ダンガンロンパ・コネクト~問題児だらけのコロシアイ学園生活~ (ノドクル)
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プロローグ【問題だらけの入学式】
第1話


誰でもいい。

 

誰でもいいから、助けてくれ。

 

俺は、俺はもう……

 

 

 

プロローグ【問題だらけの入学式】

 

 

 

話は少し前に遡る。

 

その日、俺は巨大な学園の前に立って校舎を見上げていた。

 

「ここが、希望ヶ峰学園……やっぱり近くで見ると圧倒されるな」

 

私立希望ヶ峰学園。

 

各分野における超高校級だなんて呼ばれる人間をスカウトして、その才能を伸ばす手助けを行う学校だ。

 

入学するには試験は必要ない、ただ【現役の高校生】である事と【超高校級と呼ばれるほどの才能】があればいい。

 

……いや、後者はそんな簡単な話じゃないけど。

 

聞いた話だと、かなり昔には普通試験での入学の道もあったらしい。

 

最も、希望ヶ峰学園には大量の情報が失われている空白の期間があって普通試験云々もその頃の話らしいから、それが本当かどうかもわからないけどな。

 

とにかくそれだけの狭き門だ、卒業すればその後の人生は成功が約束されている……事実世間で華々しい活躍をしている人間はまず希望ヶ峰出身。

 

「今日から俺も……」

 

その希望ヶ峰学園に、俺葛城潤【カツラギジュン】はスカウトされた。

 

 

【超高校級の調整役】として。

 

 

   葛城 潤【カツラギ ジュン】

 

    【超高校級の調整役】

 

 

世の中には多種多様な考え方がある。

 

賛同が集まったり、逆に衝突を引き起こしたり……時にはそこから命だって失われて。

 

そんな最悪の事態にならないようにそれぞれの気持ちを汲んで、円滑に事が運ぶようにする存在。

 

それが調整役。

 

俺は昔、ある苦い経験をしてから調整役を進んで引き受けてきた。

 

葛城がいれば話し合いがスムーズに進む、名前が潤だから文字通り潤滑油だなんてあだ名を付けられた事もある。

 

チームに俺がいるといないとでは結果がまるで違うなんて言われた時は、本当に嬉しかった。

 

もちろん受けてきたのはそんないい評価ばかりじゃない。

 

時には間に入る事で痛い目を見たし、共通の敵になって俺だけが割りを食ったりもした。

 

だけど俺にとってはそんなものへっちゃらだ。

 

だって俺は自分が傷つく以上に……怖い光景を、知っているんだから。

 

とにもかくにもそんな日々を生きてきた俺の生き方が認められたのか、希望ヶ峰学園は【超高校級の調整役】として俺をスカウトしてきた。

 

そして今日は入学式……これから俺はここでどんな日々を過ごすのか。

 

「いや、想像はつくけどな」

 

きっとどこだろうと俺のやる事は変わらないだろう。

 

元々【超高校級】の高校生達は才能があるためか個性が強く、一筋縄ではいかないらしい。

 

しかも今回スカウトされた生徒達はその中でも特に我が強いと噂で聞いた。

 

「腕が鳴るじゃないか……そんな相手の間に入るのが俺の才能だ!」

 

なら俺はそんなクラスメイト達の調整役としてやっていこう!

 

そう決意して、学園へと向かった俺は。

 

唐突に、前触れもなく、何の予兆もなく。

 

意識を失った。

 



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第2話

「んっ、んんっ……」

 

重い瞼を持ち上げると、そこは見た事もない景色だった。

 

「ここは……教室?」

 

どうやら俺は机に突っ伏して眠っていたらしい……居眠りなんて今までした事なかったのにな。

 

……いや、ちょっと待て。

 

「俺、いつの間に教室に来たんだ?」

 

おかしい、俺は確か希望ヶ峰学園に入学式のために来て……来て……

 

「それから、何があったんだ」

 

脳を総動員させていくら思い出そうとしても、俺の記憶は校舎に入ろうとするところで途切れていて。

 

仮に俺が校舎に入ってすぐに倒れて運ばれたんだとしても、だったら教室じゃなくて保健室とか病院で目を覚ますはずだ。

 

 

「それに、なんだこの教室……」

 

混乱したまま周囲を見渡してみても、混乱は晴れるばかりか深まるばかり。

 

だって窓があるらしき場所は鉄板で塞がれて。

 

教室の隅には場違いな監視カメラがある。

 

異常だ、いくらなんでも異常すぎるじゃないか。

 

「とにかく、外に出よう」

 

教室を出ると待ち受けていたのは薄暗い廊下。

 

不安感を煽るような暗闇、さらにここにも監視カメラや鉄板……本当になんなんだよこれは!?

 

「誰か、誰かいないのか!?」

 

ここに一人でいるなんて耐えられない……俺は不安を振り切るように廊下を走る。

 

「くそっ!」

 

だけど。

 

「ここは開かない……!」

 

どれだけ部屋を見て回っても。

 

「っ、通行止めか!」

 

誰もいない、そもそも鍵がかかったり塞がっていたりで入れない部屋ばかり。

 

「……」

 

まさか本当に俺しかいないのか?

 

そんな最悪の結論にさえ達しそうになりながら一際大きな扉を開くと。

 

「あっ……」

 

複数の視線が一斉に俺に向けられた。

 

「おいおい、まだ人がいたのか?」

 

「こ、これで十六人……ちょうど男女半々ってところかな」

 

「チッ、悪吐蠱【オトコ】か」

 

反応は様々だけど、今の俺にはどんな反応でも救われたような気分になる。

 

「ちょっと大丈夫ですか?もしかして泣いてます?」

 

「えっ、いや」

 

さすがに泣いてはいないはず……目が潤んでは、いる気がするけど。

 

「ま、まさかまだ増えないでしょうね」

 

「アッハッハッハッ!それも賑やかでいいじゃないか!」

 

「フン、これ以上塵が増えられても困る」

 

「あ?てめえ今、なんて言いやがった!?」 

 

「ハイハイ、落ち着いて落ち着いて。はいグローブ」

 

「オラァ!」

 

「うん、いいパンチだよ!」

 

「な、なんで殴られたのに笑ってるの……?」

 

だけどこうして冷静になってみると……なんか変わった印象を受ける奴が多い。

 

「あの、どうでもいいんですがこれはどういった集まりなんですか?」

 

「中には知ってる顔もいるけど……」

 

「なら自己紹介でもしてみましょうか?そうすれば自ずと共通点も見えてくると思います」

 

「あちしも賛成でちゅ!」

 

自己紹介か……

 

「ではでは、言い出しっぺの私から!」

 

そう言って一歩前に出たのは、さっき俺に大丈夫か声をかけてきた女の子だ。

 

 

時折着けている丸い眼鏡の位置を直しながら、メモ帳に何かを忙しなく書き込む姿はどことなく小動物を連想させる。

 

「私は新木良香!世間では【超高校級のリサーチャー】と呼ばれています!」

 

 

   新木 良香【アラキ ヨシカ】

 

   【超高校級のリサーチャー】

 

 

新木良香……確かあらゆるジャンルのリサーチをして企業とかにその情報を提供しているとか、個人を調べさせたら全て丸裸にしてしまうほどの調査能力を誇るとか言われてたな。 その噂が本当なら確かに【超高校級】にふさわしいだろう。

 

「リサーチしたい事があればこの私にお任せを!それではあいうえお順にいきましょう!」

 

「だったらきっと次はあちしでちゅね!」

 

名乗りをあげたのはウサギのぬいぐるみ……ブンブンと杖を振り回すその姿はまさに異様だ。

 

「あちしはウサミ!魔法少女やって……」

 

「えいっ!」

 

「きゃあっ!?」

 

ウサミを名乗る着ぐるみの頭が後ろから近寄った……俺が来た時舌打ちした女子に奪われる。

 

その下から出てきたのはかなり整った顔立ちをした女の子で、着ぐるみの頭を奪った女子は満面の笑みを浮かべていた。

 

「やっぱりボクの目に狂いはなかった!着ぐるみの中にこんな可愛らしい天使がいたなんて!」

 

「か、返してください!」

 

「そんな!キミのような天使が姿を隠すなんて……」

 

「うっ、ううっ……」

 

あっ、泣かせた。

 

「うわあああっ!?な、泣かないで天使!今返すから、ほら!」

 

「ぐすっ……」

 

慌てて返された頭を再び着けてウサミはまた杖を振り回し始める。

 

心なしかさっきより勢いは感じられない。

 

「えっと、あちしはウサミ……」

 

「もうそういうのいいから」

 

「……ぐすっ、宇佐見衣です」

 

 

  宇佐見 衣【ウサミ コロモ】

 

  【超高校級のスーツアクター】

 

 

「宇佐見さんと言えば、魔法少女ウサミとして全国で活躍する【超高校級のスーツアクター】ですね!」

 

「そ、そんな、あちしに中の人なんて……」

 

「そのくだらない小芝居をまだ続けるのか」

 

「うっ、ひっく」

 

「天使を泣かせるとは何事だこの悪吐蠱め!」

 

「最初に泣かせたのは貴様だろうが」

 

「ぐっ」

 

「と、とにかく自己紹介を再開しましょう!次は……」

 

「わたし」

 

「うわっ!?」

 

背後から聞こえてきた声に驚いて振り向くと、そこにはマントを羽織ったボサボサの髪の女の子がいて。

 

その手にあるのは……振り子?

 

「宇田川瑛子。大地の声を聞き取る巫女」

 

 

  宇田川 瑛子【ウダガワ エイコ】

 

  【超高校級のダウザー】

 

 

「私の調査によると、宇田川さんは長年見つからなかった埋蔵金を見つけ出した事で一躍有名になった【超高校級のダウ……」

 

「違う」

 

「えっ、違うのか?」

 

「わたしは大地の巫女。大いなる存在に導かれてその力をほんの少し解放しているだけ。決してダウザーなんかじゃない。訂正して訂正して訂正して訂正して訂正訂正訂正訂正訂正訂正訂正……」

 

ダウザーという呼称が気に入らないのか宇田川は目を見開いて新木に詰め寄る。

 

……正直、かなり怖い。

 

「ひいいっ!?」

 

「なんだよこの電波女は!?」

 

「早く訂正して訂正しろ訂正訂正訂正訂正」

 

「わ、わかりました!宇田川さんは大地の巫女!【超高校級の巫女】ってやつです!」

 

「わかればいい」

 

新木が訂正すると宇田川はそれまでの殺しかねないほどの雰囲気をあっさりと霧散させて。

 

そのまま宇田川は何事もなかったかのように、ペンデュラムを持ちながらフラフラと俺達の輪から離れていった。

 

「……い、一生分の恐怖を味わった気分です」

 

涙目になりながら呟かれたそんな新木の言葉に同意するのは俺だけじゃないだろう。

 

きっとその場にいる全員同じような……

 

「ああ、怒った天使もいい!」

 

……一人例外がいた。

 

さっきから異様な存在感を放つジャージ姿の女子……なんで宇田川を見て目をキラキラさせてるんだ?

 

「あっ、そろそろボクの自己紹介かな!ボクは小田貴美!よろしく天使達、悪吐蠱はノーサンキュー!」

 

 

   小田 貴美【オダ タカミ】

 

  【超高校級のバドミントン部】

 

「小田貴美さんは、確か数々の大会で優秀な成績を収めてきた【超高校級のバドミントン部】ですね」

 

「その通りだよ天使良香!」

 

「なあ、さっきから言ってるその天使って……」

 

「チッ、わからない?これだから悪吐蠱は……」

 

新木に対する対応と露骨に違う態度を見せて小田は仕方ないと言わんばかりに俺を見る。

 

「いいかな、女の子はみんな天使なんだ!その全てを愛でるに値するこの世界の宝なんだよ!悪の権化で吐き気がする虫……悪吐蠱とは違う!」

 

さっきから男のニュアンスが変だと思ったらそんな変換してたのか!?

