無感動な少女と魔眼使いの少年 (なるなる)
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主人公紹介や解説

 本編じゃなくてごめんなさい!


 プロフィール

 

 名前:藍川 柊断

 性別:男性

 

 外見:身長は170前半で、赤褐色の眼、本人は普通だと言っているが中々のイケメンである。髪は黒。

 誕生日:2月3日

 

 血液型:B型

 星座:水瓶座

 

 好き:魔法少女仲間、ミルクティー、普通の日常

 嫌い:無力な自分、仲間を傷つける人

 

 趣味:読書、料理

 特技:ピアノ  

 

 出身地:神浜市

 学校:神浜市立大附属学校

 

 年齢/学年:15歳/高校1年生

 肩書き:魔法少女&公安刑事(アルバイト)

 

 願い事:いつまでも、平和で幸せな世界が続きますように

 固有魔法:不明(今現在)

 ソウルジェムの形状/色/位置:楕円形/黄色/首 

 

 

 『人物像』

 一人称は「俺」。

 「誰も死なせず、誰も悲しませず」がモットー、その所為もあってか自分のことを後に回しガチ。

 お人好しが過ぎることもあり、偶にお節介呼ばわりされる程の優しい心を持っている。

 危険なバイトをしているが、本人はそれを楽しんでるようで魔女との戦闘もスムーズに動くことが出来る。

 

 

 頭の回転の良さは鶴乃に匹敵し、学校でもそこそこ上位の成績を取っていて運動神経も悪くない。

 レナやかえでからは「大抵のことはそつなくこなす天才肌」と言われており、他の魔法少女からもそう思われていたり。

 実際は日々の努力で、ももこややちよなどの付き合いが長い者はそのことを分かっている。

 

 

 一年前まではやちよとチームを組んでいたこともあり、魔法少女としての戦い方を教わっていた。

 ある一件の事件を境にチームを離れ今のモットーを掲げて一人で魔女を狩っていたが、まさらやこころと出会いでまたチームを組む。

 学校では密かにファンクラブが出来ていたりなかったり。

 

 

 『魔法少女として』

 変身後は体そのものが女性に変質し雰囲気がガラリと変わる。

 髪の色や身長はあまり変わらないが、出るとこはしっかり出ていてやちよに白い目で見られたこともあった。

 昔の踊り子のような少し色っぽい衣装、全体的に黄色で赤も少しだけ入っている。

 

 

 武器は自由自在であらゆるものを使いこなす、通常時は刀剣類を使うが状況に合わせて重火器も使うことが多々ある。

 固有魔法ではないが、質量を変化させる魔法と系統を変える魔法が得意。

 実力は指折りで、魔眼を魔法と併用してくるため、対処が難しくベテランのやちよでさえ「無傷で無力化させるのは不可能」と評している。

 

 

 マギア『一閃必殺』

 末来視・直死・千里眼と、三つの魔眼を駆使し一撃必殺の不可避の攻撃を叩きこむ。

 あらゆる角度から未来を視て敵の行動を完全に把握し、その後はただ斬るだけ。

 どれほど強くても、殆どの敵を一撃で倒す。

 

 

 魔眼紹介

 『末来視の魔眼』:対人

 文字通り未来を視る眼。

 通常時の魔法少女ではないしゅうたが視れる範囲は10秒から15秒。

 魔法少女時では、20秒から25秒である。

 どれほど魔力があっても、末来という情報の塊を脳で処理するのは簡単ではなく当人曰く「これが限界」らしい。

 

 

 基本的に可能性を視るだけで、その未来通りにいく可能性は100%ではない。

 しかし、少なくとも99%の確率で末来視通りになる。

 この末来視が外れたことはしゅうたの人生の中で一回もない。

 

 

 『直死の魔眼』:対人・対物・対現象(ピクシブ百科事典参照)

 某型月に出てくるあれ。

 ”死”を視覚情報として捉えることのできる眼。

 この目が読み取って視覚する”死”とは「生命活動の終了」ではなく、”いつか来る終わり”(死期、存在限界)という”概念”である。

 

 ”死”は線と点で見えるもので、強度を持たない。

 

 「死の線」は存在の死に易いラインを表し、線をなぞり断てば対象がどんなに強靭であろうと切断される。

 「死の点」は死の線の源であり、寿命そのもの。死の点を突かれた存在は死ぬ。

 (正確に言えば、存在の”意味が死ぬ”ことになる)

 

 ”死”に至らしめることが可能なのは生物だけに留まらない。

 ”いつか来る終わり”を持って存在しているモノである限り、あらゆるモノ(時には概念すら例外ではない)を殺すことができる。

 

 「未来」などの不確かなモノを”殺す”ことは本来できないが、未来視により確定された「未来」は別となる。

 対象物の中の限定的な部分に関する線や点だけを突くことも可能。

 例えば、体内の毒物や病んだ内臓などを限定して殺せば他は傷つけずに排除できるため治療としての応用が出来る。

 

 しゅうたからすれば「この魔眼は使い辛い」とのこと。

 しゅうたは死の点は見えないし、事象などは殺すことが出来ない。

 変身時も同様である。

 

 

 『千里眼』

 千里を見渡す眼、その効果範囲は半径一キロメートル以内。

 それ以上にすると脳が吹き飛ぶ。

 あらゆる角度から、あらゆる視点でものを見ることが可能。

 変身時は1.5キロメートル以内に範囲が拡大される。

 

 

 『催眠の魔眼』:対人

 対象と眼を合わせることで、初めて能力が発揮される。

 名前通り、相手を催眠状態にして思うがままに操ることが出来る。

 しゅうたは極力使わないように心掛けているが、お仕置き代わりに使うことも稀にあったり。

 対象は一人だけで、千里眼と組み合わせれば視点があったと言う事実を無理矢理{多人数(4~5人)}作り能力を発動させることが可能。

 変身時も同様である。

 

 

 『心転身の魔眼』:対人

 対象と眼を合わせることで、初めて能力が発揮される。

 能力としては相手の身体を乗っ取り、思うがままに操ることが出来る。

 だが、しゅうたからは「一番使い勝手が悪い」と言われている。

 変身時も同様である。

 

 

 『静止の魔眼』:対人・対事象

 発動条件は簡単で、対象のものが自分の視界内にいて「静止」と口に出した時に判断される。

 対象が視界内に居た場合は、その対象の質量や体積に静止の時間が左右されていく。

 大きければ大きいほど質量も上がるし体積も増える為、止められる時間は限られてくる。

 対人に対しては、一人当たり一分程。

 多人数にやればその分止められる時間は減っていくので、使い方がシビアな面もある。

 

 変身時の場合は、一人当たり五分程。

 やろうと思えば世界の時間や概念の経過さえ止める。(現時点では不可)

 

 

 『破壊の魔眼』:対人・対事象

 発動条件は簡単で、対象のものが自分の視界内にいて「破壊」と口に出した時に判断される。

 対象が視界内に居た場合は、その対象の質量や体積に破壊にかかる魔力が左右されていく。

 大きければ大きいほど質量も上がるし体積も増える為、破壊できるかは分からなくなっていく。

 人に対して使った場合、臓器やら身体の一部が内側から弾け飛ぶように破壊される。

 やろうと思えば事象や概念さえ破壊可能。(現時点では不可)

 直死と組み合わせれば、死の点を破壊することで簡単に相手を倒すことが可能(現時点では不可)

 

 

 『生と死の魔眼』:対人

 生と死の魔眼は、基本的に他者や自分の治癒に使います。

 致死に至ってなければ、大抵の怪我は治せます。

 ただし、強力なためデメリットがあり。

 契約した時点で、契約者から「死」という概念が奪われて死ぬことが出来なくなります。

 しゅうたの場合は、完璧な契約はしてないので首を刎ねられたり、脳天をぶっ刺されたるすると死にます。

 

 

 魔眼説明の最後に何故魔力の無いしゅうたが普通に魔眼が使えるかを説明します。

 作中でも語られた通り、魔力がない場合は相当な無理を脳にかけることになり、普通の人間では扱うことが出来ません。

 ですが、しゅうたは脳が常人より遥に高性能な状態で生まれました。

 彼はやろうと思えば四桁四桁の掛け算を暗算で解くことも可能です。

 ですが、彼自身そおいうズルが嫌いな為いつもは封印して対処していて、魔眼を使う時だけ封印を解除しています。

 

 

 少し無理矢理な設定ですがお付き合いください。

 

 

 最後に分かり易いステータスです。(平均をCと仮定しています)

 EXは規格外と言う意味です。

 下のステータスは……終盤で見ることになるとも思います。

 マギレコを進めいる方なら分かると思いますよ!

 

 

 しゅうた(魔法少女)総合値 A-

 筋力:A

 耐久:B-

 俊敏:A-

 魔力:B+

 幸運:D

 マギア:EX

 知力:A++

 

 

 しゅうた(???)総合値 EX

 筋力:A++

 耐久:A++

 俊敏:A++

 魔力:EX

 幸運:--

 マギア:EX

 知力:EX

 

 これにて解説を終わります。

 ここの内容は作品が進むにつれて変化する部分もあると思いますので、ぜひ気を掛けてやってください!




 次回もお楽しみに!

 誤字脱字などがありましたらご報告お願いします!


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外伝の章
外伝01「ピッチピチのJKです!」


 本編を出すと思っていただろう!残念!外伝です。本編のネタバレがあるかもだけど、それでも良い方は見ていって下さい。


 これは少し昔の出来事。俺とももこが初めて調整屋に行った日の事だ。

 

ーしゅうたー

 俺は、ももこの()()()に釣られて、廃墟にやって来ていた。

「なぁ、ももこ。本当にその調整屋ってのはいるのか?デマだったら無駄足になるんだが…。」

「私も分かんないよ、たまたま聞いた噂みたいなもんだし。」

「てか、何でこんな廃墟に調整屋なんて…。暗いったらありゃしない。」

 俺たちは学校から帰る道をわざわざ迂回して、この道に来ている。五時を過ぎて夕方だが、廃墟の中と言う事もあって薄暗く感じる。

 

 

「しょうがないだろぉ!、何だか調整屋は魔女や使い魔の類とは、戦えないらしいんだから。」

「そ、そうなのか、おっ!扉だ。何かこの扉だけやけに新しく見えるな?」

 ももこが体をくっ付けるので、女子特有の甘い匂いがする。まぁ、薄暗くて怖いのはしょうがないんだが。なぜか「胸も、ワザとやってるんじゃないか?」、と思うほど押しけ付けられてくる。理性で欲望を何とか押し殺して、やっと扉を見つける。

 

 

「「お、お邪魔しまーす。」」

 俺とももこが恐る恐る入る中、中からは間延びした緩ーい声が聞こえてきた。

「いらっしゃ~い、調整屋さんにようこそ。ソウルジェムを弄りに来たの?」

「え、えっと、ここに来れば強くなれるって聞いて…。」

「そ、そうなんです!と言うか、ソウルジェムを弄るって。」

「あらあらぁ、二人は初めてなのね。なら簡単に説明するわよぉ。」

 

 

 調整屋の店員さんらしきお姉さんに、この調整屋でやっていることを聞いた。まず一つ目は、強化だ。ソウルジェムの中に、店員さんが触れるってこと。そして、他の魔力を注いだり、潜在能力を引き出したりする。二つ目は、魔法少女の紹介だ。これは単純に仲間になってくれそうな子を紹介したり、傭兵みたいにお代を支払って戦ってくれる子を紹介してくれる。大まかにこの二つだ。

 

 

「で‼早速なんだけど、この書類にサインを書いてくれるかしらぁ。」

「何々、【今後調整屋の紹介をする代わり、自分達の情報も提供することを約束します。】か。」

「そうそう、そんなに細かい事は言わないわ。そうねぇ、どれ位強いかとか、後は性格かしらぁ。」

「なーんだ、そんな事でいいのか。ならアタシは即OKで。」

「おい!ももこ!決めるのが早いぞ…全く、俺も大丈夫です。」

「なら、サインを書いて早速調整を始めましょう。あら、ごめんなさい。言い忘れてたわねぇ、わたしは八雲 御霊(やくも みたま)って言うのよ?以後、御贔屓にしてちょうだいね。しゅうたくん、ももこちゃん」

 そう言って、少し妖艶な笑みを零した。

 

 

 

ーももこー

 アタシたちは交代で調整をうけた、何だか体が少しポカポカしている感じがする。みたまさんが言うにはそれは良い証拠らしい。アタシが寝台の上で少しうとうとしている内に何だか、あの二人は仲良しそうに話していた。何か、私の携帯も弄って連絡先交換してるし。

「みたまさんって、高1なんですね。何だか大人びてるから大学生位かと思ってました。スイマセン!」

「そうよぉ、全く失礼しちゃうわ。これでも、まだピッチピチのJKなんだからぁ。お代あげちゃうわよぉ。」

「それは勘弁してください。これお代です。でも、そしたら[みたま先輩]の方が良いかもしれませんね。」

 そうやってしゅうたは、お代としてグリーフシードを渡していた。

 

(えっ!?みたまさんって高1だったのか。アタシたちとあんまり変わらないんだな。ってか、しゅうたにお代払わせちゃった。まぁ何か他のもので返そう)

 そんな感じで少し考えたのち、二人の下に向かった。

「みたま先輩かぁ、良い響きね!よし!しゅうたくんは今度からそれでお願いね!」

「分かりました、みたま先輩がそれでいいなら。」

「って言うか、みたまさんってアタシたちと一個違いなだけなんだな。」

 結局、話が思いの外盛り上がって仕舞い。一時時間近く話し込んでしまった。

 

 

「やべっ!もう七時前だ!急いで帰るぞももこ。みたま先輩、今日はありがとうございました。それじゃ。」

「待ってよしゅうた!みたまさん、今日はありがとうございます。いきなり来てすいませんでした。」

「しゅうたくん、待ってちょうだい。大事な話があるの。ももこちゃんは少し外で待っててくれるかしら?」

「はい?分かりました。ももこ。」

「分かったよ、外で待ってる早く来いよ。」

「はいはい、すぐ行くよ。」

 

 

 

ーみたまー

 この子も知っているのね()()()と同じで、魔法少女の真実を。ももこちゃんも知ってたけど、この子は今にも壊れそうな何かがある。だから…。

「ごめんなさい。わたしね、ソウルジェムに触るとその人の過去が見えちゃうの…。だから…あなたの過去も見たは、それに何故か分からないけど見えるはずのないあなたの感情も見えてしまったの。」

「そう…ですか。みたま先輩あの真実を知っても、大丈夫何ですか?」

「大丈夫何かじゃないわ。私だって怖いは、もしかしたらいつか突然死ぬかもしれないのよ。でも、大丈夫じゃないのは、あなたも同じよ。普通は過去は見えても感情までは見えないもの。相当不味い証拠よ、だから…。」

 

 

 

 気を付けて、その一言が言えない。()()()()()を言った私にこんなことを言う資格はあるのだろうか…。でも、だけど、言わなければきっと壊れてしまう、後悔してしまう。そんなのは嫌だ!もう後悔はしたくない。

「だから?」

「気を付けて、今日初めてあった人にこんな事言われて、訳が分からないかもしれないけど。お願いだから!」

(壊れないで!)

「分かりました、ありがとうございます。みたま先輩!何とか頑張ってみます。」

 しゅうたくんが頷いてくれたのを見て、少し安心した。私は改めて帰りの挨拶をする。

 

 

「じゃあねぇ、しゅうたくんまた近いうちに。」

「はい、みたま先輩。それじゃあ。」

 そして、しゅうたくんは扉を開けて帰っていった。

 

 

 

ーももこー

 二人の話を盗み聞きしてしまった。

(やっぱり…しゅうたはあの時のことを。よし!こういう時こそアタシが頑張らなくちゃ!)

 そう決意を固めていると、しゅうたが扉を開けて出てきた。

「ももこ、またせて悪かったな早く帰ろう。」

 しゅうたは足早にアタシの手を掴みながら、走り出す。だが、アタシはそこを動こうとしなかった。そして、アタシはしゅうたに抱き着いた。

 

 

「も、ももこ、いきなりなんだよ。」

「ねぇ、しゅうた。アタシじゃ力不足もいいところだけど…、ちゃんと話してよ。じゃないと辛いとか悲しいとか分かんないよ!」

「ももこ、お前…。」

「ごめん、聞くつもりはなかったんだけど、少し聞こえちゃって…。」

「そっか、心配してくれてありがとな。その気持ちだけで十分だよ。」

 少し申し訳なさそうにそう言って、しゅうたはアタシの頭を撫でてくれた。撫でてくれたしゅうたの手は凄く、暖かく感じた。

 

 

 

ーしゅうたー

 ももこがいきなり抱き着いて来た時は、何だ?と思ったが。話を聞けば、俺を心配をしてくれていたらしい。それを伝えようとしているももこが今にも泣きそうな顔だったので、久しぶりに頭を撫でた。壊さないように優しく丁寧に。大事な幼馴染をこんなにも心配させたと思うと、このままではダメだと分かり、また頑張ることを決意した。

「じゃあ、帰ろっかももこ。」

「ああ、そうだな!早く帰らないと心配掛けちゃうしな。」

 今日は、久しぶりに手を繋いで帰った。ももこの手がとても暖かく感じた。

 

 

 

ーその後ー

【ももこちゃん、しゅうたくんの事お願いね!いろいろ心配だから。後、ちゃんとマーキングしないと取っちゃうわよ♪】

「べべべ、別にそんなんじゃないから!」

 こんなことが、あったのは言うまでもない。

 

 




 ももこちゃんがヒロインみたい!まぁ実際にサブヒロインでもあるので、本編が終わったらIFルートも書こうと思います!


