仮面ライダーエグゼイド Fatal Death Game SAO(停止中) (パラドファン)
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ホロウ・フラグメント編
プロローグ


 ――激戦の火蓋が切られた。

 

 永夢らと相対するヒースクリフは、これが六千の命を懸けた一戦だという気概がまるでない。

 だが、キリトにはそれがある――違いが出るとすれば、ここか。

 

「ハアァァァァッ!!」

 

「おい、キリト!」

 

 永夢と共にヒースクリフと打ち合っていたキリトが、急に剣速を上げた。

 そこで、人数差の有利で息を合わせ連携していたというアドバンテージが一気に崩れる。

 

「ふっ……」

 

 それを見逃すヒースクリフではなかった。

 次第に、永夢とキリトの二人を押し返し始めた。

 

(くッ……弄ばれてるのか!)

 

 キリトは焦った。勝負を急がねばヒースクリフには勝てないと悟ったからだ。

 

「だああああ!!」

 

 ソードスキルを起動させるキリト。

 対し、ヒースクリフはニヤリと笑みを溢す。

 

「キリトっ!」

 

 更に、それに焦った永夢も同じく必殺技を起動させる。

 

「「セヤぁぁぁああああ!!」」

 

 永夢とキリト、互いに無数の連打を打ち込む。

 が、ヒースクリフの完璧なまでの防御は崩すことができない。

 

「あっ……」

 

 漏れ出た声はキリトだ。キリトが両の手にする二つの剣からソードスキルの閃光が途切れ、動きが止まる。

 

(ここで硬直かよ!?)

 

 永夢はフォローに入るべく、我武者羅に剣を振るうが、そんな動きではヒースクリフには通じない。

 

「まずった!」

 

 剣が弾かれ、ヒースクリフの視線がキリトへと向く。

 身を引き、いつでもキリトを突き殺すことの出来る体勢だ――しかし

 

「――っ!?」

 

 一瞬の時間の断絶する感覚の後、ヒースクリフが初めて驚きの表情を見せる。

 よく見れば、ヒースクリフのアバターを形成するポリゴンがところどころで不安定になっている。

 

「っちい!」

 

 一瞬の判断でヒースクリフが飛び退く。

 直後に、技後硬直から回復したキリトがヒースクリフの不調を好機とみて攻め立てる。

 

「ぬアアアアア!!」

 

 ――連打、連打、連打。

 キリトの猛攻はヒースクリフの鉄壁の守りを徐々に崩していく。

 

「うおおおおお!!」

 

 猛烈な二刀での斬り上げが、遂にヒースクリフの防御を跳ね上げた。

 

「行けッ、キリト!!」

 

「だああああああ!!!」

 

 叫びとともに、左の一刀――ダークリパルサーによる突きがヒースクリフの胸元に深く突き刺さる。

 

 

 

 

 

 瞬間、空間が二つに割れ、割れた空間の裂け目にヒースクリフが飲まれる。

 

「どうなった……」

 

 空間が元に戻った時には、既にヒースクリフの姿はなかった。

 

「……終わった、のか?」

 

 呆然と呟くキリト。そんな彼に縋るように抱き付くのは、彼の添い人であるアスナだ。

 

「キリト君っ!」

 

「アスナ……」

 

「バカバカバカッ!! ほんとよかった、キリト君……キリト君……」

 

 縋りながら、嗚咽交じりに安堵の言葉を吐き続けるアスナに、キリトは安心させるように言葉を紡ぐ。

 

「ごめん、アスナ……。でも、生きてるよ、俺……」

 

「うん……よかった……キリト君、生きてる……本当によかった……」

 

 

 

 



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Myestry placeと少女

ヒースクリフが姿を消して以後、結局SAOはクリアとならず次なる層である七十六層に上がったエムら攻略組。

 

 すると、システムエラーかステータスや武器の一部がロックされ、終いには七十六層以下の層に降りることができなくなるという重篤なバグに見舞われてしまう。

 

 仲間と合流する中で迷宮区を探索していたキリトとエムは、突如謎のシステム音声とともに光に包まれる。

 

「……ここは?」

 

 光が消えると、二人がいたのは元の迷宮区内部ではなく木に覆われた森の中。

 状況を掴むために探索を開始した二人だったが、突如と駆けてきたプレイヤーを避けきることができずにエムがそのプレイヤーとぶつかり、大きく吹っ飛んだ。

 

「うぐっ……」

 

「エム!」

 

 キリトはエムの方に駆け付けようとするが、エムとぶつかったプレイヤーが短剣を抜いたのを見て、即座に自身も背中の剣を抜く。

 

「んッ……!」

 

 キリトは短剣の一、二撃目を素早くかわすと、右手の片手剣でプレイヤーに攻撃を入れる。

 

「キリト君!」

 

 攻防が始まり数瞬、エムはふと短剣プレイヤーのカーソルを見て驚愕した。

 

「オレンジカーソル!?」

 

 オレンジカーソルとは、犯罪行為をしたプレイヤーに等しく宣告される犯罪者の証。

 エムはストレージを操作し、ドライバーとガシャットを出現させてドライバーを腰に装着する。

 

「……行くぜ」

 

 意識を僕から俺に切り替え、ガシャットの起動ボタンを押す。

 

『マイティアクションX』

 

 音声とともにゲームエリアが展開され、背後のゲーム画面からチョコブロックが辺りに散らばる。

 

「大変身!」

 

 掛け声とともにガシャットをベルトの挿入口にセットする。

 

『ガシャット』

 

 そして、レバーを握り勢いよく展開する。

 

『ガッチャーン レベルアップ!』

 

 そして周囲にセレクトパネルが展開されたので、エグゼイドの画面を右手で選択する。

 

『マイティジャンプ! マイティキック! マイティマイティアクションX!』

 

 エフェクトに包まれ。音声が終わるとエムのは仮面ライダーエグゼイドに変身を果たす。

 

『ガシャコンブレイカー!』

 

 エムはガシャコンブレイカーを取り出して、オレンジプレイヤーにへと振りかざす。

 ――が、オレンジプレイヤーはそれを後へ飛んで回避する。

 

「っ!? 女の子……?」

 

 キリトがそう漏らす。

 オレンジプレイヤーが回避した際にその全身を覆っていたフードが、エムの剣に巻き込まれ耐久力限界により壊れたのだ。

 姿を見せたのは、明るい茶髪をショートにした軽装で盗賊装備の女の子だった。

 

「あんた達……何物?」

 

「それはこっちのセリフだ……!」

 

 彼女の問いに、そうエムが返す。

 

 

 互いに踏み込めず、膠着する場。

 ――その時だ。上空から巨大な影が落ちてきて、エムとキリトそしてオレンジプレイヤーは一気に飛び退く。

 

「なっ!?」

 

「こいつは……」

 

 落ちてきたのは、巨大な鎌を持ち全身骨だらけの百足の様な姿をしたモンスター。――つまり、

 

「スカル、リーパー……」

 

「なんで俺達が倒したボスが此処にいるんだ!?」

 

「リスポンしたのか……?」

 

 多くの犠牲を出しながらも倒した最悪を前に、呆然とする二人。

 

「何なの……コイツ」

 

 余りに巨大な敵を前に、オレンジプレイヤーも驚愕を隠せない。そんな彼女を狙い骨百足(スカルリーパー)は巨大な鎌を振り落とす。

 

「危ない!」

 

 咄嗟に身体が動き、エムはオレンジプレイヤーを庇うべく走り出す。

 

『マッスル化』

 

 偶然近くにあったエナジーアイテムを引き、パワーを上げたエムは骨百足の攻撃を力任せに弾く。

 

「何故、助けたの……?」

 

 オレンジプレイヤーが呆然と問うてくるが、エムの答えはいつだって変わらない。

 

「目の前で奪われそうになる命を見捨てることなんて、俺にはできないからな」

 

 それはエムの、ドクターとしての信念であった。

 

「エム! 大丈夫か!?」

 

「ああ、大丈夫だ。レベル2で受けれはした。こいつは元のフロアボスより弱く設定されてるな」

 

 そのままエムは骨百足に向かっていき、キリトはオレンジプレイヤーに視線を向ける。

 

「そこの君! あいつを倒すのを手伝ってくれ!」

 

 対して、オレンジプレイヤーの彼女は未だ呆然としたままだ。

 

「なんで、あなたたちは見ず知らずのプレイヤーを助けるの。後ろから斬られるかも知れないのに……」

 

「俺達はキミに恨まれる事はしてないんだけどな。それにさっきエムに助けられたとき、キミは斬りかかってこなかった。君もこんなところで死にたくはないだろ?」

 

 キリトの言葉に彼女も一瞬思案して、すぐに頷いた。

 

「……解った、協力してあげる」

 

 その答えに、キリトはにやりと笑みを浮かべて、声を張り上げた。

 

「それじゃ、いくぜ!」

 

 キリトと彼女、二人ははエムが引き付けてくれていた骨百足へとそれぞれ向かい、攻撃を開始した。

 

「せやっ!」

 

 キリトが単発のソードスキルで骨百足の気を引けば。

 

「ふっ!」

 

 同じく、彼女も短剣のソードスキルで細かくダメージを与えていく。

 

「……負けてらんないな、俺も」

 

 そんな二人の奮戦を見て、エムは心躍らせる。

 すると、そんなエムの内から声が響いてきた。

 

(そこは俺たちも、だろ?)

 

 声は、永夢の生涯の相棒であるパラドのもの。

 そしてそのパラドも、やはりエムと同じく心躍らせているようだ。

 

「そうだな……。じゃあ行こうぜ、パラド!」

 

(ああ!)

 

 エムが呼びかければ、元気の良い返事が内から帰ってくる。

 早速と、エムはストレージから『マイティブラザーズXX』のガシャットを取り出すと、前線を張るキリトに向かい叫んだ。

 

「キリト! 少し時間を稼いでくれ!」

 

「わかった!」

 

 答えに、エムは瞬時に後ろに下がると、ガシャットの起動ボタンを押す。

 

『マイティブラザーズXX』

 

 ベルトのレバーを閉じ、マイティアクションXガシャットを抜く。

 

『ガッチョーン ガッシューン』

 

 そして新たにマイティブラザーズXXを挿入口に差し、レバーを引く。

 

『ガッチャーン レベルアップ!』

 

 サイド周囲に展開されたセレクトパネルの中から、今度はレベルXのものを選択し、エフェクトがエムの身体を包む。

 

『マイティブラザーズ! 二人で一人! マイティブラザーズ! 二人でビクトリー! X!』

 

 エムはエグゼイド レベルXにレベルアップする。が、エムは続けてレバーを操作する。

 

「だ~~い変身!!」

 

 掛け声とともにレバーを展開し、エフェクトがまたエムの身体を包む。

 

『ダブルアップ!! 俺がお前で! お前が俺で! (ウィーアー!) マイティ! マイティ! ブラザーズ! (ヘイ!) XX!!』

 

 エグゼイドの身体は二人に分裂し、二人――エムとパラドは仮面の下で笑みを受かべる。

 

「よし! 行こうぜ、エム!」

 

「ああ!!」

 

「「超協力プレイでクリアしてやるぜ!!」」

 

 手を叩き合い、二人は一気にスカルリーパーへと向かっていく。

 

「えっ!? 増えてる!!」

 

 驚いた声を上げるのは、オレンジプレイヤーの彼女。

 だが二人は、そんな声を気にも留めずにスカルリーパーに攻撃を仕掛ける。

 

 

「「ふっ!」」

 

 二人息の揃った連携パンチ。

 そして、レベルXXの能力で一気に能力が引き上げられる。

 

「「ハアッ!!」」

 

 今度は、息の揃った連携キック。

 そうして、弛むことのない連携により普段以上のスペックを発揮しながら、二人は徐々に骨百足を追い込んでいく。

 

「「オラッ!!!」」

 

 そんな掛け声とともに放たれるのは、息の揃った全力での一撃。

 そのあまりの威力に骨百足は、一時身動きが取れないほどのダメージを受ける。

 

「皆! フィニッシュは必殺技で決まりだ!」

 

「心が躍るな!」

 

「ああ!」

 

「えっ!? ひ、必殺技って?」

 

 各人それぞれ反応を見せる中で、エムとパラドはベルトを操作し、キリトはソードスキルを始動させ、彼女の方もキリトの倣うようにソードスキルを始動させた。

 

「行くぜ!」

 

 キリトが叫び、エムとパラドは同時にレバーを展開する。

 

『MIGTHY DOUBLE CRITICAL STRIKE!』

 

 音声とともに、二人は飛び上がる。

 そして地上では、キリトと彼女が剣を振るう。

 

「せやッ!!」

 

 キリトは、片手剣最上位スキルの『ノヴァ・アセンション』を。

 

「フッ!」

 

 彼女は、短剣の上位スキルの『アクセル・レイド』をそれぞれ打ち込む。

 

「「いっけェ――――!!」」

 

 そしてトドメは、空中からのエムとパラドによる必殺キック。

 たちまち、骨百足のHPは零となり、巨大なポリゴンの塊となって爆散していった。

 

 

 

 




『次回、仮面ライダーエグゼイド!』

 ――突如エムとキリトの手に現れた、謎の紋章……

「これはいったい…?」

 ――そしてエムとキリトに待ち構える試練

『これより《ホロウ・エリア》適正テストを開始します』

 ――エムとキリトは適正テストを突破できるのか!?

「ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!」

 ――開かれる謎の場所……

「此処はいったい……?」


 次回、『適正テストをBreakthroughせよ』


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適正テストをBreakthroughせよ

ついにソードアート・オンラインアリシゼーションが始まる!しかも四クール(一年)でOPがLisaさんでED藍井エイルさんって…豪華すぎだるぉぉぉぉぉぉぉ!!

後アナザービルドのベストマッチの弓道と水泳って弓道(電車)と水泳(海賊)だったのかな?


「お疲れ、エム」

 

「そっちもお疲れ、パラド」

 

 スカルリーパーとの戦闘終了後、エムはパラドと労いの言葉を交わすとレバーを操作し変身を解除した。

 そうして一息ついたエムに、オレンジプレイヤーの少女が問いかけた。

 

「あんたたちいったい何者? ……あいつらとは違うみたいだし」

 

「あいつら……? ここには君以外にもプレイヤーが居るのかい?」

 

「ええ……」

 

 それだけ、ぎこちなく答えると少女は、さっと踵を返し立ち去ろうとする。

 

「それじゃ……助けてくれて、ありがとう」

 

「あ、待って!」

 

 立ち去ろうとする少女をエムが呼び止める。

 

「何? ……まだ何か用?」

 

「いや……まだ聞きたいことがある。ここはいったい何処なのか」

 

「あなた、わたしに話しかけて何とも思わないの? わたしのカーソルみたでしょ。」

 

 少女の発言に、少し間を開けてエムが答える。

 

「うん。……オレンジだ」

 

「あなたはどうも思わないの? ……なんで、普通に話しかけられるの」

 

「なら、なんで君が何でオレンジカーソルなのか……聞いたら答えてくれるかい?」

 

 エムの問いに、少女は少し悩むような素振りを見せて、やがて重く言葉を紡いだ。

 

「…………人を、殺したから」

 

「「……!?」」

 

 少女から明かされた衝撃の事実に、二人は思わず言葉を失う。

 それを見た少女が、少しだけ寂しそうな表情をして、突き放すように言ってきた。

 

「これでわかったでしょ? わたしとは関わらない方がいい」

 

 またも立ち去ろうとする少女に、手を伸ばしたのはキリトだ。

 

「ちょっと待ってくれ!」

 

「……言ったわよね。わたしとは、関わらない方がいいって」

 

 差し伸ばされる手を拒むように振り払う彼女に、キリトは尚も縋る。

 

「エムの質問に答えてくれないか? 関わる関わらないにしろ、最低限の情報は欲しい」

 

 そんなキリトの様子に少女も観念したか、ポツポツと話し始める。

 

「……ここのことはよくわからない。わたしは一か月前に飛ばされてきたんだけど……生き残るのがやっとで、ほとんど探索できてないから」

 

「一ヵ月!? まさか、ここは《クリスタル無効化エリア》……」

 

 キリトの反応に、エムは即座にアイテム欄を探る。

 そして転移結晶を取り出して、タッチをする。クリスタル無効化エリアならば、ここで使用不可能のログウインドウが出てくるのだが……。

 

「……? あれ、普通に使える?」

 

 通常通り、音声認識でない場合の階層や場所の指定を求めるログウインドウが出現し、使用が可能であることが分かった。

 

「ここの階層とかはわからなくなってるけど、アイテムやメッセージは普通に使える」

 

 ならば、と二人は思った。

 彼女の装備等を鑑みても、ここに来たのが一か月前だとするならば、その頃には回廊結晶は無理でも転移結晶は各プレイヤーが二、三個は所持している筈なのである。

 

「転移結晶を持ってないだけなら、余分に持ってるから、それを分けられるけど……」

 

「遠慮するわ」

 

 エムの提案は即座に拒否される。

 

「……君には何か、事情が――」

 

 そう問おうとしたその時、エムの声を掻き消すように周囲に謎の電子音声が響き渡った。

 

『《ホロウ・エリア》データアクセス権限が解除されました』

 

「……なんだ、今の?」

 

 謎の音声に、何かあるのかと周囲に気を配るが、何か起こる気配もなく、突如少女が叫んだ。

 

「あなた達、それ!」

 

 少女はエムとキリトの手を指差す。

 見ると、二人の手に謎の光輝く紋様が浮かび上がって来ていた。

 

「何だこれ!?」

 

「これは一体……?」

 

「ちょっと見せて」

 

 少女は急いて、キリトの手を取り輝く紋様を観察し始める。

 

「似てる、あれに……」

 

「君はこれを知っているのかい?」

 

 似てる、そう漏らした少女にエムは尋ねる。

 何か分かれば、この場所をことをもっと知ることの出来るチャンスだ。

 

「これと同じ紋様がある場所を知ってる」

 

「本当か、ならそこに行けば何かわかるかもしれない」

 

「確かに、行ってみる価値はあると思う」

 

 少女の答えに、キリトとエムは彼女の言う場所に向かうことを決める。

 

「よかったら、この紋様と同じのがある場所まで案内してもらえないかな?」

 

 エムが聞けば、少女はまたそれを拒絶しようとする。

 

「信じるの? 私はオレンジ……レッドなのよ。」

 

 対しエムは、少女に向けて穏やかに微笑む。

 

「僕には君が好きに人を殺すようには見えない。何かやむを得ない状況になって、それで殺してしまったんじゃないかな?」

 

「なんで、そんな風に思えるの?」

 

「……人を殺したっていうんだったら僕らも同じことをしたことがあるから」

 

 ――言って、僕は思い返す。あの最悪の日のことを。

 

「え……?」

 

「ラフィン・コフィン……知ってるよね?」

 

「え、ええ。最悪のレッドギルド……」

 

「そう。彼らの討伐作戦には僕らも参加した。命と命のやり取り、言葉にすれば響きもましになるけど……実態はそんなものじゃない」

 

 ――ラフコフの連中は、SAOで生まれた狂気の集合体のような連中だった。

 

「醜く命を奪い合う、本当に凄惨なものだった」

 

 ――理由もなく、ただ快楽を満たすためだけに大勢の命を奪った連中と、目の前の少女は明らかに違う。

 

「君が僕らを拒絶するのは、奪ってしまった命と向き合うのが怖いから……誰かといると怖くなってしまうから、違うかい?」

 

 ――彼女は僕らを拒絶した。怖いから、そう思えるのなら彼女は僕らと同じだ。

 

「俺もキミが人を殺すようには思えない。さっき俺達と一緒に戦ってくれたし、充分信頼できる」

 

 キリトも、先までのエムの言葉に同意するように少女に向かって微笑んだ。

 微笑みを受けた少女は少し困ったように、やがて渋々と二人の提案を了承する。

 

「わかったわ。その紋様と同じのがある場所まで案内してあげる」

 

「本当に! ありがとう」

 

「別に。わたしも気になるから、一緒に行くだけ」

 

「……そっか」

 

 素っ気無い返事だが、これで一歩前進か……。

 エムは内心でそうごちて、出発の呼びかけをしようとしたところで、ふと口籠る。

 

「それじゃあ、行こうか。……えっと」

 

「……フィリアよ」

 

 名を呼びあぐねていると、少女からため息交じりに自己紹介が入る。

 

「僕はエム。よろしくね、フィリアさん」

 

 よろしくと声を掛ければ、少女――フィリアはこくりと頷く。

 

「俺はキリト。よろしく、フィリア」

 

「……よろしく」

 

 続くようにキリトも声を掛ける。すると、今度はぼそりとながらもフィリアも答えた。

 

「さ、案内するわ。行きましょう」

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 フィリアが導く場所まで向かう道中、幾度か出現したモンスターとの戦闘になることもあったが、いきなりスカルリーパーが現れてくるといった危機的状況などは起こらず、比較的安全に進んでいた。

 その道中で、ふとフィリアがエムに問いかける。

 

「……そういえば、エムだっけ? あなた、姿が変わったり増えたりしたけど……あれは一体?」

 

「え、ああ……」

 

 姿が変わったりとはライダーシステムのことだろう。

 簡潔に説明するには……と少し言葉を探り、やがて思考を終えて口を開く。

 

「さっき僕の姿が変わってたのは、《仮面ライダー》に変身したからだよ」

 

「仮面ライダー……って、あの?」

 

「うん。フィリアさんが思ってる通りだと思うよ」

 

 血盟騎士団の《仮面ライダー》と言えば、アスナの閃光の名にこそ劣るがそれなりに通る名だ。

 実際、エムにそのことを聞いたフィリアも驚きで目を見開いている。

 

「じゃあ、あなたが血盟騎士団の副団長なのね」

 

「そう。……でも、今はギルドごとの攻略っていうよりもみんなで協力し合って攻略を進める方向にシフトしたから、形だけだけどね」

 

 現在、攻略組を実質的に率いているのはアスナ。

 その方針もあって、その他各ギルドのトップがサポートに入る形で攻略組を一括で指揮している。

 

「へえ……、いがみあってばかりだと思ってた」

 

「ああ、フィリアは今、SAOがどうなってるのか知らないのか」

 

 フィリアが《ホロウ・エリア》に囚われたのが一か月前。

 攻略組が七十六層に到達したのが一週間ほど前では、フィリアは最新の情報はまるで持っていないのであろう。

 

「……どういうこと?」

 

「そのことについてはおいおい話すさ。今は、ここのことが気になる」

 

「……そうね」

 

 フィリアは気にしたげだが、代わりに話題を変える。

 

「……それで、仮面ライダーってなんなの?」

 

「あ、それは俺も気になるな。エムに詳しく聞いたことなかったし」

 

 フィリアの疑問にキリトも乗り、少し長くなる説明を強いられるエム。

 

「うーん、覚えてるかな? 七年前に《仮面ライダークロニクル》ってゲームを巡って起こった問題があって、それを解決するために用意されたのがライダーシステムなんだ」

 

「仮面ライダー……」

 

「……クロニクル?」

 

 キリトとフィリアが共に首を傾げる。

 

「まぁ……そうだよね、二人とも十歳はいってなかっただろうし覚えてなくても当然か」

 

 これが時の流れか、とエムが憂いているとキリトが説明を急かしてくる。

 

「それで、その仮面ライダークロニクルっていうのは?」

 

「《仮面ライダークロニクル》、史上最悪のサバイバルゲーム。前後の事件を含めて、犠牲者は数千人にも及んでる」

 

「そ、そんなに……」

 

 フィリアが驚きの声を上げる。

 まぁ当然だろう。千単位の被害となると国内外においても相当のバイオテロ事件となるのだから。

 

「まあ、多分そろそろ犠牲者の人たちを蘇らせる方法も一般化できるはずだから……」

 

「どういうこと?」

 

「詳しくは、あんまり言えないけど……もうすぐなんだ」

 

「「へえ……」」

 

 二人の声が重なる。

 淡白な二人の反応に、これは二度目は無いなと内心ほっと息吐くエムだった。

 

「さ、早く行こうか」

 

 思えば、話し始めてからは足も遅くなっていた。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 更に進んだ道中。

 今度疑問の声を上げたのはキリトだった。

 

「しかし、ここははいったい何なんだ? 階層も表示されないし……」

 

 メニューを開き、キリトは各画面を操作するが、一向にこのフィールドの情報は出てこない。

 

「ここは《ホロウ・エリア》って呼ばれているらしいわ」

 

「《ホロウ・エリア》……?」

 

 アナウンスにもあった名前だ。

 

「二人はどうやってにここに来たか、覚えてる?」

 

 と、フィリアが問うので、二人は少し前の出来事に記憶をさかのぼる。

 

「ええと……。ダンジョン探索中に急に光に包まれて、気がついたらこのエリアに転送されたんだ」

 

「ああ、転送される感じはどことなく回廊結晶のコリドーに似ていたな」

 

 蛇足気味の補足をキリトが付け加えるが、結果フィリアはキリトの方は無視して考え込む。

 

「突然転送された……か。わたしも同じ。ただ違うのは……その手に浮かんでいる紋様」

 

 言って、フィリアはキリトとエムの手に浮かぶ紋様を凝視する。

 

「フィリアさんには、この紋様は無いみたいだね」

 

「ええ。というか、ここでそんな紋様のあるプレイヤーなんて見たことない」

 

 ふと、そんなことを言うフィリア。

 プレイヤーと言うからには、このエリアにはフィリア以外にも誰かいるのか……それをキリトは問うた。

 

「え? ここには、フィリア以外にもプレイヤーがいるのか?」

 

「……ええ。でも少しおかしなところもあるというか……」

 

「おかしなところ?」

 

 エムが首を傾げる。

 ――おかしなところとは、一体……?