 

「そういう事だからボクは今天使と戯れるのに忙しいんだ。悪吐蠱はさっさと自己紹介でも勝手にしなよ」

 

本当にいっそ清々しいくらいの対応の差だ……

 

……その後回ってきた俺の自己紹介は特に問題もなく終わった。

 

まあ、他の自己紹介が個性的で実際はこんなものだろ……

 

 

「次はオレだな!」

 

俺の次に声をあげたのは見るからに筋肉ダルマといった感じの男だ。

 

着ているシャツはサイズが合ってないのかかなりキツそうに見える……

 

「うおおおおおっ!我慢出来ん!オレを見ろぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

「きゃわあああっ!な、なんでいきなり脱いでるのよアナタは!?」

 

「見ろ!見ろ!もっと見てくれ!この国希大の筋肉を目に焼きつけるんだぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

 

   国希 大【クニキ マサル】

 

  【超高校級のボディービルダー】

 

 

「国希大さん……ボディービルの世界に突如として現れた【超高校級のボディービルダー】ですね!」

 

「その通り!さあ、理解したならもっと見るんだこの胸筋!この背筋!この腕の芸術を見てくれぇ!」

 

「近寄るなこの悪吐蠱!天使にそのおぞましい何かが触れたらどうする!?」

 

「触りたいのか!ならば遠慮するな!」

 

「はっ!?やめろ、ボクの腕は天使の柔らかな身体に触れるための、ぎゃあああああっ!?」

 

国希に腕を掴まれて筋肉を触らされそうになっている小田……調整する必要もなさそうだし放置しておくか。

 

「やっと俺の番か……時間をかけすぎなんだよこの塵共」

 

靴音を鳴らしながら眉をつり上げて俺達を睨み付ける男……きっと名前を知らない方が少ないだろう有名人。

 

「この黒神明哉の時間にどれだけの価値があると思っている」

 

 

  黒神 明哉【クロカミ アキヤ】

 

     【超高校級の社長】

 

 

黒神明哉……現役高校生にして巨大企業黒神グループの総帥に君臨している【超高校級の社長】だ。

 

その言動から唯我独尊傍若無人が服を着て歩いているだなんて言われてる。

 

だけど調整役として生きてきたからだろうか……俺にはわかるんだ。

 

「俺の偉業をわざわざ語ってやる必要もないだろう。さっさと次に行け」

【僕の仕事は説明すると時間がかかるから……次の人、自己紹介どうぞ】

 

この黒神、本心と実際に出る言葉があまりにもかけ離れてる!

 

よーく見てみると微妙に震えてるし、多分極度の緊張から口が異常なまでに悪くなるタイプなんだ。

 

これはまた……調整役をするのに苦労するだろうな。

 

「さて、そろそろ私の番でしょうか」

 

白衣を羽織った男がニタニタ笑いながら前に出てくる。

 

その笑みは、どこか蛇を彷彿とさせた。

 

「小城津佐也。犯罪研究家です」

 

 

  小城 津佐也【コシロ ツサヤ】

 

  【超高校級の犯罪研究家】

 

 

小城津佐也、数々の事件の隠された真実を暴き出してきた【超高校級の犯罪研究家】。

 

だけどその犯罪研究への情熱の裏には……とんでもない目的を持っている。

 

「しかしここはなかなかにいい環境になりそうですね」

 

「貴様の目的にか」

 

「おや社長、ご存知でしたか。私が美学ある殺人を追い求めていると」

 

「び、美学ある殺人?」

 

「そうですよ?殺人とは美学あるものであれというのが私の持論でしてね。環境、トリック、動機!その全てが美しい殺人を私は追い求めているんですよ!」

 

「ま、また変な人がぁ……!」

 

そう、恐ろしい事にこの小城は美学ある殺人を追い求めている事を公言している。

 

あまりに危険なその思想に警察も要注意人物として監視しているらしい。

 

「フフフ、期待できそうなこの環境でいったいどんな事が起きるのやら……」

 

……確かに常に監視したくもなるな。




自己紹介半分まで。
残り八人は次話にて。


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3話

「つ、次は僕かな?」

 

小城の自己紹介で少し張り詰めた空気になっていた中、気まずそうに一人の男子が手を挙げる。

 

「僕は佐藤晴斗。普通の男子高校生だよ」

 

 

  佐藤 晴斗【サトウ ハルト】

 

  【超高校級の平均】

 

 

クラスに一人はいるようなこの雰囲気……今までの面子が超高校級の才能を持つ人間ばかりだった事を考えると、多分佐藤も何らかの才能持ちなんだろうけど、いったいどんな才能なんだ?

 

「佐藤さんですか……すみません、リサーチ不足だったみたいです。あなたはいったいどんな超高校級の才能をお持ちなんですか?」

 

新木も同じ事を思ったのか、そう問いかけると……佐藤の顔から表情が消えた。

 

あれ、なんか急に雰囲気が……

 

「僕は普通の男子高校生だよ」

 

「えっ、いや、でもここまで超高校級の方々が出てくるならあなたもそうなんじゃ」

 

「普通だって言ってるだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

 

いきなりの叫びに、もう何度目かもわからないけど新木は固まり、周りの空気が凍りつく。

 

その叫びの主である佐藤の目は血走り、口の端から泡まで出して頭をかきむしっていて……はっきり言って正気かすら疑わしい。

 

「才能?超高校級?おかしい僕は普通だ、普通に生きてきただけなのになんで超高校級の平均だなんて言われるんだよ!?」

 

「お、落ち着けよ佐藤!」

 

「ああ、その上こんな普通じゃない所に連れてこられて!日常のサイクルが崩れ、おええ!?」

 

は、吐いた?こいつ、いったいなんなんだよ!?

 

「特別とかいらない!僕は普通でいい、普通を返せぇ!」

 

「うるせえんだよ!くそが!」

 

あまりの迫力に周りがドン引きしていると、さっき黒神に食って掛かってた男子が佐藤の腹を殴る。

 

そのまま佐藤は何かを言う事もなく、その場に崩れ落ちた。

 

……今年は個性的とは聞いていたけどここまでなのか?

 

「なんなんですか、もう……」

 

新木はさっきから災難ばっかりだな……気の毒に。

 

「……もういい?次は多分あたしなんだけど」

 

「あっ、どうぞ……ま、まああなたは有名だと思いますけど」

 

 

次に出てきたのは金髪碧眼の女子……ああ、確かに彼女は有名だ。

 

「狭山真依」

 

 

   狭山 真依【サヤマ マイ】

 

  【超高校級のグラビアアイドル】

 

 

狭山真依と言えばそのプロポーションと明るい性格で人気のトップグラビアアイドル……あれ?

 

「なんか、テレビと性格違わないか?」

 

テレビで見た狭山はもっと明るかったというか、こんな冷めた目をするようには……

 

「あんなもの演技に決まってるでしょ。馬鹿じゃないの?」

 

「ば、馬鹿?」

 

「事実でしょ。それとも間抜けの方がいい?」

 

ほ、本当はこういう性格だったのか……ファンとまではいかないけど、なんか夢を壊された気分だ。

 

「何、その夢を壊されたとでも言いたげな顔」

 

「えっ」

 

「これだから嫌なのよ。元々じゃ売れないからってあんなキャラにされて、勝手に幻滅されるとか」

 

「わ、悪かった……」

 

「は?謝ってとか頼んでないからやめて」

 

き、キツいな……まあ、そういう人間だってわかればまだまともな方かもしれない……

 

「生意気な女だなてめえ!」

 

「はっ!?」

 

そんな事を考えていると、佐藤を殴った男子が何を思ったかいきなり狭山に殴りかかる。

 

狭山は虚をつかれたのか全く反応出来ていない……!

 

「っ!」

 

俺は咄嗟に防御の体勢を取りながら間に入ったけど、その一撃はあまりに重く、腕に痛みが襲いかかってくる。

 

こいつ、こんな力で狭山を殴ろうとしたのか!?

 

「ああ!?てめえこの武宮唯我の邪魔をしやがるか!」

 

 

  武宮 唯我【タケミヤ ユイガ】

 

   【超高校級の空手家】

 

 

武宮唯我……ま、まさかあの空手家の武宮唯我なのか?

 

空手をやってる奴がいきなり人を殴ろうとした、それどころかさっき人を殴ってたよな!?

 

「オラァ!」

 

「ぐっ!?」

 

武宮はターゲットを俺に変えたのかその拳が腹に突き刺さる……混乱していたせいでもろに入った一撃に意識が飛びそうにさえなって、俺は思わず膝をついた。

 

「ゲホッ、ゲホッ!」

 

「か、葛城さん!」

 

腹を押さえて咳き込む俺を新木が心配する声が聞こえてくる。

 

俺は大丈夫だと声をかけようとして、武宮がまた俺を殴ろうと拳を振り上げてるのを見た。

 

嘘だろ、こいつまだ……駄目だ、やられ……

 

「ああ、武宮くんまたこんな事して!ちょっと待って、ほらグローブ」

 

思わず目を閉じた俺の耳にそんな声が聞こえてくる。

 

見てみたらさっきも殴られていた小柄な男子が、武宮を怖がる様子もなくさっきと同じように笑いながらグローブを渡していた。

 

「はい、どうぞ」

 

「オラァ!」

 

グローブを着けた武宮はまるで誘うように腕を広げた男子を殴って、その男子は床を転がる。

 

「あはは、いいパンチだよ武宮くん!」

 

だけどすぐさま起き上がって埃を払っていた……だ、大丈夫なのかあれ。

 

一方の武宮は満足したのか、また俺や狭山を殴ろうとはしてこなかった。

 

「今、天使を殴ろうとしたな!?」

 

「ああ?うるせえな、当たってねえからいいだろうが。ごちゃごちゃ抜かすとてめえも殴るぞ」

 

「なんだとこの悪吐……むぐっ!?」

 

空手家にあるまじき言葉を吐きながら武宮は全く反省してないのか、つまらなそうにそっぽを向く……小田は宇佐見に口を塞がれ、他は俺を含めて殴られたくはないからか、何も言わなかった。

 

「大丈夫?ごめんね、武宮くんちょっと沸点低いから」

 

謝りながら俺に湿布を渡すさっきの男子……本当になんでこんなに平気なんだ?

 

「あはは、心配そうな顔しなくてもいいよ。ボクは南雲青梅、殴られ屋をしてるんだ」

 

 

  南雲 青梅【ナグモ オウメ】

 

  【超高校級の殴られ屋】

 

 

「殴られ屋……?」

 

「そうそう。葛城くんもイライラしたら思いっきりボクを殴っていいからね!」

 

「そ、そんな事するわけないだろう!」

 

「えぇ?でもストレス溜めるのはよくないよ?」

 

なんで南雲が大丈夫なのかはわかったけど、理解はしたくない。

 

ましてや殴るなんて俺はごめんだ!

 

「まあ、いいけど!他のみんなもどんどんボクを使っていいからね!」

 

なんで笑いながらそんな事が言えるんだよ……!

 

「ま、またあんなの……あ、ああ、もう。外ってこんなに怖いところなの……?」

 

そう言って頭を抱えるのはさっきからちょくちょく叫んでいた女子。

 

どうやら彼女の感性はまともみたいだ……

 

「あ、ああ、次もしかしてワタシ?ね、寝倉清美……【超高校級の引きこもり】よ」

 

 

   寝倉 清美【ネクラ キヨミ】

 

   【超高校級の引きこもり】

 

 

「ちょ、【超高校級の引きこもり】?」

 

それって才能なのか?

