俺の転生旅記 (ユキユキさん)
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~プロローグ~

リハビリ的な?


普通に生活していた俺は、…唐突に神と自称する兄さんに呼び出された。暇だから転生しろってことらしい、…それも飽きるまで何度も。一つの世界で物語を終えたら再び転生、幾つもの世界を巡って楽しませろと。文句を言った所で神だから意味はなし、…サクッと転生して貰いましょうか!

 

 

 

 

 

 

説明もそこそこに転生の儀式へ、とりあえずスロットを回せと言われたので回してみた。

 

…一つ目、

 

〔神竜族(特殊)〕

 

…と出た。神竜族? と疑問に思えば神からの説明、この神竜族というのはFEの職業《クラス》みたい。俺の種族が神竜族になるようで当たりになるのだとか、成長に限界がないんだって。…ボス級ってヤツなん? …そら凄いわ。しかも竜石なしでも竜に変身出来るとか、…転生先によっては制限があるようだけど。

 

…二つ目、

 

〔KOF〕

 

…何これ? と素直に思った。聞けば格ゲーキャラの技を覚えるようで、どうなるかは転生後の世界次第みたい。…冷静になってみればKOFって知ってるわ、一応…当たりになるのか?

 

…三つ目、

 

〔ときメモ4全技能〕

 

…ときメモ4とかってなかなかにマニアック。神曰くデメリット系技能は全て除外されるか変化をしているとのこと、…大当たりなんだって。

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで最後はダーツ、…手にあるダーツを回る的に向けて投げれば、

 

〔DQ8〕

 

と出た。…何? 最初の転生先がDQ8なの? 時間がないから直ぐに転生させる? 赤子プレイは見るに堪えないから二十歳の姿で、色々と面倒だから天涯孤独が多いとされるパルミドに送り込むと。

 

せめて最後のお願いでステータスを確認させて! とダメ元でお願いしてみれば快諾、…え~と、

 

【ステータス】

名前:ユーキス

LV:1

力:15

素早さ:12

身の守り:13

賢さ:15

攻撃力:19

守備力:18

最大HP:50

最大MP:30

 

【装備】

檜の棒

布の服

バンダナ

 

【スキル】

棒術スキル:0

暗殺術スキル:0

神竜スキル:0

格闘スキル:0

ときメモスキル:0

 

【魔法】

メラ・ホイミ・キアリー

 

【特技】

なし

 

所持金:1,000G

 

…おお! 初期ステータスがめっちゃ高い! 流石は神竜族ってヤツか!! 棒術・暗殺術・格闘が何を示すのかは分からないけど、KOFの誰かになるんだろうな。棒術と言えばビリー・カーン? 暗殺術って誰だ? 笑龍とか? …格闘は多過ぎて思い付かない。神竜はブレス系でも覚えるんか? ときメモは…何だろう?

 

とにかく良いステータスみたいで安心しましたぞ、ありがとう…神よ。魔法でホイミとキアリーっていうのに優しさを感じた。治安の悪い場所だからオマケってヤツ? …それでもありがたいよ。

 

 

 

 

 

 

とりあえずDQ8の世界で頑張ってみますわ。…えっ? DQ8の知識を消すって? …まぁ当然の処理でしょうな。知識があったらツマらないもんね、せっかく行くんだったら自力で楽しまないと。…何? 良い心掛けだって? …いや、それほどでも。

 

ちょっとサービス? マジですか? 内容は秘密? 行ってからのお楽しみ? …そうですか、…分かりました。では、…精一杯生きてみます! 神よ、転生をお願いします!!




のんびりとね。


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第1章 ードラゴンクエストVIIIー
第1話 ~パルミドからこんにちは


ーユーキスー

 

皆さんこんにちは、転生者のユーキスです。神の手により転生したこの世界、苦労も多いですがそれなりに楽しく生きております。俺の生活している町はパルミド、非常に治安の悪い場所です。転生直後は右も左も分からず、ならず者に何度か騙されたりしました。…それでも二年間住み続け、この俺も逞しくなりました。今ではこの町の実力者です、俺に手を出したら地獄を見ますよ?

 

 

 

 

 

 

転生から二年が経ち俺も二二歳、初期から高かったステータスも更に上がり…、

 

【ステータス】

名前:ユーキス

LV:20

力:180

素早さ:183

身の守り:164

賢さ:171

攻撃力:214

守備力:213

最大HP:370

最大MP:245

 

【装備】

毒蛾のナイフ

レザーマント

皮の盾

疾風のバンダナ

疾風のリング

 

【スキル】

棒術スキル:20

暗殺術スキル:20

神竜スキル:20

格闘スキル:20

ときメモスキル:20

 

【魔法】

メラ・メラミ・ギラ・ベギラマ・イオ・イオラ・バギ・ヒャド・ヒャダルコ・ライデイン・ザキ・マヌーサ・マホトーン・マホトラ・バイキルト・マホカンタ・マジックバリア・フバーハ・ホイミ・ベホイミ・キアリー・キアリク・ザオラル・ルーラ・リレミト

 

【特技】

グランドブラスター・スピニングランサー・ムーンスラッシャー・Xキャリバー・炎のブレス・氷のブレス・残影拳・空破弾・ステルス・不屈の根性・ときめく挨拶

 

所持金:35,420G

 

…といった感じの化物ステータスになりました。所謂チートってヤツですね、俺自身もビックリっすわ。

 

KOF系スキルもアレです。棒術はMr.ビッグ、暗殺術はレオナ、格闘はアンディでした。何故にこの人選!? と思いましたがまぁ強いからいいでしょう。神竜スキルはやはりブレス系で強力、ときメモスキルもかなり使えるスキルです。

 

 

 

 

 

 

こんな感じで強くなりすぎた俺は町の者達から畏怖されていたりする。そして…、

 

「…はふん。ただいまぁ~、ユーキス~♪」

 

自宅で自分のことを考えていれば、同棲中の恋人が帰ってきました。彼女の名前はユフィール、町中で当たらない占いをしている美人さん。町中で行き倒れている所を保護したら惚れられまして、…付き合うことになったのだ。ちょいとお馬鹿ですが可愛いから良しとしましょう、…今も抱き着いてきて甘えてきてますし。…神の言っていたサービスとは彼女のことでしょう、…出会い方からの流れがご都合主義っぽいしね。

 

それに…、

 

「…ユフィ、オカエリ。」

 

ユフィールが帰ってきたのを察知して奥からもう一人の美人さん、アモーレが姿を現しました。青白い肌が目を引く彼女は人にあらず、…実は魔物なのです。やはり町の外で出会い慕われまして同居中、町の者達は何も言わない。アモーレは人を決して襲わないし、ここはパルミドで俺の大切な人故に。これもサービスなのかな?

