天然なあの子の心に触れて (あまぽー)
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プロローグ
第0話 俺達の時間はなぜ止まったのか


どうもー!天駆けるほっしーです!ヽ(*゚∀゚*)ノ

この度新作を始めました♪(‘ω’*)

メインヒロインはおたえ!

これから頑張るのでよろしくお願いします!

勿論ポピパの皆も出ますよー!ヽ“(*´ω`)ノ♪


「おたえちゃんは大きくなったらなにしたいの?」

 

 

幼い頃俺が幼馴染みの花園たえに聞いたことがある。

 

家が近所だから両親が仲良く、必然的に彼女と過ごす時間が増えて仲良くなった。

 

 

当時幼稚園児だった俺は未来に大きな希望を持ち、たくさんの夢を持っていた。

 

それでもなりたい職業はスポーツ選手とか電車の運転手とかだった。

 

だから彼女からの答えもアイドルやらお花屋さんとかかなー?と思っていた。

 

しかし、彼女は笑顔でこう答えた。

 

 

「おたえの国をつくる!」

 

 

「…えっ」

 

 

「もちろん、ともくんもいっしょにね?」

 

 

「う、うん」

 

 

こうして俺、九条 智之〈くじょう ともゆき〉はもれなく彼女の…『花園ランド』に巻き込まれていくことになる…はずだった。

 

 

 

ーーーー1年後

 

 

親の仕事の転勤から家族で引っ越すことになった。

 

昔から泣くことがあまりなかった俺は幼稚園のお別れ会でも笑顔でありがとうと伝えることが出来た。

 

 

そして引っ越し当日、残りの荷物を車に乗せ終えあとは出発するだけという時に花園家の人たちが見送りに出てきてくれた。

 

 

「花園さん、ありがとうね?」

 

 

「いいのよ~、いつでも遊びに来てね?明日でも」

 

 

「さすがに明日は無理だって!」

 

そんな親同士の会話を聞いているとおたえが近づいてきて俺の両手を掴んで言った。

 

「ともくん、ずっと待ってるよ」

 

 

「でも、僕引っ越しちゃうし…」

 

 

「おたえの国はね?絶対戻らないとどんどん罰ゲームをやらなきゃいけなくなるんだよ?」

 

 

「罰ゲーム?」

 

 

「そう。だから早くに戻ってきてね?約束だよ」

 

 

「わ、分かった!」

 

 

あの時の表情は冗談を言うものではなかった。正直なとこ怖かったのを覚えてる。

 

 

そして、車に乗り込み町を後にした。

 

それからの人生は特に代わり映えもなく過ごした。

 

勉強もそこそこ、部活もやらずにいたが日課として筋トレとランニングをするくらいか。

 

そうして中学三年になったばかりの頃、親父からある一言を言われた。

 

 

「智之、お前将来はどうするんだ?」

 

 

「将来か…まだ考え中だよ」

 

 

「あのなぁ…あっという間にもう高校生になるぞ?」

 

 

「まだどこ受けるか決まってないしね」

 

 

親父は頭を抱えてため息をついた。

 

でも、そうだ。確かに決めないとな…。

 

そう思った時に親父は顔をあげて言った。

 

 

「智之、父さんは来年転勤になる予定だ。前みたいにお前は小さくない。だから一人暮らししてみないか?」

 

 

「へ?」

 

親父からの予想外の一言に変な声が出た。一人暮らし?俺が?

 

 

「母さんと話してたんだ。お前の人生だ。親の都合で振り回すのもあれだしな」

 

 

「親父…」

 

 

「ちなみに住む場所は昔住んでいた家あるだろ?あそこでもいいか?」

 

 

「俺は大丈夫だけど…いいの?」

 

 

「おう。ただし、バイトも必ずやれよ?」

 

 

「分かった!」

 

中学を卒業と共に俺の一人暮らしが始まった。

 

 

そして、それは彼女、花園たえとの再会はそう遠くないことを告げていた。

 




さて、次回から早速おたえが登場します!

お楽しみに!(◯’ω’◯)

よければお気に入り登録よろしくお願いします♪


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第1章
第1話 運命の再会とは何か


どうもー!天駆けるほっしーですヽ(*゚∀゚*)ノ

プロローグからお気に入りに登録してくれる方多くて嬉しいです(*ノωノ)

早速1話はメインヒロインに再会します!


卒業して1週間が過ぎた頃、俺はこの街に帰ってきた。

 

荷物は前もって業者に頼んだのを両親が対応してくれた。

 

ありがとう。親父、お袋。

 

今日はとりあえず家の中を軽く掃除してから段ボールを開けていこう。

 

家までの道はスマホがあれば行けるし問題はなかった。

 

町並みを見ながら家の方に向かう。

 

流石に記憶も薄れてハッキリと覚えてないがそれとなく見覚えのある建物も見えた。

 

ふと公園の中を見渡す。

 

「ここは…」

 

間違いない、昔より遊具が減っているがここは俺とあの子が一緒に遊んだ場所だ。

 

「…今もいるのかな」

 

流石に引っ越してしまったかもしれない。でも、居て欲しいなぁとぼんやり考えているとスマホは目的地までの案内を終了した。

 

「懐かしいな…」

 

 

あの頃見た家に比べていくらか年月が経ったため少し汚れも見えた。だがまだまだ綺麗だ。

 

ドアの前でカギを取り出そうとカバンを開けた。

 

 

「ん?」

 

カギが見当たらない。

 

カバンのポケットを全て調べるが見当たらない。

 

「マジかよ…」

 

どうやら…カギを忘れたようだ…なんてこった。

 

 

急いで家に電話をかける。

 

数回のコールの後に繋がった。

 

 

『もしもし?』

 

出たのはお袋だった。

 

「あ、お袋!俺、家のカギを忘れてったみたいだ!」

 

『はぁ~?アンタ初っぱなから何してんの?』

 

たしかにな。

 

 

『今日はお父さん仕事で帰って来れないから何とかしなさい』

 

 

「え?明日まで?」

 

『それじゃあ、私もパートの時間だから。またね』

 

ガチャ

 

「オイオイ…マジかよ」

 

一人暮らし最初の夜がもれなく野宿とか笑えないんだけど!?

 

「どっかの窓とか空いてなねぇかな…」

 

リビングの窓を調べる…開いていない。

 

「参ったな…」

 

こうなったら2階の窓だな…

 

塀を登ってそこから車庫の屋根に移る。

 

そこから昔俺の部屋だったところの窓に手を伸ばす。

 

「あと少し…!」

 

 

その時、下から声がした。

 

 

「昼間からの泥棒さんかな?」

 

 

「えっ!?」

 

思わずビクッと身体が震えた時、伸ばした手が空を切った。そして、そのまま身体を浮遊感が包んだ後背中に強い衝撃がきた。

 

つまり、車庫から落ちて背中を打った。

 

「グハッ!」

 

一瞬息が止まる。

 

だが、折れてはいない。

 

落ちたところは昔お袋が手入れをしていた花壇だった。

 

流石に花は咲いてはいないが下が土だったからなんとかなったようだ。

 

まぁ…痛かったけどな。

 

 

痛みが引いたところで身体を起こす。

 

「あー、ツイてないなぁ…今日は」

 

このまま横になっていたい気分だ。

 

 

「お、生きてる?」

 

 

さっき聞いた声がした。

 

 

声の方に視線を向けるとそこには一人の少女が立っていた。

 

 

長い黒髪、緑の瞳、整った顔立ち…面影がある。

 

 

「なぁ、俺のこと…分かるか?」

 

 

もっとマシな事は言えなかったのか!そう思ったがこの状況で俺が頭で紡いだ言葉はこれしかなかった。

 

 

しかし、彼女の答えは予想とは違ったものだった。

 

 

「う~ん、2階から家に侵入しようとして落ちた泥棒さん?」

 

 

「まんまじゃねーか!あと、泥棒じゃねぇよ!!」

 

 

思わずそうツッコミを入れてしまった。

 

 

彼女はツッコミを聞くとフフッと笑いながら言った。

 

 

「冗談だよ。久しぶりだね、ともくん」

 

 

やはり彼女は、あの花園たえだった。

 

安堵と共に思ったことをそのまま言う。

 

 

「中身は思ったより変わってないな、花園」

 

 

「昔は『おたえ』、だったよね?」

 

ちょっと膨れっ面をして言う花園。

 

「昔はな?」

 

 

「ともくんをそんなひねくれた風に育てたおぼえはないのになー?」

 

 

「そりゃ育てられてないからな」

 

 

そんな軽口を叩きながら俺は内心安堵していた…

 

 

この時、花園がぼそっと呟いた。

 

「…1つ目の罰ゲームにしておこっか」

 

「ん?なんか言ったか?」

 

「ううん、何でもないよ?」

 

 

「そっか」

 

こうして俺と花園はアニメやドラマの様な運命的なものではない、なんかもう色々と残念な再会をしたのであった。

 




これにて1話は終了です!