 

「う、産まれてから一度も外に出た事なかったのよ。今日、希望ヶ峰に来たのが初めての外出」

 

「一度も!?」

 

寝倉のその言葉はにわかには信じられない、そんな代物だった。

 

人間が生きていて全く外に出た事がなかったなんて……

 

「そんな事ありえるわけ?学校とか病院は」

 

「が、学校は家庭教師とか通信教育でなんとかなるわ。病院はかかりつけのお医者様が、向こうから来てくれるし……欲しい物があったらネットとかでね」

 

狭山の疑問に寝倉はなんて事はないと言った口調で返答する。

 

本当に筋金入りなんだな……

 

「ま、まあ……ワタシが望んでたわけでも、ないんだけど」

 

寝倉が最後に悲しげな顔でポツリと呟いたその言葉。

 

俺がそれについて聞くよりも早く、次の自己紹介が始まっていた。

 

「次は拙者でありますか……拙者は風魔千代!故あって才能は明かせませぬが、ご容赦を!」

 

風魔と名乗った少女が胸を張る……だけど才能を明かさないって本気なんだろうか。

 

腰に差したクナイ、手裏剣にしか見えない腕輪、口元を隠す黒い布に和服っぽい上着の上からでもすぐわかる鎖帷子……

 

いや、隠す気ないだろあれ。

 

「あの、どう見てもアナタって忍……」

 

「風魔さんは確か【超高校級のメイド】でしたね」

 

「違うのかよ!?」

 

「違うの!?」

 

新木が明かした風魔の才能に俺と寝倉の叫びが見事にシンクロする……こんな忍者ですアピールしておきながら【超高校級の忍者】じゃないのか!?

 

しかもメイド!?彼女のどこにメイド要素があるんだ!?

 

「ま、まさかリサーチされていたとは……!拙者は確かに【超高校級のメイド】であります……無念!」

 

 

   風魔 千代【フウマ チヨ】

 

   【超高校級のメイド】

 

 

「えぇー、その格好で本当に忍者じゃないの?」

 

「むむっ?確かにお館様の護衛をする事もあるにはあるでありますが……拙者の得意技能は基本的に家事であります!」

 

「じゃあなんでそんな忍者っぽい格好なんだい?可愛いけど、ボクは天使千代のメイドさんも見てみたかったな」

 

「だってかっこいいでありますよ!忍者!」

 

だから忍者の格好なのか……まさかあれでメイドの仕事もしてるのか?

 

「それに忍者がこんな忍ばない露骨な格好とかあり得ないのでは?」

 

「当たり前ですね」

 

……た、確かに。

 

ここまで露骨な忍者がいるわけない……なんだか負けた気分だ……

 

 

「次は私、デスネ?」

 

風魔の事でまた停滞した自己紹介も残りは後男女二人。

 

先に声をあげたのは女子の方……見るからに外国の出身だとわかるその顔立ちは片言が混じった口調で確信に変わる。

 

「私はメイリー・ペンティア。ガイド、デス」

 

 

    メイリー・ペンティア

 

   【超高校級のガイド】

 

 

「メイリーさんは色んな国のガイドとして活躍している【超高校級のガイド】ですね」

 

「そんなに色々な国に?」

 

「ハイ、国によって、違いがたくさんあって……ガイド好きデス」

 

どうやら彼女もまともみたいだな……よかった。

 

「たくさん……フフッ」

 

「……んっ?」

 

今、メイリーの目が妖しく光ったような……気のせいか?

 

「最後は俺か!アッハッハッハッ!今までの自己紹介を見てきたが本当に個性的な奴らばかりじゃないか!」

 

最後に残った男子……いや、高校生にしてはなんか大人っぽく見えるな。

 

「俺は山菊昌平!【超高校級の運転手】だ!アッハッハッハッ!」

 

 

  山菊 昌平【ヤマギク ショウヘイ】

 

    【超高校級の運転手】

 

 

「確か山菊さんは要人の運転手をした事もあるんですよね?」

 

「まあな!議員やら総理大臣やら海外のVIPの運転手もしてきたぞ!」

 

「高校生なのにそれだけ運転手してきたのか?」

 

「まあ俺は留年してるしな!アッハッハッハッ!」

 

留年……だから雰囲気が大人っぽいのか。

 

それに免許だって現役ともなると取りにくいだろうし……

 

「ちなみに何回留年したんデス?」

 

「うーん?確か俺は今年で二十五歳になるからひーふー……八年だな!」

 

八年!?

 

「に、二十五歳の高校生って……」

 

「卒業のタイミングをいつの間にか逃した感じだな!まあいずれ卒業出来るだろう!アッハッハッハッ!」

 

ポジティブ、過ぎる。

 

人を個性的だって言ってたけど、自分だって十二分に個性的じゃないか。

 

 

こうして、十六人の自己紹介が終わる。

 

あまりに個性的な面々に……俺は少し不安さえ感じ始めていた。

 

そしてその不安は。

 

キーンコーン、カーンコーン……

 

このチャイムと共に、さらに強くなる事になった。

 




これで自己紹介は終了です。
このメンバーで物語は進んでいきますのでよろしくお願いいたします。


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4話

『あーあー!マイクテス!マイクテス!聞こえてる?聞こえてるよね?』

 

「なんだ、この不快な放送は」

【この放送、なんか変だよ】

 

いきなり響いた放送……それに対して眉をひそめる黒神の言葉はここにいる全員が少なからず感じた事だろう。

 

疑念、不快感、恐怖……そんなものを呼び起こすような。

 

悪意とか嘲りとか、そんなマイナスの感情にこの上ない歓喜の色が混じった、そんな歪なものをこの放送からは感じた。

 

『これより希望ヶ峰学園の新入生入学式を始めたいと思います!』

 

「入学式……やはりここにいるのは今年希望ヶ峰学園にスカウトされた新入生でしたか」

 

「じゃあここにいるのも希望ヶ峰学園のイベントだったって事か!アッハッハッハッ!こりゃ一本取られた!」

 

「ふざけんな!校舎に入ったと思ったら、いきなりこんなとこに連れてきやがって!」

 

「あれれ、武宮くんもなの?ボクも学園に来たらいつの間にかここにいたんだよね!」

 

武宮と南雲の会話に自分もそうだという声が次々にあがる。

 

そうだ、個性的な面々の自己紹介で薄れていたけど俺も……

 

「ちょっと確認するわよ。この中にここに来るまでの記憶がある人間はいる?」

 

狭山の問いかけ……それに答えられる人間は誰もいない。

 

 

それは多少のズレこそあるものの全員が俺と同じように校舎に入ろうとした辺りで記憶が途切れて、ここにいたという事実。

 

そんなあまりにも異常な事実をはっきりと俺達に突きつけていた。

 

 

「なんだかキナ臭くなってきましたね……全員がいつの間にかここにいたなんて」

 

「そもそもここは本当に希望ヶ峰学園なのか!外から見た限りではこんな場所ではなかったはずだぞ!」

 

「悪吐蠱に同意するのは嫌だけど確かにそうだね。こんな窓が塞がれてるわ、監視カメラは大量にあるわな場所なら……いや、天使がいるなら来たけどさ」

 

「ぶ、ぶれまちぇんね……」

 

「もっと褒めていいよ天使衣!」

 

国希や小田の疑問も最もだ……ここがあの希望ヶ峰学園だとするならあまりにも聞いていた場所と違う。

 

ここにあるのは希望、というより……

 

「その蛇、何か知ってる」

 

ある単語が浮かびそうになった思考を遮るように、宇田川の衝撃的な発言が飛び出す。

 

「おやおや、なぜわかったんです」

 

宇田川に指差された蛇……小城は意外だと言うように肩をすくめていた。

 

「わたしは大地の巫女。それくらい見抜くのは造作もない」

 

宇田川がなんで小城が何かを知っていると見抜いたかはともかく、あの様子からするとそれは真実らしい。

 

だけど小城はいったい何を……

 

「もしかしてツサヤが私達をここに連れてきたデスカ?」

 

「いえいえ、それは違います。私も皆さんと同じで希望ヶ峰学園に来たらここにいたんです」

 

「そ、それじゃあ、アナタは何を知っているの?」

 

「ここがどこか、という事でしょうか……いや、正直あまりにも荒唐無稽な話なんですがね?」

 

ここがどこか……それは何もわからない俺達にとってみれば有益な情報。

 

だけどそれは現実離れした内容なのか、小城自身も断言するには迷う結論みたいだ。

 

「今は少しでも情報がほしい……話してくれないか小城」

 

「……わかりましたよ。お話しましょう」

 

俺が改めて問いかけて、小城がやっと重い口を開こうとする。

 

だけどその前に。

 

『はい注目!』

 

それは、俺達の前に現れた。

 

『これより学園長の挨拶を行います!』

 

声が聞こえる方向……壇上に俺達は一斉に視線を向ける。

 

さっきまで何もなかったそこには……今、新しくぬいぐるみが置かれていた。

 

左右で白と黒に分かれた身体。

 

白い右半分は普通のぬいぐるみに見えるのに、黒い左半分の禍々しい赤い目やゾッとする笑みを浮かべた口がそのイメージを塗り潰す。

 

『お待たせしたねオマエラ!今から入学式を始めるよ!』

 

それが喋っている、動いている。

 

『ボクはモノクマ!この希望ヶ峰学園の……学園長なのだ!』

 

希望ヶ峰学園の……学園長を名乗っている。

 

そんな異常すぎる光景に、俺の頭は数分、いや数秒?思考を停止させてしまっていた。

 

「これは何のつまらない冗談だ」

【……ドッキリ?】

 

「クマのぬいぐるみが学園長だなんてリサーチ結果は出ていません!これはいったいなんなんですか!?」

 

『さてオマエラ入学おめでとうございます!』

 

「ありがとうございます!」

 

「あんなぬいぐるみにお礼言っちゃうの!?」

 

黒神や新木を無視してモノクマは話を進める。

 

風魔と寝倉の方は悪いけど今は構っている余裕がない……!

 

『オマエラは今年入学する事となった新しい希望です!』

 

「アッハッハッハッ!そんな褒められたら照れちまうな!」

 

『だけど思うんだよね。世の中には危ない事がたくさんあるって』

 

「そうかな?ボクは天使が溢れた素晴らしい世界だと思うよ……悪吐蠱もいるから確かに危なくはあるけど」

 

「あちしはここが一番危ない気がしてきまちた……」

 

「なんだって!?天使衣の光を曇らせるのはいったいどの悪吐蠱だ!?」

 

『そんな危ない世の中からオマエラ希望を保護するためにこの希望ヶ峰学園はあるのです!』

 

「ご託はいいわ……何が言いたいわけ?」

 

『まあ要するに……オマエラには一生ここで暮らしてもらいます!』

 

モノクマのその宣言に、マイペースだった面々が揃って沈黙する。

 

だけどそれは、あくまでも今言われた理解しがたい宣言を理解するためのもので。

 

数十秒もすれば、爆発にも等しい怒号が体育館に響き渡った。

 

「一生だと!?それはどういう意味だぁ!」

 

『一生は一生だよ!オマエラは死ぬまでここから出ていく事は出来ないの!』

 

「ふざけないで。わたしには大地の巫女としての使命がある」

 

「私もまだ行ってない国があるのに、そんなの困るデスヨ!」

 

俺達の困惑も、怒りも、まるでどこ吹く風と言うようにモノクマは相手にもしない。

 

だけどそんなものがいつまでも続くわけがない……この場にはあいつがいるんだから。

 

「いつまでも舐めた事言ってんじゃねえぞ糞野郎が!」

 

俺がその名前を頭に浮かべたのと同時に、武宮がモノクマに向かって走り出す。

 

それはまさに弾丸というのがふさわしい疾走……その勢いのまま武宮はモノクマに蹴りを叩き込んだ。

 

