腐りきったその目は隻眼と化す (Pp)
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嘘をつく,世間では一般的に忌み嫌われる行為だ。時には誰かを傷付け,時には誰かを陥れ,時には...etc。終いには「嘘つきは泥棒の始まり」なんて言葉まで存在する。ある日嘘についての授業を受けたことがある。その時隣の席の山本君は先生にこう言った。「皆んなが嘘を付かなければ世界が平和になるんじゃないの?」......確かに誰しもが嘘を付かない世界があったとして客観的に見れば偽りのない美しい世界に見えるかもしれない。だが考えて見れば嘘が無い=平和とは限らない。嘘が無いということは誰しもが自分を偽らずに生きていくということだ。つまりそれは嘘によるリミッターが外れるということで恐らく他人は他人を包み隠さず正直に評価するだろう。()()()()()(ここ重要)

それが良にしても負にしても結局の所面倒ごとは免れない。そういう意味では人間は嘘をつくという行為のおかげで今こうして生きていられるのかもしれないという矛盾。嘘は時に誰かを傷付け時に誰かを陥れ時に.............誰かを救い..時には身を守る。つまり嘘=悪ということでも無いらしい。()()は嘘を付かなければ生きていけない存在なのだ。そして俺もまた,自分を偽り続けていたのに,

 

 

「駆逐」

 

その短いたった2文字でまだ生まれて十数年の俺の人生を終わらせようとしてくる奴らがいる。俺は奴らに遭遇すれば可能な限り抗い続けた。奴らは何処までも追跡してくる。其れこそ地の果てまでと言わんばかりの。普通に生活していれば追われることなんて殆どない筈。いや,()()()に生まれたかによって人生は大きく左右される。一つは平凡な日々を送る方だけの人生。そしてもう一つは喰う喰われ奪い奪われの血濡れた悲劇の世界。いや,その悲劇というのも平和な世界の住人だからこそそう思うだけなのかもしれない。少なくとも俺は少し前までは前者だった。なのにいつの間にか俺は.......

 

 

背後からは鍛え上げられた肉体の男性二人組が俺のことを血眼になりながら追いかけて来ていた。天気は雨で俺は全身びしょ濡れ状態だ。頭上から額にかけて垂れ下がってくる雨粒の感触は気持ち悪い。

 

ただ追いかけられているだけなら逃げはしない。何らかな方法を取って撃退するだけだ。しかし奴らの手にはとても強固な素材でできた武器が持たれていた。どうやら二人組は俺に逃げられていることに対して少しづつ苛立ち始めている様子のようだ。ましてや今日は土砂降り。それだけでイラつかせる要素が一つ増えたと言っても過言じゃない。

 

「手間取らせやがって!」

(いや、手間とらせてるつもりないんだが)

 

何処までもついてきそうな二人に対し俺は走りながら質問をした。

 

 

「なぁ,何であんたら必要以上に俺のこと狙ってくんだ?」

「.....」

「だんまりですか」

(成る程こっち側に成るべく情報を与えたくないんだな。そういうとこはしっかり出来てる。....それにしても...こいつら.......................何処まで追ってくんだよ!)

 

走りながらも俺は少し先にあるどデカイ電信柱を目で捉えていた。先程よりも少しスピードを上げていく。するとそれに合わせて後ろの二人も声を荒げながら俺の後を追おうとしてくる。

 

「はっ待て逃すか!!」

 

俺は声を荒げる二人の男を無視してそのまま全長数メートルはあろう電信柱に向かって地面を蹴り上げ飛翔した。突然何が起こったのか分からない様子の二人組は視線を電信柱に上げるが...

 

「いない!?くそっ逃げられたか」

 

其れもそのはず俺は敵の死角を利用して飛び乗った電信柱からそのまま背後へと回っていた。二人組は俺に気づかないまま後ろを振り向こうとした。

 

「へ?」

 

突然隣の男の体が前方へ吹き飛んでもう一人の男が呆然と立ち尽くす。一瞬何が起こったのか分からないご様子で....。

 

「どうした——

 

言葉を最後まで発することなくもう一人の体も勢いよく吹っ飛んだ。直ぐにそれが敵からの攻撃と悟った二人は立ち上がり辺りを見渡す。

 

「ちくしょう。あの野郎か?!ぶっ殺してやる!!」

 

そう強く出る二人はその後先程と同様また間抜けな声を漏らした。

 

「へ?.....」

 

ようやく気付いたようだ。さっきまで自分達の手元にあった筈の武器が既に無くなっているということを......

 

「くそ!?俺たちの武器は何処へ行った!?」

 

そんなお二方の疑問は目の前にいる俺を見て直ぐに解消された。それもそのはず俺の両手には2人が持っていた武器が握られていたのだから。

 

「てめぇっ!いつの間にか奪いやがった!?」

 

「あんたらが馬鹿みたいに転んでる時に拾っただけだ」

 

と言葉を発して俺は2人の体にもう一撃を浴びせた。再び吹き飛びそれでも何とかして立ち上がろうとする二人組。しかしその2人組の顔を見ればもう俺に対して明らかに戦意喪失しているというのが容易に捉えられた。奴らの唯一の対抗手段はもうこちらの手元にあるのだから。

 

「おま,お前!?今何で攻撃した!?明らかに手や足の感触じゃなかった!それにお前.....」

 

そう何かを問いかけてくるが俺がそれに対して答える義理は一切ない。そしていつの間にか俺に対する問いかけは泣き言へと変わっていた。

 

「た、頼む!殺さないでくれぇ!」

 

「うちにはまだ若い女房や子供がいるんだ!お願いだ頼む!!」

 

心底苛立ちを覚えた。

 

(こいつら,子供がいるとか女房がいるとか好き勝手言いやがって....。ならお前らは何で罪のない女子供を容赦無く殺してんだよ。矛盾してねぇか?こっちの理由を聞く間も無く殺しにかかってきてその癖自分がやられそうになった途端、手のひら返しの命乞い)

 

「命乞いなんてするぐらいならはなから狙ってくんなよ!!」

 

そう怒声を浴びせ俺は2人の男にもう一撃を強いのをいれた。鈍い音と共に2人はそのまま民家の壁へと押し当てられた。倒れた二人はピクリとも動かない。恐らく気絶してしまったのだろう。

 

「」

 

その言葉と共に俺は前へと走り出した。降り注いでいた雨はまるで俺の今の心情と繋がっているのかというぐらいの勢いで激しい豪雨になっていた。前方から激しい突風が俺の動きを遮る向かい風となって押し寄せてくる。それにより一層苛立ちが増しつづけ俺はただ雨を降らしているだけの空に向かって大きな雄叫びを上げた。

 

「おぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!」

 

 

 

 

走っているといつの間にか自分が向かおうとしていた目的地へとあっという間に到着していた。そこは誰もが親しみのある喫茶店。俺は息を荒げながらそのまま既に閉店した喫茶店の中に入ろうとした。ドアを開ける間際鈴の音が鳴り響き誰かが入ってきたことを中に伝えていた。すると奥のドアが突然開かれて暗い店内で一つのシルエットが浮かび上がった。俺は特に誰かと警戒することもなくそっと店内の椅子に腰をかける。

