モモンガ様自重せず (布施鉱平)
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モモンガ様、異世界デビュー

 異世界に転生したモモンガ様は、自らを押さえつけていた殻を脱ぎ捨て、我侭に、本能のままに生きようと決意する。
 セバスとプレアデスに外に出るよう命令し、アルベドと二人きりになったモモンガ様は────


◇転移直後────

 

 

「ああ、私はここで初めてを迎えるのですね…………モモンガ様、服はどういたしましょう? 自分で脱ぎましょうか? それとも着たままの方がよろしいでしょうか?」[アル]

 

「着たままでよい(着エロフェチだから)」

 

「ああ…………っ! モモンガ様♡!!」[アル]

 

 

 

◇守護者集結────

 

 

「私は仲間を見つけるため、この世界を手に入れる!(有名になれば仲間の方から見つけてくれるかも知れないし)」

 

「おお、なんと素晴らしい…………全身全霊を持ってお仕えさせていただきます!」[デミ]

 

「主の願いを叶える事こそ、仕える者にとって至上の喜びで御座います!」[セバ]

 

「モモンガ様ノ剣トナリ、ソノ覇道ヲ切リ開イテ見セマショウ!」[コキュ]

 

「わたしもモモンガ様のお役にたってみせます!」[アウ]

 

「モモンガ様…………か、かっこいいです!」[マレ]

 

「ああっ…………なんと勇ましく、そして美しいお姿なのでありんしょうか!」[シャル]

 

「モモンガ様。このアルベド、至高にして唯一の御方の為…………そして私の愛しい旦那様の為、正妃としてこれまで以上に誠心誠意お仕えさせていただきます! もちろん、夜のご奉仕も!」[アル]

 

「「!!??」」[一同]

 

 

 

◇守護者集結その後────

 

 

「ちょっとアルベド! さっきのはどういうことでありんすか!?」[シャル]

 

「くふふふ、もちろん()()()()()()よ、シャルティア」[アル]

 

「そういうことって…………そういうことって…………」[シャル]

 

「あら、分からないほど初心(うぶ)なわけないわよねぇ…………」[アル]

 

「い、いったいいつの間に…………」[シャル]

 

()()()()()()は、当人同士の秘密…………その質問は無粋よ? シャルティア」[アル]

 

「ずるいでありんす! ずるいでありんす!」[シャル]

 

 

「ふむ…………女性同士、盛り上がっているようだねぇ」[デミ]

 

「至高ノ御方ノ御宿直(オントノイ)ヲ話題ニスルトハ…………不敬デハナイダロウカ」[コキュ]

 

「そうかもしれない…………が、先ほどモモンガ様はアルベドの言葉を否定なさらなかった。 それはつまり…………」[デミ]

 

「ムウ…………事実、トイウコトカ。ナラバ、今後ハアルベドヘノ態度モ改メナケレバナラヌナ」[コキュ]

 

「正妃、となればそうだろうね。彼女の能力上、守護者統括の役割は兼任になるだろうが、王に仕える者たちがその伴侶に対して対等な口を利く訳にもいかないだろうからね」[デミ]

 

「王…………?」[コキュ]

 

「さっき言っただろう? モモンガ様はアルベドの言葉を否定なさらなかった、と。アルベドは()()という言葉を使った。正妃とはつまり王の伴侶に他ならない。モモンガ様は言葉を発せられなくても、実に多くのことを私たちに伝えてくれているんだよ?」[デミ]

 

「オォ、ナント! モモンガ様ハ、王ニナラレルノカ?」[コキュ]

 

「まずはナザリックを一つの国としてこの世界に認めさせ、そのあとはこの世界を統べる唯一の王となられるだろう。そしておそらくは、自らは絶対的な支配者として頂点に君臨されたまま、実質的な統治はお世継ぎたちに任せられることになるだろうね」[デミ]

 

「オ世継ギ、ダト?」[コキュ]

 

「そうさ、コキュートス。わざわざ()()という言葉をアルベドが使ったのはどうしてだと思う。そして、その言葉を訂正なさらなかったモモンガ様のお心はどのようなものだと思うかね?」[デミ]

 

「…………ハッ! アルベドガ正妃トイウコトハツマリ…………ッ!」[コキュ]

 

「アルベドが()()を名乗り、それをモモンガ様が認められたのなら、これから世界に進出していくにあたっての外交的な側面…………いわば立場上だけの王妃という可能性もあった。だが、()()というのは、複数の(きさき)が存在する中での地位を表す言葉。つまり、モモンガ様は側室も傍に置かれるということを暗に示していたのさ。そして、複数の女性を最高権力者が(そば)に置くのは、世継ぎを作るために他ならない。だがモモンガ様は不死の存在。後を継ぐ者を作る必要はないということを考慮すると…………」[デミ]

 

「ナルホド。ソレデ先ホドノ話ニ繋ガルワケカ」[コキュ]

 

「そういうことだね。モモンガ様は最終的にはこの世界の神になられる。そしてその下で世界を統治をされるのは、偉大なる血を受け継いだ方々…………モモンガ様の御子息や御息女だ。さあ、我々もこれから忙しくなるよ、コキュートス」[デミ]

 

「オ世継ギ…………御子息に、御息女…………アァ、ナント素晴ラシイ光景ダ! 爺ハ、爺ハ…………」[コキュ]

 

「コキュートス?」[デミ]

 

 

「正妃って事は、アルベド…………モモンガ様と結婚するのかなぁ? モモンガ様も否定なさらなかったし…………いいなぁ…………」[アウ]

 

ぼ、僕も頑張って働いたら、モモンガ様と、け、け、結婚出来るかなぁ?」[マレ]

 

「ん? なにゴニョゴニョ言ってんの、マーレ」[アウ]

 

「な、なんでもないよ、お姉ちゃん!」[マレ]

 

 

「…………はっ、私としたことがあまりに衝撃的な発言を受けて自失してしまいました。早くモモンガ様のお側に仕えなければ!」[セバ]

 

 

 

◇カルネ村に降臨────

 

 

「中位アンデッド創造────〈死の騎士(デス・ナイト)〉」

 

「あ、ああ…………」[エン・ネム]

 

「まだまだ! 中位アンデッド創造〈切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)〉! 〈屍収集家(コープスコレクター)〉!」

 

「ひぃいいいいい!」[エン・ネム]

 

「念の為に上位も造っておくか…………上位アンデッド創造〈蒼褪めた乗り手(ペイルライダー)〉!」

 

「ぶくぶくぶく…………」[エン・ネム]

 

「雑魚ばかりっぽいし、これくらいでいいか。よし、もう大丈夫だぞ…………って気絶してる?」

 

「……………………」[エン・ネム]

 

「……………………記憶操作しとこ」

 

 

 

◇ニグンさん受難────

 

 

「貴様…………なにも」[ニグ]

 

「〈時間停止(タイム・ストップ)〉。アルベド、回収しておけ」

 

「畏まりました、アインズ様」[アル]

 

「ニューロニストに渡して、この世界について知っている限りのことを吐かせろ。それが終わったら私が記憶操作の練習に使う」

 

「畏まりました。その後はエントマやソリュシャンなど人肉を好む者に下げ渡しても構いませんか?」[アル]

 

「そうだな…………いいだろう。望む者がいればくれてやれ」

 

「ありがとうございます。…………ところでアインズ様…………今夜は、どうされますか?」[アル]

 

「一段落したら部屋に来い」

 

「くふーーーーっ!」[アル]

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 なんとなく書きたくなって書いた。
 後悔はしていない。
 もう一つオバロのSSを書いているにも関わらずだ。
 さらにはなろうでオリジナルの小説を停滞させているにも関わらずだ。
 いいのさ、趣味なんだから。
 好きに書いてもいいのさ。
 だから頑張れ自分。


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モモン様でも自重せず

 冒険者として人間の街に訪れたモモン様。
 早速冒険者に絡まれ、吹っ飛ばして解決し、赤毛の女冒険者にお詫びのポーションを渡すが、ナーベになぜなにどうしてと質問され────


◇冒険者モモン────

 

 

「ちょっと! 私が食費を切り詰めてまで手に入れたポーション、どうしてくれんのよ!」[ブリ]

 

「すまん。じゃあ代わりにこれをやろう」

 

「赤いポーション? …………まあ、いいか」[ブリ]

 

 

「モモンさ────ん、どうしてあの女にポーションを与えたのですか?」[ナベ]

 

「なんか言いづらそうだし、もうモモン様でいいぞ」

 

「申し訳ありません。ありがとうございます、モモン様」[ナベ]

 

「で、なぜあの女にポーションを渡したか、だったか?」

 

「はい、無知な私にどうぞお教えください」[ナベ]

 

「ふむ…………(特になにも考えてなかったな)」

 

「モモン様?」[ナベ]

 

「ナーベよ、そんなことよりもイイコトを教えてやろう(誤魔化してしまえ)」

 

「いいこと、でございますか? あっ…………モモン様! そんな、そんなこと…………あぁ!」[ナベ]

 

 

 

◇モモン、カルネ村への道中────

 

 

「モモンさんとナーベちゃんって凄く仲良さそうだけど…………やっぱりそういう関係なの?」[ルク]

 

「そういう関係…………! そんなことはない、ことも、ない、ですが! モモン様にはアルベド様という方が…………!」[ナベ]

 

「ナーベ!(そういう関係のことは人に話したらダメ! 恥ずかしいだろ!)」

 

「はっ! も、申し訳ありません、モモン様!(しまった! ついアルベド様のお名前を…………!)」[ナベ]

 

「へ、へー…………ナーベちゃんとそういう関係なうえ、他にもいるんだ…………」[ルク]

 

「英雄は色を好むものである!」[ダイ]

 

「モモンさん…………」[ニニャ]

 

「す、すいませんモモンさん、うちのメンバーが」[ペテ]

 

「…………いえ、今後は控えて頂ければ…………あと、今耳にしたことはできれば他に漏らさないでいただきたい(女性関係晒されるとか、ものすごく恥ずかしいから)」

 

「はい、もちろんです! 皆もわかったな! 特にルクルット」[ペテ]

 

「へーい。…………しっかし、やっぱモテるんだな、モモンさんは。羨ましいぜ」[ルク]

 

「ルクルット!」[ペテ]

 

「はいはい、黙ってますよ」[ルク]

 

 

 

◇村に着いた一行────

 

 

「モモンさんが、アインズ・ウール・ゴウンなんですね」[ンフィ]

 

「そうだ」

 

「即答!?」[ンフィ]

 

「バレてしまったものを隠しておいてもしょうがないだろう(俺は息抜きに冒険したかっただけだし)」

 

「モモンさん…………(さすが、本物の英雄は器の大きさが違う)」[ンフィ]

 

「それで? 私がアインズだとして、君はいったいどうしたいのかね?」

 

「お礼を、お礼を言わせていただきたかったんです。この村を、エンリを救っていただいて、本当にありがとうございました!」[ンフィ]

 

「そうか…………なるほど、君はエンリのことを…………(若いっていいね)」

 

「あ、そ、それは!」[ンフィ]

 

「ふふふ、私からエンリに何か言ったりはしないさ。その代わり、君も私がアインズだということは黙っていてくれると有難い(もう少し冒険したいし、この世界の通貨も稼がなきゃならないしね)」

 

「なにか、深い理由があるんですね。はい、もちろん誰にも言ったりしません。モモンさんは、エンリを救ってくれた恩人ですから!」[ンフィ]

 

「ああ、よろしく頼む」

 

 

 

◇ハムスケ仲間入り────

 

 

「降参でござる! この通りお腹も見せるから、殺さないで欲しいでござるよ!」[ハム]

 

「出会い頭になんだ、このジャンガリアンハムスターは」

 

「モモン様。モモン様の強大なお力の一端に触れたのですから、この低俗な獣が醜態を晒すのも当然のことかと。お見苦しいのでしたらすぐに始末しますが?」[ナベ]

 

「ひいー! 勘弁して欲しいでござる!」[ハム]

 

「いや、それには及ばぬぞ、ナーベ(あっ、そうか。森の賢王とかいう強力なモンスターがいるらしいから、絶望のオーラⅠを常時発動させてたんだっけ)」

 

「はっ、畏まりましたモモン様」(ナベ)

 

「こ、殺されないでござるか?」[ハム]

 

「ああ、特に殺すメリットもないし、ンフィーレアにも出来れば殺さないで欲しいと言われていたからな」

 

「ありがとうでござる! 拙者、殿に一生懸命お使えするでござるよ!」[ハム]

 

「獣が、馴れ馴れしくモモン様に近寄るな!」[ナベ]

 

「ひいーーー!でござるーーー!」[ハム]

 

「よい、ナーベ。さて…………お前、何か名前はあるのか?」

 

「森の賢王と呼ばれているでござる」[ハム]

 

「(お前かよ!)…………そうか、では森の賢王」

 

「その名は、名も知らぬ人間の戦士が付けたもの。出来れば殿に新たな名前を付けて頂きたいでござるよ」[ハム]

 

「じゃあハムスケ」

 

「即答でござるな。それが拙者の名でござるか?」[ハム]

 

「嫌か?」

 

「とんでもないでござる! 拙者はハムスケ! 殿に新たな名を頂いた、魔獣ハムスケでござる!」[ハム]

 

「モモン様から名を授かるとは…………ギリギリ(羨ましい!)」[ナベ]

 

「で、ハムスケ、お前は付いてくると言ったが、お前が森からいなくなってもカルネ村が魔獣に襲われたりしないか?」

 

「カルネ村? ああ、拙者の縄張りに近いところにある、人の住んでいる場所でござるな。今は森の勢力バランスも崩れてきているでござるし、拙者がいようといまいとあまり変わらないと思うでござる」[ハム]

 

「そうか、なら付いてこい。戦力としては当てにならないが、アウラあたりが喜びそうだしな」

 

「ありがとうでござる、殿! 一生ついていくでござるよ!」[ハム]

 

 

 

◇エ・ランテル事件────

 

 

「で、お前たち二人が今回の事件の首謀者と見ていいんだな?」

 

「だったらどうだというのだ?」[カジ]

 

「いや? どうということはない。お前たちが何をしていたのだろうと、後数分で全ては潰える事になるからな。私が聞きたいのは攫われたの少年の行方だ。名前は────言わなくても分かるだろう?」

 

「へぇー、随分な自信じゃん。しかしどうやってここが分かったのさ?」[クレ]

 

「そのマントの下に答えはある」

 

「うわー変態ー、えろすけべー」[クレ]

 

「それは否定しない」

 

「あ、否定しないんだー。オープンな変態だねー」[クレ]

 

「そちらも否定はしないんだな。なら、ンフィーレアは近くに囚われているということか。よし、ナーベラル・ガンマ、男どもは任せる。建物とかはなるべく壊さないように殲滅しろ」

 

「はっ、畏まりました。〈二重最強化(ツインマキシマイズマジック)連鎖する龍雷(チェイン・ドラゴン・ライトニング)〉」[ナベ]

 

「「ぐわぁあああああああっ」」[カジ他]

 

「えっ、あれ、い、今のって何位階魔法?」[クレ]

 

「二重最強化した第七位階魔法だ」

 

「…………う、嘘でしょ?」[クレ]

 

「いや? 第七位階魔法だ」

 

「……………………ダッ!(全力で逃走)」[クレ]

 

「〈時間停止(タイム・ストップ)〉。やれやれ、手間をかけさせてくれる…………ガシッ」

 

「はっ? な、なんで捕まってるの?」[クレ]

 

「時間を止めたからだ」

 

「…………そ、そんな、ありえない」[クレ]

 

「お前がどう思おうと勝手だが、事実としてお前は私の腕の中にいる。さて、ではこの事件の首謀者として、私の名声を高める踏み台になってもらおうか」

 

「く、くそっ、ふざけるな!」[クレ]

 

「サバ折り!」

 

「ガフッ!」[クレ]

 

 

 

 

 




 そういえば前話ではガゼフさんにはちらりとも触れなかった。
 ニグンさんには一応出番があったにも関わらずだ。

 まあ、いいか。


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モモンガ様、シャルティアは一旦保留

 エ・ランテルの事件をサラッと解決したモモンガ様の耳に飛び込んできた知らせは、なんとシャルティアの反乱だった。
 事実を確認すべくナザリックに戻るモモンガ様だったが────


◇馬車の中のNPC────

 

 

「はぁ…………」[シャル]

 

「どうなさいました? シャルティア様」[セバ]

 

「どうもこうもないでありんすぇ…………アルベドはモモンガ様、いえアインズ様の正妃という地位を手に入れたというのに、わたしにはまだお呼びがかからない…………やはり、、なのでありんしょうか…………」[シャル]

 

「そんなことはないと思いますよ。シャルティア様」[セバ]

 

「慰めはいらないでありんす…………」[シャル]

 

「いいえ、シャルティア様。私もそう思いますわ。アインズ様は胸の大小で(とぎ)を務める者を決めるほど狭量な御方ではございません」[ソリュ]

 

「もちろんアインズ様は狭量などではありんせん! だけど、だけど、アインズ様にも()()というものはあるかもしりんせんでありんしょう?」[シャル]

 

「それにつきましては、おそらく問題はないかと」[ソリュ]

 

「なぜ!? なぜそう言い切れるでありんすか!?」[シャル]

 

「ナーベラルがお手付きになったようですので」[ソリュ]

 

「「えっ!?」」[シャル・セバ]

 

「アルベド様を基準にすれば、ナーベラルの胸は決して大きいものではありません。ですので、胸の大小で伽を務める者を選ばれる、ということはないのではないかと」[ソリュ]

 

「ちょっ、ちょっと待つでありんす! いい、今、聞き捨てならないことを言いせんでしたかぇ!?」[シャル]

 

「わ、私も初耳です。本当なのですか、ソリュシャン?」[セバ]

 

「ナーベラルがアインズ様のお手付きなったことでしょうか? でしたら、ええ、間違いありませんわ」[ソリュ]

 

「い、いつの間に…………」[シャル]

 

「確か、アインズ様がモモン様という名前で人間の街に行かれて、初日のことだったかと」[ソリュ]

 

「しょ、初日…………」[シャル]

 

「な、なぜ私に報告が来ていないのですか? ソリュシャン」[セバ] 

 

「私が知ったのは、偶然アルベド様とナーベラルの伝言(メッセージ)を聞いてしまったからですわ、セバス様。その時アルベド様が「別に隠す必要はないけれど、アインズ様から正式なお達しがあるまでは言いふらすこともないでしょう」と仰られたので…………」[ソリュ]

 

「ん、コホン。なるほど、了解しました。では、私たちもそれに習いましょう」[セバ]

 

「…………たい……………………」[シャル]

 

「? シャルティア様、なにか?」[ソリュ]

 

「いったい、どうやって!? どうやってナーベラルはアインズ様の寵愛を得られたの!? どんなきっかけで!? なにがアインズ様の琴線に触れたの!?」[シャル]

 

「シャ、シャルティア様? 言葉遣いが…………」[セバ]

 

「はっ!! ん、んん!! ナ、ナーベラルはどうやってアインズ様のご寵愛を得たでありんすか?」[シャル]

 

「申し訳ありませんシャルティア様。詳しい内容までは…………」[ソリュ]

 

「そう、でありんすか…………」[シャル]

 

「ですが、部屋で二人になってすぐ…………という言葉をアルベド様が漏らしておられましたので、アインズ様とお二人きりになる機会があれば、ご寵愛を得る可能性も高いかと」[ソリュ]

 

「そ、それは本当でありんすかぇ!?」[シャル]

 

「至高の御方に関わることで嘘など申しませんわ」[ソリュ]

 

「そ、そうよね。ごめんなさい」[シャル]

 

「いえ、シャルティア様のお気持ちも分かりますので」[ソリュ]

 

「ソリュシャン、あなたも…………」[シャル]

 

「ナザリックに存在する女で、偉大なる御方に恋焦がれないモノなどおりませんわ」[ソリュ]

 

「そう…………そうでありんすよね。至高の御方を想う気持ちは皆同じ…………お互いに、頑張ろうじゃありんせんか、ソリュシャン」[シャル]

 

「はい、シャルティア様」[ソリュ]

 

「お二人共。仲良くご歓談のところ申し訳ないのですが、どうやら獲物が針に掛かったようです」[セバ]

 

「おや、ようやくでありんすかぇ」[シャル]

 

「シャルティア様、よろしければあのザックという男は私に頂けないでしょうか?」[ソリュ]

 

「構いませんぇ。貴女とは同じ目標を持つ同士でありんすもの」[シャル]

 

「ありがとうございます」[ソリュ]

 

「…………馬車が止まったようでありんすね」[シャル]

 

「そうですな」[セバ]

 

「盗賊退治などあまり気は乗りんせんが────アインズ様の為、蹂躙を開始しんす」[シャル]

 

 

 

◇シャルティアの反乱────

 

 

「シャルティアが裏切った、だと?」

 

「はい、アインズ様。セバスの話では野盗と遭遇、殲滅した後、シャルティアは残りの野党を捕獲するべくアジトに向かったようです。その間に不審な点はなく、アインズ様のご寵愛をどうすれば受けられるかと口にしていたと聞いております」[アル]

 

「なるほど、つまりそれ以降、反旗を翻すなにかがあったということか」

 

「はい、そう推察されます」[アル]

 

「ふむ、マスターソース・オープン…………確かに、シャルティアの文字が黒くなっているな」

 

「ご覧の通りに」[アル]

 

「ん? アルベドと…………ナーベラルの名前がピンク色になっているな」

 

「はい。アインズ様♡」[アル]

 

「マーレの名前も、ピンクになっている」

 

「まあ、アインズ様ったら、いつの間にマーレまで♡」[アル]

 

「これは…………」

 

「はい♡」[アル]

 

「あれだよな」

 

「はい、間違いないかと♡」[アル]

 

「そうか」

 

「はい♡」[アル]

 

「んん!! あー、これは、な…………決して浮ついた気持ちでヤッたのではないぞ、アルベド」

 

「もちろんでございます、アインズ様♡ アインズ様の大いなる愛は、その寵愛を受けたもの全ての心と体に深く刻まれております♡」[アル]

 

「う、うむ。そうか」

 

「はい♡」[アル]

 

「分かっているなら、うむ、よいのだ。うむ」

 

「アインズ様?」[アル]

 

「な、なんだ? アルベド」

 

「マーレとは、いつ?」[アル]

 

「あー、うむ、マーレとは、な、あれだ。ナザリックの偽装をやり遂げた際に、褒美に欲しいものはないかと聞いたら、私と、その、結婚したいと言われて、な」

 

「なるほど、あの時でございましたか」[アル]

 

「お前を(ないがしろ)にしているわけではないのだぞ? アルベド」

 

「はい、もちろん承知しております。私よりも前か後か、少しだけ気になったものですから」[アル]

 

「う、うむ。私は、お前が初めてだぞ、アルベド」

 

「は、初めて…………?」[アル]

 

「あ、いや」

 

「くふーーーーーーーー!!」[アル]

 

「あぁ、ちょ、ちょっと待つのだアルベド、今は…………!!」

 

我慢できません!!」[アル]

 

「あっはい」

 

 

 

◇至高の戦いを前に────

 

 

「それで、お伺いしましょうか? なぜ、アインズ様がお一人で向かうことを認めたのです?」[デミ]

 

「もちろん、アインズ様がお決めになったことだからよ?」[アル]

 

「なぜ、アインズ様が人間の都市(エ・ランテル)に向かう際に守護者を供としないことを、あれほど拒絶したあなたが、今回のような事態に首を縦に振ったのですか? なぜ!? なぜです!?」[デミ]

 

「アインズ様は仰ったわ」[アル]

 

「…………なんと、仰ったのですか?」[デミ]

 

「私の愛する者たちが戦う姿など死んでも見たくない、と」[アル]

 

「!!」[デミ・コキュ]

 

「そうまで言われて、止めることが出来る? デミウルゴス」[アル]

 

「それでも…………それでも止めるべきだったのではないですか!? このナザリックで戦うことの出来る守護者は、女性ばかりではありません! 私やコキュートスだって…………」[デミ]

 

「あなたは勘違いしているわ。デミウルゴス」[アル]

 

「な、なにを…………」[デミ]

 

「アインズ様は、ナザリックに存在するもの全てを愛している。そう仰ったのよ」[アル]

 

「!!」[デミ・コキュ]

 

「アインズ様の愛は、広く、深く、大きいわ、デミウルゴス。あなたが考えているよりも、ずっとね」[アル]

 

「なんと、なんと勿体無いお言葉…………」[デミ]

 

「オゥオゥオゥ…………!」[コキュ]

 

「どう? ここまで仰っていただいているというのに、まだアインズ様を信じることができないかしら?」[アル]

 

「…………いえ、確かに、そこまで仰られたアインズ様をお止めすることが出来る者など、このナザリックには存在しないでしょう」[デミ]

 

「なら、そこに座って大人しくあの方の勇姿をご覧なさい。私たちは応えなければなりません。あの方の愛に、あの方の信頼に」[アル]

 

「オゥオゥオゥオゥ…………!」[コキュ]

 

「…………いつまで泣いているんですか、コキュートス…………」[デミ]

 

 

 

◇至高の戦い────

 

 

「アインズさまぁ! なかなか痛かったですよぉ!」[シャル]

 

「そうか。では続けて〈失墜する天空(フォールンダウン)〉!」

 

「ガフッ! な、なぜ連続で超位魔法を…………!?」[シャル]

 

「さらに〈失墜する天空(フォールンダウン)〉!」

 

「ぐうぅぅぅううううっ! なぜ! なぜぇ!?」[シャル]

 

「知りたいかね? シャルティア」

 

「あ、あぁぁ…………」[シャル]

 

課金アイテム(シューティングスター)だよ!」

 

「あぁぁぁああああああ!!」[シャル]

 

 

 

◇至高の戦いを見ていた者たち────

 

 

「なんと…………圧倒的ではないですか…………」[デミ]

 

「秒殺デアッタナ」[コキュ]

 

「超位魔法の連打で一度シャルティアを滅ぼし、アイテムによって復活したシャルティアに特殊技術で止めを刺す…………」

 

「瞬殺ノ方ガ正シイカモ知レヌ」[コキュ]

 

「あれほどの力をお持ちだったとは…………正直私は、いえ、私たちは至高の方々のお力の、ほんの一端しか知らされていないのかもしれませんね」[デミ]

 

「ウム。私モアインズ様トシャルティアノ戦イハ、三:七デアインズ様ガ不利ダト予想シテイタ」[コキュ]

 

「ああ…………アインズ様♡ アインズ様♡ 早くお戻りくださいませ♡ 私は、私はもう…………♡」

 

「……………………」[デミ・コキュ]

 

「アインズ様~~~~っ♡」

 

「シャルティアの復活準備を進めますか…………」[デミ]

 

「ソウダナ」[コキュ]

 

 

 

◇シャルティア復活────

 

 

「…………アインズ様?」[シャル]

 

「目覚めたか、シャルティアよ」

 

「わたしはいったい…………はっ、なぜ裸に? あ、ああ、もしかして、わたしはここで初めてを…………」[シャル]

 

「それはまた今度な」

 

「えっ…………?」[シャル]

 

「んん! シャルティアよ、お前の最後の記憶はなんだ?」

 

「あ、はい、えぇと…………ソリュシャンとどうすればアインズ様のご寵愛を受けることが出来るか話して」[シャル]

 

「そこは飛ばしてよい」

 

「え、はい、その後は…………盗賊のアジトを襲って中にいた人間をナザリックに送って…………その後は、その後は…………」[シャル]

 

「どうした、覚えていないか?」

 

「はい…………申し訳ありません」[シャル]

 

「いや…………よい、よいのだシャルティア。他に異常はないか?」

 

「はい、問題はないようでありんす」[シャル]

 

「そうか…………うむ…………」

 

「あの、アインズ様…………わたし、なにか?」[シャル]

 

「それは私から伝えます、アインズ様」[アル]

 

「…………うむ、そうだな。では任せたぞ、アルベド」

 

「畏まりました…………ほら、行くわよシャルティア」[アル]

 

「え…………? 行くって、何処にでありんすか?」[シャル]

 

「アインズ様の勇姿を映像に残してあるの。複数のアングルから撮影してあって、すでに編集済みよ。それを皆で観に行くの」[アル]

 

「わたしも撮影したんだよ!」[アウ]

 

「ぼ、ぼくも手伝いました!」[マレ]

 

「そうか。では、二人には褒美を与えねばな」

 

「そんな、褒美なんて…………」[アウ]

 

「お、お姉ちゃん…………ゴニョゴニョ…………」[マレ]

 

「ぴえっ!」[アウ]

 

「? どうした、アウラ」

 

「いいい、いえ、何でもありません、アインズ様! あの、その、ご褒美…………期待して、いいんでしょうか…………」[アウ]

 

「ああ、望むものがあるなら、言うといい」

 

「わ、分かりました! あ、あ、あ、後でお伺いします!」[アウ]

 

「あ、あの、ぼくも、いっしょに…………」[マレ]

 

「あらあら…………仕方ないわね、ご褒美ですもの。今日は二人に譲るわ」[アル]

 

「! そ、そういうことか。だが譲るって…………アルベドとは帰ってすぐに」

 

「さ、行くわよ皆!」[アル]

 

「ちょ、ちょっと、なんでありんすか? この疎外感は!」[シャル]

 

「観ればわかるよ。さ、行こうかシャルティア」[デミ]

 

「うう…………デミウルゴスもなんか怒ってる感じでありんす…………」[シャル]

 

「それは仕方ないんじゃないかな」[アウ]

 

「仕方ないと思います」[マレ]

 

「仕方ナイ」[コキュ]

 

「仕方ないのよ」[アル]

 

「なんなんでありんすかーーーーーーー!?」[シャル]

 

 

 

◇その少し後、ナザリック某所────

 

 

「いやぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」[シャル]




 ふはは。
 一日に三話書いてやったわ。
 私にしては多い方。
 でも他の人には普通くらいの量なのかな?

 もっと早く、そして面白いものを書けるようになりたい今日この頃。

 まあ、もう今日は疲れたから寝るけど。


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モモンガ様、蜥蜴村ではちょっと自重

 シャルティアを洗脳から解き放ち、それを成した者たちを警戒しながらも色々と働いていたアインズ様。
 情報のすり合わせを目的とした報告会を開くため、久しぶりにナザリックへ帰還したのだが────


◇半月ぶりに自室でゆっくり────

 

 

「お帰りなさいませ、アインズ様」[アル]

 

「うむ。すまんなアルベド、長らく留守を任せて…………で、その格好はなんだ?」

 

最終決戦装備(裸エプロン)、でございます♡ ペットを連れて単身赴任された旦那様を新妻が迎えるのに、これ以上の装備はないと聞き及びました♡ いかがでしょうか、アインズ様?」[アル]

 

「そう、だな。大変魅力的だぞ、アルベド」

 

「くふーーーーーっ! アインズ様ーーーーー♡!」[アル]

 

「あ、ちょ、報告会は!?」

 

「まずは私♡でございます、アインズ様♡!」[アル]

 

「あ、はい」

 

 

 

◇コキュートス敗戦報告(前)────

 

 

「ねぇ…………あの、アレは?」[アウ]

 

「第八階層守護者のヴィクティムですよ、アウラ」[デミ]

 

「あぁ、よかった。アインズ様とアルベドの赤ちゃんだったらどうしようかと思ったよ」[アウ]

 

「私モソウナノカト思ッテイタ」[コキュ]

 

「ぼ、ぼくも…………」[マレ]

 

「わたしもでありんす」[シャル]

 

「…………だから皆遠巻きに見ていたのかい?」[デミ]

 

あおむらさきあかねたまご(そんな、わたしがアインズさまの)、やまぶきたいしゃこくたん(おこだなど、おそれおおいです)」[ヴィク]

 

「なに語!?」[アウ]

 

「確か天使言語であるエノク語を元にした…………エノグ語とかいうものだったと記憶していますが…………」[デミ]

 

「聞キ取リヅライナ」[コキュ]

 

「あなたが言うでありんすか?」[シャル]

 

「すみません。ふつうにはなします」[ヴィク]

 

「あ、ああ、普通に喋れるのだね、ヴィクティム。じゃあすまないがそれで頼むよ」[デミ]

 

「コキュートスは…………」[アウ]

 

「私ノ言葉ガ聞キ取リヅライノデアレバ、ソレハ喋リ方ガドウコウトイウヨリモ、声質ニヨルモノダ。変エルコトハ出来ン」[コキュ]

 

「ま、そうでありんしょうねぇ」[シャル]

 

「あんたも普通に喋ったら?」[アウ]

 

「わたしのこれは、ペロロンチーノ様によって定められたものでありんす!」[シャル]

 

「でもたまに普通に喋ってるじゃん」[アウ]

 

「う…………」[シャル]

 

「そこまでにしたまえ。拝謁に関する打ち合わせをしますよ(口唇蟲を使えばコキュートスの声を変えることもできるのですが…………まあ、余計なことは言わないでおきましょう)」[デミ]

 

 

 

◇コキュートス敗戦報告(中)────

 

 

「まずは────デミウルゴス」

 

「はっ」[デミ]

 

「ことあるごとに呼びつけていることに加え、低位の巻物(スクロール)を作成可能な皮の発見…………実に見事な働きだ。感謝するぞ」

 

「おお、感謝などもったいないことでございます、アインズ様! 私はあなたのシモベ。至高の御方の為に働くことこそ我が喜びでございます!」[デミ]

 

「うむ。だが、その忠勤に対する私の感謝は是非にも受け取ってくれ」

 

「はっ、ありがとうございます! アインズ様!」[デミ]

 

「よい。では次にヴィクティム」

 

「はっ、アインズさま」[ヴィク]

 

「……………………」

 

「? アインズさま?」[ヴィク]

 

「あ、ああ、すまん少し考え事をな(俺とアルベドの子供を想像しちゃったよ)」

 

「しゃざいなどふようでございます、アインズさま」[ヴィク]

 

「う、うむ。だが、それでも新たに謝罪はさせてもらう。想定外の事態が起こった際には、お前の特殊技術(スキル)を使わせてもらうことになるからな。すぐに蘇らせるとはいえ、その命を奪うこと、許して欲しい」

 

「もったいないおことばです、アインズさま。しこうのおんかたのおやくにたてるのであれば、このいのち、なんどでもおつかいください」[ヴィク]

 

「わかった、ヴィクティム。謝罪ではなく、お前の愛に感謝しよう」

 

「アインズさま…………!」[ヴィク]

 

「では次に────シャルティア」

 

「はっ、はい!」[シャル]

 

「我が元まで寄るがよい…………お前の胸に刺さった棘の件だ」

 

「ああ! アインズ様! どうか、どうかわたしに罰をお与えください! 守護者の地位に就くものでありながら、あのようなことをしでかした罪深き愚か者にふさわしい罰を!」[シャル]

 

「うむ…………シャルティアは、あの映像を観たのだったな? アルベド」

 

「はい、アインズ様の戦い方を学ぶためにも、守護者全員で百回は観させていただきました。その後はダビングして各自持ち帰り、各々(おのおの)でアインズ様の勇姿を繰り返し何度も何度も拝見させていただいております」[アル]

 

「ひゃっ…………んん! あー、それだけ観たのであれば、それは十分な罰ではないか? シャルティア」

 

「確かに、あの映像を観るのは辛く苦しいものでありんした。わたしの罪の証拠とも言えるものでありんすから…………ですが、アインズ様に討たれるわたしの姿を何度も見ているうちに、なんだか、その、だんだん気持ちよくなってきてしまって…………」[シャル]

 

「うわぁ」[アウ]

 

「ですから、ですからあれでは罰にならないのでありんす! アインズ様、どうかわたしにさらなる罰を!」[シャル]

 

「……………………(うわぁ…………いや、ペロロンチーノさんがマゾという設定もつけてたんだっけ? でも、そうなると結局どんな罰を与えても悦んじゃうんじゃ…………)」

 

「アインズ様?」[アル]

 

「はっ、いや、うむ。そうだな…………それについては追々(おいおい)考えるとしよう。だがシャルティアよ、私はお前の罪をすでに赦しているし、お前たち愛する者の苦しむ姿など見たくはない。そのことはよく覚えておいてくれ」

 

「嗚呼、アインズ様! 愛などと!」[シャル]

 

「よい、シャルティア。では下がるがよい…………次に、コキュートス」

 

「ハッ!」[コキュ]

 

「敗北で終わったな」

 

「ハッ、コノ度ノ私ノ失態、誠ニ申シ訳アリマセン!」[コキュ]

 

「コキュートス、アインズ様に失礼よ。面を上げて謝罪なさい」[アル]

 

「失礼シマシタ!」[コキュ]

 

「よい、アルベドよ。…………それで、コキュートス。兵ではなく将として戦い、何を感じた?」

 

蜥蜴人(リザードマン)ヲ侮ッテオリマシタ。彼我(ヒガ)ノ戦力差、地形、ソウイッタモノヲ調ベモセズ、タダ闇雲ニ戦力ヲ投入スルダケデハ勝テヌノダト…………個デハナク(グン)トシテノ戦イハ、私ガコレマデ培ッテキタ戦イ方トハ、全ク別ノモノデアルコトヲ痛感イタシマシタ」[コキュ]

 

「素晴らしい!」

 

「ハッ?」[コキュ]

 

「学んでいるではないかコキュートス。それでいい、それでいいのだ。誰にでも失敗はある、しかし、そこから何を学ぶか、それこそが大事なのだ。お前はこの世界でも成長できるということを示してくれた。それは失態などではなく、むしろ賞賛に値する必要不可欠な失敗だったと言えるだろう」

 

「デスガ…………」[コキュ]

 

「ああ、そうだろうな。失敗して褒められてもその心は晴れまい。ゆえに命じるぞ、コキュートス」

 

「ハッ!」[コキュ]

 

「自らの失敗を、自らの功によって打ち消す機会を与えよう────蜥蜴人(リザードマン)を殲滅するのだ。お前一人でな」

 

「ア、アインズ様…………」[コキュ]

 

「ん? どうした、コキュートス」

 

「オ願イノ儀ガゴザイマス!」[コキュ]

 

「コキュートス! 自らの失敗を拭う機会をアインズ様から与えられながら、それに応えるでもなく請願をするとは…………っ! いったいどういうつもりなの!」[アル]

 

「よい、アルベド」

 

「しかし、アインズ様…………!」[アル]

 

「よいのだ。私は今、実に機嫌がいい。その願いとやらを言うがいい、コキュートス」

 

「ハッ…………ナニトゾ、蜥蜴人(リザードマン)タチヲ、ナザリックノ傘下ニ加エルコトヲオ許シクダサイ!」[コキュ]

 

「ほう…………」

 

 

 

◇コキュートス敗戦報告(後)────

 

 

「感謝スル、デミウルゴス。オ前ノ口添エガナケレバ、蜥蜴人(リザードマン)タチノ殲滅ガ決定サレル所ダッタ」[コキュ]

 

「いや、礼の必要はないとも。アインズ様はこの結果に満足されているようだったしね」[デミ]

 

「そうなのでありんすか?」[シャル]

 

「そうだとも、全てはアインズ様の想定された通りに運んでいたのだよ。でなければ、あれほどご機嫌麗しくあるはずがないだろう?」[デミ]

 

「は、はい。アインズ様は、とても嬉しそうにしてた、と、思います」[マレ]

 

「そうねー。なんていうか、威厳あるオーラの中に、喜び成分が混じっているような感じだったものね」[アウ]

 

「そ、そうなのでありんすか?」[シャル]

 

「私ニモ、分カラナカッタ」[コキュ]

 

「アインズ様のご寵愛を受けた者と受けてない者の差、かもねぇ」[アウ]

 

「えっ!? チ、チビスケ、アインズ様からのご寵愛を受けたでありんすか!?」[シャル]

 

「ん? そうだよ?」[アウ]

 

「マ、マーレも?」[シャル]

 

「は、はい…………////」[マレ]

 

「い、いつの間に…………」[シャル]

 

「あたしはこの前の映像撮影のご褒美に」[アウ]

 

「くひぃ! マ、マーレは…………?」[シャル]

 

「ぼ、ぼくは、ナザリックを丘に偽装した時の、ご褒美に…………////」[マレ]

 

「チ、チビスケどころか、マーレにまで先を越されるなんて……………………ん? 寵愛を受けた者と、受けていない者の差…………? ま、まさか! デミウルゴスも!?」[シャル]

 

「そんな訳ないでしょう。私は男ですよ?」[デミ]

 

「それは…………でも…………そう! それを言うならマーレだって男じゃありんせんか!」[シャル]

 

「チチチ、それが違うんだな、シャルティア」[アウ]

 

「アウラ…………なにが違うというでありんすか?」[シャル]

 

「マーレはね、男の娘なんだよ!」[アウ]

 

「…………男の子なんでありんすよね?」[シャル]

 

「ちがうちがう。男の()なの!」[アウ]

 

「それは…………どこがどう違うのでありんすか?」[シャル]

 

「私もそれは一度確認しておきたかったんですが…………その男の娘というのは、マーレが少女の格好をしていることとなにか関係があるのですか? アウラ」[デミ]

 

「お、さすが鋭いねー、デミウルゴス。そう! 何を隠そう、男の娘というのは『えるじーびーてぃーをちょうえつしたあらたなるせいのふろんてぃあ』にして『せつなのきらめきとはかなさのちょうわがうみだすびのけっしょう』なんだよ!」[アウ]

 

「…………デミウルゴス、分かりんしたかぇ?」[シャル]

 

「二つ目の言葉は『刹那の煌きと儚さの調和が生み出す美の結晶』だと思いますが、一つ目のえるじーびーてぃーという言葉の意味が分かりません。それを超えるなにかすごいものだということだけは伝わってきますが…………アウラ、えるじーびーてぃーとはなんなのですか?」[デミ]

 

「うーん、実は私もよく分かってないんだよね」[アウ]

 

「分からないのに、なぜああも自慢気だったでありんすか!?」[シャル]

 

「いやぁ、ぶくぶく茶釜様が嬉しそうにそう仰ってくださっていたのはちゃんと覚えてるんだけど、その意味までは…………」[アウ]

 

「ああ、なるほど、ぶくぶく茶釜様のお言葉をそのまま伝えてくれていたのですね」[デミ]

 

「デミウルゴス、なにか分かったでありんすか?」[シャル]

 

「いえ、容易には分からないだろうという事が分かっただけですよ。至高の方々が残された言葉は難解で、我らが理解できるものは数少ない。アウラが先ほど言っていた言葉も、その一つになるでしょう」[デミ]

 

「確かに…………わたしもペロロンチーノ様のお言葉はいくつか覚えていんすが、その意味までは分からないものが多いでありんす」[シャル]

 

「しかし、何ものにも代え難い大切なお言葉であることは間違いありません。アウラ、ぶくぶく茶釜様のお言葉を教えてくれてありがとうございます。私もその言葉の意味がいつか理解できるよう、精進を重ねていきますよ」[デミ]

 

「えへへー…………あ、でね、ぶくぶく茶釜様が仰るには、男の娘は男性に愛されてもなんの問題もないんだって。むしろその方が圧倒的に『もえる』って仰ってたから、マーレがアインズ様のご寵愛を受けたことを知れば、ぶくぶく茶釜様もお喜びになると思うよ」[アウ]

 

「もえる…………燃える、でしょうか? 炎系の状態異常を示す言葉? いや、それでは前後の文脈に繋がらない…………むしろ精神的な何かだと捉えたほうが…………」[デミ]

 

「ち、な、み、に、あたしは『雄んなの娘(おんなのこ)』って言うらしいよ。男の娘と対をなす、同じくらい重要な存在なんだって!」[アウ]

 

「ナルホド、勉強ニナッタ。因ミニマーレ、一ツ質問ヲシテモイイダロウカ?」[コキュ]

 

「静かにしてたと思ったら、急に会話に加わってきたでありんすね、コキュートス」[シャル]

 

「え、あ、あの、はい。ぼくに答えられることでしたら…………」[マレ]

 

「男ノ娘トハ、オ世継ギヲ産ムコトハデキルノダロウカ?」[コキュ]

 

「「……………………」」[アウ、デミ、シャル]

 

「ドウナノダロウカ?」[コキュ]

 

「いやー、流石にそれは無理じゃない?」[アウ]

 

「男性に愛されるべき存在でありんすとはいえ、性別的には男でありんしょうから…………」[シャル]

 

「どう、なのだろうね。私は男の娘の詳しい生態を知らないからなんとも…………」[デミ]

 

「あ、あの!」[マレ]

 

「わっ、な、なにマーレ、急に大きな声出して」[アウ]

 

「う、産める、と、思います…………」[マレ]

 

「えっ!? う、産めるんでありんすか!? ど…………どこから?」[シャル]

 

「それは、その…………ぼくもわからないんですけど…………」[マレ]

 

「ふむ、その割には確証を持った声に聞こえたんですが…………なにか根拠のようなものでも? マーレ」[デミ]

 

「は、はい、あの、ぶくぶく茶釜様が、そう仰ってたんです」[マレ]

 

「えっ、なにそれ、あたし知らない!」[アウ]

 

「あ、うん、あの時は、お姉ちゃんいなかったから…………」[マレ]

 

「あー、もう、アウラ! 話の腰を折りんせんでくんなまし!」[シャル]

 

「あー、ははは…………ごめんごめん、ぶくぶく茶釜様のことになるとつい、ね…………マーレもごめん、続けて続けて」[アウ]

 

「う、うん。ぶくぶく茶釜様は、ぼくの頭を撫でながら、こう仰ったんです。『いつか可愛い赤ちゃんを産んでね』って…………」[マレ]

 

「「……………………」」[アウ、デミ、シャル]

 

「だから、う、産めると思います!」[マレ]

 

「ぶくぶく茶釜様が仰ったのなら…………」[アウ]

 

「ええ、産めるのでしょうね」[デミ]

 

「ど、どこから…………」[シャル]

 

「…………確かに、それは疑問ですね。一度、体を調べさせてくれませんか? マーレ」[デミ]

 

「だ、ダメです! あ、す、すいません。でも、ぼくの体は、アインズ様のものですから…………////」[マレ]

 

「…………そうですね。すみません、マーレ。デリカシーのない発言でした。撤回します」[デミ]

 

「い、いえ、いいんです。ぼくこそ、大きな声をだしてごめんなさい」[マレ]

 

「ア、アインズ様のもの…………アインズ様のもの…………きぃーーーーっ! なんて羨ましいセリフでありんしょうか!」[シャル]

 

「あんたもそのうちお呼びが掛かるよ」[アウ]

 

「上から目線!!」[シャル]

 

「…………ということらしいが、納得したかい? コキュートス」[デミ]

 

「ウム、オ世継ギヲ産ムコトガデキルノハ、大変喜バシイコトダ…………マーレ!!」[コキュ]

 

「ひゃ、はい! な、なんでしょう、コキュートスさん…………」[マレ]

 

「丈夫ナオ世継ギヲ産ンデクレ。ソシテ、教育係リニハ是非コノコキュートス…………イヤ、爺ヲ!」[コキュ]

 

「…………それが狙いだったんですか、コキュートス…………」[デミ]

 

「なんかコキュートスってさ、お世継ぎの話になると人が…………蟲が? 変わるよねー。あたしも同じこと言われたし」[アウ]

 

「なんか面倒くさそうでありんすが…………それでも羨ましいでありんすーーーーー!!」

 

「アインズさまのおよつぎ…………たのしみです」[ヴィク]

 

「あれ? いたの? ヴィクティム」[アウ]

 

「ひどいです…………」[ヴィク]

 

 

 

蜥蜴人(リザードマン)決戦前────

 

 

「さて、アウラ。ここに留まることを無理に決めて悪かった。お前は私にふさわしくない場所だというが、そんなことはない。お前が私の為にわざわざ作ってくれたのだ、私は気に入ったぞ? 時にはここで共に過ごすのも悪くないと思える程にな」

 

「ア、アインズ様…………」[アウ]

 

「ア、アインズ様…………♡」[アル]

 

「にじり寄るな、アルベド、今はよせ」

 

「も、申し訳ございません!」[アル]

 

「よい…………ところでアウラ、ひとつ聞きたいことがあるのだが…………」

 

「はい! なんでしょうかアインズ様!」[アウ]

 

「アレはなんだ?」

 

「あー、アレは…………」[アウ]

 

「簡素ですが、玉座を用意させていただきました」[デミ]

 

「(お前か! デミウルゴス!)そう、か。うむ、なるほど、な」

 

鷲獅子(グリフォン)飛竜(ワイバーン)などの、良い部分のみを集めて作っております」[デミ]

 

「ほう…………それは、よいもの、だな?」

 

「当然ナザリックの玉座には遠く及びませんが」[デミ]

 

「いや、うむ。アレもお前が私の為にわざわざ作ってくれたもの。私は気に入った、ぞ。…………特にその、あれだ、あの手を置く辺りの丸みなど、そう、手を置くのにちょうど良さそうではないか」

 

「流石はアインズ様! あの部分は数百体の中から厳選に厳選を重ねたものでございます。アインズ様の手のひらの大きさにちょうど収まり、かつ歪みが少なく、そして同じ大きさのものを探し出すのには少々時間が掛かりましたが」[デミ]

 

「(どう見ても人間の頭蓋骨だけど! 数百体って…………え? 数百体ってどっから出てきたの!?)…………それは、苦労をかけたな」

 

「とんでもございません! 至高の御方のために働くことこそ至上の喜び。頭蓋骨を厳選する作業も楽しいものでした」[デミ]

 

「……………………(言った! いま頭蓋骨って言った! いや人間のとは言っていないけれども!)」

 

「さ、どうぞお掛けください、アインズ様」[デミ]

 

「う、うむ。では、腰掛けさせてもら…………はっ! そうだ、シャルティア、お前には罰を与えるという約束だったな」

 

「はっ!」[シャル]

 

「今この場でそれを与える────屈辱という罰をな」

 

「畏まりました!」[シャル]

 

「そこに膝を折って頭を垂れるのだ。四つん這いになれ」

 

「はい!」[シャル]

 

「流石はアインズ様!」[デミ]

 

「(えっなに!?)…………ほう、デミウルゴス、気がついたか」

 

「もちろんでございます! しかしお見事ですアインズ様…………いえ、すぐに思い至ることのできなかった非才なるこの身を悲しむべきでしょうか」[デミ]

 

「(だからなに!?)…………ふむ」

 

「階層守護者であるシャルティアを足置き台(オットマン)にすることで、この玉座に不足している威厳を補う。それによって、この玉座の価値は至高の御身にふさわしい場所にまで高められることになるのです! このデミウルゴス、どのように感謝をお伝えすればよいのかすら分かりません!」[デミ]

 

「(微塵も考えてなかったよ! でも、今更断れる雰囲気じゃないな、これ。デミウルゴス涙ぐんじゃってるし)……………………うむ」

 

「しかも! 本来であれば私自身が務めるべきその栄光あるお役目を、シャルティアに罰を与えるという口実で実行させることで、実際にはすでに赦しているというご自身のお言葉を偽ることなくシャルティアの心に刺さった刺をも取り除く…………! ああ、ああ、御身はなんと、機知と英知と慈悲の心に溢れた方であらせられるのか!」[デミ]

 

「(足置き台にされるのって栄光あるお役目なの!?)ふ、ふふふ、よせ、デミウルゴス」

 

「アインズ様…………アインズ様は、私が考えに考えてたどり着いた答えを、瞬きすらも追いつかない刹那に組み上げ、言葉として発し、命を下されました。このデミウルゴス、まさに智謀の神を見た思いでございます!」[デミ]

 

「いや、うむ。そこまで思いつくに至ったお前は、すでに私に追いつきつつある。誇るがいい、デミウルゴス(どうしてそこまで深読みした! もはや俺の意図の介在率は0%だよ!)」

 

「勿体無きお言葉…………っ!」[デミ]

 

「デミウルゴス? ひとつ、間違っているわよ」[アル]

 

「(お前もかアルベド!)ほう…………」

 

「アルベド…………間違っているところ? いったいなにが…………はっ!」[デミ]

 

「(俺には全く分からん。俺の方を向くな、デミウルゴス。いいから気づいたならそのまま口にしろ!)…………よい、デミウルゴス。思うままを口にするがよい」

 

「智謀の神、私は先ほど申し上げました。しかし! アインズ様のお力はその英知のみにあらず! シャルティアを圧倒したあのお姿は、まさに戦いの神そのもの! つまり、アインズ様を表すに相応しい呼称とは、全知全能の神に他なりません!」[デミ]

 

「「おおぉぉぉぉぉぉ!」」[アウ、マレ、コキュ、シャル]

 

「そう、その通りよ、デミウルゴス」[アル]

 

「アルベド、そしてアインズ様…………私の思い違いを自ら正す機会をいただき、感謝の言葉もございません。非才の身でありながらアインズ様の力を推し量り、狭い範囲に収めようとするなど不敬の極みでございました。どうぞ私にも相応しい罰を」[デミ]

 

「アインズ様?」[アル]

 

「…………よい」

 

「デミウルゴス。アインズ様はお許しになるわ」[アル]

 

「ですが…………!」[デミ]

 

「あなたが言ったことよ? アインズ様は全知全能。当然そのも私たちが量ることができないほどに広く深いものだわ…………もちろん、(ねや)においても、ね」[アル]

 

「はぁ、はぁ、アインズ様、おみ足は…………おみ足の重みはまだでありんしょうか…………っ」[シャル]

 

「……………………(こいつら…………マジだっ!)」

 

 

 

蜥蜴人(リザードマン)決戦後────

 

 

「クルシュ・ルールー、お前たち蜥蜴人(リザードマン)はこれより繁栄の時を迎える。お前たちの世代、お前たちの子の世代には、此度の戦いを厭い、恐怖する心があろう。だが、お前たちの孫、ひ孫、そのさらに先の子孫たちは、此度の戦いに必ず感謝を示すだろう。我が支配下に入ったことを喜び、この戦いで死した蜥蜴人(リザードマン)の戦士たちは英霊として崇められることになる」

 

「…………! はい、全ておっしゃる通りになるかと存じます」[クル]

 

「その割には浮かない顔をしているようだが?」

 

「そんな、そのようなことはございません! 偉大なる御方の庇護下に加えていただいたことで、蜥蜴人(リザードマン)の未来は約束されました、これ以上望むものなど…………」[クル]

 

「ザリュース・シャシャ」

 

「!!」[クル]

 

「お前の(つがい)であったな」

 

「なぜ…………それを…………」[クル]

 

「その程度のことを、私が分からないと思ったのかね? …………まあ、いい、本題に入ろう。クルシュ・ルールー、お前に頼みがある」

 

「頼みなど…………絶対の支配者であるゴウン様がご命令くだされば、どのようなことでも…………」[クル]

 

「命令ではなく、個人的な頼みだよ」

 

「個人的な…………?」[クル]

 

「そう、極めて個人的な頼みごとだ。そして、その対価は────ザリュースの復活」

 

「! そのような、ことが…………!?」[クル]

 

「なに、私には容易いことだ。生を死に変えることも、死を生に変えることも、な」

 

「何を…………何をお望みなのでしょうか…………私の、身体ですか?」[クル]

 

「いやない…………ゴホン! いや、それはない。私が望むことはただ一つ────お前とザリュースが、多くの子を成すことだ」

 

「ザリュースと、子を…………?」[クル]

 

「そうだ、もちろん産んだ子を取り上げたりはしない」

 

「なぜ、そのような…………」[クル]

 

「ザリュースは蜥蜴人(リザードマン)の中で最も優秀な戦士だそうではないか、そして、お前は最も優秀な魔法詠唱者(マジックキャスター)。お前たち二人から生まれた子は、その優秀な力を受け継いでいる可能性が高い」

 

「それは…………そうかもしれませんが。なぜゴウン様がそれを望むのでしょうか。ゴウン様や、その側近の方々から比べれば、私たち蜥蜴人(リザードマン)など取るに足らない存在のはず。多少優秀な者が生まれた所で、特別お役に立てるような働きができるとは思えません」[クル]

 

「なに、今回のことで()()学んだのさ。経験することの意義というものをな」

 

「…………?」[クル]

 

「いやなに、今のは独り言だ。そう、なぜ優秀な子を望むか、だったか。それはな、クルシュ・ルールー…………私は、学校を作ろうと思っているのだよ」

 

「がっこう、ですか? それはいったい…………」[クル]

 

「知識を教え、技術を教え、そして戦う術を教える場所だ」

 

「…………!! 我々蜥蜴人(リザードマン)に教えを授けてくださると?」[クル]

 

「そう、そしてその対象は蜥蜴人(リザードマン)だけではない。今後、このナザリックには様々な種族が傘下として加わり、支配されることになる。そして、その者たちには絶対的な一つの価値観が求められることになるのだが…………それがなにか分かるかね?」

 

「ナザリック…………いえ、ゴウン様への忠誠、でしょうか?」[クル]

 

「その通りだ。流石に知恵が回るではないか、クルシュ・ルールー」

 

「畏れ多いことでございます」[クル]

 

「そこまで分かっているのなら、この後私が言いたいこともわかるな?」

 

「はい。学校とはつまり、知識や技術や戦い方を通して、ゴウン様への忠誠、信仰を身につけさせるための場所である、ということですね?」[クル]

 

「そうだ。先程も言ったが、今いるお前たちの世代の根底には、この私やナザリックに対する恐怖がある。恐怖は疑念を呼び、疑念は不満を呼び、不満は反乱を生み出すものだ。だが、これから生まれてくる子供たちにはそれがない。そのまっさらな心に、初めから私への忠誠を刻み込めたなら…………」

 

「全ての者がゴウン様を中心とした、新しい世界が生まれる…………」[クル]

 

「…………新しい世界、は言いすぎかもしれないが、まあ概ねそういうことだ。お前とザリュースの子供には、その学校教育のテストケースとなってもらいたいのだよ」

 

「教育を受けた私たちの子供が村に戻り、学校に行くことのできなかった子供たちにも教育を施す。そして、優秀なものが村を束ねる長に就くのもまた自明の理────つまり、私たちの子供の世代から本当の支配が始まると、そういうことなのですね」[クル]

 

「ん? うん、まあそういうことだ(もうちょっとライトな感じで考えてたんだけど…………)」

 

「畏まりました、ゴウン様のお申し出、何一つとして疑問に思うことも不満に思うこともございません。どうかザリュースを…………私のただ一人の(つがい)を復活させてくださいませ」[クル]

 

「ふむ…………分かった。ザリュースにはお前が伝えるといい。お前たちの子は、新しい世界に最初の一歩を踏み出す栄誉を手に入れたのだ、とな」

 

「はい。必ず伝えます」[クル]

 

「よし。ついでだから族長たちも生き返らせてやろう。武技の研究などに協力してもらう必要もあるしな」

 

「寛大なるご慈悲に感謝いたします」[クル]

 

「うむ…………(なんか、途中からクルシュの目にうちのNPC達に似た光が宿ってきた気がするんだけど…………)」

 

「では、ザリュースの元へご案内いたします、偉大なるゴウン様」[クル]

 

「あ、はい」

 

 

 

 




 なぜだ。
 
 トカゲ編はアインズ様の出番がほとんどないから、二千文字くらいで終わるかなー、と思っていたのに、書き終わってみればなぜか一万文字超…………!
 