【超高校級の空手家】の怒りにまかせた蹴り……俺達が受ければ死んでもおかしくない。

 

『……何かした?』

 

だけどモノクマはその一撃を受けても、少し凹んだだけだった。

 

「てめえ、素直に壊れやがれ!」

 

『嫌だよ!いくらスペアがあるからってなんで壊れないといけないのさ!』

 

武宮の攻撃をいなしながらモノクマはさらに悪いニュースを叩きつけてくる。

 

この硬さでさらにスペアがいる……その事実にはさすがの武宮も思うところがあったのか、舌打ちしながらその場から飛び退いた。

 

「糞野郎が!」

 

『糞野郎はどっちだよ!このボクのプリティなボディを凹ませるなんて!だいたい話にはまだ続きがあるんだから、最後まで聞く!』

 

腕をあげて怒りをアピールしていたモノクマは、咳払いを一つして壇上に座る。

 

『オマエラが一生ここにいるのが嫌なのはわかりました!ボクはそんなオマエラに、帰るためのシステムを用意してあります!』

 

「帰るためのシステム……それはなんでしょう?」

 

小城の問いにモノクマが笑い声を漏らす。

 

俺は、この時……未だに武宮に殴られて気絶したままの佐藤を羨ましく思ってしまった。

 

『人を、殺すんだよ』

 

だって佐藤は、こうして直接モノクマに悪意をありったけ込めたような言葉を聞かされる事はなかったんだから。

 

「人を、こ、殺す?」

 

『その通り!オマエラ新入生の中の誰かを刺して殴って絞めて落として沈めて斬って燃やして……手段は問いません!人を殺す事がオマエラが帰る唯一の方法なのです!』

 

……モノクマに帰りたければ人を殺せと言われて、なぜだか俺には予感があった。

 

「本当か?」

 

人を殺したからって、それでこのモノクマは帰すわけがないと。

 

『はい?』

 

「誰かを殺すなんて確かにそれだけで異常だ……だけど他にも、何かあるんじゃないのか?」

 

「そうね。こんな悪趣味な存在が人を殺したからって素直に帰すとは思えない」

 

『いいね!なかなかいいポイントだよそこは!もしオマエラの中で殺人が起きた場合……オマエラには学級裁判を行ってもらいます!』

 

学級、裁判?

 

『人を殺した犯人……クロは誰にも気付かれずに殺人を行えたか!それ以外の人間……シロはクロの犯行を見破れるか!』

『それを議論するのが学級裁判だよ!』

 

殺人が起きた場合、俺達は犯人当てをしなければいけないって事か……!

 

「あの、もしそこで犯人、クロでしたか。クロが暴かれた場合……クロはどうなるんですか?」

 

『犯行を暴かれたクロにはおしおきを受けてもらいます!』

 

「おしおき?具体的にはなんだ、牢屋にでも放り込むのか」

 

『処刑です』

 

「しょ、処刑だって!?」

 

『人を殺したんだから当然それ相応の罰は受けてもらわないとね!死には死を!シンプルでしょ?』

 

「ならば半分が犠牲になれば半分は助かるわけか?」

【それじゃあシロがクロの犯行を暴けなかったら……】

 

『その時はシロにおしおきを受けてもらいます!クロにしかペナルティがないのは不公平だからね!』

 

「なんだよそれ……」

 

つまり、一度殺人が起きたら必ずシロ全員かクロが死ぬって事じゃないか!?

 

「なんでだ!なんでそんな事を俺達にさせるんだよ!?」

 

わからない。

 

俺達は希望ヶ峰学園に入学する事になっただけの高校生だ。

 

いったいどうしてこんな事に巻き込まれなきゃ……

 

『なんでってそれになんの意味があるの?それを聞いたらオマエラは納得するの?』

 

「それは!」

 

『嫌なら殺さなきゃいいんだよ!一生ここで生きていく事を受け入れればいいだけ!』

 

「そ、そんな……」

 

『さてと説明もしたし、最後に開始宣言をしようかな?』

 

「開始宣言……」

 

『コロシアイ学園生活!始まるよー!』

 

 

コロシアイ学園生活。

 

それが俺達が巻き込まれた最低で最悪な日々の、名前だった。

 

『それじゃあ入学式はここまで!これからオマエラがどんな生活を過ごすか……楽しみにしてるよ!』

 

モノクマは笑いながら、消えていく。

 

後に残されたのは、一気に色々なものを叩きつけられた俺達だけ。

 

「た、大変な事になりましたね」

 

「コロシアイ学園生活……な、なんでこんな事に」

 

誰もが困惑していた。

 

当たり前だ、いきなりこんな……

 

「フフフ」

 

「……今笑ったの誰?」

 

隠そうともしない笑い声……その発生源は、小城だ。

 

「いやはや、まさか本当に……資料でしか見なかったあの事件が再び起こるとは!」

 

小城は笑う、この状況が愉しいと言うように。

 

いや、実際愉しいんだろう……美学ある殺人があるかもしれないんだから。

 

「揃ったんですね!私の追い求める美学ある殺人のための条件が!」

 

「お前、何を……!」

 

「オラァァァァッ!」

 

「きゃああっ!?」

 

「おいやめろ!何をしている!」

 

小城に詰め寄ろうとしたその瞬間、違う方向から悲鳴が聞こえる。

 

そちらを見れば、武宮が馬乗りになって南雲を殴り付けていた。

 

「糞が!糞が!糞がぁ!」

 

「あはは、武宮くんっ!構わないよ、もっとボクを使ってさ!」

 

なんだよ、これ。

 

「なるほど、コロシアイか……つまり上手く立ち回れば天使だけの楽園を作れるじゃないか!」

 

「こんな所にいられない……大地の巫女として生け贄を……」

 

なんなんだよこれは。

 

「ちょっと葛城」

 

「狭山……?」

 

「あんた調整役だったわね?この状況調整してみたら?」

 

この状況を……?

 

「……」

 

「出来ないの?はぁ、役に立たないわね」

 

怒号、悲鳴、笑い声。

 

全てがごちゃ混ぜになって体育館を支配する。

 

誰でもいい。

 

誰でもいいから、助けてくれ。

 

俺は、俺はもう……

 

「こんなの調整出来るわけ、ない……」

 

そして俺はさっき頭によぎった言葉を改めて思い出す。

 

ここにあるのは希望じゃない。

 

 

 

 

 

     絶望だ。

 

 

 

 

 

 

プロローグ【問題だらけの入学式】END

 

 

生き残りメンバー

 

【超高校級の調整役】葛城潤

【超高校級のリサーチャー】新木良香

【超高校級のスーツアクター】宇佐見衣

【超高校級のダウザー】宇田川瑛子

【超高校級のバドミントン部】小田貴美

【超高校級のボディービルダー】国希大

【超高校級の社長】黒神明哉

【超高校級の犯罪研究家】小城津佐也

【超高校級の平均】佐藤晴斗

【超高校級のグラビアアイドル】狭山真依

【超高校級の空手家】武宮唯我

【超高校級の殴られ屋】南雲青梅

【超高校級の引きこもり】寝倉清美

【超高校級のメイド】風魔千代

【超高校級のガイド】メイリー・ペンティア

【超高校級の運転手】山菊昌平

 

以上16名。

 

 

To Be Continued...

 

 

 

【希望ヶ峰学園入学証書】を手に入れました。

【希望ヶ峰学園に入学した証。

絶望の日々の始まりを告げるとは誰もが思いもしなかった】

 

NEXT→CHAPTER01【シズメル】




プロローグ終了。
これから本格的に物語が始まります。


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キャラクター紹介
キャラクター紹介


名前…葛城 潤【カツラギ ジュン】

性別…男

才能…【超高校級の調整役】

 

「よーし、よくわかった。まず人の話を聞く事から始めよう」

 

身長…177cm 体重…58kg 胸囲…73cm

 

好きなもの…少年漫画

嫌いなもの…裏切り

 

いがみ合うチームの潤滑油として成功に導く超高校級の調整役にしてこの物語の主人公。

彼がいるといないとではチームワークに酷く差が出来る。

コロシアイにおいて苦労する事を運命付けられている。

主に我の強いクラスメイトのせいで。

 

【服装】

紺色のブレザーに赤いネクタイ。

ベージュ色のチェック模様のズボン。

 

【髪と目】

茶色い短髪の後ろを結んでいる。

頭頂部には垂れぎみのアンテナ。

目の色は紫。

 

 

名前…新木 良香【アラキ ヨシカ】

性別…女

才能…【超高校級のリサーチャー】

 

「えへへ、調査はこの私にお任せを!」

 

身長…153cm 体重…40kg 胸囲…83cm

 

好きなもの…調査

嫌いなもの…隠し事

 

様々なジャンルの事柄をリサーチしている超高校級のリサーチャー。

彼女にかかれば国家の機密さえもリサーチしてしまえるとか。

 

【服装】

真っ赤なブレザーに胸元に黒いリボン。

黒いスカートに白のハイソックス。

頭に載せる形の赤い小さな帽子に丸い眼鏡。

白の肩掛け鞄を掛けている。

 

【髪と目】

肩までの長さの黒髪。

右側頭部に赤いヘアピン。

目の色は赤。

 

 

名前…宇佐見 衣【ウサミ コロモ】

性別…女

才能…【超高校級のスーツアクター】

 

「うわわっ、蹴らないでくだちゃーい!」

 

着ぐるみあり

身長…175cm 体重…80kg 胸囲…100cm

 

着ぐるみなし

身長…158cm 体重…45kg 胸囲…80cm

 

好きなもの…ぬいぐるみ、ウサギ

嫌いなもの…乱暴な人

 

着ぐるみ関連のイベントで見ない事はないと言われる超高校級のスーツアクター。

常にウサギの着ぐるみを着ており、中の姿を見せようとしない……のだがコロシアイ学園生活では小田によっていきなり素顔を暴かれている。

 

【服装】着ぐるみあり

ウサミの着ぐるみ。

 

【服装】着ぐるみなし

グレーのタンクトップと白のショートパンツ。

 

【髪と目】

桃色のショートカット。

ウサギを模したカチューシャを着けている。

目の色は黒。

 

 

名前…宇田川 瑛子【ウダガワ エイコ】

性別…女

才能…【超高校級のダウザー】

 

「わたしは大地の巫女……」

 

身長…131cm 体重…28kg 胸囲…64cm

 

好きなもの…大地

嫌いなもの…ポイ捨て

 

温泉から埋蔵金、油田まで見つけ出す超高校級のダウザー。

大地の巫女を自称しており、ダウザーと呼ばれる事を非常に嫌っている。

 

【服装】

巫女服に黒いマント。

腰回りにはペンデュラムが大量に付けられている。

 

【髪と目】

ボサボサの白い髪。

茶色い鉢巻きを巻いている。

目の色は金色。

 

 

名前…小田 貴美【オダ タカミ】

性別…女

才能…【超高校級のバドミントン部】

 

「ああ、天使がいっぱいいるよぉ……」

 

身長…171cm 体重…60kg 胸囲…85cm

 

好きなもの…天使

嫌いなもの…悪吐蠱

 

数々の大会で優秀な成績を納めてきた超高校級のバドミントン部。

女子を天使と呼び愛でるのを好む一方で、男子は悪吐蠱【オトコ】と吐き捨てている。

 

【服装】

上下黒のジャージ。

青色の大きなスポーツバッグを持っている。

 

【髪と目】

赤い腰までのロングヘアーを首の辺りで黒いリボンで結んでいる。

目の色は黄色。 

 

 

名前…国希 大【クニキ マサル】

性別…男

才能…【超高校級のボディービルダー】

 

「もっとオレを見ろ!この美しい筋肉を目に焼き付けろぉぉぉぉぉぉ!!」

 

身長…202cm 体重…122kg 胸囲…130cm

 