 

「おかえり比企谷君。雨でずぶ濡れだね。どれ今タオルを持ってくるよ」

「ありがとうございます店長」

 

俺は渡されたタオルで髪の毛体をゴシゴシと拭いた。しばらくしたら直ぐにタオルはびしょ濡れになり2枚目のタオルに手を伸ばそうとする。すると聞き覚えのある音が耳に入ってきた。それと同時に店内に溢れる馴染みあるコーヒ豆の香り。どうやら今コーヒを淹れてくれているようだ。

 

「はい,どうぞ」

「助かります」

 

そう言葉を返し俺は湯気の立っている熱いマグカップに口をつけた。口の中にはコーヒの独特な香りと苦味が広がっていく。俺はいつからかこの今飲んでいるコーヒとあるものしか口に出来なくなっていた。他のものは全て身体が受けつけず嘔吐してしまうのだ。しかしそれは決して生まれつきだからという理由ではなくもっと別のところに原因がある。俺は口の中で熱いコーヒーを味わいながらこの喫茶店"あんていく"の店長"芳村"に先程あったことを話した。

 

「芳村さん,さっきまた奴らに追われてたんすけど、こっちが優位になった途端に命乞い。勘弁して欲しいですよほんと」

 

 

 

 

俺のいつもの愚痴に対して芳村さんは真剣に聞いてくれた。

 

「でも殺さなかったんだろう?」

 

「勿論です。そんなこと出来ませんよ」

 

「君が元は普通の人間だったからかもしれない。.......でも君は優しい」

 

俺が殺さなかったという言葉に対し芳村さんはいきなり優しい声をだした。

 

 

「..........」

 

「まぁ今日はもう遅い,妹さんも待ってるんだろう?」

 

「えぇ,..........一応...」

 

すると芳村さんはいきなり立ち上がり締めていたカーテンをゆっくりと開いた。俺は窓越しに外を見つめる。目を見開いた。先程まであれだけ降り注いでいた豪雨がいつの間にか止んでいたのだ。

 

「さぁ,止んだことだし今日はもう帰りなさい」

「あっ何かすいません。愚痴聞いてもらって」

「ふふ,誰だって愚痴をこぼしたい時ぐらいあるさ。またおいで」

「ありがとうございます」

 

俺は芳村さんに会釈をすませて外に出た。今は何時だろうか。そんな疑問が浮かび俺はポケットの中に入っていたスマートフォンを起動させた。そして気になる時刻は

 

「17時2分!!って......反対だわこれ。2時17分!!嘘だろ?!」

 

反対に見ていたスマートフォンを元に戻しポケットにいれて俺は急いで自宅まで戻ろうとした。その時不意にポケットに入れたスマートフォンからバイブ音が鳴り響く。

 

「誰だよこんな時間.....」

 

すると俺の中にある一つの可能性が浮かび上がった。

 

「まさか、小町?!」

 

急いでポケットの中に手を突っ込んでその光っている画面を直視する。

「不在着信......まぁそうだよな、小町から来るはずないよな」

 

俺は通話ボタンを押してそのまま耳元にスマホを当てた。スピーカーの奥からはノイズとともに何やらボソボソと声が聞こえて来る。

 

「いたずら電話か.....切るぞ」

 

「あ」

 

切る前に何やら声が聞こえたが御構い無しにポケットにスマホを戻した。人は何かに期待を寄せて違う結果の時、期待してない時よりも更に深く沈む傾向がある。まさに俺も今その状態だった。少し気落ちしながら俺は家へと帰宅することにした。

 



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第1話 卒業

三月......開花し始めた桜の花びらがヒラヒラと舞い降りてまるで降り出してきた小粒の雨ののようにその地面をピンク色へと染めていった。そっと辺りを見渡せばそこでは別れを惜しみ涙を流すもの,新たな決意を胸に目を輝かせるもの沢山の人々が賑わっている。

今日は此処千葉市立総武高校の卒業式だ。 玄関前では生徒達の保護者が涙を流し我が子の成長を実感しながらもその成長を写真に収めようとカメラを回していた。

(今日で,ここともお別れか.....)

 

  卒業,その言葉にはあまり意味がないというかキリがないと思う。何故なら卒業の次に待っているのは必ず始まりだからである。例えば高校を卒業したからと言ってそこから始まるのは大学への進学や企業への就職,そして非労働者(いわゆるニート)など大半がそのどれかに当てはまるだろう。もしかすると本当の卒業というのは人生からの脱退,いわゆる"死"とやつだけなのかもしれない。いや、もしかしたら死後の世界が存在してまたそこでは新たな人生が待ち受けている。そんな場合もある...いや、もしもの話なんてしても意味はないが.....。簡単な話,何かが始まれば何かが終わり何かが終われば何かが始まる。それでこの世界は成り立っている。.............因みに言うと俺は始まりという言葉が嫌いだ。しかしその言葉に関して語るのならそれは此処で俺の数々のトラウマを掘り起こさなきゃいけなくなる。

 

「さてと,さっさと帰りますか」

 

  先程教員の"平塚静"にだけ別れの挨拶を済ませた。あとはもうこの学校でやり残すことはない。俺はざわざわとしているその場を押しのけてゆっくりと校門まで向かった。校門の目の前まで差し掛かった時,誰かが俺の背中を掴んだ。

 

「!!」

 

 俺は振り返り俺の背中を掴んだであろう人物に視線を寄せる。

 

「...久しぶり,比企谷く...ヒッキー」

 

 そこには二年の終わり間近に俺が退部した奉仕部の部員"由比ヶ浜結衣"の姿があった。いつぶりだろうか.....彼女に喋りかけられたのは..

 

『持つものが持たざる者に慈悲の心を持ってこれを与える』

 

 

それがその部の方針であった。まぁ難しいことを言ってるようではあるが簡単な話ただのボランティアである。校内の生徒達の悩みを聞いてそれを解決しようと案を出して行動に移させる。しかし奉仕部がやるのはあくまで手助け程度で解決するのは本人次第。全般を受け持つわけではない。

そんな奉仕部にある依頼が持ちかけられた。俺の捻じ曲がった解決方法により彼女達とは疎遠になってしまい遂には唯一の繋がりだった奉仕部をも辞めてしまった。逃げた俺は今更ながら彼女らに合わせる顔がない。

 

 

「ねぇ,ヒッキーあのさ...」

 

 そう喋りだす彼女の声は少し震えている。俺は彼女が次の言葉を話そうとする前に前を向いて足を動かそうとした。その足を一歩踏み込もうとした時また身体が止まった。すると今度は背後から吐息が聞こえてくる。俺はまたゆっくりと後ろを振り返った。

 

「比企谷君,はぁ..はぁ..待ちなさい」

 

 するとそこには息を切らす奉仕部の部長"雪ノ下 雪乃"の姿があった。何故今頃になってこの2人が喋りかけてくるのだろう。そんな疑問がふと頭をよぎる。俺は強引にその掴まれた背中を振りほどき前へ進もうとするが...今度は二人いっぺんに手を引っ張ってきた。

 

「聞いて!!お願い」

 

そう強く由比ヶ浜の声が耳に入ってくる。

俺はまた振り返り一言発して二人の様子を伺うことにした。

 

「何だよ...」

 

 俺が言葉を発したことに少し驚き彼女らはお互い顔を見合わせてほっと溜息をついた。

 

「ねぇヒッキー,本当にこのまま行っちゃうつもりだったの?......そんなの.....そんなの寂しいよ」

 

 由比ヶ浜に続いて雪ノ下も...

