私は私を許さない (如月 刹那)
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私は私を許さない:序


お久しぶりな方はお久しぶりです。息抜きに書いたものですが、ゆっくりと見ていってください。


 

アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ

 

2017年12月31日———異聞帯サーヴァントである彼女に攻められて、カルデアは崩壊した。これが人理を救ったマスターとその仲間達を襲った現実だ。

 

しかし、数多ある何処かの世界線では査問が引き延ばしにされ、様々な厄介事を引き起こす者がいれど、割と平和な日常を送れたカルデアもあった。

 

ならばこれも運命(Fate)か。

 

これは、大切なものを奪われた皇女(こうじょ)と大切なものを奪った皇女(こうてい)の闘いである。

 

 

 

 

 

 

彼との出会いは、普通の聖杯戦争ではなかった。私が召喚されたのは、辺りが炎に包まれ、廃墟と化した街。目の前にいたのは、まるで未熟な魔術師。闘いとは無縁そうな、平凡な男だった。それでも彼はその身を震わせながら、私にこう言った。

 

「力を貸してくれ」と。

 

彼は率直に言えばドが付くお人好し(人誑し)だった。サーヴァントである、私をただの人の様に接して。だからこそ恐れた。もう一度、大切なものを失うことを。

 

「近付かないでください」

 

彼はそれでも私に接してきた。それと同じ様に彼の後輩(?)である、マシュ・キリエライトも話しかけてきた。まあ最初に召喚されたサーヴァントは私ですし、あまり仲が悪そうに見えても、他のサーヴァント達への影響がありそうですしね。そこへの配慮はしましょう。

 

「まぁ……壁越しに喋るくらいなら、構いませんが……」

 

彼は楽しそうに笑う。それがどんな虚勢であろうとも、周りを安心させるために。大切な後輩を守るために。仲間達と未来を見るために。弱音を吐かず、人類史を歩み続ける。……少しはサーヴァントとしての役目を果たした方がよろしいでしょう。

 

「まぁ……同じ部屋に居るくらいなら、良いです……」

 

彼は至って、普通の人だ。魔術礼装がなければマトモな魔術も使えず、それでも世界を救う為に頑張っている。けれど、普通だからこそ……責任や重荷は彼を縛り付ける。私がそれを支えてあげたい。

 

「あらマスター、いらっしゃい。ちょっと待ってね。今、お茶を淹れるから。皇女といっても、末期は自分独りで色々とやれるようになっていたのよ」

 

彼は———平凡で、お人好しで、普通で。私にとって最高のマスター。いつの間にかに、私の心の(かべ)は溶かされていた。マスターも、周りの人達も、お姉様方達の様に大切な存在になっていた。ならば、私は———。

 

「掴んだ手を、離さないで……。私の目の届く所に居て。私の声を聞いたら、いつでも返事をして。私はもう……失いたくないの」

 

———この命尽きる時まで、貴方をお守りします。

 

 

 

 

 

 

素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

 

降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

 

繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を破却する

 

———告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。

 

誓いを此処に。

 

我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者。

 

汝三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ———!

 

 

 

「サーヴァント、アナスタシア。召喚の求めに応じ、ここに参上したわ。久しぶりね!再び、貴方を守り続けるわ!」

 

クリスマスが終わりを告げ、マスターとのお別れを果たし、名残惜しいもののカルデアから退去をした私。こうして再び召喚されたことを嬉しく思いながらも、先程から嫌な予感がしてならない。

 

———地獄すら生温い現実が、すぐそこに迫っていた。

 

 

 

 

 

俺の名前は藤丸立香。様々な経緯があって、人理修復をすることができる最後のマスターになってしまった。ドクターやダヴィンチちゃんはすごく申し訳なさそうにしていたが、俺は後悔はしていない。確かに人理修復するのに、色々な傷を負い、死を目の当たりにし、大切な人も失った。それでも色褪せない、濃い2年間だったと思う。

