人類の片翼 (雪楓❄️)
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設定&0話

新作アンケ、色々あったんですけど魔法科と迷った結果こっちを書きます!
理由は特にないんですが、進撃の巨人って僕の中で1番読んでいてこうだったらなぁと思うことが多い作品なので書くことにしました。





ソラ=ノーレンス(19歳)

 

調査兵団兵士長補佐。

リヴァイの調査兵団入団後に、壁の外から来た謎多き人物。壁外に居たときの記憶は全く存在せず、自分のことはイマイチよく分かっていない。

戦闘能力はリヴァイと引けをとらず、その性格から周りからの信頼は厚い。

リヴァイと共に「人類の双翼」と呼ばれている。

 

性格

温和。時々、訓練兵の訓練にも赴いておりそのため新兵とも関わりが深い。

 

容姿

身長は170ぐらい。

茶髪で、長さはミカサぐらい。東洋人のような顔立ちで、かなりの美人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「………あなたは生きなさい」

 

1人の少女の視線の先には、大量の銃を持った兵士に囲まれた女性。

そして、その子は1人の巨人の手によって運ばれている。

 

「………お母さん!!」

 

その子の悲痛な叫びも届くことなく、その子の母親は撃ち殺された。

 

 

 

 

(…………またあの夢)

 

最近よく見る。

小さな女の子の夢。

 

「…………嫌な夢だ」

 

ソラは寝汗を拭うと身支度を整え、いつもの様に兵服に着替え部屋を出た。

 

「…うげ、リヴァイ……」

 

ソラは自分の部屋を出るなり朝からリヴァイに出会ってしまった。

彼の名は、リヴァイ=アッカーマン。

人類最強の兵士?と呼ばれ、調査兵団の兵士長でもある。何故『?』が付いているかと言うと、昔はそう呼ばれてたんだけど今はソラと一緒に『人類の双翼』なんて呼ばれ方をよくされているるから。

実際、実力は同じぐらいだけどリヴァイの方がまだまだ兵士としては上だと思う。

 

「……なんだ、てめぇか。」

 

リヴァイの最大のダメなところ。それは、コミュニケーション能力のなさ。

よく『人類最強の兵士』とか『人類の双翼』とか言われてみんなからの憧れの視線を集めているが、彼の本性を知ったらみんな失望するだろう。

 

「……さっさと、行くぞ鈍感ボケ」

 

「はいはい、ちびっ子兵長」

 

「……おい…待て」

 

「ほら、早く行きますよ」

 

ソラはちょっと怒り気味のリヴァイを置いて、先に班員の元へ向かった。

 

 

 

「ソラさーん!」

 

班員の元へ辿り着いたソラを見つけるなり、突撃をかましてくる女の子。

 

「ペトラちゃん!!」

 

ソラは突撃してくるペトラをそのまま抱きしめる。

 

「おい、ペトラ。ソラさんはお前だけのもんじゃねーんだぞ」

 

「オルオ。男の嫉妬ほど見苦しいもんはねーぞ」

 

「ん?オルオも来る?」

 

ソラはグンタに弄られているオルオに向かって、ペトラを抱きしめていない方の手を広げそう言った。

 

「なっ。い、いいっすよ、俺は」

 

「そう?残念」

 

顔を真っ赤に染め上げて焦っているオルオに更に追い討ちをかけるように、ソラはあからさまに残念がる。

 

「おい……無駄なことやってないでさっさと掃除を始めろ」

 

「あー、リヴァイ。1番最後に来たのにその態度〜?」

 

ソラより数分遅くリヴァイはここに到着した。

殆どソラと出発した時間は変わらなかったのに、随分と時間がかかったものだ。

多分、エルヴィンの所に行っていたのだろう。

 

「……ちっ。お前もさっさと持ち場につけ。さもなければ、お前の分の紅茶は俺が飲む」

 

「……なっ!?それは困るよ」

 

ソラは急いで掃除道具を持って、自分の持ち場へと向かった。

 

「ソラさんって、時々分からないよね」

 

「あぁ。」

 

みんなのソラに対する謎は深まるばかりである。

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ。終わった、終わった」

 

ソラは自分の持ち場の掃除を終え、外の景色を眺めることにした。

 

(………壁の向こうはどんな景色なんだろう)

 

巨人によって奪われた人間の生活区域。

100年前、人間は突如として現れた巨人によって殆ど全てを奪われたと言われている。

住む地を奪われた人類は3つの壁を築き、その中へと逃げ込み生き延びた。それが今の人類。

現在、人類は壁内にしか居ないと言われている。ちなみに、壁外に出ると死罪にかけられるとかなんとか。

ソラも危うく殺されるところだった。実際、エルヴィンが救ってくれなければどうなっていたかわからない。

そんな壁内の人類の中で、唯一壁外へ赴くことを許された人類。それが、調査兵団。

今のところ、壁外調査による成果というものは上げられておらず調査兵団の存続も危うかったり危うくなかったり。

ちなみに、存続出来ている理由にソラとリヴァイの存在が大きかったり大きくなかったりもする。

 

「おい………掃除は終わったんだろうな?」

 

窓の外を眺めながら黄昏ていると、見回りに来たリヴァイに見つかった。

 

「もちろん、ほら見てみなよ」

 

ソラは自慢気にリヴァイに手を広げて見せる。

 

「……………チッ。いいだろう、紅茶はいれてやる」

 

「今、舌打ちしたよね??酷いなぁ、頑張ったのに」

 

(………こいつ、適当な癖して無駄に丁寧だな…。それに、ムカつく野郎だ)

 

リヴァイはソラの言ったことを無視して、次の場所へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ。やっぱり、一仕事終えたあとの紅茶は美味しいねぇ」

 

「……お前が居なければな」

 

「そんなこと言っちゃって」

 

掃除を終えたソラとリヴァイはティータイムと洒落込んでいる。

他の班員は、皆訓練に勤しんでいる。

 

「……昔はさ、こんな物誰でも飲めたのかな?」

 

「あぁ?」

 

「今はさ、贅沢品って呼ばれてるし兵団でも飲んでるの私たちぐらいでしょ?巨人が出現する前は、どうだったのかなって思ってね」

 

「……知るか」

 

そう言うとリヴァイは私から視線を外して、紅茶を啜った。

 

(…………外の世界はどうなってるんだろう)

 

壁の外の世界から来たと言われても、ソラには壁内に辿り着く以前の記憶は存在しない。

だからこそ、ソラは外の世界に興味が尽きないのだ。

 

「………そう言えば、エルヴィンがキースの野郎がお前を呼んでいたと言っていたぞ」

 

「そう…それじゃあ、明日行ってこようかな。そういうことで明日はよろしくね?」

 

「あぁ。お前が居ない分、掃除も捗る」

 

リヴァイのいつも通りのツンデレを聞きながら、ソラは紅茶を啜った。

 

 

 

 

 




僕って、女主人公率高いですよね…。
自分でも若干引き気味。
理由はただ、恋愛を書くのが苦手なのであまり起こらない女主人公の方が書きやすいからなんですけどね



感想、お気に入り登録お願いします!!


それではまた次回!


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1話

寝れなかったのでもう1話。

あまり長くはありませんので、あしからず。


「キース教官〜、呼ばれた通り来ましたよ〜」

 

先日、エルヴィンからの伝言でキース教官に訪ねるよう言われたソラは翌日トロスト区近郊の南方訓練地へと訪れた。

 

「ノーレンス……、少しは訓練兵のことを気遣え!!」

 

来てそうそう、ソラは教官に怒鳴られていた。

教官の目の前には数十人の新兵がおり、これから通過儀礼をするところだった。

ソラのせいで、訓練兵たちは強ばった表情を維持するハメになっていた。

 

「あっ……。ごめんなさい。私は下がってますので、どうぞお続け下さい」

 

ソラは頭を下げ、一旦他の教官方の元へと下がった。

 

「いや〜、ごめんなさい。迷惑かけたようで」

 

「いえ、ノーレンス殿に来ていただけるとは我々としても光栄です!!」

 

ソラが教官の方と話をしていると、通過儀礼が終わったようでソラはキース教官に呼ばれた。

 

「なんでしょう?」

 

「貴様から何か言ってやってくれ。私では、厳しくはできるが希望というものは与えられんからな」

 

(この鬼……いやキース教官は、根はとても優しい人なんだけどなぁ。本当に不器用というか、なんというか。まぁ、新兵を無駄死にさせたくないのは分かるけどもう少し愛想良くすればいいのに……)

 

ソラは渋々と言った感じで、一歩前へ出ると話し始めた。

 

「えー、私は調査兵団兵士長補佐のソラ=ノーレンスです。皆さんは、巨人というものを見たことがあるでしょうか?皆さんの顔を見る限り1,2割ってところでしょうか。私は皆さんのように訓練兵から上がったわけじゃないので、これといってアドバイスや指針を示せるわけじゃないのですが一言だけ言わせてもらいます。憲兵になるにしろ、駐屯兵になるにしろ、まして調査兵団になる方は特にですが……………実践と訓練は全くの別物。その意識だけは忘れないで下さいね。」

 

ソラはそう締めくくり、キース教官の所まで下がる。

 

「流石は、前線で戦っている者だ。言葉の重みが違う」

 

「そうですかね?私よりもリヴァイの方がこういうのは適任だと思うんですけどね」

 

実際、調査兵団でもソラは甘やかし過ぎているとよく怒られる方だ。

その割には、エルヴィンなどからこの様な仕事を頼まれることも多い。

 

「貴様だからこそ、出来ることもあるという事だ」

 

不可解なことを言い、キース教官は訓練兵の元へと歩いていった。

 

(……はてはて。)

 

ソラの謎は深まるばかりである。

 

 

 

 

 

 

「へぇー、てことはエレンとミカサはずっと一緒に居るんだね」

 

訓練兵たちも、初日は殆どやることも無くたった一人を除いて既にみんな自由時間。

結果、それまで小屋の上で日向ぼっこをしていたソラの元へ訓練兵が集まるのは当たり前のことである。

 

「ソ、ソラさんって、今までどれぐらいの巨人をぶっ殺したんですか!?」

 

この元気がいい青年がエレン。

コミュニケーション能力の高さには、最初ソラですら驚いたほど。

 

「うーん、リヴァイよりは少ないと思うよ。」

 

実際、ソラよりも早く調査兵団に居るリヴァイに討伐数で勝てるはずもない。

 

(けど、もし私が先に入ってたら兵士長の座は私に……。そしたら、リヴァイのことこき使えたのに……。)

 

人生とは思惑通り進まないものだと、改めてソラは実感した。

 

「すっげぇ。」

 

エレンは、新品のおもちゃを貰った子供のような目で私を見つめている。

 

「あ、あの俺ジャン=キルシュタインって言います。なんでノーレンスさんは調査兵団に?」

 

エレンに少しだけ顔立ちの似ているこの子はジャンと言うらしい。

 

「うーん、私の場合は調査兵団にしか選択肢がなかったからかな。ほら、言ったでしょ?さっき、「訓練兵上がりじゃない」って。まぁでも、訓練兵だったとしても調査兵団を選んだかなぁ。」

 

「そ、そうですか……。」

 

ソラの言葉に、ジャンは残念そうに下がっていった。

 

(…ありゃりゃ不味ったかな?)

 

この年頃というのはとても難しいと改めて、キース教官の凄さを感じるソラである。

 

「さて、そろそろ兵舎に帰らないと。また来るね、それまでの成長楽しみにしてるからね」

 

私は皆に見送られながら、兵舎へと戻った。

 

 

 

 

 

「……遅かったじゃねぇか」

 

兵舎に辿り着くと、すっかり夜も深くなっており兵舎前にはリヴァイがスタンバイしていた。

 

「いやぁ、訓練兵の子たちと話し込んじゃってさ。リヴァイも一度行ってみたら?」

 

「………さっさと寝ろ」

 

そう言うとリヴァイは、不貞腐れたように下を向いて自室の方へと戻って行った。

 

(………リヴァイがあの子たちに囲まれたら面白そうなのになぁ)

 

そんなソラの淡い期待は、どう足掻いても叶うことはない。

まず印象的にも、リヴァイが行くとあまりよろしくないからエルヴィンが行かせないだろう。

 

(さて、寝ますかね)

 

ソラもリヴァイに続くようにして、自室へと戻りそのまま眠りについた。

 

 

 





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それでは!