罰ゲームとは…なんでしょうねー?

よければ次回もお楽しみに!ヽ(*゚∀゚*)ノ


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第2話 だれが智之をここへ呼んだのか



更新遅くなりました!

今回はシリアスもあります。

では、どうぞ!o(>ω<)o


 

 

花園に連れられて花園家にお邪魔する。

 

 

「ただいまー」

 

 

「お邪魔します…」

 

 

玄関に入ると奥からパタパタと足音が聞こえたかと思ったら奥から出てきたのは花園の母親だった。

 

「おかえりなさい~、あら?たえ、この子は…」

 

 

「結婚相手だよ?」

 

 

「違うわ!」

 

油断してるとこれだ…まったくこいつは…。

 

 

「うふふ…久しぶりね?えーっと、たかくん」

 

 

「誰ですかそれ!?」

 

 

「あら?間違えちゃったわ~まぁ上がって上がって」

 

 

「ほら、いつまで話してるの?早く上がろうよ」

 

 

いや、お前とお前の母親がふってきたことじゃねぇか…

 

 

「あいよ」

 

 

「とりあえず脱衣場に行って着替えてくればいいよ」

 

 

「あぁ、すまんな」

 

 

「いいって、私も一緒に着替えるから」

 

 

「…なんで?」

 

 

「冗談だけど?」

 

 

俺は思わず無言で花園の額にデコピンを打ち込んだ。

 

 

「うぅ~…ともくんに傷物にされた」

 

 

「変な言い回しするんじゃない」

 

 

昔何度も遊びに来た家だ。変わらないため脱衣場に向かう。

 

 

ドアを閉めて鞄から着替えを取り出す。

 

 

シャツを脱いで新しいシャツを取り出した時、扉が開いた。

 

 

「…おい、花園」

 

 

「きゃー、ともくんのえっちー?」

 

 

「なんで見られた側の俺が言われなきゃいけないんだ…」

 

 

ドアを閉めて鍵をかけてから大きくため息をついた。

 

 

 

 

着替えを終えてリビングに向かうと花園がウサギに囲まれて笑っていた。

 

 

 

黙ってれば可愛いんだがなぁ…。

 

 

そんな風に思えるほど花園は魅力的になったと思う。

 

 

外見はな?中身は全然かわってねーから残念なんだよな

 

 

「ともくーん、おっくんが遊んでやるってさー」

 

 

「随分と偉そうなウサギだなオイ!」

 

 

 

花園にツッコミを入れながらウサギ達の近くに行く。

 

 

実は動物が好きな俺からしたら楽園だ。

 

 

昔、俺が花園の家によく遊びに来た主な理由だ。

 

 

その日はあっという間に夜になると花園の母親がハンバーグを作ってくれたので頂いた。

 

 

ゲージに入ったウサギを近くに見てハンバーグを食べると…なんか変な感じだ。

 

 

親たちは花園さん家に泊めてもらえることを伝えると、

 

『失礼なことしないように気を付けてよ?』

 

 

と返信がきた。

 

さて、ここまで問題はなかったのだがここから問題が発生した。

 

 

時刻は23時。そろそろ寝る時間なのだが俺は床でもいいと伝えると花園が言った。

 

 

「昔みたいに二人で寝ようよ」

 

 

 

「いや…花園、それはなぁ?」

 

 

「あら?たえがそれでいいなら一緒に寝たら?ともくん」

 

 

「えーっと、それはなんというか」

 

 

「ともくん、優しくしてねー?」

 

 

「明日はお赤飯ねー」

 

 

「いや、寝るだけですから!」

 

 

結局お客用のお布団を借りて寝た。

 

 

朝起きたら花園が布団に入ってきて抱きついており、それを花園の母親に見られたりしたのはまぁ…疲れた。

 

 

 

 

 

―――23時半 九条家―――

 

 

 

「ただいま」

 

 

「あら、あなたおかえりなさい」

 

 

「…智之から連絡来てたが、花園家に泊まったんだってな」

 

 

「えぇ…智之も楽しいみたいだし大丈夫そうね」

 

 

 

「…あれが届いて5年か。最初は智之が忘れられないのかなと思ったのだけどな」

 

 

そういって智之の父は鍵のついた引き出しを開ける。

 

 

 

「…あの子を止めるには直接お前を会わせるしかなかった。」

 

「そうね…」

 

 

 

 

引き出しの中には大量の封筒が入っており一つ取り出して中身を出す。

 

 

 

「すまん……智之…」

 

 

 

手紙に書かれていたのは1文。

 

 

 

 

 

 

――――「お前たちが奪った、彼を返せ」

 

 

 

 

同じように両親へ大量の手紙が届いていたことを、智之本人は全く知らされていなかった。





次回も更新遅れるかもしれませんがよろしくお願いします!o(>ω<)o


よければ感想、評価、お気に入りお願いしまーす!


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第3話 嫉妬深き彼女は何を妬むのか

遅くなりました!o(>ω<)o

3話始まります!

あと宜しければ評価ポチポチお願いします♪(*ノωノ)

モチベ上がりますので…笑っ


カーテンの隙間から入ってくる朝日とゲージ内のうさぎのカタカタと動く音で目を覚ます。

 

 

「あーそういや泊めてもらったんだったな…」

 

 

今日は親父が家の鍵を届けてくれる予定だ。

 

鍵を受け取ったらあと引っ越しの物も出さないと…

 

まだ寝ぼけた頭でぼんやりと考えていると右側でモゾモゾと音がした。

 

 

「…」

 

ゆっくりとそちらを見るといたのは花園だった。

 

 

「なんで同じ布団に入ってんだよ…」

 

 

昨日も一緒に寝ると言い出して結局部屋に戻ったと思ったら…どうやら俺が寝ている間に潜り込んだらしい。

 

というか、近い。

 

 

「まったく…おい、花園」

 

「んふふ…しろっぴー…」

 

 

oh…まだ夢の中にいるな。

 

 

「いいからおーきーろー」

 

 

呼び掛けながら肩を揺らす。

 

 

「んー…ともくん?」

 

 

流石に起きたか…やれやれ。

 

 

「やっと起きたか…花園、お前結局俺の布団に…『ともくーん♪』」

 

「うおっ!?」

 

 

やっと起きたと思ったら花園はそのまま抱きついてきた。

 

 

「んふふ~…♪ともくーん…」

 

「おい!離れろ!てか、寝ぼけてんのか!?」

 

何とか離れようとするが…コイツ、力強くないか!?

 

腕もこんなに細いのに…てかいい匂い…じゃなくて!

 

「はーなーれーろー!」

 

流石に男子が女子に力で負けることはない。少しずつ腕を引き剥がしていけそう…だったのだが。

 

 

「あらあらあら…ご飯炊いちゃったけどやっぱりお赤飯のほう良かったかしら~?♪」

 

 

「……」

 

 

ゆっくり声の主のほうを見ると頬に手を当ててニコニコと微笑む花園の母親がいた。

 

 

「あ、あの、お母様…?これはですね?ややこしいことなのですが、そういうことではなくて…」

 

 

「あらあら~!もうお義母様だなんてー♪」

 

「そうじゃなくてー!!」

 

 

俺の悲痛な叫びを聞いたからか花園は目をパチリと開けてこちらを見る。

 

 

「花園!お前からも言ってくれ!!」

 

「ともくん?」

 

「なんだ!」

 

「末永くよろしくお願いします」

 

「…」

 

そのあと花園のおでこに渾身の凸ピンを叩き込んだ。

 

 

女子に暴力なんて!と思う人もいると思うが…俺も我慢したほうなんだ。多目に見ては貰えないだろうか…?