 

自分を慕ってくれる後輩(マシュ)、司令官代理や技術顧問など影から支えてくれた万能の天才(ダヴィンチちゃん)、1番最初に召喚に応じてくれた彼女(アナスタシア)に、数多の英霊(なかま)、カルデアのスタッフ達、皆のお陰で未来を掴めた。

 

特にアナスタシアにはお世話になった。最初はかなり拒絶的な態度を取られたものの、特異点を駆け抜けて、時間を過ごすと共にかけがえのない存在となった。自分が挫けそうな時も、ずっと支えてくれた優しい皇女。

 

お転婆で、ちょっとワガママで。

 

そんな彼女(ナースチャ)のことが好きだった。

 

結局、本人には言えなかったけどね。マシュと言い、2人して積極的に迫ってきたから、比較的平和な時はかなり心臓に(別の意味で)悪かった気がする。

 

退去前に告白しようとも思ったが、自分は人間で彼女はサーヴァント。彼女を俺で縛り付けていけない。また会おうと約束してお別れをした。

 

———だからこそ、あの光景は忘れることができない。

 

 

 

 

 

シャドウボーダー内で、備蓄に余っていたなけなしの聖晶石で召喚できるかを、ゴルドルフ新所長の判断を元に実行した。召喚は成功した。

 

「あら?随分と殺風景な場所ね。カルデアではないのかしら?とりあえず、マスターにお茶でもご馳走してあげたいのだけれど」

 

プンプンと効果音が聞こえそうな可愛らしい仕草で、アナスタシアはそう告げた。彼女は悪くない。あの(・・)アナスタシアとは別人だ。そう皆は頭では思っているが、実際は警戒している。立香自身も今、どんな目でアナスタシアを見つめているか分からない。

 

「……なにかしら、この空気。随分と張り詰めているみたいだけど、どうかしたかしら?」

 

そう問いかけるが、誰も答えない。否、答えることができないのだ。彼女に言ってしまえば、きっと彼女は耐えられない。ここで黙っているのは決していい結果にはならないが、最悪の結果になることもない。だからあのホームズも、黙りを決め込んでいる。

 

だが、その均衡を破ったのは良くも悪くも、ゴルドルフ新所長だった。

 

「な、なぜ貴様がここにいる!!」

 

青い顔をして、新所長が驚いていた。無理もないだろう。ゴルドルフ新所長はあと数秒遅れていたら、この少女と同じ人物に氷漬けにされていた。

 

実際、俺とマシュが助けに行かなければ……。

 

「新しいカルデアのスタッフかしら?私の名前はアナスタシア。アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ。ロマノフの皇女よ。よろしくね」

 

そう言って、アナスタシアはゴルドルフ新所長に微笑みかけるが、新所長は青い顔から一転、顔に怒りを浮かべていた。そして怒りのままに、崩壊の言葉を放とうとした。

 

「なぜ貴様がここにいるかと聞いている!貴様は……!「ダメです!ゴルドルフ新所長!!」カルデアを崩壊させたサーヴァントだろう!!」

 

その言霊が放たれて、一瞬で空気が凍り付くのが分かった。アナスタシアは、言葉の意味が理解できていないようだった。

 

「私が……カルデアを崩壊させた……?」

 

「そうだろう!私だって間一髪だった!殆どのカルデアのスタッフを殺し尽くして、カルデアを凍結させた!」

 

「それ以上はダメです!!アナスタシアさんが!!」

 

マシュが止めに入るが、時既に遅し。アナスタシアは信じられないという顔をしている。周りに眼を回す。スタッフ達の目は大小あれど、警戒、畏怖の眼を向けている。

 

次に救いを求め、縋り付いてきたのはマスターである、俺だった。

 

「ねぇ……嘘でしょマスター?私がカルデアを……大切な皆を手にかけただなんて……。嘘だと言って……立香(マスター)……」

 

