サンパウロ市内の病院に筋骨隆々な男と長身の男がいた。
彼の名はカルロス・ナカサワ
日系ブラジル人であり、つい2ヶ月前までは日系ブラジル人として初のボクシングのヘビー級世界王者であったがとある理由により引退をした。格闘家、格闘技ファンの間では知らぬ者がいないとまで言われていた大スター選手であった。
カルロスは長身の男に少しだけ待ってもらい、一人の少女が眠っている病室に足を運んだ。
ベッドの傍にイスをずらし座ると、カルロスは寝ている少女の頭を大きな手で優しく撫でる。
「ジュリア…」
小さく少女の名を呟く。
この少女はカルロスの妹であり、3ヶ月前に謎の病に倒れ入院しており、倒れたその日からまだ一度も目を覚ましていない。
金なら余るほど稼いだ
名誉もこれまでもかって位得た
だが、代償にジュリアを独りにしてしまった…
寂しい思いをさせてしまった。
もう…独りにしない、目を覚ますまで傍にいる
だから、ボクシングをやめた。
遅いかもしれないけど、自己満足かもしれない、だが俺にできる事はこれしかない…そう決めた、そう決めたのに…
「報告があるんだ、さっきなスカウトが来たんだ。国連航空宇宙局って所の職員から火星に行かないかって、ジュリアの病気が治るワクチンのサンプルを採りに行く人を探しているらしくてな…だからまた独りにしてしまうかもしれない…もう独りにしないと決めたのにな、嘘つきなお兄ちゃんでごめんな…けれど、もう少しだけ待っててくれ、ジュリア」
そう言いながら、彼女の片手を両手で強く握った。
病室を出ると、出口の傍にスカウトを持ちかけてきた職員の男が立っていた。
「もういいのですか?」
「はい、もう大丈夫です…!」
カルロスが力強く言うと長身の男は頷き、封筒を渡した。
「では、明日からカルロスさんの妹さんをU-NASAに移します。それに合わせてカルロスさんもご一緒に来てもらいます」
数日後、俺はU-NASA内でとある手術を受けた。
火星環境で生身での長時間任務を可能とするためと、とある生物から対抗するための手術だ。
だが、成功生存率は36%と低く、術中死もありえるこの手術を乗り切る事が第一。
見事手術に成功、目が覚めた頃には病室のベッドの上だった。その時にこれで火星に行けるという実感が湧いてきた。
ベッドから起き上がり、立ち上がろうとするもうまく力が入らず転びそうになったが、何とか踏ん張り持ちこたえる事ができた。
とりあえず、リハビリがてらに病棟の中を軽く歩こう…と思い、扉から部屋を出て、ゆっくりと歩き始めた。
それから数ヶ月後、火星での計画、そこにいる生物で人間大のゴキブリを見せらたり、他の乗組員らに紛れて、走り込みや筋トレをしていた。現役の頃の身体に戻す為に、現役時と同じ…いや、現役の時より過酷なトレーニングをこなしていた。それにより、身体はより大きく、力は強くなり、スピードも速く、フルパワーで長時間打てる持久力も身についた。
明らかに現役の頃より強くなっていた。
今日も、トレーニングとして走り込みをしていた。今は、局内のトレーニング施設で5キロのダンベルを持ちシャドーをしていると、後ろから男の声がかかった。
「もしかして、カルロス・ナカサワ?」
その声の主は、鬼塚慶次。ボクシング元ライト級王者だった。
声の主に驚きつつも言葉を返す。
「まさか、こんな所で会えるとはね…鬼塚さん」
「いやいや、俺こそまさかだよ。あの闘神とまで呼ばれた君と会えるなんて光栄だよ」
手を差し出し、互いに握手を交わすと近くのイスまで移動し腰を掛け、これまでどのようにしてボクシングの道を辿ったか、どうしてここにいるのかを話し合った。歳も同じなのかすぐに打ち解け、既に旧知の友人のようになっていた。
「そうか…お前も大変なんだな」
「それはお互い様だよ…成功させたいな、慶次」
