――――見逃すというの?

 

「勘違いしないでくれないかしら?これは取引よ。私の探し人を見つけるのは私にとってそれだけの価値があるの。」

 

「・・・いいだろう。その代わり、見つけたら彼女も解放して欲しい。」

 

「彼女って・・・ああ、オ―フィスちゃんのことね。はあ・・・私は別に無限の力はいらないって言ったのに。カテレアの奴らも勝手よね。あいつらは知らないのかしら!!可愛いは正義って!!あんな可憐な子を泣かせて・・・。」

 

 ほむらはぷんぷんと怒っている。

 

「ちなみに、私・・・オ―フィス派の会長も務めているの。そのオ―フィス派の合い言葉は「可愛いは正義!!」だから覚えておきなさい。貴方もそこに組み込んであげるから。」

 

 いや・・・俺はそんな変態的な会派に入りたくないぞ!!

 

「そんなことはどうでもいい。それでどうなんだ?」

 

 入りたくないからこそ・・・急いで話を進める。

 

「・・・分かったわ。その条件も受け入れてあげる。まあ・・・その分色々と愛でさせてもらうけど。その代わり・・・あなたには私の目的のためにあの街でやってもらうことがある。」

 

「・・・なんだ?」

 

 一体何をさせるつもりだ?この場合はそれに素直に従った方がいいのだが。

 

「・・・安心しなさい。貴方にとっても悪い話ではないわ。ふふふふふふ・・・。」

 

 黒い笑みを浮かべる彼女を見て思った。

 

 ああ・・・流石首領。悪巧みがうまいと。

 

 でも・・・案外悪い人じゃないとも。

 

「これでオ―フィス派に二天龍が入ることになるわ。これで万が一のときでも大丈夫ね。ふふふふふふふ・・・。あなたのその取引はその会派に入ってもらう事が条件だからよろしく!!」

 

 でも、この人かなり腹が黒い。

 

 こうして、俺は・・・オ―フィス派に強制的に組み込まれてしまった。

 

 

SIDE イッセ―

 

 俺達は今、信じられない光景を見ている。

 

「えっと・・・今日からみなさんと同じクラスになった。」

 

「ヴァ―リだ。よろしく頼む。」

 

『・・・・・・・。』

 

 前に俺達と激闘を繰り広げたヴァ―リが突然、転校してきやがった!?

 

「おい・・・これって何の冗談だ?」

 

「俺にそれを振るな!!困る!!」

 

 ネロのひきつった笑みもわかる。

 

「はあ・・・まあ、あとで本人に事情を聞けばいいだろう。あいつの事だ。事情の知っている俺達になら教えてくれるはずだ。」

 

「あいつと同じ学校、同じクラスになるなんて。」

 

「分からない物だ。だが・・・これでこのクラスの人外化がさらに進む。」

 

 元々ヴァ―リと親交のあったらしい鋼兄は落ち付いている。

 

 まあ・・・友と言える巧とハルトは苦笑しているけど。

 

 俺達のクラス・・・なんかすごい事になっていませんか!?

 

 

 

 

 そのあと・・・部室ではもう二人、面白いメンツが来ていた。

 

「よお・・・。」

 

 何でアザゼルさんがいるのですか!?

 

「はははははは・・・。」

 

 そして剣崎さんまで!?

 

「今日から俺がこのオカルト研究部の顧問になった。よろしく頼むな!!セラフォル―の奴に頼んだらこのような形になったぜ。」

 

 ラスボス先生・・・アザゼルさんの誕生ですか!?

 

「ついでに言うなら・・・なんかこの学校の用務員として働くことになった。リアス部長の口添えで。」

 

 そしてジョーカーな用務員も誕生!?不死身の用務員って・・・。

 

「まあ・・・アンデット対策もあるし、あなたをこっちに引き込みたいのもあったから。眷属にするのは・・・流石に止めたわ。でも一応だけど使い魔契約をさせてもらったから。」

 

 部長は思い切った事をしますな。

 

「・・・有無言わさずに使い魔にされた・・・。はあ・・・。」

 

 剣崎さんを使い魔にしたなんて!?

 

 そして、その傍に・・・あれ?ブランカが現れましたけど・・・なぜかうちの制服を着ています。

 

「・・・私、小猫ちゃんとギャー助のクラスに転校することになったから。」

 

 そして・・・えっ?

 

 ブっ・・・ブランカよ。今何って言った?

 

 学校に通うって聞こえたような気がしましたが?

 

「・・・私が許可したの。もっといろいろな世界を見て、人間の勉強もしたいって。年齢的に小猫ちゃん達と同じだからそのように。」

 

 唐突過ぎて困る!?

 

「私もイッセ―のハーレムに入るには人間としての常識、身につける必要があると見た。故に人間としての生活を・・・。」

 

 こっ・・・後輩が無双龍って、なんじゃそりゃ!?

 

「これで・・・戦力はさらに万全。さあ・・・渦の旅団共。私達の学校を襲ってみたかったら襲ってみなさい!!魔王や熾天使だって裸足で逃げだすメンツばかりよ!!」

 

『・・・・・・・。』

 

 どんどん過剰戦力が学校に集まってくる。

 

「渦の旅団ではお前達の無双に恐れおののいているぞ。この学校を襲うのは冥界の首都や天界などを襲うよりも遥かに危険とされるくらいにな。」

 

 ヴァ―リの言葉も何となく分かる。

 

 あの時みんな・・・大暴れしたもんな。

 

『・・・・・・。』

 

 あれ?そこで俺にみんなジト目を向けてくるのはなぜ?

 

――――一最も大暴れした本人達は自覚なしか。

 

 ドライクさん?そんなに暴れた覚えは無いって。ただ・・・ヴァ―リとタイマンをやっただけで・・・。

 

「イッセ―。お願いだから、ヴァ―リと戦う時は場所と時を考えてよね?あなた達の激突は渦の旅団だけじゃなく、三勢力、いえ全世界に轟いたのだから。歴代最強にして最も危険な二天龍としてね。」

 

 部長から釘を刺された!?

 

 その前に、俺達ってそんなにすごい事になっていたの?

 

「しかしまあ・・・うん。あいつの提案通り、悪くない。」

 

「お前はマイペースだよな!!おい!!」

 

 今更とは思うけどヴァ―リは当然のように部室に顔を出していた。しかも今のやり取りに動じていないどころかあっさり流しやがったし。

 

「・・・事情は聞いたが、お前も大胆な事をするな。」

 

 スパイ活動のためにこの学校にやってきたヴァ―リ。まあ・・・渦の旅団の首領直々の命で、この街で調査をするために来たそうだ。

 

 スパイということはとっくにばれているので、むしろ祖の首領はそれを利用して、目的の人物を探すように仕向けたのだ。

 

それは誰か・・・流石にヴァ―リも言えないらしいが、少なくても俺達じゃないらしい。

 

「渡殿、例の彼女から手紙を預かっている。」

 

「ありがとう。」

 

 ヴァ―リは律義にもオ―フィスからの手紙を渡す。

 

「・・・・・・二天龍が揃う部室か。」

 

 部長は俺達を見て溜息をついている。

 

「おそらく・・・こんな光景は今までなかったぞ。いや・・・今代の二天龍は規格外過ぎて恐れいるわ。」

 

 アザゼル先生の言葉に皆が頷くところを見ると、どうやらそれが皆の思いらしい。

 

「おお、赤いの!!ついに生まれたぞ!!我が子が!!」

 

「何!?見せてくれ・・・おお・・・・。可愛い子ではないか。」

 

 その一方、アルビオンはドライクに先ほど孵ったばかりの双子を見せていた。

 

 額に第三の目を持った白い蛇みたいなドラゴンに、紫色のドラゴン。

 

「調べて分かった事だけど・・・この子達、父親の生前の能力の上にとんでもない力を持っているのよ。」

 

「そうなの?父親の力ってことは半減、そして空間を半分にする事と・・・。」

 

「封印されたはずの反射を二人とも使ったわ。一人は反射をさらに突き詰めてとんでもない能力を生み出したけど。えっと・・・あの白い子よ。」

 

「・・・反射だと!?」

 

 それを聞いたドライクは驚いている。

 

「・・・・・・とんでもない子になってしまったぞ。まだ何かを持っていると思う。判明したこの子達の固有の能力もそうだし。しかもこの子達は契約したら、その力を神器としてその契約者に与える事も出来る。」

 

 どうも二人とも父親の能力をすべて継いでいる様子。

 

「おいおいおいおい。神器のシステムを逆に利用しているというのかい!?原因は?」

 

「おそらく二人のアギトの祝福かと。それで神器のシステムをあらかじめ備えた子になってしまったと考えるのが妥当よ。」

 

「・・・アギトの祝福?こいつらをこの二人が祝福したというのか?神の特権である祝福を!?なるほど・・・じゃあ、こいつらその物がまだ未分化の神器そのものでもあるということかい。」

 

 アザゼル先生は色々とメモを取って興味深くみている。

 

「悪用されないように気をつけな。この子達は条件さえ整えば人間以外でも神器を使えるようになってしまう例外的な存在だ。しかも、どんな能力か分からねえがお前達の子なら神滅具に化ける可能性が極めて高い。下手したら上位クラスになるかもな。」

 

 その上で適切な警告をしている。

 

「この子達はトップシークレットにした方がいいわね、」

 

 とんでもない子供だ。

 

「あっ・・・卵が動いた。」

 

 一方クレアが持っていた卵も動き出したのだ。

 

 そして・・・。

 

「思ったよりも孵るのが早いぞ!?」

 

「本当ね。むしろベノ達の子を見て早く会いたいと思ったのかも。」

 

 二つの卵に亀裂が入り・・・そして生まれる。

 

 赤ではなく朱金の龍と黒いドラゴン。その双子が。

 

「うっ・・・生まれたというのか?おお・・・。」

 

 ドライクは元の姿にっておおおおおおおおおい!?

 

 ハルトがとっさに部室内の空間を広げてくれなかったら部室が崩壊していたぞ!!

 

 元の姿になって抱き寄せているぞ。すごい勢いで涙を流しまくって。

 

「これが我が子・・・白いの!!これが我が子だぞ!!」

 

「あらら・・・もう好き勝手に元の姿に戻れるか。でも、ああ・・・私達の子だ。」

 

「・・・うん。そして、この子たちもベノの子供たちと同じようになっている。」

 

 ブランカの指摘に皆は固まる。

 

 つまり未分化の神器でもあるということか。

 

「・・・俺、神器研究者として大変光栄な場にいるぞ。新たな神器の可能性と出会えるとは・・・じっくりと体を調べ・・・。」

 

『うちの子に変な事をすればどうなるかわかっているかな?』

 

「ひっ!?」

 

 あの子達の親たちが一斉に元の姿に戻り、アザゼル先生を取り囲んでいた。

 

 うわ・・・アザゼル先生が悲鳴を上げた。

 

 でも無理ないよね。二天龍にクレア、ベノまで加わった状態で睨みつけたらねえ。

 

「・・・分かった。この子達の健康診断、検査程度にするから安心してくれ。ドラゴン専門の医者も紹介してやる。はあ・・・この子達に手を出したら、その勢力はこの世から確実に消滅するぞ。このモンスターペアレント共を敵に回す事だけは避けないとグレゴリが消滅する。それも一瞬でな。」

 

 アザセル先生は必死でいう。

 

「まったく、古来からドラゴンの子供と親の繋がりは大変深いとは聞いていた。まあ、ラッセ―のような放任主義も多いらしいが、お前達の場合はそうだったか。お前達も気をつけろ、この子達に何かあったら、テレパシーみたいな感じで親たちがすぐに気付く。そして怒り全開で襲いかかってくるから。二天龍とその嫁共の逆鱗・・・お前達だって触れたくないだろ?」

 

『・・・・・・・。』

 

 四体の最強クラスのドラゴンが怒り全開で暴れまわる光景。

 

 うん・・・世界の終わりが見えた。

 

 嫁の方は合体もできるから余計にヤバい。

 

 みんなの顔色も揃って青ざめているのは仕方ないよね?

 

 孵ったばかりで動きがおぼつかないドライクの子供達。

 

 それに駆け寄ってくるアルビオンの子供たち。

 

 両者共・・・興味深々。そして・・・すぐに遊び始めたのだ。

 

「・・・子供ってすぐに仲良くなりますよね。」

 

 アーシアの言葉に頷く皆。

 

 なんか・・・和む。

 

 そのアーシアのカードが輝く。

 

 そして・・・その手に前に契約したモスラの卵が現れ、それが孵化のだ。

 

 現れたのは焦げ茶色でかわいらしくデフォルメ化した芋虫みたいな生き物。

 

「アカリが生まれた。」

 

「って・・・何だその生き物!?」

 

 生まれたモスラは子供達に駆け寄る。

 

 そして一緒に遊び始めた。

 

 一匹だけドラゴンじゃないけど、それでもお構いなしに遊んでいるぞ。

 

「・・・それの本来の大きさ、今は考えないようにするわ。」

 

 部長のその言葉で皆は思い出してしまった。

 

『・・・・・・・。』

 

「おっ・・・おい。みんな、どうして震えている?」

 

 アザセル先生と剣崎さん、そしてヴァ―リは知らないのか。

 

 あの卵の本来の大きさが体育館並かそれ以上の大きさだということに。

 

「認めたくないわ。まだ今は小さいから可愛いけど、本来の大きさになったらまさに怪獣じゃない。」

 

 ますます怪物が増えて行く。

 

「あれ?ラッセ―?」

 

 そこにラッセ―が加わる。

 

 そして何やらいう。

 

 皆がそれで嬉しそうな声を上げる。

 

「・・・どうも、アカリだけじゃなく、みんなのお兄ちゃん役を買って出たみたいです。」

 

「ほう・・・。」

 

「ふふふ・・・頼むわね。」

 

 ラッセ―の潜在能力を知っているドライクとクレアは微笑む。

 

「このドラゴンは・・・。」

 

「へえ・・・、いいわね。」

 

 ラッセ―の潜在能力に気付いたのだろう。

 

 アルビオンもベノもラッセ―に驚いていた。

 

「でも・・・アルビオン、大丈夫?あの子達は女の子なのに?」

 

「そうそう・・・ドライク。私達の子共は二人とも女の子よ。」

 

『なんだと!?』

 

 雌だというのか?どちらの子供も・・・。

 

「ちなみにアカリも女の子です。」

 

 モスラ・・・いやアカリか。この子も女の子だと!?

 

『・・・・・・。』

 

 ラッセ―にすごく懐いている四匹の赤ん坊ドラゴンと謎の生き物アカリ。

 

 なんだろう。将来ラッセ―がハーレムを築き上げている光景が見えてきたよ。

 

 なんか二天龍がラッセ―を睨みつけております。

 

「将来性もある・・・危険だな。」

 

「うむむむむむむ・・・。娘はやらんぞ。」

 

 パパドラゴン共がすごく・・・すごくラッセ―を警戒していますよ!?

 

「ふはははは・・・イッセ―とヴァ―リの実例があるからわかるが、ドラゴンは自然とハーレムを作るみたいだな。まさか生まれついてすごいことになっている。」

 

 俺っていつの間にかハーレムをつくっていたか?

 

 まあ、ヴァ―リの奴は作っていたな。

 

「イッセ―。お互い女子には苦労するな。」

 

「ははは・・・ああ。全力で殴りあった仲だ。愚痴位は聞いてやる。」

 

「こっちも聞くぞ。お前とは色々な意味で仲良くできそうだ。」

 

 こいつとはなんか仲良くできそうだ。

 

 良いライバルと言う意味でも。

 

 共に女子で苦労している仲という意味でも。

 

「だが、ここでならあの子達の遊び相手には苦労しないからある意味いいのだが・・・。渦の旅団には預けておけない。」

 

「ちょっと!?この部室をこの子達の託児室にするつもりなの!?」

 

 ヴァ―リはこの部室を二天龍の子供たちの託児所にするつもりらしい。

 

「・・・だが、それしかないだろ。この子達を野に放って、何かあったら親が・・・。」

 

『・・・・・・・・。』

 

 怒れる二天龍を想像し、部長は冷や汗を流す。

 

 前の二人の喧嘩でも危なかった。この上で二人が逆鱗を発動させ、同時に襲いかかってきたらどうなるか・・・。

 

「じょっ・・・冗談じゃないわよ!!」

 

「ごめんなさい。出来る限り私達もサポートするわ。」

 

「でも初めての子供で不安で不安で・・・。」

 

 この旧校舎なら遊び場としても広めだし、結界も皆の強力で大変厳重にかけてある。

 

 確かに安全だ。

 

「・・・はあ。分かったわ。あとアルファとグレイフィアにも応援を頼むから。この子達は世界の希望にして同時に滅ぼしかねない爆弾みたいなものだから。慎重に育てないと。悪影響が心配だわ・・・例をあげると。」

 

 部長は色々不安を抱えている様子。

 

「おう!!面白い子供たちだな。」

 

「あのドラゴンの子供って聞いたけどこれは中々かわいいね。」

 

「ほな・・・立派なドラゴンになるように色々おしえてやらんとな。」

 

「そうそう!!一緒に色々と遊ぼうね。」

 

「王としての風格と言う物を・・・。」

 

「一生懸命可愛がるぞぉぉぉぉぉぉぉ。」

 

 悪影響候補その一・・・良太郎のイマジン共プラスデネブ。

 

 キャラが濃すぎる!!

 

 しかも何故かおもっきり張り切っていやがる。

 

「面白そうじゃねえか。こうなりゃ、この子達も育て上げてやる。将来竜王どころか天龍、いや、龍神にしてくれるぞ!!ふふふふははははははははははははははははははは!!ついでにハーレムと言うやつを今のうちに教え込んで・・・。」

 

 悪影響候補その二・・・ラスボス先生ことアザゼル先生。

 

 自らの手でこの子達を育て上げる事に野望を感じ始めているよ!!

 

 そこに余計な事を吹きこもうとしているし!!

 

 他にも・・・ドS姉弟にスタイリッシュな奴ら、いたずらネコ、腹が黒過ぎる大魔道士、酒好きドラゴンなどエトセトラエトセトラ。

 

「・・・すごく不安な環境でもあるのですけど!?」

 

「どんな愉快な子になるのか想像できない!?」

 

 母親達が悲鳴をあげている。

 

 俺の周りは愉快な連中が多すぎて、無垢なこの子達がどんな影響を受けるのか怖くて仕方ない!!

 

「剣崎さん!!お願いします。この子をぜひとも・・・ぜひとも!!私達もずっとついていきたいのですがそうもいかない時もあって!!」

 

「頼みます。まっとうなあなたが最期の希望です!!」

 

 実体化したクレアとベノに懇願される剣崎さん。すごく戸惑っている。

 

 まあ・・・でかい二人に迫られるのは流石に怖いだろうし。

 

「うっ・・うぇ!?」

 

 どうも一番関わりが深くなりそうなのは用務員である剣崎さんみたいです。

 

「子育てなんて初めてですから!!でも・・・出来る限りは。それにまともって言っても一応人外ですよ?」

 

『人格としてはもっともまともです!!』

 

「さいですか・・・はあ。どうしよ・・・。」

 

 そう言った事は不器用そうだね。

 

「安心して・・・これでも前世の経験がある。手伝うよ。」

 

 おお・・・良太郎がすごく心強いって・・・。

 

「ヨッシャ・・・こいつらにクライマックスを教えてやるぜ!!」

 

「僕は相手を釣ったり、釣られる方法を・・・。」

 

「こいつらを泣けるほどに強くしてやる。」

 

「答えは聞いていないは・・・教えない方がいいかな?」

 

 だめだ!!憑いてくる悪影響候補ナンバーワン共が余計だ!!

 

「立派な王に育て上げて見せるぞ。」

 

「・・・おちつきなさい。こうなったら・・・。」

 

 部長は皆を静めて言う。

 

「なるようになれよ。」

 

 匙を投げて、完全に開き直った!?その言葉と共にバイオリンが聞こえてくる。

 

 その音に・・・ドラゴン達が静かになる。

 

 奏でているのは渡だ。

 

「・・・胎教にもよかったのよ。彼のバイオリン。この子達はこのバイオリンを子守唄代わりにするのかしら?」

 

 そして・・・すやすやと眠り始めた。

 

「龍を鎮める曲か・・・。唄なら知っているが、この子達は渡の音楽も聞きながら成長するのだな。」

 

「うん。僕もがんばらないと。オ―フィスちゃんは絶対に戻ってくる。だからこそ。」

 

 渡はすでに前を向いている。

 

「さあて、まあ将来性が大変楽しみな子供達もいるが、まあ・・・その前にお前達をさらに強くするつもりだ。俺の神器の知識を総動員させてやる。それに・・・心強い連中もいるからな。チームイッセ―共は今後の三勢力・・・いや、世界の平和の鍵になる。それを疑う余地はねえ。」

 

 アザゼル先生は俺達を見る。

 

「・・・とくにイッセ―とヴァ―リ。お前達は切り札だ。だが・・・同時に危険すぎる最終兵器でもある。あの力を長時間保持、ならびに制御できるように夏休みは徹底的に鍛え直す。覚悟してもらうぞ。」

 

 修行している俺達に向けて先生は告げる。

 

「すでにサーゼクスの奴に声をかけて、あるお方達を呼んである。ついでに・・・良太郎、これをお前の契約しているイマジン共に使ってみな。」

 

 アザセル先生はある腕輪を五つ良太郎に渡す。

 

「んん・・・ええええぇぇぇぇぇえ!?」

 

 すると、イマジン達が皆実体化。

 

「おおおおっ!?なんじゃこりゃ!?」

 

「この時間で実体化できるなんて。」

 

「こりゃすごいで!!」

 

「最高だよ!!これで踊れる!!」

 

「う~ん。やっとこの時がきた。」

 

 デネブ以外は実体化出来なかったのに。

 

「今回の修行・・・お前達イマジンは個別にやってもらう。良太郎の個性を生かすにはお前達のさらなるレベルアップが必要だからな。そして、その器である良太郎と・・・そうだなサイガ!!お前もあの力の制御とスタミナなどの鍛え直す必要があるはずだ。俺達が開催する地獄のメニューにイッセ―とヴァ―リと共に参加してもらうぞ!!」

 

『えええっ!?』

 

 地獄のメニューって・・・。

 

「上等・・・アザゼルが地獄と言うのだから相当なものなのだろうな。前に体験したあれを軽く超えるのだろ?」

 

 ヴァ―リはアザゼル先生のトレーニングを受けた事があるらしい。

 

「当たり前だ。お前さん達の力はそれだけ増大してんだ!!それ相応の覚悟はしてもらうぞ。この人間核弾頭共が。」

 

 人間核弾頭・・・。俺達に対する評価がそれなの!?

 

「・・・はあ・・・。」

 

 でも・・・確かに本格的に鍛え直す必要は感じている。

 

「他のメンツも俺が頼んでスペシャルゲストを何人も呼んでいる。朱乃にも覚悟してもらうぞ。まあ・・・あいつの事は許せないのは分かる。だが・・・。」

 

「分かっていますわ。私もいい加減前に進みたいですし。」

 

 アザゼル先生の言葉に朱乃さんは何故か穏やかだ。

 

 あれ?なんで?確か父親である堕天使を憎んでいるはずなのに?

 

 首を傾げるアザゼル先生。

 

 アーシアが驚いた様子を見ている。

 

「・・・・ごめんなさいアーシアちゃん。今は口止めで。」

 

「・・・・・・はい、朱乃お姉様。」

 

 何か様子がおかしいぞ?

 

「まあ、それと向き合いながらユウナと共に最強の魔女と一緒に修行してもらう。ハルトとポルム、そしてウラタロスとリュウタロスも一緒に行け。」

 

 最強の魔女?

 

「・・・あのベヨネッタ様と?ユウナさんから聞いてはいましたが?」

 

 誰ですか?そのベヨネッタって?

 

「少なくとも・・・朱乃、お前とは絶対に意気投合する奴だとだけ言っておく。俺はお前のキャラが崩壊しないことを祈っている。あれは俺や魔王、熾天使はおろか神ですら敵に回したくないとんでもない女だ。・・・ハルトとも意気投合しそうで俺は心底恐怖している。」

 

 渋い顔で告げるアザゼル先生。

 

 一体そのベヨネッタって魔女・・・どんなキャラしているの!?あのドS姉弟と意気投合間違いなしって!!

 

「木場。お前は禁手化の長時間の維持と・・・今回の修行でオーガギアの禁手化に至ってもらう。巧と一緒に剣も一から鍛え直しだ。お前を「剣帝」にするつもりだから覚悟しておきな。安心しろ、ギア関係なら巧のことで研究は進めている。」

 

 木場に対して課題は明快。あのギアを使えるようにするか・・・。

 

「ゼノヴィアとネロ、ついでにモモタロスにも参加してもらうぞ。特にゼノヴィアの中にいる残り二体のイマジンはまだ不明だが、お前さんも技量もさらに高めさせる。一から徹底的に鍛え直すつもりだから覚悟しな!!剣に関しては木場の師匠にダンテが相手になる。おもっきりしごかれてきな。」

 

 ゼノヴィアもそこに加わるのね。

 

「さて・・・アーシアにはアギトとして変身をできるようにしてもらう。アギトとしての戦闘形態。戦闘を嫌うお前さんには過酷だが、変身できるようになったら新しい次元が見えてくるはずだ。皆には言えねえが、アギトとしての大先輩に見てもらう。」

 

 そして、アーシアは変身できるようにか。って・・・アギトの大先輩って誰です?

 

「小猫ちゃんは・・・鬼の修行を仕上げろ。仙術と鬼の力の融合は凄まじい。そして・・・ガメラと言う存在とも向き合ってもらう。」

 

「はい。」

 

「鋼鬼・・・確かお前は夏の鬼の合宿をサイラオークと共に冥界でやる予定だよな?」

 

「ああ・・・夏の魔化魍対策で紅になることを覚えてもらおうとやる予定だ。ついでに・・・黒歌と共にアーマード化できるようにも・・・。」

 

「にゃはははは・・・覚悟はしているにゃ。」

 

 そっちはそっちで過酷な修行をするつもりですな。

 

「そこに実はそのサイラオークの眷属や、あと希望者も参加するらしい。一般の下級悪魔や堕天使達だ。俺は鬼の力を冥界にも伝えたいと思う。冥界の悪魔を・・・鬼にしてくれる。」

 

「・・・おいおい。下剋上が起きるんじゃねえか?」

 

 魔力とかではない鍛え上げた肉体のみで戦う別の意味で悪魔の軍団。

 

「サイラオークを量産するつもりなの!?」

 

「それも悪くない。魔力などではない・・・肉体のみで高みに上がる連中・・・鬼の一団を作り上げてくれるか。」

 

「・・・恐ろしい奴らだぜ。そんなガチムチ連中と戦うのは俺はごめんだね。」

 

「こっちは楽しみが増えて仕方ないよ。」

 

 ヴァ―リと俺の反応は全く別なのは仕方ない。

 

「安心しろ。そこにリアス・・・お前も参加させる。」

 

「・・・はい!?」

 

 えっ?鬼の修行に部長が!?

 

「お前さん・・・多分ウィザード系のパワーだけじゃなく、ウォーリア系のパワータイプを目指しても面白そうでな。」

 

「あのね・・・。」

 

「キンタロスとデネブも参加させてのパワー祭りだ。がっちり楽しんで来い。」

 

 すごく意地の悪い笑みを浮かべるアザゼル先生。

 

 部長が嫌がることを分かった上での確信的な笑みだ!!

 

 部長は体を細かく震わせながら・・・魔法陣からハリセンを召喚。

 

 その頬には皇魔力発動の証であるステンドグラスのような文様が浮かび上がっている。

 

「げっ!?ちょっとまて!!おちつけ・・・おちつけリアスちゃん!!その状態でのツッコミはシャレにならな・・・」

 

「私はそんなパワーはないっちゅうねん!!」

 

 そんなアザゼル先生を、なぜか関西弁で叫びながらのハリセンでのフルスイングを叩きこむ。

 

「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・・・・・・!?」

 

 部室の天井をぶち破り、場外ホームランのごとく外まで吹っ飛ばされる堕天使総督、もといラスボス先生の図。

 

 すごい勢いで星になったと思う。

 

「あっ・・あれ?」

 

「・・・すごい・・・パワー。なるほど、確かに修行は必要だね。鬼にならなくていいからその力を制御するための修行・・・僕も手伝うよ。」

 

 渡・・・部長と共に修行することになりそうだった。

 

「ウオオオオオォォぉ…ふん!!はあ・・・はあ・・・はあ・・・死ぬかと思った。まったく、そのパワーとあの爆発に耐えられる頑丈さを生かさない理由はねえだろう?ツッコミでこれだからな。」

 

 急いで戻ってきたアザゼル先生は荒い息とでっかいたんこぶをさすりながら身を持って部長の修行の必要性を示してくれた。

 

 なんてパワーだ。

 

「後ギャスパー。神器の制御はそうだが・・・あいつは未知の力が多すぎる。天道が主にさせるらしい。俺も研究がてらじっくり付き合ってやる。ついでにジ―ク、お前も来い。」

 

「へっ・・・ぼぼぼぼ・・・僕がイッセ―先輩の師匠に教えてもらうのですか?」

 

「クロックアップ。それを覚えさせたいらしいぜ・・・。お前なら生身でそれができると。」

 

「がっ・・・がんばります!!」

 

 ギャー助は段ボールからこもりながらもいう。

 

「・・・だが、こいつもやるな。血を吸われている事に今更気付いた。」

 

 ヴァ―リは驚きながら肩を指す。

 

 そこには・・・ギャー助が変化した一匹のコウモリと・・・サガ―クと体の一部が変化したコウモリが噛みついているだと!?

 

「・・・うむ。やはり最高級の燻製、そこにチーズなどの乳製品のようなおいしさがある。」

 

「そうですね。ああ・・・さらに力が湧いてきます!!」

 

 軽く飲んだ後、サガ―クがギャー助の所に戻って感想を言い合う。

 

 そう言えば、こいつ・・・相手に気付かれずに血を吸う技を身につけやがった。しかも・・・アギトの本能すら気付くのに時間がかかるほどのレベルで。

 

「こっ・・・こやつ・・・。二天龍を餌にしているというのか!?」

 

 アルビオンまで戦慄している。

 

「赤いの・・・気をつけろ。こいつは我らの天敵になりえる。」

 

『・・・・・・・。』

 

 ドラゴンキラー、いやドラゴンイ―タ―、アギトイーターのギャー助の誕生ですか?

 

「ははは・・・まあ、私も、ネロ君もやられましたよ。」

 

 アーシアは苦笑している。

 

「でも・・・飲む量は一日一人、四人、ローテーションにする。飲む量は百ミリグラムなら問題ないから。」

 

「・・・逃げることはできるのか?」

 

「やれたらやっている。こいつ・・・俺達まで停めるようになりやがった。目隠ししても止める事ができる。」

 

「・・・なんか、神器の特性を逸脱し始めているな。本当に退屈しない。」

 

 ヴァ―リの指摘に対してネロは溜息。

 

 ちなみにアーシアの血は喉越しすっきりでなおかつ甘く、逆にネロは炭酸のような刺激があって、なおかつ・・・美味しいビールのような苦さがあると。

 

 どんな味だ?

 

「まあ、覚悟してくれ。この夏、お前達をさらに魔改造してくれる!!お前達ははっきり言って現時点でも化け物だが、それでまだまだ原石と言うのだからこっちもやり甲斐があるってもんだ!!お前達はここからさらに上にいく。その手伝いをやらせてくれ。巧を助けてくれた礼代わりになるかどうか分からんが。」

 

・・・このラスボス先生って、義理固い。

 

「後・・・、キリエ、例の件はどうなっている?」

 

「ええ。パートタイマーの神様は順調ですよ。」

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?』

 

 キリエさんの報告を理解するのに俺達はかなりの間が必要となった。

 

 パートタイマーの神様!?

 

「はははは・・・まあ神様代理ということで本人はパートタイム勤務みたいな形でやっているのよ。」

 

「・・・ああ。時代も変わったねえ。まさか神としての仕事がパートタイム制になるなんてよお・・・。長生きするもんだわ。いやほんと。」

 

 アザゼル先生がすごく遠い目をしている。

 

 誰なんです?パートタイムで神様をやっている方は!?

 

「そう言えば・・・まどかさんって最近パートタイムでの仕事を始めたよね?」

 

 渡がある事を言い出す。

 

 そうだった。母さん、パートで働きだすと。

 

 もっとも、食事当番や家事は分担しているので全然問題はない。

 

 でもどうしていきなりパートを始めたのだろう?

 

 そして、どうして渡はそこで母さんがパートを始めた事を上げたの?

 

「そう・・・か。これはもう決定的ね。」

 

 ため息をつく部長。

 

「・・・気をしっかり持ってくださいリアスさん。僕も確信したところです。」

 

「渡君・・・ありがとう。」

 

「まあ・・・後で聞きに行こうや。俺もその領域に至ったというわけで。アーシアちゃん紹介を頼むわ。」

 

 あれ?渡と部長、そしてネロは揃って溜息をつく。

 

「安心しろ。俺も気付いた。」

 

「同じく。はあ・・・あの家はもうすごい。何が飛び出してくるのか想像もできん。」

 

 そこに・・・あれ?ハルトに鋼兄まで加わった。

 

「私・・・イッセ―の化け物じみた力の根源を知ることになるのね。」

 

 部長もまた遠い目をしている。

 

 こんな感じで俺達は夏休みを迎えようとしていた。

 

 だが、その前にとんでもない事件が起きるなんて誰が思ったか。

 

 

 

 

 




 皆さま・・・この後、夏休みの前にある事件を起こします。

 オリジナルです。

 前々からリクエストがあった分です。さて・・・かなりのカオスになります。


 


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 間章 原作世界からの遭遇。
ドッペるゲンガー!?と子供達脱走


 いよいよ始まりました。

 原作達とのコラボです。

 上手くできているのかわかりませんがどうぞ!!


 SIDE ???

 

 起きたら・・・夏に逆戻りしていた。

 

 あれ?可笑しいな。もうすぐ年末で、部長達と年越しとしゃれこもうとしていたのに?

 

 何で夏の学校のグランドに立っているんだ!?

 

「・・・・・・・・。」

 

 チャイムが鳴る。それと共に玄関から次々と生徒たちが出てくる。

 

「俺・・・タイムスリップでもしたの?」

 

 でもその考えは甘いようだった。

 

「・・・・・・・・・。」

 

 その玄関からよく知った顔が出てきたからだ。

 

 そいつは間抜けな顔で俺を見る。

 

 きっと・・・俺も同じ顔をしてそいつを見ているだろう。

 

 何しろ・・・そいつは俺と同じ顔だったらだ。

 

「いっ・・・イッセ―が二人!?」

 

 見覚えのない背の高いイケメンが俺と隣の俺を交互に見る。

 

「ドッ・・・ドッペルゲンガー!?俺死ぬのか!?」

 

 ああ・・・見たら死ぬってあれ・・・てえええぇぇぇぇぇ俺しんじゃうの!?

 

―――落ちつけ阿呆が。

 

 俺の中の相棒がたしなめてくれる。

 

 しかし、なんか唸っているぞ。

 

―――俺が・・・あいつにもいるぞ!!

 

「おい・・・これはどういうことだ!?」

 

 向うの俺の傍に・・・デフォルメ化したドライクが現れただと!?

 

―――あっ・・・相棒・・・ここは違う世界だ!!

 

 どういう事だ?ドライグ。

 

「お前・・・名は。」

 

 チィ、仕方ねえ。

 

「兵藤一誠。」

 

「奇遇だな、俺も兵藤一誠だ。」

 

 二人の俺が対峙する。

 

 出来れば平和的に行きたいけど・・・。

 

―――――バトルフィールド。

 

「結界は展開させたわ。どうしてこうなっているのか全く分からないし、興味もあるから逃がすつもりはない。まあ・・・前回の反省を生かしてハルトが作ってくれた特性の結界。そのテストも兼ねさせてもらうわ。」

 

 指輪をはめた少女の姿を見て・・・俺は絶句した。

 

「レッ・・・レイナ―レ。」

 

 それは俺を殺した相手。

 

 それが俺の目の前にいるが・・・。

 

――――――フィールドカット。

 

 腰に・・・何か特撮ヒーロー、仮面ライダ―ウィザードだったか?そのドライバーみたいな物が現れ、そこにでかい指輪をかざしたら音声と共に周りの空間が変わる。

 

―――ぐっ・・・一瞬でこの空間を切り離したか。相棒・・・そいつを倒さないとここから出れないぞ。

 

「・・・仕方ない。」

 

 力を温存したいけど・・・そうもいかねえか!!

 

 ある意味では好都合かもしれん。

 

 トラウマを克服するいい機会だ!!

 

 かなりやりにくいし、複雑だけど。

 

 俺は禁手化を発動。

 

 この時期の俺なら、まだ禁手化に至っていないはず。

 

それで突破口を開いて・・・。

 

「すまねえがレイちゃんをやらせるわけにはいかねえ。」

 

 だが、もう一人の俺が立ちはだかる。

 

「何かあったらグレゴリ最凶の魔王が黙っていない。俺の友は・・・俺が知る限り最凶なんでね。」

 

 何でその隣にヴァ―リまでいやがるんだ!?

 

 しかも駒王学園の制服まで着ているとは。

 

「ああ・・・あれは俺が知る限り最も凶悪な類だ。悪いことは言わねえ。コカビエルが逃げまどい、アザゼルすら恐れる男の大切な人に・・・手を出すんじゃねえよ。」

 

 他の皆もレイナ―レを庇っているだと!?

 

「・・・俺はこいつに殺されたんだぞ?」

 

 それだけじゃなく・・・まあ、結構酷い事をされたというわけで。

 

「お前にとってはそうだろうな。だが・・・俺の幼馴染の大切な人なんだ。」

 

 んん?もう一人の俺の幼馴染だと?グレゴリの関係者となぜ幼馴染に?

 

「・・・あっ///あの///なっ・・・なんで私がハルトの大切な人なの?まっ・・・まだ恋人にもなっていないのに!?」

 

 顔を真っ赤にさせてもじもじとしているレイナ―レだと!?

 

 なんか、可愛いぞ?

 

 おかしい。レイナ―レッて救いようのないキャラだった気がするのに?

 

『ああ・・・「まだ」なってはいないよな。』

 

 そこで全員があえて「まだ」を強調しやがった!!

 

「はっきり言ってモロバレ。恋愛に関して鈍いイッセ―だって気付いているくらいにな。」

 

 右腕を手袋で隠した背の高い奴が呆れた様子でもう一人の俺の肩を叩く。

 

「おい!!誰が鈍いだ!?」

 

「罪深さはお前らしい。うんうん。」

 

 その隣でヴァ―リの奴がなんか感慨深そうに見ているし!!

 

 なんかあいつら仲良いな。

 

「????」

 

 なんか・・・可笑しい?

 

 あのレイナ―レ。俺が知っているレイナ―レと何か違う。

 

 ヴァ―リも俺が知るよりもなんか・・・丸い。そして乙女という名の可愛い生き物になっている。

 

―――――だから言ったはずだぞ!!ここは異世界だと!!俺達のいた世界の過去じゃなく、似ているが違う世界に来ているとな!!

 

「皆手を出すなよ。特にヴァ―リ!!お前はな。」

 

 異世界の俺がやる気を出して前に出てくる。

 

「仕方ない。まあ・・・他の連中もいたらやらせてもらうよ。アギトとしての予感だけど、きっと来ているのは彼だけじゃない・・・異世界の僕もいる気がする。」

 

 あっ・・・あれ?腰に何か変なベルトが現れましたよ?

 

「お前の予感はシャレにならないから勘弁してほしいぜ、変身!!」

 

 その声に・・・黄金の何かに変身した!?

 

 黄金のアーマーに紅い大きな複眼。

 

 それは俺達の世界で放送している仮面ライダーその物だった。

 

「なっ・・・なんだそれ!?」

 

「仮面ライダ―・・・アギト。」

 

 仮面ライダ―アギト。ああ・・・そう言えば観た事がある。

 

 しかもアギトって平成ライダーの二番目。

 

 俺も実は好きな仮面ライダ―である・・・って・・・。

 

「おっ・・・おい。何で俺がアギトになってる?」

 

 どうなってんだ!?俺が仮面ライダーアギト!?

 

「・・・アギトを知っているのか?」

 

 しかも・・・両手足が可笑しい事になっている。左腕は赤龍帝の篭手なのはわかる。

 

 右腕に変な龍のガントレット。あれって仮面ライダー龍騎のドラグバイザーそのものだ。

 

 右足に同じく黒い龍のグリーブ。

 

 そして・・・左足が白い龍の翼になっとる!?

 

――――・・・あの左足、アルビオンの・・・。

 

 俺は過去に右腕にその力を取り込んだけど、あいつは・・・左足か、

 

 足・・・。

 

 仮面ライダ―だとしたら、それは嫌な予感しかならない!!

 

 あの足でのキックは受けないようにしよう!!

 

 ライダーキックと半減の合わせ技は凶悪過ぎる。

 

「ぐっ・・・だがやるしかねえ!!」

 

「いいぜ。どこからでもこいや!!」

 

 こうして俺は何故かアギトに変身したもう一人の俺と戦う羽目になった。

 

「へえ・・・これや面白い。」

 

 そこにヴァ―リまでやってきやがった。

 

「・・・別世界の僕か。なら・・・こっちが相手するのが筋かな?みんな手を出さないでもらおうか。」

 

 そう言ってあっちのヴァ―リもまた変身しやがった!!

 

 今度は・・・ミラージュアギトだと!?

 

 ・・・あれ?という事はオルフェノクもいるのか?この世界?

 

 なんか仮面ライダー繋がりが多い世界だな。

 

「ふははは・・・あーははははは!!いいねいいね!!まさか異なる世界の俺とも戦えるなんて光栄だよ。」

 

 ヴァ―リの奴。歓喜の声をあげているぜ。

 

「・・・二天龍激突再びか。はあ・・・、どうしよ・・・。これって結界持つのかな?」

 

 レイナ―レが深い溜め息を突いている。

 

「二人ともやりすぎないでよ?・・・また学校が壊れたら、ハルトが黙っていないから。」

 

『・・・ビク!!!』

 

 あれ?その言葉に向うの俺達が固まったぞ。

 

『カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ・・・。』

 

 なんだ?アギトであるあいつらが何で震えているの!?

 

『りょっ・・・了解であります!!』

 

 何で軍曹!?

 

「・・・一体誰なんだ?そのハルトって?」

 

「お前達もあれを受けてみろ。」

 

「あれはトラウマになる。」

 

 向うの俺達が口々に言う。

 

 なんだ?そのハルトってやつ?

 

 しかもそのハルトって名前・・・仮面ライダーで聞いたことがあるような・・・。

 

 でもあのアザゼル先生が恐れる男って・・・何か怖いんですけど!?

 

「さっさとここから脱出して逃げるぞ!!」

 

「何を言っているんだい!!そのハルトって奴と戦うぞ!!アザゼルが恐れる男だなんてそうそういない!!」

 

 ああもうヴァ―リは!!なんでこう自ら危険に突っ込むかな?

 

「無茶せん程度に全力でいくぞ!!」

 

「しかたないか・・・。でも心行くまで戦わせてもらう。」

 

 俺達はこうして違う世界の俺達と戦う事になった。

 

 

 

SIDE 剣崎

 

 人生って分からない。

 

 今、俺はそう思わずにはいらない状態だった。

 

「キャ・・・キャ!!」

 

 思えば俺って・・・あれから遠いところまで来たもんだ。

 

 あの時から百年以上も世界を歩き回り、紛争地帯ではこの不死身の体が役に立った。

 

 助けた相手からも化け物呼ばわりしたけど、それでも助けた事に後悔はない。

 

 むしろ怖がって、危険な場所から急いで逃げてれくれればそれでいいくらいだ。

 

 そんなつもりで戦ってきた。

 

 だが、変な靄みたいな壁のせいで俺はいつの間にか異世界にやってきてしまった。ある時は変なジャングルみたいな世界。そのあとにこの世界に来てエクゾジストや悪魔、堕天使や天使等など色々な人外に襲われるという羽目に。

 

 まあ、みんな返り討ちにしたけど。

 

 みんな未熟すぎて不死身じゃなくても片手間で追い払えた。

 

 でも、あまりに蹴散らし過ぎて、皆から不死身の怪物と言われて恐れられましたよ。とほほほほ・・・。

 

 でも、ある意味人外ばかりの世界で良かったとも思う。

 

 俺みたいな不死身の化け物でもまぎれてしまうので。

 

 その関係か友達もできた。

 

 特にこの日本で九尾の狐さんには世話になったよな。

 

 そして・・・俺はこの街に再びやってきて今・・・。

 

「べろべろばぁー!!」

 

 必死でドラゴンの赤ちゃん達をあやしています!!

 

 皆元気一杯で、日々があわただしい。

 

 ただいまこの子達の母親は食事を取りにいっている。まあ・・・人間体に変身しての買い物だ。

 

 イッセ―君達がドラゴンの専門家と共に相談し、作っている。

 

 母さんドラゴンズはそれを作れるように日々練習中。二体とも料理はしたことないので、イッセ―やその師匠である天道さんに教えてもらっているという。

 

 ドラゴンアップル。それもヤマタというドラゴンが知り合いからかなり良心的な値段で仕入れており、それを利用した料理も研究中。

 

 そんな風に・・・何かすごい恵まれている環境でこの子達は育てられております。

 

 そのお守を俺がやることになるなんて。

 

 本当に・・・どうしたらこんな風になるの!?

 

 人生って分からない。長く生きれば生きるほど・・・退屈せずに色々と想像もしない事が起こってくる。

 

う~ん。まだ到達点が見えないよ。はははは・・・なんか俺の人生は波乱万丈に満ちているのかもしれない。

 

 でもおかげで退屈だけはない。退屈だけは。おかげで生きることができる。

 

 あの小さなじっちゃんも言っていたな。

 

 まあ、三勢力も和平したことで、こっちもイリナさんの父さんと敵対することがなくてよかったと思う。

 

「ラッセ―本当にありがとうな。」

 

 その過程でなんか・・・ラッセ―と仲良くなった。基本的に俺は懐かれないはずなのに、何となく一緒にいて楽しい友達になった。

 

 ラッセーの奴が少し照れた様子で顔を隠す。でも頭が三つもあるので隠し切れていないのは御愛嬌だ。

 

 ・・・俺自身がこんな怪物になったせいか、あまり種族などで人を見ない。それこそ俺は妖怪やドラゴン共仲良くなった。

 

 九尾の狐さんもそうだ。

 

あとすごく居眠りなドラゴンも。そのドラゴンとは何故か契約までさせてもらったほど。

 

 旅の中で落ちていた契約のカードを拾ってしまい、それがどんなカードかしらないまま使わせてもらったのだ。他の皆がそれを持っているのを見て驚いた。あれは・・・ミラーモンスター達が使うカードだったらしいのだ。

 

 俺が契約しているのは隠しておいた方がいいと、その契約したあいつに諭されたので皆にはまだ明かしていない。

 

その契約のカード越しにそいつは色々と教えてくれる。相談しながら色々とやっているわけだ。

 

 眠ってばかりなのに、眠りながら知識を吸収しているのか、色々な知恵を持っている。

 

 こっちの波乱万丈な人生を楽しいと思ってくれるらしく夢の中で見守っているらしい。

 

 なら・・・今俺が悪戦苦闘しているのはどう見えるのかな?

 

―――――ははは・・・面白いに決まっているじゃないか。夢として見るには最高だよ。

 

 二天龍の子供のお守って言う色々な意味で重要な役目をあいつは面白がっている!!

 

 そうそう・・・今俺が子守をしているドラゴン達の紹介をしようと思う。

 

 みんな女の子だ。

 

 白い蛇みたいな子の名前は撫子(ナデシコ)。

 

 性格はかなりクールで冷静。でもすごく頭がよく、洞察力も鋭い。ついでに言うと額に第三のでかい眼があるためか、空間把握能力が極めて高く、視野も広い。手の代わりに常に彼女の周りに四つの球体が浮いており、それで細かな作業とかする。

 

 ちなみに、すごく器用だ。まるで精密機械のごとく、神業を平然とやらかす。

 

 

 紫のドラゴンの名前は珊瑚(サンゴ)。

 

 すごく大人しく引っ込み思案な子だ。だが・・・気をつけて欲しい。

 

 この子もまた危険な力を持っている。

 

 その危険な力に加え、凄まじい怪力の持ち主という罠もある。

 

 まだ赤ちゃんなのに、俺だけでなく、車すらを片手で軽々と持ち上げる。

 

 そのパワー・・・まだまだ急成長中。

 

 

 

 朱金の龍の名前は陽菜月(ヒナヅキ)

 

 おしゃれ好きで、綺麗好き。少々気が強いのが特徴だ。でも・・・例にもれず彼女も恐ろしい力を秘めている。

 

 まあ、それで大事にしている宝物が消えてしまわないように細心の注意を払っているだけマシですかね。

 

 でも怒ったら相当苛烈になるのは勘弁してほしい。あの力は不死身だろうが関係なく戦闘不能、または死んでしまう力故。

 

 

 黒いドラゴンの名前は雷花(ライカ)

 

 活発でなおかつ好奇心旺盛。じっとしているのが苦手な子だ。疲れた時に寝るのも速いからスイッチのオン、オフの切り替えが早いのも特徴だ。

 

 この子は・・・とにかく早い。すごく早いのだ。

 

 おかげで逃げられたら一番捕まえるのに時間がかかる子だ。

 

 狭い部屋では一分もかかってしまう。

 

 むしろどれだけ俺から長く逃げていられるか?それを楽しんでいる。

 

 

 

 それでもこの子たちはアーシアちゃんの契約モンスター・アカリちゃんと仲がいい。

 

 アカリちゃんは、すごくマイペースでのんびり、おっとりしている。でも、何か芯が強そうな感じがある。

 

 

 彼女達の個性を把握し、それにうまく合わせられる程度には俺は子守をしている。

 

 結構可愛い子達だ。

 

「んん?えっ?またあれをやってほしいの?」

 

 そして、俺は最近子供達に受けがいいある特技を編み出した。

 

 まずジョーカーに変身。

 

 そして、部長に教えてもらった魔法で大木すら楽に切れそうな位の大型のチェーンソー召喚。

 

 この世界の魔術も面白い。フォースとはまた違うものがある。

 

 ついでにアイスホッケーのマスクをつける。

 

 さて・・・盛大にチェーンソーを吹かして!!

 

「ダァーイ!!」

 

と相手に恐怖を与えるために声色を低くくぐもった感じにして叫ぶ。

 

『キャキャキャキャキャ!!』

 

 それを見て子供達は大はしゃぎ。

 

 いや・・・普通怖がりそうなのに何でこんなに受けるのか?

 

 よく分からん。

 

ドラゴンの子供だからなのか?

 

それとも、無邪気故の怖い物知らずなのか・・・。

 

 ・・・・・・・個人的には後者だと思っている。

 

 これを母親達には見せられないよね?見せたら絶対にお仕置きだし。

 

 あの奥様達のお仕置きは・・・不死身でも嫌だ。

 

 ハルト君を使ってくるんだし。

 

 まあ・・・気を取り直してもう一度。

 

「・・・リアス姉様!!一体何がどうなって!!」

 

 という言葉と共に、戸が開く。

 

 それに気付き、その戸に振り返りつつ、俺はチェーンソーを振り上げて・・・。

 

「ダァァァァァァァァァァイィィィィィィ!!」

 

 と叫んでしまった

 

 我ながらさっきよりもより声が低く、怖く出来た渾身の演技。

 

 そこにいたのはアーシアちゃんだった。

 

「・・・・・・・・。」

 

 まあ、ここに来るのは身内だけだから問題ないって・・・あれ?

 

 何で顔色蒼くしているのですか?

 

「・・・・・・・・・パタリ。」

 

 そして・・・倒れた!!?

 

「うーん・・・うーん・・・。」

 

 慌てて抱き起こすと・・・すぐにアーシアちゃんは目を覚ますが・・・。

 

「ヒッ!?・・・ガク。」

 

 と小さな悲鳴をあげて気絶してしまった。

 

 なんか止めさせてしまったような。

 

「あれ?ああ・・・俺ってこの姿のままだった。だが・・・アーシアちゃんは見慣れているはず。どうして今更気絶なんか・・・。」

 

 自分が言うのもなんだが、ジョーカーの姿は初見では怖すぎる。

 

 でもみんなはもう慣れてくれてこっちとしては気が楽だったのだが・・・。

 

「・・・私がいる?」

 

 だが、その答えは扉の向こうから現れたもう一人のアーシアちゃんだった。

 

「?」

 

 さて・・・どうやらまた何かが起きたらしい。

 

「う~ん・・・う~ん。」

 

 まずはうなされているもう一人のアーシアちゃんを介抱しないと。

 

「その前にアーシアちゃんを放してしてくれないかな?」

 

 だがその俺の首元に剣が当てたれる。

 

「?」

 

 それは佑斗君だった。

 

 でも・・・何か違う。

 

「この人・・・違う佑斗さんです!!」

 

「・・・・はあ。オンドゥルは・・・。」

 

 思わず溜め気がでるよ。

 

 やれやれ。とにかくゆっくりと話をしましょうかね?

 

「そう警戒しなくていい。ちょっとこの子を驚かせてしまってね。まあ、こんな見た目で申し訳ない。」

 

 首に突きつけたはずの剣をやんわりとのける。

 

 手も使わずに刃と体の接点だけでだ。

 

 こういうのは円運動が大切なんだよ。あと体の軸とか重心も。

 

 太極拳のそれに近いかな?

 

「驚かせたのは謝る。だから落ちつこうよ。」

 

 そして、彼の目の前でジョーカーの姿から人間に戻る。

 

「いっ・・・何時の間に・・・。」

 

 いきなり剣から俺がすりぬけるようにして立ち上がったように見えるだろう。

 

 まあ・・・本当に長い事闘ってきたから。変な技が身についてしまった。

 

 理に至るといわれる類らしい。まあ無駄な力を使わずに色々できるし楽ですが。

 

 戦い以外あんまり意味が無いのが最大の難点だ。

 

日常生活ではその場の空気を手に取るように読める程度で。

 

 そうそう、ジャングルで余生を過ごしていた小さなじいさんからも「フォース」って奴もならっていたんだ。

 

 あれは結構便利だ。素質があるって言われた時には驚いたけど。

 

 超能力みたいな事が楽にできるようになっている。

 

 別れる前にはもうマスターとして認めてもらえました。

 

 そう言えばこの世界でその素質を持つ奴を見つけて弟子にしないといけないのだった。

 

 騎士の系譜を継ぐ者っているのかね?

 

 この世界で多分骨を埋めることになりそうだし、この世界で弟子に教えましょうかね_

 

 実はあの子供ドラゴン達にも素質がある。アカリちゃんとラッセ―にもだ。故に遊びながら密かに修行させてみたりする。

 

 まだ下地段階だけど、これが十年後になると面白い事になる。

 

 ふふふ・・・。初めての弟子がドラゴンって言うのも面白い。

 

 何となく予感がするんだ。俺はここに来る運命だったと。

 

 そう告げている。

 

「あれ?アーシアちゃんが二人?」

 

 彼もアーシアちゃんが二人いる事に気が付いたようだね。

 

 さて、まずどこから・・・。

 

「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「ぐっ・・・敵?」

 

 灰色の魔人・・・ホースオルフェノクが下半身を馬に変えた状態で壁をぶち抜いて乱入してきたのだ。

 

「なっ・・・。」

 

 下半身が馬の状態で翔る彼を見て、もう一人の佑斗君は絶句しながら素早く飛び退く。

 

「なんだ・・・君は。」

 

「・・・それはこっちのセリフだ。」

 

 オルフェノクの姿から戻る佑斗君。

 

 そう・・・彼は俺達の知る佑斗君なのだ。

 

「・・・僕まで二人?でも僕はそんな化け物に変身はしない!!」

 

「化け物は否定しないさ。」

 

「ちょっとお二人とも落ちついて下さい!!って・・・。」

 

 二人の姿が消える。

 

 それと共にあちこちで剣撃が聞こえてくる。

 

「・・・参りましたね。はあ・・・。」

 

 アーシアちゃんはため息をつく。

 

「・・・どうもあちこちで戦闘が起きています。って・・・。」

 

 その激突のせいで壁に大穴が空く。

 

 そこから・・・ドラゴンちゃん達が脱走。

 

 ライカが大人でも走れないと思うほどの速度で皆を引っ張り、あっという間に消えてしまった。

 

 どうも激戦に驚き、思わず逃げてしまったみたいだけど・・・速過ぎる。

 

 その速度・・・子供にして弾丸のごとく。

 

 俺は反射神経も鍛えているので何とか見えたけど・・・。

 

 まだ子供だね。流石に怖かったか。

 

「大変・・・アカリまで連れていかれた!!」

 

 子供ドラゴンズとアカリちゃんはとても仲がいい。それこそ・・・本当の姉妹のように。

 

 故に、危ないと思って一緒に連れて行ったのだろう。

 

 うん・・・いい子たちだ。

 

「ってラッセ―!?」

 

 その後をラッセ―が通り過ぎる。

 

 彼もすごい速度で逃げた子達を追いかけて行ったのだ。

 

「・・・お兄ちゃんとして妹分達を放置しておけないって。」

 

 いや、ラッセ―。君はいい兄をしているよ。

 

「・・・はあ。」

 

 でも、参ったねえ。早く見つけないと。

 

 嫌な予感がするんだ。こんな光景を母親達が見たら・・・。

 

 ドサ・・・。

 

 ああ・・・遅かった。

 

「何・・・これ・・・。」

 

「ねえ・・・私達の娘はどこ?すごく怯えていたのを感じて慌ててきたのに・・・。」

 

 朱金のショートヘアの女性が買い物袋を取り落とす。

 

 そして紫のおさげをした女性が茫然と見ている。

 

 この二人・・・クレアさんとベノさんだったりする。

 

「・・・すみません。あの二人が突然戦い出して、それにびっくりして逃げてしまって。」

 

『へえ・・・。』

 

 二人の瞳の瞳孔が縦に細められながら屋外で戦っている二人の佑斗君達に向けられる。

 

 あれは・・・怒りの目だ。

 

 それも猛烈な怒りの時にしかみせない。

 

「どうして彼が二人に増えているのかはこの際、置・い・て・お・く・わ。」

 

「ええ・・・。そんな些細なこと、ど・う・で・も・いいから。」

 

 やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!!

 

 あの奥様達を怒らせたらマジでヤバい!!

 

 本来のお姿に戻る前に!!

 

「おっ・・・俺が止めてくるんで。ここは穏便に。」

 

「・・・あなたは娘達を探して、この二人は・・・私が直々にお仕置きする。」

 

「ええ、説教は任せたわ。私はこのあたりを探す!!幸い・・・テレパシーであの子達はただ怯えているだけというのは分かったから。ゲラス、エビル、そしてアルビオンも急いで呼ばないと。ヴァ―リ!!ちょっと来なさい!!ええい、つべこべ言わずに・・・いいわね!!えっ?もう一人の自分と戦うから邪魔するな?ふふふだったらその子ごと話をつけにいってくれるわ!!ちょっとそこで待ってなさい!!」

 

 えっと、契約者を無理やり連れてくるつもりですか?

 

 あの方・・・アギトを顎で使おうとしているよ。

 

「ブランカにはもう伝えたわ。ふふふ、あの子達にお仕置きしてあげる。よくも私達の子供達を怯えさせたわね。」

 

『・・・・・・。』

 

 俺とアーシアちゃんは揃って震えあがる。

 

 いや・・・あんた達の方がよっぽど怖いわ!!

 

 ッてツッコミを心の中でするといアーシアちゃんが頷いてくれた。

 

 直接言えませんからね。火に油を注ぎたくない。

 

『いいからあんたはとっとといけ!!』

 

「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 俺はグレゴリから貰ったあるベルトを腰に巻いて駆けだした。

 

 別に逃げているわけじゃない。あの腕白な子供達を探しに行くだけだ。

 

 そのために俺は必死で走っているだけだからな!!

 

 それでも、俺は思わずにいられない。

 

 二人の佑斗君・・・強く生きてね。

 

 俺・・・二人の事は決して忘れないから。

 

 

 

 

 

 




 さりげなくですが、剣崎さんもとんでもないことになっています。

 残念な部分は相変わらずですけど。

 さて・・・ここから事件はさらにつづきます。


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うかつに逆鱗に踏まない方がいい。

 連続投稿・・・第二弾


 ここからさらに混迷してきます。

 リアスさん大暴れです。


SIDE リアス。

 

 はあ・・・もうすぐ夏休み。

 

 あっという間に一学期が終わったわ。でも、その一学期が、これまでの高校生活、いや私の人生の中で最も濃い時間だったと断言できる。

 

 ああ・・・私は遠い世界にまでやってきてしまった。

 

「何黄昏ているのよ?」

 

「仕方ないじゃない。だってねえ。」

 

 思えばこの一学期だけで、私もずいぶん遠くまで来た気がする。

 

 カ―ミラの力が判明してから・・・、いえイッセ―を眷属にしてしまったことからすべてが変わったのだ。

 

 非常識の塊であるイッセ―。私の可愛い下僕・・・というにはあまりに凄まじすぎる存在。

 

 そして・・・私の心を奪ってしまった赤龍帝にして、アギト。前の戦闘で魔王と共にいなくなった神の後継となった子。

 

 私以外の多くの女の心を奪った大変罪な男の子。

 

「・・・あの・・・この世界の私に何があったの!?」

 

「・・・現実逃避をさせてもらったわ。」

 

 目の前にはもう一人の私がいる。現実逃避もしたくなるものだ。

 

「カ―ミラっていうのかしら?私の過去にはそれがいなかったから、タイムスリップしたわけじゃないのは分かるわ、でも・・・一ついいかしら?」

 

「何かしら?」

 

「あなた・・・イッセ―に告白したの?」

 

 その言葉に対して溜息を突きたくなる私。顔が赤いのは仕方ないことだ。

 

 悩ましいため息になってしまった。

 

「そう・・・か。ふふふふふふふふふふふふ。」

 

 だが、それを聞いたもう一人の私は笑う。

 

 優越感を持って。

 

「なっ・・・何よ。」

 

「勝ったわ。だって私・・・イッセ―の一番だもの。」

 

『・・・・・・・・。』

 

 なん・・・だと!?

 

「今・・・なんて言ったの?」

 

「私・・・イッセ―の恋人なの。プライベートでは呼び捨てにするくらい。そして冥界でも私達の仲を祝福してくれているわ。ふふふふふ・・・。」

 

「・・・・・。」

 

・・・・・・・。

 

 まっ・・・負けた。

 

 私はがっくりと膝をつく。

 

「ちょっと、なんでそんなにショックを!?」

 

 もう一人の私には分からないでしょうね。

 

 この・・・圧倒的な敗北感は。

 

「ふふふふふ・・・でも、この様子だと、そこまでの流れはこの世界でも変わっていないわね。せっかくイッセ―と年越しを楽しもうとしたのに・・・。」

 

 年越しだと?

 

「あなた・・・未来から来たの?」

 

「ふふふ、そうよ。もう結婚まで考えるほどの仲に・・・。」

 

「・・・あなた、少し見栄を張っているわね。」

 

 あれ?カ―ミラがもう一人の私を見て断言する。

 

「なっ・・・何のことかしら?」

 

「あなた達の性格も癖も全く同じだし!!だから、あなたが見栄を少し張っているのも見抜けるわ!!まあ・・・付き合ってラブラブなのは本当のようね。」

 

 カ―ミラの分析にもう一人の私は軽く表情をひきつらせる。

 

「すごい・・・。そっちの世界の私って面白い相方を・・・。」

 

「教えなさい。」

 

 でも、私はそれどころじゃない。

 

「どうやってイッセ―を落としたのか教えなさい。」

 

 未来の時間から来た別世界の私は、今の私にとって重要な情報を持っている。

 

 イッセ―を落とし、一番、つまり正妻になるための方法を。

 

「・・・いや・・・そのね。」

 

「私にはライバルがたくさんいるの。そりゃもう・・・アーシアとユウナと正妻の座をかけて戦っているし、最近は朱乃まで参戦するわ、ブランカやゼノヴィアやまだ未知なるスペックを持つ幼馴染のイリナ。私の勘だとまだまだこれから増えそうなのよ!!そんな罪深いイッセーのハートをこっちの物にしないといけないの。ハーレムは避けられないのはすでに私も、そしてみんなも承知のこと。だからこそ・・・正妻の座が重要なのよ!!」

 

 私は負けられないのだ。

 

 絶対に・・・一番になる!!

 

「あれ?私の知らない名前が?・・・・・・そうか。そっちは私よりもライバルが多いか。うんうん・・・わかるわ。」

 

 もう一人の私は頷く。すごく余裕で。

 

 かなり癪に障る。

 

 これが・・・これが正妻となった者の余裕というのか?

 

「・・・だから教えなさい。私とイッセ―が結ばれる方法を。」

 

「いやよ。そんなの苦労しないと意味ないじゃない。ふふふふふふふ、せいぜい苦しみなさいな。私・・・。」

 

 かなり意地悪な笑みを浮かべてくれますね。

 

「絶対に聞きだす。カ―ミラ!!」

 

 傍で飛んでいるカ―ミラを問答無用で捕まえる。最近カ―ミラを素手、それも片手で捕まえるのがうまくなったわ。

 

「ちょっと!!ここで私を使うの!?」

 

「い・い・か・ら!!情報は鮮度が命!!」

 

 良いから変身させなさい!!

 

「新鮮な情報を得るためなら、相手がウサギでも私は獅子になるわ。」

 

 なりふり構っていられない!!

 

「・・・そうか、その意気込み・・・天晴だわ。でも、これだけは彼女に言わせてね。・・・もう一人のリアス、最初に謝っておくわ。」

 

「へっ?」

 

 どうして謝っているのか分からないでしょうね。

 

「この子・・・私のせいでとんでもないことになっているから。」

 

 カ―ミラはそういいながら私の手の甲をキスするように噛む。

 

 そこからステンドグラスのような文様が私の頬などに浮かびあがるとともに皇魔力が注ぎ込まれる。

 

 それと共に私の腰にベルトが出現。

 

「私としては降参を強くお勧めする。」

 

「変身。」

 

 降参を薦めるカ―ミラをセットして変身。

 

「・・・・・・・・・。」

 

 紅のキバになった。

 

 変身した私を見たもう一人の私は唖然茫然。

 

 少し魔力を解放させると全身から滅びの力が出てくる。

 

「げっ!?滅びの力が尋常じゃない!?」

 

 どうもカテナを解放するにつれて力が増しているようだ。

 

 滅びの力がさらに増しているわ。

 

 もう最上級悪魔どころか、魔王クラスだってカ―ミラやお兄様も言っていたし。

 

 そして、おもいきり地面を踏むと・・・。

 

 震度五から六程の地震と共に、大きな地割れが・・・。

 

「なっ・・・ななんあなな・・・あなたサイラオークにでもなったというの?」

 

 ふふふ・・・もう変身したら中級ドラゴンくらい拳一つで十分よ!!

 

 竜王と互角に殴り合う事が当面の目標よ!!

 

 悪魔としては破格のパワー!!私はもう・・・色々な意味でパワーキャラなのよ!!

 

 最初に鋼鬼さんに会った時にやった広域への地震。夏休みまでに己が出来るようになるなんて・・・ふふふ・・・もう後戻りできないわね。

 

 開き直りって肝心。

 

 大切な何かが次々と失われている気がするけど、もう気にしないことにするわ。

 

「・・・さあ、洗いざらい吐きなさい。」

 

「じょっ、冗談じゃないわよ!!自分で言うのもなんだけどあなた・・・怪物になっているわ!!下手したらグレンデルと真正面から殴り合えるような怪物とガチで戦うなんて願い下げよ!!」

 

 すぐにその場から逃げるもう一人の私。

 

 グレンデルって何よ?

 

「ふふふ・・・逃がさない。」

 

 私という名の獅子は、情報をもつもう一人の私という名のウサギを狩るために全力を出そうとしていた。

 

 

 

SIDE 鋼鬼。

 

う~む。これはどうしたものか。

 

 俺は山の中でうなっていた。

 

『・・・・・・・。』

 

 それは日課となった黒歌と小猫と共に鬼の修行の時に起きた。

 

 もう一人の小猫ちゃんが現れたのだ。

 

「・・・これはどういうことだ?」

 

――――私が説明する。

 

 そこに黒歌の首にかけられた鏡から出現する者がいた。

 

 三つの足を持つデフォルメガラス・・・ヤタノガラスだ。

 

「私が・・・いる?」

 

「どうなっているの?」

 

 二人の小猫ちゃんがお互いをぺたぺた触りながらお互いが幽霊ではないことを確認し合う。

 

「・・・いや・・・私は今夢をみているのかにゃね?あまりに白音がかわいすぎて二倍になっちゃうなんて。」

 

 それを見た黒歌は二人をまとめて抱きしめる始末。

 

――――――んんん・・・なんだ。強い気が・・・。

 

 だが、見分けはつく。何しろこちらが知る小猫の肩の上にある存在が現れたからだ。

 

「ガメラ、起きたの?」

 

「ああ・・・。」

 

「カメさん?ずいぶん凶暴な面構えだけど・・・。」

 

「うっ・・・。」

 

 もう一人の小猫ちゃんの指摘に少し傷ついた様子のガメラ。

 

「でも、目は可愛いよ?すごく賢い。」

 

「撫でていい?」

 

「どうぞ。」

 

「・・・異世界の小猫ちゃん・・・いいぞ。」

 

 ガメラの奴はそのまま撫でられることにしたようだ。

 

「平行世界から来た小猫ちゃんというのか?」

 

 ヤタガラスからの説明ではガメラの事例と同じく違う世界から来た存在らしい。

 

「ああ。まあ、いきなり戦闘にならなくて良かった。相当仙術の修行を積んでいる。」

 

「そうね。ねえ・・・あなたもしかして大人の姿になれる?」

 

「えっ・・・はい。なれます。」

 

「やっぱりか。う~ん、こっちの世界の白音にも覚えさせようかにゃ。」

 

 仙術により大人の姿になる。それは黒歌から聞かされていたのだ。

 

 そして、平行世界の小猫ちゃんはそれが出来る。

 

「こっちの世界でもそれが仙術の一つの到達点かもしれんな。」

 

「うんうん、あとで色々聞かせてにゃ。」

 

「えっと・・・その前に聞きたいのですが、お姉様?」

 

 別世界の小猫ちゃんは恐る恐る尋ねる。

 

「この方は誰です?」

 

「誰って、私の夫にゃ。」

 

「そうですか・・・・・・・・・ってすみませんもう一度言ってもらえませんか!?」

 

 あまりにあっさり答えたのでもう一人の小猫ちゃんは聞き流しつつ、すぐに驚く。

 

「だから私の夫にゃ。」

 

「私の義兄さんになります。」

 

「まあ、そう言う事だ。」

 

「・・・・・・・。」

 

「驚くのはわかる。私も話を聞いた時にはびっくりした。でも実際夫婦だよ。すごく仲もいいし。」

 

「・・・・・・今私、異世界に来た事をこれほど実感したことはない。万年発情期のお姉様が結婚していたなんて。」

 

「・・・そっちの私にあったら一言文句をいってやりたいにゃ。」

 

 黒歌が唸る。そちらの黒歌はどうなっている?

 

「でも、いつ私・・・伯母さんになるのか戦々恐々している。」

 

『ぶっ!?』

 

「えっ?」

 

 こっ・・・小猫ちゃん。なんてことを・・・。

 

 色々あってイッセ―の家に小猫ちゃんも来る事になった。

 

 朱乃、木場などのグレモリ―メンバー全員だ。

 

 故に俺達は夜のあれに関しては最新の注意を払っている。

 

「防音の結界・・・確かに効果覿面。でも故にそれを展開しているということはどういうことかモロバレ。」

 

「・・・うっ・・・うにゃ////。」

 

「しかも・・・毎晩改めて展開。仙術を知っていたらすぐに分かる。」

 

「うっ・・・。」

 

「振動からしても一晩で十回以上はしている。本当に夫婦の営みがすごい。いつ私、伯母になってもおかしくない。」

 

「・・・ふっ・・・不潔です///。」

 

『・・・・・・ああ・・・うう・・・///。』

 

 たっ・・・頼む小猫ちゃん。これ以上暴露しないでくれ。

 

 俺達夫婦の夜の生活を突っ込まれると困る。

 

「和菓子で手を打ちましょう。もう一人の私の分・・・含めて。」

 

「わかった。」

 

「やるようになったにゃ。」

 

 うちの義妹は・・・したたかだ。

 

 満面の笑みで脅迫してくる。

 

「まあ、その和菓子の前にやることで来たようだ。そのあとでいいか?」

 

 俺は街の方を見る。

 

「・・・良くない気がするにゃ。鋼ちんも感じているのかにゃ?」

 

「ああ。」

 

 仙術を習った甲斐はある。

 

『私も感じます・・・あっ。』

 

 二人の小猫ちゃんも同時に声をあげる。

 

「ふふふ・・・仙術の師匠としてはその領域に到達した白音が嬉しいにゃ。」

 

「・・・なら俺に乗れ。」

 

 ガメラがその言葉と共に少し巨大化する。

 

 甲羅の大きさで普通自動車みたいな大きさになったのだ。

 

 四つん這いになったガメラの上に小猫がもう一人の小猫と共に乗る。

 

 俺も、黒歌も続く。

 

 皆が乗ったのを確認すると・・・。

 

 ガメラが手足を引っ込め、何と・・・そのからジェットみたいな物を噴き出して宙に浮き始めのだ。

 

「とっ・・・飛んだにゃ!!」

 

「空をジェット噴射で飛ぶ亀・・・だと?」

 

 亀が空を飛ぶ。一応小猫から話その物は聞いていた。

 

 だが・・・本当にジェット噴射で飛ぶとは。

 

「・・・・・・。」

 

 もう一人の小猫ちゃんは驚いて声も出ない様子だ。

 

「気持ちわかる。でも大丈夫だから。あれ?私、何か大切なことを忘れているような。」

 

 何を忘れているというのだ?小猫ちゃん!!

 

 すごく嫌な予感がするぞ。

 

「・・・学園に向かうとしよう。皆・・・しっかりとつかまれ!!」

 

 ガメラの奴が頭も引っ込める。

 

 そして・・・回転を始めたのだ。

 

「あっ・・・あれ?」

 

 その回転は徐々に速くなってくる。

 

 いや・・・早いというレベルを超えて・・・。

 

 しっ・・・視界が・・・遠心力が俺達に・・・。

 

『うああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 その日、山から学園に向かって悲鳴を上げながら高速回転する謎の飛行物体が目撃されたらしい。

 

 

 

 

 

SIDE ハルト

 

 俺は生徒会室で旧交を温めていた。

 

「いや~本当に久しぶりだぜ。」

 

「仁藤さんも相変わらずで。」

 

 生徒会室には攻介と俺、そして、マユちゃんとミサちゃんも来ていたのだ。

 

「あなた達には何と言ったらいいか。本当にありがとうございます。」

 

「ほんまやわ。」

 

 ソーナ会長が頭を下げる。その隣ではレイも頭をさげてくれている。

 

「まあ・・・私達の身内のせいでもあるし。」

 

「こちらこそ、ヴァ―リがやりすぎてごめんなさい。」

 

「・・・しっかし、ミサちゃんともこうして話せる日が来るなんてなあ。」

 

 攻介はミサちゃんをマジマジと見る。

 

 マユちゃんと初めて見かけ、メデューサと間違えて追跡した事を思い出しているのだろうか?

 

「なあ・・・お前らってどういう知り合い?」

 

「えっ・・・そのな・・・。」

 

 匙の質問に応えづらそうな攻介。

 

 俺達からしても何と言えばいいのか分からない。

 

 まさか、あれを言うわけには・・・。

 

「前世での仲間ですよね?」

 

 だが、その答えをソーナ会長があっさりと言ってしまった。

 

「そうでないと、あなたと仁藤君とのつながりは説明できません。」

 

 そして苦笑して見せる。

 

「・・・どうやらあなたの頭脳をこっちは過小評価していたみたいだ。」

 

 俺は肩をすくめる。

 

「えっ?前世って・・・。」

 

 匙は戸惑っているが、攻介が溜息をついて彼に説明を始めていた。

 

「一応だが、これはグレゴリのみんなも、イッセ―達も知らないことだ。オフレコで頼むよ。」

 

「ええ。あなたには大変お世話になっています。こっちもそれくらいの誠意は見せないと。」

 

 ソーナ会長。すまないな。

 

「まあ・・・デンライナーみたいな訳の分からない事態が目の前で起きたのです。その関係者が異世界からの転生者というのは知っていますし、別の事例があってもおかしくないということです。」

 

 なるほど・・・良太郎達の事例で確信したということか。

 

「まあ、そう言う事で俺はお前より人生経験は長いってわけだ。」

 

「ついでに言うなら・・・こいつは苦戦を阿呆みたいに経験している。」

 

 故に攻介の粘りは異様なまでにすごいぞ?

 

「そうですか。そして、そのキマイラが前世からの相方というわけですね。」

 

「そして、似たような状態に匙がなっているわけだ。」

 

―――――腹へった。

 

 匙の相方であるマティゴティアの相変わらずな言動に皆は苦笑する。

 

「あいよ。今回は野菜チップスだ。お前夏バテ気味だからな。」

 

「気づかい感謝~。」

 

 匙の相方も相当慣れてきた様子。

 

「もうすぐお前も変身できる。いや・・・もう出来るのか?切り札としてそれを隠しているな?」

 

「・・・ははは・・・ばれましたか、ええ、切り札としてね。まあ・・・イッセ―達を考えるとこっちもまだまだですし。」

 

 どうも同期のイッセ―をライバル視している匙。

 

 彼は陰で努力し続け、その結果ついに変身を出来るようになったのだ。

 

「あいつのライバルになるのは大変だぞ。」

 

 アギトとして途方もない進化をしているイッセ―。

 

 まだどの領域にまで行くのか想像もできない。

 

「百も承知です。でも・・・あれだけの力を持ちながら、それに溺れない。それどころか真っ直ぐと目標を持って進んでいるあいつに俺・・・負けたくないと思う。神になる男とライバルって我ながらいい度胸だと思うけど。」

 

「ふっ・・・だが、お前の神滅具はある意味アギトにとっても脅威だからな。倍化の力・・・うまく吸収したみたいだし?」

 

「あとは半減の力を取り込めればこっちの物ですけどねえ。」

 

 今の匙は、手ごわいぞ。油断していると足元をすくわれると思うがいい。

 

「さあて、俺はガメラさんと会いましょうかね?あの人から何か得られると思うし。」

 

 ガメラって・・・あれか?

 

「こっちも色々と交流は盛んにさせてもらっているぜ。前のレギオンからは・・・。」

 

―――――マイクロウェーブ。

 

「面白い技をゲットさせてもらったし。これ・・・必殺技になるぜ?指輪同志のコンボもできるし。」

 

 攻介の奴も色々と手数を増やしているな。しかしマイクロウェーブか。

 

「あのアニメ・・・参考になる。」

 

 そう言えば俺もあいつとあれを見たよな。あれを・・・やらかすか。

 

「・・・あっ・・・丁度よかった。」

 

 そこに副会長の真羅さんまでやってくる。

 

「あの・・・これってなんです?」

 

 彼女の腕の中には・・・青いひよこのような奴がいた。

 

「サンダ―バード・・・のようね。」

 

 それは北欧のインディアンの伝承に現れる雷の精霊。

 

 小型の飛行機くらいの大きさはあるとされ、色は黒の場合が多い。

 

 だが、そのサンダーバードは外見が違っていた。まず尾羽がクジャクのようになっていたのだ。

 

 感じるのは雷だけじゃない。転生の力を秘めた聖なる炎と浄化の力を持つ光の風。

 

 ヤタガラスと同等がそれ以上の格を感じる。

 

 もしかしたら、成長したらとんでもない奴になるのでは・・・。

 

「一応アーシアちゃんに聞こうか。もしかしたら・・・あの類かもしれん。それに・・・契約のカードを使ったな。」

 

「はい。いつの間にかカードで契約していて・・・何故か私がその契約者。卵は確かに私が孵しましたが。」

 

「・・・それは怖いな。」

 

 契約モンスターはデフォルメ化して小さくなっている。だが、それはあくまでも仮の姿。

 

 本来なら途方もないでかい奴もいる。ガメラやモスラ、ヤマタがいい例だ。

 

 そして、俺はそれを警戒して良かったと心の底から思うことになる。

 

「興味深いですね。」

 

「変な石まで飲み込んでいるのですよ。でも、すごく可愛いと思いますけど?」

 

『・・・・・・・。』

 

 えっと・・・青いひよこを可愛がるのは分かりますけど。

 

 まあいい。

 

 副会長殿はその変なひよこを可愛がることにしたようだ。

 

「名前はヴァルヴァ―レってする予定です。」

 

 ソロモンの魔神の名前を元にしたか・・・。

 

 そんな時だった。

 

「はあ・・・はあ・・・はあ。」

 

 その部屋にリアス部長が入ってきたのだ。

 

「この世界のソーナ。助けて・・・。」

 

 息も絶え絶え。

 

「なんですか?」

 

 そして・・・生徒会室の壁が吹っ飛ばされる。

 

「み・つ・け・た・・・。」

 

 そこにいたのは・・・紅のキバ。もといリアス部長だった。

 

「・・・ひっ・・・。」

 

『ガタガタガタガタガタガタガタ。』

 

 何だろう・・・他のみんなが震えている。

 

 こっちもなんか冷や汗が背を伝う物があるぞ。

 

「リアス・・・、お願いですから普通に入ってきてください。それにどうして魔王モードになっているのかしら?もう一人の彼女が怯えているじゃないですか。」

 

「ふふふふふ・・・ソーナ。その子を渡しなさい。」

 

「だっ・・・だめ。全く勝負にならない。」

 

 色々を粘ったのだろう、でも全く歯が立たずに逃げ込んできたようだ。

 

「どうしてあなたがそこまで執着するの?」

 

「もう一人の私は異世界の未来から来ているの。その子がイッセ―の一番となった未来からね。その情報は・・・私が全力を出す価値があるの!!」

 

「・・・なるほど。しかし未来の情報ってある意味禁断の果実ですね。」

 

 ソーナ会長が呆れた様子を見せている。

 

「あなたも挑発しないでくださいな。」

 

 その上で事態の収拾しにかかる。

 

「まさか私の消滅の魔星(イクスティングイッシュ・スター)を相殺されるなんて。」

 

「・・・私もカテナ三つ解放でないと対抗できなかったわ。未来の私はとんでもない必殺技を思いついているものね。まるでブラックホールじゃない。」

 

「あなた・・・一度に三つも解放できたの?」

 

「根性でなんとか。」

 

 こっ・・・根性ですか。

 

―――――私、驚きを通り越すと呆れになるってことをこの数カ月で思い知らされたわ。

 

「カ―ミラ姉さん・・・大変ですな。」

 

 腰のベルトではカ―ミラがあきれ果て、それにレイが同情する始末。

 

「・・・・・・・。」

 

 呆れ、いやもう天晴と言えるレベルの執念。前の戦いで開き直ったがためにカテナを一度に二つ解放するという暴挙をやったばかりなのに・・・。

 

 ソーナ会長がこめかみに指を当てて頭痛を抑えようとしているし。

 

「・・・・・・あなたも大分染まってきましたね。」

 

「ふっ・・・それこそ今更よ。」

 

 グレモリ―眷属。人外街道を邁進中ですな。

 

 パワーあふれるとされているけど、リアス部長がその先陣を務めているのはねえ。

 

「自覚あるだけマシと思っておきます。まあ、こんなやりとりができるだけ冷静になりましたかね。お茶でも飲んで話会いましょう。」

 

「それもそうね。ごめんね追いかけまわして。ようやく冷静に慣れたわ。」

 

「お前達がどうしてこの世界に来たのかも気になる。俺達も話を聞くことにしよう。・・・約二名程、心当たりがあるし。」

 

 俺は何となくだが、この騒動の背後に誰がいるのか分かっていた。

 

 昨日の晩に二人が「実験はいつにする」や「どうせなら・・・。」と物騒なことを話していたのを聞いていたから。

 

 あの二人め・・・あとでお仕置きだ。

 

「・・・たっ・・・助かったわ。私も白状する。なんとか元の世界に帰りたいし。」

 

「初めからそうすればいいのよ。」

 

 何とかそっちは平穏に終わりそうだ。はあ・・・あの様子だと他の連中も来ていると考えた方がいいか。

 

「本当に異世界なのね。シトリー眷属に見慣れない顔が・・・。」

 

「こっちは鎮圧してくるよ。ヴァ―リの奴・・・絶対に戦っているだろうし、イッセ―も熱血過ぎてバトルになっている可能性がたか・・・。」

 

 俺は窓の外を見て絶句していた。

 

「なんだ・・・あれ?」

 

 何か回転してきて突撃してくる物体があったのだ。

 

 大きさは普通乗用車位。それがジェット噴射をしながらこっちにやってくる光景を見たら、いくら俺でもあっけにとられる。

 

「ちょっとこっちに突っ込んできて・・・。」

 

 それがそのまま窓や壁をぶち破って・・・。

 

『ふん!!』

 

 とっさに変身したソーナ会長とリアス部長が協力して止める。

 

「・・・この世界・・・ソーナまで変身するのね。」

 

 異世界のリアス部長が遠い目をしている。

 

 回転がようやく止まると・・・。

 

「・・・ガメラの・・・馬鹿。」

 

 その上に見知った連中がいた。

 

「・・・すまん。ついいつもの癖で・・・。」

 

 回転が止まると黒い円い物体から手足、そして頭が出てくる。

 

「うっぷ・・・気持ち悪いにゃ・・・。」

 

「うう・・・。」

 

 上から二人の小猫ちゃんと黒歌が滑り落ちてくる。

 

「・・・今度は・・・三半器官を・・・鍛えるぞ。まだ鍛え足りん部分があったとは・・・。」

 

 ガメラの上から降り立った鋼兄も・・・そのまま膝をつく

 

 修行馬鹿は根性がどうも違う。でも流石に限界だったらしい。

 

「あなた達は・・・どうしてこう普通にやってこないのですか。窓からやってくるのはまだ分かりますが、窓ごと外の壁をぶち抜いて入ってくるなんて非常識すぎます。この世界にやってきたからには・・・クドクドクド。」

 

 ソーナ会長、ガメラに説教し始める図。

 

「ううう・・・。」

 

 ガメラは反省しているのか小さい姿に戻ってその説教を聞いている。

 

 いや、ソーナ会長。貴方も大分たくましくなりましたな。

 

「・・・はあ。直ぐに壁を修繕しますか。匙、攻介、マユちゃんにリサちゃんはこいつらの看病を頼む。」

 

 もう修繕に慣れたよ。

 

 懐から指輪を出す。この指輪。レイちゃんが初めて自分で作ってみた物だ。

 

 その効果・・・中々の物だと思っている。それをプレゼントしてくれたのだ。

 

 ようやくそれをここで使える。

 

「ついでにお菓子を出すよ。レイちゃんが頑張って作ってくれたものでねえ。すごくおいしいんだ。是非みんなにも食べてもらいたい。」

 

 同じくレイちゃんがみんなと一緒に色々と思考錯誤しながら作ってくれたドーナッツ。

 

 俺がドーナッツを好きだと知っていたのか。頑張って作ってくれた一品。・

 

 すごくおいしいので感動したくらいだ。それを皆と分かち合おうとした。

 

 それなのに・・・。

 

 穴から紅いドラゴンのオーラを纏った球体が飛んできたのだ、

 

 それに吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられる俺。

 

 それと共に籠に入ったドーナッツまで粉々になってしまう。

 

 その際に指輪も取り落としてしまい・・・。

 

――――――Half Dimension!!

 

 半分になってしまった。

 

『・・・・・・。』

 

 いや・・・痛いね。

 

 本当に痛いよ。

 

 それにせっかく修繕しようとしたのに、指輪まで半分にされて使用不可能になったし。

 

 美味しいドーナッツまであったのにな・・・。

 

「ふふふふ・・・。」

 

 なんか痛くて、可笑しくて笑いがこみあげてくるよ。

 

 せっかくレイちゃんが作ってくれた物なのにねえ。

 

「・・・おっ・・・おいハルト、落ちつけ。冷静に・・・冷静にな。」

 

 それを見た攻介が必死に俺をなだめてくれる。

 

「あーはははははははははっ!!」

 

 ありがとう。俺は冷静だよ?

 

 だって・・・何をするべきかよく分かっているから。

 

 ――――――ドライバーオン。

 

 俺の腰にドライバーが出現。

 

―――――シャビドゥダッチ、ヘンシーン!シャビドゥダッチヘンシーン!!

 

 俺は変身する。

 

――――――ドラゴン

 

 いつものフレイムスタイルじゃなく、その上位の変身。

 

 フレイムドラゴンスタイルに。

 

「・・・お前、絶対に怒っているだろう?」

 

 攻介の指摘に対しての俺の答えは・・・。

 

 右腕に出現させたドラゴタイマーである。

 

―――――――ドラゴタイム。

 

「ふふふふふふふふ・・・。」

 

――――――ウォータードラゴン!!

 

 青の魔方陣が現れてそこから青の俺が出現。

 

「ふはははははは・・・。」

 

――――ハリケーンドラゴン!!

 

 緑の魔法陣からは緑の俺。

 

「あーはははははははっ!!」

 

――――ランドドラゴン!!

 

 黄色の魔方陣からは黄色の俺。

 

「・・・お前絶対に怒っているな。完全にイカレタ笑いをしてやがる。」

 

「・・・ハルトさんが四人・・・。」

 

 匙の奴が今の俺をみて目を点にしている。

 

『ほう・・・。』

 

 俺は破壊された壁の向こうを見て、底で戦っている奴らをみて犯人を知る。

 

『あの二天龍共・・・お仕置きだ。』

 

『ガタガタガタガタガタ・・・。』

 

 お仕置きのために笑っているだけなのにどうしてみんな震えているのかな?

 

「・・・何か朱乃を思い出すわね。」

 

「いい眼しているわ、もう一人の私。まだ朱乃には内緒だけど彼・・・その朱乃の実の弟なの。」

 

「・・・はあ?」

 

「ついでに言えば・・・血筋のせいなのかものすごくドS。あのように本気で怒ったらドS魔王になるから。ついでに言うとグレゴリ最高幹部。同じ立場にいたコカビエルはもちろん、総督のアザゼルでさえ彼を怒らせるのは絶対に避けた程よ?」

 

「・・・・・・。」

 

「グレゴリ最強にして最凶。それが彼よ。」

 

 もう一人のリアス部長がこの世界のリアス部長とソーナ会長の説明を聞き、俺をまるで化け物を見る様な眼で見る。

 

「この世界・・・すごいわね。」

 

 向うの世界は一体どんな感じなのだろうか?興味はあるけど今は・・・あいつらの処刑が先だ。

 

『さあ・・・ショータイムだ。』

 

 俺達はそう言って壁の向こうから飛び出す。

 

「ああ・・・惨劇のショータイムの始まりだぜ。」

 

「・・・俺、絶対にハルトさんだけは怒らせないようにする。今そう決めた。」

 

 攻介と匙のそんなコメントを最後に聞いた。

 

 

 

 SIDE ???

 

 どうやら俺達に運が向いてきたようだ。

 

 思えば本当についてない。

 

 フェイゾンを発掘していた時も常に脅威にさらされていたし、あそこで憎き、でも脅威過ぎる相手・・・サムスがやってくるし。

 

 採取したフェイゾンと共に逃げたかと思えば、そのフェイゾンの中でダークサムスが復活し、俺達を洗脳してきやがるし。

 

 俺達は呪われている。結果としてほぼ全滅したと言っていい。

 

 だが、俺達が乗った戦艦はワープを行い。奇跡的にある星に不時着していた。

 

 文明レベルの低い惑星。

 

 座標を見ても銀河連邦から相当離れているらしく、反応が無い。

 

 ここで資源を採集して、しばらく我慢し、我らの復活ののろしを上げて・・・。

 

 そこで俺達は珍しい生物を見つけた。

 

 それは・・・リドリー様に似ている部分がある。

 

 一体は白い蛇。

 

 二体目は紫。

 

 三体目は朱金。

 

 四体目は黒。

 

 そして五体目は・・・昆虫みたいな要素が見られるこげ茶色。

 

 だが、内包しているエネルギーは半端なものではない。

 

「・・・捕まえるぞ。」

 

 もしかしたらメトロイドに変わる我らの新しい兵器になる可能性すらある。

 

 俺の提案に皆は頷く。

 

 どうやら本当に運が向いてきたようだ。

 

 ふははは・・・これで我らスペースパイレーツは復活できるぞ!!

 

 さあ、行くぞソルジャー共!!あの生命体を捕獲するぞ!!

 

 俺達は動き出す。

 

 それが俺達の死亡フラグだとは知らずに。

 

 




 いよいよこちらの世界の必殺処刑人ハルトさんが機動しました。

 彼の処刑を楽しみにしてください。


 あと・・・今回の生け贄は彼らです。


 


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 激化する戦いと狙われた子供たち。

 連続投稿最終段。

 ここから本格的に事件が始まります。


SIDE 良太郎。

 

 今僕の目の前で二人の姉さんが戦っている。

 

「ふん!!よっ!!はっ!」

 

「オラオラオラオラオラ!!」

 

 二人ともデュランダルを手にして斬り合っているのだ。

 

 いや、片方はデュランダルだけじゃない。凄まじい力を帯びた鞘を使っている。

 

 あれって・・・エクスカリバーなの?

 

「ご明察。でも、ゼノヴィアには弟がいるなんて初めて知ったわ。」

 

 目の前には四枚の天使の翼を持ったイリナ。

 

 手には・・・オートクレールという聖剣を手にしている。

 

「でも、どうしてその状態のゼノヴィアとそっちのゼノヴィアが互角に戦えているの?」

 

 あっちはすごい事になっている。

 

 互いに聖剣の力を全開にして戦っており・・・体育館がボロボロ。

 

 向うの姉さんは天閃、擬態、夢幻などなど、エクスカリバーの能力をデュランダル付加させて戦っているのだ。

 

「ふん!!そっちは過去の私のようなパワー馬鹿じゃないのか!?」

 

 それを姉さん・・・素で渡り合っている。

 

「行くぞ・・・私の必殺技。」

 

 そして姉さん・・・モモタロスの影響を受けたのか必殺技にこだわるようになった。

 

 まあ・・・デュランダルの破壊的な力をうまく洗練する練習になったのだけど。

 

 そのせいで大変なことになってしまった。

 

「断て、デュランダル!!」

 

 姉さんが剣を振る。

 

 其の斬撃をとっさにかわす向うの姉さん。・

 

 其の斬撃は・・・空間ごと体育館を真っ二つにしてしまったのだ。

 

『・・・・・・!?』

 

「またつまらぬ物を斬ってしまった。」

 

「ってなにやってんのおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 僕は頭を抱えながら叫んだ。

 

「いや・・・ノリでつい。」

 

 どうしてノリで体育館を真っ二つにするかな!!?

 

 つまらないどころか、斬っちゃいけない物を斬らないで!!

 

 ハルト君になんていえばいいか。

 

「なっ・・・なんて斬撃だ。」

 

「パワーも大事さ。だが・・・素早さもそしてテクニックも重要なのだよ!!」

 

 デュランダルの制御に重きを置いた修行をして来た姉さん。

 

 その結果、その力をある程度制御し、言霊みたいなキーでその力を特定の方向に解放することができるようになったのだ。

 

 さっきの「断て」はそのまま空間切断。しかも切断対象の選択もできるというかなり精度も練度も高い必殺技だ。

 

「爆せろ」「穿て」「薙ぎ払え」もあるがこれはまだそれに比べたら荒い。

 

最強なのは・・・「消し飛ばせ」という言葉だが、これは制御困難な代物だ。

 

 もしかしたら、あっちのようにエクスカリバーの力を加えた状態なら何とかなるかも。

 

「どうやったら人を斬らずに体育館だけ真っ二つにできるのか、教えて欲しいわ。」

 

「すごいだろう。」

 

 驚く二人の後ろにデネブがいきなり出現。

 

「・・・なっ・・・何だお前!?」

 

「なんだお前?そう聞かれると私はデネブと答えます。初めまして。」

 

「馬鹿。何で出てきてんだ!」

 

「はい・・・これお近づきの印・・・。」

 

 デネブ・・・マイペース過ぎる。

 

 恒例のデネブキャンティーを渡そうとしている。

 

「戦闘中に何やってんだ馬鹿!!」

 

 そんなデネブに姉さんはドロップキックをかます。

 

「ええい。こうなったらこっちも出し惜しみしない。変身!!」

 

 亜空間からベルトを取り出した姉さんはベルトを装着。チケットを指し込む。

 

―――――アルタイルフォーム。

 

「なんと!?」

 

 その状態でゼロガッシャーを大剣に組み立て、そこにデュランダルをはめ込む。

 

 最近になってこの機構を追加したのだ。

 

「最初に言っておく、私はか~な~り・・・強い!!」

 

 フリーエネルギーと聖剣のオーラの共鳴作用は半端なものじゃない。

 

 これをフルチャージで行ったら恐ろしい事になる。

 

 さっきのデュランダルの技・・・壊滅的な破壊力になる。

 

「これは強そうね!!私も加勢するわ。」

 

「すまない。そっちの私は変身するのだな。」

 

 イリナが向うの姉さんに加勢してくる。あっちでも二人は相棒なんだね。

 

 そこから一対二の戦闘。

 

「おら!!」

 

「うおっ!?」

 

「きゃ!?」

 

 圧倒的なパワーで姉さんが押している。

 

 二人の連携に苦戦しながらも圧倒的な斬撃で二人をまとめてふっ飛ばすように動いているのだ。

 

 しかも動きは軽やか。

 

 2人がうまくタイミングを合わせ、左右を挟んで逃げ場を封じた剣を上に軽やかに飛んでかわしたのだ。

 

「まるで牛若丸のごとき戦い方。」

 

「失礼。」

 

「ぎゃあああああぁぁ・・・私を踏み台にした!?」

 

 空中戦もできる天使のイリナの追撃を、その彼女を踏み台にする鬼畜さも発揮。

 

 二人の連携を崩そうとあの手この手で奇妙な動きを出したのだ。

 

「ぐっ・・・変身しただけあって身体能力向上しているな。だが・・・その前にすごく戦い慣れている事が気になる。」

 

「ええ。まるで歴戦の戦士。今のゼノヴィアと技量が比べ物にならない。」

 

 そりゃそうだよ。こっちの姉さん・・・桜井佑斗の生まれ変わりでその前世の戦闘経験値もすべて受け継いでいるのだし。

 

 二人と剣で打ち合いながらうまく立ち回る姉さん。

 

「これは・・・相当な猛者だぞ。」

 

「だが、そっちもうまい連携だ。こっちも攻めあぐねている。」

 

 実際二人はよく戦っている。姉さんの必殺の一撃を放たせない辺り・・・相当な修羅場をくぐり抜けている。

 

「うむ・・・一対二は卑怯だ。だったらこっちも参戦しよう!!」

 

 そこにデネブまで参戦。

 

「いくぞ!!」

 

 そして憑依する。

 

 何故か向うの姉さんに。

 

『って、おい!!』

 

「すまない。憑依する相手間違えた。」

 

 いやねデネブ。流石にそれって酷いと思うよ。

 

 少なくともこっちの姉さんはゼロノスに変身しているんだ。

 

 それなのに如何して向うの姉さんに憑依してしまうのかな?

 

――――――なっ・・・なんだこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 

「いいから憑依を解け!!」

 

 姉さんがデネブに指示するが・・・。

 

「・・・あれ?憑依が解けない。引っ掛かってしまった。」

 

『一体何をどうして、何に引っ掛かったというの!?』

 

 僕と姉さんのツッコミが轟く。

 

 どうもトラブルで憑依解除できなくなってしまったしい。

 

―――――おい!!私の体を返せ!!

 

「ごめん。乗っ取るつもりはなかったんだけど・・・出れなくなってしまった。すまんしばらく身体を借り・・・。」

 

―――――のおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!

 

 向うの姉さんの悲鳴が辺りに轟く。

 

「・・・悪霊の類ならオートクレ―ルで何とかなるかしら?」

 

「失礼な!!!私は悪霊ではない!!」

 

 やっていることは悪霊と同じか、それよりも遥かに性質の悪い事をしているよね!?

 

 本人に悪気全くなしだけど。

 

「・・・これどうすればいいんだ。」

 

 もう戦闘何処じゃなくなったよ。はあ・・・不幸だ。

 

 僕は頭を抱えてしまった。

 

ああ・・・いい加減、胃が痛くなってきた。

 

 

 

SIDE ギャスパー

 

 僕は・・・信じられない物を見ている。

 

「これって・・・なんだろうね。」

 

 隣では渡さんが溜息をついている。

 

 僕たちの目の前には・・・僕がいた。

 

 それも深い闇に包まれた僕だ。

 

――――とりあえず、お前達を排除させてもらおうか。

 

――――おいおい。それは酷いよ。もう一人の僕。

 

 そんなもう一人の僕に、サガ―クが話しかけてくる。

 

「何?」

 

―――すごい闇。なるほど・・・これが僕たちの中にあるもう一つの可能性か。先に知れてよかったよ。

 

「・・・ほう。面白い。なら戦うというのか?」

 

――――そっちのギャスパーを守りたい気持ちは分かる。でも少し落ち着きなよ。その力はそこまで長く持たない。こっちもどうして異世界の僕が来たのか分からなくて困っているんだ。

 

「・・・そうか。しかしどうして・・・。」

 

 渡さんはとりあえず胸をなでおろす。

 

 あの闇。極めて厄介だと肌で分かるからだ。

 

「あれ・・・僕の中にもあるの?」

 

「・・・ああ。だが、そっちの僕たちは経緯が違うようだな。話を聞く価値はでたか。」

 

 そう言ってもう一人の僕は闇を解除する。

 

 だが、そこで僕は感じとってしまった。

 

「・・・ッ!?ななななんあななな?」

 

「凄まじい怒気?これって・・・。」

 

「これは龍の逆鱗?だが・・・ファーニブルとは比べ物にならないレベルの・・・。」

 

「二人とも事情説明は後だ!!そっちの君も手伝ってくれ。嫌な予感が当たっていないことを祈るけど・・・。」

 

 僕たちは急いで向う。

 

 何となくだけど誰が逆鱗を発動させているのか分かるからだ。

 

 

 

SIDE イッセ―

 

 仮面ライダーアギトだけあって、この世界の俺は相当に厄介だ。

 

 平成仮面ライダーはフォームチェンジをする。それにより基本スペックや、属性を変化させて、色々な戦況に対応できる。

 

 アギトは俺が知る限り基本形態であるグランドフォームに加え、スピード型のストーム、パワー型のフレイムの二つ。

 

 何故俺が仮面ライダーに詳しいのか?

 

 おっぱいドラゴンの主役をやるにあたり、色々な特撮ヒーローを知っておく必要があったために勉強したのだが・・・少しはまってしまった。

 

 俺の場合はアギトに。

 

 他のライダーも一通り知っているぜ。

 

「フォームチェンジにはフォームチェンジだな。」

 

 いきなりだがトリアナで、僧侶の力を使う。

 

 背中に二本のキャノン砲が出現。

 

「だったらこっちも僧侶だ!!」

 

 グランドフォームから水色のこっちの知らない未知のフォームになりましたよ?

 

「アクアフォーム。」

 

 ぐっ・・・まさか、こっちのトリアナと同じく悪魔の駒の昇格機能を利用したフォームチェンジを行っているのか!?

 

 こっちがクリムソンブラスターをぶっ放すが・・・それをあいつは水で作った結界で防ぎやがった!!

 

――――アギトか・・・。お前が見ていた話の通りなら実に厄介だぞ。

 

 わかっているわい!!アギトは無限の進化をする。「神」の因子を持つからな。

 

 俺はその爆発の余波を見逃さず、ナイトにチェンジ。ブーストで素早く接近して殴ったが・・・。

 

 その拳がすりぬけた。

 

「おいおいおいおいそんなのありかよ!!」

 

 あいつが、液状化したのだ。それで攻撃をかわされた。

 

「スピードにはスピードだ!!」

 

 その身体が今度は蒼のストームフォームに変わる。

 

 ベルトからストームハルバードを出す。あのフォームは素早い。その上あの武器の特性上一体多数に向いている。

 

 だが、そんなに速いイメージはなかったような・・・。だが、その姿が陽炎のように消えるのを見て思考が止まる。

 

―――――相棒!!後ろだ!!

 

俺はその認識をすぐに改める。

 

「ぐっ!?」

 

 背中から斬り飛ばされた俺。

 

 それに対応するように素早く接近するが、すぐに消える。

 

 速い・・・それも尋常じゃない。同じフォームチェンジでもクロックアップやファイズアクセルに近い動き。

 

 木場よりもずっと早い。

 

 俺はすぐに戦車へと変え、攻撃を受け止めにかかる。

 

 もちろん・・・防御だけで勝てるとは思っていないさ。

 

「だったら・・・これでどうだ!!」

 

 俺はドラゴンショットを放つ。

 

 それが拡散し、ショットガンのようにもう一人の俺に襲いかかるが、それを次々と手にしたハルバードで切り払っていく。

 

 でも・・・その程度は読めているんだよ!!

 

――――――Reflect!!

 

「がっ!?」

 

 本命は・・・確かにあいつの背中に命中していた。

 

「へへへへ・・・作戦成功。」

 

 それは俺が放った小さなワイバ―ン型のビット。

 

 白と赤を切り替えてドラゴンショットを増幅しながら反射している。

 

 まさかこの姿でもできるなんて、俺も成長しているな。

 

「まさか・・・反射だと!?」

 

「反射?アルビオンの失われた力の・・・あれか!?ナデシコの奴が使っていたあれをあいつが使うのか・・・。まるでファンネルだ。」

 

 向うのドライグが驚いている。無数の魔力弾の一部を跳ね返したぜ。

 

 うまく不意をつけた。

 

 増幅して次々と放って、あいつのスピードを殺す!!

 

「だったら・・・。」

 

 だが、向うの俺がさらに変身。今度はフレイムフォームだ。

 

 片手に刀。もう片方に・・・何だあの剣!?

 

「神剣アギト・アスカロン。力を貸してもらうぜ。」

 

 あっ・・・アスカロンだと!?

 

 鍔元がアギトの紋章みたいになっているし、刀身も朱金だけど・・・。

 

 驚くべきはそこからだった。

 

 右腕と右足のガントレットに四枚のカードが勝手に入っていく。

 

――――――Guard Vent!!×4

 

 すると紅い龍の腹のような盾が二枚、それぞれの両肩。

 

 黒い龍の腹のような盾が両腿に装着された!?

 

 あれって・・・龍騎のカードじゃないのか!?

 

 あいつはゆっくりとこっちに向かってくる。

 

 無数のドラゴンショットが乱れ飛ぶ領域内に入って、こっちにやってくる。すべてのドラゴンショットを手にした剣で斬り払い、または両肩と両腿の盾で弾き飛ばしながらだ。

 

「げっ・・・そんなのありかよ!?」

 

 そう言えば、フレイムフォームは上がるのはパワーだけじゃなった。感覚も鋭敏になるという反則さがあった。

 

「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 雄叫びをあげ、全方位からランダムで無数飛んでくるドラゴンショットを次々と斬り払い、弾き飛ばしながらあいつはこっちに迫ってくる。

 

っておいおいおいおいおいおいおいおいおいおい!!

 

 なんじゃそれ!?

 

 振り下ろされた剣をル―クに変化させ、装甲厚くした両腕で何とか止めましたよ。

 

「ぐううう・・・。」

 

「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 ッくそ・・・化け物だぜ。装甲が切り裂かれる。

 

 このままじゃ腕ごと・・・。

 

「だったら・・・。」

 

 俺は僧侶にチェンジ。剣を持つ相手の手をすぐにつかみ止める。

 

「この距離で避けてみな。」

 

「ぐっ!?」

 

 クリムソンスマッシャーを放つ。

 

 それをあいつは両肩の盾で防ぐ。

 

 ・・・ったく反則もいい所だ。クリムソンスマッシャ―を受け止める盾ですかい。

 

 だが・・・あれを狙える。

 

「ドライグ!!あれをいくぞ!!」

 

―――――なるほど。それならいけるな!

 

 それは最近目覚めた新たな力。

 

 まだ修行中ですが、今のあいつにはこれが一番有効だ。

 

 再びル―クになって、ソリットインパクトごとぶちこむ。

 

――――Penetrate!!

 

 俺は盾を構えたあいつに向かって倍化させた状態での拳を叩きこんだ。

 

「がばっ!?」

 

 そしてあいつは盾越しに殴り飛ばされる。

 

「・・・うわ・・・過信していたわけじゃないけど、ガードベントを貫いて打撃のダメージを貰ってしまったぜ。どうなっていやがる。」

 

 殴りとばされ、黄金のアギトに戻ったもう一人の俺は驚いている。

 

「驚いたのはこっちもだ。まさか・・・今度は俺の生前の能力を使用するか。歴代赤龍帝でもそんな奴はいなかったぞ。」

 

――――ああ。こっちも初めてだ。

 

「相棒、今のは「透過」。俺の生前持っていた能力だ。あれでおまえのガードベントによる防御を貫いてダメージを与えてきたんだ。」

 

「へえ・・・面白いもんをもっていやがる。・・・本当に何をしてくるのか分からねえな。」

 

「その言葉・・・熨斗つけて送り返してやる。」

 

 何をしでかすのか分からずに怖いのはこっちも同じだ。

 

 普通ドラゴンショットをあんな風に攻略してくるか?

 

 お前と戦って恐怖しか感じていない。

 

 強い。それも圧倒的に。

 

「だったら、今度はこっちの必殺を見せないとな。」

 

 あいつの頭の角が展開。

 

 それと共に足元の地面にアギトの紋章・・・って・・・。

 

「なっ・・・なななな・・・。」

 

 そのアギトの紋章がグランド一杯に広がる程のでかさ。

 

<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!>

 

 それと共に瞬時の倍化だと?

 

――――まっ・・・まずいぞ、このアギト。必殺の一撃に特化している。

 

「必殺の一撃って?」

 

―――――あのキックだ。あの瞬時の倍化はおそらく・・・。

 

<BOOSTBOOSTBOOST・・・・・・。」

 

――――今から放つ必殺技の破壊力倍増にすべて注がれている。

 

 はっ・・・破壊力倍増!?

 

 じょ・・・冗談じゃないぞ!!

 

 そんなんでよくバーストしないよな!!

 

――――こっちはもう呆れている。おそらくそれに耐えられるように進化したのだろう。

 

 悪夢もいい所だぞ。仮面ライダーの必殺キックの破壊力を瞬時に倍化ってどんな化け物だ!!

 

「さあ・・・いくぞ。」

 

―――――EXPLOSION!!

 

 その倍化した力を解放しやがった。

 

 それと共にあいつは飛び上がる。

 

――相棒!!あの一撃だけは受けてはいけない!!

 

 そんなのわかっている!!あんなふざけた一撃、防御の上からつぶされるのは間違いない。

 

 だがかわす事も出来ない・・・ってそうだ!!

 

「だったらこれしかねええええええ。」

 

 俺はワイバ―ン型のビットを反射形態にする。

 

 そして・・・。

 

<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!>

 

 そのビットを倍化させる。

 

―――――Refect!!

 

「跳ね返せぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「なっ!?」

 

 一か八かの反射。

 

 それであいつの必殺キックを反射の力を倍増させて起動したビットを盾としてさせて防ごうとしたのだ。

 

 激突するビットと必殺キック。

 

「うううおおぉぉぉぉ!?」

 

 その衝撃がもう一人の俺に跳ね返される。

 

 その目論見は正解だった。だが、完全に殺しきれず凄まじい爆発が起き、俺達は吹っ飛ばされる。

 

「まさかこっちの必殺技を「反射」で防ぐか。」

 

「あっ・・・危なかった。」

 

 こいつ・・・俺達を遥かに上回るパワータイプだ。あんな必殺キック、龍王ですら一撃で沈むぞ。

 

「一応加減はしていたぞ。お前を戦闘不能にするように。」

 

 あれで加減していただあ!?

 

――――――嘘・・・じゃないだろうな。あのキック、死ぬことはないように直撃をさけていた。余波だけで俺達は戦闘不能になるだけの馬鹿げた破壊力があったがな。

 

「・・・・・。」

 

 手加減まで出来るって・・・テクニックも相当か。

 

「お前・・・変身できるようになったのはいつだ?」

 

「一学期の初めくらいだ。本格的な戦いが始まったのもそれくらいだぜ?」

 

 ・・・・つまり闘い始めたのは俺達を変わらない時期。

 

―――― 一学期だけでこれだけの力・・・。まずいな。

 

 ああ。不味い。

 

「ちなみにすでに至っている。」

 

 禁手化もしているのか?

 

 あいつは元の姿に戻り、禁手化して見せる。

 

「アギトの本能って奴のおかげだ。戦い方が分かってしまうんだ。」

 

「そうかい。」

 

 この世界俺・・・ずいぶんチート。

 

「まあ、ライバルであるヴァ―リも同じ条件だし、この世界には他にアギトもいる。油断はまだまだ出来ないぜ。あいつの俺の力を取り込みやがったし。」

 

「へっ!?うっ・・・嘘!?」

 

 向うでは俺達の世界のヴァ―リが茫然としている姿があった。

 

「なん・・・だと?」

 

 あいつの左腕が赤くなり、翼が展開しているのだ。

 

「・・・アギトは無茶苦茶だ。あの二人はこの時点、互いの力を行使できる。こっちも呆れて呆れて・・・。」

 

 デフォルメ化したドライクが溜息をつくほどか。

 

『・・・・・・・。』

 

 反則もいい所だぞ。

 

「ドライグ・・・こいつは出し惜しみして戦える相手じゃねえ!!」

 

――――同感だ。まさに神・・・こいつは戦神と戦うノリで当たった方が適切だ。

 

「異世界の俺よ。適切な判断だと思うぞ。こやつは聖書の神の後継者となりし男だからな。」

 

・・・・・・。

 

・・・・・・。

 

・・・・・・。

 

・・・・・・まじかよ。

 

 この世界の俺・・・すごいことになっていません?

 

「まだあくまでも指名を受けただけだ。俺自身は戦闘ばっかでまだまだだ。」

 

「・・・そうかい。」

 

 その言葉だけで分かるぜ。

 

 あいつはそれを本気で目標として動いている。

 

「なら・・・全力で行くぜ。」

 

 俺達はとっておきを出すことにした。

 

「―――――我、目覚めるは王の真理を天に掲げし赤龍帝なり!!無限の希望と不滅の夢を抱いて、王道を往く!我、紅き龍の帝王と成りて―――。」

 

「なんだその呪文!?覇龍と違う新たな呪文だと!?」

 

 向うのドライグが驚いている。

 

 俺は呪文を完成させる。

 

「――汝を真紅に光輝く天道へと導こう――!!」

 

 

―――――Cardinal Crimson Full Drier!!

 

 

 

 それは女王としての姿。

 

「・・・覇龍に変わる新たな力。」

 

「・・・なるほど。似ているな。」

 

「先制攻撃やらせてもらうぜ!!クリムソンスマッシャァァァァァァ!!」

 

 俺は一気に攻撃を仕掛ける。

 

 一体に絞ったクリムソンスマッシャ―。

 

 だが、その間に銀色の髪をした女の子が現れ、その砲撃を片手で受け止めたのだ。

 

「・・・イッセ―何している?姉様が呼んでいる。」

 

「・・・行きたいのは山々なんだがなあ。」

 

 なんだ・・・あの子?うちの学校、一年の制服を着ている。銀髪のすごい美少女なのはわかる。レイヴェル位の中々いいおっぱいを・・・でも背丈は高いな。その、感じられるドラゴンのオーラが半端じゃない。

 

「仕方ない、私も戦う。」

 

 その姿が・・・黒い龍へと変わっただと!?

 

 しかもあの龍、見た事がある。

 

 無双龍・・・ドラグブラッカ―。

 

 何で仮面ライダー龍騎のミラーモンスターがいるんだ!?

 

 あっ・・・あいつの右足。

 

 あれってもしかして、あいつの召喚機なのか?

 

 となると・・・右腕のあれは、ドラグレッタ―!?

 

 こいつ・・・無双龍と契約してんのか!?それも二体も!!

 

 仮面ライダーの要素が加わった世界だというのか?この世界は?

 

「ブランカ。わりぃがこいつとは一対一なんだ。」

 

 ドラグブラッカ―がイッセ―を守るように周りを飛んでいる。

 

「わかった。必殺技の時のサポートだけでいいの?」

 

 俺の真紅の鎧に対して向うも変身する。

 

「こっちも女王にならせてもらうぜ。」

 

 今までのフォームがてんこ盛りになったフォームに。

 

「カルデットフォーム。」

 

「・・・マジですか?」

 

 多分トリニティーフォームみたいなもんだろう。

 

 だが、あっちはイレギュラー的な変身だった。

 

 それに自在にフォームチェンジできるのですか!?それってどんなチートなの!?

 

「おいおい・・・それだけで終わらせるのかい?こっちはあれを見せようとしているのに?」

 

「ヴァ―リ。あれを見せようというのか?」

 

「ああ。覇龍をあのように極めた事に対しての返礼としてな。」

 

 向うの俺の後ろにミラージュアギトとなったこの世界のヴァ―リがやってくる。

 

「まだ力を隠しているのか?」

 

 こっちの世界のヴァ―リが笑む。楽しくて仕方ないって様子だな。

 

「いいだろ。そっちの俺、人間どころか、普通の悪魔でもないからみせてやる。これは最近目覚めたばかりでな。気をつけな?結構強力だぜ?」

 

「俺達の進化は・・・止まらないということだ。」

 

 異世界の俺と同じく異世界のヴァ―リは揃って言う。

 

『みせてやる。この世界の二天龍。その新たな進化のステージを!!』

 

 

 

―――――Welsh Dragon over drive !!

 

―――Vanishing Dragon over drive !!

 

 

 

 そして、あいつらはとんでもない進化を果たす。

 

 それは俺達の禁手化を取り込み、アギトとなった姿だ。

 

 つまり・・・アギトと神滅具の融合。

 

『・・・・・・・。』

 

――――そっちも大概ではないか。

 

――――まったくだ。なんて怪物になっている!!

 

 すっ・・・すげえ。

 

 オーラが、迫力が違う。

 

「凄まじいな。これはこの世界に来たかい甲斐があるというものだよ!!」

 

 これは・・・今までのフォームと次元が違うのが分かる。

 

「ふはははははは、おっぱいドラゴン、改めおっぱいアギト爆誕ってわけだ!!俺はもう開き直っているぞ!!」

 

「いつの日かヴァ―リがケツ龍皇・・・いや、ケツアギトって言われないか心配ではなる。こっちも覚悟している。相手がすごい連中だからな。」

 

――――うっ!?ここでも尻なのか!?おっぱいなのか!?

 

――――できれば、ここでは違うと信じていたのにな・・・。

 

 向うの二天龍達・・・かなり苦労してんな。

 

「・・・終わったら飲みたい。じっくりとそっちの苦労を知りたい物だよ。」

 

――――おお・・・分かってくれるのか?

 

「わからないわけがない。同じ私だ。分かち合おうじゃないか。」

 

―――うう・・・その優しさがしみるわ~。

 

『・・・・・・・。』

 

 何で異世界の二天龍が仲良くなっているのかな!?

 

「なんかもう・・・お前らが敵じゃないのはとっくにわかってんだけどな。」

 

「邪念はない。だが・・・ここまで来ると。」

 

 わかっているさ。あっちも悪い奴じゃない。

 

 異なる世界とはいえ、基本的に俺自身でもある。

 

 そう変わらないのはわかった。

 

 だが、故に分かるんだ。

 

『このまま終わるのは逆に失礼ってもんだぜ!!』

 

 俺達は完璧にヒートアップしていた。

 

「あの・・・出来れば止めて欲しいの。あなた達がそこまでヒートアップしたら流石に結界が持たない。」

 

『そんなの関係ねぇ!!』

 

「ひゃう!?」

 

 向うでレイナ―レが涙目になって何か言っていたけど、俺達が一喝して悲鳴をあげている。

 

まあ、そんな些細な事はどうでもいい。

 

 こうなったら拳でとことん語り合おうじゃないか・・・。

 

―――――ガッシ×4

 

『・・・レイちゃんを怖がらせるのは、そこまでにしてもらおうかな?君達。あの時の事をもう忘れたのかな?』

 

 って、いつの間にか俺達の前に何かが現れた。

 

『げっ、・・・ハルト!?』

 

 それは仮面ライダーウィザード。それもその強化形態、ドラゴンスタイル。

 

 それが色違いで四体もいる。

 

 つまりドラゴタイマーを使っての分身。

 

 そして、そいつがいつの間にか俺達の顔面を右手でわしづかみしていた。

 

 必死にもがくが・・・全然離れねえ。

 

 しかも片手で体が持ち上げられているぞ!!

 

「お前達・・・良くもやってくれたな。」

 

 ハルトって奴の指差す方向を見ると、生徒会室のあるところに大穴が。

 

―――――・・・お前のドラゴンショットが一発通った穴だぞ。

 

 もしかして、それが原因?

 

 もう一人の俺がおそるおそる聞く。

 

「・・・・・・直撃ですか?」

 

「ああ・・・。楽しみにしていたレイちゃんが作ってくれたドーナッツごとな。」

 

 すごく優しい声だ。すがすがしい程に。でも・・・何かその奥底で怒気が轟いていて怖ぇぇぇぇぇ!!

 

 そして、あいつは半分になった指輪を取り出す。

 

「・・・同じくレイちゃんがせっかく作ってくれた指輪もこの通りだ。一体どっちのヴァ―リがやったのかな?」

 

 俺はこっちの世界のヴァ―リを見る。

 

「・・・・・・。」

 

 冷や汗流している事から見るとどうやらこいつがやらかしたことらしい。

 

 まあ、あいつが冷や汗を流すのもわかる。

 

 あいつの手・・・俺達の鎧を握りつぶしてそのまま直接顔面を捉えていますので。

 

――――――ただの握力で鎧が砕かれただと!?

 

 それを見た相棒達が驚いている。

 

『・・・よりによってあいつを怒らせるか。はあ・・・。』

 

 向うのこの世界の相棒達は呆れている。

 

 どっ・・・どんな握力!?

 

 あいつの右腕から黒い蛇みたいな物が轟く。

 

―――――これはまさか・・・原初の蛇だと!?

 

―――――禁断の存在をこいつ・・・腕に宿らせているというのか?

 

『ふふふふふ・・・さあ、二天龍共、お仕置き、いや調教の時間だ。』

 

 それは処刑宣告だった。

 

『総督殺し。』

 

 そしてあいつは俺達を片手で持ち上げながら、強烈なアイアンクロ―をかます。

 

『ぎゃああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 俺達は揃って絶叫することになった。

 

 強烈な握力と、痛みのツボを適切に抑えた必殺技に。

 

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!

 

 なっ・・・なるほど・・・これがあいつらが恐れるハルトか。

 

 俺達四人に平等に地獄を見ているぜ。

 

 あっ・・・俺、痛みすら感じなくなってきた。

 

 それと共に意識が・・・遠のく・・・ぜ・・・。

 

 

 

SIDE ???

 

 僕は逃げ惑う彼女達を必死で追っていた。

 

 必死で叫び、そして彼女達は立ち止まる。

 

「ガ―!!・・・ガア・・・。」

 

 さすがライカちゃん。速過ぎる。

 

 しかも他のみんなをひっぱっているのにもかかわらず追いつけなかった。

 

 でも、みんな落ちつきを取り戻したようだ。よかった。

 

「ガ―!!ガガガガ!!」

 

 皆に帰ろうといってやる。皆は不安そうだけど・・・。

 

 安心してと言ってやる。

 

 多分、クレア姉さんやベノ姉さん達が鎮圧している。

 

 姉さんって呼んだら二人がすごく喜んで、「我が子同然に可愛がってあげるわ」と言っていたのは何故か分からないけど。

 

 ドライグさんやアルビオンさんは、「恐ろしい子。」ってなんか戦慄していたし。

 

 兄さんと呼ぼうとしたら・・・。

 

 なんかそっぽ向いたし。

 

 姉さんたちと妹たちの絆は強い。

 

 だからこそ・・・早く不安を取り除かないと。

 

 そう思ってみんなと共に帰ろうとした時だった。

 

 僕たちの周りを・・・変な連中が取り囲んだ。

 

 それはSF映画に出てくるような緑の昆虫人間みたいなやつら。

 

 その皆から明確な悪意が伝わってくる。

 

 細かいことは一切分からない。

 

 僕は皆にいった。

 

――――――逃げろと!!

 

 それと共に僕は突撃した。

 

 僕はみんなの兄ちゃんだ。

 

 だから・・・みんなを守る!!

 

 

 

 

 SIDE とあるゼーベス星人。

 

 強力な生命体の捕獲に・・・そのオスと思われる個体が立ちはだかった。

 

 小さい。まだ幼体なのはわかる。

 

 それなのに桁違いの戦闘力を見せていた。

 

 まず、動きが速い。

 

 まるで弾丸のごとく動き、突っ込んでくる。

 

 その突進で仲間の一人が吹っ飛ぶのを見るとパワーも相当なものだ。

 

 それだけで仲間が気を失ってしまった。

 

 みながビームを放つが、それを受けて吹っ飛びながらも突撃を繰り返す。

 

 恐ろしく頑強な体をしている。

 

 傷つきながらもこの謎の生命体の幼体は我らに向かってくる。

 

 なんだこの生命体は!?

 

 他の奴らがあの逃げた個体を追っているが・・・これは予想以上の戦闘力。

 

 幼体でこれなら・・・メトロイドを超える新しい我らの兵器になる・・・。

 

「ガアアアアアアァァァァァ!!」

 

 その目の前にその幼体がいる。

 

 そして噛みつき、体を持ち上げ・・・。

 

「ほほられれられれあ!?」

 

 そのままふっ飛ばされる。

 

 わっ・・・我々五十人の全滅が先か、捕獲が先か分からなくなってしまった。

 

 なんて生命体だ・・・。

 

 応援を・・・大至急だ!!

 

 あっ・・・止めろ・・・いや止めてください。そこで何で三つの頭から光がともって・・・。

 

 あっ・・・身体が浮いた・・・。

 

 ぎゃああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 

 

SIDE 木場

 

 僕たちは今・・・恐ろしい相手に正座で説教されていた。

 

 それはドラグレッターという龍だ。

 

「さあ・・・申し開きはあるかしら?」

 

 今は人間の姿を取り、二王立ちしている。

 

『ガタガタガタガタガタガタ・・・。』

 

 罪状は・・・戦って子供たちがそれに怯えて逃げてしまったということ。

 

 

 

 僕達はいい戦いをしていた。

 

「ふっ・・・やるな。」

 

「そっちの僕こそ。」

 

 向うは魔剣グラムというとんでもない剣を使ってくる。

 

 その剣の力・・・打ち合うだけで寒気がする。

 

 それをオルフェノクとしてのパワーでカバーしていた。

 

「そっちの僕はパワータイプなのかい?」

 

「基本的にはそっちと同じテクニックタイプだよ。この姿になったらそれにパワーとタフネスが加わる。」

 

「変身したら僕の弱点を全部カバー。やるね。」

 

 眼にもとまらぬ剣の応酬。

 

 なんか打ち合って楽しくなってきた。

 

「剣で語らうってこういう事をいうのかな?」

 

「多分そうだね。ふふふふふ・・・。」

 

 お互いに世界で何があったのか?どういう修羅場をくぐり抜け、そして何を失い、。得てきたのか?

 

 お互いに語り合っているのだ。

 

「アバン流刀殺・・・。こっちの世界にはなかった剣だね。でも・・・シンプルながらに色々な状況に対応できる良い剣だ。参考にさせてもらってもいいかい?」

 

「教えはしないさ、でも・・・盗むのなら御自由に。盗めるものならね。」

 

「上等。」

 

「ふふふふふ。」

 

 お互いに剣で打ち合う。

 

 ひたすらひたすら・・・。

 

 ああ・・・今僕達はコスモを・・・。

 

『えええかげんにせんかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!』

 

 そんな僕達は大音量の咆哮でふっ飛ばされる。

 

「ぐっ・・・。」

 

 もう一人の僕は魔剣グラムを使って応戦しようとしたけど、その前に剣を取り落としてしまった。

 

「そんなモノ・・・うちの子の前で見せたら・・・消し飛ばすわよ?」

 

 その剣を超高熱の火球が弾き飛ばしたからだ。

 

「さて・・・せいぜい泣き喚きなさい。」

 

 そのあとの追い打ちで超高熱の火球をたっぷり撃ちこまれた。

 

 泣きわめくどころか、悲鳴を上げることすらできない程です。

 

 ボロボロになった僕達に襲いかかる圧倒的な怒り。

 

 あっ・・・あまりにも圧倒的な怒気に、身体が震えて何もできなくなりました。

 

 それで散々な目に会った後に正座です。

 

 そして、僕たちは説教を受けている。

 

―――――――ゴゴゴゴゴ・・・・・・・。

 

 と背後からそんな効果音すら出てきそうなノリだ。

 

「あなた達は・・・私達の子を怯えさせたいの?」

 

 いや、ドラゴンだからではなく母親だからこそ、すごく怖い。

 

「まあまあ、落ちついてください。」

 

「そうです。これくらいにして、みんなを探しに行きましょう!!」

 

 そのクレアをなだめてくれるのが二人のアーシアちゃん。

 

「ふう・・・。」

 

 その怒気がこもった吐息は怖いです。

 

「・・・・・・。」

 

 そこでクレアさんの様子が変わる。

 

「どうしたの?ねえ・・・えっ・・・。」

 

 そして慌てふためいた?

 

 その後・・・瞳を閉じて静かになる。

 

 だが、次にその瞳が開かれた時、僕達は絶句した。

 

 その目が・・・怒りで紅く輝いていたのだ。

 

「誰?・・・うちの子達に手を出す愚か者は・・・。」

 

『・・・・・・・・・。』

 

 その背筋が凍るような声に僕達は固まってしまった。

 

 そのためなのか・・・震えが・・・悪寒が止まらない。

 

 止まってくれない。

 

 さっきの怒りが生温い位に。

 

「いい度胸ね。だったら・・・焼き尽くしてくれるわ。」

 

 そのままクレアさんは本来の姿・・・ドラグレッタ―となる。

 

 眼は怒りで紅く光ったまま。

 

 理性はある。

 

それでも圧倒的な憎しみ、殺気と怒りがクレアさんから放たれている。

 

 おそらく理性を保てるギリギリのところで押さえているのだろう。そうでないと助けることができないのを理解しているから。

 

 さっきの説教はまだまだ生温かったのだ。

 

 おそらく今の状態がクレアさんの・・・逆鱗。

 

『・・・・・・・。』

 

「あなた達・・・手伝なさい。私の理性が残っている間に。」

 

『はっ・・・はい!!』

 

 この様子だと・・・あの親である残り三体もブチ切れている。

 

 まずい。子供の危機に天龍クラスのドラゴンが理性を失って暴れそうになっている。

 

 この街の、いや下手したら世界の危機だ。

 

「ごめん、でも手伝って。この街の危機なんだ。」

 

「わっ、わかった。」

 

 先ほどまで剣で打ち合った仲だけど、今は緊急事態。

 

 あちらもそれを分かってくれて嬉しいよ。

 

「だったら乗ってくれ!!」

 

 僕はホースオルフェノクとなり、背中にもう一人の僕を乗せる。

 

「クウ!!」

 

―――――安心しなさい。すでに空中から探しているわ。クレアも落ちついて。こういったことは私の得意分野だってわかっているでしょう。今のあなたが突撃したら街が壊滅するわ!!

 

「わかっているわ。でも・・・あまり長く待てる自信はない。」

 

――――ええ。任せといて。ベノにもそう伝えなさい。

 

 相棒はすでに捜索を開始してくれている。その声はもう一人の僕にも伝わってくる。

 

 本当に出来た相棒を持ってこっちは嬉しい。

 

怒りMaxのクレアさんをなだめてくれるし。

 

「お願い。このままじゃ私・・・どうかなりそう。」

 

 それはクレアさんも分かっているみたいで。

 

 何とか・・・ギリギリで抑えてくれている。

 

 その間に、何としても助けないと。

 

――――でも・・・妙な連中がいるわ。

 

「妙な連中?」

 

―――なんというか・・・エイリアン的な何かが?

 

・・・・・・。

 

・・・・・・。

 

・・・・・・。

 

 あまりに想定外な存在の出現に僕は思わず天を仰いだよ。

 

 そうか・・・エイリアンですか。

 

 「宇宙キタ―ァァァァァァァ!!」と叫ぶ弦太郎君達でなとなく想像はしていた。

 

 宇宙的な何かがあるのならもしかして・・・と。

 

 なんかいよいよそう言う存在もやってきたという感じだ。

 

 この街の人外魔境化は何処まで進む?

 

「そっちの世界、どうなっているの?」

 

「ははは・・・はあ。こっちも全然分からないよ。言えるのは、もう何が出てきても驚かない方がいいってことかな?」

 

 そう言いながら僕たちは駈けだした。

 

 さあ・・・今度は何が出てくる?

 

 そう開き直りながら。

 

 もうUFOや宇宙戦艦程度じゃ驚かない!!

 

 

 

 




 この街の最大の危機・・・いかがだったでしょうか?


 原作サイドのとの戦闘・・・こんな感じになりましたがどうだったでしょうか?

 まだ戦闘そのものは起きますのでご安心を。



 さて・・・今回の投稿はここまでです。

 また会いましょう11


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怒りのドラゴン達です。

 大変遅くなって申し訳ないです。

 暑さで完璧にばてていました。


 さて・・・連続投稿第一弾。

 どうぞ!


 SIDR イッセ―

 

 俺達はただいま正座中。

 

 いや、少し前まで危険な痙攣をおこしながら気絶していたらしいのだ。

 

 そこにさらなる苦痛を与えられ強制的に目覚めさせられ、また苦痛を受け気絶、それをさらに・・・ドS魔王の調教という名の心をへし折る拷問スパイラル。

 

『ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ。』

 

 ハルトのあれを受けて、俺だけじゃなく異世界の俺とヴァ―リですらも震えている。

 

「ふっ・・・ふふふ・・・。この僕が恐怖をうえつけられるなんて。」

 

 それでも異世界のヴァ―リはすごい。そんな事を言うだけ天晴だよ。

 

「あっ・・・危うく何かに目覚めるところだった。」

 

 異世界の俺よ。よかったな。それに目覚めたら後戻りはできないぞ。

 

「ハルト・・・落ちつけ。」

 

 巧がこういう時、救世主に見える。

 

「これ以上やって話を聞けなくなったら意味がないだろう。・・・これくらいで手打ちにしてやれよ。」

 

「ウィ―、しかたないねえ。」

 

 その言葉に俺達は心の底から安堵していた。

 

 いや、ハルトを止められるのはレイちゃんか巧くらいだもんな。ヴァ―リもそうだけど、あいつの場合は、お仕置きを受ける場合が多いからあまり・・・。

 

「誰だ?あいつ?」

 

 異世界の俺の質問に、少し考えて答えておいた。

 

「ラスボス総督先生の息子さん。」

 

『ぶっ!?』

 

 その言葉に異世界のヴァ―リですら吹いた。

 

「あっ・・・アザゼルに息子だと?」

 

「グレゴリの王子様さ。親馬鹿提督の二つ名を持っているくらいに、アザゼル先生は巧を溺愛している。ちなみに俺とグレゴリ幹部の一人であるハルト、巧は友でもある。」

 

 こっちの世界のヴァ―リは簡潔に説明している。

 

「この世界の交友関係は面白いな。」

 

「おいおい。何納得してやがる。」

 

「そうそう・・・ちなみにこいつはネロ。」

 

「はい?なんでデビルメイクライ4の主人公がいるの!?」

 

 あれ?向うの俺がネロを知っているみたいだ。

 

「ちなみにギルスだ。ちょっと変身してみ。」

 

「はあ・・・よっと。」

 

 ネロが変身して見せると・・・。

 

「・・・・・・・・・。」

 

 向うの世界の俺が茫然としていた。

 

「なっ・・・なあ?もしかしてダンテっているのか?」

 

「ああ・・・冥界五大魔王―――スパーダの?そしてネロの伯父のか?」

 

「って、魔王になっているのかいぃぃぃぃぃ!?まさかベヨネッタまでいないよな?いたら悪夢だぞ!?」

 

 何やら頭を抱えているぞ。

 

 ちなみにいるらしいと答えると・・・すごく震えていたよ。

 

 なんか口で「偶然見たゲームのキャラがいるなんて・・・。しかもいろんな意味で濃い連中ばっか。」って言っていやがるし。

 

「・・・巧に・・・ハルト。そうか・・・555にウィザードってわけかい。他にもいそうだな。」

 

「って・・・なんで五大ギアの事を知っている?」

 

「五大ギア?それってカイザにデルタ、サイガとオーガ・・・。」

 

 おいおいおいおい。なんで五大ギアの名前を全部知っている!?

 

 異世界の俺はどうしてそんな情報を!?

 

「君達説教中なのを忘れているのかな?」

 

 とハルトが言った時だった。

 

 突然俺達の背後でドライグとアルビオンが実体化したのだ。

 

『うお!?』

 

――――――なっ・・・なにぃぃぃぃぃぃぃぃ!?

 

――――――この世界の我らは・・・生前の肉体を持てるというのか?

 

「これが生前の姿か。いや・・・まさにドラゴンって感じが。」

 

「ほう・・・見ることができるなんて光栄だ。」

 

 向うの世界の二天龍達が驚いているが、それどころじゃない。

 

 何しろその身体から凄まじい怒気が発せられている。

 

『グルルルルルルルル・・・。』

 

 相棒達がブチ切れていたのだ。

 

「これって・・・まさか。」

 

―――ああ。相棒、二度目見ることになる逆鱗だ。

 

 向うの俺はどうやら今、ドライグ達に起きていることを知っているらしい。

 

「どっ、どうしたドライグ!?」

 

「アルビオン、落ちつけ!!」

 

 俺とヴァ―リは、必死に相棒達をなだめる。

 

「じっとしていられるか。」

 

「ああ・・・我が娘達を狙う奴が出てきた。」

 

「その通りよ。」

 

 そこに紫の髪の女性が現れる。

 

「あの子達が脱走したのは聞いていたが・・・。」

 

「なにぃ!?」

 

 あの子達が脱走?ヴァ―リ!!なんでそんな重要な情報を話さないのかな!?

 

「・・・・・・私の娘を狙うなんて・・・悪い子ね。ふふふふふふ・・・。」

 

 ベノさん、やっぱり怒っていますね。

 

「ベノ・・・頼むから理性は保ってくれ。」

 

「ええ、それでもどんだけ保つかな?自信がないわ。」

 

 女性が本来の姿――ベノスネ―カ―になる。

 

「あなた・・・そこにいたの?」

 

 その上からクレアまで出てきたよ。

 

『・・・・・・・。』

 

 いや、奥様まで怒っていて。

 

「やっぱり、龍騎かよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 向うの俺が頭を抱えて叫んでいる・

 

――――ちょっとまて!!この世界の俺達に娘だと?

 

――――しかも、あの者達はまさか・・・。

 

 向うの二天龍達は仰天している。

 

「この世界ではお前ら、結婚して娘がいるぞ?」

 

「しかも双子だ。」

 

 俺とヴァ―リの言葉に・・・あっちの世界の俺達は眼を点にしている。

 

『こっ・・・子持ちドラゴン・・・。』

 

 異世界とはいえ俺はともかく、ヴァ―リが目を点にする様を見るのは結構レアだな。

 

――――わっ・・・我らに娘・・・だと?

 

――――・・・・・・・・・そんな馬鹿な。

 

 と、向うの相棒は余ほどの衝撃だったのか、言葉を失っている。

 

「しかも奥さんがミラーモンスターってなんじゃそりゃ!?」

 

 あれ?なんであいつはミラーモンスターって言葉も知っている?

 

「・・・この世界って本当に異世界なんだな。はあ・・・ドライグがドラグレッタ―と結婚し、娘がいるってなんだそりゃ!?アルビオンもそうだし・・・ベノスネ―カ―に至っては人間にまでなれるのかい!!」

 

 あとで問い詰めておかないと。

 

「・・・しかし、お前達の娘を狙う奴がいるか。愚かにも程があるとしか言えん。」

 

 ヴァ―リの奴はため息をついている。

 

「許せん。」

 

「この世界に存在することすら認めぬほどにな。」

 

 うおっ、すごく物騒なセリフが。

 

 でもまあ・・・気持ちは分かるかも。

 

「わかった。一緒にとっちめに行こうか。俺にとっても可愛い妹分みたいな奴らだし。」

 

「あの子達がどんな猛者になるのか楽しみでもある。成長を見守っていきたい子だ。長生きする気にもなるよ。」

 

 あの子達が生まれて、すごく賑やかになった。まあ、相棒の家族ならこっちの家族でもある。

 

 ついでに言うと、ヴァ―リも家で暮らしている始末だ。

 

 あいつの見立てだと、オカ研の部室に続き、俺の家は子育ての環境にとてもいいらしい。

 

 そして、あいつのチームまで住まわせてほしいと言っていやがる。

 

 良い住みか位は提供したいからと。あとそのチームの面々が、俺の料理を食べてみたいと熱烈に言っていやがるらしい。

 

 その話を聞きハルトと部長は家の大改装を行うべきと色々と計画しているのは余談だ。アシュカ様とフィリップ、ポルムの奴も設計に加わるらしい。

 

 その際・・・アーシアが不吉な予言を言って二人が頭を悩ませているのを知っている。

 

 その予言は、とりあえず二百人位を前提に考えた方がいいと。その上で五年後にさらに増築をと

 

 なんか、家に他にも色々と集まってくると予知しているらしい。

 

 部長は戦慄し、ハルトはため息ついて俺を見ていた。

 

―――――あんたは一体どれだけ化け物を引き寄せれば気が済むの?

 

 と言いたげな視線と共に。

 

 そんなくだらないことを思い出しながらも俺はドライグ達を見る。

 

「・・・すまない。俺にとっての宝は妻と娘そして・・・相棒だな。」

 

「違いない。友という存在も含めてもいいかもしれん。」

 

 少し怒りを納めたのか、そんな事を言ってくる。

 

 いや、少し照れるな。

 

 ヴァ―リの奴もぶっきらぼうにしながら、それをごまかす。

 

「・・・はあ。しかたねえ。だったら俺も付き合う!!」

 

 そこで異世界の俺まで名乗り出てきた。

 

 なんで?違う世界のことなのに?

 

「おいおい、意外そうな顔をするなよ。お前は俺だ。なら逆の立場ならどうしていた?」

 

 そして考えてから・・・。

 

「・・・・・・フッ。」

 

 思わず笑ってしまう。

 

 確かにそうだ。こういうの放っておけるわけがない。

 

「こっちはその命知らずと戦ってみたいだけだ。」

 

「・・・上等。なら楽しもうか?」

 

 ヴァ―リ同士でも何か通じる物があるみたいだ。

 

「相棒の大切な宝は俺にとっても宝なんだ。宝を守るのはドラゴンにとって本望だろ?」

 

 ドラゴンは宝を守ってナンボでしょう!!

 

「・・・ならお前達、背に乗れ。」

 

「共に・・・我が宝に手を出した報いを与えてやる。」

 

――――こうなったら付き合うか。その娘とやらも見てみたい。

 

――――そうだな。ふっ・・・宝か。我らにもそのようなものがあったら違ったのかもな。

 

 向うの相棒達も感慨深そうにしている。

 

「やれやれ・・・こっちも手伝うとしようか。レイちゃん?」

 

「はいはい。」

 

 その隣ではドラゴンの翼を生やしたハルトと箒みたいな物に腰掛けて空を飛ぶレイちゃん。あの・・・レイちゃんって、堕天使ですよね?自分の翼で飛ばないの?

 

「こっちの方が速いの。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

 気安く話す俺とレイちゃんを見て、向うの世界の俺は押し黙る。

 

「・・・・・・あの世界でももし出会いが違っていたら、こういう風になっていたのかな?」

 

――――相棒。

 

 それを見てレイちゃんは手に水晶玉を出現させる。

 

「レイちゃん?一体何を・・・。」

 

 レイちゃんにはまだ隠された力がある。その一つが水晶玉を介しての力。

 

 相手に何があったのか、その経験を映像として映し出すことができる。

 

 もちろん千里眼なども可能だ。

 

―――――メモリー

 

 レイちゃんは指輪を発動させ、それを異世界の俺にあてる。

 

 そして、水晶玉にあちらの世界のレイちゃんがやったことが映し出されていた。

 

 神器を持っていた異世界の俺をだまし、デートとかこつけて殺した事。

 

 助けたアーシアの神器をその命ごと奪い、己が堕天使の提督の愛を受け止めるために利用したこと。

 

 死ぬ前にも・・・だ。

 

 それを見たレイちゃんは納得した様子だった。

 

 それでこいつはレイちゃんを見て複雑な顔をしたのか。

 

「・・・・・・向うの世界の私が酷い事をしたみたいだね。謝るのも可笑しいかもしれないけど、ごめんなさい。」

 

 レイちゃんが悲しい顔をして謝る。

 

 だが、それを見て逆にあいつは笑った。

 

「・・・・・・いいぜ。話して分かった。本当に俺は異世界に来たんだな。」

 

 そこでもう一人の俺はようやく納得した様子を見せたのだ。

 

「あんたは夕痲ちゃんとは違う。何もかも。そうでないと謝ってこなかった。」

 

 相当深い傷を受けているのだろう。それでも・・・。

 

 こいつは前を向いて歩いている。

 

 俺とは経緯は違ってもこいつも傷を抱えながらがんばっている。

 

「あとで色々と語ろうぜ。異世界とはいえ俺なら当然あれを・・・。」

 

「ふっ・・・そうだな。」

 

 俺達の共通の話題、それはもちろん・・・

 

『おっぱいに決まっているよな!!』

 

―――――ガッシ×2

 

『は~い。ここで煩悩を全開にしない。君達の欲望は全開にするとシャレにならない。』

 

 軽い口調でハルトが頭を掴んできましたよ。

 

 もちろん右手で。

 

 しかも分身している。

 

 思うけど、ハルトさん?あなたが分身を使うのって反則だと思うよ?

 

『イッ・・・イエッサー・・・。』

 

 アギトである俺のストッパーがどうやらキリエさんのほかにもう一人いたようだ。

 

 ああ・・・ノーモア総督殺し。

 

 まあ、気を取り直そうか。

 

 お互いに少しはリラックスできただろうし。

 

「さあ・・・ここからは二天龍(俺達)の聖戦(けんか)だ!!あいつらに俺達龍の逆鱗の恐ろしさを思い知らせてやる!!」

 

 俺の声に皆が頷き、四体の龍が怒りの咆哮をあげる。

 

 さて・・・可愛い妹分達を助けにいくぞ!!

 

 俺達は飛び立つ。相棒達の逆鱗に触れた愚か者の顔を拝むために。

 

 

SIDE とあるぜ―ベス星人。

 

 ようやく、あの幼体が大人しくなった。

 

 重武装で身を固めた我ら同士が三百人も戦闘不能になるとはだれが思ったか。

 

 とっておきの巨大ドローンを使ってようやく倒せた。

 

「ううう・・・。」

 

 手足から血を流しながら倒れている三つ首の幼体。翼もボロボロ。

 

 今、他の隊から逃げた他五体を発見。追い詰めつつあると報告がある。

 

 向うは念のために五百人も動員している。

 

 確実に捕獲できるだろう。

 

 さあ・・・こいつを捕獲する。

 

 この星を我らの基地として・・・。

 

「があああああぁぁぁぁ!」

 

 だが・・・あいつばまだ立ち上がっていた。

 

 そしてその口から光が灯る。

 

――――高エネルギー反応を確認。

 

 それは蒼い光。口にエネルギーが集まっているのだ。

 

 あいつはまだ・・・力を隠し持っていたというのか?

 

 重力を操作する力だけでなく、こんな高エネルギーを発することができるなんて。

 

 しかもそいつは三つの首から発したエネルギーを目の前で球状に集束していたのだ。

 

 皆はそれに気づいてパワービームを放つ。

 

 だが・・・あまりのエネルギーに、その余波だけですべて弾き飛ばされてしまったのだ。

 

 そしてあいつはその超高圧エネルギーを我らに向かって解放する。

 

 放たれる巨大なエネルギー球は巨大なドローンを飲み込み消滅させるだけではなかった。

 

 そのまま地面を削り、我が隊の半数を飲み込み、山の向うへ消えたかと思うとその山が消し飛んだ。

 

 凄まじい轟音と共に。

 

『・・・・・・・・。』

 

「がっ・・・ぐっ。」

 

 それを放った幼体は完全に意識を失った。瀕死の状態になったみたいだ。

 

 だが、あれだけの力をこいつは秘めていた。

 

 結果として、あの一撃で力尽きたようだが、おかげで四百人の隊の内半数以上が消し飛ばされたのだ。

 

 合計・・・五百を超える同胞が倒された。

 

 恐ろしいと言える。方針を変更しないといけないようだ。

 

 例え死んでも、その細胞サンプルだけでも十分だ。

 

「がっ・・・ぐっ・・・。」

 

 俺達は手にした武器をその幼体に向ける。確実に止めさせないとこちらが危険なのは今の一撃で分かったからだ。

 

 そして、一斉にパワービームを放つ。しかもチャージした物。

 

 それに加えて無数のミサイルも撃ち込んだ。

 

 だが、この星は想像を遥かに上回る魔境だったらしい。

 

「ウェェェェェェイ!!!

 

 突然割りこんできた地球人が手にした棒きれ、確か「箒」を呼ばれる掃除に使う原始的な用具ですべて弾き飛ばしてくるなんて誰が思ったか。

 

『・・・・・・・。』

 

 一体この星はどうなっているというのだ!?

 

 

SIDE 剣崎

 

 何とか間に合・・・ったわけじゃないか。

 

「ごめん。遅くなった。」

 

 ボロボロのラッセ―を抱きかかえて俺は謝る。

 

「がっ・・があぁぁぁ・・・。」

 

 弱々しい声でラッセ―は応えてくる。

 

「そして・・・よくがんばったな。」

 

 片手で抱きかかえながら俺は、高速で箒でビームやミサイルなどをはたき落とす。

 

 その異様な光景に、向うから怯えと戸惑いが見える。

 

 百均の短い箒も掃除以外に十分役に立つ。

 

『・・・・・・。』

 

 駈けつけていたのか、二人の木場君がやってくる。だが・・・二人ともぽかんと口を開けて呆けていた。

 

「あっ・・・ごめん、ラッセ―を頼む。」

 

 そんな二人に攻撃をはたきながらラッセ―を渡しに行く。

 

 それを受け取る木場君たちだけど、まだ呆けたままだ。危ないぞ?

 

「えっ・・・ええ。はあ・・・やっぱりあなたも人外でしたか。いや、元々人外だったけどさ、こんなのありかな?」

 

「ほっ・・・箒、それも片手間感覚?」

 

 なんか木場君達が驚いているけど、その程度出来なくてどうするの?

 

 この程度なら目視しなくても、いや・・・そもそも目視しないでも片手で全部はたき落とせるわ!!

 

 埃やごみと一緒だ。

 

「部長・・・、あなたなんて人を使い魔にしたんですか。この人・・・不死身で最強の用務員になっているじゃないですか。」

 

「この人、学校の用務員なのかい!?この世界の用務員ってこんな人ばかりなの!?」

 

「そんなわけない!!ただ・・・うちの学校は一味違っただけだ。」

 

「一味どころか、大分、いやものすごく違うと思うよ。」

 

 この学校の用務員は結構給料もいい。ボディーガード的な役割も期待されているらしいが、そんな大したことはしていない。

 

 痴漢、盗撮、自殺など色々な事件を事前に予知して防いでいるくらいだ。

 

 それくらいなのにすごく待遇がいい。

 

 それにあれを再現してくれた。

 

「グレゴリの最新技術に感謝。」

 

 それはスペードのバックルがついたベルト。

 

 そう、ブレイドのベルトだ。

 

 実はこの世界に流れ着いてきたらしい。それをアザゼルさんが修復し、ポルムとハルトそして、フィリップという人も加わって、改良と使用方法など色々と研究し、議論していたところに俺がやってきて、その本来の使い方を見せた。

 

 ゲットしたカテゴリーAのカードを入れ、変身して見せた時の四人の顔を今でも忘れない。

 

 だって、すごくいい顔していたから。

 

 視線だけで分かる。

 

―――――すごくいいモルモット(被検体)を見つけた。

 

 なんか、モルモット決定みたいです。

 

 トホホホ・・・。何か俺、こういうマッドな連中は苦手だ。

 

 そんな感じですが、気を取り直しましょう。

 

 人工神器という扱いになっているけど、遠慮はいらない。

 

「変身!!」

 

――――ターンアップ!!

 

 その音声に気付き敵が攻撃を仕掛ける。

 

 だが、その攻撃が俺に届くことはなかった。

 

 俺の目の前にスペードが描かれた蒼い光の壁が現れ、それが攻撃をはじき返したからだ。

 

 その壁を俺は歩いて通り抜ける。

 

 それと共に俺は・・・実に数百年ぶりに変身する。

 

 ブレイドに。

 

 変身した俺を見て向うがさらに慌てだす。

 

 接近戦をしかけようとする者まで現れたくらいだ。

 

 それを軽く掌低でふっ飛ばしながら、俺は剣を抜く。

 

 ブレイラウザー。あの子に渡したあの剣とはまた違うが、忠実に再現してある辺り、流石と言える。

 

「他の子達を頼む。こいつらは俺が・・・あれ?」

 

 そこで、俺は気付いてしまった。フォースが教えてくれる。

 

「なんであの子達こっちにむかってんの?」

 

 ラッセ―が逃がしたはずのあの子たちがこっちに凄まじい速度で向っていることに。

 

「しかも・・・あの子達・・・怒って・・・げっ!?」

 

 俺だけでなく皆、目を点にしただろう。

 

 遠めに見えたのはアカリちゃんだった。

 

 超巨大になった。

 

 轟音と共にこっちに向かって突進してきているのだ。

 

 しかも普段蒼い眼が紅く輝いている。明らかに怒っていたのだ。

 

「ちょちょちょちょちょちょ!?」

 

 アーシアちゃんからアカリちゃんは本来の大きさから大分小さくなっていることは聞いていた。

 

 だが、本来の大きさがあまりにもでかすぎる。

 

 それはまさに、怪獣。

 

 それが道路を家の塀ごと破壊しながらこっちに向かってきている。

 

『グルルルルルル・・・。』

 

 その頭の上にはあの子達がいた。

 

 その視線にはボロボロになったラッセ―の姿。

 

『グルルルルルルル!!』

 

 それを見た二天龍の娘達は唸る。怒りと共に。

 

 あいつらは流石に危険を察したのか、逃げようとするが・・・。

 

 その行く手には最悪な奴らがいた。

 

「あらあら・・・うふふふふ。」

 

 そこにいるのは二人の朱乃さんとユウナちゃん。

 

「ちょうどいい相手がいましたわ。」

 

 そして、三人の眼がドSのそれになっている。

 

「今からト―チャ―アタックという物を二人に教えます。まずは・・・。」

 

 ユウナちゃんが突然ギロチン台をある敵の目の前に召喚。

 

 呆けている敵の尻を踏みつけるようにユウナちゃんが蹴り始めた。

 

 足が幾つも見えるほどの蹴りの連打。

 

「ギッ!?ギィィィィィィィ!!!」

 

 それが何を意味しているのかとっさに判断したのか敵はそのギロチン台の柱を持ち必死に抵抗するが・・・。

 

「ふん!!」

 

 それを強引に蹴り飛ばして相手がギロチン台に首と手首にはまり、完全に拘束された。

 

 そして指を鳴らすとともに・・・あっ・・・ギロチンが落ちて。

 

『・・・・・・。』

 

 そこから先はあえて何も言わないでいいだろう。

 

 あまりに唐突な残虐行為に敵味方共に言葉を失っているぞ。

 

「このように、かつて魔女が受けたあらゆる拷問を敵にやりかえすことで・・・。」

 

 それなのにすごく可憐な笑顔で説明を続けているのが逆に怖い。

 

 敵の背後に今度は変な人型が出たよ?それが空くと、鋭いとげとげが!!?

 

 あれってアイアンメイデンと呼ばれるものじゃ。

 

「こちらの魔力を回復させるという技よ!!」

 

 その敵を容赦なくアイアンメイデンの中に蹴り飛ばした!?

 

 そしてふたが閉じるとともに絶叫が・・・。

 

『・・・・・・・。』

 

 何?この残虐ショー。

 

「魔女の恨みを晴らしているの。」

 

 いやいや、魔女の恨みといいますが、明らかにこいつらはそれとは関係ないよね?

 

 だって宇宙人だよ?宇宙人が魔女を拷問したり、処刑したというの?

 

 明らかにとばっちりじゃん!

 

「・・・フッ。」

 

 それを見た木場君が倒れた!?

 

「君!!大丈夫か!?」

 

「イッ・・・妹が、こんなドSなわけがない・・・そう・・・ドSなわけがないさ・・・はは・・・あははははは・・・。」

 

 ・・・・・・駄目だ。現実逃避している。

 

「彼女はこの世界の木場君の双子の妹なんだ。生き別れたけど、とある魔女の教えであんな風に・・・。」

 

「一体どんな魔女なの?双子の妹がいる事も驚きだけど、そこが一番気になるよ!!」

 

 簡単にだけど、事情を説明する。もちろん、異世界の木場君は混乱するばかり。

 

 まあ、こっちもユウナちゃんの師匠にはまだ会ったことが無い。

 

 今後も会う事がないことを心の底から祈るばかりだ。

 

「さて・・・私は三角木馬でもしましょうか。」

 

 朱乃さん。何で三角木馬にまたがっているのですか。手にした鎖をまるで鞭のように振り回し・・・すごくわくわくしていますけど?

 

 その鎖をあいつらの中の一体に巻きつけ、三角木馬に強制的にまたがらせて・・・。

 

「あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 なんか、敵が絶叫とも恍惚ともどちらとも言えない声で叫んでいる。

 

「おほほほっおほほほほほほほほほほっ!!」

 

 もう一人は電撃を纏わせた鞭で叩きまくっている。

 

 これって完璧なSMだあああああああぁぁぁぁぁぁ!!

 

「やっぱり素質十分。鞭の使い方といい、あの恍惚とした表情といい、私の眼に狂いはなかったわ。異世界の貴方も師匠に紹介したくらいよ。」

 

「ふふふふ・・・あとで変わってくださいな。」

 

「ええ・・・たっぷりと楽しみましょう。」

 

 蹂躙され、危険な痙攣をする生贄達を捨て去り、三人の視線があいつらに向かう。

 

 次の獲物をさがして。

 

 それはまさに食べごろの獲物を見つけた雌ライオンの眼だ。

 

『・・・ヒッ。』

 

 連中の口から悲鳴が漏れるのはもう・・・仕方のないことだ。

 

 しかし、思えばこの子達って異星人とファーストコンタクトしているんだよね?

 

 そして、これがあの子達の異星人とのコミュニケーションってわけか・・・。

 

 百歩譲って争いならまだわかる。

 

 SMで語るなんて誰が思ったのかな?

 

 痛みと快楽って言う意味では分かりやすいけど。

 

 鞭で語る異文化コミュニケーションってなんかおかしいと思うのは俺だけなのかな?

 

 あいつらが撤退しようとする。

 

 変身した甲斐がない。

 

 まあ・・・。

 

「オホホ・・・オホホホホホホ!!」

 

「ああぁぁぁぁぁ!!」

 

 あそこで調教されている彼らを見たらそうなるか。

 

「もっと・・・もっとぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「あらら・・・早速豚みたいな子が現れましたわね。ほら・・・ご褒美ですわよ!!!」

 

「あああああああぁぁぁぁ!!」

 

 ト―チャ―アタックを使って、あいつら宇宙人を調教している。

 

 もう何人か目覚めてはいけない何かに覚醒している。

 

 この子達からあとで事情を聞くとしましょうか。

 

 それよりも・・・あれ?みんながボロボロのラッセ―に駆け寄ってきたぞ。

 

「うう・・・。」

 

 ラッセ―は完全に気を失っている。命すら危うい状態。

 

「・・・う!!」

 

 五体はラッセ―を見る。涙すら流して。

 

 ラッセ―は目覚めない。

 

 そこに彼女達を追いかけてきた別同隊がやってきたのだ。

 

 一斉に攻撃してくる。ビームやミサイルだけじゃない。爆発物すら使ってくる。

 

 でも・・・それがすべて弾き飛ばされて、皆に跳ね返されてしまう。

 

 ナデシコの力によって。

 

 しかも、その跳ね返し方を見事に計算。

 

 あーあ。あいつに迂闊な攻撃は逆効果だというに。

 

 それに驚く連中に、サンゴが叫ぶ。全身から光の粒子みたいな物を噴き出しながら。

 

 それがビームを次々とはじき、その粒子を相手に浴びせると、相手が次々と苦しみ出しながら倒れて行く。

 

 そこに鳥の足みたいなロボットが数体やってきて、上空から攻撃しようとしたが、その身体が爆発と共に消滅する。

 

 ヒナヅキの仕業である。彼女の咆哮でそれが起こったのだ。

 

 そして・・・後ろから迫る連中に対してはライカがすでに駆けていた。

 

 いや、すでに連中の後ろにいたのだ。両手に生やした鋭い刃の様なヒレを振るいながら。

 

超高速移動と透過との組み合わせは相変わらず反則だといえる。

 

切れない物体は無いから。

 

 時間差をおいて次々と切断される連中。

 

 あっという間に・・・五百体のエイリアンが全滅。

 

 上空からは何やら戦闘機みたいな物が来たが・・・。

 

 アカリちゃんがその巨体で攻撃をすべてうけとめる。びくともしない辺り、すごい頑丈だ。

 

そして、口から強力な糸を吐きだし、撃退しちゃった。

 

 うん・・・この子達明らかに怒っている。

 

 しかも、ここぞとばかりに反則級の自身の能力を発動させているし。

 

 ナデシコちゃんの能力の一つ・・・ベクトル操作。

 

 サンゴちゃんの能力の一つ・・・謎の粒子。

 

 ヒナヅキちゃんの能力の一つ・・・爆発消滅。

 

 ライカちゃんの能力の一つ・・・物質空間透過。

 

 これに親達の能力、そして他にも能力を持っているからねえ。そもそもナデシコちゃんとライカちゃんの力は親の力をさらに発展させたものだし。

 

「うう・・・だが、この街には一万を超える我が同胞が・・・。」

 

 倒れたあいつらがとんでもない数字を言ってくる。

 

 それと共に街のあちこちから一斉に奴らの仲間が転送してくる。

 

「はあ・・・その程度か。」

 

 でもこう思うんだ。

 

 たったそれだけなんだと。

 

 出現したあいつらが四本のブレスによって一斉に薙ぎ払われる。

 

『我が娘たちよ!!無事か!!?』

 

 来たか。

 

 パパドラゴンズが。

 

『アカリちゃんというでかい目印のおかげで分かりやすかったわ!!』

 

 ママドラゴンズが。

 

 そして、その上から二人のイッセ―とヴァ―リ、そして、ハルト君とレイちゃんが降り立ってくる。

 

「・・・やっと見つけた。アカリちゃん。一体どうし・・・。」

 

 そして、アーシアちゃんがもう一人のアーシアちゃんを連れて突然現れる・・・って。

 

「ラッセ―?」

 

 ぼろぼろのラッセ―を見て言葉を失っていた。

 

「・・・ラッセ―。あなた・・・。」

 

 彼に触れるだけでアーシアちゃんはすべてを察したらしい。

 

「・・・こやつ、娘達を命がけで守ったというのか?」

 

「その根性、認めぬわけにはいかぬな。」

 

 ドライグさんとアルビオンさんはボロボロのラッセ―に泣きついている娘たちを見て唸る。

 

 ラッセ―は何気にイッセ―のトレーニングや戦いをよく見ていた。

 

 その影響を多大に受けているのは間違いない。

 

 特に根性という点は。

 

「口だけではないという事か。」

 

「どうやら、お前を見くびっていたようだ。」

 

 そして、獰猛な笑みを浮かべる。

 

「小僧、今は眠っておけ。そして、起きたら今度は俺達がお前を鍛えてやる。」

 

「娘を守る気概・・・天晴なり。ならそれに見合う実力を身につけてもらわんとな。」

 

 そして、ラッセ―に優しげな視線を送ってから、あいつらに怒りの視線を向けてくる。

 

「ええ。そして、家族でもあるあの子に手を出した報いを与えないとね。」

 

「・・・みんな殺ってあ・げ・る。遺言すら・・・認めないわ。」

 

 その奥さん達も同様だ。すでに本来の姿を見せながら殲滅にかかっている。

 

 もう一人のアーシアちゃんが回復の光を照る。

 

「・・・それであなた達は怒っているのですね。んん?」

 

 そこに突然一人の閃光が走る。

 

 それと共に・・・アーマーを纏った別の奴らがボロボロのラッセ―ごと二人のアーシアちゃんを捕まえ、そのまま高速で離脱してきたのだ。

 

 敵ながら見事といえる。だが・・・。

 

「・・・やってくれるな。こい!!トルネ!!」

 

 こいつらが逃がしてくると思ったのかな?

 

 

 

 

 




 
 やりたい放題名剣崎さんはどうでしょうか?学校の一人、剣崎さんがいれば平和になると私は断言しますWW


 もうすぐ次隊も終息に向かいます。


 もう一話投稿します。

 


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別れと新たな出会い、そして嵐の予感です。

 今回は二話だけですが、これで幕間は終わりです。


 次回の投稿から五章にはいります。

 その前に色々と予告も入っています。


SIDE とあるエリートパイレーツ。

 

 今自分たちは大変興味深いサンプルを捕まえた。

 

 一体はこの星の生命体の中でも上位にいると思われる三つ首の生命体。

 

 後二体は、ヒーリングを使う二体の生命体だ。

 

 その力・・・大変強力と見た。

 

それを解析すれば・・・。

 

「はえ~景色が全然見えないです。」

 

「音速で飛んでいるからですね。」

 

 あっ・・・あれ?

 

 なんでこいつら普通に喋っているの?

 

 言語その物は翻訳できている。

 

 だが、問題はそこじゃない。

 

今自分達四人は音速で飛んでいるといる。

 

それに伴いこいつらに凄まじい気流などが襲っているはずなのに、何でこいつら平気なの?

 

 あの生命体にヒーリングをかけ続けているし。

 

「あっ・・・私が障壁を張っていますので喋れるのですよ。」

 

「そうなんですか。この世界の私って色々できますね。」

 

 なん・・・だと?

 

 そんな力を有しているというのか。

 

「その気になればテレポートで逃げる事が出来るのですが・・・せっかく追いかけてくれているのでそのまま捕まったままにしましょう。」

 

 なんでこいつら、平然としている?

 

 あれ?そう言えばこいつら、とんでもないことを言っていなかったか?

 

 追いかけてきていると。

 

「アーシアちゃん無事か!!」

 

 その声がした方を見て、自分の頭が可笑しくなったかと思った。

 

「サイガさん。冥界の用事は大丈夫ですか?」

 

「一応片付いたよ。セラさんと一緒に戻ってきたんだけど、いきなりお祭り騒ぎで、驚いたよ。これが日常になりそうで怖いし。」

 

 それは鎧の騎士だった。まるで龍のような鎧。それが黄金に輝いている。

 

 それが乗るのは、馬と呼ばれる生命体と思われる。

 

「轟竜さん・・・黄金に輝いていますね。」

 

「俺はどうやらサイガの力を受け止めるだけの器だったらしい。まったく、阿呆みたいな力を発揮して。俺の力がさらに上がってしまったぞ。体の色も変わったし。ふふふ黄金というのも悪くない。」

 

 その馬は呑気に喋っている。

 

「格好いいです~。あの人誰です?」

 

 呑気なやり取りをしているが、可笑しい事に気付いてほしい。

 

 今自分達、四人は音速で飛んで逃げている。

 

 それにあの馬は・・・平然と追いついているのだ。

 

 しかも息を切らさずに平然と喋る余裕すらある。一体どんな化け物だ?

 

こんな阿呆みたいなスペックを誇る生命体、見た事がないぞ!!

 

「・・・・・・えっと。この世界はそう言うのはごろごろいますので気にしない方が。」

 

「ああ、すまないって・・・えっ?」

 

 あれ?今、心読まれていませんか?

 

「ははは・・・はい。出来れば降参を薦めます。」

 

 どうして、そう言ったのかその答えが追いついてきた。

 

「うひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、ドッ・・・どんなバイク何だよこれ!!」

 

 そこには二人乗っていた。

 

――――二人乗りでも爆走だぜい!!

 

 それはバイクと呼ばれる物。それが追いついてきたのだ。

 

 しかもバイクが喋っている。

 

「でも、仮面ライダ―って言えばバイクだよな!!それは納得したぜ!」

 

「分かるか?このロマン!!」

 

「おうよ。まあ、生きたバイクって言うのもまたすげえがな。」

 

 他にも色々と追いついてきた。

 

「行け・・・ガメラ。」

 

「最初からこうやって飛んで欲しい。」

 

 空飛ぶ亀らしき物体。その上に二人の少女がいる。前足を翼のようにし、顔を出し、後ろ足の部分からジェット噴射で飛んでいるのだ。

 

「久々に全力で走れるな!!レイダ―!!」

 

――――そうだぜあんちゃん!!

 

「今回はお前にアクセルメモリを使う必要はなかったが・・・捕まえる競争をすんのなら使うか?」

 

―――――アクセル。

 

「共に、ぶっちぎろうぜ?」

 

―――――これで俺は最速だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

「あなた達何をやっているのですか!!」

 

 そこに白い翼を生やした女性がやってきただと!?

 

「げっ、キリエ?なんでお前・・・。」

 

「父様に高速で飛行するための訓練をしていますから。天界の研修帰りにこの騒ぎを聞きつけてやってきたの。」

 

「みんな頑張っているね。」

 

 そこに金と赤の翼竜みたいな奴までいる。

 

――――なあ、渡、お前意図的にその姿になれたか?

 

「・・・それに関しては分からない。エンペラーバットに意図的になれはしたけど、ここまで理性を残せるのは・・・。前の暴走の影響かな?」

 

――――もしかしたらオ―フィスの譲ちゃんが関係しているかもな。

 

 腰に着いている変なコウモリモドキとのんきに喋っている。

 

 その上には同じ顔をした少年が二人。

 

「狙いをつけます。いきましょう!!」

 

「すべて・・・止めます。」

 

 何か二人ともこっちを凝視している。何をしようとしているのだ!?

 

 突然凄まじい衝撃波と光が襲いかかってくる。

 

 後ろを見ると天まで届く尾様な凄まじい火柱がまるで壁のように一斉に上がっていたのだ。

 

 その数・・・軽く見て百・・・二百を超え、空一面を覆う炎の壁となっていた。

 

 その火柱を突破してドラゴンと呼ばれる生命体が四体出現。

 

 小さいのも四体。

 

 あと謎のいも虫みたいな奴もやってきている。

 

 どうやら、あっちの連中は一瞬で全滅か。一万体の同胞が、時間稼ぎにもならない。

 

なんだ、あいつらは化け物か?

 

 そろそろ覚悟した方がいいのかもしれない。

 

 なんだ、この星は?タ―ロンやフェイザすら生温く感じるぞ。

 

「・・・降参するのなら伝えますよ?」

 

 彼女が全く不安に感じなかった理由はそこにあった。

 

 どんな事態にも対応できるという自信があったからだ。

 

「是非頼む。」

 

 自分は他の奴らに視線を向ける。そして、皆が同じ思いだと知る。

 

 逃げ切れれない上に、戦っても敵わない。

 

 自分達は、こいつらの元に下ることを決意した。

 

 のちにその判断が正しかった事を思い知ることになる。

 

 呪われていると思っていた自分達の人生の大転換となった。

 

 

 

Side イッセ―

 

 はあ・・・終わった終わった。

 

 しかし、四人ほど降参してくるのには驚いた。

 

 ラッセ―とアーシアをさらった連中なんだけど、こっちが追いかけてくる光景と、アーシアの説得に、降参を決めたらしい。

 

 それ以外に・・・朱乃さん達とユウナに調教された連中も・・・。

 

「この世界、エイリアンがでてくるんだな。いや・・・俺達の世界よりも色々と混沌として・・・。」

 

「いや、さすがにエイリアンは想定外だぞ。」

 

 ついにエイリアンまででるようになったか。ドラゴンはもとより、ホラーに魔化魍、怪獣も現れていたけど、ついに宇宙か。

 

「ははは!!今度は宇宙怪獣の出番かな?」

 

『!?』

 

 その言葉に皆が固まってしまった。

 

「お願いだからあなたがそれを考えないで。アギトが言うと、現実になるフラグでしかないから。」

 

 部長が疲れた様子で俺に注意をする。

 

 あれ?そんなフラグってありましたっけ?

 

――――――エマージェンシー。えっと・・・宇宙から何かが接近しているよ。

 

 その時、何故かフィリップの奴からテレパシーにてとんでもないセリフが出てくる。

 

 現れたのは銀色の謎の物体。その中から銀色の物体が降り立ち・・・巨大な怪獣に変身した。

 

『・・・・・・・。』

 

 皆の視線が俺に注がれる。

 

 その視線にはこのような意思が込められていた。

 

――――――お前のせいか。

 

 ちょっと!!俺のせいだというのか!?

 

「口は災いの元ね。皆・・・もてなしの準備はいいかしら?」

 

 こちらの世界の部長の声に反応したのか巨大な宇宙怪獣・・・オルガがこっちに向かって走り出すが・・・。

 

 上空からすごい勢いで落ちてきたある人物がオルガを殴り飛ばした。

 

 五十メートル以上の高さはある巨体が吹っ飛び転がっていく。

 

『・・・・・・・。』

 

 それを唖然として見る異世界の俺達。

 

「もてなしってこっちのほうでいいのか?」

 

「ええ。食前酒にはなるわね。」

 

 それはでかい相手に関して安定の破壊力を誇る鋼兄です。

 

 もちろん変身している状態ですが・・・はあ、怪獣を殴りとばしますか。

 

「最近活躍あまり出来ていない気がする。思い切り暴れてくれる。」

 

 すごくやる気を出している。

 

「前菜はこっちがやろうかしら?変身。」

 

 部長が再び紅のキバに変身しましたよ?

 

「おっ・・・おい、お前らツッコミはなしか?」

 

 まあ、あんな光景、異世界の俺から見たら可笑しいか。

 

 察することはできる。

 

 でもな、厳しいがこの世界って奴は・・・。

 

「この程度で突っ込んでいたらこの世界では生きていけない。」

 

「・・・何その世界!?」

 

 何その世界って、それが俺達の世界だから仕方ない。

 

「この世界のイッセ―の幼馴染という名の怪物連中にもまれてみなさい。常識というのがいかに脆く、そして、どれだけ馬鹿馬鹿しいものだと悟りが開けるから。」

 

 俺のコメントに続いて部長が言う。

 

「・・・そう。この世界の私・・・苦労しているのね。」

 

 異世界の部長が察したようで軽く肩を置く。

 

「・・・こうなったら総力戦だ。みんな鋼兄に負けるな!!」

 

『おう!!』

 

 その言葉に立ちあがりつつあった宇宙怪獣オルガが悲鳴を上げたような気がした。

 

 そこからはもう・・・やりたい放題だったとだけ言っておく。

 

 

 

Side ポルム

 

「へえ・・・これが宇宙戦艦ねえ。」

 

 僕達はあのエイリアン達がいた宇宙戦艦を発見し、そこにいた連中を片付けながら、色々と見て回っていた。

 

「興味深い。いやいや、異世界のテクノロジーをこうやって見れるなんて!!」

 

 フィリップ殿を誘ったら、すごい喰い付きだった。

 

「う~む。なるほどねえ。一度宇宙船という物作ってみたいと思っていたんだ。あと、かなり先のことだけど、人口増加も考えてコロニ―建設も・・・。う~ん夢が広がる!!」

 

 アシュカ殿まで来ているのには驚いたけど。

 

「全くだぜ、いや~これはすごい。」

 

 異世界のアザゼルさんとこの世界のアザゼルさんもしみじみとみている。

 

「・・・あの世界のごたごたが終わったら宇宙旅行っていうのも乙だな。そのためのテクノロジーを今のうちに収集しておこうかね。」

 

「いいねえ。でも、ポルム。お前は知っているみたいだな?」

 

「まあ、行ったことのある世界の文明の物ですので。」

 

 まさか、あの世界の宇宙船が落ちてくるとは。

 

「スペースパイレーツがこの世界に来るなんて、予想外もいい所だ。まさか・・・マザーブレインまで来ているわけ・・・ないよな?あの攻撃で消滅させたはずだし。」

 

 まずい。航行記録を見ても事故で途方もない距離をワープしてしまい、この星に来てしまった事が分かった。

 

 つまり・・・あの銀河連邦はコッチの世界と物理的に繋がっているという事。

 

「・・・マジですか。」

 

 頭が痛くなる。あの銀河連邦に怒りに任せて、やりたい放題やってしまいましたよ。

 

 これがきっかけで宇宙にも目が向けられる。ははは・・・どうしようか。

 

「・・・どうする?お前が崩壊寸前までに暴れまわった世界だろ?」

 

 アザゼル。頼むから痛いところ突かないでくれ。

 

「・・・交渉は何とかしよう。ある意味色々と勝手が分かっている世界だ。」

 

「ハーハハハハッ!!色々な意味で効果的だな。」

 

 笑いごとじゃないって。はあ・・・向うで大魔王認定されているからな。

 

「しかし、平行世界って言うのもおもしれえ。あの機械・・・また詳しく原理を教えてくれ。こっちの世界にも招待したい。」

 

「おう。まず・・・ポルム、お前も共犯だろうが、説明を頼む。」

 

「はいはい。」

 

 しかし・・・予想以上に混沌としてしまった。

 

 異世界へのゲートを開くための装置。それをアザゼルと一緒に作ってみたら・・・まさか異世界のイッセ―達を召喚することになってしまうなんて。

 

「いいデータが取れた。まあ・・・大騒ぎになってしまったけど。」

 

 まさかこの街で起きた騒動の原因が僕達だなんて口が裂けても言えない。

 

「俺の試作機と共鳴するなんて・・・いや、面白い事が起きるもんだわ。」

 

 向うの世界のアザゼルが作っていたワープ装置と共鳴してしまった結果だなんて。

 

 言ったらお仕置き確定だ。

 

 このことは内密にして次回作をまた・・・。

 

―――ガッシ×3

 

『・・・ほう。やっぱりそうだったのか。』

 

 その頭を誰かに掴まれる。

 

「・・・口は災いの元だったか。」

 

 我ながら迂闊だった。

 

「やっぱり騒動の大元を逃がすわけにはいかない。」

 

 流石、ハルト。グレゴリの処刑人だけのことはある。

 

 しかもきっちり三人に分身している。

 

「ありがとうハルト。おかげでじっくりと処刑できるわ。」

 

「ええ。本当に。」

 

「ふふふふ・・・どうしてくれようか。」

 

「楽しみでしかたないぞ。」

 

 その後ろでは、本来の姿で怒気を放っている親ドラゴンズ。

 

 そして、異世界から来た連中も含めたオ―ルメンバーが・・・。

 

「なんだこれ?」

 

「・・・これがこの世界におけるグレゴリの名物みたいなもんだ。」

 

「え゛?」

 

 悟った様なセリフを聞いたあっちの世界のアザゼルの反応は分かるよ。だって・・・もうグレゴリの名物だし。

 

『みんな~判決を頼む。』

 

 怒り心頭の皆を見てハルトが微笑む。

 

 みんなの視線が・・・アーシアちゃんに向けられる。

 

 ああ、彼女なら安心だ。

 

 慈愛に満ちた天使、または女神のような彼女なら恩情が・・・。

 

 天使の様は微笑みが俺達の救い・・・。

 

「ポルムさんとアザゼルさん達のおかげでラッセ―とアカリがすごい事になりました。」

 

 あれ?救いが・・・。

 

 すやすやと眠っているラッセ―。あちこちに包帯が・・・。

 

 そしてアカリちゃんは泣いていたのか疲れて眠っている。

 

『・・・・・・。』

 

 かつてない出来事にアザゼル達も冷や汗を流している。

 

 アーシアちゃんが笑顔のまま怒っている。

 

―――――ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・。

 

 それも後ろにいる親ドラゴンズ達と同レベルか、それすらも上回るような凄まじい迫力を伴って。

 

『・・・・・・。』

 

 いっ・・・いや、あまりの怒りに親ドラゴンズすら冷や汗流して引いているぞ。

 

 みんなもガタガタ震えながらそれを見守っている。

 

 余が見誤るとはな・・・。

 

 まさか、このメンバーで一番怒らせてはいけない存在が彼女だったとは。

 

「・・・俺もアーシアちゃんは怒らせないようにしよう。あれは流石に怖い。さあアーシアちゃん、君が代表で判決を頼む。」

 

 アーシアちゃんは言う。

 

 何故か俺の背後で○か×が交互に点滅しているように見える。

 

 そして・・・結果は○。

 

「・・・・・・ニコッ。」

 

 それはもう天使の様は微笑みをたたえ、なおかつ怒りの四つ角を四つも出した状態で。

 

「・・・デリート許可。」

 

 すごく黒い一言で処刑を宣告。

 

 その黒さに皆が引きながらもハルトは執行する。

 

『執行・・・総督殺し。』

 

『ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 俺達の頭を握りつぶさんとするほどの強烈なアイアンクロ―ががぁぁぁぁぁぁぁぁ!?

 

 何気に初体験だけど・・・これは今までに味わったことのない激痛。

 

 ただ力が強いだけじゃない。

 

 ほっ、本当に繊細に、そして容赦なく激痛のつぼを攻撃してきている。

 

 残虐さ以外は魔界一だと自負していたけど、すくなくともこのドSさは敵わない。

 

 認めるよ・・・友よ。お前は余ですら敵わぬ物を持つと。

 

 ああ・・・意識が遠のく。悲鳴をあげているのに意識が・・・。

 

 意識がデリートされる!!

 

 二人のアザゼルの全身から力が抜け、だらりとする。

 

 余も・・・イッ・・・意識が・・・。

 

 その悲鳴をよそに皆が揃って言う。

 

『ゴッチュー!!』

 

 そして、締めを二人のイッセ―が務める。

 

「・・・これにて一件コンプリート。」

 

「今日も駒王町は日本晴れ・・・・・ってか?」

 

 敵に止めさせた後の決め台詞か。

 

 ・・・ある意味ラスボスたちの最期にふさわしい。

 

 

 

 

SIDE イッセ―

 

 とりあえず処刑のあと、戻るための方法は確立していると聞いて安心していた。

 

 すでにその装置は作っていると。

 

 ただ、エネルギーチャージのために明日の朝まで待ってほしいと。

 

 破壊された街の修繕。町の人々の記憶改竄を二人に押し付けておいた。

 

 まあ、騒動が起きた時点で結界を発動。隔離したために被害は軽微で済んだみたいですが。

 

 さて、異世界からの客人達は帰宅するまで家で泊ってもらう事にわけで。

 

 そして、宴会になる。

 

 そうなるとこっちが腕を振るわないといけないな!!

 

 腕が鳴る。作り甲斐があるってもんだぜ!!

 

『・・・・・・。』

 

 ということになったのだけど、なんだ?異世界の連中(おもに女子達)が目を点にしているぞ?

 

「えっ?この世界のイッセ―って何でこんなに女子力が高いの?」

 

 女子力ってもんじゃないけど。

 

「・・・天道師匠のおかげです。イッセ―君の師匠は料理の達人で・・・。」

 

「えっと、一応確認するが、その師匠でもしかして「天の道を往き、総てを司る」男じゃ。」

 

『まさにその通り!!』

 

 俺と朱乃さんの声が重なる。

 

「カブトかよ!!」

 

 向うの俺が頭を抱えてシャウトしている。

 

「もしかして師匠も仮面ライダーに変身するのか?」

 

 向うの俺から話は聞いている。仮面ライダ―という名のヒ―ロー特撮番組がある事を。

 

 剣崎さんに何があったのか、それがその中の物語そのものだったこともだ。

 

 剣崎さんだけじゃない。良太郎の話もそうだ。

 

 異世界では自分達の活躍がテレビで放送されていたことに「それってどんな羞恥プレイ!?」って悶えていたよ。

 

 まあ・・・渡と巧の場合は少し違っていたが共通している部分は多い。

 

 そして、怪しい奴が一人いる。

 

 それはハルトだ。

 

 あいつは否定はしているが、もしかして・・・。

 

 うん・・・いや、有用な情報だ。しかも、平成ライダーだけじゃなく、昭和に活躍した「昭和ライダー」もいる。

 

 その情報はかなり大きい。この世界での仮面ライダ―と向うの世界の特撮番組の仮面ライダ―との共通点はあまりにも多い。

 

 まだ遭遇していないのは、クウガ、ディケイド、オ―ズとカブト、最新作である鎧武か。

 

 どれも主人公と同じ名前の奴とは知り合いだし。

 

 カブトに関しては念のため、師匠に会った時に確認しておこう。

 

「・・・すごく美味しいわ。」

 

「まっ・・・負けた。」

 

「なんでこの世界のイッセ―って女子力が無駄に高いの?」

 

 あの・・・。だから何で異世界のみんなはそんな敗北感に打ちひしがれているのですか?

 

 そんな大した物は作っていないけど。

 

「ははは・・・私達の師匠になっています。」

 

 最近はゼノヴィアにいかに料理を覚えさせるか悪戦苦闘中。

 

「あっ、イッセ―。こんな感じで。」

 

「おう。ありがとうなデネブ。」

 

 その相棒であるデネブはすごく料理が上手でいい助手になるよ。

 

「・・・イマジンがいる家。」

 

 イマジンって奴も知っているみたいだけど、一緒に暮らしていることに面食らっているな。

 

 実体化させることに成功した良太郎のイマジン達は。

 

「ちょっと待てぇぇぇぇぇ!!」

 

 相棒達の娘と絡んで遊んでおります。

 

 悪影響も心配したけど、良い遊び相手になるんだわ。

 

「ふっ・・・君とは読み合いができるね。」

 

「ぐが~。」

 

「そうそう。僕がお兄ちゃんだからね!!」

 

「うん~下々が戯れる光景もいいものだ。」

 

 何か二人、遊んでいない奴がいると思うけど気にしないでおこう。

 

「なあ・・・一つ相談がある。」

 

 そんな時ヴァ―リが真剣な表情で相談してきた。

 

「俺も・・・バイクが欲しい。」

 

 ヴァ―リはバイクを持っていなかった。

 

「しかもただのバイクじゃない。お前達が得ているような生きた相棒としての奴がほしい。」

 

 ライバルと言うからにはバイクもそれに見合う物が必要だ。

 

「その気持ち分からなくはない。」

 

 異世界のヴァ―リも頷く。

 

 バイクで爆走した俺を見て、うらやましいと思ったのかこいつら?

 

「音速をこえた世界をみたい。」

 

 う~ん。でも俺達のバイクも偶然に出会えたものだから。

 

 鋼兄か巧、ハルト、フィリップ辺りに聞くか。

 

「・・・今日は随分賑やかだね。」

 

「うん。」

 

 そこにあっ父さんと母さんが帰ってきた。

 

・・・・・・・。

 

 しまった。

 

 このあまりにも混沌とした状況をどう説明しよう!?

 

 みんなも固まってしまっている。

 

「邪魔するぜ。」

 

「ここがまどかの家か~。」

 

 そこに聞きなれない声が二人追加だと!?

 

「・・・わ~お。」

 

 うん。父さんの反応が面白い。

 

「そっ・・・そっくりさんがいたので家に招待してみました。今夜はそう言った趣向でパーティを。」

 

 我ながら、苦しすぎる。

 

 苦しすぎる良い訳だ。

 

「・・・・・・。」

 

 うちのアーシアが苦笑している。

 

「そうか。ならこっちも楽しませてもらうよ。ドライグ、アルビオンもまた飲もうじゃないか。」

 

 あれ?信じてくれた。

 

 良かった。うちの親が天然で。

 

「あっ・・ああ。(いくらなんでも苦しすぎるぞ。こっちはフォローできん。)」

 

「また先輩としてご教授を。(翔一殿、あえて流したのですな。)」

 

 何か相棒達が感心した様子で父さんを見ている。

 

「俺達も飲もうぜ?」

 

「たまには悪い大人もいいだろ?」

 

「・・・今度は仮面ライダーアギトかよ。」

 

『!?』

 

 また頭を抱える異世界の俺の発言に皆、いや父さんですら驚いている。

 

「えっ?俺の父さんが?」

 

 それは流石に聞き捨てならないぞ!?」

 

「・・・この世界の父さんも仮面ライダーだというのか?」

 

 しかも、何の因果かアギト。まさかそんなことないよね。

 

『・・・・・・・・・・・・まさか。』

 

 その発言に俺を除いた皆が真剣に何か考え込んでいる。

 

「・・・・・・。」

 

 あれ?父さんが冷や汗を流している。それもすごい量。

 

「もっ、もう、何を言っているのやら。」

 

「あっ・・・母さん。」

 

『!!?』

 

 だが、続いて入ってきた母さんに異世界の皆の眼の色が変わる。

 

「まじですか?何・・・若々しい父さんに、幼な妻な母さんなのか!?」

 

「すごい濃い家庭なんだね。この世界って。」

 

「う~ん。」

 

 それを見た異世界の部長が唸っている。

 

「・・・どこかで見た事があるような・・・。」

 

 どうも母さんを見てなにかを思いだそうとして・・・。

 

「あっ・・・魔法少女まどかマギカ。弓矢を使う魔法少女だ!!」

 

 異世界のアーシアがそれを言い当てる。

 

「えっ?」

 

 それを聞いた母さんが、素で驚いているぞ。

 

「その人にそっくりだ!!」

 

「ああ・・・セラフォルー様が魔法少女好きで、私達その観賞会に巻き込まれたからねえ。劇場版をすべて見たわ。魔法少女達を救うために、魔法少女になるために強力な願いをかなえる力で神になった魔法少女に瓜二つ・・・。」

 

「・・・・・・・・。」

 

 今度は母さんが笑顔のまま何故か冷や汗を流しまくっている。

 

「・・・どうしたまどか?」

 

「なんか魔法少女という単語が・・・。」

 

 そこにもう二人やってくる。

 

 蒼いショートヘアの元気そうな女の子と紅いポニーテールの女の子。

 

 歳は・・・母さんと同じくらい歳しか見えない。

 

「なんでもないよ・・・あはははは・・・はあ。」

 

「また魔法少女のそっくりさん!!」

 

「本当にすごい世界ね。剣を使うさやかと槍をつかう杏子だったりして。」

 

『・・・・・・・。』

 

 魔法少女のそっくりさんと聞いて二人もまた固まっている。

 

「ソウルジェムってやつ、持っていたりして。」

 

『!!』

 

 とりあえず、その話題から逸れた方がいいかな。

 

「母さん?この二人は?」

 

「えっと・・・私の友達なの。」

 

 その際、名前がそのまんま「さやか」と「杏子」だったという事に皆が驚いていた。

 

 内心で、歳は一体いくつなの?という疑問を俺と共にいだきながら。

 

 

 

 SIDE ???

 

 私は本当に心臓に悪い思いをした。

 

 みんなはすでに騒ぎ疲れて眠っている。

 

「はあ・・・もう。だから異世界は怖いの!!もう少しでばれるところだったよ。」

 

「びっくりした。」

 

「うん。」

 

 私達は溜息をついていた。

 

「私達の活躍がスクリーンでねえ。」

 

「しかも、私達の身に起きた事その物だなんて、どんな悪夢なの?」

 

 私達は苦笑しながら話し合っている。

 

「あれがまどかの息子ねえ。学校ではスーパーエロ、変態と言われているのに?」

 

「・・・どうしてああなったのやら。」

 

 翔一君がまた溜息をついている。

 

 さやかちゃんと杏子ちゃんが首をかしげるのも分かるかも。

 

「でも、ここぞという時はまどかの子って感じがする。」

 

「何と言うか・・・すごいお人良しだし。」

 

 杏ちゃんの言うとおり、一誠はとても人が良い。熱血、根性、そして友情という言葉が誰よりも似合う子なのだ。

 

「だからこそ、不安でもあるの。あの子は多くの絆を持ち、それをとても大切にしている、それが仇にならないか。」

 

 私はそれをとても心配している。誰よりも優しい子だからこそ・・・。

 

 あの子は神としての道を歩き出している。私と同じにして、それでいて全く違う道を。

 

 その言葉を聞いた二人がポカンと呆ける、でもすぐに互いに顔を見合わせて苦笑し合う。

 

「・・・そうか。本当にお母さんになったんだな。」

 

「なんか複雑だけど。」

 

「その気持ちわかるわ。」

 

 そこでクレアさんも加わる。

 

「・・・はあ。ヴァ―リに悪い事をしたわね。」

 

 ベノさんもそうだ。

 

「ホムラちゃん・・・やっぱり私を探しているんだ。」

 

 あの二人にはすでに正体がばれている。

 

 その上でベノさんは黙ってくれている。ホムラちゃんが私を探しているという情報と共に。

 

「あいつがこの世界で暗躍か。」

 

「目的がわからないのが怖いぜ。」

 

「・・・彼女なりにまどかの幸せを考えているだけだと思うよ。」

 

 翔一君が断言する。

 

「でも、やり方が間違っているだけなんだ。あの組織のトップにいるなら接触できる機会もある。」

 

「でも、翔一君・・・絶対にホムラちゃんに恨まれているよ?」

 

「あまつさえ子持ちになっているし。」

 

「悪いがその際はフォローできねえ。」

 

「・・・そうだよね。どんなように挨拶したらいいのやら。」

 

 なんだろう。この駆け落ちして、時間がたってから親に改めて会いに行く感じは・・・。

 

 でも、出来れば翔一君にはもう本気を出さないでほしい。

 

 彼はこのまま優しいままで、闘うことなくいて欲しい。

 

「苦労しているのだな。」

 

「はあ・・・まあ飲め。」

 

 アルビオンとドライグが酒を進めてくる。

 

 ちなみにこの家にいる親ドラゴンズ達は人間の姿になっている。

 

 その方が飲みやすいという理由と、子育てで買い物に行く時は流石にドラゴンの姿でいる事が出来ないというのが理由である。

 

 子育てのために人間に化けるようになったのだ。

 

 近い将来、子供達にもそれを覚えさせる予定だ。

 

「・・・相棒の父親も苦労しているのだな。」

 

「ああ。」

 

 二天龍達というべきかな?彼らもすでに私達の事情に気付いている。

 

 いえ、ようやく気付いたというべきか。

 

「うう・・・私の魔法が逆に利用されるなんて不覚だわ。」

 

 原因はクレアが自分達の存在を隠すために使った魔法にある。

 

 それを翔一君に使ったのだが、それを逆に跳ね返されてしまいクレアさん達の感覚を鈍くしていたのだ。

 

 そのため、私達が表にでるまでクレアさん達は正体に気付かなかった。

 

 でもイッセ―にはまだその効果が続いている。

 

 私の力だから特ににはまだ進化が足りない。

 

 そう言う裏事情があったりする。

 

 ヴァ―リに関してもベノが同じ失敗をやらかしてしまった。

 

「迂闊だったわ。相手は神だと最初から気づいていれば。」

 

「まあまあ。でも・・・おかげで私達もそれを前提として動ける。」

 

「・・・すまない。うちの息子の事を頼む。」

 

「ああ。任せろ。」

 

「こっちの娘達とヴァ―リが世話になっている恩人を無碍に出来ぬ。律義なのが我らドラゴンの流儀よ。それに翔一殿が本気出したら・・・。」

 

 そして、彼らは気付いている。

 

「生前の神と互角かそれ以上。その力は確実にあるな。」

 

 翔一君の本当の実力に。

 

「アギトの行きつく先って言うべきかな。」

 

「こちらとしては光栄だぞ?神にささげる酒というのもある。」

 

 そこにヤマタが加わる。

 

「俺はすげえ連中とつるんででいるってわけかい。」

 

 アザゼルさんもそこにいる。

 

 彼のアドバイスは大変助かっている。

 

「はあ・・・。こっちの世界はすごいもんだねえ。安心しな。このことは腹に収めておいてやる。まあ、万が一の時に援軍頼むかもしれねえ。そんときは頼むわ。」

 

 異世界のアザゼルさんから平行世界で何があったのか情報として聞くことができた。

 

 非常に不味い事があることが分かる。

 

 ある意味この世界はそれに何かが加わってさらに事態が悪化する傾向にある。

 

 その悪化が、平行世界で起きる奇跡を潰す危険性すらあった。

 

「下手したら私・・・動かないといけないかもしれない。」

 

 私・・・兵藤まどかはその時が近い事を察している。

 

「その時は俺が動く。まどかは今は大切な時だ。無理はさせたくない。」

 

 でも翔一君はそれを遮って言う。

 

「おいおい。だったら、俺が自ら動くって。妊婦に戦わせる様なことは流石にしないぜ。ケルト神話のマッハみたいになっちまう。」

 

 アザゼルがそう言った時だった。

 

「そうか。ならこっちも手を貸そうか。」

 

「策略などにはちょっと自信がある。」

 

 そこにハルト君とポルム君がやってくる。

 

 それとポルム君。君の策略はちょっとした自信で収まらないでしょ?

 

「まったく、呆れて何も言えないぞ?この家の事情には。」

 

 ハルト君・・・どうやら自ら至ったわけか。

 

「私も忘れないで。やっとこの魔境の根源を見つけたわよ。」

 

「そういうこと。」

 

 あらら、リアスちゃんに渡君まで。

 

 次々とやってくるわね。

 

「同然だ。全体のレベルが上がってんだ。気付かない方がおかしい。」

 

 まあ、ネロ君は当然か。

 

「ここからが勝負。皆には私の事情を話しておくよ。」

 

 私は皆に協力を仰ぐ。

 

 これから何が起こるのか分からない。

 

 出来る手はすべて打っておきたい。

 

 

 

SIDE イッセ―

 

 皆の帰還の日がやってきた。

 

「この世界の俺・・・がんばれよ。なんか俺、一学期ごとに死んでいるから。」

 

「・・・肝に銘じておく。」

 

 異世界の俺・・・相当、苦労を重ねているぜ。

 

「何かあったら言えよ。次元の壁くらいぶち抜いて助けに来てやるぜ!!」

 

「おう。それはこっちも同じだぜ!!」

 

 互いに拳をぶつけ合い、友情を交わす。

 

 他の皆も似たような様子。

 

『じゃあ、またな!!』

 

 そして皆が帰っていく。

 

 異世界の俺と合うなんて大変レアな経験をしましたな。

 

「・・・はあ。よし、皆気持ちを切り替えるぞ!!」

 

 アザゼル先生が皆を叱咤する。

 

「皆、異世界の話を聞いて夏休み以降もとんでもないことが起こることは分かったはずだ!!」

 

 まったくだ。

 

 この後もとんでもないことに俺達は巻き込まれるってわけだ!!

 

「その困難を蹴散らすために皆・・・強くなるぞ。」

 

『おう!!』

 

 皆は決意していた。

 

 これまでの事件と、あいつらが経験した事件を比べてもやってくる困難はさらに凶悪化している。

 

 それを俺達は蹴散らす位に強くならないといけない!!

 

 少なくとも俺は・・・死にたくない!!

 

 死んでたまるか!!

 

 

 

SIDE アザゼル

 

さて・・・。いよいよあいつらに魔改造開始か。

 

「やっとできたよ。」

 

 ポルムが首を鳴らしながらやってくる。

 

 手にしていたのは鉄拵えの黒い鞘に収まった一本の刀。

 

「しかし、この世界でこれを見ることになるなんてねえ。オリハルコンで作るって言う点もまた・・・。」

 

 その刀を抜き、俺は出来気を確認する。

 

 それは峰と刃が逆になった刀――逆刃刀。

 

「良太郎にあの魂が入っている結果だ。あいつがまさかなあ。」

 

 良太郎には恐ろしい素質がもう一つある。

 

「すでにあのメモリはインストールしている。悪魔の身体だからあの剣にも十分耐えられるのは面白い。」

 

 これが完成すればイッセ―、木場に続く三枚目のグレモリ―眷属の切り札が生まれる。

 

 いや、俺だって完成した良太郎とまともに戦いたくないレベルだぞ?

 

「あの魂がこの世界、しかも良太郎に宿っていたとは。ふふふ・・・ついでだからゼノヴィアにはあれだね。そのために沖田さんにお願いしているのだから。」

 

「・・・お前の異世界での経験が役に立つな。片手平突きをゼノヴィアに覚えさせようだなんて。他にも幻魔剣って正気なのかい?」

 

 フィリップも呆れるか。まあ・・・あの二つを覚えさせるだけでも大分違う。

 

 剣士組の新たな育成計画。グレモリ―眷属。俺だけでは手に余るメンツばかりだったが、ポルムの奴がいてくれて助かったぜ。

 

 木場の奴は基礎固めも兼ねている。巧も一緒だ。あの幻魔剣という謎の剣技。

 

 適性があるのは一体誰なのやら。

 

 呪いのある武器が良いらしく、巧と木場辺りに適性があるとみている。

 

「リアスはどうする?あれはもう・・・あのまま突き進んでもらったら?」

 

「それに関しては同感。むしろ接近戦と、異世界のリアスが使っていたあれを習得してもらおうかと考えている。ふふふふ・・・あれを接近戦用にできたらさぞ恐ろしいね。命中したらまさに神すら殺すから。」

 

 フィリップ。お前はまた恐ろしい事を考えやがって。

 

「小猫ちゃんと組み手やって、互いに成長してほしいもんだ。小猫ちゃんはもうすぐ鬼として完成する。それに合わせて波動拳も覚えさせる。あとリアスには王としての渡からの指導もある。」

 

「ギャスパーもある意味リアス達と同行か?あいつに眠っている異質の力の正体は判明している。その目覚めのためには・・・。」

 

「それに関しては僕ががんばってみるよ。ふふふ伝説の魔王と話せるなんて光栄の極みだよ。」

 

 フィリップがギャスパーのあの力を引き出すために色々とやりそうだ。しかしあいつの中にあれがいるとはねえ。

 

 アギトの力で大方、失ったはずの神性を得たと予想できる。そうなるとあの力も変質していると考えるべきか。

 

 定期的に四人のアギトの血を摂取しているみたいだし。

 

「朱乃達は・・・もう考えねえ。俺はベヨネッタには関わりたくねえ。絶対に!!」

 

 魔女ベヨネッタのウィッチアーツなどの各技を習得するのか・・・。

 

 さっきのト―チャ―アタックも生き生きしていたし、その素質に疑う余地無し。

 

「ついでにハルトがエレメントチェンジを覚えさせようとしているぜ。基本が雷だし。」

 

 朱乃の魔改造はあっちに丸投げしてくれる。

 

 ただ、気になる事もある。俺が朱乃の奴にあの雷光の力と向き合う事を進めたのだが、朱乃の奴は反発することもなく素直に頷いたのだ。

 

 どうしてだ?少なくてもコカビエルのことで確執があるはず。異世界の俺もこの時期の朱乃がそうだったと言っていた。

 

 どうやら何か起きているみたいだが・・・。

 

「・・・その点はユウナに任せればいいだろう。まだこちらが知るべきときじゃないかもしれない。」

 

 良いアドバイザーがいてくれるとこっちも助かるぜ。人生経験だけで言えば俺と同じかそれ以上だもんな。

 

「そして、サイガには二刀流になったという事で、出身世界で二刀流の最強剣を覚えさせようかと。あれを使えば二刀流の意味がある。詳しい話は聞いているけど、習得できるかどうかがカギだね。後・・・あれを覚えさせようと思う。ギガデインすら超える最強のデイン系呪文。まあ・・・勇者としての素質があるのなら出来ると思うけど。」

 

「そして二天龍共。あいつらをさらに強くするぞ。あのフォーム、俺が見たところ新たな進化の基本フォームでしかないはずだ。あそこからの派生を探る。まずはあれを通常の変身と同じように使えるように鍛えるのが目的だ。」

 

 あの二人は新しいステージにいる。その基礎固めのためのメニューは出来たぞ。

 

「立花さん。本当に感謝します!!」

 

「ふっ・・・なあに。久々に鍛えがいのある若造がきたんだ。」

 

 そこには冥界最高峰のトレーナー、立花さんがいる。

 

「しかし、本当にすごい連中だ。こっちも加減はしねえぞ。なあ本郷、一文字?」

 

「俺達の総てを叩きこんでくれる。」

 

「しっかりとな。」

 

 先輩ライダーの代表格二人が直々に鍛えるか。しかも技と力。

 

 そうか・・・立花さん、それぞれ誰をどのように鍛えるのかよく分かった。

 

「タンニーンも頼むぜ?ヤマタや他の方々も借りてくる予定だし。」

 

「ふははははははは!!お前達には世話になっている。こんなの当然だ。」

 

 龍王クラス二名もそこに追加。みっちりやってもおうじゃねえか。

 

「さあ、切り札を育成するぜ。この先の困難をすべて蹴散らせるほどにな!!」

 

「ああ。」

 

「楽しみだよ。非常にね。」

 

「容赦なくいくぞ。久々に血が滾る。」

 

 さあ、この世界を狙う連中よ覚悟しろ!!

 

 俺とポルムのラスボスコンビが他の色々な意味で愉快すぎる連中とチームを組んであいつらの魔改造をやってくれる!!

 

 

 

 

 

 

SIDE アーシア

 

 あの宇宙船から声が聞こえ私は行く。

 

 そして・・・。

 

 卵みたいな物を見つけましいた。

 

「なんでしょ?」

 

 私はそれに触れます。

 

 すると・・・そこから変な生き物が生まれました。

 

 透明な金魚鉢にも似た殻の中に三つの紅い球体。そして下の方に鋭い四つの牙。

 

「アーシア様!?」

 

 それを見たゼ―ベス星人のミカさんが駈けつけてくる。

 

 私をさらった四人ですが、なんの因果か、私に仕えたいと言ってきたのです。

 

 それぞれミカ、ガブ、ラファ、ウリという名前を名づけました。

 

 数字だけの名前じゃ何か寂しいです。

 

 そして名を与えると四人とも膝をついて「一生忠誠を誓います」って言われました。

 

「気をつけてください、そこには偶然残っていた最期のメトロイドの卵・・・って孵っているだと!?危ない!!急いで下がって・・・。」

 

 そして、私の周りで嬉しそうに飛び回っているこの子を見て驚く。

 

「まさか・・・懐いているのですか?あのサムスと同じように?」

 

「この子、危険な力を持っているのですね。」

 

 私はメトロイドと呼ばれた生命体に触れて、その力の概要を理解します。

 

「ポルムさんは知っていますか?」

 

「・・・はあ。君には驚かされるよ。」

 

 ポルムさんが出てきます。彼はこの船を調べ回っていたところだったみたいです。

 

「あっ・・・あなたは・・・。」

 

 それを見たミカさんは驚き、震えていた。

 

「君達の判断は正しい。ここはお前がいた場所よりも遥かに待遇がいいぞ?それと余の力は秘密にしてもらえれば助かる。まだ札は伏せておきたい。」

 

「・・・わかりました。あなたほどの方がいるのなら安泰ですね。」

 

 ミカさんはポルムさんの本当の実力を知っている。それ故に納得していた。

 

「メトロイド。鳥人族の生きた遺産と言える人工生命体。そう・・・この子と同じくね。」

 

 ポルムさんの傍から緑色の巨大な殻を持った子が現れます。

 

「ベビーよ、もうすぐ脱皮の時か。本当ならその姿であいつに会わせたかったが仕方ない。もう充分に成熟し始めた。知能も、何もかも・・・。」

 

 そう言ってそのメトロイドが脱皮します。

 

 上が緑の鱗のような物に覆われ、小さな角がでます。顔立ちは少しドラゴンに似ています。下が透明な殻で覆われています。

 

 それを見たミカさんが驚愕しています。

 

「そんな・・・馬鹿な。メトロイドはあの惑星の放射線が無ければ脱皮しないはず・・・。」

 

「・・・覚えておくといい。女王になる個体はそれが通用しない。そして、女王となる個体はそこにもいる。」

 

「・・・クイーンだと?メトロイドにそんな例外が。」

 

 ミカさんは驚きながらも興味深そうに頷いている。

 

「知らなくても無理はない。そんな個体は極めて稀だ。こっちもベビー以外に遭遇したのは初めてだし。」

 

 この子達が女王となる。それがどういう意味か、私はまだ知りません。でも・・・。

 

「この子、私の事をママだと思っています。」

 

 私の感情を受け取って喜ぶこの子。

 

「そうか。なら、君が育てるがいい。安心して、こっちが教えてあげるから。」

 

 私はこうして新しい子を使い魔とすることになりました。

 

 契約として・・・キスをするとこの子の体にアギトの紋章が浮かび上がる。

 

 せっかくなのでその巨大となるあの子にもキスをすると同じ紋章が浮かび上がる。

 

 その光景にポルムさんが目を点にしています。

 

 相当驚いているみたいです。

 

「・・・アギトの祝福と因子をもつことになるメトロイドは初めてのケースだ。これは通常と少し違った進化をしそうだ。面白い。だが、いつかアーシア王国が生まれそうで怖いな。君は一体どれだけの連中を率いるの?君はモンスターテイマ―の素質がある。」

 

 ポルムさんは苦笑していましたが。

 

 さて、新しい子をどうやって紹介しようかな?

 

一応、女王だけあって女の子ですよね?名前も考えないと。

 

 

 

SIDE ???

 

 復讐の時は近い。

 

「君を生き返らせた甲斐はあるってものだよ。君のおかげで大軍団が組織できた。」

 

 この世界は私達の世界では測れない常識外の力がある。

 

 そのおかげで復活することができた。

 

 私が率いたスペースパイレーツはたった一人、いや二人に壊滅させられた。

 

 一人は銀河の英雄・・・サムス・アラン。かつて銀河で栄華を誇った鳥人族の全てを受け継いだ戦士。

 

 私が嫉妬した奴。

 

 そしてもう一人。

 

 あれは、生命体と見ていいのか分からない。

 

 だが、この世界で私は再び蘇った。

 

「君にも存分に働いてもらうよ?」

 

 水槽の中で私はまだ眠り続ける。眠りながら軍備を進める。

 

 プログラムに人工的に忠誠心が植え付けられたが、その程度なら別にいい。

 

「リドリー君。君もまたがんばってもらうからそのつもりで。」

 

 私の片腕、リドリーもまたさらなるメタル化を果たして復活。

 

「だったらその軍は俺に預けてもらおうか。ちょうどいい。」

 

 海賊つながりだろうか。面白い男と意気投合してしまった。

 

 その名は牙王。彼にスペースパイレーツの全権を任せてある。

 

「将は幾らいても足りないことはない。なあ、お前達。あれだけ荒々しい欲望が多い連中があれば喰らい甲斐があるってもんだ!!」

 

 牙王の傍には銀色の鬼と金色の鬼がいる。

 

「ったく、やっと実戦にでれるぜ。」

 

「さてさて・・・。今日はどんなように楽しもうかな?」

 

 フェニックスとグレムリンもいる。

 

 欲望が加速する。

 

「そのためには・・・あれの捜索もしておきたい。北崎に命令をしろ。冥界にあるはずのあれを探し出せと。こっちからヤミ―を貸し出す。」

 

「ずいぶんと盛り上がっているわね。」

 

 そこに黒髪の少女・・・この組織の表向きのボスが姿を現す。

 

「私は彼女を探すためにここにいる。それだけよ?まあ、騒ぎは利用させてもらうわ。」

 

「そうか。それでおまえの所で捕獲したオ―フィスの事だが。」

 

 オ―フィス。

 

 この世界で無限を体現した龍神と呼ばれる存在。

 

「その無限の力をこっちに提供してくれないかい?」

 

 その力をこっちの物にしたら、より戦力が増強・・・。

 

「・・・ふざけているの?」

 

 だが、それは敵わない。

 

 彼女自身が周りの時を停めてしまったから。

 

「彼女に何かあってみなさい。その時・・・例え神が相手でも関係ないわ。」

 

「おう・・・怖い・・・!?」

 

 いつの間にか無数の爆弾が召喚されてもいる。

 

「・・・分かったよ。流石に君と敵対するのはこっちも骨が折れる。そっちは蛇だけで十分としておく。」

 

 オ―フィスが提供してくれた蛇のみの解析。

 

 それだけでもかなり大きいことは大きい。その量産化もめどがついている。

 

 それにアンデットの細胞。

 

 欲望をエネルギーとするセルメダル

 

 これだけそろえば・・・。

 

「・・・さあ。旧魔王派達の襲撃の時は近い。その時、冥界の全てを喰らってくれる。」

 

 だが、私は明かしていないがたった一つだけ不安要素があった。

 

 惑星ゼ―ベス。

 

 その崩壊にまぎれて私はその星から脱出しようとしていた。

 

 あの身体すら私のスペアでしかない。

 

 倒された瞬間にもう一つの身体に転送し、逃げて再び雌伏の時を経てスペースパイレーツを復活させようとした。

 

 だが、その時にあいつがいた。

 

 怒りに燃えるもう一人の存在が。

 

 それは私が殺したはずのベビーメトロイドを伴っていた。

 

 そして・・・。

 

「・・・変身。」

 

 その姿がさらに変わったのだ。

 

 黒い殻と紅い二つの複眼。額には第三の単眼。そこに銀色のアンテナの様な触覚とバッタのような牙、そして爪を持つ怪物。

 

 胸には龍の頭を模し、三つの緑の宝石が縦に並んだ装甲。腰には赤、蒼、緑の三つの石が三角形に並ぶように入ったベルト。

 

 両手足を初めとして、全身のあちこちを鎖で拘束されている。

 

 そして、首に紅い色をしたマントのような長いマフラーをしている。

 

「お前の逃亡を見抜けぬ余と思ったか?」

 

 それは正体不明(アンノウン)と言うほかない正体不明の怪物。

 

「逃がさぬ。あいつを泣かせたお前だけは・・・決して。」

 

 その右腕の凄まじい炎、そして左腕に絶対零度の冷気が発生。

 

 その炎は凄まじく巨大な炎の鳥となる。

 

 冷気は凄まじく巨大な氷の龍となる。

 

 宇宙空間でだ。

 

 それが融合していく。

 

「受けてみろ・・・メラガイアとマヒャドデスの融合魔法。」

 

 発生したのは・・・すべてを消滅させるエネルギー。

 

「極大消滅呪文(メドローア)のさらに上位を行く呪文。」

 

―――真・極・大・呪・文(ジ・ュ・メ・ド・ロ・―・ア)!!

 

 それが鳥の翼を持つ巨大な白い光の翼龍となって私に襲いかかる。

 

 無数の攻撃も、総ての飲み込みながら。

 

 私は近くの衛星の傍に逃げた。

 

 大きさはこの世界で言う地球程の大きさ。

 

 それも不意を突いたワープでだ。しかも、隣の銀河にまで瞬時に逃げたのだ。

 

 そこならあの攻撃も届かない。はずだったが。

 

―――――その程度で余から逃げられると思ったか。

 

 といった瞬間、私はその衛星ごと消滅していた。

 

 最後に目に留まったのはこっちに迫る光の龍だった。

 

 一体あいつは何者なのだろうか?

 

 あの後のデータが全くない。元の世界に誰かを送って情報を収集しないと。

 

 特にあのポルムというやつのデータを至急集めないと・・・私が編成した軍団を単独で全滅しかねない。

 

 私はマザーブレイン。

 

 この世界で闇の神により復活した生体コンピューター。

 

 この世界で私達スペースパイレーツは新たな形で復活する。

 

 

 SIDE ???

