ボーカロイド達の日常 (新参者)
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初めての出会い
ひらり、ひらり、桜が散っている中、とことこ私達はアスファルトで舗装された道を歩く。そんなに暑くないし、荷物も筆箱だけだから重くないし、入学式も終わったら直ぐに帰れるし、今日はいい日。くしゅん、とたまに花粉やほこりでくしゃみが出るけどそんなには気にならない。今日はそんな日。入学式にぴったりな日。
「ミク!!」
そんな陽気の中、後ろの方から声をかけてきた。
「あっ!!ぐーーーみぃーー!!」
振り返って見てみるとぐみがおーい!!といいながらこっちに向かって走ってきた。私も負けじと手を振り、駆け出す。
「はぁ……はぁ……先に行っちゃうからビックリしちゃったよ。一緒に行こうって言ったのに……」
「あー、ごめんごめん。ついうっかりー」
そんな事言った覚えはないけど、ぐみが言うならなんかそんな気がしてきた。
「はぁ……ま、まぁいいけどさ……ふぅ、じゃあ行こっか」
「そうだね!!」
私がそう言うとぐみはニッコリと笑った。それを見て私も嬉しくなった。
私達が通うこの学校は新しいところじゃないし、家から遠いけど私は好きだ。自然は豊かだし、ぐみもいる。あと、新しい友達もたっくさんいるし、楽しみ!早くお話したいなぁ。ぐみは勉強熱心だから高校の勉強に不安を持ってたけど、真面目だなぁ。そんな事を思ってたら学校に着いて、気がつくとクラスが発表されていた。
私は校長先生が話してる間に考えていた自己紹介を頭でいっぱいに膨らませながら席に座り、クラス表を見てみる。
「あ、ぐみって隣のクラスか……」
少しがっかりだけどこういう事もあるよね。でも隣のクラスだから喋れる機会もあるし!
「ねぇねぇ、アナタってここに座ってる人?」
そんな事を考えてると白髪の少女が私の肩をちょんちょんと突いてきた。可愛らしいその少女は首を傾げてこちらを見ている?
「…………中等部の人?」
私がぽろりとそう漏らすと腕をブンブン降って、声を張り上げた。
「…………私はこれでも高校生なんだって」
プイっと顔をそむけ、ほっぺたを膨らませている。失礼にもその顔が可愛い。
「ご、ご、ごめんなさい……」
私は慌ててブンブンと頭を縦に振る。その姿勢を見て彼女は納得いったのか笑顔で手を差し伸べてきた。
「私の名前はIAよろしく」
「私は初音ミク!よろしくね!」
私達はそれぞれ席について先生を待ちつつ、中学校時代の話に花を咲かせた。
「ぐーーみぃーーー!!」
「ちょっとミク!急に抱きつかないで!」
「いーーじゃーーん!!」
「良いわけ無いでしょ!!」
私達はぐみが終わるまで外で待っているとぐみがやってきた。
「GUMIさん、そちらは先程話していた初音さんですか?」
「およ?あなたは誰?」
ぐみの後ろの方から聞き慣れない女の人の声が聞こえてきた。ぐみの肩越しに覗くとそこには黄色い髪をした可愛らしい女性が立っていた。
「はじめまして。私は鏡音リンです、初音ミクさんですよね?よろしくお願いします。して、あなたは?」
鏡音リンと名乗った少女は私の後ろに立っていた少女へと目を向ける。
「私はIA。鏡音リンさんね、よろしく」
「よろしくお願いします、IAさん」
二人とも軽いお辞儀をしてにこりと笑った。
「それじゃあ一緒に帰ろうよ!」
私は階段の方に駆けながら三人の方へと向いた。すると黄色い髪の少女は少し残念そうな顔をして、頭を深々と下げた。
「ごめんなさい、私、待たせている人がいるの。だから今日は一緒に帰れないんだ……」
「そ、そっか」