「そうだな…じゃあ俺は走り込みに行くよ、トレーニング中に邪魔して悪かったな、カルロス」
「じゃあまたな」
そのまま慶次を見送った後、トレーニングを再開した。
トレーニングを終え、シャワーを浴びて帰る途中に飲み物を買おうと自販機に向かった所にまたもや声が掛かった、今度は聞き慣れた声でだ。
「カルロス」
「あ、アドルフ班長どうしたんですか?」
襟長の服を着て口元を隠した長身の男、アドルフ・ラインハルト。
U-NASAドイツ支局所属であり、俺が属している班の班長である。
結構無愛想で、周りに冷たい態度を振舞っているから勘違いされがちだが、実はかなり優しい人。
なのでいつも俺と出会うと、自販機で飲み物を買ってくれる。
「いつもありがとうございます!」
ポイッといつも買っている飲み物を買い、俺に投げ渡す。
そして必ず
「調子はどうだ?」
こう聞いてくる。
「好調です!」
「…そうか、あまり無理をするなよ」
こう言い残して、去って行く。
周りからはどう思われているかは知らないが、俺らの班員は彼を慕っている。
貰った飲み物を開け、一口飲むと飲み物を誰かに奪われた。といっても犯人は分かってる。
「また俺のを奪うなよ、イザベラ!」
イザベラと呼ばれた褐色肌の女性は奪った飲み物を飲み終えると、そのまま投げ渡した。
「いいじゃん、一口だけなんだから」
笑いながら横に並び歩く、これもほぼいつもの光景だ。
イザベラとは出身国が同じだからか此方に来てから、グイグイと話しかけて来るものなので案外早く打ち解けられた。まあ、打ち解け過ぎたというのもあるのか、俺が怒らないからかもしれないが、ほぼ毎日絡んでくる。
「はぁ…しょうがないな」
「大人はそうでなくちゃね」
「んで、もう終わったのか?」
「終わったよ、ちょいっとハードだったけど」
何気ない会話をしながら歩く、こんな事があとどれだけ出来るか分からない。
ただ、ボクシングでの初めての試合の時に負けたらどうしようとネガティブな事ばかり考えていた時に父親に言われた言葉を思い出した。
『今を楽しみ、今を考えろ、そして今をがんばれ!そうすればなんとかなるさ!』
初めての試合は勝つことが出来た。
その言葉のお陰で、全ての試合に勝つ事が出来た。
全てがうまくいった気がした。
その言葉を信じよう、そうすればジェシカも…。
あぁ…早くジェシカと会話をしたいな。
初めての投稿なんですが、文章って難しいですね!
スラスラと書けてる人マジパナイっす…
誤字脱字があったら宜しくお願いします。
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2話
火星出発当日、戦闘服を身に纏いながらイザベラから貰ったリンゴを頬張りながら宇宙艦【アネックス1号】へ向かっている。
続々と入って行く乗組員に紛れ入り込むと、壁に備え付けられた椅子に座っていき、艦内にシートベルトを閉めていく音が鳴り響く。そして、緊張からなのか全員が静かに打ち上げられるのを待っていた。
そしてその時が来た。
鳴り響く轟音に浮遊感、そして圧し掛かるG。それを数分乗り越えれば…
≪あーあー…あふんっ えー乗組員諸君、シートベルトを外してくれ。あとは火星に着くまで居住エリアで過ごしてもらう。居住エリアは人工的に低重力を作り出してあるが任務まで体が鈍らない様にトレーニングを欠かさない様に!あと―――≫
後は簡単に禁止事項などをゆる~く話していた程度だ。俺はとりあえずトレーニング施設がどうなっているのか気になっていたので軽く見に行ってみようと思う。施設の方に足を向け歩き出そうとした時にガッと腕を掴まれ、その腕を辿って顔の方を向くと。
「イザベラか…ビックリしたじゃないか」
「驚いた?」
悪い笑みを浮かべながら俺の腕を離した。
そういえば、イザベラはエヴァと一緒にいたのでは?隣や周りを見てもいないのでどっかいったのか?