好きなもの…筋肉、トレーニング

嫌いなもの…軟弱

 

彗星のごとく現れ、数多くの大会で優勝をかっさらってきた【超高校級のボディービルダー】。

自身の筋肉を何よりも美しい物だと語り、隙あらばそれを見せつけてくる。

 

【服装】

サイズの合っていない白のTシャツ。

黒色の短パン。

【髪と目】

金色の坊主頭。

目の色はグレー。

 

 

名前…黒神 明哉【クロカミ アキヤ】

性別…男

才能…【超高校級の社長】

 

「ついてこられないならばそのまま突っ立っていろカスが」

【危ないからみんなは無理はしないで待ってていいからね?】

 

身長…182cm 体重…64kg 胸囲…81cm

 

好きなもの…社員

嫌いなもの…自分の態度

 

唯我独尊傍若無人傲慢が服を着たような男と呼ばれる大企業のトップに君臨する【超高校級の社長】。

しかしその本質自体はまともであり、彼をそう呼ばせるのは照れと緊張から言いたい事がかなり高圧的になるその口の悪さから。

【服装】

上下純白のスーツに淡褐色のネクタイ。

黒縁眼鏡をかけている。

 

【髪と目】

肩までのくすんだ金髪。

目の色は紫。

 

 

名前…小城 津佐也【コシロ ツサヤ】

性別…男

才能…【超高校級の犯罪研究家】

 

「ああわかってませんね!殺人というものはもっと美しい物であるべきなんですよ!」

 

身長…179cm 体重…61kg 胸囲…78cm

 

好きなもの…犯罪

嫌いなもの…美学のない殺人

 

数多くの殺人事件を研究し、隠された真実を見つけ出してきた【超高校級の犯罪研究家】。

殺人には美学があるべきと考えており、それを常に追い求めている。

 

【服装】

黒いシャツに茶色いベスト。

さらにその上から白衣。

紺色のズボン。

左手中指に銀の指輪。

 

【髪と目】

腰まで伸びた黒い長髪。

前髪で左目を隠している。

目の色は赤だが糸目のため普段は見えない。

 

 

名前…佐藤 晴斗【サトウ ハルト】

性別…男

才能…【超高校級の平均】

 

「こんなの普通じゃない!僕は普通に過ごしていたいだけなのに……!」

 

身長…170cm 体重…61kg 胸囲…83cm

 

好きなもの…普通

嫌いなもの…特別

 

全国の高校生の中から全てが平均であると認められた超高校級の平均。

普通である事にこだわっており、それはもはや執着の域。

 

【服装】

平均的な学ラン。

 

【髪と目】

平均的な長さの短い黒髪。

目の色は黒。

 

 

名前…佐山 真依【サヤマ マイ】

性別…女

才能…【超高校級のグラビアアイドル】

 

「あんなもの演技よ」

 

身長…164cm 体重…50kg 胸囲…88cm

 

好きなもの…猫

嫌いなもの…噂

 

そのプロポーションと愛らしい性格から男女問わず人気の超高校級のグラビアアイドル。

しかしその性格は全て演技であり、本性はかなりキツい性格をしている。

 

【服装】

胸元を開けた白いシャツ。

クリーム色の上着を腰巻きにしている。

藍色のスカートに紺のニーソックス。

 

【髪と目】

腰までの金髪のサイドテール。

前髪部分に猫の形の髪飾り。

目の色は碧眼。

 

 

名前…武宮 唯我【タケミヤ ユイガ】

性別…男

才能…【超高校級の空手家】

 

「うるせえんだよ糞が!!黙らねえと殴るぞてめえ!」

 

身長…185cm 体重…78kg 胸囲…88cm

 

好きなもの…殴る事

嫌いなもの…ムカつく全て

 

小学生の頃から無敗を誇る超高校級の空手家。

異常なまでに沸点が低く、一度キレると女子だろうが容赦なしに殴る。

 

【服装】

褐色の肌、ボロボロの胴着に黒帯。

足は靴を履いていない。

 

【髪と目】

伸ばしっぱなしにしたグシャグシャの黒髪。

目の色は赤褐色。

 

 

名前…南雲 青梅【ナグモ オウメ】

性別…男

才能…【超高校級の殴られ屋】

 

「あっ、殴る?はいグローブ」

 

身長…135cm 体重…29kg 胸囲…61cm

 

好きなもの…殴られ屋としての仕事

嫌いなもの…無視

 

常に誰かに殴られようとする超高校級の殴られ屋。

小柄な体格でありながら笑って殴られるその姿は恐怖さえ感じさせる。

 

【服装】

青いシャツの上に前を開けた紺色のブレザーとお揃いのズボン。

腰からグローブを吊るしている。

 

【髪と目】

毛先が内側にカールした肩までの茶髪。

目の色はベージュ。

 

名前…寝倉 清美【ネクラ キヨミ】

性別…女

才能…【超高校級の引きこもり】

 

「なんでそうなるの!?」

 

身長…163cm 体重…55kg 胸囲…96cm

 

好きなもの…ボーッとする事

嫌いなもの…暗い家

 

産まれてからただの一度も家から出たことがないと言われる超高校級の引きこもり。

感性はまともなツッコミ気質だが引きこもりだったがゆえに会話が苦手。

 

【服装】

白いシャツの上から焦げ茶色のカーディガン。

レースのついた白いスカートに黒のストッキング。

 

【髪と目】

藍色のセミロングを二つに分けて結んでいる。

目の色は空色。

 

 

名前…風魔 千代【フウマ チヨ】

性別…女

才能…【超高校級のメイド】

 

「拙者の才能は明かせませぬ!」

 

身長…162cm 体重…50kg 胸囲…82cm

 

好きなもの…忍者

嫌いなもの…目立つ事

 

 

口の布や装束など忍者要素を全面に押し出した超高校級のメイド。

運動神経や家事の腕は非常に優れているが、かっこいいと理由で常に忍者の格好をしている。

 

【服装】

薄手の鎖帷子の紫色の忍者装束。

首と腰に黒い布を巻き、腰布の下にはクナイ。

手首には手裏剣を模した腕輪。

 

【髪と目】

肩までの黒髪を持ち上げて赤いかんざしで留めている。

目の色は銀色。

 

 

名前…メイリー・ペンティア

性別…女

才能…【超高校級のガイド】

 

「旅は好きデスヨ……フフッ」

 

身長…173cm 体重…62kg 胸囲…92cm

 

好きなもの…旅行

嫌いなもの…嵐

 

外国を旅しながらガイドをしている超高校級のガイド。

明るい性格をしているが所々で不穏な気配を見せる。

 

【服装】

白いシャツに茶色の革のジャケット。

ダメージジーンズ。

大きなリュックサックを背負っている。

 

【髪と目】

暗い金髪のポニーテール。

目の色は緑。

 

 

名前…山菊 昌平【ヤマギク ショウヘイ】

性別…男

才能…【超高校級の運転手】

 

「アッハッハッハッ!気にするだけ無駄だ無駄!」

 

 

身長…192cm 体重…87kg 胸囲…90cm

 

好きなもの…運転、高校生活

嫌いなもの…特になし

 

 

政治家やVIPの運転手も務めてきた超高校級の運転手。

八年留年しているがそれを全く感じさせないほどポジティブ……というより能天気。

 

【服装】

上下黒いスーツだが上は袖を通さず羽織るようにしている。

手には指ぬきグローブ。

 

【髪と目】

短い逆立ち気味の金髪。

目の色は紫。

 



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CHAPTER01【シズメル】
(非)日常編その1


いよいよCHAPTER01スタートです。
よろしくお願いします。


人を殺すという事は、あまりにも重い。

 

突然人を殺せと言われて即行動出来る人間はまずいないだろう。

 

だが、最初の一歩さえ踏み出してしまえば。

 

コロシアイという深淵に、人は簡単に沈んでいく。

 

 

CHAPTER01【シズメル】(非)日常編

 

 

希望ヶ峰学園に入学するはずだった俺達十六人は、どこかもわからない場所に拉致された。

 

そして拉致した犯人だろうモノクマというロボットに告げられたコロシアイ学園生活の開始。

 

そこから小城や武宮、一部の生徒が暴走を始め、完全な無秩序状態……

 

下手をすれば今この場で殺しあってもおかしくない状況で、俺は調整役として声をあげないといけないのに。

 

完全に雰囲気に呑まれた俺の声帯は全く機能してくれなかった。

 

「いい加減にしろこの塵共」

【みんな、ちょっと落ち着いてよ!】

 

そんな異常な光景を止めたのは、黒神の声音だけは心底見下げ果てたと言わんばかりの冷たい一喝だった。

 

「なんだこの低級極まりないくだらない騒ぎは……貴様らこれでよくも超高校級などと名乗れるな、屑が。こんな連中と同期とは希望ヶ峰も程度が知れる」

【いきなりこんな事になって混乱するのもわかるけど。これじゃあモノクマの思う壺だよ……クラスメイトなんだから団結しないと】

 

畳み掛けるように、捩じ伏せるように黒神の口からは真意を棘で覆い尽くした暴言が吐き出されていく。

 

黒神の言いたい事そのものは間違ってない。

 

確かに今の状態はモノクマにとって願ったり叶ったりの状況だろうし、俺達はクラスメイトなんだから団結するべきだ。

 

「てめえ、さっきから偉そうにしてんじゃねえぞ!?」

 

「ええい、暴れるな!」

 

「今回は武宮に同意だな。黒神、そっちこそさっきからちょっと口が悪すぎやしないか?」

 

「そうであります……いくらなんでも刺々しすぎるのでは?」

 

だけど黒神の表向きのそれはあまりにも棘がありすぎる。

 

こんな言い方をされて素直に頷ける人間はまずいないだろう……現に国希が抑えてなければ武宮はすぐにでも殴りかかる勢いだし、寛容な方だろう風魔や山菊でさえこれだ。

 

このままだと黒神の本音は伝わらず、他のメンバーとの間に決定的な対立が生まれる……だけど。

 

「ちょっと待ってくれ」

 

それは俺がいなかったらの話だ。

 

黒神の表向きの言葉……これでよくも超高校級を名乗れたという言葉は、俺の情けない思考を振り払うには十分な弾丸だった。

 

ここにいる個性的なメンバーや今の状況に圧倒されたけど、いくら助けを求めたところで調整役の才能を持つのは俺。

 

だったら俺がやるべきは助けを求める事じゃなくて……いらない亀裂を生じさせないために動く事。

 

それが【超高校級の調整役】である俺の役割なんだ……!