 

 

 

 

朝御飯を食べ終えテレビを見ているとスマホが鳴った。

 

画面には『親父』と表示されていた。

 

 

「もしもし、親父?」

 

『あぁ、今家の前に着いたぞ』

 

「今行くよ」

 

電話を切ると花園が言った。

 

「誰から?」

 

「親父だよ。家の鍵持ってきてくれたってさ」

 

「…ふーん」

 

ん?まぁ興味ない話だったか、とりあえず受け取りに行こう。

 

外に出て家に向かうと家の前に親父の車が止まっていた。

 

「悪い親父。ありがとう」

 

 

「いいさ、父さんはもう行くが困ったことがあれば連絡しろよ?」

 

 

「花園んとこに顔出さないの?」

 

「あぁ…と、父さん、ちょっと忙しいからな」

 

「そっかぁ」

 

忙しいなら仕方ないよな。また今度来たときでもあいだろうしな。

 

そう思った時だった。

 

 

「お久しぶりですね、おじさん?」

 

「うおっ!?」

 

 

いきなり後ろから花園が言った。というかいつの間に?

 

「や、やぁ…おたえちゃん」

 

「私は『たえ』ですよ?おじさん?」

 

「そ、そうだね、たえちゃん」

 

ん?花園の奴いつもなら「おたえ」って呼ぶように言ってくるのに…珍しいな。

 

 

「じゃ、じゃあな、」

 

そう言うと親父は車のエンジンをかけて行ってしまった。

 

「なんだよ、そんなに忙しかったのかよ…悪いことしたなぁ…」

 

 

「フフッ…ソウミタイダネ…」

 

「…」

 

 

花園、ちょっと笑ってるのに怖いぞ?

 

 

家の荷物は花園と花園の母親が手伝ってくれたのと前もって大きいのは運んでくれていたのですぐに終わった。

 

「ありがとよ。だいぶ片付いたしあとはすぐに出さなくてもいいものだし大丈夫だ」

 

 

「そう?ならあとは買い物行こうよ」

 

「買い物?」

 

 

「冷蔵庫、空だよ?」

 

 

「あー…確かに買い物いかないとなぁ」

 

 

「私もウサギ達のご飯買いに行かないいけないからついていくよ」

 

「なら行くかぁ…」

 

 

 

少し歩いてショッピングモールに向かう。

 

道中は昔のこと、お互いのその後とかを話していたらあっという間に着いた。

 

そのままペットショップに向かう。

 

 

「ちょっと買ってくるね」

 

 

「あいよー」

 

 

俺は特にペットショップに用事ないし外のベンチに座って待つことにした。

 

 

スマホを弄っていると泣き声が聞こえてきた。

 

 

「うぅ…おねぇぢゃあぁぁん…!」

 

 

迷子だろうか?女の子が泣いていた。通行人は誰も見てみぬふりときた。…酷いやつらだ。

 

 

「あー、お姉ちゃんとはぐれたのかい?」

 

「グズッ…だぁれ?」

 

「俺は智之だ。一緒にお姉ちゃんを探しに行こう」

 

「たすけてくれるの?」

 

「おう、迷子のお姉ちゃんを、探しに行こうぜ」

 

「あはは!おねえちゃんは迷子にならないよー?」

 

 

笑ってくれた。さぁて、お姉ちゃん探しと行きますか。

 

とりあえず一階を二人で回っていると声が聞こえてきた。

 

「沙南ー!どこにいるのー!?」

 

「おねえちゃんだ!」

 

「あっちのほうから聞こえたな!行こう!!」

 

「うんっ!」

 

 

「おねーーーちゃーーーん!!」

 

声を頼りに向かうと一人の少女がいた。

 

 

「沙南!よかったぁ…貴方は…?」

 

「このおにいちゃんがたすけてくれたの!」

 

「そうだったんだ。妹がご迷惑おかけしました」

 

 

少女はそう言うと頭をペコッと下げた。

 

 

「困ったときはお互い様ですから」

 

「あの、何かお礼を…」

 

 

あーこれは面倒になりそうだ。

 

「お気になさらず。連れを待たせてるので失礼します」

 

「そうですか…」

 

「おにいちゃんばいばーい!」

 

少女は笑顔で手を振ってくれた。

 

「おう!」

 

 

手を繋いで去っていく姉妹を見送ると後ろから手を掴まれた。

 

「見つけた」

 

「うおっ!?」

 

「…何をしてたの?ともくん?」

 

花園…怒ってる?

 

「すまん…迷子の子を助けてた」

 

「…それだけ?」

 

「お、おう…」

 

他に何もしてないが…。

 

しかし、花園は顔を上げず続けて言った。

 

 

「嘘だよね?」

 

 

「いや、俺は嘘なんて」

 

「女の子と話をしていたよね?」

 

「え?あ、迷子の子の姉とは話したけど…」

 

 

「ともくん…嘘つきは罰を受けないといけないんだよ」

 

「何を…痛ッ!」

 

 

花園は掴んだ手をすごい力で強く握ってきた。

 

…なんで話しただけでこんなっ!?

 

 

「俺が、悪かった、から…!」

 

 

「…分かってくれたならいいよ。じゃあ食品買いに行こう?」

 

 

「…あぁ」

 

 

俺はこの時始めて花園を怖いと思った。しかし、嫉妬深い彼女の本当の闇を知るのはまだ先のことだった。

 




ということで第3話でした!前半甘々だったので後半ちょっと暗くしてみました!笑っ(*ノωノ)


あとはゲスト出演してもらいましたけど…分かる人には伝わるよね?( ̄ω ̄;)

宜しければ評価、感想、お気に入りよろしくお願いします♪

ではまたー!ヽ(*゚∀゚*)ノシ


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第4話 孤独の少女はなにを求めるのか


お久しぶり♪天駆けるほっしーです(‘ω’*)

11月になり私の地元は寒い日々が始まっています。

そんな中!秋葉原にまた行ってきましたー!

入手したもの等はTwitterに写真載せてますので興味のある方はどうぞ!o(>ω<)o


さて、今回も闇おたえ成分が出ます。

更にちょっと痛い描写もありますのでダメな方は気をつけて!


 

それから食品を買って花園が少し見たいところがあると言ってたので、俺は本屋で待つと伝え本屋に向かった。

 

欲しかったマンガの新刊を購入し、近くのベンチにて花園を待つ。

 

今度はベンチを離れずスマホを弄って待つ。

 

…また痛い思いをするのは御免だからな。

 

しばらく待って睡魔が襲って来た頃に突然俺の左頬にヒヤリとしたものが触れた。

 

「うおっ!?」

 

いきなりきたものだから意識が一気に覚醒してベンチから立ち上がってしまった。

 

クスクスと笑い声が聞こえた方を見ると缶コーヒーを持った花園がいた。

 

 

「お前なぁ~…」

 

「ともくんの反応、面白かったよ?」

 

 

その笑顔からは先ほど感じた圧は無かった。

 

「はぁ…、んで?そっちの用事はすんだのか?」

 

「うん、起こしてごめんね?」

 

 

「いや、そこは待たせてごめんね?だろ…」

 

「どっちにしろごめんね?」

 

「適当だなぁオイ!…まぁいい。帰るぞ」

 

出口に向かおうと向きを変えると花園は俺の左腕にくっついてきた。

 

「うん♪」

 

 

「歩きづらいんだが…」

 

 

「頑張れ、男の子ー」

 

 

「いや、この歩きにくさに男女差はねーから!」

 

俺のツッコミなぞ知ったことかと言うかのように花園はより体を密着させてきた。

 

…色々と当たっているのだが。

 

結局そこから家に帰るまで花園は俺の手を離そうとはしなかった。

 

 

家の玄関に着く頃にはすっかり夕方になっていた。

 

扉の前まで来ると花園はパッと離れ今度は俺の手を握った。

 

「…花園?」

 

 

「…痛かったよね」

 

どうやらあの時のことを気にしていたらしい。

 

正直なとこちょっと花園の爪が食い込んだとこが痕になってたりもしたが後に引きずられる方が面倒だ。

 

 

「少しは力ついたみたいだな!」

 

 

ここは強がってみせなきゃなんか悔しい。

 

 

「…怒ってない?」

 

 

「別に?」

 

「…ともくんはやっぱり優しいね」

 

そう言ってふわっと笑う花園に思わずドキっとした。

 

 

「そりゃ気のせいだ」

 

 

「ふふっ♪」

 

 

「なんだよ」

 

 

「ともくんが来てからすごく楽しいなぁって」

 

 

「なんだそりゃ。中学の友達とかと遊びに『いないよ』

 

 

……え?