「ん?エヴァなら第1班の子と周ってるよ」
「なるほどね…で、お前はどうするんだ?」
「んー特に何もすることがないから、あんたに付いて行くよ」
「あいよ」
結局この日を含めほぼ毎日イザベラと行動を共にしたのであった。
39日目
≪こちら、艦長室 もうじき火星の大気圏に入る 総員2時間後にAエリアに集合すること! 装備を確認後、プラン
「もうすぐ…」
静かに呟く、静かだったが強い思いが篭った呟きだった。
「俺は特にやる事ないから早めに行くが、どうするイザベラ」
後ろでフルーツを食べていた、イザベラは手に持った食べ残しを全て口に入れ飲み込むと立ち上がり隣まで来た。
「そうだね、私も行くよ」
部屋を出て、Aエリアに移動しようとした時、イザベラが異変に気付いた。
「なんか、騒がしくない?」
「確かに、喧嘩か?」
なら見に行ってみようと言うイザベラを引き止めようとした途端、艦内が大きく揺れ始めた。
「「ッ!」」
「んだ今の揺れは!?」
「爆発!?」
やがて揺れが収まり、居住エリアから続々走ってくる乗組員の姿があった。
≪緊急事態発生!着陸プラン
プランδは、全滅を避けるため100人の乗組員を6つのチームに分け、高速脱出機に乗ってそれぞれ別の方向へ向けて本艦を離れ、着陸を終えたチームから各班、アネックス本艦を目指し集合するというもので、各班は各国代表の幹部乗組員が指揮をとり、40日後にやってくる救助船を待つ。それがそのプランδの計画だ。
「イザベラ、脱出機格納に急ぐぞ」
「あ…」
イザベラの手を引っ張り、先導する。
なんだこの胸騒ぎは、嫌な予感が…何も無いでくれよ。
≪こちら艦長!現在メインエンジンに支障をきたし、徐々に火星地表に下降している。本艦での安全な着陸が困難になったため、総員直ちに脱出機格納エリアへ移動する事!≫
そうこうしている間に脱出格納エリア前の扉まで来た。が先にきていた乗組員が開けようとしていた所に合流した。開けようとした矢先に後ろから青年の声が掛かった。
「待て!アレックス!そこにもゴキブリがいるかもしれねぇって艦長が!…みんな下がってろ」
「ゴキブリ!?」
「ゴキブリって、テラフォーマーのことだよな?」
イザベラの言う通り人間大のゴキブリの事だ。となると先程のメインエンジンもあいつらが!?
ていうか、あいつらがこの艦内に侵入してたのかよ!?
扉を開けた瞬間、目に映ったのはアドルフ班長がゴキブリと対峙している最中だった。
「アドルフ班長!」
「…下がってろ」
あぁ難しいですね。
さてさて、そろそろ戦闘シーンも考えなくては…
誤字脱字感想お待ちしております!
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3話
襲い掛かったテラフォーマーの手がアドルフ班長の頭に触れようとした所に、電気らしきパチッとした音と光を感じた瞬間、テラフォーマーが痙攣し、全身から煙を焚きながら倒れていった。
「つ、つえぇ…」
皆の先頭に立っていた青年は呟いた。
わかる、瞬殺だもんな。
その後、俺達は無事に格納エリアに辿り着く事が出来たが、先程の青年、アカリ君やマルコス君らに話しを聞いたところによると、他のエリアにもテラフォーマーが現れたらしく、何人か殺されたらしい。
「火星に着かないでこのカンジ…」
「あぁ、これは面倒な事になりそうだな」
イザベラと話し合っていると、慶次がこちらに気付き近づいて来た。
「カルロス!無事だったのか!」
「ああ!なにがなんだか訳わかんねぇよ」
慶次にも聞いてみたが、慶次はチラッとテラフォーマーの姿を見ただけで直ぐに逃げて来たらしい。すると怒号のような号令が掛かった。
「全隊ィ!気を付け!!!! まずは深呼吸…ハイ吐いてー吐いて全部吐いてー。はい吐ききったら3秒停止!……オッケィー、呼吸が整っただろ?」
あれは…シルヴェスター・アシモフ。
「えー色々と言いたい事はあると思うが…この通りだ」
テラフォーマーの顔を両手で持ち上げ、全員に見せ付けた。ざわつく乗組員にそのまま静聴するように大声で号令をかけ始めると、小町艦長から作戦の説明が入った。
「これより緊急プランδに則り、6機の高速脱出機による火星への着陸を開始する。そして、これより6機の高速脱出機に乗り込み、班毎に分かれて本艦を離脱する!