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2話


どうも、あまりお気に入り数が伸びず悩んでる作者です

元々、検索ワードの中に進撃の巨人が存在していないことが僕としては不思議です!!
そりゃ、書く人も増えませんよ!運営さん、追加よろしくお願いします


若干愚痴りましたが、それでは本編どうぞ!!
今作は初めて三人称視点で書いてみているので、他作品を読んでいる方はどちらの方がいいかなど感想貰えると嬉しいです!


 

104期訓練兵団の訓練期間も終えた今日。

ソラたち調査兵団は、第56回壁外調査へと赴くこととなった。

ソラはいつも通りリヴァイの真横に並ぶ。

 

「あれが人類の双翼……」

 

「リヴァイ兵士長、ソラさん!!巨人共をぶっ殺してください」

 

「いやぁ、好奇の目に晒されるって言うのも嫌なもんだね」

 

「……あぁ。」

 

ソラとリヴァイは分隊の事情から、一緒に並ばなければいけないのだが結果周りにいる人の視線を集めるハメになる。

 

「君たち2人は相変わらず目立つね〜」

 

「……ハンジ変わる?」

 

「やだなぁ、ソラ。私は遠慮しておくよ」

 

「……おい、いつまでもくっちゃべってるな。クソメガネ」

 

リヴァイの言葉に未だにハンジは何かを言おうとするが、それはエルヴィンによって阻まれた。

 

「開門始め!!」

 

ゴゴゴゴゴゴゴ

 

「第56回壁外調査を開始する!」

 

「前進せよ!!」

 

ドドドドド

 

「……それじゃあ、リヴァイ。」

 

「あぁ。先に行ってる」

 

ソラは門から出たところで、リヴァイたちと別れ立体機動へと移る。

 

「よっこらせっ!」

 

ザシュ

 

ソラは援護班が取りこぼした、10メートル級巨人のうなじを取り敢えず切り取る。

 

ヒュン

 

「……ふぅ。」

 

周りを見渡すと、殆ど巨人の姿は見えず周りには援護班の調査兵のみとなっている。

 

スタッ

 

「申し訳ありません、副兵士長。ご迷惑を」

 

「いや、大丈夫だよ。どうせエルヴィンからも言われてるしね。って言っても今回は、君たち援護班が優秀なおかげでもう仕事ないけど」

 

普段なら、もう少し暴れられるぐらいは巨人がいるのだが今回は綺麗さっぱり。

さっきの10メートル級で最後のようだった。

 

「いえ!ありがとうございます」

 

「うん。それじゃあ、本隊への合流急ごうっか。」

 

ソラは口笛を鳴らし、愛馬を呼び寄せる。

 

「いやぁ、いい子。それじゃあ、本隊の方までレッツゴー」

 

ソラたち援護班は、少し先を行く本隊へと馬を進めた。

 

 

 

 

 

 

「あっ、おーいリヴァイ〜」

 

本隊を発見したことで、手を振りながら馬を走らせるソラ。

今回は巨人が殆どいなかったということもあって、本隊に合流するのにそこまで時間は喰わなかった。

 

「……チッ……遅かったじゃねぇか」

 

「そうかな?私の中では過去最速な気がするんだけどなぁ」

 

「………行くぞ。エルヴィンから、ソラを連れて至急来いと言われてる」

 

リヴァイは馬を進行方向へと向き直すと、ソラの言ったことなどお構い無しに馬を走らせた。

 

「………むぅ。あのツンデレめ」

 

ソラも続くようにして、馬を走らせる。

 

「……いつも通りだね。二人とも」

 

「あぁ。あの二人に壁外とかそういうのはないんだろうな」

 

「ほら、お前ら置いていかれるぞ!」

 

2人に取り残されるようにして、残っていたオルオとペトラもグンタによって再び緊張感を取り戻して先行するリヴァイたちを追った。

 

 

 

 

 

先にエルヴィンの元へ辿り着いたリヴァイとソラ。

基本的に作戦に組み込まれることない、リヴァイ率いる特別作戦班(=リヴァイ班)。

大体は、エルヴィンからの勅令で動くため他隊とは別行動となることが多い。

 

「えっと、つまりここを兵站拠点にしたいからここにいる巨人を蹴散らせばいいってこと?」

 

「あぁ、そうだ。」

 

「わかった。それじゃあ、あとは俺とこいつで決める」

 

「頼んだ」

 

ソラとリヴァイは、一旦エルヴィンから離れエルヴィンからの指令を元に、作戦を練る。

作戦を練るとはいっても、大体の組み分けなどしかないのだが。

 

「いつも通りでいいんじゃないかな?私とリヴァイはそれぞれで、あとはエルドに班を任せてやってもらうって感じで」

 

「………お前の意見を聞き入れるのはあれだが、それが一番いいだろう…」

 

ソラの案をリヴァイは嫌々ながらも受け入れ、丁度到着したエルドたちに伝える。

 

「ここからは、エルドの指示を俺の指示だと思え。そこのバカと俺は単独で動く」

 

「誰が馬鹿ですかぁ〜、このちびっ子!」

 

壁外だということをお構い無しに、夫婦漫才を繰り広げるリヴァイとソラ。

そんなものを見せられては、折角戻った緊張感も解けてしまうというものである。

 

「取り敢えず、そういう事だから。みんな、ピンチになったら教えてね。すぐ駆けつけるから」

 

そう言うとソラは、立体機動に移り戦場を駆けて行った。

 

「……チッ…あのクソ女が」

 

それを追うようにしてリヴァイも戦場へと身を投じる。

 

「………俺達もいこう」

 

エルドの言葉に緊張感の切れていたリヴァイ班の面々も、もう一度気合を入れ直し戦場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

ヒュン

 

「……さようならっ!」

 

ザンッ

 

膝から崩れ落ちる巨体。

サラはその倒れる巨体の頭を踏み、そのまま一緒に降りてくる。

 

「まだまだ多いなぁ。」

 

かなりの数の巨人を討伐したが、その数は一向に減る気配を見せずむしろ増えているようにすら感じる。

 

(……何かがおかしい。)

 

確かにこの市街地の周りに巨人が居る。

だが、その巨人たちは市街地の横を通り過ぎ壁の方へと歩を進めている。

 

(…………まさか)

 

ソラの頭の中に最悪の考えが浮かぶのとほぼ同時に、エルヴィンがソラの元へと来た。

 

「…ソラ撤退だ。」

 

「……なんで?これからでしょ?」

 

ソラは理由を聞くため、敢えて反論する。

 

「巨人たちが一斉に南下を始めた。5年前と同じだ、、壁が破られたかもしれん」

 

先程、ソラの頭に浮かんだ最悪のシナリオ。

それと全く同じことをエルヴィンは言った。

 

「………早く戻ろう。私とリヴァイだけでも、早く!」

 

「あぁ、そうだな。ソラはガスと刃を補充し次第リヴァイと共にリヴァイ班を率いて先に壁まで戻ってくれ」

 

「了解!」

 

ソラはエルヴィンからの指令をリヴァイに伝えると、即座に刃とガスを補充して壁を目指して馬を走らせた。

 

 

 

 

 

 

 





進撃の巨人って、書いてて楽しいですね。

もう少しお気に入り数増えたら、毎日投稿しようかなと思ったり思わなかったり。

続き楽しみな方はどうぞしていってやってください。
お願いします!


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3話


中々、お気に入り数は増えませんがこの作品は楽しいので書き続ける予定です。

それでは本編!


 

「……リヴァイ!!もっと急いで!」

 

「………わかっている…」

 

エルヴィンの命令によって、リヴァイ班は調査兵団の本隊から離れ先行して壁へと戻っている。

道中、出会う巨人は殆どが壁へと向かっており余程近付かない限りは人間を襲おうとはしない。

 

「………見えた!!」

 

「あぁ。エルド、お前らは壁の周りに群がってる巨人共を頼む。俺とこいつで中の様子を見てくる」

 

リヴァイが班全体に命令を下し、壁の中に入ろうとしたとき。

 

ドオォォン

 

リヴァイたちが入ろうとした穴は巨大な岩によって塞がれてしまった。

 

「………どういうこと?」

 

「……わからん。だが、急ぐ必要がありそうだ」

 

リヴァイはそう言うと立体機動に移り、壁を颯爽と駆け上がっていく。

 

「あっ、待ってよ!」

 

ソラもリヴァイから1歩遅れる形で立体機動へと移り、壁を駆け上がっていく。

 

 

 

(………チッ……あれはなんだ?)

 

先に壁上に辿り着いたリヴァイは壁の中の景色に疑問を抱いていた。

 

「………なにあれ?……巨人なの?」

 

先程ソラたちの進路を塞いだ大岩にもたれ掛かるようにして座っている一体の巨人と訓練兵が2人。そして、その巨人のうなじ辺りと融合している兵士が1人。

その周りには2体の巨人。

 

「………詳しいことはわからねぇが、取り敢えず助けるぞ」

 

「…うん」

 

ソラの返事とともに、2人は壁上から飛び降りる。

 

ズバァッ

 

落下の勢いそのままに、2人は2体の巨人のうなじを刈り取った。

 

(……自由の翼…?)

 

ボロボロの訓練兵はリヴァイとソラの後ろ姿を見て、そう呟く。

 

「…大丈夫?」

 

「………おい、ガキ共これは一体…どういう状況だ?」

 

ソラ、リヴァイの質問に、訓練兵はただただ呆然とするだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、漸く終わったね」

 

「……あぁ。」

 

ソラたちが訓練兵を助け出したあと、調査兵団と駐屯兵団の精鋭によって数日かけてウォール・ローゼ内に残っていた巨人は全て殲滅された。

 

「えっと、このあとは確か兵法会議だっけ?」

 

「あぁ。あのエレンとかいう餓鬼のな」

 

ソラたちが助け出したあと、エレンは巨人では無いかという嫌疑をかけられ幽閉されており、エレンのこれからの進退を審議する兵法会議がこれから行われる。

 

「こらこら、餓鬼とか言わないの。」

 

ソラはそう言いながら、リヴァイの前を歩く。

 

「……餓鬼だろうが…」

 

リヴァイも、ソラに反論するように呟きながらそのあとを追うようにして歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

審議所に着いた、リヴァイとソラはエレンの牢獄の方へは行かず、審議所で待機することとなった。

理由は特にないが、ただハンジとミケがエレンを迎えに行ったと言うだけの話。

 

(………なんでウォール教がいるんだか…)

 

兵法会議という名だけあって、普段は兵団関係者しかいない会議に今回はウォール教も存在していた。

 

ガチャ

 

そんな扉の開く音と共にエレンが審議所へと入ってくる。

 

(あれは、扱い酷いね。エレンが巨人化したらどうするつもりなのやら)

 

憲兵はエレンが入場するなり、乱暴に座らせる。

 

「さぁ、始めようか。」

 

そう言ったのは全兵団のトップ。ダリス・ザックレー総統。

 

(……あの人、いつまでやるんだろ)

 

ソラの見当違いの疑問を他所に、会議は進行する。

 

「エレン・イェガー君だね?君は公のために命を捧げると誓った兵士である……違わないかい?」

 

「はい」

 

ザックレーのある意味無情な質問にもエレンは即答する。

 

(……ひぇ、まぁ確かにそうなのかな?そう言えば、私はしてないからこうなった場合逃げられる?)