 

 私はずっと眠っている。

 

 まだ見ぬ私の主を求めている。ギアの持ち主である彼は私を使わない。いえ、使う資格がないのだ。

 

 そのため私の本当の主はまだいない。私を乗りこなしてくださる素晴らしい主が・・・。

 

 ああ・・・誰か。私を目覚めさせてほしい。

 

 原初の魔王の愛馬である私を。

 

 

 

 SIDE ???

 

 欲望。それは人が誰しも持っている物だ。

 

「エイジさん?」

 

 その欲に導かれるように私達はやってきた。

 

「はあ・・・。アンク。ここでいいのか?」

 

「ああ。ここにあいつがいる。」

 

 私の傍で人間の姿で実体化したアンクがふてくされた様子を見せる。

 

「死んだはずのロストがいるか。消えたメダルと共に。」

 

「苦労してメダルを復活させたのに?」

 

 私の隣でルフェイちゃんがかわいらしく首をかしげる。

 

「・・・すまない。ヒナちゃん。結局巻き込んでしまった。」

 

「いいよ。それにこの子と一体化しちゃったらそうもいっていられないし。」

 

――――まだつかないの?

 

 私の身体の中から現れるのはグリードの一体。ガメル。

 

 元々、幼い印象のある彼は小さなサイの姿で甘えるように私の肩に現れる。

 

――――落ちつきなさいガメル。ふふふ・・・愛という欲望が満たされていく。本当に満足よ。

 

 ルフェイちゃんの中から出てきたのはシャチの姿をしたグリード・・・メズ―ルだ。

 

「ふん。この世界の神も間抜けな物だ。俺達グリードを復活させたのはいいが、バラバラに復活させたあげくにこっちに二人、いや・・・三人も率いる事ができた。」

 

「ふふふふふ・・・強い剣士がいるみたいですね。」

 

 アーサーさんが笑う。その身体の中からは・・・。

 

――――拙者としても、魂が滾る思い。暴れてくれようぞ。

 

 銀色の蠍の姿で現れるその名前は・・・ノブナガ。

 

「君とこんな形で再会するなんて思いもしなかったよ。」

 

 エイジ君は苦笑しています。あんな悲しい別れをした彼とこんな形で再会すればそうですね。

 

「あなた達には感謝しています。私も、そして妹もオルフェノク故の短命から逃れられなかった。私はまだいい。戦いの中で死ねるのなら関係ありません、でも・・・ルフェイは違います。あの子はまだこれからだというのに・・・もう寿命が来ていましたから。誰よりも魔術師としての才能があるというのにね。」

 

 アーサー君の姿が灰色の魔人・・・ライオンオルフェノクへと変わります。

 

 それと共にルフェイちゃんもまた変わります。まるで妖精女王のような姿を持ち、アゲハ蝶の特性を持つオルフェノク、バタフライオルフェノクへと。

 

「そんな時・・・あなた達が来た。そして、私達は命を長らえることができた。グリードと融合することで。」

 

 この二人の兄妹はオルフェノクとしての寿命をグリードとの共存で補う事が出来た。

 

 しかも二人ともオリジナルで揃って強力な力を持っている。

 

「感謝してもしきれない。本当に・・・。」

 

――――共存というやつだ。人間から欲望を得ているおかげで俺達も常時欲が満たされ、生きることができる。

 

――――そういうこと。あなた達といると飽きないもあるけどね。

 

――――お腹すいた~。

 

『ガク。』

 

 相変わらずこの子はマイペースだ。ちなみにガメルは私と融合している。

 

 なんの因果か・・・泣けてきます。

 

 何でこうパワー系なの・・・。

 

 私の手には変わった錠前みたいな実もあります。クルミみたいなものですけど?

 

 その実は私を選んでここまで来たみたいです。どうやってつかうのでしょうか?

 

「五大ギアが冥界に揃おうとしている。私も急がないといけませんね。」

 

 アーサー君の腰には五大ギアの一つ・・・カイザが現れる。

 

「あとハルトからルフェイ専用のドライバーを受け取らないとね。」

 

 ルフェイちゃんはもう一つ・・・指輪の魔法使いとしての素質ももっている。ゲートとしてすでに中にファントムも存在しているのだ。

 

「はやくヴァ―リに合流しましょう。すごく楽しみですし。」

 

「はい!!」

 

「はあ・・・まさか死ぬ形以外で冥界に行くことになるとは。」

 

「はっ、面白いじゃねえか。冥界というやつを一度見てみたかった。」

 

 アンクの言葉に苦笑しているエイジ君。

 

「それよりも注意しろよ?お前の中に再び宿った恐竜メダル。あれはヤバいぞ?」

 

「分かっている。しかも今回は共存という形になっているけど・・・油断はしないさ。」

 

 エイジ君は再び暴走の危険を抱えています。

 

「未来から来たスーパータトバメダルがどれだけ役に立つのかだな。あれもお前とりこんでいるだろ?」

 

 その上に未知のメダルも入っています。

 

 アンクのメダルと共に。

 

 アンクとエイジ君は今は身体を共有している状態。まあ・・・それでも前と変わらないので全く問題はないです。

 

 腕だけ出してサポートしてくれますし。

 

 今のように私の兄を模した人間の姿だけでなく節約モードとして小さな鳥の姿になることもあります・

 

 その小さい鳥みたいな姿でいつもエイジ君の肩の上に止まっているあたり、あそこがアンクのお気に入りの場所になっています。

 

 あの二人はやっぱり良いコンビです。

 

「さて・・・いよいよ人外になったお前と共に冥界に乗り込もうか!!」

 

「ちょっと!!誰が人外ですか!!」

 

「ぐああああああぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・。」

 

 私は思わずアンクをはたいてしまう。

 

 悲鳴を上げながらアンクが星に・・・。

 

「今日も良く飛ぶねえ。」

 

「ええ。」

 

「距離はえっと・・・すごいまた新記録です!!」

 

「・・・はあ。」

 

 私・・・ヒナもまた人外になってしまいました。ガメルに懐かれ、そのメダルをとりこんでしまったおかげで。

 

 そのおかげでコンプレックスだった怪力がもうすごい事になっています。並のヤミ―なら片手で粉々に出来るほど。

 

 ふっ飛ばされ慣れたアンクがすぐに戻ってきます。

 

「あっ・・・相変わらずの馬鹿力。お前の拳は常に必殺か?」

 

 このまま私・・・変身することが無いことを祈ります。

 

「そう言えば・・・イッセ―君は元気しているかな?これが終わったら駒王町に行こうか?」

 

「お前が言う・・・もう一人の真のオ―ズに足りえる男か?面白い。会ってみたい物だ。」

 

「まあ、すごくスケベという意味ではね。でも欲望という意味では破格だと思う。」

 

 イッセ―君という人は私も知らない人です。

 

「まあ、弟分みたいな子だ。会えるのが楽しみだよ。」

 

 でも、私は何となく予感しています。

 

 何か冥界で会えそうな気がすると。

 

 そうなると・・・すごく厄介なことになるかも。

 

 




 五章でついに彼らが参戦です。

 予告の通り、六章でのあれは原作を遥かに超える大騒ぎになります。

 冥界の危機第一弾となる予定です。


 さて・・・今後の魔改造のために私はこの夏のある映画を見てきました。

 そしてもう一つもまた見に行きます。

 この五章で初登場キャラが色々と凄いことになりますのでWW

 ではまた会いましょう!!


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第五章 冥界合宿のヘルキャット
いよいよ夏休み開始です!!


お待たせしました、五章はじまりです。たった二話しか書けませんでしたが投稿したいと思います。

 まずは・・・リクエストがあったエピソードも入った話です。




SIDE 一誠

 

 一学期の最期のHRが終わる。

 

「あぁぁぁぁぁ・・・終わった終わった!!」

 

 俺は長い一学期が終わったことをまだ実感していなかった。

 

 そりゃ、今まで生きた中で最高に濃い一学期を過ごしたからだ。

 

 元々普通じゃないのは分かっていた。でも、己を鍛えながらそれなりに平穏に暮らしていたのだ。

 

 それが春、突然俺は死んだ。

 

 そこから部長と出会い、復活し、アギトとして覚醒。

 

 そこからはもう、修羅場と摩訶不思議なアドベンチャーの連続だった。

 

 幼馴染達と次々と再会。

 

 普通なら死なないといけないはずの冥界にも行きました。

 

 何故か列車に飛び込んで時すらも超えました。

 

 魔王を初めとする化け物達とたくさん遭遇しました。

 

 戦って、何とか生き残ってきました。

 

・・・・・・・・。

 

 時を超えた時点でもう濃さがわかってくれるよな!?全人類で時間を超えた奴なんているのか?

 

 あっ、ネロや良太郎、ゼノヴィアを忘れていた。

 

 ダンテ様も超えたらしいし。

 

・・・意外と俺の周りで時間を超えた連中が多いな!!

 

「・・・お前、この一学期のことを思い返しているだろ?」

 

 ネロが呆けている俺に話しかけてくる。

 

 何で分かる?

 

「・・・お前という人間がどれだけ分かりやすいか、他の皆にも聞いてみろ。」

 

 しかも、戸惑う俺に投げやりな言葉をかけてくるし!!

 

 他の皆も苦笑していやがるし。

 

「そこがいい所なんだがな。お前は一生そのままでいてくれ。その方が面白い。」

 

 鋼兄は一応フォローしてくれている。

 

「こっちとしては、それもまた興味深い。」

 

 ヴァ―リが不敵な笑みを浮かべている。

 

「なあ、イッセ―。」

 

 松田が俺の方を見ていう。

 

「お前の知り合い、すごい勢いでこのクラスにやってきていやがるな。」

 

 俺の知り合いか・・・確かにそうだ。

 

 元々このクラスは同じ学年でもなぜか少なかった。

 

 学校の先生曰く「なんか少ない方がいい気がした。」と言っていたらしい。

 

 そして、その予感は的中する。

 

 何しろ、俺の関係者が全員このクラスにやってきやがったしな!!

 

「もう俺達の中で『転校生=イッセ―の関係者』という図式が成り立っているぜ。」

 

 元浜の言葉に話を聞いていた他の連中までうんうんと頷いていやがる。

 

 おかげでこのクラス。転校生の歓迎がすっかり慣れた。

 

 

 

 巧とユウナ、良太郎とゼノヴィアの転校の際なんて・・・。

 

「・・・乾巧。まあ、よろしく。」

 

 巧はぶっきらぼうに自己紹介。

 

「木場ユウナです。みんな仲良くしてね!」

 

 ユウナは礼儀正しく、はきはきと。

 

「ゼノヴィアだ。以上。」

 

 ゼノヴィアは・・・ざっくりだ。

 

「姉さん・・・ざっくりしすぎ。えっと良太郎です。みんなよろし・・・。」

 

 その際、良太郎のセリフを途中で遮ったクラスの反応が・・・。

 

『イケメン(美少女)キタァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!』

 

 もうクラス中のテンションはアゲアゲである。

 

 なんか弦太郎を思い出したのは俺だけか?

 

 いや、ネロや渡、アーシアと視線を合わせるが同じことを思ったみたいだな。

 

 アギトの直感舐めるなよ!!

 

弦太郎のキャラが濃すぎた故に頭に残っているだけかも知れんが。

 

『・・・・・・。』

 

 遠慮も無い反応に驚く転校生の四人。

 

「はいはい。皆落ち着きなさい。」

 

 すっかりこのクラスの担任となったキリエさんが皆をなだめる。

 

 でも、テンションが上がり過ぎたのかみんなは騒がしいまま。

 

「あの・・・。」

 

「やれやれ・・・ふん!!」

 

『ビクッ!?』

 

 凄まじい音で手が鳴る。まるで巨大な風船が破裂したかのような、爆音でだ。

 

 それをやったのはネロの仕業だ。パワーで手を叩いたのだろう。

 

「・・・・・・静かにしてやれ。」

 

 その一言で皆が静かになる。

 

「ネロ・・・。」

 

「いいから話を続けな。」

 

 ちなみにそんなことは一度や二度じゃない。

 

 副担任のキリエさんのフォローをしていたのだ。その結果。

 

「さすが委員長。」

 

 今やクラスの委員長だ。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんでだ?」

 

 ひねくれ者のネロが委員長をやることになるなんて誰が思ったか。

 

 本人も深く嘆き、今でも色々と納得できず悩んでいるが、俺は絶対に同情しない。

 

 あいつの愛しのキリエさんをフォローしようとしてそうなったんだからな!!

 

 好きなだけいちゃいちゃしやがれ!!その関係であいつら学校でよく二人きりになっていやがるし。

 

 ある意味役得なんだよ!!

 

「まあまあ。なんだかんだいって皆ついてきている。」

 

 サポート役の副委員長は渡だ。色々とフォローがうまい事に定評がある。

 

 まあ、ネロはぶっきらぼうだけどそのキャラに慣れればみんな分かってくれる。

 

 いい意味でこのクラスをまとめているのだ。

 

 ちなみにネロは知らないが、あいつが委員長になった背景には・・・ダンテ様の意向があったのだ。

 

 一応人を率いる立場となる。そのための経験を積ませたいと。

 

 建前はそう言っていた。そして、それも大きな理由だと思う。

 

 でも、本音ではただ面白そうだからだと思う。

 

―――アーハハハハッ!!だっ・・・だがあいつが委員長って考えてみるだけでも可笑しすぎて・・・はっ、腹が・・・・。

 

―――――ネロ。お前は本当に変わったな。あのはみ出し者が・・・委員長だなんて。

 

 実は何気なく定期的にネロや巧の様子を俺がダンテ様に通信で報告している。

 

そこで大笑いしているダンテ様と目に涙を浮かべしみじみとしているクレドさんを見ればなあ。

 

「説明省くためにいうが「また」イッセ―の関係者だからな。今回の幼馴染枠は巧とユウナだ。」

 

 そして、ネロがざっくりと言ってくれる。

 

 それと共に・・・。

 

――――またお前の関係者が。

 

 とクラス中の視線が・・・。

 

「お前ら・・・何も言うな。」

 

 ネロの奴。余計なことをいいやがって。

 

「言っておくが、ある方から聞いた情報だ。それが正しければこれまだ増えるらしいぞ?イッセ―関係者の転校生。」

 

『!!!?』

 

「しかも男、女問わず綺麗何処ばかり。みんな・・・イッセ―に感謝でもしておけ。」

 

『ハハハァァァァァ!!イッセ―様!!』

 

 今度は俺に向かって一斉に拝んできた!?

 

 というか、ネロの言うある方って・・・。

 

「・・・・・・エヘ。」

 

 やっぱりお前か。アーシアァァァァァァァァァァァァ!!

 

 て言うか、この先さらに俺関係の転校生が来るってどういうことだ!?

 

―――――仕方ないですよ。予知で見ちゃいましたから。変更も可能ですけど、素敵な予知でしたので私・・・そのままにしておきますね。

 

 律義にアーシアがテレパシーで返答してきやがった。

 

 しかも予知の変更可能って・・・さらっとすごい事を言っていませんか?

 

 まだ来るのか?そう思うと少し憂鬱だぞ。

 

 

 

 まあ、簡単な紹介の後・・・。

 

「そろそろいいか?皆もウズウズしている。」

 

 ネロが壇上にあがる。キリエさんも苦笑しながら頷いている。

 

「さあ、お前ら・・・待たせたな。」

 

 そして、ネロは告げる。

 

「待ちに待った!!転校生への質問タイムだ!!」

 

『うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』

 

 ネロの言葉に皆が歓喜の雄叫びをあげる。

 

 その雄叫びに学校が揺れる位に。

 

 そして、皆が一斉に質問してきたのは一つだった。

 

『彼氏(彼女)はいますか!?』

 

 という質問。それを聞いた瞬間・・・俺はヤバいと思ったね。

 

 だって。

 

「はい~私、将来イッセ―と結婚する予定です。」

 

 と満面の笑みで応えるユウナがいますので。

 

『・・・・・・・。』

 

「兄の佑斗からも何とか許可を得て(強制)きましたので。父様も母様も祝福してくれて。子供は三人くらいは・・・。」

 

 そして、男子共の殺意が俺に集中する。

 

「なあ・・・イッセ―。お前、最近調子のり過ぎじゃねえか?」

 

 元浜が俺の肩に手を置く。

 

「話をさせてもらえないか?どうやったらあれだけの美少女にべたぼれに?アーシアちゃんといい、お前・・・・お前・・・。」

 

 松田までやってきた。

 

 二人とも・・・すげえ嫉妬オーラを・・・。

 

「にゃはははは。面白いにゃ!!」

 

「これまで入ってきた転校生の綺麗何処は・・・皆彼氏持ちだったしなあ。」

 

「それって誰の事にゃ?」

 

 第一号は黒歌。お前だ!!

 

「黒歌が入ってきた時、俺達は沸いたさ。だがな・・・そいつに夫がいるという事を知った時の衝撃がお前にわかるか!?しかもその夫は、めちゃくちゃ強いし。」

 

 黒歌が結婚している。そのニュースは学校中でえらい騒ぎになったな。

 

「キリエさんという美人教師が入ってきたら・・・今度はすでにネロとの禁断の関係。」

 

「・・・だれが禁断の関係だ?」

 

 余計な事を言った元浜に対してネロが優しく肩を叩く。

 

 本当に優しいタッチだったぜ。

 

「イッ・・・いや~・・・ネロ委員長じゃありませんか?何のことですか・・・?」

 

 元浜が恐怖でガタガタ震えている位に。

 

「夕痲ちゃんは・・・はあ。もう相手がいるし。」

 

 別のクラスにいる夕痲ことレイナ―レはもう言うまでも無い。

 

「下手に手を出すと・・・ハルトという名の魔王の制裁が・・・。」

 

「ほう・・・、君はそんなに僕と語らいたいのか。そうかそうか。」

 

 松田。お前はハルトの地獄耳を知らなかったようだな。

 

 すでにハルトの右手はあいつの顔面を捉えているし。

 

「すまねえ。ちょっとこいつと話があるからつれていくわ。」

 

「俺も。いい機会だ。松田君には新しい世界への扉を・・・。」

 

『ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁお助けぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』

 

 凄まじいパワーで引きずられていく松田と元浜。

 

 ネロ・・・お前は同じ名前の暴君みたいになっているぞ?

 

 ハルト。いい笑顔しているな。

 

 頼むから松田にこれ以上変態属性を付加させないでくれ。

 

『・・・・・・・・。』

 

 俺達はそれを見ても憐れみすら感じなくなった。

 

「・・・これがこのクラスか。」

 

 巧はすぐにわかったようだな。そして、これがもう日常なのだよ。

 

『ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 廊下に響き渡る悲鳴だってな。

 

 教師達も慣れ切ってしまった。

 

「僕・・・うまくやっていけるのかな・・・。」

 

 不安そうな良太郎。

 

―――だったら俺様流を見せてやる!!

 

 そこで良太郎にモモタロスが!?

 

「俺・・・参上!!」

 

―――ゼノヴィア。挨拶とはこうやるものだよ。

 

 あ~そしてデネブまでやってきたか。

 

「みなさん!!どうか僕のことをよろし・・・。」

 

「・・・こんにちは、カオスっていうべきなのかな?」

 

 遠い目をしたユウナ。

 

「俺・・・こんな濃い連中とうまくやっていけるのか?」

 

 巧。がんばるんだ!!

 

 変な連中が多いからこそ、お前のようなまともなキャラは大変貴重なんだ!!

 

 こういったように転校生が来るたびにお祭り騒ぎに。

 

 

 

 

 現代に話を戻すが、本当に賑やか過ぎて毎日大変だ。

 

「そうそうユウナさん、アーシアちゃん、ゼノヴィアさんや。」

 

『?』

 

 桐生の奴が三人に話しかける。

 

「昨日のあれ・・・読んでみた?」

 

『・・・・・・・。』

 

 その質問に三人は少し押し黙った後・・・。

 

 爆発したかのように瞬間的に顔を真っ赤にさせた。

 

「ふふふふふふ・・・アーシアちゃんは分かるけど、まさかユウナちゃんまでここまで純情だったなんて。教えがいがあるわ。」

 

 そうなのだ。

 

 アーシアはもちろんだが、ユウナはエロに関して全く免疫なし。

 

 すごくドSなのに・・・すごく初心なのです!!

 

 しかもそれがすごく可愛いけど、そこに桐生の奴が付け込んできやがって・・・。

 

「・・・桐生さん。僕の妹に変なことを教えないで貰えないかな?」

 

 そこにいつの間にか双子の兄である佑斗参上!!

 

 もうこいつの事を名前で呼ばせてもらっている。ユウナと一緒だとややこしいので。

 

「いや~変なことじゃないよ。ただ・・・無知は罪なだけだから、親切心で。」

 

「だっ・・・大丈夫よ兄さん。イッセ―との将来を考えれば。でっ、でも、あんなプレイがあったなんて初めて知ったわ、ああ・・・いいわ。私SもMもどっちでも・・・。」

 

 顔を赤らめてあたふたしながらとんでも無い事言ってくるユウナ。

 

 いや、言っている内容全然大丈夫じゃないから!!

 

「・・・・・・・・・君とはじっくりと話合う必要がありそうだ。とんでもないことを吹きこんでくれた事について・・・ね。」

 

 佑斗が素晴らしい笑顔で詰め寄っているぞ。もちろん怒りの四つ角が浮かんでいる状態で。

 

「あはははは・・・。イッセ―さん。いつでも私はお口で・・・。」

 

「ストープッ!!それ以上言ってはいけない!!」

 

 危険を感じたのだろう。アーシアの発言をとっさに遮った佑斗、ナイスフォロー。

 

「勉強になる・・・女としての楽しみ方は・・・。」

 

「ゼノヴィア・・・君もか。」

 

 あっ・・・あれ?ゼノヴィアまでまきこまれている?

 

「ああ・・・ツッコミが足りない。」

 

 佑斗がすげえ嘆いているぞ。

 

「・・・僕も桐生さんに話があるんだ。姉さんに変なことを吹きこんだことについて。」

 

 そして、目を座らせた良太郎参上!!

 

 あれは相当怒っているぞ?

 

 良太郎は俺達のメンバーの中で怒らせたくない一人に入る。

 

 無言でキレたら誰も止められない。

 

「きわどい質問ばかり飛んできてね。本当になんてことをしてくれたんだ?おかげでこっちは対応に苦慮していたよ?」

 

「あははは・・・何を怒っているのかな?ふっ・・・二人とも、怖いから・・・ね?」

 

『・・・・・・。』

 

 追い詰められる桐生。

 

「イッセ―君。助けてくれないの?ヴァ―リ君は?」

 

 俺に視線を向けるが・・・俺の場合はむしろ・・・。

 

「佑斗、良太郎。」

 

 二人の肩に手を置く俺。

 

「俺も混ぜてくれ。アーシアに変なことを吹きこんだ事についてじっくりと・・・。」

 

 なるほど・・・納得したぜ。

 

 最近アーシアがかなり過激な挑発をしてきた事に。

 

 最初は下着姿だった。そして・・・昨日は全裸。

 

 それに対抗意識をもやした部長とユウナも同じ様に全裸でやってきたですよ!!

 

 朱乃さんまで途中でやってくるし!!しかも全裸!!

 

「おかげで今日も寝不足だ。」

 

 真っ裸で迫られて・・・俺、相当やばかったぞ!!

 

 手を出すにも・・・その・・・順序ってもんがあるだろうが!!

 

 ある意味良い精神修行にはなったぞ。

 

 ・・・おい。誰かヘタレって言わなかったか?責任を考えないといけないだろうが!!

 

―――――そのままの意味でしょうが。

 

―――――はあ。相棒、お前もそろそろ覚悟を決めろ。熱望していたハーレムだぞ?

 

 あのな。相棒達。いきなり夢叶っても、困ることだってあるんだ!

 

「・・・えっと。」

 

 危機を覚えたのか桐生の視線がヴァ―リにむけられるが・・・。

 

 ヴァ―リはハルトと一緒に語らいながら視線を向けて一言。

 

「自業自得に救いの手はなし。」

 

 バッサリと切り捨てた!?

 

「まっ・・・それが妥当か。」

 

「俺も参加させてほしい。あの時のお礼をまだだった。」

 

 巧がそこに参加。

 

 そう言えば巧も桐生の被害者だ。意外と世間知らずだった故に、とんでもないことを吹きこまれた事が多数。

 

 特に一昨日のは酷かったね。

 

 内容は・・・親しい連中には「おっぱい」とあいさつするということ。

 

 こいつ、それを信じてしまった。

 

 いや~こいつが「おっぱい」と真面目な顔で挨拶してきた時、俺達は固まったね。

 

 何事かとクラス、いや、生徒、教師問わず学校中のみんなが固まった。

 

 あまりの衝撃に俺達の方が異常なのか!?可笑しいのは俺達なのか?そんな風に思ったくらいだぞ!!

 

 オカルト研究部全員で緊急会議を開催したのは言うまでも無い。

 

 アザゼル先生や通信に出てくれたダンテ様ですら混乱させるほどの破壊力。

 

――――――なあ?なんで「おっぱい」という?そんな挨拶があるなんて初耳だぞ?

 

 そこに空気を読まないヴァ―リの奴がストレートに聞いてきやがったもんだから・・・。

 

 あいつ、ようやくそれに気付き、あまりの恥ずかしさに一時部屋に引きこもり。

 

 昨日なんて学校休んだよ。

 

 慰めるのにみんなどれだけ苦労したか。

 

「・・・あははははは・・・。まっ・・・まさかあれほどの事態になるとは思ってもいなかったの。本当に・・・ごめんね?」

 

 それに対する答えは手首を軽くスナップを利かせる仕草。

 

・・・・・・必殺ですか。

 

『・・・・・・・。』

 

 四人で追い詰めてやろう。この罪深すぎるエロの伝道師に冥界へ旅立ってもらうためにな!!

 

「そうか・・・てめえがうちの巧にあんなことをした元凶かい。ふはははははははははははははははははははっ!!」

 

 最後にアザゼル先生が邪悪な笑みと共に登場!!

 

 巧ひきこもり事件はアザゼル先生も相当な心労をうけた。

 

「安心しな。生徒指導室という素晴らしい場所を用意している。みんなでじっくりと語り合おうじゃないか。」

 

 ラスボス先生まで参戦とは、すごく心強い!!場所まで用意してくれました!!

 

 すごく邪悪な笑みが今はすごく頼もしい!!

 

「・・・あっ!!あそこに通りすがり魔法少女ならぬ魔王少女が!?」

 

『何!?』

 

 魔王少女の名に俺達は揃って反応してしまう。

 

 しかたないじゃん!!魔王少女がこっちの身内になってんだし!!

 

 しかも・・・。

 

「あれ?どうしたのみんな?」

 

「ふふふ・・・まだまだ私もいけるわ~。」

 

 サイガの奴がセラ様を連れて本当にやってきてるし!!

 

 セラ様・・・駒王学園の制服似合っていますね。

 

 あなたの妹様よりも違和感ないです。

 

 しかも隣には・・・ツクヨミさんが大人っぽいスーツとキレのある眼鏡をかけ、出来る教師風になっとる!!

 

 しかも俺達が茫然としていた隙に・・・。

 

「さらば!!」

 

 桐生の奴、逃走。

 

『まてえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』

 

 そのあと俺達は必死であいつを探した。だが・・・なぜか見つからなかったのだ。

 

「・・・あれ?なんでセラ様を魔王少女って言ったの?」

 

 その違和感に渡だけが首をかしげて。

 

 

 

 

 

 さて、少し時がたって夏休みが始まる朝。

 

 家が一晩でとんでもないことになっていた。

 

「・・・・なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 部屋の外に出ると、廊下が広くなった。

 

 廊下だけじゃない。

 

 外に出てみると家が・・・マンションみたいになっとる!?

 

 いや、むしろショッピングモールに近い。横にもでかいのだ。

 

 屋上なんか、学校のグランドと同じか、それ以上の大きさになるほど。

 

 それに可笑しいのは家だけじゃねえ!!

 

「・・・改装工事やっと終わったわ。」

 

 一仕事終えたといわんばかりのハルト(徹夜明け)

 

「うん・・・いい出来だ。」

 

 感慨深そうに見るポルム(貫徹)

 

「大変愉快な家になったぞ・・・ふふふふ。」

 

 フィリップ(二徹)が満足げな笑みを。

 

「お前達もご苦労さん。その技術、すごく役に立ったよ。」

 

『いえいえ。』

 

 アザゼル先生がねぎらっていたのはゼ―ベス星人ズ。作業服来ていたけど、あいつらも人仕事終えたって顔をしていやがる。

 

 しかも契約のカードによりデフォルメ化した状態だ。

 

 まさかたったこれだけでやったというのか!?改装工事というふざけた形で?

 

「流石ねえ。」

 

「グレゴリの技術、アシュカに集まった冥界の技術と、ポルムが得てきた各世界のテクノロジー。天界秘蔵の秘儀。そして、それを再現できるだけの高度な知能と技能をもった異星人達。」

 

 アーシアに仕えるゼ―ベス星人達は・・・実はすごい奴らだった。

 

 それは戦闘面ではない。技術面でだ。

 

 あいつら四人は元々基地建設、戦艦、兵器製造などの技術屋で、その技術だけでエリートまでのし上がってきたのだ。

 

 四体中二体・・・ガブさんとウルさんは科学者でもある。

 

 本来なら後方なのだが、あの時は仕方なく前線に出た。それが逆に彼らの命を救ったのだ。

 

「お前達もごくろうさんな。」

 

『はっ!』

 

 他にも生き残ったのは大人しいゼ―ベス星人達。

 

 彼らは元々略奪とかは嫌っており、戦闘能力も意欲も低いためにそれで低い地位にいた。だが、それ故に命を救われた。戦闘に役に立たないが、皆・・・何か知らの特技を持っている。

 

 その結果生き残った異端のゼ―ベス星人達二十人もアーシアに仕えている始末。

 

 彼らもアーシアに忠誠を誓っている。命の恩人、居場所をくれた女神として。

 

 計二十四人のゼ―ベス星人達による技術屋集団は今、各世界から注目を集めようとしている。

 

 最近では北欧神話のドワーフ達と交流を持とうとしているらしい。

 

「こいつらを味方にしてよかったぜ。いや・・・研究が進む。」

 

 アザゼル先生は彼らをグレゴリの食客として迎え入れている。

 

 破格の連中をいちはやく早く取り込んだ形だ。

 

 うまいことしやがったと、他の皆は思っている。

 

 アザゼル先生。流石・・・。

 

「でも・・・ここに来てすごく待遇がいい。」

 

「ああ・・・本当に。」

 

 こいつら、契約のカードを利用して、小型、ステルス化してアーシアの警護もこなしている。まあ、それ以外は普通の人間と同じ待遇だ。

 

 それでもあいつらにとっては破格の待遇らしい。

 

「・・・飢え無くて済む。本当に。」

 

「サムスにおびえなくて済む。ああ・・・なんて幸せ。ご飯もおいしいし。」

 

 なんかこいつらがたどってきた経歴を聞くと本当に幸薄かったらしい。

 

 ご飯を作る量が激増したけど、作り甲斐がある連中でこっちも嬉しいもんだ。

 

『ここは天国です!!』

 

「いえいえ。みなさん一生懸命なだけですから。」

 

『はい。アーシア様!!』

 

 寝起きのアーシアを見て皆が膝をつく。

 

 こいつらのアーシアへの忠誠心は半端じゃない。アーシアのためなら命すら惜しまぬくらいの気概までみせているのだ。

 

「・・・まさかあいつらとこんな形で再会だなんてね。」

 

 そこに褐色の肌に銀色の髪をした女性が登場。

 

「もともと、勤勉な部分はあったからな。まあ・・・異端な奴らだけど。」

 

 隣にはノエルさんまで。

 

 気配からなんとなく褐色肌の女性の正体はわかる。

 

 いやしかし・・・信じられない位美人だ。

 

「ダークサムス?いや・・・ダースというべきか?どうした?」

 

『・・・・・・。』

 

「いや・・・、操ったことのある連中がやってきたと聞いてね。一応どんな様子か見に来たのよ。でもすっかり可愛い姿になちゃって・・・。」

 

 操った事があるですと?

 

『ガタガタガタガタガタガタガタ・・・。』

 

 あれ?ゼ―ベス星人ズ達が震えてアーシアを庇うようにして立ちはだかっている。

 

『こっ・・・この方に手出しは・・・。』

 

 なんか恐怖に逃げ出したい気持ちに駆られながらも、主を必死で守ろうとしているような光景・・・。

 

「・・・・・・へっ?」

 

 それを目を点にして見ているダースさん。そのあと苦笑する。

 

「・・・ああ・・・そのね。安心して。あなた達の主には手を出さないし、変なことはしないわ。」

 

「まったく。この世界でフェイゾン汚染による洗脳はするなよ?」

 

「そんなことしてもこの世界じゃ、あまり意味ないわ。それにフェイゾンの量にも限度がある。洗脳を維持していくだけの厖大な量を作り続けるなんてしんどい。」

 

「確かにね。」

 

 ポルムとダースのやり取りを聞きながらゼ―ベス星人達は安堵した様子。

 

「しかし、すごいわ。」

 

 俺達は一晩で変わり果てた我が家を見る。

 

「そりゃまあ・・・俺達のリクエストをすべて叶えたもんだからな。十五階建てだぜ?」

 

 十五階建てですか。しかし横幅が広がっているのはどうしてです?

 

「天界、グレゴリ、冥界、日本神話。特に日本神話勢力が大きすぎね。おかげでうまいこと言ったわ。」

 

「ええ。しっかり話したので無事に・・・。」

 

 部長とユウナ、朱乃さんが悪魔の笑みを浮かべています。

 

 三人とも何をやったの!?

 

 でも、今更触れるけど建物だけじゃなくて、その周りも明らかにおかしくないですか?

 

 いつのまにか裏山もいくつか現れていますし。それも結構でかい。

 

 庭は途方も無く広く、湖までできていますよ?

 

「ふふふ・・・日本神話からは山、それも川と滝、湖もプレゼントです。」

 

 いつの間にかいたアマテラス様がとんでもないことを言っています。

 

 山プレゼントって・・・。水源には困らないわ。

 

「まあ、ある程度ですが、地形を変えることは簡単ですし。まあ、本州の土地を五十分の一だけ広げ、そこに当てただけですし。」

 

 ツクヨミ様が微笑む。いっ・・・いや、簡単というわりにやっていること半端ねえですから!!

 

「しかも男のロマン満載だぜ?何しろ地下もすげえから。」

 

 アザゼル先生がうきうきしている。

 

 地下まであるのですか?

 

「地下は二十階まであるぜ!!あの山の下も実は建造中だったり。」

 

 地下の方がすごい!?しかもまだ何か作っているのかい!!

 

 庭どころかもう・・・。

 

「屋上は庭園になっているぜ!!翔一さんの要望でな!!」

 

「おかげで立派な農園ができたよ。」

 

 屋上は畑。

 

 他に広くなった庭に蔵も見える。

 

「ふははははははは・・・ついに・・・ついに我が蔵ができたぞ!!田んぼも畑もある!!感激だ!!麦もブドウだって、サツマイモも作ってくれる!!」

 

 ヤマタの奴・・・歓喜している。酒の材料を次々と栽培し始めている。

 

 天候操作できるあいつなら美味しいのを作ってくれそうだ。

 

「・・・・・・本当にあのヤマタノオロチが変わりましたねえ。」

 

「ええ。私に農業の知識を乞うなんて誰が思ったか。」

 

 アマテラスさんとツクヨミさんが農業にいそしむ彼を見て遠い目をしている。

 

 あの日本神話で大暴れしたヤマタ。今はツクヨミさんに農業を教えてもらいながら酒作りに励んでいる・・・か。

 

 本当に日本神話が更新されているわ。

 

 ちなみに父さんもツクヨミさんから教えてもらっているらしい。

 

 その関係かツクヨミさん、我が家にほぼ住んでいる状態。

 

 というより、終業式に学校に先生として赴任してくることが決まりやがった。

 

 農業課の先生として!!

 

 ついに神様まで。どんどん学校がすごいことになってくる。

 

「・・・まるで別世界だぜ、」

 

 たった一晩で激変してしまった我が家とその周辺にまだ茫然としている俺。

 

 隣にすむ幼馴染が昔に引っ越してくれてよかった。

 

 あいつ・・・鉱太が見たらびっくりするのは間違いないし。

 

 ちなみに、現世への混乱そのものは・・・大丈夫だろう。

 

 この土地の神様がいるのだし。

 

「さて・・・いよいよ夏休み。みんな、長期旅行の準備をしなさい!!もちろんイッセ―の幼馴染連中も全員よ!!」

 

 あれ?いきなり旅行ですか?

 

「言ったでしょ?夏休みの合宿。冥界への帰省よ!!」

 

 そう言えばそうだった。俺達のための集中合宿。

 

「堂々と冥界にか。フッ・・・楽しみだよ。どこまで強くなれるのやら。」

 

 ヴァ―リの奴もヤル気満々だ。

 

「お前な・・・。」

 

「おっとイッセ―。お前もそうだろ?あの力を使いこなすために必要な合宿だと。」

 

 アギトの新たな進化。紅のアギト。

 

 ヴァ―リは白のアギト。

 

 その力は壊滅的と言える。だが、それを使いこなすレベルに俺達は至っていなかった。

 

「この力もまだ通過点に過ぎない。お前だって分かっているはずだ。それに・・・。」

 

 ヴァ―リはネロの方を見る。

 

「あっちもどうやら面白い力に目覚めているみたいだしな。こっちも負けていられない。」

 

「わかっちまうか。それの披露はおいおいにな。」

 

「それと翔一父様とまどか母様には・・・。」

 

 部長が父さん母さんにあるチケットを渡していた。

 

 

 SIDE リアス

 

「晩さん会・・・悪魔の実態を知るために是非。」

 

 私は翔一さんとまどかさんに冥界へのパスを渡す。

 

 この二人の場合はそれだけで十分なのだ。

 

「やれやれ。大胆な事をするね。」

 

「一応、あなたの家の人達に挨拶したほうがいいのかしら?」

 

「少なくてもお兄様にはお願いします。グレモリ―家は・・・したらお父様もお母様も卒倒しそうですのでもう少し待ってください。」

 

 これでも神様代行しているとんでもないお二人。

 

 本当なら様つけしたいところだけど、二人の意向でそれは無しにしている。

 

「本当なら一緒に冥界いきの列車に乗りたかったよ。」

 

「一度乗ってみたいね。」

 

 いえいえ。あなた達お二人が乗ったらすごいことになります!!

 

 私達若手悪魔の会合にとんでもない方々がやってくる。

 

「・・・私の息子をよろしくね。あの子は私達から見ても規格外な部分があるから。」

 

「アザゼル先生、キリエ先生。ツクヨミ先生もどうか・・・。」

 

「おう。その点はまかせてくれや。」

 

「私達が見守っています。」

 

「しかたないですね。」

 

 オカルト部の顧問としてキリエ先生とアザゼル先生、そして、新たに赴任してきたツクヨミ先生も一緒に行く。

 

 私も一応先生と呼ぶのは、巧君へのあの親馬鹿っぷりのせいでもあるけど。

 

 なんか巧君に親近感を覚えてしまって、それがアザゼル先生と呼ばせてしまうのだ。

 

 

 

 




 いよいよ皆・・・冥界へやってきます。

 そして同時に事件の始まりが・・・。


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闇夜の仕置き人と冥界大歓迎です。

 さて・・・ここで新キャラが一気に登場します。

 これを考えるのにエネルギーを使ってしまった。

 この合宿中に起こる事件がどういったものか概要が分かります。

 では、二連続投稿二話目どうぞ!!


SIDE ???

 

 冥界にいよいよあいつらがやってくる。

 

「我が主を殺した・・・あいつが・・・。」

 

 俺達は憎いあいつをやる。

 

「あいつのおかげで我らは地の底へと追いやられた。だから・・・だからこそ・・・。」

 

 俺達の狙いはただ一人。

 

「黒歌・・・お前の命、我らが貰い受ける。」

 

 黒歌。いまや日本神話勢力の中心にいる元猫又の悪魔。

 

 俺達はあいつとその妹を捕まえ、姉である黒歌を無理やり眷属にした。

 

 だが、あいつは反抗し、妹をグレモリ―へ逃がして逃走。

 

 私も瀕死の重傷を負った。

 

 俺達はそいつに復讐する機会をうかがっていたが・・・バアル家を通じてこっちを粛清にきやがった。

 

 おかげで散々だ。

 

 だが、悪魔でも拾ってくれる神はいるらしい。

 

 俺の中にはある力が宿った。

 

 そして、手駒も大勢増えた。

 

 待っていろ。お前が一番大切にしていた妹からじわじわとやってくれる。

 

 泣き叫ぶお前の姿を堪能して・・・。

 

「・・・そんな事をさせると思った?」

 

 誰だ?!

 

「いや~本当にいい仕事しているわ。こんなところに屑がいたなんて。」

 

 どこにいる!?

 

「元七十二柱・・・ヴァサゴ家。その元当主、ジャルバ・ヴァサゴ。眷属を酷い手段で得ルなど数々の非道な行いを告発され、当主を追われた悪魔。」

 

 こいつら、俺の素性を・・・。

 

「ふふふふふ、久しぶりに義姉ちゃん達が帰ってくるというのに、こんな火種があるのはだめだよ。」

 

 聞こえてくるのは誰か分からない正体不明の二人の声。

 

 でも何処にいるのか分からない。

 

「いい加減でてきやがれ!!」

 

 俺達は必死で辺りを見回す。

 

 その時、二つの音声が聞こえてきた。

 

―――――アップル。

 

―――――マスカット。

 

 そして、それは現れる。

 

―――――ロック・オン!!

 

 歩きながら二人の上空がファスナのような物で切り取られ、そこからそれぞれ赤のリンゴとマスカットのような物があらわれる。

 

それぞれ二人はそれを頭から被る。

 

―――――アップルアームズ・・・いざ天誅タイム!!

 

 一体は腰に赤のリンゴをつけ、青の空手道着を思わせる様なインナーの上から銀のアーマーを纏い、背中に内側が赤、外側が闇夜のような闇色となったマント、そして右手に直剣、左手に無双セイバーを手にした存在が姿をあらわる。

 

 

―――――マスカットアームズ・・・ザ バレット クイーン。

 

 もう一体はマスカットを模した物を腰につけ、ライダースーツを意識したかのような黒のインナーの上から緑のマスカットを模したアーマーとヘルメットを纏っている。飾りみたいな物がついた両手に拳銃。何故か足、踵にくっつく形でも大型の拳銃が四丁もついている。

 

「こっ・・・こいつら・・・。」

 

 それは最近冥界を騒がせている怪傑達。

 

「仮面ライダ―ナイトブレード。」

 

 一体は紅刃の異名を持つナイトブレード。

 

「仮面ライダ―ベロニカ。」

 

 もう一体は魔弾の異名を持つベロニカ。

 

 なんてこったい!!どうして俺達の計画がばれた!?

 

 それは怪傑「ナイトカーニバル」と呼ばれる連中。

 

「・・・だが、たった二人で何ができる?」

 

 俺達は得た力の一つ・・・ロックシードを発動。

 

 そこからインべス達を召喚。

 

 こいつらを囮にしてにげ・・・。

 

 用と思ったらその行く手を阻む三つの影があった。

 

「まったく、二人とも自重しやがれ!!」

 

――――――ピーナッツ!!

 

「そうですわ。本当に振り回されまくって!!」

 

――――――イチジク!!

 

「はあ・・・でもあの二人らしいわ。」

 

――――――グレープ!!

 

ナイトカーニバルは全部で五人。

 

―――――ロック・・・オン!!

 

 黒い忍び装束を思わせるインナーの上からピーナッツみたいな物を被った戦士。ピーナッツを模した光沢を消した胸当てとハチガネ付きのフードをかぶっている。両手にトンファーと銃、そして光剣の三つを複合させたトンファーガンブレードを手にした忍びのような戦士。

 

――――――ピーナッツアームズ 我、闇に忍び、闇に躍る牙!

 

 仮面ライダ―影牙(エイガ)

 

ワンピースを思わせる紺のインナーの上からライチみたいな物を被った戦士。エプロンのような装甲を纏い、頭にはカチューシャ付きのヘルメット。両手にはイチジクを模した爪付きのグローブをはめ、イチジクを模した傘を手にしている。

 

―――――イチジクアームズ  必殺仕事人 皆様、冥土へご案内~!!

 

 仮面ライダ―冥花(メイカ)

 

赤のチャイナドレスのようなインナーの上からグレープフルーツを被った戦士。紅の飾り尾に、弓道の胸当てみたいな装甲。両手は厚めの篭手に覆われ、左肩の装甲が盾みたいになっている。 頭には猫の耳みたいなパーツがあり、尻尾みたいな物もついている。

 両手足の先が鋭い爪となっている。

そして、最大の特徴が手にしている武器だ。グレープ断面図みたいな円状のクリアパーツが横についた大型の弓矢。弓の中央部に矢のようなパーツがくっついている。ただ・・・その弓の部分が刃になっており、接近戦での斬撃とブーメランのようにも使ええる・

 

―――――グレープアームズ  CAT & ARROW!!

 

 仮面ライダーキャットテイル

 

 この五人がそろって「ナイトカーニバル」となる。

 

 旧魔王派達にとって魔王達以上に憎い相手だ。こいつらのおかげで冥界にて起こそうとした数々のテロがすべてつぶされたのだ。

 

「ごめん。でもこいつらだけは放置してはいけない。」

 

「まあ・・・気持ちはわからんでもない。黒歌って人。無関係じゃないし。」

 

 ナイトブレードの言葉に皆が頷く。彼が先導した結果らしい。

 

「やれやれ、二人とも男の子しちゃって。」

 

「それがあの二人ですって。」

 

「フォローするのはうまいので。」

 

 俺は何とか逃げようと算段をする。

 

 こいつらとまともに戦う理由はない。

 

「仕方ない。」

 

 そこに助っ人が現れた。

 

―――――チェック。

 

「変身。」

 

 その言葉共に現れたのは五大ギアが一人。「原初の魔王」デルタ。

 

 ある組織から助っ人として着てくれたドラゴンオルフェノクこと・・・北崎さん。

 

「君達・・・調子に乗り過ぎだよ。こっちが強者の戦い方という物を教えてあげる。」

 

 デルタの全身から凄まじい電撃がほとばしる。

 

 その電撃をあいつら五人は一斉に飛び退いて避け、攻撃を始める。

 

 そして、こっちが召喚した無数のインベス達に命中し、倒していく。

 

「面白いねえ。雑魚程度じゃ相手にならない。まあ、僕達を邪魔してきたのだからそれくらいじゃないと。ふん!!」

 

 デルタとなった北崎さんがキャットテイルを殴りつける。

 

 重厚な一撃に吹っ飛ぶが、あいつは宙返りし、身を翻しながら弓を構え、北崎さんに向けて無数の矢を放ってきたのだ。

 

「ぐっ・・・。生意気な。」

 

 そこに影牙が突っ込んでくる。

 

 殴ろうとするが、それを急静止してからの後転でかわす。そして素早く左右のトンファーで斬りつける。

 

「・・・ちょこまかと動くのなら・・・。」

 

 北崎の姿が消える。得意の高速移動なのだろう。

 

 だが・・・。

 

「その手の攻撃ができるのはあんただけじゃないわ!!」

 

「がっ・・・馬鹿な・・・。」

 

 無数の炸裂音と共に北崎さんが吹っ飛ぶ。そこにいたのはベロニカだ。

 

 他のインベス達はナイトブレードが手にした武器を一閃するたびに爆発、消滅していく。

 

 不可思議な紅いエネルギーがそれを可能としている。なんだ?あの力は。

 

 しかしヤバい。北崎が押されている。

 

――――ヒートウェイブ ナウ!!

 

 だが、突然の業火の嵐が起き、インデスごとナイトカーニバルの五人を飲み込んだ。

 

「情けねえ。だが、俺の新たな力を試すにはいい機会だぜ。」

 

 全身から炎を吹き出しているユウゴことフェニックスファントム。

 

「手ごろな相手だからね、でも今のでつぶれちゃったんじゃない?」

 

 その後ろからソラことグレムリンファントムも登場。

 

 流石としか言いようがない。たった一撃であのナイトカーニバルを・・・。

 

―――ディフェンド・・・。

 

「ほう。向うに指輪の魔法使いがいやがったか。」

 

 炎が一瞬で消える。そこには冥花が手に指輪をした状態で傘を開きながら皆を守っていたのだ。その傘には凄まじい冷気が流れている

 

 それでも完全に防ぎきれなかったらしく、皆が膝をついている。

 

「みんな大丈夫ですか?」

 

「なんとか。でもいきなり化け物が揃いすぎ。」

 

 最上級悪魔クラスが三体もいるのですからそれは当然。

 

 むしろ良く圧倒していたというべきですかね。

 

「しかたない。正体がばれる恐れがあるからあれを使いたくなかったけど・・・。」

 

 立ち上がるナイトカーニバルの五人。何かを取り出そうとするが、その切り札で何とかなる相手なのかな?

 

 こいつらを始末すれば、黒歌への復讐の邪魔はなくなる。

 

 でもですよ。

 

「うら!!」

 

 彼らに迫ろうとした一体のインぺスが突然乱入してきた青年の回し蹴りにふっ飛ばされたのをみたら唖然する。

 

 その人を見たソラさん。いや、その肩の上に現れた変なライオンが唸る。

 

「この世界にまでやってくるか。オ―ズ!!」

 

・・・・・・オ―ズってなんですか?

 

 

 SIDE ???

 

 僕達のピンチを救ってくれた男の人。

 

「あなたは?」

 

 その人はどうも旅人らしい。

 

「カザリにウヴァか。お互いに似たような状況になっているな。」

 

 その後ろから右手だけが宙に浮いて現れたよ!?

 

「アンク・・・。」

 

 向うが唸るって言うか・・・どうして右手だけ!?

 

「あっ・・・あなたは?どうして助けてくれたの?」

 

 色々と戸惑いながら僕は彼に問う。

 

「まあ、いうなら仮面ライダーは助け合いだから・・・かな?」

 

 仮面ライダー?

 

 そう言いながらその人が腰に三つの円が付いた長方形の何かを装着。それが瞬く間にベルトになった?

 

 まさかこの人も?

 

 その人は三つのメダルをまず左右同時に赤、緑、最後に中央に黄と入れて行く。

 

 腰に付いていたスキャナーみたいなものを手に取る。

 

「変身。」

 

 その言葉と共にそのメダルをスキャナーで読み込んだ。

 

 それと共にその人の周りに無数のメダルが現れる。

 

―――――タカ、トラ バッタ

 

 頭が赤、上半身が黄、下半身が緑となる。

 

 そして変身する。

 

―――――タ・ト・バ!!タトバ、タ・ト・バ!!

 

 変な唄みたいな音声と共に姿を見せたのは仮面ライダー!?

 

『オ―ズ。』

 

 二人が忌々しげに見ていますよ?

 

「・・・あれが欲望の王オ―ズ。面白そうだ。」

 

 デルタがその姿を見て唸っている。

 

「へえ、僕達とおんなじ状態だなんて、面白いね。せっかく残りのコアメダルを探しに来たというのに、こんな形で見つかるなんてね。」

 

「こいつからメダルを奪えばさらに僕達は強くなるのか!!そりゃいい!!」

 

 そこにクレムリンが急襲。肩のカザリと共に笑っている。

 

「根こそぎ頂くぜ!!いくらお前達でも俺達には・・・。」

 

 フェニックスとデルタもそこに加わろうとする。

 

「させるか。」

 

 僕達は立ち上がる。

 

 ――――仮面ライダーは助け合いでしょ?

 

 そんな理由で僕達を助けてくれた人を放っておけるわけがない!!

 

それを阻止しようとした時だった。

 

「きゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 あれ?その二人の内、フェニックスに向かって誰かがまるで弾丸みたいに突っ込んできた。

 

「そうそう。お前達。とんでもない怪物女に注意しろよ。」

 

「がばろぶられりゃ!?」

 

 そのままフェニックスの首にラリアットが決まり、それは転がるようにして着地。

 

「痛い~。」

 

 そして現れたのは・・・なんとごく普通の女の人だった。

 

「ガメル!!もう少し加減してよ。」

 

「ごめん。」

 

 その女の人の肩には変なサイがあやまっている。

 

「重力操作。使いこなされるとここまですごい事になるなんて思わなかったぜ。」

 

「ガメルまで!!げぇ、しっ、しかもあの女は・・・。そんな組み合わせは流石に不味いって!!」

 

「カザリ、何を青ざめているの?まあいい。ユウゴ君何時まで眠っているの?いい加減起きて・・・。」

 

 そこでクレムリンも気付いたみたいだ。

 

「・・・・・・・・・・ぶくぶくぶく。」

 

 目を回し、口から泡を吹いて完全に気を失っているフェニックスに。

 

「・・・・・・え゛?」

 

「忠告しておく。あの女。人間というカテゴリーを逸脱している。」

 

「・・・・人間?ベースになっているのが普通の人間なの!?」

 

 カザリの説明にグレムリンは固まる。そこにオ―ズと呼ばれた仮面ライダーが斬りとばしながら駆けていた。

 

「ヒッ・・・ヒナちゃん!!」

 

「えっ?」

 

「うう・・・おっ・・おおっ。首が・・・首が吹っ飛ぶかと思った。」

 

 彼が駆けていたのは、気を失っていたフェニックスが意識を取り戻したからだ。手に巨大な剣を召喚しながら立ち上がってくる。

 

 それを見たオ―ズの周りにインべス達が阻む。

 

「舐めた真似をしやがって!!前の戦いで拷問に慣れていなかったらそのままお陀仏だったわ!!」

 

「キャッ!?」

 

 その剣を女の人に向けて振り下ろす。

 

 それを女の人が片手で白刃取り。

 

「何!?」

 

 本来ならありえないけど、何人かは考えつくことかもしれない。

 

「えい!!」

 

 でも、そこから大剣をまるで板チョコを割るようにバキッと簡単にへし折るなんて誰も想像できないよ。

 

「・・・・・・・・。」

 

 へし折れた剣を見て目を点にし、言葉を失っているフェニックス。

 

「なっ・・・なんじゃ・・・そりゃ・・・。」

 

 ようやく出てきた言葉がそれだった。

 

「嘘ぉぉ・・・。」

 

 オ―ズとつばぜり合いをしているグレムリンですら引いている。

 

「あっ・・・ああ。またやっちゃった。」

 

 それを見て嘆き悲しむヒナさん。剣を無造作に投げ捨てる。

 

「げっ・・・まっ、待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・・・・・・」

 

 超音速で飛んできた剣の破片が刺さったインペスが粉々になりました。

 

 しかも複数まとめて。

 

 ついでに放り投げる際の腕に当たって、フェニックスが轟音と共に超音速でその場から吹っ飛んで消えてしまいました。

 

 悲鳴すら上げる暇も無く一体の敵が「待て」の一言を残して退場。

 

『・・・・・・・。』

 

「お願いだからそこで重力操作しないでよ!!放り投げただけで恐ろしいことになっていますけど!?」

 

「面白そうからつい。」

 

 その女の人は肩に止まったサイと色々と言い合っています。

 

「・・・すごい。」

 

 僕達はそうつぶやく事しかできない。

 

「・・・もうお前、グリード超えたな。ガメルの力を繊細かつ、あそこまで昇華させられると俺でもお手上げだ。」

 

「はははははははは・・・。」

 

 アンクと呼ばれた腕の言葉にオ―ズは笑うだけだ。

 

「・・・最悪だ。最悪すぎる。なんだ・・・こいつ?本当に人間か?」

 

 グレムリンが下がる。

 

「うう。私ついに人外になっちゃった。」

 

 一方のヒナさんは涙目になっている。

 

「いくら君でもあいつを真正面から戦うのは止めた方がいい。」

 

「そうだね。接近戦は頼まれても絶対にしたくない・・・うおっ!?」

 

 デルタの足元に無数の弾丸が命中。

 

「五大ギアの内の一つ、ようやく見つけた。手合わせを願おうか?」

 

 そこにいたのは顔がXの字みたいになった存在。

 

 それはデルタと同じオルフェノク、五大ギアの一つ。

 

「カイザだと・・・。」

 

 今まで確認されなかった最期のギアまででてきたの!?

 

 五大ギア。ついに全部表に出てきたよ。

 

「転送完了。やっと見つけたよ。」

 

 そこにとんがり帽子をかぶったお姉さんもいる。周囲に無数の青い蝶が舞うのが気になるけど。

 

「・・・なんじゃこりゃ?」

 

 そして、そこにもう一人。

 

 残ったインベス達を蹴り飛ばし、オ―ズに加勢してきた奴がいた。

 

―――――噂のナイトカーニバルと遭遇か。面白い事になってきた。それと・・。

 

「久しぶりだな。オ―ズ。」

 

「あっ・・・君はW。」

 

 それはベルゼブブ眷属の切り札・・・仮面ライダーW

 

 しかもオ―ズと知り合いらしい。

 

「・・・まずいぞ。」

 

 一気にやってきた戦力。

 

「・・・・・・状況が悪いね。仕込みもあるからこれ以上は戦闘したくないし。」

 

「ぐっ・・・しかたない。撤退だ!!」

 

 その言葉とともにデルタが無数の電撃を一斉に落とす。

 

――――テレポート ナウ!!

 

 その爆発にまぎれ、グレムリンの魔法で転送して逃げてしまった。

 

「ぐぅ・・・。」

 

 みすみす逃がしてしまった事に僕達は呻く。

 

「・・・あいつらをあのままにしておくと・・・黒歌さんが・・・。」

 

「黒歌?どういうこと?」

 

「話をきかせてくれないか?彼女とは知り合いだ。」

 

 僕達を助けてくれた人達がこっちにやってくる。

 

「どうやら、こっちも事情を知る必要があるみたいだな。」

 

―――――彼女に危機とはどういうことだい?

 

 Wも変身を解く。

 

 どうやら僕達も変身を解いて、皆の協力を仰がないといけないらしい。

 

 これが僕達「ナイトカーニバル」と欲望の王。そして騎士王の子孫達と、二人で一つの探偵たちの出会い。

 

 僕達にとってかけがえのない友人となる彼らとの話がここから始まる。

 

 

 

 

SIDE イッセ―

 

 さあ。俺達はついに冥界に足を踏み入れる。

 

 まさか駒王町の電車の遥か地下に冥界へのプラットフォームがあったなんて。

 

「・・・はあ。でも私はあえてツッコミたい。ゼノヴィア、お願いだからあなたの電車をこの電車に連結させないでよ。」

 

 まあ、その電車にゼロライナーが後ろに連結してしまったけど。

 

「冥界への道を走ってみたいと思って。一度通れば、自由に冥界にいける。パスもできたし。良太郎もデンライナーを連結させとけ。覚えて損はない。」

 

「うん。それもそうだね。」

 

「・・・はあ。時を走る列車が冥界を走る日がくるか。それも乙かも。」

 

「いいのか?それって本当にいいのか!?」

 

「・・・外交問題にならないかい?」

 

 ネロのツッコミと渡の心配にたいして、部長は平然としていた。

 

「はあ、まあ考えてもみれば、覚えて損はないわ。いざという時のためにやっておく。ゼノヴィアも良太郎はこっちの眷属なんだし使える物は増やしておいて問題ないわ。」

 

 部長、決断早っ!!

 

 その後ろからデンライナーまで連結。こいつらやりたい放題だな。

 

 そんな感じで冥界列車の旅を存分に楽しんだわけだ。列車も、そしてゼロライナーとデンライナーも皆で堪能した。

 

 正直・・・はしゃぎ過ぎて疲れたくらいだ。

 

 そんな感じでいざ冥界へ。

 

 そして、たどり着いた先には・・・。

 

 何故か匙と浩介の姿が駅のフォームに。

 

「やっと来たか。」

 

「待ちくたびれたぜ。」

 

 その後ろからソーナ会長まで・・・。

 

「はあ・・・お姉様とサーゼクス様の提案です。今回は大騒ぎになるからまとめてしたほうがいいと。」

 

 ソーナ会長の言葉の意味を俺達は身を持ってしった。

 

 駅の先は・・・まるでパレードのような大歓迎だったからだ。

 

「・・・・・・。」

 

 何でそんなに大歓迎を?

 

「その理由の一つはサイガ君です。」

 

「へっ?私?」

 

「・・・何しろ、ようやくお姉様が見つけた女王にして、婚約者です。」

 

「・・・えっ?婚約者!?」

 

 婚約の話にサイガの奴がびっくりしてやがる。

 

「お付き合いはしているけど・・・、婚約って。」

 

「それだけのことなのを自覚してください。何しろ五大魔王の紅一点にして、中々決まった相手を見つけなかった姉様。その姉様がついに結婚。その生涯の相方となる女王。冥界中のマスコミがそのお姿を見たくて殺到しているのですよ。ようやくレヴァイアタン眷属、最強と名高い女王のお披露目ですかね。」

 

 魔王の眷属にして、婚約者。それってすごいことなのね。

 

「・・・えっと。そんなすごい騒ぎに。」

 

「そうだよ。私と付き合うって言う事はそう言う事なの。」

 

 そこに正装をしたセラ様がやってくる。

 

「私が見つけた運命の相手だもん。それくらいは覚悟してほしいわ。あなたの夢のためにもね。」

 

 セラ様がサイガの元に飛び込むようにやってきて。

 

 何とキス!?

 

 突然の行動にびっくりする俺達。

 

「・・・もう。不意打ちはずるい。」

 

「この前のお返し☆」

 

「もう、今度は私が先にって予約していたのに。」

 

 あれ?なんかすごく恋人らしい会話。それもすげえラブラブな・・・。

 

「あまり時間は取れないんだよ?サイガ君はここで合宿することは決定しているし。・・・今日は実家でお父様とお母様に挨拶を・・・。」

 

「・・・マジなの。」

 

「そう言う関係で、そのサイガ君の女王でもあるポルム君も一緒にね。」

 

「・・・うわ~、勘弁してほしいな。何が悲しくてこんなラブラブを見せつけられにゃならんのだ。」

 

 ポルムの半端じゃない嘆き。こいつは結構サイガとセラ様、ツクヨミ先生のデートを目撃。女王でもあるので一応監視している。

 

 だが、その監視の跡、決まってこいつげっそりした様子で帰ってくるのだ。

 

 その時のポルムの一言。

 

「・・・砂糖を吐きそうな気分が良く分かった。甘い物は当分食べたくない。おのれ・・・余にここまでの精神的ダメージを。」

 

 仲よろしくてよかったですね!!チクショウ!!

 

 実際、セラ様は魔王として忙しく、サイガも魔戒騎士として仕事もある。ツクヨミ先生も神様の仕事があるのでので時間を取るのが大変らしい。それをポルムが頑張ってセッティングしている。

 

 短い時間の中で必死に絆を深めあっている形だ。

 

 あいつ・・・それを色々とフォローしているな。

 

「・・・覚悟はしていましたが、歳下の義兄ができるのは私としては少々複雑です。」

 

 ソーナ会長はため息をついている。

 

「そして、二つ目の理由ですけど、巧さんとネロさんです。新たなスパーダ眷属の兵士。お二人にもすごい注目が集まっているのです。」

 

「俺が?」

 

「目立つのは得意じゃないが・・・。」

 

 ネロと巧はそれぞれびっくりしている様子だ。

 

「仕方ないでしょう。ネロさんはスパーダの血を引く、五大魔王ダンテ様の甥にして、ギルスの力を持っています。冥界最強の兵士になるだけのスペックを持つ。巧さんだって、オリジナルオルフェノクにして、五大ギアの一つ、ファイズでもあるのですから。ファイズの活躍は冥界でも有名ですし。あなたは冥界では堕天使、悪魔関係なく子供達をたすけていましたよね?実はあなた・・・子供達からすごい人気なのですよ?」

 

 そう言えばこいつらもその生まれの背景も活躍もすごかったわ。

 

「まあ、ネロ君の場合はあの四大天使ミカエルの娘、キリエさんと恋人で、巧君の場合はグレゴリの王子にして、あの総督アザゼルが溺愛する息子。ついでに猫舌と言う事も大きいよ。いや~冥界特番でその情報が流れた時には唖然とするみんなの顔ったら・・・。」

 

『ちょっとまて!!どこまでプライベートが暴露されている!!?』

 

 セラ様が語るとんでもない情報に詰め寄る二人の気持ち分かるわ~。

 

 すげえな。おい!!冥界のマスコミが怖い!!

 

「はあ、そして最後は兵藤君とアーシア。貴方達です。」

 

 あれ?最期、なんで俺とアーシアなの?

 

「おいおい。お前、自分の立場を考えてみろ。」

 

 呆れた様子の鋼兄。

 

 そう言えば俺って、正式に神様の後継になったか?それでその騒ぎ?

 

 呆れた部長が説明してくれる。

 

「イッセ―。あなたの存在は冥界にとっても特別なの。あなたは冥界、天界の両方を平等に、そして平和にすることができる存在。いわば三勢力和平の象徴なの。」

 

 えっ?三勢力和平の象徴?

 

 俺が?

 

「あなたが神になれば、私達は争う必要もない。三勢力の皆から認められたあなたはいわば冥界の希望。そして、天界はもちろんそれは世界にとっても一緒。あなたは世界にとって今や、最重要人物なのよ。アーシアにいたっては、最も進化し、数々の奇跡を起こす極めて神に近い存在。イッセ―と共に世界を平和に導く大切な女神とされているわ。」

 

「それをリアス。あなたが二人とも眷属にした子なのだから・・・。グレモリ―家は大騒ぎでしたよ。神となる子と縁を結んでしまったと。」

 

 ソーナ会長と部長のため息は深い。

 

「ほんと・・・お母様が気を失うなんて、私が知る限り初めてのことよ。実家の皆が、どうやったらそんな怪物という言葉ですら生温い連中を眷属にできるのかと戦慄していたし。他のメンツも大概な事になっていることを知ったらお父様ですら卒倒しちゃったし。止めに剣崎。あなたを使い魔にしたことかな?」

 

「えっ?」

 

「君は駒価値で言うなら軽く見積もっても兵士の駒八個じゃ足りない。スペックだけ見ても龍王クラスは確実だからね。」

 

 サーゼクス様が剣崎さんを的確に分析している。しかし龍王クラスは確実って・・・。

 

「・・・あなたそんなにすごいの?」

 

 流石にこれは予想外だったのだろう。部長が剣崎におそるおそる問いかける。

 

「そんなに強かったかな?」

 

 色々と残念な部分はあるけど、決めると事は決めるよね?

 

「いやいや・・・剣崎さんレベルのテクニックで強くなかったら僕はどうなるの?」

 

 佑斗の奴が必死で否定している。

 

 どうやらあいつは剣崎さんのとんでもない何かをみてしまったらしい。

 

「それに加えて、高すぎて、最早意味不明なレベルのテクニック。もう神業と言うべきだろう。それについても報告は貰っているよ。異世界の旅で我々の世界の外の超人的な技を得ていることをね。そして、あの二天龍の娘たちを弟子にして色々と教えていることもね。」

 

「・・・・・・・。」

 

 二天龍の娘たちの師匠となる男。それが部長の使い魔だ。

 

「私・・・またやっちゃったの?またイッセ―繋がりでとんでもない規格外を引きいれたの?すごく有能なのはわかっていたけど、あの子達の師匠になっているのは初耳よ!?」

 

「リアス。君のその出会いと言う名の才能、いや最早「奇跡」は冥界どころか全世界に轟いているよ。我が妹ながら・・・恐ろしいよ。」

 

サーゼクス様ですら戦慄しているほどか。

 

 ・・・話を聞けば聞くほど。俺達すごい事になっているみたいだ。

 

 今更ながら実感が・・・。

 

「ははははは・・・まあ、そんな政治的な事情は置いといて、歓迎するよ。イッセ―君!!我が義弟として!!」

 

「そう言う事だ。俺達が直々に歓迎してやるぜ。ようこそ、冥界へ。」

 

 サーゼクス様とダンテ様が直々に出迎えてきた!?

 

「はあ・・・面倒臭いけど、こればかりはしかたない。」

 

「ふう・・・初めて会えたよ。子達の幼馴染に。」

 

 その後ろから見慣れない方がお二人?

 

「・・・アシュ君、ファルビー君まで。五大魔王、公の場では久しぶりに大集合だね。」

 

 えっ?あの方たちも魔王?

 

 つまり俺って・・・五大魔王全員から歓迎されているのですか!?

 

「・・・すごいです。」

 

 俺達ってすごいことになっているよな?

 

「へえ・・・この人が僕の義兄様になる人なんだ。」

 

 サーゼクス様の傍にグレイフィアさんと一緒に赤毛の子がやってくる。

 

「ミリキャス。久しぶりね。」

 

「はい。リアス姉様。」

 

 後からその子がサーゼクス様とグレイフィアさんの間の子供だと知って俺はびっくりする。

 

 サーゼクス様って自分の女王と結婚していたんだ。

 

 そして・・・。

 

「へえ・・・。この人がユウナお姉様の・・・。」

 

 ダンテ様の傍には銀色の長い髪をポニーテールにしたミリキャスと同じくらいの女の子がいます。

 

 ユウナの名前を出しながらまじまじとみている。

 

 すごく可愛い。将来は絶対に美人になる。断言してもいいぜ。

 

 純粋可憐なお嬢様って感じがする。

 

「そんで、この人が私のいとこなんだ。」

 

 次にその女の子がネロをマジマジと見ていとこ発言だと!?

 

「いとこ?んん?」

 

 ネロが固まる。その目で魔力などを見ているのだろう。段々とその顔が驚愕に染まっていく。

 

「おっ・・・おい、ダンテ。まさかとは思うがこいつってまさか・・・。」

 

「挨拶しろ。一応公の場なんだから。」

 

「まったくお父様ったら、相変わらず驚かせるのが大好き。でも、私も大好きなの。いい止めになりそう。」

 

 いたずらめいた不敵な笑みは・・・ダンテ様も女の子もそっくりだった。

 

 しかもダンテ様に対するお父様発言。これは・・・。

 

「初めましてネロさん。私はテレサ・スパーダ。五大魔王ダンテ・スパーダの一人娘です。」

 

 大変可憐な笑みでとんでもないことを言ってきやがった!!

 

「だっ・・・ダンテの娘だとぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

 ネロの絶叫が辺りに轟く。

 

「はあ、ネロ。お前はなんていいリアクションをする。」

 

 その後ろから出てきたクレドさんが苦笑している。

 

「あらま・・・かわいらしい子ですね。」

 

「あら?あなたがクレド伯父さまの妹なんだ。へえ~すごく綺麗な人。」

 

 キリエさんを見てはしゃぐテレサちゃん。

 

「そうそう、私。ついでに言うならミリキャスの許嫁です♡。」

 

・・・許嫁?

 

 目を点にする俺。

 

 苦笑する部長達から見て、どうやら本当らしい。

 

 ミリキャスの腕を組んでくるテレサちゃん。

 

 こっ・・・この歳でもう・・・リア充だというのか!?

 

「ミリキャス、テレサったらもう・・・あっ、ソーナお姉様!!」

 

 その後ろからミリキャスとテレサと同じくらいの歳のメイド服を着た黒髪の女の子がやっていたぞ。

 

「ふふふ・・・久しぶりですね。」

 

「はい。セラお姉様と合わせて姉妹三人が揃うなんて久しぶりです。リアス様も久しぶりです。」

 

 ・・・どうやらまだ身内がいるらしい。

 

 こんどはシトリー家か。

 

「あっ・・・初めまして。特に・・義兄様になるサイガさんには。私はレイア・シトリー。シトリー家の末っ子です。」

 

 しかもメイドの姿をしている。

 

「レイアちゃんはメイドマニアなの。その関係でグレイフィアにメイドとしての色々な指導をうけてねえ。まあ・・・メイドのたしなみとは思えない技能も幾つも持っているけどね。」

 

 ・・・また濃い子が増えたぞ。

 

「ふふふふふ・・・久しぶりだな友よ!!」

 

 あれ?そこにすげえ背の高い男がやってきたぞ。

 

 赤髪をして・・・なんかサーゼクス様と少し似た風貌の男。

 

「ああ。久しぶりだ。」

 

 その彼と鋼兄が互いに視線を交わし合い・・・。

 

『ふん!!』

 

 唐突に拳をぶつけ合った!?

 

 ぶつけ合った時の衝撃は凄まじく、あたりに大爆発のような轟音と凄まじい暴風のような衝撃波が撒き散らされる。

 

 なっ・・・なんていうパワーだ。

 

 俺達が吹っ飛びそうになったぞ。

 

『・・・・・・。』

 

 二人は無言で拳を引く。

 

『・・・フ。』

 

 そして、笑う。

 

「さらに強くなったな。すでに鬼にはなれるのか?」

 

「ああ。それにそっちこそ、さらに出来るようになった。強敵と戦ったみたいだな。」

 

 二人はそう言葉を交わしあう。

 

「歓迎しよう。友よ!!」

 

 そして次の時には拳を軽く差し出し、上、下とぶつけ合って最期に握手。

 

「・・・お前もそれを知っているのか?まさか・・・。」

 

「最近、もう一人友ができてな。そいつから教えてもらった。あとで紹介する。まあ必要はないだろうがな。」

 

 その男は苦笑しているあたり、大体誰か想像できる。

 

「あの時は本当にお世話になったにゃ。」

 

 黒歌の頭を深く下げる。

 

「お前達は、俺達バアル家も歓迎する。俺の夢のために鬼という物を教えてくれた友。そして・・・。」

 

 そいつが俺に向けて拳を突き出す。

 

「おれの名はサイラオ―グ・バアル。バアル家の次期当主だ。よろしく頼むぞ。次期神様。」

 

「ちなみに私のいとこでもあるの。」

 

「はっ・・・はい。」

 

 俺はサイラオ―グさんの拳に応じ、拳を上、下とぶつけ合い、握手をした。

 

 そして、それだけで分かった。アギトの力を介して伝わってくるのだ。

 

「・・・すごく苦労したんだ。」

 

 その言葉にサイラオ―グさんは軽く驚いた様子。

 

「ほう。分かるか?」

 

 その人が血をにじむような努力と数々の挫折を乗り越えてきた猛者であることを。

 

「こっちはまだまだですよ。まだ力に俺自身が追いついていない。魔法の才能もあまりないですし。」

 

「そうか・・・。お前もまた努力をして来た男ということか。その身に余る力と向き合うために。ある意味俺とは逆だが、ある意味俺と同じということか、面白い。」

 

 俺達はそれだけで分かりあってしまった。

 

「鋼鬼。お前が気にいることはある。こいつとは手合わせをしてみたいものだ。己の総てを賭けてぶつかり合う価値があるぞ。」

 

「わかってくれるか?この熱血馬鹿のことを。」

 

「ああ。」

 

「・・・サイラオーグ。あなたまでイッセ―を気にいるの?」

 

「少なくとも、お前が神になれば、この世界はより面白くなる、それは確信したよ。」

 

 何がどうなったらそう言う評価になるの!?

 

「すごい。これが兄様の認めた男達。」

 

 んん?サイラオーグの傍にミリキャスにと同じくらいの歳の男の子がいるぞ。長い赤髪をした・・・なんかやんちゃそうな子だ。まるで赤い獅子のような子。

 

「来たかいはあるだろう?」

 

「はい。なんか燃えてきた!!」

 

「ああ・・・この子がお前の手紙にあった・・・。」

 

「初めましてみなさん。俺はアスフェイ・バアル。サイラオーグ兄様の弟です。」

 

 この人に弟がいたのか?

 

「・・・あの・・・鋼鬼さん。」

 

「ああ。嵐、来ているよな?」

 

「はいはい。」

 

 いつの間にか嵐さんが鋼兄の後ろに登場しましたよ!?

 

 この人・・・列車についてきたのか?まじで?

 

「話にあったお前の忍術をご所望の子だ。忍びとして色々と教えてやってほしい。」

 

「へえ・・・彼が。鬼の修行も一緒にやっていると聞きましたが?」

 

「だが、まだ鬼になることはできん。身体が出来ていないからな。」

 

 鬼になるにはちゃんと身体が出来上がってからでないと無理らしい。まあ、響鬼という鬼の中で子供ながら変身したという例外はあるが少なくともあの子にはまだ早いという判断だ。

 

「でも、今のうちに色々と勉強したくて。特に忍者その響きが大好きで!!」

 

「そして、こいつは忍者マニアだ。すでに独自の研究はかなり者のだぞ。俺だって油断ができん。」

 

「いいでしょう。色々と教えてみましょうか。」

 

 忍者マニアの弟。

 

 そして・・・ある子がひっそりとやってくる。

 

「やっと見つけた。」

 

 淡いグリーンがかかったブロンドの髪をツインテールにしたその子。歳はうん・・・アスフェイ君と同じくらいに見える。何処となく猫っぽい子だ。

 

 服がチャイナドレスっぽいのが気になるけど。

 

 その彼女をみたユウナが「あら?」と少し驚いている様子だ。

 

 それが、まっすぐと巧に向けてやってくる。

 

「お久しぶりです、巧様。私の名はイリーティ・アガレスです。えっと・・・巧様にお聞きしたい事があります。私の姉の事覚えていますか?」

 

「・・・姉?ああ、アガレスっていうと、お前は確かあいつ・・・シ―グちゃんの妹。そうか、あの時の子か。大きくなったな。気付くのに時間がかかった。」

 

「はあ、私のことも何となく覚えていましたか。はい、察しの通りアガレス家次期当主。シ―グヴァイラ姉様のことです。四年前にあなたが助けていただいた・・・。」

 

「・・・あいつもそう言えば次期当主になったんだっけな。その緑のブロンド。シ―グちゃんにそっくりだ。」

 

 あっ・・・あれ?巧の知られざる交友関係が明らかに・・・。

 

「今は別の要件でいませんが、姉様から伝言があります。「助かったのなら顔位みせなさい!!」と。」

 

「・・・はあ。まあ、あいつには一応助かったとメールは送ったんだが。んん?」

 

 俺を初めとした皆が一斉に巧を見る。

 

 もちろんジト目だ。

 

「巧?あなた・・・シ―グヴァイラと知り合いなの?」

 

「意外な繋がりが・・・。」

 

「ああ。まあ、知らない仲じゃねえよ。一日一回ほどメールのやり取りをする仲。」

 

「巧。まさかお前・・・女なのか?それはお前の女なのか!?」

 

 アザゼル先生ですら知らなかったのですか?

 

「俺も初耳だ。いや・・・ショックだよ。まさか彼女がいるなんて。どうしておしえてくれなかったのかな?」

 

 ハルトが優しく、巧を問い詰める。

 

「うそ・・・シ―グの言っていた彼って巧君の事なの?ねえ、あなたシ―グの・・・。」

 

 ユウナが驚いた様子で巧に詰め寄る。

 

「・・・あのな。彼女じゃねえよ。ただ四年前に助けただけで・・・。」

 

「そのことについては報告を受けている。だが、交流は今でも続いていることは聞いていない!!一体どんな女だ!?」

 

 そして、誰よりも必死の形相で問い詰めるアザゼル先生。

 

「だから・・・シ―グちゃんとは。」

 

『・・・・・・。』

 

「・・・驚いた。まさかあの子達にそんなつながりが。しかも愛称で呼ぶ程だなんて。」

 

「巧君を助ける件で、アガレス家から秘密裏に協力はあったんだ。彼には大きすぎる借りがある。そのために手を貸すと言う感じでね。でも、そんな裏があっただなんて。」

 

「へえ~。面白いことになってんじゃねえか。俺もすげえ奴を眷属にしたもんだ。」

 

 魔王様同士で感慨深く話しあっている。

 

 だがあえて俺は言ってやる。

 

「この裏切り者・・・。」

 

 女の気配など全くないと思わせておいて、巧の奴・・・しっかりとそう言う奴がいやがった。

 

「・・・あのね。イッセ―君。君はそのセリフを言う資格はないよ。」

 

「うんうん。」

 

 佑斗と良太郎の奴がそういうが、それでも結構ショックなんだぞ!!

 

「・・・はあ。これはお姉様も苦労するわ。共通の趣味を持っているから意気投合はしているのに・・・。」

 

「私達で何とかフォロー出来ればいいですけど。」

 

「でも、典型的な厄介なパターンよ。これって。」

 

 あそこではため息をつくイリ―ティちゃんにレイアちゃんとテレサちゃんが加わってひそひそと話しあっている。」

 

「私達のお姉様達に相談すべきよ。特にセラお姉様は参考になると思うわ。」

 

「お姉様。実はユウナ様と交流がありまして、すでに色々と相談しているとか。」

 

「まあ・・・私達の繋がりですでに顔見知りではあったからねえ。」

 

 あの三人娘・・・仲良いな。

 

「あの子達・・・幼馴染だから。ついでに言うならアスフェイとミリキャスもね。あの五人ですでにグループが出来てしまっているわ。」

 

 悪魔っ子五人グループか。

 

「さて・・・リアスの眷属達はグレモリ―家でもてなす。」

 

 俺達はどうやらグレモリ―家に行くみたいです。

 

「俺の新しい眷属は当然、俺の家だわな。スパーダ家に招待してやる。アザゼル、渡。お前達も招待してやるぜ?俺のカミサンの料理でも食べていけ。」

 

「ああ。ダンテ、あんたの奥さんの顔を見せてもらうぜ。」

 

 ネロ、巧の奴はアザゼル先生とユウナと共にスパーダ家へ。

 

「鋼鬼。そこの奥さんと一緒に来るがいい。もうすぐ行われる鬼の修行の打ち合わせをしたい。嵐殿も・・・」

 

「あらら・・・まさかこの私がバアル家の客人となる日がくるにゃんて。」

 

「俺の相棒が作ってくれた酒・・・共に飲もうか?」

 

「おう。一度飲んでみたかった。」

 

 鋼兄と黒歌は嵐と共にバアル家へ。

 

「サイガ君とポルム君、ツクヨミちゃんは私の実家だよ。三人でお父様達に御挨拶だ~!!」

 

「まさかこんな日が早くも来るなんて。」

 

「・・・まあ、がんばれ。」

 

 頭を抱えるサイガはポルムと共にシトリー家へ。

 

「それでツクヨミちゃん、いよいよ今晩だよ?覚悟はいい。」

 

「えっ・・・ええ///!!覚悟はできましたとも。勝負下着も・・・。」

 

 サイガにはせいぜい爆発しろと言ってやるぞ!!!

 

 お二人がなんか顔を赤らめながらひそひそと話しあっているし。

 

――――ちなみに僕達は影から護衛と言う形で見守っているからよろしく。

 

――――まったく、お前達が来ると冥界が大騒ぎだぞ。

 

 テレパシーで翔太郎とフィリップの意思が伝わってくる。あいつらもここにまぎれて俺達を護衛しているらしい。

 

「・・・ははは。本当にすごいことになっている。久しぶりだね。」

 

 そこに見覚えのある顔がやってくる。

 

「そうそう、リアス。この人を紹介しよう。ミリキャス達を助けてくれたみたいでね。まあ、純粋な人間ではないがいい人だよ名前は・・・。」

 

「・・・エイジ兄・・・。」

 

 俺は思わず名前を呼んでしまう。

 

『え゛?』

 

 その名に皆が固まる。

 

 俺の声を聞いたエイジ兄さんは微笑む。

 

「久しぶりだね!!元気そうでよかったよ!!しかし、驚いたよ。イッセ―君達はなんでこんなに大歓迎されているのさ。」

 

「いや、驚いたのはこっちもだって!!なんでここにいるの!?」

 

 あちこちを旅していたエイジ兄さん。どうして冥界に来ているの!?

 

 そんな時だった。

 

 部長が俺の肩を優しく叩く。

 

「また・・・あなたの幼馴染なの?」

 

 その言葉はその場にいる皆の意思を代表したものだったらしい。

 

 視線で皆も同じ様な意思を伝えてくる。

 

「はい。昔近所にいたお兄さんです。あちこち旅をしていてその話を色々と・・・。」

 

 懐かしい。いや本当に。

 

「・・・エイジさん。久しぶりです。それとアンクも。」

 

 あれ?渡の奴知り合いか?

 

 それとアンクってだれ?

 

「お前さんも相変わらずだな。」

 

 そこに紅い腕だけの何かが現れた!?

 

「・・・イッセ―。あえて聞くわ。今度の幼馴染はどんな人外かしら?」

 

 すごく頭痛そうな部長ですけど、俺にだってわからん!!

 

「あのさ・・・エイジ兄・・・。一体何があったの?」

 

「それはこっちのセリフだよ。」

 

 どうやら・・・色々と語り会う必要がありそうだ。お互いに。

 

 

 




 ついにこの章で合流するエイジさん登場です。

 でも・・・ひなさんを無双させすぎました。


 いや・・・敵からしたら最悪の組み合わせですわWW



 さて次回はそれぞれの家での歓迎風景をまず書きたいです。


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一生懸命歓迎されます!! シトリー家、スパーダ家編

 今回は四つの家に分けて、二話投稿にしようと思います。

 まず第一弾・・・シトリー家とスパーダ家です。


 SIDE サイガ。

 

 おそらく私は今・・・人生で最も緊張する瞬間に立ち会っている。

 

 私の目の前にはセラさんのお父様とお母様がいるのだ。

 

 ソーナ会長の眷属全員も参上している。

 

 匙君も緊張しているみたいだ。

 

 そして私はシトリー家の当主をみる。

 

 うん・・・二人とも黒髪。父親が眼鏡を賭けており、何となくソーナ会長に似ている。そして母親の方が・・・うんセラさんそっくりだ。

 

 レイアちゃんはおそらく、この二人の色々な部分を受け継いでいそう。

 

――――お前こんな時に呑気に分析するよな。

 

「・・・ある意味図太い。緊張はしていても、頭は真っ白にならずクリア。どんな逆境でも冷静を保つのは大事だねえ。」

 

 ポルムの奴が平然と言っていやがる。

 

「・・・君がサイガ君か。」

 

 そして、威厳たっぷりに現シトリー家当主がやってきて・・・。

 

「ありがとう!!我が娘を嫁にもらってくれて!!」

 

 と、うれし涙全開で私の手を握ってきた!?

 

「あれ?」

 

「どうやらサイガの奴は相当歓迎されているらしいぜ。」

 

 その光景に目を丸くする匙君。

 

 仁藤君は呆れた様子だ。

 

「この子ったら、お見合いとかそういった話をすべて破綻させてきたのよ。いい加減いい歳なのにぶらぶらと・・・。魔王の仕事も忙しいのは分かるけど・・・。」

 

「うう。母様。それは今無しだって。」

 

「まあ・・・そのおかげでこんな素晴らしい婿殿を見つけてくれたのだ。」

 

 ・・・何かすごい歓迎を受けているぞ!?

 

「相当出来ると聞いている。その実力、魔王クラス。そして潜在能力は・・・龍神クラスは確実だとね。」

 

 そりゃ・・・私の本気はそうでしょう。でもまだ完全じゃないのに。

 

「そして、特例で大変有能な女王の相方を持った。」

 

「有能って光栄です。まあ、大船に乗った気でいてください。」

 

 ・・・そうだね。

 

 なんかポルムは、話によると異世界の旅でやりたい放題大暴れしてきたという話だし。

 

「かのトリックスターですら脱帽しそうなほどですよ?智謀は私ですら敵わない。それだけは太鼓判押しておきます。何をしでかすかわからないアギト達に並んで私がもっとも敵に回したくないとね。」

 

「・・・ソーナの智謀ですらも敵わないといわせるのか。悪魔としての慣例を破り過ぎだが、それだけの男、婿殿は先んじてよく眷属にしたものだ。」

 

 なんだろう。ポルムの本当の実力はそんなものじゃないと何となく断言できる。

 

 よく、悪魔の駒で眷属にできたものだよ。

 

「・・・お前も勘がいいな。まあ、こっちの実力は最上級悪魔だって変異の駒を使ってもこちらを眷属にできなかっただろうねえ。」

 

 ポルムは苦笑しながら告げる。

 

「ほかならぬサイガ・・・お前だからこそ、こっちは眷属になったし、眷属になることができた。まあ、あの駒変異したのもあったが、お前の潜在能力があってこそだ。」

 

 私はため息をつく。

 

「本当に色々と秘密の多いね。君は。あの後一体何があったの?」

 

 聖剣計画の脱走劇の後・・・ポルムに何があったの?

 

「いずれ明らかになるさ。だが、これだけは信じて欲しい。僕はその秘密を皆のために使うと。」

 

 その点に関して疑う理由はあるのだろうか?ポルムはいつだって私達のために動いている。いたずら好きでも、それにはきちんと理由もあるのだ。

 

 こいつは無駄な事もしない。決して。

 

 すべて・・・私達のため。

 

 本当に、難儀な奴だ。

 

「・・・それこそ今更だ。そうだろ?相棒。」

 

 それはイッセ―の幼馴染・・・翔太郎さんがフィリップに向けて言っている言葉。

 

「・・・ああ。そうだな、相棒。」

 

「あー!!何そっちで勝手に男同士の友情を確かめ合っているのかな!?」

 

 セラさんが軽く叫ぶ。

 

「う~ん。天然たらし系の義兄といったところでしょうか?あっ・・・それとお茶です。」

 

 メイド服を着たレイアちゃんが手慣れた手つきでお茶を入れてくれる。

 

「・・・ほう、良い香り。・・・うん。美味しい。相当研究しているね。」

 

 ポルムがそれに高評価。

 

「分かってくれますか?」

 

「ああ。この場で緊張することを見越してもいる。まあ・・・少し熱すぎるのは治した方がいいかな?」

 

「あらら・・・。」

 

「ポルム・・・お前すごいな。初めての家でよくもまあ堂々と。」

 

「そうかな?僕からしたら・・・匙君、君の方が色々とすごいと思うけど?」

 

「・・・やはり君から見てもソーナの眷属は有望か?」

 

 シトリー家当主はポルムに意見を求める。

 

「はい。特に匙君と仁藤君の二人はシトリー眷属の二枚の切り札。そして・・・同じ三大巨獣の神器をもつ同志でもある。それ故に分かる。」

 

 ポルムの奴は断言する。

 

「この二人は・・・戦いを経験するたびに爆発的に強くなる。鍛えるのが楽しみだ。」

 

 ポルムとハルトがシトリー眷属の担当となっている。ハルトはアザゼルと打ち合わせて、ドライバーに加え、人造神器を提供する構えだ。

 

「よく考えてみればシトリー家が三大巨獣の神器を独占しているのだな。」

 

「しかも、神滅具認定されるのは確実。多分・・・二人の分は下位神滅具位はある。」

 

『!?』

 

「ちなみに・・・あえて聞きますけどあなたの翼は現時点でどれだけの力が?」

 

 ソーナ会長の言葉に対して・・・。

 

「きっと・・・あなたの推測通り。恐ろしい程収集していますからねえ。三大巨獣の神器は収集した分だけ強くなる。それが答えです。」

 

「そう・・・ですか。」

 

 ソーナ会長が察した事はわかる。

 

 確実に上位神滅具クラス、または・・・それを超えている可能性すらある。

 

 そんなやりとりをしていると・・・一人のメイドがこけて茶菓子を落としそうになり・・・。

 

 その茶菓子の入ったトレイとメイドの身体が空中で止まったのだ。

 

「すみません。」

 

 よく見ると、レイアの指から糸が出ており、その一本がメイドの身体を。

 

 そして器用な事にメイドの身体を経由して二本で茶菓子の入ったトレイをキャッチ。

 

 それを見たセラさんもソーナさんも目を丸くしている。

 

「あっ・・・お姉様達。安心してください。これも、メイドのたしなみですので。私こう見えて編み物はすごく得意になって、これはその応用・・・。」

 

 待て待て待て待て待て待て待て待て!!

 

 これをメイドの嗜みに含めていいのか!?

 

「・・・うちの妹に何教えているの。」

 

「こんな異能を身につけていたなんて。」

 

「ははは・・・。はあ・・・でも教えたのはグレイフィア殿ではない。グレイフィア殿のような戦闘技能を身につけたるために、なおかつメイドがやっても可笑しくないだろうと考えた結果のあれだ。」

 

 どこをどうやったら糸使いになるのさ?

 

「ほう・・・。面白い技能を持っているね。」

 

 そこにポルムが乗っかってきた。

 

「うん。でも、この性能だとまだまだだと思っているでしょ?」

 

「わかりますか?はい・・・まだ納得ができるレベルができなくて。ある程度は糸の硬度や太さを魔力で変化させることができますが・・・。」

 

「ふむふむ・・・君にならあの試作品を渡しても面白そうだ。ちょっとまってね。これをベースに改造する。ほんの二十秒で済む。」

 

 あいつは久々に神器・・・ジズの翼を出す。

 

 その手には・・・なんか変な手袋を装備している。

 

「改造にはまずはこれだね。神ノ御手(パーフェクタ―)装備っと。」

 

 神器・・・じゃないよね?一体それって何さ?

 

「これで器用さが数百倍にも増す。さてちゃちゃとしましょうかね!!」

 

 そんな感じでスタート。

 

 なんか眼にも止まらぬ速度で手が動き、翼からも次々となにかと取り出していく。

 

 その時間・・・ほんの二十秒。

 

「さて、これでどうかな?」

 

「わあ・・・すごいです。なんですかこの糸?」

 

「何・・・ある世界で大変応用の効くクローステ―ルという糸があってね。それをそっちの糸と混ぜ合わせて完成させたのさ。まあ・・・ちょっとした神器みたいになっている。アザゼルから色々と人工神器について情報を貰っておいてよかった。即興にしてはいいのができた。ちなみにこれは神器みたいに、そっちの身体の中に直接収納できる。しかも、糸はそっちの魔力でいくらでも出せる。しかもすごくローコストでね。使用制限はないから安心してね。これで大分コンパクトになったよ。」

 

「・・・君は本当にすごいね。」

 

 ポルムの奴、たった二十秒でオリジナルの神器を作りやがった。みんな目を点にしているぞ。

 

「ありがとうございます。後・・・これってどう思います?」

 

 彼女が何かを投げる。

 

 それが壁に刺さったのだ。茶菓子にたかろうとしていた一匹の蠅を縫い止めてだ。

 

「・・・氷を凝縮して作った針か。少ない魔力をこんな形で応用。精密な狙いといい、よく考えている。まるで暗殺者の様な技能だね。しかも、調整したら刺さった部分から毒のように相手の内部を凍りつかせることもできると見た。君は完璧なテクニックタイプだ。成長したら末恐ろしいよ。しかも、その歳にしては保有魔力も格段に多い。」

 

 ポルム。お前がそこまで称賛するほどの子なのか?

 

『・・・・・・。』

 

 幼い妹のまさかの技に驚いている二人の姉。そしてその眷属達。

 

「アニメとかではこれもメイドのたしなみに入るみたいです。メイドってすごいですよね?暗殺技能もこなすなんて。パワーも必要みたいで、並走する車から運転しながら片手で人一人くらい引きずり込んだり、時を止めて、家事をぱぱっと済ます事も当たり前らしいですので。私・・・時を止める方法を今研究中なのです。あと筋トレもしていまして・・・まあ片手で・・・自動車のドアを引きはがすくらいはなんとか・・・。」

 

 誰だ!?この子にメイドとしての間違った知識を教えた奴は!?

 

 そんな無茶苦茶なメイドがいてたまるか!?

 

 あれ?義父様がそっぽを向いているぞ。

 

 それを義母様がジト目で見て真実を告げる。

 

「あなたがメイド関連の連中が出てくるアニメを見たせたり、ゲームをやらせたら普通の子になるのかと、壮絶な間違いを犯したわ。おかげで・・・すごい濃い子に・・・。」

 

『お父様~!!』

 

 姉二人が絶叫するのも無理ない。

 

「ブラックラグー○のロ○ルタはやり過ぎたと思う!!だが閃の軌○のシャ○ンや東○の○夜はよかったぞ!!」

 

『そう言う問題じゃないです!!』

 

 きっと一番見せてはいけない類のメイドのアニメやゲームを見せたんだろうね。

 

「魔女っ子を愛する私が言うのもなんだけど・・・変な方向にメイド愛がむかっているよ~!!」

 

「可笑しいと思わないのですか!?ああ・・・大切な時期になんて教育を!!」

 

 義母様の嘆き。姉二人が怒鳴る。

 

「そうだ。暗殺技能ついでに君にこれを進呈しよう。使いこなせるかな?」

 

 オイ、ポルム!!面白半分に変な物を渡そうとするな。なんだ?その死神の鎌みたいなやつは!?

 

「これは死神の笛。その強化版でね。武器としての頑強さを追求しつつ、音の操作能力を極限まで追求するために私が今まで来た世界のテクノロジーをすべて注ぎこんだ自慢の一品。スクリームとかねえ。これが君に惹かれているみたいなんだよ。いや~君を見ているとあの死神君を思い出してしまって・・・。君は彼を超える事ができそうだ。」

 

「私に使いこなせるかな?フルートとかには自信あるけど。」

 

「十分です。あとこれも飲んでみてよ。」

 

 杯に注がれた赤い血のような物。

 

「どれどれ・・・ごくごくごく。」

 

 それをためらわず飲んだ!?

 

「・・・あれ?頭の中に「壊せ」とか「殺せ」と言う言葉がでてきたけど?んん・・・まあ、すぐに抑えました。」

 

「・・・すごい精神力だね。全部飲みほして平然としているよ。」

 

「・・・あっ、胸になんか赤い印ができた。」

 

「まさかの適合者か。改良をしているとはいえ。一気に三つも適合するのはさすが悪魔ってところかな?これで君は成長したら時が止めることができる。」

 

「ほんと!?」

 

 ポルム、お前人様の妹を魔改造していないか?

 

 一応私の義妹なんだぞ?

 

「あっ・・・そうだ。これってもっと面白くできるかな?」

 

 傘を手渡されたポルムはジスの翼の光で解析し・・・驚く。

 

「・・・斬新な傘。すばらしい!!これをどのようにしてほしいのかな?」

 

「えっと・・・こんな感じで。全体的にさらに強度を高くして・・・。それでドライバーみたいな事が出来たら・・・。」

 

「ほうほう。せっかくですし、その傘に使えそうな技術があるんだよ。面白いライトボウガンが・・・。」

 

「すごい・・・できるのですか?」

 

「これでもできないことの方が少ない男だと自負している。」

 

 二人の間でどんどん話が膨らんでいく。

 

「・・・出会わせてはいけない二人を出会わせてしまったようです。ああ・・・私の・・・私の可愛い妹がどんどんおかしくなっていく。」

 

 ソーナ会長。今更ながらに後悔している。

 

「しかし・・・すごい子がいたものだな。」

 

 歳不相応の戦闘技能の高さに首をかしげる。

 

「まあ、婿殿。修行までの間ゆっくりとしていきなさい。」

 

 その好意に今は甘えるしかないか。はあ・・・本当にとんでもない奴を相棒にしちゃったよ。

 

「あっ、レイア様。お届け者です。」

 

 そんな時、あるメイドが小包を持ってくる。

 

「あら?先生からですか。ありがとう。さてさて・・・んん、待望の新作。では早速。」

 

 出てきたのは指輪。しかもすごく見覚えのある。

 

――――ドライバーオン!!

 

『はい?』

 

 レイアちゃんの両手首に出てくるのは掌が描かれたブレスレット。

 

―――――インビジブル。

 

 そして、その音声と共にレイアちゃんの姿が消えた!?

 

「ラッキー。すごく使える指輪だ!!」

 

『・・・・・・。』

 

 さて、今、私達がやるべきことはなんだろうか?

 

 ソーナ会長がスマホを取り出しながら私達を見る。

 

 私達は頷く。

 

「もしもし・・・・・・あっ、ハルトさん。あなたに大至急聞きたい事があります。はい・・・私の妹の事で・・・。私の妹があなたの弟子とは聞いていませんけど!?」

 

 この子・・・指輪の魔法使いでもあったのか?

 

 

 

 はあ・・・。なんか濃い妹ちゃんのおかげで疲れたよ。

 

 ハル君に確かめたところ、私達と再会する前、三月頃に弟子にしたらしい。どうも彼女は自力で絶望から乗り越え、魔法使いになったのだが、彼が見つけるまでその自覚がないままだったらしい。

 

 世間の狭さにみんなが呆れかえっていたよ。三勢力が和解して本当によかった。

 

 そして私達は食事などを堪能した後、私は寝室で横になっていた。いや・・・食べたよ。

 

 疲れていたのを配慮してくれたのだろう。

 

 冥界名物のすごく精のつく料理を食べさせてもらった。この世界でウナギの完全養殖に成功していた事に驚いたよ。

 

 他にもニンニクをうまく効かせた料理・・・うん、すっぽんもよかった。

 

 おかげで疲れが取れたよ。身体がぽかぽかする。

 

 それになんかすごくいい香りのする御香が焚かれている。頭が少し呆けるけど、いい感じだ。

 

―――お前・・・本当に気付いていないのか?その料理が出たわけを・・・。それにその御香は・・・。

 

 エイガが何故か呆れかえっている。

 

「どうしたの?すごく疲れが取れてよかったけど。」

 

――・・・・・・今晩はもう俺は寝ておこうか、すごく長い夜になりそうだし。

 

 エイガの奴・・・そのまま寝てしまったぞ。

 

 そう言えば轟竜はスワンさんに連れていかれたし・・・。

 

 んん?扉の向こうから声が聞こえる。

 

 耳を澄ませてみようか。

 

「セラフォル―殿、ツクヨミ先生。これがリクエストの分です。すでに御香は設置済み。その効果はすでに鋼鬼に対して黒歌が使ってみて、実証済みです。・・・・・・あの鋼鬼さんが狼になりましたよ。」

 

「にゃはははは・・・グッジョブ。いや~本当に良い眷属を得たわ。」

 

「・・・ああ。だからあの朝、鋼鬼がやつれていたのですね。黒歌も腰を痛めていましたし。」

 

 確か夏休み入る前。すごくげっそりした様子の鋼兄と、腰を痛めた黒歌さんがいたけど・・・あれと関係あるのかな?

 

「でわでわ~今晩はゆっくりと楽しんでください。」

 

 扉の向こうからポルムの気配が消える。

 

 魔法で転送したようだ。

 

「・・・さて。ツクヨミちゃん。覚悟はいい?」

 

「はっ・・・はい!!私・・・女になります!!」

 

んん?

 

 そう言って二人がノック。

 

 そして入ってきた二人の姿が・・・。

 

「ぶっ!?」

 

 下着無しのベビードール姿だった。

 

 何故下着無しなのかわかるか?

 

 あまりに薄く、透け透けだからだ!!

 

 セラさんは小柄なわりに胸が豊かだし、ツクヨミさんもスレンダーだけど・・・スタイルは結構いい。和風的な・・・。

 

「・・・相当興奮してくれたみたいだね。」

 

「鼻血を出すなんて、鋼鬼以外初めてだわ。」

 

 その言葉で私はようやく鼻血が出ている事に気付く。

 

 それだけじゃない。

 

 すごく・・・すごく興奮しているのだ。

 

「突然でごめんね。でも・・・私達。もうそろそろそっちの関係に入ってもいいと思うの。」

 

「私達の初めて・・・貰ってくれません?」

 

 ・・・・・・・。

 

 頭くらくらして倒れそう。でっ・・・でも、以前ならそれで気絶していたのに・・・。

 

――――――竜の騎士化した関係だろうな。前のままだったら、そのまま気絶しているだろうが、今のお前は違う・・・。女性の裸に免疫なくても・・・もうすぐ狼になれるぞ。

 

 エイガ!!お前寝ていたんじゃないのか!?

 

うっ・・・・・・目が・・・目が二人の身体から離れない。

 

 わっ・・わわわわわわわわ・・・。

 

 しかも二人の視線が私の下半身に・・・。

 

「すごい興奮している。はっ・・・恥ずかしいけど・・・。嬉しいかな?」

 

「そのまま・・・私達を・・・その優しくお願いします。」

 

 その言葉で私の何かが切れ、二人の手を引き、ベットに押し倒す。

 

『きゃ!?』

 

――――――・・・ついにサイガの坊ちゃんが男になるのか。月日は早いものだね。

 

 エイガがしみじみ言っている中、私達はついに一線を越えることになる。

 

 その夜は・・・大変熱かったことだけはここで述べておく。

 

 朝、ポルムが「昨晩はお楽しみでしたね。」と定番のセリフを言いやがったので、それに対してライデインでお返ししてあげた。

 

 

 

SIDE ネロ

 

 ダンテの奴の家・・・さすが魔王だと思ったぜ。

 

 その家はもう城になっている。意外と綺麗なのには驚いたけど。

 

 まるで中世ヨーロッパで、領主が住んでいるような立派な城だ。

 

「はあ。あんまりあんなの俺のがらじゃねえがな。」

 

 じゃあ、あの城にした理由はなんだ?

 

「・・・ムンドゥスを倒した時の城が面白そうだったんだ。それを再現している。」

 

 それってかつて魔界を支配していたというあいつだな?

 

「・・・・・・お前には話さないといけない事がたくさんある。色々と・・・な。」

 

 城門の前でふとそう告げるダンテ。

 

「・・・そうか。」

 

 あえて聞こうとしなかった事。それは俺がダンテの甥であること。

 

 俺の母は人間だ。それは分かっている。

 

 そうなると俺の父は・・・。

 

 それについてあいつは色々と知っている。

 

「・・・ネロ。」

 

 キリエが心配そうに俺に声をかけてくる。

 

「・・・俺も知っていいことかい?」

 

「あんたなら知ってもらっても問題ないだろ。それだけの男だと思っている。」

 

 アザゼル先生に対してダンテは言ってくれる。

 

「そりゃ、ありがたいねえ。・・・んん。」

 

 そんな時だった。

 

 俺は悪寒を感じた。

 

 姿は見えない。でも・・・。

 

 みんなとっさにある方向に向かって武器を突きだす。

 

「へえ・・・面白い子達が来ているわね。」

 

 そこには黒髪で眼鏡をかけた・・・すごくイカレた恰好をした女がいた。

 

「ダンテ・・・この子たちが眷属?」

 

「ああ。愉快な連中だろ?」

 

「ふ~ん。天使もいるけど・・・まあ、狩る対象とするのは止めた方がいいか。あっちの天界の天使は主神がまず違うからねえ。本当にややこしいわ。」

 

 そいつはキリエを舐めるように見て、そうつぶやく。

 

 そんな女を見てユウナが笑顔。

 

「師匠様。ただいま帰りました。」

 

「あら~・・・ユウナ、帰りなさい。ふ~ん。少しは女らしくなったじゃないの。でも・・・まだまだ妖艶さが足りないわ。」

 

 もう一人、銀色の髪に紅いパンクスーツを着た女性もいた。

 

「魔女の系譜がこうやって受け継がれているだけでも十分じゃないか。」

 

「そうね。魔女が三人。そして弟子が二人。いえ・・・これから三人目の弟子が生まれるって話だし?」

 

「・・・ある意味久しぶりになるのかな?」

 

「へえ。あのダンテの血族か。」

 

 そこにもう二人女性が現れる。

 

 一人はブロンドの髪をした美人。

 

 もう一人はボブショートの黒髪にサングラスをかけた女。

 

「ああ。俺達の新しい家族だ。」

 

 その二人を見て俺は悟る。

 

「まさか・・・あの二人が・・・。」

 

 スパーダ眷属を最凶たらしめている戦車と僧侶。

 

 レディ・アンとトリッシュ。

 

 俺達のいた街でもダンテと共に好き勝手に暴れていたみたいだしな。

 

「あの時の坊やがねえ。ふふふふ・・・。」

 

 トリッシュの奴に至ってはグロリアに変身していやがったし。

 

「それでお前達最凶女四人がどうして一緒にいる?」

 

 ダンテ。頼むからその表現は止めてくれ。

 

「言い得て妙だぜ。」

 

『何か言った?』

 

「いっ・・・いえ、なんでもありません。」

 

 アザゼル先生の言葉に素晴らしい笑みで武器を突きつけて問うあいつら。

 

 うん・・・。

 

 あのダンテですら持てあます理由が分かる気がする。

 

 これは逆らいたくない。

 

「・・・報告は見た。確かに魔界の悪魔と異界の天使を率いて、テロを起こそうとした旧魔王派の一派は全滅だな。・・・街ごと崩壊させてな!!ハルト殿がいなければどれだけ修繕費がかかったか。ああ・・・ハルト殿。感謝の極み。巧君・・・ありがとう。本当にありがとう。アザゼル殿。本当に感謝します。」

 

 あの四人の仕事の報告を受けたクレドがため息をついた後、巧の手を取って嘆いていた。

 

「意外な形でハルトとのつながりが役に立ったな。」

 

「・・・俺のポジション、だんだん見えてきたぞ。」

 

 それ以来・・・指輪の魔法使いが暴れまわった最凶女四人組の後始末をつけるというのは恒例になる。

 

 そんな未来が見えた。

 

「でも、仕方ない。あれだけの戦力をたった五人で十分で終わらせただけでも上出来と思ってほしい。雑魚とは言え・・・千単位は確実だった。」

 

 そこに褐色の肌に赤毛。そして白いマントを纏った女がいるぞ?

 

 赤い髪で左目を隠したその女の手には二本のショーテル。

 

「彼女はルシアという。スパーダ眷属のもう一人の騎士だ。」

 

「ほう・・・君達が新しい眷属か。まあ・・・濃い連中ばかりだけど、よろしく頼むわね。」

 

 この人はまともっぽい。

 

「他のみんなも似たような理由だ。おかげで何時よりも過激になった。」

 

 それで一つの街が壊滅ですか・・・。

 

「・・・歓迎したいなら、被害を出さないようにやってほしい!!」

 

 クレド。お前の苦労、何となく分かった気がする。

 

 こいつらイカレていやがる。

 

「まあ、身内が増えるのよ?顔位みたいじゃない。」

 

「そうですよね!!」

 

 テレサは嬉しそうにはしゃいでいる。

 

 まあ、こいつは従妹なのはしっくりくる。

 

 意外と歳相応なんだよ。やんちゃなお姫様。いや、妹分というべきか?

 

 キリエともすっかり仲良くなっているし。

 

「もう・・・テレサ。少しは落ち付きなさい。今日はせっかく客人が来たのよ?」

 

 そこに一人の声が聞こえてくる。ブロンドの髪をした美人だ。

 

「初めましてネロ君。巧君。私はパティ・スパーダ。ダンテが色々を迷惑かけて御免なさいね。」

 

 えっと・・・・。

 

『・・・・・・・。』

 

 ・・・誰だこいつ?

 

「ネロ、巧。彼女がダンテ様の奥方様だ。」

 

 その時、クレドがとんでもない事を言ってきやがった。

 

 何?こいつがダンテの奥さんだと!?

 

「おう。帰った。」

 

 そして、城の中に入った途端・・・ダンテはソファーにかけて寝始めたぞ!?

 

「はあ・・・相変わらずね。」

 

「週休六日が俺の基本だ。全く・・・魔王になってから忙しい。もっと休ませてほしいぜ。」

 

 ・・・。

 

 なんだろう。

 

 その発言からなんとなくわかってしまった。

 

 ダンテってプライベートでは・・・すごくダメダメじゃないのか?

 

「まあ、平常運転なのはわかった。そこでゆっくりしてなさい。テレサ、料理を手伝って。」

 

 ・・・奥さんの方は出来た人だな。

 

 うん。でもダンテの事をよく知っている。

 

『・・・ふう。このロリコン。』

 

 なんかトリッシュとレディの奴が揃ってダンテをロリコン呼ばわり?

 

「・・・ダンテ様の奥様は元人間。彼女が幼い頃にダンテ様が救ったのが最初の出会いで・・・それ以来ずっと慕い続けていたらしい。」

 

 その理由をまたクレドの奴が説明してくれたよ。

 

「おい!!」

 

 あいつ・・・光源氏みたいなことを・・・。

 

「・・・少し見損ないました。」

 

 キリエまで絶対零度のまなざしを向けて・・・

 

「悪魔らしく業が深いじゃねえか。」

 

 アザゼル先生ははニヤニヤと意地悪く笑う。

 

「おいおい。そりゃないぜ。何度も言っているが・・・。」

 

 必死に言い訳するダンテ。

 

「ふう。あのね、私きちんと成長してから結婚を申し込んだの。まあ・・・人間は止めるはめになったけど。ご先祖様のおかげなのかしらねえ。」

 

「・・・十年後になったらデートに誘ってやるといったが、まさかこんなことになるとは・・・。」

 

 あいつ・・・多分ガキの頃の奥さんに冗談交じりにそう言いやがったな。

 

「ふふふ・・・人間界でのパパ。すごかったもんね?ママ。」

 

「お前・・・素が出ているぞ。」

 

「いいもん。」

 

 どうやらテレサはプライベートではダンテをパパ。奥さんをママというらしい。

 

 でも、あいつはそれを気にしていない。

 

「だって、新しい家族になる人達なんだよ?身内に素を見せないってそっちが可笑しいよ。」

 

 そう言うテレサの慈愛の満ちた微笑みは・・・なるほど母親そっくりだと思った。

 

 意地の悪い笑みはダンテそっくりだが。

 

「・・・はあ。本当に母親似だな。しかたねえ、こっちも少しだが手伝ってやる。」

 

「ほんと?」

 

「ああ。」

 

 気だるげに立ち上がるダンテが台所へ。それを見てユウナの奴が苦笑している。

 

「・・・ああ見えて、ダンテ様って、テレサちゃんに甘いの。」

 

 なんだかんだいって・・・あいつ父親してんだな。

 

「そうそう、私の家では使用人はいないの。基本的に全部自分でしているから。」

 

「立派な屋敷なのに・・・?」

 

 屋敷が立派なのに・・・なぜ使用人がいない?魔王なのに?

 

「・・・こいつらの金遣いが荒いからだ。」

 

 クレドがあの四人を睨みつける。

 

「だって・・・おシャレしたいじゃないの。」

 

『ねー。』

 

 この四人・・・まさか相当金使ってんのか?

 

「やれやれ・・・。せっかく戦車以外の額がすべて埋まったというのに。」

 

 ダンテの奴がただ一つ残っている戦車の駒を回す。

 

 そう言えばダンテの「女王」は誰?

 

「・・・ああ。それなんだが、少しややこしくてな。駒が三つに分かれちまって・・・。」

 

 駒が三つに分かれた?

 

 なんかすごい事を聞いたぞ?

 

「俺の変異の駒はセラの奴と同じ女王。だが、その変異の仕方が愉快で愉快で。該当者が三人揃った時点で、初めて効果発揮したんだわ。駒が一気に三つに分かれて・・・。」

 

 女王の駒が三つに分かれただと!?

 

「ひとりでにベヨネッタ、ジャンヌ、そしてパティの中に入ったんだ。これには参ったぜ。三人揃ったのは偶然なのに。」

 

「あ・の・ね。こっちはいきなり人間止めさせられたのよ。それを笑い話にするなんて大した度胸ね。あんたらの結婚騒動に巻き込むだけ巻き込んで・・・。天使を狩らないといけないという代償が消えたのはまだましだけど。」

 

「それに・・・身体能力や魔力が上がっただけで大した違いが無いのが魔女の悲しいところだけど。」

 

 つまり、この二人もスパーダ眷属?マジでか?

 

「この事は公にはなっていない。スパーダ眷属に女王が三人いるということはな。しかも,主神すら倒した最凶の魔女二人がそうだと誰も知らない。知られたら・・・外交的にもまずい部分が・・・。」

 

「まさに俺達の眷属のリーサルウェポンなんだわ。」

 

 なっ、なんじゃそりゃ・・・。

 

「・・・どんな悪夢だ。お前の女王の駒ってどうなっている?イカレていると言うレベルを超えているぞ!!しかも駒が選んだ連中も!!スパーダ眷属・・・さらに凶悪になっているじゃねえか!!」

 

 アザゼル先生。すっかり頭を抱えている。

 

「アシュカからもそう言われたぜ。ったく、こんな連中俺だって手に余る。パディの奴もあの時久しぶりにあったら愉快な事になっていやがったし・・・。」

 

「あら?何が愉快なの?」

 

 エプロン姿のパディさんがやってくる。

 

 あの人がダンテのいう愉快なことって・・・。

 

 俺の視線がパティさんの胸のブレスレットと腰に指してある長剣に気付く。

 

 そこから不思議な力が感じられるのだ。

 

「どうやったら行方不明の間にお前がデビルハンターになってんだ?」

 

「だって・・・あなたを見て育ったから。何処に言ったのか探すためにルシアさんから聞いたりして・・・。」

 

「ふふふふ.私達の影響もあるかな?」

 

「私達も色々と教えたし。」

 

 トリッシュの微笑み、レディの苦笑。

 

「・・・お前らが教育に悪い奴らなのはよく分かった。」

 

 ダンテは肩をすくめる。

 

「まあ・・・そんなだが、ゆっくりしていけ。普段好き勝手やっている連中が集まるなんてめったにないからな。」

 

「失礼。」

 

 そこに・・・なんか厳つい顔をしたサングラスをかけた黒い肌の男がやってきたぞ?

 

 すごい重圧感・・・。

 

「ベヨネッタ。何で俺がお前の家で、バーテンダーをしないといけねえ。」

 

 しかも、いきなり部屋の一角がバーテンダーに変わったぞ?

 

「いいじゃない。私の弟子と、ダンテの甥っ子が来たんだから。」

 

「パクパク・・・。」

 

 あれ?どうしてアザセル先生がそいつをみて驚いている?

 

「ロダン!!お前、どうしてここにいるんだ!?」

 

「親父・・・知り合いか。」

 

 巧も思わず聞き直す。

 

「ほう・・・。久しぶりだな。アザゼル。」

 

「意外な知り合いだな。」

 

「こいつはグリゴリに所属しなかった数少ない奴だ。だが、死んだと聞いていた。だが生きていたのか。お前は俺にとっては古い馴染み、いや幼馴染だ。ミカエルの奴も驚くだろうよ。」

 

 軽く涙を零すアザゼル先生。

 

「・・・はあ。お前も涙もろくなったな。ベヨネッタ、お前これを狙っていたな?」

 

「どうかしら?ただ堕天使の総督が来ると聞いてもしかしたら天界時代のあなたを知っているかな考えた事はあるけど?」

 

 最凶の魔女の一角はとぼけていやがるが、何となく分かる。絶対に狙っていたと。

 

「・・・気が変わった。昔馴染みもいるのなら喜んでバーテンダーをやってやる。」

 

 ロダンは肩をすくめる。

 

「・・・嬉しい物だぜ。俺にとってはな。そうそう、ミカエルの娘もいる。ミカエルの奴もやってくる予定だから飲もうぜ?」

 

「あのミカエルに娘だと?・・・詳しい話を聞かせろ。」

 

「こりゃ、予想以上に盛り上がりそうだな。」

 

 ダンテは心底愉快そうに笑った。

 

 俺からしても面白い何かが始まると思ってしまったのは同じ血が流れているからだろうか。

 

 

 SIDE 渡。

 

 その日の食事会。

 

「・・・あなたがベヨネッタと共に人間界にいたなんて驚きですよ。」

 

「ああ。お前さん。その気になれば俺の代わりだってなれたのによお。」

 

「ふん。そんな面倒くさいこと、やってられるか。作品作りで俺は忙しい。」

 

 速報を聞きつけ、やってきたミカエルさんとアザゼル先生。ロダンさんは揃って飲んでいた。

 

「長い歳月だったが、また三人でこうして共に席を並べるか・・・面白い物だ。」

 

 三人は本当に天界での幼馴染だったらしい。

 

 片や熾天使。片や堕天使の総督。そして最後の一人が・・・人間界でバーテンダーをしながら魔女たち相手に魔界のブラックスミス。

 

「・・・ねえ。ロダンの天界でのエピソードってある?こんな厳つい姿をした天使って面白いから。」

 

 実は堕天使だったロダンさん。しかも相当地位の高い天使だったらしい。

 

 ミカエルさんとアザゼル先生と同等なくらいの。

 

 そんなロダンさんの天界でのエピソードにベヨネッタさんは興味をもったらしい。

 

「おうおう。ロダンの姿は変わっていなかったぜ。いや~あいつは昔から・・・。」

 

「アザゼル。この世からの永遠の別れを望んでいるようだな。」

 

 何やら紫のオーラを放って腕をまくりあげるロダンさん。

 

「じょっ・・・冗談だよ!!お前の拳は二度御免だ!!」

 

「天界一の鉄拳。衰えていないみたいですね。」

 

「ふん。一応鈍らないようには気をつかっている。だが・・・ミカエル。お前に娘か。・・・今更だが祝福してやる。」

 

 ロダンさんが自慢のカクテルをミカエルに作って渡す。

 

「ありがたく頂きます。」

 

「それとアザゼル・・・。」

 

 そして、それはアザゼルさんにもだ。

 

「・・・巧って奴は、お前の義理の息子といったな。だが、本当は違うな?目を見たらわかる。お前は肝心な事を隠すからな。その苦労を察してだ。」

 

「・・・・・・けっ・・・ミカエルといいロダンといい、昔馴染みはやりにくいぜ。」

 

 そう言いながら一気にカクテルを飲むアザゼルさん。

 

「・・・・・・心配してくれてありがとうな。」

 

 そのあと出てきたのは・・・彼にしてはやや弱気な感謝の言葉だった。

 

「巧の奴の命を救えて本当に肩の荷が下りたぜ。だが・・・それはきっと一時的なんだろうなって思っている。あいつは戦う道を選んだ。戦う定めにあるんだよ。あいつらは。それがあいつの受け継いだ「救世主」の資格なんだろうよ。」

 

「救世主・・・そうか先代のファイズ。まさか・・・・。」

 

 ロダンも聞いた事があるらしい。先代のファイズ。

 

「そうかお前の義理の息子はあいつの・・・。」

 

「知り合いなのか?」

 

「・・・また話してやる。ここで話すのは止めた方がいいだろ?」

 

 それが何と呼ばれていた事に。僕も実は知っていた。

 

 そして、巧君がその・・・息子であることも。

 

「あとでお前さんのバーの行き方を教えてくれ。」

 

 ぽつりとそう漏らすアザゼルさん。

 

「ふん。勝手に来ればいい。客なら拒まん。」

 

「私もそうさせてもらいましょう。ふふふ・・・人間界のバーに私達が行きつけのバーが出来るというのも乙です。ダンテさんも来るのでしょ?」

 

「ああ。またストロベリーサンデー頼む。」

 

「お前はそればかりだな・・・。」

 

 バーになぜストロベリーサンデーが置いているのか謎だ。

 

 ダンテ様はストロベリーサンデーに何か愛着でもあるの?

 

「俺のバーがどんどん人外の溜まり場になってきたぞ。」

 

「人外って失礼ね。」

 

「事実だろう。魔王連中も良く来る。普通の人間も来るから気をつけてくれ。」

 

 と・・・大人連中でなんか盛り上がっている。

 

「そうですか。」

 

「あなたも気をつけなさい。って・・・そう言った事にはなれているか。」

 

「まあ。今なら私もある程度戦えますから。」

 

 キリエさんはパティさんと話しこんでいる。お酒を手にして。

 

「・・・本当にあなたなら天使と言って納得できるわ。なんであっちの天使はあんなゲテモノばかりなのかしらね?まあ・・・二天龍をまとめて相手にして勝った猛者相手ならこっちも流石にまともに戦いたくないわ。」

 

「いえ、勝ったわけじゃなく、ただ喧嘩を止めただけです。」

 

 ジャンヌさんはキリエさんをマジマジと見てつぶやく。

 

「そうそう・・・ユウナはどうかしら?愛しの彼を手篭めにしている?」

 

 ベヨネッタさんも愉快そうにキリエさんに話しかけてくる。

 

「う~ん。アピールは頑張っていると思います。誘惑もうまいと思いますが・・・まだ一線を越えていないような・・・。」

 

「ちょっとキリエさん!!」

 

 顔を真っ赤にさせるユウナ。まあ図星だよね。

 

「ユウナ、もっと頑張りなさい。あなた・・・このために今まできつい修行に耐えてきたのでしょ?」

 

「はい・・・。どうもエッチな方面に知識が無くて。今クラスメイトに教えてもらっています。世界ってすごく背徳的なんですね。」

 

『・・・・・・。』

 

 その言葉を聞いた他の女性陣は悟る。

 

 あかん。このままじゃ色々と不味いと。

 

「・・・よし。しっかりと教えてあげよう。間違ったまま突っ走られたらこっちが怖いわ。」

 

 レディさんの一言でそれが決まる。

 

「そうね。修行ばっかでそっちを教える暇なかったのは失敗かも。」

 

 パティさんはユウナのことを小さい頃から知っているらしい。なんか色々と反省している。

 

「知的好奇心、旺盛でよかった。あなたに色々と教えてあげる。」

 

 トリッシュさんが何やらタブレットを取り出したぞ。

 

「もう・・・年頃なんだし・・・いいわよね?ふふふ、この夏であなたは女になるのよ。」

 

 ベヨネッタさんがいたずらめいた笑み。

 

「はあ。弟子にこんな事を教えることになるとは。でも余裕も必要か。」

 

 ジャンヌさん・・・軽く嘆いている?

 

「ねえねえ・・・ユウナお姉様に何を教えるの?私も教えて欲しい!!」

 

 テレサが興味深そうに聞く。

 

『・・・・・・。』

 

 ユウナさん以外は顔を見合わせる。

 

 そしてパティさんが動く。

 

「テレサ・・・ごめんね。」

 

 にこやかに彼女はいう。

 

「ここから先はR指定だから。」

 

「ぶっ!?」

 

 そのセリフに何故かダンテ様が吹いたぞ?どうして?

 

『クスクス。』

 

 そしてレディさんとトリッシュさんが笑っている。

 

「パディ・・・お前な・・・。」

 

「あの時私に言ったじゃない。結局その後でR指定を見ちゃったけど。」

 

 なんかこの二人の馴れ初めとかすごく興味あるかも。

 

 その前にR指定ってなんだ?

 

 どっちの意味でのR指定?

 

「ほら、テレサちゃん。」

 

 巧君がテレサに声をかける。パティさん達の助太刀なのだろう。彼はなんだかんだ言ってこういう場で適切に動くことが・・・。

 

「あー!!そうだった。あなたに言いたい事があるの!!あのね・・・。」

 

 テレサちゃん・・・巧を見てなにかを思い出したらしい。

 

「シ―グお姉さんの事であなたに言いたい事があるの!!」

 

「・・・シ―グのことで?なんのことだ?」

 

 巧君・・・君は鈍感だよ。

 

「はあ・・・巧さんはシーグお姉さんを可愛そうだと思わないの!?」

 

「だからどうして可愛そうなんだ!?」

 

「・・・もう、どうして男って鈍チンが多いの!!」

 

「おいおい、何をいっている!?何で俺が責められないといけない?」

 

 巧君が押されている。

 

 テレサちゃんの説教の勢いは止まらない。

 

「・・・ふう。」

 

 そこでネロ君が席を立つ。

 

「少し風にあたってくるわ。」

 

 そう言って彼は席をたった。

 

「・・・なるほど。」

 

 僕は悟る。ダンテ様もまた席を立っていたからだ。

 

 ネロが席をたったのはそのためだろうと。

 

 僕は立ち上がり、ネロ君の姿を探した。

 

 

 

 

 SIDE 巧

 

 俺はテレサちゃんの追求から逃げるように席をたった。

 

 なんでシ―グのことであそこまで責められる?

 

 まあ、別れの時・・・「俺はもう長くはない。」って真実は告げた。

 

 それでシ―グの奴は「せいぜいがんばりなさいよ。」といった。

 

 なんかすごい涙目だったけど。

 

 あいつに助かったことを正式に報告していなかったのは流石に悪かったか。

 

 まあ、冥界にいる間に合いにいって・・・。

 

 その前にネロだ。

 

 一体何が・・・。

 

「よお。騒がしかっただろ?」

 

「・・・ああ。愉快すぎるくらいにな。」

 

 城の窓辺で、ネロ・・・そしてダンテ様が並んでいた。

 

「・・・色々と巻き込んでしまったな。」

 

「その事に関しては別にいい。むしろ俺を助けてくれたんだろ?」

 

「ああ。おかげで兵士の駒全部使っちまった。お前なら元は十分取れるがな。」

 

 二人は語り合っている。そのやりとりをつい立ち止まって聞いてしまう。

 

「・・・あんたも回りくどいな。そんなに話すのが怖いのか?らしくもない。」

 

 ネロがそんなやりとりの後苦笑する。

 

「・・・そう言うお前は、少し余裕が出てきたか。いい傾向だ。」

 

 ダンテは軽く肩をすくめる。

 

「ああ・・・怖いね。何しろ死んだ、いやある意味俺がこの手で殺した俺の双子の兄の話をすることになるからな。」

 

「・・・それが俺の親父か。」

 

 それは・・・ネロの父親の話だった。

 

「そうだ。お前の父親はバージル。俺の双子の兄だ。」

 

 ダンテ様は語る。

 

 ネロの父親の話を。

 

「俺とあいつは母親・・・まあお前のばあちゃんの死をきっかけに道を違えた。俺は人の心を持っていく道。バージルはひたすら力を求める道。そして、魔界への道を開く扉で俺達は決別した。あいつは魔界へ・・・。」

 

 ダンテ様は簡潔にだが語る。

 

「そのあとの再開は・・・魔帝に悪魔に改造されたあいつだった。俺は・・・この手であいつを倒した。」

 

 そしていう。

 

「ある意味俺は・・・お前の父の仇になる。」

 

「・・・そうか。ならこの闇魔刀も・・・。」

 

右腕の悪魔の腕から刀を取り出すネロ。

 

「ああ。俺の親父。そしてバージルへと受け継がれたものだ。そう言った意味ではお前がそれを手にするのは正しい。俺の親父が残したあれも・・・テレサが受け継いだしな。」

 

「そうか・・・。」

 

 ネロの手にしている刀は彼の力の源の一つ。空間すら切断する刀。その刀はスパーダ由来とは聞いていた。だが・・・そのスパーダから息子、そして孫へと受け継がれていた物とはさすがに思わなかったが。

 

 そしてもう一つの剣。それが何かも俺は知っている。

 

「・・・その魔帝はお前がぶっ倒したんだろ?」

 

「ああ。あいつの手引きでお袋も殺された。仇は取れたがな。また復活するかもしれん。」

 

「そうか。なら復活した時は俺もあいつをぶちのめす権利があるというわけか。楽しみだぜ。・・・二度と復活できないようにしてやる。」

 

 ネロは獰猛な笑みをうかべる。

 

「お前・・・。」

 

「あんたを父親の仇とは思わねえよ。ただ俺の親父も自分なりの道に殉じた。それだけだろ?」

 

「・・・ああ。その結果の悲劇だがな。」

 

「あんたも自分の道を進んでいる。後悔もすべて飲み込んで。それならそれでいい。俺も進むべき道は見えている。」

 

 ネロは言う。

 

「俺は・・・大切な奴らを守るためにこの力を使う。元々この腕がこうなったのもキリエがきっかけだった。だから、その力を使う理由も似たようなもんだ。少々派手に・・・楽しんで暴れさせてもらうぜ。」

 

 それを見たダンテ様は茫然としていただろう。

 

 俺だって驚いた。

 

 その笑みは・・・そのダンテ様にそっくりだったのだ。

 

 つまりそれは、双子の兄である・・・。

 

「・・・ったく。やっぱお前ら親子だわ。一度道を決めたら頑固なまでに一途。本当に面毒臭い奴らだぜ。」

 

 悪態付きながら、後ろを向くダンテ様。何故か夜空を見上げている。

 

「お前はそのまま突き進んで行け。それだけで十分だ。」

 

「・・・おいおい。そんなのあんたに言われるまでも無い。」

 

「・・・その道で大切な人を絶対に守ってやれよ。」

 

 その言葉にネロは足を止める。

 

「俺はもう、死ぬことはできない。情けない話だが、娘が生まれてしまってからそうなったんだわ。死んだら・・・、そしてパディを死なせたらあの時の俺を同じ悲しみを味あわせてしまうってな。情けねえ。俺も歳とったわ。」

 

「・・・・・・やってられねえぜ。」

 

 ネロはため息をつきながらダンテに背を向ける。

 

「そんなの当たり前だろうが。」

 

 頭の後ろで腕を組みながら彼もまた夜空を見上げて言う。

 

「俺にはもう父親も母親もいねえ。だが・・・何となく分かるぜ。あんたもなんだかんだ言って父親やってんだなってな。そうでないとそのセリフはでないぜ。」

 

「そうか。」

 

 ダンテ様はその言葉を嬉しそうに受け取る。

 

「俺の道・・・そこで守るべき大切な奴らの末席でよかったらダンテ、あんたも入れておくぜ。一応、血縁でもあるしな。」

 

 ネロはそのまま立ち去ろうとする。

 

 照れくさいセリフを言ったからだろう。

 

 足早にその場を後にしたいはずだ。

 

 だが、あえて・・・あえてダンテ様は呼びとめた。

 

「そうそう、ネロ。」

 

「あん?まだ何か用かい?」

 

「お前とキリエの結婚式の時は俺達が全面プロデュースしてやるから安心しな。」

 

 ネロ・・・ずっこける。

 

 先程までの空気がぶっ壊れた。

 

「あのな・・・。」

 

「おいおい。せっかくの俺の身内の結婚式だぞ?せっかくならスタイリッシュにしたいじゃねえか!」

 

「いらんわ!!あんたがプロデュースする結婚式ほど恐ろしい物はねえ!!」

 

 ・・・その気持ちわかる。

 

 ダンテ様のプロデュース。そうなると他の眷属達も全員ノリノリ。

 

 それだけでも十分恐ろしい。

 

 そこに交友関係のある俺の親父や他の魔王様達がやってくると・・・。

 

「なんだよ。せっかくの晴れの舞台。派手にやらないと。」

 

「そんなのいい!!そんなの俺もキリエも望まん!!」

 

「言うね。ならお前とキリエの結婚式はどんな感じだ。」

 

「そりゃ・・・教会で楚々で身内だけ集めてやる感じがいい。あいつもそう言うところ控え目だし。ドレス位はいいのを用意したいからそっちの方向で頼む!!」

 

 ネロ。お前どさくさにまぎれてとんでもない部分でお願いしているな。

 

「ふっ、いいぜ。それじゃ、プロポーズの言葉も考えているのか?」

 

「ああ!!考えているとも!!最高に生かした言葉をな!!」

 

「是非聞きたい物だな。ならあっちにキリエがいると思って言ってやれ。」

 

「ああ、よく聞いておけ!!」

 

 おっ・・・おいネロ!!そっちには・・・。

 

 よりによってその人に両肩に手を置く。

 

「キリエ・・・。」

 

 ネロ・・・全然気づいていない。きっとそうそう考えていたんだろう。

 

 目の前の相手を空想の産物だと思っていやがる。

 

「お前の事をずっと大切に思っていた。この悪魔の力もそうだ。その想いに応えるようにして発動したんだ。」

 

 なんてこった。なんで・・・俺はこんな大変な現場を目撃してしまう!?

 

「お前の事・・・これからも大切な、最も愛しい人としてこれからもずっと一緒にいたい。こんな俺でよければ・・・ずっと、俺の妻として傍にいてくれ。」

 

『・・・・・・・・。』

 

 ダンテ様も流石に頭を抱えてしまった。

 

「・・・・oh。予想外に情熱的だな。しまった、やり過ぎたぜ。」

 

「あっ・・・あのな!!こっちだって恥ずかしい・・・えっ?」

 

 そこでネロ、ようやく気付きやがった。

 

「・・・・・・・。」

 

 顔を真っ赤にして呆けた・・・キリエさんの姿に。

 

「パクパクパクパク・・・。」

 

 ネロは初め何が起きたのか理解できなかっただろう。

 

「だっ・・・ダンテ・・・。」

 

「すまん。流石にこれは想定外だ。ここまでマジなプロポーズを用意していたなんて。」

 

 ダンテ様の動揺から見て・・・あれはマジだ。

 

「・・・あっ・・・その・・・。」

 

 キリエさんがおずおずという。

 

 涙目になぎながら・・・。

 

「こんな私でよければ・・・。」

 

 と返事をしてきたのだ。

 

「ネロが学校卒業したら・・・教会で式をあげたいです・・・。」

 

「あっ・・・ああ。」

 

 成り行きで、プロポーズ・・・成立しただと!?

 

 そんなネロの肩をクレドさんが叩く。

 

「・・・ネロ。いつかこの日が来ると思っていた。だが、それが今だと誰が思ったか。」

 

「あのな・・・クレド。」

 

「何も言うな分かっている。ダンテ様・・・。」

 

「ははははは・・・はあ。やらかしてしまったが、結果オーライじゃねえか?」

 

 どうしてこんな事になったのか?クレドさんはお見通しのようだ。

 

「・・・ネロ君。娘をよろしくお願いします。」

 

「あっ・・・ああ・・・その・・・。」

 

「私のことは義父様と呼びなさい。いいですね。」

 

「はあっ!?ちょっ・・・。」

 

「そうしないと結婚は認めませんので・・・。」

 

 ネロ・・・大ピンチ。ミカエルさんに「義父様」と呼ぶ事になったことで!!

 

「ははははこれは愉快。」

 

『どわ!?』

 

 そこで渡の奴が天井からぶら下がるような形で登場。

 

「ふっ・・・俺を驚かせるか。強かだが、中々クレイジーな奴だぜ。」

 

「おい・・・渡。何でお前、スマホを?」

 

「めでたい事じゃないか。ネロとキリエさんの婚約を動画付きで保存したんだ。いや・・・これで言質はとった。」

 

 あいつ・・・ネロのプロポーズをスマホで録画したのか!?何とタイミングのいい。

 

「その録画消してやる!!」

 

「へっ?」

 

 ネロが右手を巨大化させて渡を捕獲、妨害しようとするが・・・天井から綺麗に降り立ってその手をすり抜ける。

 

 見事だ。

 

「・・・あっ・・・黒歌さんにメールに添付しやって送っちゃった。」

 

「えっ?」

 

「本当なら添付するつもりはなかったのに・・・。」

 

 どうやら渡は黒歌にメールを送るつもりで書いていた最中だったらしい。

 

 そこに突然の攻撃にびっくりし、操作をミスして・・・先ほどの動画をメールに添付しておくってしまったのだ。

 

「NOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!?」

 

 送った相手が最悪だった。

 

 他の連中ならいい。

 

 だが、相手は黒歌だ。このスパーダ眷属と色々な意味で染まりそうな程のいたずら好きな猫。

 

 こんな面白い事態を見逃すわけが無い。

 

 絶対に皆に回す。広めまくるはずだ。

 

 こうやってネロとキリエさんの婚約騒動は瞬く間に全員に伝わる事になる。

 

「・・・まあ、覚悟して祝福されろ。渡があんなことをするなんて想定外もいい所だ。」

 

 俺はネロにフォローをしてやる。

 

「ごっ・・・ごめん。」

 

 渡もひざをついて茫然としているネロに謝っている。

 

 だが、ネロはなんとも言えない様子。

 

 っていうか・・・あの騒動でぞろぞろとのぞき見していた連中が現れる。

 

 って・・・眷属全員!?

 

「キリエさん!!おめでとうございます!!そしてブーケトスの時はウィッチタイムを使ってまでも私がゲットします。」

 

 ユウナがキリエさんの両手を握って祝福。己の欲望もだだ漏れだったが。

 

「あらあら。まあ私も悪魔と天使に蹴られるのは癪だし、余計なことは言わないわ。でも祝福だけはさせてもらおうかしら。」

 

「・・・ドレス。一緒に見つくろいましょうね。最近「ヒナ」という新人デザイナーがいてね。その子が御勧めかな?その子を探し出して・・・。せっかくだから翔太郎にも動いてもらおうかな?探偵なんだし、探し出してくれるよね?」

 

「うん・・・どこにいるのかしらね。あちこち旅をしているデザイナーらしいし・・・見つけたら是非に。」

 

「是非捜索させましょう。大義名分はあるんだし。」

 

「・・・普段なら止めるところだが・・・今回は私も賛成だ。こっちの知り合いにもさがさせよう。」

 

 他の五人・・・ひそひそと作戦会議。

 

 そして・・・。

 

「キリエさん。今からゆっくりと打ち合わせを。」

 

 ベヨネッタさんが・・・キリエを拉致。

 

「あなたに似合うドレスを来てもらうためにその「ヒナ」って人を探すわよ!!」

 

「えっ・・えええぇぇ!?」

 

「すまないネロ。キリエ殿を借りて行くぞ。」

 

「黒歌にメール・・・メールっと。暇なら一緒に付き合ってもらおっと。既婚者の意見もほしかったし。」

 

「ならグレイフィアとセラちゃんにも声をかけるわね。ふふふ・・・みんな巻き込むわよ!!」

 

 そのまま拉致されていくキリエさん。

 

「こりゃ、もう一飲みする必要が出てきたなダンテ。」

 

「ああ。ミカエル、お前も飲むか?」

 

「ええ。でも、感慨深いものです。これでクレドさんにもいい人が見つかれば安心ですが。」

 

「・・・私は当分そんな事はないと思います。ああ・・・妹の花嫁姿を見る日がついに・・・。」

 

「ふん。今日は忙しい。」

 

 渋い男達はそのまま戻る。

 

「・・・ははははは・・・おれ・・・どうなる?」

 

 学校卒業後・・・結婚式を挙げる事が決まったネロであった。

 

「・・・愚痴位はきいてやるぜ。」

 

「うん・・・本当にごめん、」

 

 俺は・・・友のために一肌位は脱ごうと決意した。

 




さて・・・色々と事件が巻き起こる歓迎。

 残る二つの家も・・・事件もちろん起きます。!!


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一生懸命歓迎されます!!  バアル家 グレモリー家編

 さて・・・残る二つの家。

 ここでももちろん事件が起こります。

 最後はある意味最悪かもしれない。


SIDE 鋼鬼。

 

「・・・ほう。」

 

 俺は黒歌のスマホに渡から送られてきた動画を皆にも見せる。

 

「これはめでたいが・・・これは・・・。」

 

 サイラオーグの奴も察しているだろう。

 

 これはおそらく事故だと。

 

「にゃはははは・・・でも、いつか言おうとしていたみたいにゃ。結果的はそれをダンテ様が後押した形にゃ。明日、ユウナ達とそのドレスを見つくろいにいってくるにゃ。しかし・・・ヒナって誰の事にゃ?」

 

 あいつのことだ。引くに引けない状態だろう。

 

「にゃふふふ・・・他のみんなに送信してくれ?ユウナちゃんも中々の悪よのお・・・にゃふふふふふふふふふふふふ・・・。」

 

『・・・・・・。』

 

 その後ユウナから送られたメールを見て嬉々として、そのミッションをこなしていく黒歌。

 

 我が妻ながら、スパーダ眷属と交流を始めているな。

 

「冥界のお祭り騒ぎはまだ続くな。」

 

「ああ。」

 

 サイラオーグと語らいながら酒を飲む。

 

「合宿・・・お前の眷属も連れて行くのだな?」

 

「俺達の眷属の底上げにちょうどいい。」

 

「眷属全員・・・お前を含めてこっちが出した課題をクリアしているとはな・・・。」

 

 俺はサイラオーグに彼に眷属用のトレーニングメニューをあらかじめ渡していた。

 

「・・・鬼って凄まじいですね。」

 

 あいつの女王であるクイ―シャ・アバドンは遠目になって振り返っていた。

 

「にゃはははは・・・もうすぐで鬼になれるところまでは鍛えたれたみたいね。」

 

「はい。まったく・・・王が非常識だから私達もそれに習わないといけない。」

 

「そもそも修行はお前が言いだしたことだろう?」

 

「私達全員、あなたに付いていくと決めているのです。そのために苦労はしましたが・・・。」

 

 鬼の修行・・・やっぱりきつかったか。

 

 それでもこいつら・・・それに耐えきるだけのものがあった。

 

「俺の義妹と一緒の合宿だ。こっちもさらに高みを目指すべくやらせてもらうぞ。」

 

「それはこっちのセリフだ。」

 

 俺達は本当に拳を軽くぶつけ合う。

 

「残念なのはあの愉快な男がここにいないことか。ミカエル殿を迎えにいかないといけないらしくて。」

 

「・・・天界の二枚のジョーカーの片割れか。あいつも出世したものだ。」

 

 サイラオーグの言うとおり、あいつがやってきているらしい。しかも・・・。

 

「天界も仕事が早い。転生天使をもう生み出したか。しかもジョーカーをすぐに二人用意して。」

 

 対象者はすぐに決めていた。

 

 そうして天使となった天界の二枚の切り札。その片割れは同じく天使になった妹と共にやってきている。

 

 実質的に天界三枚目の切り札となる彼女と共に。

 

「・・・イッセ―の奴が聞いたら驚くぞ。あいつは俺が知る限り誰よりも精神的に強い。」

 

 あの精神的な強さは俺達でさえ敬意を払うほどだ。

 

「ああ。よく立ち直ったものだ。さあて、神様候補達に負けないように頑張ろうか。」

 

「ただいま兄様!!」

 

 その時・・・あいつの弟、アスフェイが戻ってくる。

 

 あちこちボロボロで。

 

「・・・無我夢中でやったな。」

 

「もうすごく面白くて。」

 

「・・・鍛えがいありますよ。もう分身の術をマスターして。」

 

 分身の術だと?

 

「ちなみに本物はこっち。」

 

 後から入ってくるアスフェイ。

 

「驚いた?」

 

「あっ・・・ああ。」

 

 完璧にだまされた。

 

「・・・恐ろしい子。」

 

 サイラオーグも面喰らっているぞ。

 

「こっちも滅びの力が無い分は色々と補うぞ!!」

 

 修行に燃えている彼。

 

 あの歳にしては十分すぎる・・・いや、異常と言える実力だぞ?

 

「ふふふ、兄弟揃って滅びの力はないが、あいつにはそれを補って有り余る物があったな。忍びの才能と言う・・・。」

 

 サイラオーグの言うとおりだ。

 

 この子、忍びの力はないがそれを補って有り余る才能を持っている。

 

 だが・・それが開花したのにはもう一つ要員がある。

 

「兄であるお前の背中を追いかけてきたのもその理由だろう。違う道、違う方法でやるあたり、己の可能性に気付いているようだ。」

 

 そこにはサイラオーグの背中を見て、それに負けないようにしたい。その背中に追いつきたいという思いがある。

 

 現にアスフェイは強くサイラオーグを慕っている。

 

 目指すべき背中として。

 

「・・・成長し、鬼の力も得る日が楽しみだ。あいつ・・・冥界に忍軍を作るのが夢の一つだと言っていた。」

 

 サイラオーグは楽しみらしい。

 

 弟の成長を。

 

「・・・うっぷ。ちょっとごめんにゃ。」

 

 そこで何故か黒歌が気持ち悪いと言って席を外す。

 

 そう言えば昨日からそういう傾向がみられる。

 

 何があった?

 

「・・・・・・あれ?こういった症状どこかで見たような・・・。」

 

「合宿は大丈夫なのか?」

 

「本人は平気だと言っている。まあ、無茶はさせんつもりだが・・・。」

 

 黒歌の体調が心配である。黒歌はすでに鎧化に至っている。今回はそこまで無理させないつもりだが・・・。

 

「・・・すまん。クイ―シャ、すまないが彼女の様子をみてくれないか?」

 

「えっ?・・・あっ、はい。任せてください。」

 

 何やら黒歌の様子を見て考え込んでいたクイ―シャはサイラオーグの言葉に頷き、後を追う。

 

 どうも、その症状に心辺りがある様子だ。

 

「・・・すまないな。」

 

「いいことだ。」

 

 礼ついでに俺はあいつに言ってやる。

 

「彼女の思いどうするつもりだ?」

 

「・・・・・・。」

 

 その言葉に押し黙るサイラオーグ。

 

 その彼女とはもちろんクイーシャのことだ。

 

「見ていればわかる。まあ・・・余計な節介なのは自覚しているがな。」

 

「ふう・・・気付いて入る。だが俺はまだ次期当主だ。」

 

 聞いていてなんだが、まだ応じない理由も何となく分かってはいた。

 

 今のままじゃ応えられないと。

 

「・・・彼女の気持ちに応えるためにも夢に早く叶えろ。俺も応援してやる。

後ろ盾になってやるから。」

 

「言ってくれるな。だが、お前の後ろ盾は心強い。」

 

 俺達は乾杯をする。

 

「・・・しかし、うまい。お前のパートナーが作った酒は本当にいいな。」

 

「そうだろ?」

 

「俺もお前みたいなパートナーが欲しい物だ。」

 

 サイラオーグは酒をあおる。

 

「その獅子がいるだけでも十分なのにか?」

 

「・・・お前、レグルスの事を・・・。」

 

「ふっ・・・何となくな。鬼のためのメニューもどうもおかしかった。だが、あいつがあれなら説明が付く。まったくとんでもない切り札をもっているな。」

 

「ああ。だが、これはバアル家の重要機密だ。」

 

「わかっているさ。」

 

 外交問題にもなりかねないが・・・まあいいだろう。この程度で驚いていたら身が持たん。

 

「・・・あと、お前に伝えておくことがある。」

 

 サイラオーグは酒を飲みほした後に告げる。

 

「お前の奥さんの命を狙うやつがいる。」

 

 それを聞いただけで・・・十分だった。

 

「・・・どいつだ?」

 

 俺はグラスを粉々に握りつぶしながら問う。

 

 黒歌を狙う奴がいる。

 

 せっかく幸せになったあいつを不幸に陥れようとする奴がいる。

 

 許せるわけが無い。

 

「・・・落ちつけ。まあ・・・お前ら本当にいい夫婦している。」

 

 サイラオーグは不敵な笑みを浮かべる。

 

「俺の総てを賭けてでも、そんなの許すわけが無いだろう。」

 

「・・・ありがとう。」

 

「おう。」

 

 俺達はまた飲む。

 

 後で一緒にその不届き物にお仕置きしないとな。

 

――――――・・・面白い男達がいる物だな。

 

 そこに突然声が聞こえてきた。

 

『!?』

 

―――――鋼鬼。奴は鏡だ。

 

 ヤマタの声に俺達は窓を見る。

 

 そこには・・・白に蒼い縞が入った虎のような奴がいた。

 

――――契約者がいたのか・・・ふん!!

 

 それは姿を現す。

 

 人と同じような四肢。だが、腕には鋭い五本の爪が付いた手の甲となり、全身の体格もサイラオーグにも負けないくらいにだ。

 

「初にお目にかかる。我が名はデストワイルダー。契約者に足る猛者を探しあちこちを放浪している。」

 

 こいつ・・・ミラーワールドのモンスターか。

 

「クレア達の知り合いか?」

 

「クレア?」

 

「ドラグレッターのことだ。」

 

「ほう・・・知っているのか?」

 

「知っているも何もそいつの契約者は俺の弟分だ。妹のドラグブラッカ―も一緒だ。」

 

「我と互角のあいつが契約?それにあの妹まで。奴も面白い御仁をみつけたようだ。」

 

 なっ・・・何?

 

 あいつ・・・無双龍クラスの実力者だというのか!?

 

「それは良い事聞いたぞ。」

 

 サイラオーグが上着を脱ぎ捨てて歩き出す。

 

「お前・・・俺と拳を交えてみないか?」

 

「・・・何?」

 

「俺はお前のような奴を探していた。その力の身を信じる覇気、そしてにじみ出る強さ。総て申し分ない。」

 

 サイラオーグは拳を突きつける。

 

「その拳で語り、気にったら俺と契約してくれないか?」

 

「・・・なるほど。我がお前が契約に値する猛者かどうか確かめてみろということか。だが、何故力を求める?」

 

「ふっ・・・夢のためだ。この悪魔の世界を「実力と志」のある者にふさわしい実力社会に変えたい。その夢のための力を欲している。」

 

「我の力を夢のために使うというのか?」

 

 デストワイルダーは唖然としている。

 

「そのために俺は拳一つでここまでのし上がってきた。それが答えだ。」

 

「・・・・・・そうか。」

 

 デストワイルダーは驚いているらしく茫然としている。

 

「いいだろう。個人的にお前の奴は嫌いではないぞ!!」

 

 デストワイルダーが構える。

 

「名乗れ。少なくとも名を聞く価値がある御仁だ。」

 

「サイラオーグ・バアル。魔力を持たない身に生まれ、拳一つで次期当主にまで登りつめた男だ!!」

 

 サイラオーグは手にした音叉を鳴らし、額に当てる。

 

 すると鬼の顔が浮かびあがり、その全身が炎に包まれる。

 

 そして炎の中から・・・鬼が現れる。

 

 それは茶色の肌に黒く長い髪をした鬼。

 

 彼に俺は鬼としての名前も送っている。

 

 その名は獅鬼(シキ)

 

 獅子のごとき鬼故に、それが送ってやった名前だ。

 

「・・・ほう。面白い。」

 

 2人が構えるが・・・。

 

「待った。」

 

 俺がその間に入って一度止める。

 

「・・・場所を変えろ。お前達がぶつかると屋敷が粉々になる。」

 

 そう言って親指で二人に外に出るように促す。

 

「・・・ああ。すまない。お前もそれでいいか?」

 

「ふっ・・・いい友がいるようだな。」

 

 幸いにも二人ともそれを聞き届けてくれる。2人とも相当猛っているから流石に冷や冷やしたが、止めれてよかった。

 

 場所を変えないと被害がどれだけでるか想像できんぞ。

 

 この二人を止めるのならこっちも全力をださないといけない。

 

 そうなったら、戦いの余波だけで屋敷が崩壊するぞ。

 

「ついでに見届け人になってやる。俺にその資格はあるか?」

 

『上等!!』

 

 俺は二人と共に窓から飛び出す。ちなみにここは四階だが、それがどうした?

 

 そんなの問題なく着地できる。

 

 何しろ俺達は・・・。

 

『鍛えていますから。』

 

 ・・・俺のセリフをサイラオーグとデストワイルダーに取られてしまったのが悔しい。

 

 

 

 

 

 

SIDE 黒歌

 

 うう・・・気持ち悪いにゃ・・・。

 

「あの・・・大丈夫ですか?」

 

 クイ―シャがこっちに話しかけてくる。

 

「うん・・落ち着いた。」

 

 そして、その子は私を真剣なまなざしで見る。

 

「あの・・・もしかして、黒歌さん。あなた・・・。」

 

 ・・・やっぱりばれてしまったか。

 

「うん。察しの通りにゃ。」

 

 多分まだ一か月もたっていない。

 

 ほんの初期にゃ。

 

「・・・まだ言わないのですか?」

 

「正直言うのは少し怖いにゃ。」

 

 私も今日初めて知った。

 

 冥界行きの列車の中で使った検査薬でも陽性。

 

「・・・でも、言う。この合宿が終わった後に。」

 

「・・・ご自愛してください。」

 

「気遣い感謝。」

 

 いつ言うかにゃ~。

 

 正直色々と覚悟がいる。

 

 でも・・・。

 

 私が悩んでいた時だった。

 

 突然・・・爆発のような轟音が轟いてきたのだ。

 

「にゃっ・・・にゃに!?」

 

 それは外からだった。

 

 私達は外に出てみると。

 

「・・・丁度よかった。黒歌、結界頼む。」

 

『うおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!』

 

 鬼に変身したサイラオーグさんとなんか虎が人型になり、そのまま恐ろしい程マッチョになったような奴と殴りあっていた。

 

「なっ・・・何これ?」

 

 そしてサイラ―グさんが殴り飛ばされる。

 

「サイラオーグ様!?」

 

「フハハハハハ!!流石だ!!俺と正面から殴りあえる奴はそうそういないのでな。楽しいぞ!!これでもまだ力不足とはな。」

 

「それはこっちのセリフ。いい・・・いいぞ!!お前の力・・・信念、そして全力を俺にぶつけてみろ!!お前の全力を俺は受け止める用意がある!!」

 

「・・・いいだろう。レグルス!!」

 

 サイラオーグさんの傍に仮面をつけた謎の少年が現れる。

 

「さっ・・・サイラオーグ様!!まさか全力でいくつもりですか!?」

 

「ああ!!この戦いを死戦と断定する!!それくらいしないと失礼だ!!」

 

「上等。お前の全力・・・見せてみろ!!」

 

 どんどんヒートアップしていく二人。

 

「黒歌。結界を張ってやれ。秘密にしてやったほうがあとあと面白そうだ。」

 

「・・・すまねえ。」

 

「いいってことだ。俺もお前の全力をみたいのでな。」

 

 鋼チン・・・すっかり燃えている。本当に男の子って馬鹿ねえ。

 

 嫌いじゃにゃいけど。

 

 あたしは鋼ちんの言葉に頷き、急いで結界を展開。

 

 そして、私は・・・とんでもない化け物同士の死闘をみることになる。

 

 いつから私の周りにはこんな馬鹿みたいに強い連中ばかりになったのだろうかねえ。

 

 この後私は急いでアーシアを呼び出したのは言うまでも無いにゃ。

 

 向うも向うでとんでもないことになっていたけど。

 

 

SIDE イッセ― 

 

 さて・・・怪物ぞろいの部長の眷属参上となりました。

 

「・・・うむむむむ・・・本当にすごいな。これでまだ原石だというのが信じられん。」

 

 部長のお父様はまじまじと俺達を見る。

 

 それだけならまだいいかもしれない。

 

「あなたもそう思うか。リアス殿の眷属は俺から見ても将来有望。まあ、我が好敵手であるイッセ―はまた格別だが。」

 

 その家に何故か堂々とヴァ―リがいるとなるとなあ。

 

「・・・屋敷に二天龍とその家族が勢ぞろい。」

 

 グレイフィアさんがすごく頭痛そうにしている。

 

 その足元では相棒達の娘が遊んでいる。

 

 そして剣崎さんは・・・傍のソファーで呑気に寝ている。

 

 緊張の欠片もない。ある意味大物だ。

 

「仕方ないだろう。相棒の娘達がそっちの娘達と姉妹みたいな状態になっているのだから。」

 

 ずっと一緒にいるのが当たり前になっている。

 

 ヴァ―リの奴。意外と子供には甘い。

 

「・・・本当にすごいな。」

 

「まったく、イッセーがどんなやつが期待していたが・・・ある意味想像を超えていたぞ。ってお前ら俺で遊ぶな!!」

 

 腕だけとなったアンクがあの子達に遊ばれる光景。

 

「・・・そっちは本当にすごいことになっていたんだね。」

 

 エイジ兄さんと色々とからたっていた。

 

 はあ・・・そうか。

 

 エイジ兄さんまで人間をやめていたのか・・・。

 

「ふふふふふ・・・。やっぱり人外だったわ。でも、その程度で私は驚かないわ。」

 

 部長はなんとか持ちこたえている。

 

「でも・・・私はヒナさんに驚いていますわ。あの・・・。」

 

「私って冥界でそんなに有名なの?」

 

 新鋭ファッションデザイナー。それがエイジ兄さんの同行者であるヒナさんだ。

 

「有名ですよ。あっ・・・実は知り合いのドレスを作って欲しいという依頼がありまして。」

 

 朱乃さんがヒナさんに頼み込んでいる。

 

「えっ?私がドレスを?」

 

「しかもウェディングドレスです。」

 

「・・・うむ。誰が着るのか、それをまず確かめたいねえ。」

 

 黒歌からのメールはばっちり届いていた。

 

 うん・・・。

 

 ネロ。

 

 末永く爆発しろ!!

 

「それでエイジ兄さんたちはグレモリー家にやっかいになっていると。」

 

 エイジ兄さんはミリキャスたちのピンチを助け、客人として招待されていたのだ。

 

「・・・どうやら、リアス。君の運命という名の才能はここでも発揮されているようだね。」

 

「はい。私は今後どれだけイッセーの幼馴染に出会えるのか、むしろ楽しみになってきました。」

 

「・・・その開き直り、わが娘ながら天晴れよ。」

 

 部長の父様と母様が慰めている。

 

「私の眷属も全員がイッセーと間接的にですけど関わりがあることが判明しましたしね。もう私は開き直りました。このメンバーなら大抵のことはなんとかなると。」

 

「・・・リアス。たくましくなって。」

 

 二人共涙目になっている。

 

「私たちからしたら本当に卒倒するかと思ったわ。あなたとんでもない子達を眷属にしたから。」

 

「・・・その筆頭がイッセーか。」

 

 ・・・俺のせいなのね。

 

「仕方ないだろう。二天龍の力を持つということはそういうことだ。」

 

 開き直るのは俺のほうだ。

 

 せめて・・・せめてもう死なないようにしたい。

 

「・・・ともに頑張ろう。」

 

 ヴァーリが俺の肩に手を置いて頑張ろうと言ってくれる。

 

 この時だけはお前の友情に感謝したい。

 

「宿命のライバルでもあるけど・・・なんかこう・・・同情したい部分もある。」

 

 そういえば、お前もそうだったな。周りに変な連中が集まりまくって。

 

「ついに会えました。君がオーガの使い手。」

 

「そういう君は・・・カイザか。」

 

 祐斗とエイジ兄さんの連れだった、アーサーさんが対峙する。

 

 二人共揃ってオルフェノクの姿に。

 

「・・・二人共オリジナルオルフェノクなの?」

 

 しかも、二人とも五大ギアの所有者。

 

「手合わせを願いたいところですが・・・。まだそっちは伸びしろがありそうです。こっちもまだ十分とは言えませんし・・・。そっちの修行に参加してもいいですか?」

 

「・・・へっ?」

 

 緊張していた祐斗が間抜けな声をあげる。

 

「・・・まさかアーサー。」

 

「私にはアギトの勘はありません。でも、それでも一剣士として予感がするのです。目の前の男こそが私の待望していた男だと。」

 

 こいつ・・・ヴァーリと同類か!?

 

 しかも肩には蠍みたいなグリードも。

 

「・・・アーサー。遂に見つけたのか?己の欲望を満たすにたる相手を。」

 

「まだこれからです。でもこの目の前の相手は間違いなく強くなる。」

 

「・・・う~ん・・・。」

 

 アーシアが苦笑しながら二人を見て何かを悟る。

 

「冥剣帝と聖剣王・・・か。」

 

 そうか。それがこの二人の未来か。

 

 すごい二つ名。

 

「はははははははははっ。化物ぞろいもいいところじゃないの!!」

 

 部長。本当に苦労していますね。

 

「よしよし。リアス姉さま。落ち着いてください。その分すごく頼りになるナイトになりますし、そのライバル、かつ盟友になる方ですので。頼りになる見方ですよ。」

 

「私の眷属の未来・・・明るいのかな?」

 

「失礼します。あっ、ヴァーリさん久しぶりです。」

 

 ミリキャスとともに現れたのはとんがり帽子をかぶった小柄な女の子。

 

「あっ・・・。」

 

「?」

 

 そして、その女の子が俺を見て声をあげる。

 

「えっ?嘘・・・。なんで・・・。」

 

 それで口元を覆って驚いている。

 

 いったい誰だ?

 

「あっ・・・あの!私の顔に見覚えありませんか?」

 

「・・・えっと・・・。」

 

 俺は彼女の顔を見て頭をひねる。

 

 ひねって・・・ひねって・・・。

 

 そして思い出したのだ。

 

「・・・もしかして、ルーちゃん?」

 

「はい。久しぶりです。」

 

 思い出した。

 

 両親の海外旅行でイギリスに行った時に遊んでいた女の子だ。

 

 本名はルフェイ。愛称でルーちゃんと呼んでいた。

 

 まあ、拙い英語でなんとかやり取りしようとして、向こうが翻訳魔法をつかいずっこけた思い出が苦いぜ。

 

「覚えていてくれましたか。」

 

「あっ・・・ああ。」

 

 歳下なのに、それでいて不思議な術を使う子だということで覚えていたのだ。

 

『・・・・・・・。』

 

 その展開にほかの皆が固まっている。

 

「ほい。」

 

 そして、ルーちゃんが軽く指を鳴らすと・・・。

 

 無数の花々。あれって出会いの時に使った魔法。

 

「あれから魔法の勉強がんばりました。おかげで魔法学校、飛び級アンド主席卒業です。まあ、オルフェノクでしたから、もうすぐ死んじゃう危機だったんですけど。」

 

「なっ・・・。」

 

 その事実に、俺は思わず彼女の肩を掴む。

 

 まさかこの子も巧と同じ運命を・・・。

 

「・・・あれ?」

 

 でも、滅びの気配は感じない。巧が死にそうになっていたようなものは感じなかったのだ。

 

「でもメズールさんのおかげで永らえることができました。」

 

 えっ?

 

「ふふふ。愛が溢れて満たされるわ~。」

 

 ルーちゃんの方の上に・・・シャチみたいな奴が?

 

「グリードの一人。ヒナもアーサーもそうだが、彼女にも憑いている。」

 

「私はようやく愛を知ることができたわ。それだけで十分よ。」

 

 愛?

 

 一応エイジ兄さんからグリードの詳細は聞いている。

 

 

 

「はい・・・。私は死にたくありませんでした。必死で生きたかった。だって、あなたと約束がありましたから。」

 

「・・・・・・・・。」

 

 えっと・・・たしかその約束は・・・。

 

「私はもうすぐ結婚できる歳になります。その時にはぜひお嫁に。」

 

 そっ・・・そうだった!!

 

 まずい。ホンマにまずい。

 

 あの時は。

 

「あっ・・・安心してください。イッセーさんが異様にモテるのは知っています。ずっと見守っていましたので。」

 

 ずっと見守っていた?

 

「ハルト師匠からある程度話は聞いていました。私は魔女としての勘でピンときましたよ。それでプラモンスターを放ったら、イッセーさんでしたし。」

 

「・・・・・・。」

 

「すごくモテるなと思いました。いや~でもみなさんの事情を知ったら納得です。というわけで私も末席でいいですので加えてください。ドラゴン、そしてアギトのハーレムに。」

 

「・・・・・・。」

 

 パクパクしているのは俺だけじゃない。

 

 部長たちも顔を真っ赤だ。

 

「・・・気づきませんでした。あなた・・・すごい魔法使いですね。」

 

 アーシアが気付かなかっただと!?

 

「いえいえ。まだまだ未熟です。」

 

「この子・・・大魔法使いになる素質ありますよ。それこそ・・・かのマーリンすら超えかねないくらいに。」

 

 アーシアの鑑定にその場の皆が絶句していた。

 

 ・・・まじですか。

 

 マーリンって、ケルト神話に出てくる有名な大魔法使いじゃないですか!!

 

 現時点でもアギトを騙すくらいの魔法の使い手なのに?

 

「ふふふふふふ・・・そうでしたか。そういうことでしたか。」

 

 あれ?

 

 アーサーさんが素晴らしい笑みを浮かべてこっちを見ている。

 

「あなたが私の妹をたぶらかした犯人。あえて光栄です。ええ・・・ものすごく。」

 

 目は全く笑っていない。

 

「お兄様?」

 

「私の可愛い妹が生きる支え。それが一週間だけ一緒に遊んだ日本人とは聞いていました。名前は教えてくれませんでしたけど。その人の言葉が生きる支えでした。ええそりゃもうこっちが羨ましくて嫉妬しまくって仕方ないくらいにね!!」

 

 あっ・・・あれ?

 

 段々と殺気が。

 

「ここであったが百年目。あなたとじっくり語らいたかった。この剣でね!!」

 

 まさかだけど、このアーサーさんってシスコン!?

 

「私を負かす男でないと・・・ルフェイはやらん!!」

 

 すごいレベルのシスコンなの?

 

「相変わらずの妹馬鹿だな。」

 

 ヴァーリは呆れている始末。

 

「・・・ふふふふ我が聖剣が神殺しの剣になる日が来たようですね。」

 

 まて!!その聖剣を俺に向けるのか?

 

 めちゃくちゃ私怨じゃねえか!!

 

「待て。」

 

 おおぉぉぉ・・・祐斗。

 

 アーサーを止めてくれたよ。俺の友よ・・・。

 

「君の気持ちは痛いほどわかる。」

 

 あっ・・・あれ?

 

 佑斗さん~。何でそんなに爽やかな笑みなの?

 

「僕にも双子の妹がいてねえ。でも・・・すでにイッセー君の毒牙に・・・。」

 

「・・・・・・そうか。」

 

 そして、ふたりはがっちり握手。

 

『同志よ!!』

 

 ここに・・・シスコン同盟が結ばれた。

 

「ともに罪深い神様を懲らしめよう。」

 

「うん。そうだね。」

 

 待て待て待て待て待て待て待て待て!!

 

 そこで二人で組むな!!めちゃくちゃ怖いから!!

 

 部長たちもとめて・・・。

 

「カーミラ。」

 

「あいあい。お仕置きタイムの時間ですかい?」

 

――――ドライバーオン!!

 

「カ―ミラちゃん、いけないわね。私の決めセリフを取らないでくださいな。」

 

 なんでお姉さま方変身準備しているのですか?

 

「私は思うのよ。イッセー、あなたは色々とやりすぎだとね。幼馴染だけでも苦労しているのにハーレム要員までガンガン増やしちゃって。・・・・・・教育が必要ね。」

 

「そんないけない子にはお仕置きです。」

 

 待ってくれ!!なんでそこでお仕置きなの?

 

 俺が何をしたというの!?

 

「・・・デュランダル。」

 

 待て!!ゼノヴィアまでいい笑顔!?

 

 こうなったら・・・助けてアーシア!!

 

「・・・知りません。(*´`@)プィ。」

 

 あああああああぁぁっぁ、アーシアちゃんがすねちゃった!!

 

 可愛いけど今はそれどころじゃない!!!

 

「・・・お前の弟分は相当な猛者みたいだな。」

 

「うん。まさか夢を叶えている上に、どんどんフラグを立てているなんて。こりゃ、すげえ業が深い。」

 

 グリードから業が深いって言われるのはなんか・・・嫌。

 

「あなたも面白い子を契約者に選んだわね。」

 

「うう・・・完全に教育に失敗した。」

 

「どうどう。おかげで私もイッセ―の事が好きになれた。」

 

 アルファさんはすごく嘆いております。

 

「あっ・・・母上!!探しましだぞ!!」

 

「・・・ただいま戻りました。」

 

「お腹すいたよ~。」

 

 そのアルファさんにミリキャスと共にデフォルメ化した青い一角をもつ小さな白と銀の麒麟みたいな子が頭、黄金の翼竜、銀色の翼竜みたいな子が両肩に乗ってやってきた。

 

「・・・あら。その子があなたの子供なの?」

 

「一人は私の娘。2人はゴルドの娘と息子よ。」

 

『・・・えっ?ゴルドの子供?』

 

 クレア達がアルファの言葉に驚く。

 

「挨拶なさい。三人とも。」

 

『はい!!』

 

 まず麒麟の子が挨拶する。

 

「私は白雷(ハクライ)というぞ。アルファ母上と・・・炎駒父上の娘だ。」

 

 偉い尊大な話し方をするけど・・・まあ、悪い気はしない。

 

 そして、炎駒?

 

「お兄様の眷属で・・・麒麟よ。」

 

 キッ・・・麒麟!?あの伝説の聖獣の・・・。

 

 その事実に俺だけでなくアーサー達も驚いて止まってくれた事に、内心ほっとしているのだが。

 

「へえ・・・あなたも素敵な殿方を。」

 

「まあね。今旦那はいないけど・・・まあ冥界にいる間に紹介するわ。」

 

「・・・ふっ。」

 

 少し照れたような様子のアルファに、グレイフィアが笑う。

 

「なっ・・・なによ。」

 

「あなたも本当にいつまで新婚なのやらってね。」

 

「・・・それをあんただけに言われたくないわ!!」

 

「・・・新婚って・・・アルファ、あんた・・・。」

 

「予想以上にいい縁だったみたいね。」

 

 呆れかえった様子のクレアとベノに、アルファは慌てて釈明。

 

「違うわよ。その・・・まあ良い夫婦はしているつもりだけど。」

 

「ええ・・・本当にいい夫婦しているわ。うんうん。」

 

「だ・か・ら、他の人ならともかくグレイフィア、あなただけには絶対に言われたくないわ!!」

 

「えっと・・・なんのことやら・・・。」

 

「言っていいのかな~この馬鹿ップルが!!」

 

 グレイフィアさんは顔を真っ赤にし、目をそらしながらアルファの追及をかわす。

 

「・・・まあ、あの二人は結構似た物同士ということで・・・。どっちの夫婦も円満と思ってもらえればいいわ。」

 

 部長の説明がすごく分かりやすいです。

 

「私達はゴルド父様の子です。」

 

 残った二体の翼竜は・・・どうやら双子らしい。

 

 銀色の子は冷静で、淡々とした喋り方。

 

 金色の子は・・・うんアホのこっぽいけどすごく元気だ。

 

 ちなみに銀が男の子、金色が女の子。

 

「銀色の私はシルウス。」

 

「金色の僕はゴルイア。」

 

「・・・・ゴルドの子供・・・なのよね?」

 

 黄金の不死鳥であるゴルドことゴルドフェニックス。

 

 その彼の子供が双子の翼竜。

 

 そうなると・・・母親は・・・。

 

「この世界のドラゴン・・・なんだろうな。一体誰だ?」

 

 ドライクもその結論に至ったようだ。

 

「母様ならもう来ています。」

 

「うん、外を見ればいいよ。驚くとおもうよ。」

 

「んん?」

 

 俺達が外を見ると・・・そこには青い巨大なドラゴンがいた。

 

「げえええェェェ!!きっ・・貴様は!!」

 

 ドライクはそれを見て大層驚いている。

 

「なん・・・だと。」

 

 アルビオンですらもだ。

 

「はあぃ、久しぶりねドライク、アルビオン。」

 

 青いドラゴンはすごく軽いノリで話しかけてきたぞ。

 

「ごっ・・・五大龍王、ティアマット。」

 

 五大龍王ですと!?

 

「私の娘と息子はどうだったかしら?」

 

「・・・・・・。」

 

「いやね。私はあのドライクとアルビオンが復活したあげくに、妻子を持ったと聞いて慌てて戻ってきたわけよ。ふふふふ。」

 

 ティアマットはそのままデフォルメ化して窓から屋敷に入ってくる。

 

「本当に・・・あのやんちゃな子が立派な父親になって、お姉さんはなんといえばいいのか。」

 

「ちょっ!?」

 

 んん?ティアマットがお姉さんっていった?

 

「アルビオンまで同じ様な事になって、本当に世界って面白いわねえ。」

 

「・・・まさかお前の子とは・・・・。」

 

 アルビオンまで震えている。

 

「なあ・・・ドライク。あのティアマットとどんな関係だ?」

 

「俺も気になるぞ。アルビオン。」

 

『・・・・・・。』

 

 俺とヴァ―リの質問に二天龍ズは黙秘。

 

 だったら・・・。

 

 俺の視線はアーシアと当事者であるティアマットに向けられる。

 

「まあ、私とあいつらは昔馴染みでね。小さい頃からの縁なのよ。」

 

 あの二人の幼馴染でしたか。

 

「あはははは・・・そしてそのティアマットさんがお姉さん的存在で、ドライクさんとアルビオンさんが頭の上がらない方だそうです。」

 

『ちょっ!?』

 

 アーシアの前では誰も嘘をつけず、隠し事もできない。例え神であってもだ。

 

「へえ・・・あなたがそんな方だったとは。えっと私はドライクの妻で、ドラクレッタ―こと、クレアです。」

 

「同じくアルビオンの妻のベノスネ―カ―ことベノです。」

 

「いやいや、ご丁寧に。五大龍王のティアマットです。夫からはディアと呼ばれているわ。」

 

 三体のデフォルメドラゴンが深く頭をさげて自己紹介しあっている光景。

 

『さっ・・・最悪だ。』

 

 その夫達の表情が青ざめている。

 

「・・・そうか。お前達がディアの言っていた弟分達。世間は狭い物だよな。」

 

 ゴルドさんはそんな二人の方に優しく翼を置いてある。

 

「ちなみにこの子達・・・三人共ミリキャスと契約しているわよ。」

 

 アルファさんの言葉に俺達は驚いたね。

 

 三体も契約ですか。

 

「あの・・・遊んでもいいでしょうか?」

 

「私達にあの子達が興味深々で・・・。」

 

「そうそう。僕もそれが気になった。」

 

 二天龍の娘達、アカリちゃんとラッセ―、そして新参のメトロイドと言う謎の生命体であるメリスちゃんが興味深そうに三体を見ていたのだ。

 

 ちなみにメリスは部長の名前をもじったらしい。

 

「ふん、まあ私達が遊んでもやってもいいが・・・。」

 

 そのハクライの言葉がきっかけで二天龍の娘達が一斉に走り出す。

 

 良いタックルでハクライちゃんが押し倒される。

 

「ちょっ・・・おっ・・・お前ら落ちつけ。」

 

 ハクライちゃんは尊大な言い方をしながらも必死で皆をなだめている。

 

「相変わらず、面倒見がいいですね。」

 

「うんうん。」

 

「お前達!!感心していないで・・・。ってお主!!何で頭に噛みついておるおおっ・・・力が吸われる!!」

 

 どうやらあの子はかなり面白いツンデレみたいだ。でもまとめる力はある。

 

 皆をなだめている。

 

 でもメリスちゃんが頭に喰いつき、エネルギーを吸っているけど。

 

 それが彼女なりの挨拶になっている。そんなに吸わないが、相手の力を取り込みそれを記憶させるのがメリスちゃんの中の友達認定となっているのだ。

 

 まあ・・・すごく個性的な方法だけどね。

 

「う~ん。あの子達、仲良くできそうだわ。」

 

「いい友達になってもらえませんか?」

 

「ええ。」

 

「こっちもいいわよ。まあ・・・ラッセ―君が一人だけ男の子だったからシリウス君とはいい友達になってくれるかも。」

 

 子供達がどんどん増えて行く。

 

 それも将来が末恐ろしい連中ばかり。

 

「グレモリ―家・・・ドラゴン大集合だわ。ふふふふ・・・もう私達単独で一つの神話勢力が作れそうなくらいよ。」

 

 力の塊であるドラゴンがすごい勢いで増えている。

 

 部長の言うとおりだ。

 

 そんなやりとりをしている中、最悪の事件が起きようとしていた。

 

「・・・・・・お前にメダルを入れたらどんなヤミ―が出るのか試していいか?」

 

 アンクが手にセルメダルを出現させ、それを俺に入れようとしたのだ。

 

「あのな・・・。」

 

「こいつはすごくいい欲を持っている。どんなヤミ―が出るか試したい。」

 

「あっ・・・それいいかも。私ならどんな魚の群れになるのかな?」

 

「僕もー!!」

 

「なら私も試して・・・。」

 

 他のグリードのみなさんも興味深々だ!!

 

「ヤミ―は迷惑かかるから、いつも通り屑ヤミ―の応用でコツコツやったらどうなの?」

 

 エイジ兄さんが呆れた時だった。

 

「やめたまえ!!君は世界を滅ぼすつもりかい!!?」

 

 そのセルメダルを必死の形相で弾き飛ばす佑斗。

 

「世界を滅ぼす?ハッ、ヤミ―程度でそんなことが起きるわけないだろうが。ったく、いきなり何をする。」

 

 その過剰なまでの反応にアンクは鼻で笑う。

 

「いいから止めなさい!!あなたはこのイッセ―の業の深さを何もわかっちゃいないから!!」

 

 部長まで?その前に俺の業ってなんなの!?

 

「お願いだからイッセ―君のヤミーだけは勘弁してほしいわ。何が飛び出してくるか全く分からないから。」

 

「最初からクライマックスなイッセー先輩のヤミ―はもう怪獣、または災厄クラス。」

 

 あれ?朱乃さん、そして、小猫ちゃんまで止めにかかっている。

 

「・・・えっ?どうなるの?」

 

「そんなにすごいのか?」

 

「・・・想像できませんけど。」

 

 ―――――その前に俺の決め台詞をとるな!!

 

 何も知らない良太郎とゼノヴィア、ギャー助はただ戸惑うばかり。

 

 確かに自分でもあれは引いたよ。

 

「私も全力で止めます。ええもう・・・あなたのヤミ―のおかげで結婚式場が半壊したんですからね!!」

 

「・・・ははははは・・・おっぱいライオンは勘弁してほしい。」

 

 グレイフィアさんやサーゼクス様までそれに加わっている?

 

「ほう・・・魔王様が恐れるほどのヤミ―か。どうするメズ―ル。」

 

「えい。あらら・・・手がすべちゃった。」

 

 あれ?俺の中にメズ―ルさんのメダルが入りこんで・・・。

 

『あーーーー!!』

 

 俺の周りに一気に大量の卵が・・・。

 

「・・・・・・あれ?入れたばかりなのにすごい数。」

 

 その数・・・部屋を埋め尽くす程。いや部屋どころかグレモリ―家の屋敷のあちこちに出現。

 

 それを見てメズ―ルさんの笑みがひきつる。

 

「メズ―ル、これって大丈夫なの?あなたのヤミ―は何度か作りだした事あるけど、これは流石に異常だよ。」

 

 ルフェイちゃんですら青ざめている。

 

「・・・大丈夫じゃないわ。コントロールできない。」

 

「・・・さいですか。」

 

『・・・・・・。』

 

 アーサーさんとノブナガさん、ヒナさんは驚きのあまりに呆けている。

 

「・・・なるほど、お前達が恐れる理由が良く分かった。お前、グリードになるつもりはないか?それだけの欲望、そのままにしているのがもったいないぞ。」

 

 アンクはマイペースに俺を勧誘してくる。

 

「あいつのセリフを取るなら、イッセ―、お前のその欲望・・・素晴らしい!!流石神の後継だけはあるな!!」

 

「確かにすごいや、ヤバいというレベルと通り越してある意味素晴らしいよ!!」

 

 エイジ兄さんですらやけくそ気味の発言。

 

 そして卵から一匹孵化。

 

 それは人の頭位の大きさのピラニアだった。

 

 全身銀色の装甲に包まれたピラニアだ。

 

 その一言は・・・。

 

「おっぱい。」

 

『やっぱりかぁ!!』

 

 流石は俺の欲望。俺の分身だわ。

 

 唐突に部長に襲いかかりその服を食いちぎったのだ。

 

「へっ?きゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 瞬く間に服だけ食いちぎって裸にしようとするところを・・・。

 

「ふん!!」

 

 小猫ちゃんの強烈パンチが入る。

 

 それでも砕け散らずぴちぴちと跳ね回り・・・。

 

「なんて事をするのよ!!」

 

 ヒナさんが怒って、強烈な重力波によって地面に縛り付けられた。

 

「・・・一応重力百倍。でも・・・これは・・・。」

 

 重力百倍の中、そのピラニアは動いている。

 

「おっぱい・・・おっぱい・・・。」

 

 執念で女性の服を食い荒らし、おっぱいを堪能しようと動いていたのだ。

 

「なっ・・・なんて執念。」

 

 しぶとい。すごくしぶとい。

 

「やらせると思うか!!」

 

「消し飛べ!!」

 

 アーサーさんと佑斗のダブルの剣撃でようやくセルメダルに還った。

 

「・・・一体でこれか。並のヤミ―クラスはあるな。」

 

 そのセルメダルは・・・かなり多い。

 

「そうなるとこいつらが一斉に孵化したら。」

 

 エイジ兄さんの言葉に皆が凍りつく。

 

『・・・・・・・・・。』

 

 その卵から一斉に俺の欲望を元に生まれたおっぱいピラニア共が孵化する。

 

 最初からその勢い、数共に・・・うん、世界の終末を見た。

 

『おっぱーいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!』

 

「なっ・・・なななななななな。」

 

「呆れて言葉もでない。」

 

「ほえ・・・・。」

 

 あのアーサーやヴァ―リですら呆れかえっている。

 

「ゼ―ルズ全員緊急召喚!!アルファ、サバイブの準備!!」

 

―――わかったわ。ハクライ!!あなたはミリキャスや他の子達を守りなさい。

 

 グレイフィアさんはゼ―ルズ達を一斉に呼びだす。

 

「ゴルド!久々に本気でいくぞ!!ティア君も手伝ってくれ。父様と母様は無理せずに・・・。」

 

――――――承知。まさかこんなことになるとは。

 

――――――まさに何が飛び出すか分からない。歴代で最も危険な赤龍帝なのも納得よ。

 

「おい、赤いの!!お前の相棒はとんでもない奴だな!!なんだこれは!?」

 

「本当に呆れて何も言えん。ああ・・・前よりもひどいぞ!!相棒!!お前煩悩がパワーアップしているだろ!?」

 

 しかたないじゃん!!だって、桐生の策略でみんな裸でせまってくるなど煩悩刺激されまくっていたのを我慢していたんだもん!!

 

 うん、我ながらすごい煩悩だわ。

 

 ここまで来ると別の意味で賢者モードになれる。

 

「ああもう・・・カ―ミラ!!」

 

「あいよ、久々の絶滅タイム、行っちゃいましょう!!みなさん準備はいいかな?こいつら根絶やしにしないと冥界がヤバいわ。」

 

『こうなったらやるしかない(わ)!!さあ・・・絶滅タイムだ!!』

 

 カ―ミラの一言に皆は腹を括った。

 

 グレモリ―家全員・・・全力です。

 

「んん、何か嫌な予感がって、でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」

 

 剣崎さんも覚醒。ぐっすり眠っていたのに目をさましましたね。

 

 こうしてグレモリ―家でのおっぱいピラニアとの死闘が始まる。

 

 本当に死闘だった。

 

 主に女性陣の被害が甚大だったという事は追記しておく。

 

 そのたびにおっぱいピラニア共は分裂し、数を爆発的に増やしていた。

 

 そして、その分裂のたびに、俺は心の中ですごく感動していたけど・・・。

 

『お前・・・あとで覚えておけ。』

 

 と理不尽な怒りを皆から向けられていた。

 

 ちなみにその数は後で分かった事だけどおっぱいピラニア共は一億体は確実だったらしい。

 

 そして、集まったセルメダルは・・・兆すら超えるとてつもない数だった。

 

 前よりもパワーアップしていたぜ。

 

 アンク曰く「ハイリスク、ハイリターンの極致。恐ろしいほど儲かった。」だそうだ。

 




 今回は二話で終わりです。

 ・・・二作品同時投稿は本当に大変です。ふう・・・台風に閉じ込められた状態である意味よかったかもしれません。

 今回の事件はどうでしたか?

 新たに登場したおっぱいピラニア。・・・ある意味おっぱいライオンよりも厄介だと個人的には思うのですがどうでしょう?


 


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修行開始!!

 まず一話目投稿。遅くなってすみません。




 SIDE イッセ―

 

 めちゃくちゃな歓迎を受けてから一夜明けた。

 

「・・・お前たち・・・お疲れさんな。」

 

「ああ・・・疲れたよ。」

 

「下手な修行よりもよっぽときつかった。」

 

 俺と初めヴァ―リの奴も完璧に疲れきっている。

 

「何とか絶滅できたわ。」

 

 部長初め、グレモリ―眷属一同・・・疲れ切っていた。

 

「・・・はあ。まさかあんたが契約者を見つけるとはねえ。」

 

「納得できる相手・・・いないと憤慨していたのは知っていたけど。」

 

 そして、クレアとブランカは呆れかえっていた。

 

「フハハハハハ!!我はこいつが気に入った。昨日義兄弟の契りを交わした!!この男とならどこまでもついていくぞ!!」

 

 それは「シラトラ」と命名されたデストワイルダーである。クレアと同等の実力を持つとんでもない猛者だ。肉弾戦ではクレアも勝てないらしい。

 

「いい拳だった。お互い、さらに高め合おうじゃないか!!」

 

「おう!!兄者!!」

 

「・・・まさか、デストワイルダーと真正面からガチで殴り合う馬鹿がいたなんて。」

 

 クレア、そんなに驚く事か?

 

「・・・そうだったわね。ヤマタノオロチを単独で倒した鋼鬼といいあなたといい、そんな事が出来る連中ばかりか。でも、おめでとう。嫁さんはどうするの?」

 

「・・・おいおい考える。今はそこまで考えていないからな。」

 

「いや、一人紹介したい奴がいる。まあ・・・あいつに性別がある事が驚きだが。」

 

「誰だ・・・ってあいつか!?」

 

 一体だれです?

 

「ある意味面白いだろ?あれも一応、女だ。ネコ科同志ある意味お似合いかもしれん。」

 

「そうか。一度じっくりと話してみたい物だ。兄者を支える同志としてもな。」

 

「・・・一体あなたは誰を紹介しようとするの?」

 

「俺は分かったぞ。だが、クレアよ、今はあえて内緒だ。」

 

 鋼兄は何か知っているらしい。

 

「そうにゃね。あれはさすがに・・・はあ、何で化け物ばかりにゃのかしらね。」

 

 黒歌ですらうんざりとしている。

 

「・・・・・・・。」

 

 一方のサイガの方は・・・。

 

 まさに両腕に花って感じになった。

 

 右にセラフォル―様

 

 左にツクヨミ様。

 

 それぞれひっついている。

 

 しかも、それをそのままういけ入れているサイガ。

 

 すごく親密になったな。

 

「////!?」

 

 アーシアは顔を真っ赤にさせている。

 

「あう・・・あうあう・・・。」

 

 一体何を読んだ!?

 

「・・・はははは・・・。」

 

「ネロ?」

 

「いや、まあ、事故みたいな形で悪かったな。」

 

 一方ネロはこっそりとキリエさんと話していた。

 

「でも・・・いつか言うつもりだったのでしょ?」

 

「あっ・・・ああ。まあ、言う予定が早まっただけだ。だが、改めてまたプロポーズはする。学校卒業後の式に間に合う様に。」

 

『・・・・・・。』

 

 まあ、そんなおいしい会話を見逃す連中じゃないわな。

 

「お前ら・・・。」

 

「おうおう・・・俺に対する嫌がらせか?この独身貴族の俺様をよお!?」

 

 アザゼル先生がすごく荒れている。

 

「・・・あれ?あなたが独身・・・ふふふふふふふふ。」

 

「ククク・・・他の連中にはうまく隠しているらしいな。」

 

 そのやっかみを聞いたミカエル様とロダンさんが笑っています。

 

「・・・あれ?親父・・・確かあのブローチをいつも大切にもっていたよな?あれに二人で映っていた人って・・・。」

 

「・・・さっ・・・さあ、なんのことやら。」

 

『・・・・・・。』

 

 巧の一言が決め手になった。

 

 この総督、何か隠している。それも女性問題でとっても重要な事を!!

 

「・・・それはともかくだ。」

 

 強引に話をぶった切ったアザゼル先生。

 

「さあ・・・合宿を始めるぜ。」

 

『・・・・・・。』

 

「始めるったら始める!異論は認めん!!」

 

 皆の疑いの眼差しを浴びながら先生は合宿の始まりを宣言した。

 

――――あとでじっくりと調べるにゃ。みんな手伝ってにゃ。

 

――――おう!!

 

 黒歌が発した念話・・・仙術を応用させたものだけど、それに皆は一斉に応じる。

 

「・・・もしかしたら、親父がようやく幸せになるかもしれんからな。」

 

 巧に至っては、ある意味本気だ。

 

 いや、アザゼル先生。よかったですね。親父思いのいい息子がいまして。

 

「あ~もう。そう言うのは合宿後にしろ!!」

 

 それを言ってからアザゼル先生は改めて言う。

 

 

 

 SIDE アザゼル

 

 あ~もう。巧の奴、いつの間に俺のブローチを・・・。

 

 ったく、確かにハーレムを作った事はあるぜ?

 

 だが・・・あいつは俺の本質をしっている。

 

――――親父って、ずっと誰かの事を引きずっていないか。

 

ったく、堕天使総督あるまじきことを巧は知ってやがる。そして・・・それがブローチの写真に写ったあいつと言う事も。

 

 あいつは知らねえだろう。そのあいつがお前の・・・。

 

「まあ、そんな事は置いといてだ。さあ・・・いよいよ今日から合宿だ!!」

 

 俺は切り替える事にした。

 

 長年生きているからこそできる。

 

 そうでないと・・・今までのあれに押しつぶされそうになるからだ。

 

 

SIDE イッセ―

 

 アザゼル先生は皆に合宿メニューを渡す。

 

「まずはリアス。お前は王として・・・まあ、本来なら鬼の合宿に参加する必要なんてないんだが・・・。」

 

「まあ、あの必殺技の完成するためにね。」

 

 部長・・・本格的にきつい修行を行うみたいです。しかも鬼の。

 

「前話していたあの鬼畜技か。レ―ディングゲームでは使用不可能のあの技をさらに使いやすくしたあれだな。はあ・・・それなら身体を鍛えるのが一番だが・・・お前さんはそこまでしなくてもそのまま順調に成長できれば強くなるんだぞ?」

 

「ええ。でも・・・きちんと修行すればさらに強くなる。私は王として、そして滅びのキバの継承者として皆を率いるにふさわしくならないといけないの。もちろん、メニューにある勉強も術の研究もキチンとするわ。」

 

 部長なりに課題を持っているみたいだ。

 

「・・・必要なトレーニングはこれでいいな?うむ、鬼の修行の基礎メニューだ。こうなったら鬼になってみるか?」

 

「ふっ・・・もちろん変身できるようになるなら・・・なって見せる。」

 

 部長・・・貪欲に強さを目指し始めている。部長が鬼になったら・・・。

 

「ああ、鋼鬼。やり過ぎは勘弁してくれ。第二のサイラオーグは・・・。」

 

「安心しろ。そんなすぐになれるものじゃない。だが・・・ゆくゆくはなれるようになるかもしれんが・・・。そのためのメニュー・・・夏休み後も組んでおくか?」

 

「よろしく頼むわ。」

 

 部長の恐ろしい可能性がまた一つ・・・。

 

「・・・パワー系の筆頭。そのあたりの根性は一体だれの影響やら。」

 

「さあ?」

 

 部長の視線が何故か俺に・・・。

 

「まっ・・・わかりきっていたことだが。」

 

 アザゼル先生はため息をつく。

 

 他の連中も何故か「うんうん」とうなづいていやがるし!!

 

 一体なんなんだ?

 

「さて、朱乃。お前は・・・。」

 

「ええ。向き合う事は完了していますわ。」

 

 朱乃さんの手には電撃が・・・あれ?それに光の力が・・・。

 

「・・・なあ。どうして、お前さん・・・そんなにあっさりとそれを受け入れた?お前は確か・・・。」

 

 アザゼル先生は戸惑っている。父である堕天使を恨んでいるはずの朱乃さん。

 

 その力を嫌っているはずなのに・・・。

 

「さあ?私も強くなってくる敵を相手に手段を選んでいられないだけですけど?」

 

「・・・朱乃さん。」

 

 もちろんアーシアは何を察している。おそらくハルトの奴もだ。

 

 きっとそれは封印された記憶にある。

 

「・・・そうか。おまえさん・・・。」

 

 アザゼル先生も何か察したようだ。

 

 でも朱乃さんは軽く首を横に振る。

 

「まだ・・・気持ちの整理はついていません。それだけは分かってください。」

 

「ああ。でも、お前も一歩前に進んでいるということだ。それを誇りに思っていい。」

 

「・・・・・・。」

 

 その発言を聞いた朱乃さんは少し驚いている。

 

「どうした?すごく意外そうな顔をして。」

 

「・・・あなたが本当に先生をしているのに驚いて。」

 

 確かに・・・アザゼル先生ってフリーダムだけど、それでもいい先生だ。長く生きてきた教訓をうまく生かしているし、皆の心にもすっと入ってくる。

 

「・・・そんな事はどうでもいい話だ。ったく・・・先生が意外と肌に合うなんてこっちも驚いているんだぜ?」

 

 堕天使、それも総督が先生。意外と天職かもしれない。

 

 堕天使が先生、それに天職ってなんか可笑しいけど。

 

「それで朱乃。お前・・・本当にいいのか?俺・・・あいつになんて言えばいいのか。」

 

「良いも悪いもないわよ?アザゼル。これだけの逸材をみすみす逃がすと思った?」

 

 朱乃さんの後ろから二人の女性が現れます。

 

 ベヨネッタさんとジャンヌさんです。

 

 この二人・・・なんと魔女で、ユウナの師匠。

 

 そして、今から・・・。

 

「ユウナ・・・本当に良い子を紹介してくれたわ。あなたが朱乃さんね。ふふふふふふ。」

 

「あら・・・。」

 

 ベヨネッタさんを見て朱乃さんが冷や汗を流す。

 

「・・・ああ。バラキエル。俺を許せ。お前の一人娘を魔女にしてしまうことを止められなかった俺を、許してくれ。」

 

 アザゼル先生・・・現実逃避しています。

 

 朱乃さんは「ウィッチアーツ」の素質があるらしく、夏休みの間に基礎を叩き込む予定をしているらしい。

 

 どんな感じになるのやら・・・。

 

「私は魔女の使う術が気になりますので同行します。」

 

「一応僕も行く事になったからよろしく!!」

 

 そこに・・・ルフェイちゃんとリュウタロスまで同行。

 

 ・・・なんだろう。すごく嫌な予感がする。

 

「さて・・・佑斗、そしてゼノヴィア。お前さん達は巧とネロと共に・・・それぞれ習得してもらうことがある。」

 

 次は佑斗とゼノヴィア。

 

「まず佑斗はダンテとお前の師匠であるあいつから剣の基礎からの見直し。そこに剣崎まで加わるんだろ?・・・本当に豪華絢爛だな。そして・・・ある技を習得してもらう。ポルム!!」

 

「あいよ。これが修行用の球だよ。」

 

 ポルムはある球体を取り出して佑斗に渡す。

 

「魔剣を使う君は「幻魔剣」を覚えてもらう。異世界、剣王が編み出した技。アバン流刀殺法と共に力になるはずだ。おそらくそれをした時お前のオーガは至れると考えている。」

 

「・・・どういった技かはすでにポルムから聞いています。・・・ぜひ物にしたいです。」

 

 佑斗は改めて決意する。

 

「その修行には巧とモモタロスも参加するんだよな?」

 

「ああ・・・。」

 

「俺の必殺技の足しになると思ってな。」

 

『・・・・・・。』

 

 佑斗はすごく微妙な顔をしている。修行にすごい濃い奴が投下されたのだから。

 

「そして、ゼノヴィア。お前はこのメニューと共に木場の師匠から・・・片手平突きを学んで来い。お前の破壊力を向上させ、そしてテクニックもさらに磨くためだ。純粋な必殺剣を物にしてこい!!」

 

「私の・・・必殺剣。」

 

 必殺剣を習得させるのが目的らしい。

 

「その響き、なんかいいよな。」

 

 その目標に何故かゼノヴィアが感動に撃ち震えている。

 

 でも、アギトの勘が告げているんだ。なんかマジでシャレにならない必殺技を身につけると。

 

 まさに必殺を言えるような何かを・・・。

 

「ネロ・・・お前もそこに参加するんだよな?」

 

「ああ。せっかくだしな。」

 

「その修行にアーサー。お前まで付いていくのか?」

 

「当たり前だろう!!ここまでの剣豪が揃っているのに逆に行かない理由はあるか?それのアバン流刀殺法って言うのが気になる。逆手で放つ・・・カイザに合う気がしてな。それとフォースにもな。」

 

 ヴァ―リの指摘にアーサーの奴は何当たり前の事を言っているという風に聞き返してくる始末。

 

 まあ・・・あのダンテ様も佑斗の師匠、そして剣崎さんもいるし・・・アーサーからしたら願ったり叶ったりなんだろうな。

 

 剣の化け物だらけなんだし。

 

『・・・・・・。』

 

 佑斗の泣きそうな表情でこっちをみる。

 

 いや・・・ごめん、俺は何もできん。だってねえ。

 

「巧君、ネロ君・・・よろしく頼む。」

 

「ああ。頑張ろう。」

 

「・・・すげえ愉快なパーティだぜ。」

 

剣士たちによる愉快すぎる剣舞が見れそうだ。

 

「小猫の奴は・・・いよいよ鬼の修行の完成だな。コツコツ努力を積み重ねてきた事がついにこの合宿でついに実を結ぶぞ。」

 

「はい。」

 

 小猫ちゃんはついに・・・至ろうとしている。

 

「仙術の修行も順調。そこに修行の一つとして「波動拳」それも習得頑張ってね。」

 

「はい。私・・・もっと強くなれる。がんばります。そして目指せ・・・大人な姿の私!!」

 

 ・・・それって前の事件で平行世界の小猫ちゃんが来た時の話だよね?

 

「あいあい。でも夏休み中にはそっちの方もなんとかなりそうにゃ。ガメラとの契約もあるからすごい量の気を取り込めるしねえ。」

 

 黒歌の奴が苦笑している。

 

「夏休み。鬼の軍団が生まれるか。鋼鬼・・・しっかりやれよ?」

 

「ああ。」

 

「さて・・・鋼のあんさん。俺もついに鬼になる日が来たな・・・。」

 

 そこにキンタロスか。イマジンを鬼にする気らしい。

 

 良太郎・・・身体持つのか?

 

「・・・あっちはあっちでガチムチ連中が集まったな。」

 

 鋼兄、サイラオーク、デストワイルダー、そしてキンタロス。うん・・・パワー系ばっかだ!!

 

「アーシア何だが・・・お前が一番悩んだ。」

 

「へっ?何ですか?」

 

 アザゼル先生は頭痛そうにしてアーシアを見る。

 

「まあね。だってどんな進化をするのか分からないアギト。イッセ―の場合は、どこをどう改善すればいいのか分かりやすいからいい。でもアーシアの場合は方向性に困っていたんだ。まあ・・・神器の禁手化と応用もそうだが・・・お前さんにはあの方が師匠としてつく。」

 

「あの方?」

 

「神様の代理を務める方・・・と言えば分かるか?」

 

『!?』

 

 その発言に俺達は驚いた。

 

 今は神の代理を務めている別の神様がいるとは聞いている。その人がアーシアを鍛えると言ってきたのだ。

 

「どうも、「魔法少女」としての力を与えると。」

 

『?』

 

 その名を聞いた部長とネロ、渡、ハルトの奴がすごく驚いているぞ。

 

 えっと・・・魔法少女としての力ってなんです?

 

「そして、俺からもプレゼントがある。平行世界の俺の話しだと、契約できるはずだからな。」

 

「・・・?」

 

 一体何が始まるんだろ?

 

「ギャスパーは僕とウラタロス、ジ―クと一緒だ。神器の訓練と共に渡君からファンガイアの力の制御方法を学べ。・・・まあ、平行世界のお前がやらかしたあれを目覚めさせるのが目標だが、無理はしなくてもいい。」

 

 ポルムによってギャー助のあれを目覚めさせる?あの漆黒の闇を?

 

「目標はお前は魔眼の魔王にすることかな?」

 

「へっ?僕が魔王?」

 

 ギャー助が魔王って・・・想像できん。

 

「そして・・・残りの連中だ。まず良太郎、そしてサイガ!!」

 

『?』

 

「お前達はポルムが紹介するある人物とワンツーマンでみっちりしごかれてもらう。」

 

「いや~、本当にありがとうございます。」

 

 ポルムは二人の男を召喚する。

 

「ふん。馬鹿弟子の生まれ変わりがいるとは聞いていたがな。・・・まったくせっかく京都で陶芸家として隠居暮らしをしていたのに・・・。」

 

「・・・俺の剣をあいつの息子に教える日が来たか。」

 

 現れたのは二人の男。

 

「まあ・・・一人は悪魔の誘いで面白い方を眷属にしました。僕の・・・ね。」

 

 ポルムは笑う。

 

「普段は陶芸家だ。あいつが馬鹿弟子の生まれ変わりか。一目で分かったぞ。」

 

「えっと・・・僕の前世?」

 

 良太郎はかなり戸惑っている。

 

「俺の名前は比古清十郎。」

 

「俺はロン・ベルク。腕の傷・・・直してくれてありがとう。アーシアちゃん。」

 

「いっ・・・いえ。」

 

「まさか治せるとは思わなかったけど。規格外もいい所だよ。」

 

 アーシア。一体何を治した!?

 

「そして・・・お前がダイの息子か。こっちも面白い事に一目で分かったぞ。」

 

 ベルクさんはサイガを見る。

 

「あの・・・あなたは?」

 

「そのダイの剣の制作者と言えば分かるか?まったく、あれから面白い形になった。真魔剛竜剣とペアになっている点といい、規格外もいいところだ。それと肩を並べる剣をつくれたことに誇りをもつべきかもしれんが・・・。」

 

「なっ・・・父さんの剣の!?」

 

「ふふふふふ・・・驚いてくれて嬉しいよ相棒。」

 

 ポルムは驚くサイガを見て満足している。

 

「さあ、二人はしっかりしごかれてきなさい。」

 

「えっと・・・。」

 

 良太郎は気付いているだろう。己の契約イマジンが次々と魔改造されていく事に。

 

「・・・良太郎君もしっかりしごかれてね。」

 

「そうそう。イマジンの強さに追いつくどころか、追い越せる程のスペックを得られる予定だ。死にかけるだろうが・・・。そのあと、日本神話から素晴らしいプレゼントがあるから楽しみにしてね。」

 

「ちょっと!!」

 

 良太郎・・・地獄の特訓が待っていますな。その上で予感する。とんでもない怪物その二が誕生しそうだと。

 

「お前に最強の剣を教える。そのついでに・・・しっかりしごいてやる。」

 

「最強の剣?」

 

 サイガも苦労しそうだな。

 

 何となく分かる。あの二人・・・途方もなく強い。

 

「さあて・・・最後にイッセ―とヴァ―リだ。ふふふふふふふふふふ。」

 

「ふふふふふふふふふふふふ。」

 

 あれ?最期に俺達の番になって・・・アザゼル先生とポルムの奴が邪悪な笑みを浮かべているぞ?

 

「今回は豪華ゲストばかりだ・・・来てください、冥界最強のトレーナー立花さん!」

 

「おいおい・・・持ち上げ過ぎだぜ。」

 

 そこには壮年のおっさんがいた。

 

「えっ?あっ・・・あの立花?」

 

 ヴァ―リが驚いている。

 

「ヴァ―リ・・・知っているのか?」

 

「知っているも何も・・・冥界、いや三勢力、いやいや全神話勢力で彼を知らない人はいない。」

 

 ヴァ―リからその立花って人の武勇伝を聞く俺は唖然とした。

 

 そっ・・・そんなすごいトレーナーが?

 

「この二人が希望となる新しい「仮面ライダー」か。どうだい?先代として・・・。」

 

「ある意味昭和ライダーの伝統だな。」

 

「なら・・・しっかり揉んでやろうかね。」

 

『・・・・・・。』

 

 立花さんの隣に現れるのは二人の異形。

 

 それは仮面ライダーの名を名乗っている者なら知らないわけがない偉大な存在。

 

「生きた伝説がくるなんて光栄もいい所だよ。」

 

 ヴァ―リも興奮を隠せないようだ。

 

 その二人はそれだけの存在だった。

 

 それは始まりの仮面ライダ―。

 

『・・・・・・。』

 

 仮面ライダ―1号。

 

 仮面ライダー2号。

 

「・・・大先輩って呼んでいいんですかね?」

 

 俺は・・・流石に震えていた。

 

 仮面ライダーを名乗る資格があるのか問われる様な気がして・・・。

 

「ふっ・・・まだ青いな。だが・・・そのあたりも見極めるつもりでいる。」

 

 1号先輩が笑む。

 

「俺も名乗れるのか?俺はそんなにふさわしいとは思えんぞ?」

 

「それを決めるのはお前だけじゃない。じっくり見極めさせてもらうぞ。」

 

 2号先輩が軽く肩を鳴らす。

 

「・・・それに加えて・・・。」

 

 そこに2体の巨体が現れる。

 

 それは・・・ドラゴンだった。

 

 一体は見覚えがある。

 

「はあい。昨日ぶりね!!

 

 五大龍王の一角――ティアマット。

 

 もう一体は・・・。

 

――――久しぶりだな。タンニーン。

 

――――悪魔になったとは聞いていたが、壮健そうだな。

 

「ぐはははははっ・・・ああ、本当にお前達も元気そうだ。あと、遅れたが娘達の誕生おめでとうと言わせてくれ。」

 

 ・・・元ドラゴンの最上級悪魔。

 

 それがタンニーン。元龍王という経歴をもっている。

 

「・・・・・・まさかこれだけの相手を用意してくれたのかい?アザゼル。」

 

 ヴァ―リも嬉々としているが・・・。

 

「ああ・・・それにあとゲストが3人いる。」

 

「こっちが修行の手伝いをするなんてねえ。」

 

「エイジさん!?」

 

 そこにはエイジさんがいた。

 

「欲望の王。特別ゲストとして来てくれてありがとうよ。」

 

「いえいえ。仮面ライダーは助けあいですから。それにこう言ったサバイバルには慣れていますし。」

 

 エイジさんまで来るなんて・・・。

 

「そして二人目・・・。」

 

「久々に弟子を鍛え直したくなったから来てやったぞ。」

 

 いつの間にかその場にいたのは・・・天道師匠でした。

 

 その手には・・・赤いカブト虫みたいなものがある。

 

 あれって・・・ギャー助のカマキリと一緒の?

 

「そして・・・最後のゲスト。」

 

 それはアザゼル先生の言葉と共に唐突に傍に姿を現していた。

 

『・・・・・・。』

 

 それの姿を見た皆が驚いている。俺だってびっくりだ。

 

「あっ・・・アギト・・・だと?」

 

 それはグランドフォームのアギトだ。だが・・・変身しているのは俺でもなければヴァ―リでもアーシアでもない。もちろんギルスであるネロも違う。

 

 しかも、見た目は俺が初期に変身したアギトのフォームに似ている。

 

 だが・・・感じる力は比較にならない。

 

「驚いてくれたか?アギトとしての大先輩にポルムの奴に通手があってな。異世界で最も進化したアギトを招待した。」

 

 いっ・・・異世界のアギト?

 

「ははは・・・まあ嘘はいっていないですね。」

 

 何故かアーシアは苦笑。

 

『・・・・・・。』

 

 そして、部長と渡、ネロ、ハルトの奴は目を点にしている。

 

 まるで「どうしてあなたがここにいるの?」と「そんなの聞いていないって!!」

 

 と視線で訴えているみたいだ。

 

「最も神に近い・・・いや神その物と言えるアギトだ。いや~ダメもとで頼んで良かったぜ。」

 

 無言でたたずむ異世界のアギト。

 

 それだけでその阿呆みたいな実力が分かる。確実に俺達二人よりも強い。それも圧倒的に。

 

――――――まさか・・・あの御仁までこういう形で参戦するか。

 

――――――ふふふ・・・でも、それだけ期待しているということでしょう?

 

――――――でも流石に驚いた。

 

――――――だが、これだけの化け物が揃う時点ですごいことだぞ?

 

――――――ええ・・・。まったく。

 

 仮面ライダーが5人。龍王クラスが二人。

 

 俺達の修行にとんでもないメンツが集まったな。

 

「さあ・・・お前達はこの超豪華なメンツでサバイバルゲーム方式でしごく。光栄に思ってくれ。」

 

 それを聞いたヴァ―リはさすがに畏敬の念を抱いた様子だ。

 

「・・・ふっ・・・これは凄まじいな。イッセー。」

 

「ああ。これは強くなれるぞ。これだけのメンツが相手なら。」

 

 俺達は確信していた。夏休み、これだけのメンツが相手なら確実に強くなれると。」

 

「・・・ほう。過酷になる修行を嘆くのではなく、強くなれる事に歓喜するか。戦士として高みをめざす姿勢は嫌いじゃないぞ。こいつらはしごき甲斐がある。」

 

 立花さんは呆れかえりながらも嬉しそうだ。

 

「さすがドラゴンと言うべきか。この二人・・・根性面では確実に合格ですよ?」

 

「ふふふ・・・流石お前の弟子だけのことはあるか?」

 

「ふっ、当然だ。俺の弟子だからな。」

 

 二人の先輩に褒められた天道師匠は・・・まんざらでもない様子。

 

「さあ・・・合宿の始まりだ。皆・・・さらに化け物になってこい!!」

 

 俺達は覚悟した。

 

 壮絶な修行が始まると。

 

 

 

 

 




 修行のサプライズゲスト・・・いかがでしたか?


 かなり無茶苦茶な修行になります。


 その結果を・・・楽しみにしてください!!


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修行の理由と小猫ちゃんの壁

 今回はこの第二弾までです。


 此処で事態をさっそく動かします。

 修行はシンプルに書きます。

 


SIDE イッセ―

 

 その修行・・・あまりにも過酷だった。

 

 冥界のとある森。そこで先輩ライダー五人と二体のドラゴンによるサバイバルゲーム。

 

「はあ・・・はあ・・・生きているか?ヴァ―リ。」

 

「ああ・・・。互いにしぶといのは取り柄みたいだ。」

 

 俺達は背中合わせになりながら互いに声をかける。

 

 ちなみにドライク達は俺達の身体から出ている。

 

 理由はラッセ―を初め、娘達の修行のためだ。

 

 他の娘、息子達と一緒に。

 

 ある意味交流会みたいなことになっているけど。

 

俺達は相棒達不在の状態で一週間・・・粘っている。

 

 神器は禁手化できないが、能力は使える程度。

 

 だが、アギトへ変身はできない。

 

 その代わり、アギトとしての感覚を研ぎ澄ませてきた。

 

―――――ゾク!!

 

 悪寒が走り、俺達はすぐに飛び退く。

 

 それと共に何かが走りぬけていた。

 

「ほう・・・やるな。クロックアップを見切るか。」

 

 しっ・・・師匠だったよ。

 

 俺はこの修行の中で師匠もまた仮面ライダ―である事を知った。

 

 仮面ライダーカブト。多分・・・平行世界の俺が言っていた戦いをくぐりぬけてきたと思う。

 

 しかし、クロックアップで奇襲は鬼畜すぎませんかね?

 

 でも、あれってまだ続く事ができたよな?師匠・・・どうしてわざとクロックアップを解除して・・・。

 

「わきが甘いぞ。」

 

 その理由は飛んで逃げた俺を捕まえた・・・一号ライダーこと本郷さんと、ヴァ―リを同じ様に捕まえた二号ライダーこと一文字さん。

 

 そして、二人はそのまま、俺達を投げつけてきたのだ。

 

 昭和ライダ―の中でこの二人は投げ技もまた必殺技。

 

 その威力は半端じゃねえ!!

 

 地面に叩きつけられる前に。

 

『イオラ!!』

 

 俺達は地面の方に手を伸ばし、揃って爆裂呪文を発動。

 

俺、魔法は苦手だけど、それでも手に出現させ、それを直接投げる形なら出来るようになったぜ!!

 

 爆風を利用して技の勢い削ぎ、その隙に・・・。

 

「ヴァ―リ、息を止めろ!!」

 

 俺はヴァ―リの手を取って発動させる。

 

――――――――Penetrate!!

 

 それは透過の力。

 

 それを使って揃って地面に潜り込む。地面に叩きつけられないことで投げを無効化してやったぞ!!

 

 透過の力は応用が効く。

 

 防御不能の攻撃はもちろん、防御にも奇襲にも使えるのだから。

 

 しかも、それを自分だけでなく、相手にも譲渡できる。

 

「・・・そっ、そんな方法で無効化するか。」

 

「こりゃまいった。これは想定外だぞ。」

 

 先輩たちをびっくりさせたぜ!!

 

 そして俺達は背後の地面から飛び出し。反撃に出ようとするけど・・・。

 

「だがまだまだ甘いわ!!」

 

「ふん!!そういうこと!!」

 

 本郷さんと一文字さん。俺達のパンチを軽くいなされ、そのまま殴り飛ばされる。

 

「・・・すげえ。」

 

「ああ。」

 

 この二人・・・戦闘経験が圧倒的に違いすぎる。それも一つ一つの戦闘が死闘だったのだろう。

 

 そこで培ってきた技がすごい。さっきの奇襲も簡単に読まれてしまった。

 

「ほうけていいのかな?」

 

「さあ・・・こっちもいくぞ。」

 

 吹っ飛んだ俺達にタンニーンのおっさんとティアマットの姉さんが空中から絨毯爆撃のようにブレスを巻いてくる。

 

「げえええぇぇぇぇぇぇ!」

 

「おおおおおっ!!」

 

 必死で俺達は逃げる逃げる逃げる逃げる!!

 

 背後に炎の壁が迫っているのだからな!!