 

「説明が難しいの。実際に会って説明した方がいい」

 

「わかった。そうしよう」

 

 一先ずとそれで納得したエムだが、同時に別の疑問が湧いて出る。

 

「ところで、今僕たちはどこに向かっているかな?」

 

 何も言わずとフィリアに同行しているキリトとエムだが、今更ながらに行き先への疑問が湧いたのだ。

 

「ほら……あそこに見えるでしょ?」

 

 答えたフィリアが手を向けた先、深い森の木の切れ目にフィールドには似ても似つかない、巨大な黒い球体が浮遊して存在するのが視認できた。

 

「あの球体か。フィリアは中に入った事はあるのか?」

 

「いいえ、入れないの。でも……二人がいれば入れる気がする。その手の紋様と同じのが描かれていたから」

 

「なるほど。……きっかけはスカルリーパーを倒した事みたいだったけど、一体何がフラグだったんだ?」

 

 考察するエムだが、噴出する疑問を解消は出来ずに考察はそこで打ち止めとなる

 

「でも、わたしには紋章が出なかった。二人が取っているスキルに関係があるんじゃない?」

 

「こんなことが起こるスキルなんて聞いたことないぞ」

 

「強いて言うなら、キリト君の二刀流だけど……今は使えないし」

 

 ライダーシステムはスキルではないし……と、やはり考えても無駄となりそうだ。

 と、その時だ。周囲に先ほどと同じように謎の電子音声が響き渡る。

 

『規定の時間に達しました。これより《ホロウ・エリア》適正テストを開始します。』

 

「い、いきなり何?」

 

「な、なんだ今このアナウンスは?」

 

 驚くフィリアとキリトの二人だが、エムは冷静にアナウンスを分析する。

 

「規定の時間、適正テスト……。フィリアさんは何かわからないかな?」

 

 一か月間、このエリアにいるフィリアなら何かわかるのではないかとエムは尋ねる。

 

「わたしに聞かれても困る!」

 

 が、フィリアにもテストの詳細はわからない模様。

 

「適正テスト……とか言っていたよな」

 

「ええ……確かに、そう聞こえたわ」

 

「もしかしたら、あのスカルリーパーもそのテストの一環だったのかもね」

 

「だったら話は早いな。モンスターを倒せば、フラグが建ってくなんて解り易くていい」

 

 エムの言葉に反応して、キリトは笑みを浮かべる。

 元々頭脳派ではないのだから、モンスターを狩る方が自分には適している――そんな考えからだろう。

 

「そうだね。頭を捻るのもいいけど、僕らにはコッチの方が性に合ってる」

 

 今度はエムが、キリトに同意するように言うと、フィリアが点で呆れたようなポーズを取る。

 

「……こんな時に、よくそんな前向きになれるわね」

 

「この状況でテストとやらを回避出来るとは思えないし。それに未知のフィールドってなんかワクワクしないか?」

 

「それに僕とキリト君がいれば、テストなんて余裕さ」

 

 二人の発言に、フィリアは呆れの色をより強くする。

 

「……お人よしなのかと思ってたけど、あんた達ってただの戦闘バカだったのね」

 

 ふと、そんな言葉が漏れるがテンションが上がっている二人には届かない。

 

「ん? 何か言ったか?」

 

「別に、なんでも……」

 

 フィリアの答えに、そっかとキリト。

 エムの横に並び立ち、互いに戦闘狂のゲーマーらしい笑みを浮かべる。

 

「じゃあ、さっさとあそこまで行こうぜ! エム!」

 

「ああ!」

 

「「超キョウリョクプレイで、クリアしてやるぜ!!」」

 

「……ばかみたい」

 

 背後からのフィリアの声も、やはり二人には届かない。

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 適正テスト、といっても割に簡単なもので道なりに進みつつ現れる敵を倒していくといったものだった。

 それなりに強いモンスターが現れ、フィリアとしては策を練ってから、と行きたかったのだが――ゲーマースイッチの入ったエムとキリトの戦闘狂コンビによって凄まじい速度で倒されていき、道は終端、残るはボス一体となってしまった。

 

「お、あれがラスボスか」

 

 他のモンスターよりも二回りほど大きい体躯に、身の丈以上の巨大な斧を装備した牛の獣人。

 ボス特有の《the》という定型詩を纏わせたボスの名は《マッスルブルホーン》。

 

「よし、いくぜ!」

 

 事前準備も、作戦もなしにボスに挑もうと剣を構えるエム。

 流石にそれは、とフィリアが制止する。

 

「何だよ、一気にボスを倒してゲームクリアと行こうぜ」

 

 スイッチが入ったからか、何やら口調まで変化している様子のエムに、フィリアはもう何も言うことはないと頭を抱えた。

 

「本当、バカみたい…」

 

 そんなフィリアのボヤキをさておき、エムはゲーマドライバーと二本のガシャットを取り出した。

 

『マイティアクションX ゲキトツロボッツ』

 

 ゲームエリアが展開され、周囲に極彩色のアイテムが散らばる。

 

「大・大・大変身!」

 

 変身の掛け声とともに、ゲーマドライバーのスロットにガシャットを刺して、レバーを展開。

 

『レベルアップ! マイティジャンプ! マイティキック! マイティマイティアクションX!』

 

 レベル2の姿を取ったエムに、ロボットゲーマが噛みつくように合体する。

 

『アガッチャ! ぶっ飛ばせ! 突撃! ゲキトツパンチ! ゲキトツロボッツ!』

 

 レベル3へと変身したエム――エグゼイドは、ボスに正面から相対するといつものように宣言した。

 

「ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!」

 

 隣に立つキリトも剣を抜き、スキルの構えを取る。

 

「行くぞ、エム!」

 

「おう!」

 

 溜めを解放したキリトが上級剣技《ヴォーパルストライク》で一気にボスの懐まで飛び込む。

 続くように、エグゼイドも一気に加速し左拳を振るう。

 

「これ…私手伝う必要ないかも…」

 

 フィリアは、そんな二人をただ茫然と眺めていた。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「喰らえ!」

 

『HIT!』

 

 エグゼイドの左腕の強化アームによる一撃がボスのHPが減少させる。

 

「流石! 俺も負けてられないな!」

 

 続くようにキリトも《メテオストライク》を始動させる。

 打撃と剣戟を合わせた七連撃をボスが捉え、硬直状態となったところに、ボスが斧を振りかぶるが、カバーに入ったエムがキリトに命中するより早く斧を殴り飛ばす。

 

「一気に決めてやる!」

 

『ガシャコンブレイカー!』

 

 エグゼイドはガシャコンブレイカーを呼び出し、パリィによってがら空きになったボスの胴へと剣と強化アームによる連撃を叩き込む。

 ダメージにより一時行動不能状態となったボス。

 畳みかけるべく、並び立つキリトに向けて、エグゼイドは声を張る。

 

「キリト! フィニッシュだ!」

 

「ああ!」

 

 キリトはソードスキルのモーションを開始し、エグゼイドはゲキトツロボッツをキメワザホルダーへと装填し、スイッチを押す。

 

『GEKITOTSU CRITICAL STRIKE!』

 

 必殺技の発動と同時、一気に拳を振り抜く。

 ロボッツアームが射出され、推進力でボスを空へと打ち上げる。

 

「まだだ!」

 

 追撃と、手にしたガシャコンブレイカーにマイティアクションXを挿す。

 

『MIGTHY CRITICAL FINISH!』

 

 必殺技を起動させ、エグゼイドは跳躍する。

 打ち上げたボスへ叩きつけるように剣を振るい、地面へ叩き落とす。落ちたボスは地面で構えているキリトのもとに、そして満を持してキリトは片手剣最上位スキルの《ノヴァ・アセンション》を放ち、見事ボスはポリゴン片へと変わる。

 

『《ホロウ・エリア》適正テストのクリアを確認しました。承認フェーズを終了します』

 

 クリアを示す電子音声が鳴り響き、それを聞いたエグゼイドとキリトが拳を振り上げる。

 

「よっしゃ! ゲームクリアだ!」

 

「案外、呆気なかったな」

 

「いや……あんた達がおかしいだけ」

 

 クリアを喜ぶ二人に、呆気にとられたとばかりのフィリアのツッコミが突き刺さる。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 エリアボスを倒し、承認とやらを得られた三人が向かうのは、先ほどフィリアの指し示した謎の巨大な球体。

 

「……あれよ」

 

 深い森を抜け、少し開け場所に出た三人。

 その奥をフィリアが指差し、エムとキリトがその方を見る。そこには、キリトとエムの手に浮かんでいる紋様と同じ紋様が描かれている石碑が浮かんでいた。

 

「確かに、僕たちの手の紋様と同じだ……」

 

「これがあの球体に入る装置だと思う。試しに、手を触れてみて?」

 

 フィリアの指示にこくりと頷いた二人は、浮遊する謎の石碑に手を触れさせる。

 直後、石碑が光輝き、同様にキリトとエムの紋様も光輝く。

 

「……やっぱり、関係があったのね」

 

「みたいだな」

 

「多分、これであの球体の中に入れると思う」

 

「よし、それじゃあ行こうか」

 

 提案を二人がこくりと首肯し、エムは石碑に手を触れながら言った。

 

「転移」

 

 通常の転移門同様に、音声認識によりシステムが起動して三人は光に包まれる。

 一瞬の浮遊感の後に光が晴れると、三人の前に見たこともないようなエリアが広がっていた。

 

「これは、いったい……?」

 

「球体の中は、こんな風になってたのね」

 

 アインクラッド全景を写すホログラムに、ホロウエリアのマップデータを写す電子画面。

 その他コンソールに囲まれた不思議な異空間とも称すべき場所が、球体の中の正体だった。

 

「《管理区》……。ここでホロウエリアを管理してるのか?」

 

 周囲を調べる中で、コンソールを調べるキリトが言った。

 

「実装……? エレメント……? 何なんだ、これ?」

 

 訝しみながら、試しとばかりにきりとがコンソールを操作する。

 すると、再度電子音声が辺りに鳴り響いた。

 

『アクセス権限者を確認しました。転移システムの認証を解除します』

 

 ――アクセス権限? エムがまた考察に入ろうとするが、その前にフィリアが叫ぶ。

 

「こっちに来て!」

 

 なにやら発見したのか、取り急ぎキリトとエムがフィリアの元へと向かう。

 

「何かあった!?」

 

「……これ、転移門かも? 少し見た目が違うけど……」

 

 フィリアが指し示すもの、それは確かに形が多少異なれど転移門のそれだった。

 

「本当だ。これでフィリアさんもここから出られますね」

 

 喜ぶエムだが、対してフィリアの表情は硬い。

 

「どうしたんだ、フィリア?」

 

 キリトが聞いても、フィリアは頭を振るのみ。

 

「フィリアさんは一緒に行かないんですか?」

 

「戻ったところで、わたしはオレンジだから警備NPCに街から追い出されちゃうから……。だから、あんた達だけで帰りなよ」

 

「……わかった。それじゃ俺たちは一旦帰るな」

 

「多分僕たちが戻れば、向こうでもここと繋がるはずだろうし、また来るよ」

 

「その時は、わたしにメッセージを頂戴。ここにいるようにするから」

 

「わかった、その時は……またよろしく」

 

「うん」

 

 最後にそう言い残し、キリトとエムは光の中に消えていった。

 

「……またな、か」

 

 

 

 

 

 一人となった管理区。

 そこで、フィリアは転移門の前に立つ。

 

「転移……」

 

 通常なら、光に包まれ指定した場所に飛べるはず。

 ――しかし、

 

『システムエラーです。《ホロウ・エリア》からは転移出来ません』

 

 無情にも、システムという壁に阻まれてしまう。

 

「やっぱり転移出来ない……わたしってなんなんだろう……」

 

 一人孤独の嘆きが、ホロウ・エリア管理区に弱く木霊した。

 

 

 

 

 

 

 




次回はおさらいなので予告無しです。

ちなみにフェイタルバレットでヒーロークエスト森林の交戦で世界55位(ユウキでは一位)取りました♪

此処からは懐かしき再開です。





どうも、知ってる人はお久しぶり、知らない人はこんにちは。《クマさん》でございます。
 垢BANされてから久しく消息を絶っていましたが、現在はパラドさんの監修という立場に落ち着きつつあります、どうも僕です。

 久しく筆を執ることはなく(大嘘)穏やかに受験勉強に勤しんでいましたが、まあ衝動が抑えられぬとパラドさんに場をお借りして、つらつらと書き連ねているわけですが、せっかくですし何かやりましょう。

 ――ということで、こんなコーナー始めたいと思います。

 
 ~SAO ゲームシリーズ解説~

 この作品はSAOのゲーム作品とのクロスオーバーということで、わからないという人の為に軽く解説をしておきたいなという思いから、このコーナーを思いつきました。
 ということで第一弾、早速やっていきましょう!

 現在、SAOゲームシリーズは五周年を迎え、先日も様々な発表が為されましたが、今回はその第一作目《ソードアート・オンライン ~インフィニティ・モーメント~》(以下、IM)を解説していきましょう。

 IMは、SAOゲームシリーズ第一作目として2013年にプラットフォームを今や懐かしのPSPで発売された作品となります。
 話としては今作(SS作品の方です)と同じく原作のアインクラッド編の最終決戦が謎のシステムエラーにより中断され、キリト達が七十六層から改めて百層までを攻略していく、といったものになります。
 ゲームシステムとしては一昔前のMMORPGにアクション要素を足したARPGと言ったもので、キリトをメインにその後のゲームにも受け継がれた様々な武器アクションでゲームを進めていくことができるものになります。

 また、SAOのゲームシリーズは毎度の如く《ギャルゲー》と称されるように、IMでも主要ヒロイン・凡用ヒロインの差あれど大体のNPCキャラを攻略することができます。

 現在では中古販売店等でも見かけることは少ないですが、旧来のMMORPGの雰囲気を味わいたい方には是非お勧めの作品です。
 ただ、グラフィックが古めという点とアクション要素が少ないという点から、リメイク版である《ホロウ・フラグメント》を始めるのもありだと思います。


 ではまた次回のお話でお会いしましょう。クマさんでしたm(__)m





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これまでのEvent

 転移時独特の浮遊感も過ぎ、目の前の光が晴れるとエムとキリトの目の前に映る景色は第七十六層《アークソフィア》のものだ。

 

「アークソフィア……戻ってこれたんだな」

 

「うん、そうみたいだね」

 

 安堵の息を吐く二人だが、突如と爆音が二人の耳に届く。

 

『聞こえているなら返事をしろォォォ!!宝条永夢ゥゥ!!!』

 

 鼓膜が破れるのではないかというほどの絶叫に、思わず耳を庇う二人だが、耳を塞いでも絶えず声が耳に届くので、エムは声の主の名を叫んだ。

 

「何ですか!? 黎斗さん!!」

 

 すると、反応が返ってきたことに驚いたのか、一瞬間を置いた後にまた黎斗の声が響いた。

 

『ようやく返事をしたかぁ! この私を無視するとはいい度胸だなぁ!! ブゥハハハハ!!』

 

『あーも! うるせぇよ、神!! 見つかったんだから黙れ!』

 

 どうやら共に貴利矢もいたらしく、苦情の声が二人の耳にも届く。

 

『この私に黙れだとぉ!? 九条貴利矢ぁぁ!!』

 

『だいたいずっと叫ばれたら迷惑なんだよ!』

 

 そのまま始まる二人の口喧嘩。

 あまり聞いていたいものではないが、耳を塞いだところで垂れ流されてくるのが現状。

 結果、キリトとエムの二人は転移門の前で困り果てるという良く解らない状況に置かれることとなる。

 

『この私がバグの影響で繋がらなくなった回線を回復して連絡を取ったのに返事をしない永夢が悪い!!』

 

『だから、声がうるせぇって言ってんだよ! もっとボリューム下げろ!』

 

『この私に指図するなぁぁぁぁ!!』

 

 どんどんヒートアップし、収集がつかなくなり始めるが、ここでようやく救いの手が出た。

 

『二人共うるさい! やっと連絡繋がったんだから喧嘩は後!』

 

 甲高い声はポッピーか。

 状況の分からぬキリトははてな顔だが、エムはポッピーの登場に最早泣きそうである。

 

『エム! 大丈夫?』

 

「あ、うん。ポッピーの方は……大変そうだネ」

 

『うん……。落ち着いたらまた連絡入れるね』

 

「が、頑張って……」

 

 そこで、回線は途切れたようで、以降呼びかけても返事はなかった。

 

「キリト君! エムさん!」

 

「「アスナ(さん)」」

 

 慌てた様子のアスナがキリトとエムの元に駆け寄ってきていた。

 

「二人共心配したよ……連絡しても反応ないし、死んじゃったかもって」

 

「そんな心配しなくても、生命の碑を見れば……」

 

「キリト君、今は生命の碑は」

 

「あっ、今は見れないんだった……」

 

 七十五層の攻略後に起こったシステムエラーで、七十六層以前の層には行くことができなくなっていた。

 エムからの指摘で気付いたキリトは、アスナが今にも泣きそうな顔をしている理由にも気付く。そこへ――

 

「「キリト君(さん)! エムさん!」」

 

 アスナに遅ればせながら、リーファとシリカも駆けつけて来た。

 

「いったい何処に行ってたの!?」

 

「良かったです。二人が無事で……」

 

 どうやらみんな心配してくれていたようだ。

 リーファは口調こそ怒り気味だが、その顔は安堵に満ちているし、シリカの方は言わずもがなだ。

 

「二人とも無事で良かったです!」

 

 そんな二人の背後からユイが飛び出し、エムに抱き付いてきた。

 経緯もあってかエムにも良く懐くユイであったが、キリトの方に行かないのは何故か。

 疑問に思い、エムがキリトの方を見れば――アスナに泣き付かれていた。

 

「……ただいま、ユイちゃん」

 

 それならばしょうがない。と、エムはユイの頭を軽く撫でてやる。

 そして甘い雰囲気の二人を捨て置いて、エム達はたまり場兼宿であるエギルの店へと向かう。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 旧五十層の店から、門構えを変え新たに酒場兼宿兼雑貨屋としてエギルが開いた店に着いたエム達。

 

「あー! やっと戻ってきたわね!」

 

「……言ったでしょ、その辺で暴れまわって戻ってくるって」

 

 そんな彼らを迎えたのは、怒る声と対して冷ややかな声。

 ちなみに怒る声の方がリズで、冷ややかな声がシノンのものだ。

 

「アハハ……」

 

 実際に暴れまわってきたのは事実。

 反論する余地なく、エムは苦笑いだ。

 

「皆も心配し過ぎなのよ」

 

 吐き捨てるようにいうシノン。

 長い付き合いではないのに、ここまで読まれているあたり単純だなぁ……と、認めざるを得ないエムだった。

 

「た、ただいま……」

 

 と、後ろからキリトの弱弱しい声が。

 それがリズの怒りを呷ったか、怒声が店内に響き渡る。

 

「キリト! エム! あんたらいったい何処に行っていたのよ!」

 

 その迫力は凄まじく、歴戦の戦士であるはずのエムは元より、数々の修羅場をくぐったキリトも委縮する程。

 一先ず、リズの怒りの矛を収めさせるために

 

「そ、それは不可抗力で……」

 

 意外と、シノンが眉を吊り上げる。

 

「そうなの……?」

 

 そんなシノンの問いに答えうように、おずおずとキリトが口を開く。

 

「……実際、エムの言った通り不可抗力だったんだ。迷宮区を探索していたら急に転移させられて……」

 

「それって、いきなりって事?」

 

 話を聞いたリーファが疑問の声を上げ、対しエムが疑問に答える。

 

「うん。それで隠しエリア……っていうのかな? そんな所に転移して、一応様子見して……戻ってきたんだ」

 

「……そんなエリアが未発見の状態で見つかるって、あるのかしら? ユイちゃんは何かわかる?」

 

 根本の疑問をアスナがユイに問いかける。

 SAOの全システムを統括するカーディナル由来のプログラムのユイならば、多少なりとゲームのシステム的内情にも詳しかろうと、皆ユイの答えに注目し、答えを待つ。

 

「アインクラッドに様々な事情で一般のプレイヤーには公開されていないエリアがあります。ゲーム開始時にそれらエリアは封鎖されたのですが、現在は謎のシステムエラーの影響でカーディナルシステムが不安定になっています。それを考慮するとないとは言い切れません」

 

「成る程ね。ありがとうユイちゃん」

 

