ありふれた黒の剣士で世界最強 (零乃龍夜)
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プロローグ

キリトかなーやっぱりww
自分は思わないんだけど周りにキリトに似てるってよく言われるwww
こないだDQNに絡まれた時も気が付いたら意識無くて周りに人が血だらけで倒れてたしなwww
ちなみに彼女もアスナに似てる(聞いてないw)

※主人公はキリトですがキリトではありません←名前だけ

文の一部を変更しました。


 

 

月曜日、それは一週間の内で最も憂鬱な始まりの日。

 

きっと大多数の人が、これからの一週間に溜息を吐き、前日までの天国を想ってしまうだろう。

勿論その中の一人に重い瞼をどうにか開けており、日本人特有の黒髪黒目の浮城 桐斗(ふじょう きりと)事、キリトも含まれている。何せ昨日は2時までずっとMOBA(マルチプレイヤー・オンライン・バトル・アリーナ)をやっていたからだ。お陰様で遅刻ギリギリで起床に加え、寝癖の付いた髪のまま朝食を取らずに学校に行かなければならない始末だ。

 

そんなわけで寝不足+不健康生活を送っているキリトは重い体をどうにか動かしながら教室のドアを開けた。

開けてまず来るのは視線だ。いや、視線というよりも睨みつける、あるいは殺気と言わんばかり勢いでキリトを見てくる。

 

「ふぁ~・・・・・おはよう~」

 

しかし、キリトにとってはいつもの事なのであまり気にせず、いつものようにスルーして全体に向けて挨拶する。挨拶大事、これ重要。

するとあら、不思議な事に睨んできた奴らはチッと舌打ちして、授業の準備に取り掛かる。これがキリトにとっては恒例行事である。

キリトもさっさと席に着こうかなっと思いながら机に向かうのだが、どうやらその席の周りでまたいつもの4人の集団が1人の青年にちょっかい出してていた。

 

キリトは溜息をつきながら「ならば・・・・・」と小声で言いながら・・・

 

「ひ~~や~まくん!」ゲシッ

「なッ!?イッテ!!?」

 

こちらも日課の如く4人組の筆頭、檜山 大介(ひやま だいすけ)の膝の裏を蹴りよろけさせる。

それに合わせて檜山とその取り巻きの斎藤 良樹(さいとう よしき)・近藤 礼一(こんどう れいいち)・中野 信治(なかの しんじ)がキリトの方を向く。

 

「くっそ!何しやが・・・・・浮城。てめぇ・・・・・」

「いやぁごめんね?俺の席の前で毎度学習しないうるせえのがいるからさ・・・・・なぁ?仕方ないだろ?」

「・・・・・チッ」

 

蹴ったのがキリトだと知った檜山は先程の連中と同じ位に睨んできた為、ニヒル笑いをしながら片手をヒラヒラと振りながキリトが言うと舌打ちして自分の席に向かった。

 

「まったく、登校早々舌打ちばっかりだな・・・・・っとおはよう、ハジメ」

「あっうん。さっきはありがとう″キリト″」

 

彼は南雲 ハジメ(なぐも はじめ)

 

ハジメとキリトは高校入学した時に仲良くなって、彼の事を【キリト】と呼ぶ数少ない友達である

ハジメもキリトも言ってしまえばオタクだ。・・・・・とはいえ、キリトは漫画や小説、ゲームやアニメ、映画などにハマったのは中学を卒業した辺りなため本格的にオタク化したのは高校からで、その頃はハジメにオススメなどを聞いて手当たり次第に手を出してた。

そんなこんなですっかりとオタクとなり、そう言った部分を学校でもお構い無しにハジメと喋っていた為、晴れてキリト達二人はクラスメイトからもオタク呼ばわりされる事になったのだが・・・・・世間一般ではオタクに対して普通なら嘲笑程度はあれど、ここまで敵意むき出しにされる事は無い。

 

「別にいいよ。それより・・・・・そろそろ来るぞ?」

 

 

 

・・・・・では、なぜ男子生徒全員が敵意や侮蔑をあわらにするのか。

 

その答えは・・・・・・・・・・

 

「へ?何が「南雲くん、おはよう! 今日もギリギリだね。もっと早く来ようよ」・・・・・あ、ああ、おはよう白崎さん」

「ほら来た・・・」

 

彼女は白崎 香織(しらさき かおり)

 

学校で二大女神と言われ男女問わず絶大な人気を誇る途轍もない美少女だ。いつも微笑の絶えない彼女は、非常に面倒見がよく責任感も強いため学年を問わずよく頼られ、よく徹夜のせいで居眠りの多いハジメをよく気に掛けている。

そんなハジメが白崎が親しくできることが、同じく平凡な男子生徒達には我慢ならないようで、「なぜ、アイツだけ!」と思っているらしい。

それと女生徒達は「白崎さんがあそこまでやってくれているのにそれでも生活態度を改めようとしない」と思っているみたいで、ハジメに対して不快さを感じていようだ。

 

おっとそうだと思いながら、キリトは手を振りながら白崎に挨拶する。

 

「白崎さん、やっはろ~」

「ちょっ!キリト!?」

 

キリトの軽い挨拶に周りはより一層睨んできて、ハジメは内心冷や汗をかいているが、一回一回反応してくる連中に面白がりながら愉悦に浸るキリトだった。

 

「うん!浮城くんもおはよう。あっ浮城くんもギリギリだったよね?もっと早く来ないとダメだよ?」

「あっやっぱり?いやぁ~本当だったらもう少し早く寝ようと思ったんだけどねぇ・・・・・」

 

頭を掻きながら言う俺に「気を付けるんだよ!」と人差し指でメッ!っとしている白崎。

 