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始まりの章
Prologue「始まりの日」


初めての二次創作なので、設定やらなんやらはあやふやかもしれませんが、よろしくお願いします。


「キュウベえ、俺に魔法少女の適性があるって本当なのか?」

「ああ、本当さ。正直驚いてる、君は男なのになぜ魔法少女の適性があるのか?興味がでてね、だから君に声を掛けたのさ。」

「そっか。魔女っていうのは、厄災や呪いを振り撒くヤバイ奴らで、魔法少女はそいつらと俺たちが気付かない所で戦っている訳なのか。」

「そういうことだね。どうかな?君も魔法少女をやってくれるかい?」

(魔法少女か、、まぁ、やってみるか。今の()()よりヤバイってことはないだろ。)

 

 

 

 俺はそうやって、自分の考えを纏めてキュウベえに答えを返す。

「分かった。俺、魔法少女になるよ。」

「さぁ藍川 柊断(あいかわ しゅうた)、その魂を対価にして、君は何を願う?」

「願いか、、、じゃあ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

「そんな抽象的なものでいいのかい?」

「俺の願いはこれなんだよ、だからこれでいい。」

「その願い、叶えよう。おめでとう、これで晴れて君も魔法少女だ。」

 

 

 キュウベえにそう言われた俺は、急いで携帯端末のカメラ機能で自分の姿を確認する。そこには見知らぬ顔の美少女が立っていた。胸はたわわな果実が二つ、ウエストは程よい肉付きの健康体で、お尻はプリンとした安産型だ。服はいつの間にか、まるでゲームの中から飛び出してきたかのような幻想的なものだ。

 

 

「これが俺?」

「ああ、君さ。魔法少女だからね、変身している時はこの姿だよ。」

 凄い、声まで女性特有の少し高めの声になっている。

 

 

 これが始まりだった。約三年前、俺がキュウべえと契約した日である。

 

 

 

 

 

 あれから、時がたち俺も高校生になった。今は神浜市立大附属学校に通う高校1年生だ。今日は早く学校に着き過ぎてしまった所為で教室はまだ閑散としていた。ガラガラと教室のドアを開ける音がしたのでその方向を見る。そこには、幼馴染であり親友でもある十咎 桃子(とがめ ももこ)だ。

 

 

 

「おはよう、ももこ。今日は早いんだな。」

「おはよう、しゅうた。それはこっちのセリフだよ。何か用事でもあったのか?」

「いいや、別になんもないよ。ただ寝ぼけて時計見間違えただけだよ。」

「ハハハ、それは災難だったな。」

 ももこが、来てからはずっと下らない話をしながら時間を潰した。

 

 

 そして、今日もまた一日が始まる。この日から、また運命の歯車は回りだす。

 

 

 これは戦いと日常、その中にある出会いの物語。

 

 ある日、少年は無感動な少女との出会いを果たす。

 

 




次回から本編始まるのでよろしくお願いします。まさらが出てくるのはもう少し先です。
最初の方はいろはとの物語です。


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一話「環いろはとの出会い」

いろはちゃんとかの漢字は勝手に解釈してこんなやつかなってのを当てはめてますのでご容赦ください。この話はマギレコの内容にそりつつちょいちょい独自ストーリィを織り交ぜていく感じですので、ネタバレが嫌な人はご遠慮ください。


 午前の授業が終わりお昼休み、俺は購買で買ったパンを持ってももこたちの所に急いでいた。

「ワリィ、結構購買混んでて遅れた。」

「大丈夫だよ、それぐらい。」

「レナは、良くないんですけど。しゅうた、アンタなんか寄越しなさいよ。」

「レナちゃんやめなよ、しゅうた君困ってるよ?」

「別にいいよ。ほいっ、このフルーツサンドやるから勘弁してくれ。」

 

 

 そう言って、俺はレナにフルーツサンドを投げ渡す。

 

 一様二人の説明をしよう、秋野 楓(あきの かえで)。神浜市立大附属学校に通う、弱気で戦う事が苦手な少女。中学2年生の14歳。過去に魔女との戦いで窮地に陥っていたところをももこに助けられ、このことをきっかけにももこ・レナとチームを組んで活動するようになった。勝ち気なレナとは些細なことでしょっちゅう喧嘩が起きる、その度にももこが世話をやいている。

 

 水波 怜奈(みずなみ れな)。神浜市立大附属学校に通う15歳の中学3年生。ももこ・かえでとチームを組んで行動している勝ち気な少女。かえでとは些細な事でよく喧嘩が起きている。

 

 

 まぁ二人の説明はこんな感じだ。ももこ・かえで・レナは、俺と同じ魔法少女で何度も共闘したことがある仲だ。かえでとレナの事は妹みたいなものだと思っている。

 

「投げて渡すんじゃないわよ!落としたら勿体無いじゃない!」

「悪かった、悪かった。レナ、そのフルーツサンドはかえでと分けて食えよ?」

「わ、分かってるわよ。」

「しゅうた君、私もいいの?」

「勿論、そのためにサンドイッチしたんだから。」

 かえでとレナは、俺からもらったフルーツサンドを早速開けて二人で分けていた。

 

 

「悪いな、かえでとレナに奢らせちゃって。」

「いいよいいよ。はいっ、これお前が頼んでたミルクティー。」

「サンキュ。ちょっと待ってて、今お金渡すから。」

「そんなのいいよ、それより今日はももこたち魔女狩りに行くか?」

 俺は、やんわりとももこからのお金を断り、話題を逸らす。

 

 

 

「魔女狩りかぁ、今日はパスかな。グリーフシードはまだ余りあるから。急に如何したんだ?」

「いやぁ、今日はブラブラ魔女狩りに行こうと思っててさ。ももこたちもどうかな?なんて。」

「ていうか、アンタも別にグリーフシードには困ってないでしょ。」

「それもそうなんでけどさ。」

「それにしゅうた君には、()()()()がいるのにどうして?」

「たまには、違う奴と狩るのも良いかなって。まぁ、断られちゃったから今日は一人で行くよ。」

 ももこたちに、断られてしまったので諦めて一人で魔女狩りに行くことを決意していると、ももこに肩を叩かれる。

 

 

「なんかあったら呼んでくれ、すぐ行くから。」

「了解!何かあったときは頼りにしてるよ、タイミングが悪くないことを祈ってる。」

 そんな軽口を叩きながら、話をそこで切りまた別の話題にスライドさせていく。その後は、笑いながら雑談を交わしてお昼休みを終えた。

 

 

 

 午後の授業も終え。俺は、学校を後にする。部活に入ってる訳でもないので帰るのは速い。一人帰り道を歩く中、今日は何処を探しに行こうか一人悩んでいた。

 

 

 

 

 

 -----------------------------------------------------------

 

 最近、私は同じ夢を見ている。誰か知らない女の子が病室に居て、ベットの上に座ったまま本を読んだり、食事をしたりする姿をただ眺める夢。

 

 その子は時々、私に笑いかけて何かを言う。だけど私には、その声が聞こえない。

 

 きっとそれは、私が病室に居ないから。

 

 私は画面の向こうにある別の世界を、ただ眺めているだけだから。

 

 どうして私は…こんな夢ばかり見るようになったんだろう。

 

 ー神浜市ー

 

 ー新西区ー

 

「・・・・・・・・・・・・・」

 (私が繰り返し、あの夢を見るようになったのは、前にこの町に来てから…。)

 (あれからずっと、夢を見る度に胸がざわめく…。)

 (私の中に押し込められていた何かがしきりにうごめくように…。)

「…だから、私は真相を知りたい夢の事も、胸がざわつく理由も…。だって、その為に、この町に来たんだから…。」

 

 見つけないと…

 

 そして確かめないと…

 

 

 

 はぁ、とため息が漏れる。いくら探しても何も掴めない。

(魔女を追っていれば見つかると思ったんだけどな、魔女も使い魔も多くて思う様に魔力を追えない…)

 だけど…諦められない。多分この辺りに魔女がいる。

「もう一度、探ってみよう。、、、、、、やっぱり近い。ーっ!?違う、すぐそこにいる!」

 あんまり遅くなるのは、お母さんを心配させちゃうし、急いで確認しよう、そう考えた後は走り出していた。

 

 

「どこにいるの…?」

 魔法少女の魔力反応があればすぐに見つけられるのに。

「反応は近い、、、。」

(きっとどこかに…)

「ひゃああ‼」

 私は叫び声のした方向に走っていく。

 

 

 そこには使い魔とそれに狙われいている魔法少女が居た。

「ーーーーーーーー‼」

 使い魔の攻撃に当たってしまい、転んでるみたい。助けないと。

「ふゆぅっ!はぅぅ…早く逃げないと」

 私は使い魔に向かって魔力の矢を打ち込む。それが直撃し使い魔は消滅した。

「ーーーーーーー‼?」

 良かった、何とか助けることが出来た。

「ふぇ!?」

 

 

 転んでいた、魔法少女の子に怪我はなさそうだった。

「大丈夫!?」

「え、あ、あの…うん…!」

「良かったぁ、一緒に結界から逃げよう!」

「う、うん!分かった!」

 

 

 私たちは何とか魔女の結界から抜け出した、助けた子は安心したのか少し疲れた顔をしていた。

「ふゆぅ………。」

「はぁ…何とか逃げられたね。もう落ち着いた?」

「う、うん、ごめんね。助けてくれてありがとう。」

 助けた子が申し訳なそうにいうので、笑顔で返した。

「ううん、気にしないで。ただ、使い魔が強くてちょっと驚いちゃった。」

 正直驚いていた。私の居た町からしたら考えられない程の強さだった。

 

 

 

「強くて?あの、もしかして、神浜の外から来たの?」

「え?うん、そうだよ?」

「それなら戻った方がいいよ。この町の魔女強いから。今の使い魔でも弱いぐらいだもん。」

「え、うそ…?」

「嘘じゃないよ、だから…。」

 でも、この話が本当なら私一人で何処までいけるか。けどまだ諦める時じゃない、もう少し頑張らなくちゃ。

 

 

「心配してくれてありがとう。でもね私、まだ帰れないんだ。」

「え、でも本当に…。」

「あ、えっと、疑ってるわけじゃないの!ただね、ちょっとここに来たのは理由があって。」

「理由?」

「うん…。あ、そうだこの町で見たことないかな?」

「な、なにを…?」

「小さいキュウベえなんだけど、キュウベえの子供みたいな。」

 

 

 助けた子は、少し考えてる様子だ。

「小さい…キュウベえ…?」

「ご、ごめん知らないよね。」

「う、ううん、見たことあるよ。」

「、、、ホント!?」

「う、うん、最近ね、この町ってあのキュウベえしか見ないから。」

 やった!やっと手がかりを見つけることが出来た。

 

 

「私ね、その子を探しに来たの!」

「ふぇえ!?」

「前に一度見てるんだけど、どこにいるか分からなくて。」

「あ、えっと!それなら急いだ方がいいよ!」

「え、急いだ方がいい…?」

 どうしてだろ、まさか…。

 

 

 

「うんうん!さっきの結界に居たと思う!見間違いじゃなければ…だけど…。」

「えぇ!?」

(さっきの魔女の結界は…!?うぅ、流石にもう逃げてるよね。でも…)

「教えてくれてありがとう!私、さっきの魔女を追ってみる!」

「でも、慎重にね。あの小さいキュウべえ、警戒心が強くて逃げちゃうから。」

「うん、分かった、ありがとう!」

 よし、頑張ろう。あと少しで何か掴めそうな気がする。

 

 

 

「私こそ、助けてくれてありがとう!」

(でも、小さいキュウべえなんて見つけてどうするのかな。)

 

 

 

 あの魔法少女の子を助けてから十数分、何とか微かな魔力を頼ってここまで来た。

(見つけた!これさっきの魔女と同じ魔力パターンだ。)

 これなら追っていけるけど何だか変な感じだ。さっきは人が多い所にいたけど、今は人が少ないところに居る。

(何が目的なんだろう…?)

 私は追うがままに、夕方になったことであまり日が入らない路地裏にたどり着いた。

「--っ!?」

 

 

(急に反応が近く…)

「魔女が、近い…!?」

(違う!向こうから来てる!?)

 魔女の結界内に入ると、一瞬で世界が切り替わり少し幻想的で不気味な場所になった。

「、、、、あれ…!?」

(使い魔が、いない?)

 

 

「-っ!?」

「キュ?」

「いたぁ!」

 あ、そうだ。ゆっくり近付かないと、逃げられるかも。

「モキュー‼」

 

 

 

(あれっ!?向こうから近付いてくる!?警戒心が強いんじゃ…。)

「ーーーーーー――‼」

 小さいキュウべえの後ろの方から、使い魔がやってくる。

「こんな時に…!ーっ!?」

「ーーーーーーーー‼」

「なに、この数!?」

 よく見ると、使い魔の数は十や二十そこらではない、私の方に向かって五十はありそうな大群が襲ってくる。

 

 

 

(まさか、この使い魔。私が追いかけてるって気付いてた…?)

「ーーーーーーーー‼」

「くっ!まだ‼」

「--------!?」

 何とかいなしているが、限界が近い。

 

 

「--------!?」

「ーーーーーーーー‼」

「-っ!?そんな、こっちからも…!?」

 使い魔に挟まれていしまい、死角からの攻撃が私を襲った。

「ふうぅぅう!はぁ…はぁ…はぁ…。」

(だめ…一回戻らないと。)

 

 

 結界を出ようとするが、そのせいで致命的な隙を生み出してしまう。そこを使い魔に突かれ、止めとも言える重い一撃が入ってしまう。

「--------‼」

「あっ…ゥアアァッ‼」

 私は受け身も取れずその場に転がってしまう。

 

 あれ…私…どうなったの…?

 

 力が…はい、らない…

 

 キュウべえ…

 

 だ…れ…?

 

 ………

 

「ここは、あなたが居ていい町じゃないわ」

 

「別にそこまで言う必要ないじゃないですかやちよさん」

 

 そんな会話を聞こえた最後に、私の意識はプツリと切れた。

 

 

 

「-っ!?あれ、ここって…。やっぱり、あなたの病室なんだ…。ねぇ、あなたは誰…?」

「----」

 やはりと言うべきか、彼女の声はまるで私には聞こえない。彼女が何かを喋っているのは分かるが何を言っているかは分からない。

 

 

 

 そして、私の意識は覚醒する。

「え…?あれ…私。」

「お、ようやくお目覚めかか、気分はどうだ?って最悪だよな!」

 目を開けるとそこには、私と歳はそう変わらなそうな男の人が居た。

「え、あの、あなたは?」

「ああ、自己紹介が遅れてごめん。藍川 柊断よろしくね。しゅうたでいいよ。」

「あっ、はい。よろしくお願いします、しゅうたさん。」

(あれ、最後に見たのってこの人…だったっけ?)