 

会議とは斜め方向へと思考を発展させていく、ソラである。

 

「…………君の生死も…今一度改めさせていただく。異論はあるかね?」

 

「ありません!」

 

(………うわぁ、彼凄いなぁ。私だったらあるけどね)

 

「……おい、少し落ち着いて聞いていろ」

 

一々、エレンの応答に感心を見せるソラを隣で見ていたリヴァイは痺れを切らし横っ腹をどついてみせた。

 

「……はーい。」

 

横っ腹をどつかれたことでソラも静かになり、会議も順調に進行していく。

 

「今回決めるのは君の動向をどちらの兵団に委ねるかだ。その兵団次第で君の処遇も決定する。憲兵団か…調査兵団か…。では、憲兵団から案を聞かせてくれ」

 

「憲兵団師団長ナイル・ドークより提案させていただきます。我々は…エレンの人体を徹底的に調べあげた後速やかに処分すべきと考えております」

 

この憲兵団の案にその場も静まる……ことはなかった。

 

「……くすっ」

 

たった一人。

思わず笑いを堪えることが出来なかった。

 

「………おい貴様!何がおかしい!!」

 

ソラの笑い声に反応したのは、師団長のナイルではなくその隣にいた一端の兵士であった。

 

「……いえ。ただおかしかったもので」

 

「……なにを!?」

 

ソラの嘲笑うかのような返答に更にその憲兵は怒りが増す。

それとは反対に、師団長であるナイルを筆頭に幹部は皆落ち着いた面持ちでことを見ている。

 

「あの、総統発言してもいいですか?」

 

今は一応、憲兵団の発言機会であり調査兵団であるソラが自由に発言するのは不味い。

そのため、ソラは念の為ザックレーに確認をとった。

 

「あぁ、許可しよう」

 

「どうも、ありがとうございます。…………よっと」

 

確認をとったソラはリヴァイを連れ、エレンの元へと歩き出した。

 

「それじゃあ、リヴァイ。考えてたことやって」

 

「……あぁ?……チッ……仕方ねぇな」

 

ドガッ

 

そんな鈍い音共にエレンの口から歯が飛び出した。

 

(………ごめんね、エレン)

 

ドガッ

 

ドガッ

 

ドガッ

 

リヴァイは手を緩めることなく、エレンを蹴り続ける。

 

「……もういいよ。」

 

「……あぁ。」

 

ソラが止めたことでリヴァイも蹴るのを辞めた。

 

「……おい、ソラ、リヴァイ……そんなことをしたら危険だ。恨みを買ってこいつが巨人化したらどうする」

 

「………くすっ。」

 

「貴様ぁ!!」

 

再びソラが笑ったことにより、先程まで冷静になりかけていた再び憲兵の頭に血が上った。

 

「……こいつが笑う理由も分からねぇのか?」

 

リヴァイは腹を抱えて笑い出したソラを横目に、憲兵団の方を向きそう言った。

 

「それは我々を馬鹿にして……」

 

「……ナイル、お前の部下は相当頭が悪いらしい。」

 

リヴァイの無情な言葉に、その憲兵は驚きを隠せないでいた。

 

「……ふぅ、久しぶりに笑わせてもらったよ」

 

「……お前は笑い過ぎだ、このアホ」

 

「アホって何よ!このチビっ子」

 

「あぁ?」

 

そして再び始まった夫婦漫才。

こうなってしまえば止められる人は限られてくる。

 

「ソラ、リヴァイやめんか。」

 

「あっ、ごめんなさい。」

 

そう、ザックレーである。

エルヴィンでも止められる可能性はあるが、面倒なのには変わりなく絶対に止められるのはザックレーのみである。

 

「すみませんね、時間かかっちゃって。それじゃあ、話させてもらいます。まずなんですけど、さっきリヴァイがエレンを蹴っている時言いましたよね?「やめろ」って。それはエレンが巨人化されたらどうするつもりなのかということなんでしょうけど、憲兵団の皆さんは解剖するんですよね?そんなことしたら、どうなるんでしょうね?巨人も見た事がない皆さんは」

 

ソラの言葉にエレンに対して罵声を挙げていたもの、ソラに対して苛立ちを覚えていたものも全員黙り込んだ。

 

「…それに、エレンには知恵がある。確か記録によると、ミカサを2度守ったとか。」

 

「だが、あの2人は幼少期に強盗を計3人殺傷している。そう考えれば、アッカーマン訓練兵が庇っているとも考えられる」

 

ソラへの反論にナイルは昔の事件のことを出した。

そして、それに乗っかるかのように先程まで黙り込んでいた者も水を得た魚のように罵声を飛ばす。

それもエレンだけではなく、ミカサにも。

 

「………うるさいなぁ。」

 

ソラのその一言で場は再び静まった。

 

「あなた達は何……?私に殺されたいの?いいよ?全員でかかってきなよ、一人残らずかっ捌いてあげるから」

 

ソラの目は本気だった。

普段は見せることない、殺意に満ちた瞳。

 

「おい……さっさと話を続けろ」

 

リヴァイだけが、この状態のソラに唯一臆することなく話しかけられる。

 

「……はーい。」

 

リヴァイに言われたことで、ソラは殺意を収め再び話し始めた。

 

「えっと簡単な話、巨人化したエレンをあなたたちで止められるんですかってことですね」

 

ソラの言葉に誰一人口を挟むことは出来なかった。

 

「ですよね。まぁ、私とリヴァイの敵じゃないですけどね。ウォール教の方々も神だのなんだの言う前に現実見た方がいいですよ。それじゃあ、長々失礼しました」

 

そう言って私は話を締め括り、元の場所へと戻った。

 

「……そうか。それでは、念の為調査兵団の案を伺おう。」

 

「はい。調査兵団13代団長エルヴィン・スミスより提案させていただきます。我々調査兵団はエレンを正式な団員として迎え入れ、巨人の力を利用しウォール・マリアを奪還します。以上です」

 

「ん?もういいのか?」

 

ザックレーがそう問い直すほど、調査兵団の案はシンプルだった。

 

「はい。彼の力を借りればウォール・マリアを奪還できます。何を優先すべきかは明確だと思われます」

 

エルヴィンの主張は最もであり、反論するものはいなかった。

 

「ちなみに、今後の壁外調査はどこから出発するつもりだ?ピクシス。トロスト区の壁は完全に封鎖してしまったのだろう?」

 

「あぁ…もう二度と開閉できんじゃろう」

 

トロスト区の扉は、エレンが岩で塞いでしまったため扉にすらならない。

 

「東のカラネス区からの出発を希望します。シガンシナ区までのルートはまた…一から模索しなければなりません」

 

調査兵団からすれば、この5年は無駄になってしまったが壁を守り抜いたことを考えればそれもなんとか気にならない。

 

「ちょっと待ってくれ。今度こそ全ての扉を完全封鎖するのではないのか!?【超大型巨人】が破壊できるのは壁のうち扉の部分だけだ。そこさえ頑丈にすれば、これ以上攻められることは無いというのに…そこまでして土地が欲しいか!?商会の犬共め!!お前らは出来もしない理想ばかり言って我々を破滅に陥れるだけだ。これ以上、お前らの英雄ごっこには付き合ってられない」

 

そう言いきったのは兵団所属の者ではなく、ウォール教の1人。

 

「……よく喋るな、豚野郎。土地が足りずに食うのに困ってる人間は、てめぇら豚共の視界に入らねぇと?」

 

リヴァイはソラが言う前に、全て言い切った。

 

「わ……我々は封鎖さえすればたすかると話しただけだ……!」

 

「良さぬか!この不届き者め!!神より授かりしローゼの壁に…人間風情が手を加えると言うのか!! 」

 

この発言には誰もが憐れみの目を向けた。

 

「………うるさいなぁ。あなたの意見なんて、誰も聞いてないの。なんなら、あなたが巨人を殺してくれるの?」

 

痺れを切らしたソラは、怒りを顕にすることなくただ静かにそう述べた。

 

「………総統、ご提案があります」

 

ソラによって沈黙に包まれた空気を、エルヴィンが破った。

 

「エレンの【巨人の力】には不確定な要素を多分 に含んでおり、その危険は常に潜んでいます。そこでエレンが我々の管理下に置かれた暁にはその対策としてリヴァイ兵士長とソラ兵士長補佐に行動を共にしてもらいます。彼らほど、腕の立つ者ならいざと言う時にも対応できます」

 

「ほう……出来るのかリヴァイ、ソラ ?」

 

「えぇ」

 

「殺すことに関しては間違いなく。問題はむしろその中間がないことにある…」

 

そう言うリヴァイと私に、とてつもない殺意を込めて睨みつけてくる視線が1つ。

 

(……ミカサか……後で謝ろう)

 

「……審議は尽くされたようだな」

 

「エレン・イェガーは調査兵団に託す。しかし…次の成果次第では再びここに戻ることになる」

 

ザックレーのその一言で、審議は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






ここの審議、どうやって短くしようかと考えたんですけど大事な部分多すぎて長くなってしまいました…ごめんなさい

これからも頑張って投稿するので、よろしくお願いします!


それでは


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4話

早くオリジナル展開出来るところまで行きたい…(切実

本当に原作なぞりで申し訳ないですが、もうそろそろオリジナル展開に行けそうなのでもう少しお待ちください…


それでは本編の方どうぞ!


「いやぁ、エレンごめんね?リヴァイが」

 

審議を終え、一旦調査兵団の預かりとなったエレンはエルヴィンたちと共に部屋に移されていた。

 

「……チッ……俺の事を恨んでいるか?」

 

ソラの発言に不満を感じながらも、リヴァイはエレンに若干申し訳なさそうにそう言った。

 

「い、いえ。必要な演出だったと理解してます」

 

「……そうか。ならいい」

 

「リヴァイ心配そうだったもんねぇ、いきなり新兵に嫌われてないかって」

 

「………んなことはねぇ。それはお前だろうがこのズボラ女が」

 

「はぁ?このチビが!」

 

相も変わらず始まる夫婦漫才を他所に、ハンジはエレンに興味深々と言った様子で駆け寄る。

 

「いやぁ、あの二人がごめんね?歯折れちゃったでしょ?」

 

「あ、はい」

 

「エレン、口の中見せてみてよ」

 

エレンはハンジに言われるまま、口を開きハンジ口の中を見せる。

 

「……え?歯が生えてる」

 

 

 

 

 

 

 

 

「旧調査兵団本部。古城を改装した施設ってだけあって……趣とやらだけは1人前だが……」

 

エレンを監視する任を受けたのは、ソラとリヴァイであるため結果的に2人の所属するリヴァイ班がエレンの所属班となりそして、リヴァイ班はここ旧調査兵団本部での生活を命じられた。

 

(……オルオは何やってるんだろ…?舌噛まなきゃいいけど…)

 

馬上でベラベラよく喋っているオルオを見て、ソラは多少なりとも心配になる。何故なら、彼は前科があるから。

案の定、ソラの心配は現実のものとなる。

 

「巨人かなんだか知らんがお前のような小便臭いガキにリヴァイ兵長とソラ副兵長が付きっきりなるなどー」

 

ガリッ

 

そんな音と共に、オルオの口から血が吹き出す。

 

(……ほら、言わんこっちゃない)

 

 

 

 

 

「乗馬中にべらべら喋ってれば舌も噛むよ」

 

「………最初が肝心だ……」

 

古城に着くなり、ペトラに介抱されることとなったオルオは未だに強がっていた。

 

「あの新兵ビビっていやがったぜ」

 

「オルオがあんまりマヌケだからびっくりしたんだと思うよ」

 

「……なんにせよ俺の思惑通りだな」

 

「……ねぇ、昔はそんな喋り方じゃなかったよね?もし…仮にもし…リヴァイ兵長のマネしてるつもりなら…本当にやめてくれない?イヤ…まったく共通点とかは感じられないけど…」

 

(……なんだかんだ、あの2人って仲良いのよね)

 

ソラはペトラとオルオのやり取りを眺めながら、そんなことを考えていた。

 

「意外でしょ?こんな変な人ばっかりで」

 