 

 

「わたしの友達はともくんだけだよ」

 

そう言って視点を下げる。

 

 

「ええっと…マジ?」

 

 

「うん」

 

 

まさかイジメにあっているとか…?

 

 

再度ゆっくり顔を上げながら言った一言は俺の心を震わせた。

 

 

「だって私にはともくん以外に必要ないよ」

 

 

あぁ…またこの目だ。

 

 

あの日、引っ越す前に見た時と同じ目。俺以外の物を視界から排除しているような、深い沼を思わせるような目――。

 

 

離れても花園は俺を待ち続けて、待ち続けて待ち続けて待ち続けて待ち続けて待ち続けて待ち続けて…今彼女は俺との止まった時間を再度動かし始めた。

 

 

「ともくん顔が真っ青だよ?大丈夫?」

 

 

やめろ。

 

 

「ゆっくり休んだほうがいいんじゃない?」

 

 

そんな目で俺を見るな。

 

 

「わたしが看病してアゲルヨ?」

 

 

俺はただ…昔みたいに…お前と…!

 

 

「ネェ?…トモクン?」

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 

 

俺は花園を突き飛ばすと扉を開けて家に入り素早く鍵を閉めた。

 

 

それからどうしたかはよく覚えていない。

 

 

ただ覚えていたのは…心にぐちゃぐちゃになったような感情が渦巻いていた事と…恐怖に囚われていた事だけだ。

 

 

 

 

 

――花園家

 

 

わたしは部屋に戻ると、服を脱いで自分の右腕を見る。

 

 

そこは表皮が剥がれ、血が滲んでいた。

 

普通なら痛いだけだがわたしにはその傷が愛おしかった。

 

 

だって、ともくんがわたしにくれたもの。消えないといいな…。

 

今日は大切なものがたくさん増えた。

 

こっそり借りて作ったともくんの家の合鍵。

 

スマホでたくさん撮ったともくんの寝顔。

 

今日はホントにいい1日だったな。

 

 

わたしからもともくんの手にわたしの痕を残せた…。

 

 

これからの事を考えるとニヤニヤが止まらない…!

 

 

鏡に映ったわたしは今までで見たことないくらいに幸せそうに、醜く笑っていた。

 

…今度はどんなことがあるかな…トモクン?

 

 





私自身、書いてて少し怖くなってました( ̄ω ̄;)

おたえの闇に気づいた智之はどうなるでしょうか?

次回をお楽しみに!


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モチベ上がれば更新早くなる…と思います!笑っ


ではまた次回ヽ(*゚∀゚*)ノシ


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第5話 彼女は誰のために涙を流すのか


皆さん、どーも!ヽ(*゚∀゚*)ノ天駆けるほっしーです!

前回はちょっと暗ーーい終わり方をしましたが…果たして今回はどうでしょうか?

では第5話始まります。


 

花園を突き飛ばして家に入ってからその後の事はあまりよく覚えてはいなかった。

 

 

ただ気持ちが落ちついてから外を見るともう夜になっており、恐る恐る入り口のドアスコープを覗くと花園は帰ったのかいなかった。

 

リビングに向かい、冷蔵庫からアイスコーヒーを取り出して喉に流し込む。

 

スッと頭が冷えて考えをまとめる。

 

……花園はどこか普通じゃない。それは前から分かっていた事だが今回のはより危険なものを感じた。

 

本能的ものだろうか?……花園からは殺意のようなものは感じなかった。むしろ強烈な依存といったものを感じた。

 

いずれにしろまともじゃない。これからは少し距離をとったほうがいいのかもしれない……。

 

そう考えながら俺は一晩過ごした。

 

 

 

 

 

ピンポーン!

 

 

 

翌朝、俺を起こしたのはインターホンの音だった。

 

「は、花園か……!」

 

やっぱり来た!

 

昨日の事を思い出し手が震える。

 

頭から布団を被り耳を塞ぐ。

 

頼む!帰ってくれ!!

 

しかし、花園に居留守なんて通用しなかった。

 

 

 

「お寝坊さんだね?」

 

 

――背後からいきなり聞こえた花園の声。

 

冷水を頭からかけられたように全身が一気に冷えた。

 

「ひっ!」

 

悲鳴すら言葉にならず、恐怖が心を覆っていく。

 

そんな俺を花園は――――。

 

 

「んー、暖かい♪」

 

 

後ろからふわっと抱きしめた。

 

 

「は、花園……?」

 

 

花園の熱が俺の冷えた心を溶かしていく。

 

 

「昨日はごめんね?」

 

 

「それは……」

 

 

「私、もっとともくんと一緒に居たい。だから……私を嫌いにならないで?…一人は寂しいよ……」

 

 

花園の声が、体が震えていた。まるで俺のが移ったみたいに。

 

……そういえば、コイツはあの頃も俺以外に遊んでる奴見なかったな…。

 

だからこそここまで俺に依存してしまっているのではないのか?

 

なら、俺がコイツにしてやれることは――――ある。

 

 

俺は花園から離れると勢いよく布団を蹴っ飛ばす。

 

いきなりだったからかさすがの花園のビクッと驚いていた。

 

 

「と、ともくん……?」

 

 

花園と向き合う。

 

花園の顔は涙で少し濡れていた。

 

あー、やっぱり泣かせちまってたか……。

 

だけど、これだけは言わなくてはいけない。

 

 

 

「はっきり言おう。花園、お前とずっと一緒というわけにはいかない」

 

 

「――っ‼」

 

俺からの言葉に花園の表情は更に悲しみに染まる。

 

俺は間違ったことは言っていない。コイツとは高校は同じだが、クラスが別な場合コイツはクラスでぼっちになっちまう。

 

「だからこそ、お前に友達が出来るよう俺が手を貸してやる」

 

 

友達が出来ればコイツの曲がっちまった気持ちを少しずつ真っ直ぐに戻れるはずだ。

 

「でも、ともくん以外の友達なんて……」

 

またか!

 

「あー!お前のために動いてやるってんだよ!」

 

「……私のため?」

 

「…おう」

 

 

……すっげぇ恥ずかしいんだが。

 

思わず顔を背けようとした時、花園がクスクスと笑った。

 

 

「なんで笑ってんだよ」

 

「ともくんが初めて私のためって言ってくれたからね」

 

「……間違ったことは言ってねぇだろ」

 

「…そうだね」

 

そう言うと花園はすっと立ち上がる。

 

「気持ち落ち着いたから帰るよ」

 

「おう、早く帰れ。さっさと帰れ」

 

俺はシッシと手を振ると花園は部屋のドアノブに手をかけてからもう一度振り替えって言った。

 

 

「私はともくんのそういう優しいとこ、好きだよ」

 

そう言い残して部屋を出ていった。

 

 

「俺はお前のそういうとこ苦手なんだよ…」

 

 

誰もいなくなった部屋で一人呟く。

 

触らなくても分かるくらいに、俺の顔は熱くなっていた。





何とか仲直り?は出来ましたね!( ̄ω ̄;)

次回から学校生活が始まります♪

よければ評価、感想お待ちしています!