 

 

「あれ?おかしいな?俺が来た時はまだ意識があった気がするんだが。あっ!?そうか。」

 男の人がそう言うと、一瞬辺りが光に包まれる。光が晴れて出できた人は凄く綺麗な魔法少女だ。

(あれ、でもおかしい()()()()になってる‼)

「えっ!?何で、どうして男の人が魔法少女に!」

「それ、初対面の人にメッチャ言われるよ。まぁ、詳しく分からないけど、偶然に偶然が重なった結果かな?」

「そ、そうなんですか。」

 私は驚きを隠せないでいた、そのせいで少し放心状態になってしまう。その間にしゅうたさんは変身を解いていた。

 

 

「おいおい、大丈夫かー?あんまりボーっとしてると、俺みたいな奴に襲われるぞ?」

「えっ!?」

 やばい、少しガチな感じで引かせてしまった。俺はそこから何とか立て直す。

「じょ、冗談だから。そんな引かないで。」

「は、はい。」

「それより、助かって良かったな。運よく俺たちが通り掛かってなかったらヤバかったよ。」

 そ、そうだ私助けて貰えたんだ。お、お礼しなきゃ。

 

 

 

「た、助けていただいて、ありがとうございます。」

「いいよ気にしなくて。目の前に、倒れてる女の子が居たら助けるのは当たり前だよ。ただちょっと状況が悪いな。使い魔にやられたのは。」

 私は、自分の弱さを痛感する。これじゃあ、やっと掴めそうだった手がかりも零しちゃう。

「というわけで!これから神浜で戦っていく為にも俺と一緒に、調整屋に行こう!」

「へ?ちょうせい…や…?」

「やっぱり君、神浜の魔法少女じゃないんだ。調整屋を知らない事こそ、分かりやすい証拠だな。」

 調整屋って何なんだろう。やっぱり、この町の魔法少女からしたら私が余所から来たっていうのは分かりやすいんだ。

 

 

「そう…なんですか…?」

「そうだよ、魔女が強い神浜市じゃ調整屋ってのは常識なのさ。なんせ、魔力を強化したり魔法少女を紹介してくれるからな。」

「それ、本当ですか…!?」

 それができるなら、あの魔女たちを相手に神浜市の魔法少女がちゃんと戦える理由も納得できる。

 

 

「嘘か本当かは、これから自分の身で確かめに行くんだよ。ってなわけで、案内するから付いて来てね。」

「そ、そんな!私なら大丈夫ですから!」

「この神浜に、わざわざ外から来たんだ、何か特別な理由があるんだろ?」

 私はコクリ、と頷いた。

 

 

「ここは頼っておいても損はないと思うぞ?」

 私は、少し考えてから返答した。

「ごめんなさい、よろしく「しゅうたー‼、遅れてごめん。」」

「さっすが!ももこタイミング最悪だ!」

「ごめんってば!っでこの子が結界の中で保護した魔法少女か。よろしくね、アタシは十咎 桃子。ももこでいいよ。一様あたしも、魔法少女だから。」

 そう言って、ももこさんは私の前で変身する。

(あれ、そうだ。まだ名前言ってない。)

 

 

「こちらこそよろしくお願いします、ももこさん。あっ、私は環 彩羽(たまき いろは)です。あと、その調整屋に…。」

「大丈夫分かってるよ。ももこを呼んだのは、同じ女の子同士の方が話しやすいと思ったからだよ。まぁでも来たのは、大半を話し終わった後だけど。」

「しょうがないだろ、いきなり呼ばれてそんなに早く来れるか!」

「分かってるよ、だから調整屋に行くまでは、いろはちゃんと話してリラックスさせてやって、、、ちっ!魔女だ。蹴散らして押しとおる。」

「分かった、いろはちゃんはサポートに回って。」

「で、でも、私も…。」

「さっきの戦いの疲れ、まだ取れてないでしょ。大丈夫、俺たちに任せて。」

 

 そして、私たちはまた魔女の結界に入っていった。




まさらが出るのはやっぱりもうちょい先かな。


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二話「調整屋に行こう!」

今回からは、視点切り替え方式で行きたいと思います。
戦闘シーンはへたくそなの許してください。


ーいろはー

 結界内に入ってからは、しゅうたさんとももこさんは、私を挟んで背中合わせで武器を構えていた。しゅうたさんは刀?でももこさんは大剣だ。私が索敵をしていると、しゅうたさんが話掛けてくる。

「一様、俺の武器の説明をするよ。」

「え‼ただの刀じゃないんですか!?」

「違うよ、俺の武器は何にでもなれるんだ。今は刀にしてるだけで、槍や鎌にもなるし銃にだってなれる。ただ、同一系統内の武器変更だったら魔力はあんまり掛からないんだけど。違う系統に移ると魔力が結構掛かって燃費が悪いから、使い慣れてる剣の系統にしてるんだ。何となく分かった?」

「な、何とか。」

「ならいいや、いろはちゃんは矢で援護してくれればいいから。」

 

 

 しゅうたさんが、笑顔でそう言ってくれるお陰で少し落ち着いた状態で使い魔を待つことが出来た。

「しゅうた!いろはちゃん!来たぞ!数は三十位だ、行けるか?」

「誰に言ってんだももこ、任せとけ。」

「了解です、サポートします!」

 しゅうたさんが、目の前に来ていた使い魔を切ったの皮切りに、戦いが始まる。

「----------!」

 

 

ーしゅうたー

 目の前に迫っていた使い魔を切り捨てると同時に、意識を集中して()()を起動させる。目が青く光りはじめる。それが魔眼発動の証、今回発動させたのは「末来視の魔眼」。その名の通り未来を視る事の出来る魔眼だ。視ることの出来る時間は、二十秒後の未来が限界だ。それでもこの末来視が外れたことはない。この魔眼がある限り、俺が戦闘で先読みで負けることはない。

 

 

『いろはちゃん、聞こえる。』

 俺はいろはちゃんにテレパシーを送る。

『何ですか?しゅうたさん。』

『お願いなんだけど、ももこの方を優先的に助けてあげて。』

『で、でも!危ないですよ!』

『大丈夫だよ。俺、こんなんだけど神浜でも結構強い方なんだから。信じて!』

『分かりました…でも!危なかったら直ぐに援護に行きます』

『それでいいよ、ありがとう!』

 

 

 

 俺は一通り伝えたい事を言い終わると、意識を戦闘に切り替える。迫りくる敵に対して、末来視で得た情報を基にして悉くを切り捨てる。死角に潜んでいた敵から不意打ちの攻撃が来るが、刀をロングソードに変えて横薙ぎに振り回す。この攻撃のお陰で周りの敵を片付ける事に成功する。

(さて、ももこの方はどうかな?ヤバそうだったら助けねぇと。)

 

 

 

 

ーももこー

 しゅうたの方を皮切りにこっちでも戦いをが始まる。

「--------‼」

「せやぁ‼」

 大剣を少し振りかぶり、上段からの剣劇で使い魔を切断する。いろはちゃんのサポートのお陰で、スムーズに殲滅を行うことが出来る。

(でも、しゅうたの方をあまり見てないとなるとあいつ…私の方を優先的に助けてやれとか言ったんだろうなぁ。たく心配症だな。)

 

 

 私は、しゅうたの気遣いは後でちゃんと説教しようと決意して、次の敵に意識を向き直す。敵はあと三匹か。その三匹は一匹一匹では通じないと分かり、三匹纏めて襲い掛かってくる。

「「「--------‼」」」

「はぁぁー‼!」

 魔力を大剣に流し込み、巨大化させる。巨大化させた大剣を横一線に流し敵を一掃する。

「「「--------‼」」」

 使い魔の断末魔が響く。使い魔が消滅するとともに結界が晴れる。あたしは変身を解き、しゅうたたちの下に向かった。

 

 

 

ーしゅうたー

 変身を解いたいろはちゃんやももこが俺の方によって来る。俺が労いの言葉でもと言いかけた瞬間。

「お疲れあ、ぐぇ!?痛いなももこ!何すんだ!」

「それは、こっちのセリフだよ!アンタこそ何で!いろはちゃんのサポートをあたしの方にだけ回したんだ。」

「そりゃあ、俺の方が強いし。お前に何かあったら、、、嫌だし。」

「でも、しゅうたの方が数が多かっただろ!それに私も、しゅうたが怪我するのは見たくない!」

「まぁまぁ、落ち着いて下さい。二人とも無事なんですから、それでいいじゃないですか。」

 

 

 

 いろはちゃんの仲介で、何とか言い争いをやめる。その後は何とか落ち着きを取り戻し、少し申し訳なくなりももこに謝る。

「ごめん、ももこ。お前の気持ちを無視しちゃって。」

「あたしこそ、ごめんな。なんかカッとなっちゃって。」

「しゅうたさんとももこさんって、何だかんだ仲が良いんですね。」

「まぁね、幼馴染だし。結構昔から遊んでたよ。でも、お互いに大きくなってからは、頻繁に遊ぶことはないけど今でもよく遊ぶよ。」

「そうだね、昔はももちゃん、しゅう君って呼び合ってたっけ。」

「そうそう、懐かしいなぁ~。」

 

 

 俺たちが懐かしんでいると、いろはちゃんが思い出したように飛び上がる。

「あ!?調整屋さん!しゅうたさん案内をお願いします。」

「そうだった!、急がないとね。ももこ行くよ。」

「分かった、急ごうか。」

 そう話してると、目の前に制服姿の女の子が現れる。

 

 

 

「柊断、速く帰って来て。こころが料理を作って待ってるは。」

「やべぇ!もうそんな時間か。ごめんまさら。こころに帰り遅くなるって、伝えといてくれ。」

「よっ!まさらちゃん。」

「こんばんわ、ももこ。そう言えば、あなたの親御さんが心配してたわよ。」

「マジか、悪いまさらちゃん。私の方もしゅうたと一緒に居るって、伝えといて。

「分かったわ、伝えておく。」

「えっと…しゅうたさん、この人は?」

「そっか、初対面だもんな。」

 いろはちゃんは、突然現れて俺やももこと親しげに話すまさらに少し驚いていた。

 

 

(まぁ、驚くよな。まさらは、話してるとき全然顔変わらないし。)

「こいつは、加賀見 真更(かがみ まさら)。分けあって俺の家に住んでる魔法少女だ。あともう一人は粟根 心(あわね こころ)って言うんだ。その子は、また会った時に紹介するよ。」

「加賀見 真更よろしく。」

「た、環 彩羽です。」

「自己紹介が済んだ所で急ごう!早く行かないともっと暗くなっちまう。まさら、後のこと頼んだ!」

 俺は、まさらに一度別れを告げ、調整屋に急ぐ。

 

 

 俺たちはある廃墟にたどり着く。

「さぁ、この奥だよ。足元気を付けてね。」

「こんな廃墟の奥に…?」

 いろはちゃんは少し困惑してる様子だ。

「調整屋は魔女や使い魔の類とは、戦えないからね。」

「そっ、だから人気のないところの方が使い魔や魔女が近寄らないし、調整屋にとってはやりやすいんじゃないかな?」

 俺たちは奥に進み、奥にあったドアをあける。

 

 

「どうも、みたま先輩。」

「おっす、調整屋~。」

 そこに居たのはなにやら少し洋風な格好をした女の人だった。胸が大きくて、足もスラットしている。顔は柔和で優しい顔をしているが、どこか小悪魔っぽい。

 

 

「あらぁ、久しぶりね、しゅうたくん、ももこ。最近来なかったから寂しかったわ。」

「スイマセンね、何分こっちも忙しいもんで。」

「真面目に返すなよ、しゅうた。なーに言ってんだか、最近じゃ客も多くなって思い出す余裕もないくせに。」

「そんなことないわよぉ?あら?そちらの子、見ない顔ねぇ?」

 みたま先輩は、いろはちゃんを吟味するような視線で見ている。

 

 

「そ、今日は俺の用じゃなくて新しい客の紹介だ。」

「あの、この人が調整屋さん、ですか…?」

「どうもー、調整屋さんです。八雲 御霊(やくも みたま)って言うのよ?以後、御贔屓にしてちょうだいね。」

「えっ、あ、はい…。私は環 彩羽って言います、よろしくお願いします!」

 これがいろはちゃんとみたま先輩の出会いとなった。



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三話「夢のあの子」

前回は無理やりまさらちゃんを登場させてスンマセン。
速めに、登場させたくてつい。


ーいろはー

「みたま先輩に頼みたいんだけど。今いいですか?」

 しゅうたさんが辺りを見渡しながら、みたまさんに尋ねていた。他のお客さんが居ないかを確認していたんだろう。

「なぁに?しゅうたくんのお願いだったら、お代次第じゃ何でも聞くわよぉ~。」

 みたまさんが少し頬を染めながら、しゅうたさんをからかっていた。

(なんか、大人の余裕を感じるなぁ。)

 

 

「別に変なことは頼まないよ、さっきも言った通り今日はいろはちゃんの用なんだ。」

「あらぁ、残念ねぇ。」

「おい、調整屋。あんまりしゅうたをからかうのは止めてくれ。いろはちゃんのソウルジェムを弄って欲しいんだ。」

「冗談よ、冗談。でお代はちゃんと有るんでしょうね?」

「勿論、俺が持つよ。」

 

 

 流石にこれ以上は黙っていられない。助けてもらった上に、そのうえ調整屋さんのお代まで払って貰うなんて。私は急いで会話に割り込んだ。

「ちょちょっ、待ってくださいしゅうたさん!助けてもらった上に、そのうえ…お代まで払って貰うなんて。」

「まぁまぁ、こういう時は年上を頼るもんなんだよ。」

「で、でも…うぅ…。」

「いろはちゃん、アタシが言うのもなんだけど。こういう時は喜ぶもんだよ。」

「はい、ありがとうございます!」

 私は、精いっぱいの笑顔を作り、お礼をした。

 

 

 

ーしゅうたー

「で、あの、それで…ソウルジェムを弄るって、どうするんですか。」

 いろはちゃんはまだあんまり理解できてないので、みたま先輩の方を見て面目ないと言わんばかりの顔をしていた。

「ふふっ、それはね…あなたのソウルジェムの中に、私が触れるってこと。そして、他の魔力を注いだりぃ、潜在能力を引き出したりするの。」

「ほんとにそんなことが…?」

 やっぱり、あまり信じられなかったか。まぁ、普通そうだよな。調整屋なんて、この神浜ぐらいにしか居ないし。

 

 

「一度経験してみるとビックリするとおもうわよぉ。だからね、早速始めちゃいましょう。」

「あっ、はい!」

「それじゃあ、服は脱いで、そこの寝台に横になってねぇ。」

「はい、わかりま…えっ、脱ぐ…!?」

 いろはちゃんが顔を赤くしながら驚いた。みたま先輩のいじりが始まってる。ドンマイ!いろはちゃん。

 

 

「そう、そこのカゴの中に入れてね。」

「、、、、、、、、、、」

「おい…調整屋…。」

「分かりました!」

「分かるな!もぉ、みたま先輩もあんまりいじめないであげてくださいよ。」

 脱ごうとするいろはちゃんを必死で止めて、みたま先輩をジト目で見つめる。

 

 

「ふふっ、嘘でしたぁ。」

「えぇ…。」

 そして調整が始まった。みたま先輩は少し仕事の顔になり、いろはちゃんに向かっている。この時間は、俺たちに何もすることがないので暇だ。

 

 

「はい、そうリラックスしてー。しんこきゅー。」

「すーーーーはーーーー。」

 傍から見ると何だか奇妙な光景だなと、どうでも良い事を考えつつ生末を見守った。

 

 

「ゆったりぃ、身を任せてぇ。大地に沈んでいく…しずかにー…しずかにー…。」

「はぁ…」

 ヤバイ。シリアスムードなとこ悪いが、危ない宗教にしか見えなくなってきた。

「それじゃあ、ソウルジェムに触れるわよぉ?」

「くっ…。」

 いろはちゃんが少し苦しそうに呻いていた。

 

 

「力を抜いてぇ…もう少し…ふかーくっ…。」

「あぁ‼」

 そして、いろはちゃんが小さな叫び声を上げて気を失った。

 

 

 

ーいろはー

 気が付くとまた、あのこ病室にいた。誰か分からないけど、私に何か関係があるのかな。

「また、あの子の病室…?」

(前より鮮明に見える…)

「やっぱりあなたの病室だ、流石に私も覚えちゃったよ。…ねぇ、あなたさっき、私に何か言おうとしてなかった。」

 

 

「------。」

 まただ。口が動いてるのは分かるのに、何を言ってるかは聞こえない。

「え?あ、あの、ごめんね。もう一度言ってもらっていいかな…?」

「----ーー。」

 目の前にいるあの子は、悲しそうな顔で何かを言っているが、それすらも聞くことが出来ない。

 

 

「違うの、そんな悲しい顔しないで。ちゃんと声が聞こえないだけで…。…ねぇ、あなたは誰?」

「------。」

 少し笑顔になりながら私の質問に答えてくれる。この感じからして私は…。

「…もしかして私、あなたと会ったこと…あるの?行かないで!答えて!ねぇ、あなたは私の…なに…!?」

 私の声も虚しく、あの子は姿を消し夢から覚めそうになる。

 

 

 どうして見る度に、こんなに愛おしくて懐かしいの…

 

 

 

ーしゅうたー

 いろはちゃんの目が覚めると同時に、みたま先輩が声を掛けていた。

「どう?体の調子は良い感じかしら?」

「えっと…。はい…さっきよりずっと良いです。何だか体がポカポカしてます。」

「ふふっ、それなら成功ねぇ。最初は体がだるく感じたり、違和感があるかもそれないけどしばらくすれば、少しずつ馴染みはじめるから。」

 みたま先輩がちょっぴり笑顔になり、説明を終える。

「はい、ありがとうございます!」

 

 

「お疲れ、いろはちゃん。」

「お疲れさま、いろはちゃん。」

「ど、どうも。」

「如何したんですか、みたま先輩?急に難しい顔して。」

 俺とももこがいろはちゃんに駆け寄る中、みたま先輩は一人難しい顔をしていた。

 

 

 