 

「比企谷君,最後ぐらいちゃんと話してから別れなさい。仮にも貴方は奉仕部の元部員なのよ」

 

  二人は口々に寂しいなど最後ぐらい別れを言えなどと無茶苦茶なことを俺に言ってきた。正直迷惑だと感じている自分がいる。何故なら俺の中でこいつらはもう過去のものでしかないと自覚していたからである。どれだけ一緒に過ごしてもどれだけ絆が深くても,ずっと会わなければ当然それに対する感情は薄くなっていくものなのだ。

 

「何で何も喋らないの?」

「......」

「怒っているのね。それも当然よ....私たちも貴方にずっと謝りた「悪い,お前ら誰だっけ?」

 

  雪ノ下が何かを言いかけたことを察した俺はそれを遮るようにして虚言を吐いた。これが俺が彼女らに出来るせめてもの気づかいだ。俺が彼女達のことを忘れたことにすれば彼女達は俺を勝手に軽蔑して勝手に諦めるだろう。所詮彼女らにとっても俺は過去の存在でしかないのだから。

 

「え,ヒッキーどういうこと?」

「......言葉の通りだ」

「貴方まさか,()()()一年で私達のことを忘れたんじゃないでしょうね?」

「いや,....思い出せない」

(俺はもう......他人事で悩みたくない)

「......もしかして貴方記憶喪失にでも陥っているんじゃないの?」

「そうかもしれないな。それなら今度医者で見てもらうわ」

 その無神経な一言が膨れ上がっていた爆弾の導火線に火をつけてしまったようだ。普段真っ白な雪ノ下の顔が一瞬にして赤くなっていく。

 

「いい加減にしてちょうだい!!そんな白々しい嘘を....」

「そうだよヒッキー!私たちを忘れたなんて嘘だよね?!」

「........」

 

(一度壊れた関係は.....もう,元に戻しても一緒だ....また何かが理由で壊れてしまうのなら....俺はそんなの要らない)

 

  しばらくして辺りを見渡すと野次馬らしき人集りがこちらに注目して「修羅場じゃんw」と言いながらあざ笑っていた。しかし二人はそんな周りを気にもとめずに俺に対して意見をぶつけてくる。

 

「貴方がちゃんと喋るまで私達は貴方を帰さないわ!!」

「ヒッキーが私達のことを忘れるわけないじゃん!!お願いだよ。........最後ぐらいちゃんと」

 

 いよいよ俺の苛立ちも頂点に達した。俺は考える間も無く無意識に吐き捨てるように言葉を放っていた。

 

「目障りなんだよお前らの存在自体が。ずっと無視してきた挙句に卒業の日になって急に手の平を返すように謝ろうとしてきやがって.....」

(やばい,口が止まらない)

 

 感情を爆発させて喋る俺の姿を見て二人の目には薄っすら涙が宿っていた。それを見て少し心が痛くなりながらも俺はしばらく口を止めなかった。息を切らしながら言葉を言い終わると今度は由比ヶ浜が喋り出す。

 

「違う。私達は別にヒッキーのことを無視した訳じゃないよ!それにヒッキーだって自分から避けてたでしょ...私達のこと.....。もう嫌だよこんな関係が続くのは...。...........だから最後にちゃんと話し合って..」

「そうか....分かった」

「え?」

(やめろ,それを言ったしまえば本当に何もかも終わってしまう)

「もう終わりにしよう」

「お前らとは......。短い時間だったけどありがとう。割と楽しかった。ある意味俺の人生の中で一番輝いていた時間だったのかもしれない。それだけだ.....もう俺に関わるな」

 

  その言葉を言い終わると同時に頰が何かで濡れた感触がした。俺はそれを手でそっと撫でて涙だということを理解する。

 

(なんで.....)

 

「あ、の」

 

  俺は2人が何かを言おうとする前にそのまま校門の外へと駆け出した。その時彼女達がどんな表情をしていたのかは覚えていない。ただ校門から抜ける最中最後に雪ノ下が発した一言が耳の中で強くリピートされていた。『貴方はまた逃げるのね』

 

 

 

 

 頭の中ではドライに割り切っていたのにこのザマだ。本当は心から彼女達ともう一度向き合いたいことを願っていたのかもしれない。でも今はその機会すら逃してしまったのだ。もう元には戻れない。俺は少しずつ足を速め全力疾走と言わんばかりの速さでそのまま目の前の交差点まで急いだ。とにかくこの場から一秒でも早く抜け出したかったのだ。もどかしい。息苦しい。視界は涙で歪んでいた。今は全てを否定したい気分だった。信号が黄色に点滅し赤になろうとしている。俺は早める足にブレーキをかけることなく,そのまま信号を突っ走った。

 

 

 

 その時だった。

 

 

 

 

  横から巨大な大型トラック迫っていることに気がついた俺はすぐに方向転換をしようと体を捻らすがどう考えても間に合わない。

(俺,ここで死ぬのか)

  俺は目をつぶりながら走馬灯と言われる現象が起きていることに気づいた。しかし浮かんでくるのは奉仕部での記憶ばかりだ。

 

(あいつらとの思い出ばっかだな)

 

(やっぱあいつらと最後くらい向き合えばよかった........)

 

  大きなトラックのブザー音が耳の中で渦巻いて視界がどんどん揺らぐ。そしてついにそのトラックの先端部分は俺の体とし、凄まじい衝撃と共に俺の目の前から光が消えた。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇

 

 だがしかしどういう訳か,俺は今こうして生きていた。しかしそれは今まで生きてきた当たり前の日常ではなく,フィクションの中でしか存在しないと思っていた非日常の世界。血肉を貪り,奪い殺し喰らいあう冷淡で残酷な世界。俺はそこで偽りの仮面を付けて今日も喰種達の生活を脅かす捜査官と対峙していた。何度でも言い続ける。

 

「俺は喰種だ」

 



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第2話 仕事

カーテンから覗いてくる眩しい光と熱が俺の体に覆いかぶさり俺はゆっくりと目を覚ました。顔を上げて辺りを見渡す。俺は薄っすらぼやけた視界で壁際に掛けられている時計に目をやった。

 

「もう朝か....」

 

まだ頭がぼーっとしている。俺は手の平を眼球に押し付けてぼやける視界をゴシゴシと治そうとした。その時ふと首筋に痛みを感じる。俺は片腕を首筋にもっていき痛みの原因を探るべく隙間なく触れた。外面には特にこれといった傷は見当たらなく痛みはどうやら内側から来ているようだ。首を横に曲げようとすると少しづつ痛みが生じ始める。

 

「あー成る程ね。..............これ........筋肉痛だわ」

 

それもその筈俺は昨晩からずっと体育座りの状態で眠りこけていたからである。首に負荷がかかり過ぎてこうなってしまったのか。

 

「あれ?てか何で俺こんな体勢で寝て...」

 

そう言いながら俺は地面に視線を向けた。するとそこにグシャグシャになって落ちている紙の〈診断書〉という文字が目に入ってきた。急に昨晩のことがビデオテープのように頭の中に流れはじめた。

 

 

「....って,診断書ぐちゃぐちゃになってるし....」

 

 

俺は立ち上がりベットの方に目を向けた。ベットの上には当たり前のように小町が眠っていた。しかしその可愛らしい顔と反して腕にはrc細胞の塊ががっしりと巻きついている。

 

(Rc細胞過剰分泌症か....)