「い、いえ」

 

リヴァイ班の面々を眺めながら思い耽っているエレンに、ソラは近付いて話しかける。

 

「まぁ、徐々に慣れていけばいいと思うよ。皆腕だけは確かだから」

 

そう言うとソラはリヴァイの元へと歩いていった。

 

(………俺が暴走したらこの人たちに殺されるんだよな)

 

エレンはソラと話して改めて認識をすることとなった。

 

「…久しく使われていなかったので少々荒れていますね」

 

古城の入口にいるグンタのそんな言葉に、ソラは嫌な予感がした。

 

(………これは不味い)

 

ガシッ

 

ソラは捕まるより前に逃げ出そうとしたが、残念ながらリヴァイによってフードを掴まれる。

 

「それは重大な問題だ……早急に取り掛かるぞ。お前もだ、ソラ」

 

「うへぇ。」

 

ソラは逃げることを諦め、渋々リヴァイの指示に従うことにした。

 

 

 

 

 

「はぁ。めんどー」

 

ソラは逃げようとしたことで、リヴァイによってペトラと同じところの清掃を命じられた。

つまり、ソラのサボり防止のためにペトラは監視役を命じられたということだ。

 

「ソラさん、そんなこと言いながら掃除終わってるじゃないですか」

 

「だってさぁ、リヴァイ五月蝿いんだもん。」

 

ソラはぐちぐち文句を言うわりには、既に清掃を終えグダっている。

 

「それじゃあ、兵長のところに報告してきますね」

 

「あ、私も行く〜。リヴァイに紅茶頼まないと」

 

ソラも報告に行こうとする、ペトラのあとを追いリヴァイの元へ向かった。

 

 

 

 

ソラたちがリヴァイの清掃場所に向かうと、リヴァイは上の階へと向かっている所だった。

 

「あ、行っちゃったね」

 

「ですね」

 

ソラはリヴァイを追って上の階へ。ペトラは、そのままそこで待つことにした。

 

「失望したって顔してるね」

 

「はい!?」

 

リヴァイがいってしまい暇を持て余していたペトラは、丁度そこにいたエレンに話しかけている。

 

「珍しい反応じゃないよ。二人とも世間の言うような完全無欠の英雄には見えないでしょ。現物の2人って、いつでも言い合いしてるし、リヴァイ兵長は小柄で近寄り難いし、ソラさんは思ってるよりフレンドリーだし」

 

「いえ…俺が意外だと思ったのは…上の取り決めに従順に従う姿勢です」

 

「強力な実力者だから上の意には介さないと?」

 

「は、はい。誰の指図にも介さない人たちかと…」

 

「うーん、そうだね。リヴァイ兵長は昔はそのイメージに近かっただろうけど、ソラさんに関しては今もその傾向が強いよ。ソラさんが従うのは、エルヴィン団長だけだし、それを言ったらリヴァイ兵長も同じなんだけどね。兎に角、あの二人はどちらかが欠けてもくずれちゃうんじゃないかな」

 

ペトラは尊敬する2人のことを思い浮かべながら、エレンにそう言った。

 

「おい…エレン」

 

ビクッ

 

リヴァイがエレンを呼ぶ声で、ペトラは思わず驚いてしまう。

 

「エレン〜、あれじゃあ文句言われちゃうよ」

 

悪戯じみた笑みを浮かべながら、ソラはリヴァイの後ろから顔を出している。

 

「こいつの言う通り、全くなってない。やり直せ」

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、精一杯働いた後の紅茶は美味しいね。エレン」

 

「は、はい!」

 

掃除も最低限は終わり、辺りも暗くなってきたことで今日の掃除を終えリヴァイ班はティータイムと洒落こんでいる。

 

「そう言えばさ、今回の大規模遠征って新兵も連れてくんでしょ?」

 

「ソラさん、それはホントですか?随分急な話だと思うんですけど」

 

ソラのひょんな発言に反応したのはグンタ。

グンタの言うように、まだ卒業して間もない新兵を壁外遠征に連れていくのは危険が大きすぎるため何度か訓練を積んでから連れていくのが定石である。

 

「うんまぁね。作戦立案は私やリヴァイの仕事じゃないからわからないけど、たぶんエルヴィンの事だから考えがあっての事だと思うよ。それに今回の巨人の襲撃は言い方は悪いけど一種の選別になったと思うよ。これから、壁外で生きていけるかどうかのね」

 

ソラの言い方はかなりキツイものだが、それが事実である。

新兵だろうが、歴戦の猛者だろうが巨人は関係なく襲いかかる。その中で生き延びていかなければいけないのが壁外の地へと足を踏み入れることを許可された調査兵団の使命だから。

 

「この馬鹿の言うように、今期の新兵は今までの奴らとは違うのは確かだ。それに今回はイレギュラーなことも多い」

 

「ですね。多大な犠牲を払ってまで確立したシガンシナ区までのルートが白紙になったと思ったら突然希望が降って湧いた」

 

「確かにエルドの言う通りだね、エレンがいれば穴塞ぐこと出来るしね。幾ら私とリヴァイでも流石にあの穴を塞ぐことは出来ないからね」

 

ソラの言う通り、どんなにソラとリヴァイが強かろうとあれだけ大きな穴を塞ぐことなど不可能である。

もっとも、巨人を絶滅させることのほうがこの2人にとっては現実的なことなのかもしれない。

 

「まぁ、取り敢えずエレンは壁外調査に行く前に死なないようにね!」

 

そう言うとソラは椅子から立ち上がり、扉から出ていく。

 

「……チッ…あいつ逃げやがったな」

 

「なぜ、ソラ副兵士長は…」

 

バタン

 

「やぁ、リヴァイ班のみんな!古城の住み心地はどうかな?」

 

「あいつが原因だ」

 

「あれ、ソラはいないのか。残念だなぁ、ソラにも会いたかったのに」

 

ハンジはソラがいないとわかると若干落ち込んだ様子を見せるが、再び目を輝かせエレンの目の前に座った。

 

「…リヴァイ、エレンの明日の予定は?」

 

新しいおもちゃでも見つけたかのように瞳を輝かせているハンジは、視線をエレンから離すことなくリヴァイに質問した。

 

「………庭の掃除だ」

 

「そっかぁ。じゃあ、決まりだ。よろしくね、エレン!」

 

ハンジはリヴァイの返答を聞くなり、とても嬉しそうにエレンの手を握る。

 

「あ…はい。しかし、巨人の実験とはどういうものなんですか?」

 

このエレンの質問をオルオは止めようとするが、時既に遅し。

既にハンジの耳に届いてしまっていた。

 

「おっ、気になるかね?」

 

そのハンジの言葉と共に、エレン以外のリヴァイ班の班員は椅子から立ち上がりその場から立ち去る。

 

「そんなに聞きたかったのか…しょうがないな。聞かせてあげないとね」

 

この後、エレンは夜明けまでハンジの話を永遠と聞かされる羽目になったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(………今回の遠征、多分目標はエレンと同じ知性を持った巨人)

 

ソラは一足先に自室へと戻り、1人考え事をしていた。

 

(…今回の巨人の襲撃、確実に計画されたものだった。5年前も今回も私たち調査兵団が丁度壁外調査に出掛けている間のこと。それに5年前は現れた鎧の巨人が今回は現れなかった。超大型巨人も最初の1度のみ。これから、考えられるのはその2体の巨人はエレンと同じ人間。そして、今期の新兵の中に潜んでいる可能性が高い。)

 

窓から見える壁を眺めながら、ソラは思考を巡らせ続ける。

 

(その者たちにとって、エレンの存在は邪魔かもしくはあちら側に引き込みたいと考えるのが当然。そして、もし攫うのにしても殺すにしても壁外ほどやりやす場所はない……か。だから、エルヴィンはあんなことを…。)

 

ソラは思考を止め、今回の壁外調査の作戦立案の時にエルヴィンに言われた言葉を思い出していた。

 

「緊急事態の時は、ソラ1人で対処して欲しい」

 

それがエルヴィンがソラに対して言った言葉。

普段じゃ、絶対に言わないような命令。なぜなら、単独行動はソラやリヴァイとは言え危険な行為だからだ。

 

(………まぁ、言われなくても私は手の届く中で仲間を殺させる気は万に一つもないけどね。)

 

「………………誰であろうと殺す」

 

窓の外へと呟いたソラの言葉に返事をするものはもちろん誰もいない。

ただ呟いたソラの瞳は、光を灯していなかった。

 

 

 

 

 





感想や気になったことありましたら、よろしくお願いします。

三人称読みにくい場合もお願いします。
試験的なものなので、一人称がいい場合はよろしくお願いします


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5話

えー、先に謝ります。
今回も戦闘シーンはございません…。
本当にごめんなさい。

ただ今回も割と重要な回なので、よろしければ読んでいってください。

それでは、本編どうぞ!



ハンジがエレンの元に訪れた翌日。

あれだけ苦労して、捕獲した2頭の巨人が同時に殺されるという事件が起きた。

もちろんハンジは発狂し、日頃の冷静さを失うほど。

犯人の捜索は即座に行われたが、残念ながら犯人へと繋がる手掛かりすらも掴めないままただ時間だけが過ぎていった。

 

 

そして、今日は今期の訓練兵たちの所属兵団の決定の日である。

ソラやリヴァイは、特に仕事はないためわざわざ見に来る好奇心でもない限りはいつも通りの日常を過ごすこととなっているのだが…好奇心という点である意味ハンジをも上回るのがこの人物である。

 

「……ねぇ、リヴァイ。今期はどれぐらい入ってくれるのかなぁ?」

 

「……知らん。それに何故俺がここに連れてこれたか説明しろ」

 

エレンの監視はエルドとグンタがやってくれているため、リヴァイはやることもなく紅茶でも飲んで落ち着いた時間を過ごそうとしていたが、ソラに見つかりここまで引っ張ってこられたのである。

 

「ん?リヴァイだって気になるでしょ?例えば……ほら、ミカサとかさ。同じアッカーマンだし、何かとよく睨まれてるし?」

 

「……………興味無い。俺は帰るぞ」

 

「今一瞬迷ったよね?それじゃあ、見ていかないと」

 

ここを立ち去ろうとしたリヴァイだったが、ソラにフードを掴まれてしまい逃げるに逃げられなくなってしまう。

 

「……その4年で調査兵団の7割程が死んだ。4年で7割だ」

 

ソラとリヴァイがごちゃごちゃしている間に、エルヴィンによる演説が始まっていた。

 

「うわぁ、エルヴィン厳しいこと言ってるね」

 

「当たり前だ。そんな生半可な覚悟で、調査兵団に入ってきたところで巨人共の餌に成り下がるだけだ」

 

リヴァイとソラ。

この2人がいなければ、調査兵団の死者率はもっと跳ね上がっていただろう。

 

「………それにしても、今回はこれだけか」

 

「…………多い方だろう」

 

エルヴィンの演説が終わり、その場に残ったのは二十数名。その中には、南方訓練兵団のよく知った顔がチラホラ。

 

(………彼らを誰一人として死なせないようにしよう…)

 

目の前の覚悟に満ちた敬礼を見て、ソラはそう決意した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

訓練兵たちが所属兵団を決定してから、1ヶ月。

これが、エレンを連れていく初めての壁外遠征となる。

 

(…………本当に来るのだろうか)

 

ソラは作戦会議の時に、エルヴィンに言われたことを思い出していた。

 

 

 

 

「えっ、わざわざそれを見越しての作戦ってこと!?」

 

「あぁ、そうだ。奴らがエレンを狙っているとすれば、このタイミングを逃す手はない。」

 

エレンを初めて壁外遠征へと連れていく今回は、確かに奴らにとって格好のタイミングである。

 

「………うーん、分かったけど。私でも足止め出来ない場合はどうすれば?」

 

「…………簡単な話だろ。お前で足止め出来なきゃ調査兵団が壊滅するだけだ」

 