 そして、ゆっくりと口を開いた。

「…えぇ、ちょっと…。ねぇ、いろはちゃん…。」

「はい?」

 みたま先輩の顔に驚きつつも、いろはちゃんはちゃんと返していた。

 

 

「わたしね、ソウルジェムに触るとその人の過去が見えちゃうの…。」

「過去…?」

 また、少し困惑している。何か今日だけで、いろはちゃんの困り顔や驚いた顔を結構見たな。まぁ、それだけ新しい発見が多いってことか。

 

 

「そう…。だからね、いろはちゃんの過去も見えたわ。」

「え…。」

「勝手に見たのは謝るわ決して誰にも言わないから…。それでもね、一つだけ聞かせて欲しいの。」

「なん、ですか?」

 驚きを通り越して、良く分かってなさそうな感じだ。だがそれでも、みたま先輩は続ける。

 

 

()()()()()()()()()()()…?」

「…?私が何を願ったか…?」

「…わたしたち魔法少女が契約をする時に叶えた願い事よ…。覚えてる?」

「はい、もちろんです。私は…。私は……。あれ…願い事…。私の…。」

 そこで言葉に詰まってしまった。人に言えない願い、と言う訳ではないだろう。もしかして、、、

 

 

「いろはちゃん…まさか。」

 俺が質問をしようとした瞬間、いろはちゃんが苦しみ始める。

「あっ、はぅ…。また、どうして…‼」

「いろはちゃん!?」

 いろはちゃんは、頭を痛そうにして頭を抱えたまま蹲ってしまった。ももこも黙って居られず、いろはちゃんに抱き着いた。

 

 

 そして、数分がたった後、いろはちゃんの謎の頭痛が収まった。

「はぁ…はぁ…はぁ。あの子はは誰…?私の願いと関係があるの…?」

 何を見たのかは、分からないがそれがいろはちゃんにとって大事なことだという事が分かった。

 

 

「ごめんなさい。苦しめる気は無かったの…。」

「あの小さいキュウべえ。やっぱり私と何かあるんだ…?」

 そう言いだして、いろはちゃんは外に飛び出そうとする。

 

 

「いろはちゃん!まだ外に出ちゃダメだ!」

 追いついたももこがいろはちゃんを止める。

「行かせてください!私、見つけないといけないんです。あの、小さいキュウべえを!」

 だが、いろはちゃんは熱くなっているのか、少し冷静さが欠けているようだ。

 

 

「小さいキュウべえって。そんなの見つけてどうするの?」

「私、あの子を見てからおかしくなったんです。知らない女の子の夢をみて、その度に胸がざわついて。今は何故か愛おしくなって、もう訳が分からないんです。だから、どうなるかなんて分からないけど、もう一度小さいキュウべえに会って、この夢が何なのかハッキリさせたいんです!」

 凄い熱意みたいだ、それほど大事なことなのかも、でも今はダメだ!

「いろはちゃん!今はダメだ!」

 

 

 そう言い終わる前に、彼女は走り出していた。

「あっ!しまったぁぁあああ!今出て行ったら、絶対アイツに捕まるぞ…!」

「だぁ、くそ!みたま先輩お代はこれで!」

 みたま先輩に向かって、グリーフシードを二つ投げて調整屋を去った。

「ありがとうねぇ、しゅうたくん。また来てね~。」

 みたま先輩の緩い声が調整屋に響いていた。

 

 

 

ー???ー

「どこ、あの魔女は…。どこ!?」

「やっぱり、ももこのところにいたのね…。」

 あの子は、私の前で証明してしまった。だから、、、

 




最後に出てくるのは一体、何海やちよなんだ!?


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四話「いろはを追う影」

遅れてスンマセン


ーしゅうたー

 「人は失う事でしか成長出来ない。」、こんな言葉を聞いたのはいつだっただろうか。二年前の()()があってから誰かが口にしていた。俺も時々、そうなんじゃないかと思う時がある。でも、本当は何も失わないで済むのが一番なんだ。

 

 

 

ーいろはー

 調整屋を飛び出して来たものは良いものの、段々と魔女の魔力は薄くなっていった。

「はぁ…はぁ…はぁ…!」

 走って場所を移してからもう一度魔力を探す。

「、、、、、、、、、。ダメだ、魔力が薄くなってる。」

(早くしないと…手がかりが…)

「待ちなさい。」

 

 

 突然声を掛けられて少し驚いてしまう。女の人だ、だが。

「ーっ!?ごめんなさい!今、急いでるんです!」

 私は焦っていて、謝罪をして直ぐにその場を去ろうとする。けれど女の人は関係ないと言わんばかりに、行く道を阻む

「私は待ちなさいと言ったはずよ。」

「あの、私ほんとに急いでて…!」

「どうしても通ると言うなら、私を倒してからにしなさい。」

「どうして…。」

 女の人の言葉に私は竦んでしまう。でも、この女の人は一体誰なんだろう?

 

 

「あなた自身が一番よく分かっているはずよ。魔女の結界で無様にやられてたんだから…。」

 あれ、この女の人は。そうだしゅうたさんと一緒に助けてくれた。

「もしかして、あの時の…。」

「そう、まだ意識があったのね。覚えてるなら話が早いわ。邪魔が入ったお陰でおそくなったけど。これで心置きなくあなたを町から追い出せる。」

「町から…追い出す…。」

 何で、そんな事を。この人何なんだろう、全く読めないし分からない。

 

 

「そう、あなたは私の前で証明してしまったから…。この町で生き抜く実力がないということをね。」

「-っ!?]

(嫌だ!まだ上手く掴めてない。あとちょっとで届きそうなのに。)

「いや、です…。私、目的があってこの町に来たんです…だから!」

「だからどうしたの?目的も果たせずに死にたいの?」

「でも私、調整屋さんにソウルジェムを弄ってもらって…。だからもう、大丈夫です。」

 大丈夫、私はまだ頑張れる!ここで折れる訳にはいかないから。

 

 

「また、しゅうたとももこのお節介ね…。はぁ、わかったわ。」

「通してくれるんですか!?」

「えぇ、あなたが自分の強さを証明できればね。」

「-っ!?」

「かかってらっしゃい。あなたがこの町で生き抜けるかは私の眼と腕で判断するわ。」

 辺りが一瞬光に包まれると、そこには魔法少女への変身を終えた女の人の姿があった。私も変身を済ませる。進まなきゃ!前を向いて進まないと何も変わらない!でも…

 

 

(せっかくあのキュウべえを見つけたのに…どうして。)

「覚悟は出来たかしら…退くなら今のうちよ…。」

「、、、、、、、、」

 無言で武器を構える、こうなったらやるしかない。退くことはしない!

「あなた、気が弱そうに見えて結構、頑固なのね…。」

 私は、無言で戦いに移っていた。

 

 

 

ーしゅうたー

 俺たちはいろはちゃんを追いかけて色々な所を探し回っていた。

「クソ!見失った…。案外足早いなあの子は。」

「にしてもだよ!如何すんのさ?このままだとやちよさんに見つかってゲームオーバーだよ。」

「だよな~。俺も今考えてるんだが、あんま人前でこれ使うのも不味いしかと言って、路地裏まで行ってゆっくり探す時間も無いし。」

 

 

 俺は目を指さしながら言う。魔眼のことだ、ももこのことだから分かるだろう。諦めて別の手段を模索しようとしたところに、一本の電話が掛かって来た。

「はい、もしもし藍川ですけど。」

「もしもし、柊断君。今いいかな?」

「咲良さん。はい、ちょっと急いでますけど大丈夫です。」

「ならいいかな、そこから近い所で魔法少女同士が争ってるんだよね。ただの稽古かもしれないけど、心配だから急いで見に行ってくれないかな?場所は今から送るから。」

「了解です!任せといてください、何かあったら連絡します。」

 

 

 

 電話を切ると同時にLINEに来た住所にを確認する。確認をとったら走りながら意識を集中させてある眼を引っ張り出す。

(頼むぞ、千里眼!)

 千里眼を発動させて先程の場所に視点を移す。そこには槍で攻撃を仕掛けるやちよさんと、それをなんとか耐えるいろはちゃんが見えた。

 

 

「ももこ、いろはちゃんの場所が分かった。もうやちよさんと戦闘になってる、早く行くぞ。」

「咲良さんのお陰か、分かった飛ばそう!」

 俺とももこは急いでいろはちゃんたちの下に向かった。

 

 

 

 

ーいろはー

「うあぁ!」

 私は槍の水平に薙ぎ払う攻撃で飛ばされてしまう

「所詮は付け焼き刃ね強化しても経験は追いつけないわ。」

 やっぱり、付け焼き刃程度ではどうにもならない。

 

 

「っ…!」

「あら、まだやる気?」

 何とか立ち上がり、もう一度向かい合う。

「お願いです…私、キュウべえを探してるだけなんです!小さいキュウべえを…。」

 私は、戦ってるはずの相手に、懇願するように呟く。

 

 

 女の人は、面食らっている。小さいキュウべえをしっているのだろう。

「…小さいキュウべえ。」

「…せっかく見つけたのに…。」

「--っ!?そう、あなたなら近付くことができるのね…。だけど…いい加減諦めなさい!」

 

 

 さっきまでの覚悟が砕けそうになっていた、そこに二人の影が現れた。

 

 

 

ーしゅうたー

「「まてーい。」」

 ももこと声を揃えてやちよさんといろはちゃんの間に着地する。

「-っ!?」

「キャッ‼」

 二人ともビクッ!としていた。いろはちゃんの方に怪我はない、相変わらずそういうのは上手いな。

 

 

「ふぅぅ…いやはや、間に合ってよかったよ。」

「だな!大丈夫?今日二回目のピンチだね。」

 笑顔でいろはちゃんの方を向きながら、ふざけた口調で言う。

「し、しゅうたさんにももこさん!?どうしてここに…?」

「やちよさんがいろはちゃんを襲うのは分かってからね。」

「まぁ、少し遅れちゃったけどそこはごめんね。」

 

 

 いろはちゃんぼ心配をしつつ、やちよさんを警戒する。

「相変わらず趣味の悪い女だよ…。」

 ももこが悪態を突くが俺も何とかフォローする。

「ももこやめろよ。どうもやちよさんさっきぶりですね。」

「そうね、しゅうた。それとももこ、趣味じゃないわ。ただ、この町に無駄な死体を増やしたくない…それだけよ…。」

 やちよさんも弁明を混ぜつつ、返事を返す。だがももこは、あまり聞く耳を持たない。

 

 

「はっ、よく言うよ。大方、魔女の数が減るからだろ?町に魔法少女が増えりゃ個人の取り分も減るからな。だから、「ももこ!」…悪い。」

 俺がももこを叱責する。やちよさんも少し息苦しそうだ。

 

 

「、、、、、、、、。いい加減、誤解されるのも気分のいいものじゃないわね。…そうね。ねぇ、あなた。小さいキュウべえ見かけたってどこで見かけたのかしら?」

 いろはちゃんは、いきなりの質問に戸惑いつつも何とか受け答えていた。

「えっ、あの、砂場の魔女の結界です…。」

 やちよさんは、考える素振りを見せると新たに提案を出した。

 

 

「そう、そえじゃあこうしましょう。砂場の魔女を先に倒したら実力を認めるわ。ハンデとして私はひとり、そっちはタッグで構わないわ。これで、どうかしら?それと、タッグの相手はももこよ。」

「え、そんな勝手に…!私は小さいキュウべえさえ見つかれば別に…。」

「乗ったー。」

「乗るなよ!バカももこ!」

「えぇ!?ちょっとももこさん!?あの、私は別にそこまで認めてもらえなくても…。」

 ももこが勝手に乗ってしまった所為で、余計面倒臭くなった。

 

 

「これで、あの堅物が認めてくれるっていうなら安いもんさ。それに勝ちさえすれば、気兼ねなく探せるだろ?」

 俺の方を見てアイコンタクトをしてくる。何となく分かるが、ルールに抵触しない範囲で手助けしろってことか。

「ああ!もう、好きにやれ!」

「あ…うぅ…」

 いろはちゃんは少し唸っていた。

「やるぞ、いろはちゃん!」

 

 

「はい、分かりました…。」

 結局、いろはちゃんが押し負けて了承していた。相変わらず押しが強いなー俺の幼馴染わ。

「よし、それじゃあ決まりだ。」

「決まりね。」

 そして魔女の結界探しが始まった。

 




オリキャラが登場しましたが、そこらへんは後々に。

主人公の説明をしていなかったので手短に
名前:藍川 柊断
外見:身長は170前半で、赤褐色の眼、本人は普通だと言っているが中々のイケメンである。髪は黒。
誕生日:2月3日
血液型:B型
星座:水瓶座
好き:魔法少女仲間、ミルクティー、普通の日常
嫌い:無力な自分、仲間を傷つける人
趣味:読書、料理
特技:ピアノ

今後ともよろしくお願いします
10月26日に血液型追加しました。


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五話「似ている二人」

お待たせ!待ってないって?そんなこと言うなよ。


ーいろはー

 さっきの提案から魔女を捜索して、十数分。

「ありました、ここです。」

「随分と奥に隠れてたな。」

「さすがに複数に魔法少女に狙われたら逃げたくもなるわよ。さっきは小物一匹だから気が大きくなってたんじゃない?」

 やちよさんが、私の方を見ながら言ってくる。

 

 

「小物…。」

「やちよさん、言い過ぎですよ流石に。」

「とりあえず、その分のハンデは付けたつもりよ。ももこと二人で頑張りなさい。強くなった実力とやらをせいぜい発揮してね。」

 しゅうたさんがフォローしてくれているが、それでも言葉は私の胸に刺さっていく。

「、、、、、、、、」

「いちいちムカつく言い方だな。こっちは、アンタの都合で提案を飲んでるってのにさ。」

 

 

 ももこさんは、やちよさんの言い方があまり好きではないみたいだ。というより…。

(やちよさんのことも、あんまり好きじゃないみたい。)

「別に合わせなくても結構よ。それならそれで、私と戦って勝てばいい話だけど。」

「まぁまぁ、二人とも落ち着いて。」

 しゅうたさんはまたしても、二人の間に割って入り円滑剤になっている。

 

 

「あの、ももこさん気にしないでください。私の実力が足りてなかったのは本当ですから・・・。それに、この結界の中にキュウべえもいるかもしれない。だから、頑張ります、私!」

「ふっ、見ものだわ。」

「くぅぅぅぅ…!」

 そんなやり取りを終えて、私たちは中に入っていく。

 

 

 

ーももこー

 結界の中に入ると、早速使い魔たちが囲んできた。

「くそっ、こいつら早速囲んできた…。」

「背中は任せて下さい援護します!」

「あぁ、アタシは一気に突破口を開く!やちよさんに先を越されてたまるか!」

 

 

 いろはちゃんの頼もしい声に任せて、私は正面を見据える。攻撃的な上段の構えを取り、意識を正面にいる敵だけに向ける。

「--------‼」

 一匹の使い魔が襲ってくると同時に、他の使い魔も群れをなしてやってくる。アタシは上段の構えから、魔法で一気に剣を肥大化させて振り落とす。

「せりゃぁっ‼」

 その瞬間、正面に居た敵は潰され瞬く間に消滅していく。群れを成したお陰で簡単に道を開けることができた。後は、周りの敵に牽制しつつここを抜けて最深部を目指す!

 

 

「お先に失礼するわよ」

 アタシが道を開けるより早く、やちよさんが先を行く。最速最高の戦い方を、この数瞬で考えたと思うとゾッとする。

「くっ、やっぱり早いな…。いろはちゃん、急ごう!」

 先を急ごうとする、アタシをいろはちゃんが止める。

 

 

「あ、あの、待ってください!」

「なに立ち止まってるの!そんなノンビリする時間なんて。」

「、、、、、、、、」

 いろはちゃんが立ち止まって、明後日の方向を見ている。アタシもそこに視線を向ける。

「いろはちゃん?」

「プギュ?」

 

 

 そこには、いろはちゃんが探している小さいキュウべえが居た。

「…いました!小さいキュウべえ!」

「いろはちゃん!今は魔女を狩ることが優先だ!」

 アタシが早口でそう言うと、いろはちゃんは少し躊躇う。

 

 

「でも、私はあの子に会いに来たんです。ちゃんと、話す事さえ出来れば私はそれで…。」

「そりゃあ、楽観的すぎるよ。いろはちゃんの願いが関係してるのかも知れないけどさ。そのキュウべえに会えたからって解決する保証はないんだろ?」

 いろはちゃんの大事なことが関係してるかもしれないが、もし違ったら一からやり直しだ。アタシもしゅうたも手伝ってやりたいが、今回の提案に勝たないと話にならない。

 

 

「それは…そうですけど…!」

「またこの町に来る必要があれば、あいつだって邪魔しにくるはずだ。だから、今は魔女を優先しよう。」

「、、、、、、、」

 いろはちゃんは何故か素直に納得できてない感じだ。

「モキュ!」

 小さいキュウべえがアタシたちに向かって語り掛けてくる。何だろう?