 完全ではないものの、考察のはかどる有益な情報をもたらしたユイ。

 が、当人はアスナに頭を撫でられながらもシュンと落ち込んだ様子を見せる。

 

「いえ……現在の稼働情報がもう少し詳しくわかればいいのですが……」

 

 そんなユイに、キリトは優しく微笑みかける。

 

「今の説明でも充分だよ。ユイ」

 

「パパのお役に立てたなら、嬉しいです」

 

 微笑みを受けて、ユイはキリトに同じく微笑みを返す。

 親子団欒……素晴らしいものだが、とエムは最後に話を畳むべく総括に入る。

 

「ホロウ・エリアについては、色々調査が必要だね……。とりあえず僕の方は色々とバックアップについてくれてる人に調べて貰うよ。何かわかったら、皆にも報告する」

 

そう言うとふとシノンが思い付いたようにエムを見つめる

 

「どうしたの……シノン?」

 

「バックアップって聞いて思い出したんだけど、エムを呼んでいたあの奇声は何?」

 

シノンの疑問を聞きはっとしたようにエムに視線が集まる

 

「確かになんかエムって叫んでいたわね」

 

「それにうるさくて耳が痛くなりそうでした……」

 

「えっと……ごめんなさい。うちの身内が迷惑を……」

 

エムはとてつもなく落ち込んだような表情を浮かべ申し訳なさそう謝罪し場が静まり返る。

 

そしてその状況をどうにかしようとリズがユイちゃんに訊ねる。

 

 

 

 

 

「……ねぇ、ユイちゃん。そのエリアには見つかっていない素材とか有ったりするの?」

 

 ふと、リズがユイに尋ねた。

 

「その可能性は十分にあると思います」

 

 ユイの回答は、実に曖昧でかつ期待の持てるものだった。

 鍛冶師として血が騒ぐのか、リズは期待を胸に心躍らせる。

 

「そっか、未知の素材……未知のスキルとかもあるのかしら……」

 

 そんなリズの言葉に煽られたか、皆からも並々ならぬ熱意の声が上がる。

 

「だったら、ピナのパワーアップも……」

 

「私も、短剣はどうも合わないから……いい武器を手に入れたい」

 

「あたしも、もっと……」

 

 そんな皆の様子に慌てるアスナ。

 

「ちょっと、皆……もしかして行くつもりなの!?」

 

 だが、そんなアスナの様子を余所にキリトは無邪気に笑む。

 

「いいじゃないか別に、俺たちだってちゃんと帰ってこれたんだから」

 

 そんなキリトに突っ込むのは、苦い顔のエム。

 

「……そういう問題じゃないと思うんだけどな、キリト君」

 

「いや、でも……皆のレベルなら、ホロウ・エリアでも十分に戦えるだろうし、そこで手に入るアイテムで皆を強化出来たら、この先の攻略だってグンと楽になるだろう?」

 

「そ、それは確かにそうね……」

 

 流されそうになるアスナ。

 実際に、キリトの言う通りホロウ・エリアには手強いモンスターが多い分、強いアイテムがあると予想される。

 

「なら、わたしも行くわ。キリト君だけを行かせるわけにはいかないもの」

 

 結局、妥協案で落ち着くアスナだった。

 

「……ありがとう。アスナが来てくれるなら、フィリアも喜ぶよ」

 

 キリトがフィリアの名を出した瞬間、辺りの雰囲気が一気に凍り付く。

 

「フィリア……?」

 

 リズはキリトが呼んだ名を反芻し、

 

「それって……」

 

「もしかして……」

 

 アスナとシリカは共にキリトを睨み、

 

「……キリト君?」

 

 リーファは呆然とキリトの名を呼び、

 

「パパ……その人って」

 

 ユイは冷めた目でキリトを見る。

 

「もしかしなくても……女の人、よね?」

 

 そして最後にシノンが、そうキリトに問いかける。

 

「ああ、よくわかったな。名前しか言ってないのに」

 

 キリトは、周りの雰囲気にも気付かずに呑気と意外気な顔をする。

 

「ほらねえーー!!」

 

 新たなライバルの出現に、アスナはもう絶叫するしかない。

 

「暴れまわってただけじゃなくて、女の子も口説いてたんだ」

 

 わざとらしくため息まで吐いて、呆れたように言うシノン。

 

「く、口説くとか、そういうんじゃないよ! なぁ、エム?」

 

 一身に関わること故に、キリトは全力で否定してエムに助けを求めるが……

 

「……ノーコメントで」

 

 否定はしきれない、エムは黙秘権を行使した。

 

「おい!?」

 

「どうせ、『力になってやりたいんだ』……とか言ってきたんでしょ」

 

「あぁ~……」

 

 シノンの慧眼に、エムは脱帽でもうため息しか漏れない。

 

「おい、エム!?」

 

「キリト君……わたしが泣くほど心配して必死に探していた時に女の子と……」

 

 涙目になるアスナ。

 

「待て待て! 不可抗力なんだよ!!」

 

 必死に言い訳を試みるキリトだが、と周囲の冷ややかな目は絶えない。

 

「また不可抗力、ね」

 

 責めるはシノン。キリトに冷々たる目が突き刺さる。

 

「向こうに飛ばされたらたまたまフィリアがいて、そこにスカル・リーパーとかが降ってきたから一緒に戦っただけだよ!」

 

「……うぅ、キリト君のバカ!」

 

 必死の言い訳、だがアスナには届かない。

 

「知ーらない」

 

 と、シノン。

 

「右に同じく」

 

 かける言葉も見つからず、エムは目を瞑る。

 

「おい!? エムは一緒に居たんだからちゃんと擁護してくれよ!」

 

「あはは! 自業自得ね」

 

 叫ぶキリトを笑うのはリズ。対してキリトは、頭を抱える。

 

「人を助けたんだから得はあっても、業なんかないだろ……」

 

 嘆くキリトを余所に、リズは一笑いしてスッキリしたのか清清しい笑みで皆に提案する。

 

「でもまあ、何かあっても《黒の剣士》様がいることだし、探索には行きましょうよ」

 

「同感ね。この世界にいつまでもいるわけにはいかないもの」

 

 コーヒーを一口、クールにシノンはリズの言葉に同意した。

 

「あ、あたしも行きたいです!」

 

 興奮気味に、シリカが手を上げる。

 それを抑えながら、エムが皆に向けて言う。

 

「まあ行くにせよ、もう少しこっちが落ち着いてからにしよう。まずは七十六層突破だ」

 

「突破はいいけど……二人は、もう今日攻略に出かけるのはダメよ」

 

 おお! と全員手を振り上げる寸前、アスナがキリトとエムに対して釘を刺す。

 

「「えっ、なんで……?」」

 

 これには戦闘狂の二人、思わず声が揃う。

 

「さっき《スカル・リーパー》と戦ったって言ってたでしょ? 当然ね」

 

 馬鹿を見るような目で、シノン。

 

「いやでも、HPは全快してるし……」

 

「パパ! 今日はママの側にいてあげてください」

 

 尚も行こうとするキリトに、むすっと怒るユイ。

 

「……そうだな。じゃあ、明日からにしよう」

 

 基本的に女性陣に勝てないキリトだが、やはりと最愛の娘であるユイにも勝てないようだ。

 

「せんせーも、ですよ!」

 

「……医者の不養生は良くないからね、そうするよ」

 

 エムもエムで、やはりユイには勝てない。

 

「じゃあ、キリト君はちゃんと部屋で休む! ……ほら」

 

「ちょ、アスナ……引っ張らなくても、ちゃんと部屋行くから……」

 

「だーめ、信用なりません」

 

「ええ……」

 

 キリトはアスナに引っ張られて二階の奥に消えていく。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 女性陣の質問攻めでヘトヘトなエムは、休めと言われたはずなのに逆に疲れて、椅子に座ろうと……その時だ。

 

『ブゥハハハハハ!!宝条永夢ぅぅぅ!!!』

 

 再び黎斗による奇声が耳に届き、座り損ねて床に転がる。

 

「いてて……何ですか!? 黎斗さん」

 

 疲れもあって、イラつきながら返事をするエム。

 

『今回は返事をするの早かったなァ……褒めてやろう!』

 

 上から目線の黎斗の声の背後で、ポッピーのため息が聞こえる。

 

「はぁ……さっきまで謎のエリアに飛ばされてて、連絡手段が無かったんですよ」

 

 ため息が移ったか、エムは苛立ちを吐き出して冷静に返す。

 

『何だと……? 永夢、今SAO内部で何が起きているのか詳しく説明しろ』

 

 どうやら、黎斗の興味は《ホロウ・エリア》に飛んだようだ。

 

「わかりました。黎斗さん」

 

 エムは少々ため息を混じらせながら返事をする。

 

 そして、思い返すのはつい先日。七十五層を踏破し、七十六層に足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 見えた景色は穏やかなもの。直前までの世界の運命をかけた戦いの場とは打って変わっての、穏やかなフィールドだった。

 しかし、フィールドの穏やかな様子と打って変わって、攻略組の皆の雰囲気はあまりいい物ではなかった。

 特に血盟騎士団の人たちは。でも、それは当然のことだった。

 自らが信じ、支えてきた団長のヒースクリフが実は茅場で、なんて話をすぐに飲み下せるような人間はこの中には一人もいないだろう。

 

 ――そんな時だ。

 

「おい、どういうこった!?」

 

 突如と、エギルさんが驚愕の声を上げた。

 振り向けば、ウインドウを開きながら固まっているのが見え、僕は慌てて声を掛ける。

 

「どうしたんですか!?」

 

「アイテムや、一部スキルが消えてやがる!」

 

「えっ……!?」

 

 慌てて確認する。

 確かに、一部アイテムやスキルが文字化けを起こして使用不可になっているようだった。

 

「なんで……」

 

 呆然と呟いていると、今度はクラインさんが驚愕の声を上げる。

 

「おい! 迷宮区までの道が消えてるぞ!?」

 

「ハァ!?」

 

 キリト君が驚愕に叫ぶ。

 急ぎ確認するが、今さっき七十六層に上がるために使った迷宮区タワーの階段がなくなっていた。

 

「嘘だろ……おい……」

 

 呆然とエギルさんが呟く横で、どうにか思考を巡らせて僕は叫んだ。

 

「転移結晶は!」

 

「使えない……!!」

 

 ちょうど試していたらしいキリト君が憤りの叫びを上げる。

 落胆と絶望が攻略組を覆うが、それでもアスナさんは声を張る。

 

「皆、諦めないで! わたしたちが今ここで折れてしまったら、今までに命を懸けてきた人たちの犠牲が無駄になる……そんなこと、させちゃいけないわ!」

 

 声に、キリト君が続く。

 

「先に進まなきゃ俺たちに未来はない……俺は行く! 皆はどうする?」

 

 責任ある大人として、僕も二人の奮起の声に応えねばなるまい。

 

「皆さん! 嘆くのも、足が竦むのも……わかります」

 

 皆の顔を見る。一様に怯えたような、そんな表情だ。

 先ほど力強い言葉を残した二人でさえ、決意に満ちた表情を微妙に不安に歪めている。

 

「でも、僕たちの大半は責任ある大人です。今ここにいる二人、キリト君とアスナさんを支えていくためにも皆さんの力を貸してください」

 

 声に熱が乗り、続いて頭を下げる。

 

「お、俺たちは……」

 

「あと四分の一、それをこんな状況で……」

 

 耳に届く声は、戸惑いや不安の色を隠せないものが多い。

 それでも、勇気を振り絞って声を上げてくれる人がいる。

 

「へッ、こんなことでへばる俺様じゃねェ! 俺は行くぜ、キリト!」

 

 声を張るクラインさんは、ニヤリと笑う。

 

「クライン……」

 

「俺も、折角の商売のチャンスは逃せないな」

 

 続くように声を上げたエギルさんも、また同じくニヤリと笑う。

 

「エギルさん……」

 

 二人の声に、他の攻略組もメンバーも続いてこれからの参戦の意思を述べる。

 

「……皆、ありがとう」

 

 僕はただ、声に応えるようにもう一度頭を下げた。(お願いされました)

 

 

 

 

 

 改めて、七十六層の主街区を目指す攻略組のメンバーたち。

 ――と、その時だ。突如と僕の身体に異変が起きた。

 

「……!? これは?」

 

 意識がぶれるような、半身が削れるような、そんな感覚。

 

「おい、エムどうした?」

 

「大丈夫ですか? エムさん」

 

 キリト君とアスナさんに声を掛けられた直後、ぞわりと沸き立つ感覚とともに『何か』が僕の身体を離れた。

 

「……なんで、俺が? エム!」

 

 生身から発声された相棒の声。

 急ぎ声の方を見れば、そこにいたのはパラドだった。

 

「パラド……!」

 

 なんで……今まで分離できなかったのに。

 またゲームのバグの影響か、思考を巡らせてみるも大したことは浮かんでこない。

 なら、今はこのことを素直に喜ぼう。

 

「これからは、向こうでみたいにまた一緒だな」

 

「エムと一緒なら、心が躍るな!」

 

「ああ!」

 

 生身では二年ぶりとなる、手の打ち合わせ。

 パラドの言う様に心躍らせていると、呆然と問いかけてくるアスナさんの声が聞こえてきた。

 

「あの……エムさん?」

 

「はい?」

 

 状況の把握が出来ていないといった様子のアスナさん。

 

「その人は……いったい?」

 

「ああ、こうして会うのは初めてだからね。紹介するよ、僕の相棒のパラドだよ」

 

「よろしくな、アスナ」

 

 常の表情である口角を上げた笑みをパラドが向ければ、アスナさんは一瞬思案顔になった後にまた聞いてくる。

 

「えっと……パラドって、あの?」

 

 あの、とはブラザーズに変身した際にパラドが分裂したR側を担当していた件についてか。

 

「な、何でエムから出てきたんだ?」

 

「えっと、それは……」

 

 真面目に答えると長いので、要所をかいつまんで説明する。

 と言えども、パラドの件に触れるとライダークロニクル事件の子細を語ることになるので、多少なりと長い説明になった。

 アスナさんは一先ずと納得してくれたが、キリト君の方は終始首を傾げたきりだ。

 

 

 

 そうして、パラドも交えて七十六層の主街区《アークソフィア》にたどり着いた攻略組一同。

 一応、転移門を解放して下層への転移を試したものの見事に失敗し、流れでそのまま解散となる。

 皆、ショックから足取りは重いが、それでも有志のメンバーが街の周囲のマッピングを買って出てくれたし、クラインさんとエギルさんに至っては新しい店を探してくると駆け出していった。

 僕はというと、キリト君とアスナさんらとともにバグの影響がないか手持ちのアイテムやスキル等のチェックをしていた。

 

「――見て! キリト君!」

 

 と、アスナさんがキリト君を呼んだ。

 気になったので僕もアスナさんの方によると、ウインドウを可視化して僕たちに見せてきた。

 

「このアイテムよ」

 

 示してくるのは、文字化けして使えなくなったであろうアイテム群の中で唯一光るもの。

 しかし、文字化けしている故に何のアイテムかは見当がつかない。

 

「文字化けしてて読めないな? 一応オブジェクト化してみるか……」

 

 言って、キリト君は早速とアイテムストレージを開いてそのアイテムを選択した。

 光とともに出現したのは、涙を模した大きなクリスタル。見覚えのあるそれを見て、アスナさんが声を漏らす。

 

「これって……」

 

「あ、ああ……ユイのクリスタルだ」

 

 言葉に詰まるキリト君。

 理由はわかる。もし何かの拍子でユイちゃんのデータが消えるような憂き目にあられては困るどころの騒ぎではないからだ。

 

「……やってみるか」

 

 だが、やがて決意したかのように呟くと、掌に載るクリスタルを二度タップした。

 すぐに光が溢れ出し、クリスタルがキリト君の手を離れる。

 

「…………」

 

 三人の間に緊張が走る。

 浮かび上がったクリスタルはさらに光を増し、爆発的な閃光に思わず一瞬目を逸らす。

 

「……また、会えましたね」

 

 鈴音のような声が耳に届いた。

 驚きに、すぐに逸らした視線を戻せば――

 

「「「ユイ(ちゃん)!」」」

 

 空に浮かぶ白いワンピース姿の女の子――ユイちゃんが、涙を浮かべながらキリト君とアスナさんの胸に飛び込んだ。

 幾数名か同じくと残っていた周囲からなんだなんだと視線が飛んでくるが、お構いなしに親子三人は抱き合う。

 

「……おかえり、ユイちゃん」

 

 ふと、万感の思いに溢れ、漏れた言葉。

 それが耳に届いたのか、ユイちゃんはキリト君とアスナさんに一度軽く頭を下げると、今度は僕に抱き付いてきた。

 

「ただいまです。せんせー!」

 

 何だか泣きそうになる。

 それを誤魔化すように、僕はユイちゃんの頭を軽く撫でた。

 

 

 

 

 

 その後は――

 

「リズ、もう君は七十五層以下には戻れないんだ」

 

「――え?」

 

 僕たちを心配してくれたのだろう。

 流しておいたバグの影響による不具合で七十六層に上がったが最後、七十五層以下には戻れないという情報に眼もくれずに、リズが駆けつけてくれた。

 

「上級鍛冶スキルも消失して、三百万コルをはたいて買った店も……人生、終わった?」

 

 壊れた人形のように、何度も「店が……」と繰り返すリズの姿は、見ていてとても痛ましかった。

 

 

 

 さらに――

 

「最前線で事件があったって聞いて、エムさんたちが心配で……いてもたってもいられなくて」

 

 同じく、シリカちゃんも僕たちを心配して駆け付けてくれた。

 幼いながらも儚げな表情のシリカちゃん。そんな彼女に伝えるには忍びないが、残酷な事実を伝えなければならない。

 

「シリカちゃん、聞いて欲しいことがあるんだ」

 

「はい?」

 

「七十六層は一度上がってきてしまうと、もう下の層には行けなくなるんだ……」

 

「え……ええっ!?」

 

 驚き、目を剥くシリカちゃん。

 

「そんな……あたし、中層プレイヤーだからこの階層のモンスターには全然歯が……」

 

「……とりあえず、僕たちのところで何とかなるように手配するよ」

 

「重ね重ね、本当にごめんなさい!」

 

「いいよ、心配してきてくれたんだし」

 

 こうして、リズとシリカちゃんは一先ずとエギルさんの店預かりとなった。

 

 

 

 

 

 ――そして、異変はこの後も続く。

 

「……お兄ちゃん?」

 

「――へ?」

 

 妖精が現れたというクエスト依頼を受けた、僕とキリト君にアスナさん。

 そうして、やってきた森の奥にいた妖精がいきなりキリト君に対して「お兄ちゃん」発言、驚かないわけがない。

 

「ほ、本当に……スグなのか……?」

 

「当たり前じゃない!」

 

「って言われてもなぁ……」

 

「なによ、信じられないわけ?」

 

「いや、スグはこんなに胸大きくないだろ」

 

 何を言い出すか、キリト君がスグと呼びかけた妖精の胸を指し、言う。

 当然、引っぱたかれるまでがオチだが、それでもキリト君は疑念を解かない。

 

「いてて……でも、SAOに途中参加なんてありえるのか?」

 

「まぁ……確かに」

 

 言わんとし難いことは解る。

 もしだったら、脳をスキャンされてNPCに仮想の人格データを埋め込んだと言われた方がまだ説明がつく。

 

「じゃ、じゃあこういうのはどうかな?」

 

 と、アスナさんが無邪気そうに手を上げた。

 

「はい?」

 

「彼女がキリト君の妹さんなら、家族しか知らないような秘密を聞けばいいんじゃないかな?」

 

 悪戯っぽい笑みを浮かべるアスナさん。

 単に訊きたいだけだろうが、面白そうなのでそのまま僕も了承する。

 

「あ、名案ですね、それ」

 

「じゃあ、なにかキリト君のとっておきの秘密ってない?」

 

 アスナさんが聞けば、彼女も先ほどの仕返しか悪戯っぽい笑みを浮かべる。

 

「それじゃあ……うーんとね。 あ、そうだ、お兄ちゃんが小学四年の授業参観の日に……」

 

 と、そこでキリト君が慌てて彼女の口を塞ごうとする。

 

「待て待て、わかった! れっきとしたウチの妹だ! だから俺の黒歴史を掘り返さないでくれぇ!!」

 

 が、それでも彼女は話を続ける。

 

「お母さんが見に来るからってはしゃいじゃったらしくて、教室で……」

 

「やめてくれぇ!!」

 

 こうして、キリト君の実の妹であるリーファさんもSAOにやって来てしまったのである。

 

 

 

 ――そして、さらに。

 

「お兄ちゃん、あれ」

 

 早速リーファさんをアークソフィアに連れ帰り、転移門広場までたどり着いたその時だ。

 

「あそこ、空がなんか光ってるんだけど……」

 

 リーファさんが指差す先、確かに空が光っていた。

 

「……本当だ、何だあれ?」

 

「テレポートの光とは、ちょっと違うね」

 

「うん、色が少し違うよね。それに、あんな空高く転移するなんてないし」

 

「だよな……でも、街中でなんかイベントが起こるわけでもなし」

 

 四人でやんややんやと言い合っていると、空を見ていたリーファさんが叫んだ。

 

「お兄ちゃん、見て!!」

 

 慌てた様子に急ぎ、仰ぎ見れば変色していた空からプレイヤーが転移してきていた。

 

「マズい!?」

 

 示し合わせるまでもなく、叫んだキリト君とともに限界の速度で駆ける。

 その間も、プレイヤーはどんどんと地面に近づいていく。

 一応、安全圏内なのでダメージはないが衝撃は伝わる上に、プレイヤーには意識がなさそうだ。

  

「間に合え!」

 

 キリト君が叫ぶ。

 と、脳内から声が響いてきた。

 

(俺が行く)

 

「パラド!?」

 

 反応する間もなく、体内から粒子が飛び出して、一気にプレイヤーの真下で身体を形成する。

 

「よっと」

 

 そうしてパラドが受け止めた女の子だが、やはり意識はないようで一先ずと宿まで運ぶことになったのだが――

 

「んっ……」

 

「お」

 

 女の子が目を覚ました。

 辺りを軽く見まわして、状況把握に努めた後、パラドに背負われているという自身の状況に気がついて、飛び下りた。

 

「…………」

 

 睨んでくる彼女だが、一応と話は聞かねばならぬと声を掛ける。

 

「えっと……君は空から落ちてきたわけなんだけど、何があったか教えてくれない?」

 

「……私、ここに来た前後のことが全く記憶にないの」

 

「そっか」

 

 何かあった、では済まなそうだ。記憶を飛ばすほどの出来事とは……。

 更に話を聞いていくために、また質問を投げかけた。

 

「じゃあ、君が前までどこにいたかもわからない?」

 

「……その前に、一つ良いかしら?」

 

 と、彼女が半歩退いて言ってきた。

 

「うん?」

 

 思わず疑問で返すと、彼女は警戒しながら恐る恐ると尋ねてきた。

 

「……なんで、あなたたち皆剣なんて持ってるの?」

 

