魁!!インフィニット・ストラトス (神無鴇人)
しおりを挟む

初っ端からカオス

篠ノ之束によって作り出された女性しか動かせない最強のパワードスーツ……IS(インフィニット・ストラトス)

 

あらゆる兵器を凌駕するその性能、そして女性にしか動かせないという事実により、世界は女尊男卑に…………ならなかった!

 

実はISにはもう一つ、致命的な欠陥があったのだ。

 

その欠陥とは…………

 

 

 

 

 

 

 

『前略、親愛なる友人達へ、

俺、織斑一夏は晴れてIS学園に入学出来ました。

何故、男で頭も悪くない俺がISを動かせたのか?それは定かでない。

だけど、入学した以上は一日も早く学園に慣れて、健やかな学園生活を謳歌したいと思っているつもりだ。

 

 

 

だが、しかし……』

 

 

 

 

 

「では、出席番号順に始めます。まずは相川さん」

 

「はい!出席番号1番、相川清香です!」

 

担任に呼ばれた相川清香というその可愛らしい少女は元気一杯に自己紹介を行う。

ここまでは普通の自己紹介だ。

 

そう、ここまでは……。

 

「特技は……これです!」

 

不意に、清香は一本の鉛筆を取り出した。そして……

 

「はむっ!」

 

なんとその鉛筆を食った!

 

(食った!?鉛筆を食いやがったよこの娘!!)

 

そしてバリボリ、ガリガリと音を立ててそれを噛み砕き、やがて飲み込んだのだった。

 

『前略、親愛なる友人達へ

これがIS学園です。周りはみんな女子ばっか。

しかもその殆どは…………バカなんだよ。

 

こんな風に見慣れない、というか見慣れたくない人達に囲まれて、いささか戸惑っています。』

 

 

ISの抱えるもう一つの欠陥。それは……

“知能指数が低い者、つまりバカにしか反応しない事!”

 

ISは最強の兵器である。

だが同時に、バカの象徴でもあるのだ。

 

当然IS学園にはバカが集まる訳で、その倍率は著しく低い。

入学試験に至っては引き算さえ出来れば合格という有様だ。

 

そんな中、織斑一夏は男であり、尚且つ高いIQを持ちながら適性が判明したのが運の尽き。

すでに決まったエリート校への進学が取り消され、

世界公認のバカ学校こと、IS学園に入学させられる事になったのだった。

 

 

 

『けど、けどな……こんなのまだ序の口なんだ。

俺にとって最大の誤算に比べりゃあ…………』

 

後ろを振り返る一夏。

そこには学園の制服を着た女性がいた。

女性である。女子ではなく女性。

つまり少女ではなく大人の女である。

 

その女を一夏は無言のまま睨み付けた。

 

 

 

「織斑千冬だ。

好きなものは冷えたビール。嫌いなものは算数だ。

今年で1年生9回目だから皆と歳は離れてるが、歳の事は気にせず、弟の一夏共々仲良くして欲しい」

 

一夏の姉、織斑千冬。今年で24歳。

最高レベルのIS適性を持つ、最高(というか最低)レベルのバカである!

 

「何やっとるんじゃバカ姉がぁ〜〜っ!!」

 

千冬の脳天に一夏の拳骨が炸裂した。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

クラスメートは実の姉(留年8回のバカ)

非ログインユーザーでも感想を書けるようにしました。


「何やっとるんじゃバカ姉がぁ〜〜っ!!」

 

「ひでぶっ!?」

 

俺の拳骨を喰らい、のたうち回るバカ姉……織斑千冬。

 

IS適性は最高レベルのS判定。

モンドグロッソというISの世界大会でにおいて栄光ある初代優勝者という輝かしい経歴を持つ人物だ。

 

が、輝かしいのはそれだけ!

それ以外はもう何もかも酷いの一言!

 

「おいコラ、バカ姉。何か言う事があるんじゃないのか、ああ?」

 

「ご、ごめんなさい……留年の事黙っててごめんなさい」

 

俺に胸倉を掴まれ、千冬姉は萎縮して目を逸らしながら謝罪の言葉を吐いた。

 

 

 

「本物よ。本物の織斑千冬よ」

 

「留年しまくって未だに高校生って噂は本当だったのね」

 

 

 

更に周囲から聞こえる呆れにも似た声。

俺だって噂だけであって欲しかったよ!!

 

気付かなかった俺も大概だけどさ。

元々IS学園に通ってるのは知ってたけど、ぶっちゃけ学園の警備員とかの仕事でもしてるのかと思ってたんだよ。

だって千冬姉、毎月給料だってもらってる上に、たまにISの小規模な大会に参加して賞金稼いでくるし。

(※実際の所、後者はともかく、前者はISの実験に付き合うバイトによるものだと知ったのは昨日の事だ)

 

この学園の進級試験って相当緩いんだぜ?

2年は掛け算、3年は割り算、卒業に至っては分数と小数点が理解出来れば合格。

そんな中で未だに1年のままって……、まさかココまでバカだったとは。

 

「えーっと、織斑君。今はホームルーム中です。

お姉さんを絞め上げるのは放課後まで待ってください」

 

「あ、真耶さん……」

 

そんな中、俺を止める担任の声。

この童顔だが巨乳の女性の名は山田真耶。

千冬姉の元後輩で俺も仲良くしてもらってる。

 

「学園では山田先生と呼ぶようにしてください。

まぁ、お気持ちは痛い程解りますよ。私だって先輩だった人が自分の教え子になるなんて……」

 

そして、俺にとっては自分と同じく千冬姉の馬鹿さ加減に頭を痛める同志とも言うべき人だ。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

そんなこんなで、俺は千冬姉を解放し、一度は滅茶苦茶になったホームルームも終わりを迎え、授業を経て今は昼休み。

 

さっさと飯を済ませた俺が今何をしているかと言うと……

 

「駄目だ……一問も解らん」

 

現在、千冬姉の勉強を見てやっている真っ最中だ。

 

「あー……これはまだ千冬姉にはまだ早かったか」

 

溜息を吐きそうになるのを我慢し、悔しそうに唸る千冬姉の手元にある問題集……小学3年レベルの算数ドリルを見る。

見事なまでに解答欄には何も書かれていなかった。

 

「よし、じゃあこっちにするか」

 

代わりに渡したのは小学2年用のテキスト『猿でも覚えられる掛け算九九』だ。

 

「……すまない」

 

「良いって。その代わり、今年こそ必ず進級して、そのまま一緒に卒業しようぜ」

 

「……うん(涙目)」

 

でなきゃ俺が恥ずかし過ぎて日の当たる場所を歩けなくなるから。

千冬姉だって卒業しないと色々アレだし……。

やっぱ肉親としてちゃんと嫁の貰い手ぐらい見つけてやりたい。

 

「あ、それは問題ない。見つからないならお前に娶ってもらうから」

 

「ふざけんな、心読むな、姉弟で結婚なんか出来るか!」

 

「あべしっ!?」

 

アホなことを抜かすバカ姉を拳骨で黙らせた。

何を抜かしてんだコイツは!?しかも目が本気だったぞ……。

 

 

 

その後、結局千冬姉は掛け算九九にも悪戦苦闘したのは言うまでもない。




次回、中学の時の自慢大会。

本作においてIS適性は、高ければ高い程に知能指数が低いという設定デス。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

中学の時の自慢大会。

前略、親愛なる友人達へ。

俺、織斑一夏がIS学園に入学して、早3日が過ぎました。

この学園の女子達は知能こそ低いがなかなかコミュニケーション能力が高い奴が揃ってるらしく、俺の所属する1組のメンバーはもう全員打ち解けてしまっている。

 

「私、中学の頃から結構ブイブイ言わしててさ、

とにかく先生から『手の尽くしようがない』って言われてて、

クラスの皆からは『二中の爆弾女』なんて言う渾名で呼ばれてたんだ」

 

「へぇ〜、凄ーい!」

 

これはこれで頭が痛くなったりするからタチが悪い。

 

「私、これまで一度も恋愛した事ないのよね」

 

続いて口を開いたのは自己紹介の時にインパクト大の芸を披露した相川さんだ。

 

「え、何で?相川さん結構かわいいからモテそうなのに」

 

「う〜ん、ナンパとかされた事はあるんだけどね、

けど男の人って私が特技を見せると何故か皆変な顔して離れてくの。

それでついた渾名が『不戦敗の清香ちゃん』。

どういう意味なんだろう?」

 

いや、当然の普通にそのままの意味だよ!

誰が好き好んで鉛筆食うような女と付き合うか!?

 

「ハッキリ言って私に比べれば皆大した事無いわ。

っていうか自慢にもなってないじゃん」

 

しかし、そこに現れる小柄なツインテール少女。

彼女の名は凰鈴音。小学生の頃中国から転校してきた俺の幼馴染だ。

 

「私は中学の頃、勉強こそ苦手だったけど部活(ラクロス部)とISの知識はめっちゃ真面目にこなしてきた。

お陰でこの二つに関しては未だ負け無しよ。

特にラクロスは1人で相手チーム全員抜きを達成した事もあるわ」

 

「凄い!それで、渾名は何て呼ばれてたの?」

 

結局渾名に行き着くんかい。

 

「え?渾名……特に渾名はなかったけど」

 

「じゃあダメね。話にならないわ」

 

哀れ鈴、クラスメート達の基準は特殊だった。

 

「はぁ!?ちょっと待ってよ!別に渾名なんか無くたって問題ないでしょう!?」

 

「二中の爆弾女とか三中のモンスターガールとか、そういう呼び名が無いと意味ないでしょ?」

 

「だよね。二中の鈴木とか三中の佐藤なんて言われても、凄いって感じが伝わって来ないし。

悪いけど、また次回に挑戦してね」

 

「次回っていつよ!?」

 

こうして、鈴の武勇伝は誰にも伝わる事なく終わった。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「ねぇ、織斑君は何か武勇伝とか無いの?」

 

うげ、俺にまで矛先が向いてきたよ。

ある訳ないだろ。こちとらバカでアホな千冬姉の面倒見なきゃいけないからずっと真面目に生きてきたんだから。

 

あ、でも……

 

「武勇伝じゃないけど、昔一回だけめっちゃ悪い事しちまった事があったな」

 

「え!?どんな事したの?」

 

「あれはたしか、第二回モンドグロッソの時……」

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

あの頃、千冬姉はまだ現役バリバリで第二回モンドグロッソにおいても優勝候補筆頭とされていた。

が、馬鹿さ加減で言えば今と大差なく、寧ろ優勝候補筆頭なんて言われてた物だから若干調子に乗ってた為、今以上に酷い状態だった。

 

日々バカな奇行を繰り返し、俺はその後始末に追われる日々だった。

更に、千冬姉の本性を知らないファンの連中からは訳の分からん嫉妬の目を向けられ、当時の俺は心身ともに疲弊しきっていた。

 

やがて、俺の中で千冬姉とファンの連中に対する憤りは頂点に達した頃、俺はこう思った。

 

「あのバカ共に千冬姉がどんだけ頭悪いか教えてやる!!」

 

そう考えた俺は、早速行動に移った。

家の押し入れの中から千冬姉の中学までのテストの答案用紙を可能な限り掻き集め、それらを全てネットに晒してやったのだ!

 

その甲斐あって千冬姉のファンクラブは大混乱。

『ここまでバカだったなんて』と失望する声と、

『いくら適性が高いと言ってもここまで酷くない筈だ』と擁護する声が入り乱れて、ファンクラブが崩壊していく様はまさに痛快の一言だった。

 

 

 

 

 

しかし、事態はこれだけでは終わらなかった。

千冬姉の馬鹿さ加減が露呈したのはファンクラブだけではなかった。

何と他国にまで知れ渡ってしまったのだ。

 

その結果、第二回モンドグロッソにて千冬姉はわずか3回戦で頭の悪さを突かれ、頭脳戦に持ち込まれてしまって敗退してしまったのだった。

(イメージ湧かないならドラゴンボールのクリリンVS餃子の決着シーンを想像しろ)

 

余談ではあるが、後日千冬姉に勝利した選手とその母国から俺に対しお礼の品が山ほど届いた。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「まぁ、お前らの(バカな)エピソードに比べりゃ大した事ないけどな」

 

『いや、アンタの方が滅茶苦茶タチ悪いわよ!!』

 

え、そうか?(真顔)




登場人物紹介 その1

織斑一夏
一応主人公。ポジションは神山高志。
千冬の馬鹿さ加減に手を焼き、反面教師にしてきた為、非常に勤勉で真面目だがそれ以上に冷めた性格になっている。
千冬に対しては一切容赦が無いが、肉親の情はちゃんと持ち合わせている為、なんだかんだ言っても見捨てられずにいる。
身体能力は千冬に一歩劣るが、腕力は長年千冬を拳骨で黙らせてきた為、千冬以上になっている。
また、IQが高い為、身体能力の差は頭脳と技術で十二分に埋まり、結果的に実力は千冬以上。
恐らく作中一のドス黒いキャラ。



織斑千冬
もう一人の主人公。ポジションは林田慎二郎。
最高レベルのIS適性を持っており、それ故とにかくバカ。
そんな彼女が教師になれる訳もなく、留年しまくって未だに高校一年生で8歳下の弟である一夏のクラスメートになってしまう。
身体能力は滅茶苦茶高いが致命的なまでのバカで頭脳戦に持ち込まれるとまるで駄目になる。
それでも常人より遥かに強く、たまにIS関連の大会に出ては賞金を稼いでいる。
性格は原作と比べて穏和で気さく。ただし度を超えたバカ。
一夏には頭が上がらない。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ナイス・バルク

「俺以外に男が?」

 

唐突に千冬姉の口から知らされた驚愕の事実。

何と俺以外にも男性操縦者が3人も発見されたらしく、それぞれ2、3、5組に編入したらしい。

 

「ああ。先程2組を覗いてきたが……凄い男だった。あれ程の男は初めて見たぞ」

 

このバカ姉の凄いという基準がどんなものか甚だ疑問だが、やはり気になるものは気になる。

 

「よし、俺も行ってみるか。で、その男の名前は?」

 

「いや、名前は知らん。だが行けば一発で解る」

 

は?どういう意味だ……?

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

【1年2組】

 

「よし、ここだな」

 

千冬の言う凄い男とやら、見定めてやろうじゃないか!

そう思って俺は勢いよく扉を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いた・・・!!

 

 

 

 

「…………」

 

間違いない!この男だ!!

し、しかし……何なんだこの男は!?

 

優に190cmはあるであろう体躯、スキンヘッドに一房だけ垂れたカールした金髪。

厳つい顔に割れた顎に、こちらもまたカールした豊かな口髭。

 

そして、何故か裸の上半身に鎧の如くムッキムキな筋肉!

 

(何だこのオッサンはぁーーーー!?)

 

こ、このオッサンが男性操縦者?

だからと言って教師にも見えん……。

どっちかって言うと、豪腕の錬金術師を彷彿とさせるが……。

 

「は、はじめまして……1年1組の織斑一夏です」

 

「…………」←フロントダブルバイセップス

 

「あ、あの……お名前は?」

 

「…………」←サイドチェスト

 

…………何か言ってよ!

無言のままポージングするのやめて!!

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

こうして、何の成果もないまま、クラスに戻ってきてしまい、千冬姉と鈴と合流した訳だが……。

 

「結局、あの男について何も分からずじまいだった……」

 

「そうか、やはり恐ろしい男だ」

 

「っていうか、本当に生徒なの?」

 

「とりあえず、名前だけは分かったぞ」

 

山田先生に頼んで名簿見せてもらったからな。

 

「名簿には、アームストロングとだけ、書いてあった」

 

…………やっぱり豪腕の錬金術師?

 

 

あと2人、3組と5組にも男性操縦者がいるらしいが、

こんなカオスが続いてしまうのか?

 

いや、他の2人が普通の人間という可能性もある!!

きっと他の2人はまともだ!少なくともアームストロング少佐よりは!!

そうであってくれ!頼むから!!

(※完全にフラグ)

 

 

 

 

だがしかし、俺の僅かな望みは後に跡形も無く崩れ去る事になる。

 

 

 

 

【1年3組】

 

さて、次はここだな。

 

「前回のこと考えると怖いわね」

 

「ああ、気を引き締めていこう」

 

今回は一人じゃ不安だから千冬姉と鈴に同行して貰った。

 

「よし、開けるぞ……!」

 

意を決し、扉を開けたその先には……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ンゴッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴリ、ラ……?

 

 

 

次回へ続く。




アンケート、結局無駄にしてしまって申し訳ないです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

英国から来た女帝(バカ)

久々に投稿。
ゴリラの下りはカットしました。


一夏以外に発見された男性操縦者が一人はガチムチのオッサン、もう一人がモノホンのゴリラという衝撃にして笑撃の事実が判明してから数日後、

未だそのショックから冷めない一夏達を余所に、IS学園に新たな騒動の種が舞い込もうとしていた。

 

 

 

 

 

「ココがIS学園……。

庶民が通う学校らしく、小汚い所ですわ」

 

金髪に縦ロールのロングヘアという出で立ちで、校門前に仁王立ちする一人の少女。

彼女の名はセシリア・オルコット(16歳)。

イギリスの名貴族、オルコット家の一人娘にして、母は日本に多数存在する外国人学校の理事を務める権力者である。

 

セシリアはこれまで数多くの学校を日英問わず支配し、遂にIS学園にもその手を伸ばしたのだ!

 

「フフッ……これで記念すべき20校目ですね。

今度はどんな間抜けな無礼者がお嬢様の権力に屈して這いつくばるか、楽しみですわ」

 

ちなみに子分のメイドも一緒である。

 

「大衆は豚か猿でしかありませんわ!!

無能な者共に私の理想を叩き込み、支配して差し上げましょう!!」

 

かなり危ない発言と共に、セシリアは学園へと足を踏み入れた。

そこで待つ地獄のような混沌も知らずに……。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「ココがお嬢様の在籍なさる1年1組です」

 

「フフフ……では、早速下々の者達の間抜けな顔を見てあげるとしましょうか」

 

そしてセシリアは勢い良く扉を開いた。その先には……

 

「…………フンッ!」

 

筋肉ムキムキのオッサン(アームストロング少佐)が謎のポージングを決めていた。

 

「ちょっと少佐!アンタは違うクラスでしょうが!」

 

そしてそんな彼を引っ張っていく小柄な中国人の少女(鈴音)。

 

「……………………」

 

セシリアは何も言わずに扉を閉めた。

 

「どうかなさいましたか?」

 

「い、いえ……今何かとんでもないものを見たような……。

例えるなら美少女達の輪の中に1人だけ中年のマッチョおじさんがいたような……」

 

「あ、あの……お嬢様、言ってる意味がよく分からないのですが……。

まぁでも、この学校は馬鹿の集まりで有名ですから……」

 

「いや馬鹿とかそういう次元の話ではありませんわ!!」

 

セシリアは混乱してしまった。

 

「と、とにかく落ち着いて、もう一度見てみましょう。今度は私も一緒に見ますから」

 

「え、ええ……では、せーの!」

 

そして再び扉を開けたその先は……

 

 

 

 

 

「この馬鹿姉がぁーーーーっ!!テメェ、俺を舐めてるのか!?

何回教えりゃ理解出来んだコラァッ!!

6×5=(ろくご)30って言っておいて、何で6×6の答えがそれより減るんだ!?

6×6=(ろくろく)26って何なんだよ!?

この…………ド低脳がぁーーーーっ!!!!」

 

某パープル・ヘイズのスタンド使いばりにキレた少年と、その少年に締め上げられる初代ブリュンヒルデの姿だった……。

 

 

 

 

 

「…………やっぱりおかしいですわ!!

何ですの今の光景は!?

何で初代ブリュンヒルデが学生服着てますの!?

何で初代ブリュンヒルデが締め上げられてますの!?

何であの男はあんなにキレてますの!?」

 

セシリアは更に混乱してしまった。

 

「あ、落ち着いてくださいお嬢様!!

た、確かに異様な光景でしたが、ここで尻込みしてたらこの学校を支配する事なんて出来ません!!」

 

「ハッ!そ、そうでしたわ。

…………いや、でも、アレはさすがに……」

 

「しっかりしてください!!

いくらムキムキのオッサンでも、ブリュンヒルデとその弟でも、

結局は同じ人間です!必要以上に恐れる事はありません!

お嬢様には権力という強力無比な武器があるではありませんか!!」

 

「そ、そうでしたわ……。

私とした事が何たる醜態を……申し訳ありません。感謝しますわ」

 

子分メイドの必死の説得でセシリアは漸く落ち着きを取り戻し、再び扉に向き直る。

 

(そうですわ。私には権力がある!権力程人間が抗えない力は無い……。

とどのつまり、私に敵う者などこの学園にいないのですわ!!)

 

そして、セシリアは三度扉に手を掛ける。

誰が支配者なのか、誰が女帝なのかを大衆に解らせるために!

 

「さぁ、このセシリア・オルコットの前に跪きなs『ンゴッ?』…………」

 

目の前に映るゴリラの姿にセシリアは三度、扉を閉めた。

 

「人間ですらありませんわ……」

 

「もしもしお父様!教室には入れませんわ!お母様に代わってくださいまし!!」

 

セシリア、やっぱり大混乱。

 

 

 

 

セシリアとその子分メイドの受難は続く。




登場人物

鳳鈴音
ポジションは前田彰。
原作とは違い1組所属でIS適性はC。両親は離婚してない。
一夏の幼馴染の日中ハーフ。

勉強は苦手だが、基本的にまともな常識人。
しかし、周りが常識から剥離した馬鹿が多いため、必然的にツッコミ担当になってしまう不憫な娘。

本作では一夏とは友人止まり。
(逆に一夏のドス黒い一面にはドン引きしてる)
代わりに弾と付き合ってる。

彼女の父親にはある秘密が……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

嘘は泥沼の始まり

今回はほぼ原作沿いです。


前回までのあらすじ

学園に転校してきたイギリスの名門貴族のお嬢様、セシリア・オルコット(+子分メイド)。

IS学園支配を目論む彼女は、未だ教室に入ることさえままならない状況にあった。

 

「留年8回の初代ブリュンヒルデ・織斑千冬。

入学試験次席の成績を誇る剣道部エース・篠ノ之箒。

謎のマッチョおじさん・アームストロング。

例のゴリラ。

まだ確認の取れてない5組の男性操縦者。

この5名が1年の要注意人物達です」

 

「なるほど。つまりその連中さえ抑えればこの学園の支配も容易という事ですわね」

 

先程のパニックからようやく立ち直ったセシリアは懲りずに学園支配の算段を進めていた。

 

「いえ、実はその上に更にとんでもない要注意人物がいるのです。

織斑千冬でさえ手に負えない程の男が……」

 

「何ですって!?その男とは一体……?」

 

「その男とは………………コイツです」

 

「ん?」

 

子分メイドの指差した、その先にいた男、それは…………織斑一夏だった。(←ある意味当然)

 

「フッ……誰かと思えば、先程のプッツン男ではありませんか。

この程度の者、私の相手ではありませんわ」

 

「いきなり出てきて何を訳の分からん事を言ってんだ?このクロワッサン頭は……」

 

「く、クロ…………えぇい!よく聞きなさい愚民共!

私の名はセシリア・オルコット!!

イギリス名門貴族、オルコット家の令嬢にして、この学園の理事長の娘!!

アナタ達全員を退学に処すなど容易な事。

まずは手始めにこの無礼者を退学に……」

 

「ちょっと待ちなさいよ」

 

不意に鈴音がセシリアを呼び止めた。

 

「何ですのおチビさん?」

 

「この学校、国立よ。理事長なんかいないわよ」

 

「え?国立……」

 

「大体さ、外人が日本の学校の理事長っておかしいでしょ。

外国人学校ならともかく」

 

「…………」

 

鈴音の指摘に、セシリアはしばし沈黙し、やがて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(が、学校間違えた……)

 

今更になって己のバカでアホで間抜けな間違いに気付いたのだった。

 

(ど、どうしましょう?この学校じゃお母様の権力は使えないし、

かと言って『学校間違えました』なんて言ったら赤っ恥も良い所……)

 

一瞬にして追い詰められたセシリア。

この大チョンボを隠すべく彼女は(無い)知恵を必死に振り絞る。

そして……

 

「えぇい!良く聞きなさい!!

私のお母様はこの学園の理事長ではありませんわ!!」

 

「は?じゃあ何なんだよ?

お前が理事長って今さっき言ったんだろ?」

 

「え、えーと……私のお母様は世界政府を牛耳る悪の黒幕!影の大統領ですわ!!

この学園もお母様がISの力に目を付け、狙っているのですわ!!

私はその悪事を止めるべく、お母様に反旗を翻し、計画阻止の為にこの学園に来たのですわ!!」

 

だが、無いものはどう足掻いても無い。

0に何を掛けても0にしかならないように、無い知恵を振り絞って出した答えは当然バカ丸出しの嘘だった。

 

(うわぁ〜〜!何て嘘吐いてんのよ!?この馬鹿お嬢は!!

そんなデタラメ小学生どころか幼稚園児だって信じないわよ!!)

 

子分メイドは心の中で悲痛な叫び声を上げる。

終わった……セシリアのみならず、その手下である自分も色んな意味で終わってしまった。

子分メイドは心の底からそう思った。が……

 

「えー!?それ本当!?」

 

「こ、この学園に悪の魔の手が迫ってたなんて!?」

 

(信じちゃった!?とんでもないバカだわコイツら!!)

 

一夏と鈴音を除くクラスの生徒達はセシリアの言葉を鵜呑みにしてしまった。

 

「ちょっと良いか?」

 

「は、はい!何でございましょう?」

 

騒ぎの中、千冬が前に出てセシリアの眼前に立った。

やはり腐っても大人。流石に騙せないかとセシリアは思ったが……。

 

「手伝わせてくれ!正義の為に!!

今こそ私達は学園と正義を守る地球防衛軍を立ち上げるべきだ!!」

 

(もっとバカなのがここに居たーーーーっ!!流石留年8回……)

 

やはり千冬は千冬でした……。

 

「そうだよ皆!一緒に悪と戦おうよ!」

 

「私達ならきっと勝てるよ!」

 

「わ、分かりましたわ。今日から私達1年1組の皆さんは正義の仲間ですわ!!」

 

『おー!!』

 

ここまで来たらセシリアももう後には引き返せなくなり、最早ヤケクソになって地球防衛軍設立を宣言したのだった。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「とんでもない事になっちゃった……」

 

「自業自得ですけどね……」

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「ねぇ、一夏。さっきから何撮影してるの?」

 

「いや、あの金髪クロワッサンとこの馬鹿姉達が泥沼に嵌っていくのが面白くてな。

動画撮ってサイトにアップしようと思ってな。

大丈夫、顔は加工して隠しとくから」

 

邪悪な笑みを浮かべて答える幼馴染の姿に、鈴音はこう思った。

 

(やっぱコイツ、ドス黒いわ……。

吐き気を催す邪悪ってレベルよ、これは……)

 

 

 

余談だが、セシリアはこの後、何とか転校しようと試みるものの、母親から『良い加減、手に職を付けてきなさい』と言われ、そのまま学園に在籍する羽目になってしまい、泥沼から抜け出せなくなってしまうのは、また別の話である。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

オーバーテクノロジー×オーバーテクノロジー

お待たせしました。
メカ沢枠の登場です。


「一夏!鈴!大変だ!!また凄い男が5組にいたぞ!!」

 

俺の優雅な昼休みをぶち壊しにする馬鹿姉の大声。

例の最後の男性操縦者か……。

 

「またそれかよ。やれマッチョのおっさんだの、モノホンのゴリラだの……今更何が出てきても別に驚きゃしないだろ」

 

「いや!アレは絶対驚くぞ!!私がそうだったんだからな!!」

 

お前の基準なんて当てにならんだろ……。

 

「そういえば、5組だけはまだ確認してなかったわね?」

 

「ああ、何か検査がどうとかで5組の奴だけしばらく欠席してたんだ」

 

まぁ、この際だ。驚く云々は別にして見に行ってみるか……。

 

「でもIS全盛のこの時代にロボットとか改造人間とか出てきても驚きゃしないけどね」

 

「ハハッ、確かに」

 

鈴の言葉に俺は笑いながら返す。

今思えば、これがフラグだったのかもしれない……。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

そして、1年5組の教室前に来た訳だが……

 

「じゃあ開けるぞ。せーの……」

 

思い切ってドアを開けたが……

 

「何?教室の中にISがあるけど……?」

 

鈴が呆気にとられたような声を上げる。

教室内の最後列の席には何故か座るように置かれている一体のIS。

しかし、見た事の無い完全装甲(フルスキン)の機体だ。

確かに変な光景だが……。

 

 

 

「大変!大変だよI沢(あいざわ)君! 」

 

「どうした?そんなに慌ててよ……」

 

……は?

 

「え?今、あのISが喋った・・・?」

 

「ま、待て待て。ISは所詮IS、きっと中に人が・・・」

 

「いや、でもアレ・・・」

 

 

 

「ちょっと待ってろ。もうすぐ油差し終わるからよ」

 

鈴が指差した先には胸元の装甲をパックリと開いて中の精密機械を専用器具でメンテナンスしてるISの姿が・・・。

 

「アレが5組の男性操縦者・・・I沢Sin太郎(あいざわしんたろう)だ」

 

IS操縦者じゃなくて、ISそのものじゃねぇかぁ〜〜〜〜!!

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「で、何が大変なんだ?」

 

「じ、実は同じクラスの鈴木さんが、整備科の子と揉めて喧嘩になっちゃって・・・。

向こうは人数揃えて徹底抗戦の構えみたいで・・・」

 

「構う事ないよ!こっちも兵隊集めて迎え撃とうよ!

整備科の奴らいつも私達操縦士科の事を脳筋って馬鹿にしてくるんだもん!

自分達はモヤシの癖に!!」

 

「落ち着けって」

 

「あべし!?」

 

何かいきなり不良漫画みてーなノリになったと思ったらI沢が騒ぐ女子をデコピンで黙らせる。

・・・大丈夫なのかアレ?

 

「人それぞれ考えの違いってもんはあるから、喧嘩するのも結構だ。

だが、全面戦争なんて物騒な考えは止せ。

喧嘩は鈴木と整備科の一員の個人的なものだろ?

俺は整備科にダチがいる。そいつ通して話付けて仲介しといてやるよ」

 

「ちょっと待ってよ!それじゃこっちから泣き寝入りするって事!?」

 

「心配すんなよ。あくまで仲介して和解を促すだけだ。

操縦士科の面子に泥は塗らねぇよ。

それにな、操縦士と整備士ってのは本来、持ちつ持たれつの関係なんだ。

下らねえ喧嘩が将来に響くなんてお互い馬鹿らしいし、デメリットしかないだろ?」

 

何かカッコいい事言ってるし。

しかもISそのものが言ってるから余計説得力がある・・・。

 

「I沢君って、大人よね」

 

「本当、頼れる兄貴分でお父さんみたいな感じだよ!」

 

「ウチのクラスのリーダーはI沢君以外考えられないよね」

 

何か頼りにされてる・・・

 

 

 

 

「ねぇ、そろそろ本格的に突っ込み入れたいんだけど」

 

俺の隣で鈴がげんなりとした様子で呟く。

俺だって同じ気持ちだけど、アレにどう突っ込めと言うんだ?

 

「な、驚いただろ!?」

 

ドヤ顔ではしゃぐ馬鹿姉がうぜぇ・・・。

 

 

 

その内、俺と鈴は考えるのをやめて、騒ぐ千冬姉を物理的に黙らせたのは言うまでもない。




キャラ紹介

セシリア・オルコット
ポジションは北斗武士。
原作と違って両親は健在で仲も割と良い。
エリート志向の強い典型的な高飛車お嬢様・・・しかしIS学園に入学してる辺りやっぱり馬鹿。
勉強はそれなりに出来るが、思考が世間離れし過ぎている。
また、テンパると全く駄目であり、低レベルな誤魔化しで逃れようとする悪癖有り。


子分メイド
オリキャラ。ポジションは北斗の子分。
セシリアと共に編入してきたが彼女とクラスメート達の馬鹿な行動に辟易させられる苦労人。
セシリアに仕えるメイド。断じてチェルシーではない。
本名は不明でセシリアも既に忘れている。
実はチェルシーよりセシリアとの付き合いは長い。
だが名前は忘れ去られている(←ここ大事)。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

原作メインヒロインは二次創作だと酷い扱いが多かったりする(特にISとか)

今回は一夏とは別の視点になります。


私の名は篠ノ之箒、15歳。

1年4組在籍、剣道部所属だ。ちなみに入試2位(1位は一夏)。

 

『試合終了!勝者・篠ノ之箒!!』

 

「凄い!篠ノ之さん、これで5連勝!!」

 

「これならクラス対抗戦も優勝間違い無しね!」

 

剣とISの実力は校内指折り、原作と違って友達は多いし、人望も厚いと自負している。

幼馴染の一夏と並び、1年生ツートップと称される優等生だ。

だが、そんな私にも大きな弱点がある。

 

「ありがとう。

すまんが、ちょっと後にしてもらえるか?ちょっとトイレに・・・」

 

ピットを抜け、誰もいない事を確認。

よし、誰もいないな・・・ならば、猛ダッシュだ!!

 

(や、ヤバい・・・もう出そう・・・!)

 

私は慌ててトイレに駆け込み、鍵を閉め、便器に向き直る。

 

そして・・・

 

「オェエエエエェェェ!!」

 

盛大に吐いた。

 

私の弱点、それは・・・ISを含む乗り物に極端に弱い事である!!

 

「うぅ・・・酔い止め、切らすんじゃなかった」

 

この日に限って愛用の酔い止めの薬を切らしてしまい、この様である。

乗り物の中では2番目に乗りやすいISで酔い止めを忘れたらこの有様だ。

これが観光バスやタクシーとなってくると酔い止めを飲んでいても良くて吐く一歩手前に陥ってしまう。

 

思えば、子供の頃からこの体質に毎回苦しめられ続けていた。

他校での練習試合や大会に出場する為の遠出しなければいけない時、バスや電車で移動する事は、私にとって試合よりも遥かに辛い苦行だった。

 

だが、それでも私はこの苦難を気合いと根性で乗り切ってきた。

自慢じゃないがまだ人前で吐いた事はない!!

……本当に自慢になってないな。

 

『さっきの試合、篠ノ之さん凄かったね〜』

 

『本当、流石入試2位。対抗戦で一夏君との対戦が楽しみだよね』

 

む?他の生徒も入ってきたか。

取り敢えず出るか。そろそろ戻らないといけないし……。

 

『それはそうと明日の遠足、楽しみだね〜』

 

『うんうん!おやつ何持ってく?』

 

……し、しまったぁ〜〜〜〜っ!!

そ、そうだ……明日は水族館に遠足だった!

遠足…………つまり、観光バスに乗らなければならない苦行中の苦行!!

 

「よ、酔い止めでどうにかなるのか?」

 

いや、無理だ。

観光バスは酔い止めでどうにか出来るレベルじゃない……。

だが、旅行やテーマパーク自体は好きだから行かない訳には……。

 

『バスは他のクラスと合同で乗るんでしょ?』

 

『うん、ウチのクラスは1組とだって』

 

…………1組と、だと?

って事は“奴”と一緒のバスに……。

 

「うっぷ……」

 

明日来るであろう地獄を想像して、私は再び吐いた。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

1組との合同乗車に戦慄する箒。

果たして、彼女と1組との間に何が?

そして、箒の言う“奴”とは?

 

次回、地獄の遠足が始まる!




キャラ紹介

アームストロング
1年2組所属。謎のマッチョおじさん。
元ネタは鋼の錬金術師に登場するアームストロング少佐。
ポジションはフレディ。
基本的に無言だがポージングで感情表現する為、ある程度の意思疎通は出来る。
一夏、千冬、鈴音の事を気に入ってるらしい。


I沢Sin太郎
1年5組所属。AI搭載の無人IS。
ポジションはメカ沢新一。
男気に溢れた大人の魅力を持った漢。
だがISである。
つまりISがISを学ぶと言う実にシュールな光景が発生している。
どこで製造されたのかは篠ノ之束にも分からないらしい。
イメージCVは速水奨氏。


ゴリラ
1年3組所属。文字通り本物のゴリラ。
ポジションはゴリラ。
どこから来たのか誰が連れてきたのか何もかもが謎。
ちなみに、コイツがISに乗れると知った時、篠ノ之束は三日三晩寝込んだらしい。
父親に当たるゴリラはその昔、某不良校に通っていたとかいないとか。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

嗚呼、遠足

今回も箒視点です。


IS学園、一年生の遠足。

テンションの高い連中を乗せた大型バスは、一路都心の大型水族館目指して走っていた。

 

そんな中、1組と4組のバスはというと・・・。

 

 

 

 

私の名は篠ノ之箒。

くどいようだが、入試次席の優等生だが乗り物には弱い。

私は今、文字通り苦行の真っ只中にいる。

 

「〜〜〜〜〜♪」

 

バスのど真ん中でパーティー用の帽子を被って、ビール片手に熱唱している“奴”・・・織斑千冬。

人が酔って気持ち悪い時に馬鹿騒ぎして・・・目障りかつ耳障りな事この上無い。

だが、喋ると吐きそうになる・・・。

 

「うっぷ・・・」

 

いかん、余計な事考えたらますます気持ち悪くなってきた。

えぇい、無視だ無視!このまま目を閉じ、無心になって到着を待とう。

 

「ふぅ〜、歌った歌った。どっこいしょっと・・・」

 

歌い終えた千冬のアホは少し疲れたのか腰を下ろした。

・・・私の膝の上に。

 

(ぐぇっ!?お、重いぃ・・・気持ち悪いぃ・・・)

 

「ハッ!?しまった!私とした事が何て失礼な事を!」

 

さっさと退けぇ!重いんだよ!!

 

「やっぱり帽子脱がないと失礼だったな」

 

そっちじゃない!退けと(心の中で)言ってるんだぁ〜〜!!

畜生、やっぱりこうなってしまった・・・。

思えばコイツには昔から酷い目に遭わされてきた。

姉さんの幼馴染みだから必然的に接点が出来てしまい、一夏共々コイツの奇行に悩まされた小学生時代。

私の乗り物酔いを知ったか知らずかは分からんが一緒に乗り物に乗ると必ずと言って良いほど私の酔いを助長してくる。

 

「ん?おい箒、顔色悪いぞ。大丈夫か?」

 

誰のせいだと思ってるんだこの野郎!!

覚えてろよ貴様・・・バスを降りたら必ずぶち殺す!!