「ごめんなさい、せっかく誘ってくれたのに」
「い、いいの!いいの!それじゃあまた今度学校でね!!行こっか二人とも」
「えぇ、それじゃあリン。また明日」
「また明日ね」
「えぇ、さようなら」
彼女は頭をもう一度下げると駆け足で去っていく。その姿を見て、なんとなくなんだけど心がモヤついた。
百合とか目指してみる。皆の身長とか歳とか性格とかの設定があれば幾分か真っ当に書けるのにな
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何時もの時間
私とミクはリンと別れた後、IAさんと三人で一緒に帰る事にした。三人で一緒に帰るといってもIAさんは校門までしか一緒じゃなくてそこからは二人で帰る事になった。ミクは新しい友達と帰れない事が少し残念そうだったけど仕方無いね。
「ぐみぃ、他に誰か友達出来た?」
「ううん、リンだけ」
「そーなんだー私はIAだけじゃなくて色んな人と話が出来たよ!!」
ミクはくるくると笑いながら今日起きた出来事を嬉々として話す。別段面白いという話では無いのだけれど、違うクラスになってもう話す事なんて無いのかなって思ってたけどなんだか何時も通りの日常になりそうで安心した。
「ぐみぃ?なんで笑ってるの?」
「んー?ミクの話が面白いからだよ」
「そーでしょ!ふふっ!!あ!ルカだ!!」
ミクは急にとことこと駆け出すと遠目に見えるピンクの髪の女性に手を振りながら近づいていく。私も小走り
で近づき、ミク同様に手を振る。
「こんにちはルカ」
「こんにちは二人とも。今日は入学式?」
ルカは優しく微笑み、私達に手を振る。
「そうなの!新しい友達も出来たし、明日からまた楽しみ!」
ミクはさっきまで息を切らせていたけれど、今は打って変わってニコニコと笑っている。そんな表情を見ると、私は心の何処かが少しモヤついた。
「そう、良かったじゃない。GUMIはどうだった?新しいクラス馴染めそう?」
「え?う、うん。ミクとは違うクラスだったけど、友達も出来たから」
「あら、二人とも違うクラスだったの?それは残念だけどもう友達なんて出来たの?良かったじゃない」
「そうそう!ぐみとは隣のクラスだから少し残念だったけど……でもね!可愛い子とかとね、友達になれたの!」
「羨ましいわ、今度私に紹介してね。それじゃあね二人とも」
「さよなら」
「バイバイ!」
ルカはそう言うとまた優しく微笑み歩いていった。
「ねぇねぇ!今度ルカにさリンとかIAとか紹介しようよーー」
「そうだね……」
何でだろう、心の何処かでそれを望まない私がいた。
暫く歩いてミクと別れた後、私は家へと帰ってきた。帰ってスマホを見るとメールが来ていた。差出人はミクで件名は無し。何だろう?と思って開いてみるとよく分からない文字列が並んでいる。よくよく見てみるとなんだか見覚えのある文字列の様にも思えた。
「誰かのメアドかな……?」
そんな風に思っているとミクから件名無しで更にメールが送られてきた。
『さっきのはね、IAのメアドなの!交換したからぐみにも教えてあげるね!後、持ってたらリンのメアド送って!』
開いてみるとこんな文面が送られてきて、私は少し溜息の様な笑顔が漏れてしまった。本当に友達作るの得意だなぁって
『ごめん、持ってないんだ。交換したら教えるね』
私はスマホをベットへ放り投げるとそのまま、ベットに倒れ込む様に寝転んだ。
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初めての友達
入学式が終わってから一週間が経った。