「えっと、それはここがソードアート・オンラインのゲームの中だからとしか答えられないんだけど……」

 

「……ごめんなさい、わからないわ」

 

 記憶がないと言っていたが、まさかSAO事件以後の記憶も抜けているのか。

 どうしたものかと思案していると、キリト君が耳打ちで話しかけてきた。

 

「つまり、彼女には記憶がないってことでいいんだな」

 

「うん、そうなるね」

 

 答えれば、キリト君はユイちゃんに尋ねる。

 

「ユイ、彼女のことで何かわからないか?」

 

「はい、調べてみますね」

 

 目を閉じて、検索を掛けているのだろう唸るユイちゃん。

 だが、それも数秒ほどで終わると少し険しい表情で語り始めた。

 

「終わりました……結果から言うと、この方のIDはつい先ほどログインされたもののようです」

 

「ついさっき? ユイちゃん、どういうことかわかる?」

 

 アスナさんが尋ねれば、また少しの思案の後にユイちゃんから答えが返る。

 

「はい、リーファさんと同じように他のゲームからログインした可能性が高いと思います」

 

 と、ここまでの状況話に混ざれなかった彼女が不安げに語り掛けてくる。

 

「えっと……説明してもらえると助かるんだけど」

 

「ああ、細かい説明は宿に戻ってからするよ……えっと、なんて呼べばいいかな、キャラネームとか?」

 

 尋ねれば、彼女は首を傾げる。

 

「キャラネーム?」

 

「あ、こうするとウインドウが出るからそこに出る名前を読んでくれればいいよ」

 

 右手を振り、実演してみせる。

 それを真似るように覚束ない様子で右手を振った彼女は、ステータス画面を見るのも慣れない様子で時間を変えて名を読んだ。

 

「こ、こうね……シノン、って書いてあるわ」

 

「シノンさんか、よろしくね」

 

 こうして、シノンさんもデスゲーム《ソードアート・オンライン》の地に足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「これが主だった現在のSAO内部で起きた出来事です」

 

 長い説明を終えて、一息つくエム。

 逆に話を聞き終わった黎斗は、ふむふむと話を理解し噛み砕いた。

 

『成程……SAOに迷い混んだ二人のことも気になるが、君の言う《ホロウ・エリア》とやらは興味深いな……』

 

 やはり黎斗はゲームのことにしか頭がないようで、エムはため息をつく。

 と、そんな黎斗の背後から声が届く。

 

『その迷い混んだ二人の方は、自分が保護するように掛け合っとくわ』

 

 声の正体は貴利矢で、エムの不安もこれでどうにか解消されそうである。

 

「ありがとうございます。貴利矢さん」

 

『な~に、良いってことよ』

 

 エムの礼に軽く答えた貴利矢は、早速と動き出してくれたようで階段を下る音が耳に届いた。

 と、そのタイミングで黎斗がさっと告げた。

 

『エム、君は《ホロウ・エリア》について調べてくれ』

 

「え? でも攻略が…」

 

『パラドと分離が可能になった今ならば、攻略はパラドに任せ君は《ホロウ・エリア》の調査を出来るだろう』

 

 攻略の方が最優先だ、そう反論しようとするエムだが、次々と黎斗は指示を出してくる。

 

『君のストレージに新たにゲーマードライバーを1つ送った。パラドに渡したまえ』

 

「ちょっと黎斗さん!」

 

 呼びかけるも反応はなく、どうやら既に黎斗は回線を切ったようだ。

 ため息を吐きながら、身を投げ出すように椅子に深く腰掛けたエムは呆然と呟く。

 

「休む暇、なさそうだなぁ……」

 

 先ほど休むように言われたはずなのに、全く心休まらぬエムであった。

 

 

 




いどうも、後書き兼仕上げ担当(?)のクマさんです。
 今回もまたゲームのタイトル解説! といきたかったのですが、まじめにやってると後四回で終わってしまうので……今回は別な話題で間を繋ぎましょう(笑)

 

 では、何をするか……そうですね、アリシゼーションが始まって、原作を読んでない方なんかは一話の後半パートで頭抱えたかと思われる、キリトによる《ソウル・トランスメーター》の解説をかみ砕いていきましょうか



 それでは、まず《ソウル・トランスレーター》(以下STL)って何ぞ? というところから始めましょう。
 STLというのは、今回のアリシゼーションの作品の舞台であるアンダーワールド(以下、UW)にダイブするためのフルダイブ機器……つまり、ナーヴギアやアミュスフィアと系列としては同列の物です。

 さて、系列としては……などと濁すような言い方からも解る通り、STLは今までのフルダイブ機器とは根本からして異なります。

 今までのナーヴギア等のフルダイブ機器は、脳へ映像や感覚を信号を送ることで仮想世界を表現してきました。
 簡単に言うと、皆さんがプレイしているゲームの画面を直接脳内に送り込んでるといった感じでしょうか。

 では、ソウル・トランスレーターは一体どんな風に仮想世界を表現しているかというと……それがまた別な解説を挟まなければなりません。
 

 時に皆さん、人の心とはどこに存在していると思いますか?
 まあ、それは皆さんが声を揃えて「脳みそ」と答えるでしょうが、実際その通りです。
 で、その脳みそはなにで出来てるかとなり、それが脳細胞ときて、今度は細胞を形成する核となって……とそんな細かいところまで突き詰めなくてもいいですが、一先ずと脳細胞ネットワークと呼ばれる場所に、人間の心があると現在では仮定されています。
 まぁ、仮定なので、答えではないのですがね。

 では、心とは何ぞと最初の疑問に戻るわけですが、極限までその答えに近づいた理論がこの世にあったりします。
 それは《量子脳理論》とかいうんですがね。量子と聞いただけで、分かる方は卒倒もんですがこれがまるで理解できるもんではないときます――ので、必死に噛み砕いていきましょう。

 先ほど軽く触れた脳細胞ですが、実はその中にももう一つ脳があるんです――はい、わけわかりませんね。
 で、それが脳細胞の中の脳が光……光子、つまりは量子なわけです。
 量子というのは、波のようにも振る舞うこともあれば粒子のように振る舞うこともあるという、実に不安定な存在でして、その揺らぎというのが人の心だと量子脳理論では言う訳です。
 馬鹿です、わけわかりません。というか、わかんなくていいです。でもこれで納得してください(暴論)

 それで、その脳細胞の中の光子は《キュービット》という名のデータを記録してるんです。
 つまりは、光子そのものが一つの量子コンピューターとなるわけですね(どういうことだってばよ……)


 ほんと、自分でも何口走ってるかわかんなくなってますが、そういうことなんです。
 あ、量子コンピュータというのは、最近中国で開発に成功したとか噂のあれです、めっちゃ高性能な奴です。
 普通のコンピュータが「0か1」かしか計算できないなら、量子コンピュータは「2²」が計算できるみたいな感じです。高性能ですね(小並感)


 で、やっと本題です。
 その光子の集合体、SAO作中では《フラクトライト》と呼称されているそれに、STLは直接データを書き込むことで、仮想世界を表現しているわけです。
 結局書き込んでる時点で同じだろ、と思われるかもですが、STLによる仮想世界は感覚に情報を打ち込むナーヴギアによる仮想世界なんかとはわけが違うんです。
 魂に直接情報を乗せてるので、少なくとも頭の中ではSTLで表現される世界はまるで現実と変わらないわけなんですよ。


 えっとですね……もう解り易く一言で纏めます。明晰夢見てるのと一緒です。
 あ、明晰夢っていうのは夢と自覚してみる夢のことです。
 まず夢を見る過程というのが、自分の経験したことを蓄積した脳が情報の整理の際に見せるデータみたいなものなので、今までの説明を簡単に言うと、本当に夢を見ているのと何ら変わりないという状態を意識的に作り出すことができるといったことです。


 以上で、全く噛み砕けていないSTLの説明を終わります。
 ――では、皆さん、今度はSAOゲームシリーズ紹介の《ロスト・ソング編》で会いましょう


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 Purpleの少女

最近、斗を見ると黎斗見える…

ヴェノムさん遂に登場ですよ。


「――というわけで、当面は僕は攻略に参加できそうにないんだ」

 

「た、大変だな……エムも」

 

 昨夜のこと、エムはバックアップに付いている黎斗に《ホロウ・エリア》の調査に専念するように言われたのだ。

 その皆を一先ずとキリトに伝えると、苦笑気味に了承してくれた。

 

「一応、パラドが残れるから戦力としては落ちないと思うけど……」

 

「攻略なら、俺に任せとけ」

 

 と、パラドが胸を張るので、一先ずと攻略は安心して任せられそうだとエムは思った。

 

「任せたよ、パラド」

 

「ああ」

 

 笑むパラドに、エムも微笑みを返す。

 

「僕も《ホロウ・エリア》の調査を終わらせてすぐ戻るよ」

 

「楽しみにしてるぜ」

 

 では行こうと、立ち上がろうとしたその時だ。

 バンと勢いよく扉が開かれて、酒場にクラインがやってきた。

 

「おい! 《ホロウ・エリア》なんて存在しねェぞ!」

 

「ど、どうした……クライン?」

 

「だから、昨日キリトが言ってた《ホロウ・エリア》っつたか? 行けねェんだよ」

 

「そんな筈は……確かにアクティベートしたぞ」

 

 それに関してはエムも確認していることだ。

 どういうことかとキリトとともに首を傾げるが、クラインはそのまま続ける。

 

「そう聞いたからよォ、俺も行こうとしたんだけど……行けねェのよ」

 

 クラインのは発言に更に首を傾げる一同。

 その中、一先ずとキリトは皆に提案した。

 

「取り合えず、転移門に行ってみようぜ」

 

 そうして、一同七十六層主街区《アークソフィア》の転移門人場までやってきた一同。

 クラインは転移できなかったとの事なので、エムが転移門の前に立ち、叫んだ。

 

「転移、《ホロウ・エリア》管理区!」

 

 少しして、光がエムの身体を包む。

 そして独特の浮遊感が過ぎ去ると、目の前には確かに管理区の様子が広がっていた。

 

「アクティベート出来てる……よね?」

 

 と、一応外に出るなど等確認を済ませて、アークソフィアに戻るエム。

 

「転移、一応出来ました」

 

 報告をすると、納得がいかない様子のクラインがエムに迫る。

 

「なんでエムは転移出来るのに俺は出来ねぇんだ!?」

 

 その様子を見て、苦笑気味にキリトが呟く。

 

「これはちょっと調べてみる必要が有りそうだな……」

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 翌日、主要な面々に集まってもらい調査の結果を伝える。

 

「んじゃ、結果から説明するとだな……《ホロウ・エリア》に行く事が出来るのは、俺とエムの二人だけだ」

 

 ボリボリと頭を掻きながら、キリトが言う。

 

「そして、一緒に付いていけるのはキリト君と僕に対してそれぞれ一人づつ。パラドが僕と一体化している状態の場合は僕一人だけが行けます」

 

 続けて、エムがキリトの言葉に付け加える。

 

「つまるところ、ホロウ・エリアに行くにはエムかキリトと一緒じゃないと行けなくて、それも着いてこれるのは二人までってわけか……」

 

 難色を示したのはエギルだった。

 ホロウ・エリアに向かえる最大人数は四人。それでは攻略の幅が狭まるし、何より完全未知のエリアとなるので各層の迷宮区よりも遥かに攻略の危険度が高くなってしまうのだ。

 

「ええ、今後ホロウ・エリアに行く場合は誰と行くかが重要になると思います」

 

 そのため、エムの言う様に人選が重要なファクターとなる。

 更にアイテムの採取等も行う場合は持っていくアイテムの量にも相談しなければならない。ストレージの量は無限ではないのだ。

 

「でもよォ、何でキリトとエムの二人は自由に行けるんだ?」

 

 と、クラインが諸問題はさて置きとキリトとエムに疑問を投げかける。

 

「俺とエムに共通する点は《ホロウ・エリア》で表れた紋様だな……」

 

 意識し、力を籠めれば手に浮かぶ不可思議な紋様。それを見つめながら、キリトは難苦の声を漏らす。

 

「ホロウ・エリアに関しては、謎が多すぎるな……」

 

 結局、それ以上に話は進まず、皆での会議はお開きとなる。

 そのままエギルの店の酒場にて、キリトとエムの二人は言い渡された休暇を存分に持て余していた。

 

「お前らな……やることないからってずっとウチの店の席占領すんな。これでも繁盛してんだ、ほら気分転換にでも街でも回ったらどうだ?」

 

 呆れたように二人を追い出そうとするエギルに、そんなはずないだろ……と言い返そうとしたキリトだったが、実際に店内を見回すと昼時ということもあってかそれなりに賑わう店内が。

 

「……行くか」

 

「そうだね……」

 

 そんな店内の様子に頑なに居座るほど無粋でもなく、二人は街へ繰り出されることとなった。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「なんだかんだ、皆それなりに順応してるんだなぁ……」

 

 スキル等打ち消されるゲームシステムの根幹にかかわるバグに見舞われても尚、アークソフィアの商店通りにはプレイヤーよる出店や鍛冶屋などが出店されている。いや、このタイミングだからこそ早急にスキルの再取得や研鑽に回し、顧客を獲得しようとする狙いも多分にあるのだろう。

 

「高層にいる生産職の人たちは、強かじゃないと食べていけないからね」

 

「どっちにしろ生き残るために強さか……必要なんだろうけど、なんだかなぁ」

 

「……早く、百層までたどり着けると良いね」

 

「だな」

 

 そうして活気ずく街並を見て回っていく二人。

 ――とその時だ。何やら視線を感じ、歩みを止める。

 

「キリト君」

 

 エムが呼びかけるが、言わずもがなとキリトが反応を見せる。

 

「誰か俺達を見ているな……」

 

「……索敵スキルには反応はないみたいだけど」

 

「俺の方でも反応がないな」

 

 足音等の環境音によって気配を掴んでこそいるが、索敵スキルをマスターしているキリトとエムからも気取られないとなると、それは隠密スキルを同じくマスターしていることになる。

 それほどの実力者が狙うとすらば『暗殺』。以前にもシリカでの一件で、それを経験したことのある二人は尚も警戒を強めた。

 

「裏路地まで引き付けよう」

 

「ああ」

 

 ぼそりと告げられたエムの提案に乗り、徐々に徐々にと人通りの少ない裏路地にまで歩を進め、あちらから仕掛けてくる隙を窺う。

 

「…………」

 

「……来ないね」

 

 NPCすらも寄り付かないような細路地。仕掛け来るには正にうってつけの場だが、気配が動く様子もない。

 

「こっちから仕掛けるか……」

 

「そうだね」

 

 意を決し、キリトは気配に向かって声を張る。

 

「……おい! そこにいるのはわかってるんだ! 何が目的か知らないが、要望があるなら話は聞く。出てきてくれないか?」

 

 すると気配が動きだし、甘やかな――少女の声が二人の耳に届く。

 

「あーあ、気付かれちゃってたか……」

 

 少悪戯に失敗した子供のような笑みを見せながら、二人の前に姿を見せる。

 薄紫色の髪の毛に赤い瞳、そして抜群のスタイルを際立たせるように所々を露出させた装備に身を包む少女は――ゆらりとキリトとエムに微笑みかける。

 

「こんにちは」

 

 笑む少女に、キリトは警戒を解かぬまま声を掛ける。

 

「……今までに会ったことはないよな」

 

 しかし少女は、キリトの警戒を余所に満面の笑みのまま手を振る。

 

「うん、初めましてだよ。アタシは《ストレア》、よろしくね」

 

 ストレア……聞き慣れない名に、キリトは眉間に皺を寄せる。

 

「どうしたの? 怖い顔して」

 

 首を傾げるストレアに、エムは警戒は解かないままで疑問を投げかける。

 

「ストレア……さん、僕たちをつけていた理由を教えてもらえないかな?」

 

「んー……ちょっと興味があったから観察させてもらってたの。二人とも強くて有名人だもん、興味を持って当然!」

 

 それでストーカー紛いのことをするのか――エムは呆れそのまま口にする。

 

「……君も、相当に強いみたいだけどね」

 

「あ、わかる? アタシも結構強いよ」

 

 しれっと言い張るストレア。

 事実、キリトとエムの二人に対し姿を補足させなかったので、その事を笑えない。

 

「それにしても……う~ん、やっぱりね~」

 

 どう対応したものかと頭を悩ませていると、ストレアが二人の顔を覗き込んでくる。

 

「やっぱりって、何だ?」

 

 キリトが聞けば、ストレアはにやにやと笑んで言う。

 

「二人とも、近くで見ると結構カワイイ顔してるね!」

 

「へ? か、カワイイ……?」

 

 唐突のストレアの物言いにキリトは呆然とする。

 

「三十にもなって言われるとは思わなかったよ……」

 

 そしてエムだが、流石にカワイイはダメージか項垂れている。

 

「んふふ~、えいっ!」

 

 と、今度はストレアがキリトを首から抱えるように胸に抱く。

 

「うわっ!? ちょっと! く……くるしいっ!!」

 

 突然のことにキリトはストレアを引きはがそうとするのだが、STR値もそれなりにあるのか中々振りほどけない。

 

「いいじゃん! だってカワイイんだもん! こうしたくなっちゃうよ」

 

「どんな理屈だ! わっ、ぐりぐりするな!?」

 

 どういう状況なのだろうか、警戒していた少女は天真爛漫にキリトを胸に抱いている。

 とりあえず、このことは後でアスナに報告しよう――エムはそう決意した。

 

「あっ、ねえねえ! これから時間ある? 一緒にお茶でも飲みたいなー!」

 

 キリトを胸に抱きながらお茶の誘いをするストレア。

 

「え?」

 

 困惑の声を上げるキリトを余所に、ストレアは有無を言わせない。

 

「いいよね? さっきも要望を聞くっていってたし」

 

「わかった! 付き合うから!? まずは離してくれっ!!」

 

 キリトが必死に引き剥がすと、ストレアはまるで幼子のように両手を上げて喜びの感情を表す。

 

「やったね!」

 

 ――なんなんだ、この人……。

 キリトとエム、二人の思考は重なった。

 

 

 

 

 




活動報告に短編とかのアンケート出しています。(期間は何時までも)

 ――なんか、いつものです。


 はいどうも、後書き&監修(というか最早共同作と言ってもいいくらい関わってる気もしますが……)担当のクマさんです。
 本編の方はストレアが登場しましたね、実はSAOのゲーヒロの中ではストレアが一番好きだったりするのでテンション上げて書かせていただきました。
 さて、今回は前回も言ったようにゲーム《ロスト・ソング》(以下、LS)について解説していきましょう。



 LSは、前作インフィニット・モーメント(ホロウ・フラグメント)とはスト―リー的なつながりこそ一応ありますが、開発自体はIMよりも前から行われるなど完全新作という位置づけで作られた作品となります。
 発売は2015年で、プラットフォームはPS3/PSVitaとなっていますが、同年に完全版として《Re:ホロウ・フラグメント》を同梱したPS4版が発売されました。
 話としては、IM(HF)の物語終了後の2025年6月から一週間の出来事で、新生したALOにて新たに実装された《スヴァルト・アールヴヘイム》を舞台に新たなヒロインである《レイン》や《セブン》を迎えて繰り広げられる物語となります。
 ゲームシステムとしては前作のIM(HF)から大きく異なり、よりアクション性を追求したものとなり、オートアクションからプレイヤーがコマンドを入力することで攻撃が発動するものとなり、魔法やフライトモードを採用したことで、より原作に忠実なアクションになっています。
 また、本作はキリト以外にも様々なキャラクターを操作することが可能となり、原作キャラクターやゲームキャラクターの他にも、外伝漫画《ガールズ・オプス》から《ルクス》が登場します。

 また、毎度毎度の如くギャルゲーとしての体も成すかのように《添い寝イベント》も各自用意されているので皆さんもお好みのヒロインを攻略してあげてください。
 僕は真っ先にユウキを攻略しに行きました! ……あ、勿論ストレアも、、、
 
 この作品は割と中古屋で見かけますし、PS4を持ってる方は同梱する《Re:ホロウ・フラグメント》がHFの完全版で各イベント(主に新ヒロインのフィリア関連)が追加された作品になるのでPS4版がおすすめです。


 ではでは、次回……今度は何の話をしましょうか?
 リクエストがありましたら多分……パラドさんが活動報告の方にでもリクエスト板を作ってくれると思うので(人任せ)、そちらの方に書いていただければ、多分ノリノリでその話題について書くと思います。

 それでは今度こそ、また次回にお会いしましょう。クマさんでしたm(__)m


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PARA-DXのボス戦

ユナイタルリングの表紙公開されましたね。アリスはシルフ当たりかな~って思っていたからケットシーの猫耳見た瞬間めっちゃ良いやん!ってなってしまいました。猫好きだから超歓喜!!(アリスケットシーだったら良いな~って思っていたから!)


七十六層にたどり着き十数日――

 様々なアクシデントに見舞われつつも、プレイヤーの攻略への思いは尽きることなく遂にフロアボスとの戦いが始まろうとしていた。

 

「皆さん! 今日……遂にフロアボスとの決戦です。絶対に生きて、勝ちましょう!」

 

 攻略指揮であるアスナの声に、攻略組全員が叫びで応じる。

 

「遂にフロアボスとのバトルか……心が躍る」

 

 パラドもその一人、生来の本能には抗えずに控える戦いに高揚を隠せていない。

 ただ唯一の懸念は、現在並行して行われている《ホロウ・エリア》の調査にエムが赴いているために共に戦うことができない点か。

 

「では、皆さんそれぞれパーティーを組んでください」

 

 喧騒が落ち着いた頃合いを見計らって、アスナが手を叩く。

 最序盤を除いて、今までのボス攻略での最小の戦闘単位は《ギルド》であったが、見舞われたバグの影響とラスボスがトップギルドの団長であったこともあり、正直といったところギルドという単位に拘って限りあるリソースを奪い合うという状態が馬鹿らしくなったというのが攻略組の総意で、全体のバランスを見てパーティーを組む方がいいだろうという案が採用されたのはそんな事情があってのことだったりする。

 

「ねぇねぇ、よかったら私と組まない?」

 

 誰と組むか……そんな風にパラドが悩んでいると、背後から甘やかな声がかかる。

 振り返るとそこにいたのは、先日キリトとエムに絡んできた少女――ストレアだった。

 

「お前は、ストレアだったな」

 

「そうだよ~、よく知ってるね。アタシのこと」

 

「お前のことは見てたからな、エムの中で……」

 

「ふぅん、エムの中……。そっか~、キミがパラドなんだね」

 

 その名を呼ばれたことに、パラドは驚く。

 目の前の少女への疑念は尽きない。さらに強まるばかりだ。

 

「なんで知ってる? 攻略組の人間くらいしか俺のことは知らないはずだぞ」

 

「知っているよ! だって、今までずっと見てきたんだから!」

 

「……見てきた?」

 

 どういうことだ――見てきた、ずっと?

 

「キリトとエムは特別だもん! アタシたちみーんな、二人のことはずっと見てたんだよ?」

 

 空恐ろしくなる――アタシ、たち?

