ちょっとおかしなサーヴァントの居るカルデア (作者B)
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這い寄る太陽

諭吉十人をささげて爆死した記念。
むしゃくしゃして書いた。


人理継続保障機関・カルデア

 

人類の営みを永遠に存在させるために設立したこの機関で証明された衝撃の事実。それは「2016年 人類の絶滅」だった。

「近未来観測レンズ・シバ」が観測した、西暦2004年の「日本のある地方都市」に存在する「聖杯」という名の観測不能領域。これを人類絶滅の原因と判断したカルデアは、「霊子転移(レイシフト)」による時間遡行での歴史修復を決定した。

これは、カルデアに残ったただ一人のマスターの、人理を救う物語である―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいはーい! いつもコンコン。貴方の頭上に這い寄る太陽、タマモちゃんでーす!」

 

 カルデアの外は、今日も今日とて相変わらずの吹雪。

 そんな中ハイテンションで現れたのは、青いビキニの上に無地のTシャツを羽織り、室内だというのにビーチパラソルを開いている狐娘。

 本人曰く、真名は『玉藻の前』だそうだけど、前に特異点で見たのと印象違い過ぎない?

 召喚されたとき、水着姿だったもんだから、びっくりしたわ。

 

「他所で召喚された(わたくし)の話をされましても……いいじゃありませんか。(わたくし)だって、いつもの堅苦しい着物は脱ぎ捨て何もかも開放的になったりしますよ」

 

 いや、言いたいことはわかるんだけどね。

 

「まあ、(わたくし)のことはいいじゃありませんか。それより、一つ聞きたいのですけれど」

 

 うん? 何?

 

 

 

「――うふふふふふ。さあ、ますたぁ。私たちの愛の巣(マイルーム)へ参りましょう。」

 

 

 

 ああ、これ? 玉藻が来る前にきよひーと世間話してただけだよ。

 

「いや、どう会話してたらマスターがぐるぐる巻きにされてるんですか。しかも、ご丁寧に下半身を(りゅう)に変化させて拘束してますし」

 

 いやぁ、なんでだろうね――痛たたたたっ! 清姫サン!? 流石にそれ以上締め付けられると、中身が出ちゃうんだけど!

 

「……あら、玉藻さん。いらっしゃったんですね? 男女の逢引を邪魔するだなんて無粋だこと」

「そんな、着物の裾で口元を隠しながら悪女ムーブしてる人に逢引と言われましても。(わたくし)には蛙を捕食しようとしている蛇にしか見えないんですが」

「捕食……男女……愛の巣……二人きり……まあ、玉藻さんってば、真昼間からはしたない」

「えぇー…今の(わたくし)が悪いんですか?」

 

 二人が会話に花を咲かせているせいか、いつの間にか俺の目の前にも花畑が見えてきた。

 あれ? あそこに居るのは所長じゃないですか。おーい、所長ー! え? こっちに来るなって? そんな釣れないこと言わないでくださいよー。

 

「――って、そろそろマスターがやばそうですね。清姫さんには悪いですが……日輪の力を借りて、いま必殺の『太陽拳』!」

「きゃぁッ!」

 

 玉藻が顔の前で横向きにダブルピースすると、彼女から強力な光が放たれた。

 てか、俺も眩しい! 目が超痛い!

 

「正気に戻られたところで、さっさとずらかりますよ、マスター!」

「ああっ、お待ちになって、ますたぁ――うぅっ、何も見えません……」

 

 技の巻き添えを食らって碌に目を開けられない俺、玉藻に手を引かれるままこの場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふぅ、さっきは流石に死ぬかと思った。

 

「先程死にかけたのにあっさり流すとか、修羅場慣れしすぎてません? それはそうと、清姫さん。今日はいつもよりテンション高かったですね。変化の方も、いつもは頭から蛇になっていくのに今日は脚からでしたし」

 