 

「確かに黒神の言葉は刺々しい。だけど黒神が本当に皆に言いたい事は違うんだよ」

 

「ど、どういう事ですか?」

 

「本当は落ち着いて、こんな状況だと混乱するのもわかるけど、このままだとモノクマの思う壺だよって黒神は言いたいんだ」

 

そうだよな?と同意を求めると、黒神は口を開こうとして……また変な言い方になるとわかったのか、ただ頷く。

 

「ぜ、全然違わない?というかなんでわかるの?」

 

「なんとなくな。調整役としての経験があったからかもしれない」

 

「そういう事だったんでちゅか……だったらさっきあちしに言ったのも」

 

「いやいや、騙されたらダメだよ天使衣!悪吐蠱なんて嘘をつく生き物なんだから!」

 

思わぬ黒神の本音に皆がざわつきだす……最も、これでこの言い方を受け入れられるかと言えばノーだろう。

 

黒神がどんな本心を持っていたとしても、それは言葉の棘を消す魔法にはならないんだから。

 

多分これは黒神自身にこの口の悪さを直してもらうか、俺達が時間をかけて理解するしかない。

 

どちらにしろ時間のかかる問題……なら。

 

「小城、ますますさっき聞けなかった話を聞く必要が出てきたみたいだな」

 

今はこの場を治める事に重点をおいて……同時にさっき聞けなかった事を聞き出そう。

 

「フフフ、そうですね。皆さんもいずれ知る事になるでしょうし、美学ある殺人のためなら情報提供ぐらいはお安いご用です」

 

こんな状況で上機嫌で舌舐めずりしている小城に対して思うところはあるけど、今はあえて口を出さない。

 

機嫌を悪くされて教えないなんてなったら、問題だからな……それだけ今の俺達にとって何かを知る小城は重要人物なんだ。

 

「おぉ、そういえばそんな事言ってたな。それにさっきも資料がどうとか……お前さん、何を知ってんだ?」

 

「どこから話すべきか……皆さんはこの希望ヶ峰学園が一度滅びを迎えたのをご存じでしたか?」

 

「なんだと……?」

 

「希望ヶ峰学園が、滅んだ!?」

 

そうして語り始めた小城の話は初っぱなからとんでもない衝撃を俺達にもたらした。

 

こんなに世界的にも有名な、長年栄華を誇ってきた学園がそんな事になったなんて聞いた事ないぞ……

 

「本当でしょうね?そんな話聞いた事ないわよ」

 

「まあ、知らない人の方が多いでしょう。これは希望ヶ峰学園の闇のようなものですし、あまりにも凄惨な事件でしたから」

 

希望ヶ峰学園の闇……いったいそれがどんな風に関わってくるんだ?

 

聞きたい事は山ほどある、だけどいちいち話の腰を折るわけにもいかず……俺が黙ったままでいる間にも小城の話は続く。

 

「かつて希望ヶ峰学園は数多くの才能をスカウトし、研究していました。しかし78期生……その中にとんでもない生徒がいたんです」

 

「とんでもないって殺人鬼とかデスカ?」

 

「いいえ、違います。もちろん表向きの才能は違ったようですが、その後の影響や本人が名乗っていたことからこう呼ばれています」

 

「【超高校級の絶望】と」

 

【超高校級の絶望】……聞いただけでいい才能じゃない事だけはわかる。

 

「資料によると【超高校級の絶望】は洗脳や懐柔を用いて希望ヶ峰の生徒や一般人を取り込み、世界にテロや暴動を引き起こした。その被害は世界中に及び少なくともその時の人口の半分は死んだとか」

 

「じ、人口の半分!?」

 

「でも、そんな大惨事がどうして今の世に伝わってないんですか?」

 

新木の言う通りだ。

 

この事件が本当にあったなら、いくら記録が失われていても多少は歴史に残るはず。

 

だけど俺達はそんな事、何も知らない。

 

「出来なかったんですよ。紙媒体の記録は失われ、映像記録には洗脳する仕掛けを残していたようでしてね……映像を見た人はまるで狂信者のように暴れたとか」

 

「口だけでは何をトチ狂ったかと判断されるか……ふん、当然だな」

【にわかには信じがたい話ではあるし……記録がないなら仕方がないのかもね】

 

確かにこうして聞いていても、信じきれない部分はあるしな。

 

「それに、当時の人々は恐怖したようです。その絶望のあまりにも浸透のしやすさ、拡大の早さに」

 

「もう【超高校級の絶望】は話題にするのも憚られた……だからみんな口を閉じたって事?」

 

なんか怖いなぁと口にする南雲……その様子はさっきまで武宮に殴られていたなんて微塵も感じさせない。

 

いくら殴られ屋といってもなんであんな平然としていられるんだ……その方が怖いぞ。

 

「そういう事です。この話を語り継いでもし影響された人間が現れたら、それこそ悲劇を繰り返す事になりますから」

 

「ふうむ……それではもしやこの状況も過去に?」

 

「えぇ、資料だと【超高校級の絶望】のクラスメイト……【超高校級】の才能を持つ当時の希望ヶ峰学園の生徒達が校舎に閉じ込められ、コロシアイをさせられたようですね」

 

「なにぃ!?今とまるっきり同じじゃないか!」

 

「そう、そしてその舞台であった校舎……資料に載っていた上面図とここは酷似している」

 

かつてコロシアイが行われた場所とここが同じ……じゃあここは希望ヶ峰学園の校舎だっていうのか!?

 

「さらに【超高校級の絶望】はコロシアイの進行のためにあるロボットを使っていたとか」

 

「まさか」

 

「その名はモノクマ。さっき私達も会ったあのモノクマですよ」

 

 

状況、舞台、モノクマ……小城の話すその事件と今の俺達はあまりにも一致しすぎている。

 

まるで、俺達をここに連れてきた犯人がその事件の再現をしたいかのようじゃないか……

 

「これが私の知る全てです」

 

「結論から言うと、このコロシアイとやらはその大昔の【超高校級の絶望】に影響された馬鹿が始めたってわけ?」

 

「まあ、影響されているのは事実でしょうね。まさか何も知らずにここまで被せたというのもおかしな話ですから」

 

「なるほどね、じゃあ今回の事件はお前が引き起こしたって事かな」

 

小城の話を聞き終わった皆が考え込んでいると、小田がいきなり指を突きつけて小城が犯人だと主張し始める……どうしてそんな結論になったんだ?

 

周りも同じ事を思ったのか、小田を何を言い出したんだという目で見ていた。

 

 

「あ、あの小田さん?どうちてそうなるんでちゅか?」

 

「わからないのかい天使衣!あの悪吐蠱はこのコロシアイが昔の事件の影響を受けたと言った。だけどボク達はそんな事件の事、今聞くまで何も知らなかったじゃないか!」

 

……まさか、小田が小城を犯人だと主張してる根拠って。

 

「あの、もしかして小田さんは、小城さんが昔の事件を知っていたから犯人だと……?」

 

「その通りさ天使良香!さあ、天使達早くボクの後ろに!悪吐蠱は死んでもいいからそいつを捕まえるんだ!」

 

意気揚々と腕を広げる小田の言葉に……動く人間は誰もいない。

 

「あ、あれ?」

 

いつまで経っても誰も動かない事に、小田は予想外だったのか目に見えてうろたえだす。

 

その様子はある意味同情すらしたくなるぐらいの狼狽ぶりだ。

 

「あんた馬鹿じゃないの?」

 

「馬鹿!?天使真依、どうしてそんな……」

 

冷めきった目の狭山に容赦なく斬って捨てられてさすがの小田も動揺している。

 

調整役として何か言うべきなのかもしれないけど、男の俺が口を挟むとややこしくなりそうだから黙っておくか……

 

「小田殿……もしもこのコロシアイが隠匿されていた過去の模倣ならば、それを知っている事を犯人はひけらかさないのでは?」

 

「いや、だけどね天使千代……昔の事件を知っていたのはあの悪吐蠱しかいないんだから必然的に……」

 

「そこは黙っただけだと思いますデスヨ?こうして疑われてしまいますデスシ」

 

「て、天使メイリーまで……そうだ!そもそもあの悪吐蠱は自分から言い出したんじゃなくて天使瑛子が見抜いたから……」

 

「名前を呼ばないで変態。大地に神罰を下してもらいたいの?」

 

「名前を呼んだだけで変態!?」

 

容赦ない総攻撃は女子を天使だなんて呼ぶ小田には効果抜群だったようで、彼女は膝をついて嗚咽を漏らし始める。

 

「ちょ、ちょっとやり過ぎたんじゃない……?」

 

「た、確かに少しかわいそうな気もしてきました」

 

まあ、小田も思った事を言っただけだもんな……

 

ここはフォローするべきなんだろうけど男にされるのは嫌だろうし、宇佐見辺りに頼んで……

 

「はぁぁ……天使達がボクの主張を切り捨てるのも、冷めた目で罵倒するのも、それはそれですごくいい……!」

 

前言撤回だ、あれはもう放置しよう。

 

「し、心配して損した……」

 

「同情が一瞬で吹き飛びました」

 

とうとう寝倉や新木にまで呆れられる小田……あの二人にこう言われるなんて相当だぞ。

 

とにかく小田は大丈夫そうだし、話を戻すか。

 

「それで、ここが小城の言う過去の再現みたいな場所だとしてこれからどうする?」

 

「それなんですが、皆さんまだこの場所を詳しく調べてないでしょう?私も確信を得たいのでここはひとつ調査をしませんか」

 

話を切り換える俺に乗る形で小城が調査を提案してくる。

 

調査か……俺も走り回ってた時は慌ててたし、改めてやれば何か発見があるかもしれないな。

 

「よし、調査か!アッハッハッハッ!もしかしたら出口が開いているかもしれないしな!」

 

「それはねえだろ……」

 

「あの、調査したらどこかに集まりまちゅか?」

 

そういえばそこも決めておいた方がいいな。

 

やっぱりこの体育館を集合場所に……

 

「それなら寄宿舎に食堂がありましたのでそこにしてはどうかと」

 

「食堂か……報告にはいいかもしれませんね」

 

「だったらそれで……」

 

「待って」

 

集合場所も決まり、調査を始めようとした俺達に狭山が待ったをかける。

 

まだ何かあるのか?

 

「調査するなら二人一組にしたら?」

 

「二人一組……なんでデスカ?」

 

「そしたら誰か死んだら殺した奴がすぐわかるでしょ」

 

狭山の言葉にいきなり冷や水をかけられたかのような冷たい感覚が背中に走る。

 

その空気を感じ取ったのか彼女は鼻で笑いながら、挑戦的な目を向けてきた。

 

「何?あたし間違った事言った覚えないんだけど」

 

「ふん、実に合理的だな。塵が死んでも俺達には手間がかからない」

【疑いたくはないけど、万が一を考えたらその方がいいかもね】

 

「わ、わかった。じゃあ二人一組になって……おい狭山、どこ行くんだ!?」

 

二人一組を提案したその本人が体育館を出ていこうとしているのを思わず俺は呼び止める。

 

振り返った狭山は何を聞いてるんだとでも言いたげな冷めた目で俺を貫いた。

 

「どこって調査よ」

 

 

「二人一組になるんだろ?一人で行ったら……」

 

「それでもやっちゃう馬鹿がいるかもしれないでしょ?あたしは馬鹿に殺されるなんてゴメンよ」

 

そう吐き捨てて、狭山は体育館から出ていってしまった。

 

その背中にははっきりと拒絶の二文字が書かれているような、そんな気さえしてしまう。

 

「何あれ」

 

「あの糞女!好き勝手言いやがって!次会ったらぶん殴ってやらぁ!」

 

「まあまあ落ち着いて落ち着いて。ほらグローブ」

 

「……は!?ここはいったい!僕は何を!」

 

「や、やっと目を覚ましたのね……」

 

佐藤が目覚めたり、狭山に対する不満が漏れるさっきまでとは違う意味で騒がしくなる体育館。

 

そんな中、俺は彼女が出ていった体育館の出入口をなんとなく見つめていた。

 



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(非)日常編その2

「さて、と……」

 

色々あったけど改めて俺達は二人一組になって調査を始めようとしていた。

 

「しかし佐藤は大丈夫なのか?」

 

目覚めた後俺達の置かれた事情を聞かされて酷く混乱した佐藤は、まともに話も出来ない状態で。

 

そのため佐藤は殴られたばかりだという事もあり宇佐見、国希の二人と食堂の調査を兼ねて待機する事になった。

 

それはそれで小田が騒いでたけどな……

 

「あいつ、普通にこだわりがあるみたいだから心配になるな」

 

とはいえ俺も行ってこれ以上調査の手を減らすわけにもいかない。

 

佐藤とは食堂に集まった時に話しておこう。

 

「とにかく今は調査だ。そういえば俺の組む相手って……」

 

「葛城さん!」

 

名前を呼ばれて振り返ると、走ってきたのか息を切らせた新木が膝に手を置いていた。

 