 

 

 

 

 

 

…こんな感じで充実した転生ライフを満喫中。これからもパルミドではあるけど平穏に生活を…と思っていたんだけど、友人のヤンガスがパルミドから消えました。何処に行ったのか? …と思っていたら、友人で何だかんだでヤンガスと良い仲のゲルダが訪ねてきまして、

 

「…ヤンガスの馬鹿がやらかしたみたいでね、北の方へと立ち去ったみたいなんだよ。」

 

とか行ってきました。…心配なんですね? 分かります。

 

 

 

 

 

 

…そんなわけで俺とユフィール、そしてアモーレはヤンガスを探しに北へと向かいます。ゲルダの頼みだし俺もヤンガスが気になるしね、ユフィールも旅行だ! …って喜んでいますし。アモーレも当然一緒に行くことから家を空けることになる、心配なんで管理をゲルダに頼みました。勿論快諾してくれました、…ヤンガスの件は任せてくれよ!



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第2話 ~トロデーンにて……

ーユーキスー

 

ヤンガスを探してパルミドを出て三年。…と言ってもルーラで何度かパルミドの自宅に戻っているが、経過報告の為に戻っているのでパルミドを出ていると表現してもいいと思う。まぁそれはどうでもいいとして、俺達はこの三年間を大いに楽しんできた。各地を観光がてらヤンガスを探したり、町に宿泊するよりも野宿が多かったりと色々あった。アモーレは美人だけど魔物だからね、…気を遣うわけですよ。

 

そういうわけで各地をフラフラとしていて最終的にトロデーンへ流れまして、住み良い感じにユフィールが大層気に入ってしまい一年はこの地にいます。その一年の間に俺はその強さを見込まれて兵士を鍛える仕事を、ユフィールも占い…ではなく魔法についての講義をしていた。この地の人々も良い方が多く、危険ではないとのことでアモーレも一緒に城下で暮らしている。

 

そんな生活の中でヤンガスの情報を日々集めるも行方が掴めず、どうしたものかと考える俺達…というか俺。ユフィールとアモーレはヤンガスのことを忘れているっぽいからね。…見付からないヤンガスが悪い、何処で何をしているんだか。俺もそうだけどゲルダも呆れているぜ? 心配を隠しきれていないけど。

 

 

 

 

 

 

トロデ王に絡まれたり、ミーティア姫に慕われたり、エイト君に師匠と呼ばれたり。充実していたんだけど事件が起きた、それはもう大変なことが。

 

…深夜、城の方から凄まじい魔力の波動を感じた。嫌な予感がしたのでユフィールとアモーレの下へと行けば、二人も魔力を感じていたらしく…震えていた。その直後、圧倒的な魔力の爆発を肌に感じた。俺は素早く二人を抱き抱えて高密度のマジックバリアを張り備えれば、突如巨大なイバラが這うように現れて……。

 

イバラの攻撃を防ぎきることが出来た。…イバラの動きが止まって暫く経ち、危険がないと判断しマジックバリアを解除。落ち着いて周囲を見回してみれば惨劇、トロデーンの全てがイバラに支配されていた。人々もイバラと一体化しているし、至る所にイバラが生えている。この痛ましい光景に声を失う俺達、…これから先どうすればいいんだ?

 

 

 

 

 

 

暫くの間三人で呆然としてしまったけど、気を取り戻して生存者? を探してみれば…エイト君が倒れていた。外傷も何もなし、無傷のようで安心した。エイト君も直ぐに気が付いて捜索に参加、そして見付けたのが緑のおっさんと白馬。聞けば緑のおっさんはトロデ王、白馬がミーティア姫らしい。姿形が変わったとしても無事で良かった、…本当に良かったと思う。

 

落ち着いたであろうトロデ王が今回の件を説明してくれた。…数日前に現れた道化師風の男ドルマゲス、奴がこの惨劇を引き起こした張本人。奴は城に封印されている杖を強奪、その杖の力でトロデ王とミーティア姫に呪いを掛けた。…気が付いた時には自身が魔物の姿に変わっており、ミーティア姫が白馬に変えられていたそうな。ドルマゲスが消えて城がこの有り様、犯人は奴で間違いないだろうとのこと。

 

…そうか、あの男がこの惨劇を起こしたのか。…許せないな、心暖かい人々をこのような呪いに掛けて。恩義あるトロデ王とミーティア姫をこのような姿に変え、ユフィールとアモーレを危険な目に遭わせた。エイト君も何とか無事だったから良かったものの、……ドルマゲスの奴には報いを与えなければならない。今の心情からはこのことしか思い付かん、…覚悟しておくんだなドルマゲスよ。

 

 

 

 

 

 

…とにかくこの場に留まることは出来ない。トロデ王とミーティア姫、この地に住まう人々の呪いを解かねばならないからだ。解呪の方法は分からない、…が掛けた奴は分かっている。ドルマゲスを追って捕まえ方法を聞けばいい、現状それが一番確かな方法だろう。後もう一つ、ドルマゲスの師匠と言われている男が東にあるトラペッタにいるとのこと。その男の名はマスター・ライナス、彼に奴のことを聞くのも手ではないかとトロデ王が言ってきた。

 

そんなわけでドルマゲスを追いつつ、近場のトラペッタへと向かいライナスと会うということにした。このまま見捨てるわけにはいかないので、俺達は護衛という形でその旅に同行しよう。忘れかけていたけどヤンガスの件もある、彼の行方もついでに探さなければ。危険な旅になるかもしれないからユフィール達は…、一緒に行くの? …マジで!?