 

「おい!しっかりしろ!!真っ青になってるぞ」

 

だが、私の殺意を他所に千冬は私の身体を揺さぶってくる。

 

「ぐぇぇぇぇ・・・!!」

 

やべでぇ〜〜!死ぬ〜〜〜!!もう私の負げですぅ〜〜〜〜っ!!

お願いだがら私に触らないでぇぇぇ〜〜〜〜っ!!

 

「ん?箒、もしかしてお前、アレか?」

 

そうだよバス酔いだよ!やっと理解したか!?

 

「すまない、そうとは気付かず・・・。

よし、とっておきのものを渡そう」

 

よ、酔い止め・・・たのむ酔い止めを・・・もう過剰摂取でも構わないから。

 

「腹が減ってたんだな。ほら、オヤツのプリンだ」

 

希望は儚く崩れ去った。

 

「ちょっと緩くなってるが、味に問題はないだろう。さ、食うが良い」

 

そう言って私の顔にプリンを近付けてくる。

 

(イヤァァァーーーー!そんなの食ったら間違いなく吐くぅ〜〜〜〜〜っ!!)

 

「さぁ、遠慮せずに『お前が食ってろ馬鹿姉が!!』ぶげらっ!?」

 

だが、不意に背後から現れた手が千冬の頭を鷲掴み、プリン目掛けて彼女の顔を叩きつけた!!

 

(い、一夏ぁぁ・・・)

 

私を救った救世主・・・一夏の姿に私は無様にも涙を抑えられなかった。

 

「千冬姉が悪かったな箒。

ほら、ミントガムだ。これ噛んで酔いを紛らわせ」

 

「あ、ぁりがとぅ・・・」

 

嗚呼、一夏がいてくれて良かった!

やっぱり一夏は私のヒーローだ!!

これで吐かずに済む!!

 

 

 

 

 

 

 

【数分後】

 

 

 

 

 

 

 

「オェェェェ〜〜〜〜っ!!

うぅ・・・ビール飲み過ぎた上にプリンはまずかったか・・・うっぷ・・・」

 

わ、私の隣でエチケット袋にゲロを吐く千冬。

酔いが落ち着きかけて油断した矢先に・・・。

 

(あ、もうダメ・・・)

 

 

『オェェェェ〜〜〜〜っ!!!!』

 

 

こうして、私は忌々しい織斑千冬と並んで、仲良く吐いたのだった。




人物紹介

篠ノ之箒
一夏の幼馴染み。
ポジションは竹之内豊。
原作とは違い1年4組所属。入試次席で剣道部のエースで、人望も厚く友達も多い。
一夏から勉強を教えてもらっていたため、学業は優秀。
要領は良くないが勤勉さでカバーしている努力家。
束との仲は普通に仲の良い姉妹に落ち着いている。
そもそもこの世界では要人保護プログラムは発生してない。

自他共に認める優等生だが、ISを含む乗り物酔いが非常に酷く、酔い止めは必須になってしまっている。
(ただし、箒にとってISはまだ楽な方である)
原作より扱いが良くなったのか、悪くなったのかは読者の捉え方次第である。




次回予告

ノリと勢いで創設された地球防衛軍。
数話にかけて放ったらかしになっていたが、千冬の突飛な提案で新メンバーを探すことになった。
果たして、防衛軍に入る新メンバーとは?

次回『原作ポジションが無いなら、別メディアから引っ張り出せば良い!』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

原作ポジションが無いなら、別メディアから引っ張り出せば良い!(前編)

6月某日

 

入学から約2カ月が経過したこの日……都内某所の一室にてある会議が開かれていた。

 

「よし、全員揃ったな?」

 

会議の発起人たる千冬は周囲を見回しながら席に着く。

部屋の中にいるのは千冬を含めて7人。

 

一夏、千冬、鈴音、セシリア、アームストロング、ゴリラ、子分メイド

 

とまぁ、いつもの(?)面子である。

 

「では、これより地球防衛軍緊急幹部会を始める!」

 

「何でこんな(馬鹿げた)事に・・・」

 

千冬の言葉にセシリアは机に突っ伏して嘆く。

 

そう、賢明な読者諸君は覚えているであろう。

数話にかけて放ったらかしだった地球防衛軍(馬鹿軍団)が遂に動き出すのだ・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、会議そのものをどうこう言うつもりは無いけどさ・・・これだけは言わせて欲しいの・・・」

 

開始早々、真っ先に口を挟んだのは鈴音だ。

 

「・・・何でそれを私の家でやらなきゃいけないのよ!?場所ぐらい他にもあるでしょうが!!」

 

なお、会場は鈴音の家である。

 

「だって、第一候補の一夏の部屋にしようとしたら、一夏が・・・

 

『あ゛?一生ビール抜きにされてぇのか?』

 

って言うんだもん!!」

 

「いい歳して何が“もん”よ!?この8浪女!!

私の部屋はビールより安いんかい!?」

 

「それは違う!私にとってビールの価値が高いだけだ!!」

 

「どっちみちタチ悪いわ!!」

 

開始早々もうグダグダである。

 

「おい、不毛な喧嘩してないで本題言えよ。

こんな(アホらしい)会議さっさと済ませて帰って晩飯の支度したいんだけど」

 

しかし、そこに一夏が睨みを利かせながら割って入り、強制的に話を切り替えた。

ちなみに、こんな馬鹿軍団に何故に一夏と鈴音の常識人が入っているかというと、

担任の山田真耶に『あの連中を野放しにしたらまずいから監視しといて欲しい』と頼まれたからである。

なお、見返りとして2人にはそれぞれ国立大学とスポーツ校への推薦を約束してもらった。

 

「む?すまん・・・。

議題というのはだ、実はこの地球防衛軍幹部会に追加メンバー・・・つまりは新幹部を入れたいと思うんだ」

 

『はぁ?』

 

思わぬ突飛な提案に、一同は声を揃えて首を傾げた。

 

「何でまた急に?」

 

「うむ、現状防衛軍幹部はだ、えーっと・・・・・・そいつ(子分メイド)を除けば、隊長であるセシリアを含めても6人。

6人だといまいち中途半端だろ?センターも作れないし。

どうせなら七福神や七人の侍みたいに、7人の方が縁起も良いと思ってな」

 

「そ、そいつ・・・?」

 

「な、なるほど・・・たしかに。

突飛な提案の割に普通な理由ですわね」

 

「けどさ、それなら・・・あー、えっと・・・・・・その娘が7人目の幹部で良くない?」

 

「そ、その娘?」

 

「彼女の場合、セシリア直属のメイドだからなぁ・・・幹部とは別格だろ?

それに、子分が幹部ってのも締まりがないよなぁ」

 

「彼女!?子分!?」

 

「よし、明日から皆で新メンバー探しだ!」

 

思った以上に会議はスムーズに進み、千冬達は席を立って解散しようとするが・・・。

 

「ちょっと待って!!」

 

「ん?どうした?」

 

そこに待ったをかける人物・・・子分メイドである。

 

「アンタ達さっきから私の事をそいつとかその娘とか言ってるのは何なのよ!?

まさかとは思うけど、私の名前知らないなんて言わないわよねぇ!?」

 

『・・・・・・ごめん、知らない』

 

子分メイド・・・本作オリジナルキャラである彼女は未だ名前が明かされてなかったりする。

 

「嘘でしょ!?もう編入から1ヶ月以上経ってるのに!!」

 

「正直興味無いからな」

 

「酷っ!!お、お嬢様!お嬢様なら知ってますよね!?

私メイド長のチェルシーさんより付き合い長いんですから!!」

 

縋るようにセシリアを見詰める子分メイド。

そんな彼女にセシリアは・・・

 

「・・・」

 

気まずそうに目を逸らし、そして・・・

 

「ご、ごめんなさい・・・忘れましたわ」

 

「・・・・・・」

 

希望は無残に打ち砕かれ、子分メイドは真っ白に燃え尽きたのであった・・・。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

原作ポジションが無いなら、別メディアから引っ張り出せば良い!(後編)

かくして、千冬の突飛な思い付きから、地球防衛軍新メンバー探しが始まった。

だが、腐っても探すのは幹部となる人間。そこら辺のモブでは務まらない。

メインを張れる強力な個性を持ち、能力的にも一定以上は欲しい所である。

 

「その点、ウチのクラスは私と一夏、鈴の3人で打ち止めだな。

他の連中、みそっかすのモブばかりだし」

 

「学力みそっかす未満が何を言うか!?」

 

というやりとりが織斑姉弟の間であったのはまた別の話である。

 

 

とはいえ、やはりそんな人物は簡単には見つかる訳もなく・・・。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

最初にスカウトに向かったのはセシリアと子分メイド。

ターゲットはIS学園の生徒達の長たる生徒会長だ。

 

「お願いしますわ。私達を助けると思って・・・」

 

「入隊していただけないでしょうか?」

 

「駄目です(即答)」

 

整備科三年生主席にして学園生徒会長・布仏虚の返答は余りに無情だった。

 

「どうしても駄目なのですか?」

 

「どうしても、どうあっても駄目です。

ただでさえ生徒会の仕事に、進路の準備で忙しいのに、そんなのに時間は掛けられません。

生徒会のメンバーを誘うのは勝手ですけど、少なくとも私はそんな馬鹿らしいクラブ活動をする気はありませんので」

 

まさに絶対零度と言う視線で虚はセシリアと子分メイドの嘆願をバッサリと切り捨てた。

 

「慈悲は、無いのですか・・・?」

 

「慈悲は地球防衛軍なんてものをクラブ活動として認定してあげた時点で全て使い果たしました」

 

なるほど、確かにそれは最大の慈悲である・・・。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

続いてのスカウト担当は千冬。

ターゲットは整備科主席にして生徒会会計担当。

先に断られた虚の妹、布仏本音である。

 

「という訳だ。布仏、是非我が地球防衛軍に入ってくれ!!」

 

「・・・」

 

千冬に声をかけられた本音だが、何も答えず無言のまま通り過ぎようとする。

 

「ちょ、ちょっと待て!?聞こえなかったのか?地球防衛軍に・・・」

 

「・・・・・・」

 

今度は話し終える前に去ろうとしてしまった。

 

「おい!聞いてるのか!?」

 

「・・・私、お姉ちゃんから『織斑千冬とはあまり関わったり喋ったりしちゃ駄目』って言われてるんです。

ついでに、私も8浪してる人とはちょっと・・・」

 

「・・・・・・」

 

ようやく出てきた言葉は明らかな拒絶と胸を刺すような毒舌だった。

 

 

 

その日の放課後、校舎裏で体育座りしながら泣いている千冬が発見された。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

続くは一夏&鈴音。

今度のターゲットは・・・

 

「生徒会以外に当てが無いの?アナタ達・・・」

 

操縦士科入試3位(箒と1点差)にして生徒会書記、更識簪だった。

 

「だってまともな人ってほとんど生徒会なんだもん」

 

「ついでに、更識は操縦士科一年の中で数少ない成績優秀者だしな」

 

というか今年の一年は一夏、箒、簪が群を抜いてトップなだけなのだが。

 

「悪いけど、私もパス。馬鹿の相手は家の中だけで十分」

 

「家の中?」

 

何か引っかかる物言いに首を傾げる鈴音。

そんな時・・・

 

「お困りの様ね?」

 

「ん?お前は・・・」

 

「困っている年下を助けるのは頼れるお姉さんの役目。

この頼れるお姉さんこと、更識刀奈がその防衛軍とやらに入ってあげようじゃない!」

 

現れたのは簪の姉、更識刀奈!

通称【ダブりの刀奈】!去年の進級試験直前に食当たりを起こした挙句、留年してしまった悲劇の17歳である!!

ちなみに彼女も生徒会所属だが、立ち位置は一番下っ端の雑用である。

 

「私が入るからには学園ナンバー1のクラブ活動になるのも不可能じゃないわ!

さぁ、部室に案内しなさい!!」

 

やる気満々でいきり立つ刀奈。だが・・・

 

『成績底辺のダブりに用は無い!』

 

更識刀奈・・・彼女の成績は千冬に次ぐワースト2。

体調不良が無くても進級出来たか否かは五分五分とまで言われている。

千冬にすら手を焼くのにそんな学年ワーストをもう1人増やそうなどと一夏と鈴音が思う訳なかった。

 

「余計な時間食っちまったなぁ」

 

「本当、一から探し直しね」

 

踵を返して去る二人。

その場には呆れ顔の簪、そして・・・

 

「うぅ・・・!」

 

涙を流してその場に蹲る刀奈が残された。

 

「お姉ちゃん・・・」

 

「か、簪ちゃん・・・」

 

そんな彼女に簪は優しく声を掛け・・・、

 

「そこだと邪魔だから外で泣いててくれる?」

 

見事にトドメを刺した。

 

「うわぁ〜〜ん!皆のバカぁ〜〜〜〜っ!!」

 

刀奈は泣きながら走り去っていくのだった。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

それから数日後。

まぁ、色々あったものの、新メンバーは見つかった。

今日はその歓迎会だ(場所はもちろん鈴音の家)。

 

「じゃあ紹介するぜ。

彼女が1年3組所属で現役高校生モデルとして芸能活動もしている・・・」

 

「はじめまして、ゴリ君の紹介で来ましたシャルロット・デュノアです。

何か面白そうだったから参加する事にしました。

芸能活動と掛け持ちになっちゃうから活動に参加出来ない事もあるかもだけど、よろしくね」

 

『よろしく!』

 

在日フランス人、シャルロットの加入にメンバー(現在1名不在)は拍手で出迎えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

一方その頃・・・

 

「何よ皆して・・・これでも私去年より成績上がって進級出来る確率65%ぐらいに上がったのよ・・・」

 

「そうだ!お姉ちゃんはなぁ!お姉ちゃんはなぁ!!お姉ちゃんなんだぞ!!」

 

校舎裏にて、未だ泣きながら愚痴っている残姉コンビ(千冬と刀奈)の姿があった。

 

彼女達はこれより数時間後、連絡を受けた一夏と簪に連れ戻される事になる。




登場人物

シャルロット・デュノア
1年3組所属の在日フランス人。
容姿端麗で現役高校生モデルとして芸能活動もしている。
クラスメートのゴリとは仲が良い。
面白そうという理由から地球防衛軍に参加する事になった。

ポジションは実写映画版にて登場した阿藤快(本人役)。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

最強決定戦

深夜のテンションで書いたから色々ヤバい事になっとります。


「今日、皆に集まって貰ったのは他でもない。

私達、地球防衛軍の主力たる8人の中で、最も強い者・・・つまり、誰がエースに相応しいかを決めたい!」

 

前回に引き続き、地球防衛軍・・・またの名をIS学園問題児軍団の会合。

またも千冬の思い付きでトラブルの火種が撒かれようとしていた。

 

「フッ・・・トラブルメーカー千冬さんも偶には良い事を言うではありませんか。

良いでしょう。このセシリア・オルコット、リーダーとエースを両立する器という事を思い知らせて差し上げますわ!!」

 

「お嬢様には悪いけど、私も腕っ節には結構自信があるのよねぇ・・・!」

 

なお、今回の議題は割と好評だったりする。

 

「ちょっと待ちなさいよ・・・!」

 

「ん?何だ鈴」

 

「誰が最強か?・・・その疑問は最もだし、私も少しは気になってるから別に否定しない。

けどさ・・・だから何でそれを私の部屋でやるのよ!?」

 

賢明な読者の方々にはお察しの通り、鈴音の自宅・・・彼女の部屋である。

 

「またそれか?」

 

「話の腰を折らないで下さいまし」

 

「冗談じゃないわ!こっちは畳貼り替えたばっかりなのよ!張り倒すわよアンタ達!!

どうしても暴れたいなら外でやりなさいよ!!」

 

「だって外暑いし・・・。

とにかく私は暴れたいんだ!今すぐココで!!」

 

「テメェいい加減にしないとマジで殺すぞ・・・!!」

 

最早やりたい放題な千冬に鈴音は口調とキャラが崩壊し始める。

 

「じゃあまず一回戦は鈴音さんVSゴリラさんで・・・」

 

「ふざけんな絶対断る!!」

 

そんな中でも勝手に話を進めるセシリア。

ちなみにこんな時に限って一夏は欠席である。

理由は『こんな連中のエースになんかなりたくない』との事。

 

「ちょっと良いかな?」

 

鈴音の理性がブチ切れる一歩手前、不意にこれまで沈黙を貫いていたシャルロットが口を開いた。

 

「正直、ボクもこういう戦いってする意味無いと思うんだよね?

ぶっちゃけ戦闘力じゃ一夏と千冬がダントツだし、ゴリ君と少佐はよく分からないから」

 

「そうよね!やる意味無いわよね!?」

 

思わぬ味方の出現に鈴音は満面の笑みを浮かべてシャルロットに同調する。

 

「それにボクはルックス&ビジュアル担当だから、有事でもないのに喧嘩とかはちょっと・・・」

 

『は?』

 

シャルロットの思わぬ一言に場の空気が一瞬で変わった。

 

「ちょっと待ってくださいまし、シャルロットさん。

今のルックス&ビジュアル担当とはどういう意味ですの?」

 

「そうだ。私達だってルックスに自信はあるぞ。

お前だけが優れてるみたいに言うのはおかしくないか?」

 

「アハハ!ちょっと面白い冗談言わないでよ。

だってさぁ左から順に・・・」

 

呆れ半分の笑みを浮かべ、シャルロットは千冬達を指差した。

 

「年増&馬鹿(千冬)、厨二臭い似非エリート(セシリア)、名無しモブ(子分メイド)、鈴はまぁ悪くないけど小柄なのがネック。

その点ボクは芸能人でモデルやってる訳だし・・・。ね?ボク以外にルックス担当いないでしょ?」

 

余りにも毒舌、余りにも容赦なし、そして余りにも自尊心に満ち溢れたその発言に室内の誰もが凍り付いた。

 

「と、年増・・・」

 

「厨二臭い、似非エリート・・・」

 

「な、名無し・・・モブ・・・?」

 

(う、うわぁ・・・シャルロットって意識高い系だったんだ。しかも悪い意味で)

 

シャルロット・デュノア・・・普段は割と大人しい彼女だが、実は容姿に関する自信と美意識だけは常人より遥かに高いプライドの持ち主である。

 

そして、彼女に貶されされた者達は・・・。

 

「誰が、年増だ!?24歳の美女に向かって年増呼ばわりかこのクソアマがぁ!!」

 

「この私に対し、何たる無礼千万・・・!

似非とは何ですの!?身も心もエリートたるこの私に向かって!!」

 

「名前あるもん!名乗らせてもらえないだけで名前はちゃんとあるもん!!」

 

当然、ブチ切れである。

 

「えぇっ!?何でキレてんの?本当の事言っただけなのに!?」

 

「あれで悪気無し!?嘘でしょ!?」

 

若干サイコパス気味なシャルロットの反応に鈴音は戦慄を覚えた。

だが、悪気が無いといってもそれで収まるほど千冬達の怒りは緩くない。

 

『ぶっ殺す!!』

 

「ひぃぃっ!!」

 

三位一体という言葉が似合う程ピッタリのタイミングで3人はシャルロット目掛けて襲い掛かった!

 

「ちょっ!?ココ私の部屋!!」

 

「ボクの心配は!?」

 

『死ねぇー!腐れモデルがぁ〜〜〜〜っ!!』

 

3人の拳や蹴りなどが一斉に繰り出され、シャルロットの顔面をスクラップにしようとする。

だが、その刹那・・・

 

 

 

「北斗剛掌波!!」

 

 

 

「あべしっ!?」

 

「ひでぶっ!?」

 

「うわらばっ!?」

 

部屋の出入り口より放たれた闘気が衝撃波となって3人を吹っ飛ばし、壁に激突させた。

 

「うぬら、騒がし過ぎるぞ。営業に差し支える、少しは控えよ」

 

「だ、誰・・・」

 

扉の先に現れたのはアームストロングをも超える巨体と筋肉を持った短髪の男だった。

 

「あ、お父さん」

 

「お父さん!?」

 

そう、彼こそが鈴音の父親にして彼女の自宅『鳳飯店』の店主・凰羅王(ラオウ)である!!

 

「鈴、ひび割れた壁は今夜直してやる。それまで待つが良い」

 

「うん、ありがと!お父さん大好き♪」

 

去っていくラオウ・・・そして、部屋には呆然とするシャルロット、ピクピクと痙攣する3バカ、ただ居るだけのアームストロングとゴリラ。

そしてゆっくりと振り返ってシャルロットを睨む鈴音が残された。

 

「シャル、アンタこれから説教・・・!」

 

「え〜!?何で!?」

 

当たり前である。

この後、みっちり説教されたシャルロットは、千冬達に謝罪し、何とか事は収まるのであった。

なお、3バカは終始ラオウに怯えていたが・・・。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

その頃、一夏は・・・

 

『アーマーパージだぁぁぁっ!!』

 

「よっしゃあプレミア!16R確定!!」

 

パチンコ屋で久々の休みと自由を満喫していた。

 

「これで万発超え!このままエンディングまで行っちまうかぁ?」

 

しかも大勝ちしてるから超ご機嫌である。

 

「一夏君、ゴメン!玉少し貸して!

やっと当たったけど持ち玉無いの!!」

 

しかも、隣では教師である山田真耶も一緒に打っていたりする。

 

「応よ、持ってけ!

今夜は焼肉だぜ!ヒャッハー!!」

 

 

 

 

 

 

当たり前であるが、18歳未満のパチンコは本来厳禁である。

真似しないで下さい。

 

 




登場人物

鳳羅王
鈴の父親、本作最強キャラ。
モデルはもちろん某世紀末覇者・拳王。
中華料理店を経営しており、非常に繁盛している。
寡黙ながらも、娘への愛情はしっかり伝わってる模様。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

地獄の修学旅行

私の名前はモップ・・・もとい、篠ノ之箒。

今日は皆が待ちに待った筆者の故郷である福岡への修学旅行だ。

勿論私も楽しみにしている者の1人である。

太宰府天満宮には一度行ってみたかったし、本場の豚骨ラーメンや梅ヶ枝餅に明太子と、グルメに舌鼓を打つのは非常に楽しみだ。

 

私は今日の為に日々特訓を繰り返してきた。

酔い止めなしでバスや電車に乗っては何度も吐いたし、失神しかけた。

だが、その甲斐あって、何とか多少は電車・バスへの酔いは改善した。

今では酔い止めさえあれば電車に30分ぐらいならば平気で乗り続けられる程になったのだ!

 

だが・・・

 

 

 

 

 

 

『本日は、当エアラインをご利用いただき、誠にありがとうございます』

 

 

 

 

 

 

まさか飛行機だったとは・・・見通しが甘かった。

冗談じゃないぞ・・・飛行機は私の中で苦手な乗り物ナンバー1。

乗る機会なんて滅多に無いから特訓のしようがないし、乱気流に入った時の凄まじい揺れ、耳にかかる空気圧etc・・・それら全てが私の三半規管を掻き乱してくる!

まだ電車もバスも克服しきれてないのに、そこから一足飛びで飛行機とかどんな無理ゲーだ!?

それに加えてもう一つ問題が・・・

 

 

 

 

 

「動くな!大人しくしろ!!」

 

 

 

 

 

覆面かぶった2人組の女にハイジャックされてしまった。

どういう状況だコレは!?

 

 

 

・・・だが、不幸中の幸いと言うべきか、我が校はIS学園。

教師はパイロットとしての能力や知識があり、腕っぷしも相当強い。

加えて初代ブリュンヒルデであるアホの千冬と、泣く子も恐怖で震え上がって黙る鬼畜ヒーローの一夏がいる。

この条件ではハイジャックなど成功しようもあるまい。

そうでなくとも離陸前に警察に包囲されて膠着状態だ。

 

それに、こうなってしまえばこちらも修学旅行どころではない。

恐らくこの旅行は中止され、延期になるだろう。

皆には悪いが、やはりいきなり飛行機はハードルが高過ぎる。

ここは一度延期してもらい、再特訓をして出直そう。

 

「ちょっと!どうなってるんですかラウラ隊長!?

私達藍越学園の修学旅行の飛行機を狙ってたはずですよね?

なのに何であのIS学園の連中が乗ってるんですか!?」

 

ん、何だ?ハイジャック犯の様子が・・・

 

「バカ!名前で呼ぶな!

しょうがないだろ!襲う飛行機間違えたんだから!!

大体、修学旅行の学生を狙おうと言ったのは貴様だろうがクラリッサ!!」

 

「アンタだって名前で呼んでるでしょうが!」

 

何だコイツら・・・ウチの学校と同じくらいの馬鹿じゃないか。

こんなのにハイジャックされたのか私達は・・・。

 

「ま、まぁ落ち着こう。こんな時に仲間割れなど命取り以外の何物でもない。

冷静に今後の事を話し合おう」

 

「そ、そうですね・・・。でも、どうしましょうか?

・・・い、いっその事、自首しましょうか?今ならまだ誰も傷つけてないし。

未遂なら刑務所で何年か臭い飯で済むでしょうし」

 

お、おい・・・ちょっと待て。

いくら何でも諦めるの早すぎないか?もう2〜3時間ぐらい粘れよ。

あんまり早過ぎるとそのまま修学旅行再開なんて事になりかねないんだぞ。

 

 

 

いや、落ち着け私!

いくら私が原作でモップだのクズインだの暴力女だのと呼ばれていようが、自分から犯罪に走る程腐ってはいない!

やはりココは奴らが犯罪に走らぬように願うべきだ。一市民として!!

 

 

 

「お前の気持ちはよく分かった」

 

お、解ってくれたか。

それで良い。じゃあこれから私は修学旅行延期を申請して・・・。

 

「とりあえず、飛行機発進を強行して、それから後の事を考えよう」

 

「ちょっと待て貴様ら!!」

 

『え?』

 

「『え?』じゃないだろ馬鹿かお前らは!?

今の話の流れだと、改心して自首する方向に話が進むべきだろうが!

それが何で飛行機飛ばすなんて話になる!?」

 

「す、スマン。

飛行機乗るのは初めて(これまでの移動は船での密航だけ)だからテンパってしまって、自分でも何言ってるのか分からなくなってしまった。

それに、周りに人が多過ぎて緊張してしまって・・・」

 

「よし、分かった。

おい!全員飛行機から降りろ!!」

 

私の一括で学園の皆と他の乗客達は飛行機を降りたのだった・・・。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「いやぁ〜、人がいなくなってスッキリすると落ち着くな」

 

「本当ですね。私達、結構人見知りしちゃいますから」

 

飛行機に残ったのは私と馬鹿なハイジャック犯2人組・・・私も降りてりゃよかった。

 

「この人と一緒ならもう何も怖くないな、クラリッサ!」

 

「はい!もう自首しようなんて思いません!!」

 

え・・・?

 

「ボス!次は何をすれば良いでしょうか?」

 

「ぼ、ボス・・・?」

 

ま、マズイ・・・いつの間にか共犯者にされている!?

 

「え、え〜と・・・よし、ならば政府に思いっきり無茶な要求をしてやれ」

 

「はい!それじゃあ・・・5億円用意してアメリカまで飛行機を飛ばすように言ってやります!!」

 

ふぅ・・・これで良い。これだけ無茶な要求なら政府も簡単には応じられないだろう。

後は警察に任せて、私は隙をついて脱出しよう。

 

 

 

 

 

「OKだそうです!

クラリッサ!金を確認次第発進だ!操縦を頼むぞ!!」

 

え゛!?

 

「確かに5億円確認出来ました!発進します!」

 

ちょっと待てぇーーーーっ!!!!

 

 

 

 

 

箒の奮闘も虚しく、飛行機は飛び立ってしまったのだった。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

ぐえぇぇぇぇ・・・!ぎぼぢわ゛る゛い゛!!

酔い止めが全く効かん・・・だじげで〜〜〜〜っ!!!!

 

「何だかボスの顔色が悪いぞ?」

 

「誰がボスだ!?うっぷ・・・!」

 

案の定、この後私は盛大に吐いた。

 

 

 

 

 

こうして、私・・・篠ノ之箒の長い修学旅行が始まったのだった。




さらば箒。また会う日まで・・・


次回
『修学旅行の忘れ物』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

修学旅行の忘れ物

前回、修学旅行の飛行機がハイジャックされたが、箒の活躍?で他の生徒達は無事解放された。




・・・で、当の箒は?


ハイジャック事件から3日後、警察からの事情聴取も終わり、学園は無事再開。

中止された修学旅行に関しては次学期に延期という形に話は落ち着いたのだった。

 

「この前は大変だったな。まさかハイジャックに遭うなんて・・・」

 

昼休み、食堂に集まった原作(アニメ1期)レギュラー陣+子分メイドは事件を振り返っていた。

 

「残念ですわ。福岡、楽しみにしてましたのに」

 

「延期はしょうがないですよ。二学期を待ちましょう」

 

「モツ鍋囲んで宴会するのもしばらくお預けかぁ・・・」

 

旅行を楽しみにしてたセシリア、子分メイド、千冬が残念そうに溜息を吐く。

 

「まぁ、旅行そのものが無くなるよりはマシだよ。

ところで・・・・・・ボク達、何か忘れてない?」

 

『そういえば・・・』

 

シャルロットの一言に、一堂は怪訝な表情を浮かべた。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

私の名は篠ノ之箒。

毎度毎度しつこいかもしれんが操縦士科1年次席で剣道は滅法強いが乗り物には滅法弱い。

 

 

 

ココは一体どこなんだ?

・・・あの馬鹿ハイジャック犯達の言葉が正しければ恐らくアメリカだろうけど。

ん・・・こんな所に立て札が?

 

『Texas』

 

どうやらテキサス州らしい。

テリーマンの故郷か・・・私的にはブロッケンJr.の方が好みなんだがな。

 

 

 

いかん・・・現実逃避してる場合じゃない。

 

何でこんな事になったんだ?

あの後、飛行機はアメリカ領空圏に入ってどこかに着陸するかと思った矢先、アメリカ空軍の戦闘機に撃ち落とされてしまい墜落。

私とハイジャック犯達は命からがら脱出し、離れ離れになりつつも、何とか逃げ切ったわけだが・・・。

 

「何とか日本領事館に・・・いや、それだと帰りも飛行機に乗らなきゃいけなくなる」

 

もう飛行機は嫌だ。

飛行機酔いを何とかしない限り日本には帰るに帰れない。

 

とりあえず今は生き延びる事を考えよう。

幸い英会話は出来るし(これでも英検2級)、腕っ節を活かして近くの街で酒場の用心棒でもやるか。

 

 

 

学園の皆はどうしてるだろうか?

やっぱり私の話題で持ちきりだろうな。

 

・・・あぁ、星がきれいだな(現在夜)。

この星空、出来るなら皆で眺めたかった。

千冬辺りは時差の事とか理解せずにボケをかますんだろうがな(笑)

 

そういえば、あのハイジャック犯達・・・ラウラとクラリッサだったか?

二人はどうしているだろうか?

犯罪者とはいえ、何だか憎めない奴らだったな。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

その頃、日本(昼)では・・・

 

「ところで話は変わるが、昨日夜空を見たら北斗七星が綺麗に光っていてな。

きっとセシリアやシャルロットの祖国でも同じ様に綺麗に見えただろうな」

 

「またお馬鹿な事を・・・時間も場所も違いすぎますわ」

 

案の定、千冬は時差など理解してなかった。

 

「それより忘れ物よ。私も何か忘れているような気がして仕方ないのよ」

 

子分メイドの言葉に話題は再び忘れ物の事になるが・・・

 

「うーん、何か忘れてたっけ?ねぇ、篠ノ之さん」

 

 

 

「・・・いや、気のせいだろ」

 

シャルロットの質問にマスクを着けた小柄な銀髪の少女は目を逸らして冷や汗を掻きながら答えた。

 

「そっか・・・そうだよね」

 

「うん、そんな気がしてきた」

 

「まぁ、忘れて思い出せないならその程度ですわ」

 

「そうだな、箒の言う通りだ!

さて、そろそろ教室に戻るか!」

 

そして納得する馬鹿共。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、何でココにいるんだ?ハイジャック犯の片割れがよぉ」

 

「しかも箒に成り済まして・・・これで騙される他の連中の気が知れないけど」

 

当然ながら一夏と鈴音は騙されなかった。

 

「わ、私も何が何だか・・・。

とりあえず私の事は『マスクド・(ラウラ)・篠ノ之』とでも呼んで欲しい」

 

こうしてIS学園に新たなクソバカ生徒、マスクド・L・篠ノ之が加わったのだった。




次回予告

箒と入れ替わって学園に来た馬鹿ハイジャック犯、ラウラ。
何故彼女は学園にやって来たのか?
彼女の口から語られる知られざる出来事が今、明らかになる!

次回『彼女がマスクを被った訳』

?「あんな馬鹿校で箒ちゃんを留年なんかさせられるかぁ〜〜〜〜っ!!」

マスクド「何で私がこんな珍獣の庭なんかに・・・」

一夏「お前も十分珍獣だよ」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

彼女がマスクを被った訳

私の名はマスクド・L・篠ノ之。本名はラウラ・ボーデヴィッヒという。

訳あって今はマスクを被り、篠ノ之箒に成り代わってIS学園に通う羽目になってしまった。

 

「で、何でお前ハイジャックなんかした訳?」

 

「うむ・・・アレは半年前の事だ」

 

冷めた目で私を見下ろす織斑一夏の質問に、私は淡々と語る。

思い出すだけで身悶えする・・・あの忌まわしい事件を。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

当時、私は軍人だった。

祖国であるドイツの首都・ベルリンを拠点に日々鍛錬に励み、任務をこなす日々を送ってきた私だが、ISの適正と能力の高さからエリート若手精鋭部隊『シュバルツェア・ハーゼ』・・・別名『鉄砲玉部隊』の隊長に配属された。

 

「鉄砲玉って名前からしてエリートじゃないわよね?

完全に捨て駒当たり前の最前線の激戦区送りみたいなもんでしょ?」

 

えぇい!うるさいぞチャイニーズ!

兎にも角にも隊長に就任した私にある任務が下った。

 

それは、ベルリン市内に潜伏中の犯罪組織の捕縛任務だ。

 

そして任務当日・・・私と副長のクラリッサは敵の潜伏先の屋敷の近くに潜んでいたが、ある異変が起きた。

他の部下が来なかったのだ。

 

『あの馬鹿どもが!時間も守れんのか!?』

 

そう思って憤慨しつつも、任務開始時刻になり、私達はたった二人で屋敷へ突入した。

 

『な、何だお前らは!?』

 

『ドイツ軍精鋭部隊“シュバルツェア・ハーゼ”が隊長、ラウラ・ボーデヴィッヒだ!』

 

『同じく副隊長のクラリッサだ!』

 

『他の構成員はどこだ!?逆賊め!大人しくお縄を頂戴しろ!!』

 

『何を言っとるんだ貴様らは!?』

 

『あ、あれ・・・た、隊長、この人どこかで見た覚えが・・・』

 

『へ?』

 

『貴様らぁ〜〜、自分の上官の顔も忘れたのか!?』

 

何故かそこには私達が属している軍の長官がいた。

 

『そ、そんなバカな!?何故ここに長官殿が!?

ココは犯罪組織のアジトじゃ?』

 

『それは隣町だ馬鹿どもがぁ〜〜〜〜っ!!!!』

 

 

 

こうして、襲撃先を間違えたばかりか、上官の家を破壊してしまった私達は即逮捕。

2人揃って軍法会議にかけられ、国外追放に処された。

その後は密航やスリを繰り返し、日本に流れ着いたが、金も飯も底をつき・・・。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「それで自棄を起こしてハイジャック?馬鹿なのアンタは?

・・・いや、馬鹿どころか大馬鹿か」

 

「で、本物の箒は?あと、何でお前日本に戻ってんの?」

 

「あの後、アメリカではぐれて・・・そしたら、篠ノ之束が私の前に現れて・・・」

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「お前、今すぐ腹面被って箒ちゃんの代わりに学校通ってこい!」

 

「えぇ!?そんなぁ〜〜!!」

 

「あんな馬鹿校で箒ちゃんを留年なんかさせられるかぁ〜〜〜〜っ!!

事が済んだらお前の日本で暮らせる戸籍作ってやるからさっさと行けぇ〜〜〜〜っ!!」

 

「で、でもバレちゃったら・・・」

 

「あの馬鹿校の生徒は気付きゃしない!最悪私が話し付けてやる!」

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「それはまた、滅茶苦茶な・・・」

 

「私だって滅茶苦茶だと思うさ。けど、本当にバレなかった。

お前ら以外には・・・」

 

がっくりと項垂れ、マスクド・L・篠ノ之ことラウラは嘆いたのだった。

 

「うぅ・・・何で私がこんな珍獣の庭なんかに・・・」

 

「お前も十分珍獣だよ」

 

こうして、新たな珍獣・・・マスクド・L・篠ノ之が学友となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

「〜〜♪」

 

「山田先生、いつの間にそんなブランド物のバッグ買ったの?」

 

「え?・・・あー、ちょっと臨時収入がね」

 

馬鹿どもの日常の裏で、真耶をはじめとした教師達は妙に羽振りが良くなっていた。

 

 

 

 

そして、ラウラの相方であるクラリッサは・・・

 

「ヒィ・・・ヒィ・・・」

 

「はーい、今日の業務終了でーす!」

 

「やっと終わったか・・・」

 

「はい、じゃあ今日の日当5000ペリカね」

 

束が買収した地下労働施設で働いていた。




次回予告

馬鹿の集まりとはいえ、年頃の女子が集まれば必然的に恋話になる。
だが、そこで思わぬ事実が明らかになると知らずに・・・。

次回「意外な事実!アイツに恋人が!?」

?「嘘ぉっ!?」

?「天変地異の前触れ!?」

?「私も知らなかったぞ!?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

意外な事実!アイツに恋人が!?

「ではこれより第一回地球防衛軍女子会を始める!」

 

クラッカーの鳴る音と共に、千冬のテンションの高い声が鳴り響く。

今日は連休を利用し、女子メンバー達による女子メンバーのためのお泊まり女子会だ。

 

「こういう時だけは私の家じゃないのね。全然構わないけど」

 

「パーティーとなればやはり高貴な場所でなければなりませんからね。

ならばやはり財閥令嬢たるこの私の家こそ相応しいのですわ」

 

なお、今回の会場はセシリアと子分メイドの家(オルコット家所有・都内一等地の高級マンション)の空き部屋である。

 

「それにしてもセシリアの家って凄いね。こんな高級マンション持ってるなんて。

おまけに出前の代金まで持ってくれるなんて、

流石高貴なお嬢様だよね(棒読み)」

 

「やっぱり持つべきものは金持ちの友達よねー。

今日のアンタは輝いて見えるわ。未来の英国女王間違い無し(棒読み)」

 

「おーーーほっほ!そうでしょう!そうでしょう!!