日米合同第1班班長
日米合同第2班班長 ミッシェル
ロシア・北欧第三班班長 アシモフ
中国・アジア第四班班長
ドイツ・南米第五班班長 アドルフ
ヨーロッパ・アフリカ第六班班長 ジョセフ
同時に迎撃されるのを防ぐため、6方向に射出されるが、着陸後は無線で連絡を取り合い本艦墜落地点へ集合すること。いいな!」
「「「「はい!」」」」
「…いくぞ!」
脱出機の準備の間に各乗組員らはそれぞれ不安の声を漏らしていた。また別の乗組員は互いの成功、生き残りを祈りながら握手、拳を交わすものがいた。
俺も慶次と拳を交わし、互いの生き残りを祈った。両者無言のままだったが、言わずとも伝わる。それがボクサーだ。
振り返り、高速脱出機に向かうとほとんどの乗組員が座っていた。
「あれ、エヴァは?」
見渡すとエヴァの姿がないので、近くにいたワックに聞いてみると日米班の友人に挨拶に行っているそうだ。とりあえず一番前の左に座る事にし、エヴァが来るのを待つ。
「すみません、遅れて!」
遅れてやってきたエヴァは慌てながらも、通路を挟んで俺の右隣に座った。因みにその隣がイザベラだ。
全員が乗車したことを確認し、ヘルメットを被るようアドルフ班長から言われ、被ると。射出までのカウントダウンの音だろうか、機械音が鳴り響く。
徐々に目の前の射出口のゲートが開き始めた。そのゲートの外脇付近にはテラフォーマーがウジャウジャと群がっている。そして同じ音程だった機械音が一気に高音になるとゲート付近の奴らをミンチにしながら勢いよくアネックス1号から射出された。
「ッ!」
射出速度が速いので、身体に力を入れてしまう。
だが、最初を抜けてしまえば後は楽だ。
数分の間、火星の空を飛ぶと着陸態勢に入る。徐々に降下していき、ドラッグシュート(着陸時に出すパラシュート)を出すと、地面を滑走しながらも速度を落としていき、しばらくすると完全に止まった。
「成功だ。ヘルメットを取ってもいいぞ」
アドルフ班長が指示を出すと。皆取り始め、呼吸が出来るのを確認していた。
「とりあえず、奴らと遭遇せずに済みましたね」
「ああ、俺は着陸成功の報告をする。カルロスは皆と周囲を警戒しといてくれ」
「了解」
周囲を見渡すが、何処も岩、岩、岩山だらけ。だが、見渡しがいいので詮索などはしやすい。
特に奴らもいないことらしので、ここで一旦様子を見るそうだ。
「…来たな」
アドルフ班長がそう言い出すと、周囲からテラフォーマーが複数現れ始めた。
「イザベラ、わざわざサンプルになりに来たぞ」
「ん…本当だ」
「…イザベラとカルロスは薬と網を持って外へ出ろ。それ以外は車内で待機」
「ウッス!」
「了解!」
さてと、サンプル採取開始だ。
あぁ!やっぱり難しいぃ!次回戦闘入っちゃうぅ!