 

 だが、らちがあかん。

 

「ヴァ―リ!!」

 

<BOOST!!BOOST!!BOOST!!BOOST!!BOOST!!BOOST!!BOOST!!BOOST!!BOOST!!BOOST!!BOOST!!BOOST>!!

 

「ああ!!今度はこっちの番だ!!」

 

――――――Transfer!!

 

 俺は倍化した力をヴァ―リに譲渡。

 

 そして・・・。

 

――――――Reflect!!plus Transfer!!

 

 そのブレスをまとめてヴァ―リが反射!!

 

『なんですと!?』

 

 その反射の力は倍化で増強している。しかも、ヴァ―リ自身が倍化した力を反射したブレスに譲渡している。

 

そのため二体のドラゴンのブレスをまとめて、しかも威力を倍化させて跳ね返す!!

 

「ぬおおおおおおおおっ!?」

 

「そんなのありなのぉぉぉぉぉぉ!?」

 

 それを避けるために消える。

 

 まあ、二人のブレスが凄まじかったせいで、増幅し跳ね返した時には・・・空一面を覆わんばかりの状態になったぜ。

 

 その隙に俺達は逃げようとするけど・・・。

 

「ところがギッチョン!!」

 

 何か聞き覚えのあるセリフとともにエイジ兄さんが立ちふさがっていた。

 

「エイジ兄さん・・・そのセリフはない。」

 

「・・・ああ。やりたい放題やったあげく死亡するフラグだ。」

 

「おいおい・・。」

 

 エイジ兄さんもまた仮面ライダーに変身するのには驚いたよ。しかもメダルの力で。

 

 今は基本フォームであるタトバコンボだけど・・・。

 

「だったらそのフラグを叩きおろうかね?」

 

―――クワガタ。

 

―――カマキリ

 

―――バッタ。

 

――――ガタキリバ!!

 

 腰にあるメダルを緑に統一させてスキャン。別のフォームに変身。

 

 すると・・・一気に百体以上に分身・・・。

 

『・・・・・・。』

 

 エイジ兄さんって・・・めちゃくちゃだ。

 

 ある時は太陽みたいな状態になるし、ある時は超パワー、ブラックホールを起こせる程の重力操作。ある時は津波を操り、自身も液状化。ある時は炎に包まれた不死鳥の化身・・・。

 

――――エイジ。お前、コンボをここまで引き出すようになったか。

 

 アンクが呆れている。

 

 とにかく、あんな数の暴力に飛び込む馬鹿じゃない!!

 

 すぐに逃げるけど・・・・。

 

 その先には・・・。

 

 あっ・・・異世界のアギトが立ちふさがっていた!!

 

 俺達は揃って空中に巻き上げられる。

 

 もう・・・何が起きたのか分からない。

 

 そして、俺達は地面に倒れる。

 

「はあ・・はあ・・はあ・・。」

 

「うう・・・また一撃入れることができなかったか。」

 

「まだまだだな、お前達。」

 

 そこで師匠達が武器を突きつけ・・・終わった。

 

「・・・今回は三時間か。粘るようになってきたな。」

 

 立花さんがストップウォッチを持ってくる。

 

「だが・・・正直危なかったぞ。」

 

「私達のブレスを増幅して跳ね返すか。」

 

「それだけじゃない。」

 

「おい・・・お前ら、透過と反射を使ったのか?」

 

 俺とヴァ―リはこの一週間のしごきの中でようやく神器の三つ目の力を発動できるように進化していた。

 

 俺は透過。

 

 ヴァ―リは反射だ。

 

 そして、お互いの力を取り込んだので、その力を使えるように研究している。

 

 その足掛かりも得ている。きっとこの修行中に使用できるはずだ。

 

 少なくとも本来持っていた力と合わせて使う事でさらに凶悪になっている。

 

「ぶっつけ本番・・・うまくいったのにな~。」

 

「しかも俺ごととはな。透過の力を譲渡するなんていい発想だ。」

 

「そっちもただ反射するだけじゃなく、反射の瞬間に倍化した力を譲渡って鬼畜だぞ。」

 

 それぞれ同時発動させてみると・・・何とまあ凶悪なことで。

 

『・・・・・・。』

 

 他のみんなが呆れている。

 

「こいつら・・・しごき甲斐があるな。どんどん化けて行く。一体何をやらかすのか全く予想できん。」

 

「ああ。本当にとんでもない新人ライダーだ。まあ、こんどは組み手だ。俺達の技・・・しっかりと覚えておけ。」

 

『はい!!』

 

 俺達からしても先輩達は本当に尊敬する漢達だ。

 

「俺・・・ここまで色々と充実した修行は初めてだ。より高みに登っているという実感があるよ。」

 

 ヴァ―リは感激している。成長しているし、さらにいい意味で刺激を受けている。

 

 強くなっている。

 

 そう実感できるのだ。

 

 それでもまだ目の前の先輩達に勝てないけど。

 

 ちなみに俺が本郷先輩から色々な技。

 

 一文字先輩はヴァ―リを担当している。

 

「技の一号・・・力の二号。ある意味二人にふさわしい。」

 

 立花さん曰く・・・何が飛び出してくるのか分からない俺には技を。

 

 圧倒的な力のヴァ―リはその力を生かすべくというらしい。

 

 

 

 

 そして、休む時はドラゴンの大先輩であるタンニーンとティアマットや先輩ライダー達と語らう。

 

 今回はドラゴンの大先輩のお二人です。

 

「・・・そうか。あんた、すげえな。」

 

「はははははは。神様候補にそんな事を言われるなんて光栄なものだ。」

 

「でも、おかげで私達ドラゴンは助かった。それは事実よ?」

 

 タンニーンのおっさん。ドラゴンの主食であるドラゴンアップルの栽培のために悪魔に転生した。

 

 ティアの姉さんもその関係でグレモリ―眷属の使い魔契約をサーゼクス様とかわしたというのだ。

 

 その結果、あのゴルドさんと夫婦になるというのは流石に驚いたけど。

 

「あの馬鹿二人が暴れまわった後、本当に苦労したわ~。まあ、可愛い子供もできてこっちは満足だけど。」

 

「・・・そう言われると肩身狭いな。」

 

「あっ・・・ああ。」

 

 あれ?ドライグ達が戻ってきた。

 

 子供達も一緒だ。

 

「ふっ・・・お前達も円くなったものだな。」

 

「生と死を超えたらそうなってもおかしくないだろう。」

 

 アルビオンの返答が面白いのかタンニーンのおっさんは笑う。

 

「なるほど。それもそうだな、まあ・・・俺からしても暴れん坊な奴らだがしっかり手綱をひいてくれよ?」

 

「もちろんよ。」

 

「出来る嫁になっているつもりだし。」

 

 クレアとベノが笑っている。

 

「・・・なあ。すごいドラゴン率の高さじゃね?」

 

「まったくだ。」

 

 焚き火をしながら休んでいるその場には龍王二体、二天龍。そして、龍王クラスと二天龍クラスの怪物が揃っている。

 

「・・・この様子だともう一体の龍王も復活しそうだな。」

 

「ウリトラか。そう言えばアザゼルの奴が復活プロジェクトを立ち上げているらしい。」

 

「そうなの!?」

 

 話によると、戦力の増強は急務らしいのだ。

 

 アザゼル先生は何かをにらんで動いている。平行世界のアザゼル先生との交流で色々と思うところがあるらしい。

 

「あいつ関連の神器。全部集めたらしい。まあ・・・和平を結ぶ前に集まってしまった奴らしい。それを丁重に使う。」

 

 ウリドラの四つの神器に分かれているらしい。

 

 それを一つ。つまり、匙に総て集中させて、復活を促すプロジェクト。

 

「契約のカードは配布済み。これで暴走は何とかなる。ふふふふ・・・どんどんすごいことになっていくわ。」

 

 そして、肉体までもミラーモンスター化させるつもりだ。

 

 クレア達ミラーモンスターが集まってくれたおかげでどんどん死んだり、封印されたはずのすげえ奴らが復活していく。

 

「五大龍王と二天龍が揃ったら、面白い事になりそうだな。」

 

「だが・・・あの二人が動くかしら?ファーニブルはこっちにくることは決定しているけど。」

 

 五大龍王の内一体は・・・アーシアが契約するらしい。平行世界でもそれは確定しているらしく、アザセル先生はそれを早めることにした。

 

「・・・だが、平行世界と同じになることを俺は非常に危惧している。」

 

「右に同じく。平行世界の俺が精神に大ダメージを受けたからな。」

 

 ただ・・・何かすごい問題があるらしい。

 

「・・・ふう。嘆かわしいわ。」

 

「右に同じく。」

 

 相棒達はその問題点が何か決して教えてくれない。

 

 平行世界の俺達も何も教えてくれなかったし。

 

「後二体は・・・片方は一番の若手の癖に現役引退宣言。」

 

「後一体は・・・ずっと寝ているからねえ・・・はあ。」

 

 ・・・なんだ?

 

 龍王ってすごく個性的だな。

 

 若手なのに現役引退?

 

 そしてずっと寝ている?

 

「・・・力の塊だからな、だが、ドラゴンは基本的に己がやりたい事をやっている。良くも悪くも正直だよ。」

 

 ヴァ―リの奴もなんか悟った顔をしている。

 

「・・・だが、それでもヤマタの奴に世話になりっぱなしだな。」

 

 そこで・・・俺達の身内と意外な繋がりも分かったし。

 

 タンニーンのおっさんが教えてくれた。

 

 家で酒造りに情熱を注ぐ日本神話屈指のドラゴン。

 

「あいつのおかげでドラゴンアップルの育成だけでなく品種改良もできた。」

 

「・・・イッセ―。お前の身内はすごいな。色々な意味で。」

 

 ヴァ―リが呆れているのもわかる。

 

 まあ本人はそれで美味しい酒が作りたいと思ったから、参加したんだろうけどな。

 

 現にタンニーンのおっさんの手にはヤマタ謹製の果実酒の樽がある。

 

 あれ・・・特別なリンゴで作った自分達ドラゴンのための酒だと言っていた。

 

「ふっ・・・うまい。早くお前らも成人しろ。そしたら、このおいしさを分かち合える。」

 

 タンニーンは笑って言ってくれる。

 

「まさにドラゴンって感じがするな。」

 

「ああ。」

 

 俺達にとって偉大な先輩。

 

 それがタンニーンに対して抱いた俺達二人の印象だ。

 

 ドラゴンとしてはあんな誇り高いドラゴンを目指したいな。

 

「ティアの事は・・・伯母と呼んだらまずいよな。」

 

「ええ。ドラゴンでも女ですもの・・・えい。」

 

 ティアマットの姿が青い髪をした女性にかわる。

 

「クレア。人化の龍魔法を教えてくれてありがとうね。これで人間界も自由に歩ける。」

 

「ええ。今度一緒にショッピングでもいこうじゃないの!!」

 

「ふふふふ・・・ママ友がふえてこっちが嬉しいわ。」

 

「本当にあんた・・・こんな便利な奴があったら早く教えて欲しいわ。」

 

「・・・本当はブランカの魔法なのよ。」

 

『・・・・・・・。』

 

 その光景を最大級の脅威と見ているのだろう。

 

 俺達の相棒達が頭を抱えている。

 

 最強にして最凶のママ友がどんどん増えて行く。しかも、その一人は彼らの幼馴染で姉みたいな奴。逆らえない唯一の相手だ。

 

「まあ、昔のよしみで愚痴位は聞いてやる。俺の息子も世話になっている。改めて挨拶させてくれ。これだけの面々と友になれるのはいい刺激になる。」

 

 タンニーンのおっさんも黒髪のダンティな男に変身しましたよ。そして同じく人に変身した相棒達を慰めている。

 

「・・・お前の息子か・・・。」

 

 遊んでいる子供たちに交じっているのは黒いドラゴン。赤い瞳が特徴的だ。

 

 通称レッドアイズと呼ばれているらしい。ラッセ―とすごく仲がいい。

 

「本当に新たな世代のドラゴンが次々と生まれていくな。」

 

 ドライクとアルビオンはしみじみと見ている。

 

 集まっている子供達は間違いなく未来で大成する程の規格外の存在ばかり。

 

「本当に教育が重要ね。」

 

「うん・・・。」

 

 親ドラゴン達は教育の重要性で完全に一致している。

 

 新たな世代のドラゴン達は世界の守護者となるのか、邪竜となり世界を破壊する存在となるのか大切な時期になるのだから。

 

 そのための子供たちの交流でもあった。まあ・・・友達同士になれば大概の事は何とかなるというアドバイスをグレイフィアさんと俺の母さんからもらったらしい。

 

 まあ、グレイフィアさんはミリキャス。母さんの場合は、俺という実例があるし。

 

 その結果・・・いい子に育っている。

 

 個性的になるのはもうどうしようもない。むしろそれでいい。

 

 

 

 

 その次の日は、先輩ライダーの本郷先輩と一文字先輩の二人。

 

「へえ・・・ハーレム王っておまえなあ~。」

 

「ははは・・・だが、本郷、お前も若い時はすごくモテていたじゃねえか。」

 

「・・・お前もな。一文字。」

 

 このお二人。すごくモテていたらしい。

 

「意外だな。意外とそう言う軽い部分もあるのか?」

 

「まあ、あの時は俺も若かったということだ。」

 

 意外と気さくなお二人。

 

「なあ、お前達はどうして戦う?」

 

 だが、本郷さんが急にまじめな顔をしてこっちに問いかけてきた。

 

「名誉のためか?それともハーレム王や、皆の王になりたいという欲のためか?」

 

「・・・・・。」

 

「お前達は力をえた。それもこれからさらに大きくなるであろう危険な力だ。それを・・・。」

 

「いや・・・そこまで難しい事は考えていません。」

 

 だが、それに対して俺達は明確な答えは出せていない。

 

「俺は新しい神になるという目標はある。そして、俺の母を殺したあいつに対する復讐もある。その気持ちはある。」

 

 ヴァ―リの奴もうなる。

 

「でも・・・そんな難しいことじゃないんです。俺達が闘う理由、強くなりたい理由は。」

 

 俺とヴァ―リは根元が似ている。俺がエロく、ヴァ―リはその辺はそっけないという明確な違いはあってもだ。

 

「まずライバルがいる。共に高め合いたい奴がいる。そして・・・守りたい奴らが、助けたい奴らが大勢いる。」

 

「あいつらの居場所を守るために力を高めてきた。強くなってきた。それはこれからも変わらないだろうな。フッ・・・俺も甘いものだ。力に取りつかれてただ戦いに明け暮れる事も考えたが・・・俺の目標はそれじゃたどりつけない。」

 

 俺達はライバルだ。共に神の後継、白龍神帝になるというどこか似た目標を持つ。

 

「俺達はそのまあ・・・未来を勝ち取るために戦う。自分達だけじゃなく、みんなの未来のために。」

 

「・・・俺が知る限り、俺のチームの面々はどれも元いた世界の脅威となって死んだやつらだ。どうしてこの世界に来たか分からないが、あいつらの居場所を作ってやれたなと思って、そのためにも今の目標を貫くことにしている。」

 

 俺達が闘う理由は一つだ。

 

『みんなの未来を守るため。そして勝ち取るために俺達は強くなる。』

 

「・・・ふっ。そうか。」

 

「未来か・・・まだ若いが、良い答えだ。」

 

 二人の先輩が俺達を眩しそうに見たのは何故だろう?

 

「お前達の中には確かに「人」としての魂が根付いている。なら・・・大丈夫だな。」

 

「だが、規格外の後輩だと色々と苦労しそうだぜ。」

 

 そう言っている間にできた。

 

「よっし。ヴァ―リ手伝ってくれ。」

 

「ああ・・・しかし料理というのも奥が深いな。」

 

 このサバイバル生活でヴァ―リに簡単だが料理も教えることにした。

 

「先輩たちもどうぞ。この森でとれた食材に米を使ったカレ―です。」

 

「ほう。ではいただこうか。」

 

「どんな味かなっと・・・。」

 

 サバイバルしながら俺達は色々と学ぶ。

 

『うまい!!』

 

 先輩達がどんな思いで戦ってきたのか。

 

 どんなふうにして窮地を脱してきたか。

 

 

 

 

 

 SIDE  アザゼル。

 

 修行開始から二週間。

 

 俺は天道達から成果を聞いて唖然としていた。

 

「まじか。まさか第三の能力を二人とも発揮しているのか?」

 

 聞くに、アギトなら神器の奥に封印されたそれぞれの相棒の能力に行きつくことができるのではないかと思い、立花さんが提案したみたいなのだ。

 

 寝る前の一時間の瞑想による神器の中の探索。その成果だそうだ。

 

 平行世界のあいつらがやっていた事を自分自身でやってみたというのかい。

 

 それもお互いに力を取り込みあった影響もあるって・・・おいおい。

 

 能力三つって・・・上位神滅具クラス確定の所業じゃねえか。

 

 本当にアギトってやつは・・・。こちらの常識をとことんぶち壊す。

 

「現在四つ目も開発中だそうだ。」

 

 あいつら・・・どこまで強くなる?

 

「二人のコンビネーションが凄まじくてな。俺達を驚かせる達人だよ。」

 

「一日十回以上は意表を突かれる。」

 

 あの二人、根っこが似ている気がした。それ故か。

 

 赤と白のコンビ・・・。ふふふ・・・ダブルアギトライダーの誕生かい。

 

「二人は新能力を開発した。倍化と半減。それぞれを応用させた・・・な。あれには流石に驚かされた。ふふふ・・・。でもすごく嬉しいよ。」

 

 天道の奴が驚いたって・・・何をしたんだ?あいつら。

 

 天道はすごく満足そうにわえらっているし。

 

「だが・・・一番の成果は、基礎能力のアップか。俺達がみっちりしごいた甲斐がある。二週間のサバイバル、あいつらはたくましくなった。お前さんの狙いであった新たな力・・・楽に制御できるほどにはな。」

 

「言うなれば俺達の後継者。技の赤龍帝と力の白龍皇ってところだ。ドラゴンライダーの一号、二号ってか?」

 

 ・・・マジであいつら、一号ライダーと二号ライダーから受け継いだっていうのかい。

 

「変身しなくても・・・神器なしで並の上級悪魔なら楽に倒せるぞ?」

 

 ・・・そりゃすげえ・・・な。

 

 あれ?なんか思った以上に強くなっていないか?

 

 変身も神滅具無しでそのレベルは流石に想定外・・・。

 

「ふう・・・アギトとしてもまた一段、進化のステージを上げたと思っていいよ。」

 

 そして、アギトに変身していた彼もまた現れる。

 

 変身を解いた彼は軽く肩を鳴らす。

 

「しかし・・・お前自らが修行の手伝いを買ってくれるなんてな。」

 

 俺だって驚いている。

 

「強力なアギトの台頭。多分、使徒たちが動きだすと思う。その対策をしておきたい。」

 

 変身していたのは翔一。イッセ―の父親にして異世界から来た最強のアギト。

 

 その翔一が懸念していることがあるのだ。

 

「十二体のエルロードか・・・。」

 

 アギトに等しい存在である神に仕えし最高位の使徒である十二体のエルロード。

 

 水、風、地、氷、雷、大空、大地、呪毒、燐光、深淵、幻、理 の十二体

 

 それぞれ主神クラス以上か、それを超えるような化け物と聞いている。

 

 だが、姿を見せた事はなく伝説となっている。

 

「グレゴリで一通り、アギトの神話を調べておいたぜ。光の神と共にもう一つのアギトの始祖。・・・十三体目の「火」のエルと言う存在もな。」

 

 本来なら十三体いたが、ある理由で十二体になっている。

 

 十三体目って辺りがすごく因果だが。

 

「・・・そこまで調べたか。」

 

「もともと研究者気質だったんでな。ある意味本郷、一文字。おまえさんと同じだな。アギトって奴は。敵対する存在と同じ力を持つという意味じゃあな。」

 

「・・・そうだな。仮面ライダ―の業をな。」

 

 一号ライダーの業。それは彼が元々はショッカ―の改造人間だったということ。つまり敵として闘った存在と同じだったという点。

 

 そして、それはアギトも同じ。

 

 火のエル。それが行方不明の十三体目のエル。

 

 それが光の神と共にアギトの始祖と言える存在と知る人間はほとんどいない。

 

 今はもういない光の神。

 

 その光の神と火のエルが結ばれ、その子が人と交わることで広まったのだ。

 

 それこそ燃え広がる火のごとく。しかも、同じ現象が異世界でも起きていた。

 

 それを知っているのは先祖がえりのごとく光の神に限りなく近くなった最強のアギトである翔一とそれを調べ上げた俺。そしてこの場にいるメンバーくらいだろう。

 

 まさに炎の十字架(クロス・オブ・ファイヤー)か。

 

 そんなアギトの始祖と同等の存在と戦うことになる可能性は極めて高い。

 

「・・・だが、あいつらは諦めることはしない。」

 

 天道の奴は断言する。

 

「その試練を乗り越えるのもまた神としての試練だろう。だが、あいつらは一人じゃない。だからこそ・・・。」

 

 俺達は出来る限りの事をする。

 

 あいつらという希望を守るために。

 

 

 

 

 

SIDE ほむら

 

 

 私は今・・・この世界の創造神の一人である闇の神と対峙している。

 

「・・・へえ。あなたの部下までいるなんて。」

 

「彼らは力を持ちすぎた。並のオーバーロードではもう歯が立たないレベルにまで。」

 

 たしかにね。

 

 アギトと言う存在は私も知っている。

 

 彼の同胞であった光の神の力。

 

 そして、こっちはほとんど知られていないが、彼の直属の部下であった存在の因子も入った存在だと。

 

 それがこの世界で力の塊と言えるドラゴン達の力を合わさり、あまつさえもう一人の神の遺産である「神滅具」を持っている。

 

 そんな化け物。並のオーバーロードじゃ、歯が立たないどころか、瞬殺されるわ。

 

 現に彼はオーバーロードを幾重も派遣はしている。それも一体二体のレベルではなく一度に百単位でだ。

 

 でも・・・アギトどころか、その仲間達に瞬殺される始末。

 

 あの街は本当に可笑しい。私が観測しただけで様々な力が集まってきているのだ。おかげで並のオーバーロード程度じゃ誰も近づけない魔境となっている、

 

「新たな光の神になりえるアギト。そして、それに惹かれて集まった力すべてを根絶やしにします。その親、親戚も問わず・・・。」

 

「我が主の意のままに・・・。」

 

 隣にいる水のエルが頭を下げる。私から見ても水のエルは・・・化け物としか思えなかった。

 

 その力・・・・・・龍神クラスは確実。

 

 その彼がもうすぐ暴れようとしている。

 

「・・・あまり勝手なことはしないでほしいわ。」

 

 だが、私はそれが気に入らない。

 

「あなたの都合であなたは・・・自分の子供を殺すの?」

 

 この世界の人間の祖である目の前の神。

 

「・・・あなたは恐れているのはわかるわ。人間達の中であなたを脅かす存在が出た事に。私から見てもあれは脅威だし。」

 

「それが分かっているのなら・・・。」

 

「でも・・・あなたの愛ってそんな程度なの?」

 

 私はあえて告げる。

 

「ッ・・・あなたに何が・・・。」

 

「少なくてもこの世界は貴方の脅威となる存在だらけよ?私だってそうだし。」

 

 それでも私は思うのだ。

 

「その程度で神様名乗るな。」

 

 神様を名乗るならこれくらいの脅威は受け入れろと。

 

「あなたもそうではないのか?」

 

「私は神になったつもりはないわ。だって私は異世界の悪魔よ?誰が神っていったのかしら?まあ・・・神としたらせいぜい邪神がいいところだし。」

 

 私は神になったつもりは微塵もない。

 

「・・・それだけの力をもって、神ではないというのですか?」

 

「ええ。私の目的は一つだし。皆に愛を注げない、私が神を名乗るわけないでしょう。」

 

 神になるのなら皆に愛をね。

 

「あなたの愛ってなんなの?」

 

「・・・・・・・。」

 

 その問いに闇の神は押し黙る。

 

「まあ・・・そう言った意味では新たな神の後継はいいのかもしれないわね。あの子・・・あれだけ多くの力と心を惹き寄せる。それはある意味カリスマと言えないかしら?」

 

 この世界は新しい神話が始まっている。

 

 最も・・・私の探し人と関係あるとは思えないけど・・・。

 

 

 

 私は後にその考えが大きな間違えだと知ることになる。新たな神の候補がまさか・・・。

 

 

 

SIDE イッセ―

 

 俺達は一度グレモリ―宅に戻っていた。

 

 そして、そこで・・・。

 

「小猫ちゃんと黒歌が倒れた!?」

 

 という衝撃なニュースを聞く。

 

 そして、俺は急いで向う。

 

 そこにはベットで寝かされた小猫ちゃん。

 

「・・・あっ・・・すまないな。」

 

 それに寄り添っていたのは鋼兄だ。

 

「・・・鬼になる前に一つ壁にぶつかってしまってな。」

 

 鋼兄は言う。

 

 小猫ちゃんの心の奥底に・・・ある恐怖があり、それが彼女の鬼への変身を妨げているのだ。

 

 その反動で鬼に変身できず倒れたのだ。

 

「・・・私のせいにゃ・・・。」

 

 起きあがった黒歌が弱々しげにいう。

 

「私の暴走が・・・小猫に大きな傷を作った。それが・・・。」

 

「お前のあの時の選択は間違っていない。」

 

 うなだれる黒歌。

 

 ・・・あれ?どうして黒歌は倒れたの?

 

「・・・貧血だそうだ。」

 

 鋼兄はため息をついている。

 

「とにかくお前は寝ておけ。こっちの修行は大方終わった。あとは・・・。」

 

 鋼兄の視線は小猫に向けられる。

 

「義妹の壁だけだな。」

 

 鋼兄はため息をつく。

 

 そして、黒歌は再び寝る。

 

「すまない。俺はサイラオーグ達の修行を少し見る必要があるここは任せてもいいか?」

 

「わかった。」

 

 俺の身内である二人を見てやる事くらいどうってことない。

 

 あっ・・・ついでだから・・・。

 

 

SIDE 小猫

 

 私はいいにおいと共に目を覚ました。

 

「おっ・・・起きたか?ちょうどいいな。」

 

 そこには笑顔のイッセ―先輩がいた。

 

「・・・・・・・。」

 

 そのイッセ―先輩を見て私は二つの意味で驚く。

 

 まず・・・目を覚ましたらすぐにイッセ―先輩がいるという事実。

 

 もう一つは・・・。

 

「先輩・・・すごく強くなっている。」

 

 私は分かってしまったのだ。

 

 イッセ―先輩が修行開始前よりも遥かに凄まじい力を得ていることに。

 

「まあ、お腹すいただろ?」

 

その言葉に何故か驚きながらも、先輩は雑炊を作ってくれたのだ。

 

「まあ、猫舌だから、キチンと覚ましてある。安心しろ。」

 

 ・・・細かい気遣い感謝・・・かな?

 

 

 

 

 私は鬼への変身が失敗したことを思い出し、食事の後落ち込んでいた。

 

「・・・・・・。」

 

 まあ、食事が美味しすぎて忘れていたというべきか。先輩の食事は相変わらず凄まじい魔力がある。

 

「・・・大まかには聞いている。」

 

「私がして来た事って・・・無駄だったのかな?」

 

 私はぽつりとつぶやく。

 

 化け物ぞろいの眷属の中で私だけ普通。

 

 ・・・どこかで誰か「どこが普通?」って言った気がするけど、私はそう思っている。

 

 ずっと追いつきたいと思っていた。

 

 平行世界の私から話を聞いて、希望も持てた。

 

 でも・・・でも・・・。

 

 でも、先輩は私の頭を優しく撫でていう。

 

「いや、小猫ちゃんもすごく強くなっている。」

 

 なんで?

 

「俺が具体的にどれだけ強くなっているのか?それが分かったから。すごく仙術の制度が高くなっている。」

 

・・・言われてみれば・・・。

 

 私、いつの間にかそれを当たり前のように感じている。

 

「まず、無駄じゃないって。小猫ちゃんが積み重ね来た努力は着実に実を結んでいる。それは俺が保障してやる。」

 

「・・・・・・。」

 

 私・・・強くなっているんだ。

 

 でも・・・目標としていた鬼への変身が・・・。

 

「う~ん。」

 

 先輩は私の頭を撫でながら悩んでくれる。

 

「怖いのは仕方ないって。」

 

 その上で私の中の恐怖を肯定してくれたのだ。

 

「いい機会じゃねのか?」

 

 それで言ってくれたのだ。

 

「怖いのは悪い事じゃない。だからこそ・・・。」

 

 私の恐怖をやわらげる魔法の言葉を。

 

「答えを見つけるべきだと思う。そこにある大切な答えを・・・何に恐怖し、それをどうしたいのかって。」

 

「・・・・・・。」

 

「まあ、姉妹同士、そこら辺じっくり語らっておけ。」

 

 その一言に、隣のベットで寝ていた姉様が大きく震える。

 

・・・・・・起きていたんですね。

 

「それに何かあったら俺が絶対に助けてやる。絶対に。」

 

 ・・・・・///!?

 

 そこで私は平行世界の私が言ったもう一つの事を理解する。

 

 どうして先輩のお嫁になりたいのか?

 

 駄目だ・・・こんなことを言われると・・・。

 

 

SIDE 黒歌

 

 ・・・あんにゃろ・・・。

 

 私の可愛い妹のハートを射止めやがって。

 

 何故分かるのか?部屋から出て行くイッセ―の背中を顔を赤らめ、呆けた様子で見る様子を見れば誰だってわかるにゃ!!

 

 それでも悔しいけど、賽は投げられちゃったね。

 

「ねっ・・・姉様!?」

 

 それを私にじっくり見られていることに気付いた私の妹は・・・顔を真っ赤にさせる。

 

「・・・はあ。でも、感謝するにゃイッセ―。」

 

 どうやら問題の解決策はそこなのね。

 

 私はベットから起きあがる。

 

「少し外に出ようか?」

 

「・・・はい。」

 

 

 

 私は白音、もとい小猫と共に屋敷の外で散歩。

 

「ねえ・・・。私はねえ・・・後悔はしているにゃ。」

 

 私は告げる。

 

「後悔って・・・。」

 

「色々とにゃ。あの時はそれが一番いいと思っても、結局後になってそれは白音を苦しめる結果だけ・・・。」

 

 私は絶望的な状況の中、必死だった。必死で何とかしようとした。

 

 何とかしたつもりだったにゃ。

 

 それでも・・・白音を苦しめてばかりだったにゃ。

 

 白音だけにゃない。

 

 鋼チンも・・・あの時、死にかけた鋼ちん。私を助けるために・・・。

 

 今生きているから良かったと言える。

 

 でも・・・あの時死んだままだと・・・今でも実はそれが怖くてしかたない。

 

 私はいつも・・・後悔してばかりにゃ。

 

「そんな!!姉様は・・・。」

 

 白音は私に対して強く反論する。

 

「姉様があの時、がんばってくれなかったら私は今・・・ここにいません。」

 

「ありがとうにゃ。」

 

「・・・そうでしたね。」

 

 そして、白音はしみじみと感じている。

 

「・・・・あれは私を守ろうとしてくれたのですね。」

 

「・・・仙術の暴走。怖かったのはごめん。言い訳はしない。」

 

「いや、その・・・私何を怖がっていたのかなって・・・。」

 

 白音の中で何か答えが出たようだ。

 

「・・・なんだ。少し恥ずかしいです。」

 

 そして苦笑する。

 

 それと共に・・・私は感じる。

 

「・・・そうか。また一つ強くなったのね。」

 

 心の成長と共に訪れる妹の成長。それと共に気が一回り大きくなったことに。

 

「・・・あっ。」

 

 そして、白音は私を見て驚く。

 

「あっ・・・あの姉様?姉様のお腹に・・・命の鼓動が・・・。何で今頃。」

 

「そうか。もうそこまで分かる位に成長したか。にゃははは・・・嬉しいにゃ。」

 

 私はお腹をさすっていう。

 

「そう・・・私が貧血になったのはこのせいにゃ。」

 

「まっ、まさか、赤ちゃんですか?」

 

 白音は口をパクパクさせている。

 

「うん。そうにゃ。ついに・・・。」

 

 そこまで言いかけて。

 

「何やっているんですか!?」

 

 っと白音が怒鳴りつけてくる。

 

「えっ?えっ?」

 

「速く鋼鬼義兄さんにいわないと!!姉様・・・まだ言っていませんね?」

 

 あれ?すごく必死。

 

「何故でそんな必死なの?って、顔しないでください!!姉様の事だからまだ鋼鬼義兄さんに言っていないでしょ!?迷惑かけたら嫌だからって!!」

 

 うぐ・・・痛いところを・・・。

 

「めでたいことですよ?すごくうれしい事なんですよ?姉様が・・・そして義兄さんが待望していた子供・・・義兄さんの迷惑になるわけないじゃないですか!!」

 

・・・・・・・。

 

「姉様。急いで義兄さんの所に行きましょう。」

 

 そう・・・だったね。

 

 鋼チンも望んでくれていたこと・・・だよね?

 

 私との子供ができる事は。

 

 だったら・・・。

 

「さあて・・・いよいよお仕置きタイムだな。」

 

『!?』

 

 私達は悪意に気づく。

 

 私はその悪意を放つ男を見て固まった。

 

 白い髪に、赤い肌をしたあいつを忘れるわけがなかった。

 

「あんた・・・。」

 

「よくも俺に大怪我を負わせたあげく・・・はぐれ悪魔にしてくれたな。」

 

 それは私達にとって大変因縁深い相手。

 

 ジャルバ・ヴァルゴ。

 

「その仕返しにきた。さあ・・・姉妹ともども覚悟しておうか。」

 

 背後に三人現れる。

 

 それは・・・。

 

「さて・・・じゃあ仕事だ。」

 

「さっさとやりますか。」

 

 あの時のテロ事件で暴れまわった二体のファントム。

 

 フェニックスとクレムリン。

 

 そして・・・五大ギアの一つ、デルタの所有者・・・ドラゴンオルフェノク。

 

 二体のファントムが腰にベルトを出現させ、指輪をそこにかざす。

 

――――――トランスポート・・・ナウ!!

 

 それと共に私達は転送されてしまった。

 

 

 

 

SIDE ???

 

 一足遅かった。

 

「ちぃ・・・まずい。」

 

 僕達が駆け付けるのと同時に二人は攫われてしまったのだ。

 

 そこに現れたのはエイジさんも悔しそうな顔を浮かべる

 

 手からメダルを出すとそれが赤い空き缶にかわる。

 

 その空き缶がさらにトリへと変化。

 

 その鳥に監視させていたのに・・・。

 

「ミリキャス君・・・あいつらの転送した位置はこっちが把握する。だから他の皆にこのことを・・・。」

 

 そして、エイジさんは後ろを見て笑顔をひきつらせる。

 

「必要なかったみたいだね。」

 

 そこには必死の形相でやってきたイッセ―さんとヴァ―リがいた。

 

「・・・アギトの勘か?」

 

 イッセ―とヴァ―リはアギトの直感。

 

 そして・・・そのあとには・・・。

 

「・・・・・・。」

 

 鋼鬼さんはおそらく蟲の知らせみたいなものだろう。

 

 やってきていた。

 

 しかも・・・凄まじい怒りのオーラを漏らしながら。

 

「・・・位置は把握している。三人とも・・・協力者がいるから彼女に。」

 

 だが、その言葉を遮るように現れる者がいた。

 

「邪魔・・・させない。」

 

 それは・・・無数のヤミ―だった。

 

 そのすべてがバッタ人間のようなヤミ―とカマキリ人間のようなヤミ―だった。

 

 ヤミ―だけじゃない。

 

 巨大な何かも召喚される。昆虫型の巨大ヤミ―。

 

「お前ら・・・邪魔させない。復讐のジャマ・・・させない!!」

 

 その叫びと共に巨大ヤミ―が一斉に襲いかかってくる。

 

 だが・・・。

 

「喝ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」

 

「!!!?」

 

 それを一喝でふっ飛ばす方がいました。

 

 爆音のような衝撃と音声。それで地面がえぐれる。

 

 それを受け・・・まるで突風にまき散らされる木の葉のようにヤミ―達が吹っ飛んで行く。

 

「・・・どこだ?」

 

 まあ、それが誰か想像に難しくない。

 

「・・・二人はどこにいる?」

 

「・・・また転送したか。でもすぐに見つける。」

 

「頼む。」

 

「がっ・・・ぎっ・・・。」

 

一喝だけで戦闘不能にされたヤミ―達はメダルにかわる。

 

 イッ・・・一喝だけって無茶苦茶にも程が・・・。

 

「鋼兄・・・おちつけとはいわん。だが・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

 無言の鋼鬼さん。

 

 オーラだけで分かる。

 

 やばい・・・と。

 

「・・・お前がそこまで怒るのは初めて見る。だが・・・仕方ないか。俺も力を貸す。」

 

 追跡魔術にヴァ―リさんが手を貸してくれる。

 

「助かる。」

 

「すまないがイッセ―、譲渡を俺とエイジさんに頼む。処理速度を加速させる奴で。」

 

「わかった。後相棒達も呼ぶぞ!!こうなったら総力戦だ。グレイフィアさんのゼ―ルズ達の力も・・・。」

 

 この二人・・・本当に良いコンビになって・・・。

 

―――――エイジさん。僕の仲間もまぎれています。

 

 僕がが念話で語りかける。

 

―――――何とか時間稼ぎをさせます。

 

 

 

「こっちも一応、黒歌ちゃんの事は聞いているんだ。かなり苦労して今の幸せを掴んでいることに。その幸せを・・・身勝手な欲望でつぶさせない。俺も欲望の王の一人として・・・それだけは絶対に許せない!!」

 

 エイジさんの言うとおりだ。

 

 黒歌さんは幸せになるために相当な苦労をしてきた。

 

 それをこんな形で終わらせない!!

 

「・・・・・・・・・。」

 

 あと・・・二代目荒神が暴走寸前なのもあるけど。

 

 すごく怖いです。

 

 




 すっかりダブルライダーかするイッセーとヴァ―リについて皆さまどう思いましたか?


 あと小猫ちゃんの最大の壁到来です。ある意味原作に近い形です。

 其れを乗り越えるのは・・・新たな命がカギになります。


 今回の投稿はここまでにします。


 今日間に合えば、一周年記念第二弾・・・イギリス編を出したいと思います。


 ではまた会いましょう!!


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白き鬼の覚醒

 あめましておめでとうございます。

 やっと投稿できる。

 向こうで失敗したのを治してこっちも投稿開始です、

 では第一弾・・・どうぞ!!


 SIDE???

 

「いや~やっと会いに行けるぜ!!」

 

「ほんとうだわ!!」

 

 俺達は冥界にやってきた!!

 

 イッセ―達もやってきてるもの知っているが・・・まあ、仕事の関係とあっちが修行中で中々スケジュールが合わなくて今まで会えなかった。

 

 だが・・・今日修行が終わったと聞いた。

 

 俺達も今日は手が空いている。

 

 だったら会いにいかない理由はねえだろ!!

 

「・・・すっかりイッセ―君が神様候補だもんね。」

 

「ああ。」

 

 神の不在で落ち込んでいた俺達。だが、イッセ―ガ神の後を継ぐと言ってくれた。

 

 そして、それは現実になりつつある。

 

 あいつが神様になったら、世界はきっと面白い事になるぜ。

 

 もちろん、良い意味で。

 

 こうなればあいつも連れて行けばよかったぜ。

 

 まあ、冥界の美味しい物を一杯土産として買っているからそれで勘弁してもらう。

 

「ゼノヴィアや良太郎・・・元気でやっているかな?」

 

「当たり前だろう!!あいつらだからな。」

 

 早く会いに行きたいぜ。

 

 俺達はわくわくしながらグレモリ―家の前に立つが・・・。

 

 んん?あれはサイラオーグじゃねえか?

 

 すごく焦った様子で・・・。

 

「どうした?」

 

「おお・・・お前たちか。」

 

「何かあった?」

 

 こうやって俺達は巻き込まれていく。

 

 

 

 

SIDE ???

 

 ここが冥界か・・・。

 

 前世では思いもしなかった。

 

 この世界って本当に規格外だ。

 

「こら!!きょろきょろしない!!田舎者丸出しじゃないですか。」

 

「だってさ、姉ちゃん・・・生きて冥界に行けるって誰が思った?」

 

 俺達はじっちゃんの付き添いでやってきていた。

 

 じっちゃんとは・・・。

 

「ほほほほっ・・・面白いのおう。お主は・・・。」

 

「オーディン様!!弟をあまり甘やかさないでください!!」

 

 姉ちゃんが早速怒鳴っているよ・・・。

 

 この世界で俺は・・・なんと・・・半分だけ神様だった。

 

 じっちゃんの死んだ一人息子の忘れ形見だったらしい。

 

 日本から呼び出された時・・・流石にびっくりしたよ。

 

 半分だけ神様だったわけですので。

 

 ちなみに姉ちゃんとは半分だけ血が繋がった関係・・・まあ本当は従妹だ。

 

「ほほほほ。」

 

 じいちゃんは本当に自由奔放だからなあ。

 

 結構色々と腹黒いけど。

 

「・・・孫は可愛がるのは当然。まったく口五月蠅いのう。だからその歳でもまだ彼氏の一人もできない処女「SHOOT VENT」ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。だから大砲をこっちにむけないでおくれ!!見合いでも何でもセットしてやるから!!」

 

だからじっちゃん・・・姉ちゃんを怒らせないで。

 

「おとなしくしてくださいね?出ないと・・・ギガランチャーをゼロ距離でブチ込みますので。」

 

 手にしているのは明らかに姉ちゃんの身体よりもでかい大砲。

 

 姉ちゃんの相方――マグナさんの両腕をくっつけた特性の大砲だ。三メートル位の長さはある。

 

 よくそんな馬鹿でかい大砲を片手でもてるよね?

 

 その射程距離は十キロなのだが、姉ちゃんの創意工夫で射程はさらに十倍にのびている。

 

 反動も無かった事にする辺り・・・流石姉ちゃん。

 

 相方曰く・・・ストッパー無しで本来を超えた破壊力を得られると。

 

 そんな大砲をゼロ距離でぶちこむって流石に鬼畜・・・。

 

「まっ・・・まあまあ・・・落ちついてください主。」

 

 その肩の上に小さな人型が現れ、必死に姉ちゃんを抑えている。

 

 銀色に紅い目をし、手には十字のような紋章が描かれた黒い魔道書を持っている。

 

「新もしゃきっとしなさいね。」

 

「分かっているって。」

 

 口うるさいとこもあるし、そのわりにドジだけど・・・それでも自慢の姉だと思っている。身内のひいき目にしてもすごく美人だしすごく頭もいい。才女といって誰もそれを否定できない。天才の言葉すら足りない。

 

 むしろ・・・どうして彼氏も一人もできないのかこっちとしては疑問で・・・。

 

「内面残念な上に、歩くラグナロクと呼ばれているせいじゃろ?」

 

「あっ・・・・・・納得。」

 

 姉ちゃん・・・すごい異名をもっていましたわ。内面も結構残念だけとそれが大きい・・・。

 

 ヴァルギリ―最強にして北欧神話最強。神や巨人はおろか、スルドですら恐れ、滅びが裸足で逃げだす女として超有名で・・・。

 

 姉ちゃんって天才で天災だった。

 

「ふ・た・り・と・も?」

 

『・・・・・・。』

 

 俺とじっちゃんは姉ちゃんのすごく優しい声に無言で両手をあげて、無抵抗をアピール。

 

 冷や汗も滝のように流れている。

 

 情けない?

 

 でも仕方ないと思うんだ。

 

 大砲「ギガランチャー」とマグナバイザーを後頭部に突きつけられるのって流石に駄目だと思うんだ。

 

 暴力反対。

 

 平和が一番。

 

 北欧神話にあるまじきことだって?

 

 それを姉ちゃんに言う度胸ありますか?

 

「ええいい!!主、落ち着きなさい!!」

 

「へぶっ!?」

 

 そんな姉ちゃんをアインちゃんが等身大となり、ハリセンを取り出してはたいて止めてくれる。

 

 ・・・アインちゃん。

 

 君が俺達の神話勢力の最期の希望だ。姉ちゃんがキレたら・・・ラグナロクが始まってしまう。

 

 北欧神話の今後は君にかかっている!!

 

「うむ・・・平和だ。」

 

 って、マグナさん!!あんたも止めてくれ!!和んでないで!!

 

 しかもこの殺伐とした状況のどこが平和なの!?和む要素も皆無だぞ!?

 

「まったく、戦いの神であるあなたを連れてきたのは・・・。」

 

「分かっているって。」

 

 それは三勢力の和解と共に神の死を各神話勢力に知らされた時だった。

 

 俺はありえない名前が書かれており、俺はそれを確かめるために冥界にやってきた。

 

 アギトとして、その神の後継となる者。

 

 その名は・・・。

 

「・・・イッセ―。お前なのか?神の候補って・・・。」

 

 その名が俺の幼馴染と同じ。

 

 本名「兵藤一誠」。

 

 俺の日本にいた時の友達。

 

 エロく馬鹿だが、すごく熱血で友達思いですごくいい奴。

 

 そいつが神様に?

 

「・・・んん?」

 

 そこで俺は左腕の篭手が反応している事に気付く。

 

 それは・・・奇妙な篭手。

 

 通称「鬼の篭手」と呼ばれる。それは鬼の血を引く者しか使えないとされる者。

 

 俺の中に流れる半分だけの人間の血。それは最悪の鬼と呼ばれた黒い鬼の血らしい。

 

 そして、俺は前世を持つ人間にして・・・ある存在の生まれ変わりらしい。

 

 その篭手が輝く。

 

 その反応は俺の・・・この世界での俺達の母さんを殺した奴らと同じ反応だ。

 

「この反応・・・まさか!?」

 

 それを見て俺は駆けだす。

 

「ちょっ・・・新!?」

 

 なんでこの冥界に幻魔の反応が?

 

 その反応に俺は導かれる。

 

「いくぞ、ガタックゼクター。」

 

 傍に前世からの相棒を連れて。

 

 その先に再会がある事を知らずに。

 

 

 

 

 

 SIDE 黒歌

 

 私達は絶体絶命の危機に陥っていた。

 

「白音!!」

 

 私の・・・私の妹をあいつらは痛めつけていたのだ。

 

「止めて・・・私の妹を!!」

 

「フハハハハハ本当はお前の夫もやってやりたったが仕方ねえな。」

 

こいつら卑劣もいい所だ。

 

 鋼ちんも狙っていたのだろう。

 

「・・・あんな怪物。誰が戦うの?」

 

 だが、鋼チンの修行は完成した。そのパワーをこいつらはみたのだろう。

 

 鋼ちんとまともに戦う愚かさを。

 

 その代わりに小猫がいたぶられている。

 

「お前はあの化け物眷属達の中で唯一の普通。そして、お前の唯一の肉親だからな。」

 

「う・・・。」

 

 小猫があちこちボロボロ。でも・・・立ち上がっている・

 

「・・・良い根性しているね。普通って言うけど、今の僕の力に殴られ続けてまだ立ち上がるか。」

 

 北崎の奴がまだ立っている小猫を見てあきれ果てている。

 

「・・・白音!!もう良いにゃ!!私が・・・。」

 

「姉様!!」

 

 白音は強い決意で私を見る。

 

「あっ・・・。」

 

 しっ・・・白音。あんたまさか・・・。

 

 まだ死んでいない目が物語っている。

 

―――――姉様には・・・絶対に危害を加えさせない

 

 その理由は単純にゃ。

 

――――だって・・・もう姉様一人の命じゃないから・・・。

 

「白・・・音。」

 

 私のお腹の子供のことを・・・。

 

「ふん!!」

 

「がっ・・・。」

 

 でも、それで白音が吹っ飛ばされる。

 

 そして、そのまま起きあがらなくなる。

 

「あっ・・・。」

 

 立ち上がらない白音。

 

 ピクリとも動かないのだ。

 

「白音ェェェェェェ!!」

 

「・・・ほう・・・粘りますね。」

 

 そこにもう一人変な奴がやってくるにゃ。

 

 それは細身の眼鏡をかけた男。そして手に不気味な人形を座らせている。

 

「真木博士。どうしてあんたがここに?」

 

「・・・何。嫌な気配を感じましてね。」

 

 その目が私を見抜くにゃ。

 

 何?この博士・・・。

 

 グリード?

 

 いや、それもあるけど、もっと異質なものを感じるにゃ。

 

 まるで・・・別世界の怪物みたいな。

 

「滅びと対極・・・その気配がその方から感じられるのです。」

 

「・・・何?」

 

 それは最悪の展開。

 

「・・・そうか。お前・・・。」

 

――――スキャン・・・。

 

 あいつが指輪で私の身体を調べる・

 

「やっぱりか!!お前・・・妊娠しているな。それもあの二代目荒神の!!」

 

 あいつの顔が邪悪に歪む。

 

「ふふふ・・ふはははははこれはいい。二代目荒神に対してこれは最高の仕返しができる。」

 

 そう言いながらあいつは言う。

 

「お前には痛い目にあわされた。その償いをその子供にしてもらおうと・・・な。」

 

 私の子供を・・・自分の道具にしようと。

 

「感謝するがいい。お前の子供は俺が責任もって育ててやる。俺の最強の眷属としてな・・・ふははははははははは!!」

 

「いや・・・。」

 

「まずはその子供のスペックを知りたいな。」

 

 やめてよ・・・。

 

 せっかくできた私達の子供だよ?

 

「ふははははははははは。」

 

 鋼ちんとの・・・大切な子供を・・・。

 

「いや。」

 

 私が抵抗しよう、鬼の笛を取り出すが・・・。

 

 その腕ごと凍りつく。

 

 そして体が次々と凍っていくのだ。

 

「あっ・・・ああ・・・あああああああ・・・。」

 

 私の身体を凍りつかせているのは真木という奴だった。

 

「・・・その絶望いいですね。あなたに終末を与える時がきたようです。そして、その子供は私が改造してあげましょう。最強の幻魔として。」

 

 私の身体が凍っていく。

 

 心と共に。

 

「さて・・・その子供を調べさせてもらうぞ。そして・・・取り出した後は俺達の駒として存分に・・。」

 

――――スキャン。

 

「いやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 私の心を絶望が襲おうとしていた。

 

 

SIDE 小猫

 

 私は姉様の悲鳴を聞いた。

 

 地に伏せていた私が視線を向けると・・・あの男が姉様のお腹に魔法を当てていた。

 

「・・・姉様。」

 

「へえ・・・あの猫又、妊娠していたなんて・・・。」

 

 姉様が・・・泣いている。

 

「どんな子供なんだろうね。ふふふふ僕達からしても楽し・・・み。」

 

 子供・・・。

 

 たった二人だけの家族だった私達。

 

 そこに鋼鬼義兄さんができて・・・そしてもう一人。

 

 それが姉様の子供。

 

「何?」

 

 私は立ち上がる。

 

「・・・呆れた。まだ立ち上がるのかい。平然と。」

 

「平然・・・じゃない。」

 

 全身あちこちが異常な程に痛い。

 

 膝に力が入らず、立ち上がった私の意思をあざ笑う様に激しくゆさぶってくる。

 

 全身の関節という関節が・・・気を抜いたらそのまま力を失ってしまいそうだ。

 

 でも・・・。

 

「大切な人達が悲鳴をあげているのに・・・寝たままだなんて皆に笑われるよ。」

 

 私は笑みを浮かべていたのだろう。

 

 その笑みにドラゴンオルフェノクに変身していた北崎が一歩だけ、後ろに下がった。

 

「・・・すっ、凄まじい根性だね。」

 

 心なしか冷や汗を流している気がした。私を見て恐れている?

 

 でも、そんな程度どうでもいいか。

 

「良くも悪くも「ど根性」の塊といえる先輩がいたから・・・。」

 

 気付けばイッセ―先輩の背中ばかりを見ていた。どんな状況も諦めなかった先輩。

 

 そんな先輩だからだろう。アギトとか関係無しに・・・すごい連中がイッセ―先輩の味方になっている。

 

・・・・私もその中の一人かもしれない。

 

 私は憧れている。

 

 みなの不幸を爽快に、なおかつ過剰なまでの破壊力を伴ってふっ飛ばす先輩の雄姿を。

 

「諦めない・・・。」

 

 私はそれに届く手段はただ一つだけ。

 

 どんな状況でも諦めない。

 

 単純だけどすごく難しい事。

 

 でも、その根拠となるための修行も積んできた。

 

 私の心の中にもう・・・恐れもない。

 

 あるのはただ一つ。

 

―――――助けたい。

 

 私の唯一の肉親である姉様を

 

――――助けたい。

 

 私の新しい家族になる子供を。

 

 助けたいという思いがあふれてくる。

 

 その思いに自分の力が応える。

 

 そう・・・信じて。

 

「姉様と・・・子供、私の・・・私の新しい家族には・・・!!」

 

 私はそのまま駆けだす。

 

 その瞬間・・・。

 

「なっ!?」

 

 私の身体は大人のそれに変わり・・・。

 

 私の耳に付いた鈴の綺麗な音色と共に私の身体は白い炎に包まれる。

 

 そのまま駆けだし私は拳を北崎に繰り出す。

 

 全身が白くなった私の新たな姿と共に。

 

「がば!?」

 

 大きく吹っ飛ぶ北崎の巨体。

 

 それに目もくれずに私はさらに駆ける。

 

「絶対に手出しさせない!!」

 

 そして、姉様をもてあそぼうとしていた連中をそのまままとめてふっ飛ばした。

 

 姉様を凍りつかせようとした氷も粉々に砕く。

 

 

SIDE 黒歌

 

 ・・・・・・・・・何が起きたにゃ?

 

「姉様!!」

 

 絶体絶命のピンチにやってきてきた白音は倒れそうになる私の身体を抱き起こし・・・。

 

―――――軟気功。

 

 手から気を当てて、癒し始めた。

 

 自然治癒力が活性化し、私の凍傷による傷が治り始めていく。

 

「うっ・・・うん。」

 

 なすがままになっているのには理由がある。

 

 それは白音の変身。

 

 白音は見事に鬼に変身していた。白音にふさわしい白い鬼。

 

 猫耳みたいな二本の角と二本の尻尾が生えている。

 

 ついに白音は鬼に至れたのだ。

 

 それも強力な鬼に。

 

 名をつけるならまさに白。

 

 総てを浄化し、癒す白い鬼。白鬼(ビャッキ)と呼ぶべきだ。

 

 でも、もっと驚くべき点がある。

 

「がっ・・・なんだ!?」

 

 それは白音の全身を驚くべき密度の気が覆っていたこと。

 

 凄まじい浄化の気。それを白音は常時纏っていたのだ。

 

 それに当てられあいつらが苦しみ・・・慌てて私から逃げる。

 

 私には何ともないのに?

 

「・・・変身したというのか?だが・・・今の速度。」

 

 北崎が驚いた様子を見せる。

 

 しかも、白音はたった一歩位、瞬き位の刹那の時間で私を助けていた。

 

「くそう・・・なにしやがる!!」

 

 キレたフェニックスが大剣を手に斬りかかってくる。

 

―――捷星魔光弾!!

 

「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 それを白音の掌から放った気の大砲に飲み込まれ、粉々になっていく。

 

 すごい・・・。

 

 普通なら便利な遠距離攻撃程度なのに。あまりに気が高まっているために強力な砲撃になっている。

 

 まるで某魔砲少女のあれみたいに・・・。

 

「・・・不死身でよかった。」

 

 瞬く間に再生するけど、その表情には冷や汗が伝っている。

 

「・・・だったら。」

 

 北崎はデルタに変身。

 

 そして、そのまま姿を消す。

 

 彼の高速行動。

 

「・・・・・・無駄。」

 

 でも、その北崎の死角からの攻撃を振り向きもせずただ手を無造作にあげるだけで止める。

 

「嘘・・・。」

 

 攻撃を見切られた北崎。

 

「このこのこのこのこのこのこのこの!!」

 

 続いて連続攻撃を仕掛ける。眼にも映らない速さの攻撃を白音は・・・。

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!」

 

「なんで当たらない!?」

 

 平然と受け流していた。

 

「・・・手に取るようにわかる。だから無駄。」

 

 まるで剣崎さんが使っているあの力のように。

 

「へっ?」

 

 攻撃を捌き、白音は北崎の胴体に手をあてる。

 

「これはさっき、ぼこぼこにしてくれたお返し!!」

 

―――ゼロ・インパクト!!

 

「ごぶぁ!?」

 

 それだけで凄まじい衝撃と共に北崎は変身を解除させながら吹っ飛んだ。

 

 しかも・・・。

 

「がばゴッ・・うう・・・なっ・・・なんだ、この威力は・・・。」

 

 大ダメージを受け、立ち上がれないでいる。

 

「白音・・・。」

 

 間違いない。仙術を白音は完璧に使いこなしている。

 

 しかも気功技もつかっている。

 

 縮地による高速移動、気を読むことによる攻撃の先読み。そして、寸勁によるゼロ距離からの内部破壊。

 

 それを生かすために波動拳。

 

 今までの修行の成果が一気に花開いている。

 

「・・・ぐっ・・・グレモリ―眷属でお前だけは普通じゃなかったのか?」

 

 シャルバが唸るが・・・気付くのが遅れたみたいね。

 

「私の自慢の妹を侮ったわね?」

 

 あの眷属には私の妹を含めてだれ一人まともな奴はいない!!

 

 全員が規格外の化け物にゃ!!

 

 まあ、白音がそれに連なる存在に覚醒したのには色々と思う所はあるけど。

 

 リアス・・・覚悟しにゃさい。あんたらの眷属全員、レ―ディングゲームで大幅な制限がかかるのは確定だから。

 

「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁ欲望が浄化される!!」

 

 それに真木という変態科学者が悲鳴をあげる。

 

「きつい・・・なんだ?」

 

「うう・・・僕も苦しい。」

 

 真木ほどじゃないけどフェニックスとグレムリンも苦しんでいる。

 

 いや、その場にいるヤミ―全員が苦しんでいる?

 

「何故・・・何故私の滅びの欲望が?」

 

「あなたの欲望が浄化しないといけない類だからです。」

 

 これは・・・グリードという欲望の怪物にとっては天敵だろうにゃ。

 

 欲望その物を浄化するだなんて・・・。特に邪なもの限定だろうけど。

 

「うう・・・そんな存在がいるなんて!!」

 

「ぐっ・・・だったらお前を!!」

 

 奴らからしたら脅威。

 

 ジャルバが手にした果実の錠前みたいな物を開くと、

 

 チャックみたいなものに空間が切り開かれ、インベスと呼ばれる怪物があらわれる。

 

「増えたか。」

 

 このまま守られっぱなしも癪にゃ。

 

 私も変身する。

 

「姉様大丈夫ですか?あまり無理は・・・。」

 

「問題にゃい。一応遠距離主体だし。それに無理は白音も・・・。」

 

「私なら・・・・・・ッ!!」

 

 白音の口から苦しそうな声が少しだけだけど漏れていた。

 

 やっぱりそうにゃ。

 

 白音は無理している。

 

 あれだけの怪我を負った状態での覚醒。それは身体にものすごい負荷をかけているにゃ。

 

「・・・もう許さん。」

 

「こっちも試作の幻魔を召喚させてもらいましょう。来い・・・足軽達。」

 

 真木という変態科学者が告げるとともに無数の戦国時代に現れた雑兵のような奴らが現れる。

 

「こいつら・・・何に?」

 

 そいつらから異様な気配が感じられる。

 

 私はその気配に気づく。

 

「あんた・・・人間を材料にしたわね。」

 

「・・・・・・。」

 

 それは人を改造した怪物。それを指摘して、驚く白音。

 

 一方真木という科学者は無表情でただ淡々と応える。

 

「しかたないでしょう。何しろ私もまたある存在と融合して生まれ変わったのですから。

 

 其の言葉にフェニックスとグレムリンの肩の上にいる変なクワガタとライオンが苦笑する。

 

「・・・あんたが一番無茶苦茶だ。なんだ?どうした幻魔と合体できて復活できる?」

 

「どうして、ガラともう二体とんでもない化け物を取り込んだのやら。」

 

「でもおかげで新しい研究ができる。そう・・・。」

 

 真木の姿が変わっていく。

 

 それは恐竜を模した人型。だが・・・その背後に禍々しい何かがいる。

 

 ガラって・・・聞いた事があるにゃ。

 

 古の錬金術師。それもグリード達の元となったコアメダルを生み出した存在の一人だと。

 

「さあ・・・古の錬金術師と高等幻魔の中でも最高峰の科学者も二体。そして・・・もう一つの要素を得た私を倒せるかな?」

 

「・・・幻魔!?」

 

 私はその単語を聞いてさらに驚きを隠せない。

 

「姉様知っているの?」

 

「知っているも何も・・・何で今更。あれは伝説の赤い鬼武者達が倒したはずじゃ・・・。」

 

 それはこの世界に侵攻してきた異世界の怪物達。

 

 それは赤い鬼武者と黒い鬼武者によって阻止された。

 

「ククク・・・私達の二つの神もまた復活しようとしているのですよ。私の研究でね。ああ・・・滅びという美しい終わりに先があっただなんて。」

 

 どこか恍惚したようすの真木。

 

「・・・狂っている。」

 

 何でこう敵組織にはロクでもないマッドサエティストがそろっているかにゃ!!

 

「そうですね。なら、この足軽達でその成果を見せてあげましょう。何しろ彼らの体内にはセルメダルが埋め込まれていましてね。クククク・・・それを発動させたら。」

 

 足軽達の全身が変わっていく。全身が包帯の様な物に覆われたのだ。

 

 そして現れたのは全身がメタル化した足軽達。

 

「改造時にそれぞれの欲望だけを残しておいたのです。私達に対する命令の服従と狩り、それにさらなるエッセンスを加えるために。ふはははは素晴らしい。亡霊のごとき欲望は狂ったように皆を強化させるぞ!!」

 

 まさにマッド。

 

 やることがえげつなすぎる。人間の体を材料にするだけに飽き足らず、その残留思念すら躊躇いなく利用するあたりがとくに・・・。

 

「さあ・・・終焉を初めようじゃ・・・。」

 

――――あらあら?無粋ですね。

 

 だが、そこに乱入者があらわれる。

 

―――――バインド

 

 無数のインベスや足軽達が動けなくなる。

 

 よく見るといきなり現れた細い糸に絡みつかれ動けなくなっているのだ。

 

「やっと見つけましたわ。」

 

 それはメイドのような格好をした仮面ライダ―。その隣には忍者のような姿をした奴もいるにゃ。

 

「・・・ちぃ。ナイトカーニバルにかぎつけられたか。」

 

 仮面ライダ―冥花の姿。その手には指輪と傘が握られていた。

 

「今度はやられねえぜ?」

 

 もう一体はたしか影牙。

 

 その二人が私達を護るようにやってきている。

 

「お待たせしました。あなた達を絶対に兄さんの所に連れて・・・。」

 

「・・・えっと、その声、もしかしてあんた・・・。」

 

 その声、そして発する気に心当たりがある。

 

「あっ・・・。」

 

「・・・もう仙術使いになにをやっているの。」

 

 どうして彼がここに?

 

 それにその姿・・・。

 

「ちぃ・・・生意気な!!」

 

――――エクスプロ―ド・ナウ!!

 

 声を荒げながらフェニックスファントムが爆破の魔法を発動。

 

 だが・・・。

 

「もうそれは効きません。」

 

―――――シェイクハンズ!!ディフェンド!!

 

 指輪を傘についている掌の形をした部分に当てると、傘が展開。

 

 爆発を完璧に防ぐ。

 

「げぇぇぇぇぇぇ・・・。」

 

「改良されたこの傘の性能は素晴らしいでしょう?それにこれは守るだけじゃないのです。」

 

 それと共に傘に付いている引き金を引く。

 

 すると先端から無数の弾丸が発射された!?

 

「がばばばばばばばば!?」

 

 それを受けて爆発と共に吹っ飛ぶフェニックス。

 

 なんなのあの傘?

 

 普通の傘に見えたけど、それならどうして強烈な爆発を防げるの?

 

 おまけに弾丸発射って・・・。

 

「それそれどんどんいきますわ。」

 

 傘の先端からまるで対空機関砲みたいに巨大な弾丸が連射されていく。それにインベス達や、足軽達が弾丸の雨にさらされ散っていく。

 

 まるでマフィア映画の抗争シーンを見ている気分にゃ。

 

 雑魚の群れが十秒で片付いた。

 

「どうですか?メイドの嗜み・・・。」

 

「いや!!それがメイドの嗜みって絶対に間違っている!!」

 

 グレムリンのツッコミも間違ってない。

 

「ぐおおらあぁぁ!よくもやりがったな!!」

 

 フェニックスが復活して剣で斬りつけてけど・・・。

 

「・・・ホントに氷の使い方がよりすごくなりましたわ。」

 

 それを突如出現した氷の壁が防いだのだ。

 

「この程度の氷の壁など俺の炎で!!」

 

 フェニックスの大剣から炎が吹き荒れ氷を溶かそうとする。

 

 だが・・・。

 

「ふふふ・・・温すぎますわ。」

 

 だが、氷は全く溶けない。

 

「一瞬で百枚分位は張れましたわ。あなたは氷山を剣で斬ろうとしているのと同じなのです。」

 

「ひょっ・・・氷山だと!?げえっ!?剣が!?」

 

 炎を噴き出していた剣が凍りつく。

 

「そして・・・あなたはもう終わっている。」

 

「へっ?」

 

 其の言葉と共にフェニックスの首が宙を舞う。

 

 いつの間にか背後に回り込んでいたにゃ。そして、不気味な音色を奏でる鎌を振るって・・・そうしたらいつの間にかフェニックスの首が・・・。

 

「・・・なんだ・・・そりゃ・・・不死身じゃなかったら終わっていた。」

 

 首だけであいつ生きているにゃ!?

 

「催眠術。あの音・・・催眠音波みたいなものになっているみたいだね。多芸だね。前の時とは明らかに違う。って・・・動けない!?」

 

「ええ。ついでにあなたを処刑しちゃいましょうか?」

 

 グレムリンの全身にいつの間にか糸が巻かれている。

 

「なっ・・・なんで身体が元に戻らない・・・って俺の身体がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 そして、フェニックスの身体は氷に包まれて封印されていた。

 

「・・・念のためにあなたの切り傷を凍らせました。体も氷結封印して復活は不可能です。」

 

「てっ・・・てめえぇぇぇぇぇ!!ごぶふぁ!?」

 

「お二人にパス!!」

 

 そのメイドライダーさんがフェニックスの頭を華麗に私達の方へと蹴りとばす。

 

 うん・・・シュートを決めやすい緩やかな山なりのパス。

 

 いい仕事にゃ。

 

 さすがメイドさん。

 

「おいっ馬鹿、止めろ。いややめてくださ・・・。」

 

 私と白音は視線を合わせて共にやる。

 

『シュゥゥゥゥゥゥトッ!!』

 

 頭だけのフェニックスを私と白音の二人の共同作業で一緒に蹴り飛ばす。

 

「おっ・・・俺の身体だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・!!」

 

 星になっていくフェニックス。・・・なんか不死身もこういう時、ほんの少し哀れにゃ。

 

 まあほんの少しだけだけにゃ。

 

「ちょっ、君達鬼か?!なんで惨いことを・・・。」

 

『私達は鬼ですが、それがどうした(にゃ)?』

 

 その返答にあいつは戦慄していう。

 

「・・・まさに・・・鬼!!」

 

 いや、実際私達は鬼だから。

 

「だが、こっちもいつまでもとらわれていてばかりだと思うな!!」

 

 閃光と共に糸をふっ飛ばし、姿を消すグレムリン。

 

 そいつが両手に鎌を持ち高速で冥花に向かっていくけど・・・。

 

 その鎌を影牙が手にしたトンファーブレードで受け止める。

 

 受け止めた後・・・別の影牙が現れグレムリンをふっ飛ばす。

 

「がっ!?なっ・・・なななななななななっ!?」

 

『今度は俺達の番だ。』

 

 それは分身の術。それも実体を持った。

 

 今影牙は・・・十人いる。

 

「何それ?」

 

―――――まるでヴヴァみたいなやつだな。

 

「おい・・・しっかりしろ!!身体は俺が取り戻す。」

 

「・・・悪い。」

 

 緑色のクワガタがいつの間にかフェニックスの身体にいる。

 

「・・・氷の封印が!?」

 

 氷の中で爆散するフェニックスの身体。それと共に戻ってきたフェニックスは首から下の身体が再生してく。

 

「・・・なあ、メイドって闘う存在なのか?あんなメイドとは二度と戦いたくないぞ。」

 

「案外冥界には多いかも・・・。本来は全く違うのにねえ。」

 

 フェニックスの問いに苦笑するグレムリン。

 

 たしかに・・・、グレイフィアさんという典型例がいるからにゃ・・・。

 

「なら今度は試作機を登場させましょうか?」

 

 真木が指を鳴らすとともに・・・。

 

「あああァァァァ!?おっ・・・俺の身体がが!?」

 

 ジャルバの身体に異変が起きる。内側からぼこぼこと膨れ上がり、身体が炎と共に燃えだしたのだ・

 

「おっ・・・お前、俺の身体に何を!?」

 

「何・・・瀕死のあなたを復活させるとき、普通では助けらなかったのです。ですから幻魔の血と共にあなたを蘇生させたのです。安心してください。理性のない下等とは違います。高等幻魔相当にあなたは仕上がりましたから。」

 

「きっ・・・貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ついでに試作のコアメダルも内蔵しています。あなたの中で膨れ上がる欲望を糧にそろそろ・・・。」

 

 それと共にそれは姿を現す。

 

 それは燃え上がる巨人。

 

「さて・・・そこにこのメモリを使うと・・・。」

 

――――仮面ライダ―。

 

 其の言葉と共に真木はあるUSBメモリみたいなものを投げ、その巨人に刺さる。

 

 そして現れたのは仮面ライダーのような頭部をもつ怪物。

 

「悪魔を素体にした人造幻魔と、ガラの錬金術、そして私のメダル技術。そこに試作のガイアメモリが加わった合作。いい作品でしょう?」

 

 冗談みたいな怪物があらわれたにゃ。そのでかさ・・・その身体に込められた怨念みたいな・・・。

 

「グオオオオォォォォ・・・チカラ、モットチカラヲ!!スベテヲ!!」

 

「何しろ彼は力を渇望していた。その願いを叶えてあげただけ。さあ・・・この二人を潰してその欲望をさらに満しなさい。」

 

「ォォォォォォォ!!!」

 

 まさに絶対絶命のピンチ・・・。

 

 そんな時だった。

 

 

 

『トリプルライダーバンチ!!』

 

 

 

 と言う雄叫びと共に凄まじい打撃音が轟いたにゃ。

 

「グオオオオォォォ!?」

 

 地面に倒れる仮面ライダーコア。

 

 それを背に三人が私達の前に降り立っていたにゃ。

 

 二人は今代の二天龍、イッセ―とヴァ―リ。

 

 そして、最期の一人は・・・。

 

「・・・無事のようだな。」

 

 それは一人の鬼。

 

 それは、私の夫。

 

「鋼ちん!!」

 

 鋼ちんがきてくれたにゃ。

 

「・・・無事でよかった。小猫、お前もおめでとう。ついに至ったか。」

 

「・・・鋼鬼義兄さんと先輩達がいるなら・・・大丈夫だね。」

 

 その言葉に安心したのか白音は倒れる。

 

「しっ・・・白音!!」

 

 慌てて私は元の姿にもどっていく白音を抱き起こす。

 

 あちこち怪我をしているでも・・・。

 

「・・・・・・・。」

 

 やりとげたと言いたげに満足げな顔をしている。

 

 必死になってくれた私の妹を抱き寄せて私は涙を流しながら言う。

 

 ありがとう・・・と。

 

 




 やらかしました。小猫もついに本当の意味でグレモリ―眷族入りです(オイ!!)


 そして何気に新しい幼馴染と原作キャラ登場。

 ツッコミ所は万歳だと思いますが・・・。

 もう一話投稿します。、


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 登場。二人のアギトライダー

 第二弾。完璧なオリジナル展開です、

 今回の投稿は此処までですが、この後はレ―ディングゲーム編となる予定です。

 ついにヴァ―リのバイク(?)も登場します。

 では・・・どうぞ!!


SIDR イッセ―

 

 

 俺達・・・相当ヤバい事になっている。

 

 変身もしない状態であのデカい奴を殴り飛ばしたからだ。

 

 無我夢中だった。

 

 突然現れた三体の謎の仮面ライダ―。彼らが小猫ちゃん達の居場所を見つけ、ここまで連れて来てくれたのだ。

 

「何とか・・・間に合った。」

 

 彼らはナイトカーニバル。

 

「時間稼ぎありがとう。助かった。」

 

 エイジ兄さんが信頼できると言ってくれたけど・・・本当に助かった。

 

 そうでないと・・・あのでかい奴にやられる事だったからだ。

 

 急いで駆けだし、三人で殴り飛ばす。

 

 その結果に流石に俺も驚いているぜ。俺達、神器を使わない素の状態でも大分強くなった。

 

 だが、その驚きはすぐに怒りに変わる。

 

 安堵して気を失った小猫ちゃん。

 

 変身を解いた姿はボロボロだった。

 

「ありがとう・・・ごめんね・・・ごめんね。」

 

 それを抱き寄せて泣いている黒歌。

 

「今回復させます。」

 

 メイドの姿をしたライダーが指輪を当てる。

 

―――ヒーリング。

 

 そして、彼らが黒歌と小猫ちゃんを護衛している。

 

「・・・イッセ―、白音の事を感謝する。」

 

「?」

 

「あいつの壁を取り払ったのはお前だろ?おかげであいつは至れた。そして、生き延びれた。そのことに先に礼を言っておく。」

 

「・・・・・・大したことはしてねえって。」

 

 ただ、指摘しただけだ。

 

 どう解決すべきか。

 

 答えその物は小猫ちゃんが見つけたんだしそんなに礼をいわれることじゃ・・・。

 

「・・・フッ・・・お前はそのままでいてくれ。」

 

「そうだな。その方が好ましい。」

 

 軽いやり取りはそこまでだった。

 

「それとお前達にも感謝したい。本当に・・・ありがとう。」

 

 鋼兄の感謝はナイトカーニバルの五人にも及ぶ。

 

「・・・幼き身でこれ以上無理はさせたくないが・・・このまま妻と義妹を頼む。」

 

『はい!!』

 

 これで憂いなく暴れられるな、

 

「・・・さて。貴様らには仕置きが必要だな。」

 

「久々にあいつの本気の怒りをみたな、」

 

 ヴァ―リの言うとおり、本気でブチ切れている鋼兄の姿。

 

 怒りだけで大気だけじゃなく、軽く地鳴りが起きている。

 

「鋼兄・・・俺達もいくぜ。」

 

「はあ・・・まあ、ね。」

 

 小猫ちゃんを酷い目にあわせたのだからな。 ヴァ―リはそこまで怒っていないが、やる気には変わりない。

 

「・・・んん?」

 

 ヴァ―リは足元に転がっているなにかを踏みつけている。

 

「・・・・・・酷い・・・。」

 

 それは北崎だった。

 

 どうやらヴァ―リが着地した時、おもっきり踏み抜いたらしい。

 

 そして、それは止めになっていた。

 

「そんな・・・認めない。この・・・この僕がこんな終わり方を!!」

 

 全身から青い炎を吹き出しながら立ち上がる北崎。

 

 そのまま最後の攻撃をしかけようとするが。

 

「・・・お前はその程度だった。それだけのことだ。」

 

 それに対して止めの拳を叩き込むヴァ―リ。

 

「そのままお前の罪を数えながら・・・果てろ!!」

 

「認めん・・・僕にはデルタがある。不死の魔王の力。これがある限り寿命以外で死ぬことは・・・。」

 

 腰に現れたデルタのベルト。

 

 だが・・・それが光を放つ。

 

 そして・・・。

 

「そんな・・・。」

 

 そのベルトがヴァ―リに装着されたのだ。

 

「・・・ギアが俺を選んだみたいだ。いいのか?別に俺自身はアギトの力の影響で死ぬことはないが・・・。」

 

「あっ・・・あああ・・・・あああ・・・。僕のデルタが・・・」

 

 そのデルタのベルトを装着し・・・。

 

―――check、

 

 ヴァ―リがデルタに変身してみせる。

 

「そんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 それを見み、絶叫しながら北崎は果てた。灰となって・・・。

 

「・・・改めて巧がこうならなくて良かったと思うよ。」

 

 オルフェノクの最期を見てヴァ―リは呟く。

 

 俺もそう思うよ。でも・・・そう思うと哀れだな。

 

「デルタギアが白龍皇の元に・・・。」

 

「しかもルシファーの血を引く者が・・・か。因果だな。」

 

 俺達の傍に相棒はいない。故にあの姿にはなれない。

 

 だが・・・それでも今回は負ける気がしない。

 

「流石に分が悪いですね。でも・・・我々にかまっていいのかな?何しろ仮面ライダ―コアは「強さ」を求める欲望で動いている。そして・・・。」

 

 立ち上がった仮面ライダ―コア。その下半身がバイクの車輪のように変化。

 

「フハハハハハハハハハハハ!!さあ・・・冥界の滅びの一端、私の試作品で始めましょうか!!」

 

「貴様!!」

 

「実験の結果を高みの見物します。」

 

――――テレポート ナウ!!

 

 三人はそのままその場から転送されて姿を消し、仮面ライダ―コアの肩の上に転送。

 

「追いつけるものなら追いついてみなさい。」

 

 そして、そのまま仮面ライダーコアと共に爆発と共にその場から走り去って行った。

 

 行く先は・・・冥界の街。

 

 あいつ・・・街を襲撃するつもりか。

 

「そんな事させるか!!トルネ!!」

 

――――あいよ!!

 

 俺はトルネを召喚。早くあいつに追いつき止めないといけない。

 

「鋼兄乗れ!!」

 

「ああ!!」

 

 鋼兄を後ろに乗せる。

 

「ヴァ―リ!!先に行くぞ!!後で追いついてくれ!!」

 

「あっ・・・俺は・・・。」

 

 俺はヴァ―リの返事を聞く前に爆走を開始する。

 

 

 SIDE ヴァ―リ

 

 非常に困ったことがある。

 

 それは俺には・・・。

 

「追いつきたくても俺にはバイクがない・・・。」

 

 今だに解決していない重要な問題。

 

 それが俺のバイクが無い事。制作依頼を出してみたが・・・俺の満足できるスペックを言ってみると・・・。

 

―――――無理ゲ―いってんじゃねえ!!そんな化け物を作れるわけねえだろ!!

 

 と、アザゼルに滅茶苦茶怒られた。

 

・・・・最低でも一万馬力は欲しいと言っただけなのにな・・・。

 

 普通のバイクじゃ物足りない。

 

俺のバイク・・・もうすぐゲットできると予感はしていたのに・・・。

 

 アギトの勘も外れることがあるのか。

 

――――――あの・・・私でよければ使ってみませんか?

 

「んん?」

 

 其の言葉が俺の頭に聞こえて・・・。

 

「デルタのベルトか?」

 

――――今から言う番号を入力してください。

 

 其の言葉に従い、俺はベルトにそのコードを入力する。

 

 3821と。

 

 それと共にそれは召喚される。

 

「ずっと待っていました。あなたが・・・あなたが私のマスターですね!!」

 

「・・・おお・・・。」

 

 召喚されたそれを見て俺は確信した。

 

 これが俺の相棒だと・・・。

 

 だが後ろで黒歌が「それ・・・バイクにゃのか?」と茫然としていたが関係ない。

 

 歓迎する。俺のバイクよ!!

 

 

 

SIDE イッセ―

 

 俺達は今苦戦を強いられていた。

 

 仮面ライダ―コア。

 

 それは下半身をバイクの変形にさせ、高速で街に向かっていた。

 

 追いつくこと事態は簡単だ。

 

 だが、問題は追いついてからだった。

 

 あいつは走りながら胴体だけこっちに向けてきたのだ。

 

 そして火球で攻撃。

 

「ぐっ・・・厄介だぜ。」

 

 全く速度を落とさない状態での攻撃。

 

 だが俺達は遠距離攻撃手段はない上に相棒達とまだ合流できていない。

 

「・・・あいつらめ・・・。」

 

「止められるものならとめてみなさい!!」

 

 仮面ライダ―コアの身体からまるで炎の車輪に顔がくっついたような怪物が無数に現れる。

 

「造魔、それに無のメダルをたした試作機第二弾・・・火車のテストをさせてもらいましょう!!それにそれを応用させた足軽よ!!」

 

『!?』

 

 俺達の左右に現れたのは巨大なタイヤの様な乗り物の中心に乗っている足軽の姿。

 

 二体一組みで一つのタイヤに乗る、前の奴が両腕に円形の盾を装備した状態で操縦。後ろの奴が手にした火縄銃みたいな奴から光の弾を撃ってくる。

 

「あるロボットアニメでやっていた地球ローラ―作戦・・・それを参考にした最新アイテムなのだよ!!動力源はセルメダル。足軽自身の欲望で動くのだから面白い。」

 

 それはまさに走るタイヤ。上部にミサイルポットやキャノンみたいなものが付いているけど、タイヤがひとりでに走っているインパクトに比べたらだいぶ弱い。

 

 その内部に戦国時代にいるような足軽がいるのもカオスだし。

 

「トルネ・・・操縦頼むわ!!」

 

「あいよ!!」

 

 俺は遠距離攻撃が可能なフォーム・・・アクアフォームになる。

 

 その後ろで・・・鋼兄も手にしたアームド・クサナギを顔の前に出す。

 

 俺達は無防備に見えるタイヤの側面に回り込み、短剣を繰り出す。

 

 だが・・・。それを前の足軽が装備していた盾が発動させた小型の障壁が阻む。

 

 それはタイヤの両側面を覆う様に展開されている。

 

「だったらタイヤを・・・!!」

 

 タイヤに攻撃を仕掛けるが・・・そのタイヤが恐ろしいほど頑丈。

 

「・・・俺の斬撃を弾くか・・・。」

 

 鋼兄の斬撃が弾かれるって・・・どんだけ!?

 

 奇抜な見た目なのに関わらず、相当作りこまれている。

 

 思わぬ苦戦だが・・・。

 

「まあそれなら・・・。」

 

 俺も元のグランドフォームに戻る。

 

 結論は同じだ。

 

『防御の上から叩きつぶす!!』

 

 鋼兄はパンチ、それはキックをあの変なタイヤの側面に同時に叩き込む。

 

 防御?そんなことしても・・・俺達の一撃なら転倒は免れない。

 

 横に吹っ飛びながら転倒して離脱していくタイヤ。

 

「・・・まさに力技。」

 

 うっさいわ!!

 

 乗っている二人がすげえパワー系だからそうなるんだよ!!

 

 そう言っている間に他のタイヤと火車がやってくる。

 

 前方から一斉に無数の火車達が蒼い炎を纏わせて突進。

 

 左右に一体ずつ、そして後ろから二体のタイヤ達が銃を連射させながら迫ってくる。

 

「・・・鋼兄・・・前は頼むわ!!」

 

「ふっ・・・おう!!」

 

 他に突進してきた火車を前方に大きく飛びながら次々と切り払う鋼兄。そして、俺は宙返りしながら後部の荷台に両手から着地しつつ・・・両脇のタイヤ野郎を蹴り払う。

 

 そして、後ろのタイヤ野郎を蹴り飛ばしつつ荷台から運転席へと飛び乗り、前へ飛んだ鋼兄の足元まで加速。鋼兄は荷台の上に着地して、座り直す。

 

 その時間・・・僅か三秒。

 

『・・・・・・。』

 

 いや・・・新体操ってできるもんだ。

 

「・・・こっ・・・こいつらどういう運動神経してやがる?」

 

「本当に・・・。」

 

 フェニックスとグレムリンが目を丸くしているな。

 

「良い修行してきたみたいだな。」

 

「そっちも信じてくれてありがとうよ。」

 

 お互いに強くなった実感があるぜ。

 

 この程度なら全然問題ない。

 

 トルネもいるしな!!

 

「だが、彼を忘れてもらっては困るのだよ。」

 

 仮面ライダ―コアが拳を振り上げて襲いかかってくる。

 

 それを辛うじてかわすも・・・他の雑魚がジャマしてくる。

 

「・・・しかたねえ・・・。」

 

 修行で得た新たな力・・・それを使う時・・・か?

 

 だが、後ろから意外な援軍がやってきていた。

 

―――――――ここは俺達に任せてもらおうか!!

 

「へっ?」

 

 それは聞き覚えのある念話。

 

 その念話が飛んできた後ろの方を俺と鋼兄は揃って振り向くと・・・

 

 恐るべき何かがタイヤどもを次々と跳ね飛ばしながらやってきていた。

 

 それはタイヤの代わりに二つの球体みたいな奴を使っていた。

 

 背後にロケットブースターみたいなものがついていた。

 

 そして、その前面は極めて固いフードと装甲に覆われている。

 

 まさに二輪駆動のハイテク装甲車って感じがする。

 

「・・・何?これ・・・。」

 

 それにまたがって操縦していたのはヴァ―リだ。

 

 その表情はまさに歓喜。

 

「ふはははははははははっ!!見るがいいイッセ―!!これが俺の・・・バイクだ!!」」

 

『バイク!?』

 

 って・・・それバイクなの!?

 

―――――このたびヴァ―リ様の愛馬となりましたジェットスライガーと言います。以後、お見知りおきを。

 

『・・・・・・・。』

 

 しかもそれ・・・しゃべんのか!?

 

 すごくお淑やかなお姉さんの声だぞ?

 

――――はい。アギトの因子で私の体も変化したみたいで。

 

――――えっ?じゃあ、お姉さん、私と同類なの?

 

 トルネがおどいた様子でこっちを見る。

 

――――はい。製造年月日は・・・まあデルタギアと同じですのであなたよりも年上です。

 

「デルタギアと同じ?」

 

―――――私はデルタギアと対となるように生まれたものです。いままで私の力を使いこなす人がいなくて・・・誰も・・・誰も私を使ってくれなかったのです!!

 

「・・・・・・・。」

 

―――――すごく性能はいいのですよ?でも、それ故に私を召喚しても、みなかった事にして私をすぐに送り返しますし!!そのあと私の存在を忘れて・・・もう・・・。

 

 そんな化け物、誰が使うというのか?

 

「ふっ・・・だが、俺にはふさわしいと思うぞ。お前が。」

 

 あっ・・・いや、いたわ。ヴァ―リって言う馬鹿が。

 

 まあ、こいつが巧のファイズギアのあれと同じなのは分かった。だが・・・。

 

「なあ・・・それってバイクってカテゴリーで本当にいいのか?」

 

「何をいっている!!一定以上の排気量、まあ今回は馬力で言うが、その馬力をもって二輪で自走しているんだ。間違いなく自動二輪車、つまりバイクだろう!!」

 

『・・・・・・・・・。』

 

 間違ってはいないだろう。

 

 むしろそのごつさで、軽並の排気量しか無い方が驚きだわ!!

 

「・・・ちなみに馬力は?」

 

 鋼兄の質問に対して・・・

 

―――まだ正確にはわかりません。そちらの子と同じくアギトの因子の影響で十倍以上に出力が強化されまして。でも・・・五万馬力は余裕です。

 

『・・・・・・・。』

 

 うわ~オーバースペック。

 

 うん・・・俺達はバイクの定義で大切なことを見失っていた。

 

 一定以上なのは大切だよね?

 

 でも・・・どこまでがバイクと定義していいのか考えるべきだと思うんだ。

 

 何なの?そのオーバーすぎる馬力。

 

「そのパワーみせてもらうぞ!!」

 

―――お任せあれ!!

 

 そのまま仮面ライダーコアに突撃するジェットスライガー。

 

「ちょちょちょ!?」

 

 やってくる無数の火車達を・・・

 

―――邪魔しないでください。

 

 搭載されたミサイルで次々と撃墜。

 

「ぐおおおおおぉぉぉぉ!!」

 

 仮面ライダ―コアが火球を放つけど・・・。

 

 それを正面に搭載されたフォトンブラットの砲弾が相殺。

 

 その爆発を突っ切るように、ブースト全開で突進。

 

「これが本当のライダークラッシュだ!!」

 

 結果はまあ・・・最低でも五万馬力もあればおかしくもないことだった。

 

 仮面ライダ―コアが見事に跳ね飛ばされたのだ。

 

 きりもみ回転しながら宙を舞う巨体。

 

―――御主人様。私・・・あのお姉さんに火力と馬力、頑丈さで勝てる自信がないよ・・・。

 

「むしろ勝たないでくれ。」

 

「・・・そうだ。気にしたら駄目だ。」

 

 トルネの進化の方向性が可笑しくならないうちに言っておく。

 

 はっきり言って「五万馬力」はすごいが、すごすぎて最早「無駄」と言うレベルだ。

 

――――ただパワーがあるだけじゃありませんよ!それ!!

 

 ジェットスライガーはそのまま走行に使っているタイヤがわりの球体を横に回転させ、百八十度ターン。

 

 バイクって概念すでに破壊しとる。

 

「小回りもバッチリか。まさに化け物マシンだな。」

 

「はははははははは!!すばらしい!!これからもよろしく頼む!!」

 

―――ええ!!主様に立ちはだかる物は私がすべて跳ね飛ばしますのでご安心を!!

 

 うん.そいつなら山どころか海や隕石だってぶち抜けて走りそうだ。

 

「どうだイッセ―!!これが俺のバイクだ!!」

 

『・・・・・・。』

 

 俺はこれを見て思ったんだ。

 

 俺はそのジェットスライガーさんを絶対にバイクと認めてはいけないと。

 

 むしろ「二輪駆動の重突撃戦車」の方が適切じゃありませんか?

 

「落ちついたらツーリングでもしよう。」

 

『それだけは絶対にだめだ!!』

 

 ヴァ―リの提案に俺と鋼兄は即座に止める。

 

 あんなのが公道走ると、大騒ぎになる。絶対に・・・。

 

「・・・ぐぅ・・・。なんなんですか・・・あれ?」

 

「俺に分かるわけねえだろ!!」

 

 仮面ライダ―コアから振り落とされたフェニックスとグレムリンが呻く。

 

「・・・だが、舞台は整った。さあ、仮面ライダ―コアよ。我が作品達を暴れる時がきた!!」

 

 真木が指示を出す。それと共にコアが立ち上がり走りだす。

 

 その先には・・・街。

 

 それもコアが向う先は・・・学校!?

 

「さあ・・・楽しませてもらいますよ。街を蹂躙するその日を!!街中でさっきのような戦い・・・君たちにできますか?」

 

 あいつら・・・街で暴れるつもりか?

 

 俺達は追おうとするが・・・。

 

――――アクセル・・・ナウ!!

 

 グレムリンが加速魔法を発動。仮面ライダ―コアの姿が瞬時に消えたのだ。

 

―――――・・・私が振り切られるなんて・・・。

 

―――――時間操作系の力ですか。

 

 そっちがそう来るなら・・・。

 

「・・・ヴァ―リ。」

 

「・・・ふっ。仕方ないか。」

 

 俺達は揃って神器を発動させる。

 

 あの力の使い時がきた。

 

 目には目を・・・歯には歯を・・・。

 

 そして時間操作系能力には・・・同じ力を!!

 

 

SIDE 三人称

 

 

 それは突然だった。

 

 巨大な炎に包まれた怪物が学校のグランドに現れたのだ。

 

 その日は授業参観日。

 

 多くの子供達、そしてその親たちが学校に来ていたのだ。

 

「ぐおおおおおおぉぉぉぉぉ!!」

 

 仮面ライダーコア。

 

 その巨大な怪物はグランドで下半身を車輪のまま学校に向けて突進。。

 

「オマエタチ・・・ツブスゥゥゥゥゥ!!」

 

 その巨大な腕で校舎に殴りかかった。

 

 その時だった。

 

「グッ!?」

 

 赤と白の閃光が走り・・・仮面ライダーコアの横からふっ飛ばしたのだ。

 

――――――Accelerator  BOOST OVER!!

 

―――――Half Thme divide limit!!

 

 二つの音声と共にそれは現れる。

 

「ったく・・・危ないったらありゃしねえ。」

 

「ふう。だが俺がこんなことをするようになるとは。」

 

「俺からしたらおかしくもなんとねえと思うがな。」

 

「?」

 

 校舎を庇うように現れたのはバイクに乗った二人の青年。

 

「お前はなんだかんだ言ってすげえいい奴だ。俺が保証する。」

 

「ふっ・・・だったらお前はそれを超えるとんでもないお人好しだ。俺が保障してやる。」

 

「なんだそりゃ?」

 

「共に修行すればお互いそんなところを嫌でも分かるだろ?」

 

「ったく、そうだな。」

 

 二人はそんなやりとりをしながら仮面ライダーコアと対峙する。

 

「・・・追いついてきたか。しかもその力・・・。」

 

 真木が二人を見て驚く。

 

「ああ。時間操作系の能力。」

 

「イッセ―の師匠が使っていた能力をこっちの能力の応用で再現させてもらった。」

 

 無数の火球を弾丸のごとく高速で幾重にも放つ仮面ライダーコア。

 

 それはまさに火球の雨。

 

 その火球は後ろの学校にも多く向けられているが・・・。

 

「ふっ・・・。」

 

――――――half Thim divide!!

 

 その動きがすぐに遅くなる。

 

――――divide!!

 

 そして、それはだんだん遅くなっていき、止まっているように見える。

 

「空間ではなく周りの時間の流れを半減できる。進みを遅くさせた分・・・その速さを俺はとりこみさらに加速され・・・光を超える!!」

 

 白い翼を広げたヴァ―リの姿が消える。

 

―――divide!!

 

「もう、お前の攻撃は役に立たない。」

 

――――divide!!divide!!divide!!divide!!

 

 無数の火球達は瞬時に半減され、小さく弱く・・・最終的に火の粉なとなって消えていく。

 

「だったら、お前達!!」

 

 足元に無数の足軽達が現れるが・・・。

 

「対する俺の方は単純だ。ただ加速しているだけだからな。」

 

――――Accelerator BOOST!!

 

 もう片方の姿が消え、それと共にふっ飛ばされる足軽達。

 

 そのふっ飛ばされた足軽達の中に彼はいた。

 

「もっとも、俺はその速さを誰かに譲渡できる。こっちでの応用を色々と考えている最中なんだ。」

 

 その光景に驚く眼鏡の男・・・真木。

 

「・・・今代の二天龍。本当に異質ですね。新たな能力を会得しているとは・・・。」

 

 彼らは二天龍と呼んだ青年たちに畏怖の念を禁じえない様子だった。

 

「良い出会いだった。おかげで俺たちも時間と言う世界に足を踏み入れる事が出来たのだからな!!」

 

 片方の青年が凶暴な笑みを浮かべてその賛辞を受ける。

 

「さあて、とりあえずこいつを何とかしようや。」

 

「ふっ、本当にお前といると戦いに困らない。だが・・・今回は楽しむというより・・・。」

 

「そうだ・・・な。」

 

 二人は後ろを見る。

 

 そこには大勢の子供達。

 

 もし攻撃を一発でも通ったら、その子供達が危ない。

 

『絶対に。』

 

 だからこそ、二人は猛る。

 

『絶対に・・・・・・負けられねえよな!!!』

 

 守らないといけない存在がそこにいるから。

 

 二人の足元にアギトの紋章が浮かび上がる。

 

「・・・だが、パワーはこっちが上。それに仮面ライダーコア本体に半減をしかけて無駄ですよ?」

 

「・・・半減に抵抗できる敵・・・最近多くなってきたな。」

 

 銀髪の青年ヴァ―リ・ルシファーはそれに対してそこまで動揺していない。

 

 まるで半減が効かない程度、全然問題ないと言わんばかりに。

 

「でも、その程度なんだろ?俺からしたら関係ねえし。」

 

 黒髪の青年・・・兵藤一誠は軽く肩を回す。

 

「それに・・・ようやく相棒達が来てくれたからな。」

 

 其の言葉と共に・・・

 

「グオオオォォォ!?」

 

 仮面ライダ―コアに迫る赤紫の刃。

 

 それに斬りつけられ、下から銀色の何かが高速で突進。その二つを同時に受けてよろめいたところで・・・。

 

 赤い火球、黒い火球、毒液。その三つを同時にぶつけられ・・・。

 

 最後に赤と白のブレスによってふっ飛ばされた。

 

「・・・ったく遅いぞ!!」

 

「無理言うな。あんな常識外のスピードであちこち移動されて困っていたんだぞ。」

 

 赤いドラゴン—ドライグがイッセ―の言葉にうめく。

 

「・・・それがお前のバイク(?)なのか?」

 

 白いドラゴン――アルビオンはヴァ―リの傍にいるジェットスライガーを見て何故か疑問形。

 

―――――よろしくお願いします~。

 

「・・・なんというか・・・個性的な子がまた増えたわね。」

 

 紫色の巨大なコブラの様のような大蛇――ベノスネ―カ―は苦笑。

 

「ついに主殿がバイクを・・・。めでたいな。」

 

「だが・・・ある意味主様らしいバイクかもしれない・・・。」

 

 銀色の二足歩行のサイ――メタルゲラスと赤紫色のエイ――エビルダイバーも興味深々である。

 

「・・・トルネだけじゃないと思っていたけど、合流するのに苦労したわ。」

 

 紅の龍―――ドラグレッタ―ことクレアは少し疲れた様子。

 

「ホント。でも・・・これで全員集合。」

 

 それと対になる黒の龍――ドラグブラッカ―ことブランカの言葉に皆が頷く。

 

「さて・・・ここからは本気を出させてもらうぞ。」

 

「ああ。修行の成果・・・ここでみせよう。」

 

 イッセ―とヴァ―リは揃って相棒達を見る。

 

『応!!』

 

 そうして二人は変身する。

 

―――――Welsh Dragon ・・・・・・

 

―――Vanishing Dragon ・・・・・・

 

 子供たちの前で。

 

―――――over drive !!

 

 変身するその姿は・・・紅のアギトと白のアギト。

 

 

「・・・それが報告にあった二天龍の新たな姿。」

 

 真木がそれを見て息を飲む。

 

 二人は傍にドラゴン達を従え、学校を護るようにして仮面ライダ―コアと対峙。

 

「お前は俺達、龍の怒りを買った。」

 

 イッセ―が告げる。

 

「俺たちの逆鱗に触れたその罪、万死に値する。」

 

 ヴァ―リが告げる。

 

『さあ、ここからは逆鱗の時間だ!!二天龍の怒りを思い知れ!!』

 

 二人は仮面ライダ―コアを指差して同時に告げる。

 

 その光景を子供達が目を輝かせてみていることに二人はまだ気づいていない。

 

 こうして冥界に二人のヒーローが誕生する。

 

 ダブルドラゴン。

 

 ダブルアギト。

 

 そして、ダブルライダーと言う形で。

 

 

 

 

SIDE イッセ―

 

 いや~まさかこいつと名乗りを上げるなんて思いもしなかったぜ。

 

「・・・意外と癖になるな。」

 

「ああ。」

 

 だが、修行の成果がでている。

 

 今の姿に変身しても全然平気なのだ。

 

 今の姿のまま普通に暮らすことだってできる。

 

 それほどまでのレベルだ。

 

―――ホント・・・強くなったわねえ・・・。

 

―――流石に驚いたぞ。

 

 相棒達が驚いているが、まああれだけの荒行をすればなあ。

 

 仮面ライダ―コアが殴りかかってくるが・・・。

 

「さらに高みに登れた。もう神の領域かもな。」

 

 ヴァ―リが苦笑しながらこっちを見る。

 

 片手でコアの拳を軽く止めながら。

 

「かっ・・・片手!?」

 

「かもな!!」

 

 その隙に飛びあがり、仮面ライダ―コアの顔面を殴る。

 

「がぶっ!?」

 

 吹っ飛ぶ仮面ライダ―コア。

 

「・・・なん・・・だと?」

 

 その光景に真木も驚いている。

 

「改めてこの姿・・・すげえわ。」

 

「ああ。また手合わせ願いたいが・・・場所は選ぶか。」

 

 呑気に話しながら俺達は歩いて仮面ライダ―コアに向っていく。

 

「クルナ・・・。」

 

 立ち上がった仮面ライダ―コアは怯えている。

 

「クルナァァァァァァァ!!」

 

 コアは怯えた様子で巨大な火球を作り出し俺達にぶつけてくる。

 

 だが・・・。

 

「アッ・・・アアァァ・・・。」

 

 俺達はそれを異に返さずに炎の中を歩いていく。

 

 その火球は土やコンクリートすら飴のように溶かすどころか蒸発させるほど。

 

 それを受けて平気だった。

 

 全く倍化や半減も使っていないのに、素の防御力で耐えたのだ。

 

「そんな程度か?」

 

「温い炎だ。」

 

 俺達は走り出す。

 

「本当に熱い炎と言うのは・・・こういうのだ!!」

 

―――――メラゾーマ!!

 

 火炎呪文を手に纏わせながらヴァ―リはアッパ―を繰り出す。

 

「あっ・・・熱いィィィ!?」

 

 炎に覆われたはずの仮面ライダーコアはその炎のパンチを受けて熱さにもだえる。

 

「おいおい・・・それで終わるなよ。」

 

 浮いたそいつの足元で俺は腕を回す。

 

 その瞬間辺りに風が巻き起こる。

 

 それをさらに高めていき・・・

 

 俺は自力で竜巻を起こす。

 

 その竜巻に巻き込まれる仮面ライダ―コア。その巨体が浮き上がるほどの強さの竜巻を俺は自力で巻き起こしたのだ。

 

 これは一号先輩に教えてもらった技の一つ。

 

 その名も・・・きりもみシュート。

 

 その竜巻に空高く巻き上げられ、地面に叩きつけられる仮面ライダ―コア。

 

 圧倒もいい所だった。

 

 一対一でもおそらく楽に勝てるほどに俺達は強くなっていたのだ。

 

「ぐっ・・・くそぉぉぉぉ!!」

 

 それに怯えて逃げようとする仮面ライダ―コアだったが・・・。

 

「逃がすと思ったか?馬鹿者!!」

 

 それを殴りとばして止める男がいた。

 

 それは鋼兄。

 

「ようやく追いついたぞ。だが・・・お前達、本当に強くなった。力も、技も、そして心も・・・。」

 

 鋼兄が俺たちの成長を喜ぶ。

 

「なら兄貴分としても負けていられんな。」

 

 鋼兄もまた変身していた。

 

 鬼武者モードに。

 

 あっ・・・相変わらず凄まじい力だ。

 

「・・・・・・・。」

 

 仮面ライダーコアはその時点で悟っただろう。

 

 駄目だ・・・完全に積んだと。

 

「俺の妻とその妹が大変世話になったな。」

 

 怒りの鋼兄。

 

「止めいくか?」

 

「そうだな。」

 

 俺たちも足元にアギトの紋章を展開させる。

 

 そのエネルギーを集束させ、必殺キックを繰り出す。

 

「マダ・・・マダダァァァァァァ!!」

 

 だが、仮面ライダ―コアはしぶとい。

 

 発光したかと思えばいきなり身体の炎の勢いが強くなった。

 

 その炎が俺たちの攻撃を受け止めたのだ。

 

 それはまさに炎の鎧。

 

 それが俺たちのキックを受け止め・・・仮面ライダ―コアは俺達を跳ね飛ばす。

 

「・・・意外にやる。」

 

「ここに来て欲望による進化ですか・・・いいですね。」

 

「力・・・モット・・・モットチカラヲォォォォォ!!」

 

 仮面ライダ―コアが吠えるとともにさらに炎の勢いが増す。

 

 その炎の中らから大量に現れるのは炎に覆われた足軽達。

 

 その後ろからバケガニのごときでかさの巨大なカニやサソリ、ムカデなどの化け物が炎に包まれながら出現。

 

「己の欲望で足軽型のヤミ―や巨大なヤミ―達を・・・ほうほう。」

 

 真木は予想外の進化をしたそいつを見て何度か頷く。

 

 炎に包まれた足軽達は学校から避難しようとしていた子供達に向かって走り出す。

 

 だが・・・それを許す相棒達じゃない。

 

 足軽達を手足で薙ぎ払う。

 

 そのまま巨大な蠍やムカデ、カニなどの甲殻類のヤミ―と戦闘開始。

 

「・・・外道が。」

 

「相棒達の守りし者は我らの宝。それを狙うのは相応の覚悟があるとみていいな?」

 

 ドライクとアルビオン・・・格好いいな。

 

 流石ドラゴン。

 

 流石二天龍。

 

「だったら!!」

 

 フェニックスの奴がいつの間にか校舎に!?

 

「まとめて破壊しつくして・・・。」

 

 だが・・・。

 

「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 それを阻む奴がいた。

 

 それは白いイカみたいな姿。そして右手にオレンジ色のロケットを吹かせ、そのままフェニックスに突撃。

 

「ロケットライダ―ァァァァァパーァァァンチ!!」

 

「ごぶろっ!?」

 

 フェニックスがそのまま空中に巻き上げられ・・・。

 

 そいつはロケットの先端にフェニックスを引っかけたまま急降下。

 

 ロケットの推力で普通に落下するよりも早い速度で落ちていき。

 

「ぎゃふつ!!」

 

 フェニックスはそのまま地面に激突。

 

 そのまま爆発消滅する。。

 

「久しぶりだぜ・・・イッセ―!!」

 

 その姿を俺は見間違う事はない。

 

 俺の幼馴染の一人・・・

 

「弦太郎!!」

 

 紫道 弦太郎。

 

「私も忘れてもらっては困るわ!!」

 

―――――キック

 

―――――サンダ―

 

―――――マッハ

 

 三枚のカードを装填。

 

―――――ライトニングソニック!!

 

「へっ?ぐるぼら!?」

 

「何?がらば!?」

 

 雷を纏って高速で飛んできた何かがグレムリンと真木を跳ね飛ばす。

 

 そして、地面を高速で滑りながら着地したのはまた知った顔だった。

 

「久しぶり。イッセ―君。」

 

 イッ・・・イリナ。

 

 何で二人が冥界に?

 

「お前の幼馴染か?」

 

「あっ・・・ああ。」

 

 こんなところで再会できるなんて思いもしなかったが・・・。

 

「まあ、詳しい説明は後にしようぜ。」

 

「そうね・・・。私の新しいベルトも初披露よ!!」

 

 イリナの腰にはトランプのダイヤが描かれたベルト。

 

「そっ・・・それって剣崎さんの!?」

 

「これは過去に橘さんが作ったグレイブの進化系。天界に保管していたのよ。使うカードは・・・。」

 

―――ケルベロス。

 

 三首の獣が描かれたカード。

 

「変身。」

 

―――――オープンアップ!!

 

 現れたのはダイヤを模した仮面をかぶった金色の仮面ライダー。

 

 仮面ライダ―グレイブ。

 

 その手には剣、そして銃。

 

 イリナの新たな姿ですか・・・。あれ?でも・・・。

 

「メテオのスイッチは?」

 

 イリナってメテオに変身していたよな?

 

「二代目メテオの元に。」

 

 二代目のメテオですか!?

 

 一体誰だ?

 

「ぐっ・・・こんなところで援軍だと!?」

 

 復活したフェニックスが呻く。

 

「しかっも、あれって報告にあった教会サイドのイッセ―の幼馴染。このパターン・・・やばい!!」

 

 グレムリンは悟っただろう。

 

「撤退の準備だ。」

 

「どういうことです?」

 

「兵藤一誠の一番恐ろしさはその本人の強さだけじゃない。」

 

 グレムリンは断言しやがった。

 

「彼の周りにその力が次々と集まってくるということです。しかも幼馴染として。一人来たなら・・・瞬く間に十人二十人と・・・。」

 

 俺の恐ろしさってそこなの!?

 

「まさにゴキブリみたいな連中だ。しかも例外なく化け物ばかり。」

 

「・・・なあ。俺達、どうしてゴキブリ扱いされているんだ?」

 

「失礼しちゃうわ!!」

 

 あいつら俺の幼馴染を何だと思っている?

 

「いや~私達からしても大概な連中だと思うわよ?」

 

「あれだけの猛者・・・良く集まった者だなと。」

 

 あっ・・・相棒達まで・・・。

 

「他の連中が来る前に速攻でつぶすが吉。」

 

 俺たちの周りを無数の足軽達が囲む。

 

 雑魚ばかりがすごい数。軽く見て二百体はいるか。

 

「・・・タイマンできねえ。」

 

 弦太郎、今回もその名乗りは諦めろ。

 

 だが、その心配は杞憂に終わる。

 

 彼らの前に蒼い風が走る。

 

 それと共に、一気に足軽達が吹き飛ばされていく。

 

「・・・やっぱ、幻魔か。」

 

 現れたのは二本のクワガタの顎のような剣を手にした奴。

 

 歳は俺達と同じくらい。

 

 その目は右目だけ赤くなっていた。

 

「・・・ったく、あのでかいのも幻魔か?しかも凶悪なレベルの造魔ってところか。進化する造魔って聞いたことが無いが・・・。」

 

 手には・・・鬼の篭手!?

 

「お前・・・まさか俺と同じ・・・。」

 

「そう・・・鬼の末裔。まあ・・・人間である部分はな。」

 

突然現れたあいつは・・・俺を見る。

 

「・・・話には聞いていたけど、やっぱアギトなんだな。イッセ―。」

 

 んん?

 

 何で俺の名前を?

 

「すげえ久しぶりだな!!弦太郎もイリナも!!」

 

 弦太郎とイリナの名前も・・・。

 

「えっ・・・まさか、新!?」

 

 イリナが不意に名前を呼ぶ。

 

 新って・・・ええぇぇぇぇぇ!?

 

「おっ・・・お前あの新!?」

 

「そうそう・・・久しぶりだぜ!!」

 

『・・・・・・。』

 

 その光景を敵サイドは唖然と見ていた。

 

「・・・新たな幼馴染みの登場・・・だと・・・。」

 

「まさか冥界での再会になるなんてな。三勢力の神が死んだって発表には驚いたが、その後釜にお前の名前があったからもっとびっくりしたぜ!!」

 

「・・・えっ?」

 

「おっと・・・名乗るのが遅れたな。」

 

 新の手が飛んできた何かを掴む。

 

 それは・・・青いクワガタ!?

 

 ギャー助や天道師匠と同じ・・・ゼクターなのか?

 

「俺は北欧神話・・・アース神族が一人。新たな戦いの神、ガタックの名を持つ者!!名は加賀美 新!!」

 

『!!?』

 

 ガタックの名を聞いた他の皆が驚いている?

 

「あっ・・・あの北欧神話、最も新しい神!?オーディンの孫にして、光の神バルドルの忘れ形見・・・。」

 

 あっ・・・新?

 

 新だけに新しい神って?

 

 ヴァ―リも驚いているけど?

 

「へえ・・・イッセ―、君の幼馴染は本当にすごいね。まさか新しい神の一席までいたなんて。いつか手合せを願っていた神族の一人がいたなんて・・・。」

 

「・・・・・・・。」

 

 はい?

 

「新しい神。その名はガタック。北欧神話で戦いを司る神だ。あの神話勢力で戦いを司るってどれだけの事だと思う?」

 

 あいつが腰のベルトに蒼いクワガタを指し込み、変身。

 

 現れたのは銀色の鎧に覆われた異形の姿。

 

 両肩にはキャノンが搭載されている。

 

 多分あれって重装甲とパワーを兼ね備えたマスクドフォーム。

 

「新・・・そっちも事情を教えてくれ。引っ越した後、向うで何があった?」

 

 その問いに肩をすくめた新。

 

「色々と。本当に色々とあった。まあ、この後じっくりと語らおうぜ。」

 

「ああ!!あの時の連中が集まってきたな。」

 

 あの不思議なロボット達と宇宙からの友達と一緒に遊んだ連中が集まってきている。

 

「鉱太、誠、イリアは?」

 

 新もその連中の名前を覚えていたみたいだ。

 

「三人ともあの後半年位かけて引っ越した。でも・・・この様子だと、再会が近そう。」

 

『・・・・・・。』

 

 また会ってみたい。そんな願望も込めて俺は何となくそう思った。

 

「・・・イッセ―がそう言ったらきっと当たるよ。うん!!」

 

 イリナが元気一杯に頷く。

 

 しかし、俺がそう言って当たるわけじゃ・・・。

 

――――アナタ・・・自分がアギトってこと忘れているでしょ?今のはアギトの予言よ。

 

 クレアが呆れた様子でいう。

 

「・・・でも私たちの知らない幼馴染か。」

 

 そう言えば、あいつらってクレアと出会う前、そして相棒がまだ俺の中で眠っている間の奴らだったな。

 

 知らなくても無理ねえわ。

 

「ああ、リアス、覚悟しなさい。第二次幼馴染ラッシュが始まったわ。下手したらスーパー幼馴染大戦が起きるかも・・・。」

 

 スーパー幼馴染大戦?なんじゃそれ?

 

・・・・・・あれ?どうして「2015」にそれは起こると?

 

「おお・・・あっ・あんたが噂の紅の賢炎龍!?(クリムゾン ワイズマンズフレアドラゴン)」

 

 新がクレアを見て感激で声をあげる。

 

「へっ?それって私の事?いや~すごい二つ名が付いたわねえ。」

 

「その対となるのが漆黒の闇炎龍(ブラック ダークネスフレアドラゴン)」

 

「私も有名になった・・・。」

 

 ブランカの奴もまんざらでないみたいだ。

 

「堕天使の総督「アザセル」が命名したらしいぜ!!」

 

『・・・・・・。』

 

 その名を聞いた瞬間、2人は微妙な表情を浮かべていた。

 

 あっ・・・あの親馬鹿総督が名付けた二つ名か・・・。

 

「貴様ラァァァァァ!!」

 

 仮面ライダ―コアが突進してくるが・・・。

 

「どりゃぁぁぁぁぁ!!」

 

 黄金の輝きをした何かがそれを斬り飛ばす。

 

「・・・まさかこいつとまた戦う事になるなんて思いもしなかった。」

 

 やってきたのはエイジ兄さん?

 

 黄金のライオンみたいな形態でやってきた。

 

「そして久しぶりだな・・・真木博士!!」

 

「ええ。」

 

 エイジ兄さんと真木が対峙する。

 

「・・・ぐおおおおっ!!」

 

 立ち上がる仮面ライダ――コアを何処からともなく飛んできた砲弾が阻む。

 

「がぶ!?」

 

 その砲弾の破壊力は凄まじい。

 

 炎の防御で受け止めたのは見た。

 

 それでもダメージを軽減しきれなかったのだろう。

 

 コアが大きく吹っ飛びグランドの外に叩きつけられる。

 

――――こらぁぁぁぁ!!新!!クロックアップ全開で行くから捕捉に時間かかったわ!!

 

 俺たちのいる場に正体不明の声。

 

 女性の声みたいだけど・・・。

 

「げえぇぇぇぇえ!?姉ちゃん?」

 

――――やっと補足できたわ。まったくあの場所から三十キロも離れているじゃない・・・って・・・後ろをもっと気にしなさい。

 

「ごぶが!?」

 

 溜息と共にもう一発砲弾が飛んできて火球を放ちつつ起きあがろうとした仮面ライダーコアの顔面に命中。再び地面に押し倒す。

 

――――――破壊力はあえて落としているわ。

 

 コアが放った無数の火球をすべて打ち落とす砲弾。

 

「・・・呆れたわね。でもその砲弾ってまさか・・・。かっ・・・彼が来ているの?」

 

『・・・・・・・・。』

 

 その砲弾を見たクレア達が青ざめているけどどうした?

 

「・・・まっ・・・まさか彼が?一体誰と契約を!?」

 

「ベノ・・・どうしてお前が震えている?」

 

 ミラーモンスターズの様子が明らかに可笑しい。何か・・・とんでもない存在をかんじとったように。

 

「流石姉ちゃん・・・正確な砲撃。」

 

「・・・ガタックの姉・・・だと!?」

 

 その姉の言葉に敵サイドが大きく震えている。

 

「・・・北欧神話最強まで来ているのか。しかし、あれで手加減した砲撃とは・・・。」

 

 ヴァ―リの口からとんでもない単語が出てきましたけど!?

 

「あっ・・・歩くラグナロクが冥界に来ている!!?」

 

「まずい・・・にっ・・・にげ・・・はっ?」

 

 とっさにグレムリンがフェニックスの影に隠れる。

 

 それと共に砲撃が命中。

 

「・・・てめえ。俺が不死身だからって弾よけにするとはいい度胸じゃ・・・ばっ!?」

 

 何発の打ちこまれる砲弾。

 

 それをグレムリンはフェニックスを盾にしてかわすかわす。

 

―――――撤退をお勧めしますよ?でないとリミッター解除の本気をぶちこみますから。

 

 あれで本気じゃないのね。

 

「・・・姉ちゃん・・・どんだけ遠距離砲撃の精度を上げているの。」

 

「ぐっ・・・。」

 

 仮面ライダーコアが立ち上がるが・・・。

 

「ふん!!」

 

 だが、すぐに吹っ飛ぶ。

 

「・・・ヒナさん。」

 

 ヒナさんがいつの間にか現れたのだ。

 

「・・・化け物がまた来た。」

 

 グレムリンの嘆き。

 

 あれ?ヒナさんってあんなに力・・・。

 

「ナンダお前ェェェェ!?」

 

「えい!」

 

「がぶろ!?」

 

 地面に叩き伏せられた仮面ライダ―コア。その足を掴み・・・。

 

「!?!!!?!?!?!?!?」

 

 そのままジャイアントスイングをかます。

 

 竜巻が発生するほどのすごい速度で回ります。

 

『・・・・・・。』

 

 回しきって上空にほおり投げる。

 

 うわ・・・すごく小さく見える。

 

 そのまま巻き上げられ・・・。

 

 あっ・・・グランドに落下していく。

 

 落下する瞬間に飛びあがり、ヒナさんが共に落ちながらあいつの巨体を掴み・・・。

 

 そのまま顔面に叩きつけた!?

 

『・・・・・・。』

 

 結果・・・超巨大な犬神家が完成。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

 辺りに轟音の余韻が広がる。

 

「・・・・・・・・・・・・何が・・・起きたのです?」

 

 真木が目を丸くする。まるで何が起きたのか理解が追いつかないようで・・・。

 

「・・・・・・やめてくれ。不死身でも・・・不死身でも心は折れるんだ!!」

 

「おっ、落ちつけ!!」

 

 フェニックスに至っては軽く錯乱している。

 

「エイジ君も何も言わないから心配したんですよ?」

 

「あっ・・・ああ。」

 

 エイジさんが引きつらせるのも無理ない。これは流石に・・・・・・。

 

「仕方ないですから、私も一肌脱ぎます。せっかくこれも貰ったので。」

 

 ヒナさんの懐から・・・クルミの様な錠前。

 

 腰には黒に日本刀のような物が付いたベルト?

 

――――――クルミ

 

「・・・変身。」

 

 ヒナさんがそれをベルトにセットすると・・・。

 

 変身するとともに空中からチャックが開いて、そこから現れたのは・・・クルミですと!?

 

――――クルミアームズ・・・ミスタァ~ナックルマ~ン!!

 

 それを被って変身しました。

 

 ヒナさんが。

 

 両拳はでかくなっている。

 

 そして・・・。

 

「私も戦います。」

 

「いっ・・・いや、あの・・・。」

 

「安心してください。負ける気がしないので!!」

 

『・・・・・。』

 

 そう言いながら巨大なヤミ―を拳で殴るヒナさん。

 

 一撃で巨大なカニが粉々に吹っ飛んだ。

 

 そうだよね。変身前であれだけの事をして貸して、その上変身。

 負ける要素皆無だわ。

 

「・・・何度も聞くがお前、本当に人間か?」

 

「・・・・・・もう人間止めています。」

 

 エイジ兄さんから出てきたアンクの言葉。

 

「お前、完璧に開き直ったな。」

 

 ヒナさん、あんたは確かに人間止めていますわ。

 

「ひいいいいぃぃぃぃぃ!!マジで逃げる!!あいつが変身ってドッ、どんな悪夢なんだ!?」

 

 撤退を決意して逃げ回るフェニックス。

 

「ぐっ・・・本当に今代の赤龍帝は恐ろしい。一体どれだけの化け物を集めれば気が済む!?」

 

 グレムリンさん。

 

 そんなの俺の方が聞きたいわぁぁぁぁぁぁ!!

 

 まあ、それでもありがたい。

 

「これでこいつに専念できるわ。」

 

 やっと頭を地面から抜いた仮面ライダーコアを見て俺達は拳を鳴らす。

 

「こいつは俺達が倒す。新達は悪いが・・・。」

 

「いいぜ?露払いは任せろ。学校に一切傷つけさせはない。」

 

「おもっきりやって来い!!」

 

「任せて欲しいですわ。」

 

俺の幼馴染共は本当に頼りになる。

 

「やれやれ・・・なら真木とグレムリン、そしてフェニックスって奴らは俺が直々にもんでやる。」

 

「げっ?」

 

 鋼兄は肩を鳴らす。だがその目は本気でキレている。

 

「止めろ・・・もうこれ以上・・・いじめないでくれぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 フェニックス、一体お前に何があった?

 

 あれ?俺達が最初にやったことだろって聞こえたが・・・、まあそんなこと気にしない。

 

「ぐぐぐ・・。ぐおおおぉぉ!!」

 

 仮面ライダ―コアが起きあがり、キックを繰り出してくる。

 

「遅い!!」

 

 それを紙一重でかわしつつ俺はその脚を蹴りあげる。炎の防御も流石に出来ねえタイミングだぜ?

 

 体制が崩れたところを・・・ヴァ―リが高速で地面をすべりながらスライディング。

 

 空に跳ね飛ばされた仮面ライダ―コアの元に俺は駆けより・・・。

 

 そのまま相手の身を翻らせながら地面に叩きつけえる。

 

 その名も・・・ライダーがえし!!

 

「ぐう・・・この程度ォォォォォ!!」

 

 立ち上がる仮面ライダ―コア。

 

燃え上がった炎で防御しているだけにダメージは小さい。

 

 仮面ライダ―コアが雄叫びと共に巨大な火球を無数作りだす。

 

 そのでかさは直系だけでも三階建ての校舎位の大きさがある。一発で校舎が粉々に吹き飛ぶのは確実。それを一度に無数。

 

 あいつの力がどんどん上がっているのは分かる。

 

 でも・・・その程度だ。

 

「ヴァ―リ。」

 

「ああ。」

 

 それだけで十分。

 

 放たれた無数のでかい火球に対してヴァ―リが立ちはだかる。

 

――――Reflect!!

 

 そして、そのまま反射の力を発動。

 

 すべての火球をまとめて跳ね返す。

 

「ぐおおぉぉぉぉぉ!?」

 

 しかも反射具合を上手くコントロールしているのかすべて仮面ライダ―コアに直撃。

 

 炎によりダメージはそこまでないだろうが何より相手の動揺が大きい。

 

 その隙に俺は仮面ライダ―コアの目の前まで接近し、拳を繰り出す。

 

 普通なら炎の防御で無効化されるだろうな。

 

 だが・・・俺にはこれがある。

 

――――Penetrate!!

 

「がっ!?」

 

 防御を貫通した一撃を受けた仮面ライダ―コアがよろめく。

 

 俺の透過の力はそんな防御は一切無力にする!!

 

 俺は透過の力を発動させもう一発殴る。

 

 怯む仮面ライダ―コアを前にヴァ―リは告げる。

 

「俺もやらせてくれないかい?」

 

「おう。」

 

 俺は仮面ライダーコアを蹴り飛ばしつつ、ヴァ―リに向かって・・・。

 

――――Transfer!!Transfer!!Transfer!!

 

 三回譲渡をする。瞬間に力を幾重に分けて事も出来た。

 

 そして、譲渡したのは倍化させた力じゃない。

 

「ぐう!?」

 

「うおおおぉぉぉぉぉ!!」

 

 透過の力だ。

 

 ヴァ―リの前蹴りが腹に刺り、前かがみになる。

 

 そこをヴァ―リの右拳で打ち上げ・・・

 

 浮かんだ所を二人で蹴り飛ばす。

 

「ガッバッ・・・馬鹿ナ・・・防御ガ・・・。」

 

 防御を貫通され、ダメージを受けた仮面ライダ―コア。

 

「参った。まさか生前の力を発揮するだけでなく、譲渡までするとは。」

 

「・・・あんな闘い方、歴代の使い手たちもしてこなかったぞ。」

 

 相棒の呆れた声にアルビオンもうなづく。

 

「力・・・何故?コレダケノ力ヲ得テ、ドウシテ圧倒!?」

 

 仮面ライダ―コアは立ち上がる。だが、その動きは明らかに弱っている。

 

 あれだけぼこぼこにされたらそうなるわな。

 

「ウガァァァァァァァァァ!!」

 

 それでも奴は叫び、さらに全身の炎を猛けさせる。

 

そこに俺達は揃って並び立つ。

 

「・・・とりあえず止め行くか?」

 

「そうだな。」

 

―――――FINAL VENT!!

 

 俺達はそれぞれクレアとベノのファイナルベントを発動。

 

――――Boost!!Boost!!Boost!!Boost!!

 

 俺達は同時に瞬時の倍化をし、破壊力を高めていく。

 

 破壊力の倍化は・・・十六倍位。

 

 今回はこれくらいの破壊力で勘弁してやるよ。前のあれは流石に自重しないといけないし。

 

 俺達は揃って飛び上がり、その前にクレアのベノが待機。

 

 飛び上がった先にそれぞれアギトの紋章が出現。

 

 俺達はそれぞれクレアの炎のブレスとベノの毒液を受けた状態でアギトの紋章を突きぬける。

 

 発生する爆発的な加速。

 

「その程度ォォォォォォ!!」

 

 それを炎の防御で受け止める仮面ライダ―コアだったが・・・甘かったな。

 

――――Divide!!

 

「なっ!?」

 

 その声と共に炎の防御が四分の一になる。

 

――――Divide!!Divide!!Divide!!Divide!!

 

 それは半減の力。

 

 俺達はキックのインパクトの瞬間に防御力を半減させるべく発動した力。

 

 しかも、ただ半減させるだけじゃない。

 

 半減させた分、その力を奪い破壊力に転嫁させる。

 

 透過させるまでもない。

 

「ソンナ・・・反則・・・。」

 

『ウオオオオォォォォォ!!』

 

 そこにさらに俺達は身体をひねることでの回転を加え、さらに破壊力を上げる。

 

 二号ライダーから受け継いだ必殺キック。

 

 その名も・・・・

 

『ライダァァァァダブル卍(マンジ)キックゥゥゥゥ!!』

 

 その必殺キックを放った俺達は仮面ライダーコアの身体をぶち抜いて地面に着地する。

 

「・・・・・・認メナイ・・・。」

 

「・・・これでも全然最大破壊力じゃないから怖いよ。」

 

ヴァ―リの問いは分かる。

 

 あの時からさらに力の制御を行い、破壊力をより効率的に発揮するだけの技量も獲得した。

 

 その結果、単独のファイナルベントで倒せた。

 

「コンナ程度デ・・・私ガ・・・。」

 

 仮面ライダ―コアを。

 

「グソォォォォォォォォォォ!!」

 

 身体に大穴をあけた仮面ライダーコアは絶叫と共に爆発。

 

「・・・まさに戦神。いや・・・龍神の化身といえますね。」

 

 爆発し、メダルをまき散らす光景を見ながら真木は感心すらしている。

 

「おいおい!!感心している場合か!」

 

「・・・追い詰められた。」

 

 フェニックス達が悲鳴をあげて真木の傍にやってくる。

 

「やれやれ・・・。もう大物は終わったのね。」

 

 やってきたのは、部長!?

 

「仕方ありませんわね?」

 

「イッセ―君達かっこよかったよ。今度はこっちの番かな?」

 

 朱乃さんとユウナの奴まで・・・。

 

 次々と集まってくる。

 

「・・・やべえ・・・。」

 

「不味いですね・・・。」

 

「まさかお前まで復活しているとは思いもしなかったぞ。」

 

 エイジさんが真木を睨みつける。

 

 知り合いのようだ。それも一度倒した類の。

 

「・・・今度こそ終末を実現する。それだけです。」

 

「イッセ―君。あいつだけは倒して。でないと・・・。」

 

 エイジさんは汗を伝いながら告げる。

 

「世界が危ない。」

 

 その真木と言う男が危険だと。

 

「・・・こうなったら起死回生の一手!!」

 

 グレムリンが何かを決意した様子。

 

 フェニックスからメダルを三枚取り出したのだ。

 

「セルメダルを少し貰う。そして・・・。」

 

―――ゲ―ト・・・ナウ!!

 

 指輪の魔法でゲートを開いて、そのメダル、数にして三つほど入れた。このパターンどこかでみたような・・・?

 

「しっ・・・しまった!?」

 

 ハルが何かに気付き声をあげる。

 

 あれ?身体の中に何か入れられた?

 

「さあ、皆、活目するがいい。」

 

―――トランスポート・・・ナウ!!

 

 そして、あら割れたのは巨大な昆虫。

 

 まるで下半身をハチ。上半身をカマキリにしたような巨大な奴だった。

 

 その周りには無数の小さなカマを持ったハチ達が群れを作って飛びまわっている。

 

『・・・・・・・。』

 

 その現象に俺以外の皆が固まっている。

 

 それはどうしてか?

 

 その答えは一つ。

 

「おっぱいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 

 その巨大なハチがおっぱいと叫びやがったからだ。

 

 しかも羽音までおっぱいと聞こえてくる。

 

 っておいおいおいおいおいおいおい!?

 

「また・・・君のヤミ―か。」

 

 ヴァ―リですらうんざりとしている。

 

「そして、今回はまだいるぞ!!」

 

 続いて現れたのは重装甲に身を包んだ巨大なヘラクレスオオカブトにクワガタ蟲の顎をくっつけたキメラ。

 

「最後に・・・でてこい!!おっぱいアゲハ!!」

 

 最後には巨大な目玉がついた巨大な芋虫みたいな奴が・・・。

 

 今回は無駄に豪華だ。

 

 三体もいやがる。

 

「まずいわ。これはさっきの奴らよりも遥かに強敵よ!!」

 

「またあいつのヤミ―かよ・・・。それも三体。」

 

 俺の幼馴染共が戦慄している。

 

「あっ・・・あいつら最悪の無差別テロを・・・。」

 

 ネロの言葉に皆が頷く。

 

 最悪のテロか・・・。

 

 俺のヤミ―ってそんな扱い!?

 

「フハハハハハ!!逝くがいい!!おっぱいインセクトたちよ!!」

 

 やけくそ気味にグレムリンが叫ぶ。

 

『おっぱいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!』

 

 その雄叫びに応えるようにあいつらが「おっぱい」といながら俺達に襲いかかってきた。

 

 

 

 そのあとのカオスは凄まじい物だった。

 

 何しろそのおっぱいインセクト共は強い上にやたらしぶとい。

 

 高速で飛びまわるカマキリバチ。その周りにいる小型の個体が一斉に針を乱射。

 

 雨のように降ってくる針の一本一本が・・・「洋服破壊」の効果。

 

 小型の奴らは羽から発生させた超震動波を使ってバリヤ―として使ってくる。

 

 本体は巨大な銛のごとき針と震動波による範囲攻撃、そして両手の鎌で応戦。

 

 もう一体のカブトクワガタなんて電撃を発し、その電撃を浴びた瞬間動きが固まると言う最悪のコンボだ。

 

 しかもやたら固く、パワーもあった。ヒナさんと鋼兄の同時パンチに素で耐えるレベルの。

 

 何とか重力増大で動きを止めたけど。

 

 もう一体のおっぱいアゲハは幼虫でよかったと思ったらそうでもない。

 

 だが、ヘンなフェロモンを出して、俺達の欲望(主に性欲)を刺激する様にしてきたり、糸を吐いて、相手を縛りプレイ状態にさせる。目玉みたいな模様から光を出したりして催眠状態にするなど地味にいやらしい事をばかりしてきやがった。

 

 体も無駄に弾力があって、下手な攻撃ははじき返されるし。

 

 何とか俺達が女性陣の服と鋼兄の鼻血を犠牲にしながらもカマキリバチとカブトクワガタ、アゲハ倒したと思ったら、幼虫体のアゲハが倒す寸前にさなぎになり、それで攻撃をしのぎやがった。

 

倒れた二体の欲望を吸収。

 

 一瞬で羽化したからな!!

 

 その姿は倒したおっぱいカマキリバチとカブトクワガタを融合させ、巨大な蝶の羽を生やした姿。

 

 周りには無数のビットみたいな蟲共がいてさらに厄介。

 

 ある意味昆虫キメラとなったおっぱいアゲハ。

 

 最後に最大の強敵、そして同志だった。

 

 倒すのに皆が総力を結集したほどだ。

 

 その高速で飛びまわりながら男女無差別に「洋服破壊」する大変危険な燐粉が街中にばらまかれ甚大な被害が出た。

 

 あいつら?

 

 もちろん、そのどさくさにまぎれて逃げましたよ。

 

 まったく、仮面ライダ―コアよりもよっぽど厄介だったね。

 

 あれ?佑斗さん?

 

 どうして爽やかな笑みで俺の肩に手を置いているのですか?

 

 他のみなさんも大変素敵な笑みでこっちをみていますよ?

 

 あの・・・あれって俺のせいではないですよ?

 

 グレムリンに怒ってくれよ!!あんなことをしでかしたのは・・・。

 

 えっ?俺の欲望だからとりあえずお前は殴られろ?

 

 皆お怒りのようで?

 

 そっ・・・そんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 ここからが俺のステージらしい。

 

 グレムリンの奴!!今度会ったら覚えておけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!

 

 




 今回の投稿はここまでです。

 いやーおっぱいヤミーシリーズは安定したオチになります。

 では今年もまたよろしくお願いします。

 


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 狼の王子の再会アギトの予言

 大変お待たせしました。

 二話程更新します。


 原作と時系列は違うことになるのは容赦してください。

 そして・・・巧と椿姫に関して驚愕の事実があきらかになります。


 SIDE 椿姫

 

・・・・・・。

 

 私達はすごい時代に生まれたのだと思う。

 

「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!」

 

 ある意味光栄と言うべきかもしれない。

 

「HA-HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!」

 

 ありがたみは全くないけど、

 

「HAHAHAHHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA・・・さあイッセ―。いい加減すべて白状しなさい。あなたの幼馴染ってあと何人いるの?名前は?行方は?そして、どんな化け物なの?」

 

 RIASUさんもとい、リアスさんが壊れた笑いをしながらイッセ―君を問い詰めています。

 

「そんな事言われてもたくさんいるし・・・。」

 

『たくさん!?』

 

「それにあっちこっちから来て、あっちこっちへ行っちゃったから。」

 

『あっちこっち!?』

 

「ちょっ・・・そこ、驚くところなの!?」

 

 沢山とあちこち発言にリアスさんだけでなく、話を聞いていた全員が聞き返します。

 

 もちろん私も驚いています。

 

 この期に及んでまだいますか・・・。

 

 それもまだ沢山。

 

 本当にいい加減にしてほしい。

 

「いいから全部教えなさい!!」

 

「へっ・・・そんな無茶・・・。」

 

「い・い・か・ら!!」

 

「行方不明な連中が多いから!!宇宙だったり、平行世界だったりで・・・。」

 

『なんですと!?』

 

「あっ・・・しまった。これは誰にも言うなって・・・。」

 

「全部・・・全部話して!!お願いだから!!一体どんな連中なの!?想像もできないくらいヤバい連中がまだまだ一杯いる気がしてならないの!!もう私の眷属全員が規格外になって、残った戦車の駒が変異の駒に変わっちゃって、これからどうなるのか心配しているだけでもきついのに!!」

 

 リアスさん、すごく問い詰めています。

 

 現在いる眷属全員が化け物確定ですし。

 

 まあ・・・それに酷い追い打ちが・・・。

 

「ひょっとして・・・俺のせい?」

 

 加賀美 新さん。

 

 イッセ―君の幼馴染。

 

 その正体はあのオーディンの孫・・・。

 

 うん。驚かない方が可笑しいくらいとんでもない繋がりです。

 

「宇宙か・・・まあ、あいつがいる場所だよな。元気してっかな~。」

 

 新さんの証言で確定しました。

 

 まず宇宙に何かがいると。

 

「あなたの人脈って本当に一体どうなっているの!?私・・・宇宙にも気を張らないといけないの~~~~~~~~~~~~?!」

 

 リアスさんの悲鳴が木霊します。

 

「私も把握しないといけません。」

 

 あれ?ソーナも考え込んでいますね。

 

「他人事じゃないからです。現に、兵藤君の幼馴染繋がりの転生者を私は兵士にしていますし。」

 

 ああ・・・仁藤君の事ですね。

 

 転生者であり、私達の先生、ハルトさんの同志。彼を恐れない数少ない猛者。

 

「レイアもいつの間にかハルトさんから魔法を教えてもらっています・・・。」

 

 そう言えばシトリー家もイッセ―さんの幼馴染関連が・・・。

 

「極めつけは姉様とサイガ君の婚約。ポルムさんの眷属入り。」

 

 あっ・・・あれ?

 

「いつの間にか、こっちの周りもイッセ―君の幼馴染関連に浸食されていたようです。これは非常に恐ろしいことです。」

 

 そうですね。気がつかないうちにこっちの眷属も・・・。

 

「あと、どこにその芽が潜んでいるのやら・・・。」

 

「・・・そう言えば、判明している中に私の弟と同じ名前がありましたね。」

 

 私は新君と弦太郎君達との会話の中にあった鉱太と言う名前に懐かしさを覚えていた。

 

「たしか・・・葛葉 鉱太・・・でしたか?」

 

「はい。」

 

 私のただ一人の弟。性が違うのは両親が離婚したからだ。

 

 呪われた子とされた私のせいで・・・。

 

「・・・・・・まだ見つかりません。あの子・・・どこにいるのかしら?」

 

 あの子は二年前から行方不明になっている。そのままだったらイッセ―君の一つ歳下になるくらいの歳だ。

 

 あの子には私が悪魔になった事も伝えていない。

 

「・・・一つ聞きますが、そのあなたの弟さんはこの街にいましたか?」

 

「ええ。」

 

 私の弟は皆に自慢したくなる事がたくさんあります。

 

その一つが信じられない程の身体能力。

 

 私が幽閉されていた蔵に一つだけついている窓へ平気でよじ登ることなど、朝飯前なくらいに。

 

 呪われた子とされた私にも懐いてくれた可愛い弟。

 

よく、私の所へ忍びこんできて、一緒に遊んだ友達の事を話していました。

 

 エッチだけど熱血な一誠君。

 

 友達を作るのが上手な弦太郎君

 

 不器用だけど、やるときは過剰なまでにすごくできてしまう誠君。

 

 真面目で一本気な新君・・・。

 

 おバカだけど元気一杯なイリナちゃん。

 

 おませで、クールだけど、本当は誰よりも熱いイリアちゃん。

 

 他にも話していたわね。

 

 変なロボットみたいな人達。

 

 宇宙の警察官・・・。

 

 ホント愉快な友達ばかりだったわ。

 

 人間とは思えない人達も話していた。乗り物に変形するって・・・。

 

 あの子は生きているのかしら?私は今でも心配しています。

 

 たった一人の大切な弟だから。

 

 ずっと・・・ずっと探しています。

 

「・・・・・・・。」

 

 あれ?ソーナ?どうして崩れ落ちているの?

 

「・・・・・・手遅れでした。」

 

 何を言っているの?

 

「あなたの弟さんの話していた友達と目の前にいる面々を照らし合わせればわかりますよ。」

 

 えっと・・・へっ?

 

 ちょっとまって?あの子が言っていた友達ってもしかして・・・。

 

「しかも、新たな火種まで発覚しましたし。そうですか、文字通り人外の存在は確定ですか。それも複数・・・。ロボットみたいな連中って一体なんでしょうかねえ・・・。乗り物に変化して潜り込むって・・・。」

 

 あれって・・・本当にいるの!?

 

「でも、ある意味朗報ですね。あのイッセ―君の幼馴染であることが。」

 

 あっ・・・。

 

「私の推測が正しければ、あなたの弟さんは間違いなく無事ですよ。そして、アギトの予言が正しければ近いうちに会えるはずです。」

 

 鉱太が・・・生きている?

 

 そして、もうすぐ会えるの?

 

「嘘・・・。」

 

 ずっとずっと探していた私の弟。

 

 これほど嬉しい事ってあるの?

 

「ただ・・・心配なのは、もう一つの法則ですけど。」

 

 ソーナの表情が陰る。

 

「一体・・・どんな化け物になっているのやら。」

 

「・・・・・・。」

 

 そういえば、そうでしたね。

 

 それから逃れられないのですか。

 

 でもそれはそれでいいかも。

 

 ある意味、鉱太に私が悪魔になったと言っても、笑って済ませそうだし。

 

 そんな私達を見てアーシアさんが言ってくれます。

 

「もうすぐ会えますよ。弟さんに。」

 

 女神のような綺麗な微笑みで。

 

「ははは・・・そうですか。これで・・・確定ですか。」

 

 私にとって嬉しいことですけど、ソーナには止めになったみたいで。

 

 すごく遠い眼をしながら笑っています。

 

「リアスに伝えるべきでしょうか・・・。ついに私達の周りも浸食されましたと。そして、とんでもない火種が発覚したことも・・・。」

 

 鉱太・・・。早く会いたい。

 

 どんな姿でも、あなたが無事ならそれで・・・。

 

 でも・・・まさか交際している人なんて、いませんよね?

 

 まだ十代半ばなのに、そんなのお姉ちゃん・・・・・・・・・許しませんよ?

 

 ふふふふふふふふふふふふふ・・・まさかねえ。

 

 

Side ???

 

 ハックション!!

 

 んん?誰か噂しなかったか?

 

「どうしたの?鉱太。」

 

「あっ・・・ああ。なんか噂された気がしてな。」

 

 俺の心残りがそうさせたのかもな。

 

 イッセ―達。

 

 そしてお姉ちゃん・・・。

 

 少々ブラコンが過ぎるところはあるけど、優しくて綺麗な自慢の姉だ。

 

「・・・私もあなたのお姉ちゃんに会ってみたかったわ。あなたの愉快な友達にも。」

 

「そうだな・・・マイ。」

 

 俺達は知らない。

 

 俺達の心残りともうすぐ会えることに。そして・・・その際に大きすぎる問題と思考放棄してしまいたくなるほどの酷いカオスに襲われる事も。

 

 SIDE イッセ―

 

 まあ、とにかく新の奴との再会を果たしたわけで。

 

「歴代赤龍帝でずばぬけていないかい?力を引き寄せる才能。」

 

 ヴァ―リが呆れた様子で指摘してくる。

 

―――もう諦めの境地だ。アギトである時点でもう悟っている段階だ。

 

 俺の中の相棒の言葉がすべてらしい。

 

――――最早、今度は何?ってレベルだし。

 

 クレア・・・お前までか。

 

――――私達でさえ把握しきれないから。

 

 ブランカ・・・そう・・・だったな、

 

「・・・ウルトラマンって奴に会ったら驚くかな?」

 

『!!?』

 

 だからみんな過剰に反応しすぎだって!!

 

 ゼロ達が来たら大変なことになるのは間違いないけど。

 

 

 

 そして、そんなやりとりの中で・・・。

 

「私の事・・・覚えていますか?」

 

 イリナが剣崎さんと再会を果たしていた。

 

「君は・・・それにその剣・・・その銃!?」

 

「橘さんってから受けとりました。永く生きるあなたを一人にしないでほしいと。」

 

「橘さんが・・・。」

 

 イリナの悲願だった恩人との再会。それはまさかの剣崎さんだった。

 

「私も結果的にあなたの友達になれるわ。永い間。」

 

「えっ?」

 

 イリナの背中から現れたのは白い翼。

 

「天使!?」

 

「そういうことだ。」

 

 そして、弦太郎の背中にも白い翼。

 

 これは・・・。

 

「へえ・・・もう転生天使が生まれたか。」

 

 アザゼル先生は何やら事情を知っている様子ですけど?

 

「あんたが、イリナの命の恩人か。」

 

「あっ・・・ああ。」

 

 弦太郎が拳を突き出す。

 

 そして・・・。なんとなくだったのだろう、剣崎さんも拳を突き出したのだ。

 

 そこから行うのは友達の証。

 

「これであんたともダチだ!!」

 

「・・・・・・・。」

 

 茫然となる剣崎さん。

 

「ああ・・・よろしく。」

 

 だが、嬉しそうに笑う。

 

「人外になっても、友達ってできるものだな・・・。」

 

 その瞳に涙が光っている事に気付いたけど、そっとしておこう。

 

「あの・・・俺たちも友達ですよ?」

 

「・・・そうだった・・・いつの間にかこんなに大勢。僕と対等な友が沢山・・・。気付けば他の世界でも多くの仲間達がいたな・・・。もう会えないけど・・・。」

 

 俺たちも当然仲間だと思っている。・・・もう完全に身内です。

 

「はい・・・。」

 

 何があったのか分からない。剣崎さんは長い時の間、色々な世界を回っていた事くらいしか俺たちも知らないのだ。

 

 まあ、この後部長は剣崎さんがジョーカーになってから色々あって地球を飛び出してしまい、あちこちの世界、宇宙を渡り歩き、様々な戦闘経験を積んだ文字通り、百戦錬磨でなおかつ不死身な猛者だと知り、卒倒するのだが。

 

ゼ―ベス星人達の事も知っていると知り、皆最初から何故それを言わなかったと突っ込んだのは本人いわく・・・。

 

――――そんな過去よりも今が大切だし、言う必要はないと思った。

 

 だそうだ。

 

 意味不明の神技の秘訣は途方もない歳月を戦いと修行に明け暮れることになって身に付けたものらしい。

 

 フォースと言う物を知ったのは特に驚いたけど。

 

「・・・んん?一つだけ聞いて良いか?君って・・・アンデットの力を生身でつかっていないかい?」

 

「あれ?これって生身で使えないものでしたか?」

 

「!?」

 

 剣崎さんがイリナの発言に血相を変える。

 

 どうしたの?

 

 そのカードを生身で使えるもんじゃないの?効果もすげえし・・・。

 

 ちなみに俺達の誰も使えない。

 

「まっ・・・まさか俺と同じ過剰適合者・・・。」

 

―――――・・・・・・。

 

―――――・・・・・・。

 

 俺の中でクレアとブランカが沈黙を保っている。

 

「過剰適合者?」

 

「なんだ?それ・・・。」

 

「じゃあ・・・彼女があいつの言っていた五人目・・・。」

 

 五人目?そう言えばモノリスの奴も白いジョーカーって奴も五人目の事を言っていた。

 

 確かジョーカーって話しで、剣崎さんもその中の一人だと。

 

「ある意味、天使になれてよかったかも。そうだ、これは提案なんだけど・・・。」

 

 剣崎さんはとんでもない事を言いだす。

 

「フォースを覚えてみないかい?」

 

「フォース?」

 

「アンデットの力の制御にも役立つ。君はみたところテクニックタイプ、それもウィザードとしての素質もある。なら役に立つはずだ。」

 

 イリナ、魔改造の始まりですか。

 

「それと、後で君達を天使にした人達と合わせて欲しい。・・・・・・確認したい事があるから。」

 

 真剣な表情の剣崎さん。一体何があったのだろうか。

 

 

 

 

 

 そんなやりとりをしながら俺達はある城にやってきていた。

 

 そこで新人悪魔が集う会場に来ている。

 

 そこで・・・。

 

 ある女性が、ガラの悪い奴に絡まれていた。

 

「だから・・・俺が男って奴を教えて・・・。」

 

「・・・ふん。おとといきて欲しいですわ。」

 

 女性は振りきろうとしている。だが、男はしつこい。

 

 そこで俺達の連れの一人の行動が速かった。

 

「・・・そこまでにしておけ。」

 

『えっ?』

 

 それは巧である。

 

「・・・あん?誰だお前?」

 

「あっ・・・ああ・・・ああ・・・。」

 

 ガラの悪い奴が睨みつけるのとは対照的にクールな容姿をした女性の方は巧を見て言葉を失うほどに驚いている。

 

「そいつは俺の知り合いだ。それが絡まれるのを見ると・・・。」

 

「巧!!」

 

「ごぶっ!?」

 

 絡もうとしたそいつを女性が蹴り飛ばして巧に駆け寄り・・・。

 

 って、蹴り飛ばしますか。

 

 見たよりもすごく過激な人だ。

 

「よお。シーグ・・・久しぶ・・・。」

 

「久しぶりじゃないでしょう!!!」

 

 と、クールな雰囲気をぶち壊して巧に怒鳴ったのだ。

 

「えっ・・・と。」

 

「知り合いなのは知っていましたが・・・。」

 

 その怒号。・・・マジで怖いです。顔見知りだと思われる部長やソーナ会長も目を点にさせていますし。

 

「助かったのなら助かったと連絡くらい寄越しなさいよ!!あなたの身体の事を知って私がどれだけ心配したかと・・・。」

 

「そういえば、俺を助けるために・・・。」

 

「ええ!!あなたには多大な恩もあると言って、家の力も使わせてもらいました!!」

 

「そっ、そこまでしたのか?」

 

「文句ある?あなたが助かるのなら、利用できるものなら何でも使うって思っただけよ!!そのために次期当主にもなったくらいだし!!」

 

「いっ・・・いや・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

 巧を助けるために動いてくれた人だったんだ。この人が・・・。

 

 じゃあこの人が・・・あの噂のシーグヴァイラさん?アガレス家の次期当主である?

 

「てめえら!!俺様を差し置いて何痴話喧嘩をしてやがる!!?」

 

 ガラの悪い男が絡もうとする。

 

痴話喧嘩には同意するけど・・・この人は誰?

 

「・・・こいつはグシャラボラス家の凶児、ゼファードル。絡まれているのがまあ、俺の弟も世話になっているシーグヴァイラだ。はあ・・・あいつらに絡むなんていい度胸だ。」

 

 へえ~。

 

 確かにガラ悪い。

 

「てめえら・・・いい加減に・・・。」

 

「少し黙れ・・・。」

 

「だから・・・。」

 

「だ・ま・れ。わかった?二度も言わせないで。さて・・・巧に言いたい事はまだ・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

 それをシーグさんは強引に振り切った。

 

 茫然となるガラの悪い男ことゼファードル。

 

―――――チェリーエナジー!!

 

「こっ・・・この・・・俺を馬鹿にしやがって・・・えっ?」

 

 激昂してさくらんぼのような錠前を取り出す。そのまま腰に現れたベルトに装着し、魔力を解放しようとしたところで、その顔面を誰かが掴む。

 

「はいはい~とりあえずお前は黙っていようね。」

 

「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 でました。堕天使総督すら気を失うハルトの必殺総督殺し。

 

 単なるアイアンクロ―とは違うのだよ。

 

「巧。とりあえず紹介をしてくれよ?その麗しいレディは一体誰だい?」

 

「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「・・・・・・。」

 

 ゼファードルの顔面を握りつぶさんと掴み上げながら、普通に話しかけてくるハルト。

 

「えっ?えっ?」

 

 シーグヴァイラさんの方も流石に驚いている。

 

 無理もないか・・・。

 

「・・・お前な・・・。」

 

 巧のほうは流石に慣れているらしく、呆れる余裕まである。

 

 本当に慣れている。

 

「本当に隅に置けないと言うか・・・巧、僕にも紹介して欲しかったぞ。」

 

「ぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 絶叫し続けるゼファド―ル。

 

「まあ、噂の彼女と言うのは間違いないね。」

 

「ぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「・・・・・・うるさい。」

 

 ゴキ。

 

 そんな鈍い音と共にゼファド―ルが黙る。手足も力が抜け、だらりと下がる。

 

「えええっ!?」

 

 シ―クヴァイラさんは茫然としているけど、俺達からすれば見慣れた光景だ。

 

 もう驚くまでもない。あの程度、生かさず、殺さず絶妙で最高の苦痛でやらかすハルト先生の技にかかれば・・・。

 

 まあ酷いとは思うけど、もう日常の一コマだ。

 

 ハルトのキャラになった。

 

 ハルトがそいつをごみみたいに放り捨て、女性の方に駆け寄る。

 

「まずは、グリゴリを代表してお礼を言わせてもらいたい。」

 

「グリゴリ?ってあなた・・・確かグリゴリの幹部の・・・。」

 

「まあ、俺の友達。グレゴリ最凶を誇っています。」

 

 今のところ。そして、これからも多分、俺の幼馴染最凶をキープし続ける可能性が高い。

 

「あっ・・・あの希望と絶望を司る指輪の魔法使い?」

 

 女性の方もハルトの素性を知っていた様子。

 

 しかし、希望なのは分かっているけど絶望って・・・。

 

・・・・・・・・・。

 

・・・・・・・・・。

 

 ・・・・・・うん、ごめん!!納得しかできない!!

 

 主に敵対した連中に絶望がもたらされると言う意味で。

 

「がっ・・・ぐっ・・・ぐぐぐぐぐ・・・・ううう・・・てめえ・・・。」

 

 あっ・・・あいつまた立ち上がってきたぞ。

 

 結構タフだな。

 

「下級悪魔やカラス羽根ごときがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

――――チェリーエナジー!!

 

 再びさくらんぼの錠前を使おうとするが・・・。

 

 おいおい、そこまでにしてやれよ。

 

 巧にそれ以上ちょっかいをかけて黙っていない人がいますから。

 

「おい・・・若造。うちの息子に何かようかい?」

 

 ああ・・・来ちゃったよ。

 

 ラスボス先生もとい・・・親馬鹿提督が・・・。

 

 グリゴリ大暴れと言っておこう!!

 

「・・・・・・・。」

 

 流石に不味いとは思ってくれたみたいだね。

 

 固まっていますよ。

 

 それを見て先生は告げる。

 

「先生達。俺の代わりにこの若造に無形文化遺産に個人的にだが登録したいと思うほど素晴らしい・・・あの鬼の伝統を教えてやってくれ。」

 

 それはもうラスボスらしい邪悪に満ちた笑みを浮かべながら。

 

「誰が先生だ・・・。」

 

「あんたが一応先生だろうが・・・。」

 

 それに応えてやってきたのはサイラオ―グさんと鋼兄?

 

「まあ、お前はやり過ぎたってことだ。あのまま気を失っていれば幸せだったのに。」

 

「あとで怪我だけは治してやる。怪我だけはな・・・。存分に堪能してくれ。」

 

「ちょっ!?」

 

 ゼファードルの表情が明らかに変わる。その全身からでるオーラがまず違うお二人ですし。

 

「安心しろ、記憶を失わない程度にしてあげるから。」

 

 ハルト・・・お前まで参加するのか。

 

それに敢えて記憶を失わない程度にするの間違いだろう!?

 

――――――AD VENT!!

 

 そこに唐突に何かが現れる。

 

「ちょっ!?」

 

 獣の様に飛びかかるシラトラさん。そのままゼファードルさんを押し倒して告げる。

 

「兄者・・・こっちは準備いいぞ。このまま引きずっていく。」

 

「はっ・・・放せ!!放せぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 シラトラさんが顔面を掴んであちこち引きずりまわしながら物陰へと消えていく。

 

「こっちは初めてだが、ファイナルベントの良い練習にはなるか。」

 

「必殺だけは勘弁してやれよ・・・。」

 

 ガチムチ筆頭のお二人がそのあとに続く。

 

「いい仕事しているねえ。」

 

 そのすぐ後に魔女顔負けの最凶のドS、ハルトが・・・。

 

「・・・そうか。鬼伝統のあれか。」

 

 巧も知っているな。鬼伝統が何か。

 

 俺もあれが伝統って知りたくもなかったよ。鬼達を怒らせてはいけないって心の底から思ったし。

 

 それをまた見る事になるのか。

 

「何?鬼伝統って?」

 

 シ―グさんは知らない。知らない方が幸せだったのになあ。

 

 鬼の真の恐ろしさを知ることになるから。

 

「まあ、ある意味祭りみたいなもんだ。簡単に言えば文字通り・・・。」

 

「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 物影から辺りに轟く絶叫と何か赤い液体みたいなものが飛び散る音。

 

 それで何か分かったみたいだ。

 

「祭りは祭りでも、血祭りってこと!?」

 

「正解。よく分かったな。」

 

「これのどこが伝統なの!?」

 

 良いツッコミですな。

 

 鬼伝統・・・恐ろしや恐ろしや。

 

 

 

「・・・あっ・・・こほん。」

 

 女性もといアガレス家、次期当主シ―グヴァイラさん。化粧直しもして自己紹介もしてくれました。

 

 クールな雰囲気を取り戻しているように見えるが・・・。

 

「・・・お前。怒っているだろ?」

 

「怒ってない。」

 

「めちゃくちゃ拗ねているだろ!?」

 

「拗ねてないモン。」

 

 あっ・・・あれ?

 

 巧とのやり取りがすごく・・・。

 

 この方ってすごくクールで知的な女性って感じがしたのに・・・。

 

「・・・そう言う関係かい。」

 

 アザセル先生ですら呆れ果てている。

 

「はあ・・・巧。お前に女ってもんを教えておけばよかったぜ。」

 

「なんでそうなる?」

 

 巧・・・お前・・・。

 

 この場にいる巧以外の全員が思った事だろう。

 

『・・・・・・。』

 

 鈍い。

 

 あまりにも、鈍すぎるぞ。

 

 なんで、あそこまで分かりやす過ぎる好意に気付かないかな!?

 

「・・・まあ、挨拶が遅れたな。ありがとよ、うちの息子のために力を貸してくれて。」

 

 アザゼル先生が改めて挨拶。

 

「・・・本当にあのアザゼルの息子だったんだ。」

 

 しかも、義理でもなく本当に血の繋がった孫だとは誰も思わないだろうし。

 

 渡とネロも苦笑している辺り、同じこと考えたな。

 

 二人はクールに、なおかつ穏やかな雰囲気で・・・。

 

「お前さんが巧とどういう関係かはよく分かった。だが・・・簡単にウチの息子を攻略できるとは思わないことだな、小娘。」

 

「ええ・・・思いがけない強敵がいる事がわかりましたから。御老人」

 

「そうとも、その強敵は手強いい。特に御老人は・・・とってもな。」

 

「だからこそ燃えるというものよ。小娘はね。」

 

「はははは・・・。」

 

「ふふふふふ・・・。」

 

 あっ・・・あれ?

 

『ふははははははははははははははっ、あーはははははははははははははーっ!!』

 

 なんか二人の笑いがすげえ怖いです。

 

 まるで悪の組織のボス同士の邪悪な笑いのようだぜ。

 

 互い、腹にドス黒い何かを抱えているのは間違いないね!!

 

 冷や汗が・・・

 

 冷や汗が止まらねえ・・・。

 

「なっ・・・なんだ?二人とも・・・。」

 

「へえ・・・これは面白いことになりそうだ。」

 

 戸惑う巧をよそにハルトはすごく面白いおもちゃを見つけたような笑み。

 

「・・・フォローはしてやるか。」

 

 同じ眷属のネロは頭痛そうに・・・。

 

「シ―グちゃん。私は応援するから。」

 

 ユウナは完璧にシ―グヴァイラさんの味方だ。

 

「・・・ユウナ。貴方の応援・・・非常に心強いわ。今後のために魔女の修行これからもっと頑張るわよ!!」

 

 初耳ですよ?それ・・・。

 

「げええ、ちょっと!!それは反則だろ!?お前まで魔女関連かい!!今回の新人悪魔共は一体何がどうなっていやがる!?ちょっとおかしいぞ!?」

 

 アザゼル先生の反応が明らかに変わった。

 

 どんだけ魔女に苦手意識をもっているの?

 

「てっ・・・てめえら・・・。」

 

 血まみれのガラの悪い男――ゼファードルが復活してくる。

 

 こいつ不死身の特性も無いのに存外しぶとい。

 

 良く心が折れないな。

 

 その眉間に三丁の銃が突きつけられる。

 

「あら?魔女相手に君、良い度胸だね?」

 

「はっ・・・破壊の魔女ユウナ・・・だと?」

 

 一人はユウナ。

 

 異名がすげえですよ?

 

「あらあら、私の姉弟子の恋路を邪魔する殿方にはどんなおもてなしをしましょうか?」

 

「雷光の・・・巫女!?」

 

 一人は、朱乃さん!?

 

 いつの間に銃を手にしていたの!?

 

「おもてなし?そんなの決まっているじゃない。」

 

『ええ・・・。』

 

 三人は同時に発砲。

 

 躊躇い?

 

 そんなの微塵も感じなかったぜ。

 

「がばっ!?」

 

 額に凄まじい衝撃が叩きつけられたために、キリモミ回転しながらふっ飛ばされる。

 

そして、壁にめり込むほどに叩きつけられるゼファードル。

 

「あんたなんか最初から眼中にないの。だから消えなさい。」

 

 シ―クヴァイラさんがすごく冷めた目でいらっしゃる。

 

『でないと・・・お仕置きしちゃうよ?』

 

 三人の言葉と共に次々と召喚されてくる拷問器具。

 

『いい度胸だな。また祭りを楽しみたいのか?』

 

 後ろではガチムチのお二人と、ハルトさん、シラトラさんがスタンバイ。

 

 まさに前門に虎。後門に狼。

 

 この場合は前方に魔女。後方に鬼と言うべきか?

 

 あっ、一応だけど虎も混じっていますわ。

 

 後門になるし、すげえガチムチだけど。

 

「・・・・・・・・くっ・・・てめら・・・覚えていやがれぇぇぇぇぇ。」

 

 ここで懸命な判断をやっとしてくれた。

 

 そのまま逃げ去ってくれてよかった。

 

 もう必死で逃げて行ったよ。

 

 捨て台詞はありきたりだったけど。

 

「・・・魔女同士の団結は強いとは聞いていた。だが・・・これは厄介だな。」

 

「ふふふふ・・・どうですか?」

 

「上等。だったら攻略できるものならやってみるがいい!!」

 

「その勝負受けましたわ。」

 

 どうやら、巧をめぐって堕天使総督VSアガレス家次期当主のバトルが始まったみたいだ。

 

「二人とも・・・何言っていやがるか。」

 

 巧は呆れながらもシ―グヴァイラさんに近づき。

 

「でも、ごめんな。そしてありがとうよ。色々あったが、おかげさまでスパーダ眷属として生きている。」

 

 巧の謝罪に、邪悪な笑みを引っ込めたシーグさんは穏やかな笑みを浮かべる。

 

「うん、よかった。最悪、こっちの眷属にしても良かったんだけど、あなたほどの実力者・・・悔しいけど残っている駒では出来なかったから。」

 

 この人・・・それでも巧を助けたかった。

 

 そして、それができた事に心から喜んでいるんだ。

 

 自分の大好きな人を助ける事が出来たのが・・・。

 

「まあ、夢はまだ探している最中だが・・・。」

 

「やっと夢を探せるようになったか。よかったじゃないの。」

 

「ああ。まあ、個人的に再現してみたいことはあるが・・・。」

 

「何?私にも教えてよ?」

 

『・・・・・・。』

 

 本当に二人は親密な仲らしい。

 

 すごく自然なやり取り。シーグさんはすごく嬉しそうだけど。

 

 って、巧のやつ、何を考えている?何かを懐から出したぞ?

 

 まるでDVDケ―ス・・・。

 

「それなら、また行こうぜ?ほら・・・。」

 

「あっ・・・これって、新作?うわ~。」

 

 あれ?シ―グヴァイラさんの目の色が変わった?

 

 まるで少年みたいにきらきらと輝いて・・・。

 

「ずっと続きを楽しみにしていた奴だ。掘り出し物で苦労したけど、伝手があって、探しておいた。渡すのが遅れたのはごめんな。」

 

 何を渡したの?

 

「あと、予定はこっちが合わせる。都合付いたら連絡してくれ。これが俺の新しい連絡先だ。」

 

『!?』

 

 巧のやつ・・・すげえ。

 

 いろいろな意味で。

 

「まっ・・・まあそこまで言うなら、付き合ってあげてもいいわよ?」

 

 照れ隠し偉そうにそのメモを受け取るジ―グヴァイラさん。

 

「ドヤァァ。」

 

 その際、アザゼル先生に向けて会心のドヤ顔。

 

 もうこれ以上にないほど、勝ち誇っていたね!!

 

「なっ!?」

 

 よっぽど教えてもらった事が嬉しかったんだね。

 

 もうこれでもかって言うくらいの勝利の笑みだったもん。

 

「ぐっ、真っ先に阻止しないといけない巧の電話番号と、メールアドレスを・・・。」

 

 一方、アザゼル先生は心底悔しそうだ。

 

「親父は俺の新しい番号とか知っているだろうが?」

 

 アザゼル先生も流石に巧本人からだと阻止できないのね。

 

 とりあえず、この場はシ―グヴァイラさんの勝ちでいいみたいだ。

 

 さて、もうこの二人がどういう関係なのか良く分かった。

 

 アザゼル先生は邪魔する気満々。

 

 こっちとしては・・・。

 

・・・・・・・・。

 

・・・・・・・。

 

 うん。巧の幸せのために全力で応援してやる。

 

 この人となら巧も幸せになりそうだし。

 

「どうなることやら。」

 

 みたところ渡は傍観。

 

「同僚たちに教えないと。これでしばらくは話のネタに困らない。」

 

 ハルトは面白いネタと見てひっかきまわす気満々。

 

「どんなふうにプロデュースしようか・・・。とりあえずくっつける方向でいいのかな?」

 

「良い訳ないだろ!!」

 

 その話にポルム・・・お前まで乗ってくるか。

 

 しかもまずは方針から聞くか。その方針にアザゼル先生が怒鳴るし・・・。

 

「どうせなら面白くしようよ。色々と検索しておいた。」

 

「なら選択はあくまでも巧君にって方向で?」

 

「そうだね~。まずは巧の意識調査から・・・。」

 

 おい!そこの黒幕共!!

 

 お前らこいつらの関係に介入する気満々だろ!!

 

 いつの間にかフィリップの奴まで混じっていやがるし!!

 

 ハルト、ポルム、フィリップ!!お前達が暗躍するのは本当に怖いって!!

 

「安心したまえ、分からないようにする自信があるから。」

 

 そう言う問題じゃねえ!!

 

 そっちはそっちでお前ら怖いって!!

 

「やれやれだ。はあ・・・。苦言くらいはいわんとな。」

 

 鋼兄は・・・ため息ついているところ見ると、アドバイス位は送るつもりか。 

 

「どうしたらいいものか・・・。」

 

 ネロは大変面倒なことになると悟り、頭を抱えている

 

 結構ネロと巧は仲がいい。気が合うと言うのかもしれないが・・・。

 

「大丈夫かな・・・。また荒れそうな予感が・・・。」

 

 サイガはあくまでもドライに今後の展開を心配している。こういった事にはあまりかかわらない性質か?

 

「何言ってんだお前ら?」

 

 弦太郎は・・・うん。全く理解していないのか?

 

「そんなのなるようになるしかないと思うぜ?」

 

 あっ、あれ?

 

 弦太郎?

 

「そこまで騒ぎ立てなくても十分面白いと思う。それに、二人はお似合いだと俺は思うぜ?ずっと一緒にいて問題ないくらいに。そのままにしても時間はかかるが自然とくっつく。まあ、何かをしてうまくいけばその時間が縮む程度だけな気が・・・。巧本人がいつ気付くのが鍵だな、あれは・・・。」

 

『・・・・・・・。』

 

 その発言に皆は驚く。もちろん俺もだ。黒幕三人集はそのあと苦笑しているみたいだけど。

 

 まるで「確かに」と納得しているような・・・。

 

 アザゼル先生ですらも表情をひきつらせながらも黙っている。

 

 多分・・・図星なんだと思うよ。最初から勝ち目のない戦なんだと。

 

 どうも俺は弦太郎を見くびっていたようだ。

 

 こういう時、核心をついてくる。

 

 その見立てはおそらく・・・間違っていない。アギトの直感がそう告げている。

 

「そうそう、こういうのは見守るのが一番。やっぱり、君にはフォースの素質があるようだね。イリナちゃんと一緒に修行してみないか?」

 

 剣崎さんは・・・なんか年寄り臭い。

 

 しかもさりげなく修行をつけようとしているだと!?

 

「私は断然・・・応援するわ!!」

 

「えっ・・・?天使が?」

 

「むしろ天使だからこそよ!!」

 

 イリナは・・・うん。応援する気満々ですか。

 

「本当に愉快な連中だよな?イッセ―!!」

 

 新・・・。お前はそれを愉快で済ませるお前がすごい。

 

 これはただのカオスなのに・・・。

 

「・・・ユウナから話は聞いていたわ。でも、ここまでとはさすがに予想外。」

 

「奇遇ですね。私もです。」

 

 そう言えばお二人は妹や甥等の繋がりでシ―グヴァイラさんと面識があったのですね?

 

 こんな混沌とした状態を見てシーグヴァイラさんはため息をついて部長と会長に話しかける。

 

 心底同情した様子で。

 

「・・・あなた達。苦労しているのね。これだけのカオスな連中に囲まれて・・・。」

 

『分かってもらえる!?』

 

「分からない方が可笑しいわ。」

 

 新人悪魔女子三人・・・急速に仲良くなっていないか?

 

「・・・・・・えっと・・・僕の存在を皆忘れていないかい?」

 

 そこに優男みたい奴がいるが、忘れ去られていた。

 

「お嬢・・・予定の方はこうなっている。この日に誘えばいい。」

 

 そこにまるで鎧武者の様な姿をした男がいつの間にか予定帳を手にスタンバイ。

 

 腰には日本刀がくくりつけられている。

 

 眼帯もそうだけど、見た目が・・・。

 

「・・・・・・ザムシャー。あなた、見ていたのね?」

 

「余計なことはしないのが主義でな。あの程度ならお嬢だけで何とかなると判断しただけのこと。後・・・久しぶりだな巧。息災で何よりだ。」

 

「久しぶり。」

 

 えっと・・・このお方は誰です?

 

「紹介するわ。私の騎士、ザムシャーよ。」

 

「星斬りのザムシャ―・・・。冥界で有名な剣豪の一人。僕も手合わせをしてもらったよ。」

 

 佑斗の言うとおり・・・この人も凄まじい実力の持ち主と言う事がわかる。

 

 ただ・・・。

 

「力にリミッターがかかっているのか?いや、今の姿も本来の姿じゃない・・・。」

 

 その言葉に少し固まるシ―グヴァイラさんとザムシャーさん。

 

「驚いた・・・。」

 

「・・・流石は神の候補だけはあるか。そちらの言う通りだ。これでも騎士の変異の駒二つ消費した存在。この姿でもそれ相応の実力は出せるのだが・・・。」

 

 今の姿、ザムシャーの本来の姿ではないのは何となくわかるのだ。

 

 本来の姿は多分・・・途方もなくでかい。

 

「本来の姿は私の女王と同じで滅多な事が無い限り、出さないようにしているわ。あれもあれで・・・ゲームが成立しなくなるし。自重って大切よ。」

 

「お嬢に命を拾われた恩義で眷属となっている。生きていればあいつらに再挑戦できる日も来るだろうからな。お主たちとも手合せする日が来そうだ。楽しみにしている。」

 

「・・・これはレ―ディングゲーム、面白い程に荒れそうです。」

 

 頭が痛そうな会長。

 

「・・・案外私達・・・制限無しで頑張れるかも・・・。どんどん周りもすごくなっていけば案外・・・。」

 

 部長が変な希望を持ち始めている。

 

 そんな希望でいいのか!?

 

 そんな事になったらレ―ディングゲームそのものが可笑しくなるって!!

 

 

 

 そして、その後の事である

 

 新人悪魔達が目標を皆の前で発表する場での事。

 

 部長がレ―ディングゲームの制覇。

 

 ソーナ会長がレ―ディングゲームの学校を作りたいといった時だった。

 

 それをあいつらが笑ったのだ。

 

「・・・ぐっ・・・。」

 

 ソーナ会長が悔しがる。

 

 だが、そこであいつが黙っているわけが無かった。

 

 そいつの発言。それと共に新たな力が発動する。

 

『!?』

 

 あまりの出来事に場の空気が凍りつく。

 

 それはそうだろう。

 

 その原因は匙であった。

 

 その全身から噴き出す黒い炎。

 

―――――そうか・・・また一体復活していたか。

 

 それがドラゴンへと具現化していく。

 

 それを見て長老たちは流石に驚く。

 

「我が分身とその恩人を侮辱するのは許さん・・・。」

 

 それはヴリトラ。そう・・・滅ぼされ、封印されたはずの龍王だ。

 

「おいおい落ちつけって相棒。」

 

 その隣にたつのは仁藤。

 

「まあ、気持ちは分からなくもないがよお。俺だって少し・・・腹立っているし。」

 

 仁藤の後ろにも何かいる!?

 

 大蛇の身体にその背に当たる部分に、まるで毛のように無数の蛇が生えてる。そして、ヤマタノオロチのように首がたくさんあるぞ!?数えて十三本も首がある!?

 

 でもその首はみんな目を閉じているし。

 

――――なんだ?この力・・・龍王クラス?

 

――――でもなんというか・・・すごい毒々しい。なんなの?

 

 俺の中の相棒達が騒ぐほどの存在。

 

「紹介するぜ?俺の新たな契約者・・・バジリスクとヒドラのハーフ。呪毒の龍王――またはメデューサドラゴンと呼ばれた・・・。」

 

「アルティナと申します。以後お見知りおきを・・・。」

 

 でも声はすごく清純な少女の声!?しかもすごく礼儀正しい。

 

 十三の首が一斉にお辞儀する光景に色々な意味で驚くけど。

 

 その前に・・・メデューサドラゴンと言いませんでした!?

 

「まあ、俺の妹分だ。よろしく・・・。」

 

「妹分だあ!?」

 

「はい・・・。」

 

「なっ・・・なんて危険なドラゴンと契約を・・・。」

 

 人の姿をしたタンニーンのおっさんが絶句している?

 

「冥界のある一帯がドラゴンを初めあらゆる命のある生き物が生きていけない瘴気の土地になった。その原因となったドラゴンだ。存在そのものが災厄といえる。近々、邪竜認定しようとしていた危険な奴だったが・・・。」

 

 仁藤の手にはあいつが描かれたアドベントカード。

 

「そいつとカードで契約させてもらった。その毒の制御もできるように。あらゆる毒を制するドラゴンになったんだぜ?」

 

「おかげで私はあの土地からようやく動けました。感謝してもしきれません。」

 

――――――私の契約のカードをこのように使うか・・・。考えたわね。

 

 契約のカード・・・応用が利きすぎでしょう!!

 

 それにしても、邪竜認定されそうになったわりには邪悪な気は全く感じない。

 

 毒々しい力は感じるけど・・・。

 

「・・・せっかく美味しい料理を堪能していたと言うのに・・・。」

 

 背中の蛇に乗っているのは料理が載せられた皿!?しかもすげえ量だぞ!?

 

「・・・お前、堪能しているな。」

 

「はい!!やっと出られた外の世界。本当に素晴らしいです!!ごはんもおいしいです!!もっともっと楽しみます!!」

 

 なんつうか・・・性格はすごく無邪気。

 

 アーシアになんか似ている。

 

「すごく美味しいですよね~。」

 

「はい~。あっ・・・それ、私も食べていいですか?」

 

「どうぞ。でもイッセ―さんの食事はもっと美味しいですよ?」

 

「えっ?そうなんですか?是非食べてみたい・・・。」

 

「是非食べるべきだわ。あれはまさに神の料理・・・。」

 

 ・・・いつの間にかアーシアとイリナの二人と仲良くなっていやがるし。

 

緊迫したその場のはずなのに・・・皆の毒気が抜かれる位にほのぼのとしてしまった。

 

「・・・・・。」

 

 タンニーンのおっさん茫然。

 

 しかたねえわ。

 

 こいつ本当に邪竜?すごくいい奴なんだけど・・・。

 

「まあ・・・こいつ、力は危険だが、性格はもう・・・これ以上ないってくらい良い娘だぜ?邪竜認定は待ってやってくれ。」

 

「あっ・・・ああ。どうやら俺達の認識が間違っていたようだ。」

 

 仁藤の言葉にタンニーンのおっさんも納得したようだ。こいつは邪竜にはならない。

 

 いい奴すぎる。力の制御もできた今、驚異ではないだろう。

 

「でも・・・私の義兄様の恩人の夢を侮辱するのは私もさすがに見すごせません。」

 

『!?』

 

 閉じられた瞳が一つだけ開く。

 

 誰も無い方向に。

 

 すると・・・その場所が一瞬で石となり砕け散る。

 

「私の視線の毒・・・ぶつけますよ?」

 

『・・・・・・・。』

 

 本当に危険な力を持っていらっしゃる。

 

 場の空気が一瞬で冷えた。

 

 ほのぼのとしていた分、その反動がきつい。

 

「落ちつけお前ら!!」

 

「なんて娘なの!?」

 

「流石に放置できない。」

 

 ドライク、クレア、ブランカがとっさに実体化して二体のドラゴンを止めるくらいに。

 

「・・・HAHAHAHAHAHA・・・・・私の眷属も大概になってきましたね。」

 

 会長が遠い眼をするのもわかる。笑いが壊れているよ。

 

「ようこそ・・・私は歓迎するわ。一緒にゲームのリミッターをぶっ壊しましょう。」

 

 部長はそんな会長の肩を叩いているし。

 

 

 

 

 

 

 さて・・・これがきっかけで俺達はシトリー眷属とレ―ディングゲームで戦う事になった。

 

 ただ、お互いに危険な力を持ちまくっているので大幅な制限付きで。

 




 次話・・・いよいよゲーム開始です。


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レ―ディングゲーム 前編

 いよいよゲーム開始。

 今回の投稿は此処までで申し訳ないです。

 後半はまた執筆次第投稿します。

 
 ここで両眷属がどのように強くなったの分かると思います、


 ただ・・一方の眷属が恐ろしいことになっていますが。


SIDR イッセ―

 

 ゲームに課せられた制限。

 

 特に俺には相当な制限が掛かっているが・・・。

 

「これでレ―ディングゲームに参加できるのならむしろ安いわ。」

 

 と部長はむしろ安心していた。

 

 そして、その制限とは・・・。

 

 まず俺は禁手化禁止。ギャー助に至っては神器の使用とゼクターの使用を禁止されている。ゼノヴィアもデュランダルを禁止されている。

 

 そして俺のアギトと龍騎、木場のオーガとナイト、良太郎の電王、ゼノヴィアのゼロノス、部長の紅のキバ、朱乃さんのソーサレスドライバー、小猫ちゃんの鬼の力による変身禁止。

 

 当然ファイナルベントも禁止されている。ソードベントなどは使っていいらしい。

 

 使い魔も無し。この使い魔はミラーモンスターも含まれるらしい。故にアドベントなど、相棒達を呼び出す系のカードも使用できなくなるし、良太郎のイマジン憑依もできなくなる。

 

「・・・今回出番なしか~。」

 

 剣崎さんも出せないのもねえ。剣崎さんに活躍して欲しかったのに。

 

「いっ・・・いや、剣崎さんが参加したら、全力の状態の君とは別の意味でゲームが崩壊する。本当に出てくれなくて良かった。知能戦の切り札になるけど、剣崎さんは強すぎる。」

 

 佑斗が全身を震わせながら断言する。

 

 相当な制限がかかったな。

 

「まあ・・・当然と言えば当然・・・だが、穴だらけもいいところだぞ?」

 

「そうね。」

 

「ははは・・・いいのかな?こっちはそのルールの穴をついても。」

 

『・・・・・・。』

 

 佑斗に至ってはある肝心な力に全く制限が掛かっていない。

 

「あの・・・私は全力を出していいのでしょうか?」

 

 アーシアに至ってもそうだ。俺はすでに感じ取っている。

 

方向性はともかく、純粋な力という意味では、アーシアは俺やヴァ―リとほぼ互角だ。

 

 現時点では眷属でもっとも力を発揮するのはアーシアだ。皆はその脅威を完璧に見誤っている。

 

 アザゼル先生は肩をすくめて言う。

 

「あっちには二枚の切り札がいる。あと、ハルトとポルムの奴があいつらを魔改造している恐れがある。それには十分注意しろ。だが、それ以外で負ける要素は皆無だ!!油断せず・・・なおかつこれまでの修行の成果を存分に発揮しろ!!あいつらを蹂躙してやれ!!」

 

『おう!!』

 

 こっちも本領発揮無理ですし、今回はサポートだけにしようかな?

 

 ふふふふふ・・・さあ、平行世界の同志から教えてもらいさらに昇華したあれを披露してやる。

 

 そして、制限を設けたはずのゲーム運営側の皆は思い知る。

 

 俺達がどれだけ規格外な連中なのか。

 

 そして、アーシアになにも制限を設けなかったという重大なミスを思い知る。

 

 

 

SIDE 匙

 

「・・・あのグレモリ―眷属と戦うのですか!?」

 

 悪魔社会で、すでにあの眷属は怪物揃いと言う事で有名になっていた。

 

 それも全員がだ。

 

 この夏で例外は誰もいなくなった脅威の連中だと俺達は認識している。

 

 制限が掛かるのがむしろ怖い。

 

 今まで認識してこなかった脅威が顔を出しそうで・・・。

 

「みんなビビっているんじゃねえ!!むしろチャンスだ!!」

 

 だが、俺からしたらむしろチャンスだと考えている。

 

「俺達の夢・・・その本気度を見せつけるチャンスだ。」

 

「へえ・・・そんな事を言うの、本来俺の役割なんだが・・・強くなったな。」

 

 仁藤が俺の肩をたたく。

 

 だが、仕方ねえだろう。窮地に陥った時のポジティブさはお前から学んだから。

 

「だが、その通りだぜ?俺達にも制限は掛かった。だが、それでも向うに比べたらまだマシといえる。それがチャンスと言えず、なんて言う?」

 

『・・・・あっ・・・。』

 

「やっぱり仁藤だな。こういう所は・・・。」

 

 ハルトさんとポルムさんがやってくる。

 

「ネタばれはしないようにするが・・・向うは化け物だ。」

 

「よくいうぜ。お前だって大概だろうに。」

 

「そういうなよ。」

 

 ハルトさんと仁藤のやり取りをみると、本当に戦友って感じがある。

 

「でもみんなには力がある。それに・・・今回は制限が掛かってできないけど・・・。」

 

―――――ピーチエナジー。

 

「確かに残念ですね。」

 

 椿姫副会長の手には変わった桃の形をした錠前。

 

 それを使った変身をするけど、今回は見られそうにないか・・・。

 

「まあ、今回はドライバー単独で我慢します。」

 

 俺達にはハルトさんが作ったドライバーによる指輪の魔法・・・。

 

「良い作品ができた。皆使いこなしておくれよ?」

 

 ポルムが作った平行世界で皆が手にする予定の人造神器を神器へと昇華させた者が皆に渡っているのだ。

 

「リバースを神器で再現、創り出すのは面白いアイディアだ。寿命は縮めないけど、消耗は軽い物じゃない。使いどころを考えるように。」

 

「はい。」

 

 リバースと言うもう一つの切り札も用意できた。

 

 さあ・・・向うはどうする?

 

 

SIDE  新

 

 俺達はイッセ―達のゲームをじっちゃん達と一緒に見ている。

 

「楽しみじゃのう。お主の友人、そしてこの勢力の神になるであろう兵藤 一誠。その真価がわかるぞ。」

 

 変身禁止という大幅なパワーダウンを迫られたあいつら。

 

「ふっ・・・その程度、何も問題ない。」

 

 それを俺の隣で観戦しているヴァ―リが断言する。

 

 結構勘違いされそうな性格とみていい。だが、本質はすごく熱い。クールに見えてすごく熱い男だと俺は思っている。

 

 そのせいかすぐに意気投合。呼び捨てし合う仲になった。

 

「何しろあいつはあの仮面ライダ―1号からその技の全てを受け継いだのだからな。むしろ素の状態でその技がどれだけ発揮できるのか楽しみだよ。後で君とも手合せを願いたいがいいかい?」

 

「いいよ。でも・・・姉ちゃんが許してくれたら・・・。」

 

「・・・君の姉上と手合わせを願いたいが・・・。相棒達が・・・。」

 

「・・・さすがにあいつの契約者とまともに戦いたくないわ。」

 

 ヴァ―リの隣にいる紫の女性。それが姉ちゃんの傍にいるあいつを見て戦慄していた。

 

「ベノ、それほどの存在なのか?マグナギガって・・・。」

 

「・・・ミラーワールド最強のゴルドですら恐れるから。」

 

「・・・おい。オーディンのじいさん。なんて奴を・・・・。」

 

 アザゼルさんが呆れかえっている。

 

「ワシも持て余しておる。あいつ単独でスルドや霜の巨人族達の暴走を鎮圧する様な連中じゃから。いまではスルドじゃなく、あいつらが世界を焼き払いかねん。そして、それは向うもそれを恐れておる。あいつらがいる限り・・・ラグナロクは起こせんじゃろうな。」

 

 じっちゃんは溜息をつく。

 

 戦争の神であるはずのじっちゃんが持て余す。それはつまり、マグナ一体で戦争その物が瞬時に終わってしまうからだ。

 

「・・・自分、不器用です。」

 

「おかげで、色々と改良し甲斐があったわ~。まだまだ無駄なところがあるからねえ。もっと改良するわよ~。」

 

「あの・・・自分、これ以上強くなるのですか?」

 

「もちよ!!あなた自身も進化し始めているからまだまだ行けるわよ。ミラーワールドのカードもまだまだ応用が利くし・・・サバイブ・・・作り出したのは良いけど、まだまだ改良の余地ありですから!!」

 

 黄昏のサバイブ。

 

 それを使う時・・・世界が終るとされる禁断のカードとなっている。

 

「・・・これ以上にない最良の契約者みたいね。あなたの力を倍化させ、さらに精度も高める上に、サバイブを意図的に編み出すだなんてどんだけ悪夢よ!?クレア・・・どう思う?」

 

「ノッ・・・ノーコメント。頭が痛いわ。イッセ―・・・あなたの周りに私達の常識すら崩壊する連中が現れ始めたわ。」

 

 マグナギガ。あまりの破壊力に自身も制御できずにいた存在

 

 それが契約者を得ることで、その契約者自身がもう一人と一緒に色々と改良。

 

 その結果・・・北欧神話に問答無用の破壊神降臨となったのだ。

 

 黄昏のサバイブという最終兵器もおまけ付きで。

 

 それを姉ちゃんが本気でブチ切れて、ロキ相手に一回だけ使った事がある。

 

 俺の命を狙ってきたロキ。俺がバルドルの息子だから、命を狙ってきたらしい。

 

 俺の知らないウチに死んでしまった俺の父さん。その因縁という奴だ。

 

そのため俺が大怪我を負った。

 

 それに激怒した姉ちゃんが使ってしまったというわけだ。

 

 その結果?

 

 瀕死の重傷を負ったロキ達が答えだ。

 

 その心に拭い難いトラウマが出来たとだけ言っておく。

 

「・・・それで、その人があんたの嫁ということか。人間じゃないのは分かるけど・・・。」

 

「はい。」

 

「これはまた美人な・・・。器量も良さそうだし・・・。」

 

 出てきたのはアインさん。ロズヴァイゼ姉ちゃんの最初の相棒。

 

「私は「夜天の魔道書」の管制プログラムでした。闇の書に改造され、その運命から解き放たれ、私はそのまま消滅する運命だったのに・・・この世界にやってきて・・・契約をしてしまって。」

 

「全く・・・変な改造をしていたから直すのに時間がかかりました。でもプログラムが魔法になる世界っていいです。おかげで私の魔法にも革命が・・・。」

 

「闇の書の闇を解析して、逆に応用させるなんて世界って広いですねえ・・・。」

 

 それは運命の出会い、だったと思う。

 

 姉ちゃんが家の魔法を継ぐ事ができないと落ち込んでいた時に出会ったアインさんこと夜天の書。

 

 書の中にある闇と永久結晶を解析し、こちらのあらゆる魔術と称号させ、そして・・・解除。

 

 その中で異世界の魔法体系を完璧に理解した姉ちゃん。そこからすべての始まりだった。

 

 北欧神話における姉ちゃん無双の始まりは。

 

 あのロキが最も恐れる女となるまでに。

 

 調子に乗らないのは・・・まあ、本人はまだまだ満足していないだけである。

 

 だから、姉ちゃんってマグナの破壊力ばかりに恐れが向けられているけど、本当の脅威は誰も知らない。

 

 神すらしのぐ世界最高クラスの魔法の使い手であり、戦略家、分析家。

 

 魔法で姉ちゃんに挑まない方がいい。

 

「グレゴリの指輪の魔法と異世界の呪文・・・う~ん・・・ぜひ教えて欲しいものです。」

 

「・・・流石にこれには驚いたぞ。」

 

 そこにある男がやってきた。

 

「あっ・・・。」

 

 まさかとは思っていた。

 

「天道?」

 

「ああ・・・加賀美。この世界に生まれ落ちてきたか。さらに面白い男になったな。」

 

「・・・天道殿と知り合いか?」

 

「あっ・・・ああ。一応だが」

 

「加賀美とは友達だ。」

 

『!?』

 

 その言葉に天道の事を知ると思われる人物。冥界の魔王達とグレゴリの総督、アザセル達は驚く。

 

「はははははははっ!!流石イッセ―の幼馴染。僕でも予想できないパイプを持っている。面白いよ。」

 

 笑いを止められないヴァ―リ。

 

「ちなみに言うが、天道はイッセ―の師匠だぞ。」

 

・・・・・・なんですと?

 

 驚く俺は天道を見ると。

 

「こっちはお前がイッセ―の幼馴染である事に驚いているが・・・。」

 

 お互い様って顔をしているが、待て待て待て待て待て待て!!

 

「おい天道・・・この世界でお前は何をやらかしている!?イッセ―の師匠ってどういう意味だ!?」

 

 じっくり話を聞かないと。この世界で天道の奴は確実に何かをやらかしている。

 

 それは間違いない。

 

 でもこいつは秘密主義者だから、はぐらかすだろうがな。

 

「・・・本当にどんな人脈をしておるのじゃ?お前の幼馴染は・・・。」

 

 じいちゃんの言葉がすべてであった。

 

 

 

SIDE イッセ―

 

 さあって、やる気満々!!一丁行きましょうか!!

 

『・・・・・・・。』

 

 あれ?なんか女性陣からの視線が冷たい?

 

「イッセ―君、君って本当に罪づくりだよね。」

 

 良太郎の奴が俺の肩に手を置いてうんうんと頷いている。

 

「えっと・・・さっきのことか?」

 

 ゲームに行く前に俺達はレイヴェルが差し入れに来てくれたのだ。

 

 その際・・・すごく熱い視線が注がれていたような・・・。

 

「・・・本当にどれだけの罪を重ねれば君は気が済むのかな?僕の妹といい・・・。」

 

「僕の姉さんといい・・・。」

 

『・・・はあ。』

 

 二人は揃ってため息をついている。

 

「あとで被害者の会を作ろうか。」

 

「そうだね。・・・アーサー君とハルト君、ライザ―さん、黒歌さん、鋼鬼さん達も呼んで。」

 

「・・・・・・。」

 

 被害者の会ってなにするおつもりですか!?

 

「クレアさんも呼ぼう。イッセ―対策にあの人の参加は欠かせない。」

 

「確かに・・・。あと部長の兄様も・・・。」

 

 だからお前ら!!

 

 なんの被害だ!?

 

 

 

 

 ってな感じでゲームは始まる。

 

 

 

 

 舞台は・・・ショッピングモール。俺達の街にある奴だ。

 

 戦いはもうすぐ。

 

 この戦いは物をむやみに破壊したら減点されるらしい。

 

「この戦い・・・イッセ―。貴方の持ち味は完璧につぶされるわね。」

 

 まあ・・・普通ならそうだろうな。

 

「それはどうですかね?こっちも先輩達にしごかれましたし。」

 

「・・・えっと・・・それって生身でも強くなったってこと?」

 

 まだ俺達はそれぞれの修行の成果を知らない。

 

 逆に生身での強さを見せてやろうかな?

 

「それでも確かに持ち味は出せねえ。こっちは補助、そして奇襲をメインにするつもりだ。」

 

「奇襲?」

 

 あの二つはそのためにある。

 

「時間稼ぎ位はできる。メインのアタッカーは・・・良太郎と佑斗、ゼノヴィア、そして・・・。」

 

 小猫ちゃんは前のダメージがあり、本調子ではない。無理はさせられない。

 

 それに俺は感じとっている。

 

「アーシア。頼むぜ。」

 

 アーシアの成長を。

 

「えっと・・・戦うのはあまり好きじゃないですけど・・・。」

 

『えっ!?アーシア!?』

 

 俺の推薦に対して皆が驚くけど仕方ない。

 

「だって、この面々の中で俺を除くと最も攻撃力が高いの・・・アーシアだぜ?」

 

「そうでしょうか?」

 

『・・・・・・・。』

 

 俺の発言に皆が驚いている。

 

――――――それは本当か?

 

 ドライグですら疑問形。

 

 でも間違いない。なんでアーシアになにも制限を賭けなかったのかが、疑問な位だ。

 

「なら一つ質問があります。あの・・・。」

 

 アーシアの質問に皆が驚く。

 

―――――壊した物って直したらそれで問題ないでしょうか?

 

 その言葉の意味を皆が知った時、俺ですら驚いた。

 

 ちなみに問い合わしたら直したら問題なしということらしい。前例が無いことだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして戦闘開始。

 

 

 俺達はそれぞれの王を目指し走りだす。

 

 まずギャー助が無数のコウモリを作り出す。

 

 吸血鬼、ファンガイアとしての力を引き出したギャー助。

 

 その結果、己自身が変身しなくても偵察用のコウモリ等をだせるようになったのだ。

 

 もっとも、パワーダウンが激しいのには変わらない。

 

 ライフエナジーは死なない程度に吸っては良いらしいが。

 

 俺よりも制約を受けている。

 

「・・・・!?どうやら分身が消えました。どうやらいるみたいです!!」

 

 ギャー助の偵察用のコウモリが消えた事らしい。

 

「手はず通り、二枚の切り札は俺がいくぜ。」

 

「ええ・・・。ギャスパーはそのまま分身を密かに配置しておいて。このフィールドを密かにね・・・。ふふふふふふふふ・・・制限された中で色々と考えるのも悪くないわね。」

 

 部長が悪い顔になっています。

 

「では私はこのフィールドを好きに改造します~。」

 

『えっ!?』

 

 アーシア。その力の一端が今発揮される。

 

 

 

 

SIDE 匙

 

 俺達はついにグレモリ―眷属、最強の男と対峙した。

 

 その名は兵藤 一誠。

 

 悪魔の駒の力により、アギトとして覚醒し、亡き神の後継の座までたどり着いた男。

 

 春から今まで、ほんの数カ月で数々の武勇伝を持つ。

 

 その阿呆みたいな破壊力は裏の世界に轟いている。

 

「待っていたぜ?」

 

「へえ・・・アギトの勘ってやつか?」

 

 不敵な笑みを浮かべる兵藤。それに俺達はあえて不敵な笑みで返す。

 

 だが、内心では冷や冷やしている。

 

――――すげえ・・・。すげえプレッシャーだぜ。

 

 この夏であいつはさらに凄みを増している。

 

 厖大な力を発揮する新たな変身を制することができたのも嘘じゃねえ。

 

 だが・・・。

 

「上等。だからこそやりがいがあるってもんだぜ。」

 

 その力を大幅に今回は制限されている。その持ち味は発揮できないはず。

 

「・・・そうかい!!」

 

―――――BOOST!!

 

 あいつの神器が発動。力の倍化が始まる。

 

 最新の情報としてその倍化を応用させた時間加速による高速行動も可能になったと。

 

 あらゆる防御を貫通する透過という新たな力。

 

 あの戦いで情報があるとはいえ、一つ一つが脅威だ。

 

 それに対抗するには・・・同じ力。

 

―――BOOST!!

 

 そう。俺のリバイアサンの神器の力を。

 

「・・・俺と同じ倍化?」

 

「その通り。これが俺の神器の力。あらゆるエネルギーを吸い込み。己の力として自在に行使できる神器。一応、譲渡してもらった事があるからな。その際・・・お前の倍化の力を吸収させてもらった。」

 

 この神器の真価はそこだ。あらゆるエネルギーを吸い込み、己の力とする。その器は天井知らず。無限に吸い込み貯蓄する。

 

「・・・してやられた。だが・・・。」

 

――――BOOST!!BOOST!!BOOST!!BOOST!!

 

「・・・・・・瞬時の倍化はできるのか?にわかのコピーで・・・。」

 

 ぐっ、やっぱり自力が大幅に上がっている。本来なら十秒ごとに倍のはずなのに、意図的に瞬時に倍化させるなんて。

 

 だが、それを待っていた。

 

 一度吸い込んだエネルギーは・・・。

 

―――――absorption!!

 

 発生したその時点で俺の神器が吸い取る!!

 

「なっ・・・。」

 

 どんな力も一度吸い込んだら支配下に置く。

 

 それが俺の神器のもう一つの特性。

 

「へえ・・・面白い。」

 

 兵藤は召喚機にカードをセット。

 

――――Sword Vent!!

 

 剣を召喚しようとするが・・・。

 

「それも対策済みだ!!」

 

 それに対するカウンターも用意しているぜ!!

 

 俺はある指輪を取り出す。

 

――――コンファイン

 

 アザゼル先生からハルト、そしてポルムへと伝わったあるカードの力を指輪として再現したもの。

 

 その効果は・・・カード効果の無効化。正確にはアドベントカードのAP、およびGPの破壊だ。

 

 ポルムさん・・・いい仕事していますよ。

 

 兵藤の奴が目を丸くしてマジで驚いていやがるし。

 

「・・・まじ?」

 

 これで譲渡から来る厄介な必殺技も封じた!!

 

 兵藤の必殺技の一つはソードベントやストライクベントからくる。だからそれを封じてしまえば・・・。

 

「だったら新能力・・・。」

 

――――Accelerator BOOST!!

 

 時間加速の能力を使う瞬間・・・。

 

 俺は合図を出した。

 

「おう!!」

 

――――リバース!!

 

 戦車の由良が現れ、篭手状の人工神器を発動。

 

 それは神器の力の反転。

 

 時間加速の反転。それはすなわち・・・。

 

「ぐっ・・・。」

 

 時間の遅延。

 

 兵藤の動きがゆっくりとなる。

 

 その隙を俺は見逃さない。

 

 あいつの身体を黒い炎で拘束。

 

 四つの神器の力を得て、俺の力はさらに進化した。

 

「・・・平行世界の俺が言うよりも展開が速い?」

 

 平行世界の俺より先に、ヴリトラの神器をすべて移植されていた。

 

 もうその地獄は体験済みだ。

 

「ははは・・・あーはははははははははは!!」

 

 笑わずには・・・いられねえ!!

 

「・・・そうか。地獄だったか。」

 

 兵藤の奴は何故か憐れみの目で俺をみやがるし。

 

―――――だが、そのおかげで俺は早くに分身と会えた。

 

 その地獄のおかげでヴリトラと出会えたし・・・。

 

 このまま兵藤をたお・・・。

 

―――Divide!!

 

「簡単にいくと思うなよ?」

 

 黒い炎が消えていく。

 

――――Divide!!

 

―――これは・・・アルビオンの力?我が呪詛が半減されていく。

 

 相棒が驚いている。瞬く間に黒い炎が消えてしまった。

 

「おいおい・・・その力って相手に触れないとだめなはずだったじゃねえか?」

 

 半減の力についても調べている。

 

 触れた相手の力を十秒ごトに半減するというもの。相手に触れないといけないという制約があるはずなのに・・・。

 

「ちょっとした応用だ。触れて力を奪う対象が者から物になっただけ。ヴァ―リのアイディアだ。お互いに神格を持つ相手に半減がうまく機能しなくなった。それ故に相手が放った力なら関係ないだろうと言う発想でやってみたら、できたわけだ。ヴァ―リの奴なら大半の攻撃を無力化しやがる。」

 

「・・・・・・。」

 

―――――無っ・・・無茶苦茶な理屈だぞ・・・。

 

 ヴリトラの驚きもわかる。だが、ありえる。アギトは神格を持っている。

 

 おそらく進化を続けた結果、その神格が強くなり、お互いに半減が決め手にならなくなったと考えれば・・・。

 

 それに対する力の使い方の変更もあり得るということか。

 

「・・・お前・・・頭いいな。まさにそう言う発想。」

 

「!?」

 

 そう言えば時間加速を使ったのに、すぐにそれが解けた?

 

 あらかじめ時間加速をリバースされることを知り、短くしていたとしか思えない。

 

 どうしてだ?

 

「はっ・・・まさか乳語翻訳(パイリンガル)!?」

 

 平行世界の兵藤が編み出した変態技。女性の乳房から心を読むと言うあの・・・。

 

「はは・・・。」

 

 だがその言葉にあいつは笑う。

 

「はーはははははははは!!乳語翻訳(パイリンガル)?その技なら修行前にとっくに使えるわ!!平行世界の俺が教えてくれたおかげでな!!」

 

「!?」

 

「戦う相手がみな野郎ばかりだったから使う機会がなかっただけでな。」

 

 すでに使用可能だった?

 

「・・・この修行で高まった俺の力はその乳語翻訳(パイリンガル)をさらに進化させた。その力でリバースをしてくることも分かったから対応できた!!」

 

 しかもそれをさらに進化させただと?

 

「その名も・・・」

 

 イッセ―はもったいつけてその名を言う。

 

「乳神予言(パイトラダムス)!!」

 

・・・・・・

 

・・・・・・。

 

 へっ?予言!?

 

 翻訳から今度は予言!?

 

「相手の乳から、心だけでなく、未来を読むことができるようになったのだ!!もちろん、それだけじゃなく予言だから・・・。」

 

――Penetrate!!

 

「させるか!!」

 

 俺も黒い炎を発射させようとする。透過の能力はそれだけ危険だ。

 

 防御不可の攻撃だけじゃない未知の怖さが・・・。・

 

「そこでお前は俺の「透過」を反転させようとする!!」

 

兵藤の奴がいう。

 

――――リバー・・・

 

「えっ!?」

 

 由良の奴の行動を・・・読まれた?

 

「そして透過の力の反転を利用して・・・。俺は新たな力を発動!!」

 

――――――Reflect!!

 

俺の放った黒い炎を片手ではじき返しやがった。

 

「おかげで反射のコツが分かった。感謝するぜ。」

 

『・・・・・・。』

 

――――なっ・・・何と言う化け物だ。

 

「ぐっ・・・だがそれも反転・・・。」

 

「神器を発動させようと思ってあんたは後ろに下がった拍子に石に躓いて転ぶ。ちなみにパンツは丸見え。」

 

「へっ?きゃ!?」

 

 その言葉と共に由良が本当に後ろに下がって転ぶ。

 

 そのパンツ・・・俺も見てしまった。

 

「立ち上がろうと棚を掴んだらその棚が倒れて下敷きになる!!」

 

「へっ・・・きゃあああぁぁぁぁ!!」

 

「・・・・・・。」

 

 兵藤の言ったとおりになったぞ。

 

―――これは・・・因果率操作。

 

「その通り。女性限定のな。」

 

―――気をつけろ!!我が分身よ!!この力は・・・ただ女性の乳から未来を読み取るだけじゃないぞ!!

 

 ヴリトラの警告が響く。

 

「ああ・・・わかっている。」

 

 なんて力を編み出しやがった。

 

「発動すると最後、未来予知だけじゃなく、女性限定だが、俺の言った事が現実になる。それが俺の乳神予言(パイトラダムス)!!」

 

 まさに・・・女性に対して無敵の力。

 

 もはや意味不明のレベルだ。

 

「由良!!お前はさがれ。兵藤と相手にするのはあまりに分が悪すぎる。」

 

「ぐっ・・・グレモリ―眷属は化け物か!?」

 

 それどころか由良の乳から未来を読み取り、自分の思いのままに行動させることができるあたり、こっちが不利だ。

 

「ちぇっ、良い判断だぜ。平行世界の俺が言うに・・・強敵は野郎ばかりだからこの力はあまり役に立たないんだわ。お前の様な・・・な。」

 

 由良を下げ、一対一で俺は兵藤と対峙する。

 

 凄まじいプレッシャーだ。まるで、巨大なドラゴンと対峙しているような錯覚すら覚える。

 

「へえ・・・強敵と思ってくれんのか?」

 

「少なくても、俺にとって警戒しないといけないのは仁藤と匙・・・お前だと思っているぜ?」

 

 そう言ってくれてこっちは心が震えた。あいつ、あえてこっちを燃え上がらせたな?

 

「いいねえ・・・上から目線であるのは癪だけど。」

 

「一応神様の後継だぜ?」

 

「それなら俺もこっちにこないといけねえわな。」

 

 兵藤の足元に銃撃が飛ぶ。

 

 それと共に現れたのは・・・仁藤だった。

 

「相棒、駆け付けたぜ。会長の懸念大当たりってところか?」

 

 流石だぜ・・・。本当に良いタイミングで来てくれた。

 

「・・・わりぃ。リバースを逆に利用されたり・・・予想を遥かに上回る強さだった。正直助かる。」

 

 兵藤とは初めての戦いだけど、大幅に力を制限されている中でもその恐ろしさが嫌ほど分かってしまう。

 

 何をしでかしてくるか分からない脅威的な意外性。

 

 これが制限無しだと・・・正直勝てる気がしない。

 

 絶望しかできねえ。

 

「リバースは切り札に変わりねえ。それを利用するあたり、相手が悪かっただけのことだ。まったく、これだからアギトって奴は・・・。」

 

 仁藤も頭を抱える。リバースはアギトには危険だと分かったからだ。何が起こるかわからない。

 

 おかげで回復役であるアーシアちゃんにもリバースを使うのは危険だとわかった。

 

「まあ、そう切り替えて、アーシアちゃん以外の他の神器使いに使えばいいだけのことだ。俺達は二人で兵藤を抑えるぞ。人数的にもこっちの方が有利だ。」

 

「上等。」

 

 頼りになるぜ。

 

―――イッセ―さん、頑張ってください。

 

「へっ?」

 

 その言葉と共に俺達のいた場所がかわっていく。まるで建物の一部がそのまま作りかえられているような光景。

 

 そして、廊下だったのが、体育館の様なフィールドになったのだ。

 

――――それと・・・アスカロンは使わないのですか?なにも制限が掛かっていないのに?

 

『!?』

 

 俺達に衝撃が走っていた。

 

 聖剣から神の剣となったアスカロン。それは・・・制約の中に入っていなかった。

 

 その剣の力は公開されていない部分が多い。

 

「やめておく。今の俺が振るったらフィールドを壊す恐れがある。」

 

 だが、兵藤は不敵に笑う。それを使わないというのだ。

 

 極めて恐ろしい理由で。

 

「さあ・・・互いに本気でいこうぜ?せっかくアーシアがおぜん立てしてくれたんだからな。」

 

 俺達は、互いに視線を交わし合う。

 

―――――あとでアシュカ様に直訴しよう。

 

―――――当然。制約が全然機能していない!!

 

このあとでルールを決めた連中に抗議することを決めた。

 

 連中があまりに・・・あまりに規格外すぎる。ルール制限が追いつかない位に。

 

 そこで俺達は気付く。

 

 他の連中はどうなのかと。

 

 ヤバいのは兵藤だけじゃないんじゃないかと。

 

 そして不幸にもその懸念は大当たりだった。

 

 

 

 SIDE 祐斗

 

 とりあえずアシュカ様には後で言っておかないと。

 

 僕はある姿になってフィールドを駆けまわっていた。

 

 背中に二人を乗せて。

 

 そして真羅副会長にあったけど・・・。

 

「・・・あら・・・。」

 

 流石に驚いています。

 

 今の僕は下半身が馬のようになった疾走体となっている。

 

「・・・オルフェノクでしたよね。そう言えば・・・その力になにも制限が掛かっていなかったような・・・。」

 

 その通りだった。

 

 僕のオルフェノクとしての力、全然制限掛かっていない。

 

 そのため、常識外れな速度でショッピングモール内を駆けてみたのだ。

 

 意外と気持ちが良い。普段なら出来ないことができるのだ。一階から三階まで踊り場から飛びあがるっていうのもいい。

 

 しかも、以前の格闘体とは違う。

 

 修行の成果で激情体に進化したんだ。

 

 戦闘力は以前の十倍。

 

 防御力の向上は特に著しい。

 

「こんなの勝てるわけないですって!!ただでさえ強いオリジナルのオルフェノクなのに・・・。」

 

 傍にいる花戒さんも青ざめている。

 

「・・・えっと・・・流石にこれは止めておくよ。」

 

 修行の成果の一つと言える。でも今回は止めておく。

 

 オーガギアの禁手化と同じく、別の機会で披露しよう。

 

 向うもきっと通常のオルフェノクであることを前提としていただろうし。

 

 僕は変身を解く。移動を楽しめただけで十分だったし。それに背中に二人を乗せたのもあるし。

 

「えっ・・・でも・・・。」

 

「パワーで押すのは対等じゃない。それに・・・今回は修行の成果を見せたいと思ったからだ。なあ・・・ゼノヴィア?良太郎君。」

 

「その通り!!」

 

「ふふふふふふふふふふふふふ、地獄を見た成果をみせてあげる。」

 

 僕の手渡した剣と刀を持つゼノヴィアと良太郎。

 

 特に良太郎はあちこち包帯だらけである。

 

 ちなみに渡しているのは非常に頑丈なだけの普通の剣と刀だ。

 

 二人曰く・・・己の技に耐えればそれで十分とのことだ。

 

「ではいこうか・・・。」

 

「ああ・・・。」

 

「そう簡単にいきません!!」

 

 無数の仮面が現れる。それを操っているのは草下さん。

 

「人工神器・・・。」

 

「いいえ・・・もう神器よ?それも、ポルムさん謹製の・・・。」

 

 無数の仮面に黒いマントが装着。人型になっていく。手には白い手袋。

 

 怪人達の仮面舞踏会(スカウティング・ペルソナ)

 

 それが神器として昇華した姿。あのジズの神器の力か・・・。本当に神器を生み出すだなんて・・・。

 

 草下さんの周りに現れる無数の仮面と黒いフードで構成された人形達。

 

 その数は三十体。

 

「さあ・・・人形遣いとなった私と踊ってくださいな。」

 

 それは恐るべき神器。

 

 そうなると桃威さんも似たような物を持っていると考えた方がいいか。

 

 先制はさせてもらおう。

 

 僕は剣を作り出し、衝撃波を繰り出す。

 

 それで三体程まとめて切断・・・。

 

「・・・幻魔剣。」

 

 本来なら対魔物などの生物相手に有効な技。

 

 魔剣創成を持つ僕とは相性が良すぎる剣。それに剣を一から鍛え直した僕。

 

 だが、その衝撃波が突然現れた鏡に阻まれ、それ壊れると共に全く同じ技が反射されてきた。

 

 とっさに僕はもう一発、幻魔剣を放って相殺する。

 

 しかも跳ね返してきた衝撃波は・・・聖なる力が込められていた。

 

「・・・私の神器も強化されています。そのまま技を跳ね返したり、逆に変換させることもね。」

 

 真羅副会長の神器の強化!?そんなことまで。

 

「いけ!!」

 

 殺到してくる草下さんの仮面人形達。

 

 それらが僕達を襲ったと思った時だった。

 

「たったそれだけか。」

 

 それらが瞬時に蹴散らされる。

 

「えっ?」

 

 やったのは良太郎君だ。

 

「一対多数の斬り合い。それを飛天御剣流の得意とするところ。ついでに人じゃないから先読みはしにくいけど、その分、遠慮なく斬れるよ。」

 

 戦国乱世で猛威を振るった古流剣術。それを良太郎君は文字通り体を張って体得したのだ。

 

「本当に気持ちがいいくらいにね。」

 

良太郎君の前世のまた前世がその使い手だったらしく、その結果も素質があったので、合宿中に収めることに成功はしたらしい。だが・・・その代償は酷い物だった。

 

「・・・前世の僕ってすごかったんだね。ははははは・・・ははははは・・・。」

 

相当な地獄を見たらしい。前世のまた前世の記憶が一部蘇るほどに。

 

 どうやら何回か生死の境を彷徨ったためらしい。

 

「・・・・・・逝くでござるよ?」

 

 たまにござる口調が混じってしまうのがいい例だ。

 

 あと逝くって字が可笑しくないかい?

 

 実際に技を喰らって覚える方式だったから、そのせいだったのかも・・・。・

 

 まだ最終奥義はできていないが、近いうちに習得させる予定らしい。

 

「まっ・・・まさかあの数を一蹴!?しかも斬った所見えなかったけど!?」

 

 だが、今のままで十分ヤバい。

 

 騎士である僕が形無しなくらいに何もかもが速いのだ。

 

 身のこなしも、剣閃もだ。

 

 すぐに草下さんは新しく仮面人形を召喚し直すが・・・それを瞬時に斬り倒す良太郎君。

 

 まさに無双。

 

「ちょちょちょちょ・・・なんなの!?何かの妖術なの!?」

 

 一振りで一気に数体を斬り伏せる。それを瞬時に一気にされたら妖術か何かと勘違いしてしまうのも無理ない。

 

 でも、信じられないけど、あれは剣術。

 

 ただ先読みと身のこなし、そして剣速が異常に速いだけの。

 

 それを最大限かつ、最小の動きで行った結果が・・・目に止まらぬ無双なのだ。

 

「・・・本当に、グレモリ―眷属はどれもこれも人外ばかりということなの!?」

 

「って危ない!!」

 

 花戒さんがフィールドを展開させ、攻撃を防御。

 

「きゃああぁぁ!?」

 

 でもその防御ごと二人まとめてふっ飛ばされてしまった。

 

「・・・あっ・・・ごめん。」

 

 素にもどって謝る良太郎君。そんなところは変わらない。

 

「大丈夫?」

 

「うっ・・・うん。でも・・・まったく動きが見えないって・・・危ない!?」

 

 そこにゼノヴィアが突進。その突進速度・・・良太郎の動きよりもさらに速い。

 

 しかも、その動きは獲物を狩りにいく肉食動物を思わせた。

 

「なんのぉぉぉぉぉ!!!」

 

 花戒さんが再びフィールドを展開させるが・・・。

 

「ふっ・・・なら活目するがいい・・・・。」

 

 それは師匠直伝の必殺剣。

 

 片手平突き。

 

 それを破壊力重視で昇華させ、偶然にも再現させてしまったゼノヴィアの必殺剣が・・・。

 

――――牙突!!

 

 師匠と同僚であるあるお方が得意としていた必殺剣。

 

 まさに牙。

 

 それがフィールドを粉々に砕く。

 

 貫通ではなく、粉々にしたのだ。

 

「その程度の防御、私の牙突を止めるほどではなかったみたいだな。」

 

「・・・まじですか?」

 

「突きを私なりに極限に昇華させてみた結果だ。沖田先生の教えも良かった。」

 

 師匠がゼノヴィアの突きを見て、ある人物が使っていた技を思い浮かび、試しに教えてみた結果なのだ。

 

 それはまさに必殺。

 

 普通の剣で城塞に使う様な巨大で重厚な鋼鉄の門に大穴があくほどの威力があれば必殺でいいよね?

 

「・・・デュランダルでやってみたかった。沖田殿から禁止されていたから。」

 

『ひっ・・・ひえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』

 

 その言葉を聞いて三人が震えあがっているって!!

 

 こんな危険すぎる必殺剣・・・あの聖剣でやったらどれだけの破壊力になるのか僕だって想像できない。少なくても大規模な災害になるのは確信している。

 

 それにゼノヴィアはこの剣をさらに恐ろしい進化をさせている。

 

 師匠の必殺剣も使えるのだ。それも牙突と組み合わせた状態で。

 

 どうしたらそんなことができるのか?疑問に思う人もいるだろう。

 

 言えるのは師匠が脱帽したということと聖剣との併用は禁じ手にするようにといったことだけ。

 

 それは・・・披露することが無い事を祈る。

 

 あれはもうすでに人外と言う言葉すら生温い神の領域の必殺技だ。

 

 ゼノヴィアと良太郎。

 

 この姉弟、まさに怪物だよ。

 

「・・・一時撤退!!作戦の練り直しです!!」

 

『はい!!』

 

―――――テレポート!!