やっと下々のあなた達にも私の偉大さが解ったようですわね!」

 

シャルロットと鈴音の明からさまなお世辞にセシリアは普段以上に調子に乗る。

 

(お嬢様、アンタって人は・・・金蔓にされてるのにも気付かないで)

 

そんなアホ主人を見て内心嘆く子分メイド。

だが、だからと言って自分が金を集られるのは嫌なので黙認してる辺り彼女も相当だが。

 

 

 

「よし!じゃあ早速女子会のお約束、恋話から行ってみよう!」

 

馬鹿騒ぎもそこそこに、纏め役の千冬がいきなり話題を振った。

 

「恋話って、アンタからそんな話題が出るなんて意外ね」

 

「失礼な。私だって女だぞ!その他の話には興味津々だ!!」

 

【意外だ・・・】

 

普段からズボラ、破天荒、馬鹿、間抜けを絵に描いたような存在で女らしさなんて外見以外皆無の千冬の思わぬ一面に室内は一瞬沈黙に包まれる。

 

「よし!まずはお前からだセシリア!!」

 

「へ?私ですの?」

 

だが、そんな沈黙も意に介さない千冬に指名されたのはセシリアだった。

 

「私は、今の所特定の殿方とのお付き合いはありませんわ。

たまにお母様やお父様のお知り合いの縁者の方から縁談(お見合い)はあったのですが・・・。

皆さん私の高貴さに圧倒されて自分から身を引いていきましたわ。

身の程を弁えた方々ですわ。尤も、美しすぎる私にも非はありますが」

 

【絶対違う・・・。それアンタの性格にドン引きして逃げただけだから】

 

ドヤ顔で語るセシリアに、千冬を含めた全員が破談の原因を正しく理解した。

高慢ちき、唯我独尊、自己中、ナルシスト、選民思想、バ金持ち・・・挙げればキリの無いセシリアの短所。

余程のドMでもなければこんな女絶対無理だろう。

少なくとも俺(筆者)的には絶対無理!!

ちなみにメンヘラも無理・・・実際付き合って怖い思いをしたので。

 

ごめんなさい、話が逸れました。

 

 

「セシリアはフリーか。じゃあ次はシャルロット」

 

「ボク?僕 ボクはフリーだけど、彼氏募集中だよ。

顔は余程のブサイクでなければ良いし、性格良くて学歴は一般並みで、ちゃんと働いてくれればOKかな?」

 

「へぇ・・・意外ね。ナルシストなアンタの事だから、男の理想とか滅茶苦茶高いと思ってたのに」

 

「失礼な。そりゃボクの美しさは別格だけどさ。

それはボクが別格なだけで、それ以下の一般的なレベルは理解してるよ。

大体、ボクと同格の容姿の男性を探してたら、それだけで20年は掛かっちゃうよ」

 

「あ、そう・・・」

 

相も変わらずナルシスト全開な態度だが、意外な所で常識的?な答えに顔を痙攣らせながらも鈴音は納得した。

 

 

「あ、でも好みのタイプは勿論いるよ。

真っ直ぐで正義感の強い江戸っ子な人が良いな。この前テレビのパチンコ番組で見た大工の源さんみたいな」

 

「・・・うん、一夏と一緒にパチンコ屋行ってきなさい」

 

シャルロットは自分の容姿以外には割と常識的なのである。

その落差に鈴音は思考を放棄した。

 

 

「じゃあ次は・・・鈴!お前、最近彼氏とは上手くいってるのか?」

 

「・・・えぇ、上手くいってるわよ。“弾とは”ね」

 

千冬からの問いに鈴音は憂鬱そうな表情で答えた。

 

「上手くいってる割には浮かない顔ね?」

 

(彼氏)との関係は良いんだけどねぇ、お父さんも弾の事気に入ってるし。

ただ、向こうの家族がね・・・」

 

子分メイドの疑問に、鈴音は憂鬱な表情を徐々に怒りに染め、グラスを握る手に血管が浮き始めた。

 

「向こうの家族、特に弾の爺さんと妹・・・あの二人、私達の関係猛反対してんのよ。

妹はとんでもねーブラコンでさ、私の事『貧乳雌豚泥棒パンダ』呼ばわりした挙句、隙あらば弾に夜這いしようとして、結果弾はわざわざ学校の寮に入る羽目になって・・・。

そしてあの耄碌ジジイ!アイツが交際反対する理由がふざけ過ぎてる!!

アイツ、私のお父さんに10年前に料理大会でボロ負けした事を未だに恨んでて、それが理由で交際反対って!ふざけんじゃないわよ!!

しかも、負けた事を恨むだけならまだしも、『あの時負けたのはテメーが不正しやがったからだ!』ですって!?

何寝言抜かしてんのよ!?アンタの野菜炒めなんかお父さんの青椒肉絲と比べりゃ月とすっぽんでしょうが!

言っとくけど亀の鼈じゃないわよ!トイレのスッポンの方だからね!!

ア゛ア゛ぁぁぁぁーーーーっ!!!!」

 

『ヒィッ!?』

 

誰しも地雷というものがある。

普段から常識人でツッコミ役というフラストレーションの溜まり易いポジションな鈴音にとって、それはまさに特大の地雷だったのだ。

 

「で、では千冬さんはどうですの?

言い出しっぺなのに自分の事はまだ言ってませんでしてよ」

 

「そ、そうだな。まぁ私の彼氏となる男はもう決まってるがな」

 

「嘘!?彼氏候補いるの!?」

 

「当然だ。私を誰だと思っている?」

 

『留年8回の馬鹿』

 

ドヤ顔の千冬に皆(鈴音含む)の声が見事にハモった。

 

「き、貴様ら・・・まぁいい、とにかく私の彼氏候補は頭も顔も良くて、私が馬鹿やったらちゃんと叱ってくれる。お前らも良く知ってる男『もしかしなくても一夏でしょそれ』・・・最後まで言わせろよ」

 

「ハァ!?アンタ実の弟に何つー感情抱いてんのよ!?」

 

「流石にあり得ませんわ」

 

「ココにもブラコンがいたなんて・・・」

 

「えぇい!何を言うか!!筆者の別作では私と一夏は姉弟の柵を乗り越えて結ばれたんだぞ!!」

 

メタ発言はやめて下さい。それに本作において幻想郷は存在しません。

 

 

 

 

 

「盛り上がってる所悪いけどさ、一夏・・・彼女いるよ?」

 

 

 

 

 

「え・・・?」

 

シャルロットの思わぬ発言に、一同は暫し沈黙し、そして・・・

 

「嘘ぉっ!?」

 

「天変地異の前触れ!?」

 

「そんな馬鹿な!私も知らなかったぞ!?」

 

「本当だよ。僕のモデル仲間で、芸能事務所の先輩なんだけどさ。

4年ぐらい前に海でチンピラに絡まれてたのを助けられたのがきっかけなんだって。ねぇ、鈴?」

 

「うん。友達の誘いで皆で海に行ってさ。

その時にナンパされてたのを助けてね。

その女の人4歳年上なんだけどさ、当時小6だった一夏とお互い一目惚れしちゃって、未だに一夏とはラブラブで、今ではもう一夏が高校卒業したら結婚しようって約束してるのよ。

一夏も既にデイトレードで結婚資金稼いで用意してるし。

それにしても、シャルの事務所の先輩とは驚いたわ」

 

『・・・・・・』

 

シャルロットと鈴音からの爆弾発言の連続にセシリアと子分メイドは開いた口が塞がらず、千冬に至っては真っ白になってしまった。

 

「さ、4年も?私・・・全然知らなかったんだが・・・」

 

「話がややこしくなるから黙ってたんじゃない?」

 

「でしょうね、前に『千冬姉には正式に結婚が決まってから言う』って言ってたし」

 

「・・・・・・うわぁぁ〜〜〜〜ん‼︎(号泣)」

 

溺愛する弟に婚約者がいたという残酷(?)な真実に、千冬はただただ泣く事しかできなかなった。

 

その後、女子会は千冬の慰めパーティーに変わったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、私も彼氏いるんだけど・・・」

 

なお、子分メイドの彼氏や恋話を出す予定はありません。

 

「チクショォォーーーーッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

その日の夜

都内某所のラブホにて・・・

 

「一夏くん、早く来てぇ・・・」

 

「何だよ、今日は積極的だな?」

 

「だって、久しぶりに休み重なったんだから、

こういう時ぐらい思いっきり甘えたいんだもん」

 

「ったく、どっちが年上か分からないな。

・・・良いぜ。その代わり、今夜は寝かさないぜ真凛(まりん)

 

その女性・・・自身の恋人、海野真凛を引き寄せ、唇を奪いながら、一夏は彼女をベッドに押し倒したのだった。

 

 

 

 

この後滅茶苦茶S○Xした!!




登場人物紹介

マスクド・L・篠ノ之(ラウラ・ボーデヴィッヒ)
元ドイツ軍の兵隊(階級は兵長)。ポジションはマスクド竹之内。
自身の間抜けなミスが原因で国外追放となり、世界中を放浪した挙句日本に流れ着き、ハイジャックを画策するも、紆余曲折を経てアメリカに取り残された箒の影武者としてマスクを被って学園に通う事になってしまった。
本人は自分をまともな常識人だと思っているが、実際の所は他の生徒と大差ないバカ。


クラリッサ
ラウラの元部下。ポジションは相棒マスク。
ラウラと同様のミスで国外追放に処された。
現在は束が買収した闇金(超ブラック企業だった)の地下労働所で働いている。


海野真凛(うみの まりん)
オリキャラ。
一夏の彼女で現在大学2年生。年齢は20歳。
シャルロットのモデル仲間で芸能事務所の先輩。
その手の業界の人間としては珍しい裏表のない天真爛漫で明るい性格。
一夏とは交際3年目にして常に相思相愛で、普段腹黒な一夏も彼女に対しては甘い。
既に結婚の約束もしている。
外見及びモデルはパチンコでお馴染み『海物語』『ギンギラパラダイス』シリーズの主役・マリンちゃん。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

現在までの登場人物まとめ

原作レギュラー陣が軒並み登場したのでまとめてみました。
※年齢は全て数え年です。


織斑一夏

クラス・1年1組

戦闘スタイル・空手+剣道+喧嘩殺法

部活・地球防衛軍(監視役)

性格・聡明だが感情の起伏が激しい

好きなもの・筋トレ、パチンコ、常識

嫌いなもの・常識の無い馬鹿

大切なもの・恋人、姉

好きな食べ物・バーベキュー

好みのタイプ・美しさと可愛さを兼ね備えた女

特技・料理(プロ級)、デイトレード(総資産4000万)

趣味・マリンスポーツ、釣り、パチンコ

得意科目・美術以外全て

取得資格・空手4段、剣道3段、英検1級

危険度・A

 

本編の主人公(ツッコミ担当)。16歳。

高いIQとそれに見合った聡明さを持った容姿端麗かつ文武両道な優等生。

にも関わらず、何故かIQの低い女にしか起動出来ない筈のISを起動してしまい、IS学園に入学する羽目になった不運な男。

そのツッコミと並外れた戦闘力の高さは他の追随を許さない。

4歳年上の恋人がいて、彼女には甘い。

 

 

 

織斑千冬

クラス・1年1組

戦闘スタイル・身体能力にモノを言わせた我流

部活・地球防衛軍(自称副長兼エース)

性格・自由奔放な気分屋で凝り性

好きなもの・その日の気分で変わる

嫌いなもの・算数(永久不変)、勉強

大切なもの・弟

好きな食べ物・一夏の手料理、キンキンに冷えたビール、枝豆

好みのタイプ・一夏

特技・力仕事

趣味・飲み歩き、テレビゲーム(下手の横好き)

得意科目・体育と実技(それ以外は全て成績1or2)

取得資格・無し

危険度・SSS

 

もう一人の主人公(ボケ担当)。24歳。

驚異的な身体能力と世界最高クラスのIS適性を持つ、世界最高クラスの馬鹿。

そんな彼女が原作の様に教師になれる筈もなく、留年を繰り返して未だ1年生のまま弟の一夏のクラスメートになってしまう。

とにかく馬鹿丸出しな言動が目立ち、周囲のまともな者を悩ませる。

その一方、度を超えた馬鹿である事に目を瞑れば気さくで陽気かつ人情深い性格の持ち主であり、何だかんだで彼女を心底から嫌う者は意外と少ない。

また、ごく稀にではあるがツッコミに回る事も無くは無い。

 

 

 

凰鈴音

クラス・1年1組

戦闘スタイル・南斗白鷺拳(母方の伯父から習った)

部活・地球防衛軍(監視役)

性格・真面目だが苦労性

好きなもの・スポーツ(見るのもプレイするのも好き)

嫌いなもの・自室を溜まり場にされる事、五反田家の老害(厳)とクソガキ(蘭)

大切なもの・家族、恋人

好きな食べ物・お父さんの作った青椒肉絲、酢豚

好みのタイプ・私の為に熱くなってくれる人

特技・ラクロス、料理(中華料理のみ一夏より上手い)

趣味・新作メニューの開発

得意科目・体育、実技

取得資格・拳法初段

危険度・C

 

一夏の幼馴染みの一人。16歳。

アクの強い学園生徒達の中では珍しい常識派。

しかし、それ故に周囲の馬鹿達に振り回される苦労人のポジションに収まってしまった不憫な娘。

中学時代の同級生・五反田弾と付き合っている。

 

 

 

セシリア・オルコット

クラス・1年1組

戦闘スタイル・護身術

部活・地球防衛軍(隊長)

性格・高慢だがヘタレかつ間抜けで詰めが甘い

好きなもの・権力、名声、栄光

嫌いなもの・権力の通用しない相手、貧乏人

大切なもの・自身の栄光(あって無いようなもの)

好きな食べ物・高級ローストビーフ

好みのタイプ・私に従順なイケメン

特技・クレー射撃

趣味・テニス

得意科目・帝王学(自称)

取得資格・無し

危険度・A

 

イギリスからの留学生。16歳。

名門貴族出身でエリート意識の強い高飛車なお嬢様。

『大衆は無能で身勝手な猿だから私が導かなければならない』という歪んだ使命感を持った危険人物・・・なのだが、当人が間抜けで流されやすい性格のため、結局『口だけが達者なバ金持ち』に落ち着いている。

 

 

子分メイド

クラス・1年1組

戦闘スタイル・護身術

部活・地球防衛軍(隊長補佐)

性格・マイペース

好きなもの・ボーナス

嫌いなもの・名前を覚えてもらえない事

大切なもの・家族、オルコット家の皆様、彼氏

好きな食べ物・美味しければ何でも

好みのタイプ・私の名前をちゃんと覚えてくれる人

特技・掃除、洗濯

趣味・B級グルメ食べ歩き

得意科目・家庭科

取得資格・無し

危険度・C

 

セシリアに付き従うメイド。16歳。

オルコット家に代々仕えるメイド一族の生まれでセシリアとは幼馴染み。

金持ち思考なセシリアと違い、庶民的な感覚の持ち主。

セシリアに対する忠誠心は強いが、内心で悪態を吐いたり、彼女が鈴音やシャルロットに金蔓にされるのを黙認するなど、結構いい加減で適当な部分がある。

メイドという事以外にこれと言った特徴が無く、周囲はおろか主であるセシリアにすら名前を覚えてもらえない。

実は日系人で母方の叔父は彼女と同じ悩みを持っていたとか?

 

 

 

シャルロット・デュノア

クラス・1年3組

戦闘スタイル・マーシャルアーツ(護身のため覚えた)

部活・地球防衛軍(自称ルックス担当)

性格・温和だが自意識過剰でナルシスト

好きなもの・自分の美しさ、ファッション

嫌いなもの・醜いもの、紫外線

大切なもの・家族、自分の美貌

好きな食べ物・海鮮料理、フルーツ

好みのタイプ・情に厚い江戸っ子気質な男性

特技・メイク

趣味・美容、美白、ストレッチ

得意科目・音楽

取得資格・無し

危険度・B

 

在日フランス人。16歳。

学生ながらファッション・グラビアで人気のモデル。

原作とは違い母親は健在。

普段は温厚で人当たりの良い好人物だが、実は自身の容姿に対するプライドと自惚れが非常に高く、自分は世界レベルの美しさを持つと信じて疑わないナルシスト。

故に他人に対するルックス評価は全く容赦がない毒舌。

同じクラスのゴリラとは仲が良い。

 

 

 

篠ノ之箒

クラス・1年4組

戦闘スタイル・剣道

部活・剣道部

性格・質実剛健

好きなもの・剣道、温泉、酔い止め

嫌いなもの・乗り物全般(特にバス、電車、飛行機)

大切なもの・家族、友達

好きな食べ物・唐揚げ、お茶漬け

好みのタイプ・ありのままの自分を受け入れてくれる人

特技・剣道、英会話

趣味・レジャー施設巡り

得意科目・国語、英語

取得資格・剣道4段、英検2級

危険度・C

 

一夏の幼馴染みの一人。16歳。

入試次席の優等生で成績優秀かつ剣道部エースで人望も厚い。

しかし、ISを含む乗り物に極端に弱いという致命的な弱点を持つ。

実害という意味では千冬の奇行に最も被害を受けた人物であり、いつか彼女を叩きのめす事を密かな野望としている。

現在は諸事情によりアメリカ・テキサス州のバーで用心棒の仕事で生計を立てつつ、日本に帰る手筈が整うのを待っている。

(姉の束が『絶対酔わない潜水艦』を開発中)

 

 

 

マスクド・L・篠ノ之(ラウラ・ボーデヴィッヒ)

クラス・1年4組

戦闘スタイル・ミリタリーコンバット

部活・剣道部(幽霊部員)

性格・生真面目だがノータリン

好きなもの・衣食住の保証された生活

嫌いなもの・貧困生活

大切なもの・生活費用

好きな食べ物・ジャーマンポテト

好みのタイプ・養ってくれる人

特技・野宿、サバイバル

趣味・早食い

得意科目・無し(取り立てて苦手科目も無い)

取得資格・無し(国外追放により全て剥奪)

危険度・SS

 

元ドイツ軍の兵士。16歳。

自身の間抜けな失態により、ドイツから国外追放となり、自棄を起こしてハイジャックを起こした末に、篠ノ之箒と入れ替わる形でIS学園に通う事になった。

やる気はあるが当人の間抜けが災いしてやる事なす事裏目に出るタイプで、分かりやすく言えば『やる気はあるが、方向性がズレた問題児』。

現在は衣食住の保証された学園生活にそれなりに満足している。

 

 

アームストロング

クラス・1年2組

戦闘スタイル・筋肉

部活・地球防衛軍

性格・無口

好きなもの・肉体美

嫌いなもの・贅肉

大切なもの・?

好きな食べ物・プロテイン

好みのタイプ・?

特技・ポージング

趣味・筋トレ

得意科目・体育、理科

取得資格・大型車両運転免許

危険度・B

 

謎のマッチョおじさん。

無口で何も喋らないがポージングである程度意思疎通は出来る(らしい)。

無言だと逆に扱いに困る(作者談)

 

 

 

ゴリラ

クラス・1年3組

戦闘スタイル・野生

部活・地球防衛軍

性格・ゴリラの性格なんて知るか

好きなもの・?

嫌いなもの・?

大切なもの・?

好きな食べ物・バナナ、鮭

好みのタイプ・?

特技・料理(!?)

趣味・?

得意科目・少なくとも千冬よりは成績上

取得資格・ある訳ねーだろ

危険度・A

 

本物のゴリラ。

どこから来たのか、誰が連れてきたのか全く不明。

束はコイツがIS適性を持つ事を知った際、ショックの余り三日三晩寝込んだらしい。

最近蕎麦屋でバイトを始めた。

 

 

 

I沢Sin太郎

クラス・1年5組

戦闘スタイル・IS戦闘術

部活・帰宅部

性格・実直

好きなもの・漢気

嫌いなもの・筋の通らない事

大切なもの・仲間達

好きな食べ物・重油

好みのタイプ・守ってやりたくなるタイプ

特技・メンテナンス

趣味・ギターの弾き語り

得意科目・国語、理科、歴史

取得資格・無し

危険度・B

 

どこで誰が製造したのか全く不明の無人IS。

漢気溢れる好漢で、クラスの女子達にとって頼れる兄貴分。

だがISである。

当人(?)に自身がISだという自覚があるのかは不明。

 

 

 

山田真耶

クラス・1年1組(担任)

戦闘スタイル・マスターズ通信空手

部活・地球防衛軍顧問(名ばかり)

性格・心優しく温和だが若干利己的

好きなもの・努力、ギャンブル、ブランド品

嫌いなもの・煙草の臭い

大切なもの・生徒達

好きな食べ物・焼肉、牛乳

好みのタイプ・甲斐性と包容力のある男性

特技・速読

趣味・パチンコ、競馬、昼寝、読書

得意科目・国語

取得資格・教員免許、普通自動車運転免許

危険度・D

 

一夏達の担任で千冬の元後輩。23歳。

IS学園OGでありながら教員免許を取得した努力家で、学生・教師双方から密かに一目置かれている。

一方で私生活ではパチンコや競馬に熱を上げる素行不良な一面を持ち、一夏とはパチンコ仲間で、某クズニートな六つ子達とも友人同士。

ラウラの編入に関して束との裏取引ではちゃっかり懐を潤すなど、利己的な一面も持っている。

とは言え、本質的には生徒思いな善人であり、彼女を慕う生徒は多い。

 

 

 

 

 

生徒会

事務処理を専門に行うため、メンバーはほぼ整備科の生徒。

メンバーのクロ高ポジションは特に定まっておらず、話の内容に応じて様々な立ち位置に変わる(予定)

 

更識刀奈

クラス・1年5組

戦闘スタイル・喧嘩(武術を覚えるオツムが無い)

部活・生徒会(雑用)

性格・陽気な寂しがり屋

好きなもの・楽しい事、簪ちゃんからのお仕置き(秘密)

嫌いなもの・放置される事、仲間外れ

大切なもの・簪ちゃん、虚ちゃん、本音ちゃん

好きな食べ物・チョコ菓子、ハンバーグ

好みのタイプ・私に構ってくれる人

特技・水泳、マラソン(体力だけはある)

趣味・アニメ鑑賞(主に子供向け)

得意科目・体育

取得資格・無し

危険度・S

 

生徒会の一員。17歳。

通称『ダブりの刀奈』

江戸時代から続く名家・更識家の長女。

(本作において3代程前に更識家は暗部から足を洗っている)

千冬に次ぐ馬鹿で、IS学園においても数少ない留年経験者。

一応名目上は食当たりによる体調不良が原因だが、素の学力では進級出来なかった可能性が高い。

千冬に負けず劣らずの馬鹿な言動でよく妹の簪からお仕置きされているが、実は隠れMで、それを悦んでいる。

ただし、根が寂しがり屋なので放置されたり仲間外れにされるのだけはガチで嫌がる。

 

 

 

更識簪

クラス・1年5組

戦闘スタイル・古武術

部活・生徒会(書記)

性格・冷静沈着

好きなもの・姉、アニメ、漫画、ゲーム

嫌いなもの・姉の奇行

大切なもの・両親、自作パソコン、姉(一応)

好きな食べ物・ハンバーガー

好みのタイプ・カリスマ性のある人

特技・ゲーム(プロ級)

趣味・アニメ鑑賞(主にロボットアニメ)、姉へのお仕置き考案

得意科目・国語、理科

取得資格・漢検準1級、藤堂流古武術2段

危険度・B

 

生徒会の一員で刀奈の妹。16歳。

操縦士科では珍しい成績優秀者で一夏とは手のかかる姉を持つ者同士仲が良い。

冷静沈着・・・というより若干冷徹でサディストな面があり、姉へのお仕置きが密かな愉しみ。

(刀奈がMなのでwin-winな関係)

 

 

 

布仏虚

クラス・3年A組

戦闘スタイル・CQC

部活・生徒会(会長)

性格・合理主義

好きなもの・クラシック音楽

嫌いなもの・騒がしい環境、愚か者

大切なもの・妹、お嬢様方

好きな食べ物・握り寿司

好みのタイプ・足りない部分を補い合える人

特技・養豚場の豚を見るような目、チェス、将棋

趣味・クラシックを聴く事、アニメ鑑賞(主にホラー系)

得意科目・プログラミング

取得資格・簿記1級

危険度・B

 

学園操縦士科主席にして生徒会長。18歳。

更識家の従者の一族出身。

自他共に認める合理主義者で、問題を起こしたクラブや部活に対して容赦無く予算をカットする事から多くの生徒達から恐れられる存在。

当然ながら、本来主である筈の刀奈との力関係は実質逆転している。

上記の様に愚か者を嫌っているが、何故か刀奈の事は嫌っておらず、プライベートでは良き友人関係だったりする。

 

 

布仏本音

クラス・1年B組

戦闘スタイル・CQC

部活・生徒会(会計)

性格・能天気な楽天家だが毒舌

好きなもの・可愛いもの

嫌いなもの・面倒くさい人

大切なもの・お姉ちゃん、(かん)ちゃん

好きな食べ物・お菓子、カレーライス

好みのタイプ・優しくて格好良い人

特技・ダーツ

趣味・着ぐるみパジャマ集め、アニメ鑑賞(主にヒーローもの)

得意科目・溶接

取得資格・無し

危険度・B

 

虚の妹で生徒会の一員。16歳。

普段はのほほんとしたのんびり屋な少女だが、姉と同様に馬鹿な相手に対しては結構容赦がなく、しれっと毒舌を吐く一面を持つ。

簪とは親友同士。

 

 

 

学園外

 

海野真凛

性格・天真爛漫

好きなもの・海、泳ぐ事

嫌いなもの・迷惑行為、しつこいナンパ

大切なもの・一夏君

好きな食べ物・シーザーサラダ

好みのタイプ・一夏君

特技・スキューバダイビング

趣味・旅行、カラオケ、水族館巡り

取得資格・ダイバー、ライフセーバー、普通自動車運転免許

危険度・E

 

一夏の恋人。20歳。

シャルロットと並ぶ人気を持った現役大学生モデル。

一夏が小6の頃にチンピラにしつこくナンパされていた所を助けられた事から知り合い、一目惚れし、その年のクリスマスに告白したのをきっかけに付き合うようになった。

シャルロットとは同じ事務所の先輩後輩の間柄で、美意識の塊であるシャルロットも認める程の美人で、人格面も優れており、尊敬されている。

実家は海の家を経営している。

 

 

 

凰羅王

戦闘スタイル・北斗神拳

性格・寡黙だが懐の深い豪傑

好きなもの・信念

嫌いなもの・脆弱、卑劣、怠惰

大切なもの・妻と娘

好きな食べ物・スタミナ料理

好みのタイプ・妻

特技・料理、武道

趣味・鍛錬

取得資格・調理師免許、特級厨師免許、大型車両免許

危険度・A

 

鈴音の父親で人気中華料理店・凰飯店の店主。44歳。

超一流の料理の腕前と一騎当千の戦闘力を持った豪傑。

寡黙で口数は少ないが、妻子を深く愛しており、家族仲は非常に良好。

将来の娘婿候補である弾の事は気に入っており、自身の後継者として鍛えようと考えている(弾も乗り気だったりする)。

が、五反田家との因縁が娘の恋路を邪魔している。

4人兄弟の長男で、次男は整体師、三男はバイク屋、四男は自衛隊に勤務している。




次回からクロ高以外の漫画を元ネタにした話も増やしていこうと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

傭兵参上!因縁のグラウンド!!

今回から他の漫画を元ネタにした話も増やしていこうかと思います。


都内某所の河川敷に作られた野球場。

この日は商店街対抗野球大会の決勝が行われていた。

 

一回戦で西町を下した南町代表『南町ビッグボンバーズ』。

対するは東町を下した北町代表『北町サザンクロス』。

 

この二組による激しくもスポーツマンシップに溢れた正々堂々とした試合が行われて・・・

 

「テメェ!コラ審判!!今のはどう見てもアウトだろーがぁっ!!

今すぐアウトに訂正しろ!ぶち殺すぞ!!」

 

「馬鹿か老害野郎が!!おい審判、訂正なんかするんじゃねぇぞ!!

いっその事そのクソジジィを退場させたらどうだ!?」

 

「う・・・(た、確かにその方が面倒が減って良いかも?)」

 

「ぐっ・・・!

ケッ・・・1点ぐらいちょうど良いハンデだ!いい気になるなよ!」

 

・・・いや、ヤクザ顔負けの殺伐とした抗争の様な試合だった。

 

 

 

さて、ココで今衝突している二組について説明しよう。

まず、南町チームのキャプテン・五反田厳。

五反田食堂店主にして南町商店街組合の会長を務める男である。

読者の方々はお察しだろうが、本作における鈴音の彼氏・弾の祖父でもある。 

 

そして対する北町チームキャプテン・霞邪義(かすみ ジャギ)

北町商店街にてバイク店を経営する元暴走族総長の男である。

 

 

 

「何打たれてんだコラァッ!!北町のクソなんざ三振にできねーのかお前は!?」

 

「ダーハッハッハッ!パワハラジジィがキャプテンじゃ大変だなぁ!

こっちに寝返るなら歓迎してやっても良いぜ!!」

 

殺伐どころの問題ではなくなってきた。

この会話で察することが出来ると思うが、この二組、そしてこの二人は非常に仲が悪い。

ただでさえ商店街同士利害がぶつかる上に、この二人・・・いや、この二組の一族はある理由から10年以上前から仲が悪かった。

 

そして、現在の点数は南町0点、北町3点で北町が圧倒している状態だ。

 

「おい!例の助っ人はまだ来ないのか!?」

 

「さ、さっき連絡したら、今用事が終わってもう直ぐ着くと『おーーい!』・・・き、来た!!」

 

しかし、そこに二人の女が自転車に乗りながら颯爽と現れた。

 

「おぉ!来てくれたか!!」

 

「遅くなってごめんね。補習が思ったより長引いちゃって」

 

「補習受けたの刀奈ちゃんだけでしょ?」

 

IS学園1年、更識刀奈(17歳、留年中)とシャルロット・デュノア。

この二人こそ、南町が助っ人に読んだ選手達だった。

 

「お待たせしました。早速で悪いんですけど・・・」

 

「あ、あぁ、報酬の1万円ずつね。勝てば上乗せで2万プラスだ」

 

「まいどあり♪」

 

勿論、有料である。

 

「お、おい・・・こんな娘二人で大丈夫なのか?」

 

強力な助っ人と聞いていたのに現れたのがまさかの女子高生という自体に厳は不安な声を出す。

 

「会長さん、安心してください。

私は運動神経だけなら更識家No. 1。シャルロットちゃんも現役モデルにしてIS学園での球技大会で好成績を残した期待のホープ。

どんな相手だって負けはしません!!」

 

「そ、そうか・・・とにかく頼んだぞ!あの北町の奴らにだけは負ける訳にはいかねぇんだ!!」

 

「はーい。それじゃ、行くわよシャルロットちゃん!」

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「プレイボール!」

 

6回表南町の攻撃。

バッターはシャルロットだ。

 

「女子供とはいえ金で呼ばれた助っ人だ。油断するなよ!」

 

「はい!」

 

激励を受け、北町のピッチャーは気を引き締めてバッターボックスに立つシャルロットを睨む。

 

(バカ校とはいえ、体力は半端ない事で有名なIS学園の生徒。油断はしねぇぞ!)

 

ボールを持つ手に力を込め、振りかぶるピッチャー。

そして、それを振りかぶり、投げるその時・・・

 

「ふぅ、それにしても今日は暑いなぁ」

 

突然シャルロットは自身のユニフォームの襟元を掴み、暑がるそぶりを見せ、ピッチャーに対して胸の谷間を見せつけた!

 

「おおっ!?」

 

JK、しかも現役モデルのシャルロットの豊満な胸に北町のピッチャーは思わず目を見開き、ボールを掴む手も緩み、投げた球は素人にも目に見えて分かるスローボールと化した。

 

「いただき!」

 

当然、そんなスローボールを見逃すシャルロットではなく、勢いよくバットを振って外野までボールをかっ飛ばした!

 

「し、しまったぁ!?」

 

「へへ、まず一塁っと♪」

 

シャルロット、一塁打。

 

「オイ待てコラァ!色仕掛けなんかどうみても反則だろうが!」

 

「うるせー!シャルロットちゃんは暑がってただけだ!テメェん所のピッチャーが発情したのが悪いんだろうがぁっ!!」

 

そしてこの罵倒合戦である。

結局、北町の意見は通らずシャルロットは一塁進出が認められた。

 

この後、北町ピッチャーは調子を乱してしまい四球を連続。

何とかツーアウトに持ち込んだものの、満塁のピンチを迎えてしまった。

そして・・・

 

「よーし、ここで決めてやる。代打、更識!!」

 

南町のリーサルウェポン、更識刀奈が遂に打席に立った!

 

「フフフ・・・やっと私の番ね」

 

普段の馬鹿さ、間抜けさからかけ離れた不敵な笑みを浮かべ、刀奈はバットを天に掲げる。

 

「よ、予告ホームラン、だとぉ・・・!」

 

そう、予告ホームランである。

その行為がピッチャーの怒りに火をつけた。

 

「な、舐めやがって・・・!俺はかつて学生時代、甲子園を目指し県大会決勝まで駒を進めた事もあるんだぞ!

その俺に対して予告ホームラン・・・打てるもんなら打ってみろぉーーーーっ!!」

 

ピッチャーの怒りを込めた豪速球が放たれた!!

 

 

 

[カキィーーーーン!!!!]

 

 

 

たが、そんな怒りを嘲笑うかの如く、刀奈のバットはボールに命中。

予告通りフェンスを越え、ホームランを決めた!

更識刀奈・・・成績ワースト2な彼女だが、身体能力は織斑姉弟に次ぐ学園No.3。

その腕力は伊達では無かった!

 

「満塁ホームラン!!」

 

『うおぉぉーーーーっ!!逆転だぁーーーーっ!!』

 

「そ、そんなバカな・・・」

 

会心の一打に歓声を上げる南町ビッグボンバーズの面々。

そして、北町ピッチャーはその場に崩れ落ちるしかなかった。

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

その後、逆転された北町は何とか逆転しようとするも、シャルロットの巧みなピッチング(キャッチャーは刀奈)に抑えられ、得点を得られなかった。

しかし、北町もこれ以上の得点を許さず必死で守り抜き、

遂に最終9回裏、北町最後の攻撃となった。

 

「ギャーハッハッハッ!ざまぁみやがれ北町のカスども!もう何やっても無駄だ!さっさと負け認めて土下座しやがれってんだ!」

 

「あ、あの老害ヤロー・・・!!」

 

勝ち誇っている厳に地団駄を踏むジャギ。

このまま北町の負けで終わってしまうのか・・・

 

「おーい、おじさーん!」

 

だが、運命は北町を見放してはいなかった!

 

「お待たせ!助っ人連れて来たよ!!」

 

「おお!鈴か!!待ってたぞ!!」

 

ジャギの姪・・・凰鈴音が強力な助っ人を引き連れ駆けつけたのだ!!

 

「家の老害が迷惑掛けちまったようで申し訳ねえ。

この責は働きを持って返させてもらいます」

 

その助っ人・・・鈴の彼氏、五反田弾はジャギに一礼し、己が祖父を睨み付ける。

 

「テメェ弾!凰のクソチビに入れ込むのみならず、北町のカス共に寝返る気か!?」

 

「黙れクソジジィ!!家を出る時言ったはずだぜ?テメェの五反田食堂(クソみてぇな家)は俺の手でぶっ潰してやるってなぁ!今日はその前哨戦だ!!」

 

凄まじい気迫で厳の怒号を跳ね返し、弾はバッターボックスに入った。

 

「早速俺が打たせてもらいます。

決別してるとはいえ俺は奴の孫だ。そんな俺に満塁やツーアウトの状況を任す訳にはいかないでしょう?

叔父貴の信頼を勝ち取る意味も込めて、まずは同点にして見せます」

 

「・・・よし、良いだろう。代打、五反田弾!!」

 

ジャギの宣言と共に弾は先程刀奈が見せたものと同じポーズ・・・予告ホームランを見せる。

 

「予告ホームランなんて、大きく出たね。

鈴の彼氏みたいだけど、こっちも報酬掛かってるんだから、遠慮はしないよっ!!」

 

好戦的に笑い、シャルロットの手から投げられた球(スライダー)は綺麗な弧を描きながら刀奈のグローブ目掛けて飛んでいく。

この試合において、この球を打てた選手は未だいない!

 

「・・・フン!」

 

だが、弾は口元に笑みを浮かべ、そして・・・

 

[カッキィーーーーン!!]

 

先の刀奈を上回る大きな音を上げ、そして刀奈の記録を遥かに超える飛距離を見せ、弾の打球は場外へと消えた。

 

「ほ、ホームラン!!」

 

『ウオォォーーーーッ!!や、やったぁ!同点だぁーーーーっ!!』

 

まさに起死回生の一撃。

土壇場で同点に巻き返した弾は凱旋するかのように右腕を掲げながら塁を回り、北町サザンクロスのメンバー全員の喝采を浴びてホームインしたのだった。

 

 

 

 

 

 

「チクショォォーーッ!!あの、クソガキがぁぁっ!!」

 

勝利を目前に台無しにされ、厳は周囲の目も気にせずブチ切れてバットを振り回してベンチを破壊する。

 

「よっしゃあ!これで同点だ!

鈴、お前の彼氏は最高だ!!後は延長戦でもう一度ホームランを・・・」

 

「その必要は無いわ。もう一人、最強の助っ人が来てくれたから♪」

 

「そう、あの程度の連中にこれ以上付き合う必要無し!」

 

「そ、その声は・・・」

 

聞き覚えのある声にジャギは恐る恐る振り向く。

その先にはいたのは、優に2メートルを越える巨躯を誇る、その男は・・・

 

「あ、兄者!?」

 

そう、ジャギの兄にして鈴の父、ついでに弾の師匠、凰羅王が満を辞して参戦したのだ!!

 

 

 

「ら、羅王・・・だとぉ!?」

 

そして南町側で羅王に一際強く反応したのは、かつて10年前に料理対決で負けて以来、因縁の続く厳である。

 

「あの、野郎ぉぉ・・・!どけ、役立たずの小娘(ガキ)共!