ではまた~ヽ(*゚∀゚*)ノシ


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第6話 決定的瞬間は誰に目撃されたのか

皆さんどーも!天駆けるほっしーです。ヽ(*゚∀゚*)ノ

さてさて、今回より学校編始まります♪

アニメとは違い、オリ主がおたえの友達作りに奮闘するため、ポピパメンバーとの絡みもだいぶ違うものとなっています!(´・ω・`)

その子とを理解の上読んでいただけると幸いです。

では始まりますー(ノ`ω´)ノ


あの出来事以来、花園はすこしは落ち着いた……とは思っていたが実際は前よりも遠慮がなくなった。

 

今朝もそうだった。アイツは目覚ましより早く俺の家に来ると寝ている俺に馬乗りになって起こそうとした。

 

「ともくーん?今日は入学…んっ、式だよ…?」

 

さすがにユサユサ動かれると目が覚める。

 

「…花園。起こしてくれるのはありがたいんだけどさ、普通に起こしてくれないか?」

 

しかし、花園は動くのをやめない。

 

 

「だってこれ…んうっ…いいもん」

 

「は?」

 

「も、もう少し…でぇ…」

 

 

火照ったように顔を赤らめながら動く花園を見て俺は……。

 

 

「ふっ!」

 

 

素早く身体を起こした。

 

 

「っ~~‼」

 

 

素早く俺が起きたから驚いたのだろう。

 

花園はビクビクッと身体を震わせた。

 

 

「これに懲りたら早く離れて……花園?」

 

 

花園はなぜかハァ…ハァ…と全力で走ったかのように息を切らしていた。

 

 

「……ともくんの鬼畜ぅ…」

 

「なんでそこまで言われなきゃなんねぇんだよ」

 

 

花園はフラフラとわきに避けると後ろを向いた。

 

 

「取り替えないと…」

 

よく分からんがのんびりしすぎると時間ないな。

 

俺は花園を置いて替えの下着をつかんで風呂へ向かった。

 

 

ささっとシャワーを済ませてリビングに行くと花園がソファーに据わってテレビを見ていた。

 

 

「花園、お前ご飯は?」

 

 

そう言うと花園は首を傾げながら言った。

 

 

「ともくん作ってくれるんじゃないの?」

 

 

「当たり前のように言うんじゃない」

 

 

頭に乗せてたバスタオルを花園に投げつける。

 

「ふぐっ!」

 

とか言って花園の顔に当たった。

 

ため息をつきながら部屋に戻って制服をクローゼットから出す。

 

制服はベージュをベースにした落ち着いた色のものだ。

 

 

シャツとネクタイをささっと着るとジャケットとカバンを掴んで下に降りる。

 

イスにジャケットを引っかけて代わりにエプロンを着ける。

 

冷蔵庫を開けて卵とベーコンを取り出しちゃちゃっとベーコンエッグを作る。

 

 

みそ汁は昨日の残りのキャベツと人参のみそ汁だ。

 

いつの間にか置かれていた花園の食器一式に呆れつつ盛り付けてテーブルに運ぶ。

 

 

「美味しそー」

 

「ご飯は自分で盛れよ?」

 

「うん」

 

 

花園が自分の茶碗にご飯を盛ってから自分のにも盛る。

 

 

『いただきます』

 

テレビをBGMにご飯を食べる。

 

んー、ベーコンの塩気がご飯をすすませる。

 

 

 

 

 

『ご馳走さまでした』

 

 

食器を流しに下げて洗っていると花園が隣に来た。

 

 

「食器、拭くよ」

 

「おう、頼むわ」

 

 

二人でやるとあっという間に終わるしな。洗った食器を花園に渡すと花園がそれを拭いて棚にしまう。

 

 

「……こういうのも悪くねーな」

 

 

思わずそう呟いた。

 

それを聞き逃す花園ではなかった。

 

ハッと、思って花園を見るとニマニマしていた。

 

 

「まるで新婚さん?」

 

「……」

 

 

なんかその顔がイラっとしたので泡がついたままの手でデコピンをかます。

 

 

「いったーい」

 

「知るか、早く拭け」

 

「はーいー」

 

 

 

片付けを終えて歯を磨きに洗面所に行くとこっちにもコップと歯ブラシが増えていた。

 

 

「…なぁ、花園」

 

「何?」

 

「なんでお前の物増えてんの?置いてんの?」

 

「んー、お泊まりセット?」

 

「持って帰れ」

 

「嫌だよ?」

 

「ったく…あまり持ってくるなよ?」

 

「大丈夫、下着は置いてないから」

 

「当たり前だ!」

 

 

やはり、こいつのペースには勝てない。

 

歯ブラシを取ろうと鏡に映った自身の顔はちょっと疲れた顔をしていた。

 

 

 

 

準備を終えて家を出て学校に向かう。

 

学校へは電車を使っていくこととなる。定期券は前もって購入済みだ。

 

 

二人でぼんやりと電車に揺られると止まるたびに花咲川の制服の女子がどんどん乗ってきた。

 

男子は…あまりいないようだ。

 

それもそのはず俺たちの通うことになる花咲川学園高校はつい最近まで女子校だったのだが入学者数の減少により今年から共学となった。

 

こんなところまで少子化問題が響いてくるとさすがにこの国の今後が心配になる。

 

 

15分ほどで学校近くの駅に着くと学生が一気に降りた。

 

さて、ここからちょっと歩けば学校はすぐだ。

 

 

 

学校に着くと案内にしたがってクラス表を見る。

 

俺はーっと…あった。Bクラスか。

 

花園は…どこだ?

 

「…Aクラス」

 

「あー、でも隣じゃねーか」

 

「ともくん、捨てないでー」

 

そう言うとしがみついてくる花園。

 

もちろん周囲の人に見られる。

 

「は・な・れ・ろ!」

 

「うぅー」

 

新品の制服が伸びるぅぅ!!

 

 

「隣なら遊びにくればいいじゃねーか!」

 

「ともくんが来てよ」

 

「なんでだよ!」

 

「そのほうが嬉しいな♪」

 

「…気が向いたらな」

 

「待ってるね」

 

そう言うとやっと離れてくれた。

 

それぞれのクラスに別れて俺はBクラスに入る。

 

さて、席はどこだろうか。か、き、く…九条

智之。あったあった。

 

カバンをかけて座ると隣にすでに座っている子がいた。

 

小柄で金髪のツインテールのかなり可愛い子だ。

 

スマホをいじっていたが俺からの視線に気づいたのかこちらをチラリと見てから笑顔で頭を下げてきた。

 

 

「隣の…九条くんですよね?私は市ヶ谷有咲といいます。よろしくお願いしますね」

 

「ご丁寧にどうも、九条智之です。よろしく」

 

 

なんかすげーお嬢様って感じだな。こんな子の隣になれてラッキーかもなぁー。

 

 

なお、後にこのラッキーはすぐに幻想だったと知るがそれはまだ後の話。

 

 

 

時間になりクラスメイトと担任の自己紹介を終えて体育館にて入学式が始まる。吹奏楽部の演奏と共に入場し着席。

 

さて、新入生代表の挨拶だ。代表はたしか入試トップの生徒が言うんだったな。

 

 

「新入生代表、市ヶ谷有咲」

 

「はい!」

 

 

意外にも代表はさっき話した市ヶ谷さんだった。

 

可愛くて優しくて頭いいとかなんだこのチート少女。

 

彼女の挨拶を聞いた後に校長の有難い話やらなにやらを聞き流してるうちに校歌を歌って入学式は終了した。

 

校歌?初めて聞いたから歌えるわけないだろ?

 

ホームルームを終えて帰ろうとした時、後ろの席の子から声をかけられた。

 

 

「ねぇねぇ、九条くんってA組の子と付き合ってるの?」

 

「へっ?A組に?いないけど」

 

「でもほら、朝も二人でべったり仲良かったよね!」

 

 

そう言って見せてきたスマホには学校玄関で花園にくっつかれている俺の画像が映されていた。

 

 

「げっ!」

 

「何?どうしたの?」

 

 

俺の声を聞いてスマホを見ようとする市ヶ谷さん。

 

あぁ!見ないでー!