 どうした!? 

 何があった!?


 ……………………(プレビューを確認中) 


 わかった! 男の娘談義に費やしたんだ! 

 なら悔いはなし。

 あと、だんだんシャルティアに「い、いつの間に…………」と言わせるのが楽しくなってきた。
 
 ごめんシャルティア。
 君がアインズ様に呼ばれるのはもう少し先になりそうだ。

 


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モモンガ様、王国で自重せず上

 相変わらずこの世界の金策に苦しむアインズ。
 そこにアインズが依頼していた鉄鉱石が集まったという知らせを持ってナーベラルが現れるが────


◇嬉しくて鉄鉱石のことは伝え忘れ────

 

 

「金が足りない…………全然足りない…………」

 

「モモン様、なにか仰いましたか?」[ナベ]

 

「む、戻ったかナーベ。いや、さっきのはなんでもない、ただの独り言だ。誤解させてすまんな」

 

「謝罪など! どうか私のことなど気にせず、お好きなように振舞ってくださいませ!」[ナベ]

 

「うむ…………(とは言っても、ナーベが隣にいるのにぶつぶつ独り言をつぶやいている訳にもいかないしな)」

 

「も、もしくは…………」[ナベ]

 

「うん?」

 

「あの、私ごときがモモン様のお考えを理解することなど出来ないと承知してはいるのですが…………それでも、その、お話を聞かせて頂けるのなら…………それに勝る幸せはないと申しますか…………」[ナベ]

 

「……………………」

 

「あの…………モモン様?」[ナベ]

 

「いや、可愛いことを言ってくれるではないか(いやほんと、心臓もないのにドキッとしたよ!)」

 

「か、か、可愛いなどと、そのようなお戯れを!」[ナベ]

 

「私は嘘などつかん。つく必要もないからな(今のも含めて九割近く嘘とハッタリだけど)」

 

「し、失礼いたしました!」[ナベ]

 

「よい。褒めたのに謝られたのでは、私の立つ瀬がないではないか」

 

「も、申し訳…………いえ、あの…………」[ナベ]

 

「ははは、よいよい。意地悪をして悪かったな、ナーベ」

 

「い、いえ、そのような…………」[ナベ]

 

「では、お詫びの代わりとして────私の話を、聞いてくれるかな?」

 

「…………っ! はい! モモン様!」

 

 

 

◇またそんなもの拾ってきて、ダメでしょ!────

 

 

「お帰りなさいませ、セバス様────はぁ…………またですか?」[ソリュ]

 

「只今戻りました、ソリュシャン」[セバ]

 

「今度は何を拾ってこられたのです?」[ソリュ]

 

「ええ、袋に詰められ、おそらくこれから処分される所だったであろう重症の女性を────」[セバ]

 

「捨ててきてください!」[ソリュ]

 

「…………ちゃんと私が面倒を見ますので」[セバ]

 

「そういうことではありません。なぜ、わざわざ面倒事に巻き込まれそうな者たちばかり拾ってこられるのですか! そしてこれで何人目ですか、セバス様!?」[ソリュ]

 

「五人目…………ですね」[セバ]

 

「その詳しい内訳は!?」[ソリュ]

 

「目隠しをされて連れ去られる途中だった少女、黒い衣装に身を包んだ複数の暗殺者に追われる元暗殺者の女性、夫を目の前で貴族に殺され自身は慰みものになる寸前だった未亡人、異様なほど全身鎧(フルプレート)抱擁(ハグ)と黒目黒髪の女性に怯える金髪の女性、そして今拾ってきた女性の五人です」[セバ]

 

「…………今日こそアインズ様にご報告させていただきますからね」[ソリュ]

 

「お、お待ちなさい、ソリュシャン! 金髪の女性は翌日行方不明になってしまいましたが、それ以外の女性は全員問題を解決して送り出したではないですか! この女性も…………」[セバ]

 

「問題がないのなら、なぜアインズ様にご報告なさらないのですか?」[ソリュ]

 

「そ、それは…………」[セバ]

 

「ご自身でも分かっていらっしゃるのでしょう? セバス様の行われていることは、ナザリックにとって、ひいては至高の御方であらせられるアインズ様にとって何ら益のないことであることを」[ソリュ]

 

「む、むう…………」[セバ]

 

「アインズ様から仰せつかった仕事はきちんとこなされているので黙認してきましたが、これ以上は看過できかねます。そう四人目の時にもお伝えしたはずです」[ソリュ]

 

「しかし…………」[セバ]

 

「…………はぁ、三日です。セバス様の部下として、あと三日待ちましょう。それまでにその人間は何とかしてください。それが出来ないのであれば────」[ソリュ]

 

「分かりました。三日間の猶予をいただきありがとうございます、ソリュシャン」[セバ]

 

「ご自分で仰ったのですから、その間その人間の世話はご自身でお願い致します。私はナザリックの利益にならないと分かりきっていることの為に働くつもりはありませんから」[ソリュ]

 

「もちろんです、ソリュシャン」[セバ]

 

「では、()()()()()があればお呼び下さい。…………失礼いたします」[ソリュ]

 

「…………………………………………ふぅ、これは呪いなのですかねぇ…………たっち・みー様…………」[セバ]

 

 

 

◇捨ててきなさいって言ったのに!────

 

 

「セバス様…………」[ソリュ]

 

「なんでしょう、ソリュシャン」[セバ]

 

「あれから七日経ちますが────いつアレを追い出すのですか?」[ソリュ]

 

「もう少し、もう少しだけ待って頂けませんか? いま彼女はようやく安定してきたところなのです。いま外に放り出してしまえば、彼女は二度と人を信じることが出来なくなってしまうでしょう」[セバ]

 

「それがどうしたというのです? アレが人間を信じられなくなったところで、それが私たちになんの関係があるというのですか?」[ソリュ]

 

「…………関係は、ありません」[セバ]

 

「でしたら…………」[ソリュ]

 

「ですが、今のところなんの問題もないのも事実です。そうでしょう、ソリュシャン?」[セバ]

 

「今問題がないことが、今後も問題が起こらないことの証明にはなりません。セバス様がアレを拾ってきたときの状態を考えれば、アレは間違いなく問題の種です」[ソリュ]

 

「たかが人間が起こす問題です。私が対処しきれないほどの厄介事になることはないでしょう」[セバ]

 

「────ではセバス様、もしあの人間がナザリックにとって害となる存在だと判明した時には…………」[ソリュ]

 

「そのときは、私が処分します」[セバ]

 

「…………その言葉、お忘れなきように」[ソリュ]

 

「もちろんですとも、ソリュシャン────おや、どうやら来客のようですね。対応してきます」[セバ]

 

「…………よろしくお願いいたします、セバス様…………」[ソリュ]

 

 

 

◆ついぞ出番がなかったので────

 

 

「ようこそおいで下さいました! 私の創造主たるモモンガ様!」[パン]

 

「うむ、久しぶりだな、パンドラズアクター。まずは謝罪させてもらおう。今までこの宝物庫にお前を押し込めていて悪かった」

 

「とんでもございません、モモンガ様! このパンドラズアクター! 与えられた使命を果たすことこそ至上の喜び! まして! まして! 私は至高の方々が集められたこの数々の宝物たちを心から愛しておりますれば! この宝物庫にいる限り退屈とは無縁でございます!」[パン]

 

「そ、そうか…………あ、そうだ。パンドラズアクターよ、私は名前をアインズ・ウール・ゴウンに変えた。今後は私のことをアインズと呼ぶがいい」

 

「畏まりました!」[パン]

 

「…………(うーん、自分で設定しておいてなんだけど…………やっぱり軍服やこの仕草は格好いいな!)」

 

「どうかされましたか? アインズ様」[パン]

 

「い、いや、何でもないとも」

 

「であればよろしいのですが…………して、本日はどのような御用でこちらに?」[パン]

 

「うむ、実はお前に頼みたい仕事があってな…………」

 

 

 

◇俺より強いやつに、俺を強くしてもらう!────

 

 

「────なるほど、あなたの性格は大体掴めました。戦士にとって、手や武器はその人物を写す鏡。あなたは非常に好感を持てる方のようだ」[セバ]

 

「…………お恥ずかしい限りです」[クラ]

 

「いえ、恥などではありませんよ。あなたの手は、自らの才能以上を求めて訓練を繰り返した者の手。そしてあなたの剣は、少しでも勝算を上げるべく磨き上げられた向上心の証。予備武器ゆえに見逃された小さな傷は、あなたがまだ未熟な証拠です。しかし、そのことに意識を向けたあなたは、今わずかながら成長を遂げられました」[セバ]

 

「俺が…………成長を?」[クラ]

 

「はい、それはほんのわずかなもの。それこそ、その武器に付いた小さな傷ほどの成長です。ですが成長とはその積み上げによってしか得られません。才あるものはその幅が大きい、ただそれだけのことなのですよ。自らの小さな成長に意識を向けないものは、結局自ら積み上げたものを潰してしまいます。あなたは今、予備武器に付いた小さな傷を恥じた。その時に思ったはずです、二度とこのような傷は残さない、と」[セバ]

 

「それは…………はい、その通りです」[クラ]

 

「それを忘れないことです。自らの成長を見逃さないことです。それこそが鍛錬の本当の意義であると、私は考えています」[セバ]

 

「あなたは…………あなたはいったい…………」[クラ]

 

「偉大な方にお使えする、ただの執事ですよ。さて、柄にもなく長話をしてしまいました…………では、訓練をつけましょうか────」[セバ]

 

 

 

 ────『モモンガ様、王国で自重せず下』につづく…………

 




 王国の漢たち上巻…………

 まーアインズ様の出番がないことないこと。

 NPCもセバスとソリュシャン以外にほとんど出てこないから、今回書く事がほとんどなかったです。

 仕方ないのでモモン様とナーベをイチャイチャさせたり、クライムくんをセバスに諭させたりしてました。
 
 セバスがなんだか壊れているのは、その余波のようなものです。


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モモンガ様、王国で自重せず下(前)

 クライム、ブレインと共に八本指の娼館を襲撃したセバス。
 娼館を壊滅させ、セバスを脅していたサキュロントも捕らえ、やれ一安心と館に帰ったセバスを待ち受けていたのは────


◇至高の御方?────

 

 

「遅くなりまして申し訳ございません」[セバ]

 

「…………よい。気にするなセバス。連絡もなしに突然来たのだからな。お前の予定と合わないこともあるだろう────ところで、今日も巻物(スクロール)の買い付けに行っていたのか?」

 

「はっ…………いえ、それは…………」[セバ]

 

「いや、気にするな。今日はそんなことを聞きにわざわざ来たわけではないからな。それより、そんな場所で頭を下げていないで、早く部屋に入って来い」

 

「はっ」[セバ]

 

「……………………その辺りで止まったほうがいいと思うがね。セバス」[デミ]

 

「キチキチキチッ」[コキュ]

 

「…………はっ」[セバ]

 

「さてセバスよ、私がなぜこの場にいるのか、その理由は分かるな?」

 

「…………私が拾った人間のことで、ではないかと」[セバ]

 

「その通りだ。しかし、そうではない、とも言える」

 

「それは…………?」[セバ]

 

「お前が可愛らしいペットを五匹拾った────そのこと自体は大した問題ではない。問題なのは、なぜそれを私に報告しなかったのか、ということだ」

 

「も、申し訳ありません! アインズ様!」[セバ]

 

「謝罪が聞きたいのではない、セバス。なぜ報告しなかったのか、その理由を聞きたいと言っているのだ」

 

「そ、それは────」[セバ]

 

「セバス。そこから先、発する言葉には気を付けよ。私はお前の忠誠を、言葉と心で見る。もしお前の言葉に嘘が、心に偽りがあれば、その身に訪れるのは死ではない────追放だ」

 

「…………!!!」[セバ]

 

「さあ、無からは何も生まれぬ。もう一度言ってみよ、セバス。なぜ、報告をしなかった?」

 

「は、はっ!! 私の行為は、ナザリックに対し益をもたらすものではありませんでした! ゆえに、唯一残られた至高の御方であるアインズ様に見放されることを恐れ、愚かにも報告を致しませんでした! どうか、どうかお許しを!」[セバ]

 

「ふむ…………では、再度聞こう『なぜ』、と。なぜナザリックの益にならぬことをしたのだ、セバス。お前ほど忠義に厚いものが、なぜ?」

 

「そ、それは────」[セバ]

 

「困っている者を見過ごすことができなかった、か?」

 

「ア、アインズ様…………なぜ」[セバ]

 

「セバスよ。お前はナザリックの中でも例外的に善の性質を持つ存在として創造された一人。弱者に対して蔑みではなく哀れみを持つのは当然のことだ。人が泣いていれば、苦しんでいれば、その手を差し伸べずにはいられない。そうなのだろう?」

 

「…………はっ」[セバ]

 

「それを恥じることはない、お前はそうあれと造られたのだから。だがなセバス、人とはそもそも泣きながら生まれてくるものなのだ。愚かな同胞しか存在しない種として生まれたことを嘆き悲しみ、助けてくれと叫びながらこの世に生を受けるのだ。…………ゆえに聞こう、お前が助け、そして送り出した者たちは、この先もう泣くことはないと、そう思うか?」

 

「それは…………」[セバ]

 

「そうはならないだろう。人として生まれ、人として生きるしかない者たちは、『人である』という枠から逃れ出ることは出来ない。それはつまり、死が訪れるその時まで苦しみ続けることと同意なのだから」

 

「…………そう、なのかも知れません…………ですが!」[セバ]

 

「セバス。アインズ様のお言葉に異を唱えるのも、そこまでにしてくれないかな? いい加減、私もコキュートスも限界なのだよ」[デミ]

 

「…………ギチギチギチギチッ」[コキュ]

 

「よい、デミウルゴス」

 

「…………ですが、アインズ様」[デミ]

 

「よい…………と、()()()()()

 

「…………! はっ、失礼いたしました。()()()()()()そう仰るのであれば」[デミ]

 

「さて、セバス。お前が言いたいことは分かるつもりだ。たっち・みーさ────ん、のことであろう?」

 

「…………っ! はっ!(このお方は…………私の心をどこまで…………)」[セバ]

 

「確かに、彼は言っていた『誰かが困っていたら助けるのは当たり前』────私とて、その言葉を忘れたことはない」

 

「アインズ様…………」[セバ]

 

「しかし、だ。お前はその言葉の意味を、本当に理解しているのか?」

 

「それは…………どいうことなのでしょうか。言葉以上の意味がそこには込められている、と?」[セバ]

 

「そうだ、セバスよ。たっちさんは、現実(リアル)と呼ばれるもう一つの世界においても、困った人を助けることの為にその命を掛けていた」

 

「おおっ、なんと! たっち・みー様…………!」[セバ]

 

「だが、その方法はお前とは異なる」

 

「そ、それはまことでございますか、アインズ様!?」[セバ]

 

「勿論だとも、セバス。この私が嘘を吐くとでも?」

 

「い、いえ! そのようなことは決して…………!」[セバ]

 

「よい。本気で言った訳ではないことくらい分かっている」

 

「は、ははっ! 失礼いたしました!」[セバ]

 

「それで、だ。たっちさんがどのように人を助けていたかだが、それは────人を罰することによって、なのだよ」

 

「人を…………罰する?」[セバ]

 

「そうだ、セバス。たっちさんはお前のように、困っている人間を見つけるたびにその庇護下に置いていた訳ではない。罪を犯した人間を見つけ出し、捕まえ、時には隔離し、時には殺す。そうすることによって社会の秩序を保ち、間接的に人を助けていたのだよ」

 

「…………そ、そんな…………」[セバ]

 

「考えても見ろ。そもそもお前たちが至高の存在として崇める四十一人はPKギルド────つまり、人間を殺すことを目的とした集団に属しているのだぞ?」

 

「!!!」[セバ]

 

「そしてその創始者であり、私の前にギルドマスターの座に就いていた存在こそ、たっち・みーさんなのだ。その事実を考慮した上で、お前はまだ自分のとっていた行動がたっちさんの望むものだったと、胸を張って主張できるか?」

 

「いえ…………いえ、私が浅はかでございました。私の創造主たるたっち・みー様のお言葉の、その表面だけを見て、かの方のお心を理解したつもりでおりました…………私は…………私は、なんと愚かな…………」[セバ]

 

「よい。今回のことでお前は一歩、たっちさんの心に近づくことが出来た。それは喜ばしいことだと思わないか?」

 

「は、はっ! それは、まことに…………で、ですが、私は自らの思い違いからアインズ様に不敬を…………!」[セバ]

 

「成長とは痛みを伴うもの。お前がこの度感じた迷いも、痛みも、全てはお前が成長するために必要なものだったのだろう。私はお前の全てを許すぞ、セバス・チャン」

 

「アインズ様…………!! ありがとうございます!! ありがとう…………ございます…………っ!」[セバ]

 

「よい。泣くなセバス。折角の凛々しさが台無しだぞ?」

 

「はっ…………! はっ! 申し訳ありません!」[セバ]

 

「うむ。では、たっちさんの心に近づけたお前だ、私の心も分かるであろう」

 

「はっ! 今後は、どのような些細なことであれ、必ずご報告させていただきます!」[セバ]

 

「それでよい。お前に人助けをやめろ、などと無粋なことは言わぬ。だが、助ける前に必ず考えるのだ。助けるとはどういうことなのか、どうすれば本当の意味で助けることが出来るのかということを。そして、その考えを私に伝えてくれ。そのせいで、時にはその人間を見捨てることにもなるかもしれない。その重荷は、お前一人ではなく私にも共に背負おう」

 

「あ、アインズ様…………!」[セバ]

 

「…………オゥオゥオゥオゥ!」[コキュ]

 

「ふっ、また泣かせてしまったな。なぜかコキュートスも。では、私はヴィクティムを連れて一旦ナザリックに戻る。デミウルゴス」

 

「はっ」[デミ]

 

「十…………三十?…………いや、一時間だ。一時間したらまた戻ってくる。それまでに館を引き払う下準備をしておけ。取引先への挨拶回りなどはセバスとソリュシャンに任せるとして、この館にある家財道具などはまた後ほど使い道があるかもしれない。ナザリックへ持ち帰り保管しておくことにする」

 

「はっ、畏まりました」[デミ]

 

「そして…………ソリュシャン」

 

「はっ」[ソリュ]

 

「この度は苦労をかけたな」

 

「勿体無いお言葉です」[ソリュ]

 

「お前には特別な褒美を与える。ナザリックに戻ったら、私の部屋に来るがよい」

 

「…………! はっ! ありがとうございます!」[ソリュ]

 

「うむ。では…………〈上位転移(グレーター・テレポーテーション)〉!」

 

 

 

◇至高の御方? 一時帰還直後(王国側)────

 

 

「…………オゥオゥオゥオゥ!」[コキュ]

 

「…………まだ泣いているのかね、コキュートス。まあ、確かにアインズ様のご慈悲やお言葉は強く心を揺さぶるものでしたが…………少し演技過剰だったことは否めませんがね」[デミ]

 

「……………………」[セバ]

 

「そしてこちらは放心、ですか…………セバス、正気に返りなさい」[デミ]

 

「はっ! し、失礼いたしました、デミウルゴス様」[セバ]

 

「様は不要だよ、セバス。私はこれからこの屋敷にある家財道具をナザリックに送るが…………君は自分が何をすべきか分かっているかね?」[デミ]

 

「? それはもちろん、そのお手伝いを…………」[セバ]

 

「ここの家財道具をナザリックに送るくらい、部下の悪魔たちを使えば十分も掛からずに終わりますよ。だというのに、なぜアインズ様がわざわざ一時間後に戻ると仰ったのか、分かりませんか?」[デミ]

 

「…………いえ、申し訳ありません。なぜなのかお教えいただけますか? デミウルゴス」[セバ]

 

「私たちはこれから王都を引き払うのだよ? そして君が拾ってきた最後のペット────その処遇は未だに決まっていないんだ。私は直ぐに処分するべきだと思うが、君はそれを望まないだろう。違うかい?」[デミ]

 

「…………っ! ツアレ…………」[セバ]

 

「おや? どうやらただのペットという訳ではなさそうだね。なるほど、アインズ様はそれを見越した上で一時間後という時間を指定されたということですか」[デミ]

 

「…………どういう、意味でしょう?」[セバ]

 

「アインズ様は、どこまでも慈悲深いお方だということさ。…………君とそのツアレという人間に、わざわざ一時間という時間をお与えになるくらいね」[デミ]

 

「なにを…………?」[セバ]

 

「まだ分からないのかい? そのツアレがどのように扱われるかは不明だが、君にとって最悪の場合、先ほどアインズ様が仰ったように見捨てるという可能性もあるんだ。一時間もあればその辺りの事情も言い含められるだろうし、二人で()()()()()時間もある。これだけ言えば分かってくれるかな?」[デミ]

 

「…………! むぅ…………」[セバ]

 

「アインズ様のご慈悲を無駄にしてはいけないよ、セバス。撤収作業は私に任せて、君はツアレのもとに行くといい」[デミ]

 

「…………感謝致します。デミウルゴス」[セバ]

 

「その感謝はアインズ様に言うべきだね」[デミ]

 

「む、そう、ですね。そうさせていただきます。では…………」[セバ]

 

「ああ、愉しんできたまえ」[デミ]

 

「…………! 失礼いたします!」[セバ]

 

「…………話ノ流レガ分カラナイノダガ」[コキュ]

 

「…………ようやく泣き止んだんだね、コキュートス。しかし君は成人…………いや成蟲、なんだろう?」[デミ]

 

「アア、モウ脱皮ハシナイダロウナ」[コキュ]

 

「……………………」[デミ]

 

「ドウシタ、デミウルゴス?」[コキュ]

 

「いや、なんでも。君はそのままでいてくれた方が、きっといいのだろうなと思っただけさ」[デミ]

 

「? 訳ガ分カラン」[コキュ]

 

「褒めたんだよ。さ、私はそろそろ撤収作業に取り掛かろう」[デミ]

 

「私ハ?」[コキュ]

 

「…………玄関ホールで素振りでもしていたらどうかね?」[デミ]

 

「ウム! ソレハイイ考エダ! 蜥蜴人(リザードマン)ヲ傘下ニ入レタ時ニアインズ様カラ下賜サレタ剣ガ、マダ手ニ馴染ンデイナイカラナ! アインズ様ノ御為(オンタメ)ニ働ク為ニハ、一刻モ無駄ニハ出来ン! 早速素振リヲシテクルトシヨウ!」[コキュ]

 

「…………色々と壊さないようお願いするよ」[デミ]

 

「承知!」[コキュ]

 

「……………………冗談、だったんですけどねぇ」[デミ]

 

 

 

◆至高の御方? 一時帰還直後(ナザリック側)────

 

 

「ただ今戻りました! アインズ様!」[パンアイ]

 

「…………うむ。見事役目を果たしたな、パンドラズアクター。だが、その姿はもう元に戻すがよい」

 

「失礼いたしました! ただ今直ぐに! ────(むにょんむにょんむにょん)お待たせいたしました!」[パン]

 

「うむ。では改めて礼を言おう。この度の働き、実に見事であった。まさかあのセバスの涙を見ることになるとは思わなかったぞ」

 

「私は! 敬愛すべきアインズ様であればこう言うであろうと思うことを口にしたに過ぎません! 全てはアインズ様の深きご慈悲ゆえ!」[パン]

 

「うむ。お前が思う私は、私が思う私よりもよほど優れているのだろうな」

 

「とんでもございません! アインズ様! 今回のこと、アインズ様が事前に情報を下さらなければ、あのような落としどころにたどり着くことは出来なかったでしょう! 全てはアインズ様のお心の内! 私はその中から一歩も外に出ることは叶いませんでした! 嗚呼! なんたる智謀! なんたる御方! 貴方こそ至高の中の至高でございます! アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ!」[パン]

 

「……………………」

 

「どうなさいました、アインズ様?」[パン]

 

「い、いや、すごいテンショ…………ゴホン! なんでもないとも、パンドラズアクター」

 

「それはようございました! ところで、ひとつご質問をさせて頂いてもよろしいでしょうか? アインズ様」[パン]

 

「ん? うむ。私に答えられることであれば答えよう」

 

「アインズ様に答えられぬことなど!」[パン]

 

「いや、それぐらい私にもあるさ。デミウルゴスやアルベドは私のことを全知全能などと言うが、私はそのように優れた存在ではない(いや、マジで)」

 

「はーっはっはっは! アインズ様! ご冗談を! で、ご質問なのですが」[パン]

 

「(スルーした!)う、うむ。なんだ、パンドラズアクター」

 

「なぜお戻りになるのを一時間後にされたのですか? デミウルゴス殿であれば、十分と掛からずに撤収準備は終わるかと思われますが…………」[パン]

 

「あー、うむ、それはな…………(パンドラズアクターの演技が決まりすぎて、ある程度時間を開けないとさっきのが本物の俺じゃないってセバスにバレちゃうかも知れないからだよ! とはとても言えない…………)」

 

「はっ! アインズ様! もしや!」[パン]

 

「む? さ、流石はパンドラズアクター。私の思うところを察したのだな? かまわぬ、口にするがよい(た、助かったー…………)」

 

「はっ! アインズ様は褒美として寵愛をお与えになるとお聞き及びしております! おそらくは私にもご寵愛を下さるために、一時間という時間を取られたのではないかと!」[パン]

 

「そんなわけあるかっ! いや、うむ、ち、少し違うぞ、パンドラズアクター! 大体お前は男だよな!? …………男だよな?」

 

「はっ! 正真正銘男でございます! ですがこの身は二重の影(ドッペルゲンガー)! どのような姿にも変身が可能ですので、アインズ様がお望みであれば絶世の美女にも!」[パン]

 

「…………はっ、いやいやいや。そうではない、そうではないぞ、パンドラズアクター! 確かに私はお前に褒美を与えようと思ってはいたが、それはお前の希望を聞いてから考えようと思っていたのだ! お前を男として創造した以上、私はお前に女として寵愛を与えることなど望んでいない!」

 

「嗚呼! なんと慈悲深き御方! ですが神にも等しいアインズ様に対し、自らの望みを告げるなど不敬極まりないことでございます! 私にはアインズ様の為に働けることこそ最大級の褒美! それ以上に望むものなど!」[パン]

 

「う、うむ。ナザリックのNPC達は皆そのように言うが、それは私の望みではない。一人一人性格が違い、性別が違い、種族が違う以上、欲するものにも何かしらの個性があるはずだ。私はそれを知りたいのだと知れ、パンドラズアクター」

 

「はっ! 失礼いたしました、アインズ様! では…………そうですね…………」[パン]

 

「……………………(頼むから寵愛とか言うなよ。頼むから寵愛とか言うなよ…………)」

 

「では…………」[パン]

 

「う、うむ(ゴクリ)」

 

「ち…………」[パン]

 

「ち?」

 

「父上、と呼ばせていただいてもよろしいでしょうか…………?」[パン]

 

「……………………」

 

「だ、ダメでしょうか、アインズ様…………」[パン]

 

「い、いや! ダメなわけ無いとも! 父上、うむ、父上だな! よし、私のことをそう呼ぶことを許そう。他ならぬ私が創造した守護者なのだからな(よ、よかったー、変なことじゃなくて)」

 

「あ、あぁ、あぁぁあああ!! ち、父上ーー!! このパンドラズアクター! 涙の大海原で溺れそうなほどに感激しております! 嗚呼! 本日を『父上の祭日』として記念の彫像を作らなければ! 素材はスターシルバー…………いや、アンオブタニウムで…………」[パン]

 

「あー…………ゴホン! パンドラズアクターよ」

 

「はっ! 失礼いたしましたアインズ様! いえ、父上!」[パン]

 

「うむ…………喜んでくれているのは何よりだが、私のことを父上と呼ぶのは私と二人だけの時にするように。お前だけが特別な扱いを受けているのだと他のNPC達が知れば、いらぬ不和の元になるかもしれんからな」

 

「畏まりました! 父上!」[パン]

 

「あと、超希少金属を使って私の彫像を作成するのは禁じる。あれは他に使い道があるものだし、偶像というものは忠誠や信念といったものを別のものに歪めてしまう可能性があるからな。お前の忠誠は金属で出来た像などにではなく、ただ私一人に捧げられるべきものだろう?」

 

「はっ! 申し訳ありません! その通りであります! 父上! 私の忠誠は、ただ一人父上の下に!」[パン]

 

「うむ、分かれば良いのだ」

 

「寛大なるお心に感謝致します!」[パン]

 

「よい」

 

「はっ! それでは父上! 話を元に戻して、なぜ一時間後に戻るのかお教えいただけないでしょうか!」[パン]

 

「…………(やっぱりそこは忘れてないか、くそっ)」

 

「父上?」[パン]

 

「あー、うむ。それはだな…………ツアレだ」

 

「ツアレと申しますと、セバス殿が拾ったという人間の娘のことでございますね?」[パン]

 

「そうだ」

 

「あの娘がなにか?」[パン]

 

「その、な(デミウルゴスならこの辺で、なるほど! とか言って深読みしてくれるんだけどなぁ…………)」

 

「はい」(パン)

 

「ふ、ふふふ、秘密だ(もう問題を先送りにするしかない!)」

 

「な、なんと、今ここで仰ることが出来ないほど重大な秘密が!?」(パン)

 

「い、いや、そこまで重大ではないとも。ただ…………そう、私はただお前の父として、息子に成長して欲しいと考えているのだよ。私に尋ね、それを私が答えることは簡単だ。しかし、それではお前の成長の妨げになる。だから考えるのだ、パンドラズアクター。なぜ私が一時間という時間を開けたのか、それがあのツアレという娘とどのような関係があるのか。あと数十分の時間があるのだから、その時間を自らの成長のために使うのだ(な、なんとか辻褄の合う話になった!)」

 

「嗚呼! 父上! 私のことをそこまで考えて下さるとは!」[パン]

 

「うむ。向こうに行ったときにはまた伝言(メッセージ)を繋いでおくから、答え合わせはその時にするがよい!」

 

「畏まりました! 父上!」[パン]

 

「…………(もうこうなったら、なんとかパンドラズアクターの納得するような展開になってくれることを祈るしかない! 頼むぞ、ツアレとかいう少女! なんでもいいから、なにか秘密とか持っててくれ!)」

 

 

 

◇帰ってきた至高の御方────

 

 

「ふむ…………どうやら二人共覚悟は定まったようだね」[デミ]

 

「はい。アインズ様のおかげで、彼女と話す時間が取れました」[セバ]

 

「ム…………二人共、アインズ様ノ御前ニ控エル為ニ身ヲ清メテ来タノカ? フム、感心ナコトダ。私モ…………」[コキュ]

 

「もうアインズ様が戻られますよ、コキュートス。それにこの二人は…………いや、余計なことは言わないでおきましょう」[デミ]

 

「…………感謝致します、デミウルゴス」[セバ]

 

「いえ、貴方のためじゃありません。コキュートスはこのままでいいという結論に達したのですよ」[デミ]

 

「ナンノコトダ?」[コキュ]

 

「いえ、なんでも…………全員姿勢を正しなさい! アインズ様がいらっしゃいます!」[デミ]

 

「「はっ」」[セバ、コキュ、ソリュ]

 

「────待たせたな」

 

「とんでもございませんアインズ様。ご予定の時間より少し早いくらいでございます」[デミ]

 

「うむ。まずはデミウルゴス、そしてコキュートス。今回のこと世話をかけたな、感謝する」

 

「なにを仰りますか。この身はアインズ様のもの。ご命令とあらばどのようなことでも」[デミ]

 

「ソノ通リデゴザイマス」[コキュ]

 

「うむ、立つがよい二人とも。そしてセバス、ソリュシャン、お前たちもだ」

 

「「はっ」」[セバ、ソリュ]

 

「さて、それで…………? 残る一人がツアレという娘か」

 

「(ビクリ)!」[ツアレ]

 

「ふふふ、何もいきなり殺したりはしないさ。そうビクつくものではない」

 

「も…………申し訳…………」[ツアレ]

 

「一体いつ発言の許可が出たのかね? 〈黙りたま…………〉」[デミ]

 

「よい、デミウルゴス」

 

「はっ、出過ぎた真似をいたしました」[デミ]

 

「よい。さて、ツアレとやら、お前も立って顔を上げるがいい。…………ああ、それと前もって言っておくが、私は人間ではなくアンデッドだ。顔を見ても悲鳴をあげたりするなよ? その場合は、私に忠誠を誓うものたちがお前を即座に殺すだろう。それこそ、私が止める間もなくな」

 

「…………ツアレ、立ちなさい。アインズ様のお言葉は全て真実です。そしてその忠誠を誓うものの中には私も含まれています」[セバ]

 

「は…………い」[ツアレ]

 

「うむ…………うむ? (この顔…………どこかで…………はっ!)」

 

「どうなさいましたか? アインズ様」[デミ]

 

「いや、うむ────ツアレとやら。お前のフルネームを答えよ」

 

「あ…………」[ツアレ]

 

「ツアレ、直ぐにお答えしなさい」[セバ]

 

「は、はい…………私は、ツアレ、ニーニャ。ツアレニーニャ・ベイロンと申します」[ツアレ]

 

「そうか…………お前が…………」

 

「この人間をご存知でしたか? アインズ様」[デミ]

 

「ふむ…………いや、予想通りだったものでな(チャンス! これでパンドラズアクターに顔向けできるぞ!)」

 

「予想通り、でございますか?」[デミ]

 

「うむ、まあ、それは後で良い。ツアレ、お前はこれからどうしたい? 希望があれば言うがいい」

 

「私、は…………セバス様と一緒に、暮らしたいです」[ツアレ]

 

「ほう…………セバスと共にか…………(ソリュシャンの報告でなんとなく察してたけど、やっぱりそういう関係なのか?)」

 

「は、はい」[ツアレ]

 

「なるほど、ではセバスにも聞こう。この少女はそのように言っているが、お前も同じ考えということでいいのだな?」

 

「は、はっ! 私はアインズ様のお心のままに…………」[セバ]

 

「そうではない、セバス。お前の心にある言葉をそのまま伝えよ。先程もそう言ったではないか」

 

「はっ、失礼いたしました! 私もツアレと共に有りたいと望んでおります!」[セバ]

 

「うむ。それでよい。さて…………私はセバスの全てを許すと言った。そして、この度の王国での働きの褒美として、セバスにはツアレを与えようと思う。なにか異論のあるものはいるか?」

 

「ございません。全てはアインズ様の御心のままに」[デミ]

 

「ゴザイマセン。ソレガセバスノ望ミデアリ、アインズ様ガソレヲ認メラレルノナラバ」[コキュ]

 

「ございません。至高の御方」[ソリュ]

 

「よろしい。セバスも…………当然異論などないな?」

 

「ございません。寛大なお心に感謝致します。この身の全てはアインズ様のために…………!」[セバ]

 

「うむ。ではセバスよ、ツアレを連れて退室するがよい。ツアレをどうするのかはお前にすべて一任する。今後ナザリック内でどうするのか、二人で話し合うが良い」

 

「はっ、ですが、その件につきましてはアインズ様にお時間を頂いたことにより既に話し合っております」[セバ]

 

「…………そ、うか。では、それは後ほど聞くとしよう。なんにせよ、そのツアレの身はこのアインズ・ウール・ゴウンの名に置いて保護されるものとする。デミウルゴス、全NPCにそれを伝え、事故などは決して起こらぬようにせよ」

 

「はっ、畏まりました!」[デミ]

 

「よし。ではセバスよ、今度こそ退室するがよい。ナザリックがどのような場所か、そしてその中での自分の地位や、生活する上でのルールなどをツアレに教えておいてやれ」

 

「はっ、ありがとうございます! では失礼いたします、アインズ様」[セバ]

 

「うむ(よかったー…………! セバスが一時間の間に話し合ってくれていたおかげで、パンドラズアクターに時間を開けた説明になった!)」

 

 

 

◇セバス退室後────

 

 

「アインズ様。あの娘、ご存知だったのですか?」[デミ]

 

「ん? ああ、その話か。…………これを見るが良い」

 

「これは…………日記、でございますか?」[デミ]

 

「うむ(えっ、デミウルゴスもうこの世界の文字読めるようになったの!?)」

 

「…………なるほど、これはあのツアレの妹が書いたもの。そして…………」[デミ]

 

「そうだ。私はその日記によってこの世界の一般常識をある程度知ることが出来た。私はツアレの妹に対して恩がある。…………本人を生き返らせるほどのものではないがな」

 

「アインズ様のお心、得心(とくしん)いたしました。全て分かっておられながら、その小さな恩とセバスの不心得(ふこころえ)、その二つを同時に清算するために、あえてこのタイミングまで干渉なさらなかった、そういうことなのでございますね」[デミ]

 

「ん? う、うむ。その通りだ、流石はデミウルゴス」

 

「いえ、アインズ様から流石などという言葉を受け取るには、この身は非才に過ぎるというもの。今この瞬間が訪れるまでアインズ様の真意を図ることが出来ていなかったのですから」[デミ]

 

「ドウイウコトナノダ? デミウルゴス」[コキュ]

 

「私は分からなかったのだよ。アインズ様であれば、最初の一人をセバスが拾った時点で、その行いに気づいておられたはず。だというのに、アインズ様はセバスに対して叱責も質問も一切なさらなかった。そして五人目であるツアレが拾われ、ソリュシャンからの報告が来て初めて動かれた。私は最初、ソリュシャンがいつアインズ様に報告するのかを試されていたのかと思ったのだが、そうではなかった。そうでございますね? アインズ様」[デミ]

 

「う、うむ。続けるといい、デミウルゴス」

 

「はっ。アインズ様はおそらく、ツアレの居所を既に掴んでおられたのだろう」[デミ]

 

「ソ、ソンナコトガ可能ナノダロウカ?」[コキュ]

 

「アインズ様が人間の街でなにをしているか知らないわけではないだろう?」[デミ]

 

「ソウカ! アインズ様ハ冒険者ヲ…………!」[コキュ]

 

「そう、しかも最高位であるアダマンタイト級の冒険者だ。調べようと思えば、王国の裏に暗躍する八本指の存在も、その組織の一つに囚われているツアレの存在も、容易に知ることができただろう」[デミ]

 

「…………(すごいんだな、アインズってやつは。金をどうやって稼ぐかしか考えてない俺とは大違いだよ。えっ、ハッポンユビ? なにそれ初耳なんですけど)」

 

「だがアインズ様は、自らツアレを救いに行くことはしなかった。冒険者であるモモンとしては八本指が経営する娼館に乗り込む大義がないし、ナザリックの力を使えばこれから利用しようと考えている八本指を警戒させる恐れがある」[デミ]

 

「…………(なるほど。どうやらアインズは、ハッポンユビを利用して王国で何やらやらかそうとしているらしい。ふ~ん、なにそれ!? いったいいつからその計画進行してるのさ!?)」

 

「そこでセバスが一人目の人間を拾い、それを報告しなかったときに思いつかれたのだろう。今回の計画を」[デミ]

 

「ダ、ダガ、セバスガツアレヲ拾ッテクルカドウカナド、イクラアインズ様デモ分カラナイノデハナイカ?」[コキュ]

 

「…………(俺もそう思うよ、コキュートス)」

 

「もちろん、そんな偶然に頼るようなものは計画とは言えない。おそらくアインズ様は、時機を見てツアレを救出し、セバスの通り道に置いておかれるつもりだったのだろう」[デミ]

 

「ナ、ナルホド! セバスナラ間違イナクツアレヲ拾ウ。ソシテ、八本指ハセバスガ襲撃犯ナノダト思ウダロウカラ、結局今回ノコトト同ジ流レニナルトイウコトカ…………ッ!」[コキュ]

 

「そう、セバスが偶然にもツアレを拾ってきたおかげで、アインズ様がお手を煩わせることもなかったがね。…………もし、本当にセバスがツアレを拾ったのが偶然だったのならば、ですが」[デミ]

 

「…………偶然だとも、デミウルゴス(だからそんなに尊敬を込めた眼差しで俺を見ないでくれ…………! ほら! お前の視線に気づいて、コキュートスやソリュシャンまで同じ目をしてるじゃないか!)」

 

「ええ、勿論ですとも、至高なる御方…………」[デミ]

 

「…………(ははは…………もう好きなように思っててくれ…………俺はもう、知らん…………)」

 

 

 

◆その頃ナザリック宝物庫では────

 

 

「うぉおおおおおおおお! ち、父上ーーーー! そのような、そのような意図があったとは! えっ? し、しかも、そのように前から今回のことを!? な、なんという…………貴方はなんという偉大なる御方なのかーーーー!!!!」[パン]




 おかしい、六巻の序盤だけで一万文字を超えてしまった。

 一巻一話進行の予定が早くも崩れることに…………

 というわけで、セバスを追い詰めるだけで一話が終わりました。

 たぶん次で六巻分の話は消化できると思いますが、もしかしたらもう少し伸びる可能性もあります。

 
 ちなみに────モモンガ様が代役のパンドラズアクターに前もって与えた指示はこれだけです。

 1、たぶんセバスはたっち・みーの言葉『困っている人がいたら助けるのは当たり前』を実行しているだけだ。

 2、たっち・みーは、現実(リアル)の世界では悪い人間を捕まえることで社会の秩序を保っていた(警察)。

 3、以上を踏まえた上で、これからはちゃんと情報を上げるようになんとか上手いことセバスを説得してくれ。

 後は伝言(メッセージ)を繋ぎっぱなしにして、パンドラズアクターからの質問にちらほら答えていただけです。
 つまり、ほとんどの部分はパンドラさんのアドリブ。
 一応アルベドやデミウルゴスに匹敵する智者という設定だし、アクターでもあるしね。


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モモンガ様、王国で自重せず下(後)

 ツアレが攫われた。
 セバスは怒り、ソリュシャンは激怒し、そしてアインズ様は────


◇攫われたツアレ────

 

 

「どうやら、ツアレは囚われていた娼館の上位組織である八本指に攫われたようです」[セバ]

 

「どうされますか? セバス様」[ソリュ]

 

「無論、助けに行きます」[セバ]

 

「はい、それがよろしいかと。アインズ様がその尊い御名の下に庇護を約束された存在が攫われたのです、許す訳にはいきません」[ソリュ]

 

「…………随分とツアレに対する認識が変わったようですね、ソリュシャン」[セバ]

 

「ツアレそれ自体はどうでもよいのです。アインズ様の庇護下にあるものを攫った、その愚劣極まりない行為が許しがたい! そして何より、何より…………!」[ソリュ]

 

「何より?」[セバ]

 

「私が受けるはずのご寵愛が先延ばしにされたことが、何より許せない!!!」[ソリュ]

 

「……………………」[セバ]

 

「アインズ様にメッセージを送ります!!」[ソリュ]

 

「あっはい」[セバ]

 

 

 

◇ツアレ攫われるの報を受けたナザリックでは────

 

 

「なんだと!?」

 

「アインズ様? どうかされたのですか?」[アル]

 

「ソリュシャンからの伝言(メッセージ)だ。ツアレが攫われた」

 

「まあ。ツアレというのは確か、セバスが拾ったという人間でございましたね」[アル]

 

「そうだ。しかも、私がこの名の下に庇護を約束した存在。それを攫うとは…………!!」

 

「直ぐに殲滅の準備を! …………あっ」[アル]

 

「どうした? アルベド」

 

「先ほど頂いたお情けが、外に溢れてしまいました…………////」[アル]

 

「…………あ、ああ、そうか」

 

「で、す、の、で、もう一度お願いします!!」[アル]

 

「え、今?」

 

今すぐにです!」[アル]

 

「あっはい」

 

 

 

◇悪魔と愉快な仲間たち(レベル100多数)────

 

 

「と、いうわけで、動けないアルベドの代わりに今回の全権指揮を任されました。なにか異論のある者は?」[デミ]

 

「ございません」[セバ]

 

「もちろんないよ!」[アウ]

 

「あ、ありません!」[マレ]

 

「ございません」[ソリュ]

 

「ございませんわぁ」[エン]

 

「異論はありんせんが…………『と、いうわけで』と言いつつ説明は何もなし…………なぜアルベドは動けないでありんすか?」[シャル]

 

「あ、それはあたしも気になった」[アウ]

 

「ぼ、ぼくも…………」[マレ]

 

「大人の事情です」[デミ]

 

「「……………………」」[ちびっこ三人]

 

「アルベドは今頃ナザリックで逆立ちをしている、とだけ言っておきましょう。さ、他に質問がなければ説明に移りますよ」[デミ]

 

「「……………………?」」[男胸二人]

 

「……………………////」[マーレ]

 

「お願いします、デミウルゴス」[セバ]

 

「では…………さて今回の目的は、第一にアインズ様の庇護下にある人間、ツアレを愚かにも攫った八本指という組織への誅殺。第二にその攫われたツアレの奪還。第三に王国で進行中の計画を一手先に進めることです」[デミ]

 

「王国で進行中の計画、とは一体何なのでしょうか。デミウルゴス」[セバ]

 

「ふむ…………まあ、伝えてもいいのですが、今回ツアレの奪還に関してはあなたに一任するつもりなのです、セバス。ツアレがアインズ様の庇護下に置かれた存在である以上、暴行や殺害といった手段を取られる前に迅速に奪還したい。彼女が復活に耐えられる強さを持っているとは思えないのでね」[デミ]

 

「それについては全面的に同意いたいします」[セバ]

 

「なのでセバスとソリュシャンには、一足先にツアレの救出に向かってもらいたいのだよ。手遅れになる前にね」[デミ]

 

「了解いたしました。私とソリュシャンは先行させて頂きます」[セバ]

 

「お願いするよ。そして、君たちはツアレを確保しだいナザリックに戻ってくれ。セバスにしろソリュシャンにしろ、その方が都合がいいだろう?」[デミ]

 

「「ご配慮頂き、ありがとうございます! では、行ってまいります!」」[セバ、ソリュ]

 

「……………………な、なんでありんすか? あの二人の気合の入りよう…………」[シャル]

 

「う、うん。すごい速さで消えていったね」[アウ]

 

「び、びっくりしました…………」[マレ]

 

「二人とも、早くナザリックに帰りたいのですわぁ」[エン]

 

「なにか知っているでありんすか? エントマ」[シャル]

 

「セバス様はぁ、ツアレのことをすごく心配してましたから、取り返したらすぐに安全な場所に連れて行きたいのだと思いますぅ。そしてソリュシャンはぁ、アインズ様のご寵愛を頂けるはずだったのがお預けになっているのですぅ。身を清めるのにも時間がかかりますし、早く帰りたいのは仕方ないと思いますわぁ」[エン]

 

「ああ、それなら仕方ないね。セバスの気持ちは全然分からないけど、ソリュシャンはそりゃ早く帰りたいよ」[アウ]

 

「そ、そうです。ぼくだってそんなことになったら、は、早く帰ってアインズ様に甘えたいと、お、思います////」[マレ]

 

「い、いつの間にソリュシャンがご寵愛を受けることが決まったでありんすか?」[シャル]

 

「つい数時間前ですよ。王都での働きと、セバスのことで苦労を掛けた分だと仰って、アインズ様のご寵愛とは別に幾人かの人間も与えられることが決まっています」[デミ]

 

「羨ましいですわぁ」[エン]

 

「それはどっちに対して?」[アウ]

 

「もちろん、どちらもですわぁ」[エン]

 

「エントマも今回頑張れば、アインズ様からご褒美を頂けるかも知れませんよ」[デミ]

 

「頑張りますぅ!」[エン]

 

「わ、わたしは!? わたしの活躍の場はどうなっているでありんすか!? デミウルゴス!」[シャル]

 

「ああ、シャルティア。申し訳ないんだが今回君は遊軍だ。あまり暴れないように気をつけながら遊んでいてくれ」[デミ]

 

「な、なぜ!?」[シャル]

 

「いやなに、君の〈血の狂乱〉が心配でね。今回の作戦は非常にデリケートな部分が多いから、リスクは避けさせてもらう。悪いね」[デミ]

 

「う、うぅ…………わたしの活躍…………アインズ様からのご寵愛…………」[シャル]

 

「大丈夫! アンデッドだし時間はいくらでもあるんだから、そのうち活躍する機会もあるよ!」[アウ]

 

「上から目線!!」[シャル]

 

「では話を進める。今からエントマに幻術で作り出してもらう人物は殺してはいけない。絶対にだ。重要事項なので見逃さないように。エントマ、お願いできるかな?」[デミ]

 

「畏まりましたわぁ」[エン]

 

「…………うん、よく出来ている。ありがとうエントマ。さて、先程も言ったがこの人物の殺害は厳禁だ。手傷を負わせるくらいは構わないが、手加減が苦手な者は手を出さないで欲しい。分かったかい、シャルティア」[デミ]

 

「結局名指しにするなら、最初からそう言えばいいでありんす!」[シャル]

 

「あ、あの、セバスさんにはお伝えしなくても、えっと、よろしかったんですか?」[マレ]

 

「大丈夫だよ、マーレ。セバスはこの人物と面識があるし、彼の性格上傷つけるようなことはしないだろう。…………だが一応伝言(メッセージ)は送っておくことにするよ。ありがとう、マーレ」[デミ]

 

「い、いえ。きっとアインズ様の計画に必要な人、なんだと思いますから」[マレ]

 

「その通りだ。だから繰り返し言うが、この人物には極力手を出さないように。特にシャルティア」[デミ]

 

「りょうかいでありんす!! あ、り、ん、す!!!」[シャル]

 

「(これぐらい念を押しておけば、さすがに大丈夫でしょう)では、これからそれぞれに作戦を指示していくから、各自忘れないように。アインズ様のご計画の一端だ。間違いがあってはいけないからね」[デミ]

 

「「はい!」」[アウ、マレ、シャル、エン]

 

「ああ、シャルティア、君には特に指示することはないから、ぼんやりと聞き流しておいてくれたまえ」[デミ]

 

「りょ、う、か、い、で、あ、り、ん、すーーーーー!!!!」[シャル]

 

 

 

◇六腕と童貞と剣士と竜人(あとショゴス)突入前────

 

 

「これはお二方。こんなところで会うとは奇遇ですね。どうされました?」[セバ]

 

「セ、セバス様? 貴方こそ、どうしてここに…………」[クラ]

 

「お恥ずかしい話なのですが、先日話したツアレという女性が、少し屋敷を留守にしている間に攫われてしまいまして…………これから取り返しに行くところなのです」[セバ]

 

「よし。計画変更だ。セバスさんがいるなら俺たちも突っ込むぞ」[ブレ]

 

「ちょ、ちょっと待て、さっき一旦引き返そうっていう話になったばかりだろうが」[ロック]

 

「大丈夫だ。セバスさんがいるからな」[ブレ]

 

「はい、大丈夫です。行きましょう」[クラ]

 

「え、えー…………なにその自信…………なんなのこの人、強いの?」[ロック]

 

「ああ。俺とガゼフとガガーランが三人同時に掛かって、五秒もてばいいほうだな」[ブレ]

 

「…………嘘だろ?」[ロック]

 

「いや、そんぐらい強い。…………五秒は盛りすぎたか、三秒かな…………」[ブレ]

 

「さらに減った!?」[ロック]

 

「申し訳ありません。時間が惜しいので突入します。では」[セバ]

 

「…………正面から突っ込んで行った……………………ん? あの空に舞ってるのは、ペシュリアン? あ、マルムヴィストとエドストレームも。……………………は、はは、人間って、あんなに飛ぶんだぁ」[ロック]

 

「おい、何してるロックマイヤー。今のうちに行くぞ」[ブレ]

 

「そうです、この機に潜入しませんと」[クラ]

 

「お前らにとってあれは驚愕に値しないことなのか!? 人が飛んでるんだぞ!?」[ロック]

 

「セバスさんだからなぁ」[ブレ]

 

「セバス様ですから」[クラ]

 

「…………あぁ、そうかい。世界は広いんだなぁ…………もう一度冒険者になって、世界を旅してみるのもいいかも知れないなぁ…………」[ロック]

 

「それはこの作戦が終わってからにしろ。ほら、行くぞ」[ブレ]

 

「へいへい。なんかもう、緊張感とかどっか行っちまったなぁ…………」[ロック]

 

 

 

◇六腕と童貞と剣士と竜人(あとショゴス)突入後────

 

 

「ふふふ。俺と同じモンクの爺は、見せしめとして俺が無残に殺す。まあ、うちには血の気の多い奴らが多いからな。もしかしたら今頃やりすぎて殺してしまっているかもしれんが…………」[ゼロ]

 

「…………知らないって」[ブレ]

 

「…………哀れ」[ロック]

 

「…………ですねぇ」[クラ]

 

「? な、なんだお前ら、その態度は!」[ゼロ]

 

「あのな? お前のお仲間は、俺らが突入する前にもう全滅してたぞ?」[ブレ]

 

「バカなことを言うな!」[ゼロ]

 

「いや、ほんとだって、俺もこの目で見たし」[ロック]

 

「は、ははは! そうやって俺の動揺を誘って逃げ出そうったって…………」[ゼロ]

 

「いえ、生き残ってるのはもう多分あなた一人ですよ? そこで伸びてるサキュロントは別にして」[クラ]

 

「…………お前ら、マジで言ってんのか?」[ゼロ]

 

「ああ」[ブレ]

 

「うん」[ロック]

 

「はい」[クラ]

 

「……………………」[ゼロ]

 

「おや、こちらでしたか」[セバ]

 

「(ビクゥ!)」[ゼロ]

 

「お、セバスさん。どうやらツアレさんとやらは無事に助け出したみたいだな」[ブレ]

 

「ええ、おかげさまで。で? そちらが六腕とやらの首魁ですか?」[セバ]

 

「はい、そうですセバス様。ゼロという名前のモンクです」[クラ]

 

「サキュロントはこっちで捕らえましたから、そいつで最後ですよ」[ロック]

 

「それは重畳。ではゼロとやら、選ばせてあげます。大人しく死ぬか、暴れて死ぬか、どちらでも好きな方を選んでください」[セバ]

 

「な…………舐めるなよ、この爺がーーー!! へぶぅ!!」[ゼロ]

 

「…………俺の刀を弾いたんだがなぁ」[ブレ]

 

「頭蓋骨が陥没してますね。それに背骨も飛び出てます」[クラ]

 

「あ、なんだか俺も麻痺してきたかも。この光景が普通に思えてきた」[ロック]

 

「あとあと苦労するぜ? あのガガーランすら、か弱い女に見えてくるからな」[ブレ]

 

「…………俺は童貞じゃないが…………一応気を付けておくことにするよ」[ロック]

 

「俺はラナー様一筋なので問題ないです」[クラ]

 

「おっ、言うようになったじゃないかクライム君」[ブレ]

 

「なに、クライム君ってラナー様狙いなのか? ヒュー、命知らずー」[ロック]

 

「セバス様の前に立つことに比べたら、世の中の大体はなんとかなる気がします」[クラ]

 

「それは危険な兆候かも知れないぞ? セバスさんの強さを知っているってだけで、別に俺らが強くなった訳じゃないからな」[ブレ]

 

「勿論です。容易なことだとは微塵も思っていません。ただ、覚悟ができただけです」[クラ]

 

「男だねぇ、クライム君。おじさん応援するよ」[ロック]

 

「ありがとうございます、ロックマイヤーさん」[クラ]

 

「皆さん、ご歓談中のところ申し訳ありませんが、私はツアレを早く安全なところまで連れて行かなければならないのでこれで失礼いたします」[セバ]

 

「「あらーっしたっ!!(最敬礼)」」[ブレ、クラ、ロック]

 

 

 

◇悪魔と吸血鬼と筋肉とレズ(あと蟲っ娘)────

 

 

「おい、ありゃなんだ。イビルアイの親戚か?」[ガガ]

 

逃げろ、今すぐに。どれだけ持つか分からんが、数秒は稼いでみせる」[イビ]

 

「おいおい、マジかよ。イビルアイが数秒って…………」[ガガ]

 

でかい声を出すな。実際にはその数秒すら怪しいんだ。無駄口叩いてないで今すぐ逃げろ」[イビ]

 

ガガーラン、行こう。イビルアイはマジ。あれは相当ヤバイ相手らしい」[ティア]

 

「…………っち。死ぬなよ、イビルアイ」[ガガ]

 

当たり前だ。お前たちが逃げたら、すぐに私も転移で逃げる。…………行けっ」[イビ]

 

 

 

「大丈夫ですか? ここからは私が代わりますので、先に戻って休んでいてください」[ヤル]

 

「ウゥ…………ゴ寵愛ガァ…………」[エン]

 

「…………心中お察ししますよ。さ、私たちの全てはアインズ様のもの。それを傷つけたままにしてはいけません。早く戻りなさい」[ヤル]

 

「申シ訳アリマセン…………」[エン]