・・・・・するとここでまた新しく三人の男女が近寄ってきた。

 

「おはよう″キリト″。南雲君もおはよう、毎日大変ね」

「香織、また彼らの世話を焼いているのか? 全く、本当に香織は優しいな」

「全くだぜ、そんなやる気ないヤツらにゃあ何を言っても無駄と思うけどなぁ」

 

こちらにやって来た三人の中で唯一挨拶した彼女は八重樫 雫(やえがし しずく)。

 

白崎の親友で、ポニーテールにした長い黒髪がトレードマークである。切れ長の瞳は鋭く、しかしその奥には柔らかさも感じられるため、冷たいというよりカッコイイという印象を与える所謂侍ガールを連想させる。

また、彼女もキリトと呼ぶ数少ない人物だ。

 

 

次に、些か臭いセリフで香織に声を掛けた男は天之河 光輝(あまのがわ こうき)。

 

如何にも「俺!勇者!!」とでも言わんばかりの見た目とキラキラネームのこいつは、容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の完璧超人らしい。

 

 

最後に投げやり気味な言動の彼は坂上 龍太郎(さかがみ りゅうたろう)。

 

光輝の親友で、百九十センチメートルの身長に熊の如き大柄な体格。見た目に反さず細かい事は気にしない本当に頭の中は筋肉だけなんじゃないかと思うほどの脳筋タイプである。

 

おっとそうだ。挨拶されたんだから、俺もせめて挨拶してきた八重樫にはちゃんと返さないと。

 

「おはよう、八重樫。ついでにお二人も」

「おはよう、八重樫さん、天之河くん、坂上くん。はは、まぁ、自業自得とも言えるから仕方ないよ」

 

八重樫達に挨拶を返し、苦笑いするハジメと八重樫には挨拶して、天之河と坂上には「ついでに」呼びするキリトにまたも視線が来る。

その大半はキリトに来ているのだがそんなさなか天之河は・・・・・

 

「それが分かっているなら直すべきじゃないか? 何時までも香織の優しさに甘えるのはどうかと思うよ。香織だって君に構ってばかりはいられないんだから」

 

そう言って天之河はハジメに忠告するように言うのだが、キリトから言わせれば何いってんのコイツ?って思える。

今、ハジメの横でキリトは、「は?」っと言いながら馬鹿を見る目を天之河に向けているが、天之河はそれに気付いておらず、今度はキリトの方に顔を向けて口を開く。

 

「それに浮城もだよ?それに香織と雫にはちゃんと挨拶して、俺達はついでなんて少し失礼じゃないか?」

 

天之河がキリトにも忠告するように言ってきた。

「・・・・・ほうほう、言ってくれるじゃねえかこの野郎」と小声でキリトは言う

 

「いや~、あはは……」

 

ハジメは笑ってこれ以上面倒事にならないようやり過ごそうとしている。

・・・が、それはキリトの鋭利な刃物で切るような発言と我らが女神様の爆弾によって粉々になる。

 

「は?俺は白崎と八重樫には挨拶されたからしたんだ。お前と坂上にはされてないんだからついでにに決まっているだろ?てか、未だに挨拶しないお前らの方が失礼だろ?」

「? 光輝くん、なに言ってるの? 私は、私が南雲くんと話したいから話してるだけだよ?」

 

キリトと白崎がそれぞれ天之河に言い返すとハジメは顔を引き攣っている。・・・と、まあさっきのやり取りを見てわかるように、キリトは天之河の事が恐らく嫌いなのだろう。いや、なのだろうではなく、めっちゃ嫌いである。自分に都合の良い奴で他人の事を知らないくせに知ったような風に言うのがどうも気に食わないのだ。

 

「え?・・・・・・・・・・あ、ああ、本当に香織は優しいよな」

 

天之河はまたも都合いいように俺の話を聞いてないフリをしたな。

またかよ・・・、と内心でキリトはそんなご都合勇者事、天之河の態度にイラついている。それに白崎の言葉も、どう聞いたらそんな解釈ができるのかわからない内容である。ハジメに関しては青ざめながら現実逃避をするかのように窓の外を見ている。

そうしている内に天之河と坂上は自分の席に戻り始めた。こいつらは言いたい事だけ言ってこっちの言い分は何も聞かないからのでほんと自分勝手だなとキリトは溜息を吐きながら思った。

 

「はぁ・・・・・ごめんね?光輝も香織も悪気はないんだよ」

「あはは・・・大丈夫だよ八重樫さん」

「て言うか知ってるし、八重樫が謝る必要はないよ。・・・それに白崎さんはともかく天之河は問題なんだよね。・・・本当にあれはどうにかならんかね?」

「・・・何度も言ってるのに分かっていないのよ・・・・・正直、あれは私の手には負えないわ」

 

八重樫がキリトとハジメの前に来て、そう小声でキリトに話しかけて来た。

八重樫はキリトが『小学生の頃』から知り合いだ。彼女の実家は八重樫流という剣術道場を営んでおり、雫自身、小学生の頃から剣道の大会で負けなしという猛者である。現代に現れた美少女剣士として雑誌の取材を受けることもしばしばあり、熱狂的なファンがいるらしい。後輩の女子生徒から熱を孕んだ瞳で“お姉さま”と慕われて頬を引き攣らせている光景はよく目撃されている。

そんな八重樫とキリトは小学校こそ違うものの、互いに剣道をしているのと家が近かった事もあり、仲良くなったのだ。

キリトが剣道を始めたのは実家の祖父が剣道道場を営んでいたからで、興味本位で始めたもののそこまで強くなかったが、それでも県の大会で優勝する位までは勝つ位の実力はあった。

 