 

その時、廊下からやってきたのは花園だった。

 

んー!バットタイミング!

 

 

「ともくん成分が足りない…ともくーん」

 

 

静まりかえる教室。

 

こうして俺のクラスメイトからの第一印象は「入学早々女子とイチャつく男」で固定された。

 

 

…俺は悪くないよな?




いつもよりは長めに書けましたね(‘ω’*)

次回の更新は1月になります。

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では皆さん、よい御年を!ヽ(*゚∀゚*)ノシ


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第7話 優等生が隠す秘密とはなにか


遅くなりました(´・ω・`)

リアルが多忙でなかなか更新出来なくてごめんなさぃ!

失踪はしないのでご安心を!


 

「ともくーーーーーん、ぎゅっとさせてすりすりさせて匂い嗅がせて抱きしめてむしろ抱いtむぎゅっ!」

 

 

勢いよく手を伸ばして寄ってきた花園の顔に対して鞄を盾にする。

 

 

「勝手にクラスに入るな、公然で顔を近づけるな、不適切な発言をするな!」

 

 

ちょっと離れただけでこれだ。あんな約束しちまったけど……

 

 

「……スンスン。ちょっとだけともくんの匂いする」

 

 

ハイ。反省の兆しが見えない。

 

チョップを叩き込もうと手刀を頭上で構えたところで教室中からの視線に気づき手を下ろす。

 

ゆっくりと横を見ると市ヶ谷さんが冷ややかな視線とともに一言言った。

 

 

「……うわっ」

 

 

いきなりクラスの才女にそんな反応されるとさすがに心にグサッと刺さった。

 

 

「ま、また明日!」

 

 

俺は花園から鞄を引き剥がすと勢いよく教室を飛び出した。

 

 

「ともくーーーん、どうしたのー?」

 

「どうもこうもあるかぁぁぁぁ!またな!!」

 

 

花園を玄関で振り切りそのまま全力下校。

 

走って駅に着き電車に乗り席につくと頭を抱えた。

 

まさかの入学初日からのアクシデント。

 

第一印象は最悪だ。

 

明日の学校でなんと言われるやら……あぁ!考えたくもない。

 

早足で電車を降りて駅を出てて家に直帰。

 

ベッドに頭から飛び込み深くため息をつく。

 

その日は花園の訪問もなく落ち着いた頃には日が傾き始めていた。

 

炊飯器を開けるとちょっぴりしかご飯が入っていなかった。

 

 

「……なんか買いに行くか」

 

 

このテンションではフライパンは握りたくない。

 

財布とスマホを持って家を後にする。

 

向かった先は商店街。この前花園と来て色々見て回ったが雰囲気が気に入った。

 

 

美味しそうな匂いに足を止めると一件のお店があった。

 

 

「北沢精肉店……肉屋さんか」

 

 

揚げ物もやっているのか……いいな。

 

買って帰ろうと店に近づくとカウンターの奥からにゅっと少女が頭を出してきた。

 

 

「いらっしゃーい!あれ?お兄さん、もしかして花咲川の学校?」

 

「うおっ!?そうだけど……君も?」

 

「うん!はぐみも今日から花咲川の学生だよ!」

 

 

そう答えると自身をはぐみと言った少女はニッコリと笑った。

 

 

「なら俺と同い年だな。俺はB組の九条智之だ」

 

「北沢はぐみだよ!よろしくねともくん!」

 

「お、おう……」

 

「それで、何買うのー?」

 

「あー、そうだった。北沢、オススメは?」

 

 

そう訊くと北沢はすぐに答えた。

 

 

「うちのコロッケは絶品だよー!」

 

「コロッケか……いいな。それ2個頼む」

 

「はーい!160円ね!」

 

 

財布からちょうど出してカウンターに置く。

 

 

「はいどうぞー!」

 

 

はぐみから紙袋を受けとると中には揚げたてのコロッケが3つ入っていた。

 

 

「なぁ北沢、これ3個入ってるんだけど……」

 

「友達にはオマケだよー!また買ってね!」

 

「おう、サンキュー。また来るよ」

 

 

北沢に手を振り返して店を離れる。

 

 

その日はコロッケを3つ食べるとお腹一杯になり、明日の学校に向けて準備して早めに眠ることにした。

 

 

 

次の日学校に登校すると恋愛大好きな女子達に花園との関係を問いただされたが、親切丁寧に説明すると分かってくれた…多分。

 

 

そんな中、隣の市ヶ谷さんが休みだった。

 

体調崩したらしい。そんな中、昼休み担任の先生に書類を提出するとボソッと呟いた。

 

 

「参ったわね…」

 

「どうしたんですか?」

 

「市ヶ谷さんに別で明日には提出して欲しいものがあるのだけど…私、このあと会議あるのよ……ハァ…」

 

「それは大変ですね……俺届けますか?」

 

「えっ?いいの?」

 

「いいですよ、特に予定ありませんし。あー住所だけ教えてもらえば」

 

「ありがとう!さすが男の子、頼りになるわ。今住所書くから待ってて」

 

「はーい」

 

その後住所の書いた紙を受けとり、教室に戻ると俺の席に花園が座っていた。

 

 

「あ、ともくん来た」

 

「お前はなんで俺の席にいるんだ」

 

「ともくんに言わないといけないことあって」

 

「なんだ?」

 

「私今日は一緒に帰れないから」

 

「そうか。じゃあな」

 

「……ともくん冷たい」

 

 

冷たいというか俺も市ヶ谷さんに先生からの預かりもの届けないといけないし。

 

どのみち一緒に帰れないからな。

 

 

「俺も用事あるから調度良かったんだよ」

 

「……用事?」

 

 

花園の声のトーンがグッと低くなった。これは……地雷を踏んだ……?

 

 

「せ、先生の手伝いだ」

 

「……先生の?」

 

 

フッと空気が軽くなったような気がした。

 

よし、ここで素早く話題を変えるぞ。

 

 

「お前はなんかあんの?」

 

「私はバイト」

 

 

初耳だ。花園がバイトしてたとは…。

 

 

「そっか……頑張れよ」

 

「うん、ありがと。じゃあご飯食べよ?」

 

「そうだな」

 

 

休みの市ヶ谷さんの席を隣にくっつける。

 

すまん、ちょっと借りるよ市ヶ谷さん。

 

 

 

 

放課後、住所を頼りに市ヶ谷さんの家に着いた……のだが。

 

 

そこには笑顔で盆栽に水をやっている市ヶ谷さんがいた。

 

 

「利根川~水だぞー♪」

 

「…んん~?」

 

 

体不調…は治ったのか?とゆーか盆栽好き…なのか?

 

しばらく見ていたからか視線に気づいたのか市ヶ谷さんがこっちを向くなりカチンと固まった。

 

 

「ど、どうも……?」

 

「か……」

 

「か?」

 

「見てんじゃねー!帰れぇぇぇぇえーーー!!」

 

「!?」

 

 

彼女の怒声に圧倒されてしまった。

 

…市ヶ谷さん、結構口悪いのね。





次回有咲の話続きます!

またよろしくねーーー!(p ‘∀’o)


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第8話 どうすれば猫被りの少女と和解出来るのか

遅くなりました……。

1度書いているときに消えるとか(=ω=.)

かなり凹みましたよ……。

では有咲回です。


「見てんじゃねー!帰れぇぇぇぇえーーー!!」

 

 

静かな住宅地に響く市ヶ谷さんの大声。

 

正直大した用事ではなければ回れ右で帰りたいところだが……先生と約束したからなぁ。

 

ここはまず市ヶ谷さんに話を聞いてもらわなければ!

 

 

「市ヶ谷さん、聞いてくれ!」

 

「嫌だ!」

 

「ちょっと話を」

 

「話すことはない!」

 

「ちょっとだけだから!」

 

「知らねー!帰れ!」

 

 

 

あぁー話にならない!ホントに帰ろうか!?