 

「かまいませんよ。お行きなさい、アレらには私がしっかりと灸を据えておきますから……………………さて、お待たせしましたね。彼女と約束しましたし、しっかりと灸を据えさせていただきますよ? 少し熱めのやつをね…………」[ヤル]

 

 

 

◇王都は晴れ、時々空からモモン────

 

 

「漆黒の英雄! 私は蒼の薔薇のイビルアイ! 力を貸してくれ!」[イビ]

 

「────承知した」

 

「これは、これは、よくぞいらっしゃいました、漆黒の戦士殿。私の名前はヤルダバオトと申します。そちらのお名前をお伺いしても?」[ヤル]

 

「ふむ…………ヤルダバオトか。わかった。私の名前はモモン、アダマンタイト級冒険者、漆黒のモモンだ」

 

「アダマンタイト? おやおや、貴方がアダマンタイトということは、先ほどの者たちは身分を詐称していたと考えた方がよいのでしょうか」[ヤル]

 

「貴様…………私の仲間をどこまで侮辱すれば…………!」[イビ]

 

「事実、でしょう? 貴女の仲間は手加減された炎でゴミのように死に、貴女自身も強者であるモモン殿の後ろから吠えるだけ…………その姿を見て、どうして私が貴女たちをモモン殿と同級の存在だなどと信じられるでしょうか?」[ヤル]

 

「くっ…………」[イビ]

 

「────それぐらいにしておいてもらおう」

 

「モモン…………様…………」[イビ]

 

「お前の相手は私だ、デ────モン。お前たちは、いったいなんの目的があって王都で騒ぎを起こしている?」

 

「私たちを召喚、使役する強大なアイテムがこの都市に流れ込んだみたいでしてね。それを回収するために参った、ということになっております」[ヤル]

 

「なるほど。人間同士の争いに巻き込まれたから、と言いたいわけだな? 大体は理解した。ならば、私がそのアイテムを探し出し、お前たちに渡せばそれでいいか?」

 

「モ、モモン、様! なにを!」[イビ]

 

「なるほど、なるほど、モモン殿は強い上に聡明でいらっしゃる。本当に、なぜそこにいる頭の悪い女が貴方と同じアダマンタイト級であるのか、理解に苦しみますね」[ヤル]

 

「なら答え合わせでもしようか? ヤルダバオト。私が本当にお前の意図を理解しているのかどうか…………」

 

「不要でしょう。()()()()必ず理解してますよ」[ヤル]

 

「…………そうか?」

 

「はい」[ヤル]

 

「そうか…………」

 

「疑う余地もなく」[ヤル]

 

「…………では、最後にひとつ聞こう。戦いは避けられない、という認識でよいのだな?」

 

「ええ、私はそう思っております」[ヤル]

 

「なるほど。ならば、私はアダマンタイト級冒険者として、お前を倒す」

 

()()()倒される訳には行きませんので、抵抗させて頂きます」[ヤル]

 

「そうか────行くぞ」

 

「がんばれ…………ももんさま…………」[イビ]

 

 

 

◇イライラナーベ────

 

 

「モモン、様。なぜ先程はあいつと交渉しようなどとしたのですか?」[イビ]

 

「それは────」

 

「馴れ馴れしくモモン様に話しかけるな、大蚊(ガガンボ)」[ナベ]

 

「な…………っ!」[イビ]

 

「よせ、ナーベ」

 

「はっ、畏まりました。モモン様」[ナベ]

 

「……………………(このナーベとかいう女の態度…………もしかして、モモン様はどこかの王族か? じ、じゃあ、さっき私が抱えられたのは、正真正銘のお姫様抱っこ!?)」[イビ]

 

「私の連れが失礼を────イビルアイ殿?」

 

「あ、ああ、いえ、よいのです、モモン様。それと、私に対して敬称や敬語は不要です。モモン様は命の恩人なのですから(本物の王子様かもしれないし!)」[イビ]

 

「そう、か? うむ、わかった。ではイビルアイと呼ばせてもらう」

 

「はい! モモン様!」[イビ]

 

「……………………(イライライライラ)」[ナベ]

 

「…………ちょっと離れて仲間と話してくる」

 

「…………えっ?」[イビ]

 

 

 

◇スッキリナーベ────

 

 

「申し訳ない、話が長引いてしまった」

 

「…………(ツヤツヤ)」[ナベ]

 

「い、いえ、いいんです…………そんなことよりモモン様、あれを」[イビ]

 

「ん? あれは────〈ゲヘナの炎〉…………?」

 

「なにかご存知なのですか!?」[イビ]

 

「あ、ああ…………! そ、そう、あれこそ私が危惧し、ヤルダバオトに交渉を持ちかけようと思った理由の一つ」

 

「そ、そうなのですか? あの炎は一体…………」[イビ]

 

「あれは〈ゲヘナの炎〉という、高位の悪魔が使用可能な魔法の一つだ。幻術にも似た炎で、あれ自体には熱なく、触っても問題はない。だがあの炎に囲まれた空間には、魔法の効果が切れるまで延々と低位の悪魔が召喚され続けるという性質がある」

 

「そんな…………!」[イビ]

 

「放って置けば、王都に悪魔が溢れかえることになるだろう」

 

「そ、それなら、尚の事さっき倒してしまったほうが良かったんじゃ…………」[イビ]

 

「! い、いや、そうではない。あの〈ゲヘナの炎〉の効果が終わっても、召喚された悪魔自体は残り続けるのだ。私がヤルダバオトなら、あらかじめ王都の外であれを発動させ、別働隊として無数の悪魔を王都周辺に配置させておくだろう」

 

「…………な、なるほど。つまり不用意にヤルダバオトを倒せば、その悪魔の群れが流れ込んでくるかも知れないと、そういうことですね?」[イビ]

 

「う、む。そういう、ことだ」

 

「ようやく、理解できました。…………私は、あのヤルダバオトという悪魔の言う通りだな。頭が悪く、そして弱い…………モモン様にそのようなお考えあるとも知らず、責めるようなことを…………」[イビ]

 

「いや、いいんだ。私とイビルアイの違いは、知っていたか知らなかったか、ただそれだけのこと。これでイビルアイもあの悪魔の恐ろしさを知っただろう? もう私とお前に大きな違いなどないさ。そう自分を卑下するものじゃない」

 

「モ、モモン様…………」[イビ]

 

「モモン様、そろそろ」[ナベ]

 

「うむ。ではイビルアイ、私たちはもう行くが、もし普通の悪魔とは違う見た目のものが現れたのなら、不用意に近づかないことだ。君の倒せる相手ではないからな」

 

「えっ、モモン様…………行くとは、どこへ?」[イビ]

 

「決まっている。あの炎の中心────ヤルダバオトを倒しにだ」

 

「……………………はっ!(なにやってる! 見とれてる場合じゃないだろ!)お、お待ちくださいモモン様! 私たちに…………いえ、この国にぜひ協力していただきたい!」[イビ]

 

 

 

◇対ヤルダバオト作戦会議後、最終確認にて────

 

 

「姫、口を挟むことをお許し下さい」[クラ]

 

「どうしましたか? クライム」[ラナ]

 

(やじり)となる人物ですが、もうお一人、凄まじい戦闘能力を持つ御方を存じております。その方を探してお願いしてはどうでしょうか? おそらくあの方がいれば、作戦の成功は確実かと」[クラ]

 

「なんだ、クライム。私が推薦するモモン様では不足だとでも言うつもりか?」[イビ]

 

「いえ、そうではありません。矢の数は一本より二本。その方が確実だろうと申し上げたかったのです」[クラ]

 

「しかし、先ほどの言い方では、そのセバスとかいう人物がいればモモン様はいらないようにも聞こえたぞ?」[イビ]

 

「そのような意図はございません、イビルアイ様。ただ…………ただあの方は本当に、想像を絶する強さなのです」[クラ]

 

「モモン様以上に強い戦士などいるわけがない。私はこの目で直にその強さを見ているのだからな。断言してもいい」[イビ]

 

「いや、そうとは言い切れないぜ? 世の中には俺たちの想像もつかないような強さを持つ存在が、案外隠れているもんだ。俺は二度もそれを体験してる」[ブレ]

 

「お前がブレイン・アングラウスか。ガゼフ・ストロノーフと御前試合で互角に戦ったという」[イビ]

 

「昔のことだ。今の俺は分を知っている。強さでガゼフと互角、というのは、それほど誇るべきことでもないということもな」[ブレ]

 

「むぅ…………クライムが推薦するその人物は、お前にそこまで言わせるほどの存在なのか」[イビ]

 

「ああ、セバスさんは強い。俺の知る強さの頂点は、セバスさんと────」[ブレ]

 

「セバス?」

 

「ええ…………もしかして、モモン様はセバス様をご存知ですか?」[クラ]

 

「あ、ああ。もし私の知っているセバスが、君の言うセバスと同じなのであれば」

 

「鋼のように靭やかな肉体。銀色の髪と髭。柔らかな物腰────」[ブレ]

 

「…………猛禽のような目つきで、執事服を着た?」

 

「こいつあ驚いた。いや、逆に納得したぜ。蒼の薔薇のイビルアイが一目置くあんたなら、セバスさんと知り合いでも不思議はない」[ブレ]

 

「む、モモン様もそのセバスという人物をご存知なのですか? それはいったいどのような────」[イビ]

 

「それは私も気になるわね。イビルアイより強いモモン殿が知る人物、興味があるわ」[ラキュ]

 

「俺もぜひ聞きたいね。多分あんたは俺たちよりもセバスさんのことを知っているんだろ? なあ、あんたとセバスさん、どっちが強い?」[ブレ]

 

「当然モモン様です」[ナベ]

 

「ナーベ…………」

 

「ほぅ…………で、あんた自身はどう思うんだ?」[ブレ]

 

「…………そうだな。単純な殴り合いなら、圧倒的にセバスの方が強いだろう」

 

「「モモン様!?」」[ナベ、イビ]

 

「…………それはつまり、単純な殴り合いじゃなければ?」[ラキュ]

 

「私が負けることはない」

 

「…………っ、おいおい、マジかよ。あんたの言葉を信じりゃあ、これで三人目だぜ」[ブレ]

 

「(三人目? 俺、セバス、あと一人は誰だ?)その三人というのは────」

 

「だが、話だけで信じるわけにもいかねぇな。あんたも相当強いんだろうが、俺も念の為にセバスさんを探した方がいいと思う」[ブレ]

 

「この最下等生物(オオゲジ)が…………! 今すぐ焼き尽くして…………」[ナベ]

 

「やめろ、ナーベ。…………さて、ブレイン殿。セバスの強さを知る貴方が、私の強さを信じられないのも当然かと思う。だが、セバスは今王都にはいないのだ。捜索に人員と時間を割くのは無駄というもの────なので、私の強さを貴方が認めれば、この話はこれで終わりということでいいかな?」

 

「ああ、もちろんだ。どうする? 庭に出て────」[ブレ]

 

「いや、その必要はない(〈絶望のオーラ:レベル1〉)」

 

「うぉおおおおおお!?」[ブレ]

 

「こ、これは、あの時セバス様から感じたものと同等…………!?」[クラ]

 

「モ、モモン様…………! これほどとは…………!」[イビ]

 

「す、すごい! これが漆黒の英雄の力…………」[ラキュ]

 

「あぁ…………モモン様…………!」[ナベ]

 

「(〈絶望のオーラ:レベル1〉解除)…………どうです? 普段は抑えている私の力の一部を開放しました。これで信じて貰えましたか?」

 

「…………これで一部とか…………ははっ! いや、失礼した。上には上が居ると理解したつもりだったが、まだ認識が甘かったようだ。先程までの言葉と態度を謝罪する」[ブレ]

 

「ふぅ…………あれと同じ恐怖は、そうそうないと思っていたんですが…………はっ、ラナー様! 大丈夫ですか!?」[クラ]

 

「え、ええ、私は大丈夫よ、クライム。でもすごかったわね。あれが英雄の持つ覇気とでもいうものなのかしら?」[ラナ]

 

「ももんさま…………すごい…………」[イビ]

 

「か…………かっこいい…………(漆黒の英雄という二つ名、それを体現する全身鎧、普段は封印している力…………! こ、これは是非参考にしないと!)」[ラキュ]

 

「ふむ、どうやら認めていただけたようだな。では、私とナーベは一旦下がって準備をさせてもらう。出番が来たら呼んでくれ。その時は────闇を貫く一本の矢として、一直線にヤルダバオトのもとへ向かわせてもらおう」

 

「……………………はっ! モモン様、待ってください、私も────」[イビ]

 

 

 

◇決戦! 自作自演!(戦闘開始から数分後)────

 

 

「さて…………この部屋は安全、ということでよいのかな?」

 

「はっ、アイテムと魔法により遠視、盗聴などは完全に遮断しております。この部屋で話した内容が外に漏れるということはありません」[デミ]

 

「うむ。ならよい────そうだ、私が通ったルートは把握しているな?」

 

「はっ。既に配下の悪魔たちに、アインズ様に助けられた人間は八割以上残すように命じております」[デミ]

 

「ふっ、流石はデミウルゴス。私の考えはお見通しというわけか」

 

「とんでもございません。これも全てはアインズ様の計画の一部。私などは盤面を動き回る駒に過ぎません」[デミ]

 

「謙遜するなデミウルゴス。私は今回、お前の策を読みきれていない。それだけの計画をお前は立案したということだ、誇りに思うがいい」

 

「おお、なんと! 初めてアインズ様に知恵比べで勝てた思いです!」[デミ]

 

「ふふふ、お前であれば、いずれ私を完全に超える日が来る。期待しているぞ、デミウルゴス」

 

「ア、アインズ様…………」[デミ]

 

「それで、デミウルゴス。今回お前が立てた作戦について詳しく話してくれ」

 

「はい、畏まりました、アインズ様。まず今回の作戦には五つの利点があります」[デミ]

 

「(五つも!?)…………ふ、ふむ、そこだデミウルゴス。私は今回の利点を四つ考えていた。その残り一つが読みきれなかった分だな」

 

「なるほど、そうでございましたか。ではご説明させていただきます。私たちが『悪魔を召喚するアイテムを探す』という目的で襲撃した場所はこの王都の倉庫区となっているのですが、その倉庫区には商人たちが一時的に保管している交易品や、徴兵された民へ貸し出すための武具、八本指によって密輸された禁制の品、腐敗した貴族たちによって集められた金銭や美術品などが大量に保管されています。それをこの混乱に乗じて全て奪い、ナザリックの財とすることがまず一つ」[デミ]

 

「ふむ(すばらしいじゃないか!)」

 

「二つ目は、被害範囲を拡大させることにより『八本指襲撃も目的の一つだった』という事実から焦点を外すことが出来る、ということ」[デミ]

 

「そうだな(なるほど、なるほど)」

 

「三つ目は、ヤルダバオトという存在が人類にとって脅威であると認識させることができることです。このゲヘナの炎に囲まれた地域にいる人間の大半は、すでに倉庫区の資源と共に回収済み…………王都の人間は、間違いなくそれもヤルダバオトの仕業であると考えるでしょう」[デミ]

 

「ああ、そうだ(なるほどねー。悪名は全部ヤルダバオトが被ってくれる。そして、それを倒すことでモモンの評価は上がる…………いいこと尽くめじゃないか!)」

 

「四つ目。ヤルダバオトをモモン様が退けることで、モモン様は王国一の英雄として崇められることになるでしょう」[デミ]

 

「…………その通り、だ(あれ? 倒すんじゃなくて退けるなの?)」

 

「そして五つ目。ヤルダバオトとの決着を()()()()つけないことによって、以降もヤルダバオトという存在を利用し、人間に敵対するあらゆる行動を気兼ねなく行うことができるようになります」[デミ]

 

「…………なるほど(すごい…………! 確かにヤルダバオトが存在する限り、完全な自作自演(マッチポンプ)を何度でも繰り返すことができる!)」

 

「五つ目の利点により、ヤルダバオトは人間から魔王として認識されることになるでしょう。ただ、その強さを印象づけさせるためにも、アインズ様には最後の戦いがなるべく派手になるようご協力頂きたいのですが…………」[デミ]

 

「ああ…………それなら問題ないだろう。ここに来る前に、私の強さをこの国の主要な人物に見せつけてきた。蒼の薔薇のリーダーと…………ラナーという姫に対してな」

 

「…………! (アインズ様…………私の計画を読みきれていないなど、やはりご謙遜だったのですね。私が秘密裏にラナーと会っていたことも、おそらくご存知なのでしょう。…………ふ、ふふ、このデミウルゴス、まだまだ貴方様の足元にも及ばぬようです)」[デミ]

 

「さ、あまり時間を開けても不自然だ。そろそろ行くとするか、デミ…………いや、ヤルダバオト」

 

「はっ!」[デミ]

 

 

 

◇決戦! 自作自演!(アイ・デミ会議の裏でプレアデスたちは)────

 

 

「〈電撃(ライトニング)〉」[ナベ]

 

「ぐわぁーっす」[ルプ]

 

「…………おのれよくも、わたしのなかまをー。ダンッ! ダンッ! ダンッ!(空砲)」[シズ]

 

「きゃあー」[ナベ]

 

「…………! ナーベ、大丈夫か!?」[イビ]

 

「よそ見をしている暇があるのですかっ!? ドゴォッ!(腹部に正拳)」[ユリ]

 

「ぐはあっ!」[イビ]

 

「……………………よし、あの小さいのは遠くに吹き飛ばされていったっすね」[ルプ]

 

「ユリ、なんか張り切ってない?」[ナベ]

 

「…………ユリ、アインズ様からのご寵愛、まだだから」[シズ]

 

「私もまだっす」[ルプ]

 

「私は…………ふふっ」[ナベ]

 

「あぁあああああっ! ナーベラルが勝ち誇った顔してるっす!」[ルプ]

 

「…………わたしも、まだ…………(ギリギリッ)」[シズ]

 

「ソリュシャンはこれからご寵愛を受けるって身を清めてるし…………うぅ、経験豊富っぽい言動をしていた自分が恥ずかしいっす…………」[ルプ]

 

「…………ドンマイ」[シズ]

 

「ところで…………エントマは?」[ナベ]

 

「ああ、エントマはアインズ様に伝言(メッセージ)で療養するよう命じられたから、体を休めているっす。優しいっすよねーアインズ様」[ルプ]

 

「…………それに、すごく強いし、すごく頭がいいし、すごくかっこいい」[シズ]

 

「…………ふふっ」[ナベ]

 

「また勝ち誇ったっすね? 戦う演技とはいえ、少し力が入っちゃうかも知れないっすよ?」[ルプ]

 

「…………実弾に、交換しておく」[シズ]

 

「…………それは勘弁して欲しいわ」[ナベ]

 

「…………だいじょうぶ、峰撃(みねう)ちだから」[シズ]

 

「いや、銃で峰撃ちってなんすか!? …………あ、そろそろ戻ってくるみたいっすね」[ルプ]

 

「じゃあ、適当に攻撃してくれるかしら? 流石に無傷って訳にもいかないから」[ナベ]

 

「…………任せて」[シズ]

 

「…………あなたはいいわ、シズ。ルプスレギナ、お願い」[ナベ]

 

「任せるっす! どかーんとやるっすよ!」[ルプ]

 

「…………さっきのは謝るから、手加減してよね」[ナベ]

 

「( ・◡ु< ) 」[ルプ]

 

「ごめんってば、ねぇ、ちょっと、聞いてる?」[ナベ]

 

「あんまり痛くないようにしたいんすけど、許してほしいっす( ・◡ु< )」[ルプ]

 

「さっきからその顔はなんなの!?」[ナベ]

 

「どりゃぁあああああっす!」[ルプ]

 

「痛ぁあああああっ!」[ナベ]

 

「…………峰撃ち。ダゥンッ! ダゥンッ!(実弾)」[シズ]

 

「痛っ! ちょっ! 痛っ!」[ナベ]

 

 

 

 

◇英雄の誕生────

 

 

「やった、モモン様の勝利だ!」[イビ]

 

「…………いや、私だけの勝利ではないとも、イビルアイ。あれを見るがいい」

 

「? …………あっ、ラキュース、ティナ…………それにガガーランとティアも? そうか、皆も戦ってくれていたんだものな」[イビ]

 

「そうだとも。この場で私が心置きなく戦えたのは、他の敵を皆が引きつけてくれていたからだ。イビルアイ、もちろんお前もな」

 

「モ、モモン様…………!」[イビ]

 

「ナーベもよく頑張ってくれた」

 

「勿体無いお言葉でございます」[ナベ]

 

「────────モモン殿ーー! ヤルダバオトは!?」[ラキュ]

 

「ヤルダバオトなら、先ほどモモン様が見事に撃退された!」[イビ]

 

「…………なぜイビルアイが自慢気に言うのだ?」[ラキュ]

 

「へー、あんたがモモンってやつかい。童貞…………じゃあなさそうだな」[ガガ]

 

「私はそれよりも隣の美人が気になる」[ティア]

 

「その二人はいっぺん死んでおけ。…………あっ、もう死んでたか」[イビ]

 

「おいおい、体がダルいのを押して来てやったってのに、随分な言い草だなイビルアイ! そんなんだから()()()()()()()()処女なんだぜ!」[ガガ]

 

「ひんぬーは心も小さいのか」[ティア]

 

「お…………お前ら…………っ!」[イビ]

 

「…………すいません、モモン殿」[ラキュ]

 

「皆さん、仲がいいのですね」

 

「あはは…………ん、コホン。モモン殿、この度の働き、誠にお見事でした」[ラキュ]

 

「いえ。先ほどイビルアイにも言いましたが、これは皆の勝利。決して私だけが讃えられるべきではありません」

 

「おぉ…………流石はモモン殿! ですが、あれをご覧下さい」[ラキュ]

 

「ん…………? あれは…………」

 

「見えるでしょう、皆の誇らしげな顔が。聞こえるでしょう、貴方を讃える声が。騎士や冒険者、街の衛士、この戦いに参加した全ての者が、モモン殿のその強さと気高さに感銘を受けたのです。もちろん、私たちも例外ではありません。ですから是非我らの、そして彼らの期待に、声に、応えてやってください」[ラキュ]

 

「…………少し、恥ずかしいですね」

 

「ふふ、そういったところもモモン殿の魅力だと思いますよ」[ラキュ]

 

「(ギロリッ)きさ…………」[ナベ]

 

「コホンッ! ええ、はい、そういうことであれば、応えない訳にはいきませんね!」

 

「はい! お願いいたします!」[ラキュ]

 

「では…………うぉおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」[その場にいた全員]

 

 

 

 

 

 




◇おまけ────


「俺は、あいつの爪を切ったんだ!」[ブレ]

「えっ! セバス様やモモン様に匹敵するという存在の爪を!?」[クラ]

「おいおい、まじかよアングラウス! やったじゃないか!」[ロック]

「ああ、あの技は〈秘剣:爪切り〉と名付けよう! そしてこの刀の名は【名刀:爪切り丸】と改める!」[ブレ]

「か、かっこいいです! ブレインさん!」[クラ]

「おう! 流石はブレイン! いや、爪切り職人!」[ロック]

「よせよ、おまえら…………////」[ブレ]

「「ブレイン! ブレイン! ブレイン! ブレイン!」」[クラ、ロック]

「オオオオォォォォオオオオン!!」[スケイル・デーモン]

「やべっ! 騒いでたら悪魔に見つかった!」[ブレ]

「大丈夫です! 僕らにはブレインさんがいる!」[クラ]  

「そう! そしてブレインには【名刀:爪切り丸】と〈秘剣:爪切り〉がある! あの程度の悪魔に負けるものか!」[ブレ]

「へっ、おまえら…………よおし! 見とけよ! これが俺の、新たな力だ! 〈秘剣:爪切り〉ぃぃい!」[ブレ]

「ギヤァァァアアアアアアッ!」[スケデモ]


 ────みたいな。

 なんだかこいつらを書くのが楽しくなってしまった。

 
 あとガガーランの略で[ガガ]って書くとレデ〇ガガを想像してしまう。


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モモンガ様、ナザリックで自重なんてするわけがない(前)

 王国での活動がひと段落し、今後の活動方針を決めることになったナザリック。
 アインズ様はデミウルゴスにうまいこと言ってそれを語らせようとするが────


◇ナザリック今後の方針会議────

 

 

「まずは長期に渡る情報収集ご苦労だった。セバス、そしてソリュシャン」

 

「「はっ!」」[セバ、ソリュ]

 

「ソリュシャンにはすでに我が寵愛を与え、人間も幾人か生きたまま渡しているのでこれを褒美とする。異存はあるか? ソリュシャン」

 

「ございません! あろうはずがありません! あぁ、素敵でございました、アインズ様との…………」[ソリュ]

 

「ごほん! ソ、ソリュシャンよ、その感想は胸の内に秘めておくがよい」

 

「はっ、失礼いたしました」[ソリュ]

 

「う、うむ、よい…………それで、セバスよ。お前にもすでにツアレを与えたが、その後の働きなども考慮した結果、他にも褒美を与えることにした。なにか望むものはあるか?」

 

「アインズ様にはすでに格別のご慈悲を頂いております。これ以上望むものなど…………」[セバ]

 

「セバス。主人からの褒美を固辞するのは、お前たちの悪い癖だ。この際だから皆にも伝えておく。私はお前たちの働きに心から満足し、そして感謝している。だからこそ、お前たちに褒美を与えるのは私の喜びでもあるのだと知るがいい」

 

「「ア、アインズ様…………!!」」[NPC全員]

 

「────よい。それで、セバス。もう一度聞くが、望みはあるか?」

 

「はっ、であれば…………ツアレの衣服などの生活必需品を頂ければ…………」[セバ]

 

「オゥオゥオゥオゥ…………」[コキュ]

 

「服か…………それだけか?」

 

「はっ? いえ、それでも十分なほど…………」[セバ]

 

「いや、ついでだからお前の部屋のベッドをダブル…………いや、キングサイズにしてやろう」

 

「オゥオゥオゥオゥ…………」[コキュ]

 

「お待ちください、アインズ様!」[アル]

 

「ど、どうした、アルベド?」

 

()()()サイズのベッドを使用して良いのはアインズ様のみ! セバスにはクイーンサイズ…………いえ、ワイドダブルを与えるべきかと!」[アル]

 

「…………そこはいいのではないか?」

 

いけません!」[アル]

 

「そ、そうか? …………すまんなセバス、そういう訳だからワイドダブルで我慢してくれ」

 

「い、いえ、十分すぎるお計らいでございます」[セバ]

 

「オゥオゥオゥオゥ…………」[コキュ]

「…………アインズ様のお言葉に感動したのはわかるが、いい加減に泣き止みなさい。コキュートス」[デミ]

 

「…………で、では次にエントマ、我が前に」

 

「ハッ!」[エン]

 

「声は未だ戻らぬか」

 

「オ耳障リデゴザイマショウカ…………」[エン]

 

「そのようなわけがなかろう。私はその声も好きだぞ、エントマ」

 

「ア、アインズ様…………!」[エン]

 

「もちろん、お前の創造主である源次郎さんが設定した(わけじゃないけど)、もとの可愛らしい声もな」

 

「アインズ様ァ…………」[エン]

 

「泣くな、エントマ。お前の声は、この私が何とかして元に戻してやろう。…………そうだな、差し当たっては同族の召喚に長けた恐怖公あたりに、同じ声を発する口唇蟲を召喚できないか聞いてみるとしよう」

 

「オゥオゥオゥオゥ…………」[コキュ]

「あぁ、ようやく泣き止んだと思ったのに…………」[デミ]

 

「…………エ、エントマよ。お前の今回の働きに対しては、それを持って褒美としようと思うが、どうだ?」

 

「勿体無イオ言葉デゴザイマス! アインズ様ノ深イオ慈悲ニ心カラノ感謝ヲ!」[エン]

 

「う、うむ、よい。…………では次に、アウラ、マーレ、シャルティア。前に」

 

「「はっ!」」[ちびっこ三人]

 

「お前たちも今回の作戦では中核を担ってくれていたと聞いている。特にアウラ、マーレ。八本指への襲撃を見事やり遂げ、それを支配下に収めた功績は大きい。望むものはあるか?」

 

「あ、あの、あたしたちは、その、二人で話し合ったんですけど…………」[アウ]

 

「ご、ご寵愛の時に…………あ、頭をいっぱい、撫でてほしいなぁ…………って////」[マレ]

 

「う、うむ。そうか…………では、そのように、な」

 

「「はいっ!」」[アウ、マレ]

 

「…………あー、では次にシャルティア」

 

「は、はい!」[シャル]

 

「遊軍とはいえ、大切な任務だ。この二人と同じだけの褒美を与えることはできないが、何か望むものはあるか?」

 

「はいっ! その…………あの…………」[シャル]

 

「どうしたシャルティア、遠慮せずに言うといい。お前の願いを叶えられるかどうかは分からないが、言ってくれなければその判断もできないぞ?」

 

「は、はい…………その、こ、今度何か作戦がありましたら…………」[シャル]

 

「ふむ、作戦があったら?」

 

「ど、どうか! どうかわたしにも活躍の機会を与えてくださいませ!」[シャル]

 

「…………うむ、なるほどな。シャルティアよ」

 

「は、はいっ!」[シャル]

 

「約束しよう。必ずお前に活躍の機会を与えることを。そして、その活躍の後で願うがいい。お前の本当の望みをな」

 

「あ、あ…………ありがとうございます! アインズ様ぁ!」[シャル]

 

「うむ。…………ちらっ(コキュートスは…………よし、泣き止んでるな!)では、次に今後のナザリックの方針を決める。デミウルゴス、前に」

 

「はっ!」[デミ]

 

「────では、デミウルゴス。今後ナザリックがどのように活動するべきか、それを語るのだ。そして他の守護者たちよ。お前たちにも何か意見があれば、遠慮なく手を上げるがいい」

 

「「はっ!」」[NPC全員]

 

「よし。ではデミウルゴス、頼んだぞ。全ての者に聞こえるように、かつ分かりやすくな」

 

「畏まりました、アインズ様。────ではこれからのナザリックが取るべき方針を説明する。分からない部分などがあれば、必ず手を挙げて質問するように」[デミ]

 

「「はいっ」」[デミ除くNPC]

 

「よろしい。さて、まずは今回の作戦成功によってアインズ様の世界征服計画の第一段階が終了したわけだが…………我々が次にやるべきことは当然、ナザリックの威を世界に示すことだ」[デミ]

 

「ふむ(世界征服ね。確かに仲間を見つけるために世界を手に入れる! って勢いで言っちゃったけど、やっぱり本気にしてたのか)」

 

「その為に我々は、外の世界に打って出なければならない。それはなぜか。まず第一に、シャルティアを洗脳した世界級(ワールド)アイテム保有者の存在が挙げられる」[デミ]

 

「はい! 質問!」[アウ]

 

「なんだね、アウラ」[デミ]

 

「なんでシャルティアを洗脳した奴らを警戒するなら、表に出るの? 目立ったら危険なんじゃない?」[アウ]

 

「…………(いいぞアウラ! その調子で色々と質問してくれ! 俺のために!)」

 

「それはね、アウラ。シャルティアを洗脳した存在が未だに我らに尻尾を掴ませない────つまり世界の裏側に暗躍している者たちだからだよ。シャルティアを洗脳した者たちを発見し、殲滅するためには、彼らを表に引きずり出す必要がある。そのためには、標的である我々が表に出ることが最も効率がいいのさ」[デミ]

 

「なるほど! あたしたち自身を囮にして、シャルティアを洗脳した奴らをおびき出すってことか!」[アウ]

 

「ねぇ…………さっきから、わたしを洗脳した奴ら、わたしを洗脳した奴らと言い過ぎではありんせんか?」[シャル]

 

「シャルティア、発言するときは手を挙げるように」[デミ]

 

「…………くっ、なんか納得いかないでありんす!」[シャル]

 

「では話を進める。第二の理由は、これまで以上に大きな活動をするためだ。我々はこれまで、出来るだけ目立たないようにごく少数を派遣し活動してきた。だがそれでは危険(リスク)は抑えられるかもしれないが、大きな成果を上げることも同時に難しくなってしまう。今回王国の裏を牛耳る八本指という組織を支配下に置いたことで、もはや我々が裏に潜んで活動する必要はなくなった。裏の活動は彼らを利用して行えばいいからね」[デミ]

 

「ハイ!」[コキュ]

 

「…………君から質問があるとは意外だね、コキュートス。なんだい?」[デミ]

 

「ソモソモ、表ニ出ルトハ、ドノヨウニ出ルツモリナノダロウカ?」[コキュ]

 

「あ、ぼ、ぼくもそれは気になります。それに、も、もし、ナザリックが王国の下につくことで表に出るというのでしたら、は、反対します!」[マレ]

 

「大丈夫だよマーレ。私だってそんなことは御免だ。そもそも、王国にしろ他の国にしろ、そうまでして関係を結びたいような魅力はないからね」[デミ]

 

「はい!」[シャル]

 

「なんだね、シャルティア」[デミ]

 

「いまマーレも手を挙げてなかったでありんすが!?」[シャル]

 

「どこかの国の下部組織として活動するということは、私たちの行動が制限されるということに他ならない。それではわざわざ表に出てくるリスクを負った意味がなくなってしまうからね。どうだい? 安心したかな、マーレ」[デミ]

 

「は、はい!」[マレ]

 

「スルー!?」[シャル]

 

「コキュートス、お待たせしたね。それで君の質問に対する答えだが…………以前私が話したことを覚えているかな? アインズ様は王になられるおつもりだ、という話を」[デミ]

 

「モチロン覚エテイル…………ハッ! デハッ!」[コキュ]

 

「そう、アインズ様はこの世界に来た当初から、すでに今現在…………いや、それ以上先までを見通しておられたんだ。私もその事実に気づいたときには、心が震えたものだよ」[デミ]

 

「…………(王? 何の話だ?)」

 

「皆に伝えてもよろしいでしょうか? アインズ様」[デミ]

 

「ん!? あ、ああ、もちろんだデミウルゴス。お前に任せる」

 

「はっ! では皆、心して聞くがいい。アインズ様は────」[デミ]

 

「…………ごくりっ」[全員(アインズ含む)]

 

「この地に、ナザリックという一つの国を建国されるおつもりなのだ!」[デミ]

 

 

 

◇死の支配者と魔法の奴隷────

 

 

「も、もしやあなたのお連れは第七位階…………いえ第八位階の魔法をお使いになれるのではっ!?」[フール]

 

「そうだ。彼女は第八位階の魔法を行使できる。そして私は────────それ以上の魔法を使うことができる」

 

「そ、そんな、まさか!? 私の目には何も…………っ!」[フール]

 

「(そういや指輪をしてたな)…………そら、これで見えるか?」

 

「ふひぃいいいいいいいいいいいいっ!!!!」[フール]

 

「っ!?(ビクゥッ)」

 

「しょ、しょのお力はぁ! しょのお力は第九位階ぃいいいい!? いや、しょれどころではないぃい! 第十!! 第十!! 第十位階でございますかぁああああああっ!!?」[フール]

 

「(キショッ!!)…………そ、そうだ。私は第十位階…………いや、それ以上の魔法を扱うことができる」

 

「くひぃぃいいいいいいいいいいいっ!!! だ、だ、第十位階いじょうでしゅとぉぉぉおおおおおおおおおっ!!? しょっ、しょっ、(じゅるりっ)それはいったい!! どのような!! 素晴らしい魔法なのかぁあああああああっっ!!? 想像もつかないぃいいいいいいいいいいっ!!」[フール]

 

「…………(ヤバすぎるな、こいつ)」

 

「ああぁぁぁあああああっ!! 神よぉおおおおおおおっ!! 魔法の神よぉおおおおおおおっ!! どうかっ! どうか私にその英知をお授けくだされぇえええええっ!!」[フール]

 

「う、うむ。そうだ、な。考えてもいいが…………」

 

「きぃひぃいいいいいいいいいいいいい!! っしゃぁああああああああああっ!!」[フール]

 

「…………(なんかもう、こういう奇声を上げるおもちゃみたいだな)」

 

「ありがとう、ありがとうございますっ!! このフールーダ・パラダイン! いと深き御方の命とあればどのようなことでも致しますっ!! 足を舐めろと言われるのであれば、爪の隙間まで舐めさせていただきますぅうううう!!」[フール]

 

「寄るなっ! 汚らわしい下等生物(ウジバエ)がっ!! お前ごときがアインズ様のおみ足に口をつけようなどと…………っ! 思い上がるのもいい加減にしなさいっ!」[ナベ]

 

「…………(よく言ったぞナーベラル!)」

 

「お前に許されるのは、アインズ様が歩いた場所の床を舐めるところまでよっ!」[ナベ]

 

「はっ! ありがたき幸せ! ペロペロペロペロペロペロペロペロペロ」[フール]

 

「……………………(いいんだよな? デミウルゴス。帝国一の魔法使いってのは、本当にこの恍惚とした顔で床を舐め回している爺さんで間違いないんだよな!?)」

 

「ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロ」[フール]

 

「っ!(ひぃ! なんか少しずつ近づいてきてる!?)」

 

 

 

◇ワーカーと漆黒────

 

 

「────ふむ。私の実力を試したいと、そういうことでいいのかね?」

 

「そういうことしゃ。主の噂かとこまて真実か、それを儂らに見せて欲しいんしゃよ」[パル]

 

「了解した…………ただし、私は手加減が苦手だ。()()()()()君たちを殺してしまうわけにはいかないから、剣を合わせる訳にはいかない。それでもいいかね?」

 

「…………凄いな」[モブ]

 

「…………ああ、凄い」[モブ]

 

「ひゃひゃひゃ! 凄い自信しゃ! 儂らかお主を傷つけるとは微塵も考えておらん」[パル]

 

「当然だ。私と君たちにはそれくらい歴然とした差がある。だからこそ私はアダマンタイト級を預かっているのだ」

 

「…………ふん。私には体良(ていよ)く力試しを避けたようにしか見えませんがね。それで? 剣も合わせずにどうやってご自身の力を示すというのです?」[エル]

 

「君は?」

 

「…………私は『天武』のエルヤー・ウズルス。帝国の闘技場をご覧になったことは?」[エル]

 

「すまんな、知らん。有名人なのか?」

 

「ぷふっ」[イミ]

 

「おい、よせよイミーナ。…………くくっ」[ヘッケ]

 

「…………っいえ、あなたほどではありませんよ。それで? どうなのです。どうやってその力を示してくれるというのですか?」[エル]

 

「そうしゃの。剣も交えすに、とうやって噂か真実たとわしらに教えてくれるつもりなのしゃ?」[パル]

 

「なに、簡単なことさ。ご老人と、エルヤー君。それと君と…………そこの鎧を着た人。そこに立っていてくれ」

 

「え、俺も?」[ヘッケ]

 

「俺もか?」[グリ]

 

「ほっ、これていいかの? それて?」[パル]

 

「今から私の力の一部を解放する。もしそれを受けても剣を交えたいと思うものがいるなら、受けてたとうじゃないか」

 

「ふん、威圧でもするというのですか? 私を獣と同じように考えてもらっては…………」[エル]

 

「むんっ…………(〈絶望のオーラ:レベル1〉)」

 

「ひひゃあぁあああっ!?」[エル]

 

「ぬぅ…………なんと!」[パル]

 

「うおっ!」[ヘッケ]

 

「むぉおおおおおお!?」[グリ]

 

「(〈絶望のオーラ:レベル1〉解除)…………さて、どうかね? 私と戦いたい者がいたら前に出るといい」

 

「い、いやいや、冗談じゃねぇぜ。まだ闘技場で武王と戦ったほうがマシだ!」[ヘッケ]

 

「こ、これほととは…………」[パル]

 

「これが、アダマンタイト級の冒険者か…………」[グリ]

 

「……………………」[エル]

 

「納得してくれたようだな。では私は荷物を馬車に運び込まなければいけないので失礼する(力試しとかされる時にはこれが一番だな。楽だし)」

 

「……………………ヘッケラン? ヘッケラン、大丈夫? 何があったの?」[イミ]

 

「あっ、ああ…………お前は何も感じなかったのか? イミーナ」[ヘッケ]

 

「えっ? いえ、特に何も…………」[イミ]

 

「そうか…………殺気を当てる対象も自在ってわけか。いやぁ、アダマンタイトってのはスゲェんだな」[ヘッケ]

 

「…………そうしゃないわい。あの御仁か強すきるたけしゃ。おそらくモモン殿はアタマンタイトの中のアタマンタイトと呼んて差し支えない存在なのしゃろう。見ろ、エルヤーの小僧の様を」[パル]

 

「……………………」[エル]

 

「あー…………ありゃ完全に心が折れてるな」[ヘッケ]

 

「いい気味よ。急に変な叫び声を上げたときは超キモかったし」[イミ]

 

「まあ、無理もなかろうて。あの小僧にとっては、初めての挫折たったんしゃろ。しかも、剣を合わせるまでもなく敗北を味わわされたのしゃからな。…………これかいい経験になって、立ち直った時には少しくらいまともな性格に成長してるといいんしゃか…………」[パル]

 

「無理じゃない? クズだもの」[イミ]

 

「容赦ねぇな。イミーナ」[ヘッケ]

 

「ひゃひゃひゃっ! 若いのぅ、若い。嬢ちゃんも小僧も、皆若い。たか、今はその若さか少し羨ましいわい…………さて、儂は少し疲れた、先に馬車て休ませてもらおうかの」[パル]

 

「…………ご老公」[ヘッケ]

 

「なんだか、寂しそうな背中…………」[イミ]

 

「ご老公も武人だからな。あれほどの差を見せつけられては、へこんでもしかたなかろう」[グリ]

 

「グリンガムまで…………そんなに凄かったの?」[イミ]

 

「ああ、ありゃ殺気なんてもんじゃない。…………そう、『死気』とでも言ったほうがいいかもしれねぇ。当てられた瞬間に自分の死を確信させられたからな。あれで一部だってんだから、全力のあの人の前に立ったら、それだけで本当に死ぬんじゃねぇかと思うほどだ」[ヘッケ]

 

「凄いのね。アダマンタイト級の冒険者…………いえ、モモンさんって」[イミ]

 

「ああ、凄ぇよ…………本当に、凄ぇ」[ヘッケ]

 

「人とは、あそこまで強くなれるのだなぁ…………」[グリ]

 

 

 

◆そのころナザリックでは────

 

 

「それでは、皆に仕事を割り振っていきます。割り振られた者は確認の為にその内容を復唱するように」[デミ]

 

「「はい!」」[NPC他]

 

「ではまず、ユリ、エントマ」[デミ]

 

「「はい」」[ユリ、エン]

 

「君たちは侵入者が全員ナザリックに踏み込んだところで、その退路を断つ役割をお願いする。ただ、強者を除いた場合のナザリック防衛戦力を確認することも目的の一つだから、君たちは直接手を出さないように。もちろん、侵入者が逃げてしまいそうな場合はその限りではない。指揮はユリに任せるものとする」[デミ]

 

「はっ。ボ…………私が指揮を執り、ナザリック・オールド・ガーダーの戦力のみで侵入者の退路を断ちます。侵入者が逃走しそうな場合には、私の判断により私とエントマも戦闘に加わります」[ユリ]

 

「よろしい。次にルプスレギナ、ソリュシャン、シズ」[デミ]

 

「「はい」」[ルプ、ソリュ、シズ]

 

「君たちは内部に侵入した者たちを、さらに奥へと追い込んでもらう。その際には、先ほどユリに指示したのと同じく君たちも直接戦闘に加わらないように」[デミ]

 

「追い込むっす!」[ルプ]

 

「追い込みますわ」[ソリュ]

 

「…………追い込む」[シズ]

 

「…………まあ、いいでしょう。次にニューロニスト、恐怖公」[デミ]

 

「はぁい」[ニュー]

 

「はっ」[恐怖公]

 

「君たちの所には、罠にかかった愚かな侵入者が転移してくるはずだ。殺して構わないが、必ず恐怖と苦痛と絶望を与えるように」[デミ]

 

「うふふっ、もちろんよん。アインズ様の為に、美しい歌声を響かせるわぁ」[ニュー]

 

「敵に恐怖と苦痛と死を与える…………我が眷属たちほどそれに適したものはおりませんでしょう」[恐怖公]

 

「よろしい。次にザリュース、ゼンベル、ハムスケ」[デミ]

 

「「はっ」」[ザリュ、ゼン、ハム]

 

「君たちが訓練している場所に続く通路の罠は切っておく。何人かの侵入者がたどり着くだろう。そのたどり着いた侵入者はハムスケ、君が〈武技〉によって倒しなさい。ザリュースとゼンベルはそのサポートを」[デミ]

 

「畏まったでござる、軍師殿! このハムスケ、殿の為に鍛えた技を今こそ見せるでござるよ!」[ハム]

 

「全力を持ってハムスケ殿をサポートします」[ザリュ]

 

「ああ、特訓の成果を見せてやろうぜぇ!」[ゼン]

 

「うむ、期待しているよ。では最後に〈伝言(メッセージ)〉」[デミ]

 

『どうしたの、デミウルゴス』[アル]

 

『全体への指示が終わりましたので、そちらの確認を。アルベドはニグレドと共に侵入者の監視、そしてすぐには全滅させないよう調整をお願いします』[デミ]

 

『任せておいて』[アル]

 

「さて…………後は待つだけ、ですね。ふふっ…………不謹慎ですが、少し心が躍ります」[デミ]

 

 




 少し長くなったので前後に分かれました。

 しかしこの二次創作…………自分で書いててなんですが、むしろ自重してないのはアインズ様以外なのでは? と思う今日このごろ。

 とくにアルベドとか、アルベドとか、アルベドとか…………

 アルベド自身のセリフは少ないはずなのに、所々で出てくる存在感がハンパないです。



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モモンガ様、ナザリックで自重なんてするわけがない(後)

 ワーカーを招き入れ、防衛戦力を確かめようとするナザリック。

 デミウルゴス指揮の下、ワーカーに絶望と死をもたらす作戦が開始された────


◆招かれた侵入者たち 入口付近(ユリ、エントマ)────

 

 

「…………ユリ…………ユリッテバァ」[エン]

 

「はっ…………ど、どうしました? エントマ」[ユリ]

 

「ナニ(ホウ)ケテタノォ?」[エン]

 

「そ、そんな、ボ…………私は呆けてなんて…………」[ユリ]

 

「嘘ォ。コノ前ノ作戦ノ時ニ、一人デ『イビルアイ』ヲ抑エテイタゴ褒美トシテ頂イタ、アインズ様カラノゴ寵愛ノコト思イ出シテタンデショウ?」[エン]

 

「な、なんでそれを!?」[ユリ]

 

「ユリハァ、スグ顔ニ出ルカラァ」[エン]

 

「そ、そんなことないもん!」[ユリ]

 

「サッキ、ニヤニヤシテタヨォ?」[エン]

 

「うっ!」[ユリ]

 

「今モ顔真ッ赤ダシィ」[エン]

 

「あ、あんまり見ないで…………」[ユリ]

 

「アトォ」[エン]

 

「ま、まだあるの?」[ユリ]

 

「ナザリック・オールド・ガーダーガァ、トックニ侵入者ヲ全滅サセチャッテルヨォ?」[エン]

 

「…………あっ」[ユリ]

 

 

 

◆招かれた侵入者たち 追い込み(ルプスレギナ、ソリュシャン、シズ)────

 

 

「それー! 侵入者を追いかけるっす、死者の大魔法使い(エルダーリッチ)たち!」[ルプ]

 

「「はっ!」」[リッチたち]

 

「んー…………追いかけるにしても甚振(いたぶ)るにしても、やっぱり自分でやらないとイマイチ面白くないっすねぇ」[ルプ]

 

「そうねぇ。でも今回は、最低限の防衛戦力がこの世界の人間にどれだけ有効なのかを調べる実験も兼ねているのだから、仕方ないわ」[ソリュ]

 

「分かってるっすよー。でもなんだか逃げていく人間を見ると、こう、ムズムズと…………」[ルプ]

 

「…………それは仕方ない。ルプーは犬だから」[シズ]

 

「犬じゃないっす! 狼っす!」[ルプ]

 

「…………犬と狼に遺伝的な違いはほとんどない。野生環境に適応しているのが狼、飼われる環境に適応しているのが犬」[シズ]

 

「じゃあ犬っす」[ルプ]

 

「…………あなたはそれでいいのかしら?」[ソリュ]

 

「ナザリックを離れたら生きていけないっすからねぇ。それにアインズ様に飼われているんだと思うと…………それはそれでこう、クルものがあるっす!」[ルプ]

 

「…………うわぁ」[シズ]

 

「シズ。この程度で引いてたら、アルベド様の『好き好きアインズ様♡ 夜のご奉仕技術向上講座(初級編)』にすら耐えられないわよ?」[ソリュ]

 

「なんすかそれ!?」[ルプ]

 

「アインズ様のご寵愛を受けた者たちの為に定期開催されている、アルベド様主催の研修会よ。本人の資質と熟練度に合わせて、初級編、中級編、上級編、最上級編、超越編の五段階に分かれているわ。会報もいくつか出てるのよ…………はい、これ」[ソリュ]

 

「重っ!? 会報って厚さじゃないっすよこれ!? 何ページあるっすか!?」[ルプ]

 

「大体毎回三百ページくらいね。多い時は四百ページで前後巻になることもあるわ」[ソリュ]

 

「そ、そんなに何が書かれているっすか?」[ルプ]

 

「そうねぇ…………主に書かれているのはアルベド様のエッセイね。アインズ様に対する気持ちだとか、アインズ様が言われたことに対してこう思ったとか、アインズ様がふと遠くを見ている時に何を考えているのか想像してみたりとか…………そういったことが時には楽しく、時には物悲しく、時には淫靡に書かれているわ」[ソリュ]

 

「…………そ、そうっすか」[ルプ]

 

「あとは挿絵付きで、アインズ様がお悦びになる〇〇〇を〇〇〇するやり方だとか、〇〇〇の時は〇〇を〇〇〇〇する方がいいとか、〇〇〇の時はあえて〇〇〇〇ながら〇〇〇を見せつけるようにして、最後は〇〇を〇〇〇〇ると凄いことになるとか、そんなことが書いてあるわ」[ソリュ]

 

「…………す、すごいっす! 俄然興味が沸いてきたっす!」[ルプ]

 

「まあ、あなたもご寵愛を受けることになったら参加するといいわ」[ソリュ]

 

「くぁああああああっ! 羨ましいっすーーー! 私も早くアインズ様からご寵愛いただきたいっすーーー!! そしてまだご寵愛を受けてない人の前でそんな顔したいっすーーー!!」[ルプ]

 

「…………………………………………がんばる」[シズ]

 

 

 

(はこ)の中にはみっしりと────

 

 

「…………おい、誰かいるか?」[グリ]

 

「────ここだ、グリンガム」[モブ盗賊]

 

「お前だけか…………他には誰もいなのか?」[グリ]

 

「ああ、俺たちだけみたいだ」[モ盗]

 

「くそっ! さっきの罠か? なんだ、バラバラに転移させられたとでもいうのか?」[グリ]

 

「信じられんが、現状を考えればその可能性が高いな。集団を転移させる魔法は、確か第五とか第六位階だったと思うんだが…………」[モ盗]

 

「この墳墓の主は、それだけの魔法を仕えるってことかよ」[グリ]

 

死の大魔法使い(エルダーリッチ)を顎で使うようなやつだからな。多分そうなんだろう」[モ盗]

 

「くそっ、くそっ! どんだけ狂ってるんだ、このクソッタレ墳墓は!」[グリ]

 

「その言葉、許しがたいですね」[恐怖公]

 

「な、誰…………!? ぎ、ぎぃやぁああああああああああああっ!!!!」[グリ]

 

「お、おい、どうしたグリンガム!?」[モ盗]

 

「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……………………ブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチ」[グリ]

 

「グリンガム! グリンガム! くそっ! そ、そうだ、明かりを!」[モ盗]

 

「……………………ムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャ」[グリ]

 

「明かり、明かりを…………よし、ついた………………………………ぁ」[モ盗]

 

「……………………」[グリだったもの]

 

「……………………え? な、なんだよこれ、グリンガムはどこに行ったんだよ? グリンガム? グリンガム!!」[モ盗]

 

「おや、失敬。我輩としたことが、つい怒りに我を忘れてしまいました」[恐怖公]

 

「ひぃ! な、なんだお前は!」[モ盗]

 

「名乗りもせず申し訳ない。我輩はこの地をアインズ様より賜る者、恐怖公と申します」[恐怖公]

 

「な、な…………」[モ盗]

 

「ああ、そちらが名乗られる必要はございませんよ。その既に骨と化している愚か者のせいで、我輩も眷属も自制が効かなくなっているのです。あなたはただの餌として、我輩の眷属の腹を満たしてくれればそれで結構」[恐怖公]

 

「え、餌…………? じゃ、じゃあこの骨は…………」[モ盗]

 

「数秒後の貴方の姿ですよ」[恐怖公]

 

「…………い……………………いやだぁあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……………………ブチブチブチブチブチブチブチブチムシャムシャムシャムシャムシャムシャ」[モ盗]

 

「…………さて、二人では少々物足りませんね。もう少し来てくれればいいのですが……………………」[恐怖公]

 

 

 

◇必要なのは愛なのです────

 

 

「モガッ? モガモガモガモガッ!」[モブ]

 

「あらん、ようやく起きたのねん?」[ニュー]

 

「フゥッ、フゥッ、フゥッ…………」[モブ]

 

「そんなに息を荒げて…………私の体に興奮しちゃったのかしらん? でも、ダ、メ、よ♡ 私の身も心も、全てアインズ様のものだからん」[ニュー]

 

「は、はいんふはは?」[モブ]

 

「そう、アインズ様。至高の中の至高にして、最も美しく、優しく、愛に満ちた御方…………このナザリック地下大墳墓に住まう全ての者があの方をお慕いし、恋焦がれ、忠誠を捧げているのよん」[ニュー]

 

「……………………」[モブ]

 

「あらん? そう言えばまだ名乗っていなかったわねん? 私の名前はニューロニスト。ナザリック地下大墳墓特別情報収集官…………まぁ、拷問官と言ったほうが分かり易いかしらん?」[ニュー]

 

「…………っ!」[モブ]

 

「うふふふふ。そんなに怯えなくてもいいのよん? 私は愛を込めてあなたに接するだけ、あなたはアインズ様を讃える歌を歌うだけ…………ね、簡単なことでしょ」[ニュー]

 

「ふ…………ふは?」[モブ]

 

「そう、歌よん。あなたとお仲間には、神であるアインズ様に捧げる賛美歌を歌う、聖歌隊の一員になってもらうのん。そして私はその指揮をする…………あぁ、目に浮かぶようだわ♡ 私の捧げる歌に感動して、人目も憚らず思わず私を引き寄せ、抱きしめてしまうアインズ様…………私はその情熱的な抱擁に応え、あの細っそりとしたお体を抱きしめ返す…………あぁ、あぁ、そして私は初めてを…………♡」[ニュー]

 

「……………………ブルリッ」[モブ]

 

「…………うふふっ。まぁそういう訳だから、あなた達にはせいぜい素敵な歌を歌ってもらって、私とアインズ様の雰囲気を盛り上げてもらわなくちゃいけないのよねん。だ、か、ら、そのお手伝いをしてくれる助手たちを紹介するわねん。カモン、拷問の悪魔(トーチャー)たち」[ニュー]

 

「…………っ! んーーっ!! んんーーーっ!!」[モブ]

 

「無駄よん。あなたごときの筋力で、その拘束から逃れることはできないわん。さ、じゃあ本番の前にたっぷり練習しないとねん。あなた達は今回の作戦のクライマックスで、そのBGMとなる栄誉を与えられているの。失敗は許されないから、何度も何度も練習しましょうねん?」[ニュー]

 

「ひゃへへ! ひゃへへふへ!!」[モブ]

 

「んー? やめてほしいのん? でもそれは、無、理♡ なぜならあなた達は、至高の方々のお住まいに土足で踏み入った薄汚いコソ泥なのよん? あなたは自分の一番大切なものを、一番愛するものを、自分より遥かに下等な存在に踏みにじられたらどうするかしらん?」[ニュー]

 

「おへははふはっは!」[モブ]

 

「私は踏み潰すわん。例え心から反省し、謝罪したとしてもねん。踏み潰す前にありとあらゆる苦痛を与え、心を絶望と狂気で満たし、自我が崩壊する直前まで追い込んでからだけど」[ニュー]

 

「はふへへふへ!」[モブ]

 

「そうね、助けが来るといいわねん。まぁ、もし来たら来たで、聖歌隊のメンバーが増えるだけだけどねん」[ニュー]

 

「ひひゃはー! ほんはほはひひゃはー!」[モブ]

 

「あら、なかなかいい声で歌うじゃない? でも、まだまだねん。本番ではちゃんと歌えるように、しっかり練習しましょうねん」[ニュー]

 

 

 

◇折れた天武────

 

 

「ようやく来たでござるか、侵入者殿」[ハム]

 

「…………あなたは?」[エル]

 

「拙者はハムスケ。ここでおぬしの相手をするように言われたものでござる。色々とテストしなければならないことがあるのでござるが…………そなたではちょっと弱すぎて相手にならないでござるなぁ」[ハム]

 

「…………また、か。剣も交えずに、あなたも私より強いと確信している…………」[エル]

 

「これはまた、随分と辛気臭いのが来たでござるなぁ」[ハム]

 

「私は…………私は弱いのか?」[エル]

 

「弱すぎでござる。人間にしてはそこそこ、程度でござろうな」[ハム]

 

「そこそこ…………」[エル]

 

「この場所のもっと下の方にいる方々から比べたら、ドラゴンに立ち向かうハエ程度でござろう」[ハム]

 

「…………ハエ」[エル]

 

「まあ、どれだけ弱かろうと侵入者は侵入者でござる。容赦なく殺すつもりで攻撃するでござるから、そちらも全力でかかってきてほしいでござる」[ハム]