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第3話 ~トラペッタにて……

ーユーキスー

 

ドルマゲスを追ってトロデーンを発ち、トラペッタを目指している俺達。途中で賊に襲われたが奴は盛大に自爆、死にかけた所でエイト君に助けられた。その賊っていうのが探していたヤンガスで、俺達に気付いたことで自爆したってわけ。助けられた後に取っ捕まえて俺が説教、ヤンガスは土下座をして許しを乞うてくる。その時のユフィールの目、…蔑んだ視線をヤンガスに向けていました。…そんな目、…出来たんだな?

 

ゲルダのことをヤンガスに伝えればめっちゃ顔が引き吊っていた、当然…逃さぬように同行させる。ヤンガスは渋々ながら同行を承諾、命の恩人であるエイト君の子分という形で一行に加わった。…つーか、何を仕出かしたんだ? ヤンガスの奴は。俺達は友を見捨てるようなことはしないぜ? 頼ってくれれば何とかなったかもしれないのに。…パルミド以外で賊は駄目だろ。

 

 

 

 

 

 

ヤンガスが加わった一行は魔物を退治しながら進み、目的地であるトラペッタへと辿り着いた。そのまま町の中へ入ろうとしたトロデ王を止める、怪訝な顔をされたが理由を説明すれば納得。今の姿のままで入れば危害を加えられるかもしれないからな、安全第一と言えば流石のトロデ王もね。…後で食べ物と酒を差し入れるから我慢して貰いたい、勿論アモーレもトロデ王と外で待って貰う。彼女は強いからね、そこらの魔物からトロデ王とミーティア姫を守ってくれるだろう。

 

それぞれと別れてマスター・ライナスを探してみれば、宿屋近くの建物が燃えカスとなっていた。近くの人に聞いてみれば、放火とみられる不審火によって火事となり老人一人が亡くなってしまったらしい。しかも亡くなった老人の名がマスター・ライナス、…探していた人物が既に死んでいた。俺達がトラペッタに着く前日に、…何ということだろうか? もう少し早くこの町に着いていたら話を、…助けられたのかもしれないのに。

 

まだ他に情報がないかと更に町の中を歩いていると、何やら騒がしい声が聞こえてきた。行ってみれば酒場で中へと入ってみれば、ヒゲのおっさんとエイト君が原因のようだ。どちらかというとおっさんの方か? エイト君の顔を見て唸っている、何をしているんだか…。とりあえず間に入って事を治めようとしたのだが、酔っ払い同士が喧嘩を始めましてそっちを治めることに。別に険悪な感じはしなかったし大丈夫だろう、うん。

 

 

 

 

 

 

その後も情報収集に精を出したけど特に成果なし、別れた皆と合流してトロデ王の下へ。忘れずに食べ物と酒を買っていきましたとも。話がてら一緒に野宿ってね、…俺達だけで宿屋に泊まるのもあれだし。皆で仲良く酒盛りをしつつ野宿の方が楽しい、仲も深まるしね。

 

合流をして野宿の準備をし、酒盛りをする前に集めた情報をトロデ王に伝えれば驚いていた。…目的の人物が既に亡くなっていたんだから仕方がないわな、自力でドルマゲスを追うしかなさそうだ。…マスター・ライナスにドルマゲスの人となりを聞けば、正確ではないにしても行動がある程度読めたかもしれないのに残念である。

 

話も終わり酒盛りでも…と思った矢先、町から俺達を訪ねてきた少女がいた。少女の名はユリマ、夢で俺達のことを見てお願いをしに来たそうな。化物姿のトロデ王を見ても騒がずにお願いを頼むか、…なかなかに胆力のある少女のようだ。トロデ王も頻りに感心している、お願いを聞く気満々である。一応急ぐ旅になるのだがまぁいいか、皆もやる気みたいだし。

 

 

 

 

 

 

…でお願いを聞いてみれば、占い師である父のことらしい。高名な占い師である父の調子が悪く、原因は水晶玉なのではないかとのこと。調べてみればガラス玉に変わっており、それじゃあ調子が悪くなるのも当たり前。代わりとなる水晶玉を探してきて欲しいみたいだ、…そうは言われてもツテがないんだが。そう思ったんだが、夢のお告げで水晶玉の眠っている場所を知っているとか。

 

水晶玉の眠る場所は、町の南にある大きな滝の下の洞窟。…そんな場所では彼女じゃ行けないわな、魔物が出ると思うし。心当たりがあるのなら良いだろう、俺達で水晶玉を取ってきてあげようじゃないか。…ユフィールよ、水晶玉を入手してもお前じゃ駄目だと思うぞ? いい加減、占い師から足を洗えって……。



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第4話 ~滝の洞窟

ーユーキスー

 

トラペッタに住む占い師の娘ユリマ、彼女のお願いで水晶玉を探すことになった。彼女曰く、町の南にある大きな滝の下の洞窟に水晶玉が眠っているらしい。そういうわけで、俺達一行はドルマゲス追跡の前にこの洞窟を目指すことになったのだ。

 

道中ユフィールが占いを熱く語り、お願い事の水晶玉の他にもう一つ入手した場合欲しいとか。…いや、水晶玉を入手したからって占いが当たるとは限らないんじゃないか? はっきり言って才能がないと思うけど。そう言えば、やってみなければ分からないと不貞腐れている。…フニフニフニクラ言ってるから駄目なんじゃん、キタマクラ~って何やねんと思う俺とアモーレ。………ユフィールの占いは謎だからなぁ~、…彫刻していた方が良いんじゃないか?