 

 腰に掌の形をしたベルトを出現させた草下さん達。

 

 そこに指輪をかざし、そのまま消えてしまった。

 

 引き際は鮮やかである。撤退も想定していたのだろう。

 

 まあ・・・。

 

「・・・とりあえず追い返せたか。」

 

「でも祐斗君・・・君の必殺剣はどうしたの?」

 

「えっと・・・。」

 

 新たに習得した僕の必殺剣は幻魔剣だけじゃない。

 

 そして、習得したすべてを結集させた一応の必殺剣があるのだ。

 

「私からしたらデュランダルを持った状態でも勝てるかどうかわからないとてつもない技なんだぞ?」

 

「あんなの喰らったら、こまぎれになる。どうやったらあんな無茶苦茶な技を繰り出せるの?人間どころか悪魔すら止めているよ。」

 

 あれのことか・・・。

 

 可笑しい。あれってそんなに恐ろしいか?

 

 師匠もそれは禁じ手にしておけといったのがわからない。

 

 まあ、師匠以外の他の人からの評価も欲しい所だし・・・。

 

それでも、披露する機会があるだろうか。一発撃つと流石に疲れると言う難点はあるけど、僕なりの必殺剣ができたつもりだ。

 

 

 

 

SIDE ソーナ

 

 私は本陣にて、椿姫たちの報告を聞いて、戦慄を隠せなかった。

 

「・・・そう・・・ですか。」

 

 グレモリ―眷属の化け物っぷりに。

 

 ルールによる制限もあまり意味が無いとは・・・。

 

「リアスが壊れるわけです。相手にするとこれほど恐ろしいとは・・・。」

 

 今、私達の眷属の二枚の切り札は兵藤君と戦っている。

 

 いや、あの二人でないと相手にならないといった方がいい。

 

 元々押さえてもらう予定だったのだが、頼んで正解でした。

 

 兵藤君は女性の天敵です。

 

 いろいろな意味で。

 

 乳で予言とはまさに乳の神。呆れかえっても、納得もしてしまう。

 

「リバースを利用。アギトの力、まさに恐るべし。問題は他の連中ですね。」

 

 ゼノヴィアさんと良太郎君。この二人の恐ろしさはある程度だが把握した。

 

 でも椿姫が言うには、木場君にもまだ何かあるという。

 

 彼女の勘は鋭い。

 

 まだ・・・どうやら彼らの修行でどのような化け物になったのか把握し切れていないようです。

 

 塔城さんは近接戦闘で予知じみた事ができると聞いています。

 

 他はまだ分かりませんが、一番の問題があります。

 

「気付いていると思いますが、ショッピングモールの内部が作りかえられています。」

 

 ショッピングモール内部が完全に作りかえられていたのだ。

 

 それも壁を新たに作り出したり、消したりする形で。

 

「誰の仕業・・・という点は信じたくもないですが一人しかいません。」

 

 それが一番の問題であるもう一人のアギト。

 

 彼女になにも制限が掛かってないことを発表されたルールを見て、嫌な予感はしていたのです。

 

「・・・一体どんな力を習得したというのです?」

 

 その力の正体は分からない。それに彼女は本陣に可能性が高い。

 

「・・・本陣に送りこんだ仁村さんと巡さん・・・大丈夫でしょうか?」

 

 本陣の場所を知り・・・送りこんだ二人が心配・・・。

 

「・・・しっ・・・死ぬかと思った。」

 

「うう・・・。」

 

 思ったら送りこんだ二人がテレポートで戻ってきました。

 

「何があったのです?」

 

 二人とも疲れ果てていました。だが・・・まったくの無傷。

 

 本陣にはリアス、朱乃さん、塔城さん、そして、アーシアの四人が固まっていたと言う話を聞いたうえで・・・。

 

『私達・・・アーシアちゃんにやられかけました。なんですか!?あれ・・・なんですか!?訳が・・・訳が全然分からないです!!』

 

・・・・・恐れていた事が現実になったようです。

 

 グレモリ―眷属は伏魔殿(バンデモニウム)みたいですね。

 

 

 

SIDE  リアス

 

 平行世界の私は、アーシアを回復役として貴重な戦力と言っていた。

 

 この世界でも私達の大切な妹分だと言うのには変わらない。

 

 でも、この世界の彼女はアギト。

 

 そして、修行相手が神の代理であるイッセ―のお母様。

 

 その結果、どうなるのか想定すべきだった。

 

「・・・あなた、魔法少女になったの?」

 

「はい。」

 

 シスターの着る様な格好。それに十字架の様な物を手にしている。

 

 腰には・・・ベルト?

 

「義母様より、この石を使ってみなさいと言われまして。アマダムという・・・。」

 

「・・・oh・・・。」

 

 よりによって新アイテムですか。

 

「それと・・・何か矢じりみたいな物を頂きまして。それが身体の中に入ったら・・・。」

 

 追い打ちで、おまけまであるのですか!?

 

 なんでかな?

 

 どんなものか分からない。

 

 分からないのに・・・。

 

 アーシアにその二つの組み合わせは極めて危険な気がするわ。

 

 私達はその矢じりが何か聞こうとしたら・・・

 

――――テレポート。

 

 突然の襲撃。

 

『お覚悟!!』

 

「ぐっ・・・・。」

 

「まさか突然やってくるなんて。」

 

 来たのは兵士の仁村さんと騎士の巡さん。

 

 ここは私達の本陣。なら・・・

 

 仁村さんは女王に昇格しているわね。

 

 両足に装着された神器・・・

 

 足だけじゃなく・・・両腕にも何か装着されている!?

 

「一発いきます!!」

 

 超高速から繰り出される拳。それを私は受け止める。

 

「ふん!!」

 

 片手でだ。

 

「えっ?」

 

 私が反撃の蹴りを繰り出すが、それを高速で後ろに避ける。

 

「・・・嘘。片手で止められた?しかも素手で!?しかもびくともしていないんですけど!?」

 

「ふん・・・。私を誰だと思っているの?」

 

 手ごたえからして、おそらく打撃のインパクトの瞬間、加速と衝撃を加える類の追加装備。

 

「どんどん進化していく眷属に、主である私が負ける訳にいかないじゃない!!」

 

 その破壊力はおそらくビルに大穴をあけ、巨大な鉄球すらも粉々にするでしょうね。

 

 でも・・・その「程度」がどうしたの?

 

「・・・あの・・・リアス先輩。もしかして、すごく強くなっていません?その・・・魔力ではなく、肉体的な意味で・・・。」

 

「ふっ・・・。」

 

 私は笑みを浮かべる。

 

「服が消えることや、その他の制限が無かったらこの場で鬼になった私を披露できたのに・・・残念だわ。」

 

「・・・まじですか?」

 

 私・・・皆に内緒ですけど、鬼になれるようになったわ。才能があるみたい。

 

 まだ完全じゃないけど、この後も修行を重ねて秋には完成させる予定。

 

 その発言に朱乃も小猫も目を丸くしているわね。

 

「だったらこれはどうです?」

 

 巡さんが無数の剣を召喚。それをいつの間にか私達の影に刺してきたのだ。

 

「影縛りの剣。私の閃光と暗黒の龍絶刀。これもまた進化しているのだよ。ある付加機能をポルム殿達が再現してくれたおかげでな!!」

 

 ・・・あのアザゼルの黒歴史といえる人工神器か・・・。平行世界の私から話は聞いていたわ。

 

 でも、その割に、いや、逆にだからこそすごいのも知っている。

 

「アザゼルさんに巧君の幼い頃のアイディアが入ったらしい。故にこれは巧君の黒歴史も付加されている。」

 

 えっ?小さい頃の巧君のアイディア追加?

 

余計な人物の黒歴史が追加されていたの!?

 

「巧君・・・やっぱりあの子・・・アザゼルの身内ね。」

 

 まさに二人の黒歴史の結晶を手にしている巡さんに対する同情すら覚える。

 

「同情しないでほしい。逆にダメージが入るから。まさに・・・黒歴史の塊みたいな刀だが、どうだ?無数の分身を作り出し、それを自在に操作、飛ばせる巧君考案の効果は。しかもその剣は指輪の魔法で様々な付加効果が付けられる!!色々な効果が付加できるのはそう言った形で再現したぞ!!」

 

 それで影縛りの効果が・・・。

 

 すごいスペックじゃないの。

 

「でも・・・その程度で私を拘束したつもり?ふん!!」

 

 気合いを発して、私は影に刺さった刀をふっ飛ばす。

 

「・・・・・・。」

 

 巡さんが目を丸くしています。

 

「あの・・・リアス先輩?」

 

「だから言ったでしょ?この程度の芸当・・・イッセ―辺りなら簡単にやってしまうから驚くことはないはずよ?」

 

 なのに何でみんな驚いているの?

 

 単なる気合いなのに・・・。

 

「・・・本当にリアス先輩って場に染まっていますね。あの眷属の主にどんどんふさわしく・・・。」

 

 まだ足りないわよ。私の身内はどれもこれも私とは比べ物にならないから。

 

 知略面でもみんなを引っ張らないと、被害がでかくなるわ。

 

「うん・・・。でも他の皆はこれで動きは止めた。二人でなら!!」

 

 仁村さんと巡さんは同時に私に襲いかかる。

 

 私はそれを迎え撃とうとした。

 

 だが、次の瞬間、私は信じられない光景を見た。

 

『ぷぎゃ!?』

 

 2人が突然前の壁に激突したのだ。

 

 私に飛びかかってきたのに、何故か二人は後ろの壁に正面から激突。

 

「なっ・・・何が?」

 

「起きたの?」

 

 二人は鼻を抑えながらこっちを向く。

 

 仁村さんの姿が消え、私の真上に現れる。

 

「これなら!!」

 

 でも、またおかしなことがおきる。

 

 その拳は私ではなく、何故か天井を殴っていた。

 

「まっ・・・また!?」

 

 天井を蹴り、仁村さんが私に蹴りを繰り出してくる。

 

 加速の入った蹴り。

 

 それが次の瞬間。

 

「えええぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 私の真後ろの壁を蹴破っていた。

 

 本当に何が起きているの?

 

 私は一歩も動いていないのに?

 

「ぐっ・・・だったら・・・。」

 

 巡さんが無数の刀を召喚。

 

 でも、次の瞬間。

 

 その刀がすべて同時に粉々に砕けた。

 

「これって何?」

 

 そう・・・すべて同時に砕けたのだ。

 

 しかも、それだけじゃない。

 

「あっ・・・脚が!?」

 

 仁村さんの足がいつの間にか拘束されていた。床に足が沈みこむ形で。まるで床が液状化し、再び固まったような様子。

 

 それに加えて、巡さんの身体が無数の植物の蔦にいつの間にか拘束されている?

 

「なんだ?一体これは・・・なんだ!?」

 

「リアスお姉様・・・大丈夫ですか?」

 

 そうか。

 

 このおかしな現象ってやっぱりあなたの仕業なのね。

 

 アーシア。

 

「何をしたの?」

 

「正確には私ではなく・・・もう一人の私の力です。」

 

「?」

 

 アーシアが何を言っているのか皆、分からなかった。

 

「みなさんは悪魔ですから見えるはずですよね?では紹介します。」

 

 その言葉と共にアーシアの背後から現れる人型があった。

 

 胸と両腕、両脛、そして顔の十字架が目に入る。

 

 腕はアシュラのごとく六本。

 

 背中には天使のごとく白い翼が生え、頭の上には天使の輪っかのようなものがついている。

 

 まるで天使。

 

 その背にはアギトの紋章が輝いています。

 

 その身にはシスターが着る様なローブを纏っているが、アーシアと同じ金色の髪をしていた。

 

「マザーズロザリオ、もう一人の私です。」

 

 後にそれがアーシアの文字通り分身にあたるものだと知る。

 

「これがこのおかしな現象の正体!?」

 

「だが・・・原因が分かれば!!」

 

 2人が拘束を引きちぎり、同時にアーシアに向うが・・・。

 

「マザーズロザリオ!!」

 

 その攻撃をマザーズロザリオが優しく受け止める。

 

 繊細で、なおかつ包み込むようにそれぞれ腕一本で止めたのだ。

 

 二人とも押し切ろうとするが・・・。

 

「動かない!?」

 

「なんてパワー、そしてスピード・・・。おまけに精密な動き・・・。」

 

 ビクともしない。

 

 そして、その隙に拳が繰り出され、二人がまとめて吹っ飛ぶ。

 

「あれ?怪我はない?」

 

「凄まじい威力だったのに?」

 

 でも、二人に怪我はない。

 

「怪我は直しました。安心してください。」

 

 殴った瞬間に同時に治癒・・・。ある意味アーシアらしいわね。

 

『へっ?ぐっ!?』

 

 だが、二人の様子がおかしい。フラフラしていたのだ。

 

「撤退をお勧めします、今あなた達の感覚はすごくスローです。その状態で痛みを伴うことをすれば・・・。」

 

 軽く小石がはじかれ仁村さんの腕にあたると・・・。

 

「ぐぁぁぁぁぁ!?」

 

 過敏に反応した?ものすごい激痛を味わっている?

 

「これ・・・はっ・・・!?」

 

「・・・仕方ないので送り返します。」

 

『えっ!?』

 

 その言葉と共にアーシアの姿はいつの間にか仁村さん達の後ろに出現。

 

 ポンと優しく手に肩を置いて、そのまま二人を転送させてしまった。

 

 訳が分からないと思う。私だってそう思うから。

 

 でも、事実なの!!

 

 トリックとかそんなチーフなものじゃない。もっと根源的な恐怖に触れた気がするわ。

 

 同じことを証言する人が私の傍にもいるわ!!聞いてみて!!

 

「・・・・・私達出番あるかしら?」

 

「イッセ―先輩の予言的中。でも、さすがにここまでとは・・・。」

 

 アーシア・・・大活躍。

 

 二人を完璧に翻弄していたわ。

 

 ああ・・・活躍しすぎてめまいが・・・・。

 

 イッセ―の義母様。

 

 アーシアに何をしでかしたのですか?

 

 本当に訳が分からない。

 

 

SIDE ソーナ

 

 さて・・・二人の報告を聞いた私は、何処からそれを突っ込めばいいのか悩んでいた。

 

 リアス・・・あなた。本当に人間・・・いえ、悪魔を止めていたのですね。

 

 力技で大抵の事を解決している。例え滅びの魔力無しでも、拳ですべて解決できそうな勢いです。

 

 そして・・・アーシア・・・。

 

 想定を超える力の様ですね。

 

 二人の証言が間違っているとは思えません。

 

 でも、そうなると・・・その力の正体が気になります。

 

 指輪の魔法でもない。そしてアギトの力も加わっているようですが・・・。

 

 でもその前に私は気付いてしまった。

 

「みなさん・・・本陣を移動させます。それと迎撃の準備を。本陣の位置がばれています。」

 

 アーシアさんがこちらに転送させた。

 

 それはつまり・・・この位置がばれているということだ。

 

「・・・これはどこまでやれるか、きついところですね。」

 

 私達はとっさに移動するが・・・。

 

「・・・見つけました。」

 

「へっ?」

 

 無数のコウモリがそこにいた。

 

「・・・しまった。リアス・・・ギャスパー君の分身をあちこちにばらまいて・・・。」

 

 力だけでなく、ずいぶん狡猾になりましたね。リアス。

 

 眷属の特性を把握して、網を張っていただなんて。

 

「ついでに少しライフエナジーを・・・う~ん。でも女性の首筋を噛むのってエロテックで少し苦手です。」

 

「!?」

 

 いつの間にかギャスパー君の本体が花威さんの後ろに!?

 

「・・・ほにゃ・・・。」

 

 力が抜けてひざをつく花戒さん。少しライフエナジーを吸われましたか。少しにした辺り、加減してくれたのでしょうね。

 

「・・・う~ん。もう一人の僕もあまり満足していないか。でも・・・あっちの激闘に手を出すつもりもないし・・・。あっちなら美味しそうなんだけど。」

 

 私達・・・勝てるのかな?

 

 だが、そこで・・・。

 

―――――諦めんじゃねえ!!

 

 と、匙君の声が辺りに轟く。

 

 このフィールド中にだ。

 

――――だったら、こっちは意地で勝負だろ?現にまだ、二人とも健在だぜ?

 

――――本当にきついけど・・・。まだ・・・まだいける!!

 

 仁籐君の声まで・・・。

 

 二人ともまだ粘っているのですね。

 

 あの兵藤君に対して・・・。

 

「ふっ・・・。」

 

 あの二人は本当に私達の切り札だ。

 

「花戒さん!!刹那の絶園を全開。ギャスパー君を分身ごとふっ飛ばしなさい!!」

 

「はい!!うおおおおおぉぉぉぉぉ!!」

 

「えっ?うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 結界がギャスパー君の分身と本体をまとめて弾き飛ばす。

 

「・・・こうなったら意地です。みんな・・・この戦いは勝つ事が目的じゃありません。」

 

 私は決意する。

 

「私達の夢にたいする意地・・・みせてやりましょう。」

 

 こちらも持てる力の全部を賭けてやらせてもらいます!!

 

 

 

Side イッセ―

 

――――部長・・・みんな!!気をつけろ!!向うは開き直った。

 

 俺は匙と仁藤の言葉を聞いて皆に言葉を送る。

 

――――こういう奴ほど恐ろしい奴はいねえ。こっちも全力で相手にしてほしい。それが礼儀だと思うぜ!!

 

 そう言って目の前の二人と再び対峙。

 

 俺はボロボロだ。

 

 だが、それは向うも同じ。

 

「やっぱ・・・規格外だわ・・・。お前は・・・。」

 

「だが、檄を飛ばすのを見逃したのはどうしてだ?」

 

 その二人に対して俺は笑う。

 

「そんな無粋なことできるか?その代わり俺も檄を飛ばさせてもらったがな。」

 

 俺は構える。

 

「さあ・・・続きいこうぜ!!」

 

 二人は手ごわい。こうやって互いにボロボロになっているのがいい証拠だろう。

 

―――――カッカッカメレオン!!

 

――――ケルベロストライファング!!

 

 いつの間に姿を消していた仁藤が、右肩のカメレオンの口から舌を伸ばし、俺を拘束。

 

 左肩に現れた三つ首の犬・・・ケルベロス。

 

「トライファングクラッシュだ!!」

 

 左手のダイスサーベルと呼ばれる剣。それから同時に繰り出される三つの炎の斬撃。

 

 それを俺は軌道を見切ってかわそうとするが・・・。

 

「そう簡単にかわせると思うなよ!!」

 

 匙の本来の神器・・黒い龍脈が作り出したラインが俺を拘束したのだ。

 

「そのまま血を吸い出してやる!!」

 

「ぐっ・・・。」

 

 黒い龍脈から血が出てくるのがわかる。なるほど・・・中々えげつない・・・だが・・・。

 

「だったら・・・。」

 

 俺は旋回する。

 

 両手を振り回し続け、その勢いで竜巻を起こす。

 

 それに匙が引っ張られつつ、俺を縛った黒い龍脈のラインを利用して仁藤の三つの炎の刃を防ぎつつ焼き斬る!!

 

「ぐああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 そのまま上に巻き上げられる匙。その隙を逃がさない。

 

 猛烈な竜巻で仁藤も外から手だしはできない!!

 

 足元にアギトの紋章を発動。

 

「ぐっ・・・や・・・ば・・・。」

 

 確実にリタイアさせる。

 

 そのつもりで蹴りを放とうとするが・・・。

 

――――ドリュ―ライジング!!

 

「なっ・・・ぐっ!!」

 

「そうさせるか!!」

 

 仁藤がいきなり足元から強襲。キックが失敗してしまって、俺はふっ飛ばされた。

 

「きりもみシュートをこんな形で破るなんて・・・。」

 

 竜巻の死角。それは真上か、真下。

 

 仁藤は迷うことなくその際短距離である真下から床に溶け込むようにして移動してきたのだ。

 

 この二人は本当にいいコンビだ。テレパシーとかそんなの使っていないのに、この連携。

 

 隙がない。

 

 上空に巻き上げられる俺。

 

 逆にピンチになってしまう。

 

 仁藤がダイスサーベルに指輪を当てる。

 

 出てきた数字は・・・四。

 

「うおおおらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 一方黒い炎を纏った匙が・・。

 

――――キックストライク!!

 

 空中で指輪を腰のベルトに当てて・・・キックを繰り出してくる。

 

 一方仁藤が四体のモグラの形をしたエネルギー体を放ってきた。

 

 二人の必殺技に挟み込まれる形になる俺。

 

「ぐっ・・・。」

 

 二人の必殺技が同時に俺に襲いかかる。

 

 

 

 

side 仁藤。

 

「やったぜ!!」

 

 二つの必殺技が交差し、爆発したのを見た。

 

 決まった。

 

 そう俺は思っていた。

 

 キックを繰り出し、俺の後ろに着地した匙。

 

 労をねぎらおうとしたが・・・俺はすぐにそれをやめる。

 

「・・・まじかよ。」

 

 その表情は驚愕に染まっていたからだ。

 

「仁藤!!防御だ!!」

 

 必死の表情の匙。

 

その言葉に俺はとっさに指輪を交換。

 

―――――タートルディフェンス!!

 

 亀型の防御壁を作り出す。

 

 それと同時だった。

 

 爆発の向うで・・・

 

 天井に足をつけ、そこにアギトの紋章を展開させている兵藤の姿・・・。

 

 あいつは何故か無事だったのだ。

 

 不敵な笑みがこっちを見据えていた。

 

「今度はこっちの番だ。」

 

「おいおい、嘘だろ?!!」

 

 天井が砕けるほどの勢いで蹴りだす兵藤。

 

 そのまま弾丸のごとき勢いで、必殺キックを繰り出してきた。

 

「ぐおおおおおぉぉぉぉぉ!!」

 

 俺が展開させた防御壁がそれを防ぐが・・・。

 

――Divide!!

 

「げえっ・・・こっ、ここで半減!?」

 

 そのタイミングで半減してきやがった。

 

「くそぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 魔力を込め、防御を半減させないようにするが、奪い取った力と・・・。

 

――――Boost!!Boost!!

 

 倍化により、向うの威力が増してくる。

 

「やっ・・・やばい!!」

 

 このままじゃ、防御が突破される!!

 

「ここでさらに・・・!!」

 

 まっ・・・まずい、その上ここで透過を使われたら・・・。

 

「仁藤ぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 だが後ろで俺の相棒が構えていた。

 

――――スペシャル!!

 

 巨竜の顎に集中させた黒い炎と、

 

―――――absorption

 

――――BOOST!!

 

 とっさに神器を発動させて、奪い取った倍化の力。それこと瓦礫を吸い込み、ボウリング状の砲弾を作り出す。

 

 黒い炎を纏った砲弾。それを必殺キックで押しつつある兵藤にぶつける。

 

 その結果、大爆発が起き、俺と匙は吹っ飛ばされる。

 

「ぐああああぁぁぁぁぁ!!」

 

 ふっ飛ばされ、転がる俺達。

 

「ぐう・・・荒っぽい方法だぜ。」

 

「あのキックの直撃よりは遥かにましだろう!!」

 

 まったくもってその通りだ。なんとかあの必殺キックを相殺できた。

 

 変身していない素の状態で、とんでもない破壊力だった。

 

 これほど全力で防御しても突破されそうになるとは・・・。

 

「しかし・・・何故無事だった?」

 

 俺はどうやって必殺技の挟撃をしのいだのかわからないでいた。

 

 かわしようのないタイミング。転送を使うにも間にあわない不意打ち。

 

 すべて揃えていたのにな。

 

「あいつ・・・二つの必殺技がぶつかる瞬間、透過を使いやがった。絶妙なタイミングで俺のキックとお前の必殺技をすり抜け、俺を踏み台代わりに上へ飛び上がったんだ。おかげで俺のキックはお前の放った必殺技にぶつかって相殺される始末。俺だって信じられない物を見て驚いているぜ。」

 

 ・・・透過で切り抜けたのか。

 

 だから匙は気付けたのか。キックに手ごたえが無く、すり抜けた瞬間を見たから。

 

 おそらくそれはとっさの判断。アギトの本能によるもの・・・なんだろうな。

 

 発動のタイミング、透過する相手の対象。その刹那の発動時間。すべてを本能的に行ったということか。

 

 アギトの本能、恐ろしいにも程がある。

 

「あれでも駄目なんて・・・。」

 

 立ち上がる兵藤を見て、ぞっとしたね。

 

 どうやったらこいつを倒せるのだろうって・・・。

 

 何をしでかすのか本当に分からない。

 

 それがどれだけ怖いか初めて思い知ったぜ。

 

「やっぱ・・・簡単にいかねえな。俺のキックが防がれるなんてショックだわ。」

 

 俺達と同じくボロボロのイッセ―。

 

「それはこっちのセリフだ。あれで倒せないって、お前どんだけ化け物なんだ?」

 

 認めよう。

 

 目の前にいる男、兵藤 一誠。

 

 俺がこれまで闘ってきたどの猛者よりも手ごわいと、

 

 一人だったら瞬殺されていてもおかしくない。

 

「俺は認めるぜ?お前ら二人は本当に名コンビだ。俺も正直勝てる気がしねえわ。他の連中と戦わせなくてホント良かった。」

 

 それもこっちのセリフだ。

 

 他の連中に戦わせたら、瞬殺される。

 

 相棒と一緒でも、正直勝てる気がしない。

 

 まあ・・・

 

 俺達は互いに視線を交わし、神器などを手に取る。

 

 俺は・・・いや、俺達は!!

 

諦めるつもりなど微塵もないがな!!

 

「諦めねえか・・・。上等だぜ。」

 

 お互い遠慮なく戦えるのが唯一の救いだ。

 

 お互いの目的は達しているのだから。

 

 お互いの切り札を封じる事。

 

「焦ったら負け。こうなったら腰据えてじっくりと行こうか!!」

 

『上等!!』

 

 俺達の戦い・・・長期戦になることは確定のようだった。

 

 だが俺達は知らない。

 

 この戦いで、冥界の上層部の人達や、神々達から俺達の評価が急上昇していたことに。

 

 




 オリジンルの技・・・どうでしたか?

 乳語翻訳を超えるのって、これしか思い浮かばず、くだらない技になりました。


 次話・・・祐斗とゼノヴィアの真の必殺剣が明らかになります。

 二人とも、本当に洒落になりません。

 あとアーシアの新たな力。いくつ能力があるのかわかりますか?

 またこれも徐々に明らかにします。

 ではみなさんまた会いましょう!!


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レーディングゲーム 後篇

 お待たせしました。、

 ついに後篇。

 グレモリー眷属が誇る三大剣士のとんでもない切り札が明らかになります。


 


SIDE 新

 

「へえ・・・あの二人やるねえ。これは手合せをお願いする価値があるか・・・。」

 

 レ―ディングゲームを見ていた皆は驚いていた。

 

 神の後継のイッセ―。

 

 それと互角に渡り合っている匙と仁藤。

 

 ヴァ―リですら感心している。

 

 同じ意見だ。

 

 どっちもすごい。

 

「これはすごい物を見せてもらっておるわい。互いに枷がある中でこれだけの戦いを・・・。」

 

「ええ。」

 

 ロズお姉ちゃんも感心している。

 

「・・・これがクレア達の見染めた契約者。無双龍と契約し、二天龍のアギト。」

 

「気に入らん。あのような若造が神になるか・・。」

 

 そこに入ってくるのは別勢力の神様だった。

 

「・・・帝釈天。」

 

 それはインド神話の神。

 

「天を名乗る存在がいると言うだけでも・・・。」

 

「そうかい。なら、あいつと正面切って闘ってみるかい?」

 

「・・・・・・。」

 

 アザゼルさんがそう言うと、

 

「ふん。戦闘に特化し、あそこまで進化したアギトと正面から戦うわけ無いだろう。」

 

 不愉快そうにしながら、戦う危険性を認識していた。

 

「神滅具を得たアギトと言うのは本当に恐ろしい。ワシだってまともに戦いたくないわい。力と経験で上回っても、それを補って有り余る意外性と爆発力があるからのう。まさに進化する破壊神じゃわい。」

 

 オーディンのおじいちゃんも戦いたくない程か・・・。

 

「そう・・・じゃな。じゃが、人間でもあると言うのがアギトの弱点でもある。そう思わないか?」

 

「俺は逆だと思うが?」

 

 そのやりとりにヴァ―リは不敵な笑みを浮かべる。

 

「あいつは人間でもある。だからこそ・・・強い。弱さが強さに変わるくらいに。」

 

 神としての力。そして人間としての弱さと、逆にそれを強さとなる力。

 

 それを兼ね備えた存在は恐ろしいということか。

 

「じゃが、その神の後継と互角に戦うあの二人・・・。」

 

 戦争の神であるオーディンのじっじゃんはいう。

 

「共に勇者の素質を秘めておる。かの紅の救世主と同じ・・・な。サーゼクスよ。」

 

 じっちゃんは断言する。

 

「あの二人を大切にしたほうがいい。あの二人、いずれ世界を救う英雄となる。」

 

 じっちゃんが英雄と断言した相手は間違いないだろう。

 

 紅の救世主の名前も聞いたことがある。一人の狼のオルフェノクの話を。

 

 北欧神話のフェンリルの名をじっちゃん達が送った程の。

 

「・・・ハルト・・・ポルム・・・。」

 

 その救世主のギア・・・ファイズギアを受け継いだ男、巧は顔を真っ赤にさせながらハルトとポルムを問い詰めていた。

 

「よくも人の恥部を・・・黒歴史を晒してくれたな・・・。」

 

 涙目で二人を問い詰めている。

 

「いっ・・・いやね!!アザセルの中二病の遺産を見せてもらった時に、それだけじゃ足りないと思ってね。そうしたら、そこに小さい頃の巧君が考えた最強の武器シリーズが書いたノートがあったから。いや~巧は才能あるって。最近の分もあったけど、すごくいいアイディアだったよ。この通りばっちり再現したらすごくいい出来になったし。」

 

「むしろ今後も意見が欲しいくらいだ。是非・・・。」

 

「お前ら説教!!そこに正座!!答えは・・・聞いてねえからな。」

 

『はっ・・・はい!!』

 

 ハルト君とポルム君に説教が出来る。それだけで巧君って貴重な存在なんだね。

 

 巧君が変身する。

 

 それは・・・。

 

『!?』

 

 紅の救世主と同じウルフオルフェノクに。

 

 しかも、全身の刃がさらに発達した姿、激情体に。

 

 背中から紅い翼のような物も見える。

 

「まっ・・・まさか、あやつ?そうか・・・ファイズギアはただ親から子へ。」

 

 オーディンのじっちゃんは何かに気付いたようだ。

 

「わりぃ・・・内緒にしてやってくれ。大切な孫なんでな。」

 

「お主も因果なものじゃな。」

 

 孫?たしか巧君ってアザゼルさんの義理の息子じゃないのか?

 

 孫ってどういうこと?

 

「・・・まさかあの救世主の息子まで。なるほど、確かに恐ろしい。今代の赤龍帝は色々とあまりに規格外すぎる。周りに集まる力のあまりの多さもか。これはある意味前の神よりも恐ろしい存在になるかも・・・いや、だがそれはそれであいつへの対抗馬に・・・。」

 

 帝釈天が何やら色々と考えている。

 

「ちなみに、お前さんの所にもあいつの幼馴染がいるかもしれねえな。」

 

「そんな馬鹿な事が・・・。」

 

 あいつが否定しようとするが・・・。

 

「現にワシの実の孫が幼馴染じゃ。」

 

 オーディンのじっちゃんが俺を指す。

 

「・・・・・・。」

 

 そして、ある名前を口にする。

 

「孫ってまさか・・・あやつじゃないだろうな・・・。誠の奴が、そんな事を・・・。」

 

 あれ?誠って・・・。

 

「誠って・・・まさかあいつも?あいつってそちらの関係者なの?」

 

 あいつは普通の人間だよな?

 

 なのに、どうして関わってるの?

 

 その発言に帝釈天が驚いた形相でこっちに迫ってくる。

 

「なんでお前が誠の事を知っている?」

 

「誠って氷川 誠だよな?不器用な癖にやるときはすごくやる奴。」

 

「・・・・・・。」

 

 俺の言葉に帝釈天は目を抱える。

 

「あいつは劉備の子孫だぞ。」

 

 今何気なくとんでもない事が言われて気がする。

 

 劉備って・・・あの劉備!?

 

 三国志で超有名な!?

 

「今は駒王町の隣町で高校生やっているぜ。まあ、親を失った所を、保護してな。まあ保護者、孫みたいな奴なのじゃ。警察官になりたいと言っておる。神器も宿しておらず、裏の世界は一切関わらせていないし、あいつも知らないが・・・。」

 

『・・・・・・。』

 

 誠。お前まで・・・。

 

「HAHAHAHA―!!こりゃもう笑うしかねえわ!!俺もそうだが、あんたもイッセ―の関係者になるってわけだしな!!あいつを神の後継にしたら外交が楽でいいわ~!!パイプばっちりすぎてもう・・・。今後もイッセ―の幼馴染繋がりでよろしく頼むわ!!」

 

 心底可笑しそうにアザゼルさんは笑う。帝釈天にひと泡吹かせることが出来たのが相当愉快なのだと見える。

 

「・・・・・・誠っちがあいつの幼馴染だったとは・・・。そんな馬鹿な事が・・・。」

 

 信じられない表情で呆ける帝釈天。

 

「今代の赤龍帝の恐ろしさ・・・思い知ったか!!これでも氷山の一角だと自負しているぜ。あとどれだけのつながりがあるのか楽しみでもあり、恐ろしくもあるぜ!!」

 

 アザゼルさんの言葉に皆が戦慄しているのが分かる。

 

「戯れはこれくらいにしよう。またゲームが動くよ。」

 

 ヴァ―リはマイペースにゲームを観戦。

 

 お前は驚かないのか?

 

「こっちのチームも大概な奴がいる。それにもう驚くのを諦めた。むしろ歓迎するべきだと開き直ったよ。より多くの猛者と手合わせできるのだからな。」

 

 戦闘好き故にむしろ歓迎って、それは間違いなく少数派だよ?

 

 

SIDE 裕斗

 

 どうやら、シトリー眷属は皆で立ち向かいに来たみたいだ。

 

 こっちの本陣の場所もばれている。ある意味妥当な判断って・・・!?

 

 すごい冷気が・・・。

 

「・・・ささやかな対抗手段ですけど、何もしないよりはましでしょう。」

 

 フィールドをあちこち凍りつかせながらソーナ会長が眷属達を連れて歩いていた。

 

 この冷気、凄まじい物がある。

 

 瞬く間にショッピングモール全体が凍てついてしまった。

 

 そう・・・建物全体がだ。

 

 一体これのどこがささやかなの!?

 

ソーナ会長ってテクニックタイプですよね?どうやったらここまで凄まじい冷気を・・・。

 

「デモンズブラッドを飲ませてもらって良かったです。レイアを魔改造したポルムさんに問い詰めて、こっちも飲ませてもらった事を感謝しないと。」

 

 ポルム君・・・一体何を飲ませたの?

 

「これである程度はフィールドを支配することができるはずです。あと出来る限り、アーシアさんと他のみなさんを放すこと。そしてアーシアさんには見かけたら戦闘は厳禁!!大切なのは挑まない、近づかない、即座になおかつ、目を離さないようにして逃げる。その三つを必ず守る事。それが対抗策です。彼女自身も闘争心は極めて薄い。こっちから襲うか、仲間を守ろうとしないかぎり、動くことはないでしょう。彼女から攻めてくることはないと考えてください。」

 

 まるでクマへの対処法みたいだけど、アーシアちゃんに対する対抗策。的確だ。

 

 彼女は自ら攻めることはしない。その優しすぎる性根のために。

 

「了解しました!!」

 

「と言うより、アーシアちゃんと戦いたくありません!!兵藤君とは違う意味で勝てる気がしません!!一体何をしたのか、全然分からないし!!」

 

 でも、なんでそこまでアーシアちゃんを恐れている?

 

「させると思った?」

 

「来ましたね。しかしキング自らですか。」

 

 そこに部長達が登場。

 

 アーシアちゃんが飛ばしてくれたのだろう。

 

 テレポートって本当に彼女は何でもありだ。

 

「・・・えっと・・・。」

 

「アーシアちゃんに挑まないで下さい!!本当に何をしでかすのかわかりませんから!!」

 

 仁村さんと巡さんが震えあがりながら仲間に注意を送る。

 

 いや、何をするか分からないって、本当に何したのさ?

 

「アーシア。悪いけど、今回は後ろで見ていてくれないかしら?さすがにあなたは強すぎるから。はあ・・・これでアーシアも大幅な制限が掛かるわね。ここまで強くなるなんて予想外過ぎる。これでアギトの力の覚醒も考慮すると・・・想像もしたくないわ。」

 

「わかりました。えっとフィールドを一応変えておきますね。マザーズロザリオ!!」

 

 アーシアちゃんの背後から何やら変な人型が現れる。

 

 床を触って、フィールドが一気に広くなった。

 

 あれって何!?

 

 僕も初めて見るけど!?

 

 他の皆も唖然としているって。

 

「あのビジョンが力の根源ですか。・・・リアス。自重してくれた事を感謝します。でも、そうですか、無意味な策でしたか?」

 

「いいえ、若干ですが改造しにくくなっています。無駄じゃないですよ。」

 

「ありがとうございます。でも・・・若干ですか。やはり、アーシアちゃん、あなたが規格外過ぎるだけですね。本当に自重してくれて感謝します。あなたに他の眷属全員で挑んでも間違いなく勝てないですから。」

 

「同感。でもソーナもすごいことになっているわね。」

 

「何・・・私もあなたと同じと言う事です。」

 

 ソーナ会長も悲壮な決意をしていた。

 

「私も前のパーティーの時に悟ったのです。主が眷属に負けていられない。そして、あなたと同じく・・・ゲームのリミッターをぶっ壊すことにしました。まあ、私の夢が壊れるわけではありませんから。」

 

 なんかすごく同情したくなるくらいに。

 

 それと共にソーナ会長に周りに巨大な氷の竜が二体現れ、放たれる。

 

 一体一体が並のドラゴン位の大きさがある。それが部長を飲み込もうと襲いかかってくるが・・。

 

「・・・心底同情するわ。でもそうよね。」

 

 リアス部長がそれを前にして笑っていた。全然動じていないよ!?

 

「そうでないと、主として威厳が保てないから。」

 

 その言葉と共に氷の竜を殴って砕いた!?

 

 なんの魔力を込めていない素手で!?

 

「これ・・・ダイヤモンド位の硬度はあったのですが?」

 

 そんな馬鹿みたいな硬さの氷を素手で砕いたの!?

 

しかも粉雪のように粉状になったよ?

 

「なら私も面白い技を披露しましょう。この二重の極みは些細なものだから流しておいて。」

 

「いえいえ、それで流さないでほしい!!」

 

 部長が目の前で拍手するように手を叩き合わせる。それと共に現れる赤黒い球体。

 

「平行世界の私が使っていた消滅の魔星(イクスティングイッシュ・スター)。それはリタイアシステムすら意味をなさない程のあまりの破壊力とチャージに時間がかかる欠点があるわ。まあ、夏休み前に訓練を積んで完全に物にしたけど、二つの欠点がどうしても克服できないでいた。でも・・・この夏の合宿で、私はその欠点を補う技を開発したわ!!異世界の忍術の情報に・・・感謝だわ!!」

 

 部長の新たな必殺技。

 

 手にした赤黒い球体の内部では凄まじいエネルギーが渦を描いて回っている。

 

「それがこの消滅の魔弾(イクスティングイッシュ・マグナム)。威力こそ落ちたけど・・・。」

 

「いえいえいえいえいえいえ、それでも十分ですよ!?」

 

 小型化したというのか?

 

 でも小型とはいえ・・・。

 

「安心して。これもまだ欠陥があるから。」

 

 リアス部長がため息をつきながらその新たな技を評価する。

 

 僕から見ても完成度は十分だと思うけど?

 

 手を合わせて、一瞬で作りだせる点といい、小型化して扱いやすいという点も・・・。

 

「これでも破壊力が強すぎるのよ。小型化しただけじゃなく、破壊力まで凝縮しちゃったから。リタイアシステムなんて意味なさないという点はどうしても変わらないのよ。これ一発で、教室一つ分位なら例え神でも楽に消滅できるし・・・。」

 

 なんかすごく怖い欠点(?)ですけど・・・。

 

「レ―ディングゲームでは使用禁止確定だからこの場では使えないわ。ふん!!」

 

 作り出した消滅の魔弾を片手で握りつぶす部長。それだけで辺りに凄まじい嵐が巻き起こる。

 

 まるで大型の台風が来た様な嵐。それが狭いショッピングモール内を吹き荒れ。僕達はふっとばされる。

 

 部長は平然と立っていますけど。

 

『ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

 なっ・・・なんて技だ。あの球体の中にあれだけの運動エネルギーで滅びの魔力がうごめいて・・。

 

 それを一瞬で作り出すなんて・・・。

 

 まさに必殺技じゃないか。

 

「でも実戦ではこの上なく頼りになります。文字通り必殺技の完成ですか・・・。しかも爆発させても使えるなんて恐ろしいことこの上ない。」

 

 周囲に張った氷の壁で爆発を防いでいたソーナ会長は冷や汗を流していた。

 

「ええ。仕方ないからこの姿で出来る・・・。」

 

 部長の左腕から滅びの魔力が放たれ・・・。

 

「紅のキバの必殺技の再現で戦いましょうか。」

 

 それが蝙蝠の翼を広げたような弓へと変わった!?

 

「・・・本当にいい加減にしてほしいですよ!!あなた達は一体どれだけ切り札を隠し持っていると言うのですか!?」

 

 ソーナ会長はもう呆れる事も出来ずに、怒りだす。

 

 まさに逆切れ。

 

 でも仕方ないと思う。

 

 リアス部長・・・引き出しが増えてきましたね。

 

「あなただってレイちゃんと合体しなくてもいずれ、できるようになるわ。何度もウェイクアップを使っていると体が覚えていくのよ。」

 

 部長・・・あなたはもう人外の仲間です。

 

体が覚えていたからってあの技を簡単に再現できる時点でね。

 

「私・・・段々常識が分からなくなってきました。」

 

 会長。貴方ももうその仲間入り確定です。その現象は部長が最初に通った試練。

 

 今までの常識の破壊から統べて始まりますので。

 

「さて・・・僕たちも逝くか。」

 

「ああ。」

 

 良太郎とゼノヴィアがやる気満々だし。

 

 良太郎・・・また逝くっていっているよ?落ちつこうよ。

 

 ゼノヴィアが凄まじい突進と共に牙突を繰り出してくるけど・・・。

 

「手出しはさせません!!ミラーフルオープン!!」

 

 そこに真羅会長が立ちはだかる。

 

 眷属達一人一人に鏡の盾を展開させてきたのだ。

 

「なっ!?ぐっ・・・。」

 

 元々砕けてから反撃するカウンタータイプの神器。

 

 迂闊に砕いてしまい、それが衝撃波となってゼノヴィアを襲う。

 

「・・・やってくれる。」

 

 あちこちボロボロになるゼノヴィア。だが、まだ立っていた。

 

「・・・まさか一撃離脱でカウンターから逃げますか。」

 

 そのカウンターで出た衝撃波をあえて突きで突破してダメージを最小限にとどめた。

 

 一撃離脱。

 

 カウンターの対策の一つだ。

 

「それでも有効なのに変わりはありません。禁手化はまだですけど、これでも皆を守るくらいはできますよ!!」

 

「そして・・・私達の本慮もここからです!!花威さん!!」

 

「ええ!!

 

 花威さんの周りの空間から無数のシャボン玉みたいな球体が無数現れる。手にしているのはウィザードソードガン?

 

「独自に開発した禁手化・・・。」

 

 えっ?人工神器の禁手化!?

 

 それって、暴走状態じゃ・・・。

 

「無数の性質の違う結界を作り出して、攻撃と防御、補助すらもできる・・・虹色の泡宝玉(レインボー・シャボン)!!」

 

 彼女が目の前に現れたシャボン玉に弾丸を放つと・・・弾丸が曲がった?

 

 しかも砲弾みたいにすごくでかくなって・・・。

 

「これは三年前の巧君のアイディアです。その発想のおかげで人工神器を神器に、そして禁手化へとランクアップできたよ!!」

 

 巧君のアイディア!?しかも人工神器の禁手化再現って、何とんでもないことを。

 

 まさに神への挑戦・・・。

 

「・・・また巧君なのね。中々シャレにならないアイディアを・・・。」

 

 リアス部長・・・しかも、またといいましたね!?

 

 巧君のアイディアがシトリー眷属に反映されているのかい!?

 

「私のこれも巧君のアイディアだよ?まあ・・・一年前に書いたアイディアノートからハルトさんが本人に無許可で採用したみたい。」

 

『・・・・・・。』

 

 無数の仮面人形も巧君のアイディア・・・。しかも無許可って。

 

 ハルト君、やりたい放題だね。

 

「その禁手化をみせてあげる。」

 

 草下さんの身体が黒い影に沈む。

 

 そして、現れたのは黒いドレスを纏った草下さんの姿。その後ろには黒い巨大な影の人形が現れていた。

 

 ピエロの様な帽子に白い表情のない仮面。そしてその全身を黒い闇のようなローブをまとっている。

 

 手は白い手袋になっている。

 

 それはまるでアーシアちゃんの後ろに現れたもの似ている。でも、大きさが桁違いだ。

 

 手だけで人の胴体を丸々納めることができそうなほど。

 

 その手から無数の糸が伸びており、纏っている闇の衣からも無数の闇色のリボンみたいな物が伸びる。

 

「闇人形師の戦闘衣(ダークドールマスターズ・バトルドレス)。攻防一体の私の鎧よ!!」

 

 また派手な奴を・・・。

 

 草下さんの纏った衣から無数の闇のリボンがあらわれ、こっちに向かってくる?

 

 それを慌ててかわす。

 

 紙一重で避けた良太郎君が草下さんの懐に入る。そこに巨大な人形の腕が突きだされ、良太郎君をふっ飛ばそうとするが・・・。

 

 それを刀で受け止めつつその腕の勢いに逆らわないように回転、勢いを流しつつ、さらに軸足を変えて回転。

 

 刀に先ほどの攻撃の勢いに、遠心力を上乗せした強烈な一撃を草下さんにお見舞したのだ。

 

―――飛天御剣流・・・竜巻閃!!

 

 その隙に僕も、そしてゼノヴィアも攻撃を仕掛ける。

 

――――牙突!!

 

「・・・流石に自動防御が無かったらヤバかったわ。」

 

 その攻撃すべてを草下さんの目の前に現れた黒い布が阻んでいる。

 

 だが、あまりの勢いに草下さんの体も若干だが浮いていた。

 

「これ・・・十トントラックの激突だって余裕なのに・・・。三人ともすごすぎるよ!!」

 

 体を宙に浮かせながら無数の闇のリボンで攻撃。

 

 僕達は散開してかわす。

 

「・・・この一撃すら防御されるか・・・。」

 

 かわしながら良太郎君がため息をつく。その足に糸が絡む。

 

「おろ!?」

 

「・・・糸も使えるのよ?」

 

 そこに殺到する闇のリボンと仮面人形達の一斉攻撃。

 

 その勢いにふっ飛ばされた良太郎君。

 

 すごいギミック。

 

「これに魔法まで併用可能だからいいわね。糸や布に特殊効果も付属できるよ。」

 

 草下さん・・・すごい。

 

 これは明らかに一体多数を想定した禁手化だ。

 

「私のも巧君のアイディア搭載よ?」

 

 仁村さんの手足の装甲もか・・・。

 

 なんか僕達、巧君と戦っている気分になってきたよ。

 

「今度、巧君にこの類のアイディアをお願いすることにします。アザゼルの身内だけあって、研究者、いや発明家として才能が突出しています。これは面白いことです。」

 

「・・・巧君。おそるべし。」

 

 会長と部長も戦慄していた。

 

 これはまた意外な才能・・・。そう言えばハルト君と研究に関して色々と話しこんでいたのを思い出す。

 

 あの時点で巧君も研究者としての才能があったんだ。

 

 ハルト君と互角のやり取りができるレベルの。

 

 発想だけで言えばおそらくグレゴリ随一・・・。

 

「さあ・・・私の神器も切り札お披露目といきましょうか!!」

 

 仁村さんの両手足の装甲が変化する。それはまるで獅子の手足を思わせる様な拳と足。

 

 背中と腰では尻尾の様なタービンが回っている。

 

 どんな発想があればあんな禁手化を思いつくの?

 

「玉兎と嫦娥(プロセラルム・ファントム)の禁手化。合成獣の獄宴(キマイラ・イグニッション)!!

 

 キマイラ?

 

「・・・仁藤君の頑張りに私も応えたいから!!匙君と一緒に今・・・あのイッセ―君と戦っている。だったら私たちもここで踏ん張らないでどうすんのよ!!」

 

 ・・・堂々と言ってのけますね。

 

 それだけで皆察したみたいだ。仁村さんの想いに。

 

「そう言うの・・・嫌いじゃない。」

 

 小猫ちゃんが前にでてきた。

 

「来て。私が相手になってあげる。」

 

「今の私を簡単に止められると思わないでよねぇぇぇぇ!!」

 

「こっちこそ・・・波動拳の極意を見せてあげる。」

 

 二人の拳がぶつかり合う。

 

「やれやれ・・・読みにくい攻撃で苦労する。」

 

 そして吹っ飛んだはずの良太郎君が首を鳴らしながら登場。

 

 あちこち傷だらけだけど・・・その怪我の程度は驚くほど軽い。

 

「・・・こっちも遠慮する必要はないな。」

 

 首を軽く鳴らし、良太郎君は告げる。その左ほほに浮かび上がるのは十字傷。

 

「ここから本気を出す。」

 

「へっ?本気?」

 

 その姿が消える。

 

「うぐうううううううううううっ!?」

 

 草下さんの自動防御が発動。でも・・・それでもふっ飛ばされていた。

 

 壁に激突した衝撃そのものは防御されていたからなんともないだろう。

 

 でも・・・精神的な衝撃はどうしようもなかった。

 

「ちょちょちょちょ・・・さっきのは本気じゃなかったの!?」

 

「正確にはさらにギアをあげることができるということでござるよ!!実戦で前世の感触をだんだん思い出してきたでござるからな!!」

 

 良太郎君が駆ける。

 

「このぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 まるで雨のように放たれある無数の黒い布や糸達。

 

 それをかわすかわすかわすかわす・・・。

 

「なぅ・・・なんであたらな・・・。」

 

 貫いたと思ったら、それは残像だったりなど・・・一発のかすりもしない。

 

 一体多数用の攻撃の弾幕をたった一人に集中しているのにもだ。

 

「視線で・・・読める!!」

 

「それでもその動きは明らかに可笑しいでしょう!!ひいいいいいいいぃぃぃぃぃ!!」

 

 再び放たれる強烈な一撃。それを自動防御。

 

 でも、吹っ飛ぶ。その防御を粉々に打ち砕いて。

 

 周りには先ほどよりも遥かに多い人形達もやってくるが・・・。近づいた瞬間に斬り飛ばされ、消滅。

 

「先読みの補助にフォースを覚えただけ。気にすることはない。」

 

「ちょちょちょちょ・・・!!」

 

「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 弾丸の雨も大量にやってくるがそれをすべてかわすか刀で切り飛ばすなどして、全然当たらない。

 

「いやぁぁぁぁぁぁこっちこないで!!」

 

『・・・・・・。』

 

 草下さん、もう涙目になっている。

 

「ちぃ・・・この!!」

 

 巡さんが加勢にやってくる。

 

 無数の刀を飛ばしながら切りかかる。

 

「私の禁手化発動!!」

 

 その刃が突然消える。

 

 良太郎君が慌てて動くと、先ほどいた場所に刃が刺さっていた。

 

「私の禁手化は四枚の切り札(フォーカードジョーカズ)。一枚目の切り札・・・空断の刃(テレポートソード)そして・・・。」

 

 巡さんの右腕にオーラと共に装甲が出現。右腕が巨大な装甲に覆われ、手にした刀も巨大化。その大きさ・・・軽く見積もって五メートルはある。

 

 重さは無いのか、それを巡さんは軽々振るってくる。

 

「二枚目の切り札。荒魂の刃(オーバーソウルブレイド)!!」

 

 突然現れる無数の刃。それに加え巨大化した剣。そこに・・・。

 

「巡さんナイス!!」

 

 草下さんの攻撃が加わる。

 

「これもしのぐとは・・・。」

 

 それでもなかなかとらえきれないが・・・。

 

 足元にしかけた刃に足を引っかけた良太郎君がよろめく。

 

「隙ありぃぃぃぃぃ!!」

 

 それを見逃さず、巨大化した剣による縦一閃を放つ巡さん。

 

 その剣閃。間違いなく一流。

 

人間どころか、ダンプカーですら両断できそうなほどの見事な剣撃だった。

 

 だが・・・放つ相手が悪すぎた。

 

「その程度でござるか?」

 

 それを良太郎君は白刃取りしていた。

 

それも、両手ではなく、左手の人差し指と中指で挟み込むようにして止めていた。

 

 片手、しかも指二本による白刃取り。

 

「・・・嘘。」

 

「こう見えて、白刃取りも心得があるでござるよ?神谷活心流と言う名の・・・。」

 

 そのまま素早く詰め寄り、刀の柄で殴り飛ばされる巡さん。

 

「・・・大丈夫!?」

 

 追撃を草下さんが防ぐ。

 

「駄目だ・・・敵わない。」

 

 だが巡さんの驚愕はまだおさまっていない。

 

「次元が・・・次元が違いすぎる。」

 

 巡さんのそのコメントの通りだろう。良太郎君の剣の腕はもう異常としかいえない。

 

 夏休みの間に凄まじい潜在能力が開花したものだ。

 

「巡さん!!気を取り直して!!気を抜いたらやられて・・・げっ!?」

 

「大まかの攻撃の概要はわかった。理屈さえわかれば大したことはない。」

 

『・・・・・・。』

 

 二人の攻撃を見切ったといった良太郎君の衝撃発言。

 

 現に二人は全力で攻撃を仕掛けるが・・・。

 

 今度は全く当たらない。涼しい顔で、紙一重、必要最小限の動きでかわしていく。

 

 無数のリボンの雨も・・・。

 

 突然現れる刃も。

 

 巡さんの斬撃も。

 

 草下さんの人形たちも・・・。

 

 もはや掠りもしなかった。

 

『・・・・・・。』

 

 二人の表情に浮かぶは・・・恐怖。

 

「さあ・・・。今度はこっちの番でござる!!」

 

 刀を構え、走りだす良太郎君。

 

『ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!?』

 

 二人の悲鳴に皆は心底同情していた。

 

「・・・私、良太郎君とだけは絶対に戦わない。そう決めたわ。」

 

 二人の神器。それも両者は神器の禁手化をつかっている。それなのに、ただ頑丈なだけの普通の刀を持った良太郎君一人に圧倒されているのだから仕方ないよ。

 

 本当に化け物だ。

 

 純粋な剣の腕と身体能力なら良太郎君が間違いなく一番だろう。

 

 洞察力と先読みが凄まじすぎるけど。特に先読み。

 

 フォースも加わって、もはや予知能力のレベルに・・・。

 

「・・・良太郎が本気見せるのならこっちもとっておきを見せてやる。」

 

 ゼノヴィアが剣を手に歩きだす。

 

「あなたまで、まだ何か持っていると言うの!?」

 

 その言葉に他の皆も戦慄する。

 

「そうか・・・あれを見せるのか?」

 

「ああ・・・。」

 

 そのとっておきが何か、僕は知っている。

 

「ぐっ・・・そんなのさせるわけないでしょう!!」

 

 三発の弾丸がゼノヴィアの上、右斜め下、そして後ろと放たれる。

 

 花威さんの仕業だろう。

 

 展開させたシャボン玉状の結界を使った歪曲。しかも、弾丸を巨大化、砲弾クラスにまで質量を増大させるおまけつきだ。

 

 一発位なら今のゼノヴィアでも斬り落とせる。

 

 でも三発同時は無理だろう。

 

 普通ならば・・・。

 

 その普通じゃない要素を今のゼノヴィアは会得してしまっている。

 

 三発の砲弾は同時に叩き斬られる。

 

 三つ同時に放たれた斬撃によって。

 

「・・・へっ?」

 

 なにが起きたか皆、理解が追いつかないだろう。

 

「良し・・・斬撃を三発だせるようになったか。」

 

「三発同時に斬撃を放つ?」

 

 ゼノヴィアに秘められた恐るべき才能。それがこれだ。

 

 それを発見したポルム君の驚き様が半端じゃなかった。

 

 師匠ですら「恐るべき魔剣。」と称する程に。

 

 ポルム君は多次元魔術だとか、第二魔法とか言っていたけど・・・。

 

「難しいことはない。たった三発同時に放てるだけだ。」

 

『いやいやいやいやいやいやいやいや!!』

 

 悲しい事にゼノヴィアは己がやらかしている事が人外の剣技だと全く自覚していない。

 

「さて・・・これで放ってやるぞ。私だけの・・・必殺剣を!!」

 

 それによりゼノヴィアが放つは・・・

 

「受けてみるがいい・・・三発の牙突!!」

 

 三発同時に放つ牙突。

 

 そして、師匠直伝の必殺剣。

 

「牙突連式・・・。」

 

 それに牙突を加えた異常な剣。防御も回避も不可能な絶技。

 

「無明三段突き!!」

 

 三発同時に、それも一点に向かって放たれた牙突。

 

 それが真羅さんの鏡を粉々に打ち砕く。

 

 その余波で花威さんと真羅さんが吹っ飛ぶ。

 

「そっ・・・そんな無茶苦茶な剣・・・反射できるわけないでしょう!!」

 

「あと訂正。四段突きになっていた。はははは・・・一段増えたぞ!!」

 

『!?』

 

 三段と言っておきながら四段突き!?

 

「どうやらもっと修行を積めば同時に放てる剣撃が増えそうだ。まだまだ強くなれる・・・。」

 

 全然自覚していないけど三発同時の時点でもう防御不可能だからね!!

 

 斬撃なら下手したら回避すら不可能になる。

 

 それでまだまだ増える余地がある辺り、剣士としてふざけているとしか思えない。

 

「・・・グレゴリ―眷属は化け物か!?なんなのその不可能技!?」

 

 いやいや・・・それだけで僕達まで巻き込まないでよ!!

 

 多分あの姉弟が可笑しいだけだから。

 

『・・・・・・・。』

 

 どうしたの?どうして良太郎君とゼノヴィアが一斉にこっちを?

 

 それもすごいジト目で。

 

「ならお前のあの剣を見せてみろ。」

 

「裕斗君も大概だとみんな思うから。」

 

 すごく失礼なコメントだった。

 

「・・・・・・二人に比べたら大した剣じゃないよ。」

 

 僕は剣を振るう。

 

 放たれるのは幻魔剣。

 

「フン・・・その程度の衝撃・・・波・・・!?」

 

 驚いてくれたようだね。

 

 一度にしかも別方向から放たれたことに。

 

「異世界には面白い剣がある。隼の剣というのがね。」

 

 僕は修行しながらポルムからあらゆる世界の不思議な力を宿した剣を見せてもらっていた。

 

 その一つがこの隼の剣。

 

 この要素をこっちは解析と言う魔術を習得し、それを使って把握。剣の糧としたのだ。

 

 投影と言うのに近いらしく・・・それを覚えてみたら・・・。

 

「こんな風に・・・。」

 

 僕の周りに無数の剣が一度に多数現れる。

 

 剣を作る時の消費が恐ろしいほどまでに減った。

 

「そして、僕は二刀流を鍛え、逆手二刀流のある必殺技も会得した。」

 

 僕に向かって一斉に襲いかかってくる仮面人形達。

 

 それを僕はかわす。

 

 ゆっくりとした動きで。

 

「攻撃が・・・当たらない!?」

 

 まるで舞う様にゆっくりと動く。

 

「その動き・・・流れる水のごとく。とある隠密の頭の技さ。」

 

 この域に達するのに相当苦労した。

 

 そこからは僕は回転し・・・逆手による高速三連撃を放つ。

 

――――――回転剣舞!!

 

 それもただの三発じゃない。

 

 幻魔剣を付加した三連発の衝撃波。

 

 それを辛うじて花威さんの結界が阻もうとするけど、関係なしに切り裂く。

 

「さて・・・これを二刀流、しかもアバンストラッシュも加えてで放つ。使う剣は隼の剣。そして・・・。」

 

 僕のもう一つの剣技。

 

 それは・・・。

 

 作り出したナイフを近くの物体に投げる。刺さると・・・。

 

 十七に分割・・・。

 

『えぇぇぇぇぇぇ!?』

 

「・・・目に魔力を込めると変な物が見えるんだ。あちらこちらに変な紅い線が・・・。」

 

 その際目は蒼く輝くらしい。

 

 ポルムがそれを見た時。ゼノヴィアの時と同じくらいに戦慄していた。

 

 将来、とんでもない怪物になると。

 

 目に魔力を込めないと出来ないのは、ポルム曰く、リミッタ―らしい。

 

 彼は言っていた。

 

 この眼はあらゆる物に死を与える魔眼だと。

 

「この目を併用させて放つ必殺剣・・・。」

 

 はじめて放つ。今僕が習得したすべての技を合わせた必殺剣。

 

「何か分からないけど止めなさい!!あなたが今から放とうとする技はすごく嫌な予感が・・・。」

 

 部長が言い終わる前に僕は放つ。

 

 アバンストラッシュ、幻魔剣、隼の剣 回転剣舞 そして・・・直死の魔眼。

 

 これらをすべて同時に組み合わせて放つ・・・。

 

「ダースウィングスラッシュだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 周囲に無数の衝撃波をまき散らす僕の秘剣。

 

 必殺の十二連撃。

 

 その刃は周囲に見える赤い線を一つ一つ捉えて切断していく。

 

 その結果・・・。

 

 

 

SIDE アザゼル

 

 俺達は信じられない物を見ている。

 

 それは切断され、崩壊してくショッピングモール。

 

『・・・・・・・・。』

 

 目を点にしているのは俺だけじゃない。他の皆も一緒だ。

 

 佑斗の奴・・・なんて技を・・・。

 

 純粋な剣技でショッピングモールを崩壊させるか。

 

「やっぱり禁じ手にしてよかった。今回は試しに一発だけ許可したけど・・・まさかこれほどとは・・・。」

 

 あいつの師匠である沖田総氏はやれやれとため息をついている。

 

「あれは神すら殺す禁断の剣。みなさん・・・神殺しの騎士の誕生ですよ。」

 

『・・・・・。』

 

 この時から裕斗は神すら殺す騎士として、その名が世界中に轟くことになる。

 

 後悔はすでに遅いのは分かっている。だが、思わずにはいられなかった。

 

 俺・・・・・・とんでもない連中を育て上げてしまったんじゃねえのか?

 

 それこそ後世に間違いなく名を上げる様なとんでもない化け物どもを・・・。

 

 共犯であるポルムも目を丸くしている。

 

「おい・・・。」

 

 我に返ったのかポルムは頭痛そうな表情で応える。

 

「ごめん・・・流石にあれはこちらの想定を遥かに超えている。ここまでのレベルになるなんて・・・。特にフォースを加え、予知能力と言っていいレベルになった飛天御剣流に第二魔法、そして、あの魔眼が・・・。あれは僕ですら殺される。」

 

「それでこそ我が好敵手。それくらい出ないとむしろつまらない。」

 

 隣でにやりと笑うアーサー。あれみてそのようなリアクションってことはこいつも大概ってことかい。

 

「・・・グレモリ―眷属はアギトがいる。そして、そのアギトが一番の脅威としていた。それは今でも間違いだろう。」

 

 俺は悟る。

 

「だが・・・すまねえ。俺のせいで他の連中も大概なレベルにしちまった。これほどまでに化けるなんて想像もしなかった!!」

 

 間違いなく俺の名も後世に残るな。こいつらを育て上げた男として。

 

 俺の育成論も相当なレベルだぜ・・・はははははは・・・はあ。

 

「はっ・・・はは・・・。」

 

 サーゼクスの奴、乾いた笑い声しか出ていねえな。

 

「・・・この連中をどのように制限かけるべきか・・・悩ましいものだ。せっかくだから皆も相談に乗ってくれないかい?まだ引き出しもありそうだし。あのような・・・。」

 

 アジュカの奴が画面を指す。

 

 それを見た俺達はもう・・・驚きすら通り越してあきれ果てた。

 

「もう・・・いい加減にしてくれ。」

 

 驚くことに疲れてきた。

 

 

 

 SIDE 椿姫

 

 まさかのエリア崩壊に私達は慌てていた。

 

 でも・・・。

 

「みなさん!!」

 

 花威さんがとっさに結界を展開。私達を守ってくれた。

 

 ソーナを庇えなかったけど・・・まあ大丈夫でしょ。

 

 現にあそこに凍てついたエリアがあります。

 

「・・・ゲームとしてもう成り立たないです。」

 

「ぐうの音もでないわ。」

 

 リアスさんは・・・素で平気だった。

 

 他の皆はぐずれた瓦礫の下から次々と出てきた。

 

 朱乃さんなんか・・・。

 

「やれやれですわねえ。こんなことでウィッチタイムを使う事になるなんて。」

 

 服すら汚れていないってどんだけ!?結界の類を使った形跡がないのに・・・。

 

 うん・・・みんな大概ですね。特にグレモリ―眷属一同は結界など一切使用せずにぴんぴんしていたのだ。

 

「あれ?肝心の彼は!?」

 

 大崩壊をやらかした佑斗君はいつの間にか上空にいた。

 

 手には槍。そしてその身体にマントみたいな物が纏っていた。

 

「まっ・・・まさか。」

 

 私はそれをデータで知っている。

 

 それは仮面ライダ―ナイトのファイナルベント「飛翔斬」

 

 でも・・・ファイナルベントカードは使っていないのに!?

 

「そんな・・・ファイナルベントを・・・。」

 

 嫌な予感がした。

 

「はああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 槍を下に向け、高速回転しながらこっちに突っ込んでくる!?

 

 マントが身体を覆い、まるで黒いドリルのようになるところまで!!

 

 まさかとは思っていたけど・・・

 

 ファイナルベントを自力で再現したというの!?

 

「この余に及んでまだ!!?」

 

「そんな手札を!?」

 

「破壊力は本家に劣るはず!!皆防御に集中!!」

 

「もう二度と戦くないぞ!!グレモリ―眷属とは!!」

 

 花威さんと草下さん、巡さんに由良さんがとっさに前に出て各々の神器で防御。私も鏡を展開させるが・・・。

 

 その防御を簡単に破って私達四人を弾き飛ばす。

 

「きゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁ!?」

 

 地面に着弾した衝撃で辺りが大きく揺れた。

 

 ひび割れた地面から槍を手放し立ち上がる佑斗。黒いマントがゆらゆらと揺らめく。

 

「あっ・・・ああ・・・。」

 

 勝てるわけが無い。

 

 ファイナルベントを、自力で再現させてくる相手に・・・。

 

 確かにファイナルベントは禁止されている。だが、それを自力で再現してはいけないとはどこにも書いていない。あのマントもガードベントではない。槍もそうだ。

 

 自力で生み出した物だ。どのようにして魔剣創成でマントも創成できたのか分からないけど。

 

 だが、間違いなく破壊力は本家に迫る者がある。

 

 私達五人の全力の防御を簡単に打ち破ったのだからそれは間違いないだろう。

 

 倒れた四人の周りが剣で囲まれる。

 

「・・・身体がうごかせない。」

 

「そもそも、さっきのダメ―ジが・・・。」

 

「良太郎君の言葉の意味が・・・よくわかった。」

 

「非常に嫌な意味で・・・こっちも大概だ。」

 

 あの姉弟がいうことに私も納得していた。

 

 むしろ破壊力ならこのメンバーで最強じゃないかと。

 

 私も剣を首筋に・・・。

 

「チェックメイト・・・ですね。」

 

 爽やかな笑みで降参を進める裕斗君。

 

 戦神の様な強さを発揮したのと思えない爽やかであどけない笑み。

 

「あっ・・・。」

 

 心臓が高鳴る。

 

 一体これって何?

 

「・・・ごめんソーナ。」

 

 降参するしかなかった。私の方はもう手札も尽きた。

 

 それになんか・・・負けてしまった。心がそう言っている。

 

「・・・はあ。」

 

 ソーナは手を挙げる。

 

「今回は私達の負けです。これ以上は戦う意味すらない。」

 

 それはリサイン。

 

「すぐに直しますね。ほいと!!」

 

 アーシアちゃんがそう言うと・・・瞬く間に崩壊したショッピングモールが直る。

 それも新品同様に。

 

『・・・・・・・。』

 

 本当に規格外だ。

 

 これで私達の初めてのゲームは終わった。

 

―――――グレモリ―眷族・・反則負け

 

 なぜか私たちの反則負けと言う形で。

 

「えっ?」

 

 

――――兵藤 一誠

 

――― 匙 元司郎

 

――― 仁藤 攻介

 

―――――リタイア・・・。

 

『・・・あれ?』

 

 そして、その直後にリタイアをした三人という謎を残して・・・。

 

 




 この三人は変身しないでこの破壊力です。

 制限を外し、本来んパワー、本来の武器で放った時の破壊力はいまだこっちも想像できていません。


 本当にレーディングゲームでどのように制限かけようか真剣に悩んでおりす。

 もう一話だけ投稿します。

 8月30日一部内容修正


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エピローグ 終わりは始まり。

 ようやく五巻の話が終わります。

 時間かかりすぎたと思います・・・。

 では短いですがエピローグ・・・どうぞ!!

 5/30 ゲームの結果について加筆修正。


 


SIDE イッセ―。

 

「祐斗・・・。」

 

「本当に申し訳ない。」

 

 ベットで寝かされた俺達は祐斗の土下座を受けていた。

 

 俺達がリタイアした理由。

 

 それは先ほどの崩落のせいだった。

 

 

 

 戦闘に専念していたら、俺の脚が止まった。

 

 俺の本能が告げたのだ。

 

 とてつもなく・・・本当にとてつもなくヤバいなにかが起こると。

 

「どっ・・・どうした?」

 

「二人とも!!逃げろ!!」

 

『へっ!?』

 

 突然天井が崩落したのだ。

 

 そして俺は・・・。

 

「・・・へっ・・・兵藤!?」

 

「二人とも・・・何とか生きているみたいだな・・・。」

 

 倒れた二人を庇うように一人で瓦礫すべてを支えていた。

 

 我ながら・・・お人好しもすぎるぜ・・・。

 

「お前・・・どうして?」

 

「こんなつまんないトラブルで勝負を無意味にしたくねえ。それに、お前らはいい奴らだ。こんなところで死なせたくねえ。そう思ったら身体が勝手に・・・な。」

 

 だが、どうしようか?とっさに倍化で強化した力を使って支えているが、支えるのが精一杯だ。

 

「ぐっ・・・。」

 

 瓦礫は予想以上に重く、俺もそれほど持ちそうにない。

 

「二人共逃げろ・・・。」

 

 それを見た匙が立ち上がり、

 

「ぐっ・・・・。」

 

 唇をかみしめ・・・。

 

「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!」

 

 俺と一緒に瓦礫を支えにかかったのだ。

 

「おっ・・・おい!?」

 

「なら俺も!!」

 

 匙だけじゃない。仁藤の奴まで・・・。

 

「なんで?お前ら・・・。」

 

 俺が怒鳴ろうとするが・・・。

 

「そんな格好悪いこと・・・できるかよ。」

 

 匙がこっちを見て笑ったので怒鳴れなかった。

 

 女なら間違いなく惚れる程のたくましい笑みだった。

 

「せっかくの二度目の人生。後悔なく生きたいからな!!」

 

 仁藤も笑う。

 

「それに・・・お前みたいなお人好しの神様。俺は大歓迎だ!!」

 

「そんないい神様を死なせるわけにはいかねえ。死なせねえっていうのは・・・こっちのセリフってことだ!!」

 

「・・・ぐっ・・・お前ら・・・。」

 

 俺は涙ぐんだね。2人の熱い心に。

 

「この戦いが終わったら・・・一緒に遊びに行こうぜ。お前らはもう・・・ダチだ!!」

 

「ああ!!認めてやる。これだけ色々とやってダチじゃなかったらむしろ可笑しい!!」

 

「終わったら遊び倒すぜ!!」

 

 そうして友情を育んだ。

 

 こいつらとはもう永い付き合いになりそうだ。

 

 その付き合いの長さに予感し、悪くないと俺は思いながらいう。

 

「今から瞬時の倍化を使い、その力をお前らに譲渡する!!一気に押し返して切り抜けるぞ!!」

 

「上等!!」

 

「いつでもいいぜ!!」

 

 テンションも最大級まであげる。

 

――BOOST!!

 

 そうして倍化し始めた時だった。

 

 また嫌な予感がした。

 

 突然上から凄まじい衝撃。

 

『へっ?』

 

 それと共に瓦礫が一気に押し寄せて・・・。

 

『うあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 俺達は生き埋めになったのだ。

 

 

 

 みんなは気付いていると思うけど、崩落の原因は祐斗のダースウィングスラッシュ。

 

 最後のだめ押しは飛翔斬。

 

 その結果反則負け。

 

 すべて・・・祐斗のせいということだ!!

 

「お兄ちゃん・・・何私のイッセ―を生き埋めにしようとしてくれたのかしら?」

 

 微笑みながらユウナが祐斗を問い詰める。

 

 でも、例のごとくすげえ怖い!!

 

「お仕置きのためにあの子を呼ぼうかしら?」

 

 ユウナの背中から蝶や蛾のような翼が生える。目もらんらんと輝いているぞ?

 

「祐斗さん?」

 

「祐斗君?」

 

「ふふふふふふふ・・・祐斗。」

 

 リアス部長も笑っている。もちろん目は笑っていないけど!!

 

「ほんとうにごめんなさい!!」

 

 ・・・やらかしてくれたぜ。

 

 ついでになると試合は結局無効になった。

 

 ソーナ会長のリサインも反則負け判定もそうだが、こっちがやらかしすぎたからだ。

 

 破壊しても直せば問題ない。

 

 それで破壊力制限の意味がなくなってしまうなど運営側も想定しなかったらしく、色々と議論を重ね。無効となった。

 

 まあ・・・

 

『ガタガタガタガタガタガタガタ。」

 

 一部シトリー眷属の中にぬぐい難い心の傷を負った者がいたり・・・。

 

「ぽ~///。」

 

 なんやら恋の予感がする奴もいるし。

 

 試合そのものは無効とはいえアピールはできた。

 

 シトリー眷属の評価は極めて高まったのがいい証拠だろう。

 

 そして、こっちはどのようにルールで縛ればいいのか運営が悩む始末。

 

 評価としてはルールブレイカーという素晴らしいような、不名誉のような微妙な評価だ・・・。 

 

 結果として戦って得したのはソーナ会長達だろう。

 

 怪物達と互角に渡り合った勇者達として。

 

「まあもう良いって。怪我その物はすぐに治るし・・・。」

 

 俺たちはいい加減祐斗を許すことにする。

 

「はい。」

 

 ベットで寝ていたのは極度の疲労のためであった。怪我はもうすっかり回復している。

 

「アーシアちゃん・・・半端ねえな。」

 

「おう・・・。」

 

 匙や仁藤が驚くほどの一瞬だった。一瞬で怪我は完治。

 

 あとは回復呪文などで体力を回復すれば問題ない。

 

 体力回復・・・ホイミはこういう時に便利だ。倍化させればベホマズンクラスにまでできるし。

 

 魔法の倍化・・・いずれは極大化を目指して・・・。

 

「・・・そうだ。お前・・・。」

 

 俺は拳を差し出す。

 

「?」

 

「なるほど・・・。」

 

 仁藤は何か分かった様子。

 

 二人の拳に俺の拳を上下にぶつけ、最後に真っ直ぐぶつけて、握手。

 

 それは友達の証。

 

「これでダチだな。」

 

「・・・!?ああ!!そういうことか。」

 

 匙の奴も思い出したらしい。弦太郎のあれを。

 

「おっ・・・お前らやっているな!!」

 

「いい戦いだったぞ。」

 

 俺達の幼馴染達もやってくる。

 

「それとビックニュースだ。」

 

 新が笑う。

 

「俺も二学期からそっちに通う事になった。よろしく!!じっちゃんから交流も兼ねて頼んだら採用された!!護衛がつくけど・・・」

 

 新が・・・転校してくる?

 

「ついでだが、俺とイリナもだ!!」

 

「ふふふ皆と一緒の学校!!三人ともクラスも一緒なんだよ!!」

 

 まじかよ!!それって嬉しいな!!

 

「段々あの時のメンツが揃ってきたな。この様子だと他の面々との再会も近そうだぜ!!」

 

 俺には絶対に再会の才がある。その才能にすごく感謝だ!!

 

 俺は思わずサムズアップをする。

 

 ゆーすけ兄さんから教えてもらったもの。

 

 それはあの時の連中は全員知っている。

 

 現に新も、弦太郎も、イリナもやっている。

 

 だってゆーすけ兄さんは本物のヒーローだから。

 

 その戦いを俺達は見て、憧れ、そして知った。

 

 痛みに耐え、怒りを堪え、それを超えた偉大な人だと。

 

 あの人もまた仮面ライダ―だからだ。先輩達に是非紹介・・・いや、先輩達はもう知っていると思うか。

 

『・・・・・・。』

 

 一方、他の面々の表情がかたまる。

 

「また・・・イッセ―の幼馴染が・・・学校に・・・。」

 

「学校に次々と集結していく件について、相談したいのですがいいですか?一人確定している者がいて。」

 

「ええ・・・じっくり相談しましょう。」

 

 部長と会長が揃ってため息をついていますけど・・・。

 

 

 

 そんな騒ぎの中、俺は黒歌と鋼兄が二人でその場を離れるのを見た。

 

 

 そして見たのだ。

 

「鋼チン・・・驚かないできいてくれるかにゃ?」

 

 黒歌が重大な告白をしている場面に。

 

「・・・子供・・・だと?」

 

「うん・・・。」

 

 俺は目を点にしていた。子供ですと?鋼兄の?

 

「そっ・・・その・・・念願の子供なんだけど・・・。」

 

 固まったままの鋼兄。

 

 だが・・・。

 

「そうか・・・。」

 

 その固まった表情が溶ける。それは喜びだった。

 

「産んでくれるのか?」

 

「私はそうしたい。だって・・・。」

 

 黒歌ははっきりと言う。

 

「鋼ちんと愛し合って出来た子だにゃん。大切な・・・私達の子供だから。」

 

「ああ・・・。嬉しいよ。」

 

 後は言葉にせず、鋼兄は黒歌を抱きしめていた。

 

「・・・しかし困ったな。夫婦とはいえ・・・予想外に早く子が出来てしまった。せっかくの高校が・・・。」

 

「産休くらいは取れるにゃ。リアスっちにも頼んでそのあたりを相談・・・。」

 

「ええ・・・相談に乗ってあげるわよ。」

 

 話を聞いていたのか部長が微笑んでいた。

 

「おめでとう・・・といいたいけど、はあ・・・だから倒れたのね?」

 

「面目ないにゃ。」

 

 他の面々も笑っていたり、驚いていたりしていた。

 

 まあ・・・。

 

「鋼兄・・・父親になるのか?」

 

「ああ。まあ・・・。」

 

 すごくたくましい笑みでいったよ。

 

「思っていたよりも早く出来てしまっただけだ。まだ実感はわかないのが正直なところだが、養うこともできる。準備はしていたよ。」

 

 と言っていた。

 

 リア充爆発しろ・・・などとは言わない。

 

「・・・それなら言わせてくれ。」

 

 俺は言ってやる。

 

「おめでとう。」

 

 と、心からの祝福を。

 

「俺からも祝福させてくれ。」

 

 ヴァ―リの奴も祝福していた。

 

「すばらしいです。おめでとうございます。」

 

 アーシアも微笑む。

 

「まっ・・・何かあったら言え。片手間ついででよければ力になってやる。」

 

 ネロも少し意地悪そうに笑う。

 

 それと共に・・・。

 

「にゃ?にゃみゃにゃ!?お腹が光って・・・。」

 

 黒歌のお腹が光る。

 

 浮かび上がるのは四つのアギトの紋章。

 

「えっと・・・これって・・・。」

 

 俺達はやらかしてしまった。

 

 これから生まれてくる鋼兄と黒歌の子供。

 

 それに・・・三人のアギトと一人のギルスからの祝福を送ってしまったことに。

 

「やれやれ・・・。ある意味最高の贈り物だよ。」

 

「これって・・・悪影響はにゃいよね?」

 

「私達の娘と言う事例があるから問題はないわ。」

 

 クレアが現れその娘達を見せる。

 

「むしろいいことじゃないの?どんな特典がつくのかわからないけど。」

 

 その結果。この子供にあるとんでもない特典がつくことになろうとはこの時俺達はだれもしらなかった。

 

 

 

 

 そんなハプニングがありながら、俺達は電車に乗っている。

 

「ふあ~・・・。」

 

 あまりに充実しすぎた夏休み。

 

 多くの再会と絆をえて、俺達はさらに強くなった。

 

「えっと・・・うん・・・あとはこの体型を維持してくださいね。」

 

 電車の中でヒナさんがキリエさんの採寸を終え、色々と考え込んでいる。

 

「ウエディングドレス・・・初めてだけど、頑張らせていただきます。お題は・・・まあ四大天使と五大魔王、そしてグレゴリの皆さまから頂いていますし。もうデザインはできています。」

 

「・・・二年後ですが、着るのがすごく恐れ多くなってきましたね。」

 

 無駄に豪華な面々からの要請でヒナさんが二年もかけてキリエさんのウェディングドレスを作ることになってしまった。

 

「あのヒナさんに作ってもらえるなんてすごく光栄じゃないですか!!」

 

「そうなのですか?」

 

 ヒナさん。すごく有名だったことにびっくりだ。

 

 一方。

 

「にゃふ・・・うん。食べ物の好みってかわるもんにゃね。」

 

「そういうものですか?」

 

「ある意味、私達のなかで一番進んでいますからねえ。」

 

 黒歌の身体を気遣う小猫ちゃん。

 

 朱乃さんは興味深そうに見守っている。確かに恋人になり、夫婦となり、そして子持ち。

 

 俺達の中で最先端のお二人。

 

「母になると・・・見えてくる者がある。」

 

「同じく・・・少しずつ実感もわいてきた。」

 

 鋼兄もさらに貫禄が出てきたし・・・。

 

「父親・・・か。」

 

 それを見て先生が何故か遠い眼。

 

 邪悪なラスボス先生ではなくまるで・・・。

 

「ふっ・・・。」

 

 永く生きると本当に色々あるのだろうか。だが・・・その表情はすごく悲しげに、そして・・・。

 

「巧の時は・・・しっかりと見守ってやらねえとな。ひ孫になっちまうが。」

 

「?」

 

 いろいろな想いを乗せて俺達は冥界から帰っていく。

 

 

 そして・・・冥界から帰って来て意外すぎる再会が待ち受けていた。

 

 

 いたのは部長と同じ新人悪魔・・・ディオドラ・アスタロトだった。

 

 そのままアーシアに向けてプロポーズをして来たのだが・・・。

 

 アーシアは顔を青ざめてそれを拒否していた。

 

「・・・なんでだい?」

 

「あなたの心に聞いてください。私には心に決めた人もいます。」

 

 はっきりと拒否する。

 

 その心に決めた人って・・・。

 

「・・・しかし、アーシアがどういう立場にいるのか分かっていてプロポーズしているのかしらね?私の眷属の以前に・・・。」

 

 部長もただあきれていた。

 

 今のアーシアはアギトであり、この世界の女神となる存在。

 

「反省しないのなら・・・こっちだって考えがあります。あなたのことはすべてお見通しです。悔いるのならまだ間に合います。」

 

 しつこい彼に、アーシアの背後から現れるマザーズロザリオ。

 

 後に判明したのだが、スタンドと呼ばれる能力らしい。

 

 その姿が変わろうとしていた。

 

「それでも反省しないのなら。あなたに本当の意味で反省を促すために・・・。」

 

「へっ?」

 

 反省のための力?

 

―――――あの力を使うのですか?レクイエムを・・・。

 

「・・・出来れば使いたくありませんが・・・。このを改心させるためには・・・。」

 

 スタンドがひとりでに喋る。

 

「あれは本当の意味で反省をするための力。でも・・・残酷な力でもあります。出来ればそうせずに改心してほしい・・・。」

 

「かっ・・・改心って・・・。」

 

 アーシアが一体何を感じ取ったのか分からない。ただスタンドは防衛本能と連動しているらしく、それが勝手に反応するだけの何かをあいつは持っている。

 

「・・・・・・・。」

 

 極めて危険な何かを・・・。

 

「諦めないから・・・必ず僕の物に・・・。」

 

 だが・・・問題はそいつじゃない。

 

「・・・やっと見つけた。」

 

 駅のホームにもう一人やってきたのだ。

 

「・・・あれ?」

 

 その人に俺は非常に見覚えがあった。

 

 予感その物はしていたんだ。

 

 だが、まさか・・・。

 

「ゆーすけ兄さん?」

 

 それは俺達の幼馴染。俺と弦太郎、イリナ、新達の面倒を見てくれた優しいお兄さん。

 

 その名は五代雄介

 

 通称ゆーすけ兄さん。

 

「久しぶりだね。」

 

 誰よりも笑顔が似合うお兄さん。そして・・・。

 

 誰よりも痛みに耐え、怒りを抑え、影で戦ってきた俺達がヒーローと認めるすごい人。

 

 戦いを終え、心を癒すために旅に出ていたと聞いている。

 

「あの・・・アーシアって子は・・・。」

 

 そのゆーすけ兄さんもまたアーシアに用事があるらしい。

 

「先約がある。人間風情が邪魔を・・・。」

 

 だがそこまで言いかけて彼の姿が消える。

 

 強制転移、アーシアのスタンドがそれをやらかしたのだ。

 

「やっと見つけた。」

 

 アーシアが目を丸くしてゆーすけ兄さんを見ている。

 

「嘘・・・ですよね?あなたが・・・私の・・・。」

 

 アーシアはその心を呼んで激しく動揺している。でも・・・。

 

「やっと見つけた。世界中あちこち探してやっと・・・やっと・・・。」

 

 ゆーすけ兄さんは涙目になりながらアーシアに駆け寄って抱きしめる。

 

「俺の・・・妹よ・・・。」

 

『えっ!?』

 

「・・・・・・。」

 

 まさかの展開に皆呆けている。

 

 今、なんといいました?

 

 アーシアのことをゆーすけ兄さんが妹といった?

 

「お兄・・・ちゃん・・・お兄ちゃん・・・なの?」

 

 アーシアもそう言っていますし!!

 

『ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?』

 

 仮面ライダ―クウガでもあるゆーすけ兄さんの妹?

 

 アーシアが!?

 

「・・・夏休みの最後にとんでもないオチが・・・。まさかあのクウガなの!?あのクウガの妹なの!?しかもきっちりとクウガとイッセ―達が幼馴染だなんて!!」

 

 部長が頭を抱えている。

 

「もうこれで私達全員が過去にイッセ―君と関係あると確定しましたね。はははは・・・イッセ―君の出会いの才能が恐ろしくなってきましたわ。」

 

 朱乃さんがそう言うし・・・。

 

・・・・・・・・。

 

 ・・・・・・あれ?

 

 朱乃さんが全員っていったよね?

 

 それって・・・。

 

「・・・あっ・・・あのクウガの妹だと!?そんな馬鹿なことが・・・。」

 

 慌てて戻ってきたディオドラが驚愕していた。

 

 後にクウガの名は表の世界だけでなく裏の世界でも有名だと知る。

 

 勇者の名として。

 

 こうして俺達のすごく内容の濃い夏休みが終わる。

 

 だが、終わりは始まり。

 

 俺達の波乱はまだまだここからのようだった。

 




 最後の最後で追加の幼馴染の登場。

 しかも…アーシアのお兄三という設定つきです。

 アーシアがアマダムを得たのはこういったフラグがあったからです。


 二人とも聖なる泉がだれよりも似合うと思いましたし・・・。


 今回の更新はここまで


 次から六巻の話に入ります。では…また会いましょう!!


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第六章 体育館裏のホーリー編
始まりはいつも突然に


 大変お待たせしました。

 一話だけですが、更新です!!

 予告もしませんでしたけど小説版仮面ライダーウィザードを踏まえて、ある方が電撃参戦です。


 


SIDE イッセ―

 

新学期が始まり・・・。

 

「覚悟はしていたぜ。」

 

「もう驚くことはない。」

 

と、元浜と松田の言葉にクラス中が頷きやがった!!

 

『どうせまたイッセ―関連だろ!?この転校生は!!』

 

 やってきた三人の転校生。

 

 それはイリナ、弦太郎 そして新だ。

 

 当然・・・俺の幼馴染。

 

「むしろ二学期スタートで転校生ネタが無い方が可笑しいと思う。」

 

 まっ・・・まあ・・・な。

 

 皆全然驚いていない。

 

 むしろ当たり前とすら思っていやがる。

 

「このクラスは面白そうだぜ!!」

 

「ええ・・・。」

 

「はあ・・・こりゃまた濃い所に転校してきたもんだ。」

 

 俺のクラスに三人はすぐになじみそうだ。

 

「だが・・・流石に想定外があったのは・・・黒歌のことだ!!」

 

「妊娠ってまじかよ・・・。」

 

「にゃははははは・・・。」

 

 だが、さすがに黒歌の妊娠は想定外だったらしい。

 

「でも、きちんと学校は卒業させる。子持ちになるが・・・。」

 

「・・・鋼鬼さん・・・あんたすげえよ。」

 

「もう子供の事を受け入れ、育てるつもりでいるし・・・。」

 

 俺の悪友共は尊敬を隠せない。ある意味エロの先にある事をだからな。

 

 黒歌はちょうど三学期の終わり、三月頃に出産する予定らしい。

 

 学校はギリギリまで通う。それは決定している。

 

 先生達の説得は・・・まあ、この学校のオーナー達のおかげで何とかなった。

 

 ただもう一つ問題が・・・。

 

「あともう一人、すごい用務員さんが入ったね。」

 

 二学期になると同時に2人目の用務員さんがやってきた。

 

 その名はゆーすけ兄さん。

 

 そう・・・。

 

「しかも私の実の兄ちゃんです~。」

 

 アーシアの実の兄と言うとんでもない事実が発覚した俺の幼馴染です。

 

 

 

 

 冥界から帰還した後、俺達はゆーすけ兄さんから話を聞いていた。

 

 両親と妹が飛行機事故で亡くなったが、アーシアだけ実は奇跡的に無傷だったということ。

 

 それを知ったのはつい最近で、ずっと探していたことをだ。

 

 その頃のアーシアは赤ん坊だったのでゆーすけ兄さんのことははっきりと覚えていないのだが・・・。

 

 アーシア曰く。

 

――――間違いなく・・・私と血を分けたお兄ちゃんです。

 

 とのこと。

 

 アーシアのアギトとしての直感。そしてそこからのDNA検査もあり・・・確定した。

 

 2人が兄妹だと。

 

 クウガ。こちら側の世界でも勇者として有名な存在。

 

 その正体を僕達は知っている。

 

 そして・・・。

 

「・・・ハハハハハハ・・・アーハハハハ・・・。」

 

 ウチの部長が壊れた。

 

 いや、もう何度壊れたのか数えきれないくらい。

 

 この壊れた笑いですら日常になっている。

 

「なんでうちの眷属はどいつもこいつもイッセ―繋がりなの・・・。」

 

 俺の幼馴染関連ばかりのグレモリ―眷属達。

 

 みなが一斉に部室に集まる。

 

「久しぶりだぜ!!」

 

「弦太郎君も大きくなって・・・イリナちゃん、新君も・・・。」

 

 転校してきた三人とも交流。

 

「・・・世間ってどうしてこんなに狭いのかしらね。」

 

「あらあら・・・。」

 

「イッセ―よお。」

 

 そこでネロが確認をしてくる。

 

「確認が正しければ・・・少なくともあと三人いるよな?」

 

 ネロには弦太郎達以外の幼馴染の事は話してある。

 

 鉱太に誠・・・最後にイリヤか。

 

「安心して・・・誠君ことはすでに調べは付いたから。」

 

 情報通の渡の奴がすごく憂鬱そうな顔で話し始める。

 

「結論から言うと・・・・彼は一般人だよ。」

 

『へっ?』

 

 むしろみなの期待を大きく裏切るような調査結果。

 

「一般人?嘘でしょ?」

 

 俺の幼馴染初の普通の人間。その事実に部長が特に信じられない様子だ。

 

「えぅ?だって、イッセ―の幼馴染は全員人外じゃないとおかしいわ!!」

 

 だから!!なんでそんな法則に・・・・・・ってごめん。

 

 俺から見ても確かにそうだわ。

 

―――アナタ、自分の事は棚にあげているでしょ?

 

 俺自身・・・まあ普通じゃないが。

 

「ただ・・・彼はあのインドラが保護者になっているけど。」

 

『・・・・・・・。』

 

 案の定、普通であるようで全然普通ではなかったりするのだが・・・。

 

 なんですか?なんでインド神話に関わっている。

 

「・・・ある意味安心したわ。そう・・・。でもイッセ―の幼馴染ってことはまだ他の要素があるはずよね?でないとあのインドラが保護者をやっているわけないもの。」

 

「・・・流石に鋭い。えっと・・・誠君はね。」

 

 誠の奴。自分でも気づいていない状態で変なことになっているな。

 

「三国志の劉備の子孫だって。」

 

『・・・・・・・・・。』

 

 へっ?三国志の劉備って・・・あの劉備!?

 

 その名を聞いたみなが驚いているぞ。

 

「なんでさっきの授業で出てきた奴が・・・。」

 

 しかも、歴史の授業で三国志のことをやったばかりだけにインパクトでか!!

 

 おかげで歴史に疎かったはずのネロまですごい衝撃を受けているぞ!!

 

 もちろん俺も弦太郎やイリナ、新も唖然としている。

 

 あいつも・・・とは思っていたけど。

 

「ああ・・・そうか。今度はそっちの方面できたのね。一般人って言葉にだまされたわ。ある意味安心も納得もしたけど!!」

 

 部長はため息をついている。想定外にも程があるからだ。

 

 英雄の子孫。

 

 三国志で数々の漫画の主人公になっているあの劉備の子孫?

 

 あの誠が?

 

「どんな力を秘めているのかは不明。でも、幸いだけど裏のことは一切知らない。その点は安心して。神器ももっていないし。」

 

「そうか・・・あいつは平穏に暮らしているのか。」

 

「うっ・・・うん。」

 

 渡は冷や汗を流してはいた。

 

 そのファイルに何やらとんでもない内容か書かれていそうだけど・・・。

 

「ちょっと見せて。」

 

「あっ・・・。」

 

 渡の隙をついて拝借。いや~相手の不意を突く動き。アギトの本能に感謝・・・。

 

 俺はそのファイルを見て・・・静かに閉じた。

 

「・・・・・・・・・。」

 

 俺は・・・見てはいけない物を見た気がする。

 

 黙って渡を見た。

 

「出来れば黙っていてあげて。」

 

「おっ・・・おう。」

 

 まっ・・・誠・・・。

 

 ファイルに書かれていたことはすごい涙目の特記事項だった。

 

 それは・・・。

 

 重度のトラブル巻き込まれ体質。

 

 一日一回は何かしらの重大事件に巻き込まれているという。

 

 裏の事は知らないか・・・。

 

 知らなくてもあいつ、すごく刺激的な毎日を送っているよな!!?絶対に!!

 

 ちなみに現在は・・・。

 

「・・・・・・。」

 

 テレビをつけるとある銀行に武装した男達が立てこもったとの速報が・・・。

 

 それに現在進行形で誠は・・・巻き込まれている!!

 

 人質の中に誠がいるというのだ!!そのファイルに其れが書かれている。

 

「知っているのなら、助けてやれよ!!」

 

 むしろそんな最新すぎる情報をファイルしている渡の情報網が恐ろしいわ!!

 

「そうしたかったけど・・・。迂闊に介入できなかった。それに介入する必要もないし。」

 

 ファイルに書かれた特記事項。その追記を見る。

 

 追記にはこう書かれている。

 

 あまりにトラブルに巻き込まれすぎて、そのトラブルの対処になれていると。

 

 しかも、その友達にある刑事が・・・。

 

「統計データによるなら平均三十分後には終わらせるから。誠君とその友達のある刑事がね・・・。」

 

 渡の予言通り・・・三十分後、

 

 犯人達は涙ながらに武装解除し、自首してきたという。

 

 ある少年に説得されたと。

 

 その少年は・・・。

 

――――ちょっとお前らの黒幕、ぶん殴ってくる。

 

 と言って銀行から姿を消したと言う。

 

 一時間後・・・ある少年の通報で黒幕が発見され逮捕。

 

 その黒幕は強烈なストレートを受けて伸びていたという。

 

 刑事達脱帽のスピード解決だった。

 

 誠・・・お前が刑事になるのは天職だと思うぜ?

 

 だが、あえて俺はこれを皆に言う事はしなかった。

 

 だって、あいつと再会するとき、ほぼ確実に何かしらの事件がらみってことになる。

 

「・・・この先も荒れそうだね。」

 

「そうだな。」

 

 アギトの予言で、あの時の幼馴染は近く集まる。

 

 だが、すごくドタバタ騒ぎの中の再会になりそうでならない。誠・・・お前どんだけたくましくなっているの?

 

「ただ・・・ごめん。イリヤさんと鉱太さんだけは分からなかった。」

 

 渡の情報網でも二人の事は途中までしか分からなかった。

 

 イリヤは十年前から行方不明ということ。

 

 謎の組織による拉致。そして・・・。

 

「改造手術・・・か。」

 

 それはネオ生命体と言う存在を作り出すためのプロトタイプとしてイリヤは拉致されたというのだ。

 

 改造後脱走・・・。雷に打たれ、そのまま姿を消したという。

 

 ほう・・・。そうかい。

 

 あいつがそれほど酷い目に・・・。

 

――――相棒・・・落ちつけ。

 

―――気持ちは分かるけど・・・。

 

――――でも放置していいわけでもない。

 

 ブランカの言うとおりだ。

 

その組織。そのままにしておけんな。

 

「渡・・・・・・。」

 

 その組織の事を教えてもらおうとしたけど・・・。

 

「安心して。その組織はもう潰しておいたから。」

 

 と渡が笑顔で言ってくる。

 

 えっと・・・もう潰した?

 

「調査の過程で、危険と分かったからね、巧君とネロ君にも協力してもらって三人でササッと片づけた。」

 

 ササッと・・・って。

 

「それが俺の仕事だ。」

 

「トライアル無双とだけいっておく。」

 

 なんだよ・・・。まあ、お前らがやってくれたのなら安心するぜ。

 

「だが・・・完成したと思われるネオ生命体はすでにいなかった。」

 

「うん。そしてイリヤさんの行方もね。」

 

「・・・・・・・・。」

 

 そう思うとどうしても心が暗くなる。

 

「鉱太さんは・・・あの街にいたよ。」

 

 それは二年前の大事件。

 

「よりによって・・・あの沢芽市にいたなんて・・・。そこから行方不明。」

 

 それは謎の植物による浸食。

 

 それにまきこまれた・・・か。でも生きているのならあいつはいったい・・・。

 

 俺の予言・・・本当に当たるのかしんじられなくなってきたぜ。

 

 

 SIDE 渡

 

「・・・・・。」

 

落ち込むイッセ―君。でも僕はあえて黙っていることがいくつもあった。

 

 その一つが鉱太君のことである。

 

鉱太君がその大事件の中心人物だったなんて・・・。

 

 浸食してきた植物・・・ヘルヘイムの森。その正体もユグドラシルに残っていたデータより僕はつかんでいた。

 

 その森による浸食。

 

 そして、新たな進化のための戦い。

 

 その戦いで彼は、森に選ばれた。

 

 進化の鍵である黄金の果実を食する資格を得ていたのだ。

 

それを食し、オーバーロードとなった彼は別の星にて、巫女となった少女と一緒に暮らしているところまでは掴んだよ・・・。

 

 うん・・・これは流石に彼の姉である椿姫副会長にも言えない。

 

 不毛の星で新たな命を育む、アダムとイブになっている状態って辺りが特に!!

 

「・・・・・・。」

 

―――渡さん。あの・・・すごいですね。

 

 テレパシーでアーシアちゃんが純粋に驚いている。

 

君に知られることはもう覚悟の上だよ。最近どんどん情報網を開拓出来て来て困っているくらいだ。

 

インド神話の裏事情位、十分もあれば分かるほどに。

 

 その情報で分かってしまった。

 

 他の連中がどうなっているのか。

 

 はっきり言ってみなまともな状態と考えられない。

 

 イリヤちゃんも改造後に脱走し、そのあと宇宙船らしきものと遭遇。そのまま拉致され、宇宙に連れてかれたという情報も掴んでいる。

 

 二人とも生きている可能性は極めて高いのだ。

 

 とんでもない人外として。

 

 止めは誠君。彼は彼で恐ろしい事がもう一つ判明している。

 

 彼はある刑事と歳の離れた親友。よくある事件に巻き込まれ、その事件解決に一役買っているらしい。

 

 その刑事の名前は・・・

 

「泊 進之助。」

 

 僕が刑事で、仮面ライダ―である事を掴んでいないわけがない!!

 

 すでに誠には専用のシフトカ―が開発されていることも。

 

 しかもあの泊さん・・・イッセ―君とも関わりがあることも判明している。

 

 そして、これは未確認の情報。

 

 いや、僕の予測だ。

 

 それが正しければあの人は転生者の可能性が高い。

 

 その理由は、彼の情報をイッセ―父こと翔一さんに見られた事があった時の反応だ。

 

 それはアザゼルさんの人造神器とファイズギアの知識、ハルト君の指輪やドライバー、フィリップさんのガイアメモリ―関連、そこにポルム君のあらゆる世界の技術の総力を結集させて再現してみようとしていたのだ。天界からもアストロスイッチにアンデットカードと呼ばれる技術まで提供。

 

 それを結集させた神器を超える新たな戦闘システムを作る初めての三勢力合同プロジェクト。その名は・・・G3プロジェクト。

 

 Gはギア。そして3は三勢力の3から取ったらしい。

 

 その名と計画のコンセプトに驚いた翔一さんがアザゼルさんに色々と聞いていた時に、僕がファイルを落としてしまい、それを見てしまったのだ。

 

「・・・・・・。」

 

 茫然自失。間抜けなまでに驚き、呆けていた翔一さん。

 

 あの最強のアギトが唖然としていたのだ。

 

「ヒッ・・・氷川・・・さん?」

 

 その言葉だけで大体察したよ。

 

「G3といい・・・これは運命なのかな?」

 

ふふふ・・・僕の情報網が段々恐ろしくなってきた。リアスさんが知るより前に、総て分かってしまったのだから。

 

 別の意味で僕は頭を抱えたい。

 

 こんな連中がもうすぐ全員集合なんだよ!?

 

 絶対何かしら大事件が起きているよね!?

 

「はあ・・・なら問題ないだろ。」

 

 いつの間にか会話に参加していた弦太郎君がいう。

 

「だって、イッセ―。お前がもう直ぐ、皆集結すると予言したんだぜ?ならあいつもどこかに生きて、そしてこっちに向かっていると言う事だろ?」

 

 そう・・・だったんね。

 

 二人とも生きているのは間違いない。でも宇宙から来る可能性が極めて高い。

 

「あいつのことだ。たくましく生きているはずだぜ?」

 

「うん・・・。」

 

 こういう時の弦太郎君には心が救われる。

 

 でも、問題が無い?

 

 御免だけどそこだけは否定させてもらう。

 

 問題・・・おおありだ!!あり過ぎて頭が痛いよ!!

 

 この問題だらけすぎる情報・・・出来れば隠しておきたい。

 

 あまり意味が無い事は分かっていても。

 

 

 

 SIDE イッセ―

 

 皆との再会を楽しみにしながら俺は家路についていた。

 

 新や弦太郎、イリナも一緒だ。

 

 その理由?

 

 ・・・一緒に住む事になったからに決まってんだろ!!

 

 他にも北欧神話と天界からそれぞれスタッフとしてやってくるみたいだ。

 

「元人間。ガブリエル様のエースよ!!」

 

 一人は転生天使。しかもイリナと同じエースらしい。

 

「しかも、自力で絶望から立ち直って指輪の魔法使いになった人よ!!」

 

「だから、天界からの指輪と武具の制作依頼ってわけか。こっちも忙しいよ。」

 

 ハルトは最近魔法使い達のために色々と作っており、G3プロジェクトも重なって、かなり忙しそうだ。

 

「その人は刑事でもあり、エクソシストでもあったのよ。まあ・・・ゲートとは想定外だったわ。絶望させたのは同僚の刑事に化けていたミノタウロスのファントムって話。逃げたけど。」

 

「・・・ミノタウロス?刑事?」

 

 ハルトの奴がそれを聞いて考え込む。

 

「・・・なんか聞いたことがあるような・・・。」

 

「・・・?」

 

 すごく考え込んでいるぞ?

 

「こっちは向うの幼馴染がな。」

 

 新のほうは友達がお目付け役としてくるらしい。

 

「ちなみに新人のヴァルキリ―だ。もう一人の姉でもある。妹分付きで。」

 

「戦い方は・・・うん。とにかく銃たくさん。リボンもあったし。」

 

 それって本当にヴァルキリ―なの!?

 

「なんっていうか・・・まあ、あこがれの人でもあるわけだ////。」

 

 ほう・・・これは面白い。

 

 新のあこがれの人か~。

 

 皆期待を込めて見ている。

 

 天使がもう一人に・・・戦乙女まで・・・。

 

 俺の家・・・どんどん人外魔境に・・・。

 

 だって剣崎さんもいるし、しまいには・・・ゆーすけ兄さんも住むことになったんだよ?

 

「・・・フッ・・・この家ならむしろ納得だわ。あの二人の懐の深さがよくわかるってもんよ!!」

 

 部長がなにやら悟りきった目で人外魔境となっていく我が家を見ている。

 

 どうして納得しているのさ!!

 

「だってねえ・・・このために増築したようなものだし。アーシアに感謝だわ。」

 

 アーシアの予言か・・・。

 

「!!!!」

 

 その家の前ではある人物がふっ飛ばされ転がってきている。

 

「ぐうう・・・。」

 

「アーシア様の心に決めた人はイッセ―殿ただ一人!!」

 

「早々に立ち去れ!!」

 

「オノレ・・・。」

 

 それはおそらくあのディオドラがつかわした男だろう。

 

 でも・・・。

 

 ゼ―ベス星人達がそれを門前払い。

 

「立ち去らぬなら・・・。」

 

「こっちにも考えがあるぞ!!」

 

 本来の姿に戻って激しく威嚇。

 

 その後ろからは・・・アーシアの契約していた子までいるぞ。

 

 あのメトロイドって呼ばれる謎生物が!!

 

―――アーシア母様に変なことするなら、お前らをミイラにしてやる。

 

「ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 それが止めとなり、使いの奴は逃げて行った。

 

 確かにゼ―ベス星人さん達の本来の姿ってちょっとしたホラーだ。

 

 メトロイドもそうだ。

 

 ちなみにあの子はテレパシーを身に付け、皆と話せるようになっていた。

 

 見た目によらずかなり高い知性を持っているみたいだ。

 

「あっ・・・アーシア様!!御帰りになりましたか。」

 

「皆様も御帰りなさい。」

 

―――みんな御帰り~。

 

「あっ・・・ああ・・・。」

 

 見た目、人間とは程遠いホラー的な姿をした宇宙人に愛想よく「御帰り」と言ってもらえる光景。

 

 それって、俺の家くらいだよね?

 

 すっかり日常になってしまった自分が怖くなってきた。

 

「本当にいい仕事しているわね。あなた達。」

 

 部長がゼ―ベス星人達を労おうとしていた時。

 

「うおお・・・おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 弦太郎が感激してその手を取っていた。

 

「ついに・・・ついに宇宙人と出会えたぜぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「本当だわ!!」

 

 あっ・・・そういえば・・・。

 

 あの二人にとっては念願の異星人とのファーストコンタクトだった!!

 

「あっ・・・あのアーシア様?この方達は・・・今日からここに住む人達ですよね?」

 

「はい♪」

 

 あまりの勢いに戸惑うゼ―ベス星人。確か・・・ガブさんでしたよね?

 

 意外とお淑やかな女性の声だったよね?

 

そういった感じで、沢山いるゼ―ベス星人達の個々の違いが分かるようになってきたぜ。

 

「頼みがある!!俺と友達になってくれ!!」

 

「ども・・・だち?」

 

 その言葉に目を丸くするガブさん。その片方はミカさんでしたよね?

 

「えっと・・・済まないが我々は今までそう言った概念はなかったのだ。いきなり言われても・・・。」

 

「あの・・・。」

 

 でもミカさんとは違いガブさんは積極的だった。

 

「教えてください。友達と言う物を!!」

 

 それは科学者として・・・。

 

「私は・・・私達はこの星で持っていなかった事がたくさんあるのを知りました。特に「友達」というのは・・・。」

 

 それは自分達の変化を求めるための行動。

 

「いいぜ?ならなぞなぞだ。」

 

「えっ?」

 

 弦太郎が無邪気な笑みで言う。

 

「俺達は何時友達になれるのか?って奴だぜ!!」

 

「えっ?それってどういう意味?」

 

「一緒に居れば分かるってものだ。」

 

 意外なやり取りである。

 

 だが、それを見て弦太郎の意図を皆は察したらしい。

 

「興味深い。私もいいかい?」

 

 ミカさんも参加するようだ。

 

「おう!!」

 

――――友達ってなんだろ?

 

「・・・そうか。これが異星異種間の交流ってやつなのね。うん・・・。」

 

「ほほえましいですわ。」

 

 ほっこりする。ようやくまともな交流になってきたと思う。

 

 ドS魔女達がやらかした、SMとは違う。

 

「まあ、それよりも問題が・・・なあ。」

 

 みなは家に入って、送られてきた大量のプレゼントにため息をついている。

 

「参りましたね。手荒なまねはしたくないのに・・・。」

 

 苦笑するアーシア。

 

「そもそも、この子はこの世界を支える女神となる子よ?トレードしようにも・・・。」

 

 アーシアはすでに部長の眷属以上の存在になっている。部長に眷属でありながら、この世界の大切な支え。そんなのトレードできるわけがないし・・・。

 

「それ以前に私にとって、大切な妹分だもの。」

 

「そうそう。」

 

 それ以前に、この家にいる皆がアーシアを大切にしている。それはもう友達と言うより家族のレベルで。

 

「アーシアには返し切れない恩がある。」

 

 巧に至っては命の恩人。

 

「右に同じく。」

 

 それはハルトからしてもそうだ。

 

 当然・・・。

 

「俺からしても・・・な。」

 

 アザゼル先生からしてもだ。

 

「私にとってはもう・・・妹も同然です!!」

 

 キリエさんもアーシアのことをもう・・・溺愛しているくらいだ。

 

「はははは・・・まあ、おれからしても・・な。」

 

 ネロもなんだかんだいってアーシアのフォローをしている場面がおおい。

 

 それに父さんや母さんも実の娘のように可愛がっている。

 

 アーシアの事を大切に思っていない連中は誰もいない。

 

 ドライグ達ですらそう思っている。

 

 その上でクウガであり、アーシアと再会した実の兄・・・ゆーすけ兄さんがいるのだ。

 

 はっきり言おう。

 

 アーシアを狙うなら、覚悟しやがれ。

 

 俺達の家族、仲間、幼馴染連中全員が相手になると!!

 

 

 

 

 SIDE ???

 

 ちくちょう・・・。

 

 僕はあまりの状況に歯がみするしかなかった。

 

 あのアーシアを手に入れたいと思っていた。

 

 でも、まさかアギト。しかも、この世界を支える神の後継の一人となっているなどと。

 

 これだと家の力を使っても無理やり手に入る可能性は無しに近い。

 

 だが、強引に奪おうとしても・・・。

 

 あの汚らしいドラゴンの力を得た最悪のアギトを初め、化け物達があっちにはいる。

 

 いくら力を得たとはいえ・・・。

 

 忌々しい・・・。もっと力を・・・。

 

「なら・・・お前がそれ使うが良い。」

 

 そんな僕の元に黒い壁が現れる。

 

「ほう・・・。」

 

 それは四枚のキング。

 

「いよいよ始めるのですか?」

 

「五人目のジョーカーもいる。やるなら今だろう。」

 

 あらわれるのは井坂。

 

 そしてアルビノジョーカー。

 

 後もう一人、ジョーカーがこちらの手札として残っている。

 

「そう・・・バトルファイトの時間だ。生贄として・・・あの娘を使わせてもらう。」

 

 ついに究極の力を得られるのか・・・。

 

 13という力を!!

 

「ふはははははははは!!」

 

「さあ・・・バトルファイトの開始だ。ジョーカーの洗脳準備を・・・。」

 

 モノリスがそう言いかけた時だった。

 

「緊急事態です!!ジョーカーが・・・脱走しました!!」

 

「・・・・・・ことはうまく運ばないか。」

 

「ならそのジョーカーの捜索はこちらでやらせてもらおう。」

 

 異世界にいたジョーカーの脱走。

 

「仕方ない・・・ミノタウロス君!!」

 

「はっ・・・。急ぎ・・・。」

 

 ファントムのミノタウロス君にジョーカーの捕獲を依頼する。

 

 だが、彼・・・ミノタウロスを見たのはこれが最後だった。

 

 

 

SIDE ???

 

 はあ~疲れた。でもやっと到着よ!!

 

 私は長旅を終え、すごく久しぶりに日本に帰ってきた。

 

 まあ・・・人間止めましたけど。

 

「志願した甲斐があるわ~、」

 

 私はこの三大勢力の協力体制となり、そのためのスタッフに志願した。

 

 その理由は・・・堕天使勢力の幹部リストにある名前を見つけたからだ。

 

「この指輪の制作者の名前が・・・ねえ。」

 

 操真晴人。

 

 その名前を私が間違えるわけがない。

 

 みなに明かした事が無いけど、私・・・前世の記憶がある。それはもうはっきりと。

 

 いわゆる転生者と言う存在だ。

 

 ファントムやゲート、サバトなど、色々あった前世だけど、まあ~この世界も大概なものだとおもう。

 

 その世界で再びファントムのミノタウロスに絶望させられるなんて誰が思ったか。

 

 何でそんな所だけ前世と同じなの!!

 

 まあ・・・前世ならともかく、今の私を舐めないでほしいわ!!

 

 その絶望・・・自力で乗り越えたさせてもらったから!!

 

 驚いたあいつの顔ったら今でも思い出してしまう。

 

 これもハルト君のおかげ。前世でも色々あった。

 

 そんな中であなたから貰った希望のおかげです。

 

 おかげで私・・・現世ではなれちゃいました。

 

 指輪の魔法使いに。

 

 密かに憧れていたから密かに嬉しかったりする。

 

 そして、それを四大天使の一人・・・ガブリエル様に見初められて、天使になっちゃったりして・・・。

 

 うん・・・前世もそうだけど、人生ってほんとわからないわ~。

 

 刑事でエクソシストな私が魔法使いになり・・・そして天使になるなんてねえ。

 

 そして・・・私は再び日本に。

 

 この駒王町に彼はいる。

 

 確かめないといけない。

 

 グレゴリ幹部・・・そして、「指輪の魔法使い」じゃなく、それより色々な意味でグレードアップした「指輪の大魔王」と呼ばれるハルト君に。

 

 グレゴリの幹部っていうのもそうだけど、その前に魔王ってなんなの!?悪魔陣営の魔王達を差し置いて「指輪の大魔王」って何!?「大」までついているし

 

 もし彼は本当にハルト君なら・・・この世界で何やらかしているの!?

 

 すごく心配で、こうして志願したわけです。

 

 やっと到着した駒王町。

 

 裏の事情知る人達からは「この世界最新にして最強の人外魔境。」と呼ばれている町だわ!!

 

 三勢力の和平の地にして、噂の神の後継となったアギトに二天龍を初めとしたドラゴン達も暮らしているのだから驚きだわ。日本神話、ファンガイア勢力も深く関わっている上に宇宙人を初めとする未知の生命体もたくさんいると。

 

そんな色々とカオスな情報ばかりのこの町の境に今足を踏み入れようとして・・・。・

 

「う・・・うう・・・。」

 

 踏み入れたと共に、私は第一町人(?)と遭遇。

 

 顔はなかなかイケメンだ。うん・・・ハルト君が居なかったら惚れていたかもしれないくらいに。

 

 全身ボロボロであちこち怪我をしている。でも・・・その血の色が・・・。

 

「緑色の血?」

 

 人間のそれとは明らかに違っていた。

 

「大丈夫ですか!?」

 

 流石駒王町。第一町人(?)が人外とは・・・。

 

「ぐっ・・・にっ・・・にげろ・・・。」

 

 その人は苦しそうにしながら、私に逃げるように言ってきます。

 

 その後ろから灰色のゴキブリみたいな連中がやってくるけど。

 

 そいつらを蹴り飛ばしてその人を助け起こす。

 

「・・・うん。なら助けます。」

 

 それで私は決めました。

 

 この人を助けると。

 

「なんで・・・だ?おれがこわくない・・・のか?」

 

 その人の姿が変わります。

 

 黒に緑の・・・まるでカミキリムシなどの昆虫を思わせる怪物へと。

 

「そんなにボロボロなのに私を見て。逃げろと案じてくれる人に悪い人はいません。」

 

 私の見立てだと、悪い人じゃない。むしろ良い人だ。

 

 人外でも、それとこれとは話は別だし。

 

 我ながら前世の常識が色々と壊れているわ。

 

「だが・・・。」

 

 そんな私達の周りに現れたのは・・・ゴキブリ達と見覚えのある異形・・・グ―ルの姿。

 

「そう・・・そっち絡みってわけか。」

 

 私は手に指輪を装着。

 

――――コネクト・・・プリーズ!!

 

 魔法陣からソードガンを取り出し、ガンモードで撃つ。

 

 これでも射撃の腕はちょっと自信がある。あえてホーミングさせないでも無造作に銃を振りながら相手すべてに命中ことくらいはできる。

 

 これで出てきたグ―ルやゴキブリ達を一斉に銃で撃ち抜く。

 

「チィ・・・まさかここでお前に会うなんて・・・。」

 

 そこで現れるのは前世でも、現世でも因縁深いファントム。

 

「ええ・・・。」

 

 ミノタウロスだった。

 

「ちょうどよかったわ。あなたにお礼がしたいと思っていたの。あなたのおかげで魔法使いになれたのよ?」

 

 私はしてやったりと言わんばかりに背中に力を込める。

 

「おまけに天使にもなったし。」

 

 背中から現れる三対の白い翼。私は転生したらいきなり上級天使相当の力を得ることになってしまっていた。

 

「まっ・・・まじかよ。もう指輪を・・・。おまけに天使になっただと!?」

 

 ミノタウロスのうろたえは酷い。

 

「ぐっ・・・前回とは違いすぎる。絶望させれなかったつけが・・・。だが、そこにいるジョーカーは大切な切り札なのでな。諦めるわけにはいかねえ。」

 

「ジョーカー?」

 

 ミノタウロスの狙いは後ろのこの男の人のこと?

 

「そう言う事だ!!ワーム共!!」

 

 現れたのはグ―ルじゃなく、緑のまるでさなぎの様な怪物達。

 

「・・・なんなの・・・こいつら。」

 

 私は変身のための指輪を準備。

 

――――ドライバーオン!!

 

「でもまあ、倒すしかないか。」

 

 私は変身しようとした時だった。

 

 そのワームと呼ばれた怪物の中の一体の色が茶色になり、外皮がボロボロになって崩れて行った。

 

 現れたのは、赤と黒のまだら模様の蜘蛛の怪物。

 

 その姿がぶれるように消え・・・。

 

 私の目の前に銃撃を受けて吹っ飛ばされたのだ。

 

「気をつけなさい。ワームは脱皮するとクロックアップと言う高速行動をやってくるから。」

 

 後ろから現れたのは金髪にロールをした私よりも歳下の少女。

 

 歳は・・・十代半ばくらいかな?

 

「しかし、流石は駒王町ね。足を踏み入れた途端に人外達のバトルに遭遇するのだから。」

 

 その少女の初めてこの町に足を踏み入れた所だったのだろう。

 

 なんか遠い目をしてこっちを見ている。

 

 って・・・こっちが同類にされている!?

 

 そりゃまあ・・・人間は止めましたけど。

 

「いやいやいや、好きで私だって戦っているわけじゃないって!!後ろの人の・・・。」

 

「・・・うん。助けようとしたわけだ。」

 

 彼女は私の隣に並んで言う。

 

「私の名前はマミ。新人の戦乙女よ。」

 

 なんと・・・北欧神話の戦乙女!?しかし新人ですか。

 

「私は凛子。こっちも新人天使よ。」

 

「そっちも新人なんだ。」

 

「元人間で、最近になって天使に転生したのよ。」

 

 私達は軽く話を交わしつつ。

 

「詳しい話はあいつらを片づけてからでいいかな?」

 

「ええ。美味しい紅茶でも御馳走するわ。お茶受けは・・・。」

 

「実はフランス土産の焼き菓子が・・・。」

 

 いつでもコネクトでとりだせるわよ?かなりお土産もってきたし。

 

 ハルト君が良く使っていたけどあれって便利だわ~。バイクや車ですら取り出せるし。

 

「なら決まりね。そうね・・・今日はどの子にしようかな?」

 

 マミさんの傍に現れるのは機械仕掛けの昆虫達。

 

 一匹はトンボ。

 

 二匹目はハチ。

 

 三匹目は蝶のような姿。

 

「なっ・・・ゼクターだと!?それも・・・三体も・・・。」

 

「この子達は私の友達よ?あともう一人いるけど・・・。あの子は気紛れだから。」

 

 マミさんはクスクス笑いながら左腕の時計みたいな部分にハチをセット。

 

 いつの間にか手にしていたグリップにはトンボが止まる。

 

 そして腰にあったベルトには蝶が羽を休めるように装着。

 

「どうも三人ともヤル気満々みたいね。ならみんな一緒にいこうか!!」

 

 っていうより、この子達っていつもヤル気満々なんじゃ・・・。

 

「あら?わかっちゃった?」

 

「うん。すごく仲良さそうだし。」

 

 息の合った彼らを見たらねえ。喋ることは無くても、仕草でわかる。

 

「・・・ええい。だったら助っ人を呼ぶまで!!」

 

「まっ・・・そういうことだわな。」

 

 ミノタウロスの後ろに・・・。

 

「まさか、ウィザードの野郎に続いてお前まで転生していたか・・・。」

 

 これもまた私にとってちょっとした因縁のあるファントムが現れた。

 

 赤と金の身体を持つそのファントムの名前は・・・。

 

「ユーゴ・・・いえ、フェニックス。」

 

 フェニックスファントム。

 

「ハルト君に続いて・・・ねえ。」

 

 そしてグレムリンまで・・・。

 

「やっぱりこの町にハルト君がいるのね!!」

 

『・・・・・・。』

 

 ハルト君の名を出したら何故かファントム達沈黙。

 

「・・・今のあいつとは戦いたくねえ。」

 

「みっ・・・右に同じく。出来ればこの町に足を踏み入れたくなかったくらいだ。」

 

 フェニックスとグレムリンの怯えが尋常じゃない。

 

「・・・えっと・・・。」

 

 あの二人って前世のあの二人よね?特にユーゴ君って呼べばいいのかフェニックスと呼べばいいのかわからないけど、特に君ってハルト君に太陽にふっ飛ばされて無限の死と再生を繰り返す羽目になったと・・・。

 

「・・・今のあいつに戦いを挑むと死よりもおぞましい地獄を見る。」

 

 あのフェニックスが断言したの?不死身で戦闘狂のあなたが戦いを拒否!?

 

 衝撃的だわ~。

 

「・・・私はそのハルト君に会いにわざわざ来たのよ。」

 

「・・・あわせるわけにはいかねえな。」

 

「当然。」

 

「はあ・・・。」

 

「おい!!ミノタウロス!!お前だって他人事じゃねえだろ!!お前はあいつを絶望させようとして、その一歩手前まで追い込んだろ?そのことを今のあいつがしったら・・・。」

 

「はっ!?ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ。」

 

 あれ?ミノタウロスが震えている。

 

「ブ~~~~~~~~~~~~~~~~ン!!」

 

 震えすぎて・・・携帯やスマホのバイブレーションみたいになっている!?

 

「いっ・・・いやだ・・・。処刑なんて・・・。処刑なんていやだぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 狂ったように斧を手にして、私に襲いかかってきたわ!?

 

 って・・・どんだけハルト君の事を恐れているの!?

 

「・・・あなた・・・あの指輪の大魔王の知り合い?」

 

 マミさんまであのってつくぐらい有名人みたいね。

 

「それを確かめたくて・・・。」

 

 ・・・ホント、一体何があったの!?

 

 私達は戸惑いながらも変身しようとして・・・。

 

―――――ダブルライダ~~~~~・・・・・・。

 

 その耳に何やら爆音が聞こえてくることに気付く。

 

――――キ―――ック!!

 

 そして何やらすさまじい速度でメイドさんと執事さんが後ろからそれぞれフェニックスとグレムリンにとび蹴りをかました!?

 

「がっ?」

 

「うぐ!?」

 

 顔面から地面にダイブする二人。

 

 しかも、それを踏み台にしつつ二人はさらに飛び上がり・・・。

 

―――――もう一発だぁぁぁぁぁあ!!

 

「がぶず!!?」

 

 それがミノタウロスの後頭部を踏みつけるように命中。

 

 ミノタウロスもまた顔面から地面にダイブ。

 

 そして、そのまま私達の前に着地する。

 

「ふい~何とか間に合ったよ。」

 

「要救助者・・・一名ってところ?」

 

 やってきたメイドさんは金髪ツインテールで蒼い瞳をした十代前半位に娘。

 

 見た目は・・・そう・・・初音ミクっていうボ―カロイドに似ている。

 

 かなり可憐だ。

 

 もう一人は緑色の髪と紅い瞳をした十代前半の少年。

 

 生意気そうな外見。髪をポニーテイルに括った野性児的な感じがする。

 

「ぐっ・・・なんだてめえらは!!」

 

「いきなりとび蹴りって、すごく痛かったけど!?」

 

 立ち上がり怒鳴り散らすフェニックス。

 

「こっちは買い物の途中だったんだい!!」

 

 よく見れば二人の手には買い物バック。

 

「まったく・・・ゴウリュウさんの楽しみにしていた特性のニンジン見つけたのに・・・。」

 

「こっちはオートバジンさんが喜びそうなメンテ用のオイルを見つけたんだい!!」

 

「き~さ~ま~ら~・・・。」

 

 怒り狂いながら立ち上がってくるのはミノタウロスだった。

 

 斧を手にし、そこに魔力を集中させ・・・。

 

 それを投げつけてきたのだ。

 

「ああっ!?」

 

 地面に突き刺さり私達の前で大爆発する斧。その爆発に二人が巻き込まれるが・・・。

 

「あつ~い。」

 

「・・・少し焦げちゃった。」

 

 その爆発から出てきたのは二台のバイク。

 

「・・・なっ・・・なに!?」

 

 それを見たクレムリンが驚く。

 

「まっ・・・まずい。あれは・・・。」

 

「お姉さん達大丈夫?」

 

「えっ?」

 

「まさか・・・さっきの子達なの!?」

 

 さっきのメイド少女と執事少年が・・・バイクになった?

 

「いえいえこっちが本来の姿だよ。」

 

「・・・この子達まさか・・・。」

 

 マミさんもこの子達が誰か思い至ったらしい。

 

「まっ・・・まずい。この子達・・・あのアギトの使い魔だってぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

「えっ?あの化け物バイクが・・・ってぁぁぁぁ!!」

 

 その後ろからさらに巨大なでかいバイク(?)が登場!?

 

 グレムリンがそれに気づいて急いで逃げるけど。

 

 フェニックスがブチって踏みつぶされた!?

 

「あなた達なにやっているのですか!?寄り道なんかしちゃって・・・。」

 

「いや~ライカ姉。怪我人がいたもんで。」

 

「それに戦闘中。」

 

「・・・・・・はあ。なら主様達に伝えればいいでしょう。」

 

 その化け物バイクもまた喋っているだと!?

 

「・・・白龍皇の使い魔だ・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

 この街にはアギトが四人いるときいている。そのうち二人はあの二天龍。

 

 その片割れの使い魔まで・・・。

 

「まったくもう・・・あなた達。主様達の街で騒動を起こすなんていい度胸ですね。」

 

 その化け物バイクもまた姿を変える。白に黒の混じった二十代前後の妙齢のストレートヘアの女性がいた。

 

 髪の色は何故か桃色。

 

 服は・・・当然のようにメイド服。

 

 あの子もボーカロイドでみたことがあるような・・・。

 

「しかたありません。戦闘開始しましょう。」

 

『あいよ!!』

 

―――――トランスフォーム!!

 

 女性のメイドの方も一度バイクに戻ってから変形した!?

 

 それも人型に!?

 

『・・・・・・・・。』

 

 女性の方は・・・両肩に巨大な球体の様なタイヤを装着。

 

 髪のボリュームみたいに多くのパーツが後ろに移動しているけど、それでもあの子達より大きい。

 

 三メートル位はあるよね?

 

「では・・・私、マシントルネイダ―ことトルネと!!」

 

 金色の子が名乗りを上げる。

 

「俺・・・ギルスレイダ―ごとレイダ―!!」

 

 その次に緑の少年だったバイク。

 

「そして私、ジェットストライカーことライカ・・・。」

 

 最後に元巨大なバイクの女性。

 

『が・・・あいてになります!!』

 

「まっ・・・まずい。こんな怪物どもに見つかるなんて。」

 

「・・・・ああもう!!自爆して脱出なんて俺のキャラじゃねえぜ!!」

 

 フェニックス、一度爆発して死んでから再生することでライカさんの踏みつけから脱出。

 

 終始踏みつけられっぱなしだったし。

 

 なんかこの世界でフェニックス・・・あんた不死身だからって不憫な立場いるじゃない?

 

「おいおい・・・お前らだけだと心配だろうが・・・。」

 

 そこにさらに黒い鎧を纏った一本角の馬に・・・。

 

 ホバー飛行する変なロボットまで!?

 

「・・・どんどんあつまってきやがる。」

 

 フェニックスが悲鳴を上げる。

 

「一応あいつらの兄貴分なのでな。」

 

「・・・竜の騎士の愛馬・・・轟竜・・・。それにオートバジンまで・・・。」

 

 あの世界一速い名馬?そして、紅の救世主の相棒まで?

 

「なにやっているの?って・・・敵か・・・。」

 

 止めになんか黒い龍が影から登場したのですけど!?

 

『ひぇぇぇぇぇぇぇぇ!!ドラグブラッカ―まで!!』

 

 あっ・・・あれって、この町に住んでいるドラゴンの一体よね?

 

 天龍クラスの。

 

「流石、駒王町ってところですかね。」

 

 マミさんの苦笑もわかるよ。

 

 私、この町に足を踏み入れたからまだ・・・まともな人間とあっていない!!

 

 本当にすごい魔境よ!!

 

 流石、最新にして最強の人外魔境と呼ばれるだけのことはあるわ。

 

「まったくやかましいな~、って・・・・・・。」

 

 そして、すごく懐かしい声と共に彼はその場に唐突にやってきていた。

 

「あっ、ハルト君。」

 

 それは私が知る彼とは若干歳が若いけど、ちゃんとしたハルト君の姿だった。

 

 

 

 

 SIDE ハルト

 

 駒王町に張った結界に反応があった。ついでにライカさんからの連絡。

 

 ブランカちゃんが影から転送してくれると言うのでそれでいち早く駈けつけると。

 

 全く予想もしなかった人と遭遇してしまった。

 

「なっ・・・なんで凛子ちゃんが?」

 

「その呼び方・・・よかった~やっぱり私の知っているハルト君だ!!」

 

 背中から天使の翼を三対だしている凛子ちゃん。

 

 俺の事を知っていると言う事は・・・。

 

「まさか・・・この世界に転生してきたのか?」

 

「そういうこと。この世界ってすごいわね~、」

 

 その手には・・・。

 

「なんで凛子ちゃんが俺の作った指輪を持っているの?って・・・まさか魔法使いって・・・。」

 

「ははは・・・その通り。」

 

 なんてことだ・・・。

 

この世界で凛子ちゃんが指輪の魔法使いに。

 

「あのミノタウロスに再び絶望させられてね。前世の経験が無ければあぶなか・・・。」

 

「ちょっ!?」

 

 ミノタウロスの奴が慌てて止めようとするが・・・もう遅い。

 

「ほう・・・。」

 

 俺はミノタウロスを見る。

 

 俺を知っていると言う事は前世でも凛子ちゃんを絶望させた奴だな。

 

 へえ・・・この世界でも同じことをやったんだ。

 

 前世でしっかり反省しなかったということか。

 

 なら今反省してもらわないとな。

 

「ひっ・・・ひぃ!?」

 

「・・・・・・凛子ちゃんが世話になったみたいだね。」

 

 色々と本当に御世話になったようだな。

 

「戦術的撤退!!」

 

 ミノタウロスが尻尾巻いて逃げようとするところを・・・。

 

―――――コネクト・・・プリーズ!!

 

 目の前に現れた魔法陣に手を突っ込み、ミノタウロスの、目の前に現れた魔法陣から手を伸ばして捕獲!!

 

「なっ!?」

 

「逃がすわけないだろ?」

 

 そのまま魔法陣へと引きずり込んでコッチの傍まで転送っと・・・。

 

 敵を取り寄せるなんて面白い発想だろ?

 

「ひいいいいいいいいいい!!」

 

「凛子ちゃん。再会の挨拶はあとにしようか。まずこいつに・・・。」

 

 ミシミシミシ・・・。

 

「ギャアアアアアァァァァァあっ・・・頭が割れる!!!?」

 

 そのまま掴んだまま持ち上げる。

 

 怪力を誇るわりに軟弱だね。この程度で悲鳴を上げるなんて。

 

 アザゼルをもっと見習いたまえ。

 

 彼の方がもっと打たれ強いから。

 

「じっくりと挨拶しないといけないみたいだね。もうそれりゃ・・・じっくりと。」

 

「・・・ちょっとまて!!変身しないでお前は俺を倒そうというのか?前世以上の屈辱・・・ぎゃああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 屈辱か・・・丁度いい。

 

「お前らも逃げるなよ?色々とやらかしてくれた事に対する礼を返せていな・・・。」

 

「ごめんミノタウロス!!お前の犠牲は無駄にしねえから!!」

 

「君のことは決して・・・わすれない!!!」

 

 って二人共そそくさと逃げたか。

 

 ふふふ・・・いいだろう、楽しみは後でとっておくことにしよう。

 

「って・・・見捨てないでくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 悲鳴を上げるミノタウロス。

 

「・・・とりあえず今はお前の罪をじっくりと問う事にしようか。凛子ちゃんに一体なのをしたのか・・・ねえ。」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいだから・・・だから命だけはぁぁぁぁぁぁぁぁ。」

 

「いいだろ。命だけは助けてやる。でも・・・。」

 

 罪を洗いざらいはいてもらって・・・。

 

「しばらくは生き地獄を味わうと思ってくれ。ああ・・・楽しい時間が始まる。」

 

 せっかくだし姉上と一緒に色々と試していいかも。

 

 最近はユウナ共こういった事を一緒に楽しむようになってきたし・・・。

 

「やっぱ人思いに殺してくれぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「そんな楽な道に逃がすわけないでしょ?」

 

「ぎゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!誰か助けぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 このまま総督殺しをかけ続けて・・・落とすか。

 

 情報も色々と持っているだろうし。

 

 凛子ちゃんにした時と同じように軽く絶望させる程度でいいだろう。

 

 でもファントムが絶望したらどうなるのだろうか?

 

 その実験もいいかもしれない。

 

「えっと・・・ハルト君?」

 

「色々と詳しい話はイッセ―の家でしようか。捕虜もできたし。」

 

「捕虜ねえ・・・。」

 

「これが大魔王と言われるゆえんか・・・。」

 

 俺はミノタウロスの顔面を掴みあげたまま、凛子ちゃん達を家まで案内する。

 

「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!放せ!!放してくれええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 いい加減やかましいな。

 

「気が変わった。一回・・・死んでみる?」

 

「いやああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ死にたくねええぇぇぇぇぇっぇぇぇ!!ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・ガク。」

 

 苦痛と恐怖を処理しきれずに落ちたか。これでやっと静かになる。

 

「・・・本当にハルト君、何があったの?すっごいドSになっているわ。」

 

 俺に対して遠慮なく言うあたり・・・うん前世のパートナーだけのことはある。

 

 すごくやりやすいし・・・信用も信頼もできる。

 

「・・・はあ、攻介にも最初に聞かれた事だよ。それも含めて教えるよ。凛子ちゃんにも教えておかないといけないことだし。少し特殊な家に生まれちゃったから性格が・・・。」

 

 本当に血って魂よりも濃いって思うよ。

 

 なんでこんなドSの家に生まれたのやら。おかげで毎日が・・・。

 

 うん、楽しくて仕方ない。血筋って最高だね!!

 

「って、仁藤君までいるの!?」

 

 この世界・・・なんでもありだなとつくづく思った。

 




 スタートから全開でいきます。

 熱さで疲れ気味ですがここからまたがんばっていきます。

 今後もよrしくです!!


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異世界を旅する少女達

皆さん久しぶりです!!

 大変おくれてもうしわけありません。

 今回は三話投稿します。


 一話のサブタイトルは・・・ポルムの罪というべきでしょうか?


 

 SIDE イッセ―

 

 

 

 ただいま家に怪我人が一人担ぎ込まれていた。

 

 ハルトの奴がテレポートで関係者全員をまとめてこっちに呼んだせいだ。

 

「アーシアちゃん。彼の治療を頼む。」

 

「はい・・・って・・・酷い・・・。」

 

 アーシアが手を当てるだけでその怪我の状態が分かる。

 

「この人・・・始さんじゃなかったらとっくに死んでいました。」

 

 始さん?

 

 そう言えばこの緑の血って・・・剣崎さんと同じ・・・。

 

「この人はアンデット。それも・・・ジョーカーです。そして、剣崎さんの・・・。」

 

 アーシアの力はさらに上がっている。

 

 それはおそらくサイコメトリ―の類。

 

 相手にふれるだけで相手が知らない情報まで読み取るまでに。

 

 そこで部屋のドアが開け放たれる。

 

 そこには息を切らした剣崎さんの姿。

 

「・・・・・・なんで・・・。」

 

 俺達の最強用務員一号の剣崎さん。

 

「なんで・・・始が・・・。」

 

 その反応だけで十分だった。

 

 ああ・・・この二人は知り合いなどを超えた関係なのだと。

 

「やっと・・・あえたな・・・。」

 

 始さんが息も絶え絶えに剣崎さんに微笑みかける。

 

「会えたじゃないって!!何でお前がここにいる!?」

 

「ずっと探していたぞ・・・。何百年・・・いや、何千年・・・いや・・・万すら超えていたか。」

 

 涙目になりながら彼・・・始さんは微笑む。

 

「やっと・・・やっと・・・・・・お前に会えた・・・。」

 

 そこで始さんは力尽きる。

 

「始!!」

 

「落ちついてください。体力の限界で休眠状態に入っただけです。」

 

 アーシアが剣崎さんに落ちつくようにいう。

 

 剣崎さんの肩に手を置いたのは後から駈けつけてくれたゆーすけ兄さんだ。

 

 俺達の最強用務員二号でもある。

 

「怪我はもう直しました。体力も一時間もすれば回復するはずです。気力の消耗もありますから目覚めるのに三時間と一分三十五秒程かかります。」

 

「そっ、そうか・・・。」

 

 剣崎さんも分かっているのだろう。始って人の状態が落ちついたことに。

 

「ありがとう。でもすごく具体的だね。具体的過ぎて逆に恐ろしいよ。」

 

 あまりに具体的過ぎて表情がひきつっている。

 

 アーシア・・・本当にすごい。

 

「剣崎さん・・・この人は?」

 

 俺達の質問に剣崎さんは涙目でいう。

 

「二度と会えないと思っていた・・・友達だ。この世界だからこそ、やっと会えたといえるかもしれない。」

 

「?」

 

 剣崎さんはそう言って始さんに話しかける。

 

「本当に長かった。」

 

「・・・・・・・。」

 

 剣崎さんとこの人はおそらく同じだ。同じ・・・アンデットと呼ばれる存在。

 

 でも、剣崎さんの魂は人のそれだ。

 

 この人は違う・・・。

 

 アーシアの方に視線をやると・・・。

 

「・・・・・・。」

 

 泣いていた。

 

「アーシア!?どうしたの!?」

 

「ウエッ!?あっ・・・そうか・・・すまない。泣かせてしまったね。」

 

 突然泣き出したアーシアに驚くゆーすけ兄さん。一方剣崎さんはアーシアの力を知っている故に謝る。

 

「いえ・・・いいんです。あのような事情があったなんて・・・。剣崎さんあなた・・・。」

 

『????』

 

 後に俺達は剣崎さんと始さんの事情を知って揃って涙することになる。

 

「・・・・・・へっ?」

 

「あら・・・。」

 

 マミさんが後から来た母さんと互いに固まった状態で見つめあっていたのは不思議だったけど。

 

 

 SIDE ポルム

 

「君に事情は聞いていたけど・・・。」

 

 私は今・・・ハルトをめぐるちょっとした修羅場に苦笑いしている。

 

「フカ~~~!!」

 

「あらら・・・うん。やっぱり前世と同じだ。」

 

 ハルトの左腕に抱きついて猫みたいに威嚇するレイナ―レ。

 

 右腕に抱きつきながら苦笑する凛子さん。

 

「本当に・・・そうなのね。見た目は変わっているけど・・・。」

 

「へっ?」

 

 凛子さんがほほ笑みながらレイナ―レを抱きしめる。

 

「へっ?ちょっと突然何を・・・。」

 

「・・・・・・・うん。」

 

涙目の凛子さん

 

「この世界では必ずあなたを助ける。ハルト君。私も協力するから!!」

 

 レイナ―レちゃんの事情。それはこっちと少し似ている。

 

「ハルトぉぉぉぉぉ!!」

 

 そこに攻介の奴もやってくる。

 

「あっ・・・仁藤君!!」

 

「・・・マジであんたなのか・・・。」

 

 魔法使いがどんどん増えていく。

 

「ハルト君・・・責任はとってあげなよ。」

 

 この世界で再び巡りあったのも縁だから。

 

「ほう・・・。」

 

 あれ?ハルト君が何やら意地悪な笑みを・・・。

 

「前に君があちこち色々な世界を巡ったと言う話は聞いていたよ。でもね。そこで・・・。」

 

 ハルト君とは色々な話をしている。

 

 こっちの前世を知られているからこそ、気兼ねない関係になれる。

 

 どうしてハルト君が知っているかって?

 

 自力で気付かれたからだ。

 

 まったく、指輪の魔法使いも侮れないものだ・・・・

 

「気のせいだと思っていたけど、少なくとも五人の女性の名前があったよね・・・。」

 

「・・・・・・・。」

 

 えっと・・・五人って・・・あの五人のことでしょうか・・・。

 

「一人は宇宙最強のバウンディーハンター。」

 

 グサ!!

 

「一人は自在に変身できる女暗殺者。」

 

 ブスッ!!

 

「一人は天然すぎる眼鏡ッ子女暗殺者。」

 

 がばっ!!

 

「一人は風の国の王女。」

 

 ドス!!

 

「最後の一人は・・・幼馴染の勇者・・・。」

 

「すんませんでした!!」

 

 私はすぐに土下座しました。

 

 えっ?大魔王のプライド?

 

 そんなものくしゃくしゃにまるめてゴミ箱に棄ててくれるわ!!

 

「お前も罪だね。その子達から好意を持たれているのに逃げてしまったのだから・・・。」

 

『・・・・・・・。』

 

 ちょっと!!それを何で凛子さんとレイちゃん、仁藤君のいるところでいうのかな!?

 

 さっ・・・三人からの視線がすごく痛い!!

 

「少し話をしない?女として今の発言は見過ごせないけど。」

 

「気があったわね。私も一言・・・。」

 

「てめえ・・・まさか・・・リア充だったのか!!?」

 

 まずい・・・。このことは同志イッセ―にも秘密にしていたのに・・・。

 

 サイガの件でわかったのだが、この世界での私達の身内、特に女子はヤバい奴らが多すぎる。

 

 絶対に漏らしたくない。

 

「・・・だが、お前はこの世界に行くためにあえて不意にしてきたってわけか?」

 

「・・・言い返す事もできないよ。」

 

 皆にはさわしい生き方がそれぞれの世界にある。

 

「この世界は危険だ。こっちがかなり彼女達に力を貸していたとしても・・・。」

 

 こっちはあの世界ではもう不要の存在。あの世界の新たな脅威になりかねない存在はその世界から去った方がいい。

 

 それにそのうち二人はもう・・・この世にはいない。

 

 逆にこの世界はこっちが永住するには極めて都合がいい。何しろ厖大な力を持つ存在が沢山いる。こっちもうまく制御していけば、目立つ事もない。

 

 それに生まれ故郷だし。

 

「その世界でどれだけ暴れたの?」

 

「訪れた世界を少なくとも一度は救ったくらいには。」

 

 本当に力を抑えながら四苦八苦させてもらった。良い経験にもなったよ。

 

「ついでにキレて世界を滅ぼしかけた事もあったよ。ははははははは・・・。」

 

 厖大な力も不便なものだ。

 

「・・・なっ・・・なあ。あんたってどれだけの力を秘めている?」

 

 仁藤君がおそるおそる聞いてくる。

 

「さてね。ただ、こちらは普段はテクニックタイプをやっている事だけは本当だよ。」

 

 無駄に力を披露するつもりもない。

 

 世界を滅ぼせるほどの力など・・・普通の戦いでは無用だから。

 

 其れを存分に生かすためのテクニックを磨かないと。

 

「まさか・・・相当強いの?」

 

「多分・・・。それで自分から消えて行ったってところか?」

 

 レイちゃんと凛子さんがひそひそと話しこんでいる。

 

 どうでもいいが、会話の内容は丸聞こえだ。

 

 しかも・・・痛いところをついてくる。

 

「なら女として一つだけ言わせもらうわ。」

 

 凛子さんは意地の悪い笑みで言う。

 

「あなたが逃げたのなら、その子達・・・絶対に追いかけてくるわよ?」

 

 とんでもない予言だ。

 

「追いかけるって・・・無理だよ。向うには異なる世界を渡る術が・・・。死んじゃったやつだっている。」

 

 本当は助けたかったのに・・・。

 

 世界を救えても、一人の女の子を救えないこともある。

 

「でも、ポルム君は幾つも世界を渡り歩きながら旅をしてきたんだよね?」

 

「・・・・・・・。」

 

 そう言えばそうだった。

 

 だが・・・単独で何とかなる様な物は渡していない。

 

 だから無理なはず・・・だよね?

 

 それにアーシアちゃんからの予言もないから大丈夫なはずだ。

 

 彼女の予言だけはシャレにならない。まじで・・・。大魔王すら脱帽する。

 

 死すら覆しかねないとんでもないものだから。

 

 でも、この時すでにアーシアちゃんは予言していた。

 

 

――――ポルムさんを追いかけて五人の女の子が世界を渡って旅をしています。夢幻の竜の導きと共にこの世界にやってきます。死の運命、世界の壁すら超えた者達です。

 

 

 でも、会えて秘密にしていたらしい。

 

 しかも、五人ってなに!?

 

 ・・・勘弁してほしい。

 

 何で私は女性関係で苦労せないといけない?前世でもこんなのなかったよ・・・。

 

 

SIDE ???

 

「・・・今度はどんな世界なんだ?」

 

 星を渡る船に私達は乗っていた。

 

 それを操っているのはボディーラインがはっきりと出る不思議な服を着た金髪の女性。

 

 星の海の世界からやってきた賞金稼ぎらしい。

 

「サムス、今度はどの世界に?」

 

 その名はサムス。話し方はぶっきらぼうだけど、かなり愛情深い正確をしている。

 

「それはこのコンパスに聞いてくれ。一応目的の世界へと続いているはずだから。」

 

「楽しみ。今度はどんな世界なんだろうね。」

 

 私達は世界を旅していた。

 

 しかも、それはポルムが旅した世界だ。その痕跡があちこちにある。

 

 その旅の中で私達は出会った。

 

 きっかけは私とサムスの出会い。

 

「あいつがこのスターシップを改造してくれたおかげだ。変なログに合わせて向ってそっちの世界に着いた。」

 

 スターシップ。サムスの世界は広大で、移動するために必要な星を渡る船。

 

 それを改造していたおかげで、サムスは事故みたいな形で私の世界にやってきた。

 

 本来なら寄生体Xにやられて、結果として破壊されたのに、あいつはあらかじめ自己修復を仕込んでいたみたいで研究所の脱出の際に新しいスターシップと融合する形で復活。

 

その際にXやメトロイドすら取り込むという離れ業まで・・・。

 

――――私としてもこのオーバーテクノロジーの塊を言える船に興味があるよ。

 

 おまけにサムスのスーツにも何か仕込んでいる。

 

 ポルムは離れた後でも彼女の助けとなるように色々とやっていたのだ。

 

 でもその際にうっかり、コッチの世界のログをスターシップに残してしまった。

 

 そこで私の持っていたコンパスが合わさった。方向音痴な私のために無駄に高性能なコンパスを作ってくれたのだ。

 

 目的地を言えばその方向を指し示してくれるコンパス。

 

 あまりに無駄に高性能なそれはポルムの居場所まで指示してくれたのだ。

 

 其れが道しるべとなり、私とサムスで世界を巡る旅が始まった。

 

 途中、世界の破壊者と呼ばれる人たちにも会いながら旅を続け・・・。

 

 あいつの罪を三つ見つけた。

 

 一人はヘッドホンと言う物を被ったウエーブの髪の女性。

 

 名前はチェルシー。元暗殺者。

 

 あっちの世界ではポルムはある国の革命を手伝ったらしく、その際に出会ったらしい。

 

「ふふふふふふ、さあて、今度はどんな世界なのやら。」

 

 特技・・・帝具による変装と暗殺。一度死んだ身らしいけど・・・。

 

「私の身体の責任・・・取ってもらわなきゃ。」

 

 ポルムの奴がそれを生き返らせた。

 

 何故かをチェルシーにあらかじめ仕込んでいたらしい。

 

「おかげで私、不老不死だし。」

 

 首の切断?コロの餌になった身体?力の覚醒と共にすぐに再生したとのこと。

 

 首だけの状態から復活にも驚いたけど・・・。

 

 一か月以上の時間は掛かったのも驚いた。

 

 復活のきっかけとなったのはある存在とリンクしてしまったからだ。

 

 いままでは不意をついての暗殺専門だったのに、人外になってからは将軍クラスなら素手で倒せるまでになっている。

 

 復活した後、研究所で静かに、なおかつ大暴れして、逃げだしたらしいし。

 

「コウモリみたいは怪物になる上に、いつの間にかこいつが私の相方になっていたけど?」

 

「イエェェェス!!」

 

 傍には変な蝙蝠の羽が付いた黒い龍が飛んでいる。

 

 後ろ脚には宝玉がついている。

 

 声はかなり陽気な奴。

 

「お嬢さん。失われし始まりの王の鎧を相棒にしたのはあなたが初めてですよ?ファンガイアの王族の誰もがなしえなかった偉業なのですよ!!もっと喜んで下さい!!」

 

「だって、見た目が・・・気色悪い。ヘビみたい。」

 

「が~~~~ん!!」

 

 その言葉に相方の変な蛇ドラゴン・・・私達はクロちゃんと読んでいるけど、この子が落ち込む。

 

「ヘビみたいで気色悪いって・・・これでも誇り高きドラゴンなんだぞ。そりゃ鎧となるために色々と改造を受けたけどさ・・・。それでもこの姿で龍王クラスの力はあるんだぞ。そりゃ本来の姿はでかいけど、そっちの方は格好いいんだい!!それなのに・・・それなのに・・・。」

 

 結構繊細なのよね。この子・・・。そこが可愛いけどね、

 

「ってもう・・・。こんなことで落ち込まないでよ。」

 

 この子はそのままチェルシーの鎧となる。月光幻帝――オリジン・キバと呼ばれている。どうもどこかの世界で王の鎧のプロトタイプとして作り出されたけど、厖大な力に耐えきれず王が消滅。

 

 王の鎧のクロちゃんだけが異世界に飛ばされ・・・チェルシーと出会った。

 

 復活のために何かが足りなかったチェルシー。それとクロちゃんが出会ったことである力が足りない要素を補うこととなり、二つの存在が深く結びついてしまった。

 

 そうしてチェルシーは復活。

 

 その鎧を着こなす主となって。

 

 その力は帝具扱いとしても破格であった。

 

 複数の奥の手を持っている時点でもう反則だろう。

 

 その上・・・。

 

「はあ・・・それにしても、なんであなたが私を纏えるのか不思議で・・・。皇魔力相性抜群ですし。体もファンガイア化しています。しかもキングとして。」

 

「それはポルムに聞きなさい。ったく、私の身体に何したのやら・・・。」

 

 頬にステンドグラスのような文様が走るチェルシー。あれがファンガイア化の証らしい。

 

「はあ・・・。それは私もですかね~。」

 

 同じ世界でもう一人の罪・・・シェーレもいう。

 

 彼女の場合はあるアイテムをポルムから貰ったために死の運命から逃れたらしい。

 

 その名はリバースドール。

 

 持ち主が死んだあと、身代わりとなって壊れた後に所有者を蘇生させるアイテム。

 

 其れを作り出して、試作として渡していたのだ。

 

 試作故に失敗したとポルムも思っていただろう。

 

 だが・・・。

 

「・・・聞こえます。スターシップの上に前の世界の砂がこぼれていたみたいです。」

 

 彼女にもまた想定外の事故があった。

 

 それは復活の際に、ある科学者が行った研究成果・・・強化人間の全ての成果を一緒に取り込んでしまったのだ。

 

 それもまた復活の際に足りない物を補おうとした結果だ。

 

 彼女の場合は身体を食われて失ったので、新しい身体を作る必要があった。

 

 あちこちの実験体を人形が吸収。そのまま復活。

 

 おかげで純粋な身体能力はサムスに匹敵・・・いや、耐久力とパワー、五感ならダントツで最強である。その上・・・その力を解放させる変身と言う奥の手まである。

 

 その力・・・その世界に存在している危険種でいうなら確実にS級。

 

 素手でそのレベル。

 

 そして、手にしている巨大なハサミのような愛用の帝具――万物両断エクスタスはその姿を変えてしまった。

 

 本来ならその素材に使われた金属があまりにも硬いのでそんな事が起こるはずなどないはずだった。だが・・・。

 

 まず分離して、それぞれが単独の剣として使用可能になってしまった。何故か大きさも短剣サイズから大剣サイズまで自在に変化。

 

 そこから、さらに複数の形態に変化する。

 

 この変化はおそらくポルムの奴が仕込んだのだろう。あの世界の兵器をよくもまあ・・・ここまで魔改造したもんだ。

 

 それは彼女の腰に埋め込まれた不思議な石のせいだと本人は言う。復活の際に欠損した部分を補わせるためにある石をつかったらしい。

 

 アマダムっていったかしら?

 

 チェルシーとシェーレの二人はそうした復活を経て、元々いた暗殺組織、ナイトレイドを影で支援していた。

 

 黒い翼と白い獣として。

 

 お互いに面識がなく、ぞれぞれ単独で動いていたので出会った当初、激しい戦闘になった。

 

 そこに私達がやってきて戦いを止めるのに四苦八苦したわ。

 

 あれはまさに人外同士の戦いだったから。

 

 彼女達の手伝いをし、帝国での革命を成功させたのを見届けたあと、その二人も連れになった。

 

 そして、ある世界で最後の一人と出会った。

 

「ポルムさんにはあとで説教です。」

 

 それは何とその世界の一国の王女様。

 

 その名はリース。槍を手に、その世界の危機を救った姫様でもある。

 

「国は弟に任せることができます。アマゾネス隊も立派な後釜もいます。そのおかげで私も・・・。」

 

 彼女は弟に国を任せることができるように半年で色々と頑張った。

 

 どうも風が、教えてくれたことらしい。

 

「世界を救うだけ救って勝手にいなくなりました。」

 

 世界を救って勝手にいなくなったポルム。

 

 リース達その世界の六人の勇者と共にその導き手としてポルムは色々と動いていたらしい。

 

 もちろん力はあえて押さえていた状態だったらしい。

 

 皆ポルムが最期の最後で本気を出して驚いたらしい。

 

 三体も現れた最強の神獣を圧倒するほどのパワーを秘めていたなどと・・・。

 

 彼がやらかした所業・・・それは皆が自在にクラスチェンジできると言う事。

 

 クラスと言うのは職業みたいな物。私たちもそれぞれ該当するクラスがあるらしい。

 

 そして、彼のせいで・・・六人の勇者は光と闇、それぞれの極みといえるクラス4、そしてその集大成と言えるクラス5までクラスチェンジしちゃったということ。

 

 おかげでそれぞれ六人は二人だけで因縁の最強の神獣と戦い勝利。

 

 その三体の融合した最後の敵も皆で勝利。

 

 それと共にポルムは姿を消したのだ。

 

 この世界での役目は終わったといい残して・・・。

 

「・・・あの世界は他の五人がいれば問題ありません。」

 

 でもクラスチェンジしたためにリースは風を読む形で未来予知的な力を得ていた。

 

 必ず、同じ境遇の者達がやってくると。

 

 だから諦めずに自分が何時旅立っても問題ないように入念な準備をしていた。

 

 そして・・・彼女達四人と出会ったのだ。

 

「あいつは世界を救ったり、滅亡の危機に陥れたり忙しいな。」

 

 サムスの世界。ポルムは通りすがりの観光客を装い、世界を旅していた。神出鬼没で行く場所行く場所に現れサムスも顔を覚えたのがきっかけ。

 

 あの時はまさか瞬間移動をやらかしているなどサムスは想像もしていなかったらしい。

 

 その世界でポルムは戦いにも参加。

 

 その中で・・・本気で怒ってしまった。

 

 銀河連邦のある方々の企みを三度も見てしまったがゆえに。

 

 一度目は警告程度にしたが・・・三度も見てついにキレた。

 

 サムス曰く・・・終末の大魔王が降臨したらしい。

 

 いろいろな意味ですべての力を解放させたポルム。

 

 それは魔神の降臨。

 

 たった一日で銀河連邦が崩壊寸前。銀河、最大の危機と言えるほどまでに追い詰めていた。

 

 そのためにサムスはポルムの本当の力と恐ろしさをよく知っている。

 

「倒さないといけない。そう思ったけど、勝てる気が一切しなかったよ。戦いたくもなかったけど・・・。」

 

 彼が本気になったら世界を滅ぼすことさえできる。

 

 其れが証明された出来事だった。

 

 流石あの大魔王の生まれ変わり。

 

 むしろ前世よりも色々な面がパワーアップしている気がしてならない。

 

「だからと言って私が悩みに悩み、決死の覚悟で戦いを挑んだら・・・あいつめ・・・。私にやられた振りして別世界へ逃げやがったし・・・。私じゃなかったら気付かなかったぞ。」

 

 サムスが挑んでくることを見越したのだろう。

 

 サムスがまたその世界を救う流れを落とし所にしてポルムは去ったのだ。

 

「銀河連邦も綺麗になった。あいつは私達の世界の大掃除をするだけやって、あとは私に押し付けたってわけだ!!あいつは私のために怒ってくれたのに・・・こんな栄誉なんていらない!!だから旅に出たというわけだ。」

 

 心底悔しそうなサムス。

 

「・・・ったく、無茶ばかりして・・・。」

 

 私はため息をつく。

 

 ポルムとは一応幼馴染になるから。一緒に修行した仲だし・・・その・・・。

 

「あなたがすべての始まり・・・か。おかげでポルムがどんな奴が良く分かった。あいつはたった一つの目的のためにあちこちの世界を回っていた。寄り道ついでに世界を救いながら・・・。」

 

 ポルムは異世界出身。私の父さん母さんの仲間だった二人の子供。

 

 えっ?私?

 

 そう言えば自己紹介がまだだったか。

 

 私の名前はヒュミナ。

 

 まあ、有名すぎる父さんと、ある国の賢者をやっていた母さんの間に生まれた一人娘ってところかな?

 

 職業は・・・賢者であり剣士。あと武闘家かな?二つ組み合わせるとバトルマスターになるし。あっ・・・賢者だから魔法使いでもあり僧侶でもあったわ。

 

 何故か皆からは勇者って言われるけど・・・ねえ。私そんな気質じゃないし。

 

 いくらアバン先生を初め、色々な人から師事を受け、色々な事ができるようになったっからって・・・。

 

 髪は父さんと同じ色。

 

 顔立ちも父さんに似ていると言われる。

 

 でも性格は父さん曰く、母さん似だと言われるわ。

 

 闘志だけはまさに父さんの娘と他のみんなから一斉に言われるけど?

 

 そんなに闘志あったかな?

 

 父さんなんかそれを聞いて複雑そうな表情していたし。

 

『・・・・・・・。』

 

 なんか船に乗っている他の皆が私を見ているわ。

 

 何言ってんだこいつ?ってみたいな目をしているし。

 

「あなたは闘志とド根性の化身!!史上最強の負けず嫌い!!戦士の中の戦士!!まさにあんたは勇者!!将軍クラスは確実なんだから!!一度エスデスと戦わしてみたいわ!!」

 

 チェルシーが私にツッコミを入れる。

 

「案外自分は普通だと思っているタイプなのでしょうね。だからこそ己の凄さが分からないと。」

 

 シェーレ。それをあんただけには言われたくなかった。

 

「デュランと互角に斬り合い、剣友になるなんて初めて見ました。男と女すら超えたいい戦いでしたね。」

 

 えっと・・・リースさん。それってあなたの世界に来た時ですよね?

 

 流石に猛者って感じがあって戦いましたよ?

 

 すごく楽しかったって思いましたよ?

 

 それでどうして闘志なのさ!!?

 

 一応私は闘志と勇気、二つを司ると言われていますけど。

 

「・・・敵の大群に単機で突っ込む馬鹿はお前が初めてだ。それで圧倒し、蹂躙して、勝利をつかみ取るから・・・まさに勇者だな。」

 

「・・・ああもう・・・私は勇者じゃないって!!」

 

 何故か皆は私を勇者と呼ぶ。でもライディンやギガデインを使えるのは幼い頃、生死の境をさまよった時にマザードラゴンの血を受けたからで・・・。

 

 あの世界で残ったもう一つのあれを受け継いじゃったけど。

 

 行く先々で勇者って言われるし。どうして?

 

「くくくく・・・魔王の幼馴染が勇者って面白いじゃない。」

 

「ありそうでないですからね。」

 

「幼馴染って・・・。」

 

 まあ、ポルムが私の世界にやってきた時・・・最初に彼を見つけたのは私だ。

 

 覚えたてのホイミを使いまくったわ。

 

 隠しきれなかった角と額の眼もバッチリとみましたよ。秘密にしてあげたけど。

 

 そして、私はポルムと父さんやアバン先生達に合わせた。

 

 そこで私は、ポルムの素性を知ったのだ。

 

 父さん達の仲間出会った人達の一人息子。遺児であったことを。

 

 でも彼には強い決意があった。

 

 目的がある。助けたい人達がいると。

 

 そこからあいつはすごかったわ。

 

 呪文に関する才は・・・皆が脱帽しても仕方ないレベル。

 

 武術も凄まじい。私よりもすごい怪力だったするし。

 

 ただ・・・一瞬で三つの事を同時にやらかすのにはビビったけど。

 

 それに、マトリフのおじいちゃんと一緒に破廉恥なことをすることも多いし。

 

 でも、ポルムはむしろ呪文の数々よりも、アバン先生をじっと見て、見極めようとしていたような気がする。

 

 いままで自分の知らない何かを見極めようとしているような・・・。

 

 そして、その理由は彼が旅立つ夜に明らかになった。

 

 あとで分かった事だけど。密かにアバン先生には話をいていたようだ。

 

―――――ようやく答えがわかった。だからこそ・・・私は行くよ。

 

 彼は私に自身の本当の正体を明かしてくれた。

 

 彼はあの・・・。

 

―――今ならよく分かるよ。どうしてあの時、勝てなかったのか。だからこそ・・・ごめん。巻き込むわけにはいかないから。

 

 彼は私に別れを告げて世界から旅立った。

 

 異世界にいる同志達を助けるために。

 

 そして私は気付いてしまった。

 

 彼の事を・・・どうしようもなく好きになっていることに。

 

 しばらく泣いていたわ。

 

「そんな時に、サムスが来たってわけだ。」

 

「最初は泣き虫かと思ったが・・・本性がねえ・・・。」

 

 私はサムスとの出会いで決意した。

 

 あいつを追いかけると!!

 

 そして、再会したら全力でぶん殴ってやる。

 

 ヒム兄直伝の闘気拳(オーラナックル)で!!

 

 まあ、破壊力は本家には流石に劣るから。

 

 オリハルコン製のナックル使うだけだし。

 

「おっ・・・お願い。あんたのその左拳だけは勘弁して。」

 

「かっ・・・神の左・・・。」

 

 確かチェルシーとシューレを止めたのも私の拳だったか。

 

 でも神の左って大げさだよ。

 

 ヒム兄からもそう言われたけどそんな大した拳じゃないわよ。

 

 私の左は大魔王ですら殴り飛ばすって・・・まあポルムをちょくちょく殴りとばしてはいました。

 

 アイツ最強のカウンター技?あれすらもぶちやぶった。

 

 ポルムが「まさか単独の技で余の奥義がやぶられるとは・・・。」茫然としていたのを初めて見たわ。

 

 でもそれとこれは絶対に違う・・・はず。

 

 そう言えば旅立つ前にやった左拳のカウンターを見たら父さん、ヒム兄、驚いてわね。でも、そこにラ―ハルトおじ様やアバン先生すら目を点にしていたわ。

 

 あれってそんなにすごいの?

 

 アバン流の奥義って何?

 

 先生はもう・・・武術と心構えで教えることは何もないって太鼓判をもらったし。

 

 剣は右だけど、拳は左なんだよねえ。

 

 そう言ったら何それ?怖い・・・。

 

 ってみんな言うたびに引いていたけど。

 

 確かに右手の剣で色々と斬って、左拳でぶん殴ってきたわよ?

 

 私の装備って、右のバスタードソードと左腕の篭手のような小型の盾。そして、左拳のナックル。

 

 二つともポルムが残してくれた私だけの武器。どうも鎧の魔剣と鎧の魔拳を参考にしたらしい。

 

 滅茶苦茶重いと思ったら、二つともオリハルコン製だからびっくりした。

 

 私専用として作ってくれたらしい。

 

 えっ?今はどうかって?

 

 ・・・もう体の一部だよ。はははは・・・あいつのせいで私、怪力少女になったわ。

 

 ははははははは・・・うん。

 

 私・・・この剣とナックルがオリハルコンだと知ってから決意したことがあるわ。

 

プレゼントしてくれたこのナックルで絶対に殴り飛ばす!!

 

 何が悲しくて力だけならこのメンバーの中でナンバー2にならないといけないの。

 

 おまけにもう一つ切り札も習得しましたし。

 

 父さんのあれ・・・やばいわ。

 

 今の私があれをやっちゃうと・・・うん。

 

 もう一つの切り札も合わせるとヤバいわ。

 

「人外ばかりの旅だわ~さあ・・・次は・・・。」

 

 私達はポルムを追いかけて旅を続ける。

 

 出てきたのは変な空間。色々な残骸が散乱している世界。

 

 そして、私達は遭遇してしまう。

 

「・・・・・・うわ・・・。」

 

 それは巨大な紅いドラゴン。

 

 でかいだけじゃない。

 

 その身にとてつもない力を感じる。それこそ神すらも軽くしのぐような・・・。

 

 同じドラゴンの血を引くと、わかっちゃうわね。

 

 どうする・・・それでもこのメンツなら退かす事くらいはできるけど?

 

「あの方、私達を見て警戒しています。」

 

 リースが解説を入れてくれる。

 

 あんたのドラゴンマスターとしての能力を使っているのね。

 

「どうも最近変な連中が沢山やってくるのにうんざりしているようで。」

 

 こういう時すごく便利だわ。

 

「・・・事情を話そうか。どうやらこの空間の主みたいだし。話は分かるのよね?」

 

「ええ。かなり気が立っているのですが、唄で静めます。」

 

「頼むわ。いらない争いはしたくないし。それにやってきた変な連中の事も聞きたいし。変な連中の退治も手伝ってもいいし。」

 

 私達はそのドラゴンがグレートレッドを呼ばれる偉大な存在であることをまだ知らない。

 




 新キャラ登場にしてポルムの罪を公開です。。

 彼は別の意味で色々とやらかしているのですWW

 そして、彼女たちがどうやってこの世界に来るのかもこれで確定です。

 


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ゲーム前夜 皆の決意です。

 連続投稿第二弾

 今回はゲーム開始前夜までです。

 さあ・・・皆の決意を見てください。




 SIDE イッセ―

 

 俺達は部室に集まっていた。

 

 その理由は前回のレ―ディングゲームでの俺達のステータスを見ることになったのだ。

 

 ちなみに始さんの処遇はすぐに決まった。

 

 剣崎さんの友と言う事で・・・また部長が使い魔にしました。

 

「ふふふふふ・・・これでさらに戦力増強よ。」

 

 部長、簡単に使い魔にしましたけど・・・始さん、とんでもなく強いですよ?それこそ剣崎さんと互角なレベルで。

 

「ちかく、エイジさんも来ることは決定している。戦力はどんどん集めたいの。敵も厄介だし。」

 

 しかも学校の用務員第三号になったし!!この学校、イケメンの用務員が三人もいるってネットで話題になっていますよ!?

 

 四号もすでに内定。ははは・・・うちの学校の用務員もまた一味違うぜ。

 

「助かる~。一人では手が一杯だったんだよ。でも・・・結構手慣れているな。」

 

「お前を探している時に色々あった。こちらも永く旅をしてきたからな。」

 

 どうも始さんも何かを持っている。

 

 うちの眷属・・・相当強化されていないですか?

 

「・・・俺はやらかしてしまったと思っている。」

 

 俺達のデータにアザゼル先生は頭を抱えている。

 

 グレモリ―眷属は典型的なパワーだとされていた。

 

 だが・・・良太郎と俺がそれをかなりの部分でカバーしていることが判明したのだ。

 

 ゼノヴィアはテクニックも改善されている。牙突を必殺技にしたのが相当功を奏した結果だ。もちろんパワーはさらに増強されているが。

 

 佑斗は防御面の改善。スピードとテクニックのさらなる強化が目立つ。パワーも向上しているし、テクニックタイプとしてバランス良く、順調に成長している。

 

 小猫ちゃんはマジックも含め、高いレベルでバランスが取れている。

 

 朱乃さんは全く手札は見せなかったけど、マジックが異常に高くなっている。どうも修行中にさらに磨いたようだ。

 

 部長は・・・・。

 

「・・・・・・・・ははは・・・。」

 

 部長、素で新人悪魔第二位のパワーを誇るようになりました。眷属内では素の状態の俺を抜いてナンバーワン。

 

「ハハハハハハハ・・・修行の成果がでたわね。」

 

 おそらくサイラオークさんと素で殴りあえるレベル。部長もダントツのパワーだ。

 

「後悔はしていない・・・って言いたいのに、なんだろう・・・この悲しさ。何か大切な物を失った気が。」

 

 部長、笑っているのに涙がほろりと。

 

 大丈夫ですって・・・素敵なおっぱいは全く変わっていませんから!!

 

「・・・お前さんの拳は俺も受けたくねえな。」

 

 拳の破壊力その物は素のサイラオークさんですらしのぐと。何か変な技を良太郎より教えてもらい再現したらしい。

 

 踏みつけるだけで地割れどころか、床が一斉に粉々の砂になることと関係あるのか?

 

 魔力を込めればどんな結界も粉々になるらしいし。

 

 スピードは良太郎がダントツ、時点が裕斗だ。

 

 特に良太郎のスピードは異常だ。佑斗はナイトとして随一と言えるスピードを誇っている。

 

 でも、普通の兵士であるはずの良太郎のスピードはサイラオークさんすら超えると出ている。

 

 スピードだけなら新人悪魔の中で断トツと言う恐ろしさ。パワーは平均。でもテクニックも最高クラスなのだから性質が悪い。

 

 これにあの切り札があるから始末が悪い。

 

「僕も負けていられないね。」

 

「私ももっと突きを鍛えねば。」

 

 剣士三人が燃えている。

 

 俺は変身前のステータス。

 

 パワーに秀でていると思いきや・・・。

 

「テクニックが測定不能?」

 

 俺のテクニックの数値がサイラオークさんの馬鹿げたパワーと良太郎のスピードすら突き抜けた状態。

 

 可笑しい。

 

 どうしてこんなに・・・。

 

「アギトの本能のせいだ。」

 

 アザセル先生が頭痛そうに俺を見る。

 

「前の戦いでお前は幾つも奇跡としか思えないテクニックを使っただろ?あんなの魔王どころか神すら出来ねえ芸当。そんな事をしでかすお前への冥界上層部からの適切な評価だ。パワーそのものですら、下手なパワータイプを軽く蹂躙するくらいの物があるのに、反則もいいところだ。」

 

 テクニックタイプですか・・・。禁手化しない俺ってそうなるの?

 

 俺は首をかしげていた。

 

 だが先生も同じく首をかしげていた。

 

「だが・・・それでも異常でもある。まるでお前が数千年もずっと闘い続けてきた様な異常なまでのテクニックを見せるようになってきた辺りが・・・。」

 

 修行で確かに多くの先輩達を手合せはした。

 

 でも修行終了前には先輩達ですら舌を巻くほどのテクニックを俺は身に付けていたのだ。

 

 誰もおしえてもらってない技すらも。

 

 まるで誰かの経験をそのまま己の物としたような・・・。

 

「もしかして・・・覇と・・・。」

 

 アザゼル先生は俺の左腕に現れたブースデットギアに軽く触れながら考え込む。

 

 一体何を考えこんでいるのだろうか?

 

 考え込んでいると言えば最近ドライクとクレアが良く神器の中に入り込んでいる。

 

 どうも想定外の事が発生したから、それを修正するらしい。

 

 クレアも慌てていたし・・・。一体何が起きているんだ?俺の身体に?

 

「やり過ぎた・・・といいてえが、これくらいが良かったと思うべきか。アーシアといいお前といいアギトって恐ろしいもんよ。」

 

 ちなみにアーシアのステータス?

 

 すべて計測不能。

 

 それが答えだった。

 

 アーシアだけは今だ全貌わからず。

 

 ギャー助もまた全貌わからず。

 

 レ―ディングゲーム出場禁止にもなるほどだ。

 

「それで・・・この後の試合だが・・・。」

 

 前回反則負けとなったゲーム。次こそは勝つと皆は張り切っていた。だがその相手が・・・。

 

「よりによってディオドラなのね。」

 

「・・・・・・。」

 

 その言葉に巧が表情をこわばらせる。

 

 その理由?

 

「・・・前回のゲームの映像だ。」

 

 アザゼル先生も苦虫をつぶしたような表情をしている。

 

 その理由は・・・映像を見て明らかになった。

 

 ゲームの終盤。キング同士の戦いになった時だった。

 

 異常な力を発揮し、シ―グヴァイラさんを圧倒したのだ。

 

 魔女の修行を積んだはずの彼女はそこらの悪魔とは一線を画す実力を持つにも関わらず。

 

 しかもシ―グヴァイラさんは何故か実力を発揮できない。体の動きがわずかな差だけど可笑しいのだ。

 

『・・・・・・・。』

 

 当然、同じ魔女である朱乃さんもユウナも気付いている。険しい表情を浮かべている。

 

 そして、倒れ伏せたが何故かリタイアが作動せず。

 

 リタイアシステム不調と表示がでている。それでも明らかに戦闘不能になっていたのだ。

 

 だが、そんなシ―グヴァイラさんを高笑いしながらディオドラが容赦なく攻撃を仕掛ける。

 

 殺しても構わないといわんがかりに。蹴りとばし、殴りたりと・・・。

 

 そこに止めと言わんばかりにディオドラが魔力を込めた渾身の砲撃を仕掛けてきたが・・・。

 

 それを止めたのは、巧だった。

 

 ゲームフィールドをクリムソンスマッシュでぶち破りながらディオスドラの攻撃を止めたのだ。

 

 倒れたまま動かないシ―グヴァイラを抱き起こし、巧は去ろうとする。

 

 そこにディオストラが攻撃をしかけようとするが・・・変身を解除し、シ―グヴァイラさんを御姫様だっこしたまま巧があいつを睨みつけたのだ。

 

 それにディオドラは攻撃を止める。ふざけた笑みが恐怖へと変わったのだ。

 

 どんな表情をしたのかはここから見えない。

 

 だが、その後で今度はウルフオルフェノク・・・それも激情体に変わったことからある程度は察することができるぜ。

 

 しかも、その後ろからザムシャーさんまで現れたのだから・・・ディオドラは手を出さないでいた。

 

 何故か起動しなかったリタイアシステムの代わりに巧がシ―グヴァイラさんを医務室へと連れて行く。

 

 風の様な速度で。

 

・・・・・・・。

 

 この光景を見て俺達は納得していた。

 

 なるほど・・・だから今朝から巧がすごく怖かったわけだ。

 

 そして、アーシアが姿を現す。

 

「治療終わりました。あと十二時間と二十五分ちょうどで眼を覚まします。」

 

「・・・ありがとう。なら安心だ。」

 

 意識不明の重体だったシ―グヴァイラさん。その治療を巧がアーシアにお願いしたのだ。

 

 ・・・・・・ちなみに意識覚醒の時間がすごく具体的な事については突っ込まないでおく。

 

 だってアーシアだから。それが俺達の新たな共通認識だ。

 

「みんな・・・頼む。絶対にあいつに勝ってくれ。」

 

 巧は俺達に向けて頭を下げる。

 

 ゲームで戦って負けたことは仕方ない。だがリタイアシステムの不調につけこみ、シ―グを殺そうとした事はどうしても許せないのだ。

 

 だが、巧はレ―ディングゲームに出れない。

 

 それ故に俺達にお願いしたのだ。

 

 勝ってくれと。

 

「・・・ええ。同じ魔女として、必ず仇は討つわ。」

 

「私も修行を手伝う。あいつだけは許せない。呪いを使ってくるなんて・・・。」

 

 朱乃さんとユウナの怒りはもっともだ。

 

 本当に魔女同士の絆は強い。

 

 どうも不調だったのは呪いのせいらしい。

 

「・・・・・・魔女に呪い・・・。確かに変だな。それにあいつ自身の異常なパワーアップも可笑しい。きな臭いぜ。」

 

 アザゼル先生は唸っている。

 

 俺たちも同じことを思っていた。そして、その理由は何となく察してもいたのだ。

 

「・・・オーフィスの蛇・・・か・・・。」

 

 巧に続いて今度は渡か・・・。凄味がでているぞ。

 

「一応、調査している。あいつの化けの皮・・・はがしてやる。」

 

「こちらもすでに情報戦は開始している。いままで培った伝手を今度こそ全力でやらせてもらう。」

 

 アザゼル先生と渡はすでに情報戦を開始しているってわけですかい。

 

「みんな・・・やる気は十分だな?」

 

 当然のように頷いてくれる。

 

 俺達は戦いを決意していた。

 

 今度は色々な意味で勝たないといけない。

 

 どんな制限が掛かるのか怖いところだけど。

 

 

SIDE ドライグ

 

 俺達は神器の中で人としてのかりそめの姿をとって立っていた。

 

―――――アギトの本能・・・。相棒はきづいていないだろうが・・・過去の亡霊達の戦闘経験値まで吸収し始めているのだぞ?

 

―――――えっ?それって本当?

 

 俺は神器の奥に眠る歴代赤龍帝の残留思念の事をすでにクレアに話していた。

 

 それが覇龍の元にもなっている。

 

 相棒は無意識のうちに覇に触れている。

 

 歴代赤龍帝の経験値すら己の物にするのはもちろんアギトだからだろう。

 

 残留思念。それをサイコメトリ―のように読み取り、己の血肉と化している。

 

 そんな無茶苦茶な現象に呆れて溜息がでてくる。

 

 アギトだから・・・。最近それだけで色々な不思議現象が説明できる。

 

 我が相棒ながら規格外もいいところだ。何やらかしても驚かないつもりだった。

 

 だが、それでもまた驚かされる。

 

 相棒はどうもアギト以前にとんでもない星の下に生まれていたようだ。

 

――――今、覇龍を発動させた時、何が起こるのかこちらは想像もできない。こいつのせいでな。まさか覇龍の中に紛れ込んでいたとは。

 

――――それは私も感じていた。眠ってはいるみたいだけど・・・。何かがいるとは薄々感じてはいたわ。人ではない強大な存在が・・・。

 

 相棒すらもまだ気づいていない何か。それが相棒へと私が移った時に入り込んでいた。

 

 ただ分かっているのは、まだ眠っているが・・・

 

―――あれは怒りの化身だろうな。

 

――――えええ・・・。なんとかしないと危ないわ。私達でもあれを御することはできない。危険すぎるわね。

 

―――ああ・・・。こいつが目覚めると大変なことになるぞ。最低でも竜神クラスはある。何でそんな危険な存在が相棒の中に・・・。

 

 今俺達は神器内でその存在を何とかしようとしている。

 

 黒い巨体を誇る怒りと破壊の権化を・・・。

 

 

 

 

 

SIDE  ???

 

「久しぶり・・・まさかあなた達と再会できるなんて・・・。」

 

 その頃私達は旧交を温めていた。

 

「うん。マミさんも元気そうで・・・。」

 

 私はこの世界で魔法少女の仲間と再会できた。

 

「マミさんが来てくれるなら百人力だよ。」

 

 まどか・・・。

 

「あんたがヴァルキリ―なんてな。」

 

「お互い凄いところにきたわ~。」

 

 さやかさんに杏子さん。この二人が天界のスタッフとしてこの家に住む事になった。

 

 それはまどかの家である。

 

「・・・歓迎するよ。だからリボンはほどいてくれないかい?」

 

「・・・あなたにはお仕置きが必要ですから。」

 

 ただ、そのまどかがあのままの姿で結婚、そして子供までいると言うとんでもない事態には面食らったわ。

 

 今その犯罪者をリボンで縛りつけている。

 

 私がまどかの事を聞いて、すぐにその翔一さんがでてきたわ。

 

 その時・・・私は遠慮なく「ティロ・フィナーレ」と言ってかましてやったわ。

 

 私はその時の一撃を全く後悔していない。

 

 でも、それで焦げた程度なのは悔しかったわ。

 

 それはもう心底。

 

「あの・・・僕はまどかだからいいわけで。決してロリコンじゃ・・・。」

 

『・・・・・・。』

 

 翔一さんっていうのでしたね。その弁明にさやかさんと杏子さんも冷たい視線を送り続ける。

 

「まだ納得できてねえ・・・。」

 

「犯罪者としか思えねえし。」

 

「そっ・・・そんな!!」

 

「はあ・・・今も私は娘を妊娠しているというのに・・・。うっ・・・きもちわる~。」

 

「大丈夫かい?」

 

・・・・・・。

 

 私の拘束をあっさり抜けて翔一さんはまどかに駆け寄る。

 

その気になればやっぱり抜け出せたか・・・。

 

 それも簡単に。

 

「しかたないって。多分まどかと同格の力を持っている人だから。」

 

 悔しいけど、納得もしてしまう。

 

 だからまどかさんを助けることができたのだと。

 

「・・・でも力その物は完全じゃない。まだ翔一君の力を一部借りているし。」

 

 結婚し、この世界の神の後継となる息子を産んだまどか。

 

「・・・あの子がまどかの息子か・・・。私、すごく歳とった気分になったわ、」

 

「いわないでくれ。」

 

「ははははは・・・だが、いい奴だぜ?かなりえろいけど・・・。」

 

 エッチな子だけど、逆に欲望は生きたいという気持ちの表れ。

 

「むしろ、英雄、色好む・・・か。はあ・・・新君ももっとそう言う事に持ってくれれば・・・。はあ・・・私がいながら・・・」

 

『・・・・・・・。』

 

 あっ・・・あれ?

 

 なんか他のみなさんが・・・。

 

「へえ・・・マミさんは歳下がお好みですか・・・。」

 

 ばっ!?

 

 私はとっさに己の口を手で押さえた。

 

 でももう遅い。

 

「ヴァルキリ―が神の子を愛する・・・いい話じゃないですか。ははははははは。」

 

 しっ・・・しまった余計なことを・・・。

 

 他三人の興味深々な笑顔がこちらに向けられる・・・。

 

「じっくりと聞かせてもらうよ。安心して、結界はあるから。」

 

「・・・やれやれ。だったらこっちは席をはずそう。何か茶受けでも作ってこよう。」

 

「翔一君、お願いね・・・ふふふふふ・・・。」

 

 まどかの笑みに凄味がある。まるで獲物を捉えた虎・・・いえ、ドラゴンの様な笑み。

 

 にっ、逃げられない!?

 

 この後・・・私は新とのことをじっくりと尋問されました。

 

 はははははははは・・・まどか。あなたは確かにお母さんになったわ。

 

 恋愛に関してここまで余裕を持つなんて・・・。

 

 

 

SIDE  アーシア

 

 明日はレ―ディングゲームの日。

 

 色々あって体育祭と重なりましたけど・・・。

 

 体育祭では私はイッセーさんと二人三脚に出ます。

 

 運動は得意じゃないけど、こっちも明日に備えて一生懸命練習してきました。

 

 目指せ一番です。

 

「アーシア・・・。」

 

 私が月夜を見上げていた事に気付いたのでしょう。

 

 ゆーすけ兄さんがベランダにでてきました。

 

「眠れないの?」

 

「色々と・・・明日は大変なことになりそうですから。」

 

「・・・・・・。」

 

 その言葉にゆーすけ兄さんから不安の気持ちが現れます。

 

「分かっています。きっと明日のゲームで大事件が起きますから。」

 

「・・・・・・っ!?アーシア・・・それを分かっていてどうして・・・。」

 

 私は微笑みます。

 

「だって・・・みなさんを信じていますから。どうあがいても私は誘拐されます。そこから先は予知できていませんけど・・・イッセ―さん達や兄さんがいるなら・・・。」

 

「・・・・・・アーシア、君は・・・。」

 

 ゆーすけ兄さんの身体から諦めにも似た様子で力が抜けます。

 

「君は・・・なんて強い。」

 

 私が・・・強い?

 

「少なくても、今まであってきたどの人よりも君は強い。誰よりも心が・・・。」

 

「・・・・それは兄さんも同じです。」

 

「へっ?」

 

 私はゆーすけ兄さんを抱きしめます。

 

 私はすでにある程度読み取っていました。

 

 ゆーすけ兄さんがたどった軌跡。クウガの力を得て殴り・・・殴られる痛みに耐えながらずっと戦い、そして戦い抜いてきたことを。

 

 そのすべてが抱きしめることで伝わってきます。

 

「私は兄さんの妹である事を・・・・・・誇りに思います。」

 

「・・・ッ!?」

 

「だって・・こんなにも強く、優しい兄さんですから。」

 

 兄さんの瞳から何かがこぼれます。

 

 それが何かは・・・あえて気づないふりします。

 

 だって・・・それだけ兄さんは頑張ってきたのだから。

 

 本当に私よりも強いと思えるくらいに。もう戦わなくていいし、出来れば戦ってほしくないと思っています。

 

 でも、それが出来ない。

 

 そんな現状・・・私が変えないといけない。

 

「何があっても必ず君を助ける。だから・・・。」

 

「はい・・・。アザゼル先生、渡さん、ポルムさん・・・皆をお願いします。」

 

「・・・チェ・・・気付いていやがったか。」

 

「・・・・・・ごめん。多分これが、最善の手だから。」

 

 アザゼル先生と渡さんが屋根の上からベランダへと飛び降りてきます。

 

「みんなにはあえて知らせてねえ。だが・・・何かあったら・・・。」

 

 そして唐突にアザゼル先生は土下座までして私に謝ってきたのだ。

 

「本当にすまねえ。巧の命の恩人を危険にさらすことになる。だから、この作戦、俺の方も命をかけさせもらう。」

 

 先生にとって、断腸の思いだったのでしょうね。だからこそ・・・。

 

「・・・先生を信じています。だからこそ、先生ってみんなから慕われるのですね。」

 

 非情な決断もできる方です。心がどれだけ悲鳴を上げても。

 

 でも、それを己の命をかけてやりとおすだけの人です。

 

 先生が堕天使の長でよかった。

 

「・・・ああ。サーゼクス達にも連絡はしてある。出来る限りのことはもうやった。」

 

「安全のために・・・こちらも策がある。これを・・・。」

 

 ポルムさんがあるカードを渡してくれます。

 

「これは身体に直接収納できる。だから・・・。」

 

「ありがとうございます。切り札になりそうです。後・・・もう一人攫われますので覚悟してください。」

 

「もう一人?」

 

「そのための切り札を・・・剣崎さんがすでに持っています。朝の間に渡すように言ってください。そうでないと・・・最悪の未来が・・・。」

 

 明日・・・私は攫われる。

 

 もう一人、私の友達も・・・。

 

それでも、私は決着をつけないといけない。

 

 こんな時に肝心のあの子が・・・。

 

「アカリちゃん・・・繭になっちゃったから・・・。」

 

 アカリちゃんは今とんでもない場所で繭になっていた。

 

 その場所は・・・世界樹ユグドラシル。

 

 アカリちゃんがおっきな木のあるところで繭を作りたいとリクエストし、新さんのおかげなのか、世界で断トツに大きなユグドラシルの根元で繭になりました。

 

 北欧神話の方々にはすごく迷惑をかけていますね。一応、新さんのお姉さんが警護に着いてくれているので問題ないといってくれています。

 

 羽化したらその姉さんごと飛んでくるとも。

 

 もうすぐ、アカリは成虫へと変化します。ゲームに間にあうか微妙ですけど。

 

 それが間に合えばいいのですけど・・・。アカリがいないと大変なことになります。

 

「みんな・・・明日はよろしくお願いします。」

 

 決戦は明日。

 

 

 

 

 

 

SIDE  イッセ―

 

 

 アーシアは決意している。それを耳にしながら俺は考え込んでいた。

 

「明日・・・何かが起きる・・・。」

 

 アーシアの様な予知はこっちにはできない。でも、明日、何か重大な事件が起きようとしている事だけは間違いなかった。

 

 アギトの勘が激しく警告を発していたのだ。

 

 そのために、今日は休む。明日のために・・・。

 

 そんな時、地下道場に人の気配があったのでそこに立ち寄った。

 

 数々の人外共の手合せに耐えられるようにとにかく頑丈に作られたそこにいたのは二人。

 

 一人はゼノヴィア。

 

 もう一人は良太郎だった。

 

 二人は木刀を構えている。

 

 良太郎は木刀を下に垂らすようにして楽な構え。

 

 ゼノヴィアは半身を引き、例の牙突の構えを。

 

 二人の姿がそのまま消える。

 

 そして、闇夜の中で二つのぶつかり合いが巻き起こる。

 

 現れたのはすれ違った二人。

 

「・・・・・・突撃のスピードだけならお前に引けをとらないな。」

 

「複数の斬撃のおかげで牙突の弱点を完璧にカバーしている。まさに驚異だよ。しかも、あまりに速くてかわしきれなかったし。」

 

 瞬時の激突。ゼノヴィアは三連撃の牙突を放ったのだ。

 

 それを交わしつつ回転し、カウンターを決めようとする良太郎だが、それをあらかじめ背後から現れた二つの斬撃が防ぐ。

 

 刹那の間の攻防。それでも防ぎきれなかったのか、ゼノヴィアの背中の服が少し裂けている。

 

 最も良太郎も道着の脇が斬り裂かれているが・・・・。

 

「今は同時に五つ。これくらいしないとお前達に対抗できないから恐ろしい。」

 

「全く、これをデュランダルでやったらどれだけになるか。」

 

「・・・お前達・・・すげえな。」

 

 俺は思わず声をかけていた。

 

「みていたのか?」

 

「ああ。こっちには到底できない領域だったけど。」

 

 間違いなく二人は剣士として超一流の実力を持っている。

 

「アーシアを護るためにな・・・。あいつはこの世界での大切な友達だから。」

 

「えっ?」

 

「嫌な予感・・・感じているのが自分だけだと思った?」

 

 良太郎の表情が険しくなる。

 

「前世の勘もあるが・・・必ずあいつがなにかかけてくる。何かが起きると・・・。」

 

「他の皆も感じているはずだよ。まあ、前世の分も含めてみんな修羅場をくぐり抜けているからね。何となく分かっちゃうよ。」

 

 そうか・・・他のみんなも明日のことを・・・。

 

「脅威から逃げることはできない。でも、立ち向かう事くらいはできる。前世は男、今は女!!それでもこの世界の大切な友達に変わらないんだ。アーシアは・・・。」

 

 ゼノヴィア・・・お前・・・。

 

「姉さんが頑張っているんだ。こっちも張り切らないとね。」

 

「へへ・・・そういうことだ。」

 

 道場に誰かが入ってくる。

 

 それは・・・良太郎が契約しているイマジン達。

 

 モモタロス。

 

 ウラタロス。

 

 キンタロス。

 

 リュウタロス

 

 そしてジ―ク。

 

 そしてそれにデネブが加わる。

 

「戦略ならこっちが得意とするところ。任せてほしいね。覚えたての新しい力を発揮したいし。」

 

「よっしゃ!!鬼の力をみせたるかい!!」

 

「踊りながら撃つよ。お姉さん達から凄くハッピーな撃ち方をおしえてもらったんだ。」

 

「さて・・・華麗にいこうか。」

 

 そう言えばイマジン達も強くなったっけな?一体何を習得してきたと・・・。

 

――――――・・・我々の目覚める時が近づいているということか。

 

―――――きゃはははっ・・・いいねえ。楽しみだよ。

 

『!?』

 

 この場にいない二つの声が聞こえてきた。

 

 しかも、ゼノヴィアから。

 

「・・・どうやら本当に私の中に別のイマジンが憑いているみたいだな。」

 

 ・・・・どうも不安要素だらけで困る。

 

 しかも、ゼノヴィアの奴呑気にそれを受け入れていやがるし!!

 

「な~に。いざという時に役に立ってもらうさ。宿賃位は貰わないと。」

 

『・・・・・・。』

 

 何と豪胆な考え。

 

 ただそれに呆れることしかできなかった。

 

 

 そうして、俺がリビングへと飲み物を取りに行くとき・・・。

 

「・・・覚悟はしていたわ。」

 

 リビングでイリナの声が聞こえてきた。

 

 話しているのは・・・ミカエル様と剣崎さん?

 

「そうか、すでに君は・・・俺達と同じ・・・。」

 

「・・・うん。」

 

 イリナが軽く自分の腕を傷つけると・・・。

 

 流れてきたのは赤ではなく・・・緑の血・・・。でもすぐに赤になり、それと共にすぐに傷がふさがる。

 

「・・・アンデット化していたのか・・・俺と同じで・・・。」

 

 剣崎さんはあらかじめ確信していたのだろう。

 

「それを天使として・・・私のエースとして迎え入れました。イリナさん、今のあなたは上級天使でもあり、そしてアンデット、それもジョーカーでもある特異な存在です。」

 

「言うなればエンジェルアンデット。天使達の始祖と言える存在・・・ということか。」

 

「・・・イリナ。」

 

 その隣では弦太郎が心配そうに話しかけている。

 

 どういうことだ?イリナがアンデットって?天使になったわけじゃ・・・。

 

――――おそらく、あのカードの影響だろう。

 

 おっ・・・ドライク戻っていたか?

 

 ドライク達は最近神器の奥に潜ることが多く、首をかしげていた。

 

 どうも覇龍を抑えるために色々とやっているらしい。

 

―――こっちもできることはしたわ。でも・・・

 

――――不安要素はてんこ盛り。

 

 まあ・・・それはおいおい何とかなるだろう。それよりもイリナの今の状態って・・・。

 

―――――剣崎殿と同じだろう、

 

 剣崎さんって、確かアンデットカードとの融合係数が高すぎる故に、その力で人からアンデットになってしまったって・・・・っ!?

 

 それで気付いてしまった。

 

 イリナは生身でカードを使用できる。それはつまり剣崎さんよりもさらに融合係数が高いということ。

 

 つまり・・・。

 

――――あの子はすでにアンデット化が進んでいた。それも本人が気付かないレベルでゆっくりと・・・。

 

――――それが、天使化による転生で・・・。

 

「だから私の腰にこれがあるわけか。」

 

 腰には剣崎さんや始さんと同じ碧のカードリーダーがある。

 

「・・・・・・・・。」

 

 だが、首を横に振って気丈にイリナは応える。

 

「でも、ある意味今更。」

 

 今更って・・・。

 

「だって、人を止める決意はすでに決めていたわ。それがジョ―カーの力を得た天使になっただけのこと。見た目の変わらないのが救いだわ。」

 

「イリナ・・・。」

 

「ただ・・・少し怖い。イッセ―君や、他の皆がどう思うか・・・。」

 

 そこに俺はドキッとしてしまった。そうだった・・・イリナって俺のことを・・・。

 

 でも、戻ってきてアプローチがあまりないなと思っていたけど、それが背景にあったのか。

 

「・・・はあ・・・そうか。だが、それすら今更じゃねえのか?」

 

 弦太郎は呆れていた。

 

「すでにイッセ―はお前と同じ立場の剣崎さんや始さんと仲がいい。アンデットと言う存在も十分理解している。それに・・・お前は一人にならねえ。この世界でよかったぜ。」

 

「そう・・・だったわ。でも、怖い・・・。」

 

「・・・だったら、明日おもっきりぶちまけろ。いい機会だし・・・。」

 

 そんな不安そうなイリナの前に一杯のお茶がおかれる。

 

 置いたのはゼ―ベス星人のガブさんだ。

 

「飲んでください。落ちつきますよ。」

 

「うっ・・・うん。」

 

 それを口にするイリナ。そのお茶に・・・。

 

「おいしいわ・・・。」

 

「そうですか。よかった。この世界のお茶と言う物を調べ、私なりに今の状況に最善の組み合わせを考えたので・・・。」

 

「気分も落ちつく・・・。」

 

「良かったです。ポルムさんに簡単な錬金術をならって甲斐が・・・。」

 

『・・・・・・。』

 

 平然と行われる会話に俺達は驚いている。

 

 見た目はかなり怖いゼ―ベス星人。

 

 だが、その内面が確かに変化している。

 

「この家は私の様な者でも受け入れてくれました。アーシア様だけじゃなく、他のみなさんも・・・だから大丈夫です、イリナさん。」

 

 ガブさんは励ましていた。

 

「イッセ―さんなら受け入れます。あなたと言う存在は何も変わっていませんから。」

 

「・・・・・・グス。」

 

 その言葉にイリナさんが涙目になり、そのままガブさんに抱きつく。

 

「・・・あなたと出会えてよかった。そう思えるわ。」

 

「それは私もです・・・弦太郎さん。」

 

 ガブさんはあえて人間、それも女性に変身して告げる。

 

「あなた言った友達の意味・・・分かった気がします。本当にいつの間に・・・。」

 

「・・・ああ!!」

 

 弦太郎の奴が笑顔を見せる。

 

「ふっ・・・あなたを天界の切り札にしてよかった、本当に・・・。」

 

「こうやって分かりあえて行くのか・・・。アンデットですら・・・。」

 

「ああ・・・。」

 

「もう・・・。」

 

 イリナは涙をそっとぬぐって言う。

 

「ガブさん。そのお茶の創り方教えて!!」

 

「えっ?いいですけど・・・。」

 

「じゃあ早速部屋にGOよ!!アーシアとゼノヴィアにも飲ませたいし。」

 

 そう言って二人はリビングから出ていく。

 

 それはもうどう見ても・・・ただ中の良い友達にしか見えない。

 

 そして、剣崎さんと始さんはミカエルさんと一緒に出ていく。

 

 弦太郎はリビングのソファーで軽く何かを考えている様子だった。

 

 まったく、俺は卑怯かな?

 

「いや・・・そのまま居てくれてありがとよ。」

 

 弦太郎がこっちを見ずに声をかけてくる。

 

 俺がのぞいているのに気づいたのか?

 

「一応、フォースを学んでいてな。ダチの気配にはこれでも敏感なんだぜ?」

 

「ったく・・・お前には負ける。」

 

 苦笑しながら俺はイリナと入れ替わる形でリビングに入る。

 

「・・・安心してくれ。ちゃんとイリナの事は見ている。」

 

「そうか。なら安心だ。」

 

 皆が色々と抱え込みながら夜は更けていく。

 

 でも、俺達のやる気には変わらない。

 

 

 

 SIDE ???

 

 いよいよ明日。

 

 邪魔なアギトどもを一掃できる最大のチャンスがやってくる。

 

 旧魔王派の者達も存分に暴れてくれる。

 

 そして・・・。

 

「誘拐成功の確率95%。」

 

 巨大なガラス容器に入った一つ目がついた脳みそみたいな怪物。

 

 名前はマザーブレイン。

 

 その力は重宝させてもらっている。

 

 性能を強化したおかげで、われわれの頭脳として役に立っている。

 

「スペースパイレーツ復活の狼煙を上げます。」

 

「いいぜ。部下はこっちが丁重につかってやる。」

 

 私の隣では牙王が張り切っている。

 

 己の母艦の乗組員のめどがついた事に大変満足している様子。

 

「アギトに関しては我らが・・・。」

 

 私の傍に現れる水のエル。

 

「あなたの任務はただ一つ。分かっていますね?」

 

「ハッ・・・アギトを狩ること。それが使命。もう一人のエルと共に・・・。」

 

「ギャハハハハは!!頼りになりますね~。アギトハンターと言える使徒がでてくるのですから。」

 

 ザボエラが水のエルの存在に歓喜の声を上げる。

 

「ふん・・・。だが勘違いするな。我々がお前達に従っているのは・・・。」

 

 そこに現れる三人の悪魔。

 

 それは旧魔王派の者達。

 

「わかっているよ。望んでいるのだよね?君達が魔王として君臨する世界を。そんな世界にすることを私は約束するよ。」

 

「それならいい。悪魔らしく生きれる世界であれば・・・。」

 

 そのうち一人・・・カトレアが・・・。

 

「いよいよ・・・なのね。」

 

「ああ・・・。いよいよ始まる。」

 

 アルビノジョーカーと手を取り合い見つめあっていた。

 

 あの二人・・・。

 

『共に新しい世界を・・・。』

 

 悪魔とアンデットの愛・・・ですか。

 

 種族を超えた面白い物を・・・。

 

「・・・いよいよですか。新たなバトルロイヤルの開始は・・・。」

 

 明日・・・冥界で戦争が勃発する。

 

 そこで神となろうとしている二人のアギトを始末する。

 

 必ず・・・。

 




 まだ続きますが、この時点でアーシアはある程度何が起こるのか察しています。

 それでもその余地をした上で皆を信じているのです。

 そしてイッセーの中に眠る謎の存在。

 それがこの章で大暴走します。


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ゲーム開始の罠と同志達。

 連続投稿第三弾。

 これが本日最終です。

 いよいよゲーム開始です。


 

SIDR  イッセ―

 

 ついにやってきた体育祭。

 

 でも・・・やってくるメンツが濃すぎる。

 

「えっとスペシャルプログラムとして・・・用務員三人集に面接に合格し採用が決定した用務員さん達による応援ダンスパフォーマンスを・・・。」

 

 運動会の冒頭でとんでもない物を見せられた。

 

 えっと・・・用務員四人集?って誰の事だって?

 

 剣崎さんにゆーすけ兄さん、始さんに・・・それにエイジさんが加わった四人だよ。

 

 あの四人、すげえダンスを披露したんだ。それこそ…新体操選手すら脱帽するレベルのアクロバットを含めて。

 

 どうやったら空中で五回転できるの?しかも余裕で・・・。

 

 なんか四人でユニット組んでみてもいいじゃねえのか?アイドルグループみたいな感じで。

 

 リズム感もすごくいいし・・・唄を歌わせても行けると俺は見ているね!!

 

「・・・デビュー・・・考えてみるか。五人目も欲しいところだけど。」

 

 部長、わりと本気で考えていますよ!?あの四人全員こちらも身内だからね!!

 

 黄色い声援も分かるってもんだ。

 

「いや~みものだわ。」

 

 ただ、四人とも人外事を知っている人は何人いるのやら。

 

「こうして学校の行事に参加できるだけでも面白いわ。」

 

 イリナと凛子さんの天使コンビがしみじみとみている。

 

「本当ですね。同じ天使同士・・・仲良く・・・。」

 

『!?』

 

 そこにキリエさんが加わってくるけど・・・二人の反応が面白い。

 

「はっ・・・はい!!キリエ様!!」

 

「えっと・・・私は普通にキリエでいいですよ。」

 

「いっ・・・いえ、ミカエル様の娘、しかも最強の熾天使様は流石に私達からしたら恐れ多い・・・。」

 

「・・・そんなに私ってすごいの?天界でもみんな伏せていましたし・・・。」

 

 キリエさん・・・天界では熾天使待遇を受けているみたいです。

 

 実力もそうだけど、本当に天使としてデビューしているのですね。

 

「仕方ないですよ。むしろあなたは天使達からの新たな希望ですから。」

 

「なっ・・・ガブリエル様まで!?」

 

 そこにミカエルさんと同格の力を持つ女性天使・・・熾天使のガブリエルさんまでやってくる。

 

「えっと・・・ガブリエルお姉様?」

 

「うんうん・・・そうそう、私の事を姉と呼んでくれてありがとうね。」

 

 最強の女性天使を姉と呼ぶキリエさん。なんだかすごい領域にいるな~。

 

「言え・・・本当にわからない事を色々と教えてくれて。」

 

「だって、ミカエルの娘なら私達の家族も当然でしょ?ミカエルもこんな可愛いい娘の存在に気付かなかったって罪深いわ。」

 

「はは・・・あはははは・・・。」

 

 ミカエルに娘。それだけで相当天界では大事件になったらしい。

 

「私も・・・・子供ほしい。うらやましくなってきました。」

 

『!?』

 

 ガブリエルさんの子供が欲しい発言に、俺達は当然固まる。

 

「あっ・・・あの・・・恐れ多いのですがお相手は・・・。」

 

「ふふふふふっふふイリナさん。」

 

「はい・・・。」

 

「おばさんになる覚悟・・・いいかしら?」

 

『・・・・・・・・。』

 

 なんかとんでもない発言を聞いた気がする。

 

「あれ?どうかしたのか?お前ら・・・ってガブリエルさん!!お久しぶりです!!うっぷ!?」

 

「ふふふふふふふふふっふふふふふふふふ・・・。」

 

 弦太郎を抱き寄せて満足した様子。それはまるでやんちゃな弟を溺愛している姉のような・・・。

 

「・・・凛子さん。」

 

「はっ・・・はい!!」

 

「協力おねがいしますね。」

 

「わっ・・・私の力でよければ!!」

 

 なんだだろう。弦太郎・・・お前、罪深すぎるぞ。何がどうなって天界最高の美女にここまでべたぼれに・・・。

 

「なっ・・・何がどうなっているのか分かんねえけど、ガブリエルさん、もうすぐゲームが始まるぜ?」

 

「あらら?それでイッセ―君達を?」

 

 ああ・・・そうか、もう始まるか。

 

「そう・・・なら・・・。」

 

「イリナ!!」

 

 だが、そこで弦太郎がイリナを呼びとめる。

 

「安心して。もう切り札は受けとったから。みんなを・・・私は信じているわ。」

 

「・・・わかった。」

 

 そのやりとりに・・・強い決意を感じたのは何故だろう?

 

 今回のゲームは体育祭の最中に行われる。

 

 そこから転移されたステージ。

 

 変哲もない普通のステージだった。

 

 今回は短期決戦にする予定。

 

 制限は大幅にかかっているけど、それでもこちらは全力を出して・・・。

 

 そう決意した瞬間だった。

 

 目の前に突然現れたのは・・・。

 

「久しぶりだね・・・君達。」

 

 何度も俺達と戦ってきたジョーカー・・・井坂とアルビノジョーカー、そして・・・

 

「さあ・・・始めようか、我らのバトルファイトを・・・。」

 

 黒い壁のような存在。

 

 バトルファイトの統制者がそこにいた。

 

 

 

 

 

 

 俺達は最大限の警戒をしたはずだった。

 

 必ずあいつらが何かをしかけてくると。

 

 でも、相手がしかけてきたことはあまりに予想外すぎた。

 

「バトルファイトの始まり・・・?一体お前ら何を・・・。」

 

「ふははははははははははははは!!これを見て同じことが言えるかな?」

 

 井坂の隣に転送されてきたのは・・・イリナだった。

 

「!?」

 

 その身体を拘束されている。

 

「ディメイションミスト・・・。英雄派も便利な物を持っているものだよ。やはりアギト化した神滅具使いの力は確実ということか・・・そして・・・。」

 

 俺達が前の方に意識を集中させている間だった。

 

「・・・ってさせるかよ!!」

 

 俺は振り向きながら居合気味の上段回し蹴りを叩き込む。

 

「ぷぎゃ!?」

 

 アーシアに触れようとしたディオドラの顔面へと。

 

「・・・ククク酷いじゃないか・・・。」

 

 だが、ディオドラはそれを顔面で受け・・・・吹っ飛ぶ。

 

「だが・・・アーシアは頂いていく。」

 

「きゃあああああぁぁぁぁぁぁぁl!?」

 

 アーシアの身体が虚空から突然出てきた巨大な手に捕まっていた。

 

 そしてその手はディオドラの背中から出ていたのだ。

 

「おっと・・・アギトの力は封じさせてもらうよ。ディメイションミストの力で・・・。」

 

 何!?

 

「目には目を・・・アギトにはアギト・・・。神滅具使いのアギト・・・お前達だけだと思ったか?」

 

 統制者が笑う。

 

 まさか俺達以外に神具・・・それも神滅具を宿したアギトがいるっていうことか!?

 

「さあ・・・・・・紫道 イリナよ。五人目のジョーカーとして我らが陣営に着いてもらうぞ!!バトルファイトの最大の切り札として。」

 

 捉えられたイリナとアーシアの姿が消える。

 

「お前達はあいつらが歓迎する。クククク・・・せいぜいあがくがいいさ・・・。ぎゃはははははははははははははっ!!」

 

 他の連中が消え、現れたのは無数の悪魔達。

 

 いや、悪魔たけじゃない・・・。

 

 見覚えのある宇宙人の姿まで・・・。

 

―――今ここに宣言しよう・・・。

 

 そこで現れる謎の声・・・。

 

――――スペーツパイレーツ・・・再結成の時を!!

 

 ステージの天井が粉々に破壊され・・・そこにあったのは巨大な戦艦だった。

 

 それも一隻だけじゃない。

 

 十隻くらいはある。

 

 ッて、スペースパイレーツ!?

 

 そこから無数の砲撃が飛んでくる。

 

 それを俺達はかわしながら会場を飛びだす。

 

 その戦艦から次々と現れるのはゼ―ベス星人!?

 

「・・・アーシアの予言通りか。」

 

「覚悟はしていたけど、これだけの戦力を投入してくるなんて。」

 

 アザゼル先生と渡が俺達の隣に降り立つ。

 

「・・・先生達はこうなることを見越していたのですか?アーシア、そしてイリナがさらわれることも。襲撃されることも・・・。」

 

「・・・ああ。」

 

 先生はすでに想定していたらしい。

 

「だが、アーシアは自ら攫われることを選択した。」

 

『!?』

 

 アーシアが自分から攫われることを選択・・・した?

 

 あいつ、この事まですでに予知で分かっていたんかい!!

 

「攫われる事をすでにあいつは覚悟していたんだ。イリナも同じタイミングでさらわれることも・・・。そして、昨日、直接アーシアがイリナに伝えている。」

 

『!?』

 

 アーシア、いつの間にそんな根回しを・・・。

 

「もし二人に何かあったら・・・俺は自分の首を斬る。それだけの覚悟をしている。まあ、それだけじゃ足りねえがな。せめてこれぐらいの覚悟はさせてくれ。」

 

「それはこっちも同じ。この襲撃は逆にチャンスでもある。だから・・・命を賭けさせてもらう!!オ―フィスちゃんを助けるチャンスだからね。」

 

 アーシアの決意に先生と渡は・・・文字通り己の命をかけて応えているってわけかい!!

 

 ったくどいつもこいつも・・・。

 

「ほう・・・だったらお前達の首を俺が喰らおうか。」

 

 そこに現れたのは正真正銘の化け物・・・。

 

「ぐっ・・・牙王・・・。」

 

 良太郎とゼノヴィアの前世からの因縁の化け物・・・牙王。

 

 その力はおそらく・・・魔王や熾天使と言うレベルすら超えている。少なくとも主神レベルの怪物・・・。

 

 こうやって強くなるとなるほど・・・相手の化け物っぷりも分かってくるもんだぜ。

 

 その後ろには二人の鬼がついている。

 

 片方は杖と槍がくっついたような武器を持つ金色の鬼。

 

 もう片方は巨大な金棒を持つ銀色の鬼。

 

「久しいな・・・お前達に鬼一族の野望を阻止されて以来か・・・。」

 

「ゴルドラ・・・シルバラ・・・。」

 

「っていうことは・・・・。」

 

 上空の戦艦の中に変わった戦艦が一隻。それはまるで日本の昔の戦艦の上半分だけ切り取り、艦橋だけ取り除いて他の戦艦の下半分にくっつけ、全貌部がワニの頭部のようになっている異形の船。

 

「・・・時を渡る船・・・。」

 

「嫌・・・違うな。これは時を喰らう船。ガオウライナーと時を渡る船を融合させて生み出した新生スペースパイレーツの旗艦だ。」

 

「チィ・・・ここで厄介なものを!!」

 

「時を喰らう船?」

 

「なんだそれ?」

 

 良太郎とゼノヴィアが動揺していることから相当不味いのか?

 

「・・・時間にとってかつてない最悪の事態ってことだけはいえる。あいつらこの世界を根本から消滅させるつもりか!?」

 

「さあ・・・お前達、奪え・・・そして喰らえ。すべてを喰らいつくせ!!」

 

 牙王の乱入。だが・・・俺達はここでもたもたしている場合じゃないというのに・・・。

 

「・・・やれやれ・・・ならわしがてつだってやろうかい。」

 

「ならこっちも手を貸してやる。」

 

 だが、そこに乱入者が現れる。

 

 それは・・・新とオーディン、そして・・・。鋼鬼・・・。

 

「・・・俺達はこいつらを抑えればいいってところか?渡。」

 

「頼む・・・。」

 

 って、もう鋼兄が来てんのかい!?いくらなんでも速過ぎる。

 

「言ったはずだよ。すでにできる限りの手は打っているって。」

 

「そういうことだ!!」

 

 上空から弦太郎まで降り立ってきた。

 

「ちなみに弦太郎君にもこのことは伝えてある。出ないと・・・友として失礼だからね。」

 

 ポルムの奴まで・・・。

 

「まったくじじい扱いが荒いぞ・・・新。」

 

「わりぃ、じいちゃん。でも・・・闘いの神だからね。ここで暴れることが出来るのは本望ともいえる。特に友達のためにならよりな!!」

 

新の奴がガタックゼクターを手にした。

 

「イッセ―・・・弦太郎、いけ!!ここは俺とおじいちゃん、鋼鬼さんで抑える!!」

 

「ふほほほ・・・たぎるのう・・・。」

 

 オーディンさんが手に槍を・・・。

 

「だったら来い・・・リドリー!!」

 

 牙王が言うと空から鋭い叫びと共に・・・何かが舞い降りてきた。

 

 それは怪物だった。

 

 全身が骨が浮き出る様な赤黒い痩躯。そして長い頭にくちばしとなっている口。

 

 背中には皮膜となった翼。そしてまるで背骨のような鋭い先端を持つ尾。

 

「・・・覚悟してもらおうか。」

 

 こいつもヤバい!?