「まっ今に始まった訳ではないからな。・・・それよりも八重樫は毎回振り回されて大丈夫か?」

「ええ、私も大丈夫よ。問題ないわ・・・・・あとさ」

「ん?」

 

そう言ってモジモジしながらキリトに何か言おうとする八重樫、しかし、その前にチャイムが鳴ってしまい・・・・・

 

「いい加減さ・・・・・名前で呼んでくれて「やべ!先生来た。八重樫も早く席に着いた方がいいぞ」も・・・・・」

「ん?八重樫、どうかしたか?」

「・・・・・何でもない」

 

あ、あれ?とキリトは思いながら、明らかに怒っていそうな顔をしている八重樫が席に戻る。

しかし、キリトはなぜ怒っているのか分からず仕舞いでまっ、いっかと思いながら同じく席に着こうとする。

 

「はぁ~・・・キリトは本当にこういうのは鈍いんだね・・・・・・」

「え?何が?」

「ナンデモナイヨー」

 

隣の席のハジメがキリトに溜息を吐きながら呆れた目でそう言うが、当の本人は何もわかっていないようだ。

とりあえず、授業に集中・・・・・

 

 

 

 

・・・・・と意気込んだキリトは途中まで受けてたが寝落ちした。

睡魔には逆らえなかったよ・・・・・、とキリトは呟きながら昼休みまで、眠りについた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

時間は遡ってお昼休み。授業を終え、チャイムが鳴って少し経った辺りでキリトは眠い体を起こす。現在教室は三分の二くらいの生徒が残っており、それに加えて四時間目の社会科教師である畑山 愛子(はたけやま あいこ)先生が教壇で数人の生徒と談笑していた。既に昼休みのチャイムが鳴った辺りでハジメは机から顔を上げて少し起きいたらしく、カバンから十秒でチャージできる定番のお昼をゴソゴソと取り出し補給していた。

 

「あれ?ハジメ昼食ここで食べて平気なの?」

「え?何が?」

 

どうやら寝ぼけているのかそれとも忘れたのかしれないがハジメは自ら爆弾を食らいに行くようだ。

 

「南雲くん。珍しいね、教室にいるの。お弁当? よかったら一緒にどうかな?」

 

ハジメはしまった内心で思いながらどうしようか考えているようだ。

 

「あ~、誘ってくれて有難う、白崎さん。でも、もう食べ終わったから天之河君達と食べたらどうかな?」

「えっ! お昼それだけなの? ダメだよ、ちゃんと食べないと! 私のお弁当、分けてあげるね!」

 

ハジメの奴、今日厄日じゃないのか、と思わせるくらいに地雷を踏んでいる今も男子の連中にすごく睨まれており、檜山達はこの後呼ぶ場所を話し合っているレベルだ。

それをキリトは隣でうへぇと口から漏らしていたが、ハジメの助けてと言う視線をスルーしてキリトも昼食に入ろうとする。

ハジメはキリトに内心で怒った!しかし、キリトには効かない!

キリトは自分の席でそのまま昼食を食べようとすると一人、こちらに近づいてきた。

 

「キリト、一緒に食べてもいい?」

「ん?ああ、いいよ」

 

八重樫がお弁当を持ってこちらに来た。

ハジメと違ってキリトはよく教室で八重樫と昼食をとっている為男子の連中の視線がややあるがハジメ程ではない。

 

「・・・・・ねえ、キリト。それ何?まさか、昼食じゃないよね?」

「うん?ああ、このカロリーで、メイトな、やつですか?昼食だけど?」

 

因みに味はチョコレート味。チョコレートは正義。ここ譲れない。

それにいつも弁当だけど今週は両親が海外に行ってる為無理である。キリト自身は料理は作れないわけではないが、朝は弱いのでそもそも作る気がない。

 

「はあぁ・・・・・はい。少し分けてあげるから」

 

そう言って八重樫は大きめの二段弁当の下の部分と箸をキリトに差し出てくれた。

・・・・・周りの男子達が血走るようにキリトを見るがそんなものを無視し、八重樫に訪ねる。

 

「え?でもいいのか?」

「ええ。それにキリトが自分で弁当を作らないと思ってたかね。予め、多く作っといたのよ」

「・・・・・妹から聞いたのか?俺が今一人で家にいる事を」

「さぁ?私はただ〈お兄ちゃんが今、家で一人でいるのをいい事にどうせマトモな食事を取らないと思うから面倒見てあげてください!〉と『同じ道場の友達』に言われただけよ」

「『お兄ちゃん』って言ってる時点で俺の妹じゃねえか!」

 

そう、八重樫の言う通りキリトには妹がいる。更に妹は今も八重樫の道場に通っており、そのお陰かただいま全国優勝に向けて全力で頑張っている。

 

「全くあいつは・・・・・あっうまい」

 

そう言って貰った弁当を頂き、唐揚げを食べながら言う。

普通、弁当って冷めてるから美味しさ半減するものだと思っていたが、この弁当はそんな常識を無視しているレベルの味である。

 

「そ、そう?・・・・・一応それ、私が作ったんだけど・・・・・」

「マジで?やっぱり八重樫はすごいな。流石は大和撫子と言うか、女子力高いと言うか・・・・・オーバースペック?」

「ちょっと、やめてよ・・・・・もう・・・・・」

 

八重樫の事を素直に褒めてキリトは貰った弁当を食べ続ける。

男子達(並びに八重樫ファンの数人の女子生徒から)羨ましそうな視線や殺気を送る奴が膨れ上がるがスルースルー(適当)。

それにしても、横は横で修羅場になっているな。ハジメに弁当をあげようとした白崎に天之河が気持ち悪いセリフを言う。

 