立香は目を逸らしてしまった。本来ならそこでアナスタシアの言葉を受け止めて、答えてあげるべきなのに。それを解と受け取り、アナスタシアは顔を絶望に染めていく。

 

「あぁぁ……。わ……たくしは……みんなを……たいせつなひとたちを……」

 

身体も声もガタガタと震わせていく。流石にその様子にゴルドルフ新所長も、あのアナスタシアと別人と認識したようだ。スタッフも我に返り、立香も声をかけようとするが———。

 

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」

 

悲痛の叫びを上げ、そのまま霊体化して、この場を去っていった。このまま1人にしたら、どうなるか結果に見えていた。立香はその場を皆に任せて、アナスタシアを追いかける選択をした。

 

「……っ!俺っ!行ってきます!」

 

「ちょっ……待ちたまえ!……彼女は本当にあの時のやつとは別人なのか……?」

 

ゴルドルフ新所長は沈痛な雰囲気を漂わせながら、ダヴィンチに問うた。その答えはすぐに帰ってきた。

 

「……勿論だとも。彼女は人理修復を始めた時からの仲間でね。最初はツンツンした態度だったが、そのうちスタッフ達のカウンセリング相手などで随分助けられたよ。皆を家族のように接してくれたのさ」

 

「私は何も知らずに、彼女に酷いことを言ってしまったのだな……。後で謝らなければ……」

 

「ええ。ですが、今はMr.立香に任せましょう」

 

 

 

 

 

追いかけた先は期せずも、自分のマイルームだった。一瞬、入ることを躊躇ったが……。

 

とりあえずノックだけして、入る意思を表明した。

 

「入るよ、ナースチャ」

 

部屋の中に入ったが、真っ暗だった。当然ながら、シャドウボーダー内の電力は有限だ。自分がいない時に、電気を付けるなど以ての外である。

 

目を凝らした先……ベッドの上にアナスタシアが佇んでいた。そのままアナスタシアの元に向かおうとしたら、不意にアナスタシアが呟いた。

 

「私の」

 

「ナー「私の手を掴まないで」っ!!」

 

「私の目の届くとこから離れて」

 

「私の声を聞いても返事をしないで」

 

「私はもう」

 

気圧されて、そのまま壁にもたれかかり、部屋の電気がつく。

 

「何も失いたくないの………………」

 

目から光が消え失せ、壊れたように微笑み、涙を流している姿が照らされる。心が壊れた姿が、映し出される。その姿に何時かのアナスタシアはなかった。

 

俺は、勢いのままナースチャを抱きしめる。

 

「ごめんっ……!ナースチャが1番辛いのに……!俺は目を背けてしまった!俺が1番支えないといけないのに!ずっと支えてくれたナースチャのマスターなのに!」

 

「私に近付かないで……」

 

ナースチャは身体を震わせながら、そう呟くだけだった。自分の不甲斐なさに反吐が出る。何が人理を救ったマスターだ。好きな女の子1人守れない。

 

「……ナースチャ。俺はもう君のマスターである資格がない。ただ1つだけ言わせて欲しい」

 

虚ろな目をしながらナースチャはこちらを向く。その目に……どこかにナースチャの意思があると信じて。

 

いつかエミヤが話してくれたことが、少しだけ分かったかもしれない。きっと根本が違うのだけれど。

 

「俺は君のことが好きだ。君のことが大切だ。俺はもう君を裏切らない。俺はナースチャだけの【正義の味方】になるよ」

 

———いつしか、どこかの正義の味方が、大切な後輩に言った言葉。彼は、その呪いの言葉を受け継ぎ、1つの結末に辿り着いた。きっと1つの幸せの形に辿り着けたのかもしれない。

 

———けれど◼︎◼︎◼︎◼︎と藤丸立香は違う。◼︎◼︎◼︎◼︎は呪いの言葉で正義へと妄信したが、藤丸立香は普通の一般人だ。人理修復を成し遂げたとは言え、その心の在り方は変わらない。ただの平凡な人間だ。

 

……その先は地獄だぞ、マスター。君は……俺のようにはならないでくれ……!