 

「…………どうぞ、ご自由に」[エル]

 

「うむ! 某はハムスケ! そなたを殺すものの名を覚えて、あの世に逝くといいでござる!」[ハム]

 

「…………私などは名乗る程の者でもありません。ただのハエです」[ハエ]

 

「ではハエ殿! 行くでござるよ!」[ハム]

 

「…………どうぞ」[ハエ]

 

 

 

◇ハエの死後────

 

 

「このっ! このっ! ハエ野郎!」[エルフ1]

 

「お前の〇〇〇小さいんだよ! そして早すぎるんだよ! この〇〇〇〇〇〇野郎がっ!」[エルフ2]

 

「あはははははははっ! あははははははははっ!」[エルフ3]

 

「……………………あのぉ、でござる」[ハム]

 

「ざまみろこの〇〇野郎! ハエよりも小さいんじゃないのか!? お前が初めてだったら、私まだたぶん処女だったぞ!?」[エルフ2]

 

「このっ! このっ! このっ! このっ!」[エルフ1]

 

「あはっ! あははっ! あははははははははははっ!」[エルフ3]

 

「…………独特な弔い方でござるなぁ」[ハム]

 

「いえ、たぶんあの男に恨みでもあるのでしょう」[ザリュ]

 

「ああ、鬱憤を晴らしてるようにしか見えねぇからなぁ」[ゼン]

 

「あの者たちも一応侵入者なのでござるが…………」[ハム]

 

「無理やり連れてこられたのかも知れませんし、一応ゴウン様の指示を仰いでからにしたほうがいいかもしれませんね」[ザリュ]

 

「じゃあそうするでござるか。ところでザリュース殿、ゼンベル殿、どうでござった?」[ハム]

 

「ええ、見事に武技が発動していましたよ。おめでとうございます、ハムスケ殿」[ザリュ]

 

「おお、普通は一つの武技を習得するのに早くても一年くらいはかかるもんだぜ? まあ、普通はあんな自分が生きてるか死んでるかも分からなくなるような訓練なんてしねぇけどな」[ゼン]

 

「…………基本、格上の存在しかいないでござるからなぁ。拙者、五十回以上は死にかけたでござるよ」[ハム]

 

「俺とゼンベルは実際に一回死んでますよ」[ザリュ]

 

「おお! 貴重な体験だったぜぇ!」[ゼン]

 

「お二人は前向きでござるなぁ。よし、拙者も一回死ぬくらいの気持ちで頑張るでござるよ!」[ハム]

 

「経験しないに越したことはないですよ」[ザリュ]

 

「おお! 二度はゴメンだぜぇ!」[ゼン]

 

「…………やっぱり、もうちょっと控えめに頑張るでござる」[ハム]

 

 

 

◇円形劇場にたどり着いたフォーサイト────

 

 

ぎゃぁあああああああああああああああああ!!」[モブ]

やめて! やめて! やめて! やめて! やめて!」[モブ]

ひぃいいいいいいいい! ひぃいいいいいいいいい!」[モブ]

もう嫌だぁあああああああっ! 殺してくれぇえええええええっ!」[モブ]

 

「…………マジかよ」[ヘッケ]

 

「あれ…………みんな他のワーカーたち?」[イミ]

 

「おお、なんということを…………神よ…………」[ロバ]

 

「おげぇえええええええええええっ!」[アルシェ]

 

「アルシェ!?」[ヘッケ]

 

「だ、大丈夫!?」[イミ]

 

「無理もありません、あんな光景を見せられては…………」[ロバ]

 

「ち、違う! あ、あ、あれ…………!」[アルシェ]

 

「あれ…………? うおっ!」[ヘッケ]

 

「なにあれ…………スケルトン?」[イミ]

 

「ただのスケルトン…………ではないでしょうね」[ロバ]

 

「逃げて! お願い! 今すぐに逃げて! あれは、あれは化物なんて言葉で収まる存在じゃない! 力の桁が違うの! 無理! 絶対に無理ぃ!」[アルシェ]

 

「落ち着け、アルシェ!」[ヘッケ]

 

「ロバー!」[イミ]

 

「ええ、〈獅子のごとき心(ライオンズ・ハート)〉」[ロバ]

 

「…………う」[アルシェ]

 

「大丈夫? アルシェ」[イミ]

 

「ごめん。でも、大丈夫じゃない! 皆、あれは人間が勝てる存在じゃない! 想像を絶した化物なの! 早く、早く逃げないと!」[アルシェ]

 

「逃げる…………ったってなぁ」[ヘッケ]

 

「…………ええ、無理ね」[イミ]

 

「アルシェのようなタレントがなくても分かります。あのスケルトンから、世界を包むかのような濃厚な死の気配が漂ってきてますからね」[ロバ]

 

「ああ…………こいつぁまるで…………」[ヘッケ]

 

 

「……………………待たせたかな? 侵入者諸君」

 

 

 

◆フォーサイトの行末────

 

 

「さて、侵入者諸君。まずはおめでとうと言わせてもらおう」

 

「…………それは、どういうことですかね」[ヘッケ]

 

「君たちはここにたどり着いた唯一の冒険者…………いやワーカーだったか? まあ、どちらでもいい。とにかく唯一の生き残りだからだよ」

 

「…………あそこにいる奴らは?」[ヘッケ]

 

「ああ、ニューロニストの()()()達か? あれを生きていると表現するのなら、君には詩人の才能がある」

 

「そいつぁ…………どうも」[ヘッケ]

 

「礼はいらんよ、ただの皮肉だ。…………さて、ではそろそろ本題に入らせてもらおうか。実は君たちに提案があるのだよ」

 

「…………提案、ですか」[ヘッケ]

 

「そう、提案だ。ここまでたどり着いた褒美として、君たちには選択肢を与えようと思う。君たちはそのどちらを選んでも構わない…………あそこで歌っている者たちとは違ってな」

 

「…………なんで俺らが特別なのか、それを聞いても?」[ヘッケ]

 

「なに、一つ試したいことがあってね。侵入者たちの中でもとりわけ優秀そうで、かつ性格もまともそうな君たちに白羽の矢が立った、というだけだ」

 

「そいつぁ光栄、なんですかね。で? 俺たちで試したいってことはなんなんですかい」[ヘッケ]

 

「君たち『この世界』の人間が持っている、タレントや武技だよ。私はそれに非常に興味がある。私の下僕(しもべ)にも武技を習わせたりはしているのだが、それは中々に時間が掛かってね。もっと手っ取り早い方法はないかと考えた結果、武技やタレントを持つものを迎え入れればいいと思い至ったわけだ」

 

「…………それはつまり、俺たちに奴隷になれってことですか?」[ヘッケ]

 

「下等生物が…………っ、口の利き方を知らないようなら…………」[アル]

 

「よい、アルベド」

 

「しかしっ!」[アル]

 

「よいのだ。今はただの下等生物だが、もうすぐ()()()()()()()()。口の利き方も自ずと知るだろう」

 

「はっ、失礼いたしました。アインズ様」[アル]

 

「よい。…………でだ、君たちに与える選択肢は二つ。私の提案を受け入れてその命を私に捧げるか、もしくは提案を蹴ってあそこにいる者たちと同じ運命を辿るかだ」

 

「…………その提案、俺が受ける代わりに俺の仲間を見逃すって訳には…………」[ヘッケ]

 

「ヘッケラン!」[イミ]

 

「当然なしだ。ただ、各々に選ばせてやろう。自分の命をどうするかは自分で決めたいだろうからな。…………さて、どうする?」

 

「…………私は」[ロバ]

 

「おっと、ひとつ注意しておこう。選択は一度だけだ。はじめに断っておいて、後でやっぱり提案を受けますなんて我が儘を聞くつもりはない。どれだけ泣き叫んで懇願しようと、提案を断った者は死ぬことも許されない苦痛を精神が崩壊するまで延々と味わってもらうことになる。気をつけたまえよ?」

 

「…………選択肢なんてないじゃない」[イミ]

 

「よせ、イミーナ」[ヘッケ]

 

「それに、私たちが全員戻らなければ、すごく強い人がここに来ることになっているわよ? その人はあなたより強いかも知れない!」[イミ]

 

「よすんだ、イミーナ」[ヘッケ]

 

「あの人なら、モモンさんなら…………!」[イミ]

 

「やめろ、イミーナ! モモンさんは来ない!」[ヘッケ]

 

「へ、ヘッケラン? だ、だって、あのモモンさんなら…………」[イミ]

 

「こないんだよ、絶対に来ない。…………そうでしょう? モモンさん」[ヘッケ]

 

「……………………え?」[イミ]

 

「……………………〈精神が鎮静化〉」

 

「あなたは、あの人と同じ『死気』を纏っている。それをあそこであえて俺たちに見せたのは、あそこで俺たちを選別する意図があったからだ。だからこそ、ご老公やエルヤーだけじゃなく、わざわざ俺やグリンガムにまで力を見せつけたんでしょう?」[ヘッケ]

 

「ふむ…………(いや…………そこそこ強そうだったから、後々また同じことが起こらないように一度にやっただけなんだけど…………)」

 

「ちょ、ちょっと待ってよヘッケラン! じゃあなに、この…………この人がモモンさんと同一人物だってことは、アダマンタイト級の戦士としての力を持っている上に、アルシェが吐くくらい強力なマジックキャスターだってことよ!?」[イミ]

 

「そうだ」[ヘッケ]

 

「そんな…………そんなの…………」[イミ]

 

「……………………話を脱線させるのはそれくらいにしてもらおうか。私がそのモモンだろうと、そうでなかろうと、君たちの運命が変わるわけでない(もう〈絶望のオーラ〉を軽々しく使うのはやめよう)」

 

「…………ひとつだけ、聞かせて欲しい」[アルシェ]

 

「アルシェ…………」[ヘッケ]

 

「…………ふむ、いいだろう。ただし、質問はひとつだけ、そして君の質問で本当に最後だ。私がそれに答えようと答えまいと、その後君たちには自分の運命を選択してもらう」

 

「…………ああ、わかった」[ヘッケ]

 

「いいの? ヘッケラン…………ロバーとイミーナも?」[アルシェ]

 

「…………はぁ、もうどうしようもないみたいだし、いいわよ」[イミ]

 

「ええ、かまいません」[ロバ]

 

「…………ありがとう…………ごめんなさい」[アルシェ]

 

「いいってことよ。どうせ聞きたいことは同じだろうしな、俺の代わりに聞いてくれ」[ヘッケ]

 

「うん……………………では、質問します」[アルシェ]

 

「ああ、するといい」

 

「私たちがあなたの提案を受け入れたとして…………結局私たちはどうなるの?」[アルシェ]

 

「……………………(そういや、命を捧げろとか言っておきながら、どうするかは言ってなかったけ…………)」

 

「答えて…………くれますか?」[アルシェ]

 

「あ、ああ、もちろんだとも。私の提案を受け入れた場合、君たちには────────」

 

「「ごくりっ」」[フォーサイト]

 

「────────吸血鬼の眷属化してもらうことになる」

 

 

 

◆侵入者撃退作戦その後────

 

 

「お疲れ様でした、アインズ様」[アル]

 

「うむ。今回の作戦では、お前も全体の調整に力を注いでくれたそうだな。流石は守護者統括であるアルベド、作戦を予定通りに進めることができた。感謝するぞ」

 

「勿体無いお言葉です。それでアインズ様、お時間はよろしいのですか?」[アル]

 

「ああ、地上のことはパンドラズアクターに任せてある。あいつならモモンとしてうまく立ち回ってくれるだろう」

 

「それはよろしゅうございました。では、少しお時間を頂いてもよろしいですか?」[アル]

 

「あ、ああ、構わないとも(まあ、いつもの流れだとこのままベッドになだれ込むんだけど)」

 

「実は…………」[アル]

 

「うむ(あれ? なんか真剣な感じ…………)」

 

(わたくし)…………」[アル]

 

「う、うむ(なに!? この溜めはなに!? どんな重要なこと言おうとしてるの!?)」

 

「────────出来ちゃったみたいなんです!」[アル]

 

「…………………………………………〈精神が沈静化〉」

 

 

 

 




 はい、七巻分はこれで終わりです。

 フォーサイトが生き残りましたねー。
 ですが今後の出番はないかもしれないので、彼らのその後をちらっと書いておきます。

 基本的には全員シャルティアによって吸血鬼化しましたが、役割はそれぞれ違います。

 ヘッケラン────武技を使える吸血鬼に。ハムスケや蜥蜴人と共に武技の普及に励んでます。

 イミーナ────基本的にはヘッケランと同じです、魔法が使えないナザリックのNPCに魔法を教えようと頑張っています。

 ロバーデイク────吸血鬼化したあと、アインズ様の記憶操作によって信仰の対象がアインズ様に変わりました。
 変わらず回復魔法は使えています。

 アルシェ────タレントは吸血鬼化しても使えることが判明。
 ただ、今のところは使い道がないのでシャルティアのおもちゃです。
 妹たちはカルネ村に呼び寄せ、時々会いに行かせてもらっています。

 以上。

 一応皆、幸せっちゃあ幸せなんでないかと思います。


 そして…………アルベドさん。

 出来ちゃいましたねー。

 どうしましょう。

 まあ、書いてしまったものはしょうがないので、後々なんか小話でも入れてこうかと思っています。

 なるべく本編の大筋には影響のない方向で。

 




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モモンガ様、束の間の休息

 アルベドの「出来ちゃった」発言から一夜明け、アインズ様は主要なものたちを王座の間に集めていた────


◆正妃ご懐妊────

 

 

「皆に伝えることがある」

 

「「はっ!」」[全NPC]

 

「既に皆も知っていることだろうが、改めて私の口からその言葉を伝える必要があると思い、こうして集まってもらった次第だ。アルベド、欠けているものはいないか?」

 

「アインズ様。四階層守護者ガルガンチュアを除く全階層守護者、及び執事(バトラー)のセバス、戦闘メイド(プレアデス)、御身の前に控えております。また、各階の領域守護者、一般メイド、その他NPCにも魔法によってアインズ様のお声は届いており、全ての者にそのお言葉を聞く準備は整っております」[アル]

 

「うむ。では────聞くがよい、我が愛する全てのものたちよ!」

 

「「はっ!」」[全NPC]

 

「この度、我が正妃であるアルベドが────我が子を身ごもった!

 

「「オォオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」」[全NPC]

 

祝福せよ! 新たなる生命の誕生を! 歓喜せよ! この(まれ)なる慶事に! そして心せよ! 我らには守るべきものが、また一つ増えたということを!

 

「「アインズ・ウール・ゴウン様万歳! アインズ・ウール・ゴウン様万歳! 至高なる御身に栄光あれ! 生まれ来る貴き御子に幸いあれ! アインズ・ウール・ゴウン様万歳!! アインズ・ウール・ゴウン様万歳!!……………………」」[全NPC]

 

 

 

◆懐妊報告その後(アインズ様とアルベド)────

 

 

「ふぅ…………(セリフとか全部パンドラズアクターに考えさせたけど…………あれで大丈夫だったかな? 大仰すぎやしなかったか?)」

 

「お疲れ様でした、アインズ様」[アル]

 

「おお、アルベド。なに私は大丈夫だ、それよりお前の体はどうなのだ? 歩いたり跪いたりして問題はなかったのか?」

 

「もちろんでございます、アインズ様。アインズ様から頂いた何よりも大切なものは、私の一命に代えても護り通してみせます」[アル]

 

「うむ。その心は嬉しいが、私にはお前とて何にも代えがたく大切な者なのだ。我が子と同じように、お前自身の身も必ず護り通して欲しい」

 

ああ! アインズ様ぁ!!♡」[アル]

 

「え、あれ、ちょっと、子どもは!?」

 

「大丈夫でございます、アインズ様。既にお腹の子は安定期に入っております。激しすぎなければ問題ありません♡」[アル]

 

「えっ! もうっ!?」

 

「はい、アインズ様。私は淫魔(サキュバス)ですので、妊娠から出産までの期間は約一ヶ月でございます。お腹もあまり大きくはなりませんので、体型(プロポーション)が崩れる心配もございません」[アル]

 

「あ、そ、そうなんだ…………んんっ! いや、そうなのか?」

 

「そうでございます!♡」[アル]

 

「その、やけに興奮しているようだが…………」

 

昨日はおあずけでございましたから!!♡」[アル]

 

「あ、はい」

 

 

 

◆懐妊報告その後(守護者たち)────

 

 

「めでたい! 実にめでたい! あぁ、私は今ならば羊皮紙の原料にすら優しく振る舞えそうなほど高揚していますよ!」[デミ]

 

「確かに、珍しいでありんすねぇ。デミウルゴスがここまで浮かれた姿を晒すのは」[シャル]

 

「そりゃしかたないよ! あたしだって嬉しいもん! シャルティアだってそうでしょ?」[アウ]

 

「当たり前でありんすぇ。アインズ様のお子がお生まれになるんでありんすもの。まぁ、アルベドに対しては()()()()()と羨ましいの気持ちが半々くらいでありんすが…………」[シャル]

 

「あぁ…………シャルティアはまだだもんねぇ」[アウ]

 

「う…………で、でも、アインズ様は約束してくれたでありんす。今回はナザリックの最低戦力の確認ということで出番はありんせんでしたが、次こそは活躍の機会をお与え下さると…………」[シャル]

 

「大丈夫、きっとすぐだよ」[アウ]

 

「くぅぅ…………また上から目線…………」[シャル]

 

「まあまあ、君たちもこんな時にまでいがみ合っていないで、今日くらいは共に喜びあったらどうかね」[デミ]

 

「…………そういうデミウルゴスは、セバスと抱き合って喜んだりしたでありんすか?」[シャル]

 

「流石に抱き合ったりはしないが、セバスとはこれからBARに飲みに行く事になっているよ?」[デミ]

 

「えっ、ほんとに? めっずらしー」[アウ]

 

「驚きでありんす…………」[シャル]

 

「自分でもそう思うが、今回のことはそれくらいの慶事だということさ…………ところでアウラ、マーレはどうしたんだい?」[デミ]

 

「マーレ? マーレなら六階層に戻って部屋で本でも読んでると思うけど…………」[アウ]

 

「おや、こんな日にまで部屋に引きこもって読書でありんすか?」[シャル]

 

「まあ、読書って言えば読書だけど…………」[アウ]

 

「わざわざそのような言い回しをするということは、普通の読書ではないように思えますが?」[デミ]

 

「うーん、ほら、実際にはアルベドに子供が出来たことは昨日知った訳じゃない? その知らせを聞いたマーレはすぐに図書館に飛び込んでいってさ、山のように本を抱えて戻ってきたんだよね」[アウ]

 

「で? 結局それはなんの本だったでありんすか?」[シャル]

 

「妊娠とか出産の方法について書かれた学術書」[アウ]

 

「……………………」[デミ、シャル]

 

「妊娠しやすい体温だとか、妊娠初期の段階で必要になる栄養素だとか、なんかそういう小難しいことが書かれた本を読みながら、ずっとブツブツ呟いてた」[アウ]

 

「…………本気、でありんすね」[シャル]

 

「まあ、マーレは二番目にアインズ様からのご寵愛を受けた存在だからね。次は自分だと意気込んでいるんだと思うよ」[デミ]

 

「最近ご寵愛を受けるときはあたしとマーレ一緒に呼ばれるから、赤ちゃんが出来るとしたらふたり一緒かもねー」[アウ]

 

「くぅぅぅぅっ! 羨ましいでありんすぅぅぅぅっ!」[シャル]

 

「…………はぁ。二人共、ほどほどにしておきたまえよ? じゃあ、私はそろそろBARに行くから、これで失礼させてもらうよ」[デミ]

 

「…………あ、そう言えば、今日はコキュートスは一緒じゃないでありんすか?」[シャル]

 

「ああ、コキュートスなら…………ほら、あそこにいますよ」[デミ]

 

「あれって…………なにやってんの? なんか床に四つん這いになったままプルプルしてるみたいだけど…………」[アウ]

 

「感動に打ち震えて泣いているんですよ。たぶんあと二十分くらいはあのままでしょう。そしてその後はアインズ様のお世継ぎをお世話する未来を妄想して、誰かが止めるまで悶え続けてると思いますよ」[デミ]

 

「そ、そうでありんすか…………」[シャル]

 

「あなた達もこのままここに居れば、彼の妄想による一大叙事詩を聞くことが出来ますよ? 私としては爺がお世継ぎ様と共に心身を鍛える武者修行の旅に出るあたりが山場が多くてお勧めです」[デミ]

 

「…………いこっか」[アウ]

 

「…………そうしんしょう」[シャル]

 

 

 

◆懐妊報告その後(セバスと戦闘メイド(プレアデス))────

 

 

「────────ですので、今後はさらにお仕えする御方が増えていくと思われます。皆にも今まで以上に働いて貰うことになると思いますので、よろしくお願いします」[セバ]

 

「喜ばしいことです」[ユリ]

 

「…………アインズ様の赤ちゃん…………早く見たい」[シズ]

 

「私は早く産みたいっす!」[ルプ]

 

「アルベド様が第一子をご懐妊されたことで、ご寵愛を受けるためのハードルが大きく引き下げられたみたいですし、ルプスレギナがご寵愛を受けるのももうすぐでしょう」[ソリュ]

 

「えっ? ご寵愛を授けるかどうかって、アルベド様が決めてたっすか?」[ルプ]

 

「全部が全部ではないみたいですけど、アルベド様は正妃ですもの。正妃というのは、いわば後宮(ハーレム)のトップ…………既にご寵愛を受けた者たちのルーティンを決めていたのもアルベド様よ?」[ソリュ]

 

「そうだったんすか!?」[ルプ]

 

「ええ。正妃であるアルベド様が一番最初にアインズ様のお子を授かれるように、色々と調整しながらね」[ソリュ]

 

「なるほど、確かに正妃を差し置いて他の者が第一子を授かるというのは、後々問題になりそうですからね」[セバ]

 

「単純にアルベド様がそれを許せない、ということが一番の理由だったみたいですけれどね」[ソリュ]

 

「…………そ、そうですか」[セバ]

 

「アルベド様にお願いしてくるっすー!」[ルプ]

 

「…………ずるい、私も」[シズ]

 

「私モォ」[エン]

 

「……………………育児室の準備を手伝って頂きたかったのですが…………まぁ、仕方ありませんか」[セバ]

 

「セバス様も、今日はデミウルゴス様とBARに行かれるのではなかったのですか?」〔ユリ〕

 

「ええ……………そうですね。今日くらいは彼と喜びを分かち合うことを優先しましょうか」[セバ]

 

「…………そういえば、ナーベラルはどうしたのですか? ユリ」[ソリュ]

 

「ナーベラルですか? ナーベラルなら、確かヴィクティム様を第八階層にお運びする役目を仰せつかっていたと思いますが…………」[ユリ]

 

 

 

◆懐妊報告その後(コキュートスとヴィクティムと…………)────

 

 

「────────ソシテ私ハオ世継ギ様ニコウ言ウノダ。『勝利シタ後ノコトハ、勝利シテカラ考エレバヨイノデス。今ハタダ、目ノ前ノ一戦ニノミ心ヲ掛ケルベキデゴザイマス』ト…………」[コキュ]

 

「そ、それからどうなるのですか? コキュートスさま?」[ヴィク]

 

「私トオ世継ギ様ハ互イノ背ヲ合ワセ、群ガッテクル敵ヲ次カラ次ヘト切リ倒シ…………」[コキュ]

 

「……………………(捕まってしまった…………っ)」[ナベ]

 

 

 

◆懐妊報告その後(マーレ)────

 

「────────ブツブツ…………後はなるべく安静にし、十分ほどは横になったままの体勢でいるといいでしょう。ですが、体力に自信があるのであれば、逆立ちをするのも効果的です…………ブツブツ…………運動などによって基礎代謝を高める…………ブツブツ…………ホルモンバランス…………ブツブツ…………」[マレ]

 

 

 




 今回はオリジナルの閑話でした。

 アインズ様の休息はたった一晩で終了しましたね。
 まさに束の間。

 次回から八巻の内容に進んでいこうと思いますが…………カルネ村のトロール襲撃はバッサリカットでもいいかな。

 アインズ様の出番はあんまりないし。

 書くとしても短くなると思います。

 では、また次回。


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モモンガ様、スパでも自重せず

 ある日のナザリック。
 いつもどおりに眠れぬ夜を過ごしたアインズ様は、たまにはゆっくりしようと決意するが────


◇ナザリックの朝────

 

 

「おはよう! フォアイル、リュミエール!」[シクス]

 

「おはよう、シクスス。気合入ってるね」[フォア]

 

「おはようございます。当然でしょうフォアイル。シクススは今日アインズ様当番なのですから」[リュミ]

 

「そう! 私は今日アインズ様当番! (みなぎ)ってるわぁ!」[シクス]

 

「いいなぁ、シクスス。私まだアインズ様当番回ってきてないんだよねぇ」[フォア]

 

「…………既に当番は一周以上しているはずですが? アルベド様に確認してきてあげましょうか?」[リュミ]

 

「ああっ! 嘘だよ、嘘だよ! …………でも、本当に嘘ってわけでもないんだけど」[フォア]

 

「アインズ様当番に、アインズ様へのご奉仕が含まれるようになったのはつい最近だからねぇ」[シクス]

 

「うぅ…………私の当番が終わったすぐ後だったんだよ…………」[フォア]

 

「そうでしたね…………ご愁傷様です、フォアイル」[リュミ]

 

「そう思うなら…………代わってくれる? リュミエール」[フォア]

 

「それはありえませんね。私だって待ち遠しいのですから」[リュミ]

 

「そうだよねぇ…………」[フォア]

 

「ほらほら、暗くならないの! 必ず当番は回ってくるんだから、今日は今日の仕事を頑張りましょう?」[シクス]

 

「…………そうね! よし、いっぱいご飯食べて、今日もバリバリ働くぞ!」[フォア]

 

「ええ、頑張りましょう」[リュミ]

 

「おおー、やる気マンマンっすねー」[ルプ]

 

「ひゃっ! ル、ルプスレギナさん?」[シクス]

 

「驚かせないで下さいよー。もー」[フォア]

 

「…………心臓が口から飛び出るかと思いました」[リュミ]

 

「にっしっし、三人ともいいリアクションっす。やっぱり不可視化からの声掛けコンボは鉄板っすね。…………それにしてもシクススは今日アインズ様当番っすかー。羨ましいっすねー(モミモミ)」[ルプ]

 

「あっ、ちょ、ちょっとルプスレギナさん!? 揉まないでくださいよ!」[シクス]

 

「これか! これでアインズ様にご奉仕するっすかー!?」[ルプ]

 

「そ…………それは、アインズ様がお望みであれば…………////」[シクス]

 

「むきぃいいいいっ! 羨ましいっすーーー!!(モニュモニュモニュモニュ)」[ルプ]

 

「ああっ、そんなに激しくしたら服にシワができちゃいますよー!」[シクス]

 

「…………いじめ、よくない(パスッ!)」[シズ]

 

「痛っ!? シ、シズ? ナザリック内での発砲は禁止っすよ!?」[ルプ]

 

「…………大丈夫。消音器(サイレンサー)付けてるし、峰撃(みねう)ちだから」[シズ]

 

「いやだから、前も言ったっすけど銃で峰撃ちってなんすか!?」[ルプ]

 

「…………(パスッ! パスッ!)」[シズ]

 

「痛っ! ちょ、痛いっす! 食事の約束すっぽかしたのは謝るっすからーー!!」[ルプ]

 

「…………不可視化まで使って(パスッ! パスッ! パスッ! パスッ! パスッ! シャコンッ)」[シズ]

 

「痛ぁーーーーっ!! しかも、さらに再装填(リロード)してるっすーー!?」[ルプ]

 

「……………………さ、私たちは今のうちに食事に行きましょうか」[リュミ]

 

「そ、そうね。私も早めに食事を終わらせて、身だしなみを整えなきゃ」[シクス]

 

「う、うん。巻き込まれないうちに早く行こう!」[フォア]

 

 

 

「あぁあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」[ルプ]

 

 

 

◆アインズ様の朝────

 

 

「おはよう、アルベド。良く眠れたか?」

 

「はい、アインズ様の腕枕のおかげで♡」[アル]

 

「…………そうか(骨なんだけど…………)」

 

「はい♡」[アル]

 

「…………んんっ! あー、アルベドよ、体の調子はどうだ? 問題ないか?」

 

「もちろんでございます、アインズ様。むしろ最近は調子が良くて調子が良くて…………」[アル]

 

「う、うむ、そうか。それは何よりだ(俺は逆に疲れ気味だけど…………アンデッドなのに)」

 

「こう、力が漲ると申しますか、レベルが百を突破しているのではないかと思うくらいに絶好調なのです」[アル]

 

「……………………(あれ? もしかして俺、アルベドに経験値吸い取られてる? いや、まさかな…………)」

 

「どうかなさいましたか? アインズ様」[アル]

 

「い、いや、何でもない、アルベドよ…………では、ニ時間後に本日の活動について打ち合わせをする。準備を整えたら改めて私の部屋に来い」

 

「畏まりました、アインズ様。まずは────────一緒にお風呂に入りましょうか♡」[アル]

 

「あっ、はい」

 

 

 

◆アインズ様、朝の打ち合わせ────

 

 

「────────ではアルベド。昨晩から今朝にかけて、ナザリック内でなにか私に報告すべき事案はあったか?」

 

「はい、アインズ様。今朝、食堂で発砲事件が一件ございましたが、それ以外に報告すべきことは特にございません」[アル]

 

「…………発砲事件?」

 

「はい。一緒に食事する約束をすっぽかされたシズが、ルプスレギナに向けて十六回発砲したようです」[アル]

 

「……………………(食堂で発砲とか…………アメリカの大学かよ)」

 

「シズにはなにか処罰を?」[アル]

 

「…………いや、よい。ナザリックの施設や一般メイドに害がなかったのであれば、今回のことは不問とする。ただし、今後は制裁に武器や特殊技術(スキル)を使わないよう、シズには改めて厳命せよ」

 

「はっ、そのように致します」[アル]

 

「うむ。では次に私の予定だが…………午前中は静養に当てることとする(なんか疲れたからな)」

 

「畏まりました、ゆっくりとご静養ください」[アル]

 

「まあ、午後からはいつも通りエ・ランテルでモモンとして活動する予定だがな」

 

「パンドラズアクターにでも任せて、丸一日ご静養に当てられたらいかかですか?」[アル]

 

「いや、向こうの用事は早めに切り上げて帰ってくる予定だから問題ない。それからナザリックに戻ったあとは、男性守護者やセバスと共にスパにでも行こうかと思っている」

 

「私とではなく、デミウルゴスやコキュートスとですか?」[アル]

 

「うむ。お前たちに構ってばかりで、彼らとコミュニケーションが取れていないからな。たまには男同士で親交を深めることも必要だろう」

 

「なるほど、畏まりました。では男性守護者各位、およびセバスには私から伝えておきますか?」[アル]

 

「いや、それには及ばない。私が直接伝言(メッセージ)で伝えておくとしよう。それもまたコミュニケーションの一つだからな。それと…………アルベド、お前には今日一日休みを与える。同じくアウラとシャルティアにも休みを与えるので、たまには女性の守護者三人で遊ぶといいだろう」

 

「私に休み、でございますか? 先程も申し上げましたが、私の体調はむしろ絶好調ですので休みなどは…………」[アル]

 

「アルベドよ。その体は、もはやお前だけのものではあるまい」

 

「もちろんでございます! この体も心も、全てはアインズ様のもの♡!」[アル]

 

「い、いや、そうではない。母体を労われと言っているのだ」

 

「ア、アインズ様…………!」[アル]

 

「お前の体調がいいにしろ悪いにしろ、普段と違う時点でそれは()()だ。そしてその異変の原因は、妊娠の影響である可能性が高い。だから、例えお前自身が絶好調だと感じていたとしても、私は休むべきだと判断する」

 

「畏まりました、アインズ様。アインズ様の深い洞察とご慈悲に従い、私は本日休養を取らせていただきます。その中で自らの体と向き合い、万全の体調でアインズ様の御子を出産できるよう…………」[アル]

 

「アルベド。せっかくの休みなのだぞ? そう固く考えずに肩の力を抜け」

 

「ふふふ…………はい、アインズ様♡」[アル]

 

「…………っ! (そういうふうに微笑むと、ほんと女神みたいに綺麗だな…………)」

 

「? どうかなさいましたか?」[アル]

 

「い、いや、何でもない。では、本日の打ち合わせはここまでとする。アウラとシャルティアには私から伝言(メッセージ)を送っておくから、お前は部屋で少し休め。そして後ほど、二人とどう休日を過ごすか打ち合わせをするといいだろう」

 

「はい♡ では失礼いたします、アインズ様♡」[アル]

 

「………………………………ふぅ。なんか最近になってアルベド、より綺麗になってきたよなぁ。なんだろ、やっぱりホルモンバランスとかが影響してるんだろうか? それとも、もうすぐ母親になることで内面から変化が? ……………………俺は…………俺はどうなんだ? もうすぐ父親になるんだ。俺はしっかり出来てるのか? ………………………………休んでる場合じゃないな、支配者ロールの練習でもするか…………」

 

 

 

◇守護者女性陣の休日────

 

 

「────────そしてアインズ様はこう仰ったの「ああ、愛しているぞ、アルベド! 私は我が子を宿した愛しいお前の体が心配でならない! だから今日は休め! そしてまた明日から、その美しい体で私を抱きしめ、愛という名の衣で私の心を包み込んでくれ!」────と」[アル]

 

「……………………」[アウ、シャル]

 

「その後アインズ様は「さあ、体の力を抜け。目を閉じ、耳を塞ぎ、快楽のみに神経を集中させるのだ」────そう囁きながら私をベッドに押し倒し…………」[アル]

 

「はいダウトーーーっ!」[アウ]

 

「な、なによアウラ。いきなり大きな声出して」[アル]

 

「いや、どう考えたって盛りすぎでしょ。それに最後の話、アルベドが押し倒される? ないない。だって我慢できなくなって自分から押し倒してばっかりじゃん」[アウ]

 

「うっ…………どうしてそれを…………」[アル]

 

「アインズ様から聞いた」[アウ]

 

「あぁ…………アインズ様。なぜ私との睦事(むつごと)を他の者に………………………………まあ、それはそれで少し興奮しますけど」[アル]

 

「うわぁ…………」[アウ]

 

「あら、アウラ。そんな反応していいのかしら? (ねや)の情報に精通しているのはあなただけじゃないわよ? むしろ私の方が、あなたよりもずっと色々と知っているのだからね?」[アル]

 

「うっ…………それって…………」[アウ]

 

「あなた、〇〇〇よりも〇〇〇の方が好きなんですってねぇ。しかも普段は活発なあなたが、〇〇〇を〇〇〇〇ながら〇〇〇〇されているときは、まるでマーレのように大人しくなるんですって? 意外だったわぁ」[アル]

 

うわーーーっ!! うわーーーっ!! な、なんでそんなことまで知ってるのさ!」[アウ]

 

「うふふ…………守護者統括を侮らないことね。私はこのナザリック内で起きた出来事なら、ほとんど把握しているのよ?」[アル]

 

「ま…………まさか、あのことも…………」[アウ]

 

「ああ、あなたがアインズ様にお願いして〇〇してもらったこと?」[アル]

 

やーめーてーーーっ!!」[アウ]

 

「………………………………うぅ、話に入っていけないでありんすぅ…………」[シャル]

 

 

 

◇村娘と大英雄(見送る兵士達)────

 

 

「────────では、この娘の身元は私が保証する。それでいいな?」

 

「「はっ! 問題ありません、モモン様!」」[モブ兵士達]

 

「うむ。では行こうか、エンリ・エモット」

 

「は、はいっ!」[エン]

 

「……………………ふぅ、さすがはアダマンタイト級冒険者の中でも随一と呼ばれるモモン様だ。実際に見ると迫力が違うな」[モブ兵士A]

 

「ああ。威圧感というか、貫禄というか…………そういった目に見えないものが物理的な圧力でも持っているかのようだった」[モ兵B]

 

「まさしく大英雄の称号に相応しい方だったな」[モ兵C]

 

「しかし…………あのエンリ・エモットという村娘は、そのまま通してしまって良かったのか?」[モ兵D]

 

「いいだろ。モモン様がいいって言ってるんだから」[モ兵A]

 

「ああ、何も問題はない。ですよね?」[モ兵B]

 

「うむ。かの御仁がわざわざ身元保証人を買って出るほどだ。やはりただの村娘ではないのだろうが、同時にこのエ・ランテンルに害をなす存在だとも思えない」[モブ魔法詠唱者]

 

「そうそう。なんてったってモモン様は、この都市どころか王都まで救った大英雄だからな」[モ兵C]

 

「…………そうだな。うん、何も問題はない。しかし、あのエンリ・エモットという村娘とモモン様の関係はいったい…………?」[モ兵D]

 

「現地妻じゃないか? そこそこ可愛い娘だったし」[モ兵B]

 

「あっ、俺もそう思った」[モ兵C]

 

「やっぱ、アダマンタイト級冒険者ともなるとモテるんだろうなぁ…………」[モ兵A]

 

「うむ。かの御仁であれば、現地妻が五人…………いや十人以上いても不思議ではない」[モ魔]

 

「す、すごいな。十人とか…………俺なんてまだ一人も…………」[モ兵D]

 

「お、なんだお前。まだ童貞か? 童貞なら、俺がいい人紹介してやろうか?」[モ兵B]

 

「……………………いいよ。あれだろ? ガガーランさんだろ?」[モ兵D]

 

「バレたか」[モ兵B]

 

「そんだけ童貞を強調されればな。だいたい、初体験があの人とかレベル高すぎるだろ。へし折れるわ」[モ兵D]

 

「人間的にはすごく好感の持てる人なんだがなぁ。やっぱりそっちの対象となると、リーダーのラキュース様か」[モ兵B]

 

俺はイビルアイちゃんの方が…………」[モ兵D]

 

「…………えっ? お前って、ロ…………」[モ兵B]

 

「おい、お前達それぐらいにしておけ。まだまだ後がつかえてるぞ」[モ魔]

 

「「はっ!」」[モ兵達]

 

 

 

◇村娘と大英雄────

 

 

「あの、ありがとうございました!」[エン]

 

「いや、気にするな。礼ならンフィーレアくんにするといい。彼が君のことを随分気にかけているようだったから、私も覚えていただけだ」

 

「ンフィーレアが…………」[エン]

 

「私は彼の友人だからな。友人が大事に思っている人を見捨てるわけにはいくまい」

 

「だ、大事って、私たちはそんな」[エン]

 

「君の気持ちはどうだか知らないが、彼の気持ちは見ていればわかる。…………君だって、本当は気づいているんだろう?」

 

「…………////」[エン]

 

「おっと、余計なことを言ってはンフィーレアくんに怒られてしまうな。それで、君はなぜこの街に?」

 

「は、はい。あの、森で採れた薬草を売りに来ました。その後は神殿に行って村へ移住したい人がいないかの確認と…………あと村にはない品物の購入。それと冒険者組合にお話があって…………」[エン]

 

「…………冒険者組合に?」

 

「はい。私の村────カルネ村近くにトブの大森林というのがあるのですが…………あっ、モモン様はもうご存知でしたよね」[エン]

 

「ああ、ンフィーレアくんの依頼で訪れたからな」

 

「そのトブの大森林で異変が起きているようなんです。なんでも東の巨人や西の魔蛇という強大な力を持つ存在が、滅びの建物とかいう場所に住んでいるもっと恐ろしい存在────滅びの王と戦う為に色々と動いていて、森の勢力図が不安定になっているんだとか…………」[エン]

 

「…………なるほど(滅びの王ってのは…………たぶん俺、だよな? でも、東の巨人に西の魔蛇? そんな奴らが居るなんて聞いてないぞ…………)」

 

「下手ををするとカルネ村にも魔物が押し寄せてくる可能性もあるので、その辺のことを冒険者組合に相談出来たらと…………モモン様?」[エン]

 

「あ、ああ、すまん。少し考え事をしていてな。うむ。そういうことなら、冒険者組合に相談するといいだろう。私もこれから向かう予定だから、先に行って話を通しておく。無下には扱われないはずだ」

 

「そ、そんな! そこまでお手を煩わせる訳には…………」[エン]

 

「いや、いいのだよ。君が私の知り合いだと伝えておくだけだ。手間というほどのものではない」

 

「あ、ありがとうございます!」[エン]

 

「ンフィーレアくんも今はカルネ村に暮らしていることだし、他人事ではないからな。村に戻ったら彼にはよろしく伝えておいてくれ」

 

「は、はい(ンフィーレアって、こんなすごい人とも仲が良かったんだ…………すごいなぁ)」[エン]

 

「では私は一足先に冒険者組合に向かわせてもらおう。君も用事を済ませた後で寄るといい」

 

「はい、ありがとうございます…………あれ?」[エン]

 

「ん? どうかしたかね?」

 

「いえ、あの…………モモン様の声って、どこかで聞いたことあるような気がして」[エン]

 

「…………〈精神沈静化〉…………気のせいじゃないか? 世の中には似たような声の他人が、探せば三人くらいはいるというからな。私と似た声だって二、三人いても不思議じゃない」

 

「そう…………そうですよね! すいません、変なこと言ってしまって」[エン]

 

「いやいや、構わないとも。では疑問も解けたようだし、私はこれで失礼するよ(あっぶね! でもまあ、声くらいで同一人物だと特定はできないだろ)」

 

「あ、はい! 本当にありがとうございました! (あっ、わかった。モモン様の声って、ゴウン様と似てるんだ。……………………でも、そんなはずないよね!)」[エン]

 

 

 

◇支配者と犬────

 

 

「ルプスレギナ。なぜ呼ばれたか、その理由は分かるか?」

 

「申し訳ありません、アインズ様。私にはなぜ呼ばれたのか理由が分かりません」[ルプ]

 

「そうか。では質問を変えよう。東の巨人に西の魔蛇────この名前に聞き覚えはあるか?」

 

「あっ、はい。その二つの名前はつい最近カルネ村で耳にしました」[ルプ]

 

「…………なぜそれを報告しなかったのだ?」

 

「申し訳ありません。ハムスケと同程度の力しか持たない存在だと聞きましたので、さして重要なことではないかと…………」[ルプ]

 

「ふむ…………ルプスレギナよ」

 

「はっ」[ルプ]

 

「お前たちナザリックの外で働く者たちは、この私────アインズ・ウール・ゴウンの目であり耳である」

 

「はっ、そのように仰っていただき、感謝の言葉も────」[ルプ]

 

「その目が見、耳が聞いたことを頭である私が理解していない。それがどういうことだか分かるか?」

 

「…………! そ、それは…………」[ルプ]

 

「目と耳が正常に働いていないか、もしくは頭の方がちゃんと機能していないのか…………どちらにせよ、それは私自信に欠陥がある、ということになる」

 

「そのようなことはございません! 至高なるアインズ様に欠陥など!」[ルプ]

 

「ルプスレギナよ。私が言いたいのは、お前も…………いやお前だけではない、このナザリックに存在する全ての者は私の一部。そう思っているということだ」

 

「ア、アインズ様…………!」[ルプ]

 

「私はお前たちを自分の目や耳と同様に信頼している。そしてその期待は今も、そしてこれから先も変わらないだろう。────ルプスレギナよ、お前も私の期待に応え、今後はどのように些細なことでも報告を上げてくれるな?」

 

「は、はっ! このルプスレギナ・ベータ! アインズ様の目として、耳として、恥ずかしくない働きをすることを誓います!」[ルプ]

 

「うむ。励め」

 

「はいっ!! あっ、そうだアインズ様。ンフィーレアから新しく完成したポーションを預かっています。まだ試作品だそうですが」[ルプ]

 

「よーし、よしよし。早速実践できているな、偉いぞルプスレギナ(わしわしわしわしっ)」

 

「あっ、あうあう…………くぅ~ん」[ルプ]

 

 

 

◆支配者と犬(退室後)────

 

 

「ぽけー…………」[ルプ]

 

「…………どうしたの? ルプスレギナ。そんなあからさまにぽけーっとして」[ユリ]

 

「…………アインズ様、ちょうステキっす…………」[ルプ]

 

「今更なに言ってるのよ」[ユリ]

 

「違うっす! ちょう…………ちょうステキっす!」[ルプ]

 

「ええ、そうよね」[ユリ]

 

「なんかもう、さっき頭を撫でられたときは、飛びついて押し倒して顔をペロペロしそうだったっすよ!」[ルプ]

 

「…………それはやらなくて良かったわね。完全に不敬だわ」[ユリ]

 

「あぁ~…………ムラムラするっすーーーっ!! アインズ様にじゃれつきたいっす! アインズ様とお外に行きたいっす! アインズ様と〇〇したいっすーーーっ!!」[ルプ]

 

「…………もう完全に犬ね」[ユリ]

 

 

 

◇支配者と犬(アインズ様とアウラ)────

 

 

「────────アインズ様と〇〇したいっすーーーっ!!」[ルプ]

 

「……………………」

 

「あんな大きな声で叫んで…………まあ、気持ちは分かるけど」[アウ]

 

「…………この扉、意外と声が通るんだな

 

「? なにか仰いましたか? アインズ様」[アル]

 

「い、いや、何でもない。それよりアウラ、お前には心当たりはないか? 東の巨人と西の魔蛇」

 

「申し訳ありません、アインズ様。一応森の地表部分は探索しているのですが、脅威となるようなモンスターは発見できていません」[アウ]

 

「まあ、ハムスケと同程度なら仕方ない。一応念の為に確認だけはしておくか。アウラ、探せるか?」

 

「はい。ハムスケと同じくらいの雑魚モンスターですね。あたしのシモベに探索させれば、すぐ見つかると思います」[アウ]

 

「よし、では任せた」

 

「はい、アインズ様!」[アウ]

 

 

 

◇滅びの王と、雑魚二匹────

 

 

「────────私の名前はアインズ・ウール・ゴウン」

 

「ふぁふぁふぁふぁ! 臆病者の名前だ! 俺様の名前は…………」[グ]

 

誰が臆病者だコラァッ!! (ボグシャァ!)」[アウ]

 

「グペッ!?」[グ]

 

「あぁっ!? もういっぺん言ってみろや!? いや、やっぱお前は口を開くな!! (グシャァッ! メキィッ! ガボォッ!)」[アウ]

 

「ガッ! ベプッ! オゴォッ!」[グ]

 

「このクズがっ! ゴミがっ! カスがっ! お前ごとき虫けらがアインズ様を…………アインズ様を臆病者だと言ったなっ!!?(グッチャ! グッチャ! グッチャ! グッチャ! グッチャ!)」[アウ]

 

「……………………」[グだったもの]

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……………………おい、そこの蛇」[アウ]

 

「はひぃ!」[リュラ]

 

「…………お前も、アインズ様の名前が臆病者の名前だ…………とか言うつもりはないよね?」[アウ]

 

「も、も、も、もちろんでございますっ! アインズ・ウール・ゴウン様こそ覇者の名前! この世で最も尊く、気高く、美しい名前でございますっ!」[リュラ]

 

「うん、その通り。お前は運が良かったよ、蛇。もしここにいるのがあたしじゃなくて弟のマーレだったら…………」[アウ]

 

「あ、あなた様の弟君(おとうとぎみ)であらせられたなら…………?」[リュラ]

 

「今頃ここはトブの大森林じゃなくて────────トブの荒野になってただろうね」[アウ]

 

「ひぃいいいいいいいいいっ!!」[リュラ]

 

「……………………(マーレは怒らせないように気を付けよう)」

 

 

 

◆カルネ村は襲撃されなかった────

 

 

「────────ふぅ、とりあえず今日一日は何事もなかったわね」[エン]

 

「うん。暫くは警戒が必要かもしれないけど、ゴウン様のおかげで村の防備もだいぶ整ってきたし、ブリタさんやジュゲムたちと話し合って避難計画も立てられた。四方八方から魔物の大群に襲われでもしない限り大丈夫だと思うよ」[ンフィ]

 

「…………ね、ンフィーレア」[エン]

 

「なに? エンリ」[ンフィ]

 

「結婚しよっか」[エン]

 

「な、な、な…………っ! きゅ、急に何を!?」[ンフィ]

 

「嫌だった?」[エン]

 

「そんなことないよ! むしろすごく嬉しいんだけど…………いきなりだったからさ」[ンフィ]

 

「ある人に言われて、考えてたんだ。ンフィーレアが私のことを好きだっていうのはなんとなく気がついてたんだけど、私はンフィーレアのことどう思ってるんだろうって」[エン]

 

「そ、それで…………?(ゴクリ)」[ンフィ]

 

「好きとかそういう気持ちは、正直よくわからない。でも、ンフィーレアとはずっと仲良しでいたいし、離れ離れにはなりたくないって思う。…………これって、好きってことなのかな?」[エン]

 

「ぼ、僕はそう思うよ! うん、たぶんそうだと思う!」[ンフィ]

 

「うふふ…………そっか。じゃあ、両思いだね」[エン]

 

「(い、今の雰囲気なら、このまま押し切れるんじゃないか!?)…………エ、エンリ!」[ンフィ]

 

「あ、そうだ」[エン]

 

「ん、ゴホン! な、なんだい、エンリ?」[ンフィ]

 

「私に考えるきっかけをくれた人…………モモン様が、ンフィーレアによろしくって言ってたよ」[エン]

 

「…………! エ、エンリに僕のことを考えるきっかけを与えてくれた人って、ゴ…………モモン様なの!?」[ンフィ]

 

「そうだよ。エ・ランテルに行った時に入口のところで検問に引っかかっちゃって、それを助けてもらった時にお話させてもらったの」[エン]

 

「…………(アインズ・ウール・ゴウン様! 僕の命を救い、生涯の仕事を与えてくれたばかりか、私生活のケアにまで心を砕いてくださるなんて…………! なんて、なんて慈悲深い御方なんだろう! このンフィーレア・バレアレ、心からの忠誠を誓います! アインズ・ウール・ゴウン様バンザイ!)」[ンフィ]

 

「ど、どうしたのンフィーレア? 急に勢いよく両手を挙げたりして…………」[エン]

 

「なんでもないよ、エンリ。さ、もうベッドに行こうか」[ンフィ]

 

「え、もう? 流石に寝るには早い時間じゃ…………」[エン]

 

「眠るだけがベッドですることじゃないよ(キランッ)」[ンフィ]

 

「あ…………(なんか、ンフィーレアが男の顔してる…………ちょっと、カッコイイかも)」[エン]

 

 

 

「……………………入るタイミングを失ったっす。でもまあ、二人が一戦交えるのを観戦した直後に乱入するのもいいっすね~♪」[ルプ]

 

 

 

◇お呼ばれした三人────

 

 

「すごい! こんなの凄すぎるよ!」[ネム]

 

「ははは、そうだろうそうだろう。私と仲間で精魂込めて作り上げたものだ。メイド達も毎日綺麗に掃除してくれているしな。感謝しているぞ、シクスス」

 

「アインズ様…………!」[シクス]

 

「すごい! ゴウン様も、ゴウン様のお仲間も、メイドさん達も、みんなすごい!」[ネム]

 

「ははははは! ありがとう、ネム。褒めてくれたお礼に、今日のディナーに凄いものを加えてやろう」

 

「なに!? すごい物ってなに!? ゴウン様!」[ネム]

 

霊亀(れいき)の肝という素材アイテムでな。食べると寿命が千年伸びるというフレーバーテキストが…………」

 

「…………(しょぼん)」[ネム]

 

「おっと、ネムには甘いものの方が良かったかな? では禁断の果実(アップル・オブ・イブ)のシャーベットにしようか。これには────────」

 

「……………………な、なんかすごいことになってる。我が妹の純粋さが恐ろしいわ…………」[エン]

 

「流石はゴウン様。聞いたこともないようなレアアイテムでも、ゴウン様にとっては僕らに与えても全く問題ない程度の価値しかないようだね」[ンフィ]

 

「ンフィーレア、なんかちょっと変わった? ゴウン様に対する尊敬が強くなったっていうか…………」[エン]

 

「僕を変えたのは君だよ、エンリ。君のおかげで僕は男になれたんだ。僕はもう迷わない。ゴウン様に忠誠を、回復薬の研究に人生を、そしてそれ以外の全てを君に捧げると決めた」[ンフィ]

 

「ンフィーレア…………」[エン]

 

「愛しているよ、エンリ…………」[ンフィ]

 

「…………あー、仲睦まじいところを邪魔して悪いんだが、ナザリックを案内するのにネムを連れて行ってもいいかね?」

 

「はっ! 義妹をよろしくお願いします、ゴウン様!」[ンフィ]

 

「う、うむ…………(ンフィーレアってこんなんだっけ?)」

 

「ネム、ゴウン様に迷惑かけちゃダメよ?」[エン]

 

「うん!」[ネム]

 

「なるべく早く戻ってくるから、その後は三人で夕食を摂っていきたまえ。あと…………二人のことはルプスレギナから聞いている。精のつくものを用意したから、期待しておいてくれ

 

「はいっ! ご配慮ありがとうございます、ゴウン様!」[ンフィ]

 

「あ…………ありがとうございます…………////」[エン]

 

「なーに? どうしたのお姉ちゃん、顔真っ赤にして」[ネム]

 

「いや、何でもない。さ、行こうかネム」

 

「はい、ゴウン様!」[ネム]

 

 

 

◇ナザリックスパリゾート────

 

 

「アインズ様♡」[アル]

 

「ん? アルベド…………それにアウラとシャルティアもいるのか。どうした、お前たちも風呂に入りに来たのか?」

 

「はい、アインズ様。アインズ様が男性守護者と親交を深められるということでしたので、正妃である私も同じように側妃(予定)たちとの親交を深めようかと…………」[アル]

 

「そうか。うむ、いいことだ。…………ああ、そうだ。アルベド、マーレもそちらに混ぜてやってくれないか?」

 

「マーレ、でございますか? マーレは一応男ですが…………」[アル]

 

「いや、私も最初は男湯に共に入るつもりだったのだが…………その、マーレが私以外の男に肌は晒したくないと言ってな…………」

 

「ああ、そういうことでございますか。なるほど、確かにそうですね。マーレもアインズ様のご寵愛を受ける者のひとり。みだりに他の男に肌を晒すのは宜しくないでしょう。…………じゃあマーレ、あなたはこちらに」[アル]

 

「は、はい。あの、アインズ様、その…………今度は二人きりで一緒にお風呂に入ってくれますか…………?」[マレ]

 

「ああ、もちろんだともマーレ。今度機会を作って一緒に入ろう」

 

「あ、あたしもお願いします、アインズ様! その、二人きりで…………」[アウ]

 

「もちろんいいとも、アウラ」

 

「あ、あ、あの、アインズ様!」[シャル]

 

「ん? どうした、シャルティア」

 

「わ、わたしとも、その、一緒に入っていただけないでしょうか…………」[シャル]

 

「…………そうだな。うむ、シャルティア、今度一緒に風呂に入るか」

 

「…………! ア、ア、アインズ様ぁ…………っ!」[シャル]

 

「良かったわね、シャルティア。さ、皆いつまでもアインズ様の足をお止めしてはいけないわ。お風呂に入るわよ」[アル]

 

「「はい!」」[女性守護者&マーレ]

 

「では、アインズ様。失礼いたします」[アル]

 

「「失礼いたします!」」[女守&マレ]

 

「……………………なんというか、アルベド様には落ち着きと言いますか、守護者統括としての貫禄が出てまいりましたな」[セバ]

 

「ええ、これもひとえにアインズ様の薫陶を受けてのことでしょう。私たちも至高なる支配者であらせられるアインズ様に恥じぬよう、日々精進を重ねなければいけませんね」[デミ]

 

「ウム。ダガソモソモ、ソレヲ(オコタ)ル者ナド、コノナザリックニハ存在シナイダロウ」[コキュ]

 

「お前たちの忠誠は嬉しいが、三人とももう少し肩の力を抜け。今日はリラックスするためにスパリゾートに来たのだからな」

 

「畏まりました、アインズ様。…………そう言えば、パンドラズアクターはお呼びになられなかったのですか?」[デミ]

 

「ああ、一応声は掛けたのだがな。『服を着たままでもよろしいでしょうか?』とか言うから置いてきた」

 

「…………パンドラズアクター様は、服をお脱ぎにならないのですか?」[セバ]

 

「うむ。あの服を脱いでしまったら、それはもうパンドラズアクターではないのだと言っていた」

 

「なるほど、彼のアイデンティティの一つ、という訳ですか」[デミ]

 

「私モコノ外骨格ヲ脱グコトハ出来ナイノデスガ、ヨロシイノデショウカ?」[コキュ]

 

「いや、お前のは皮膚のようなものだろう? 脱いだりしたら……………………どうなるんだ?」

 

「ヤッテミタコトハアリマセンガ、オソラクハ瀕死ニ近イダメージヲ受ケルノデハナイカト…………」[コキュ]

 

「うむ、やめておこうな。お前はそのまま風呂に入っていいぞ、コキュートス」

 

「ハッ、アリガトウゴザイマス、アインズ様」[コキュ]

 

「私からも一つご質問をよろしいでしょうか、アインズ様」[セバ]

 

「ん? なんだ、セバス」

 

「はっ…………第八階層の守護者であるヴィクティム様は…………その、どちらなのでしょうか」[セバ]

 

「ああ、ヴィクティムか…………私も分からなかったので直接聞いてみたのだが、どちらでもないそうだ」

 

「それは…………男性でも女性でもないということでしょうか?」[セバ]

 

「あれは種族が天使だ。天使は基本的に性別のない存在だからな」

 

「なるほど、ではこの場にお呼びにならなかったのも…………」[セバ]

 

「いや、それは違う。一応誘いはしたんだが、あれはそもそも風呂に入る習慣がないそうだ。あまり大量の水を浴びると、背中の木が伸びてしまうんだとか言っていたな」

 