あの野郎は俺がぶっ潰す!!」

 

「うわっ!?」

 

目を血走らせながら厳はシャルロットを突き飛ばし、何と自らマウンドに立った!

 

「自ら呼んだ選手、それも女子にその暴挙・・・昔から何も変わらん老害ぶりよ。

五反田厳!貴様の醜態、見るに耐えんわ!!」

 

「うるせぇ!イカサマで俺に勝った分際で偉ぶってんじゃねぇ!!」

 

もはや何の勝負かも分からなくなりそうな中、それぞれがマウンドと打席に立って睨み合い、一触即発となる二人。

 

「おい審判、さっさと再開しな。とばっちり食う前にな」

 

「は、はい!プレイ!!」

 

場の雰囲気に当てられ、呆然としていた審判はジャギの忠告に慌てて試合を再開する。

 

(この日をずっと待ってたぜ。テメェをぶっ殺せるこの日を!

俺には野球において最強の最終兵器【燃える魔球】があるんだ!!)

 

羅王を睨み付けながら、厳はマウンドに入る際にすり替えた球を見てニヤリと笑う。

ただの球ではない。油をたっぷりと染み込ませた球である。

そして、その球を投げると同時に手に隠しておいたライターを着火して引火!

 

 

 

そう、【燃える魔球】とは・・・

 

 

 

「死ぃねぇーーーーっ!!!!」

 

 

 

 

本当に燃える球なのである!!

 

 

 

「ちょ!?」

 

「そんな球取れる訳ないでしょうが!!」

 

慌てて逃げ出す審判と刀奈。

だが、球が向かうのはキャッチャーミットではなく、羅王の顔面だ!

 

「もう試合なんて関係ねえ!くたばりやがれぇ!!!!」

 

「・・・愚か者が!」

 

しかし、羅王は狼狽えず、燃える球を見据え、いとも容易く打ち返した!!

 

「な!?ぐえぇぇぇ!!」

 

打ち返されたボールは厳の腹にぶち込まれ、厳の身体諸共河へぶっ飛ばしてしまった!!

 

「ほ・・・ホームラン、ゲームセットォ!!」

 

『ウオォォーーーーッ!!!!』

 

かくして、試合は北町サザンクロスの勝利に終わった。

 

 

 

「あの爺さん、絶対おかしいわよ。もう南町の助っ人なんて絶対しないわ」

 

「・・・同感」

 

なお、刀奈とシャルロットはこれを理由に南町と縁切りし、以後南町に助力する事は無かった。

なお、南町ビッグボンバーズの殆どのメンバーがこれから数日内に北町・西町・東町に流れたとか・・・

 

 

 

 

 

 

 

「ち、ぢぐじょー・・・!次は必ずぶっ殺してやるからなぁ〜〜〜〜!!」

 

そして老害・・・もとい、厳は未だ懲りていなかった。




今回の話の元ネタはエリートヤンキー三郎です。

人物紹介

五反田弾
一夏の親友で鈴の彼氏。
五反田家からは実質的に家出しており、現在は全寮制の学校に通いつつ、工事現場のバイトと奨学金で学費を賄っている。
羅王とは師弟関係にあり、彼から北斗神拳と料理技術を学び、鳳飯店の跡継ぎとしての修行に励んでいる。
義に熱い熱血漢であり、腕っ節は一夏、千冬よりも強い。
(一夏曰く【俺と千冬姉が二人がかりならギリ勝てそう】なレベル)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

戦慄!知能テスト!!

新年明けましておめでとう御座います。
今年もよろしくお願いします。


「それではこれより、皆さんの知能テストを行います!」

 

一学期も後半、季節は夏となる中、殆どの生徒にとって憂鬱な行事・・・知能テストの日がやって来た。

 

IS学園における知能テストは適正や学業の成績、日頃の生活態度を元に二種類に分けられる。

 

一夏、簪のような成績優秀者や、鈴のように適性がC以下かつ常識ある生徒には通常のIQテスト。

そして、残りのバk・・・もとい、適性の高い者や常識の無い度を超えた素行不良な者。

また、分類不能な者は・・・

 

 

 

「では、吊るしてあるバナナを取ってください。

制限時間は1時間。手段は問いませんし、物は好きに使って構いません」

 

ベッドの置かれた部屋にはバナナが吊るされ、下には台座と棒が置かれている。

そう、知る人ぞ知る『猿の知能テスト』である!!

 

「ガチで人間扱いされてねーな」

 

「まったくだわ。あそこに入らなくて良かった」

 

「でも仕方ないと思う私達は正常な筈」

 

「あーあ、大衆は猿か豚って宣ってたお嬢様が猿扱いなんて・・・」

 

猿扱いな底辺組を眺めながら、低レベルテストを免れた一夏、鈴音、簪、子分メイドは安堵と呆れの入り混じった声を上げていた。

 

「やれやれだ。本当に碌でもない猿共だ。ああはなりたくないな・・・」

 

「お前は箒が戻って来たら改めてテストするって山田先生言ってたぞ」

 

「・・・え?」

 

マスクド・L・篠ノ之ことラウラ・・・一応彼女は現在箒の替え玉として通学している身のため、今回の猿テストは免除されている。

だが、箒が戻り次第、彼女は本名のラウラ・ボーデヴィッヒとして編入する予定であり、その後に猿テストを受ける事が確定している。

 

「な、何故だ!?私は何も問題など・・・」

 

「ハイジャックの前科があるだろうが!」

 

 

 

 

case1 シャルロット

 

「まったく・・・何でこの僕がこんなエテ公のテストなんか。

事務所通して学園に抗議しちゃおうかな?」

 

普段ゴリラと仲が良いくせに自分が猿扱いされるのは嫌がるシャルロット。

ちなみに、彼女の場合人格に問題ありと判断されたが故に通常テストとは別にこのテストを受ける事となったのだ。

 

「こんなの簡単じゃん」

 

そう言うとシャルロットは道具には目もくれず、ベッドを引っ張ってバナナの真下に移動させた。

 

「はい、これで良しっと」

 

そしてベッドの上に立ってバナナに括り付けられた紐を解いてバナナを取る事に成功したのだった。

 

これが模範解答である。

 

 

 

case2 セシリア

 

「こ、この私に猿の知能テストなど・・・!

ええい!腹立たしいですわ!!」

 

案の定セシリアはキレ気味だった。

 

「こんなもの台に乗って棒を使えば簡単ですわ!!」

 

いきり立ちながら台に登って棒をバナナ目掛けて振るい、バナナを叩き落とそうとするが・・・

 

「あら?この・・・!あとちょっと!えぇい!!」

 

だが届かない!届いても落ちない!!

それもその筈、このバナナは簡単に叩き落とされないように、硬く紐に結ばれ、高さも生徒がギリギリ届かないように調節されているのだ!

 

そして、30分が経過した頃・・・

 

 

「ゼェ、ゼェ・・・ちょ、ちょっと休憩・・・」

 

届かないバナナと格闘し続け、すっかりバテたセシリアはベッドに倒れ込む。

 

「ど、どうすれば届くのでしょうか・・・ん?」

 

ココでセシリアは漸くベッドを使えば良い事に気付いた。

 

「セシリアさん、記録は30分です」

 

「・・・///」

 

猿のテストに30分も掛け、周囲からの呆れた視線に晒され、セシリアは顔を耳まで真っ赤にして覆ったのだった。

 

 

 

 

 

case3 I沢Sin太郎

 

『それでは、スタートです』

 

真耶からの合図にI沢はバナナを一瞥し・・・

 

「ターゲットロック・・・シュート!」

 

何と、手甲部からカッターを飛ばして、バナナを吊るす紐を切り裂いてしまった!

 

「フッ・・・取ったぜ」

 

落ちて来たバナナをキャッチし、クールな態度を見せるI沢。

 

『あ、はい・・・合格です。

・・・そりゃそうよね、ISなんだから』

 

真耶は深く考えないようにした。

 

 

 

 

case4 刀奈

 

「このっ!このっ!このぉっ!!」

 

続いては刀奈。先のセシリアと同じく、棒を使って取ろうとしているが、当然ながらまるで上手くいかない。

 

「クッ・・・それなら!」

 

苛立ちながらも、刀奈は台から降り、バナナ目掛けて棒を投げ付けた!

 

 

だが・・・

 

「あ、外し・・・ホゲェっ!?」

 

棒はバナナに当たる事なく、天井・壁・床と跳ね返り刀奈の顎に直撃した。

 

「ふおぉぉぉぉ・・・・・・!」

 

顎に痛感の一撃を喰らい、刀奈は悶絶。

数分間のたうち回る事となってしまった。

 

「ハァハァ・・・このままじゃダメだわ。・・・かくなる上は」

 

やがて回復した刀奈は何を思ったのか両腕を広げ、手首を動かして手の平をパタパタと動かし始めた。

 

『・・・あ、あの、更識さん?何やってるんですか?』

 

「決まってるでしょ?飛ぶんですよ。翼で!」

 

『は?』

 

訳の分からない回答に真耶は思わず間抜けな声をあげてしまった。

 

「だって私には、私達には・・・私たちの心には・・・翼があるのだから!」

 

『・・・』

 

目をキラキラさせながらそんな馬鹿丸出しな台詞に真耶は何も言えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして・・・

 

 

『1時間経過。時間切れです』

 

うんざりした様な声で時間切れを告げる真耶。

当然、結果は失敗である。

 

「うぅ・・・そ、そんな・・・私には翼が無かったの?

この前見たアニメでは皆飛べてたのに」

 

そんな理屈で飛べてたまるか。

 

「お姉ちゃん、1週間ぐらい私に話しかけないで。恥ずかしいから」

 

「うわぁ〜ん!!(泣)」

 

顎だけでなく、心にも痛恨の一撃を受けた刀奈であった。

なお、この後簪は本当に1週間刀奈と口を利かなかった。

 

 

 

 

 

case5 ゴリラ

 

続く挑戦者はゴリラ。

だが、ゴリラは開始早々部屋を出てしまった。

 

『・・・やっぱりゴリラにこのテストは無謀だったかな?

・・・あれ?』

 

諦め混じりにつぶやく真耶だったが、不意にゴリラは戻って来た。

その腕に脚立を抱えながら。

 

「ンゴッ、ンゴッ」

 

そしてそのまま脚立を器用に登ってバナナを取ったのだった。

 

 

 

『・・・・・・下手な人間より頭良い』

 

呆然としながら真耶はバナナを美味そうに食べるゴリラを暫し眺め続けたのだった。

 

 

 

 

 

case6 千冬

 

さて、いよいよ学園No. 1の馬鹿・千冬の出番な訳だが・・・。

 

「フン!フン!フンッ!!」

 

結論を先に言えば千冬はテストをクリアした。

 

「ふんぬっ!ふんぬっ!!」

 

某吸血鬼の如く壁に足をめり込ませてよじ登り、吊るされたバナナを力づくで手に入れたのだ。

 

「どうだ!取ったぞ!!」

 

『・・・えぇ、一応合格です。脳筋極まりないやり方ですけど。

・・・次は壁をもっと硬い材質に変えないといけませんね』

 

 

 

 

 

case7 アームストロング

 

『えー、それではアームストロングさん。始めてください』

 

そして最後の挑戦者、アームストロングは・・・

 

「・・・・・・」

 

しばしの沈黙の後、アームストロングは先程刀奈がやったように腕を伸ばし、手をパタパタと羽ばたかせる。

 

『・・・またそれです、か・・・!?』

 

呆れた表情を浮かべた真耶だが、その表情は一気に凍りついた。

何と、アームストロングの身体が・・・

 

『う、浮いてる!?』

 

本当に宙に浮いて飛んでバナナを取ったのだ!!

 

『ちょ!?な、何で!?どうやって飛んでるんですか!?』

 

 

 

 

「・・・・・・心の、翼で」

 

 

 

 

 

『・・・・・キェェェェェェアァァァァァァ!!シャァベッタァァァァァァァ!!?』

 

真耶の疑問はアームストロングの言葉に一瞬で吹っ飛んでしまった。




今回の話はpixivにてブラストさんからのリクエストになります。




なお、今更ですが子分メイドの外見とCVのイメージ

外見・『ぱにぽに』の桃瀬くるみにメイド服
イメージCV・植田佳奈


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ある人物の一日

◯月×日

朝6時30分

自宅のベッドで目を覚ます。

父さんは既に仕事の為朝市に出掛けたらしく、母さんが用意した鮭の塩焼きを食べた後、今日も自宅からIS学園へ通う。

 

 

 

国語の授業

 

「はい、じゃあこの漢字読める人いる?」

 

黒板に大きく書かれた三葉虫の文字。

 

「はい!みつばむしです!!」

 

手を挙げた青い髪の生徒が自信満々に答えたが、それ思いっきり間違ってるよ・・・。

 

「残念、読み方が完全に間違ってるわ。あと、ココはアナタのクラスじゃないわよ更識さん?」

 

先生がこめかみをピクピクさせながら返す。

何で5組の刀奈さんが3組に来てるんだろう?と思うかもしれないが、彼女は週に2〜3回クラスを間違えるので、こんなのは見慣れた光景なのだ。

 

この後、5組の担任の先生と妹の簪さんに首根っこ掴まれながら刀奈さんは退場していった。

 

ちなみに正解は【さんようちゅう】である。

 

 

 

実技の授業

 

今日は4組と合同。

本物の篠ノ之さんは未だアメリカから戻ってこられそうにないらしい。

偽者こと幸いにもマスクド・L・篠ノ之さんは間抜けではあるけど成績はそこまで悪くないから評価がそこまで落ちる事はないようだ。

 

・・・いや、元々偽者なのはほとんどの人が知ってるけどね?

 

 

 

テストの結果発表

 

さて、今日から張り出される中間テストの結果だが、僕の結果は

 

国語・82点

数学・74点

理科・55点

社会・58点

英語・49点

実技・91点

 

うーん、やっぱり社会と英語は苦手だ。

 

 

「一夏君全教科満点?勝てないなぁ」

 

「簪もほとんど満点だろ?英語で少しミスったぐらいで」

 

「まぁね。英語はちょっと苦手で・・・」←それでも95点

 

成績トップの一夏君と簪さんは流石というべきか。

 

 

 

「何で主の私よりメイドのアナタの方が全教科好成績ですの!?」

 

「知りませんよぉ〜〜!(アンタが馬鹿だからでしょうが!!)」

 

セシリアさんは主人の面目丸潰れ。

 

 

 

そして・・・

 

「「・・・・・・」」

 

成績底辺二大巨星こと、千冬さんと刀奈さんは、ゾンビのような表情だった。

 

ちなみに点数はというと、

 

千冬さん

国語・15点

数学・7点

理科・12点

社会・23点

英語・0点

実技・99点

 

刀奈さん

国語・8点

数学・25点

理科・1点

社会・30点

英語・3点

実技・90点

 

うわぁ・・・(ドン引き)

 

「ふん!進級試験は掛け算九九さえ出来れば合格なんだ!

あんなレベルの高過ぎる問題ばかりのテストなど、出来ずとも大した問題では無い!」

 

「そうよね!肝心の実技は十分高いんだから、働き口は問題ない筈よ!」

 

いや、テストは中学生レベルの問題ばかりでしたよ?

それにアナタ達留年してるから洒落になりませんよ?

 

「言いたい事はそれだけか?」

 

「お姉ちゃん、辞世の句は読み終えた?」

 

「「ひぃっ!!」

 

案の定、二人は一夏君達に締め上げられ、断末魔の叫びを上げた。

 

「「ぎぎゃああぁぁ〜〜〜〜っ!!」」

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

放課後、部活を終えた僕はバイト先の蕎麦屋へ向かう。

大将から「腕が上がったな」って褒められて嬉しかった。

更に、来月から賄い作りもやらせて貰う事になった。

 

 

 

 

そして帰宅後、夕食に父さんの握ってくれた寿司を食べ、しばらく寛いだ後、就寝。

 

明日も頑張ろう。

超一流の蕎麦屋になる夢を目指して!

 

 

 

 

 

[以上、御手洗数馬(ゴリラ)の日記より抜粋]

 

 

 

 

 

「あ、あのゴリラ・・・何者?」

 

密かにISに乗れるゴリラの生態を追っていた科学者、篠ノ之束は密かに入手したゴリラの日記をコピーした書類を読み、卒倒した。

 

これより束は再び三日三晩寝込み続ける事になった。

(なお、箒を日本に帰す為の乗り物作りは助手に任せてある)




今回の話はpixivにてK.Kさんのリクエストをベースにしました。

人物紹介

篠ノ之束
ISの開発者で箒の姉。24歳。
人見知りだが原作程酷くはなく、箒との仲も良好。
製作時に千冬に合わせたプログラミングをしたがために知能指数の低い女しか乗れない極端なパワードスーツとしてISを開発してしまい、世間からは珍発明家として名が知られている。
なお、本作における白騎士事件はミサイル迎撃ではなく、ハッキングによる世界同時中継でISによる自由飛行を行うといったパフォーマンスになっている。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

代筆(挿絵?有ります)

どうも、ナイツ&マジックがスパロボ参戦決定してテンション上がってる神無鴇人です。
今回ちょっと出張中なんで、ちょっと代筆してもらってます。


「いい加減名乗らせて欲しいんだけど・・・!」

 

昼休み、校庭の片隅で地球防衛軍(笑)メンバーが集まって駄弁る中、突然子分メイドが真剣な表情で口を開いた。

 

「またそれかセシリアの子分メイド」

 

若干うんざりしながら一夏は呆れ気味に返した。

 

「前から思ってたけど何よその子分メイドって呼び方!?確かに私はセシリアお嬢様の子分でメイドだけど!

私にだってちゃんと本名があるのよ!良い!?私の名前は・・・」

 

「ちょっと待て!」

 

「何よ!?」

 

名乗ろうとする子分メイドを千冬は強い口調で遮った。

 

「お前に本名がある事ぐらい馬鹿な私や、ここには居ないが刀奈だって知っている。

だがな、それでもお前の名前は『子分メイド』なんだ!」

 

「んなっ!?」

 

はっきりと突きつけられる無情な現実に、子分メイドは愕然とするしかなかった・・・。

 

「・・・それはもしかして最後通告なの?」

 

「もうそれで定着してるんだ。諦めろ」

 

「ふざけんじゃないわよ!どいつもこいつも私の名前を蔑ろにして!

それに私ってそんなに地味?メイドって時点で十分キャラ立ってるでしょ!?」

 

「いや、君メイドって事以外全然特徴無いよ。寧ろそれでギリギリキャラが立ってるだけで」

 

シャルロットの言う通り、子分メイドはあくまでも『セシリアの子分で本名不明のメイド』という特徴だけでキャラが成り立っているのだ。

特に『本名不明』が大きなウェイトを占める現状では、それを失う事はコイツの存在そのものが危うくなる。

 

「つまりだ、お前に本名があるのは分かってるし、興味が無い事も無い。

だが、本名言ったが最後お前の出番は終わり、お前はレギュラーからモブに降格し、最悪作品そのものから消える!」

 

「そこまでの事!?私の本名そんなにタブー扱いなの!?

っていうか、まさかとは思うけど作者が本名設定してなかったりしないわよね!?」

 

「いや、一応本名は考えてるよ。漠然とではあるけど」

 

子分メイドの叫びに、声をかけたのは一人の男。

自転車に乗ってやって来た一人の30前後のオッサンだった。

 

『誰このオッサン!?』

 

「俺だよ。神無鴇人だよ」

 

そう、この男こそがこの小説の作者・神無鴇人(32歳・独身)である。

 

「えぇーーっ!!作者本人出てきちゃった!?」

 

「おう。あんまりお前らがごちゃごちゃしてて収拾つかないから、俺が出るしかないと思ってな。

で、何?本名の話だっけ?」

 

「そ、そうよ!アンタ作者なんでしょ!私の本名設定してるなら明かしてよ!!もう私の出番とかどうでも良いから!!」

 

「無理」

 

哀れ、子分メイドの懇願はバッサリ切り捨てられた。

 

「っ・・・殺す!」

 

「待て待て!この小説終わらせる気か!?」

 

「落ち着きなさい!私を人殺しの主人にする気ですの!?」

 

ブチ切れてどこからか取り出したバットを振り上げる子分メイドだが、周囲のメンバーがそれを抑える。

 

「まぁ真面目な話、子分メイドの本名は考えてるけどさ、出すのは作品終盤って決めてるから。今出すにはいかんワケよ」

 

「そ、そんな・・・じゃあ私は終盤まで誰からも、誰一人として名前を覚えてもらえないの?」

 

落胆し、その場に跪いて絶望する子分メイド。だが・・・

 

「落ち着け。要は名前を覚えてくれる奴がいれば良いんだろ?おい、来てくれ!」

 

鴇人の呼び掛けに応じ、一人の少年が姿を見せる。

銀の髪に眼鏡を掛け、小柄ながら中性的でなかなかの美少年だ。

 

「今度は誰よ?」

 

「と、透!?」

 

「あはは・・・お久しぶりです。姉さん」

 

透と呼ばれた少年は照れ臭そうに頭を掻きながら子分メイドに笑い掛けた。

 

「姉さん?って事は子分メイドの弟?」

 

「いえ、彼氏ですわ」

 

そう、彼の名は透・ジョーンズ。

元々は設定のみだった子分メイドの彼氏である。

 

「コイツなら子分メイドの本名知ってるからな。ほれ、証拠見せたれや」

 

鴇人に促され、透は子分メイドに近付き、何やら耳打ちするが・・・。

 

「うぅっ・・・!」

 

「泣いた!?」

 

突然、子分メイドは涙を流した。

 

「何言われたんだよ、お前?」

 

「・・・名前、言ってくれた。ちゃんと名前覚えててくれた・・・!!」

 

名前呼んでくれただけでこの感激ぶりである。

 

「透〜〜〜〜っ!!」

 

「え、ちょっ、んむぅっ!?」

 

感涙しながら子分メイドは透に飛び付き、周囲の目も気にせず、熱烈なキスをかました!

 

「ごめん皆、私今日早退するって山田先生に伝えといて!

透!すぐにホテル行こホテル!!」

 

「ちょっ!?姉さ、あぁ〜〜〜〜!!」

 

そのまま透は子分メイドにお持ち帰りされたのだった。

 

「アイツ、あそこまで思い詰めてたんだな・・・」

 

「そうですわね。今度ボーナス弾んでおきますわ」

 

去っていく子分メイドの姿に一夏達はただ呆然とするのだった。

 

 

 

 

 

「さて、じゃあ俺も帰るわ」

 

「あぁ。・・・ん?ちょっと待て!作者のお前がココに居るなら、この小説誰が書いてるんだ?」

 

「ああ、それなら↓のコイツに代筆頼んだ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

あ、どーも僕トイプードルの仁人(にと)です。

兄ちゃんがいつもお世話になってます。

 

「犬じゃねーか!!犬に書かれてたのか今回の俺達!?」




人物紹介

神無鴇人
遂に本編登場に手を出したこの小説の作者。32歳(2021年現在)。
普段は食品工場に勤務している。
趣味はパチンコでギンギラパラダイスや大工の源さん超韋駄天など爆発力のある台を好む。
2ヶ月ほど前からTwitterを始めた。


透・ジョーンズ
子分メイドの彼氏で日系人。14歳。
オルコット家お抱えのSP部隊隊長の息子で、現在は近くの町の外国人学校に通っている。
見た目は中性的な優男だが、SP部隊出身なだけあって実力は非常に高く、頭脳も明晰。
趣味はアクション映画鑑賞。
外見モデルは賢者の孫に登場するトール=フォン=フレーゲル。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

人の恋路を邪魔する馬鹿は・・・ 前編

今回下ネタ有りますのでご注意を。


都内某所のお好み焼き屋、その一角に集まった6人の女・・・織斑千冬、セシリア・オルコット、更識刀奈、更識簪、布仏虚、布仏本音。

 

「皆、よく集まってくれた」

 

操縦士科、整備科入り乱れた面子が皆真剣な表情でこの集まりの発案者である千冬を見つめる中、千冬はゆっくりと口を開いた。

 

「今日、お前達を集めたのは他でもない・・・『奴』が動き出した」

 

「奴、ですか?」

 

「そうだ。奴は私にとって仇敵とも言える存在だ。

今まで大した動きを見せなかったが・・・奴め、痺れを切らして行動を起こした。

だが、奴の思い通りにする訳にはいかん!

 

・・・決戦だ。奴が仕掛けてくるなら、それに乗じて奴を討ち取る!

学園や警察が何を言おうと邪魔はさせん!!

 

しかし、今回の件に限って言えば、一夏、鈴、シャル、子分メイドは全く当てにならん。

箒(マスクド)にも声をかけようとしたがバイトが忙しいと断られた。

今ココにいる面子だけが戦力として期待出来るメンバーなんだ」

 

忌々しげに目を細める千冬。

普段のおちゃらけた彼女からは想像もつかない雰囲気だ。

 

「生徒会のメンバーまで巻き込んで申し訳ないと思う。だが、今回の敵は強敵だ。どうしても戦力は多く欲しい。

この織斑千冬、一生の頼みだ。奴を討ち倒す為の戦い・・・手を貸して欲しい!」

 

普段一夏以外に滅多に下げない頭を下げる千冬。

その姿に5人の瞳に決意の炎が宿る。

 

「・・・仮にも初代ブリュンヒルデであるアナタが頭を下げるとは、余程の事ですわね?」

 

「まぁ、良いでしょう。暗部は三代前に廃業したとはいえ、日本政府に仕えた私達布仏と更識の力をお貸ししましょう」

 

「すまん、恩に着る!

では、三日後にこの地図の場所まで来てくれ!」

 

セシリアと虚の言葉に再び頭を下げ、千冬は席を立ち、支払いを済ませて店を出たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、虚さん」

 

「何です?」

 

「『奴』って誰でしょうか?」

 

「え!?セシリアさんが知ってるんじゃないんですか?」

 

「へ?私は虚さん達が知らされてるのかとばかり・・・」

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

三日後、都内の某遊園地の入り口には3人の少年が立っていた。

 

「あ、いたいた!おーい、弾!」

 

「一夏君、おまたせ!待った?」

 

「ゴメンね透。自宅に手間取っちゃって」

 

その3人・・・一夏、弾、透に駆け寄る3人の女。

一夏の婚約者・真凛

弾の彼女・鈴音

透の恋人・子分メイド

本作における全カップル組である。

 

「大丈夫大丈夫。俺達も5分前に着いた所だからな」

 

そう、今日はこの3組によるトリプルデートである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの(アマ)・・・!一夏の時間を5分も無駄にしおって・・・!

私の最愛の弟の5分、貴様の命を以て償わせてや『喧嘩(クォーラル)ボンバー!!』・・・グエェェッ!?」

 

「テキサスコンドルキッーーク!!」

 

「ひでぶっ!?」

 

どこから持ってきたのか、日本刀とライフル銃を構えて飛び出そうとする千冬にセシリアの変形ラリアットと簪の両膝蹴りが炸裂した!

 

「な、何をするお前ら!?」

 

「こっちの台詞ですわ!奴ってアレですの?一夏さんの彼女!?」

 

「彼女じゃないもん!あんなパチンコ屋で『super lucky♪』とか言ってそうな女、お姉ちゃんは絶対認めません!」

 

「私だってアンタみたいな阿呆馬鹿が初代ブリュンヒルデなんて認めないよ!」

 

「かんちゃん、私も刀奈お嬢様が更識家次期当主なんて絶対認めないよ」

 

「それ関係無いでしょ!?・・・否定はしないけど」

 

「二人とも酷い・・・(泣)」

 

そう、千冬の目的・・・それは『一夏と真凛のデートの阻止(ついでに他の2組も巻き添え)』である!!

 

「馬鹿らしい、わざわざ休日に出向いたと思ったら弟のデート邪魔しろなんて」

 

「同感。虚さん、このブラコンに何とか言ってやってよ」

 

余りに馬鹿馬鹿しい展開にセシリアと簪の二人は呆れ返り、生徒会長である虚にも同意を求める。

 

だが・・・。

 

「誰が虚ですか?」

 

「へ?」

 

「殺し屋、ウツホ13(サーティーン)と呼びなさい」

 

サングラスをかけ、ライフルを構える虚。

まさかのそっち(ボケ)側である。

 

「千冬さん、今回ばかりは全力で協力します!あの3人・・・1年坊主の分際で相手作るなんて・・・何てはしたな、ではなくて羨ましい・・・!!」

 

言い直せてない上、嫉妬丸出しである。

布仏虚・・・普段はまともな彼女だが、他人の恋愛が絡むと途端に嫉妬剥き出しの爆弾女と化すのだ。

 

「同感ね。千冬ちゃん、虚ちゃん、私も協力するわ!」

 

「ちょっ!?虚さんにお姉ちゃんまで・・・」

 

「私の事はカタナ13と呼びなさい!」

 

「何便乗してますの!?大体13って何ですの!?」

 

「不吉の象徴・・・そして生まれてこの方13回に渡り狙ってた男を他の女に取られた私の悲しみと怒り」

 

虚の口から語られる理由とも言えない理由。

・・・完全に逆恨みと八つ当たりも良い所である。

 

「私にとっては今年に入って13回、簪ちゃんに無視された。

それに、あんなポッと出のオリキャラ二人と中堅ポジの鈴ちゃんが、真のヒロインである私を差し置いて彼氏作るなんて・・・許せないわ!」

 

刀奈の場合、恋愛など関係無い上ただの自業自得。

しかも何しれっと厚かましい事言ってんだコイツは?

 

「よし、行くぞお前ら!」

 

セシリアと簪のツッコミも虚しく、3人のモテない女共は一夏達を追って遊園地に突入してしまった。

 

「あっ!ちょっ・・・行ってしまいましたわ」

 

「こんな所で暴れられたら大変な事になる・・・止めに行くよ!

本音、手伝っ『誰が本音よ。私は殺し屋、ホンネ13』・・・アンタまで何やってんの!?」

 

「面白そうだから行ってきまーす!」

 

本音に至っては完全に好奇心だけで動いてるからタチが悪い。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

早速尾行を開始したヤバイ女4人とそれを止めようとする2人。

 

最初に訪れたのはメリーゴーランド。

このメリーゴーランドはカップル向けの仕様で、馬一つに二人で相乗りできる設計になっており、一夏達はそれぞれ仲睦まじく相乗りし、その少し後ろには千冬達がそれぞれ馬に乗ってライフルを構えているが・・・

 

「クッ・・・あの女、なかなかやるな。まさかこれを選ぶとは・・・」

 

「狙いが定まりません」

 

「距離が全然縮まらないわ。何か気持ち悪くなってきたわ」

 

「うぇっぷ・・・」

 

「縮まるわけないでしょうが!これメリーゴーランドですよ!?

土台ごと一緒に回ってるんですわ!永久に回り続けてなさい!!」

 

バカ4人の奇行にセシリアの痛烈なツッコミが入る。

というか、コイツらはメリーゴーランドの仕組みも知らないのだろうか?

 

「遊園地なんて幼稚園の頃以来なので分かりません。

次に来る時は彼氏を作ってからと決めてたので」

 

「私も無いな。ホストクラブなら一回行った事があるが、アレは私には合わん」

 

随分と寂しい青春である。

 

「あのさぁ、カップルに嫉妬するのは勝手だけど、やり方ぐらい弁えようよ。

このままじゃ最悪一夏君達にバレて半殺しだよ?」

 

「えぇい!喧しい!バレるのが怖くて逆キューピッド作戦が出来るか!

バレなきゃ良いんだ!バレなきゃ!!」

 

「もしあの娘(子分メイド)と透に何かあったら私がチクりますわよ?」

 

「ぐっ・・・!い、良いだろう。あの二人、ついでに鈴と弾には手出ししないでおこう。

私の目的はあくまで一夏とあの女の仲を引き裂く事だからな」

 

「・・・仕方ありません。狙いは一組に絞りましょう」

 

「いっちーのパンチ、すっごく痛そうだしね・・・」

 

口では強がりながらも内心バレるのは怖いらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に訪れたのはお化け屋敷。

メンバーそれぞれがカップル毎にペアで入る所を狙って仕掛けようと、千冬達は先回りして待ち伏せ作戦を取っていた。

 

「ククク・・・闇に乗じて驚かして小便ちびらせてくれる!」

 

そう息巻いてお化け屋敷に突入した千冬、虚、刀奈、本音(しかもどこから調達したのかゾンビのマスク装備)。

セシリアと簪は付き合いきれずに外でソフトクリームを食べながら待っていた。

 

「ねぇ、思ったんだけどさ、顔隠して襲うのは良いけど、逆に返り討ちに遭う危険があるんじゃないの?」

 

「有り得ますわね。下手に彼女さんに手を出すと一夏さんのパンチが『テメェ!何真凛にセクハラしてんだコラァ!!』・・・」

 

『ギャアアアァァァァッッ!!』

 

『ごめんなさーーい!胸触った方が怖がると思ったんです〜〜っ!!』

 

『テメェらぶっ殺す!!』

 

『『『『たじげて〜〜〜っ!!』』』』

 

『い、一夏君落ち着いて!私もう大丈夫だから!』

 

アトラクションの外にまで聞こえてくる憤怒の声と断末魔の叫び・・・これだけでもう中で何が起きたか理解できてしまった。

 

「「・・・・・・はぁ〜〜」」

 

大きくため息を吐き、セシリアと簪は中でボッコボコにされてるであろう4人を思い浮かべて静かに合掌した。

 

 

 

 

 

数分後、4人は命からがらお化け屋敷から脱出してきた。

 

「ほ、本当に死ぬかと思った・・・」

 

「お化けより怖かったよ・・・」

 

「か、顔を隠したのが逆に仇でした。ガチで殴りかかってくるんですから・・・」

 

「自業自得ですわ」

 

「・・・・・・」

 

「ん?お姉ちゃん、何で黙ってるの?それに、何か姿勢に違和感が・・・。

何か内股気味な感じ・・・ん!?」

 

刀奈の不自然な態度と姿勢に違和感を覚える簪。

そして、直後に気付いた。違和感の正体・・・そこから来る異臭と液体によって。

 

「簪ちゃん、あと皆・・・誰にも言わないででござりまする・・・」

 

「「「「「えぇ〜〜〜〜っ!!??」」」」」

 

目から一筋の涙を流す刀奈に、5人はドン引きしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、刀奈の売店で買った下着と服で着替えを済ませ、5人はベンチで小休止に入った。

 

「くそぉ・・・まさかここまでガードが固いとは・・・」

 

「もう諦めなさいな。アナタ達の下らないセクハラ攻撃であそこまで怒り心頭だったのですわ。

それだけ、一夏さんは彼女の事を本気で愛しているのですわ。

仮に本当に真凛さんが失禁してしまったとしても、一夏さんの想いが変わるとは思えませんし」

 

「ぬぐっ・・・!」

 

「セシリアちゃん、それはアレ?一夏君は彼女さんの事が汚い部分も受け入れてしまう程好きって事?

アナタは私が漏らしたのをドン引きしてたのに」

 

「お姉ちゃん、私も引いてるよ。しばらく話し掛けないで」

 

セシリアに諭され、言葉に詰まる千冬。

そして、刀奈は簪に突き放され、再び泣く。

 

そんな中、5人の背後からある人影が近付きつつあった。

 

「あのー、ちょっと良いですか?」

 

「ん?何か用・・・か・・・っ!?」

 

振り返ってその人物を見た時、千冬は凍りついた様に硬直した。

 

「ずいぶんボロボロですけど、大丈夫ですか?」

 

そこにいた女性・・・一夏の恋人、海野真凛は心配そうに千冬達の顔を覗き込んでいた。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

一方その頃・・・

 

「うふふ・・・お兄を奪う泥棒パンダ・・・北町の遊園地諸共みーんな纏めて吹っ飛ばしてやるんだから・・・!!」

 

不穏な影がもう一つ、近付きつつあった・・・。




登場人物(?)紹介

御手洗数馬(ゴリラ)
ゴリラ改め御手洗数馬。年齢は人間換算で16歳程。
実はゴリラとしては非常に高い知能の持ち主で、人語は完全に理解しており、その気になれば筆談で会話も可能だったりする。
父は寿司職人のゴリラで、料理の腕は父譲りで非常に高い。
夢は一流の蕎麦職人で、現在は蕎麦屋でのバイトを通じて修行中。



仁人
筆者の実家で飼ってるトイプードルの一匹。雄・8歳(2021年現在)。
筆者の本編登場時は彼が代筆している(という設定)。
性格は甘えん坊で人懐っこい。
ちなみに、筆者の実家には他にもペットの犬が3匹いる。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

人の恋路を邪魔する馬鹿は・・・誰だろうとぶちのめす!!(後編)

今回はギャグ少なめです。
※蘭好きな人、閲覧注意。


遊園地内のフードコートに集まる3組のカップルとそれを追いかけてきた馬鹿4人とツッコミ役2人。

そしてその中において渦中の人物でもある一夏と真凛、そして千冬は同じテーブルに座っていた。

 

「「・・・・・・」」

 

お互いに沈黙する一夏と千冬。

一夏の方は呆れ半分困惑半分、千冬の方は完全に萎縮してしまっている。

 

「それで、俺と真凛の関係知って、デートに横槍入れようとしたのかよ?」

 

「う、うぅ・・・」

 

「はぁ・・・まぁ、彼女居るって事言わなかった俺も俺だから、千冬姉の事あれこれ言えねぇけど。・・・さっきのお化け屋敷のアレは落とし前つけたし」

 

溜息を吐きつつ、一夏は一度立ち上がる。

 

「取り敢えず、飯買って来る。後の事は飯食いながらじっくり話そう。

後、真凛に変な事するなよ」

 

念押ししてから一先ず売店へと向かう一夏。

テーブルには真凛と千冬の2人が残された。

 

「・・・一夏君のアレ、照れ隠しですよ」

 

「そ、そうなのか?」

 

そんな彼氏の後ろ姿を微笑ましく見守る真凛の言葉に千冬は困惑しながら尋ねる。

 

「えぇ。一夏君、普段千冬さんに対してツンケンした態度かもしれないけど、本当はお姉さんの事、いつも心配してるんですよ」

 

「ほ、本当か!?」

 

「本当ですよ。私達の関係も、『千冬姉がちゃんと進級出来たら改めて言おう』って言ってましたから。

だから必ず自分が同じ学年の内に学校を卒業させるって、いつも言ってました」

 

「っ・・・!」

 

真凛の口から語られる弟の本音に思わず声にならない声を上げて涙ぐむ千冬。

 

「千冬さん、私・・・一夏君と真剣にお付き合いしてます。

千冬さんにとっては、いきなり出てきて大事な弟さんと付き合ってる、何て受け入れ辛いのは分かってます。

でも私達、本気なんです。本気で結婚するつもりなんです。

認めて、貰えませんか?」

 

「う・・・うぅ・・・・・・、

弟を・・・一夏をよろしくお願いします」

 

「っ!あ、ありがとうございます!!」

 

真凛の穢れの無い真っ直ぐかつ純な瞳で見詰められながらの懇願に、千冬は狼狽し、暫し唸りながらも、やがてどこか観念したように首を垂れた。

 

「お待たせ・・・って、どうしたんだよ千冬姉?」

 

「い゛ぢがぁぁっ!」

 

直後に戻ってきた一夏に千冬は涙と鼻水を垂らしながら飛び付いた。

 

「どわぁっ!?な、何だよいきなり!?」

 

「私、絶対進級するがらなぁ!お前も幸せになっでくれぇ!!」

 

「だぁ〜〜っ!抱きつくな!鼻水が付くだろうが!!」

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「あっちは、話付いたみたいですね」

 

「そうね。まぁ、丸く収まったなら良いけど」

 

「で、アンタらはどうするんだ?」

 

「まだデートを邪魔するって言うなら、相手になるわよ?」

 

残りのメンバー・・・透&子分メイド、弾&鈴のカップルは千冬と共にデートを邪魔しに来た虚達を軽く睨みながら尋ねる。

 

「今更、あれこれする気はありませんよ。

アナタ達にちょっかい掛けてたら命がいくらあっても足りません」

 

「私達は私達で適当に遊んで帰るよ」

 

「ふぅ・・・漸くこんな馬鹿馬鹿しい騒ぎから解放されますわ。

透達には迷惑をかけましたわね」

 

「でも忘れないで。アナタ達リア充の影には常に私達非リア充がいるという事を『お漏らし女は黙ってて』・・・(泣)」

 

こちらの騒ぎも一先ず収まり、漸く事態は収拾した・・・と、思われたが。

 

 

【ドカアァァン!!】

 

 

突如鳴り響く爆発音。

何事かと思い振り向く一夏達。

 

「な、何だ!?爆発事故か?」

 

「いや、違う・・・アイツは・・・!」

 

「あのガキ・・・なんて事を・・・!!」

 

爆炎の側に立つ人影に、弾と鈴は怒りの表情を浮かべる。

 

「見つけたわよ、貧乳雌豚泥棒パンダ!!今日こそアンタをぶっ殺してお兄を取り戻す!!」

 

現れたのは弾の妹・・・五反田蘭。

どこから持ってきたのかダイナマイトを片手に持ち、後ろには南町の男達数名を引き連れている。

 

「お前、何考えてんだ!?遊園地や俺達まで巻き添えにする気か!?」

 

「あ?うっさいわね。外野は黙ってなさいよ。

クソみたいな北町の遊園地やそこで遊んでるクソみたいな連中吹っ飛ばして何が悪いのよ?」

 

一夏の抗議に蘭は平然と答える。

その表情に罪悪感など全く無い。まさにサイコパスとも言うべき有様だ。

 

「あの愚妹に何言っても無駄だ。昔からあんな感じだからな」

 

「そうね。どうせあのダイナマイトもどっかの工事現場から掻っ払って来たんでしょ?