 

そんな声が何処かで木霊する。しかし、藤丸立香にその声は届かない。

 

ナースチャは安心したかのように、俺に抱きついてきた。そのまま身を委ね、睡魔に誘われる。

サーヴァントは寝ることはないが、精神的に疲れたのか、そのまま安らかな寝息をたて始めた。

 

「もう俺は離さない……。ナースチャを支え続けるよ」

 

シャドウボーダー内の一室は再び、暗く、闇に沈んでいった。

 

壊れ始めた歯車は、もう戻らない。




ど う し て こ う な っ た。

どうも初めましての方は初めまして。お久しぶりな方はお待たせいたしました。作者の如月刹那と申すものです。

最後に作品を投稿してから数年。やっと書いたものを出せました。いや実際はインスピレーションが湧いたから、ちょちょいと一気に書き上げたものですけどね。

元からFate作品は出したいなーと思ってました。ですがネタはたくさんあるけど何を書こうか迷う。なら元々1つの案が浮かんでいたので、それを出すことにしました。

アナスタシアを題材にして、何かを書きたいなーと思っていた所存でして、前にカドアナとぐだアナでコタツを囲みながら、お互いのアナスタシアが惚気合うという物を書こうとしましたが、残念ながら没行き。まあ実際は割とお世話になっている掲示板で、そのような話があったのでそんな感じのが頭に上がってました。ダブルデートとかも、構想があったりなかったり。

今回の話もどこかで似たようなのを見かけた話でして。「うちのアナスタシアは人理修復前に呼んだんだ!」と言うのものを目にして、いっそのこと最初に呼んだらどうなるんだ。と組み立てて、今回の物語を書きました。

まあ予想はできてる方は多いとは思いますが、このアナスタシアさんは絆10想定です。異聞帯のお堅い感じではなく、本来のお転婆な皇女様です。コタツの民です。ナースチャはアナスタシアの愛称です。

あとは少しだけエミヤこと衛宮士郎についても絡めてみました。私は衛宮士郎と言うよりは男性キャラで断トツにエミヤが好きなキャラに入るのですが、何が好きかってその在り方が好きなんですよね。

正義の味方と貫き通して、その末があの心象風景。原作をまだやってない身としては完全に理解しきれていないところもありますが、凄く惹かれるキャラです。

そして辿り着いて出会えたのが、カルデアの藤丸立香。カルデアではサンタムなどとかなりハッチャケたりしてますが、それも抑止力にこき使われるより、安心して過ごせてる姿でもあると思うんですよね。実際、藤丸立香に対してかなり親密的に接してますし。新米魔術師だった頃の自分と重なったりと、思うところがあるんでしょうね。

そしてエミヤにとって、藤丸立香は1つの【正義の味方】の形でもあったんだと思います。見知らぬ人のためにでもなく、世界の為にでもなく。自分が生きたいから、皆と未来を見たいからという、自己優先で、それでも助けたい人は助けるという信念の元に動く姿は、エミヤもとい衛宮士郎にとって憧れの対象なんだと。

けれど藤丸立香は自分にそんな自覚はなかった。ただ生きたいからやったと。藤丸立香は衛宮士郎じゃない。藤丸立香という、普通の男の子(女の子)は決して正義の味方にはならないと思うんです。あれは一般人が背負うには業が深すぎる。

ていうか、元々こんな展開にする気なかったんですよ!本当は汎アナvs異アナでちょっとバトってもらう予定だったんですよ!
でも、アナスタシアみたいな美少女が絶望する姿をちょっと見たいな。見てみたくない?みたいに進めたらいつの間にかに、つい絶望のドン底だよ!オマケでぐだ男にも堕ちてもらいました(愉悦)。

決して当方は愉悦部ではありません!信じてください!