「…………あれはやはり植物だったのですね」[セバ]

 

「では、これ以上人数も増えないようですし、そろそろ私たちも参りましょうか。アインズ様」[デミ]

 

「ああ、そうしよう。話すことがあるなら、風呂の中でも話せるからな」

 

 

 

◆ナザリックスパリゾート(女湯)────

 

 

「ふぅ~…………やっぱり広いお風呂というのは気持ちがいいわね(ぷかぷか)」[アル]

 

「…………浮いてる」[アウ]

 

「…………浮いてるでありんす」[シャル]

 

「や、やっぱり胸があったほうが、アインズ様は好きなのかなぁ…………」[マレ]

 

「なぁに? 三人して人の胸をじろじろ見て」[アル]

 

「いや、やっぱり大きいなぁ、と」[アウ]

 

「羨ましいでありんす…………」[シャル]

 

「ぼ、ぼくにも胸があったほうが、その、いいんでしょうか?」[マレ]

 

「マーレ。アインズ様はそのままのあなたを愛しておられるわ。胸の有り無しなんて些細なことよ」[アル]

 

「そ、そう、かなぁ…………////」[マレ]

 

「まぁ、胸があったほうがいろいろなプレイが出来ることは間違いないのだけどね」[アル]

 

「「……………………」」[男胸×3]

 

「でも、肝心なのは気持ちよ。どれだけ心を込めてアインズ様にご奉仕できるか…………それがアインズ様の寵姫として最も重要なことなのだと心得なさい」[アル]

 

「なんか素直には納得できないけど…………まあ、心を込めてご奉仕するのは当たり前よね」[アウ]

 

「だ、大丈夫です! アインズ様のこと…………だ、大好きですから!」[マレ]

 

「…………聞こう聞こうと思って、今まで聞けなかったことがあるんでありんすが、この際だから質問してもいいかぇ? アルベド」[シャル]

 

「あら、何かしら? 閨での作法が気になるなら、あとで研修会のパンフレットを…………」[アル]

 

「それも気になりんすが…………そうじゃないでありんす」[シャル]

 

「…………あなたにしては歯切れが悪いわね。そんなに重要なことなの? なに? 言ってごらんなさい、シャルティア。私に答えられることなら、ちゃんと答えてあげるから」[アル]

 

「う…………その…………あの…………アインズ様のアレって、どうなってるんでありんすか?」[シャル]

 

「「……………………」」[経験者×3]

 

「だ、だって! アインズ様のお体はアンデッド、しかも私のように肉や皮があるわけでもなく骨だけでありんすし…………だから、その…………どうやってシテるのかなぁ、と…………」[シャル]

 

「あぁ、あなたは知らなかったのね? シャルティア」[アル]

 

「? なにがでありんすか?」[シャル]

 

「アインズ様の胸に収められている世界級(ワールド)アイテム、【モモンガ玉】の能力についてよ」[アル]

 

「あの赤い玉でありんすか? かつてナザリックが1500人の敵に襲撃された際に、その多くをアインズ様があの玉を使って倒した、ということは聞いていんすが…………確かにその能力までは知らないでありんす。でも、それがなにか関係あるんでありんすか?」[シャル]

 

「あの世界級(ワールド)アイテムはね、一日に三回、超位を超える対個体用幻術系魔法と、七日に一回、広範囲幻術空間を作り出せるという性能を持っているの。あの襲撃の際には、その広範囲幻術空間とヴィクティムの足止めスキルの併用によって、敵の戦闘能力を大きく奪ったことが勝敗を決したのよ」[アル]

 

「そ、そうだったでありんすか! でも、それがアインズ様のアレと何の関係が…………?」[シャル]

 

「ふ、ふ、ふ…………アインズ様はね、その対個体用幻術系魔法を自らにかけることによって────────アレを生やしているのよ!」[アル]

 

「え…………で、でも、幻術なんでありんすよね?」[シャル]

 

「シャルティア…………超位を超える幻術というのは、世界すらも騙すのよ? 世界の(ことわり)すら屈服させて作り出されたアインズ様のアレは、幻術でありながらも偽物ではないの。だから、その効果時間にアインズ様からご寵愛をいただけば────私のように身ごもることも可能というわけ」[アル]

 

「す、すごいでありんす! はっ! し、しかも、幻術ということは…………!」[シャル]

 

「…………そこに気づいてしまったのね、シャルティア。そう、幻術によって作り出されるということは、大きさも、形も、何もかも自由自在ということ! すごいわよ、シャルティア。アインズ様のアレは…………」[アル]

 

「…………ごくりっ」[シャル]

 

「あなたはお遊びで眷属と色々してるみたいだけど、そんなものは本当にただのお遊びだったということを思い知ることになるでしょう」[アル]

 

「そ、そんなにすごいんでありんすか?」[シャル]

 

「そうね、例えば…………ゴニョゴニョゴニョゴニョ…………」[アル]

 

「えっ!? そ、そんな、そんなところにまで!? それに…………回転!? 振動!? しょ、触手!?」[シャル]

 

『女湯での猥談許すまじ! これは誅殺である!』[ゴーレム]

 

「え、ちょ、なにこれ!?」[アウ]

 

「…………男の声…………ぼくの裸を見た……………………殺そう」[マレ]

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいマーレ! ここでその魔法は…………! アウラ、シャルティア! マーレを抑えて!」[アル]

 

「マーレ! 落ち着くでありんす!」[シャル]

 

「あれはゴーレムだから! 無生物だからノーカンだよ! マーレ!」[アウ]

 

『ふははははっ! 男の目がないからとNGワード(18禁用語)を口にしたのが運の尽き! そんなことでは嫁の貰い手がないぞ!?』[ゴレ]

 

「あぁっ!? なんだとこのゴーレムクラフトのくず野郎! マーレ! かまわないから()っちゃいなさい!」[アル]

 

「えぇーーーーいっ!!」[マレ]

 

「「あぁあああああああああああっ!!」」[アウ、シャル]

 

 

 

◆ナザリックスパリゾート(男湯・前)────

 

 

「さて、まずは体を洗うとするか」

 

「お背中お流し致します、アインズ様」[セバ]

 

「ん? そうか、悪いなセバス。ではこのブラシを使ってくれ」

 

「畏まりました」[セバ]

 

「では、私は君の背中を洗おうか」[デミ]

 

「ウム、スマナイナ、デミウルゴス。関節ノ可動域ニ限界ガアッテ、自分デ背中ハ洗エナイカラ助カル」[コキュ]

 

「…………手は四本もあるのにねぇ」[デミ]

 

「……………………それくらいでいいぞ、セバス。どれ、今度は私が洗ってやろう」

 

「そ、そんな滅相もございません! アインズ様に私の背中を洗っていただくなど…………!」[セバ]

 

「ははは、そう固くなるなセバス。お前も普段からよく働いてくれている。その慰労の意味も込めて、背中くらい流させてくれ」

 

「ア、アインズ様…………っ!」[セバ]

 

「……………………デミウルゴス、今度ハ私ガ洗オウ」[コキュ]

 

「そうかい? じゃあ、お願いしようかな」[デミ]

 

「ゴシゴシ、ゴシゴシ…………ウゥム、背中ヨリモ尻尾ヲ洗ウ方ガ大変ダナ…………」[コキュ]

 

「結構長いからねぇ」[デミ]

 

「……………………よし、全員洗い終わったな。まずは何から入る?」

 

「水風呂ガイイカト」[コキュ]

 

「…………一番最初に入る風呂が水風呂というのは、さすがにないと思うよ? コキュートス」[デミ]

 

「う、うむ、そうだな。まずは普通の風呂から入ろうか」

 

「畏マリマシタ…………水風呂モ気持チガイイノデスガ…………」[コキュ]

 

「あとでご一緒しますよ。コキュートス様」[セバ]

 

「氷塊ヲ抱イテ入ッテモイイダロウカ?」[コキュ]

 

「…………それはご遠慮頂ければ」[セバ]

 

「馬鹿なこと言ってないで行きますよ」[デミ]

 

「…………本気ナノダガ」[コキュ]

 

 

 

◆ナザリックスパリゾート(男湯・後)────

 

 

「ふぅ~…………やはり広い風呂は気持ちがいいな」

 

「ええ、体の芯から疲れが流れ落ちていく感じがします」[デミ]

 

「全くです。私もこれからは休日の度に利用させていただくとしましょう」[セバ]

 

「熱イ…………」[コキュ]

 

「そういえばセバス。ツアレとはどうなんだ?」

 

「はっ、アインズ様のご厚情を賜りまして、つつがなく暮らさせていただいております」[セバ]

 

「そうか、うむ…………それで? アッチの方はどうなんだ?」

 

「はっ? あっち、と申しますと?」[セバ]

 

「ほら、だから、アレだ。子供が出来る行為というか…………」

 

「はっ、あの、そちらのほうも、その、順調でございます…………」[セバ]

 

「茹ダル…………」[コキュ]

 

「そ、そうかそうか。うん、いいことだ」

 

「そのうち、セバスとツアレの間にも子供が出来るかもしれませんねぇ」[デミ]

 

「…………そいういうデミウルゴスには、浮いた話とか聞かないな。実際のところどうなんだ? そういう相手とかはいないのか?」

 

「私に、でございますか? …………そうですね、交配実験には興味がありますが、心を傾ける相手というのはおりませんね」[デミ]

 

「そ、そうか。もしそういう相手がいるなら、遠慮なく言うといい。協力するぞ?」

 

「ありがとうございます、アインズ様。もし伴侶となるべき相手ができましたら、ご相談させていただきます」[デミ]

 

「うむ…………(お、なんか上司らしい会話ができてるんじゃないか? 今日の俺!)」

 

「煮エル…………」[コキュ]

 

「コキュートスは…………おい、大丈夫か? コキュートス」

 

「…………ハッ! ソロソロ水風呂デゴザイマスカ? アインズ様」[コキュ]

 

「…………そうだな、水風呂に行くか」

 

『女湯での猥談許すまじ! これは誅殺である!』[ゴーレム]

 

「…………今の声は?」[セバ]

 

「…………るし★ふぁーさんの声だな」

 

「まさか、至高の御方の!?」[デミ]

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいマーレ! ここでその魔法は…………! アウラ、シャルティア! マーレを抑えて!」[アル]

 

「ナニヤラ不穏ナ空気ダナ」[コキュ]

 

「…………ちょっと行ってくるから、お前たちはそのまま風呂に入っていろ」

 

「しかし、アインズ様だけを向かわせるわけには…………」[デミ]

 

「私以外の男が行ったら、間違いなくマーレの標的になるぞ?」

 

「それは…………被害甚大でございますね」[セバ]

 

「だから、私だけで…………」

 

『ふははははっ! 男の目がないからとNGワード(18禁用語)を口にしたのが運の尽き! そんなことでは嫁の貰い手がないぞ!?』[ゴレ]

 

「あぁっ!? なんだとこのゴーレムクラフトのくず野郎! マーレ! かまわないから()っちゃいなさい!」[アル]

 

「えぇーーーーいっ!!」[マレ]

 

「ドゴォオオオオオオオオオオオオンッ!!」[女湯]

 

「……………………」

 

「…………後ほど改装工事の見積を出しておきます」[セバ]

 

「では、私は作業用の悪魔でも召喚しておきましょう」[デミ]

 

「力仕事ガ必要デアレバオ手伝イ致シマス」[コキュ]

 

「…………うむ。私はちょっと女湯を見に行ってくる。皆はもう少し温まって…………コキュートスは冷えてから出るといい」

 

「「はっ!」」[男性守護者]

 

「…………はぁ(今度はゆっくりと入りたいなぁ…………)」

 




 はい、なんだか少し長くなりましたが、ちょうどいい切れ間がなかったので分割せずに上げました。

 今回でアインズ様のアレの謎が解けましたね。
 
 もちろん完全に捏造設定ですのであしからず…………

 あと、もう小見出しに◇をつけるべきか◆をつけるべきか、自分でもよくわからなくなってきました。

 あまり気にせず見ていただけると幸いです。


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モモンガ様、帝国相手に自重せず(前)

 帝国の城に突如として現れた一匹のドラゴン。

 その背に乗っていた双子の闇妖精、アウラとマーレは、帝国の皇帝に対し「謝りに来ないと潰すぞ!」と脅しをかける────


◇帝国の受難(闇妖精の双子・序)────

 

 

『────────アインズ・ウール・ゴウン様は不機嫌です! 帝国の皇帝がすぐ謝罪に来ないのであれば、この国を滅ぼします! まず手始めに、ここにいる人間は皆殺しです! マーレ、やっちゃって!』[アウ]

 

『う、うん。えぇーい!』[マレ]

 

「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!」

 

『はーい、皆殺しにしました! 早く皇帝が出てこないと、次は街を半分くらい潰します! では、カウントダウン開始ー! 10! 9! 8! 7!……………………』[アウ]

 

 

 

◇帝国の受難(闇妖精の双子・会談)────

 

 

「────────さぁ、使者殿。遠いところから来られたのだ。まずは喉を潤してはいかがかな?」[ジル]

 

「ゴクリッ────うん、まっず」[アウ]

 

「お、お姉ちゃん、失礼だよ」[マレ]

 

「なによ、マーレは美味しいと思うの? これ」[アウ]

 

「そ、それは、あんまり美味しくないと思うけど…………」[マレ]

 

「でしょ? というわけだから、もういらなーい」[アウ]

 

「これは申し訳ない。なにか好みのものがあるなら準備させてもらうよ」[ジル]

 

「あんたたちに用意するのは無理だと思うから別にいいよ。それで? 謝りに来るの? 来ないの? 来ないつもりなら、もうさっさとこの国滅ぼして帰りたいんだけど」[アウ]

 

「もちろん、ちゃんと謝罪に行くとも。ナザリックなる場所に誰かを送った記憶はないが、配下の者が勝手な真似をしでかした可能性はある。下のやったことは上が責任を取らなければならないからね」[ジル]

 

「あっそ。じゃ、今から一緒に行こうか」[アウ]

 

「それは少し待って欲しい。私もこの帝国を統べる身だ。すぐに国を空ける訳にもいかないんだよ。そうだね、準備も含めて十日────」[ジル]

 

「あぁん? 十日ぁ? あんた、アインズ様をそんなにお待たせする気?」[アウ]

 

…………(ピクッ)」[マレ]

 

「十日もあれば、贈り物としてそれなりのものを用意できるだろう。つまらないものを贈っては失礼になるからね。それに、誰が君たちのもとに人を送ったのか、その責任の所在も調べる必要があるんだよ」[ジル]

 

「ふーん…………ま、いいや。元々アインズ様からはすぐ来るように伝えてこいって言われただけで、期限までは指定されてないからね。でも────あまり遅くなるようだったら、またあたしとマーレが戻ってきてこの国を潰すから」[アウ]

 

「…………分かった。準備も含めて、五日後には必ずそちらに伺わせてもらおう。それでいいかな?」[ジル]

 

「いいよー、五日ね。アインズ様にはそうお伝えしておく。…………あ、そうだ。もし人間をいっぱい殺しちゃったときは、アインズ様からお土産を渡しとくよう言われてるんだった」[アウ]

 

「お土産?」[ジル]

 

「そう、お土産。じゃあマーレ、やっちゃって」[アウ]

 

「う、うん。〈血を吸う怪樹(ジュボッコ)〉!」[マレ]

 

「…………! な、なんだあれは!? 中庭にいきなり赤い樹が…………!」[バジ]

 

「落ち着けバジウッド。…………使者殿、あのお土産がなんなのか、ご説明いただけるかな?」[ジル]

 

「マーレ」[アウ]

 

「あ、あれは第七位階のドルイド系召喚魔法〈血を吸う怪樹(ジュボッコ)〉、です。地中の屍体や、け、汚れを吸収してくれるので、アンデッドが発生しなくなります。ただ────」[マレ]

 

「…………ただ、なにかな?」[ジル]

 

「近づくと、生きている人も枝に絡め取られて血を吸い尽くされちゃうので、その、ち、近づかない方がいいと思います」[マレ]

 

「どう? やっさしいでしょう、アインズ様は。お城でアンデッドが発生したら困るだろうからって、わざわざマーレに指示を与えてくださったんだから。感謝しなさいよ?」[アウ]

 

「…………ああ、ありがとう。お心遣い感謝すると、アインズ・ウール・ゴウン殿にもお伝えしてくれるかな」[ジル]

 

「分かった。じゃ、用も済んだしあたしたちは帰るねー。マーレ、行くよ」[アウ]

 

「う、うん。あの、し、失礼します」[マレ]

 

 

 

◆帝国の受難(闇妖精の双子・会談後)────

 

 

「くそっ! どうなってやがる! 何なんだよあの闇妖精(ダークエルフ)の子供たちは! ドラゴンに乗って中庭に乗り付けるわ、魔法一発で近衛を全滅させるわ、その後の召喚魔法は嘘か誠か第七位階ときたもんだ! 何一つまともじゃねぇ!」[バジ]

 

「爺、あの闇妖精(ダークエルフ)の子供が使った魔法は、間違いなく第七位階だったのか?」[ジル]

 

「正直に申し上げて、正確な位階は儂にも分かりかねます。ただ、第六位階以上であることは間違いないでしょうな」[フール]

 

「事実、か。…………ふぅ、私たちはとんでもないドラゴンの尾を踏んでしまったようだな」[ジル]

 

「陛下、短い間でしたがお世話になりました」[レイ]

 

「まあ、ちょっと待てレイナース。この先どうなるか分からんが、ナザリックへ同行してくれるなら、お前の呪いに関して聞く機会があるかもしれんぞ?」[ジル]

 

「それなら自分で聞きに行きます」[レイ]

 

「確かに、帝国騎士という身分は敵対視される可能性があるからな。だがその身分を捨てた、なんの後ろ盾も、なんの交換条件も持たないお前と、あの強大な力を持った姉妹を送りつけてくる奴らが素直に交渉してくれると思うのか? いきなり訪ねていったところで、ワーカーたちと同じ運命を辿るだけだと思うがな。それに比べ、私は一応招待されている身だ。奴らと接触を持つのにどちらが確実か、それはお前にも分かるだろう?」[ジル]

 

「…………もう少しだけお世話になります」[レイ]

 

「お前のそういう所、嫌いじゃないぞ。レイナース」[ジル]

 

「はぁ…………もうどうにでもなれって感じですな。しっかし陛下、招待されたっていうよりは脅迫されて呼びつけられたの方が正しい表現だと思いますがね」[バジ]

 

「そうはっきり言うなバジウッド。少なくとも今はまだ皇帝なのだ。何をするにしてもこちらが下手(したで)に出るような表現を使うわけにはいかん」[ジル]

 

「五日後にはどうなってるか分かりませんがね」[バジ]

 

「いつになく悲観的だな」[ジル]

 

「そりゃ悲観的にもなりますよ。陛下だって見たでしょう? あの闇妖精(ダークエルフ)の子供が使った魔法。あれ一発で百人からいた近衛は全滅、ナザミまで死んじまった。しかも、それでもまだ本気を出しているようには見えませんでしたぜ?」[バジ]

 

「中庭に生えた赤い樹────血を吸う怪樹(ジュボッコ)だったか。あれも宣言通りの植物だったしな」[ジル]

 

「ええ、血気に逸った騎士の一人が切り倒そうと近づいた瞬間、枝に絡め取られてミイラ化しましたからね。第二位階の炎系魔法も無効化されたんでしたっけ?」[バジ]

 

「いや、第三位階じゃ」[フール]

 

「どう考えたって無理でしょ、陛下。あの庭に生えている樹の一本にすら、帝国の精鋭が手も足も出ないんですぜ? そのナザリックとかいう化物の巣窟は、森にあるんですよね? どうします? 行ってみたら森の樹が全部あれだったりしたら」[バジ]

 

「その場合は全員仲良く樹の養分になるしかないな。だが、もしそうなのだとしても行く以外の選択肢はない。私たちに選べるのは、化物の親玉であるアインズ・ウール・ゴウンに渡す贈り物の種類くらいだ」[ジル]

 

「…………相手が絶世の美女ならその作業も(はかど)るんですがね」[バジ]

 

「分からんぞ? あの姉妹を見ただろう。もしかしたらアインズ・ウール・ゴウンも女闇妖精(ダークエルフ)で、あの姉妹以上に絶世の美女という可能性だってある」[ジル]

 

「ははっ、ならせいぜいそいつを期待して、(みつ)ぎ物…………いや、贈り物の選別に励むしかありませんな」[バジ]

 

「…………ちっ」[レイ]

 

「そう不機嫌になるな、レイナース。お前だって十分に美しいぞ?」[ジル]

 

「顔の半分は、ね」[レイ]

 

「そうだな。それを踏まえたうえで忠告しておく。ナザリックに着いてからどんな美女が出てきたとしても…………そう、例えあの双子を超えるような美女が現れたとしても、今みたいな態度は絶対に取るなよ? 相手は間違いなくフールーダをも凌駕する魔法詠唱者(マジックキャスター)だ。お前を治すことも出来るかもしれんが、お前の綺麗なもう半分も呪われた姿にすることだって可能かも知れない。それを忘れるな」[ジル]

 

「…………了解です」[レイ]

 

「ふぅ……………………爺、私はいったいどこで間違えてしまったのかな」[ジル]

 

「…………(すまんの、ジル。儂、実は裏切っとるんじゃ)」[フール]

 

 

 

◆帰ってきた双子────

 

 

「たっだいま戻りましたー!」[アウ]

 

「あ、あの、戻りました」[マレ]

 

「うむ、二人共ご苦労だった」

 

「ア、アインズ様!? わざわざ王座から下りて、あたしたちを待っててくれたんですか!?」[アウ]

 

「ああ。大切な任務を果たしてきてくれたお前たちを、私が出迎えずに誰が出迎えるというのだ?」

 

「ア、アインズ様ぁ…………!」[マレ]

 

「おっと」

 

「あぁー! ずるいマーレ! 自分だけアインズ様に抱きついてっ! あたしもっ!」[アウ]

 

「ははは、二人共そう慌てるな。私に抱きつきたいのであれば、いつでも応えよう」

 

「うふふぅ♡(すりすり)…………あれ? アインズ様、香水をつけてらっしゃいますか?」[アウ]

 

「ああ、マーレからプレゼントされてな」[マレ]

 

「なっ、マーレあんた、いつの間に…………」「アウ」

 

「え、えっと。この前アインズ様と、その、二人でお風呂に入ったときに…………////」[マレ]

 

「なんでも六階層に生えている草花から抽出したものだそうだ。爽やかな香りがするだろう? ありがとう、マーレ。とても気に入っている」

 

「い、いえ、そんな! アインズ様に喜んでいただけて、ぼ、ぼくこそ、その、う、嬉しいです! ありがとうございます!」[マレ]

 

「はははは、プレゼントをくれたマーレがお礼をいうのはおかしいだろう?」

 

「あ…………そ、そうですよね////」[マレ]

 

「……………………(お、弟の女子力が高すぎる…………)」[アウ]

 

 

 

◆皇帝が来るよ、どうしよう会議(in宝物庫)────

 

 

「パンドラズアクター、折り入って相談がある」

 

「おや、どうなさいました? 父上」[パン]

 

「うむ…………じつは、な、その、人間の皇帝がこのナザリックに来ることは、お前も承知しているだろう?」

 

はい(ヤヴォール)! もちろんでございます!」[パン]

 

「うむ。それで、だな。その皇帝との会談に臨むにあたって、ふさわしい態度とはどのようなものか、と思案しているのだ」

 

「? いつも通りでよろしいのでは?」[パン]

 

「あー…………あれだ。一応、相手は一国を支配する指導者だからな。お前たちに接するのと同じ態度という訳にもいかんだろう。呼び出した内容が内容だから友好的にするわけにもいかないし…………」

 

「なるほど! 至高なる存在ゆえの弊害(へいがい)…………というわけでございますね!?」[パン]

 

「ん? う、うむ、その通りだ」

 

「父上と対等な存在は全次元、全宇宙、全世界でも四十人だけ! そして、その他の全ては父上に仕える下僕か、踏み潰される虫けらのみ! であれば、虫けらの王に対してどのような態度を取るべきか、お悩みになるのも致し方ないことでございましょう!」[パン]

 

「あ、ああ、流石はパンドラズアクター。私の心を完全に理解しているのだな」

 

「もちろんでございます! このパンドラズアクター! このナザリックでただひとり、父上によって創造された存在でありますれば!」[パン]

 

「…………(相変わらずテンション高いな)」

 

「つまり、父上は客人以下、虫けら以上の中途半端な存在が相手なので、どのような態度を取るべきか迷っておられる。そういうことでございますね?」[パン]

 

「う、うむ。その通りだ」

 

「でしたら、必要最低限のことのみ口にされるのがよろしいかと。その際にはなるべく溜めを作るとなお良いかと思われます」[パン]

 

「…………溜め?」

 

素晴らしい(ヴンダヴァー)! 流石は父上! 早速実践され、使いこなされておられる!」[パン]

 

「…………これでいいのか?」

 

「格の違いがあればあるほど、上位者からの言葉というのはその一言一言が重いものです。そして言葉と言葉の間に溜めを作れば、その重さはさらに増すでしょう。

 故に、相手が虫けらの王程度の存在であるならば、父上が発せられるお言葉はごく短いもので良いかと思われます。

 細かな応対は下僕(しもべ)である我々…………今回の謁見であれば、アルベド様とデミウルゴス様が致しますので、父上は鷹揚に構えていて頂ければ、その虫けらの王がどれほど愚かな存在であろうとも自然と格の違いを思い知り、自ら頭を垂れることになるでしょう!」[パン]

 

「…………そ、そうか(話さなくていいのは助かるけど、それじゃやっぱり舐められるんじゃないか? …………常時〈絶望のオーラ〉でも発動させておくか)」

 

「あとは…………そうですね、時には無言で相手をじっと見るのも良いかと思われます」[パン]

 

「…………ただ見るのか?」

 

「はい、父上ほどの超越者ともなれば、もはや言葉すら不要! その神にも等しい視線に晒されれば、ただそれだけで心(やま)しき者は悔い改め、至高なる御身の前に平伏すること間違いありません!」[パン]

 

「そ、そうか」

 

はい(ヤヴォール)! 我が神(マイン ゴット)!」[パン]

 

「…………う、うむ。助言感謝するぞ、パンドラズアクター。なにか望むものがあれば褒美としてとらすが、なにかあるか?」

 

「至高なる父上にお仕えすることこそ我が喜び! それ以上の褒美など有りましょうか!」[パン]

 

「誰も彼もがそう言うが、それは却下だ。何かないのか? 宝物庫の宝を磨くための新しい布だとか、マジックアイテムをじっくり観察するための眼鏡だとか」

 

「はぁ…………で、あれば…………」[パン]

 

「ん、なんだ? なにかあるなら言ってみるがいい」

 

「新しいマジックアイテムを作成する許可を頂けますでしょうか?」[パン]

 

「別に構わないが…………何を作るつもりだ?」

 

「いえ、特に何をという訳ではないのですが…………宝物庫のマジックアイテムを眺めたり磨いたりしておりますと、なんといいますか、こう、ムズムズしてくるのですよ。制作欲求とでもいうのでしょうか、そういったものがこみ上げてくるのです」[パン]

 

「ふむ…………(俺がマジックアイテム好きという設定を付けたからか? 職業でもクラフトマンをとってるしな…………)」

 

「あのー…………父上?」[パン]

 

「あ、ああ、うむ、いいだろう。マジックアイテムの作成を許可しよう。ただし、何かを作ったら、その都度私に報告すること」

 

「はっ、畏まりました、父上!」[パン]

 

「…………(変なもの作らなきゃいいけど…………)」

 

 

 

◆皇帝が来るよ、どうしよう会議(in私室)────

 

 

「────────というわけで、だ。今回の皇帝との会談については、アルベドとデミウルゴスに任せようと思う」

 

「アインズ様…………! 私のことをそこまで信頼していただけるとは…………っ」[デミ]

 

「私()()よ、デミウルゴス。────畏まりました、アインズ様。必ずご期待に添える結果を出してご覧に入れます」[アル]

 

「うむ。それで、話の落としどころをどうするかだが…………」

 

「はい。アインズ様の目指すものは、私もデミウルゴスもしっかりと理解しております」[アル]

 

「ええ、アインズ様の智謀には遠く及ばぬこの身ですが、アインズ様のご計画からは決して外れぬとお約束いたします」[デミ]

 

「う、うむ、そうか。任せたぞ、二人とも(俺の計画ってなんだ?)」

 

「「はっ!」」[アル、デミ]

 

「うむ…………では、私から話すことはもうないのだが、二人からなにか報告すべきことなどあるか?」

 

「はっ、では私から一つ。これは報告というよりも確認事項になるのですが────アインズ様のお世継ぎがお生まれになる時が近づいております」[デミ]

 

「うむ。そうだな」

 

「お育てするための育児施設や、ご教育するための教育施設などはすでに完成しているのですが、その人事は未だ内定の段階にあります」[デミ]

 

「ああ、そうだったな。確か、育児施設の責任者候補がニグレドで、その補佐がペストーニャ。教育施設の責任者候補がアルベドで、補佐がパンドラズアクターだったか」

 

「はい、その通りでございます」[デミ]

 

「アルベド、すでにナザリック内の仕事をいくつも抱えているが、問題ないのか?」

 

「はい。基本的な実務はパンドラズアクターに取り仕切らせ、方針と決定のみ私が関わる形になると思いますので、問題はありません」[アル]

 

「そうか、それならそのままの人事で決定して構わない」

 

「ありがとうございます、アインズ様……………………えー、あとですね。実は是非にもお世継ぎのお世話役として働きたいと申し出ているものが一名いるのですが…………」[デミ]

 

「ん? 世話役? 育児施設で子供の世話を焼くのは、ニグレドの役目ではないのか?」

 

「いえ、それとは別に、なんと言いますか…………護衛と話し相手と戦闘教官を混ぜ合わせたようなものとでも言いますか…………その、一言で言えば『爺』になりたいと申し出ておりまして…………」[デミ]

 

「…………ああ、コキュートスか」

 

「…………はい」[デミ]

 

「んー……………………うむ、いいだろう。正直具体的に何をするつもりなのかはさっぱり分からないが、随分とその『爺』とか言うのになりたがっていたしな」

 

「よ、よろしいのですか?」[デミ]

 

「もちろん付きっきりという訳にはいかないだろうがな。だが、私の信頼する守護者が、私の子供の相手をしてくれるのはむしろ好ましいことだと思っている」

 

「おお…………アインズ様。その言葉を聞けば、コキュートスも涙を流して喜ぶことでしょう」[デミ]

 

「もちろんお前もだぞ、デミウルゴス。お前の素晴らしい知恵や知識、そしてナザリックへの強い忠誠を、ぜひ我が子に伝えてやって欲しい。私は心からそう思っている」

 

「ア、アインズ様…………!」[デミ]

 

「うむ。ではコキュートスには爺をやってもらうとして…………アルベドたちも『責任者』では味気ないな。よし、育児施設は名称をナザリック保育園とし、責任者であるニグレドは『園母(えんぼ)』、補佐のペストーニャは『保母』とする。そして教育施設は名称をナザリック学園とし、アルベドは『学長』、パンドラズアクターは『教頭』と呼称することとする。なにか意見はあるか?」

 

「いえ。素晴らしいですわ、アインズ様。園()だなんて、姉も泣いて喜ぶと思います」[アル]

 

「ええ、アインズ様の深いご慈悲には、敬服などという言葉では到底足りません。敬意の心に上限などないのだと、今日改めて思い知りました」[デミ]

 

「も、ち、ろ、ん、愛情にも上限はありませんわ。アインズ様♡」[アル]

 

「あ、ああ、うむ。お前たちが喜んでくれるなら、何よりだ(特に深い意味はなかったんだけど…………まあ、いいか)」

 

「アインズ様♡ 私からもひとつよろしいですか?」[アル]

 

「ん? なんだアルベド」

 

「私たちの子供の名前は、もうお決まりになりましたか?」[アル]

 

「ああ、子供の名前か。うむ、候補はいくつかあるのだが、まだ絞りきれてはいないのだ。生まれてくるのが男の子か女の子か……………………そういえば、生まれてくる子に性別はあるよな?」

 

「はい、女の子でございます♡」[アル]

 

「そうか、女の子か…………って、もう性別が分かってるのか!?」

 

「はい、淫魔(サキュバス)の性質でしょうか、生まれてくるのは女の子だと本能が告げています」[アル]

 

「そ、そうか。では、候補は半分に絞れるな」

 

「ちなみに、どのような名前をお考えで?」[デミ]

 

「うむ。性別が決まってもまだいくつか候補はあるのだが…………女の子だった場合は、セレマ、アルキュミア、レスアルカーナ…………」

 

「……………………」[アル]

 

「あとはもっと単純に私たちの名前を取って、モモルとか…………」

 

「モモル! それがいいと思いますわ、アインズ様!」[アル]

 

「ん? そうか? だがセレマとかのほうが響きが良くないか? モモルはアルベドの『ル』しか入っていないし…………」

 

「いいえ! そんな錬金術()()()に関連した名前よりも、アインズ様の真の名、モモンガ様に因んだ名前の方がずっと素敵ですわ!」[アル]

 

「そ、そうか? うむ、そこまでアルベドが気に入ったのなら、モモルを第一候補としておこうか」

 

「はい! アインズ様…………いえ、モモンガ様♡」[アル]

 

「ははは、その名で呼ばれるのも久しぶりだな」

 

「ずっと…………ずっとこの名でお呼びしたいくらいですわ…………♡」[アル]

 

「なんだ、アルベドはモモンガという名前の方が好きなのか? なら二人の時はそう呼んでも構わないぞ?」

 

い、いいのですか!? アイ…………モモンガ様!」[アル]

 

「あ、ああ。それくらい別に…………」

 

モ、モモンガ様ぁ♡!!!」[アル]

 

「おぉわっ!? ア、アルベド!? あ、こら、ちょっと、デ、デミウルゴスがいるから!」

 

モモンガ様が…………モモンガ様がいけないのです! 我慢してたのに、ずっと我慢してたのに、我慢できなくなることを仰るから!」[アル]

 

「…………私はこれで失礼いたしますね」[デミ]

 

「あっ、デミ…………」

 

「ふーっ、ふーっ、さあ、モモンガ様、いつものように…………いつものように超位幻術を…………♡」[アル]

 

「あ…………あぁ…………………………………………アッーーーーーーーーーーー!

 

 

 

 

◇帝国の受難(着いたよナザリック)────

 

 

「────────お待ちしておりました。ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス皇帝陛下。私は皆様を歓迎するよう主人より仰せつかりました、ユリ・アルファと申します。そして後ろに控えます者は、私の補佐役であるルプスレギナ・ベータ。短い間ではありますが、よろしくお願いいたします」[ユリ]

 

「これはご丁寧にありがたい。貴女たちのような美しい女性をつけてくださったアインズ・ウール・ゴウン殿に心より感謝を。そして、私のことはそのように堅苦しい呼び方ではなく、どうぞジルと呼んでください。私と親しいものは、皆そのように呼んでくれるからね」[ジル]

 

「申し訳ありません、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス皇帝陛下。私はアインズ・ウール・ゴウン様より皇帝陛下には礼をもって接するよう厳命されておりますので、先ほどのご厚意にお応えすることは叶いません。どうぞお許し下さい」[ユリ]

 

「そうかい? それは非常に残念だが、それがゴウン殿の命とあれば仕方ないね。それで? ゴウン殿にはいつお会いできるのかな?」[ジル]

 

「現在皆様を迎える準備をしておりますので、それが整うまではこちらでおもてなしさせていただきます」[ユリ]

 

「それは、そちらのログハウスで待たせてもらえる、ということかな?」[ジル]

 

「いえ、せっかくの日和(ひより)ですので、この場で皆様をおもてなしさせていただきます」[ユリ]

 

「ふむ…………生憎の空模様だが…………」[ジル]

 

「そのまま空をご覧下さい」[ユリ]

 

「どういう…………? うおぉっ! 」[ジル]

 

「…………なんだこりゃあ。どんどん雲が消えて、空が青く…………」[バジ]

 

「素晴らしい!! 第六位階の天候操作魔法…………いや、これはより上の位階の魔法ですな!?」[フール]

 

「これで過ごしやすくなったと思われますので、次はお飲み物をご用意させていただきます。…………来なさい」[ユリ]

 

「ふひぃいいいいいいっ!!」[フール]

 

「フ、フールーダ殿?」[バジ]

 

「あ、あ、あ、あれは死の騎士(デス・ナイト)!? しかも五体も! す、素晴しぃいいいいいいい!!」[フール]

 

「おい、誰か! 精神安定系の魔法使えるやつはいるか!? フールーダ殿がいきなり狂ったぞ!」[バジ]

 

「いや、バジウッド。爺はたまにああなるんだ。魔法で新たな発見をした時とかな」[ジル]

 

「あ、そうなんですか?」[バジ]

 

「こ、こ、これ! 少し触ってもいいですかの!? ちょこっと、ほんのちょこっとだけじゃから!」[フール]

 

「いいですよ」[ユリ]

 

「うひゃはーーーーーっ!! おっほぅっ! 意外とツルツルしとる! 意外とツルツルしとる! (なめ)し革のような皮膚なんじゃなぁ!」[フール]

 

「…………うわぁ、キッショ」[ルプ]

 

ルプスレギナ。思ってもそういうことは口に出さないの」[ユリ]

 

「うわっ、キッショ」[レイ]

 

「…………レイナース。あれでも一応我が国の筆頭魔法詠唱者(マジックキャスター)だ。そうストレートに言ってやるな」[ジル]

 

「…………そんなことより陛下。アレ(・・)、王国戦士長より強くないですかね?」[バジ]

 

「私にそんなこと聞かれても分かるわけないだろう。そうなのか?」[ジル]

 

「私もそう思います。やっぱり逃げていいですか?」[レイ]

 

「その場合、お前は帝国とは一切無関係の存在だと言うからな?」[ジル]

 

「…………ちっ」[レイ]

 

「けど陛下、俺もレイナースに賛成ですよ。今からでも逃げませんか?」[バジ]

 

「……………………爺! おい爺! 帰ってこい!」[ジル]

 

「イーッヒヒ! …………ん? 呼んだかの? ジルや」[フール]

 

「正気に戻ったか? 戻ったなら答えろ。アレはなんだ?」[ジル]

 

「ん、コホン。すみませぬ、少々取り乱したようですじゃ」[フール]

 

「…………(少々か?)」[バジ]

 

「いいから答えろ、爺。さっき死の騎士(デス・ナイト)と言っていたが、あれは魔法省の奥に封印されているというアンデッドと同じものか?」[ジル]

 

「さようです。私が何度も支配を試みて、未だ成し遂げられぬ強力無比なアンデッド。それが五体…………五体も…………五体もいるのですじゃぁあああああっ! もういっぺん! もういっぺん、触らせてくだされぇ!」[フール]

 

「…………見ただろう、バジウッド。爺はまるでアテにできん。ということは、逃げるにしても転移ではなく走って逃げることになるわけだが────逃げ切れると思うか?」[ジル]

 

「…………無理でしょうなぁ。馬と駆け比べをした方が、まだ勝算あるように思えますわ」[バジ]

 

「ならこのまま進むしかあるまい。幸い、向こうはもてなしてくれると言っているわけだしな。こうなったら全てを委ねる以外に道はないだろう」[ジル]

 

「…………そろそろ準備を再開させて頂いてもよろしいでしょうか?」[ユリ]

 

「あ、ああ、すまない。ほら爺! 帰ってこい! ハウス! ハウス!」[ジル]

 

「アヒィーハァーッ! …………はっ! し、失礼しました、陛下。少々興奮してしまったようです」[フール]

 

「…………(だから、少々じゃねぇだろ)」[バジ]

 

「こほん…………お見苦しいところをお見せした。どうもゴウン殿の強大な力を垣間見て、興奮を抑えることができなかったようだ。許して欲しい」[ジル]

 

「いえ。末端とは言えアインズ様のお力の一部に触れたのです。そちらのご老人の反応も無理もないことだと思います」[ユリ]

 

「…………(末端? 爺をおかしくさせるような化物ですら、ここでは末端扱いだというのか!? 確かに机を運ばせたりと下僕のような扱いをしているが…………)」[ジル]

 

「では、お飲み物をご用意いたしましたので、皆様お席へどうぞ」[ユリ]

 

「…………ああ、ありがとう。ご馳走になるよ」[ジル]

 

 

 

◇帝国の受難(アインズ様に謁見)────

 

 

「アインズ様。バハルス帝国の皇帝、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス。お目通りをしたいとこのとです」[アル]

 

「…………うむ」

 

「…………!(アンデッド! あれがアインズ・ウール・ゴウン! そして、隣に立つ美女は王妃か? 周りを固める配下も化物ぞろい…………いったいどうなってるんだ、この墳墓は!)」[ジル]

 

「……………………(じっ)」

 

「…………これは、挨拶もせずに失礼した、アインズ・ウール・ゴウン殿。この墳墓…………と言っていいのかな? ここのあまりの素晴らしさに言葉を忘れてしまってね。私はご紹介頂いた通り、バハルス帝国の皇帝…………」[ジル]

 

「誰が口を開くことを許した。それと、下等な人間風情が立ったままアインズ様に謁見するつもりかね。〈ひれ伏したまえ〉」[デミ]

 

「「…………ぐっ!?」」[ジル以外]

 

「…………っ!?(なんだ!? あの蛙の化物は、声で人を操るのか!?)」[ジル]

 

「…………ほぅ、マジックアイテムですか。アインズ様の前にそのような玩具(おもちゃ)を身につけて現れるなど無礼千万。〈上位道具(グレーター・ブレイク)…………〉」[デミ]

 

「…………よい、デミウルゴス」

 

「はっ、失礼いたしました、アインズ様。〈自由にしたまえ〉」[デミ]

 

「…………失礼した、バハルス帝国の皇帝よ。部下の非礼は謝罪しよう」

 

「いや、謝罪など…………」[ジル]

 

「……………………(じっ)」

 

「…………っ(くっ、予想以上の化物だ。精神支配や精神異常を無効化するマジックアイテムを装備しているというのに、この圧力…………今にも膝が崩れ落ちそうだ…………!)」[ジル]

 

「────アインズ様は、長きに渡る安息を下賎な盗賊どもに破られたせいで非常に不機嫌なのです。ですから、それを指示したと思われる首魁の弁明を、是非とも聞かせてもらいたいと仰っているのよ」[アル]

 

「…………(黙って座ってるだけで、アルベドやデミウルゴスが勝手に話を進めてくれる。これは便利だ)」

 

「待ってもらいたい、アインズ・ウール・ゴウン殿。私はこの地に人員を送る指示など出していないのだ。それを指示したと思われる貴族については、こちらで既に特定し、処断してある。部下が勝手を行ったことについては深く謝罪し、その証としてこれをお渡ししたい。バジウッド、あれを」[ジル]

 

「はっ!」[バジ]

 

「デミウルゴス。それをこちらに」[アル]

 

「はっ」[デミ]

 

「……………………これは、首か(どうしろってんだ、こんなもの)」

 

「それこそがあなたを不愉快にさせた首魁。帝国で伯爵位を持つ貴族、フェメールの首だ。どうかこれを謝罪の証として受け取って欲しい」[ジル]

 

「…………なるほど。確かに受け取った、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス殿」

 

「私のことはどうかジルクニフと呼んでくれ。長い名前だからな」[ジル]

 

「…………そうか、私のこともアインズでもゴウンでも、好きに呼んでもらって構わない。────では、ジルクニフ殿。せっかく貰った首だ、有効活用させてもらおうか。〈中位不死者創造〉」

 

「なっ…………!?」[ジル]

 

「おぉ! す、素晴らしいぃ! 死の騎士(デス・ナイト)を支配するどころか、こうも簡単に創造するとはぁ!」[フール]

 

「…………! (マジかよ! フェメールの首があの化物に…………!)」[バジ]

 

「列に並びなさい、死の騎士(デス・ナイト)。そして謝罪の証をアインズ様が受け取った以上、あなた達はもう帰って結構よ。アインズ様はこれから、少々忙しくなるの」[アル]

 

「? 忙しくなる、というのはいったい…………」[ジル]

 

「……………………(俺も聞きたい)」

 

「知れたこと。この墳墓にすら外の喧騒が持ち込まれるというのなら、外を静かにすればいいだけの話。アインズ様は、再び静寂が訪れるまで順次地上の国々を滅ぼされるおつもりよ」[アル]

 

「なっ…………!」[ジル]

 

「……………………(マジで!? いや、ブラフだよな? …………ブラフだよね?)」

 

「ま…………待って欲しい、ゴウン殿! 国を…………そう、この地にゴウン殿の国を建国されたらどうだろうか? そして、我が帝国と同盟を結ぼうじゃないか!」[ジル]

 

「同盟? 従属の間違いじゃありんせんかあ痛ぁっ!?」[シャル]

 

ちょっとシャルティア! あんたアホなんだから黙ってなさいよ!」[アウ]

 

だ、誰がアホでありんすか!」[シャル]

 

過去の自分の行いを思い返してみなさいよ!」[アウ]

 

…………くっ、否定しきれないでありんす…………っ!」[シャル]

 

「…………騒々しい、静かにせよ!(俺だってちょっとパニクってるんだから!)」

 

「「はっ! 申し訳ありません! アインズ様!」」[アウ、シャル]

 

「…………失礼した、ジルクニフ殿。で、同盟だったか? 構わない、結ぼうじゃないか(アルベドがこれ以上物騒なこと言う前に)」

 

「そ、そうか。それは良かった…………では、同盟国である私たちに望むことがあるなら、早速聞かせてくれないかな?」[ジル]

 

「…………すぐには思いつかないな。デミウルゴス(なんかあるか?)」

 

「はっ。帝国の代表者とは、私が話を詰めさせていただきます」[デミ]

 

「…………う、うむ(そういう意味で呼んだわけじゃないけど…………まあいいか)」

 

「では、こちらからは秘書官を…………ロウネ・ヴァミリネン!」[ジル]

 

「────はい! 帝国のために、全身全霊をもって行わせていただきます!」[ロウ]

 

「任せた。ではゴウン殿、私はこのあたりで帰るとしよう。貴殿との同盟に際して、準備しなければならないことが数多くあるからな」[ジル]

 

「…………そうか。では、デミウルゴスに外まで送らせよう」

 

「い、いや、それには及ばない! せっかくだから、帰りもあの美しいメイドの方々にお願いしても良いだろうか?」[ジル]

 

「…………ふむ、構わないとも。では、扉を開けた先に先ほどのメイドが待っている。彼女たちに送ってもらうといい」

 

「我が儘を聞いてもらって感謝するよ。ゴウン殿」[ジル]

 

「…………なに、同盟者のささやかな望みを叶えるくらい、当たり前のことだ。そうだろう?」

 

「そうだね…………同盟者とは、そうあるべきだね…………」[ジル]

 

 

 

◇帝国の受難(帰路)────

 

 

「…………陛下」[バジ]

 

「…………どうした、バジウッド」[ジル]

 

「マジヤバイっすね、あそこ。調度品ひとつとってみても、我が帝国と同等の物が何一つ見当たりませんでしたよ」[バジ]

 

「ああ。どれもこれも、帝国(うち)より数段格上だった。国庫を空にしたところで、あそこにある十分の一も集められんだろうな」[ジル]

 

「圧倒的な戦力差を見せつけられ、財力でも遥かに上回られている…………これってもう、詰みじゃないですか?」[バジ]

 

「…………これだけ力に差があれば、下手な小細工は通用しないだろうな。まともにぶつかっても、搦手でも、どちらにせよ勝ち目はないだろう」[ジル]

 

「今は同盟国ですが、いずれは属国決定ですかね」[バジ]

 

「属国は最も()()な末路だな。次にましなのが滅ぼされること。そして最悪なのが、国まるごと人権も何もない奴隷として扱われることだ」[ジル]

 

「…………そいつぁぞっとしませんね」[バジ]

 

「ああ。見たところ、あそこに人間は一人もいなかった。いや、あそこは人間がいられるような場所ではなかった。奴らにとって、人間は対等の存在たり得ないということだろう」[ジル]

 

「家畜…………ってぇとこですかね」[バジ]

 

「家畜の餌、かもな」[ジル]

 

「ははっ、それが一番ありえそうなのが恐ろしい。…………しかし、あのアインズ・ウール・ゴウンというのは凄い迫力でしたが、あまり口数は多くありませんでしたな。むしろよく喋っていたのは隣の…………あれは王妃なんですかね? ともかく、隣に立ってた美女がほとんど喋ってました。実はあのアンデッドはお飾りで、実権はあの美女が握ってる、みたいなことはありませんかね?」[バジ]

 

「ないな。あのゴウンの支配者ぶりをお前も見ただろう?」[ジル]

 

「ああ、『騒々しい、静かにせよ!』ですか? 確かにあのカリスマはうちの皇帝以上だったと思いますが…………」[バジ]

 

「ふん…………あの一言で、あの場にいた化物どもは全員姿勢を正し、かつゴウンに対し尊敬の目を向けていた。お飾りの王に出来ることではない。となれば、あのゴウンは恐ろしい智謀の持ち主だということになる」[ジル]

 

「なんでそうなるんです?」[バジ]

 

「考えても見ろ。絶対的な支配者であるゴウンが、ほとんど口を開かなかった。それはつまり、全てヤツの想定通りに事が進んでいたということだ」[ジル]

 

「なっ…………!」[バジ]

 

「あいつは、私との会話がどう進みどう決着がつくか、全て読み切っていたのだ。何一つ想定外の事態が起こらなかったから、口を出す必要がなかった。あいつが無口だったのは、それだけの理由だろう」[ジル]

 

「じゃ、じゃあなんですか? あの化物は、フールーダ殿を遥かに超える魔法詠唱者であり、同時に陛下を手のひらで転がすような策略家だってことですか!?」[バジ]

 

「そうなる。認めたくはないが、認めざるを得ない。敵の力を認めないのは、その時点で自分の負けを認めたようなものだからな。だが、まだだ…………まだ私は諦めんぞ」[ジル]

 

「…………なにか手があるんですかい?」[バジ]

 

「同盟だ」[ジル]

 

「同盟ってぇと…………」[バジ]

 

「帝国、王国、法国、聖王国による、人類国家の大連合だよ」[ジル]

 

「…………そんなことが可能ですかね?」[バジ]

 

「違う。それしか方法がないのだ。それを成し遂げない限り、人類に未来なはい。まずはその第一手として、王国との戦争だな」[ジル]

 

「今回は仕掛けないってことですか?」[バジ]

 

「逆だ。今までにない打撃を王国に与える。あの化物を巻き込んでな」[ジル]

 

「そんなことすりゃあ、帝国はあの化物の支配下だと思われますぜ?」[バジ]

 

「完全にはそうならないよう、裏で手を打つ。まずはあの化物がどれだけ恐ろしい存在なのか、世界に知らしめなければならないのだ。そのためなら、帝国はあえて泥を被ろう」[ジル]

 

「血まみれなうえに、泥まみれですかい? 鮮血帝」[バジ]

 

「ふん、汚泥(おでい)帝とでも呼ぶがいい。必要ならばなんでも被ってやるさ。血だろうと、泥だろうと、糞尿だろうとな」[ジル]

 

「最後のは勘弁して欲しいですが、まあ泥くらいなら俺も一緒に被りますよ」[バジ]

 

「ああ、嫌だと言ってもぶっかけてやるさ。…………さて、まずは帰ったら王国に対する宣戦布告書を────────あっ」[ジル]

 

「どうしました?」[バジ]

 

「レイナースはどうした?」[ジル]

 

「え? 馬車の近くにいませんかね? ────────いませんね」[バジ]

 

「あいつ、まさかあそこに残ったのではあるまいな」[ジル]

 

「…………ありえますね。呪いを解くことに人生捧げてるやつですから」[バジ]

 

「はぁ…………奴らが何か言ってきたら、好きにしてくれて構わないと言っておけ」[ジル]

 

「いいんですかい? 四騎士が二騎士になっちまいますが」[バジ]

 

「仕方あるまい。あいつも覚悟の上で残ったのだろう。あと、二騎士は語呂が悪い。せめて双騎士と名乗れ」[ジル]

 

「おお、流石は陛下。では明日から双騎士筆頭のバジウッドと名乗りましょう」[バジ]

 

「二人しかいないのに筆頭も何もないだろうが…………あぁ~、もう嫌だ。帰って寝たい」[ジル]

 

「俺は寝ますよ」[バジ]

 

「クソっ! 貴様もゴウンの生贄に捧げてやろうか!?」[ジル]

 

「ははは、そうなったら残るはニンブル一人ですな。絶対ストレスでハゲますよ、あいつ」[バジ]

 

「私も帝国初のハゲた皇帝になるだろうよ。……………………それまで帝国が残っていればの話だがな」[ジル]

 

 

 

◇謁見後(ナザリックサイド)────

 

 

「────────と、いうようなことをあの皇帝は考えていることだろう」[デミ]

 

「全くもって愚かでありんすねぇ。人間がどれだけ集まったところで、守護者の一人にも太刀打ち出来んせんでしょうに」[シャル]

 

「…………あんた、自分が操られたの忘れてない?」[アウ]

 

「うぐぅっ!」[シャル]

 

「まあ、今はアインズ様のご指示によって守護者各位が世界級(ワールド)アイテムを所持しているから、同じ手はもう通用しないよ。ただ、あの皇帝辺りはナザリックの内部分裂も狙ってくるだろうねぇ」[デミ]

 

「内部分裂ぅ? それって、あたしたちがアインズ様を裏切るように仕向けるってこと?」[アウ]

 

「う、裏切る? ぼ、ぼくが、アインズ様を?」[マレ]

 

「はっ! 愚かでありんすねぇ」[シャル]

 

「だからあんたが…………」[アウ]

 

「シャーーーーッ!」[シャル]

 

「うわっ、威嚇してきた!」[アウ]

 

「……………………(とことことことこ)」[マレ]

 

「? マーレ、どこに行くのです?」[デミ]

 

「…………あっ…………あの、皇帝に餓食孤蟲王さんの卵を植え付けに行こうかと思って…………」[マレ]

 

「いや、それはちょっと…………」[デミ]

 

「…………マーレは時々やることがエゲツないでありんすよね…………」[シャル]

 

「想像したら鳥肌が立った…………」[アウ]

 

「愚かな人間の頭の中でだとしても、自分がアインズ様を裏切ることを想像されるのが許せないのよねぇ。分かるわ、その気持ち。私もアレの脳天を叩き潰してやりたかったもの」[アル]

 

「アノ皇帝ハ忠義トイウ言葉ヲ知ラヌラシイ」[コキュ]

 

「皆の憤りは分かりますが、あの人間はまだアインズ様の計画に必要な駒です。勝手に殺さないように。わかったね、マーレ」[デミ]

 

「は、はい。ごめんなさい、アインズ様…………」[マレ]

 

「う、うむ。よい、気にするな、マーレ」

 

「話を戻しましょう。皇帝はアインズ様の思惑通りに動き、ナザリックは一つの国として表の世界に進出することになりました。そこで私からひとつ提案なのですが、アインズ様が王となられた際の呼び方を皆で考えてはどうか、ということです」[デミ]

 

「ふむ。いずれ神となられるアインズ様の呼び方がただの『王』では、その御身に相応しくない。そういうことでございますね?」[セバ]

 

「その通りだよ、セバス」[デミ]

 

「素晴らしい提案だわ、デミウルゴス。では、なにか案のあるものはいるかしら?」[アル]

 

「はいはーい! 最強王がいいと思います! アインズ様は最強だから!」[アウ]

 

絶世美貌(ぜっせいびぼう)王がよろしいかと思いんす。アインズ様ほど麗しい美貌を持つお方はありんせんから」[シャル]

 

「あの、アインズ様はとてもお優しいので、温厚慈愛(おんこうじあい)王とかどうでしょうか…………?」[マレ]

 

「アインズ様は世にナザリックの正義を成す御方。…………義侠(ぎきょう)王などがよろしいのではないかと思います」[セバ]

 

「ふむ、皆なかなかに素晴らしい案ですね。私は────────アインズ様の崇高なる英知を湛え、英明(えいめい)王がいいと思います」[デミ]

 

「私はもう至高神と名乗っていいんじゃないかと思うわ」[アル]

 

「いやいや、アルベド。そこは王で頼みますよ…………コキュートスはどうです?」[デミ]

 

「ソウダナ…………アインズ様ハ我ラ異形ノ者達ヲ従エ、今後モ多クノ種族ヲ支配下ニ置カレル御方。魔ヲ導ク王────魔導王ナドハドウダロウカ?」[コキュ]

 

「おぉ…………素晴らしいじゃないかコキュートス。まさにこれからのアインズ様の計画を体現するかのような呼び名だ…………アインズ様、いかがでしょうか?」[デミ]

 

「うむ。コキュートスの案を採用しよう(最強とか絶世美貌とかに比べたら一番まともだし)」

 

「畏まりました。ではその旨、帝国の秘書官を通して伝えておきましょう」[デミ]

 

「任せた」

 

「では次の議題ですが…………ユリがナザリックの外で帝国の女騎士を拾ったそうです」[デミ]

 

「…………なんだそれは、置いて行かれたのか?」

 

「いえ、どうやら自分の意思で残ったそうです。なんでも呪いを掛けられていて、それを解いてくれるならどんなことでもすると言っているそうですが…………」[デミ]

 

「強力な呪いなのか?」

 

「いえ、顔が少し爛れる程度の弱い呪いです。ペストーニャに見せればすぐにでも解呪できるでしょう」[デミ]

 

「そうか、なら解いてやれ」

 

「よろしいのですか?」[デミ]

 

「同盟国の騎士だしな。それに、顔の爛れは女にとって辛いものだろう」

 

「おお…………なんと慈悲深い…………では、そのように致します」[デミ]

 

「一応帝国には問合わせておけ。ここに連れてくるくらいだから、身分の高い者である可能性がある」

 

「畏まりました。では、次に王国との戦でアインズ様が使用される魔法についてですが────────」[デミ]

 

 

 




 色々あって久しぶりの投稿となりました。
 またちょこちょこ更新していく予定です。

 ちなみにですが…………

1、マーレが使っていた〈血を吸う怪樹〉(ジュボッコ)はオリジナルです。原典は日本の妖怪。
 水木先生の日本妖怪大全に載ってます。

2、レイナースは帝国に戻らず、ナザリックの下僕になりました。
 今後出てくるかは未定です。

 …………こんなとこかな?