次回は少し遅れますがよろしくお願いします。
誤字脱字感想がありましたらよろしくお願いします。
喜びます。
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4話
【ボクサー-boxer-】
ボクシングの選手のこと。ボクシング選手の中でも特定のスタイルで戦う選手を指すこともある。
ボクサーには大別して2つのタイプがあり、近距離におけるインファイトを好む選手を【ファイター】、相手から距離をおいて戦うことを好む選手を【ボクサー】と呼ぶ。さらに3つ目のタイプとして両方の戦術が出来る選手、あるいはどちらとも判然としない選手を【ボクサーファイター】と呼ぶ。
そして、彼はファイターである。実際に彼は、これまで対戦してきた相手、全員を近距離で粉砕してきた。時に、対策として徹底的にボクサーを貫く相手にだって距離を確実に縮めて倒してきた。そんな彼、カルロス・ナカサワには3つの武器がある。
1つ目【パンチ力】
相手をガードの上から粉砕するほどの圧倒的パンチ力
2つ目【ディフェンス力】
相手がいくら攻撃しようとも、全て避けられ、ガードされる。顔に当たったと思いきや、そのパンチが伸びる方向と同じ方向に顔を背けるようにして受け流す、高等技術を駆使するディフェンス力
3つ目【瞬発力】
相手にいくら距離をとられても瞬時に近付く事も容易に可能であった、爆発的瞬発力
これらの武器を身に纏い、彼は頂点に立った。
だが、それは火星に行く事が決まった事でもう1つ増えていた。
火星に来る前に受けたM.O.手術。人為変態が出来る事により、彼は更に強くなった。
手に持った注射器から緑色の液体を首元に打ちこむ。
すると、額からは徐々に触角らしきモノが現れていき、身体の筋肉が大きく増強され、特に両腕、前腕がその生物を表したかの様に大きく変形していった。
その瞬間に攻撃しようと推定20匹いると思われるテラフォーマーがアドルフ、イザベラ、カルロスらに襲い掛かろうと走り出した瞬間、砕ける音と共に1匹の頭部が無くなっていた。
あまりの出来事に、双方の動きがピタリと止まった。
頭部の無いテラフォーマー前を見てみると、拳を振り戻した一人の人間が立っていた。
南米に位置するアンデス山脈東部の熱帯雨林地帯に生息する。
食性、肉食。
攻撃性、強し。
昆虫類に収まらずカエルなどの両生類、爬虫類をも捕食する。
そして、最強と謳われるパラポネラまでも襲い、捕食することもあり。
最強を食う最強。
M.A.R.S Ranking
---14位---
カルロス・ナカサワ ブラジル
24歳 ♂ 194cm 109kg
M.O.手術 " 昆虫型 "
- ディノポネラ -
「案外脆いな」
一言呟くと、そのまま右足を数ミリ浮かして左足で地面を力強く踏み込む。
踏み込まれた地面は抉れ、目標まで一気に到達する。
着地した右足から左足も着地すると、そのまま踏み込みの勢いを体重に乗せ、左足、腰、左肩、左腕の順に回転させていく。すると、先程まであったテラフォーマーの頭部があっという間に砕け散っている。
更に次は、近くにいたテラフォーマーが殴りかかろうと大きく振りかぶった右腕に合わせ、左半身に重心を落とし顔を左後ろに移動させると、右腕がカルロスの顔に当たらず通過した。瞬間、またもや頭部は粉砕されていた。
あまりに強烈、あまりに強力、それ故に現役時に付けられたニックネームは
【闘神】
人間離れした動き、力を持った彼を讃え、そう名付けられた。
そして、また次の標的に狙いを定める。
数分後には、先程いたテラフォーマーらはサンプルとして全て脱出機に装備されている虫籠の中へ入れられた。
イザベラがテラフォーマーの一部である眼球や肉片を摘み持ちながら観察しているので、汚いから捨てろと注意した所、投げつけて来たので追い掛け回していたら。脱出機からエヴァが顔を覗かせ、移動するから車内に戻ってと言われた。因みにアドルフ班長は戦っている最中に「お前らだけで十分だ」と言い、車内に戻った。
「では、移動を開始するぞ」
俺が最後に席に座ると、脱出機を発信させた。どうやら、アネックス1号へ移動する様だ。
数十分後、走行中に急に
「なぁカルロス」
「なんだ、イザベラ?」
「カルロスって絶対に生け捕りが基準に無ければ絶対に14位じゃないよな、なあエヴァ?」
「う、うん。皆、すごいビックリしてたよ」
「いや、普通だrッ!?」
すると、脱出機が急に左折し始め、車内を揺らした。
左、右、また右と揺られる。少しアドルフ班長へ運転技術を疑ったが、何か理由があっての行動だと信じよう。
「離陸ぶぞ、掴ま―――ン!?おいおい…!?何でだッよッ!」
初めて聞くアドルフ班長の慌てた声に続くように、脱出機が横から大きな衝突音と共に衝撃が俺たちを襲い、脱出機が周りの悲鳴と共にどんどんクレーターの下に落ちていくのが分かった。その時、アドルフ班長が何かに気付き、声を上げた。
「ここはまずい!押し返すぞッ!」
フルスロットルで脱出を図ろうとした瞬間、爆音が聞こえ、後輪と恐らくエンジン部分だろう箇所がやられた。そして、数十分前に見た光景とアドルフ班長が
そして、アドルフ班長が通信していた会話で聞こえた言葉
『ただのゴキブリじゃない…"人間の裏切り者"か、若しくは"火器を得たゴキブリ"か…』
畜生!的中かよ!