てなわけで後書きも長々と書きましたがここまで読んでくださいましたか?ありがとうございます。あなたのお宅にラフムを贈りました。どうぞご活用ください。

不定期更新(多分)ですが、流石に短編なのでササッと完結したいと思います。できるかなー?出来ると信じたい。

ではもう一度。ここまで読んでくださり、ありがとうございました!誤字脱字などがあれば、容赦なく追求してください。

PS.私はカドアナもぐだアナも好きです。4人がハッピーエンドになる姿がいいよネ!(そうなるとは言っていない)
この作品が終わったらぐだアナ(+α)で行く各種聖杯戦争とかも面白そうかも?


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私は私を許さない:壊


お待たせいたしました。アナスタシアの内容が記憶から抜け落ち脳内ガバガバだったため、ストーリー見直しながら、平行して進めてたら時間がかかってしまいました。
では、ごゆっくりしていってください。


 

こんにちは。マシュ・キリエライトです。今回はアナスタシアさんが、召喚されてからのお話を少しさせていただきます。

 

あの後、数分もすれば、先輩は戻ってきました。どうやらアナスタシアさんは、先輩の部屋で寝ているそうです。羨ましい……いえ、なんでもないです。

 

その時に、先輩とお話をしたのですが……。

 

私の中で違和感……認識の齟齬がある気がしました。

 

でも、あの状態のアナスタシアさんを、落ち着けることが出来たと聞いたので、安心したのもあって、特に気にすることはしませんでした。

 

 

 

 

 

 

———今、思えば、私はずっと旅をしてきたサーヴァントとしても、サポートとしても未熟だと。先輩とアナスタシアさんが、あんなことになるなんて、私には思いもよらなかったのです。

 

 

 

 

 

 

カルデア崩壊から1週間、アナスタシア召喚から4日が過ぎた。あれからのアナスタシアは、前のようにスタッフ達のカウンセリングなどを行い、周りとコミュニケーションを取っていた。

ゴルドルフ新所長とも仲直りし、改めて自己紹介した末で、今も会話などを交わしているようだ。

 

周りから見れば、前と同じように振舞えているだろう。ただし立香からの視点では、全くの別物だ。

 

瞳の奥が淀んでいる。感覚でしか感じられないものだが、前とは明らかに違っている。何を考えているかは、想像に難くないが、自分としては、アナスタシアの意思を尊重したい。

 

俺自身も、もう2度と彼女(ナースチャ)を離さないと決めた。ずっと支える為に。クリプターを倒し、アナスタシアを守り抜き、生き続ける。

 

 

 

そう

 

 

 

何を犠牲にしようとも

 

 

 

俺はナースチャだけの【正義の味方】だから

 

 

 

———藤丸立香は生きる理由(呪い)を抱え、壊れていく。

 

 

 

 

 

 

 

あれからマスターの様子がおかしいように、アナスタシアは感じた。ずっと過ごしてきた自分にだからこそ、分かったのだろうか。十中八九、自分が召喚された時の出来事が原因だと思われる。

 

だから、アナスタシアは前よりも立香の近くにいるように心掛けた。その行動の甲斐あってか、自身のマスターの変化を理解してしまった。

 

私の所為だ。立香はもう普通ではない。私が業を背負わせてしまった。きっと立香は、前の立香に戻らない。戻れない。

 

でも、私はそれを嬉しく思うわ。立香が私を1番に想ってくれているもの。私の中で、1番大切な存在が。恐らく、これから私が起こす行動も見守って、見捨てないでいてくれるだろう。

 

 

 

だから私は

 

 

 

あらゆる敵を凍り殺し

 

 

 

邪魔する者を嬲り殺し

 

 

 

遍く邪悪を呪い殺す

 

 

 

殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して

 

 

 

奴らの大切なものを全て奪い殺す

 