私達は何時も通り学校に行き、それぞれクラスで過ごし、また一緒に帰る。そんな生活を送っていた。友達と一緒に帰ろうと誘われた時も何度もあった、でもこれまでも私達二人は一緒に帰っていたし、これからも二人で帰るのだろうと思い、そのつもりでいた。だから毎回、友達との誘いは断り、一人校門で待ってた。
「お待たせ、帰ろっか」
「そうだね」
私達二人はいつも一緒、それは揺るがないと思っていた。
「ねぇ、レン。これからは友達と帰るから無理に待たなくていいよ」
「え……?」
彼女がその言葉を発する、その時までは……
入学式後日、私達はクラスで少し話題になった。別に疚しい事をした訳では無い。ただ、昨日の帰りに私が二人いた、という噂があったのだ。結論から言えば、そんなホラー現象は無く、私こと鏡音リンは他クラスの生徒である鏡音レンと一緒に下校していたというだけ。それ以上でもそれ以下でも無かった。その時、クラスの人から様々な事を根掘り葉掘り聞かれた。双子なのか?どういう関係なのか?他にも兄弟姉妹がいるのか?などである。
(あぁ、またか)
こういう事は幼稚園の時からのお約束事である。学校が変われば、クラスが変われば、属するグループが変わればよく聞かれる何時もの事だった。幼稚園の頃はそれに関するいじめなどがあったけれど、今は私達を珍しいものを見るかの様に接し、話した内容が次の日には学校中に広まり、先生に知れ渡っている事もある。
「まぁ、続きは今度ね」
私が話を適当に切り上げると不服そうな反応をしながら散っていく。所詮そういう者たちばかりなのだ。誰もいなくなると、ふぅと溜息をついて次の授業を行う先生を待つ。すると、一人の女性が私の席に座り、授業の道具を探し始めた。
「大変だよね、こんなの毎日やってたら気が滅入っちゃうでしょ?」
「ううん、もう慣れてるから」
隣の彼女は教科書を机に出し、シャーペンを取り出すとこちらに体を向ける。
「そっか、でも辛い事があったら何時でも言ってね」
「あ、うん。ありがとう……」
彼女はそれだけ言うと体を前の方へ向けて、ペン回しを始めた。
私は少し驚いて彼女から目を離せなかった。今までとは違った反応をする人間が、僻みや妬みの視線を向けてこない同性が、初めてだった。私だって瓜二つの人間の事が気になるし、聞くと思う。それでもそんな淡白な反応をされて、優しくしてくれるなんて意外だった。一体どんな事に興味を持っているのだろうか?何が好きなのだろうか?彼女が気になった。
「あっ」
すると、彼女の手からするりとシャーペンがこぼれ落ちる。咄嗟に私は手を伸ばし、シャーペンを空中でキャッチする。
「よっと……」
「おぉ、すごい!ありがとうリン」
私はGUMIの本当に嬉しそうな顔を見て、とくん、と私の心は僅かに跳ねた
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白髪少女の光と影
桜も散って、青い葉が顔を見せ始めるようになった。入学式からはそんなに時間が経ってないように思えるけど凄く長い時間を過ごしたように感じる。学校にいると毎日が楽しくて楽しくて、仕方ない。
「ちょっといあー?話聞いてるの?」
「聞いてるよ聞いてる」
それもこれも彼女のお陰だ。初めて話しかけてみた時は子供っぽいと罵られたものだが、それも今となってはあまり気にならない。
「それで、今日のお昼御飯は何を食べるの?」
「IA、昼御飯は今食べてるよ」
「あれ?じゃあ夜御飯の話だっけ、ごめんなさい、今日は駄目なの」
「やっぱりなにも話聞いてないじゃん!」
あれ?そうだったっけ。話は聞いていたつもりだったのにな、何の話だっけ?