 自分のことをも認知する監視者らの存在は、パラドに恐怖を抱かせるには十分だった。

 

「どういうことだ?」

 

「おしえな~い」

 

 凄んでみるもはぐらかされるばかりで、要領を得ない。

 

「お~い?組まないの?」

 

 当の本人であるストレアは、パラドの警戒心など何の苑だ。

 

「……ああ、よろしくな」

 

 こうなれば、監視者を監視してやる。

 そう意気込んだパラドは、ストレアの伸ばしてきた手を取った。

 

「こちらこそ、よろしくね!」

 

 そんなパラドの思惑をよそに、ストレアは無邪気に笑む。

 

 転移門広場から次々と迷宮区への攻略組のメンバーたち。パーティーを組んだパラドとストレアもその後を追う。

 

 そして迷宮区の最深部までを行く道中で、パラドはリーダーであるアスナに声を掛けた。

 

「なあ、アスナ」

 

「どうしたんですか、パラドさん?」

 

「偵察隊、今回も一応出したんだろ? どんな感じだったんだ?」

 

「スカル・リーパーの前例があるので、部屋の外からしか確認してないから詳しいボスの戦い方とかはわからなかったんですけど――」

 

 アスナからの情報纏めると、ボスは巨大な目に無数の触腕持ちのアンデット属性のモンスターらしい。

 詳しい攻撃方法や配下のモンスターの有無等の情報は部屋の外からは観測できずに情報はないが、一応の作戦は主な攻撃手段であろう触腕を斬り落とすことに専念。以上は敵の攻撃手段によってはアドリブで変更する可能性大の――要は行き当たりばったりだ、

 

「情報がないってのは、やっぱきついな……」

 

「ええ、バグの影響と結晶が使用できないことで無闇に偵察戦が行えないので……」

 

 七十五層からボス戦の場は結晶アイテムが使用不能なのは変わらずで、それが大小様々と影響をきたしている。

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 ボス部屋手前の空間へと辿りついた攻略組。

 装備の最終確認として準備を始めた面々。それらが終わる頃を見計らってアスナが声を掛ける。

 

「では、これより乗り込みます。生きて、次の層へ進みましょう!」

 

「「「「「おお!!」」」」」

 

 攻略組の士気は高い。これならば死者の出る戦いとはならないだろう。

 皆の叫びに、こくりとひと頷きしたアスナはボス部屋の扉に手をかけた。

 

「扉が開いたら、一斉に飛び込んでパーティーごとに散開を!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

 地鳴りとともに開いていく石扉。

 同時に点灯していく部屋の灯りとともに浮かび上がるボスの姿。

 

「きめェ……」

 

 ボスの外観に対してそんな感想を漏らした声は、クラインの物だろうか。

 情報では目玉に触腕の異形とのことだったが、炎に浮かぶ姿はパラドの想像の数倍は醜悪だ。

 

「うわぁ……気持ちわる~い」

 

 隣に立つストレアも軽い口調ながらも嫌悪を口にする。

 が、別にそんなことはパラドにとってはどうでもいい。戦えればそれでいいのだ。

 

「心が躍る……っ!」

 

 ストレージからドライバーとガシャットを取り出す。

 

「マックス大変身!」

 

 ガシャットをドライバーのスロットに装填し、レバーを開く。

 

『赤い拳強さ! 青いパズル連鎖! 赤と青の交差! パーフェクトノックアウト!!』

 

 パラドは赤と青の戦士、パーフェクトノックアウトゲーマーレベル99に変身した。

 

「おお、すごいね~」

 

 その姿を見て、ストレアが歓喜の声を漏らす。

 ようやく扉が開き切る、そのタイミングをじっと待つ。そして――

 

「総員、突撃!」

 

 アスナの号令で攻略組全員がボス部屋内部へ突撃していく。

 皆の目にボスの名前が映る《The Ghastlygaze》――恐ろしい視線、そんな名の通りにぎょろりとした巨大な目を中心とし、そこから先端に口を模した器官を持つ無数の触腕を伸ばすおぞましい姿だ。

 

「うへえ、やっぱきめェ」

 

「好ましい見た目じゃねえな、ありゃあ……」

 

 クライン、エギルがボスの見た目に顔をしかめるが、態度とは裏腹に警戒は解いていない。

 と、その時だ。ボスが突如と力を貯めるように目を細めた。

 

「来るぞ! 避けろ!!」

 

 誰の叫びだろうか、言われずもがな七十五層と突破してきた攻略組の面々は急ぎボスの正面から飛び退く。

 そこをボスの目から放たれた極太の光線が薙ぐ。

 

「距離をとったらヤバそうだな……」

 

 パラドがそう漏らすと、隣にいるアスナが叫ぶ。

 

「皆、一気に踏み込んで!」

 

 距離を取ったら不利。そう結論付けたのだろう、一斉攻撃の指示を出した。

 

「「「「「了解!」」」」」

 

 皆指示に従い、ボスとの距離を詰める。

 無論、距離を詰めればボスの触腕での反撃がくるが、メインの攻撃は目からの光線なのか密度は薄い。

 

「タンク、受けて!」

 

 素早くアスナによる指示が行われる。

 対し、同じく素早く応じたタンク部隊が前に出る。

 

「ぐっ……まだ何とか受けられる!」

 

 エギルが叫ぶ。

 バグの影響による能力低下は大小問わず全員に見られたが、一先ずとボスに一撃を取られるといったことが無いことに安心する。

 

「続いて攻撃隊、各部位に対し攻撃を! 反応があった場合は即座にわたしに!」

 

 出番だ。パラドはパラブレイガンを構えると、即座にボスの目玉――正面の危険地帯へ踏み込む。

 

「ハアッ!!」

 

 一振り、ボスの目玉へ攻撃を加えると――ボスは絶叫のような、不快な声を発した。

 それに合わせ、触腕もうねるように不定形な動きから地団太踏むような感情的なものに変わる。

 

「成る程、弱点はあの目玉か」

 

 この反応ならば、伝えることなくともアスナには伝わるだろう。

 

「目玉……皆! 可能なら目玉を狙って!」

 

 再度のアスナの指示。

 狂乱するボスの攻撃をタンクが捌き、攻撃部隊が目へと攻撃を集中させる。

 

「いっくよ~」

 

 気の抜ける掛け声とともに、強烈な一撃をストレアがボスに叩き込む。

 その一撃はボスに怯みを与えるには十分で、またその隙に皆が追撃を入れる。

 

「へッ! 意外と楽勝じゃねーか」

 

 クラインがそう叫ぶように、ボスのHPは徐々に徐々に減っていく。

 とは言え、流石膨大なボスのHPだ。攻略組の総力によるここまでの攻撃でも二割を削るのがやっとだった。――と、その時だ。

 

「GUGYAAAAAAAAAAA!!」

 

 ボスがさらなる奇怪な叫び声を上げた。

 と、同時オーラのようなものがボスの目玉から噴出する。

 

「なんだ!?」

 

 突然の事態に、パラドは驚きの声を漏らす。

 が、すぐに状況を理解する――身体が、動かなかったのだ。

 

「……っ!? 麻痺か!」

 

 状態異常への対策手段は少ない。

 現在、バグの影響はアイテムにまで影響を及ぼしており、品物として買えるアイテムの中には時間のかかる状態異常回復作用しかないポーションと、バカ高い上に毒消作用しかない解毒結晶のみだ。

 更に麻痺とは最上位の状態異常だ。効果時間は他と比べて短いなれど、効果は驚異であらゆる行動が阻害される。

 

「ぐっ……」

 

 どうにかとパラドが目を配る。

 他の皆も麻痺状態に陥っていては死人が出てもおかしくない。が、見渡した限りでは麻痺に陥ったものは少ない。どうやらランダム効果で各状態異常が付与されたようだ。

 

「これなら……」

 

 どうにか戦える、かは微妙だが少なくとも負けが込むということはない筈だ。

 とはいえ、付与される状態異常について適宜把握しなければ負けは必至だろう。

 

「……面倒だな」 

 

 そんなぼやきが、パラドの口から洩れた。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 ボス戦開始から数十分――幸運にも、これまでの戦いの中でHPをレッドゾーンにまで減らしたものはいない。

 だが、麻痺、出血、毒と様々の状態異常攻撃でじわじわと削られているため、回復アイテムの底が見え始め徐々に不利な展開となりつつある。

 

「こうなったら……」

 

 これ以上戦いを長引かせるわけにはいかない。

 周囲に散らばっているエナジーアイテムを確認し、最適な効果を探す。

 やがて目当ての物を見つけると、パラドは叫んだ。

 

「よし、全員一旦離れろ!」

 

 それを聞きつけたアスナも声を張る。

 

「皆、後退を!」

 

 指示に際し、ボスの周囲に張り付くプレイヤーは急ぎ飛び退く。

 そこへパラドが突っ込みエナジーアイテムを自身に引き当てる。

 

『停止』

 

 アイテムの効果で己以外、周囲の時間を止める。

 能力はクロノスの《ポーズ》に準ずるが、効果時間が十秒と定められているために早急に決めなければならない。

 パラドはベルトを手早く操作すると、構える。

 

『ウラワザ! KNOCK OUT CRITICAL SMASH!』

 

 炎を宿した拳でパラドはボスの目玉を殴り飛ばす。

 同時、停止の効果が切れ、ボスは認知することの叶わない強烈な一撃にダウン状態となる。

 そして、その隙を逃すアスナではない。

 

「今よ! 一斉攻撃!」

 

 指示の元、皆最大火力のソードスキルを発動させ、一気に突撃する。

 凄まじい攻撃の数々に、ボスは残HPの半分を減らす。

 

「次で決めるっ!」

 

 と、ベルトに手をかけるパラド。

 その背後から、ストレアが軽い声で応じてくる。

 

「オッケー! 任せてよ、パラド!」

 

「うおっ! いつの間に!?」

 

 気配なく現れた声に思わず驚きを口にするパラドだが、当のストレアは気にしたげもない。

 

「そんなの良いから決めるよ~!」

 

 そう無邪気に笑いながら両手剣を構えるストレアに苦笑しつつも、パラドは再びエナジーアイテムを自身に引き寄せる。

 

『マッスル化 マッスル化』

 

 二つの効果を受けたパラドは、即座にベルトを操作する。

 

『ウラワザ! PERFECTKNOCK OUT CRTICAL BOMBER!!』

 

 炎とパズルのエフェクトがパラドの身体を包む。

 機を見計らって、飛び上がるとそのままボスに向かいバフの乗ったキックを放つ。

 

「いっけェ――!!」

 

 無論、ボスとて必殺の一撃を甘受するわけはなく、抵抗として触腕を無数にパラドへ向けて伸ばしてくる。

 しかしその程度で死ぬほどの威力ではなく、一瞬にして触腕を引きちぎるように突破すると必殺のキックをボスの()()へと叩き込む。

 

『GREAT!』

 

 痛恨の一撃を示す音声とともに、パラドは着地する。

 が、そこへボスの触腕が襲い掛かる。

 

「なに!?」

 

 咄嗟のことに回避が遅れ、防御姿勢を取るも吹き飛ばされるパラド。

 

「浅かったか!!」

 

 ダメージに喘ぐ中で漏らす。

 どうやら、抵抗の末にキックの軌道をずらされ弱点部位の目玉を狙ったはずが外れていたようだ。

 

「でも、後一撃……っ!」

 

 流石に痛恨の一撃。ボスの残HPは表示上一ミリも残っていない。

 だが、すぐに動こうにも必殺技発動直後の無防備な瞬間を狙われ、軽度のスタンを起こしてしまっている。

 さらに死にかけとなったボスは最後の足掻きと残った触腕全てを遮二無二振り回しており、とても近づけたものではない。とそこへ――

 

「まっかせて~~!」

 

 ストレアがボスに向かい走る。

 

「待て!」

 

 引き留めるべくパラドは叫ぶも、ストレアは止まらない。

 無秩序に振るわれる触腕の攻撃の雨の中を、まるで予知しているかの如く躱し、とうとうボスの眼前にまで迫る。

 

「これで、トドメ~!」

 

 そう可愛らしく告げるのとは裏腹に、構える両手剣から放たれるソードスキルは《ライトニング》。

 両手剣の技としては数多い四連撃の重範囲ソードスキル。ただでさえ火力の高い両手剣スキルのそれらすべてをボスの目玉一点に叩き込むのだから、威力はオーバーキルものだろう。

 たちまち、ポリゴンの欠片となって砕け散っていくボス。

 同時に、周囲から安堵の――そして歓喜の声が上がる。バグの影響後初のボス戦にて死者ゼロで攻略を行えたことはそれほどの結果だ。

 

「ふう……」

 

 疲労のため息とともにパラドが変身を解除すると、そこへストレアが近付く。

 

「お疲れさま。パラド」

 

「ああ……お疲れ」

 

 笑みとともに手を振る少女には、悪意の類を感じない。

 だが、それ故にパラドの中でのストレアへの疑念が強まる。

 

(あれだけ強いのに、なんでここまでストレアの名を一度も聞かなかった? 少なからずあの目敏いヒースクリフが名を上げなかったというのは変だ)

 

 上手く考えが纏まらない。エムがいたなら、もう少し……わがままは言えない。

 とりあえずパラドは、上がる歓声の中をアクティベートの為に次の層への階段へと向かう。

 

「待ってよ~! パラド!」

 

 それを目敏くストレアは引き止める。

 

「……何だ?」

 

「んふふ~なんでもないよ。ちょっと待ってね!」

 

 できれば今はストレアとは絡みたくない。

 その意を込めながら言うが、ストレアは関係ないとばかりに無邪気に笑う。

 と、突然パラドの目の前にトレードウインドウが現れる。

 

「これは、何だ?」

 

「ボスのLAボーナスだよ~、アタシ要らないからあげる!」

 

 まさか、パラドは驚きトレードウインドウのアイテムを見る。

 LAボーナスは一つしかない物それを渡すとはどういう事か、問いただそうとウインドウから顔を上げると――

 

「……いない」

 

 もう既に、ストレアの姿はどこにもなかった。

 

「あいつ……いったい何なんだ? 何が目的だ?」

 

 パラドの疑問に応える者はいなかった。

 

 

 




活動報告で短編アンケートとクマさんの後書きアンケート行っております。



 はいどうも、クマさんでございます。
 今回はなにをネタにしようかを五分くらい悩みましたが……場面の補完にSSでも


 ――場面は第四話「これまでのEvent」より、キリトがアスナに部屋に連れていかれたところからです


 階段を上り、廊下を渡り、一分にも満たないほどの短い時間だったがその間も俺たちは無言だった。
 アスナは決して俺に顔を見せようとせず、俺の方も負い目故に中々アスナに話しかけることが憚られる。
 とは言え、部屋へと辿りつき、既に五分近くが経とうという頃になってもその状態というのは居心地悪いというものではない。耐え切れず俺は擦れた声で話しかける。

「おい、アスナ。もう部屋に着いたし……」

 と、今までだんまりだったアスナが、ごく小さな声を発した。

「――った」

 声を聞き取れず、俺は尋ねる。

「アスナ……?」

 振り返るアスナ。その頬には涙が伝う。

「……怖かった」

 その涙を拭うべく、キリトは手を伸ばす。
 目尻に溜まっていく涙。それを軽く拭ってやると、震えた声でアスナは想いを吐露する。

「キリト君と連絡がつかなくなって、キリト君が死んじゃったんじゃないかって」

 伝えられた想いに、俺は衝撃を受けた。
 アスナを信じすぎていた。連絡が少し途切れたくらいで、アスナがここまで弱るとは思っていなかったのだ。

「……俺は死なないよ」

 言い訳、というわけではない。
 それは決意だ。アスナを残したまま死なない、揺らがぬ決意だった。

「嘘、あの時だって……キリト君、死ぬ気だった」

 その決意を、アスナは頭を振って否定する。
 あの時、とは七十五層でのヒースクリフとの一騎打ちの件だ。

「……あの時は、あいつが――ヒースクリフが茅場だって知って、許せなかった」

 今は、どうなのかもわからない。
 あいつへの怒りは本物だ。だが、同時にこの世界が無ければアスナと出会うこともなかったのだ。
 恨む気持ちもある。妬む気持ちもある。だが同時に、感謝の念も抱くのだ。
 この世界が無ければ、家族(リーファ)とも向き合おうとは思わなかったのだ。

「キリト君……」

 不安げに揺れるアスナの目。
 俺はその目を見つめ返すことができない。想いの吐露が、収まらない。

「だって、そうだろ? 攻略のために命を懸けて、直前にだって先遣隊が全滅してる。なのに、攻略組のリーダーがあいつで、馬鹿みたいじゃないか」

 全てはあいつが生み出した壮大なマッチポンプ。
 その上で転がされた想い、出会いすらも奴の掌の上だと思うと――今も怒りがこみ上げる。
 なのに、やはり俺はあいつを恨み切ることができない。感情をどこに持っていけばいいのかわからない。

「……ディアベルも黒猫団の皆も――いや、それどころかこの世界で死んだ人たちが全員馬鹿みたいじゃないか」

 ドロドロした感情が渦巻く、どうしてこうも俺は弱いのだ。
 強くあれたなら、こんな風に悩む必要もないのに。

「それがどうしても、俺には許せなかった」

 最後、そう締めくくると、暗い感情はすっと落ちていった。
 口に出したことが功を奏したのか、ただ空しさだけが心の中に残る。

「……キリト君」

 悲し気な、そして包み込むような甘やかな声だ。
 俺の中の弱いところも、醜いところも全部受け止めてくれるような。

「キリト君の気持ちは、わかるよ。……でも、わたしは前に言ったよ」

 暖かな感触が俺の頬を包む。
 アスナの目が俺の目を捉える。
 
「キリト君のいない世界なんて、意味がないよ」

 アスナの目には、もう悲しみはない。
 決意に満ちていた。強い、意思よる決意だ。

「だから、もう無茶は……しちゃうよね。キリト君、優しいから」

 苦い顔をみせるアスナ。でも、すぐに優しく微笑みかけてくれる。

「帰ってきて、わたしはキリト君が帰ってくるのを待ってるから」

 本当に、アスナには敵わない。

「……わかった。ちゃんと帰るよ、アスナのところに」

 新たな決意は、もう揺らがせない。
 飛び切りの笑顔が、俺を待っているのだから。

「うん」

 綺麗だ――これからも幾度と思うのだろう。

「なあ……アスナ?」

 ――微笑みを守ろう。

「なに? キリト君」

 ――喜びを守ろう。

「今日も……アスナと一緒に居たいな」

 ――アスナを守ろう。

「……うん、わたしも」

 とりあえず今日は、アスナと共に過ごそう。


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謎のPendant

遂にSAOウエハースを買えたぁぁぁぁ!!!!!


 ――パラドがフロアボスと戦っている頃エム達も《ホロウ・エリア》攻略のため奮闘していた。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 ホロウ・エリアの管理区に転移して早々、エムとキリトの二人はフィリアに連れられ、どこかに向かっていた。

 

「なあ、フィリアさん?」

 

 そんな道中、キリトがフィリアに問いかけた。対して、レスポンスはそんなに早くない。

 

「……何?」

 

「俺たちどこに向かってんのか、いい加減教えてもらえませんかね……?」

 

 VR世界に疲れはないが、長々目的地も知らされず歩かされれば疲れもする。

 耐え切れずの、キリトの問いかけだった。

 

「《二人が邂逅した教会》の奥に隠し扉を見つけたの、目的地はそこ」

 

 フィリアの答え。と、それを聞いたエムが苦笑気味に呟く。

 

「凄い洒落た名前だね……」

 

「アイツらしいと言えば……まあ、らしいよな」

 

 二人が邂逅した教会。そんな名前がついているということは、アイツ――ヒースクリフこと茅場晶彦は未開放に設定したエリアにまで律義に名前を付けていたことになる。

 律義な奴だ、と呆れ気味にキリトは同意した。

 

「?」

 

 何のことだかさっぱりのフィリアは首を傾げるしかなかった。

 

 

 

 

 

 その後、フィリアに連れられるまま教会に入り、細々POPした敵を処理しつつ隠し扉があるという場所まで向かう一行。

 教会を奥へ奥へと進み、たどり着いたのは教会最奥の礼拝堂の隅だ。

 

「ここが、わたしの見つけた隠し扉」

 

「確かに、ここだけ床の色が違うね……」

 

 と、エムが視線を落とすと、確かに隠し扉と目される場所だけ床の色がだけが赤い。

 

「モンスターが待ち構えてるだろうし、気をつけて行くぞ」

 

 キリトの忠言に、こくりと頷き合うと三人は隠し扉の中へ一気に入り込む。

 

「敵は!」

 

「一体! ゴーレム型!!」

 

 即座の状況把握、敵は背後の宝箱を守護するように位置する石ゴーレムが一体。

 そして恐らく、後ろの宝箱はフラグによるロックで、目の前のゴーレムを倒さなければ開かない。

 

「《The sanctuary》、聖域……ここの守護者だな」

 

 石ゴーレム、《The sanctuary》は早速と唸りを上げ襲い掛かってくる。

 三人は散らばりつつ、即座に壁役にキリト、ディーラーにエム、遊撃にフィリアと展開する。

 

「ゴーレム型には打撃属性以外は効き辛い、二人ともソードスキルは打撃属性を!」

 

「「了解!」」

 

 エムの指示が飛び、そのまま消極的な戦闘が始まる。

 石ゴーレムは固く、STRも高い。全員が軽装故に迂闊には近づけず、武器も皆剣なのでじわりじわりとしかダメージを与えられない。

 

「……あんまり時間もかけてられないし、頭数を増やすか」

 

 そんな戦闘が十分ほど続いた頃、ぼそりと呟いたエムが動いた。ストレージからゲーマドライバーを取り出し、マイティブラザーズXXを起動させる。

 

『マイティブラザーズXX!』

 

「あれ? エム……それってパラドがいないと使えないんじゃなかったか?」

 

「まぁ、見ててよ」

 

 不安を口にするキリトに、エムはにやりと笑みを浮かべると、ガシャットをベルトに挿入した。

 

「だ~~い変身!!」

 

 掛け声とともにレバーを展開、エフェクトがエムの身体を包む。

 

『俺がお前で! お前が俺で! (ウィーアー!) マイティ! マイティ! ブラザーズ! (ヘイ!) XX!!』

 

 音声の完了とともに、ダブルアクションゲーマーレベルXXに強化変身を完了したエムたち。

 

「「ええ!?」」

 

「「超キョウリョクプレイでクリアしてやるぜ!」」

 

 キリト、フィリアの二人の驚愕の声を背に、いつもの決め台詞をキメるエムたち。

 

「しゃあ! 行くぜ、俺!!」

 

 Rのエムは、ガシャコンキースラッシャーを呼び出しながら語調荒く、半身に呼び掛ける。

 

「はい!」

 

 Lのエムは、半身に応えるようにガシャコンブレイカーを構えると、二人同時に突撃していった。

 そこからはエムの独壇場だ。パラドの時とはまた異なる、圧倒的なコンビネーションでゴーレムに攻撃をさせずに、抑え込んでいる。

 