 

 

俺はため息を吐いて地面に横になった。

「やっぱり,そんな簡単に治らねえ病気だよな..。.....薬が必要だ...」

 

しかしその薬というのは病院でもらったりドラッグストアで購入したりそんな易々と手に入れられる品物ではない。

名称は"rc抑制剤"。その名の通り体内にあるrc値濃度を和らげる為のものである。小町が患っている病気もその体内にあるrc細胞が原因だ。治るかは分からないが最低でも病気の進行を遅らせることは可能かもしれない。

しかし手に入れようともその抑制剤は喰種が最も苦手としているものだった。人間よりも明らかに体内のrc細胞が多い喰種に抑制剤を使用すれば一時的にだが身体の自由が効かなくなり喰種随一の攻撃手段であるrc細胞の筋肉"赫子"も使うことができなくなる。つまり人間にとっては薬でもあり喰種に対する兵器でもあるのだ。

「抑制剤っても,どこにあんだよ..」

 

それに俺はまだそれを保管されている場所もあまり明確に把握できてなかった。恐らく貴重な為当然一般の病院には置かれていない。となると置かれている場所は限られてくる。それは国が建てた巨大な国際病院もしくは"CCG"と呼ばれる巨大な対喰種対策機関だろう。喰種に効果がある以上対策局がそれを使わない筈がない。どちらにせよこの二つの場所から抑制剤を盗み出すことは容易じゃない。その為には沢山の情報と労力が必要なのだ。

 

 

「って、今考えてもまとまらねぇな」

 

俺はそのまま近くの椅子に腰掛けた。机の上に置いてあるコーヒポッドの電源をつけ,その横にあらかじめ置かれていたマグカップを台の上に置いて放置する。しばらくすると香ばしいコーヒ豆の香りと共にコーヒがマグカップの中に満たされていく。俺はマグカップを口に運びながらその横に置いてあったリモコンでTVの電源を入れた。すると黒い画面から誰かニュースキャスターらしき音声と共に映像が流れ始める。

 

『今日未明,東京20区にあるホテルの前で男性が女性を襲ったという事件が発生しました。女性は重体ですぐに病院へ搬送。目撃者の証言によりますと,どうやら男は刃物ではなく赤い結晶のようなもので女性を切り刻んだとされています。この赤い結晶というのは喰種特有の"赫子"というものらしく,犯人は喰種ということで捜査を続けています。さて次の』プツ

 

少し前まで人々にとって喰種とは都市伝説的な存在だったのに今では彼らが公の場に現れることも多くなりもう都市伝説だけの話では無くなっている。実際人間だった頃俺は喰種なんて見たこともなかったし時々買っている雑誌やネットで情報を調べる程度だった。喰種になってからは体に蜂蜜を塗って蜂が寄ってくるかの如く喰種達は俺の所に現れはじめた。東京20区は東京の中でも喰種による事件が少なくあまり重要視はされていなかった。これも"あんていく"の店長芳村さんのおかげだろう。しかしそんな20区も最近では喰種の事件が多くなっている。平和な場所なので正直迷惑な話である。俺の"あんていく"の仕事ではそういった凶悪な喰種達の駆逐も含まれているのだ。

 

「さてと,今日は.....ってシフト入ってたんだっけ?..........はぁ,いつの間にか俺も社畜の仲間入りってわけね」

俺の仕事は三つ。一つは戦えない喰種や赫子を出せない喰種達の為に捜査官達の武器を強奪。二つ目は凶悪な喰種達の説得もしくは排除。そして三つ目は喫茶店"あんていく"の店員だ。正直この三つの中で一番大変なのは三つ目のそれだ。接客業なんてものはぼっちでコミュ症を少し拗らせていた俺には到底レベルが高いものだった。そして何よりも其処には俺に対して滅茶苦茶厳しい暴君が存在した。まぁそらについては後で話そう。つまり結論=いちばん辛い

 

俺はタンスを開けて地味目なTシャツを一枚着てそのまま玄関へと向かった。時刻は9時半。とっくにあんていくは開店している。

 

(やだなぁ、怖いなぁ)

 

そんな思いを抱きながら寝ている小町に一言。

 

「じゃあな小町,お兄ちゃん行ってくるわ」

そう言って俺はアパートのドアを開いて鍵をかけた。そうだ....俺がこうして"あんていく"で働いているのは小町の為でもある。あんていくというのは肩書きがあればそれだけで情報をくれる喰種も沢山いるだろう。少しでも多くの情報が俺には必要なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ようやく"あんていく"の近くまでたどり着いた。しかし遠くから窓越しに見える暴君の顔は間違いなく切れている。多分俺が遅刻していることに対して腹を立てているのだろう。やだなぁ行きたくないなぁ....

 

俺は店の窓際部分から見えないルートを辿り何とかしてあんていくにたどり着いた。ドアノブに手をかけると同時に大きな圧力がかかる。恐怖心とは恐ろしい。俺はそっと音が鳴らないことを願いドアを開けた。しかし俺のそんな期待は外れていつも通りの大きな鈴の音が店内に響き渡る。すると当然のように周りは俺に視線を寄せ,営業スマイルをしていたであろう暴君の目つきが俺を捉えたと同時に恐ろしいものへと変貌した。彼女の名前は"霧島トーカ"歳は俺より二つ下で近くの公立高校に通っているらしい。だが年下にも関わらず彼女は目上のはずの俺に対してかなり乱暴な部分があるのだ。いや,部分というか主に全般が乱暴というか...。

 

「比企谷~ちょっと」

 

その優しさに満ちた声で俺は霧島に手招きをされる。あれ?何か優しくね。

 

 

なんてことはなく店裏に連れていかれた途端彼女の態度は豹変した。

 

「おい,糞谷」

(ついに名前ですら呼ばらなくなった)

 

「女の子が糞って言ったらお袋さんが泣いちまうぞ」

 

「は?あんた遅れたくせにそんなこと言える立場?」

 

「いえ,その今のは失言でした」

(実力社会だからな,ここは....)