「むぐっ・・・・・何あれ?今の聞いたか?天之河の奴、「香織。こっちで一緒に食べよう。南雲はまだ寝足りないみたいだしさ。せっかくの香織の美味しい手料理を寝ぼけたまま食べるなんて俺が許さないよ?」・・・って。気持ち悪いにも程があるぞ?」

「ちょっと、ふふふっ。なんでそんなにふふっ、似てるのよ・・・・・ふふっ」

 

キリトが弁当を食べてる途中で最大限天之河のモノマネをすると八重樫が少し笑いそうな所を我慢している。

しかし、その後の白崎の爆弾で堪えることができなかった。

 

「え? 何で、光輝くんの許しがいるの?」

「ブフッ、ちょっとうふふっ、香織待ってふふっ」

「wwwちょっw勇者振られてやんのwwwww」

「ちょっ、うふふっ、キリトもやめなってあははっ!」

 

白崎の発言とキリトの笑いに釣られた八重樫は我慢出来なくなり、ついに吹き出し。

天之河はその光景に顔を引き攣らせながら困ったように笑う。

ハジメに至っては深い溜息を吐いており色々と諦めている表情である。

ハジメは(もういっそ、こいつら異世界召喚とかされないかな?)とか(……どこかの世界の神か姫か巫女か誰でもいいので召喚してくれませんか~~)と内心で思いながら疲れた顔をしている。

キリトはそろそろ落ち着こうと呼吸を整えているところで・・・・・

 

 

 

凍りついた。

 

「え?」

 

ハジメの目の前、天之河の足元に純白に光り輝く円環と幾何学模様が現れたからだ。その異常事態には直ぐに俺含め、周りの生徒達も気がついたが全員が金縛りにでもあったかのように輝く紋様、俗に言う魔法陣と言えばいいのだろうか・・・らしきものを注視する。

 

「ッ!八重樫!!」

 

「キリト!」

 

その魔法陣は徐々に輝きを増していき、一気に教室全体を満たすほどの大きさに拡大した。自分の足元まで異常が迫って来たことに漸く硬直が解け悲鳴を上げる生徒達。未だ教室にいた愛子先生が咄嗟に「皆! 教室から出て!」と叫んだのと、魔法陣の輝きが爆発したようにカッと光ったのは同時だった。

数秒か数分たった時には・・・・・教室には誰もいなかった。



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異世界召喚

投稿が遅くなった・・・・・筆記力を!想像力を!ください!!


 

突然の異常な現象と光が起きて咄嗟に目を閉じていたキリトはゆっくり目を開こうとする。徐々に視界が回復するに連れて周りのざわめきや目に映る物に思わず息を呑む。

 

「・・・・・これは?」

 

そこにはさっきまでいた教室ではなく、中世ヨーロッパの雰囲気、大理石のような白い石造りの建築物、巨大な柱に支えられたドーム状の天井といった、正しく大聖堂という言葉が自然と湧き上がるような荘厳な雰囲気の広間にいる事がわかった。

 

「まるで異世界って感じだな・・・」

 

キリト達がいる所は最奥にある台座のような場所の上にいるようだ。周囲より位置が高く、その周りにはキリトと同じように呆然と周囲を見渡すクラスメイト達がいた。どうやらあの時、教室にいた生徒は全員この状況に巻き込まれてしまったみたいだ。

 

そういえばハジメは?とキリトは顔を横に向くと隣で周囲を冷静に観察していた。その背後には呆然としてへたり込む白崎の姿や、あの教室にいた人達がいる事を確認すると、あの教室にいた者達が突如現れた魔法陣によって転送されたのだと何となくだが予想できた。

 

そんな事を考えているとキリトの方に不安げな顔をしながらこちらに近づく八重樫が声をかけてきた。

 

「キリト!」

「八重樫、大丈夫だったか?」

「えぇ、でもこれっていったい・・・・・」

「俺にもわからない・・・・・ただ」

 

そう言ってキリトは一番気になっていた方に顔を向けならがら八重樫に言う。

 

「この状況を答えてくれるだろ、あいつらが」

 

そう、この広間にいるのはキリト達だけではない。少なくとも三十人近い人々が、キリト達の乗っている台座の前にいたのだ。まるで祈りを捧げるように跪き、両手を胸の前で組んだ格好で。

 

「まるで何かの宗教だな」(ボソッ)

 

キリトは呟きながら彼等の姿を確認する。彼等は一様に白地に金の刺繍がなされた法衣のようなものを纏い、傍らに錫杖のような物を置いている。その錫杖は先端が扇状に広がっており、円環の代わりに円盤が数枚吊り下げられていた。

 

その内の一人、法衣集団の中でも特に豪奢で煌びやかな衣装を纏い、高さ三十センチ位ありそうなこれまた細かい意匠の凝らされた烏帽子えぼしのような物を被っている七十代くらいの老人が、手に持った錫杖をシャラシャラと鳴らしながら進み出て、外見によく合う深みのある落ち着いた声音でハジメ達に話しかけた。

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

そう言ってイシュタルと名乗った老人は、好々爺然とした微笑を見せた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

現在、キリト達は場所を移り、十メートル以上ありそうなテーブルが幾つも並んだ大広間に通されていた。

 

この部屋も例に漏れず煌びやかな作りで、素人目にも調度品や飾られた絵、壁紙が職人芸の粋を集めたものなのだろうとわかる。恐らく、晩餐会などをする場所なのではないだろうかとキリトは思った。

上座に近い方に畑山愛子先生と光輝達四人組が座り、後はその取り巻き順に適当に座っている。キリトとハジメは最後方だ。

 

ここに案内されるまで、誰も大して騒がなかったのは未だ現実に認識が追いついていないからだろう。イシュタルが事情を説明すると告げたことや、The勇者のレベルMAXのカリスマスキルによって落ち着かせた事も理由だろうが。