「リヴァイの言う通りだ。ソラで足止めも出来ない相手ならば、その時は調査兵団は太刀打ち出来ないだろう」

 

傍から見ればとても酷な話ではあるが、それだけソラの実力は高い。

そのソラですら、足止め出来ない程の相手が来てしまったら最早どうすることも出来ない。

 

「まぁやって見るよ。その代わり、ちゃんとやってよね?リヴァイもミケも」

 

「あぁ。お前こそ、しくじるなよ」

 

 

 

 

(……まぁ来たらぶった斬るだけ…)

 

ゴゴゴゴゴゴ

 

「団長!!間もなくです!」

 

「いよいよだ!!これより人類はまた1歩前進する!!」

 

エルヴィンは掛け声によって、調査兵たちを鼓舞する。

 

「「「「「「「オオォォォォォ!!」」」」」」」

 

「第57回壁外調査を開始する!前進せよ!!」

 

調査兵団は開門と共に勢いよく飛び出していく。

 

「………あれ、ソラさん行かなくていいんですか?」

 

ペトラは、いつもならば援護班の手伝いに一旦離脱するはずのソラが隊列の中にいることに疑問を感じた。

 

「……うん。今回はエルヴィンから行くなって命令だからね」

 

ソラの言葉にペトラは心底申し訳なさそうな顔になる。

 

「そ、そうだったんですか。ごめんなさい」

 

「ううん。それより、オルオみたいに舌噛むからまた後でね」

 

ソラはそう言うと馬の速度を落とし、班の最後尾へと着いた。

 

 

 

 

 

(………うーん、平和だ)

 

エルヴィンが考案したこの索敵陣形のおかげで、かなりの広範囲の索敵をカバー出来、尚且つソラたちリヴァイ班がいるのが陣形の中央の後ろであるため巨人に出くわすという方が難しいのである。

 

(………あれは?)

 

ふと、右翼側を見ると黒い煙弾が打ち上がっている。

そして、その数分後にはかなりの数の煙弾が空へと打ち上がる。

 

(………やっぱり来た)

 

エルヴィンの思惑通り、エレンを攫うために奴らが来た可能性が高い。

案の定、それらの煙弾を見たエルヴィンの判断は進路変更。

つまり、作戦通りということだ。

 

「口頭伝達です!!右翼索敵壊滅的打撃!!右翼索敵一部機能せず!!以上の伝達を左に回して下さい!」

 

(……これで確実か)

 

右翼索敵が壊滅するほどの被害を被ったということは、何らかの原因があったということ。

つまり、それは知性をもった巨人が何らかを仕掛けた可能性が高い。

 

「聞いたかペトラ。行け」

 

「ハイ!」

 

リヴァイはペトラにそう命じ、そのまま陣形の進路にそって班を率いる。

ソラはその間にリヴァイの隣にまで馬を走らせ、並走するような形をとる。

 

ドォォォン

 

それは先程までよりも、明らかに近くから聞こえたものだった。

 

「黒の煙弾!?奇行種が!?」

 

「エレンお前が撃て」

 

「ハイ!」

 

リヴァイは混乱しかけているエレンに煙弾の指示をして、落ち着かせた。

 

「なんてザマだ…やけに陣形の深くまで侵入させちまったな」

 

「だね。流石にやばいと思う」

 

ソラとリヴァイですらも、危機感を覚える状況。

そんな中で焦りもせず平静を保てる兵士など存在するのだろうか。

 

「………取り敢えずは、あそこまで辿り着くって所かな?」

 

先程から、幾ら煙弾が上がろうともエルヴィンは東から進路を変えようとはしない。

目的地の旧市街地は南にあるというのに。

 

「……あぁ。死ぬなよ」

 

「誰にもの言ってんの。帰ったら紅茶よろしくね」

 

「………帰ったらな」

 

リヴァイとソラの会話は、他のものには聞こえないほど小さなものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルヴィンの目論見通り、索敵陣形は巨大樹の森まで到着。

[中隊のみ森へと入り、他の隊は迂回し巨人を森へと侵入させるな。]

それが、エルヴィンが下した命令であり班長以下の兵士には伝えられていないことである。

 

「兵長!!副兵長!!」

 

「……なに?」

 

結果、何も伝えられていない兵士はエレンのように混乱するのが関の山。

 

「何って、ここ森ですよ!?右からも何か来てるのに、どうやって巨人をかいひしたりするんですか?」

 

「……エレン、わかってるなら騒がないで。そんなこともう出来ないに決まってるでしょ?」

 

いつもは出さないようなソラの低い声に、リヴァイ以外全員が驚きを隠せなかった。

 

「な!?…なぜそんな……」

 

「周りをよく見ろ……、この無駄にくそデカい木を…立体機動装置の機能を生かすには絶好の環境だ。そして考えろ、お前のその大したことない頭でな。死にたくなきゃ必死に頭回せ」

 

ピリピリしているソラに代わって、リヴァイが出来るだけ冷静にエレンに返答する。

 

そして…、その原因が現れるまでそう時間は要さなかった。

 

「お前ら、剣を抜け。それが姿を現すとしたら一瞬だ」

 

(………本当においでなすったよ)

 

後ろを振り返れば、直ぐに姿が見える。

そう錯覚するほど地鳴りのような足音は近くまで迫っていた。

 

 

 

 

リヴァイの指示により、抜刀したまま馬を走らせること数分。

今回の全ての元凶がすぐ真後ろまで迫っていた。

 

「兵長!!立体機動に移りましょう!!」

 

ペトラの焦った声だけが響く。

すぐ真後ろまで迫っている巨人にたいして、増援は来る気配もなくただ接近を許し続けているからだ。

今この状況で、冷静なのはソラとリヴァイだけ。

 

「…………さて、あとはよろしくね?リヴァイ」

 

「あぁ。」

 

1番先頭をリヴァイと共に走っていたソラは急激に馬のスピードを落とし、最後尾に着く。

 

「ソ、ソラさん!?」

 

驚き声を上げたのはペトラだけだったが、リヴァイ班全員が状況を飲み込めず唖然としている。

 

パシュッ

 

その音と共に、ソラは立体機動へと移り謎の巨人と対峙した。

それは一瞬のことで、誰も状況を飲み込めないまま馬だけが前へと進む。

 

「兵長!!ソラさんが!!今なら間に合います!ソラさんのサポートを!!」

 

ペトラは状況も飲み込めないまま、ソラがたった一人であの巨人と対峙したことだけが理解できた。

それは他の班員も同じ。

 

「兵長!!」

 

「兵長!」

 

ペトラだけではなく、全員が声を上げる。

だが、リヴァイはそれらに返答することなくただ前を向き前進し続けた。

 

 

 




次回は絶対に戦闘シーンありますので。
あと、多分次回から一人称になるかもしれないのでご了承ください


感想お待ちしております。
それではまた次回〜


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6話

進撃の巨人は書いてて楽しいので、なんか毎日投稿みたいになってますが不定期なので悪しからず。
あと、一気にお気に入り登録が増えてきていてとてもテンション上がってます!本当にありがとうございます!!



あとこの前気付いたのですが、進撃の巨人。検索欄に復活してました!
いやぁ、嬉しい限りです!


あと、あまり三人称っぽくない一人称と三人称の微妙な間で書いてしまっていますが読みにくい方は遠慮なくお願いします。

それでは、本編へGO!


「兵長!なんで副兵長だけを、ヤツと戦わせるんですか!!仲間じゃないんですか!?」

 

ソラが班を離れたことを気にすることも無く、ただ前を向き前進し続けるリヴァイがエレンは理解出来なかった。

それは他の班員も同じ。

 

「兵長!やりましょう!!幾らソラさんでもあいつは危険です!!」

 

「…………お前らはなんであいつが1人で足止めしに行ったかわからねぇのか?」

 

リヴァイはオルオの言葉に痺れを切らしたように答えた。

 

「普段ならば、援護班がヤツの足止めをするがあいつはそいつ等が無駄死にしないためにたった一人であいつの足止めをしてるんだ。俺たちはこのまま馬で駆ける、いいな?」

 

リヴァイの言葉を理解出来ない者はいなかった。

それでも、自分たちを逃がすためだけにあの化け物とたった1人で対峙している自分たちの慕う相手をみすみす見殺しにする決断をするのは容易なことではない。

 

「……了解です!!」

 

リヴァイ班において、最もソラを慕っているペトラの言葉は他の班員を決断させるには十分すぎるものだった。

 

「………何故ですか!?何故ソラさんを見殺しにするんですか!?」

 

他の班員がどれだけ納得しようとしても、エレンだけは納得出来なかった。

それはソラの戦闘を見た事がないから故か、それとも本能的なものか。

 

「エレン、前を向いて走りなさい!!」

 

ペトラ自身、ソラを置いていったことに納得している訳では無い。

それでも、リヴァイとソラの判断を信じると決めたからにはこのまま進むしかなかった。

 

(……なんで俺は人の力に頼ってるんだ?自分で戦えばいいだろう)

 

エレンは自分の手を噛み切ろうと手を口にあてる。

 

「エレン何をしてるの!!それが許されるのはあなたの命が危うくなった時だけ!私たちと約束したでしょ!?」

 

ペトラが幾ら言おうとも、エレンは口から手を離そうとはしない。

 

「エレン。お前は間違ってない、やりたきゃやれ。」

 

「兵長!?」

 

ペトラはリヴァイの意外な一言に驚きを隠せなかった。

 

「だがな、俺はあいつを信じている。普段はあんなんだがあいつはやることをやって必ず俺達の元へ戻ってくる。」

 

「あとは、お前が判断しろ」

 

リヴァイの普段からは考えられないような言葉に、エレンは驚き迷った。

 

「………エレン、ソラさんを…私たちを信じて」

 

ペトラの懇願するような顔にさらにエレンは悩んだ。

ソラの力を軽んじているつもりはないが、それでもあの巨人の恐ろしさを間近で見てしまった。だからこそ、悩んだ。

今ならまだ巨人の姿は目視出来る範囲におり、まだ間に合う。対峙しているソラの姿はあまりにも小さかった。

 

 

 

エレンが悩んでいる間にも馬は前進を続ける。

 

 

 

 

 

「エレン!遅い!!さっさと決めろ!」

 

「………こ、このまま進みます!!」

 

エレンの判断が正しいか間違っているかは、分からないがこの時においてリヴァイ班は漸く1つとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(………そろそろ行ったかな)

 

ソラは女型の巨人のギリギリ射程範囲外の気にぶら下がるようにして、背後のリヴァイたちを確認していた。

 

「………さてさて、あなたは誰?」

 

ソラはそう呟くとアンカーを射出して、目にも止まらぬ速さで女型の巨人の腕を削いだ…………はずだった。

 

ガキィンッ

 

(………硬いなぁ。)

 

女型の巨人の右腕は、ソラが斬撃を浴びせた場所のみが青く硬化していて傷一つついていなかった。

 

「…こりゃあ、骨が折れそう。」

 

エルヴィンからソラに課せられた命令はたったの2つ。

[女型の巨人の足止めと誘導]

それだけだ。

 

「さてと、取り敢えず腕邪魔だから削ぐよ!」

 

パシュッ

 

アンカーが射出されるその音だけを残し、ソラは縦横無尽に女型の巨人を削いでいく。

先程のように硬化されてしまえば、傷をつけるのは難しくなるが硬化される前に切り刻めばいい。それがソラの考えだった。

 

ドスンッ

 

轟音とともに、女型の巨人は傷だらけの腕を庇うようにしながら後ろの木へと寄りかかる。

 

(………硬化されてる場所以外は刃が通るのかな)

 

一方ソラはと言うと、下を向き動かなくなった女型の巨人を見ながら冷静に弱点などを観察していた。

 

ブンッ

 

(………危なっ!)