 

 

「キュウべえ…?」

「キュッ、モッキュ!」

「なんだ、どういうことだ?」

「付いてこいってこと?」

「キュ!」

「それってもしかして魔女のところ?」

「モッキュ!」

 何故会話が成立しているのか分からないが。自然と言っていることが分かった。

 

 

「ははぁ、なるほど…。チビスケも魔女を優先して倒せってさ。」

「そうなの…?」

「キュ!」

「、、、、、、、うん。…分かった、じゃあ案内して!」

 チビスケがいろはちゃんの声に反応する。多分大丈夫だろう。多分だけど

 

 

「ただ、信じて大丈夫なのかはちょいと不安だけどな。」

「でも、キュウべえが知ってたら。迷わず辿り付けますね。」

「うん、普通に戦ってたらやちよさんに追いつけないし…。ここはひとつこのチビスケに賭けてみるか!」

「はい!」

 いろはちゃんが元気よく返事をする。

 

 

 結界の中を進みながら話をする。少し走っているため、一定の場所に留まらないことからあまり使い魔に襲われない。現に最初の一回以降は数匹現れるが、ソウルジェムを弄ってもらったお陰でいろはちゃんの調子が良く、見つけたらアタシが突っ込む前に倒してしまう。遠距離武器の強みがあるな。

 

 

「これで勝てたらいろはちゃんも仲間入りだな。」

「仲間入り?」

「神浜市の魔法少女のね。」

「そんな嬉しいものですか…?普通ライバルが増えたとか…。」

「アタシは嬉しいよ友達が増えたみたいでさ。」

「、、、、、、、」

 アタシの言葉にいろはちゃんは少し照れた様子を見せて、顔を逸らした。

 

 

 

 

ーしゅうたー

 千里眼を使いやちよさんの位置を特定し、末来視に切り替えてその後の通り道を予測する。そして、偶然を装って遭遇する。

「どうも、やちよさん。奇遇ですね。」

「ルール違反じゃないかしら?こういうことは。」

 首を傾げてとぼけて見せる。やちよさんが呆れた顔をしてため息を吐く。

 

 

「ルール違反じゃありませんよ。()()()()()()()()()()()()()これがルール、というか条件です。でも、俺はいろはちゃんを追っていたら偶然をそこについて、話を聞いただけです。」

「それでもよ、あからさま過ぎるわ。」

「それに、俺は今この結界にただの魔法少女として来てます。魔法少女が魔女の取り分で争うのは日常茶飯事でしょう?まぁ、俺は嫌いですが。」

「だったらなぜ?こんなことをしても意味は薄いでしょう?」

「助けるって決めたからですよ、あの子を。一度助けたら、最後まで面倒を見る!それが助ける者の在り方でしょう。」

 またもや、やちよさんはため息を吐く。先程より更に呆れた顔をしていた。

 

 

 

「あの子、誰かに似てると思ったら。やっぱりあなたね。」

「そうですか?そんな感じします?」

「えぇ、特に頑固な所がそっくりよ。脆いのに一生懸命になる所も。呆れるくらいにね!」

 やちよさんが言葉を言い終えると、俺に向かって槍の一撃を叩きこむ。末来視で何とか一撃を刀の腹で逸らす。

 

 

「流石ね、前会った時よりも強くなったんじゃない?」

 やちよさんが不敵な笑みで聞いてくる。

「どういたしまして!これでも()()の都合上、嫌でも強くならなきゃやってられないんですよ!」

 刀を構え直す。その時やちよさんが走りだす、当たり前だこんな相手に時間を掛ける方がアホなのだ。なので走りながら戦いに持ち込もうとする。やちよさんは結界の最深部が分かるのか、一直線で走っている。俺はと言うと、この状況を打破することが出来るが迂闊に使えないでいた。

 

 

(ここで、消耗したら後々面倒なことになりそうだ。クソ!迂闊に魔眼が使えない。)

 魔眼も万能という訳ではない。使用制限もあるにはあるし、使用中は体力の消耗も激しくなる。そして、そのままズルズルと引き伸ばされ、気付けば結界の最深部に辿り着いていた。

 

 

 

ーいろはー

 あれから数分が経ち、急いだお陰で何とか早く着くことが出来た。

「モキュ!」

「ここ、最深部の入り口…。」

「あぁ、この先は魔女のプライベート空間だな。半信半疑だったけど、本当に案内してくれるとはね。」

 やっぱり、この子を信じてよかった。でも、もうやちよさんって人が来てるのかな?

 

 

「私たち、一番乗りですか…?」

「あぁ、追いつかれる前に乗り込むよ。」

 私の不安が混じった質問に、ももこさんは少し勝気な感じで返してくれる。

「はい!」

 ももこさんの言葉に支えられながら、結界の最深部に入る。

 

 

「--------‼‼」

「なっ‼いろはちゃん、危ない!」

「えっ!?ふぁあ‼」

 ももこさんの警告の声も虚しく、私は吹き飛ばされてしまう。

 

 

 今のなに…?

 

 魔力の波みたいな…?

 

 

 起き上がるとそこには、やちよさんとしゅうたさんが居た。

「あら、遅かったのね。」

(今の魔力、この人なんだ…。)

 しゅうたさんの魔力では無く。やちよさんの魔力だ、しゅうたさんは魔力が各段多い訳ではなく覇気がすごいのだ。調整屋に行くときの戦いで分かった。

 

 

「ザリザり…☆…◇…。」

「一撃で魔女が…気絶してる…。」

「待ちくたびれて魔女と遊んじゃったからね。」

「スマン、あんま足止め出来なかったわ、魔女は手出し出来ないから…。」

「おい、冗談きついぞ…。いくら何でも早すぎる…。」

「早すぎる…?あなたたちが遅すぎるのよ。これ位の力量差があるのはももこなら想像できたでしょ…?」

 (嘘でしょ。これで遅いなんて、精いっぱい急いで来たのに。)

 

 

 私たちの急ぐは、彼女にとっては急いで無いのと変わらないらしい。明らかに経験が違う、天と地程の力量差がある。

「くっ…。」

 ももこさんが歯噛みをし、しゅうたさんも悔しそうな顔する。

「さ、あなたたちの負けも決まったようなものね。」

「、、、、、、、」

 私も、まだ諦め切れずにいる。

 

 

「だけど特別に、もう一度チャンスをあげるわ。」

「え、もう一度…?」

「えぇ、あなた、魔女を一人で倒しなさい。そうすれば、実力を認めてあげる。私の食べかけなのは、ちょっと残念だけどね。」

「、、、、、、、、」

「バカにするのも大概にしろ!人を弄んで!」

 私が無言になったのを見て、ももこさんが声を荒げる。

 

 

「ももこ抑えろ。お前がどうこうできる問題じゃない!やちよさんもやちよさんだ!何でもっと言い方を考えない!こうなるのは目に見えてるだろ!」

 しゅうたさんも、ももこさんを抑えながらやちよさんに向けて注意をする。少し声に怒気が含まれているのが分かる。でも…。

(でも、何だかただ怒ってるのと少し違うような?)

 

 

「なによ、せっかく考え直したのにひどい言い方ね。それにしゅうたの言う通り、これはあなたの問題じゃないわ。どうするかはこの子次第よ…。」

「くっ…。」

 やちよさんの言葉にももこさんは黙り込んでしまう。

「さぁ、どうするの?」

(…さっき、ももこさんが言ってたみたいに。また、この町にくる必要があるかもしれない…。)

 私は決意を固めやちよさんに言い放つ。

 

 

「今ここで魔女を倒してみせます。」

「そう、それなら見せてみなさい、神浜の魔女をを倒すところを。」

「頑張れよ、いろはちゃん。」

「兎に角、目を凝らせ今の君なら見えるはずだ。あの魔女の動きが。」

「はい…!」

「さぁ、魔女が動くわよ…。」

 魔女が動き出す。

 

 

「ももこさん、キュウべえのことお願いします!」

「ああ、任せといて!」

「しゅうたさんも、アドバイスありがとうございます。何とか頑張ってみます!」

「うん、ここで見てるから!頑張って来て。」

 私は駆け出し、攻撃の範囲内まで行く。ここなら私の攻撃も届くし、相手の攻撃も良く見れる。勝とう!勝ってあの小さいキュウべえに教えてもらはなきゃ、あの子のことを。

 




 因みに、主人公の強さは神浜一です(迫真)。(魔眼のお陰)


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六話「これからのこと」

待たせてごめん!


ーしゅうたー

 いろはちゃんと砂場の魔女の戦いは熾烈を極めるものだと思っていた。だが、そうではなかった。いろはちゃんは砂場の魔女に対して善戦していた、むしろいろはちゃんの方が若干だが押し勝っていた。けれどこれは、あくまで最初の話だ。戦いが始まって十分が過ぎた頃、いろはちゃんに異変が起きた。

「はぁ、はぁ、てやぁ!」

 

 

 息が上がり始めていた、まだ十分されどいろはちゃんにとっては命懸けの十分だ。ソウルジェムを弄ってから一時間も経ってない、それに今回が初めての体験だ、単純に魔力の強化に()()()()()()()()()と言う事。いろはちゃんに限界がづいていた。それを見たももこが加勢しようとする。だが、やちよさんも反応して槍で加勢を妨げる。

 

 

「そこを退いてくれ、やちよさん!このままじゃぁ、いろはちゃんが!」

「嫌よ!それにももこ、約束を忘れたの?あの子が決めたことに、あなたが割って入る資格は無い。」

「くっ!でも!」

「ももこ。その辺にしとけ。…大丈夫だ、もしもの時は責任を持って俺が助ける。」

「…分かったよ。」

 少ししょぼくれるももこから視線を変え、いろはちゃんの方を見る。そこには、まだ目に闘志を燃やし戦い続ける一人の少女の姿があった。

 

 

 

 

ーいろはー

 体は辛うじてまだ動く、目の前に居る魔女から視線を外してはいけない。そんなこととしたら一巻の終わりだ。魔女から出る竜巻攻撃を見切り、体制を立て直し武器の構えを取る。武器であるクロスボウに、魔力で作った矢をセットして撃つ。武器の欠点としては、剣や槍、鎌などの近接系武器に比べると、如何せん攻撃の際にタイムロスがあることだ。下手に魔力を貯めて攻撃をしようとすると、攻撃に対しての隙が出来やすくなってしまう。やちよさんの様に呼吸をするように、魔力を扱える人間はそう居ない。

 

 

「まだ!諦める…わけには…いかない!」

 震える足に鞭を打つ、魔女とはお互いに消耗し合ってる。先程の竜巻攻撃に結構な体力を持っていかれてるらしい。

(ここで…決めなきゃ!)

 

 

 

 呼吸を整え、もう一度クロスボウを構える。魔女も先程とは比べ物にならない程の竜巻を作っている。私も今残っている全てをかき集めて最後の一射を作る。

(未来への道を、この一射に!)

 すると、自然と口から言葉が出できた。

「この一射が、未来への道となりますように。ストラーダ・フトゥーロ!」

 

 

 そして、私の矢と魔女の竜巻が激突した。撃った矢は何本にもなり、雨の様に竜巻もろとも魔女を打ち消していた。

 

 

 結界が解け、世界は元に戻っていく。私は少しボーっとしていた。そんな時、後ろからももこさんに声を掛けられる。

「やったな、いろはちゃん!」

 ももこさんは凄く嬉しそうだ、その後ろにいたしゅうたさんも私に労うような言葉を掛けてくれる。

「お疲れさま!よくやったよ、いろはちゃん。やちよさんと戦って消耗していたとは言え、単独で砂場の魔女を倒すなんて!」

「はい、はい!やっちゃいました!」

 私もさっきまでの疲れは何とやらと言う感じで飛び跳ねてしまう。

 

 

「どうだ、やちよさん。」

「どうしてももこが、得意気になってるんだが…。さぁ…。」

「なに、これ以上、難癖付けようっての?」

「まさか、実力は認めるわよ。最初から大丈夫だろうとは思っていたからね。」

「え、そ、そうなんですか…?」

 やちよさんの言葉に驚きを隠せない。だったらなぜ、試すような事をしたのだろう。

 

 

「えぇ、何となくだけど、その人を見れば分かるわ。」

「なんだ…。だから、魔女を譲ってくれたり…。」

「相変わらず、ズレてるな~やちよさんは。」

 しゅうたさんは、やちよさんの考えを見抜いてたんだろうか?

「しゅうたさんは、分かってたんですか?この事。」

「それなりにね、まぁ付き合いは長いから。…でも、約一名は違うけど。」

 そう言われて、ももこさんの方を見ると。少しだが怒って、やちよさんを睨んでいる。

 

 

「いや、人を弄んだだけだ…。」

「別に弄んでなんかないわよ、目的のために導線を引いただけ。」

「導線…?」

「そう…。ちょっとイジメすぎたのかしらね。私の前に、このキュウべえは現れてくれないから…。」

「え…。」

 首を傾げる、やちよさんはこの小さいキュウべえと会ったことがない?

 

 

「小さいキュウべえ…。今まで有り得なかったイレギュラー。気がついたら、神浜市からいつものキュウべえは消えていて、この子しか存在しない…。どう考えても、危険な因子にしか思えないのよ。」

「ヤバっ!?」

「はっ…。」

「「ももこ(さん)。」」

「しまった!」

「遅い!」

 気付いたら小さいキュウべえは、ももこさんの腕からいなくなり。やちよさんが捕まえていた。

 

 

「ぐっ!」

「プギュっ‼」

「キュウべえ!」

「チビスケ!」

「ようやく消せるわ。」

「やめてーーーーー‼」

 そして、私の叫び声が住宅街に木霊した。

 

 

 

ーしゅうたー

 やちよさんがチビスケを抱えながら、いろはちゃんと対峙している。俺は何時なにがあってもいいよう、魔眼を直ぐに発動できるように準備する。

「あなたも分からず屋ね…。そのキュウべえに関わるとロクなことにならないわ。」

「この子が何をしたって言うんですか!」

 いろはちゃんの怒声の声が響く。もっともな意見だと思う。

 

 

「これからするかもしれない。リスクは早めに排除するものよ。」

 これも正論に近い、チビスケが友好的なのは今だけかもしれない。でも…。

「そんなことしたら、聞けなくなっちゃう!あの子は…あの子は…。私にとって、大切な子かもしれないのに‼」

 その時、いろはちゃんが矢を引いた。だが、やちよさんに単純な攻撃が通じる筈もなく、軽々と躱されてしまう。

 

 

「ヤルの?あれだけの実力差があると分かってても?」

「やります、あの子は私にとって、大切な子かもしれないから!」

「そう、なら来なさい。どこまで耐えられるかしら!」

 そこからの戦いは、まさに一方的な暴力に等しい。いろはちゃんは消耗してるので避ける事しかできない、最も魔力も尽きかけているためまともに矢すら作れないが。居ても立っても居られず先にももこが立ち上がろうとした。

 

 

「しゅうた行くぞ!いろはちゃんが危ない。」

「待て!行くな。」

「どうして!今行かないで何時!」

「一回待て、チビスケからテレパシーをもらった。」

「…どんな?」

「信じて待って、だそうだ。俺も信じていいかわからないだけど、この先アイツとやってくなら信じるっきゃない。」

「確かに…でも、もしもの時は…。」

「ああ、行っていいよ。それにもしもの時は俺も行く。」

 

 

 そして、歯がゆい思いをしながら戦いを見送った。

 

 

 

ーいろはー

 ももこさんとしゅうたさんは加勢に来てくれない。でも、あっちを見た時。確かにしゅうたさんは、こちらに信じる目を向けていた。だから…。ここで折れる訳には。

「ここまで耐えたのは褒めてあげるわ。だけど…ここまでよ!」

「だめぇ‼」

「キュ!」

 

 

 私は抱えていた小さいキュウべえを守るように強く抱きしめる。

「そいつを離しなさいアナタまで串刺しになるわよ。」

「いやです!絶対に離しません!-っ!?」

(なに…意識が…)

 

 

「いろはちゃん‼」

「はぁ…だからいったでしょ…アナタの自己責任よ。」

「いろはちゃん!だあクソっ!信じたのは間違いじゃないけど、もっと良いやり方はないのか。」

 しゅうたさんとももこさん、それにやちよさん。それぞれの声が聞こえた気がした。

 

 

 

 ……………

 

 ……

 

 抱きしめたキュウべえから、何か…来る…

 

「お姉ちゃん!今日も来てくれたんだね!」

 

 お姉ちゃん…?

 

「あーあ、早く元気になってお姉ちゃんと学校に行きたいなぁ。」

 

 ずっと入院してるこの子…

 

 私…どこかで…!