 

「分かったら早く着替えて手伝いな!今日はお客さん多いんだから」

「うっす!!」

(年下の女子にこの扱いを受けるって...マジでなんなんだよ社会)

 

 

 

「トーカちゃん。その辺で...ほら比企谷君も反省してるだろうさ」

 

そこで突然第三者の声が耳に入ってきた。視線を寄せるとそこには黒髪の大人しそうな青年がこの状況をどうにかすべく良心をもたらずの霧島に話しかけていた。彼の名は"金木 研"。勿論喰種だ。しかし芳村さんの話を聞けば彼も俺と同様純粋な喰種ではないらしい。半喰種というべきか....。まぁ余り詳しいことは聞いていない。そんな彼が今俺のピンチを救うべくこのあんていくの暴君,霧島トーカに無謀にも立ち向かおうとしている。感謝でいっぱいだ。17年間生きてきて初めて友情を感じたかもしれない。俺は一筋の涙を流した。

 

「は?お前が口挟んでくんな」

その一言で勇敢に見えた金木の体を三歩後ろへと遠ざけさせた。金木がんばれ。

 

「いやでもさ,トーカちゃんもその,少し言い過ぎかなって」

「は?どっちが悪いわけ?」

 

「すいません..比企谷君が悪いです...」

(こいつ秒で見捨てやがって。..)

 

結局俺は金木のヒートさせた暴君の熱をくらい渋々店に入った。今日は休日なのでかなり人が多い。俺はすぐにカウンターに向かって歩き出した。カウンターでは2人の人物が珈琲を淹れている。その手慣れた手つきを見れば長年ここで働いていたということが容易に読み取れるほど上手だった。

 

「比企谷君,これ持ってって。僕のスペシャル魔猿ブレンド」

 

そうキメ顔でコンプレックスの巨大な鼻をふんっと鳴らす彼の名前は"古間円児(こまえんじ)。無論喰種だ。

 

「はいはい,そうゆうのはいいの古間君。これも頼むわね比企谷君」

 

そう古間さんにツッコミを入れたのはこの店の美人店員"入見カヤ"だ。この二人付き合いはかなり長いらしい。ぶっちゃけ付き合っているんじゃないかというぐらい仲がいい。のかもしれない....多分。

 

「うっす」

 

そう言って俺はトレーの上に渡された珈琲を二つを乗せた。零さないようにとゆっくり慎重に客の元へ運んでいく。其れもその筈持ち方にはコツがあり家で母ちゃんが運んできてくれるような両手もちのお盆ではないのだ。待つのは片手の指だけ。これがすごく難しい。最初の頃はうっかり零してしまったこともあるがやはり何でも慣れであるのか今は殆ど零さずに運ぶことができる。俺はそっと客の前で頼まれていたオーダを読み上げ珈琲をテーブルの上に置いてカウンターに戻った。しばらくは其れの繰り返し。割と単純な作業ばかりだ。

 

 

しばらくすると巨大な音ともに笑顔の霧島と頭から湯気が立っている金木の姿が。

(おつかれさまです)

 

その後も俺は淡々と作業をこなしいつしか時は閉店間際まで迫っていた。お客さんは殆どおらず後は会計が一人だけだ。

 

「1580円になります」

「ほなこれで。中々絶品やったわ~また来るなぁ」

「ありがとうございます」

 

歳は三十代半ばぐらいだろうか。とても愛想がありそうな顔のおっさん。おそらく陽気な関西ってとこだろう。口調がそうだ。しかし俺はこのおじさんから少しだけ漂う血の臭いを見逃してはいなかった。

「あの、つかぬ事お聞きしますが喰種ですよね?」

その質問に男は少し困惑したそぶりを見せた。

「大丈夫ですよ。人いないんで」

「あぁ、そうですか。」

「あんまり食べ過ぎない方がいいですよ。結構臭ってますから」

「おぉこれは大きに大きに。それじゃあ」

そう言って男は少し足を早めて"あんていく"から出ていった。俺はやっと最後の客が出ていったのでそのままカウンターから離れて椅子に腰をかけた。

 

「比企谷君,お疲れ」

 

そんな声が聞こえてそちらに視線を寄せるとそこには笑顔の芳村さんが立っていた。

 

「今日はもう上がっていいよ」

 

その一言に食いつく暴君こと霧島。

 

「なんでですか!?こいつまだ片付けもしてませんよ」

「トーカちゃん分かってるだろう?彼には仕事があるからね」

 

霧島は黙る。流石の霧島も芳村さんに対してはあまり頭が上がらないらしい。

 

(ばーかばーか)

と暴言は心の中だけでとどめておいて、

 

「それじゃあ俺は失礼します。みなさんお疲れ様でした」

 

そう言って俺はあんていくから出ていった。向かう先は21区。ここは最近喰種事件が多発しており捜査官達がかなりマークをしている場所だ。つまりそこなら大量の武器を押収できる。これがあんていくで働く俺のもう一つの仕事なのだ




評価感想どしどしお待ちしております


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第3話 自覚

目を凝らし耳を澄まし感覚を研ぎ澄まさせ、俺は21区周辺にあるビルの屋上から辺りを見渡した。目を細めて極限まで視力を高めると薄っすらと二つ白い人影が見えた。この白というのは恐らく喰種捜査官たちが身に纏わせている作業服だ。白だから暗い所でも電信柱の明かりで目立つ。格好の的だ。

 

(あいつらに狙いを定めるか)

 

 

鳩に顔バレしない為に作られたマスクをはめて、夜の闇に紛れながら音を立てず素早く俺は二人の捜査官との距離を詰めていった。

喰種になってからは人間の時よりも不自由なことが多いがその反面出来ることもかなり増えた。まず最初にこの圧倒的身体能力の高さには驚いた。まず人間の時との体感が全く違う。まるで常にトランポリンで飛んでいるかのように身軽だ。勿論最初からそれだけ身体能力が身に付いていた訳ではなく少しづつ体を鍛えていった。鍛えると言ってもハードなことは殆どしておらず筋トレやランニング,どれもただの基礎トレーニングばかりだ。だがその簡単な基礎トレーニングをやった後に上昇するパラメータは恐らく人間の時と比じゃないのだ。人間ではどうやってもこれ程の身体能力は身につかない。

 

 

しばらくすると二人の捜査官が通りかかる直前のビルの上に着いていた。

俺はポケットの中から取り出した双眼鏡でじっくりと目を凝らして二人を観察する。

 

(鳩で間違いないな。周りに増援の気配もない..)