 

 だが・・・そいつに・・・無数の砲撃。

 

「ここは我らに任せてください!!」

 

 そこに現れたのは家に住んでいるゼ―ベス星人達立った。

 

「ほう・・・下級戦闘員に技術者共か。どうして逆らう?」

 

 リドリーが声を荒げる。

 

「我はもうスペースパイレーツじゃないからだ。」

 

 ミカさんが代表で告げる。

 

「我はこの星で、本当に使えるべき主を見つけた。」

 

「そして、この星で・・・友達ができた。」

 

 ガブさんが続く。

 

「いくらあなたが・・・最高幹部であっても、私達よりも遥かに格上でも・・・私達は闘うと決めた。主と・・・友達のために!!」

 

 お前ら・・・。

 

―――――理解不能ですね。そんなことのためにあなた達は反逆するというのですか?

 

 そこに立体映像と言う形でとんでもない異形があらわれる。

 

――――私の支配は絶対だというのに?

 

 それは棘が生えた脳みそに一つ目と口が付いた怪物。

 

「・・・マザーブレイン。」

 

 ポルムが苦々しくその脳みそに話しかける。

 

――――あなたは・・・そうですか。あなたには散々煮え湯を飲まされました。

 

 マザーブレイインは告げる。

 

―――あなた達。その手であの男を倒せ・・・。

 

 その命令には確かな圧と力があった。

 

 それこそゼ―ベス星人達を強制的に従わせるだけの。

 

 だが・・・。

 

 その言葉に対してあいつらは揃って言う。

 

『断る!!』

 

―――・・・私の支配が効いていない?

 

「我らはこの星で生きることを決めた。そしてそれを我らが同胞達にも伝えていく!!あなたの支配から解き放って!!」

 

 よほど計算外だったのだろう。機械的な口調から感情が漏れる。

 

―――そんな・・・そんな馬鹿な事が・・・・お前達!!このイレギュラーを即刻処分しなさい!!

 

 その言葉に他のゼ―ベス星人達が手にした武器をむけてくる。

 

「ほう・・・気概のある奴らだ。喰らい甲斐は少しはありそうだ。」

 

 牙王は愉快そうに笑う。

 

「・・・格下が後悔するがいい。」

 

 リドリーに至っては冷徹に裏切り者とみなし、処分しようとしている。

 

 そんな威圧に対してもあいつらは怯えていない。

 

「イッセーさん!!アーシア様と・・・私の友達を頼みます!!」

 

「っ!?」

 

 ガブさんの言葉は俺達の胸に響いた。

 

 ゼ―ベス星人同士の戦いになると言うのにあいつらにあるのは決意。

 

「ついでに、あいつらの内何人かをこっちに引き入れたい。」

 

「こっちの世界の素晴らしさ・・・教えてあげたい!!」

 

 その上、かなり貪欲だ。敵にまわった連中をこっちに引き入れようとしているのだから。

 

「お前ら・・・絶対に死ぬなよ!!」

 

 俺は思わず叫んでいた。こんないい奴ら・・・絶対に死んでほしくないから。

 

 だが、それが無意識のうちに・・・。

 

 あいつらへの祝福となっていた。

 

 あいつらの額に浮かぶアギトの紋章。

 

『承知!!』

 

 本当に死んでほしくないからこその力だ。

 

 護り、救うための戦い。それがどれだけ厳しいのかあいつらも分かっているからこそ。

 

「安心しろ。この忠義の者達・・・死なせるには惜しい。」

 

 鋼兄は肩を鳴らす。

 

「フォフォフォ・・・若いのう。じゃが嫌いではない。」

 

「戦いの神の名に誓ってやる。お前らはいけ!!二人を助けて来い!!」

 

「・・・頼む!!」

 

 俺達はいく。アーシアとイリナを助けるために。

 

 転移装置で外に出た俺達。

 

 そとでは旧魔王派と呼ばれる連中の部下達が暴れ回っていた。

 

 住人達にも被害が出ようとしている。

 

「ぐっ・・あいつら・・・。」

 

 卑劣すぎる。一般人にも手を出そうとしているのが、あまりにも・・・。

 

 そのことに怒りを覚えていた俺。だが・・・その隙を突かれてしまった。

 

―――コネクト。

 

 何かが身体の中に入り込む感覚が・・・。

 

「行かせない。」

 

 そこでやってきたのはグレムリンだと!?

 

「お前達に対する時間稼ぎを言われてね。こい・・・。」

 

―――――サモン!!

 

 そこで召喚してきたのはやっぱり・・・。

 

「おっぱいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 俺のおっぱいヤミ―でした、。

 

 しかも今回は・・・恐竜。

 

 おっぱいティラノです!!

 

「しかも今回だ大サービスだ!!」

 

 他にも次々と・・・。

 

 おっぱいライオン

 

 おっぱいインセクト

 

 おっぱいピラニア。

 

 歴代俺達を苦しめた奴らまで・・・。

 

 そこに実は前の先生の実験で大量発生した奴もいる。

 

 それはおっぱいスコ―ピオン。

 

 おっぱいファルコン

 

 おっぱいバッファロー

 

 おっぱいコブラ

 

 向うの世界では大量の俺が出た事件。

 

 でも俺の世界では・・・四つのセルメダルが混入したおかげで四種類のおっぱいヤミ―が大量発生する始末。

 

 皆、苦労かけたぜ。

 

「さあ・・・お前達にとってこれほど嫌なやつらはいないだろう。」

 

「ぐっ・・・なんてことを・・・。」

 

 歴代おっぱいヤミ―達の登場。

 

 それに皆は戦慄を隠せないでいた。

 

「かつてない危機よ。それぞれ一体ずつでもあれだけ苦戦したというのに!!」

 

 部長の言葉に皆は真剣に頷く。

 

 でも・・・な。俺は思うんだ。

 

『おっぱいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!』

 

 あいつらがおっぱいと叫びながらこっちに襲いかかってくる。

 

 でも・・・。

 

「おっぱいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 

 と俺がでかい叫び声をあげ、あいつらを止めた。

 

「へっ?イッ・・・イッセ―君!?」

 

 裕斗は何やってんだこいつと言いたげに声をかけてくるけど・・・それをあえて無視する。

 

 何しろこいつらは・・・。

 

「また会えてうれしいぜえぇぇぇぇぇぇ俺の同志ぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

『はい!?』

 

『!?』

 

 同志と言う言葉におっぱいヤミ―達は動きを止めた。

 

「お前達・・・分かるんだ。お前達は確かに生まれは俺の欲望から生まれたのかもしれねえ。だがな・・・分かるんだ・・・俺とお前達は共通する一つの正義によって動いているってことを・・・。」

 

 俺の言葉におっぱいヤミ―達は眼を輝かせている。

 

「おっぱい!!」

 

『!?』

 

「そう・・・それが俺達の正義だ!!そして、俺の大切なアーシアのおっぱいとイリナの立派なおっぱいが今・・・危機にさらされている!!」

 

『!!?』

 

 その言葉に我が同志達はショックを受けている様子だった。

 

「お前達!!俺から生まれた俺の子供みたいなやつらだろ!?なら思いは一つ!!俺達の正義はおっぱい!!そのおっぱいをすくうために・・・たたかってくれないか!?」

 

 それは俺の心からの叫び。

 

 あいつらと俺が分かりあえると信じての言葉。

 

「おっぱい!!」

 

 それにまず応えてきたのは・・・おっぱいライオン。

 

 それに皆が続く。

 

「おっぱい・・・。」

 

「おっぱい!!」

 

「おっぱい!!」

 

『おっぱい!!』

 

 皆・・・分かってくれた。

 

 嬉しくて涙が出てしまう。

 

「分かってくれたか!!嬉しいぞ同志達!!」

 

「なななななななななななっ・・・。」

 

 その光景にグレムリンはかなり動揺している。

 

「さあ戦え、そして蹂躙しろ!!みなのおっぱいを救え!!おっぱいの素晴らしさを分かち合える友を救え!!これからのおっぱいもだ!!そして、敵のおっぱいを思う存分堪能しろ!!俺達の正義はただ一つ!!」

 

『おっぱいぃぃぃぃぃぃぃ!!』

 

その瞬間俺達は確かに一つになった。

 

「いけぇぇぇぇぇぇぇぇ俺の同志達!!皆を救え!!」

 

 その言葉共に全おっぱいヤミ―が走り出す。

 

 旧魔王派の悪魔達はそれを見て・・・悲鳴を上げていた。

 

「よし。これで大分戦闘が楽に・・・ってあれ?」

 

『・・・・・・・・。』

 

 部長始め、他の眷属一同が呆れかえっていた。

 

「いや・・・おっぱい・・・無敵だな。」

 

 アザゼル先生は呆れすら通り越し、感心した様子だ。

 

「そんな馬鹿な!?グリードですら制御できない程のあいつらを制御するなんて!!」

 

 グレムリンは悲鳴をあげている。

 

「制御なんかしてねえよ。」

 

 俺は断言してみせる。

 

「ただ・・・あいつらとは分かりあいたかったから、そうなるように頑張っただけだ。おっぱいの素晴らしさを知っているあいつらを倒すのがどれだけ悲痛だったか・・・お前にはわからないだろ!!」

 

 おっぱいの素晴らしさを知る最高の同志。そう魂では感じていたんだ。

 

 今度会えたら絶対にわかりあいたいと・・・ずっと・・・ずっと思っていたんだ!!

 

 だから・・・夢が一つ叶った!!

 

「そんな無茶苦茶な理屈であいつらを・・・。」

 

 グレムリンはよろよろと立つ。

 

「チィ・・・アギト、いや・・・これが兵藤一誠の恐ろしさというのか!?おっぱい・・・恐るべし!!」

 

――――テレポート。

 

 グレムリンは慌ててその場から逃げる。

 

「・・・イッセ―。あなたはもうアギトすらある意味超えているわ。」

 

「呆れて何もいえない・・・。」

 

 皆は少し茫然としていたが・・・。

 

「お前すげええな!!ヤミ―とも友達になるなんて!!」

 

「ああ・・・やっと友になれた。」

 

 友に早速お願いするのは心苦しいけど・・・この戦いが終わったら全員俺の使い魔にしてやる。だから頑張れ!!

 

 俺達には今やることがある。それが終わったあと、ゆっくりと語らおう!!

 

「・・・でも結果オーライよ!!私達はアーシアとイリナさんを助けましょう!!」

 

 部長・・・切り替え早!?

 

「良い流れだから。その理由は眼をつぶっておくわ。」

 

「そうですね。」

 

 こうして俺達は走り出す。

 

 アーシアとイリナを救いに。

 




申し訳ないです。最後の最後でシリアスさが無くなってしま手。

 でもこのイッセーの同志たちはこの戦いの最後のカギになっています。

 ヒントは、全系統のヤミーが勢ぞろいと言う点です。



 今回の投稿は此処までです。

 皆さままた会いましょう!!


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蹂躙します  

 大変遅くなって申し訳ないです。

 かなりひどいスランプに陥っており、別の試みをしているのも手伝って投稿が大変遅くなりました。

 ですが・・・何とか一話分を投稿します。

 次の投稿でこの章を簡潔させたいですね。


 あとあとがきで二周年記念の追加の話を。


 SIDE  巧

 

 今ゲームの会場は乱戦騒ぎになっていた。

 

「親父の奴・・・勝手に格好つけやがって。」

 

 親父と渡の奴があえて囮を使うという作戦をとったのはさっき初めて知った。

 

「ハルト・・・お前は知っていたのか・・って・・・。」

 

「アザゼル・・・こういう事はきちんと言ってほしい・・・。」

 

 ハルトの奴がかなり切れている。

 

 えっ?ハルトが知らなかった?

 

――――わりぃ・・・言うのを忘れていた。ポルムの奴が伝えていると思って・・・。

 

 そうか・・・やっぱりポルムの奴も噛んでいたか。あいつはこういった悪企みは得意そうだし。

 

「うまくいってもいかなくても総督殺しは覚悟しておけ、アザゼル。」

 

―――・・・今回は甘んじて受ける。だが・・・。

 

 あれを甘んじて受けるというあたり、相当な覚悟だ・・・。

 

「・・・こちらとてアーシアちゃんを助けたくないわけじゃない。むしろそのために大暴れさせてもらっている。」

 

―――本当にすまねえ!!・・・・あと、これだけ言わせてくれ。

 

 ハルトにとってもアーシアちゃんは大切な恩人である。攫われたと知って早速キレていた。

 

 それが今周りで山積みになっている旧魔王派の悪魔達に向けられていたのだ。

 

「ががががががががががっ。」

 

――――・・・手加減位はしてやれ。

 

 そして、今右手で掴んでいるのは長髪の貴族風の服を着た男。どうも幹部クラスらしいが・・・。

 

「ハッ・・・放せ!!私を誰だと思っている!!真なる魔王であるクルゼレイ・アスデモウス・・・ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「はいはい・・・そう言うのはもう良いから・・・。」

 

「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 情報通りなら、ハルトが今総督殺しをかましているのは、旧魔王派の幹部だったはず。

 

 それを片手間に痛めつけている・・・。流石ハルトと言うべきか。

 

「こっ・・・こうなったら・・・・!!」

 

 あいつが懐から何かスイッチみたいな物を取り出し・・・。

 

「むっ!?」

 

 その光に驚きハルトが手を放すと同時にそいつは変身した。

 

 全身にカニのような赤に棘の突いた甲殻を身に付け、右腕がカニのハサミになっている怪人へと。

 

「ふははっははゾディアーツが一人・・・キャンサーゾディアーツ。」

 

 あいつは勝ち誇った笑いをしている。それだけ強くなった自信があるのか?

 

「オ―フィスの蛇と組み合わせれば・・・偽の魔王やカラス羽ごときに遅れをとることはないのだぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 むう・・・確かに強くはなっている。

 

 なっているが・・・。

 

「・・・ハルト君・・・。」

 

 そこにサーゼクス様がやってくる。

 

 どうもハルトとクルゼレイが対峙している場面を見て慌てて駆けつけてきたらしい。少し息が上がっている。

 

「頼む・・・最後に彼と話をさせてくれ。」

 

 その言葉にハルトの奴も彼の顔を立ててあげたみたいだ。

 

 それに最後って言うあたり・・・良く分かっている。

 

「こっちに戻ってくるつもりはないのか?」

 

「ハッ!!そんなつもりはない!!」

 

 だが、それを跳ねのける。

 

「お前達偽の魔王は軟弱な事に他の勢力と和睦を結ぼうとした。それがどれだけ屈辱的なことか!!

 

 形勢逆転をしたとでも思ったのだろう。

 

「この世界には悪魔だけでいい。他の種族はいずれ滅ぼす。そのためにはお前達が選んだ神の後継は極めて邪魔だ。全世界の融和の象徴となった二人のアギトはな!!」

 

 己らの大義を掲げる。

 

「だから消す。あの二人がいなくなれば神亡き世界!!我々の天下・・・」

 

「・・・・・・。」

 

 俺は隣でハルトを見る。

 

 うん・・・笑みを浮かべている。額に怒りの四つ角が幾つも浮かんだ状態で。

 

「覚悟しろ!!偽りの魔王!!」

 

 サーゼクス様に向けて右手のハサミで襲いかかる・・・。

 

「サーゼクス殿・・・あなたは優しすぎます。」

 

 だが、そのハサミが横から来たハルトの右腕が粉々に打ち砕く。

 

「なあっ?なあああっ!?」

 

 粉々に砕けたハサミを見て驚愕の悲鳴をあげるクルゼレイ。

 

「・・・すまない。彼らを負いつめたくないと思った私の甘さが・・・。」

 

 助ける必要などなかったのだが、あえてハルトは手を出したのだ。

 

「でも、あなたはそのままでいてください。それが今後の悪魔のためになる。アジュカ殿も同じことを思っているはずだ。」

 

「ハルト君・・・。」

 

 サーゼクス様の意思をわかったが故に。

 

「きっ・・・貴様!!がばっ!?」

 

 激昂したクルゼレイをハルトは蹴り飛ばす。

 

「サーゼクス殿の優しさに免じて・・・殺すのだけは止めてやる。だが・・・。」

 

――ドライバーオン!!

 

 腰にベルトを召喚。

 

――――――ヒ―・・・ヒ―ヒ―ヒ―!!

 

 そして、変身する。

 

「我が恩人を貶めようとし、友を侮辱した罪・・・それだけは許し難し・・・。」

 

 右腕にある指輪を装着。

 

「ハルト・・・お前本気をだすのか?」

 

「ああ・・・。本気で怒らせた礼としてな・・・。」

 

 ハルトの奴、怒りの上限が突破していやがる。

 

「見せてやるよ。なあ・・・蛇よ・・・。」

 

――――サモン・・・。

 

 ハルトの右腕に蛇のようなオーラがまとわりつく。

 

「こけおどしをぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 ハサミを再生させ、ハルトに挑みかかるクルゼレイ。

 

 だが、その蛇のオーラに触れた瞬間・・・すべてが粉々になった。

 

「なっ・・・なにぃぃぃぃ!?」

 

「ある意味これは星座繋がりかな?我が腕にいるのは名も無き原初の蛇。世界最初の誘惑者なのだからな。ある意味お前達悪魔とも縁が深いだろ?」

 

 それがハルトの腕にいる存在の正体。

 

 人がエデンを追放されるきっかけとなった名も無き誘惑の蛇。

 

 それがハルトの右腕の正体。星座となったあらゆる蛇でもあり、あらゆる蛇の代表。

 

 不死の存在。

 

 その名は・・・エデン

 

――――――今度はこいつを喰らうのか?

 

「そうだよ、遠慮なく食ってやろうか、心を絶望に染めて・・・。」

 

 最近になってハルトはそいつとの対話に成功。もう一人の相棒として迎え入れたらしい。

 

 ハルトの背後からもう一体現れる。

 

――――ハルトの怒りを買うとは愚かな・・・。

 

 それはずっと一緒にいたと言う相棒・・・ファントムドラゴン。

 

「ひひひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!?」

 

 龍王クラスは確実なあいつの力に恐れ、悲鳴をあげる。

 

「・・・なんで君がそいつと契約を・・・。伝説の存在と言ってもいい存在を・・・。」

 

 エデンの蛇。神の目をくぐり抜けたその力は龍神クラスとされる。

 

「だっ・・・だが、同じ龍神であるオ―フィスの蛇がある限り私は!!」

 

「へえ・・・あの子の力を無理やりねえ。ならこれはどうだい?」

 

 あいつの左腕から黒い翼が現れる。

 

 その翼に眼玉がついており、その視線を向けた瞬間、相手は苦しみ出す。

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアア!?」

 

 それは絶叫といってもいいだろう。変身すら解除され、のたうちまわっている。

 

「ギャアアアアアっ・・・かっ・・・身体が!?腹が!?」

 

 あいつのもう一つの切り札は実は左腕にあると言っていたが、あの翼がそうなのか?

 

「ドラゴン相手じゃなくてもその呪詛は極めて強力だよ?こっちがそのように調整したのだから。まあ・・・おかげでイッセ―の家では行使できないけど。」

 

「まっ・・・まさかキサマ・・・コキュートスにいるあいつと・・・。」

 

「なんだと!?」

 

 サーゼクス様もなぜか驚いている。

 

「そういうことだ。お前が言っていた他種族の絶滅。その中で最難関とされるドラゴンに対する最大の切り札はもう意味を成さない。それを理解したか?その力はコキュートスごとこっちの物なのだからな・・・。いや~イッセ―のためになるかなと思って抑えておいてよかった。死亡原因を先につぶすっていい気分だよ。」

 

 コキュートスって、なるほど、あの翼から凄い冷気が漏れている。

 

 一気に周囲が冷えたよ。

 

「そっ・・・そんな馬鹿なぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「さて・・・。」

 

「ひっ!?」

 

「そろそろ覚悟は良いかな?」

 

 ハルトの最後通告はもちろんあれだ・・・。

 

「さあ、フィナーレの時間だ。」

 

 決め台詞と共にハルトはクルゼレイにゆっくりと歩みよっていく。

 

「くるな・・・こないでくれ・・・。」

 

 恐怖に腰を抜かしたクルゼレイ。

 

「来ないで・・・お願いしますから!!」

 

 それでも必死に逃げようと後ろに下がるが・・・無駄なあがきだった。

 

「こないでくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 必死で全身全霊の魔力弾を撃ち込んできたのだ。

 

 もっとも・・・。

 

 それが直撃しても、ハルトは何ですかそれ?と両手を広げてアピールする始末。

 

 全くダメージ受けてねえ・・・。

 

「あっ・・・ああ・・・ああ・・・。」

 

「大丈夫・・・死にはしないから。」

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 止めにハルトの奴が俺にドーナッツをくれた時の様な軽い口調でとんでもない事を言ってきたので、クルゼレイの恐怖が限界に達したようだ。

 

 悲鳴がもうおかしい。

 

 でもまあ、死にはしないわな。

 

「ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「大丈夫。最初から最後まで痛いだけだから。それも死ぬほど。」

 

 いや、そこは痛いのは最初だけっていうところだろ!?

 

 死んだ方がましな目にあうのは確実だけど。

 

「・・・彼も超越者の一人なのだろうね。いろんな意味で・・・。」

 

 サーゼクス様がハルトに対する評価。

 

「あなたと同じ?」

 

「・・・我が弟の友の内何人が超越者になるのか怖くなってきたよ。イッセー君はもちろんとして、鋼鬼君と渡君、サイガ君、キリエさんは確実だろうし・・・。」

 

「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!かっ・・・身体が凍るぅぅぅぅ!!」

 

 サーゼクス様はクルゼレイの悲鳴を聞こえないふりしながら遠くを見る。

 

 超越者・・・。

 

 それはサーゼクス様とアジュカ様、ダンテ様の三人の魔王に天道さん、ベヨネッタさんに与えられている称号。

 

ハルトおめでとう。

 

お前は人外からさらにランクアップ。

 

まさに色々な意味で論外の領域の仲間入りだぜ。

 

 イッセ―の幼馴染に人外だけでなく、超越者という要素まで加わった瞬間を俺は目撃した。

 

 まあ、他にあいつらも確かにある一線は越えているのは納得。

 

 俺には縁のない話だと思うからいいけど。

 

「巧・・・それはフラグだから。」

 

 ってハルト!!何言っていやがる!!俺も確かに人外だが、そこまで化け物になった思えはねぇ!!

 

 あと凍りついたクルゼレイを左手で掴んでもちあげるな!!それはそれで怖いから!!

 

 クルゼレイの断末魔の顔のまま凍りついているのが特に!!

 

 キレてそのまま背中から紅いフォトンブラットの翼を四対出現させる。

 

 って・・・四対!?

 

 いつの間に俺ってそんなに?

 

「・・・君もその可能性が十分にありか。・・・末恐ろしい。」

 

 サーゼクス様。あなたも何を言っているの!!?

 

 

 

SIDE ネロ

 

 俺達はイッセ―の元に合流しようとしていた。

 

 ちょうど雑魚共がイッセー達の前に立ちはだかろうとした時に間にあえたのだ。

 

「ネロ!?」

 

「派手なことになってんな!!」

 

 手ごろな敵を吹き飛ばしながらイッセ―達が行く道を作ってやる。

 

「イッセ―君!!」

 

 隣にはユウナの奴もいる。敵を次々と撃ち殺しながら駈けつける。

 

「まあ、大暴れはこっちの眷属の専売特許だ。なあ・・・そうだろ?」

 

「ええ・・・私の弟子が大変世話になったらしいし?呪いをかけてくれた礼をしっかりとしないと・・・。」

 

「ジャンヌ・・・流石に怒っているわね。あなたの弟子だし・・・。」

 

 俺の後ろに、怒れる二人の魔女どもがやってきている。

 

 特にジャンヌの奴が滅茶苦茶キレている。

 

 あいつの弟子だったもんな・・・。

 

「お師匠さま!?」

 

 朱乃の奴が驚いている。

 

「ここは任せなさい。あなた達はあの子を・・・そうでないとあの子・・・本気で怒っているから・・・。」

 

 あの子?

 

 ベヨネッタが指す方向には・・・キリエがいた。

 

 めちゃくちゃ怒っているキリエがいる。

 

 そりゃもう・・・アーシアを妹として溺愛しているキリエですから。

 

 怒って当然ですか。

 

「囮作戦なんて聞いてないですよ?アザゼル先生・・・。」

 

「ひっ!?しっ・・・しまった!?ハルトに続いて、あんたに了解を取るのを忘れて・・・。」

 

 アザゼル先生があまりのキリエの怒りっぷりに腰が引けている。

 

「・・・あとでアーシアも含めて説教です。あの子が選んだ道でも・・・無茶しすぎですから。」

 

「いたぞ!!新しい熾天使!!」

 

「ミカエルの娘!!」

 

「倒して我らが誉れにしてくれる!!」

 

 そんなキリエに旧魔王派の悪魔共が襲いかかってくるが・・・。

 

 全員がまとめて吹き飛ばされる。

 

 ただあえて全員無傷で吹き飛ばす辺り、あいつの優しさが分かる。

 

「・・・少し黙って貰えます?」

 

『ひっ!?』

 

 そのあと、素敵な笑みでそれを封殺。いや・・・ホントお前も強くなったな。

 

 力なんぞ無くても、元々お前は強かったけどさ。

 

 凄味が出てきやがったぜ。

 

 それにいい度胸だなてめえら・・・。

 

「キリエに手を出してみな・・・。」

 

―――ジェット!!

 

 俺はアクセルクイーンにメモリをセットした状態で振るう。

 

「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 猛烈な勢いをつけけた剣に海波斬を加え、皆吹き飛ばしてやったぜ!!

 

「お前さんもだいふはじけてきたな。」

 

 隣にはダンテの奴までいる。

 

「ダンテ・・・貴様がいなければ・・・我々が・・・我々が!!」

 

 複数の悪魔達がダンテに憎悪の声をあげる。

 

「・・・あんた、相当恨まれてんな。」

 

「仕方ねえだろ?あん時も無茶やった。サーゼクスの情けで追いやる程度にしといたが・・・。」

 

「ここには我が同胞が二万いる。皆で貴様を殺し・・・そのあと娘も後を追わせてやる!!すでに五千もの刺客を送りこんで・・・・・・・。」

 

 一人の悪魔がそう言った瞬間。

 

 銃声が轟き、その悪魔が周りの連中も巻き込んで粉々になった。

 

 たった一発の弾丸でだぜ?

 

 撃ったのはダンテの野郎だ。その目には恐ろしいほどまでに冷たい光が宿っている。

 

「・・・それは見過ごせねえな。」

 

 ったく、あの馬鹿ども・・・よりによって禁句を言いやがって。

 

「魔王でもあるけど、それと同時にこれでも一人の親なんだぜ?それなりに俺も娘が可愛いわけだ。それに手を出す?HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!」

 

 ダンテの壊れた笑いが辺りに響き渡る。とても・・とても怖い狂った笑い声だ。

 

 ちなみにそれなりに可愛がってると言うが、実際は溺愛に近い。

 

 あーあー・・・もうしらね。

 

 ここまで壊れた笑いをされたらもうだめだ。

 

 あいつら終わった。

 

「HA-HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!」

 

「キリエ・・・行こう。ここはダンテに任せてよさそうだ。」

 

「はっ・・・はい・・・。」

 

 キリエも流石にビビっただろう。

 

 凄まじい怒気がでてきていやがる。

 

「イッセ―・・・今からここはR指定になる。悪い事言わねえから速く行くぞ。巻き込まれる。皆も速く!!」

 

「おっ・・・おう。」

 

 ダンテの姿が変わっていく。紅の甲殻に覆われ、マントのような翼をもつ姿に変身。それは悪魔としての力を解放させた魔人化。

 

 其れなりの本気らしいな。

 

「・・・かかってきな。」

 

 まだ余裕を残しつつも。完全にブチ切れたダンテの奴が歩き出す。

 

「おっ・・・おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 一度に百人ほど襲いかかってきたけど・・・ダンテはそいつらを一振りで斬り殺す。

 

 たった一振りで、百人をすべて捉えて切り裂いたのだ。

 

 魔力を使わない純粋な剣技での一閃。百人が一つの線に重なった瞬間を瞬時に見極めて振っただけなのだ。

 

 まさに悪魔の剣。

 

「・・・こっちの宝に手を出すと宣言したのなら、それなりの覚悟はあるよな?」

 

 戦いの技量だけで超越者となったダンテ。その実力を敵味方共に思い知らされた形だ。

 

 悔しいが俺もそこまでの領域にまだ立ててねえ。ダンテの奴は本当に強い。

 

「安心しなさいな。あなたの奥さんと念のためロダンと一緒にグレイフィアのところにいるわ。」

 

 その怒りを少し鎮めようとベヨネッタが教えてくれる。

 

「安心しろ。打ち合わせ通りだ。アーシアに感謝しろ。」

 

 アザゼル先生まで落ちつくように言う。

 

「本当・・・すごい子だと思うぜ。だが・・・怒りには変わらねえ。」

 

 無数の爆発と雷光・・・そして斬撃が悪魔達の群れを蹂躙。

 

「だから・・・こっちも暴れさせてもらうわ!!」

 

 スパーダ眷属の残りまでやってきやがったって言うわけだ。

 

 トリッシュにルシア、レディの奴まで・・・。

 

すでに大暴れしとるし。

 

「お前達・・・今回は俺が許可する。好きなだけ暴れろ。」

 

 その上、ダンテの奴、手綱を放棄したぞ!?

 

「俺たちをなめるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 向こうからの反撃が魔力弾という形で飛んでくる。

 

 だが、それを阻んだのは白い片翼の翼をもつ天使のような悪魔だった。

 

 左腕と翼が一体化してできた盾で雨のような魔力弾の弾幕をすべてはじいたのだ。

 

 こっちに来てから始めてみるクレドの悪魔としての姿。

 

「キリエ、ネロ。お前達は彼らと共に行け!!」

 

 本気になったクレドも今回は暴れる側に回るようだ。

 

「クレド・・・お前も今回は派手にやれ。もうこいつらにやる慈悲はねえからな!!」

 

「承知!!」

 

 無数のジャベリンを周りに召喚。そのまま突撃してくる。

 

 そこから・・・スタイリッシュなショーが始まる。

 

 怒れるスパーダ眷属が凶悪な笑みと共に悪魔の軍隊二万体に襲いかかる。

 

 何分で終わる事やら・・・。

 

 あとで時間を聞くことにしようか。えっ?負ける要素?

 

 敵がまるで埃を払う様に蹴散らされる光景を見て、そんなのあるように見えるか?

 

 むしろ掃除にどれだけ時間がかかるのかが心配だぜ、

 

「ネロ!!」

 

 んん?ダンテの奴が声をかけてきた。

 

「お前も今回は本気だせ。修行の成果を見せてやれよ。」

 

・・・俺の現時点での本気か・・・。出さないことを祈るしかねえな。どうもイッセーが暴走しそうで怖いし、そのためにとっておくつもりだ。あの力は・・・。

 

 

 

 

SIDE イッセ―  

 

 スパーダ眷属一同大暴れを背にしながら俺達はディオドラがいる神殿に来ていた。

 

 グレモリ―眷属に加え、ネロとキリエさんが一緒だ。

 

 アザゼル先生はその場から離脱。いろいろと仕込みをしているらしく、そのための指揮をしてくるとのこと。

 

 代わりに渡がこっちに残っている。

 

「見届ける責任は僕が果たす。」

 

 あいつは相当気負っている。

 

 ったく、こっちは全く怒っていないというのに・・・。

 

「この世界の女神である前に彼女は僕のクラスメイト、そして友達でもあるから。その彼女の決意を知ったものとして、これは最低限の礼儀だと思う。」

 

 ・・・そうか。ますます怒れねえわ。

 

 お前ら本気だし。

 

 それこそ命を懸ける覚悟。

 

「この騒ぎがチャンスなんだ。オーフィスちゃんを助ける最大の・・・。」

 

『・・・・・・。』

 

 まさにピンチだからこそ、チャンスか・・・。

 

 ヴァ―リの奴も言っていたな。この作戦で、あいつらのボスが現れると。

 

 そのボスがなぜかオーフィスちゃんをかわいがっているとも。

 

 身の安全は保障されているようだが・・・。

 

 本当に何者なんだ?そのボスって?

 

 話だけ聞くと悪い奴に思えねえけど。

 

「なら今回は仕込み頼むわ。」

 

 とりあえず渡に作戦などを任せる。

 

「俺たちが派手に暴れるから。」

 

「・・・わかった。」

 

――――――さあ…始まりましたよ。バトルファイトが!!

 

 そこで響き渡るのはあのディオドラの声。

 

 バトルファイト?

 

――――――――お前たちとここで私の眷属たちとゲームをしてもらいます。まずはそうですね・・・・私の使い魔とバトルなんてどうでしょうか?ギャハハハハハハ!!

 

 その下品な笑いとともに現れたのは使い魔とされる怪物たち。

 

 ただ、どうも違う。ベースとなっているのは魔界の魔獣、または低級のドラゴンたちだ。

 

 漂ってくる気配がアンデットと同じなのが違う。

 

―――――アンデットの細胞と融合させたトライアルシリーズ。彼らは不死身ですよ!!

人間なんて脆弱は存在よりもはるかに強靭な肉体を持った彼らを私は使い魔にした!!

 

 確か剣崎さんから聞いたことがある。

 

 あれの魔獣版ってわけか。

 

――――さあ…お前たちの使い魔程度で勝てますかね?

 

 俺たちの使い魔か・・・。

 

 まじでどうしよう。俺たちの使い魔ってアーシアほどじゃないけど・・・。

 

―――――私たちが暴れようかしら?

 

――――こんな奴ら蹴散らしてくれる。

 

―――――私たちを舐めるな・・・。

 

――――全員ひき殺していいかな?かな?かな!?

 

 まず俺の相棒の四人が殺気まんまんだ。

 

 やばい・・・。

 

―――――超音波メスの実験でもしてあげようかしら?あれで切断できるらしいから試したいと思っていたの。

 

「どうどう・・・落ち着いて。この程度、クウが戦うまでもないから。」

 

 裕斗も己の相棒を抑えている。まあ、言っていることも間違っていないし。

 

――――グルルルルルル。貴様ら・・・。

 

「ガメラ・・・落ち着いて。さすがにあなたが出るのはかわいそう。」

 

 小猫ちゃんのガメラ…守護神的にあれってさすがにアウトですか。

 

 マジで怒っています。ガメラなんてこのメンツの中で最大のでかさと守護神という名に違わぬ最高クラスの実力だから・・・本気を出されたら、フィールドがぶっ壊れる。

 

 ああもう!!ほんとにまともに戦わせたらやばい奴らばかりなんだよ!!

 

「まあまあ・・・みんな。」

 

 そこで部長が皆を抑える。

 

「相手はアンデットよ?ならその専門家にお願いするのが筋じゃないかしら?」

 

『おおー!!』

 

―――――おっ・・・おい・・・。

 

 ディオドラの戸惑いをよそに俺たちは納得する。

 

この事件、あの二人にとって因縁だし、まさに最適!!

 

 さすが部長!!わかっていらっしゃる!!

 

―――――お前ら俺を舐めているのか?

 

「・・・なに変なことを聞いているの?」

 

―――――それなら・・・。

 

「当り前じゃない。そんなこと・・・。」

 

――――・・・・・・・。

 

 当り前のように問題ないと思っております。

 

 そんなことを言われたディオドラはしばらく無言。

 

――――――貴様らぁぁぁぁぁぁぁ!!いけえええお前たちぃぃぃぃぃぃぃぃ!!

 

 そして、即座に怒号とともに使い魔たちに命令。って俺たちに攻撃していいのか?

 

 早速ルール違反だぞ?

 

「仕方ないわね。こっちがルールを守ってあげるわ。ねえ、あなたたち・・・。」

 

 その言葉とともに部長の前に四人の影が現れる。

 

 今回は部長の使い魔たちが相手に・・・って四人!?

 

 その四人が現れたことで向こうのトライアルとなった使い魔たちが足を止める。

 

「あんたも無茶するな。」

 

「ふっ…剣崎。これが余裕というやつだ。」

 

 もともと使い魔だった剣崎さんと始さんはわかる。

 

「巻き込んでごめん。」

 

「いや…仮面ライダーは助け合いでしょう。まあ、悪魔と契約するなんてさすがに予想外だったけどさ。それでも妹さんのため・・・。」

 

「うん。こんな形でも力になれるから!!」

 

 でもなんで、ゆーすけ兄さんとエイジさんまでいるの!?

 

「簡単よ。二人も私の使い魔にしたの。もっともゆーすけさんとは昨日したばかりだけど。」

 

 昨日?

 

「それって、アーシアのために?」

 

 頷くゆーすけ兄さん。

 

「できることはすべてやりたいと思ってね。もともと好待遇だったし。アーシアのそばにいるためにもやらせてもらった。」

 

 まじで・・・部長、とんでもないメンツを使い魔にしましたねえ。

 

「悔しいけど、余った戦車の駒を生かせる人達じゃなかったのよ。四人ともハイレベルなうえにバランスタイプだし。まあ、こちらとしてはいい人材をゲットしたと思うけど?」

 

――――――なんですか?その貧弱そうな使い魔は・・・。でも一人は見たことがあるような・・・。

 

 ディオドラが四人を馬鹿にする。

 

 でも、ディオドラは全く分かっていない。

 

「私の家族が相手になるわ。さあ・・・どこからでもきなさい。」

 

――――フン、たった四人の人間・・・蹂躙しなさい。

 

 襲い掛かってくる魔獣達。

 

 まず巨大なドラゴンが迫ってきたけど・・・。

 

 それをゆーすけ兄さんが片手で止めています。止めながら赤いクウガに変身。

 

――――――――へっ?そそそそそその姿・・・。クウガ!?

 

「どりゃああああぁぁぁ!!」

 

 そこにエイジさんがオーズに変身して両腕の爪でドラゴンを両断。

 

「久々にいきますか。」

 

「ああ・・・。」

 

 剣崎さんもカードを取り出し変身。

 

 ブレイドへと。

 

 始さんもカードを腰のリーダーにスライスさせてカリスへと・・・。

 

―――――げえええええ…欲望の王にジョーカー二人!?

 

 変身した四人が使い魔たちの群れを歩くように横切る。

 

「とりあえず・・・こんなもんでいいですか?」

 

「無駄に体力を使う必要もない。」

 

「ええ、時間も使いたくなかったしそれでいいわ。」

 

――――おっ、おい…まだ終わっていな・・・。

 

「いいえ、終わったわ。ほら・・・。」

 

 次のフィールドへの道が開く。

 

 それとともに・・・使い魔たちが次々と倒れ、消滅していく。

 

―――――・・・・・・・。

 

「さっ、このままいきましょう。あなたたちは万が一のこともあるし、このまま私の護衛を頼むわ。因縁もあるだろうし。」

 

―――――そんな…馬鹿な。

 

 ディオドラの奴、ようやく理解したか。

 

 部長は魔王眷属にすら勝るとんでもない連中を使い魔にしているなんて。

 

 ある意味、部長に仕える最強の近衛騎士団といえる。

 

 しかもまったく本気だしてねえし。

 

 そして、次は・・・。

 

―――――――だっ…だったら次はどうです!?すでに女王に昇格させた兵士八体。

 

「良太郎、一人で十分よね?」

 

「うん。」

 

――――――なにぃぃぃぃぃぃ!!?

 

 それに対してこっちはまだ昇格もしてない兵士が一人。

 

「せっかく日本神話から送られた奴があるのだし。試しにつかいなさい。変身も、イマジンたち、昇格も使わない状態でも楽勝でしょ?何十秒で終わるかしら?」

 

「・・・はあ。カウントは好きじゃないですって。孫のことを思い出すから。でもまああえて言うなら・・・。」

 

 良太郎は鞘に収められた日本刀を構えて言う。あと孫って!?

 

「三秒で。」

 

―――――きっ…貴様!!

 

「無駄口はもういいか?こっちは少々キレてんだ。」

 

 あの日本刀・・・そうか、アマテラスさんからの贈り物。良太郎の最高の相棒・・・。

 

――――――お前たち・・・この馬鹿者を倒しなさい!!アンデットとしての力の開放してねえ!!

 

 ディオドラの言葉に兵士たちは悲しそうな表情を浮かべ…変身する。

 

 無数のコードが伸びた異形…トライアルへと。

 

「・・・あいつ…自分の眷属になんてことを・・・。」

 

 剣崎さんが悲しそうにいう。

 

「不死に近い状態だよね?ある意味安心したよ。でも・・・君たちは悪くないから・・・。」

 

――――試合開始ですよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

 

 良太郎が告げる。

 

「一瞬で終わらせてあげる。この戦いも、君たちの悪夢も!!」

 

 それとともに姿が消える。

 

放ったのはたった一閃。それに兵士八体。それも女王に昇格した状態でなおかつトライアルとなった皆を吹き飛ばしたのだ。

 

―――――・・・・・・・。

 

「カウントは3っていったはずだよ。」

 

 起き上がることのない兵士たち。その姿が元の姿へと戻っていく。

 

「小猫ちゃん、ありがとう。仙術も役に立ったよ。おかげで簡単に無力化できた。」

 

「はっ・・・はあ・・・。確かにその刀は気を伝えますが、短期間で、ここまでのレベルに。」

 

 手にしていたのは鋼兄たちからの贈り物。それは日本神話の有名な神剣。天叢雲剣。

 

 持ち主の意思である程度形状を変えるが、良太郎はそこにある刀のデータを入れて、再現させた。

 

「・・・不殺の誓い・・・とまではいわないけど、君たちを救うためにこちらにさせてもらったよ。」

 

 今は刃と峰が逆になった逆刃刀になっている。任意の普通の日本刀と切り替えられる。

 

 今回は良太郎も情けをかけたようだ。

 

――――――そんな!!不死のトライアルをどうやって一撃で!?

 

「仙術で体内の気を一時的に断った。そのショックで気を失っているだけだ。普通死ぬけど、不死化しているのならすぐに蘇生できると踏んでね。痛みもないはずだ。」

 

「・・・アンデットにそんな対策をしてくるなんて。」

 

「実は俺…実験台になっていた。」

 

 剣崎さんがアンデット対策の指導をしていた。そこで小猫ちゃんが使う仙術が意外にも有効だとわかったのだけど・・・。

 

 実際に試さないとわかないことが多く、剣崎さんが実験台に・・・。

 

「むしろ効果なかったら、俺は泣いていたよ。」

 

 すでに涙目の剣崎さん。相当痛かったとのこと。不死身でもあれは死ねると言っていた。

 

「・・・・・・。」

 

 何も言わずに優しく肩をたたく始さんの優しさが染みる。

 

「がんばったんですね。」

 

「俺・・・あなたを心の底から尊敬します。」

 

 ほかの同僚二人も優しく慰めてあげる。

 

 このために剣崎さんは文字通り体を張って貢献してくれたのだ。

 

「・・・あとで何かお詫びをします。」

 

「うん。本当にごめんなさい。」

 

 申し訳なさそうな良太郎と小猫ちゃん。

 

「まあそんな感じで彼女たちは確保させてもらうからね。」

 

―――――・・・・・・。

 

 無茶苦茶な連中ばかりって自覚はあるよ。

 

―――だったら次は戦車二人・・・

 

「ゼノヴィア、行きなさい。ただし殺さない程度に。今のあなたならできるわよね?」

 

「ふっ・・・愚問だ。」

 

 ゼノヴィアが一人だけで歩き出す。

 

――――――その人も化け物だというのですか?

 

「だったらどう?」

 

 同じくトライアル化した二人がゼノヴィアに迫るが・・・。

 

 ゼノヴィアは素手で構える。

 

 そう・・・牙突の構えを・・・。

 

 そして二体の戦車が繰り出した拳とゼノヴィアの拳がぶつかり合う。

 

 悪魔からしても怪物としか思えない連中を素手の牙突で吹き飛ばす。

 

 スピードの騎士がパワーと頑丈さに秀で、おまけにアンデットとなってさらに強化された戦車二人を真正面から殴り飛ばすという悪夢。

 

「今のお前らと相手するのに本来なら素手で十分だ。」

 

 あんた本当にナイト!?

 

 すごいガチムチですよ!?

 

―――――――・・・あなた、デュランダル使いですよね?使う気になれないって・・・。

 

「その程度の強さだと明らかにオーバーキルになるからだ。」

 

 オーバーキル・・・。アンデット相手にオーバーキルいいますか。

 

「だがな・・・私の思いを素手で伝えないというのも無粋だな。だから!!」

 

 ゼノヴィアが虚空を叩くと、そこの空間が砕け、そこからデュランダルが現れる。

 

「・・・一発だけだ。たった一発の牙突でやってやる。」

 

 それはまさに猛者だけに許された余裕。

 

「それに、良太郎・・・。」

 

「うん。できれば…助けてあげて。」

 

 ゼノヴィアは相手を見て何かを察している。

 

 そのうえで覚悟を述べる。

 

「私の前世は・・・皆に忘れ去られる人生だった。それはそうだろう・・・私は私自身の存在の記憶を対価に戦っていたからな。」

 

 ゼロノスの代償。この世界ではないが以前はかなり残酷な代償が伴っていた。

 

「…だからこそ…友達は大切なんだ。私のことを覚えていてくれる。私と一緒に時を過ごしてくれる。私の・・・時間となってくれる人を。」

 

 前世・・・桜井佑斗だった時の話。

 

「アーシアはこの世界での私の時間の一部。神の後継以前に、私の大切な…大切な友達なんだ。魔女と酷いことを言ったこともあるけど、許してくれたかけがえのない・・・。」

 

 ゼノヴィアにとって友達はそれほどまでの重要な意味があった。

 

「イリナもそうだ。こんな私のために友達になってくれた・・・。こう見えて昔は切り裂き姫と呼ばれて、恐れられた私の・・・な。宗派の違いとかあるけど、そんなのどうでもいいと思えるほどの・・・。」

 

 だからだろう・・・。

 

「・・・お前も応えたいと思っているのか?」

 

 俺の中にある神剣アギト・アスカロンが胎動している。

 

 ゼノヴィアの友を思う深い気持ちに共鳴か・・・。

 

「だが、今回は止めておけ。あれで十分だ。」

 

 でも、今回はいいだろう。お前まで加わるとさすがに加減ができない。

 

「さあ・・・こい!!こっちは連撃なしのたった一発だけだ。ただし…全力のな。」

 

『!?』

 

 デュランダルを手に牙突の構えをするゼノヴィア。その全身にまとうオーラが異様なまでにデカい。

 

 前方にオーラの濃密な壁。

 

『・・・・・・・・・。』

 

―――――ええい。その程度がどうした!行きなさいお前たち!!

 

 ディオドラの命令に躊躇いを見せながらも二人が駆ける。

 

「・・・受けてみろ、私なりの牙突を!!」

 

 それを迎え撃つようにゼノヴィアもまた突進。

 

 そして必殺の一撃を放つ。

 

「・・・穿て、デュランダル!!」

 

 たった一発だけの・・・牙突。

 

 だが、その一発がやばかった。

 

 その一撃が前面のオーラの壁をぶち破り、その壁のオーラをすべてその穴に引き込む。

 

 その勢い、まさに渦巻く聖なるオーラの巨大なドリル。

 

 その勢いに戦車の二人がとっさに避けようとして・・・その余波で吹っ飛ぶ。

 

 そして、そのドリルはそのままフィールドをぶち抜き、空間に大きな穴が空く。

 

――――・・・・・・絶霧でできた結界に大穴を・・・。

 

「空間ごと穿つ。それが私の本当の牙突だ。空間切断ができたから可能だと思ったが・・・牙突との相性があまりにも良過ぎて怖いものだよ。」

 

 吹っ飛ばされた二人はもう…余波だけで戦闘不能。

 

「予想外に威力が大きすぎたが、何とかなったか。一点集中型にしなくてよかったよ。」

 

 このとき俺たちはゼノヴィアを心底恐ろしいと思ってしまった。

 

 純粋な破壊力で言ったらおそらくこのメンバーでもトップクラスだからだ。

 

 テクニックを磨いた結果、さらに破壊力が増すというとんでもないことになったぞ。

 

「我が剣に穿てぬもの・・・なし!!」

 

 これからどんどんいろいろと非常識なものを穿ってきそうで。

 

 しかも、それを一度に五発以上、同時に放てるのだから・・・。

 

――――我々は必要なかったか?

 

―――――面白いものみさせてもらったよねえ。

 

『!?』

 

 その声に俺たちは立ち止まる。

 

「…ようやく反応を見せたか。だったら出て来い!!」

 

 ゼノヴィアの声に、その体から砂時計の砂のようなものが零れ落ちつつ、実体化してくる。

 

 ゼノヴィアに憑いていたイマジンが・・・。

 

「・・・今日は誰が死ぬ?教えてもらうか?」

 

 一体は牡牛の角を持つイマジン。それを見て、ゼノヴィアだけでなく良太郎も固まっている。

 

「・・・デスイマジン・・・。」

 

「久しいな。お前たちにいいようにやられた後に、こっそり憑いてきた。おかげでお前らの前世を見守る形でこちらも自分の時間が持てた。しかし、転生とはなかなか面白いことになっている。」

 

 良太郎が最大限の警戒をする。

 

 確かにあのイマジン・・・相当に強い。少なくとも今まで見てきたイマジンの中では断トツ。

 

「安心しろ。今の契約者は彼―いや、今は彼女だ。それに従うだけだ。せこいことはしない・・・。この私の時間をかけてそれは誓う。」

 

 イマジンの時間。それは彼らにとって存在そのものと言っていいほど大切なものだ。

 

「だったらこのまま私の物になれ。」

 

『・・・・・・・・。』

 

 ゼノヴィアは有無も言わさずにいう。

 

「今の私が特異点だと知ったうえで契約したのだろ?それでもいいならこのまま、私の剣となりともに戦え。こっちは少しでも戦力がほしい。」

 

「・・・本当にお前は・・・。昔から無茶苦茶な奴だ。」

 

 デスイマジンは呆れている様子。

 

「いいだろう。契約してやる。もう一人・・・お前も出て来い。」

 

「面倒くさいけどいいよ。」

 

 現れたのは時計を持った白いウサギのイマジン。

 

「言っておくが、そいつはとんでもない力をもっている。そうだろ?アリス。」

 

「ふふふふふふふふふ・・・。」

 

 どうやら女性型のイマジンらしい。

 

「契約はすでにしているわ。あなたの願い・・・私は常にかなえているから。」

 

 そういって変なウサギのイマジンは消えていく。

 

「そういうことだ。」

 

 デスイマジンも姿を消す。

 

「…どうやら、想像以上の連中が入っているようだな。」

 

「うっ、うん。」

 

「…そう。ゼノヴィア。あなたにはまだ何かあるのね。まだまだ底が見えないわね。」

 

 そう話している間に次の戦いになってしまった。

 

――――こうなったら、サプライズゲスト!!

 

 

 

 現れたのはアンデット達。それも二十はくだらない。

 

 

―――――――言ったはずですよ。バトルロイヤルだと・・・いきな・・・。

 

 だが、そいつらは一切動かない。いや、動けなかった。

 

「・・・・・・・・やらせないです。」

 

 それはギャー助の目。

 

「あいつらは私たちがやる。」

 

 どうやらギャー助と小猫ちゃんがやるみたいだ。しかし、ギャー助・・・アンデットだけを止めるなんて芸当を・・・。

 

「こんなの先輩たちに比べたら片手間でできます。先輩たちは耐性があるから止めるのも大変なんです。」

 

『・・・・・・・。』

 

 アギトを相手にしてギャー助がなんかおかしい。

 

 その前に俺たちを止めることができる時点ですごいですよ?しかもアギトの血を毎日のように飲みやがって・・・こちらの能力への耐性を上回り始めている。

 

 アギトイーターになりつつある。

 

「個人的に英雄派にいる神滅具をもつアギトが気になります。絶対に血を飲んでやります。今度はどんな味がするのやら・・・。」

 

 アギトの力を持つ俺とネロは寒気を禁じ得ない。本当にとんでもない奴だぞ。

 

「おい・・・どうしてこうなった?」

 

「こっちが聞きてええ・・・。」

 

 英雄派の皆さん・・・覚悟はいい?

 

俺達と同じアギトがいるのはわかったけど、それを聞いてギャー助はあなたたちの血を求めているから。

 

 でも味方としては誰よりも頼りになる。

 

 でも間違いなくギャスパーはアギトの天敵だ。俺達の身内の中で戦いたくない奴五指の一つにギャスパーが入るのは間違いないね。

 

―――――だっ・・・だったら。

 

 その背後から別のアンデットが現れる。でも・・・。

 

「こっちは私がやる。ふん!!」

 

 小猫ちゃんが吹っ飛ばす。

 

 一撃を受けたアンデットは、まったく動かない。他のアンデットも襲い掛かってくるけど、それを小猫ちゃんは攻撃をいなしながら重い一撃を叩きこみ、黙らせる。

 

 十体いたアンデットをそれぞれ一撃で黙らせた。

 

「・・・鬼の力を使うまでもない。そっちもやろうか?」

 

 小猫ちゃんの言葉にギャー助の奴は首を振る。

 

『・・・・・・・・。』

 

 その理由を見て今度は俺とネロだけでなく、その場にいた全員の背筋に寒気が走った。

 

―――――――――なっ・・・なんですと?

 

 ギャー助に停められたアンデット二十体が石化していたのだ。

 

「アンデットですので、このまま封印できます。アンデットは血もライフエナジーも不味いから固めておきました。」

 

「あっ・・・ああ・・・。おかげでスペードがキング以外すべてそろったよ。」

 

「こっちもハートがキング以外・・・。」

 

 一斉にカードを投げて封印していく剣崎さんと始さん。

 

 すでにあきれ返っている。

 

―――――・・・一気にアンデットが三十体も封印。

 

 相手が悪かったとしか言えない。

 

「二人とも訓練の成果・・・でたね。」

 

 その後ろからブランカが人間の姿で現れ、二人をねぎらう。後輩組の訓練をいつも手伝っていたのだ。

 

「うん。」

 

「おかげで役に立てた・・・。」

 

――――――だっ・・・だったら・・・。

 

 次の相手は僧侶が二人。

 

「次は私たちね。」

 

「後輩たちにばかりいいところみせられないわ。」

 

 お姉様方が出陣。

 

「そうそう・・・小猫、ゼノヴィア、挑発しなくても一瞬で終わらせるから。」

 

 こそこそと話していた小猫ちゃんとゼノヴィアに先にくぎを刺しておく部長。

 

「一応、この話は並行世界の私たちから聞いたことがあるので、イッセーもご褒美はいいわよ?あ・・・でもリアス、今回は私が暴れていいかしら?前回のゲームでも何もしていなかったし。」

 

「そうね・・・。あなたの修行の成果もみたいし・・・。」

 

 二人の姉様方は暢気に話し込んでいる。

 

 向こうは決死の攻撃をしているのにもかかわらずだ。

 

 飛んでくる魔力弾を部長は避けもせず、防御もせず、体にまとった滅びの魔力のオーラの余波だけで防いでいる。

 

 朱乃さんも全身にまとわせた魔力で防いでいる。

 

 まるでたった一匹のアリがゾウ、いや、クジラに攻撃を仕掛けているような光景がそこにあった。

 

――――――・・・・・・・。

 

 あまりにもどうしようもない光景にディオドラは言葉が出ないようだ。

 

「仕方ない。私がひるませるからとっとと決めちゃなさい。」

 

「ありがとうございます。」

 

 部長がそう言って手を振る。

 

 ただそれだけ。

 

 それだけで相手の僧侶が放っていた魔力弾の弾幕がすべて消滅、とっさに防御結界を展開させるけど、それすらも粉々になった。

 

「いきなさい。」

 

 黄金の光をまとった朱乃さん。その背後には・・・三つ首の龍がいた。

 

 神々しい光をまとったそれが・・・。

 

 そして、手から稲妻のような光線を放つ。

 

 でもそれはいつも放っている雷撃と違う。光も入っているけど・・・。

 

 それを受け、相手二人が巻き上げられ、そのまま吹っ飛ばされる。

 

「今の何かしら?」

 

「えっと・・・私もよくわかりません。どうも私の中にいる何かが得意としていて・・・。魔女として、その存在と契約しているの。まあ、まだよくわからない子ですけど。」

 

「あなたにもまだ何かあるというのね。はあ、どんどん身内がおかしくなっていく。」

 

 瞬殺だった。

 

――――――なんですと?

 

 ディオドラはもう言葉にできない様子。こっちのメンツは全く本気を出していない。

 

「最後は騎士二人と女王か・・・。佑斗。女王は優秀だけど、瞬殺できそう?」

 

 部長はその時点で何とかではなく瞬殺できるかどうか聞くあたりよくわかっている。

 

「ええ・・・!?」

 

 でも、ディオドラの残りの眷属三人とともに現れた存在に驚いた。

 

 一体は黒い魔界騎士の鎧を着た・・・キバ。

 

 そしてもう一体は・・・。

 

「さあ・・・戦わせてもらいますよ?」

 

 アギトに覚醒する前からの因縁、フリードであった。

 

「私はまず、あなたを指名します。木場佑斗!!」

 

 あいつ、強くなっている。嫌な感じではなく、まっすぐな意味で。

 

―――――――さあ・・・どうします?

 

 っていうか、ゲームのルール完全に無視じゃねえか。

 

「・・・しっかたねえ。俺も出るわ。向こうに眷属以外の連中がでたのなら・・・。」

 

「うん・・・ってあれ?」

 

 ネロと渡の奴が出ようとして・・・上を見る。

 

 すさまじい轟音。それとともに切り裂かれる結界。すさまじい斬撃の余波がフィールドに巨大な十字の切り傷を作る。

 

 その余波から慌ててよけるキバとフリード。

 

 それとともに結界が消滅。空が見えた。

 

「乱入・・・成功。」

 

 そして、突破してきたのは轟竜に乗ったサイガだった。

 

「ごめん遅れて。雑魚一掃に時間がかかった。」

 

―――――なんで・・・ここは絶霧で守られているのにどうやって・・・。

 

「どうやってって・・・ただ力いっぱい斬っただけ。」

 

 ただそれだけで・・・。

 

――――相棒・・・お前の知り合いは本当に規格外だな。

 

――――どんどん化け物が増えていくし、その成長具合が異常よ。流石人の姿をしたドラゴン・・・。

 

 本当にそう思う。ただ力いっぱい斬っただけで神滅具を破りますか。

 

 ちなみにサイガの奴は人の姿をしたドラゴンとして、龍王の一角に数えられようとしていた。

 

 もっとも、実力はそれすら軽くしのぐけど。

 

 近い将来は龍神に数えられるのは確実とのこと。

 

「あと相棒がいたからかな?解析ごくろう。おかげでやりすぎない程度にできた。下手するとフィールドを崩壊させていたし。みんなも巻き込まれるところだった。」

 

「・・・なあに、こっちも解析し甲斐があったよ。まあ、切り裂く方法じゃなく、どこをどれくらいの強さで切れば内部に影響をおよばさないかという点はお手上げだけど。」

 

 光の翼を展開させながら降りてくるのはポルム。

 

 そうか・・・切り裂くこと自体は簡単だったのか。

 

 もう呆れることしかできねえぜ。

 

「まあここは任せて。佑斗、互いの成果を見るとしようか。それに・・・こっちも父様の因縁があるし・・・。」

 

 二本の剣を構えるサイガ。

 

「ちなみにとっくに騎士二人、女王一人はアウト。」

 

 ぶっ倒れた三人。

 

 あの三人、何もせずにそのまま退場ですか。

 

「いいねえ・・・いいねえええええええぇぇぇぇぇえ!!」

 

 そこでフリードは剣で足元に円を描き、そこから鎧が現れる。

 

 漆黒の鎧。それはキバの鎧に似ていた。

 

「お前・・・自ら堕ちたのか・・・。」

 

 魔界騎士の鎧にはサイガや状況による例外を除いて装着する時間に制限時間がある。

 

 それを超えると鎧に食われてしまう。

 

 だが、それで鎧に食われ、暗黒騎士に落ちることもある。

 

 もちろんこれにすら実はとんでもない例外が存在している。

 

 今のフリードが召喚している鎧もその堕ちた制限時間無しの鎧・・・。

 

「元の体がすでにいろいろな細胞のキメラになっていましてねえ。食えずにこっちが逆に鎧を取り込んだのですよ。さあ、ボルキャンサー・・・いえ・・・。きょうからあなたたちは進化するのです・・・このカードで!!」

 

 フリードが手にしたカードに俺の中の相棒たちが騒ぐ。

 

―――――サバイブのカード!?

 

―――――新たなカード・・・。

 

 描かれているのはまがまがしい渦の描かれたカード。

 

「私はあなたたちに負けっぱなしです。アギトとなった兵藤一誠もそう、そこにいる木場佑斗もそう…負けっぱなしで悔しかったのですよ!!でもあなたたちはまさに化け物。とてもこのままじゃ追いつけそうにない。だから…私も決めた。目には目を。相手が化け物ならこっちも化け物になる必要があるとね!!」

 

 フリードは新たな力を手にしていた。

 

 フードを取り払った姿。その体は完全な異形だった。

 

あらゆる生物、そして先輩たちが戦ってきた怪人の長所を掛け合わせたような怪物。

 

 見た目はハドラーさんの姿に近い。

 

 あいつは完全に人間を捨てた。前の戦いでもわかっていたことだが・・・。

 

「その執念が新たな力を与えました。いうなれば・・・暴流のサバイブ!!」

 

 それを手にしたとともに左腕にあったハサミ型の召還器が変わる。

 

 それは手に持つタイプの盾。カニ本体を模した甲羅型の盾になったのだ。

 

 そこにサバイブのカードを入れる。

 

 それとともに・・・ボルキャンサーたちも変化する。黄金の甲羅に痛々しいとげが生え、背中の甲羅と胸部にタイヤのようなものが出現するなど少しメカっぽくなった。

 

 それとともにキャンサーとしての姿も変わった。銅色のカニをもしたアーマー。肩にはハサミを模したショルダーアーマー。

 

「その上から・・・。」

 

 そして、そこから鎧をまとったのか。

 

「ふははははははっはははははは!!さあ、私が得た力がどの程度か試させてください。この世界の超魔生物となり、人外へとなった私の!!」

 

 その姿に皆は黙って俺を見る。

 

「まあ、あなたに追いつくにはこれくらいしないといけないわね。」

 

 部長の言葉の皆が頷く。

 

 あいつ俺たちに勝ちたいためにそこまでやるか・・・。

 

「・・・クウ。全力で行く。」

 

「ええ。ならあれで行きなさい、」

 

 佑斗の腰に現れるのは五大ギアの一つ・・・オーガギア。

 

 手に持つ携帯電話をいじる。

 

――――――000.

 

 入力するコードはその三つ。

 

―――――変身!!

 

 その電話をギアに装着させて変身する。

 

 初めて見た・・・。

 

 黒を基調とした重厚なアーマー。腰には金色のフォトンが流れる黒いローブ。アーマーにも黄金のフォトンブラッドのラインが流れる。

 

 五大ギア最大の防御力とパワーを誇る・・・オーガギア。

 

 その変身を。

 

「一人の騎士として、お前のその執念に答えよう。」

 

 腰に差した剣。そして手にはもう一本の剣。

 

 ゆっくりと二本の剣を手に歩き出すその姿。

 

 まるで歩く要塞のようだった。

 

 一歩一歩があまりにも重厚だったからだ。

 

「こい・・・。」

 

「いいねいいねいいねいいねいいねいいねええええええええぇぇぇぇぇ!!もうお前らに勝つことだけに己の人生のすべてをささげました!!どこまで届くのか、やらせてもらうぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 こうやって二人の剣がぶつかり合う。

 

 不意に佑斗の姿が消え、フリードの後ろに現れ、剣をふるうが・・・。

 

「相変わらず早いですね。」

 

 召還器の上からいつの間に装着していた盾で防ぐ。

 

 だが、あえてそのまま佑斗は剣がはじかれることもなく、ただ振り切った。

 

 そのうえで何とも剣をふるうフリード。

 

 だが、あえて佑斗はよけない。

 

 何度も切りつけられ、火花が散る。

 

 だが、佑斗はなすがまま剣を受け続けていた。

 

 その様子におかしいと感じたのだろう。

 

 フリードが下がる。

 

「そんなものか?」

 

「・・・・・・・。」

 

 全然堪えていない。

 

 それどころか・・・。

 

「・・・マジで・・・。」

 

 切っていた剣が刃こぼれを起こしていたのだ。

 

 なんというか、鉄壁すぎる。

 

 防御も何もしない素の状態でダメージ無効どころか、逆に剣が刃こぼれするなんて。

 

 おそらく全力で防御したらファイナルベントすら耐えないか?

 

「・・・本気だけど、あれだけは使わないでおく。」

 

「なんですか?あれって?」

 

 佑斗が軽く指を鳴らすと・・・。

 

 盾が粉々になった。

 

「!?」

 

「この力は怖いんだ。それこそ神すら確実に殺せるからね。殺す気の僕にはイッセー君だって逃げ出すってことだけは伝えておくよ。何しろこの力で殺せないものはないから。」

 

 あいつが見せたのは例の力。

 

 その力が目覚めた後、暫定措置として普段は魔力を使って封印させている。

 

 ポルムいわく、今まで出会った中でトップクラスにやばい力だそうだ。

 

 あのポルムがそういうのだ。

 

 あの力は相当やばいものなのだろう。それこそアギトですら致命傷を負うほどの。

 

 あの力がこっちに向けられると思うだけで、悪寒が止まらない。

 

 何というか・・・グレモリー眷属がいろいろとやばいことになっている。

 

 俺達アギトですら脅威に思う連中が出てきているし。

 

「すっかり盛り上がっちゃって。さて、こっちはおじいちゃんの敵と行きたいけど・・・。」

 

 そういったが、キバが切りかかってくる。

 

 それを背中に回した剣で受け止める。

 

「こっちは全力出せないな・・・。」

 

「舐めているのか?」

 

「それにあんたは偽物だ。母上から本物が生まれ変わっているのは知っている。その鎧をむしろ返してもらいたいくらい・・・。」

 

「それは無理だな・・・。」

 

 キバは笑う。

 

「今や私は鎧そのものだからな・・・。」

 

「・・・アンデット肉体を得て、それもなお・・・。」

 

「はははははははははは!!」

 

 剣で切りかかるキバ。

 

 それを両手の剣できりとばす。

 

「なっ?」

 

 真っ二つになった剣をみながらキバは呆然とする。

 

「あんた程度・・・紋章も、そして鎧を使うまでもない。剣をつかったのはせめてもの情けだ。本来なら素手で十分。」

 

 サイガの余裕の態度。

 

「・・・ふざけるのも大概にしてほしいですよ。」

 

 フリードのボヤキがすべてだと俺たちは思ったね。

 

「まだ全力というわけではないというのですか。」

 

 もっとも・・・。

 

 フリードの奴は本当に強くなっている。

 

 ただ、俺たちに勝ちたいがために・・・。

 

 俺たちの成長速度に負けていない

 

「仕方ないですね。やる気失せましたわ。もうさっさと行きなさい。まだまだこっちはあんたらに届かないことがわかりましたから。さらに強くなって出直してきますわ。」

 

「ぬぐうう…わが剣を・・・。」

 

 剣を切りおられ膝をつくキバ。それに対してフリードは手を差し伸べる。

 

「くやしいですか?ならあんたは同志だ。違います?」

 

「・・・そうだな。今後は・・・お前についていこう。」

 

 フリードの言葉のおかげなのだろう。

 

その手を取り、立ち上がったキバは告げる。

 

「この折れた剣の借り・・・必ず返す。さらに強くなってな。」

 

「・・・騎士として、受けないわけにはいかないか。いいだろう!!」

 

「そのふざけた能力を強制的に使わせるほどの強さを得てまたもどってきますから~!!」

 

 フリードは軽い手合わせだけでその場から消える。

 

「どうやら、僕もまだまだ立ち止まっている場合じゃないようだ。」

 

 変身を解く佑斗。

 

 あいつの剣・・・相当な凄みがあったのを見て、どこか嬉しそうだ。

 

「イッセー君。こういう相手がいると燃えるよね?」

 

「まったくな。」

 

 ライバルが多いというのはいいことだ。まだまだ上に行ける。

 

「お願いだからそれ以上の化け物にならないで・・・。」

 

 部長が嘆く。

 

 オーガに変身したときの威圧感だけでも相当なものだったし。

 

魔王クラスはあったぞ。

 

 それに攻撃を受けたのに全然効いていない脅威の防御力。

 

 部長が頭痛そうにしているのを横目に俺たちは向かう。

 

 アーシアを助けに・・・。

 

 

 

 

 

 SIDE アーシア

 

 

「なぜ・・・だ!?なぜ・・・。」

 

 ディオドラは己が用意した刺客が蹂躙される様を見て憤慨していた。

 

 おそらく彼なりに最高の布陣で挑んだのだと思う。

 

 もっとも・・・全く歯が立たなかった。

 

 それも相手が全く本気を出していない状態でだ。

 

「・・・こんなはずはない。だっ、だったら、コッチが用意した最高の手札を・・・。」

 

「もう無駄ですよ・・・。」

 

 私は彼がどれだけ無駄なことをしようとしているのか教えてあげます。

 

「次はイッセーさんが相手です。私たちの中で最強のイッセーさんが。」

 

「・・・あの忌々しい神の後継者が・・・だと?あの人間からの成り上がりが・・・薄汚いドラゴンの申し子が?」

 

「少なくとも、皆が認める強さです。」

 

 私の言葉にあの人は押し黙る。

 

「くくく・・・・・くはははははははは!!」

 

 でもすぐに笑いだす。

 

「だったら・・・だったらその強さ見せてもらいましょうか・・・私はまだ・・・。」

 

「・・・・・・あなたはかわいそうな人ですね。」

 

 そんな彼に・・・私は哀れみすら覚える。

 

「かわいそう?どうしてそんなことをいうのだい?それに僕は悪魔・・・。」

 

 私はその否定に首を横に振ってこたえる。全身を拘束されてもいう。

 

「あなたは自らの過ちに気づいてない。悪魔だろうが、天使だろうが、たとえ魔王、そして神でもやってはいけない過ちに・・・。」

 

「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 私に攻撃をしかけようとするディオドラ。力を封じられ、魔力弾の直撃を受ける。

 

 でも、私は生きている。

 

「・・・・・なぜ・・・。」

 

 無傷とはいかない。体も痛い。でも・・・。

 

 あまり私はダメージを受けていない。

 

 どうも近いらしい。私の次のステージへと。

 

 私の体内の悪魔の駒。その転生機能を利用し、私の体が変化し始めている。

 

 己の力に耐えられるようにより強く、頑丈に・・・。

 

 それに伴い私の体が熱い・・・。まるで私自身の危機に呼応し、目覚めようとしている。この枷さえなければすぐに開放してしまいそうなほどに。

 

「ぐっ・・・だったら!!」

 

 激昂したディオドラがさらに攻撃を仕掛けようとしたときだった。

 

 その手を誰かがつかむ。

 

「・・・お前、いい加減にしろよな。」

 

「貴様は!?」

 

「イッセーさん!!」

 

 それはイッセーさんだった。

 

 手を振り払おうとするディオドラ。でも…まったく動かない。力任せに振るっても何もできないのだ。

 

「ちぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 空いた片方の手で魔力弾を放ちます。でも、ほぼ密着に近い形なのに魔力弾は当たらず・・・。

 

 逆にその顔面にイッセーさんの拳が当たります。

 

「がっば!?」

 

 まるで冗談のように吹き飛ばされていくディオドラ。

 

「・・・・・・・立てよ。」

 

 とても静かなイッセーさん。でも、分かってしまいます。

 

 それこそ心を読む必要すらないくらいにイッセーさんは怒っています。

 

 冷静な、ままで・・・。

 

「なめるなぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 激昂とともに放ってきた魔力弾。でも・・・。それを片手で受け流すように受け止めつつ・・・。

 

「お返しだ。」

 

 投げ返してしまいました。

 

「ぎゃああああああああああぁぁぁぁ!?」

 

 

 

 

 

 

SIDE  佑斗

 

 

 俺たちは今、恐るべきものを見ている。

 

 変身も何もしていない状態でオーフィスの蛇を使って強化されたディオドラを圧倒しているイッセー君を。

 

 変身どころか、神器すらも使っていない。魔力も、そして…アギトとしての超能力すらも使っていない状態で・・・。

 

「そんな馬鹿なことがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 素手でディオドラを圧倒していた。

 

 上級悪魔であるディオドラが手も足もでない。

 

「がば!?」

 

 使っているのは純粋な身体能力と・・・技量のみ。

 

 それだけで相手の魔力弾すら投げ返したりして、無力化している。

 

「来いよ…お前に思い知らせてやる。」

 

 間違いない。

 

「お前がどれだけ下らない力に酔っていたのか。そして、どれだけやばい連中を怒らせたのかを。」

 

 今回イッセー君はディオドラを変身もせず、神器も使わず、魔力も使わない。

 

鍛え上げた肉体と純粋な技量による格闘だけで圧倒するつもりだ。

 

 それはまさに暴挙。

 

 サイラオーグのように圧倒的なパワー、スピードではなくただ技量だけで倒すとのだから。

 

 でも、ある一定水準を超えた技量は、もはや魔法や超能力の類と何も変わらない気がする。

 

 ディオドラが防御結界を展開させても、軽く触れただけでガラスのように粉々に砕け散り、相手が殴りかかっても、その勢いをそのまま相手に変えてのカウンターのひじ打ちや蹴りが入る。

 

 挙句の果てにはまるでバレーボールのように何度も宙を舞い、地面に叩きつけられる始末。

 

「がばっ?ばか・・・な・・・。」

 

「うん。一番無茶苦茶なのは、やっぱりイッセーだわ。」

 

 部長の言葉に僕達はただ頷くことしかできなかった。

 

 僕たち眷属の中で最強のパワーと、最高のテクニックを両方備えた規格外の存在。

 

 それが今のイッセー君だった。

 




 二周年記念

 今確定している二人の幼馴染と突然思いついた未来の話。




 それはイッセーが小学生五年生の時だった。

 彼はサッカーが好きな二人の少年と友達となり、よくサッカーで遊んでいた。

「光太郎!!信彦!!」

 その二人の名前は南 光太郎 もう一人は 秋月 信彦という。

 もっちも二人は家の事情ですぐに引っ越してしまったが、イッセーにとってともに遊んだ大切な友である。


 だが、イッセーは知らない。

 兄弟のように仲のいい二人に、悲劇が訪れていたことに。


ぼろぼろの状態で道なき道を歩く一人の青年。

 その名は南光太郎。

 彼はある組織との闘いですべてを失った。

 大切な家族も、そして、兄弟のように仲良かった友も。

 彼はさまよっていた。

 すべてを失って。

 それでも、彼は死ねない。世紀王としての力がそれを許さない。

 そして、彼はついに力尽きて倒れた。

 その街の名前は・・・駒王町。




 そして、彼は知らない。

 失ったはずの・・・彼自身の手で倒したはずの彼が・・・。

「なぜ・・・生きている・・・。」

 復活していることを。

「私は・・・なんてことを・・・。」

 それも残酷なことに洗脳も解け、記憶が元に戻った状態で・・・。

 それは満月の綺麗な夜の中の出来事であった。




 そして、彼はもう一つある体験をしていた。

「あんたもウルトラマンなの?」

「ウルトラマンを知っているのか?」

 中学生の夏休み。

 彼はある町にやってきていた。

 そこで怪獣、そしてウルトラマンとの闘いを見たのだ。

 その正体も。

「俺の友達がそうだったから。たしかゼロといって・・・。」

「まさかセブン兄さんの息子と知り合いだったとは・・・。」

 そこにやってきたのは人形となったウルトラマンタロウ。

「世間は狭いね。俺の名前はヒカリだ。よろしくな!!」

 こうして彼は新たなウルトラマンと友達になる。

「おう!!」



 それから二年後・・・。

 アギトとして覚醒し、裏の世界で頑張っているイッセーはある日テレビを見て吹いた。

「ちょっと!?どうしたの?!」

 リビングの大画面のテレビに映るのは…ウルトラマン。

「ウルトラマン・・・ギンガ・・・。」

 とある街でもう一人のウルトラマン――ヴィクトリーとともに戦っている映像。

「・・・マジかよ!!こうしてはいられねえ!!」

 それを見てイッセーは飛び出す。

「ってイッセーどこにいくの!?」

「ちょっとギンガの加勢にいってくる!!ダチがまた変身して戦っている!!」

「・・・ダチって・・・まさか・・・。」

 部長はテレビを見て、姿を消したイッセーとの関連を思いため息をつく。

「あなた・・・一体どれだけの縁をもっているのよ・・・もう・・・。なんでウルトラマンと知り合いなの!!!?」

 ウルトラマンギンガ。

 裏の社会でも割と有名な光の巨人。

 イッセーは駆ける。絆を結んだ冒険好きな友達のために・・・・


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絶望と復活のG

 皆さまあけましておめでとうございます。

 更新遅くて申し訳ないです。それでもできる限り書いていきますのでよろしくお願いします。

 六章はまだ続くことになりそうです。最後の最後でとんでもないイベントを作ってしまったがゆえに。

 さあ・・・六章最終決戦へどうぞ!!


 

 

 SIDE イッセー

 

「がっ・・ごごごごごご・・・。」

 

 ディオドラに対してこちらが抱いた感想はただ・・・下らないということだった。

 

 確かに強化されている。普通の上級悪魔なら圧倒できるくらい。

 

 だが、ただそれだけ。

 

 力は上がっているけど・・・。

 

 その力が薄っぺらい。同じ力でもその質が全然違う。

 

 俺の周りは常に切磋琢磨している。力そのものは今のディオドラに劣るが、その質は間違いなくお前よりうえだ。

 

 積み上げたものがまったくない。

 

 こっちの力は突然得たもの。

 

 だが、俺だってその力と向き合い、自分よりも強い連中たちとともに磨いてきた。

 

 強くなろうと努力してきた。

 

 だから負けない。

 

 こんな紛い物に・・・。

 

「ちぃ、こうなったら認めるしかありませんね・・・。」

 

 おそらく今のままでできる攻撃はすべてやったのだろう。

 

 全く歯が立たないことをあっさり認めた。

 

 それでもあいつは笑う。

 

「でも・・・でもですよ?こっちにだって、とっておきはありますよ!!」

 

 指を鳴らすとそこには…イリナが現れた。

 

「イリナ?」

 

 だが、その様子がおかしい。

 

「さあ…ジョーカーの覚醒の時間ですよ!!」

 

 イリナの姿が変わっていく。

 

 それはアンデット。ジョーカーの姿となった剣崎さんたちと似た昆虫としての要素をもっていた。

 

 だが、体色は金色。しかも、天使の翼が十二枚。

 

「ジョーカーの因子に天使の因子が入ったおかげで、先祖がえりみたいな形になったみたいでねえ。ジョーカーの中でもさらに特別な存在になりました。今の彼女は最初に生まれた二体の熾天使。その因子を受け継ぐ異例の熾天使のアンデット・・・。」

 

 ディオドラは告げる。

 

「セラフアンデットというべきでしょうかね。」

 

 光の槍をまるで雨のように大量に出現させるイリナ。

 

 その数に皆がぎょっとなる。

 

 その数はコカビエルの時よりも多い。

 

「やってしまいなさい!」

 

 その言葉とともにイリナは大量の光の槍を俺に向けてうち放つ。雨のごとき量と密度で降り注ぐ光の雨を俺は眺める。

 

―――――熾天使と同じ力っていうのも嘘ではないようだな。

 

「ああ・・・よくわかった。」

 

 イリナの奴・・・まじですごい。

 

 だが・・・

 

「それで?それで勝てると思ったのか?」

 

 ただそれだけだ。

 

「・・・・・・・・・。」

 

 勝ち誇っていたディオドラの笑みが固まる。

 

 俺はその雨が降り注ぐ中を無傷で歩いている光景を見て。

 

「なっ・・・あ・・・・・・・。」

 

『・・・・・・・。』

 

 行っておくがバリヤーや透過などは一切使っていない。

 

 ただ歩いているだけ。

 

 それだけだ。

 

「ったく、これでフォースが使用できたのならこっちは全力で防御したさ。」

 

 剣崎さんからフォースを学んでいるイリナ。そのフォースを併用させ、こちらの未来位置に攻撃を置いてくるとさすがに禁手化するなり、変身するなどして、防御しないといけない。

 だが・・・今のイリナはただ力を淡々とふるうだけ。フォースは操られているために全く使用できない。

 

 攻撃の鋭さもまったくない。

 

「ばっ・・・。」

 

 そんな見え見えのぬるい攻撃は歩いてかわせる。

 

「化け物・・・。」

 

 ディオドラの奴が青ざめた表情を見せる。

 

 そんなすごいことか?

 

 って、後ろの連中まで表情を引きつらせながら激しく同意してやがる!?

 

――――――相棒・・・もうしゃべらなくていい。無自覚さに頭が痛くなってきたから。

 

――――――アギト、末恐ろしいわ。

 

 相棒たちまで!?

 

――――――もうイッセーに禁手化、または変身しないときの弱さの問題はないも同然。

 

――――――だろうな・・・。

 

――――――変身しなくてこの強さって・・・。この子、恐ろしい速度で強くなって・・・。

 

「勝てるわけがない・・・あんな化け物・・・勝てるわけがない。」

 

「さあ・・・。」

 

「ひぃ!?」

 

 俺が一歩踏み出すと、あいつは悲鳴を上げる。

 

「アーシアとイリナを解放してもらおうか?」

 

「こないで・・・。」

 

 あれ?あいつ失禁している。おまけに顔から出るものすべて出している状態で・・・。

 

「こないでくれええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 って逃走!?ったく・・・。

 

「逃がすと思ったか?」

 

あいつの逃走先にあるものを召還し、行く手を阻む。それは・・・

 

「があっ?・・・えええ・・・?」

 

 ドラグシールドの遠隔召還。あいつだけは逃がさん。

 

―――――・・・・・・もうこの程度では驚かないわよ。カードを直接召還器に転送、しかもそれを意図的に別の場所に召還させるなんて・・・はは・・・はははは・・・。

 

 俺はそう決めていたんだからな。

 

ディオドラが慌てふためく。

 

「わかった。僕が悪かった・・・だから!!」

 

 全然足りない。

 

――――はあ、そうね。ついでに言うなら調べてもらったあなたの罪を教えて上げるわ。

 

 クレア?あいつの罪って・・・。

 

―――――こいつ・・・シスターを堕落させるのが趣味。そして眷属とした。

 

 そういえばゼノヴィアや良太郎たちがそんな様子を・・・。

 

 それが二人を見ると、二人は頷く。

 

「・・・そうか。」

 

 アーシアを貶めたのもそれが理由か。

 

――――悪趣味・・・いえ、もはや外道ね。

 

「・・・・・・翔太郎達にはあとで感謝しないとな。」

 

――――あら?情報源、ばれちゃった?

 

 なんとなくわかる。

 

――――本当に神様らしくなってきたね。イッセー。

 

「悪魔なんだぞ!!自分の欲望のままに動いて何が・・・。」

 

「悪いに決まっているだろ!!」

 

「ひっ?!」

 

 そこで俺は初めて怒鳴った。

 

 それとともに俺の目の前で巨大なアギトの紋章が展開。

 

――――――Boost!!

 

左手にブースデットギアが出現。すでにブーストが始まっている。

 

―――――――相棒の怒りに呼応か・・・。勝手に起動してしまっている。

 

 あいつは欲望のままに踏みにじってはいけないものを踏みにじった。

 

「おっ・・・おい。僕を守・・・・っ!?」

 

 あいつがイリナに命令を下そうとするけど・・・俺に気を取られてしまい、何も命令しなかったのが仇になったな。

 

「イリナは返してもらうぜ。」

 

 ほかのメンツがイリナを抑えていた。すでに洗脳の解除に入っている。

 

「イッセー・・・おもっきりやってこい。」

 

「おう・・・。」

 

 弦太郎が背中を押してくれる。

 

「ひっ・・・ひいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 ――――Boost!!

 

「さあ…お前の罪…数えたか?」

 

「つっ…罪だとぉぉぉぉぉ!?この僕に何の罪が・・・。」

 

「そうか・・・、数え切れなかったか。」

 

――――Boost!Boost!boost!boost!boost!!

 

 倍化がどんどん進む。それとともに拳に力がみなぎっていく。

 

―――BoostboostboostboostboostboostboostboostboostboostBoostBoost・・・

 

 天井知らずに。

 

「やめてくれ!!その拳はやばい・・・やばいですからぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「やめてと言ってお前は止めたのか?」

 

「・・・・・・・・。」

 

 アギトの紋章の力も拳に集める。

 

「さあ、あの世で・・・。」

 

「あっ・・ああ・・・ああ・・・。」

 

 あまりの力の圧についに言葉すら発することができなくなったディオドラ。

 

「お前の罪をかぞえやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

――――――Explosion!!

 

 その拳に集めた倍化の力の解放とともに俺は拳をふるった。

 

 

 

 

 

side 木場 佑斗

 

 イッセー君の渾身の拳。

 

 その破壊力はあまりに規格外だった。

 

『・・・・・・・・。』

 

 ディオドラの顔のすぐ左を通り過ぎた拳。その一撃は空を切るが、その余波だけで後ろの壁が粉々に・・・。

 

 いや壁だけじゃない。すぐ後ろにあったすべてが吹き飛んでいた。神殿みたいなステージが半壊するほどの破壊力。

 

「あっ・・・あ・・・・・・がく。」

 

 それを見てディオドラの心が完全に折れたのだろう。

 

 口から泡を吹いて気を失ってしまった。

 

「・・・変身も、禁手化もしないでこの破壊力・・・。」

 

 心底、君は恐ろしいよ。

 

――――相棒・・・完璧に心を叩き折ったな。

 

「それくらいしないとな。それにもう殴る価値もない。」

 

――――ふん。私たちの怒りを買ったのよ。来世でもそのトラウマに苦しむがいいわ。

 

――――ドラゴンにおびえる者の目はしていた。もうあいつは・・・。

 

――――再起不能。

 

「それでイリナの方はどう?」

 

「少し苦戦している。」

 

 元の姿に戻ったイリナさんの洗脳解除のためにポルム君が動いていた。

 

「・・・んん?げえ・・・まじで・・・。」

 

 そこでポルム君はため息をつく。

 

「どうした?」

 

「あいつら・・・なんてもんを仕込んで・・・。どうしたもんか・・・。」

 

 考え込むポルム君。

 

「それであれはどうすればいい?」

 

 イッセー君の質問はアーシアちゃんを拘束している謎の機器に・・・。

 

「・・・すでに解析は済ませた。絶霧の禁手化だよ。おかげで神滅具を解析できた。あれはいい。あれのおかげでこっちの切り札の一つが完成しそうだ。ははははははは、この世界は本当にいい・・・。」

 

 切り札?それ一体何だい?

 

「おっと・・・話が逸れたけど、まあ・・・破るのならサイガに頼んで。アギトの力に耐性はあるけど、それ以外は大したことはない。紋章の力を一つ使った一撃で壊せるはずだし。」

 

「また出番ってわけね。一つだけでいいのね。簡単でいいよ。」

 

「または佑斗のあれだね。あれは耐性なんて関係ないし。」

 

 あれって・・・あの魔眼ならたしかに・・。

 

――――――神滅具の禁手化・・・それも上位の奴を簡単・・・。

 

 もう呆れることしかできないよ。

 

 僕の力も。

 

「ったく、結局暴れることはなかったぜ。」

 

 全然暴れていないネロ君。

 

「ええ。でもアーシア。あとで説教ですから。」

 

「あはははははは・・・。」

 

 ぼろぼろのアーシアに少し涙ぐみながらキリエさんは怒っている。

 

「さて・・・ちゃっちゃと・・・。」

 

――――それは困るな・・・。

 

 

 だが、そんなムードを彼らがぶち壊した。

 

 

 

 現れたのは異形だった。

 

 

――――せっかく捕獲したアギトを解放してもらっては・・・。

 

 エイみたいな頭をしたのは、アンノウンと言われている敵と同じ感じがした。

 

 ただ・・・漂わせている力は桁が違う。

 

 そのとき、別の気配がアーシアちゃんの後ろから・・・。

 

 一人の悪魔が姿を現していた

 

 

 

 

 それが手から発生させた魔力の刃でアーシアちゃんの体をつらぬいていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 一瞬、時が止まったかのように思えた。魔力刃に貫かれ、血を吐き出すアーシアちゃん。

 

 貫いた部分からも血がでている。

 

「そのまま時空の彼方へ消え去るがいい。」

 

 その悪魔はそのままアーシアちゃんを背後に現れた時空の裂け目に飛ばしたのだ。

 

「くはははははは!!やったぞ!!種族の融和をほざくアギトをこの手・・・真なる魔王たる私の手で!!」

 

『・・・・・・。』

 

―――――――よくやったぞ。

 

 その後ろから現れるのは黒いモノリス。

 

 モノリスの後ろから次々と現れるアンデット達。

 

「…貴様らとは意見が一致しただけのことだ。忌々しいアギトを葬るためには・・・。」

 

 その会話だけであいつらの目的はわかった。

 

 それはアギト。

 

 つまりイッセー君とアーシアちゃん、そしてネロ君・・・。

 

「これであと二人・・・。」

 

 イッセー君が目を見開いたままふらつくのが見えた。

 

「ア・・・シア?」

 

 アーシアちゃんが消えた虚空を見ていた。

 

 残っていたのは彼女が刺されたときの血だけ。

 

 その場にまでふらふらと歩きながらイッセー君は・・・。

 

「どこに・・・いるんだい?」

 

 アーシアを探す。

 

「助けに・・・来たぜ・・・。」

 

 その姿はあまりにも痛々しい。

 

「お前にひどいことをしたやつらはぶっとばした・・・。一緒に二人三脚で走るって・・・。」

 

「イッセー!!」

 

 あまりに痛々しかったのだろう。部長がイッセーを抱きとめた。

 

「さて…二人目をやろうか。この手で・・・。」

 

 水のエルが部長に抱き留められたイッセー君の目の前にいつの間にか立っていた。

 

 手には槍がある。

 

「世界を混沌に導く邪悪なアギト・・・逝くがいい・・・。」

 

 部長ごとその怪物――水のエルは手にした槍を振り下ろした。

 

 僕達全員が助けようとするが、アーシアちゃんのことによる動揺で、みんな反応が遅れている。

 

 無慈悲な刃がショックのあまりにうつろになったイッセー君を守るとする部長に振り下ろされ・・・。

 

「・・・ふざけんじゃないわよ・・・。」

 

 それを部長が片手で受け止めていた。

 

「止めるか。だが、たかが悪魔程度に・・・。」

 

「ふざけんじゃないわよ!!」

 

 押し込もうとするが部長はあの怪物の攻撃を片手で止めつづける。

 

「・・・?」

 

「あなた・・・一体だれを殺したのかわかっているの?」

 

 部長は受け止めたまま怒りをあらわにしている。

 

「アーシアは世界の希望…そして、私たちの希望・・・。そして何より・・・。」

 

 涙を流しながら・・・。

 

「私たちの大切な妹分…家族だったのよ!!」

 

「なっ、なんで押し込めん・・・。」

 

 焦る水のエル。それをよそに部長の体が炎に包まれ・・・。

 

 部長は鬼に変身する。紅の鬼へと・・・。

 

「鬼?小癪な・・・!!」

 

「あんただけは絶対に許さない・・・カーミラ!!」

 

「ええ・・・。こいつにわからせてあげましょう。あなたの怒りと悲しみを!!」

 

 鬼となった部長の腕にすでにかみついていたカーミラ。

 

 腰にすでにベルトが出現している。

 

 そして、カーミラがすぐにベルトに止まり、部長は紅のキバに変身。

 

「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

紅のキバとなった部長はついに水のエルの槍を押し返す。

 

「ぐぐう…なんだこのパワーは!?」

 

 見た目は全く変わっていないけど、中身は以前とは別物だ。

 

 何しろ鬼になったうえでキバの鎧をまとっているのだから。

 

 部長は有無も言わさぬ勢いで水のエルの胴体に拳を叩きこむ。

 

「無駄だ・・・。」

 

 だが、それを受けた水のエルは自身の体を液状化させてかわす。

 

「?」

 

 それを見て赤黒い滅びの魔力をまとった打撃に切り替えるが・・・。

 

 それすらも透過する。

 

「私にその程度の攻撃など通用・・・。すべて受け流せる」

 

 水のエルの力。それはどうやら液体となって攻撃を受け流せるみたいだ。

 

 しかも、属性攻撃すら無力化できるレベルで。

 

「溺れるがいい。わが力で・・・。」

 

 無数の水の塊が出現。それが放たれる。

 

 それを交わすと塊が爆発。地面にクレーターができる。

 

 それがまさに弾幕のごとく僕達にも襲い掛かってくる。

 

「それは超圧縮した水の爆弾。触れたそれだけで体が粉々に・・・。」

 

「ふん!!」

 

 でも部長がそれを片手で粉々に・・・。

 

「へっ?」

 

「ふんふんふんふん!!」

 

 まるでシャボン玉のように超圧縮された水の塊が壊れていく。

 

 ちなみに僕達も全員…各々の技で防ぎ切っている。

 

「ちい・・・だったらこれだ!!」

 

 超巨大な滝のような水を部長に向かって放つ。

 

 その勢いはウォーターカッター並みの恐ろしさ。触れただけで岩が消し飛ぶほど。

 

 それに部長はイッセー君ごと飲み込まれる。

 

 いや、僕達全員に降りかかる・・・。

 

「・・・ふう・・・我らにたてつくから・・・。」

 

「へえ・・・たてつくから、なに?」

 

 でも部長を含め。全員無事だった。

 

「なに?」

 

 ギャスパー君が一斉に水そのものだけを止めていた。

 

「なぜ…わが技が神器ごときに・・・。」

 

「イッセーさんやアーシアさんを止めるに比べたらあくびがでるくらいだ・・・。」

 

「今度はこっちがいくぞ!!」

 

 その言葉とともにゼノヴィアが走り出す。

 

 構えはもちろん牙突・・・。

 

 それを防ぐのはモノリスみたいな管制者。

 

「・・・聖剣程度・・・我らにとって何の脅威も・・・。」

 

 黒い壁のような体の表面にデュランダルの刃先が届いていない。

 

 その周りにまとっていた力場が阻んでいるようだ。

 

 だが、それに弾き飛ばされるのをこらえて、ゼノヴィアは叫ぶ。

 

「穿てデュランダル・・・!!」

 

 その言葉とともにデュランダルが光輝き。刃先が力場に食い込む。

 

「なにぃ?!」

 

「連なれ…わが剣!!」

 

 その叫びとともに莫大なエネルギーの刃が発生。

 

 しかもその数が一度に十本。

 

「へっ?」

 

 立ち止まった状態からゼノヴィアは放つ。

 

 ゼロ距離からの牙突を・・・。

 

「牙突零式。」

 

 空間すら穿つ牙突。

 

「十連!!」

 

それが一点に十発同時・・・。

 

 そんな滅茶苦茶な一撃を防げる手段などこの世に存在するのだろうか?

 

「がばががががががららら!?」

 

 一気に防御が崩壊。黒いモノリスは粉々に砕け散りながら消滅。

 

「なん・・・だと?」

 

 相手は神。その守りを本体ごと粉々にした光景にエルは呆然。

 

「あなた、液体になれるのよね?それで攻撃をすべて受け流すと・・・。」

 

 部長は呆然としていた水のエルの懐に潜りこみ、その胴体に手のひらを押し当て・・・。

 

「だったら、これはどう!!?」

 

「ぶぐす!?」

 

 そう叫んだ瞬間に水のエルの体が粉々になった。

 

 あまりの衝撃に水どころか霧のレベルにまで粉々になったほどだ。

 

 すぐに元に戻る水のエル。でも・・・。

 

「・・・・・・なんだ今のは・・・。」

 

 膝をついていた。相当なダメージを受けた様子。

 

「私なりに・・・ゼロ・インパクトを再現させたのよ。短径に二重の極み、滅びの魔力に清めの音の合作としてね。」

 

 僕たちは研究していた。

 

 イッセークラスの相手との対決する日が来るのではないかと。

 

 イッセー君のような例外が、ほかにいないとは限らない。それに備えていたのだ。

 

「・・・・・・そんな阿呆みたいな技で私にダメージを・・・。」

 

 会得した力のてんこ盛りと言ったらそれまでだけど、うまく融合できると破壊力は思いのほか凶悪である。

 

 清めの音の浄化と滅びの魔力。それを二重の極みと皇魔力が恐ろしいレベルにまでに増幅させる。その結果誕生した防御不可能の一撃。

 

「あなたの水の体にまんべんなく浸透できたようね。もともと、イッセーの液状化能力を見て、敵が使った時の対策の一つとして考案したけど・・・大正解みたい。」

 

 その研鑽が今…炸裂。

 

 ――――ウェイクアップ1!!

 

 部長の左腕のカテナが外れる。

 

「カテナを外し、皇魔力と二重の極みの効果を高めた状態でぶち込めば・・・あなたを確実に仕留めること・・。」

 

「・・・・・・。」

 

「できそうね。」

 

 それを見て狼狽える水のエルが答えだった。

 

「だっ・・・だったら当たらなければいいだけのこと・・・。」

 

「ふん!!」

 

 当たらなければいい。その希望を粉々に粉砕するのは・・・

 

 部長が空間を殴って轟音とともに放つ圧だった。

 

「がっ・・・があ!?」

 

 それは空間を清めの音を放つ太鼓と想定して放つ・・・清めの音と滅びの魔力、そして皇魔力を混合させた衝撃波。

 

 それを受けた水のエルが己の体の動きが鈍っていることに気づく。

 

 鈍っているだけじゃない。

 

 体の液状化が阻まれているのだ。全身をむしばむステンドグラス状の文様に・・・。

 

「っ・・・これは!?」

 

「前見たグラグラの実だっけ?あれを参考に空間殴れるかなと試行錯誤したら・・・なぐれるようになったわ!!思っていたのと違うけど。これはこれで使える。」

 

 空間を殴ることで相手に清めの音などを送り込む荒業。

 

 このおかげで部長は素手で清めの音を出せる。撥など使わず、拳で空間を打ち鳴らすことで。

 

 音とともに送り込まれた清めの音と滅びの魔力、そして皇魔力。それを浴びて、エルの動きが鈍ってしまったのだ。

 

 ステンドグラスのようなものが体を覆い、体の液状化すらも阻んでいる。

 

 この技の恐ろしさは範囲が今後、どんどん広がることだろう。

 

「むっ、無茶苦茶すぎる・・・。」

 

 その意見だけは激しく同意する。

 

「ねえ、知っている?人を仕留めるときってね・・・。」

 

 部長は左腕のカテナを解放させたまま淡々と告げる。

 

「冷静さが・・・大切ってね・・・。」

 

 もっとも僕達全員を含め…あえてそう務めているだけだが。

 

 絶対に仕留めないといけない。

 

 そんな相手だけに・・・。

 

「仕留めるって・・・この私を・・・あの方の使徒、エルである私を本気で仕留めると・・・。」

 

「ええ…仕留められると確信もできたしね・・・。それに神殺しの力に定評のある子がいるし・・・。」

 

「神殺しだと!?」

 

「・・・そういうこと・・・。」

 

 僕も本気で殺そう・・・。

 

 お前だけは・・・。

 

 剣をひそかに構えている僕。

 

「ひっ!?そっ・・・それは死の力!!主様すら殺すあの・・・。」

 

 僕が魔眼を解放させたのを見て、水のエルは悲鳴を漏らす。どうやらこれはあいつらにもとても有効なのがわかったよ。

 

 しかも、あいつらの主も殺せることもわかった。実にいいねえ・・・。

 

「部長・・・それやったら、こっちも二度と復活できないように微塵切りしてもいいですか?」

 

「ええ・・・絶対、殺してあげましょう。」

 

「ひいいいいぃぃぃぃ・・・・!?」

 

 とうとうおびえだす水のエル。

 

「…ぐうう…この私がここまでの被害を・・・。」

 

 粉々になった黒いモノリスがうめき声をあげながら復活。

 

 それを見たゼノヴィアが冷めた目で・・・。

 

「まだ足りないか・・・そうか。なら今度は・・・。」

 

 いつの間にかゼロノスに変身。

 

 デュランダルをゼロガッシャーと合体。一本の剣とする。

 

――――フルチャージ!!

 

 その状態でさらに・・・。

 

――――フルチャージ!!

 

 エネルギーを充電。それも二回も・・・。

 

「だったら今度はこれを十発同時に叩き込んでやる。さっきよりも一発あたりの威力は百倍だ・・・。」

 

 ゼロガッシャーとデュランダルの合体。将来的にそこにエクスカリバーも加わる予定だが、現時点で威力は桁違いに跳ね上がっている。

 

 フルチャージすると、その破壊力は想定をはるかに超える。

 

「・・・・・・やめろ。そんなの受けたらさすがに死ぬ・・・。」

 

「そうか・・・ならむしろ好都合!!お前を殺すでぶち込もうとしているのだからな!!」

 

「ぐうう・・・。」

 

 黒いモノリスはすぐに後ろに下がる。

 

「やらせはせんぞ!!」

 

 そこにもう一人乱入。

 

 それは大地から現れる。

 

 それは空から現れる。

 

「大地のエル・・・風のエル…来てくれたのか?」

 

「主様が嫌な予感がすると聞いてな・・・。いけ・・・。」

 

 大量のアンノウンが出現。

 

 その数は千を超える。

 

「…これだけの数がいれば時間は稼げる。今のうちに・・・。」

 

―――――ウェイクアップ!!

 

 だが、その程度の数・・・無駄だろうね。

 

 こっちの後輩が・・・。

 

「全部…食べてしまいます。」

 

 一斉に止まってしまうアンノウン達。

 

 後ろですさまじい吸引が起き、それとともに動きが止まった千のアンノウンが次々と吸い込まれていく。

 

 それをやっているのはサガに変身したギャスパー君。

 

 胴体の口のカテナを解放、すべて吸い込んでしまっているのだ。

 

 数千体のアンノウン達を一気に・・・だ。

 

「……倒すだけならまだわかるが、まとめて喰らった!?神の使徒である我らを?」

 

「・・・うまい。アギトに似た味がします。でも…悲しい…満足できない。なんだろう…心にぽっかりと穴が空いてしまった・・・。」

 

 変身した瞳から涙を流しながらギャスパー君は三体のエルたちを見る。

 

「お前たちを…食べたら・・・その穴って埋まるの?アーシアさんがいない穴を・・・。」

 

『!?』

 

 エルたちは味わっているだろう。

 

 食べられてしまう。そう・・・殺されるだけとはまた違う脅威に。

 

「馬鹿な・・・我れらが捕食されるというのか!?」

 

「ええい!!お前ら無視するな!!」

 

 もう一人は旧魔王派の幹部・・・。

 

「直接手を下したあんたを逃がすと思った?」

 

 それを迎えうつのは足から炎をロケットのように噴射させる小猫ちゃん。

 

 その炎はただの炎じゃない。

 

 ガメラの力…プラズマだ。

 

「がぶ!?」

 

 そのまま殴り飛ばされた。

 

 あらかじめ展開した結界を手に灯したプラズマの炎で蒸発させたうえで・・・。

 

 しかも小猫ちゃんは変身している。白い鬼へと。

 

 そのうえで全身にすさまじい量のマナをまとっている。

 

「一発では終わらせない・・・あんたが逝くまで何発も殴ってあげる。」

 

「グオ・・・こんな雑魚ごとき・・・。」

 

 だが、明らかに強い・・・いや圧倒してしまっているのは小猫ちゃんだ。

 

 そのうえで地のエルと風のエルはある一人の人物のぼこぼこにされていた。

 

「ばが!?」

 

「ぶぐ!?」

 

 それは良太郎。

 

 二体の攻撃を回転でかわしつつ・・・その後ろを遠心力がたっぷり乗った返しの一撃で吹っ飛ばす。

 

――――みんな・・・いくよ。

 

『おう!!』

 

 彼と契約しているイマジンたち全員、どうしようもないほどの悲しみと怒りで一致。

 

 変身したのは電王――超クライマックスフォーム。

 

 その状態で良太郎はみんなと一緒に全力で攻撃していた。

 

 その有様は・・・。

 

「わっ・・・我らが二人で・・・。」

 

「手も足もでん・・・ぶぐがが!?」

 

 パワー、テクニック、そして何よりも速さで圧倒していた。

 

 一人と五人が一体となった力は神の使徒すら二体とも圧倒。しかも手にしていた剣とデンガッシャーを合体させてさらに破壊力が・・・。

 

「ふん!!」

 

『がばらる!?』

 

 二人が何かする前に素早く攻撃が来て、完全に封殺。

 

 武器をふるっても、大地を隆起させたり、突風を起こしても・・・。

 

 それを先読みされ、回避、または攻撃でつぶされる。

 

 無数の斬撃に切り刻まれながら吹っ飛ばされるエルたち。

 

 耐久力だけは無駄に高い。

 

「こいつ本当に人間か!?」

 

 そこにさらなる化け物が乱入する。

 

 水のエルが何とか拘束を断ち切って復帰したと同時に彼は走っていた。

 

 それはネロ。

 

「うらあああああああああああ。」

 

 怒りに身を任せながら変身。その右腕で水のエルを地面にたたき伏せる。

 

「がば!?」

 

 そして、手にしたアクセルクイーンで三人をまとめて吹き飛ばす。

 

「がらら!?」

 

「これで終わると思うな・・・糞野郎ども。」

 

 そして、姿が消える。

 

―――――――トライアル。

 

 あまりの高速行動で。

 

「うらららららららららららららららららららららららららららららら!!」

 

 背中に現れたもう一体の人型ともに無数のパンチ。

 

 それはまさにパンチとキックの嵐。打撃の壁。

 

 それを三体は同時に受けていた。

 

 まったく反撃も知覚もできないままに・・・。

 

「どうなって・・・・いる?」

 

「うぐ・・・。」

 

「ギルス…ここまで進化をしていたなんて・・・。」

 

「まだ甘いぞ・・・。」

 

―――――トライアル・・・。

 

「今度は必殺だ。キリエ、ポルム、ゆーすけさんもアーシアのことを頼む!!」

 

 そのうえでさらなる高速を得られるマキシマムドライブを発動させようとしていた。

 

「わかった。一応、あらゆる世界の蘇生手段を習得している。それ使えば助けることができる。」

 

 後では空間の裂け目を素手で強引にこじ開けたポルム君。その後ろにはキリエさんもいる。

 

「死なせない。あなたはもっと、みんなを笑顔できる子なんだから!!」

 

「アマダムを持っているのなら、まだ大丈夫なはず。」

 

 三人はまだあきらめてもいない。蘇生することもできるすべを持っている故に。

 

「そんなことさせ・・・。」

 

「るかと思ったか!!」

 

 その行く手を阻むのはネロ君。

 

「任せた。」

 

 そして・・・両腕と額、三つの竜の紋章を全開にさせているサイガ君だった。

 

「・・・もうあいつらにくれてやる慈悲はない。余の代わりにあいつらを消滅させてしまえ。終わった時にまだいたら・・・・。余が直々に処刑してくれる。」

 

 怒りを隠そうともせずにポルム君はその言葉を残して裂け目の中に入っていく。

 

「久々だな。人の逆鱗に遠慮なく触れられたのは・・・。」

 

 その状態でサイガ君は剣先で上空に円を描く。

 

 それとともに装着される鎧。

 

「はあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

『!!?』

 

 かつてない圧力に三人のエルたちは怯えを見せる。

 

「さあ、全員瞬殺してやる。かかって来いよ。」

 

 両手にそれぞれ真魔剛竜剣とダイの剣を逆手に持っている。

 

 瞬殺してやる。

 

 その言葉だけで多くの言葉を使う必要はなかった。

 

「…あなただけは許さない・・・。」

 

 そして、瞬殺する手段を持っているのはもう一人。

 

 朱乃さんが涙を流しながら背後の何かを具現化させつつあったのだ。

 

 それは黄金の三つ首竜。

 

 バチバチとすべてを消滅させるプラズマをまとった状態で。

 

「この世から・・・魂も残さない・・・。」

 

 それだけでわかるだろう。あれは触れてはいけないなにかだと・・・。

 

「・・・なんだそれは・・・。」

 

 エルたちは驚愕して見ている。

 

「アギトだけが脅威だと思っていた・・・。」

 

 水のエルはようやく思い知ったようあ。

 

「だが・・・実際はどうだ?なんだ…この化け物たちは!?」

 

「われらが殺されるというのか!?アギトを駆逐することもできず・・・。」

 

「ぐう・・・主様が懸念していたのはアギトだけじゃないということか!?あのアギトがいることで力があつまり、さらにそれが増大・・・している。我らが圧倒されるほどの・・・。」

 

「魔王たる我が・・・こんなやつらに・・・。しかも雑魚だと?!」

 

「…見誤った。アギトの影響でほかの連中まで異常な強化を・・・。」

 

 黒いモノリスの視線はうつろな目で膝をつき、弦太郎と渡が必死に支えられているイッセー君に向けられる。

 

 手を出そうとするが・・・そこを剣崎さんたちが阻んでいる。

 

 モノリスが全く違う方向から攻撃を仕掛けてきてもそれを三人は楽々にさばいたのだ。

 

「われらはあのアギトの真の脅威を見誤っていた。もはやあやつの存在そのものが世界を変革する。なら・・・。」

 

 モノリスの背後の空間が裂ける。

 

「こい・・・14。」

 

 空間を突き破って現れるのは異形の魔神。

 

「…いかなる犠牲を払ってでも、こ奴らはこの場ですべて滅ぼす!!」

 

「同感だな・・・我らも本気を出してやらねば、殺される。」

 

「封じられた枷・・・自ら解き放つ時が来るとは・・・。」

 

 その言葉にエルたちの姿も変わろうとしていた。

 

「神としての真の姿で・・・。」

 

「ハッ、そんなのあなたたちの死亡フラグでしなかいわ!!」

 

 部長がそんな彼らを笑い飛ばす。

 

 まったくその通りだ。

 

 僕たちは全くひるんでいない。

 

「隠していた力があるのなら出しなさい。すべて打ち砕いてあげるわ!!」

 

 みんなやる気満々。アーシアもまだ終わったわけじゃない。あきらめるのは早い!!

 

「恐れないとは、まさに規格外・・・。認めてやる。お前たちが我らの最大の敵であることを!!恐るべきはグレモリー眷属よ!!」

 

「ここまで脅威に思った連中は生まれて初めてだ。絶対につぶす!!」

 

 エルたちも含めて僕たちは本気でぶつかろうとしていた。

 

 だが・・・その時にそれは訪れていた。

 

 イッセー君が不気味なオーラとともに立ち上がったのだ。

 

――――――・・・まずい・・・。

 

――――――おっ・・・抑えきれない。

 

 イッセー君の内部で三人の声が聞こえる。

 

――――私たち三人がかりでも無理って・・・どんなばけものなのよ!!

 

 しかも必死だ。

 

――――あいつら・・・とんでもないことをしてくれた。歴代赤龍帝の残留思念と、覇の力が呼応してはいた。それに加え・・・あいつの空虚な悲しさと深い憎しみと怒り。そのせいで遂にあいつが目覚めてしまった。これはもう…手におえん!!

 

――――――だっ…ダメ…取り込まれる・・・。私たちの力が・・・。

 

――――み・・・みんな・・・。

 

 ブランカちゃんが皆に告げる。

 

――――逃げて…今すぐに!!

 

 

 

 

 

その言葉とともにイッセー君は呪文を唱える。

 

―――――我 目覚めるは・・・。

 

 それは覇龍の呪文かと思った。

 

――――怒りの化身たる獣たちの王なり。

 

 だが・・・・二天龍じゃない。

 

―――覇と無限、夢幻すら飲み込み。

 

 これは違う呪文だ!?

 

――――破壊の神となりて・・・世界のすべてを・・・

 

 覇龍の呪文自体は事前に聞いている。

 

 万が一のための対策としてだ。

 

 だが、これは・・・。

 

――――破壊しつくしてくれよう。

 

 まったく別の何かだ。

 

――――Destroyer burst drive GOZIRA!! GOZIRA!!

 

 イッセー君の神器が告げるとともにイッセー君の体が光輝く。

 

 そして、その光の中から黒い巨体が姿を現したのだ。

 

『・・・・・・。』

 

 その大きさ、まさに山のごとし。背中には炎のようで、それでいて刃のように鋭い背びれ。

 

 岩のような黒くごつごつした皮膚。

 

 その腰にはアギトのベルト。

 

 右腕にはブースデットギア。左腕にはドラグレッターが装備されている。

 

 右足には黒のドラグレッター。

 

 それはまさに怪物。

 

 その場にいた敵味方ともに間抜けなように口を半開きにして唖然としていた。

 

「なんなの・・・これ・・・。」

 

 僕たちが唖然としている前でそいつは口を開き・・・。

 

 咆哮。

 

 ただそれだけ。

 

 ただそれだけなのに・・・。

 

 大気が震え、大地すらもそれに伴い震える。

 

 いや大気だけじゃない・・・。

 

「空間・・・そのものが・・・ふるえている・・・だと?」

 

 ただの咆哮で空間が震え、神殿が壊れる。

 

 崩壊していく神殿。その中、その瞳は・・・。

 

「・・・ひっ!?」

 

 アーシアちゃんを殺した例の悪魔に向けられていた。

 

 どうやら狙いは決まっているようだ。

 

――――貴様だけは許せない・・・。

 

 すさまじい怒りの思念とともに背びれが青白く発光。

 

 そして、その口から青白い光が放たれた。

 

 その大きさは巨大なトンネルのようだった。すさまじいくらいに膨大なエネルギーが米らている。

 

 管理者が召喚した14がそれを防ぐべく立ちはだかる。

 

 でも、それはほんの微かな時間稼ぎにしかならない。

 

 飲み込まれ瞬時に蒸発。

 

「ちぃ?!」

 

「馬鹿な一瞬だと!?」

 

 それを見て彼らはすぐにかわす。14が稼いだ刹那の時を利用し、熱線をかわすのに十分な距離を移動・・・。

 

 だが、その余波だけで・・・。

 

『ぬぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?』

 

 全身を焼かれながら吹っ飛ばされる。

 

 そして、その光がかなり遠くの山に着弾し・・・。

 

 轟音とともに山一つが消滅。

 

 その余波がこっちに襲い掛かってくる。

 

「きゃあ!?」

 

「なななな!?」

 

 僕達もそれに吹っ飛ばされないようにこらえるのが必至だった。

 

 少なく見積もって、数十キロは離れている山が消滅。しかもその余波の衝撃で超巨大台風の最大風速くらいの衝撃がここまで届くレベル。

 

 全身を焼かれ、すっかりボロボロになった水のエルが倒れたまま告げる。

 

「次元が・・・次元が違い過ぎる・・・。」

 

「まさかこんな力を秘めていたとは・・・。」

 

 まさにその通りだった。

 

「・・・・・・・。」

 

 あの悪魔に至っては痙攣しながら気を失っている始末。

 

 イッセー君が変身したそれはまさに…怪獣だった。

 

――――これって・・・やばいわね。二天龍どころか、神龍クラスは確実。

 

 僕の中でクウが若干の怯えを含ませながらいう。

 

――――確実にオーフィスよりも力だけなら上ね。おそらく・・・この世界最強と互角かまたはそれすらも・・・。

 

 エルたちは震えあがっていた。

 

 あまりに規格外の存在の出現。

 

「・・・あらためて認識を改めるぞ・・・。やはり最大の脅威はあのアギト・・・いや・・・。」

 

 それは最も触れてはいけない部分に手を出してしまったという深い後悔に。

 

「兵藤一誠はもはやアギトという枠すら超えた存在ということか。・・・我らでは歯が立たん。」

 

―――GURURURURURURURURU・・・。

 

 まだ生きている水のエルを見て…イッセー君は瞳に怒りを灯す。

 

――――BOOST!!

 

「へっ?」

 

―――BOOST!!BOOST‼

 

 その怒りとともに、今の状態で最も聞きたくない音声が聞こえてきた。

 

「まさか、倍化しているだと・・・。」

 

 それとともにもともと巨大だった力がさらに爆発的に膨れ上がる。

 

――――BOOST!!BOOST!!BOOST!!BOOST!!BOOST!!BOOST!!

 

 部長が変身した状態で表情は見えないが、おそらく青ざめた表情で頭を抱えていることだろう。

 

 その場にいた敵味方ともに同じ表情をしているだろう。

 

 僕だって・・・そうだ。

 

「冗談じゃないわよ!!あれでまだ倍化してないなんて・・・。」

 

 もはや恐怖。

 

 倍化しない状態で、山をふっとばすほどの破壊力。

 

 ならそれで倍化したのなら・・・。

 

 想像できるレベルを超えてしまっている。

 

――――Explosion!!

 

 背後にアギトも紋章を展開させながら力を解放。

 

 解放された力の余波だけで神殿ごとすべて吹っ飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

SIDE アザゼル

 

 それは突然起こった。

 

 神殿から青白い光が放たれ、それととともに山が消し飛んだのだ。

 

 あまりの光景に、戦っていた皆が敵味方問わずに手を止める。

 

 あいつらが向かった神殿が轟音とともに吹っ飛んだのだ。

 

「・・・おい。なんだありゃ・・・。」

 

 それは黒い山のような巨体を持った見たことのないドラゴン。

 

 だが、その内包しているエネルギーが尋常じゃない。

 

 そいつは背びれを発光させたかと思うと、口からすさまじく膨大な量の青白い熱線を放ってきた。

 

 その量…冥界の空、一面を覆わんばかり。

 

 それで大きな被害を受けたのは空にいたスペースパイレーツたちの艦隊だ。

 

 空一面を覆っていた艦隊の大半がその一撃で消し飛んだのだ。

 

「・・・マジかよ・・・。」

 

 軽く見ても戦艦百隻くらいはあったぞ。今まで見たことのない大艦隊だったのに・・。

 

 それがたった一発で全滅。

 

 でたらめすぎる。あまりにも・・・。

 

―――BOOST!!

 

 へっ?なんだ今の音声。

 

――――BOOSTBOOST

 

まさか…あいつから聞こえてくるのか?

 

 よく見ればあいつの右腕にはブースデットギア。

 

 しかもその音声とともにただでさえでたらめなパワーがさらに増大しているし!?

 

 左腕にはドラグレッター。

 

 腰には…アギトのベルト。

 

 右足にはブラックドラグレッター。

 

 あいつの背中の後ろにアギトの紋章・・・。

 

 まさかあいつ…イッセーなのか!?

 

 イッセーが変身したのか!?

 

 あいつの視線はあいつのそばで戦いを繰り広げていた魔王派の悪魔たちに向けられている。

 

 怒りと憎しみが込められたとんでもない視線だ。

 

 それだけで遠くにいるというのに俺達は射すくめられそうになる。

 

――BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!

 

 怒りに呼応するように倍化の速度が飛躍的に上がっている。

 

 おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい!!?

 

 やべえぞ!!やばすぎるぞ!!

 

――――BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTOBOOSTBOOSTBOOST!!

 

 怒りのボルテージとともに天井知らずに力が上がっていやがる。

 

 その証拠に高まる力だけで・・・。

 

「地震が起きていやがる・・・。」

 

 大地が震え、大気が轟く。

 

――――Explosion!!

 

 そして、倍化した力を解放。

 

「ぐお!?」

 

 ただそれだけですさまじい衝撃があたりにまき散らされる。

 

 大地が裂け、大気が爆せる。

 

――――争いをしている愚か者どもよ・・・すべて消え去るがいい!!

 

 その思念が頭に響くとともにあいつの背びれが青く発光。

 

 それとともに口の中が青白く発光し・・・。

 

『うおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!』

 

 崩壊したがれきの中から飛び出した二つの影がその巨体の顎を打ち抜く。

 

 そのために狙いが上に反れ、上空に青い光が放たれる。

 

 先ほど艦隊を全滅させた奴よりもはるかに強大で広範囲に及ぶ青白い熱線。

 

 あんなのが地上に放たれていたと思うとぞっとする。

 

 確実に俺たちがいる地域一帯が吹っ飛ぶ。

 

「はあ・・・はあ・・・やべえな。」

 

「そう・・・だね。」

 

 大金星をあげたのはネロとサイガの二人のようだった。

 

――――邪魔をするか・・・。

 

 あいつらだけじゃない。

 

「死ぬかと思った。」

 

 他の連中も次々とがれきの下からあらわれる。みんな無事だ。

 

 グレモリー眷属・・・俺が育成を手伝ったとはいえ、呆れかえるほどに頑丈だな。

 

「…てめえは何者だ。何があってイッセーの体を乗っ取っていやがる!!」

 

―――われに名前はない。

 

 ネロの叫びに、それは淡々と告げる。

 

―――我は幾重の世界に存在していた。そして、様々な理由で死んだ。だが、そんな幾重の世界の我がこいつに惹かれ、一つとなる形で我は生まれた。怒りと憎しみの化身として。こいつが生まれた時からずっと・・・ずっと眠っていた。

 

 あいつがイッセーが生まれた時からずっとともにいたという衝撃的な事実を。

 

――――わが宿主の底知れない絶望・・・悲しみ、そして怒りが我を呼び覚ました。それにこたえるがわが役目。あいつはまだ生きているか・・・。

 

「ひぃ!?」

 

 がれきのそばから出てきた謎の怪人達にそいつは憎しみの視線を向ける。

 

 その圧倒的な殺意にその怪人たちは悲鳴をあげている。

 

――――宿主の代わりに消す・・・。確実にな!!

 

 その声をともに背びれを発光させ、再び口から青白い熱線を放つ。

 

「ひいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃ!?」

 

 だが、その熱線がそいつに届く前に。

 

 熱線が掻き消える。

 

「・・・やってくれるわね。」

 

 その怪人たちの前に現れたのは一人の少女だった。

 

 長い黒髪をした少女。

 

 背中には翼が生えている。

 

 着ている衣装は黒いバレエで使うようなもの。

 

「ほむら殿・・・。」

 

 怪人たちは驚いた様子でその少女を見る。

 

「一体何が起きたの?何がどうなったら艦隊が全滅し。こんなひどい有様になるのよ。旧魔王派・・・ほぼ全滅しているし。」

 

「それは・・・。」

 

 あいつが力を解放させた余波だけでこのあたり戦闘していた雑魚はほとんど戦闘不能になっている。

 

 確かに全滅といっていい。解放した余波だけで全滅ってあたり、もう次元が違う。

 

「・・・だれだ。あんた。」

 

 俺が足元の連中たちのもとへ急いで向かっている間にネロの奴がその少女に話しかける。

 

「あなたがギルスね。そう・・・。」

 

 見た目の歳はおそらく十代前半。

 

 だが、その妖艶なまでのしぐさから見た目と不相応の何かがある。

 

「初めまして。私の名はほむら。禍の旅団の代表を務めているものよ。」

 

『!?』

 

「みな!!」

 

 俺は急いで皆のそばに降り立つ。

 

「ついにお出ましってわけかい。どうしてテロ組織のボスがみずから・・・。」

 

「あなたがグレゴリの総督ね。ふふふ・・・楽しいわね。」

 

 悪女のように笑う禍の旅団のトップを務めているほむら。

 

 だが、あの熱線を防げるだけ、相当な実力を・・・。

 

「それで・・・一体なにがあった・・・って!?」

 

―――BOOST!!

 

 いつの間にか倍化したイッセーがいる。

 

――――Explosion!!

 

「ぐっ!?」

 

――邪魔を・・・するなぁぁぁぁぁぁぁあl!!

 

 倍化した状態で放たれる熱線。

 

 それを受け止めるほむらだったが・・・。

 

「ぐう・・・さっきまでと威力が違う!?」

 

 押し切られようとしていた。

 

 だが、そこにもう一人現れた存在がその熱線を横っ腹から殴り飛ばす。

 

「・・・ほむら、無事?」

 

 それは・・・

 

「助かったわ。」

 

「いい。ほむらには世話になっている。」

 

「オーフィス!?」

 

 無限の龍神様だった。

 

「渡…やっと会えた。」

 

 渡の姿を見て涙ぐむオーフィス。

 

 思わず飛び出し、渡に抱き着く。

 

「・・・ふう。やれやれ。再会の時間を作ってあげたけどそう・・・あなたがオーフィスちゃんの愛しい人・・・か。加えてこの状況じゃなければ最高だったけど。逆にこんな状況だからこそうまくいったというべきかな?」

 

 その光景を優しいまなざしで見ているほむら。

 

「ちなみに私はオーフィス派の代表でもあるの。彼女は大切に保護していたわ。まあ・・・ごめんなさい。まだ一時的な再会しかできないけど。」

 

「それでも…再び会えた。それだけでも・・・。」

 

「本当に会いたかった。」

 

 抱きしめあう二人。それをあいつはほほえましくみている?

 

「私もはやくみつけないとね。まどかを・・・。」

 

「いたか・・・ほむら。」

 

 そこに空間の裂け目が現れもう一人あらわれる。

 

 それはヴァ―リだった。

 

 その腕の中には・・・。

 

「アーシア!?」

 

 アーシアの姿があったのだ。

 

「ほむら。勝手に動くな。おかげでこっちが動くことになったぞ。」

 

「あら?ごめんなさいね。」

 

「アーシア!?」

 

 ゼノヴィアが急いで駆け寄る中、同じく空間の裂け目からポルムとキリエ、ゆーすけが出てくる。

 

「…安心して。治療は終わった。」

 

「たまたまヴァ―リ君が虚無の中を移動していて、よかったわ。」

 

「何・・・彼女には大きな恩がある。それにこの世界に必要な存在だと思っているのでな。」

 

「なっ・・・馬鹿な・・・。」

 

「へえ・・・その子にあなたたちは手をだしたのね。」

 

 謎のエイみたいな怪人の言葉に何かを察したのかほむらはためいきをつく。

 

「その結果、もう一人のアギトの逆鱗に触れてああなった…ところかしら?」

 

「ぐっ・・・。」

 

「だが・・・流石にこれは余の想像の斜め上を行き過ぎている。」

 

 ポルムが冷や汗を流しながらイッセーが変身した存在を見る。

 

「知っているのか?あいつを・・・。」

 

 ポルムは「ああ」と息をのむようにつぶやいてからつげる。

 

「あいつの名はゴジラだ。数々の世界を旅してきたが、その中で様々な形で出会った。その世界における最強の生命体としてな。」

 

『!!?』

 

「みな…気を付けろ。あいつは怒りと破壊の化身。世界によっては心臓だけでも生きているような本物の怪物だ。力はこの世界で言う龍神。それもグレートレッドクラスだと思え!!」

 

 ポルムの警告は皆に衝撃とともに納得をもたらす。

 

 って心臓だけで生きているって邪龍顔負けのしぶとさじゃねえか!!

 

「そう・・・なのね。じゃあ・・・それに・・・。あれってどう?」

 

――――BOOST!!BOOST!!

 

「ブースデットギアの倍化・・・だと・・・。」

 

 ポルムの体が震えあがる。

 

「なるほど…考える限りの最悪の組み合わせだ。はははは・・・これは本気で不味い。しかたない・・・。」

 

 そういいながらポルムはジズの翼を出す。

 

 そこから現れたのは白い霧。

 

 絶霧?まさか、あいつ…この戦いで解析して己の物としたのか!?

 

「まずは被害をこれ以上出さないようにする。出ないと、冥界が滅ぶ。」

 

 その結界を使ってのバトルフィールドを作るか…いいアイディアだ。

 

「でも、あの放射熱線に対しては薄いガラスの壁でしかないよ。」

 

 ・・・まじですかい。

 

 だが、そこでポルムの策は終わらない。

 

「そこで提案がある。幸いなことにオーフィスちゃんの扱いを見てそれを信頼の担保としていいみたい。」

 

 話しかけているのはほむらだった。

 

「共闘を持ち掛けたい。」

 

 ポルムの奴が禍の旅団の首領に共闘を持ち掛けただと!?

 

 驚く俺たちをよそに・・・。

 

「緊急事態ということで頼む。それに、もしかしたらいい機会かもしれない。」

 

 ポルムが何を言いたいのか俺はすぐに悟る。

 

 ボスであるほむらの人柄をある程度見切ったうえで持ち掛けたのだ。そして、この騒動が終わった後、対話の窓口となることも期待して。

 

 正直、俺もしたが回る。

 

 それだけの計算を瞬時にしやがったか。

 

「食えないけど、この際しかたないわね。私としてもあれは放置しておけないし。なら、条件がある。私…探しているひとがいるの。それを見つけてほしい。あなたに協力してもらったらすぐに見つかりそうだし。」

 

「わかった。交渉は成立だな。」

 

――――BOOST!!BOOST!!

 

 ポルムの交渉はそこで終わる。

 

 ゴジラの奴がまた倍化を始めたことで。

 

「俄然やる気が出てくるわね。でも…これは流石にきついわ。」

 

「同感。」

 

 はあ・・・しかたねえ。冥界が滅ぶかもしれない時だ。

 

 腹をくくろうか!!

 

「あいつの熱線は背びれの発光の後に放たれるよな?ならまだ解決策は・・・。」

 

 俺はヴァ―リを見る。

 

「俺が近づいて半減させる。」

 

 ヴァ―リもやる気だ。

 

「それにいい機会だ。グレードレッドクラスなら今の俺の実力がどれだけの物か図れる。」

 

 途方もない強い相手に対してむしろ高ぶるあたり、大概戦闘狂だ。

 

 この場合は頼りになることこの上ないが。

 

 だが、この後、あいつは想定外の行動に出てきた。

 

――――Guard vent!!

 

 今度は召還器が発動したのだ。

 

 それも・・・。

 

――――Strike vent!!

 

 一気に。

 

――――Sword vent!!

 

 光輝くとともにゴジラはとんでもないことになっていた。

 

 赤と黒のドラグクローが両腕に装備。

 

 頭に一本角のように、そして尻尾の先に尾びれのようにドラグセイバーが出現。

 

 最後にドラグシールドが両脛と両肩に装備される。

 

「・・・・・・うわ・・・・・・そんなのありか・・・。」

 

 結果、完全武装モードのゴジラが爆誕する。

 

 さすがのポルムの奴も頭を抱えてしまっている。

 

「最悪がさらに最悪に・・・。まてよ・・・ということは・・・。」

 

―――――transfer!!

 

 倍化した分のエネルギーが両腕のドラグクローに譲渡される。

 

――――BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!

 

 さらに倍化を早め・・・。

 

――――Explosion!

 

 本体も力を解放…譲渡と力の解放を同時という、無茶苦茶な力の運用をしている。

 

 そして両腕のドラグクローからも青白い光が集まっていく。

 

 さっきの熱線を今度は三発同時放つつもりか!?

 

 そんなの放たれたら余波だけでも俺たちは確実に全滅するぞ!!

 

「・・・・・・あの時、余に挑みかかった勇者達の決死の気持ちがわかる気がする。絶望したくなるよ。」

 

「・・・・・・。」

 

 それを今言うなよ・・・。はあ、大魔王としては逆の立場に置かれることに感慨深いものがあると思うが・・・。

 

 今まさに熱線が放たたれようとしていた。

 

 その時だった。

 

 巨大な二つ矢が放たれ・・・ドラグクローを上へと打ち上げる。

 

 別のアギトの紋章が展開され、その顔面に向けて何かが飛び込んできた。

 

「!?」

 

 放たれようとした一撃はその二つにより上にそらされる形で放たれる。まるでロケットの発射のような爆炎と衝撃があたりを襲い、冥界の空を青白く染める。

 

 夜空しかない暗闇の世界がしばし青白い空模様へと変わる。

 

 地上に向けて放たれたら一撃で冥界が・・・滅ぶかもしれない。

 

 よく防げたぜ。

 

 あれを行ったのは・・・あの二人か。

 

 大変いいタイミングで心強い応援がきたもんだ。

 

 一人はアギトだった。

 

 アギトシャイニングフォームとなったイッセーの父親――兵藤 翔一。

 

 そしてもう一人は・・・。

 

「まどか・・・。」

 

 俺の隣でほむらが呆然としている。

 

「どうして・・・まどかが・・・?」

 

「・・・ほむらちゃん・・・。」

 

 何?

 

 一方、兵藤 まどかは少し悲しそうにほむらを見ている。

 

「やっと…見つけた。でも…なにがどうなっているの?どうして・・・。」

 

「どうしてって・・・怒り狂った息子の怒りを鎮めに来ただけだよ。」

 

「息子?」

 

 ほむらの視線がゴジラに向けられる。

 

「・・・・えっ?息子?まどかの・・・息子?子供・・・・あかちゃん?あの新しい神となる子があかちゃんでまどかの赤たんで・・・!?」

 

 なんかすごく混乱している。赤たんって・・・さっきの堂々とした態度はどこにいった?

 

「うん・・・おなかを痛めて生んだ自慢の息子だよ。」

 

「・・・・・・・。」

 

 そしてついに固まった。

 

「えっと…もしかして探していた人って・・・まどかさんなの?」

 

「・・・・・。」

 

 ポルムは固まったほむらの態度がすべての答えだと悟る。

 

「あらら・・・。でも、これは僥倖か。戦力は増えたから。」

 

 何がどうなっているのかわからない。

 

 並行世界にいた俺から聞いた話よりもいろいろな規模でひどいことになっているし。

 

「・・・みんな。イッセーを救うぞ!!言っておくが殺す気でやらないとこっちが死ぬ。しかもファイナルベントで瞬殺に冥界滅亡のおまけつきだ。」

 

 ファイナルベントという言葉に、いよいよ皆の緊張が限界までに張り詰める。

 

 今のイッセーがファイナルベントを使ったらもう・・・俺たちは終わる。

 

「はあ…イッセークラスと戦うことを想定して修行していたけど、まさかイッセーと戦うことになるなんて・・・。」

 

 リアスの奴が嘆く。完璧に開き直りやがった。

 

「それも…ここまでくると驚くことすらできず、もう…今度は何って悟れるレベルだわ。」

 

 俺もこんな事態は流石に想定していない。

 

 並行世界の覇龍だったら、今のメンツで簡単に、しかも手早く、力づくで取り押さえることができる自信はある。

 

 だが、さすがにこれは想定外にもほどがある。

 

 おそらく敵もそうだろう。

 

「主殿に伝えねば…奴、兵藤 一誠に手を出したら、滅ぶのは我らの方だと!!」

 

これが終わったら間違いなく、エルたちの報告で、敵はイッセーを恐れるだろうな。すべての世界で最も逆鱗に触れてはいけない存在として。

 

 まさに歴代最強にして最凶の赤龍帝だよ。それもダントツで!!

 

―――――邪魔をするのなら・・・消し飛ばしてくれる!!

 

 こちらを敵と認定したのか、咆哮をあげるゴジラ。

 

「みんな・・・イッセーを救うわよ!!」

 

『おう!!』

 

 みんなはイッセーを止めるための戦いを始める。

 

 俺はその中で意識をうしなったままのアーシアを見る。

 

「…おそらくカギはアーシアか。」

 

 世界でイッセーとは違う方向に進化しようとしているアギト。

 

 その彼女がカギなのは間違いない…と思ったとき。

 

 彼女の腰にアギトのベルトが出現。

 

 横たわっている床に黄金のアギトの紋章が現れていた。

 




 ということで六章最終決戦・・・まさかのイッセーがラスボスです。

 この作品史上最高の強敵だと確信しております。

 モンハンのクエスト風になるとこんな形になります。


   六章最終決戦。

 アギトゴジラを倒し、イッセーを救え!!

 達成条件  あるイベントが起きるまでに、誰一人死なないこと。

       十ターン全員生き延びれば勝ち。

 失敗条件  誰か一人の死亡。

 誰が一人死んだ時点で、イッセーの絶望が頂点に達し、限界までの倍化と透過を併用させた状態でファイナルベントが発動。問答無用で冥界ごとすべてが終わる。


 なお毎ターンごとに味方の増援あり。

 なおこのターンから放たれる攻撃はすべて透過による防御不能効果が付加される、

 ターン経過ごとにゴジラはアギトの本能がなじんでいくことで、つぎつぎと新たな能力を発揮していく。十ターン後には…最悪なことになる。



 解く形です。ぶっちゃけ増援がカギです。また次の投稿を楽しみにしてください。


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VSG 前半 

 みなさま大変お待たせしました。

 このまま最終戦とエピローグまで投稿します。

 うまくかけたか自信ありませんがどうぞ・・・第一部のラストバトルを!!


 

 SIDE  ポルム

 

「戦闘指揮は余がとる!!みな…異存はないか?」

 

 余の言葉に皆が頷いてくれた。

 

「俺からも頼む。お前さんがこの場合は一番だ。」

 

 アザゼル殿の推薦もあり、決定となった。

 

「・・・ありがとう。みな。」

 

 皆に改めて頭を下げる。

 

 その信頼にこたえないといけない。

 

 ふふふふ・・・大魔王時代には感じなかった気持ちだ。

 

「小猫ちゃん!!そっちは今のうちにガメラの召還!!彼の力が必須だ!!」

 

「わかった。」

 

―――BOOSTBOOSTBOOST・・・。

 

 ゴジラの奴が倍化を開始。

 

「皆は各々攻撃。ヴァ―リが突撃して、あいつに直接触れるための時間稼ぎを!!こっちは万が一のためにあれを用意しておく。」

 

 私は右手に炎を左手に氷を出す。

 

 これは万が一の時の相殺のための手札。

 

 あいつの力は未知数すぎる。何が飛び出すのか全く分からないのだから。

 

「足元を狙う!!」

 

 グレモリー眷属が先頭に立って突撃!

 

「巨体を支える足をまずは払って動きを封じ込める!!」

 

 部長の判断は正しい。あれだけの巨体だ。足を狙う戦法はゴジラの世界でもやっており、一定の効果がでていた。

 

 だが、山のごとき巨体であるあいつの足を払うとは、どうするつもりだ?

 

 朱乃さんとギャスパーが中心となって攻撃をしかける。

 

 朱乃さんの放つプラズマの龍がゴジラの目にせまるが それを額のドラグセイバーで切り裂いて消滅。

 

 だが、ただで消滅しない。

 

「あくまでも仕込みですわ。」

 

 猛烈な閃光と爆音があたりに響き渡りゴジラの五感を一時的に封じる。

 

「さすがに止めることはできそうにないから・・・。」

 

 ギャスパー君は思いの外、柔軟で、そして優秀だったようだ。

 

「動きをゆっくりにさせてもらいました。」

 

――――!?

 

 ゴジラの動きは流石に止められなかったらしい。だが、時の流れを半減させたのだ。

 

「僕の半減を参考にするなんて恐れ入ったよ。」

 

 どうやらヴァ―リの時間の半減からヒントを得たらしい。

 

―――――ウェイクアップ1、ウェイクアップ3!!

 

 部長が両手のカテナを二つ外しながら接近。

 

 巨体の足元に到着していたリアスが飛び上がりながらとらえる。

 

「うおおおおらあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 それは二段攻撃。ゴジラの両足をダッシュの勢いを乗せた左ストレートで吹っ飛ばす。

 

―――うお!?

 

 その結果宙に浮くゴジラ。そして、浮いたゴジラに間髪入れずに右アッパーを叩き込む。

 

「ゴジラってものすごく重いのに・・・。」

 

 結果生まれたのが物理の法則に喧嘩を売っているような暴挙。

 

 体重は十万トンを超えているゴジラの体がすごい勢いで宙に吹っ飛ぶ光景だった。

 

遠い目をしたくなる。

 

 今更突っ込みなどはしないけど・・・ねえ。

 

 あの巨体が数百メートルも力技で打ち上げるほどになるとは。

 

 さすがあのグレモリー眷属の王というべきか。

 

 部長、この一撃だけでもあなたはあの眷属の王として十分ふさわしいと思う。

 

 少なくとも余はそう思う。ほかにも大多数の人たちがそう思うだろうよ。

 

『・・・・・・・・・。』

 

 現にそれを目撃した皆が驚愕し、余たちの身内に至っては悟りを開いたような遠い目をしている。

 

 本当に強くなったものよ。この数か月の間に恐ろしいほどに。

 

―――――BOOSTBOOSTBOOSTBOOST・・・。

 

 この隙を狙わないわけにはいかない。

 

 さすがのゴジラも空中では・・・。

 

 だが、次の瞬間…ゴジラの姿が消えた。

 

 瞬時に地面に降り立って見せたのだ。

 

 テレポテーション。イッセーが開花させた瞬間移動能力。

 

「・・・想像以上にアギトの力の適合が早い。さすがというべきか。」

 

 時間をかければかけるほどアギトとしての力をゴジラは使うようになっていく。

 

―――――小さきものにここまで吹っ飛ばされたのは初めてだぞ。お前ら・・・只者ではないな。

 

 本人は流石に驚いている様子。

 

 まあ、こちらからしたらアリに吹っ飛ばされるのと同じだから想像なんてできないわな。

 

――――Explosion!!

 

 そこで力を解放させようとするが・・・。

 

「悪いがもうお前に触れた。そのおかげで・・・。」

 

 解放されたのに衝撃波が来なくなっていた。

 

―――Divide!!

 

 ヴァ―リのおかげで。

 

「神性があろうがなかろうが・・・問答無用で半減できる。それが今の俺の力。ふはははは、すでに限界の一つは越えたぞ!!」

 

 アギトの恩恵なのだろうな。神格にも問答無用・・・。半減する意味がさらに大きくなったものだ。

 

「…ゴジラの力を半減。非常にありがたいよ!!」

 

――――…だが、その程度で・・・!!

 

 半減の速度と倍化の速度は拮抗している。これだけでも十分に大きい。

 

 その上・・・。

 

 その顔面にネロが飛んできて・・・巨大化させた腕で顔面を掴み・・・。

 

「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・。」

 

 そのままゴジラを首狩りみたいな形で反対側へと投げ飛ばす。

 

「どうりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 轟音とともに地面に叩きつけられるゴジラ。

 

―――ぐう、今度は投げ飛ばされるか・・・。

 

 そこに皆の攻撃が入ってくる。

 

 立ち上がったゴジラは両足と肩のドラグシールドですべていなす。巨体なのに達者な動きとしか言いようがない。

 

 アギトの本能・・・あの巨体でも有効なのか・・・。

 

 だが、その防御をサイガが潜り抜けてきた・・・アバンストラッシュを二連撃繰り出す。

 

 ――――アバンストラッシュ・・・。

 

 それはただのストラッシュではない。

 

 二つのアバンストラッシュを交差させる竜の騎士だけに許された大技。

 

―――――クロス!!

 

 それがゴジラの胴体に命中。

 

―――――――がああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?

 

 紋章が二つだけの状態とはいえ、その威力は絶大。

 

 ゴジラの体に十字の大きな傷を入れたのだ。

 

 さすがにあれは効いたらしい。

 

 大きくよろめく。

 

 だが、失敗だ。

 

「・・・アギトの本能って厄介すぎる。技の威力が・・・。」

 

 ゴジラはほんのわずかだけ後ろに下がったのだ。ストラッシュが交差する刹那の時に。

 

 そのわずかな差が威力を大幅に下げたのだ。

 

 だが、アギトの本能に対抗できるのは同じアギトか、竜の騎士くらいだ。

 

 現にサイガはゴジラの防御をかいくぐることができた。それは間違いない。

 

 アギトの本能、または竜の騎士が受け継いできた数多の戦闘経験。

 

 それに批准するようなスキルがなければ攻撃を直撃させるは厳しいようだな。

 

 まあ、リアスがやったのはスキルあろうがなかろうが命中させようとした度胸と皆の適切なサポートのおかげだろうよ。

 

 先陣を切ったあの一撃、誠にあっぱれ。イッセーのことをよく知っているがための一撃と言えるだろう。あそこまでしないと命中させることはできないと。

 

 この調子なら・・・。

 

―――――舐めるな小僧どもがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

 

 だが、すぐにその希望は消える。ゴジラの傷が瞬く間に癒えはじめたことから。

 

「なんて生命力・・・。」

 

 この程度、予想の範疇だ。ゴジラの特性。その中の一つが類まれなる再生能力。

 

「ひるむな、攻撃は確かに効いている。そこに攻撃を封じることは・・・。」

 

 そして、もう一つ新たな力が具現化する。

 

―――Divide!!

 

「・・・そうか。そっちも目覚めたか。」

 

 それは左足に出てきた白い足具。

 

 ディバイディングギア。イッセーが取り込んだ白龍皇の力がでてきたようだ。

 

「・・・半減はもう役には立たないか。」

 

 仕方ないことだ、この程度は予想の範疇。もっとも、予想よりも早いが。

 

 それに巨体のわりに攻撃の回避力が高すぎる。あのでかさで直撃は三つだけ。

 

 それに今度は半減が加わるか。

 

――――――BOOST!!

 

――――――Divide‼

 

 異なる二つの力を同時に発動させているゴジラ。

 

「…一応半減対策のために直接触れていないでおいて正解だわ。」

 

「みんな散れ!!散ってから遠距離攻撃を主体に・・・。」

 

 皆は一度間合いを放す。うかつに触れて半減させられたら・・・。

 

 だが、そこでゴジラは予想外のことをして来た。

 

――――Half Dimension!!

 

 それは空間の圧縮。

 

『なっ!?』

 

 白龍皇の力の一つ。それを…使用しただと?

 

 しかもそれを応用させて、ばらばらに散った皆と強制的に集めた。

 

「ちぃ!!」

 

 さすがに予想外すぎる。しかも、攻撃じゃなくて、皆を集めるために使うなんて・・・。

 

―――――Explosion!!

 

 倍化した力を解放させるゴジラ。

 

 その余波をキリエさんが盾を展開させて防ごうとするが・・・。

 

 見事に盾をすり抜けてきた。

 

「きゃあ!?」

 

 そのため、皆が吹っ飛ばされる。

 

「…まさか…あの衝撃波に・・・。」

 

 ここで小技をいれてきた。倍化した力の解放に透過を組み合わせてきたのだ。

 

 余たちからしたらふざけるなといいたくなる。

 

 おかげで衝撃波をまともに受けてしまい、皆がダメージを受けつつ体制が崩れてしまった。

 

 そこに…解放させた力と譲渡を済ませた攻撃が・・・。

 

 だが、そこに希望がやってきた。

 

 熱線を放とうとしたゴジラの周囲に赤い三角錐が無数出現。それが一斉にゴジラに襲い掛かってきたのだ。

 

 熱線を放つのをやめ、それを防ぐゴジラ。

 

 あれをすべて止めているあたり、さすがだろう。

 

 だが、さすがに・・・。

 

『動きは止まったようだな!!』

 

 その隙にやってきたのは四人に分身していたハルト。ゴジラの両腕のドラグクローにそれぞれ二体ずつ手を置き・・・。

 

 それを粉々に砕いたのだ。

 

「ほかにもいるよ。」

 

 それに驚いたゴジラ。

 

 だが、その顔面にはさらに二人の影が・・・。

 

 それを見て驚いたゴジラが防御しようと盾を展開・・・。

 

「・・・ドラグシールドはもう役に立たないよ。」

 

 だが、その肩盾が突然砕け散る。

 

 それをしでかしたのは・・・佑斗だった。

 

 あいつ皆の攻撃に交じって魔眼の力をつかったな。うまい…普通に攻撃されると気づかれる。

 

 にくいことにそれを隠すための眼鏡も用意していた。

 

 それで脛の盾を使おうとして・・・。

 

 それも誰かが指を鳴らすと同時に粉々に砕け散る。

 

「…私の牙突を舐めるなよ?」

 

 そっちはゼノヴィアの仕業らしい。してやったりの笑顔だ。

 

 頭と尻尾先のドラグセイバーを・・・。

 

「・・・両断成功。」

 

 良太郎がいつの間にかへし折っていた。

 

――――こいつら?!

 

 グレモリー眷属三大剣士・・・流石だな!!いい仕事だ。

 

『どうりゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 飛び込んできた二人の拳がゴジラの顔面に直撃。

 

 ゴジラが吹っ飛ばされ、後ろの山に激突。

 

 この世界の連中て本当に規格外ばかりだな。ゴジラを殴り飛ばす連中が三人もいるのだから。

 

 この光景、権藤さんにみせてやりたかったよ。あの人なら絶対に笑い飛ばしてくれる。

 

 余が認めた猛者の一人である彼なら・・・。

 

「事情は聞いた。遅れてすまない!!」

 

「われらも参戦させてもらうぞ!!」

 

 殴り飛ばしたお二人・・・鋼鬼さんとサイラオーグさんの背中が大変頼もしい。

 

 この二人もアギトをとらえられるスキルを持っている。仙術と長きにわたる鍛錬の果てに得たスキルだ。大変心強い。

 

 その上で時間稼ぎが始まる。

 

――――――Freeze Vent!!

 

 サイラオークさんが発動したそれは…ゴジラに対して効果があった。

 

 それは相手を凍りつけにして動きを封じるというもの。ゴジラの数少ない弱点、超低温に対応したものだ。

 

 ある世界のゴジラは北極の氷の中に封印された点。そして、ある世界のメカゴジラの切り札も超低温攻撃。

 

 ゴジラにこの手の攻撃は効果がある。

 

 時間稼ぎとしては上等すぎる効果を持つカード。

 

「そんなにもたないだろう。簡潔にだが、作戦を頼む。」

 

 サイラオーク殿もそれを察しているようだ。

 

「・・・まずはゴジラに大ダメージを与えることが重要だ。非常にありがたいことに、ハルトのおかげで、手数は確実に減った。」

 

 ここまで二ターン経過といったところか。

 

 だが、ゴジラの力と能力が増えてきている。

 

「時間をかけたらさらに苦戦する。倍化に装備系のアドベントカード、もう透過と半減、テレポテーションに空間圧縮・・・。」

 

『・・・・・・。』

 

 ましてや、相手はあまりにもタフすぎる。

 

「最悪ファイナルベントが待っているし・・・。」

 

「…ファイナルベント対策・・・ならそっちは俺に任せてもらおうか。」

 

 そこでアザゼル殿が手を挙げる。

 

 ファイナルベント対策があるというのか?

 

「時間はかかる。発動までに間に合わせるようにするが・・・。」

 

 アザゼル殿の研究の成果の一つをだそうというのか?

 

 ということは…そうか、人造カード・・・。

 

「・・・だがカードにエネルギー充電させるのに時間かかる・・・。」

 

「文字通り切札ということだな。期待させてもらうぞ。」

 

「…プレッシャーかけてきやがるな。任せな、もう充電は初めている。」

 

「・・・あとはゴジラの封印か・・・。ガメラだけじゃだめか・・・。」

 

 ゴジラの封印に成功した存在は数少ない。

 

 一体目はキングギドラ。相打ちに近い形で封印した。

 

 もう一体はあのモスラ。だが、それには同族であるバトラの存在、またはメカゴジラの存在があってこそだ。

 

「・・・まだピースが足りない。だが・・・。」

 

 ここは期待するしかないということか?

 

 わが同志が持っている力あるものを引き寄せる運命を。

 

 もう一つのカギは・・・。

 

「…カギはもうすぐそろいます。」

 

 その声に皆は驚く。

 

「もう目を覚ましたか。」

 

 それはアーシアだった。

 

「・・・みなさん。心配をかけました。」

 

 その腰にアギトのベルトを出現させた状態で。

 

「みなさん。ゴジラの封印のカギはイッセーさんが手繰り寄せています。だから・・・。」

 

『おう!!』

 

「ふっ…希望が出てきたぞ。」

 

―――――どこに希望があるというのだ?

 

 その声とともに、凍てついたゴジラが動き出す。

 

―――――その程度の希望・・・我が打ち砕いて・・・。

 

「わかっていないな、お前さんもイッセーに引き寄せられた口だろ?」

 

―――――――・・・・・・・。

 

 余は知っている。いや、この場にいる誰もが知っていることだ。

 

「イッセーの真の恐ろしさ。それはお前さんのような力のある存在を引き寄せ、そして次々と味方にしていくことだ。この様子なら今までイッセーが培ってきた者たちが全員集合ってところだろうな。」

 

 余はすでに確信している。

 

「覚悟しろ。いずれお前もイッセーの力となるのだからな。」

 

 この場をしのげばイッセーはこのゴジラの強大な力すら己の物とすることを。

 

 その発言に皆は驚くが…すぐに納得して見せた。

 

「確かにおっぱいヤミー達のこともあるし・・・。」

 

―――――ふん・・・なら証明して見せろ。わが宿主の真の恐ろしさをいうのを!!

 

「教えてあげますよ。どうしてイッセーさんが神の後を継ぐことを決意し、皆がそれを応援するようになったのか?」

 

 アーシアの腰のベルトが光輝く。

 

 それとともにアーシアはついに覚醒する。

 

 アギトとして。

 

 それは普通のアギトでもなければ、ギルスでもない。

 

 強いているのならアギトの基本形態に近い。胴体と頭はそうだ。

 

 だが、まとっているのは黄金の光。天女のような薄い羽衣とアギトの紋章を背負った存在。

 

「紅のアギト、白のアギト、青のギルスに続く…黄金のアギトの誕生か。」

 

 ヴァ―リの言う通りだ。ここに四人目・・・黄金のアギトが覚醒した。

 

「そして、私の覚醒とともにあの子も到着したみたいです。」

 

 空間を粉々に打ち破ってそれは上空に現れた。

 

 ゴジラを二度にもわたって封印して見せた稀有な存在。

 

 そしてアーシアの相方。

 

――――――この世界にもいたというのか?忌々しい・・・。

 

 それはモスラ。それも・・・。体色が違う。黄金に虹色が混じった色になっていたのだ。

 

 この世界で最も大きな木の力を得たモスラは余が知るどの個体よりも強く、可能性にあふれている。

 

―――――撃ち落としてくれる!!

 

―――――――BOOST!!BOOST!!

 

 倍化の速度がだんだん上がっている。

 

 より力がなじんできている証拠・・・か・・・。

 

――――――Explosion!!

 

 すぐに倍化の力を解放。衝撃波が透過込みでやってくるが・・・今度はその衝撃波がやってこない。

 

「・・・一枚がだめなら異なる種類を何枚も展開するだけです!!」

 

 そこにはまるで龍の鱗のような結界を展開させたキリエさんの姿。

 

 考えたものだ。あえて一枚、二枚は透過させ、ほかの盾で防ぐというあたり・・・。

 

「守りに関してあなたには絶対敵わないとおもうよ。」

 

 だが、そのおかげで、透過の防御貫通を伴う衝撃波の対策はできた。

 

 もっとも、そのあとに放たれる放射熱線をどうにかできるといったら・・・。

 

――――shoot Vent!!

 

 だが、モスラを追撃しようとしたらアドベントカード発動。

 

 モスラの頭の上から何者かが立っており、そこからとんでもない轟音が鳴ったのだ。

 

 轟音の正体は砲撃。

 

 放たれたのは超音速のエネルギー砲弾。

 

 飛んでいく先は今まさに熱線を放とうとするゴジラの口の中。

 

 直撃だった。

 

――――がばごぅ!?

 

 爆発するエネルギーにゴジラが倒れた。

 

 口の中から白煙を立ち昇らせながら悶絶している。

 

 その隙に降り立つモスラ。

 

―――母様!!

 

「うん…立派になったね。アカリちゃん。」

 

 アーシアが彼女を撫でてやる。アカリという名前を込めて。

 

「ふう・・・なんで皆さん、顔面をねらわないのでしょうか?ああいった巨大で防御力のある相手は足とともに優先して狙うべき個所でしょうに・・・。」

 

 その頭の上から、降り立つ猛者はデカい獲物を持っていた。

 

 歩くラグナロク。

 

 そう呼ばれている北欧神話最強の存在。

 

 その名は・・・。

 

「ましてや口の中なんて、目と同じく最優先で狙わないと。」

 

「ロズヴァイセ・・・。」

 

 新君の実の姉であった。

 

「他でもない新の友達のお願いですから。ふふふ・・・。ほんとに立派になりました。」

 

 彼女が護衛についていたのだ。

 

「・・・いや。しかしお主もやるものだのう。戦術としては確かに正しい。だが直撃させるなど・・・。」

 

 それこそ、ビルなどで至近距離にまで近づかないと無理だ。特に今のゴジラはアギトの本能もあって、飛び道具を命中させるなど不可能に近い。

 

 それを・・・いともたやすく。それも放射熱線を暴発させるという絶妙なタイミングで。

 

「砲弾にちょっと工夫をしただけですよ。グングニルのレプリカを作りまして、その際に得た術式を使って・・・。」

 

『・・・・。』

 

 必中と言われたグングニルの性能を加えた砲弾。なるほど、神の武器なら納得だ。

 

 そんなとんでもないものをぶち込んだのか。

 

 すさまじい猛者よ。生身でゴジラの口の中に砲撃を加えた二番目の猛者として未来永劫、その名を覚えておくよ。

 

――――久しい屈辱だ・・・。

 

 膨大なエネルギーの暴発にも関わらず頭がふきとばないだけでも十分なのに、もう立ち上がってきたゴジラ。

 

―――――BUST!!

 

―――――Divide!!

 

 いや、暴発した瞬間に倍化を解除し、さらに半減を使ってエネルギーを逃がしたのか。

 

 本当にアギトの本能は脅威だ。こちらの攻撃を最小限にとどめてくる。

 

「ならもう一発いっておきますか?今のままなら私は熱線を放つたびに。私が砲撃を加えますよ?」

 

――――――・・・・・・。

 

 グングニルを使った砲弾。さすがに簡単によけることはできまい。放射熱線の欠点は放つ際の予兆―――背びれの発光があることあることだ。

 

 ゆえに砲撃のタイミングを合わせるのやたやすい・・・。

 

 それを本能的に、そして直感として悟ったのだろう。ゴジラの動きが止まる。

 

「私も狙おうか。これでも命中率にはちょっと自信があるから。」

 

 まどか殿もまた矢を放とうとしている。あなたの矢なら同じか、もしかしたらそれよりも高い効果をもたらせそうだ。

 

 これで厄介すぎる放射熱線を封じることができた。

 

 そう思った時だった。

 

――――なら・・・。

 

 ゴジラの左腕のブースデットギアが光を放つ。

 

――――balance break!!

 

 そして、その体を・・・赤い鎧が覆ったのだ。

 

 それは禁手化・・・赤龍帝の全身鎧(ブースデット・スケイルメイル)。

 

―――――これならどうだ?

 

「あら・・・。」

 

 放射熱線の予兆すら隠す鎧。しかも・・・その背中には翼が・・・。

 

「ヴァーリ・・・あの翼ってもしかして・・・。」

 

「・・・ああ。ディバイングウィングだ。」

 

「・・・Oh・・・。」

 

 二つの意味で最悪だった。

 

 一つは半減の力を防御に使われるという点。

 

 もう一点は・・・。

 

―――――もう、お前の砲撃は当たらん・・・。

 

 ゴジラが鎧をまとい…そして宙に浮いた。

 

「まさかそっちの方向に持ってくるなんて・・・。」

 

 あのゴジラが空を飛ぶ。

 

 熱線をロケットの推進代わりにして飛ぶことはあった。

 

 だが、あれはどのゴジラもやったことがない。

 

――――数多の同胞たちよ!!我はついに・・・空を飛ぶことができたぞ!!

 

 しかも、あの翼の機動力はヴァ―リの速さで証明済み。

 

 あの巨体でメガギラス並みかそれ以上の空中機動性・・・。

 

 うん・・・悪夢だ。

 

 世紀末的な世界で大地を駆けるアグレシッブなゴジラは見たことがある。でも、これはない・・・。普通ならありえない

 

――――数多の同胞たちが空を飛ぶ者たちをうっとうしいと思っていたが、今や同じ土俵。

 

 そして、ほかでもないゴジラ自身がそれを喜んでいる始末。

 

――――さあ、第二ラウンド開始だ。

 

「驚くのは無理もないけどみんな気を取りなおそう!」

 

「・・・うん。でも味方が増えるけど、どんどん状況悪化しているのは気のせいかしら!?」

 

 気のせいではない。部長のいう通り、ゴジラの力が着実に強化されている。

 

 アーマードゴジラというべきなんだろうな。今のあいつは。

 

 さあ、ここからどのように戦略を立てようか・・・。

 

 

 

 SIDE ???

 

 我らははっきりとした自我を持った。

 

 それぞれ一度は敗れたがその魂の本体はある存在の中にずっと宿っていた。

 

 その存在は我らを受け入れ、同志・・・と呼んでくれたのだ。

 

 終わったら家族にしてくれると。

 

 我らは孤独だった。

 

 ただひたすら、我らが生まれる元となった欲望の赴くままに動くだけだった。

 

 だが、その存在は我らに新たな道を示してくれた。欲とともに…温かい何かを。

 

 だから我らは力を使う。

 

 この力で欲を満たしつつ。すべてを無力化することで。

 

 だが・・・我らは立ち止まる。

 

 我らを家族と言ってくれた存在の危機を・・・。

 

 その魂の悲鳴を・・・。

 

 我らは互いに意思を確認しあった。

 

 家族と言ってくれた。

 

 家族・・・知識として存在するその概念に当てはめるのなら・・・。

 

 我らは駆け出す。

 

 その概念から生まれた新たな欲に従って。

 

 我らの生みの親というべき存在を助けるために・・・。

 

 こんな欲望まみれの我らを家族と思ってくれた彼のために・・・。

 

 

 

 

SIDE  ポルム

 

 

 第二ラウンド。空中を高速起動で飛び回るゴジラが相手。

 

 必然的に空中を飛べるメンツがメインとなる。

 

 だが、ホントに厄介すぎる。

 

 空中をモスラたちですら補足するのが難しいほどの機動性で飛んでくるのだから。

 

「ぐっ…狙いが定まらない。」

 

 あの巨体で禁手化したヴァーリクラスかそれを超える高機動飛行は反則すぎる。

 

 皆の攻撃が当たらない。

 

 目にも止まらない速度での飛行。それを巨体で行っているために、とんでもない衝撃波がまき散らされる始末。

 

 はっきり言って十万トンを超える巨体が高速で動くだけで、破壊がまき散らされる。

 

高速ですれ違ってくるだけでとてつもない衝撃波が巻き起こって皆を吹き飛ばしてくる。

 

「ぐう・・・。上空にいるとさすがに殴れん。」

 

「何とか地上に叩き落としたいが・・・。」

 

「うっとうしいぜ・・・。」

 

 そんな高速飛行に対応できるメンバーは流石に多くない。

 

 無数の細かい攻撃をまき散らして、相手をひっかける方法をとろうにも・・・。

 

 それを阻むのがゴジラの素の頑丈さをさらに高めてしまった鎧。

 

 その鎧の防御力は極めて高い。もともとあったゴジラのタフネスを恐ろしいほどまでに高めてしまっている。

 

「・・・タイプアロー程度じゃ、ダメージを与えることすらできないなんて・・・。」

 

 実際竜の紋章を二つ使った状態のアバンストラッシュ。威力が落ちるが、闘気刃を飛ばすアロータイプをうまくサイガがあてたのだが…まったく無傷。

 

 あの巨体がまとう鎧だ。その装甲の厚みも半端じゃない。

 

それ故に防御力すら桁違い。

 

 しかも・・・。

 

――――BOOST!!

 

 表面上は一回だけの倍化に見える。だが、これは実質的には二十回以上の倍化だ。

 

 あまりの速さの倍化に音声が追い付かなくなっているのだ。

 

 たった十秒で百回くらいの倍化に・・・

 

――――Explosion!!

 

 百回の倍化。あまりに膨大すぎるエネルギー。

 

「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおい・・・。もう神器としての性能がぶっ壊れてしまっているぞ!!」

 

 ブーステットギアの性能の限界が大幅に壊れている。そこまでの倍化は流石に想定外すぎる。

 

 そして、それに耐えられるゴジラの素の肉体の頑丈さに改めて畏怖してしまうよ。

 

 これまでで最大の放射熱線が上空から放たれようとしている。

 

 放たれるだけで冥界全体の一割を壊滅させるのは確実な威力・

 

「ちぃ・・・。」

 

 それに対抗できる呪文はあれしかないのだが、あまりにも相手のエネルギーが膨大すぎる。これはイッセーごと消滅させてしまう上に、あの力――反射を使われるリスクが怖い・・・。

 

 だが・・・ためらっていたら地上のメンツが間違いなく全滅・・・。

 

――――消し飛べ・・・。

 

 ゴジラの口の装甲が空き、放たれる膨大な量の青の放射熱線。

 

 仕方ない・・・使うしか・・・。

 

「・・・だったら、俺に任せな。」

 

 だが、そこに頼もしい同志がやってきた。

 

 それは・・・。

 

「吸い込め、リヴァイアサン!!」

 

 右手に巨竜の顎を出現させた匙が吠える。

 

 それ共にゴジラの放射熱線を吸い込み始めたのだ。

 

「うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 すさまじい圧に必死に堪えているが踏んばりきれず吹っ飛びそうになった時・・・。

 

「匙・・・。」

 

「がんばって・・・。」

 

 その匙をシトリー眷属一同が一斉に支える。

 

 そして・・・。

 

「・・・みんなありがとう。」

 

 あの熱線をすべて吸い込み切った。

 

――――・・・・なに・・・。

 

 目を点にさせているゴジラ。いや・・余も含めてみんな驚いている。

 

 それはもはや奇跡の所業だった。

 

「もうお前の熱線は効かねえ。全部吸い込んでやる!!」

 

「ナイスすぎるぞ!!」

 

 あの神器はすべてのエネルギーを吸い込むのは知っていた。

 

 だが、まさかあの放射熱線すらすべて吸い込むとは・・・うれしい誤算だ。

 

 もっとも、何度もできぬ。

 

「ぐっ・・・。」

 

 あれだけの膨大なエネルギーを吸い込むには相当な反動がある。

 

 現に匙は眷属の仲間たちに支えられて、本当に辛うじて踏ん張りきったのだが、それでもボロボロだ。

 

――――貴様・・・何者だ・・・。

 

 だが、その状態で匙は吠える。

 

「何者?そんなの簡単だぜ・・・。」

 

 シンプルな答えを。

 

「俺は…イッセーの、お前が乗っ取った奴のダチだ!!」

 

――――ダチ・・・だと?

 

「イッセーを・・・俺たちのダチを解放しやがれぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

―――――ダチ…我が宿主の・・・。

 

 その叫びに、彼の相棒が答える。

 

「とりあえずお前は・・・。」

 

 それは驚き空中で止まってしまったゴジラの真上にいた。

 

――――いつの間に!?

 

 もう一人の三大巨獣の神器の所有者・・・仁藤 浩介、

 

「そのまま地面に堕ちやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

―――――コンドルダイブ!!

 

―――――ティターンスタンプ!!

 

――――――グラビティプレス!!

 

――――――ドリルクラッシュ。

 

 次々と指輪を読み取らせつつ上空から急降下。

 

――――キックストライク。

 

 五つの指輪の同時併用。

 

 これは・・・まさか・・・。

 

―――――5コンボストライク!!

 

 ベヒモスのもう一つの力・・・コンボ。

 

―――――グァ!?

 

 上空からの急降下を伴った強烈な踏みつけドリルキック。

 

 重力増加も組み込まれており、ゴジラが空中で叩き落とされる。

 

―――ぐううう・・・こいつ・・・。

 

 それでもうまく着地して、体制を整えなおそうとするゴジラ。

 

「・・・ガメラ・・・今!!」

 

 さらに上空からガメラ出現。

 

 ゴジラの顔面にプラズマ火球を命中させ、ひるんで隙にゴジラに高速回転しながら顔面に突撃。

 

 あまりの勢いにゴジラは地面に倒れる。

 

―――ぐぅ・・・あいつら・・・。

 

 立ち上がろうとするゴジラ。だが、その地面が突然陥没。

 

―――ぐおっ!?

 

 その地面から次々と植物のツタが発生し、ゴジラを縛り上げていく。

 

「ここであなたを封印します!!」

 

 地面の陥没とツタによる拘束、それはアーシアの仕業。

 

「アカリちゃん!!」

 

 上空で、アカリちゃんが羽ばたきながら旋回。

 

 黄金の鱗粉をまき散らし始めた。

 

―――ぐあああ!?

 

 鎧越しに苦しむゴジラ。

 

 あの鎧の上からダメージって・・・。

 

――――だったら・・・・。

 

「へっ…倍化しても無駄だぜ・・・。」

 

 倍化しようとしたゴジラ。だが、そのエネルギーが逃げる。

 

 匙がいつの間にか仕込んでいた黒い龍脈によって。

 

――力が・・・吸われている!?

 

「そして、この巨竜の顎は…一度吸い込んだエネルギーは際限なく吸い込める!!お前の倍化の力…全部吸ってやるぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 しかもやたら頑丈にできている。

 

「簡単にちぎれると思うな・・・。」

 

 ラインをうまく編み込んだ黒い龍脈の結界。それはゴジラの力でも簡単に引きちぎれられないほどの強度を誇るまでになっていた。

 

 おまけに足元が凍ってしまっている。

 

「・・・これであなたは飛べません。」

 

 ソーナ会長の仕業なのは明らかだった。

 

「冷凍系が有効だとしりましてね。動きを封じる意味でも十分でしょう。

 

――――おっ・・・おのれ・・・。

 

 口部を開き、放射熱線を放とうとするゴジラ。

 

 だが、その熱線が・・・。

 

「もうあなたの熱線は効きません。」

 

 アカリちゃんの鱗粉によってすべて拡散させられる。

 

 この隙だ・・・。

 

「みな…一斉攻撃!!冷凍系の攻撃を主力でぶちこめ!!」

 

 ここで一斉攻撃の号令。

 

 皆が各々の攻撃を遠距離でゴジラに叩き込む。

 

――――――Freeze VENT!!

 

 さらにそこにサイラオーク殿がもう一回フリーズベントを発動。

 

――――かっ…体が凍る・・・。

 

 凍り付いていくゴジラ。

 

―――――――Divide!!

 

 半減を使って辛うじて防御だが、半減しきれないほどの物量の攻撃に体の凍結が止められないでいた。

 

 放射熱線を放とうにもモスラの鱗粉が邪魔する。

 

――――こうなったら・・・。

 

 それでもあいつは放とうとして・・・。

 

 それを飲み込んだ。

 

 それとともにゴジラの全身が青い光を放ち・・・。

 

 やっ・・・やば・・・あれを強引に倍化させ、半減の力を取り込んだ状態で放つなんて何を考えて・・・。

 

「みんなにげろおおおおおおぉぉぉぉ!!」

 

――――――――Explosion!!

 

 ゴジラを中心に力の解放とともにすさまじい大爆発が巻き起こった。

 

 

 

 

 

「…みんな生きているか?」

 

「ええ・・・。」

 

「なんとか守れました・・・。透過付与でしたから防ぐの大変でしたよ。」

 

 すさまじい爆発だった。あまりの爆発に爆心地であるゴジラを中心に巨大なキノコ雲が立ち上っている。

 

 ゴジラの周りに地面なんか、ほとんど吹き飛んでしまっている。

 

「熱線のエネルギーを飲み込んで…全身から放つなんて非常識にもほどがあるぞ・・・。本当にとんでもない奴だな。」

 

 アザゼル殿の見立ては正しい。初見で原理を見抜くあたりさすがだな。

 

 あれはゴジラの切り札の一つ。体内放射。

 

 まあ、接近、拘束されたときにあれで脱出することが多い。

 

 だが、倍化つきで放たれると広範囲殲滅技に変貌する。あんなの逃げることなどできぬ。

 

 キリエ殿がいなければ、間違いなく全滅していた。

 

 鉄壁のディフェンスのおかげでだいぶ助かった。

 

「・・・あれで脱出されたか。」

 

 あれだけの爆発。さすがにゴジラを拘束していたすべてが吹き飛ばされてしまっている。

 

―――今度はこっちの番だ。

 

――――――プロモーション・・・ルーク。

 

 立ち込める煙の向こうからゴジラの方からとんでもない音声が聞こえてきた。

 

―――――――プロモーション・・・ナイト

 

「・・・なんなの・・・これ・・・。」

 

―――――――プロモーション・・・ビショップ。

 

 音声がするたびに煙の中に見えるゴジラの影が変化していき・・・。

 

――――――プロモーション、クイーン!!

 

 その音声とともに煙が吹き飛ばされる。

 

 現れたのは装甲がさらに厚くなり、両腕が巨大化。

 

 背中にはとてつもなく強力なブースター。

 

 肩に二門のキャノン。

 

 といったゴジラの新たな姿。

 

「・・・・・・・・。」

 

 それは並行世界の彼が行っていた形態。

 

 その女王形態のするフル武装モード。

 

「・・・泣きたくなってきた。」

 

 余の言葉を誰も笑うことはしなかった。

 

 きっと皆同じ気持ちだろうから・・・。

 

 だが、泣き言をいう暇すら与えてくれない。

 

 ゴジラの姿が消えたかと思うと・・・。

 

 次の瞬間、余たちの後ろにいたのだ。

 

 拳を振り上げた状態で・・・。

 

『!?』

 

――――――今度は肉弾戦といこうか。

 

 振り下ろされた拳を・・・。

 

「…シャレになってねえぜ・・・。」

 

 ネロが右腕を巨大化させて受け止めていた。すさまじい衝撃とともに・・。

 

「ぐうう・・・うっ・・・。」

 

 だが、一人では止めきれないのか苦しそうな表情を浮かべている。

 

「さすがに規格外だぞ。あの巨体でなんて動きだ。」

 

 それをさらに補強するのはヴァ―リである。

 

 なんなのだ?今のは・・・。

 

「やろう…加速しやがった。たぶん、俺のトライアルと同じ・・・。」

 

 加速・・・だと?

 

――――時間の倍化というやつだ。それに風を操り・・・。

 

 つまりなんだ…あの形態は…アギトのフォームチェンジまで取り込んでいるということか!?

 

『・・・・・・・。』

 

 さらに最悪度が増したというべきだろう。

 

 もう片方の腕で殴り飛ばそうとして・・・。

 

『うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』

 

 それを鋼鬼殿とサイラオーク殿が拳をぶつけ合わす形で受け止めた。

 

 拮抗する拳と拳。

 

 だが、その時だった。

 

――――ソリットインパクト。

 

 拳からすさまじい衝撃が発せられ、四人が吹っ飛ばされる。

 

「ぐ・・・そったれ・・・マジかよ。」

 

「あの巨体でこのレベルの肉弾戦とは・・・恐れ入る。」

 

「・・・また鍛えが足りんか。」

 

「ふはははは・・・上等だぞ。これくらいでないと超える甲斐がない!!」

 

 まあ、あの一撃を受けてぴんぴんしているあたり、あの四人は無駄に頑丈である。

 

 その隙にグレモリー眷属三大剣士にサイガが加わった四人が一斉に切りかかる。

 

 四人の一撃はおそらく、あの分厚い鎧を切り裂くに足る。

 

『なっ!?』

 

 だが、それは空振りに終わった。

 

 ゴジラをとらえた剣が空振りすることで。

 

 そう・・・。

 

 剣がすり抜けたのだ。

 

―――便利なものだな。

 

 透過に液状化の組み合わせ・・・ということか。

 

 あの四人の一撃は神すら殺す斬撃。それを無効にするか。

 

「嘘だろ・・・。必殺剣を無効にされるなんて。」

 

「さすがというか…ことごとくこちらの予想を超えてくる。」

 

「…はは…まいったよ。」

 

「…馬鹿にされているみたいで、ちょっと腹が立ってきた。」

 

 唖然、または憤慨する四人に向けて肩のキャノンを向ける。

 

―――――ドラゴンブラス・・・。

 

「撃たせません!!」

 

 まどか殿が発射口に向けて弓矢を放ち、それに敏感に反応したゴジラがキャノンの収納。

 

 その隙に無数の爆発が起きる。

 

「…本当に化け物ね。」

 

 それはどうやらほむらの仕業らしい。

 

 フリーズから何とか立ち直ったようだ。

 

「あとであなたの夫に話がしたいのだけどいいかしら?」

 

 その背後から立ち上るのは…なんかすごくどす黒いオーラ。

 

「えっと・・・。」

 

「安心して。まどかを妊娠させてお母さんにしたことについて、じ・っ・く・りと問いただしたいだけだから。」

 

「どうどう。落ち着いてほむら。」

 

 下手したらそのままその罪深い夫に実力行使しかねないほどに。

 

 オーフィスちゃんが落ち着くように言うあたり、相当だぞ。

 

―――――――――ふざけているのか?

 

 それを見たゴジラが激怒しながら殴りかかろうとして・・・。

 

「今はそれどころじゃないの!!ちょっと黙ってろ!!」

 

――――――⁻・・・・・あっ、はい。

 

 ほむら殿のすさまじい迫力に手が止まってしまった。

 

『・・・・・・えっ?』

 

 あのゴジラがビビッて・・・手を止めた?

 

 これはこれでレアな光景を見たぞ。

 

 敵味方ともに驚いているぞ。もちろん余もだ。

 

 うん…思いの外すごい御方なのかもしれん。

 

「でも、気を付けた方がいい。その夫の強さは本物だぞ。」

 

 その隙に彼が突撃する。

 

 最強のアギト。その必殺のキックがゴジラの意識の死角を突いてきた。

 

 ほむら殿の強烈な怒気に充てられ、固まった隙をついてだ。

 

 その一撃は流石最強のアギトだけあり、

 

―――ぬう!?

 

 ゴジラは全く反応できず。回避も透過もできない状態で直撃・・・。

 

「何!?」

 

 だが、ゴジラは受け止めていた。

 

 分厚くなった腕の装甲で。

 

「まいったな。これを防がれるなんて・・。」

 

 受け止められながら感慨に浸らないで下さいよ!!まじでやばい!!

 

 あの形態、フレイムフォームの感覚鋭敏化まで取り込んでいるのか!?

 

 そうでないと反応なんてできない。彼の一撃はそんなタイミングで放たれていたのだ。

 

――――…脅威だな。

 

 肩キャノンを展開させ、今度は彼を狙おうとして・・・。

 

「肩キャノンを撃つゴジラはメカゴジラだけで十分だ!!」

 

 その発言とともにこっちは無数の爆発球をゴジラの前に放つ。

 

―――――イオラ×多数

 

 爆裂呪文の弾幕。それをゴジラの周囲に放ち、爆発の嵐を起こす。

 

 一時的な視界と聴覚の妨害。その隙に彼は離脱。

 

「助かったよ。でも本当に強いね。」

 

「もう・・・無茶しないで!!」

 

 ぷんぷん怒っているまどかに気まずそうに頬を描く翔一殿。

 

「・・・・・・・・。」

 

 余の隣ではどす黒いほむら殿がいる。

 

「あとで話を聞かせてくれないかしら?」

 

『・・・・・・。』

 

 変身していて表情はわからないけど、その背中には冷や汗が伝っているのは伝わってくるよ。翔一殿。

 

 あのゴジラをビビらせたほどの迫力だ。

 

 これは怖い。

 

「まどか殿、あまり無理はしないでほしい。あなたのおなかには・・・。」

 

「うん。」

 

「まさかもう一人いるの!?」

 

「娘だ。おそらくまどか殿にとてもよく似た可愛らしい娘になるぞ。」

 

「・・・・・・。」

 

 翔一殿の冷や汗が止まらない。

 

「あなたの罪…あとでじっくりと数えてあげるわ。まあ、まどか似の娘はすごく楽しみだけど?」

 

 そんな翔一殿の肩に余は手を置いてやる。

 

「どっちに転んでも、地獄が待っているな。」

 

「……覚悟はしていたよ。」

 

 同情はしてやる。

 

 そんなやり取りをよそに、ゴジラはこっちを見ていた。

 

――――なぜお前がそれを知っている・・・。

 

 それって、メカゴジラ発言のことか?

 

――――我の同胞が鉄の鎧をまとった件、どうして知っている!?

 

 えっとそれはもちろん直接・・・。

 

――――ぬっ…お前・・・。

 

「…あら…覚えていたの?」

 

――――ああ…覚えているぞ・・・。

 

 ・・・・はははははははは・・・。

 

 しまった。余計なことをしていまった。

 

――――何人もの我がお前のことをすごく覚えていたぞ・・・。

 

「・・・・・・。」

 

 それは…すごく光栄です。

 

―――――本当にいろいろとやらかしてくれたな・・・。

 

 うん、怒っている。この方、基本的に他の人間はどうでもいいのだけど、どうやら余のことは別だったらしい。

 

 そんなに覚えていてくれたんだ・・・・。光栄だけど、これは誤算だった。

 

―――――どうしてお前がそこにいるのかはこの際はどうでもいい。

 

 うん。わかることはこいつが余を見て・・。

 

―――数々の借り・・・ここで返させてもらおうか!!

 

 いつぞやの仕返しをするつもりだと。

 

「いや!!もう存分に返されている。こっちは地獄味わっているって!!」

 

――――問答無用!!ついでに情けは皆無だとしれ!!倍返しだ!!

 

「お前・・・あいつに何しでかした?」

 

「聞かないでくれ。観察のためにいろいろとちょっかいかけただけだ。おかげであいつの息子とは憩意にさせてもらったが・・・。」

 

 あいつはかわいかったよな。生き残ってほしいと思うばかりにやらかしたけど。

 

 実際にあいつからはいろいろと成果はあった。あいつ対策の兵器なんて、この世界では存在そのものが神滅具に値するほどもある。

 

 G細胞もそうだし。

 

 いい成果だったが・・・どうやらいたずらをやりすぎたようだ。

 

「はあ・・・どうしよ。こっちも本気を出さないといけないかな・・・。」

 

 こっちもいい加減に切り札を出さないといけないようだ。

 

 今後の戦略が大きく変わってしまうけど、仕方がない。

 

 イッセー、わが同志を救うためなら安いことだし・・・。

 

 あれ?

 

 いや、その必要はなさそうだ。

 

 振り上げたゴジラの腕。それを・・・二人の男が蹴り飛ばす。

 

「おばあちゃんは言っていた。」

 

 それは超越者の一人・・・天道 総司。

 

「友を救うのに理由はいらねえってな!!」

 

「こっちの場合はすごく世話のやける弟子なのだが・・・。」

 

 その隣には 新の姿。二人ともそれぞれカブトとガタックに変身している。

 

―――――ちぃ・・・。

 

 肩キャノンを展開させようとするゴジラ。だが、キャノンが突然消失。

 

「・・・やれやれ。どうやらいい時にきたようだね。」

 

 舞い降りたのは黄金。

 

「お兄様!?」

 

 五大魔王の一人にして超越者・・・サーゼクス殿。

 

しかもオーディンに変身した状態。

 

その瞬間的な動きにゴジラも反応できず

 

 消失したキャノンの原因もすぐにわかった。滅びの魔力。

 

 それを打ち込んだのだ。さすがにあれをいきなり透過することはできなかったらしい。

 

 そして、その動揺した隙に・・・。

 

 ゴジラの背後から二つの光線が放たれ、ゴジラが吹っ飛ぶ。

 

「・・・まさか、私の切り札をだすなんてね。」

 

 それは超巨大な黒い昆虫だった。

 

 巨大な黒に黄色と赤の模様が入った蝶のような翼。

 

 巨暴そうな面構え・・・。

 

 なんて・・・なんであいつがここにいる?

 

「バトラ・・・だと?」

 

 とある世界に存在するモスラと対をなす破壊神。

 

 どうしてあいつがここに!?

 

 その上に乗っている存在も驚きだけど。

 

「ユウナ!?」

 

 ユウナさんがいたのだ。

 

「この子が私の魔女として契約した存在。悪魔じゃないけど、それでもどうかしら?」

 

 魔女。悪魔と契約することで成立すると聞くが…悪魔じゃなくて、破壊神と契約したってかなり無茶苦茶だぞ!?

 

―――――――いつぞやお前に痛めつけられた礼をさせてもらうぞ!!

 

―――――――ぐうう・・・。叩き落としてくれる!!

 

 高速で空中飛行しながらバトラに突っ込むゴジラ。

 

 だが・・・。

 

――――ウィッチタイム。

 

 バトラはいつの間にかゴジラの後ろに立ち、目から光線を放って叩き落とす。

 

「バトラと私の魔女の力を舐めないで。時間操作はあなただけのものじゃないの!!」

 

 時間操作系の力を持つ者たちが揃う。

 

「まあ、そういうことだ。」

 

「覚悟しなさい。」

 

 それとともにスパーダ眷属も大集合。

 

「こりゃまた愉快すぎるパーティーになってんじゃねか。」

 

 ダンテ殿は告げる。

 

―――・・・まだくるか・・・ぐお!?

 

 そのゴジラの背後から複数の人たちが蹴り飛ばしてくる。

 

あまりの衝撃に顔面から地面に叩きつけられるゴジラ。

 

「・・・すまない!!おそくなった。」

 

「今度は私たちも参加させてもらおう。」

 

 それはイッセーの師匠となった仮面ライダーの方々。それをタンニーンが運んでくれたのだ。

 

 心強い。

 

「遅れてすまないな。」

 

 ハドラーさんまで?

 

「親父…そしてみな!?」

 

「わりぃ…遅れた。」

 

「でも、ここからだぜ?」

 

 ヴァ―リ―チームのメンツまで来てくれたか。

 

――――皆、一斉攻撃‼!一度あいつを吹っ飛ばせ!!

 

 と念話で送る。

 

 それとともに皆は一斉に突っ込む。

 

 その場にいる全員での一斉攻撃。それにゴジラが吹っ飛ぶ。

 

―――――――ぐう・・・。

 

 これだけのメンバーなら圧倒できるか。

 

 まあ、揃っているメンバーがメンバーだし、このメンツがいれば、間違いなく世界の危機だって楽勝で解決できるレベルだ。

 

 放射熱線についてまだ変わっていない弱点もある。あれは死角があるのだ。背後と頭の真上付近という。

 

 これだけの実力者がそろえばその弱点もつける。

 

 勝機が・・・見えてきた!!

 

――――…数が多いな。

 

 だが、ゴジラが立ち上がる。

 

――――ならこっちも手数を出そう。

 

 そして、その周囲から赤いワイバーン型のビットが現れた。

 

 赤だけじゃない。白…そして黒いビットもある。

 

『・・・・・・・。』

 

 次はそう来たか。

 

 あれもまた並行世界の彼が使っていた物。

 

 だが、その数が…数が・・・。

 

―――手数はこれで十分かな?

 

 軽く見て数万ほどあるのですが!?

 

 空を覆い尽くさんばかりのビットの群れ。

 

『・・・・・・。』

 

 腰を抜かすものすら現れたが・・・仕方ないことだ。

 

 ふざけているとしかいえん!!

 

「こっ…今度は数の暴力ってわけかい。俺たちをとことん追い詰めてくるぜ。」

 

 もう・・・絶望したい気分だ。

 

「間違いなく、殺しにかかっている。」

 

 しかもあのビットは厄介すぎる。何しろ一つ一つが倍化、譲渡、半減、反射を繰り出してくるのだから。

 

 だが・・・黒いビットは・・・。

 

 その疑問はその黒いビットが青い光を放ち熱線を放ったことでしった。

 

 小さいビットから放たれた熱線は本体には遠く及ばないが・・・。一発で地面にナスカの地上絵を形作るような溝が地面を溶かすことでできてしまったほど。

 

 ミニチュアゴジラですか。

 

 攻撃用のビットまであるなんて・・・。

 

―――――――さあ、どれだけ集まろうが今度は負けんぞ。

 

「もう絶望してもいい・・・?」

 

 まさに絶望との闘いだった。

 




 意外な方の活躍でしたかね?

 匙君の持っている神器は二つとも実はゴジラと大変相性がいいのです。


 それでここまで大活躍をしています。

 このまま次は後半戦・・・です。


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VSG 後半

 ここでついに決着です。

 際限なく強くなっているゴジラ。

 それを止めるすべとは・・・。


 どうぞ!!しょうげきのけつまつになればいいです。(あえて平仮名にしています。)


SIDE ???

 

 私たちは何とか説得に成功していた。

 

「そうですか・・・。」

 

 どうやら彼は次々と壁を越えてくる者たちがいてうんざりしていたそうだ。

 

 どうもこの壁の向こう側にいる何かが次々と力を引き寄せているらしく。

 

「…いったい何なの?次々と力を引き寄せる存在って。」

 

 彼は首を横に振る。

 

 だが告げる。

 

 世界に間違いなく変革をもたらすものだと。いずれ、自身の領域にたどり着くとも。

 

「力を引き寄せるか・・・。」

 

 彼女たちは考える。

 

「心当たりはあります。あいつも強大な力を持った存在。なら・・・。」

 

 その時、その彼は大きく震えあがる。

 

 いや、彼が感じた波動を私たちも感じてしまった。

 

「なっ・・・なんなの!?」

 

「この力・・・。」

 

 かつて感じたことがない何かを私たちは感じてしまった。

 

「変革者の暴走!?」

 

 彼の言葉からとんでもないことが発覚する。

 

「…変革者とは世界を左右するほどの存在。平和に導くのも、滅亡させるのも彼次第だと。」

 

 彼は動き出す。

 

「止めるというの?」

 

 彼は頷く。

 

「だったら私達も手伝います。」

 

 私たちは予感していたのだ。その変革者の傍に彼がいるのではないかと。彼が言っていた世界はもしかして・・・。

 

「旅の終点は近いわね。」

 

「ええ。」

 

「ならみなさんをお連れしましょうかね?」

 

『!!?』

 

 その時、狐耳に丈の短い紫色の着物を着た女性が唐突にその場に現れた。

 

「だれ!?」

 

「何・・・うまいこと逃走しやがったご主人を助けに来ただけですよ。ねえ…二人とも??」

 

「その通り!!王国は滅亡しましたが、それはわかっていたこと!!やるべきことはやって一度死んだのですから、新たな人生をあいつの傍で!!転生の秘宝・・・そのお礼もしたい。」

 

「…信じる強さ…教えてくれたあの人を助けたい。私・・・おかげで違う人生を歩めた。あの人の裏切りを防げて・・・。次の人生はポルムさんとともに・・・。」

 

 そこには二人の少女がいた。

 

 片や腑が見える白百合のようなドレスに鎧の胸当てを装備した少女。

 

 もう片方は長い青紫の髪をポニーテールにした少女だ。

 

 二人とも十代半ばの姿をしている。

 

『・・・・あいつまだ罪を隠していたか・・・。』

 

 どうやら相当その彼は罪深いらしい。

 

「いいわ、自己紹介は後回しで良いかな?あいつを追いかけて世界を超えただけでもう十分だから。」

 

 彼女たちはいよいよ突入する。

 

「えっ?あなたまで?・・・そうかさすがに放置はできないか。」

 

 とんでもない存在とともに。

 

 そして、私たちもまた思い知る。

 

 私たちがこの世界に来たのもまた偶然ではないことを。

 

 

 

 

SIDE ポルム

 

 

 何とか持ちこたえてはいる。

 

 だが、皆すでにぼろぼろである。

 

「…みんな大丈夫ですか?」

 

 持ちこたえている最大の要因、それはアーシアちゃんの存在だった。

 

 皆の傷がたちどころに癒えていくのだ。

 

 それは彼女が展開させている黄金のフィールド。

 

 強烈な回復領域。

 

「あなたがいなければここまで戦えなかったわ。」

 

「本当に感謝。」

 

 まだ誰もあきらめてはない。だが・・・どうしようもないのも事実だ。

 

 無数のピット共はそれだけ厄介すぎるのだ。

 

 まずは黒の奴は放射熱線を放つだけでなく体内放射までやらかしてくる。

 

 それだけならまだ対処の使用はあったが、それを赤と白がさらに凶悪なまでにサポートしてくる。

 

 次々と倍化していく赤。それが黒に力を譲渡。

 

 防御はもちろん白。攻撃が半減されていき、すぐに無力化。

 

 その上、反射も使ってくる。

 

 この反射が特に厄介だ。防御だけじゃない。攻撃にもつかってくる。

 

 特に本体から放たれてくる放射熱線を反射で曲げたり、拡散させてくる。

 

 もちろん、その本体の攻撃は倍化で増幅している。

 

「ぬぐあ!?」

 

 放たれた熱線をかわすが…すぐ背後に現れた白がそれを反射。

 

 おまけに赤がその威力を倍化させるという最悪のおまけつきだ。

 

「また来るか!?」

 

 壊滅的な破壊力を持つ放射熱線が何回も往復してくる悪夢。おかげで放射熱線の死角すら消滅してしまった。

 

 でも、それを防ぐのもまた同じ反射だった。

 

「・・・覚えていなければ即死だったな。」

 

 ヴァ―リはあの巨大な放射熱線を片手で反射して、防いでくれる。だが、ほかの白のビットがさらに反射、赤がついでに倍化と・・・。

 

「だが、キリがないぞ。」

 

 何とか神器の力を封じないと・・・。

 

「手ならある。だが・・そのためにはあいつに接近しないといけない。」

 

 ヴァ―リは何か策があるようだ。接近できたらの話らしいが。

 

 だが、ヴァ―リは今は防御の要。いなくなるとこちらは十秒も持たずに全滅する。

 

「何とかあの翼に・・・。」

 

「俺に何かできることがあるか?」

 

 その言葉に傷の癒えた匙が質問する。

 

「・・・頼みたいことがある!!」

 

 ヴァ―リが何か思いついたらしく匙に何かをはなす。

 

 その案は余も聞いていて…確かに効果は抜群だと思う。

 

 その効果は奇しくもヴァ―リ自身が体験しているのだから。

 

 だが問題はそれをどうやって・・・。

 

――――粘るものだ。

 

 ゴジラはむしろ感心した様子で余たちを見る。

 

「…あきらめは悪いと自負しているのでね。」

 

 余の言葉に皆は頷いてくれる。

 

――――なら…そろそろ終わるがいい!!

 

―――――BOOST!!

 

 でも、そろそろみんなも限界が近い。

 

 ここで何とか突破口を見つけないと。

 

 まずはあいつの最大破壊力の放射熱線を・・・。

 

「・・・ポルムさん、もうすぐチャンスが来ます。もうひと押しです。」

 

 えっ?アーシア?

 

 チャンスがやってくるって・・・。それにもうひと押しって・・・。

 

『おっぱーい!!』

 

『!?』

 

 アーシアの発言の意味をすぐに知った。

 

 大量の何かがビットに襲い掛かってくる。

 

――――なっ、なんだ!?

 

 それはおっぱいピラニア。おそらく大量に欲望をため込んだのだろう。数を大幅に増やしてやってきたのだ。そして、その数が大変多い。数万匹はいるだろうか・・・。

 

 それらが次々とピットを捕まえにかかる。

 

 そして、ゴジラ本体に襲い掛かってきたのはほかのおっぱいヤミー達だ。

 

 そのでかさ・・・彼らも相当欲望とため込んだらしく、ゴジラクラスの大きさになっている、

 

 一体一体が・・・。

 

――――――ウォォォォォ!?

 

 戸惑いの悲鳴を上げるゴジラ。

 

――――なっ、なんだ貴様らは!?

 

「おっぱーい!!」

 

 ゴジラは襲い掛かってくる彼らを殴り飛ばしたり、尻尾で払って吹き飛ばすが・・・。

 

――――我らの正義はただ一つ・・・。

 

――――それはおっぱい!!

 

――――それを教えてくれた親、師、そして同志の危機。

 

―――――その危機に駆けつけただけだ!!

 

 おっぱいヤミー達に明確な自我が生まれていた。

 

 ともにあるのはイッセーを助けるという意志とおっぱいを愛する心。

 

――――なんだんだ!?こいつら一体なんなんだ!?

 

 そんな連中と今まで出会ったこと…ないだろうな。

 

 理解できずにに動揺しまくっておる。

 

 ゴジラは戸惑いながら倍化した熱線を放つ。

 

 それと同時にあちこちで倍化しながら反射されていた無数の放射熱線も一斉にやってくる。

 

 やっ・・やば・・・。

 

「・・・今のタイミングだ!!」

 

「行け!!佑斗!!」

 

 その熱線の嵐に対して佑斗が立ちはだかる。

 

 逆手にした剣をもって・・・。

 

 なんと・・・

 

『っ・・・・!?』

 

 熱線を切り払ったのだ。

 

 倍化して、威力が極限まで上がった放射熱線を・・・それも無数にあった奴をまとめてだ。

 

「・・・・・・僕のギアがオーガでよかったと心底思うよ。」

 

 切られた放射熱線が消滅していく。

 

――――なっ、なにぃぃぃぃぃぃぃ!!?

 

 全身のあちこちから煙を上げながら膝をつく佑斗。

 

 変身ももちろん強制的に解ける。全身、大やけどをおっている。

 

 それでも立って彼は吠える!!

 

「僕の剣・・・僕の魔眼・・・僕のすべてを・・・舐めないでほしい!!」

 

 直視の魔眼。その力で切ったのか?

 

 そのタイミングを剣崎さんとサイガがアドバイスしたとはいえ・・・見事としか言えん。

 

 オーガの頑丈さがなければ斬る前にその熱で遣られていたし・・・。

 

 そこにイッセーから伝わったど根性。

 

まさに今の佑斗の強さのすべてがなければなしえない神技・・・いやもはや奇跡だ。

 

 そして、それはかなり大きい。

 

 ゴジラの動揺がそうだ。

 

 余も、あれは経験がある。カイザーフェニックスを無傷で無効化されたときのことだ。

 

 沽券にかかわる衝撃だからな。あれは・・・。

 

 その隙を見逃す者達ではない。

 

 ゴジラの背にあるディバイディングウィングに黒いラインが絡みつく。

 

 それを翼に引っ掛けたのは渡だ。

 

「いい隙だった。おかげで準備完了だよ。」

 

 例の翼龍形態になって素早く接近してきたということだ。

 

「…さて、イッセー、こんな形だがいつかのお返しさせてもらうぞ。」

 

 そのラインの先には匙とヴァ―リ、そしてオーフィスの姿がある。

 

 ヴァ―リはすでに倍化すみ。

 

「ついでにお前から吸収した倍化の力や放射熱線のエネルギーも一緒に送り返してやる!!」

 

「われの力もついでに!!」

 

――――transfer!!

 

 それは譲渡。

 

 譲渡先は…翼の力を半減させる力と排出する力。

 

―――――ぐおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!?

 

 二人の初対決の時にしたことをヴァ―リはそのままお返ししたのだ。

 

 それもおそらく倍返しどころじゃないレベルで。

 

 その結果機能不全に陥り、ビットの動きが乱れる。

 

 その隙を見逃すあいつらではなかった。

 

 高速で走るゼノヴィアと良太郎。

 

 飛行を司る翼を…切断!!

 

 ギャスパーもまたカテナを解放。

 

 上空に向けて視線を向ける。

 

 その結果…機能不全に陥ったすべてのピットを止めた。

 

 有無を言わさずに。

 

 そして・・・。

 

――――――ウェイクアップ1

 

――――――ウェイクアップ2

 

――――――ウェイクアップ3

 

「受けなさい!!」

 

 三つのカテナを同時に解放させた部長による・・・。

 

―――――――ウェイクアップ4!!

 

 いっ・・・いや、この土壇場で四つのカテナを同時に外した部長による大変強烈なジャンピングアッパーがゴジラの顎に炸裂する。

 

―――まっ・・・またしても!?

 

 すさまじい轟音とともに大きく上に吹っ飛ばされるゴジラ。

 

 部長・・・二度目の快挙だ。もはや伝説の域だろうな。

 

『・・・・・・・・。』

 

 その光景を初めて見て呆然としている彼女の兄をはじめとする関係者は放置しておいて、それは準備を完了していた。

 

 一度見ておいてよかったよ。そうでないとあの呆然としている連中の仲間入りしていただろうし。

 

「上空からの渾身の一撃だ。」

 

「たっぷり受け取れ・・・。」

 

 いつの間にか飛び上がっていたライダー達。

 

 どうやら飛べない方々はタンニーン殿に乗って飛び上がったらしい。

 

 剣崎さんや始さん、雄介殿はもちろん・・・。

 

「俺たちの魂の一撃…受けてみやがれ!!」

 

「たたき起こそう!!」

 

「ああ・・・。」

 

「受けてみろ!!」

 

 師匠である天道殿、新君、そして翔一殿にエイジ殿まで・・・。

 

「一気に突っ込むぞ!!」

 

 最後に・・・巧君か・・・。

 

 うん…ライダーキックの嵐だ。

 

―――ぐっ・・・

 

 それを見て、鎧のブースターを使って体勢を立て直し、放射熱線を放とうとするゴジラだが・・・。

 

「やらせません!!」

 

―――スペシャル・・・。

 

 その音声とともに朱乃殿がある力を解放させる。

 

 その背後に現れたのは黄金の光に包まれた三つ首の龍・・・ってえええええ!?

 

 あれええええぇぇぇぇぇ!?なんであいつがここにいるの!?

 

――――おっ、お前は!?

 

 さすがのゴジラも驚愕しただろう。

 

 余もびっくりしている。

 

 何しろゴジラに同族以外で真正面からぶつかって唯一対抗しうる存在なのだから・・・。

 

 ここにきてグレモリー眷属たちは、皆底力を見せている。しかもとんでもない爆発力を伴って。

 

 規格外すぎる連中ばかりだな・・・この眷属共は。

 

「焼き払え!!」

 

 三つの首から放たれる稲妻のような光線。ゴジラはそれをまともに浴び苦しむ。

 

―――ぐううううう!!!?

 

 その攻撃にゴジラが苦しむ。

 

 そして・・・。

 

『そいやー!!』

 

 その隙に飛び上がった皆さんによる超豪華なライダーキック。

 

 ゴジラが地面に叩きつけられる。

 

―――ぐおおぉぉぉぉぉ・・・。

 

 さすがに効いている。

 

 その倒れたゴジラの頭の上にある人たちが乗っていた。

 

「さあて・・・今度は俺達だな。」

 

「ようやく鬼らしいことができる。」

 

 それは鋼鬼殿とサイラオーク殿。

 

 ゴジラの脳天にベルトのバックルとなっていた火炎鼓を揃ってセット。

 

 その火炎鼓が展開。

 

 二人の手には・・・音撃棒。

 

 まさか…あの二人、よりにもよってゴジラの脳天でやらかすのか!?

 

『音撃打、火炎連打の型!!』

 

 そう叫び、二人は火炎鼓を叩く叩く!!

 

 その連打は工事現場で聞こえてくる破砕機のごとき速さ。

 

 すさまじい轟音とともに清めの音が当たりに響き渡る!!

 

―――――うぐああああああぁぁぁぁぁ!?

 

『そらそらそらそらそらそらそら!!!』

 

――――止めろおぉぉぉぉ‼‼頭が…頭がガンガンする!!!

 

 そら、このメンツの中でもトップクラスのパワーを持つあの二人が全力で叩けばな・・・。

 

 打くパワーはゴジラの体を突き通って地面が揺れるほどのものだ。

 

 叩かれている火炎鼓と叩いている音撃棒が粉々にならないのが不思議で仕方ないほどだ。

 

「お前には邪念が多い!!」

 

「清めの音で・・・浄化してやる!!」

 

『そらそらそらそらそらそらそらそらそらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

――――うがあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 清めの音を脳天から直接頭の中に叩き込む。

 

 幾重のゴジラの集合体なら怨念の集合体の奴もいたはずだ。なら・・・効果は絶大のはず。

 

 それに清め云々以前に、脳天に冥界中に驚くような轟音とそれに伴う衝撃をすさまじい連打で叩き込まれて平然としているやつなんているのか?

 

 うん…物理的にも清めという意味でも色々とえげつねえぇぇぇぇぇ。

 

――――いっ…いい加減に・・・。

 

 ゴジラが頭に乗っている二人を手で振り払おうとして・・・。その隙をサイガが狙う。

 

「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!」

 

 紋章の力を全開にさせた状態で・・・。

 

 そして、反対側からはハルト。

 

――――スペシャル・・・。

 

 右手に蛇のようなもの、左手にすさまじい冷気を出す翼を生やして走ってくる。

 

 不味いと感じたのだろう。ゴジラが逃げようとするが・・・。

 

「逃がすと思うか。ここで切り札を出させてもらうぜ・・・うおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!」

 

 そのゴジラを青い巨人が背後から押さえつけてきたのだ。

 

 それはネロの切り札。デビルトリガー。

 

 ただ・・・今の状態で解放させたらゴジラとガチで殴り合うことができるレベルになってしまうレベルの巨体と、力を持つ巨人が背後に現れるだけの。

 

 まだあまり長く続かないのが欠点ではあるが、文字通りの切り札だった。

 

――――放せ!!頭がぁ!!!頭があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

『そらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそら!!』

 

 ゴジラの脳天はもはやあの二人の独壇場である。力の限り、太鼓を打ち鳴らしゴジラが絶叫をあげるほどの苦しみを味わせている。

 

「この状態でトライアルをぶちかましたらどうなるかな!?」

 

 ネロがえげつないレベルでのトライアルのマキシマムドライブを作動させる。

 

「おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおららおらおらおらおら!!!」

 

――――――ぐあああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!?

 

 あの巨体で放つパンチのラッシュ。もちろん脳天にいる二人の演奏は邪魔しないように胴体に集中して叩き込む。

 

 鎧のあちこちにはすでに亀裂は入っている。

 

「受けるがいい・・・龍殺しと原初の蛇の力を!!」

 

 ハルトが両手を合わせると、右腕に現れた蛇が左腕から生えていた翼を融合。

 

 翼を持つ蛇となる。

 

――――ドラゴンイーター!!

 

 龍を喰らう強烈な右腕の蛇の顎がゴジラの体に叩き込まれる。

 

 そして、その締めに最大の技をサイガは繰り出す。

 

 それはアバンストラッシュクロスにある魔界最高の剣を加えた絶技。

 

 二本のオリハルコンの剣を持つことによってはじめて可能となった。

 

――――アバンストラッシュ・・・スタークルスブレイク!!

 

 組み合わせたその技は・・・星皇十字剣。

 

――――――トライアル・・・マキシマムドライブ。

 

 三人の必殺技が交差し、ネロが上へと放り投げたトライアルメモリをつかむ。

 

 そして、締めに頭の上の二人は・・・。

 

『そいや!!』

 

 最後のひと押しに清めの音を叩き込み、その反動で頭の上から飛び降り、着地。

 

 それと同時にゴジラの脳天にくっつけていた火炎鼓と手にしていた音撃棒が粉々に砕け散る。

 

 むしろ、あれだけ力の限り打ち終わるまでよく持ってくれたと思うべきだろうな。

 

「9.98・・・。」

 

「それがお前の」

 

「絶望への・・・。」

 

『ゴールだ!!ハアッ!!』

 

 五人の声が合わさると同時にゴジラがまとっていた赤龍帝の鎧が粉々に砕け散り、ゴジラの体に巨大な十字の傷が刻まれる。

 

―――ぐああああっ!?

 

 だが、ゴジラはまだ立っていた。かなりふらふらしているが、まだ立っていたのだ。

 

――――おっ・・・おのれ・・・。やりたい放題やってくれて・・・。

 

 あれでまだ立っているなんて・・・化け物もいいところだぞ。

 

「ぐっ…まだ倒れんか!!」

 

「なんてやつ!!」

 

「だが・・・攻撃続行!!モスラ!!バトラ・・・ガメラ!!、いまだあああぁぁぁ!!」

 

「はい!!」

 

 ゴジラの周囲にモスラの鱗粉が舞う。

 

 そのフィールドにバトラの光線、そしてガメラの火球が加わる。

 

 すると巻き起こる鱗粉内でのスパークと爆発現象。

 

―――――ぐあああああ!?

 

 これはあるゴジラを気絶に追い込んだ陣形。それにガメラを加え、さらに強化している。

 

 これでこのまま気絶に追い込んで・・・。

 

――――こうなったら・・・。

 

 だが、ゴジラはあるカードを使おうとしていた。

 

 現れる二枚のカード。

 

 それは・・・・

 

――――Final vent!!

 

 それを見て余たちはぞっとした。

 

「…やばい!!あれを発動されたら!!」

 

 それが召喚機に・・・。

 

「させると思ったかよぉぉぉぉぉぉ!!ヴァ―リ!!いくぞ!!」

 

「ふん。」

 

――――Confine Vent!!

 

 発動させたのは…まさに切り札。

 

 ファイナルベントを文字通り無力化させる。

 

――ぐう…そんなカードが!!

 

「これでお前さんの切り札は封じたぜ!!」

 

 その効果を増強させるための人工神器を発動させたアザゼル殿。

 

 そのカードを提供したヴァーリ…二人ともナイスだ!!

 

――――くそおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!

 

 だが、ゴジラはなかなか気絶しない。

 

「だったら…とどめです。」

 

―――――Final VENT!!

 

 それはロスヴァイセである。

 

 その音声とともに・・・・おいおいおいおいおいおいおいおいおいおい!!!?

 

 マグナギガ出現。

 

 ただそのデカさはじんじょうではない。

 

 ゴジラと同じくらいのでかさにまでなったのだ。

 

「あの姿なら全力でぶち込んでも問題ありません。あれだけの生命力ならちょうど大けがで気絶する程度で済みます。」

 

 間違ってはいない…だがとどめとしては相手にとって最悪すぎるぞ。

 

「喰らいなさい・・・地形に関してはすでにあなたが滅茶苦茶にしているので気にせずにこうして、マグナギガを本来の大きさにして、全力で放てます故・・・。」

 

 マグナギガに過剰なまでのエネルギーが集まっていき、全武装を解放していく。

 

 それを見てモスラやバトラ、ガメラもゴジラから距離を放していく。

 

 そして、彼女は銃型の召還器…マグナバイザーを背中にセット。

 

 短く一言。

 

「Fire!!」

 

―――――エンドオブワールド!!

 

 それとともにマグナギアの前面から解放される数々の火器。ついでに数多くの魔術も混じっており、とてもカラフルだ。

 

 それが彼女のいた前の景色を轟音と共にすべて炎の壁のごとく焼き払った。

 

――――ぬぐおおあああああああああああああぁぁぁぁ!?

 

 そして、ゴジラのいた場所にはすさまじい轟音とともにキノコ雲が立ち上った。

 

『・・・・・・・・・・。』

 

 まさにそれは世界の終わり。ラグナロクを見せられたような光景。

 

 おそらく国一つを焦土に変えるのに十分な火力だろうな。

 

 そのすべてがゴジラに集中・・・。

 

「・・・さすが歩くラグナロク。」

 

 驚愕とともに納得するしかない。とんでもない火力だと。

 

 そして、その爆発が収まった後・・・地面に倒れ伏せるゴジラがそこにはいた。

 

 まだ生きている。

 

「・・・そして、あれをまともに受けてまだ生きているあたり・・・ほんとに規格外ね。」

 

 部長のいうこともわかる。

 

 あれだけのダメージを受けてあいつはまだ生きている。

 

「加減してよかったですかね?」

 

 あれで加減していたというのか?!

 

「殺さない程度にするには。本来ならアインも一緒に放つ技。」

 

「私が一緒ならさらに三倍になります。」

 

『・・・・・・・。』

 

 規格外もいいところだ。彼女ひとりで冥界を滅ぼせるぞ。

 

 だが何とか弱らせることはできた。

 

「今のうちにゴジラの封印を!!」

 

――――くくくく・・・くははははははははははははははは!!

 

 だが、それを阻むのは最悪の光景。

 

 ゴジラは立ち上がったのだ。

 

 全身を赤く燃えあがらせながら。

 

 って・・・あの姿・・・。

 

―――――――この姿にならないといけないほどまでに追い詰められるとは。

 

 ここでバーニングモードになるか。だが・・・あの姿になられるとまずい。

 

「お前・・・自滅するつもりか!?」

 

「なんだ…あの姿。」

 

 赤く燃え上がるゴジラ。その口から放たれる熱線は赤くなっている。

 

 そして、その破壊力は倍化しなくても・・・

 

「威力がましている!?」

 

「暴走形態・・・バーニングゴジラだ。一番なってほしくなかった形態だぞ。」

 

 あれはゴジラの体内の核融合が暴走したことによる姿。

 

 総ての力は飛躍的に増すが、遠くないうちに核爆発、またはメルトダウンによる周囲溶解を起こしながら自爆する禁断の姿。

 

――フン…そんなわけはないであろう。この姿を制御する術ならすでに答えは出ている。

 

―――――SURVIVE!!

 

 ゴジラの体から現れるのは…サバイブカード!?

 

――――わが力を加えた烈火・・・いや、劫火、熱、として、爆烈のサバイブ・・・。

 

 まさかバーニングモードの力をカード化させるなんて!!

 

 しかもその枚数は・・・三枚。

 

 三枚のサバイブって反則すぎていい加減にしてほしいぞ!!

 

―――――そして…最後はこれだ。

 

 現れるもう一枚のカードそれは・・・。

 

――――Unite Vent!!

 

 しっ・・・しまった!!

 

 赤く燃えるゴジラはこうしてさらに進化する。

 

 カードの力によって。

 

て――――――エボリューション!!

 

『ぐあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』

 

 巻き起こる大爆発に皆は吹き飛ばされる。

 

 それは進化の際の余剰のエネルギー。

 

 それだけで前に放った体内放射すら超える破壊があちこちにまき散らされる。だ

 現れるのは肩からドラグレッダーとドラグブラッカーの首を生やし、ドライグの翼を生やしたゴジラの新たな姿。

 

 その胴体はサバイブの時のアーマーだ。

 

 頭には既に展開されているアギトの角がある、

 

 ここに紅のゴジラが爆誕する。

 

「ちぃ・・・だったら、それも無効化すれば・・・。」

 

――――させると思ったか?

 

―――――Storange Vent!!

 

―――Steal Vent!!

 

 ぼろぼろのアザゼル殿が震える手で無効化させようとしたそのカードをゴジラが盗む。

 

「しっ・・・しまった!!」

 

――――さあ…まとめて終わらせてくれよう。

 

――――Boost‼Boost!!

 

 もう絶望しかそこにはなかった。

 

 倍化が始まっている。

 

 ピットも次々と復活しつつある。

 

 こっちはもう疲労困憊。それなのに、向こうはさらに強くなる。

 

 何をやっても立ち上がってきて、さらに強くなるなんて最悪すぎる。

 さらに最悪なことに・・・。

 

――――――――Strasce Vent!!

 

――――――――Trick Vent!!

 

 トリックベントで六体に分身しやがった!?

 

 しかもその分身たちがそれぞれ倍化しているぞ!?

 

「もう何をやっても無駄だ.。奴を止めることはできん・・・。」

 

 打つ手はもう・・・ない。完全に追い詰められた。

 

「…みんな…あとは余がやる。」

 

 余は決意する。

 

「ぽっ…ポルム!?」

 

「命に代えても必ず・・・同志は助ける!!」

 

―――――我らもあきらめん!!

 

 おっぱいヤミー達もまだ立ち上がり、ゴジラに向かうが・・・。

 

――――貴様らなど・・・

 

 だが、さらなるパワーアップしたゴジラはそれらを容赦なく蹴散らす。

 

 吹き飛ばされセルメダルへと分解されていくヤミー達。

 

 あいつらなりに…イッセーのことを思って・・・。

 

「・・・無駄にせん・・・。」

 

「あんたばかりに格好つけさせると思った?」

 

 先ほどの大爆発を受け倒れた皆が立ち上がっていく。

 

 部長を先頭に皆・・・。

 

「このまま倒れてやられたら、イッセーが悲しむだろうが!!」

 

「倒れてばかりはいられなね。」

 

――――その気概まさにあっぱれ。だが・・・。

 

―――――Explosion!!

 

 倍化の力を解放するゴジラ。

 

―――――これで終わりだ!!

 

 分身体も含め、一斉に倍化させた赤い放射熱線を放とうとして・・・。

 

「いえ…あなたの負けです!!」

 

 とアーシアがいった。

 

――――何?