 

疲弊しきっていたと思っていた女型の巨人は、そんな風を切った音を置き去りにしそうな勢いで、ソラ目がけて回し蹴りをした。

 

もちろんソラへ当たるはずもなく、ソラは難なく避け女型の巨人との距離をとる。

 

「…あっ」

 

ソラが女型の巨人の意図に気付いたときには既に遅く、既に女型の巨人はソラを置いてエレンたちが進んだであろう方向へと走り始めていた。

 

(………まさか、私を無視して先へ進もうとするとは…。)

 

エレンでの実験で判明したことの一つに、巨人化というのは無尽蔵に出来るものではなくある程度クールタイムのようなものが必要である。というのがあった。

それを鑑みれば、疲弊している今無理をしてまでエレンを狙いにいかないというのがソラの考えだった。

 

(……まぁそっちに進んでくれるならいいんだけど…。リヴァイに何を言われるのやら)

 

女型の巨人の誘導もソラに課せられた命令に入っているのだが、普通に考えて巨人を後ろから誘導するなんて有り得ないことである。

 

ソラはリヴァイに小言を言われる覚悟をしながら、女型の巨人の射程には入らないように気をつけながらあるポイントの方に進むように追いかけた。

 

(……そろそろかな)

 

女型の巨人がソラを突き放そうと加速しようとした瞬間。

丁度、そのポイントへとたどり着いた。

 

「…撃て!!!」

 

久方ぶりに聞いたエルヴィンの掛け声とともに、女型の巨人に向かって無数のアンカーが突き刺さる。

 

ストッ

 

「……いやぁ、良かった」

 

ソラは女型の巨人が捕獲されたのを確認し、安心したようにエルヴィンの居る枝へと飛び降りる。

 

「よくやった、ソラ」

 

「あぁ。なぜ、こいつの後ろから来たかは知らんがお前のおかげで漸くこの中にいる奴に会える」

 

「まぁ、これで紅茶が飲めるからね。それじゃあ、私もここから高みの見物と洒落こもうかな」

 

ここから先は、リヴァイとミケの仕事。

ソラは胡座をかいてその場に座りこもうとした。

 

「…ソラ、ガスと刃の補充をしておけ。」

 

「………ほえ?なんで?」

 

「……嫌な予感がする」

 

エルヴィンの真剣な面持ちにソラも納得し、渋々物資の補給へと向かった。

 

「……さて、中で小便漏らしてなきゃいいがな」

 

リヴァイのその言葉聞こえたからか、女型の巨人の目は見開いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いつからちゃんとした戦闘描写があると錯覚していた?



本当にごめんなさい…。
よくよく考えたら、リヴァイと同等以上に強いソラがタイマンで女型の巨人に負けるはずもなくむしろ圧倒するのが当たり前でした…。
実際、リヴァイも女型の巨人ボコボコにしてましたからね…。

進撃の巨人って、基本的にうなじを削ぎとってしまえば一瞬で死んでしまうので強キャラほど戦闘描写がつまらなく…。
言い訳が長くなりましたが、戦闘描写これが限界な気がしてます…。
戦闘面以外の描写頑張るのでこれからもよろしくお願いします…。


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7話

この話書くにあたって、7巻を見直してたんですけどやっぱり悲しくなりましたね…。

リヴァイ班の死に方が本当に嫌で、あまり読み返してなかったんですけどこの話書くのに必要だったんで読んだんですけどやっぱり無理でした…,,


進撃の巨人、好きな作品なんですけど結構重要キャラが死んでいくのであまり2度見ることないんですよね。
重要キャラが死ぬからこそ、多分面白いんだと思うんですが。



前書きが長くなりましたが、それでは本編へレッツラゴー!


「……しっかし、肝心の中身さんはまだ出せないのか?何やってんだよ、リヴァイとミケは…」

 

「……まぁねぇ。あれ、かなり硬いから幾らリヴァイたちでも硬化された後だとかなり厳しいと思うよ」

 

「………えっ!?うわぁ、なんだソラか。突然出てこないでよ」

 

ハンジは独り言のように呟いたはずのものに、後ろから返答されたため無駄に驚いてしまった。

木の上にいるとはいえ、ここは壁外。急に話しかけられれば、必要以上に驚くのが必然的である。

 

「…それでソラは何をしてるんだい?」

 

「エルヴィンにわざわざ補給を命じられたから、補給して戻ろうと思ったらハンジが面白そうな独り言呟いてたから話しかけたってところかな?」

 

「……あぁ、そう」

 

ハンジ含め調査兵団の殆どが忘れていることだが、ソラは戦闘面以外何かしら抜けていることが多い。

天然という言葉では言い表せないほど、時として不思議な行動をすることが多い。だからこそ、リヴァイのように近寄り難い雰囲気を醸し出していないのかもしれない。

 

「ところで、ソラ。あれと戦った感想は………」

 

『きぃやあああああぁぁぁぁぁぁぁ』

 

ハンジは中身が出るまで、まだまだ時間がかかると踏みソラに女型の巨人と戦った感想を聞こうと話そうとしたが、それは大きな声によって掻き消された。

 

「…………断末魔……?」

 

「………いや、違う。ハンジ、来るよ!!」

 

断末魔のような女型の巨人の叫び声が途切れた直後、ソラの耳には地鳴りのような足音が全方位から無数に聞こえていた。

 

「……来るって何が?」

 

「……巨人がだよ!!全方向から足音がしてる!」

 

ソラがそう言ってから、巨人がやって来るまでそう時間はかからなかった。

 

「………ここは通さないよ」

 

ソラの真正面からこちらへ向かって一心不乱に突っ込んでくる巨人。

周りには数人の兵士が居るが、そちらには全く興味を示すことなくこちらへと進んできている。

 

(………やっぱり何かしたな)

 

ソラは女型の巨人を横目で一瞥すると、アンカーを射出し迫ってくる巨人へと目の前を通り過ぎる。

 

(………全く反応なし)

 

人間が目の前を通り過ぎたにも関わらず、その巨人は目で追うこともなくただ走り続ける。

 

ソラはアンカーを反対側の木へと突き刺し、すれ違いざまに巨人のうなじを刈りとる。

 

(………やばいなぁ。これは)

 

一体を倒したところで、女型の巨人へは数十体もの巨人が迫っていた。

 

「全員戦闘開始!!女型の巨人を死守せよ!!」

 

エルヴィンの指示で、周りにいた兵士全員が女型の巨人へと群がる巨人へと飛びかかった。

 

 

 

だが、圧倒的に数で勝る巨人に幾らリヴァイやソラがいたとしても少数の人間が目標を守りきるということは出来ずただ女型の巨人が食われていくのを見ているしかなかった。

 

「全員、一時退避!!」

 

エルヴィンの指示により全員が木の上に移るが、そこから見えた景色は最悪なものだった。

あれだけの損害を出してまで捕獲した女型の巨人を、なんの利益も得られないまま巨人に捕食された。

ここにいる兵士の疲労は、半端なものではない。

 

(………もしかして……………)

 

ソラはエルヴィンの言った嫌な予感がこれで終わったとは思えず一刻も早く班へと戻ろうと思った。

 

「………エルヴィン、もしかしたら女型の巨人はまだ……」

 

ソラはリヴァイと共に居たエルヴィンの元へといき、自分の脳裏に掠めたことを話そうとした。

 

「…あぁ。ソラ、一刻も早くエレンの元に向かってくれ。リヴァイは補給したらすぐに向かってくれ」

 

「りょーかい。リヴァイ早く来てね」

 

「………チッ……わかった」

 

ソラは班の元へ、リヴァイは至急補給をしに向かった。

 

 

 

 

 

 

(………さてと、みんなはどこに居るんだろうか)

 

リヴァイから大方の方向は聞いてはいたが、この広い森の中で相手を探すというのはかなり至難の業である。

 

パシュゥゥゥゥ

 

(…………あれは誰?)

 

そう遠くない、ソラの前方から放たれた煙弾。そして、その煙弾に返答するようにそ奥からもう1つ煙弾が。

 

(……………不味い!!)

 

ソラは思いっ切りガスを吹かし、目の前の人影へと追いかけた。

普段から立体機動の速度に関していえば、リヴァイよりも速いソラ。だが、ソラが今出している速度は普段よりも格段に速く、その操作は荒々しい。

 

(………あれの格好は調査兵?いや、それにしては、怪しすぎる。)

 

全速力で森を駆け、ソラは漸く目の前の人影を捉えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん!リヴァイ兵長…………イヤ違う…ソラ副兵長でもない…誰だ?」

 

グンタは目の前からやって来た人影に戸惑っていた。

だからこそ、1歩反応が遅れたのかもしれない。

 

キィンッ

 

「……えっ?」

 

突然、自分の目の前に横入りする人影が現れたと思ったら突然鳴る刃が交錯する音。

 

「……危なかったね、グンタ。」

 

「ソラ副兵長!?」

 

グンタは突然ソラが現れたことに驚き、その足を見てソラが来なければ自分はどうなっていたかを悟った。

 

「……みんな…来るよ。エルド、班全員でエレンを連れて本部の方に!!あいつは私が始末する」

 

「で、でも!ソラさんその足じゃ!」

 

ペトラだけではなく班員全員が同意見だった。

先程グンタを守るさいに、一瞬抜刀が遅れソラは足を少し斬られてしまっていた。

 

「………いいから、早く!!私のことが信じられない?」

 

そう言ったソラの表情を見て、もう誰も反論出来なかった。

 

「…………ソラさんの勝利を信じてます!どうかご武運を!!」

 

ペトラの言葉にソラは片手を挙げて答えた。

 

(………さて、どうするかな)

 

班員が全員本部の方へと飛んでいくのを確認して、眩い閃光とともに現れた女型の巨人と再び相見えるソラ。

先程とは違い万全の状態ではないが、それはあちらも同じ。幾ら、エレンよりも練度が上だとしても1度あれだけ疲弊した後にもう一度巨人になっているということを考えれば先程よりも弱体化しているのが普通。

 

(………四の五の考える前に削る!!)

 

ソラは、女型の巨人に触れられないギリギリの木にアンカーを突き刺し女型の巨人との距離を一気に詰めその勢いを殺さぬように女型の巨人の目に刃をぶち込む。

 

ソラは手を緩めることなく、女型の巨人に硬化の暇を与えぬように斬撃を浴びせ続けた。

 

(………これで落ちろ)

 

ソラは思いっ切り木を蹴り飛ばし、女型の巨人の膝裏を切りに行こうとした………。

 

ブシュ

 

「………やばっ」

 

先程斬られた足のことを完全に忘れ、動き続けていた結果足の傷口が開き血が溢れておりもはや力が入る状態ではなかった。

 

(…………あーあ、私も終わりかなぁ)

 

片目だけ修復を終えた女型は、無残にも地面に這いつくばっているソラを見るとそのまま足を振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




戦闘描写が下手…。
自分でも書いててわかるんですけど、上手くならない……。

ここ2日ぐらいでお気に入り数50ぐらい増えててとても嬉しかったです!!

それではまた次回〜


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8話


色々、試しつつ書いていたのですがやはり一人称が1番描きやすいのでソラ視点でこの作品は進んでいくと思います!


更新は遅いですが、よろしければ見ていってください!

それではー、本編へレッツラゴー


 

迫り来る巨大な足を避ける術を見い出せない私は、ただその足を受け入れることにした。

ただ一つだけ、今まで何度も見た蹂躙されていく仲間の立場になってわかったことがある。

 

(………やっぱり死ぬのって怖いんだ)

 

死に際になっても思い出すような走馬灯もなく、それこそ調査兵団に入った当初はいつ死んでも構わないとすら思っていたのに、今自分の死というものに直面して初めて怖いと思った。

 

(…………ごめんね、リヴァイ。紅茶、一緒に飲めなくて。ペトラたちにも悪いことしたなぁ)

 

心の中でリヴァイとの約束を破ったこと。

私を置いていったと後悔するであろう部下達に謝りながら私は目を瞑りその瞬間を待った。

 

 

 

だが、いつまで経ってもその瞬間は訪れずただ時間だけが過ぎた。

 

(…………ありゃ?)