 ああ、それはたまたま清姫の宝具の話になって、『俺、蛇人間(イグ)より蛇体(ラミア)の方が好きだなぁ』って言っただけだよ。

 

「相変わらず、なんてチョロ――こほん、マスター想いだこと。ですが、それだけですと、ハイテンションだった理由には弱いような」

 

 後はそうだな……しいて言えば、ラミア形態になってくれた清姫を見て、思わず『その蛇肌を俺が体温調節したい』って言ったくらいかな。

 

「完全にそれじゃないですか! そんなワンチャン告白に聞こえなくもないかもしれないようなこと言われれば、清姫さんだって暴走しますよ!」

 

 えー、俺としては、純粋に、健全に、体を温めてあげたいって言っただけなんだけど。

 

「はぁ……マスターの性癖は置いておくとして、ただでさえ女性が多いんですから、少しは自重してください。そんなことでは、いくつ命があっても足りませんよ?」

 

 あんな素直に好意を向けてくれるのに、それを無碍には出来ないかなーって。

 第一、そんな大げさに言うほどじゃないよ。あとは精々、酒呑に神便鬼毒酒片手に酒の席へ誘われたり、エリちゃんに貧血になるくらい血を吸われたり、丑御前に監禁されて駄目人間にされそうになったりとか、そのぐらいだし。

 

「やだ、ウチのマスター、命狙われ過ぎ。今日のところは御自身の部屋で休まれた方がいいのでは?」

 

 いや、それはあまり意味がないんじゃないかな。

 

「はい? それはどういう――」

「見つけましたよ、我が子(マスター)

 

 ふと、俺を照らす廊下の光が影で遮られ、視界が薄暗くなる。

 振り返ると、そこには源頼光、もとい丑御前(・・・)が笑みを浮かべて立っていた。

 

「うわっ! びっくりした……もう! アサシンでもないのに、気配もなく背後に立つのやめていただけます?」

「部屋で待っていたのにいつまでたっても帰って来ず。母は心配したのですよ?」

「しかも(わたくし)のことが視界に入っていないし……マスター、もしかしなくても、ついさっき言っていたのは」

 

 うん。マイルームに返ると高確率で丑御前がいるからね。

 

「うわぁ……」

「さあ、マスター! 食事、運動、排泄、おはようからおやすみまで、すべてこの母が面倒を見てあげますよ!」

 

 いや、流石にトイレの世話は恥ずかしいな。

 

「ツッコむところはそこですか!? ええい、もう! 『呪相・雷天』!」

「なっ!?」

 

 丑御前が俺ににじり寄っている隙に、玉藻の呪術が丑御前を拘束した。

 

帝釈天(インドラ)がなんぼのもんじゃい! ほら、行きますよ!」

 

 そして俺はまたもや玉藻に手を引かれ、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 それからというもの……

 

「はい、これ。私の部屋の鍵よ。え? どういう意味かって? それは……もう、女の口から言わせないで。うふふ」

「そこ! 息を吸うようにマスターを誘惑しない!」

 

 マタ・ハリから彼女の部屋の鍵を受け取ったり

 

「あら、マスター。お困りでしたら、私の箱庭で匿って差し上げましょうか?」

「それって、もしかしなくても監禁ルートと変わらないんじゃありません?」

 

 幼いメディアに魔女の箱庭へ招待されそうになったり

 

「主殿ー! 隣に居る狐は狩ってもいいのでしょうか? とても良い鼓が作れそうです!」

「質問しながら抜刀するんじゃありませ――うわッ! 危なッ!」

 

 バーサーカーよりも人の話を聞かない牛若丸に(玉藻が)襲い掛かられたりしたのだった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

――――――――――

―――――

 

 

 

 

 

「ぜぇー、はぁー、ぜぇー、はぁー」

 

 玉藻、お疲れ様。

 それにしても、今日はやけに多かったな。まあ、これだけ来れば今日はもう大丈夫でしょ。

 

「ふぅー、ようやく息が整った……。今日は、マスターの愛され具合を改めて再確認させられましたよ」

 

 いやー、マスター冥利に尽きるね。あっはっは!