「IAさん、今日の放課後に時間があれば遊ぼうという話ですよ」
「あ、そうなんだ」
確かに言われてみればそうだったかもしれないし、そうじゃ無かったかもしれないし、まぁどっちでもいっか。
「ごめんなさい、この後用事があって早く帰らないといけないから今日は行けない」
「えぇー、そんなのつまんないじゃーん!!いあだけだよー、こんなに断ってるのー!リンだって最近は遊ぶようになったんだからーー」
「…………ごめんなさい」
そう言われてしまうと本当に申し訳ない、私だって行けるのなら行きたい、ミクと一緒に。
「まぁまぁ、また今度にすればいいじゃん。ね、IA」
「そうですよ、人には人の都合もありますし」
「…………うん、でも今度は絶対に遊ぼうね!」
「うん、そうだね」
ミクはころころと表情を変えて、最後はにかっと笑いかけてきた、私はそれに精一杯の笑顔で応じた。
「ただいま……」
私は返事が無いと知りながら鍵をしめ、靴を脱ぎ、独り言の様に呟く。そして荷物はリビングに起き、台所へと直行し夜御飯の支度を始める。すると奥の部屋から物音がして、すぐに足跡が近づいてきた。
「今日のご飯は?」
「……麻婆豆腐」
「あっそ」
その足音は一瞬止まったかと思うと足音の主は私に姿を見せることなくして遠ざかっていった。私はそれを気にする事なく、淡々と作業をする。
私と私の母親とは普段からこれ程の会話しかしない。他にあるとしたら、掃除しろ、洗濯しろ、あれこれ買ってこいというばかりである。他にあるとしたら、それは学校の成績についてとやかく言う時だが、それも稀である。私は昔に少しいざこざがあり、それから母親との仲が疎遠になった。私はまだ未成年でもあり、お金もなく、他の親戚も知らない。だから、こういった生活を長い間している。その為、残念な事に友人と遊ぶ機会はあまり無い。彼女達には悪いがこれから先も遊びの誘いを断る事になるだろう。
「本当にごめんなさい……」
毎日断っても、毎日誘ってきてくれる彼女に対して、私は本当に申し訳無い気持ちでいっぱいだった。
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鏡の歪み
四月はもう下旬に入り、クラスの周りの人達は五月の連休に胸を躍らせていた。バーベキュー、旅行、カラオケ等々、様々な娯楽を挙げてまだかまだかとここ数日、クラスの話題で持ち切りになっている。
「レンは何か連休中にするの?」
「いや、別に」
「そっかぁ、だったらさぁ、一緒に何処か行こうよー」
「あぁ!それいいねぇ!!何処にする?」
ボクの周りでもそういう話題は出てくる。意図した訳でもないのに、何故か自然とそんな雰囲気になる。
「ならさぁー、私、リンさんと遊んでみたいんだよね!」
「あ、私もー!」
なんで、こんな展開になったのだろうか。面倒で仕方ない。別に次の連休に外に出る予定は無いし、リンも家にいる筈だ。
「でもさぁ、リンさんってさ、最近友達作ったらしいし、多分その人達と遊ぶと思うよ」
ぴたり、とその言葉が脳内で止まる。
「え、そうなの?だったら難しいかなぁ。私、リンさんもそうだけど、その友達の事すら知らないからなぁ」
「だよねぇ、私も隣で楽しそうに話してるのを遠目に見ただけだからなぁ……ってレン?」
頭は冷えるが、思考が高速で回る。いつの間に?と思ったが、その兆候はあった。
あの、GUMIとかいう女だ。
最近一緒に帰らなくなって不審に思っていたが、彼女達の言っているのは恐らくソイツのことであろう。あの不真面目そうな女の何が良いと言うのか。
……一回調べてみるのもいいか?この連休中に会ってみてソイツの動向を伺ってみるか。
「ねぇレン?どうしたの?ぼーっとしてさ」
「分かった、リンにその事伝えてみる」
「え?それってどういう事?」
「そのグループに入れてもらえるか聞いてみる」
「本当に!?やった!!」
「レンありがとう!」
「ううん、別に」
他人なんかの為に動かない。ボクはボクとリンの為に動くだけだ。
リンが遅れて帰ってくるとボクはリンに五月の予定を聞いてみた。
「五月の連休……?あー、うん。確かにGUMI達と遊ぶ予定入ってるけど、なんか用事とかあったかな?」
ボクの眉は微かにピクリと動いた様な気もするが、それはともかくとして今日あった事を話した。
「一緒に遊びたい……か。うーん、多分大丈夫だと思う。けど、GUMIに連絡入れておこうかな」
彼女はスマホを取り出してポチポチと入力している。数分してスマホをポケットにしまうと彼女はにっこりと笑った。
らしくないな
これまで二人っきりで彼女の隣に居続けていたボクは反射的にそう思ってしまったが、出来る限りの笑顔を見せて部屋に戻った。
暫くしてソイツから『確認取れた、全然大丈夫!』という返信が来たらしく、こうして五月の連休の予定が決まった。
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