 

 

 

 

 

 

…で件の洞窟に辿り着いたわけで。ミーティア姫を危険にさらすわけにはいかないとのことで、トロデ王は入口で待つとのことだ。…弱いにしてもここらは魔物が多い、万が一も考えて護衛にアモーレを置くのが定石だな。言わずともアモーレはそのつもりのようだし、トロデ王も頼りがいのあるアモーレをニヨニヨ見とる。仲良きことは良きことかな…ってな。

 

そういうことでこの洞窟に挑むのは先頭をエイト君、続いてヤンガスにユフィール、殿を受け持つのが俺となった。俺が先頭になるのが一番良いのだが、エイト君に経験を積ませなきゃならん。彼はいずれ、ミーティア姫を守る兵となる身。まぁ今もそうだけどこれから先…、俺達が共にいるっていうのはない。教えられる内に教えておかなければ、…共に旅をしている間に。

 

 

 

 

 

 

松明を手に洞窟へと入っていくとそこそこ幅の広い通路、…この広さならば戦闘になっても大丈夫そうだ。そんなことを考えながらエイト君を先頭に進んでいく、…おっ? 広い空間に出たな。…見たところ、…魔物が多く潜んでいるっぽいが。…って正面突破かい! エイト君が脳筋だ、ヤンガスと同レベルだよ!

 

俺は極力戦闘に参加せず基本はエイト君とヤンガス、サポートにユフィールの布陣。襲い掛かってくる魔物を素手で殴っていくエイト君、…背にある剣は飾りですか? 師匠と呼ばれているだけあって色々と教えたけどさ、…いつの間に残影拳を覚えたの? 縦横無尽に肘打ちをするエイト君に目を丸くする俺。

 

比べてヤンガスはヤンガスのままで安心した。大木槌で叩き潰す様は圧巻と言えるだろう、激しく動くエイト君にどっしり構えるヤンガスか。…でサポートのユフィールはというと、…まぁ頑張っている。エイト君にピオリム、ヤンガスにスカラと補助魔法をしっかり唱えていた。本人は魔物と一緒に踊ったり、石で躓いて会心の一撃を繰り出したり…。え…? 遊び人? と思う程の行動が目立っている。彼女は一応魔法使い枠の筈、…スキルで遊び人と占いっぽいのがあるけど。

 

 

 

 

 

 

途中で通せんぼをしていた魔物がいたけど、その目の前で暴れたからかいなくなっていたな。目の前で仲間が粉砕されてりゃそうなるか、特にエイト君とヤンガスが恐いだろうね。…そんなことがあったりしたが順調に奥へと進み、大きな滝のある最奥部へと辿り着いた。…滝の前に大きな水晶玉があるけれど、明らかに怪しいよね? 罠なんじゃないの? と警戒するが、水晶玉に目の眩んだユフィールがそれに手を伸ばし……。

 

 

 

 

 

 

魔物に襲われましたよ、滝の主を自称するザバンって奴に。何か怒りまくっているけどどうしたんだ? と聞けば、水晶玉の持ち主に天誅と聞く耳持たずに襲い掛かってきた。…自ら名乗ってきたんだから話を聞けよ!

 

襲い掛かってきたザバンなのだが、…俺が手を出す前にエイト君達が倒してしまった。ザバンの攻撃はエイト君達には全くといっていいほど通用しなかった。爪での攻撃は避けられるか受け止められるのどちらか、ギラを唱えればユフィールのマジックバリアで蚊に刺された程度に。驚愕するザバンに全員で攻撃をすれば為す術なし、苦し紛れに黒い霧を出してきたがエイト君の前で掻き消える。…そして沈黙、ほぼ瞬殺でした。やるじゃないか皆!

 

 

 

 

 

 

倒されたザバンは冷静になったようで、聞く耳持たずに襲い掛かったことについて謝ってきた。十数年前に滝壺で寝ていたところ、水晶玉が落ちてきたらしく傷付いてしまったらしい。誰かにぶつけられたと憎しみが募り、この水晶玉を囮にずっと待っていたんだって。そんな時に俺達が来たもんだから勘違いをして…とザバンが語った、…奴も被害者なんだね。とりあえず和解して水晶玉を貰い、俺も持っていた特薬草を数束渡したら喜んでいた。

 

何はともあれ水晶玉を入手した、ユリマの所へ戻ることにしようか。



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これまでのステータス

【ステータス】

名前:ユーキス

LV:28

力:270

素早さ:285

身の守り:251

賢さ:263

攻撃力:309

守備力:300

最大HP:423

最大MP:298

 

【装備】

毒蛾のナイフ

レザーマント

皮の盾

疾風のバンダナ

疾風のリング

 

【スキル】

棒術スキル:20

暗殺術スキル:30

神竜スキル:30

格闘スキル:30

ときメモスキル:30

 

【魔法】

メラ・メラミ・ギラ・ベギラマ・イオ・イオラ・バギ・バギマ・ヒャド・ヒャダルコ・ライデイン・ザキ・ザラキ・マヌーサ・マホトーン・マホトラ・バイキルト・スカラ・ピオリム・マホカンタ・マジックバリア・フバーハ・ホイミ・ベホイミ・ベホマ・キアリー・キアリク・ザオラル・ルーラ・リレミト

 

【特技】

グランドブラスター・スピニングランサー・ムーンスラッシャー・Xキャリバー・ボルテックランチャー・炎のブレス・氷のブレス・赤焔のブレス・残影拳・空破弾・爆震・ステルス・不屈の根性・ときめく挨拶・強さの見極め

 

────────────────────

 

【ステータス】

名前:エイト

LV:8

力:31

素早さ:26

身の守り:21

賢さ:28

攻撃力:36

守備力:39

最大HP:57

最大MP:38

 

【装備】

なし

皮の鎧

皮の盾

皮の帽子

なし

 

【スキル】

剣スキル:0

槍スキル:0

ブーメラン:0

格闘スキル:10

勇気:8

 

【魔法】

メラ・ギラ・ホイミ・キアリー・ルーラ・リレミト

 

【特技】

残影拳

 

────────────────────

 

【ステータス】

名前:ヤンガス

LV:8

力:40

素早さ:23

身の守り:23

賢さ:17

攻撃力:58

守備力:37

最大HP:66

最大MP:18

 

【装備】

大木槌

旅人の服

皮の盾

皮の帽子

なし

 