 

「お姉ちゃん…息が…はぁ…うぅ…。」

「ゆっくり体起こそうねっ!■■は強い子だから大丈夫だよ!」

 

 私…知ってる…

 

 あの子の苦しそうな顔も嬉しそうな顔も…

 

 あの子、そう名前…なんだっけ…懐かしくて愛おしい、あの響き…

 

「お姉ちゃん、本当に私、退院できるの…?」

「そうだよ、うい!」

 

 うい…?

 

 ういうい

 

 そう、ういだ!

 

 私の妹…

 

 ずっと入院していて身体が弱くてすぐに消えてしまいそうな

 

 かけがえないのない私の大事な妹…

 

 どうして私こんな大切なこと…

 

「お願い、妹の病気を治して…!ういを元気にしてあげて!そのためなら…私、何でもするから…‼」

 願いと言うには少し違う。懇願だ、藁にも縋る勢いだった。

「環いろはそれが君の願いなんだね。」

 

 

 

 

ーしゅうたー

 今は調整屋に居る。ここは中立地帯、戦闘はご法度だ。

「はっ………。」

「あらっ!ももこぉ、しゅうたくぅん、いろはちゃんが目を覚ましたわよっ!」

「え、ほんとに!?いろはちゃん、大丈夫!?」

「おいおい、ももこ。起きたばっかりなんだ、あんまり質問攻めすんな。」

 

 

 俺だって今すぐにでも駆け寄って無事を確かめたいのだ。

「ももこさん…しゅうたさん…みたまさん…。」

「なに?どうしたの?どこか痛い?」

「えっ!痛いとこがあるのか直ぐに見せて!」

「私…思い出しました…。どうして魔法少女になったのか…。」

「え…。」

「はっ…。」

 

 

 俺とももこが少し呆けている、多分チビスケのお陰なのだろう。

「私…妹のために…。あの子の病気を治すために魔法少女になったんです…?どうして忘れてたんだろう…こんな大切なこと。」

「忘れてたって…どういうこと…長い間、離れて暮らしてるとか。」

「いや、違うな。何かあるんだろういろはちゃん。」

「はい、そうです。…ずっと一緒でした…。この間まで、同じ屋根の下で一緒に寝て、ご飯も食べてました。でも、みんな消えてるんです…なかったことになってるんです…。あの子がこの世界に居たことが…。」

 新手の魔法…それともキュウべえ似た奇跡を起こす何かか。上手くは分からないな。

 

 

「そんなことって…。」

「でも、実際にそうなんです。家に帰っても、ういが居ないのが普通になってて…。お父さんとお母さん三人でいつも通りに暮らしてた。私だって、さっきまで自分のこと一人っ子だって…。」

「つまりそれって、わたしが妹ちゃんに会っていたとしても、忘れてるかもってことぉ?」

「はい…きっと…。」

「…魔女の仕業かしらぁ?」

「長いこと魔女と戦ってるけど、そんな魔女がいるとは…。」

「それじゃあ、どうして…。」

「それか、キュウべえのように奇跡を起こせる存在が居るとかってところだな。」

「私が思い出せてないことが他に何かあるのかも…。」

 

 

 みんなが少し考え込むとチビスケが鳴いた。

「モキュ。」

「キュウべえ…。もう、あなたに触っても何も思い出せないね。でも、あなたが、ういのことを思い出させてくれたんだよね?」

「キュ?」

「…きっとそうなんだよ。そんな気がする。…………。うん…決めた…。」

 いろはちゃんは、あの時と同じように何かを決めた顔をしていた。そんないろはちゃんを、ももこが呼ぶ。

 

 

「いろはちゃん?」

「私、また来ます…。この神浜市に。」

「目的は果たせたんじゃないの?」

「今度はういを探さないといけませんから…。きっと、この神浜市のどこかに、手がかりがある気がするんです。ういが消えちゃった理由も、あの子が今、どこにいるのかも。ういのことを思い出させてくれた、この小さいキュウべえが居る町だから…。」

 そう言った、いろはちゃんはとても清々しい顔をしていた。

 

 

「…その記憶が実はウソで何か理由があって植え付けられた、そんなことも考えられると思うんだけどぉ。」

「みたま先輩、後味良い感じで来てるんだから、あんまり壊さないでよ。」

「大丈夫ですよ、しゅうたさん。みたまさん。それでも私、この記憶を信じます。」

 

 

 ういのことを考えるだけで愛おしく感じるから

 

 鮮明になった思い出があの子がいたって実感を与えてくれるから

 

 そして何より…

 

「今の私は…。環 羽衣って妹がいる環 彩羽だって思えるから…。」

「環 羽衣がいる環 彩羽…。その記憶を信じて妹ちゃんを探すんだね、この神浜市で。」

「はい!」

「うん、そっか、分かった…。アタシは大歓迎だよ。新しい仲間が増えるからね。」

「俺も歓迎するよ。新しく仲間ができるのは楽しいからね。」

「わたしもお客様が増えるし無理に止められないわぁ。」

 みたま先輩らしい、発言にクスリと笑ってしまう。

 

 

「オマエなぁ…。」

「うっふふ。」

「まっ、それじゃあ次に来るまで、チビスケはアタシが預かるよ。どうも、この町からは出たがらないみたいだからさ。」

「あい、ありがとうございます。」

「それじゃあ、いろはちゃん。」

「はい。」

「この子に名前を付けてあげてくれる?」

「名前?」

「チビスケや小さいキュウべえなんてかわいそうだろ、そう言うことだよ。」

「そぉ、だから、なにか分かりやすい。新しい名前をって思って。」

 いろはちゃんは、ばつが悪そうにしている。

 

 

「でも、私が…いいんですか?」

「えぇ、いろはちゃんにとってきっと、大事な存在だと思うから。」

「…それじゃあ、えっとキュウべえちゃん…。」

「あら、本当にそれでいいのぉ?」

「それじゃあえっと…。チィで、どうでしょうか?」

「ふふ、良いと思うわぁ。」

「モキュ‼」

 チビスケ、改めチィは名前が気に入ったのか嬉しそうに鳴いている。

 

 

「チビスケも気に入ったみたいだしな。」

「これから頼むな、チィ。」

「チィこれから一緒にういを探してくれる?」

「モキュキュ!(うん!一緒に頑張ろう!)」

「ふふっ、これからよろしくね!」

 そして、その日はお開きとなった。

 

 

 家への帰り道で。

「はぁ~、疲れた。」

「でも、いろはちゃんを助けられて良かったな。」

「…ああ。っともう家か。じゃあ、チィのこと頼んだぞももこ。」

「任しといて。じゃあお休み、しゅうた。」

「お休み、ももこ。」

 家の前でももこと別れ自分の家の柵を開け中に入る。

 

 

  俺の家は昔ながらの瓦屋根の平屋だ。4LDKでリビングとダイニングとキッチンが一纏めになった大き目な部屋に加え、七畳程の和室と八畳の部屋が三つだ。そこそこでかい家なのだ。父親は俺が小学校に上がる前に殉職した、父さんは警察官だった。本当だったら今は母さんと住んでる筈なのだが、とうの母親は俺が中学に上がる際に海外に旅に出ると言いどこかに消えた。母さんからの仕送りがあるが、幸か不幸かひょんなことから今の仕事に付いている。その仕事とは父さんと同じ警察官で、そして公安に入った。所属している部署は神浜市ウワサ魔女特別対策班だ、咲良さんもそこの班だ。あともう一人いるのだが、その話はまた今度にしよう。

 

 

 俺は自分の家の扉のドアノブに手を掛け思いっきり回し、ドアを開け中に入る。

「ただいま~。こころちゃん、まさら帰ったよ。」

 トタトタと足音がする。俺が靴を脱ぎ終わり正面を見ると、そこにはエプロン姿のこころちゃんの姿があった。

「柊断さん、おかえりなさい。今日は遅かったですね、ご飯もお風呂も準備出来てますよ。」

「ありがと、こころちゃん。まさらは?」

「リビングで柊断さんのことゲームして待ってますよ。ご飯も食べずに、各いう私も食べてませんが。」

 テヘっと笑うこころちゃんを見て癒されつつも、先程の答えを言う。

 

 

「じゃあ、ご飯にしようかな。」

「分かりました、早く中に入って下さい。」

中に入ると、ソファに深く座り込みゲームをしてるまさらが居た。

「おかえりなさい、柊断。遅かったわね、待ってたらお腹が空いたわ。」

「悪かったな、少し面倒ごとに首突っ込んでたんだよ。」

「知ってるわ、早く食べてしまいましょう。冷めてしまってはあの子に申し訳ないわ。」

「そうだな。こころちゃん早く食べよ。」

「はい、今お茶もって行きますから。」

 

 

 全員が席に座ると誰かが揃えた訳でもないのに。三人が声を揃えて…

「「「いただきます。」」」

 そう言っていた。こんな日常的な物に俺は喜びを感じていた。

 

 こんな生活を送るようになったのは、一ヶ月前のことだ。



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七話「邂逅する三人」

 どうも、失踪系投稿者のしぃです!
 色々遅れてスイマセン、今後は平日投稿が増えるこの作品ですのでどうかよろしくお願いします。


ーしゅうたー

 一か月前、俺は二人の少女と出会った。

 この時の俺は知らなかったのだ、この出会いが後に大きな影響を及ぼすなど。

 

 

ーももこー

 今日は月曜日、昨日の夜しゅうたからの電話で朝起きられないかもしれないから起こしに来てくれと頼まれた。

 私はお前の彼女でも、母親でもないと断ろうとしたが、何でも昨日だけで三体も魔女を狩ったらしく疲れが溜まってるらしい。

 私は渋々了承し、しゅうたの自宅を訪れていた。

 預かっている合鍵で鍵を開け、家の中に入る。

 

 

「入るぞ~」

 

 

 中から返事がないことから、まだ部屋で寝てるのだろう。

 時間も時間なので早く起こさないと自分も遅れてしまう、私はしゅうたの部屋に向かう。

 一階にあるのは、和室とリビングやダイニング更にはキッチンがくっ付いた大きな一部屋で、二階に三部屋の洋室。

 豪華な家にも見えるが、そこまででもなく内装はあまりなくシンプルだ。

 階段を上がると見えてくるのは三つの部屋。

 

 

 階段を上がって右手の奥にある部屋は物置で、いつもは少し埃を被った段ボールが積まれている。

 目の前にある部屋は、しゅうたのお母さんが使っていた部屋で今は誰も使っていない。

 最後に左手の奥にある部屋がしゅうたの部屋、リビングで寝ていないということはここに居る筈だ。

 

 

「お~いしゅうた、朝だぞおきろー」

 

 

 あまり大きな声を出すと近所迷惑になるので抑えめに声を出す。

 すると、部屋に置いてあるベットの布団がもぞもぞと動いた。

 

 

「……ももこか……あと一時間……」

 

 

「いや!流石に五分にしてくれ、アタシも遅刻するだろ」

 

 

 ベットに近づき豪快に布団を引っぺがす。

 

 

「うう~、眠い……けど起きないと学校に~」

 

 

「うだうだ言ってないで起きろ、朝飯も弁当も準備は終わってるんだから」

 

 

「サンキュー、よし……そろそろ起きるか」

 

 

 やっと目が覚めたのか、のそのそと動いて着替え始める……着替え始める!?

 

 

「しゅうた、アタシも居るんだからまだ脱ぐなよ!」

 

 

「別にいいだろ?減るもんじゃないし」

 

 

「減るよ!現にお前の羞恥心が減ってるよ!」

 

 

 まだ眠気が覚めてないのか、いきなり脱ぎだしたしゅうたを置いて私は部屋を出た。

 

 

ーしゅうたー

 朝はももこに起こされて、今はももこの家。

 仕事の所為で夜が遅い時や、疲れている時はこっちの家で朝飯や昼飯を用意してもらっている。

 

 

「すいません、いつもいつも」

 

 

「いいのよ、困っときはお互いさま。それにお互いそんなのを気にするほど、初々しい関係じゃないでしょう?」

 

 

「それもそうすっね」

 

 

 この人はももこの母で十咎(はるか)

 昔からお世話になっている人で、いつも頭が上がらない。

 いつもならももこの弟の二人も居るのだが、今日は先に出てしまったらしくももこと二人で食事を済ませる。

 

 

「そう言えば、最近は忙しそうだな。また何かあったのか?」

 

 

「全然、これと言って特筆することはなにも……でも最近は、大東区もヤバイらしい。何でも最近急に魔法少女が行方知らずになってるとか」

 

 

「そりゃあ大変だな……十七夜さんは大丈夫かな?」

 

 

「多分大丈夫だろう、あの人が負けるのは……なんだが想像できない」

 

 

 和泉十七夜(いずみかなぎ)、大東区のトップとも言われている魔法少女。

 何度か会ったこともあるし、先程話した件でも相談を受けたことがある。

 因みに年齢は十七。

 ある種のカリスマ性を持った人で、周囲の人間からは尊敬の念を多く寄せられている。

 魔法少女としてもベテランで、以前実際に戦ったことはあるが二度と戦いたくないと思う相手の一人だ。

 だが、最近は神浜に魔女が増えた所為か関係は軟化してきた。

 

 

 その前は、縄張り問題について西代表のやちよさんと東代表の十七夜さんと特別席の俺で話したこともある。

 

 

「だな、ああ!ヤバイぞしゅうたそろそろ出ないと遅刻確定だ!」

 

 

「マジか、すいません遥さんもう出ます。朝飯と弁当ありがとうございます」

 

 

「いえいえ~どういたしまして」

 

 

 緊張の中にある空間さえも和ませるような緩い声が聞こえてくる。

 相変わらず、四十を超えてるとは思えないほどの愛らしさを持つ母親だ。

 

 

「じゃあ、アタシも行ってくるから。家のことはよろしく」

 

 

「もう、言われなくても分かってるわよ」

 

 

 その可愛らしさに少し緩みそうになる感情を抑えて学校に向かった。

 

 

ーももこー

 今日の授業で一番面倒なのは体育だ。

 何でも、今日限って三年との合同になったらしい。

 そういうことはもっと早くいって欲しい、なんたって三年には……

 

 

「しゅうたーー‼」

 

 

「ぐへっ?!いきなり抱き着くな鶴乃、腰の骨が逝くかと思ったわ!」

 

 

 つるのが居るからだ……

 由比鶴乃(ゆいつるの)、神浜市立大附属学校三年生にして私やしゅうたと同じ魔法少女。

 昔はチームを組んでいたこともあるが、今は別々だ。

 

 

「久しぶり~、昨日ぶりくらい?」

 

 

「だろうね昨日も会ったからね!……たくっ、何でよりにもよって鶴乃のクラスなんだよ。もっと他にクラスあるだろ」

 

 

「いいじゃん、ももことしゅうたと一緒に体育出来るのは私的に嬉しいよ!フンフン!」

 

 

 鼻息荒く言うつるのに、私も苦笑しながら話しかける。

 

 

「悪いつるの、今日のしゅうたあんま調子良くないからさその辺にしといてやってくれ」

 

 

「ええーー!?そうだったの?だったら早く言ってよ、それだったら何もしなかったのに」

 

 

「何か言う前にお前が突っ込んで来たんだろうが……まぁいい。俺は今日あんま力出せないから、隅で大人しくしてるよ」

 

 

 体育の種目はサッカーとテニス、女子がテニスで男子がサッカーだ。

 しゅうたは運動は得意な方だが、昨日の疲れが祟って今日はディフェンスに落ち着いている。

 いつもだったらオフェンスの方で、ガンガン点を取りに行くのだが、今回はディフェンスで敵のボールをギリギリの所でカットして仲間に渡すという程度で済んでいる。

 ……本当に何でもかんでも万能に出来るから凄い。

 そして、今度は私とつるのの番が来た。

 

 

 何でも、今回は上級生とペアを組まないといけないのでつるのと組んでいる。

 まぁ、おおよそのことはなんとなく予想で出来ている。 

 

 

「よし!頑張ろうねももこ!」

 

 

「あいよ、よろしくねつるの」

 

 

 そして、この日私のラケットにボールが触れることはなかった。

 

 

ーしゅうたー

 昼休み、いつも通りの場所に行くと、ももこの目の前で土下座をする鶴乃の姿が見えた。

 

 

「……レナ、これはどういう状況だ?」

 

 

「レナに聞かないでよ、何でも体育の時間につるのがももこにボール触らせず全試合済ませちゃったらしいわ」

 レナの話を聞いて俺は頭を抱えた。

 また、鶴乃がやらかしてしまったらしい。

 

 

「ごめん!本当にごめん、ももこ」

 

 

「だから、そんな謝らなくていいって。早く食べないと、飯食う時間も無くなるぞ」

 

 

「も゛も゛ご~ありがどう゛~」

 鶴乃がももこに泣きながら抱き着く……到底上級生とは思えない光景だ。

 

 

「何だか、ももこちゃんの方がお姉さんみたいだね……」

 

 

「かえで、それは言うな……」

 コントのやり取りをしながらも弁当を食べ始める。

 