 

 アーシアの言葉とともにそれは現れた。

 

 空間の隙間から・・・。それは世界最強とうたわれる最大の存在。

 

 D×Dとよばれしもの。その名は・・・。

 

「…こんなところにグレートレッドがあらわれるなんて。」

 

 赤龍神帝の登場。

 

「いや…あれだけ大暴れしたのだ。むしろ来ない方が不自然だ。」

 

―――ほう・・・面白い奴がきたものだな。

 

 ゴジラの注目がグレートレッドに向けられる。

 

―――――お前も破壊しつくしてくれようか?

 

 破壊の化身はそれを倒そうと意識を向けるが・・・。

 

―――――いまだ!!

 

 空間の裂け目から見おぼえるのある何かが飛び出してきたのだ。

 

 それは・・・。

 

「スターシップだと?」

 

 ある世界でともに戦ったあいつが乗っていた宇宙船。

 

 どっ・・・どういうことだ!?なんであの船が!?

 

 倍化したゴジラの眼前に現れた船の上から立つのは・・・。

 

 見覚えのありすぎる連中の姿。

 

 信じられない。どうしてあいつらがここにいる?どうしてだ!?

 

 スターシップを中心に展開される幾重の魔法陣。

 

 あれってメディアの・・・。

 

 驚いたゴジラが赤い放射熱線をはくが、それをスターシップの周りに現れた結界が阻む。

 

「・・・まさかアヴァロン・・・。」

 

 これもまたこちらの知り合いの使っていた物。こちらが知る限り最強の結界。

 

 赤い熱戦を防がれ驚くゴジラの顔面に突き刺さる無数の攻撃。それを受けゴジラはひるむ。

 

 そして、一人スターシップから飛び降りて・・・。

 

 その飛び降りてきた奴のことをすごく見おぼえがあったりして何がなにやら・・・。

 

 それが勇敢にもゴジラの顔面に飛び込み・・・。

 

「本物はお前だ!!うおおおおらららあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 ゴジラの顔面を殴った!?

 

――――ぐおおおおおっ!?

 

それはあまりに強烈な一撃だったのだろう。

 

―――――おっ・・・おおおおおっ・・・。

 

 顔面を抑えながら倒れこむゴジラ。あまりの痛さに悶絶している。

 

 まだいたのか。ゴジラを殴り飛ばす猛者が。しかも本体を一発で見切りおったし。

 

「・・・・・・なんでさ。」

 

 しかもそいつが余の知り合いだったなんて・・・。

 

 そして、そのわずかの隙に奇跡は起きようとしていた。

 

――――同志を…助ける。

 

 それはセルメダルになったおっぱいヤミー達。

 

 だが…まだ動いていた。

 

 メダルのまま・・・。

 

――――絶対に・・助ける。

 

――――絶対に助ける。

 

―――絶対に…助ける。

 

 メダルたちが口々にそういって動き出す。

 

 その現象にゴジラはもちろん…グレートレッドも驚くが・・・。

 

 そのグレートレッド少し考えてから、何やら笑みを浮かべ…吠えた。

 

 まるで最後のひと押しをするかのように。

 

「・・・私も願います。あなたたちの思いがかなうように。」

 

 そしてアーシアが祈る。

 

「ネロさん!!ヴァ―リさん!!あと翔一さんも祈ってください。」

 

「…祈るって?」

 

「だまされたと思ってやってみるしかないだろう。」

 

「息子を助けるためになるのならなんだってしよう。」

 

 そして、アーシアに続いて他三人のアギトもまた祈る。

 

 そして、そのひと押しと祈りが効いたのだろう。

 

 

 

 

 この時…不思議なことが起こった。

 

 

 

 

 メダルが輝きを放ちながら動き出したのだ。

 

 一枚一枚・・・アギトの紋章を宿し、それを輝かせながら。

 

 動き出すメダルの山の中からアギトの紋章がひときわ輝くメダルがある。

 

 緑の昆虫が描かれたメダルが三枚。

 

 赤の鳥が描かれたメダルが三枚。

 

 銅色の爬虫類が書かれたメダルが三枚。

 

 黄色の動物が描かれたメダルが三枚。

 

 灰色の重量動物が描かれたメダルが三枚。

 

 水色の水生生物が描かれたメダルが三枚

 

 銀色の甲殻類が描かれたメダルが三枚。

 

「そんな馬鹿な。コアメダルが生まれただと!?」

 

 コアメダル。それはグリードたちの存在の芯となるもの。

 

 どんな奇跡が生まれたのかわからないが、この場でコアメダルが生まれたのだ。

 

 何がどうなっているのかさっぱりわからないけど。

 

 それらのコアメダルを中心となり・・・セルメダルが集結。

 

 そして形作られていくのはすべてのコアメダルの要素を合わせて持つ生命体だった。

 

 そう…自然とあらゆる生物の要素をもってそれは生まれた。

 

 ドラゴンが。

 

『おっぱーい!!』

 

 そう・・・イッセーの欲望から生まれたヤミーがグリードとなり、一つとなってドラゴンになったのだ。

 

 ドラゴンは確かに様々な生物のキメラといえる。

 

 こんな形で再現することになるなんて予想外だったけど。

 

 そして誕生したのが・・・ドラゴングリード。

 

 いや、あえてこう名付けよう。

 

 おっぱいドラゴンと!!

 

――――――なんだお前は?

 

―――――・・・・・。

 

 ゴジラももちろん、グレートレッドすらも驚いている。

 

 その存在の誕生の異端さに、そして内包された力の莫大さに。

 

 あれもまた・・・龍神だ。

 

 あの超巨大なおっぱいヤミー達の力を束ねただけあって、規格外の力を持っている。

 

――――わが同志…助ける。

 

 その言葉とともにおっぱいドラゴンはゴジラにとびかかる。

 

 殴り飛ばそうとするゴジラだが、突如発生した太陽のごとき閃光が阻む。

 

――――目が・・・目がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

 

 強烈な目くらましに悶絶している隙にゴジラを抑えにかかっている。

 

 それを見てほかの分身ゴジラが動き出そうとするが・・・。

 

――――その力、我にもあるぞ!!

 

 おっぱいドラゴンまでもが分身して対抗しただと!?

 

――――はっ・・・はなせ!!

 

 しかも体を液化させ、ゴジラを取り込むようにして動きを封じるわ、重力を操作してビットたちを次々と墜落させているわで・・・。

 

――――おっぱい・・・。

 

――――――!?

 

――――すべてはそのために!!

 

――――おっぱいってなんだ!?

 

 突っ込みながらもゴジラは四苦八苦しつつ抵抗…だが様子がおかしい。

 

 倍化の力が効いていないのだ。

 

―――――お前の力・・・すべてわが欲望に!!

 

 あいつが力を吸っているのか?!

 

 ゴジラもそのことに気づいたのだろう。必死にもがくが・・・全然離れない。

 

 しかも、その力のおかげだろう。分身ゴジラが消えていく。

 

 おっぱいドラゴンに力を吸われて。

 

――――――ちぃ、離れろ!!離れ・・・。

 

――――いやだ。お前に伝えると決めたんだ。

 

 おっぱいドラゴンはとんでもないことを言ってくる。

 

――――おっぱいのすばらしさを

 

―――――だあああああ!!だからおっぱいってなんだ!?なんでそんなことのためにこんなバカげた力が!?

 

 ゴジラは本気で戸惑い、そして恐れていた。目の前のおっぱいドラゴンという存在を。

 

――――大丈夫。おっぱいを知ればみなと仲良くなれる。そのためにおっぱいのすばらしさを・・・。

 

―――――わけがわからぬぞ!!!なんなんだお前は?!

 

『・・・・・・。』

 

 なんというか・・・おっぱい馬鹿の誕生としか言えん。その力だけでなく、キャラでもゴジラをタジタジにしているぞ。

 

「おっぱい・・・。」

 

 その時ゴジラの口からイッセーの声が漏れる。

 

――――何!?我が宿主の抵抗が始まっただと!?

 

「おっぱい・・・は正義・・・。」

 

―――――なんでだ?なんで・・・まさか、これがおっぱいの力だと・・・。

 

―――――ここでおっぱいドラゴンの歌…スタート!!

 

 おっぱいドラゴンがそういうと・・・

 

 謎の歌が流れてきた。

 

 いつの間にかあちこちに召還されたスピーカーからだ。

 

『・・・・・・・・。』

 

 それはおっぱいドラゴンの歌。

 

「あっ・・・あれ?なんで俺たちの作った歌がながれてんの?」

 

「う~ん・・・。」

 

 サーゼクス殿‼!アザゼル殿!!この世界でも作っていたの!?

 

「ああ。やっぱ、作った方が面白いと思ってな。だが・・・。」

 

 その歌のせいでゴジラの動きがさらにぎこちなくなる。

 

―――――そんな馬鹿な!?おっぱいで・・・おっぱいだけでこんなことが?

 

「おっぱい・・・おっぱい・・・。」

 

――この歌はまさに我の歌。この歌がさらに力を引き出してくれる!!

 

――おっぱいってどんな力なのだ!?

 

 おっぱい…まさかこれがキーだったなんて・・・。

 

 あとゴジラさん。おっぱいはそんなすごいものじゃないって。

 

 あとで訂正しないと。取り返しのつかない勘違いをしかねない。

 

「イッセーさんと合体したのは失敗でしたね。」

 

 アーシアの発言に気づいてしまった。

 

 ゴジラは確かにイッセーのアギトとしての力を取り込んだ。

 

 だが、その際にダイレクトに取り込んでしまったのだろう。

 

 彼のおっぱいという欲望。

 

ある意味アギトの本能すら凌駕しかねないとんでもないものまでも。

 

―――――――っ!?これが宿主の恐ろしさだというのか!?

 

 アーシアちゃん…これを狙っていたのか。イッセーのおっぱいに対する奇跡・・・いや、その必然を知って・・・。

 

「いえ…まさかここまでとは思いもしませんでしたけど。」

 

 いや、アーシアからしても予想外だったのか。

 

「・・・皆・・・封印準備。」

 

 呆然としているみなに封印を促す。

 

「する必要もないかもしれないけど。」

 

 でも、あまりにばかばかしい光景に何とも言えなくなってきた。

 

―――ウッ…動かん。体が・・・うごかな・・・。

 

 それでもこのままゴジラを押さえつけるにはもひと押し何かが・・・。

 

 そうもひと押し・・・。

 

 ひと押し・・・。

 

 ひと押しと言えばスイッチ・・・。

 

「はっ!?…いまだ部長。あなたのおっぱいを触らせるんだ!!」

 

『はい!?』

 

 おそらく最善の答えはこれだろう。それ以外考えられない。

 

 皆何を言っているのだろうと思っただろう。

 

 だが、これしかない。

 

 余だって、なんでこんな結論に至ったのか疑問で仕方ないのだ。

 

 だが・・・わが同志―――イッセーなら・・・ありえる!!

 

「…この世界でも私って、スイッチ姫なのね。」

 

 変身を解き、鬼から戻った部長。すでに全裸なので問題はない。

 

「いいわ。皆のため、そして誰よりもイッセーのためならそんな私も受け入れて見せるわ。」

 

 その表情には悟りがあった。

 

 どうやら覚悟はしていたようだ。並行世界の彼女から話を聞いたのだろう。

 

 色々なことがありすぎたけど、結果的にそれと似た展開になってしまったことも。

 

「…リアス。私もいくわ。」

 

 だが、その横に朱乃さんまで!?

 

「…二つスイッチがあってもいいでしょ?」

 

「・・・ふっ・・・いいわよ。共に逝きましょう。スイッチ役として。」

 

「・・・それに並行世界の私もやっておけばよかったと言っていたので。」

 

「はっ!?あなたまさか・・・。」

 

 二人のやり取りをよそにゴジラの腕は勝手に動く。

 

―――――おおおお…腕が・・・腕が!?

 

 二人のおっぱいに誘われるように動いていく。

 

 それに危機を覚えたのだろう。

 

「わっ・・・私だって!!」

 

「私もです!!」

 

 ユウナとアーシアまで参戦しただと!?

 

 あーあもう・・・乙女がそろいもそろっておっぱいさらすって・・・。

 

 頭が痛くなってきた。

 

「男どもは向こうを向きなさい!!」

 

 キリエ殿がすぐに我に返ってそういうが、この場合エロスよりも起きてしまっている出来事の異常さの方がはるかにまさっているので問題はない。

 

 まあ、とっさにおっぱいの部分を見えないように盾で隠すあたりはいい仕事だ。

 

「あとであの四人に説教しなくちゃ。」

 

 キリエ殿・・・あなたはいい教育者になれる。

 

 ゴジラの巨大な両手が、指先でさらされた四人のおっぱいをつつき・・・・。

 

――――さあ、ともにおっぱいのすばらしさを!!じっくりと語ってあげる!!時間はたっぷりあるから・・・。

 

――――やめろ!!放せ!!・・・放せぇぇぇぇぇぇ!!

 

 それをきっかけに封印の陣の中でゴジラをおっぱいドラゴンが生み出したセルメダルで包んでいく。

 

――――うおおおおなっ…なんだ…いったい・・・なんだというのだ!!?

 

 ゴジラは最後まで混乱しっぱなしだった。

 

――――おっぱいって…おっぱいって一体なんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?

 

 それがゴジラの最後の言葉だった。

 

 たぶん、おっぱいという単語にトラウマを刻まれたまま。

 

 ゴジラとおっぱいドラゴンがセルメダルの中に消えていき、それが消えていく。

 

 そして、あとには倒れたイッセーだけが残っていた。

 

『・・・・・・・。』

 

 みんな、あまりに予想外の展開に呆然としている。

 

 それはそうだろう。全滅一歩手前まで追い詰められた相手の末路がねえ。

 

「なんだ・・・そりゃ・・・。」

 

 こんなオチ、誰も想像できん。

 

「・・・・・・いや、またこのセリフを言うことになるなんて思いもしなかったけどよお。」

 

 アザゼル殿が深いため息をつきながら言う。

 

「おっぱいって・・・やっぱ無敵だよな。」

 

『・・・・・・うん。』

 

 満場一致だった。

 

 余も思わず納得してしまった。

 

 その言葉がこの戦いのすべてだと思う。

 

 さすがのゴジラも、おっぱいには勝てなかった。

 

それがすべてだ。

 

 ・・・・・・・うん、自分で言っていて訳が分からん!!

 

 だが事実なのだから仕方ない。

 

 ゴジラよ。

 

 お前もまた触れてはいけない部分に触れてしまったのだろうな。

 

 イッセー、わが同志が持つおっぱい・・・いや乳パワーに。

 

 ここからその伝説が始まるのか・・・。

 

「色々な意味で非常識もいいところだよ。」

 

 皆いろいろな意味で酷い疲労に襲われたのは無理もないだろう。

 

 ほんとに疲れた。心底な。

 

「本当お疲れさまでしたね。」

 

 さて…いつの間に隣にあいつがいることをそろそろ突っ込んだ方がいいか。

 

「どうしてお前がいる?タマモ。お前はあの世界で・・・。」

 

「私だけじゃないですよ。ねえ・・・みなさん。」

 

 いやな予感がしてきた。

 

 そばに降りたスターシップから降りてきたのは・・・。

 

「やっと見つけた。」

 

 ヒュミナ・・・だと?ほかにも・・・。

 

 なんでここにいるのかわからないが不味い・・・。

 

 どうやらみな、余がいないか探している様子。

 

 去るなら今だな。

 

 こっそりと、その場から去ろうとするが・・・。

 

「おっと…ちょっと待ちな。」

 

 ハルト殿がいつの間にか余の肩をつかんでいた。

 

「この戦いの功労者がどこにいく?」

 

 その顔は大変面白い何かを見つけたような笑み。

 

 そう…完璧なドSの笑み。

 

「いっ・・・いや、安心したらトイレに・・・。」

 

「逃がしたらだめですよ!!」

 

「そうそう。予言大当たりだわ。」

 

 この時、余は心底後悔していた。ハルトにあの話をしたことを。

 

「何?」

 

「あの人たちのことを知っているの?」

 

 そのやり取りを見てほかのメンツがこっちに向かってくる。

 

「えっとですね。」

 

 ああ・・・なんでこうなったの!?

 

 そんなことをしたら見つかってしまう。

 

 そんな時だった。あいつと目が合ったのは。

 

 歓喜、そして・・・怒りが表情に次々と浮かんでいき・・・。

 

「そこを動くなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 ダッシュしてきたヒュミナ。その手には余がかつて送ったオリハルコンのナックル。

 

 ちなみに動きたくてもハルトに肩をしっかりとつかまれて動けんよ。

 

「ふぐおあっ!?」

 

 それに殴り飛ばされた余。

 

 ・・・・素晴らしい拳だった。その一撃でヒュミナの成長具合がよく分かったとだけ言っておく。

 

 さすがゴジラを悶絶させただけのことはある。

 

 ああ…余たちが救った冥界の空が美しい・・・。

 

 そう感心しながら余は意識を失った。

 

 あとから聞いた話だと、千メートルほど殴り飛ばされたらしい。

 

 

 

 

 

 




 私はやってしまいました。

 この世界でも不思議なことを起こしてしまった。

 このような結末。予想できましたか?

 
 ゴジラすら敵わぬもの・・・それがこの世界にあるなどと(笑)

 次話…エピローグです。


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エピローグ

 本日最後の投稿です。

 短いですが本編のエピローグ。そして…次話の予告も兼ねています。

 
 ポルムさんが目立ち過ぎたかもしれませんね。


 ではどうぞ!!


SIDE ほむら

 

「・・・なん・・・だと。」

 

 あの後こっそり組織に戻った時、ぼろぼろのエルたちは闇の神へと報告をしていた。

 

 その手は震えている。

 

「あいつに手を出すのは危険です!!」

 

「もはやアギトの枠すら超えた存在。」

 

「挑んだら最後…間違いなく滅ぼされます。」

 

 闇の神は彼らの後ろにいる黒いモノリス――管制者を見る。

 

「あいつにはもう…関わりたくない。神である我が存在そのものの消滅の危機に瀕した。」

 

「・・・・・・。」

 

 あいつに手を出した。

 

 そう・・・まどかの息子―――兵藤 一誠。

 

「確かにあれは化け物ね。あれを封印できたのはもはや奇跡よ。」

 

 まさかおっぱいだなんて・・・。

 

 おっぱい・・・。

 

 私は自分の胸を触るが…悲しくなってすぐにやめた。

 

『・・・・・・・。』

 

 それをじっと見ている水のエルと闇の神共。

 

「…そう…あなたたち死にたいの。」

 

「まっ、まて!!話せば分かる!!」

 

 そうね、話せば分かり合えるかな?

 

「そうだ。いくらあのおっぱいというふざけた奇跡を見て、自分のおっぱいを見て空しくなっても我らは・・・ハッっ!?」

 

『バっ…馬鹿!!余計な事を!!』

 

「・・・そう。死にたいのね。」

 

 水のエルの失言に、私は大量の爆弾を召還。

 

「逝ってきなさい。」

 

『ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 背後で大爆発が起こるの振り向きもせずに私は歩き出す。

 

 私の目的は達した。

 

 まどかを見つけた。

 

 もう…神としての力を取り戻し、戦いに無縁な生活を送ることは不可能になっている。

 

 それでも幸せに暮らしている。

 

 それは本当に良かった。

 

 幸せそうな家庭。

 

「・・・ほむら?会いに行くのか?」

 

 傍らにいるオーフィスを撫でながら私は頷く。

 

「ええ。そしてそろそろ潮時ね。私も・・・。」

 

「なら・・・我を慕う者達も一緒に連れていきたい。」

 

 オーフィスを大切に思っている者達はこの組織にも多い。

 

 あの子達も確かに連れて行きたいわね。

 

「・・・まずはまどかに会わないと、まどかを幸せにして子持ちにしたあの人とじっくりと話し合いたいしね!!」

 

 まずは近いうちにまた会いに行かないといけないようだ。

 

「それに興味あるわ。まどかの息子・・・一誠にも。」

 

 これからのことを考えるためにも、まずは会いに行く必要がある。

 

 そう私は考えていた。

 

 

 

SIDE ポルム。

 

「これより・・・判決を言い渡す。」

 

 なんでこうなった?

 

 殴られ気を失っていた余は目が覚めると。十字架に貼り付けにされ、突っ立っていた。

 

「ちょっと待て!!何がなにやら!?」

 

「罪状は・・・・・・。」

 

 なんでいきなり裁判になって余は裁かれている!?

 

 裁判長は…キリエ殿だ。

 

「あなたの罪状は大変罪深いです。何しろ、こんなに良い子達の心をとっかえひっかえ奪いまくっているのですから!!」

 

『・・・・・・・。』

 

 横を見ると・・・ああ・・・あいつらがいる。

 

「状況を整理すると・・・全て話したな?」

 

「この世界では手を出していないのが分かって安心はしたけどね。」

 

 ヒュミナ達はどうやら事情説明をしたらしい。余が気を失っている間に。

 

「いや~父さん達の仲間の娘さんに会えるなんて大変光栄だったよ。」

 

 貼り付けにされた余の隣でサイガはうんうんと頷く。

 

「こっちも、ポルムが本来の目的を達成していたことにはびっくりよ。まあ・・・この世界で永住するつもりだったという点において、色々とお話ししたいところだけど?」

 

 どうやらかなり情報の整頓が行われたらしい。

 

「あの時話してくれたおかげでねえ。スムーズに話は進んだよ。」

 

 ハルトの奴が笑う。

 

「・・・・・・・。」

 

 ある意味幸いだったと言うことなのだろうか。

 

「…それで、どうしてお主達はここにいる?あの時死んだはずでは・・・。」

 

「あんたが残してくれた遺産のおかげで復活したのよ!!こんなおまけつきで!!」

 

 チェルシーの頬に走るステンドグラス状の文様。

 

「・・・・・・なんでファンガイア化している。おまけにその傍にいるのって・・・。」

 

「・・・失われしオリジン・キバの鎧。適合者が現れるなんてびっくりだよ。」

 

 渡殿が感心しているが、余もこればかりは訳が分からぬぞ。

 

「私はまあ・・・これのおかげ?」

 

 シェーレの腰には・・・アマダムのついているベルト。リバースドールに仕込んでいたやつが・・・。

 

「・・・そうか。救えたのか。」

 

 それを見て余は救えなかったと後悔していた二人を助けることが出来ていた事を悟る。

 

「良かった。まあ…人外にしてしまったのはすまないな。」

 

「別にいいわよ。感謝こそすれ、人でなくなったのは暗殺者として人を殺し続けた罰だと思っている。」

 

「生き返ったおかげで、革命には成功しましたよ。」

 

「当然私も手伝ったけど。」

 

「・・・お前、あの世界で暴れたのか。」

 

 こうして余は状況を整頓していく。

 

「それでリース。お前、国はどうした?まさか・・・。」

 

「ええ、弟に託しました。そうできるように憂いは全てなくしましたので。」

 

「…一国の王女様のハートを奪った罪が追加された瞬間だけどね。」

 

「・・・・・・。」

 

 あいつまで追いかけてくるなんて想定外もいいところだぞ。

 

「さて・・・次は私だな。この世界は凄いよな・・・。なんでダークサムスやゼーベス星人達がいて、一緒に仲良く暮らしているものそうだが・・・。」

 

 彼女の後ろに・・・あっ・・・ベビーが・・・。

 

「なんでベビーがいるのかな?」

 

「あっ・・・いや~・・・。」

 

 そして、サムスは余に掴みかかる。

 

「お前はいつもそうだ!!なんで私のために自分を犠牲にする!!私があれで喜ぶと思ったか!!?」

 

 涙を流して

 

 あいつが涙を見せるのは二度目だ。

 

 一度目は、あの最終決戦の時。

 

「…だから追いかけてきたの?」

 

「ああ!!悪いか!!そう思ったらスペースシップに次元渡航機能が発動してな。お前を追いかけ始めたということだ。初めに着いた世界でヒュミナと出会ったのが幸運だったな。」

 

「…それでヒュミナ、お前に渡したコンパスを使って余を追いかけたと言うことか。」

 

「ええ。流石にどうしてこうなったか分かった?」

 

 まさかスターシップに自己進化機能を付け、一つだけ新たな機能をつけれると設定したら、サムスの無念を察して並行世界へ渡る機能を・・・。

 

 それにヒュミナのコンパス。あの二つが加わると余を追いかけることは可能だわ。それで余の後を追う形で並行世界の旅をした為に、あの三人と合流してしまったと。

 

「それでこの狐耳の人は誰?」

 

「ある世界で聖杯戦争に参加して、そのとき召喚したのが縁で。だが、お前はどうやってここに・・・って!?」

 

 タマモの尻尾は九本になっている。

 

「・・・強引に世界の壁をぶち破ってきたのか。」

 

「はい。」

 

「単独で存在できるように魔力を生成するようにしたのが仇となったか。」

 

 余は余計なことをしてしまったことに頭を抱える。

 

「本来なら尻尾を切り離すところでしたが…流石に何が起こるのか分からないのでこのままでやってきました。どうやらそれが正解だったみたいですが。」

 

 日本三大化生の一人の力ならそうだな。

 

 この世界でも十分通用するだろうよ。

 

「それでアルトリアはどうして?」

 

「何って・・・一緒に旅した時に言いましたよね?やるべきことを終えたら、来世ではあなたと共にいるって。マーリンには感謝しないと。転生できる方法を探してくれたのだから。」

 

「・・・そうか。王としての務めは自らの死と共に終えたか。しかし転生とは・・・。」

 

「私も同じです。もっとも、自ら編み出しましたけど。」

 

 メディア・・・お前もか。

 

 この二人は本来進むはずだった歴史を余と出会ったことで変わってしまった者達だ。

 

 アルトリアは女であることを隠す必要をなくした。その結果修行の旅では騎士姫と呼ばれることになった。

 

 旅に付いて行ったが、人助けと言う名のトラブルに巻き込まれ続けた波乱万丈の旅だったぞ。マーリン殿とは良い交流になったが。

 

 メディアは・・・うん。あの男を抹殺したからのう・・・。

 

 呪いはこちらで解除したし。

 

 文句言ってきた神にはこちらが秘かに出向いてよく言って聞かせたから、どうやら幸せな一生を過ごしたようだな。

 

「あなたのおかげで私は裏切りの魔女ではなく、あの世界で巫女のままで過ごせました。まあ、あなたに魔女と呼ばれる経緯を追体験させられましたけどね。そのお礼のために私は転生と第二魔法の研究をさせてもらいました。その成果が今の私です。」

 

 確かにあいつらにはこちらも勉強になった。それ故に転生という概念とその手掛かりは教えたが・・・。

 

 転生した上で、追いかけてくるなんて想定外すぎる。

 

 その結果、こちらが体験した世界とは違うIFの二人が生まれた。

 

 二人とも…リリィと呼ばれる存在だ。

 

 余がもたらした可能性の二人。

 

 正史と違う二人を生み出してしまったのは間違いなく余のせいである。

 

「いや~ポルム。お前って凄い奴だったわけだな。」

 

 いや、余の隣で相方であるサイガが素晴らしい笑みを浮かべている。

 

「お前が前にセラさん達の責任を取らすために、色々と策を弄してくれたよな?結果としてこっちは良い感じになったわけだど、肝心のお前自身は放置しておいたわけだ。」

 

「あっ・・・いっ、いやな。」

 

 サイガ…まさかあの時嵌めたことをまだ根にもっているのか?!

 

「フフフ、僕達を助けるためにあえて反故にしてきたのは分かっている。」

 

「ええ、十分にね。でもその件はすでに解決済。もうポルム君の憂いは一切ないわけだ。」

 

 祐斗と良太郎もまた素晴らしい笑顔!?

 

「本当にごめんなさい。私達の所為で大変な迷惑を。」

 

「いえいえ。」

 

「助けたい人がいるというのは素敵なことですよ。その目的はもう達成されたみたいですし。」

 

 ユウナがこちらを見る。

 

「安心してください。私達があいつにしっかりと責任を取らせます!!」

 

「ちょっ!?」

 

 いきなり何を言い出す・・・って。

 

『・・・・・・・・・。』

 

 うん。反論したくても、こちらの身内の女子達の視線が大変痛いです。

 

 有無は言わせないようだ。

 

「いや~同志。」

 

 匙と仁藤がやってくる。

 

「お前さ…本当にイッセーの同志だな。」

 

「本当だぜ・・・。」

 

 二人は素晴らしい笑みを後に・・・

 

『てめえ、とんでもないハーレム野郎だったんだな。この馬鹿野郎!!』

 

 ハーレム野郎って言いますか。

 

 あっ・・・でも確かにそうだわ。

 

「安心しな。俺達もしっかりと監督する。」

 

「逃がすことはしない。」

 

 ネロとヴァ―リまでもが俺の隣で賛同してる。

 

「・・・アーシア。もしかして、これは予知していた?」

 

「はい。あえて言いませんでしたけど。」

 

 アーシア。君って子は・・・。

 

「だって可哀想じゃないですか。」

 

『うん。』

 

「私もそう思います。」

 

 まっ・・・まどかさんまで!?

 

「あなたはこの子達を泣かせました。それだけで大変大きな罪です!!」

 

 まいったのう。

 

「お主達の覚悟は…本物だろうな、やれやれ・・・。」

 

 余は覚悟することにした。

 

「降参だ。」

 

 白旗を上げることに。

 

「お主達の思い、受け入れる。だが、余はすでに悪魔として永遠に近い寿命を得た。お主達と共にいるためには・・・。」

 

「その点は安心したまえ。」

 

 サーゼクス様達がやってきただと!?

 

「特例とは言わない。だが、今回の件を鎮めた恩恵として満場一致で君に贈られるものだ。」

 

 それはチェスの駒。

 

「…味な真似をしてくれる。」

 

 それが何か分からぬ余ではない。

 

 余は皆の手際の良さに呆れ果てることしかできなかった。

 

「・・・んん?そして、この裁判に我が同志の姿がないな。」

 

 同志とは・・・もちろんイッセーのことだ。

 

 ハーレムという意味でも同志となってしまったのだ。

 

 彼とは更に絆を深めたい。

 

 命を賭けるに値するほどのな。

 

 あいつはまだ・・・。

 

 その発言で皆が押し黙ったことで分かってしまった。

 

 どうもテンションがおかしいと思った。

 

 どこか・・・無理していたような・・・。

 

「…まだ目覚めていないのか?」

 

 余は拘束を自力で解く。

 

 その点に皆は何も驚いてはいない。その気になればこの程度の拘束など抜け出せる。

 

「案内してくれ。あと容体も。」

 

「・・・えっ?」

 

「あやつは余の恩人にもなる人だぞ。この世界で得た大切な友。その身を案じないわけがないだろうが!!」

 

 余は久々に怒鳴ってしまった。

 

「…そんなに凄い人なの?」

 

 ヒュミナはそんな余に問いかける。

 

「ああ。あやつこそ神にふさわしい。余がそうが思うほどの漢だ。」

 

 余はイッセーのもとに駆け寄る。

 

 イッセーは眠っていた。

 

「起きたのね。」

 

 その側にはデフォルメ化したクレア。

 

「・・・まあ、見ての通りだ。」

 

「うかつに干渉できない。」

 

 その傍にはデフォルメ化したドライグと人型になったブランカの姿。

 

 あいつらが外に出ているのにどうして・・・。

 

「この子・・・私達に負荷がかからないようにしていたのよ。」

 

「我らに何かあったら娘達に合わせる顔がないと・・・くっ・・・。」

 

 余は手を仰いだ。

 

 あれだけの力の負担を己一人で背負ったのか。

 

「この・・馬鹿者が・・・。」

 

「相棒・・・目を覚ましてくれ・・・お前こそ何かあったら悲しむものは多いのだぞ!!」

 

「・・・私達だってそうなのに!!」

 

「目を覚まして・・・。」

 

 彼の相棒である三人のドラゴンたちが嘆き、涙を流している。

 

「・・・・・・。」

 

 余もまたそうだ。

 

 あいつ、内に存在するゴジラと決着をつけるつもりなのだろうな。

 

 だが・・・悲しんでもいられない。

 

「症状は?」

 

 アーシアに問う。

 

「極度の消耗です。寿命も魂の力もかなり使ってしまって・・・。今はただ眠らせています。まだ精神世界でどうやら対話中みたいですけど。」

 

「なら・・・まずは仙術、仙術の使い手を集めて気を練るように手配してくれ。そして・・・。」

 

 余は考え込みながら色々と出していく。

 

「メディア!!力を貸してくれ。君の知識と宝具の力を借りたい。アルトリア、君のアヴァロンもだ!!」

 

『はっ・・・はい。』

 

 死なせない。

 

 そして、このまま眠らせん。

 

 お前のことを待っている者達は多いのだぞ。

 

「後・・・ベビー、そしてサイガ。お前達の血を取らせてくれ。それとヤマタ殿に連絡を!!霊薬の試作品、それを使うぞ!!!あれは摩耗した魂を癒す効果もあったはずだ。」

 

 余は皆に指示を出す。

 

「皆!!嘆くのはできることを全て終えた後だ!!余もできることをする。皆も力を貸してくれ!!」

 

 余達の戦いはまだこれからだった。

 

 

 

 そして・・・。

 

 

「・・・ふう。何とかなるものだな。」

 

 余は一息ついていた。

 

 できる限りの処置を施したのだ。あとは目を覚ますのを待つだけ。

 

「だが・・・アーシアですら分からぬとは・・・。」

 

「はい。流石にゴジラ相手では予知がしにくくて。でも分かっていることはあります。イッセーさんは必ず目を覚まします。」

 

 アーシアの予言。

 

「新たな幼馴染達が集まったら・・・。その中にイリナさんや弦太郎さん、新さんが入っています。」

 

「・・・そうか。そして、それが揃う日は近い。行方が分からぬ者達もいるが・・・な。」

 

 それはイッセー達が言っていた皆が知る限り最も古い馴染み。

 

余は予感していた。

 

 イッセーが目覚める時は近い。だが、そこには必ず波乱が待っていると。

 

「・・・皆に休息を進めんとな。あれだけの激闘。消耗も激しいはずだ。…本当にこの世界は退屈せんよ。まだまだ何かあるようだしな。」

 

 新たな戦いが近い。それに備えないといけない。

 

 

 

 そして、それは現在、地球に迫っていた。

 

 

SIDE ???

 

「ふっ…これがあればラグナロクが起こせる!!」

 

 そこに乗り込むは一人の魔神。

 

「世界を滅ぼそうだなんて、あなたも面白いことを考えますね。」

 

「ふっ…宇宙犯罪組織にそう言われるなどとは・・・。光栄だな。」

 

 魔神と共にいるのは宇宙犯罪組織の一員。

 

「ふん。だが・・・我らがいる理由は・・・。」

 

 その隣には破壊大帝の名を持つ、転生せし金属生命体がいる。

 

「元々我がいるのはそういう神話だからな。だが、成就するには悔しいがこちらの自前の戦力だけでは圧倒的に足りない。何しろラグナロクを起こすには邪魔な存在が多すぎる。」

 

 その神の意思に従うように宇宙を飛ぶそれは唸る。

 

「さあ…メガへクスよ!!その力でラグナロクを!!」

 

冥界最大の危機の後・・今度は地球最大の危機が迫っていた。

 

 

 




 次の章は地球の危機です。かなり大規模な戦闘になるかもしれません。

 目覚めぬイッセー。彼が目覚めることが戦いのカギだったりします。

 次…放課後ラグナロクーー第二次幼馴染大戦編を楽しみにしてください。

 


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第七章 放課後ラグナロク編
事件の始まりは友の再会とともに。


 大変お待たせしました。

 最新刊の発売に合わる形になって申し訳ない。

 最新話…一話だけですが投稿です。



 ここで一つ問題です。実はこの章でイッセー、ポルムに続く第三のとんでもないハーレム野郎が判明します。それが誰でしょうか?

 もう一つは、この話のツッコミどころは幾つあるかです。


 さあ、イッセーが眠っている状態でラグナロク・・・スタートです。 



 SIDE 誠

 

暗い夜道を歩いていた。

 

「今日も何もなかった。」

 

 おっと、名乗るのが遅れた。自分の名前は氷川 誠。

 

 まあ、どこにでもいるような平々凡々な高校二年生の男子だ。

 

 そんな自分が、今日も何も起きないまま自宅に帰ろうとしている。

 

 本来なら一日一回、何かしらの事件が起きて、自分はそれに遭遇するはずだったのだ。

 

 一週間前にバスジャックに巻き込まれて以来・・・何も起きていない。

 

 その前の日は飛び降り自殺しようとする現場に遭遇。

 

 その前の日はやくざの抗争。

 

 その前の日は銀行強盗。

 

 その前の日はカーチェイス。

 

 その前の日は誘拐・・・。

 

 といった具合に何かに遭遇する毎日を送っているのに、ここ一週間は何も起きないのだ。

 

 そんなのは生まれて初めてで、怖い。

 

 それを北条君に相談したら「それが当たり前だ、馬鹿者。」って、心底呆れられた。

 

でもそれが当たり前だったのに・・・。

 

 なんか嫌な予感がする。

 

 なんかこう・・・とんでもない何かに巻き込まれそうな。

 

「まあ、考えても仕方ないか。」

 

 今は考えてもわからないというのは確かだ。

 

 明日はどうなることやら。

 

 そう思ってアパートの前まで到着した時だった。

 

 それは目の前にいた。

 

「…もう…ダメか・・・。」

 

 それは巨大な人。いや、正確に言えば巨大な金属人間。

 

 それが倒れていたのだ。

 

「・・・・・・・。」

 

 さて、どうやら、一週間何もなかったのは、マジでここからとんでもない何かに巻き込まれるからだろうな。

 

 それを悟り、天を仰ぐ。

 

 久しぶりの事件だ。まずは状況の把握を・・・。

 

「・・・っ!?人間・・・。」

 

 その巨大な金属人間が右腕を変形させてこっちに向けてくる。

 

 それは巨大な大砲のようなものだった。

 

「おっと。こっちは通りすがりの・・・。」

 

 そういえば小さい頃、この目の前にいるような巨大な金属人間と会ったことあったけ。

 

 あれのおかげで、この世界には色々な奴がいるって知れた。そいつと友達に慣れて、人生の中の誇りだと思った。

 

 確か、目の前にいる奴とそっくり・・・。

 

 そっくり・・・。

 

「って!?」

 

 自分は目を疑った。

 

 間違うはずがない。こちらを警戒していたあいつは・・・。

 

「オプティマス・・・。」

 

「どうして、私の名前を・・・。」

 

「覚えていないか?ああ・・・そうか、かなり久し振りだもんな。」

 

 こっちは思わず、大砲に変形した手に触れる。

 

「誠・・・誠だ!!オプティマスプライム!!」

 

「・・・誠・・・ああ・・・そうか。誠・・・か。」

 

 オプティマスの目が光、こちらをスキャン。どうやらメモリーにいるこちらの顔を今の顔を照会し、自分だと理解してくれたようだ。

 

「やっと…やっと会えた・・・。あの時の・・・子供達に・・・。」

 

 そう言って彼は倒れる。

 

「私の・・・とも・・・だち・・・。」

 

 そう言い残して、気を失ってしまった。

 

「って!?」

 

 よく見れば全身ぼろぼろだった。金属の体のあちこちに穴が開いており、穴の内部ではショートが起こっている。

 

「どうして…こんな怪我を・・・。」

 

「…そいつを引き渡してもらおうか?」

 

 銃を手にした男達がそこにいた。

 

 見るからに…プロだ。

 

「・・・なんなんだ・・・あんたら。」

 

「そいつは悪い宇宙人なんだ。そいつを退治に・・・。」

 

「退治だと・・・。」

 

 それだけでわかってしまった。

 

 彼の怪我はこいつらの所為だと。

 

「オプティマスのこと…悪い宇宙人だと言ったな?」

 

「ああ。危険なんだ。彼らトランスフォーマ―は。だから消さないと・・・。」

 

 その言葉で自分は…キレてしまった。

 

「その発言…取り消せ。」

 

「取り消せって・・・。」

 

「今でも自分のことを友達と言ってくれる奴が悪い奴?そんなわけあるか!!」

 

 彼には命も救ってもらった。

 

 いろんなことを教えてくれた。災難続きの人生でも、立ち向かう道しるべを示してくれた。

 

 自分の…心の師ともいえる彼を悪い宇宙人と言われて、我慢ならなかった。

 

「・・・どうやら関係者のようだな。取り押さえろ。最悪撃ち殺してもかまわん。」

 

 男の指示で、次々と銃を手にした男たちが現れる。

 

 狙撃もいると仮定すると・・・まあ二十人ほどだろう。

 

「力づくでも話を聞かせてもらうぞ!!」

 

「ふん・・・プロ相手に素人が粋がるな!!」

 

 こうして、珍しく自分からその騒動へと殴り込みに行くこととなった。

 

 それが人生最大の波乱万丈な一週間の始まりだった。

 

 この一週間が自分の人生の大きな分岐点となる。

 

 保護者のじっちゃんとお猿さん師匠・・・貴方達から教えてもらった健康で頑丈な体を作るためのロングブレス健康法や自然と一体になるための瞑想…役に立つかな?

 

 

 

 SIDR オプティマス

 

 うう・・・早く起きなければ、彼を巻き込んでしまう。

 

 彼らはプロの軍人だ。それもあの国から執拗に追ってきて、こちらを仕留めようとするほどの。

 

 まだ、私のことを案じてくれる人達がいる。

 

 それだけでも、最後は救われた。

 

 だから…その救いだけは・・・。

 

「おい…起きろ。自己修復機能は働いているか?」

 

 何とか再起動した私が見たのは少し服がぼろぼろになった誠君と・・・。

 

「・・・うう・・・。」

 

 ぼろぼろで地面に倒れ伏せる私を追ってきた特殊部隊という理解不能の光景だった。

 

 あれ?心配したのに・・・。

 

「馬鹿…な。プロである我々が・・・。」

 

「こういっちゃなんだけどよ。こっちは年中修羅場なんだ。たかがアサルトライフルやハンドガン、ナイフやアンチマテリアルライフル程度、拳一つで十分だ。」

 

『・・・・・・。』

 

 まさに理解不能。

 

「おーい。大丈夫か?」

 

とても、信じられないことだが、どうやら誠君が一人、それも素手で倒したらしい。

 

 それが事実なら、凄まじさを通り越こしてバグじみた、可笑しい戦闘能力だ。

 

 人間どころか、我々トランスフォーマーの歴戦の勇士でもできない。

 

「君は一体・・・。」

 

 一体彼に何があったのか?

 

「で?あんたはトランスフォーマ―に恨みがあって、それを消そうとしたわけか。」

 

「なんでそれがわかる?」

 

「なんとなく。それを達成するために何かの思惑に乗ったということも何となく。」

 

「・・・・・・。」

 

 しかも、まるで心理学者のように相手の動機まで言い当てる。

 

 本当に何があった?

 

「だから一つ言わせてもらうぜ。彼がその恨みを買ったのか?それは彼自身が悪いのか?」

 

「・・・・・・。」

 

「あんたがしていることは…ただの八つ当たりだ。」

 

 リーダーである彼に誠君は断言する。その指摘が図星だったのだろう、何も言えずに口をパクパクさせている。

 

「しっかり反省してろ!!この馬鹿野郎!!」

 

 そして、渾身の力を込めた拳を顔面に叩き込み、その彼を吹っ飛ばす。壁に叩きつけられ、そのまま伸びてしまった。

 

 人間離れした素晴らしいパンチ力だ。

 

「さて・・・どうやら気が付いたか?」

 

「あっ・・・ああ。」

 

 一体彼に何があったのだろうか?

 

「久し振りの再会ということでいろいろと語り合いたいけど、まずはまあ・・・体を治すことからかな?ちょっとまって・・・。」

 

 彼はスマホを手に誰かに連絡を送る。

 

「あっ・・・進兄さん?ちょっと・・・。」

 

 何があったのか?これから何が起こるのかわからない。だが・・・微かだが、希望を持ち始めていた。

 

 私達の同志達を救うことができるかもしれないと。

 

「うん・・・よろしく。じゃあ、行こうか。ちょうど休める場所があってね。そこに案内するよ。」

 

 そして、一週間後、私の予感は的中することになる。

 

 そして、それは我々の故郷を救うきっかけとなる。

 

 

 

SIDE ???

 

 私は宇宙船に乗って追いかけていた。

 

「ボブ。あいつはどの星に向かおうとしているの?」

 

――――どうやらあの星だ。えっと地球と呼ばれる惑星・・・。

 

「地球ですって?」

 

 あいつが逃げようとしていたのは地球。

 

 そう、私が生まれ育った星。

 

――――君の星だったね。なかなか帰ろうとしなかった。

 

「・・・私はもう地球人じゃないから。」

 

 私にはもうあの星で生きている資格はない。だって・・・。

 

 私は己の手を見る。

 

「…とっとと、あいつを捕まえるわよ。」

 

――――わかった。

 

 私はこうして初めて地球に帰ることになる。

 

 そして、この地球という星が文明レベルが低い惑星なんて激しく間違っていると断言できるほどの魔境だと知ることとなる。

 

 

 

 

 SIDE オプティマス

 

「いや~助かったよ。」

 

「それで…今回はまた偉い案件に首を突っ込んだな。」

 

 案内されたのは警察署の地下にある変わった施設。

 

「そうだね。でも…見過ごせなかった。それだけは言える。」

 

 そこにいたのは一組の男女。

 

「霧子さんもすみません。」

 

「いっ、いえ。でもこういうのはロイミュードで慣れたつもりでしたが・・・。」

 

「まあ、神様もいるんだ。他にこういった存在がいてもおかしくないだろうさ。」

 

 この二人の名前は進ノ介と霧子というらしい。私の姿を見て、戸惑いつつも受け入れている。

 

 その上で私の修理をしてくれているのだ。

 

「この部分の配線を繋げればいいのか?」

 

「うん。それでいいはず。ふう・・・どう?」

 

「ありがとう。」

 

 私は頭を下げて感謝を二人に伝える。

 

「しかし…ロイミュードとは違って宇宙人とはね。」

 

「しかも、誠君の友達。」

 

「本当に再会できて良かった。でも…何があったの?」

 

 私は口を開く。

 

 

 

 元々我々はサイバトロン星にいた。だが、それが戦争によって荒廃し、我々は宇宙に散り散りになった。

 

 その中でこの星に辿り着き、我々は地球の乗り物に擬態することで密かに生活していた。

 

 だが、戦争を起こした相手が地球にやってきて戦闘になった。

 

 地球人達を守るために我々は戦った。

 

 だが、その戦いが終わったら、今度は我々を支援してくれた彼がこちらに襲い掛かってきた。

 

 次々と私の同志達が狩られ・・・私は一人ぼっちに・・・。

 

 

 

 

「・・・・・・さて。その組織の本部はどこ?殴り込みに行きたいから。」

 

 その話を聞いた誠君が肩を回しながら大変怒っていた。

 

「落ち着いてください。」

 

 そんな誠君の暴走をジャンプキックで鎮める霧子さん。うむ…大変優れた運動神経。

 

「そういう奴らの本部は大抵基地だろう。そんなところに単独で殴り込みに行くのか?」

 

「……それだけ怒っているということだけわかってくれ。今殴り込みに行くプランを一つ思いついたところだから。安心して、誰一人殺しはしないから。殺しはしないけど…組織が国か知らんが…ぶっ潰す。」

 

「冷静に、なおかつとんでもないことをするのがお前の怖いところだからな。剛の奴と違うようで変なところは似ていて困る。まあ、だが、確かに見過ごせないのも事実か・・・。」

 

「剛兄さんと似ているか・・・。なんか微妙な気分。」

 

 どうして、君の周りにいる人達は自分のことのように怒ってくれる?

 

「少なくとも、あんたは良い奴だ。それだけは見ていてわかる。動く時だって周りにぶつからないように注意深く動くだろ?しかもそれを当たり前のように・・・。」

 

 自分でも気付かなかった癖だ。

 

 人間達と一緒に居たから…自然と身に付いたことだ。

 

「だからこそ…信じる。何よりこいつの心の師であるというのもな。」

 

「・・・・・・・。」

 

 信じることをやめたはずだった。人間を信じてはいけない・・・と。

 

 だが・・・彼は私を信じてくれた。

 

 同じ人ですらない私に・・・。

 

「こっちも・・・な。一応人間以外の友達は居たんだ。二人ほど。もう二人とも会えないけど・・・。」

 

「あっ・・・。それってチェイス兄さんと・・・ハート・・・。」

 

 心当たりがあるのか誠が名を告げる。

 

 彼・・・進ノ助は語る。

 

 彼らはこの世界で生まれた金属生命体…ロイミュードと戦い全滅させた。

 

 だが、その中二人ほど友情で結ばれた者達もいたのだ。

 

 一人は同志。

 

 もう一人は最大の好敵手として。

 

 彼はそれを決して忘れないと誓ったらしい。

 

「だからこそ・・・お前とだって友達になれる。それを知ったんだ。こうやって・・・。」

 

 彼は手を差し伸べてくれた。

 

 私は人間達のように涙を流す機能はない。

 

 だが・・・もしあったのなら今泣いているのだろう。

 

 嬉しさのあまりに。

 

「あんたとは良い友達に慣れそうだ。」

 

「ああ・・・。こんな私だが、よろしく頼む。」

 

 この街に来て良かったと思う。少なくとも今私の心は救われた。

 

 そう思いながら、私は差し出された彼の手を取る。それは握手。

 

 人間達の絆を結ぶための儀式。

 

 私は再びその手を取る。この人達を信じてみようと思いながら。

 

「さて…作戦会議と言いたいけど、そっちは仕事だったよね。」

 

「ああ。落ち着いたらまた来る。その際に作戦会議をしよう。」

 

「はあ…中々新婚生活を楽しませんね。」

 

「本当にごめん。騒動に巻き込んでしまって。」

 

「それこそ今更だ。」

 

 この二人は夫婦だったのか。それは邪魔をしてしまった。

 

「すまない。私の所為で・・・。」

 

「ああいや、お前さんに謝ってもらっても困る。」

 

 この星はまだ、守る価値がある。そう思えるよ。

 

 

 

 SIDE  ???

 

 私は地球にこっそりと降り立ち、いろいろとやっていた。はあ…この空気、すごく懐かしい。

 

――――やはり故郷というのはいいものではないのか?

 

「ええ。そう思えてしまうのが癪だし、そんなに長く滞在できないけど。」

 

 あくまでもあれを抑えるのが今回の仕事。

 

 終わったら…さっさと帰らないといけない。

 

「行くわよ。あれがどうして地球に・・・。」

 

 私が追っているのはかつて数々の星を同化しようとした存在の生き残り。

 

 本来なら本体が破壊され、動くはずなかった再び動き出した。それも三か月前から。

 

 それがあちこちで暴走。それが地球に・・・。

 

「この星は…私が守る。」

 

 私の故郷を・・・破壊させはしない。

 

―――――――――準備は終わった。

 

「ええ。必要な部品は何とかかき集めた。」

 

 この地球の紙幣・・・。まだ使えたのが幸いだった。

 

 閉店寸前のPCショップに駆け込み、その紙幣をふんだんに使って買いあさった。

 

 ケチっても仕方ない。

 

 あいつはまだ地球に落下して、そのまま動かない。

 

 その間に・・・。

 

「ゾーン展開。除外対象を・・・って!?」

 

 だが、その前に相手が予想外のことをしてきた。

 

 そのあちらがゾーンを展開してきたのだ。

 

「不味い!!転送ポットの準備を!!」

 

――――あちらが先にゾーンを展開してくるとは・・・。・

 

「驚くのは後!!どうしてゾーンを・・・。」

 

 私はボブに指示を飛ばし、あのゾーン内に転送する準備を進める。

 

 

 SIDE ???

 

スキャニング完了。

 

 魔術的、生体反応、エネルギー数値、及び因果律的観点より脅威度認定。

 

 排除を開始する。

 

 ゾーン展開。

 

 対象者四体の生体反応。有機体が三体と金属生命体が一体。あと未知のエネルギー反応体を隔離。

 

 これより行動を開始する。

 

 

 

SIDE ポルム

 

 さて・・・どうやらことは起きたらしい。

 

「空間隔離型の未知の結界を確認。」

 

 ガブさんがモニターに出してくれる。

 

「・・・ゾーンか。」

 

 その構成を見て悟る。

 

「・・・珍しいな。なんでこの世界で?」

 

 サムスも知っていたか。あれはあちらの世界の技術だ。

 

 星をまたぐ犯罪者、それを捕まえる際、民間や何も知らない人達の被害を無くすためにその地域を丸ごとコピーする形で隔離する空間を作る。

 

 それがゾーンだ。あの内部で戦闘しても、本来の世界は何も影響はない。

 

 ある星系で使われており、被害を出さない点では便利なので、傭兵や宇宙刑事達も必要な場合使うこともたまにある。

 

「ゼーベス星人達が飛んできた時点でもしかして…と思っていたがこれで確信したよ。あの空の向こうにお前達の星系があるか・・・。」

 

「・・・私からしたら、あいつらと共に暮らすことが未だ信じられないが・・・。」

 

「我々からしてもそうですよ。」

 

 ミカさんが隣にやってくる。

 

「サムス様ほど恐ろしい相手はいなかったですから。」

 

 宇宙海賊達からしたら、サムスというのはもはや歩く災害扱いだったらしい。

 

 数多の種類の強力なビームにミサイルやボム…そしてパワーボムというとんでもない破壊力を持つ火器。それに厚い装甲に超高速でなおかつ触れた相手を粉々に砕くダッシュを始め、ふざけるなと言いたいほどの数々の特殊能力。

 

 それにサムス自身の強さも合わさって、無双に近い状態。

 

「…本当に何があるかわからんものだ。まあ、あんたらは信頼しているから。」

 

「わっ・・・我々は慣れるにまだ時間がかかりますが・・・。」

 

 もはやサムスという存在そのものにトラウマが・・・。

 

「ママ?」

 

 そこにサムスをママと呼ぶ存在が現れる。緑のパジャマを来た幼女だ。

 

 髪は緑。目は赤い。

 

「・・・あ~・・・いやな。」

 

 寝ぼけた彼女を見てサムスはなんかやりにくそうだ。

 

「ママと呼ばれることに慣れていないか。」

 

「当り前だ!!ベビーが人間に変身できるようになっただけでも卒倒したのだぞ?」

 

 はははは、驚かせることに成功したのだけど、これはやりすぎたか。アギトの加護に感謝しないと。

 

 あいつが驚きのあまりに卒倒するなんて初めて見たぞ。

 

 ちなみにベビーは進化の影響か、知性まで上がった。

 

「だって、人間でいう血の繋がりもあるし・・・。」

 

「うっ・・・。」

 

 彼女の指摘は鋭い。サムスはいろいろあって、ベビーと血の繋がりもある。

 

 彼女の命を救ったメトロイドワクチンと言う名の。

 

「むう~お姉ちゃん・・・どうしたの?」

 

 その側には更に小さな緑髪の幼女。

 

「何でもないみたい。」

 

 ちなみにもう片方はアーシアと契約したほうだ。ベビーのことを姉と慕っている。

 

 まだ彼女は一段階目の脱皮はしていない。

 

「…メトロイドが人間になるなんて、とんでもない星だ。」

 

 本当にそう思う。ちなみに変身というより進化と言った方がいい。アギトの力による影響として・・・。

 

 そのもっとも足る例が・・・。

 

「二人とも・・・なにしているの?」

 

 一人の寝ぼけた幼い少年だった。

 

「ラッセー君・・・いや、何かあったみたいだから。」

 

「う~ん、とりあえずポルムさんがいるならなんとかなりそうだよ。こっちは寝た方がいい。邪魔にしちゃ駄目だよ。」

 

「そうなの?」

 

「ドラゴンの勘だけど、じゃあ二人を連れて行くよ。」

 

「あっ・・・ああ・・・。」

 

『おやすみ~・・・。』

 

 先ほどの会話に有った通り彼は・・・あのラッセーだ。彼はある意味とんでもない存在。

 

 先ほどの検査で知ったのだが、変異した原因がゴジラとキングギドラ。その二つの力を取り込み、アーシアの助力でそれを己の物にしてしまったのだ。

 

 それを知った他の皆の反応を察してほしい。

 

 こっちだって震えが止まらなかったよ。あのゴジラに全滅寸前まで追い込まれた身としては。この子・・・とんでもない子だったのだと。

 

 確かにゴジラの力で変異した奴はいる。だが・・・このような形は初めてだ。この世界のドラゴンの生命力とアギト・・・・いやアーシアの力はホントに恐ろしい。

 

あのゴジラとよりにもよってそれと同等のキングギドラの力を取り込んだ前代未聞のドラゴン。潜在能力はこちらとて計り知れない。

 

 ドライクやアルビオンの見立ては間違っていなかった。

 

 その潜在能力はまさに二天竜、いや龍神クラスだと。

 

 皆の意見は一致している。

 

 しっかり教育していこうと。二天龍の娘達と同等以上に!!

 

 下手したらゴジラすら超える怪物になりかねない。

 

 だが、幸いなことに凄く良い子だ。良い年少組達のお兄ちゃんになっているのだ。

 

 ちなみに同じくらいの歳のミリキャスと冥界の合宿の際に仲良くなった。むしろ人間の姿になったのは彼と遊びたいからという単純かつ微笑ましい理由がある。

 

 ただ・・・怖いことに幼さないのに既にハーレム状態。

 

 こいつ…既に勝ち組だ。もっともそのハーレムにちょっかいをかけようものなら余も死を覚悟しないといけないが。

 

 親達が非常に怖いので・・・。

 

「あの子の教育は私も手伝う。」

 

「頼む。もはやメトロイドという種族もドラゴン扱いだし。まあ、成体はまさにそれっぽいから問題はないか。クイーンが二体・・・進化も著しいし。」

 

 確実にこの世界でメトロイドは繁殖する。だが、前よりも共存しやすい形で。

 

 メトロイドとの共存。その研究も進んでいる。

 

「良い方向に全て動いている。イッセーがいろいろと呼びこんでくれたおかげで。」

 

 余はそう呟きながら皆に指示を出す。

 

「話を戻すが、隣町に誰か派遣しようと思う。志願者はいるか?」

 

 そこで名乗り出たのは彼らであった。

 

「行かせてくれ。情報通りならあそこには・・・。」

 

 現在、唯一行方が判明しているイッセーの幼馴染みがいる。

 

「頼む!!」

 

「お願いするわ!!」

 

 そこに志願したのはある意味予想通りの連中だった。

 

「・・・弦太郎、イリナ・・・新。」

 

 馴染みの危機に立ち上がった三人。

 

「わかった。念のため・・・渡殿、タマモも頼んでいいか?」

 

 情報通で、交渉にも長けた彼と、多彩な術によるサポートができる彼女を加える。

 

「頼む。こっちもゾーンの解析ができ次第・・・。」

 

「私も行こう。」

 

「…頼む。そっちの関係者が来ている可能性が高そうだ。」

 

 サムスも加えれば、相手が龍王クラスでも蹴散らせそうだ。二天龍クラス相手でも上手く立ち回れば互角以上に持ち込める。

 

 サムスにも向ってもらう形で事態の収束を図る。後は…ここから何が起きるかだ。まだ情報が足りない。それを集めないと。

 

「はあ…近く何かが起こると思っていたけど…よりにもよってこのタイミングか。」

 

 最近余は頭が痛い。

 

 その理由は上の部屋にある。

 

 ちなみにここはイッセー宅の地下の指令センター。皆でノリとロマンを集めまくって作った結果、無駄に広く、無駄に高性能な場所だ。

 

 だが、これが今凄く機能している。

 

 この場所を超えるセンターはおそらくこの世界のどこにもない。そんなオーバースペックな場所。

 

 それにより、地球で最も安全な場所として、ある会談が行われようとしていたのだ。

 

 イッセー宅で。

 

 それは日本神話勢力と北方神話勢力の会談。ゴジラの件の疲れや傷を癒しつつそのセッティングで大わらわだったのだが、そこで二つの問題が発生したのだ。

 

 一つは・・・。

 

 グレゴリからやってきた護衛としてとうとうあの方が来たこと。

 

『・・・・・・・・。』

 

 バラキエルさん。グレゴリの幹部にして、朱乃殿、そしてハルトの実の父親。

 

 気まずい…とにかく気まずいのだ。過去に何かあったのかはある程度聞いている、ハルト殿からある協力を依頼されているので、その際に事情は聴いたのだ。

 

「あっ・・・あの・・・お二人とも・・・。」

 

『・・・・・・・。』

 

 レイちゃんが必死に仲を取り持とうとするけど…二人は無言。

 

 大変気まずい。

 

 そして、もう一つの問題は突然やってきた。

 

―――ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・。

 

「・・・・・・。」

 

 なんとついさっきだけどカオスフリゲードの首領、ほむらが乗り込んできたのだ。

 

 なんか凄く怖い迫力を伴って。

 

 はっきり言ってガチで怖い。

 

 あのゴジラですら敬語になるほどの迫力だ。

 

『ガタガタガタガタ方・・・。』

 

 知り合いであるまどか殿ですら震えている。

 

 そして、その怒気と殺気を全て・・・。

 

「覚悟は・・・していたよ。」

 

 翔一殿に向けられていたのだ。

 

「あなたとはじっくりと話し合いたいと思っていたの。」

 

「そうか。」

 

「その前にあなたの息子さんに会いたい。おっぱいというふざけた奇跡を巻き起こす兵藤 一誠に!!」

 

「あの・・・息子に何か用なの?場合によっては・・・。」

 

 だが、そのほむらの迫力すら更に上回る恐ろしい何かが発せられる。

 

 それは・・・まどかさんだ。

 

「あっ・・・いっ、いやね。ただ話をしてみたいと思っただけなの。」

 

 それに皆が震えあがる。余だって震えておる。

 

 いや、母は強し。上には上がいるものだな、

 

「はあ…まずはこれを渡すわ。結婚と出産祝い、そして・・・。」

 

 ほむらはあるネックレスを渡す。

 

「ごめん…結果的にあなたを幸せにできなかった。悔しいけど今の方が幸せそう。」

 

「もういいよ、こうして話せているだけでも。」

 

 いや、まどかさんもまた無敵と言える。

 

 簡単に許したのだ。

 

「ってまどか・・・いいの?!」

 

「あいつはお前の力を奪って・・・。」

 

「その程度・・・いいんだ。逆にいろいろと心配も駆けちゃったし。ほむらちゃんなりに私のことを考えてくれただけだから。」

 

「まどか・・・。」

 

 本当に敵わない。

 

「でもごめん。まだ一誠は・・・。」

 

「・・・そう。まだ回復していないのね。残念だけど私の力じゃ・・・あのゴジラにまで干渉は無理よ。」

 

 悲しそうな顔をするまどかの肩を叩き、慰めるほむら殿。

 

「お見舞いだけさせて。」

 

『!?』

 

「いいよ。僕が許可しよう。」

 

 その許可を出したのは翔一さんだ。

 

「・・・やけにあっさりね。借りでも作りたいの?」

 

「いや、ただ、大切なまどかの子供に何かをするという人じゃないと確信できただけだ。」

 

「へえ・・・あなたも私を試しているというわけか。」

 

 二人の視線がぶつかり合って・・・。

 

「なるほど・・・。」

 

 少し笑った後に、ほむら殿はまどか殿に連れられて部屋で眠ったままの一誠にもとにやってくる。

 

「…一週間、眠りっぱなしよ。」

 

「あれだけの力を引き出したから、仕方もないわ、」

 

 眠ったままのイッセー。その側には二人の龍がいた。

 

「お前は・・・。」

 

「何しに来た?」

 

「安心してくれ。彼女は客人だ。」

 

 翔一殿の言葉にドライグとクレアは下がる。

 

「…この子がこの世界の新しい神。」

 

 ほむら殿は感慨深くイッセーの顔を見ていた。

 

「まだ少年なのね。でも・・・うん。どことなくまどかに似ている。そうか・・・。」

 

 軽く眠っているイッセーの頬に手を当てる。

 

「決めたわ。私、この子が目を覚めるまでこの家に居続ける。」

 

 そして、とんでもないことを言い出したのだ。

 

 

 

 

SIDE イッセー

 

 ずっと俺は眠っている。

 

「はあ…腹減った。」

 

 おなかもすいているのに起きられないのだ。

 

「まだ魂が回復しきっていない。もう少し待つがいい。安心しろ、体は衰弱してない。食料の代わりに気を集めている。」

 

 そんな中、夢の中で俺はある存在と対話していた。

 

「しかし・・・あんたみたいな凄い存在がどうして?」

 

「それだけの存在になっているのだ。兵藤 一誠よ。」

 

 それはグレートレッド。話を聞くに・・・世界最強の存在らしい。

 

 それに違わぬとんでもない力を持っているので間違いないだろう。俺でも単独では勝てない。

 

「だが、単独は無理でも奴らが全員揃えば敵わぬ。それだけの強い存在をお主は集めまくっているのだぞ?」

 

「と言ってもな~・・・。」

 

 引き寄せたくても引き寄せているわけじゃない。勝手にやってくるというのが多い。まあ、友達も多いけど。

 

 ついでに心読まれる程度は驚いていない、ここは俺の頭の中だし。

 

「しかも、それが全てお主の力となる。お前は単独の力では測れぬこの世で最も恐ろしい力を持つ存在だぞ。まったく本当にどんな器をしておるのだ?」

 

「いや~でも、仲間、友達は多い方が良いかと。だってほら?俺一人で出来ることなんてそんなに多くない。しいて言うなら皆のために、そして己のために神になることくらいだし。」

 

「そんなに多くないことの一つに・・・お前が出来ることとしてそれをあげるか・・・。」

 

 その発言にしばし無言となり・・・。

 

「はーはははははははははははは!!」

 

 グレートレットは笑った。それはもう心底愉快に。

 

「良く分かった。お前に何故力・・・いや、人々の夢が集まってくるのか。」

 

 夢?

 

「我は夢幻を司るもの、そのうちの夢がお前の周りに集まって輝いておる。」

 

「夢か…確かに皆したい事があって、それに精一杯だし。」

 

 振り返ればそうだった。皆、各々の夢、目標を持ち、それに向かってまっすぐだ。まだ持っていない奴だって、それを見つけようといろいろとやっている。

 

「そして、我もその例外ではなかったということだ。」

 

 へっ?

 

「我もお前のでかい夢に惹かれたということだ。お前という存在の本質が見えてきた気がする。だが気を付けるがいい・・・。」

 

 グレートレッドは告げる。

 

「お前は味方も引き寄せるが敵も、災いも引き寄せる。今後も戦いの日々は続くだろうよ。」

 

 確か言っていたな。ドラゴンは力あるものを引き寄せる。それって良いことばかりじゃ・・・ないよな。

 

 俺に惹かれていろいろと集まってくるわけか。

 

「それなら、戦うだけだ。」

 

 俺はそれを恐れない。ある今更だし。

 

「皆のためにそして自分の夢のために。まあ、どっかで悪さしたり、トラブルを起こすならこっちがしっかり懲らしめてやればいいだけだ。」

 

「・・・懲らしめる?」

 

「そういう意味では都合がいい。どんどんきやがれ。」

 

「…都合がいいとな・・・ふふ・・・。どんどんきやがれと?」

 

 その発言にまたグレートレッドは笑う。

 

「ふははははははっはははははははーこれは傑作だ!!呪いにも似た宿命を、まさか都合がいいというか!!ふはははははははははははははははっ!!」

 

 心底愉快そうに。

 

「よかろう。我もお前が神になることを推薦してやろう。」

 

「へっ!?」

 

 なんかとんでもない言葉を聞きましたけど?

 

「お前という存在がそれだけ気に入ったというわけだ。フフフ…お前がいると本当に面白い世の中になりそうだ。ただ・・・我の願いを叶えてくれたらだが?」

 

「?」

 

 何だろう?最強の存在が頼むこと?

 

「何…世界を夢でいっぱいにしてほしいだけのことだ。もちろん絶望も隣り合わせだが。」

 

  夢でいっぱいか・・・。確かに夢とそれを絶たれた時の絶望は隣り合わせと言える。

 

 でもな・・・。

 

「何当たり前のことを言っている?」

 

 そんな世界にしたいと思っている。

 

「夢は希望と絶望が隣り合わせなのは仕方ないぜ。だが・・・それでも希望でもある。それがあふれる世界なら、それだけの数の希望も生まれる。絶望が生まれたなら…コッチガ何とかしてやる。それだけだ。」

 

「・・・・・・・・。」

 

 今度はグレートレッドが言葉を失っていた。どうやら驚いていたようだ。

 

「驚いた。夢の本質を見抜いた上でそう答えるとは・・・。なら…受け取るがいい。」

 

 そういってグレートレッドの体から光が発せられ、それが赤い宝石となって俺の手に置かれた。

 

「・・・お前を救った存在は、規格外の欲望が魂となり、それに我の力と他のアギトの力も加えて生まれた存在。これはその力を使いこなすためのカギだ。あれはあいつの封印のカギも兼ねている。」

 

「あいつねえ・・・。」

 

 俺はあえて見て見ぬふりしていた光景を見る。

 

「どうしようか・・・あいつ。」

 

 それは隅っこで縮こまってるゴジラさんだった。

 

「おっぱいこわいおっぱいこわいおっぱいこわいおっぱいこわいおっぱいこわいおっぱいこわい・・・。」

 

 というとんでもないセリフを連発しながら・・・。

 

「・・・だが、あいつをおっぱいで本当に撃退するとは。世の中は不思議なことがある。」

 

「あんたから見てもやっぱり恐ろしいか?」

 

「ああ・・・我が夢幻なら、あやつは間違いなく破壊と怒りだ。我すらまともにぶつかったら勝てぬ。その相手を我も少し力を貸したとはいえ・・・。」

 

「あの・・・おっぱいの素晴らしさはまだ語り足りないけど・・・。」

 

「いい!!もう語らなくていい!!」

 

 おっぱいドラゴンの奴にゴジラは完璧に参っていた。

 

「・・・おっぱいで倒すとはのう・・・。」

 

 グレートレッドさんは感慨深くその光景を見る。

 

「ふう・・・まいったな。逆にトラウマになっちゃった。」

 

 こっちに来るおっぱいドラゴン。

 

「ああ…だが、お前おかげで助かった。」

 

「いいよ、父さん。」

 

 ・・・・・・・。

 

 はい?

 

今なんと言いました?!

 

「間違っているかな?だって父さんの欲望から生まれたんだよ?」

 

「・・・・・・・。」

 

 固まっている俺。

 

 この歳で父親・・・だと!?

 

「ぐはははははははは・・・だっ・・・駄目だ。面白すぎる。」

 

 笑い転げる世界最強。

 

「はあ…まあ好きに呼んでくれ。」

 

 受け入れるしか・・・ないのか?なんか釈然としないが、間違っているとも思えん。確かにお前とは同志だが・・・。

 

「あいよ。」

 

「父親か・・・。」

 

 その言葉にゴジラもまた反応を示す。

 

「んん?どうした?」

 

「フン…なんでもない。」

 

 そういってそっぽを向く。

 

「そうかい。だが…まあ、これからよろしく頼むわ。」

 

 そんなあいつにも声をかけておくのを忘れない。

 

「・・・怒っていないのか?」

 

「今更怒っても仕方ねえだろ?お前さんがやらかしたことは全て何とかしたし。」

 

「・・・・・・そうか。」

 

 そういってゴジラは無言になる。

 

 これ以上は話しかけない方がいいか?

 

 さて、なるべく早く眼を覚まさないと・・・。

 

「おい・・・。」

 

 だが、そこで今度はゴジラの方から声をかけられる。

 

「受け取れ。」

 

 投げ渡されたのは青い炎を発する球体。

 

 これはゴジラの焔?

 

「それを取り込め。そうすれば俺の力に対する順応も早くなる。早く目覚めるだろうよ。」

 

 あらら・・・。

 

 グレートレッドが面白そうにその光景を見て問う。

 

「ほう・・・お前なりの誠意ということか?」

 

「勘違いするな。俺は破壊しかできない。今回も怒りで宿主の大切な何かを破壊するところだった。それを防ぐための最低限の力だ。」

 

「・・・ありがとよ。」

 

 俺はそれを中に入れる。

 

「それと、お前さんは破壊しかできないというのは違うと思うぜ?」

 

「?」

 

 そして、あえてお返しをしてやる。

 

「だってさ、あんた誰かの親だったんだろ?」

 

「!?」

 

 おっ、ゴジラが驚いた。

 

 案外俺の直感も当たるもんだ。

 

「破壊しかできないやつが、誰かの親になんて成れないって。まあ・・・そんだけ。」

 

「・・・・・・ふん。まったく。俺は寝る。」

 

 反論出来ずゴジラはふて寝を決め込んだようだ。

 

「ほう・・・だったら、お前さんとも語らおうかね?」

 

 そんなゴジラにグレートレッドが話しかけてくる。

 

「お前が俺と?それの何が楽しい?」

 

「なあに・・・案外こっちも暇でな。そっちも寝るというのだから暇だろ?我と互角の存在はいなくてな。良い機会だからいろいろと話をしたい。」

 

「フン。気が向いたらな。」

 

 なんか・・・俺の夢の中は凄いことになっているよな?

 

「まあいつかお前も外に出れるようにしてやる。それまで待ってくれ。」

 

「・・・正気か?」

 

 何言ってやがる。俺は正気だ。そして至って大真面目だ。

 

 どうやら案外悪い奴じゃないと分かっただけでもよしだし。

 

「それにお前、サバイブのカードを作っただろ?その際に契約もしたんだぞ?」

 

 俺の手に現れるのは…ゴジラのカード。

 

 多分・・・最強の切り札になる。生み出してくれた三枚のサバイブと共に。

 

「まだ使いこなせんが、これを使えるようになればお前も外に出してやる。そんなに時間をかけるつもりもないし。まあ、ゆっくり待ってくれ。」

 

「・・・呆れるほどお人好しだなお前は・・・まったく。」

 

 最も力がデカすぎて順応するのが大変だけど。

 

 修行・・・しっかりとしないと。まだまだ鍛え足りないみたいだ。

 

「ついでに我のカードはないか?」

 

「えっ?」

 

「父様。私のも・・・。」

 

 追加される二枚のカード。それはもちろん契約のカードだ。

 

「もっとも、今は使えん。時が来たら使えるようになる。我ら三龍神の力はな。」

 

 俺・・・更にとんでもないことになっていないか?

 

「やっぱりおっぱいのことも語りたい・・・。」

 

「頼むからお前だけは止めてくれ!!!ああ・・・おっぱいこわい・・・。」

 

 俺の中がどんどん愉快なことになっていく。

 

 相棒達が戻ってきたらどんなことになるやら。

 

 …せっかくだし瞑想しておこう。

 

 

 

 

SIDE 誠

 

 自分はある機械の鎧を着ていた。

 

 それを着て、警察官として、そして一人の人間として自分は戦っていた。

 

 不可能犯罪を引き起こす、アンノウンと呼ばれる存在と。

 

 隣にはアギトとギルスがいた。

 

 そこで彼は本当の強さというものを知った。

 

 アギトでもなくても、人間としての。

 

 その強さは・・・。

 

 

「・・・んん?」

 

 走馬灯のようなものを見て自分は目を覚ます。

 

 隣にオプティマスがいる。どうやらうたた寝していたらしい。

 

「疲れているのだろう。もう少し寝ていてもよかったぞ。」

 

「ああ・・・。」

 

 いつも見ている夢だ。

 

「・・・あれってなんだろう。」

 

 あの夢を見た時からだ。こちらにありえない何かが入り込んだのは。

 

 オプティマス達と幼い頃に出会ってから見るようになった謎の夢。

 

 それがきっかけで、少しずつ誰かの経験値が入ってくるのだ。

 

「どうした?」

 

「ああ・・・いや・・・なんというか・・・。」

 

「よかったら話してみたらどうだ?」

 

 だが、それを話して信じてもらえるかどうか・・・・。

 

 まあ、試しに話してみた。

 

 そしたら意外な回答が出てきた。

 

「転生・・・かもしれない。」

 

 オプティマスの口から出てきた転生という言葉。

 

「我々トランスフォーマ―にも極まれに起こることだ。我々の魂・・・スパークの力によってね。君達の転生とは少し違うが。」

 

 トランスフォーマーに転生の概念があるなんて意外だ・・・。なんかこう・・・こてこてのSFって感じがしたのに・・・。

 

「それで自分が誰かの生まれ変わりだと?」

 

「もしかしたらの話だ。だが、君の場合はその可能性がある。」

 

 転生・・・ねえ。もしそうだとしたら、自分の前世って相当戦っている。それこそあり得ないほどの強敵と。

 

「人間というのは不思議だな。もしかしたらまだこの星には未知の何かが・・・。」

 

「いや、それはこっちのセリフだって。そっちにも転生という概念があることにびっくりだ。」

 

 こうやって語らっていくのも久し振りだ。

 

 向こうの転生は蘇生にも近い。大抵転生したらより強力になるとも。

 

「むしろ、こちらとしてはその歳では異常といえる戦闘力と洞察力を持つ理由になる。そうか・・・転生か。」

 

 …いったい誰の転生かな?自分って・・・。

 

 そう考えていた時だった。

 

 突然・・・それは起きた。

 

『!?』

 

 何かが起きた。恐らく前世で積み重ねた経験がそれを告げる。

 

「…空間異常?いったいこれは・・・。」

 

 オプティマスも気付いたようだ。

 

「何かわかる?」

 

「…空間隔離?まさか・・・我々はどうやら閉じ込められた。」

 

「…本当に凄まじいな、今回の事件って。」

 

 これまで数々の事件に巻き込まれてきたけど、まさかここにきて更に訳の分からない事態に遭遇するとは。

 

「どうする?閉じ込めたってことは…こっちに対して何かしようとする人達だろ?どんな用で・・・。」

 

「それは私もわからない。だが、何かが・・・。」

 

「・・・脅威度確認。対象二名。片方・・・この星の原住生命体、前回のデータあり。もう片方…過去のアーカイブ参照・・・。機械生命体、擬態能力を持つトランスフォーマーと確認。」

 

 それは突然現れていた。

 

「・・・なっ・・・なななな・・・。」

 

 そいつの姿に俺は凄く見覚えがあった。

 

 一年前、それはこっちを襲撃してきたからだ。

 

「なんでメガへクスがここにいる?」

 

 その名はメガへクス。詳しいことは後で進兄さんから聞いたのだけど、遠い宇宙から全宇宙を同化させようとしていた機械生命体らしい。

 

「あの事件に君も巻き込まれていたのか?検索したが確かこの近辺で・・・。」

 

 オプティマスも過去のデータを参照したのだろう。

 

 かつて地球を襲撃してきた奴の。

 

 でも確かあいつは、進兄さんが確か・・・神様(?)とかいう謎の協力者と一緒に本体を破壊したから何とかなったはずじゃ・・・。

 

「排除…排除。」

 

 メガへクスの手から放たれる光の弾。それをかわそうとするが早くてかわし切れなく・・・

 

 それを庇ってくれたのはオプティマスだった。その腕の装甲で受け止めてくれたのだ。

 

 その隙に、もう片方の腕を大砲に変形させてうち放つ。

 

 それを受けて吹っ飛ぶメガへクス。

 

「ここから出るぞ!!」

 

「意義なし!!」

 

 エネルギー弾を受けて傷一つなく立ち上がるメガへクスを見ながらこちらは逃げる。

 

「排除…排除・・・。」

 

 秘密基地、ドライブビットから逃げたこちらの後をワープしながら追ってきたメガへクスの手から光の弾が放たれようとして・・・。それが横から飛んできた銃声に阻まれる。

 

「・・・まさか、またこいつと戦うことになるなんてな!!」

 

 進兄さんだ。あのメガへクス本体と戦った経験がある。だが、最大の問題がある。

 

 進兄さんは今、ドライブに変身できない。あいつに生身で戦うのは・・・。

 

「…対象者確認。排除を開始する。」

 

 両腕を刃に変形させたメガへクス。

 

「ちぃ・・・。」

 

 それに対抗するのはなんとオプティマス、もう片方の手から両刃剣を展開させて攻撃を受け止めたのだ。

 

「どうやらまともに戦えるのは私だけらしいな。」

 

 目が光る。

 

「・・・脅威度、高。」

 

 メガへクスもその脅威の認識を改め、剣をはじき攻撃をしようとするが・・・。

 

「甘い!!」

 

 彼はそれを軽く振り払い、メガへクスを吹っ飛ばす。

 

 その際にもう片方の大砲からエネルギー砲弾を撃ち込むのも忘れず。

 

 爆発とともに吹っ飛ぶメガへクス。体のあちこちが焦げている。

 

「存外頑丈だな。だが・・・。」

 

 体格差もあり、メガへクスを圧倒するオプティマス。

 

「…強い。」

 

「いや…確かに。」

 

 メガへクスの戦闘力は極めて高い。それこそ歴代の悪の組織の最強怪人クラスは確実。

 

 だが、それをオプティマスは単独で圧倒。

 

「オプティマスって…こんなに強かったの!?」

 

「・・・認定改定・・・脅威度 極高。」

 

 二倍以上の体格差からくるパワーで圧倒され、両腕の刃も粉々に砕け散り、胸部に大きな切り傷が生まれる。

 

「アームブレイド、及び胸部装甲破損。修復開始。」

 

 だが、再生機能があるらしく、すぐにその体が修復されていく。

 

「だったら、それが間に合わないくらいに・・・。」

 

 再び攻撃をしかけようとするが・・・。

 

「シールド展開。」

 

 それをメガへクスの周りに展開された何かが受け止めていた。透明な何かに。

 

「戦闘モードをジェノサイドに移行。加速装置、イグニッション。」

 

 その言葉とともにメガへクスの姿が消える。

 

「ぬっ!?」

 

 まるで何が起きているのかわからない。それほどの動き。

 

 だが、それに見覚えがあった。いうなれば重加速を受けた時に近い。だが、今回は相手が加速しているだけなのだろう。

 

「・・・・・・。」

 

全身のあちこちが傷つきながらオプティマスは冷静だった。

 

「・・・そこだ!!」

 

 なんと撃ち落としたのだ。

 

 後ろから攻撃してこようとしたメガへクスを。

 

「すげえな。あれは相当の数の死線を潜り抜けている。」

 

「うん・・・。」

 

 星一つ規模の大戦を生き延びたのは伊達ではない。

 

 そういえば、総司令官と名乗ったことがあるけど・・・。

 

「・・・・・・。」

 

 もしかして、オプティマスってすごく偉い人なんじゃ。あの星で英雄と呼ばれてもおかしくないほどの。

 

「ぎぎぎ・・・。」

 

 あちこち破損しながら立ち上がってくるメガへクス。それに向けてトドメを指そうとするオプティマス。

 

「・・・戦術変更。Fire!!」

 

 だが、それは突然起きた。

 

 それは上空から放たれた一閃、

 

 それがオプティマスを貫いたのだ。

 

「がっ・・・。」

 

「金属細胞破壊砲・・・着弾確認。」

 

「ぐお・・・おおお・・・。」

 

 着弾した個所から崩壊していくオプティマスの体。放ったのはもう一体のメガへクス。

 

 そう…メガへクスは二体いたのだ。

 

「オプティマス!!」

 

「引き続き排除対象を・・・。」

 

 二体がこっちに迫ろうとした時・・・。

 

―――させると思ったか!!

 

 という声とともに道路を突き破ってそれは現れた。

 

 それはトライドロン。

 

「ベルトさん!?」

 

 それとともに無数のシフトカーも現れ・・・。

 

 そこでとっさに自分は動いていた。

 

「マッドドクター!!」

 

 手にしたのはチェイス兄さんの形見。ブレイクガンナー。

 

 大好きだったあの人の愛用していた武器だった。

 

 それにマッドドクターをセットし・・・倒れたオプティマスに充てる。

 

「ぐう・・・うう・・・。」

 

 どうやら崩壊は抑えることはできた。でも・・・。

 

「傷は・・・治らないか・・・。」

 

「ぐう・・・一命取り留めただけでもいい判断だ・・・。」

 

 瀕死なのは変わりない。戦闘はもちろんのこと、未だ辛うじて繋いだ命も危ない。

 

 その状態で二体のメガへクス・・・。

 

「今度は・・・俺達の番だ。」

 

―――――――状況はまだわからないが・・・いいだろう。

 

 だが、今度は進兄さんが立ち上がっていた。

 

 その手にはベルトさん。

 

「行くぜ!!」

 

――――ドライブ・・・タイプ・・・スピード!!

 

 そうして、久し振りに進兄さんは変身する。

 

 仮面ライダードライブに。

 

「…仮面ライダードライブを確認、かつて我らを滅ぼしたことを考慮・・・脅威度は極高。」

 

「久し振りのドライブだ。またこんな日が来るなんて夢みたいだ。」

 

―――――こんな状況でなければな・・・。

 

「ああ・・・だから・・・。止まっている暇はねえ。」

 

 進兄さんはいう。

 

「久々に・・・ひとっ走り付き合えよ。」

 

 不利な状況なのに…それでも力強くいう。

 

「ここからは俺達の番だ。頼むから・・・絶対に死なないでくれ。」

 

 死にかけのオプティマスに激を飛ばす。

 

 そして、二体のメガへクスに向かっていく。

 

「無茶を言う・・・絶対にか・・・だが・・・。」

 

 消えそうな命。

 

「死にたくない・・・か・・・。死などいつも覚悟していたことだが・・・。」

 

オプティマスは死にそうな体で思う。

 

「死にたくない・・・だな。」

 

 冷静にだが・・・己の中の生きることへの渇望を知る。

 

「ああ…だからまだ頑張って・・・。」

 

「…対象…排除。」

 

 そこで最悪なことが起きる。

 

 それはまさかの・・・。

 

 メガへクス…三体目。右腕を刃。左腕を大砲に変形させている。

 

「ちぃ!!マッドドクター…そのままオプティマスの治療を頼む!!」

 

「っておい!!?」

 

―――――誠君無茶をするな!!

 

 走り出す自分。既に狙いは決めていた。

 

「金属細胞破壊砲・・・。」

 

「態々説明ありがとうさん!!」

 

 ブレイクガンナーを発砲。

 

 狙いはエネルギーを充電させたメガへクスの左腕の大砲。

 

 その砲口にブレイクガンナーのエネルギー弾が入っていき・・・。

 

 暴発した。

 

 その暴発の時のエネルギーで、メガへクスのボディにも甚大な被害が出ていた。

 

 そう・・・。

 

「ががががががががががががが!?

 

 メガへクスのボディが崩壊していたのだ。

 

「…まさかと思ったけど、やっぱ、トランスフォーマーのそれに近い体だったか。」

 

 腕の変形方法などがオプティマスのそれと似た部分があった。全身修復もまるでこちらの体が治るのを早送りしているようだった。

 

 それを見て、オプティマスの命を脅かす武器を使ったのと合わせて思ったんだ。

 

 あの武器…あいつら自身にも有効じゃないかと。

 

『・・・・・・・。』

 

 まさに自分の毒で遣られるという図。メガへクスはそのまま全身を崩壊させて、消滅。

 

――――アンビリーバボ…。いや、なんという発想。

 

「あの悪魔の兵器をあんな風に攻略したのは初めてだ。」

 

「ああ。あいつ年々凄くなってくるな。刑事になった時が凄く楽しみだ。」

 

―――そうか・・・相も変わらず大活躍か。凄まじいな君達の弟分も。

 

「…本当に凄い弟分だと思うぜ。」

 

「いや~ベルトさん。そう言われると照れますって。」

 

――――まあ、そういった部分が年相応で安心したよ。

 

「そこが可愛いってわけだ。ふん!!こっちは防戦一方だけどな。」

 

 進兄さんは二体のメガへクスに押されているが、何とか持ち堪えている。

 

―――――実は、少し性能アップのために改良していたり・・・。

 

「その点…感謝するぜ‼‼ベルトさん!!だが・・・やっぱ強い・・・。」

 

 進兄さんもドライブとして相当な修羅場を潜り抜けている。それでもあいつらは強い。

 

 こちらの使った手も一度きりだろうし・・・。

 

「そこの人伏せて!!」

 

 だが、そこで一つの希望がやってきた。

 

 その声とともにぶっ放される二つの轟音。

 

 それとともに進兄さんが戦っていった二体のメガへクスが大爆発を起こす。

 

 声をした方を見ると・・・なにやら白煙をあげる長方形のバズーカみたいなものを両肩に担いだ女性が立っていた。

 

 反動がどれだけかわかんないけど、凄いよね?

 

「…この星って文明レベルは低いはずだったわよね?」

 

―――確か・・・そのはず。

 

「じゃあ・・・あのパワードスーツは何!?」

 

 あれ?自分達を助けてくれた人も何やら混乱していますよ?

 

 

 

 SIDE イリア

 

 まさかのこの星でメガへクスとまともに戦闘できる兵器があるなんて思わなかった。

 

―――――この星の文明レベルでは・・・あのような高度なアーマードスーツなんで不可能なはず・・・。しかも、あれはどの星系のデータにもない。

 

 でも…目の前にあるわね。う~ん・・・。

 

 まるでタイヤをたすき掛けしているみたいな奇抜なデザイン。何の意味があるのかわからないし。

 

「あなた…どこの星系なの?」

 

「どこって…生まれも育ちもこの地球だが?」

 

――――同じく・・・。

 

 うん・・・

 

「・・・・・・。」

 

 頭が痛くなってきた。

 

「おかげで助かったけど。」

 

 私の故郷・・・思ったよりも凄いことになっている。

 

―――文明レベルの引き上げが必要なのは確実だろう。

 

 その通りよ。性能だけ見ても宇宙刑事のコンバットスーツといい勝負できそうだし。

 

 おっと、忘れていた。

 

 再生しようとする二体のメガへクスに向けて端子を当てて・・・。

 

「…セーブ完了。」

 

 半透明のクリスタルのようなものに閉じ込める。

 

――――封印したのか?

 

「ええ。これで大丈夫なはずよ。」

 

 想定外の出会いがあったけど、おかげで、大事なく済んだと・・・。

 

―――――いや、一人重傷者がいる。

 

「えっ?あっ・・・・あれって・・・。」

 

 そこで私は気付く。側に巨大な金属の人間が倒れているのを。

 

―――――――あれは・・・伝説のトランスフォーマー・・・。

 

 トランスフォーマー。

 

 宇宙でも伝説とされる乗り物に変形できる機械生命体。その特性から、あらゆる文明に溶け込み、その姿を見た者は殆どいない。

 

 私はこの故郷で、そのトランスフォーマーの一人と出会ったことがある。

 

「オプティマス・・・。」

 

 そう・・・今、目の前にいるトランスフォーマ―だ。

 

 忘れるわけがない。あなたのことを・・・。

 

「君・・・は・・・。」

 

 彼の目が私を見る。

 

 そう・・・。

 

「イリア・・・か。久しぶりだ。」

 

「えっ?」

 

 私の名前を知っているトランスフォーマーは一人だけだ。

 

「オプティマス・・・まさかあなたに出会えるなんて。」

 

 言葉も出なかった。でも・・・。

 

「どうして、そんな酷い怪我を。」

 

 胴体に大穴が空いている。トランスフォーマーでも生きているのが不思議なくらいだ。

 

「・・・誠君達のおかげで何とか生きながらえている。」

 

「誠・・・。」

 

「イリア・・・なの?」

 

 その言葉に、私と同じ歳くらいの青年が話しかけてくる。

 

 その顔を見ると・・・ああ…面影がある。今も持っている皆との集合写真に・・・。

 

「・・・誠・・・なの?」

 

 まさか、ここで幼馴染と再会できるなんて思わなかった。

 

 しかも、メガへクスに襲われていたなんて・・・。

 

「・・・相変わらずの運のなさね。」

 

 彼はどういうわけか、災難と縁がある。

 

 一緒にいるだけで本当に退屈しないくらいに。

 

「久し振りの言葉はないんかい!!まあ…否定はできん。」

 

 いつも通り過ぎて力が抜けてくる。

 

―――――皆いろいろとあるだろうが、この場を離れることを強く勧める。

 

 ボブが私の傍にホログラフを出して皆に声をかけてくる。

 

―――――もう・・・ゾーンが崩壊し始めている。このままでは・・・十分で完全に崩壊する。

 

「ちょっとまずいじゃないの!!」

 

 ゾーンの展開先は月よ?!崩壊したら、生身の皆がやばい・・・。

 

「・・・皆転送させるわ。でも…問題は。」

 

 瀕死の重傷を負ったオプティマスをどうやって転送するか・・・。

 

―――――――最後になら可能だ。転送ポットが使えなくなることを考えれば。

 

「…それくらい安いものよ。」

 

 皆を転送させる算段は付いた。急いで脱出しないと。

 

 でも、そんな時だった。

 

「索敵任務中止。脅威度・・・極高。」

 

「!?」

 

 まさかの四体目のメガへクスの出現。

 

「一体こいつら何体現れやがる!?」

 

「こっちが聴きたいわよ!!」

 

―――――スキャニングは完了した。全部で五体いる。

 

「五体!?」

 

「一体は倒した。ならもう一体は・・・。」

 

 って!?

 

 最後の一体がセーブした二体の傍に立っていた。

 

「一体崩壊・・・。残り四体、機能に問題なし・・・。封印解除。」

 

 それとともにセーブした二体が解放。

 

 そして・・・もう一つの脅威がやってくる。

 

 それはメガへクス五体を送り込んだ謎の飛行物体。

 

――――――トランスフォーム。

 

 その姿が変わっていく。体を無数の四角い金属に変え、それを瞬時に組み替えることで。

 

「あれは・・・。」

 

 現れたのは巨大なメガへクス。オプティマスと同じくらいの大きさを誇る。

 

「トランスフォーム・・・だと?」

 

 そいつが行ったのは間違いなくトランスフォーム。

 

「…あんな個体データにないわ。しかも基本は一体だけだったのに、どうしてこの星だけ・・・。」

 

「イリアちゃん・・・あの武器は使えるのか?」

 

 変なパワードスーツを来た男が話しかけてくる。

 

「使い捨てだからもう無理。って、いきなり馴れ馴れしく・・・」

 

「イリア…変身しているのは、進兄さんだ。」

 

「・・・えっ?」

 

 私は固まってしまった。

 

 あれに変身しているの…近所のお兄さんだった・・・進兄さん!?

 

「どうしてメガへクスのことを知っているのか、そして行方不明だったのか、聞きたいことはたくさんある、だが、今はこの窮地を脱することが先決だ。」

 

「・・・ええ。」

 

 なんでこんなに知り合いに立て続けに会うのかな・・・・。

 

 ある意味帰ってきた甲斐はあるけど。

 

「・・・そうだな。うん・・・。転送ポットって使うラグはあるの?」

 

「えっ?いえ…ラグはないわ。一斉に転送できるようにもしてある。エネルギーがあればだけど。」

 

 いろいろと問題が・・・。

 

「…だったらいい手がある。」

 

 誠君が不敵な笑みを浮かべる。

 

「ベルトさん…あいつらに協力を。」

 

 

 

SIDE ???

 

 目標殲滅・・・。

 

 我らは一斉に攻撃を加える。

 

 脅威度最大に高め・・・そして・・・。

 

「殲滅…確認・・・。」

 

 後に残ったのは金属片と血の海に倒れる人間達。

 

「生命反応なし・・・。死亡確認。」

 

 この星の最大の脅威は取り払った。

 

「ゾーンより転送・・・引き続きオーディン、及び加々美 新の捜索を・・・。」

 

 これで本来の任務に戻れると思った。

 

「!?」

 

 だが、異変は唐突に起きた。

 

その人間達の姿が消えたのだ。

 

 破片も血の海すらもきれいに!?

 

 動きだそうとするが・・・。

 

「!?」

 

 何時の間にか我らの足元がコンクリートで固められていた。

 

 すぐに動けない。

 

「・・・・・・・。」

 

 我らは理解できずに暫く立ち竦んでいた。

 

 

 SIDE イリア

 

 

 そこは町はずれの廃工場の中。

 

 もっともデカいのが転送された衝撃で全て粉々になっている。

 

 転送…完了したのはいいけど・・・。

 

「上手く行ったぜ‼‼シフトカー達協力ありがとう!!」

 

『・・・・・・・・。』

 

 それは即席だった。

 

 小さなミニカーのような物はそれぞれ特殊能力を持っている。

 

 そのうち一体が立体映像を作り出したのだ。

 

 攻撃そのものは別のミニカーが次々と別空間に飛ばし・・・。

 

 その隙に先行して転送させたミニカーから供給された太陽光からのエネルギーで転送のためのエネルギーを溜め・・・、生命反応が消えたような絶妙なタイミングで転送。

 

 その転送の直前にあらかじめ潜まてていた別のシフトカーによりコンクリートを出し、膝から下を一気に固め、素早く離脱。

 

 ちなみにオプティマス転送に伴う転送ポットの破損は相手がこっちに来ることを防ぐために利用と・・・。

 

 タイミングといい…見事に相手は引っかかった。

 

「・・・いや、お前のとっさの機転にはいつも助けられているが・・・。」

 

――――今回は格別だったよ。シフトカー達の特性を良く理解している。

 

「・・・誠君・・・あなた・・・。」

 

 こんなこと普通じゃできない。

 

 一体どれだけの修羅場を潜り抜けたらできるの?

 

 あなた・・・今までどんな目に・・・。

 

 だんだんと心配になってくる。

 

「一体何をしていたの?事件に巻き込まれながら・・・。」

 

「何って・・・・まあ何が起きても大丈夫なように強くなりたいと…保護者のじっちゃんに言ったんだ。そしたら…サルみたいなおじいちゃんを紹介されて・・・。」

 

 サルみたいなじっちゃん?

 

「健康かつ頑丈になれるからって…ロングブレス健康法をはじめいろいろと・・・。」

 

 どう考えてもそれが原因の一つね。後でロングブレス健康法とその色々の部分を問い詰めないといけない。

 

 どうやら進兄さんも同じ気持ちのようだ。視線が交わった時になんとなくわかったもん。

 

「話しは後。とりあえず、オプティマスの治療を。メンテナンス用のマンターンとジャッキ、スパーナを出して。あれで更に回復と修理を・・・。」

 

「おっ・・・おう。」

 

――――本当に私よりも的確だ。

 

 その言葉とともにオプティマスの体をエネルギーでできた作業台が支え、スパナによる修理とエネルギー補充が行われる。

 

「・・・絶対にあんたを死なせない。必ず助けるから。」

 

 誠君は本気だった。

 

 瀕死のオプティマスを助けようとしている。

 

「うう・・・ううう・・・。」

 

 いろいろと聞きたいことはある。向こうもそれは同じだろう。

 

 でも、まずは・・・。

 

「知り合いの宇宙刑事に連絡してみる。来るのに時間はかかるけど、何とかなると思う。」

 

「宇宙刑事?」

 

「誠・・・あなたも知っている人よ。彼の艦ならよりいい治療もできるかも。まあ、私も彼の依頼からあのメガへクスを追っていたから、その連絡も兼ねておくわ。」

 

「宇宙刑事って・・・。」

 

「宇宙規模の警察か・・・。」

 

―――――どうやらまだまだ私の知らない世界があるみたいだな。

 

 それはこっちのセリフよ。私の故郷ってこんな魔境だっけ?

 

 メガへクス本体はこの星の近くで謎の消滅をした事は知っているけど、もしかしてこの星の連中がやらかしたじゃないかしら?

 

 そう思えてくる。

 

 そんな恐ろしい予測を振り払いながら誠君に問う。

 

「生命維持だけならなんとかなる?」

 

――――問題ない。

 

「・・・すまない・・・。」

 

 オプティマスが申し訳なさそうな声を上げる。

 

「いや、あんたが頑張ってくれなければ、こちらがやられていた。今度はこっちが助ける番だ。」

 

 進兄さんは変身を解く。

 

 やっぱり進兄さんだったのね。あれに変身していたのは・・・。

 

「マットドクターの効力は絶大だ。まだ持つ・・・。」

 

 本当にどんなテクノロジーがあれば、こんな凄いミニカー達が出来るのやら。

 

 でも、安心するのはまだ早かった。

 

「…囲まれているぞ。」

 

「今度は逃がさんぞ…オプティマス!!」

 

 現れたのは首をギブスで固定し、右頬にデカいあざを作った男。

 

「…オプティマスは瀕死・・・か。好都合。今回はさっきの四倍の人数だ。」

 

 勝ち誇った男を誠君は、目を据わらせた状態で睨み付けつつ淡々と聞く。

 

 同じく怒りを隠そうとしてない進兄さんに。

 

「進兄さん…無力化してから拘置所にぶち込んでいいか?」

 

「安心しろ。銃刀法違反などいろいろとやっている。逆に理由には困らん。」

 

 えっと、その前に誠君が持っているそれは・・・。

 

「あれはおもちゃの銃だ。光を放つだけだからな。」

 

 はい・・・そうですか。

 

「それであいつらは・・・。」

 

 襲い掛かってきたあいつらのことを聞こうとした時だった。

 

―――――殲滅…殲滅・・・。

 

 その音声とともに四体のメガへクスがポットのあったところから強引に出現。

 

 そのまま私達に切りかかってきたのだ。

 

 でも・・・それに気付いて真っ先に動き出した者がいたのだ。

 

「危ない!!」

 

 それは瀕死だったオプティマス。

 

 この場の誰よりも多くの戦いを経た、戦士としての勘が働いたのだろう。

 

 気付けば私達の前に躍り出て、その大きな体をメガへクス達の刃を遮る盾としたのだ。

 

「にげ・・・ろ・・・。」

 

「オプティマス!!?」

 

 そして、強引に開けられた空間から出てきた巨大メガへクスが大砲を構え・・・

 

 オプティマスに向けてうち放った。

 

 

 

 SIDE オプティマス

 

 

 遠のく意識の中・・・私はいろいろなことを思い出していた。

 

 母星での戦争の日々。そして、荒廃した星から出るという決断の悲しみと痛み・・・。この地球に流れ着いた後の話も・・・。

 

 この地球で私はかけがえのない友ができた。

 

 辛いこともたくさんあった。

 

 だが…最後に救われた。

 

 そう、私のことを自分達のように怒ってくれ、助けてくれる人達がいたのだ。

 

 こうやって・・・自分自身を顧みない形で助けようとしてしまうほどに。

 

「・・・私は・・・死ぬのか。」

 

 そのこと自体に悔いはない。

 

 だが・・・。

 

「私はまだ・・・やるべきことがあるというのに・・・。」

 

―――――やるべきことだけなのか?

 

 そんな私に話しかけてくる者がいた。

 

「誰だ?」

 

「俺のことはどうでもいいだろう?」

 

 そこにいたのは誠君やイリアちゃんと同じくらいの歳の青年。

 

「さっきの問いの続きだ。あんたはやりたいことがあるのか?自分の母星を救わないといけないと言っていたが?」

 

「それは私の使命であって・・・・。」

 

「それだけじゃないだろ?」

 

「・・・・・・。」

 

 遠い目をしながら私は考える。でも、不思議と素直に成れた。

 

「守りたい・・・。」

 

 それは総司令官としての立場とかおいて、一人のトランスフォーマ―としての意思。

 

「多くの同胞達を。」

 

 それは単純なものだった。

 

「私を助けようとしてくれた人達を・・・。私のことを・・・。

 

 心からそう思っていた。

 

「私のことを友達と言ってくれ、今でもそう思ってくれている彼らのことを・・・。」

 

 本当ならここで倒れている場合じゃない。

 

「動け・・・私の体・・・。」

 

 薄れていく意識を繋ぎ止め様とする。

 

「彼らを助けたい・・・。守りたいんだ・・・。」

 

 もう体は死んでいる。私達の魂・・・スパークも消え去ろうとしている。

 

 でも、諦められない。

 

「・・・・・・やっぱり、あんたはすげえよ。」

 

 その私を見て、誰かが声をかけてきた。

 

「ありがとうなフィリップ。検索してくれて。」

 

――――いきなり本棚に現れたのはびっくりしたけど、そういうことなら仕方ないよ。でも、元気そうでよかった。

 

「わりぃ…心配かけて。でも、目覚めるのにまだ時間かかりそうなんだわ。」

 

 現れたのは誠君やイリアと同じくらいの歳の青年。

 

「・・・・・・助けに来た。」

 

 その言葉とともに私の体に刻まれる不可思議な紋章。

 

「夢幻の力と破壊の力・・・少し使わせてもらうぜ?」

 

―――いいだろう。この者の夢…見てみたくなったのでな。

 

――――ふん、大馬鹿者の末路をみせてもらう。

 

――――父上。こちらも・・・。

 

――――ついでにこれも受け取り給え。面白ことになりそうだ。

 

「ああ・・・。この二つを欲望と知識がつなげるか。だが、フィリップ。ついでにそれを渡すなよ。」

 

 そして青年の手に現れるのはメダル。

 

「さあ…俺達の力を抽出したメダルだ。」

 

 それを私の体にできたコインスロットに入れながら言う。

 

「無駄遣いしないように、しっかり励めよ?」

 

 その青年を見て、私の中のメモリーがある人物をはじき出す。

 

「まさか、君は・・・イッセー?」

 

 あの時、友達になった子供達の一人。

 

「ふっ・・・またな。会えるのを楽しみにしている。」

 

 そして、その結論が正しいと私は確信した。

 

 何しろその青年が浮かべた人懐っこい笑顔が昔の彼にそっくりだったから。

 

 力が湧いてくる。

 

 それもすさまじいレベルで・・・。

 

「ありがとう…イッセー。」

 

 沈み込もうとしていた意識が浮上していく。

 

 

 

 SIDR イリア

 

 破片を散らせて倒れていくオプティマス。

 

「あっ・・・・・。」

 

 全身の力が抜け、膝から崩れ落ちる誠。

 

「そん・・・な・・・。」

 

 ・・・助けられなかったのか。

 

「お前・・・。」

 

「ああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 そこで私は叫ぶ。

 

 その叫びとともに全身から怒りをまき散らす。

 

――――落ち着けイリア!!力が暴走しているぞ!!

 

 ボブの警告にその叫びを止める。

 

 だが、頭の方は全然怒りが収まらない。

 

「そんなの関係ない・・・。」

 

 目から涙をこぼし・・・。私・・・泣いているんだ。

 

「あんたら・・・絶対に許さない。私も・・・もう出し惜しみはしないから・・・。」

 

―――――――だっ、だが、あの力は君の・・・。

 

「それくらい怒っているのよ!!私の友達を!!」

 

 その言葉とともに私の姿はもう変わっていた。

 

 いつの間にか割れていた窓ガラスの破片でそれは確認できる。

 

 緑の体にラインが入っている。

 

 腰には赤い宝玉。

 

 その姿は・・・。

 

「仮面…ライダー・・・。」

 

 そう…それがこの星に戻ってこなかった理由。

 

 私は既に人間じゃないのだ。

 

――――君の体はもしかして・・・。

 

「ベルトさん・・・。」

 

 進兄さんは察してくれたのだろう。私に何が起こったのか。

 

 この力は私を拉致したある科学者によるもの。私をネオ生命体のプロトタイプとして。

 

 父もその研究に参加していた。でも…私を実験体とするのを止めようとして・・・殺された。

 

 その結果が今だ。

 

「…覚悟しな。」

 

「・・・未知のエネルギー確認・・・排除・・・。」

 

 両腕を刃に変形させ、走ってくる二体メガへクスに対して私は迎え撃つ。

 

 二体同時に攻撃を受け止めた。この姿だとこれくらい軽い。

 

「問題は変身が全然安定しないことだけどね。」

 

――――――もう変身が解けかかっている。あまり持たないな。

 

 ボブの言う通り、この力は凄まじいけど、持続しない。あの人達も私のことを失敗作だと・・・。

 

「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!」

 

 そこに割って入る者達がいた。

 

 それは誠君。って!!?

 

 腕をブレードに変形させたメガへクスが叫びに反応して、誠君に刃を向ける

 

 こちらに向けて振り下ろしたブレードと誠君が繰り出した拳。

 

 ダメ…間に合わない・・・。

 

 そう私は思った。

 

 脳裏によぎるのは体をブレードによって両断される誠君の姿。

 

 でも・・・。

 

――――なん・・・だと?

 

 予測した未来と、目の前で起きた光景は大きく違っていた。

 

 誠君の拳がブレードを粉々に砕きながら、メガへクスを殴り飛ばす光景のために・・・。

 

『はい!?』

 

――――アンビリーバボー・・・。

 

「がががががががっ!?」

 

 殴り飛ばしたメガへクスはその顔面が粉々に砕かれ破損。首もその衝撃で折れている。

 

「理解不能・・・。人間に・・・あのような攻撃力など…ありえない。」

 

「あんた・・・本当に人類?」

 

 私はあまりの衝撃に変身を解きながら、尋ねる。

 

 人のことは言えないけど、あちらもなんかいろいろと吹っ飛んだ様子。

 

「普通の人間だ。しかし・・・案外あいつら脆いな。拳一発で・・・。」

 

「いや!!あいつらが脆いとかじゃなくて・・・。」

 

――――――君の攻撃力が異常なだけだ。殴っても拳に全く怪我もないみたいだし・・・。改めてもう一度聞きたい・・・。一体彼に何があった!?

 

「それはこっちが聴きたい。ロイミュードじゃ・・・ないわな。」

 

「右に同じく、理由不明です。」

 

 ベルトさんの悲鳴に頭を抱える進兄さんと霧子さん。

 

 本当に訳が分からない。

 

「逃げなければよかった。そしたら…オプティマスも・・・。」

 

「そうね・・・。でも今は・・・。」

 

「・・・っ・・・ああ!!」

 

 確かな怒りに悲しみと戸惑いを今だけは覆い隠し、戦闘に参加しようとする。

 

だが、その次の瞬間に不思議なことが起こった。

 

 倒れたオプティマスの足元に不可思議な紋章が浮かび上がってきたのだ。

 

 

 

 

SIDE 誠

 

「あれは・・・。」

 

 初めて見るはずだった。

 

 だが・・・その紋章に自分は凄く見覚えがあった。

 

 それは・・・。

 

「アギト・・・。」

 

 そんな名前が不思議と口から出てきた。

 

 そして、その足元のアギトの紋章から光が柱となってあふれだし。オプティマスの体を包み込む。

 

「何が起きている?」

 

――――――わからない。

 

 光とともに立ち上がったオプィマスがあちこちにスキャンの光を広げる。

 

 そして、スキャンしたのは・・・。

 

トライドロンとシフトカー・・・。

 

――――――トランスフォーム!!

 

 そして、オプティマスは新たな姿になった。

 

「…心配かけてすまない。」

 

 それはトライドロンと同じカラーリングとなったオプティマス。

 

 瀕死だったはずなのに・・・。

 

「まさか・・・これって・・・。」

 

 さっきまで話していたトランスフォーマーの転生。

 

「ふっ・・・この身で転生を体験することになるとはな。イッセーに感謝しないと。」

 

『イッセー!?』

 

「兵藤のこと・・・だよな?」

 

 オプティマスの言葉に自分達の耳を疑った。

 

 どうしてここでイッセーの名前が出てくる!?

 

「詳しい話は後にする。まずは・・・。」

 

 生まれ変わったオプティマスが巨大メガへクスと対峙。

 

「こいつらを片付けてからだ。」

 

――――理解…不能。

 

「何が・・・どうなっていやがる!?」

 

 まさかのオプティマスの復活劇にメガへクスはもちろん、オプティマスを追ってきた男達も固まっている。

 

 こっちも理由はわからない。

 

 だが・・・。

 

「脅威度・・不明。即刻排除。」

 

 メガへクス達が一斉に姿を消す。

 

「・・・加速装置!!?だったら私も・・・。」

 

 イリアがそう言って手を出そうとしたが・・・。

 

 それをオプティマスが制する。

 

「こちらも同じことをしようか。」

 

―――――スピード!!スピード!!スピード!!

 

 その音声とともにオプティマスの姿が消え、屋根が吹き飛び、壁が大きく吹っ飛ぶ。

 

 これって・・・。

 

「凄い・・・。」

 

「ベルトさん・・・これってもしかして。」

 

――――どうして彼がシフトカーの力を使える!?

 

 呆然としている霧子姉さん、進兄さんとベルトさん。

 

 訳の分からない事態が起こっているけど、その事態に一つだけ心当たりが・・・。

 

「まさか、転生の時のスキャンで・・・。」

 

 あの時、オプティマスは転生の際にあちこちスキャンしていた。その中にシフトカーがあるとすると・・・。

 

「すまない。どうやらそのようだ。」

 

――――・・・なんということだ。

 

 加速が終わり、姿が見えるようになるオプティマス。

 

 それと同時に、すさまじい勢いで地面に落下する巨大メガへクス。

 

 一方的にぼこぼこにされており、起き上がってくる気配がない。

 

―――コアトライビアを取り込んでしまったとは・・・。

 

「・・・マジで何が起きているのか・・・。」

 

「こちらも新たな力に戸惑っているところだ。だが・・・。ふん!!」

 

 その声とともに向こうにいる男達の動きが緩慢になる。

 

「な・・・が・・・ああ!?」

 

「重加速まで・・・。」

 

―――――頭が痛いぞ・・・。

 

 嘆いている間にメガへクス四体がこちらに迫ろうとしていた。

 

「…今度はこちらが頑張る番だ。」

 

「いいや、こちらも戦うぞ。ベルトさん!!細かいことは後まわしでいいか?」

 

―――仕方ない。はあ…久し振りの目覚めだが、波乱が多過ぎるぞ。

 

 一斉に攻撃してくるメガへクスたち。

 

 腕が刃へと変形。

 

 それに構えようとして・・・。

 

――――Guard Vent!!

 

 突然上から降ってきた何かがそれを阻んだ。

 

「やれやれ・・・。愉快なことになっていやがる。」

 

 阻んだのは傘・・・だった。

 

「大和の傘は流石頑丈だな。そして、案の定、巻き込まれていやがったか・・・誠!!」

 

 メガへクスの攻撃を防ぐ傘。それに驚いている時、そいつは自分の名前を呼んだ。

 

「久し振りだな。助けに来たぜ?」

 

「って・・・新!?」

 

 それは新だった。

 

「イリアも久しぶり。それと…オプティマスも。」

 

「…また知り合いに会えた。一体どうなって・・・。」

 

 その新を見て・・・。

 

「最優先対象・・・発見。」

 

「即時…抹殺。」

 

 メガへクス達が反応する。最優先対象?

 

 メガへクス達が一斉に新に向かうが・・・。

 

―――――提督・・・私達の力を使ってください。

 

―――――狙いは・・・提督っぽいよ?

 

 なんか新の方から女性の声が聞こえてきたけど!?

 

「今回は必要ないって。だって、こっちに来たのは俺だけじゃねえぜ?」

 

 新が笑みを見せると同時だった。

 

「うおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!」

 

 傘で攻撃を防がれ、動きと止めた四体のメガへクスに対して誰かが突進してくる。

 

 それは…右腕がロケットになった白いイカのような奴だった。

 

 凄まじい勢いに四体が纏めて吹っ飛ばされる。

 

「ふう~あんな感じで良いか?」

 

「いい仕事だぜ、弦太郎!!」

 

『弦太郎!?』

 

「おう。皆久し振りだぜ。」

 

 へっ?えっ?

 

「…また未知の技術・・・。しかもそれを使っているのが弦太郎?」

 

 訳が分からない。どうして弦太郎が変身している?

 

「挨拶は後にした方がいい。」

 

 オプティマスの言葉に振り向くと・・・立ち上がってくる五体のメガへクスの姿。

 

「・・・まずはあいつを片付けることを・・・。」

 

「心配ないわ。」

 

 その時・・・新たな声とともに、メガへクスの体を無数の光の槍が貫く。

 

――――ぎぎぎぎ!?

 

「もう動けないから。」

 

 現れたのは…まあ、弦太郎がいるからいてもおかしくないとは思っていたけど・・・。

 

「久し振り、皆。」

 

 イリナだった。

 

 ただ・・・その背中から五対の白い翼を生やした状態で。

 

『・・・・・・・・。』

 

 もはや何からツッコめばいいのか。

 

「動き止めたからトドメはよろしくお願いするわ。」

 

「やれやれというべきか。」

 

 そして、最後に現れたのは・・・。オレンジの丸みを帯びたパワードスーツに身を包んだ存在だった。

 

「なんであなたがここにいるの!?サムス?」

 

 イリアはそれを見て酷く驚いている。

 

「久し振りだな、イリア。一年ぶりか。」

 

「一年ぶりじゃないわよ!!どうしてあなたがこの星に?」

 

「まあ、いろいろあって。説明は後にしよう。」

 

 大砲となっている右腕には大量のエネルギーがチャージ。

 

「・・・吹っ飛びな。」

 

 放たれる巨大なエネルギ―砲弾。それがメガへクスのうち、人間大の大きさの奴を四体纏めて飲み込み…消滅。

 

―――ウェイクアップ!!フィーバー!!

 

 そして、天井の穴から音声とともに何かが飛来してくる。

 

 それは黄金の鎧を纏った…仮面ライダー。

 

 両足から赤い翼を生やしながら急降下キックを巨大メガへクスに叩き込む。

 

 その一撃…メガへクスを地面に叩きつけるほど。

 

「そこから更に・・・。」

 

――――リミットブレイク!!

 

 左足にドリルを装着した弦太郎によるロケットの噴射も加えたドリルキックも炸裂。

 

 巨大メガへクスの体をぶち抜く。

 

――――馬鹿・・・な・・・。

 

 二つのライダーキックを受けて爆散する巨大メガへクス。

 

「……あっという間に決着だな。」

 

「あっ・・・ああ。しかし、本当に君達なのか?」

 

 オプティマスは恐る恐る弦太郎達に話しかける。

 

「おう!!」

 

 変身を解除したその姿は・・・うん。リーゼントといい弦太郎だな。

 

「会えて嬉しいわ。イリアに至っては行方不明と聞いていたから心配で・・・。」

 

「えっ?」

 

「あ~・・・それは・・・。」

 

 イリアが行方不明というのは初耳である。

 

「まあ、その辺の話はおいおいと。そして…遂にあと一人か。アーシアちゃんの予言にあったイッセーの幼馴染達が・・・。」

 

 弦太郎とともにライダーキックをかました彼も変身を解いて、こちらにやってくる。

 

 見た目は・・・うん、線の細い芸術関係…または王子様という感じ。

 

「自己紹介が遅れた。僕の名前は紅 渡。君達の知り合い…兵藤 一誠。いや、イッセー君の友達と言えば…通じるかな?」

 

「イッセーの友達!?」

 

「あらら・・・魂がイケメンな人達がまたきましたね。」

 

 その言葉に振り向くと、狐のしっぽと耳を持った丈の短い着物のような衣装を纏った女性が立っていた。

 

「ふう・・・どうして、彼のもとにはこれほどまでにイケメン達が集まってくるのやら。こちらとしては嬉しい限りですが、目が肥えてしまいます。」

 

「タマモさん。外にいた連中は?」

 

「とっくに眠っています。あまり呪術は使いたくなかったけど仕方ないことで。」

 

 振り向くと男達が全て倒れていた。

 

「気絶させただけです。まあ、一日ぐっすりと眠っていることでしょうけど。このまま放置しておく予定ですのでいい具合に風邪ひくかも。」

 

『・・・・・・・。』

 

 いよいよわけがわからなくなってきた。

 

「・・・何がどうなっているの?」

 

「まあ、分からなくもない。こっちも十年前と前世、そのまた前世で同じ経験したし。」

 

 新が苦笑する。

 

 前世とそのまた前世って何!?

 

「僕達の本拠地へこないかな?そこで全てが分かると思う。」

 

 渡さんがそう提案してくる。

 

「えっと・・・。どうしよう・・・。」

 

 あまりにいろいろとあり過ぎて考えが纏まらない。

 

「ここは誘いに乗るべきだと思うぞ?」

 

 進兄さんがその提案に乗るようにいってくる。

 

「信じられるかどうかはまだわからない。だが、知り合いが関わっている以上まずは話を聞くのが先決だ。何よりこちらはあまりに何も知らない。まずは情報が欲しい。」

 

「私も進ノ助殿と同じ意見だ。少なくとも私達を助けてくれた。その行いを信じてみるべきだ。それに・・・。」

 

 オプティマスは渡さんに問いかける。

 

「そこに…イッセーはいるのだな?」

 

「うん。いるよ。」

 

『!?』

 

 イッセー・・・だと?あいつも関わっているのか?

 

「どういう理屈かわからないが、確かなのは彼のおかげで私は転生できたことだ。そのお礼をしたい。」

 

 なんでオプティマスの転生にイッセーが関わっているの!?

 

「そうか・・・。タマモさん、転送の準備をお願いしてもいい?」

 

「はいよ。皆さん寄ってくださいな。」

 

 タマモさんの指示で皆傍に固まる。

 

「これより・・・この世界最新にして最強の人外魔境へとご案内~。」

 

『・・・・・・。』

 

 何やら大変不吉なことを言ってくれますけど。

 

 

 

 

SIDE  鉱太

 

 いや~漸く落ち着いた。この星もだいぶ栄えてきた。

 

「動植物もたくさんよね。」

 

「ああ、苦労したけど。」

 

 メガへクスのこともあったが、それも落ち着き、俺達は今この星でゆっくりと過ごしている。

 

「あっ・・・あのね。」

 

 そこで舞がもじもじしながらこっちに寄り添ってくる。

 

「そろそろ落ち着いてきたし、私達も・・・。」

 

「?」

 

 少し顔も赤いし…なにを言い出して・・・。

 

「欲しいなって・・・、その・・・。」

 

 その視線は仲良さそうにすり寄っている鳥の親子。

 

「こっ…子供・・・。」

 

「あ・・・。」

 

 そうだよな…漸く落ち着いたから…欲しいよな。

 

 俺と舞の・・・。

 

 やべえ・・・心臓がバクバク言って・・・。

 

「舞・・・。」

 

「鉱太・・・。」

 

 見つめあう俺達。

 

「・・・おい・・・。」

 

 互いしか見えない。

 

「おい・・・。」

 

 もう止められない。

 

 ここからは俺達のステージだ(人生初体験の)!!

 

「・・・・・・おい・・・。」

 

 俺達はゆっくりと顔を近づけ、目を閉じていき・・・。

 

「いい加減気づけ‼‼バカップルどもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

『!?!?』

 

なっ、なんだ!?

 

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・なんでこんなところでイチャイチャした光景を見せつけられなきゃいけない・・・。」

 

 振り向くとそこには白マントの男が立っていた。

 

「はあ・・・自己紹介が遅れた。私の名前はロキ・・・北欧神話の神々の一人だ。」

 

 すぐに冷静さを取り戻し、優雅に自己紹介・・・。

 

「あっそ。悪いが邪魔だから帰れ。今俺達のステージが・・・。」

 

「・・・ブチ!!?」

 

 あっ、キレた。

 

「…今の私は・・・な。お前達のような幸せいっぱいのバカップルを見ると腹が立つんだよ!!私だって…私だって…ヤマト嬢と!!!オノレ、オノレ、加々美 新ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 そして、血涙流しながら絶叫しているぞ。

 

「…えっと、何やら凄い嫉妬の念が・・・。」

 

 それと、加々美 新って凄く聞き覚えのある名前が聞こえてきたぞ。

 

「・・・それで?何の用だ?この星には何もないぞ。少なくともあんたのいうヤマトという人も。いるのは俺の自慢の奥さんだけだ。」

 

 いい具合にこっちのペースに持って行けたので、問答無用で問う。

 

「・・・ふっ、我が悲願のために貴様達の持つ黄金の果実を・・・。」

 

――――ドンカチ。

 

 その言葉を言い終わる前にあいつの頭の上にどんぐり型のハンマーを召還。そのまま落とす。

 

「があ!?」

 

「帰れ。」

 

「・・・鉱太・・・いつの間に・・・。」

 

「だいぶ力に慣れてきたから。カギなくてもこれくらいならいくらでも・・・。」

 

「それだけで説明つくのかな?」

 

「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・。」

 

 頭にドンカチを受け、悶えるロキを相手にのんきに会話。

 

「黄金の果実は渡さない。」

 

「ぐぅ…だったらメガへクス!!」

 

 現れたのは・・・かつてこの星を襲った機械生命体。

 

「同じ敵に二度も負ける俺と思ったか?」

 

 だが、それを両手に出現させたオレンジを模した刀――大橙丸で一刀両断に切り伏せる。

 

「・・・っ!?」

 

「一応、この星の主だ。研鑽は欠かさんさ。」

 

 実際は星も落ち着いてきたからやることがなくなり、暇つぶしも兼ねて、鍛錬に気持ちと集中させただけだけど。

 

 地球でのメガへクスの騒動後、帰る前に鍛錬のためにいろいろな本を買っておいてよかった。

 

「ちぃ・・・戦神クラスの力を持っているか。世界は案外広いものだな。がばっ!?」

 

 まあ、想定外なのは一つあって・・・。

 

 うちの奥さんもそれを読み出し・・・。

 

「あく・・・ううう・・・。」

 

 護身程度ならいいかと思ってやってみたら結果、ロキが金的蹴りをまともに受け前かがみ。

 

「ぶぐぼ!?」

 

それに合わせて膝を顔面に打ち込む。

 

 それでのけぞった隙に首を狩るようにラリアットを決め地面に倒し・・・。

 

 そこから足をサソリ固めで決める!!

 

「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

必死にタップするロキという光景をみることになった。

 

「降参は寝てから言ってね?」

 

 しかも、ウチの奥さんは容赦ない。相手を落としてから・・・降参させるという主義・・・。

 

「なあ・・・足決めきっても相手は落ちないぞ?」

 

「なら股関節破壊して・・・。」

 

「いい加減にしないか!!」

 

 そこで別の奴が出現し、舞に殴りかってきた。

 

 舞はそれを転がるようにしてかわす。

 

「大丈夫か?」

 

「ひっ…酷い目にあった・・・。」

 

「なんだ…お前・・・。」

 

 それはデカかった。デカい…金属人間。

 

「助かった…ガルバトロン・・・。君を転生させた甲斐はある。」

 

「・・・ふん。」

 

 そこら辺のメガへクスとは一線を画すようだ。

 

 いや、そもそもこいつはメガへクスとは違う。

 

「大人しく渡せばいいものを・・・。あれを使わせてもらうぞ・・・。」

 

「使うがいい・・・。こいつらにもう加減は無用だ。」

 

 ガルバトロンと呼ばれたそれの手に現れたのは・・・金色のリンゴ型のロックシード!?

 

「なんでお前がそれを持っている!?」

 

「ふははははは・・・いくぞ。」

 

――――――ゴールデンアームズ・・・黄金の果実・・・。

 

 相手の巨体に見合った巨大なリンゴが現れ・・・。

 

 

 

 

 SIDE ???

 

 突如、再稼働したメガへクス。その背後に何やら大きな事件を感じた俺は地球に向かっていた。

 

 銀河のあちこちで暴れており、もうてんてこ舞いだ。

 

「…懐かしいな。」

 

 あの地球は俺の父の故郷。そして、あそこには友達がいる。

 

「できれば・・・こんな形で来たくなかったが。」

 

 事件の捜査である傭兵を使うことになった。

 

 あのサムスと並ぶ有名人だ。

 

 まさか、あいつとあんな形で再会するなんて、お互い驚いたが・・・。

 

 詳しい事情は教えて貰えなかったが、じっくりと聞きたいものだ。

 

 そいつが向かったのも何の因果か地球だった。

 

 そして、あいつ…イリアから連絡があったのだ。友人の負傷と今まで見られなかったタイプのメガへクスが地球に送り込まれていたことを。

 

「・・・んん?生命反応?」

 

 地球に向かっている最中、生命反応が・・・。

 

 そこで俺は見てしまった。

 

「・・・・・・えっ?」

 

 ぼろぼろで腕の中の女性を大切に守りながら気絶している青年を・・・。

 

「…まだ生きているのか?」

 

――――――信じられませんが・・・。

 

「…すぐ回収!!」

 

 そうして、俺はまた再会してしまう。

 

 地球に来た時の友達の一人・・・鉱太と。

 

「…その前に宇宙空間にいて生身で生きているんだ!?」

 

 訳の分からない状態ではあるが・・・。

 




 うん。トランスフォーマ―とドライブのコラボってこれをいちどはやってみたかった。

 そう思っています。


 集結予定の者たちはすでに全員顔出し完了。

 ここからパニックがおきます。


 また次話の投稿を楽しみにしてください。では…また会いましょう!!


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ようこそ 人外魔境です。

 大変お待たせしました。思うように執筆できず時間がかかってしまいました。

 今回は二話更新します。


 一つ目は・・・この世界の最強の人外魔境となった兵藤邸の実態がわかるようなっております。

 どうぞ。


 

 

 

 SIDE イリア

 

 今私は…魔境にいる。

 

「あれ?イッセーの家ってこんなに凄かったけ?」

 

 誠君の疑問に私達はため息をつく。

 

「これは・・・それ以前の問題だ。」

 

 記憶が確かなら、ごく普通の一軒家だったはず。

 

 それが・・・。

 

「土地レベルでおかしい。何があった?」

 

 あまりに広大な土地。数々の山や土地、湖すらあるレベルの。

 

 家なんてマンションというレベルすら通り越している。

 

「凄い・・・。」

 

「…なんで俺達はこんな異変に気付かなかった?それがまず疑問だ。」

 

――――そうだな。

 

 進兄さんの疑問はもっともだ。どうやら突然こうなったのに、誰も疑問に思っていないのだ。

 

「まあ、この国の神様からの贈り物です。」

 

「?」

 

 後でそれがそのままの意味だと知って、私達は卒倒しそうになったのは仕方のないことだろう。

 

 法的な問題に関しては・・・進兄さんも頭を抱えていたし。

 

 ベルトさんが間違いなくそんなことを法律が想定しているわけないだろうと慰めていたわ。

 

「イリア。一体君に何があったのか色々と聞きたい。」

 

 誠君が私のことをジト目で見ていた。ウッ…確かに二度と帰らないつもりだったから何も言っていなかったし…言う暇もなかった。

 

「まあ、何となく想像はつくけど。ずっと待っていたのにな・・・。」

 

 ずっと待っていた?

 

 どうして?

 

「ついに現れたわね。幼馴染第二波が・・・。」

 

 歓迎してくれたのは紅の髪の女だった。もう、人間離れした美しさを誇る。

 

 スタイルだって…うん、同じ女として羨ましいくらいに。

 

「…あっ、自己紹介が遅れたわね。私の名前はリアス・グレモリー。悪魔よ。」

 

 そういって背中から悪魔の翼を出したリアスさん。

 

「まあ、私が悪魔だなんて、この場所ではとるに足らないことよ。」

 

『・・・・・・。』

 

 もう言葉が出なかった。

 

 悪魔の登場ですらほんの序章だったのだ。

 

「あっ、おかえりなさい。」

 

「それといらっしゃいませ。」

 

「・・・なんでゼーベス星人がいるの?」

 

 家に入ると、そこにはあの宇宙海賊で有名なゼーベス星人達がいた。

 

 何故か、非常に礼儀正しい。

 

「それ以前に、なんというテクノロジー・・・。」

 

――――― 一人の科学者としてこれは・・・すごい。

 

 小さなミニカーとなったオプティマスとベルトさんがあちこちをスキャンしながら見て回っている。

 

 えっ?オプティマスがどうしてミニカーになっているかって?

 

 どうやらシフトカーをスキャンした結果だそうです。大きすぎて入れないと思ったら、小さくなったこと。それを見せつけられたリアスさんが「こっ、この程度で動じないわよ。」と卒倒しそうな顔で言っていたのが印象的だった。

 

 滅茶苦茶動じているのは気のせいではないだろう。

 

 まあ、こちらも理屈なんて理解できなかったし、深く考えたら負けだとなんとなくわかった。

 

――――トランスフォーマ―。ロイミュードと似た部分があるようだね。

 

 ベルトさんは何やら考え込んでいたけど。

 

 いろいろと苦労しているのかもしれない。後でゆっくりと話を聞きたい。

 

 まあ、とりあえずメカニックなお二人がいうには、この家は普通に見えて、実体は途方もない高度で、解析できないほどの数々のテクノロジーが満載らしい。

 

 もっとも普通に見えてというけど、外観がマンションクラスな時点で既におかしいと思うべきだ。

 

 ・・・なんか普通の感覚が狂ってきた気が。あっ、目眩が・・・。

 

「ほう・・・分かんのか?この夢とロマンが満載になったこの家の素晴らしさが!!」

 

 そこに、何時の間にか隣に現れたダンディーなおじさまが話しかけてくる。

 

「…何時の間に!?」

 

「おっと、警戒する必要はないぜ?俺はイッセーの身内だ。まあ・・・あいつの先生というべきか・・・。」

 

 おじさまは笑いながら背中に十二枚の黒い翼を出す。

 

「俺の名前はアザゼル。堕天使達の組織…グリゴリの総督をやっている。」

 

 悪魔に…堕天使・・・。まあ、イリナが天使になった時点でいてもおかしくはない。

 

 んん?順応が早いって?

 

 なんとなく理解し始めてきただけだって。

 

 この星には私にとって未知の何かがある。

 

 それが分かったのなら、それを知るべくやるだけだって。

 

 ただ、驚くことに疲れだけじゃない。

 

 決して・・・。

 

「はあ・・・・・・・。」

 

 うん、ため息くらいは許してね。

 

「あんたらとは一科学者として、後でいろいろと話を聞かせてほしいぜ。すげえ興味ある。グローバルフリーズのこととか・・・。」

 

――別にいいが、どうして君達がそのこと知っている?

 

「なあに、蛇の道は蛇なだけさ。まあ、裏のことは何も知らないみたいだから、俺から説明するわ。」

 

 そこからアザゼルさんとリアスさんにより、この世界の裏側を知ることになる。

 

「・・・まじか。」

 

―――ますます…アンビリーバボーだな。

 

「この世界の裏側って・・・。」

 

 天使、堕天使、そして悪魔の三大勢力。そして、それ以外の数々の神話勢力。

 

 私の故郷は本当に凄い星だった。

 

 銀河連邦に報告するべきだろうか・・・。

 

 そこから説明が更に続く。

 

 長年対立していた各勢力。だが、ある存在の出現で急速に和平が進んでいったという。

 

 それのきっかけを作り、そして中心となったのはイッセーであること。

 

「ここでイッセーか。一体あいつに何があった?」

 

 ここからが肝心な部分なのは私にもわかる。

 

 イッセーがその裏の世界で何をやらかしたのだろうか?

 

「・・・それにはアギトのことと神の遺産である神器(セイグリット・ギア)のことを話さないといけねえ。」

 

 アザゼルさんは話を進めていく。

 

 それは・・・。

 

 

 

 

 SIDE 誠。

 

 自分達は眠り続けるイッセーと面会することとなった。

 

「…イッセー、久し振り。」

 

「本当に・・・。」

 

 どうして眠っているのか含めて全ての事情を聴いた。

 

「お前・・・すげえことになっていたんだな。この世界の新たな神って。」

 

 イッセーがアギトと呼ばれる神の因子と神滅具という神器の中でも最上級、それも伝説のドラゴンの魂を宿したものを持っていたこと。

 

 そこに…異世界の強大な力を持つ龍との契約。

 

 彼は数々の存在を引き寄せていた。

 

 自分達もその中の一つだと。

 

 そしてイッセーは過去に死んだ神の代わりに神になると決意。その戦いの際にその体に宿っていた新たな存在が暴走し、それを押さえつけた後、暴走の反動で眠ってると。

 

「そうか・・・お前達が・・・。あの時は神器の中で眠っていたからわからなかったが。」

 

 そこに紅い髪をした一人の男性が現れた。

 

「あんたは?」

 

「紹介が遅れた。俺の名前はドライク。まあ、イッセーの相棒。二天龍の赤龍帝だ。今は人の姿をしているが・・・。」

 

 どうやらこの家でトップクラスの力を持つ、ドラゴンの化身体にあったようだ。

 

「あらら・・・早速来たか。」

 

 そして、小さな女の子二人を連れた女性も現れる。

 

「私の名前はクレア・ドラグレッター。同じくイッセーの相棒よ。そして、この子達は・・・。私達の娘。」

 

「そうか・・・。イッセーの奴、本当に恵まれているな。」

 

 一目でわかる。イッセーがどれだけ愛されているのか。

 

そして、この二人がイッセーの相棒であることも。

 

「…念願であるハーレムを作っているのも呆れたけどね。」

 

 それでハーレムを作りつつあるという点はもう呆れることしかできない。

 

 あいつめ・・・小さい頃からの夢を叶えてやがる。

 

「ほう・・・彼があのインドラの秘蔵っ子か。そして…まさか君まで来るとはね。まさか我が同志の幼馴染の一人だったとは驚いたぞ。広大なはずなのに世界って本当に狭いものだよ。」

 

 そこにもう一人来たけど・・・。

 

「ガタガタガタガタ・・・・・・。」

 

 そこに現れた存在にイリアが震えだした。

 

 その震え方が尋常じゃない。

 

 こちらと同じ歳の普通の青年にしか見えない彼に?

 

「ななななななっ・・・なんであんたまでここっ・・・ここに!??」

 

「久しぶり、イリア。あの時以来か。」

 

「どうした?イリア。」

 

 どうしてここまで警戒し、おびえて・・・。

 

「こっ…こいつはポルム。たった一人で、そして、一日で私達の銀河連邦を崩壊寸前に追いやった、だっ、大魔王よ!!」

 

『!?』

 

 その言葉に俺は震え上がる。

 

「ああ・・・なるほど。相当おびえているわな。」

 

「当り前よ!!あなたがあれほどの怪物だって初めて知ったわ‼‼はっきり言ってこちらは絶望しかなかったんだし。」

 

銀河連邦…宇宙にあるから相当デカい規模だよな?

 

 それを単独で崩壊寸前までに追いやった?

 

 それも一日で?

 

 あのポルムって奴が?

 

『・・・・・・。』

 

 進兄さんもさりげなく警戒している。

 

 一体目の前の彼はどれだけの怪物というのか想像もできない。

 

 そんなのどこを吹く風というようにポルムはイリアに尋ねる。

 

「…あの後、銀河連邦はどうなった?」

 

「まあ、撃さんが頑張ってくれたおかげで、いい具合になっているわ。」

 

「なるほど、思った通り。彼なら安心だ。ふふふふふふふふふ・・・。」

 

 その返答に大変満足げな笑いを見せるポルム。

 

「それがこいつの狙いだ。最初から彼を頭に据えるつもりだったのだろう?」

 

 そう言いながら金髪美人が現れる。

 

「ってサムス・・・あなた知っていたの?私もまあ…なんとなく意図は気づいていたけど。」

 

「それが分かったから、こいつを追ってあちこち旅していたんだ。やっと捕まえたし。」

 

 なんと、あのパワードスーツの中身が女性だったとは。

 

 名前と声から男だと思っていたけど・・・。

 

 しかも凄い美人。アメリカン系の美人・・・。

 

 スタイルも抜群。

 

思わず見惚れていたら・・・。

 

「・・・ふん。」

 

「いたたたたたたたたたたたたっ!?

 

 なんかイリアが不機嫌になって、尻をつねってきた。

 

「ほうほうほうほう・・・。」

 

 それを見てポルムさんはなんか微笑んでいますし

 

「・・・しかし傑作だよ。地球出身の彼が、今や銀河連邦のトップだもんな。」

 

 へっ?地球出身?

 

「…無茶苦茶恨み言を言ってたわよ?嵌められた。全て押し付けられたって。絶対にお礼参りに行ってやるって。」

 

「ふははははは!!流石は宇宙刑事。良く分かったものだよ!!一応ばれないようにいろいろとやったというのに、気づく辺り、刑事としてもやはり優秀だったよ。そうだな・・・なら彼に伝えてくれ。最高の褒め言葉をありがとう!!その調子で、新たな銀河連邦を頼むとな!!なーはははははははははははははははっ!!」

 

『・・・・・・。』

 

 それだけでわかった。

 

 なるほど、確かに魔王だ。どうやらやりたい放題に、好き勝手に暴れるだけ暴れて、後のことを誰かに押し付けたという形だな。

 

 その…地球出身の宇宙刑事・・・撃って人に。

 

 相当な策略家だぞ・・・あれは。

 

「まあ、それならこいつの手綱は頼むわ。貴女一人じゃ、荷が重いかもしれないけど。」

 

 イリアの言葉に、サムスは笑う。

 

「安心しろ。一人じゃないさ。なあ…私達の責任を取ってくれるって言ってくれたんだし?」

 

「・・・・・・。」

 

 笑いを引っ込め、冷や汗を流すポルム。

 

「私達?」

 

「こいつはあちこちでかなり罪を犯していてな。その償いをさせているわけだ。」

 

「そういうことです。」

 

 そこに可憐な少女が現れる。金髪に凛々しい顔をしている。

 

 うん、なんか姫様って感じが・・・。

 

「初めまして。私はリースといいます。とある世界で王女をやっていました。でも、あの方に心奪われ・・・追いかけてきました。」

 

『・・・・・・。』

 

 マジで王女ですか!?

 

 そのことに驚くのはイリアも同じだ。

 

「へえ~…サムスだけじゃなかったんだ・・・へえ・・・。」

 

 そして、ポルムの罪が何か理解したらしく、大変冷たい目で彼を見る。

 

「そこが弱点ってことか。流石大魔王だけのことはあるわね。うん…そんな部分まで大魔王だったなんて・・・良いこと知ったわ。」

 

 声のトーンが平坦で、逆に怖い。

 

 なんだ?あいつの罪って・・・。

 

「それに、こいつを止めるだけなら最強の奴もいる。」

 

「イリアさん!!!今の話って本当ですか!?」

 

「げえっ!?」

 

 そこに銀の髪をした女の子がやってくる。そして、ポルムの口から悲鳴が漏れた。

 

「あんた誰?」

 

「あっ、自己紹介遅れました。私はヒュミナと言います。こいつとは幼い頃からずっと一緒で・・・。」

 

 つまり、ポルムの幼馴染・・・。

 

「それでポルムったら!!なんてことしてんのよ!!サムスのいた世界で大暴れしたのは知っていたけど、そんなことまでしていたなんて初耳よ!!」

 

「いっ・・・いや、彼なら大丈夫だと見抜いた上でだ。それに彼がトップに立つのに誰も文句言われないように・・・。幾つものシナリオを考え、それ全て達成させたから、もう彼以外誰もいない状況にしただけで・・・。」

 

「それを逃げ道を塞いだというのよ!!ああ…後でその人に謝らないと。」

 

「・・・・・・。」

 

 イリアは呆然とその光景を見ている。

 

「驚いたか?どうやらポルムに対する最大のストッパーみたいでな。」

 

「ええ。安心したわ。」

 

 やはりこの世に絶対無敵というのは存在しないらしい。

 

 どの相手にも多かれ少なかれ弱点はあるものだ。

 

 安心した。いや…心の底から。

 

「それに今のあいつには相方もいる。」

 

「そういうこと。本当にいろいろやらかしてんな。武勇伝に困ることはないでしょ?」

 

 そこにもう一人黒髪の少年が現れる。

 

「現在私は悪魔でね。彼・・・サイガのクイーンをやっている。」

 

 ポルムが背中から悪魔の翼を出す。

 

「それって悪魔達が人間などの他種族を眷属にするってあれか?だが、それって実力に見合ったものがいるって・・・。」

 

 一応、その辺りの悪魔の事情もリアスさんから聞いている。

 

 イッセーとの出会いも彼を眷属にしようとしたこと。

 

 そこから全てが始まったと、つい最近のことのはずなのに、そのことを振り返っていたリアスさんが凄く遠い目をしていた。

 

 まだ半年も経っていないのに・・・。

 

 その僅か数か月で何があったのだろう?

 

 後でじっくりと聞きたい。

 

 そんな中で、ポルムから衝撃の言葉が放たれる。

 

「簡単なことだ。サイガは余と互角。それだけのこと・・・。」

 

「え?あんたもポルムみたいな怪物なの!?」

 

 その言葉にイリアが固まる。

 

「つまり、そちらさんも途方もない実力者だと・・・。」

 

「まあ・・・そういうことかな?まだその力を完全に物にしたわけじゃないけど。」

 

「ちなみに同じほどの実力者はごろごろとおるぞ。最低でも余とサイガが組めば銀河連邦くらい・・・十時間で簡単に壊滅できる。そんなレベルの連中がここにはたくさん集まって・・・。」

 

「…地球って何!?私の故郷ってこんなにおかしかった!?」

 

 イリアが頭を抱え、悲鳴を上げる。

 

 あまりに信じられない事実を突きつけられ軽く混乱している様子だ。

 

 銀河連邦崩壊クラスの実力者が集う星…集う街、集う家(?)

 

 なるほど・・・すげえ魔境だ。

 

 ここで宇宙全体の危機が起きてもおかしくない。

 

「ここはまさに火薬庫だな。」

 

 進兄さんも笑みを引きつらせている。

 

「どうどう。でも・・・心根はいいみたいだ。」

 

「?」

 

 自分の言葉にイリアが首をかしげる。

 

「イッセーの下に集まる奴らって、そういう奴らだってこと。そっちも例外じゃないでしょ?」

 

 少なくともこのポルムという奴…理由もなく銀河で大暴れする奴には見えない。

 

 それに、どうやらこの星で居を構えるのは間違いないし。

 

 そうでないと相方の件、そしてサムスさんを始めとした皆の責任という言葉も出てこない。

 

 そう考えたら、滅多なことはしないだろう。

 

「ほう・・・。素晴らしすぎるレベルの人を見る目だね。少なくとも、その歳で余の腹の内を探れるほどの・・・。」

 

 自分の発言に、ポルムは感心したように目を細める。

 

「君、もしかして転生者?」

 

『!?』

 

「そういえば・・・そのような相談をされていたな。」

 

 オプティマスが先に言ってくる。

 

「あ~うん。えっ?ああ・・・なんかそれっぽい。」

 

「…まだ完全じゃないのか?」

 

「そう、それ。一体誰のかわからないんだ。ただ・・・アギトの存在だけは知っていて。」

 

『!?』

 

 その単語に皆驚く。

 

「…それは興味深い。アギト関連の転生者なんて初めてだ。よし、この手を調べる術式や、道具があってね。試してもいいかい?」

 

 その中で素晴らしい笑顔を浮かべながら、ポルムさんの背後からいろいろな道具が出て来ましたよ?

 

 なんか拷問器具もあるし。

 

「へっ?」

 

「ふふふふふふふ・・・痛くしないから。ちょっと記憶が飛んだり、人格分裂だったり、一日ほど廃人になるくらいだから!!」

 

 その言葉を聞いた瞬間、自分はイッセーの部屋を飛び出した。

 

「謹んで遠慮します~!!」

 

 だって、大丈夫な要素はまったくねえ!!しかも、本人大丈夫って一言も言ってないし!!

 

 痛くなくても安心できない!!!

 

 不安・・・いや、絶望しかねえ!!

 

「逃げなくていいじゃないか~。」

 

 でも何時の間にか自分の前で先回りをしているポルムさん。

 

「!!?」

 

 どうして先回りされているのか、という疑問もあった。

 

 でも、まず大切なのはそのまま進んでも、引き替えすために止まったところですぐに捕まるという事実がそこにあるということ。

 

 だから・・・。

 

 こっちが驚きながらとった手段は、相手の股の間をスライディングで抜ける!!!

 

「なっ!?」

 

 その際に足を払って動き止めるのも兼ねて!!

 

「おっと!?へえ・・・普通なら立ち止まって別の方向へ逃げるか、固まって動けないはずなのに、逆に驚きながらすり抜けてくるなんて・・・。ますます興味を持ったよ。」

 

 でも、足を払い、すり抜けたのに、あいつは空を飛んでいる。

 

 って、背中から翼を出して本気で追いかけてきやがった!!

 

「逃がさないよ。君という存在を本気で調べたくなった。」

 

 必死で自分は逃げる。大魔王の魔の手から!!

 

「ひえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 なるほど…確かに魔王だ。マッドサイエンティストという意味で。

 

 逃げる…とにかく逃げまくる!

 

 現在地が分からなくなるほどに逃げまくる!!

 

「・・・って、早い。そしてすばしっこい。なんて奴だ。しかも廊下をバレルロールって・・・。」

 

 こういった危機は何度もあるからな!!

 

 そう簡単に捕まってたまるか!!

 

 壁から天井を走りながら回ることも何度あったか。

 

 廊下をバレルロールのように走ることくらい誰だってできるだろ?

 

 俺を追いかけてきた連中は、その多くがパニックになっていたが…まあ、悪いことをしている奴らだし、罪悪感を思い出してくれたのかも。

 

「いや、それは違う!!」

 

 そこでツッコミ。大魔王からツッコミが来るなんてめったにない経験だわ。

 

「まさか余がツッコミに回ることになるとは・・・これだから天然という奴は。それはそうとして、これではキリがない。まさか逃げ足だけでもこのレベルなんて。スタミナは・・・これまでの経緯を考えると期待しない方がいいか。仕方ない。防犯システム起動!!」

 

 その言葉とともに壁、床ともに変な魔法陣やスイッチが出現。

 

 ついでに言えば、レーザーの網まで現れる始末。

 

 うん…あれ全部罠だ。

 

 保護者のじっちゃん、師匠、自分をここまで育ててありがとう。

 

 今のうちに感謝しておくよ。

 

 人生最大の危機、到来です。

 

 無数の罠がまるで津波のように襲い掛かってくる!!

 

 壁を蹴り・・・。

 

 天井を足で叩き・・・

 

 床を滑り・・・。

 

 ありとあらゆる手段で逃げる!!

 

「嘘・・・。まだ粘れるなんて・・・。まさか彼は忍者だというのか?!この日本で有名な影の執行者の末裔だとでも!?本当に驚かせてくれる。」

 

 何やら驚いている様子だけど、そんなこと気にしている場合じゃない。

 

 長くはもたないからだ。早く安全な場所を探さないと。

 

 しかもドアにも何か展開されていて・・。

 

 んん?近くの扉には何もない・・・。

 

 半ば空いているのか、魔法陣も何もない。

 

 ブラフっていう可能性もある。

 

 だが、この場合は・・・。

 

 うん・・・ここしかねえ!!

 

「なっ!?まさか・・・。」

 

 とにかくその扉に飛びこめぇぇぇぇ!!

 

 

 

 

SIDE アザゼル

 

 むう…後何が足りないのか・・・。

 

「私としては複数の技術と動力体系を結ぶ、何かが必要かなと思うけど?」

 

 そこか。確かにこれは色んな仮面ライダーの技術を結集させた傑作。

 

「もう一つ・・・動力とシステム制御を司る何かが欲しい。イッセー達の神滅具ならドライグ達がやっているような。」

 

「なるほど。何かの魂を・・・。でも一歩間違えたら危ないわよ?」

 

 巧を交えて、俺達はある天使と議論を重ねていた。その天使曰く、巧には色々と教えたいらしい。

 

 相当有望な逸材だと。

 

 なんか鼻が高いぜ。巧の技術者としての腕と発明家の才能を各勢力から高い評価を受けているなんてよお。

 

―――ガイアメモリにはそんな機能はない。アストロスイッチもそうだ。あるとしたら別の技術。だが、人造アンデットなどの技術は危険すぎる。

 

 フィリップの方もいろいろと検索してくれただな。まあ…言われるまでもねえ部分もあるが。

 

 アンデット関連は剣崎の奴からやめるように強く言われている。あいつ自身がその被害者だし。

 

 説得力があるっていうレベルじゃねえ。

 

「こう・・・エネルギーユニットとAIを兼ねた何かが・・・。」

 

んん?防犯システム、犯人捕獲用で作動か。

 

 泥棒でも入ってきたのかね?

 

 って誰か飛び込んで・・・・おっ?

 

 なんで誠の奴が飛び込んでくるんだ。

 

「ぜえぜえ・・・ぜえ・・・。」

 

 その後ろからポルムが呆れた様子でやってくる。

 

「なんて判断力。抜け目の無さと言い…ロックが掛かっていなかった部屋に飛び込むなんて。罠かと思ってしまうところなのに・・・。こっちの防犯システムの穴を直感で見抜くとは恐れ入る。間違いなく彼は余が認める猛者だよ。」

 

 はい?防犯システムの穴だと?

 

「改良点だ。でもおかげで助かった。すぐに直すように手配しよう。」

 

「はあ、はあ・・・。」

 

「でも、やっぱり君は誰かの転生者ということか。それも相当な修羅場を潜り抜けた。まあ、調べた限り、現世でも相当な修羅場の連続なのはわかっているけど。それでも異常だ。それこそ前世の経験をプラスした上で辛うじて説明つくレベルだ。」

 

「試したと言う事か?」

 

「まあね。案外こういった方法が効果的な場合が多い。危機的状況が記憶や経験を必要とするから。まあ…君の経歴からして、並みの状態じゃ無理だと判断して・・・。」

 

 おいおい・・・。うちの防犯システムを起動させないと検証できないってどんなんだ?

 

 一度、スサノオ殿に実験させたが、あいつが玄関から靴を脱ぐことすらできずに撃沈されたレベルの防犯システムだぞ!?

 

 あっ、もちろん本人の承諾はもらっているから安心してくれ。

 

 神すら玄関から上がらせないレベルの防犯システム。あまりに過剰すぎるが、ポルムの奴がいい笑みで・・・

 

―――――何事も実験が大切だし。いいデータが取れたよ。

 

 と言いやがった。

 

 うん…はっきり言って、俺は・・・。

 

 その言葉に感動したね!!

 

 思わず両手で握手したよ!!

 

 あいつといるとどんどん面白いことができる!!

 

 そして、それに巧までいい笑顔なのがなあ。

 

 うん…共同作業はいい。

 

 だが・・・その合作の穴を見つけたとは・・・本当にただもんじゃねえな。

 

「・・・・・・・。」

 

 だが、被害者であるはずの誠の奴が全然反応しない。

 

「どうしたの?」

 

「G3・・・・。」

 

 何?!どうしてあれの名前を?

 

 誠が見ているのは三大勢力がその持ちえる技術の総力を結集して作り上げようとしている物。

 

 その名もG3!!

 

 完成すれば、魔王クラスの戦闘力も夢じゃない逸品だ。

 

 テーマは人造的に神滅具を作ること。人造神器、そしてその禁手化は巧のおかげで一定の成果をえることができた。

 

 巧の成果は極めて大きく。冥界、天界どころか各神話勢力すら問わず、技術者達の大きな注目を集めている。

 

 そんな中の新たなステージってやつだ。

 

 こちらも人造神器などの技術を総動員したのだが…足りねえピースがあって今、皆で悩んでいる最中・・・。

 

 ちなみに極秘のプロジェクトだ。

 

 そんなプロジェクトの名前をどうしてあいつが・・・。

 

「やっぱり・・・君だったか・・・。」

 

 おっ?天使側からの技術者がため息をつく。

 

 彼女はこの家に今日来たばかりだ。

 

 思えばその天使が発起人、かつ名付け親だった。前の神が生み出した最後の天使。だが、生まれたままずっと眠っていたらしく、俺達も初めて見る天使だった。

 

 四月に入って目覚めたらしく、そこで驚くことが発覚する。

 

そいつはその神の遺志を継いでいた。言わば、神様のラストメッセージ。

 

神は自身の後継者が現れ、三つの勢力が手を結ぶ時にその懸け橋となるべく彼女を最後に生み出したのだ。

 

異世界から召還したある人物の魂と共に。

 

 あの神はこのことも予見していたのだ。本当に恐れ入る。

 

 そこから多忙だったらしく、中々この家に来れなかった。だが、G3プロジェクトに問題が発覚したことでこの家にやってきた。

 

「私がいる。だから、あなたも、と思っていたけど・・・本当に久し振り。氷川君。」

 

「へっ?久し振り・・・っ?」

 

 軽く頭を抱え、痛みに顔をしかめた誠はいった。

 

「…小沢さん?」

 

 この天使は自分をそう呼ぶように言っていた。その名前を誠は口にしている。

 

「うん。いや~やっぱり運命ってやつかな?この世界で私がこれを作るのも…そしてその装着者として・・・氷川君、あなたがここにやってくるということも。まあ、元々あなたがこの世界に来てもおかしくないと思って、あなた用に調整していたから。」

 

『・・・・・・・・。』

 

 俺とポルムは視線を見合わせる。

 

 あまりに予想外のことにお互い驚いているということらしい。

 

「こりゃ、おもしれえ。やっぱ流石イッセーの幼馴染だけのことはあるわ。」

 

「うん。しかし、アギトのことを知っているということは、もしかして・・・。」

 

「・・・なんでさ・・・。」

 

 そこでもう一人やってきてしまった。

 

 その名はこの家の主・・・兵藤 翔一だ。

 

『あっ!?翔一(君)!!』

 

 彼の姿を見て二人が一斉に反応。

 

「・・・おやおや・・・まさか・・・。」

 

 どうやらそのまさからしい。この二人・・・翔一殿の・・・。

 

 こりゃ、更に面白いことになりやがった。

 

――――突然どうしたのかね?

 

「はあ…誠、無事だったか・・・。」

 

 そこにしゃべるベルトと進ノ介がやってくる。

 

―――おっ・・・なんだね?そちらにある素敵なパワードスーツは・・・。

 

 のちにその足りないピースをしゃべるベルトさんが埋めてくれることになる。

 

 イッセーの奴は本当に色々なものを持っていやがると思ったのは俺だけじゃないだろう。

 

 答えが向こうから転がり込んでくるなんて。

 

 

 

SIDE イリア

 

 はあ・・・。

 

 私は深く・・・それはもう深過ぎるくらい深いため息をついていた。

 

「私の悩みって・・・なんだったの?」

 

 私はネオ生命体のプロトタイプとして改造された。その直後に攫われ、人間じゃなくなった体に愕然とし、地球に帰るのを諦めたのだけど・・・。

 

「まあ…気にするな。皆そんなもんだ。結構身内に似たケースが多いと分かったら・・・。」

 

 新君が慰めてくれる。

 

 でもね…それでも思ってしまうのよ!!

 

 誰か・・・私の決意を返して。

 

 かなり悲痛な決意だったのに!!

 

 そこから銀河で探索者として頑張ってきたのよ!!必死に!!

 

 嘆きを止めない私を新君は苦笑い。

 

 そしてイリナも同じ心境らしく、優しく慰めてくれる。

 

「せっかく帰ってきたんだ。墓参りくらいしておけよ。」

 

 そこで弦太郎が突然そんなことを言ってきた。

 

「へっ?墓参り?って・・・誰の?」

 

「君のお父さんとお母さん、それとフェンに決まっているじゃないか。」

 

 お父さんと・・・お母さん、そしてフェンの墓?

 

 でも…私は皆が血まみれで倒れたところを見ただけで・・・。

 

 フェンも必死で私を助けようとして・・・。

 

「口止めされていないから言うけど、誠君と進兄さんが作ってくれた・・・。」

 

 ちょっとそれってどういうこと?!

 

「俺達も最近知ったけどさ、そっちが行方不明にあった後、看取ったのは誠なんだぜ?」

 

 誠君が?

 

「あいつが墓の管理をしている。毎年…毎年な。あなたのこともすっと待っていたから。いつかここに来るって・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

 そうか・・・誠君・・・。

 

「・・・私達も花を手向けたわ。この街に来た時に。」

 

「いろいろと世話になったから。」

 

 皆・・・。

 

 私の胸が熱くなっていくのを感じた。私のために…こんなことをしてくれるなんて。

 

 そして、今でも私のことを待っていてくれた誠君にも・・・。

 

「・・・ありがとう。」

 

 目頭が熱い。こんなの久し振りだ。こんなに熱くなったのも・・・。

 

「本当に・・・ありがとう。」

 

 何も言わずに、イリナが私を抱きしめてくれる。それに私は暫く甘えることにした。

 

――――帰ってきてよかったな。イリア。

 

 私もそう思う。私…こんなに思われていたんだ。

 

 

 

 そこから少し落ち着き、私はある相談をすることにした。

 

「・・・私の体のことは知っているわね?」

 

「一応、簡単に調べている。」

 

「なんとかできないかしら?今のままじゃ…暴走してばかりで。」

 

 私の体はネオ生命体としての機能を備えているのだが、どうも上手くかみ合っていない。

 

 今更元に戻れるとは思っていない。でも、この力を活かすことがまだ出来ていないのだ。

 

 変身する前でも十分強いのが幸いだけど。

 

「そうだね。まず…君の体からは強い「フォース」が感じられる。まずそこ・・・。」

 

 って!?いきなり別の人が入ってきていますけど!?

 

「師匠?!」

 

「剣崎さん・・・。」

 

 イリナ達が彼のことを師匠と呼ぶ?

 

「はははは・・・師匠って、まあ、君達のマスターではあるけど、なんか照れくさい。」

 

 マスター?

 

「うんうん・・・やっぱりイッセー君の近くには素質のある子がどんどんやってくる。うん、君も弟子、いや、この場合はパダワンにしたいくらいだ。」

 

 えっと・・・なんの弟子ですか?

 

「ジェダイだよ。」

 

 ジェダイ?

 

 ああ…あの伝説の・・・。

 

 かつて銀河を守っていた超常的な力を使う騎士達。

 

「へえ・・・ジェダイ・・・。」

 

 私も探索者としてその遺跡をあちこち視たけど・・・。

 

 うん・・・・。

 

「・・・・・・・・・はい!?」

 

 なんで私がその伝説にならないといけないのですか!?

 

 その前に剣崎さんって・・・。

 

「一応ジェダイマスターをしてね。」

 

 ジェダイ・・・あの伝説が目の前にいた。

 

 流石、地球。伝説のジェダイまでいるなんて・・・。

 

 もう何がいても驚かない方が賢明ね。

 

「それ以前に、いろいろとややこしい経緯をもっていたりするんだ。ははははは・・・。まあそれはともなく、力の制御の助けになると思う。君の力はフォースやこの地球での気と同質。どういう理屈かわからないけど、君は極めて強大なフォースを持っている。それもおそらくこの世界では最大。こっちだって足元に及ばないレベル・・・。」

 

 剣崎さんが目を細める。

 

「その力・・・ぜひ無駄にしてほしくないし、少なくとも暴走しない程度にまでには強制的に教育したいと。」

 

 そんなに凄い力を・・・私が?

 

「ちなみに気としての力は俺達の出番だ。」

 

 そこにもう二人現れる。

 

 一人は大変体格のいい、大男さん。鉄のような浅黒い肌が特徴的だ。

 

 相対するだけで猛者だとわかる。それも…この中では断トツ。

 

 でも、怯えさせない辺り、威圧しないようにする心配りも感じる。

 

 きっと…凄く良い人なんだと。

 

 これは私が宇宙で苦労してきて、そこで養われた人を観る目と、以前からなんとなく感じていた勘みたいなもの。

 

 もしかして、これがフォースだったりするの?

 

「イッセーの兄貴分をやっている鋼鬼という。黒歌、仙術の素質とジェダイの素質は似ているのだよな?」

 

 鋼鬼さんの隣で猫耳に尻尾、そして着物を派手に着崩した女の人がやってくる。

 

 うっ、この人もナイスバディ・・・。

 

 なんかこの家の女性陣って、破格のスタイルを持つ人達が多いような気がするわね。

 

 軽く嫉妬してしまう。

 

「うん・・・。ただジェダイのあれは例の器官があるかどうか。それが違いよ。」

 

 どうやらジェダイに関して、この家のメンツは相当に調べているらしい。

 

「あれがあると、仙術だって更に効率的にできる。はっきり言って反則的な器官にゃ。」

 

「まあまあ。あれがあるゆえの未来予知。そして、その双方の素質をこの家にいる連中の中で断トツの規格外で持っているわけか…。」

 

「フォースと仙術の技術検証をしていたけど…その成果をあの子で試してみていいかもしれにゃい。」

 

 あっ・・・あれ?なんか私を見て凄くいい笑顔?

 

「ふふふふふふ・・・流石イッセーの幼馴染の一人だけのことはある。」

 

「鍛えがいありそうですね。」

 

「仲間が増えるぞ!!」

 

「面白そうだわ!!仲間が増える。」

 

 イリナ?あなたもしかしてフォースを使うの?それってつまりあなたもジェダイ・・・。

 

「まだ弟子の段階だ。天使とジェダイの相性は抜群だ。一時衰退したけど、この世界でどんどん増やしたいところだよ。おかげで一つの夢ができた。それはこの世界で俺は多くの弟子を育てて、ジェダイ騎士団を作ることだ!!」

 

 ジェダイ騎士団・・・。

 

 この星で復活しようとしているのか。銀河の守り手たる伝説のジェダイ達が・・・。

 

 このこと、銀河連邦に言った方がいいよね?

 

 無関係じゃないし。

 

 それに銀河の守り手が増えるのは非常に喜ばしいこと。

 

「その夢の第一歩として、是非、修行をつけたい。」

 

 えっと・・・。

 

――――――悪い話ではないぞ?少なくともそちらの力の制御の役に立つなら・・・。

 

 ・・・うん。そうだね。

 

 メリットは大きい。それにこの力にもまだ何かある気がするし。

 

 でも、この時私は知らなかった。

 

 ここで剣崎さんたちに修行をつけてもらうことが、私が宇宙の伝説になる第一歩だったなんて・・・。

 

「んん?」

 

 そこで剣崎さんは驚いたように空を見る。

 

「どうやら…また一人、目覚めつつある子がこっちに向っている様だ。豊作豊作。」

 

 

 

SIDE オプティマス。

 

 誠君に関しては安全を確認できた。

 

 どうやらあのポルム殿がいろいろと実験を兼ねてやったことらしい。

 

 本当に彼は魔王なのだろうな。でも、悪い人間でもない。

 

 かなり、油断のならない類の人間であるのは間違いないが。

 

 そんなことを考えながら私は、ある声に導かれてある場所に来ている。

 

 それは・・・車庫というにはあまりに巨大な場所。

 

 たとえ全長が二百メートル、高さ百メートルクラスの大怪獣でもゆっくりとくつろげるような無駄に巨大な空間があった。

 

「あっ、来てくれたんだ!!」

 

 そこには一台のバイクがいた。

 

 朱と金のカラーリングのしたバイク。その車体には私が復活する際にサイバトロンのエンブレムにくっつく形で現れた紋章がある。

 

「君は一体・・・。」

 

 そして、そのバイクからは我らサイバトロンと同じ生命反応がするのだ。

 

 どういうことだ?

 

「えっと・・・まずはこの姿から。」

 

 そこで彼女はトランスフォームしたのだ。

 

 人の姿へと。

 

 そんな馬鹿な。セイバートロン星の生き残りなのか?

 

 いや、でも、彼女のような存在はサイバトロンにはいなかった。

 

 ディセプティコンでもないようだ。

 

 彼女にはどちらの陣営のマークもない。

 

どちらの陣営にも属さないのは・・・。

 

「私の名前はトルネ。兵藤 一誠の最初の眷属。元々はこの地球にあった秘密結社ショッカーが作ったバイクです。」

 

「地球のバイクが?もうキューブがないというのに・・・。」

 

 キューブがないと起こらないはずの現象が起きているのだ。

 

 あれなら物質に生命を与えることも可能だ。

 

 だが・・・生まれたばかりの彼らは理性がなく獣そのもの。

 

 少なくとも目の前の彼女になるまでに相当な時間が・・・

 

 そこまで考えて私はあることを思い出し、考えるのを一度止めた。

 

「いや、この星のことだ。それ以外にも要素があるのだろう。魔法や神の力とか・・・。」

 

 この世界の裏側にいる者達の力は未だに謎が多い。だが、その力は未知ながら素晴らしいとしか言えない。

 

 そのおかげで私は蘇ったのだから。

 

 その要素が彼女を生み出したと考えれば説明がつく。

 

「…順応が早い。」

 

 実際に存在する力。そして、それによって命を救われた体験した以上、認めない方が不毛だ。

 

 謎が多いから早く情報を収集して、整理をしたいところだが。

 

 情報の整頓は適応の第一歩。

 

「やっぱり、人生経験が違うのかな?」

 

「そうですね~。」

 

 そこにもう一人やってくる。

 

「…君達も同じ類か。」

 

 やってきたのはもう一台のバイクと・・・ホイールが球体になった大型の装甲車のようなもの。

 

「いやね。新たなアギトの眷属が誰かと思ってきたわけだけど・・・。」

 

「私よりも年上ですのね。」

 

 二人もそれぞれイッセーとは別のアギトの眷属らしい。

 

 その前にアギトの眷属とはなんだ?

 

「簡単に言えば、アギトの使徒。アギトのエルという存在。神で言う…天使。」

 

 以前いた神は、自らの使徒として天使を生み出していたと聞く。今ではその神がいなくなり、新しい天使は一切生まれなくなったとも。

 

「私はご主人が無意識に生み出した最初の眷属。アギトの因子によって魂を覚醒させられたの。レイダー君もそう。ライカさんは元々意思があったから少し違うけど。」

 

「私もその因子で、もうすぐ進化する予定です。」

 

 ライカと呼ばれた・・・その・・・二輪駆動の重装甲車?は頷く。

 

 ちなみにどうやらライカ嬢はトルネ嬢と同じ、バイクに分類されるらしい。

 

 バイク・・・なのか?

 

 機会があったらライカ嬢とその主とともにじっくりとバイクという定義について議論する余地がありそうだ。

 

 第三者の意見も是非聞きたい。

 

 今は、そう今だけは本題ではないので、この疑問は棚に上げておこう。

 

 非常に問いただしたいのだが、堪えておく。

 

「そして、オプティマスさん。あなたにもご主人の因子があります。おそらくご主人があなたを助けようとした結果。アギトの因子を送り込んだと思います。」

 

「私の体にアギトの因子・・・。」

 

 つまり今の私はアギトの使徒ということか。だからサイバトロンのマークにアギトの紋章が加わったと。

 

 だが、それだけでは説明がつかないことが一つある。

 

「おかしいデータがあるのだが・・・この・・・。」

 

――――――アクセス!!

 

 変なメモリが体の中に何時の間にか入っていたのだ。

 

「・・・あ~・・・それは・・・。」

 

「ガイアメモリって・・・あの人まで関わっているのか?」

 

 ガイアメモリ?なんだそれは・・・調べたいものだが・・・んん?

 

 そこで調べたいと思うと、あるデータが入ってきた。

 

 それは・・・膨大なデータ。

 

 その中から必要な情報を見つけ、引き出す。

 

「アクセス…ガイアメモリ。それは地球の記憶。それを基にその力を引き出す力。アクセスは・・・。」

 

 アクセスの力。それは・・・。

 

 どこからも情報を引き出したり、干渉することすらできる「接続」の力。しかも接続できる距離など関係ない。

 

 先ほどはこの地球と言う名のサーバーに接続したことで得られた情報だ。

 

 おそらく、ここから我が母星まで接続することすら簡単だ。

 

 普通の生物なら使いこなせないが、トランスフォーマ―である私なら・・・いや、でもこの力はあまりにも危険すぎる。

 

 これを使えば・・・。

 

「・・・イッセーとその友の信頼に応えないとといけないな。」

 

 どうやら私の自制が重要なようだ。

 

 この力は皆のために使おう。そう誓った時だった。

 

 警報がなる。

 

「あれ?」

 

「何があった!?」

 

―――――――――アクセス!!

 

 すぐにこの家のシステムに接続し、状況把握。

 

 そこには、宇宙船があった。

 

 ある星雲で使われるものだ。

 

 メモリーが確かならあれは・・・。

 

 そして、その船は今、襲われている。

 

―――――ッ!?急いで救援に・・・。

 

 襲っている相手はメガへクス。それが十体・・・。このままでは船が・・・。

 

「・・・あっ、もう向かっているから安心して。」

 

 トルネが無邪気に笑う。

 

 もう向かっていると?

 

 ここの対応の速さに流石に私は舌を巻いた。

 

「・・・私の経験・・・この場で役に立つのだろうか?」

 

 悲しいことに、ここにいる人達のレベルは髙過ぎる。

 

 そんな中で私は何ができるのだろうか?

 

「安心して、おそらくあなたは私たちが欲していたとある素質とそれに関する豊富な経験を持っているから。」

 

 トルネ殿の言葉に首をかしげるが、のちに私は皆の力になるようになる。

 

 総司令官として。

 

 

 

SIDE 弾

 

「ちぃ…メガへクスがどうして!?」

 

 地球に到着しようとしていた時に、突然の襲撃。

 

 十体ものメガへクスが襲い掛かってきたのだ。

 

「狙いは・・・きっとあの二人だろうな・・・。」

 

 メガへクス達は基本的に単独か多くても三体で行動するのが基本だ。

 

 だが、今回は十体という異例。

 

「なんで…メガへクスに狙われてんだ?」

 

 おっ・・・更に増援として十体。

 

 ・・・・・・明確な殺意を感じる。

 

 二人に対する明らかな殺意が。

 

「地球・・・。この星にまた何か起きているというのか?」

 

 この星は父の故郷。

 

 俺の初めての友達がいる星。

 

「ってそれどころじゃねえ。甲板に出るぞ!!」

 

 そう言って、俺は甲板の上でメガへクスの内一体と対峙。

 

「…蒸着!!」」

 

 その言葉とともに俺の姿は変わる。

 

 コンバットスーツを纏った姿に。

 

 銀色のスーツは銀河警察からしても有名なもの。

 

 それは父から受け継いだギャバンのもの。

 

―――――説明しよう。銀河連邦のコンバットスーツは僅か0.05秒で・・・。

 

「黄金の果実…奪う。」

 

 いつものナレーションが入る前にこちらに攻撃がやってくる。

 

 まあ、僅か0.05秒で蒸着できるのだから、かわしたり防ぐことに関しては何も問題ない。

 

「こちらの船を狙うとは…いい度胸してんな。」

 

 ポルムのおかげで、宇宙刑事引退しないといけなくなった父の分まで頑張るぜ!!

 

「…光を超えるぜ!!レーザーブレイド!!」

 

 剣を取り出し、メガへクスに切りかかる。

 

 だが、すぐにそれに反応を示し、左腕を刃に変形させて受け止めてくる。

 

 その後、右腕を大砲へ変化。こっちに向けてくるがそれを蹴りで跳ね飛ばす。

 

 よろけたところを斬る。

 

 一発でメガへクスのボディに火花が散り、装甲を切り裂く。

 

「厄介だな。」

 

――――銀河警察の宇宙刑事…確認。過去のデータ参照…コードネーム、ギャバンである確率97パーセント。

 

 こいつら一体一体が、下手なダブルモンスターよりもはるかに強い。

 

 下手な攻撃は無駄だ。極めて高い自己修復機能ですぐに治る。

 

 現にボディの傷もすぐに治る。

 

 おまけに情報を共有している。

 

 やっぱり過去に倒した奴のデータまで共有していたか。

 

――――ギャバンダイナミックに警戒。

 

 あいつを一撃で倒すにはそれしかねえが、当然警戒されているわな。

 

 それが十体。

 

 シャレにならないぜ。

 

 だがまあ・・・。

 

「守るためにひと肌脱がせてもらうぜ!!」

 

―――――物量で押す。Fire!!

 

「そういうこと・・・なら・・・。」

 

 場に現れた無数のエネルギー砲弾による攻撃。

 

 かわすこともできねえし、かわしたら艦に被害が出る。

 

「…試してみるか。」

 

 レーザーブレイドの刀身に手を当て、エネルギーを纏わせ、そのまま砲弾の群れに向けて走り出す。

 

 最近、俺は少しおかしい。

 

 軽い未来予知みたいな力というのか?

 

 どうも単なる勘とは違う力に目覚めつつあるのだ。

 

 今だって、飛んでくるエネルギー砲弾をどのタイミングでどのように斬ればいいのか分かってしまうのだ。

 

「・・・ここ・・・だぁぁぁぁぁ!!」

 

 フルチャージさせたレーザーブレイドでエネルギー砲弾の群れを一閃。

 

 全ての砲弾をあいつに向けて跳ね返す。

 

 自身が放った砲弾を受けて怯む五体のメガへクスたち。

 

 その隙を見逃さない。

 

 そのまま走りながら五体のメガへクスをスピンするようにして薙ぐ。

 

 飛び上がりながら一回転して、その勢いのまま切り裂く、従来のギャバンダイナミックとは違う。

 

 一対多数用のギャバンダイナミックだ。

 

――――バっ…馬鹿な!?

 

 たった一閃で五体のメガへクスを纏めて両断。

 

 これくらい、砲弾を全て跳ね返すことに比べたら楽である。

 

 爆発、消滅するメガへクス達。

 

 それを背にしながら改めて思う。

 

 なんだろう、この力は?

 

 父にこのことを話したら、首をかしげていた。

 

 どうも答えが出ない。

 

 だが、この地球にこの力に対する答えがある気がする。

 

 この力がそう告げている。

 

「はあ、まあ考えってもしかたねえ。まずは・・・。」

 

 残り五体のメガへクスを・・・。

 

「きゃああああああぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 そこで悲鳴が聞こえてくる。

 

 急いで中に入ると・・・。

 

――――始まりの女…捕獲。

 

 一体のメガへクスが助けた少女を捕まえていた。

 

 宇宙空間で漂っていても平気でいた二人の内の片割れ。

 

 あちらの怪我は軽度だったので、もう目を覚ましたのか・・・。

 

「その人を離せ!!」

 

 そこまで言って俺は走り出すが、助ける必要はなかった。

 

 そのメガへクスが突然現れた槍に串刺しになったからだ。

 

 鍔元がバナナ。まるでバナナを向いたら中身が槍だったような変わった武器。

 

――――バナスピア―。

 

「舞を離せ・・・。」

 

 それをぶん投げた奴は、よろよろとよろめきながらも凄まじい怒りでメガへクスを睨み付けていた。

 

「鉱太!?」

 

「ががががががが!?」

 

 まだ怪我が治っていないのだろう。ふらふらになりながらも、黄色い変わったメイスを引きずりながらまだ少女を離そうとしないメガへクスに向かって歩いていく。

 

 逃げようにもそのメガへクスは胴体を槍でぶち抜かれ、壁に縫い止められている。

 

――――マンゴパニッシャー!!

 

「舞を・・・。」

 

 そのままメイスを手にし、ハンマー投げのようにぶん回して・・・。

 

「離しやがれ!!!」

 

 メガへクスを思い切り殴り飛ばす。

 

 粉々になっていくメガへクス。

 

 おいおい、深手を負っている状態で一撃かよ・・・。

 

「うっ!?」

 

「鉱太?!」

 

 彼の方が怪我は酷い。それこそ普通の人間ならとっくに死んでいるほどの重傷だ。

 

「あんた大丈夫か!?」

 

 倒れる前にその体を支える。

 

「…ああ…舞は?」

 

「私は平気だから!!えっと・・・。」

 

「弾。えっと・・・。」

 

「鉱太だ・・・。うっ・・・。」

 

「舞です。あなたが私達を助けて・・・。」

 

「まあな。それよりもお前・・・鉱太?まさか・・・。」

 

「ああ…弾ってまさか・・・。」

 

 俺は変身を解き、鉱太も金髪の姿から親父と同じ地球人としての姿になる。

 

 うん・・・。

 

『・・・・・・やっぱりか。』

 

「へっ?えっ?」

 

 俺達はお互いにため息をつく。

 

「なんでお前人間止めてんだ?」

 

 宇宙空間を生身で生きている時点で確実に人外だ。

 

「いろいろあったんだよ。そういうお前は・・・そうか…宇宙刑事になったんだな。」

 

「あの…この人って鉱太の知り合い?」

 

 舞という少女が俺達のやり取りに驚く。

 

「ああ。昔馴染みだ。」

 

「そういえば、そのべっぴんさんは?」

 

「俺の奥さん。」

 

 うん・・・そうか奥さんか。

 

 ・・・・・・・・。

 

「・・・・・・悪い。もう一度説明たのむ。」

 

 何やら理解不能の単語が聞こえてきましたよ?

 

 奥さん?俺と同じ歳でなんで結婚してんの!?

 

 人外になったついでにお前はリア充にでもなったというのか!?

 

 こっちはそういったことは今まで無縁だったのに!?

 

 ああ…なんか暗黒面に堕ちそう・・・。

 

「説明に時間がかかる・・・。いろいろあったから。」

 

 深いため息をつく鉱太にこっちも聞くのをやめる。

 

 まだ終わっていないからだ。

 

「まあ…あいつらを片付けた後で。」

 

 再びコンバットスーツを纏う。

 

 後ろで現れた別のメガへクス。

 

 それと戦うために。

 

「おっ・・・おれも・・・うっ・・・。」

 

「ここは任せておけ。」

 

 明らかに人外になった体もそうだが、それでも今は戦えないのは明らかだ。

 

――――コードネームギャバン。前回の戦闘時よりも戦闘力のアップを確認。

 

 早速解析しやがったか。

 

――――下手な攻撃は効果なしと判断。

 

 あいつらが一斉に腕を刃に替える。

 

――――かわせない同時攻撃・・・。

 

 まずい。

 

 あいつら、コッチが対応しきれないほどの密度で攻撃するつもりだ。

 

―――より確実性をあげるために到着した戦力も・・・。

 

 そこに壁ぶち破って巨大なメガへクスが三体も現れる。

 

 これが前回との大きな違いだ。

 

 メガへクス達を運ぶ宇宙船。その正体は巨大なメガへクスだ。

 

 トランスフォーマと同じく、二つの形態へと瞬時へとトランスフォームする。

 

 この点から、伝説のトランスフォーマーの関与も俺達は疑っている。

 

 まあ、デカい分、その戦闘力は疑う余地もない。

 

 一体だけなら何とかなる。だが三体は流石にきつい。

 

「・・・あいつ・・・相当俺達を恨んでやがるな。」

 

「やっぱり股関節破壊してやればよかった。金的だけじゃ生ぬるかった。」

 

「こっちもマンゴパニッシャーを叩き込んでやればよかった。ドンカチじゃ甘かった。」

 

『今度あったら絶対にボコってやる。』

 

「・・・・・・。」

 

 うん。後で後ろの二人から事情聴取しないといけないようだ。

 

 黒幕のこと知っているのかと、執拗までに狙われる理由について。

 

 ついでに説教もしないといけない。

 

 どうやら相手が怒って当然のことをしたみたいだから。

 

 断片的だけど、金的と凶器による殴打をしたようだ。

 

 刑事として説教しなくては。

 危機的状況なのにそんなことを考えられるなんて、俺は頭でもおかしくなったのだろうか?

 

 危機的状況なのに、なんとかなると何かが叫んでいる。

 

 一斉に飛んでくるメガへクス達。腕は刃に変形させた状態だ。

 

 それが一斉に襲い掛かってきて・・・。

 

 一陣の風が吹いた。

 

 それはまさに風だった。

 

 通り抜けてからその存在に初めて気付くという点では。

 

 しかもあまりにも早く、何かが通り過ぎたのは分かったが、何が通り過ぎたのか分からない。

 

 そして、通り過ぎた後には・・・。

 

「…遠慮なんていらないよね?」

 

 両断されていくメガへクスと刀を持つ一人の青年の姿。

 

――――おいおい良太郎。俺達にも暴れさせろや。

 

――――せっかく修行したのですよ?

 

「そうだね。」

 

 あいつの体の中に何かが入り込んでくる。

 

 それとともにあいつの髪に赤のメッシュが入る。

 

 そして、刀を肩に担いでいう。

 

「俺・・・参上!!」

 

 まだ再生できる個体がいたらしく、メガへクスが立ち上がろうとしたところで・・・。

 

「言っておくが俺は最初っから・・・。」

 

 既に刀が振るわれ、あらぬ方向から斬撃が飛んできたのだ。

 

「クライマックスだぜ!!」

 

 それが再生途中のメガへクスを切り裂く。

 

 切り方そのものは浅いが・・・。

 

――――自己修復機能不全・・・。

 

 切られた傷が修復しないのだ。

 

「はん!!やっぱ幻魔剣は有効だったか!!」

 

 あいつらの自己修復を阻む方法あるだと??!

 

 他のメガへクス達が攻撃してくるが・・・。

 

「見え見えなんだよ!!よっ・・・はっ!!」

 

 飛んでくる砲弾や剣を簡単にかわしていく。

 

 動きそのものは荒々しいが、この感覚はまさか・・・。

 

 俺と同じ力・・・だと!?

 

「おっ?匂うぜ?フォースの匂いを・・・。あんた・・・素質持ってんな。」

 

 彼は俺の方を見て、笑う。

 

―――モモタロス。そっちの方面にも鼻が効くようになったのね。

 

「おう。さっきの娘と言い、豊作、豊作。こりゃ剣崎の兄ちゃんが喜ぶぜ。」

 

 フォース・・・だと?

 

 確かそれってお時話の伝説のジェダイが使う力・・・。

 

―――先輩。今度はこっちの番だって。

 

「・・・って、やべえな。頼むわ。」

 

 視線を向けると無数のミサイルらしきものを放つ

 

 今度は青い何かが入り込み…髪に青いメッシュが・・・。

 

「お前・・・僕に釣られてみる?」

 

 と言い始めましたよ!?

 

「まあ、もうとっくに釣っているのだけどね。」

 

 一斉にミサイルを放つメガへクス達。

 

 その攻撃があらぬ方へと反らされる。

 

――――ターゲットロック…エラー!?

 

「幻術というやつだよ。お前らみたいな奴らでも簡単に釣れるよ。ほら!!」

 

 手にしていた剣が変化する。一本の釣り竿のような槍へと変わったのだ。

 

 その槍が消える。

 

 だが、それとともに。

 

――――動作…不良・・・!?

 

 突然、無数のメガへクス達が動けなくなった。

 

「言ったはずだよ?もうお前達は釣られているって。」

 

 動けないメガへクス達。

 

「じゃあね。」

 

 指を鳴らすとともに爆発消滅していくメガへクス。

 

 一体何が起きて・・・。

 

「うん・・・これで。おっと!?」

 

 背後から巨大メガへクスが腕を変形させた刃を青年に振り下ろしてくる。

 

 だが、カメの甲羅型の結界がそれを弾く。

 

「まいったね。こういうのは趣味じゃないけど。」

 

――――だったら今度はこっちの番や!!

 

「へっ?ちょ・・・どあああああぁぁぁぁ!!」

 

 今度は黄色い何かが入り込み、髪に黄色のメッシュが入ったぞ?

 

 それを見た巨大メガへクスが弾かれた巨大な刃を再び振り下ろす。

 

 それをあいつは何もせずにその身で受けた。

 

 結果・・・。

 

 振り下ろしたメガへクスの刃が粉々になるという意味不明の光景だった。

 

「・・・まじか?」

 

 動揺しつつも、もう片方の腕も刃に変形させた巨大なメガへクス。その巨大な刃で首を跳ね飛ばそうと薙ぎ払ったが・・・。

 

 それを片手で受け止めた。

 

 その刃を受け止めた手で粉々に握り潰す。

 

 そして、そのまま巨大メガへクスの胴体に張り手をかましたのだ。

 

 その一撃、胴体を粉砕し、消滅させた。

 

「俺に強さにお前は泣いた!!」

 

――――いや、相手は機械だし。それ以前に泣く暇もなかったと思うよ。

 

 なんだ?あいつ・・・。

 

 無茶苦茶だぞ。

 

「さあ、涙はこれで拭いとき!!」

 

 その言葉に残り二体の巨大メガへクスは後ろに下がる。

 

 …あんな奴に接近戦は挑みたくないよな。

 

 間合いに入ったとたん一撃必殺だ。

 

「なんやつまらんのう。」

 

――――遠距離攻撃で粉砕。

 

 二体の巨大メガへクスが腕を大砲に変形。ミサイルまで用意して放とうとする。

 

――――ねえねえ、今度はこっちの番だよね?

 

「しゃあない。行ってきいや。」

 

 続いて紫の何かが入り込み。

 

 紫のメッシュが入る。

 

「さあて・・・張り切っちゃうよ?」

 

 飛んでくる砲弾やミサイルの嵐。

 

 それをまるで踊るようにかわしながら、何時の間にか手にしていた銃を撃ち放つ。

 

 時間がゆっくりとなり、その中を自由に踊っているような感じだ。

 

「魔女の時間・・・こんな形だけど再現したよ?」

 

―――――――ははははは・・・まさか自力であれを再現するなんて

 

「ついでに良い銃の使い方も習ったんだ。今度両足にも銃が欲しいよ!!

 

 弾丸は次々と巨大メガへクスに命中。

 

 一方彼のほうは全く被弾せず。まるで時間をゆっくりと伸ばしているかのような動き。

 

 メガへクス達は全身から損傷による火花を散らしながら膝をついていた。

 

――――バっ…馬鹿な・・・。当たらない・・・。

 

「…倒すけどいいよね?」

 

――なんで…当たらない?

 

 よろめくメガへクスに

 

―――リっ…理解不能・・・。

 

「答えは聞いてない!!」

 

 とどめの銃弾乱射。

 

 そして巨大メガへクス二体が粉砕される。

 

 だが・・・。

 

――――最終プログラム起動。

 

 破壊したメガへクス達の破片が集結し・・・。

 

――――コード ヘル。

 

 ケンタウロスみたいな形態となってメガへクスが再生。

 

「へえ・・・面白そうじゃないの!!」

 

―――――ふふふ・・・ここでこそ私の出番。

 

「えっ?どあああああぁぁ?!」

 

 そんな彼に今度は白いのが入ってきて・・・。白いメッシュと何やら羽できたマフラーみたいなものを身に着けましたよ?

 

「降臨。―――満を持して。」

 

 今度は何?

 

 あいつ…シャーマンか何かか?

 

 次々と変なことになっていくぞ!!

 

 ケンタウロス形態となった巨大メガへクスの背後から四つの腕のパーツが出現。刃に変形して、飛んできた。

 

 それがまっすぐ彼を切り裂いた、ように見えたのだが・・・。

 

「その程度か?」

 

 後ろに手を組んだまま、一歩右に動いただけでそれをかわしていた。

 

 それを見たメガへクスは下半身から無数の砲台を出現。一斉に砲撃。

 

 だが、その砲弾が次々と消滅。

 

「馬ならその背に乗るのが礼儀。」

 

 そして、彼はメガへクスの背に立っていた。

 

 その動き…まったく見えず。

 

 それに遅れて気づいたメガへクスが上半身を回転させて振り払おうとする。

 

 だが、切り裂いたのは宙を舞う白い羽だけ。

 

「…頭が高い。」

 

 今度はそのメガへクスの頭の上に立っている。

 

――――センサーに反応なし?

 

「・・・お前達程度にこの私を捉えることなどできないよ。」

 

 掴みかかる手をすり抜けるようにかわしながら、虫を追い払うような手刀を顔面に叩き込み、メガへクスの前に着地する。

 

 手刀を受けたメガへクスは大きく体制を崩し、驚いていた。

 

「切り札の割にはつまらないものだな。」

 

 いまだ後ろに手を組んだままの彼。

 

 まったくもって余裕だ。

 

――――全方位射撃!!

 

 その挑発に乗ったのか全身から砲台を展開させるメガへクス。

 

――――――ちょっと!!この船に被害が出るよ。

 

「うむ…なら仕方ない。こっちも少し本気を出すとしようか。」

 

 その言葉とともに彼の背後から・・・無数の人影が出現。

 

 それはもう一人の彼。

 

 それが次々と現れ、総勢十人。

 

「・・・なんですと!?」

 

―――馬鹿な・・・全部実体がある?

 

 動揺する俺とメガへクスなんぞどこ吹く風。

 

 彼は両手に小太刀を出現させつつ言う。

 

「仕留める時間のようだ。私の妙技、とくと味わってくれたまえ。」

 

 彼の姿が消える。

 

 そして、十体の彼の姿はメガへクスの周りに何時の間にか立っていた。

 

―――――――全てにターゲットロック・・・。

 

 そこまで言って、巨大メガへクスの全身から火花が散る。

 

―――がががががががが!?知覚…不能・・・!?

 

 そして、全身が切り刻まれ、まるで積み木ように切断面からずれ落ちようとしている。

 

――――自己修復機能・・ぜっ…全開・・・。

 

「しつこいものだな。微塵切りにしたというのにまだ・・・。」

 

―――――とどめはこっちがやるよ。

 

 既に死に体のあいつに向けてメッシュが消えて普通に戻った彼。

 

「飛天御剣流・・・。」

 

 何時の間にか手にしていた刀を鞘に納めながら走っていた。

 

 抜刀しながら斜め上にメガへクスを両断。

 

 とどめにその鞘の一撃で切り裂いたメガへクスの上半身を粉々に粉砕。

 

「双龍閃」

 

 その一撃でメガへクスは終わった。

 

「ふう・・・。なんか思うけど、みんなここまで強くなったら、そりゃあのてんこ盛りが異常な強さになるわけだよ。変身すらしていないし。」

 

――――――皆本当に強くなったよな・・・。

 

―――――イマジンもまた強くなるか。

 

――――――ははははは!!

 

――――――まだまだこれからだよ。

 

―――――――うむ。悪くない。

 

 一体何者?

 

 単独であれだけのメガへクス達を蹂躙するとは。

 

「えっと、それで大丈夫ですか?」

 

「あっ・・・ああ。助かった。重傷者がいて・・・。」

 

 地球にこれだけの戦士がいたなんて。

 

「・・・・あっ。」

 

 そこで思い出す。父の故郷の星、そしてこの国にいる伝説の戦士。

 

「SAMURAI・・・。」

 

「へっ?」

 

「そうだ!!あんたもしかしてあのSAMURAIか?」

 

「えっと・・・。」

 

 この国の伝説の戦士。そのNIHONNTOUと呼ばれる剣一本で奇跡を起こすという・・・。

 

 子供の時に父が自慢げに話していたけど…本当だったんだ。

 

 剣一本でまじで奇跡を起こしていたし。

 

 SINOBIもいるのだろうか?

 

「・・・・・・なんだろう、微妙に正解な部分もあるから否定しにくい。」

 

――――まあ…ある意味今やSAMURAIだわな。

 

「そこが特に否定できない。はあ、何時の間にか人外になったな…僕。」

 

 感動だ。宇宙刑事やってよかった!!

 

 これがこの星の神秘ってやつか?

 

「うう・・・。」

 

 って、鉱太のこと忘れていた。

 

「悪い、船を降ろしたい。どこかにいい場所は・・・。」

 

「あっ、それなら・・・うん・・・真下から格納庫が開くからそこに着陸を。」

 

 格納庫?

 

 モニターを出すと真下の広大な土地の一部が開く。

 

「・・・・・・・・・。」

 

 秘密基地だと・・・この地球に・・・?

 

「そうか・・・これが父の故郷。神秘の国・・・JAPANか・・・。」

 

 父の言っていたことって本当だったんだ。

 

 今度話してあげよう。

 

『だから微妙に否定しにくい誤解はやめてくれないか!?』

 

 何故突っ込まれないといけない。

 

 訳の分からない現象・・・つまり、神秘にある溢れているじゃないか。

 

 そのツッコミが三人同時?

 

 鉱太達からもツッコミがきたぞ。

 

「あいたたたた…傷が開いて・・・。」

 

 怪我している割には律儀だよな。

 




 微妙に否定しにくい誤解ほど厄介な物はない。

 私はそれを落第騎士より学びました。あれは厄介すぎる。

 愉悦ですがね。

 もう一話投稿します。


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集結と黒幕、そして復活です。

   第二次幼馴染。全員集結です。そして…遂に・・・。


   なお、ある方が凄まじいキャラ崩壊を起こすので注意してください。


   では…どうぞ、


SIDE リアス

 

 

 ついに宇宙から直接やってきたわ。

 

「久しぶりだな~。」

 

 イッセーの幼馴染が。

 

 いつか来ると思っていた。そして、それが現実になった。

 

 ただそれだけのこと。

 

 一人は宇宙刑事。彼の戦艦が私達の秘密基地に降り立った時、驚いたわ。

 

 出迎えた弦太郎が笑顔だったけど。

 

「なんでお前らがここに?」

 

「ああ…話すと長く・・・。ってその前に鉱太を!!」

 

「鉱太!?」

 

 そこには予言にあったイッセーの幼馴染第二波の最後の一人がいた。

 

「・・・どうなって・・・。いるんだ?」

 

「それはこっちのセリフだ。だが、怪我がひどいな・・・うん。」

 

「まさか誠・・・か?」

 

「しかたねえ。マッドドクター!!」

 

 へっ?誠君の手に何かミニカーみたいなものが飛んできたわよ。

 

 弦太郎君も何かスイッチをとりだしましたし。

 

「こっちもスイッチを・・・。」

 

『すげえ、痛いが我慢してくれ。』

 

 二人は真剣な声で同時に告げる。

 

 お互いに驚き、二人は顔を見合わせるが…すぐに頷く。

 

 やるしかないと・・・お互いに覚悟を決めた様子だ。

 

「へっ?一体何を・・・。」

 

 重症の彼に向けて二人は行う。

 

 その名前通りのかなりイカレた治療行為を。

 

「ぎゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 しばし、彼の絶叫が響き渡ったわ。

 

「って、痛すぎるわあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 鉱太君が悲鳴を上げるが・・・。

 

「あれ?怪我が・・・治った?」

 

 怪我がすっかり治っていた。

 

「痛い分効果は絶大。」

 

「二つも重ねればさらに効果は乗数倍。」

 

『その分痛みも乗数倍だけど・・・。』

 

「おい!!」

 

 すごいわね。治療する方法も、痛みに気を失わない彼も。

 

 まさにマッドドクター。

 

「・・・ははは・・・はあ。そうなるとイリアもここにいるのか?」

 

「その通り。来てくれてありがとう。」

 

 イリアって人もやってきたわ。

 

「・・・遂にあの時のメンツが勢揃いだわ。」

 

「あの時のメンツ?」

 

「それ以前にここはどこだ?」

 

 弾と鉱太はあたりをきょろきょろとみながら訪ねてくる。

 

「その前に、イッセーがいないぞ?」

 

「安心しろ、ここはイッセーの家だから。」

 

『・・・・・・・・・はい!?』

 

 うわ~相当驚いているわ。

 

「なんでここがイッセーの家なんだよ!?」

 

「あいつに何があった?」

 

「はははは…まあ、事情がすごいわよ。イッセーは。」

 

 イリアさんも苦笑しているわね。うん・・・。

 

「・・・鉱太・・・。」

 

 そこで後ろから眼鏡をかけた黒髪の女性がやってくる。

 

 その名はソーナの女王。

 

 椿だ。

 

「あっ・・・。」

 

 鉱太の方も驚いている。

 

「姉・・・ちゃん・・・。」

 

 姉だと!?

 

「鉱太ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 涙を流しながら鉱太を抱きしめる。

 

「・・・うう・・・うう・・・。鉱太…いったいどこにいたの・・・ずっと・・・ずっと探していたのよ!!」

 

「あ~いや、ごめん。」

 

「ごめんじゃない!!生きているって予言で教えてもらったけど、どこにいるのかわからずにもどかしかったから!!」

 

「へっ?予言?」

 

「あ~…遂に再会しましたか。」

 

 その後ろからソーナがやってくる。

 

「…あなたの懸念通りね。」

 

「やはり、行方不明だった椿の弟がイッセーの幼馴染でしたか。」

 

「取りあえず、無事だったからよかったよ。でも何があったのか詳しく話を・・・。」

 

 椿の視線が鉱太の傍にいる彼女に向けられる。

 

「それと…そこの人はだれ?」

 

イッセーの幼馴染以外にも女性が一人・・・。

 

「あっ・・・俺の奥さん。」

 

「舞といいます。皆さんのことはいろいろと聞いて・・・。」

 

『ええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?』

 

 さて、一人すでに結婚していることについてどう突っ込めばいいのだろうか?

 

 そういえば第一波にもすでに夫婦となった人がいたわね。

 

 うん、第三波でも誰か結婚している人がいればこの新たな法則は確実なものに・・・。

 

 驚きはしたけど、すぐに冷静になれるあたり私もだいぶ慣れてきたわ。

 

「鉱太・・・の奥さん?」

 

「紹介したいなと思っていたけど・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

あまりに衝撃的な発言の後に何も反応がない・・・椿さん・・・。

 

「ぶくぶくぶくぶくぶくぶく・・・。」

 

 泡吹いて倒れましたよ!?

 

「つっ・・・椿!?」

 

「姉ちゃん!?」

 

「義姉さん!?」

 

 慌ててソーナと鉱太、その嫁である舞さんが椿さんに駆け寄るけど・・・。

 

 彼女・・・完全に気を失っていたわ。

 

「う~ん・・・・う~ん・・・。」

 

 しかもうなされている。泡吹きながら。

 

「・・・椿がブラコンなのは知っていましたけど、ここまで強いショックを受ける事案がまっていたとは・・・。さすがに読めなかった。」

 

 ソーナ・・・仕方ないわよ。

 

 結婚しているなんてふつう想像できない。

 

 いや、愛しの弟が結婚していると知ったらそうなってもおかしくないかも。

 

「…前途多難ね。」

 

「椿の弟魂(ブラコン)はいやというほど知っていますから。」

 

 ままならないものだ。

 

「それよりも事情聴取をしないと。このメガへクスについて・・・。」

 

 宇宙から来たというのなら、このメガへクスという変な奴について何か情報が得られるかも。

 

「・・・そうだ。鉱太。」

 

「はあ・・・姉ちゃん・・・。」

 

 肝心の弟君はため息をついたまま、泡を吹いて倒れた椿を見ている。

 

「・・・私達の結婚、認めてもらえるのかな?」

 

「認めるわけないでしょう!!」

 

 って、すぐに復活した!?

 

「あっ・・ああああ・・・あなたね!!一体何がどうなったら、結婚なんてしてしまうのかな!?せめて…せめて姉である私に連絡の一つは!!」

 

「だから!!いろいろあったんだよ!!下手したら二度とこの星にもどれない状況だったし。」

 

「でも戻ってきたじゃないの!!そこの舞って人!!」

 

「はっ・・・はい!!」

 

 椿が怒っているわ。

 

「私はあなたたちの交際を認めないわよ!!」

 

「認めるも何も私たちは正式に黄金の果実に選ばれた最初の・・・。」

 

「黄金の果実がどうした!!こっちは鉱太の姉よ!!それにあなたたちには気持ちがないの!?それに選ばれただけで結婚なんて、あなた・・・鉱太のこと…なにも思っていないの!?」

 

「・・・ブチ。」

 

 あっ、その言葉に舞さんの中の何かがキレた音がしたわ。

 

「ああもう頭きた・・・。黙って聞いていれば・・・。私は!!ちゃんと鉱太とは相思相愛です!!姉さん女房ですから!!」

 

「姉さん女房ですって!!実の姉がいながら・・・。」

 

「それに・・・私達・・・こっ…子供だって互いに欲しいと思っている仲です。」

 

『ちょっ!?』

 

「なにぶっちゃけてんの!?」

 

 まっ・・・まあ、相思相愛で結婚しているのだし、こっ…子供が欲しいと思うのもムムムむむ・・・無理も・・・・なななななななないわねえええええ・・・。

 

「リアス、落ち着きなさい。」

 

 だって…そこまで進んでいるなんて・・・。あっ・・・そうだったわ。あちらの夫婦を思い出したら・・・。

 

「すでに妊婦がいるのです。今更その程度で動揺してどうするのですか。」

 

 ソーナ。ありがとう。おかげで落ち着いたわ。

 

 気をしっかり持たないといけないわね。

 

 まあ、あちらはまだ新婚ってところかな。

 

 その爆弾発言を聞いた椿はそうもいかないみたいね。

 

 顔が真っ赤だ。

 

「あっ・・・・あなたたちは!!!鉱太‼!あとでお話があります!!」

 

「なんでこっちまで!?」

 

 弟君。諦めなさい。あなたをめぐっての争いだから。

 

「その歳で性行為は早い!!それ以前にあなたたちの交際を・・・。」

 

「まっ・・・まだしていないから!!」

 

「そうよ!!そんな雰囲気になったところであいつらが来て中断されたのよ!!」

 

「そんなところぶっちゃけないで!!」

 

 言い争いの中、いらないことを私たちは知っていく。

 

『・・・・・・。』

 

 そんな弟君に向けられる彼の幼馴染連中の視線は生暖かさと呆れが含まれているわ。

 

「頼むから言いたいことがあったら言ってくれ‼‼視線だけで語られるのは非常にダメージが・・・。」

 

『・・・・・・。』

 

 その答えは生暖かい視線。

 

「ぐあああああああぁぁぁぁ・・・・・。」

 

 弟君のダメージが蓄積してく。

 

 主に羞恥によって。

 

「…これ以上言い合っても無駄ね。なら・・・。」

 

 椿の手に現れるのは桃のような錠前。

 

 腰には変わったベルトが。

 

―――ピーチエナジー!!

 

「なんで姉ちゃんがゲネシスドライバーとエナジーロックシードを?!」

 

「上等。」

 

 とっさに大きく間合いを離した舞さんの腰にもベルトが。

 

 手には銀色のリンゴ!?

 

――――シルバーアームズ。

 

「なんで舞がそれを持ってんの!!?」

 

 弟君が悲鳴を上げる。

 

 だが、その疑問に二人が同時に応えた。

 

『拾ったの。』

 

「…なんでそんな物騒なモンが落ちているの!?そして、どうして二人とも拾うかな!?」

 

『使えるものを使っただけ!!』

 

――――――ロック・オン!!

 

――――――チャージ・・・。

 

 二人とも似たもの同志なだけじゃ・・・。

 

 二人の頭の上でジッパーが走り、そこから桃と銀色のリンゴが落ちてきた。

 

 そして、それを二人はかぶると同時に変身する。

 

 落ちてきた果実が開いていき二人のアーマーとなる。

 

『さあ。ここからは私のステージだ!!』

 

「二人ともこっちの名乗りをパクらないで!!」

 

 弟君の悲鳴とともに二人は走り出し・・・。

 

「ふはははははははは!!」

 

 二人が対峙しているど真ん中に何者かが現れた。

 

「簡単に潜入できたぞ。ふははははは・・・あーはははははははは・・・。どうだ?完璧な警備にもこのような穴が・・・。」

 

『・・・・・・。』

 

 よりによって修羅場のど真ん中に!?

 

『はああああぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

「へっ?がぶろ!!」

 

 二人の拳がお互いに向けられ・・・。

 

「なん・・・で・・・・?」

 

 間にいた男の顔面を挟むように殴ったわ。

 

「まだまだああああぁぁぁぁぁ!!どらどらどらどらどらどらどらどらどら!!」

 

「うらうらうらうらうらうらうらうら!!」

 

 でも二人はそんなのお構いなしに殴り合っているわ!!

 

 もちろん二人の拳は全部間に現れた謎の人物の体にめり込んでいるけど。

 

「まっ・・・まて!!がば…待てと・・・ごぼ!?」

 

 まるでサンドバック。

 

 だんだん拳のスピードが上がっていき…もはや拳の壁。

 

「どらどらどらどらどらどらどらどらどらどらどらどらどらどらどらどらぁ!!」

 

「おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおら!!」

 

 まさに拳の壁の激突。

 

「がばばばばばばばばばばばばばばばっ!?」

 

 そのラッシュに挟まれ、全身余すことなくぼこぼこにされていく謎の男。

 

「なんで気づかない?」

 

「ダメだ…二人ともバーサク化している。互いを叩きのめすことしか考えていない。」

 

『・・・・・・。』

 

 間に入ってしまった彼は眼中になしってこと?

 

 袋叩きって言葉すら生ぬるいほど殴りまってそれはないわよ!!

 

「まてっといって・・・がばら!?」

 

 二人とも一度大きく間合いを離し、腰のベルトを操作・・・。

 

 足にエネルギーを充電させ・・・。

 

「うう・・ぐう・・・・!?まっ、待て!!本当にまて!!それはシャレになら・・・。」

 

『はあああああああぁぁぁぁぁ!!』

 

 二人はそのまま走り出し、強烈なキックを繰り出す。

 

 ダッシュの勢いを見事に乗せた見事な回し蹴り。

 

 それがぶつかり、爆発を起こす。

 

「がっ・・・ばっ・・・。」

 

 間に謎の彼を挟んだ状態で。

 

『はあ・・・はあ・・・はあ・・・。』

 

 肩で息をする二人。

 

 爆炎が晴れ、現れたのは膝から崩れ落ちる彼の姿だった。

 

 二人ともベルトを操作し、再び足にエネルギーを集める。

 

『・・・・・・んん?』

 

 そこでようやく二人は、ぼろぼろになって倒れようとしている彼に気づく。

 

 やっと正気に戻ったわね、その人を助けないと・・・。

 

『・・・邪魔!!』

 

「がぼうぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

 その彼を綺麗に蹴り飛ばしたわ!?

 

 しかもエネルギーを充電させた必殺キックで。

 

 すごく息の合った回し蹴りだった。

 

 まるでその辺に転がっているサッカーボールを邪魔だから蹴り飛ばすようなノリで、無造作に・・・。

 

「・・・ひでぇ・・・。」

 

 弟君の一言がすべてだわ。

 

 あまりの勢いに壁に激突、粉々にして倒れた。

 

 これ以上はまずいか・・・。

 

 仕方いわね!!

 

 再び拳を繰り出しあう二人の間に私は滑り込み・・・。

 

「ふん!!」

 

『なっ?!』

 

 それぞれの拳を片手で受け止めた。

 

 うん…縮地っていいわね。瞬時に移動出来て便利よ。

 

 おかげで変身するまでもなく二人の攻撃を止めれたわ。

 

 衝撃を受け止めるために、床を粉々に踏み砕いてしまったわ。

 

 二人ともすごいパンチ力ね。結構踏ん張ったわよ。

 

『・・・・・・・。』

 

 あれ?なんかみんな呆然としているけどどうかしたのかしら?

 

 こっちの身内は流石だと納得してもいるけど・・・。

 

 攻撃した二人も完全に固まっているし。

 

「なん・・・だと?」

 

「嘘、変身すらしないでこのレベル・・・。」

 

 止めるという意味では好都合だから気にしないでおくわ。

 

「二人ともここまで。これ以上やるなら・・・私が相手になるわよ?」

 

 体内の皇魔力を少しだけ解放する。おそらく頬にステンドグラスのような文様が現れていると思う。

 

『・・・・・・・。』

 

 二人とも暴れすぎだ。おかげで一人負傷者がでたじゃない。

 

「・・・剛腕女王に言われたら退くしかないわね。」

 

「うぐ!?」

 

 変身を解いた椿の一言に私は落ち込んだ。

 

「・・・あっ・・・あれ?」

 

「まさか、かなり気にしている?」

 

 別にいいわよ。私の新しい二つ名が剛腕だなんて・・・。

 

 これっぽっちも、そうこれっぽっちも気にしていないのだから・・・。

 

「ワンパン姫?」

 

「・・・・・・・。」

 

 そんな二つ名もあったわね~。

 

 スイッチ姫は覚悟していたわ。でも…なんでワンパンなの?

 

 ゴジラを…ゴジラを殴り飛ばしたのが悪かったの?

 

 あんなのみんなやって・・・。

 

「いやいや、女子でゴジラまともに殴ったのはあなたとあと一人だけですよ。しかもあなたはたった一発のアッパーで十万トン越えのゴジラを数百メートル上空まで吹っ飛ばしたのだから、単独でやらかしたという意味では男子すら超える偉業・・・・・・いや、もはや伝説です。拳一つでやらかすという意味で皆畏怖を禁じ得ない・・・。」

 

 そこに椿が追い打ちを。

 

「うぐ!?」

 

 なかなか強烈。やるわね。

 

 ふっ・・・ふふふふ・・・でっ・・・でも、これぽっちも気にしていないわ。

 

 隅っこで三角座りしちゃうけど、全然・・・それはもう全然気にしていない・・・。

 

 ふははははは・・・あ~本当に私、遠いところまできちゃたわ~。

 

 鎧と鬼の力を使った状態なら龍王でもワンパンできそう。

 

 お兄様とお父様、お母様が嫁の貰い手がいてよかったといったといったことも全然・・・全然気にしていないから・・・・

 

 あはは・・・ははは・・・・・・。

 

『・・・・・・・。』

 

「そんなものですよ。リアス。」

 

 ソーナが優しく私の肩を叩いてくれるわ。

 

「あなたは強くなると誓った。確実にそれをものにしているのですからむしろ誇りにおもってください。あなたこそ、冥界を背負う逸材ですから。」

 

 ・・・うん。ありがとう。

 

 まだ私は立ち上がれるわ!!

 

 この数か月で私は本当に強くなった。それだけだわ!!

 

―――――いっ、いや。その私から見ても異常としか言えないレベル・・・。

 

 カーミラ、そこはツッコミはなしよ。

 

――――カテナもあと二つだけだし…。その前に四つ目のカテナ解放の際に他の三つを同時解放するってどういう理屈なの?そりゃ四つのカテナ同時解放したらあれだけの破壊力になるわけよ。はあ・・・下手した今年中には全部解放されるかも・・・。私、とんでもない主を持ってしまったわ。

 

「そんなの根性に決まっているじゃない。日頃の鍛錬を重ね、試行錯誤したうえで・・・。」

 

―――・・・あなたもイッセーと同類ってことがよくわかった。これで脳筋じゃないっていうのが信じらない。リアス…恐ろしい娘!!

 

 カーミラはそれ以上、このことについて聞いてこなかった。

 

 なんでそこで恐ろしい娘発言がでるの?まずはそこを聞きたいわ。

 

「…二人のことは保留としましょう。いいですね?椿。」

 

「・・・はい。」

 

「舞も。」

 

「うう・・・わかったわよ。」

 

 ソーナと弟君に諭されおとなしくなる二人。

 

「さて・・・あなたは誰です?あれだけの猛攻をその身に受けて五体満足な時点で・・・只者じゃ・・・。」

 

「・・・うう・・・うう・・・。」

 

 がれきの中から現れた男を見て・・・。

 

『あーーー!!』

 

 弟君とその奥さんが揃って声を上げる。

 

「おまさりさん!!こいつです!!」

 

「弾‼!こいつ…こいつだ!!メガへクスを率いていたやつ!!」

 

「なに?」

 

 弾が驚きのあまりに声を荒げる。

 

「こいつがメガへクスを・・・。」

 

 ちなみにメンツの中に実際の刑事がいるのでおまわりさんと言ってもそこまで問題じゃない。

 

「貴様ら・・・。」

 

 全身ぼろぼろの状態で立ち上がってくる彼。

 

 どうやら・・・敵だったようだ。

 

 ならやることは決まっている。

 

「絶対に許さ・・・。なっ!?」

 

 私は魔術を発動させようとしたこいつの懐に縮地で滑り込むようにしてもぐりこみ、

 

「がっはっ・・・・・・。」

 

 その腹に渾身の拳をアッパー気味にぶち当てた。

 

 相手を吹き飛ばすことは絶対しない。すべての衝撃を内蔵に浸透させる一撃。

 

 二重の極みを併用させたからそうなる。

 

「落ちてろ。」

 

「・・・・ガク。」

 

 その一撃で、彼は沈んだわ。うん・・・。

 

「さて、とっとと縛って事情聴取と行きましょうか。」

 

『・・・・・・。』

 

 みんなどうしてそこで無言?下手に抵抗される前に無力化するのは当たり前でしょう?

 

 あれだけ殴られても平気なのだから、全力でやっただけで・・・。

 

「はっ??なっ…なんだ、お前・・・。」

 

 んん?すぐに意識を取り戻したの?

 

 何かの術を使って私達の傍から離れた彼。

 

「それはこっちのセリフよ。しかし、魔法使いにしては呆れるほどの打たれ強さね。」

 

「あ~いや、リアスさん。こいつは・・・。」

 

 新君がすごく気まずそうに話しかける。

 

 そちらの関係者なの?

 

「うん、なんであんたがここにいるんだ?ロキ・・・。」

 

 ロキ?

 

 ・・・・ってロキ!?

 

北欧神話の神・・・あの悪神!?

 

「貴様・・・只者ではないな・・・。」

 

 腹を痛そうに抑えながら、か細い声で彼は言ってくる。

 

「いやいやいやこっちは普通の悪魔ですから!!」

 

『・・・・・・・・えっ?それマジで言っているの?』

 

 なんでほかのみんなが疑問形で答えてくるのよ!?

 

――――――リアス、あなたはもう魔王と名乗ってもいい。あなたのお兄様を含めた、ほかの全魔王が満場一致でそういっているわ。

 

 なぜ魔王!?

 

「…ダダの悪魔が私にこれだけの打撃を・・うっ・・・がはっ!?そんな馬鹿なこと・・・あるわけないよな?意識を刈り取られたぞ。」

 

 吐血しながら、信じられない出来事に軽く動揺しているロキ。

 

 神様ならその打たれ強さも納得。寧ろ私、それを一瞬とは言え、意識を落とすレベルの一撃を?