【スキル】

斧スキル:0

打撃スキル:15

鎌スキル:0

格闘スキル:0

人情:4

 

【魔法】

なし

 

【特技】

ハートブレイク

 

────────────────────

 

【ステータス】

名前:ユフィール

LV:20

力:48

素早さ:91

身の守り:38

賢さ:89

攻撃力:77

守備力:104

最大HP:145

最大MP:110

 

【装備】

愚者のタロット

みかわしの服

キトンシールド

銀の髪飾り

ハートのリング

 

【スキル】

タロットスキル:20

扇スキル:10

杖スキル:10

格闘スキル:10

天然:30

 

【魔法】

メラ・メラミ・ギラ・ベギラマ・イオ・ヒャド・ヒャダルコ・ザキ・ラリホー・メダパニ・マヌーサ・ルカニ・マホトラ・バイキルト・スカラ・ピオリム・マジックバリア・ホイミ・ベホイミ・キアリー・キアリク・リレミト・トロヘス

 

【特技】

不運の占い・強運の占い・水飛翔・残影拳・さそう踊り・不思議な踊り・会心のズッコケ・お昼寝

 

────────────────────

 

【ステータス】

名前:アモーレ

LV:17

力:52

素早さ:104

身の守り:51

賢さ:83

攻撃力:80

守備力:112

最大HP:231

最大MP:117

 

【装備】

マグマの杖

踊り子の服

シルバートレイ

珊瑚の髪飾り

破幻のリング

 

【スキル】

杖スキル:20

弓スキル:10

爪スキル:0

格闘スキル:10

小悪魔:25

 

【魔法】

ギラ・イオ・バギ・バギマ・ザキ・ラリホー・メダパニ・マヌーサ・マホトーン・ルカニ・ルカナン・バイキルト・スカラ・スクルト・ピオリム・マホカンタ・マジックバリア・マホアゲル・ホイミ・メガザル・リレミト・ボミオス

 

【特技】

炎の矢・残影拳・投げキッス・ぱふぱふ



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第5話 ~南へ……

ーユーキスー

 

滝の洞窟にて主であるザバンを撃破、そこでお告げ通りに水晶玉を入手した。ユフィールがめっちゃ物欲しそうに見とるがやらんよ? ユリマに頼まれた物だし。しかもお前の占いはタロット、水晶玉での占いは出来ないじゃん。…やるんならタロット占いが当たるようになってからにしろ、…いちいちむくれるな! …ヤンガスもニヨニヨすんな!

 

 

 

 

 

 

ユフィールをあやしながら戻ってきたトラペッタ、エイト君を先頭に真っ直ぐユリマの家へと向かう。出迎えてくれたユリマは俺達を歓迎してくれた、そしてその父親である高名な占い師のルイネロさんも。…って酒場にいた髭のおっさんじゃないか、…ただの酔っ払いかと思っていたよ。

 

ルイネロさん曰く、ガラス玉でも俺達が来ることぐらいは分かると言う。しかもユリマのお願いを達成してきたことも分かっており、お節介な奴等だと言ってきた。本当ならばもう本気では占わない筈だったみたいだが、俺達が洞窟へ行っている間にユリマと話し合い考えを改めたようで。それらの礼の為に占ってくれるみたいではあるが、もう夜も遅くなるから明日ってことで家に泊めてくれた。トロデ王達には悪いけど、好意を無下には出来ないからな。

 

 

 

 

 

 

そして次の日、ルイネロさんが占ってくれた。その結果は俺達が求めていたもので、…ドルマゲスの行く先。奴はトラペッタの南にある関所を突破、更にマスター・ライナスを殺した犯人もまたドルマゲス。野郎…、とんでもないことをしたようだ。

 

ルイネロさん曰く、その関所の先にはリーザス村があるとのこと。そこへ行けば何かしらの情報が手に入るのでは? と助言された、確かにその通りだな。奴が南へ行ったのなら、リーザス村にて目撃情報があるかもしれない。悪い情報ではあるが俺達の行く道が定まった、トロデ王に報告をして旅の準備を始めなければ。

 

宿泊と占いについてルイネロさんにきちんと礼をして、ユリマと二人で見送って貰った。ユフィールが別れ惜しそうにしていたけど気にしてはいけない、占いについて色々と聞きたいってだけだから。…本当に占いの才能なんざ殆んどないんだから辞めればいいのに、…と思っていたことが顔に出ていたらしくまたむくれた。だって本当のことじゃん、ウニイクラとか言って外しとるじゃん。戦闘ではなかなかに活躍しているけど、それ以外で当たったことがあるんか? …え?

 

 

 

 

 

 

ユフィールの駄々っ子パンチを軽くあしらいながらトロデ王と合流、占いの結果を報告したら驚愕していた。そして自分の師を殺したという事実に憤慨、奴を追うぞと興奮し始めたので宥めた。…まぁそう言ってくるのは分かっていたから準備万全、トロデ王の言うように直ぐ出発といきましょうかね。

 

トラペッタの南にある関所へ向かっている途中、何かデカイスライム? のような奴に襲われた。頭に生クリームが乗っているプリンのような不思議な奴、しかしなかなかに凶暴な奴。その巨体を駆使して果敢に体当たりを繰り出してくる、当たれば一堪りもないだろう。あ…、ヤンガスが痛恨の一撃をまともに食らって目を回している。…コイツ、滝の主であるザバンよりも強いんじゃないか?

 

ヤンガスがやられて浮き足立ったところでルカナン、エイト君達の守備力が下がった。そこに追撃を加えようとするプリン擬き、エイト君は目を回したヤンガスを守ろうとしているがこれはヤバイか。

 

…しかし意外なことにそこへユフィールが乱入、無謀にも残影拳とかって大丈夫なのか!? と思った矢先、その一撃を食らったプリン擬きは吹っ飛ぶ。…バイキルトとスカラを自分にかけた上だな? …やるじゃないかユフィール!