「ひ、酷いじゃないですか!私を置いて先に行くなんて!」

 

「えっ?」

 

言われて周りを見てみれば、そこは薄暗い廊下。

 

どうやら考え事をしながら歩いて、体育館から出てきてしまっていたらしい。

 

「わ、悪い。考え事しててさ」

 

「無視されたのかと少し悲しかったんですからね」

 

ずれた眼鏡の下から見える瞳は不満を表すかのように細められて俺を睨んでいる。

 

まいったな、調整役どころか俺自身がトラブル起こすなんて。

 

「本当にごめん。決して新木を無視しようとかそう思ってた訳じゃ……」

 

「……もういいですよ。葛城さんがそんな意地悪な人じゃないのはわかってますから」

 

苦笑いしながら眼鏡を直す新木……どうやら許してくれたらしい。

 

「それでは!気を取り直して調査一緒に頑張りましょう!」

 

「あ、ああ、新木が俺のパートナーって事でいいんだよな?」

 

「はい、そうですよ。よろしくお願いしますね葛城さん」

 

「……ああ、よろしくな」

 

そうして俺と新木の調査が始まった。

 

これが武宮とかだったら調査前に俺はボコボコにされて調査出来なくなってただろうな……

 

「二階に続く階段はシャッターが降りてますね。何とかしてこの先に行けないでしょうか?」

 

「どうだろうな……モノクマのあの硬さを考えると、壊すのは現実的じゃなさそうだし」

 

俺が目の前にある二階への階段を阻むシャッターをコツコツと軽く叩きながら告げると、ですよねぇと新木は呟く。

 

「小城さんはここを希望ヶ峰学園だって言ってましたけど……葛城さんはどう思います?」

 

「それにしては、なんだか違和感があるよな。窓を塞いだ鉄板や監視カメラもそうだけど、根本的な雰囲気に」

 

 

ここが希望ヶ峰学園なら、俺達の前の世代の生徒や教職員がいるはずなのに全くその気配がない。

 

それ以前にここには人がいたという生活感がまるでないんだ……まるで俺達が初めて入った人間かのように。

 

「そう思いますよね?そもそも小城さんが語っていた事件って相当昔の話みたいですし。その頃から校舎が全く変わっていないのは変です」

 

「そうなると、やっぱりここは昔の校舎を再現した別の建物って事になるな」

 

昔の校舎を再現した……口で言うのは簡単だけど、行動に移すとなると容易じゃないだろう。

 

敷地、資金、人手、話題にならないようにする隠蔽工作……考えただけで頭が痛くなってくる。

 

「なんだか、常軌を逸してますよね。そこまでして私達にコロシアイをさせたいんでしょうか……」

 

「……」

 

過去にあった事件の再現。

 

それをしてモノクマは最終的に何を望むのか。

 

俺には常識外過ぎるだろうその答えを導き出す事は、出来なかった。

 

 

 

「あっ、葛城さん!あれ見てください!」

 

途中にあるトイレを分かれて調べたり、保健室に鍵がかかっていたのを確認したりしながら廊下を歩いていると、新木が俺の手を引いて上の方を指差す。

 

その指の先には下手くそな字で玄関ホールと書かれた看板がぶら下がっていた。

 

「玄関ホール……」

 

「これで玄関が開いていたらいいんですけどね」

 

言った新木もさすがにそれはないだろうとわかっているのか、その口に本気の色は感じられない。

 

だけど期待していなかった俺達の予想以上の光景が、玄関ホールには広がっていた。

 

「……あれ?」

 

玄関ホールと確かに書かれていた場所……そこには、何もない。

 

扉があるだろう場所はただの壁……どこにも外に出られるような部分は存在しなかった。

 

「ここ、玄関ホールですよね?」

 

「らしいけど……」

 

念のために壁を触ってみても、新たに塞がれたという感じはしない。

 

元々ここには玄関なんてない……そう結論付けるしかなさそうだ。

 

「なんだか意地が悪いですね。玄関ホールだなんて書いておきながら、そもそも玄関がないなんて」

 

「確かにな……」

 

こんな事をさせる相手だからいい印象なんて最初からないにしても、こうもおちょくられてると腹が立つ。

 

それでも空手家の武宮すらどうしようもない以上、モノクマに俺達は従うしかないという現実が、さらに重石となって俺の心を暗くした。

 

「何もないみたいだし、行くか」

 

「そうですね」

 

名ばかりの玄関ホールから中に戻ると正面に購買部の看板。

 

中にはなぜか鎧やら剣やらが飾られていて、購買部というより貯蔵庫という印象だ。

 

「この剣、本物なんでしょうか?」

 

壁にかかった長さの違う三本の剣の内、一番短い物をまじまじと見ている新木。

 

リサーチャーとしての義務感からか、調査をしているその目は輝いて見えた。

 

「危ないからあんまり近付かない方がいいんじゃないか?」

 

あれだけの熱中具合だと本物なら怪我してもおかしくないし、念のためにそれだけ言って新木に背中を向ける。

 

棚の中にあるガラクタなのか何なのかよくわからない物を調べていると、背後で新木の小さな悲鳴が聞こえた。

 

「新木?」

 

振り向いてみれば新木は困った顔をして人差し指をくわえていて。

 

もう片方の手にはさっきまで見ていた短剣があって、その刃に微かに付着していた赤い液体が何があったのかを物語っていた。

 

「あはは、ちょっと触っただけなんですけど指切っちゃいました……本物みたいです」

 

「お、おいおい大丈夫か?」

 

新木から短剣を受け取って元に戻すと、購買にあった絆創膏を渡す。

 

「あ、ありがとうございます」

 

「いや、ここにあったの渡しただけだしな」

 

指に絆創膏を貼る新木を横目に戻した短剣を見る。

 

ちょっと触っただけで切れたって事は相当切れ味鋭いんだな……食堂で注意喚起した方が良さそうだ。

 

購買を出た俺達が次に来たのは視聴覚室。

 

中にある機器は古いものだけど、問題なく動くようだ。

 

「機器は動くけど、ソフトとかはないみたいだな」

 

「機材だけあっても意味ないですね……」

 

新木はガッカリした様子で機器を弄っている。

 

「なんだ?何か見たい物でもあったのか?」

 

「はい、まあ……古い海外ドラマなんですけど、少しずつ見ててちょうど終盤に入ったところだったんですよ」

 

「ああ……なるほど」

 

結末がわからないままここに来たから、せめてここで見られたらって思ったわけか……

 

「はあ……早く出られたらいいんですけど」

 

「あはは、そのためにも調査をしないとな」

 

「そうですね!頑張ります!」

 

 

新木が改めて気合いを入れたところで俺達の調査は進んでいく。

 

「この赤い扉はなんなんでしょうか?」

 

視聴覚室を出た先にある分かれ道を右に行くと赤い扉。

 

取っ手を掴んで押したり引いたりしても鍵がかかっているのか開く気配はない。

 

「開きそうにないな」

 

「保健室や階段もそうですけど、いずれ開く事もあるんですかね」

 

「どうだろうな……わざわざ塞いだままっていうのも考えにくいけど」

 

もし開くとしてもどういう条件なのかもわからないしな……

 

 

 

赤い扉を離れて真っ直ぐ……分かれ道の左側を今度は進む。

 

二つ並んだ教室……一つは俺が最初にいたところだな。

 

「机の一つに涎の跡がありますね」

 

「それは観察しなくていい!」

 

「あっ、もしかして葛城さんのでした?」

 

はっきり聞かれて思わず言葉に詰まると、新木は何がおかしいのかクスクスと笑う。

 

くっ、なんだか知らないけど恥ずかしいぞ……!

 

「ふうっ……私、葛城さんってもう少し気難しい人だと思ってました」

 

「俺が気難しい?どうしてまた」

 

「調整役というぐらいですから、それはもう黒神さんぐらい我が強くないとやっていけないんじゃないかって」

 

ああ、確かに自分がないと流されるだけで調整どころじゃないもんな……とはいえ黒神レベルだと逆の意味で調整どころじゃなくなるだろ。

 

「でも思ってた以上に親しみやすそうで安心しました」

 

「なぁ、机の涎の跡でそう認識されたっていうのは喜ぶべきなのか……?」

 

いや、無駄に警戒されたり悪い評価されるよりはいいんだろうけど……素直に喜べない。

 

教室を調べて手に入ったのはそんなどこか複雑な気分ぐらいだった。

 

 

「この先が小城さんが言っていた寄宿舎みたいですよ」

 

「ここを一通り調べたら食堂に行くか……それにしてもこのネーミングはなんなんだ」

 

【絶望ホテル】だなんて悪趣味な名前に辟易しながら、寄宿舎に入ると広いホールに出る。

 

すぐ右に食堂はあるみたいだな……左には大浴場があるけど、保健室や赤い扉みたいに入れないみたいだ。

 

「お風呂も入れませんか……入れない部屋の基準もよくわかりませんよね」

 

「今入れないのは保健室、赤い扉の部屋、大浴場……規則性はないよな」

 

新木と話しながら壁づたいに進むと、入れる部屋が……その中にはいくつもの洗濯機が並んでいた。

 

「ランドリーですね。もう洗濯物が干してありますけど……」

 

確かに部屋の上に張り巡らせた物干し用らしきロープにタオルやら水着やらが干してある……誰かここで洗濯したのか?

 

 

ランドリーを出た後、ここにもあったトイレを分かれて調べて先に進む。

 

「新しい部屋がありますよ!」

 

「ここには入れそうだな」

 

次にあった部屋に入ると中はかなり広く、鉄格子の奥には音をたてて動く機械が見えた。

 

ここは……

 

 

「ゴミはここで処理するようにって張り紙が貼ってありました。後鉄格子の鍵も張り紙横のボックスに」

 

「つまりトラッシュルームって事か。一応鉄格子の奥も調べてみよう」

 

新木に渡された鍵を使って鉄格子を開けると奥にある機械に近付く。

 

「焼却炉みたいだけど燃やすのもこっちでやるのか?」

 

「そうじゃないでしょうか?横に稼働用のスイッチがありますから」

 

焼却炉の蓋を開けてスイッチを押してみると、ゴウゴウと中で炎が踊りだす。

 

結構勢いが強いな……気を付けないと火傷しそうだ。

 

「何かありましたか?」

 

 

「いや、炎の勢いが強いぐらいだ」

 

焼却炉の蓋を閉めてスイッチを切った俺は、他になにかないかトラッシュルームを見渡してみる。

 

すると床に取っ手のような物があるのが見えた。

 

「なんだこれ?扉か?」

 

鉄格子を開けた鍵を差し込んでみたけど、どうやらこの鍵では開かないらしく、ガチャガチャという音だけが返ってくる。

 

「これも開かないみたいですけど、どこに繋がってるんでしょうか」

 

トラッシュルームの下……あの焼却炉で燃やしきれないゴミの集積場所とかか?

 

何にせよ開かない以上は、推測しか出来ないか……

 

 

トラッシュルームを出て進むと、ネームプレートの貼られた扉が並んでいるのが見えてくる。

 

どうやらここは個室みたいだな。

 

「個室の中も調べてみましょうか?」

 

「そうだな……トイレみたいにお互いの個室を調べておくか」

 

俺達は自分のネームプレートが貼られた部屋を見つけてそれぞれ中に入る。

 

個室にはベッドや机、シャワールーム……掃除用のコロコロなど寝泊まりする分には問題なさそうな設備が揃っていた。

 

「だけどここにも鉄板か……」

 

どうやら窓があるらしき部分には例外なく鉄板があるらしい。

 

 

監視カメラやモニターといい……正直息が詰まりそうになる。

 

「……なんだこれ」

 

さらに机の引き出しの中にはハンマーやらドライバーやらが入ったセット。

 

その上には紙で【工具セット。撲殺や刺殺のお供に是非】と書いてある……とことん気分を滅入らせてくるな。

 

沈む気分を振り払うようにテーブルの方を見ると、上に部屋の鍵と電子機器が置かれていた……これは電子手帳か?