 

そんな風に考えていると奥の建物から一人のお婆さんが出てきた。

 

 

「有咲、大声出して……あら、お友だち?」

 

「ち、違うよばーちゃん!」

 

「ど、どうもこんにちわ。市ヶ谷さんのクラスメイトの

九条 智之です」

 

「御丁寧にどうも。有咲の祖母です」

 

そうに言うとスッと頭を下げた。

 

 

「よかったら上がっておやつを食べて行きなさい」

 

「え、いいんですか!?」

 

「良くねー!帰れって!」

 

 

……そう簡単にはいかないかぁ。

 

そんな市ヶ谷さんの様子を見てお婆さんは頬に手を当ててため息をついて言った。

 

 

「もう……有咲?せっかくここまで会いに来てくれた九条くんが可哀想よ?」

 

「うっ……分かったよ」

 

「ふふふ。ほら、上がって上がって」

 

「ありがとうございます」

 

「全く……なんでこうなるんだか」

 

「あー……市ヶ谷さん、ごめんね?」

 

「いいから、早く行くぞー」

 

 

ゆっくりと建物に向かう市ヶ谷さんに付いていく。

 

ふいに吹いた風に揺られる市ヶ谷さんの髪を見ながらどう話を切り出すかを考えていた。

 

 

 

 

 

***

 

 

建物は古き良き日本家屋といった趣だった。

 

居間と思われる部屋に案内され、座るとお婆さんは部屋を出ていった。

 

市ヶ谷さんと二人になり部屋に沈黙が訪れる。

 

 

「……」

 

「……」

 

 

……気まずいな。

 

そんな中、先に言葉を発したのは市ヶ谷さんだった。

 

 

「で、なんでここまで来たんだ?ストーカー?」

 

「違うって……はい、これ」

 

 

俺は鞄から預かった書類を取り出す。

 

 

「これって……学校からの書類か?」

 

「そうだ。明日までに書いて欲しいって先生が言ってたから預かったんだよ」

 

「だったら先に言えよなー」

 

「いや、話聞いてくれなかったじゃん!」

 

「外から覗いてるお前も悪いだろ!」

 

「家合ってるか分からなかったし……」

 

「とゆーか、お前彼女いるんだろ?お前じゃなくても良かったじゃん」

 

「は?彼女?」

 

「昨日クラスでいちゃついてたじゃんか」

 

 

そうか。市ヶ谷さん今日来てないから誤解したままか。

 

それよりも……。

 

 

「あいつは昔からの馴染みだよ。それよりさ……」

 

「なんだよ?」

 

「今日体調わるくて休んだんじゃないのか?」

 

「ギクッ」

 

 

……この反応、やはりか。

 

 

「……優等生なのにサボりか」

 

「うるせー!勉強はちゃんとやってっからいいだろ!」

 

「そうだけどよ……まぁいいさ。無事ならいいか」

 

「無事って……もしかして心配してくれたのか?」

 

「そりゃ……体調崩したって聞いてたからさ。まぁ、元気そうでよかったよ」

 

 

そう言って市ヶ谷さんを見ると顔を伏せていた。

 

 

「……大丈夫?」

 

「ぅるせー……ばかぁ」

 

「えぇ……」

 

 

なんで心配したのに貶されなきゃいけないんだ。

 

 

「……お前」

 

「ん?」

 

「九条、智之って名前だったよな?」

 

「そうだよ」

 

「……また私が休んだらウチまで来てくれるか?」

 

「そうだな……用事なくて市ヶ谷さんに断られなかったら来るさ」

 

「有咲」

 

「えっ?」

 

 

市ヶ谷さんは顔を上げてこっちをジーっと見ながら言った。

 

 

「市ヶ谷って呼ばれるより名前で呼べよ。私もお前を名前で呼ぶからさ」

 

「じゃあ……有咲?」

 

「うっ!」

 

 

名前を呼ぶと山内市ヶ谷さんの顔がボンっと真っ赤に染まった。

 

いや、市ヶ谷さんじゃなく有咲だったな。

 

 

「もしかして照れてる?」

 

「っ!うるせー!智之のバカ!」

 

「バカって言うな!」

 

「二人ともおやつを――あらあら、またケンカ?」

 

 

おやつを持ってきたお婆さんに苦笑されながら俺たちはおやつのあんみつを美味しく頂くのであった。

 

 

 

 

 

***

 

 

「それじゃあそろそろ帰りますよ」

 

「げ、もうこんな時間かよ……」

 

 

あの後お婆さんを加えて3人で談笑しているとあっという間に時間が経ち、気づけば時計は6時を差していた。

 

さすがに帰らないとな。

 

鞄を持って立とうとした時、有咲が言った。

 

 

「智之、ちょっと待て」

 

「ん?プリントはもう貰ったぞ?」

 

「そっちじゃねぇ……スマホ」

 

「スマホ?」

 

「れ、連絡先分かったほうが、届けて貰ったりしやすいじゃん?」

 

「なるほどね。はい」

 

 

スマホの連絡アプリを起動して有咲に連絡先を教える。

 

すぐに友達登録が完了し、連絡先に有咲が登録された。

 

 

「これでいいな」

 

二人に見送って貰いながら玄関に行く。

 

 

「晩御飯も食べて行けばいいのに」

 

「さすがにそこまで迷惑をかけれませんよ」

 

「残念だなー、ばーちゃんのご飯すげー旨いのに」

 

「じゃあ今度来たときに是非頂きたいな」

 

 

そう伝えるとお婆さんは柔らかく微笑んだ。

 

 

「じゃあまたな。有咲」

 

「気が向いたら遊びに来いよー」

 

 

扉を開いて外に出て、駅に向かって歩き出す。

 

上を見上げると薄暗くなった空に一番星が輝いていた。




ちょまま!有咲回でした。

今後も更新していきますので良ければ感想、評価よろしくお願いします!ヽ(*゚∀゚*)ノ


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第9話 バイトの面接はどうなったのか


今回はバイト回です。

新キャラ登場します。(‘ω’*)


 

土曜の午前はテレビをボーッと見ながら過ごしていた。

 

テレビに映るピンクのツインテールのアイドルを見てふと思ったのは同じような髪型の有咲の事だ。

 

あの日から有咲と仲良くなった。

 

仲良くなって分かったことはまず口が悪い。

 

それは家に行った時に分かってたけど何だかんだ優しい奴だ。

 

しかしその優しさを素直に出せない不器用な性格の持ち主だから勿体無い。

 

そんな事を考えているとスマホから通知音が鳴った。

 

噂をすればなんとやら……ってやつかな?

 

スリープモードを解除し画面を切り替えるとやはり有咲からのメッセージがあった。

 

 

有咲:おはよ。今何してる?

 

智之:テレビ見てるよ。有咲は?

 

有咲:布団に籠ってる。今日は用事あんの?

 

智之:バイトの面接

 

有咲:え、智之バイトすんの?大丈夫か?

 

 

どういう意味だよ……。

 

すると今度はインターホンが鳴る。

 

ドアスコープ越しに外を見ると……やっぱりか。

 

外に立っていたのは花園だった。

 

「ともくーん、あーけーてー」ガチャガチャ

 

 

コイツ、俺んちの鍵持ってるじゃん……何故開けない??