「……なぁ、エムさん?」

 

 手隙となったキリトは、戦闘中のエムにふと問いかけた。

 分身するだか、ロボになるだか、驚きには慣れているはずだったが、流石に……というわけだ。

 ちなみにフィリアは理解が追い付かないのか、ただ唖然としている。

 

「「何だ(かな)、キリト(君)?」」

 

「うぉ!? 同時に返事するなややこしい! てか、どうなってるんだよ!?」

 

 返事は二つ、語調は違えども声は同じなので耳が混乱してしまう。

 

「どうなってるって?」

 

 改めて、Lのエムが返事をする。

 

「いやその形態って、パラドがいなきゃ使えないんじゃないのか?」

 

「あぁ……」

 

「そういや、特に言ったこともなかったな」

 

 二人のエムが目を見合わせて、一瞬悩むがすぐにLのエムがまた答えた。

 

「じゃあ、とりあえず僕たちのことは後で。今は目の前に集中!」

 

「っしゃ、行くぜ!!」

 

「お、おう……」

 

 得心ゆかぬ……そんな表情を浮かべるキリトだったが、エムの言うことも最もと納得したのか、改めて剣を構えるとゴーレムに突撃していった。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「うぉりゃ!」

 

「ナイス! 俺!」

 

 あれから少し……十分程か、ゴーレムのHPがようやく三割に迫る。

 無論、それには二人のエムの奮戦があればこそで、増えた手数を有用に活用していた。

 

「何か……もう、凄いな」

 

 呆然と呟く、キリト。対し、たまたま側にいたフィリアもぼそりと震えた声で呟く。

 

「俺とか僕とか、自分同士なのによく一緒に戦えるわね……わたしだったら」

 

 震える身体を隠すように腕を抱えるフィリア。

 なにかあったのだろうか――問いかけようと、キリトは息を呑むがすぐにフィリアは頭を振った。

 

「なんでもない、わたしたちも行きましょう」

 

「ああ……」

 

 生返事を返しつつ、既に短剣片手に突貫してしまったフィリアに追従するように、キリトは《ヴォーパル・ストライク》を起動させ、自身も突撃する。

 

 

 

 

 戦闘は未だ続く。

 HP三割を切ってからのゴーレムの抵抗が激しく、深く攻め入れないことが長時間戦闘の要因だ。

 だが、その状況の中でも二人のエムはゴーレムの重攻撃の隙を見て、見事な連携攻撃を見せる。

 

『マッスル化』

 

 まず、Lのエムがアイテムで強化された筋力で、振り下げられたゴーレムの巨腕を無理矢理に跳ね上げる。

そして――

 

「オラッ!!」

 

 そこに滑り込むようにRのエムが飛び込むと、素体のスペックによるパワーで一気に斬り刻む。

 無論、耐性の高いゴーレムなのでダメージは低いが、積み重ねられた攻撃もあり、HPは一割を割る。

 

「一気にトドメだ! いくぜ、俺!!」

 

 好機とみたLのエムがキースラッシャーを構える。

 

「フィニッシュは必殺技で決まりですね!」

 

 そして、答えるようにRのエムがホルダーからガシャットを抜く。

 

『『ガシャット!』』

 

 二人のエムがキースラッシャーのスロットにガシャットを挿入する。

 

『キメワザ! ACTION SPORTS CRITICAL FINISH!!』

 

 音声の発動を確認したRのエムは、即座に突撃姿勢に入る。

 それを見たLのエムが先に突撃して、まずゴーレムへの攪乱を行う。

 

「今!」

 

 指示が飛び、Rのエムは一気に突貫する。

 Lのエムの攪乱により、空いたゴーレムの防御の隙間を見事に突く。

 

「喰らえ!!」

 

 キメワザの一刀がゴーレム身体を切り裂く。

 残HPの一割がぐんぐんと減っていき……やがてゼロへと――

 

「っ!? 残った!」

 

 ならなかった。手数は増えても、レベルXXでは総じて火力が足りなかったのだ。

 退避するべくLのエムはすぐに動き出すも、ゴーレムが腕を振り上げるが早い。

 

「まずい! フィリア!!」

 

 キリトは即座に動く。フィリアに呼びかけ、自身も出の速いスキルである《ソニック・リープ》を起動させ、一気にゴーレムに迫る。

 

「うん!」

 

 フィリアも、続くように打撃属性三連撃スキル《シャドウ・ステッチ》を構える。

 

「届けッ!!」

 

 エムに向かい振り下ろされる剛腕に、キリトは剣を間に合わせた。

 衝撃とともにぶつかり合うが、ソードスキル行使の優先度が勝り、ゴーレムの剛腕を弾き返す。

 

「今だ! フィリア!!」

 

「セヤァァァァァ!!」

 

 怒涛の三連撃が、ゴーレムの体表を砕く。

 HPを散らしたゴーレムは、その構造を保てなくなり自壊。次いで、残骸がポリゴンの欠片となって消滅した。

 

「……死ぬかと思った」

 

「ふぅ……」

 

 二人のエムは互いに倒れ込みながら安堵の息を吐くと、変身を解除する。

 

「お疲れ、エム」

 

「お疲れさま、キリト君」

 

 長時間の戦闘に互いに憔悴した面持ちだが、まだ笑顔を向けるだけの余力はある。

 差し出されたキリトの手を借り、起き上がると早速フィリアの方は部屋の奥に出現した宝箱を鑑定しているようだった。

 

「中身の方はどうだ? まさかトラップだったりは無いだろうけど」

 

「うん。トラップじゃなさそう」

 

「じゃ、とっとと中身見て帰ろうぜ」

 

 キリトの進言にこくり頷いたフィリアは、一応警戒しつつ慎重に宝箱を開く。

 ギィギィと軋みを上げて開かれた宝箱の中には、ペンダントが収納されていた。フィリアはそれを手に取ると鑑定スキルにかける。

 

「《虚光に燈る首飾り》……? 装備アイテムじゃないみたい」

 

「ってことは、フラグアイテムなのかな?」

 

「だと思う。けど、ペンダントがフラグになるようなところはまだ見つかってない」

 

「てことは、まだ未探索のエリアか……」

 

「ここまで随分と探索したと思うんだけどね」

 

「でも、未開拓のエリアってことは逆に範囲が絞れてるって事にもなるわね」

 

 と、言い合う三人だったが、話はエムにメッセージが飛んできたことで一時中断される。

 そのメッセージの送り主はパラドで、内容は七十六層攻略完了! というものだった。

 

「とりあえず……今日はここでお開きかな? パラドたちも七十六層を突破したみたいだし」

 

「お、マジか! じゃあ、どっちにしろ向こうで話を纏める必要がありそうだし、俺たちは先に戻るよ」

 

「うん。わたしのほうもできるだけ調査はしておく」

 

「悪いな、色々任せっぱなしで」

 

「いいよ。二人は血盟騎士団所属なんでしょ? ホントは階層攻略をしなきゃいけないのに、こっちに来てくれるだけでありがたい」

 

「いや、もう俺たち自由所属みたいな感じだからな……」

 

「勧誘してきた団長がね」

 

 苦笑し、どこか遠い目を見せる二人だが、やはりフィリアには意味が解らない。

 そのまま話は流れ、三人は一度管理区に引き返すのだった。

 

 

 

 

 

 ――尚、その帰路にて思い出したかのようにキリトに先の件について触れられ、エムは面倒な説明を余儀なかうされたのはご愛嬌。

 

 

 

 

 

 

 




《後書き》

 ダブルアクションゲーマーのエムたちって地の文でどう区別したらいいんでしょうね(思考放棄でRとLにした人)
 
 あ、どうも後書き兼監修担当のクマさんです。
 なんかもう書くことないなと思いつつ、一月後には受験じゃねーか(白目)ということで、今日はここで終わらせて


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AREA BOSSへの挑戦

どうも前書き兼下書き担当のパラドファンです。
マイティブラザーズXXの登場率高いですよね?理由は簡単ダブルアクションゲーマーレベルXXが好きだから


 謎のペンダントを入手して数日。

 キリトがアスナとともに攻略して七十七層の攻略を進めていると、その間に先日教会にて発見したペンダントについての調査が終わったらしく、フィリアからメッセージが届いた。用件は簡潔、先日入手したペンダントについての続報が掴めたらしい。

 ただ、そこで問題が発生した。付随しての情報に、《今すぐ来て》と記されていたのだ。

 

「うえっ!? 今からかよ……」

 

 その内容にキリトは驚きを隠せない。

 当然だ、今現在キリトはアスナと攻略(デート)しているのだ。

 これを、呼び出しを理由に無碍にすればアスナが怒るのは必至。だが行かなければ、それはそれでフィリアが怒るのも必至。

 いきなり突き付けられた究極の二択に、固まるキリト。そしてそれを不審に思ったアスナは首を傾げ、心配げに問う。

 

「キリト君、どうしたの?」

 

「いや、あの……アスナ、悪いんだけど……」

 

 ――誤魔化さなければ!

 即座にその思考に至ったキリトは、どうにかうまいこと……と言葉を探るが、その様子はどう見ても挙動不審。

 アスナはすぐにその理由に思い至り、その栗色の目を細める。

 

「ふーん。キリト君はわたしとの攻略(デート)をすっぽかしてまで、他の女の子のところに行くんだ?」

 

 ――今この状況で緊急の呼び出しなら、ホロウ・エリアにいるというフィリアのことだろう。

 即座にそこまで辺りをつけたアスナは、自分でも自覚できるほどに棘を含んだ語調でキリトに訊ねた。

 

「で、デートって……確かに久しぶりの二人での攻略だけどさ――」

 

「つーん」

 

 キリトが言い切るまでもなく、アスナに取りつく島などない。

 

「あ、アスナ~……」

 

 どうしようもないと、泣きそうな声になるキリト。

 その姿を見て、アスナはしかたないと盛大なため息を吐く。

 

「はぁ……もう今更だよね」

 

「アハハ……」

 

 乾いた笑い、キリトは思わず目を逸らす。

 呆れ半分、しょうがなさ半分のアスナは先日リズが酒場で攻略パートナーがいないことを愚痴っていたことを思い出す。

 

「……ちょうどリズがレベル上げしたいって言ってたし、わたしはそっちに行くから」

 

「わ、悪い……」

 

 許しを得れたと安堵の表情を浮かべるキリト。だが、アスナとてそのまま許すわけではにはいかない。

 攻略《デート》を無為にした分の対価はしっかりと払ってもらわなければならない――アスナはニコリと、キリトに微笑みかける。

 

「その代わり……今度新しく見つけたスイーツのお店、キリト君の驕りね?」

 

 ケーキ一つ《ちゃんとしたデート一回》で許してあげるのだ。対価としては十分に安いだろう。

 アスナはうんと一つ頷くと、もう一度キリトに微笑みかける。

 

「いいわよね?」

 

「え、ア……ハイ。わかりました」

 

 思考の処理が終わったキリトが頷いたのは、すぐのこと。

 

「よろしい」

 

 満足いく結果に、笑みを浮かべたアスナは足早にその場を去っていく。

 取り残されたキリトは、ほの暗い迷宮区の通路に気落ちした様子で一人佇む。

 

「……フィリアのとこ、行くか」

 

 最後に、キリトのそんな呟きだけが辺りに深々と響き渡った。

 

 

 

 

 

 そして、途中エムと合流したキリトは早々に《ホロウ・エリア》へと飛ぶと、フィリアに状況を訊ねた。

 

「で、そのペンダントが関係ありそうな場所はどこなんだよ?」

 

 キリトの問う姿勢に肌を刺すような剣気が含まれており、若干気圧される他二人。

 

「……なんか、怒ってる? キリト君」

 

「いや、別に」

 

 エムが尋ねると、キリトはその針のような剣気を僅かに弱める。

 

「そ、そう……」

 

 触らぬ神に祟りなし、そう感じたエムはこれ以上の追及はしない。

 代わりにフィリアにちょっと説明を急ぐように目線を配る。

 

「……樹海エリアの西の端に神殿にペンダントと同じ形をしたくぼみがあったのよ」

 

「神殿……?」

 

 少し擦れ気味なフィリアの説明だったが、キリトの興味を引くには十分だったようで剣気はぱたりと収まる。

 内心ほっと息を吐くと、フィリアはさらに説明を続ける。

 

「うん。次のエリアに繋がる橋の封印を解除できるのは……多分そこ」

 

「多分か……」

 

 眉を顰めるキリト。

 

「でも、確証は高いんだよね?」

 

 逆に、眉を開くエム。

 

「だから、行く価値は十分にある」

 

 確信のフィリアの言葉に、エムとキリトの二人は共に笑みを見せる。

 新エリア、神殿。戦闘狂に片足突っ込む二人には、そのどれもが魅力的な響きだ。

 

「よし、乗った」

 

 勇み立ち上がるエム。

 

「俺も……早く帰って、アスナに謝らないと」

 

 続くキリトだが、ぼそりと何かを呟いた。

 

「え?」

 

「ん、ああ! なんでもない、行こうぜ!」

 

 エムが問いかければ、嘘のような大声を上げて先を行くキリト。

 

「……キリト、そっち反対」

 

「え!?」

 

 どうにも締まらない感じに、三人は神殿へと向かい始めた。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 フィリアの案内で道中に苦戦らしい苦戦はなく、三人は『供物を捧げた神殿』へと辿り着く。

 前回で赴いた教会とはまた趣が異なるものの、神聖さと異様さを合わせた雰囲気の石造りの建物には三人も意図せず唾を飲む。

 

「……ここの奥に、ペンダントと同じ窪みの扉があるの」

 

「なるほど……そこに、橋の封印を解く手掛かりがあるわけだ」

 

「そういうこと」

 

「じゃあ、行こうか」

 

 そうして三人、互いに頷き合うと神殿内に乗り込むのだった。

 

 

 

 

 

「おりゃああああ!」

 

 怒涛の剣戟、二刀から紡がれる流れるような剣技で現れるモンスターの悉くを粉砕していくキリト。

 その後ろを行くエムとフィリアには最早出る幕はなく、慣れた様子のエムは早々に剣を鞘に納めたが、フィリアの方は短剣を握ったまま軽く引いていた。

 

「なに、あれ……」

 

 フィリアからそんな台詞が漏らされる合間にも、キリトの二刀は現れるモンスターを粉砕していく。

 その様はスキルレベルがリセットされた筈だというのに、ゲームバランス崩壊級のものだ。

 

「あれは病気みたいなものだから……やらせとけばいいと思うよ?」

 

 流石のエムもキリトのバーサクぶりに呆れているようだったが、それを聞いたのだろう戦闘中のキリトから苦言が飛ぶ。

 

「お前も似たようなもんだろ……自分だけ違うみたいに言うなよ!」

 

「……じゃあ、僕に代わってくれる?」

 

 そうエムがからかうように返せば、キリトが苦い顔となる。

 

「も、もう少し」

 

 思わず噴き出してしまうエム。対し、フィリアは何とも言えない呆れ顔だ。

 

「もう、ただのバーサーカーじゃない……」

 

「あはは……否定は、しないかな、、、」

 

 結局、その後の戦闘もキリトが請け負い、三人は無事に神殿の最奥までたどり着いた。

 赤い宝石を豪勢にあしらった黒鉄製の巨大な扉以外に何もない空間。万が一に罠の可能性を考えて慎重に進むが、それ以上は特に何もなく、三人は最奥の扉の前に立つ。

 

「この扉……確かにペンダントと同じ形の窪みがあるね」

 

「橋に繋がる門にはペンダントと同じ紋様があったから、この部屋を調べれば行けると思う」

 

「……でも、確実にボスはいるだろうなぁ。しかも中ボスとかじゃなくて、ちゃんとした大ボスが」

 

「だよね……。本当なら、攻略組の皆を連れてきたいところだけど」

 

 巨大な扉に守られる部屋の中、ボスの存在にエムが頭を悩ませた――その時。

 

(なら、俺も混ぜてくれよ)

 

 頭の中に声が響いた。

 そして自身の内で跳ね上がる好奇の感情に、エムは自身の内にいる『相棒』の存在を認知する。

 

「パラド……わかった、久々に協力プレイだ」

 

 口許を緩ませ、相棒の声に応じるエム。

 その様子に、フィリアは訝しげにキリトに問う。

 

「……ねえ、エムは誰と話してるの?」

 

「ああ……まあ、すぐに出てくるよ」

 

 曖昧なキリトの答えに、フィリアは首を傾げる。

 

「どういうこと?」

 

 再度問うが、キリトからの答えはない。

 仕方ないので、フィリアはエムに問おうと彼の方を見る。すると――

 

「うわっ!?」

 

 突如、エムの身体から粒子のようなものが吹き出し、それが瞬く間に人の形を形成した。

 

「エムと一緒に戦うのは久しぶりだなぁ……心が躍るぜ」

 

「そうだね……今日はよろしく、パラド」

 

 現れた人型に平然と応じ、和気藹々と話し始めるエム。

 それとは逆に、突然の状況に困惑し自失するフィリアの姿がそこにはあった。

 

「…………」

 

「お、おーい、フィリアさーん?」

 

 キリトの呼びかけで、どうにか正気を取り戻したフィリア。

 困惑しきりといった様子で、現れた人型――パラドを指差しながら、漠然と問いかける。

 

「そ、その人は……?」

 

「あ、ああ……そういえば、言ってなかったね」

 

「俺はパラド。二人で一人の、永夢の相棒だ」

 

 相棒はキリトじゃなかったのか――そんな思いが浮かぶが、様々処理が追い付いていないフィリアは曖昧に頷く。

 

「へ、へえ……」

 

「とりあえず、詳しいことは置いて早く行こうぜ」

 

 キリトが促し、四人は連れ立って扉の中へと入っていく。

 そうやって侵入した扉の奥――ボス部屋と目される部屋は、相当に広い空間だが目ぼしい物は何もなく、当のボスの姿も確認できなかった。

 

「ひゃ~、馬鹿みたいに広いな」

 

「でもボスがいないな」

 

「設定ミス……なのかな?」

 

 口々に言い合いながら部屋を探索する四人。

 ひとしきりに気になると場所を調査するが、そのどれもフラグにならないのか、イベント又はボスが現れるような様子はない。

 

「……本当に、何もないの?」

 

「そんな筈はないだろ、わざわざ部屋に入るのにペンダントを使ったんだ。ペンダントまでのクエストフラグは立ったし、何もない筈が……」

 

 キリトの言葉に皆一様に首を傾げるが、考えるだけではフラグは立たない。

 

「一回、ペンダントを見つけた教会に行ってみよう。もしかしたら何かあるかもしれないしね」

 

「エムが言うなら……行ってみようぜ」

 

「そうね、ここで無駄足踏んでたくはないし」

 

 結局、一度この場での探索を諦め、ここまでのイベントを改め直すことにした。

 ひとまず神殿を出よう……四人が大部屋の出口に向けて、歩き出したその時――

 

「……っ!? 後ろ!!」

 

 何かに気付いたフィリアが叫び、それに反応した三人は一気に飛び退く。

 そこにほぼ間を置かずして、巨大な獣の爪が音もなく振るわれる。

 

「部屋を出ようとするのが、ボスの出現フラグとか陰湿すぎるだろ!!」

 

「ちょっと茅場の神経を疑うかな……」

 

「ゲンムといい勝負だぜ……」

 

 流石の出来事に、皆から口々に茅場の呪う声が上がるが、それでボスが消えてくれるわけではない。

 四人は即座に体勢を立て直すと、抜刀。

 先ほどの攻撃を放ってきた相手――ボス《The Shadow Phantasm》へと向き直る。

 

「デカいな……」

 

 キリトから、ため息交じりの声が漏れる。

 そんなキリトの声に、改めてエムはボスの姿を観察する。

 血色の肌をした、超巨大の四足歩行の獣。体中に鎖を巻き付かせ、頭頂部や胴体には巨大なクリスタルが突き刺さる。目や耳などの感覚器官に当たるものはなく、顔と思しき場所に真一文に走る牙が覗く巨大な口だけが、唯一生物であると印象付けるような化け物だ。

 ボスが唸りを上げる。続けて、口を開くことなく爆発的な咆哮をあげ、その衝撃に四人はたじろぐ。

 

「ぐッ……せやあああああ!!」

 

 そんな咆哮の中を、キリトは叫びと共に強引に突破し、右前足の腱に向けて一閃を放つ。

 が、キリトの攻撃はボスの強靭な筋肉に阻まれて刃を通さない。

 

「マジかよっ!?」

 

 パラドが驚きの声を上げた。

 攻撃特化仕様(ダメージディーラー)のキリトの攻撃ですら意に介していないというのは、初撃で得られた情報として嬉しいものではない。

 続く二撃、三撃をキリトが放つ中、エムは大きく息を吸うと叫んだ。

 

「……僕がボスのヘイトを稼ぐから、キリト君が攻撃、フィリアさんが遊撃、パラドは後ろで援護を頼む!」

 

「了解!」

 

「わかった」

 

「心が躍るな……!」

 

 三人が了解の意を示し、エムとパラドの二人はガシャットを構える。

 

「「変身!」」

 

『レベルアップ! シャカリキ! シャカリキ! バッドバッド! シャカっと リキっと シャカリキスポーツ!』

 

『DUAL UP! Get the glory in the chain! PERFECT PUZZLE!』

 

 こうして、ボス《The Shadow Phantasm》攻略戦の幕が開かれた。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 ボスとの戦いは既に半時間を超えた。 

 攻撃には隙が無く、合間合間に使ってくる攻撃技も範囲技や陰に潜んでの潜伏技、その他にも周辺にダメージ床を残す技等があり、中々ダメージディーラーであるキリトが踏み込めないのが原因だ。

 と、そうしてる間にもボスは、後ろ脚だけで立ち上がった――これは範囲攻撃の予備動作だ。

 

「範囲攻撃だ、離れろ!!」

 

 それに、いち早く気がついたパラドが叫び、皆一斉に距離を取る。

 同時、ボスの周囲に影の柱が現れ、辺り一面を暗黒で包む。

 

「くそっ! こっち近づかなきゃ、まともに攻撃できないってのに……」

 

 愚痴漏らすキリト。対しエムは、仮面の下で不敵な笑みを見せる。

 

「それなら、俺に手がある!」

 

 そうしてエムは肩の車輪を抜くと、ガシャットをキメワザホルダーに挿入した。

 

『キメワザ!』

 

「エム、どうするんだ?」

 

「まあ、見てろって」

 

 問うてきたキリトに軽快に答えると、エムはパラドに呼びかけた。

 

「パラド!」

 

「行くぜ、エム!」

 

 心得たと、パラドはパズルゲーマーの能力でエナジーアイテムを操作し、エムにエナジーアイテムを弾く。

 

『音速化! 金剛化! 剛力化!』

 

 効果を受けたエムは、車輪を構えるとホルダーのスイッチを押す。

 

『SHAKARIKI CRITICAL STRIKE!』

 

 エナジーアイテムの力により強化された車輪は――威力と、硬度と、速度を持って、ボスを襲う。

 

『GREAT!』

 

 その威力は、ボスの巨体を容易く吹き飛ばし、三本あるHPバーの内の一本をあっという間に削り去る。

 

「よっし! 残り一本!!」

 

 だが、喜ぶのも束の間だった。

 吹き飛ばしたはずのボスは、その巨体を躍らせると、先刻のように爆発的な咆哮を上げた。

 

「な、なんだ……っ!?」

 

 だが、先刻と違い、目も開けてられないほどの衝撃に皆が動けずにいると、ボスの姿に変化が起きた。

 なんと、体に巻き付いていた鎖が拘束具ごと全て外れたのだ。

 

「鎖が……外れた?」

 

 変化は続く。拘束具が外れると同時、今まで咆哮の際ですら開かれることのなかったボスの真一文に走る口が開いたのだ。

 

「うわっ、口の中グロいな……」

 

「感想、言ってる暇ないよ」

 

 思わず引くキリトにフィリアが突っ込んだ、一瞬の後。

 ボスは先ほどまでとは比べ物にならないほどの速度で、四人に突撃してきた。

 

「みたいだなぁ!!」

 

 回避しながら叫ぶキリト。

 

「いや、早すぎだろ!?」

 

 エムも釣られるように叫ぶ。

 その間にも、ボスは怒涛の速度と剛腕で次々と攻撃を仕掛けてくる。

 

「うおっ!? ギリギリセーフ!」

 

 更に拘束具から解き放たれたことにより開かれた口でも、エムたちを噛み殺そうと喰らいついてくる。

 それを咄嗟に回避するエムだったが、尚も続く密度の攻撃に成す術がない。

 

「これはキツいな……」

 

 あまりのボス《The Shadow Phantasm》の強さに、天を仰ぐエムだった……。

 




 はい、どうも最早監修というよりは共同投稿者みたいな感じになってるような気がする今日この頃……クマさんです。
 絶賛試験勉強なうなので、ゲームのあれこれについて語るの暇はないので……今回入れてみた小ネタについてでも。

 今は……もう冬アニメが始まって、一ヶ月経ちましたか? かぐや様と盾の勇者、面白いですね。
 おっと違う違う。今回は挟んだネタと言いますのが、前クールの『ゴブリンスレイヤー』という作品に出てくる槍使い(cvつぐつぐ)ということで、声優ネタです。
 彼は冒険のことを「デート」とよく言いますので、アスナに攻略のことを「デート」と言わせてみました。


 え、これだけかって?