しかも、後ろの連中、皆南町の野球チームの残党じゃない。

野球の負けをこんなやり方で仕返しするとか、本当ありえないわ」

 

鋭く目を細めながら蘭を睨む弾と鈴。

そんな2人に蘭は憤怒の表情を浮かべて睨み返す。

 

「お兄、まだそんな女に騙されてるの?

やっぱりお兄には私が必要なんだ!

アイツも!アイツに味方する奴も皆殺しにして目を覚まさせる!!

アンタ達!遊園地もアイツらも遠慮なく殺っちゃいなさい!!」

 

『応!!』

 

蘭の合図で南町ビッグボンバーズ残党はそれぞれバットやスコップなどの武器を取り出し、周囲に散らばって暴れ回ろうとするが・・・

 

「ふっ!」

 

「え?ふげぇぇっ!?」

 

鶴嘴を振り回そうとする男の眼前に突如飛び込み、殴り飛ばす一人の少年。

子分メイドの恋人、透・ジョーンズだ。

 

「随分下らない動機で、こんな下衆な真似が出来ますね?

正直、余りに不快なので、遠慮無く潰させてもらいますよ」

 

「こ、このガk・・・グエェッ!?」

 

「透の言う通りですわね。実に不愉快極まりない・・・」

 

「折角のデートを、よくも邪魔してくれたわね・・・!」

 

仲間を倒された怒りに任せて透に襲い掛かる男の顔面に2人分の膝蹴りが炸裂する。

セシリアと子分メイドの主従コンビだ。

 

「な、何だコイツら、めっちゃ強い『オラァッ!!』・・・ギャアアアァッ!!」

 

「こ、この二人は、初代ブリュンヒルデとその弟、『フンッ!』・・・グガァァァァッ!!」

 

「ブリュンヒルデ?誰だそれは?

今の私は愛の戦士、チフユ13だ!!」

 

「人の恋路を邪魔する馬鹿は、くたばりやがれ!!」

 

続いて一夏と千冬の最強姉弟の剛拳が南町残党共を容赦無くぶちのめす!

 

「き、聞いてねぇぞ!こんな化け物相手にするなんて!?」

 

「に、逃げろぉ!」

 

「逃げられると思ってるの?」

 

「私達を敵に回したら、怖いわよ・・・!」

 

更に、逃げようとする男達を虚と更識姉妹が追撃する!

 

「ヒギャアァァァッ!!」

 

「折角です。リア充への鬱憤はアナタ達で晴らしましょうか」

 

「お姉ちゃん、真凛さんと他の人は私が避難させとくから、思いっきり殺っちゃって〜!」

 

南町残党は運が無かった。

狙った相手殆どがIS学園でも指折りの戦闘力とえげつなさを持ったメンバーだったのだから・・・。

 

 

 

「こ、この役立たず!こうなったら、あの雌豚殺して、お兄だけでも取り戻してやる!!」

 

味方を瞬く間に倒され、焦る蘭は悪足掻きとばかりにダイナマイトを鈴目掛けて投げ付けようとするが。

 

「アンタ、いい加減にしなさいよ・・・!南斗烈脚斬陣!!」

 

静かな怒りと共に放たれる鈴の蹴り。

その鋭く鋭利な脚技が刃となり、蘭の両腕両脚に切傷を刻み、更にはダイナマイトの導火線を斬り落とした!

 

「うあ゛ァァーーーーッ!!う、腕がぁ!?脚がぁっ!?」

 

腕と脚を切り裂かれ、叫び声を上げる蘭。

そして、そんな妹に弾はゆっくりと近づく。

 

「お、お兄・・・助け『黙れ・・・!』ヒッ!?」

 

「俺を狙うだけならまだしも、無関係の者を巻き込み、北町というだけで遊園地を破壊しようとするというその腐った性根・・・サツに引き渡すだけじゃ済まさん!!醒鋭孔!!」

 

「ガッ!?」

 

恐れ慄く蘭の胸部目掛けて、弾の指拳が打ち込まれた!

 

「イギャアアアァァッ!!

い、痛い!痛い痛い痛い痛いぃ〜〜〜〜っ!!」

 

「本来は痛覚を剥き出しにして指で触れられただけで全身に激痛が走る身体にする技だが・・・兄としてせめてもの情けだ。鈴に切られた手脚の痛みを数倍にする程度に加減しておいた。

秘孔の効果が切れるまで、約5分・・・せいぜい自分のした事を反省してろ。

・・・後は、警察に任せるぜ」

 

激痛にのたうち回りながら絶叫する蘭に背を向け、弾は鈴を連れてその場を去ったのだった・・・。

 

 

 

 

 

これより数分後、通報を受けて駆けつけた警察によって蘭を始めとした南町残党は逮捕。

蘭は少年院へ入り、他の男達も刑務所へとぶち込まれた。

 

こうして、南町の歴史に、また一つ汚点が増えたのだった。

 

 

 

「ぐぎぎ・・・よくも、よくも・・・!

必ずここから出て仕返ししてやる・・・!!」

 

しかし、悪の芽は未だ潰えてはいなかった。

 




人物紹介

五反田厳
弾の祖父で南町商店街組合の会長。
本人は自分の事を【昔ながらの粋な漢】と思っているが、実際の所非常に狭量かつ執念深く、自分勝手な性格。
10年程前に羅王に料理大会で敗れた事を未だ根に持ち続け、孫である弾と羅王の娘である鈴の交際に猛反対し、弾の事を裏切り者と断じており、いずれ制裁して引き離そうと考えているが全く上手くいかない。
弾からは血の繋がりにすら嫌悪を感じる程に軽蔑されている。

一方で孫娘の蘭の事は溺愛しており、彼女の性格が歪む程に甘やかしている。



五反田蘭
蘭の妹。15歳。
異常なまでのブラコンで、兄である弾を異性として見ており、弾を手に入れる為なら犯罪行為にすら躊躇なく手を染めるサイコパス。
祖父の厳から甘やかされて育った為、非常に我儘で自分の思い通りにいかない事が大嫌い。






次回『千冬の野望編』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

千冬の野望

お待たせしました!新シリーズ【千冬の野望編】開幕です。
※今回はIS原作に対するアンチ要素が強いので、苦手な人はご注意を。

今回の話はpixivにてRyoさんからのリクエストになります。


「スパロボに出たい!!」

 

夏休み目前、千冬の突拍子も無い台詞で教室中が沈黙に包まれた。

 

「いきなり何言い出してますの?」

 

「あー、最近スパロボ30プレイしてるからその影響だな」

 

呆れを含みながら千冬の奇行にため息を吐く一同。

しかし、そんな事はお構い無しとばかりに千冬の熱弁は続く。

 

「良いじゃないか!スパロボに出たって!!

確かにISはロボットではなくパワードスーツだが、最近ではテッカマンやカウボーイビバップだって出てるんだぞ!

私達が出たって問題無い筈だ!寧ろ出せという声が上がってると思うぞ!!」

 

「いや、それは良いけどさ・・・、出るのは原作の僕達であって、今ココに居る僕達じゃないでしょ?僕達って、あくまで二次創作キャラだし・・・」

 

「それに、原作の千冬姉じゃパイロット加入は無いぞ。

世界最強の癖に非常事態や戦闘に殆ど出ないとか、ふざけてんのか?って思うが」

 

「ぬぐっ・・・それは分かってる。だから、別の方法を取る!!」

 

シャルロットと一夏のメタ発言込みの突っ込みに一瞬狼狽しつつも、千冬はすぐに立ち直り、教室を出てある場所へと向かった・・・

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

福岡県某所

 

「という訳だ。次回からスパロボ編を書いてくれ鴇人!!」

 

「断る!!」

 

作者・神無鴇人の家に押しかけてとんでもない事を言い出した千冬に対し、鴇人はにべも無くそれを拒否した。

 

「ったく、いきなりやって来たと思ったら、何抜かしてんだお前は?」

 

「な、何故だ!?お前だってスパロボ好きだろ?・・・K以外は」

 

「そりゃ否定しないが、それでもスパロボ編は書く気なんて無いぞ」

 

「どうして!?」

 

「だって俺、ISのスパロボ参戦反対派だもん」

 

そう、鴇人はIS参戦反対派なのだ。

 

「何、だと・・・?な、何故だ!?」

 

「だってさぁ、

・キャラデザや設定は悪くないのにそれを活かせてない

・やたら問題行動ばかり起こすヒロイン

・鈍感な上にヒーローごっこ感が強い癖に大した戦績の無い主人公

・テロ同然のやり方で世界を変えておいて味方面してる大人2人

こんなのがスパロボに出ても違和感しか無いわ。

それ以前にISがスパロボに向かないと思うんだよね。

話の舞台がほぼ学園内ばかりで完結してるし、バトルよりもラブコメ(笑)が強すぎて正直スパロボには向いてないだろうが」

 

IS二次創作派のにわかの癖にここぞとばかりに原作を扱き下ろす鴇人。

そんな鴇人の遠慮の無い言葉に対して流石の千冬も顔を引き攣らせている。

 

「さ、さてはアンチだなお前・・・」

 

「今更それ言うか?そんなもん別作(東方蒼天葬)の時点で分かるだろ?」

 

「あ、あれアンチなのか?私をめっちゃ優遇してるから気付かなかったぞ」

 

そんな理由だけで気付かない奴も大概である。

 

「ある意味アレも原作のお前に対するアンチ入ってるよ。

っていうか、今書いてるシリーズ(コラボ編)は千冬アンチの側面もあるし」

 

思わぬ所で別作品の裏話を出しちゃったよこの作者。

 

「という訳だ。スパロボ編は諦めろ」

 

「うー・・・ヤダヤダヤダ!私だってスパロボに出て活躍したい〜!他作品の良い男捕まえて彼氏持ちになりたい〜〜!」

 

遂に駄々っ子モードに入った千冬(24歳)。

 

「それこそ無理だろ。スパロボではクロスオーバーのカップルは成立しないぞ。

原作のカップルですら離婚した前例だってあるのに」

 

「それでも出たいものは出たい!!

こうなったら、制作会社に乗り込んで・・・」

 

「それやったらお前、次回から出番無しな・・・!!」

 

強硬手段を取ろうとする千冬に、鴇人はドスの利いた声で最後通告を出す。

その一言に千冬の顔面から瞬く間に血の気が退いていき、そして・・・

 

「ごめんなさい。わがままいってごめんなさい。

だから出番無しだけはやめてくださいお願いします・・・」

 

「分かればよろしい」

 

千冬は圧力に完全に屈した。

 

「はぁ・・・儚い、野望だった・・・」

 

 

 

【千冬の野望編】 完!!

 

 

 

 

「まぁ、そう落ち込むな。次回からちょっと新シリーズを考えてるから、そっちで活躍させてやるよ」

 

「新シリーズ?何だそれ『〜〜♪』・・・ん、電話?一夏からだ」

 

不意に鳴り出した携帯に首を傾げながら千冬は通話ボタンを押す。

 

「もしもし?」

 

『あ、千冬姉か?さっき束さんから連絡があってな。

新発明の【絶対酔わない潜水艦】が完成したから、夏休みに入ったら箒の出迎えも兼ねて皆でグァムにまで遊びに来ないかって言われたんだ。

飛行機のチケットも人数分送ってくれるって言ってたし、千冬姉も行くだろ?』

 

「グァム!?行く!絶対行くぞ!!」

 

『分かった。千冬姉は参加ね・・・。じゃあ他の奴らにも確認するから、準備もあるし早めに帰って来いよ』

 

思わぬ形で舞い込んだ幸運に目の色を変えて食いつく千冬。

そんな彼女の姿に鴇人はニヤリと笑い、親指を立ててサムズアップする。

 

「ま、まさか新シリーズの舞台は・・・」

 

「そうだ。海外だ・・・!」

 

「鴇人ぉ〜〜〜〜っ!!お前って奴は・・・何て良い奴なんだぁ!!」

 

喜びのあまり千冬は鴇人に抱きついた。

 

「うへへ・・・」

 

そしてさり気なく鴇人は千冬のおっぱいに顔を埋めてニヤついている。

 

・・・このエロオヤジが!!

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

場面は変わり、再びIS学園。

 

一夏「で、作者出てるけど、今回は誰が書いてるんだ?

またトイプードルの仁人か?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

いえ、仁人の兄貴分。

長兄のぷ太朗です。ぷーちゃんって呼んでね。

 

シャルロット「何で寝てるの?」

 

兄ちゃん(作者)の助平っぷりに呆れてしまいまして・・・。

 

セシリア「・・・犬に呆れられる作者って一体・・・」

 




ぷ太朗「という訳で、次回から海外編(仮称)です。見てね♪」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

海上激闘編
let's vacances


ここからが、本当の新章だ・・・!

※今回はダイジェスト形式です。


千冬の無茶振りから数日後、IS学園は夏休みに突入。

一夏と千冬、及びその友人達や恋人達は束からの誘いでグァムを訪れ、旅行を満喫していた。

 

ビーチで泳いだり・・・

 

「ぷはぁっ!泳ぐのサイコー!!」

 

「お姉ちゃん、相変わらず泳ぎだけは得意なんだから」

 

はしゃぎながら泳ぐ刀奈とそれに呆れつつも自分も海水浴を楽しむ簪。

 

「ミギャアアーーッ!!ナマコ踏んじゃいましたわぁ〜〜っ!!」

 

「何やってるんだか?」

 

「まったくだね。あ、マスクドさん、もう少し肩の辺りしっかり塗ってね」

 

セシリアの間抜けな悲鳴を他所にシャルロットはマスクドに日焼け止めクリームを塗って貰っている。

ちなみに、マスクドことラウラは束の手回しで日本国籍とパスポートを取得している。

 

「ンゴッ、ンゴッ(美味そうな魚ゲット)」

 

「・・・ゴリ君、意思疎通出来たんだ」

 

そして数馬(ゴリラ)は魚を片手にプラカードで本音相手に筆談していた。

 

 

 

名所の恋人岬ではその美しい風景を楽しみ、

 

「うわぁ・・・綺麗・・・!」

 

「本当だな・・・卒業したら、また来るか。今度は、二人きりで」

 

「・・・うん///」

 

 

 

「ね、姉さん、そんなにくっつかれると、嬉しいけど恥ずかしいです・・・///」

 

「良いじゃない。恋人岬なんだから、恋人らしくしないと」

 

 

 

当然一夏&真凛と子分メイド&透のカップル組はイチャつく訳で・・・

 

「・・・ケッ!」

 

非リア充代表の虚はそれを見て悪態を吐いた。

 

 

 

「それにしても鈴ちゃんと弾君、来れなくて残念だったね」

 

「仕方ねぇよ。中国で特級厨師の試験が重なっちまったからな。

まぁ、二人ともそれが終わったら中国で観光楽しむらしいから、大丈夫だろ?」

 

ちなみに、今回鈴と弾は不参加。

あとI沢も定期メンテナンスとアップデート作業のため、不参加である。

 

 

 

 

 

 

 

そして、夕食の席では・・・

 

『かんぱ〜い!!』

 

美味い飯に舌鼓を打ち、大人組(千冬、真耶、鴇人)はジョッキ一杯に注がれた酒をガブガブと飲み干す。

 

「ぷはぁ〜〜、美味ぇ!!」

 

「おい、何で作者のお前がしれっと混じってんだよ?」

 

「良いじゃねえか。現実じゃこのご時世、旅行なんて難しいんだ。小説の中でくらい旅行気分を味わいてぇんだよ!」

 

一夏からのツッコミに真顔で返す鴇人。

割とマジでここ1〜2年旅行行けてません。

 

「で、今回もまた犬が代筆か?」

 

「いや、今回から長丁場になるからな。話と並行してスマホで書いてる」

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

こんな感じで楽しいバカンスの日は過ぎて行き、

そして、いよいよ潜水艦到着の日を迎えた。

 

「いやー、遊んだ遊んだ。

すっかり日焼けしてしまったな」

 

「千冬姉、焼き過ぎて赤くなってるぞ」

 

日焼けした・・・というより日焼けし過ぎて肌が赤くなった千冬は手に土産袋を抱えながら満足気に笑っていた。

ちなみに、他のメンバーも(念入りに日焼け対策していたシャルロットを除いて)皆日焼けして小麦色の肌になっていたりする。

 

「あ、見えて来ましたわ!」

 

「でかっ!?何よあれ、本当に潜水艦!?」

 

そんな中、セシリアの一声に皆の視線が海へと向く。

やがて水平線の彼方から巨大な一隻の船が姿を表し、その上部ハッチから見覚えのある人物が姿を見せる。

 

「おーい!一夏、皆〜〜!」

 

「あ、本物の篠ノ之さんだ!」

 

「はぁ・・・やっと影武者生活も終わりか。

というか、シャルロット・・・お前、私が偽者って知ってたのか?」

 

「殆ど皆気付いてるよ。流石に何日も一緒に居れば余程の馬鹿でもない限り」

 

ラウラの質問に呆れて返すシャルロット。だが・・・

 

「何!?コイツ偽者だったのか!?」

 

「全然気付かなかったわ・・・」

 

余程の馬鹿(千冬&刀奈)はココに居た・・・。

 

 

 

 

 

「久しぶりだな箒。元気だったか?」

 

「ああ。長いアメリカ生活だったが、見ての通り全然元気だ!」

 

一夏からの問いに親指を立てて笑みを浮かべながら返す箒。

アメリカでの生活に染まったのか、服装は以前とは打って変わってテンガロンハットにウェスタン風の衣服に身を包み、カウガールを思わせる姿となっている。

 

「皆様、お揃いのようですね」

 

箒との再会を喜ぶ中、潜水艦から新たな少女が現れた。

 

「初めまして。私、束様の助手を務めるクロエ・クロニクルと申します。

束様は今回学会に出席のため、私が代理で船を任されました。

募る話もあるでしょうが、まずは船内へどうぞ」

 

クロエに案内され、一同は船内へと歩き出したのだった。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「外側も相当だったけど、内側も凄いね・・・」

 

感嘆とした様子でシャルロットが呟く。

船内の案内図を見ただけでも、船内にはレストランや医務室は当然の事、

ゲームセンター、カジノ、賭博場、シアター、プール、体育館、大浴場、バーと多数の娯楽施設を有し、パーティー用のイベントホールに至っては和洋両方完備と、最早動く高級ホテルだ。

 

「本船は潜水艦であると同時に、変形機構を備えた大型客船でもあります。

潜水艦と銘打っていますが、日本までの航路は客船形態での船旅を予定しています。

船内の設備はスタッフが運営・管理してますので、ご自由にご利用下さい。

食堂は4F、皆様の宿泊する客室は1Fになります。

今夜のディナーは甲板での立食パーティーになりますので、それまではごゆっくりと海の旅をお楽しみください」

 

柔和な笑みを浮かべ、操舵室へと戻るクロエ。

それから暫しして、一夏達もそれぞれ個別行動に移ったのだった。

 

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

ゲームセンター

 

「そらそら!どんどん削って行くよ!!」

 

「くっ!やるなシャルロット!」

 

ゲーセンでは簪と本音が見守る中、箒とシャルロットがストⅡターボで対戦している。

使用キャラはシャルロットが春麗、箒がバイソンだ。

 

「だが、甘いぞ!そこだ!!」

 

「ゲッ!?ファイナルターンパンチ!?」

 

「フフフ・・・バイソンを甘く見るなよ。扱い辛い分ハマれば強いんだからな!」

 

「ぬぐぐ・・・!」

 

「へぇ、バイソンの癖を良く理解してるね。次は私のザンギエフが相手してあげる」

 

「かんちゃんのザンギは凶悪だよ〜」

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

カジノ&賭博場

 

「ロン!小三元、混一色、ドラ3じゃ!!」

 

「飛んだぁ〜〜〜〜っ!!」

 

麻雀卓では鴇人、虚、セシリアが卓を囲み、刀奈をカモっていた。

 

「お嬢様、相変わらずクッソ弱いですね」

 

「全ツッパなんてするからそうなるんですわ」

 

 

 

 

 

「赤の偶数、来い・・・来い・・・!!」

 

「お美しいレディ、お飲み物をどうぞ」

 

ルーレットに興じている真耶にやけに気取った坊ちゃん刈りでサングラスをかけたボーイが飲み物を運んでやって来た。

 

「あ、どうも・・・って、あれ?カラ松君!?」

 

「おお!誰かと思えば真耶ちゃんじゃあないか!?」

 

ボーイの顔に驚く真耶。

男の名は松野カラ松。真耶のパチンコ仲間の1人で、巷で有名な六つ子のクズニート、松野家の六つ子の次男坊である。

 

「何でカラ松君がココに?最近見ないとは思ってたけど・・・」

 

「それはだな・・・『このクソ長男!何スロットなんてやってんだコラァ!!』・・・アイツのせいだ」

 

カラ松が指差した先にはカラ松と似た顔4人。

三男のチョロ松

四男の一松

五男の十四松

六男のトド松

以上の4人が同じく同じ顔の男・・・松野家長男・松野おそ松を袋叩きにしていた。

 

「テメェ!誰のせいでこんな仕事してると思ってんだコラ!?」

 

「お前が闇金に手ぇ出したせいだろうが!一番働かなきゃならねぇのはテメェだろうが!何サボってんだこの野郎!!」

 

「ギャアアアーーーーッ!!!!」

 

この船の下級スタッフの大半は束の傘下である金融機関からの責務者達だったりする。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

バー

 

「まさか、お前がココで働いていたとはな、クラリッサ?」

 

「こっちこそ、こんな所で再会するなんて思いませんでしたよ、ラウラ隊長。

っていうか、アンタ未成年でしょうが?」

 

「そこは気にするな」

 

ラウラはというと、千冬に付き合わされる形で訪れたバーにてかつての部下であるクラリッサ(ウェイトレス姿)と再会していた。

 

「お前、地下の労働施設にいたんじゃなかったのか?」

 

「その地下施設からもヘルプで人員回してるんです。結構給料良いですよ?

それより隊長の方こそ、馬鹿の巣窟であるIS学園に入れられて大変じゃないですか?」

 

「ああ、大変だ。どいつもこいつもアクの強い奴らばっかりでな。けど・・・」

 

クラリッサからの問い掛けに、ラウラは後ろのテーブルでアームストロングと腕相撲する千冬と、それをジュース片手に観戦する一夏達を眺める。

 

「不思議と、悪くないな・・・あの連中に囲まれた生活も」

 

自然と口元に笑みを浮かべ、ラウラはそう呟いたのだった。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

こうして、日本への帰路という名の船旅に着いた一夏達。

その日の夜は甲板でのディナーショーを楽しみながら、平和に過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、その裏では・・・

 

 

 

「見えてきたぜ。スコール、マドカ・・・あの船だ」

 

「フフフ・・・情報通りね。

各員監視は怠らないで。夜明けと同時に攻め込むわよ」

 

「聞いてはいたが凄い船だな。少し改造すれば簡単に軍事転用出来そうだ」

 

「だからこそ、よ。

あの船、是が非でも手に入れるわよ・・・!!」

 

 

 

『応!!』

 

 

戦いの時は徐々に、しかし確実に・・・迫っていた。




新章・海上激闘編、開幕!!

人物紹介

ぷ太朗
筆者の実家で飼っているトイプードルの一匹(長兄)。2013年生まれ。
マイペースで賢い性格。散歩が大好きで、普段は大人しいが散歩の時はめちゃくちゃ活発になる。

クラリッサ・ハルフォーフ
※紹介は二度目だが、昇格したので改めて紹介。
ラウラの元部下。22歳。
今回の話から再登場し、脇役から昇格した(脇役以上準レギュラー以下)。
地下での真面目な勤務態度が評価されて、潜水艦内のバーのスタッフ兼下っ端スタッフ(責務者達)の纏め役として採用された。
ラウラ同様間抜けな面はあるが、以前の失敗(上官の家襲撃とハイジャック失敗)から多少は思慮深く謙虚になっている。

おそ松
カラ松
チョロ松
一松
十四松
トド松
ご存知おそ松さんに登場する無職童貞クズニートな六つ子。
本作における独自設定として、年齢は26歳。
長男のおそ松が闇金で借金を作った為、借金返済の為に船での労働(バイト)刑に処された。
しかし、当のおそ松は仕事をサボりがちでカジノやバーに入り浸る事が多く、借金完済の目処は中々立たない。
他の面子はそれぞれ差はあるがそれなりに真面目に働いている(ただし休日の際は遊び呆けているか、だらけているのどっちか)。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

亡国襲来!潜水艦争奪戦!!

今年中に間に合いました。
皆様、良いお年を。


ディナーショーを終え、就寝時間を迎えて乗客達が眠る中でも、船員達はそうもいかない。

交代制でそれぞれの持ち場に着き、規則正しい航海の維持に努める。

しかし・・・

 

「ったく、見張りなんて暇なだけだろうが。

どーせ暗礁やら他の船が近付いたらレーダーやらソナーやらで探知するんだから。

酒飲みながらでも全然問題ねーよな!」

 

Mr.不真面目にして六つ子No.1の無職童貞クズ・松野おそ松は厨房からくすねて来た缶ビールとつまみ片手に見張り台の上で寝そべりながら今日もまた仕事をサボっていた。

他の兄弟達(同じく無職童貞)ですら与えられた仕事は(差はあるものの)ある程度真面目にこなしているというのに長男のこの男はこの体たらくである。

そもそもニートな彼らが働く事になったのもおそ松が3ヶ月程前に闇金(束の傘下)で50万円の借金を作ったのが原因であり、2ヶ月前に催促状が届いた事で両親にそれがバレて怒りを買い、金融業者の紹介で一定期間働く事となり、地下工事現場を経た後、ヘルプとしてこの船のスタッフとなったのだ。

しかも、借金の早期完済と当面の生活費と貯金確保のために他の兄弟も巻き添えなのだから、タチが悪い。

 

「あー、すっげぇ暇!パチンコ行きたい!競馬行きたい!

何か面白いイベントでもねーのかぁ!?」

 

 

 

「それじゃあ、私達が面白くしてやるよ」

 

 

 

「へ?・・・グボァ!?」

 

突如として上空から現れた人影に、おそ松は顔面を蹴飛ばされ、見張り台から甲板へ叩き落とされた。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「クソ!何が起きたってんだ一体!?」

 

日が登ると同時に鳴り響く警報音に、客室にいた一夏達は目を覚まし、何事かと甲板へと上がった。

 

「一夏、大変だぞ!この船、包囲されてる!!」

 

甲板に一足先に上がった箒が声をあげる。

視界に映ったのは小型艦や空母、果ては大型VTOLによって船が完全包囲された光景だった。

 

『フフフ・・・おはよう、IS学園の生徒さん及びその関係者の皆さん』

 

空母から立体モニターで映し出されたのは椅子に座って踏ん反り返る金髪の女性。

その両隣には黒髪の女性と顔を仮面で隠した少女が立っている。

しかも足元にはボコボコにされて縛られたおそ松の姿もあった。

 

『そして、初めまして。私の名はスコール・ミューゼル。

武装組織【亡国機業】の幹部よ』

 

「亡国機業だと!?国際指名手配されているテロ組織ではないか!?」

 

唐突に名乗り始めたスコールに、元軍人のラウラが驚愕する。

 

「そのテロ組織の幹部とやらが、何の用だってんだ?」

 

『フフッ・・・決まってるでしょう?私達の目的、それはこの船そのもの。

この潜水艦は私達が頂くわ!そして、私の部隊専用の移動基地として活用させて貰う!!』

 

何とも分かりやすい回答である。

 

『まさに降って沸いた幸運だわ。・・・こんな凄いハイスペックな船を手に入れて、基地に出来るなんて、この幸運を運んできたアナタ達に感謝するわ。

ありがとう。・・・ありがとう。

・・・・・・本当にありがとう!!!!』

 

何と、スコールは突然泣きながら土下座し始めた。

 

【・・・は?】

 

思わず声がハモる一夏達。

しかし、そんな事はお構い無しにスコールの感謝の言葉は続く。

 

『私、幹部なのに!幹部なのに!!私が末端の幹部だからって、幹部の中で私だけ基地持ってなくて・・・みんなから馬鹿にされて!私、悔しくて悔しくて・・・!!

 

でも!そんな悔しい気持ちも今日まで♪素敵な基地、見つけたんだもーん♪」

 

今度は一転、歓喜しながら踊り始めた。

・・・喜怒哀楽の激しい女である。

 

『おい、落ち着けってスコール。

すまん、スコールの奴、喜びの余り昨日からずっとこんな感じで・・・』

 

『アハハ!もう、オータムったら。私ちくわじゃないって♪』

 

遂には訳の分からない台詞まで出始めた。浮かれすぎだろ・・・

 

『・・・チッ!おい、カメラ止めてくれ。マドカ』

 

『ああ・・・!』

 

オータムと呼ばれた黒髪の女とマドカと呼ばれた仮面の女は青筋を浮かべながらカメラを止め、そして・・・

 

 

 

『ブッ!?ちょ、待っ・・・ムギャッ!!ごめん、あガッ!?ごめんなさーい!!』

 

音声のみだが何が起きたか一夏達はすぐに理解出来た。

数分後、再びカメラに映し出された時、スコールの顔は若干腫れ上がり、紅葉型の痕が残っていた。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

『お見苦しい所を見せて失礼。さて、私達の要求は聞いての通り、この船そのものよ。

大人しく渡すならそれで良し。帰りの手段ぐらい用意してあげるわ。

けど、渡さないなら・・・実力行使に出るしか無いけど?』

 

好戦的な笑みを浮かべるスコール。

顔が腫れてるからいまいち締まらないが・・・

 

「テロリストの言う事が信用出来るとでも?

それに、貴方達にとってこの船は出来る限り無傷で手に入れたい物の筈・・・。

つまり、下手にISや銃火器は使えない筈です。

ならば、我々にも対抗する手段はありますが?」

 

一夏達がスコールと画面越しに睨み合う中、船長代理のクロエが、クラリッサを始めとした船員複数人を引き連れて現れる。

 

『そうねぇ・・・出来れば、というか是が非でもその船は無傷で手に入れたいわ。

人質は一応一人捕まえたけど、コイツじゃ駄目そうね。さっきからアナタ達誰もコイツの事に触れてくれないもの』

 

「あ、その馬鹿はお好きにどうぞ。サボってばっかりのダメスタッフなので」

 

【意義なーし!!】

 

哀れにもおそ松はクロエにも弟達にも簡単に見捨てられてしまった。

 

『いらないから返すわ』

 

「グエッ!あぁーーーーっ!?」

 

更にはスコールからも用済みとされ、おそ松は甲板に叩き落とされたのだった・・・。

 

 

 

 

 

『さて、話が少し脱線したけど。一つ提案があるわ。

私の部隊はなかなか精鋭揃いでね。特に強い部下がオータムとマドカ以外にも5人はいるのよ。

そこで!私達精鋭部隊とアナタ達の中から最も強い者達・・・それぞれ選抜して全7試合の団体戦を提案するわ!!』

 

「団体戦だと!?」

 

『勝負は先に4勝した側の勝利。私達が勝てばこの船は無傷で頂き、アナタ達は船を降りる。

アナタ達が勝てば私達は大人しく退却するわ。どうかしら?」

 

「正直、面倒臭ぇし、受けるメリットは少ないが・・・」

 

「受けないで強行手段を取られても困りますし・・・」

 

「それに私にとって、この船以外で帰るのは自殺行為だ」

 

「良いだろう!その勝負受けた!!」

 

比較的冷静な一夏、クロエ、箒が思案し、それに呼応する様に千冬は勝負を承諾。

今ここに、IS学園チームと亡国機業チームの団体戦が決定した!

 

 

 

「リングはこちらで用意しましょう。皆様、少しお下がりください」

 

徐にクロエは懐からリモコンを取り出し、それを使用して甲板を操作する。

すると・・・

 

 

「わわっ!?り、リングが!?」

 

何と、甲板の一部が開き、プロレスなどで使用されるリングが迫り上がってきた!!

 

「フフフ・・・いつか船上格闘技イベントの為にと用意していたリングがこんな形で役に立つとは・・・」

 

「最早何でもありですわね・・・」

 

不敵に笑うクロエにセシリアは若干呆れながら突っ込む。

 

 

 

『それじゃあ、早速第一試合と行きましょうか?』

 

「こっちの一番手は、このオータム様がお前らを可愛がってやるぜ!」

 

亡国機業チーム一番手は先程スコールにお仕置きを加えた黒髪の女、オータムが空母から架けられた橋を渡り、姿を見せた。

そして、対するIS学園チームは・・・

 

「私に任せろ。テキサスの荒野で鍛えた力、見せてやる!!」

 

テンガロンハットを脱ぎ捨て、リングに上がったのは篠ノ之箒!

 

 

 

潜水艦争奪戦・第一試合

箒 VS オータム

 

海上の激闘・・・そのゴングが今鳴り響く!!




次回予告

いよいよ幕を開けた亡国機業との戦い。
箒のテキサスファイトがオータムに炸裂する!!

次回『荒馬少女・篠ノ之箒!!』

オータム「喰らいやがれ!ダイナマイトキィィック!!」

箒「受けてみろ!これが私の荒馬魂(ブロンコスピリッツ)だ!!」


※挿絵絶賛募集中です(特にアメリカンスタイルの箒)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

荒馬少女・篠ノ之箒!!

前回までのあらすじ
ひょんな事から始まったIS学園チームVS亡国機業チームによる潜水艦を賭けた団体戦。
第一試合は箒VSオータムだ!



「他の乗組員や戦えない乗客の方は私達が護衛・保護します!

箒様!遠慮無く戦ってください!!」

 

「少佐、アンタも護衛と保護に回ってやれ。千冬姉と腕相撲で引き分けたアンタなら敵も簡単には手を出せん筈だ」

 

「・・・(コクリ)」

 

「恩に着る!必ず勝ってみせるぞ!!」

 

クロエ、一夏、アームストロングからのフォローに感謝の意を示し、箒はリングに上がり、オータムと向かい合い、ファイティングポーズを取る。

 

「笑わせるなよガキ・・・!たかが学生上がりが、部隊随一のISパイロットであるこのオータム様に勝てると思うなよ!」

 

「どうかな?・・・やってみなきゃ分からんぞ!?」

 

「十四松さん、ゴングを!」

 

「あい!」

 

松野家五男・十四松がハンマーでゴングを鳴らし、試合開始の合図が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

潜水艦争奪サバイバルマッチ 第1戦

篠ノ之箒 VS オータム

 

ゴングが鳴った直後、オータムは徐に箒に向けて一度指差して、直後に親指を下に向けて突き出す。

 

「・・・ぶっ殺す!」

 

直後に親指で首を掻っ切る仕草を見せ付けて箒を挑発するオータム。

対する箒は目を鋭く細めつつも、口元に不適な笑みを浮かべる。

 

「挑発はそれで終わりか?御託はいらん、かかって来い!!」

 

「後悔するなよ・・・!!」

 

『フフフ・・・オータムを怒らせるなんて、馬鹿な娘。

ISパイロットとしては現役国家代表にも匹敵するのよ』

 

画面越しに嘲笑するスコール。

だが、それでも箒に動揺は無い。獲物を狙う獣が如くオータムを見据えて、指先をクイッと動かして挑発し返す余裕を見せている。

 

「喰らいやがれ!ダイナマイトキィィック!!」

 

先に仕掛けたのはオータム。

勢いを付けた飛び蹴りが繰り出され、箒はそれを腕で防御する。

 

「まだまだ行くぜ!!」

 

更にそこから繰り出される拳と蹴りの連打が箒を襲う。

 

「オラオラオラオラオラァッ!!」

 

息も吐かせぬ連続攻撃。

最初は塞いでいた箒だが、次第にガードが緩み始め、攻撃が次々にヒットしていく。

 

「トドメだ!!」

 

フィニッシュとばかりにオータムは拳を振り上げ、渾身の一撃を繰り出した!!