 ではまた次回~
 


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閑話、ある日のナザリック(前)

 皇帝が謝りに来てから数日後。アインズ様に対し、神妙な面持ちのアルベドが話を切り出す。
 その話の内容とは────


◆やっぱり吸われてた────

 

 

「────────では、淫魔(サキュバス)特殊技術(スキル)である〈経験値吸収(レベルドレイン)〉が自動発動している、ということなのだな?」

 

「…………はい。どうやらそのようなのです」[アル]

 

「だが、その経験値自体はアルベドには流れていっていない…………つまり…………」

 

「はい…………私たちの…………お腹の子供に吸収されているようです」[アル]

 

「ふむ。ということは、私たちの子どもは私の経験値を吸うことで成長している…………?」

 

「…………そう考えるのが、最も合理的かと思われます」[アル]

 

「……………………(なるほど。体が重く感じたのは、やっぱり気のせいじゃなかったんだな)」

 

「モ…………モモンガ様…………」[アル]

 

「…………ん?」

 

「申し訳ございません! 守護者筆頭という地位を任されておりながらモモンガ様のお力を奪うなど…………っ! 私は…………私は…………っ!」[アル]

 

「いや、よいのだアルベド」

 

「ですがっ!」[アル]

 

「よい。むしろ私は嬉しく思っているぞ? アルベドよ」

 

「えっ…………?」[アル]

 

「私の経験値を吸収している。それはつまり、我が子が健康に育っている証拠ではないか。父親として、これ以上嬉しいことがあるものか」

 

「モ、モモンガ、様…………」[アル]

 

「もし子供の成長に私の経験値が必要だというのなら、いくらでもくれてやるさ。まあ、確認してみたところ、レベルが100から99に落ちるほどには吸収されていないみたいだがな。このペースなら、100以降に溜まった余剰経験値だけで10人は子供を育てられるくらいだぞ?」

 

モモンガ様~~~っ!」[アル]

 

「おっと、どうしたアルベド…………泣いているのか?」

 

「は、はい。私、私、モモンガ様に嫌われるのではないかと怖くて…………でもモモンガ様は優しくて…………だから、だから私ぃ……………………」[アル]

 

「私がお前を嫌うことなどあるものか……………………あぁ、そうだ、ちゃんと言葉にしたことはなかったな」

 

「…………モモンガ様?」[アル]

 

「愛しているぞ、アルベド。ナザリックの一員としてだけではなく、ひとりの女としてな」

 

!!!!!!!!!!」[アル]

 

「…………だ、だいじょうぶか? アルベド。雷に打たれたかのような顔をしているが…………」

 

…………打たれました」[アル]

 

「えっ?」

 

「モモンガ様のお子を授かった時、これ以上の幸せなどないと思っておりました。ですが今! モモンガ様から頂いたお言葉によって、それは覆されました!」[アル]

 

「お、おい、ちょっと待て、なんか体が光っているぞ、アルベド」

 

今の私は無敵です! 例えかつての大侵攻に匹敵する大軍が襲ってこようとも、今の私であれば単騎で押し返すことが可能でしょう!」[アル]

 

「浮いてる! なんか宙に浮いてるぞ、アルベド!」

 

力が! 力が体の奥から溢れてくるのです!」[アル]

 

「もう眩しくて何も見えないんだが!」

 

ああぁぁあああああああああああああっ!!!」[アル]

 

「おい! どうした! だいじょうぶかアルベド! クソっ本当に眩しくて何も見えん! なんだこれ! ────────お、少し弱まって、き、た……………………」

 

「…………モモンガ様♡」[アル]

 

「ア、アルベド…………その手に抱いているのは…………」

 

「はい────────私たちの、愛の結晶ですわ。モモンガ様♡」[アル]

 

 

 

◆お世継ぎ誕生────

 

 

「なるほど。アルベド様が強烈な光を放ったかと思えば宙に浮き、そしてその光が収まった時にはモモル様がその手に抱かれていた、ということなのですね? あ、わん」[ペス]

 

「うむ、そうだ。それで…………どうなのだ? それは普通なのか?」

 

「申し訳ございません、アインズ様。私は淫魔(サキュバス)の生態に詳しいわけではありませんので…………ですが、ステータスを確認してみましたところ、アルベド様にもモモル様にも異常は見られませんでしたわん。一応医務室でしばらく様子を見させて頂きますが、おそらく問題はないだろうと思われます。わん」[ペス]

 

「そうか、うむ、それならいいのだが…………私の娘────モモルの種族は、アルベドと同じ淫魔(サキュバス)ということでいいのだよな?」

 

「マジックアイテムを使用して確認致しましたので、間違いないと思われます、わん」[ペス]

 

「だが、この額の…………赤い宝石のようなものはなんなのだ? アルベドの体には、このようなものはどこになかったが…………」

 

「この宝石についても調べてみましたわん。結果は…………『モモンガ玉(小)』というものでしたわん」[ペス]

 

「…………モモンガ玉(小)?」

 

「はい。ステータスにはそのように記載されておりましたわん。性能に関しては〈道具上位鑑定〉が弾かれましたので詳しくは分かりませんが、おそらくはアインズ様の胸に収められている世界級(ワールド)アイテム、『モモンガ玉』と似た性能を持つマジックアイテムではないかと…………」[ペス]

 

「〈道具上位鑑定〉を弾いたのか…………となると、世界級(ワールド)アイテム? いや、まさか世界級(ワールド)アイテムがそう簡単に増えるわけもないし、準世界級(ワールド)アイテムとでも考えればいいのか? …………ええい、分からん」

 

「私にも何が起きているのかは分かりません…………わん。ただ言えるのは、このモモンガ玉(小)がモモル様に悪い影響を及ぼすものとは思えない、ということだけですわん」[ペス]

 

「…………なぜ、そう思う?」

 

「アインズ様の真の名、モモンガ様の名を冠するアイテムが、そのお子に害をなすとは思えないからですわん。むしろ、モモル様の身を守る助けになってくれるだろうと信じています、わん」[ペス]

 

「そう、か…………うむ、そうだな」

 

「今はアインズ様もお休みくださいわん。アルベド様が目を覚まされましたらご報告致しますので」[ペス]

 

「うむ…………いや、もう少し、ここにいることにする」

 

「…………畏まりました、わん」[ペス]

 

 

 

◆お世継ぎ誕生(守護者たち)────

 

 

「…………(そわそわ)」[アウ]

 

「…………(うろうろ)」[シャル]

 

「…………二人とも、さっきからなにを歩き回っているんですか?」[デミ]

 

「いや、だってさ!」[アウ]

 

「気になって仕方ないでありんすー!」[シャル]

 

「君たちの気持ちはよくわかるが、ペストーニャが付きっきりで様子を見ているから大丈夫ですよ」[デミ]

 

「それは分かってる! でもモモル様のお姿が見たいんだよ!」[アウ]

 

「見たいでありんす!」[シャル]

 

「まだダメですよ。近々お披露目式がありますが、それより前に守護者たちには会わせて頂けるとアインズ様が仰っているんです。我慢しなさい」[デミ]

 

「でもー」[アウ]

 

「ありんすー」[シャル]

 

「はぁ…………二人ともマーレを見習いなさい。ああやって大人しく────────あれは、何をしているんですか?」[デミ]

 

「え? なんか独自に調合した超強力なハイランユウハツザイとか言うのを作るって言ってたけど…………」[アウ]

 

「そ、そうですか」[デミ]

 

「そういえばコキュートスはどうしたでありんすか? 姿が見えないようでありんすが…………」[シャル]

 

「ああ。コキュートスなら、モモル様に会いたい衝動をどうしても抑えられないから、第七階層で滝に打たれてくると言ってましたよ」[デミ]

 

「…………第七階層の滝って、溶岩だよね」[アウ]

 

「あの熱いのが大嫌いなコキュートスがそこまでするって…………どれだけ激しい衝動に突き上げられてるでありんすか…………」[シャル]

 

「まあ、彼はアインズ様に爺役を許可されてからというもの、日に十二回は妄想の世界に旅立っていたからねぇ」[デミ]

 

「いや多すぎでしょ」[アウ]

 

「二時間に一度のペースでありんすぇ」[シャル]

 

「それだけ待ち望んでいたということさ。もちろん、私だってそうだよ。さすがに妄想の世界に旅立ちはしなかったけどね」[デミ]

 

「うぅ~~、だめだ! モモル様の話してたら、またそわそわしてきた! あたしセバスたちを手伝ってこようかな。なんかしてないと、いつまでもそわそわしちゃいそうだし」[アウ]

 

「セバスたちは何をしてるでありんすか?」[シャル]

 

「さっきも言ったお披露目式の準備ですよ。王座の間に全NPCを集結させて大々的に行うから、領域拡張魔法やらなにやら色々準備が必要だし、式典後は食堂で立食形式の食事会、最後は第六階層で祝砲の打ち上げが予定されてるからね。やらなければならないことは山ほどあるんだよ」[デミ]

 

「なるほど。じゃあ私も眷属たちを連れて手伝いに行きんしょうかぇ」[シャル]

 

「それがいいね。人手は多いに越したことはないだろうし。では、私は私でやることがあるからこれで失礼させてもらうよ」[デミ]

 

「デミウルゴスは何してるの?」[アウ]

 

「私ですか? 私はモモル様の為に揺りかごを制作しているところです」[デミ]

 

「…………デミウルゴスの」[アウ]

 

「…………揺りかご、でありんすか?」[シャル]

 

「ナザリックには幼児用の家具がありませんからねぇ。僭越ながら、私が用意させていただこうかと」[デミ]

 

「ま、待って、デミウルゴス!」[アウ]

 

「? 何か?」[デミ]

 

「まさかとは思うけど…………その揺りかご、材料に骨は使ってないよね?」[アウ]

 

「ええ、厳選に厳選を重ねた良質なものを…………」[デミ]

 

「そ! それはどうだろうな~! モモル様の揺りかごに骨を使うのは! ね、シャルティア!」[アウ]

 

「え、ええ。揺りかごに骨を使うのは、ちょっと違うと思いんすぇ」[シャル]

 

「おや、しかし私の家具細工は、以前アインズ様にもお褒め戴いておりますが…………」[デミ]

 

「そ、それは…………そう、アインズ様がお使いになるのはいいんだよ! デミウルゴスの作る家具は、威厳のあるアインズ様にお似合いになるから!」[アウ]

 

「そ、そうでありんすね! モモル様は…………まだお姿を拝見してはおりんせんけど、お可愛らしい外見をされているはず。デミウルゴスの作る家具とは相性が悪いというか…………」[シャル]

 

「なるほど、そう言われてみればそうかもしれませんね。まだお姿を拝見してもいないというのに、モモル様に似合う家具を作るなど不可能…………まずはモモル様にお会いし、それから制作に取り掛かるべきでした。二人とも、私の思い違いを諌めていただき、感謝しますよ」[デミ]

 

「あ、あはは…………結局作るつもりなんだ」[アウ]

 

「い、いいえぇ、いいんでありんすよ…………結局作るんでありんすか」[シャル]

 

「ん? 二人とも、なにか言ったかね?」[デミ]

 

「「いや、なにも」」[アウ、シャル]

 

「そうかい? では、私は新しく材料を選別し直す作業をすることにするから、今度こそ失礼するよ……………………可愛らしい揺りかご…………丸みを帯びた骨を主体に…………いや、細くて小さい骨を組み合わせて…………ブツブツ」[デミ]

 

「…………行ったね」[アウ]

 

「行きんしたね」[シャル]

 

「どっちが言う?」[アウ]

 

「…………任せんした」[シャル]

 

「それはずるい。シャルティアが言ってよ」[アウ]

 

「私だって嫌でありんす」[シャル]

 

「……………………」[アウ]

 

「……………………」[シャル]

 

「じゃあ、同時に」[アウ]

 

「裏切らないでくんなましよ?」[シャル]

 

「そっちもね」[アウ]

 

「「……………………〈伝言(メッセージ)〉『『アインズ様! デミウルゴスが…………!』』」」[アウ、シャル]

 

 

 

◆お世継ぎ誕生(新参たち~フォーサイト~)────

 

 

「聞いたか、イミーナ。アインズ様のお世継ぎがお生まれになったらしいぜ」[ヘッケ]

 

「ええ、聞いたわ。お目出度いことじゃない」[イミ]

 

「ああ、目出てぇな。お祝いになにかお贈りしたいところだが…………」[ヘッケ]

 

「アインズ様は全てお持ちだからねぇ…………」[イミ]

 

「我が神は、我らからの供物など必要とはされないでしょう。私たちが捧げるべきは信仰と献身、それに尽きます」[ロバ]

 

「お、ロバーデイク。久しぶりだな」[ヘッケ]

 

「ほんと、久しぶりね。最近はどうしてたの?」[イミ]

 

「カルネ村で布教活動をしておりました」[ロバ]

 

「おお、開拓村で布教活動か! 夢が叶ったじゃねぇか!」[ヘッケ]

 

「ええ、それもこれも、全ては我が神のお慈悲によるもの…………ああ、至高なるアインズ様、全てを捧げてお仕えいたします…………」[ロバ]

 

「昔以上に熱心な信徒になったわよね。ロバー」[イミ]

 

「以前の私は偽りの神を信仰しておりましたから。ですが今の私は真の神、真の使命を得たのです。熱心にもなろうというもの」[ロバ]

 

「まあ、ロバーデイクが昔信仰してた神様は、いるかどうかも定かじゃないような存在だったからな。それに比べてアインズ様は確実に存在しているし、確かな加護を与えてくれる。俺もイミーナも、以前とは比べ物にならないくらい安定した生活をさせていただいてるよ」[ヘッケ]

 

「我が神は、庇護下にある者を決して無下には致しません。さあ、二人もアインズ様を讃え、ともに祈りを捧げましょう!」[ロバ]

 

「ははは、俺らに布教活動はしなくても大丈夫だぜ、ロバー。心からアインズ様を尊敬してるからな」[ヘッケ]

 

「そういえば、アルシェはどうしてるかしら? 最近会わないけど…………」[イミ]

 

「おお、アルシェでしたら、つい先日カルネ村で会いましたよ」[ロバ]

 

「あら、元気にしてた?」[イミ]

 

「ええ、妹たちと楽しげに遊んでました。ただ…………」[ロバ]

 

「ん? なんかあったのか?」[ヘッケ]

 

「いえ、しばらく見ない間に…………尻尾が生えていたんですよ」[ロバ]

 

「…………尻尾?」[イミ]

 

「ええ、あれはおそらく犬系の動物の尻尾でしょうか。スカートの内側に垂れ下がっていました」[ロバ]

 

「…………アクセサリーとかじゃなくてか?」[ヘッケ]

 

「アルシェの妹が引っ張った時に声を上げていましたから、おそらく生えているのではないかと…………」[ロバ]

 

「ふーん…………獣人にでも改造してもらったのかしら?」[イミ]

 

「おそらくは…………ただ、尻尾を引っ張った妹に対して『抜けちゃうからダメ』と言っていたので、まだ改造の途中でしっかりと定着はしていないのかもしれませんね」[ロバ]

 

「…………大丈夫なのかしら?」[イミ]

 

「ええ、私も心配になったので回復魔法をかけましょうかと言ったのですが、アルシェは顔を真っ赤にして『大丈夫! 大丈夫だから心配しないで! あとヘッケランとイミーナには秘密にしておいて!』と…………」[ロバ]

 

「…………ものすごく言いふらしてるけど、いいの?」[イミ]

 

「おお、そういえばそうですな。はっはっは」[ロバ]

 

「いや、はっはっはって…………」[イミ]

 

「…………なあ、それってよ」[ヘッケ]

 

「? なに、ヘッケラン」[イミ]

 

「……………………いや、イミーナには後で()()教えてやるよ」[ヘッケ]

 

「??」[イミ]

 

「おっと、長居してしまいましたな。では、私はこれから蜥蜴人(リザードマン)の集落に布教活動に行ってまいりますので、これで失礼します」[ロバ]

 

「おお、またなロバー」[ヘッケ]

 

「アルシェに会ったらよろしく言っておいて」[イミ]

 

「分かりました。では、お二人共お体にはお気をつけて」[ロバ]

 

「心配ねぇよ。吸血鬼だからな」[ヘッケ]

 

「はっはっは、そうでしたな。それもこれも至高なる御方のご加護…………」[ロバ]

 

「いいから行けって、また話が長くなるぞ?」[ヘッケ]

 

「うむ、そうですな。では、今度こそ失礼いたします」[ロバ]

 

「おう、そっちこそ気をつけてな」[ヘッケ]

 

「……………………元気そうだったわね、ロバーも」[イミ]

 

「ああ、前以上に生き生きしてる。俺らもな」[ヘッケ]

 

「吸血鬼だけどね」[イミ]

 

「違ぇねえ」[ヘッケ]

 

「そうだ、ところでさっき言ってた後で教えてくれることってなに?」[イミ]

 

「ああ、それはな……………………」[ヘッケ]

 

 

 

◆お世継ぎ誕生(新参たち~ハムスケとトカゲ~)────

 

 

「────────ふんでござる! ふんでござる!」[ハム]

 

「おお、ハムスケ殿。今日も鍛錬に勤しんでおりますね」[ザリュ]

 

「おお、ザリュース殿! 殿にお世継ぎが生まれたと聞かされては、安穏と昼寝などしていられないでござる! 姫をお守りするためにも、もっと強くならなければ!」[ハム]

 

「その意気です、ハムスケ殿」[ザリュ]

 

「そういえば、ザリュース殿の奥方も身篭られているのでござったな」[ハム]

 

「ええ、それもこれも、ゴウン様の支援によって食糧事情などが劇的に改善されたおかげでしょう。妻も、妻のお腹にいる子供も健康そのものです」[ザリュ]

 

「羨ましいでござるなぁ! 拙者も早く番が見つからないものでござるかなぁ」[ハム]

 

「ゴウン様が探すと言ってくださっているのですから、そう遠くないうちに見つかるでしょう」[ザリュ]

 

「そうでござるな! 殿は偉大なお方ゆえ!」[ハム]

 

「ええ、全くです。ところでハムスケ殿、新しい武技は習得出来ましたか?」[ザリュ]

 

「ヘッケラン殿の指導もあって、〈流水加速〉が使えるようになったでござるよ!」[ハム]

 

「それは素晴らしい。あの技は使いようによっては格上とも対等以上に戦えますからね」[ザリュ]

 

「ハムスケウォリアーに向けて一歩前進でござる!」[ハム]

 

「ははは、ハムスケ殿ならすぐ一流の戦士になれますよ。死の騎士(デス・ナイト)殿はどうですか? なにか武技を覚えられましたか?」[ザリュ]

 

「おお! そうでござった! 聞いてくだされザリュース殿! 死の騎士(デス・ナイト)君が、とうとう〈斬撃〉を習得したでござるよ!」[ハム]

 

「えっ! ほ、本当ですか!?」[ザリュ]

 

「もちろんでござる! さ、死の騎士(デス・ナイト)君、ザリュース殿に見せてあげるでござるよ!」[ハム]

 

「…………! (ブォン!)」[デス]

 

「こ、これは確かに斬撃! やりましたね、死の騎士(デス・ナイト)殿!」[ザリュ]

 

「…………! …………!」[デス]

 

「うんうん、死の騎士(デス・ナイト)君は寝る間も惜しんで修行に励んでいたでござるからなぁ。拙者も嬉しいでござるよ!」[ハム]

 

「ゴウン様へのご報告は?」[ザリュ]

 

「まずは拙者達の上司であるコキュートス殿に報告をしようと思ったのでござるが、どこにいるのか分からないのでござるよ」[ハム]

 

「そうですか…………ですが、これは非常に重要な案件だと思われます。コキュートス様が見つからないのであれば…………そうですね、アウラ様かマーレ様であれば第六階層にいらっしゃるでしょうから、そのどちらかに報告しましょうか」[ザリュ]

 

「お、あの双児の方々でござるな? では、拙者ひとっ走りして伝えてくるでござるよ」[ハム]

 

「よろしくお願いします」[ザリュ]

 

「了解でござる! では行ってくるでござるよ!」[ハム]

 

「迷子にならないように気をつけてくださいねー! ……………………ふぅ、しかし、死の騎士(デス・ナイト)殿が本当に武技を使えるようになるとは思っていませんでした。ゴウン様は、全てを見通された上で死の騎士(デス・ナイト)殿に武技の修行をするよう指示をされたのですかね?」[ザリュ]

 

「…………! …………!」[デス]

 

「ええ、そうですね。偉大なかの御方であれば、なにも不思議はありません。さ、では私たちは修行の続きをしましょうか」[ザリュ]

 

「……………………!!」[デス]

 

 

 

◆お世継ぎ誕生(執事とメイド)────

 

 

「ユリ、食堂の飾り付け変更と料理の準備はどうなっていますか?」[セバ]

 

「問題なく進んでおります。料理は完成次第時を止め、解除すれば作りたてを食べられる状態にしたまま次々と作り置きを作成中。飾り付けにつきましてはパンドラズアクター様が指揮を執られ、華やかかつ威厳あるレイアウトに変更中です」[ユリ]

 

「そうですか、パンドラズアクター様であれば、お任せしておいて問題はありませんね。エントマ、ソリュシャン、王座の間はどうですか?」[セバ]

 

「領域拡張魔法は、すでにデミウルゴス様によって掛けていただいております」[ソリュ]

 

「装飾につきましてはぁ、食堂が終わり次第パンドラズアクター様が変更を施すと仰っておりましたわぁ」[エン]

 

「了解しました…………ん? エントマ、声が戻ったのですか?」[セバ]

 

「はいぃ。アインズ様と恐怖公のおかげで、元の声に戻ることが出来ましたわぁ」[エン]

 

「それは素晴らしい。おめでとうございます、エントマ」[セバ]

 

「ありがとうございますぅ」[エン]

 

「あとは…………シズ、祝砲の準備はどうです?」[セバ]

 

「…………ばっちり。第六階層に設置済み」[シズ]

 

「規模はどの程度のものを?」[セバ]

 

「…………第四位階相当の閃光砲、第五位階相当の火炎砲、電撃砲をそれぞれ五十門。最後は第七位階相当の爆裂砲百五十連発で締め」[シズ]

 

「全部で三百門ですか…………少し多くはありませんか?」[セバ]

 

「…………大丈夫、いくつかは同時発動する予定だから、そんなに時間はかからない」[シズ]

 

「そうですか、それなら良いでしょう。ルプスレギナ、進行表の作成は?」[セバ]

 

「デミウルゴス様が作った進行表を、司書長のセクンドゥスさんに渡して装丁してもらってるっす」[ルプ]

 

「数は?」[セバ]

 

「各階層守護者様に一つずつ、パンドラズアクター様にひとつ、セバス様にひとつ、アインズ様にひとつの全部で十一冊っす」[ルプ]

 

「十一冊…………ということは、ガルガンチュア様用にも作ったのですか?」[セバ]

 

「超でかいのを作ってもらったっす!」[ルプ]

 

「そ、そうですか。了解しました。あとは…………」[セバ]

 

「ひとつ質問をよろしいでしょうか、セバス様」[ユリ]

 

「? なんでしょう、ユリ」[セバ]

 

「今回の式典には全NPCが参加するとのことですが、それはつまりルベド様も参加されるということでよろしいのでしょうか?」[ユリ]

 

「ええ、ただし本体の起動はせず、意識のみを水晶のようなマジックアイテムに移しての参加になるようです」[セバ]

 

「さようですか、畏まりました」[ユリ]

 

「もちろん、貴女たちの末妹も参加しますよ。さ、それでは作業を再開しましょう。ある程度設営は完了しましたので、次は本番前の予行演習として────おや? そういえばナーベラルはどうしました?」[セバ]

 

「ナーベラルでしたら、コキュートス様の様子を見に行ってますわ」[ソリュ]

 

「そうですか、コキュートス様の…………」[セバ]

 

「ええ、じゃんけんに負けましたので」[ソリュ]

 

「そ、そうですか…………」[セバ]

 

 

 

◆お世継ぎ誕生(爺)────

 

 

「────────ノウマク・サンマンダーバーザラダン・センダン・マーカロシャーダーソワタヤ・ウンタラ・ターカンマン…………ウ、ウゥ! モモル様…………! 爺ハ、爺ハ…………! ハッ! イ、イカン、マダ煩悩ガ…………ッ! ノウマク・サンマンダー…………!!」[コキュ]

 

「……………………(コキュートス様がうるさい…………)」[紅蓮]

 

「……………………(様子を見に来たけど、話しかけたら大変なことになりそう…………)」[ナベ]

 

 

 

 




 少し長くなったので前後に分割しました。
 
 今回、そして次回は基本アインズ様とアルベドのイチャコラです。

 あまり出番のないサブキャラ達もちらっと出てくるよ。

 でも基本イチャコラです。

 後書きに書いても、もう読んだ後でしょうけど。


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閑話、ある日のナザリック(後)

 アインズ様のお世継ぎが生まれ、すっかりお祭りムードのナザリック。
 全NPCに加え、アインズ様に忠誠を誓うこの世界の者たち全てを集めた宴が始まろうとしていた────


◆お世継ぎ誕生(魔導王と正妃)────

 

 

「────────あっ…………モモンガ様?」[アル]

 

「おお、目覚めたかアルベド」

 

「私…………はっ、赤ちゃん、モモンガ様と私の赤ちゃんは?」[アル]

 

「大丈夫だ、安心しろアルベド。モモルはよく眠っている」

 

「良かった…………夢ではなかったのですね」[アル]

 

「ああ、お前が無事に産んで…………うむ、すこし変わった出産だったが、産んでくれたのだ。よくやったな、アルベド」

 

「あぁ、モモンガ様…………私、幸せでございます♡」[アル]

 

「近日中に私たちの子供のお披露目式を行う予定だが、どうだ、体の調子は問題ないか?」

 

「ええ、問題ありません。あの、モモンガ様…………モモルを抱いてもよろしいでしょうか?」[アル]

 

「うむ、どうだペストーニャ、大丈夫か?」

 

「はい、今こちらにお運びいたしますわん」[ペス]

 

「と、いうことだ。どれ、体を起こすのに手を貸してやろう」

 

「あっ♡ モモンガ様、ありがとうございます♡」[アル]

 

「モモル様をお連れしました、わん」[ペス]

 

「おお、アルベド、モモルが来たぞ……………………って、なんかさっきより育ってないか?」

 

「さようですね…………おそらくは生後一~二ヶ月くらいにまで成長されています。あ、わん」[ペス]

 

「う、うむ。なんかさらっと言っているが、それは普通なのか?」

 

「大丈夫ですわ、モモンガ様。淫魔(サキュバス)は成長が早いのです。生後数週間で人間で言うところの三~五歳くらいにまで一気に成長し、一年で十歳くらいまで成長致しましたら、そのあとは緩やかに育っていくものなのです」[アル]

 

「あ、そ、そうなのか…………?」

 

「はい♡ さ、ペストーニャ、モモルを抱かせて頂戴」[アル]

 

「はい、アルベド様」[ペス]

 

「モモル、モモル…………お母さんですよ。あら、モモンガ様、この額の宝石は…………?」[アル]

 

「あ、うむ、それは…………かくかくしかじか…………」

 

「まあ、モモンガ玉(小)ですか? うふふ、まさにモモンガ様の子であることの証♡ でも、ちょっと羨ましいですわね」[アル]

 

「今のところ害は無いようだがな。アルベドの言うようにモモルの成長が早いのなら、いずれその宝石の性質も明らかになるだろう」

 

「大丈夫ですわ、モモンガ様。モモンガ様の名を冠するアイテムが、この子に害をなすはずがありませんもの」[アル]

 

「…………ああ、そうだな」

 

「…………ほにゃっ、ほにゃっ」[モモ]

 

「あら、起きたの? モモル」[アル]

 

「ほにゃっ、ほにゃっ」[モモ]

 

「お腹がすいたのかしら? モモンガ様、モモルにご飯をあげてもよろしいでしょうか」[アル]

 

「私の許可などいらないとも。モモルの母はお前なのだからな、アルベド」

 

「うふふ♡ では失礼して…………」[アル]

 

「…………なぜ全部脱ぐのだ? 母乳を与えるのであれば、そこまで脱がなくても…………」

 

「モモルは淫魔(サキュバス)ですもの。母乳など飲みませんわ。もちろん私も出ませんし…………」[アル]

 

「し、しかし、では何を…………はっ! ま、まさか…………」

 

「もちろん、私がモモンガ様からお力を分けて頂き、それをモモルに与えるのですわ♡ さ、モモンガ様♡」[アル]

 

「い、いやちょっと待て! 子供の前だぞ!?」

 

「きゃっきゃっ♪」[モモ]

 

「ほら、モモルも喜んでおりますわ♡ 流石私の娘です。というわけだからペストーニャ、少し外してくれるかしら?」[アル]

 

「畏まりましたわん」[ペス]

 

「え、えぇ~…………」

 

「さあ、モモルにご飯をお与え下さいませ、モモンガ様♡」[アル]

 

「う、う~む…………サ、淫魔(サキュバス)だから、それが普通…………なんだよな?」

 

「もちろんでございます、モモンガ様♡」[アル]

 

「(ええい、子供のためだ、覚悟を決めろ、俺!)…………超位幻術、発動!」

 

「ああ♡ モモンガ様、ス、テ、キ♡」[アル]

 

「きゃっきゃっ♪」[モモ]

 

 

 

◆お世継ぎ誕生(魔導王と正妃、その後)────

 

 

「────今にして思えば、リング・オブ・サステナンスを装備させてやれば良かったんじゃないか?」

 

「まあ、モモンガ様。それでは愛情が伝わりませんわ。やはり幼いうちは両親が手ずから食事を与えてあげませんと。それにモモンガ様も以前仰っていたではありませんか、生き物の成長には睡眠と栄養が必要だと」[アル]

 

「…………う、うむ。それは、そう、だな」

 

「で、す、の、で、これからもよろしくお願いいたしますわ♡」[アル]

 

「わ、分かった」

 

「すやすや…………」[モモ]

 

「あら、モモルはお腹が一杯になったから寝てしまったようですわね」[アル]

 

「…………可愛いものだな、我が子というのは」

 

「ええ…………本当に♡」[アル]

 

「そういえば、デミウルゴスがモモルのために揺りかごを作ってくれるということなのだが…………」

 

「まあ、デミウルゴスが? デミウルゴスの家具は精巧に作られていて体への負担も少ないですし、ありがたく頂きましょう」[アル]

 

「うむ…………だが、いいのか? 間違いなく骨で出来た揺りかごを持ってくると思うのだが、モモルが怖がって泣いたりしないだろうか?」

 

「私が全体を覆う布カバーを作りますから問題ありませんわ」[アル]

 

「あ、ああ、そうか、その手があったか」

 

「さすがにむき出しの骨の上にモモルを寝かせたりはしませんわ、モモンガ様」[アル]

 

「うむ、安心した」

 

「モモンガ様の超リアルな刺繍を全面にあしらったものを縫い上げますので、きっとモモルも喜びますわ」[アル]

 

「えっ」

 

「それと、モモルの着る服にもモモンガ様を刺繍いたします」[アル]

 

「いや、アルベド?」

 

「そうですね、モモンガ様のお顔が白なので、モモルには基本黒地の服を着せましょうか」[アル]

 

「…………(黒地に骸骨の刺繍って、どこのパンクロッカーだよ!)」

 

「モモンガ様?」[アル]

 

「あ、いや…………ど、どうだろうかアルベド、父親の顔が刺繍された服とか、子どもは嫌がるものじゃないか?」

 

「とんでもございません! モモンガ様のお顔が刺繍されたものを身に付けることを嫌がる者など、この世にいるはずがありませんわ!」[アル]

 

「そ、そうか?」

 

「ええ、絶対です!」[アル]

 

「そうか…………」

 

「斯く言う私も、下着の裏地にモモンガ様を縫い付けておりますわ♡」[アル]

 

「…………(なぜ下着の裏地!? 絶対肌触り悪いだろ! っていうかそれ、お前たちの言う不敬には当たらないの!?)」

 

「いつでも愛する人を傍に感じていたい…………それが恋する女心というものですわ♡」[アル]

 

「…………あー、アルベド」

 

「はい♡ モモンガ様♡」[アル]

 

「私の顔を見える場所に刺繍するのは禁止な」

 

「な、何故でございますか!? モモンガ様!」[アル]

 

「それは…………ほら、あれだ。他のNPCたちが恐縮してしまうだろ? 私の顔がでかでかと刺繍されていたら」

 

「…………確かに。例え刺繍されたものであろうと、モモンガ様のご尊顔を拝した者はそのご威光に打たれ跪いてしまうかもしれません」[アル]

 

「というわけで、私の顔を刺繍するなら服の裏地とかに小さく縫い付ける程度に留めておくように」

 

「くっ、畏まりました…………」[アル]

 

「あ、あと下着の裏も禁止」

 

「下着の裏もでございますか!?」[アル]

 

「そもそもだ、そんなところに刺繍してチクチクしないのか?」

 

「それは…………するにはするのですが、モモンガ様によって与えられたものだと思うとそれもまた愛おしく…………」[アル]

 

「うむ、やっぱり禁止な」

 

「ああ~ん、モモンガ様ぁ…………」[アル]

 

 

 

◆お世継ぎ誕生(守護者にお披露目)────

 

 

「では、これから我が娘を連れてくる」

 

「どきどき」[アウ]

 

「わくわく、でありんす」[シャル]

 

「は、早くお会いしたいです」[マレ]

 

「守護者の方々だけではなく私もお呼び下さるとは…………! なんたる僥倖でしょう…………」[セバ]

 

「モモルさま、どのようはおかおをしているのでしょう…………」[ヴィク]

 

「シューッ、コォーッ…………ギチギチギチギチッ」[コキュ]

 

「…………コキュートス、興奮しすぎて威嚇音が出てるよ」[デミ]

 

「あぁぁああああああっ! この日をどれだけ待ち焦がれたことかっ!!」[パン]

 

「そしてパンドラズアクター、君は単純にうるさい。皆も静まりたまえ、そろそろアインズ様がお戻りになりますよ」[デミ]

 

「────皆、待たせたな、これが私の娘、モモルだ」

 

「…………か、可愛いー! すごくお可愛らしいです! モモンガ様」[アウ]

 

「あぁ…………ほっぺがぷにぷにしてるぅ…………つつきたいでありんすぅ」[シャル]

 

「わ、わあぁぁぁっ、モモル様、可愛いです!」[マレ]

 

「この方がモモンガ様のお世継ぎ、モモル様でございますか…………!」[セバ]

 

「モモルさま、すごくかわいらしいおかおをされています」[ヴィク]

 

「モ、モ、モモル様ァッ! 爺デゴザイマス! 爺ノコキュートスデゴザイマスッ!」「コキュ」

 

「おぉ…………至高の方々と同じ、支配者たるオーラを感じます…………流石はアインズ様のご息女でございますね」[デミ]

 

「あぁっ! なんと愛らしい方なのでしょう! (我が妹(マイン ユンゲレ シュヴェスター)! 心の中でだけ、そう呼ぶことをお許しください、モモル様!)」[パン]

 

「はい、ここまでよ、皆」[アル]

 

「えぇー、もう終わりなのー? っていうか、アルベドいたんだ」[アウ]

 

「失礼ね、モモルを抱いてるのは私なんだから、いるに決まってるじゃない」[アル]

 

「モモル様に意識がいってたから、全然気付かなかったでありんす」[シャル]

 

「爺ガ、爺ガオ側ニ付イテオリマスゾ! モモル様ッ!」[コキュ]

 

「コキュートスは未だに気付いていないようだね」[デミ]

 

「…………コキュートス、少し落ち着くのだ」

 

「ハッ! コ、コレハ失礼致シマシタ、アインズ様…………オヤ、アルベドモイタノカ」[コキュ]

 

「はぁ…………コキュートス、モモルは寝ているから、皆との顔合わせはここまでよ」[アル]

 

「ム、ムゥ…………! 名残惜シイガ、モモル様ノ睡眠ヲ妨ゲル訳ニハイカヌ。サ、皆モ解散スルノダ」[コキュ]

 

「おや、以外に聞き分けがいいのだね、コキュートス」[デミ]

 

「爺ダカラナ。モモル様ノ為ナラバ、イカナル苦難ニモ耐エテミセヨウ」[コキュ]

 

「ふむ、最初はどうなることかと思いましたが、君は案外向いているのかもしれませんね、爺に」[デミ]

 

「当然ダ、爺ダカラナ」[コキュ]

 

「あーあ、もう少しモモル様のお姿を見ていたかったけど、お休みの邪魔をするわけには行かないよね」[アウ]

 

「仕方ありんせん。今日は戻りんしょうか」[シャル]

 

ぼくも…………ぼくも可愛い赤ちゃんを…………」[マレ]

 

「では、私はお披露目式の準備に戻るといたしましょう。失礼いたします、アインズ様」[セバ]

 

「私も式典の装飾にさらに手を加えましょう! もっと愛らしく! そして輝かしく!」[パン]

 

「モモル様のお姿も拝見出来ましたし、私は揺りかごの作成に取り掛かるとします。コキュートス、君はどうするんだい?」[デミ]

 

「私ハモモル様ノ御寝所ヲ護ル役目ニ就カセテ戴クツモリダ。ヨロシイデショウカ、アインズ様」[コキュ]

 

「…………うむ、いいだろう。部屋の外に立つことになるが、それでも構わないか?」

 

「モチロンデゴザイマス。コノ爺、イカナル万難ヲモ排シテ、オ役目ヲ全ウシテミセマショウ!」[コキュ]

 

「ナザリックの中でそこまで気負う必要はないと思うが…………まぁよい、任せたぞ、コキュートス」

 

「ハッ!」[コキュ]

 

「では守護者たちよ、わざわざ来てくれて感謝する。二日後に決まったモモルのお披露目式は祭りのようなものだから、皆も存分に楽しんでくれ。では、それまで各々の仕事に戻るが良い」

 

「「はっ!」」[NPCたち]

 

 

 

◆お披露目式(開会)────

 

 

「────────よく集まってくれた! 今日は我が娘、モモルの誕生を祝う式典に参加してくれたことを心より嬉しく思う!」

 

「「おぉぉおおおおおおおおっ!!」」[全NPC+α]

 

「早速皆に今日の主役であるモモルを紹介しよう! アルベド!」

 

「はっ!」[アル]

 

「皆もすでに知っていることだろうが、母親は守護者統括であり、我が正妃でもあるアルベドだ! そしてその胸に抱かれているのが────我が娘、モモルである!」

 

「「おぉぉおおおおおおおおっ!!」」[全NPC+α]

 

「ナザリックに住まう全ての者よ! 我を讃えよ! 我が正妃アルベドを讃えよ! そしてわが娘、モモルを讃えよ!」

 

「「アインズ・ウール・ゴウン様万歳!! アルベド様万歳!! モモル様万歳!! 我ら身命を賭してお仕え致します!! アインズ・ウール・ゴウン様万歳!!────────」」[全NPC+α]

 

 

 

◆お披露目式(立食パーティー)────

 

 

「うんめぇ~~~っ! なんだこれ! 本当に食いものか!?」[ゼン]

 

「いや、うまいんだから食べもので間違いないだろう、ゼンベル…………しかし、本当にうまいな…………」[ザリュ]

 

「おいしいでござる! おいしいでござる!」[ハム]

 

 

 

「いや~…………羨ましいぜ」[ヘッケ]

 

「あたしたちは吸血鬼になっちゃったからねぇ…………」[イミ]

 

「ご愁傷様です。ですが吸血鬼の皆さんには、有志による献血によって新鮮な血液が用意されていますよ」[ロバ]

 

「私も…………んぅ、協力したんだよ…………」[アルシェ]

 

「…………お、おう、そうか。ありがとよ、アルシェ」[ヘッケ]

 

「あ、ありがとう、アルシェ…………」[イミ]

 

「い、いいの。二人には…………あっ、感謝、してるし…………」[アルシェ]

 

「…………尻尾、生えてるな」[ヘッケ]

 

ええ、生えてるわね。あれってやっぱり…………」[イミ]

 

「お二人共、どうかしましたか?」[ロバ]

 

「い、いや、なんでもねぇ! あ~、アルシェの血は美味ぇな~」[ヘッケ]

 

「ほんと、コクがあるのにまろやかよね」[イミ]

 

「今回の血は、特別に処女の血ばかり集めてブレンドしたものらしいですからね」[ロバ]

 

「「えっ!?」」[ヘッケ、イミ]

 

「ふぅ、ふぅ…………私…………妹たちに、お土産持って帰らないと…………あっ!」[アルシェ]

 

「? どうしましたアルシェ、大丈夫ですか? 膝がガクガクしてますが…………」[ロバ]

 

「だ、大丈夫! 大丈夫だから! 今は…………触らないで…………」[アルシェ]

 

「…………マニアックな調教されてんだなぁ」[ヘッケ]

 

「私たちに出来ることはないわ、ヘッケラン。せめて暖かく見守りましょう」[イミ]

 

「いや、そこは目を逸らしといてやれよ」[ヘッケ]

 

 

 

「これはフールーダ様。あなたもこちらの下僕(しもべ)に?」[レイ]

 

「おや、レイナース殿。ということは、貴女もですかな?」[フール]

 

「ええ。返しきれないほどの御恩を受けましたので、残りの生はアインズ様に捧げようと決意いたしました」[レイ]

 

「ふむ、メイド服が良くお似合いですよ。そして、実にいい笑顔をされるようになった…………」[フール]

 

「全てはアインズ様のご慈悲によるものです。フールーダ様は、やはり魔法のことで?」[レイ]

 

「ええ、アインズ様は素晴らしい…………まさに魔法の神であらせられる。帝国か、それとも魔法の深淵か…………ジルには悪いと思うが、その二つでは天秤にもかかりませんからな」[フール]

 

「実にフールーダ様らしいお考えですわ」[レイ]

 

「ふふふ…………その言葉、そのままお返し致しますよ。レイナース殿…………ややっ!?あ、あそこで料理を運んでいるアンデッドは、もしや死の騎士(デス・ナイト)をも超える強力なアンデッド…………? ちょ、ちょっと待ってくだされ! ほんの少し! ほんの少しでいいから触らせていただけませんかの!? ほんとサラッとだけじゃから…………」[フール]

 

「…………今や志を同じくする同胞だけど、やっぱりキショいものはキショいわね」[レイ]

 

 

 

「エンリ、大丈夫かい? 随分緊張しているみたいだけど」[ンフィ]

 

「え、ええ、大丈夫よ。ただちょっと驚いただけだから…………」[エン]

 

「ああ、アインズ様がアンデッドだったことかい? 納得だよね~。不死の存在であるからこそ、長い時をかけてあそこまで強大お力を得られたんだろうね」[ンフィ]

 

「…………ンフィは全く動じてないわよね」[エン]

 

「ん? 僕かい? 僕はもうとっくに覚悟を決めていたからね。エンリも早く気持ちを切り替えないといけないよ? アインズ様がアンデッドだろうと、邪神だろうと、僕たちを救い導いてくれた偉大な方に変わりはないんだから」[ンフィ]

 

「…………そう、そうよね。ゴウン様はゴウン様だものね」[エン]

 

「そうそう、アインズ様はアインズ様さ。ネムをご覧よ、あの順応の速さは、流石子供だよね」[ンフィ]

 

ゴ、ゴウン様カッコイ~~! 骨だけなのにどうやって動いているんですか、ゴウン様!?」[ネム]

 

「あぁ…………また失礼なことを…………」[エン]

 

「大丈夫だよ。アインズ様は寛大な御方だからね。さ、せっかくだから美味しいものをいっぱい食べて帰ろうよ、エンリ」[ンフィ]

 

「…………ゴブリンさんたちにいくらか持ち帰ってもいいかしら?」[エン]

 

「ははっ、そうそう、エンリはそうでなきゃね。すいませ~ん、持ち帰り用に包んで貰うことって可能ですか~?」[ンフィ]

 

 

 

◆お披露目式(閉会、そして祝砲)────

 

 

ドーーンッ!! ドドーーンッ!!」[閃光砲&火炎砲]

 

「た~まや~!」[アウ]

 

「か~ぎや~」[マレ]

 

「…………(黒妖精(ダークエルフ)の双児に、日本の魂が受け継がれている…………)」

 

「いや、これは中々に派手な催しですね。建国記念日などにもぜひ行いましょう」[デミ]

 

「ウム。腹ニズドント来ルノガ心地ヨイナ」[コキュ]

 

カッ!! ゴロゴロゴロッ、ズガーンッ!!」[電撃砲]

 

「色々な色の光が空全体を駆け巡って…………綺麗でありんすねぇ」[シャル]

 

「私がっ! 改造を施したのですっ!」[パン]

 

「すごいです! すごくきれいです!」[ヴィク]

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!」[爆裂砲×150]

 

「おぉ…………凄い迫力ですね」[セバ]

 

「…………何発かガルガンチュアに当たってないか? あれ」

 

「ガルガンチュアであれば、頑丈ですから問題ありませんわ。アインズ様」[アル]

 

「…………まあ、それもそうか。それはいいとして…………ちらっ」

 

「すやすや」[モモ]

 

「…………(この状況で熟睡できる肝の太さ…………間違いなくアルベドの遺伝子だな。っていうか、俺っぽさって額の宝石だけじゃないか?)」

 

「アインズ様…………」[アル]

 

「…………ん? ど、どうした、アルベド」

 

「私、幸せですわ」[アル]

 

「ははは、今日だけでその言葉を何度聞いたかな」

 

「何度でも申し上げます。アインズ様…………いえ、モモンガ様は、最後まで私どもを見捨てずに残って下さった慈悲深い御方。

 それだけでも私どもはこの上なく幸せでありますのに、ご寵愛をいただき、お子を授けていただき、さらには愛しているとまで仰っていただきました…………この身に溢れるこの気持ちを、もはや言葉で表すことなど出来はしません。

 でも、それでも、私の口は勝手に言葉を紡いでしまうのです。幸せです、と」[アル]

 

「アルベド…………」

 

「愛しております、モモンガ様…………私、今日という日を永遠に忘れません…………」[アル]

 

「…………ああ、そうだな、私もだ。私も、お前のことを愛しているぞ、アルベド。そして、今日のことを絶対に忘れないとも。いつまでも、いつまでもな…………」

 

 

 

 




 はい、というわけで閑話はここまで。
 次から帝国編…………っていうか王国蹂躙編に戻ります。

 ちなみにですが、モモルは生まれた時点でレベル20くらい。
 その後もアルベド経由でアインズ様の経験値を吸収し続け、何もしなくてもどんどんレベルが上がっていきます。

 アインズ様、頑張って経験値稼がないと、レベルダウンしてしまいますよ?


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モモンガ様、帝国相手に自重せず(中)

 モモルのお披露目式から約二ヶ月、王国と帝国の戦いが始まろうとしていた。

 戦に向かうアインズ様は、誰を連れて行くか守護者と話し合いをするが────


◆ナザリック戦力向上会議────

 

 

「────ふむ、ということは、だ。この世界の人間を素体とした死の騎士(デス・ナイト)は武技を覚えることができたが、ユグドラシル金貨を消費して召喚した死の騎士(デス・ナイト)は覚えることができなかった。そういう結果になったわけだな?」

 

「ハイ、アインズ様。ハムスケト共ニ修行ヲサセテイタ死ノ騎士(デス・ナイト)ト同時進行デ、傭兵モンスターノ死ノ騎士(デス・ナイト)ニモ同ジ修行ヲサセテイタノデスガ、コチラノ方ハ一切武技ヲ覚エル気配ガアリマセン」[コキュ]

 

「なるほどな。純粋なユグドラシル出身者…………という言い方もどうかとは思うが、つまり私やNPCたちが武技を使えるようになる可能性は極めて低いということか」

 

「残念デハアリマスガ…………」[コキュ]

 

「いやいや、十分な結果だ、コキュートス。我々が使えずとも、武技を使えるアンデッドを量産できることが分かったのだ。その利益は計り知れないぞ」

 

「まさに、アインズ様のおっしゃる通りです。今後人間を素体とした死の騎士(デス・ナイト)に武技を習得させて行けば、確実な戦力強化が見込めます。

 また、元々武技やタレントを持っている人間を吸血鬼の眷属化した場合には、生前の武技やタレントをそのまま使うことが出来るという結果も出ています。

 これを踏まえ、有用な能力を持つ者は吸血鬼の眷属に、無能な者は死の騎士(デス・ナイト)にしたうえで武技の習得をさせていけば、より効率的な戦力強化をすることが可能でしょう」[デミ]

 

「その通りだ、デミウルゴス。ゆえに、今後は死霊術の研究に力を入れるべきだろうな」

 

「ナルホド。コノ世界ノ人間ヲ素体ニシテ作ルコトガ出来ルアンデッドハ、死ノ騎士(デス・ナイト)ガ限界…………シカシ、死霊術ノ研究ヲ進メルコトデ、サラニ強イアンデッドヲ生ミ出セルヨウニナレバ…………」[コキュ]

 

「そう、無能な人間から、力と技を併せ持つ強力なアンデッドを生み出せるようになるのだよ。無から有を生み出す…………まさにこの世界の神となられるアインズ様にふさわしい御業(みわざ)と思わないかね、コキュートス」[デミ]

 

「全クダ。アインズ様ノ英知ト御慧眼ハ、私ノ想像ノ及ブトコロデハナイ」[コキュ]

 

「コキュートス、お前の協力があってこそ結果を出すことができたのだ。それにお前が蜥蜴人(リザードマン)を滅ぼすべきではないと進言してくれなければ、この計画はもっと遅れていただろう。よくやってくれた」

 

「モ、勿体無イオ言葉ニゴザイマス!」[コキュ]

 

「デミウルゴス、お前もだ。お前は常に様々な形で私や他の守護者たちのことをフォローしてくれる。その忠勤、嬉しく思うぞ」

 

「ア、アインズ様…………! 有り難きお言葉にございます…………!」[デミ]

 

「うむ。二人とも、これからも頼むぞ」

 

「「はっ!」」[コキュ、デミ]

 

 

 

◆アインズ様、私室にて────

 

 

「ふーっ…………(やっぱり、デミウルゴスとの会話は少し緊張するな。だって俺、中身は平凡だし)」

 

「モモンガ様、お疲れですか?」[アル]

 

「いや、疲れてなどいないさ。今のはそう…………ひとつの計画が成功したことに対する、安堵のため息のようなものだ」

 

「おめでとうございます、モモンガ様。これもひとえにモモンガ様のお力によるもの…………」[アル]

 

「それは違うぞ、アルベド。この成功は、守護者をはじめとしたナザリック全ての力によるものだ」

 

「でしたらモモンガ様のご指導、ご薫陶の賜物ですわ。ね~モモル、お父様はすごいのよね~」[アル]

 

「…………とうしゃま、しゅごい」[モモ]

 

「えっ!? モ、モモルが喋った!?」

 

「はい、今朝方あたりから言葉を喋ることが出来るようになったみたいです」[アル]

 

「そ、そうか、うむ。偉いぞ、モモル(ハイハイもお披露目式の翌日くらいからしてたし、いくらなんでも成長早すぎるだろ! いや、嬉しいんだけどさ!)」

 

「…………えへへ~」[モモ]

 

「あら羨ましい、モモンガ様に褒められて」[アル]

 

「あー…………もちろんアルベドだって偉いぞ? ナザリックの内政全般に、こうして時間を見つけてはモモルの世話も見てくれている」

 

「姉さんは私がモモルを保育園から連れ出そうとすると渋りますけどね」[アル]

 

「まあ、それは仕方ないだろう。ニグレドもかなり張り切って働いてくれているみたいだからな」

 

「ええ、モモルもよく懐いていますわ」[アル]

 

「うむ。ニグレドやペストーニャにも何か褒美を考えないとな…………ああ、そういえば、なにやら人を集めて勉強会のようなこともしているそうじゃないか。何をやっているんだ?」

 

「モモンガ様に悦んでいただく為の、ご奉仕技術の向上や閨での心得などを勉強しておりますわ♡」[アル]

 

「…………えっ?」

 

「モモンガ様に悦んでいただく為の、ご奉仕技術の向上や閨での心得などを勉強しておりますわ♡ 平たく言えばセッ…………」[アル]

 

「いや! うむ! 分かった! 分かったから平たく言わなくてもよい!」

 

「はい、畏まりました♡」[アル]

 

「ふー…………(アルベドの発言は、時々モモルの教育に悪い……………………いや、アルベドは淫魔(サキュバス)だし、モモルも淫魔(サキュバス)なんだから、これでいいのか…………?)」

 

「…………かあしゃま、おなか、しゅいた」[モモ]

 

「あらあら、じゃあご飯にしましょうね♡」[アル]

 

「…………(いや、よくない! コレは絶対に良くないはずだ!)」

 

「さ、モモンガ様♡」[アル]

 

「い、いや、ちょっと待つのだアルベド。モモルにご飯をあげるのはいいとして、モモルの前で、その、する必要はないんじゃないか?」

 

「これも教育ですわ、モモンガ様♡ 淫魔(サキュバス)として恥ずかしくない教養を、モモルには身につけて貰いませんと♡」[アル]

 

「そ、それは…………もう少し成長してからでもいいのではないか?」

 

「いいえ、早いに越したことはございませんわ♡ ねー、モモル。お父様とお母様と一緒にご飯食べたいわよねー」[アル]

 

「あい!」[モモ]

 

「……………………(いい笑顔で…………)」

 

「さ、モモンガ様♡」[アル]

 

「…………えぇい、やったれぃ!」

 

「あぁっ♡」[アル]

 

「きゃっきゃっ♪」[モモ]

 

 

 

◆王国との戦争には誰を連れて行くか会議────

 

 

「────して、アインズ様。王国との戦争にはどの守護者をお連れになるつもりですか?」[デミ]

 

「うむ…………世界級(ワールド)アイテムを保有する存在がいることを考慮すれば、あまりこちらの手の内を晒すべきではない。

 ならば、まだ存在を知られていないであろうコキュートス、デミウルゴス、アルベドは除外。ガルガンチュアも同様に除外(でかすぎるし)。死ぬことで特殊技術(スキル)を発動するヴィクティムも当然除外。

 セバス、シャルティアに関しては、まだナザリックとの繋がりを知られる訳にはいかないのでこれも除外。

 となると、必然的にアウラかマーレのどちらか、ということになる」

 

「くぅ…………また活躍の機会が…………!」[シャル]

 

「ドンマイ、シャルティア(笑)」[アウ]

 

「また上から目線!」[シャル]

 

「…………どきどき、ぼくかな…………ぼくかな…………」[マレ]

 

「ご一緒できないのはとても残念ですが、私はナザリックとモモルを護り通すことに専念いたします」[アル]

 

「同ジク。モモル様ハ、コノ爺ガ命ニ代エテモオ護リイタシマス」[コキュ]

 

「ご指示に従わせていただきます。ところでアインズ様、パンドラズアクター様がお連れの候補に入っておられないようでしたが」[セバ]

 

「ああ、あれの能力は切り札(ジョーカー)だ。よほどのことがない限り、パンドラズアクターとして表に出すつもりはない。まあ、何かに変身させてから連れて行けば問題ないだろうが、それなら最初から他の者を連れて行けばよいしな」

 

「なるほど、畏まりました」[セバ]

 

「となりますと、相手が大群であることを考えればお連れになるのはマーレでございますか?」[デミ]

 

「えぇ~…………」[アウ]

 

「…………(そわそわ)」[マレ]

 

「…………いや」

 

「おぉっ?」[アウ]

 

「…………(しゅん)」[マレ]

 

「今回は二人とも連れて行こうと思う」

 

「いぃやったーーーーっ!!」[アウ]

 

「…………!(ぱぁぁ)」[マレ]

 

「ほぅ、二人とも…………ということはアインズ様、おやりになるおつもりですね?」[デミ]

 

「ああ、そうだ。今回の戦いでは────()()を使う」

 

 

 

◆その頃カルネ村では────

 

 

「────というわけで、我らが神アインズ様は王国の有象無象と戦争をすることになったのですよ」[ロバ]

 

「なるほど、分かりましたロバーデイクさん。じゃあ僕らは僕らで出来ることをやらなきゃね。エンリ、アインズ様から頂いた笛を吹いてよ」[ンフィ]

 

「えっ!? いや、ゴウン様が戦争をするっていう辺りはサラッと流してたけどいいの!? っていうか、なんで急に笛を吹くって話に!?」[エン]

 

「誰と戦争をするにせよ、アインズ様が負けるはずないからね。心配は無用さ。笛を吹く理由は、きっと僕らは王国から狙われることになるからだよ」[ンフィ]

 

「えぇ、な、なんで?」[エン]

 

「考えても見てごらんよ。王国はアインズ様のことをほとんど知らない。唯一の情報は、戦士長のガゼフさんが持ち帰ったものだけのはずだ。

 なら、王国は戦争の前にアインズ様のことを調べようとするはず。

 そして、その情報を得られそうな場所といえば────」[ンフィ]

 

「────ゴウン様に救っていただいた、私たちの村…………」[エン]

 

「そういうこと。王国はこの村に兵を差し向け、なんとしてもアインズ様の情報を得ようとするはずだ。けど、アインズ様に恩義がある僕たちがそれに協力するわけがない」[ンフィ]

 

「じゃ、じゃあ王国の兵士と戦うことに…………?」[エン]

 