 

あれほどまで死ぬ決心をしていた手前、いざ何も起こらないと逆に不安になるものである。

私は恐る恐る閉じた瞳を開き状況を理解した。

 

「…………リヴァイ。それに………ミカサ?」

 

私の視界に入ってきたのは、たった2人で女型を圧倒している調査兵。そして、女型の巨人の私に振り下ろすはずだったであろう足は膝の筋を切られ最早身体を支えることすらままならない状態になっていた。

 

「…ソラさん、少し失礼します。」

 

私が唖然としていると、リヴァイが女型の注意を引き付けている間に私はミカサによって抱きかかえられた。

 

「……ずらかるぞ。これ以上無駄な被害を増やす訳にはいかねぇ」

 

リヴァイは私の顔を見るなり少しほっとしたような表情を見せたあと、いつもの表情に戻りミカサに命じる。

ミカサはエレンを狙った相手を許せないのか、跪いている女型の巨人を一瞥すると渋々頷いた。

 

 

 

 

 

「………ところで、ミカサはなんであそこに?リヴァイならまだしも。」

 

絶賛ミカサに抱きついている状態で本隊の方へと運ばれているため少し恥ずかしくなり唐突に思っていた疑問をぶつけてみた。

リヴァイが来てくれた理由は大方わかるのだが、ミカサがあの場にいた事には疑問を抱いていた。

ちなみに、なんでミカサが私を運んでいるかというとリヴァイじゃ小さすぎて私のことを運べないから。

 

「そ、それはですね………帰還命令が出たので馬の方に戻ろうと思ったら突然光が見えてそれで嫌な予感がしたので…」

 

ミカサはそこまで言うと少し頬を赤らめて顔をそむけた。

 

「………なるほど。エレンが心配になってそこへ向かったら威圧感的なチビに捕まった上、エレンではなくこんな奴を助けることになってしまったと…」

 

ミカサがそんなことを思っていないとは分かっているが、半分ほどは事実であるため少し嫌味っぽく言ってみた。

 

「い、いえ…そんなことは…」

 

ミカサは珍しく焦ったような表情で否定する。

普段殆ど感情を表さないだけあって、こういう状態のミカサはかなり可愛らしい。

 

「……おい…テメェら……はしゃぐな。もうじき本隊に追いつく」

 

リヴァイの言う通り、目視出来る範囲に本隊がいる。

自分だけハブられたのが気に入らなかったのか、リヴァイは若干不機嫌になっているが。

 

「ありゃ怒られちゃったね」

 

「………はい」

 

私は一応助けてもらった恩があるのを思い出し、静かにミカサに抱きついていることにした。

 

 

 

 

 

 

 

「ソラさんっ!!」

 

本隊の所に到着するなり、ミカサごと抱きしめるペトラ。

壁外であることなど忘れているかのように警戒心はない。

 

「よし、よし。ペトラ、後は壁に帰ってからね」

 

私はペトラの頭を空いている方の手で撫でて、ミカサに荷馬車へと降ろしてもらう。

 

「ありがとね、ミカサ。お陰で助かった」

 

「い、いえ。良かったです、間に合って」

 

ミカサはそう言って顔を背けると自分の隊列の方へと駆けて行った。

 

「………それにしても、自分の馬にすら乗れないとは…」

 

「仕方ないですよ、その足じゃ」

 

私の誰にも聞かれないであろう呟きに答えたのはペトラ。

何故か、馬に乗らず私の隣に座っている。

 

「………ペトラ?なんでそこに居るのかな?」

 

「それが右翼側に居た何人かの馬が死んでしまったそうなのでソラさんの護衛も兼ねて私が荷馬車に乗ることになったんですよ」

 

ペトラの言う通り周りを見渡してみると、余っている馬は私の愛馬のみで他は全部誰かしらが跨っている。

確かに荷馬車では逃げきれない巨人もいるため、今の私では護衛が必要なのも否めない。

 

「……それじゃあよろしくね、ペトラ」

 

「はい!!」

 

私はペトラの元気のいい返事を聞いて少し安心することが出来た。

 

「総員!カラネス区に帰還せよ!!」

 

エルヴィンの掛け声とともに、全隊が一斉に駆けカラネス区へと帰還を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カラネス区までの帰還は比較的安全に行う事ができた。

だが、カラネス区に帰還した私たちを迎えたのは祝福ムードではなく悲壮感に満ちた嘲笑うかのような視線。

 

(………仕方ないのかな)

 

私たち調査兵団は壁外調査に出た朝と比べれば半分とまではいかないが7割ほどまでその数を減らしている。

 

「………あ、あれは……」

 

私の隣に座っていたペトラだが、前方に何かを見つけたようで急いで駆け寄って行った。

 

(……どうしたんだろう?)

 

かなり気になるところではあるが、残念ながら立ち上がることすらままならないため泣く泣く諦めた。

 

(………めんどーだなぁ)

 

あれほど啖呵を切って出ていった壁外調査の結果がこの有り様では、憲兵団やウォール教に何を言われるのか火を見るより明らかである。

 

(まぁ、面倒なことはリヴァイたちに任せて私はゆっくりさせてもらいますかね。丁度、動けそうにないし)

 

私は少ししてから戻ってきたペトラに連れられるまま、救護班の元へ連れていかれ怪我の処置をしてもらった。

救護班曰く、数十日大人しくしていれば傷は治るとのことらしい。その事をエルヴィンに言った結果、ペトラを監視役に付けられたことには不満だが。

 

 

 

 

この壁外調査の数日後、エルヴィン含め調査兵団の幹部とエレンが中央へ招集されることが決定。

私は、怪我を理由に逃げようとしたが残念なことにわざわざ迎えを寄越すと言われてしまったため逃げることは叶わないらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





それではまた次回


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9話


まだ9話なのに、話の展開が随分と早い気が……。

皆さんとしてはどうなんでしょうか?
今のままでいいのか、もっと遅くして欲しいのか……。意見ありましたらよろしくお願いします。




それではー、本編へレッツラゴー!


 

私たち、調査兵団の幹部が中央に呼び出される当日。

ソラ=ノーレンスこと私は、足の怪我を理由にどうにかして自室から出ないように粘っていた。

 

「嫌だ!無理!歩けない!!」

 

「………ソラさん、面倒なのはわかりますけど……ほら、兵長たちも待っていますし……」

 

窓から外を見れば、既に準備を整えたエルヴィンたちが私のことを待っている。

 

「だってさ、なんで"副"兵士長の私まで出頭させられるの?それだったら、ハンジも呼び出されるべきだよ!!」

 

ソラの言っていることもあながち間違ってないため、ペトラは強く反論出来ずただ顔を顰めることしか出来ないでいた。

 

ドンッ

 

「………オイ……いつまで待たせやがる」

 

「…ひゃっ!……リヴァイ、乙女の部屋にノックもなしに入るとはいい度胸だね……」

 

リヴァイの急な登場に驚いたことを隠そうと虚勢を張ったのはいいのだがリヴァイ相手にそんなこと通用する訳もなく…。

 

「……行くぞ……」

 

「嫌だァ~!ペトラ、Help me!!」

 

リヴァイに腕を掴まれてしまい逃げ場を失った私は、リヴァイに引き摺られる運命であり、それを止められる可能性のあるペトラはただ苦笑いしているだけである。

仮にも女子なのだから引き摺るのは勘弁して欲しい。

 

「……ペトラ、何をしてるお前もだ。こいつの世話役だろうが」

 

「は、はい!!」

 

リヴァイの手によってペトラまで掌握されてしまった私はそのまま為す術なく馬車へと詰め込まれた。

 

◇◇◇◇

 

(……それにしても面白い子だなぁ)

 

2台の馬車によって央都へと向かっているため、必然的に私とリヴァイ、もう片方にエルヴィンという形になっている。

単純な話、私とリヴァイと一緒に乗っている憲兵の人がさっきから何故か震えているのだ。

 

(……私たち如きを怖がってるのかな?)

 

先程から怯えたような目でリヴァイと私を交互に見ているため怖がっているのだとは思うのだが仮にも兵士。

もし巨人と対峙したら、動けなくなるのではないかと心配になる。

 

(さて、あの子らは上手くやってるかな?)

 

私たちの乗っている馬車が丁度ストレス区に入ったところで、私はふと彼らのことが心配になった。

ミカサがいるため、そう簡単に失敗することは無いとは思うがそれでもあの巨人の汎用性には私も驚かされた。

 

(……さて、そろそろ私も行きますかね)

 

今回の呼び出し、実を言うと私は行かなくても良かったと先程エルヴィンから聞かされた。

実際、聞かされた時は暴れてやろうと思ったが作戦を任されてしまったため泣く泣くここまで来たのだ。

 

「……それじゃあ、憲兵さんさようなら!」

 

「えっ……あ、おい!」

 

馬車内の憲兵さんが私を止めようと手を伸ばすが時すでに遅し。

私は隠し持ってた立体機動装置で馬車から出るとミカサたちとの待ち合わせ場所へと向かった。

 

 

◇◇◇

 

 

立体機動で移動すること数秒。

民間人に見つからないように、屋根上を最速で飛んでいたがそれでも多分見つかっていると思う。

 

(………あ、いた)

 

ミカサたちとの待ち合わせ場所付近に到着すると、丁度地下へと誘おうとしている所だった。

 

(……お願いだから少しだけ待っててよ…)

 

私は立体機動で急いでその場へと向かい、アニの隣に飛び降りた。

 

「…ソラさんッ!?」

 

隣に急に現れた私の姿を確認したアニは日頃では見せないような驚いた顔で固まっていたが直ぐにその視線を私の太腿辺りに向けた。

「あ、傷ならお陰様で治ったよ?」

 

私のその言葉でアニは冷静になったのか、直ぐに臨戦態勢に入ろうとした。

 

「ソラさん!!」

 

「…大丈夫、ミカサ。アニ…、私はあなたと話をしに来たの。」

 

私は今にも抜刀しそうなミカサを手で制して、刃をしまってからアニへと近付く。

 

「……は、話ってなんですか…。もう気が付いてるんでしょ!?」

 

「うん。でもね、私はあなたに手を貸して欲しい。これは私だけの意見じゃない、エルヴィンも同じ意見だよ。それに渋々だけどリヴァイも。」

 

私がわざわざここまで来た理由は、エルヴィンにアニを捕縛するのではなく上手くこちら側に引き込めないかと頼まれたから。

単アニを討伐するのは私とリヴァイが居ればそう難しい話でもないし、だからと言って折角巨人のことをよく知る人物をそう易々と殺すのは人類にとってもいい事ではない。

それにアニは【鎧の巨人】や【超大型巨人】とは違い、まだ人類の敵とみなされていない。アニの【女型の巨人】が人間を殺したことを知っているのは調査兵団でも極一部。つまり、まだ間に合う可能性があるのだ。

 

「………頭おかしいよ」

 

「だろうね、私もそう思う。それでどうする?殺るなら今すぐ切り刻んであげるけど?もしアニが私たちの味方になるって言うならあなたの身柄は私が責任をもって保護する」

 

これはアニにとってそう簡単に決意できる事じゃないことぐらいは私でもわかる。

いきなり、今まで殺そうとしていた相手に味方をするなんてとてもじゃないけど怖くて出来ない。

相手に正体がバレている上、自分をいつでも殺せる相手に自分の全てをさらけ出すなんて普通の神経ならまず無理だ。

ただ私にはなんとかなる自信があった。

 

(………もし、アルミンが言っていたことが本当ならアニはこちら側についてくれる。)

 

アルミンが言っていたことで唯一引っかかったことがあった。それは"女型の巨人がアルミンの顔を確認して殺すのをやめた"ということ。もし、アニが人間を殺すことに何も感じていないとするならば顔など確認せず殺したはずだから。

 

「……アニ、早く決めて。じゃないと、私は貴女を斬らなきゃいけない」

 