 

 それをやらかした自分の右手を見る。

 

 …本当に遠いところまできちゃったわ。

 

「噂以上の人外魔境のようだな・・・ここは・・・。だが…やっと…やっと見つけたぞ。新・・・。」

 

 血走った眼でロキは新を見る。

 

「まだあきらめてなかったんかい。二か月前から姿を見せないと思ったら・・・。」

 

 一方呆れた様子の新。

 

「当り前だ。そのために私は戦力を集めていた。お前から・・・お前から・・・・・・。」

 

 ロキは震える声で言う。その震えは暗い感情からくるものだと疑う余地はなかった。

 

「ヤマト嬢を奪うために!!」

 

 ヤマト嬢?

 

――――・・・・・・あなたはまだそんなことを言っているのですか?

 

 その声に反応して出てくるのは風変わりな衣装をまとった女性だった。

 

 なんかそう・・・朱乃に似ている。

 

「私はあなたを許してもいない。私の提督を殺そうとしたあなたを・・・。」

 

 その背中から・・・戦艦のようなパーツが!?

 

「即刻吹っ飛ばす。お父様やお母様の力を頼るまでもなく!!」

 

 その砲台が一斉にロキに向けられ・・・。

 

「おっ・・・落ち着け大和!!」

 

「これが落ち着いていられますか!!提督!!また巡り合えたあなたを半殺しにした相手に!?」

 

『・・・・・・?』

 

 なぜ、新君のことを提督と呼ぶの?

 

「貴様・・・。」

 

―――提督に手を出すなら、私が相手するよ?

 

 今度は犬耳みたいに毛が跳ねた赤い目の女の子よ?

 

 アーシアにておっとりした印象があるわ。

 

「さあ…パーティの始まりだ。」

 

 彼女の目が赤く輝く。その眼には確かな殺気が・・・。

 

「夕立!!ちょっと待て!!お前が暴れたら本当にやばい!!しかも、どうして改二モードに!?」

 

「安心するっぽい。回避に関しては師匠がいたおかげで大幅に改善・・・。」

 

「安心できる要素皆無!!ほかのみんなも抑えて・・・。ロキを殺してしまうから!!」

 

 神を殺すと世界の法則にもかかわってしまうのだ。

 

 さすがに自重しないといけない。

 

 誰も、神を殺してしまうという発言に関しては突っ込まないのは仕方のないことだ。

 

「ぐっ・・・破壊神の娘たちが次々と・・・。だが…だがそれでも私は!!」

 

 ロキの周りに無数の魔法陣が展開。

 

 …なんて魔力。

 

 さすが神というべきなのでしょうね。

 

 いや、本当にすごい。すごいのだけど・・・。

 

「…なんでお前たちはビビっていない?これでも修行して力を上げたのだぞ?」

 

「あっ・・・まあ・・・。」

 

 さすがにあのゴジラと比較してしまったらかわいそうだわ。

 

 あれだけの強敵と戦った経験はデカすぎる。

 

 途方もない絶望との闘いと言ってもいい。それを潜り抜けたことは確かな自信につながっていた。

 

 相手が神クラスでもイッセーがいない状態の私の眷属で・・・何とかなるわね。

 

「少なくとも、真正面からの殴り合いなら負けないわ。カーミラ!!」

 

――――使った方がいい相手ね。わかったわ!!

 

 私は鬼に変身しつつ紅のキバの鎧をまとう。

 

 それとともにあいつが放ってきた数々の魔法を・・・。

 

「ふん!!」

 

 空間を拳で殴りつけることで破壊する。

 

 この力は守りにも使える。空間ごと殴り、力を伝えることを応用させれば・・・。

 

「ぬお!?これが噂の滅びのキバか・・・。なかなかどうして・・・。」

 

 放たれた数々の魔術を攻撃性のあるものから呪いの類までまとめて粉砕。

 

 清めの音と滅びの魔力のコラボはこういった形でも使える。

 

「・・・・一応龍王とも殴り合えると思っているわ。さあ、かかってきなさい。」

 

「ほう・・・ならためしてやろう・・・って!?」

 

 私は再び縮地を発動。あいつの懐に入り、拳を繰り出すが・・・。

 

「・・・恐ろしいな。結界をこうもあっさりと砕くなんて。」

 

 結界を砕くのはいいが、その拳をロキ本人に受け止められる。

 

 油断していなければ、さすがに防がれるか。

 

 流石・・・というべきね。

 

 お互いに拮抗。お互いに押しあっているが、まったく動かない。

 

「神に届く拳だと私が認めてやる。」

 

「それはどうも!!」

 

 私たちは一度間合いを離す。

 

 やっぱり…手ごわい。神クラスなのもあるけど…目の前のこの相手はそれ以外にも・・・。

 

「ポルム・・・いるかしら?」

 

「だいぶ人を観る目が養われているね。王としても成長していると余が太鼓判を押すよ。」

 

 ポルムがいつの間にか私の傍に立っていた。

 

「あー!!お前は!!?」

 

 弾がポルムを見て驚いている。

 

「久しぶりと言っておこう。文句はイリアから聞いている。あとでじっくりと聞く。それで、そのうえでどうして呼んだの?リアス部長?」

 

「…あなたと似た感じがした。なら毒には毒を持って対抗するべきと考えただけのことよ。あいつ…何か仕掛けたでしょ?」

 

 私の発言にポルムは驚いた様子。

 

 いつも彼には驚き、ひっかきまわされているのだからそういう彼を見るのは新鮮だ。

 

 どうして驚いたの?

 

「・・・まさかこっちの方面でも成長していたなんて・・・侮れぬ。どうやら、余の予想を覆すような段階に入ったみたいだな。・・・それはともかく、さすが悪神。いつの間にか仕掛けていたよ。」

 

 ポルムが指を鳴らすとともにいつの間にか格納庫の壁に展開されていた術式がガラスの割れるような音とともに壊れる。

 

「そちらに知恵者がいたか。やるものだな。」

 

 あちらにはまだ…関心するだけの余裕があるか。

 

「なら・・・こいつらはどうかな?」

 

 その言葉とともに現れたのは巨大な白い狼。

 

「・・・フェンリル!?」

 

 あの有名な神殺しの魔狼・・・。

 

「さあ・・・フェンリルよ・・・。」

 

 さすがにまずいわね・・・。こんなとんでもない切り札を・・・。

 

「みんな・・・。」

 

「悪魔の味を覚えて・・・。」

 

「でかいわんちゃんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 とびかかっていた来たフェンリルに対して横手からまるで弾丸のように何かが飛び込んできた。

 

 フェンリル、あまりの勢いに吹っ飛ぶ。

 

「・・・・・・ああ…宇宙生活は長かったわ。本当に・・・。」

 

 飛び込んできたのはイリアさん!?

 

「ああ…やっとモフモフできる。ワンちゃんをモフモフできる!!しかもこんなにでかいなんて!!里帰りしてよかった!!お父さんお母さん・・・フィル!!私・・・今幸せだわ!!」

 

押し倒したフェンリルをすごくモフモフしている。あまりの勢いにフェンリルの方が驚いている。

 

 あの・・・イリアさん。そいつはワンちゃんじゃなくて、狼。

 

 それも神すら殺すとんでもない魔狼・・・。

 

「・・・なんだというのだ?ってフェンリル‼!そいつを食い殺して・・・。」

 

「ほれほれ・・・ここがえんかい?ここがええんかい?」

 

だが、ロキの命令をフェンリルは聞いていなかった。

 

 イリアさんがあちこち撫でまわし、それですごく目がうっとりしていたのだ。

 

 気持ちよさそうに尻尾を振り・・・イリアさんのモフモフに身を任せて・・・。

 

「・・・・・・・・・。」

 

 開いた口がふさがらないロキ。

 

 私達だってそう。もう訳が分からない。

 

「・・・・・・あ~あいつの犬好き…変わっていなかったのか。」

 

 弦太郎君!!それってどういうこと?

 

「・・・あいつは犬が大好きだったんだ。生まれた時から一緒にいる愛犬がいた影響があってな。」

 

「・・・・・・・。」

 

 幼いころから一緒に犬と一緒にいた。そして、その彼に命を救われた。

 

 その影響からワンちゃんが大好きになったらしい。いや、この場合は家族ね。

 

「ふむふむ・・・そうか・・・。あなたはいい子なんだね。フォースや気っていいわね。こうやってこの子の気持ちもダイレクトにわかる。うんうん…あんな人の言うことは聞かなくていいから安心してよ。」

 

「…フォースをこんなことに使うか。まだ修行を初めて三時間だぞ?それでこのような芸当を・・・。」

 

「ある意味イリアちゃんらしい。」

 

 呆れながら・・・・あの子・・・。

 

 フェンリルと心を通い合わせている。

 

 フェンリルはすっかり気を許してしまって・・・。

 

「我が子が・・・てなづけられようとしている・・・。そんな馬鹿なことが・・・。」

 

 フェンリルを陥落させつつ・・・。

 

「ねえ…この子うちの子にしていい?子供たちもいるからその子たちも一緒に!!」

 

「いやいやいやいやいや!!それはうちの神話的にまずいから!!」

 

「それ以前の問題だ馬鹿者!!」

 

 新君が必死になってそれをやめさせようとしている。

 

 親であるロキにとっては論外だろう。

 

「え~、だってこんなにモフモフで愛らしい子を・・・。」

 

「だって、フェンリルだよ!?全世界から警戒されて・・・。」

 

 神殺しのフェンリル。ラグナロクにて、オーディンを飲み込んで殺すとされる世界でトップクラスに危険な魔狼。

 

 アギトと同じ神殺して、各神話勢力から警戒されている存在。

 

 それを愛らしいって・・・どんな神経をして・・・。

 

「フェンリルちゃんていうんだ!!うん…いい名前じゃない。私の家族と名前が似ているのもそうだし…何かの縁かも・・・。それでこの子そんなに危険なの?」

 

『・・・・・・・。』

 

 キャラが崩壊している。

 

 そして、もう一つ気づいたことがある。

 

 イリアって、宇宙にいたからフェンリルの恐ろしさを知らないってことを、

 

「うんうん・・・いいわ~この子に運命を感じちゃった。」

 

 ただ・・・デカいワンちゃんという認識しかないのね・・・。

 

 そして、それが功となり・・・。

 

「…なんだ…貴様は。」

 

 まさか犬好きというスキルだけでフェンリルを無力化なんて…恐ろしい娘だわ。

 

「よし、なら過去に遺跡で拾ったこのカードで・・・。言い伝えでは心と心が通えば、契約できると・・・。」

 

 ってイリアちゃん!!あなたが持っているカードは・・・。

 

「なぜ貴様がそれをもって!!?」

 

 ミラーモンスターたちが使っている契約のカード・・・。

 

「よし!!これからよろしく!!」

 

 それでフェンリルと契約した・・・の?

 

 カードにフェンリルの姿が描かれているし・・・・。

 

『・・・・・・・・・・。』

 

 オーフィスの時ほどではないけど、これもまたすさまじい衝撃だわ。

 

 ロキを含め、みんな絶句しているし。

 

「・・・これじっちゃんになんて言えばいいだろう。」

 

 新君。私達だって説明できないわ。

 

「ええい!!フェンリル‼!私のいうことを聞け!!」

 

 ロキの言葉とともにフェンリルを縛る術式が発動。

 

 フェンリルが苦しみだす。

 

「・・・抵抗するなどと・・・無駄があがきを・・・。だが、ヘルヘイムの実で強化したお前の力を解放させて・・・。」

 

 その言葉とともにフェンリルの姿が変わる。肩から鋭いブレードのような刃が生えてきたのだ。

 

「・・・お前、果実の力を・・・。」

 

 弟君の表情が険しくなる。

 

「何しろこちらには専門家がいるものでね。契約されるとは予想外だったが、それでもフェンリルのコントロールはこちらの・・・。」

 

 そこまで言って、ロキの口はふさがれる。

 

「…今すぐやめろ。」

 

 目を座らせたイリアの蹴りによって。

 

「ぐぶっ!?な…なんだ貴様・・・。今の動きもみえなか・・・。」

 

 それ以上いう前に、ロキの口をイリアはふさぐ。今度は拳で。

 

「がばっ!?」

 

「もうしゃべらせない。あなたがしていいのは・・・あの子を解放することだけ。」

 

「ぐっ…調子にのる・・・なっ?!」

 

 イリアさんがとっさに銃を放つ。それとともに何かが壊れる音。

 

「言ったはず。フェンリルを解放する以外は何もさせないって・・・。」

 

 あれって…フォースの未来予知よね?

 

「助けだって呼ばせない。何もかも、私がつぶすから。」

 

 ロキが下がる。

 

 イリアさんのあまりの怒気と気迫に押されていたのだ。

 

「こいつ・・・ぐぶ!?」

 

「あの子を解放しろって・・・言ったはずだ!!」

 

 あのロキが何もできないまま、一方的に殴られ・・・。

 

 フェンリルに対しては・・・。

 

「まったく。力技で抑えることになるとは。」

 

 鋼鬼さんがその口を腕力をもって強制的にふさいでいたのだ。

 

 それを見てロキはさらに驚こうとするが…そのリアクションすらつぶす。

 

 その前にロキにダメージを与える打撃を平然と行っているイリアさんがすごいような気が・・・。

 

 えっ?お前が言うなって?

 

――――お前はまだ懲りていないというのか・・・。

 

 そこで地の底から響くような異様な重低音。

 

 彼はゆっくりと歩きながらやってきたのだ。

 

 それは北欧神話にて黄昏をもたらすものと呼ばれた存在。

 

 北欧神話最強と呼ばれたある人物と契約した存在。

 

 そして・・・ミラーワールド出身者の誰もが恐れる最強の破壊神。

 

「・・・マグナギガ・・・。」

 

「久しぶりだな・・・。貴様は相変わらず娘とその主に手を出そうとしているのか?」

 

 その彼が怒りを伴っていたのだ。

 

 その怒り、常人なら気を失ってもおかしくないほどの精神的な圧を伴っている。

 

 いつその身に秘められた破壊的な力が解放されてもおかしくない。

 

 この土地が一瞬で消滅して可笑しくないほどの力を、その彼は持っている。

 

ロキですら、平静を装っているが、微かに怯えてもいた。

 

『お父様!?』

 

 大和さんと夕立ちゃんが一斉に彼ことを父と呼んだってことは・・・。

 

「二人ともお待たせ。私たちが来たからにはもう…あいつに好きにはさせない。」

 

『お母様まで・・・。』

 

 リィンフォース。彼女もまた北欧神話最強と呼ばれたある存在がもつ魔導書の管制人格。

 

 そして…あの破壊神の妻・・・。

 

 その二人をそれぞれ父と母と呼ぶということは・・・。

 

「…マグナギガ。あなた、娘がいたの?」

 

「全然似ていない・・・。」

 

 クレアとブランカの二人も本来の龍としての姿でマグナギガの傍に現れる。

 

「ああ・・・。自慢の娘たちだ。私に似ない点においてはむしろ自慢だ。」

 

「いろいろと変な事情が込んでいます。でも私達の大切な娘です。」

 

「達ってことはまだいるの?」

 

「・・・私からしたら、お前たちの娘ということを心底恨んだよ。」

 

 ロキにとってはマグナギガの娘に手を出そうとしていることが最大の障害だったらしい。

 

「・・・フェンリルと契約せし者よ。名は・・・イリアだったか?私達の相棒がその術式を何とかする。安心しろ。」

 

「・・・へえ。なかなかえげつない魔術を。幾つのルーンを使えばこんなことを・・・。」

 

 その二人の契約者である北欧神話、最強の存在がいつの間にかフェンリルの傍でうなっていた。

 

「実の子に使う術じゃないわよ?あなた・・・。」

 

「ひっ!?」

 

 いよいよ、ロキの口から悲鳴が漏れる。

 

「姉さん・・・。」

 

――――バインド。

 

 新の姉であるロズヴァイセ。彼女は光の鎖を次々と出現させ、フェンリルを縛る。

 

 もちろんこの鎖は・・・。

 

「フェンリルを縛るだと?まさかそのバインド・・・。」

 

「ええ・・・。もちろんあれを術式に組み込んでいるわよ?」

 

「ぐっ・・・。だが、強化したフェンリルを単独で押さえつけることなど・・・。いや、お前ならそれくらい可能だったな。こちらの強化がそっちの魔法を上回ることができなかった。ただそれだけのことだ。」

 

 ロキは冷静だった。

 

 切り札であるフェンリルを封じられているというのに・・・。

 

 それってつまり・・・。

 

「・・・ッ!?みんな!!気を付けて!!」

 

 私がそう告げるとともにそれは空間に裂け目を作って現れた。

 

「探したぞ。随分とやられたようだな。」

 

「・・・ああ。だが、いい仕事だ。さすが破壊大帝。」

 

 現れたのは巨大な金属人間。それってつまり・・・。

 

「トランスフォーマー・・・。」

 

「やっぱりトランスフォーマ―がかかわっていたか。」

 

 弾はため息をつく。

 

 オプティマスプライムと同じ種族。乗り物などに擬態できる金属生命体。

 

「紹介をするのが遅れたな。俺の名はディセプティコンの破壊大帝・・・かつてメガトロンと呼ばれたものだ。今は転生し、新たな名―――ガルバトロンと名乗っている。」

 

 その言葉に宇宙からやってきた弾とイリアが息をのむ。

 

「・・・伝説の破壊大帝がやってくるなんてね。」

 

「この星って、相当だよね?此奴一人で星が滅ぶぞ。」

 

 破壊大帝、どうやら宇宙でも相当らしい。

 

 でも、それはわかるかも。

 

 あいつ…単純な戦闘力ならロキよりも強い。

 

「転生ついでに強くなった。わが娘の恩恵というものだ。もっとも…死の国で軍を作り上げ、わが娘を娶った時点で普通ではないが・・・。」

 

「ふはははははははははははは!!父上と呼べばいいのかな?ふははははははははは!!」

 

「よさんか馬鹿者。」

 

 彼の周りから次々と現れる亡者たち。

 

 一度死んでから、死の国で軍を作り上げて大暴れって普通じゃない。

 

 とんでもない化け物がロキの味方になっていたわね。

 

「・・・まさか、また貴様と会うことになるとはな。」

 

 そこに現れるのは…オプティマス!?

 

「貴様・・・転生したのか?」

 

「それはお互いさまのようだな。オプティマス!!」

 

 黒い霧となってガルバトロンは私達の後ろに瞬時に移動。

 

 その攻撃に反応するオプティマス。

 

「・・・どうやら貴様との腐れ縁はまだまだ続きそうだ。強く生まれ変わってこちらはうれしいぞ!!今度こそ・・・お前を倒してくれる。」

 

「死んでも殺せないということだな。お互いに!!」

 

 二体のトランスフォーマ―の激突の余波はすさまじい。

 

 二人は互いの拳をぶつけ合ったのだ。

 

 私達よりデカいのに、攻撃のスピードもはやく、体が金属でできているためかウェイトも硬度も別物だ。

 

 車同志が衝突したような轟音が鳴り響く。

 

「・・・なんでサイバトロンがここにいる?」

 

「大方、俺に引き寄せられたのだろうよ。まったく、お互いに嫌な因果なものだ。」

 

「厄介なものだ。お前たちの因果は転生してもそのままか。」

 

 ロキは頭が痛そうにしている。

 

「北欧神話がどんどんおかしくなっていく。ヘルを娶ったって何!?」

 

「文字通り、おかげでわが陣営に強力な婿殿ができたということだ。そして・・・。彼との間に優秀な孫が生まれてな!!そして・・・。」

 

 そこまで言って、ロキは笑みを作る。

 

 それと同時にそれは放たれた。

 

「なっ・・・。」

 

 それは完全な不意打ちだった。

 

 どこからともなくはなられた光の矢。

 

 それが二発。

 

 一発は新君を貫き。

 

 もう一発はロズヴァイセさんを貫いた。

 

「…ご苦労。戦国リョーマよ。」

 

「いやいや・・・。これくらい楽勝だよ。だが・・・。」

 

 何もない空間から彼は現れた。右目を長く伸ばした髪で隠した痩躯の男。

 

「お前は・・・。」

 

 それを見て弟君はうなる。

 

「久しぶりだね。君にも挨拶したいと思っていたよ。」

 

「なんで生きている。一度メガへクスに取り込まれたのは知っているが・・・。」

 

 弟君の言葉に彼はうなる。

 

「これでも復活に手段はいくつか考えているのだよ。君も知らない方法でね。まあ、これは少々不本意な方法だったけど。」

 

 彼の姿が幽霊みたいになって消える。

 

 そして、いつの間にかロキの傍に立っていたのだ。

 

「こいつのおかげでヘルヘイムの力を得ることができたということだ。」

 

「そういうことか・・・。」

 

「それで我が出願も・・・むっ?」

 

 だが、新君はすぐに動いていた。

 

「…提督はやらせません。」

 

 新君の中から現れた一人の少女がその光の矢を、手にしていた装甲板で受け止めたために。

 

「榛名助かった。」

 

「ぐう・・・新をやることはできなかったか。だが・・・。」

 

 ロキは満足げな笑みを浮かべている。

 

「最大の障害は排除できたようだな。」

 

「姉さん!!」

 

 負傷したロズヴァイセ。

 

「こっ…この程度傷・・・がばっ!?」

 

 吐血して倒れこむ。

 

「く・・・無駄だ。これはこちらができる限りの呪詛と、フェンリルの牙のデータを使用した、神殺しの矢。半分神であるお前にも効果絶大だろう。まあ…物理的な防御で防がれるのは想定外だったが。」

 

「…ロズヴァイセお姉様をよくも・・・。」

 

「ぐっ…やってくれるわね・・・解呪するにも時間が・・・たりな・・・。」

 

「ははははははははは!!さあ、最大の障害はこれで死んだ。あとはゆっくりと・・・。」

 

「部長!!」

 

 だが、そこで援軍が現れる。

 

 アーシアと・・・。

 

「イッセーの見舞いとほむらの様子を見に来たら、何がどうなっている?」

 

 ヴァ―リだった。

 

 そういえば彼は最近良く、この家に来ていたわね。

 

 生涯のライバルと認めたイッセーとなぜか居候になっているほむらの様子を見るために。

 

 かなり心配している様子だったわ。

 

 戦闘狂なんだけど、なんだかんだ言って彼はいい人だと思う。

 

 最近はいろいろと苦労しているみたいだし。

 

「…貴様は白龍皇!!?」

 

 おかげで心強い味方がやってきた。

 

「ぐっ・・・。こいつ…強いな。私でもまともに戦ったら負けるか。」

 

 ロキはすぐにヴァ―リから離れる。その実力を見抜いた上でだ。

 

「すまない、クレアとベノ。私の相棒を・・・。」

 

「言われなくてももうやっているわよ!!」

 

「ちぃ…厄介な呪詛を・・・。」

 

 クレアとベノも来てくれており、ロズヴァイセの治療に取り掛かっているが、難航している。

 

「・・・んん?闇の書が・・・。」

 

 だが、そこで彼女の魔導書が反応を示す。

 

「・・・・・・・。」

 

――――――――紫天の書…機動。

 

 真っ黒な本が紫へと変わっていく。

 

「これは・・・どうして?」

 

――――紫天の書の主・・・呪詛による浸食を受け危篤。癒すための最適な手段を検索。

 

 へっ?私のルークの駒が手に現れる?しかも光っていますよ?

 

――――検索完了。悪魔の駒。変異体と確認。

 

「・・・あっ・・・わっ・・・私の駒が!!?」

 

――――――転生システムに足るものだと確認。

 

 転生って何?あれって悪魔に転生させるだけの・・・。

 

 ってまさか!?

 

 転生する機能だけを利用するつもりなの?

 

「やらせると思ったか!!」

 

 ロキが特大の攻撃を仕掛けてくる。

 

 それはロズヴァイセの周囲を一気にふっとばす魔術なのだろう。

 

 無数のルーンが書かれた魔法陣がロズヴァイセたちを閉じ込め・・・。

 

 その魔術が一気に崩壊した。

 

「ちぃ…なにが・・・。」

 

 それを行ったのは十枚の光輝く翼を背負った一人の女性。

 

 私達の守りの要。

 

「みなさん…お待たせしてすみません。」

 

 キリエさん。その守り、前のゴジラとの闘いでも重要な要となっていた。

 

 彼女がいなかったら全滅していた場面がいくつもあったほどに。

 

 その守りは神クラスだと私達は結論づけている。

 

「へえ・・・愉快なことになってんじゃねえか!!俺たちが買い物に出かけている間に何があった?」

 

 そして、彼女を守る一人のナイトがいる。

 

 スパーダの血を引き、それでいてキルスであるネロ。

 

「もう一人のアギト・・・。なんでこうアギトが次々と・・・。」

 

「私もいます。これ以上、好き勝手にはさせません。」

 

 黄金のアギトにして、世界の女神。イッセーと同じくらいにいろいろと規格外すぎる私の眷属。そして、大切な妹分。

 

 アーシアもそこに立っていた。

 

「…アギトが三人も・・・。」

 

 イッセー以外のアギトが勢揃いだった。

 

 一人一人がロキクラスがそれを凌駕する戦闘能力を持つ。

 

 アーシアは戦闘は得意ではないが・・・それを補って有り余るのが・・・。

 

「私達の同胞の覚醒を予知して急いできました。」

 

 予知をはじめとする多彩で強力な能力だ。

 

 アーシアが足元にアギトの紋章を展開。

 

 転生の手伝いでもするの?

 

 って、転生させるのはいいけど!!それに使われるのは私の・・・。

 

 そして、あなたたちの同胞って・・・。

 

――――共鳴により、アギトの因子の覚醒確認。

 

 って・・・ロズヴァイセの真下にアギトの紋章が・・・。

 

「なにぃぃぃぃ!?ロズヴァイセにアギトの因子・・・。」

 

―――最適化のため、転生・・・開始します。

 

 紫の書の言葉とともに、ロズヴァイセの体に私の悪魔の駒が入り込む。

 

 それとともに悪魔の翼が生えてきて、その悪魔の翼が・・・黒い天使の翼へと変化。

 

――――転生…完了。スリープモードへ移行・・・。

 

 それとともにロズヴァイセの体の容体が安定。

 

「・・・うう・・・。」」

 

『・・・・・・・・。』

 

 気を失ったままのロズヴァイセが弱々しく唸る。

 

「転生機能って・・・姉さん何を準備していたの?」

 

「とにかく体力を回復させます。まだ転生直後ですので。」

 

「・・・そんなこと…認められるか!!」

 

 ロキが叫ぶ。

 

「北欧神話からアギト・・・それも、ヴァルキリー、なんでよりにもよってロズヴァイセなのだ!!?暗殺に失敗したあげくに、最悪にもほどがあるぞ!!」

 

 まるでこの世の終わりと言いたげに悲鳴を上げるロキ。

 

「・・・・・・絶対に覚醒させん。今すぐあいつを・・・。」

 

 とりあえず、私はこのとんでもないことを起こした元凶をぶん殴ることにした。

 

「ばがっ!?」

 

「・・・あなたのせいよ。」

 

「がっ…なっ…なにを・・・。」

 

 反論は許さん。もう一発殴らせてもらうわ!!

 

――――――ウェイクアップ1!!

 

「あなたのせいで!!!私は、またアギトを眷属にしちゃったのよ!!!?しかも北欧神話の最終兵器って呼ばれるとんでもない化け物を!!こんなのゲームにでれるわけないじゃないのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 私は絶叫しながらロキを殴り飛ばす。

 

「がばっ!?がっ?」

 

 ああ・・・どうしてこうなったの。

 

「なんという・・・拳・・・。避けれん・・・防げん・・・耐えられん・・・。」

 

 拳に嘆きをありったけ込めて殴った。

 

 そのかいあったか、ロキはそのまま倒れた。

 

 避けれると思うな。

 

 防げると思うな。

 

 耐えようなどと神ですらおこがましいわよ!!

 

 私の眷属…最後の一人は、フェンリルすら生ぬるい超ド級の怪物だったなんて。

 

 まさにリーサルウェポンだわ・・・。

 

 

 SIDE 朱乃

 

 私たちは今、格納庫に向けて走っています。

 

 だが、そこで・・・。

 

 機械の獣に襲われました。

 

「きゃあ!?」

 

 その獣の牙から身を挺して助けてくれたのは・・・。

 

「・・・えっ?」

 

 私の・・・父でした。

 

「がばっ?」

 

 獣に襲われ胴体をかまれる父。

 

「父様!!

 

 そう…私はとっくに父を許していた。

 

 記憶も戻っていたのだ。

 

 母様が生きていることも。

 

 でも…素直に・・・なれなかった。

 

 私の心が弱いから・・・。

 

 そのせいで・・・。

 

 私が雷を放つ前に、彼は動いていた。

 

 機械の獣を握力だけで粉々に粉砕した私の弟。

 

 その名はハルト。

 

 私の・・・血のつながりのある弟だ。

 

「しっかりしてくれ!!」

 

「がっ・・・ぶっ・・・。」

 

 苦しそうにしている父様に駆け寄る私。

 

 だが、そこに・・・。

 

―――――やっと見つけたぜ。

 

 後ろから気配が・・・。

 

 振り向くとそこにはイマジンがいた。

 

 そして・・・。

 

 それが私の中に入り込む。

 

「…つ?!しまった姉様が・・・。」

 

 ハルトの悲鳴とともに私は意識を失おうとしていた。

 

 消えていく私の意識の内に、もう一体の獣の牙が・・・。

 

「・・・ったく、目覚めた途端修羅場ってなんだよ。」

 

 見覚えのある背中によってへし折られる光景を見て、私は少しの安堵を覚えた。

 

 

 

 

 

 SIDE ネロ

 

 ・・・どういうことか、俺たちのお仲間が増えたらしい。

 

 しかも、それを部長がまた眷属にしてしまったという。

 

 アギト三人を眷属という偉業。

 

もう奇跡を通り越して、呪いだぞ。

 

化け物眷属を集めまくる、その出会いの才能と言う名の呪い。

 

 まあ、本人は砲台役がほしいと言ってはいた。そういう意味ではこれ以上ないほどに最高な人選だといえるぜ?

 

 でもこれ以上もないほど最高すぎて、ゲームに出れるか怪しいが。

 

「・・・北欧神話最強。アギトとして覚醒・・・面白くなってきたな。」

 

 ヴァ―リ。お前はワクワクすんじゃねえ。

 

「お前らとは一度戦ってみたいと思っていた。腕試しも兼ねて・・・。」

 

「・・・。」

 

 ロキは何も言わずに倒れたままだ。

 

「いや・・・さすがリアス・グレモリーというべきか。倍化や半減なしでの純粋な意味での一撃の破壊力はこちらもかなわない。まさに神殺しの拳。」

 

 ロキのダメージはデカいようで、倒れたままだ。

 

「しっかりしたまえ、って…あれだけの打撃を喰らったらしかたないかな、」

 

 リョーマとかいうやつの言葉にようやくロキは起き上がろうとする。

 

「がばっ・・・うう・・・まさかこれほどとは・・・。」

 

 ロキの野郎は意識を取り戻したのだが、自力で立ち上がることすらできない。

 

 あの拳で戦闘力を奪われたか。

 

「ちぃ…ここは退くしかないようだな。」

 

 ガルバトロンも忌々し気にこちらをみながら撤退を決断したようだ。

 

「退くしかないって…これだけの連中を相手に逃げられると?」

 

 皆が構える。

 

 もちろん…逃がすわけねえわな。

 

「・・・ふっ・・・なんの対策もないと思ったか?」

 

 ロキが震える指を鳴らすとともにそれは・・・地面の下から現れた。

 

 それは巨大な蛇。ゴジラですらくつろげるような無駄に縦横広い格納庫にいっぱいになるほどの。

 

 それも機械化された・・・。

 

「もう一人のわが子・・・ヨムンガルドのデータを元にし、トランスフォーマーの技術で再現させたサイバークローン。こいつが相手だ。」

 

 ここにきてデカい奴をがでてくるか。

 

「ついでに・・・。」

 

 指を鳴らすとともに・・・。

 

「きゃ!?」

 

「なっ!?」

 

 後ろから悲鳴が聞こえてきた。

 

 振り向くとそこには・・・。

 

「お父様。捕まえました。」

 

「姉さん!!舞!!?」

 

 背中に蜘蛛のような腕を八つ生やしたオプティマスと同じトランスフォーマーが立っていた。

 

「アラクネ。いい仕事だぞ。」

 

 彼女はいつの間にかその両手に椿と舞さんを捕まえていた。

 

「この二人を人質とさせてもらいます。」

 

 アラクネと呼ばれたトランスフォーマ―はすぐに姿を消す。

 

 それと入れ替わるように大量のメガへクスたちが・・・。

 

「・・・ロキ・・・。」

 

「撤退には保険が必要だろう。」

 

 ガルバトロンの腕の中でロキは笑う。

 

 野郎…抜け目がねえ。

 

「家の中でもあいつらが暴れている。お前たちの戦力を分散させてな。さあ・・・。」

 

 サイバーヨムンガルド。

 

 彼がその巨大な口をこちらに向け・・・。

 

「こいつら相手にどこまで戦え・・・。」

 

―――――――Explosion!!

 

 だが、動く必要がなかった。

 

 何しろ、空きっぱなしの格納庫の天井から巨大なアギトの紋章が展開されたからだ。

 

 おなじみの音声とともに。

 

「んん?」

 

 それはすさまじい勢いで落下。

 

 こちらに襲い掛かろうとしていたサイバーヨムンガルドに直撃。

 

 その一撃でそいつの頭部が粉々になり、床にクレーターができ、土ぼこりが舞う。

 

「・・・・・・ったく、最悪な目覚めだぜ。」

 

 彼はクレーターのど真ん中でぼやく。

 

「だがまあ・・・間に合ってよかった。」

 

 それは皆が目覚めるのを待っていた野郎だ。

 

 やっぱり、お前がいないと・・・な。

 

「寝坊しすぎだぜ。」

 

「そういうなよ。まあ…みんな久しぶり。いろいろと話してえが、今はそんな状況じゃねえからおいておくわ。」

 

 土埃の中からあいつはこの騒ぎの元凶をにらみつける。

 

「人の家で遣りたい放題やってくれたな。覚悟はできているよな?」

 

「・・・・・・赤龍帝。」

 

 ロキはうなる。

 

 まあ、あいつの活躍はそれこそ裏の世界の隅々まで広がっているだろうし。

 

「寝坊しすぎよ。まったくもう…心配させないで。」

 

「部長すみません。でもみんな・・・ありがとう。本当に。」

 

『イッセー!!』

 

 イッセーは今、目覚めた。

 

「ちぃ、二天龍が揃うなど・・・。」

 

 イッセーに襲い掛かる無数のメガへクス達。

 

 だが・・・。

 

 そのメガへクス達にイッセーは薙ぎ払う。

 

 その手に宿した青い炎によって。

 

  その炎は瞬く間にメガへクス達を焼き尽くす。

 

 

 その青い炎を忘れるわけがない。あれは・・・。

 

「・・・ゴジラ。お前が託した力、早速だが使わせてもらったぞ。」

 

「なんだその青い炎は?」

 

 再生すらできずに消えていくメガへクス。

 

 その焔は格納庫内にいた大量のメガクス達をすべて燃やし尽くしたのだ。

 

 俺たちに一切被害を出さないままに。

 

 それを見てロキは表情を引きつらせる。

 

「俺の新しく増えた相棒の力。」

 

『!?』

 

 その言葉に、あの戦いを体験した連中は目を見開く。

 

 驚きのあまりに。

 

 それってつまり・・・・。

 

「ちぃ・・・だが、退くのは今だな。」

 

 ロキはその脅威を見届けて自らの仲間とともにその場から離脱しようとする。

 

「新…次は殺す。ロズヴァイセとオーディンとともに。メガへクスの本星の力で!!」

 

 本星?

 

「・・・やはりメガへクスをお前が復活させたのか?」

 

「ああ。この星で本当の意味でラグナロクを起こすためにな。北欧神話の抑止力は強くなりすぎた。わが宿願を二つともやるには戦力が足りん。だから私が復活させた。キューブの力によってな!!」

 

 ロキがある映像を投影する。

 

 それは機械でできた星。これが・・・。

 

「メガへクス…本体。」

 

「こいつが再び地球に向かっている。ラグナロクを引き起こすためにな。」

 

『!?』

 

「しかも、各惑星のデータも収集し、星そのものを強化している。これもまたキューブの力とその英知によるものよ。」

 

 キューブ?

 

 その単語に反応したのはオプティマスだった。

 

「…なぜ、キューブのことを・・・ってガルバトロン!?お前が・・・。」

 

「ふはははははあ!!ああ。その情報と欠片ががあったのでな。それをルーン魔術で復元させたのだ。」

 

「どおりで、メガへクス達がトランスフォーマーみたいになったわけだ。お前達・・・。」

 

「魂は死の国からいくらでも提供できる。うまい組み合わせだと思わんか?死者の軍がトランスフォーマ―の肉体を得て復活しているのだからな!!」

 

 相当やばい事態らしい。

 

「私は宣言しよう。今から五日後にラグナロクが起きると。そして、その暁にはあの二人の娘をいけにえにすると。」

 

「・・・姉さんと舞のことか!!」

 

「始まりの女。そして、五大家の血を引くもの・・・。供物としては最高だろう。」

 

 ぼろぼろの状態でロキは笑う。

 

「さあ…覚悟するがいい。世界の終わりを・・・。」

 

 別のサイバーヨムンガルドが現れ、俺たちにむかってくる。

 

 だが・・・。

 

 唐突に現れたこの家の主によって殴り飛ばされる。

 

 まるで噴火直前の火山のようなフォームで。

 

「僕の家で好き勝手にやりすぎだよ。主として、これ以上の狼藉は見過ごせない。」

 

 超巨大なサイバーヨムンガルドを力任せに殴り飛ばされる光景に唖然となるロキ。

 

 その家の主が変身を解いてロキをにらみつける。

 

「…アギトがもう一人・・・だと?」

 

「・・・なんで父さんが・・・?それも…なんでアギト!?しかも、その気配…冥界の合宿で稽古つけてくれた・・・・。」

 

 それはこちらが初めて見る本気で怒っている翔一さんの姿。

 

 そして、それを見てイッセー…驚いていやがる。

 

「そういえばお前、知らなかっただよな?」

 

「もしかして、ほかのみんな知ってたの?」

 

 揃って頷いてやる。少なくとっもお前の幼馴染第一陣とグレモリー眷属の連中は全員しっているぜ。

 

「そんな…馬鹿な。」

 

 唖然としているあいつに向かってロキは吠える。

 

「…そのアギトを殺せ!!サイバーフェンリルよ!!そいつは危険だ!!」

 

 どうやらイッセーの危険性を直感的に察したらしい。

 

 機械となったフェンリル達をイッセーに向かわせる。

 

 いい目をしているといっておくか。

 

 あいつの危険性に気づくのだから。

 

 でも、イッセーに手を出そうとするのなら、俺たちはもちろん、その親も黙っていないぜ?

 

 父親も、母親もな。

 

 無数の矢が飛んできて、次々とサイバーフェンリル達を打ち抜く。

 

「イッセー。今は戦闘中、呆けちゃだめ。」

 

 まあ、それをイッセーが見たら混乱必須だけど。

 

「・・・なんで母さんがいるの?しかも、今の力は何!?」

 

 混乱しているイッセーに弓を手にしたまどかさんは苦笑する。

 

「まあ、いろいろとね。説明は後にしたいかな?」

 

「・・・ッ?!なんだこの家は!!」

 

 ロキは軽く混乱しているようだ。

 

 己の予想外の戦力に対して。しかも、そのロキの周りで無数の爆弾が出現。

 

 一斉に爆破。

 

「まどかは無理しないで。あなた妊婦でしょう?」

 

「ははは・・・ごめん。」

 

 となりには渦の団の首領であるほむらが立っていた。

 

「しかし、あの子がまどかの息子か。うん・・・たしかにどこか似て・・・。」

 

「あんた誰!?」

 

  イッセーがほむらを指さして叫ぶ。

 

 …そういえば、イッセーはほむらと会うのは初めてだったっけな。

 

「ぐう・・・こんなにアギトが集まっているとは・・・。常識外れもいいところだぞ。だが、この程度の戦力でラグナロクを防げると思うな。こちらは全宇宙を滅ぼせるほどの戦力を・・・。」

 

 ロキは狼狽えながらも計算しなおしたようだ。今の戦力で自分たちは止められないと。

 

 ある意味強がりにも見えなくない。

 

 だが、その発言を聞いて黙ってはいられない奴がいる。

 

「・・・ったく、お前わかっていねえな。この星のすごさを。一応、この星、出身なのに。」

 

 それはイッセーだ。

 

 ロキの発言を聞き、混乱から立ち直ったイッセーはそうぼやく。

 

「父さん。母さん、それと・・・あんた!!」

 

「私のこと?」

 

「ああ。あとで事情を話してくれ。何がどうなっているのかまったくわからねえ、眠っている間に何があった!?」

 

 安心しな。俺達もこの連中を知った時はひどく混乱したから。

 

 この街の人外魔境化の恐るべき根源に。

 

「だが…まあ、一つだけわかってんのは・・・ロキっていったか・・・お前。」

 

 イッセーは告げる。

 

 

 

「この星を・・舐めるなよ?」

 

 

 

『ッ!?』

 

あまりにそのままの意味だったので、敵味方問わず呆然としている。

 

 だが、今の俺たちのことを的確に言い表した言葉だ。

 

「ぷっ・・・たしかにそうだわ。」

 

 イリアに至っては納得のあまりに笑いを必死に堪えているのだから。

 

「…覚えておこう。ゆえに宣言しておいてやる。お前達のいるこの街、この家をまず滅ぼすとな。お前たちは危険だ。ロズヴァイセと同等かそれ以上に。ゆえに・・・お前達からだ。今度はこちらも力の出し惜しみはせん。」

 

「・・・いいぜ?返り討ちにしてやる。」

 

 にやりと笑うイッセー。

 

 それだけで俺たちはイッセーの狙いを悟った。

 

「・・・なら戦争を始めようか、神々の黄昏をかけた戦争を。楽しみにしているぞ!!ふははははははははは!!」

 

 ロキはそう高笑いを残して、その場から消えた。

 

「・・・・・・ふう。よし、ポルム、とりあえずはこれで上等だろ?」

 

「ああ。上出来だよ。」

 

 元大魔王な作戦参謀はうなる。

 

「事情を聴きながら作戦会議といこうぜ?みんな。特に父さんと母さんには聞きたいことが山ほどできた。それに・・・。朱乃さんにことで話がある。」

 

 第二陣の幼馴染共が全員集合とともにイッセーの復活。

 

 いよいよ盛り上がってきた。

 

 大暴れできそうだ。それも…かつてないくらいに。

 




 私はイッセーにあるセリフを言わせたくてここまで書き上げました。

 
 「この星を舐めるなよ。」


 実はかなり気に入っている名乗りで、これを言わせるためだけに頑張って書きました。



 艦隊娘に関しては前々からこんな形で出せると考えていました。

 マグナギガとリィンフォースの娘。変な足し算だと思っていますがね。



 そして、リアスさんの明日はどっちでしょうかね。

 ちなみに得た称号は「ワンパン姫」 「神殺しの拳」「最凶の出会いの才。」

「出会いと言う名の呪い。」といったものでしょうか。


 一番原作から逸脱しているリアスでした。


 またのお楽しみを・・・・。


 


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時を超えしアギトたちと蒼焔の戦乙女の覚醒。。

 大変お待たせしました。

 今回はデンライナーで過去に飛ぶところから話がはじまります。


 そこで大事件に彼らは遭遇します。



 そしてロズヴァイセさんの身にとんでもないことがおきます。


 

SIDE 朱乃

 

 ここはどこでしょう?

 

 そこは漆黒の空間。私の目には何も映らない闇だけの空間。

 

―――――やっとあなたと話すことができたわ。この時をずっと…ずっと待っていた。

 

 そこで誰かの声が響き渡ってきます。

 

 あなたは?

 

――――あなたのことをずっと見守ってきたものよ。ずっと昔・・・あなたが生まれた時から。

 

 黄金の光が闇の中に現れます。

 

――――あなたはいよいよ全てを思い出す時がきたの。あの時に何があったのか私が話しましょう。

 

 それは黄金の光を放つ三つ首のドラゴン。

 

――――どこから話しましょうか?

 

 その声はすごく懐かしいです。一体あなたは?

 

 

 

SIDE ???

 

 私は母様と弟と共に逃げています

 

 そう・・・。

 

「見つけたぞ…裏切り者・・・。」

 

 百人もの人達が、私達を殺そうとしている。

 

 怖い…助けて・・・。

 

「大丈夫・・・。私が絶対に助けるから。少なくとも龍神様の祠にいけば・・・。」

 

 母様がそういう。でも・・・。

 

「龍神様…助けてくれるかな?」

 

 二つの側面を持つ龍神様。

 

 それは守護神としてと破壊神としての側面。どうして全く異なる二つを持っているのか私にはわからなかった。

 

 まるで別人が二体いるような・・・。

 

 少なくとも片方はとても優しい声だったのを覚えています。もう片方と話したことは少しだけありますが、優しい声の方が強引に押え付けてしまいます。

 

 私はこの山で生まれ、その時からその龍神様と話をしてきました。

 

 私の優しいお姉様みたいな神様。そんな印象の。

 

 弟もそれを感じ取っているみたいで気にかけてくれています。

 

 そのことを母様と父様に話すと、とても驚いていました。

 

 まさか、封印に綻びが?それとも選ばれたというのかとか、色々と・・・。

 

 私達はそこへと逃げてきました。

 

「・・・これは?」

 

 その祠の傍まで来たところで母様は驚いていた。

 

 何やらいくつもの札や呪文が刻まれた怪しげな機械も置かれていたのです。

 

「よりによって禁域に入り込むとはな・・・。」

 

 百人もの男達が追い付いてくる。

 

「…あなた達。龍神様に何をしようとしているの!?」

 

「お前達が知る必要はない。何故ならここで死ぬのだからな!!」

 

 そして、母様が私達の目の前で・・・。

 

 斬られてしまった。

 

「母さん!!」

 

「うわああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「フン…さて、お前達を・・・。」

 

 私はへたり込む。手を見てみると・・・ひび割れていたのだ。

 

「ほう・・・ゲートだったのか。こちらが手を下すまでもなくお前は終わるな。」

 

 体の内側から何かが飛び出そうとしてくる。

 

「だが、せめてもの情けだ。お前達を・・・。」

 

 男が刀を手に、私達を襲おうとして、私の中で何かが現れた。

 

「なっ・・・なに?!」

 

「やっと時代を超えたわ。さあ・・・って・・・。」

 

 出てきた謎の存在は、目の前に刀が振り下ろされるのを見て受け止めてくれた。

 

「なんだ貴様!?」

 

「それはこっちのセリフよ!!?」

 

 出ていたのは私の大好きなおとぎ話・・・かぐや姫のような恰好をしていた。

 

 でも頭には角みたいなものもある。その手した扇子のようなもので刀を受け止めていた。

 

「・・・私が狙ったあの子の過去ってわけ?はあ・・・破壊活動はするつもりなかったのに。ただ私は私の時間が欲しくて・・・。」

 

 その変な怪物はため息をつき・・・。

 

「変な札使うんじゃなかった。正式な契約していないから体が・・・。」

 

 体から砂みたいなものが零れ落ちる。

 

―――――おね・・・がい・・・。

 

 変な怪物は私の母の方を見る。

 

「私の…子供達を…助けて。」

 

「それって契約?」

 

 刀に斬られて血の海に沈むお母様。息も絶え絶え・・・。

 

「…命がけの願いなら叶えないわけには・・・。」

 

「いや・・・。」

 

 死にそうになっているお母様。それを見て私は叫ぶ。

 

「死んじゃやだよ!!母様!!」

 

 母様を失う恐怖に・・・。体の中から何かが飛び出そうとする恐怖すら吹き飛ぶ、

 

「へっ?何を・・・って・・・あら?」

 

 その強い願いが叶ったのだろう。

 

「ちょっと!!なんで私があの子と契約を!?」

 

 私の言葉が届いたらしい。

 

「まさか・・・言霊を?それが私を契約・・・て・・・ああもう。契約は履行しないといけないか・・・。でも・・・。」

 

 変な怪物は告げる。

 

「私の名前はカグヤ。あなたの願い・・・叶えるわ。」

 

 カグヤと名乗った彼女は・・・。

 

「…こんな方法しかなかったけどね。ふん!!」

 

 カグヤさんは母様の中に入り込む。

 

――――半ば契約しかけていたから、成功したわ。でも、えげつないわね。呪詛付きの傷だわ。とりあえずフリーエネルギーで生命維持くらい・・・。

 

 よかった。

 

 それを知り、私の中ではじけようとした何が止まる。

 

「まさか…絶望を乗り越えたというのか?そんな馬鹿なことが・・・。」

 

 手を見ると・・・体を走っていた亀裂が消えていたのだ。

 

「だっ・・・だったら、あの化け物の子を!!」

 

――――私の契約者を殺すんじゃないわよ。

 

 カグヤさんは母様の中から声を荒げて立ち上がる。

 

「ひっ?!しっ…死者が蘇った!?」

 

――――まだ死んでない。私がいるから何とか生命維持を・・・。

 

「あり…がとう…私の・・・願いを・・・。」

 

 母様が途切れ途切れにお礼を言っている。

 

―――あなた達の願いを・・・か。一対一が契約の基本のはずだったけど。でも、私はあなた達の願いを叶えることを決めてしまった。イマジンとしては願いを叶える手段は問わないはずなのに・・・。

 

 カグヤさんは母様の体の中から告げる。

 

――――私もヤキが回ったってことか。でも…あんたらがやっていることが非常に気に食わないことも事実。あなたはしばらく休んでいなさい。

 

――――頼んだわ。私の代わりに・・・。

 

「ええ、だから今回はこれを使うわよ。」

 

 どこからともなく腰に銀色のベルトが巻かれ、母様の手には黒いパス。

 

―――変身。

 

――――――夜叉フォーム。

 

 黒に銀色のレールみたいなものが入った体。そのボディに陣羽織を模したようなアーマーが装着され・・・。

 

 頭には鬼の仮面のようなものが付いた。

 

「ふふふふふ・・・さあ、お仕置きの時間よ?」

 

 何かを組み立て剣となったものを右手にて構え、母様は歩き出す。

 

 左手には扇子が・・・。

 

「ひえええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!?鬼だ・・・鬼が来たぞ!!」

 

「私はカグヤ姫よ!!失礼ね!!」

 

 ごめんなさい。私から見ても、鬼や夜叉の類にしか見えません。

 

「いたいけな親子を集団で殺そうとした罪…払ってあげるわ!!」

 

 こうして変な怪人がお母様の体を借り、大暴れすることになる。

 

「あなたは弟を・・・って!!?」

 

「お前さえ殺せば・・・。」

 

 私の目の前に日本刀を持った奴が・・・。

 

 後ろには私の弟が・・・。

 

 振り下ろされる刀。

 

「ぐう・・・。」

 

 私は己の身を盾にして弟を守り、背中を斬られる。

 

「があああああっ!?」

 

「姉上!?」

 

 背中が焼けるように熱い。

 

 でも・・・まだ倒れるわけにはいかない。

 

「死ねえええぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 振り下ろされる刀。

 

「・・・ふう。何とか追いついたぞ。」

 

「えっ?」

 

 その刀が赤い篭手に受け止められていた。

 

「大丈夫か?」

 

「はっ・・・はい!!」

 

 私達を見るその眼差しは、とても優しかった。

 

「だっ・・・誰だお前!?」

 

「誰と言われましたら…まあ応えないといけないよな?」

 

 赤い小手をしたお兄さんは名乗る。

 

「俺は通りすがりの・・・赤龍帝だ!!覚えておけ!!」

 

 お兄さんはそう名乗って刀を篭手でへし折り、私を斬ろうとした人を殴り飛ばした。

 

 

 

SIDE イッセー

 

 さて・・・どうしてこうなったんだろうな・・・。

 

――仕方ないだろう。本当に奇妙なことになっている。

 

――時を超えるのも二度目か。

 

 俺達は何故か過去に飛んでいる。

 

 その際の経緯は色々とあるが、まあ…ようは朱乃さんにイマジンが入り込んでしまい、その後にとんでもない事実が発覚し、イマジンの後を追ってきたのだ。

 

「…誰よあんた?」

 

 朱乃さんの過去に飛んできたイマジンー――カグヤさんが警戒をするが。

 

 良太郎を見て絶望に身を震わせる。

 

「まさか電王!?ぐっ…今あんたを相手している暇は・・・。」

 

「その点は安心して、君を倒すつもりはないから。」

 

 ため息をつきながら良太郎がやってくる。

 

「これも時間の流れの一部になっているから。そちらのアギトさんのおかげでね。」

 

「…アギト・・だと?それに赤龍帝・・・て・・・あんたまさか!?紅の・・・」

 

 カグヤを名乗るイマジンは俺を見てわなわなと震える。

 

「戦う?」

 

「…だったら、その代わりにあなたが私の契約者を助けてほしい。そうでないと、今は離れられない。この体の命・・・私が繋いでいるから。それさえ出来れば・・・。」

 

『・・・・・・・。』

 

 やっぱり・・・か。

 

 あんたが命の恩人ってわけか。

 

 人質にしないだけ、この時点でも良い奴みたいだ。

 

「安心しろ。未来のお前からその辺の事情は聞いている。」

 

「・・・へっ?未来の私?」

 

 カグヤってイマジンは驚いている様子だ。

 

「・・・そうか。私自分の時間を・・・なんで未来の私が?」

 

「・・・っ。化け物共が‼‼結界を張れ!!

 

 そこで姫島家の刺客たちが動き出し、結界を張る。

 

「っ・・・これは・・・。」

 

 それを受け、カグヤさんの電王としての変身が解けてしまう。

 

 残ったのは朱乃さんのお母さんとしての姿だけ。

 

「…これは人外の力を封じる結界。神器も例外じゃないぞ!!さあ…お前達、その化け物の娘をかばうなら容赦・・・。」

 

「へえ・・・。」

 

――――あっ・・・。

 

――――愚か者どもが・・・。

 

 俺はその言葉を聞き逃さなかった。いや…聞き逃すわけもないし、そのつもりもない。

 

 だってねえ。

 

「俺のダチと朱乃さんを化け物ねえ・・・。」

 

 ――――相棒・・・逆鱗に触れられたのはわかる。だが、少し落ち着け。

 

 なんでだ?ドライグ・・・。

 

―――お前の怒りの波動で結界が崩壊し始めている。

 

 亀裂が走る結界を見て、俺は一度、怒りを引っ込める。

 

「・・・そんな馬鹿なことが。」

 

 なんだ、この程度で揺らぐような結界か。大したことないね。

 

「なんだお前は!!?赤龍帝なのはわかる。だが、どうして神器を封じる結界でこれだけの力を!?」

 

 自慢の結界が崩壊しそうになっていることに驚いている。

 

「この結界は上級悪魔でも簡単には、それこそ神格があれば・・・っ?!」

 

 そこで気づいたようだ。

 

 神格という言葉で。

 

「そっ…そんな馬鹿な・・・。神滅具を持つ、アギト・・・。」

 

 その推測に応えるように、足元に背後にアギトの紋章を出現させる。

 

「ひぃぃぃぃぃぃ!!そんな無茶苦茶な存在がどうしてここに!?」

 

「まあ、まだ目覚めたばかりで調子が悪いんだわ。だから・・・。」

 

 俺はあえて神器を消す。アギトの紋章もだ。

 

「お前達が言う人外の力は使わない。素手で相手してやる。」

 

「っ…舐めた真似を‼!この化け物がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 刺客達は一斉に俺へ向けて切りかかる。

 

「さて…寝ていた分の錆落としをしましょうかね。」

 

 俺はゆっくりと歩きながらそいつらに向かっていった。

 

「だからハルト、師匠も朱乃さんの治療を頼む。」

 

「ああ・・・。」

 

「任せておけ。存分にウォーミングアップをするといい。」

 

 そして、一緒に来ていたハルトと自力で時間を超えてきた天道師匠に託した。

 

 

 SIDE 良太郎。

 

「よし・・・だいぶ勘が戻ってきた。体が鈍っていたからちょうどよかった。」

 

「そうか・・・。」

 

 僕は軽く肩を鳴らすイッセー君に苦笑いを返す。

 

『バっ…馬鹿な・・・。』

 

 その後ろに百人近くの刺客が倒れているせいでね。

 

 一人一人、結構な技量を持っていたけど、どうも相手が悪すぎたみたいだ。

 

 まあ、素の状態で素手による格闘の技量だけで上級悪魔を圧倒するのだから、ある意味当然と言えば当然か。

 

「なんだ…なんだお前は!!?なんでお前みたいな化け物がここに・・・。」

 

 アギトの本能…本当に恐ろしい。

 

「・・・化けものか・・・。なあ…俺は未来から来たんだわ。」

 

 イッセー君はその中のリーダー格の男の前でしゃがんで話す。

 

「その頃にはお前らが言う化け物・・・当たり前になっているぞ?」

 

「なっ?」

 

「本当の化け物って…お前達のような気がするぜ。」

 

 そういって彼は拳を振りかぶる。

 

「だっ、だが、俺達を倒しても周りにはまだ・・・。」

 

「それならもう解決済みだよ?あまりに歯応えなかったから拍子抜けもいいところだ。」

 

 その言葉に、今回の旅のもう一人の規格外の同行者がやってくる。

 

 背中に神器を出した状態で。

 

 白い翼を見た男は戦慄しただろう。

 

「・・・っ?!白龍皇だと?」

 

 それはヴァ―リ君だ。

 

 彼は以前にデンライナーでの時間移動の話をして、非常に興味を持っていた。

 

 アギトという特典もあり、今回の時間の旅に同行。

 

「つまらない。せっかく暴れられると思ったのにな。」

 

「あは・・・はははは・・・。」

 

 その後ろにはアーシアさんもいる。

「おいおい。素手の格闘だけで無双しておいてよくいうぜ。」

 

 そして、ネロ君もだ。

 

 揃って、アギトの紋章を展開させている。

 

「それでも時間を超えるという貴重な体験ができるというのは感謝だ。」

 

 そう・・・。アギトが四人。

 

「なん・・・だと?なんで・・・。」

 

 アギトが四人も来ているという異常事態に混乱しているみたいだ。

 

 まあ、普通はあり得ない。覚醒したアギトなど、百年に一人いたら良い方だ。

 

 それが四人もいる。

 

 ましてや片や二天龍なアギト。

 

 後二人もまさに規格外。

 

 そんな連中が時間を遡ってきたのだ。

 

「ったく、アギトが増えると戦力が増えて助かる。」

 

 もちろん姉さんも一緒だ。

 

「なはは、本当にそうだ。」

 

 そして、何故かポルム君まで!?

 

「いや~以前ただ乗りさせてもらった時に交渉しましてね。時間の危機に手を貸すという契約を・・・。」

 

 ああ・・・そうか。エクスカリバーの事件の時に、ポルム君はただ乗りしたんだ。

 

 デンライナーを。

 

 その事に関しては、驚くことはない。彼の場合、この程度できてもおかしくない。

 

 むしろ・・・。

 

「できればデンライナーのデータは使わないでね。」

 

「・・・それを見抜く君も中々だよ。」

 

 いや、君は抜け目ないから、この程度は保険代わりにやっているはずだと思っただけだ。

 

 むしろそれをやっていない方がおかしいと思えるくらい。

 

 彼の神器にデンライナーのデータがあるのなら、単独で時間を超えることすら簡単だろうね。

 

 でも、彼の場合はそれを不測の事態の時のための切り札として温存しているだろうけど。

 

 おそらく、翼の中に、材料を集めて作った彼のデンライナーが眠っているはず。

 

「…君を敵に回したくない。それだけは断言しておく。だからこの力を使わない方がいい。時間というのは驚くほど繊細だし。」

 

 まあ、時間をいじることはしないだろう。余程のことがない限り。

 

 彼も、時間の管理者と敵対するつもりもないようだ。

 

「まあ、その時間が敵に回るなら、容赦はしないけどね。逆にこっちが乗っ取るってやるから。」

 

・・・彼が味方で良かったと思うよ。

 

 銀河連邦を単独で壊滅寸前に追い込むような相手だと…こっちも勝てる気がしない。

 

 彼の行動原理は単純だ。

 

 友達である僕達を助け、皆で幸せになる。それだけだ。

 

「時間って・・・こんなに簡単に遡れるの?」

 

 カグヤさん、違います。

 

この連中が規格外なだけだから。アギトや大魔王、大魔法使いなどなど・・・。

 

「・・・そうか。それで私の契約者は?あの刀に斬られて・・・。」

 

「その点は安心してほしい。姉さんは無事だよ。」

 

 刀の傷を治しているのはハルト君。

 

「時間旅行に感謝する。戻ってきたら姫島家に殴り込みをかけてやるから。ふふふふふ・・・そうか・・・姉さんや母さんをやろうとしたのは叔父様か・・・ふふふふ・・・ふははははは・・・。さあ…帰ったらお仕置きの時間だ・・・。ベヨネッタさんから教えてもらった拷問が役に立つ時が来たようだしな!!」

 

『・・・・・・・・。』

 

「あーははははははははははははははははははははっ!!」

 

 姫島家に幸あれ・・・。もう一人の大魔王がもうすぐそっちに向かうから。

 

 言っておくけど、僕達一同は止めるつもりはない。

 

「すまないがこの石にみんなの力を集めてくれ。それを姉さんに埋め込む。」

 

 僕達はハルト君の指示で、この時間の朱乃さんを救うべくハルト君が持ってきた賢者の石に力を送ろうとし・・・。

 

「・・・こうなったら最後の手段・・・。この山に眠りし龍神の封印を解いてくれる!!」

 

 辛うじて意識のあった刺客の一人が吠えた。

 

――――なっ、あなた!何をしようとしているのかわかっているの!?

 

 朱乃のお母さんが驚愕の声を上げる。

 

「ちょっ・・・どうしたの?」

 

―――この山には姫島家を始めとした数多の退魔の家の物が封印してきた龍神がいるの!!私達がここに来たのはその封印に綻びが・・・。

 

 ・・・その話を聞いて嫌な予感がした。

 

 そう、盛大なフラグというやつに。

 

「そうだ・・・ここには黄金の龍神が眠っている!!守護と破壊、二つの側面を持つな!!故にここでお前達を襲うなと言われたが、むしろちょうどいいと踏んでいた‼‼いざとなれば龍神を使えば・・・。」

 

 その言葉と共に上空に巨大な魔法陣が展開。

 

「アギトが四人相手なら実験に不足はない・・・すでに龍神の制御方法も研究済!!さあ…蘇れ、黄金の龍神よ!!」

 

 そして、轟音と共にそれは現れた。

 

 それは黄金の巨大なドラゴンだった。

 

 全身を黄金の鱗で覆い、扇子のような巨大な翼。二本のしっぽ。強靭な二本の脚で立ち、腕こそはなかったが、その代わりに三つの首を持っていた。

 

 その大きさ・・・あのゴジラよりも更に巨大だ。

 

 その名は・・・。

 

「フハハハハハハハハハ!!さあキングギドラよ!!我の命に従え!!!」

 

 僕は思う。

 

 どうしてイッセー君達と時間を超えると、いつもこんな滅茶苦茶なことが待っているのだろうかと。

 

 一度目は魔王と黄金騎士、そして、黒のコアの爆発。

 

 二度目はゴジラクラスの大怪獣。

 

彼女のおかげで、とんでもない何かが起きることはわかっていたんだ。覚悟はできていたけど・・・。その覚悟すらも上回る事態だ。

 

 これはやばすぎる。

 

 できればもう…イッセー君達をデンライナーに乗せたくない。

 

 必ず何か起きそうだから。

 

 それもだんだん悪化しているような気がしている。

 

 

 

 

SIDE イッセー

 

 時は俺達が時間を遡る前。

 

 俺達は作戦会議を開いていた。

 

 しかしまあ…眠っている間に色々あったもんだ。

 

「…父さんが異世界のアギトってのがねえ・・・。」

 

 なんで言ってくれなかったの!!?

 

 って叫んだら、自力で気付くことが要件だったからというのが・・・。

 

 そこに驚いたら今度は母さんが元魔法少女で、そこから神様になったというのが・・・。

 

 その隣にいる人はその大親友兼、神としての力を奪ったほむらさん。

 

 現、禍の団の代表。

 

 う~む。広大すぎる世界なのに、世間が狭い。

 

「ようやく俺自身のルーツが分かったぜ。」

 

 俺はぶっちゃけ神の子だったというわけだ。この世界で別にアギトの因子をもらったのもそうだろう。

 

 はあ・・・だが、それでも今まで普通の人間として生きていたのは奇跡だったな。

 

 この春についに人間止めちゃったけど。

 

 人間であった時の経験や気持ちが今の俺のルーツなのは変わらない。

 

 これまでも、そしてこれからも。

 

「いや、イッセー。あなたのスペックに関するルーツはわかったわ。でもね、この無茶苦茶な連中を集めまくる才は全く別物よね?」

 

 部長はもう一つ納得していない部分があったみたいだ。

 

 それは俺の周りのことだろうか?

 

「まあ…それはきっと。なあ。」

 

 それに対する答えはドラゴンだから。

 

 その一言で済む。

 

「すまん・・・俺達が一緒にいるからだろう。」

 

 ドラゴン達が集まる。それに惹かれて強い力が集まる。

 

 おかげで俺の中は愉快なことになっている。

 

「ゴジラまでいるとな・・・。」

 

 二天龍に、ついに龍神すら宿ることとなった俺。

 

 次々と力が合流していく。

 

 それを思い出したのか、皆の間に緊張が走る。

 

「まあ、あいつが意図的に暴れることはない。対話はある程度済ませたし。」

 

 話してみると案外いい奴だった。

 

「また、あいつも外に出せるようになったら紹介する。それまで待ってくれ。そんなに時間はかからないようにする。それまで修行のやり直しだし・・・はあ。」

 

『・・・・・・・。』

 

 その言葉に皆は無言。

 

 なんか呆れを感じるぞ。

 

「いや…流石というべきか?」

 

「どうやら、器そのものは底がないのかもしれん。あれだけの存在とどうやって対話を?」

 

 まあ、おっぱい怖いって精神的に参っていたから別の意味で苦労したわ。

 

「我が息子ながら・・・。」

 

「う~ん。これでもかなり心配していたんだよ?次々と色んなモンを引き寄せてくるし。しまいには私達が総出で戦っても、勝てないようなゴジラまで・・・。」

 

 父さんと母さんがため息をついている。

 

 マジで大暴れしたもんな。ゴジラの奴。

 

「今だからぶっちゃけるけど、生まれてくるあなたの妹もなんかのドラゴンを宿しているわ。それも強大な何かの・・・。」

 

『!!?』

 

 まじか・・・。

 

「もちろんアギト。そして、もう一つ、強力な光の力を宿している。アギトではない全く未知の何かを・・・。」

 

「末恐ろしい兄妹ね。アギトがもう一人追加されるのは確定だし。」

 

 生まれてきた妹。大切にしないといけねえな。

 

「・・・本当にとんでもない子ね。」

 

 確かほむらさん・・・でしたっけ?見た目が年下だからさん付けするのに違和感が・・・。

 

「言いたいことがあるのならいつでも聞いてあげるわよ?」

 

・・・うん。どうやら逆らってはいけない類らしい。

 

「でも話してみると・・・まどかと・・・悔しいけどあなたの息子って感じがする。色んな所が二人そっくりだもん。まあ…エロの点はどっちも似ていないけど。」

 

 母さんの大親友の評価に俺は嬉しくなる。

 

「・・・なに微笑んでいるの?」

 

「・・・いや、本当に母さんの大親友だなって。母さんのことをよく知っている。父さんのこともよく見ている。そう思うと、二人の息子として鼻が高いと。」

 

『・・・・・・。』

 

「てっ…照れるね。」

 

「うん。」

 

「・・・・・・っ!?あなたとんでもない人たらしね。なるほど、それでいてドラゴンとしての力を引き寄せる・・・。ある意味勇者、または英雄と言える、ある種のカリスマ的素質との化学反応の結果が今の状況に繋がると・・・。」

 

 ほむらさんがぶつぶつと何や分析している。

 

「どうやら、そっちもこの魔境の本質に気付いたか。」

 

「ええ・・・。これは時間が経つほどにやばくなるわね。」

 

 ポルムさん、一体何言ってんの?

 

「それで、君がこうしてやってきたのは?」

 

「はい・・・。」

 

 そこにはカグヤさんがいた。

 

 なんでも朱乃さんと契約してしまったイマジンらしい。

 

「朱璃さんを助ける。それが私の契約内容です。助けるという意味では私は無事に契約を完了できました。」

 

「娘がお世話になっています、本当に・・・。」

 

 深々と礼をいうのは朱乃さんそっくりの女性だった。

 

「・・・朱璃なのか?」

 

「はい、私です。」

 

 包帯を巻き、大怪我を押してこの場にやってきたバラキエルさん。

 

「お前・・・生きて・・・。」

 

 そして、何も言わずに彼女を抱きしめたのだ。

 

「カグヤさんのおかげよ。ずっと長い間、憑依した状態で仙術を使って私の体を少しずつ癒してくれていたの。まあ・・・ハルトが見つけてくれたおかげですぐに治ったけど。副作用で仙人になっちゃった。」

 

 カグヤさんはずっと朱璃さんの体の中で仙術を使って気を集めていた。それで呪いを消し、体を治していたのだ。

 

 だが、あまりにずっとやり続けた結果、人外になってしまった。

 

「これであなたとずっと一緒にいられるわ。」

 

「ああ・・・、嬉しいよ。本当に!!」

 

 仙人という形で。

 

「ああ・・・。これでやっと名乗れるよ…父上。もう記憶の封鎖は解けているはず。こちらのことは死んだと思いこませた封鎖はね。」

 

 ハルトの背に現れる十枚の堕天使の翼を出す。

 

「まさか…。お前が俺の同僚になっていたか。」

 

 バラキエルさんはハルトに近づき・・・。

 

「言いたいことはたくさんある。だが・・・よく生きていてくれた。」

 

 微笑みかけていた。

 

「生きててくれた。それだけでどれだけ嬉しいか。まあ、影で色々企んでいたことや、転生のこと、魔法使いのことなど突っ込みたいことは山のようにあるが・・・。」

 

 だんだんジト目になってくるバラキエルさん。

 

 それに苦笑しながら、ハルトは話題を変える。

 

「まあ、それは後にしよう。まずは姉さんを・・・。」

 

「ええ。それでお願いが・・・。良太郎さん。あなたに過去に飛んでもらいたいのです。カグヤの後を追って。」

 

「もちろん、今の私じゃなくて・・・。」

 

「はあ・・・まあ、そのつもりだったけど。なんで?」

 

 良太郎の手には既にパスがあった。

 

「…その日付を忘れることはないな。」

 

「ああ。」

 

 バラキエルさんとハルトがそのパスの日付を見て苦い顔を浮かべる、

 

「ここにいる二天龍と他2人のアギトの皆さんを連れた状態でお願いします。そうでないと、あれは止めれませんから。」

 

『あれ?』

 

 一体何が待っているんだ?それもアギトが四人も必要な事態なんて想像もできない。

 

 

 

 

SIDE 良太郎。

 

 僕は思う。

 

 あの時のカグヤさんの言葉の意味がよく分かったと。

 

 でも、せっかくならキチンを教えてほしかった!!

 

 甲高い咆哮と共に、翼を羽ばたかせるキングギドラ。

 

 それだけで竜巻のような突風と雷があちこちに落ちる。

 

 こいつも…ゴジラクラスの怪物なのは疑いようがないようだ。

 

「フハハハハハハハハ!!やれ…焼き払え!!」

 

――――・・・・・・・・断る。

 

「ハハハハハハハハハハ!!さあ…その力を・・・・・・あれ?」

 

 命令を拒否したことに遅れて気づいたあの男は間抜けな声を上げる。

 

―――もう、操られるのは御免だ!!

 

 キングギドラのテレパシーには確かな怒りがこもっていた。

 

――――どいつもこいつもこの誇り高いギドラ族である我を操ろうとしおって!!我のことを馬鹿にしすぎだ!!そんなやから皆・・・・

 

 その怒りがだんだん膨れ上がっていく。

 

―――――万死に値するぞ!!

 

 そういって、三つの口から稲妻のような光線をあちこちに吐き出す。

 

 それを受けた大地が浮き上がり、粉々になっていく。それは強烈な重力の力。

 

 それを的儲けったらこちらの体が一瞬で粉々になる。

 

「なんで・・・操れない?制御方法は完璧・・・。ぎゃあああああぁぁぁぁ」

 

 あの男の体が宙に浮く。そして、あいつは男に怒りの眼差しを向ける。

 

――――中にいる賢き我のおかげだ。術式はすでに解析済。封印もこっそりとだが少しずつ解析し、自らの手でもうすぐ破壊できるところまで来ていたのだ。

 

「なあ・・ああ・・・。」

 

 封印を自力で破りつつあった。その事実に呆然としている男。

 

――――綻びはそれだったのね。まさか内側から封印を破りつつあったなんて・・・。

 

 ずっと封印してきた者達からすればショックだっただろう。

 

「我はもう操られん!!逆に操ってくれるわ!!

 

 その言葉とともに目を光らせる。そして、あの男は倒れた。

 

 あれは催眠術か?

 

―――――ふっ、溜飲が下がったら腹が減ったな。

 

 あいつは告げる。

 

―――この星の人間すべてを喰ってくれる。賢き我は同時に大食いだったらしいからな。まずはそこに倒れている美味そうな少女を・・・。

 

 とんでもないことを!!あいつの視線は朱乃さんに向けられていたのだ。

 

「やらせるかよ。」

 

「そういうことだ。」

 

 それに立ちはだかるのは二人のアギト。

 

 赤龍帝のイッセー君と白龍皇のヴァーリ君。

 

―――邪魔をするなああぁぁぁぁぁぁ!!

 

 飛び上がった二人を三つある首は的確にとらえていた。口から引力光線を吐いてきたのだ。

 

―――――Guard VENT!!

 

 イッセー君が倍化で強化した盾を召還。

 

 そこにヴァーリ君が反射を付加させ光線を防ごうとするが・・・。

 

 その盾は反射しきれずに粉々に砕かれたのだ。

 

「なっ。」

 

 粉々になった盾。その崩落の余波を利用してその場から離脱する二人。

 

「ちぃ…まさか反射が効いていないのか?」

 

――――いや、反射は効いていた。だがやつは・・・。

 

―――――面白い能力があるものだな。力の倍化と半減、譲渡に空間半減、透過に反射。

 

 あのキングギドラってやつは俺たちの能力を見ている。

 

―――――それ以外にもあるようだな。消えぬ焔と減少の毒。

 

――――っ!!?

 

――――そこまで見抜くか。

 

 二人の中にいる二天龍達が警戒を示す。

 

――――お前達を取り込み、その力を得れれば更に力が増しそうだな。

 

 キングギドラの姿が瞬時に消える。

 

 次の瞬間、二人をその顎に捕らえていたのだ。

 

「ぐっ?!」

 

「いつのまに!?」

 

 

 二人はそれぞれ上下の口を、全身でつっかえ棒になるようにして食べられるのを堪えようとしています。

 

 だが…明らかに相手の強さが上。

 

――――無駄な抵抗よ。

 

「おかしい…倍化が弱い。」

 

「こっちの半減もだ。」

 

――――当り前よ。先ほどあの男が使っていた結界。その術式を使わせてもらった。神器の力を抑える力に特化して使ったらこんなところだ。

 

 あいつはつい先ほど使っていた結界の術式を盗み取っていた。

 

 なんてやつだ・・・。

 

「やらせると思いましたか!!アカリちゃん!!」

 

――――はい。母様。

 

 モスラのアカリちゃんを召喚したアーシアちゃん。

 

 そのモスラの光線がキングギドラの頭に当たり、顎を離す。

 

 その隙に二人が離脱。

 

「…派手なことになりそうだな。」

 

 背中から蒼いもう一人の自分を出すネロ君が、キングギドラを殴り飛ばす。

 

―――――ぬうっ?!

 

 だが、すぐに体制を立て直す。

 

――――ほう、驚きだな。小さきものに殴り飛ばされる日が来るとは。

 

「…キングギドラってありかよ。なんでまた・・・。」

 

 ポルム君も同じく唸る。

 

 だが、キングギドラは唸る。モスラを見て・・・。

 

――――・・・お前は!!あのモスラ族の・・・。

 

――――私を知っているの?って・・・先代から引き継いだ記憶に確かにあった。白亜紀の恐竜をたった一人で全て食べ尽くして絶滅させたあなたのことを。

 

 モスラ達は先代の記憶を引き継いでいることが最近わかってきた。

 

 まるで竜の騎士のように。

 

 彼女達もまた代を重ねることに強くなるのだと。

 

「・・・・・・・。」

 

 その知識の中でとんでもない事実が出てきたぞ。

 

 白亜紀の恐竜を全部食って絶滅!?しかも一人で!?

 

――――こいつ・・・マジで規格外だな。

 

 うん、モモタロス。主に生態系的な意味でやばいよ。

 

「ちなみに事実だ。ある世界のキングギドラがそうだった。自らを成長させるために太古の地球で恐竜たちを食べまくった。そのエキスで強大な力を得ている。まさかあいつまで混じっているなんてな。」

 

 ポルム君の説明で、更にやばいことがわかったよ。

 

―――お前に対するリベンジもできそうだな。お前を倒して翼を切り落とされた屈辱を・・・。

 

 それにアカリちゃんの先代って勝ったの?

 

―――今の我は一人じゃない。幾重の我が集まっている。そのおかげで強さはこれまでにないほどに高まっていると思ってくれていいぞ。この世界で我に比類し得る存在などいないと思え!!

 

 怒りと共に無数の山が浮き上がる。

 

 そう・・・山が浮き上がったのだ。

 

「超能力が強くなっている。やばいな・・・。」

 

――――超能力だけではない。見るがいい。

 

 その言葉と共に、無数の雷があちこちに落ちる。

 

――――ただ封印されていたわけではないわ!!遠見の術を会得し、そこからあちこちの魔術などを盗んできた。素晴らしいものだな。この世界の魔術も。次は何を試してくれようか?

 

「どうやら本当にやばい奴らしいな。」

 

 魔術まで使いこなすか。なんて知能の高さ。先ほどの結界の術式を見抜く点もそうだ。

 

 恐竜を食べ尽くし、今度は人間を食べ尽くそうとするあいつを放置できない。

 

「姉上を食べるだと?」

 

 そして、もう一人ブチ切れている奴がいた。

 

「いい度胸だな。」

 

 それは弟であるハルト。

 

「俺はこの日のためにずっと頑張ってきた。ばらばらになった家族を繋ぎ合わせるために。」

 

 ハルトは怒りに燃えていた。

 

 相手の圧倒的な攻撃にひるみもしていない。

 

「ここが俺・・・いや、俺達家族の最後の希望だ。だから、踏ん張らせてもらうぞ!!

 

 その言葉と共にハルトの右手が光を放つ。

 

 その手から現れたのは銀色の指輪。

 

「お前を止める。」

 

「ふっ…やってみるがいい!!」

 

――――――インフィニティー!!

 

 ハルトは変身する。身体から飛び出す三体のドラゴン。

 

 一体は前世からの相棒であるファントムドラゴン。

 

 もう一体は龍神…エデン。

 

 もう一体は龍殺しの天使・・・サマエル。

 

 それらがハルトと一体になる。

 

 銀色のコートを纏った、ウィザードに。

 

 それはウィザード最強の姿。

 

 無限の力、インフィニティスタイルだと。

 

――――なんだその姿は?

 

 キングギドラが驚いて稲妻のような光線を浴びせる。

 

 周囲の大地がぼろぼろに巻き上げられている中で、ハルトは平然と立っていたのだ。

 

「・・・そんなものか?」

 

―――――我が力が効いていない?

 

 ゆっくりと歩いていくハルト。

 

――――ほう、面白い。なら、こちらも本気を・・・。

 

 あいつがいよいよ全力を出そうとする。

 

 だが、そこでもう一つ振動が巻き起こった。

 

――――そんなこと…私がさせません!!

 

 

 

 SIDE イッセー

 

 訳の分からない現象が起きている。

 

 現れたのはもう一体のキングギドラ。

 

―――お前・・・。もう目覚めて・・・。厳重に催眠をかけていたのに!!

 

――――あれだけ叫べば目が覚めるわ!!あなたを止めるのが私――お姉ちゃんの役目!!

 

 はい!?お姉ちゃん!?

 

―――――我が同族ながら、どうしてお前はそんなつまらないことをする!?

 

―――――つまらないこと?お姉ちゃんである私に向かってその言い方はないでしょ!!

 

―――――あっ・・・いや・・・その・・・。

 

 二体のキングギドラが何やら言い争っている。

 

―――大体あなたの悪行は目に余るのよ!!ちょっと説教を!!

 

――ここで説教は勘弁してください!!

 

 いや、若干だが、先に出てきた方が押され気味である。

 

 その光景を見たゴジラが・・・。

 

――ほう。あっちの方のあいつもいたか。

 

―――あっちの方だと?

 

―――その前にあなた、私達と会話を・・・。

 

 とドライグとクレアの会話に参加してきたのだ。

 

―――ただの気まぐれだ。

 

 あいつが表に出てくるなんてな。

 

―――俺の知っているキングギドラは五体。だが、おそらく話からするとモスラが単独で倒したのを含めて六体いたらしいな。

 

 六体のキングギドラの集合体ってわけかい。

 

――――その中で一体だけ異端がいた。怨霊の我に対する最強の守護神としての奴がいた。あれはおそらくそいつだ。

 

 守護神としてのキングギドラだと!?

 

――――そうですか。あなたはそこにいたのですね。

 

――――っ!!モスラもいるのならまさかと思っていたが・・・てめえまで・・・。

 

 二体のキングギドラの意思が一斉にこちらに向けられる。

 

―――――ふん。久しぶりだな貴様ら。

 

―――――あなた、自分の体にいるのがどういう存在か知っているの?!

 

―――――我が宿敵。なんでそいつの中に?

 

 え~と・・・。なんといえばいい?

 

 俺もよくわかっていねえし、相棒達は?

 

――――わかるわけないだろうが。

 

――――まったくよ。私だってゴジラがいるのは想定外だし。

 

――――そういった存在を引き寄せてしまうとしかいえない。

 

―――――ふん。だが割と居心地はいいぞ。

 

『・・・・・・・・・。』

 

 その言葉に二体は絶句。

 

 後ゴジラさん。俺の中、案外気に入っているのね。

 

――――なら、お前を倒せばゴジラも倒したことになるよな?

 

 そして、凶暴そうな方が笑みを作りましたよ?

 

 俺を倒せばそうなると?

 

―――やらせるわけないでしょう!!

 

 それを抑えにかかるもう一体のキングギドラさん。

 

―――――――ぬおっ!?邪魔するな!!お前だってあいつとは因縁あるだろうが!!

 

―――――――それとこれとは話が別です!!ゴジラと対等に話せるあなたにならお願いできます。このまま我が弟を!!

 

――――――だから、俺はお前の弟じゃねええええええ!!それになんでお前の方が力がある?!俺は四体取り込んでいるのだぞ!!

 

――――――そんなの…根性とお姉ちゃん補正に決まっているじゃないですか!!元々私は未来人が作り出した地球産の私もいるの!!メタリックな私も含めたら私だって三体分です!!時間だって操れますから!!

 

――――なんでお前はそんなに姉キャラなのだ!?ええい…お前の巫女の影響か。あの巫女と交流をもって姉キャラになってしまいおって!!それと時間は卑怯だろう!!なんでお前の方にチートな力が!!

 

―――――ふっ・・・だから言っているじゃない。お姉ちゃんに任せなさいと!!

 

―――――その一言で全て済むと思ったら大違いだぞ。

 

『・・・・・・・。』

 

 こいつら仲が良いな。喧嘩するくらいに。

 

その余波だけであちこちに甚大な被害が・・・。

 

―――この世界に来て、どうやら色々とあったらしいな。だが・・・姉の方はなんか勝てる気がせん。キャラ的に・・・苦手なタイプだ。

 

 始まってしまった迷惑すぎる姉弟喧嘩。

 

「皆!!とにかくこの姉弟喧嘩を止めるぞ!!」

 

 声をかける。

 

――――我は腹が減ったのだ!!ゴジラも倒すし、したいことがあるんだ!!

 

――――あなたが暴れると私が守護するべきご近所が星ごと滅ぶわ!!大切な妹のためにも、弟が悪の道に走らないためにも絶対に頑張る!!

 

 なんだろう。

 

 微妙に緊張感がねえぞ・・・。

 

 だが、行われている姉弟キングギドラの喧嘩ははた迷惑極まりない。

 

 早く止めないと。

 

―――Unit Vent!!

 

―――――Final Vent!!

 

 皆その思いに応えてくれた。

 

――――Boost!!Boost!!Boost!!Boost!!Boost!!

 

―――――Divide!!Divide!!Divide!!Divide!!

 

 ヴァ―リと俺はすで相棒達を合体させ、ファイナルベントを装填。

 

 ネロも・・・。

 

――――Maximumdrive!!

 

 三つのメモリを同時にマキシマムドライブさせ、アクセルクイーンを構える。

 

 俺達バイク持ちはその上で、バイクに乗って加速もつけている。

 

 俺はトルネをボード形態にさせて。

 

 ヴァ―リはライカさんのタイヤの上に乗り、高速でスピンさせて勢いをつけ・・・。

 

 ネロはレイダーをアクセルメモリで極限まで加速させた状態で突撃。

 

 アーシアに至っては、アカリがキングギドラ達の上空を飛翔しながら鱗粉で陣を描く。

 

 その陣が二体のキングギドラを取り囲む。

 

 あれは封印ではない。

 

 こちらの必殺技を増幅させるためのものである。

 

 良太郎はクライマックスフォームになり…すでにチャージ済。

 

 ゼノヴィアはゼロノスの状態でゼロガッシャーにデュランダルを合体させていた。

 

 そのうえで限界までチャージ。

 

 師匠も・・・時間を超えてきた形態―――ハイパーキャストオフした状態でキックを放っていた。

 

 ハルトの手にはドラゴンが現れ、それが斧と剣を組み合わせたような武器に変化。

 

 斧として使い、軽く振り回すと・・・その斧頭が途方もなく巨大になる。

 

「皆さん今です!!」

 

―――――へっ?

 

―――――・・・えっ・・・?

 

 飛び掛かってくる脅威に呆ける二体のキングギドラ。

 

 そのキングギドラを二体纏めて縛るのは・・・。

 

「この場合は一瞬だけでいいよね、動き止めるのは。神性を持つ相手だけにたぶん効果的じゃないかな?」

 

 ポルムが放つ鎖。

 

―――――なんだこの鎖は?!

 

――――動きが・・・封じられて・・・。

 

 とある世界でコピーに成功したという神性を持つ相手に効果絶大という鎖。

 

 ポルム曰く、「アギト対策の一つ」とのこと。

 

 今度ゴジラが暴走しても、時間稼ぎにはなると豪語していました。

 

 動けなくなった二体のキングギドラに皆は一斉に放ちました。

 

『ちょっ・・・まっ・・・・。』

 

 最強必殺技の嵐を。

 

 

 

 その結果・・・。

 

 

―――――ぐうう・・・なんだこいつら・・・。

 

――――――痛た…流石に効いたわ。

 

 まるで隕石の落下のような巨大なクレーターの中で倒れ伏せている二体のキングギドラ。

 

 山が消滅してし、大地には深い谷間が刻まれている。

 

「…なんて破壊力。」

 

 カグヤさんが呆然としている、

 

「イッセー達がいる分助かったぜ。ゴジラの時はこうはいかなかった。」

 

「確かに。」

 

 ネロの言葉に、ヴァ―リが苦笑しながら同意する。

 

 ゴジラの場合は、俺と融合することでアギトの本能とブースデットギアの力を得たためにまじでやばかったらしい。

 

 そして、一撃の威力はどうしてもこちらが上らしい。

 

――――ちぃ…またお前に負けるというのか・・・。オノレ・・・。

 

 悔しそうに俺を睨み付けるキングギドラ。

 

――――いつもお前に負けてばかりだった。いつも・・・いつもだ。何故勝てない?何故・・・。

 

 その瞳に涙すらにじませている。

 

「・・・へえ。お前、あのゴジラのライバルか?ならちょうどいい。」

 

 それを見たヴァ―リが笑みを浮かべる。

 

 そして、近付いて話しかけてきたのだ。

 

「おい!!弟ギドラ!!俺はヴァ―リ・ルシファー。お前のライバルであるゴジラを宿した奴のライバルだ!!」

 

 そして、自ら名乗りをあげたのだ。

 

 その前に弟ギドラって・・・。

 

「お前・・・あいつに勝ちたいのだな?」

 

―――――ああ…。勝ちたい。どうしたら強くなれる?

 

「ふっ・・・なら俺についてこい!!」

 

――――何?

 

『へっ!?』

 

 その爆弾発言にその場の皆が固まってしまった。

 

 あいつについてこいって、お前何言ってんの!?

 

――――お前の中に宿れというのか?

 

「そういうことだ。」

 

 なんでお前、そんなことを・・・。

 

「イッセー。俺はお前がずるいと思った。龍神クラスのゴジラを宿していることがな。ライバルと名乗るなら、俺も同じ条件に立つ必要があると。」

 

 でも…俺はゴジラの力をまだ使えたわけじゃないぞ。それなのに・・・。

 

「それをお前は将来、絶対に使いこなす。俺はそう断言しているがな。」

 

 なんかすげえ高評価。一応そうなるために修行するつもりだが・・・。

 

――――・・・我にお前の操り人形になれというのか?

 

 操られるという言葉に警戒を示すキングギドラ。

 

 だが、それを笑い飛ばすのもまたヴァ―リだった。

 

「ふっ…誰がそんなもったいないことをするか。お前はお前のままが一番強い。気高さと強さを誇るお前はそのままがいい!!それに・・・。」

 

 あいつは言いやがった。

 

「お前をこちらが自分の手で御せないでイッセーのライバルを名乗れるか?それに俺達の相棒を見て、お前は俺がお前を操るつもりでいると本気で思っているのか?」

 

 その言葉に呼応するように、ヴァ―リと契約している者達が一斉に現れる。

 

 弟ギドラはそれをじっと見ている。

 

――――――・・・・・・・。

 

 あいつ、そんなことを思っていたのか。

 

 なんか照れる。

 

―――――面白い。共にライバルは共通している。なら・・・。

 

 一通りに見極めた弟ギドラは笑みを深める。

 

 そして、その体が黄金の光の粒となり、ヴァ―リの中に入る。

 

――――お前と共に歩むことにしよう。だが、不甲斐ないなら食い殺す。そのつもりで頼むぞ。

 

「お前こそ、ゴジラの最大ライバル・・・それが間違いじゃないと証明してくれよな?」

 

―――――言ってくれる。ゴジラよ!!再戦の時を楽しみにしているぞ。我はしばらく眠りにつく。力を馴染ませないといけないのでな。

 

―――――頭が痛いな、俺はお前なら、あいつはあっちか。

 

 ゴジラはため息をついている。

 

 まさかヴァ―リの野郎・・・。

 

―――――賑やかになるわね。

 

―――――ああ・・・。

 

―――――すげえ大物。

 

―――――また挨拶しねえと。

 

「赤龍帝がゴジラなら、白龍皇がキングギドラって何だよ。これは凄まじい。アーシアにもモスラだし・・・そうなると。」

 

 ポルムの奴がネロの方を見る。

 

「・・・まさかね。でもありえるかも、そうなるともう一人覚醒した彼女は・・・。」

 

 ポルムがため息をついている。その理由は・・・。

 

―――――流石に効きました。あなた達は凄まじい爆発力を持っているのですね。

 

 もう一体のキングギドラは全身のダメージに立ち上がることもできずに苦笑していた。

 

――――私もあなた達の行く末が気になってきました。我が弟がついていくと決めたあなた達を・・・そうですね。

 

 そいつは朱乃さんを助けようとしていた賢者の石を見て・・・。

 

――――やっぱり、そこがよさそうですね。生まれた時から知っている朱乃ちゃんなら私の巫女になってくれそうですし。

 

 賢者の石の中に吸い込まれるように入っていき・・・そのまま朱乃さんの中へと賢者の石ごと入っていったのだ。

 

――――この子の中であなた達を見ることにしましょう。大切な妹の中にいられるのは本望ですし。

 

『えっ!?妹?!』

 

 消えた二体のキングギドラ。片方はヴァ―リ。もう片方は朱乃さんが・・・。

 

 その前に朱乃さんを妹ってなに!?

 

「あの時の謎は解けたぞ。だから朱乃さんはあの時キングギドラの力を・・・。」

 

―――こちらも納得した。そういうからくりだったか。はあ・・・。腐れ縁が増える。イッセーよ。おそらく、今度は俺の関連の奴らが次々と現れるぞ。覚悟しておけ。

 

 そんな覚悟はまっぴらごめんだよ!!ゴジラさん。あんたらみたいな災害の化身といえる大怪獣が今度は集まってくるというんかい!!

 

「はあ・・・とりあえず帰ろうよ。疲れた。」

 

 なんだろう。今回はすごいお騒がせで済んでしまった。

 

「あっ、そうそう。未来のカグヤさんより。あなたはそのまま契約続行で頼むって伝言があるよ。」

 

 良太郎の奴がカグヤさんに話しかける。

 

「朱璃さんを救うこと。それがあなたにこの世界で時間を与えるための条件になっているって。」

 

「ちなみにオーナーとの話もついている。本来なら死んでもおかしくないはずだが、アギトの介入、そして、時間すらも破壊しかねない二体の龍神を抑える。そのためにね。」

 

 ポルムがその説明に補足をつける。

 

 時間すら破壊しかねないって。あの二体そんなに危険だったのか?

 

「少なくとも、片方は時間を操る能力を持っているのは確定している。あれだけ強大な存在がいろいろな時代に現れ、荒らしまわるだけでも十分ね。寧ろ・・・穏便にすませることができるだけ恩の字だ。性格は結構愉快だったけど。」

 

「そう・・・。電王にそう言われるのなら・・・飲むしかないわね。いいわ。私も契約はきちんと果たす主義なの。終わったら自由にしてもいいのよね?」

 

 カグヤさんはそう告げる。

 

「うん・・・。だからそのパスとベルトは・・・。」

 

「ああ…これは私の力。それでパスとベルトを作り出しちゃってね。」

 

 何気にこのカグヤさんもすごいかもしれない。

 

「だったら・・・この契約が満了した後、やりたいことがあるの。私、この子が気に入っちゃってね。」

 

「・・・ってええ!?まあ、孫の事例もあるから問題はないけど・・・。」

 

 何を驚いているんだ?

 

「ううう~・・・。」

 

『んんん!?』

 

 そこで今更に気付いたことがある。

 

「父上・・・。」

 

 爆心地でボロボロになって倒れているバラキエルさんの姿を。

 

――――おそらく俺達の必殺技の嵐に巻き込まれたのだろう。

 

『・・・・・・・。』

 

 皆は思う。

 

 やっちまったと!!

 

「・・・仕方ない。気を失っている今を利用して父上の記憶も封印しておく。」

 ハルトは苦笑しながらバラキエルさんの方へと歩いていく。

 

「うう・・・朱璃・・・朱乃・・・ハルト・・・。」

 

「でも、必死になってきてくれたのか。うれしいです、父上。また未来で・・・。」

 

 優しい微笑みでハルトは指輪を作動させる。

 

 その時だった。

 

「・・・っさて、帰ろうか。これ以上はまずいのだろ?」

 

 師匠が退き時だと教えてくれる。

 

「ここから先はこの時間にいる者達に任せないとな。」

 

 しかし、どうして師匠まで?

 

「・・・何。デンライナーのオーナーと所長とは故意にしているだけのことだ。あのチャーハンを作っているのも俺だからな。」

 

「・・・世間は狭いと思ったよ。」

 

 良太郎は遠くを見ている。どうやら色々と思うところがあるらしい。

 

「帰ろうぜ。色々と濃かった。」

 

 

 そうして俺達の二度目のデンライナーの旅は終わる。

 

 未来においてとんでもない事実が発覚したことにため息をつきながら。

 

 

 

SIDE 朱乃

 

 というわけでしたか。本当に久しぶりです、ギドラ姉様。

 

 幼い頃、私は精神体だけ飛ばしたギドラ姉様と仲良くなっていました。

 

 生まれた時からずっと見ていてくれたらしく、私に優しく語りかけてくれた。

 

 おしとやかで、聡明で、姿はわからないけど私の手本となった人。

 

 その方を私は姉と呼んで慕っていました。

 

「フフフ…私のことを姉と呼んでくれるのはうれしいわ。本当に何年ぶりなのやら。」

 

 私の中で姉様はずっと見てくれていた。

 

 私の力にもなっていたのだ。

 

「私はあなたと共に歩むことを決めた。だから・・・。」

 

 私のお姉様は笑っていた。

 

「一緒に行こうか。あなたとならどこまでもいけるから。そうね・・・。」

 

 その人は人の姿をとって笑っていた。

 

「お姉ちゃんに任せなさい!!」

 

 私が手本とするべき神々しいまでの姉オーラを纏わせながら。

 

 

 

「・・・んん・・・。」

 

 そして、私は目を覚ましました。

 

「あら?ここは・・・。」

 

 私は誰かに膝枕されていました。

 

 それをしていたのは・・・。

 

「おはよう、朱乃。」

 

 ずっと会いたかった人。

 

「お・・・母・・・様。」

 

 記憶が戻り、生きているとしっても実感がわかなかった。

 

 でも・・・。

 

「大きくなったわね。本当に・・・。」

 

 子供の頃と変わらない微笑み…忘れるはずもない。

 

「お母様!!」

 

 私は抱き着いてしまった。

 

「…辛かったでしょう。本当にごめんなさい。」

 

 そんなことはどうでもいい。

 

 確かに辛いこともいっぱいあった。

 

 苦しいこともたくさんあった。

 

 それでも・・・それでも、母様に会えた。

 

 それだけでどれだけ嬉しいか。

 

「こちらもすまなかった。本当に・・・。」

 

 バラキエル・・・いえ、父様も・・・。

 

 頭を下げる父様に、私は何も言わなくていいと

 

「全て思い出した。むしろ謝るのは私の方です・・・。必死になって来てくれたのに。」

 

「・・・ああ・・・。」

 

 父様の声に嗚咽が混じります。

 

「それとハルト。あなたも無茶しすぎよ。」

 

「はあ。その話し方。やはり姉上だ。いや、長かったよ。こちらは記憶があやふやだったからどうすればいいのか手探りだった。だが上手く行って良かったよ。皆…改めて有難う。」

 

 弟は皆に頭を下げる。

 

 イッセー君が代表で笑みを浮かべながら肩を軽く叩く。

 

「ああ。まあ、本当に苦労したけどな。」

 

――――私も皆さんにお礼を挨拶がしたいかな?

 

 あら?お姉様も挨拶したいの?

 

――――だって、私も姉としてお世話になっている人達に・・・。

 

 そうですわね。

 

「皆さん・・・父様も母様も、ハルトにも紹介したい人がいます。」

 

 私はにっこり笑って紹介することにしました。

 

「皆さん…お初にお目にかかります。」

 

 そして、私はお姉様を外に召還します。

 

 本来の姿で。

 

『・・・・・・・・・・。』

 

「私の名前はキングギドラ。朱乃の姉です。」

 

 皆が外にいる本来の大きさのお姉様に唖然呆然としています。

 

 そのデカさ・・・ガメラよりもはるかにでかいわね。

 

「かつてゴジラと相打ちになったことがありますが・・・皆さんよろしくお願いします。」

 

 そうですわね。ゴジラと相打ちになった方でしたわね。お姉さまって。

 

 そうするとゴジラクラスは間違いなくて・・・。

 

 あれ?リアスが固まって・・・。

 

「ふっ・・・。」

 

 悟った笑みを浮かべた後・・・そのまま倒れました?!

 

「ぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶく・・・・・。」

 

「部長―――!!?」

 

 白目剥いて泡をふいている?!なんか危険な痙攣まで・・・。

 

 リアスには…刺激が強すぎたかしら・・・。

 

「しかたないわね。私が診てあげる。うん・・・抱き心地最高ね。」

 

 そんなリアスを膝枕しているのは・・・いつの間にか人間に変身した姉様。

 

 青い瞳にふわふわロングヘアの金髪の美人さんです。

 

 あまりあまりの早業に皆も驚いています。

 

 それとリアスの抱き心地を堪能しているなんて…。少し羨ましいですわね。

 

「安心しなさい。後で朱乃も抱き締めてあげるから。」

 

 それでしたら…まあ許します。

 

 

 

 

 今だ気絶したリアスの代わりに私が話を進めることにしました。

 

「・・・しかし、こちらの眷属って時間関係が多いわね。」

 

「確かに。」

 

 一回目は祐斗君のために行ったのでしたよね。

 

 二回目は私。

 

「はあ…一度私も体験しておくべきかもしれないわね。時間を超えるってやつを。眷属の中でその関係の仕事をしている子もいるし。」

 

 リアスは真剣に考えている様子。って・・・もう復活したの?

 

 精神的にもかなり打たれ強くなりましたわね。

 

「朱乃・・・あなたとんでもない爆弾を持っていたわね。これでも結構精神的にタフになった自信はあったけど、久しぶりに気を失ったわ。それと…これからよろしくお願いします。」

 

「うんうん・・・あなたも苦労しているわね。」

 

「わかってくれますか!?ああ…救いなのはあなたが凄く良い人ってことだわ。」

 

 それでも回復が早くなっている辺り、流石ですわ。

 

 まあ、お姉様は何も言わずにリアスを抱きしめていますけど。

 

「それに・・・私の最後の眷属のこともあるから、なんでこんな化け物ばかり。」

 

 リアスの視線はいまだ眠り続けているロズヴァイセさんに向けられています。

 

 えっ?最後の眷属って・・・あのロズヴァイセさんなの?

 

「よりによってよ。ああもう・・・。」

 

 頭を抱えるリアス。

 

 確かに私の知る限り、最高すぎる眷属だと思うわ。

 

 ただ、彼女は北欧神話の中心人物。

 

 外交問題にならないかしら・・・。

 

「・・・眷属にしようとしてやったわけじゃないの。瀕死の彼女がアギトとして覚醒して、その転生のために私の駒が使われたのよ。」

 

 アギトに覚醒?

 

「・・・むう。どうしたもんか・・・。お主に責はないのはわかっておる。だが、こいつがいるからこそこちらのバランスがのう・・・。ロズヴァイセの抑止力はそれだけのものがある。」

 

 オーディン様もまさかの事態にかなり狼狽えている。

 

「おそらく、アギトとしての因子はこやつの父親か。じゃが、まさか半神のヴァルキリーがアギトとして覚醒することも前代未聞じゃぞ。」

 

「父親からの因子?」

 

 聞き逃せない単語が聞こえてきました。

 

「皆に隠していたが、ロズヴァイセはとあるアギトとヴァルキリーの間に生まれたのじゃよ。行き倒れていた父親を母親が助け、自分の勇者と見初めたのがきっかけでのう。今でもその時のことを思い出すわい。あいつが初めてワシらの前で変身したとき、わしも傍におったからな。二人の結婚式の時も仲人を務めたのう。」

 

 懐かしんでいる様子のオーディン様。

 

 大変、すごいことを聞いてしまったようです。

 

 つまり、オーディン様はアギトをかくまっていたと。

 

「わしの養子にする形でじゃ。そういった意味ではロズヴァイセもわしの孫同然というわけじゃよ。生きてくれたことには…感謝せんとな。」

 

 オーディン様は頭を下げたのだ。リアスに向かって。

 

「わしのもう一人の孫・・・助けてくれたことを感謝する。」

 

「いっ・・・いえ・・・。」

 

「外交の問題はわしが何とかする。後は本人が目覚め、どうしたいかによる。最悪、父親の方を表に引きずり出すという手があるが・・・。」

 

 いまだ眠り続けているロズヴァイセさん。

 

 オーディン様のスケベ爺とはまた違う、家族を愛する一人の祖父としての顔に私達は正直驚いていた。

 

「オーディン様!!大変です!!」

 

 別のヴァルキリーが慌てた様子でやってきた。

 

「ロズヴァイセが危篤と聞いて・・・あの方が・・・。」

 

「えっ?その怪我もすぐに治ったという報告も送ったはずじゃが?」

 

「そこが伝わっていなかったのです!!ロズヴァイセが瀕死の重傷を負うなんてまさかの事態に向こうが大騒ぎになってしまって。その瀕死の重傷って部分だけをあの方が聞いてしまい飛び出してしまわれて。」

 

「あの馬鹿者共が・・・。あやつが本気で怒ったらまずいぞ!!」

 

 オーディンが本気で慌てている。

 

「はい。愛娘に重症負わせた奴をぶん殴りに行くって・・・。」

 

『・・・・・。』

 

 ロズヴァイセさん重傷で父親アギトが大激怒。

 

 これは・・・まずいですわね。

 

「たぶんあいつのことじゃ、真っ先に娘の容体を確認するために・・・。」

 

 オーディン様がそう告げると共に、凄まじい激突音と共に、地面が揺れた。

 

「ここに来るだろうな。」

 

 オーディン様。フラグを建てないでください!!

 

 すぐに回収されてしまったじゃないですか!!

 

 そして、激突音がしてきた方の壁が粉々に吹っ飛ぶ。

 

 そう、一台のバイクによって。

 

『・・・・・・・。』

 

 まさかバイクに乗って壁突き破ってやってくるなんて誰が思うか。

 

 オーディン様は慣れている様子で落ち着いていますが、私達全員唖然呆然の有様です。

 

 現れたのはバイクに乗った緑色の・・・。

 

「ギルス・・・だと?」

 

 そう、不完全体であるギルス。

 

 ネロ君と同じく。

 

「そうじゃ。こやつはギルスのままアギトを超えた男。そこにいるネロと同じタイプじゃ。」

 

 ギルスが叫びます。

 

「ロズヴァイセ!!どこだ!!」

 

「落ち着けい!!娘が心配なのはわかるが、人の家に土足であがるでないわ!!」

 

 凄まじい圧でギルスを叱りつけるオーディン様。

 

 土足ってレベルじゃないですわ。これって・・・。

 

「安心せい。怪我ならすぐに治った。」

 

「そう・・・か。」

 

 安堵したのか、座り込むギルス。

 

 その変身が解ける。

 

「それでオーディン、ロズヴァイセはどこに?」

 

「向こうの部屋で眠っておる。じゃが・・・少々困ったことになってのう。」

 

 眠ったままのロズヴァイセの気配を感じたのだろう。

 

「!!?アギトとして覚醒してる?」

 

 父親はすぐに気が付いたようです。直接見るわけではなく、気配だけでわかってしまったようです。

 

 アギト同士ならわかるものなのでしょうか?

 

「ロキの奴がやらかしおったのじゃが、悪魔の駒を介してアギトとして転生して助かったのじゃよ。」

 

「ロキのやつがやらかしたのか。・・・・・・あいつは今どこだ?」

 

「・・・まあ、お主もロキを止めるという意味では参加決定じゃのう。なら状況を話す。」

 

「もう、今度はなんなのよ!!」

 

 その時、この家の主であるまどかさんがぷりぷり怒りながらやってきたのだ。

 

「キチンを玄関から入ってきなさいと言われなかったの!!なんでバイクで壁ぶち破って入ってくるのかな!?」

 

「あっ・・・いや・・・。」

 

 まどかさんの剣幕に押されている彼。

 

「涼さん・・・。」

 

 大穴の空いた壁の向こうから降り立つのは一人の女性だった。

 

 纏っているのは黒のインナーの上からのヴァルキリーとしての鎧。

 

 右手には突撃槍。左手には円形の盾。

 

 その二つから蒼の焔が灯っている。

 

 銀色の髪をした女性。赤い瞳が大変印象的である。

 

「いや・・・その・・・セルベリア。話を・・・。」

 

 どうやら彼女の名前はセルベリアというらしい。

 

 彼女は怒り心頭で全身からも蒼い焔が立ち上っている。

 

 手にしている突撃槍を彼に突きつけて告げるのは・・・。

 

「・・・・・・この惨状に何か申し開きは?」

 

「これはお主が悪い。」

 

 オーディン様も肩をすくめて擁護する気はないとアピール。

 

「・・・すまなかった。娘が重体と聞いて気が動転していた。」

 

 そして、頭を下げたのだ。

 

「もう。それで娘って・・・。」

 

「葦原さん・・・?」

 

 そこでこの家の主、翔一さんが呆然としながら彼に声をかけていた。

 

「・・・・・・・翔一?」

 

 一方の彼――葦原さんも目を丸くしている。

 

「えっ?なんで葦原さんも?」

 

 そして、誠君も同じ反応。

 

『・・・・・・・。』

 

 

 

 

 

 SIDE イッセー

 

 今、父さんの知り合いがまた一人増えた。

 

「ホントにすまなかった。まさかお前の家だったとは。」

 

 土下座している方がそうです。

 

 名前を葦原 涼さん。

 

 父さん達の戦友。

 

「主人が大変な迷惑を。あなた…冷静に話を聞いてください。きちんとここから、すぐに治ったという報告は入っていましたよ。この街には死んだ人間すら生き返るような技術がたくさんあるのですから。」

 

 そして、その奥さんであるセルベリアさん。

 

 その戦友が頭を下げているのが、この家に土足どころかバイクで壁ぶち破ってやってきたことについてだ。

 

「まあ、娘がそうなら慌てるって。しかし、彼女が君の娘だったなんて・・・。それに奥さんか・・・」

 

 それを簡単に許す父さんがすごいと思う。

 

「おめでとうと言わせて。幸せになれて本当によかった。」

 

 それどころか涙ぐんでいますよ!?

 

「こちらも、噂の赤龍帝のアギトがお前の息子だったとはな。しかも、お前はその幼馴染として転生か。」

 

「奇妙な縁だ。」

 

 三人がしみじみと話し合っている。

 

「娘を救ってありがとう。この通りだ。」

 

「あ・・ああ・・・いや・・・。」

 

 部長は頭を下げられて面食らっている。どう見ても父さんと同等クラスのとんでもない人物に頭を下げられていることに戸惑っているようだ。

 

「・・・私の眷属・・・イッセー関連ばかりだわ・・・。しかもアギト三人目だし。」

 

 そして、涙目。

 

「それでロズヴァイセは?」

 

「一度瀕死になったが・・・。」

 

 瀕死って言葉にセルベリアさんは表情を曇らせる。

 

「まさかとは思うけど・・・。」

 

 セルベリアさんはどうやら別のことを心配しているようすだ。

 

「何を心配し・・・って・・・まさか・・・。」

 

「私の娘だから・・・。」

 

 葦原さんも彼女が何を心配しているのか察した様子だ。

 

「一体どうして・・・まさか・・・。」

 

 オーディン様もそれに思い至ったらしい。

 

 まさかっていうけど、何がまさかなのか説明がほしい!!

 

「はい…覚醒しないかどうか・・・。」

 

 またフラグは経っていた。

 

 そして、そのフラグは・・・。

 

 家全体を大きく揺るがす爆音と共にすぐに回収された。

 

「なっ・・・ななななな・・・・・!?」

 

「今度は何!?」

 

 まさかの事態に、流石に俺達も大慌てだ。

 

 そこで俺達は見た。

 

 ドアを壁ごと吹っ飛ばして歩いてきた一人の女性に。

 

「のど・・・かわいた・・・。」

 

 ゆらゆらと寝ぼけて歩いているロズヴァイセさんを。

 

「熱い・・・。」

 

 ただ、その全身から蒼い焔が吹き出している状態で。

 

「あ・・・しまったわ。完全に覚醒している。しかも、この凄まじい力は・・・。」

 

「アギトとしてもだな・・・。しかも寝ぼけていやがる。」

 

「みず・・・みずどこ・・・。」

 

「ねえっ・・・姉さん…うう熱くて近づけない・・・。」

 

 新の奴が必死に止めようとするが、近付くことすらできない。

 

「こうなったロズヴァイセは水を飲まないと起きないのよ。でも起きてくれないと水は飲めないわね。・・。」

 

 凄まじい熱量。水なんてすぐに蒸発する。

 

それにオーディン様ですら近づけない。

 

「なんちゅう力じゃ・・・。」

 

「のど・・・のどかわい・・・。」

 

 ええいもう!!

 

 ドライグ!!あれでいく!!

 

―――あれって・・・まさか!!おい無茶だ!!

 

――――そうよ!!

 

 水飲ませるのならあれしかないだろ!!ヴァ―リを待っている暇もねえ!!

 

 あいつは今精神世界で弟ギドラとの対話でずっと眠っているから!!!

 

 俺は近くにあったボトルの水を大量に口に含み・・・。

 

 俺は透過を使い、ロズヴァイセさんの懐に飛び・・・。

 

「えっ?」

 

「なあ!?」

 

「あら・・・。」

 

「ほえっ?」

 

 そして口に含んだ水を・・・ロズヴァイセさんに飲ませる。

 

 もちろん口移しで・・・。

 

「・・・・・・・・。」

 

 透過を使って一気に突っ込んだけど、完全に逃がせたわけじゃない。

 

 滅茶苦茶熱い‼‼全身が燃えるように熱い!!

 

 だが・・・。

 

「・・・・・・?」

 

 口移しで水を飲ませると、虚ろだったロズヴァイセさんの目に光が戻った。

 

 それと共に全身から放たれる蒼い炎が消えていく。

 

―――――あ―いや…大胆だな、相棒。

 

――――うん・・・、

 

――――ある意味流石。

 

――――確か・・・人間共の雄と雌の間で唇同士をくっつける合わせるのは特別な意味があったのだな。宿主からの知識が正しければ。

 

 ゴジラさんは冷静に今、俺がやらかしてしまっていることを分析している。

 

――――そうらしい。キスというものだと。

 

――――そうか・・・。それをいきなりやらかすこいつはすごいものだな。

 

「・・・・・・!??」

 

 ロズヴァイセさんの意識が明確に戻り、今の状況を理解する。

 

 顔が真っ赤だ。

 

「あっ・・・いやね、今回は緊急事態ということで・・・。」

 

「きっ・・・。」

 

 だんだん涙目になっていき…不味いと思った。

 

「きゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 悲鳴とともに蒼い炎をまとった右こぶしによる渾身のストレートを繰り出してきたのだ。

 

「がぼっ!?」

 

 受け・・・流せなかった。

 

 俺はすさまじい破壊力を込めた拳を受けて壁まで吹っ飛ぶ。

 

 壁を粉々にしてそのまま倒れたのだ。

 

――――相棒?!

 

 すげえ…いい右ストレートでした。やっぱ…アギトの本能目覚めているわ。こっちが透過で流すことも想定して蒼の炎を固めて殴ってきやがった。

 

――――・・・末恐ろしい娘だわ。

 

 まだ、立ち上がれる。何とか事情を説明ってええええええええぇぇぇぇ!!?

 

 ――――Shoot Vent!!

 

 立ち上がった先には巨大な大砲を構えた涙目のロズヴァイセさん。

 

 目は赤く輝き、背後にはアギトの紋章が輝いているという大変やばい状況。

 

 涙目でこっちをにらみつけている。ちょっとかわいいと思てしまったけど。

 

「わーロズヴァイセ落ち着け!!」

 

 そんなロズヴァイセさんを皆さん総がかりでなだめることになりました。

 

 

 

SIDE 椿

 

 私達は今休戦することにした。

 

「まずは状況の確認が・・・。」

 

 舞さんは捕らわれの状態でもかなり冷静。

 

「一応・・・この手の経験は何度かありますので。時空を超えたこともあります。」

 

「あなた…色々と苦労しているのね。」

 

 私達がいるのはメガへクスの内部。そこで私達は個別に円筒のガラスケースの中で液体につけられた状態で保管されていたのだ。

 

 会話はどうやっているのか?

 

 単純な話。テレパシーで行っている。

 

「メガへクスに捉えられるのは二度目…ため息しかでません。」

 

「そうか・・・。」

 

 最初はあれだけ激突していたけど、話すとものすごく気が合った。

 

 すでに喧嘩のことは互いに謝っている。

 

「さあて・・・どうしようか?」

 

――――しばらくはそのままでお願いします。

 

 んん?

 

 私達に話しかけてくる誰かがいる。

 

「ども♪」

 

 そこには…チェルシーさんが!?

 

 傍で作業していたメガへクスの一体の顔がチェルシーさんに戻って・・・。

 

「私もいるぞ。」

 

 サムスさんまで・・・。

 

 どこから声がするのかわかりませんけど。

 

 いつの間に侵入を?

 

「ふっ…他にも何人か潜入している、ポルムの策でな。この時点で先手は取れた。後は決戦の時を待つだけだ。」

 

 そうか・・・。

 

「今の内に今後のことについて語り合いましょ。」

 

「うん、じっくり時間もありますし。しゃべるくらいしかやることないからちょうどいいわ。」

 

 こうして私達は団結を深めていく。

 

 

 SIDE イッセー

 

 まあ、誤解は解けたみたいだ。

 

「申し訳ございませんでした!!」

 

 土下座するロズヴァイセさん。

 

「事情は父様と母様から聞きました。本当に・・・ごめんなさい!!」

 

「いやいや・・・。」

 

 殴られた頬と首がいまだに痛いです。いい右でした。

 

 ポルムの解説がそこで入る。

 

「そして、ヴァルキュリアか。驚いたよ。セルベリアさんがねえ。」

 

 ポルムの視線の先にはセルベリアさんが。

 

 って…二人とも知り合い?

 

「まさか…あれのせいか?あなたがこの世界に来たのは?」

 

「おそらくは。私はこの世界で転生という形で復活しました。前世の力を持ったこの世界でヴァルキリーとして。初めは何の皮肉かと思いました。」

 

「どうやら生前の力を保持したままの転生の実験は成功してしまったということか。運命操作も系列もあったからやっぱり似た部分が・・・。」

 

 ってまたお前かい!!お前は一体どれだけのことをやらかして・・・。

 

「彼女の境遇を哀れんでね。実験も兼ねてある術式を施したんだ。」

 

「つまり・・・この世界で俺が彼女と出会えたのは・・・。」

 

「それで私が生まれることができたのは・・・。」

 

「うん!!私のおかげってことになる!!いや~ヴァルキュリアとアギトのハイブリットだなんて流石に読めなかったよ。」

 

『・・・・・・・。』

 

 固まってしまうロズヴァイセさん達。

 

「一度・・・あなたとはじっくり話し合う必要があるわね。一体どれだけのことをやらかしているのか。」

 

 部長はポルムの方をじっくりと見る。

 

「ふっ…数え切れぬわ。」

 

『威張って言うことか!』

 

ドヤ顔のポルムに対して部長とヒュミナさんからハリセンが振り下ろされた。

 

「どうしよ・・・新しい私の眷属の力の底が全く見えない。」

 

 底知れないロズヴァイセさんの潜在能力。

 

 力を使いこなしたらどうなるのやら。

 

「まあ、なんともなくて幸いだって。」

 

 俺は大した怪我なないことを確認する。

 

「でも・・・火傷が・・・。」

 

「ああ…これは別だ・・・。」

 

「あ・・・。」

 

 体のあちこちの火傷はロズヴァイセさんに口移して水を飲ませようとして負ったものだ。

 

「これくらいすぐに治るって。一応ゴジラの焔で耐性もあるから。」

 

「・・・・・・。」

 

 呆けた様子で俺をじっと見るロズヴァイセさん。

 

「あっ・・・。」

 

 そこで俺とロズヴァイセさんの何かが繋がった。

 

 そんな感覚が・・・。

 

「見つけました。」

 

 ロズヴァイセさんは告げる。

 

「私の・・・勇者を。」

 

『えっ!?』

 

「ちょっ…お主何を言っているのが分かって・・・。」

 

「私の中のアギトとしての直感が告げています。この方が共にいるべき人だと。そう…運命の出会いだと。」

 

『・・・・・・。』

 

 唖然としている皆。

 

「あの…迷惑でなければ、私を傍に置いていただけませんか?」

 

「えっと・・・。」

 

「私・・・あなたの傍に居たいのです。」

 

 やばい・・・すげえやばい人が俺を見染めてしまった。

 

「そっ・・・そんな・・・。」

 

 葦原さんは呆然とした様子。

 

「そう…ロズヴァイセ。あなたもついに見つけたのね。運命の人を。」

 

 セルベリアさんは応援する立場らしい。

 

「・・・そうか。まあ、お前と釣り合う勇者としたらこやつくらいのものかもしれんのう。」

 

 オーディン様はため息をつきながら俺の方へと歩いてくる。

 

「ロズヴァイセを頼む。所属こそは北欧神話とし、こちらへの出向という扱いにするが、傍に置いてやってくれい。」

 

「・・・・・・・。」

 

「私…そんな魅力ないですか?」

 

 オーディン様の太鼓判と涙目のロズヴァイセさん。

 

 それを断る理由が・・・俺にはなかった。

 

 こうして、とんでもない方がこちらに加わることになった。

 




 ついに葦原さん参戦。ついでにおきて破りの母親のヴァルキュリアとしての力も覚醒。

 やらかしてしまいました。

 そして姉ギドラのキャラと人間体のイメージが誰を元にしているのかわかった人とはいい酒が飲めると思います。

 次から本格的な作戦会議と開戦の前夜。

 そして開戦まで書こうと思います。

 ではまた会いましょう!!


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作戦会議と第二次幼馴染大戦…開戦!!

大変お待たせしました。
 
 皆さま久しぶりです。今年初めての投稿とになりますがよろしくお願いします。


 

SIDE ヴァ―リ

 

 うむ。よく寝たものだな。

 

―――ああ。じっくりと対談できたものだ。しかし…うまいものだな。

 

 対話のあとの目覚め。俺はイッセーが作ってくれたご飯を食べている。

 

 その味を、俺の感覚を通じて弟ギドラも感じているようだ。

 

―――今後の食事は量ではなく、質を第一に考えたほうがいいのかもしれん。すごい満足感だぞ。

 

 たしかに、イッセーの食事はおいしい。今回は彼の父親である翔一殿と料理の師である天道殿が特製レシピを披露。

 

 イッセーはそれを作ってみたのだ。

 

 材料は家の広大な庭で養殖しており、それを使った。

 

 今回は蟹だ。

 

 蟹一杯を豪快に使った蟹の岩塩蒸しだ。

 

「へへへ…うまくいったぜ。しかし…面白いレシピもあるもんだ。」

 

 師匠や父親からのレシピに喜ぶイッセー。

 

―――それだけではない。すごく…力が湧いてくる。

 

「おいしいだけじゃなく、実はすごい効能があってね・・・。」

 

 うむ・・・この蟹のうまみと出汁、岩塩との調和がいいものだ。そして隠し味に日本酒と味噌をつかっているのか?それを卵でうまく閉じ込めているあたり・・・。

 

 うまい。

 

 食事にあまり無頓着だったが、このイッセーの家に来てから、考えるようになった。

 

 それにすごい効能とはなんだ?

 

「炎と冷気、雷の攻撃を完全に無効にすることが・・・。」

 

 ブフォ!?

 

 その効能が想像の遥か斜め上で、思わず吹いてしまった。

 

 ほかの面々も同じだ。あのポルムでさえ俺と同じリアクションをしている。

 

――――――なんだそりゃ!?って・・・たしかに不可思議な力はある。効力も・・・まじかよ・・・。

 

 弟ギドラが中で鑑定の力を使っているのだろう。唖然茫然としている。

 

 弟ギドラの大変優れた力の一つがこの鑑定である。すべての真実を見抜く大変便利で、それでかつ恐ろしい力だ。

 

「何?いや…だが、確かにそのような効果がでている。」

 

 それはどうやらポルムのも同じだった。

 

「…試してみるか。誠殿。」

 

「んん?」

 

 ポルムが小さな火の粉を誠に向かって放つ。

 

 それに触れた誠の全身が燃え盛る地獄の火に包まれ・・・。

 

「・・・?」

 

 その中で平然としていたのだ。

 

「・・・なんと・・・。」

 

 愕然とするポルムと炎の中で平然と食べ続ける誠。

 

「ってうおっ!?全身燃えてますけど?!」

 

 テーブルや椅子すらも全く燃えていない。

 

「…なんという料理だ。」

 

 この家の人外魔境っぷりはどうやら料理にも発現するようになったらしい。

 

 ポルムがすぐに我にかえったようで、手に炎を灯し・・・。

 

 その炎が不死鳥となった。

 

 それを見た誠が固まる。あれは…あれはヤバい。

 

「あっ・・・あの・・・。」

 

「誠殿・・・うごくなよ?今度はカイザーフェニックスで・・・。」

 

「えっと・・・。」

 

「安心しろ、今の様子なら死にはせん。どれだけ軽減されるのか試させて・・・。」

 

『やめんか!!』

 

 必殺技を使おうとして、ヒュミナとサイガに止められる。

 

「・・・余のメラを無効にしたのだぞ。どれだけの脅威か試さないと。」

 

「家が持たないって。」

 

「あんたのそれは一発で城すら焼き尽くすのだから自重しなさい!!」

 

「だが、余の沽券が・・・。」

 

 珍しいくらいにムキになっているポルム。しまうが、まあ…これはさすがにしかたない。

 

『・・・・・。』

 

 茫然となっているのはイッセーたちも同じようだ。

 

「まさか、向こうの世界での効果まで再現するか。」

 

「同じ材料とはいえ、本当に腕をあげ・・・。」

 

 暢気にその光景を見ている翔一殿と天道殿。

 

 いい加減この二人の人外に問い詰めないといけない。

 

 この理外の料理について。

 

 

 

「って…あの世界の料理だったんかい!!そりゃすごいわけだよ!!」

 

「そういえば、一度連れて行ったことがあったか。」

 

 この料理の説明に反応が返ってきたのはイッセーだった。

 

「ああ。だって、あそこにも一応ダチが・・・。」

 

「・・・そうだな。」

 

「前に再会はしていたけど・・・あいつらは・・・。」

 

 イッセーが暗い顔をする。

 

「・・・ねえ。あなた、異世界にも幼馴染がいたの?」

 

 その反応にリアス殿が反応を示したのだ。

 

「・・・ああ。だが、あいつらはもういない。」

 

イッセーは悲しそうだった。

 

「向こうの世界で使命を果たしたから。」

 

「・・・そう・・・か。」

 

 その悲しみに、皆察したのだろう。

 

「また話を聞かせて。私達もそのことを知りたいから。」

 

「ああ。本当に仲のいい四人組で・・・。」

 

 イッセーは語っていた。その異世界の四人のことを。

 

 一人は王子で、その護衛という形で、三人がいたと。

 

「…実は深く寝ている間に少しそっちに行ってしまって。」

 

 イッセーは彼らのために戦ったのだ。深く眠っている間に一人だけこっそり世界を渡って。

 

「あいつらにもう、会えないよな。」

 

 辛いことがたくさんあった旅だった。だが・・・

 

「楽しかったよな・・・。トルネも走りたい放題だったし。」

 

 その異世界での旅はかけがえのない思い出だった。

 

 四人は車。車に男五人はさすがに狭いので、イッセーはバイクという形をとったのだ。

 

 通信機越しに話して。

 

「今度はもっと・・・かな?」

 

『・・・・・・。』

 

 皆がそれに気づけなかったのは昏睡中の出来事だったからだ。話が本当ならイッセーは己の分身体を送り、その世界で一年とその後、十年くらいの時をさかのぼって共に戦った。

 

 そして・・・・・・。

 

「・・・あいつには幸せになってほしかった。本当に・・・。」

 

 それは世界が違うがゆえにどうしようもなかった後悔。

 

「だからこそ、この戦い勝つぞ。後悔はもうたくさんだ!!」

 

 イッセーは皆を見る。

 

「皆…頼む!!」

 

 と、改めて戦う決意を固めていた。

 

「・・・・・・。」

 

 だが、その傍らで、リアス殿だけが無言で考え込んでいた。

 

「部長?」

 

「あっ、ごめんなさいね。でも…一つだけ思うのよ。イッセー、あなたには再会の才があるわ。それは私も確信している。だからこそまあ…これだけの過剰戦力になっているわけだし。」

 

 昔に結んだ絆は消えず、再び巡り合える。

 

 それは間違いない。

 

「そして、あなたの友達は死んだ。でも、そこにあなたは直接介入している。なら・・・また会えるんじゃないの?」

 

「って…そう簡単に・・・。」

 

「普通ならそう思うけど、すでにポルムがやらかしているから。あなたが同じような奇跡を起こしても驚けないのよ。」

 

「・・・ここで余を引き合いに出すか。」

 

 ポルムも苦笑している。まあ、このお方はすでに一つやらかしている。

 

「・・・んん・・・。」

 

 ポルムがやらかした。

 

 その単語にイッセーは冷や汗をかいていた。

 

「なあ…一つ聞いていいか?これってまさかポルムが作ったのか?」

 

 取り出したのはシャチハタ型のアイテムだった。

 

「…祝福の印か。どこに落したかと探していたがそっちが持ったのか。それは間違いなく・・・ってええええええ!?」

 

 それを術式で確認したポルムが驚く。

 

「なんで…そこに余が考え出した転生術式が刻まれておるのだ!?」

 

「あちゃ~・・・。」

 

 イッセーが悲しみから苦笑へとその表情を変えた。

 

 ポルム曰く、そのシャチハタは少し魔力を込めて相手に押すことで「祝福」などの様々なパッシブ効果、つまり能力などの上昇が得られるサポートアイテムだったのだ。

 

 だが、その様々な効果を付与させようとして、とんでもない術式を一緒に盛り込んでいたことをポルムは思い出していたのだ。

 

「まさか・・・万が一の救いのつもりでやったのだが・・・。」

 

「それ・・・うちこんじゃったんだ。あの四人とあの姉さん三人、ついでに妹さんにも。」

 

「アギトの加護付与で打ち込むのなら間違いはないな。確実にこの術式は成功しているぞ。現にこのアイテムは神器化している。」

 

 転生、確定ですか。

 

 あいつらに対する救いになっただろうか・・・。

 

「この術式は禁術にしたほうがいいかもしれん。輪廻に干渉する術は極めて危険だぞ。」

 

「ならその転生の福呪印〈リバーシブル・シール プレスアンドカース〉も普段は封印しておけ。」

 

 アザゼルがそこに割り込んでくる。そのアイテムに何気に名前を付けつつ、その効果を確認していた。

 

「ったく、お前らはなんちゅうもんをつくりだすかね。そのシャチハタは間違いなく神滅具クラスの飛んでもアイテムになっているぞ。何々・・・神々の奇跡クラスの数々のパッシブ、そして反転させ、神々の呪いクラスのデバブ効果が行え、その上に転生させる機能つきだあ!?ふざけているにもほどがあるぜ!!」

 

 いろいろあって神滅具クラスのアイテムを作り出すアギト・・・。

 

 そのようなトンデモシャチハタ・・・みたことない。

 

――――なあ・・・ここって本当に無茶苦茶だよな。

 

 弟ギドラの言葉に同意する。

 

 常識はここでは存在しないものだと思ったほうがいい。

 

「・・・なら、今からその幼馴染プラス三名、そして妹さんがどんな連中か教えてくれないかしら?」

 

 にっこり笑うリアス殿は確信していたようだ。

 

「あなたの再会の才なら絶対にこの世界にやってくるだろうし。だから、いつ、やってきてもいいようにね。みんなも知って損はないでしょ?」

 

 ここでは死すらも通過点に過ぎないようだ。

 

 イッセー、君は本当にいろいろな意味ですごい。

 

―――――――その中心人物がゴジラとか・・・。だが、あいつならと納得できてしまうのがおそろしい。

 

 そうだな。だからこそ・・・我がライバルにふさわしい。

 

――――――違いない。より高みにいけるというわけだ。

 

 わが生涯で最大の財産はイッセーとの出会いだったのだろう。

 

 それを確信している。

 

 

 

 SIDE イッセー

 

 そんなとんでもない飯も食い終わり、俺たちは改めて作戦会議となる。

 

 その前に、ロキの息子であるとある龍王に話を聞こうとして・・・皆が格納庫に集合。

 

「さて…たくさんのドラゴンがいる。」

 

 普段はずっと寝ているそのドラゴンを目覚めさせるためにだ。

 

「じゃあ呼ぶぜ?」

 

 アザゼル先生が意を決して呼び出そうとして・・・。

 

―――――その必要はないよ。

 

 と竜門が現れて、それが実際に姿を見せたのだ。

 

『なっ・・・・。』

 

それはあまりに巨大だった。

 

「…お前が起きている姿を見るなんて…世界の終末が近づいているのか?」

 

 龍王ミドカズオルム。それが目を覚ました状態でこちらに現れたのだ。

 

 本来の予定ではその精神体だけを呼ぶ予定だったのに。

 

「…いや…本当にでかい。」

 

 そこになぜか剣崎さんが現れる。

 

 上で修行をつけていたのだが、どうやら慌てて下に降りてきたらしい。

 

「ふあ・・・まあね。夢では何度もあっているけど、実際に会うのは久しぶり。」

 

「そうだね。しかし、何かなと思ったら、また君とこうやって直接会えるなんて。うん・・・やっぱり催眠学習でもフォースは鍛えられるか。」

 

「世界の真理を寝ながら知れるのは素晴らしいよ。みんなが知りたいこともわかっている。もう呼び出す頃合いだと思って、自らこうやって顔を・・・。」

 

「未来予知をこのような形でか・・・。同じフォースでもその資質によって変わるのか。おっ、みんなにも紹介するよ。こちらは・・・。」

 

「いや・・・これでも有名でね。こっちの自己紹介の必要はないよ。でも・・・。」

 

 ミドカズオルムは苦笑しているようすだった。

 

「きっと知り合いという点に説明は必要じゃないのかな?」

 

「ああその通りだ。」

 

 その言葉とともに剣崎さんの肩に置かれる手。

 

「さあ…剣崎さん。」

 

 優しく手を置いたのは場をセッティングしたアザゼル先生。

 

 その手に肩を握りつぶしかねないほどの力が込められているのは仕方ないだろう。

 

「説明頼むぜ?最近いろいろと規格外なことが起きすぎてこっちは頭が痛くてイライラしてんだ。わかりやすく。簡潔に説明を・・・。」

 

 どうも最近精神的に参っているらしい。

 

 無茶苦茶なことが起きすぎて。

 

 一体誰の仕業だろう?

 

 んん?剣崎さんが何やら呆れた様子でこっちを見ているぞ?

 

「えっと・・・まあ、こういうことで・・・。」

 

 剣崎さんが見せるのはミドカズオルムとの契約のカード。

 

 剣崎さん・・・まさか龍王と契約してたの!?

 

「この世界に来た時、たどり着いたのが眠っている彼の目の前だったから。その時に眠っている彼に語り掛けたのがきっかけで。」

 

「いろいろと見せてくれてねえ。退屈しなかったよ。この家の事情は剣崎さんを通じて把握しているから安心して。」

 

 …最初から契約していたということですか?

 

「ついでに、催眠学習を試していたんだ。でもまあ・・・すごいもんだ。」

 

「終末のとき、さらに大暴れできるかな?」

 

「その点は保証する。もう天龍の域かもしれないよ?」

 

 おいおいおいおい・・・グレードレットやゴジラよりもでかい巨体でフォースを使うなんて冗談にもほどがあるぜ?

 

 軽く実力を見積もってみるけど・・・一人じゃ勝ち目は薄いかも・・。

 

「この調子で寝たままで龍神を目指そうかな?」

 

「不可能じゃないと思う。時間はかかるけど多分たどりつける。でかいだけあって、やっぱりフォースの量が半端じゃない。質も高いのはドラゴン故にか。研鑽を続けるなら、フォースそのものになるかも・・・いや、もう半ばなっているか。毒の力も怖いし。」

 

「何もかも強化されているのは実感できる。いや…寝ながら真理を知るというもの乙だ。」

 

 まさに友人同志なのだろう。親し気に語らう二人。

 

「しかし、手間をかけてしまったねえ。剣崎さんが呼べば意識体だけでも簡単に出せたのに。実際に会えたのは久しぶりで楽しいけど。」

 

「・・・誰を呼ぶのか知らなかったこっちの落ち度だ。ロキの息子っていうのは初耳でね。」

 

「まだまだお互いに知らないことは多いってことだよ。こうしてきたからには・・・そうだね。噂の理外、または神の料理も食べたいかな?」

 

「耳がはやい。晩の食事を一緒にしながら、久しぶりにゆっくりと語らおうか。」

 

「おいしい酒も欲しいかも。ヤマタノオロチ謹製の酒はドラゴンの間でも大変有名だし。一度飲んでみたかったんだよね。」

 

「酒か…乙だねえ。」

 

「うん。贅沢だよ~。それと彼が友の・・・。」

 

「あっ・・・ああ、始という。剣崎のやつがおっきな友達がいると聞いていたが・・・文字通りだったは・・・。」

 

「説明おおざっぱすぎるって。」

 

「悪い悪い。」

 

「昔からこういうやつだ。すまないな。」

 

「大丈夫わかっているから。」

 

「ウェ!?」

 

『ははははははははは。』

 

 笑いあう三人、

 

 その一方で頭を抱えている方々も。

 

「・・・どこから突っ込めばいい・・・。」

 

「俺に質問するな。」

 

 人生経験が豊富なアザゼル先生とタンニーンのおっさんがわからないのなら、この場の誰もがわからないと思います!!

 

 

 

 まあ、せっかくの来客ということ、一緒に夕食となりました。

 

 皆さま伝説の龍王との食事ということで驚きながらの食事でしたが。

 

 酒も飲んでもらいましたが…巨体だけあって…すごく食べ、すごく飲みます。

 

「・・・げふ。これは最高すぎる。いい仕事するよ君達。ドライクやアルビオン達が気に入るのもわかる。」

 

「今度の酒のタイトルは黄昏にしようと思っていたのだ。どうだ?」

 

「いいねえ。それと試飲会があったら是非誘ってほしいよ。」

 

「センスは高そうだから・・・いいぞ。」

 

「ただでもらうのもしゃくだねえ。こっちも何かできることがあればいいけど。」

 

 でかいドラゴン同士の会話は迫力満点。もっとも内容はほのぼのだけど。

 

 

 

 そのあとにいろいろと話してくれた。

 

 妹であるヘルが見初めたのがガルバトロン。死んだ彼の魂に一目ぼれしたそうだ。

 

 ガルバトロンが冥界で大暴れし、軍を整え、最後にヘルを手に入れた。

 

 そして、その際に冥界にいたある科学者の魂を見つけ、それを復活。

 

 壊れたキューブのかけらを見つけ、それを修復し、壊れたメガヘクス本星の残骸をその科学者の案内で発見したという。

 

 そこから軍勢を急速に整え、今にいたると。

 

 

「・・・まったく、ダディも困ったことしてくれるよ。こっちはゆっくり寝ていたいのに。」

 

 ちなみにミドカズオルムさんはロキからも放置されていたらしい。

 

 ずっと寝ているから。

 

 だが、夢を見る形で色々とおかしいことになっているのは誰もわからなかった。夢を見ながら実力をさらに上げているなど誰が思うか。

 

 剣崎さん以外は・・・。

 

「それでまあ・・・知っていることはすべて話したわけだけど・・・。」

 

 ミドカズオルムは誰かを探しているようだ。

 

「わっ!!なっ・・・なに?」

 

「よしよし。」

 

 食事をしていたイリアが突然ミドカズオルムさんの前に移動する。どうやら強制的に転送させられたようだ。

 

本当にとんでもないことになっている。

 

 規格外な巨体に迫られ、イリアはたじろぐが、すぐに緊張を解く。

 

 おそらく感じ取れる意思が優しかったからだろう。

 

「…君にお礼を言いたい。」

 

「へっ?お礼?」

 

「フェンリルのこと。幸せにしてくれたらこちらはうれしい。」

 

 フェンリルとの契約をさしてるのだろう。

 

「神を殺す力を持つゆえに…自由になれなかった。だからこそ・・・。」

 

「何言っているの?まだこれからだよ。助け出した後・・・あいつと一緒に大冒険に繰り出すつもりだから!!」

 

 イリアは探索者。その相方に彼を連れて行くと宣言したのだ。

 

「・・・ありがとう。剣崎さん・・・彼女にはしっかり修行をつけてやって。弱いままで託すのはこちらも容認できないから。」

 

「ああ。しかし、兄弟思いだよね、君も・・・。」

 

 微笑む剣崎さんに少し照れくさいのか・・・。

 

「フォースのせい・・・だよ。」

 

 そういって姿を消していく。

 

「・・・なら教えた甲斐はあったよ。これからも退屈はさせないから。」

 

――――いろいろな意味で期待しているよ。

 

 終末の龍王は帰っていく。

 

 それを見たアザゼル先生はつぶやく。

 

 冷や汗を流しながら。

 

「お前ら、絶対に世界に終末をもたらすなよ。これはフリじゃねえからな。」

 

うん…寝れば寝るほど強くなるって反則すぎるから。

 

 

 

 そんな衝撃があってからの作戦会議となった。

 

「まずイリアちゃんと弾君だけど・・・うん、この短期間で、さらにフォースの力を高めている。まあ、このままで五日後の決戦に間に合うよ。」

 

 新たなジェダイのお二人の修行は順調らしい。

 

「・・・いずれ、どちらかに騎士団長になってもらいたいくらいだ。なんでこう素質の高い連中が集まってくるのやら。」

 

 剣崎さんはあきれ果てている。

 

「ちなみに俺も修行自体は順調だ。」

 

 始さんも同じく修行を積んでいた。

 

「闘争本能を抑えるのに苦労はしているがな。まあ…暗黒面に落ちても我々の場合は今更だ。」

 

「はは…アンデットゆえにね。両方の面を極めちゃっているのは本当に・・・。」

 

『・・・・・・・。』

 

 フォースには暗黒面がある。普通ならそこに落ちると悪になるのだが・・・この二人はその面では桁が違っていた。アンデットゆえの精神的な不死性が暗黒面に対する適応にもつながっていたのだ。

 

 剣崎さんもアンデットになってから身に着けた精神の不死性が暗黒面を極める手助けとなる。

 

 これは通常ではあり得ない領域である。ジェダイの誰もが到達しなかった未知の領域を剣崎さんは極めていたのだ。

 

 剣崎さん・・・この家で、いや世界最高峰のテクニックタイプであるのはいまだ変わりなく。

 

 俺ですら到達できないまさに神すら超えた領域に剣崎さんはいる。

 

 そして、まだ剣崎さんは本当の意味での本気を出していない。

 

 そのことにこのメンバーの中の何人か気づいているのやら。

 

「・・・どうやったら、あなたの領域に立てるのか。」

 

 祐斗もその弟子の一人。末恐ろしいことに、最近になってジェダイとしての素質にも目覚めつつある。だが、その素質を開花させるたびに祐斗は理解してしまうらしい。

 

 剣崎さんが途方もないほど高い領域にいることに。

 

「いやいや、こればかりは鍛錬と経験の積み重ねだよ。焦っても仕方ない。」

 

 元々の剣才にジェダイとしての能力、そして永きにわたる戦闘経験値。

 

 そして、極めてしまった光と闇の極致。

 

「・・・むしろ競い合う人たちが多いとこっちもやりがいがあるよ。そんな領域にあるから。」

 

 そんな剣崎さんとまともに張り合える人などそんなにいない。

 

「間違いなく超越者だよな。」

 

 アザゼル先生から認定をもらった。

 

 剣崎さんが超越者の一人だと。

 

「…なるべく早く追いつきます。待っていてください。」

 

 祐斗の言葉に、他に教えを受けている者達が頷く。

 

「…うう…泣けるくらいに弟子がいい子たちだよ。」

 

「おう。俺も・・・。」

 

『・・・・・・・・。』

 

 俺がやる気出すと、剣崎さんと祐斗の奴がジト目で見てくる。

 

「…その数少ない競い合える相手に君がいることを忘れないでほしいかな?」

 

 へっ?なんで?

 

「本気の君との模擬戦、こっちは命がけでやっていることに気づいてほしい。」

 

 えっと・・・祐斗が言っているのは俺が変身した時の模擬戦だよね?

 

「神技のテクニックに神殺しにたがわぬ破壊力、フォームチェンジによる戦い方の大幅な変更・・・もうふざけているとしか。」

 

んん~鋼兄と戦うときは命がけなのは知っていたけど、俺でそうなるのか?

 

―――・・・・・・。

 

―――・・・・・・。

 

―――・・・・・・。

 

―――・・・ふっ、無自覚は怖いな。

 

 って、相棒たち無言!?

 

 ゴジラさんだけなぜかコメントだし!!

 

「はいはい、話はそれたが、皆準備は順調なのはわかった。」

 

 ポルムが会議の流れを元に戻してくれる。

 

「すでにあっちの撤退に合わせて、何人かメガヘクス本星に潜り込ませてある。その情報が・・・これだ。」

 

 ポルムが手をかざすとともに現れたのはメガヘクス本星。

 

「・・・あれ?前よりも・・・。」

 

「でかくなったよう見えるぞ?」

 

 かつてメガヘクス本星を破壊した鉱太と進ノ助兄さんは首をかしげる。

 

「ああ…確実に強化されている。見てくれ…細かくだがトランスフォームもしている。」

 

 状況に合わせて表面を入れ替えているメガヘクス本星。

 

「ステルスモードを使っている。そのために今まで発見はできなかった。」

 

「おそらくキューブの力によるものだろう。ほぼ間違いなく・・・。」

 

 オプティマスが結論を出す。

 

「…あの星がトランスフォーマー化していると?」

 

「まだどの程度かわからないがな。」

 

 それは皆からしても無視できない案件だった。

 

 惑星大の超ド級の金属生命体。

 

「今回の相手もまた規格外よね。」

 

 部長はあきれ果てている。まあ、ゴジラですら規格外だったのだ。

 

「以前は中心部があった。それを破壊したらそれで終わりだったが・・・。」

 

「おそらく、トランスフォーマー化しているのなら、スパークのあるコアがあるはずだ。それを破壊すれば・・・。」

 

 オプティマスはそういって皆に告げる。

 

「そのために、皆を複数に分けたいと思う。戦力の把握はできたからな。」

 

 こうやって皆は複数の班に分かれることになった。

 

 

 

 

「まずは、潜入し、内部にいる二人を助ける。機動性のあるメンバーを選びたい。まず・・・。」

 

 まずは救出班。

 

 サイガ、進ノ介、誠、渡、鉱太、イリア、イリナ、弦太郎 ユウナ、祐斗 ゼノヴィア、良太郎。

 

 このメンバーだ。

 

 サイガの轟竜、トライドロンなどによる機動性などを主軸とした突撃班。突破力にあるメンツを集めた。

 

 

「次にボスであるロキを倒す班。」

 

 そこに名を連ねるのは・・・。

 

 イッセー ヴァ―リ、ネロ アーシア キリエ ロズヴァイセ 新 鋼鬼 剣崎 リアス ハルト

 

 

 

 そう、俺たちだった。

 

「…このメンバーの中で最も破壊力のあるメンバーを集めてみた。君たちがロキを倒してほしい。その後、各メンバーでコアを・・・。」

 

『・・・・・・・・。』

 

 そのメンツを見て皆は押し黙っていた。

 

「なんでこう・・・俺たちの中でガチなメンツばかり。」

 

 はっきり言って、ガチのメンバーである。

 

「残りのメンバーで防衛、そして遊撃を頼む。」

 

 総指揮はオプティマスである。

 

 本人は納得しきれていない部分があるようだけど。

 

「・・・・・・本当に私でいいのか?このメンバーを指揮するのは・・・。」

 

「いや、むしろあなた以外に的確な人材はいない。」

 

 ポルムの推薦である。

 

 そして、その実績から見ても皆はオプティマスが総司令官を務めることに納得しているのだ。

 

 一つの星を二分した片方の軍団のトップ。

 

 それを務め、実績も経験も積んだ男は彼以外にいない。。

 

「・・・わかった。それと将来の総司令官としての人材も育てたほうがいいな。ソーナ殿。副指令を君に頼みたい。」

 

「私が・・・ですか?」

 

「君は司令官としてすばらしい才能を持っている。後は経験を積めば、私よりも優秀な司令官になれる。それに、私がいない場合は君が指揮官としては適切だ。万が一の場合は君が指揮できるようにしたい。」

 

 ほかでもないオプティマスからの推薦であった。

 

「それとポルム殿とアザゼル殿は参謀を頼む。二人も万が一の時はこちらの代理が可能だ。故に知恵を借りたい。」

 

「まあ…わかっていたことだよ。やるからには全力を出す。」

 

「本当にいい人材を引き当てたな。適材適所をわかっていやがる。それに先を見ている。こういった意味でもあんたとも語り合えそうだぜ。」

 

「そうだな。私もあなたとはいろいろと語り合いたいと思っている。」

 

「…真面目すぎるのがたまに傷だが、すげえやつだ。」

 

 アザゼル先生と対等に話せるだけの豊富な人生経験も持っている。

 

 こうして総司令官に、ソーナ副司令、二人の参謀という体制となった。

 

「皆…未熟な身だが、よろしく頼む。万が一のサポートの準備もできている。クリム殿。」

 

――――今回は特別ということで頼む。

 

 オプティマスの後ろには大量のシフトカー達。

 

 オプティマス専用に生産されたものだ。

 

 シフトカー達はそれが個別で下位から中位の神器クラスの能力を持っている。ある意味では独立型の神器と言っていいほどの代物。

 

 変身能力をもたらすものに至っては変身アイテムとセットが前提だが、重加速能力も含め、上位神器クラスだといえる。

 

「ああ。これは迂闊に世に出してはいけねえよ。とんでもねえ科学者もいたもんだ。神器に匹敵するアイテムを作りだすなんざ…普通じゃねえよ。」

 

 神器研究家のアザゼル先生もそれを理解しているみたいだ。これはある意味神の領域にあるアイテム。

 

――――まあ、もう眠らなくて済みそうだがな。今後は彼等と研究する日々になりそうだよ。君という存在を見守る必要もでてきた。

 

「・・・そうだな、見守ってほしい。私はこの力を使うときには大いなる責任が伴うのだから。」

 

 その力を大量に取り込んだオプティマスの潜在能力もまた未知数であった。

 

「この戦いが終わったらクリム殿とも語り合いたい。」

 

―――――私もだ。あなたのような高潔な人はそうそういない。

 

「いや・・・イッセーと一緒にいるとこちらも新しい出会いがあって楽しいぜ。退屈という言葉とは無縁だ。」

 

「違いない。」

 

――――彼の出会いの才能に感謝だ。

 

 こうして、大変優れた司令官を得た俺たちは動き出す。

 

 だが、どうしてそこで俺を落としどころにもっていくのかな!?

 

 ほかのみんなもうんうんと頷いているし!!

 

 

 

 そして、五日後、決戦の日となった。

 

 

SIDE ロキ

 

 

 約束の日になった。

 

 メガヘクス本星は今まさに地球に迫ろうとしていた、

 

 場所は月と地球の間。

 

「さあ…まずはあの家からだ。」

 

 ロキはすでにこの地球で最も戦力が集まっている場所を知っていた。

 

 日本という国の、兵藤という家だ。

 

 そこはまあ・・・見た目からして普通ではなくなったが、少なくとも半年前までは普通の一軒家だった。

 

 だが・・・ロキは身をもってしっている。

 

 そこは・・・最強の人外魔境。

 

 神々ですら恐れるくらいの異常といえる面々が集結している場所。

 

 まるで理外の何かがあるような気がしてならないほどに。

 

「…あそこをたたけば、この地球を制圧したも同然。いや、そのものだと断言できる。」

 

 ロキは進む。

 

「そして…新…貴様は殺す。リョーマよ、ガルバトロンよ、手筈通りに頼むぞ。」

 

「おうよ。家だけでなく、軍を率い各国を襲うのだな。」

 

「面白いことになりそうだ。」

 

 あの家は潰す。だが、ラグナロクを起こすために他を襲わない理由はない。

 

 圧倒的な数の軍がいる。効率的に黄昏を起こそうじゃないか。

 

 我々はこの世界を圧倒的な物量で押そうとした時だった。

 

 突如…とんでもない存在が目の前に立ちはだかったのだ。

 

「・・・・・・・・・・なっ・・・なんだあれは?!」

 

 それは美しい黄金の三つ首の龍だった。

 

「キングギドラだと!?」

 

 宇宙に詳しいガルバトロンが驚くとは相当なことか?

 

 そして、その上に載っているのは一人の少女だった。

 

「ふふふふふふふ・・・。皆さんに迷惑をかけた分、今回は私が先鋒を務めますわ。」

 

 確か、グレモリー眷属の女王、姫島 朱乃。

 

 なんであいつが・・・。

 

「姉様・・・行きますわよ?カグヤも。」

 

―――――ええ・・・。派手に行きましょう。

 

―――――早速派手になるか・・・。

 

 その間にキングギドラがどのような恐ろしい化け物か、ガルバトロンよりきく。

 

 なるほど・・・まさに大怪獣か。

 

「…このまま前進。いくら大怪獣でも、これだけの軍隊、そして星相手に単独でどうにかなると・・・。」

 

 普通ならそう思うはずだ。

 

 だが、この判断をすぐに後悔してしまった。

 

 姫島 朱乃が変身したのだ。

 

 そばにいたイマジンと融合する形で。

 

 背中には黒い五対の黒い翼。ウィザードリングの変身の上から着物のような鎧をまとい、手には扇子。

 

 仮面には角が生えている。

 

「仮面ライダーソーサレス・・・。」

 

――――イン、プリンセスフォーム!!

 

 変身した彼女があるアイテムを発動させていた。

 

――――では複製能力を早速!!

 

――――ドラゴンタイム。

 

――――フレイムドラゴン!!

 

 その声とともに赤い衣の分身体が遠く離れたところに現れる。

 

――――ハリケーンドラゴン!!

 

 次は緑の色の分身体。

 

――――ウォータードラゴン!!

 

 水色の分身体。

 

――――ランドドラゴン!!

 

 黄色の分身体・・・。

 

 それがメガヘクス本星を囲むように。

 

「むっ、この配置・・・。」

 

 ちょうどこちらを中心に五等分になるように・・・って!!?

 

「母様直伝!!行きます!!」

 

――――プリズン!!

 

 それとともに、分身体四体と本体で描かれる五芒星の結界。

 

「ぬうううう。陰陽道の結界だと!?」

 

 だが、このような星を閉じ込めるような大規模なものは見たことがないぞ!!?

 

 ましてやそれを単独でやらかすなど・・・。

 

 わが軍がすべて閉じ込められてしまった。

 

「・・・転送機能まで封じられたか。」

 

 してやられたな。まさか初手からこんな奇策をだしてくるとは・・・。

 

「目標変更!!あの術士を倒せ!!結界が邪魔して進軍ができん!!ってうおおお!?」

 

 その時突然、大きな揺れが襲う。

 

「何があった!?」

 

―――――侵入者です!!

 

「なんだと!?」

 

 突然入ってきたとしか思えない反応。

 

 二つの大穴より突入してきたものがいたのだ。

 

「・・・どういうことだ?転送ではない・・・よな?」

 

 まるで気づいたら大穴が空き、侵入者がそこにいたとしか思えない状況。

 

「・・・しかたない。内部にも追撃部隊を。こっちも切り札の準備をする。」

 

 あいつら…一体どんな手を?

 

 

 

 SIDE イッセー

 

 いや・・・あの姉ギドラの時間操作能力を完全に舐めていました。

 

「…時間を飛ばす能力か。世界は広い。」

 

「私でさえ、まだ十秒くらいの時間操作が限界なのに・・・。」

 

 俺たちが突撃した方法は大変シンプルだった。

 

 ただ、超高速で突っ込み、ライダーキックでぶち破って内部に突入したというものだった。

 

 そのシンプルな動きをロキが感知できなかったのは…姉ギドラの所業に関係がある。

 

 彼女は俺たちの突入の際の一分間の時間を吹っ飛ばしたのだ。

 

 そう…俺たちだけ。周りの時間には一切影響を及ぼさずに。

 

 結果、過程がすべてふっ飛ばされ、突入したという結果だけが残る。俺たちからしたら普通にやっただけなのだが・・・。

 

 ちなみに姉ギドラ曰く、一週間くらい片手間でかつ、余裕で吹っ飛ばせるけど、一分だけ本当にいいの?といっており、それを聞いた良太郎が卒倒してしまったのは記憶に新しい。

 

 あの良太郎が卒倒するレベルなのだ。

 

 あまりに規格外すぎる。

 

 ちなみにその気になれば年単位の時間のすっ飛ばしも可能らしい。

 

「…ふっ…朱乃。あなたもう…後戻りはできないわね。」

 

 部長が遠い目をして朱乃を見ている。

 

 姉ギドラの能力があまりにもヤバいのだ。神すら真っ青なレベルと精度で時間を操ってくる。

 

 そしてカグヤもまただ。

 

 彼女が持っているのは、道具の複製能力。

 

 ある意味、ポルムの神器と似た能力

 

 電王のベルトですら複製。そして、それでいろいろと便利なアイテムを複製しまくって・・・。

 

 あの分身も、ハルトのあれを複製した結果だ。

 

「・・・私の眷属はここからどれだけの怪物になるのやら。楽しみになってきたわ。」

 

 部長、もう達観の域である。

 

 部長の気持ちもわかる。…朱乃さんはとんでもない力を手に入れている。それこそ神の領域へと。

 

「あの結界は一日しか持たない。それまでに決着をつけないと。」

 

「…ハルト君。一日も・・・って、言い換えてもいいかしら?」

 

 惑星を丸ごと封じるような大規模な結界を単独で一日も維持できるのなら十分化け物だと思う。

 

 しかもその気になれば魔力回復のための休息の時間を吹っ飛ばし、結界維持したまま瞬時に回復できる。

 

 もう化け物である。

 

「まだあれで発展途上だもんな。」

 

「将来的には魔力の消費なしで半永久的に封じ込めることが可能になる。」

 

 この封印結界は五日の間で姫島家の秘術の基礎だけ学べた成果なのだ。

 

 つまりは即席といえる。

 

「…五日間であれだけの術。上等すぎるわよ。」

 

 朱乃さんは今後、爆発的な成長が確約されている。もう…天井知らずに。

 

「・・・いくわよ。本当にいろいろとやらかしてくれたあいつをもう一発ぶん殴らないと気が済まないから!!あいつのせいでうちの眷属の怪物具合がさらに悪化してしまったわ!!」

 

 そういいながら我らの部長が走る。

 

「邪魔よ!!」

 

 ちなみにメガヘクスの再生機能に関してはこのメンツなら気にする必要はまったくなかった。

 

 だって、一撃で再生不能にまで粉々にすればいいのだから。

 

 部長なんて、何の魔力も纏っていない拳で粉々にしております。

 

「ちなみに・・・内部の破壊は気にしなくていいのか?」

 

「ポルムが言っていただろう。」

 

 ヴァ―リの疑問に大変いい顔で笑うのは鋼兄だ。

 

「派手に頼むと。」

 

 突入ついでに内部を破壊しまくってくれと。

 

「加減はいらないということか。」

 

 すでに鬼になった鋼兄が立ち止まる。

 

 その後ろから無数のメガへクス達とトランスフォーマー達。

 

 数は、感知できるだけでも一万体以上。

 

「・・・どうやら殿軍を務める必要がありそうだね。」

 

 剣崎さんが剣を出す。

 

「あんたなら死ぬことはないだろうが・・・大暴れするつもりか?」

 

「そのつもり。さあて・・・冥界からの魂だっけ?一度死んで、またこうして戦いに来るくらいだから…強いよね?」

 

 剣崎さん剣を手に軽く息を吐き・・・

 

「さあ・・・こい。」

 

 その纏う空気が変わる。

 

「・・・少し本気だすから。」

 

 見た目だけの変化なら、冥界の猛者たちはひるまなかっただろう。

 

 だが、少し本気を出す。

 

 その言葉と、明らかにまとう空気が変わったことに足を止めたのだ。

 

「へえ・・・利口だね。」

 

 だが、その言葉とともに剣崎さんはいつの間にか剣を手にしていた。

 

「だが、三歩だけ立ち止まるのが遅かったよ。」

 

 その言葉とともに一度に二十体ものトランスフォーマーがバラバラになる。

 

「カードスラッシュはもちろん、変身する必要すら感じない。」

 

 そのままゆっくりと歩き出す。

 

 それだけで背後から迫ろうとしていたやつらは逃げていく。

 

 ある一定の間合いに入った瞬間にすべて終わってしまうと、皆は悟ったからだ。

 

「このまま押し返すからそっちはよろしく。」

 

 殿軍としてはこれ以上の相手がいるだろうか?

 

 敵が火器による攻撃に切り替えようとしたところで。軽く剣崎さんは空を手で払う。

 

 それとともにその火器が一斉に暴発。

 

 それでもう相手は悟っただろう。

 

 もう・・・どうしようもない。

 

 何をやってもこいつには勝てないと。

 

『・・・・・・。』

 

 すなわちそれは…絶望である。

 

「この程度なら苦戦する必要もないから。さっさと掃除してくる。すぐに追いつくよ。」

 

 油断さえなければ、おそらく剣崎さんは最強だ。

 

 一万体の敵を相手にさっさと掃除してすぐに追いつくと言ってのけるのだから。

 

「一応、みんなの用務員ですから。」

 

 世界最強のテクニックタイプだと…俺が断言しておく。

 

 ついでに世界最強の用務員だとも。

 

 剣崎さんが本当の意味で本気を出す日が来るのだろうか?

 

 

 

 そのまま突撃していく俺たち。

 

 雑魚はたくさんいるが次々と突破していき・・・。

 

 いよいよ中心部へ。

 

 そこで見た光景は・・・。

 

『うおぉぉぉぉらああああぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

「ぐおおおおっ?!」

 

 二人の拳を顔面に受け殴り飛ばされるロキの姿であった。

 

 そのまま後ろの壁にたたきつけられるロキ。

 

「こんなもんじゃないわよ!!」

 

「いつまでもつかまったままとは…思わないことです!!」

 

 その殴り飛ばしたお二人はまさかの椿姫さんと舞さんでした。

 

・・・なんでさ。

 

 

SIDE チェルシー

 

 大騒ぎのどさくさに紛れて、私たちは救出に成功・・・といいたいところだけど・・・。

 

「さあ…行こうか。」

 

「ええ。」

 

 肝心の椿姫さんと舞さんがその短いやり取りを残し、走り出したのだ。

 

 あまりに自然な流れに私たちの反応は遅れてしまった。

 

 ここで救出メンバーと合流するつもりだったのに・・・。

 

「ええと・・・。」

 

「姉さん!!舞助けに・・・えっ!?」

 

 鉱太君がやってきて唖然とした様子を忘れることはできなさそうだ、

 

 変身すらしていないのに・・・そのままロキの待つ部屋まで突撃し・・・。

 

「なっ…貴様ら・・・。」

 

 驚くロキに対して二人は言う。

 

『とりあえず殴らせろ!!』

 

 大変息の合ったコンビネーションで殴り飛ばしたのだから。

 

 のちにあの二人は神をぶん殴った義姉妹と評されたわ。

 

「ぐうう・・・変身もしないで私にこれだけの打撃を。」

 

 ロキはとっさに無数の魔術を発動。地獄の業火が二人に襲い掛かるが・・・。それを一枚の鏡が阻む。

 

「・・・ふん。その程度の炎など・・・ぬるいわ!!」

 

 阻んだ炎をすべて収束させつつ・・・。

 

「お返しよ!!」

 

 鏡が砕かれるとともに、大火球にまで圧縮された地獄の業火がロキに襲い掛かる。

 

「なにぃぃぃぃぃぃぃ!?」

 

 透明の防壁を発動させてロキは跳ね返ってきた炎を防ぐ。

 

 だが、そこに・・・。

 

「あう!?」

 

 股間を抑えながら崩れ落ちるロキ。その股間には…舞さんの足が。

 

「後ろ…獲った!!」

 

 舞さんが股間への一撃で崩れ落ちたロキの首にいつの間にかワイヤーを巻き付けて・・・。

 

「があああああっ!?」

 

 そのついでに後ろに回っていた左腕を片手で極めてしまった。

 

 この女・・・神に暗殺術をしかけやがった。

 

 しかもワイヤーは天井の柱にひっかけられており、ロキの体が軽く宙に浮いていく。

 

 腕を極められ、首をワイヤーで締められ・・・普通の人間ならとっくに死んでいる状態だけど・・・。

 

「神様ですからねえ。そう簡単には逝きませんよね?」

 

 大変穏やかな微笑みをしながらロキの前に立つ椿姫さん。

 

「さて…お仕置きです。」

 

 そんな虫を殺さないような笑みで、首を絞められているロキの顔面にビンタ。

 

 それも往復である。しかも、手加減なし。魔力が全力で込めてある。

 

 いい音がこっちにも聞こえてくるわ。

 

「がっ!?ぶぐぅ!?がら!?」

 

 首を絞められ、腕を極められ、その上往復ビンタ。

 

「・・・・・・・。」

 

 あまりにもむごい仕打ちである。

 

 相手が神ゆえにこのような酷い目にあっているといえる。

 

「…あの二人を怒らせないほうがいいな。」

 

 ヴァ―リ君の一言に、駆けつけてくれた皆さんが青い顔をしながら頷いているわ!!

 

「さて…とどめは・・・。」

 

「ぐうう・・・おのれええええええぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 やられたい放題のロキが叫ぶと同時に無数のツタが二人に襲い掛かる。

 

 二人は大変息のあった様子で逃げる。

 

「はあ・・・はあ…貴様ら・・・。」

 

 相当な苦痛を味わったらしく、目が血走るくらいに怒り狂うロキがそこにいた。

 

 だが、そのロキの両側頭に今度は二人の綺麗な廻し蹴りが挟むようにしてヒット。

 

『少しびっくりしたじゃないの!!』

 

 ロキはそのまま後ろによろめき倒れたという。

 

 

 

SIDE イッセー 

 

 助けに来たのがばからしくなる。

 

「姉さんたち・・・。」

 

 変身しないで素でロキを圧倒して見せた二人。

 

「…これだけの戦力を用意したのだがな・・・。」

 

 まさか二人でロキを倒すと・・・んんん!?

 

「まだだ!!」

 

 いやな予感。それは根拠のない直感だったが、俺は遠慮なく叫ぶ。

 

 それとともに奴はたちあがった。

 

 その体をどこからともなく伸びたツタが支える形で。

 

 それを見た鉱太と舞が驚いている。

 

「まさかお前・・・。」

 

「…本当に異常な面々だと思うよ。貴様らは・・・。まさか二人にここまでいいようにやられるとは思わなかった。」

 

 ロキは開き直った様子だ。

 

 ぼろぼろにされているが、それでもまだ余裕があった。

 

 腰に絡まったツタが変化していく。

 

 それは鉱太が使っていたベルトと同じもの・・・。

 

「だからこそ…こちらも使わせてもらおう。本気の証として。」

 

 手に現れるのリンゴ型の錠前。

 

―――――アップルロックシード。

 

「それは金メッキのやつの!!?」

 

「あの技術はすでに私の手の中にある。ふはははははははは・・・あーはははははははははは!!」

 

――――ロック・・・オン!!

 

 現れた赤いリンゴを模したものをかぶったロキ。

 

―――――ゴールデンアップルアームズ・・・黄金の果実。

 

 そうして、ロキは黄金のリンゴの騎士へと姿を変えた。

 

 剣を振るうだけでかなりの圧が俺たちを襲う。

 

 その剣は赤い炎をまとっていた。

 

 その剣から発せられる圧は普通ではないが・・・まさか・・・。

 

「世界を焼き尽くした炎というわけか。」

 

「ご明察。さあ…この力でお前らを・・・。」

 

 俺たちはすぐに走り出す。アギトに変身した状態で。

 

―――――Strike Vent!!

 

 手に召喚するドラグクロー。

 

 ヴァ―リはメタルボーンを装備。

 

 二人でロキに殴りかかるが・・・。

 

 それをロキはリンゴの盾で受け止めたのだ。

 

「ふっ・・・この程度で倒せるとでも?」

 

 どうやらロキの奴は本気を出し始めたらしい。

 

 その言葉とともにこちらの周りに魔法陣を展開させ・・・。そこから紐を出してきたのだ。

 

 俺たちはそれを慌ててかわす。

 

 一見すると何も変哲もない普通の紐に見える。だが…感じられた何かが違っていた。

 

 触れてはいけない。触れた瞬間に終わると直感が告げていたのだ。

 

「アギトの本能・・・厄介だな。」

 

 その言葉が答えだった。あの紐・・・。

 

「ご明察。我が子を封じた、魔紐グレイプニル。その改良版だ。お前たちを封じるのに役に立つと思ったが・・・。」

 

「興味深かったよ。メガヘクスの技術、そしてトランスフォーマーの技術をつかったものでね。」

 

 そのロキの側に現れるは・・・戦国リョーマである。

 

「どうやらロキ本来の狡猾さが発揮され始めてきたか。」

 

ヴァ―リが笑う。どうやら戦うのが楽しいといった様子で。

 

 やれやれ…、だがまあ、これくらいはしてくれないとな。

 

「お前は俺たち二天龍が相手になる。」

 

 俺たちは宣言する。俺たちがロキを倒すと。

 

「いいだろう。世界を焼き尽くす魔剣の力、そして・・・我が子を封じたグレイプニル。そして・・・。」

 

 ロキの周りからチャックが無数にあらわれ、そこから現れたのは・・・。無数の変わった形の果物。

 

「ヘルへイムの力を得たトランスフォーマーたちだ!!」

 

 その足元に次々と現れるトランスフォーマーたち。彼らは出現した果実をかぶり…それを鎧としていく。

 

 手には武器。

 

 特にヤバそうなのは・・・。

 

―――ドリアンアームズ・・・。

 

 なんかドリアンをかぶったやつがいる!?

 

 手にするのはのこぎりみたいな武器。

 

「これはシャレにならないわね。」

 

「はい。」

 

「だが…派手に暴れられそうだな。」

 

 ロキに対抗すべく、他のメンバーも一斉に変身する。

 

「フハハハハハハハハハ・・・ここでお前らを葬って・・・がばっ?!」

 

 そこまで言って、ロキの顔面で爆発が起こり、そのままふっとぶ。

 

「これはあいさつ代わりです。あの時、死にかけた分の・・・。」

 

 俺たちの後ろからギガランチャーを構えたまま怒っているロズヴァイセさんがいます。変身もしていません。

 

 でも・・・。全身から青い炎のようなものが・・・。

 

「がっ・・・へ、変身しないでこの破壊力だと?それにその青い炎…アギトとは別の・・・。」

 

「ええ。アギトの力とは別物です。これは母様からの力。」

 

「…セルベリアの力・・・だと!?」

 

「お二人とも、訂正してもらってもいいでしょうか?ロキを倒すのはあなたたちだけじゃありません・・・。」

 

 そして、ロズヴァイセさんは変身する。

 

「私達五人のアギトです!!」

 

 銀色の装甲をまとったアギトへと。

 

「・・・赤、白、青、そして金…それに続く・・・銀のアギト。」

 

 その光景にロキが表情を引きつらせている。

 

「ぐう、恐れていたことがついに現実に・・・。」

 

「ならこっちも本気をだす。姉さんたちの邪魔はさせない。それに集団戦ならこっちが得意でね。」

 

 新が笑う。そして・・・。

 

「みんな・・・でてこい。久々に提督としての仕事だ。」

 

『はい!!』

 

 その言葉とともに次々と現れる女の子たち・・・。

 

 みんな戦艦の大砲などのいろいろなものを装備していた。

 

「…上等だ。ならこい。出し惜しみはせん!!俺にあと二つの切り札があるのだからな!!」

 

 ロキは笑う。そして・・・決戦第一ラウンドが始まった。

 




 ツッコミどころ多かったかもしれませんが今後もよろしくお願いします。

 次はできる限り早く投稿したいです。

 


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星砕く光の龍

 大変お待たせしました。

 大幅に投稿を遅れて申し訳ないです。

 活動報告で何をしていたのか報告し、皆さまに意見を聞きたいかと思います。

 詳しくはそこで。


 では・・・ロキとの決着編です。どうぞ!!



SIDE イッセー

 

「加賀、赤城は戦闘機を出して、七時方向の敵を。大和はそれに続けて砲撃開始。まずは敵の右翼を突破する!!」

 

『了解!!』

 

 新の奴が手慣れた様子で出てきた女性、少女達に指示を出す。

 

 その指示は…大変的確だったようで、敵の集団がぐらつく。

 

「・・・夕立、榛名!!一緒に突っ込むよ!!」

 

『はい!!』

 

 そのぐらついた集団に新は二人と共に突っ込む。

 

 クロックアップを使って。

 

 それによる切込み。そして、その後に襲い掛かる砲撃にトランスフォーマー達が次々と破壊されていく。

 

「金剛!!足柄!!」

 

「わかっているネ!!」

 

「派手にいくわよ!!」

 

 崩れたところに更に追い打ちが掛かり、右翼が完全に瓦解。

 

 そこに飛んできた戦闘機に他の敵が動揺し・・・。

 

「・・・後方支援の敵を狙いたまえ!!あそこさえ叩けば・・・。」

 

 戦極リョーマの声にトランスフォーマー達が戦闘機を出している赤城と加賀を狙い砲撃を仕掛けるが。

 

「させると思ったか?」

 

 間に割り込んできた新がそれを防ぐ。瞬時に纏ったアーマーの装甲で受け止めたのだ。

 

「大和!!」

 

「はい!!

 

 攻撃仕掛けてきた相手に、新は大和と共に砲撃を仕掛ける。

 

「提督!!」

 

「・・・すみません。」

 

「気にするな。それがこっちの役割だ。今のうちに後退して。」

 

「・・・厄介な前線指揮官だね。前線に立ちつつ、フォローをこなすなんて。どうやったら前線に立ちながら大局を見据えることができる?」

 

 新のそれはまさに指揮官だった。前線に立ちながら、全体の流れを見回し、時に共に攻撃、時に盾となり、フォローする。

 

「・・・鍛えたからな。みんなと一緒に!!」

 

 それは一朝一夕で出来るものではない。

 

 数多くの修羅場を潜り抜けてきたとしか思えない。

 

 そうなると今までの発言からして、新の奴は・・・。

 

そこまでで考えを中断する。その理由は新たに飛んできた弾丸だ。

 

「フォローする。」

 

 その銃を撃っているのは誠である。

 

 ただ、その銃の破壊力は普通ではない。一発でトランスフォーマーが吹き飛ぶのだから。

 

 そして、もう一つおかしいのは・・・。

 

「・・・ねえ。そんな無茶苦茶な銃を片手で撃てるのかね?君は普通の人間のはずだろ?」

 

 それだけの破壊力のある銃を片手で撃つ点だろう。反動もすごいものがあるはずなのに。

 

「・・・あのな。人間をなめんなよ?この世界は鍛えれば人間だってトランスフォーマーくらい殴り倒せる。」

 

 後ろから襲ってきたトランスフォーマーを殴り飛ばしながら彼は平然と告げる。

 

 身長五メートルほどの金属巨人が吹っ飛ぶ姿はかなりシュールだ。

 

「ほらな?」

 

「・・・人間って一体・・・。」

 

 戦極リョーマの苦悩をわかってほしい。

 

 まあ、この世界には鍛えまくったうえで、何かの処置し、鬼となった者達もいる。

 

 この世界は、神器のない人間でも努力とその方向性次第でそれなりに戦える。

 

 まあ…あれは異常だと思うけど。

 

「さて・・・早速使わせてもらうか。」

 

 新と共に戦う誠は軽く呼吸を変え・・・。

 

「ふん!!」

 

 そのまま地面を踏むと・・・そこから黄金の電撃のようなエネルギーが発せられ、それを浴びたトランスフォーマー達の体が硬直。

 

「・・・アザゼル先生、ベルトさん・・・小沢さん・・・巧、フィリップ、使わせてもらうぜ。」

 

 その隙に腰に巻いてある新たなベルトに、彼は手にしたシフトカーを入れる。

 

「変身。」

 

 そのシフトカーは青のバイク型。

 

―――――シグナルバイク・・・ライダー!!

 

 そして、彼は纏う。

 

 青い機械の鎧を。

 

 それは彼の前世で纏っていた鎧。

 

 その名も・・・G3

 

「・・・現世でまたこいつを纏うことになるなんて…本当にわからないよな。でも・・・・ああ…これはこれで癖になる。前世じゃ、装着に時間かかったし、こうやって手軽に素早く変身できるなんて夢みたいだ。」

 

「・・・同じ青か・・・。」

 

 誠が変身した姿にシンパシーを感じているのが新も嬉しそうだ。

 

「さて・・・テストも兼ねて暴れて来いって皆は言っていたが、逆に不安だよな。」

 

 G3。それは問題となっていたエネルギーとその制御AIを誠用に制作していた特性のシフトカーで解決させてしまった三大勢力合同プロジェクトのパワードスーツである。

 

 基本武器である銃を構える誠。

 

 その破壊力・・・一撃でトランスフォーマーが粉々になりながら吹っ飛ぶほど。

 

「…マグナムってレベルじゃねえぞ。戦車砲みたいじゃないか。」

 

 その破壊力に呆れ果てる誠。

 

「破壊力増強にチェイスのこれが使える点といい・・・。」

 

 その銃にチェイスの形見である銃を後ろに合体。更にシフトカーを合体させ・・・。

 

 更に強力な弾丸を放つ。

 

 それはまさに必殺なわけで、無数のトランスフォーマー達をまとめて消し飛ばすほど。

 

「・・・前世と比べものにならないじゃないか。」

 

 そんな誠に向けて肉弾戦を仕掛けてくる者もいるが、それを片手でいなしつつ・・・

 

「どおりゃあああああああぁぁぁぁぁl!!」

 

 拳で粉々に砕きました。まあ・・・変身しなくてもメガヘクスの首を殴り折る誠の拳だ。

 

 変身し、強化されたのならこの程度予想はできていた。

 

「動きも悪くねえ。他のライダーと同じく速く動ける。いい仕事だぜ。」

 

 そう言いながら独自の呼吸と共に足を踏み鳴らすと…また変なエネルギーが周囲に広がる。

 

 それを受けたトランスフォーマー達が一時的にフリーズ。なんだあれ?

 

「ふーむ。ならこれを使ってみるか。」

 

 なんかトランクケースみたいに折り畳まれたものを異空間から引っ張り出す誠。

 

 それが変形し・・・ガトリングになった!?

 

「・・・ふふふふふ・・・。さあて、景気よくいくか!!」

 

 その言葉と共に銃身が回転し、放たれる弾丸の嵐。

 

 その弾幕はまさに蹂躙であった。

 

 次々とハチの巣になっていく。

 

「うわ・・・前世よりも凶悪になっている。片手で撃てるし。」

 

 一番戦慄しているのはそれを片手で自在に操れるように改良されている点だ。

 

 脇に抱え、片手で簡単操作しつつ打てるのだから。

 

 弾丸をバラまきながら誠は突撃する。敵陣の邪魔なヤツをもう片方の腕にいつの間にか装備したアームブレイドで。

 

 敵を切り裂きながら弾丸をバラまいていく誠。

 

 一斉に襲い掛かろうとしたら足を踏み鳴らし、変なエネルギーを発して敵の動きを止める。

 

 まさに…無双だった。

 

「化け物め・・・なら・・・ぬお!?」

 

 誠の派手すぎる暴れっぷりに、新たな指示を出そうとした戦極リョーマはとっさに飛びのく。少し遅れ、彼がいた場所に突き刺さったのはバナナ型のランスだ。

 

「このランスは・・・。」

 

「久しぶりだな。」

 

 そのランスを投げた相手を見た戦国リョーマは絶句する。

 

「なっ・・・あっ・・・。」

 

 もう先ほどの余裕な態度から一変し、驚き、狼狽えている。

 

 まるでありえない存在がそこにいたかのように。

 

 それはヴァ―リの処のメンツの一人・・・確か・・・。

 

「・・・・・・戒斗・・・。」

 

 そうそう、そんな名前って・・・どうして鉱太が知って・・・。

 

「・・・嘘。」

 

 しかも、舞さんも揃って唖然茫然として・・・。

 

「ふん・・・できればこういった再会は避けたかったがな。」

 

 肩をすくめながら戒斗はランスを再び手に召喚する。

 

「なあ…そんな…なんでお前が生きて・・・。」

 

 激しく動揺している様子の戦国リョーマ。

 

「前回のメガヘクスの時に、一度復活したおかげだ。」

 

「だっ・・・・だけど、メガヘクスを倒して・・・。」

 

「・・・体は動かなくなったが、魂だけは残った。それを拾ってくれた奴がいて・・・。」

 

『ポ~ル~ムゥゥゥゥゥゥ!!』

 

 戦闘中にも関わらず、俺達は叫ぶ。

 

 こういう事態をやらかし続けている全ての元凶の名を。

 

――――・・・えっと、なんでそこで余の名前が・・・。

 

通信用のスクリーンが現れ、ポルムが呆れた声を上げる。

 

「・・・いや、そんなことをやらかすのはお前以外にいない。」

 

『イッセーを除いてな!』

 

 なんでそこで俺の名前が出てくる!?

 

―――――失礼な。余だけがそんなことをするわけではないぞ。

 

 ポルムが珍しく反論してくる。

 

 あれ?ポルムの仕業じゃないの?

 

 ポルムの反論に俺達はたじろぐ。一体誰がやらかして・・・。

 

―――余がしたのは肉体の再生のみよ。魂のダウンロードはフィリップが・・・。

 

「フィリップゥゥゥゥゥゥ!!」

 

 今度は合同作業かい!!

 

――――ふふふふ・・・驚いてくれたようだね。これはこれで愉快だよ。癖になるねえ。

 

 愉快じゃねえ!!頼むから変なことで快楽を覚えないで!!

 

――――今度とも一緒にやらかしましょうか。

 

―――是非とも。愉悦を覚えてきたよ。

 

 ・・・・・・あっ、頭が痛くなってきた。こいつら想像以上に仲が良い。

 

 やらかすのはポルムだけで十分だって。

 

―――魂の転送のサポート、ハルト感謝。

 

・・・・・・もう一人いやがったか。

 

「おいおい・・・困った人を助けるのは当たり前だって。」

 

 ハルトの奴は例のインフィニティフォームで反論中。

 

 そして、片手間で押さえつけているのは、フェンリルである。

 

 だって、ハルトのその姿、速いだけじゃなく、大変防御力が高い。

 

 それこそ、あのフェンリルの神殺しの牙すらも歯が立たずにはじき返してしまうほどに。

 

「……なんだ?この化け物。」

 

 それを見たロキは戦慄を隠せない様子であった。

 

 まあ…神殺しの牙は俺達アギトからしてもヤバいのだが、それを全く効かないとなると、神すら超える異質な何かというわけで・・・。

 

 インフィニティフォーム。マジで、ヤバい

 

「どうした?なんで襲ってこない?」

 

 ハルトの前には腹を見せ、降参しているフェンリルの子達の姿。

 

 あえてハルトは全ての攻撃を受け、平然とした様子を見せていたのだ。

 

 それに彼らは初めこそはムキになったが、だんだん焦りに変わり、そして次第に…絶望へと変わっていった。

 

 何をしても全くダメージを与えられない。

 

 逃げたい。でも相手は光の如き速さで素早く回り込んでくる。その上、分身まで。

 

 攻撃はしてこない。

 

だが・・・ハルトに向かってきた一体のトランスフォーマーが片手で軽く払われるだけで、粉々に砕け散った。

 

その一撃・・・いつでもハルトは彼らに向けることができるということだ。

 

その結果、フェンリル達の心が・・・折れた。

 

「やれやれ・・・たいしたことしていないのに・・・。」

 

 流石はハルトだぜ。相手の心をへし折る術を心得ている。

 

「・・・そんな…馬鹿なことが・・・。」

 

 まさか、ハルトがフェンリル達を単独で抑えてくれるなんて、助かったぜ。

 

「今のうちに洗脳を解くと良い。」

 

「えっ・・・ええ・・・。」

 

 なすすべもなく無力化されたフェンリルを契約者であるイリヤが駆け寄り、その洗脳を解きにかかる。

 

 なんか微妙な表情だったけど。

 

「・・・量産型のサイバーミドカルズオルムは?」

 

 トランスフォーマーとして再現されたミドカルズオルムのクローン達は・・・。

 

「手応えがない。」

 

「鎧を纏うまでもない。」

 

 鋼兄とサイガの無双でした。

 

 鋼兄は突進してきた一体のクローンを片手で受け止め、そのまま力任せに他のクローンに叩き付ける。

 

 一方のサイガは一振りで両断。

 

 そんなことを平然とやらかしているのだ。

 

「・・・なんだこいつら・・・。」

 

 用意していた軍団は俺の仲間達が抑えてくれている。

 

 だから、俺達は遠慮なくロキと戦える。

 

「ちぃ・・・流石に強い。」

 

 一対一で、今の俺なら互角。アップルロックシードの剣と盾に対抗し、こっちはドラグセイバー二刀流。

 

「ぐう・・・ここまで進化していたか。生意気な・・・。」

 

 攻めあぐねているロキの奴は苛立っている。

 

 そして、一対一で渡り合える状態ということは・・・。

 

「俺達がいることもを忘れるなよ?」

 

「そういうことだ!!」

 

 ロキに急接近して揃って手にした剣で吹き飛ばすヴァ―リとネロ。

 

「ぐうう・・・・。貴様ら・・・。」

 

 ロキが吹き飛ばされながらも魔術を発動しようとしたら・・・。

 

「させません!!」

 

「・・・なに?!」

 

 アーシアがそれを強制的にキャンセルする。

 

「…貴様。神の魔術に介入を・・・がばっ!?」

 

「これくらいできて当然です。」

 

 そこにロズヴァイセさんの砲撃が火を噴き、ロキが吹っ飛ばされる。

 

「アーシアちゃんには魔術、それも無力化系と治癒系の才能がありますねえ。流石・・・。」

 

「いえいえ。」

 

「・・・ぐう・・・。」

 

 魔術を封じられ、完全に詰みとなったロキ。

 

「・・・ふふふふふふふふふふ。」

 

 だが、ロキにはまだ余裕があった。

 

「仕方ない。オーディンとの対決に用意していたものだが・・・。」

 

 懐からあるアイテムを出したのだ。

 

 それは・・・鍵。

 

「なんでお前がそれを持っている?!」

 

 それを見た鉱太が驚く。

 

「・・・あれって、鉱太が持っていたのと同じ・・・。」

 

「・・・黄金の果実の欠片…それがメガヘクスにデータとして残っていたのだよ。」

 

 黄金の果実の欠片?

 

「・・・あの時か。」

 

「その残っていたデータをこちらが解析・・・そして完成したのがこの黄金の鍵というわけさ。」

 

 ロキの隣に現れる戦国リョーマ。

 

「そして、オーバーロードとしての力も私は得ることができたのだよ。」

 

 ロキは笑う。

 

――――フルーツバスケット。

 

 その周囲にジッパーが無数に現れ、それが円を描くと共に無数の果物みたいなものが出現。

 

 その中に混じって現れたのはトランスフォーマーの素体。

 

「ラグナロクを起こし、我はこの世界を滅ぼす。そして…この世界の新たな最初の神となろう。」

 

 それがロキの体に集まっていき・・・。

 

 ロキは纏う。

 

 それは鉱太が変身する最強フォームのそれに似てはいた。だが、頭の兜が月ではなく、クワガタ。バイザーも赤くなっており、肩も赤くなっている。

 

「…流石神というべきか。その力をものにするとは・・・。」

 

 リョーマの奴が感慨深くそれを見る。

 

 しかもその大きさはトランスフォーマーのそれに近い大きさになっている。

 

 ロキ・・・第二形態。

 

「さあ…今度はこの姿で戦わせてもらおう。黄金の果実、そしてトランスフォーマーの力を得た我が力を!!」

 

 そこに現れるのは・・・。

 

「今度は俺も暴れさせてもらおう。」

 

 ガルバトロンである。

 

 こいつまでやってくるとなると・・・。

 

「・・・オプティマスの奴はまだいないのか?」

 

「指名が入ったか。どうする?」

 

――――いかない理由がない。

 

 俺は眷属となったあいつを呼び出す。

 

 後ろに展開させたアギトの紋章。そこから出てくるのはオプティマスである。

 

「・・・決着をつける日が来たようだな。」

 

「そのセリフは何度も聞いたぞ。ガルバトロン。」

 

「ふははははははははは!!それもそうだな。しかも死んでもお互いに復活してまた戦う始末。まったく・・・腐れ縁だな。」

 

「ふっ、そう思うよ。」

 

 そのやり取りはライバルでありながら、長年の付き合いといった何かが感じられる。

 

「すまない。ここからは・・・。」

 

「気にするな。善悪、敵味方すら超えた何かがあるんだろ?なら…ぶつかって来いよ。」

 

「・・・君の友になれたことを今、心の底から誇りに思うよ。」

 

 よせやい。オプティマスほど高潔な人にそう言われると、かなりくすぐったい。

 

「いくぞ!!」

 

「ぐはははははは・・・・・ああ!!」

 

 そういって二人がぶつかり合う。

 

 互いに超高速で動きながら。

 

 あれは・・・重加速!?

 

「・・・互いに同じ力を得ているのか!?」

 

「ああ…面白い奴が背後にいるのでな。楽しもうじゃないか。」

 

 常人には知覚することすら難しい速度でぶつかり合う二体。

 

 その迫力にロキすら呆れ果てる。

 

「・・・はあ、お前達は別の処で戦え。流石に巻き込まれたらヤバい。」

 

「・・・そうか。それもそうだな。ならこい!!」

 

「いいだろう。ソーナ!!その間、司令官として頼む!!」

 

―――ええ。あなたの教え・・・存分に発揮させてもらいます。

 

 そういって二体が天井をぶち破って退場。

 

 そのまま真空の中で重加速を使った状態でぶつかり合う。

 

 その余波が振動としてこっちにまで伝わってくる。

 

あの二体だけ他のトランスフォーマー達とは完全に格が違う。

 

 こっちもまともにぶつかったらヤバい。

 

「さあ・・・この姿になったからにはアギトが五人いても・・・。」

 

 巨体となったロキがせまってくる。

 

 だが、次の瞬間。無数の弾丸がロキに襲い掛かってきた。

 

「ぐううう!?」

 

「こっちは終わった。援護する。」

 

 誠がガトリングを手に参戦。凄まじい勢いでガトリングが火を噴き、ロキに弾丸の雨が襲い掛かってくる。

 

「ぐうううう何だこの弾丸!?当たるたびに体が・・・しびれて・・・。」

 

「・・・太陽の力を込めているのでね、弾丸に。それもこんなに大量にできるとは思わなかったけど、想像以上に効果ありそうだ!!これなら…水のエルもハチの巣にできるかもしれんな!!」

 

 誠なりの新たな試みだった。前世ではガトリングを受けても平然としていた水のエル。それに対抗するためにガトリングにアギトの力みたいな何かを付加できないかととっさに考え・・・太陽の力を付加させてみたのだ。

 

 その効果は…絶大だった。

 

「ぐうう・・・くそ!!」

 

「巨体となったのが仇になったなあ!!」

 

 そこから横に飛んできたのは無数の砲撃だった。

 

「ぐああ!?ぐうう・・・。」

 

「的がでかい。遠慮なく火力を集中させろ!!」

 

 新が己の契約者である少女達を指揮し、その手にした大砲などの火力を全てロキに集中させてきたのだ。

 

「ぐう…まさかもう全滅したというのか?!」

 

 ロキが用意した兵士を全滅させた火力が、今ロキ一人に集中。

 

 ロキは完全に動きを封じられてしまった。

 

「いいですね。なら…私も!!」

 

 ロズヴァイセさんが肩にキャノンを出現させての集中砲火。

 

「ぐあっ!?ちぃ・・・ここは・・・へっ!?」

 

「…逃がすと思ったかい?」

 

 逃げようとしたロキの足元が凍る。それをやらかしたのはハルトだった。

 

「さあって・・・イッセー。私にも一発こいつを殴る権利があると思うのだけど?」

 

――――ウェイクアップ!!

 

 部長が両手足のカテナを開放しつつロキに向かってゆっくりと歩き出していた。

 

「・・ぬうう・・・おおおっ?!お前は来るんじゃない!!お前だけはぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 全身から立ち上る滅びの魔力。その密度にひるむロキ。

 

 彼の脳裏に宿るのは、ロキを圧倒した部長の鉄拳だろう。

 

「もう一発あなたを殴らないといけないの。だって…あなたのせいで朱乃がすごくおかしいことになっちゃったから。ふふっふふふふふふ・・・。」

 

 部長がもう色々と壊れているみたいで・・・。

 

「はははは・・・あーははははははははははははははは!!」

 

 なんだか壊れた笑いをしながらロキに迫っていた。

 

 はっきり言って…怖すぎます。

 

「来るな…こっちに来る・・・なっ?」

 

 暴れようとしたロキを拘束するのは二人。

 

「しっかり押さえておいてやる。」

 

「そうだね。しっかりと。」

 

 ネロとハルトがいつの間にかその自慢の手の力で強引にロキをその場に固定したのだ。

 

「いい仕事よ。二人とも。」

 

 大変可憐な声で部長は二人を誉める。

 

――――ウェイクアップ…フィーバー!!

 

――――…ついにフィーバーしちゃったか。もう…最後の封印が解けるのは近いわね。

 

 部長が右腕に渾身の滅びの魔力を込め走り出す。

 

「やめろ・・・やめろおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 それを見て、死刑執行される罪人の如き悲鳴を上げるロキ。

 

 うん…その気持ちなんとなくわかる。今の部長…破壊神にしか見えないし。

 

 その一撃が巨体となったロキの胴体を捉え…ふっ飛ばす。

 

 声も挙げることもできずに全身を粉々にしながら吹っ飛ぶロキ。

 

 全身を纏っていたアーマーが消滅し、そのまま壁に激突し、力なく倒れた。

 

 

 

SIDE ???

 

 ふう・・・やってられないよ。

 

 僕は戦線を離脱していた。

 

 そろそろ潮時だとわかったからだ。

 

「いいのか?あいつにはまだ最終兵器があるぞ?」

 

「はっ、君も天才ならわかるだろ?あの程度であのメンツがどうにかなるかと?」

 

 そこにもう一人の暗躍者がささやく。

 

「それもそうだな。そして、そのボディは役に立っているようだな。」

 

「ああ、助かるよ。バイタルコア、おかげでオーバーロードすら超えた存在として私は新生できた。」

 

 私の体を再生できたのは目の前の存在のおかげである。

 

「・・・そろそろ英雄派と合流すべきだろう。」

 

「ガルバトロンの回収も頼むぞ。あいつは究極の金属生命体になってもらわないといけない。」

 

 私の肩に巻き付くベルト。

 

「行こうか蛮野博士。」

 

「そうだな、戦極博士。」

 

 こうして私達は其の場から離脱する。

 

 一応、最終兵器の戦闘データを取る為だ。

 

「・・・くくく・・・トライヘキサとユニクロンの復活の為に。」

 

 この二つの復活の為の礎になってもらおう。

 

 

 

 SIDE イッセー

 

 さて・・・これでロキの切り札の一つは撃破した。

 

「そろそろもう一つの切り札を出したらどうだ?」

 

 ロキがゆらりと立ち上がる。

 

「・・・そうか。そんなにこの星は滅びたいのか。」

 

 全身ボロボロ。立つのもやっとのはずのロキ。

 

 だが、その表情には諦めはない。

 

「・・・仕方ない。なら見せてやろう、最後の切り札を。くははははははははは。」

 

 そして、その姿が光の粒子となって消えた。

 

 そう…消えたのだ。

 

 それと共に胎動が聞こえた。

 

 その胎動は・・・床、壁…いや、今いるこの場全体が胎動しているのだ。

 

 アギトの本能が激しく警告を発する。

 

 それは他四人のアギトも同じ。

 

――――皆!!急いでここから脱出して!!

 

 ポルムがゲートを開き、皆はそこに飛び込む。

 

 脱出する瞬間、床が割れ、そして壁が動き出したのを見ながら。

 

 

 

 ゲートの先はメガヘクスを閉じ込めていた結界の外側。朱乃さんの近くだった。

 

 そして、俺達は見る。

 

 メガヘクスが・・・変形するのを。

 

「これは・・・トランスフォーム。」

 

――――皆…メガヘクス本星がトランスフォーマー化していたのは予想していただろ?こっちも一応想定はしておいた。

 

 ポルムが解説を入れる。

 

 球体のボディを割って現れるのは・・・巨大な姿となったロキであった。

 

―――だが、キューブで生み出されたトランスフォーマーは極めて原始的な生物に過ぎない。知性も・・・理性もないただの動物だ。故にコントロールの方法が問題だったけど・・・。

 

「ふはははははははははは!!」

 

 メガヘクス本星が笑う。

 

―――まさかオーバーロードとなったロキが自分をスパークと化して一体化するだなんて。

 

「その通り。これぞ、我が最後の切り札よ。」

 

『・・・・・・・。』

 

 さて…あまりに規格外なラスボス登場。

 

「なんでこう・・・私達の前にはとんでもない化け物ばかりが立ちはだかるのかな!?」

 

 部長の叫びが全てだと思う。

 

「ゴジラを超える相手はいないと思っていたのに、でかさだけならそれを遥かに超えるか。やばいな。」

 

「これは・・・でかい。ゴジラとはまた違う威圧感がある。」

 

「くははははははははははは!さあ…ラグナロクの始まりだ!!ロキ・・・スタージャイアントフォームでな!!」

 

 星の巨人。相手は規格外といえる。

 

 俺はヴァ―リの方を見る。

 

 ヴァ―リの奴も同じく笑みを浮かべながら頷く。

 

「そうか・・・ならこっちも遠慮はいらないよな?」

 

『?』

 

「ハハハハハ、まさかお前の初召喚がこのような規格外相手とは。だが…だからこそ相応しい」

 

 俺達はカードを取り出す。

 

 それは・・・。

 

―――――ゴジラ・・・。

 

―――――キングギドラ。

 

 あまりに強力で、普通の戦闘では使うのをためらわれるカード。

 

 だが、相手は規格外。

 

 なら何をためらう必要があるか?

 

「規格外には…規格外で相手にやってやる!!」

 

――――AdVent!!

 

 現れるのは俺達が全力を持って相手にした二体の規格外。

 

「・・・ふん。これは壊し甲斐がある。」

 

「いいねえ。だが、初の召喚がお前との共闘とは。」

 

 ゴジラとキングギドラである。

 

 だが、俺はまだ後二枚の契約カードが使いこなせていない。

 

「うわ・・・まさか、もう召喚できるようになっているとは。」

 

「いや・・・まだまだだ。」

 

 ドラゴングリードとグレートレッド。

 

 この二つを使いこなせるようになるまでにまだ修業が足りないのだ。

 

「私も召喚します!!って…アカリちゃん!?」

 

 アーシアもモスラを召喚。

 

「なら私も・・・ガメラ・・・ってガメラ!?」

 

 小猫もガメラを召喚するが…お互いに様子がおかしい。

 

 まずアカリちゃんの姿だが…その全身が金属に覆われていたのだ。

 

 それを見た弟ギドラが嫌そうな声をあげる。

「げえ・・・まさか俺を倒したその姿になっているのか?」

 

「あなたとの出会いで、先代の力が蘇りました。」

 

 のちにそれが鎧モスラを呼ばれるとんでもない姿だと知る。

 

 弟ギドラの攻撃を一切受け付けない防御力に、秒殺する攻撃力を兼ね備えた姿だと。

 

 そして・・・ガメラの方は虚空を見て唸っているのだ。

 

 虚空から出現するのは四本の触手を持ち、紅の炎をを纏った謎の存在。

 

「・・・何故お前がここにいる?」

 

 ガメラの口から言葉が・・・ってええええええええ!?ガメラがしゃべった?

 

 テレパシーじゃなくて?

 

「先輩。ガメラも進化している。」

 

 そうか・・・。しかし、結構声が男前というか・・・。

 

 うん。声からしてまさに漢なんだよな。

 

 性格も大変男気あるし。

 

「ふん・・・。我が契約者の頼みでな。」

 

 一方も謎の存在は…冷徹な女性の声だぞ?

 

「・・・どういうことだ?前のお前は契約者を取り込むはずなのに・・・。」

 

「それでは得られないものがある。この世界でそれを知れた。」

 

「・・・・・・。」

 

 ガメラはそこで少し押し黙り・・・。

 

「いいだろう。共に戦ってやる。」

 

「ふん…まったくお前までやってきているとはな。」

 

「それはこっちのセリフだ。互いに因果はあるが、今は捨てておく。」

 

 ガメラと謎の存在の会話は一区切りついたようだ。

 

「・・・ガメラ?この子…あなたの記憶にあった・・・。」

 

「我が名はイリス。かつて邪神と呼ばれし者。ガメラの契約者よ。今回は守護神として参加させてもらいたい。」

 

「・・・あれ?だいぶ性格が違う?」

 

 小猫ちゃんが戸惑っているが、そんな彼女を見て俺は言う。

 

「いいぜ。一緒にこの派手なパーティに参加してくれ。」

 

「先輩!?」

 

「いいのか?」

 

「少しでも戦力が欲しいし、詳しい事情は分からねえが、今のあんたに邪心はない。なら問題は何もない。」

 

『・・・・・・。』

 

「先輩らしいです。」

 

 どうも俺の一言が鶴の一声だったらしい。皆も苦笑している。

 

 小猫ちゃんは呆れてため息をついている。

 

「・・・そうか。我が契約者がそなたを慕う理由がよくわかる。」

 

 イリスが笑う。

 

「今更だろう。」

 

 その傍に今度はバトラが現れる。

 

「こいつのことは私も保証してあげる。安心して。」

 

 バトラの頭の上に乗っているユウナが笑う。

 

 これで問題はないだろう。

 

「へえ・・・なら私も来て問題はないわね?」

 

 そこにもう一体現れる影があった。

 

「…貴様までいるのか!?」

 

 ガメラが悲鳴をあげる。

 

 それは白い昆虫みたいな奴だった、背中から二対の羽が細かく振動して飛んでいる。

 

――――レギオン・・・やっちゃいなさい。

 

 通信指令から、ほむらの声が聞こえてくる。

 

 どうやら契約者はほむららしい。

 

「ええ。かつてあなたの命を狙ったことは水に流してもらえると助かるわ。」

 

「・・・ガメラの因縁の相手が次々と・・・。」

 

「はあ…もう、細かいことは問わん。」

 

「ふふふふふ・・・。」

 ガメラさんがなんか疲れた様子を見せる。

 

「なあ…お前、かなりの苦労人だろ?」

 

「・・・わかってくれるか?」

 

「破壊神と守護神の違いはあれど、なんとなくな・・・。」

 

 なんかゴジラさんが同情してますけど?

 

「まあ、何かあったら大抵のことは破壊してやる、」

 

「破壊が得意なあんたらしい。だが…頼りにする。」

 

 そんなゴジラとガメラは会話の後に思い切り吠えた。

 

 やる気を上げる為の雄叫びだ。

 

 他の契約モンスターも既に全員召喚済。

 

「また大暴れの時間か。」

 

「あなたといると退屈しないわ。」

 

「これもドラゴンの醍醐味。」

 

「そうか・・・なら俺もこの世界ではドラゴンになるのか?」

 

 ゴジラさん、それに関してはなんとも。

 

 俺の中にいた愉快なドラゴン達もやる気十分のようだ。

 

「さあ…最終決戦だ。皆…派手にいくぜ!!」

 

 俺達は戦いに向かう。

 

 

 

 

 SIDE ロキ

 

 …流石に想定外だったが、その想定外を相手は更に覆す戦力を持っていた。

 

 我が拳を繰り出すが・・・。

 

 それを青のギルスが手を巨大化させて受け止めたのだ。

 

「・・・今度は星をぶん殴るとするか。」

 

 ぐうっ、宇宙空間で足場を作り、走り出すだけでも脅威なのに?

 

 ちい・・・お前達いけ!!

 

 この結界内に閉じ込められていた全軍を使えば・・・って・・・。

 

「数には数で対抗してあげる。」

 なんだ…あの黒い一つ目の虫の群れは!?

 

「フフフフ・・・私の兵隊達とどっちが強いのか勝負と行きましょう。」

 

 なんだあの白い昆虫みたいな生物は?!

 

 我が軍が・・・我が軍が押されている?!

 

「数の暴力は私が抑える。皆はあのでくの坊をやりなさい。」

 

 あの怪物がこれだけの軍を率いているだと!?ちぃ・・・先に潰しておかねば。

 

 だが、大量の軍を抑えられたことは痛いものだった。

 

 青い閃光と黄金の稲妻のようなものが襲い掛かってきたからだ。

 

 その一撃に私は吹っ飛ぶ。

 

 そう・・・月ほどの大きさがあるのに吹っ飛ばされたのだ。

 

 黒い亀みたいな奴と、炎の鳥に触手が生えた奴・・・そして鎧に包まれた蛾やそれに似た黒い奴までいやがる。

 

 機動性があり、こちらの攻撃が当たらない。そして…こちらは次々と攻撃を受けて破壊されていく。

 

 他にも赤龍帝や白龍皇・・・その相方である紅の龍や紫の蛇などなど・・・。

 

 どうにもならないほど、破壊され始めていた。

 

 そんな馬鹿なことが・・・起きていた。

 

 最後の切り札ですら圧倒されるほどの手札を相手は持っていた。

 

 これでは…ラグナロクが行えない。

 

 ・・・なら、あれを使う他ない。黄昏の為にはかなり強引な手なのだが仕方ないだろう。

 

 相手が悪いのだ。

 

 強いのだから。

 

 

 

SIDE イッセー

 

 順調に メガヘクスを追い詰めている。

 

「…あれだけの巨体をねえ・・・。」

 

 あっ、鋼兄が張り切ってパンチして、右腕の指の部分が吹っ飛んだ。

 

「・・・!?」

 

 楽勝・・・と思った瞬間、俺の中のアギトの本能が告げた。

 

 あまりにもヤバいことが起きると。

 

 それを俺以外の四人のアギトも感じたらしい。

 

「・・・完敗だよ。認めないといけないな。」

 

 ロキは攻撃され続けながら語る。

 

「だが…ラグナロクを起こす。それだけは達成させてもらう。」

 

 その言葉と共にメガヘクスの体が輝き出したのだ。

 

 急速に集まるエネルギー

 

 そして、発生したのは超重力の嵐だった。

 

 メガヘクス本体を中心に重力が捻じ曲げられ、吹き荒れていたのだ。

 

「ふはははは!!さあ…リセットの時間だ。この銀河系のな!!」

 

――――不味い・・・人工的にブラックホールを起こしやがった。

 

 凄まじい重力に吸い込まれそうになるのを必死にこらえる。

 

「…結界がこのままじゃもたない。」

 

 朱乃さんが必死になって結界でこの辺りを囲っているが、それもいつまでも持たない。

 

「・・・・・・朱乃さん。無理しないで!!」

 

 朱乃さんに話しかけるが・・・それに対しての返答は笑顔だった。

 

「…相手の自棄に負けるほど・・・私は弱くないですわ!!」

 

 朱乃さんは必死だ。

 

「私の後ろには・・・父様がいる・・・母様がいる。私の大切な人達がいる。」

 

 背に十二枚の堕天使の翼が展開する。

 

「絶対に…守り切る!!」

 

 朱乃さんは退かない。守るべき人達が住む星を背にしているから。

 

 だが、このままじゃ限界がくる。

 

「・・・どうすれば・・・。」

 

―――――・・・どうやら、私の出番のようですね。

 

 その時、俺の頭の中に何かが語り掛けてきた。

 

「えっと・・・。」

 

 並行世界の俺の話を思い出す。

 

 あの世界でロキと戦った際に決め手となったのが異世界の神の力。

 

 その名も・・・

 

―――ええ。私はおっぱいの神です。

 

『!!!?』

 

 その言葉に俺は心底驚く。

 

 同時に・・・やってきてしまったと達観した気分にもなる。

 

――――・・・相棒。ついにおっぱいドラゴンと呼ばれる第一歩が来たな。

 

 わかっているさ、ドライク。

 

「・・・・・・興味深い。」

 

 ってゴジラさん!!興味深いってなに!?

 

「何を言っている。俺はおっぱいの力で負けた身だ。未だトラウマになっている部分があるが、それ以上に・・・その力の本質を知りたい。破壊すら超えるおっぱいの力・・・。」

 

 あ~!!もう!!怪獣王がおっぱい連発するな!!お前もおっぱい怪獣、おっぱいゴジラを呼ばれるぞ!!

 

「…それに何の問題がある?」

 

 …ゴジラさん。頼む。そういったことに無頓着にならないで。

 

―――えっと・・・それであなたのおっぱいへの愛に感銘を受け・・・。

 

「…なら頼む。あの星には無数のおっぱいがあるからな!!」

 

 傍から見たら俺は訳の分からない世迷言を言っていると思われるだろう。

 

 だが・・・。

 

「そう…ついに来たのね。伝説の始まりが。」

 

 部長・・・察したのですね。

 

「さあ・・・おっぱいで地球を救うぞ!!」

 

―――――あなたの力・・・そのカードに!!

 

 俺の持っている一枚のカードが光り輝く。

 

 

 

 

 

SIDE ロキ

 

 訳の分からないことが起きている。

 

 突然、アギト共の力が高まったと思えば・・・。

 

 光り輝くカードが現れ、その効果でその場にいた契約モンスター達が一斉に集まり…合体したのだ。

 

 巨大な光のドラゴン。

 

 いわば・・・アギトドラゴン。

 

「・・・なん・・・だと?」

 

 何が・・・どうなっている。これを発動させれば、あとは滅びるだけのはず。

 

 そのはずなのに…どうして向こうはこちらの手札を上回る何かを出してくる?!

 

 あのアギトドラゴン…訳が分からないが…ブラックホールを片手で簡単に消し去ってしまうほどのヤバさがあった。

 

 勝てない…勝てるわけがない。

 

 一矢報いることすら・・・敵わないほどに。

 

 ドラゴンが変形しつつこっちに迫ってくる。

 

 それはまるで三本の指をしたドラゴンの足のような形態であった。

 

 そのドラゴンの後ろから・・・一斉にアギト共がキックをかましている。

 

 いわば・・・巨大化したライダーキック。

 

 それが重力の嵐すら吹き飛ばし・・・

 

 我がメガヘクスを粉々にしてしまった。

 

 とっさに我は分離し、光から実体と戻る。

 

 巨大な星すらも破壊…、それも爆発すら許さないレベルまで粉々にする。

 

「…こんなバカなことが・・・。」

 

 こいつらは…化け物だ。

 

 神ですら恐れるほどの・・・。

 

 退却を決意するは当然だった。

 

 今度はもっとじっくりと時間をかけて・・・。

 

「…逃がすわけないでしょうが。」

 

 だが、その俺の前に現れる者達がいる。

 

「なぜ・・・。」

 

「ヘルヘイムの実の力を使うのはこっちも一緒だ。」

 

 始まりの男がしてやったりという顔でこっちを見ている。

 

ぐう・・・。

 

 その時・・・我の上空から黄金のアギトが現れる。

 

 手には・・・レプリカのミョルニルが・・・。

 

「決めなさい。アーシアちゃん。」

 

 ちょっとまて!!それ・・・レプリカだったのに、どうして本物と同等の力を!!

 

 って…アギトの力による進化か・・・。

 

 逃げようとする私の体に雷が落ちる。宇宙なのにだ。

 

「があっ・・・ああ・・・。」

 

「逃がすわけありませんわ。」

 

 放ったのは…姫島 朱乃。

 

 まさか・・・逃げることを想定し、罠を仕掛けていただと?

 

 しかも、神である我をしびれさせ、動けなくするほどの威力の一撃を・・・。

 

「やあああああぁぁぁぁぁ!!」

 

 ミョルニルが脳天直撃する瞬間私は思った。

 

 こいつらに戦いを挑んだのは間違っていたと。

 

 こいつらがいる世界を滅ぼそうとしたのは致命的だったと。

 あいつらがいる限りラグナロクは起きないと。

 

 脳天に直撃し、ふらふらしながら逃げようとして・・・。

 

「…とどめはこっちがやらせてもらおう。」

 

 と顔面を掴まれた。

 

 あの…指輪の魔王―――ハルトに。

 

「・・・あっ・・・ああ・・・ああ・・・。」

 

 もう…抵抗すらできない。

 

「…提督殺し。」

 

 頭が潰されるか感覚を味わいながら意識を失っていった。

 

 

 SIDE イッセー

 

 よし・・・ロキは捕らえた。

 

 皆はやっと緊張を解く。

 

 まさか最後をアーシアとハルトが決めるとは思わなかったけど。

 

「私達の勝利です!!」

 

「溜飲がさがったよ。」

 

 大槌を担ぐアーシアとロキの顔面を掴んだままのハルト。

 

殺さずに無力化する辺りは流石だと思う。

 

 ただ・・・物理で行った点は色々とツッコミたい。

 

 しかもアーシアがミョルニルのレプリカをアギトの力で己の物にしている点もだ。

 

「だが、ある意味彼女にふさわしいぞ。あれは豊穣の力もある。」

 

 ヴァ―リがこういったことに詳しくて助かる。

 

 …そういった意味でも親和性が高いわけか。

 

 こうして俺達は、勝利の報告をする為に自宅に戻る。

 

 だが、その自宅の周りでは異変が起きていた。

 

「お前達がトランスフォーマーを匿っているのはわかっている。大人しく差し出せば悪い様にはしない。」

 

 と変な男達が戦車などを持ち出して囲っていたのだ。

 

 数は…千を超える程度だ。

 

「・・・どういうこと?」

 

 上空からそれを呆れた様子で見る俺に通信が入る。

 

 大変呆れた様子のアザゼル先生だ。

 

――――――どうやら某国の軍みたいでな。ったく、この程度の戦力でこの基地をどうにかできると思っているのかね?

 

 ああ・・・オプティマスを捕らえようとしていた連中か。

 

 俺達の宇宙の激闘を知らずに、こうやって来たわけかい。

 

「あいつらも懲りねえな。」

 

 誠の奴が殺気だっている。

 

 相当あいつらがやったことに腹を立てていたらしい。

 

 まあ、俺達も当然怒っているがな。

 

「・・・皆。疲れているところ悪いが。」

 

 俺達は帰還と共に新たな戦いに身を投じることになる。

 

 こちらの眷属となったオプティマスの仲間達を助ける為の戦いを。

 

 皆…いい笑顔で参加してくれた。

 

 ちなみに・・・その戦いはあいつらの本部にオハナシしに行って話をつけたのも含めて一晩で終わった。

 

 自宅を囲っていた奴ら?

 

 秒殺もいいところだ。

 

 いや~激闘後の徹夜できつかったぜ。

 

 飯食って、風呂入り、映画見て、さっさと寝ることにしようか!!