「最悪の場合ね。けど、僕たちがどれだけ抵抗しても、数で勝る王国の兵士には敵わないだろう。だから、僕たちはアインズ様の足でまといにならないように、トブの大森林にでも身を隠すべきなんだよ」[ンフィ]

 

「あ…………だからゴウン様から貰った笛を?」[エン]

 

「そういうこと。ゴブリンさんたちの数が倍に増えれば、それだけ逃げる準備も森での戦闘も楽になるし、村人たちの訓練効率も高くなるはずだ」[ンフィ]

 

「ふむ、ンフィーレア殿は賢明なお方ですなぁ」[ロバ]

 

「ありがとう、ロバーデイクさん。これもみなアインズ様のおかげですよ。さ、そういう訳だから笛を吹いてよ、エンリ」[ンフィ]

 

「う、うん、分かった。じゃあ吹くね?」[エン]

 

「お願い」[ンフィ]

 

「…………すぅぅ…………ブォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」[エン]

 

「うわっ、随分大きな音が鳴るんだね」[ンフィ]

 

「流石は我らが神から下賜された品。迫力が違いますな」[ロバ]

 

「…………前はもっとおもちゃみたいな音だったんだけど…………」[エン]

 

「────コン、コン」[ドアをノックする音]

 

「あ、はーい、開いてますからどうぞ入ってください」[エン]

 

「バタンッ────エンリ閣下が配下、ゴブリン重装甲歩兵団長! お呼びにより参上いたしました!」[ゴブ重]

 

「同じくエンリ閣下が配下、ゴブリン聖騎士隊長! 推参いたしました!」[ゴブ聖]

 

「同じく、ゴブリン騎獣兵団長! 御前に!」[ゴブ騎]

 

「ゴブリン長弓兵団長、参りました!」[ゴブ弓]

 

「「ゴブリン魔法支援団長、並びにゴブリン魔法砲撃隊長もここに!」」[ゴブ魔支、ゴブ魔砲]

 

「ゴブリン軍楽隊長であります!」[ゴブ楽]

 

「ゴブリン暗殺隊長、控えております」[ゴブ殺]

 

「ゴブリン近衛隊長、お側に!」[ゴブ衛]

 

「ほっほっほ、入りきれませんのでここまでにしておきましょうか。私はゴブリン軍師でございます。エンリ閣下の要請に応じ、ゴブリン軍団全五千、即座に戦闘に入る準備を整え参上いたしました。さぁ────敵はどちらに?」[ゴブ孔明]

 

「「……………………」」[エン、ンフィ、ロバ]

 

「おや、どういたしましたかな?」[ゴブ孔明]

 

「…………逃げる必要は、ないかな」[エン]

 

「…………そうだね。むしろこっちから攻めても良さそうなくらいだ」[ンフィ]

 

「流石は我らが神。これほどまでに強大なアイテムを、ポンと村娘に渡すとは…………」[ロバ]

 

「ふむ、察しますに、差し迫った戦の気配はないようですな。閣下」[ゴブ孔明]

 

「あのー、さっきのゴブリンさんも言ってたけど、閣下って、やっぱり私のことですよね…………?」[エン]

 

「ほっほっほ、もちろんでございます。我らエンリ将軍閣下によって召喚された者でございますからな」[ゴブ孔明]

 

(あね)さん、族長、村長ときて、とうとう将軍閣下にまで上り詰めちゃったね、エンリ」[ンフィ]

 

「うぅ…………ンフィに笛吹いてもらえば良かった…………」[エン]

 

「全ては神のお導きですよ、エンリさん」[ロバ]

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………び、びっくりしたっす。なんすか、あのゴブリンの数は…………アインズ様に報告しなきゃっす」[ルプ]

 

 

 

◇王国の戦士たち────

 

 

「────今回の戦、どう見ている? ロックマイヤー」[ブレ]

 

「きな臭いな。俺の雇い主のレエブン侯も気をつけるべきだと言ってたが、何より俺の勘がヤバイと言ってる」[ロック]

 

「ああ、俺もだ。首の後ろあたりがチリチリしやがる」[ブレ]

 

「…………お二人の悪い予感には、ストロノーフ様の言っていたアインズ・ウール・ゴウンという魔法詠唱者が関係しているのでしょうか」[クラ]

 

「間違いないだろうな。シャルティア・ブラッドフォールン、セバスさん、モモン…………絶対に勝ち目のない強者を俺は見てきた。もしアインズなんたらがその強者たちと同等の強さを持っているんだとしたら────王国に勝ち目はない」[ブレ]

 

「まあ、セバスさんが帝国側にいたら…………って考えたら、勝ち目はないわな」[ロック]

 

「王国兵が空に舞う光景が目に浮かびますね」[クラ]

 

「ああ。しかも、今回の強者は魔法詠唱者…………飛んでくるのは拳じゃなくて魔法だ」[ブレ]

 

「範囲攻撃か…………一体一ならまだしも、集団戦では最も厄介な相手だな」[ロック]

 

「はい。どれだけ強大な力を持つ戦士であろうと、一人で戦争はできません。ですが、強大な力を持つ魔法詠唱者であれば…………」[クラ]

 

「ちっ、厄介なんてもんじゃねぇ。だいたい、そのアインズとかいうのはどれだけ強いんだ? だれか知っているやつはいないのか?」[ブレ]

 

「…………お前が想像する強さを、さらに数倍するといい。それがゴウン殿の強さだ」[ガゼ]

 

「おっ、ガゼフか…………今なんて言った? 数倍だと?」[ブレ]

 

「そうだ。先ほどお前はモモン殿とセバス殿という御仁を同列の強者として挙げていたが、俺もモモン殿の強さはヤルダバオトとの戦いの痕跡からある程度推察している」[ガゼ]

 

「つまり、お前はアインズとかいうやつの強さをモモンの数倍と見ている、ということか?」[ブレ]

 

「ああ」[ガゼ]

 

「正直信じられないが…………なにか根拠はおありなんですか? ガゼフ殿」[ロック]

 

「あなたは確か…………レエブン侯の食客でロックマイヤー殿でしたか」[ガゼ]

 

「ガゼフ殿ほどの方に名を知られているとは光栄だ」[ロック]

 

「ガゼフで構いません」[ガゼ]

 

「なら俺もロックマイヤーと呼び捨てにしてくれ」[ロック]

 

「挨拶はそれくらいにして、聞かせてくれ、ガゼフ。お前は何を知っている。何を見た」[ブレ]

 

「強さだよ、ブレイン。比類なき強さだ。俺がカルネ村の救出に駆けつけたとき、そこにあったのは散らばった兵の死体と、四体のアンデッドの姿。

 その内三体は、完全装備の俺でどうにか戦える程度の強さだったが、残りの一体は────────おそらく、俺が十人掛りでも倒せないほど強力なアンデッドだった」[ガゼ]

 

「ちょ、ちょっと待ってください、ストロノーフ様! それは本当なんですか!?」[クラ]

 

「ああ。まるで勝てる気がしなかった。それを見た瞬間、自分は死ぬのだとあっさり受け入れたくらいにな。お前たちも、俺と似たような経験をしたんだろう?」[ガゼ]

 

「それは…………モモン様の力を垣間見たあの時のことですか?」[クラ]

 

「残念なことに俺はその場にいなかったがな。だがその話を後で聞いたとき、俺はカルネ村で見たアンデッドを思い出した。そしてモモン殿の戦いの痕跡を見て理解したんだ。おそらく、あのアンデッドとモモン殿は同程度の強さを持っていると」[ガゼ]

 

「だが、それがアインズの最大戦力かも知れないぜ?」[ブレ]

 

「いや、ゴウン殿はさらに強い」[ガゼ]

 

「…………なんでそれが分かるんだ?」[ロック]

 

「その後、村をスレイン法国の陽光聖典が襲撃した。だがゴウン殿は散歩にでも向かうかのような気軽さでそれを迎え撃ち、十秒ほどで殲滅すると、また何事もなかったように戻ってこられたのだ」[ガゼ]

 

「…………マジ、かよ…………」[ブレ]

 

「陽光聖典っていやぁ、周辺国最強として名高いスレイン法国の特殊部隊だろ? それを十秒って…………」[ロック]

 

「俺は決して誇張して話しているわけじゃないぞ? むしろ、行って帰って来るまでが十秒だから、実際の戦闘時間はもっと短いはずだ」[ガゼ]

 

「おまえ、それを王様に伝えたんだろうな?」[ブレ]

 

「無論だ。王は信じてくれただろうが、貴族は鼻で笑っただけだったよ」[ガゼ]

 

「俺だって、セバスさんに会わなけりゃ同じ態度をとってただろうな」[ロック]

 

「俺もセバス様やモモン様に会っていなければ、心の底で疑ってしまっていたかもしれません。ですが、今は残念なことにそれが真実なのだと理解してしまっています」[クラ]

 

「…………ガゼフ。おまえ、今回の戦はどうなると思う?」[ブレ]

 

「…………はっきり言おう。もしゴウン殿が本気を出せば、王国の歴史はその瞬間に終わることになる。だからブレイン、お前は逃げろ。俺やクライムには命を捧げて仕える方がいるが、お前はそうじゃない」[ガゼ]

 

「なんだ? 勝ち目はないから、尻尾を巻いて旅にでも出ろっていうのか?」[ブレ]

 

「言い方は悪いが、そういうことだ。俺は王の為に死ぬが、お前は自分のために生きろ。路銀もいくらかは用意して────────」[ガゼ]

 

バカ野郎! ガシッ!」[ブレ]

 

「……………………」[ガゼ]

 

「…………漢の拳をガードするんじゃねぇよ。そこは甘んじて受けるべきところだろうが」[ブレ]

 

「すまん、ついな」[ガゼ]

 

「…………はぁ、まあいい。おいガゼフ、俺は逃げねぇぞ。昔の俺なら一も二もなく逃げただろうが、今は全力で戦って死ぬのも悪くないと思ってるからな」[ブレ]

 

「ほう、それはなぜだ?」[ガゼ]

 

「世の中には、絶対的な強者ってやつがいる。そいつらと俺の間には分厚くて高い壁があって、俺が何をしようと、どうあがこうと、壁の向こうに行くことはできない。

 それを知ったとき、強さが全てだと思っていた俺は絶望した。

 俺に生きている価値などない、そう思った。

 だがな、ガゼフ。

 壁を乗り越えることはできなくても、壁に生きた証を刻むことはできるんだ」[ブレ]

 

「ブレインさん…………」[クラ]

 

「ブレイン…………」[ロック]

 

「だから俺は、壁から逃げるのをやめた。背を向けちまったら、俺の刀は壁にすら届かない。

 ────俺は戦うぞ、ガゼフ。

 そのアインズがどれほど強く、戦えば確実に死ぬのだとしても、俺は刀を振り続けてやる。

 そして、そいつの髪の毛一本でも切り飛ばせたなら、たとえ死んだとしても悔いはねぇ」[ブレ]

 

「よっ、爪切り職人!」[ロック]

 

「もしその偉業を成し遂げられたなら、今度は髪切り職人ですね!」[クラ]

 

「ふふふ、そうか。そこまで覚悟を決めているなら、もはや何も言うまい。噂に聞く〈秘剣:爪切り〉とやらを、冥土の土産に拝ませてもらうとしようか」[ガゼ]

 

「「ブレイン! ブレイン! ブレイン! ブレイン!」」[クラ、ロック]

 

「へっ…………よせよお前ら」[ブレ]

 

「おい! キサマら! 部隊編成の最中だというのに、何を騒いでいるのだ!」[王国将校]

 

「やべっ! おい、一旦散るぞ!」[ブレ]

 

「はい! あれ、ストロノーフ様は?」[クラ]

 

「さっき風のような速さで去っていったぞ」[ロック]

 

「流石ガゼフ、危機察知能力も高いな!」[ブレ]

 

「ラナー王女を守るためには、そういう能力も必要だぞ、クライム君」[ロック]

 

「はい! 精進します!」[クラ]

 

「言ってる場合か! 逃げるぞ!」[ブレ]

 

「待てー! 待たんかキサマら! そこの白い鎧! お前クライムだろ! ラナー様のお付きだからって調子に乗るなよ……………………!」[王国将校]

 

 

 

◇魔導王様の御成り────

 

 

「────カーベイン将軍、最敬礼でお願いします」[ニン]

 

「…………ここは戦場だぞ?」[カベ]

 

「お願いします」[ニン]

 

「…………分かった。皆、姿勢を正せ! 最敬礼でお出迎えする!」[カベ]

 

「ありがとうございます」[ニン]

 

「ニンブル殿の独断でないことくらいは分かる。それくらい陛下や帝国にとって重要な人物ということなのだろう?」[カベ]

 

「…………ええ。重要という意味では、このうえなく重要な()()です」[ニン]

 

「そうか────む、馬車から下りてくるぞ」[カベ]

 

「────────ひかえーい! ひかえおろう! このお方をどなたと心得る! 畏れ多くも絶対なる支配者! 全知全能なる至高の存在! アインズ・ウール・ゴウン魔導王陛下にあらせられるぞ!」[アウ]

 

チャ……チャチャチャ~、チャッチャッチャッチャ~ン」[マレ]

 

「マーレ! BGMが小さい!」[アウ]

 

「ご、ごめんさい、お姉ちゃん」[マレ]

 

「……………………(どこで覚えたんだろう、あのフレーズ。っていうかマーレ、それ将軍のオープニングだから! 副将軍のじゃないから!)」

 

「「……………………」」[ニン、カベ]

 

「(ほら! 帝国の騎士もポカンとしちゃってるじゃないか!)」

 

「ちょっとあんたたち! アインズ様がいらっしゃったんだから頭を下げなさいよ!」[アウ]

 

「…………はっ! し、失礼した! 各員、魔導王閣下に対し! 最敬礼!」[カベ]

 

「────頭を上げてくれたまえ」

 

「ほら! アインズ様が頭を上げろと仰ってるんだから、さっさと上げる!」[アウ]

 

「は、はっ! 各員、頭を上げよ!」[カベ]

 

「…………すまないな、戦場ということで私の従者も気が立っているようだ」

 

「いえ、謝罪の必要などございません。私どもも魔導王閣下にお会いできた喜びに我を忘れてしまったようです」[ニン]

 

「そう言ってくれるならありがたい」

 

「では、ここより野営していただく場所まで、私、ニンブル・アーク・デイル・アノックがご案内をさせていただきます」[ニン]

 

「そうか、よろしく頼む」

 

「私はカーベインと申します、アインズ・ウール・ゴウン魔導王閣下。なにか駐屯基地でお困りのことがございましたら即座に対応いたしますので、なんなりとおっしゃってください。ここにいる騎士の幾人かを従者としてお使い頂ければ────」[カベ]

 

「あぁっ!? あたしとマーレじゃアインズ様の従者として不足だっての!?」[アウ]

 

「…………ピクリッ」[マレ]

 

「やめよアウラ。すまないがカーベイン殿、そういう訳だから、私にはこれ以上従者は必要ない」

 

「畏まりました、魔導王閣下。ですが、何かありましたら遠慮なくお申し付け下さい。カーベイン将軍、そういうことでよろしくお願いします」[ニン]

 

「…………了解した」[カベ]

 

「ああ、そうだ。ひとつ確認したいことがあったのだが」

 

「なんでしょう、魔導王閣下」[ニン]

 

「今回の戦争は私の魔法を開幕の一撃とするということだったが────────どれだけ長くても、一撃は一撃ということでかまわないかな?」

 

 

 

◇カルネ村襲撃(バルブロ側)────

 

 

「王子、ここがカルネ村でございます」[モブ]

 

「…………なんでただの開拓村が、こんな防壁を張り巡らせているんだ?」[バル]

 

「はっ、おそらくではありますが、トブの大森林が近い場所にありますので魔獣対策ではないかと…………」[モブ]

 

「馬鹿な事を言うな! これが魔獣対策だと!? どう見ても対軍勢用の備えではないか! この村はいつからこのような有様になっているのだ!」[バル]

 

「は、あの、つい最近徴税官が来ているはずなのですが、このようなことになっているというような報告は上がってきておりませんので、なんとも…………」[モブ]

 

「貴様はどこまで愚かなのだ! そんなもの、賄賂を送られたに決まっているであろうが! …………あぁ、もうよい! これは王家に対する反逆だ! この村を滅ぼし、すぐに戦場へ転進するぞ!」[バル]

 

「お、お待ちください王子! そのようなことをしては兵の士気に…………! ん? あ、あれはなんだ!?」[モブ]

 

「なに? いったいなんだと…………おぉおおおおおおおっ!!?」[バル]

 

ドゴォォオオオオオオオオオオンッ!!

 

 

 

◇カルネ村襲撃(エンリ側)────

 

 

「────よしっ! 命中した!」[ンフィ]

 

「ほっほっほ、戦とは先手必勝。頭を最初に潰してしまえば、あとは楽なものでございます」[ゴブ孔明]

 

「…………いいのかなぁ。四方八方から〈火球(ファイアーボール)〉なんて撃ち込んじゃったけど」[エン]

 

「アレらは神に歯向かう愚か者たちです。慈悲など必要ありませんよ、エンリ殿」[ロバ]

 

「さて、では初手の火計が成功いたしましたし、次の指示を出すとしましょう。重装甲歩兵部隊、敵軍の退路を塞いでください。伏せていた聖騎士隊、騎獣兵団は左右から敵の腹を食い破って分断。長弓兵団が斉射した後、支援魔法を受けた重装甲歩兵部隊は前進しつつ分断した敵を包み込むように……………………」[ゴブ孔明]

 

「……………………いいのかなぁ」[エン]

 

 

 




 結局帝国編は前、中、後編の三つに分かれてしまいました。

 後、もう◇とか◆とかよくわからなくなってきたので、帝国編が終わったら◇に統一しちゃおうと思います。

 そして、自分で書いておいてなんだが、髪切り職人てなんだクライム。
 床屋か。
 まあ、ブレインはなんとなくカリスマ美容師っぽい見た目してるけど。


 


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モモンガ様、帝国相手に自重せず(後)

 ついに始まった王国と帝国の戦争。
 開幕の一撃を頼まれたアインズ様は、愛娘に与える経験値を稼ぐため、あることを画策するが────


◇開戦────

 

 

「────────ふむ、王国の左翼が動き始めたな。では、始めるとするか」

 

「楽しみです!」[アウ]

 

「わくわく」[マレ]

 

「さてニンブル殿」

 

「はっ!」[ニン]

 

「これから私は予定通り魔法を放つが…………そのことでひとつ注意事項がある」

 

「なんでしょう、魔導王閣下」[ニン]

 

「魔法の効果範囲に君たち帝国兵も含まれるが、害はないので気にしないで欲しいのだ」

 

「そ、それはどういう…………」[ニン]

 

「そのままの意味だよ。私が魔法を発動したら、このカッツェ平野全体が魔法の効果に飲まれることになる。しかし、君たち帝国兵には慌てず騒がず、じっとしていて欲しい。下手にパニックでも起こされてけが人でも出たら、ジルクニフに申し訳ないからな」

 

「…………か、畏まりました。伝令! 全将校に伝えろ! 何が起きてもその場を動くなと! 命令に反するものは厳罰に処すと!」[ニン]

 

「ありがとう、ニンブル殿。これで、心置きなく魔法を使えるというものだ……………………あぁ、楽しみだなぁ。対集団戦で全力を出すのはいったいどれくらいぶりだろうか」

 

「アインズ様の全力は、人間相手にはもったいない気もします」[アウ]

 

「は、はい。でもぼく、すごく楽しみです!」[マレ]

 

「ははは、期待していてくれ二人とも。滅多に見れないものを見せてやるからな」

 

「「はいっ!」」[アウ、マレ]

 

「よし、では、いくぞ────────〈超位幻術空間〉展開!」

 

 

 

◆蹂躙される王国(王国側)────

 

 

「…………なあ、夢だよな。俺は悪い夢を見ているんだよな」[モブ]

 

「…………あぁ、夢だ。夢じゃなきゃありえない。こんな…………こんな…………」[モブ]

 

「いやだぁああああっ! もういやだぁああああっ! もう死にたくない! もう死にたくない!」[モブ]

 

「ひっ、ひいぃひひひひひっ! ひゃぁはははハハハハハハっ!」[モブ]

 

ヤギの声が聞こえるんだ。ヤギの声が追ってくるんだ。どこまでもどこまでもどこまでもどこまでもどこまでもどこまでもどこまでもどこまでも…………」[モブ]

 

「お、俺は死んだ。死んだんだ。でも生きてる。死んだのに、生きてる。でもまた死ぬんだ。何回も、何回も、何回も、何回も死ぬんだ…………」[モブ]

 

「…………地獄だ…………ここは、地獄だ…………なら…………ならこの地獄を作り出したあいつは…………あいつは…………」[モブ]

 

 

 

◆蹂躙される王国(帝国側)────

 

 

「ふむ。やはり〈黒き豊穣への貢(イア・シュブニグラス)〉は見栄えするな。〈失墜する天空(フォールンダウン)〉も綺麗なんだが、あれは単発で終わってしまうし、死体も残らないからな」

 

「あたしは〈現断(リアリティ・スラッシュ)〉でスパーッ! っと数千人が真っ二つになったのが面白かったです!」[アウ]

 

「ぼ、ぼくは〈隕石落下(メテオフォール)〉が楽しかったです。隕石が落ちた周囲の人間が、あっちこっちにポーンと飛んでいくので」[マレ]

 

「あぁーあれもいいよね。なんか水に石ころ投げ込んだ時みたいで」[アウ]

 

「うむ。なんというか、じっと見ていると遠近感がおかしくなるな。手元でミニチュアの人間がちらばっているような感覚になるというか」

 

「そうですそうです! おもちゃで遊んでるみたいな…………って、すいませんアインズ様。アインズ様の魔法なのに…………」[アウ]

 

「構わないとも。それよりどうだ、二人とも。まだ時間もあるし、二人も色々試してみたらどうだ?」

 

「えっ、い、いいんですか?」[アウ]

 

「えっと、その、魔法を使ってもいいんですか?」[マレ]

 

「ああ、もちろんだ。そのためにアウラもマーレも連れてきたのだからな。普段は試せない広範囲魔法とだとか特殊技術(スキル)だとかを、この機会に使ってみるといい」

 

「やったーー! えぇーと、なに使おうかな?」[アウ]

 

「あの…………山とか作ってもいいですか?」[マレ]

 

「いいとも、好きにやってみるといい」

 

「おっ、じゃああたしはマーレの作った山を吹き飛ばして、王国軍の上に落としてやろうかな?」[アウ]

 

「や、やめてよお姉ちゃん…………」[マレ]

 

「……………………(うんうん、二人とも楽しんでるな。連れてきてよかった)」

 

「あ、あの! 魔導王閣下!」[ニン]

 

「ん? どうしたニンブル殿」

 

「こ、これはいったい、なにが起こっているのですか…………?」[ニン]

 

「私の魔法だよ。最初に確認しただろう? どれだけ長くても一撃は一撃ということで構わないか、と」

 

「し、しかし、いったいなにがどうなっているのですか!? 王国軍は…………王国軍はもう何度も全滅している! それなのに、その度に何度も元通りになって…………」[ニン]

 

「幻術空間だよ」

 

「幻…………術?」[ニン]

 

「このカッツェ平野全体が、私の作り出した幻術空間に取り込まれているのだ。この中でなにが起きようと、私の意志しだいで全ては幻に変わる」

 

「ではあれは…………あの惨劇は、幻覚なのですか?」[ニン]

 

「幻覚とは違うな。王国兵が感じている痛みも、死も、全ては現実のものだ。だが、この幻術空間内であれば、私は起きた現実を幻に変えることができる。だからもし私が何もしなければ、彼らの死が覆ることはない」

 

「な、なぜです。なぜそのようなことを…………」[ニン]

 

「なに、最近めでたいことがあってね。せっかくの慶事を人間の血で汚したくなかったのだよ(この方法なら制限時間いっぱいまで経験値を搾り取れるしね)」

 

「血が…………血が流れていない!? この惨状で!? この地獄で!? あなたは悪魔か!?」[ニン]

 

「勘違いしないでくれたまえ、ニンブル殿。私はアンデッドだ」

 

「…………っ」[ニン]

 

「さて、二人は…………おぉ、アウラはベヒモスを召喚したのか。さすがにユグドラシル最大級の魔獣だけあってでかいな。そしてマーレは…………なるほど、地面を勢いよく隆起させて、人間をベヒモスの口に放り込んでいるのか。面白いことを考える。やはり子供の方が遊びの発想が豊かだな。そうは思わないかね、ニンブル殿」

 

「…………はい。全くもって、おっしゃる通りかと」[ニン]

 

「どれ、ではまだ時間もあることだし、私も参加してくるかな」

 

…………陛下…………帝国に未来は…………いえ、人類に未来はあるのでしょうか…………」[ニン]

 

 

 

◆蹂躙される男たち────

 

 

「…………おい、クライム、何回死んだ?」[ブレ]

 

「たぶん…………十回くらいです」[クラ]

 

「はっは…………俺の勝ちだな。俺はまだ一桁だ」[ブレ]

 

「…………俺は二十回くらい死んだ」[ロック]

 

「おいおい…………見えざる(ジ・アンシーイング)の名が泣くぞ? ロックマイヤー」[ブレ]

 

「…………仕方ないだろ。でかい化物の口に放り込まれて、噛み潰されて、生き返ったと思ったらまだ口の中で…………そんなのを何回か繰り返したんだ…………」[ロック]

 

「…………まじか、どんだけ運が悪ぃんだよ」[ブレ]

 

「いつ…………終わるんでしょうね」[クラ]

 

「…………それを言うな、クライム君。死にたくなる…………」[ロック]

 

「ははは…………もう、何回も死んでますけどね…………」[クラ]

 

「…………そういやぁ、だれかガゼフを見たか?」[ブレ]

 

「戦士長殿なら…………なんか黒くてでかいのに吹っ飛ばされてたぞ」[ロック]

 

「あぁ…………あのメーメー言うやつか…………」[ブレ]

 

「あれ…………? モーモーじゃなかったでしたっけ?」[クラ]

 

「…………だいぶやられてるな、クライム。メーだよ、メー。ほら、近づいてきてるぜ」[ブレ]

 

「…………あぁ、こりゃまた死ぬな…………」[ロック]

 

「今度は…………生き返れるでしょうか…………?」[クラ]

 

「…………はっ、やっぱりすげぇな、クライムは。こんだけ殺られて、まだ生き返りたいと思うのか?」[ブレ]

 

「ラナー様が…………待ってますから…………」[クラ]

 

「そんだけ根性があれば…………お姫様だってモノに出来るさ…………頑張れクラ────」[ロック]

 

メェェエエエエエエエエエエッ!! グシャ! メシャ! プチッ!」[仔山羊]

 

 

 

◆戦争終結(帝国側)────

 

 

「────さて、そろそろだな。アウラ、マーレ、幻術空間が解除される。攻撃の手を止めるのだ」

 

「了解です! あ~楽しかった!」[アウ]

 

「こ、こんなにいっぱい魔法を使ったのは、久しぶりです」[マレ]

 

「うむ、私もだ。たまにはこうやって全力を出さないと、そのうち魔法の使い方を忘れてしまうかもな」

 

「この世界、弱っちいやつらばっかりですしね~」[アウ]

 

「まあ、シャルティアを洗脳したやつらもいることだから、油断はできんがな。…………そうだマーレ、『強欲と無欲』にはどれくらい経験値が溜まった?」

 

「は、はい。えと、このくらい、です」[マレ]

 

「どれどれ…………おお、結構溜まったな。やはり一体一体の経験値が少なくても、これだけの数から吸収すればそれなりの量になるようだな」

 

「これでモモル様をお育てするための経験値は十分ですね!」[アウ]

 

「ああ、十分すぎるくらいだ。…………では、私はちょっと王国の知人と会ってくるから、アウラとマーレは周りを警戒しておいてくれ」

 

「畏まりました!」[アウ]

 

「は、はい! アインズ様も、お気をつけて」[マレ]

 

「うむ。では、行ってくる」

 

 

 

◆戦争終結(王国の男たち)────

 

 

「……………………どうやら、終わったようだな」[ガゼ]

 

「ガゼフ! ここにいたか」[ブレ]

 

「ストロノーフ様もご無事で!」[クラ]

 

「ブレインにクライムか…………ふっ、これが無事と言えるならな」[ガゼ]

 

「…………ああ、とんでもねぇ目に遭ったぜ。今無傷なのが、逆に恐ろしい」[ブレ]

 

「はい…………王国の兵にも死傷者はいないようです。ただ…………」[クラ]

 

「心が死んだか…………無理もない。あれは幻などではなく現実だった。私を含め、全ての王国兵は間違いなく死を経験したのだ」[ガゼ]

 

「ああ、俺も何回も死んだ。最初は何が何だか分からなかったが、生き返ったんだと理解した瞬間、不覚にも足が震えたぜ」[ブレ]

 

「…………俺はしばらく立ち上がれませんでした」[クラ]

 

「それでも立ち上がれた自分を誇るといい。この戦争に参加した王国兵は、そのほとんどが再起不能になるだろうからな」[ガゼ]

 

「だろうな。現に周りを見渡してみても、立ち上がっているのはほんの数人だけだ」[ブレ]

 

「あれを経験してしまっては、生きていることのほうが苦痛でしょう。死にたい、死なせてくれという叫びを何度も聞きました」[クラ]

 

「────────死こそ安らぎであると、理解したからだよ」

 

「…………! ゴウン殿…………なるほど、アンデッドだったか」[ガゼ]

 

「あれが…………アインズ・ウール・ゴウン…………」[クラ]

 

「…………とんでもねぇ化物だな」[ブレ]

 

「久しいな、ストロノーフ殿。隣にいる海藻頭と白い鎧は友人かな?」

 

「ええ、ブレイン・アングラウスとクライムといいます。それと、私のことはガゼフと読んでくださって結構です、ゴウン殿」[ガゼ]

 

「そうか、ではガゼフ。単刀直入に私の要件を言おう────────私の部下になれ」

 

「…………!」[ガゼ]

 

「なっ!」[ブレ]

 

「ス、ストロノーフ様を、部下に…………?」[クラ]

 

「ヘッドハンティングというやつだ。武技の扱いに長けた人物を探していてな、王国戦士長であるお前なら申し分ない」

 

「…………ありがたい申し出だが、断らせて貰おう」[ガゼ]

 

「ははは、そう言うと思っていたよ。────だが、その見返りがお前の王を正常な状態に戻すことだとしても断るかね?」

 

「…………! そ、それはどういうことだ!?」[ガゼ]

 

「お前たちも経験しただろう、『死』を。死は恐怖であり、絶望だ。だが先程も言ったように安らぎでもある。死を経験して、その安息から逃れられる者は数少ないのだよ。

 お前たちのように強い心を持った戦士であれば、その誘惑を振り切れるかもしれん。だが、お前たちの王はそうではなかったようだ」

 

「王は…………王はどうなったのだ!」[ガゼ]

 

「狂った」

 

「「!!!」」[ガゼ、ブレ、クラ]

 

「先ほど様子を見てきたが、もはや人間の言葉を発してはいなかったぞ? 笑ったり泣いたりわめき散らしたり…………ああ、糞尿も垂れ流していたな。見るに耐えなかったので眠らせておいたよ」

 

「それは…………本当なのだろうな」[ガゼ]

 

「疑われるとは悲しいな。では、ここに連れてきてやろうか?」

 

「いや…………いい。あなたの言うことだ、事実なのだろう」[ガゼ]

 

「無論だ。営ぎょ…………交渉で大事なのは、嘘をつかないことだからな。だからもちろん、狂った王を元の正常な状態に戻すことができるというのも本当のことだ」

 

「そう…………か」[ガゼ]

 

「お、おいガゼフ…………」[ブレ]

 

「ス、ストロノーフ様…………」[クラ]

 

「……………………分かった、あなたの部下になろう。ゴウン殿」[ガゼ]

 

「「…………!!」」[ブレ、クラ]

 

「ただ、二つだけ聞いて欲しい頼みがある」[ガゼ]

 

「ほう…………王を正気に戻すだけでは足りないか。欲張るじゃないか、ガゼフ・ストロノーフ」

 

「聞き届けて貰えるのならば、忠誠を誓うと約束しよう」[ガゼ]

 

「そうでなければ部下にはならないというわけか…………いいだろう、言ってみるがいい。ただ、あまりにもだいそれた願いは私を不快にさせるぞ?」

 

「…………ああ、分かっている。一つ目の頼みは、私の装備をここにいる二人に渡す事を許して欲しいということだ。これは王国の至宝で、私は借り受けているに過ぎないからな」[ガゼ]

 

「構わないとも。お前の身ひとつあればそれで十分だ」

 

「ま、待てよガゼフ! 行くなら俺も連れて行ってくれ!」[ブレ]

 

「ブ、ブレインさん!?」[クラ]

 

「なあ、アインズ…………殿! 俺だってちょっとは名の知れた武技の使い手! 部下にして損はないはずだ!」[ブレ]

 

「ふむ…………私としては一向に構わないが────」

 

「ブレイン・アングラウス! お前には私の命とも言える武具を託したのだ! その頼みを…………友の頼みを聞いてはくれないのか?」[ガゼ]

 

「…………っ!」[ブレ]

 

「…………どうやら決まったようだな。それで? 二つ目はなんだ」

 

「二つ目は、私の剣を王国やその民に向けさせないで欲しい」[ガゼ]

 

「…………いいだろう。ただし、それはお前個人に対してだけの約束だ。もし王国が今後も私に敵対するというなら、私やお前以外の部下によって死を与えることを躊躇いはしない」

 

「ゴウン殿から戦を仕掛けることは?」[ガゼ]

 

「積極的に滅ぼすようなことはしないさ。ついでだからそれも約束してやろう。王国側が私に剣を向けない限り、私が王国やその民を傷つけるようなことはしないと」

 

「…………感謝する」[ガゼ]

 

「うむ。では行こうか、ガゼフ。装備をその二人に渡すといい」

 

「ああ…………ガチャガチャ…………ブレイン、クライム、これを頼む」[ガゼ]

 

「…………」[ブレ]

 

「────ブレインさん、ストロノーフ様の願いです」[クラ]

 

「…………ああ、分かっている。なあアインズ殿、俺からひとつだけ頼みごとをしてもいいか?」[ブレ]

 

「お前の頼みを聞く義理はないが…………まあいいだろう、言うだけ言ってみるがいい」

 

「もし王国と戦うことになったら、俺とガゼフに一騎打ちをさせてくれ」[ブレ]

 

「ブレインさん!?」[クラ]

 

「ふむ、それはガゼフの『王国の民に剣を向けさせないでくれ』という願いに反するが?」

 

「…………ゴウン殿、何度も我が儘を言って申し訳ないが、彼だけは例外ということにさせてくれないだろうか」[ガゼ]

 

「ストロノーフ様まで! なぜ、そのようなことを…………!」[クラ]

 

「…………なるほど。ガゼフがいいと言うなら、私に異論はないさ。もし王国と戦うことになったら、お前とガゼフに一騎打ちをする機会を与えると約束しよう」

 

「感謝する、ゴウン殿」[ガゼ]

 

「ああ、感謝するぜ。さ、もう思い残すことはない、行っちまえよガゼフ」[ブレ]

 

「ふふ…………せいぜい、お前の壁になれるよう努力するさ」[ガゼ]

 

「ぬかせ。すぐに叩っ切ってやる」[ブレ]

 

「ストロノーフ様…………ブレインさん…………」[クラ]

 

「…………(男の友情か…………俺もやったなぁ、ロールだけど)」

 

「では行こうか、ゴウン殿」[ガゼ]

 

「あ、ああ、うむ…………ワカメヘアーよ、王は正気に戻しておくから、後で伝えるがいい。近日中にエ・ランテルを引き渡せと。もちろん、抵抗するようなら敵対する意思があるものと判断する、ともな」

 

「ああ、分かった。伝えておく」[ブレ]

 

「よし。では────〈上位転移(グレーター・テレポーテーション)〉」

 

「……………………消えた、か」[ブレ]

 

「…………行ってしまわれましたね」[クラ]

 

「クライム、この武具は、俺が持って行ってもいいか?」[ブレ]

 

「…………はい、お任せします」[クラ]

 

 

 

◆戦後(帝国)────

 

 

「────────あの化物は、本当に恐ろしいな」[ジル]

 

「ええ、予想以上ですよ。一撃でどれだけの被害を出せるのか…………俺は多くても五千と踏んでいましたが、まさか何度も全滅させるなんて芸当をやってのけるとは、思いもしませんでしたぜ」[バジ]

 

「そうではない。ヤツの最も恐ろしいところは、最後に復活させたままにしたことだ」[ジル]

 

「そりゃあなんでです? 全部死んだままにするよりは被害が少ないでしょうに」[バジ]

 

「それは違う。死んでしまったのなら、カッツェ平野に埋めるなり燃やすなりしていしまえばいい。だが、生きている以上は連れ帰らなければならないのだ。

 考えても見ろ、これから王国は、二十万近い寝たきりの人間や狂人を、それらが死ぬまで養わなければならなくなったのだぞ?

 それに掛かる時間、費用、労力がいったいどれほどのものになるか…………」[ジル]

 

「ま、まさか、そのために一人も殺さなかったっていうんですかい!?」[バジ]

 

「そうだ、それ以外には考えられない。王国はすでに腐っていたが、その上さらに内側に毒を仕込まれたようなものだ。もう、長くは持つまい」[ジル]

 

「なんで…………なんであの化物はそこまで手の込んだことをするんです? あれだけの力があるなら、単純に攻めるなりなんなりしたほうが簡単でしょうが」[バジ]

 

「それは────────」[ジル]

 

 

 

◆戦後(ナザリック)────

 

 

「────つまり、アインズ様は王国という朽ちかけた大樹の隣に魔導国という新しい木を植えることで、自発的に住民が移り住むよう仕向けたのですよ」[デミ]

 

「それは、王国を力で乗っ取るのと何が違うんでありんすかえ?」[シャル]

 

住処(すみか)を奪われれば、どれだけ愚かな獣でも不満を抱きます。ですが、自ら移り住んだのであれば新しい住処を愛しく思う…………」[デミ]

 

「廃墟の国を支配するつもりはない。アインズ様はその言を実行されているのよ。まさに神の如き智謀だわ」[アル]

 

「ナルホドナ。今ノ王国ノ経済状況デハ、戦後ノ処理ヲスルコトスラママナラナイ。追イ詰メラレ、不満ヲ抱イタ民ハ自ラノ意思デ王国ヲ捨テル、トイウコトカ」[コキュ]

 

「理解が早いね、コキュートス。まさにその通りだよ」[デミ]

 

「そしてアインズ様は、エ・ランテル改めアインズ・ウール・ゴウン魔導国という楽園を築かれる。全ての者がアインズ様の元に(かしず)く、永遠の理想郷をね」[アル]

 

「理解しんした。王国を捨てた人間どもは、光に導かれる蛾のようにアインズ様の国に集まって来る、ということでありんすね?」[シャル]

 

「集まって来るのは蛾というよりも、這いずる蛆虫だけどね」[アル]

 

「まあいいではありませんか。魔導国では、蛆虫もゴブリンもみな等しくアインズ様の下僕です。もちろん、私たち真の下僕とは比べるべくもありませんがね」[デミ]

 

「当然ダ。至高ノ方々ニヨッテ生ミ出サレタ者ト、ソレ以外ノ者ハ決シテ同格デハナイ」[コキュ]

 

「当たり前のことを言わないでくんなまし。デミウルゴス」[シャル]

 

「ふふふ、このナザリックにも新顔が増えたから、一応ね」[デミ]

 

「そういえば、アインズ様が新しく武技の扱いに長けた者を連れてこられるのよね?」[アル]

 

「ああ、王国の戦士長だね」[デミ]

 

「強いんでありんすか?」[シャル]

 

「人間の中ではね。吸血鬼の眷属化すれば、ハムスケと同等くらいにはなるんじゃないかと予想しているよ」[デミ]

 

「眷属化してハムスケと同等でありんすか…………つまり雑魚ってことかえ?」[シャル]

 

「そう言ってしまえば身も蓋もないが、まあそうだね。ただし、扱える武技の数はザリュースやヘッケランに比べて格段に多いはずだ。それに、戦士長という役職柄、指導にも慣れているだろう」[デミ]

 

「ソレナリニ重要ナ存在、トイウコトカ」[コキュ]

 

「そうだね。重要度で言えば、ポーション作りをさせているンフィーレアと同じくらいといったところかな」[デミ]

 

「あまり換えのきかない存在ということね、わかったわ。────────あぁ、それにしても、王国軍(ウジムシ)を薙ぎ払うアインズ様のお姿は素敵だったわぁ…………♡」[アル]

 

「アウラやマーレが羨ましいでありんす…………アインズ様と一緒に、あんなに楽しそうに…………」[シャル]

 

「まあ、近いうちシャルティアにも機会があるさ。さて、じゃあ私は仕事に戻るとするよ」[デミ]

 

「今ハ聖王国デ暗躍シテイルノダッタカ?」[コキュ]

 

「そうだよ。まあ任せておいてくれたまえ、次も楽しいことになりそうだ────────」[デミ]

 

 

 

◆戦後(王国)────

 

 

「────────ブレインさん、こんなところにいたんですか」[クラ]

 

「…………クライムにロックマイヤーか。いつもの面子(メンツ)が揃ったな」[ブレ]

 

「不景気な顔をしてるな、ブレイン」[ロック]

 

「へっ、仕方ないだろ。それに、あの戦争に行った奴らの中じゃマシなほうだと思うぜ?」[ブレ]

 

「違いない。レエブン侯も、息子の顔を見るまで放心状態だったからな。まあ息子の顔を見たら見たで、今度は大声で泣き始めたけどよ」[ロック]

 

「…………それでも随分マシな方ですよ。ほとんどの人は、もうまともに話すことすらできない状態なんですから」[クラ]

 

「ああ、無理もない。俺も思い返すたび震えが来るくらいだ」[ブレ]

 

「俺もです」[クラ]

 

「…………それですんでるお前ら二人はすごいよ。それにあの後、魔導王と対峙したんだろ?」[ロック]

 

「ああ」[ブレ]

 

「…………どうだった?」[ロック]

 

「死だ」[ブレ]

 

「…………」[クラ]

 

「あれは、勝つとか負けるとか、そういう次元の相手じゃない。死そのものだった」[ブレ]

 

「…………そうか」[ロック]

 

「生きた証を刻み付けるなんて言ってた自分が恥ずかしいぜ。月に向かって剣を振るようなもんだ。届くはずがない」[ブレ]

 

「…………髪もありませんでしたしね」[クラ]

 

「はっ…………はっはっは! 言うじゃないかクライム! その通りだ、骸骨に髪はない! どだい髪切りは無理な話だったぜ!」[ブレ]

 

「…………ほんと、お前らはすごいよ。あの地獄を作り出した存在を笑い話のネタに出来るんだからな…………それで、ブレイン。お前はどうするんだ?」[ロック]

 

「あぁ~…………笑った。ん、俺か? 俺はあいつと約束しちまったからな。姫さんの直属として働きながら剣の腕を磨くことにしたよ。お前は?」[ブレ]

 

「俺は…………どうするかな。レエブン侯は再起不能っぽいし…………冒険者に戻るのもなんだしな」[ロック]

 

「なら、俺たちと働きましょう。ロックマイヤーさん」[クラ]

 

「クライム君…………」[ロック]

 

「そうしろ、ロックマイヤー。なに、大した仕事があるわけじゃない。姫さんの周りをブラブラしてりゃいいのさ」[ブレ]

 

「いや、ブレインさん、それはちょっと…………」[クラ]

 

「冗談だよ。ま、護衛兼小間使いみたいなもんだ。それに、お前はクライムに約束してただろ? 姫さんとの仲を応援するって」[ブレ]

 

「…………ふっ、そういやそうだったな」[ロック]

 

「ちょ、ブレインさん!」[クラ]

 

「そういう訳だから────力を貸せ、ロックマイヤー。お前がいれば心強い」[ブレ]

 

「…………しかたねぇな、付き合ってやるよ。おい、クライム君、姫様との仲は応援してやるから、俺には可愛いメイドさんを紹介してくれ」[ロック]

 

「はぁ…………分かりましたよ。ちなみに、ロックマイヤーさんが童貞なら、すぐ紹介できる方がひとりいるんですが」[クラ]

 

「おいおい、そりゃガガーランだろ? 勘弁してくれ」[ロック]

 

「くくく…………っ、ほんと、いい性格になってきたな、クライム」[ブレ]

 

「だとしたら、間違いなくお二人の影響でしょうね」[クラ]

 

「はははっ! 違いない! よーし、クライム君、ブレイン、飲みに行くか!」[ロック]

 

「よし、行くか! クライム、酒は飲めるか!?」[ブレ]

 

「はい! あまり飲んだことはありませんが、今日は飲みましょう!」[クラ]

 

「いい返事だ! 最初に潰れたやつの奢りだからな!」[ブレ]

 

「よしきた! オリハルコン級の飲みっぷりを見せてやるぜ!」[ロック]

 

「いや、それ明らかに俺に奢らせるつもりですよね!?」[クラ]

 

「男が細かいことを気にするな、クライム!」[ブレ]

 

「そうだぞ、クライム君! みみっちい男はモテないんだ! 非童貞の俺が保証してやる!」[ロック]

 

「はぁ…………分かりましたよ。部屋に戻って金を足してきますから、先に酒場に行っててください」[クラ]

 

「おう! 先に飲んでるから、クライムは特別に途中参加したところからのカウントでいいぞ!」[ブレ]

 

「じゃあ、ブレインと先に行ってるからな~!」[ロック]

 

「分かりました! 後からすぐに行きます! ────────ふぅ…………ラナー様、俺は死からあなたを守ることが出来るでしょうか…………」[クラ]

 




 帝国編終わりました。

 次はなんだっけ? それぞれの国の内政編?

 う~ん、アインズ様が武王をボコってるイメージしかない。

 また読み直すか…………


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モモンガ様、魔導国で自重せず(前)

 自らの国を手に入れたアインズ様。
 王となったアインズ様は、今日も朝早くから仕事を始めるが────


◇アインズ・ウール・ゴウン魔導国の朝────

 

 

「────アインズ様、本日のお召し物はどのようにいたしましょうか?」[フィー]

 

「うむ、フィースに任せる」

 

「畏まりました、アインズ様! 全身全霊を尽くして選ばせていただきます!」[フィー]

 

「頼んだわよ、フィース。モモ…………アインズ様の威厳を損なわないコーディネートを期待するわ」[アル]

 

「お任せ下さい、アルベド様! そうですね…………昨日はアインズ様のお力を象徴するような黒のお召し物でしたし、本日はアインズ様の愛を象徴する赤のお召し物などいかがでしょう?」[フィー]

 

「情熱の赤…………いいわね。だとすると、ネックレスの宝石はガーネット…………いえ、それだと赤がかぶってしまうわね」[アル]

 

「あっ、ペリドットなどいかがでしょう!? これならお召し物にも合うと思いますが!」[フィー]

 

「宝石言葉は『夫婦の幸福』に『輝かしい未来』だったかしら。いいわね、ナイスなチョイスよ、フィース」[アル]

 

「ありがとうございます! ベルトはやはり黒、バングルにはダイヤモンドをあしらったものを…………」[フィー]

 

「カフスはバラの花を模したものなんか素敵よね。それとストールは…………」[アル]

 

「…………(うん、完全に着せ替え人形だな)」

 

 

 

◇アインズ・ウール・ゴウン魔導国の仕事(午前の部)────

 

 

「────それで、法律の方はどうなっている?」

 

「はい、デミウルゴスやパンドラズアクターと話を詰めております。

 モモンガ様が絶対的な権力と決定権を持つというのを国法の第一章に置いてありますが、それ以外の基本的な部分はもともと王国で施行されていたものと大差ありません。

 今後様々な種族を迎え入れ、共同生活を送る中で随時変更して行けばよろしいかと」[アル]

 

「うむ、それでいいだろう。…………では次に、いつものやつをやるとするか。今日の分はこれだけだな」

 

「毎回かなりの数が入っておりますね」[アル]

 

「うむ。どのような意見や要望でも構わないから、思いついたものがあれば書いて投書するように通達してあるからな」

 

「毎回読み上げていただいて申し訳ありません」[アル]

 

「なに、構わないさ。皆が私に上げてくれた意見だ。私が読むのが当然のことだろう(俺の書いたやつも時々混ぜてるし、アルベドに読ませるわけにはいかないからな)」

 

「うふふ、それを皆に伝えたら、投書の数がさらに増えると思いますわ」[アル]

 

「そういう理由で入れては欲しくないのだがな…………まあ、それも皆とのコミュニケーションだと思えばいいか…………では、読み上げていくぞ」

 

「はい、お願いします」[アル]

 

「一つ目はこれだ。『食堂のメニューに、生きた人間を追加して欲しいです』」

 

「…………」[アル]

 

「…………エントマか、ソリュシャンだろうな」

 

「はい、おそらくは」[アル]

 

「うむ、却下だ。別に生きた人間を食べるのは構わないが、食堂のメニューに『人間』と書いてあるのもどうかと思うし、そもそもこれは料理じゃないしな」

 

「では、これは没の箱に入れておきます」[アル]

 

「うむ。では次だ『週に一度…………いえ、月に一度でいいので、アインズ様とお散歩したいっす!』」

 

「…………ルプスレギナですわね」[アル]

 

「文章として書くときもあの口調なのか? 匿名にならないだろ、これじゃ」

 

「まあ、内容が内容ですし、普通の文体だったとしても誰が書いたのかは分かったと思いますが…………」[アル]

 

「そうだな。で、散歩か…………犬や狼系の特徴を持つ者は、やはりこういう欲求があるものなのか?」

 

「その辺りの話を詳しく聞いたことはありませんが…………」[アル]

 

「今度聞いてみるか…………じゃあ、これは一応保留だな」

 

「はい、保留の箱に入れておきます」[アル]

 

「次、『…………パフェのレパートリーを増やしてほしい』」

 

「シズですわね」[アル]

 

「…………なんか、誰が書いたのか当てるクイズみたいになってきてるな」

 

「『…………』の部分で分かりました」[アル]

 

「そこを書く意味が分からん。喋ってない部分をあえて書く必要はないだろう?」

 

「シズのアイデンティティーですから」[アル]

 

「そうか、うむ、深い…………のか? まあいい、これは採用でもかまわないだろう」

 

「では採用の箱に」[アル]

 

「次は…………なんだかみっちり書いてあるな。『ご機嫌麗しゅう、アインズ様。さて、この度筆を取らせていただきましたのは、不敬ながら嘆願の儀あってのこと。実は、我が朋友たるコキュートス殿が爺という大役を仰せつかり、意気軒昂たる様子。そこで、ささやかながら贈り物をしたいと考えているのでありますが、残念なことに我輩も我輩の眷属も、贈るべきものも持ち合わせておりません。そこで、我輩が考案したマジックアイテムの作成をパンドラズアクター殿に依頼したく、その許可を頂ければこの上なき幸せにございます。

 では、略儀ながら書中にて嘆願せし無礼をお詫び申し上げます。 恐怖公』」

 

「…………名前、書いてあるのですね」[アル]

 

「ああ、書いてある。そしてもの凄く字が綺麗だ」

 

「あの手で、どうやって書いているのでしょうか…………」[アル]

 

「手というか、前足だがな。…………まあいい、これは私が後で直接話をしよう」

 

「お願いいたします」[アル]

 

「さて次は…………『好き好きアインズ様♡ 夜のご奉仕技術向上講座に、特別講師として参加していただけないでしょうか♡』?」

 

「…………♡」[アル]

 

「アルベド…………お前だな?」

 

「まあ、モモンガ様。それをお尋ねになるのはルール違反ですわ♡」[アル]

 

「…………ほ、保留とする」

 

「はい♡ モモンガ様♡」[アル]

 

「…………コホン。では次を…………」

 

「コン、コン────」[ノックする音]

 

「ん? 誰だ?」

 

「────────モモル様がいらっしゃいました」[フィー]

 

「モモルが? 今の時間は保育園にいるはずだが…………」

 

「ニグレド様もご一緒です」[フィー]

 

「ニグレドも? …………まあいい、通してくれ」

 

「はっ、畏まりました」[フィー]

 

「────────とうさまー」[モモ]

 

「おっと、ははは、どうしたモモル」

 

「おひざにのせてー」[モモ]

 

「ああ、もちろんいいとも。さ、おいで」

 

「えへへー」[モモ]

 

「お仕事中に失礼いたします、アインズ様」[ニグ]

 

「いや、構わないのだが…………今日はどうしたのだ、ニグレド」

 

「あら、アインズ様にご説明してないの? アルベド」[ニグ]

 

「うふふ、サプライズのほうがいいかと思って」[ニグ]

 

「全くあなたは…………」[ニグ]

 

「? なんなのだ?」

 

「あのねー、きょうはねー、とうさまのおしごとをみるひなのー」[モモ]

 

「仕事を見る? …………職場見学みたいなものか?」

 

「はい。モモル様にもアインズ様の働かれるお姿を見ていただこうと、アルベドと話し合いまして…………」[ニグ]

 

「…………なるほどな。だが、このように抜き打ちみたいなやり方でなくてもよかったのではないか?」

 

「うふふ、申し訳ありませんアインズ様。ですが、いついかなる時でもアインズ様は素敵ですので、問題ありませんわ」[アル]

 

「とうさま、すてきー」[モモ]

 

「…………ふぅ、まあいい。で、どうするのだ? このまま続ければいいのか?」

 

「はい、お願いいたします。せっかくだから姉さんも一緒にどう?」[アル]

 

「よろしいでしょうか、アインズ様?」[ニグ]

 

「…………ああ、構わないとも。こほん、では、次の投書を読むぞ。『モモル様はこの世の何よりもお可愛らしいですが、私もアインズ様とのお子がほしいです』」

 

「…………」[ニグ]

 

「まあ、これ姉さんでしょ。もう、私に言ってくれればいいのに♡」[アル]

 

「えへへ、ほめられちゃった」[モモ]

 

「あー…………んんっ! そうだな、うむ、努力しよう」

 

「良かったわね、姉さん♡」[アル]

 

「…………///」[ニグ]

 

「つ、次だ、次! えーと、『現在魔導国でアインズ様がご使用になっておられる館の増改築をご提案させていただきます。アインズ様のご威光を示すためには、現在の景観、内装では不十分。さらに、将来的にいくつもの種族、国家を従えていくことを考えますと、広さにおいても十分とは言えません。なぜなら────』」

 

「デミウルゴスですわね」[アル]

 

「デミウルゴスさんですね」[ニグ]

 

「でみでみだ」[モモ]

 

「ああ、デミウルゴスだろうな…………でみでみ?」

 

「でみでみー」[モモ]

 

「…………アルベド、モモルはデミウルゴスのことをでみでみと呼んでいるのか?」

 

「はい、どうも『ウルゴス』の部分が言いづらいみたいです。発音に苦しんでいるモモルに、デミウルゴス自身がでみでみとお呼びくださいと申しておりましたわ」[アル]

 

「…………そ、そうか、デミウルゴス自身がな…………」

 

「ちなみにアウラは『あうら』、マーレは『まーれ』、シャルティアは『しゃる』、コキュートスは『じい』、セバスは『じいじ』、ビクティムは『ぴんく』、姉さんは『えんちょ』、ペストーニャは『わんこ』、パンドラズアクターは『たまご』と呼ばれております」[アル]

 

「……………………(パンドラズアクター…………お前、妹からたまごって呼ばれてるのか…………)」

 

「アインズ様?」[アル]

 

「とうさまー?」[モモ]

 

「あ、いや、何でもない。とりあえず、デミウルゴスの投書は保留の箱に入れておけ。後でアルベドも交えた上で話し合うことにしよう」

 

「畏まりました」[アル]

 

「では次、『保育園で使用する玩具や遊具があれば良いと思います。危険性のないマジックアイテムなどがあれば、それをいくつかいただけないでしょうか。あ、わん』」

 

「さいよーします!」[モモ]

 

「こら、モモル。お父様のお仕事を邪魔しないの」[アル]

 

「ははは、よい、アルベド。私もこの意見には賛成だ、採用の箱に入れておいてくれ」

 

「畏まりました。良かったわね、モモル」[アル]

 

「とうさま、ありがとう!」[モモ]

 

「うむ、ペストーニャにも後でお礼を言っておくのだぞ?」

 

「はい! わんこ、あたまなでてあげると、よろこぶ!」[モモ]

 

「…………やっぱり、犬系はそうなのか。じゃあ、散歩の件も本気で考えてやらないとな…………」

 

「アインズ様、首輪とリードでしたら、私が質の良いものを持っていますわ」[アル]

 

「…………なぜそれを持っているのかは聞かないでおこう。次だ…………今日はこれで最後だな、『モモル様はいつも可愛らしい洋服を着ておられますが、たまには和服なども着てみたらいかがでしょう。とてもお似合いになると思うのですが』」

 

「あら、私はよい意見だと思いますが…………誰が書いたのかしら?」[アル]

 

「和服といえばエントマかしら…………でもそれにしては文体が硬いですね。アインズ様、どのような文字なのでしょうか」[ニグ]

 

「いや、別に誰が書いたかを当てる必要はないのだが…………そうだな、角ばった字というか、全体的にきっちりとした字体だな」

 

「ユリ? ナーベラル? でもあの二人が和服を勧めるようなイメージはないのよね…………」[アウ]

 

「じい!」[モモ]

 

「ん?」

 

「じい、かたい! かくばってる!」[モモ]

 

「まあ、確かにコキュートスは外骨格だから硬いしゴツゴツしてるが…………いや、そうか。文字だから分かりづらいが、コキュートスが書いたのだとしたら納得だな」

 

「ああ、言われてみればそうですわね。コキュートスは武人気質ですし、創造主であらせられる武人建御雷様もサムライ。和服を勧めるのも納得ですわ」[アル]