 

オータムウルトラスペシャルミラクルスーパーメガトンパーンチ!!

 

長ったらしい名前と共に繰り出されたオータムの右拳が箒の顔面にぶち込まれた!!・・・・・・のだが、

 

 

 

 

 

「おい・・・お前、これ本気でやってるのか?

これが、お前のフルパワーの一撃なのか?」

 

「へ?き、効いて、ない・・・?」

 

「ああ、さっきから大して痛くないから防御してなかったが・・・」

 

オータムの生身の攻撃力は滅茶苦茶低かった!!

 

 

 

『え?オータムってあんなに非力だったの?』

 

『そういえば、アイツ生身じゃクッソ弱かったな・・・』

 

更に追い討ちをかけるように聴こえてくるスコールとマドカの会話。

 

 

 

「つ、強がってんじゃ『うるさい』ホゲェッ!?」

 

自分の非力さを誤魔化すように箒に殴りかかるオータムだが、箒はうんざりした表情でカウンター気味に右ストレートを決めた。

 

「あ、アガガ・・・」

 

「もういいよな?そろそろ終わらせてもらうぞ」

 

鼻血を出してのたうち回るオータムを冷めた目で見下ろし、その胸ぐらを掴んで無理矢理立たせ、そして・・・

 

「受けてみろ!これが私の荒馬魂(ブロンコスピリッツ)だ!!」

 

「グエェェッ!!」

 

今度はこちらの番とばかりに繰り出される(ナックル)の連打。

その一撃一撃がオータムの顔面を捉え、的確に打ち込まれていく!

 

「ガッ!アグッ!!グガァッ!!!!」

 

「これで、終わりだ!テキサスクローバーホールド!!」

 

顔面に連打を浴びて瞬く間にボロボロにされ、ダウンするオータム。

そこを狙い、箒はオータムの右脚を脇の下に抱え込み、左脚を右太腿の上で両手をクラッチした!!

 

「ギャアァァッ!!お、折れる〜〜〜〜っ!!」

 

「5秒待ってやる。さっさと降参しろ」

 

「ぎ、ギブ、アッ・・・プ」

 

強烈な締め上げに、オータムは5秒どころか1秒と持たず、ギブアップしたのだった。

 

 

 

潜水艦争奪サバイバルマッチ 第1戦

篠ノ之箒 VS オータム

 

箒、勝利!!

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「やったな、箒!」

 

「フン、当然の結果だ。取り敢えず、まずはこれで1勝だな」

 

仲間からの賞賛の声に親指を立てて勝ち誇りつつ、箒は画面に映るスコールを見る。

 

『フン、まずは束の間の白星に酔っていなさい。次の試合からはそうはいかないわよ。

さあ、次の戦士はさっさとリングに上がりなさい!』

 

やや不機嫌気味に第二試合を宣言するスコール。

直後に亡国機業側の空母からマントで体を覆った男が姿を表し、橋を渡ってリングに上がる。

 

「次は俺が行くぜ!あの連中、俺を簀巻きにしやがった借りを返してやる!!」

 

対するIS学園チームは先程まで簀巻きにされていたおそ松立ち上がり、(勝手に)リングに上がった。

 

「おい、待ておそ松コラ!何勝手に飛び出してんだ!?」

 

「うるせぇ!やられっぱなしで黙ったられっかよ!!

このマント野郎も残りの連中も俺一人で片付けてやらぁ!!

さぁ、来やがれ!ここらでお遊びはいい加減にしろって所を見せてやるぜ!!」

 

一夏からの叱責も意に介さず、闘争心を剥き出しにするおそ松。

対するマント男は体を覆っていたマントを脱ぎ捨てた。

 

「・・・・・・」

 

マントを脱いで現れたのは筋骨隆々かつ強面、しかも物凄く殺気立った大男・・・分かりやすく言えば、【めっちゃ強そうな人】だった。

 

「なっ・・・!?」

 

思いがけない対戦相手の姿に呆気に取られるおそ松。

そんなおそ松に対し、めっちゃ強そうな人は・・・

 

「・・・1秒でぶち殺す!」

 

「っ・・・面白ぇ!かかって来いやぁーーーーっ!!!!」

 

 

 

潜水艦争奪サバイバルマッチ 第2戦

松野おそ松 VS めっちゃ強そうな人

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

数秒後

 

「あが、あががが・・・・・・」

 

第2戦、おそ松は・・・本当に1秒で負けた。

 

「この・・・」

 

【役立たずが!!】

 

「ア゛ア゛ァァーーーーッ!!!!」

 

こうして、おそ松はクロエ、一夏を始めとした潜水艦スタッフ&IS学園メンバーにフクロにされ、海に放り捨てられたのでした。

めでたしめでたし・・・。

 

潜水艦争奪サバイバルマッチ 第2戦

松野おそ松 VS めっちゃ強そうな人

めっちゃ強そうな人、勝利!!

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

『フフフ・・・これでイーブン。

さぁ、第3試合よ!次の者、リングへ来なさい!!』

 

あっという間に戦績を五分に戻し、上機嫌になったスコール。

続く第3試合の出場戦士は・・・

 

「たかがイーブンにしたぐらいで調子に乗っちゃって・・・。

ココは私がまた差を付けてあげるわ!」

 

「刀奈か・・・まぁ、おそ松の馬鹿よりはマシか」

 

「そうだね。お姉ちゃん、腕っ節は結構強いし、ガチンコで戦うならそうそう負けたりしないだろうし」

 

立候補したのは刀奈。

普段は馬鹿で間抜けな彼女も戦闘なら頼れる存在に早変わりだ。

(先のおそ松も喧嘩は強い方だが所詮は街のチンピラレベル)

 

「私が出たからには2勝目は確実ね。さーて、私の相手は誰かしら?」

 

妹や仲間に見送られて意気揚々とリングへ上がる刀奈。

そんな中、空母か一人の男が姿を現した。

 

「貴様が我と死合う相手か?」

 

「・・・へ?」

 

その人物の風貌と言葉に刀奈は思わず間の抜けた声をあげる。

髷を結った赤い髪、血のように紅い瞳、そして背中に『天』の文字が描かれた黒い道着姿の男・・・。

 

「あ、アナタ・・・誰よ?」

 

「我が名は豪鬼・・・拳を極めし者・・・!!」

 

「とんでもないキャラを出してきたーーーーっ!?

ちょっと待って!ストリートファイターってゲームの中だけの存在じゃないの!?」

 

※本作では実在の人物をモデルにしたゲームという設定です。

 

「嘘ぉ!?聞いてないわよぉ〜〜〜〜!!」

 

刀奈によるメタ発言込みのツッコミが海に鳴り響いた。

 

 

 

潜水艦争奪サバイバルマッチ 第3戦

刀奈 VS 豪鬼




登場人物解説

スコール・ミューゼル
亡国機業の幹部(末席)の女性。
普段は冷静に振る舞ってるが、本質はIS学園メンバーに負けず劣らずのお馬鹿。
テンションが上がるとお馬鹿な本性を曝け出す。
その一方で、亡国機業幹部の名に恥じない高い実力を持ち、政治・軍事にも精通している一面も持ち合わせている。
馬鹿ではあるが、決して頭が悪い訳ではない人物。
末席故か、馬鹿であるが故か、未だに自分の基地を持っていない。

オータム
亡国機業の一員で、スコールの部下。
上司のスコールの馬鹿な言動に手を焼く苦労人。
ISの操縦技術は一流だが、生身での戦闘力はポンコツ。
(せいぜい街のチンピラレベル)

めっちゃ強そうな人
同じく亡国機業の一員で、スコール配下の精鋭の一人。
読んで字の如くめっちゃ強そうな外見に違わず、戦闘力は非常に高い。
喧嘩には自信のある筈のおそ松をボッコボコにして勝利した。



アイテム解説

絶対酔わない潜水艦
束が開発した乗り物で正式名称【絶対酔わない潜水艦・束スペシャル】。
潜水艦と銘打っているが、客船への変形機能を備えており、潜水艦よりも客船としての活動の方が多い。
内部には各種娯楽施設と生活設備が備えられており、「動く高級ホテル」とも呼ばれている。
束は旅行会社と業務提携して船を売り出しており、いずれ豪華客船として世に出す予定。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

刀奈の意地!見せろ必殺拳!!

今回はバトル成分多めです。


潜水艦争奪サバイバルマッチ第3戦。

意気込んで出陣した刀奈だったが・・・

 

「豪波動拳!」

 

「ぐへぇっ!!」

 

やはり相手が悪く、試合開始から約10秒、豪鬼の両掌から放たれた気弾に、刀奈はなす術なく吹っ飛ばされた。

 

 

 

「お、お嬢様・・・何と、痛ましい・・・」

 

「お姉ちゃん、今回ばかりは負けても責めたりしないからね・・・」

 

「っていうか、気って飛ばせるものなのですの!?」

 

「飛ばせますよ」

 

心配そうな表情で刀奈を見る虚と簪を他所に、格闘漫画のような技が繰り出される光景にセシリアがツッコミを入れるが、その疑問の声に真耶が答えた。

 

「え?」

 

「そうだよ。私も接近戦向けの技だけど出来るし。

一夏君と山田先生は結構遠くに飛ばせるよね?」

 

「ええ、マスターズ通信空手で習いましたから、こんな風に・・・波動拳!」

 

驚くセシリアに解説する簪と、それを実践してみせる真耶。

ちなみに真耶が飛ばした気弾は・・・

 

「ぐぼぁっ!?」

 

海から這い上がろうとしていたおそ松に直撃し、再び彼を海に叩き落とした、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何が豪波動拳よ・・・。

気を飛ばすなんて私だって!!」

 

吹っ飛ばされながらも立ち上がり、刀奈は先程の技に対抗意識を燃やして身構える。

 

「ぬ!?」

 

「アンタが両手なら、私は片手で撃ってやるわ!」

 

思わず目を細める豪鬼を他所に刀奈は右手に気を集中させ、そして・・・

 

「食らいなさい!これが刀奈流の・・・波動拳!!」

 

渾身の力を込めて右手から放たれた刀奈版波動拳。

その気弾は力強い光を放ち、そして・・・

 

 

 

【PON!】

 

 

 

刀奈の手元から数cm飛んだ所で、気弾は音を立てて霧散してしまった。

 

「・・・へ?な、何で飛ばないの!?」

 

「アホか!?気を練って飛ばすなんて芸当、練習無しの見様見真似で出来るわけ無いだろうが!?」

 

「まぁ、見様見真似で気を練っただけでも凄いですけど・・・」

 

「茶番は終わりか?」

 

「ちょ、待っ・・・『豪昇龍拳!』モンギャアァ!!」

 

呆然とする刀奈に強烈なアッパーカットと膝蹴りを複合した一撃かぶち込まれた。

 

「ぐへぇっ!!」

 

ギャグも冗談も皆無なその一撃に吹っ飛ばされ、刀奈の体は宙を舞い、マットに沈んだ。

 

「笑止・・・!雑魚めが・・・」

 

無様にマットに倒れる刀奈に背を向け、去ろうとする豪鬼・・・だが。

 

「ま、待ちなさいよ・・・!」

 

「何?」

 

何と!刀奈は生きていた!!

豪鬼を睨みつけながら、ロープを掴んで立ち上がり、身構える。

 

「か、簪ちゃんに虚ちゃん、本音ちゃんが見てるのに、何も出来ずに負けるなんて、私のプライドが・・・許さないのよ!!」

 

「ぬぐっ!?」

 

刀奈の意地を込めた反撃の(パンチ)が、豪鬼の顔面に叩き込まれ、その身体を僅かに揺るがせた!

 

「ぬぅ・・・フフフ、面白い!」

 

ここで初めて表情を変え、獰猛な笑みを浮かべる豪鬼。

刀奈のパンチに応えるように自らも技を使わず拳で応戦する!

 

「でやあァァァッ!!」

 

「憤っ!憤っ!!」

 

互いに防御を捨てて打ち合う刀奈と豪鬼。

だが、やはり地力の差は大きく、刀奈のダメージは目に見えて大きくなる。

 

「が、はっ・・・(な、なんて重いパンチなの?これ以上打ち合えばこっちが負ける・・・それなら!!)」

 

何を思ったのか、刀奈は突然仰向けに寝転がった!

 

「ヘイ、come on!!」

 

 

 

「あ、アレは!あの体勢は・・・!」

 

「知ってるのか一夏?」

 

何かに気付いた一夏に対し、刀奈の真意を理解出来ていないラウラが疑問の声を上げる。

 

「・・・伝説の、『ア○vs猪○戦法』だ!!

その昔、有名なアメリカ人ボクサーを相手に、有名日本人プロレスラーが使った戦法。

仰向けに寝転がるような体勢でボクサーの強力なパンチを封じつつ、その体勢からローキックを繰り出すという戦法だ」

 

「おお!ならば奴のパンチを防ぐ事が・・・ん?ちょっと待てよ・・・」

 

一夏の解説に一瞬感心したラウラだったが、『ある事』に気付く。

 

「そうだ。アレは確かにボクサーには有効だ。しかし・・・」

 

 

 

「ほら、どうしたの?打てるもんなら打ってみなさいよ!?」

 

そんな一夏の懸念も知らず、刀奈は良い気になって挑発を繰り返し、そして・・・

 

莫迦(ばか)かお前は?」

 

「ぶげえぇぇっ!!?」

 

豪鬼に顔面を踏みつけられた。

そう、この戦法・・・真剣勝負では全くの無意味だった!!

 

 

 

「あの女・・・底抜けの阿呆だ」

 

一夏が呆れ混じりに呟いたその言葉に対し、その場にいた全員誰も否定しなかった。

 

 

 

「愚か者めが・・・」

 

今度こそトドメを刺し、リングを降りようとする豪鬼。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが・・・

 

「ま、まだまだぁ・・・」

 

「何・・・!?」

 

「ま、まだ負けてないん、だから・・・!!」

 

それでもまだ刀奈は倒れない!凄まじい生命力と執念で三度立ち上がった!!

 

「・・・なるほど、その才と執念は本物という事か。ならば!!」

 

ボロボロになっても立ち上がり続ける刀奈の姿に豪鬼は何かを認めたように真剣な表情を浮かべ、ゆっくりと身構える。

 

「しかと受け止めよ!・・・滅殺!!」

 

流れるような動きで一気に間合いを詰め、そして・・・!!

 

「一瞬千撃!!」

 

「ガハアァァッッ!!!!」

 

刀奈の胸ぐらを掴むと同時に繰り出されるは無数の乱撃!!

一瞬千撃の言葉通り、圧倒的な手数と力を以って刀奈を叩きのめした!!

これぞ豪鬼の奥義『瞬獄殺』だ!!

 

「ガ・・・ぁ・・・・・・」

 

それで全てが終わった。

僅かな呻き声を上げた直後、マットに力無く倒れ伏したのだった。

 

「も、もう勝負ありです!十四松さん、早くゴングを!!」

 

「う、うん!」

 

 

潜水艦争奪サバイバルマッチ 第3戦

刀奈 VS 豪鬼

 

豪鬼、勝利!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん!!」

 

「お嬢様!!」

 

ズタボロになった刀奈を心配して駆け寄る簪と虚。

そんな二人に豪鬼は静かに近づき口を開く。

 

「案ずるな・・・死にはしない。

その娘が目を覚ましたら伝えておけ。

“貴様の才・・・無駄にするな。手も足も出ず負けて屈辱ならば、強くなれ”とな『あ、当たり前よ・・・・・・!』・・・む?」

 

豪鬼からの言葉に気絶していた筈の刀奈が目を覚まし、弱々しくも声を出す。

 

「つ、次は絶対・・・もっと強くなって、アンタなんかやっつけてやるんだから・・・!!」

 

悔し涙を流しながら、刀奈は妹と従者に抱えられて退出していく。

これより数ヶ月後、刀奈はある道場に入門する事になるが、それはまた別の話・・・。

 

「フフフ・・・愚者でありながら、高き才を持つ若人か・・・フハハハハハ!!」

 

そんな刀奈の闘志に、豪鬼は笑う。

まるで、何かを期待をするかのように・・・。




潜水艦争奪サバイバルマッチ 現在1勝2敗。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

打ち切り

突然ですが、ネタが完全に突きてしまい、どれだけ考えても今後の展開が思い浮かばず、勝手ながら打ち切らせていただきます。

申し訳ありません。これまでご愛読ありがとうございます。


おそ松に刀奈と二連敗を喫した一夏達IS学園チーム。

だが、刀奈の奮戦に火が着いたメンバーは奮起した!

 

続く第4〜6試合では簪、シャルロット、ラウラが一気呵成に連勝を決め、見事に逆転!!

最終戦を待たずして勝利を確定させたのだ。

 

 

 

しかし、業を煮やしたスコールは、遂に自らが参戦!

オータム以外の敗北した部下達全員の気を吸収し、圧倒的な力を手に入れてしまった!!

その力の差にセシリア、子分メイド、虚・・・そして遂には千冬まで倒され、瞬く間にIS学園チームは追い詰められていく。

 

しかし、作者である神無鴇人と主人公である織斑一夏は、最後の手段としてある逆転の一手を打つ事を決意する。

 

「奴を倒すには、もうこれしか無い!!」

 

「この手だけは使いたくなかったがな・・・。やるならさっさとしろ!リズムは俺が合わせてやる!!」

 

 

 

「「フュー・・・ジョン!!」」

 

 

そう、融合である!

 

「な、何なの?貴様は一体・・・?」

 

「「俺は鴇人でも一夏でもない。俺はお前を倒す者、作者の権限と主人公の補正を持った超戦士・神斑鴇夏だ!!」」

 

「何か無理矢理な名前になってるー!?」

 

さしものスコールといえど、作者権限と主人公補正を持つ鴇夏には敵わず、瞬く間に追い詰められ、完全敗北を喫してしまった。

 

「「作者権限も主人公補正も持たない貴様に、勝ち目があるとは思えんが・・・どうする?」」

 

他のメンバーが回復して立ち上がる中、鴇夏はスコールを見下ろしながら問いかける。

 

 

「グッ・・・たしかに、この場は退くしかないようね。だけど・・・!!

 

 

 

いずれ私は更なる力をつけて戻って来る!

そして必ず!この船も世界も、全て手に入れて見せるわ!太陽拳!!」

 

 

強烈な光を放ち、周囲の者達の目を眩ませた!

そして視力が回復した時、スコールの姿はそこには無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

油断した隙にスコールに逃げられてしまった!

合体が解除された鴇人と一夏は、目を覚ました仲間達にスコールが逃亡した事を伝えた。

 

しかし、その頃中国にいる弾と鈴音は・・・、

 

一夏達に起きた出来事など知る由も無く、特級厨師試験を受けていた。

 

篠ノ之束すら開発下の分からない無人IS、I沢Sin太郎とは一体何者なのか?

 

 

果たして、一夏達はスコールの野望を阻止出来るのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

お わ り

 

千冬「今度は私がやる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

っていう終わり方じゃダメ?

 

 

全員『ダメに決まってんだろうが!!』

 

 

だよね。

という訳で、最終回じゃありません。

まだまだ続くよ。

 

 

シリーズは終わらんでぇ〜〜〜〜っ!!




はい、という訳でエイプリルフールネタです。
騙された人、挙手して下さい。

大丈夫、怒らないから、怖がらず手を挙げてね。
(笑わないとは言ってない)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

奮戦!オルコット・ファミリー!!(前編)

前回までのあらすじ

先鋒・箒 大圧勝!
次鋒・おそ松 無様にボロ負け
五将・刀奈 頑張ったけど相手が悪くて負け

さぁ、続く中堅戦は!?


刀奈敗北で幕を閉じた潜水艦争奪戦第3試合。

全7戦の中、現在の戦績は1勝2敗。

早くも流れの悪くなったIS学園チームの4番手は・・・

 

「ココは私が行って、この悪い流れを断ち切って差し上げましょう!」

 

ボロボロになって戻ってきた刀奈と、海からやっとの思いで這い上がってきたおそ松を尻目に、セシリアが立ち上がった!!

 

「セシリアちゃん、お願い・・・」

 

「すまねぇ、俺達が不甲斐ないばっかりに・・・!!」

 

「話しかけないでくださいまし、負け犬共!

負けた者は三匹仲良く角で正座でもしてなさいな」

 

「おい!勝った私まで負け犬扱いとはどういう了見だコラ!」

 

何故か白星を挙げた箒も巻き添えにして罵倒し、セシリアはリングへと向かった。

 

 

 

「さぁ、私の相手は誰ですか?・・・ん?」

 

リングの上には、何故かペット用の器に盛られたささみ肉が置かれていた。

 

『それがアナタの相手・・・の代理よ。

こっちの4番手は急遽出張になっちゃって、代わりにその料理だけ置いて行っちゃったのよ。私に許可も取らずにね・・・』

 

スピーカーから聞こえるスコールの声は若干泣きそうな声だった。

 

「・・・料理(これ)とどう戦えと?・・・あら?」

 

呆然とするセシリアだったが、不意に二匹の犬がリングに近付いてくる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「このわんちゃん達は?」

 

「あ、家の犬だ。次元の壁を越えて来たようだ」

 

現れた二匹の犬・・・その正体は筆者の実家で飼っているペット、どーる(雌・トイプードル)とエース(雄・ミニチュアダックス)である。

 

「私達、お腹空いてます」

 

「ご飯ください」

 

空腹を訴える二匹。その姿を見たセシリアは、不意にある事を思い付く。

 

「良い事を思い付きましたわ!このままただ不戦勝というのも私のプライドが許せませんし、丁度お昼時も近いこの勝負、そこの二匹の犬を審査員として、そこのささみ肉と私の作る料理とで料理対決としましょう!」

 

こうして、セシリアの思い付きにより、第四戦は料理対決となった。

 

 

 

「そうと決まれば、善は急げですわ。

少々お待ちになりなさい、わんちゃん達」

 

すぐさまセシリアは動き出し、素早い動きで料理を開始。

瞬く間にサンドイッチを作り上げた。

 

「フフフ・・・セシリア・オルコット特性サンドイッチ。

この勝負、貰いましたわ!さぁ、かわいいわんちゃん達、食しなさい!!」

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「やっぱささみ肉は美味しいわね」

 

「あっちのサンドイッチは変な臭いするし、こっち一択だよね」

 

どーるもエースもサンドイッチには目もくれず、ささみ肉を美味しく頂いた。

 

「うぅ・・・そ、そうですわよね。美味しくてヘルシーですものね、ささみ肉って」

 

そして、リングには四つん這いになって嘆くセシリアだけが残された。

 

 

 

潜水艦争奪サバイバルマッチ 第4戦

セシリア VS ささみ肉

 

ささみ肉、勝利!!

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「おかえり、ささみ肉に負けたセシリアちゃん」

 

先程負け犬呼ばわりされた意趣返しとばかりに箒による皮肉がセシリアを出迎えた。

 

「・・・どうかお許し下さい、こんなの一生の恥ですわ」

 

冷ややか、あるいは憐れみの視線に囲まれ、セシリアは体育座りで蹲った。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

こうして1勝3敗と、早くも王手を掛けられてしまったIS学園チーム。

丁度昼飯時となり、勝負は昼食休憩を挟む為、一度休憩となった。

 

そんな中、亡国機業側はと言うと・・・

 

「うふふ・・・まさか、あんな料理一つで勝ち星稼げるなんてねぇ。

よーし、3勝を祝して乾杯しましょう!」

 

『かんぱ〜い!!』

 

勝利にリーチが掛かって好い気になって戦艦内で祝杯を挙げていた。

 

「今日は騒ぐわよ〜!」

 

「イェーイ!!」

 

「宴だ宴だ♪ワーイワーイ♪」

 

【バシャッ】

 

勢い余ってワインを部下に引っ掛けてしまった。

 

「ごめん、ワイン溢しちゃった」

 

「アハハ、無礼講無礼講♪」

 

しかし笑って許す部下達。

 

 

 

「宴だ宴だ♪ワーイワーイ♪」

 

【ガシャン!】

 

今度はディスプレイを割ってしまった。

 

「ごめん、割っちゃった」

 

「アハハ、無礼講無礼講♪」

 

これも笑って許す部下達。

 

 

 

「宴だ宴だ♪ワーイワーイ♪」

 

【ポチッ】

 

「あら?見て見て!うっかり自爆スイッチ押しちゃった!」

 

「無礼講無礼講・・・って、それはダメェ〜〜〜〜っ!!」

 

 

 

 

 

凄まじい轟音と共に、戦艦は爆発してしまった。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「ねぇ、何であのスコールって人甲板で正座しながら説教されてるの?」

 

「さぁ?・・・まぁ、ほぼさっきの爆発が原因だろうな」

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「この馬鹿!阿保!間抜け!!騒ぎすぎて自爆スイッチ押す奴があるか!?」

 

「ごめんなさい、はしゃぎすぎました・・・」

 

「どーするんだ?次に出る予定のレインの奴、自爆に巻き込まれて戦える状態じゃあないぞ?」

 

「・・・やむを得ないわ。7人目の選手として、私も参加するわ」

 

こうして、高みの見物から一転、スコールも選手登録される事となった。

 

「ま、問題ねぇよ・・・次に出る俺が勝てばそれでお終いだ」

 

不意に発せられる男の声・・・短髪にタンクトップに両手にバンテージという出立ちの長身の男、美樹露蛇明日(みき ろじゃあす)・・・通称ロジャース。

スコールの部下の一人にして、凄腕のアマチュアボクサーである。

 

 

 

「さーて、今日の最終試合だ。華々しくぶっ倒されたい奴は前に出な!!」

 

余裕綽々な態度でIS学園チームを挑発するロジャース。

そんな中、静かに歩き出す一人の少年がいた。

 

「ここは、僕が行かせて貰いますよ」

 

「と、透!?」

 

オルコット家の従者が一人、透・ジョーンズ。

先のセシリアの敗北の汚名を返上すべく、いざ出陣!!

 




果たして、透の実力の程は!?




ここまでの戦績

先鋒 箒○ー×オータム
次鋒 おそ松×ー○めっちゃ強そうな人
五将 刀奈×ー○豪鬼
中堅 セシリア×ー○ささみ肉


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

奮戦!オルコット・ファミリー!!(後編)

前回までのあらすじ

セシリアの大チョンボで1勝3敗に追い込まれたIS学園チーム。
一方で亡国機業チームのリーダー・スコールもまた、自らの間抜けなミスでメンバーを一人退場させてしまった。

IS学園チームのピンチと主の失態を挽回すべく、透が三将としてリングに上がった!
対する亡国側は凄腕アマチュアボクサー、美樹露蛇明日(通称ロジャース)だ!


「ヘイ、ボーイ!俺様のパンチを避けられるかな?」

 

リングに上がった14歳の少年、透に余裕綽々な態度で挑発するロジャース。

そんな対戦相手に対し、透は冷静な表情を崩さず、眼鏡を外しながらロジャースを見据える。

 

「ご心配なく。若輩とはいえ、これでもプロです。

アマチュア如きのパンチに倒される程、柔な鍛え方はしていませんよ」

 

「ハッ!ガキの癖に嘗めた口を叩くじゃねぇか!?」

 

挑発返しにも見下した態度を変えず、その拳を素振りで見せ付けるロジャース。

その空を切るパンチは観戦する者達を騒然とさせる。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「す、凄いパンチ・・・」

 

「あぁ。私が倒したオータムは勿論、おそ松を倒した大男や、刀奈のパンチより鋭いな。

流石に豪鬼程の威圧感は無いが、それでも強敵には違いないぞ」

 

戦慄するシャルロットと、冷静に分析する箒。

しかし、そんな中で笑みを浮かべる少女が一人・・・。

 

「問題無いわ。この勝負・・・透の勝ちよ!」

 

透の彼女である子分メイドは不敵に笑いながら、そう宣言した。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

『試合開始!』

 

クロエの宣言と同時にゴングの音が鳴り響く。

 

「ヘッ!テメェみてーなチビガキに本気もクソもねぇ・・・。

一発で優しくK.O.してやるぜ!オラァッ!!」

 

「ッ!」

 

開始の合図と共に踏み込むロジャース。

その鋭いパンチが透の顔面・・・額に叩き込まれた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギギャアアアアアアッッッッ!!」

 

耳をつんざくような大声を上げながらリングの上を一人の男がのたうち回る。

透ではない・・・殴った筈のロジャースが苦悶の表情を浮かべてマットの上を転がっていた。

左手で押さえられているのは先程パンチを放った右手・・・その指がありえない方向に曲がっているのだ。

 

その光景に観戦者達の大半が驚きと疑問の入り混じった表情を浮かべる。

 

「やっぱり、アナタはアマチュアですね。

素手でのパンチを額で受け止め、逆に砕くカウンター・・・ストリートファイトでは当たり前の戦法ですよ?」

 

「が、あ・・・ァ・・・ば、馬鹿な!?」

 

『あ、有り得ないわ!ロジャースのパンチは【鉄の拳(アイアン・ナックル)】と呼ばれる程の破壊力!

額で防御しようものなら、逆に頭蓋骨がひび割れる筈よ!?』

 

「鉄の拳・・・ですか?」

 

思わず通信越しに声を荒げるスコール。

それに対して透は不敵に笑い、ロジャースへと近付きながら口を開いた。

 

「Mr.ロジャース・・・アナタのパンチが鉄・・・モース硬度で言えば硬度4ならば、

僕の頭突きは・・・硬度10!ダイヤモンド級のヘッドバットです!!」

 

「だ、ダイヤモンド・・・だと?」

 

「そしてもう一つ。僕は、アナタと違って優しくK.O.なんて出来る程、器用ではありませんよ・・・!」

 

普段の中性的で穏やかな表情は、もうそこには無かった。

そこにあるのは好戦的、しかし同時に無機質で敵を倒すマシーンと化した男の目だった。

 

「ふ、ふざけんじゃねぇーーーーッ!!」

 

激昂しながらロジャース無事な左手でパンチを繰り出す。

いや、それだけでは無い・・・右足で透の足を踏みつけて固定し、更には負傷した右手の代わりに右腕の肘でエルボーを織り交ぜたラッシュ!

ボクシングならば即反則負け必至のルール無用の猛連撃だ!!

 

「オラオラオラオラオラァッ!!」

 

「だ、か、らぁ・・・!」

 

凄まじい連打を浴びながらも、まるで気にする事無く、透はロジャースのラッシュを弾き返し、そして・・・

 

【ベキィッ!!】

 

「ガアアアアァァァッ!!!!!」

 

お返しとばかりにロジャースの足の骨を踏み砕いた!!

 

「そこがアマチュアだって言ってるんですよ。足踏みつけるなら、踏んで押さえつけるんじゃなくて、足の骨砕いてやらなきゃ。そして・・・」

 

足を潰され、動く事も儘ならないロジャースの顔面目掛けてパンチを繰り出す!

何度も、何度も!!

 

「グエッ!アガッ!!グガァッッ!!」

 

「やるなら徹底的に、トドメは確実に・・・刺す!!」

 

そしてトドメの膝蹴りを顔面にぶち込み、ロジャースの頭部を膝とコーナーポストで挟み込むようにして叩き付けた!!

 

「ゲ・・・・・・が・・・・・・」

 

「・・・まだ意識ありますか?」

 

「ひ・・・お・・・・・・おでの、まげだ・・・た、助けて・・・」

 

完全に戦意を喪失し、ロジャースは這うようにリングから降りていく。

そんな彼に対して透は・・・

 

「待て・・・!」

 

「ひっ!?」

 

立ち塞がるように前に出て耳元に顔を近づけ、静かに口を開いた。

 

「念のために言っておきますけど、逃げる振りして不意打ちとかしたら、どうなるか分かりますよね?」

 

「し、しません!もう許じでぐれぇーー!!」

 

執拗なまでの透の徹底ぶりに、ロジャースは情けない声を上げながら這う這うの体で母艦へと戻って行った。

 

 

 

潜水艦争奪サバイバルマッチ 第5戦

透・ジョーンズ VS 美樹露蛇明日

 

透、勝利!!

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「よし!これで2勝だ!!」

 

「やりましたわね透!」

 

「だから言ったでしょ!流石私の透だわ!!」

 

「ちょっ、姉さん!?ひ、人前で抱きつかないで・・・///」

 

戻って来た透を子分メイドの熱烈なハグが出迎える。

 

「それにしても、圧倒的だったな・・・」

 

「そうでもありませんよ。彼の戦闘力は決して弱いものではありませんでした。寧ろ、攻撃力で言えば向こうが上でしたから、総合的には決して大差はありませんでした。

圧倒出来たのは、僕の持ち味である頑丈さが彼のパンチ力を大きく上回って先手を取って主導権を奪えたからです。

残り二人は敵のツートップ・・・油断はしないでくださいね」

 

真剣な表情で亡国機業チームを睨む透。

そんな彼に応えるように、ある人物が前に出る。

 

「心配するな!こっちにだって、私と一夏が控えているんだ!次は私が決めてやる!!」

 

副将戦に名乗り上げるは千冬。

仲間達に見送られながら、意気揚々とリングイン!

 

 

 

そして亡国機業側は・・・

 

 

 

 

 

「フフフ・・・ようやく戦えるなぁ。織斑千冬・・・!」

 

仮面の少女、M。

仮面越しにも分かる程に恍惚な笑みを浮かべてリングへと上がり、千冬と相対した!

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「戦う前に、少し言いたい事がある。まずは・・・」

 

リングで千冬と向き合いながらMは徐に被っていた仮面に手を掛け、それを取り外す。

 

「な!?」

 

そこにあったのは千冬そっくりな顔だった。

それこそ瓜二つと言える程に。

 

「自己紹介しておこう。初めまして、私の名はマドカ。

織斑千冬・・・貴様をベースとした強化クローンだ」

 

「く、クローン・・・クローンって、何だ?」

 

マドカの口から語られる衝撃の事実・・・の筈なのだが、千冬には理解出来なかった。

 

「やはり聞いてた通りの馬鹿か?まったく、こんなのが自分のオリジナルとは情けない・・・。

まぁいい、肝心なのは其処じゃあない」

 

一瞬呆れた様に肩を竦めるM改めマドカだが、不意に千冬を指差しながら真剣な表情を浮かべる。

 

「織斑千冬!この勝負に私が勝ったら、潜水艦だけでなく、ある男も頂く!!」

 

「ある男?ま、まさか一夏をか!?ダメだ!一夏は絶対渡さんぞ!!」

 

思わぬ宣言に千冬は若干焦りながら反論するが・・・

 

「勘違いするな!貴様の弟などに大した興味はない。私が欲しい男は・・・」

 

 

 

マドカが恍惚の目で向き直った、その先にいた男、それは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が欲しいのは、お前だ!!」

 

「ンゴッ?」

 

マドカが指差した先にいたのは、何と御手洗数馬(ゴリラ)だった!!

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・は?お前、何の冗談だそれは?」

 

「冗談ではない!!あの剛毛に覆われた身体、逞しい顔と胸板・・・。

途轍もなく、最高に・・・・・・私好みの男だ・・・ハァハァ・・・・・・!!」

 

涎と鼻血を垂らしながら息を荒げるマドカ。

そう、彼女は・・・ケモナーだったのだ!!

 

「抱かれたい・・・!あの毛むくじゃらの身体で私を犯して『オイ・・・!』何だ!?今妄想が良い所なん、グエェェッ!!!!」

 

悦に浸るマドカの顔面に千冬のパンチがぶち込こまれた!!

 

「私と同じ顔で、ふざけた事をほざくな!この、変態が!!」

 

 

 

潜水艦争奪サバイバルマッチ 第6戦

織斑千冬 VS マドカ

 

試合開始!!




登場人物紹介

透・ジョーンズ
戦闘シーンが描かれたので改めて紹介。
オルコット家お抱えのSP部隊出身で、子分メイドの彼氏。
凄まじくダイヤモンドの如く頑丈な肉体と敵は徹底的に叩き潰す鋼の精神の持ち主。
並の攻撃では彼にダメージを与える事は至難の業。



豪鬼
ストリートファイターシリーズに登場する武闘家。
厳密には亡国機業所属ではなく、雇われの傭兵に近い。
何故彼の様な人物が亡国機業に雇われているかは不明。


美樹露蛇明日
通称ロジャース。
亡国機業所属に所属する凄腕のアマチュアボクサー。
元ネタは龍虎の拳に登場するミッキー・ロジャース。
切れ味鋭いパンチ力を持つが、透はには通用しなかった。
終始圧倒されていたが、透曰く見た目ほど実力差は大きくはないようで、油断せずに上手く戦えば善戦ぐらいは出来ていたらしい。



現在までの戦績
先鋒 箒○ー×オータム
次鋒 おそ松×ー○めっちゃ強そうな人
五将 刀奈×ー○豪鬼
中堅 セシリア×ー○ささみ肉
三将 透○ー×ロジャース
副将 千冬ーマドカ ←今ココ
大将 ?ー?

IS学園チーム 2勝3敗


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

千冬覚醒!黄金のスーパーヒロイン!!

前回までのあらすじ
おそ松、刀奈、セシリアと、3連敗を喫して後が無くなったIS学園チーム。
しかし、透の活躍によって2勝目を決め、2勝3敗に巻き返した!

続く副将戦、IS学園チームは初代ブリュンヒルデ・千冬が出陣だ。
対する亡国機業からは千冬の強化クローンにして、変態ケモナーのマドカが参戦。

果たして勝利はどちらの手に?
そして、マドカに貞操を狙われる数馬(ゴリラ)の運命や如何に!?