これは私の経験から言えること。

相手に考えさせる間を与えればそれだけ、裏切られる可能性は高くなる。

そうならない為にも、アニには即決させる必要がある。

 

「………ソラさんは………」

 

「…なに?」

 

「本当に、本当に私を守ってくれるんですか!?」

 

突然のアニの大声に私だけでなく、ミカサたちも驚いているように見えた。

アニのその言葉には一切計算など感じず、ただ本心からそう叫んでいるように聞こえた。

 

「うん、私もリヴァイも貴女を裏切らないよ」

 

たったそれだけの私の言葉がアニに伝わったのかは分からないが、アニはその場に座り込んだ。

 

「………アニ、私たちと一緒に来てくれるかな?」

 

「………………はい」

 

私はミカサに頼んで、形だけの拘束をアニに施しリヴァイの到着を待った。

何故リヴァイかと言うと、この後色々な事情説明をザックレー総統たちにしなければいけないためリヴァイにそのまま連れて行ってもらおうという算段である。

 

「さてさて、私はミケたちの方にでも向かおうかな」

 

まだリヴァイが到着するまでにはかかりそうだが、いつまでも監視役の名目で私がここにいたのでは私を信用してくれたアニに対して失礼なような気がする。

ミカサがいるため、アニに害が及ぶことも無いと思う。

 

「それじゃあ、ミカサ。リヴァイが来るまでアニのこと頼んでもいいかな?もしアニに近寄ろうとする人いたら斬っちゃっていいからね?」

 

「は、はい。ソラさんはどうするんですか?」

 

「私はね、ちょっと野暮用で」

 

エルヴィンに頼まれていたことの一つに、アニを引き込めた場合は104期生を監視しているミケたちに報告することを頼まれているため出来る限り早く向かいたいのだ。

 

「そ、そうですか。分かりました」

 

「うん、よろしく!」

 

私は立体機動を使わず急いでストレス区を出て、ミケたちの元へと馬で駆けた。

 

 

 

 

 





えー、このまま原作通り進んでも面白くない!!
そう思った結果がこれです。

実際、原作でもアニは何か裏がありそうでしたし………


まぁ二次作ですし、これぐらいが丁度いいかと。



これからも気が向いたら投稿しますのでどうぞ、お楽しみに~


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10話

ストレス区からミケたちのいる場所までそう遠くはなく、馬で小一時間程度のはずだった。

だが、私の足はストレス区から出て直ぐに止まることとなった。

 

「………なんで、壁内に巨人が…?」

 

ストレス区から20分ほど馬で駆けたところで、私の視界には数十体に及ぶ巨人の影が現れた。

1度は破られたトロスト区だが、エレンの巨人の力によって塞がれたためそこから壁内に巨人が入ってくるなんてことは有り得ず、また超大型巨人や鎧の巨人が現れたという報告も上がってきていない。

 

「考えても仕方ない……っか。」

 

巨人の影は私から約1kmほど離れた所に固まっている。

全部が奇行種でないとするならばあの辺りに誰かいると考えるのが普通。

私は馬の手網を握り、巨人の影が密集している場所へと駆けた。

 

 

◇◇◇

 

(………あの巨人は…なに?)

 

馬を走らせること数分で、目的の巨人の影の密集地帯の付近に到着したのだが明らかに一体だけ達観した様子で歩き回る巨人が一体。

明らかに普通の巨人とは違うその風貌から、知性を持つ巨人。つまり、人間が巨人になっていると考えるのが普通だろう。

 

(……あれに気づかれるのは不味いか)

 

せめて、ここにミカサかリヴァイが居るのならばあれを駆逐しにかかるのも一つの手だが今の私には補給物資もない上に単騎であれに挑むのは少し無謀に思えなくもない。

 

私は1度馬から降り、ギリギリ立体機動が届く距離から例の巨人から見えない裏手から回ることにした。

出来る限り見えないように、地面スレスレを飛んで。

 

ピューッ

 

私が丁度裏手に到着したときに馬を呼ぶ甲高い指笛の音がした。

周りからする音からして、巨人の数は例の巨人を含め4体。そのうち3体がこの林の中にある家の周りにいる。

対して、心音含め人間は1人。発生している蒸気の数からかなりの実力があることは確かなためミケである可能性が高い。

 

(………取り敢えず合流かな)

 

ミケと合流しようと林を超えた所。

先程、ミケが呼んだ馬がこちらへと向かっている姿が例の巨人の足元を通過しようとした時のことだった。

 

「……馬を狙ったの!?」

 

知性のある巨人である可能性が高いことは分かっていたが、馬を狙うことをするとは思いもしなかった。

 

馬を掴んだ例の巨人はそのまま馬を握ると、まるで投擲の玉のようにその馬をミケ目掛けてぶん投げた。

 

ガシャンッ

 

例の巨人が投げた馬はピンポイントでミケのいる屋根へと突き刺さった。

ミケもなんとか避けたがそのまま屋根から落下してしまう。

 

「…あ、危ない!!」

 

私は1度混乱した頭を振り、急いでアンカーを建物へと突き刺しミケが落下する前に回収を試みる。

 

ドスッ

 

「ゲホッ…………あぶなぁ」

 

「ソラ!?何故お前がここに…」

 

急ぎすぎたが故か、勢い余ってミケを回収する際に思いっきりお腹に衝撃を受け私は手痛い思いをする羽目になった。

 

「……ゲホッ…ゲホッ……そんなことよりも大丈夫?」

 

「……あぁ。それよりも彼奴は一体……」

 

ミケを一応安全な屋根の上へと運び、1度落ち着こうとするがミケに奴の存在を出され嫌でも意識する羽目になる。

ミケの言うようにアレは、エレンともアニとも違う明らかに巨人になっても高い知性を保持している。

あの巨体で人間の知性とは……やってられない。

 

「さぁね……ともあれ、こっちに向かって来てるしどうする?」

 

万全の状態ならばアレを討伐するという考えもあったのだが、何せミケの立体機動上手く動くか分からない状態だし、私の肋骨はさっきミケを助けた時に何本か逝っている。

あれを殺るにはかなり不安がある。

 

「…………逃げるにしても馬がなければ無理だろう。せめて、あと一人腕のたつ奴がいればな…」

 

「………確かにね。せめて、ミカサかリヴァイが居ればなぁ」

 

ないものねだりとはこの事で、ストレス区にいるリヴァイやミカサを頼りにしている時点でもはや詰んでいる。

それでも抗おうとするのが、私たち調査兵団なわけで肋骨如きで戦えなくなる私ではない。

 

「……仕方ないか…殺るか。ミケ、立体機動の調子は?」

 

「動くには動くが、ガスの方が心許ないな…」

 

「……そっか。それじゃあさ、周りにいる3体頼んでもいいよね?」

 

「あぁ……それぐらいなら任されよう。」

 

「よしっ!!それじゃあ逝ってみよう!!」

 

私は腰から刃を抜き、1歩1歩近付いてくる猿のような巨人を迎え撃った。

 

 

 

 

 

 

 

 




今回もありがとうございました。

これぐらいの長さなら比較的、投稿頻度を上げられると思うので多分当分はこれぐらいの長さになるかと。


戦闘描写が少なく物足りないかもしれませんが、これからもよろしくお願いします


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11話




お久しぶりです


更新が滞り続けていたのに、他作品を描き始めたりなどしていたらこの作品の更新がこんなにも遅くなってしまいました。
他にも、原作の方が胸糞悪い展開で書く気が起きなかったのもあるのですが…。
エレンのあの発言もそうですが、最近のエレンの行動はよく分からないのであまり続きが楽しみって感じじゃなくなってきてます……。


一応、この作品の落とし所は考えてあるのでそこまでは書き続けるのでどうぞよろしくです





「……どうしたものかな…」

 

周りの巨人をミケに任せ、私自身は猿のような巨人と対峙することにした。だが、周りに高い木は殆どない上に自分の身体すら万全ではないこの条件の下戦うにはかなり分の悪い相手だった。

知性を持った巨人を今に至るまでにアニとエレンの2人を見てきたがエレンは勿論、あれだけの武術を嗜んでいるアニよりも隙が全くない。

先程、私がミケを助けに出てきたときは若干驚いたような表情をしたもののそれ以降は私から視線をずらさず周りの巨人の方へといったミケには見向きもしなくなった。

 

「……やるだけやってみますか」

 

一旦姿を視線から隠すべく立体機動に移った瞬間だった。

猿のような巨人は特徴的な長い手で地面を抉ると、それを握り潰し大きく振りかぶった。

 

「………なにをするつもり?」

 

嫌な予感だけが頭を過り、私は巨人が腕を振り切る前に立体機動で小屋の影に隠れた。

 

ズドォォォォン

 

危機一髪。

猿のような巨人はただ掴んだ土を投げただけだろう。しかし、その投擲は凡そ投げただけとは思えないほどの威力だった。

 

「…………まじ?」

 

簡単な話、巨人が人間と同じような身体の構造をしていた場合身体が何十倍もある巨人が投擲をすればそれこそ大砲のような威力になるのは想像するより容易い。

だが、今までそんな巨人はいなかったため誰もそんな攻撃手段があるということは想像もしていなかった。

 

(知性がある個体がいる時点で警戒すべきだったか…)

 

私自身は無傷だったもののあの投擲が直撃した建物が無傷で済むわけもなく、殆ど屋根が吹き飛んでしまった。

ただでさえ、周りに高い建物が存在しないのにこの状態はかなり不味い。

唯一、建物の周りに若干残っていた巨人も一緒に吹き飛ばしてくれたことは不幸中の幸いと言うべきだろう。

 

(……うーん。リヴァイがいればなぁ…)

 

最悪とも言えるこの状況だが、打つ手がない訳では無い。先程の爆撃のような投擲のおかげであの巨人は私の姿を見失っている。とはいえ、うなじを狙うには高さが足りない。

 

「……はぁ、仕方ないかぁ……。死んだらリヴァイの枕元に化けて出てやる」

 

軽く冗談を言い自分の気を紛らわせた私は、覚悟を決め地面を思い切って蹴り、地面スレスレの高さを立体機動で移動する。

あの巨人に気づかれることなく、奴を切り刻むために。

 

(……よし、予想通り)

 

建物から少し離れた所に見えたのは、あの特徴的な毛で覆われた足。そして、僅かに周りよりも毛が薄い膝裏。

私は奴が気が付くよりも早くアンカーを膝裏へと通すとその勢いに任せ、奴の膝裏の肉を削ぎ落とした。

 

ドスンッ

 

気が付かれた場合の恐怖心からか、少し焦ってしまったため少し浅かったものの奴を跪かせるには十分だったようだ。

私は、アンカーの刺さっている木に到着すると同時に思いっきりその木を蹴り飛ばす。

突然の自分の足の自由が効かなくなった巨人は驚きはしたものの、既に私の姿をその視界におさめていた。

 

「お前……」

 

「しゃべった!?」

 

はっきり聞こえたその言葉は目の前に居る巨人から発せられたものだ。知性がある巨人はエレンやアニ、鎧の巨人などを見た今では今更驚くことはないが、そんな知性のある巨人たちでも理解できる言葉を発する巨人はいなかった。

驚きを隠せなかった私は一瞬焦り、治り切っていない足に全体重をかけてしまった。

 

「………しまっ」

 

結果、木を思いっきり蹴ることは出来ず私は中途半端な勢いで空中へと飛び出した。

勿論、知性のある奴がそのタイミングを逃すことは無く、私に向けてその大きな手を振りかざした。

 

(………死ぬのかな)

 

このまま私はこの手に握り潰されて死ぬ。そんな回避のしょうがない未来が見えたからだろうか?それとも、2度目だからだろうか?死の恐怖が私を支配することは無くただその現実を受け入れようとした。

 

「………ソラっ!!」

 

幻聴だろう…。

私がその手に収まろうとしたとき、ここにいるはずのないリヴァイの声が聞こえたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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