 

その一撃で持ち直したエイト君達、ヤンガスもエイト君とアモーレのホイミで復活。そのままお返しとばかりに大木槌の一撃、続いてエイト君の残影拳。アモーレがバギでその巨体に傷を与えて、トドメにユフィールがメラミをぶちかました。最後のメラミが過剰だったらしく、プリン擬きは燃え尽きた。…ちょいと危なかった所があったけど、俺抜きで勝つことが出来たのは良いことである。

 

俺とトロデ王は馬車からその戦闘を見ていたわけで、彼等の勇姿にトロデ王はご満悦。ミーティア姫も何やら安心しているようで、ブルル…と鼻息を荒くしていた。…後の危険はないようだ、さぁ…リーザス村を目指そうか。関所の様子も気になるし、…どんな感じになっているのかね?



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閑話 ~仲間達の話し声《その1》

ーユフィールー

 

ユーキスと出会って恋人になって、…もう五年も経つんだねぇ~。ゲルダちゃんの頼み事でヤンガスを探して三年、後半の一年はトロデーンでの生活だったねぇ~。

 

王様も姫様も良い人だし、エイト君も城の人達も良い人だった。…けど、…あのピエロは許せないよね? 城をめちゃくちゃにしてさ。

 

ピエロの後を追う途中でヤンガスを見付けて、トラペッタに行って洞窟にも行って。ユリマちゃんの頼みを叶えたらライナスって人の亡くなった真相を知って、あのピエロはヤバいよね?

 

…次はリーザス村が目的地になるのかな? …わくわく♪

 

 

 

────────────────────

 

 

 

ーアモーレー

 

彼ト出会ッテ、私ハ変ワレタ。ユーキスハ凄イ人、私ト同ジデ人トハ違ウ。私ハ彼トユフィールニ付イテ行ク、ソレガ私ノ望ミ。

 

…ヤンガス探ス、ゲルダニ頼マレタ。ソノ途中ノトロデーンデ事件ニ巻キ込マレル。…ソノ時、…トテモ恐イ力ヲ感ジタ。アノ力ハ……。

 

王様ガ小サナ魔物ノ姿ニ変ワッテ可愛イ、コレカラガ大変ダカラ私ガ守ッテアゲヨウ。人ニハ色々ナ考エ方ガアル、…大半ハ魔物ヲ恐ガルカラ。

 

次ノリーザスデ何ガ待ッテイル? …嫌ナ予感ガスル。

 

 

 

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ーエイトー

 

一年前のある日、三人の男女がトロデーンを訪れた。人を探して各地を巡っており、その途中でこの地へ。男の人はユーキスという名でとても強く、人としても出来た方でトロデ王とミーティア姫にも気に入られた。パートナーであるユフィールさんがトロデーンを気に入り、この地を拠点に人を探すようだ。

 

…その後ユーキスさんに色々と教えて貰った、まるで兄のような懐かしい雰囲気を持つ不思議な人。ユフィールさんとアモーレさんも良い人だし、最近はとても充実した日々であり毎日が楽しかった。……あの日までは。

 

…呪いでトロデーンが滅んでしまった、…皆がイバラに囚われて物言わぬ姿に。トロデ王は化物に、ミーティア姫が白馬へと変えられてしまった。何故か僕は無事でユーキスさん達も無事であった、一体…何が起きたんだ?

 

惨劇の犯人はドルマゲスという名の道化師、僕達は奴の行方を追うことに。ユーキスさん達も同行してくれるということで、これ程頼もしいことはない。

 

道中ユーキスさん達の探し人であるヤンガスを一行に加え、トラペッタにいるマスター・ライナスという人の下へ。そこで色々と知ることが出来た、ドルマゲス…! 奴をこのままにしてはいけない!!

 

次の目的地はリーザス村か、…何もなければいいけど。

 

 

 

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ーヤンガスー

 

訳ありのならず者達が集まるパルミド、そこでの生活には不自由等はなかった。ゲルダとの関係も悪くなかったし、ユーキスの旦那とはギブアンドテイクの良好な関係と言えよう。ユフィールの姐さんには振り回されたし、アモーレの無自覚な悩殺にも堪えきった。何だかんだで楽しかった、…そんな日々だった。

 

しかししょうもないことでドジを踏み、よくして貰った皆に迷惑は掛けられないとパルミドを発つ。あっちこっちをフラフラと約三年間、金も何もかもも無くなってしまい……。

 

初めて人を襲って大失敗、死にかけたが助けられた。命を助けてくれたエイトの兄貴に一生着いていくぜ! …と決意をし、再会したユーキスの旦那達にこってり絞られた。…ゲルダが恐い、…どうすれば?

 

…とりあえず訳あり旅に同行することを決め、今に至るわけだがこれから先どうなるんだ? …ドルマゲスがライナスって奴を殺してどうのって、…とんでもないことに巻き込まれている気がする。

 

 

 

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ートロデ王ー

 

平和であった我がトロデーンが滅んでしまった、…ドルマゲスという奴の手によって! しかも奴は、ワシと可愛いミーティア姫に呪いをも掛けおった! 許すまじ、ドルマゲス!!

 

しかしながら希望はある、ユーキス達が力を貸してくれるとのことじゃからな。…待っておれ、ドルマゲスよ!!

 

…と意気込みはあるのじゃが旅は辛いのぉ。アホには襲われるし、マスター・ライナスは亡くなっとるし、トラブルだらけじゃわい。これもそれもドルマゲスが悪いんじゃ!

 

…おおアモーレ! お主は優しいのう、これからも姫共々よしなに頼むぞ!!