 

因みに鳩というのは喰種内での捜査官を示す名称らしい。鳩の手には喰種を撃退するための武器"クインケ"を収納するアタッシュケースが持たれていた。俺は学校のテストの答案用紙の見直しをするかの様に何度も何度も二人を視察する。もしかしたら既にこちらに気づいているのではないか。罠に嵌められているのではないか...常に最悪のケースを考えらようにしている。その方が突然の出来事に対処しやすい。それに今回はいつもよりも慎重に行動した方がいいと第六感が言っている。理由は二つ,俺はここ21区でしばらくの間ずっと鳩からクインケを根こそぎ巻き上げている。すると当然21区を担当している捜査官たちに俺の存在が広まる。当然存在が広まればそれだけ鳩たちの脅威になりマークされ始めるのだ。まぁそれは多少なりの過信が過ぎるかもしれないが・・。

 

 

そしてもう一つ、先程から二人の鳩に目を向けつつ周りの様子も伺っているが何というかこう、静かだ。いつもは聞こえている足音なども殆ど耳に入ってこない。少しだけだが小さな不安が生じ始めつつあった。しかしあまり根拠のない不安にかられても仕方がない。

(気づかれないように)

 

俺は音を立てないようにビルを行き来して鳩の数メートル背後にまで降りた。緊張という名の糸を掴みながら俺は颯爽と身体を迫らせる。

 

 

 

すると急に何かが来るのを感じとったのか二人はこちらを振り向くが、それよりも早く俺の手には二つのアタッシュケースが握られていた。

 

しかし、

 

 

「なっいつの間に!!」「貴様何者だ!」

的な言葉を期待していたのだが俺の目に入ってきた捜査官の顔は恐怖や憎悪ではなく歓喜な表情だった。ここで俺はやっと自分が相手の張っていた蜘蛛の糸に引っかかったことを悟った。

 

「今です」

 

 

その言葉と同時に俺の手に持たれていたアタッシュケースは両方激しい爆音と共に暗かったその場を一瞬真昼と変わらないぐらい明るく灯した。

(爆発した!?俺が狙うのを見計らって.....)

 

予期していなかった為か体はそのまま後方の巨大な電信柱にぶつかった。鈍い音と共に背中に強い衝撃が走り俺は呻き声をあげる。

 

(ガードが遅れた,警戒していたのに何してんだよ俺!)

 

 

俺は先程までの油断していた自分を恨みながらゆっくりと体を起こした。もしも普通の人間が今の爆発を受けて入れば恐らく体は一瞬のうちに粉々の肉片へと変わるだろう。当然だ。今まで爆発なんてものは映画やアニメなどフィクションの世界でしか目にしたことがなかったからだ。しかし今の俺は肉片になるどころか体を軽傷するだけで済んでいる。

(助かった。喰種じゃなきゃ死んでたな....ってまぁそもそも人間だったらこんなの食らう機会も殆ど無いんだけどな)

 

俺の体は飛躍的に喰種として出来上がっているという実感をすると同時に少しづつ人という概念から外れていく自分に少し嫌気がさす。

 

(ここで使うか,赫子を)

 

中でもそれを一番実感させたのは"赫子(かぐね)"という喰種特有のRc細胞の筋肉だ。赫子というものには4種類が存在している。喰種達は全て親の遺伝で決まるらしいが俺は喰種の赫胞を移植された元人間。その場合は元の赫胞の持ち主から色濃く影響を受けている。と考えるのが妥当だろう。自分でもあまり分かっていない。因みに俺の赫子は4種類の内の一つ"鱗赫(りんかく)"という部位に位置する。最初はこの赫子を扱うどころか出現させることすらままならなかった。それもそのはず生まれてずっと五体満足で生きてきた俺の体に突然新たな部分が投入されたのだ。感覚的には恐らく生まれたての赤子が自分の手や足に感じる違和感と似ているだろう..。慣れるにはかなりの時間がかかったがし今では利き手のように赫子を扱える。

 

すると前にいる二人は衣服の下の腰にあるホルスターのようなものに手をかけそこから拳銃を取り出した。何発も放たれた弾丸は一直線にこちらに向かってきている。

 

(あれは、Qバレット..拳銃の弾丸に赫子を溶かし込めたやつか...)

 

向かってきている弾道を避けて俺は即座に捜査官達へと向かった。

 

「交わした!?くそ、あれを食らっても尚交わす元気があるのか」

 

(しょうがない、今日の収穫はあのQバレットだな)

 

再び拳銃を構える二人だが距離が縮まってきた途端に顔が恐怖に変わった。

 

「うわぁぁあ!!」

 

「いまさらおせぇよ」

そう一言発して距離僅か2メートル。

 

 

 

.........その時だった。右側から黒いシルエットと共に何者かが俺の体を斬りつけ流血と共に俺は地面に崩れた。

 

(何,が)

 

そっと視線をそちら側に向ける。俺は驚愕した。

 

「こちら平子,只今Sレート"避役"と対峙。駆逐にあたります」

 

平子と言う名の捜査官。そしてその後ろには10人はいるであろう捜査官達がこちらをずっと睨みつけていた。その顔ぶれを見て直ぐにそれが過去俺にクインケを奪われた捜査官達だということが分かった。

 

(状況がまずい!一旦立て直して)

 

そう立ち上がろうとする体の上に突然重さが。誰かが俺を逃さないよう背中の上にのしかかっているようだ。俺は仰向けになりながらもその人物の顔を捉えよう顔を上に上げようとした。その時いきなり体に痛みが生じた。

 

「そう簡単に逃すかっつーの。お前の身柄はこの伊藤倉本が貰い受ける」

 

どうやらこの捜査官にクインケで体を貫かれたらしい。

 

「ちっ」

(喰種の背中に乗るのは間違いだったな)

 

 

「倉本,背中!」

「おぉっと!やばい」

 

何かを悟ったのか平子と言う男の指摘により伊藤と呼ばれた男は空かさず俺から距離を取った。乗っていた体ごと背中から出現させた赫子で貫こうと考えていたがどうやら見破られたらしい。俺はゆっくりと体を起こして二人に視線を寄せた。

 

「タケさんあざっす」

「......油断するなよ倉本」

「うす。.....覚悟しろよ"避役(カメレオン)"」

 

"避役"カタカナでカメレオン,それが俺の喰種としての通り名らしい。何故そのような名前が付いたのか..........。それは俺の赫子に由来されている。

「行くぞ」

 

平子のかけ声と共に2人の鳩は俺を囲むように攻め込んできた。俺は硬質かつしなやかな2本の赫子を出現させ2人の攻撃の軌道に合わせ防御に徹した。

(ブレードと長槍か....)

 

成るべく2人の持っているクインケを破壊しないように手加減しながら様子を観察した。長槍型のクインケを持っている伊藤という名の捜査官はその長さいリーチを生かして近くまで攻め込んできている平子と呼ばれた捜査官の補助をしているようだ。

 

(この2人,今まで戦ってきた捜査官と違うな。特に平子ってやつ。こいつは特にやり辛い。地味顔だからかついうっかりモブと勘違いしてしまうが攻撃が重い)

 

「おらおら!タケさんばっか見てんな」

 

 

その言葉で俺はもう一人の糸目男に視線を切り替えてしまう。すると一瞬油断した瞬間平子の大振りの攻撃が既に目線の右を覆っていた。

 

「ぐっ」

(危なっ)

 

俺はここで奥の手を使い平子の攻撃を弾いた。

 

「!!」

 

 

俺はすぐさま地面を強く蹴って距離を取った。相手との位置が離れ安心したのもつかの間すぐ後ろから別の攻撃が迫っていたことに気づく。

 

「なっ!」

 

防御が間に合わなく俺はその攻撃を直に受ける。攻撃された傷口から大量の血しぶきが撒き散らされて俺は膝をついた。後ろを確認するとそこには俺にクインケを取り上げられた捜査官達が苛立ちの顔を出しながら攻撃を構えていた。