 

「何を呑気なことを。そもそも、マスターが何でもバッチ来いなスタンスなのも悪いんですよ? 嫌なそぶりを見せなければ、相手は知らず知らずのうちにエスカレートしてしまうんですから」

 

 玉藻が窘める様に注意する。確かに玉藻の言いたいことは分かる。だけど――

 ……俺は、嫌って思ったことなんて一度もないよ。

 

「あら、そうなんですか?」

 

 うん。困ることはあってもね。

 だってそうでしょ? みんな、俺みたいな(・・・・・)ただの人間を、大なり小なり信頼してくれる。

 

「……」

 

 サーヴァントだけじゃない。スタッフの人も、たまたま生き残っただけの俺を信じてくれてる。だから、俺もみんなからの想いを余すことなく受け止めたい。

 本当に、ただそれだけだよ。

 

「……」

 

 俺の独白を静かに聞く玉藻。

 そんな真面目に聞かれると、ちょっと気恥ずかしいな。

 

「……随分とまあ、志が大きいこと」

 

 すると、玉藻は俺の身を覗き込むように顔を近づけてきた。

 

「身に余る愛は貴様(・・)自身を滅ぼすというのに」

 

 そう言って笑みを浮かべる玉藻。だが、その表情は先程までの燦々としたものではなく、あざ笑うかのように口角を吊り上げ、薄眼から覗くその瞳は金色に染まる。

 

 刹那 場の空気が一変する。

 

 空気は水気を帯び、降り注ぐ光は朝露のベールで揺らめく陽射しとなり、辺り一帯が神聖な空間へと変容する。

 息苦しい。呼吸ができない。

 目の前に居るのは玉藻。だというのに、まるで巨大な太陽を前にしているかのようで、今すぐにでも目蓋を閉じて目の前の光景から逃げたくなる。

 

 

 

 だが俺は、それでも彼女から目を反らさなかった。

 

「かっかっか、"(わらわ)"をも飲み干そうとするか。よいよい。そうでなければ、出張ってきた甲斐が無いというもの」

 

 俺の様子を見て満足したのか、近づけていた顔をすっと離す。すると、いつの間にか、目も表情もいつもの玉藻に戻っていた。

 

「では(わたくし)も、すべて(・・・)を受け止めてくれるのを楽しみにしておりますわ。マスター」

 

 いつもの小悪魔めいた口調で玉藻は背を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラス:キャスター

真名:玉藻の前/白面金毛

 

 太陽神としての側面が強化された姿。より正確に言うならば、玉藻の前の皮を被った白面金毛。

 大化生・金色白面は本来であれば聖杯戦争でも呼び出すことのできない神霊・悪霊・妖怪・荒御魂の類であるが、自身の分霊(玉藻の前)の霊基に入り込むことで無理やり召喚に応じた。

 水着姿なのは、太陽の力が霊基に影響を与え、座に登録されていた『太陽に最もふさわしい姿』が反映された結果である。

 本人曰く、あと2回変身を残しているらしい。

 

スキル

・単独顕現:A

 単体で現世に現れるスキル。これにより、『分霊の皮を被る』という滅茶苦茶な方法でも現界することができる。本来はある特殊クラスしか持ちえないスキルだが――

 

・呪術:EX

 

・変化:EX

 借体成形とも呼ばれている。

 ただの人間なら目の前に立つだけで蒸発し、サーヴァントであっても手を払うだけで消滅させる。そんな規格外の力を持つ白面金毛は、召喚に応じるために、同じく規格外のランクであるこのスキルによって、神霊からサーヴァントへと自らの意志で(・・・・・・)スペックを落としている。

 




ざっくり補足しますと、玉藻の前と白面金毛の関係は「白面金毛(本体)と玉藻の前(アルターエゴ)」みたいな感じです。



とりあえず勢いだけで書いたので、よさげなら続ける。


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