そう思っている内に俺らが落ちたクレーター周辺には何処からそんなに出てくるんだって位の軍勢ともいえる程のテラフォーマーの数。そうして、先程俺らを突き落とした脱出機から片腕に3本ずつ計6本の縄を巻いた全身の筋肉が異様に増強されたテラフォーマーと周りから通常型のテラフォーマーが現れた。
「…カルロス、イザベラ」
「了解」
「…待ってな、いい子で」
イザベラがエヴァの頭をクシャっと撫でると俺らは脱出機の上に立った。
「…さて、やる事は1つだカルロス、イザベラ。あの無灯火運転のデブから4班の脱出機を奪え」
「ウス」
「お安い御用で」
「俺は向こうのどう見ても300匹近くはいる害虫共をやる」
あの時に邪魔さえなければアネックス1号へ直行出来たはずなんだがなぁ…あのデブのせいでかなりのロスだ。
ああ…アイツのせいか。
「イザベラはあのデブの周りを頼む」
「オッケィ」
「俺はデブをミンチにする」
お待たせしました。
戦闘シーンって本当に難しいですね。
さてさて、次回が激ムズだぉ…
誤字脱字感想お待ちしてます!
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5話
偉そうに逞しい両腕を組み、こちらを見下ろしている。そして、その周りには通常型テラフォーマーが囲っているが、どうも、動く気配が無いので適当に挑発してみる事に。
「そこのデブと三下共、汚いから消えてくれないか?」
すると、言っている意味を理解したのかは分からないがデブだけが歩いて来た。それを好機とみて、俺とイザベラは脱出機から降りて歩きだす。
「イザベラ、頼んだぞ」
「任せてときな」
俺らがデブとの距離が2mを切った時、イザベラが自身のベース能力を使い瞬時にデブの横を駆け抜けていった。
イザベラのベースとなった生物は"リオック"体長約65mm~80mmまである巨大コオロギだ。食性は肉食で非常に獰猛な昆虫であり、脚力も非常に強力である。その為…
「あーあ、いいの?あっちは大惨事真っ只中だけど」
瞬時に第4班の脱出機の元まで駆けつけ、テラフォーマー共を引き裂きまくってた。
声を掛けたテラフォーマーは無反応で、気付いた時には、腕を振りかぶって殴りかかろうとしていた。時遅し、そのまま顔にクリーンヒット…したと思われたが
「残念でsッ!」
もう一度殴りかかるテラフォーマーだが、またしても
「おい、喋ってる途中で殴rッ!」
当たらない、正確には当たってはいるが全て受け流されている。
混乱するテラフォーマーはもう一度殴りかかろうとした時だった、殴りかかった左腕が肘から先が吹っ飛んだ。
「ったく、人の話し聞けよ…今のは、お前が殴ってきたのを見計らって右アッパーで肘を狙った、一応カウンターってヤツ、お前らには無い技術だ。俺の顔にクリーンヒットしないのも人間の技術」
このデブのパンチはとても単調で、[腕を引く→殴る]とても簡単に見切れ、スリッピングアウェーでパンチを反らす事が出来た。カウンターを狙えたのもこいつの動きが単調だったから。ある意味、実験だったが無事に終えれたので早速もう片方の腕も吹き飛ばす事にした。両腕が無くなったデブは何やら「じょうじ!」と叫んでいるのでそろそろ終わりにする事に
「助けを呼んでいるのか?それは無駄だ、今から俺はお前をミンチにするんだから」
その言葉に続くように、左ストーレト、左右のフック。アッパー、ボディをテラフォーマーの身体に幾度も打ち込むと、周りには肉片があちらこちらに散らばり、目の前には下半身のみが残っていた。
「…やり過ぎた」
変異が終わり、頬を掻きながらイザベラがいる脱出機の方へ行ってみると、案の定彼女の周りには切り裂かれたテラフォーマーが数十体転がっていた。