 

(根に持ってるやつらか)

 

「なら!」

 

俺はそのまま数人の方へと向かって赫子を伸ばした。捜査官達は持っているクインケで防御しようとしたが先程の2人より明らかに劣っているので次々と赫子でねじ伏せれた。と同時に俺は2本の赫子を体内へと納めた。すぐ後ろには伊藤が迫っていたというのに。

 

「油断したなバカめ!」

(俺がカメレオンってあだ名をつけられているわけ)

 

そう吐いた伊藤が俺目掛けて渾身の一撃を食らわそうと長槍を突っ込んだ。普通ならこの後長槍が俺の体を貫いて致命傷を負わされる筈だ。

 

「倉本!!」

 

クインケが直前まだ迫っていたというのに次の瞬間その距離は大幅に離れていった。平子の声を聞いてもなお何が起こったか分かっていなかった伊藤はようやく自分の体が相手の攻撃にやられたことを理解した。

 

「何,だ?.....あ足がぁぁああ」

 

足に尋常じゃない痛みを感じてその場に蹲る伊藤。直ぐに平子が駆け寄ろうとしたがその隙を狙って俺は平子に攻撃を仕掛けた。がどうやら平子は紙一重で俺の攻撃を受け止めたようだ。押さえ込みながら平子は喋った。

 

「報告通りだ。......赫子を変色させることが出来るらしいな。だからさっき見えなかったのか....」

 

こいつが言っている通り俺は赫子の色を自由自在に変化させることができる。いわば分からない奴に関しては初見殺しなのだ。だからあまり悟られないように使っていたつもりだが捜査官の観察力は伊達じゃないらしい。お陰で”避役”という通り名までついてしまった。

 

(それにしても強い捜査官だ。表情が一切読み取れない)

 

先程から浴びせている攻撃を全て交わしさらにはカウンターまで入れてくる。その常人離れした動きを見てやはり捜査官を侮れないと実感した。

 

(こいつの反射神経!!ボクシング選手でも行けるんじゃねーの?)

 

こちらは既に防御に徹するので精一杯だ。疲れている俺に対してこいつの素早さはどんどんと上がっているような気がした。

 

「くっ!」

(神経研ぎ澄まさないと使えないんだよあれは)

 

流石に分が悪いと感じ攻撃を受け流しながら少しづつ距離を取っていく。がこいつはそれを許さず攻め込んでくる。

 

(結局今日は収穫なしか.....)

 

俺は後ろにあった電信柱に赫子を引っ掛け高く飛翔した。と同時に平子の攻撃が当たらない距離まで移動する。上から見下して俺はその捜査官を凝視した。あちらも上を見上げてまだ構えている。

 

(捜査官平子。....侮れないやつだな)

 

頭の危険人物リストの中にチェックし俺は颯爽とこの場を去った。

 

 

 

「誰一人死傷者は出ていない,か」

 

 



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第4話 講義

あれから数日が経ち俺はいつも通りあんていくでの仕事を淡々とこなしがら日々を送っていた。だが俺は当分の間芳村さんにクインケの回収作業を行うことを禁じられていた。

理由は当然この前の21区での出来事があったからだ。既にCCGは俺という喰種に対して少しづつ警戒を寄せている。21区だけでなく他の区域にも情報が広がっているとしたら今外に出るのは危険。という判断だ。しばらくの間は"避役"として身を隠すことにした。

そんな俺は今日はあんていくの仕事が休みなのでとある場所に来ていたのだ。

 

 

「さてと,着いたか」

 

あんていくと同じく東京20区に位置する上井大学という偏差値高めの大学だ。その敷地面積は広大で一年通っていても全部回ることが出来るかわからないぐらいだ。思えば三年間の苦労の末受かった大学なのにも関わらず俺は"あんていく"の仕事やらなんやらで殆ど顔を出していなかった。そろそろ単位が気になり始め来てみたものの,

 

「講義,面倒くせぇな」

 

あまりやる気が起きず俺はそのまま大学内にある図書館へと足を運ぶことにした。今思えば可笑しなものだ。こうして喰種の俺が大学内に足を踏み入れているのに周りは誰も気づきやしない。勿論真実が分かれば皆一目散に逃げると思うが.......。

 

「平和,だな」

 

こんな考えをするようになったのは恐らく喰種としての生活を長らく営んでいたせいでもあるだろう。俺はあちらの世界に慣れてしまっていたのだ。だから今はこんな普通の光景を『平和』という言葉で認識している。

 

考えてみれば喰種は俺が知らないだけでかなり身近にいたのかもしれない。ただその喰種としての彼ら彼女らとは遭遇するケースがあまりにも少ないというだけなのだろうか。それは同時に彼ら彼女らが普段人前では自分を人間と偽り上手く人間社会にとけ込んでいたという証でもある。そう考えると人間と喰種は[食]以外殆ど違いがないのかもしれないと感じた。

「喉が渇いたな」

 

丁度近くにあった自動販売機を見つけて俺はポケットの中の小銭を確認した。近づくと直ぐさま様々な飲み物が目に入ってくるが今の俺にとってブラックコーヒー以外のものは毒物以外のなにものでもない。人か喰種,それだけが違うだけで今まで見ていた世界が全くの別物に見えた。俺はため息をつきながら赤く点滅しているボタンに指を置こうとした時。その時

 

「おーい比企谷君」

 

突然誰かが俺の名前を呼んだ。俺は振り返ることなく機械音とともに落ちてきた隙間の中のブラックコーヒーを中腰になりながらその手につかんだ。

 

「・・うっす」

 

そこには俺と同じ"あんていく"で働いている金木研(かねき けん)という黒髪に眼帯を付けた青年がいた。俺は会釈してその場を去ろうとしたが直ぐに肩を掴まれる。

 

「ちょっと!何で無視するの?!」

 

「・・・・」

(察せよまじで)

 

俺は呼び止める金木を無視して足を動かした。

 

「えっちょっと!!待ってよ」

「はぁ」

 

俺が金木に対して何故こうして無愛想な態度をとるのか。答えは簡単だ。それは俺と彼が喰種だからだ。喰種だからこそ同じ大学内においてお互いに知らないフリをしなければいけないという暗黙の了解がある筈だが,どうやらこいつは理解してないらしい。仮にもし俺と金木に交友関係があると周りに印象付けられ,どちらかが喰種とバレた時,もう片方も喰種と疑われるリスクが出てくる。そういった危険は避けたいのに。

 

「ちょっと比企谷君。()ではいつも」

 

俺は直ぐに金木の口を塞いだ。金木は抑えられた手によって口をモゴモゴしている。

 

この時俺は悟った。

 

(こいつは地雷だ)

 

 

俺はすぐさま周りに誰もいないことを確認して口を塞いでいる金木に対して手でジェスチャーを行なった。

 

図書館に来い

 

ちゃんと伝わったのか金木は頭を縦に振って俺は手を離した。と同時に俺は足を動かし早速図書館へと向かうことにした。後ろを確認すると空気を読んだのか金木は俺との距離を少し開けてついて来ていた。溜息をつきながらそのまま図書館へと向かった。