 ……はい、そうです。実に下らないですね。
 ここのとこの受験勉強で疲れてるんです、許してください(+_+)


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Sttelement《シャドウ・ファンタズム》

クマさんはアニメの感想をあげていますが自分はあげません理由は住んでいる場所が田舎でほとんど放送されないから!!(知り合いのBSで録画頼んで遅れて試聴)


 ――ボス《The Shadow Phantasm》との戦いは、現在エムたちが圧倒的に不利な状況で進んでいた。

 

 

 

 

 

「範囲攻撃だ、避けろ!」

 

 ダメージディーラーとして、前線を張るキリトがボスの予備動作に気がつき、咄嗟に全員に指示を出す。

 それに応じ、各々が回避行動をとったと同時に、ボスが後ろ足で立ち上がる。

 

「影だ! 全力で後ろに跳べ!!」

 

 ボスが前足を地面に叩きつけ、その周囲に影の柱が乱立する。

 それをどうにか回避する一同だが、ボスの苛烈な攻撃を前に、踏み込めないのが現状。

 鎖が解き放たれてから約半時間、未だにボスは倒せていない。

 

「これじゃあ、いつまで経っても倒せない……」

 

「近づかなきゃ攻撃できないが……あれだけ攻撃が激しいと迂闊に近寄れないな」

 

 フィリアが嘆き、エムも舌打ち気味に愚痴垂れる。

 

「投擲スキルじゃ火力が足りないし……弾もない。結構詰んでるだろ、コレ……」

 

「俺たちも変身したら銃はあるけど、特化じゃないから火力が足りないしな」

 

 どうにか打開策を探るキリトとそれに続くパラドだが、純然たる火力不足に頭を悩ませる。

 その時、エムが何か思いついたように、ベルトを操作し、スポーツゲーマの装備を解除する。

 

「よし、ならこの前追加されたガシャットでいくぜ!」

 

 そして、オレンジ色のガシャットを取り出すと、スイッチを押し起動させる。

 

『ジェットコンバット!』

 

 起動したゲーム画面から、両翼にガトリング砲を装備したジェット機《コンバットゲーマ》が飛び出す。

 

「大・大・大変身!」

 

 いつもの掛け声とともにガシャットを挿入。ベルトのレバーを展開し、コンバットゲーマをその身に纏う。

 

『アガッチャ! ジェット! ジェット! イン・ザ・スカイ! ジェットジェット! ジェットコンバット!』

 

 エグゼイドは、レベル2から高い連射能力と威力をもつガトリング砲「ガトリングコンバット」と飛行ユニットを装備する《コンバットアクションゲーマー レベル3》へと強化変身を果たした。

 

「今度は、なに?」

 

「あれは俺も初めて見るな……」

 

「ジェットコンバット……そういうことかエム」

 

 エグゼイドの新形態にフィリアとキリトは困惑しきりだが、パラドの方は既にエムに合わせるべく準備を始めていた。

 

「マックス大変身!」

 

『赤い拳強さ! 青いパズル連鎖! 赤と青の交差! パーフェクトノックアウト!!』

 

 レベル99へ強化変身し、手元にパラブレイガンを構えると、ボスに向かい銃モードで連射し始めた。

 

「エム! こっちでタゲは取るから、一気に決めろ!」

 

「オッケー!!」

 

 パラドの進言に、叫びながら答えると、エムは背中のブースターを一気に吹かし、飛び上がった。

 

「「と、飛んだ!?」」

 

 今まで平面での戦闘を強いられていたキリトとフィリア。いきなりの空間を最大活用できる飛行という概念の登場に驚愕を隠せていない。 

 

「これでも喰らえ!」

 

 と、そんな地上を余所に、空を駆けるエムは両手に装着されたガトリングから凄まじい量の弾丸をボスに叩き込む。

 

「えぇ……」

 

「もう、これはチートだね」

 

 あまりに一方的な展開に、キリトもフィリアも最早呆然となるしかない。

 そんな中、ボスは空駆けるエムに対し、範囲攻撃で攻撃を加えようと、後ろ脚だけで立ち上がる。

 

「待ってました!」

 

 と、そこでパラドが一気に踏みこむ。

 

『ズ・ゴーン!』

 

 パラブレイガンを変形させ、Bボタンを連打する。

 

『1・2・3・4・5・6』

 

「喰らえ!」

 

 振りかぶり、通り抜けざまに後右足を痛烈に強打する。

 

『6連打!』

 

 痛打に、ボスは体勢を大きく崩され、範囲攻撃はキャンセルされる。

 更に、そこへ上空からガトリングの掃射が畳みかけられる。

 

「これ、わたしたちも戦う必要ある?」

 

「あの二人で大丈夫だろ……」

 

エムとパラドの二人の攻撃にフィリアは呆然としキリトは放棄状態だ。

 

 

「いっけェ――!!」

 

 コンバットアクションゲーマーの装備であるガトリングの斉射を続けるエム。

 勿論、ボスの方もそれをみすみすと見過ごすはずもなく、上空までを貫く影の範囲攻撃を駆使し、エムを撃ち落とそうとしてくるのだが、飛行しているためにそれが当たることはない。

 逆に、エムの攻撃は確実にボスに命中し続けているのだが、レベル3であるが故に攻撃力が足りずに既にかなりの長期戦になっている。

 

「グゥルァァァアアアア!!」

 

 ボスが吼える。

 これは範囲攻撃の合図だ。

 

「いけ、パラド!」

 

 エムが指示を飛ばすと、パラドは一気に駆け出した。

 そして腰元のベルトを操作する。 

 

『PERFECT CRITICAL COMBO!』

 

「喰らえ!」

 

 飛び上がり、立ち上がるボスの脚に目掛けて蹴りを叩き込む。

 その威力に攻撃は中断され、膝を折ったボスはダウン状態となる。 

 

「エム!」

 

「ああ、フィニッシュだ」

 

 それを好機とみた二人は一斉に最大火力を準備する。

 

『ズ・ガーン!』

 

 パラドはパラブレイガンを変形させると、構える。

 

『鋼鉄化! 分身!』

 

 更にエナジーアイテムを自身に引き寄せ、鋼鉄化をパラブレイガンに分身を自身に適用して強化する。

 そして、空飛ぶエムと共にホルダーにガシャットを挿す。

 

『『キメワザ!』』

 

 エネルギーがそれぞれ、ガトリングユニットとパラブレイガンに収束する。

 そして、エネルギーが溜まり切ったところで二人は引き金を引く。

 

『JET CRITICAL STRIKE!』

 

『PERFECT CRITICAL FINISH!』

 

 エムは、その身を躍らせた空中から背後に負うガトリングユニットから数多の弾丸を放ち、続くようにゲーマの本体からミサイルを撃ちだす。

 そしてパラドは、アイテムの効果で分身しつつ、同じくアイテム効果で徹甲弾と化した弾丸を一斉に放つ。

 

「グゥアアアアアアアア!!」

 

 二人の攻撃は、ボスの残ったHPバーの最後の一本を見事に吹き飛ばし、その姿はポリゴンの欠片となって霧散する。

 

「よっしゃあ、ゲームクリアだ!」

 

「……なんとか終わったな、エム」

 

「ああ!」

 

 一時間近くを使い、ようやくとボスを打倒できた。

 エムとパラドは、それを拳を躱して喜び合う。そんな二人を、キリトとフィリアの二人が遠巻きに見つめていた。

 

「あの二人、ていうかこれはわたし達がおかしいの?」

 

「もうゲームバランス崩壊ものだな……」

 

 二人の余りの異次元ぶりにフィリアは唖然。慣れている筈のキリトも、驚愕を隠せずにいる有様だ。

 と、そんなキリトだったが、フィリアのとある異常に気が付き、そのことを彼女に問いかける。

 

「……なあ、フィリアのペンダント光ってないか?」

 

「本当だ……光ってる」

 

 フィリアの異常、身に着けていたペンダントの発光。これが意味するものは――

 

「これなら、門が開くかもしれないね」

 

「門?」

 

「樹海エリアの先に通れない門があって、もしかしたらそこから新しいエリアに進めるかもしれない」

 

 キリトたちが来れない間にも、フィリアはホロウ・エリアの探索をしていたようだ。

 今しがた攻略した神殿とは別に、さらにペンダントと関連していそうな門を見つけていたらしい。

 

「そうか。でも、今日はもう無理かな……」

 

「うん、わたしも今日はいいかな……」

 

 ボスとの一時間を超す戦闘の疲れで、二人はもうヘトヘトだ。

 

「あっちの二人は……まだ戦えそうだけどね」

 

 フィリアの指し示す方では、エムとパラドの二人が《シャドウファンタズム》を倒したことによる高揚からか先ほどまでの長期戦が嘘のように余裕そうである。

 

「……取り敢えず、明日その門のある場所に案内してくれ」

 

「わかった」

 

 翌日に備えの、帰り道。四人の前に現れたモンスターは全てエムとパラドの手によって倒されていった。 

 

 

 

「……やっぱり、みんなバーサーカーだった……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




《後書き》

 Fineing life in the KEMURIKUSA!!

 はい、いまだドハマりしてますクマさんです。
 本日発表になった梶さんとあやちの結婚報告にいまだ動揺しまくりで、後書きに書く内容すべて吹き飛んだので今日はこの辺で……ではでは~
とはいけないので、今度の新作のウルトラマンタイガの話でもしましょう。
 いや~タロウに息子がねぇ……しかもいとこの息子(某二万年)と違って、素直そうないい子という。
 これでウルトラの父と母は祖父母ですよ……

 ウールトラの祖父がいる♪ ウールトラの祖母がいる♪ そーしてタロウはお父さん♪

 ――となるわけですよ。
 時の流れって恐ろしい(白目)

 さて、今度こそこんなところで……ではでは~





 ……これで残りは寿さんだけか(けいおん脳)


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短編など
特別回


クマさんと前に行ったコラボ回になります。こちらに移動させました。

フェイタルバレット編のラストバトルの元になります。

本編では内容を変更させるつもりです。


スゲームエリア~

 

「絶対に勝つ! 皆で帰るんだっ!!」

 

 

 コウガが強く宣言し、皆もそれに頷く。

 

 

「果たして君達は魔王である僕に勝てるのかなぁ!!?」

 

 

 ナーヴギアを装着し、死のゲーム《ソードアート・オンライン》の再現となったこのラストバトル。

 自分、そして仲間の運命が懸かった決して負けられない戦いだということ――それはこの場にいる全員がわかっていた。

 

 

「彼らの運命は僕達が変える!」

 

 

 エムは目の前の仲間の命を救うため、やはり強く宣言した。

 

 

「いくよ! キリト君!」

 

 

「ああ!任せろ!」

 

 

 そしてエムとキリト達はラスボスである《ザ・ゲームマスター》に向かっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コウガ君! 君はイツキのもとへ向かうんだ! 此処は僕達に任せて!」

 

「でも……」

 

「いいから向かうんだ!」

 

 エムは、コウガに全ての決着を託した。

 

「わかった!絶対に帰ろう!」

 

 託されたコウガは、イツキがいる場所目掛けてUFGを放ち、飛んでいった。

 

「キリト君、僕たちはこいつを倒そう!」

 

「ああ!」

 

 それを見送ったエムとキリトは、共に高揚感からくる笑みを浮かべ、手を差し出す。

 

「「超キョウリョクプレイでクリアしてやるぜっ!!」」

 

 その手を叩き合わせ、エムとキリトは目の前のエネミー《ザ・ゲームマスター》に向かっていった。

 そしてコウガ達を救う為に集まった仲間たちもそれに続く。

 

 

 

 

 

 コウガは、魔王を自称するイツキの前に立つ。

 

「イツキ……何でこんなことを……」

 

「僕は魔王だと言っただろ。魔王は欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れる」

 

 イツキは本当の魔王のように高揚と笑みを浮かべ、悦に浸るような邪悪な表情も見せる。

 

「……そのために、クレハとツェリスカを巻き込んだのか……!」

 

 ――大切な幼馴染みで、自分をこの世界に誘《いざな》ってくれたクレハ。

 ――GGOにログインして間もない自分を助けてくれたツェリスカ。

 二人への様々な想いが溢れ、今にも決壊しそうなコウガは苦し気に叫ぶ。

 

「そうだよ! 人間不信に陥った君を僕だけの物にするためにね!」

 

 イツキは開き直ったのかのように狂喜な笑みを浮かべ、叫び返す。

 

「僕は魔王だ……。魔王は魔王らしく、その務めを果たさせてもらうよ!」

 

 イツキは装備しているスナイパーライフルを構えて、コウガ目掛けて放った。

 それを間一髪の所で回避し、コウガは自分の装備している光剣《マサムネG9》を右手に構え、左手に拳銃を構えた。

 

「そうだ……。君は勇者らしく魔王である僕にかかってきなよ」

 

「僕は……イツキ、君を止める!」

 

 ――全ての運命を掛けたラストバトルが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レーザーだ!避けろ!」

 

 キリトが叫び、同時に足元に複数現れた球体からレーザーが放たれる。何人かがそれを受けてしまい麻痺状態になってしまった。カバーに入ろうとするが、ザ・ゲームマスターは新たにエネミーを生み出して、その行く手を阻もうとする。

 

「邪魔するなぁぁ!」

 

 エムはエネミーに向けて装備しているアサルトライフルを撃ち込む。放たれた銃弾はエネミーをクリティカルダメージで倒した。だがザ・ゲームマスターは既に新たにエネミーを呼び出していて、キリト達もそれに苦戦しているようだった。

 

「くッ……このままじゃキリがない」

 

 エムがこの状況を打開する策に悩み始めたその時、耳をつんざくような声が響いてきた。

 

『ブゥハハハァァァァァァァ!!!!!!!』

 

「まさか.……く、黎斗さん!?」

 

『苦戦しているようだなぁ!!永夢ゥゥ!!!』

 

「いったい何なんですか! 今それどころじゃ……」

 

 こんな時にと、エムが内心嘆息気味でいると、突然目の前にゲーマドライバーとムテキのガシャット一式が転送されてきた。

 

「こ、これは……」

 

『私の才能を持ってすれば容易い!! 私からの恵みをありがたく受けとるといい!!』

 

「はい!ありがとうございます!」

 

 手の平返しだが、有難いものは有難い。

 早速とゲーマドライバーを腰に巻き、マキシマムとムテキガシャットの起動スイッチを押す。

 

『マキシマムマイティX! ハイパームテキ!』

 

「彼らの運命は……俺が変える!!!」

 

『マキシマムガシャット!』

 

「ハイパー大変身!!!」

 

『パッカーン! ムーテーキー!! 輝け~流星の如く! 黄金の最強ゲーマー! ハイパームテキエグゼイド!!!』

 

 エフェクト光がエムの身体を包み込み、それが晴れた時、エムはもうひとつの姿《仮面ライダーエグゼイド ムテキゲーマー》に変身した。

 

『ガシャコンキースラッシャー!』

 

「ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!!!」

 

 エム――改めエグゼイドは手元に召喚した武器を取り、目の前にいる《ザ・ゲームマスター》にそう宣言した。

 

 

 

 

 

 

『ズキュ・キュ・キューン!』

 

 ガシャコンキースラッシャーをガンモードにして《ザ・ゲームマスター》目掛けてエネルギー弾を放った。

 

「何なのあの姿……」

 

「あんなもの実装した覚えはないわ……」

 

「いったいどうなってやがる……」

 

 エグゼイドの姿を初めて見たクレハとツェリスカ、ジョーは驚きを隠せないようだった。だが、そんなことは関係ないとばかりにエムは《ザ・ゲームマスター》に向かって、突撃する。

 

「タゲは俺が取るから任せろ!」

 

《ザ・ゲームマスター》とエグゼイド ムテキゲーマーの最終決戦が今、新たに始まろうとしていた。

 

 

 

 ――そしてコウガとイツキの戦いも続いていた。

 イツキは驚異的速度でコウガを狙い撃ち、コウガはその銃弾を回避するか光剣で防ぐかのギリギリの戦いが続いていた。

 

「いつまでこの攻撃に耐えられるかなぁ!?」

 

 イツキは狂気的に笑いながら、ライフルを撃ち続ける。

 それを避けるコウガだが、イツキの狙いの速度は速く、バレットラインがあるとは言え回避、防ぐのは容易ではなかった。

 

(このままじゃ、いずれ攻撃を受ける……こうなったら!)

 

 コウガは起死回生を狙って、光剣を構えながらイツキ目指し真っ直ぐ向かって走り出した。

 

「そう来るか……なら!」

 

 イツキは真っ直ぐ向かい来るコウガに目掛けてスナイパーライフルを構えた。

 狙うまでもなくスナイパーライフルの必中距離のために、バレットラインが見えてからでは絶対に回避出来ない。だが、コウガはキリトに光剣での戦い方を教えてもらった時に言われた事を思い出していた。

 

『バレットラインを見て避けるんじゃない相手の目を見て避けるんだ』

 

 キリト曰く《ザ・シード》共通のシステムで攻撃する際には狙った位置に目も追従するらしく、それを見れば何処に攻撃が来るか分かるらしい。

 コウガはその練習をしたが目を見て避ける事は出来なかった。しかし、この状況では相手の目を見て避けるしかなく、一か八かの賭けだった。コウガは神経をスナイパーライフルを構えるイツキのスコープ越しの目に集中する。

 

「――終わりだ」

 

 イツキの勝ちを確信した冷静な声が響き、スナイパーライフルから銃弾が放たれ、コウガに命中するかと思われた――が、コウガに命中することなく銃弾は光剣によって防がれた。

 

「何ッ!?」

 

 イツキは必中距離である筈の銃弾を防がれたことに驚愕した。

 そしてコウガはその隙に一気に接近しイツキに斬りかかるが、イツキはスナイパーライフルを盾代わりに投げ捨て、続いて腰に装備してたいたハンドガンでコウガを撃った。そしてコウガは間一髪の所を光剣で防いだが、一部が光剣の掴に当たってしまい、それによりコウガの光剣《マサムネG9》はお釈迦となる。

 互いに装備しているのはハンドガン一つだけとなる。コウガは両手に、イツキは左手にハンドガンを構え、正対する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――そしてエム達の《ザ・ゲームマスター》との戦いはいよいよ決着がつこうとしていた。

 HPを減じたゲームマスターは、一気に上昇して口許にエネルギーを貯める。

 

「あんなの受けたら一溜まりもないわ……」

 

「私達ここまでなの……」

 

 《ザ・ゲームマスター》が溜めている強力なエネルギーを前に、心の折れかけている者もいたが、まだ諦めていない者がいた。

 

「諦めるな! あのエネミーの顔目掛けて撃つんだ!!」

 

 ――キリトだ。SAOを生き残ってクリアした者だからこそ、まだ諦めていなかったのだ。

 キリトの声は全員の胸の内を揺さぶり、一斉に《ザ・ゲームマスター》がエネルギーを溜めている顔目掛けて撃ち出した。

 

 

 

 だが、惜しくも怯ませることは叶わず、《ザ・ゲームマスター》はフィールド全体に巨大なレーザーを放とうとする。その様子を見て、さすがの誰もが諦めていたが『彼』だけは「まだだ」と足掻く。

 

「変えられない運命なんてない! 俺が皆の運命を変えてみせる!!!」

 

エムはそう叫び上空にいる《ザ・ゲームマスター》に向かって飛び出した。

 

「エム!!」

 

『エム(さん)!!』

 

 今まさに放たれようとしているレーザーを目の前にしながら、ドライバー上部にあるガシャットのスイッチを押した。

 

『キメワザ! HYPER CRITICAL SPARKING!!!』

 

 武器を放り捨て、独特の構えで右足にエネルギーを貯める。

 そして、同じタイミングで共にエネルギーを貯め終え、エグゼイドは飛び出し蹴りの体勢に入る。

 

「行っけェ――――!!!」

 

《ザ・ゲームマスター》もレーザーを放ち、エグゼイドの黄金の煌めきを放つキックが衝突し互いに拮抗する。

 

「俺は……命を諦めない! 運命は俺が変える!!!」

 

「行っけェ――――エム!!」

 

「頑張って!!エムさん!!」

 

『負けるな!エム(さん)!!』

 

 フィールドにいる皆はエムを信じ、叫ぶ。

 そして、その叫びはエムに力を与え《ザ・ゲームマスター》のレーザーを押し返し始めた。

 

「うおぉぉぉ!!!」

 

 そしてレーザーを打ち破り《ザ・ゲームマスター》にエグゼイドのキメワザがヒットする。

 そしてキメワザが命中した《ザ・ゲームマスター》にHIT!の文字がいくつも浮かび上がりHIT!の文字によって被われ次第にGREAT!になり最後にPERFECT!の文字が大きく浮かび上がった。