 

鍵をポケットに突っ込んで電子手帳の電源を入れると、俺の名前が表示される。

 

「なるほど。この学園の地図や、俺達のプロフィールが載っているんだな……んっ?」

 

メニューの中に校則って項目があるな……念のためチェックしておこう。

 

 

 

1…生徒達はこの学園内で共同生活を行いましょう。期限は無期限です。

 

2…夜10時から朝7時までは夜時間とします。夜時間食堂は立ち入り禁止になるので注意しましょう。

 

3…寄宿舎の個室以外での故意の就寝は禁止します。

 

4…この学園について調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません。

 

5…学園長モノクマへの暴力行為、監視カメラやモニターの破壊を禁じます。

 

6…この電子生徒手帳を破損、紛失した場合再発行はされません。

 

7…生徒内で殺人が起きた場合、その一定時間後に全員参加が義務付けられる学級裁判が行われます。

 

8…学級裁判で正しいクロを指摘した場合はクロだけが処刑されます。

 

9…学級裁判で正しいクロを指摘できなかった場合は残りの生徒が全員処刑されます。

 

10…三人以上の人間が死体を最初に発見した際、それを知らせる死体発見アナウンスが流れ捜査時間に入ります。

 

11…死体発見アナウンスが鳴り、捜査時間に入るまで殺人は認定されず学級裁判は行われません。

 

12…同一のクロが殺害できる最大人数は二人までです。

 

13…ルールは今後も増える可能性があります。

 

 

 

「……」

 

電子手帳改め電子生徒手帳をポケットに入れると、今読んだ校則について考える。

 

「調べる事に制限がないのはそれだけ自信があるって事か?」

 

今までの事も踏まえると、ここに俺達を連れてきた相手は相当な社会的地位と財力があるみたいだ。

 

そんな奴がどうしてこんなコロシアイなんてさせるのかは……モノクマに言われたように、どんな理由だとしても納得は出来ない。

 

でも理由を知ればそれが突破口になるかも……

 

「とにかく個室にあるのはこれぐらいだし、新木に合流するか」

 

個室の外に出ると目の前に既に調査を終えたらしい新木がまた息を切らしていた。

 

……なんで?

 

「はぁ、はぁ……葛城さん。わ、わざとじゃありませんよね?」

 

「いや、俺には何がなんだかわからないんだけど……」

 

「声、かけたんですけど」

 

声?

 

新木の声なんて全く聞こえなかったよな……

 

「ごめん、全く聞こえなかった」

 

「はぁ……つまりこの部屋は防音がしっかりしているという事ですね」

 

「そうか、防音が……あれ?」

 

防音がしっかりしているのがわかったのはまあともかく……

 

「なあ、新木」

 

「なんですか……」

 

「インターホン、鳴らせば良かったんじゃないか?」

 

扉の横にあるインターホンを指差すと、新木が石になったかのように固まる。

 

まさか新木……気付いてなかったのか。

 

「くっ……」

 

「わ、笑わないでください!」

 

「いや、さっき俺も笑われたし……」

 

「ううっ、それを言われると何も言えません!」

 

「ははっ、あっ、そっちの部屋はどうだった?こっちは……」

 

新木の違った一面にさっきまでの沈んだ気分が晴れたのを自覚しながら、俺は彼女とお互いの個室についての情報を交換する。

 

それによると女子の部屋はシャワールームに鍵がかかる事と、工具セットが針や糸の入った裁縫セットになっている以外は男子の部屋と同じらしい。

 

「これは他の皆の部屋もそうだと思って良さそうだな」

 

「そうですね、大きな違いはないと思います」

 

話しながら新しく開いてない部屋とシャッターの閉まった二階への階段を確認。

 

そして俺達は食堂の前に戻ってきた……どうやら一周したみたいだな。

 

「そういえば、皆さんには会いませんでしたね」

 

「もう食堂に集まってるのかもしれないな」

 

そんな話をしながら食堂の中に入ると……

 

「離せぇ!ボクは天使良香を助けに行かないといけないんだ!」

 

「小田殿、落ち着いてください!」

 

小田が風魔に羽交い締めにされていた。

 

「新木、小田に名前を呼ばれてるぞ」

 

「嫌な予感しかしません……」

 

奇遇だな、俺もだ。

 

 

 

 

あれから話を聞いたところによると……だいたい集まったのにいつまでも来ない俺達に小田が

 

「天使良香があの悪吐蠱に襲われてる!」

 

と言い出して新木を助けに飛び出そうとしたらしい。

 

それを風魔が止めていた……というのが俺達の見たあの光景だったようだ。

 

「ああ、天使良香!無事だったかい!?あの悪吐蠱にそれはもうおぞましい目に……」

 

「無事ですから!あってませんから!」

 

 

そういうわけで今している報告会の間も小田は新木にベッタリだ……正直、時折俺に殺意のこもった視線を向けてくるのは勘弁してほしい。

 

「そういえば……あっちは大丈夫だったのか?」

 

小田の視線から逃げるように俺がチラリと視線を向けた先には一人テーブルで頬杖をついている狭山。

 

まさか来ているとは思わなかったけど、そうなると武宮辺りがまた殴ろうとしなかったか不安なんだよな。

 

「ああ、武宮の心配か?殴ろうとしたのを国希と南雲が食い止めてたな」

 

山菊の言葉を聞く限り、国希が抑えて最終的に南雲を殴って落ち着いたなこれは……

 

「さて、報告会は以上だが……貴様ら全て調べたのが俺達以外に二人だけとはやる気があるのか?」

【葛城さんと新木さんが全部調べてくれてたから僕達のと合わせて報告もスムーズに進んだね】

 

どうやら調査より集合を優先したのか、全ての部屋を調査したのは俺達と黒神、小城だけだったらしい。

 

だから報告と言っても俺や新木には新しい情報はほとんどなかったのが現状。

 

まあ俺達も食堂は調べられなかったからその部分ぐらいか。

 

「チヨ、食事はワタシ達が作るデスヨネ?」

 

「その通りでありますな。先ほども報告しましたが、モノクマ曰く食糧は常に補給されるようなので!」

 

食堂にいた風魔達によればモノクマがわざわざ出てきて、食糧が尽きないという事と食事は自分達で用意する事を伝えられたとか。

 

「あ、あの……それで少し、提案があるんだけどいいかな?」

 

手をあげる佐藤の顔色はやっぱり良くないけど、体育館でパニックになってた頃よりはマシに見える。

 

だけど提案?いったいなんなんだ?

 

「しょ、正直普通じゃなさすぎて吐きそうなんだけどさ……ここで生活しないといけないんだよね?」

 

「仕方ないよね。武宮くんでもあの鉄板壊せなかったし」

 

「てめえ余計な事言うんじゃねえよ!」

 

「そ、それでどうしたのよ?」

 

「ああ、えっとだからさ……あの、せめて日常的なサイクルを作りたいんだ」

 

「サイクル?」

 

「そ、そうそう。例えば一日に決まった時間にみんなで食事をするとか……」

 

食事会って事か……意見交換や交流の場もいるだろうしいいかもしれないな。

 

「その場合食事当番を決める必要がありますね」

 

「じゃあ次はそれを決めるか」

 

「お待ちください!」

 

食事当番をどう決めるか話し合おうとした俺達を風魔が制止した。

 

その目はどことなく燃えているように見える……

 

「ここは拙者にお任せくだされ!この風魔千代、メイドとして存分に力を尽くそうではありませぬか!」

 

「えっ、いいんでちゅか?あちしは料理が苦手なんで助かりまちゅけど……大変なんじゃ」

 

確かに風魔一人でここにいる全員分の食事を作るなんて大変過ぎるよな……

 

「一人に任せて毒でも入れられたらたまらないしね。複数でやったら?」

 

「狭山!口を開いたと思えばそれかぁ!」

 

狭山の言葉に国希が立ち上がって抗議する。

 

しかし狭山がそんなものを意に介すわけもない……現に彼女は国希を馬鹿にしたように目を細める。

 

「事実でしょ?」

 

「ふん!空気を悪くしたいのか知らんが認識が甘いなぁ!」

 

「は?」

 

「いいか!この場合むしろ複数でやる方が安心感から隙を生む!当番制となれば不特定多数が出入りする事にもなるから内部の把握も難しい!だが風魔に基本的な部分を任せれば異常があった時には風魔がすぐ気付き、さらにお前の懸念通りとなれば確実に風魔に疑いがかかる!つまり!お前の言葉は的外れだ狭山ぁ!」

 

だけどそれに対して国希はしっかりと反論していく。

 

正直、意外だ。

 

「……意外」

 

「ほほう、国希さんはそれなりに考える頭をお持ちのようですね」

 

それは皆も同じのようで、国希に向けられる視線には驚きの色に満ちている。

 

狭山ですら、まさかの反論に呆然としていた。

 

「むっ?なんだなんだ!全員オレを見て!そんなにオレの筋肉を見たいのかぁ!」

 

「い、いきなり脱ぎ出さないでよぉ!?」

 

視線をどう解釈したのか国希は服を脱いでブーメランパンツのみの姿に……これさえなければな!

 

 

「少しよろしいですか?」

 

国希になんとか服を着せて一息ついたところで今度は小城が手をあげる。

 

「改めて調査したところやはりこの校舎は私が資料で見た希望ヶ峰学園とほぼ一致しました……最も老朽化具合からしてこちらは最近建てたものでしょうが」

 

やっぱりここは希望ヶ峰学園……それも昔のコロシアイがあった校舎を模した建物なのか。

 

「これは記憶にある資料の地図を私が描いたものです。置いておきますので電子生徒手帳のマップと各自比べてみてください」

 

電子生徒手帳を出して小城が出した地図と比較する……玄関ホールに出入口がない事以外はピッタリと一致した。

 

「それでですね、一つ提案が。皆さんには夜時間の無断外出を控えていただきたい」

 

「夜時間の無断外出?外出自体じゃなくて?」

 

「これは拘束力もないので。だからもしも夜時間外出予定がありましたら、食事会の時にその旨を伝えておいてほしいんですよ」

 

「先に報告させる事で夜時間にコソコソと動き回る塵がいれば即わかるわけか」

【皆で把握しておけば、夜時間に誰かが下手に動く事もなさそうだしね】

 

なるほど……学級裁判の存在もあって外に誰かがいる状況でコロシアイを起こすのはリスクが高いからな。

 

「まあ、これはあくまでもお願いですから。心の内に留めておいていただければ」

 

 

 

「話し合うのはこんなもんか?」

 

山菊の言葉に異を唱える人間はいない。

 

これで報告というか話し合いの時間は終わりのようだ。

 

「よし、だったら飯にするか。昼も食わずに調査していたし俺は腹ペコだ!風魔、頼むぞ!」

 

「承知!それでは拙者は夕餉の準備に入ります故!ごめん!」

 

どうやらこのまま夕食に入るらしい……確かにここに来てから何も食べてないもんな。

 

「だけど風魔さんってどんな料理を作るんでしょうか?」

 

「うーん、やっぱり和食じゃない?格好が格好だし」

 

「天使千代の料理ならたとえ虫でもボクは美味しくいただくよ!」

 

厨房に入っていった風魔の料理について皆が予想しているなか、しばらくして風魔が皿を持ってやってくる。

 

「こちらは本日の小前菜【アミューズ】であります。前菜【オードブル】はしばしお待ちを」

 

「フランス料理!?」

 

本当に風魔は格好と行動が一致しないな!

 

 

ちなみに、風魔作フランス料理のフルコースは文句のつけようもなく美味しかった。

 



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