 

その時、教師より教師らしく生徒達を纏めていると愛子先生が涙目だった。

 

 全員が着席すると、絶妙なタイミングでカートを押しながらメイドさん達が入ってきた。そう、生のメイドである。地球産の某聖地にいるようなエセメイドや外国にいるデップリしたおばさんメイドではなく正真正銘、男子の夢を具現化したような美女・美少女メイドである。

 

こんな状況でも思春期男子の飽くなき探究心と欲望は健在でクラス男子の大半がメイドさん達を凝視している。もっとも、それを見た女子達の視線は、氷河期もかくやという冷たさを宿していたのだが……

 

と、ふとキリトの方にもメイドが一人、飲み物を給仕しよう飲み物を置こうとキリトの方に来た時

 

「きゃっ!」

「っ、おっと」

 

足を躓かせ、転びかけそうになった所をキリトが支える事で飲み物が零れずに済んだ。

 

「」ガタッ

「シズシズ、どうどう」

「雫ちゃん落ち着いて」

 

上座側で少しざわめきが起きたがそんな事を知らずにキリトは支えているメイドに話しかける。

 

「大丈夫か?怪我してない?」

「えっ、は、はぃッ...も、もぅしわけござぃません・・・」カァ~ッ…

「気にする事ないよ。立てる?」

「だ、大丈夫です...、ありが、とう...ございますぅ…」

 

顔を真っ赤にしたメイドはキリトに惚けながら返事を返す。

 

「……………」ゴゴゴゴゴゴ

「ステイ!シズシズ、ステイ!!」

「ほ、ほら!事故だから仕方ないよね!?ね!?」

 

またもや上座側で金属がミシミシする音と共に黒い靄が漂わせているがキリトはそんな事いざ知らずに先程のメイドと一言二言会話を交わし、メイドは立ち去って行く(何故か顔を赤くし、惚けながらも嬉しそうな顔をしながら)。

そんな状況を真横でいたハジメは溜息を吐きながら「ほんとキリトは・・・・・」と呟き、一部の生徒は「あいついつか刺されるだろ。てか刺されろ」「八重樫さんに斬られろ」「イキリトめぇ・・・」「これだから・・・」と睨み半分、呆れた半分の目で見られている。

 

そんな中、全員に飲み物が行き渡るのを確認するとイシュタルが咳払いをしながら話し始めた。

 

「ゴホンッ・・・・・さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」

 

そう言って始めたイシュタルがの話は実にファンタジーでテンプレで、どうしようもないくらい勝手なものだった。

 

要約するとこうだ。

 

1.この世界はトータスと呼ばれ、大きく分けて人間族、魔人族、亜人族の三つの種族が存在する。

 

2.人間族は北一帯、魔人族は南一帯を支配しており、亜人族は東の巨大な樹海の中でひっそりと生きており、この内人間族と魔人族が何百年も戦争を続けている。

 

3.魔人族は、数は人間に及ばないものの個人の持つ力が大きいらしく、その力の差に人間族は数で対抗しており、戦力は拮抗し大規模な戦争はここ数十年起きていないが、最近、魔人族による魔物の使役という異常事態が多発している。

 

4.魔物とは、通常の野生動物が魔力を取り入れ変質した異形で、この世界の人々も正確な魔物の生体は分かっていない。それぞれ強力な種族固有の魔法が使えるらしく強力で凶悪な害獣だ。

 

5.今まで本能のままに活動する彼等を、使役できても、せいぜい一、二匹程度なのだが、その常識が覆され、人間族側の“〝数〟というアドバンテージが崩れた。それはつまり、人間族は滅びの危機を迎えているのだ。

 

というのが主な話の内容だった。

 

「あなた方を召喚したのは〝エヒト様〟です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。恐らく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。あなた方という〝救い〟を送ると。あなた方には是非その力を発揮し、〝エヒト様〟の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」

 

イシュタルはどこか恍惚とした表情を浮かべている。おそらく神託を聞いた時のことでも思い出しているのだろうか・・・イシュタルによれば、人間族の九割以上が創世神エヒトを崇める聖教教会の信徒らしく、度々降りる神託を聞いた者は例外なく聖教教会の高位の地位につくらしい。

 

ハジメが、〝神の意思〟を疑いなく、それどころか嬉々として従うのであろうこの世界の歪さに言い知れぬ危機感を覚えていると、突然立ち上がり猛然と抗議する人が現れた。

 

「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることは唯の誘拐ですよ!」

 

この中で唯一の先生である愛子先生は今年二十五歳になる社会科の教師で非常に人気がある。百五十センチ程の低身長に童顔、ボブカットの髪を跳ねさせながら、生徒のためにとあくせく走り回る姿はなんとも微笑ましく、そのいつでも一生懸命な姿と大抵空回ってしまう残念さのギャップに庇護欲を掻き立てられる生徒は少なくない。

 

また、〝愛ちゃん〟と愛称で呼ばれ親しまれているのだが、本人はそう呼ばれると直ぐに怒る。なんでも威厳ある教師を目指しているのだとか。

 

今回も理不尽な召喚理由に怒り、ウガーと立ち上がったのだ。「ああ、また愛ちゃんが頑張ってる……」と、ほんわかした気持ちでイシュタルに食ってかかる愛子先生を眺めていた生徒達だったが、次のイシュタルの言葉に凍りついた。

 

「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」

 

場に静寂が満ちる。重く冷たい空気が全身に押しかかっているようだ。誰もが何を言われたのか分からないという表情でイシュタルを見やる。

 

「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」

 

愛子先生が叫ぶ。

 

「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」

「そ、そんな……」

 

愛子先生が脱力したようにストンと椅子に腰を落とす。周りの生徒達も口々に騒ぎ始めた。

 