開始早々に千冬がツッコミを入れるという普段なら滅多にない光景から始まった副将戦。

顔面にパンチを喰らい、よろけるマドカだが、すぐに踏み止まり、口に溜まった血を吐き捨てながら千冬に向かい合う。

 

「ほぅ、流石にパワーは凄いな?私より上を行っている。

だが、力任せ過ぎるぞ。パンチに体重がまるで乗っていない。

聞いてた通り力だけのウドの大木だな」

 

「何だとぉっ!?」

 

まるで堪えてないように不敵に笑うマドカの挑発に千冬は憤慨し、腕をブンブンと振り回しながらマドカに殴り掛かる。

 

「これならどうだ!?スペシャルウルトラデリシャスダイナミック千冬パーーンチ!!」

 

「予備動作も名前も長すぎだ!」

 

「グボァっ!?」

 

哀れ、千冬の必殺パンチはマドカのミドルキックによって不発に終わった。

 

「言ったはずだ。私は貴様をベースに生み出された強化クローン。

貴様は身体能力こそ脅威だが、それを活かす知力が低過ぎる!

そこで私を製造した科学者は過剰過ぎる身体能力を削り、それでも十分高い身体能力を最大活用出来るだけの頭脳を有した至高の戦士として生み出された!!その証拠に・・・」

 

「グガッ!!」

 

「ククク・・・怪力馬鹿の貴様にこんな関節技(サブミッション)は使えんだろう?」

 

まるで蛇の様に千冬の身体に手足を絡め、首を絞めつつ脚を足でロックする。

柔道で言う所の裸絞めだ。

 

 

 

 

 

「う、嘘!?千冬さんが・・・仮にも初代ブリュンヒルデの千冬さんが簡単に手玉に取られるなんて!?」

 

「まずいぞ・・・あの絞め技、完璧に極まってる。あれはとても逃げられん!」

 

まさかの千冬劣勢に驚くシャルロットとラウラを始めとしたIS学園チーム。

そんな様子にマドカは満足げな笑みを浮かべる。

 

「どうやら早くも勝負有りのようだな?数馬といったか、あのゴリラ?

フフフ・・・待ってろよ、このオリジナルと呼ぶのも恥ずかしい恥晒しを片付けたら、たっぷり愛し合い、いずれは挙式を挙げようじゃないか」

 

「ンゴォッ!?ウゴウゴウゴウゴ!!」

【訳・待って!?いきなりそんな求愛されても、僕どうすれば良いか分からないよ!!】

 

鼻息も荒く数馬(ゴリラ)を見てウィンクするマドカ。

そんな変態女に求愛され、数馬は狼狽している。

 

「ぐ、ぎ・・・貴様ぁ!この、ド変態があァァァッ!!!!」

 

「何!?」

 

何と、絞め落とされるかと思われた千冬は無理矢理立ち上がり、力任せにマドカを引き剥がし、そのままコーナーポストに投げ飛ばした!!

 

「な、何てパワーだ・・・グハァッ!?」

 

思わぬ反撃に狼狽え、コーナーに叩きつけられたマドカ。

すかさず千冬は追撃を加えようと殴り掛かる!!

 

「まだまだぁっ!!」

 

「っ!嘗めるな!!」

 

しかし、マドカも黙ってはいない。

服の中に隠したフック付きのワイヤーを発射した!

 

「何!?」

 

「武器使用禁止なんてルールは無いからなぁ!」

 

「くっ!」

 

間一髪回避した千冬。しかし、その隙をマドカは見逃さず、ある構えを取る。

 

「あ!あの構えは!?」

 

刀奈が思わず大声を上げる。その構えは忘れもしない、先の戦いで散々煮湯を飲まされた、あの技と全く同じ構えだった。

 

「波動拳!!」

 

「ガハァッ!!」

 

隙だらけになった千冬の身体にマドカの波動拳が叩き込まれた!

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

一方、マドカが先程発射したフック付ワイヤーの行方はと言うと・・・。

 

「さーて、ぷーちゃん達、そろそろオヤツの時間だぞ〜〜。ん?」

 

ペットの犬達にオヤツをあげようとしていた作者・神無鴇人の服に引っ掛かり・・・。

 

「のわぁ〜〜!?何だこりゃあ!?」

 

「あ、兄ちゃんが飛んでっちゃった」

 

そのまま釣り上げられ、マドカの下へ飛んでいってしまった。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「と、鴇人!?」

 

「何だ?訳の分からん奴が釣れたが・・・まぁ良い!このままコイツも貴様に叩き付けてやる!!」

 

思わぬハプニングに一瞬面食らうが、マドカはそれをも攻撃に利用しようとする。

だが、しかし・・・!!

 

 

【ガシッ!!】

 

「な、何!?」

 

「(ニヤリ)・・・作者の俺を武器に利用出来ると思ったか?」

 

何と、鴇人は千冬に激突するのを回避し、逆にマドカにしがみついて空宙へと跳び上がった。

 

「は、離せ!何をする気だ!?」

 

「と、鴇人・・・お前、何を!?」

 

「・・・さよなら、ちーさん。どうか死なないで!」

 

「誰がちーさんだ・・・って、違う!鴇人、やめろ!鴇人ぉーーーーッ!!」

 

【ドッゴォーーーン!!】

 

眩い光を放ちながら、鴇人はマドカを巻き込んで自爆した!!

 

「あ・・・あ・・・と、鴇人ぉーーーーッ!!」

 

まさかの作者自爆・・・そして、爆炎が晴れた先には。

 

「ふぅ、ビックリさせやがって」

 

全くの無傷だった・・・・・・鴇人の方が。

 

「お前が無事なのか!?」

 

「当たり前だ、俺は作者だぞ」

 

訳の分からん理屈でマットに着地した鴇人。何にせよ、結果的にこれで千冬の白星だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、思いきや・・・

 

「貴様、らぁ・・・!!」

 

「な!?」

 

何と、マドカは生きていた!!

怒り心頭とばかりに顔を阿修羅の如く憤怒に染め、両手には凄まじい密度の気を溜めて!!

 

「馬鹿な!不死身かコイツは!?」

 

「よくも舐めた真似を!もう許さんぞ!真空波動拳!!」

 

怒りの波動拳が千冬に襲いかかり、もうダメだと千冬が目を閉じた、その時・・・!

 

「うおぉぉっ!!!!」

 

突如、鴇人は二人の間に割って入り、千冬を庇い、その身で真空波動拳の直撃を喰らった!!

 

「が、はっ・・・ぶ、無事か?千冬・・・」

 

「と、鴇人!!」

 

自分を庇い、倒れる鴇人を抱える千冬。

それを見た鴇人は満足げに笑う。

 

「な、何で私を庇った!?お前はISアンチだろ!?特に私に対してアンチだと、いつも言ってたじゃないか!!」

 

「そ、そうさ・・・原作のお前や、他のクソヒロインみてーなお高く留まった奴なんて、男でも女でも大嫌いだ。

だ、だが・・・俺が書いた小説の、今俺の目の前にいるお前は原作とは違う。

・・・ヘッ、馬鹿な話さ。原作で嫌いなキャラを改変して書いてたら、そのキャラに愛着が湧いちまった何て、最低だ。アンチの風上にもおけねぇや。

だ、だが・・・お前らと共演出来た事、悪くなかった。

お前らと一緒に飲んだ酒は、美味かったぜ・・・。

 

し、死ぬなよ・・・勝て、千冬・・・」

 

激励の言葉を残し、鴇人は倒れた。

 

「フン!訳の分からん真似をするクソ作者が!すぐに貴様も同じ目に遭わせてやる!その男のようにな!!」

 

「その男のように・・・?

鴇人の事か?・・・・・・鴇人の事かぁーーーーッ!!!!」

 

マドカの言葉に爆発した千冬の怒り。

それに呼応するかの如く、千冬の身体に変化が生じる。

 

気が高まり、それを現すように髪は美しい金髪に染まり、続いて瞳が、爪が、更には目元と唇に塗られたアイシャドウとルージュ、全てが金色に染まっていく!!

 

「な、何だ!?その変化は!?」

 

「さぁな。私にもよく分からん。だが、これだけは言える・・・今の私は、貴様の何倍も強い!そして!!」

 

「グガァッッ!!」

 

目にも留まらぬスピードで千冬はマドカに近づき、マドカを殴り飛ばした!!

 

「貴様はもう許さんぞ!マドカ!!」

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「な、何あれ?」

 

「恐らく、千冬姉の怒りによって高まった気が、全身を強化しているんだ。

金色なのは、たぶん千冬姉の中で『金=強い』というイメージが反映されたんだろうな」

 

「元々あの馬鹿げた身体能力です。潜在的な気の総量も相当なものでしょう。

それが肉体の強化という形で無駄なく発揮されているんです。これは、途轍もなく強力ですよ!」

 

本音の疑問に、いつになくシリアスな態度で解説する一夏と真耶。そして・・・

 

「アレこそ、千冬の真の力。それを発揮する形態、名付けて『黄金闘士(ゴールデンウォーリア)モード』だ!!」

 

締め括るように名付ける鴇人の声が響き渡った!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・鴇人、生きてたのか?」

 

「当たり前だ。作者がいないで誰が続きを書く?」

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「クッ・・・!そんな虚仮脅しでぇっ!!」

 

千冬の変化に戸惑いながらも、マドカは反撃に転じ、千冬の顎めがけてアッパーをぶち込む!

だが・・・

 

「それが、どうしたぁっ!?」

 

「ば、馬鹿な!?ガァァァァッ!!!!」

 

顎に喰らった一撃など、まるで意に介さず、お返しに繰り出されたボディブロー。

咄嗟に左腕で防御したマドカだが、逆に防御した左腕が嫌な音を立ててへし折れ、更に防御の上からボディにもダメージが入り、胃液が逆流してマットに吐き散らかされる。

 

「終わりだ。今ので分かった筈だ。貴様は私には勝てない・・・!」

 

蹲るマドカに対し、勝利を宣言する千冬。

しかし、マドカの右手は千冬を掴み続けていた。

 

「ぐ、ぇ・・・と、取ったぞ!」

 

「っ!?」

 

不意に勝ち誇ったように吐き出されたマドカの言葉。

同時に千冬はある事に気付く。マドカの自身の腕を掴んでいた右手が素早く動き、自身の左手の小指を掴んでいた。

 

「まずい!指折りだ!!」

 

「如何に強靭な肉体とて、これには耐え切れまい!!」

 

箒の大声をあげるとほぼ同時にマドカは掴んだ小指をガッシリと握り締め、一本背負いの要領で小指を折りに掛かる!!

 

「フンッ!!」

 

「な!何ぃッ!?」

 

だが、折れない!マドカの全力を込めた指折りを千冬は小指一本の力で耐えたのだ!!

 

「これで、最後だぁーーーーッ!!」

 

そして、そのまま手を振り解き、マドカの体を抱えて後方へと跳び上がる!

 

「ジャンピング・バックドロップ!!」

 

「グガァッッ!!・・・カッ、は・・・・・・」

 

マットに強かに叩き付けられ、マドカは失神。

直後に千冬の勝利を告げるゴングが鳴り響いた!!

 

 

 

 

潜水艦争奪サバイバルマッチ 第6戦

織斑千冬 VS マドカ

 

千冬、勝利!!

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「うおぉぉっ!鴇人ぉっ!無事だったんだなぁっ!?」

 

「あががが!ま、待て千冬、お前の今の馬鹿力で抱き締められたらヤバい!!」

 

「あ、すまん・・・」

 

戻って来て早々、鴇人の無事を確認した千冬は歓喜するが、まだ変身は解けないままだった。

 

「ところで、この変身どうやったら解けるんだ?」

 

「時間が経てばエネルギーが消費されて勝手に戻るんじゃね?(適当)」

 

「まぁ、これでお互いに3勝3敗で王手だ。

ラストは、俺が決めてやるぜ!!」

 

そして、遂に迎える大将戦!

IS学園チーム大将は主人公、織斑一夏!!

 

 

 

 

 

「やれやれ、まさか私が・・・直接出向く事になるなんてね!」

 

亡国側は幹部、スコール・ミューゼルが遂に出陣!!

 

 

潜水艦争奪サバイバルマッチ 第7戦(最終戦)

織斑一夏 VS スコール・ミューゼル

 

最終決戦の幕が開くまで、あと僅かだ!




※変身後の千冬のメイクはCRスーパー海物語 IN JAPAN 金富士バージョン(2ではなく1の方)に登場する金マリンちゃんを参照。

現在までの戦績
先鋒 箒○ー×オータム
次鋒 おそ松×ー○めっちゃ強そうな人
五将 刀奈×ー○豪鬼
中堅 セシリア×ー○ささみ肉
三将 透○ー×ロジャース
副将 千冬○ー×マドカ
大将 一夏ースコール


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

炸裂!愛の鉄拳!!

激闘に次ぐ激闘繰り広げられる潜水艦争奪サバイバルマッチ。

副将・千冬は自身の強化クローン・マドカに追い詰められるが、鴇人の身を挺した激励によって覚醒し、逆転勝利!!

戦績は互いに3勝3敗に持ち込まれ、遂に大将戦。
一夏VSスコールの戦いの火蓋が切って落とされる!


遂に始まる最終戦。

両陣営の大将、一夏とスコールはリングに上がり、互いに向かい合う。

 

「フフフ・・・織斑一夏、アナタの強さは噂に聞いてるわ。

初代ブリュンヒルデ織斑千冬の弟にして、総合戦闘力は姉をも上回る傑物だと。

この私の相手にとって不足は『おーい!真凛〜〜!』・・・ちょっ!?」

 

スコールの能書きを遮るかのように一夏は大声を上げながら恋人の真凛に手を振ってアピールする。

 

「よーく見とけよ!これから真凛のだーい好きな、(スーパー)一夏君がァ・・・ビッシィーーーーっと格好良くキメてやる所をなァッッ!!」

 

愛する彼女にそう宣言して、一夏は改めてスコールに向き直る。

 

「と言う訳だ。遠慮無く叩き潰させてもらうぜ、窓際幹部さんよ」

 

「アナタ、結構嫌な性格してるわね・・・!」

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「も、もう・・・一夏君ったら///」

 

一夏からの思わぬラブコールに頬を染める真凛。

心なしかその顔には満更でもなさそうな表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

『・・・・・・かぁ〜〜、ペッ!!』

 

そして、そんな二人の甘いやり取りに、虚やおそ松といった非リア充組は揃って痰を吐いた。

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「さーて、そろそろ始めるか・・・」

 

「ええ、いつでも準備は良いわよ」

 

これまでの茶番が嘘のように張り詰めた空気に変わり、リング上に立つ一夏とスコールは互いに目を細め、真剣な表情で睨み合う。

 

「十四松さん、ゴングです!!」

 

「ぃよいしょーーっ!!」

 

クロエからの合図で十四松が力を入れてゴングを鳴らす!

 

 

 

潜水艦争奪サバイバルマッチ 最終戦

 

織斑一夏 VS スコール・ミューゼル

 

試合開始!!

 

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「フフフ・・・さぁ織斑一夏、一緒に踊りましょう。・・・血の舞踊(ダンス)をね!!」

 

「フン、踊らせてみろよ。やれるもんならな・・・!」

 

「Shall we dance!!」

 

まるでバレリーナのような動きで跳躍し、回転を加えた飛び蹴りを繰り出すスコール。

 

「キエェェーーッ!!」

 

「昇龍拳!!」

 

迫り来る空中からの強襲蹴りに対し、先の戦いで豪鬼の見せたものと同じ対空技で迎え撃つ一夏。

両者の拳と蹴りが交差し、互いに弾き飛ばされる。

 

「・・・なるほど、思ったより鋭いな」

 

着地して体勢を立て直す一夏。

その頬には刃物で切ったような切傷が刻まれていた。

 

「そっちこそ、なかなかのパワーじゃない?

尤も、殺傷力という点では私の流派(スタイル)の方に部があるようだけど」

 

対するスコールも口の端から血を流している。

しかし、その表情にはまだまだ余裕の程が窺える。

 

「斬撃空手ってヤツか?」

 

「フフ、その通りよっ!!」

 

獰猛な笑みと共に襲いかかるスコール。

その両手両脚が獣の爪の如く一夏の身体を切り裂こうとする!

 

「アナタの友人、鳳鈴音の使う南斗聖拳を基に、手脚指先を鍛え上げ、

更に私が若い頃、プリマドンナとして活躍したバレエの動きを取り入れた私独自の戦闘スタイル!

私が繰り出す手刀足刀は、打撃ではなく斬撃!!触れれば鉄をも切り裂く一撃必殺の奥義!

アナタに勝ち目は、無い『無駄口が多いぜ!!』・・・グゴォっ!?」

 

息吐く間も無い連撃の中、不意に一夏の右ストレートがスコールの顔面に打ち込まれた!!

 

「確かに技の威力は大したもんだ。南斗聖拳とも遜色無いのは認めてやるよ。

だが、動きが大振りすぎるな。俺は鈴とも対戦した事があるが、アイツに比べたら隙が大きいぜ!」

 

「ガハッ・・・!」

 

続けざまに入る鼻っ柱への頭突き。

思わず体勢を崩してふら付くスコールだが、一夏はそれを逃さない。

空中に跳躍すると同時に身体をスピンさせ、スコール目掛けて連続蹴りを叩き込んだ!!

 

「竜巻旋風脚!!」

 

「グガァッッ!!」

 

矢継ぎ早に繰り出される怒涛の連撃を浴び、スコールはなす術なく吹っ飛ばされ、リングロープにバウンドして一夏にもたれ掛かるように倒れ込んだ。

 

「悪いな。文字通り瞬殺しちまったよ」

 

「あ・・・グ、ゥ・・・・・・」

 

もたれ掛かるスコールに、一夏は勝利を確信したように語り掛ける。

 

だが・・・!!

 

 

 

 

 

「つっかまーーえたっ♡」

 

「何!?」

 

「シャアァッ!!」

 

不意に放たれた言葉と共に、スコールは面を上げ、一夏の右腕目掛けて己の左人差し指と中指を突き刺した!!

 

「グウゥッ!?て、テメェ・・・!!」

 

「油断したわね。これぞ私の必殺奥義【紐切り】!!」

 

獰猛な笑みを浮かべたまま、一夏の腕からゆっくりと抜き出されるスコールの指。

その2本の指と指の間には血に濡れた赤い筋のようなものが掴まれていた。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

後に、この戦いを観戦していたオータムは、ある人物からの質問に対し、こう語る。

 

「スコールの実力?そりゃあ本物さ。

普段は馬鹿でも、そこはやっぱ亡国機業の幹部だぜ?強さで言えば傭兵の豪鬼のオヤジ以外、ウチの部隊じゃ勝てる奴はいねぇよ。

 

え、紐切りについて?アレはえげつないぜ。

指先でよ、相手の肉を貫いて神経だの頸動脈だのをぶっち切るんだ。

私はアイツと付き合い長いからな。あの技を喰らって再起不能になった敵はごまんと見てきたよ。

 

ただなぁ、スコールが戦った一夏って坊主、アイツを見て私はこう思ったね・・・」

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「見える?アナタの腕の神経よ。これを切り裂いてしまえば・・・」

 

今度はスコールが勝利を確信した表情を浮かべ、神経を掴む指に力を込めていく。

 

「これを・・・」

 

そしてそのまま一夏の腕の神経を・・・、

 

「切ってしまえば・・・・・・あ、あれ?」

 

切れない。

どれだけ力を込めても、引っ張ろうとしても、一夏の神経はまるで切れない。

 

「そ、そんな・・・どうして!?はっ!?き、気で!!」

 

「・・・ご名答だ」

 

スコールの表情が驚愕へと変わる。一夏の神経には凄まじい量の気が収束され、神経そのものの強度を上げているのだ。

 

「そ、そんな馬鹿な!?神経を直接掴まれてるのよ!?

激痛で気を集中させるような余裕なんて無い筈なのに!?」

 

「生憎だったな。俺は北斗神拳や南斗白鷺拳の使い手である弾や鈴を相手に何度も戦い、修行してきたんだ。

痛覚を剥き出しにされる技や、肉を切り裂く技なんて何度も喰らってる!

今更神経を触れられた程度で騒ぐものか!!

そして、今は奴の方が上だが、いずれはタイマンで弾にも勝つ事が俺の目標!この程度の敵に苦戦する程、柔じゃないんだぁーーーーっ!!」

 

「が、あぁぁ・・・!」

 

万力の如く力でスコールの指を掴んで技を力尽くで解除させる。

その様子にスコールのみならず、観戦する亡国機業のメンバー達も愕然とした表情を浮かべる。

 

「ば、化け物かよ!?」

 

オータムが皆の総意を代表するように声を上げると同時に、一夏の開かれた親指と人差し指がスコールの目元を打つ!!

 

「がぁっ!?め、目が・・・!」

 

一見目潰しにも見える攻撃だが、その実態は少々違う。

空手技『虎口拳』。親指と人差し指の付け根で眉間を強打し、視力と思考能力を数秒間奪う荒技だ。

 

「まだまだぁっ!!」

 

「アガっ!?」

 

更に繰り出されるは頬への掌打。

その一撃にスコールの口が不自然にあんぐりと開く。

 

「風摩殺だ!顎が完全に外れたっ!!」

 

箒の言葉をバックに、一夏はふらつくスコールに静かに、しかし素早く近付き、その右手を強く握りしめる。

 

「これで最後だぁーーーーっ!神龍拳!!」

 

「ギャガァァァッ!!」

 

全身に緋炎の気を纏い放たれた強化版昇龍拳。

天を穿つ螺旋の如くその一撃に、まるで龍に飲み込まれる獲物が如く、スコールは悲鳴を上げながら吹っ飛ばされ海へと落ちていった!

 

「しょ、勝負ありぃっ!!」

 

 

潜水艦争奪サバイバルマッチ 最終戦

織斑一夏 VS スコール・ミューゼル

 

一夏、勝利!!

 

潜水艦争奪サバイバルマッチ

4勝3敗にて、IS学園チームの勝利!!

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「一夏君!」

 

「うわっと・・・へへっ、宣言通り決めてやったぜ」

 

「うん、格好良かったよ!!」

 

戻って来ると同時に寄り添い、抱きしめてくる最愛の恋人(真凛)を抱きしめ返し、頼もしさを感じさせる笑顔を見せる一夏。

 

そんな中、ボロボロになったスコールを担ぎ、オータムが皆の前に出る。

 

「私たちの負けだ。約束通り、この潜水艦からは手を引く。

ただ・・・その前に聞いて欲しい事があるんだ」

 

「聞いて欲しい事?」

 

思わぬオータムの言葉に千冬を始めIS学園チームのメンバーは表情に疑問符を浮かべる。

 

「ああ、正確には私達からではなく、私達の雇い主からな・・・。

おい、出てきてくれ!」

 

オータムからの呼び出しの声に応じて、亡国機業側の艦のハッチが開き、一人の女が姿を現した。

 

「な!?ね、姉さん・・・?」

 

その女性・・・篠ノ之束の姿に箒を始め、皆の表情が驚愕に染まった。




登場人物紹介

マドカ
千冬の強化クローン。
千冬の身体能力に目を付けた科学者が生み出した強化クローン。
肉体・精神年齢は15歳前後(成長速度は現在は人並みになっている)。
過剰過ぎる身体能力を少々抑えつつも高水準を維持しつつ、人並みの知能を持たせる事に成功した。
しかし、その代償なのか、重度のケモナーにして獣姦嗜好になってしまった。


次回予告

突如現れたISの開発者にして箒の姉、篠ノ之束。
彼女の口から語られる潜水艦争奪戦の真の目的。
そして、一夏と千冬の出生の秘密と、ISに纏わる闇の部分。
それらを一夏達はどう受け止めるのか?

次回「珍しくシリアス回!?」

真凛「だって一夏君は、私のスーパーヒーローだもん」


今夜0時ぐらいから活動報告で重大発表があります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

珍しくシリアス回!?

前回までのあらすじ
遂に迎えた大将戦、一夏対スコールは一夏の圧勝に終わった。
これにより、4勝3敗で潜水艦争奪サバイバルマッチはIS学園チームの勝利が決定。

しかし、そこに現れる亡国機業の雇い主と呼ばれる人物。
その正体は・・・


「た、束!?」

 

「ね、姉さん!?」

 

千冬と箒の声がほぼ同時に上がる。

目の前に現れたのは学会に出席中の筈である篠ノ之束その人だったのだ。

 

「見ての通りだよ。今回の亡国機業による襲撃は私がスコール中佐達に依頼したんだよ」

 

「そ、そんな・・・何故そんな事を!?この艦はお前が作ったんだろう?」

 

「そうだ!それに亡国機業は国際指名手配のテロ組織!姉さんはそんな者達と通じていたのか!?」

 

千冬、箒を始めIS学園チームの面々の表情に戸惑いの色が浮かぶ。

ある一人を除いて・・・

 

「・・・成る程な。道理で何かおかしいと思ったぜ」

 

沈黙を破るその人物、一夏の言葉に周囲の視線は彼に向けられる。

 

「どういう事だ?」

 

「考えてもみろよ?亡国機業の連中はやり方次第で、もっと自分達に有利な状況に持ち込む事も出来たんだ。

夜襲かけて反撃する間もなく制圧したり、人質を取ったり・・・手段を選ばなければ簡単にこの艦を乗っ取る事も出来た。

にも関わらずだ、こんな回りくどいスポーツの試合みたいな対決に持ち込んだ。

つまり、最初から目的はこの艦の奪取じゃなかったんだ」

 

『あ・・・!?』

 

一夏の分析に皆がこれまでの経緯を思い返し、何かに気づいたように目を見開く。

 

「それに、束さんともあろう人が、自分の身内が乗る艦を狙う敵を見過ごすとも思えないしな。

そろそろ教えてくれないか?この戦いの本当の目的を」

 

「フフ、見事ね。そこまで見抜くなんて・・・」

 

一夏の言葉に答えたのはオータムに担がれて気絶していたはずのスコールだ。

 

「大体その推理で当たりよ。まぁ、私達が勝ってたら潜水艦は本当に頂く契約だったけどね」

私達の目的はアナタ達の力を測る事。そして、警告よ・・・」

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「取り敢えず、順を追って話すわね。

私達の所属する亡国機業。・・・表向きは世界的テロ組織とされているけど、それはあくまで仮の姿。

亡国機業の真の姿、それは国連直轄のテロリスト対策の暗部組織。

それが亡国機業の正体よ」

 

潜水艦の多目的ホールに集められた一夏達と、亡国機業メンバー7名。

その中からスコールが代表する形で口を開く。

 

「事の発端は今から約10年前、ISの発表の直後にある二種類の団体が活発的に動き出した事だったわ」

 

「IS発表直後・・・もしかして、男尊女卑と女尊男卑主義をそれぞれ掲げたカルト集団の事か?」

 

スコールの言葉に反応したのは意外にも千冬だった。

如何に普段が能天気でおバカな彼女でも、こればかりは聞き流せない。

何故なら、その二つの団体は彼女・・・いや、彼女と束にとって因縁深い存在だったからだ。

 

「その通りよ。篠ノ之束によって開発され、その第一号機である機体・白騎士を全世界生中継で織斑千冬が操縦し、自由に空を飛行する姿を見せつけた【白騎士事件】。

そして、その直後に行われた全国適性検査において、ISの欠陥たる『IQの低い女にしか操縦出来ない』という極端な特性が明らかになった通称【愚者の台頭】。

連中はそれぞれ、そこに目を付けた・・・」

 

世界最高の才能を誇る飛行パワードスーツであるIS。

ある者はこう考えた。

『世界最強の兵器・ISに乗れる女こそ神に選ばれた存在であり、男共は女に奉仕すべし』と、

 

またある者はこう考えた。

『馬鹿な女を上手く使ってやる頭の良い男こそが人類の頂点であり、女共は男に隷属するべき』と・・・。

 

「今でこそ殆ど見なくなったが、ムカつく連中だ。

束は、あんな奴らの為にISを作ったんじゃない。【空を自由に飛び、宇宙開発を大きく進めるスーツを作りたい】という夢の為にISを作ったんだ。

なのにアイツらは・・・!!」

 

怒気を発しながら拳を強く握る千冬。

親友の夢を侮辱したも同然の存在である以上、義憤を感じるのは当然ではあるが。

 

「無論、そんな思想が受け入れられる筈も無く、その二つの集団は世間から白眼視されたわ。

だけど、一部の過激派はそれで収まらず、テロ行為に走る一派や、武力衝突で潰し合いをする者もいた。

私達亡国機業はそういった連中をある時は直接叩き潰し、またある時は潜入して内部から潰してきた。

そして今では男尊女卑・女尊男卑、両カルトはほぼ消滅した・・・筈だったわ。1年前まではね。」

 

「どういう意味だ?」

 

「1年前、突如として両カルト集団の過激派だった者達が手を組み、不穏な動きを見せ始めたのよ」

 

『は?』

 

スコールの説明に一同は揃って間の抜けた声を上げる。

男尊女卑と女尊男卑、真逆の思想を持つ者達が手を組み徒党を組むなど、まず有り得ない。

 

「どういう事だ?完全に矛盾しているじゃないか」

 

「私達も調査はしているけど、連中の目的は未だ不明。

だけど、ここ最近奴らはIS学園を、そして一夏君達男性操縦者の事を探り始めているわ。

一夏君に千冬さん、貴方達の母親にも探りを入れられそうになったわ」

 

「母さんが!?」

 

千冬が驚きの声を上げる。

二人の母・・・織斑夏菜(かな)はある理由から二人を残して離れて暮らしている女性だ。

 

「母さんは無事なのか?」

 

「大丈夫。夏菜さんは私と亡国機業の人達が保護してるよ」

 

一夏からの質問に束は安心させるように優しく答える。

 

「一夏達のお母さんって・・・」

 

「そういえば初耳ですわ」

 

思わぬ所で出てきた一夏達の親の話題に反応するシャルロットやセシリアを始めとする一同。

それに対し、一夏と千冬、そして織斑家の事情を知っている箒と束、そして真凛の表情が曇る。

 

「えーっと、二人の親に関しては、色々あって・・・」

 

「いや、良いよ束さん」

 

束が歯切れ悪く言い淀むが、一夏がそれを制する。

 

この際ハッキリ言おう。良いか、千冬姉?」

 

「・・・ああ」

 

いつに無く真剣な表情な一夏と千冬。

やがて、一夏は意を決して口を開いた。

 

「俺達の母さんは・・・刑務所に服役してるんだ」

 

「刑務所!?」

 

「そこから先は私が説明するよ。

元々いっくんとちーちゃんのお母さんは、ある医療施設で遺伝子工学を専門とする研究者だったんだ。

彼女が行っていたのは遺伝子調整によって体を強化する事で、普通の人間を怪我や病気に強い頑健な肉体に成長させるというものだったの。

その研究の過程で生まれたのが、生まれながらに高い身体機能を持った女の子・織斑千冬。

そして、その異父弟で肉体・頭脳両面で高い水準を満たした男の子・織斑一夏。

 

断っておくけど、夏菜さんは決して邪な気持ちがあって二人の遺伝子に手を加えた訳じゃないよ。

純粋に健康な体で生まれる事が二人の幸せに繋がると思っての行為だった。

だけど、その医療施設の元締めである研究機関・・・延いてはそれを裏から支配する犯罪組織はこの研究結果を兵器に転用しようと企てた。

 

それを知った夏菜さんは、二人を守る為に政府にその事を密告した。

当然、上層部から始末されかけたけど、運良く当時潜入していた亡国機業の隊員に保護されたの」

 

「だが、結果的に母さんは犯罪組織の片棒を担いでしまった。

組織は壊滅したらしいが、母さんは自分のやった事を悔やんで、そのまま刑務所に・・・」

 

「出て来れるのは、最低でも後5年は掛かるらしい・・・」

 

束の説明と、それを締め括る千冬と一夏の重々しい言葉。

それを聞き、その場に居た全員が沈痛な表情で押し黙る。

 

 

 

「・・・ともかく、テロ組織はどんな動きをするのか分からない。

今回私達が動いた理由はアナタ達に万一の事が起きるかもしれないという警告。

そして、そういった事態にアナタ達が対処出来るかを知っておきたかった。

結果は、ものの見事に私達の負けだけどね。

取り敢えず、今後の事はこれから束博士と、学園の教諭である山田真耶さんとで話し合って決める事になるわ。

アナタ達はひとまず、ゆっくり休んでいて頂戴」

 

スコールのその言葉を最後に、その場は解散となったのであった。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

解散となり、甲板に上がった一夏達だったが、皆複雑な表情を浮かべていた。

 

 

「・・・なぁ、真凛」

 

「何?」

 

不意に口を開く一夏。そんな彼を真凛は真っ直ぐに見つめながら返す。

 

「今回の話聞いて、色々混乱してるかもしれない。

けど、束さん達の言った通り、本当に危険な連中が俺達を狙ってて、それで真凛達が危険な目に遭うかもしれない。

それが恐ろしいと思ったなら、俺の事は忘れ・・・んぐっ!?」

 

一夏の悲痛さを伴った言葉が不意に止まる。

真凛のある行為によって・・・

 

『あぁ〜〜〜〜っ!?』

 

その行為に簪、本音、箒が・・・

 

『いぃっ!?』

 

千冬、刀奈、虚が・・・

 

『うっ!?』

 

シャルロット、ラウラ、セシリアが・・・

 

『えぇ〜〜〜〜っ!?』

 

松野家の六つ子が・・・

 

『おぉ・・・!?』

 

最後に透と子分メイドが声を上げた。

 

「んん〜〜〜〜っ!!」

 

一夏の声にならない叫びが漏れる。

真凛からの突然の口付けによって文字通り口を塞がれてしまったのだ。

 

「ん・・・もう、馬鹿な事、言わないでよ・・・」

 

やがて唇が離れ、真凛は一夏を強く抱きしめた。

 

「私が一夏君を忘れるなんて、そんなの無理。

だって、私・・・男の子は一夏君以外目に入らないもん。

それぐらい、一夏君が好きなんだもん!

それに、私全然怖くないよ。

一夏君が、私を守ってくれるって信じてるから。

 

だって一夏君は、私のスーパーヒーローだもん」

 

「真凛・・・そうだったな。未来の嫁も守れねぇんじゃ、ヒーローなんて、名乗れねぇからな!」

 

真凛からの愛の言葉に、一夏は力強く彼女を抱き締め返す事で答える。

そして、一夏の顔に、もう迷いは無かった。

 

 

 

 

「お、お前ら゛ぁ〜〜〜〜っ!!」

 

そんな二人を千冬が涙と鼻水で顔を濡らしながら纏めて抱き締める。

格好こそ付かないが、その表情には歓喜と祝福の意が表れていた。

 

「真凛・・・いや、真凛さん!一夏をよろしくお願いじまず!!

一夏!こんな良い女性(ひと)を絶対手放すんじゃないぞ!!しっかり守り抜いて幸せにしてやれぇっ!!」

 

「い、言われるまでもねぇよ。ってか少し力緩めろ!痛ぇって!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なーんか、三人で盛り上がっちゃってるね」

 

「まったくだ。で、私達はどうする?」

 

「どうするもこうするも、今まで通りですわ。一夏さんと千冬さんの家庭環境を知ったと言って、何が変わるわけでもありませんし」

 

「そうだな。あの二人は遺伝子操作で生まれたんだかなんだかしらんが、それを言えば私だって試験官ベビーだ。たいして変わらん」

 

「あの人達の言ってたテロ組織とかはどんなものか分からないけど、来るなら迎え撃つだけ・・・」

 

「安心しなさい!悪者なんて、この刀奈お姉ちゃんが全員纏めて叩きのめしてやるんだから!」

 

「お嬢様はその前にまず怪我治そうね。豪鬼のおじさんにやられて傷だらけのままじゃ格好付かないよ」

 

「ンゴッ!」

 

「・・・」

 

一夏達の様子にシャルロット、箒、セシリア、ラウラ、簪、刀奈、本音。

そしてゴリラとアームストロングが笑みを浮かべる。

先程までの暗い雰囲気はあっという間に吹っ飛んでしまった。

 

 

 

「ね、姉さん・・・何で僕に抱き付いてるんですか?」

 

「だってぇ、あの二人見てたら何だか私達もイチャつきたくなるのよぉ〜〜」

 

子分メイドと透も一夏と真凛に触発されて恋愛モードに入ってしまった。

 

「はぁ・・・イチャつくのは自由ですが、節度は弁えなさいな、カレン(・・・)

 

「・・・え!?い、今お嬢様、私の事カレンって・・・」

 

「取り敢えず、ファーストネームだけは本名を思い出してあげましたわ」

 

遂に判明!子分メイドの本名はカレン・・・

 

「それ、本名じゃないです」

 

「へ?」

 

「それは略称です!本名じゃないんですよぉっ!!大体なんでフルネームを思い出そうとしないんですかぁっ!?」

 

「だ、だってアナタの名前覚えにくいんですもの・・・」

 

「うわぁーーーーん!!お嬢様のバカぁ〜〜〜〜っ!!」

 

訂正、子分メイドの本名はまだ不明のまま。

判明したのはカレンという略称でした。悪しからず・・・。

 

 

 

「・・・クロエさん、今日の夕飯は度数の強いお酒お願いしますね!」

 

「いや、虚さんアナタ未成年・・・分かりましたよ。度数の強いのは無理ですが、カクテルぐらいなら出しますよ」

 

「虚ちゃんって言ったか?その酒、俺達も付き合おう」

 

「リア充が何だってんだチクショー!!」

 

相変わらず虚と六つ子は血の涙を流していた。

 

「松野おそ松!アナタは丸一日罰当番です!サボりなどさせませんから覚悟しておきなさい!!」

 

「痛でででで!?」

 

そして、今回の一件で最も醜態を晒したおそ松は、クロエに耳を掴まれて退場となったのだった。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

そして、船は無事日本に到着。

一行は無事、日本の土を踏んだのであった。

この後、亡国機業は束から今回の依頼の報酬として屋形船を一隻受け取り、以降はその船を基地兼拠点として、日本滞在する事となった。

 

「うぅ・・・基地が、小さいけど念願の私の基地が・・・!」

 

余談だが屋形船を貰った時、スコールは泣いて喜んでいたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして・・・

 

「では松野家の皆さん、お約束の積立報酬金100万円です。お疲れ様でした」

 

松野家の五人には、一人100万と言う大金が支払われ、無事日本に解放された。

 

「うおぉぉっ!ひ、100万!?本物だぁ!!」

 

「く、苦労した甲斐があった・・・!うわぁぁぁん(嬉泣)」

 

「ま、マジか・・・!?俺達みたいなクズに、こんな大金・・・」

 

「すっごいね!野球の道具何人分買える!?」

 

「これだけあれば女の子と合コン行き放題・・・!」

 

「皆さん、また働く気になったら連絡してくださいね。

アナタ達ならそれぞれ適職を紹介出来ますよ」

 

にこやかに笑いながらクロエは連絡先が書かれた名刺を五人に配る。

 

そして、これより後に、五人はそれぞれクロエの紹介で適職に就く事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして・・・

 

「おいぃぃぃっ!!何で俺だけ解放されないまま話進んでんのぉっ!?」

 

松野家長男、松野おそ松・・・彼だけは船を降りられずに、このまま地下へと連行される予定である。

 

「何でですって?アナタがサボりまくってまだ借金が返済しきれてないから!