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第6話 ~リーザス村にて……

ーユーキスー

 

トラペッタの南にある関所は普通に破られていた。その跡地にいた人から聞いたが、幸いにも死んだ人はいなかったようで。…この先にあるリーザス村が心配だ、何も起きてなければいいけど…。

 

 

 

 

 

 

…で俺達一行はリーザス村へと辿り着いた、しかし二人の子供が通せんぼをしていた。エイト君達とどうしようかと考えていたのだが、その子供達は後から来た婆様にしこたま怒られて泣き出した。その後に何かを思い出したようで走り去っていった、…何だったのだろうか? あの子供達は。

 

子供達が去った後に話を聞いてみれば、最近…この村で不幸があったようだ。…この村の領主であるアルバート家、そこの長男が何者かに殺されたらしい。…つい最近、似たようなことがあったと思うのだが。…まさかドルマゲスがまた? と思うのは流れとして間違っていない。

 

殺された長男の名前はサーベルト、村人の信頼が厚い好人物であったよう。妹がいて仲が良く、その妹は兄の死で落ち込んでいるみたいだ。妹の名前はゼシカ、…気は進まないが話を聞くことは出来ないだろうか? …屋敷は村の奥、…行ってみよう。

 

 

 

 

 

 

屋敷に行ってみたら、当然のことながら重苦しい空気。まぁ長男が亡くなったとのことだからな、頼るべき次期当主を亡くした現当主は悲しいだろうさ。勿論使用人達も同じであろう、仲が良いとされる妹は言わずもがな。

 

そんな時にも関わらず、現当主であるアローザさんは会ってくれた。悲しみの中にあっての毅然なる態度、…強い女性なんだな。話を聞いてみれば村で聞いたままのことを返された、違うことと言ったら妹のことだろうか? アルバート家の家訓を守るように言ったら不貞腐れ、部屋の前に子供を張り付かせて閉じ籠っているとのこと。…呆れているような悲しんでいるような、複雑な顔をしとる。

 

ゼシカにも聞けるかと部屋の前へと行ってみれば、先程の子供達が通せんぼ。ゼシカは誰にも会いたくないと言っていたらしく、子供達は扉に張り付いて聞く耳持たず。…慕われているようだね、妹のゼシカはさ。

 

 

 

 

 

 

どうしたものかと考えていたら、エイト君の相棒であるトーポが飛び出して何処かに行った。慌てて皆で探していれば、ひょっこりと姿を現した。何やら咥えているようだがと思えば手紙のようで、エイト君が最初に読んでから直ぐに渡された。

 

手紙の主はゼシカ、書き出しの始めに遺書と書かれていた。内容的には兄の仇を討つまでは戻らない、まずは東の塔へ行く…と。そして母であるアローザさんに対しての謝罪、ポルクとマルク…子供達に対しての謝罪。…これって不味いんじゃないの? …とりあえずは子供達に見せないと。

 

見せてみれば嘘つきと言われ、一応確認してみると言ってから驚愕。部屋にゼシカがいなかったようで、ポルクという名の少年は焦りまくっている。そして焦りながらも考えた結果、俺達に東の塔へ行ってゼシカを連れ戻してと頼んできた。東の塔の扉はポルクが開けてくれるとのこと、勿論…俺達は快諾をした。

 

 

 

 

 

 

ポルクを一行に入れて東の塔へ、そこにゼシカがいるようではあるが果たして…。彼女が無事であるよう祈ることしか出来ない、犯人がドルマゲスであるのなら楽観視は出来ないからな。…奴は知る限り一人を確実に殺している、…それ故に。

 

これから先、何が起きるか分からない。皆に気を抜かぬよう進言をしてから、目的地である東の塔へと向かうのであった。



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第7話 ~東の塔

ーユーキスー

 

道中何事もなく東の塔へ到着、入り口となる巨大な扉の前へと辿り着いた。見た限りは普通の扉のようだが、ヤンガスが開けようとするもビクともしない。…どんな仕掛けなんだ? と思った時、同行してきたポルクが前へと出てきて扉を開けた。…上げ戸かよ! ポルクは得意気だが、俺達はユフィールを除いて仕掛けに呆れた。

 

ポルクは扉を開けると、後のことは俺達に任せると言って村へと戻っていった。誰かを護衛に…と考えたのだが、風のように走り去っていってね。子供というのは恐れを知らないね、羨ましい限りだ。ポルクが無事に村へと着くよう祈りつつ、俺達は東の塔の最上階を目指しますかね。

 

 

 

 

 

 

火の息を吐く蛙の魔物に冷たい息を吐く小悪魔、全体攻撃を仕掛けてくる魔物が多い。しかも背後にはホイミスライムが控えていて、中途半端な攻撃をしていれば直ぐに回復してしまう。みんな善戦するけども時間がそれなりに掛かってしまう、これでは最上階へ向かうのに時間が……。

 

ゼシカがいる可能性がある以上、時間を掛けるわけにはいかない。そんなわけで皆に声を掛けて前に出る、今回は俺が先陣を切って無双しよう。討ち洩らしはエイト君達に任せる、…遅れるんじゃないぞ!

 

相手が息を多用するのであれば、こちらも同じくブレスを多用しよう。MPの消費はないからガンガン吐けるぜ? …とのことで、炎のブレスで魔物を焼き払いながら進む。俺の無双する姿にエイト君達は、ウンウンと頷きながら流石と尊敬の眼差しで見てくる。…その中でもエイト君のポケットから顔を覗かせているトーポからは、尊敬とは違う畏怖の念を感じる。……不思議な鼠よのう。

 

 

 

 

 

 

俺の無双により東の塔を素早く踏破、最上階に辿り着いたわけだがゼシカ…女性の姿はない。ただポツリと一つの石像が佇んでいる、両目が赤い宝石の美しい女神像? それに見惚れていると背後から物音が、振り向いてみれば一人の女性が。…彼女がゼシカなのか?

 

しかし彼女の様子が変だ、…って俺達のことを敵として見ている!? 兄を殺した盗賊って俺達は違う! 誤解を解こうにも彼女は俺達に向かってメラを放ってきた。それを散開して避けるも彼女は更にマリオを高めて…、これは流石にヤバいんじゃないか? 俺やユフィールはともかくエイト君達が! …そう思った時、

 

『待て!!』

 

何処からか青年の声が。

 

その声は暴走しているゼシカに語り掛ける、青年の声を聞いたゼシカは戸惑う。どうやらその声は亡くなった彼女の兄であるサーベルト、彼女に対して止めろと言うが止まらぬようで…。既に高まった魔法、メラミに近いかそれ以上のモノが俺達に向けて放たれてしまい…。それに目を剥いて怯むエイト君達だが、俺は前に出て素早くひのきの棒を取り出しグランドブラスターの一撃を放つ。俺の強力な棒術スキルで打ち消して事なきを得る、…危なかったな。

 

 

 

 

 

 

冷静になったゼシカへ青年の声は語り掛ける、俺達にも聞いて欲しいそうだ。青年…サーベルトは語る、彼は死の間際にその魂の欠片をリーザス像が預かってくれたと言う。リーザス像の赤い瞳が光り、俺達にとある光景を見せてくる。そこには…、やはりアイツの姿が…。

 

ドルマゲス、ドルマゲスがサーベルトを殺す様を俺達は見た。殺したサーベルトを見下ろして笑い、そして…消えていく奴の姿を。俺は知らぬ内に拳を握り締めていた、…ドルマゲスに対しての怒りが募る。…ドルマゲス、…相対した時に覚悟するといい!