「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」

「いやよ! なんでもいいから帰してよ!」

「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」

「なんで、なんで、なんで……」

 

パニックになる生徒達。

キリトも平気ではなかった。しかし、オタク知識がある故にこういう展開の創作物は何度も読んでいる。それ故、予想していた幾つかのパターンの内、最悪のパターンではなかったので他の生徒達よりは平静を保てていた。

 

ちなみに、最悪なのは召喚者を奴隷扱いするパターンだったりする。

 

「(・・・それにあのイシュタルって奴・・・やっぱり怪しい、怪しい事だらけだ)」

 

キリトはイシュタルの説明に幾つか疑問点があるものの、それは口にせず、イシュタルの目一点のみを見据える。

何せ、キリトにはその目の奥に侮蔑が込められているような気がしたからだ。今までの言動と重ねると「エヒト様に選ばれておいて何故喜べないのか」とでも思っているのだろう。

 

未だパニックが収まらない中、光輝が立ち上がりテーブルをバンッと叩いた。その音にビクッとなり注目する生徒達。光輝は全員の注目が集まったのを確認するとおもむろに話し始めた。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

 

ギュッと握り拳を作りそう宣言する光輝。無駄に歯がキラリと光る。

 

「(で・・・でた~・・・・・天之河のスキル『カリスマ勇者(笑)』が発動!効果は絶望の表情だった生徒達が活気を取り戻すが、無駄な希望とか安心感を与え、思考放棄者を増やすデメリットスキルだ~・・・)」

 

キリトは、余りにも光輝のセリフに顔を引き攣らせる。対して他の生徒の光輝を見る目はキラキラと輝いており、まさに希望を見つけたという表情だ。女子生徒の半数以上は熱っぽい視線を送っている。

 

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……俺もやるぜ?」

「龍太郎……」

「今のところ、それしかないわよね。……気に食わないし、怪しい所だらけだけど……私もやるわ」

「雫……」

「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」

「香織……」

 

いつものメンバーが光輝に賛同する。後は当然の流れというようにクラスメイト達が賛同していく。愛子先生はオロオロと「ダメですよ~」と涙目で訴えているが光輝の作った流れの前では無力だった。

 

結局、全員で戦争に参加することになってしまった。おそらく、クラスメイト達は本当の意味で戦争をするということがどういうことか理解してはいないだろう。崩れそうな精神を守るための一種の現実逃避とも言えるかもしれない。

 

「・・・・・これは、ーーーじゃない」ボソッ

「キリト?」

「いや、なんでもない。それよりハジメ、あのイシュタルって奴」

「あっもしかしてキリトも?」

「あぁ」

 

キリトとハジメは気がついていた。イシュタルが事情説明をする間、それとなく光輝を観察し、どの言葉に、どんな話に反応するのか確かめていたことを。

 

正義感の強い光輝が人間族の悲劇を語られた時の反応は実に分かりやすかった。その後は、ことさら魔人族の冷酷非情さ、残酷さを強調するように話していた。おそらく、イシュタルは見抜いていたのだろう。この集団の中で誰が一番影響力を持っているのか。

 

世界的宗教のトップなら当然なのだろうが、油断ならない人物だと、キリトとハジメは頭の中の要注意人物のリストにイシュタルを加えるのだった。

 

更にそれとは別にキリトはこの世界について考える。

 

「(・・・()()()()()()()()()()()()。それどころか戦争なんてもんに巻き込まれるんだ。アニメなどの物語みたいなご都合状況が起きるとは限らない・・・・・現実なんだ。今の俺達にとって、今この世界が・・・現実なんだ)」

 

キリトは考えをやめ、異世界に来たという理解と、その世界で今は生きるという覚悟をするのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Welcome Black Swordsman(ようこそ黒の剣士)



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ステータスプレート

ステータスもキリトかなーやっぱりww




戦争参加の決意をした以上、キリト達は戦いの術を学ばなければならない。いくら規格外の力を潜在的に持っていると言っても、元は平和主義にどっぷり浸かりきった日本の高校生。いきなり魔物や魔人と戦うなど不可能である。

 

しかし、その辺の事情は当然予想していたらしく、イシュタル曰く、この聖教教会本山がある【神山】の麓の【ハイリヒ王国】にて受け入れ態勢が整っているらしい。

 

前回の、話が終わり。キリト達はその日、ハイリヒ王国に移動、そこで国王やその親族、また騎士団長や宰相等、高い地位にある者の紹介された。

その後は晩餐会が開かれ異世界料理を堪能、これらも中々の美味であって、晩餐が終われば今日はもう解散になった。

各自に一室ずつ与えられた部屋に案内された。天蓋付きベッドにキリトは少し驚きながら、豪奢な部屋に少し居心地悪く感じながら、それでも今日の一日に張り詰めていたものや、明日からの不安を一旦空っぽにしながら、ベッドにダイブすると共にその意識を落とし、今日という一日が終了した。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

翌日、朝から早速訓練と座学が始まった。

 

まず、集まったキリトや生徒達に十二センチ×七センチ位の銀色のプレートが配られた。不思議そうに配られたプレートを見る生徒達に、騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。

 

「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

 

非常に気楽な喋り方をするメルド。彼は豪放磊落な性格で、「これから戦友になろうってのにいつまでも他人行儀に話せるか!」と、他の騎士団員達にも普通に接するように忠告するくらいだ。

 

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 〝ステータスオープン〟と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」

「アーティファクト?」

 

アーティファクトという聞き慣れない単語に光輝が質問をする。

 

「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具の事だ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」

「へぇ~・・・・・」

 

なるほど、と頷き生徒達は、顔を顰めながら指先に針をチョンと刺し、プクと浮き上がった血を魔法陣に擦りつけた。すると、魔法陣が一瞬淡く輝いた。

キリトも内心どんな感じだろうと少し楽しそうに、他の生徒と同じように血を擦りつけ表を見る。

 

すると・・・・・

 

 

 

ジジ.....!