 

とりあえず今はゆっくり休みたいから居留守作戦だ。

 

下がってドアからゆっくり離れていくが後ろ向きに下がったのが良くなかったのか玄関の段差に踵をぶつけややて床に座り込む。

 

 

「居るのは分かってるよ?電気のメーター回転してたもの。開けてよ?」ガチャガチャガチャガチャ

 

「ハァー……はいよ」

 

 

立ち上がってドアの鍵を解除する。

 

するとドアを開けて花園が入ってきた。

 

 

「おはよう、ともくん」

 

「鍵、持ってるだろ?なんで開けさせた?」

 

「ともくんが私を受け入れてくれることに意味があるんだよ?」

 

「……訳わかんねぇ」

 

 

とりあえず花園をリビングに招く。

 

 

「そーいや、最近バイト忙しそうだけどなんか欲しい物でもあるのか?」

 

 

冷蔵庫からウーロン茶のボトルを取り出しながら言うと花園はソファーに伸びながら答えた。

 

 

「私が欲しいのはともくんだよ?」

 

「残念ながら非売品だバカ」

 

「私をあげても?」

 

「いらん。すぐに返品だ」

 

 

ソファー前のテーブルにウーロン茶を置き、俺は椅子に座る。

 

 

「むぅー……私、そんなに魅力ない?」

 

「……さぁな」

 

 

正直なところ見た目は美少女だろう。

 

しかし、中身がダメだ。何がしたいのか分からん。

 

そんな風に考えていると花園がクッションを抱えてこちらをジーっと見ながら言った。

 

 

「ともくん、最近何かあった?」

 

「何か?」

 

「前より楽しそうな顔してスマホ弄ってたりしてるよね?」

 

「……そうか?」

 

 

タイミング悪くポケットのスマホから通知音が鳴る。

 

 

「……」

 

「スマホ、鳴ってるよ?出ないの?」

 

「そうだけどさ」

 

「メッセージ、来てるんじゃないの? 」

 

「……あぁ」

 

 

ポケットから取り出して見ると有咲からだった。

 

 

有咲:ばーちゃんが会いたがってだけど面接終わったらうちに来ねーか?

 

 

魅力的なお誘いだけど花園が無言でこちらを見ているから圧を感じてなんて返そうか思いつかない。

 

 

「……誰からだったの?」

 

 

いつもよりも低い声で花園が訊いてきた。

 

 

「……母さんだ。仕送り何欲しいかってさ」

 

「……そっか」

 

 

スマホの時間を見てハッとする。

 

バイトの面接の時間がだいぶ近づいていた。

 

 

「あー、花園!俺これからバイトの面接だわ」

 

「ともくんがバイト?大丈夫?」

 

「なんでおんなじリアクション!?」

 

 

思わずツッコんでからハッとする。

 

花園はスッと近づいてきて俺の両肩を掴んで言った。

 

 

「……誰と同じリアクションだったのかな?」

 

「っ!」

 

 

またあの時と同じだ。焦点が合っているのかすら分からない暗く、にごったような目。

 

思わず目をそらしながら答える。

 

 

「……クラスの友達から言われたんだよ」

 

「友達……?ともくんの友達は私だけだよね?」

 

 

花園の肩を掴む力が強くなる。

 

再び彼女の闇に触れたことで恐怖が込み上げてくる。

 

しかし、俺を落ち着かせてくれたのは再び鳴った通知音だった。

 

 

「あー!面接遅刻するだろ!!」

 

花園を引き剥がして荷物を左手、花園の手を右手に掴んで玄関に向かう。

 

 

「ちょっ、ちょっと、ともくーん?」

 

 

靴を履かせて自分のも履くと玄関を出て鍵をかける。

 

 

「悪いな!話はまた今度!」

 

 

花園にそう言い残すと俺は駅に向かって走り出した。

 

ちょっと振り向くと花園が自分の家に向かって歩いていくのが見えた。

 

電車に乗ってスマホを見ると有咲からのメッセージが一件。

 

 

有咲:既読無視すんじゃねー!

智之:ごめん、それで面接終わったら行くよ

 

有咲:ホントか?

 

智之:うん。あとありがとな

 

有咲:あいよー

 

智之:また後で

 

 

最後にそうメッセージを送ってスマホを閉じる。

 

今回は有咲に助けて貰ったからコンビニでなんか買っていこうかな。スイーツ的なのを。

 

 

 

***

 

**

 

 

 

面接に来たコンビニは学校と家からそれなりに近いところにした。

 

 

コンビニのドアがいつもよりも重く見える。

 

ゆっくり自動ドアを通ると店員の声が聞こえてきた。

 

 

「いらっしゃいませ~」

 

「らっしゃっせ~」

 

 

カウンターには二人女の子の店員がいた。

 

とりあえず用件を言わないといけないのでカウンター前に立って言う。

 

 

「あのー」

 

「タバコは二十歳になってから~」

 

「タバコ吸わないよ!」

 

「アハハ!モカったら~ところでご用は何ですかー?」

 

 

モカと呼ばれた子の隣にいたギャルっぽい子に訊かれた。

 

 

「バイトの面接で来た九条ですけど……」

 

「あー!面接ね☆事務所に店長いるからちょっと待っててね」

 

 

パタパタと奥に行くのを見送るとモカって子と二人だけになる。

 

 

「九条さんですかー、これからよろしくお願いしますねー」

 

「いや、まだ決まってないよ!?」

 

「お客さんとしてー?」

 

「落ちてもないよ!」

 

 

この子……すげーボケてくるんだけど。

 

花園とは別のほうで天然なのか?

 

そう思っていると奥から店長らしき女性の人が出てきた。

 

 

「九条さんですね?奥にどうぞ」

 

「し、失礼します!」

 

 

初のバイト面接……緊張してきた!

 

事務所はコンビニの奥にありそこまで広くはないけど

テーブルやモニターやらあってモニターには店内のカメラから様子が見えていた。

 

 

「どうぞ、座って」

 

「は、はい」

 

 

座って早速面接が始まった。

 

内容は志望動機やらどれくらい出れるのかとか一般的なもので変わった質問は特になかった。

 

一つ気になることがあるとすれば

 

 

「じぃーーーーー」

 

 

モカって子が事務所のドアから半分頭出して覗いていることだ。

 

てか、じぃーて声に出てるし!

 

 

「面接はこれで終わりです」

 

「ありがとうございました」

 

「結果は後日……いや、合格!」

 

「早くないですか!?」

 

 

やべ、ツッコんじゃった。

 

 

「特に変わったこともないし、モカちゃんがこっち見てるのに気にせず面接受けれる集中力も見れたから採用!」

 

「そ、そうですか」

 

 

すみません店長。集中出来てなかったと思います。

 

面接終わったと聞こえたからかモカって子がこちらに来た。

 

 

「受かっておめでたいですなー」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「晴れてモカちゃんも先輩になれたのでした」

 

「お、おめでとう?」

 

 

この子も読めない子だ。マイペース過ぎる。

 

 

「こちらは青葉モカさん。九条くんと同い年だから仲良くね?」

 

「よーろーしーくねー?」

 

「よろしくお願いします」

 

「あとは――」

 

 

店長が続けて言おうとした時、上からでんしおんが鳴った。

 

 

「モカちゃんの出番だー」

 

 

そういうと事務所を出ていった。

 

 

しばらくすると代わりにギャルっぽい人が事務所に来た。

 

 

「失礼しまーす。店長、決まったんですか?」

 

「ええ。九条もウチで働くことになったからリサちゃん、教えてあげてくれるかな?」

 

「わっかりましたー!」

 

 

そう言うとこちらに近づいてきた。

 

 

「えーっと、九条くん?」

 

「はい、九条智之です。これからよろしくお願いします!」

 

「元気いいねぇ♪アタシは今井リサ。分からないことはおねーさんがしっかり教えてあげるからね☆」

 

 

そういうとウィンクしてきた。

 

正直ドキっとした。

 

 

「後のメンバーは追々会えると思うから連絡先を教えてね」

 

「はい」

 

 

店長に連絡先を伝えて事務所を後にする。

 

 

カゴに飲み物とみたらし団子やらお菓子を突っ込んで

レジに持っていって会計を済ます。

 

袋を受け取り、青葉さんに頭を下げると青葉さんは笑って言った。

 

 

「またねージョーくん」

 

「ジョーくん?」

 

「九条だからジョーくんだよー」

 

「そ、そうですか……失礼します」

 

 

苦笑しつつ店を後にする。

 

有咲に何食べたいか聞いておけば良かったな……。

 

そう思いながら有咲の家に向かうのであった。





今回はここまで!

前回感想頂いた方ありがとうございましたo(>ω<)o

次回もお楽しみに!


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