そして!アナタが勝手に飲み食いした酒とつまみの数々とサボりの罰金、全部合わせて最低半年は地下労働所行き!!

今度はサボりなんて出来ませんからね。覚悟しておいてくださいよ(ニッコリ)」

 

「NO〜〜〜〜っ!!」

 

「バイバーイ、おそ松兄さん」

 

「ちゃんと借金完済してこいよー」

 

こうしておそ松は誰からも引き止められる事なく地下へと送られたのだった。




IS学園対亡国機業
戦績
先鋒 箒○ー×オータム
次鋒 おそ松×ー○めっちゃ強そうな人
五将 刀奈×ー○豪鬼
中堅 セシリア×ー○ささみ肉
三将 透○ー×ロジャース
副将 千冬○ー×マドカ
大将 一夏○ー×スコール

4勝3敗でIS学園チームの勝利!!



おまけ
おそ松除く松野家のその後

カラ松
ギャグ補正による無駄に頑丈な身体と元演劇部の経験から、主にヒーローショーの悪役や、プロレスの前座試合のやられ役で活躍する。

チョロ松
何とAV男優としてデビュー。
しかし、一度として本番シーンは撮られる事は無く、【寝取られもの】における寝取られ役専門の『リアル童貞AV男優』として一部の好事家にカリスマ的人気を誇るAV男優となる。
が、1〜2年で引退した。

一松
動物(特にネコ科)の飼育能力が評価されて束傘下の動物園にて飼育員となる。

十四松
ショーで行った『人間イルカショー』が評価され、束傘下の水族館で働くようになった。

トド松
束傘下の喫茶店で店員を勤める。
毎回同僚の女を合コンに誘ってはいるが、彼女が出来る気配は無い。







次回予告

特級厨師試験を受けるべく中国へ渡った弾と鈴。
そこで二人を待ち受けるのは?

次回『国士無双』

?「俺の作った究極の料理のどこが不合格だってんだぁっ!?」

?「北斗と南斗の若き戦士か・・・フッ、面白くなりそうだ」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

年末特別編 戦力外通告を受けた少女

今回は特別編です。

ファンの方には申し訳ありませんが、今回の主役である某人物は今回を持ちまして戦力外とさせていただきます。


2022年12月某日

 

都内のボロアパートから出かける一人の少女。

その服は普段の制服姿ではなく、ボロボロのジャージ姿という、側から見れば浮浪者にも近いものだった。

 

「・・・何で、こうなったの?」

 

そう力無く呟く少女の名は布仏本音(年俸0円)。

数日前まで生徒会の一員として活動していた本作のレギュラーキャラ・・・その筈だった。

 

今回は彼女が何故こんな有様に落ちぶれたかを追っていこう。

 

 

 

 

【ドキュメント 戦力外通告を受けた少女・布仏本音】

 

 

 

布仏本音は話数にして第11話より初登場。

生徒会の一員にして、整備科一年首席として、その姿を読者の前に表した。

当初は、その毒舌さと享楽的な思考により、腹黒キャラとしてのポジションを射止めていた。

 

『・・・私、お姉ちゃんから『織斑千冬とはあまり関わったり喋ったりしちゃ駄目』って言われてるんです。

ついでに、私も8浪してる人とはちょっと・・・』

(初登場時、千冬に対する毒舌)

 

『面白そうだから行ってきまーす』

(一夏達のデート妨害に便乗した際の愉快犯的行動)

 

しかし、海上激闘編というある種の節目を迎え、彼女の立ち位置は大きく揺らぎ始める。

 

理由はそう、“キャラの薄さ”である。

 

亡国機業というアクの強い面子の登場。

姉である虚の嫉妬剥き出しという強烈なキャラ付に対し、彼女のポジションは余りにも脆弱だった。

 

毒舌という個性も、本作においては一夏やシャルロットも持ち合わせたありふれたスキルに過ぎないという事も、彼女のキャラの薄さに拍車を掛けた。

 

地味キャラポジションである子分メイドさえ、彼氏持ち・本名不明という少ないながらも強い個性があり、本音のキャラはその水準にも満たないものだった。

 

 

こんなのがレギュラーキャラで良いのか?

これから亡国機業も加わり、キャラ数は飽和状態でより活気が必要になるストーリーを作らなければならないというのに、無駄に個性の無いキャラを続投させるのは却ってデメリットではないのか?

その問題を議題に、作者である神無鴇人と本音を除くレギュラー陣は協議を小一時間程行い、その結果・・・

 

 

 

「〜〜♪」

 

自室でお菓子を食べながら寛いでいた本音、そんな彼女に鴇人は静かに近付き・・・

 

「来年の構想に入ってない」

 

「へ?」

 

無情に告げられた戦力外通告。

作者(フロント)の決断は早かった。

 

「え!?ちょっ、何!?・・・うぎゃ!!」

 

鴇人、千冬、刀奈に拘束され、荷物と共に、本音は生徒会用の寮を追い出されてしまった。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

後に、子の処遇に対し、本音は述懐する。

 

「いや、確かに・・・最近ちょっとキャラ薄くなってきたかな?って自分でも思ってたから。

でも、レギュラー降りる気なんて無いです。

だって、私が抜けたら誰が生徒会の、この小説のマスコット役やるんですか?

だから、知らしめてみせますよ。私というマスコット枠の必要性を・・・!」

 

布仏本音は現役続行を望んでいた。

 

 

 

しかし、数日後・・・

 

「では、ご紹介します。来期より助っ人参戦していただく新たなマスコット枠担当の・・・」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「助っ人トイプードルのぷーちゃんことぷ太朗です」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「同じく、仁人です。家族からは仁人ちんって呼ばれてます。」

 

生徒会は鴇人の実家より新たなマスコット枠として助っ人トイプードルのぷ太朗と仁人を迎え入れていた。

彼らはその可愛いルックスで鴇人の実家のアイドルとして活躍するベテラントイプードル達だ。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

更に数日後、生徒会室

 

「あ、見て見て!あの子達よ、生徒会の新マスコット担当!」

 

「なにこれ超かわいい!!」

 

ぷ太朗と仁人はあれよあれよと言う間にモブ生徒達に大人気となった。

 

「凄い人気・・・流石ベテランアイドル犬」

 

「いや、僕達の場合、単にシニア犬なだけなんだけどね」

 

「そだね。人間で言えば結構な歳だし」

 

虚の言葉に二匹は割と身も蓋もないツッコミを入れた。

ちなみに、二匹は2013年生まれである。

 

「はーい、ぷーちゃん、仁人ちん。おやつの時間ですよー」

 

「「わーい!」」

 

刀奈は既にメロメロになっていた。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「・・・フン!」

 

【生徒会の新メンバー大人気】、そう書かれた学級新聞を眺め、本音はただただ無言で焚き火に当たりながらコンビニで買ってきた安い弁当をやけくそ気味に掻き込んだ。

 

そして数日が経ち、本音はある場所へと向かう。

 

『二軍キャラ練習場』

 

それは、初期に登場した相川さんや、北町野球チームのピッチャーと言ったサブキャラやモブキャラ達がレギュラーキャラを目指し、自主練を行うグラウンドだった。

 

「ん?・・・あ!ちょっと!!」

 

自主練に励む中、本音は見知った顔が近くを通った事に気づき、声を掛ける。

そこにはぷ太朗達の散歩中の鴇人と生徒会メンバー、そして何故か本音追放に協力した千冬の姿があった。

 

「皆、私のこの扱いどういう事なの?戦力外とか意味分かんないんだけど?

っていうか、この前まで普通に上手く付き合ってきたのに、いきなり冷たいんじゃないの?」

 

「・・・あー、すまん。二軍キャラはお呼びじゃないんだ」

 

「はぁ!?」

 

しかし、返ってきたのは千冬からの冷たい返答だった。

 

「私達とアナタじゃ、もう住む世界が違うの」

 

「お嬢様から聞いたわよ。本音、アナタこの前の潜水艦争奪戦の時、こっそり松野家の六つ子や亡国機業の若手男性隊員とアドレス交換したんですってね・・・!」

 

(ゲッ!?ば、バレてた・・・)

 

やけにお高く留まった刀奈に、妹相手でも嫉妬剥き出しの虚。

そして残った親友であるはずの簪と作者の鴇人も・・・

 

「ごめんね、本音。

日常編に入ったら復帰出来るように口利きしてあげるから。

 

「悪く思うな。今後はバトルシーンも増える予定だから、非戦闘員な上にキャラ薄い奴抱える余裕は無いんだ。

まぁ、どこぞの末っ子みてぇに食いっぱぐれる事は無い。単に一般生徒になるだけだから」

 

こちらも取りつく島無し。

無情な現実に本音はただ立ち尽くすのみだった。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

そして迎えたレギュラー昇格を賭けたトライアウト当日。

 

この日のトライアウトでは、芸術部門・スポーツ部門・バトル部門の三種類で各々が自身の能力を示し、合格を目指すというものである。

 

 

最初に行われたのは芸術部門。

 

「・・・」

 

布仏本音は動かない。

 

 

 

続くスポーツ部門。

 

「・・・・・・」

 

ここでも動かない。

 

 

 

 

 

そして格闘部門、事件は起きた。

 

「ア゛ァァァーーーーッ!!!!」

 

唐突にキレて奇声を上げながら、自分の順番も無視してリングに乱入した本音は、そのまま他の選手全員に襲いかかった。

 

「ふざけんなぁーーーーっ!!どいつもこいつも訳の分かんない理由ほざいて!!

私を何だと思ってんだよぉっ!!!!」

 

周囲の人間全員を瞬く間に血祭りにあげた本音。

彼女が次に視線を向けた先には・・・

 

「オマエラァーーーーッ!!!!」

 

「ゲェッ!こっち来た!!」

 

観客席で観戦していた鴇人、千冬、刀奈、虚、ぷ太朗&仁人だった。

 

「ちょっ、落ち着いて本音ちゃん『ウルセェーーーーッ!!』ギャアアア!!」

 

「ま、待て布仏・・・グエェェェッ!!」

 

そして瞬く間に刀奈と千冬はボコボコにされてしまった。

 

「あらら・・・あの子ってば完全にキレちゃってるわ。

滅多にキレないけど、本気でキレるとああなっちゃうんですよね」

 

「あー、いるよな。キレると石だの机だの持って暴れる奴」

 

姉と作者という立場から余裕ぶっこいて他人事みたいな態度の虚と鴇人だが・・・。

 

「・・・オマエラモ、道連れダァーーーーッ!!!!」

 

「「ギャアアアーーーーッ!!!!」

 

パイプ椅子を振り上げた本音によって二人はぶちのめされたのだった。

(ちなみに、ぷ太朗と仁人は早々に退散して難を逃れた)

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

全ては終わった。

トライアウトで乱闘騒ぎを起こした本音に合格などあり得なかった。

 

布仏本音・・・彼女のレギュラーとしての活躍は2022年を以て、終わったのであった。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

ところが・・・

 

「えぇっ!?ぷーちゃんと仁人ちん、帰っちゃったの!?」

 

「はい。何か、『そろそろママと散歩の時間だから』って」

 

「仕方ないから次回以降からも本音に生徒会のメンバーとして働いてもらう事になった」

 

「ま、それが無難と言えば無難か・・・」

 

驚く刀奈に説明する虚と鴇人。そして納得する千冬。

こうして、本音のレギュラーの座は辛うじて守られたのであった。

 

めでたしめでたs『おい・・・!』え?

 

「何もめでたくないよねぇ?まだお前らに報復し終わってないんだから・・・!

 

おどれら全員、皆殺しじゃあぁーーーーっ!!!!」

 

『ギィャアアアーーーーッ!!!!』

 

 

 

 

 

以下、血で汚れて閲覧不可となりました。




本音の追加個性・『キレたらヤバい』

という訳で本音は続投です。
次回よりまた本編に戻ります。

皆さん良いお年を。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

特級厨師試験編
国士無双


お久しぶりです。
思ったより筆が乗らず長々と掛かってしまいました。


時は一夏達が海上での戦いを繰り広げていた頃に遡る。

 

中国・広州のとある古城に設けられたイベント会場。

 

「いよいよだな・・・!」

 

「ええ・・・!」

 

本日、ここでは年に一度の特級厨師試験が開催される。

この試験で合格した者は世界共通で通じる最上級の調理師免許と、中華料理人として最高位である特級厨師の称号があたえられる。(※独自設定です)

この試験を受けるべく日本より渡航してきた弾と鈴音は、今まさに試験会場へと足を踏み入れた。

 

『これより、特級厨師試験を開始する!!参加者はそれぞれ用意された持ち場へ!!』

 

試験管の号令を受け、弾と鈴音はそれぞれの調理場へと立ち、直後に大型スクリーンにはある文字が映し出された。

 

「三日前に告知した通り試験の課題は二つ!麺、そして国士無双!!即ち、麺料理で国士無双を表現せよ!!

合格者は先着5名!5名の合格者が出た時点で終了とする!!

それでは、始め!!」

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「出来たぜ!」

 

「こっちも出来たわ!」

 

調理開始から数時間後、数々の料理人が不合格となり去っていく中、弾と鈴音はそれぞれの麺料理を完成させた。

 

「ふむ・・・ではまず88番・五反田弾から。

まず、この料理は国士無双をどう表現しているのか?」

 

「薬膳料理をベースに、ニンニク・ニラ・長ネギ・羊肉と言った滋養強壮に効果抜群の具材をふんだんに使い、味を整えたものだ。

食えばスタミナ抜群!国士無双が如く精が付く、スタミナ麺だ!!」

 

「なるほど・・・では、味の方は・・・・・・!?

う、美味い!濃い味だが決してくど過ぎず、上手く味が調整されている。

お見事!合格!!」

 

「よっしゃあ!」

 

五反田弾、試験合格!!

 

「続いて89番・鳳鈴音!」

 

「私の麺料理は、これよ!」

 

「こ、これは、何だ?菓子のように、甘い香り・・・?」

 

「甘くて当然、これは前日に蓮の花にくるんで寝かせた麺生地を、20回以上も折り畳んだ龍髭麺(ロンシャオミェン)をピーナッツ油で揚げて、砂糖をふったものよ。

私が表現したのは国士無双の対となる『絶対佳人』。

古来より我が国では結婚式の際に新郎を国士無双、新婦を絶対佳人と表現しているわ。

夫婦は表裏一体、二人で一対!即ち、絶対佳人は国士無双と切り離せない!!」

 

「まさに逆転の発想・・・味も申し分無し。

文句無しの合格である!!」

 

鳳鈴音、合格!!

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「畜生、あのクソガキ共・・・俺より先に合格しやがって!」

 

弾と鈴音が合格するのを遠目で見ながら、忌々しそうに二人を睨む一人の男。

その男は苛立ちを抑えようともせず、ズカズカと前に出る。

 

「オラァッ!完成したぞ!さっさと食って合格させやがれ!クソ共!!」

 

その男、五反田厳は鼻息も荒くその料理を出した。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

数分後

 

「この俺が不合格だとぉっ!?ふざけんなぁっ!!」

 

「ちょっと・・・」

 

「何であのジジイ、ここに居るんだ?」

 

合格者用の控室で休んでいた弾達だったが、聞き覚えのある声に控室を出て様子を見に来た二人は思わぬ人物の姿に呆然としていた。

 

「俺の作った究極の料理のどこが不合格だってんだぁっ!?」

 

「だから高級な食材を使い過ぎて味が潰し合っているからだと言っただろうが!!大体これのどこが国士無双だ!?」

 

「存在自体が国士無双のこの俺が作った料理なら無条件で国士無双に決まってるだろうがぁっ!!」

 

どんなトンデモ理論だそれは?

 

「そんな理屈が通るか!!さっさと会場から出て行け料理人の恥晒しめ!!」

 

「こ、この俺が料理人の恥だとぉっ!?」

 

怒りを抑えきれずに試験官が発した罵声に、元から沸点の低い厳の理性ははち切れ、遂には試験官に殴りかかった。

 

「いかん!止めるぞ鈴!」

 

慌てて止めに入ろうとする弾と鈴。しかし・・・

 

「・・・そこまでにして貰おうか?」

 

突如として厳の背後に現れた妙にダンディな声をした少年。

その少年は拳を振り上げた厳の手首を鷲掴み、合気の如く華麗に厳を投げ、地面に叩きつけてしまった。

 

「あがっ!?」

 

「見苦しく醜い者ほど、見るに耐えないものはない、な!」

 

「ぐげえぇっ!?」

 

そして、そのまま厳の首元を足刀蹴りで踏みつけた!!

 

「申し訳ない。見るに耐えないとはいえ、このような場でこんな真似を」

 

「い・・・いや、良い。寧ろ鎮圧感謝する。警備員はこの男を会場から追放、及び警察に連絡を!」

 

乱入者に狼狽えつつも、試験官は警備員に指示を出す。

そんな中、謎の少年は控室から様子を見ていた弾と鈴を見詰め、意味深な笑みを浮かべた。

 

「北斗と南斗の若き戦士か・・・フッ、面白くなりそうだ」

 

果たして、この少年は何者なのか?

新たな謎を残して次回に続く!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余談だが、厳は警察に逮捕され、結構な額の罰金が課せられて日本に強制送還。

加えて今後二度と特級厨師試験を受ける事を禁じられたのだった。




次回予告

突如として現れた謎の少年。
しかし、鈴音は彼と初めて会った気がしない。
そんな中、試験を終えた少年は弾と鈴に手合わせを申し込む。

弾「こいつ、秘孔が・・・無い?」

少年「おいおい、同級生の声も忘れたのか、鳳?」

鈴音「ああ!あ、アンタ・・・まさか!?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

機械仕掛けの戦士

前回までのあらすじ
特級厨師試験に臨み、見事に合格した弾と鈴音。
同じく試験を受けた厳は不合格の上に乱暴狼藉によって退場。
そして、厳を取り押さえた謎の少年・・・果たしてその正体は?


特級厨師試験は、弾・鈴音を始めとした5人が合格となった。

 

「やったな、鈴!」

 

「そっちもね!」

 

試験を終え、お互いにハイタッチしながら合格を喜び合う弾と鈴音。

そんな二人にある人物が歩み寄る。

 

「合格おめでとう。二人とも見事な料理だったぜ」

 

「っ・・・お前は?」

 

その人物は先程厳を鎮圧し、二人と同じく試験に合格した謎の男・・・シンと名乗る少年だ。

 

「アンタ、何者なの?試験中も私達に視線向けてたけど?

それに、私アンタの声どっかで聞き覚えあるのよね?」

 

「クク・・・正体明かす前に、一つ手合わせ願いたい。

二人とも、北斗神拳と南斗聖拳の使い手と聞く。俺もその筋では少しは知られた者だ。

どうしても一度お前らと戦いたいと思ってな」

 

不敵かつ挑戦的な笑みを浮かべるシン。

そんな彼の言葉に応えるように弾が一歩前にでる。

 

「良いだろう。俺が相手になってやる!」

 

好戦的な笑みを浮かべながら弾は身構える。

 

「五反田弾・・・一対一(サシ)の対人戦ならば初代ブリュンヒルデ織斑千冬とその弟である織斑一夏以上の戦闘力を持つ傑物と聞く」

 

「随分と調べてるじゃねぇか。そこまで知っててタイマンを挑むなら、余程腕っ節に自信があるみたいだな?」

 

「・・・計算では俺とお前のパワーは、ほぼ五分と五分と出ている」

 

「何?」

 

思わぬ宣言に一瞬面食らう弾。その隙を見逃さず、シンは凄まじい瞬発力で駆け出し、弾に肉迫。

勢いに任せて顔面に拳を打ち込んだ。

 

「グゥッ・・・!確かに、大したパワーだ。初っ端から一撃入れられるなんざ、師匠や一夏達以外じゃ久しぶりだぜ」

 

「よく言うぜ。完全に先手取ってやろうと思ってたのによ・・・!!」

 

一見して先制攻撃を決めたシンに見えるが、そうではない。

弾が顔面にパンチを喰らうその刹那、弾の膝蹴りがシンの腹に突き刺さっていたのだ。

 

「確かに大したパワーとスピードだ。なら、技はどうだ!?」

 

蹴りの勢いで距離を取り、弾は両手を前に出して独特の構えを取る。

 

「北斗羅漢撃!」

 

直後に繰り出される無数の突きの連打。

その速度により弾の腕は何重にも重なって見える残像を生み出し、その全てがシンを襲う。

 

「っ!?軌道が・・・読めな、グハッ!!」

 

防御に回るシンだが、高速かつ不規則な軌道の連撃に翻弄され、体勢を崩してしまう。

 

「貰ったぁっ!!」

 

間髪入れず貫手を繰り出す弾。

シンはこれを右腕でガードしようとするがそれを見越していたかのように弾はシンの肩に指拳を打ち込んだ。

 

(秘孔に入った!これでアイツの右腕は使えない!)

 

完全に決まった弾の一撃を見て弾の勝利を確信する鈴音。

だが・・・

 

「生憎だったな。俺にその手の技は通じない!」

 

「どういう事だ?コイツ、秘孔が・・・無い?」

 

「その通りだ!!」

 

「グゥッ!!」

 

ニヤリと笑い、シンは弾をミドルキックで吹っ飛ばす。

 

「秘孔が無い!?あ、有り得ないわ!」

 

予想だにしない展開に鈴音は思わず大声を上げる。

生物である以上、経絡秘孔は必ず存在する。

しかし、弾は『無い』と言ったのだ。外したのではなく、無いのだと言い切ったのである。

 

(間違い無い。右心臓とかで秘孔の位置が違うなんて例はあるが、そんなありふれた理由じゃねえ!殴った感触が人間とは微妙に異なっていた)

 

驚いていたのは弾も同じである。

そんな中でも弾は思考を巡らし、シンの正体を考察しようとする。

 

「答えを教えてやるよ!!」

 

そこに割って入るようにシンが右腕をまっすぐに伸ばす。

その直後、シンの右腕が光を放ち右腕が弾目掛けて発射された(・・・・・)

 

「何ぃっ!?グオォッ!!」

 

「腕が!?あ、アイツ・・・機械!?」

 

弾の鳩尾にシンの切り離された右腕が突き刺さる。

その断面から覗くのは血肉ではない。金属製の機械だった。

 

「その通り。俺は、機械人間(サイボーグ)だ!そして、これでトドメだ!!」

 

ダメージで膝を付く弾に、シンは戻ってきた右腕、そしてもう一本の左腕をそれぞれ脇に抱え、両腕断面の発射口にエネルギーが瞬く間に充填されていく。

 

「ヘルズフラッシュ!!」

 

そして放たれた膨大な量のエネルギー波。

その容赦なき力に弾は為す術無く飲み込まれる・・・と、思われたが。

 

「嘗めるなよ・・・北斗神拳奥義・北斗剛掌波!!」

 

迫り来るエネルギー波に対して放たれた弾の闘気。

その二つの光がぶつかり合い、爆ぜた。

 

「馬鹿な!?俺のヘルズフラッシュを真正面から!?」

 

「驚いてる暇は無いぜ!!」

 

思わぬ反撃に驚くシン。

直後に爆炎の中から弾が飛び出し、拳を振り上げる。

 

「しまっ・・・」

 

「終わりだ!!」

 

回避する暇も無く、無防備なシンの顔面目掛けて弾の剛拳が振り下ろされた!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何故、止めた・・・?」

 

しかし、その一撃がシンに届く事は無かった。

他ならぬ、弾による寸止めによって・・・。

 

「何故止めた!?お前のパワーなら、秘孔など関係無く俺の顔面を砕けた筈だ!!」

 

「練習試合で、これ以上は出来ねぇよ。お前だってそうだろ?」

 

「っ・・・フン、見透かされていたか。参ったぜ」

 

弾の言葉にシンは苦笑を浮かべながら降参とばかりに両腕を上げた。

 

「鈴も割って入らなかった辺り、コイツに害意が無いのは分かってたんだろ?」

 

「まぁ、ね。少なくとも私たちの力を試そうとしてるってのは分かってたわ。

それで、アンタ誰なの?私達の事知ってるみたいだけど?」

 

「おいおい、同級生の声も忘れたのか、鳳?それとも・・・」

 

鈴音の言葉にシンは全身から光を放ち、その姿を変えていく。

 

「ああ!あ、アンタ・・・まさか!?」

 

「ま、マジか・・・?」

 

「やはりこっちの姿じゃないと分からないか?」

 

人間からISへと姿を変えたその少年。

シン・・・I沢Sin太郎の姿に弾と鈴音は目を見開いて驚くしかなかった。

 

「改めて自己紹介しよう。俺の名はI沢Sin太郎・・・本名は漢字表記で相沢新太郎と言う。

国連直轄暗部組織・亡国機業所属、スコール・ミューゼル中佐揮下のエージェントだ」




I沢改め、相沢の正体が発覚し、皆が驚愕する中でも新学期は訪れる。
新メンバーが増え、果たしてこの物語はどこへ向かうのか?

次回『2人の転校生』

?「数馬!数馬はどこだ!?」

?「ヴ・・・俺、滅茶強蔵・・・よろしく」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2人の転校生

各キャラの容姿設定

相沢新太郎→『超時空世紀オーガス』の桂木桂。

めっちゃ強そうな人→『大工の源さん超韋駄天』の百萬石嵐。


波瀾万丈な夏休みも終わりを迎え、季節は秋を迎えつつある中、IS学園も二学期を迎える事となる。

そんな中で始業式前の早朝から、一応まだ名前だけは存続していた地球防衛軍では、ある緊急会議が開かれていた。

 

「と言うわけで、今日から亡国機業から出向として所属する事になった・・・」

 

「I沢改め、相沢新太郎だ。よろしく頼む」

 

困惑気味なセシリアに続き、爽やかな表情で自己紹介する相沢に、鈴を除く全員が唖然とする。

 

「話には聞いてたが、本当に人間だったのか?」

 

「正確にはサイボーグだ。

10年前に例のカルト集団のテロで誘拐されてな。身体を弄られてISのコアを埋め込まれたんだ。

まぁ、人間としての基本的な機能は残ってるだけマシなんだがな」

 

「・・・」

 

なかなかに重い相沢の過去に言葉を詰まらせる一同。

そんな重い空気を払拭するように相沢は爽やかな笑みを浮かべる。

 

「そんな面をするな。今日付けで亡国(ウチ)から二人転校生として学園に来るんだ。

騒がしくなると思うが、仲良くしてやってくれ」

 

「二人?一人は・・・まぁ、マドカだとして、あと一人は誰だ?」

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

そして始業式が終わり、ホームルームの時間となった1組では・・・

 

「と、言うわけで今日から転校してきた・・・」

 

顔を引き攣らせる担任の真耶の隣には二人の男女が立っていた。

 

「織斑マドカだ。一夏兄さんとアホの千冬とは従兄弟のようなものだ。

よろしく頼む」

 

一人は大方の予想通りマドカ。

 

「ヴ・・・俺、滅茶強蔵(めっちゃつよぞう)・・・よろしく」

 

もう一人、男の方は先の潜水艦争奪戦でおそ松を叩きのめした、めっちゃ強そうな人・・・本名・滅茶強蔵である。

 

「ちょっと待て!マドカはともかくお前が高校入学は無理あるだろ!?」

 

「誰がアホの千冬だ!?お前にだけは馬鹿にされる筋合いは無いぞ!!」

 

珍しく姉弟でツッコミを入れる一夏と千冬。

千冬の方はお互い様として、一夏のツッコミには先の潜水艦争奪戦に参加していたセシリアや子分メイド達も大きく頷く。

身長2m40cmはある筋骨隆々な巨体にモヒカン刈りのヘアスタイルに厳しい強面。

どこからどう見ても三十代、若くても二十代後半な外見の大男がIS学園の制服を着ている姿は違和感しか感じない。

 

「ヴ・・・俺、これでもおまえらお前らと同い年、今年で16歳・・・だから問題無い」

 

『えぇ〜〜っ!?嘘ぉ〜〜〜〜っ!?』

 

「ヴゥ・・・俺、昔からこんな扱い。

ちょっと老け顔な、だけなのに・・・」

 

クラス中から驚愕の目で見られ、強蔵の繊細な心は傷付き、部屋の片隅で蹲って床に『の』の字を書きながら落ち込んでしまった。

 

「わ、悪かったよ・・・。そんな露骨に落ち込むなって・・・」

 

 

 

 

 

「強蔵の方はまぁ、どうでもいいとしてだ・・・。

そんな事よりも、数馬!数馬はどこだ!?

今日こそは結婚を前提としたお付き合いを〜〜〜〜っ!!」

 

「えぇい!やっぱりそれか!?この変態が!!」

 

そしてマドカは相変わらずコレである。

千冬とのやり取りを眺めながらクラスの女子達は思った。

 

(ああ、確かにこの子は千冬さんの親戚だ・・・)

 

 

 

 

 

ちなみにこの時、別のクラスに居る数馬(ゴリラ)は悪寒を感じたとか?

 

 

 

かくして濃いキャラが二人も加わったIS学園は一体どこへ向かうのだろうか?

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

ちなみに、スコールを始めとした他のメンバーはどうしているかと言うと・・・。

 

「hey、天ぷらお待ち!」

 

「スコール!急いで魚捌いてくれ!!」

 

「もうやってるわよ!オータムこそ、調理大丈夫なの!?」

 

束から報酬として貰った屋形船を運営しながら日本に在住していた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

クリスマス外伝〜聖夜の思い出〜

少し遅れましたが、クリスマス特別編です。
時系列に関してはあまり気にしないでください。


12月24日の早朝。

暗闇の中に一筋の光・・・スポットライトがある人物を照らす。

 

「どうも皆さん、まずはメリークリスマスと言っておきましょう」

 

その人物・・・椅子に腰掛けた布仏虚は表情を険しくしながら重々しく口を開いた。

 

「クリスマス、そうクリスマスです。

子供にとってはサンタクロースを語る親族からプレゼントを貰えるありがたい日。

大人の恋人持ちは彼氏彼女と聖なる夜を建前に甘ったるい夜を過ごす日。

そして、独り身の人間は惨めに寂しい思いを強いられる日・・・!

 

この際だから言います。

クリスマスだの聖夜だの騒いでる人達・・・

 

お 前 ら 全 員 死 刑 ! !

 

もううんざりなんですよ、テメェらのその恋人自慢は!

どうせクリスマスっぽい事は服装とプレゼント交換と晩飯だけで、後は結局ヤるだけ。

なーにが聖なる夜ですか!?性なる夜の間違いでしょう!?

それに比べて独り身の寂しさと惨めさと来たら・・・テメェらに解りますか!?

これはもう差別!天による差別に他ならない!!

だからこそ、私は浮かれたリア充共にロケットランチャーをぶっ放してぶっ殺してやりたい!!ファイナルアンサー!?」

 

「ファイナルアンサー!!」

 

「「・・・・・・」」

 

明かりが付いた生徒会室内に刀奈の返答だけが響き、簪と本音は冷めた目で虚を見つめていた。

 

「ファイナルアンサーじゃないわよ!!何で私にゃ彼氏が出来ないのよぉ〜〜っ!!

私はね、私はねぇ・・・彼氏が欲しいの!愛が欲しいのよぉ〜〜っ!!」

 

「私だって本当は彼氏欲しいもん!クリスマスの思い出作りたいもん!!」

 

先ほどの怒りとは打って変わって今度は膝をついて目から涙、鼻からは鼻水を垂れ流す二人。

そんな二人に妹コンビは揃って溜息を吐く。

 

「お姉ちゃん達・・・そういう所だよ、彼氏出来ない原因」

 

「がっつき過ぎ・・・肉食系過ぎて同性の私達も引く。

っていうか、こんなのが自分の姉かと思うと嫌になるんだけど?」

 

「何よぉ!簪ちゃんと本音ちゃんだって彼氏いないじゃない!!」

 

「私達だって彼氏欲しいけど、二人みたいにガツガツしてないだけだよ〜」

 

「本音みたいに男子との交友関係広げてLINE交換からじっくりやれば?

私も子分メイドと透君の友達紹介して貰って何人か仲良くなってるし」

 

非リア充街道爆進中な姉コンビに対し、手堅く男友達を増やす妹コンビ。

どちらがリア充に近いかは言うまでもないだろう。

ちなみに簪と本音は明日のクリスマス会(セシリア主催)に呼ばれていたりする。

 

「お姉ちゃん達も来る?同伴者歓迎って事になってるし」

 

「行く!絶対行く!」

 

「そして今年こそは彼氏を!!」

 

あからさま過ぎる肉食系女子な姉二人を見ながら簪達は思った。

今年も二人に彼氏は出来そうにないだろうなぁ、と・・・。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「それでは、クリスマスを祝して、そして今日という日に出会いを願って・・・」

 

『かんぱ〜い!』

 

私の名は篠ノ之箒。

アメリカ帰りの剣道少女にしてブロンコガールの異名を持つ女。

今日はセシリアの奴が合コンを兼ねたクリスマスパーティーを行う事になり、招待された私は合コンとパーティーに釣られてノコノコ来てしまった。

 

しかし、一つ問題なのは・・・

 

ここが船上パーティーだと言う事だ!

 

「ぐえぇぇぇ・・・!」

 

忘れられてるかもしれんが私は乗り物酔いが酷いんだ!

姉さんが造ったあの絶対酔わない潜水艦以外無理ぃ〜〜〜〜っ!!

 

「フライとカルパッチョお持ちしました!」

 

NO〜〜っ!!この状況で揚げ物と生魚とか絶対吐く〜〜〜〜っ!!

 

「お、降ろしてくれぇ〜〜!!」

 

「もう出航してますわよ?」

 

「泳いで帰るから降ろせぇ〜〜〜〜っ!!」

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

都内某所に設置されたイルミネーションが施された大型クリスマスツリー。

恋人達で賑わうこの観光スポットに、一夏と真凜の姿はあった。

 

「今年もまたココに来ちまったな」

 

「そうだね。だって私達の思い出の場所だもん」

 

懐かしむようにツリーを見上げる二人。

4年前、二人はココでお互いに想いを告白し、晴れて恋人同士になったのだ。

 

「あ、そうだ!真凛、これ忘れない内に・・・」

 

懐から包装された小箱を取り出し、一夏はその蓋をゆっくりと開ける。

 

「え!?これって・・・」

 

それはネオンの光を美しく反射パパラチアサファイアが装飾された小さなリング・・・そう、指輪である。

 

「結婚出来るようになるまで、もう2年切ったから、丁度いい頃合いかなって思って・・・」

 

「嬉しい!嬉しいよぉ、一夏君・・・!」

 

渡された婚約指輪を受け取り、歓喜の涙を浮かべながら真凛は一夏に抱きつく。

 

「真凛、改めて言うよ。2年後に俺が18歳になったら、俺と結婚してくれ」

 

「はい!私を、一夏君のお嫁さんにして・・・!!」

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

一夏のプロポーズを真凛が受け入れた頃、その様子は束の作った衛星に映されており・・・

 

「ううぅぅぅぅ・・・一夏ぁ〜〜、良かった!本当に良かったよぉ〜〜〜〜っ!!」

 

束の潜水艦でその様子をモニター越しに見ていた千冬は目から滝のような涙、鼻から蛇口の水の如く鼻水を垂らして流して喜んでいた。

その泣きっ面は、さながら範馬刃牙に負けたマホメド・アライJr.の様な顔面崩壊っぷりだった。

 

「ちーちゃん泣きすぎだよ、まったく。

泣くのは良いけど、ちゃーんと自分も進級・卒業出来るようにならないとね」

 

「取り敢えず、掛け算の7の段と8の段がまだ完璧じゃないから、まずはそれの克服ですね。

それさえ片付けば、今期の進級はどうにかなりそうですし」

 

ちなみに、真耶も家庭教師役として同行していたりする。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

一方、飛騨山中の山小屋では・・・

 

「ヴ・・・熊鍋出来た。食え」

 

「ウゴ、ウゴンゴ(おお、すまねぇ)」

 

前話よりレギュラーに昇格した強蔵が数馬(ゴリラ)に熊鍋を振る舞っていた。

 

「ウゴ、ウゴゴンゴウゴ(何から何まですまねぇな。匿って貰った上に飯まで)」

 

「ヴ・・・気にするな。アイツの暴走の厄介さ、同僚の俺よく分かる。

それに、困った時はお互い様・・・」

 

申し訳なさそうにする数馬に、強蔵は笑って返す。

数馬はある人物に追われてこの山小屋に逃げ込んできたのだ。

そして、その人物は今・・・。

 

 

 

「数馬!数馬はどこだ!?このマドカサンタがクリスマスプレゼントに私自身を用意してお前に会いに来たぞーーーーっ!!」

 

その人物、ミニスカサンタのコスプレをしたマドカは、小屋から数キロ離れた樹海を走り回っていた・・・。

 

 

 

数時間後、吹雪いてきた雪によって全身氷漬けになりかけた所を強蔵に発見され、数馬を襲わぬ事を条件に救助されるのは、また別の話である・・・・・・。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

翌日、更識・布仏の屋敷にて、

 

「メぇぇぇ~~リぃぃぃぃぃクリっスマぁぁぁ〜〜スぅ!!アーヒャッヒャッヒャッヒャッ!!」

 

サンタ帽子と丑の刻参りという服装で、布仏虚は狂乱の形相を浮かべて自宅の庭の木に藁人形を五寸釘で打ち付け続けていた。

 

「・・・何があったの?」

 

「昨日のクリスマス合コン、全戦全敗だったのよ。

それに加えて、一夏君と真凛さんから正式に婚約しましたとの報告LINEが来たから・・・」

 

「それはまた、何て間の悪い・・・。

お姉ちゃんはアレやらないの?お姉ちゃんも合コン駄目だったんでしょ?」

 

「そうだけど・・・流石にあそこまではする気にはなれないって言うか・・・」

 

虚の凶行に、流石の刀奈もドン引きしていた。

こんな感じで、今年もまた碌でもない思い出が増えた更識・布仏なのであった・・・。

 

この負の連鎖を断ち切るのは、虚に彼氏が出来るのは、果たしていつなのか?

それは誰にも、作者にも分からない。

 

だって未定なのだから。



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。