 

「そういえば、コキュートスさんの親衛隊である雪女郎(フロストヴァージン)たちが言ってたわ。最近、コキュートスさんが着付けの仕方とか脱がせ方を聞いてくるって。私、てっきり雪女郎の誰かに手を出すつもりなのかと思ってたんだけど…………」[ニグ]

 

「コキュートス…………(なぜよりにもよって雪女郎にそんなこと聞いた…………)」

 

「…………なんか、変態っぽいですわね」[アル]

 

「じい、へんたい?」[モモ]

 

「モモル、コキュートスにはその言葉を言っちゃダメだぞ? 意外と傷つきやすいからな?」

 

「はい! いいません!」[モモ]

 

「よし、いい子だ」

 

「えへへー」[モモ]

 

「アルベド、その投書は採用するが、コキュートスには私から言っておこう。絶対に雪女郎で練習するなと」

 

「かしこまりました。よろしくお願いいたします、アインズ様」[アル]

 

「よし、では午前中の仕事はこれで終わりだな。アルベド、他に何かあるか?」

 

「はい、ひとつアインズ様にご許可を頂きたいことがあるのですが…………」[アル]

 

「ん? なんだ、言ってみるがいい」

 

「人間の王と交渉する人員の選定なのですが、敗戦国である王国に正妃の私が行くわけにもまいりませんし、かと言ってメイドや執事を送るわけにもまいりません。

 ですので、適当な役職を作ってパンドラズアクターを就任させ、なにかに変身させたうえで交渉に送り出そうと思うのですが、よろしいでしょうか?」[アル]

 

「うむ、それは構わないが…………何に変身させる?」

 

「それなのですが、ナーベラルのように人間を模したオリジナルの姿がよろしいかと」[アル]

 

「ふむ…………一応聞こうか。なぜだ?」

 

「すでに恐怖と絶望はアインズ様が与えておりますので、次はある程度安心させる必要があるかと。であれば、やはり人間の姿をしているのが最も効果的ではないかと思いましたので」[アル]

 

「…………なるほどな。いや、私の予想通りだ。では姿については、午後にパンドラズアクターと会う予定もあるので、私が話を詰めておこう。役職はもう決まっているのか?」

 

「相応の地位が必要ですので、元帥(げんすい)号がよろしいかと」[アル]

 

「元帥か…………守護者統括がその上の大元帥にあたると考えると、単純に元帥と名乗らせるわけにもいかないな。だがナザリックには陸海空軍があるわけでもないし、なに元帥と呼称すべきか…………」

 

「たまごげんすい!」[モモ]

 

「…………なんかそれだと卵雑炊みたいだな」

 

「魔軍元帥、などどうでしょう?」[ニグ]

 

「…………魔軍元帥か…………魔軍元帥パンドラズアクター…………ふむ、なかなかいいじゃないか、それにしよう」

 

「畏まりました。では、パンドラズアクターは本日を持ってナザリック魔軍元帥に就任。全ての者にその旨通達しておきます」[アル]

 

「うむ、まかせた。ではそろそろ休憩とするか。食事を取る者は取ってくるとよい。私は一旦自室に戻るとしよう」

 

「とうさまー、ごほんよんでー」[モモ]

 

「ん? ああ、もちろんいいぞ、モモル。なにを読んで欲しいんだ?」

 

「どぐら・まぐらがいいー」[モモ]

 

「……………………あー、別のにしないか? ほら、その本だと長いから、休憩中に読みきれないだろ? もっとこう、絵の多いやつとかどうだ?」

 

「えー…………じゃあどうしようかなー…………」[モモ]

 

「モモル様、後で私が『ヴォイニッチ手稿』を読んでさしあげますから、アインズ様には絵本でも読んでいただいたらどうです? 『ギャシュリークラムのちびっ子たち』なんて面白いと思いますが」[ニグ]

 

「あ、ああ、そうだな。それがいいだろう(どんな絵本が知らないけど)」

 

「わーい、ありがとう、とうさまー」[モモ]

 

「ははは、よし、では図書室に本を借りに行くか」

 

 

 

◇アインズ・ウール・ゴウン魔導国の仕事(アインズ様と息子)────

 

 

「……………………(なんだ、あの夢に出てきそうな絵本は…………いや、俺は眠らないんだけどさ…………)」

 

「どうかされましたか? 父上」[パン]

 

「…………いや、なんでもない。さて、お前にいくつか確認しておくことがあるのだが…………まずは最近のモモンとしての活動を聞こうか。なにか問題はあるか?」

 

「いえ、特にはございません。父上に対して不敬な発言をする者を思わず切り殺しそうになりますが、なんとか堪えております」[パン]

 

「うむ、よく堪えた。一応我が国の国民だからな、そう簡単に殺してはいかん」

 

「はっ! ですが、顔、名前、住居など全て記憶しておりますので、父上のお許しがあればいつなりと始末することができます!」[パン]

 

「…………そ、そうか。ではまあ、機会があればな…………で、次だが、お前が魔軍元帥に就任したことはもう知っているな?」

 

「はい! 栄誉ある職に任官いただき、感謝の言葉もございません!」[パン]

 

「うむ。それで、お前の魔軍元帥としての姿を作る必要があるのだが、できるだけ魅力的かつ威厳ある姿にして欲しいのだ」

 

「それですと、父上と同じ姿になってしまいますが?」[パン]

 

「そう言ってくれるのは嬉しいが、人間の姿でだ」

 

「人間…………でございますか。ですが、どのような姿の人間に魅力や威厳があるのか、私には分からないのですが…………」[パン]

 

「まあそうだろうと思ってな、私の方でいくつかの候補を用意してきた。その中からパーツを組み合わせていって、理想的な外見を作ろうと思うのだが、よいか?」

 

「もちろん、私に異論などございません!」[パン]

 

「では、遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)に映していくぞ────まずは、これだ」

 

「これは…………帝国の皇帝ですか」[パン]

 

「そうだ、人間の指導者の中でもとりわけ高いカリスマを持つ存在として知られている。私たちから見れば線の細い優男にすぎないが、人間から見れば非常に整った外見の男だと言えるだろう」

 

「なるほど…………この目の下の隈や眉間のシワも、人間から見れば魅力的なのでしょうか?」[パン]

 

「…………いや、これはただ単純に疲れているんだろうな。一国の元首なのだ、仕事も悩みも多いだろう。では、次を映そう」

 

「ふむ、これはつい最近父上がスカウトされた、人間の武技教官でしたな」[パン]

 

「ガゼフ・ストロノーフ────王国の戦士長をやっていた男だ。先ほどのジルクニフとは打って変わり、無骨な外見をしている。だが、この男も部下や市民からは絶大な信頼を得ていた」

 

「太い眉に頑丈そうな顎。確かに先ほどの皇帝とは真逆ですな」[パン]

 

「そして最後はこれだ」

 

「おや? これは執事のセバス殿ではありませんか」[パン]

 

「そうだ。私が知っている人間の姿をした者の中で、最も威厳と魅力を兼ね備えた存在だ」

 

「セバス殿であれば納得ですな」[パン]

 

「ああ。実際、人間の街に潜入しているときはかなりモテていたとソリュシャンから報告を受けている」

 

「…………で、父上。誰のどのパーツを使えばよいでしょうか?」[パン]

 

「体はセバスのものをそのまま使おう。逞しく、均整も取れているし、セバスの能力の八割ならこの世界の者に不覚を取ることもないだろうからな」

 

「なるほど。セバス殿に変身し、顔だけを別のものに変えるということですな?」[パン]

 

「そういうことだ。で、肝心の顔の部分だが…………そうだな、顔の形はジルクニフを基準にしようか。眉や鼻筋などもジルクニフに合わせ、貴公子然とした雰囲気にしよう」

 

「畏まりました。目はどういたします?」[パン]

 

「目はガゼフだな。力のある目だ」

 

「では口元はセバス殿ですな」[パン]

 

「ヒゲはいらんぞ? 貴公子だからな」

 

「畏まりました。声や立ち振る舞いはどういたしましょうか?」[パン]

 

「それはお前だ、パンドラズアクター」

 

「は?」[パン]

 

「お前には今まで、いくつもの演技をさせてきた。だが、魔軍元帥として働くのは他の誰でもない、お前自身なのだ、パンドラズアクター」

 

「ち、父上…………」[パン]

 

「姿形こそ目的に合わせて作り変えはするが、今回は私が唯一創造した存在として────我が息子として、その力を振るってくれ」

 

「あ、あぁぁ…………ち、父上ぇっ!!」

 

「ははは、そんな泣き虫では妹に笑われてしまうぞ? さ、調整も必要だろうから、早速変身後の姿を作っていくとしよう」

 

「は、はい! お任せ下さい、父上!」[パン]

 

 

 

◇アインズ・ウール・ゴウン魔導国の仕事(冒険者組合)────

 

 

「────というわけだ、アインザック。私は冒険者たちが、真の冒険者として働ける環境をつくろうと思っている」

 

「…………正直に申し上げて、非常に魅力的なご提案です」[アイン]

 

「それともう一つある。私はこのアインズ・ウール・ゴウン魔導国では、医療に関して金を取らないつもりだ」

 

「そ、それは一体どういうことなのでしょう?」[アイン]

 

「言ったままの意味だよ。私は無料の治療院を作る。そして、我が国に籍を置く者は、その種族や身分に関わらず、等しくその治療院を利用する権利を有するのだ」

 

「そ、そんなことをすれば、神殿が黙っていません! 最悪の場合、背後にあるローブル聖王国やスレイン法国との戦争になることも考えられます!」[アイン]

 

「その程度のことを、私が予想していないとでも思うのかね?」

 

「い、いえ失礼いたしました、魔導王陛下…………ですが」[アイン]

 

「私はただ、自国の民が平穏に暮らすことのできる施策を打とうとしているだけだ。もし、それに対して『金が稼げないから』などという愚劣な理由で戦争を仕掛けてこようと言うのなら────いいじゃないか、私はいくらでも受けて立つとも」

 

「陛下…………あなたは…………」[アイン]

 

「もちろん、神殿の者たちに飢えて死ねと言っているわけではない。彼らにもちゃんと仕事を用意するさ、治療院の下働きとかな」

 

「…………ふっ、まあ確かに、彼らが要求する金額は高すぎますし、態度も傲慢だ。下働きで性根を叩き直してもらうのもいいかもしれませんね」[アイン]

 

「だろう? まあ、それも彼らが望めばだがね────────ああ、そうだ、同じく建設予定の学園で働いてもらうのもいいかもしれないな」

 

「学園、といいますのは、帝国の魔法学院のようなものですか?」[アイン]

 

「あれは魔法詠唱者を育成する専門機関だ。アインズ・ウール・ゴウン魔導学園で教えることは、もっと多岐に渡る。読み書き、計算、法律、剣術、武技、魔法…………様々なものを広く学んでもらい、適性のある分野についてはさらに深く学んでもらうつもりだ」

 

「なぜ、そのような恩恵を私たちに…………?」[アイン]

 

「自惚れないで欲しい。治療院にしろ学園にしろ、その恩恵を受けるのは君たち人間だけではない。ゴブリン、オーガ、エルフ、リザードマン、ドリアード…………今後魔導国で暮らすことになるであろう全種族だ」

 

「な…………何を言っておられるのです! 魔導王陛下!」[アイン]

 

「人間以外の種族とは、共に暮らせないかね? アインザック。なら、目の前にいる私はなんだ?」

 

「そ、それは…………」[アイン]

 

「私はアンデッドだ、アインザック。私から見れば、人間も、ゴブリンも、リザードマンも、同じ『生者』というカテゴリーでしかないのだよ。

 人間だからといって優遇することはないし、ゴブリンだからといって奴隷のように扱うこともない。我が支配下においては、全ての生命は平等に扱うつもりだ。

 もちろん、その上には私が絶対的な支配者として君臨し、直属の配下たちがそれに次ぐ地位を持つがな」

 

「…………陛下のお話は、理解いたしました」[アイン]

 

「安心しろ、アインザック。我が国の法を遵守する限り、君たち人間も他の種族と同様に恩恵を受けることができるのだからな」

 

「確かに、その通りですな…………しかし陛下、もし学園で学んだ者が他の国に移ろうとしたらどうされますか?」[アイン]

 

「ふふふ…………そんなことを許す訳無いだろう? それは我が国に対する反逆だ。入学する条件として、学園で学んだ知識や技術を他国に持ち出さないと誓ってもらう」

 

「…………陛下であれば、その誓いを絶対に守らせる手段をお持ちなのでしょうな」[アイン]

 

「もちろんだとも。さて、アインザック、私はそろそろ戻る事にする。冒険者への説明は任せたぞ」

 

「畏まりました。魔動王陛下」[アイン]

 

 

 

 




 なんかDJアインズ様のお便りコーナーみたいな話になってしまった。
 
 そして、敗戦国に正妃が出向くってどうなの? と思った結果、パンドラズアクターが王国に乗り込むことに…………

 頑張れパンドラズアクター! 

 先の話は全く考えてないぞ!

 というわけで、次回の話はパンドラさんが使節団の代表として王国に向かいます。
 


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パンドラ様、王国で自重せず

 魔軍元帥の地位に就き、王国と交渉することになったパンドラズアクター。
 敬愛する父上に喜んでもらうため、新たな姿を得た彼は王国へ向かう────


◇魔軍元帥パンドラズアクター────

 

 

「────馬上より失礼! 我らはアインズ・ウール・ゴウン魔導国が使節団である!」[死の騎兵(デス・キャバリエ)]

 

「リ・エスティーゼ王国第二王子、ザナック・ヴァルレオン・イガナ・ライル・ヴァイセルフである! 貴殿らを王宮まで案内するよう陛下から命じられている! 我らの後についてきていただきたい!」[ザナ]

 

(うけたまわ)った! 我が名は────我が名はランツェ! 恐れ多くも団長殿より名を戴いた死の騎兵(デス・キャバリエ)、ランツェである!」[ラン]

 

「確かに承った、ランツェ殿。それでは最初に、この場で使節団の団長殿に挨拶をさせてもらえないだろうか。私は第二王子であり、団長殿の王宮内での行動の責任を持つ身。できれば今のうちに私のことを覚えていただきたいのだ」

 

「承った。団長殿にお聞きしてこよう」[ラン]

 

「感謝する。…………(さて、いったいどんな化物が出てくることやら)」[ザナ]

 

「────────お待たせした。団長殿────アインズ・ウール・ゴウン魔導王陛下の片腕であらせられる、パンドラズアクター様がお会いしても構わないとのことです」[ラン]

 

「ありがとう、ランツェ殿。皆、気を引き締めよ! 決して失礼の無いよう振舞え!」[ザナ]

 

「「はっ!!」」[モブ兵たち]

 

「では、ザナック殿、こちらに」[ラン]

 

「ああ」[ザナ]

 

「────────パンドラズアクター様! リ・エスティーゼ王国第二王子、ザナック・ヴァルレオン・イガナ・ライル・ヴァイセルフ殿をお連れしました!」[ラン]

 

「────ああ、ありがとう、ランツェ」[パン]

 

「…………っ(こ、これが使節団団長パンドラズアクター…………! なんて美丈夫だ!)」[ザナ]

 

「アインズ・ウール・ゴウン魔導国の使者として参りました、パンドラズアクターと申します。数日という短い間ですが、よろしくお願いします」[パン]

 

「え、ええ、こちらこそよろしくお願いいたします…………失礼ですが、パンドラズアクター様はなんとお呼びすればよろしいでしょうか?」[ザナ]

 

「おお、こちらこそ失礼した。この身は不遜ながらアインズ・ウール・ゴウン魔導国における魔軍元帥という地位をいただいております」[パン]

 

「なるほど…………(元帥、ということは軍部のトップか?)」[ザナ]

 

「もう少し分かり易く言うのであれば、アインズ・ウール・ゴウン魔導王陛下、正妃アルベド様に続く、第三位の地位に就かせていただいていると言うべきですかな」[パン]

 

「おお! そうでしたか! (第三位…………ということは、王国で言うなら侯爵位に相当する相手と考えるべきか…………予想はしていたが、かなりの大物が来たな)」[ザナ]

 

「では、こちらからも質問をしてよろしいかな? ザナック殿」[パン]

 

「はっ! 答えられることであればなんでも答えさせていただきます」[ザナ]

 

「王宮に到着してからの予定をお聞かせ願いたい」[パン]

 

「はっ! まず今晩は私ども王族との宮廷晩餐会を予定しております。そして明日は舞台の観覧会、明晩には王国内の貴族たちを集めた立食パーティーとなっております。

 明後日は宮廷楽団音楽会────その後外交交渉のお時間を作らせていただいております」[ザナ]

 

「ふむ…………では申し訳ないが、舞台の観覧会と音楽会はキャンセルしていただいても構わないかな? なにぶん根っからの軍人なものでね、芸術には縁がないのですよ」[パン]

 

「なるほど、畏まりました。空いたお時間にはなにかご予定はございますか?」[ザナ]

 

「特に予定はありませんが…………そうですね、王都を見物させてもらっても構わないでしょうか?」[パン]

 

「もちろんです。御身をお守りする選りすぐりの騎士たちを準備しておりますので、その者たちに案内もさせましょう」[ザナ]

 

「それは助かります。よろしくお願いいたします、ザナック殿。────では、そろそろ王宮に案内していただきましょうか」[パン]

 

「はっ! お時間を取らせてしまい、申し訳ありませんでした。私どもの後にお続き下さい!」[ザナ]

 

「ええ、お願いします」[パン]

 

「────────────ふっ、パンドラズアクター様に芝居を見せようなど、身の程を知らぬ奴らですな」[ラン]

 

「全くだ、ランツェ。交渉の席には、少しはマシな役者がいるといいんだがね…………」[パン]

 

 

 

◇パンドラ様、立食パーティーで自重せず────

 

 

「────皆様! これより魔導国使節団団長であらせられる、パンドラズアクター様をご紹介いたします! 

 パンドラズアクター様は魔導国において魔導王陛下の片腕と呼ばれるお方であり、魔軍元帥という重職にお就きでございます」[モブ司会]

 

あの魔導王の片腕だなんて、恐ろしいわ…………」[モブ女A]

 

いったいどんな化物が来たのかしら…………」[モブ女B]

 

やめないか。あの戦から帰ってきた者たちのようになりたいのか?」[モブ貴族]

 

「「……………………」」[モブ女たち]

 

「(元帥…………それほどの地位を持つ者が来たのか! 魔導国はこの国によほどの興味を抱いているのか?)」[フィリ]

 

「それでは、使節団団長パンドラズアクター様のご入場です!」[モブ司会]

 

まぁ! なんて素敵な方なのかしら!」[モブ女A]

 

お召し物も見たことがないくらい上等なものだわ!」[モブ女B]

 

「(おいおいおい…………魔導王ってのはアンデッドなんだろ? その片腕は人間なのか? いや、あそこまで整った外見の人間なんて…………やはり、化物か?)」[フィリ]

 

「…………ようこそ、パンドラズアクター殿」[王]

 

「陛下、お招きいただきありがとうございます。お体のご調子も良いようでなによりです」[パン]

 

「…………っ」[王]

 

「お集まりいただいた皆様にも感謝を。本日は皆様と新たな友誼(ゆうぎ)を結ぶことができればと思っております」[パン]

 

あぁ…………笑顔も素敵だわ…………」[モブ女A]

 

なんとかお近づきになれないかしら…………」[モブ女B]

 

ふん…………なにが友誼だ。やつめ、一度も頭を下げなかったぞ」[モブ貴族]

 

「(一国の王相手に堂々たる態度だな…………これが王国と魔導国の力関係か。今後俺の領土を守っていく為には、なんとかしてあの男と縁を繋いでおかないと…………)」[フィリ]

 

「…………では、パンドラズアクター殿。私はもう老いているので椅子を使わせてもらうが、貴公は存分に楽しんでくだされ」[王]

 

「ええ、きっと楽しい夜になることでしょう」[パン]

 

「(…………一番だ…………二番目でも三番目でも意味がない。一番に声をかけるからこそ意味がある…………!)」[フィリ]

 

「あの、パン…………」[モブ女B]

 

「パンドラズアクター様! 少しよろしいでしょうか────────」[フィリ]

 

 

 

◇フィリップ(バカ息子)未来を語る────

 

 

「────────というわけで、魔導国の使者殿をお招きすることになったのです」[フィリ]

 

「…………お前の兄を、多くの王国の民をあのような姿にした魔王の使者だぞ?」[父]

 

「戦争なのですよ、父上。生かして返してくれただけ慈悲があるではありませんか。感謝しませんと」[フィリ]

 

「感謝だと!? お前の兄は、苦しみぬいた末に自ら命を絶ったのだぞ! お前の兄だけではない! 多くの者たちが、恐怖のあまり自ら命を絶ったのだ!」[父]

 

「…………(だから感謝しているんじゃないか)」[フィリ]

 

「しかも…………しかもだ! お前は自分が何と言ったか覚えているか!?」[父]

 

「? ですから、使者殿をお招きすると…………」[フィリ]

 

「違う! その前だ!」[父]

 

「ああ、イザベルを使者殿に引き合わせると言ったことですか?」[フィリ]

 

「お前は…………お前は兄の命だけではなく、妹まで奴らに捧げるつもりか!?」[父]

 

「父上…………政略結婚など当たり前のことではないですか。

 それに、使者のパンドラズアクター殿は類い稀なる美貌の持ち主であるだけでなく、非常に気さくで、しかも紳士でした。

 もしあの方に嫁ぐことが叶えば、イザベルも心から私に感謝することになるでしょう」[フィリ]

 

「はぁ、はぁ…………フィリップ、お前は使者として来るような者が、そう簡単に本性を現すと思っているのか?」[父]

 

「もちろんそうは思いません。ですが、私はこれでも人を見る目はあるつもりです」[フィリ]

 

「…………そうか、お前は自分のことをそう思うのか…………」[父]

 

「もしそうでなかったとしても、必要な犠牲だと割り切るしかないでしょう。

 我が家の領土は、王国と魔導国の間にあるのですよ? 

 魔導国は強い。圧倒的です。

 もしまた戦になれば、王国には滅びる道しか残されていない。

 ですが、私が繋がりを持っておけば、それを防げるかもしれません」[フィリ]

 

「…………お前…………お前は…………」[父]

 

「すでに会場は押さえてありますし、招待状も手配済みです。あとはイザベルにドレスでも買ってやれば完璧ですよ」[フィリ]

 

「…………もう、よい。お前にこれ以上言うことはない」[父]

 

「ご理解いただき感謝しますよ、父上」[フィリ]

 

「…………(我が家は、もうダメかもしれんな…………)」[父]

 

 

 

◇パンドラ様とフィリップ(バカ)────

 

 

「パンドラズアクター様、本日はようこそお越しくださいました!」[フィリ]

 

「これはフィリップ殿。お招きいただきありがとうございます」[パン]

 

「いえ、これからの王国と貴国の関係を考えれば、国賓である貴方をおもてなしするのは当然のこと。ぜひ楽しんでいってくださいませ、パンドラズアクター様」[フィリ]

 

「私のことはパンドラと気軽に呼んでいただいて構いませんよ、フィリップ殿」[パン]

 

「おお、それは望外な栄誉です。ではぜひ私のこともフィリップと呼んでください、パンドラ殿」[フィリ]

 

「ええ、分かりました、フィリップ」[パン]

 

「使者として来られたのがパンドラ殿のような気さくな方で良かった。…………おっと、忘れるところでした。これは私の妹でイザベルと申します。────イザベル、挨拶を」[フィリ]

 

「イザベルと申しますわ。パンドラズアクター様」[イザ]

 

「これは可愛らしいお嬢さんだ。私はパンドラズアクター。貴女もぜひ、私のことはパンドラと」[パン]

 

「はい…………パンドラ様///」[イザ]

 

「ははは、貴方があまりにも容姿端麗なので照れているようです」[フィリ]

 

「もう、お兄様ったら///」[イザ]

 

「お褒めに預かり光栄です。では今日はぜひ、お二人には私の中身も知っていただきたいものですね」[パン]

 

「もちろん、そのつもりですよ。では行きましょうか、パンドラ殿」[フィリ]

 

「ええ、フィリップ。ではイザベル、貴女をエスコートする栄誉を私にいただけるかな?」[パン]

 

「もちろんですわ、パンドラ様」[イザ]

 

「では、参りましょうか────────」[パン]

 

 

 

◇フィリップ(バカ)とイザベル(バカ)────

 

 

「あぁ、素敵だわ、パンドラ様…………」[イザ]

 

「────おぉ、イザベル、ここにいたか」[フィリ]

 

「あらお兄様」[イザ]

 

「ん? パンドラ殿はどこだ?」[フィリ]

 

「今ご休憩で別室に行かれたわ…………あぁ、それにしても素敵な方…………」[イザ]

 

「そうか、休憩か…………で、どんな感じだ? 落とせそうか?」[フィリ]

 

「うふふ…………私のほうが落とされちゃいそう」[イザ]

 

「おいおい…………それはせめて向こうを落としてからにしてくれよ。我が家の行く末が掛かっているんだからな」[フィリ]

 

「大丈夫よ、お兄様。好感触だわ」[イザ]

 

「いけそうってことか?」[フィリ]

 

「私に興味を持っているのは間違いないわ。それに、彼ってあまり女性経験がないみたい。

 ダンスの時、転びそうになったフリをして胸を押し付けてみたら慌ててたもの」[イザ]

 

「ふん、百戦錬磨のお前には朝飯前の相手か?」[フィリ]

 

「嫌味な言い方をしないで下さる、お兄様。私が彼に嫁ぐことになったら、お兄様の運命は私の言葉で決まるかも知れないのよ?」[イザ]

 

「はいはい、わかってるよ。未来の元帥夫人殿」[フィリ]

 

「うふふ、よろしい。あぁ、でも、ほんとに彼って素敵ね。美しさの中に野性味溢れる凛々しさが漂っていて、体も見た目以上にすっごく逞しいの。

 …………きっと夜の方もすごいわよ」[イザ]

 

「お前が遊び慣れているのをバレないようにしろよ?」[フィリ]

 

「ほんと、男って清純な女が好きよね。大丈夫よ、初めてのフリくらいできるわ」[イザ]

 

「そうか、それならいい。今後は俺と話すときも地を出すなよ? いいか、くれぐれも注意しろ」[フィリ]

 

「…………分かりましたわ、お兄様。では、私もお化粧を直してまいりますので、パンドラ様が戻られたら、私が戻るまでお相手をお願いします」[イザ]

 

「ああ、任せておけ」[フィリ]

 

「では────────」[イザ]

 

「…………ふぅ、妹の男狂いがこんなところで役に立つとはな。やはり、俺は天に愛されているようだ」[フィリ]

 

 

 

◇パンドラ様とヒルマ(調教済み)────

 

 

「お疲れ様でした、パンドラズアクター様」[ヒル]

 

「ああ、君もお疲れ様、ヒルマ」[パン]

 

「…………どうでございました?」[ヒル]

 

「彼かい? 予想以上のバカだな。国同士の力関係すら上辺の部分しか理解していない。

 おそらくは、自分自身のことすら上辺しか知らないんだろう。

 今まで見た中で、もっとも中身のない薄っぺらな人間だよ」[パン]

 

「…………」[ヒル]

 

「おっと、中身を恐怖公の眷属に食べられたことがある君には、酷な例えだったかな?」[パン]

 

「い、いいえ! そのようなことは決して…………!」[ヒル]

 

「ふふふ、そう恐れることはない、ヒルマ。君は今のところしっかりと仕事をこなしている。その調子で頑張ってくれればいい」[パン]

 

「は、はっ! ありがたいお言葉です!」[ヒル]

 

「さて…………せっかく愚か者たちから離れられたのだから、もう少し有意義な話をしようか。

 食料の件はどうなっている?」[パン]

 

「はっ、ご指示通り、麻薬を売って得た金銭により、広い方面から少量ずつ備蓄可能な食料を買い集めています」[ヒル]

 

「よろしい、そのまま続けてくれ。マジックアイテムの情報は?」[パン]

 

「魔術師組合に手の者を潜入させ、詳しく調べさせております。また、古文書や神話、酒場の噂話にいたるまで情報収集をしておりますが、今のところお探しのアイテムの情報は入ってきておりません」[ヒル]

 

「そうか。引き続き、どのような細かい情報も上げてくるよう徹底してくれ」[パン]

 

「はっ!」[ヒル]

 

「私から聞くことは以上だが、そちらからなにか質問や要望は?」[パン]

 

「恐れながら、鉱山のスケルトンが素晴らしい成果を上げておりますので、もう少しお貸しいただければ作業効率を上げることが可能かと」[ヒル]

 

「具体的な数は?」[パン]

 

「百体もあれば十分でございます」[ヒル]

 

「では、予備も含めて百五十体送ろう。崩落などつまらない理由で無駄にしないよう、担当者に伝えておくように」[パン]

 

「はっ! 必ず伝えます!」[ヒル]

 

「さて、こんなところか。…………ああ、そうそう、あのフィリップの妹はどこか頭がおかしいのか? 急にくねくねと体をよじらせたり、何もないところで何度も転びそうになっていたが」[パン]

 

「パンドラズアクター様の気を引くための演技かと」[ヒル]

 

「演技? あれがか?」[パン]

 

「田舎貴族の娘など、所詮相手にしてきたのは同程度の下級貴族ばかりですから。それでも何人かは手玉に取っていたようですが…………」[ヒル]

 

「あれに騙されるのか…………やはり、舞台は観なくて正解だったな。役者のレベルが低すぎる」[パン]

 

「お邪魔でしたら、こちらで排除いたしますか?」[ヒル]

 

「いや、いい。一応私も合わせて演技をしておいたからな。使い道は色々とある」[パン]

 

「畏まりました」[ヒル]

 

「では、愚か者たちの元に戻るとするか────────」[パン]

 

 

 

◇パンドラ様とラナー王女(化け物)────

 

 

「ひ、姫様!」[モブメイド]

 

「どうかしましたか?」[ラナ]

 

「あ、あ、あの、パ、パパ…………」[モブ]

 

「パパ?」[ラナ]

 

「ち、違います。魔導国の使者、パンドラズアクター様がラナー様にお会いしたいと!」[モブ]

 

「どのような方ですか?」[ラナ]

 

「とても素敵な男性です!」[モブ]

 

「む…………」[クラ]

 

くすっ…………パンドラズアクター様が、私になんの御用なのでしょう?」[ラナ]

 

「私には分かりかねます。ただ、お会いしたいと」[モブ]

 

「そうなんですか…………ですが、パンドラズアクター様は男性の方ですし、二人きりでお会いするわけにもいきませんね。貴女も一緒にいて下さる?」[ラナ]

 

「ぜひ!」[モブ]

 

「ラナー様、それでしたら私が…………」[クラ]

 

「ごめんなさい、クライム。本当はあなたにいてほしいのだけど、傍に騎士を控えたまま国賓の方にお会いするのは失礼に当たるわ。私は大丈夫だから、少しの間外していて?」[ラナ]

 

「…………畏まりました」[クラ]

 

「ありがとう。じゃあ、パンドラズアクター様をこちらにお通ししていただけるかしら?」[ラナ]

 

「はい! すぐお連れいたします!」[モブ]

 

「────────やあ、ラナー殿」[パン]

 

「お待ちしておりました、パンドラズアクター様」[ラナ]

 

「ラ、ラナー様? なぜ跪いて…………」[モブ]

 

「君は少し静かにしていてもらおうか。〈睡眠(スリープ)〉」[パン]

 

「zzz…………」[モブ]

 

「彼女は後で記憶をいじっておこう。アインズ様ほど上手くは扱えないので、若干障害が残るかもしれないが構わないね?」[パン]

 

「もちろんでございます。お手数をおかけして申し訳ございません」[ラナ]

 

「これも君との契約だよ。男と二人きりになって、彼にあらぬ疑いを掛けられたくないのだろう?」[パン]

 

「ご配慮感謝致します」[ラナ]

 

「いいさ。君の働きは見事だった」[パン]

 

「ありがとうございます。パンドラズアクター様」[ラナ]

 

「そしてその功績を湛え、君に褒美を渡そう。さあ、受け取るといい」[パン]

 

「これが…………」[ラナ]

 

血の宝珠(ブラッドスペル)だ。その小さな宝珠を飲み込めば、君は吸血鬼(ヴァンパイア)になることができる。

 もちろん、人間に倒されるような低位のものではない。

 高位純血種(ハイ・トゥルーブラッド)という、レベル60の吸血鬼だ。

 難度で表すなら180に相当する。

 そして────」[パン]

 

「血を吸うことで、眷属を生み出すことができるのですね」[ラナ]

 

「その通り。今後、首尾よく王国をアインズ様に差し出すことができたなら、君はナザリックに領域守護者格として迎え入れられることになる。

 その際には眷属を一体、供として連れてくることを許そう」[パン]

 

「必ず、お渡しいたしますわ。王国の全てを」[ラナ]

 

「それでいい。永遠の楽園で、永遠に君の眷属と生きるためだ。全力を尽くしたまえ」[パン]

 

「はい、偉大なる御方────────」[ラナ]




 今回はパンドラさんが働くお話でした。

 ナザリックにいる時と口調が違うのは、各下の存在しか相手にしていないからです。

 次回はまたアインズ様がなんやかんやする予定。

 もしくは閑話とか挟むかもしれません。

 そのへんは気分次第です。



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モモンガ様、魔導国で自重せず(後)

 冒険者の勧誘に、帝国に行くことになったアインズ様。

 今回アインズ様のお供をするのはいったい誰だ、と守護者たちは色めき立つが────


◇第二回、アインズ様のお供は誰だ会議────

 

 

「────というわけで、今回アインズ様に供として従うものを決めようと思います」[デミ]

 

「毎度のことでありんすが、なにが『というわけで』なんでありんすか?」[シャル]

 

「それについては、今回は私も詳しくは知らないのだよ。全てはアインズ様のお心の内さ」[デミ]

 

「今回はどちらに行かれるのですか? アインズ様」[セバ]

 

「うむ、帝都だ」

 

「て、帝都って、ぼくとお姉ちゃんが行った場所、ですよね?」[マレ]

 

「そうだ。だが今回は脅したり攻撃したりしに行くわけではない」

 

「? では、何をしに行かれるんでありんしょうか?」[シャル]

 

「それは…………まあ、色々だな」

 

「ふふふ、シャルティア。アインズ様は私たちが想像もつかないほどの智謀をお持ちなのだ。

 この度の帝都訪問にも、おそらくはいくつもの目的がおありのはず。

 私としては是非それを最前列で見させていただきたいところなのですが…………」[デミ]

 

「おや、辞退でありんすかぇ? デミウルゴス」[シャル]

 

「残念ですが、聖王国でやることがありましてね」[デミ]

 

「…………あ、そうそう、デミウルゴス。聖王国といえば、来週辺りに姉さんがモモルを牧場見学に連れて行きたいと言っているんだけど、いいかしら?」[アル]

 

「ええ、もちろんです。ではせっかくですから、家畜になにか芸でも仕込んでおきましょうか」[デミ]

 

「ん…………ナザリックの外にモモルを出すのか?」

 

「はい、広い世界を知るのも、アインズ様の子であるモモルには必要なことかと思いまして」[アル]

 

「そう…………か、うむ、そうだな。護衛はどうなっている?」

 

「私ガコノ命ニ代エテモオ守リイタシマス」[コキュ]

 

「あたしも探知系の能力に優れた魔獣を連れてついて行きますから、ご安心ください、アインズ様」[アウ]

 

「そうか。二人がついて行ってくれるのなら、なんの心配もないな」

 

「…………ということは、必然的にコキュートスとアウラも辞退ということになるのでありんすか?」[シャル]

 

「残念だけど、そうなるね~」[アウ]

 

「あ、あの!」[マレ]

 

「ん? どうした、マーレ」

 

「あの、その、ぼくも、今回は辞退させていただいてもよろしいでしょうか…………?」[マレ]

 

「おや、マーレがそんなことを言うとは珍しいですね。なにか特別な理由でも?」[デミ]

 

「…………あの…………その…………///」[マレ]

 

「…………マーレ、自分で言うと決めたのでしょう?」[アル]

 

「…………は、はい! あの、アインズ様!」[マレ]

 

「お、おう、いや、うむ。どうした、マーレ?」

 

「ぼく…………ぼく…………あの……………………赤ちゃんが、出来たみたいなんです…………///」[マレ]

 

「……………………〈精神沈静化〉」

 

「えっ、ほんとに!?」[アウ]

 

「なんと…………大変素晴らしいことですが、流石に驚きましたね」[デミ]

 

「メデタイ! 赤飯ヲ炊カネバ!」[コキュ]

 

「おめでとうございます、アインズ様、マーレ様」[セバ]

 

「くぅ…………弟に先を越された…………!」[アウ]

 

「嬉しいと悔しいが混ざり合った気持ち…………今ならぬしにも分かるでありんしょう?」[シャル]

 

「おや、シャルティア。君はもっと驚くと思ったんだが、意外に冷静だね」[デミ]

 

「男の娘の生態について、調べたからでありんしょうねぇ」[シャル]

 

「ほう、そのような書物があったのですか?」[デミ]

 

「ふっふっふ…………じゃーん! 百科事典(エンサイクロペディア)・by・ペロロンチーノ様!」[シャル]

 

「おお! それはもしや至高の御方の!」[デミ]

 

「そう、以前アインズ様から敢闘賞兼残念賞兼慰労としていただいた、ペロロンチーノ様直筆の百科事典でありんす!」[シャル]

 

「シャルティア…………自分で言ってて情けなくならないの?」[アウ]

 

「シャラーップ! ちびすけ! 弟に先を越された姉に、私を馬鹿にする資格はないでありんす!」[シャル]

 

「うぐ…………」[アウ]

 

「シャルティアに言い負かされたアウラも珍しいが、それよりも男の娘について何が書かれていたのか教えてもらっていいかね?」[デミ]

 

「…………(俺も知りたい)」

 

「では! 特別に! 教えてあげるでありんす!」[シャル]

 

「…………シャルティアに上から目線で言われると、不思議と言い返したくなるのはなぜなんだろうね?」[デミ]

 

「…………(その気持ち、なんか分かる)」

 

「えーと、おー、おとー、おとこの…………あったでありんす。

 男の娘=男の娘には大きく分けて二つのタイプがある。

 やおい穴が付いているものと、付いていないものだ。

 やおい穴とは、男性との性行為専用の穴であり、女性で言うところの────」[シャル]

 

「こほん! その辺はぼかしていいぞ! (なに書いてんだペロロンチーノ!)」

 

「あ、はいアインズ様! 

 え~…………やおい穴にも二種類ある。

 ア○ルとは別に穴が空いているものと、性行為の際にア○ルの機能が変化────」[シャル]

 

「そこも飛ばしていいぞ! 結論の部分だけ呼んでくれ、シャルティア! (うぉい! ペロロンチーノコラァ!)」

 

「は、はいアインズ様!

 え~…………つまり、穴が二つあろうと一つだろうと、それがやおい穴である限り男の娘は妊娠することが可能だと言える。

 ちなみに、俺個人としては後者が好みである…………と書いてありんす」[シャル]

 

「…………そうか(自分しか読まないと思ってたんだろうなぁ…………)」

 

「なるほど。つまりマーレには『やおい穴』なる器官があるため、妊娠出産が可能だということなのですね?」[デミ]

 

「あ、あの…………ぶくぶく茶釜様も仰ってましたし、その、間違いないです…………///」[マレ]

 

「アインズ様、私も確認致しました。マーレは間違いなくアインズ様のお子を身篭っております」[アル]

 

「例の淫魔(サキュバス)としての本能というやつか?」

 

「はい♡」[アル]

 

「そうか…………マーレ」

 

「は、はい…………」[マレ]

 

「私は、マーレと私の子が出来たことを、心から嬉しく思う。

 だから、ぼ…………母子? うむ、母子ともに健康であってくれ。

 それだけが私の望みだ」

 

「あ、アインズ様ぁ…………♡」[マレ]

 

「オゥオゥオゥオゥ…………爺ハ…………爺ハ…………ッ!」[コキュ]

 

「コキュートスはすでに新たな爺としての妄想に旅立ってしまったようだね」[デミ]

 

「ねえねえ、アルベド。マーレの子って、男の子? 女の子?」[アウ]

 

「女の子よ」[アル]

 

「女の子かー、マーレみたいな大人しい性格の女の子かなー」[アル]

 

「いくら私でも、性格までは分からない…………あら? ちょっとアウラ」[アル]

 

「ん? なに、アルベド」[アウ]

 

「あなたも妊娠してるわよ?」[アル]

 

「えっ!!?」[アウ]

 

「そ、それは本当か? アルベド」

 

「私の目に間違いはございませんわ、アインズ様。アウラは、間違いなくアインズ様のお子を身篭っております」[アル]

 

「わぁぁっ、よかったね、お姉ちゃん!」[マレ]

 

「あわわわわ…………あ、あたしのお腹に赤ちゃんが…………? ど、どうしよう、横になってじっとしてたほうがいいのかな?」[アウ]

 

「大丈夫だよ、お姉ちゃん。ほら、ぼくが保護魔法を掛けてあげたから」[マレ]

 

「う、うん。ありがとう、マーレ」[アウ]

 

「これは…………一日に二度も驚かされることになるとは、思いもしませんでしたね」[デミ]

 

「おめでとうございます、アインズ様、アウラ様」[セバ]

 

「あ、ああ…………ありがとう、セバス」

 

「アインズ様、アウラにもお言葉を掛けてやってくださいませ」[アル]

 

「あ、うん…………うむ。アウラ」

 

「は、はい!」[アウ]

 

「アウラも、アウラと私の子供も、どちらも大切な存在だ。

 体を労わり、健康な子供を産んでくれ。

 そして、マーレやほかの守護者とともに、いつまでも私の傍にいて欲しい」

 

「はい…………はいっ! アインズ様! いつまでもお側に…………!」[アウ]

 

「まったく、ちびすけにまで先を越されるとは…………おめでとう、アウラ」[シャル]

 

「ぐすっ…………ありがとう、シャルティア…………」[アウ]

 

「アルベドさん、お姉ちゃんの子供は、男の子ですか? 女の子ですか?」[マレ]

 

「ん~…………男の子ね」[アル]

 

「おお、初の男子でございますね」[セバ]

 

「…………アア…………若、剣ノ握リハモウ少シ軽ク…………」[コキュ]

 

「コキュートスは完全にトリップしてますね…………こほん、アインズ様」[デミ]

 

「ん? なんだ、デミウルゴス」

 

「アウラとマーレがともに身篭ったとなりますと、防衛の人事や外で行う計画に少々変更が必要になります」[デミ]

 

「うむ、二人を働かせるわけにはいくまい。

 そうだな…………とりあえずモモルの護衛にはコキュートスとともにシャルティアがついて行ってくれ」

 

「はっ、畏まりました」[シャル]

 

「帝都には…………よし、モモルの牧場見学に合わせて行く事にするか。

 モモルはニグレド、コキュートス、シャルティアに任せ、ナザリックの内政はパンドラズアクターに指揮を取らせよう。

 そして帝都にはアルベド、お前がついてくるのだ」

 

「わ、私がでございますか?」[アル]

 

「ああ、お前はカルネ村以降、ずっとナザリックに閉じ込めてしまっていたからな。

 もちろん大事な仕事を任せていたのだから仕方のないことではあるのだが、たまには一緒に出かけようじゃないか」

 

「ア、ア、ア、アインズ様…………そ、それはもしや…………」[アル]

 

「うむ、デートというやつだな」

 

「…………っきゃーーーー!!

 ど、どうしましょう! 着ていくものを選ばなくちゃ! 

 なにを…………なにを着ていけばいいかしら…………モモンガ様のお好きな、胸元の大きく開いた服? それとも、初めての時に着ていたあの思い出の服のほうが…………」[アル]

 

「アルベド? おい、アルベド、行くのは来週だ。来週だぞ!」

 

「はっ! し、失礼いたしました、モ…………アインズ様。余りにも嬉しくって…………♡」[アル]

 

「う、うむ。そうか、喜んでくれたのなら何よりだ」

 

「…………アインズ様♡」[アル]

 

「ど、どうした、アルベド」

 

「二人目を作りましょう♡」[アル]

 

「い、いやちょっと待て、アルベド! 皆がまだいるから! な!? な!?」

 

「ちょ、アルベド! ぬしは一度孕ませていただいたんでありんすから、次は私に譲るべきじゃありんせんか!? 私なんてまだ…………っ!!」[シャル]

 

「はいはい、二人共一旦落ち着いてください、話が進まないじゃないですか…………さてアインズ様、第六階層の守備につきましては、後ほど改めて代理の守護者を誰にするかご相談させて頂くということでよろしいでしょうか?」[デミ]

 

「あ、ああ、うむ、それはいいんだが…………」

 

「ありがとうございます。ではアウラ、マーレ、君たちはこのあと、一応ペストーニャに体を見てもらうといい」[デミ]

 

「う、うん、分かった。なんだかまだ実感が湧かないや」[アウ]

 

「大丈夫だよ、お姉ちゃん。アルベドさんが言うんだから間違いないよ。…………ぼくがお姉ちゃんの食事にも排卵誘発剤を混ぜておいたんだし」[マレ]

 

「? なにか言った、マーレ」[アウ]

 

「う、ううん、何でもないよ、お姉ちゃん」[マレ]

 

「セバス、君は…………すまないが、コキュートスを運んでくれるかな?」[デミ]

 

「畏まりました、デミウルゴス様」[セバ]

 

「お願いするよ。ではアインズ様、私たちはこれで失礼いたします、守護者代理の草案は後ほどお持ちいたしますので」[デミ]

 

「え、ちょ、デミ…………」

 

「さ、アインズ様、邪魔者もいなくなったことですし、寝室に参りましょう♡」[アル]

 

「ちょ、私は!? 私は!?」[シャル]

 

「あなたは…………んー…………もう少し先ね」[アル]

 

「なぜに!?」[シャル]

 

「……………………(もうこの場を収めるのは無理だな。全てを受け入れよう…………)」

 

 

 

◇魔導王と正妃のデート(帝都観光)────

 

 

「────ここが帝都だ、アルベド」

 

「王国の王都とは違って活気がございますね」[アル]

 

「うむ、ジルクニフが腐敗した貴族を粛清したことにより、国が良い方向に向かっているのだろう。民の顔に希望が見て取れる」

 

「煩わしいようでしたら、全て潰しましょうか? モモンガ様」[アル]

 

「い、いや、一応同盟国だからな、そういうことはしなくていい…………それよりアルベド、あれを見てみるといい。あれがジルクニフのいるバハルス帝国の帝城だ」

 

「まあ、みすぼらしい居城ですこと」[アル]

 

「ナザリックに比べれば、どのようなものでもそう見えてしまうかもな」

 

「この国を完全に飲み込んだ際には私がギンヌンガガプで更地にいたしますので、跡地に新しい城を建てましょう」[アル]

 

「ま、まあ、機会があれば、いずれな」

 

「はい。いずれはモモンガ様のお子が支配する地ですもの、あのようなみすぼらしい城ではモモンガ様に失礼ですわ」[アル]

 

「え…………?」

 

「次は…………闘技場でございましたね」[アル]

 

「あ、ああ、闘技場の支配人に話を付けてあるからな。飛び入りで参加できることになっている」

 

「帝国の冒険者を魔導国に誘致することが目的…………でございましたよね?」[アル]

 

「うむ、そうだ」

 

「各国に放ってある八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)からの報告によれば、皇帝のジルクニフや神殿勢力、スレイン法国の者も訪れる予定なのだとか…………」[アル]

 

「ああ、偶然にもな」

 

「うふ、うふふ…………そうでございますわね、全ては()()のことでございますものね」[アル]

 

「? あ、ああ」

 

「モモンガ様の智謀は、まさに至高の極みにございますわ。まさか一週間も前からこの日のことを予想されていたなんて…………到底私やデミウルゴスの及ぶところではございません。

 流石はモモンガ様ですわ♡」[アル]

 

「(なんのことだかさっぱり分からん…………けど、一応それっぽい態度を取っておこう)…………ふふ」

 

「あぁ♡ その含みのある笑みもス・テ・キ…………♡」[アル]

 

「お前に褒められるのは、素直に嬉しいぞ、アルベド…………では、そろそろ行くとするか」

 

「はい、モモンガ様♡」[アル]

 

 

 

◇魔導王と正妃のデート(闘技場参戦)────

 

 

「────では、ジルクニフとともに観戦していてくれ、アルベド」

 

「はい、畏まりました。アインズ様」[アル]

 

「……………………あー、アルベド殿? 今回ゴウン殿は魔法を使わないということだが…………大丈夫なのかな?」[ジル]

 

「うふふ…………一度しか言わないから、よく聞いておきなさい、ジルクニフ。あと、火神殿・風神殿の神官長と、スレイン法国の人間もよ」[アル]

 

「「…………!!」」[ジル他]

 

「あら、そんなに驚いた顔をしてしまっては、全てその通りですと認めるようなものよ?

 …………まあいいわ。あなた達がなにを企もうと、全てはアインズ様の手のひらの上ですもの。

 この緊急会談が決まったのはいつ? 三日前? 五日前かしら?

 アインズ様は、七日以上も前から今日のことを予想されていたけど」[アル]

 

「ば、馬鹿な! この会談の場所が我らに知らされたのは数時間前だぞ!?」[火神官]

 

「そうよ、だからこそあの方は至高なの。ちなみに、さっきの質問への答えはこうよ。

 あの程度の雑魚が相手ならば、アインズ様は魔法を使うまでもないわ」[アル]

 

「雑魚…………四騎士が総がかりでも勝てない相手を、雑魚だというのか? そんな、いくらなんでもありえない! 魔法詠唱者が、魔法も使わずにあの武王を倒すなど…………!」[ジル]

 

「あなたたち人間(ゴミ)と私たちを同じ尺度で計ろうとするのがそもそもの間違いなのだと、いい加減に気づきなさい、ジルクニフ。

 アインズ様は当然のこととして、私ですらあなたたちの想像の範疇にはないわ」[アル]

 

「…………そ、それは、あなたもゴウン殿に近しい強者だということだろうか?」[ジル]

 

「アインズ様に近しいなどと言うのはおこがましいけれど…………私はアインズ様を守護する者よ。そう言えば理解できるかしら?」[アル]

 

「なんてことだ…………」[ジル]

 

「…………私たちは帰らせてもらおう。やらなければならないことが山ほどあるのでね」[スレ法A]

 

「お好きになさい、どこに居ようと同じことよ。

 あなた達がどれほど遠く離れようとも、結局そこはアインズ様の手のひらの上…………

 逃れる事など出来はしないのだから」[アル]

 

「…………っ失礼する!」[スレ法B]

 

「それで? あなた達は帰らないのかしら?」[アル]

 

「…………帰らせてもらえるのかね?」[風神官]

 

「さっきも言ったでしょう? 好きになさいと。

 あなた達がここに残ってアインズ様の弱点を探ろうとしても無駄だし、神殿に戻って対策を練ろうとしても無駄…………どちらを選ぼうとも、アインズ様は全てを見通しておられるわ。

 ここでこうしてあなた達と顔を合わせたことが、何よりの証拠じゃなくて?」[アル]

 

「…………帰らせてもらうとしよう。…………皇帝よ、貴方に会うことは二度とあるまい」[風神官]

 

「失礼する」[火神官]

 

「待っ…………」[ジル]

 

「……………………ふふふ。さあ、残ったのはあなた一人よ、ジルクニフ。

 スレイン法国と神殿勢力から見放されたあなたは、これからどうするつもりなのかしら?」[アル]

 

「…………っ、て、帝国を…………帝国を、魔導国の属国にしていただきたい…………」[ジル]

 

「正しい判断よ、ジルクニフ。…………あぁ、見てごらんなさい、あなた王が勝ち鬨を上げているわ。

 きゃ~~♡! アインズ様~~♡! ステキです~~♡!」[アル]

 

「ゴ、ゴウン殿~! カッコよかったぞ~!(やけくそ)」[ジル]

 

 

 

◇アインズ様はお出かけ中────

 

 

「────失礼いたします」[デミ]

 

「ただいまー」[モモ]

 

「お帰りなさい、モモル。デミウルゴスもわざわざ連れてきてくれてありがとう」[アル]

 

「いえいえ、モモル様のお供をできるのは光栄なことです。それに、アインズ様に許可を頂きたいこともありましたし…………おや、アインズ様は?」[デミ]

 

「アインズ様は今、少し遠出をしているわ。でも、一日に一度は転移で帰ってくると仰っていたから、あと数時間でお戻りになるはずよ」[アル]

 

「そうですか。では、七階層に戻って次の計画の準備でもしながら夜を待つとしましょう」[デミ]

 

「とうさまいないのー?」[モモ]

 

「お父様はお仕事で遠くに行っているの。でも、きっとモモルの声を聞きたがっていると思うわ。お父様とお話する?」[アル]

 

「するー!」[モモ]

 

「じゃあ、ちょっと待っててね。〈伝言(メッセージ)〉────『アインズ様、いまお時間よろしいでしょうか?』」[アル]

 

『アルベドか、どうした、何かあったか?』

 

「『いえ、モモルが牧場見学から帰ってまいりましたので、そのご報告をと思いまして』」[アル]

 

『おお、モモルが帰ってきたか。元気にしているか?』

 

「『もちろんでございます。今代わりますので、少々お待ちください』────さ、モモル、お父様よ」[アル]

 

「うん! ありがとう、かあさま! ────『もしもし、とうさま?』」[モモ]

 

『ああ、私だ。モモル、牧場見学は楽しかったか?』

 

「『うん! すごくたのしかった! あのね、でみでみがね、あべりおんなんとかをひゃーってなかせるの!

 それでね、なんかいもやってるとあんまりなかなくなっちゃうんだけど、しおみずをかけたり、ちいさいのをつれてきてめのまえでなかせたりすると、またひゃーってなくんだよ!』」[モモ]

 

『ん? うん、まあ、楽しかったんならよかった』

 

「『またいきたいなー。こんどはとうさまといっしょがいい!』」[モモ]

 

『ははは、そうかそうか。じゃあ、時間を作って今度一緒に行こうか』

 

「『うん! やくそくだよ?』」[モモ]

 

『ああ、約束だ。じゃあモモル、母さんに代わってくれるか?』

 

「『わかった! とうさま、あとでかえってくるんだよね? きょうはごほんよんでくれる?』」[モモ]

 

『ああ、もちろんだ』

 

「『わーい、ありがとう、とうさま! じゃあ、かあさまにかわるね』────かあさま、とうさまあとでごほんよんでくれるって!」[モモ]

 

「あら、よかったわね、モモル。それじゃあ、お父様が帰ってくる前に、私とお風呂に入りましょうね」[アル]

 

「うん!」[モモ]

 

「うふふ────『お待たせいたしました、アインズ様』」[アル]

 

『牧場見学は楽しめたみたいだな』

 

「『ええ、デミウルゴスがイベントを企画してくれたみたいです。羊皮紙の手作り体験だとか、家畜との触れ合いだとか色々と』」[アル]

 

『そうか、デミウルゴスにはあとで礼を言っておかねばな』

 

「『デミウルゴスも来ておりますが、代わりましょうか? アインズ様』」[アル]

 

『いや、どうせあとで戻るから、その時に直接言うとしよう。伝言(メッセージ)で感謝を伝えるのも味気ないしな』

 

「『うふふ、デミウルゴスも喜びますわ。では、お時間を取らせてしまい申し訳ありませんでした、アインズ様。また後ほど、体を隅々まで磨いてお待ちしておりますわ♡』」[アル]

 

『う、うむ。では、また後でな』

 

「────デミウルゴス、あとでアインズ様がお戻りになったら、直接お褒めの言葉を頂けるわよ」[アル]

 

「おお、それは嬉しいですね。頑張った甲斐があったというものです」[デミ]

 

「でみでみ、ありがとう!」[モモ]

 

「これはモモル様、恐悦至極にございます」[デミ]

 

「あら、ちゃんとお礼が言えてえらいわね、モモル」[アル]

 

「えへへー」[モモ]

 

「そう言えば今更ですが、アインズ様はどちらに行かれているのですか?」[デミ]

 

「ドワーフの国よ。詳しい目的は教えていただけなかったけど、アインズ様のことだからきっとまたいくつもの計画を同時進行されているのだと思うわ」[アル]

 

「ええ、間違いないでしょう」[デミ]

 

「あ、そうそう、帝国が属国になることが決まったから」[アル]

 

「なっ、もうですか?」[デミ]

 

「ええ、アインズ様が私とのデートのついでにサクッとまとめてしまわれたのよ。あなたにも見せてあげたかったわ、自分はアインズ様の手のひらの上で踊っているだけなんだと理解した時の、皇帝の顔を」[アル]

 

「素直にあなたが羨ましいですよ、アルベド。あぁ、それにしてもアインズ様は素晴らしい。

 アインズ様が耳にし、目にされている情報は私たちよりも圧倒的に少ないはずなのに、常に私たちより優れた結果を出される…………」[デミ]

 

「それこそがアインズ様の、唯一絶対なる私たちの主人の力よ」[アル]

 

「私たちも及ばずながら、力を尽くさなければなりませんね」[デミ]

 

「ええ、さっそく明日にでも、アインズ様が納得される帝国の属国プランを練りましょう」[アル]

 

「そのまえに、わたしとおふろにはいりましょう!」[モモ]

 

「ふふ、そうだったわね。じゃあデミウルゴス、私はモモルとお風呂に入ってくるわ」[アル]

 

「それでは、私もアインズ様にお会いする前にスパにでも行ってきましょうかね────」[デミ]

 

 

 

 




 魔導国編終わり! 

 いやー、勢いでアウラとマーレを妊娠させてしまった。

 次回のドワーフ編では、シャルティアと誰が付いていくことになるんだろう?

 勢いで書いているので、現時点では何も考えてないです。

 頑張れ、私。


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