「お、カルロス!はやかったじゃん」
「いや、ちょいっと実験してたからもう少し早く来れた。さてと…イザベラは動作確認しといてくれ」
「いいけど、カルロスは?」
「俺は…って終わってたわ」
アドルフ班長がいる方へ振り向くと既に焼け焦げたテラフォーマーの死体があちらこちらに転がっている。そして、更に奥を見てみると、もう一機の脱出機が煙を上げており、その隣にも死体が転がっていた。300匹を超える軍勢がいたのにも関わらず、周りの死体は100匹にも満たない。不思議に思ったが、とりあえず脱出機の確保ができた事を伝えにいこう。
「アドルフ班長、脱出機の確保が完了しました」
「そうか…よくやった」
「あいつらは逃げたんですか?」
「ああ…お前、デブを殺した時何か叫んでなかったか?」
殺した時…あ、もしかして…
「言ってました、じょうじって」
「恐らくだが、逃げろ的な合図、言葉だったのだろう。その言葉でやつらを統率していた奴が脱出機で逃げようとしていた。脱出機は何とか壊せたがそいつには逃げられた」
「え、統率してるやつって…ボスってことですよね!?」
「恐らくな…お前に話したい事があるが、それは移動してからする」
「了解です。おーい皆!薬、食料等必要なものを持ってイザベラがいる脱出機に移動してくれ!」
外から声を掛けると、中から安堵した班員らが言われた通りに薬、食料、水などをそれぞれ手に持ち移動を開始した。
荷物を脱出機の中に移し終えると、すぐさま移動を開始した。空での移動をしたかっのだが、翼部分が破損しているため飛行できず。そのため、周囲を警戒しながら陸路を進んでいった。
既に日は沈み、火星に来て初めての夜、先程の事もあったので精神的にも疲れている非戦闘員は眠っており。戦闘が可能である3人は2人で走行、周囲警戒、1人は仮眠をという交代制で休憩を取ることにした。
イザベラを先に寝かせたアドルフ班長は俺に近くに来いと合図を出し、小声で話し始めた。
「カルロス、お前がいなければ恐らくこの班は全滅していた」
「は?なに言ってるんですか?」
「冗談で言っている訳ではない。あの時、お前が殺したテラフォーマーが危険を察知、伝えた事でアイツらは逃走したと思われる。正直お前がこの班にいてくれて助かる」
「…なんか照れくさいですけど、そういって貰えると嬉しいですね」
「ああ…それと、これから本艦へ向かうが、その前に日米班のどちらかと合流したい」
「なぜですか?」
「恐らくだが…裏切り者がいる」
「…マジですか?」
「ああ、俺の推測だが、
「でも、4班は全滅した筈じゃ…まさか、偽装ですか?」
「正解だ、そして第6班はジョセフが明らかに何か起こす。だから、これからは害虫だけでもなく、味方もしっかりと見ておけ…まぁこの班は大丈夫だが」
「…了解です」
正直、仲間の中に裏切り者がいるなんて考えたくも無かったが、恐らくその目的はサンプルをいち早く我が国に持ち帰り、他の国よりも上に立ちたいが為だろう。
あぁ…腹が立つ、そんなにも沢山の犠牲を払ってでも上に立ちたいのか。
胸の奥底から怒りが湧き上がってくる。そんな俺に気付いたのか、アドルフ班長が右腕をあて俺の胸を小突いた。
「この戦い、俺らが勝つぞ」
「はいッ!」
邪魔するやつは誰であろうと殺す、そして俺らが必ず勝つ。
「じょうじ」
展開を考えすぎて遅れました
とりあえず今の所は5班は無事って事で。
それより戦闘が難しすぎます、助けてください。
誤字脱字感想お待ちしております!
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