 

 

こんな私を愛してくれるマスターを失わない為にも

 

 

 

願わくば、立香に幸あらんことを

 

 

 

———皇女は復讐の炎を灯し、マスターの安寧を祈る。

 

 

 

 

 

 

「…………喜べ少年少女。君達の願いは漸く叶う」

 

「何か言ったか?」

 

「ただの独り言だ。気にしないでくれたまえ」

 

異聞帯のロシア領にて、ここまたイレギュラーな存在が愉悦にほくそ笑み、胸を躍らせた。

 

 

 

 

 

 

 

「いくぞ。キャスター」

 

「ええ。全てを凍てつかしましょう」

 

教会前にて、クリプターとサーヴァント率いる立香は対峙した。通信でも、マシュ達がこちらの様子を見ている。

 

『アナスタシア……さん』

 

マシュが呟いた。あちらにアナスタシアがいることに、やはり思うところがあるのだろう。しかし、何も問題はない。ここまで来るのに随分と犠牲(・・)も出した。今更、特に言うこともない。

 

———全てはこの時のために。

 

皇帝(ツァーリ)の威光に平伏せよ。我が名はアナスタシア」

 

「君のサーヴァントと、こちらのサーヴァント。どちらが強いか、改めて勝負だ」

 

ああ。勝負だ。

 

 

 

 

 

俺のサーヴァントの存在に、気付けない時点でそちらの負けだ。

 

 

 

 

 

「惨たらしく、凍え死になさい」

 

突如、カドックとアナスタシアの背後から、凄まじい魔力が現出し、氷塊が放たれる。それに反応出来なかった、カドックが吹き飛ばされた。

 

「ガハッ……!?」

 

「カドック!?」

 

すぐさまあちらのアナスタシアは、カドックに駆け寄ったが、自身のサーヴァントの憎悪は全然晴らされないようだ。隙を与えず、アナスタシアは、立香に令呪を使うように促す。

 

「立香」

 

「令呪を持って命ずる。ナースチャ。宝具を展開し、全力で奴等を殺せ」

 

『先輩!?何を言っているんですか!やめてください!!』

 

通信からマシュの制止の声が、聞こえて来るが関係ない。周りにいる、アヴィケブロンやビリーも咄嗟のことで、驚愕に染まっている。

アナスタシアには、このロシア領の探索中、ずっと霊体化してもらっていた。原住民を混乱させないための配慮だ。

 

こちらの令呪は1日で1画回復するが、簡易な命令しか使えない。だが、相手に悟られないレベルに魔力を薄めることぐらいなら、この令呪とアナスタシアの協力で、なんとか実現できる。

 

さあ。ナースチャ。君の思うがままに。その憎悪で相手を凍てつかせろ。

 

「ヴィイ、奴等の全てを見抜き、呪い殺しなさい。何度でも、呪いなさい。大切な者を奪われた、この憎悪は決して晴れることはない。ならば、あらゆるものを奪い殺せ!殺し尽くせ!魔眼起動!」

 

アナスタシアの背後にヴィイが現れ、怒りのままにカドックとアナスタシアに、その鉄槌を何度も振り下ろし、魔眼で辺り一帯を凍土へと変える。

 

復讐者(アヴェンジャー)の如く、復讐心を燃え上がらせ、不気味に顔に笑みを浮かべながら、カドックとアナスタシアに殺意の言霊を放つ。

 

「殺せ。殺せ。殺せ。私の心を晴らすために、愛しい立香(マスター)を守るために。害為すもの全てが、壊れて千切れて割れてしまえ!疾走・精霊眼球(ヴィイ・ヴィイ・ヴィイ)!!」

 

あちらは何とか耐えているようだが、苦悶の表情でこちらを睨みつけてきている。カドックに攻撃されたことを怒っているのだろうか。ならば、因果応報だ。

 