 

 さっきのやらかしたってのは、簡単に説明するとこうだ。

 初見の方は信じられないかもしれないが、鶴乃は天才だ。

 学年トップの頭脳を持っていて戦闘時の機転も良い、運動能力は素の魔法少女じゃない状態でも余裕で男子に勝てる程に。

 まぁ、精神年齢だけで言ったらももこの方が断然年上に見えるが。

 あれでも、気が利くし家事も出来る。

 

 

 おまけに顔やスタイルも悪くない、美少女の部類に入るのだが如何せん変な子印象が付きやすい為、未だに恋人は出来ていない。

 

 

「……あれ?なんだか今日は味付けが少し濃いような……」

 

 

「アタシが作ったんだよ、しゅうたはそんな味付けの方が好きだろ?」

 

 

「流ッ石ももこ分かってる」

 

 

「ねぇねぇしゅうた、私の回鍋肉食べてみてよ。今回のは少しアレンジして出来た自信作なんだから!」

 鶴乃が笑顔で俺の弁当箱に回鍋肉を乗っけてくる。

 ……すいません、なんだか色が物凄く赤いんですが。

 

 

「今回はね!なんと、豆板醤を多めに入れてみたの!」

 

 

「……多いってレベルじゃなくない?」

 

 

「う、うん、真っ赤だよこれ」

 

 

「しゅうた、流石に今回のは止めといた方が良いんじゃ……って!もう食べてる」

 ももこに何か言われたが、俺は既に食べ始めている。

 

 

 中華系の料理独独の味の濃さが、白米にベストマッチしている。

 辛さは感じるが、その分ご飯をかきこむので何とか辛さは相殺できた。

 その味は――

 

 

「ど、どう?」

 

 

「う~ん。味は良いし、辛さもアクセントになって良い感じ……良い感じなんだが。やっぱり五十点だな」

 

 

「ええ~~‼う~~……折角アレンジして頑張ったのに……」

 明らかに落ち込んだ鶴乃を、何とか励ます。

 

 

「大丈夫だ鶴乃、俺はお前の作る飯好きだから。……何と言うか、家庭の温かさがある感じがして良いな」

 

 

「ホント!?やったーー!ありがとうしゅうた、そうやって言ってくれるのはしゅうただけだよ~」

 

 

「ああはいはい、引っ付くな」

 鶴乃が引っ付いて来た瞬間、スマホが鳴る。

 

 

「……今日はオフって聞いたんだけどな~……しゃあないか。鶴乃悪いけど、退いてくれ仕事の電話だ」

 鶴乃にそう言うと、すぐに俺から離れてご飯に戻った。

 

 

『もしもし、藍川です。どうしました咲良さん?』

 

 

『こんな時間にゴメンね柊断君、急ぎの件なの』

 

 

『はぁ~、どうぞ何ですか?』

 

 

『ええと、魔女の結界内で魔女相手に負傷者一人を背負いながら戦ってる魔法少女が居てね。助けに行ってほしいの』

 

 

『いつも思うんですけど、どうやってその情報手に入れてるんです?幾ら魔術師だからって万能すぎません?』

 

 

『君たち魔法少女だって同じようなものよ、さぁお仕事お仕事!』

 

 

『分かりました、スマホに位置情報送っといて下さい』

 

 

『オッケー、任せといて』

 

 

 通話を切った俺はため息を吐きながら目の前に居る面々を見る。

 

 

「てな感じだ、後は頼んだももこ。授業に遅れそうだったら、なんとか誤魔化しといてくれ。じゃあ、悪いけど行ってくる」

 

 

「ああ、分かった。気を付けろよ?」

 

 

「了解」

 後のことをももこに任せて、学校の隅に行き魔法少女に変身してからスマホで位置情報を確認する。

 

 

「案外近いんだな……これだったら午後の授業にギリギリ間に合うかも!」

 俺は胸に少しの期待を持って、目的の場所に向かって飛び立った。

 

 

ーまさらー

 絶体絶命とはこういう状況のことを言うのだろう。

 魔女の結界を見つけてグリーフシード目当てで入ったものの、魔女も魔女の手下も段違いの強さで瞬く間に囲まれてしまった。

 魔女に頭の部分の浅くだが斬られてしまってこころは負傷、私もこころを背負いながら戦ってるのだが、体中に目に見えて切り傷が見え始めた。

 魔女の容姿は犬に近く、前足の爪が全て鎌に変わっている。

 おまけに尻尾は大鎌と、今まで見た魔女の中ではまともな部類の容姿だ。

 

 

 手下もそれに似て犬に近い容姿なのは違いないが、こちらは体中から棘が出できているためハリネズミのようにも見える。

 切り傷が多いのもこれの所為だろう。

 避けられたと思っても掠っていたりする所為で、中々に体力を削られてしまう。

 だが、そんなところに一人の魔法少女が現れた。

 

 

「君たち大丈夫?背負われてる子は……酷い怪我だな。待ってて今治すから」

 そう言って、いきなり現れた魔法少女は敵に背を向けて私とこころの方を向く。

 

 

「後ろ!」

 こころの声が響いた。

 それも当然だ、その人の後ろには既に魔女の手下が……

 

 

「大丈夫、こんなやつに上げる程俺の命は安くない」

 そう言って、体を手下の方に向けることなくこころの治療を始めた。

 

 

「破壊」

 その言葉が響いた瞬間、周りに居た手下たちが、内側から破裂したかのように爆発した。

 

 

「どういうこと……?」

 私の口から疑問が漏れる。

 彼女が何もしていないのは明らかだ、一体何が起きたのだろうか。

 

 

 ふと彼女の目を見ると、何故か青く光り輝いていた。

 私は、その光を食い入るように見つめる。

 上手くは言えないが、少し興味を感じていた。

 

 

「まぁ、説明は後でね……さぁてその子の治療も終わったし魔女を片付けますか」

 首を後ろに向けると、こころの傷がまるで何事もなかったように無くなっていた。

 彼女は何かが可笑しい、そう感じて質問をする。

 

 

(こんなに誰かに興味を持ったのはこの子(こころ)以外では初めてね……)

「何故私たちを助けたの?この子を助けたところで何のメリットもないじゃない」

 

 

「一様、仕事だからね。それと、俺がこういうことをするのはただのエゴだよ」

 私の質問になんてことないように答えた彼女は、目の前に居る魔女に目を向けた。

 

 

「悪いけど、急いでるんだ。早速で悪いが……死んでくれ」

 また目が青く光る、次の間には魔力で作った刀を持って魔女の懐まで潜り込んでいた。

 

 

 そして、

 

 

「―――――――!!」

 刀による一閃で魔女の首は斬れ、結界も直ぐに霧散した。

 

 

「よし!お仕事完了、ええーっと君たちの名前聞いていい?」

 私はこころに背中から降りるように促して、彼女の質問に答えた。

 

 

「粟根心です。さっきは怪我の件ありがとうございました」

 

 

「加賀見真更」

 

 

「あっ!悪いね、変身解く」

 彼女は私たちの目の前で変身を解く、私とこころもそれに合わせて変身を解いた。

 そして、変身を解いた後目の前に現れたのは……彼女ではなく……()だった。

 

 

ーしゅうたー

 そりゃあ、流石に驚くよな。

 だってさっきまで女だと思ってたやつが男だったらそれはビックリする。

 酷い時は変態呼ばわりされたこともある……まぁレナになんだが。

 

 

「俺の名前は藍川柊断。あ~~、言っておくが決して変態じゃない、そこだけは理解してくれ。……ヤバッ!?時間が……これ俺の電話番号とメールアドレス、何か知りたいこととか聞きたいことがあったら連絡して。基本的に出れるようにしとくから。あと、これ上げる」

 そう言ってグリーフシードを投げ渡し、俺はもう一度変身して学校に戻る。

 銀髪と言うか白銀色のまさらって子はあんま驚いてなかった感じはした、茶色い髪のこころって子は……顔が固まっていたので相当に驚いていたのだろう。

 

 

 何だが少し悪いことをした気分だった。

 数分もしない内に学校に戻れた、魔女の結界で彼女たちを探した分少し時間を食ったが何とか間に合ったようだ。

 校舎の隅に降りて変身を解き、急いで教室に向かう。

 ベルが鳴ったと同時に教室に着き、肩で息をしながら席に着いた。

 

 

「だ、大丈夫か?ギリギリ間に合ったな」

 

 

「まぁ、何とかな……数学か~。……なぁももこ」

 俺が続く言葉を言おうとすると、ももこがため息を吐きながら続く言葉を言った。

 

 

「ノートは後で見せてやるから寝てろ」

 

 

「助かる……ありがとなもも……」

 言葉を言いきる前に、俺の意識はまどろみの中に落ちていった。

 

 

ーももこー

 結局帰って来たしゅうたは、疲れもあってか授業が始まってすぐに寝てしまった。

 少し前までは注意していた先生も、最近は注意をしない。

 しゅうたは基本的に授業態度は良いのだ、だが今回のように突発的な行動が稀にあるため、教師陣はなにか家庭の事情があるのだろと察して何も言わなくなった。

 まあ、実際に家庭の事情ではあるのだが、しゅうたの場合は少し違う。

 

 

 隣で気持ちよさそうに寝てる幼馴染を見て、チョップでもかましてやろうかと考えたが止めて優しく頭を撫でた。

 

 

「へへへ~、えへへへ~~」

 先程まで緩んでいた顔が更に緩む、何と言うか……寝ている時のしゅうたは無性に母性本能をくすぐられる。

 少しだけ、あと少しだけと三分程しゅうたの頭を撫ででいると、大量の視線が自分に向けられていることに気付いた。

 

 

「ゴホン。十咎さん、授業中にそういう行動は控えて下さい」

 

 

「す、すいません、以後気を付けます」

 注目されていたことで少し赤くなった顔を何とか隠し、隣で呑気に寝ている幼馴染に恨みがましい視線を送る。

 当の本人は熟睡しており、結局六時間目まで起きなかった。

 

 

ーしゅうたー

 翌日、俺はある喫茶店に呼び出されていた。

 こころってこからメールが来てて、何でも昨日のお礼がしたいだとか。

 あまりお礼や謝礼などは求めてないが、呼ばれたからには行かなければいけない。

 念の為に、ももこにも付いて来てもらい、目的の場所に向かう。

 

 

 今日は比較的暖かい為、喫茶店ではテラスも開けているらしい。

 よく見ると、そのテラス席には昨日の二人が居た。

 

 

「あっ、こっちですこっち」

 茶髪の……確か粟根こころちゃんだっけか。

 もう一人の子は、加賀見まさらちゃんだったかな。

 

 

「待たせてごめん、それとこっちに居るのは十咎ももこ。女の子同士の方が話しやすいかなと思って」

 

 

「アタシは十咎ももこ、ももこでいいよ」

 二人して挨拶を済ませると席に着く。

 

 

「こちらこそどうも、今日は急に呼び立ててスイマセン。何でもまさらがあなたに会いたいと言ったので」

 俺はまさらと呼ばれている女の子の方を見る。

 

 

「藍川柊断、二月三日生まれの十五歳。趣味は読書と料理、特技はピアノ。魔法少女として活動を始めたのは十二歳の頃で、願った内容は「いつまでも、平和で幸せな世界が続きますように」……これでいいかしら?」

 恐ろしいほどに正確な情報、おおよそみたま先輩のでも聞いたのだろう。

 

 

「よくそこまで聞けたね、みたま先輩にどれくらいお代取られたの?」

 

 

「お代は取られてないわ、お得意様らしいから」

 贔屓ではない、本当によくはしてもらってるのだろう。

 

 

「はぁ~、みたま先輩恨みますよ……。それで、それ以上俺に何を聞きに来たの?」

 ため息を吐きながら要件を聞く。

 

 

「あなたの目、それについて聞きたいの。タダでは無理なら何か渡すは」

 遊び半分か……それとも本気か。

 これもでも、遊び半分で俺の魔眼について聞いてきたやつは居た。

 

 

 だが、その殆どを俺は門前払いしている。

 今回はどうだ?

 

 

「本当に、聞く覚悟があるのか?」

 今までの明るい声とは明らかに違う、低くドスの効いた声。

 こころちゃんの方は少し震えている、まさらちゃんの方は……微動だにしてない……か。

 

 

「よし、じゃあ話そうか。魔眼について」

 そして、俺は魔眼について話し始めた。

 

 

 魔眼、悪魔との契約によって真に力を開放することの出来る能力。

 本来は悪魔の所有している筈である魔眼を俺みたいな人間が保有してるのは訳がある。

 その訳とは、簡単に言うと遺伝だ。

 先祖が悪魔と契約し、その血を受け継いだ者にだけ魔眼は与えられる。

 与えられた魔眼はまだ使えず、十歳を超えると契約をする為の悪魔が現れ契約をするかしないか決めるのだ。

 

 

 魔眼を契約するかしないかは自由で、契約した場合はそれ相応の使命を課せられるらしい。

 らしい、というのは憶測だ。

 なにしろ、俺の家系はそう言うしきたりはなく自由がもっとう。

 そして俺は十歳の時、悪魔に……会わなかった。

 結局の所俺が悪魔に会うことはなく、ある一件を境に魔眼が目覚めて今がある。

 

 

 魔眼の使用方法は簡単で、ただ集中して使いたい魔眼をたぐり寄せるだけ。

 使用するには魔力が必要であり、魔力が無い人は脳に数倍の負担を掛けて魔眼を使わなければいけない。

 因みに、脳に掛かる負担は魔力を使ってても凄まじいもので魔力なしでやろうと思うと頭がパンクする。

 とか言う俺も、魔法少女になる前は魔力なんてなかったけど。

 

 

「――という感じ、分かった」

 

 

「な、なんとか」

 

 

「分かったわ」

 こころちゃんはまだ上手く理解できてないが、まさらちゃんはもう理解したらしい。

 

 

「よし、これで話はお終い。他に何か聞きたいことは?」

 きっと他には何もないだろうと思ったが、まさらちゃんが手を上げる。

 

 

「どうぞまさらちゃん」

 

 

「まさらでいいわ、あなたにそう呼ばれるのはむず痒いから。あと一つ、()()()()()()()()()()()()()()()

 うん?聞き間違いか。

 

 

「ごめん、今なんて言った?」

 

 

「あなたの家に住んでいいか聞いたの?」

 ヤバイ、頭が痛くなってきた。

 

 

「いやいや、それは流石にダメだろまさらちゃん。親御さんも納得――」

 

 

「もうしてるわ」

 ももこの言葉も虚しく、説得は失敗。

 こころちゃんに助け舟を送ってもらおうとしたが……

 

 

「スイマセン、まさらがこうなったら私ではもうどうにも……でも!大丈夫です、私も一緒に住んで見張りますから」

 

 

「………………………」

 思考が完全にフリーズした。

 もう、どうすればいいんだ。

 

 

 ももこに救援を要請するが、特に何も起こらず。

 結局、翌日から二人が内に越してきた。

 

  -----------

 

「どうしたんですか?柊断さん?」

 何時の間にお風呂に入ったのか、風呂上がりで少し甘い香りを柄漂わせながらこころちゃんがやってくる。

 

 

「二人と会った時のこと思い出してた、もう一ヶ月経ったと思うと早いもんだね」

 

 

「そうですね……色々ありましたから。あっ、お風呂空いたので冷めないうちにどうぞ」

 

 

「ありがと、こころちゃんも早く寝なよ?」

 

 

「はい、お休みなさい」

 

 

「お休み」

 こころちゃんと言葉を交わして風呂場に向かう。

 今日も疲れたのでお風呂が楽しみだ。

 

 

 案外、俺たちの物語は序章に過ぎないのかもしれない。

 

 

 




 今、使える魔眼

 末来視の魔眼・直死の魔眼・千里眼・催眠の魔眼・心転身の魔眼・静止の魔眼
 ・破壊の魔眼・生と死の魔眼

 以上の八つです。
 殆どが名前通りの能力ですが、生と死の魔眼は分かりづらいので解説します。


 生と死の魔眼は、基本的に他者や自分の治癒に使います。
 致死に至ってなければ、大抵の怪我は治せます。
 ただし、強力なためデメリットがあり。

 契約した時点で、契約者から「死」という概念が奪われて死ぬことが出来なくなります。
 しゅうたくんの場合は、完璧な契約はしてないので首を刎ねられたり、脳天をぶっ刺されたるすると死にます。

 以上解説でした。


 今回は解説が多くなったお話でしたが、次回からは本編の物語が投稿されますのでお楽しみに。


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ウワサの章
八話「動き出すウワサ」


 お待たせしました!

 テスト期間中で中々出せませんでした。


ーしゅうたー

 朝七時半過ぎ、寝ぼけた頭を覚ます為洗面台で顔を洗う。

 洗った後はリビングに入って朝の挨拶を済ませる。

 

 

「おはよ、二人とも」

 

 

「おはようございます柊断さん」

 

 

「大丈夫、死んだ魚の様な眼してるわよ」

 結構な言い方だなおい!