 

「ん?」

 

キリトは突然自身の持つステータスプレートから謎の音が聞こえた。

しかし、何が起きたかわからない為、キリトは内心でそういう演出なんだろうと思い改めて確認する。

 

 

 

===============================

浮城 桐斗(キリト) 17歳 男 レベル:1

天職:■■剣士

筋力:250

体力:80

耐性:50

敏捷:220

魔力:10

魔耐:10

技能:■■■・剣術・■■・剛力・体術・縮地・先読・気配感知・言語理解

===============================

 

ステータスがしっかりと表示されていた。

まるでゲームのキャラにでもなったようだと感じながら、キリトは自分のステータスを眺める。他の生徒達もマジマジと自分のステータスに注目している。

 

「全員見れたか? 説明するぞ? まず、最初に〝レベル〟があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」

 

メルド団長はそう言って俺達に説明をする。

どうやらゲームのようにレベルが上がるからステータスが上がる訳では無いという事がわかった。

 

「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後で、お前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大解放だぞ!」

 

メルド団長の言葉から推測すると、魔物を倒しただけでステータスが一気に上昇するということはないらしい。地道に腕を磨かなければならないようだ。

その上で、キリト達に宝物庫の装備が貰える。サービスまである。キリトは内心で『ぼくのかんがえたさいきょうそうび』と妄想を膨らませかけたが首を横に振って切り替えた。

 

「次に〝天職〟ってのがあるだろう? それは言うなれば〝才能〟だ。末尾にある〝技能〟と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」

 

その説明を聞いた辺りでキリトは首を傾けながら自分のステータスプレートに書かれている部分に目を向ける。

 

「(・・・・・なんだこれ?)」

 

キリトの天職欄には〝剣士〟と書かれていた。

しかしそれだけならいいのだが、正確には〝■■剣士〟と書かれているのだ。

さらに〝技能〟にも■が多く含まれており、また剣士らしいとこもあれば、〝体術〟などの余り剣士に関係なさそうなものもあった。

 

「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」

 

メルド団長のからそう呼び掛け中もステータスプレートと睨めっこ(おかしな部分のみに)していた時、ふと横にいるハジメの方に目がいく。

 

何せ他の生徒は顔を輝かせている中、ハジメだけオドオドと冷や汗を流しながらキョロキョロしているのだ。

 

「どうしたハジ「キリト!」っ、八重樫?」

 

ハジメに声をかけようとしたキリトだったが、その前に八重樫に声をかけられた。

 

「キリトのステータス、どうだった?私はこんな感じだったけど」

 

そう言って八重樫は俺にステータスプレートを見せてきた。

見ると天職は戦闘系天職の〝剣士〟と書かれており、全体的に敏捷の高い八重樫らしいともいえるステータスであった。

 

「へぇ・・・八重樫の事だから〝天職〟は忍者とか侍ガールだと思ってた」

「なんでよ・・・・・、ってなんで忍者なの?侍ガ・・・侍とか武士ならまだわかるけど」

「・・・・・そっか、うん。そうだな八重樫・・・まだお前は知らなくていい事だったな。うん・・・・・今のは聞かなかった事にしてくれ」

「え?ちょっと待ってキリト。何で目を逸らすの?ねぇ!?」

 

ちょっとー!とキリトの肩を揺らしながら言うが、顔を横にして沈黙する。

そんなやりとりをしていると、光輝がメルド団長にステータスの報告をしに前へ出た。

 

そのステータスは……

 

============================

天之河光輝 17歳 男 レベル:1

天職:勇者

筋力:100

体力:100

耐性:100

敏捷:100

魔力:100

魔耐:100

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

==============================

 

といった具合で、まさに勇者らしいチートなステータスであった。

 

「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」

「いや~、あはは……」

 

団長の称賛に照れたように頭を掻く光輝。

ちなみに団長のレベルは62。ステータス平均は300前後、この世界でもトップレベルの強さだ。

しかし、光輝はレベル1で既に三分の一に迫っている。成長率次第では、あっさり追い抜くだろう。

そんな中、キリトは光輝のステータスを見て自分のステータスと見比べてみてとある事に気づいた。

 

「あっ、俺と天之河のステータス合計数値って同じなんだな」

「え、そうなの?ちょっと見して・・・・・・・・・・何かすごい偏ってるわね。キリトらしいといえばらしいけど。それにちょっとバグってない?」

「お前からバグなんて単語がでるとは・・・・・まぁ、後でステータス見せる時に聞くからいいとして、八重樫。余りステータスプレートは見せびらかさない方がいいぞ。一応それ、身分証なんだから」

「わかってるわよ。・・・・・大体、キリトしかまだ見せてないし・・・」

 

最後の辺りをボソボソ言いながら口を尖らせる八重樫だったが、キリトは気付かずに次々とメルド団長にステータスプレートを見せている生徒達を見る。

どうやら光輝だけが特別かと思ったら他の連中も、光輝に及ばないながら十分チートだった。

 

しかし・・・・・

 

「ああ、その、なんだ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか……」

 

順番が回ってきたハジメがステータスプレートを渡すと今まで、規格外のステータスばかり確認してきたメルド団長のホクホクした表情が変わり、もの凄く微妙そうな表情をして歯切れ悪くハジメの天職を説明する。

 

そして、その様子にハジメを目の敵かたきにしている男子達が食いつかないはずがない。

 

「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦系か? 鍛治職でどうやって戦うんだよ? メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」