 




次話…エピローグです。


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エピローグ

 短いですがエピローグです。

 後日談はまたおいおい。


 あと次の章の予告も兼ねています。


 

 

SIDE イッセー

 

 こうして、俺達の周りは平穏が持ってきた。

 

 変わったことと言えば・・・誠を初めとしたあの時のメンバーがこっちに来たことと・・・。

 

「おはようございます。イッセー様。今日も街は平和です!!」

 

 と、挨拶する対象が人や人外だけでなく、車などの乗り物にも拡大したことだ。

 

「おはよう。どうだ?この街は?」

 

「我々を救ってくれた方々の街・・・素晴らしいです。」

 

 もちろん、ただの乗り物じゃない。トランスフォーマー達だ。

 

 今この駒王町には多数のトランスフォーマー達が生活している。

 

 軽く辺りに気をやるだけで、周囲百メートル四方に四体の車に擬態しているトランスフォーマー達がいる。

 

 こちらとしても街の警備もしてくれる人材確保という意味も大きい。

 

 冥界、天界、グレゴリでも彼らを雇う者達は増えている。

 

 普段は乗り物として行動し、必要に応じて人型になり戦える。諜報、護衛など彼らの活躍の幅は広く、大変魅力的な人材なのだ。

 

 彼らの基地はもちろんのことだが、俺の自宅の地下にある。

 

 そこで彼らの情報も集めている。非常態勢もバッチリというわけだ。

 

 この世界は今、トランスフォーマー達と共存している。

 

「おっ、イッセー!!」

 その最大の功労者である誠がバイクに乗ってやって来ている。

 

 そのバイクももちろん…トランスフォーマーだ。

 

 それも、コアドライビア内蔵した誠専用の相方である。

 

 シフトカーの技術とトランスフォーマーの融合。

 

 ぞの試作一号として。

 

 シフトカーもそのトランスフォーマーの技術で驚くべき進化を果していた。

 

 それは・・・。

 

 オレの肩に乗った一台のシフトカーがトランスフォーム。人型になったのだ。

 

「レイヴェル様より連絡が入っております。例のイリスの件の説明をしたいと。」

 

 と、伝言を伝える為にだ。

 

 それはメガヘクスにあったキューブの破片の回収の際に出てきた光の所為だ。

 

 彼らシフトカーがトランスフォーマーになったのだ。

 

 幸いなのは元々シフトカーに知性があり、それが進化する形となったので、大変高度な理性があったことだろう。

 

 彼等のことをシフトロンと呼ぶことにしている。

 

 手乗りサイズの変形するシフトカーのトランスフォーマー。

 

 彼らは数多くの可能性に満ちていた。

 

 その可能性をベルトさんを始めとした各勢力の研究者達からなる研究チームが追及しているという。

 

 一体一体が生きた神器と言っていいほどの可能性らしい。その中に神滅具クラスのものも存在すると。

 

 ただ…この地を管轄する立場の部長の嘆きは更に深まったという。

 

 更に人外魔境度が悪化したと。

 

 もう、乗物などの器物にも油断できなくなったからね。

 

 ちなみに俺の手元にあるスマホ・・・これもシフトカーで同時にトランスフォーマーだったりする。

 

 色々と凄すぎて、もう何か大切な感覚がマヒしてきた気もするが・・・。

 

 

 

 

SIDE ???

 

 我々は恐れおののいていた。

 

「…もう、あいつらに戦いを挑むことはできん。」

 

 我が主たる闇の神が厳かに告げるのもわかる。

 

 それだけにあの神の後継は力を得てしまったのだ。単純な力だけでない。

 

 更なる猛者があの人外魔境に集っている。

 

 もう・・・あの町に手を出したらどうなるのか、ロキの惨敗っぷりが証明している。

 

「・・・ほむらがその神に惹かれ始めている。それがこの状態の答えだ。」

 

 エルの一人たる私は、我が主の言葉に戦慄する。

 

 あの悪魔は主ですら御することもできず、我々ですらお手上げだった相手。

 

 それがあの神の後継に惹かれ始めているのだ。

 

 もはや魔性といえる神の後継の力。単純な戦闘力だけにとどまらないのが非常に恐ろしい。

 

「・・・このままでは・・・。」

 

「ふん…確かにあいつらの力は凄まじい。だが…弱点もある。」

 

 そんな我々の元にやってくる一人の男。

 

「・・・貴様。」

 

 それは英雄派と呼ばれし者達の首領。

 

 最強の神滅具を持つ存在。

 

 そして、我が主が警戒する勢力。

 

「それに昔からいうではないか。目には目を、歯には歯を。なら・・・。」

 

「アギトには・・・アギト・・・か。」

 

 主様がその発想にしばし考え・・・。

 

「いいだろう。お前達の枷を外す。神滅具を持つアギト達よ。」

 

 まさか主様がその枷を外すとは。

 

「・・・ええ、あの者達は絆があるゆえに負けるのです。力を発揮できずに。」

 

 英雄派首領―――曹操が変身する。

 

 黒のアギトへと。

 

 その傍らには黒いゴルドフェニックスの姿もある。

 

 彼の後ろには数体のアギトの姿もある。

 

 これが英雄派の正体である。その上位陣が全て・・・。

 

 

 

 今・・・契約者であり神滅具を持つアギト達の戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

SIDE ???

 

 俺は死ぬことができず、ずっと暗闇を彷徨っていた。

 

 兄弟のように育った友も・・・家族も全て失い。

 

 だが、俺は死ねない。この体が・・・王として改造された身体がそれを許してくれない。

 

 ずっと…ずっと彷徨っていた。

 

 もう・・・生きているのか、死んでいるのかわからないままに。

 

 そして、俺はとうとう倒れてしまう。

 

「…って…大変なのじゃ!!」

 

 そんな俺に駆け寄ってくる者がいた。

 

「・・・あらあら・・・。」

 

 夢でも見ていたのだろうか。

 

 金髪に狐の耳と尻尾を持った幼女と婦人だったのだから。

 

 

 

SIDE ???

 

 俺はあの時に死んだはずだ。だが…どうして生きている。どうして・・・。

 

「・・・君を拾ったときには驚いたよ。」

 

 そこには胡散臭い笑みを浮かべる一人の少年がいた。

 

「初めまして、創世王の片割れさん。洗脳ももう解いたけど…大丈夫かな?」

 

「あっ・・・ああ・・・。」

 

「おっと・・・名乗るのを忘れていたね。ポルムという。君を拾ったのは偶然でねえ・・・。」

 

 どうやら、まだ生きているらしい。

 

 どうして生きているのかわからないままだったが…それでも生きている。

 

 なら…やることは決まっている。

 

 あいつに謝らないと・・・。許してもらえればの話だが。

 

 俺があいつにしたことを・・・全て覚えている。

 

 手が震える。やってきたことに対する罪の大きさに。

 

 震えが・・・止まってくれない。

 

 そんな俺を差し置いて、ポルムという少年は気さくに声をかけてきた。

 

 あえて・・・こっちの状態に気付いていない振りをしているのだろうか?

 

「さて・・・まだ平和とはいいがたい。現に動きがあったからねえ。いや~ほむらさんのオーフィス派には感謝だよ。ふふふ、まあ故に君にもこれから起きる戦いに協力してもらいたいが・・・。対価は君の目的の手助けかな?何となく想像はつくけど。」

 

 こっちのことは調べがついているというのか。だが…悪くない契約だ。

 

 こちらは既に悪魔と言っていい。それだけの大罪を背負っている。

 

 悪魔の契約だとしてもこっちは乗らせてもらおう。

 

「ああ。その内容次第だが・・・。」

 

「何・・・君に京都で起きると思われる聖杯大戦のマスターとして参加してもらいたいだけだよ。君なら問題ないだろ?月の王子様?」

 

 胡散臭い笑みに、俺の中の何かが警告を発する。

 

 これ、軽々しく引き受けたらダメな類じゃ・・・。

 

「…聖杯大戦だと?」

 

 どうやらまた戦いの日々らしい。

 

 その程度なら問題・・・ないか。

 

「・・・まあいいだろう。参加させてもらおう。あいつに…詫びる為に。」

 

「うん…契約成立。ふふふふふふふふふ。」

 

 だが、俺はこの判断を深く後悔することになる。これは悪魔の契約どころか、神の後継すら対等の友と認める最強最悪の大魔王との契約だったのだから。

 

 ここから始まる数々の苦難に、契約のことをもっと考えるべきだったと。

 

 

 

 

 京都にて英雄が多数集う、聖杯大戦。それがイッセー達の修学旅行と共に始まろうとしていた。

 

 

 そして、英雄達の魂に選ばれし青年、そしてかつて王として星を救いし男もまた巻き込まれることになる。

 

 

 

 

 次回予告

 

 

 

 

 太陽と月、そして星。三つの王子がカギとなるイレギュラーな聖杯戦争。

 

 そこに英雄に認められし、新たな英雄が参戦する。

 

 

 

「人の可能性は…無限大だ。だから…そんな願望器はいらない!!」

 

 

 そこで巻き起こるのは今までと違う絡め手を使ってくる敵。

 

 イッセー達は自慢の壊滅的な破壊力が封じられ、苦戦することになる。

 

 

 

 

 それを支えるのは、イッセー達赤の陣営と契約したサーヴァント。

 

「・・・今回のマスターは随分と規格外じゃねえか。だが、気に入った。」

 

 イッセーが相方とするのは・・・叛逆の騎士。

 

 そして・・・黒の陣営には・・・あいつがいた

 

「・・・黒い・・父上。」

 

「・・・ふん。」

 

 敵もまたアギト。そして、超一流のサーヴァント達が立ちはだかる。

 

 

 

 

「英雄の子孫達よ、余を倒してみよ。さすれば、お前達は本物の英雄になれるぞ?この大魔王を倒せるものならばな・・・。」

 

 遂にあの大魔王が本気を出す。

 

 

 

 次章ーーー京都聖杯大戦。

 

 

 

「大魔王を・・・余をなめるなよ?英雄共。」

 

 

 




 問う感じで次章のは京都聖杯大戦です。

 どんなサーヴァントが出てくるのか楽しみにしてください。


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第八章 修学旅行は京都聖杯大戦編。
通りすがりの大魔王が斬る!!ともうすぐ修学旅行。


 大変お待たせしました。復活というわけではありませんが、アニメの視聴も大まか終え、始めることができそうです。

 まずは過去編と新キャラのラッシュです。いよいよあのゲームからも参戦です。


 どうぞ!!


 SIDE イッセー

 

 現在、俺の家は大変姦しいことになっていた。

 

「結婚生活ってそんなことが・・・。」

 

「長続きさせるのも大変よ。こちらは歳は取らないから、愛って大切よ?長く一緒だと、マンネリ化しないか不安で。」

 

 俺の中から出てきて、クレアが関心した様子でうちの母さんと話し込んでいる。

 

「なるほど、こっちも凄く長生きだから、その辺りは気を付けないと。」

 

「新婚の私からしても凄く興味深い。」

 

「本当だにゃ・・・。長生きすると、その辺りも考えにゃいと。」

 

 霧子さんと黒歌の奴もしきりに感心している。

 

 二人とも妊娠しているという点で共通しており、その縁で仲良くなっていたりする。

 

 そんな皆に料理を振る舞っているのだが・・・。

 

 うん…凄く、凄く居心地が悪い!!だってこの場にいるメンツ…全員人妻なんだもん!!

 

「・・・私も休暇を利用してきていますが…参考になりますね。」

 

 グレイフィアさんもその場に参戦している。

 

 今回の集まりは非常にシンプル。奥様達のお茶会なのだ。

 

 茶菓子を出すいい訓練になると思い…俺は引き受けたことを大変後悔している。

 

 だって…話している内容があまりにも生々しいもの!!

 

「それで夜の方が・・・へえ・・・。」

 

 母さんが色々と夫婦間の夜の営みに関して話し出すし!!

 

 お願い!!息子がいるのにそんな話をしないで!!

 

「・・・あ・・・う・・・。私も忙しいですが、休日は・・・。でも本音を言えばもっと・・・。」

 

 グレイフィアさんも顔を赤らめながら話しているし!!

 

「…まあまあ、これを飲むといい。」

 

「ありがとうございます。ぐい・・・。」

 

 そんなグレイフィアさんにヤマタの奴がお酒を進めて・・・っておおおい!!

 

「なんでお前がここにいる!?」

 

 お茶会だろ!?なんで酒の化身がここにいる?

 

 場違いにもほどがあるぞ!!

 

「ふっ、女性でも飲みやすい酒を知りたくてな。試飲会も兼ねさせてもらっている。ちなみにこれは戦乙女という名をつけた酒だ。大和撫子や女子力崩壊もあるぞ?ワインもそろそろ出すか。」

 

 …お茶会じゃなくて、飲み会になってしまった。

 

 ヤマタの野郎・・・とんでもないことをしやがって。

 

 お前の酒は凄く美味しい。だが、美味し過ぎてどんどん飲んでしまうんだぞ?

 

 神すら酔っぱらうレベルなのに。

 

「ぐす・・・私に魅力なんてないのかしら?私に飽きちゃったの?」

 

 グレイフィアさんが早速酔っ払いに!!

 

 泣き上戸になっている。

 

「一度文句言ってやりましょ。こんなに美人な奥さんがいるのにどうしてなのかしら!!」

 

 ってカオルさんまですさまじい勢いで酒を一気にあおっていますよ!?

 

『間違いない!!』

 

 うわ…酒が入って凄く盛り上がってきやがった。

 

 仕方ない。女性用の酒のつまみもメニューを作るか。野菜もあるし…あ…チーズがねえわ。

 

 とにかく、今作れる物を作っておいて・・・。

 

 酢で締めたサバの刺身に豆腐とカイワレ大根やレタスなどの野菜にナッツをアクセントとして使い、ドレッシングは青じその豆腐サラダ。クラッカーを使ったデザートに・・・。

 

 それを母さん達の席の前に置くと・・・。

 

『おおおお!!』

 

 と、大変好評でございました。

 

「・・・まどかさん。息子さん、いつお婿に行っても問題ないですね。」

 

 家事能力が高い戦乙女のセルベリアさんからの太鼓判は嬉しい。

 

「逆に女子力高いのが問題かもしれないけど。」

 

「でも既にハーレムですよ?」

 

 ハーレムって・・・なあ・・・。

 

 いや、確かに凄くモテ始めました。ハーレムっていうのも嘘じゃない、でも・・・でも…みんなに押され気味で中々・・・。

 

 みんな出会った頃よりも凄く濃く、逞しくなってしまって。

 

 なんであんな風に・・・。

 

 んん?あんたが言う資格なしという声が聞こえてきたような・・・。

 

――――実際その通りだろうが。

 

 おい。ドライグ。お前まで何を言う。

 

――――お前の影響力を考えるがいい。俺にまで及ぶほどのな。

 

 ゴジラさ~ん!?あんたまで何を!!

 

「…本当に急激にモテちゃって。お母さん、義理の娘が一度に増えまくって大変で・・・。」

 

 母さん!!そこをリアルに言わないで!!それに義理の娘達ってとこ!?気が早すぎる気が・・・。

 

「あら?一誠は責任を取る男でしょ?私はそう見ているけど?」

 

 ああ・・・もう・・・なんで的確につてくるのかな。責任は取るつもりだよ!!

 

 皆魅力的だしその・・・うん。もうそろそろ次のステージと思っているわけですが・・・。

 

「まとめ役としてはリアスちゃんと朱乃ちゃん、ユウナちゃんとアーシアちゃんの四人ね。あの四人はスイッチ姫になりに行くだけの気概があるわ。ご意見番は…ロスヴァイセちゃんかしらねえ。貫禄が違うわ。」

 

「…やっぱりそう思います?私も・・・はあ。なんでこう、乙女がおっぱいさらすってねえ。」

 

 あの時の光景を思い出したのかキリエさんも呆れた様子を見せる。

 

「乙女だからこそ、その覚悟は本物。だからこそ、きっちりと向き合いなさい。」

 

「う・・・。」

 

 母さんの言う通りだろう・・・な。

 

「・・・はあ。敵わない。」

 

 密かに悩んでいたことに対して、こんな形で答えを出してくるなんて。

 

「お礼代わりにもっと良いモノを作らせて。その為に…ちょっとチーズを買ってくる。」

 

 そう言って俺はあの場を後にする。

 

 母さんには多分一生敵わないと思いながら。

 

―――――良い母親だな。

 

―――――母か、俺には縁のない概念だが、尊さだけは理解できる。

 

 俺の中の相棒がしみじみと言ってくれる。俺の宝の一つだよ。

 

 もしも、母さんに何かあったら・・・。

 

――――皆まで言うな。俺も参戦してやる。俺も今や夫であり、父親だからな。

 

―――――破壊しかできない存在でも役に立てると思うぞ?

 

 俺は相棒に恵まれたことに感謝した。

 

 

 

 そして、この家の中では後二つの集まりがあった。

 

 その一つは・・・兄、姉の会である。

 

「皆さま…集まってくれて大変感謝です。本当は黒歌さんも誘いたかったけど、奥様でもありますし、今回は仕方ないです。」

 

 その主催はなんと…姉ギドラこと―――モカさんである。

 

 どうも、精神体で朱乃さんの体から出ることがあるらしく、その際に出会った本物のモカさんがいるらしい。彼女は今の姿を、その名前の人から写し取ったらしい。髪の色だけは金髪にしたのだが。その人の姉力を深く尊敬しており、その姿と名を名乗ることを本人より許可してもらったそうだ。

 

 同じ姉として、意気投合したと。

 

 週一で彼女の家のパン屋に遊びに行く仲らしい。

 

 ・・・お姉ちゃんに任せなさいって…すごく姉力を感じたけど、その名前と姿を模した本人はもっとすごいのだろうか?

 

 姉力という、謎の神々しい力に戦々恐々していたりする。

 

 その姉力の所為だろうか。その本物のモカさんが作ったパンは大変美味しい。

 

――――――世界とはまだまだ未知で、神秘なことにあふれているものだな。

 

―――――ああ・・・。

 

―――――訳が分からないの間違いじゃないの?

 

――――姉か・・・。これもまた可能性なのか。

 

 そんなモカさんの呼び掛けて集まったのは・・・朱乃さん。妹でもあるけど、ハルトの姉でもあるのだ。

 

 姉の要素が強いので、ここに参戦である。

 

「ふふふふふふふ。ハルトで久しぶりに着せ替えができたわ。」

 

 姉として覚醒した朱乃さん。その犠牲者はハルトである。どのような犠牲となったかは後で語りたいと思う。

 

 それともう一人…椿姫さんも参戦している。

 

「はあ・・・いいわ。朱乃さん。結構いい趣味しているわね。こっちもやってみたけど、はまりそう。」

 

「ですよねえ~。」

 ちなみに鉱太も同じ被害をこうむっている。朱乃さんと椿姫さんが意気投合した故に。

 

「ふふふふ…姉として、私を外してもらったら困るよ~。」

 

 シスコンの代表格としてセラフォルー様は忘れてはならない。

 

「その通り。いや~グレイフィアも楽しんでいるようだしこちらもこちらで・・・。」

 

 シスコンその二・・・サーゼクス様…参戦。

 

 サーゼクス様。楽しんでいるところ悪いですが、先ほどいた場所で会話の流れが怪しくなっていましたよ?

 

 フォローした方が良いですって!!

 

 その話を聞いたサーゼクス様は…絶句。本気で焦っていた。

 

 そして、兄がもう一人・・・。

 

「…まあ、兄貴分と言われているからな。」

 

「そういうことだ。」

 

 何故か鋼兄とサイラオークさんまでも!?

 

 皆・・・濃い。濃すぎます。

 

 

 

 そして、それと対となるのが・・・妹、弟、息子、娘枠。兄姉馬鹿、親馬鹿被害者達の会である。

 

「・・・うう・・・。」

 

「何も言うな・・・後生だ。」

 

 その中心にて晒されているのは巫女服を着たハルトと・・・始まりの女の衣装を着ている鉱太。

 

「…あなた達も違う意味で苦労しているのね。」

 

 部長が目から光るものを見せながら優しく慰めている。

 

 ソーナ会長は呆れた様子。

 

「・・・はあ。まさか椿姫と朱乃さんがこんな意気投合をするとは。しかし、二人ともに似合いますねえ。」

 

『全然嬉しくねえ!!』

 

 二人とも線が細いのと顔立ちがすごく整っている為か、女装が似合いすぎて、女性にしか見えないのだ。

 

「・・・いつかモデルか、女装警護ミッションがあったら、二人を推薦すわ。」

 

『同じく!!』

 

『鬼かお前ら!!』

 

 被害者二人以外による満場一致の非情な結論に悲鳴を上げる二人。

 

 いや…普段魔王なハルトがこのようなキャラに回るのは珍しい。

 

「うう…本当に姉上にだけは弱い。」

 

「こっちも同じ。」

 

 ちなみにグリゴリでは最強にして最恐、最凶の指輪の大魔王に対する唯一の制御方法として朱乃さんの株がすごく上がっている。

 

 アザゼル先生も、すごく安心していたよな。

 

 まあ、ハルトのもう一つの弱点は母親だったりするのだが。

 

 良かった。ハルトが絶対無敵じゃなくて。

 

「・・・はあ。姉様よりも大変なのがこんなにいるなんて。」

 

 小猫ちゃんがぼやく。自身も大変妹想いの姉がいるのだが、それでもまだまともだったと思い知っているのだ。

 

 そんな思いを軽く聞き流しつつ、俺は外へと繰り出す。

 

 美味しい料理の為のチーズを買う為に!!

 

 

 

 SIDE ポルム

 

 全くみんな盛り上がってくれて。

 

 相変わらず騒がしい家。だが、平和な証拠である。

 

 その平和の尊さを噛み締めつつ、うたた寝していた。

 

 その中で、私は今…旅の一部を思い出していた。

 

 それはチェルシー達と出会った世界のことだ。

 

 

 

 

 

 チェルシーと出会ったのは戦場だった。

 

「・・・あなた、何者?」

 

 彼女達は警戒するように余を見ていた。

 

「何・・・通りすがりのただの旅人よ。」

 

「どこにあなたみたいなただの旅人がいるのよ。」

 

 余の周りには有象無象の者達が倒れ伏せていた。

 

 どうやらそのことをツッコんでいるらしい。

 

「この世界は相当荒れているようだ。ねえ…暗殺者さん?」

 

 余の言葉にチェルシーは手に忍ばせていた針を落とす。

 

「この者達は殺してはいない。ただ…眠ってもらっているだけだ。」

 

「あなたも帝具使いなの?」

 

 帝具・・・か。どうやらこの世界でも収集に値する特殊なアイテムがあるようだ。

 

 余はジズの翼を広げる。目の前にいるチェルシーが持つ帝具とやらを解析する。中々興味深い。

 

「ほう・・・変身能力か。面白いものだ。」

 

 チェルシーはさらに警戒を深める。

 

「っ!?解析された・・・か。それがその帝具の力なの?」

 

「ふっ・・・ふはははははははははっ!!まあ、そういったところか。だが、この真価はその程度のことではない。まあ…いいものを見せてもらったのだ。こちらとしても・・・そうだなあ・・・。」

 

 余は懐からある物を渡す。

 

 それブローチである。それを彼女に渡す。

 

「余はしばらくこの国で旅をする。また会うこともあるだろう。」

 

 そう言いつつ、余は翼をはためかせ、空へと消える。

 

「ちょっと!!?」

 

 この当時のチェルシーはただの人間だったに過ぎない故に、追われることはなかった。

 

 

 そこから、この世界が腐っていることを嫌というほど思い知る。それに対して反乱軍もあり、どうしたものかと余は考えていた。

 

 大魔王故に、その影響力はでかい。下手な介入は更なる混乱を呼ぶ。

 

 ただ…世界の流れ自体は解放へと向かっているようだが。

 

 そう思いながら、余はある屋敷で少年を見ていた。

 

「・・・これは・・・なるほど。」

 

 虐殺された多くの人達。

 

 それに対して、己の手で仇を撃つ彼。

 

 その気概・・・なるほど・・・。

 

「珍しいモノを見せてもらった。」

 

 と余は皆に話しかける。

 

『!?』

 

 それに皆が驚きつつ、戦闘態勢をとる。

 

「・・・そうか。噂のナイトレイドか。猛者揃いだな。」

 

 彼らのことは噂で聞いていた。実際に会う機会があればと思っていたが、こんなところでそれを果せるとは。

 

 各々の帝具を眼鏡で解析していく。

 

 ジズの翼とアクセスする形でこの眼鏡でも解析できるようにしたのだ。

 

 中々便利。

 

「ほう・・・。良い物だ。特に一撃必殺の刀と糸、そして竜の鎧が特に。獣のベルトと精神力の銃、万物を斬るハサミも中々・・・良い収集になった。」

 

『!?』

 

 余の言葉にその場にいた者達は驚いただろう。

 

 何しろ己の手札が読まれたのだから。

 

「こいつ・・・。」

 

「一体どんな帝具を・・・。」

 

「さて・・・。どこから話したものか。まず余は・・・。」

 

 そんな余に赤い目をした黒髪の少女が斬りかかる。

 

 余はとっさにかわすがその刀が余の手をかすめてしまった。

 

 そこから呪いが発動。

 

 余の心臓の一つが止められ。余はよろめき、そこに皆が一斉に攻撃を仕掛ける。

 

 首や、胴を寸断、四肢すらも切り刻まれ、吹っ飛ぶ余。

 

 バラバラ死体となって倒れた余を注意深く見るナイトレイドの皆。

 

「・・・・・・・・。」

 

 いや・・・解析はしたが、実際に受けてみるととんでもない。中々の威力だ。

 

 全身がバラバラになるとは。

 

 まあ、この程度なら平気だがな。

 

全身から回復の光を出す。

 

「・・・こいつまだ!!」

 

 仕留め切れていないとみて皆が倒れている余に向かっていくが・・・突如余の体を爆炎が包み込んだことで止まってしまった。

 

「なるほど・・・殺傷能力としては中々のものだな。」

 

 爆炎が晴れ・・・余は灰の中から立ち上がる。

 

 無傷の状態で。

 

『何!?』

 

「特に、その刀、一撃必殺だけあり、流石に効いたな。」

 

 平然と立ち上がった余を見て皆は驚く。

 

 まあ、普通ならこれを受けて生きている者などいないだろうな。

 

 他の攻撃もまさに一撃必殺だったし。

 

「おいおい。お前・・・化け物か?」

 

「どうして、村雨に斬られて平気なの?」

 

 と口々に言ってくれる。

 

「平気ではないわ。心臓が一つ止められたのだぞ?まったく・・・。他に四つ心臓があるからよかったものを。」

 

 余は呪毒を敢て、五つある心臓の一つに集め、それを止めさせることで難を逃れた。

 

 前世よりも心臓の数が色々あって増えていてよかったよ。

 

 まあ五つ全部止まっても、まだあれがあるのでたいした問題ではないが。

 

「想像以上の呪詛。生命体とっては必殺になるだろうな。心臓が五つなければ即死だったよ。まあ…もう止まった心臓は動いているがな。」

 

「心臓が五つあるって・・・。」

 

「文字通り人外か・・・。」

 

 ・・・余計なことを言ってしまったようだね。

 

「だったら・・・連続で五度斬ればいいだけだ。」

 

 心臓が五つある。その事実を素直に受け止め、どうすればいいのかすぐに判断するのは村雨を持った黒髪に赤い瞳の少女―――アカメであった。

 

 なるほど…強いな。

 

「ほう・・・。いい判断。そして、気概は嫌いではないぞ。だが・・・。」

 

 余の周りが炎に包まれる。

 

 余の背後から現れる炎の不死鳥。

 

「慢心していたのは謝ろう。だが、何度も同じ攻撃を受けるほど余が愚かだと思ったか?」

 

「ちぃ・・・。」

 

 余の言葉に皆が息をのむ。どうやら、実力の差を思い知ったらしい。

 

 それだけの熱量がこのカイザーフェニックスにはあるのだからな。

 

 カイザーフェニックスを待機させたまま、余は後ろの少年に話しかける。

 

「さて・・・君・・・名前を教えてもらえないかい?」

 

「・・・タツミだ。」

 

 仲間の仇を取った少年。その名前を聞けて満足する。

 

 どうやらあの黒髪の少女と、このタツミがこの国の運命のカギなのだろう。

 

 あの少女も余の心臓を一つ止めたのだからな。

 

「…今回は幸運だったな。」

 

 ますます面白い。なら…こちらもとっておきを披露しようじゃないか。

 

 余は魔法を発動させる。

 

 それはあらゆる世界を旅していく中で身につけた絶対治癒の魔法。

 

 それを病気に侵されたタツミの友・・・イエヤスに。

 

 瀕死だった彼の体が蘇る。

 

「なっ・・・。」

 

 余は釣り下げられたサヨの遺体に向けて十字の光を発生させる。

 

「そして・・・これが余の奥義が一つ。」

 

 ―――――――蘇生呪文〈ザオラル〉

 

 ザオリクよりもさらに上位の蘇生の呪文。これの習得には大変苦労した。

 

 成果を確認するいい機会だった。

 

 蘇生呪文をサヨと呼ばれた少女に施す。十字から出てくる命の光に、傷だらけだった全身が綺麗になり、そのまま命の胎動が聞こえてきた。

 

 成功のようだな。魂がまだ残っていたのが幸いだった。

 

 指を鳴らし、彼女が拘束されていた鎖がはじき飛ぶように切れ、それをタツミが受け止める。

 

「言っておくが、帝具で死者蘇生の力を持つ者はない。これや余が編み出した奥義。故に、この事は秘匿としてもらいたい。その条件でお主達の話を聞きたいのだがよいか?」

 

 余は目を見開いて驚いているナイトレイドのみんなにイタズラめいた笑みを向けた。

 

 

 

「…異世界からの旅人だと?」

 

 余はこのナイトレイドのボスであるナジェンダ殿と話していた。

 

「この世界の者ではない、故に実験的な事をする以外、極力介入は避けていたのだ。まあ・・・たまたま、その実験の対象がタツミ…お前の身内だけだったことよ。」

 

「それでも…感謝することしかできねえ!!」

 

 タツミから渾身の土下座を受けている余は流石に照れ臭かった。

 

 こうも真っ直ぐに感謝されるのには慣れていないのだ。

 

「余の力があれば、帝国の腐敗を一掃する事は簡単だろう。だが…それは筋が通らない。」

 

「言われなくても分かっている。」

 

 ナジェンダ殿が言う。

 

「私達で達成しないと意味がない、この国の革命は・・・。」

 

 その気概・・・見事。

 

「…良いボスに恵まれたようだな。この集団も。」

 

 正直に言うと、余はナイトレイドの皆のことが気に入っていた。

 

 それはそうだろう。

 

 殺しという業を知り、その上で戦う。

 

 その真っ直ぐで謙虚なところが特に。

 

「・・・興が乗った。なら余からお主達に贈り物をしたいと思う。こうして会ったのも何かの縁だ。実験も兼ねて受け取って貰えないか?」

 

 その提案に皆が驚く。

 

「なら、貰えるものは貰っておこう。」

 

 だが…ナジェンダ殿が頷く。

 

「…簡単に信じていいのか?」

 

「お前にはお前の信念を感じた。それに実験的なものとはいえ、皆が生き残れる可能性が高まるのならぜひ欲しい。」

 

 そうか・・・。

 

 本当に愉快だ。腐った世界だと思っていたが、前に会ったウェイブという青年といい、ボルスと呼ばれる男といい、まだ捨てたものではないらしい。

 

 ・・・この者達も死なせるのは惜しいな。

 

 心の底からそう思った。

 

 それだけの者達よ。お主達は。

 

 ゆえに・・・少しだけ手助けをする。

 

 まずは、ブラートだったか。こやつにはあるアクセサリーを渡す。

 

 これは・・・絶対的な対毒のものだ。あの鎧の弱点といえばこういった毒の類だろうし。

 

 それとラバックだったか。こやつには一度限りの転移用の紋章を刻んでやった。拷問に遭った時にでも発動させればいいだろう。ベホマを中心とした治癒の力も刻んでやる。

 

 レオーネか・・・。

 

 腰のその帝具。おそらく浸食されるタイプだろう。激しい戦いを考えれば・・・うむむむ・・・。そうだな・・・。

 

 転生の実験でもしようか。シェーレにも同じものを施したし。

 

 浸食で死ぬことも考えれば、解決策として、死ぬことを利用して一度新調する意外に方法が思い浮かばん。このリバースドールを送ろう。

 

 シェーレにも同じものを送る。

 

 その死の具合によってはうむ・・・アマダムでも二人に埋め込んでおくか。

 

 問題なかったらそのままだし。

 

 マインには・・・んん。簡単に占ってみると・・・ほう・・・ほうほうほうほう。

 

「なっ…何よ?」

 

「なんで、こちらに生暖かい目を?」

 

 いやあ…皆の危機を占いで出してみると、意外なものが出てきたよ。どうもマインとタツミの間に・・・赤い糸があるようだ。

 

 これは半年くらいするとくっつくか。

 

 それで全力を出すと考えると・・・うむ。

 

 このアクセサリーを渡そうか。精神エネルギーを蓄えておき、必要な時に引き出せるものこれを・・・。

 

 余の占いはすごく当たるらしいので。ふふふふふ。

 

「ナジェンダ殿にはこれだな。とにかく生きてほしい故に。」

 

 彼女には体に直接埋め込ませてもらった。命を削るような無茶をするがかろうじて生き残ると出たからだ。

 

 名は賢者の石。これと同じものをウェイブというものにも埋め込んでいる。

 

 緊急時の命、または生命エネルギーのスペアになるように。

 

「なんか色々としてくれるな。」

 

「はい・・・。」

 

 大盤振る舞い過ぎたか。

 

 だが・・・最高のプレゼントは二人に送りたい。

 

「アカメ殿。これを・・・。」

 

 余はサソリのような姿をしたメカを出す。それと・・・村雨を借り、ある改良を施す。

 

 その改良は村雨の構成素材そのものを変化、強化させるレベルにしてある。

 

 何しろヒヒイロノカネを使ったのでな。見た目は全く変わらないが。

 

「アカメ殿と村正の相性は大変いい。いずれ、その奥の手を使う時が来るだろう。だが、その奥の手はおそらく…極めて危険なものになる。このサソードゼクターと村雨の改良はその為の保険だ。その発動と共この二つは真の力を発揮する。文字通りの切り札としてな。」

 

 サソードゼクターが目覚める。これはただのサソードゼクターではない。ハイパーゼクターとパーフェクトゼクターとしての力も取り込ませたハイパーサソードゼクターだ。

 

 彼女になら適合・・・したようだな。

 

 目覚めたハイパーサソードゼクターがアカネを見て、即座に気に入ったのか、肩に乗り、跳ね回りながら喜んで見せたのだ。

 

「君はすごい。今の状態でもその子には様々な機能が搭載させている。その子が必要に応じて使っていくだろう。それまで楽しみにしているがいい。」

 

 単純に穴を掘る機能から、麻痺などの各種毒にそれを逆行させた解毒。鉄すら紙のように切り、その気になれば空間切断も可能なハサミ。空間切断を利用した瞬間移動などなど。

 

 こちらの最高傑作なんでね。

 

「…相当だな。こいつ単独で立派な帝具じゃないか。」

 

 そう思ってくれてかまわない。トランスフォーマーなどを参考にして生み出した機械生命体なので。しかも仲間の召喚機能付き。あらかじめ作っておいた仲間のゼクター達がいるのだ。

 

「この世界のカギはおそらくアカメ殿と・・・タツミ…君にかかっていると思っているのでね。」

 

「えっ、おれ?」

 

 タツミ自身は自覚ないだろう。だが・・・余の目が確かならお主はこの先、どんどん強くなる。それを見越し・・・。

 

「そのタツミは・・・これだ。」

 

 余はとっておきを渡す。

 

「・・・これは・・・。」

 

 それは一本の剣。その鞘に秘密がある。

 

「お主の為の剣であり、そして鎧だ。名づけるなら竜魔人剣――イルバーン。帝具として作らせてもらった鎧の魔剣だ。」

 

 帝具を作ったという言葉に皆が絶句した様子だ。

 

 この鎧はスキャンした二つの鎧型の帝具を組み合わせ、改良した上で、鎧の魔剣とある因子を加えた物。

 

 生きた金属の竜といえる存在だ。

 

「・・・カッコいい・・・。」

 

 その言葉だけで相性は抜群なのが分かる。

 

「これはタツミ、お主の為の帝具。今はまだ、その鎧を纏う事もできんだろうが、精進を重ね…鎧を纏い、その奥の手まで使いこなして見せろ。」

 

 この奥の手は・・・かなりヤバい。何しろ竜の騎士の力を再現したものだから。

 

 竜の騎士の因子。それを見つけ、この鎧で再現した、

 

 欠点としては、あまりに適合が良すぎたら、纏っていた本人が、本物の竜の騎士になってしまう可能性がある事だが・・・。

 

 まあ、そんなことはないだろう。

 

 タツミの為に作ったとはいえ、まさか竜の騎士になるなんてことは……ないだろうと信じたい。

 

 これもまた最高傑作といえる。

 

「…あんたの想いに恥じないようする。」

 

 タツミは震える手つきで余の作った帝具を受け取ってくれた。

 

「イエヤスとサヨが目覚めたら、この二つの帝具を渡してくれ。これもまた…あの二人専用だ。せっかく助けた命を無駄に散らせるわけにはいかんのでな。」

 

 そういって、鎧の魔槍と鎧の魔弓を置く。

 

「さて、余は去る事にするよ。お主達の健闘を期待している。」

 

「ああ。」

 

 余が去る事を皆は阻止しようとはしなかった。

 

 本来なら暗殺組織のアジトを知る者を許さないはずなのに。

 

 何故かを聞こうとしたら・・・。

 

「流石に魔王を止めることはできんだろう。味方で居てくれるのなら儲けものだ。」

 

と言ってくれたので、余は付け加えた。

 

「…また来る。皆…生き残れよ。」

 

 余はこうしてアジトを去って行った。

 

 

 その際にシューレと話す機会があったのでゆっくりと話していた。

 

 かなりの天然な彼女だが、それでも殺しの才能を持ち、それを生かすべく動いている。

 

 殺しの才能という時点で罪深いかもしれない。だが、それでも彼女なりの意思を持ってこの場にいるのは分かるのだ。

 

「…死ぬなよ?お主のことは面白い。生きて、この世が平和になれば・・・そうだな。余がお主を雇おう。」

 

「へっ?でも・・・。」

 

「なあに、天然な者くらい受け入れるだけの度量がなくて、何が魔王か。」

 

 余は笑い飛ばす。彼女がこの戦いを生き抜いてほしいと思いながら。

 

 その後の人生も用意して。

 

 

 だが、その願いは・・・潰えてしまった。

 

 マインを助けようと重傷の身で挑む彼女。

 

 駆けつけたが、間に合わなかったのだ。

 

「・・・・・・。」

 

 余はマインを庇う様に立つ。

 

「・・・・あなたもまた悪ですか?なら・・・。」

 

 生体帝具であるヘカトンケイル ――コロが襲い掛かってくる。

 

 その凶悪なまでの牙を余波片手で止めていた。

 

「・・・マイン、逃げるがいい。ここは余が引き受ける。」

 

「でも・・・っ!?」

 

 マインがそこまで言いかけて息を飲む。

 

 おそらく、余の中に渦巻く激情に気づいたのだろう。

 

 抑えていたつもりだが、いい感性をしている。

 

「・・・敵討ちにはならんが、少し暴れる。お前は・・・生きて仲間の元に戻れ。」

 

 余の言葉にマインが逃げる。

 

「何やっているんですかコロ!!って・・・。」

 

 その帝具の持ち主と思われる女が喚くが…やっと異変に気付いたようだな。

 

 全力で押しているのにこちらは全く動かないことに。

 

「…お前がどこの誰か、どうしてこんなことをしたのか・・・余は何も知らん。」

 

 牙を止めながら片手でそいつを持ち上げる。

 

「なっ・・・なななな・・・。」

 

「なんとなく察する部分もある。それに、この業はあいつらが背負うべきものだ。仕方ない部分がある。だが・・・。」

 

 手にしたそいつを無造作に投げ捨てる

 

 コロと呼ばれたそいつはすぐに立ち上がり、こっちに襲い掛かろうとし…動きを止める。

 

「…お主のような正義を語る外道に殺されるのはいささか腹が立つ。故に相手になってやる。」

 

 余は悠然とその場に立ち尽くす。

 

「どうした?余は魔王と呼ばれし者だ。お前が言う悪の化身みたいな者だ。正義を執行したいのなら必ず倒さないといけない存在だぞ?」

 

「ぐう・・・いけえええええええええぇぇぇぇぇ!!」

 

 コロが迫る。せっかくだからあれを使わせてもらおう。

 

 余は唯一絶対の構えをとる。

 

 コロの牙が迫り・・・余は奥義の一歩手前を発動させる。

 

 摩擦熱が起こる超音速の掌がコロの口の牙を頭ごと全て砕く。

 

 その後、暗黒闘気を纏わせた必殺の手刀がその体を真っ二つに。

 

 あえて二段だけにした。それだけで十分だし、呪文を使うまでもない。

 

・・・この奥義も余の進化もあり、色々と改良しているのだが、この世界でも披露する機会はなさそうだ。

 

 三段のさらに先を見つけたというのにな。

 

「そんな・・・。」

 

 あえてコアを残したのは気まぐれだ。

 

 帝具の破壊はあまりしたくないのもあるが。

 

 ゆえに今回の奥義は相当な手加減をしているのだ。

 

「馬鹿な…馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な!!」

 

 信じたくもない光景に絶叫する女。

 

 両腕の銃をこちらに向けて乱発する。

 

 それは余の体に当たるが、それだけだった。

 

 雨粒のように弾丸の方が細かく弾け飛んだのだ。

 

 どこから出したのか分からないが、爆弾を取り出しこちらに投げる。

 

 それが余に当たり、大爆発を起こす。

 

「・・・ハハハ・・・これで正義の執行が・・・。」

 

 だが、余が何も変わらずその場に佇んでいる事に女は目を見開く。

 

 傷一つもついていない余。

 

「・・・な・・・あ・・・。」

 

 こやつの正義の底は見えた。

 

「もう終わりか?なら余がいくぞ。」

 

 余が軽く手を振う。

 

―――――――カラミティ―ウォール!!

 

 巻き起こる衝撃波の壁。

 

「がっ、ああああああああぁぁぁぁっぁぁぁ!!!?」

 

 それが彼女を飲み込み、全身をボロボロにさせながら吹っ飛ばす。

 

 普通なら人体など、軽く消し飛ばせる。だが、それでは意味がない。

 

 ゆえにこれも技として成立できるぎりぎりの弱さまで加減してある。

 

「この程度か。お前の正義は?」

 

 ボロボロの状態でこちらを睨みつける女。

 

 だが、次に瞬間、余を見て怯え出したのだ。

 

「・・・ひっ?!」

 

 どうやら隠していた額の目と角が出てしまったらしい。

 

「化け物・・・。」

 

「言っただろう。余は魔王だと。」

 

 その言葉に歯切りする女。

 

 恐怖をはねのけようとする彼女だが、体の震えが止まることはなった。

 

「正義を語るなら余を倒してみよ。その魂、信念、絆・・・己が培った全てを賭してな。だが・・・。」

 

 余は断言して見せる。

 

「お前の正義に・・・余は殺せん。傷一つもつけられん。現にそうだっただろう?」

 

 目の前の女の正義の否定を。

 

「正義をお主が語るには浅すぎるわ。」

 

「お・・・おの・・・れ・・・。」

 

 余の威圧に何も動けない彼女を尻目に立ち去る。あやつの正義を粉々に打ち砕きながら。

 

「・・・いい女だったのにな・・・。」

 

 余はそう言い残し、シェーレに哀悼を捧げながらその場を後にした。

 

 せめて彼女が望んだ仲間の生存を叶えさせる為に。

 

 

 

 余はアジトに足を運ぶ機会があったが、そのアジトは襲撃を受けていた。

 

 Drスタイリッシュによる。

 

 パーフェクターは是非スキャンしたいと思っていたのだが、まさかこの世界でサイボーグ軍団と戦う羽目になるとは。

 

 ・・・・・・雑魚もいいところだが。

 

 巨大化したスタイリッシュと対峙するのは余だったりする。

 

「・・・さて、せっかく遊びに来たんだ。こいつを倒すくらいはやっていいだろ?」

 

 振り下ろされた巨大な腕を片手で止めながら皆に話しかける。

 

 巨体の割には力がないぞ?

 

『・・・・・・。』

 

「なによあなた!?」

 

「そういえば会うのは初めてだったな。こんばんは。余はポルム。この世界を旅している通りすがりの大魔王だ。その名…覚えておくといい。」

 

 あいつがいくら力を込めてもこっちは涼しい顔のままだ。

 

「今からお前をこの世から葬り去る男の名前をな。」

 

 余の全身からほとばしる冷気。それが周りを凍らせていく。この世界で飲んだデモンズエキス。このおかげで本当の意味で完成した余の新たな技。

 

 余の手に現れた冷気が凝縮され、現れたのは氷の龍。

 

 メドローアを成立させる程度にはヒャド系を使うことはできた。だがその最上位となるとカイザーフェニックスにはまだ及ばなかった。

 

 それを補うことができるのではないかと、この世界のある帝具に注目してみた。

 

 それがデモンズエキス。

 

 余はそれを杯に注がれた分を全て飲んだのだ。

 

 破壊衝動?そんなものあったか?

 

 その結果、余はついに一つの課題を達成できた。

 

 メラガイアーに続く、マヒャドデスの完全な意味での習得。

 

 それが余の手に乗るようにして現れた超圧縮した冷気の龍だった。

 

「刮目するがいい。この世界で完成させた余の新たな必殺技を。」

 

――――カイザードラグーン

 

 放たれた龍が大きくなっていき、巨大化したスタイリッシュに迫る。

 

「なんですかそれはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 なす術もなく、そのまま大きく口を開けた龍の顎に飲み込まれ・・・。

 

 龍が通り過ぎた後は、全てが停止した銀世界になっていた。

 

「・・・うむ。思ったよりも強力だったな。カイザーフェニックスと同等の威力となったのは嬉しいが。」

 

『・・・・・・。』

 

「それとすまないな。今の一撃でお主達のアジトを周囲の森ごと凍らせてしまったようだ。」

 

 一発で、ナイトレイドのアジトがあった地域一帯が銀世界になったのだ。

 

 それこそ、森一帯が全て凍り付くレベルで。

 

 そして、凍り付いたスタイリッシュはそのままパーフェクターを残して、粉々になって消滅。

 

 これが連射可能、それこそ無限に何発でも放てると知ったら、皆はどんな顔をするのだろうか。

 

「・・・なにがあったの?」

 

「辺り一面が、一斉に凍てついたからまさかエスデスかと思ったが、お前の仕業だったか。」

 

「・・・凄まじいな。」

 

「懐かしい顔がいるな。」

 

「ってあんたは・・・。」

 

 ナジェンダ殿とやってきたのはチェルシーだったのだ。

 

「そうか。お前もあいつと出会っていたのか。なら、説明は不要・・・。」

 

「いやいや、この天災クラスの状況は説明にならな・・・。」

 

 という感じの押し問答の間に余はスサノオ殿とも交流していた。

 

 

 

 

 と、まあ思い出していたのだ。そして、この世界の物語もこの世界で漫画になっていることに余は驚いたのは察してほしい。

 

 主人公だと思っていた二人。その見極めは間違いなかったこと。

 

 特にアカメなど・・・マンガのタイトルになっているし。

 

 だが、それを全巻読むと、あの世界と余が見てきた世界の違う点が出てきたのだ。

 

 余が関わった事以外で。

 

 一つが、あのセリューなのだが、戦った時には両腕は健在だった点。

 

 もう一つは…大臣に加え、宰相として本来いない存在がいたのだ。

 

「・・・アーデンと言ったな。」

 

 その男だけは、帝国を開放したと同時に姿を消していると二人から聞いている。

 

 その行方は知らないと。

 

 その存在がもたらした帝国サイドの強化は半端なものではなかった。

 

 余がアカメ達に手を差し伸べなかったら、全滅は避けられなかったくらいに。

 

「・・・さて、それでどうしてお前達がこの世界に来ているのか教えてもらえないか?」

 

 余の背後に忍び寄ろうとしていた二人に声をかける。

 

「アカメ、レオーネ・・・。」

 

 懐かしい顔がそこにいた。

 

「久しぶりだな…ポルム。」

 

「よっ。元気にしてたか?」

 

「それはこっちのセリフだ。だが…そうか。レオーネ。お前、一度死んだな?アマダムが発動してお前自身が・・・。」

 

「ああ。最終決戦で大臣にやられたよ。お前の保険が本当に役に立った。おかげさんで帝具を取り込んだクウガさ。まあ、生きているだけ儲けもの。それに寿命もなくなったし。」

 

「こっちもだ。人外になった。」

 

 ああ…二人とも発動してしまったのか。あまりに予想通りすぎて泣けてくる。

 

 それをひとまず置いておき。余は二人がどうしてこの世界に来ているのか問うと衝撃的な言葉がやってきた。

 

 やってくる手段?アカメのハイパーサソードゼクターがあれば可能だから驚かん。

 

「こっちに来たのはアーデンとエスデスを追ってきたからだ。」

 

「・・・・・・。」

 

 どうやら、余の予想通り、アーデンという輩はあの世界の異物だったようだ。

 

 それもこっちと同じく相当な策士。

 

 それとエスデスだ?!

 

 なんの冗談だ。

 

「・・・詳しく話せ。」

 

 別世界から火種がやってくるのは勘弁願いたい。

 

 だが、来たのなら何とかしないと。

 

 

 

 

「…上手くいきませんねえ・・・。」

 

 闇の神に話しかけてくる胡散臭そうな男。

 

「…アーデンか。」

 

「どうも。色々とやってきて帰ってきましたよ。」

 

 彼は闇の神に対して大変親しく話しかける。

 

「…お前のあの世界での実験はどうだった?神亡き世界で・・・。」

 

「はあ…ダメでしたね。何しろ取りすがりの誰かの介入で、滅亡できなかった。」

 

 アーデンはやれやれと言いたげに首を横に振る。

 

「あの世界で竜の騎士が誕生。おそらくあれが守護神となる。通りすがりの旅人が結果的に神を作り出してしまったそんな世界に長居は無用でしょ。」

 

 アーデンの言葉に神は仕方ないとため息をつく。

 

「…なら今度はこっちを手伝ってもらうぞ。お前を闇のエルとして見初めた私の為にね。」

 

「…感謝していますよ。あの力も得られましたしねえ。」

 

―――――仮面ライダークロニクル。

 

「・・・その仮面ライダーの力と最強のバグスターの力、そしてあの男の魂すら取り込んだお前の力と策略、期待している。」

 

「なら・・・ちゃっちゃと英雄派の手伝いといきましょうか。いい感じにプロデュースしてきますわ。」

 

 そう言って、アーデンは動き出す。

 

「…今度こそ復讐してくれる。王家に・・・そして、もう一つの俺が望む仮面ライダーに!!」

 

 今、エルの中でも最強最悪の存在・・・・闇のエルとなったアーデンが動き出す。

 

「蘇らせてくれたことには感謝する。」

 

「まあ、持ちつ持たれつってやつだ。」

 

 そんなアーデンの側には氷のような美女がいた。

 

「戦いの場を提供してくれるとも言ったな?それにこの世界に…ポルㇺがいることも。」

 

「ああ。お前さんを俺の眷属として蘇らせたのもその為だ。」

 

 彼女の名はエスデス。

 

 ある世界で最強と呼ばれた将軍。

 

 一度死に・・・彼女は蘇ってきたのだ。

 

 

 

 

「・・・闇のエルが帰還したか。それでこっちの作戦に参加したいと?」

 

 英雄派首領――曹操はその報告を受け、警戒をにじませていた。

 

「闇のエルというと・・・あの、策略家の?」

 

「・・・ああ。それにあいつは純粋なエルとしての力以外にも力を隠し持っている。少なくとも純粋な戦闘の技量では…私では敵わないな。」

 

 アギトでもある彼はアーデンの脅威を察していた。

 

「だからこそ、あの聖杯・・・警戒をしておいた方が良いのかもしれない。聖杯の汚染を疑うべきだろう。」

 

 曹操の後ろで胎動している聖杯に目をやるのはゲオルグである。

 

「…この聖杯もそのアーデンからの紹介か・・・。」

 

「呼び出したサーヴァントもオルタとなっている。」

 

 曹操の隣では黒い騎士が佇んでいる。

 

「・・・こちらとしては汚染されていようが関係はないのだがね。聖杯の中身を満たせれば、それだけでグレートレッドを呼び出すこともできよう。」

 

 彼らの目的は最強の存在を呼び出すこと。その為の実験として聖杯を使う。

 

「・・・だが、警戒はしておけ。他のメンバーにもサーヴァントの召喚を始めるように。」

 

「分かった。行くぞ…ランスロット。」

 

 ゲオルグの側に現れるのは黒い甲冑を纏った騎士。

 

「順調そうでなによりですな~。」

 

 その曹操の元に現れるアーデン。

 

 何時の間に現れたのか分からず、その場にいた他の英雄派のメンバーは驚きを隠せない。

 

 そんなアーデンに対し、曹操は警戒を隠さない。

 

「・・・お前が何を目論んでいるのかは分からない。だが、邪魔はしないでもらおうか。」

「おやおや怖いねえ。だが、忘れないでもらいたい。今回の聖杯大戦に私も参加しているということに・・・ねえ、アサシン?」

 

「ふん。気に食わないな。どいつもこいつも。」

 

 アーデンの背後に現れたのは全身包帯の上から紫の着物を纏った男だった。

 

「死なないという点でも厄介だが、お前に感謝だけはしておく。何しろ地獄の業火を得られたのだからな。」

 

「・・・・・・我ながら化け物に、化け物の力を与えてしまいましたねえ。こちらの世界でシスの力にイフリートの力を掛け合わせる形を狙っていましたが、こうもまあ規格外を生み出してしまうとはねえ・・・。」

 

 己のサーヴァントに呆れかえるアーデン。

 

 彼の知識の中では、人間の中には長い歴史の中で人外の力を持ったものが現れることがたまにある。

 

 アーデンが知る限り、己のサーヴァントはその中でも最上級。いや、それすらも超えた化け物だった。

 

 グランド級は確実だろう。

 

「ははははははははははははは!!この世界で国盗りも悪くない。その為には力がいる。マスター。お前もそうだろ?面白いと思ったからこそ、この通り、お前のサーヴァントになった。地獄で更なる力を身につけてな!!」

 

「・・・やれやれ。宰相としてやってきた経験がこうも生きるとは嫌だねえ。」

 

 アーデンは呆れかえりながら実体化したアサシンと共に歩く。

 

「だが、それも悪くないですねえ。そういった意味では相性はいいか。」

 

「縁の召喚というのはそういうものだ。感謝したいぜ。あとで呼び出してもらいたい奴が三人いる。それも頼む。」

 

 聖杯大戦。そこに規格外のアサシンが参戦していた。

 

「・・・ふん。お前達こそ下らん。」

 

 そんな彼らを見下ろす存在がいる。

 

 それに英雄派の皆が気付く。

 

「…アヴェンジャー。」

 

 ボロボロのローブに全身を隠した男、それがアヴェンジャーと皆が呼ぶ。

 

 その真名は誰も知らない。ステータスと共に完全に隠蔽されていたのだ。

 

 何故かマスターがいない状態で現れた謎のサーヴァントなのだ。

 

「…脱走者が現れたことを教えに来た。あの聖女と魔女の双子だ。」

 

「・・・そうか。あの二人はこの聖杯を使うことに反対していたからな。追っ手を出せ。」

 

 曹操の指示にアヴェンジャーが笑う。

 

「安心しろ。私が既に動いている。」

 

 その言葉とともにアヴェンジャーの姿が消える。

 

「・・・あのアヴェンジャーは一体なんだ?」

 

「私も分からないですねえ~。まあ、心当たりはありますが。」

 

 英雄派の誰も正体が分からないサーヴァント。アヴェンジャー。

 

 この聖杯大戦の最大のカギであることを皆は知らない。

 

 邪悪な笑みを浮かべるアーデンを除いて。

 

 

 ある森の中を二人の少女が走っていた。

 

「急ぎなさい!!」

 

「ええ!!」

 

 それは双子だった。

 

 一人は聖女と呼ばれ、もう一人は魔女と呼ばれている。

 

 彼女達は一人の英雄の魂を受け継いでいた。

 

 その英雄の名前はジャンヌ・ダルク。片方はその聖女として、もう片方は竜の魔女としての側面を受け継いだ存在だ。

 

 その二人は揃って逃げていたのだ。

 

 その理由は二人は知ってしまったのだ。聖杯を汚染している存在の強大さを。

 

 そして、それが目的としているある存在から追われているのだ。

 

「・・・あの聖杯の危険を知らせないと。あれは…起動させてはいけない。」

 

「分かっているわよ!!」

 

 その後を追うのは巨大な蜘蛛だった。全身が岩石となっており、その隙間から溶岩が流れている異形の蜘蛛だ。

 

 そして・・・。

「逃がすと思ったか?」

 

 彼女達の行く手をさらに巨大な岩石蜘蛛が阻む。

 

「…ファントム。」

 

「あなたみたいな大物がやってくるなんて、相当だわ。」

 

「我が主の悲願の為・・・死んでもらうぞ。聖女と魔女よ!!」

 

 口から吐き出される燃える岩石。

 

「せめて…この世界で生まれ変わっているはずのジークに会いたかった。」

 

 ジャンヌがそう言った時だった。

 

 どこからともなく槍が飛んできて、その燃える岩石を粉々にしたのだ。

 

「諦めるのは…まだ早いですよ。」

 

 それは金色の髪に、白いドレスを纏った二十歳ほどの女性だった。

 

「・・・この場になぜもう一人聖女が?」

 

「あなたは?」

 

 彼女は先ほど投げた三又の槍を手に名乗る。

 

「私の名前はニーナ。星の巫女と・・・名乗らせてもらいましょう。」

 

 その背に現れるのは天使の翼。

 

「・・・っ、転生天使か!?」

 

「この星に滅びをもたらせません。」

 

 ファントムと呼ばれた岩石蜘蛛は驚いた様子を見せる。

 

だが、そこに銃声と共に更なる乱入者が・・・。

 

 弾丸はジャンヌ達の後ろにいた小さな岩石の蜘蛛達をたやすく砕く。

 

「修学旅行の下見に来れば、奇妙なことになっているな。」

 

 それは甲冑を纏った女性だった。

 

「ヴァルキリーまでも!?だが、弾丸を放つヴァルキリーなど・・・。」

 

 だが、そのヴァルキリーもまた普通ではなかった。

 

 先ほど弾丸を放った銃がそのまま剣に変わったのだから。

 

「・・・さて、何故魔界の悪魔がここにいるのか教えてもらおうか?」

 

「・・・あなたは・・・。」

 

「ライトニング・・・とでも呼んでくれ。」

 

『!?』

 

 その名に双子のジャンヌは驚きに身をすくめる。

 

 それだけそのライトニングと呼ばれるヴァルキリーは有名だったのだ。

 

「味方でいいですか?」

 

「あいつが敵ならそうだな。」

 

 ニーナの問いにぶっきらぼうに答えるライトニング。

 

 二人はファントムと呼ばれし悪魔と対峙する。

 

「・・・我が主の為・・・ここで引くわけにはいかん。故に・・・。」

 

 岩の子蜘蛛たちの全身から膨大な熱量が発せられる。

 

「確実に仕留める方法をとらせてもらおう。」

 

 それは最悪の方法だった。

 

「なっ。」

 

「ちぃぃぃ!!」

 

 四人を囲んでいた岩の蜘蛛達による一斉自爆。

 

 それにより、夜の森に凄まじい轟音が轟いた。

 

 

 

 

 だが、爆発が収まった後を見たファントムは舌打ちした様子。

 

「・・・しぶとい。逃げられるとは・・・。」

 

 彼は一斉に拳大の岩蜘蛛を呼び出し、散開させる。

 

「・・・グリフォン。主様に伝言を頼む。最悪ナイトメアを出す事も検討してほしいと。予想外の介入を受けた故に。こちらは追跡を続行する。」

 

 ファントムの上空にいた獅子の下半身に大鷲の上半身を持つ悪魔が飛び去って行く。

 

 そして、ファントムもまた地面に溶け込むようにして姿を消していくのだった。

 

 

SIDE ???

 

 夢を見ていた。

 

 それはドラゴンとなって夢を見ていた自分。

 

 ずっと…ずっと誰かを待っていた。

 

 そこに一人の少女が現れる。

 

 そして、その少女がこっちに手を差し伸べて・・・。

 

 

 そこで俺は目覚める。

 

 気づけばいつもの家の軒先だ。

 

 裏京都に来てからどれだけ日が経っただろう。

 

 時を忘れるくらいにずっといた。

 

 裏京都。そこは妖怪と呼ばれる者達が住む世界。

 

「光太郎、どうしたのだ?そんなにぼんやりとして。」

 

「いや~平和だなと思って。」

 

 今、俺はこの裏京都を取り仕切る家の一人娘。九重ちゃんの家でお世話になっている。

 

「そうかそうか。しかし、光太郎もすっかり・・・とまではいかんが、元気になったのう。」

 

 戦いで心も体もボロボロだった俺。

 

 それを助けてくれたこの家、この街の人達には感謝してもしきれない。

 

 まあ、妖怪というのは初めて見たのでかなり驚いたが・・・ゴルゴムの怪人に比べたら可愛いものだ。

 

 今では色々と手伝う仲だ。

 

「今度、兄上達にも会わせたいのう。」

 

 九重ちゃんには兄と慕う人がいるらしい。何でも…すごく強く、そして恰好いいらしい。

 

 ぜひ会ってみたい.

 

どうも修学旅行で来るらしいから、皆はそれでその兄――鋼鬼さんを歓迎すべく大わらわだ。何でも、伝説のヤマタノオロチを倒し、その後契約した英雄だとか。

 

 しかも、奥さんがおり、妊娠したというおまけつき。

 

「・・・んん?」

 

 そこで、修学旅行でくる。奥さんが妊婦という点で、それが高校生ならまずいのではないのかと思ってしまったが・・・。

 

「・・・ああ、先生なんだな。」

 

 とかってに思ってしまった。

 

 今は、その鋼鬼さん一行を歓迎する準備をしつつ、その合間の一休み。

 

 ああ‥・和菓子が美味い。これ…信彦も好きな味・・・。

 

「・・・・・・。」

 

 そんな俺に抱き着いてくれる九重ちゃん。

 

 何も言わずに。

 

「・・・ありがとう。」

 

・・・しんみりしてしまったな。

 

信彦・・・救えなくてすまない。だが…俺は生きる。精一杯生きる。

 

 

 

 俺はこの半生を振り返る。

 

 赤ん坊で山にいた俺。それを拾ってくれたのが信彦の両親。

 

 何故俺が山、それも滅多に人が入らない奥地にいたのかは分からない。

 

 ただ・・・俺がいた場所に流れ星のように何かが落ちてきたらしい。

 

 それを見た両親がその落ちた場所に向かったら、何かが落ちたと思われるクレーターと、その中で眠っている俺がいたらしい。

 

 信彦と兄弟のように育った。

 

 だが・・・ゴルゴムが俺達を・・・。

 

 その所為で信彦と戦う羽目になって、俺は生き残ってしまった。

 

 心も体もボロボロで、宛てもなく山の中を彷徨い…辿り着いたのがここ裏京都だったのだ。

 

 

 

「・・・さて、休憩はそんなものでいいだろ。」

 

 だから、まずは今日一日を・・・。

 

 だが、そこで一人の妖怪が慌てて家にやってきた。

 

 俺と九重ちゃんは慌てて家を飛び出す。

 

 

 俺が見たのはボロボロで倒れている金髪の少女だった。

 

 

 

 SIDE???

 

 とんだものを拾ってしまった。

 

「うう・・・。」

 

 ボロボロで気絶しながら崖の上から落ちてきた魔女を。

 

 もちろんきちんと受け止めたが…これは一体。

 

 はあ・・・あいつがこの京都にいると分かって様子を見に来たらこれだ。

 

 どうやら何かが起きようとしているらしい。

 

 「・・・姉・・・さん・・・。」

 

 姉妹がいるのだろう。うわごとで姉を口にする腕の中の彼女。

 

 はあ…他人事には思えない。

 

 どこかに匿わないと。

 

 ポルㇺに連絡して、手配をしてもらおうか。悪魔系列のホテルがあったはずだ。

 

 そして、この京都で何が起きようとしているのか探らないと。

 

 光太郎にはもう…戦わせたくない。

 

 

 

SIDE ポルㇺ

 

 アカメ達の報告を聞き、修学旅行先である京都で行われようとしている聖杯戦争と合致する部分を見た。

 

 それに京都に行ったあいつからの連絡。

 

「…お主達を迎え入れる事にする。アカメ…お前は明日からクラスに転校してこい。レオーネは先生だ。その手はずをサーゼクス殿にお願いする。この世界の常識は今から魔法で直接頭に叩き込む。」

 

 エスデスまで来ているとなれば放置はできん。

 

「安心しろ、この家の戦力は世界を救うには過剰すぎるほどだ。心強い味方になるだろう。」

 

 二人が余の言葉に驚く。

 

「まずは、この家の中心人物に会わせないとな。部屋が阿呆ほどに余っているとはいえ家主の許可は必須。」

 

 余が部屋を出ようとした時、この家の最重要の中心人物にして、我が親友の助けを求める声が聞こえてきた。

 

「???何が起きて・・・。」

 

 扉を開けるとそこは・・・カオスだった。

 

 酔っぱらった奥様方がなんと夫達に絡んでいたのだ。

 

「私に飽きちゃったんですか!?」

 

「そんなわけないよ!!」

 

 特に酷いのがグレイフィア殿とサーゼクス殿だ。ああもう、色々とお願いしようとしたのに。

 

 後から知った事だが、事の始まりは被害者の会がついに姉、兄馬鹿の会・・・でよかったか?に挑もうとして・・・返り討ちにあっていた。

 

 

 そこにヤマタの酒でベロンベロンに酔っぱらった奥様達が乱入して・・・。

 

「…今度はウエディングドレスでも・・・。」

 

「いや、ここはあえて学園の制服を・・・。」

 

 雁字搦めに拘束され、再び女装の危機に立つ二人の弟。

 

 それを見て、理解の範囲を超えてしまったのか、気を失っているバラキエル殿。

 

 アザゼル先生と打ち合わせて訪れた瞬間にこれだ。

 

「後生だ・・・。母上、父上…見ないでくれ!!!!!!」

 

 ハルトのメンタルが特にヤバい!!

 

「このカオス…どう収集つければいいかな?」

 

「・・・はあ。何とかするしかないでしょう。」

 

 イッセーとともに余は戦場へと足を踏み入れる。

 

 少しでも早く話を進めたい故に。

 

 

 

SIDE ???

 

 もうすぐ修学旅行。楽しみすぎる。

 

「おーい。タケル。補修終わったからってニヤニヤしすぎだぜ。」

 

 仕方ないじゃないか。せっかく拾った命を再び謳歌できるから。

 

「まあ、この間まで死の淵にいたっていう意味じゃしゃあないか。」

 

「そういうノクトだって、そわそわしているじゃないか。」

 

「・・・仕方ねえだろ。それになんだ…旅行と聞くと、なんか心っていうか、魂がざわつくんだ。」

 

 クラスメイトのノクティス君。いや、色々あって、愛称のノクトと呼ばせてもらっている。

 

 彼は日系のアメリカ人で、日本に留学してきている。

 

 しかし、彼から何かただものでない感じもある。まるで…世界を救って一度死に、この世界にやってきたような・・・。

 

 まさか、そんなことなんてないよね?

 

「お~い。やりとりはそこまでにした方がいい。」

 

 そんな僕たちに話しかけてくれるのは白野。

 

 クラスで三番目に可愛い女の子で、クラスの委員長だ。

 

「・・・やれやれ。」

 

 そんな僕達に振り下ろされるノート。

 

「三人とも、楽しみなのは分かるが私語は慎んでもらおうか?」

 

「うう・・・なんで私まで・・・。」

 

 ・・・僕達のクラス担任―――僕達はライトニング先生と呼ばせてもらっている。

 

 格好いい女性。誰もがそう思うくらいの素晴らしい先生だ。

 

 少々ぶっきらぼうだけど。

 

 でも、いい太刀筋している。単なるノートなのに、僕達が脳天に落雷が落ちたような衝撃を受けたよ。

 

「痛てててて…ほんとただもんじゃねえ。」

 

 んん?でもさっき・・・。

 

「先生…右腿怪我したの?」

 

「あっ、そういえば・・・。」

 

「動き、若干おかしかったよな?」

 

 その言葉にライトニング先生の動きが止まる。

 

「・・・まあな。昨日修学旅行先の下見に行った時に蜘蛛が飛び掛かって来て、それを避けようとして。」

 

 んん・・・嘘は言っていないよね?

 

 なんとなく、そんな感じがする。

 

 でも、何か違和感が・・・。

 

「…本当にあいつらが気に掛けるわけだ。」

 

 ぶっきらぼうだけど、心配して見せるのはノクトだ。

 

「ならこっちの知り合いの医者を紹介しようか?エム兄は小児科だけど・・・。」

 

 ・・・んん?何やら気になる単語が聞こえてきたような・・・。

 

「あっ、ああ、気持ちだけで充分。ありがとう。」

 

 ライトニング先生はそのまま教壇に戻り、もうすぐ始まる修学旅行の説明を再開する。

 

 やっぱりあの先生もただものではない。

 

 上手く日常に溶け込んでいるけど・・・。

 

 ただものではないと言ったら、ノクトもそうだった。

 

「・・・あそこに行けば見つかるかな?」

 

 ノクトがつぶやく。

 

「…ずっと夢に出てきている友達?」

 

「まあな。」

 

 彼はずっと誰かを探しているらしい。彼にとって宝物といえる誰かを。

 

「何々?ノクト君の大切な人?」

 

「…たぶん、いや、絶対そうだ。」

 

 白野さんが少しからかうようにノクトに話かけるが、その反応はすごく優しいもので驚いていた。

 

「そっか・・・。後で私達にも紹介してよね?」

 

「おう。」

 

 数々の英雄と会ってきた僕の勘がそう告げている。

 

 彼――ノクトには何かがある。それも想像もつかないような

 

 そして、余談だけど同じような何かを白野さんにも感じたりして・・・。

 

 できれば、友達としてその力になってやりたいとも。

 

 まあ、まずは修学旅行を楽しまないと。

 

 僕はそんなことを思っていたわけだ。

 

 でも、その修学旅行がとんでもないことになろうとは思ってもいなかったわけで。

 

 

 

 

 SIDE イッセー

 

 俺達は悪魔としてのレーディングゲームの対戦相手を顔合わせしていた。

 それは・・・あのサイラオーグさん。

 

「・・・そうか。俺の拳が神に届くのか試す日が来たか。」

 

 獰猛な笑みを浮かべる彼は鋼兄の盟友。

 

 その実力は・・・うん。俺もびびっている。

 

 だが、それ以上に楽しみなんだよ!!

 

「さらに実力を上げたな。うん。」

 

「フハハハハハハ…流石アギト。いや、流石赤龍帝、兵藤一誠ってところか!!」

 

 鋼兄のようにアギトの本能に対抗するだけのものを身に着けているのは間違いない。

 

「・・・だが、まだゲームまでに仕上げている最中か。化け物だよ。まだ強くなるなんて。」

 

「・・・ふっ。お前との闘いは間違いなく死戦になる。この場で宣言してやる。出し惜しみは絶対にしないと。今まで隠していた全てをお前にぶつけてやる。」

 

「・・・上等。こっちも・・・出し惜しみは絶対にしない。まあ…アドベントは使えない。ゴジラは悲しいけど・・・ヤバすぎだし。」

 

 いつがゴジラも活躍させたい。あいつの破壊神としての側面もこういう形で発揮させれば問題ないけど、力が強すぎて・・・。

 

「それは仕方ないさ。だが、いずれゴジラとも拳を交えたい。」

 

 そう言いながら互いに構える。

 

 やべえ…わくわくが止まらない。

 

「そういうあんたは大物だな!!」

 

「お前に言われるなんて光栄だ!!」

 

 そういって俺達はお互いに拳を繰り出す。

 

 互いの拳がぶつかり、凄まじい衝撃が辺りに響く。

 

『ぬぐお!?』

 

 いや、俺の周りにいた人達が全部吹っ飛んだぞ!?

 

「流石だな。」

 

「うん。強烈。」

 

 あっ、鋼兄と部長は腕組みしながら平然としているわ。

 

 この二人も凄いよな。

 

「・・・上は何考えているのかしらね。本気を出したこの二人の激突・・・並のフィールドじゃあ一瞬も持たないわよ。」

 

 部長が深くため息をつく。

 

「ふふふ…その辺りは鋼鬼達の協力もあり、良いモノを作っているらしいぞ。」

 

 サイラオークさんがその不安を吹き飛ばす。

 

 でも、安心した。互いに全力出せる。まあ・・・まだまだこっちも修行が足りないが。

 

「それはお互い様だ。お互い、どれだけ己の潜在能力を引き出すのかがカギだな。」

 

 そう言って、サイラオークさんの両隣にローブを纏った二人が現れる。

 

 二人ともサイラオークさんのポーンだ。それぞれ駒価値は二つずつ。

 

 でかいローブとやや小柄なローブという違いはあるが…二人ともとんでもない何かを感じる。

 

 アギトの勘だけど、あれば…化け物だ。

 

 他にも二つずつのポーンがいる。正体は不明だが。

 

 だが、推察するに、今目の前にいる二人のポーンは両方とも神滅具クラス。

 

 というか、片方から神滅具らしき気配が感じる。

 

 それが駒価値二つとすると他の三人のポーンも・・・。

 

 上等すぎるじゃねえか。

 

「楽しいゲームになりそうだ。」

 

「ああ。」

 

 俺達はそう言って別れる。

 

 どうやらとんでもない手札を向こうも隠しているらしい。

 

 楽しみだ。

 

 互いに次の対戦に思いをはせながら。

 

 

 

 余談だが、このやり取りを聞いて、裏方では必死になって俺達の対戦場所の更なる補強をしているらしい。

 

 アザゼル先生を先頭に皆が悲鳴を上げていると。

 

 互いにさらに修行し、隠れた能力を引き出した上で本気を出すと言っただけでその騒ぎ。どうしてだ?

 

 ただ本気で戦うだけだぞ?

 

 

 

 さて、俺の修行に新たな課題がある。

 

 それは新たな竜神―――ドラゴングリードの力を一切引き出せていないことだ。

 

 あいつとはたまに対話している。おっぱいの素晴らしさを知る同士だからな。

 

「慌てなくても必要となったら解放される。既に箱は開けたでしょ?」

 

 ドラゴングリードはそう笑って話してくれる。

 

 箱。それはイメージだが、何かしらの可能性が詰まった物。

 

 俺は対話の中でそれを開けた。そして…何かが解放されたのは感じていたのだ。

 

「楽しみにしておいて。その為の調整はもう済んでいるから。後は切っ掛けだけ。その切っ掛けはもうすぐやってくる。そしたら驚くがいいよ。第一段階の時点でも凄いから。」

 

 なにやらもったいぶってくれるが・・・。

 

「分かった。それを使いこなせる為に今は基礎と力のコントロールに努める。」

 

 楽しみにしておく。俺の中の新たな力に。

 

 

「ほぐ・・・ぐうう・・・ううう・・・。」

 

 という話をアザゼル先生にしたら、卒倒しないように必死に自分の意識を繋ぎ留め、堪えていた。なんか自分の手の甲を必死になって抓り上げているぞ?

 

 おおっと、何とか意識を保つ事ができ・・・。

 

「・・・・・・・・・マジでそんな冗談はゴジラだけにしやがれ!!ポルム、お前の知恵も貸してくれ!!これはマジでヤバい!!まだまだ飛躍的に強くなるぞ。まったく…なんでこいつらを戦わせんだ!!色々とシャレになんないぞ!!」

 

「そのようだね。まったく、本当に化け物だよ。まだ進化の余地があるなんて。見ている分は楽しいけど、場所の確保が・・・。だが、こういう時の為に良いヤツがある。前に収集して良かった。」

 

「何?!早く聞かせてくれ。」

 

 ・・・何故だ?

 

 

 

まあ、そんなことがあり、俺達は実戦と共に修行にも励んでいる。

 

 みんなは俺にどんな力が発動するのか戦々恐々としている様子だったが。

 

 そうそう、ヴァ―リもまた新たな可能性を見つけたんだ。それは…ヴァ―リの中にファントムがいたのだ。絶望し、それを乗り越えたわけではない・・・いや、ヴァ―リの過去を考えれば一度絶望し、それを乗り越えたパターンがあっても不思議ではない。

 

 現にハドラーさんが助けた時、ヴァ―リの体に亀裂が入っていたという証言が・・・。

 

 なら…魔法使いとしての素質も納得である。

 

 

 その中休み的な意味で俺たちを待っている最大のイベントが・・・修学旅行だ。

 

「・・・九重ちゃんに会えるのが楽しみだな。」

 

「そうにゃ。」

 

 鋼兄夫妻にとっては馴染み深い土地。なんでも京都の妖怪全員が歓迎してくれるらしい。

 

 鋼兄のヤマタノオロチを倒し、契約をした一件はそれだけの偉業なのだ。

 

「しかし、居候がいると聞くが・・・どんなやつだろうな?俺達と絶対に仲良くなれると。」

 

『・・・・・・。』

 

 九重ちゃんの処に居候がいると。それを是非、皆に紹介したい旨も書かれている。

 

 その居候の文字を見て・・・何故か俺に視線が集中。

 

 次に部長に集中。何かしらの判断を仰いでいるみたいだ。

 

「・・・みんな。その居候がイッセーの幼馴染なら、その彼は人外で、その上で何か大きな事件が起こるか既に起きているのは確定だと思いなさい。」

 

 ちょっとまて!!何気に人外だけじゃなく、大きな事件が起こることまで追加されとる!!

 

「・・・・・・今のうちに覚悟しておくか。」

 

「そうね。」

 

 鋼兄!!何深刻そうな顔してんのさ!!

 

「ふっ。流石部長。真理を見事に言い当てる。」

 

 そして、ポルㇺ。なんでお前は悟ったような顔をしとる。その居候が百パーセント俺の幼馴染だと確信している根拠はなんだ!?

 

「・・・今までの傾向で間違っているところ・・・あったかしら?」

 

 ジト目な部長の一言に俺以外の皆が一斉に頷きやがる。

 

 でも間違っていない。俺の幼馴染どもは出会った皆が普通ではないし、再会も何かしらの事件の最中だったり、それが切っ掛けで事件が起こる場合もあったし。

 

「京都・・・何も起きないといいけどねえ。」

 

 ああもう、こういう時力あるドラゴンでアギトであることが厄介だぜ!!

 

 

 

 

SIDE 光太郎

 

「んん・・・。」

 

 どうやら目覚めてくれたらしい。

 

「ここは・・・んん?」

 

 彼女がそう言いながらこっちを見る。

 

「よう・・・かい。そうか。私は裏京都に・・・。」

 

「その主たる九尾の狐の館だ。」

 

 ホッとした。怪我も癒えているし・・・記憶も大丈夫なようだ。

 

「・・・・・・・。」

 

 彼女はじっと俺を見る。

 

「・・・どうしたの?」

 

 じっと見て…突然涙をにじませた。

 

「・・・って!?本当にどうした!?」

 

「・・・やっと…見つけた。」

 

 そういってこっちに抱き着いてきたのだ。うおおお…むっ…胸が当たる。

 

「ずっと…ずっと探していました。まさか人間に生まれ変わっていたなんて。」

 

 そう言ってその少女は何かに気づいたように目を見開く。

 

「・・・いえ。どうやら、現世も過酷な運命だったのですね。」

 

 何を言っているのか分からない。

 

 だが・・・。

 

「記憶はないでしょうね。なら、自己紹介だけでも、私の名前はジャンヌ。これでもあのジャンヌ・ダルクの生まれ変わり・・・。」

 

 …何がどうなって。

 

んん?

 

「…大人の情事ってやつじゃのう。」

 

「これ。あまり人の逢瀬を覗き見するでない。」

 

 って、何親子揃って覗いているのかな?!

 

「クスクス。んん・・・そうか。なら警告しておくべきですね。私、今裏世界で悪名高い禍の団にいました。いましたのは・・・逃げてきたからですが。」

 

「・・・ほう。それで警告とは?」

 

「京都の妖怪大将――九尾の八坂様。あなたは英雄派より狙われています。聖杯大戦の為の生贄として。」

 

 ・・・まさか、あのテロ組織にいたのか?

 

 でも・・・。

 

「…なんか信じられない。あんたがそんな悪人には見えない。」

 

 むしろ聖女だ。

 

「まあ、目的があってそこにいましたから。でも…目的も達成できました。せめてほむら様に連絡が取れればいいのですけど。オーフィス様の力も借りたい。」

 

 オーフィス?

 

「はい。私、英雄派でもあり、そしてオーフィス派です。可愛いは正義!!」

 

『・・・・・・。』

 

 そうか・・・。だから九重ちゃんをいつの間にか抱きしめて愛でていたのか。

 

 あまりに自然で、手慣れた動き。

 

 その為、俺達はその過程を認識することができなかった。

 

 九重ちゃんがいつの間にか抱きしめられ、愛でられているという結果だけが目の前にあった。

 

 戦慄すら覚えるほど愛で慣れている。

 

「…斬新な信念だ。」

 

「それが私達ですから。まあ、もうすぐ私も禍の団をオーフィス派の筆頭と共に抜けるつもりだったのですが・・・。」

 

 まあ、九重ちゃんが心地良さそうにしているのだ。悪い人じゃない。

 この子はそういうことに敏感だから。

 

「それでだ。一体何が・・・。」

 

「…聖杯戦争って知っていますか?」

 

 その言葉に、八坂さんの表情が変わる。

 

「…まさか、この京都でそれが起ころうと?」

 

「はい。しかも、聖杯大戦という形で。既に向こうの陣営は召喚されています。ですけど、誰かが介入した関係で陣営が・・・。」

 

 ジャンヌがそこまで話したところでお腹の鳴る音が・・・。

 

『・・・・・・。』

 

 シリアスな空気が台無しである。真っ赤になる彼女に対して八坂さんが苦笑し、

 

「まずは食事としようか、」

 

「・・・すみません。」

 

 顔を真っ赤にさせた彼女に出される和の食事。

 

 食事の質が最近になって大幅に向上したらしい。その原因は・・・九重ちゃんの兄の友である人の家族からのレシピ、およびネット越しの料理指導や交流があったからだ。

 

 こっちも最初に口にした時、涙がこぼれてしまったくらいだ。

 

 あまりに美味しく、そして優しい味。あの時、これ以上になくボロボロだった体と心にとても沁みたのだ。

 

 そして癒された。立ち上がる勇気を貰えた。

 

 一体誰のレシピなのだろうか?お礼を言いたい。

 

 それと同じものを口にしているのだ。

 

「いただきます・・・うわ・・・美味しいです!!」

 

 この反応は当然といえる。

 

 それを見て、皆がほっこりしたのだが、それも長くは続かない。

 

 何時の間にか空になった茶碗をまさに聖女らしい笑みで差し出してきたのだ。

 

「・・・おかわり。」

 

 聖女とは思えない暴食っぷりに皆…目を点にさせたという。

 

 コメが一升無くなってしまったことだけここに印しておく。

 

 

 

――――――ここにいたか・・・。

 

 その裏京都に魔界の悪魔の脅威と・・・。

 

――――脱走者発見。すぐに捕縛・・・。

 

 英雄達の子孫による脅威が迫っていた。

 




 ここに最終幻想からも参加者がいます。

 かなりカオスなのは確定ですがよろしくお願いします。

 んん?出てきたサーバントの名前?

 京都ですし、アサシンとして呼ばせてもらいました。本来ならアヴェンジャーでしたがねえ。


 アヴァンジャーの正体が今回の聖杯大戦のカギです。



 次話からいよいよ…京都です。!!!


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修学旅行は召喚とともに始まります。

 大変お待たせして申し訳ございません。

 今年初投稿・・・

 京都にて本格的な事件の始まりです。


 イッセーの苦労をいたわってください。


 

 

SIDE ???

 

 私は全てを救えなかった。

 

 別に殺されたことを恨んでいたわけではない。

 

 相手も人だ。

 

 だが、誰も救えなかったことが悔しかった。

 

 そこから英霊として召喚され、その雪辱を晴らす機会が来た。

 

 だが、大聖杯は奪われてしまったのだ。

 

 聖杯に振れたことで受肉した私はずっと待った。

 

 再び聖杯戦争が行われるのを。

 

 そして六十年…聖杯大戦が始まり・・・。

 

 

 そこで目を覚ました。

 

「・・・はあ」

 

 最近、夢という形で振り返ることが多い。

 

 記憶と力を取り戻したことで、その確認をしているのだろう。

 

 そして、夢を見る度に思う。

 

「・・・どうしてこうなった?」

 

 その一言に尽きる。

 

 現世で兄弟のように育った友。だが、二人とも攫われ、次期創生王として改造。

 

 そのままこちらは洗脳され、その友と戦うことに。

 

 それで友―――光太郎に敗れ、一度死んだのはいい。

 

 だが、その後復活した時に、洗脳が解けると同時に蘇ってしまったのだ。

 

 前世の記憶、そして力を。

 

 それと同時に知ってしまった。

 

 現世の死闘の際に見せた竜の如き力と、ほとばしる雷。あれは・・・前世の黒のセイバーとバーサーカーの力。

 

 それを持っているだけで確定だ。

 

 光太郎が、誰の生まれ変わりなのかを。

 

「・・・因果なものだ。」

 

 人類救済。その為に戦い敗れ、その後何が起こったのか分からない。

 

 前世でも現世でも死闘を演じた仲とは・・・。

 

 神よ…これも試練なのでしょうか?

 

「んん・・・」

 

 ホテルのベットの上で一人の少女が目を覚まそうとしていた。

 

 その顔を見た時にびっくりしたものだ。

 

 その顔は前世で戦ったルーラー・・・ジャンヌ・ダルクにそっくりだったからだ。

 

 その少女が今、目を・・・。

 

 

SIDE ???

 

 姉と呼ぶことになってしまったジャンヌとの因果は中々に深い。私は紛いものとして生み出され、そのまま消滅する運命だったのに・・・気づけばこの世界であいつと共に双子として生を受けていた。

 

 あいつの方にもあの戦いの記憶はあるらしい。記憶を取り戻した五歳の時に、あいつはすぐに誰かを必死に探し、そして見つからないことに大泣きしていたのだ。

 

 あの聖女様がだ。

 

 思わずその事情を聴いた時・・・後悔してしまった。

 

 あいつが誰かに恋をしていたことに。

 

 長い年月を経てようやく再会し、告白し、それを受け入れてもらい、星を巡る旅に出ていた時にある存在が襲撃。

 その告白した相手がとっさに彼女を庇い、大聖杯の力で転生させたことも。

 

 その際に私も巻き込まれたのだと。

 

 なんて言えばいいのか。驚いているし、呆れてもいる。

 

・・・・・・だからこそ、後悔しているのだ。

 

知ってしまったのだ。そのうえで何もしないのも後味悪すぎ。

 

 こんな弱々しい姿を見て、拒絶なんてできるような私じゃないのが悔しいわ。

 

この世界に転生した縁もあり、私達は双子の姉妹としてこの世界で暮らすことにした。

 

 作られた私が本物の人生を歩めるというもの悪くないし。

 

 姉妹仲はまあ…そこそこじゃない?

 

 なんか私のことを周りは仲良し双子のツンデレの方というけど…私はツンデレじゃない!!そこは否定させてもらうわ。

 

 まあ、そんな感じで一緒に過ごし、裏で魔女、聖女としての力を使い、情報を集めたわ。

 

 あの組織に入ったのもその為だ。

 だが、その組織で聖杯戦争が行われると知り、聖杯を見た時のジャンヌの驚きは凄まじかった。

 

 後で聞くと・・・その大聖杯こそが・・・。

 

 その中にジャンヌ達を襲撃した存在がいると聞いた時ぞっとしたわ。

 

 すぐに何とかしないといけないってね。

 

 でも、脱走した後に襲撃を受けて・・・。

 

 

 

 

「・・・・・・ああ、なんて因果だ。こっちもそれに巻き込まれて・・・」

 

 その話を助けてくれた奴〈信彦だっけ?〉にしたのだけど、頭を抱えて嘆いていたわ。何やら凄く疲れた様子だったけど。

 

「どうやら、そっちの因果だったみたいだね」

 

 その時、唐突にその部屋にいない誰かの声が聞こえてきた。

 

「・・・盗み聴きとは感心しないな。大魔王」

 

「おやおや。大魔王と呼ばれるなんて・・・最高の誉め言葉と受け取っておくよ」

 

 大魔王?誰ですかそいつ?

 

「ポルムという。いや~重要な情報ありがとう。おかげでこっちも手を打てる。玉藻。準備はどうだ?うん・・・龍脈もそうか。ならこの場で召喚してもらった方が面白いな」

 

 ポルㇺという奴は信彦に向けて手をかざす。

 

 するとその右手に・・・。

 

「・・・令呪」

 

「当初の契約通り、参加してもらうよ。その代りゴルゴムの後始末に関してはもう終わりつつあるから安心したまえ。いい怪人達はこちらで保護させてもらっている。あのクジラくんもね」

 

「重ね重ね・・・すまない。あいつは光太郎の命の恩人。一度、この手で殺してしまったあいつを助けてくれた奴なんだ。助けられて良かった。感謝する!!」

 

 頭を下げる信彦。

 

「さあ…悪魔の契約の対価を存分に払ってもらうよ?安心して、死なせることはしないから。フフフ・・・大魔王の契約なんだ。存分に働いてもらうよ?」

 

 なんだかかあくどい笑みをしているわね?

 

 あんた、こいつと契約して本当に良かったの?

 

 ・・・そう、既に死ぬ程後悔していると。

 

 別に口に出していないわよ?

 

 あいつの表情に書いているだけだから。

 

「・・・なんで大魔王と手を組むことになったのか」

 

「それも因果だと思うがいい。それと念の為に聞きたいけど、聖杯に叶えたい願いはあるの?かつて人類を救済しようとした聖人さんは?」

 

 その質問にあいつは固まる。人類を救済しようとした?聖人?なんのこと?

 

「君の前世を含めて調べておくのは当然じゃないか。情報はいつだって大切な武器。聖杯戦争でもそれは変わらない」

 

「・・・君だけは絶対に敵に回したくない」

 

 それに驚いた信彦だったけど、すぐに気を取り直す。

 

「・・・今はない。今でも救いたいと願っている。そう願い、前世で行動したことも後悔もない。だが、この世界ではそれは敵うまい。君達のような存在がいるのだから。それにあの聖杯はこちらの因果。それを晴らしたいというのが本音だ」

 

 信彦は言う。

 

「・・・また考え直し、そしてやり直しだよ。あの時も敗れた。阻止されたことも後で知ったし。その理由も考えたい。その機会が巡ってきただけでも儲けもの。まあ、これも神の試練だと思うことに」

 

「ふふふふふ・・・面白い。なら始めようか。そっちの竜の魔女も見るがいい」

 

 あいつ、私のことまで・・・

 

「・・・人理救済にそろそろ手を貸した方がいいかな?向こうの友の力にもなりたいし」

 

 いや、あんたが何者か知らないけど…なんかやめてくださいと言いたくなるわ。

 

 なんというかこう・・・規格外というか、底知れない何かを感じるから。

 

「それは後で考えることにしよう、こっちのメンツを召喚事故という形で派遣しても面白そうだし。派遣する人も訳の分からない状態の方がリアリティもあって面白いよね?うん、うちの相方辺りを送り込んだら大暴れしてくれるかな?あいつにも三人目を持ってもらうのも検討したいし・・・。ビースト、または大地母神クラスくらいひっかけてくれても」

 

 今、私は信彦がこいつのことを魔王と言った理由がよく分かった。

 

 発想がまさに悪魔。いや、魔王のそれだ。

 

 誰が召喚事故として送り込まれるのやら。その相方に関しては非常に悪い予感がする。

 

大魔王が相方を呼ぶ存在…怖くて聞けない。

 規格外間違いなしだし。

 

「いいから始めよう。それは後でも問題ないはずだ。それに縁ならあいつを呼べるはずだ」

 

「おっと、思考がそれたか。そうだね」

 

 そう言って信彦は召喚陣の前に。呪文を唱え、召喚されたサーヴァントは・・・。

 

「サーヴァントライダー・・・インダスカル。問おう、お前が余のマスターか?」

 

 現れたのは筋肉マッチョな暑苦しいおっさんだった。

 

『・・・・・・』

 

 表情を引きつらせる信彦。

 ポルムも予想外だったのか目を点にしている。

 

 うん、見るからに濃いわ。

 

「うわ・・・縁だけで、凄いのを引き当てたねえ。」

 

 えっ?こいつって凄いの?凄いの引き当てちゃったの?

 

「まいったな。あいつと再会できると思ったのに。一体どうして?」

 

 だが、信彦の奴だけは残念そうな顔をしていたのが・・・。

 

 

 

 

SIDE ???

 

・・・あれ?ここはどこなの?

 

 次はどこに行こうかなと思った矢先に変なところに出てしまった。

 

んん?あれ…マスターの気配?

 

 随分と久しぶりだけど、いきなり繋がりが強くなった。

 

 近くにいる?

 

 そうなると居てもたってもいられなかった。

 

 行くぞピポグリフ!!

 

 目指すは…マスターの気配がするところ!!

 

 

 

SIDE 一誠

 

 さあ、やってきた京都!!街の守りは先輩、後輩達に任せている。

 

 最近多くなってきた神器所有者による襲撃ですが・・・うん、片っ端から保護している。

 

 捨て駒にされている、または禁手化狙いなのは明らかだったからだ。

 

 まあ、並の禁手化では問題なし。皆、瞬殺できる。それだけの余裕があるから簡単に保護できるというものだ。

 

 ただ、気になる報告もある。

 

 それは・・・アギトの因子だ。

 

 最初は気の性だと思っていた。だが、たまに俺達と同じアギトの因子を持つ者が出てくるようになったのだ。

 

 強烈な超能力という形で。

 

 それに神器が加わると結構厄介。

 

 この前には二人ほどアギトに覚醒した者もいた。早急に無力化し、保護しましたが。

 

 うちのメンツ・・・対アギトにも熟している。

 

―――――敵の中にアギトがいたことを気にしているのか?

 

 ああ。その通りだ。神器を持つアギトは俺達だけじゃない。それは分かっていたはずだけど、実際に敵として出てくると・・・。

 

「・・・腕が鳴るな」

 

 その懸念に対してゼノヴィアが獰猛な笑みを浮かべる。

 

「そうだね。ずっとそのことを想定して修行していたから。不謹慎だけど、この間の奴じゃ、ウォーミングアップにもならない」

 

 木場まで!?

 

「ふふふふふ・・・最大の味方が何かしらの都合で敵に回る、そんなことを想定して損は今までなかったわ!!」

 

 イリナの言葉に修学旅行に来ていた俺の仲間達は一斉に頷きやがる。

 

――――・・・あの時、こちらがてこずった理由が良く分かった。

 

 こっちは暴走した時のことを覚えていないが、ゴジラは俺の仲間達に相当苦戦させられたらしい。圧倒的な力を持っていたのにも関わらず。

 

 ゴジラのコメントがあいつらの備えが間違っていなかったことの証明になる。

 

――――この世界なら、あいつも死なずに済んだのかな?

 

 そんなことをホロリと漏らす。

 

――――・・・また飲もう。付き合うぞ。同族を失った悲しみは癒えるものではない。

 

――――悪いな。

 

 そんな感じでドライグとゴジラの仲はかなり良好なのです。

 

――――酒に酔う・・・うん、悪くない。この世界は本当に悪くない。

 

 怒りの化身たるゴジラさん。その裏には多くの悲しみを抱えている。

 

「…しんみりしたところで悪いがよう、ホテルに入った後に、さっそく向かうんだろ?」

 

 相棒達のやり取りからくるしんみりとした流れを変えてくれる弦太郎。

 

「うん。鋼兄もそれでいい?」

 

「早く会いたいからな。その居候を確認して安心したいのだ」

 

おいおい、だから居候が俺の幼馴染と決まったわけじゃ・・・。

 

「・・・ホロリ」

 

 ポルム。何で見ていられないと言わんばかりに顔を背けていやがる。

 

 すげえ嫌な予感がする。

 

「…さあ、ポルㇺ。そろそろ吐いてもらおうか?」

 

 そろそろ聞いてもいいだろう。

 

 こいつが裏で色々と動いているのは知っている。この修学旅行においてもそうだ。

 

 何かを調べ、対策を取っている様子だ。

 

「…この京都に何がある?そして、何が起ころうとしている?」

 

「ふう。流石イッセー。我が最高の同志だ」

 

 あえて放置していたのは、こいつのことを信じていたからだ。

 

 どのような策略を練っても、俺達の為に動いている。

 

 それが分かるのだ。

 

 だが、そろそろ聞いておいた方がいい気がした。

 

 なんかシャレにならないことに巻き込まれつつある。

 

「逆に質問だけど、どうして今になって聞いてきたの?予測が正しいのなら・・・」

 

 ポルㇺは本当に鋭い。

 

「察しの通り、本能が警告を発し始めた」

 

 アギトの本能が発する警告。未来予知に近いものがある。

 

「そして、俺達のスマホに変なアプリがあったんだけど?」

 

 ちなみに俺のスマホは…それ単独がトランスフォーマーだったりする。

 

 世界最高の性能を誇ると断言できるぜ!!

 

 何しろスマホそのものが生きているからな!!

 

 そこに問答無用で変なアプリが追加されたのだ。

 

「う~ん。やっぱりか、説明をするにいいタイミングと言ったらそうか。まあ、簡単に言えば・・・」

 

 その時、京都駅で爆発が・・・。

 

「・・・事件に巻き込まれることはどうあがいても確定事項だった、ってなわけなの。その対策を練っていた。でも、説明に時間が足りない。はあ・・・何故か予想外に巻き込まれるタイミングが早すぎて」

 

『・・・・・・・』

 

 他の連中の視線が俺に突き刺さる。

 

 天然のトラブル引き寄せ体質になりつつある俺に。

 

・・・ああそうかい!!

 

 ヴァ―リが肩をすくめながらディバイディングウィングを展開。

 

「やっぱり、俺達の修学旅行は普通じゃないな。これはこれで退屈しないよ」

 

 そんな悲しいことを言うなや。

 

「常に覚悟は必要」

 

「準備も常に万全。認識阻害も問題なしと」

 

「仕方ないよね」

 

「イッセーの為にタイマンはってやるぜ!!」

 

 他の皆もすっかり慣れてしまって・・・。

 

「・・・同志。泣いているのかい?」

 

 いいや、空が青くて、それが染みるだけ。

 

 どんな事件が起こっても動じず、一緒にいるから仕方ないと言ってくれる皆に申し訳ないやら、嬉しいやら、頼もしいやら、悲しいやらでもう・・・。

 

ああ、雨が降ってきたのかな。目元に水滴が・・・。

 

 空が青いのに雨って…狐の嫁入りだあ~。

 

 はは・・・その水滴が海水みたいにしょっぱいや。

 

「…強く生きろ」

 

「お前に怒るのだけは止めてやる」

 

 ふっ、ネロ、鋼兄・・・その優しさが更にしみるぜ。

 

 心にな!!

 

―――――それこそ今更だろうが。

 

――――――まったくだ。

 

――――――昔からの因果じゃないの

 

―――――犬も歩けば棒に当たる的な・・・

 

 うん。分かっているさ。はあ、まだまだ平和は遠いな・・・。

 

「後で詳しい説明・・・ってうお!?」

 

 そこまで言って、おぞましい化け物が次々と現れる。

 

「なんじゃありゃ・・・」

 

 感覚からして、ろくでもない類なのは分かった。あれは邪悪な何かだと。

 

「・・・海魔の類だね。ちぃ、向こうはヤバい奴を呼んでいやがったか。多分、キャスター。それを使役するとなると・・・」

 

 ポルㇺが忌々しそうに告げる。

 

「…それに混じってあれがあるか。ほう・・・。」

 

 だが、気持ち悪いモンスターに混じって別の何かがいることに気づき、あいつは笑った。

 

「ようやく目的の物が見つかったよ」

 

 あいつの背に出現するジスの翼。

 

「だが、まずは倒さないと」

 

「ああっ!?」

 

 そこで謎の連中が現れる。

 

 それに襲い掛かってきたのは黒い全身鎧を纏った騎士。その剣を俺はとっさに籠手で止める。

 

「・・・なんだこいつは?!」

 

 何か分からない。だが・・・強い!!

 

 アギトの本能に対抗できる何かがある。

 

「…分かっていたけど、やっぱり皆はサーヴァントとまともに戦える領域だったか」

 

 俺はドラグセイバーを召喚。それも二本。それで対抗する。

 

 だが純粋な剣技だけなら・・・あいつが上か!!押され始める。

 

 あの剣がすごくヤバいのは感じている。まともに切られた瞬間に俺の全身が消し飛び死んでいる光景を幻視してしまうほどに。

 

 変身したいけど、その暇が・・・・ぐうう、おっ、押される!!

 

「って・・・イッセーがヤバい!!」

 

 ポルムがそう悲鳴を上げた瞬間であった。

 

 気を利かせたのだろう。トランスフォームした俺のスマホがアプリを起動させたのだ。

 

「・・・って、まさかこの土壇場で召喚!?」

 

 それと共に俺の側に赤い魔方陣展開され・・・。

 

 そこから現れたのは全身鎧の・・・。

 

「俺は赤のセイバー・・・戦闘中かよ!?」

 

 騎士だった。

 

「・・・しかもこの太刀筋・・・まさかテメエは・・・。」

 

 女性の声だったが、その際どうでもいい。

 

「よし!!」

 

 その騎士が攻撃を止めてくれたおかげでほんの少しだけ、変身の為の時間が稼げた。

 

「変身!!」

 

 進化を重ねた紅のアギトの姿へ。

 

「・・・って、その姿・・・」

 

 黒い騎士に向かって殴りかかろうとして・・・あいつは後ろに飛び退く。

 

「ありがとう。おかげで助かった」

 

「まさか、今度のマスターが‥・アギトだと?」

 

「マスターとか・・・なんだ?使い魔みたいなもんか?」

 

「召喚そのものがイレギュラーなのか?なんでサーヴァントのことを知らない?」

 

――――…まさか、お前は・・・

 

 だが、ドライグの奴が酷く驚いている。

 

「・・・まさか、ドライグ、二天龍の片割れ!?どうなってんだ!?」

 

 どうやらお互いに色々と知らないことが多すぎる。

 

「…ポルム」

 

「分かっている。後で説明するから。そろそろ他の皆のも起動させようか」

 

「・・・なんだこいつは?」

 

「・・・怯えることはない」

 

「・・・わお、そっちもまたとんでもない奴を呼んだねえ」

 

 ヴァ―リの側にいるのは髑髏の鎧に大剣の男だった。

 

 なんかこう・・・背筋が寒くなる。死の化身がそこにいるようで・・・。

 

 それを見たポルㇺが目を点にさせている。

 

「なんで初代様を・・・」

 

 その単語が何を意味しているのか分からない。だが、ヴァ―リは色々と気に入ったようだ。

 

「じいになってくれ」

 

 なんかあいつにじいになってくれと言い始めたし!!

 

「・・・ほう。豪な者達が揃う戦場よな」

 

 って、なんかもう一人?

 

 うわ・・・すげえ美人。タイツの上からでも素晴らしいおっぱいが分かるぜ。

 

 それで、なんで二槍流?

 

 しかも、この人もなんか凄くゾッとするものを持っているような。

 

「・・・・・・この人達の運命力・・・舐めてた。今度は影の国の女王ですかい」

 

「どうやら、私を殺せそうな者達ばかりよな。そして久しいの、ポルム」

 

 どうやらポルムの知り合いらしい。

 

「は~い。なんで貴方が召喚されてしまったのか、原因は分かっている。これは異常事態。この聖杯大戦後に向こうに救援でも送るよ。・・・友もいることだし」

 

 ポルㇺが深くため息を付きつつ皆を見る。

 

「・・・なんだこいつ?魔界の悪魔の気配もするが」

 

 ネロと鋼兄の側に現れたのは牡牛の角がついた鎧で全身を覆い隠した男。手には大剣。

 

「・・・ネロの縁で何故アヴェンジャー?其れも正体がこっちも分からないし」

 

「・・・嘘だろ」

 

「???」

 

 ゼノヴィアを見て頭を抱えるのは金髪の男性。ゼノヴィアがデュランダルで戦おうとした時に呼ばれた存在らしい。

 

 手には同じデュランダル。

 

 表情を引きつらせながら良太郎は「ひっ、久しぶりです」って言ってやがるし。

 

「そっちはセイヴァ―?真名は・・・げえ・・・そりゃ頭抱えるわ」

 

 良太郎からイマジン達が飛び出し、大騒ぎでデンライナーに向かっている。

 

 連絡しないとハナさんに殺される?なんでさ?

 

「・・・私はマルタ。ただのマルタよ」

 

「はわわわ!?マルタって・・・」

 

 アーシアの目の前には…うん、スタイル抜群、それでいてすげえ美人な女の人――マルタさんがいた。

 

「・・・でやがったな。筋力詐欺の祈り=鉄拳聖女・・・」

 

 と言った瞬間にポルムの顔面に拳が?!

 

 凄まじい勢いで殴り飛ばされるポルム。それを見て唖然とする皆。

 

 この人・・・神の拳を持っている。

 

「・・・挨拶はこれくらいでいいかしら?」

 

 ポルムの心配?

 

 爆炎と共に復活してくるのだから問題ないだろ?

 

 皆もポルㇺの復活芸に慣れてきた。

 

「痛たたた…やっぱり、あいつに通じる拳を持っていやがる。反応することすらできん。しかも、覚えているということは、こちらのことを座に刻んでいたか。それもルーラーか。やっぱり異常ということか」

 

「ふん、今度悪さしても対策できるようにね。今度こそ神の祈りを堪能させてあげるわ。」

 

「いやいや、あなたの祈りは勘弁」

 

 本当に聖女?いや、魂そのものは確かに聖女らしい清らかさを感じる。アーシアやキリエさんに通じるものがある。

 

 でも・・・拳の強さがなんか違う。

 

「何か文句でも?」

 

 なんでもありません!!

 

 うん。姐さんと呼ぶことにしよう。それが色々な意味で適切だ。

 

 聖女だけあって、その辺の勘の良さは神がかっている。

 

「ゴールデンだぜ!!」

 

「黄金だ」

 

「黄金ね」

 

「しかもマサカリ?」

 

「サングラス?」

 

 なんやら更に存在だけでも濃い奴がやってきているのは気の所為かな?

 

 んン?あの黒の騎士が慌ててこの場から去っていく。

 

 この姿なら圧倒出来たと思うのに。

 

「さて、ポルㇺ。説明を」

 

 ちなみに戸惑いながらも変な怪物達は一掃しておいた。

 

「・・・んん?」

 

 だが、まだ終わりというわけではなさそうだ。

 

「…どうやら別に襲われている連中がいるか。結界は張っておく。最悪、記憶操作もするから」

 

 それだけ聞けば十分だ。

 

「…悪いが付き合ってくれ」

 

「・・・はあ、随分お人好しなマスターだな」

 

 その騎士はため息を付きつつ付いて来てくれるようだ。

 

 だが、一つだけ訂正しておこう。

 

「イッセーだ。そう呼んでくれ。そっちはなんていう?」

 

「・・・えっ?セイバーだが・・・」

 

「それは名前じゃねえだろ?」

 

「ああいや、同志。真名は重要な・・・」

 

 そんなの関係あるかい。何となくだが、役職名で呼んでいるようなもんだろうが?背中合わせるなら名前くらい知って、呼ばないと。

 

「・・・モードレッドだ。」

 

「へっ?あっさり名前を教えた?」

 

 へえ。モードレッドていうんだ。

 

「よろしくな!!」

 

 そう言って俺は拳を突き出す。

 

「?」

 

 戸惑うモードレッドに握り拳を作るように促し、俺は弦太郎から始まった友達の証をする。

 

 拳を上下にぶつけ合い、最後に握手。

 

 これで何かが繋がった感じがある。

 

 始めは驚いた様子だったが、友好の証だと察してくれたようだ。

 

 心底呆れた様子を見せる。

 

「・・・お前変な奴だな」

 

 まともじゃ神の後継はやっていられないので。

 

 その言葉に他の皆が苦笑しながら頷くのは納得できないがな!!

 

 こうして、俺達は現場に向かっていく。

 

 ロズヴァイセさんと一緒に。

 

 

 

SIDE タケル

 

 ついにやってきた修学旅行。ああ・・・生きていることは素晴らしい。

 

「お前な・・・」

 

 ノクトと京都駅で自由行動が開始されようとした時だった。

 

「・・・お前達・・・逃げろ」

 

 ライトニング先生が緊張した面持ちである方向を見ていた。

 

「逃げろって・・・?」

 

 悲鳴が聞こえてきた方向には・・・怪物がいた、

 

 伝わってくるのはこの世に存在を許してはいけないという明白な邪悪さ。

 

「・・・ったく、なんで京都に到着して早々・・・」

 

 怪物が人を襲うとしている。

 

 逃げろと先生は言った。確かにそれに従う。

 

 襲われた人の方向へとね!!

 

 ヒトデみたいな奴の体を殴り飛ばし、その人を逃がしたのだ。

 

 だが背後から別の奴が襲い掛かってきて・・・。

 

 銃声と共に爆ぜた。

 

「・・・はあ、逃げるわけないか」

 

 先生が諦めた様子でいつの間にか手にしていた銃を下す。

 

「それが英雄であるお前なのだからな。まったくじいさんもいい魂に目を付けたものだ」

 

 今はそんなことはどうでもいい。

 

 こっちは眼魂を取り出し・・・

 

 また背後から別の怪物が!?

 

 そう言った瞬間、怪物が粉々になる。

 

 瞬間移動したノクトの剣で。

 

「へっ?えっ?」

 

 訳が分からない。今のは明らかに普通の人間が使う技じゃない。

 

「・・・何がどうなっているのかこっちはさっぱり分からねえけど、やるべきことくらいは分かっているつもりだ」

 

 ノクトの手に現れるのは・・・エムさんと同じベルト!?

 

 一体どこから取り出した!?

 

「君は・・・」

 

「それはこっちのセリフでもあるが、詳しい話は後で」

 

 そして、ノクトの手には・・・ガシャットが。

 

―――――finalfantasy15!!

 

 ・・・そうだね。難しいことを考えるのは後回しだ!!

 

――――――バッチリミナー!!!バッチリミナー!!

 

『・・・変身!!』

 

――――――覚悟!!ゴーゴーゴ、ゴースト!!

 

――――――アイム カメンライダー!!

 

 揃って変身する僕達。

 

 ノクトが変身したのはエム先生が変身するエグゼイドを黒くした感じ。だが、ゲンムとは違い黒いジャケットのようなものを羽織り、髪のような部分もノクトに近い。

 

 ノクトの変身・・・いきなりレベル2からなんだ・・・。

 

 それに変身ってことはバグスターウィルスの・・・。

 

「先生こそ下がって。こっちは僕達が」

 

「安心しな。最速タイムで、クリアしてやるぜ!!」

 

 決め台詞・・・エム先生に似ている。

 

 やはり関係者・・・だよね。

 

「・・・ああもう。お前もそうだったのか」

 

 ライトニング先生が何やら疲れた様子を見せる。

 

「凄い連中の担任になったもんだ。ああ…安心しろ。こっちは専門家だ。来い・・・シャインウイング!!」

 

 鏡から大きな鳥が現れる。大鷲を模したようなモンスターだ。

 

「そして・・・来い、オーディン!!」

 

 先生の背後に光の粒子と共に鎧兜姿の男が現れて・・・。

 

「バグスターだと・・・?じゃあ、先生は患者?だが、そんな気配は・・・」

 

 取り出したのはガシェット!?

 

 もう片方の手には大鷲が描かれたバックル?

 

――――finalfantasy13!!

 

「変身」

 

 背中に大鷲の翼を模したマント。そして、白い羽を模したアーマーを纏った仮面ライダーが降臨する。

 

「仮面ライダーサーディーン。魂はきちんと冥界に導いてやるから安心しろよ」

 

 白い羽があちこちに舞いながら先生は敵を次々と切り裂く。

 

 強い・・・とは思っていた。

 

 でも、この動き。間違いなく歴戦の戦士。

 

 どれだけの死線を潜ればこんな動きが・・・。

 

 敵の方を振り向かずに斬ったり・・・おお・・・手から炎が!?

 

 敵があっという間に火の海の中に・・・

 

 それを背に先生はこちらを見る。

 

 仮面で表情は分からない…でも何となく分かってしまう。

 

 絶対にドヤ顔になっている!!

 

「これでも逃げろと?」

 

 まだまだ余裕みたい。

 

『・・・・・・・』

 

 でも反論できず。

 

 単独で敵を殲滅ですから。

 

 いや、マジですいません。

 

 と言っている間に新手がやってくる。

 

「とにかくこいつらを倒すぞ」

 

「うん」

 

 僕達は敵を全滅させる為に動き出す。

 

「きゃああああああぁぁぁぁぁ!?」

 

 その時、聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

『って・・・はくのん?!』

 

「岸波だと?ちぃ!!」

 

 悲鳴が聞こえた方を見ると・・・変な怪物達がはくのんを襲おうとして・・・。

 

 空間に現れた黄金の波紋。

 

 そこから放たれた無数の武器に貫かれる敵の姿だった。

 

「・・・へっ?」

 

 彼女の周りに現れるのは無数の・・・眼魂!?

 

 色は・・・白、赤、紺色、黄金、そして…虹色?

 

 他にも三つあるぞ?色はわからないけど・・・。

 

「???」

 

 はくのんは訳が分かっていないようだ。

 

「この子は一体何の英雄に・・・?」

 

 これだけの英雄に愛されている、心を通わせているというのか?

 

「…どうやらお前も無関係じゃないな。まったく…なんでこう次々と・・・」

 

 僕達が戦っている中、うじゃうじゃと別の怪物達が現れる。

 

「悩んでいる暇はないか」

 

「はくのんは下がって」

 

「ここは俺達がやる」

 

「へっ?えっ?その声…先生に、ノクトに…タケル君?!」

 

『・・・・・・あ・・・・』

 

 しまった~!!なんで正体ばれするようなことしちゃったのかな!?

 

「・・・これもこの異常事態が悪い。言い訳は後で考えよう」

 

 こういう時の先生の開き直りっぷりは頼りになる。大変男らしくて素敵だ。

 

「・・・・・・最悪記憶を失くせばいいしな。術が効かなくても物理的に何とかなる」

 

 訂正!!小声でとんでもないことを言ってます!!

 

 この人本当に先生!?いや、一応こちらの担任なんですけど。

 

――――見事なり!!その開き直りっぷりに敬意を払うぞ!!

 

 どこからともなく変なおっさんの声が聞こえてきて・・・え?

 

『・・・・・・・・。』

 

 自分達は夢を見ているのだろうか?ああ…いや、こっちの存在や体験したことも大概おかしいのは自覚しているよ?

 

 でもね。まさか怪物達が・・・・。

 

 空を翔る牛に惹かれた戦車に爆雷と共に次々と引き消されていくだなんて・・・。

 

『・・・・・・。』

 

 他三人も現実を受け入れるのに少し時間が掛かっているようだ。

 

 その時間が割と致命的だから、いったん開き直った方がいいよ。

 

 こっちは慣れたから。一秒くらいで立ち直れる。

 

 ・・・・・・いや、訂正。こっちもまだまだだ。一秒も掛かってしまった。

 

 もっと早く立ち直らないと。

 

「・・・はあ。流石は神秘の国。最新にして最強の人外魔境を抱える国だ」

 

 むしろ先生の発言の方が気になる。何?最新にして最強の人外魔境って?

 

 この国、そんなにおかしいの!?

 

「本来なら名乗るのが筋だが、今回はできん。マスターがそうお願いしてきたのでな!!」

 

 豪快に敵を引き倒しながらおっさんは走り去っていく。

 

「ちょっと!?なんだあいつ!?」

 

「・・・あれはまさか・・・征服王?そんな・・・でも、あの宝具は・・・」

 

 その後ろから赤い仮面ライダーと銀色の仮面ライダーがやってくる。

 

「・・・敵じゃねえよな?こいつら倒してくれたし」

 

「…断言はできませんね。まあ、危険ではないと考えてまずはそちらの・・・」

 

 そのうち銀色の仮面ライダーとライトニング先生の視線が重なり、二人とも固まる。

 

「報告で聞いていたが、本当にアギトになったんだな」

 

「ええ。たぶん、そっちも覚醒する可能性が高いかと。それでどうしてここに?」

 

 二人はどうも知り合いらしい。

 

「こいつらの担任だ。爺さんに頼まれてな」

 

「あらら」

 

「それで、そっちの方はどうだ?お前が選んだ勇者っていうのは・・・」

 

「ああ・・・ちょうどいいです。一緒に来ているので紹介します。イッセー?」

 

「・・・?」

 

「・・・そうか、噂の神の後継。紅のアギトということか」

 

 赤い仮面ライダーも変身を解く。

 

「あの…この方は?」

 

「紹介します。ライトニング。私の姉です」

 

「うん。妹が世話になっているな。うむうむ・・流石というか、お前の選んだ勇者だけはある。文句つけようがない」

 

「・・・・・・・・」

 

 姉いたの?って顔をしていますよ?

 

「ちなみに妹もいます。セラっていうのですけど・・・」

 

 妹までいんのかい!?って表情だけで語っている。

 

 感情表現豊かといううか・・・かなり器用な顔面だね。

 

 分かり易くて逆に困るよ。

 

「私はロセほど強くないぞ?」

 

 先生がそう肩をすくめるが・・・。

 

「イッセーさん。姉さんはヴァルキリーの、いや、北欧神話では近接戦最強ですから。トール様やお父さんすら圧倒してみせ・・・」

 

 北欧神話・・・近接最強?

 

「ロキをぶちのめせなかったのは今でも悔いている。あいつ・・・今度姿見せたら、十回は殺してやる。ロセを一度殺してくれたお礼参りをしたいから・・・」

 

 あのイッセーって人も軽く引いてる。

 

 せっ、先生ってシスコ・・・かなり妹想いですね。

 

 えっ、シスコンって言おうとして先生がこっちを睨んできたから言い直したわけじゃないよ?

 

 イッセーって人も同じく睨まれて冷や汗かいているけど、同じこと考えたのかな?

 

「何か言いたいことがあるのかな?」

 

 ・・・・・・・その視線に殺気を超える恐ろしい何かを感じました。

 

「・・・それで?一体何が起きている?お前なら何か知って・・・」

 

「大魔王曰く…聖杯大戦だと」

 

 聖杯大戦という単語に先生が天を仰ぐ。

 

「大魔王って、例のあいつか。ってことはあれって、サーヴァントの誰かが召喚してきやがったということか」

 

「海魔の類。その時点で私も敵のサーヴァントが誰か分かりましたけどね」

 

「・・・流石北欧神話最強。歩くラグナロク」

 

「私がラグナロクなら姉さんは歩くアインヘリアルじゃないですか」

 なんだか物騒な二つ名が聞こえてきましたよ?

 

 この場に居ない妹さんには変な二つ名はありませんよね?

 

『・・・・・・・・』

 

 何故そこで無言!?

 

「いや・・・セラはその・・・巫女だから」

 

「うん・・・あの二人一緒に・・・ははは・・・」

 

 なんか他に二人の関係者がいるらしい。

 

 イッセーと呼ばれた人も凄く気になっている様子だ。

 

 なんだろう…この人とは凄く仲良くなれる気がする。

 

――――――・・・あなたまで来ていたの?

 

 イッセー君と呼ばせてもらおうか?その彼の背中の影から一体の龍が姿を現した。

 

 それと共に先生の背後からも先ほどの白の大鷲が姿を見せる。

 

 なんだこいつ・・・?

 

―――久しぶり。

 

―――北欧神話も大概ね。私達の進出は順調なようで

 

「…まあ敵じゃないのは分かったし、変身解こうよ」

 

「そうだな」

 

 僕とノクトは変身を解く。

 

 そして・・・イッセー君の表情が変わった。

 

「・・・・・・」

 

 ノクトを見て唖然としている様子だ。

 

「んん?なんだ?人の顔を見て・・・んん?」

 

 ノクトの方も何やら首を傾げつつ、反応が変わってくる。

 

「そういえば、お前・・・どこかで・・・」

 

「・・・そうか。まだ記憶が完全じゃ・・・そうだ!!」

 

 どこからともなく彼はハンコを取り出す。

 

 それが光を放ち・・・ノクトの足元に何かの紋章が浮かび上がり・・・。

 

「…ッ!?」

 

 ノクトが苦しそうに頭を押さえてうずくまる。

 

 って大丈夫かい!?

 

 慌てて駆け寄るが、ノクトはすぐに手で制し、立ち上がってくる。

 

「・・・・・・ったく、あの時のハンコにこういった意味があったんかい!!」

 

「わりぃ、実は帰ってきてから知った」

 

 ノクトが深い溜息をつきながらイッセー君と気心の知れたやり取りを始めたのだ。

 

「・・・ああもう、そうかい。なら感謝するしかねえだろ!!」

 

「…また会えて嬉しいぜ!!ダチ公!!」

 

 二人は拳を突き合わせ、上、下、って…それはフォーゼの彼がやっていた・・・。

 

「本当に・・・・良かった・・・死に別れるなんてことしちゃったから」

 

 涙腺崩壊レベルで泣きまくっている彼。

 

 その前に死に別れるってなに!?

 

「・・・おう。おかげで楽しい第二の人生を送らせてもらっているわ」

 

 そんな彼にノクトは気安い様子で笑いかける。

 

『???』

 

 なんだか感動の再会らしい。だが、そろそろ二人ともいいかな?

 

 僕達に詳しい説明をしてほしいんだ。

 

 分からないことばかりだから。

 

 

 

 

 

 

 

SIDE イッセー

 

 

 まず、ホテルの一室で俺は新たなダチを紹介する。

 

 生死を超えて再会できたノクトこと・・・ノクティスだ!!

 

『・・・・・・』

 

 そう紹介した瞬間、一斉に皆は白目をむいていた。

 

 安心しな。俺も、皆の立場なら同じことをしていたから!!

 

「・・・幼馴染の出現。それもあの新たな神滅具による初の転生事例。濃い・・・相変わらず濃すぎるぜ・・・」

 

 アザゼル先生の嘆きが全てだ。

 

「…既に手遅れ。別の幼馴染の登場とは・・・しかも転生してきた奴・・・ふっ、イッセーの運命力をまだまだ俺達は舐めていたようだな、大魔王さん?」

 

「こちらも予想外だった。うん。しかもなんで月のマスターまでいるのさ。ああもう・・・想定外にもほどがある」

 

 同じく頭抱えているのはポルㇺも同じらしい。

 

「・・・流石は我が同志。いつもこちらの想定を軽く上回ってくる。だからこそ面白いのだけど」

 

 そんな感じで話は始まる

 

 簡単に聖杯戦争というシステムを教えてもらい、それぞれサーヴァントがどういう存在がも知る。

 

 世界に登録された存在というだけでも驚きだ。

 

 維持するに魔力が必要なことを鑑みて、二人で一人のサーヴァントと考えていたらしい。

 

 まず祐斗とユウナが召喚したのがランサー・・・スカサハ。影の国の女王にして神殺しらしい。

 

 う~ん。スタイル抜群。いいおっぱいをして・・・っておおおっと!?

 

「・・・不埒な奴を懲らしめようとしたのじゃが・・・今のを避けるか。かなり進化したアギトのようだ」

 

 いきなり槍を分投げられました。かろうじてかわしましたが。

 

 ちなみに英雄の師匠としてもかなり有名らしい。

 

 イリナと弦太郎が召喚したのはバーサーカー・・・なんと金太郎。

 

 だが、金太郎?こっちが知っている金太郎とまったくイメージが違う。

 

 金髪にサングラス、ムキムキの筋肉など・・・

 

 かろうじて原型があるのはおかっぱの髪型だけだ!!!

 

 そんなツッコミどころを除けば、大変愉快な奴だ。

 

 あそこで弦太郎とすっかり意気投合している。

 

 アーシアとキリエさんが召喚したのは・・・ルーラーらしい。名前は聖女マルタ。

 

 祈りで龍を鎮めたらしい。

 

 ・・・・・・。

 

 祈り=鉄拳のような気がしてならない。

 

「そうそう。いい拳しているわね、あなた・・・」

 

「はい!!ありがとうございます!!」

 

 って、さっそく悪影響が!!ちょっとマルタさん!!うちのアーシアに変なことを教えないでください!!

 

 聖拳突き?そんなものを教えたらアーシアまでもがおかしくなっちゃう!!

 

 背後のスタンドも同じことをしているし!!

 

 へっ?今でも十分おかしい?

 

 そんなことは・・・・・・ないよ?まだ癒し系だし。

 

 

ーーーーこの世界の女神だし?

 

 そうだ!!おかしくないだろ!!

 

ーーーいや、十分おかしいぞ

 

ーーー俺でも分かる

 

 あーあ―聞こえない!!

 

 相棒達が現実を突き付けてくるなんて気の所為だ!!

 

「ふふふ、逸材を見つけたわ」

 

「あ・・・あら?」

 

 キリエさんは悪影響なさそうだけど。

 

―――覚えておけ。ドラゴンだって逆らってはいけない存在くらいはいるということを

 

―――この世界の人間はどういう体の作りをしている?

 

―――あは…あははは・・・これは凄まじいわ。ドラゴンライダーなんて。

 

―――仲良く・・・したいかな?

 

 うちの中のドラゴン達も興味深々だし。

 

 ゼノヴィアと良太郎が召喚したのはセイヴァ―らしい。

 

 名前はローラン・・・。

 

・・・・・・・。

 

 って、まじかよ!?

 

 ゼノヴィア、自分の実の父親を召喚してしまったんかい!!

 

 本人はそのことを知らないみたいだけど・・・

 

「・・・久しぶりだな」

 

「・・・はい」

 

「この世界って、再会にあふれている」

 

 急ぎ来たハナさんが涙流しながら抱きついているし、良太郎に至っては遠い目をしながら振り返っている。

 

「・・・そして、そうか。この子が・・・」

 

「うん。はあ・・・どうしよう。これは・・・」

 

 ゼノヴィアは知らない。目の前に実の父親と母親がいることに。

 

 とんでもない爆弾だぞ?これ・・・。

 

 ネロと鋼兄が召喚したのはアヴェンジャー。名前は全く分からず。

 

 ポルㇺですらも首を傾げているのだ。

 

「魔界の悪魔・・・なんだよな?」

 

「それでいて、ネロか鋼鬼と縁がある?しかも復讐者?誰だ?」

 

「・・・しかたねえ。後でダンテに聞いてみる。あいつなら魔界の悪魔に詳しいから何か分かるはず・・・」

 

 魔界の悪魔だけあって、おそらくネロ関連だと思うけど・・・

 

「エクストラクラスが三つの時点で異常だよ。まったく・・・」

 

 ポルㇺは心底ため息をついている。

 

「規格外と言ったらヴァ―リもそうだけど・・・」

 

 ヴァ―リが召喚したのはアサシン――初代ハサン、キングハサンと呼ばれる存在らしい。

 

「じい。もっと色々と聞かせてくれ」

 

「うむ・・・」

 

 すっかり殿様とじいの関係になっているけどな!!

 

「・・・何も媒体を用意しなかったらこうなるか。恐ろしいよ。皆の運命力は」

 

 それでこっちが召喚したのがセイバー・・・モードレッドだ。

 

 円卓の騎士にして、叛逆の騎士・・・なんだけどなあ・・・

 

 なんか相性がいい。

 

「…いや、それはお前が異常なだけだぞ?」

 

 そうか?お前となら上手くやっていけそうな気が・・・

 

「・・・・・・こいつ、どんなカリスマを持っている?」

 

 一応女扱いは止めてくれと言われている。

 

 その理由は…まあ、なんとなく察している。相棒が色々と教えてくれたから。

 

「・・・赤と白…お前達が揃っていることが既に異常だ・・・」

 

 モードレッドはなぜか疲れた様子を見せる。

 

「・・・まあいい。気のいいマスターを得られたと思うことにするわ」

 

 直ぐに気を取り直してくれたけど。

 

「さて…既にこちらの陣営ではライダーとしてあいつも呼び出してある」

 

「・・・っ征服王ですか」

 

「流石。その通り。そのマスターもこちらの陣営だ。また機会があったら会わせるから安心したまえ。だが、まだアーチャーとキャスターがいない。おかしいなあ・・・一応こちらの陣営は基本的なクラスは召喚済なはず。あっ、いや、なぜかセイバーとアーチャーが他にも召喚されている。何がどうなっている?」

 

 首を傾げるポルム。

 

 まだ三人はいるらしい。

 

 とりあえずはその辺は置いておくことにしてポルㇺは事件のあらましを説明してくれる。

 

今回は久しぶりに禍の団が関わっている案件らしいのだ。

 

 久しぶりか・・・、前の事件があまりに濃かったからそんな感じになってしまう。

 

「異世界からやってきた聖杯。それを英雄派は利用し、ある実験を行おうとしている。それはきっとイッセー、君にも関わりがある」

 

 英雄派。

 

 前の事件で旧魔王は壊滅的な被害を受けたらしい。どうも、冥界を滅ぼすべく用意した大軍勢が・・・一瞬で壊滅いや、消滅だったか。

 

――――――ふん。そんな奴らのこと覚えておらん。

 

 ゴジラさんと俺の所為でな!!

 ちなみにこっちも覚えていない。

 

「・・・普通なら、お前さんに挑もうとしないだろうがな。俺だって嫌だぞ?冥界を壊滅できるだけの軍勢を一瞬で壊滅させた相手なんだから。いや、ポルム、これは向こうからしても事故だな?」

 

「察しの通り、修学旅行先がここに決まっていたのと、その下見で色々露見したから、遠隔の魔術で召喚に介入した者のも、そしてその結果、同志が参戦してしまったことも向こうからしたら想定外もいいところだろう。修学旅行の情報は隠ぺいしていたから、今頃向こうは大慌てだろうね・・・ふはははははは!!いや~愉悦だよ!!」

 

『・・・・・・・。』

 

 何やら皆の同情の眼差しが背中に突き刺さるぜ。

 

 後、ポルㇺ、お前確信犯だな。

 

「だがもう一つ。英雄派の幹部は皆神器。それも上位、又は神滅具持ちだ。魔獣創造で作られたモンスターも確認している。その上・・・」

 

 ポルㇺば言い淀むが、何となく分かった。

 

「・・・アギト・・・なんだろ?」

 

「・・・分かってしまうか。まあ、最近街にやってきた連中も英雄派と気づけば、答えは出るか」

 

 当然だ。敵の中にアギトの因子を持った奴らがいた。

 

 そして、そんな奴らをまとめ上げるとしたら・・・アギト、またはそれに準する何かを持っていないとおかしい。

 

 つまり・・・敵は神器。それも俺とヴァ―リと同じく。神滅具を持つアギトということだ。

 

 これは手強い。

 

「でも、その聖杯は汚染。いや、中に何やらとんでもない化け物が封印されているので、発動させるのはヤバいと」

 

 ほぼ情報は揃った。

 

「向こうの陣営からの脱走者がいたねえ。ああ、安心してくれたまえ、オーフィス派だから。合言葉は「可愛いは正義」・・・」

 

 信頼の担保はそれで十分だ。

 

 あのほむらさんの一派なら信頼できる。

 

 オーフィスと母さんを大切にしてくれるあの人はこっちと敵対をやめた。

 

 味方になる理由はあっても、戦う理由はもうないからと。

 

 こっちのこともかなり気にかけてくれるのだ。

 

 ヴァ―リに至っても同じ結論らしく、視線を合わせると頷いてくれる。

 

 まあ・・・かなり変わった御方ですけど。

 

「・・・やれやれ、だが、情報そのものは揃ってやがる。せっかく俺達がこの土地で外交しようと・・・。」

 

 そういえば先生とセラフォルー様が来ているのって・・・。

 

「そうなのよ~。ツクヨミちゃんの紹介でこの土地の妖怪達との外交を。鋼鬼君達とも濃い繋がりがあるみたいだし」

 

 この土地の妖怪たちとの外交か。

 

「・・・すまないが、そこに向かっていいか?」

 

 鋼兄が険しい表情をしている。

 

「嫌な予感がする。一応すぐに向かう予定だったのだが、更に今の発言で嫌な予感が・・・」

 

「・・・そうだな。それにあそこにはもう一人いるかもしれねえ・・・いや、もう言い切った方がいいな。あそこにイッセーの幼馴染がもう一人いる!!すぐに会いにいくぞ!!どんな爆弾を抱えているのか分かったもんじゃねえ!!」

 

 先生の言葉に皆が頷く。

 

 って、あそこにもう一人いるって、なんで確定できるのさ。

 

 しかも爆弾って酷くない!?

 

「・・・いるんだよ。悪いけどそれは既に調査済で・・・」

 

 ポルム~!!

 

 そう言ったことは先に言え!!誰だ?一体誰がそこにいる!?

「・・・多分、ノクティス君と同じレベルかそれ以上の爆弾・・・」

 

 俺達はすぐにホテルを飛び出す。

 

 鋼兄と黒歌なんて悲壮な表情を浮かべているし。

 

 ごめん・・・皆。爆弾・・・否定できなかったよ。

 

―――――今回のマスター達って、なんかこう・・・愉快だな。こりゃ一緒にいて飽きそうにないわ。

 

 モードレッド。それは言わないでくれ。

 

 微妙に心が折れそうになるから。

 




 サーヴァント、ついに公開。

 考え抜きました。

 マスターは基本的に二人で一人ですが・・・この運命力を皆さんはどう思います?

 何人かは受肉させたいかと思います。

 一人は確定です。他に希望があれば・・・


 残りのサーヴァントはまた次に


 では次の更新で;
 


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神人<アギト>大戦開始

大変間が空いてしまってすみません。

 かけましたので投稿しました。


  SIDE ジャンヌ

 

 それは突然の襲撃だった。燃え上がる家々の間を私は必死に走る。

 

「母上ぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 九重ちゃんの危機を掲示で感じ取ったためにだ。それとともに、妖怪たちの集落が何者かの襲撃を受けていた。

 

 私は手にした旗槍を振るい、襲い掛かってくる悪魔を打ち払う。

 

 魔界の悪魔

 

 最下級の相手ならまだ問題はない、

 

 でも、上級の悪魔もいる。

 

 私を追ってきたあいつが・・・

 

 私は燃え上がる家々をかけ、そしてついに九重ちゃんを見つける。

 

 彼女の視線の先には血まみれでぐったりとしている八坂さんを抱えている男の姿。

 

「アヴァンジャー!!」

 

 それは私たちを殺そうとした男。

 

 この聖杯大戦の黒幕といえる相手だった。

 

「・・・やはり聖女はここにいたか」

 

 アヴェンジャーは私の姿を見て笑みを漏らす。

 

 彼の周りには無数の悪魔がいる。そして、上には・・・。

 

「グリフォン、今度は仕損じるなよ?」

 

 上空から急襲してくるグリフォン。それに対して私は周囲に聖剣を作り出して対抗する。

 

「・・・ほう。神器か」

 

「私もただでこの世界に来たわけじゃありません」

 

 それは上級神器である聖剣創造。英雄の子孫という形で生まれ変わった私が持っている世界の祝福。

 

 妹の魔剣創造と対となっているあたりがこの世界での私とあの子の関係を意識させる。

 

 でも、この力には感謝しかない。

 

「聖剣。確かに魔界の悪魔にとってもそれは毒に等しい」

 

 だが、この程度でこのアヴェンジャーが何とかなるとは思えない。

 

 この程度、かゆみにもならないのだから。

 

 だからこそ、この場から九重ちゃんを逃がそうとして・・・

 

 あたりの炎が一気に猛った。その理由はアヴァンジャーの側に展開された魔法陣から歩いてくるように現れたもう一体の悪魔のせいであることは明白だったからだ。

 

 四本の脚に人の上半身。だが、ねじくれた角や黒い甲殻のようなもので覆われた体。そして何よりもその全身から噴き出す炎が人外の者であることを示していた。

 

 手にしている熱を帯びた大剣を掲げてそいつは私に向かって走ってくる。

 

 猛獣のような跳躍からの一撃を私は手にした旗槍で止める。

 

 その一撃の重さに、私の足元の地面が陥没する。

 

「ほう…止めるか。只の人間ではないことは認めよう」

 

 言葉を発するといい間違いなくこいつは上級悪魔!!

 

「我が名はベリアル。我が主の命により、その命もらい受ける!!」

 

 私一人では手に余るほどの怪物だった。

 

 せめて妹がいれば・・・

 

「…その間に、もう一人もらい受けようか。何・・・贄は多くて問題はなにもない」

 

 その間にアヴェンジャーの魔の手が九重ちゃんを狙う。

 

「逃げて!!」

 

 聡明な彼女はすぐにわかってくれたのだろう。逃げようとしてくれていた。

 

 だが、その行く手を阻むものもいた。グリフォンだ。

 

「さあて、これで問題は解決だ・・・捕らえよ」

 

 その言葉とともに逃げようとしていた九重ちゃんに襲い掛かるグリフォン。

 

 その爪が九重ちゃんを捉えようとした時だった。

 

 突然グリフォンが横手から吹っ飛ばされたのだ。

 

 慌てて空中で体勢を立て直すグリフォン。

 

 そして、そいつを吹っ飛ばした相手は九重ちゃんの前に立っていた。

 

「遅れてすまない」

 

「光太郎!!」

 

 それは光太郎・・・。ジーク君の生まれ変わりの彼であった。

 

「大丈夫か?」

 

 彼は九重ちゃんの安否を見て、安堵の息を吐く。

 

「…なんだ貴様」

 

 アヴェンジャーは突然の乱入者に首を傾げた様子だ。

 

 そして、すぐに気づいたようだ。

 

「ここにはなった悪魔共の反応が・・・消えている?」

 

「八坂さんを返せ」

 

「ふん、こいつは大事な生贄だ。くれてやるものか」

 

 八坂さんの姿を消すアヴェンジャー。

 

「ははははは!!もうお前たちの手の届かないところにおくってやったぞ。これで満足・・・」

 

「・・・・・・・許さん!!」

 

 その言葉とともに全身から電撃がほとばしる光太郎。

 

「こいつ…ただの人間ではないというのか?」

 

 アヴェンジャーに迫る光太郎君。

 

 彼の目の前から無数の悪魔が現れ、その行く手を阻むのだが。

 

 一瞬で蹴散らされる。

 

 下級の悪魔とはいえ、一蹴なのだ。

 

 それだけでどうして彼が助けに来ることができたのか理解したのだ。

 

 理解させられたと言い換えた方が正しいけど。

 

「なあ!?」

 

 光太郎君の拳がアヴェンジャーの顔面に突き刺さる。そうして吹っ飛ぶ彼。

 

 何とか空中で姿勢を立て直すアヴェンジャー。そんな彼を守るように現れるのは巨大な岩石蜘蛛―――ファントムであった。

 

 彼が行く手を阻んだのだ。

 

 彼の巨大な足が光太郎をたたきつけんと迫る。

 

 それを後ろに飛びのきかわした彼は、何かを決意したかのように大きく息を吐いた。

 

 彼はポーズをとる。そして…叫ぶ。

 

「変…身!!」

 

 その言葉とともに彼の腰に現れる赤い宝玉みたいなものがついたベルト。

 

 そこからほとばしる光とともに彼は変身した。

 

 黒い体に赤い複眼を持つ異形へと。

 

 彼は名乗りを上げる。

 

「仮面ライダー・・・black!!」

 

「・・・なんと」

 

 私はベリアルの攻撃を受け流しながら彼の側に立つ。

 

「ここは俺に任せて、九重ちゃんを!!」

 

 

 私も噂だけなら聞いたことがある。

 

 一人の仮面ライダーがいた。ゴルゴムと呼ばれる組織を一人で壊滅させた仮面ライダーが。

 

 それが光太郎君だったのだ。

 

「・・・・・・」

 

 私は悲しみを禁じ得なかった。

 

 この世界でも彼は戦っていたからだ。

 

 彼がこの街に来た時には心身共にボロボロだったと聞いている。

 

「ぐう・・・がっ・・・貴様…ただの人間では・・・ないな」

 

 一撃喰らってようやく脅威と感じたのか。アヴェンジャーが光太郎君をにらみつける。

 

 変身した彼はファントムの足を両手で止めている。

 

「まさか仮面ライダーとは・・・ファントム!!」

 

 アヴェンジャーの激に呼応するようにファントムは足に力とその巨体の全てをかけていく。

 

 だが、それを察したのか彼は後ろに飛びのく。力でまともにぶつかり合うつもりはないという判断に迷いはなかった。

 

 飛びのき、その足に拳を繰り出すのだが・・・その岩のような体にはじかれる。

 

「無駄だ!!ファントムの体に傷をつけることなど・・・」

 

 普通なら口の中など狙うのが定石だろう。だが、マグマのような超高温の体液がほとばしる体内を攻撃するのは自殺行為。

 

 それは彼もわかっているのだろう。だから彼は飛んだ。

 

「ライダー・・・パーンチ!!」

 

 ジャンプの勢いと赤い光を拳の一点に集中させた拳を繰り出したのだ。

 

 一撃で粉々に砕け散るファントムの腕。

 

 それにファントムは驚いた様子で固まっている。

 

「・・・なるほど。これは手ごわい」

 

 その光景を見たアヴェンジャーの声にはまだ余裕があった。

 

「だが・・・お前たちだけでこいつらを相手にできるのかな?」

 

 ファントムだけでなく。体制を立て直したグリフォン。そしてベリアルもいる。

 

「・・・君は逃げろ。ここは俺が・・・」

 

「そう言われても・・・」

 

 無数の悪魔たちも現れ、私たちを囲む。

 

 聖剣を構えるが。無事に逃げれる気がしない・・・。

 

「逃がすと思うか。そして援軍など期待しないほうがいい。何しろこの一帯は私が結界で囲っているのでな。認識すらできん。破壊など考えても無駄だぞ?特別頑丈につくっているのでな!!」

 

 アヴェンジャーがそう言った時だった。

 

 まるでガラスに亀裂が入るような音が聞こえたのだ。

 

 空から。

 

 よく見ると空に亀裂が入っている。

 

 その亀裂が瞬く間に全体に広がり、粉々になったのだ。

 

「そんな馬鹿な!?なぜ結界が・・・」

 

「あれは?」

 

「おそらく結界です。アヴェンジャーが自慢するだけあって、かなり強力なものでしたけど・・・」

 

 大体並みの魔術師が百人集まってようやく展開できるほどのレベル。それがあっさりと破壊される。

 

 何があったらそんなことが・・・

 

「一体誰が・・・ぶぎゃ!?」

 

 アヴェンジャーの声を遮る爆音。

 

 その音に空中にいるグリフォンやほかの悪魔たちがよろめき、落ちていく。

 

その落下につぶされるアヴェンジャー。

 

「いくよ。ピポグリフ!!」

 

 その隙に、それは飛び込んできた。

 

 その突進力はすさまじく、ファントムが一撃で吹っ飛ばされたのだ。

 

「小癪な!!」

 

 突進してきた相手を捉えたベリアルが、剣を振るのだが、突進してきた相手がまるでカゲロウの様に消えたのだ。

 

 次の瞬間、ベリアルが転ぶ。

 

「なんだと?!」

 

 転んだベリアルを尻目に、突進してきたそれはおりてきた。

 

「何が・・・どうなっている!?」

 

 ベリアルはなかなか立ち上がれない様子。

 

「・・・あれ?確かにマスターの気配があったのに・・・」

 

 ピンク色の髪をした彼・・・彼女といってもいいのかもしれない相手は私も、そして彼にとっても深い繋がりのある子だった。

 

 それは光太郎―――ジークの前世のサーヴァント。アストルフォ。

 

 前世の戦いで私たちの仲間でもあった彼だ。

 

「君は・・・」

 

 光太郎君が声をかける。それを見てアストルフォは気づく。

 

「あっ…やっと見つけた!!」

 

 そして、そのまま抱き着いてきたのだ。

 

「なっ・・・うぉ!?」

 

「ずっと探していたよ。あっ、君も久しぶり」

 

 理性蒸発している割には、本当に直感に優れている。私たちのことをすぐに察するあたりは特に。

 

 そして、結界が簡単に破壊された理由も納得だわ。

 

 この子ならそれを行える。

 

「ぐう・・・貴様ら」

 

 アヴェンジャーが目を回しているグリフォンの下から這い出して来る。

 

「おっと、君たちが僕のマスターの敵だね?」

 

「・・・どういうことだ?どうして貴様がサーヴァントと契約を?枠は既に埋まっているはずなのに・・・」

 

 さすがにこれは予想できなかったでしょうね。何しろ前世から契約している相手なんだから。

 

「ぐう、結界の破壊も貴様か。このままじゃ、まずい。あいつらが来る前に」

 

 アヴェンジャーから余裕が消えていた。

 

 それはそうだろう。結界が消えた。それすなわち、彼らに見つかるということなのだから。

 

 この街に修学旅行できている彼ら。その中にここと非常に縁の深い者たちもいる。

 

 すぐに駆け付けるはずだ。

 

 吹っ飛ばされたはずのファントムが九重ちゃんを捉えようと地面の中から急襲してくるのだが・・・

 

 その足を大砲みたいな衝撃とともに弾き飛ばされたのだ。

 

「ごめんにゃ。遅れた」

 

 九重ちゃんの側にいたのは猫又と呼ばれる妖怪の女性だった。

 

「黒歌姉上!!」

 

 ファントムが再び突進してこようとして・・・まったく動けないことに気づく。

 

「貴様ら・・・」

 

 その理由は一人の男が真正面からファントムの頭を鷲掴みにしていたからだ。

 

 ただそれだけでファントムはその場から動けなくなっていた。

 

 掴んでいる男から発せられているのはすさまじい怒気。

 

「・・・強いな」

 

「はい」

 

 この場にいる誰よりも強い。その男の怒気に場の空気が、地面が・・・すべてが震えていた。

 

 ファントムは口から溶岩を吐き出し。男を焼こうとする。

 

 男の体が燃え上がり、その中から現れたのは鬼だった。

 

 燃やしたかと思ったらまさかの変身である。

 

 鬼になった彼はファントムの巨体をつかんだまま飛び上がり・・・

 

 ファントムを縦回転にぶんまわしながら落下。

 

 そのまま頭から地面にたたきつけたのだ。

 

 頭から地面に突き刺さり、全身に亀裂を走らせた状態で動かなくなるファントム。

 

 ・・・私たちが苦戦した相手を一蹴か。

 

「流石は二代目の荒ぶる神」

 

「荒ぶる神?二代目?それって確か九重ちゃんが言っていた・・・」

 

「鋼兄上!!」

 

「・・・すまない。遅くなった」

 

 膨大な怒りを抑え、彼――鋼鬼さんはアヴェンジャーと対峙する。

 

「俺の妹分が随分世話になったようだな」

 

「ぐう・・・まさかもう駆け付けるなど・・・結界が壊れたとはいえどうして・・・ちぃ・・なら来い、リヴァイアサン!!」

 

その言葉とともに上空に現れるのは巨大な悪魔。

 

「こいつは外からの攻撃は受け付けぬ。あのダンテでさえ、内部に入らないと倒せなかった相手よ」

 

「・・・・ペラペラと口が滑る奴だな」

 

「攻撃が届かない位置からの爆撃なら問題あるまい。リヴァイアサン!!」

 

 その言葉に巨大な悪魔が攻撃をしかけようとした時だった。

 

 その上空で突如、巨大な紋章が現れたのだ。

 

 その光景にぎょっとなる皆。

 

 ただ鋼鬼さんだけは落ち着いていた。

 

「攻撃か効かないのか、なら試してやるさ。まあ試すのは俺じゃないがな」

 

 紋章が収束するとともに何かがリヴァイアサンの真上に落ちてきて・・・

 

「試すのは俺たちの中でもっとも破壊力と爆発力がすげえ奴だ」

 

 すさまじい轟音とともにリヴァイアサンが落ちた。

 

いは、正確には落ちていない。

 

落ちるよりも圧倒的に速い速度で地面にたたきつけられたのだ。

 

 アヴェンジャーのすぐ後ろにだ。

 

 その衝撃に吹きとばされないようにこらえながら目を丸くしているアヴェンジャー

 

「なあ・・・に・・・」

 

 地面に激突、そのまま動かなくなるリヴァイアサン。

 

「さすがに硬いな。ぶち抜くことはできなかったぜ」

 

「いや、本当の意味で本気ならぶち抜けたはずだが?」

 

「・・・・加減せんと村を吹きとばしそうでな」

 

 その上に立っていたのは仮面ライダーであった。

 

 その彼は変身を解き、光太郎君に向けて笑いかける。

 

「久しぶりだな。中学校以来だぜ」

 

 人懐っこい素敵な笑みを彼は光太郎君に向けている。

 

 その声に光太郎君も誰か直ぐに気づいたようだ。

 

「・・・イッセー?」

 

「ああ・・・助けに来たぜ?」

 

 その名前は私も知っている。今世界を震撼させし続ける最新の人外魔境の主。そして、神の後継者になった者。

 

 幼馴染という名の絆の奇跡、運命から始まり、最強にして最凶の赤龍帝。破壊神にまで進化したアギトなどなど・・・。

 

 逸話に困らない男。

 

 それが光太郎君の幼馴染?

 

 そうか・・・ならこの場は勝ったわね。何しろ彼の周りには・・・

 

 

 

 

 SIDEイッセー

 

 ホント俺はアギトでドラゴンなんだと思う。

 

 昔のダチ・・・光太郎との再会。しかも、裏京都が襲われている中でだ。

 

 大きな事件と再会がセットになっていることに文句言いたい。

 

「だが・・・嘆いてもしょうがないな」

 

「ああ・・・」

 

 鋼兄が本気で怒っているのがわかる。それはそうだろう・・・身内がさらわれたのだから。

 

 うしろに追いついてきたのか次々とダチ達がやってくる。

 

「さあ・・・お礼参りさせてもらうぞ?よくもやってくれたな」

 

 燃え上がる裏京都を背景に鋼兄はアームドクサナギもだしている。

 

 本気でアヴェンジャーを叩き斬るつもりだ。

 

「ひっ!?」

 

 その怒りを一身に受けているアヴェンジャーの口から悲鳴が漏れる。

 

「まったく、そこまでにしてもらおうか」

 

 だが、そこで邪魔が入る。

 

 白い霧があちこちに立ち込め、アヴェンジャーの隣に二人の男が立っていた。

 

 一人は槍を手にした男。

 

 もう一人は・・・俺も知っている男だった。

 

「・・・アーデン」

 

「・・・やっぱ、覚えているか」

 

「当然だろ?」

 

「そして、そんなに驚いていねえか・・・いやだねえ。無駄に大物なやつは」

 

「いや、実は結構驚いている。あんた・・・そっくりさんだろ?」

 

 違う世界にそんなこともある。

 

 その言葉にあいつはずっこけた様子を見せる。

 

「そんなわけあるかい!!」

 

 そのあとに渾身のツッコミを入れるあたり・・・本物か。

 

 あっちでも何故かあいつは思わせぶりに表れて、こっちの反応に律儀にツッコんでくれる。

 

 そのツッコミのキレ…はっきりと覚えている。

 

 俺の反応にアーデンは何やら疲れた様子を見せる。

 

「・・・相変わらず、苦手な奴だよ」

 

「ありがとう。お前に苦手扱いされるとこっちはうれしい」

 

「こっちはすさまじく嫌だがね!!」

 

 アーデンが叫ぶ。

 

 その反応に皆がぎょっと見る。

 

「…大変だな」

 

「あいつが無駄に大物すぎるだけだ。あいつはキャラだけで敗北をおぼえさせたのだから」

 

 その発言に皆が「あ~」と何か言いたげに見てきやがる。

 

 なんだ?俺はあいつを振り回しているつもりはないぞ?

 

 アーデンの隣に現れる男はなぜか同情しながら俺を見る。

 

「正直、君の方が英雄にふさわしいとは俺も思う。だが、こちらも英雄の子孫。意地があるのでな」

 

 彼の手に現れる一本の槍。そこに宿るすさまじい力に、俺の中の何かがざわめく。

 

 おそらくあれがロンギヌス。最強の神滅具。

 

 そして、それを持つということは・・・

 

「親玉の登場ってわけかい」

 

「名乗らせてもらおうか、神の後継。俺の名は曹操。英雄派の首領を務めて・・・」

 

「・・・って曹操じゃん!!なんか会えると見えていたけど、ここだったか!!」

 

 切迫した状況が再び弛緩する。

 

「…やっぱり君もいたのか氷川誠。俺と同じく英雄――劉備の子孫よ。しかも君はいつの間にか、当たり前のように未来予知までできるようになったのか・・・」

 

 氷川誠・・・三国志の英雄―劉備の子孫にして、うちの父さんの前世の仲間。つまり転生者というとてつもない爆弾を抱えた幼馴染の一人だ。

 

 本人曰く、ただの普通の人間・・・らしい。

 

 ただ前世でも普通の人間のままで、G3を纏っていたとはいえエル二体に奮戦して見せた猛者であるという。

 

 それが転生してきたせいで、人間といいながら人間離れが酷くなっている。

 

 最近若者の人間離れが酷くなっていません?

 

「・・・お前もアギトってわけか。いいなあ、こっちは本当に普通の人間だぜ?神具も術も使えない・・・」

 

「何度も言っているが、未来予知といい君はもう少し自身のすごさを自覚した方がいい。私が神の後継の次に敵に回したくないのは君だからな。ロンギヌスを素手で受け止めるのだし」

 

 まさにその通り。テクニック最高峰の剣崎さんも目玉引ん剝くレベルの猛者だったりするのだ。

 

 普通の人間といいつつ、術はだめだが、それ以外の技能、仙術、波紋と呼ばれる呼吸すらもマスターしている猛者。波紋の先にある力。それを自力で発動するのも時間の問題らしい。それに加え、フォースの素質もあり、すでに未来予知のレベルは剣崎さんすら匙を投げるレベル。

 

 どうも先読みに関しては他の力も発動しているらしい。相手の意思を読む系統の力らしく、その解明に剣崎さんは躍起である。

 

 驚きつつも、剣崎さんはまだまだ自身も強くなれるとわかって嬉しそうだったのだ。

 

 ある意味ふざけているといえる事態である。剣崎さんも又強くなるのだ。

 

 その要因とった謎の力。その別方面が体を黒く硬くすることが出来るという強化の力らしい。実体のない相手すら干渉できる力。武器に纏わせることもできる。

 

 また、その力にはまだ先があるが。どうもそれの発動には素質がいるらしい。

 

 そのどれも根底は同じ、できると信じる強烈な意思による干渉の力と考えられることはわかっている。俺たちも研究に参加し、その習得に努めている。

 

 それを使って誠がゼノヴィアの放った空間すら絶つデュランダルの斬撃を素手で受け止めるのだから・・・普通とは絶対言えない。

 

 しかもこの力の先であるあれを俺は発動させてしまったが、あれはあれでやべえ。

 

 素質持ちに関しては安心してくれ。俺の幼馴染を始めとするみんなは問題なくできるぜ?

 

 その力の正体を知っている様子のポルムは「王の素質がこんなに。マジか」頭を抱えてやがったが。

 

「相変わらず高評価だが・・・本当に凡人だぜ?」

 

 その最先端を走っている誠。だが、そのすごさを残念ながらこいつは全くわかっていない。

 

 前世の経験に加え、日常で色々と事件に巻き込まれ続けている弊害なのは間違いないだろう。

 

 だからこそ、俺たちは叫ぶんだ。

 

『お前のどこが凡人だ!?』

 

 その瞬間、敵味方関係なく、こいつのことをよく知る人たちの心は一つになった。

 

「・・・マスター。気持ちはわかるが・・・」

 

 曹操をなだめるように現れるのは一人の少女だった。

 

 ドレスの上から鎧をまとったような姿。手に黒く禍々しい剣を持っている。

 

「それがお前のサーヴァントってわけない・・・って、おいどうした?」

 

 俺の中にいたあいつが息を呑んだ様子ででてきたのだ。

 

 俺の中にいたモートレッドが。

 

「黒い父上・・・」

 

 あいつの父上ということはあいつが騎士王?

 

 だが、それにしてはなんか邪悪な気を・・・。

 

「オルタ化しています。詳しい説明はあとで」

 

 ジャンヌさん説明ありがとうございます。

 

「久しぶりだなモートレッド」

 

「ああ・・・」

 

 緊張感漂う二人。その因縁を俺はまだ知らない。だが、簡単に立ち入ってはいけないものを感じている。

 

「そっちが敵対陣営ってわけか。しかもセイバーはこの上ない強い因縁を持っている。偶然では片づけられないよな?」

 

 曹操も変身をする。基本形態黄金のアギトに。

 

 その側では複数のアギトが姿を現す。

 

 俺たちと同じアギトがここまでいるとは・・・

 

『さあ・・・せっかくだ。聖杯戦争――神人<アギト>大戦を始めようじゃないか』

 

 アーデンの側にも一体のサーヴァントが姿を現す。

 

「国盗りの時間の始まりだな。地獄から帰ってきたぜ、抜刀斉」

 

 それは全身包帯の上から紫の着物を着崩した男。その眼は・・・良太郎に向けられていた。

 

 その良太郎も頬に十字の傷を浮かび上がらせながらその男をにらみつける。

 

「サーヴァントというのは厄介でござる。死人が生き返るのだからな」

 

「お前も死人といえるじゃねえか。まあ、二度も転生してくるなんて想定の埒外だが。」

 

「違いないか。めぐり合わせを恨めしく思う」

 

 こいつ・・・良太郎の前世のまた前世の因縁か!?

 

 良太郎は大変愉快な経緯が判明している。

 

 少なくとも二度の転生を経験していること。

 

 最初の電王から何故か幕末――人斬り抜刀斉という最強の剣客となり、人々のために苦悩しながらも戦い抜いた過去があるのだ。

 

 その際に得たのがーー飛天御剣流という化け物剣術。

 

 その激闘の中で最大クラスの相手だったのたしか・・・

 

「・・・おい志々雄。お前もあいつらの因縁か?」

 

「ああ、愉快だねえ。あのガキの因縁の多さ・・・相当なものだぜ?存在そのものが特異点ってよく言ったもんだ。俺でも敵わねえな」

 

 唐回しに俺のことを揶揄ってやがる。

 

 アーデンは己のサーヴァントが俺の身内の因縁と知り、頭を抱えている。

 

「・・・本当に嫌になるねえ。ここでつぶそうかと思ったのにうかつなことが出来ない。何が飛び出してくるのかわからんのがこわい」

 

 アーデンの腰の腰にはいつの間にかベルトが。それってたしか・・・ノクトが使っていたのと同じ・・・。

 

「そうかい。またてめえと会うなんて、因果なものだな。同じベルトももっているし」

 

 ノクトがベルトを巻きながら登場。シフトが使えるのであちこちに行ってもらい村人の避難をお願いしていたのだ。

 

「なあ・・・・ああ・・・」

 

 その姿を見たアーデンは絶句している。

 

「何故、お前が生きてここにいる?おまけにそのベルト・・・」

 

「色々あって…人生リスタートしてきたぜ?」

 

「そんな馬鹿なことが?」

 

 余りの衝撃にふらつき倒れそうになっている。

 

「お前さんの動揺する姿を見るなんざ驚きだな。まあ、落ち着け。さっきからそうだが、この場に死人が現れることなんざ不思議でもねえだろうが。こっちの因縁もそうだぜ?」

 

 それを叱咤するのはあいつのサーヴァント――志々雄誠である。

 

「お主がそんなことをすることに驚いたでござる」

 

 そんな風に気遣うことに良太郎が驚いている。

 

 そんなことをするキャラではないといいたげに。

 

「しょうがねえだろう。こっちだって驚いている。同じ思いをマスターがしているのなら慰めくらいはするさ」

 

「・・・気遣い痛み入ります。不思議とこの現象が誰の仕業か見当はつきます」

 

 アーデンの恨みのこもった視線が俺に向けられる。

 

 対して俺はいたずら成功といわんばかりの笑顔とピースでこたえる。

 

 実際俺のせいだし。

 

「・・・ああ。やっぱり」

 

 それを見て心底疲れた様子のアーデン。

 

「・・・本当に嫌な相手だ。せっかくあれこれ準備して驚かせようと思ったのに早速返り討ちですよ」

 

 あいつは気を取り直した様子で皆に指示をだす。

 

「皆さんこの場は撤退しますよ?ここで戦っても不利です。戦うのならこっちの陣地で。でないとあいつらの規格外の破壊力で瞬殺されます。それを封じないと。まあ、安心しなさい、アヴェンジャーのおかげでこいつらが陣営に来る理由は十分ですから」

 

「あなたの言う通りだな。それがいい」

 

 アーデンは抜け目ない。生贄として連れ去られた人がいることを利用している、

 

「まっていますよ。我らが儀式を行う大聖杯の場で」

 

「逃がすと思って!?」

 

 曹操も異論無しの様で、その場から撤退しようとする。

 

 当然それを阻もうとするのだが、皆は直ぐに何かを察し其の場から下がる。

 

 先ほどまでいた場所が凍結していたのだ。

 

「ふん。全員避けたか・・・粒素沿いなのは間違いないようだな」

 

 それを行ったであろう女がいた。

 

 青く長い髪に軍服を着た女。

 

 その彼女の声を聴き・・・何故か背筋が凍るような感覚に襲われた。

 

 間違いなくヤバイお方であると、俺の中の何かが警告を発しているのだ。

 

「この場にあいつはいないか。なら伝言を頼もうか・・・そこのタツミにどこか似た可愛い君に」

 

 可愛い君って言葉が俺に向けられる。

 

 やべえ・・・なんかやべええ・・・

 

 この感覚・・・得物を狙う雌豹があの女で俺は哀れなウサギになったような・・・

 

 あっ、思い出した。

 

 これってハルトや朱乃さん、ベヨネッタさんに感じていたのと同じだ。

 

 あの三人に共通するものといえば・・・S。つまりサド。

 

 この人絶対にあの三人に匹敵するレベルの凄まじいドSだ!!

 

 もうドSは十分。こっちはお腹いっぱいだ!!

 

「ポムルよ。私は蘇ったぞ。今度はそっちが約束を果たせと」

 

 ポルムだと!?あいつの知り合いなのか?

 

「約束とは?」

 

「それはあいつと私だけの大切な物だ。あいつに私の蘇りと約束を伝えれば充分だ」

 

「・・・はい」

 

 うん。こいつのことはあいつに任せたら問題ないよね?

 

 あいつも大概なハーレムなんだし。

 

 んん?なんでそんなことを思ったかって?

 

 あいつ目にハートが浮かび上がっているんだよ!!

 

 そんな俺を見てエスデス何故か苦笑。

 

「・・・本当に何を考えているのかわかりやすいな。だが、察しのいい坊やは嫌いじゃないぞ。じゃあ、待っているからなははははは!!」

 

 氷が砕け散るとともに英雄派の面々は姿を消していた。

 

 余りに強烈なインパクトを残して。

 

 キャラだけでもすごいのにあの人絶対に強いよね?

 

 

 

 

 SIDE アザゼル

 

 手遅れだった。その一言に尽きる、

 

 すでに裏京都に襲撃。大将がさらわれたと。

 

 そして、そこには幹部が神器持ちかつアギトだと判明した英雄派の存在。聖杯戦争の開始か・・・。

 

 ポルムのやつは頭を抱えていた。

 

「・・・どうしよどうしよどうしよどうしよ・・・」

 

 イッセーの伝言を聞いてからかなり動揺しているのだ。

 

「なんであいつはこっちに執着するんだ?原作ではタツミの方だったのに。余は好みとは正反対のはずだぞ?なぜだ!?」

 

 ポルムが頭を抱える相手とはなあ・・・。

 

 おまけにやっぱりいたのか。幼馴染。

 

「俺も戦う」

 

 南光太郎。またの名を創世王の片割れーー仮面ライダーblackか。

 

 イッセーのやつも心配していた。あいつのこれまでの経緯を聞いてびっくりしていたのだ。

 

「お前はもう戦わなくても・・・」

 

 その経緯は皆も聞かされている。辛い戦いの後、あの村で心と体も癒していたと。

 

 もう十分すぎるほどにあいつは戦ったといえる。

 

 皆もそう思うだろう。だが、あいつは決意した様子で首を横に振る。

 

「お世話になった優しい人がいる。その人たちのおかげで俺は救われたんだ。その恩人の危機に何もしないほうがよっぽどキツイ」

 

 強い決意だった。そして、再び立ち上がったその姿に皆は英雄を見たといっていた。

 

 仮面ライダーの名を持つにふさわしい英雄だと。

 

「…また戦うのですね」

 

 そんなあいつに寄り添うのがジャンヌ。聖女の子孫の彼女が心配そうに光太郎を見る。

 

「どれだけ傷ついても、あなたは必ず立ち上がるのでしょう。それが定めなら、せめて・・・」

 

 光太郎の手を取り、彼女はいう。

 

「私も隣で戦います。あなただけに傷ついてほしくないから」

 

 優しくも強い決意。よほどのことがないと出てこない言葉。みんなも驚いている。

 

 この前であったばかりの会話と思えねえ。

 

「・・・・・・どうして、そこまでしてくれるの?って聞くべきなんだろう。でも不思議だ。君ならそう言ってくると自然に思えてしまう。何か大切なことを忘れているような・・・」

 

 この反応・・・。

 

「ちょいと待ってね」

 

 イッセーがこのいい雰囲気に割り込んで来やがった!!

 

 空気をよまない割り込みに皆が驚いているが・・・

 

「…やっぱり反応あるわ」

 

 例の転生シャチハタを取り出したぞ?しかもシャチハタが震えて光っている!!

 

「これは。転生者っていうのが分る機能もある。現に誠にも反応したぜ?」

 

 ・・・そんな機能があるなんて初めてきいたぞ!?

 

 本当にとんでもないシャチハタだな!!神滅具認定したのは間違いねえ。恐ろしいことに、まだまだこのシャチハタの底が知れねえ!!

 

 祝福 呪い 転生 それに加えて一体どれだけの能力がある!?

 

「そして光太郎質問。多分そちらの彼女さんとは前世繋がりだ。その前世の記憶をこれで取り戻せるけど・・・つかうかい?」

 

「使う!!」

 

「即答かよ。ほい」

 

 イッセーが光太郎の額にシャチハタを押す。

 

「これで記憶が戻ったはずだけど・・・」

 

「光太郎?」

 

 動かなくなった光太郎を心配そうにのぞき込むジャンヌ。

 

 その彼女を光太郎が抱きしめた!?

 

「えっ?えっ?その・・・」

 

「こんなところまで追いかけてきて・・・君ももの好きだ」

 

 親愛を込めた言葉。

 

「・・・ジーク」

 

「ああ。久しぶりジャンヌ、また巡り合えた」

 

「ホント…探したんですよ?今世でも無茶やってもう・・・」

 

「うん、本当に大変だった。でも、頑張ってよかったよ。こうしてまた君と・・・」

 

『・・・・・』

 

 二人の世界に入っているところごめんだが、

 

「もうマスター。こっちを忘れないでよ!!」

 

「はは。悪い悪い。本当に君まで来てくれるなんて信じられないよ」

 

「さて、悪いが光太郎。お前達の前世。聞かせてくれないか?どうも、お前たちの前世とこの聖杯大戦が深くかかわっている気がしてならねえ」

 

「・・・そうだな。聞いてくれ。これでも前世は俺・・・ホムンクルスだったんだ」

 

 そして、俺たちは知っちまうんだ。このジークという男は英雄派と戦うのにふさわしすぎる男であるってことをな!!

 

「・・・ミーナも他の奴らも探さないとな」

 

 ノクティスがしんみりと話す。

 

「・・・ミーナ?」

 

 その名前に反応したのはライトニングである。

 

 俺も知っている有名人だ。

 

 最近天界が転生天使とした、星の巫女と呼ばれし者の名前と同じだったのだ。

 

「なあ、ノクト、そのミーナってこんな顔していなかったか?」

 

 ライトニングがスマホにある星の巫女の写真を見せる。

 

 それを見たノクトは目を見開く。

 

「なあ・・・なんでミーナが!?」

 

「・・・・あら~あの時の子でしたか」

 

 ジャンヌも写真を見て苦笑いをする。

 

「マジな。こいつのことは気になって行方を捜していたが、英雄派の連中が気絶している彼女を運んでいたことは掴めて・・・

 

「・・・英雄派の拠点はどこだ?今すぐミーナを助けないと。あそこにはアーデンの野郎もいるんだぞ!」

 

 焦って飛び出しそうになるノクティスを抑えるイッセー。

 

「安心しな。そんなことはさせねえから」

 

 こいつも必死で自分を抑えているのが分る。それを察したノクティスも冷静さを取り戻したぞ?

 

「わりぃ」

 

「気にすんな。だが、今度こそ助けるぞ」

 

「ああ」

 

 さて、俺たちはまた聞かないといけねえようだ。

 

 星の巫女ミーナ。聖女の一人とされている彼女。あらゆる精霊、神獣。召喚獣と呼ばれる偉大な存在と縁を結んでいる彼女が天使になったのは必然だった。

 

 この世界の新たな女神となるアーシアの補佐として選ばれた故に。

 

「・・・この人の運命を見ていたけど、そういうことでしたか」

 

 アーシアは一度会ったことがあるのだ。

 

 他でもない俺がミカエルに打診し、会わせてみたのだ。

 

 キリエとともに。

 

アーシアは世界を支える大切な存在。その補佐としてキリエが筆頭となっている。だが、支える人たちは多くて損はないのだ。

 

 実際三人の顔合わせは想定外のハプニングが次々とおきて、俺とミカエルのメンタルと胃に大ダメージを与えてきたが、大成功だった。

 

 すさまじい珍道中になったぜ。

 

 ハプニングのおかげなのか、幸いにも彼女達はすぐに意気投合するほどに相性がよく、三人で頑張っていこうと決めていた。

 

その矢先である。

 

 重要人物といえる。救出は急務だ。

 

「ミーナお姉様には私の加護も付けています。万が一のために捕まったら正体を隠すためのアイテム、そして矢の力で新たな力も与えています。だから、バレいないはずです」

 

 アーシアの根回しにノクトは頭を下げる。

 

「すまねえ」

 

「いいんです。早く助けに行きましょう。私にとっても大切な友達ですから!!」

 

 アーシアと会わせたのは大正解だったな。

 

 何が保険となるのかわからねえ。

 

だが、矢の力って・・・あれか?あの訳の分からん特殊能力を発現させるあれを。

 

一つ一つの能力が個性ありすぎて、特殊すぎるあれを?

 

「私がその所有者ですから。適合するかどうかという問題も関係ありません。私自身も闘争心は全くないです。それでも使えるのだから、誰でも目覚めさせることが出来ますよ。もっとも、因果が強い故に、あまり広めてはいけない力ではありますが」

 

 アーシアの背後から現れたのはマザーズロザリオと呼ばれる存在。その手には一本の鏃がある。それの所有者でもあるっておい・・・。

 

「キリエお姉様にはすでに発現しています。私の知る限り、最も優しい力を得ています。ミーナお姉様にいたっては、黄金の力といったほうがいいですかね?」

 

『・・・・・・』

 

 ただでさえ最強の天使と目されるキリエ。

 

 そこに新たな力、

 

ミーナの方にも。

 

 なんかすさまじく嫌な予感が・・・。

 

 なんかやべえ力を得ているような。

 

「私もその力を貰ったわ。サーヴァントのはずなのに眷属ってなんなの?」

 

 その力をマルタにも!?

 

 って、あいつ既に受肉しとる。

 

嘘だろ・・・完全な形で聖女マルタが復活するなんて。

 

 しかも生前にない何かの力を得た状態で?

 

「長い付き合いになりそうですがよろしくです。白金の星の力はそのためのです、実際に使っている方とはすでにお話しましたよね?」

 

「ええ。凄くぶっきらぼうな人だったけど、やれやれだわ」

 

「口調移っています」

 

「あらホント」

 

 なんかさらっと飛んでも発言してねえか!?

 

 俺たちが発明した並行世界関連の技術をいつのまに・・・

 

「・・・仕方ないわねえ。あなたを放っておくこともできないのは間違いないし」

 

 マルタとアーシアの相性もまた抜群だということだ。

 

 聖女軍団が生まれないかと俺はひそかに危惧するほどに。

 

「他にもいい人材をスカウトしないといけないわね。まあ…一人は目の前にいるけど?」

 

 マルタの視線がジャンヌに注がれる。

 

「へっ?私?」

 

「この戦いが終わった後、あなたも使徒になっているでしょうね。あなたの妹も勧誘したいわね。あなた自身魔法少女でもあるのでしょ?魔女とも相性いいと思うのよね」

 

 彼女もスカウトの対象らしい。

 

 ・・・マジで聖女軍団誕生か?

 

 ついでに魔女軍団まで?

 

「そういえばミーナお姉様とノクトさんの関係は?」

 

 アーシアが肝心な質問をしてくる。

 

 皆も知りたかった重要な部分だ。

 

 その答えは衝撃的なものであった。

 

「俺の前世の婚約者。色々あってアーデンに殺された・・・な」

 

 凄まじい重さの因果に俺は眩暈を覚えたぜ。

 

 今回は因縁だらけの戦いだ。

 

 まだほかにも因縁がありそうで怖い。いや本当に。

 

 

 

SIDE ミーナ

 

 アーデンの姿を見たときはぞっとしたわ。

 

 前世で私を殺した男、その姿を見て私も記憶を取り戻したのだ。

 

 だが、念のためにあれを使っておいてよかった。

 

「アーシアちゃんに感謝ですね」

 

 顔を変える指輪。人造神具の一種らしいのだが、顔を変えるという一点のみの機能故に、見抜かれることはない。

 

「転生天使を捉えても碌な人質になりませんねえ。しかたない。このまま邪魔できないようにとらえておきなさい」

 

 力を封じるための首輪も嵌められ、無力化できたと思っているアーデン。

 

 でも、私にはあれがある。

 

 先ほどビジョンは出してみたが問題はなさそうだ。

 

 なら早速情報収集といきましょうか。

 

 黄金の力・・・これまでの研鑽を試すときが来たようだ。

 

 実際に使っていた人が別の世界にいた。その人は気高く、夢を命がけで追い続け、実際に叶えた。

 

 私はその人を深く尊敬し、アーシアちゃんの力の一つである並行世界への干渉する力を、他の力と共に応用させ、直接会話する機会を作ってくれた。

 

そして、許可をもらってこの名前を使わせてもらっている。

 

 これはある意味、神の創世の権能一部と言っていい強大な力。

 

 キリエさんと同じ、強大な力を私は持っている。

 

 私はもう一人の私の名前を告げる。

 

「ゴールド・エクスペリエンス」

 

 

 




続きはぼちぼち書いていきますのでよろしくお願いします、


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ラスボスだらけの聖杯戦争

お待たせしました。聖杯戦争開始編を投稿します。

 最高にヤバい相手陣営のサーヴァントたちをお楽しみください


 

SIDE ダンテ

 

 俺は飛び起きた。

 

「・・・・・・・」

 

 その直感は間違いねえみたいだ。

 

「・・・パパどうしたの?」

 

 その様子を見た娘――パティが心配そうに声をかけてくる。まったく、親に内緒でやんちゃする困った娘だ。

 

「・・・スパーダの因縁?」

 

 その言葉に強張っちまうのは迂闊だったぜ。

 

「私も胸騒ぎを感じたから。魔女としての勘もあるけど・・・もっと奥、私の血と魂が騒いでいるの。何かとんでもないことがおきようとしていると」

 

 ったく。悲しいがパティもまた俺たちの一族ってわけだ。まだ幼いながらすでに一流の実力を身に着けてもいる。

 

 魔女としての実力は本物だ。

 

 だからこそ、わかるのか。

 

「・・・置いていくとはいわないで。私も行かないとなっているから」

 

「だがよ・・・」

 

「行かせてあげなさい。私たちもついていくから」

 

 修学旅行中のやつらを除いた全員俺の寝室にきやがったぜ。

 

「・・・・ダンテ」

 

 トリッシュも感じているということは・・・そうっか。やっぱりあいつか。

 

「私も魔女の先輩の仇という大義名分はあるわ」

 

「同胞の仇」

 

 お袋のことをここで出すなよ。

 

「ったく、暴れたいだけだろうに・・・んん?巧からメールだ。何々京都で聖杯戦争。ネロが謎のサーヴァントを召喚。アヴェンジャーってこと。魔界関係ということはわかるが他が全く不明。写真送るから見覚えが無いか連絡を欲しいって・・・!?」

 

 俺はそのメールに添付された写真を見て・・・絶句した。

 

「まじかよ・・・」

 

 聖杯戦争の仕組みは俺も知っている。

 

 簡単に言えば死んで座に昇った英雄を召喚するというものなのは知っている。

 

 でもあいつはそんな高尚な存在じゃねえぞ!?

 

 メールで送られてきたのは変わり果てたかつてのあいつの姿・・・

 

「嘘でしょ・・・」

 

 トリッシュも絶句しているが無理もねえ。

 

 召喚には縁がいるというが・・・まあ、ネロなら色々な意味で最高の縁だよな。

 

 あいつの中にあれもあるのだしな。むしろ必然だったかもしれん。

 

「・・・ったく、おかげで胸騒ぎの元凶がいる場所もわかった。スパーダ眷属全員でいくぞ!!!緊急事態だ!!済まんがクレドは他の面々へ連絡を頼む。下手したら京都だけの被害で終わらんかもしれねえ」

 

「えっ?それってどういう・・・」

 

 クレドに向けて俺は告げる。

 

「あいつとあいつがが復活しようとしているということだ。辟易するくらいにしつこいやつだ」

 

 今回ばかりは人生のスパイスが効きすぎる気がするぜ。

 

 

 

 SIDE イッセー

 

 俺たちはその日の夜のうちに行動開始したのだが・・・・相手は狡猾だった。

 

 戦いの舞台をなんと夜の京都そのものにしやがったのだ。

 

「・・・そうきやがったか。こいつらの良心に漬け込むあたりなかなかえげつねえな」

 

 京都の街に認識阻害だけを用意して戦いの舞台にした。大規模な破壊技が使える俺たちの対抗措置として。

 

 実際に俺はその気になれば国一つくらい消し飛ぶほどの破壊力を発揮することができる。

 

 だが、むやみやたらに発揮ことはできない。

 

 発揮できるためにはゾーンや各種結界などで隔離をしないと危なすぎる。

 

 並みの破壊力ならまだいける・・・。だが赤のアギトの力、ゴジラ関連の力は封じられてしまった。

 

「いい修行になるではないか」

 

 新たな師匠――スカハサ師匠は肩を竦める。

 

「お前たちの可能性はそこにあるということだ。特にイッセー。お前の相棒の一人の力はそこを補える手段になると私はにらんでいる。限界までがんばってみるがいい。ドラゴンもそうだが、逆境、そして実戦こそが最高の修業となり、糧になる。安心しろ、私もフォローする」

 

「そういうことだ。俺たちとともに戦うマスターっていうのも珍しくていいや。まあ…いささか逸脱したやつもいるが・・・・」

 

 モートレットの視線の先にはマルタの姉さんがいる。アーシア直属の使徒となることが決定した姐さん。その次のスカウトは・・・師匠だと!?

 

「そうそう、あなたもスカウトに応じてくれるの?」

 

 神殺しの名を持ち、英雄の師匠として有名はスカハサ師匠。それをスカウトだあ!?

 

「・・・そうだのう。まあ、いいぞ。この戦いが終わったらスカウトに応じてやる。だが、神殺しの私をいいのか?」

 

「だからこそです。万が一私が駄目になった時の際の抑止力にも・・・」

 

「そんなことを言うものじゃないぞ?」

 

 アーシアの言葉にスカハサ師匠は言葉をふさぐように抱きしめて答える。

 

「・・・・・・・お前は私が知る限り、最も優しい女神だ。私が手助けしたくなるほどのな。もっとも、その妹分的な魅力は魔性という言葉でも足りぬが・・・」

 

 スカハサ師匠もまた周りを見て喜ぶ。

 

「私にとって、この世界は天国みたいなものだ。のう・・・剣崎?」

 

「まあ、図らずも似たような境遇ですから。お互いに一度本気で戦ってよかったですね」

 

 剣崎さんが応援として駆け付けてくれたのだが、その際にスカハサ師匠と出会ってしまった。

 

 二人は出会った瞬間に分かり合ってしまった。

 

 そこからさらに剣と槍を交え、お互いの技術を披露し合い、深めてしまった。

 

「ああ・・・・お前なのだな。私の願いは・・・」

 

 師匠の願い?

 

「私を殺せる相手は・・・」

 

「俺を殺せる相手は・・・」

 

 二人の願いが被った!?

 

「そして、不死を殺せる弟子の誕生か」

 

 スカハサ師匠の視線は優斗と優菜に向けられている。

 

 最近になって分かったことがある。ユウナもまた直死の魔眼の持ち主であるということ。

 

 双子だからなのか、人とも神や不死すらも殺す力を持っていたのだ。

 

 ユウナ自身もしらなかったことらしく、かなり動揺していた。

 

 殺す、死を与えるという一点で最高の異能なのだから。

 

 その対象に例外はないのだ。たとえ神でも殺せる。

 

「お主らの直死の魔眼。それだけのものだと覚えておいてくれ。まあ、私も剣崎もまだまだ強くなれる。それが分かったから簡単に追いつけさせないからな」

 

「ふふふ・・・良い弟子がたくさんいると楽しいですな」

 

「まったくだ。さて、フォースと覇気とやらを研究させてもらうぞ?何、その代わりにルーン魔術をさずけてやるから」

 

「ははは・・・覇気に関してはこっちもまだ研究中ですよ。あとそうだ。それとこれもどうぞ」

 

 そう言ってなんかベルトを剣崎さんが渡してきたぞ?

 

 これってレンゲルの・・・

 

「あの子からいらないと言われて。スパイダーアンデットがどうも強烈な自我をもって目覚めていたみたいで・・・」

 

 剣崎さんの手には返却されたアンデットカード、クローバーのAがあった。強烈な負のオーラが・・・

 

 それを手に取ったスカハサ師匠はつまらなそうに見る。

 

 負のオーラで師匠を覆おうとして・・・

 

「ほう・・・ふん。生意気な」

 

 負のオーラを平然と弾き飛ばしながらの一言にカードがビビったぞ?大きく震えて逃げて・・・

 

「逃がすと思ったか?戻ってこい」

 

フォースの力の一つであるサイコキネシスで逃走阻止?!

 

「フォースとは便利だな。さあ、下手なことをすればどうなるかわかっているな?私の下でその腐った根性――叩き直してやるわ」

 

 必死に頷くカード。紫になっていた蜘蛛のクローバーの模様が、金色へと変化。

 

「ならよし。ありがたく使わせてもらうぞ?レンゲルの力を」

 

「・・・うわ・・・簡単に従えるのか。このあたりは全くかなわないや」

 

 影の国の女王は健在らしい。

 

「早速お出ましってことか?」

 

 飛んできたのはなんか光。

 

 その威力は半端ではなく、一撃で道が崩壊。

 

 撃ってきたのって間違いなくビームや光線の類だよね!?

 

「・・・ア―チャ―?でも、こんなのはなってくる奴なんて知らない」

 

 ロズヴァイセさんが考えながら冷静に分析してくれるのがありがたいって…何が突っ込んできた!?

 

 やってきたのは・・・怪人だった。

 

 ステンドグラスから見て。おそらくファンガイアなのだろう。

 

 蝙蝠のようなファンガイア。ただし王様の様に豪奢な衣装をまとった・・・

 

「・・・・えっ?なんで!?」

 

 それを見て渡が唖然呆然としていますけど!?

 

 一方のその謎のファンガイアは正気をなくした状態で突っ込んできた。

 

その強さは圧倒的でかわすのはいいけど、あいつそのまま突き抜けていったぞ!?

 

 まるで紙を突き抜けるようにビルの壁をぶち抜いている姿は寒気を覚える。

 

 すぐに壁をさらにぶち抜いて襲い掛かってきた姿はまさに恐怖。

 

「おとやああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

もしかしなくても渡の因縁?!

 

「ふふふ・・・良いざま」

 

 そこに現れたのは・・・陰険な男だった。

 

「ビショップ!?じゃあ・・・こいつは!!」

 

「そうです。我が君ですよ。偽りの王子よ。かわいそうに・・・せっかくこのような形で復活させたのに、あなた達への憎しみと嫉妬ですっかり狂ってしまって。ですが、狂っている分、その力は絶大ですよ?狂っていても技量は落ちていないというのは流石ですよ。さあ、行きなさい我が君―――バーサーカー、バッドファンガイア!!」

 

「かあああああ!!」

 

 叫び声をあげるとともにあちこちが爆音とともに破壊。地面も割れていく。雄叫びだけであたりが破壊されるって‥‥初っ端から魔王みたいなやつがでてきやがった!?

 

 まさに狂気の大魔王にふさわしい。

 

 なんていうか、怖い。まるで怨霊みたいな狂気を感じる。

 

 しかも傍から真名隠すつもりもねえ!!

 

 いや、わかっても弱点ってどこっていう相手じゃないとうことか?

 

「・・・単独だとどうしようもない・・・」

 

「半端な狂化じゃないってことか。よりにもよってなんて奴を・・・』

 

 腕を振るうだけで暴風と衝撃波。まともに打ち合えるのは・・・

 

「ふん!!」

 

 鋼兄くらいだね。両手を交差さて受け止めている。既に鬼に変身した状態でだ。

 

「こいつは俺が何とかする・・・ぐううううう!?」

 

「があああああああああああ!!ジャマをするなあああああぁぁぁぁ!!」

 

「ぬお!?」

 

 鋼兄が鬼に変身した状態で押されている!?いや、バーサーカーが腕を振り払って、鋼兄が弾き飛ばされた!!

 

 単純な力で圧倒しつつ、さらに衝撃波を出すだけの技と判断力は残っているわけか。

 

「・・・単純な力で圧倒されるのは久しぶりだな」

 

 上手く流して下がる鋼兄も冷や汗か、

 

このバーサーカー・・・やべえ。

 

「渡。手を組む。俺と一緒ながら不服か!?」

 

「いや助かる。でも、鋼兄を力で圧倒してくるなんて予想外もいいところだけどね。わかっていたけど、父さん相当恨まれているな。恨みがそのままパワーになっている感じがあるよ」

 

「だな。正直相手にしたくない類の相手だ。魔化魍の方がまだマシだ」

 

「なんて奴をバーサーカーにしたんだあいつら・・・正気の沙汰とは思えない」

 

 バッドファンガイア。渡から聞いたことのある先代のファンガイアのキング。その力は魔王級とされてるが、それがさらに魔改造レベルにまで強化された状態で出てきたことにポルムの頭を抱えている。

 

 あいつが地面を踏み鳴らすたびに地震が・・・

 

 あっ、バッドファンガイアの右拳に黒い炎のようなオーラが集中して・・・

 

「お前も家族だぁぁぁぁぁぁ!!1」

 

 これって言わるファミパンってやつか?

 

 それがつきだされるだけで目の前がすべてぶっ壊れて・・・・うわあああああああ!!

 

「ふん!!」

 

 キリエさんありがとうございます。盾の守りは流石です。

 

「悲しい方ですよね」

 

「ええ・・・」

 

 狂気に振り回されるバッドファンガイアを見てキリエさんとアーシアはそろってそういう。

 

 悲しい・・・確かにそうかもな。

 

 自身の力をここまで強化するほどに狂ってしまうほどの何かがあった。それは本当に・・・

 

「お前も家族だぁぁぁぁぁ!!」

 

 って、同情している暇はねえ!!

 

 さっきの一撃を両拳に、そしてそのまま地面を叩いて来やがった!!

 

 理屈かわからねえが、一瞬俺たちの下の地面が泥のように変化したかと思えば、俺たちの足元の地面が一斉に爆発したように・・・

 

 

 

SIDE ビショップ

 

  二度目の復活を果たした我が君は圧倒的ですね。ふふふふ・・・。ただのサーヴァントとして復活させたわけではないのですよ。実験は大成功ですね。我が君にある要素とともに他の英雄の力を付与させることに。大英雄ヘラクレスの狂化した力をね。

 

 スカハサと大地母神のスカディの融合事例もあるからこそ成功したもの

 

 その狂化・・・もとい強化具合は実に素晴らしい

 

 あいつらの地面が爆発したように一斉に吹っ飛んだのだから・・・

 

「・・・逃がした」

 

 だが、ダメージは与えても仕留めてはいないか。仕方ない。

 

 私もサーヴァントの力を使いましょうか。

 

 私がデミとして復活するために取り込んだサーヴァントの力を行使するために魔導書を出現させる。

 

 次々と現れる海魔達。

 

伏せていたゴーレムたちも起動。

 

カビの力も問題なし。

 

 しかも、元となったただの殺人カビと思わないでもらおうか。殺人だけだなんて比べ物にならないこのカビの力、みせてやろう。

 

 魔獣創成の力で再現。そして我がスタンドの力をもって制御、得ることが出来た我が新たなカビ。その名もÈ―3型特異菌。並行世界でバイオハザードを起こし、猛威を振るったもの。

 

 再現できたこのカビの万能性は極めて高い。これをスタンドの力として取り込めたのは極めて大きい。そう・・・もう一人の私との相性は極めていいのだよ。おかげで我がグリーン・デイは緑から黒へと変色してしまったがな。

 

 我が君はこれでさらに魔改造している。ヘラクレスの力を合わせて、不死身の戦士の誕生といっていいだろう。もとよりさらに頑丈になった上で、上半身を吹っ飛ばされても再生できるE-3型特異菌の驚異的な再生能力と七つの試練の組み合わせだ。これで殺しきれるかな?

 

前と同じと思わないことだね。

 

 まあ、何故か「お前も家族だ」という言葉が口癖っているのだが。その理由が不明だ。

 

 この街にすでに私に根は張り巡らせている。全てが終わった後、この街の全ての妖怪、人間を我が眷属にすることができるぞ。

 

 その力を利用して、あいつらの現在位置も丸裸というわけだ。

 

さあ、ただの聖杯大戦と思わないことだ。バーサーカーの枠だけでも規格外なのだからな。神滅具のあの聖杯の力は伊達ではない。

 

 これからの再生怪人は魔改造しないといけない時代なのだよ。

 

 さあ、今宵――魔改造の夜の始まりだ。

 

 まだまだ悪魔は降臨するぞ。

 

 

SIDE イッセー

 

 こちらの予想を軽く上回るほどに相手は悪辣だった。

 

 京都の街全体にすでに色々と仕込んでいやがった。

 

 「まさか、このような形ですでに陣地を構築しておるとは・・・」

 

 俺たちに一斉に襲い掛かってくるのは海魔と石で作られたゴーレムである。

 

 だが、海魔やゴーレム達の様子がおかしいのだ。

 

「なんであいつらこんなに耐久力が上がってやがる?」

 

「いや違う。再生している。いくらなんでもこれはおかしい・・・」

 

 次々と再生していく海魔とゴーレム達。

 

 ゴーレムは一度しにたえたと思ったら海魔と合体。再生してくるし。

 

それをさらに倒したと思ったら次第に砕けた破片が集まって巨大な化け物に・・・

 

「メラ!!」

 

 倍加したメラで焼き尽くしたら何とか解決。

 

―――――――ただの雑魚なのに辟易するくらいにしぶとい、明かにおかしいぞ

 

―――――・・・何か細工されている。

 

―――――ええ。相当悪辣な何かが仕込まれているわ

 

――――焼き尽くすだけでも限度がある。青い炎を貸す。

 

 みんな済まねえ。だが、初っ端からこれかよ。

 

「み・つ・け・た」

 

 そこにまるでアスファルトを泥のようにかき分けながらバッドファンガイアが現れやがった!?

 

 なんか全身に纏っていて、姿がかわっているがあれってなんだ!?

 

  その謎の力でアスファルトを泳ぐってわけがわからんがまじでやべえ!?

 

――――――オアシス!!

 

 しかもバタフライでだぞ!?

 

 訳が分んねえし、本当に怖えぇぇぇ!!

 

 まるで魚の様にアスファルトから飛び出したバットファンガイアは手に大剣を召喚。

 

「ダアアアアアアアアィ!!」

 

 それを俺たちに向けて・・・

 

「ぬう!!」

 

 鋼兄が受け止めた?!

 

 見ると全身が赤く変わり、その上で鎧をまとっている。

 

 手にはアームドセイバー

 

 あれって鋼兄の鬼武者モード・・・

 

 それでも若干押され気味なのか!?

 

「これでようやく何とかなる程度とはまさに神話の怪物・・・イッセーここは俺が抑える!!」

 

 鋼兄に群がる相手は・・・

 

「組むことを了承したんだ。こっちも戦うよ」

 

 ザンバットソードを手にした渡が切り払ったのか。

 

「いけ!!八坂殿を頼む!!」

 

 その隙に二人がバットファンガイアの大剣をはじき、手にした剣で一閃。

 

 しかもただの一閃ではない。事前にチャージしておいた必殺の一閃だ。

 

「ぐうう・・・・」

 

『なっ?!』

 

 剣が食い込んだ瞬間に抵抗が起き、火花が散る。

 

 半端ない頑丈さだ。あの二人の必殺技を何もしないで防ぐなんてどんだけだよ。

 

「・・・お前も家族にしてやる」

 

 バットファンガイアが受けながらも攻撃しようとする。

 

「お前さんの家族になるなんて御免だ!!」

 

「こっちは何とも言えないよ。だってもう、家族ではあるのだから!!」

 

 それに対抗するために二人はさらにチャージ。

 

 威力をさらに上げてきたぞ!?

 

『うおおおおおおおぉぉぉ!!』

 

 二人が全身全霊を込めて振りぬいた。

 

 それに耐えきれず、あいつは縦と横の十字に切断された。これで終わったと思ったが・・・

 

 傷口から黒い何かが出て、くっついて…瞬時に再生した?!

 

 頭も両断にしているのに?!

 

「・・・この程度か?家族にしてやるぞ」

 

『・・・・・・』

 

 必殺技に耐える規格外の頑丈さに加え、予想外の不死身っぷり。それに絶句する二人。

 

 色々可笑しくてファンタジーっていうよりホラーだよ!!

 

「・・・あいつら一体何をした?」

 

「訳が分からないよ・・・・」

 

 復活したあいつの大剣が振るわれる前に・・・

 

―――ロケット!!

 

――――アッパー!!

 

 弦太朗とイリナが突っ込んでバッドファンガイアを止めた!?

 

「うおら!」

 

 そして、金さんが黄金の鉞みたいな何かでふっとばした!?

 

「危なかった・・・」

 

「助かったよ」

 

「いやいや、助け合いは大事さ」

 

「ああ・・・だがやべえな」

 

「わかるわ。私たちも手伝う。ここまでの強敵も、想定の内よ」

 

 イリナの言葉に他四人は気負った様子もなくうなづく。

 

 これまでに遭遇したことのない強敵だ。

 

 渡は不敵な笑みを浮かべる。

 

「やっぱりゴジラとの闘いの経験が大きいよ。まだ冷静になれる」

 

「違いない。力で遥かに上回る相手との闘いで何が大切なのか学べたのだからな」

 

 鋼兄もまた気丈である。

 

―――俺との戦いがここまでこいつらの糧になっていたとはな

 

 ゴジラさんも感慨深くしみじみとかつてない強敵相手に、気持ちでは負けていない四人の背中を見ている。

 

「oh・・・マスターたちも強いねえ」

 

―――――そういった意味でも根性は重要ということだ。こいつらはイッセーからそれを学んでいる。劣勢だからこそ・・・真価が問わるのだから

 

――――そうか・・・その言葉忘れないでおこう。俺もそういう時もあった

 

 ゴジラとドライクのやり取りは正しい。

 

 気持ちで負けない。絶望したらそれで終わりなのだ。だからこそ、粘らないといけない。

 

 諦めなければ、負けなければ必ず打破できるチャンスがやってくるのだ。

 

 だが、ゴジラさんが劣勢って、相手はどんなバケモン?

 

「うおおおおおおおぉぉぉお前ら家族になれぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 バッドファンガイアが吠える。それと共にあいつの全身から電撃がほとばしり、あちこちの道路標識や車が浮かび上がった!?

 

 それだけじゃなく、地面がまるで泥のように変化したと思えば、まるで津波のように襲い掛かって・・・

 

 余りの大惨事に鋼兄ですらも表情を引きつらせている。

 

「狂っている割には手数が豊富だな!!」

 

「魔改造ってレベルを超えている。ほとんど原型が残っていないよ・・・ここは何とかするからみんなは先に行って!!」

 

「・・・だったら、四人にこれを!!」

 

 アーソアがいつの間にか矢を手にし・・・四人に放った!?

 

 矢が後ろに刺さった四人は驚くが、傷も回復。だが、あの矢はそれだけじゃ・・・

 

「何が発現するかわかりません。ですが、良ければ使ってください!!」

 

 土壇場で何かを四人に付与!?

 

「ぶっつけ本番もいいところだな」

 

「だが感謝するわ」

 

「じゃまするなああぁぁぁぁ!!」

 

 ってバットファンガイアの怒りの矛先がアーシアに向いて!!?

 

 すさまじい勢いで迫るあいつに俺たちが向かおうとして・・・

 

 

 

 唐突に飛んできた車と激突してバッドファンガイアがのけぞった。

 

 

 

 しかももう一台おまけで激突したぞ?

 

「ノオ!?」

 

 そして、地面の水道管が破裂したのだろう。すさまじい勢いで地面下から水が噴き出してバットファンガイアが宙を舞い・・・

 

 そこに倒れてきた電柱が直撃だあ?

 

 地面に叩きつけられた後に電線が絡まって痺れ、トラックが突っ込んできてバットファンガイアが吹っ飛んだ!?

 

 吹っ飛んだ先になぜか竜巻があって、さらにあいつは空高く巻き上げられ・・・急に下降気流が起きて地面に叩きつけられたぞ。

 

 さらにそこに追い打ちの落雷!?

 

 止めに地割れで地面の中に消えた!?

 

 なんだこのピタコラスイッチ!?

 

「・・・マザーズロザリオ?」

 

―――――すみません。あなたが狙われると思い、例の能力をあいつ限定で集中させて発動させてもらいました。

 

 うおっ?アーシアの背後から謎のビジョンがまた姿を現した?しかも、喋っているのか?

 

「・・・あの力は出来れば使いたくないのですが」

 

―――あくまでも防衛のためだけです。強力なストーカーよけと思えばいいかと。前回はまだ能力の制御が不完全故にできませんでしたが、今ならこの通りです。

 

「むう・・・ほどほどにしてください。相手が頑丈で不死身だからよかったですが」

 

―――――安心してください。それもわかってやっています。あなた様の優しさを失わせないようにするのもこの私、マザーズロザリオの使命ですので。引き続きこの力の制御に努めます

 

「お願いします。この力は特に危険ですから。普通の人間だと十回は死んでいます」

 

「ぬう・・・おっ?」

 

 突然の事態に訳が分かっていないバットファンガイアが泥のようになった地面から飛び出してくる。ダメージはそこまででないようだが、何がおきたのか把握できずに動揺しているようだ。

 

「ぬうう・・・」

 

 ただ、アーシアを狙う気はなくしたらしい。狂っているからこその本能、または直感で、アーシアを狙ったら何かとんでもないことになると察しのだろう。

 

 こっちだって何がおきたのか全く分からねえが、それだけはわかる。

 

 うかつに今のアーシアに手を出してはいけないと、

 

「アーシア?」

 

「ごめんなさい、この力はまだ話せません。かなり理不尽な力で、こっちも制御しきれていませんので」

 

 アーシアが理不尽っていうほどの力?

 

 訳が分からんという俺に対して、スカハサ師匠と剣崎さんは違っていた。

 

「あれは災厄の力。人どころか神でさえ手にしてはいけない力じゃ」

 

「なんて力を得ているの?アーシアちゃん。それは本当に危ない力だよ」

 

「だから悩んでいるのです。使えるとしてはこのような防衛だけで。際限なく発動してしまったらどれだけの犠牲がでるかわかりません。力のオンオフが簡単なのが救いなくらいです」

 

「世界の理そのもの相手では私も抗いきれのう」

 

「同じく。どうしようもない。フォースの予知でも対抗しきれないよ」

 

 スカハサ師匠と剣崎さんは顔色を青くしている。

 

 えっ?それだけ危険な奴なの?

 

「ですが今のうちに。ポルムさん!」

 

「・・・さっきの最凶の能力に関してはもうツッコまないよ。まったく何でスタンドの力を。まあ、ここでまた召喚するのね。えっと・・・」

 

 渡の側に魔法陣が展開。でてきたのは・・・

 

 素晴らしいバイオリンの音色だった。

 

 その音色にその場の戦闘が止まってしまうくらいに。

 

 狂ったはずのバットファンガイアも手を止めるほど。

 

 それを演奏しながら現れたのはバイオリンを手にした一人の男だった。

 

「残念ながら真名は明かせない。とりあえずはぐれのキャスターと呼んでくれ・・・って」

 

「・・・父さん!?」

 

 うん。渡が前に写真で見せてくれた親父さんだったよ。

 

「・・・う~ん。我が息子よ。三度目の出会いだな」

 

「お・と・やぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ってうお!?なんでキングがここにいる?!」

 

「ここであったがひゃくねんめええええぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 まるで獲物を食らわんとするピラニアのごとく、召喚された渡のお父さんに迫るバットファンガイア。

 

 その猛攻を慌ててかわすのだが、その動き、結構戦い慣れていることがわかる。

 

 手にいつの間にかナックルのようなものが出現し、バットファンガイアを殴るが・・・

 

「やっぱ効かないか」

 

 全く動じない姿を診てすぐに後ろに下がる。

 

「・・・・さらに化け物になってくれて、仕方ないイクザ!!」

 

 突然現れた渡の父さんの腰にベルトが出現したぞ?

 

「父さん・・・来るタイミングが最悪だと思う。でも、ある意味最高ともいえるか。父さんがいるならあいつはここに釘付けになると思う。だから任せて!!」

 

 そうか・・・因縁だらけだよな。聖杯戦争って。

 

「いや、お前たちの運命力が可笑しいだけだ。凄い濃い因果を感じるぞ」

 

 モーさんや、そういわないでおくれ。頭が痛いから。

 

「終わったらお前の親父さんのことを紹介してくれ!!」

 

「ああ!!」

 

俺たちは渡と鋼兄たちに化け物を任せて先にいく。

 

「久々の親子共演。最初から飛ばすねえ」

 

「ゆっくり再会の共演をしたいけど、それもできないから即興でやるしかない」

 

「・・・・・・」

 

 その人は渡を見て笑う。

 

「・・・大きくなったな。一人前の男になった」

 

「父さん」

 

「俺は関われなかったが、きっと色々あったんだし、これからもあるんだろ?だが、お前はそれを乗り越え、これからもそれに挑み超えていく。そんな自慢の息子がここにいる。それは誇っていい」

 

「・・・ありがとう。できれば兄さんと弟も紹介したいよ」

 

「兄はわかるが弟もいたのか…楽しみだ」

 

「紹介は乗り切れたあとでいいよな?渡の父上」

 

「よろしく頼むぜ」

 

「心強いわ」

 

 鋼兄、源太郎、イリヤも続く。

 

「俺も忘れんなよ!!」

 

 あっ、金時さんも忘れていました。

 

なんか金時さんと親父さんが見つめ合い。

 

「・・・あとで語り合おう。なんかいい友を見つけた気がする」

 

「是非に!!」

 

「それに君たちも渡の友達であることだけで信頼の担保は十分さ。よろしく頼むよ」

 

 手にしたナックルをベルトに装着し、変身したのは白い仮面ライダー。

 

 イクザ。対ファンガイア用に製作されたもので、長年にわたってバージョンアップし続けてきたもの。

 

「・・・英霊の特典なのかな?イクザが最新バージョンになってありがたい」

 

「父さんならパワーアップも使いこなせそうだ」

 

「ほう・・・この銃がそうなのか?実戦で使えればいいが・・・」

 

「うおおおおおおおお前たちも家族にしてやる!!」

 

「・・・その前に、できれば、どうしてあいつがこんなに愉快なことになっているか教えてほしい。正直混乱している」

 

「おそらくビショップの仕業としか・・・」

 

「あの陰険眼鏡の仕業か。素晴らしいくらいに仕上がってるわ・・・」

 

 そんなやり取りを耳にしながら俺たちは先に向かった。

 

 

 

SIDE ネロ

 

 俺たちの組で事件が起きていた。

 

 俺のサーヴァント。アヴェンジャーによる不意打ち。

 

 俺の右腕を切断、魔力ごと闋魔刀をうばいやがったのだ。

 

「ぐっ!?」

 

「ネロ!?」

 

 あいつはそのまま手にした大剣を俺に向かって振り下ろし・・・

 

 キリエが盾を展開させ、弾き飛ばした。

 

「…クレイジーダイヤモンド」

 

 そこに何か腕のようなものが出てきてあいつを殴り飛ばした!?

 

「・・・・・・」

 

 右腕を奪われ、膝をつくのだが・・・

 

「ネロの右腕は返してもらいます」

 

 その言葉と共に、アヴェンジャーが手にしていた右腕がひとりでに浮き、俺にくっついた!?

 

「大丈夫ですか?」

 

「あっ・・・ああ」

 

 何がどうなっていやがる?

 

 しかも。異形化していた右腕が昔の普通のそれに戻っている。

 

「アーシアちゃんには感謝しかないです」

 

 アーシア由来ということはスタンドか!!

 

 初めて力を見たが・・・確かにすげえな。

 

 俺も矢は受けているがまだ発動しねえ。

 

 だが、なんとなく必要な時がやってくる。

 

 目下の問題はサーヴァントの方だろう、

 

 闋魔刀はあっちの手にあると。

 

 其れで自身を斬りつけたと思えばアヴェンジャーは変化する。

 

 変化したのは化け物だった。その側では一人の男が倒れている。

 

 化け物は闋魔刀を手に其の場から消える。

 

 一体何がどうなって・・・

 

 倒れたあいつの側には四つの悪魔がいるし。

 

「・・・君がマスターなのかい?」

 

 杖をついた男が立ち上がる。

 

 どうもあいつからサーヴァントの繋がりを感じる。

 

「・・・やってしまったようだね」

 

「やってしまったじゃねえだろ!!」

 

 四体の悪魔の内一体。鳥のような奴が喧しくはやし立てる。

 

「早く追いかけねえと」

 

「そう・・・だね。あれを生み出した責任がある」

 

 男は立ち上がり、おぼつかない足取りで追いかけようとして・・・

 

 俺が肩を貸す。

 

「事情はよく分からねえ」

 

 右腕を闋魔刀と魔力ごと奪われるわ、俺たちのサーヴァントが分裂し、片方が悪魔、もう片方が人間の様だわ・・・ホント何がおきてる?

 

 だが、俺は肩を貸すことを選んだ。

 

「なんで?」

 

「お前のことを何と呼べばいい?」

 

 …ったく、嫌になるくらいにあいつの影響を受けている。

 

 訳が分からねえなら。まずは手をしのべてから考えろってか?

 

 どこの勇者の考え方だ?

 

「俺はネロ。お前のマスターといえばわかるか?あいつとお前の事情に関しては話せる範囲でいいから教えてくれ。無関係ではないからな」

 

「・・・・・」

 

「あいつを何とかする。その目的は同じだろ?」

 

「・・・クス。僕のことはVとでも呼んでくれ」

 

「おう」

 

 だが、あいつの視線が俺の胸元に行き、目を見開いて驚いた様子を見せる。

 

 あったのは綺麗なバラが咲いた十字架だ。

 

「それは・・・」

 

「行方不明になった母親の形見らしい。ユキナっていう名前ってことはわかっているが、顔も覚えちゃいないがな」

 

 これのおかげで俺は薔薇が好きになった。あと雪も。

 

 ユキナって名前はそういう意味だって、日本に来た時に知れたんだ。

 

 そういえば俺の中のアギトの力はその母親由来ってことだな?

 

 しかも名前からして日本人っぽいが・・・

 

「・・・そうか」

 

  Vは苦笑しながらつぶやく。

 

「こんなところで縁があるか。これ以上にない縁だ」

 

 あいつは杖を突きながら指し示す。

 

「兄ちゃん、姉ちゃん頼むぜ!!」

 

 喧しいグリフォンみたいな奴の言葉に首をかしげながら俺たちは向かう。

 

「私も力を貸しますよ」

 

 もう片方にキリエがいる。

 

 あいつと視線をかわし合う。お互いに同じことを思っていたようだ。

 

 どうも、俺由来の何かの因縁が動いていることを。

 

 

 

Side 良太郎

 

 あちこちで早速戦闘、及びトラブル発生に眩暈がする。そして、こっちの目の前にも敵のサーヴァントが姿を現した。

 

 見た感時、どのクラスが全く分からない。何しろ相手は・・・・球体だったのだ。まるで衛星の様な何か。そこに液体金属が渦を巻くようにしている。

 

 この聖杯戦争は無茶苦茶が過ぎる。

 

 人外が普通にサーヴァントとして現れているのだから。

 

「私はアーク。アーチャーのクラスとして召喚された」

 

 アーク・・・・って、何?

 

「異なる世界にやってきているのを確認。この世界の表と裏の情報は入っているが・・・いまだ情報不足。故に…情報の収集を開始する。この世界の人の絶滅の為に」

 

 その一言で僕たちは確信した。

 

 あいつは放置してはいけない相手だと。

 

「もっとも、今からクラスはフォーリナーに変更されるが・・・」

 

 その言葉とともに無数の人型の何かが出現。その数・・・十体。

 

「ゼツメライズキー装填。データ収集を開始する」

 

 人型の何かが変身、こっちに襲い掛かる。

 

「アーチャーなら弓を使えよ!!」

 

 ローランさんが悲鳴をあげると、アークの目からビームが発射される。

 

 それを慌ててかわす僕と姉さん。

 

「飛び道具なら豊富だ。文句はないはず」

 

 その言葉と共にアタッシュケースの様な何かが出現。変形したかと思えば銃や大砲、弓のような奴にまで変形!?

 

「それに弓もあるし、矢もある。情報体だった私がアーチャーとして復活する権利は十分にあるわけだ。あらゆる精神の中にいる情報体だった私が理に触れ、座に至り、ここを狙ってアクセスした甲斐はあったというもの。他にも同じことをしでかした奴らが四人ほどいたがな」

 

 アークの言葉が本当なら、召喚するところを自身の意思で介入、復活したということか?

 

 世界の座にアクセスしてくるなんて化け物もいいところだ。

 

 それにちょっとまて。同じことをしたやつらが他にも五人だと!?

 

 一人はまあ・・・あいつだろう。地獄で国盗りをしても可笑しくない奴だ。

 

 復活してきてもおかしくも何ともない。前世のまた前世での短い付き合いが、あいつはそういう奴だ。

 

 気になるのは他四人。

 

 一人はアヴェンジャーだろうか?

 

 あいつも何か異質な者を感じる。

 

「なあ・・・こいつ。間違いなくどこかの世界のラスボスだよな?」

 

 姉さんが冷や汗をかきながらそう予想しているけど、僕もそれが間違っていないと思うよ。

 

「向こうの世界で出来なかった滅亡を!!」

 

「まさに最初からクライマックスか」

 

――――今回ばかりは笑えねえよ!!

 

 モモタロスの決め台詞が嫌な意味で突き刺さってくるなあ。

 

「クライマックスにはまだ早いというものだよ」

 

 こうしてこっちも戦いを挑むことになる。

 

 

 

 SIDE 曹操

 

 グレートレッドを呼び出すために行っている聖杯戦争のはずだったのだが、何やら嫌な予感はしていたのだが、的中したようだ。

 

「・・・すみませんねえ。どうもやばい連中ばかりがこっちにやってきて」

 

 アーデンも苦笑いを浮かべながら各戦いを見ている。

 

 バーサーカーはまだわかるのだが・・・

 

「アヴェンジャーのやつがやらかした。あいつ・・・もともと聖杯の中に入っていたようでな。徹底的に邪魔されないように動いていたのだが・・・」

 

「それは聞いている。それでも魔力の多さでグレードレットを呼び出すには十分だと判断して聖杯戦争と生贄を用意した。向こうの介入で聖杯戦争となったのも織り込み済みだったわけだが・・・」

 

 魔力を発している聖杯。

 

「・・・なぜだろうな。予定にない、それでいて何かとんでもないやつが来そうだぞ?」

 

「アギトの勘ですかい?」

 

「ああ」

 

「それは厄介だねえ。何が来るのやら」

 

 俺は空を見上げる。どうも、空間ではなく天から何かが引き寄せられている気がしてならない。

 

「・・・魔術というのは不思議なものだな。だが、しっかりとした理論がある。その点はまだ学ばないといけないようだぞ?マスターよ」

 

「・・・一体君は何の英霊なんだ?ランサー・・・」

 

 絶霧を使う仲間が英霊であるランサーを引き連れてやってきた。

 

 それは確かに槍を手にしてはいた。だが、纏っているのは鳥を模したような不可思議な鎧だった。右腕はSFに出てくるようなアームキャノンになっているのだ。

 

「いや、レイヴンビークでいい。それよりどうだ?この管制室は?」

 

 ランサー・・・レイヴンビーク。

 

 明らかに地球外の英霊である。

 

「・・・・・・」

 

 魔獣創成を使う幹部の側にはライダーがいる。

 

 こっちも多分地球外の何かだ。

 

 銀色の体を持つ謎の存在。

 

 何やら神性すら感じる何かがいる。

 

「・・・しかたない。私のドローンを貸してやる」

 

 彼の周りに何やら巨大なUFOみたいなドローンが無数に出現。

 

「・・・かの者よ。まだ本気じゃないよね?」

 

「・・・まずは復讐者のお手並み拝見だ。今回の主役は私ではない」

 

「ふん。超常的な存在というのは、視点すらも超悦しているな。だが、こちらも同じだ。だが、我々も存在くらいはアピールしていいかもしれないな。我が娘と・・・我が野望を粉々に打ち砕いてくれた大魔王へのな」

 

「・・・あいつにはこっちも因縁がある。あいつが人類に味方したゆえに、我々種族――文明が消滅したという因縁がな」

 

 どうもライダーとランサーは大魔導士―――いや、大魔王ポルムとも深い因縁をもっているようだ。

 

「ケフカにはこのまま儀式を進めるように伝えておけ」

 

 ここにいないキャスターは儀式の担当である。あいつも何かのラスボスなんだろうか?

 

 相当イカレた人物であるが、腕は確か。

 

 だが、それ故に最新の注意を払う必要があるのだが。

 

「・・・こっちもそろそろ打って出ようか。抜刀斉とは・・・」

 

「はいはい、存分にやりなさいよ。あっちも相当強くなっている。楽しめますよ」

 

「そりゃいい。地獄で身に着けた力を存分に発揮してくれる」

 

 アサシンーーー志々雄誠も動きだす。

 

「・・・神の後継が近づいている。こっちも動きだすとしよう。英雄となるために」

 

 こっちの陣営を見て思う。

 

 どうも神の後継の影響としか思えないのだ。これだけの連中が集まったのは。

 

「あいつが世界の中心たる人物か確かめるために」

 

 アギトとしてではなく、人間として、神の後継を見極める。

 

 だがこの時俺は気付いていなかったのだ。

 

 彼はただ神の後継になったわけではない。幾多の災厄、試練を乗り越え、多くの絆を紡いだことのためにあると。

 

 こちらも想像できないほどの多くの絆と災厄を引き寄せ、乗り越えてきた彼の負の意味での真価。

 

 想像もできないほどの災厄がこの地を襲うことに。

 

 

 

 

 SIDE ???

 

 呼ばれている・・・

 

 一度敗れた我の体を時間かけて修復。永い眠りについていたのだが・・・

 

 我は目覚める。

 

 何者かに呼ばれて・・・

 

 眼下にひろがるのはかつて辛酸を舐めた地球という星。

 

 そこに…あいつがいるのを感じる。

 

 今度こそ倒す。

 

 我が我である事を証明するために。

 

 まって居ろ・・・ゴジラ。

 

 我がオリジナルよ

 




いかがでしたか?

ランサーはメトロイドシリーズからの参戦。

ライダーはこっちが長年やっていた地球防衛軍というゲームからの参戦です。

両方ポルムのやらかしを添えています。


 そしてキャスターは・・・分かる方はいましたか?わかる方はそのヤバさを理解してもらえるかと。

 
 最後のやつは・・・イメージはミュウツーの逆襲だったりします。ではまた会いましょう


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