 

 

「お前!俺は家主でお前は一様居候だぞ。もっとオブラートに包んだ言い方をしてくれても」

 

 

「……?眼がお腐りでございますよ?」

 

 

「もういいよ」

 

 

 朝恒例のコントをやっていると、こころちゃんが朝飯を持って来る。

 

 

「まあまあ、早く食べて学校に行きましょう?お昼のお弁当も作ってありますし」

 

 

「ありがと」

 

 

「眠そうだけど、昨日何かあったの?」

 

 

 俺は昨日あったことを簡単に思い出す。

 昨日の夜十一時頃にももこから愚痴電話に付き合わされたのだ。

 最近またレナとかえでが喧嘩したらしい、どうりで学校でも会わなかったわけだ。

 それだけならいつものことなのだが、何でも数日経っても仲直りしないらしく、ももこのお節介がついに発動。

 大抵レナに原因があって、ちょっとしたらすぐに謝りに来る。

 

 

 だが、今回は少し違う。

 

 

「二人とも『絶交』ルールのウワサは聞いた事あるか?」

 

 

「確か、仲違いして『絶交』って言った後に、仲直りの為に謝ると化け物に捕まって……」

 

 

「無限に階段掃除をさせられる、だったかしら」

 どうやら二人とも少しはこのことを知っているらしい。

 

 

「だいたいは合ってるよ……どっちか片方は消えてしまう。そんなウワサが最近神浜市で流行ってる、実際に被害者が何名か出てた」

 

 

「そんな……」

 

 

「で!ここからが重要だ、あいつらは『絶交』って言ったらしい」

 今回の事件、中々に厄介なものになりそうだ。

 

 

ーいろはー

 夕暮れのゲームセンター、私はももこさんの仲直り作戦を手伝うためにレナちゃんが居るであろうこの場所に来ていた。

 ゲームセンターに偏見のようなものを持っていたが……

 

 

「ゲームセンターって、もっと怖い人ばっかりなのかと思ってたけど普通の人ばっかりなんだね……。でも、なんか圧倒されちゃう……」

 少し辺りを見渡して、レナちゃんを探す。

 人が多いから見つけにくいと思ったけど。

 

 

「あの子……もしかして」

 

 

「あー、もう!この台おかしいんじゃない!?今のどう考えてもBADじゃなくてGREATでしょ!判定狂ってんじゃないの!?」

 怒ってる。

 ゲームに怒る人って、案外近くに居るってことを今回知れた。

 

 

(なんか怒ってるけど。今、行かないと……ダメだよね……)

「ふぅ……よしっ!」

 近づいて声を掛ける。

 

 

「あぁ?誰?って、アンタ、あの時、レナを止めようとしたヤツ!……何の用……?ももこに言われてきたんならほっといてくれない?」

 うわぁ、やっぱり私でも警戒されちゃってるなぁ……

 

 

「あの、そうじゃなくて……」

 

 

「じゃあなによ!」

 

 

「ひっ……えっと……。レナちゃんも史乃沙優希(ふみのさゆき)が好きだって聞いたから話そうって……」

 嘘はあまり言いたくないけど、二人の為に……頑張ろう

 

 

「えっ、アンタ知ってるの!?歴史と浪漫の刀剣愛ドル!史乃沙優希!」

 凄い、ちゃんとレナちゃんが喰いついた。

 

 

(あ、そういいの……なんだ……)

「う、うん、それでね。新西区の建設放棄地でねゲリライベントがあるんだって。良ければ……一緒に行かない……?」

 

 

「もっちろん!で、アンタはちゃんと刀剣サイリウム持ってきた!?」

 

 

「と……えっ……。…………うん‼」

 少しぎこちない笑顔になっちゃったけど、どうかな。

 

 

「んなもんないわよ!」

 

 

「ぇええ!?」

 

 

「やっぱ、ももこからなにか入れ知恵されたんでしょ。人の好きなもので釣ろうなんて良い根性してるわね。サイテー。マジふざけんじゃないわよレナ絶対行かないからね」

 

 

「うぅ……あのね、でも……」

 

 

「なに、アンタ今度はレナと本気でやりあおうってワケ?」

 

 

「ごめんなさい……」

 何だか、大変なことになっちゃった。

 どうしよう、どうしよう……。

 

 

「謝るぐらいなら、最初から言うな、バカ!」

 

 

「うぅ……」

 私が何を言おうか迷っていると、後ろから声が聞こえた。

 

 

「レナちゃん!」

 

 

「もう、今度は誰よ!――っ!?あんた……かえで……」

 

 

「かえでちゃん……?どうしてここに……」

 かえでちゃんが私たちの前にやって来ていた。

 

 

 私たちは知らなかったのだ、ウワサの本当の恐ろしさを。

 

 

ーしゅうたー

 千里眼を発動させながら、町を奔走する。

 こころちゃんとまさらには連絡を入れてあるため、今回は少し付き合って貰うことになりそうだ。

 踊り子の様な少し色っぽい衣装なのは、しょうがないとして流石に恥ずかしいと思う時はある。

 今なんて、パンツを見られていないかが心配だ。

 

 

 そんな余計なことを考えていると、電話が鳴った。

 ウワサ関係だと……咲良さんからか?

 それとも……

 

 

『私よ』

 

 

『……もしかして、世話になってる感じですか?』

 

 

『そんなところね、今建設放棄地に居るの至急向かって頂戴』

 

 

『了解です、それまではよろしくお願いします』

 

 

『……ええ』

 短い返事のあと電話が切れる。

 少しため息を吐いて、俺は空を仰いだ。

 

 

 ウワサが動き出した、本当の戦いはここから始まるのかもしれない。




 少し飛ばし気味ですがこんな感じで進んで行きます。


 次回もお楽しみに!

 誤字脱字などがありましたらご報告お願いします!


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九話「死なせないし、泣かせない」

 お待たせです!


ーしゅうたー

 やちよさんとの電話を終えた後、まさらやこころちゃんと合流し建設放棄地に向かっている。

 焦っている、今回の事件はもっと早急に対処すべきだった。

 魔法少女の死は日常茶飯事。

 いつ死んでも可笑しくないのが、魔法少女だ。

 だが、俺はそうは思ってない。

 

 

 死なせないし、悲しませない。

 もう誰も……

 

 

「柊断、どうかした?」

 

 

「何かありましたか?」

 

 

「いいや、何でもない。急ごう、手遅れになる前に」

 今は取りあえずやちよさんやももこを信じるしかない。

 出来る限り急がなければ。

 

ーいろはー 

 やちよさんにかえでちゃんの相手をしてもらい、私とももこさんはレナちゃんを追う。

 だが、ウワサの結界は魔女とは少し雰囲気が違い気味が悪い。

 

 

「ほんと、何なんだこの結界……。噂が現実になるって信じた所為かかなり異質に見えてくるな……」

 ももこさんが言葉を言い終えた瞬間、凄まじい魔力を感じた。

 

 

「――っ!?いろはちゃん、今の魔力感じた!?」

 

 

「はい……強いです……。さっきの使い魔なんかより全然強いです!」

 格が違う、何だが全然別物のように感じるレベルに。

 

 

「おいおい、まさか魔女のお出ましか……?ともなると、余計に理解不能だな……」

 

 

「はい……つまり、階層の無い結界……ですよね……?」

 

 

「つーことになるよな……」

 

 

 魔女の結界には階層……ようはいくつかの層がある。

 魔女に近づけば近づくほど、層に深く潜っていくことになっていく。

 原理は良くは分からないが、そういうことになっているのだ。

 

 

「――っ!?ももこさん、来ます!フゥっ!」

 

 

「なんちゅう、衝撃だ……」

 本当に、比べ物にならない強さだ。

 ただの衝撃波だけで、軽く意識が飛びかけるなんて。

 

 

「|ラ↑ン↓ラ↑ンラ/‼|」

 ……不味い、レナちゃんが魔女の所に!

 

 

「ももこさん、魔女の所にレナちゃんが!」

 

 

「|ラ↑ン↓ラ↑ンラ/‼|」

 

 

「くっ、ぁぁぁ……」

 あれは……もしかしてレナちゃんのことをかえでちゃんみたいに洗脳する気なの?

 

 

「ちっ、かえでと同じように。レナまで洗脳しようってか……?させるかよ……させて、たまるかああああああ!」

 次の瞬間には、ももこさんは魔女に攻撃を仕掛けに行っていた。

 

ーももこー

 がむしゃらに攻撃をする。

 何とかレナを助けないと!

 

 

「せやぁあああ!」

 振り上げた大剣は魔女に当たるものの、全くもって怯む様子はなく逆に鐘を鳴らして出す音の攻撃を喰らってしまう。

 

 

「くっ!いろはちゃん!サポートお願い!」

 

 

「はい!」

 いろはちゃんにサポートを頼んだはいいが、これからどうすればいいんだ……

 攻撃が通ってる気がしない、もしかして力が足りないのか?

 

 

「だったら、これでぇえええ‼‼」

 今度は、飛んで上空から回転を加えて斬撃を繰り出す。

 だが、これもダメージが通った様子はなくまたしても相手の攻撃をもろに喰らってしまう。

 

 

「づぅうう!……くそっ、なんなんだよ……。攻撃が通ってる感じがしない……」

 

 

「苦戦してるみたいね」

 

 

「やちよさん!」

 やちよさんがここに居るってことは、かえでは?

 

 

「かえではどうしたんだ!?」

 

 

「しばらく眠ってもらってるわ」

 良かった……でも、まだ安心はできない。

 

 

「そっか……ありがとう」

 

 

「あら、ずいぶん素直なのね」

 こういうところは、変わっちまったのかねぇ。

 

 

「感謝するべき時は、誰だろうとちゃんとするさ。それで、あの魔女……そうやって倒せばいいんだ?」

 

 

「そんなの、分からないわよ」

 へっ?

 い、今、何て言ったんだ?

 

 

「っ、はあ!?噂を調べたりするのはアンタの専売特許な筈だろう!?」

 

 

「『神浜うわさファイル』だって、そんな万能じゃないわ。解決されたこともないのに、うわさがつくわけないでしょ。このうわさの続きはね、私たちで新しく記すしかないの」

 ああ、もう。

 何で、こういう時にアイツは居ないんだよ!

 

 

「くぅぅ、役に立たない」

 

 

「ようやく状況が掴めたからって簡単に人を頼ろうとしないで、また私の金魚の糞になるつもり?甘えん坊のももこちゃん」

 

 

「か、過去を蒸し返すなぁっ!」

 

 

「|ラ↑ン↓ラ↑ンラ/‼|」

 

 

「は……あなたの……しもべに……」

 

 

「いけない……急がないと……レナちゃんが……」

 

 

「|ラ↑ン↓ラ↑ンラ/‼|」

 

 

「ックゥゥゥアアアアア‼」

 

 

「ももこさん、やちよさん!このままじゃ、レナちゃんが!」

 そうだ、こんなところで言い争ってる場合じゃないんだ。

 

 

「えぇ、分かってるわ。だけど、ここからは本当に無策よ」

 

 

「ただ、3人の力で押していけば、気絶くらいは狙えるかもしれない」

 

 

「そんなの、希望的観測でしかないわ」

 やっぱり、この人は空気を壊す事しか言えないのか。

 でも、今はそんな希望的観測にすがるしかない。

 

 

「希望が微塵もないよりマシだよ。おし、いろはちゃん!」

 

 

「ちょっと待った‼3人じゃなくて4人だよ!」

 ……待ってたぞ、アタシのヒーロー。

 

ーしゅうたー

 ももこたちの目の前に着地する。

 今回はいろはちゃんも居るのか……こころちゃんやまさらをどうしたかって?

 そんなの雑魚の露払いに行かせたに決まってるじゃないか。

 あの二人にいきなり大本のウワサを相手させるのはキツイと思ったから、小物を任せたって訳だ。

 

 

「しゅうた、遅かったわね」

 

 

「いやぁ、道に迷っちゃって……アイツがウワサか……。迫力あるな~」

 

 

「ナイスタイミングしゅうた!いろはちゃん、アタシとやちよさんとしゅうたで前に出る。だから、後方でサポートして!」

 

 

「分かりました!援護射撃なら任せて下さい!ひゃっ‼」 

 いろはちゃんが居る場所の地面から、不自然に植物のツタが伸びてくる。

 嘘だろ、もう目が覚めたってのか……

 

 

「えっ、今の攻撃って……」

 

 

「かえで……」

 

 

「嘘でしょ、もう目覚めたっていうの!?」

 

 

「階段さんの邪魔は許さない……」

 

 

「この身は階段さんのもの……」

 

 

「――っ!?レナまで……」

 

 

「間に合わなかった……」

 結構不味い状況なのが、最高に不味い状況になったな。

 

 

「ももこ……アンタはもうレナたちのリーダーじゃない」

 

 

「ごめんね、ももこちゃん。階段さんの方が魅力的なの……」

 

 

「くっ、何が守ってやるだ……何も出来てないじゃないか……。やちよさんの言う通りだ……、個人的な感情で噂を楽観視してこんな結果を招いた……。リーダー失格だよ、まったく。二人とも、アタシも謝るから目を覚ましてくれ」

 

 

「目を覚ませ?何を甘いこと言ってるの」

 

 

「やちよさん……」

 少し言い方に問題があるが、今はやちよさんの言い分が正しい。

 

 

「やちよさん……でもアタシは、コイツらを守らないと……」

 

 

「傷つけないことは守ることと同義じゃない、それぐらいわかるでしょ。あなたは仲間を傷つけることで自分が傷つきたくないだけよ」

 ……前言撤回だ。

 言い方をもう少し改めた方が良い。

 

 

「でも、そんな簡単にできないだろ仲間を傷つけるなんて……!」

 

 

「あなたに出来ないのなら私がやるわ。なにかあった時は、私をせめな――」

(アンタにそんなことさせる訳ないだろ)

 ここはしょうがないけど、アイツらに頼むしかない。

 

 

「やちよさん、ここは任せて下さい……スーハ~……」

 息を整えて、大声を上げる準備をする。

 そして、

 

 

「まさらーー‼‼こころちゃーーん‼‼」

 

 

 あんまりやらせたくないけど……ここで時間を潰す訳にはいかない。

 ももこもあの二人なら、気兼ねなく任せられるだろう。

 叫んでから数秒もしない内に、背後から声が聞こえた。

 

 

「何かしら?」

 

 

「うわっ!びっくりした~……それ、もうやるなって言ったよな?」

 まさらの固有魔法は良く分からないが、動いてる時や攻撃時に自身を透明化することが出来る。

 それのお陰で気配もなく、俺の背後を取れるのだが……如何せん刺激が強すぎるので注意したことがあった。

 

 

 まぁ、本人はこの調子で今回もやらかしてくれたわけだが。

 

 

「あなたの背後に這いよる混沌……と言った感じかしら……?」

 あの~、某神話生物さんが出てくるアニメの真似は止めてもらって良いですか?

 

 

「いや、普通に背後にカオスがいたら嫌だから!……じゃなくてっ!あの二人の相手をしてもらいたいんだが」

 

 

「レナにかえでね……分かったわ」

 

 

「出来るだけ怪我はさせずに頼む」

 

 

「……善処するわ。こころ行くわよ、合わせて」

 

 

「ちょ、ちょっと待ってよまさら~。柊断さん、あの二人を気絶に持って行けばいいんですよね?」

 

 

「そおいうこと、悪いけど小物どもの相手も引き続き頼むけどいい?」

 

 

「大丈夫です!最近は柊断さんに鍛えて貰ってますから♪」

 何だか、こころちゃんが偉くご機嫌に見えるな……気のせいか?

 

 

「ごめん、こころちゃんにまさらちゃん。アタシの役目押し付けちゃって……」

 

 

 少し引きずってるか……無理もないな。

 仲間があんな状態になったら、リーダーと言う手前嫌でも責任を感じてしまう。

 違うか、ももこがももこだからこんな状態になっちまったのか。

 ……いっちょ、頑張りますかね。

 

 

「ももこ、心配すんな。アイツなら上手くやってくれるし……俺が付いてる」

 俺が誰かの頭を撫でるなんて……偶にはこういうのもいいか。

 ももこの頭を優しく撫でてから、敵の方に向かっていく。

 

 

「時間を稼ぐから、その間に攻略の方法を見つけてくれ」

 魔力で双剣を編む。

 刀身は50㎝程で、持ち手も10㎝ほどに抑える。

 

 

「さぁて、俺の妹分たちを良いように使ってくれた借り。キッチリと返させてもらうぜ、ウワサさんよ‼」

 末来視の魔眼を起動し敵の懐に突っ込む。

 

 

 これが、俺にとって初のウワサとの戦いになった。




 次回もお楽しみに!

 誤字脱字などがありましたらご報告お願いします!


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