「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」

「おいおい、南雲~。お前、そんなんで戦えるわけ?」

 

 檜山が、実にウザイ感じでハジメと肩を組みその状況を楽しんでるかのように周りの生徒達――特に男子はニヤニヤと嗤わらっている。

 

「さぁ、やってみないと分からないかな」

「じゃあさ、ちょっとステータス見せてみろよ。天職がショボイ分ステータスは高いんだよなぁ~?」

 

ハジメは投げやり気味にプレートを渡す。

 

「ぶっはははっ~、なんだこれ! 完全に一般人じゃねぇか!」

「ぎゃははは~、むしろ平均が10なんだから、場合によっちゃその辺の子供より弱いかもな~」

「ヒァハハハ~、無理無理! 直ぐ死ぬってコイツ! 肉壁にもならねぇよ!」

 

ハジメのプレートの内容を見て、檜山は爆笑した。そして、斎藤達取り巻きに投げ渡し内容を見た他の連中も爆笑なり失笑なりをしていく。

そのハジメのステータスプレートが少し見えたキリトはそのステータスを見て、メルド団長と同じように微妙な顔をする。

 

===============================

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1

天職:錬成師

筋力:10

体力:10

耐性:10

敏捷:10

魔力:10

魔耐:10

技能:錬成・言語理解

===============================

 

これがハジメのステータス。

チート揃いのステータスを持つ連中の中で、圧倒的に弱いステータスだろう。

 

「(でもなんでハジメのステータスだけこうも低いんだ?非戦系天職はまだしもステータスすら低いなんて、ハジメがゲームていう所の大器晩成型だからか?・・・・・まぁ、そんな事よりも・・・)」

 

そんな事を思いながらも次々と笑い出す生徒にそろそろ香織が憤然と動き出そうとしていたが、それよりも先にキリトが動いた。

 

「ははははは~ッへぶっ!?」

 

キリトはステータスプレートに記載されていた技能〝縮地〟を使って檜山に近づいて肩を手で後ろに引っ張りながら足首を思い切り蹴って転ばした。

転ばされた檜山の手からハジメのステータスプレートを手放した為、キリトはそれをキャッチしてハジメに渡す。

 

「・・・っと、これが〝技能〟か。一定のモーションでの発動かな?それにしては自然になんとなくで出来たもんだが・・・あっ、ハジメこれ返すわ」

「え、うん、ありがとうキリト」

「別に、気にすんな」

 

ハジメにカードを返したキリトは、後から喚くように檜山が「何しやがんだ!」と叫んでおるがキリトはそれを無視してメルド団長の方に向かう。

すると檜山はキリトに掴みかかろうと立ち上がった辺りで、愛子先生が「こらー!」と精一杯の怒りを表現しながら檜山含む、ハジメを笑いものにした連中に説教している。

その為、キリトは問題なくメルド団長にステータスプレートを見せられるが、その前にメルド団長が口を開いた。

 

「さっきは驚かされたぞ。まさか訓練もしてないのに技能を使えるなんてな・・・」

「いや、俺もなんとなくでやってみたんで出来るとは思ってなかったですよ。それよりもメルド団長。俺のステータスプレートなんですが」

「ん?どうかしたのか?」

 

メルド団長が首を傾げながらキリトに訪ね、その返答にステータスプレートを渡しながら言う。

 

「俺のステータスプレートなんですが、どうやら壊れてるみたいなんですよ」

「・・・・・は?いやいや、神代のアーティファクトが壊れる訳が・・・」

 

渡したステータスプレートを受け取って確認したメルド団長は、驚いた表情でステータスプレートを見る。時にはコツコツとプレートを叩いたり、光にかざしたりする。

ひとしきりし終えたメルド団長は驚いた顔でプレートをキリトに返した。

 

「た、確かに壊れてるようだな・・・・・よし、こちらで新しくステータスプレートを貰うから。とりあえずそれまではそれを持っておけ。それでも一応身分証としては扱えるだろう」

「わかりました。あっ、できたら俺のステータスの事を周りに言わないで欲しいんですが、あんま目立ちたくないし」

「え、あっおう。わかった・・・」

 

メルド団長はもう()()()()()()()()()キリトを見る。先程の技能の使用やステータスを見た中で、今更目立ちたくないと言っても無理だろう。

そんな事もいざ知らず、キリトはハジメの方に戻るのだが・・・

 

「あれっ、どうしたんですか! 南雲君!」

「な、南雲くん! 大丈夫!?」

「・・・えっと・・・・・どういう状況?」

 

戻っくるや死んだ魚のような目をして遠くを見るハジメと、そのハジメをガクガク揺さぶる愛子先生と心配そうに駆け寄る香織。

そんな状況がよくわからないキリトは近くにいた八重樫に訪ねた。

 

「えっと八重樫・・・あれ何?」

「愛ちゃんが止め刺しちゃったのよ……ステータスプレートを見せて」

「あぁ・・・把握した。どうせ愛ちゃんもチートだったんだろ?」

「・・・ええ・・・・・」

 

キリトはステータスプレート辺りで何となく察して苦笑いする。

そんな中八重樫は、キリトの方をジト目しながらボソボソと呟く

 

「・・・なんで愛ちゃんは呼び捨てで私は苗字なのよ・・・」

「ん?なんか言ったか?」

「・・・・・・なんでもない!」

「?」

 

何故か機嫌を悪くした八重樫は足早にキリトから立ち去った。

未だに愛子先生は「あれぇ~?」と首を傾げており、相変わらず一生懸命だが空回る愛子先生にほっこりするクラスメイト達。

 

 

 

・・・しかし、この何気ない平穏が続く事などないという事を、()()()()を除いて、まだ知るよしよなかった・・・・・



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