奴等はアナスタシアを、悲しませた。心を壊した。俺が出来るのは、それを支えることだけ。

 

 

 

 

 

 

 

結論から言えば、逃げられた。カドックがなんとか令呪を使い、撤退をされてしまった。こちらからしたら、不完全燃焼でしかない。

 

周りに冷気を立ち込めさせながら、自身のマスターに宣言した。

 

「ねぇ、立香。今度は必ず殺すわ」

 

「……うん。ナースチャ。俺はナースチャがやりたいように、出来るよう、頑張るよ」

 

きっと、前までならこんな私を諭してくれた。でも、もう後戻りはできない。私も立香も壊れている。マシュや他のサーヴァント達は、黙って見ているが、内心よく思ってないことは、簡単に分かる。

 

ごめんなさい、マシュ。もう私達はお互いに依存しなければ、生きていけないでしょう。貴方の大切な先輩をこうしてしまったことを考えれば、クリプターの連中と変わりないのかもしれません。

 

だから全て終わったその時は———。

 

 

 

 

 

 

「こんな状況になってしまうとは……予想外だ」

 

「本当にそう思っているのかい?ホームズ」

 

「勿論だとも。こうなりうる可能性は考えていたが、私も過信してたのだろうね。彼ならば……と」

 

「それは些か無責任だと思うけどね。そんな予想がついていたなら、私はもっと2人を……」

 

「それは無理と言える。彼はアナスタシア嬢と親身であることは、誰の目を見ても明らかだった。その2人自身が乗り切ることができなかった。他の誰が何と言おうと、納得はしないだろう」

 

「むぅ……。とりあえず、クリプターを殺すのは賛成できない。彼らからは情報も得られるし、何より殺してしまったら、本当に立香君は戻ってこれなくなってしまう」

 

「もう、手遅れかもしれないがね」

 

「そんなことを言わないでほしいなぁ。私は何であろうと、2人を止めてみせる。彼らの為にも、マシュのためにもね。……勿論、彼等を守る為に消えた、ロマンだってそんなこと望んじゃいないはずだしね」

 

「私も努力はしよう」

 

 

 

 

 

壊れた歯車は動き続ける。

 

壊れ続けて無くなるまで。

 

誰かが止めるまで。

 

———決して、止まらない。




こんにちは。ここまで見てくださって、ありがとうございます。作者の如月刹那です。

正直、練りが甘かったなぁって思います。ぐだとアナスタシアの壊れている感をもっと出したかったけど、自分の語彙力の限界など感じましたね。語彙力のボキャブラリー少なすぎる。同じことしか言えんのかサルゥ!

では、ストーリーの解説をば。

今回は前回を経て、アナスタシアと藤丸立香が互いに依存し、壊れていく様を書きました。ボイスなども確認したんですけど、元からかなり辛辣なボイスしてますね、皇女様。
最近はガッデムホット(めっさあついわ)とかでお転婆感漂ってますけどね。わざわざ上着も脱がない、水着の霊基にしてくれる人のところにも行かない。遠回しに一緒に水着選びのデートにでも、誘いたいと言ってるんですかねぇ……?

次に藤丸立香君。彼は前回で正義の味方になると言い、エミヤがそれを嘆くシーンがありましたが、よくよく考えると衛宮士郎とは方向性が違うと思いました。

衛宮士郎は自分を犠牲にしてでも誰かを守る印象があるけど、藤丸立香は自身を犠牲にはしなさそうなんですよね。散々、生きたいと言っていますし。彼はどちらかというと、自分と守る対象以外を犠牲にしてでも、生きるタイプだと考え、今回のようになりました。

やったね、エミヤ!犠牲が増えるよ!

正直、カドアナ好きには、本当に済まんことしてると思っている。反省はしている。だが、私は謝らない!