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

図書館に着いた俺たちはすぐ様周りを確認して人目のないところを探した。丁度隅の方には誰もいない。チャンスと思い俺たちはイスに腰をかけた。

 

「それで何かあるのか?」

 

「え?」

 

「なんかあるんだろ?確か今日シフト入ってたろお前?」

 

「あ,そのことなんだけどね。店長から頼まれて君に渡したいものが」

 

そう言った金木はポケットに手を入れて一枚の封筒を渡してきた。俺はそれを受け取り早速内容を心の中で読み上げた。

 

(佐藤和義。年齢36。二週間前から20区を食い場にして暴れ回っている凶悪な喰種。よく関西人を真似て関西弁を使う)

 

「何だこの調査書みたいなの」

 

「その喰種が最近暴れまわってて店長達も手を焼いてるんだって。だからそれを僕と比企谷君で捕まえて欲しいって」

 

「あ,そゆこと」

(確かにそいつがこのまま20区で暴れていればいづれ鳩に目をつけられる。平穏に暮らしたい俺たちにとっては迷惑な話だ)

 

 

「まぁ取り敢えず話は分かったがどうやってそいつを捕まえるんだ?今の所その紙に書かれたことぐらいしか手掛かり無いんだろう?」

 

俺の疑問に対し金木は顔の表情を少し硬くして俺の耳元に口を寄せた。

「それがどうやらこの大学内に潜んでいるらしんだ」

 

「なっ!ほんとかそれ?」

 

「本当だよ。だから僕も今日はここに来たんだ。情報は店長が四方さんに調べさせてたんだって」

 

「四方さんが?」

(あの人が捕まえた方がいいんじゃないか?強いんだし......)

 

実際あんていくの面々は俺たち若い三人を除けば皆実力者揃いだ。年齢がひとまわり違うというのもあるがやっぱり圧倒的な経験による差が大きいだろう。そういった意味ではまだ俺も金木も未熟児レベルだ。特に金木に関してはまだ赫子もロクに扱えない状態だ。

(てかどうせなら調べたついでに捕まえろよ四方さん)

 

「てかこの大学に潜んでいるのはいいけど何をしてるやつなんだ?生徒?教員?」

 

「そこまでは」

 

「そこまでは,ってお前そんな曖昧な」

 

そう思った矢先封筒の奥に一枚の小さな紙切れがあることに気づいた。

 

(まだなんかあるのか?)

 

俺は封筒を逆さまにしてその小さな紙切れを手に落とした。小さな紙切れにはこう書いてあった。

 

 

 

「自分たちで探せ。そしてお前達で捕まえてみせろ」

 

 

 

 

(字を見れば分かる。これを書いたのは間違いなく四方さん。そしてこの件を俺たちに任せようと芳村さんに伝えたのも間違いなく四方さん.......。こんな所まで鍛えるための一環にしてこようとは......。それに何,探せ?捕まえてみせろ?俺たちは何処ぞのシャーロックホームズなんだよ.............。まぁでもとりあえずこの問題は早めに解決した方が良さそう)

 

 

「金木,取り敢えず今からそいつ探すぞ」

 

「うん!聞き回るんだね」

 

「まぁそれしかないな。それと名簿も全部調べるぞ。不幸にもここはマンモス大。人1人探すとなっちゃ時間が掛かる。手分けしてかかるぞ」

 

俺達は図書館を出てそれぞれ別の場所を探すことにした。まずは生徒名簿。それぞれの名簿に佐藤和義という名前がないか隅から隅まで確認した。36歳。考えれば年齢的には生徒よりも教員の方が確率が高い。しかし教員名簿も全て確認したが佐藤和義という名前は見つからなかった。

 

「すいません」

 

俺は廊下を歩いていた二人組の学生に声をかけた。

 

「佐藤?そんな先生居たっけか?」

「いや、知らね。探してんの?」

「一応」

(ここまで調べても名前すらでてこないとは)

 

もしそいつが講師でも生徒でもない場合は学校の係員や特別講師という可能性も出てくる。考えれば考えるほどキリがない。

 

(くそ、今日だけじゃ絶対に )

 

その時ポケットに入っていたスマホから着信音が鳴り響いた。液晶画面を確認すると金木研という文字が表示されている。

 

(まじか!?もう?)

 

俺はボタンを押して直ぐにスマホを耳元に押しつけた。小さなノイズ音と共に耳に金木の声が入ってくる。

 

「比企谷君!!見つけたかもしれない!!」

 

「しっ、声がでかい。.....本当か?」

 

「うん。今生徒に授業を教えてる。場所は生物学部のある校舎だよ」

 

「分かったすぐ行く」

(やはり教員だったか....たがそれなら何故教師名簿に奴の名前が無かったんだ?)

 

俺は通話を切って急いで生物学部の校舎まで走った。幸いにも生物学部の校舎は今俺がいる場所のすぐ隣の練だ。俺は素早く階段を駆け上がり金木の元へ急いだ。

 

 

「はぁはぁ,それでどいつだ?」

「ほら,あそこだよ」

 

金木の指差した方向にはチョークを片手に生徒たちに授業を教えている佐藤和義と思わしき人物の姿があった。何より黒板に本人の名前が書いてある。俺たちはその場にしゃがみしばらく観察することにしたのだが,

 

『カマキリっちゅう奴はのう肉食で力士並みにぎょーさん食うんやわ。バッタやらチョウやら。そいで余りに腹減ってもうたら共食いするんやで?』

 

『因みに後尾の後も嫁が夫のことを食うらしいから。男は気つけやぁ?女は怖いからなぁ』

 

授業をしている様子は普通に何処にでもいる陽気な先生という感じだ。ただ流石関西人というべきか授業の6割は殆どはどうでもいい話が多かった。そして授業を聞いているうちに分かったことは奴が特別講師だということだった。

 

(だから正規の教員名簿に名前が無かったのか...)

 

 

◆◇◆◇

 

 

俺たちが観察してから30分近く経った。

そろそろ授業も終わる筈だ。

 

「比企谷君?喰種に見える?」

 

金木は俺にそう聞いてきた。どうやら金木も俺と同じ疑問を抱いているらしい。

 

「いや,今の所普通に授業してる先生ってとこだな」

 

恐らく今俺と金木が感じている違和感はこの喰種と思わしき男が余りにも生徒の前で自然体だというところだ。何というか自分を偽らず曝け出している感じがする。何故喰種なのに教師という人の目につく職を選ぶのか。たが少なくとも俺たちの目から見た佐藤和義はとても教師として生き生きしているように見えた。

 

 

 

しばらくすると少しづつだが生徒が立ち上がりドアの前まで迫ってきていたことに気づく。どうやら授業は終わったようだ。俺たちは覗いていたのがバレないよう急いでその場から離れた。

 

「比企谷君どうするの?今の授業だけじゃ喰種かは判断つかないよ」

 

 

「そうだな。やつの正体が分かるまで尾行するしかないな」

 

 

俺たちはそのまま講義終わりの佐藤和義を追うことにした。

 




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