 

光景が消え、サーベルトの魂はゼシカに別れを告げて天へと還っていく。自分の信じた道を行け、兄であるサーベルトの最後の言葉。それを聞いたゼシカは泣き崩れる、俺達はそれを見守るしか出来ない。

 

 

 

 

 

 

悲しむ彼女に言葉を掛けたいがね、…それは出来んわけよ。故に俺達はこの場を去ることにした、…今は存分に泣いた方がいい。今はただ、…泣いた方がいいんだ。



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第8話 ~ポルトリンクにて……

ーユーキスー

 

兄との別れに悲しむゼシカを置いて俺達は東の塔を出た。立ち寄ったリーザス村でこのような事実を知ることになるなんてな、ただ…情報が手に入ればいいと考えていたのに。…ドルマゲス、…奴は危険だ。

 

村へと戻ってきた俺達は、頼み事をしてきたポルクに報告をする。多少…内容を誤魔化したりしたが、ゼシカは無事であると言えば心底ホッとしていた。安心したポルクは俺達に礼を言い、ささやかな報酬として宿屋の部屋を取ってくれたとのこと。小遣いをはたいたとかって、…口は悪いけど良い子だねぇ~。

 

 

 

 

 

 

次の日、ゼシカは無事に戻ってきたのかを確認する為に屋敷へと行ってみた。行ってみればゼシカは無事に戻ってきていたみたいだけど、母親であるアローザさんと言い争いをしていた。サーベルトを悼む悼まない、家訓よりもサーベルトの仇を討つ方が大事。サーベルトは仇討ちを望んでいない、それよりも家訓に従いサーベルトの死を悼むべき。

 

最終的にはサーベルトの言葉通りに自分の信じた道を進む、サーベルトの仇討ちが自分の道と言い切ったゼシカ。それに対してアローザさんは、ゼシカをアルバート一族とは認めないから出ていけと言った。…見た感じ見事に決裂、ゼシカは怒り心頭のままに自室へと戻った。

 

暫くしてから私服? に着替えたゼシカが出てきて、ポルク達に謝った後…アローザさんに捨て台詞を吐いて出ていってしまった。…これからどうなるんだ? リーザス村は? ゼシカは?

 

 

 

 

 

 

多少の気まずさがあったが、俺達はアローザさんに挨拶をしてから屋敷を出た。ポルク達にも声を掛けてから村を出た、…行き先はポルトリンクで決まりだな。そこで船に乗って大陸を渡ろう、何となくだけど…この大陸には奴がいないと思う。まぁ船へ乗る前に情報収集はするけど、…というわけでポルトリンクへと向かおう。

 

 

 

 

 

 

一年ぶりぐらいになるかな、ポルトリンクへ来るのは。久々に鼻腔をくすぐる潮の香りが心地好い、ユフィールも鼻歌を口ずさんでいるし。…やはり海はいいよな、爽やかな感じがさ。…さて、定期船は…っと。

 

定期船乗り場へと行ってみれば、何やら揉め事が起きているよう。関わりたくはないが、定期船に乗らなければならないからな。仕方なしにそちらへと向かえばゼシカがいた、海の男と押し問答をしている。…あのお嬢さんは揉め事が好きなんか? …しかしまぁ退治がどうのって言っているようだけど。

 

遠巻きにその様子を見てどうするかって話し合っていると、何やらキョロキョロとしだして…って目が合った! 案の定…ニコニコしながら駆け寄ってくる、その時…ある部分の暴れっぷりが凄かった。………ごほん! 駆け寄ってきたゼシカが言うには、海に魔物が出る為に出航が出来ないようで。自分が出ようものなら周りが必死に止める為にそれが出来ない、だから代わりに倒すか追い払うかをして欲しいとのこと。

 

俺達も定期船に乗りたいからね、その頼みを了承して魔物退治へ。定期船に乗って沖へ出てみれば、海中から巨大なイカの魔物が出現した。訳の分からんことを言って襲い掛かってくるが、奴の炎の息はフバーハの前に微弱、一〇本の触覚からなる攻撃もピオリムとスカラで避けつつ防ぎきる。後は全員にバイキルトを、攻撃力が上昇した所でタコ殴りをすれば奴は沈黙。危なげなく倒せばゼシカは大喜び、

 

「みんな強いのね! …ユーキスと言ったかしら? 積極的ではないけれど、徹底したサポートを見れば分かる。貴方が一番なのね!」

 

と言って、俺の腕を取り興奮している。…因みに俺も若干ながら興奮していたりする、…だってゼシカの巨乳に俺の腕が挟ま………ってユフィール! メラミはやめろ!! 流石の俺も火傷するから!?

 

 

 

 

 

 

巨大なイカの魔物は正気を取り戻した。…操られていたんか、…殺さなくてよかった。…で正気を取り戻した彼が言うには、海を歩く道化師野郎に操られたとのこと。操られていたとはしても迷惑を掛けたのは事実、お詫びとして金のブレスレットを置いていった。こちらもベホイミで回復してやったら、お礼を言って海の中へと帰っていった。…悪い奴じゃなかったみたいだね、彼も災難だったな。

 

…にしてもドルマゲスの奴、やはり海を渡り別大陸へ行ってやがったのか。………パルミドは大丈夫だよな?



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