 

『究極の一発!! 完全勝利!!!』

 

 音声が響き渡り《ザ・ゲームマスター》はポリゴン片となり消滅した。

 エムとキリト達は勝利の喜びを分かち合おうとした瞬間、警告音と共に女性の合成音声が響き渡る。

 

『システムの重大違反確認 システム権限を停止します』

 

 そして全員光に包まれ始め消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――《ザ・ゲームマスター》との決着が付く少し前

 イツキとコウガ互いにハンドガンを構え、正対する中でイツキはふと気付いた。

 

「その銃は……!?」

 

「イツキが僕にくれた銃だよ」

 

「持っていてくれてたんだね……。はぁ~魔王の企みは大失敗だったよ……」

 

 イツキは額に手を当て、落胆した様な声と表情で言った。

 コウガは、これを機と銃を下ろしてイツキに向かい叫ぶ。

 

「イツキ……僕は君の事は大切な仲間だと思っている、だから……!!」

 

「もう遅いよ……魔王を倒すのは勇者の務めだ」

 

 イツキはコウガの話を冷淡に遮り、銃を構えた。

 ――だが、コウガはそれでも銃を構えない。

 

「君が務めを果たせないなら……僕が!」

 

 イツキが銃をコウガに向けた直後、

 

『システムの重大違反確認 システム権限を停止します。』

 

 警告音と共にシステムアナウンスが響き出した。

 

「時間切れ……か」

 

「イツキ!」

 

「……また、会いに来るよ。現実世界か仮想世界かわからないけど……だって、君が仮想世界に来た理由を聞いてないからね」

 

 それだけを言い残し、イツキは消え、その数秒後コウガの視界は真っ白に染まった。

 



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特別企画平成ジェネレーションズForever公開記念回 前半編

メタネタ多めですよ。今回は私パラドファン一人で書きました。


永夢「激動の平成仮面ライダー紹介!」

 

作者『最初に言っておくこの話はかーなーりメタいっ!』

 

永夢「いきなりかましにきた!?」

 

作者『いいじゃん!電王世代なんだから!』

 

永夢「そんなことよりコーナーの説明を」

 

作者『おっと…忘れてた。このコーナーは激動の平成仮面ライダーの解説していこうというコーナーで私、パラドファンとゲストの仮面ライダーエグゼイド宝条永夢さんの二人で進めていきます。』

 

永夢「よろしくお願いします。作者さんに早速聞きたいことがあるですけど」

 

作者『なんですか?』

 

永夢「名前のパラドファンの由来ですが……」

 

作者『ああ、永夢の思っての通りパラドが好きだからだ。パラドのファンと言うことでパラドファンって名前にしたんです。』

 

永夢「パラドが好きになったきっかけは何ですか?」

 

作者『18話での黎斗に切れて殴ったシーンを見てからパラドが好きになってパラドの活躍が楽しみでパーフェクトノックアウトゲーマーの初登場はマックス大興奮しました。後、永夢とパラドの協力プレイでのクロノスの戦いは何度でも見直すほど興奮して一番好きなシーンですね。それにトゥルーエンディングでの登場の仕方も格好いいし何より変身音声も格好いいから好きなんですよ。ただ残念なのは平成ジェネレーションズFainlで仮面ライダーパラドクスに変身しなかった事と仮面ライダージオウで登場しなかったことですね。本当に……』

 

永夢「もう良いです! コーナーが始まりません!」

 

作者『つい喋りすぎてしまったようだそれでは……』

 

作者・永夢『「激動の平成仮面ライダー紹介スタートです。」』

 

 

 

 

 

 

~ 平成ジェネレーションズFovever公開記念激動の平成仮面ライダー紹介 ~

 

作者『最初に言っておくいくつかはインターネットで調べてから書いた。理由は……見ていないのが有るからだ!特に序盤のやつ!』

 

永夢「それでは、最初の平成仮面ライダーは仮面ライダークウガ」

 

作者『2000年から2001年に放送されキャッチコピーは「A New Hero. A New Legend.」(新しい英雄、新しい伝説)で物語は2000年に長野県山中の九郎ヶ岳で謎の遺跡が発掘され、棺の蓋を開けたことで目覚めたしまったグロンギによって、夏目幸吉教授らの調査団は全滅してしまい捜査に当たった長野県警刑事・一条薫は五代雄介と名乗る冒険家の青年と出会う。五代雄介はそこで見せてもらった証拠品のベルト状の遺物から、戦士のイメージを感じ取りグロンギ……ズ・グムン・バに遭遇した雄介は、咄嗟の判断でベルト…アークルを装着して仮面ライダークウガへと変身した。そして、人々の笑顔を守るためにグロンギと戦うことを決意する。以後、クウガとグロンギは「未確認生命体」と呼ばれ、人々に認知されてい戦いが始まる。』

 

永夢「笑顔を守るため……僕と同じだなぁ」

 

作者『そうですね……。僕の生まれた翌年に放送されたからよく覚えていないんですが親からはテレビを見てクウガって言っていたと聞いています。』

 

永夢「作者さんの最初に見た仮面ライダーはクウガなんですね。」

 

作者『全く覚えてないけどね。放送始まった当時の時は生後11ヵ月だし』

 

永夢「あっ……で、では気を取り直して次の平成仮面ライダーは」

 

作者『二代目平成ライダーは仮面ライダーアギト』

 

永夢「キャッチコピーは「目覚めろ、その魂」です。仮面ライダークウガの“未確認生命体事件”の終息から2年後、沖縄県の与那国島海岸に人知を超えた謎の遺物・オーパーツが流れ着き同時に各地では、人間には不可能な殺害方法を用いた猟奇的連続殺人事件が発生し警視庁はこの事件の犯人を、かつての“未確認生命体”グロンギを超える新たなる脅威として「アンノウン」と命名し、未確認生命体対策班 (SAUL) に専属捜査を命じる。SAULに配属された若き特務刑事・氷川誠…仮面ライダーG3、瀕死の重傷を克服した後に変容していく自らの肉体に恐怖を抱く大学生・葦原涼…仮面ライダーギルス、そして記憶喪失でありながらも本能の赴くままにアンノウンを倒していく家事手伝いの青年・津上翔一……仮面ライダーアギト、三人の仮面ライダー物語です。」

 

作者『アギトは映画しか見ていなから殆どインターネット任せだ!クウガもね!』

 

永夢「言わなくて良いです! そんなことよりちゃんとしましょう!」

 

作者『それじゃあ、気を取り直して……仮面ライダーアギトから2号、3号ライダーの登場が始まりだしたね。永夢達のような仮面ライダーが複数登場する切っ掛けとなりそれに次では……』

 

永夢「適当過ぎませんか……えー次の平成仮面ライダーは」

 

作者『三代目平成仮面ライダーは仮面ライダー龍騎、物語は2002年に街では、人々が忽然と失踪する事件が連続発生していた。真相を追うネットニュース配信社の「OREジャーナル」に所属している見習い記者、城戸真司は失踪者の部屋を取材中に奇妙なカードデッキを発見する。そして謎の龍を目撃する。発見した謎のカードデッキの力で仮面の戦士に変身してしまった城戸真司は、鏡の中の世界に迷い込み、自分と同じような仮面の戦士がモンスターと戦う光景を目撃する。命からがら現実世界に帰還した城戸真司は、もう1人の仮面の戦士である秋山蓮と、彼と行動を共にしている神崎優衣から、ミラーワールドとミラーモンスター、そして仮面ライダーの存在を知る。連続失踪事件はミラーモンスターによる捕食で仮面ライダーはミラーモンスターの力を使うことができる超人であることを知る。ミラーモンスターから人々を守る決意をして真司もミラーモンスター…無双龍ドラグレッダーと契約し、正式な仮面ライダー龍騎となるが、仮面ライダーナイトこと秋山蓮は、城戸真司と共闘するどころか「龍騎を潰す」と告げて襲いかかる。仮面ライダーは全部で13人、それぞれの目的のために、最後の1人になるまで戦わなければならないという宿命の中で城戸真司はミラーモンスターと戦いながらライダーバトルも止めようとするが、真司の願いとは裏腹にライダーバトルは繰り広げられしまう。』

 

永夢「ライダー同士での対決……僕達と近いですね。」

 

作者『近いと思いますよ。ラスボスもクロノス同様のチート能力でしたし』

 

永夢「それに仮面ライダーが13人もいるなんて……覚えるの大変そうですね。」

 

作者『え~っと、龍騎、ナイト、ゾルダ、王蛇、シザース、ライア、ガイ、ファム、リュウガ、タイガ、インペラー、ベルデだね。永夢と会ったことある仮面ライダーが一人いるね。』

 

永夢「仮面ライダーゾルダ北岡さんとはスーパーヒーロー対戦でゴライダーとして一緒に戦ってくれました。」

 

作者『さぁ次の平成仮面ライダーの紹介といきます続いての平成仮面ライダーは…』

 

永夢「4代目平成仮面ライダーは仮面ライダーファイズ。キャッチコピーは「疾走する本能」。物語は2003年。九州で一人旅をしていた青年乾巧は、そこに居合わせた園田真理とともに、謎の怪人オルフェノクに襲われる。園田真理は持っていたベルトを装着されて仮面ライダーファイズに変身しようとするが失敗し、無理やり乾巧にベルトを装着させて、仮面ライダーファイズに変身させることで窮地を脱します。オルフェノクは、ベルトを狙って園田真理を襲い。その後二人はクリーニング屋の菊池啓太郎と出逢い、事情を知った彼の勧めで東京にある彼の家で3人の共同生活を始めることになる。一方、東京で暮らしていた青年木場勇治は、2年前の居眠り運転トラックによる交通事故によって両親を失い、自らも2年間の昏睡状態を経て死亡したかに見えた。しかし、勇治は病院で謎の蘇生を遂げ、周囲を混乱させる。自らも混乱したまま帰宅する木場勇治だったが、自宅は既に他人のものとなっていた。叔父一家が自分が眠っている間に財産を根こそぎ利用していた事実を知り、恋人が自分を裏切り従兄弟と交際していることを知った木場勇治は、異形の怪物オルフェノクに変身し、従兄弟と恋人を手にかけてしまう。醜悪な肉体変貌と犯した罪に絶望する彼の前にスマートレディという女性が現れ、事の真相を告げられる。木場勇治は一度の死亡により、オルフェノクとして覚醒したのだった。スマートレディが属するオルフェノクの組織スマートブレイン社に囲い込まれた木場勇治は、同じようにオルフェノクとして覚醒した長田結花と海堂直也の二人と行動を共にするうちに、人類を敵視するスマートブレインの姿勢に反発し、人類とオルフェノクの融和を考え始める。乾巧と木場勇治の2人の物語を中心に、ベルトを、ひいては人類の未来を巡って、オルフェノクと人類の戦いが始める。」

 

作者『ファイズは僕も見たことがあります。変身に携帯を利用するライダーです。そして皆様お馴染みの猫舌たっくんですよね。』

 

永夢「最初の情報はともかく後のやつ要りますか…?」

 

作者『要りますよ! 仮面ライダーファイズ乾巧=猫舌ですから、ジオウでもちゃんと猫舌たっくん出たんですから!』

 

永夢「はぁ…それでは次の平成仮面ライダーにいきましょう」

 

作者『まだ言いたいこと有るのに……』

 

永夢「五代目平成仮面ライダーは仮面ライダー剣です。」

 

作者『仮面ライダー剣はトランプをモチーフとしいて、キャッチコピーは「今、その力が全開する。」「運命の切札をつかみ取れ!」です。人類基盤史研究所《BOARD》。そこでは「ヒトが地球を制した背景には、進化論で説明できない理由が存在する」との仮定のもと、その理由を究明するために作られた機関で、彼らは研究対象の不死の生命体・アンデッドを様々な生物の祖であるとする。だが3年前、アンデッドの大半の封印が解かれ、人間を襲い始める。BOARDは所長・烏丸啓の指揮の下、アンデッドを「ラウズカード」へと封印すべく、アンデッドの能力を応用した特殊装備「ライダーシステム」を開発する。BOARDの新人職員・剣崎一真仮面ライダー剣は、先輩の橘朔也仮面ライダーギャレンと協力してアンデッドの封印を行うが、ある日、BOARDはアンデッドの攻撃で壊滅し、橘は不可解な失踪を遂げる。剣崎は生き残った研究員・広瀬栞とともに、仮面ライダーの取材を試みていたライター・白井虎太郎の家に居候し、個人的にアンデッド討伐を続ける。そして戦いの中、剣崎は相川始仮面ライダーカリスと遭遇する。カリスはBOARDが開発したシステムではなく、始の正体はどうやらアンデッドと気付く。始は人間を軽んじる一方で、彼が身を寄せる栗原親子のことは気遣う様子を見せる。剣崎は当惑しつつ、始を静観することに決める。』

 

永夢「僕は、剣崎さんとはお会いしたことがあります。」

 

作者『例の黎斗の件ですね。仮面ライダー剣はカードを使って変身し戦いますが、そんな剣崎の代名詞と言えばオンドゥル語ですね。』

 

永夢「何ですか……それ…?」

 

作者『1話の時に剣崎に「本当に裏切ったんですか!?」というセリフがあったんですが、滑舌が悪かったから「オンドゥルルラギッタンディスカー!?」に聞こえた事が由来です。』

 

永夢「へぇ……」

 

作者『後、3話における橘さんの「俺の身体は、ボロボロだ!!」というセリフも「オデノカラダハボドボドダ!!」と聞こえます。』

 

永夢「なんとも言えない……」

 

作者『それじゃあ次行こうか』

 

永夢「はい……」

 

作者『六代目平成ライダーは仮面ライダー響鬼です。』

 

永夢「キャッチコピーは「ぼくたちには、ヒーローがいる」です。。日本には、古来 “鬼” と呼ばれる者たちがいた。そして人間でありながら超人的な能力を持つ彼らは、魔化魍と呼ばれる妖怪の類から人々を守っていた。そして鬼をサポートする人々の体系は組織へ発展し、猛士と呼ばれるようになった。2005年、高校受験を目前に控えた安達明日夢は、母の実家の法事で屋久島に向かう船上で、船から転落した男児を助ける男を見る。それを見て驚く明日夢に男は「鍛えてますから」とだけ言い残して立ち去っていったのだった。島を散策しに出た明日夢は、原生林の中で怪物に襲われるが窮地の明日夢の前に再び船上の男・ヒビキが現れる。ヒビキは音叉を顔の前にかざすと、全身が炎につつまれ鬼の姿に変身、怪物に立ち向かっていった。」

 

作者『響鬼はベルトを使わずに変身する異色の仮面ライダーですね。』

 

永夢「それにしても…どんな鍛え方をしてるんでしょう…?」

 

作者『一言で言えば人には無理な鍛え方だね。』

 

永夢「え……?」

 

作者『永夢がやったら100%死ぬかも』

 

永夢「……次…、行きましょう……」

 

作者『さて、七代目平成ライダーは仮面ライダーカブトです。』

 

永夢「キャッチコピーは「天の道を往き、総てを司る!」です。1999年10月19日、地球に飛来し渋谷に落下した巨大隕石によりその周辺地域は壊滅した。そして7年後の2006年、人間を殺害しその人間に擬態する宇宙生命体・ワームが出現する。ワームに対抗するため、人類は秘密組織ZECTを結成し、ワームに対抗するためマスクドライダーシステムを開発する。そんなある日、ZECTの見習い隊員・加賀美新は、自らを「天の道を往き、総てを司る男」と称する妙な男・天道総司と出会う。その頃ワームが出没し、追い詰められていくZECT隊員たちを見た加賀美はライダーになって戦うことを決意しベルトを装着するが、カブトゼクターは加賀美ではなく、天道の手中に納まった。天道は何故か持っていたライダーベルトにカブトゼクターをセットして変身、仮面ライダーカブトとなり戦うのであった。」

 

作者『カブトは龍騎以来の本格的なライダー同士での戦いが多かったですね。』

 

永夢「そうなんですか、僕らも対立はしたけどそこまで戦うことはなかったですが」

 

作者『そして、カブト言えば天道の料理。毎回天道が作る料理が美味しそうでお腹が空きます。最早料理番組みたいな回もありましたね。さぁ次に行きましょう!!』

 

永夢「急に!?」

 

作者『八代目平成仮面ライダーは仮面ライダー電王、キャッチコピーは「時を超えて 俺、参上!」です。2007年の現代に現れ、時間の改編を企てる侵略者イマジンと、時の改編を阻止するために戦う仮面ライダー電王・野上良太郎、そして良太郎に憑依し力を貸す味方イマジン達の活躍を描く。イマジンは憑依した人間との間にその望みをかなえるという「契約」を結び、手段を選ばず「契約完了」することで望みにまつわる記憶を呼び覚ますことで、それを足がかりに過去へ飛び破壊活動を行うことで時間を改変を行う。イマジンに対抗できる電王に変身できるのは、時間改変の影響を受けない特質の持ち主「特異点」のみ。だが時の列車デンライナーに乗って未来から来た女性ハナが見出した特異点・良太郎はひ弱で気弱、しかも不運続きと一見およそヒーローらしさは一切ない。そんな良太郎に憑依して共に戦うのが、モモタロス・ウラタロス・キンタロス・リュウタロスといった強烈な個性を持ったイマジン達、憑依することで良太郎は能力のみならず性格も一変する。モモタロス達の力と良太郎の奥底にある正しく強い心が合わさることで電王はその力を発揮させ、そして過去へ飛んだイマジンを追って行く。』

 

永夢「僕が説明する筈だったのに……全部言われた…」

 

作者『電王が好きだから此処は僕が説明したかったので』

 

永夢「そんなに好きなんですか?」

 

作者『はい!一番好きな仮面ライダーです!電王ではイマジンが良太郎に憑依し変身することで様々なフォームチェンジがあります!モモタロスが憑依すると接近型で素早さと手数で圧倒するソードフォームに、ウラタロスが憑依すると中距離白兵戦を得意し水中戦が可能なロッドフォームにキンタロスが憑依すると防御力を活かして敵の攻撃を受けとめ近接格闘戦を得意とするパワータイプのアックスフォームに、リュウタロスが憑依すると唯一遠距離戦ができ、一方的に攻撃して敵に反撃の隙を与えない戦闘スタイルが特徴のガンフォームになりますよ。』

 

永夢「多彩なフォームで戦うここから、仮面ライダーのフォームが増えたんですね。」

 

作者『さらば電王では、良太郎に憑依しなくても変身できるのでスーパー戦隊のような全員での変身があってそれもかっこいいです。』

 

永夢「長くなりそうなので、次行きましょう。」

 

作者『まだ言いたい事が沢山あるのに……』

 

永夢「何時までたっても終わりませんよ!」

 

作者『はい……九代目平成仮面ライダーはコウモリをモチーフにした仮面ライダーキバです。』

 

永夢「キャッチコピーは「覚醒(ウェイクアップ)! 運命(さだめ)の鎖を解き放て!!」です。1986年、世間には人間の姿に化け人間の生命エネルギー・ライフエナジーを吸収し生きるモンスター・ファンガイア族が跳梁跋扈し、それに気づいた数少ない人々がファンガイアと戦いを繰り広げていた。ある日、腕利きのファンガイアハンターである麻生ゆりはターゲットであるファンガイアを追い詰めたものの、彼女に惚れたらしい1人の男の乱入により取り逃がしてしまう。ゆりの叱責を気にもせず彼女を口説きに掛かる男の名は、紅音也。天才バイオリニストである彼は、こうしてファンガイアの存在を知ることとなった。それから22年経った2008年。ゴーグルにマスクという奇妙な姿で、ゴミを漁っては魚の骨を拾って回る怪しげな青年がいた。その彼の名は紅渡。紅音也の息子である彼は、父の遺したバイオリン「ブラッディローズ」を超えるバイオリンを作るためにバイオリン職人として修行を続けていたが、他人との接触を極端に嫌う内気な性格のため彼方此方でトラブルを起こしていた。そんなときに22年前に逃がしたファンガイアが再び出現。ゆりの娘であるファンガイアハンター・麻生恵が戦いを挑むが、その力に圧倒され危機に陥る。その時「ブラッディ・ローズ」の弦が突如として震え始め、それを聞いた渡は本能に突き動かされるようにファンガイアの元に向かう。奇妙な姿をしたコウモリ・キバットが渡に噛み付いた瞬間渡の身体は鎧に包まれ、仮面ライダーキバへと変貌を遂げた。こうして、父と息子、22年にわたる運命の物語は幕を開ける。」

 

作者『実はキバは見ていなくて説明が出来ません……』

 

永夢「それでも頑張ってくださいよ!」

 

作者『え~、キバで電王同様に多彩なフォームもあるのが特徴でフォームチェンジのさいに武器が変わります。以上です。』

 

永夢「しっかりしてください!」

 

作者『見てないから、しょうがないでしょーが!』

 

永夢「はぁ…次行きましょうか」

 

作者『十代目平成仮面ライダーは現在放送中の仮面ライダージオウにも登場中の仮面ライダーディケイドです。』

 

永夢「キャッチコピーは「全てを破壊し、全てを繋げ!」です。2009年光夏海は無数の仮面ライダーが「1人の標的=ディケイド」に総攻撃を仕掛けて全滅するという夢を何度も繰り返し見ておりうなされていた。現実に戻れば家業の「光写真館」に居候している青年・門矢士がきちんと写真を撮らないと客から苦情を受け、謝罪と士への説教をする毎日そんな中ある日、突如世界のあちこちで謎のオーロラと共に現れた無数の怪人が、人々を襲い始めた。夏海と離れ離れになった士は謎の青年・紅渡と接触し、自分がディケイドと呼ばれる仮面ライダーであることを知らされれた。夏海と合流した士は、彼女が見つけたバックルで仮面ライダーディケイドに変身して怪人たちを倒すが、世界の崩壊は止まらなかった。士は再び現れた渡により、それぞれの仮面ライダーが戦う9つの並行世界が1つに融合し、最終的に崩壊しようとしているということ、そして士は九つの世界を旅してそれを防ぐ使命を課せられた存在だということを渡に告げられる。こうして士は自分の写せる世界を探すために、夏海は夢で見たディケイドへの不安から、異世界への旅に出ることを決意する。」

 

作者『仮面ライダーディケイドの特徴は歴代平成ライダーに変身することでその力を使うことが出来るのが特徴ですね。』

 

永夢「歴代の平成ライダーに変身…凄いですね。」

 

作者『当時はクウガからキバまでだったけど、今のジオウではダブルからビルドまで変身可能になっていますね。』

 

永夢「今ではさらにパワーアップしたと言うことですね。」

 

作者『最早一人だけ次元が違うけどね。ってことで今回はここまで!』

 

永夢「えっ!? まだ半分僕達平成二期ライダーが残っていますよ!」

 

作者『長くなるので、今回はここまです。次回は豪華なゲストを二名お呼びして御送りします。それではまた次回』

 

永夢「無視ですか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

~ see you next game ~

 

 




長いので二期ライダーはまた後日です。



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