とりあえず、今のところ構想としてはラストバトルで決着をつけようかなーって感じで、第1異聞帯のネタバレにあまりならないように組み立ててはいます。元がアナvsアナやりたかっただけですし、アナスタシアストーリー全部をやる気はありませんでした。

あとは止まるルート止まらないルートの2種類を書くか、どちらか1つを書くかで迷っていますね。気まぐれで決めます。止まるんじゃねぇぞ……ルートはありません。

残り1,2話で決着が付くと思います。どんな最期になるか、想像を膨らませながら、お楽しみにしてくださいませ。

では、長々と語りましたが、今回もありがとうございました!次回も、よろしくお願いいたします!

PS.誤字脱字などおかしいところがあれば、報告をお願いします。すぐさま修正させていただきます。


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私は私を許さない:迷


お待たせいたしました。まだ最終回ではございません!次は少し遅くなるかもしれません。

では、ごゆっくりとお楽しみください。


 

「はぁ…………」

 

カドック・ゼムルプスは溜息を吐いた。考えていることは、勿論奴の……藤丸立香のサーヴァントについてだ。

 

奴のサーヴァントは、奇しくも自分のサーヴァントと同じアナスタシアだった。いつ召喚したのか、それが分からない。この異聞帯に来てから召喚したのだろうか。

 

いや、それはない。少なくもあいつらの間には、確かな信頼関係が見えた。少ない言葉だけで、相手の意思を汲み取り、こちらを明確に攻撃して来た。それに……。

 

「なぜ、あそこまで怒っていたんだ……。あっちのアナスタシアは、カルデアにいた時期が長いのか?」

 

奴のアナスタシアは不意打ちでカドックを狙って、殺意を剥き出しにして、宝具でこちらを圧倒してきた。あの殺意は尋常じゃないレベルだった。

 

「……ック、……ドック、……カドック。ねぇ、聞いてるのかしら?私のマスター?」

 

「……っ!いつの間に、横に来ていたんだ」

 

「あら?私に気付かないなんて、凍らせたくなるわよ。それで、何を考えているのかしら?」

 

「ああ、やつのサーヴァントについてだ」

 

アナスタシアは、そのことを聞いた瞬間に嫌そうな顔をした。あれだけ、自分に……汎人類史の自身に、追い詰められたのをよく思ってないようだ。

 

「それについてなら、マカリー司祭が調べてくれたみたいよ」

 

「勿論だとも。今から説明しよう」

 

アナスタシアに続いて、マカリー司祭もいつの間にかに立っていた。アナスタシアはともかく、こいつは、いつ来たんだ。

 

「まず、カルデア側のアナスタシアについてだが……あちらの皇女はどうやら、藤丸立香が最初に召喚したサーヴァントのようだ。仲もかなり良好。ここまで言えば、分かると思うがね」

 

「カルデアの連中を殺したからか?」

 

「それだけではないでしょう。元の私なら、そこまで長く過ごしていれば、家族の様な信頼性を築けていたと思うわ。きっと、家族を失うのは辛いですもの」

 

今でこそ、ヤガの精神性などが埋め込まれ、家族の顔さえ思い出せないほど変質しているアナスタシアだが、アナスタシア自身が言うんだ。あちらのアナスタシアは、そう言う存在だと考えたほうがいい。

 

「それに加えて中身こそ違うものの、同じ存在に殺されたのだからね。霊基が変質しかけているのも頷ける」

 

「霊基が変質だと?そんなことがあり得るのか?」

 

「ふむ、ないとは言いきれない。私にとっては馴染みのある霊基だったのでね。———あの泥と良く性質が似ているよ。最もアレは災厄を齎らすものだから、比較対象としては弱いがね」

 

「マカリー。アンタは何を言っているんだ」

 

「いや、こちらの話だ。気にしないで、忘れてくれていい」

 

馴染みのある霊基?泥?聞き覚えのないことだが、今はそんなこと気にしている場合ではない。とにかく、あちらの戦力にこちらの想定外のものが加わった。それを考えて動かなければならない。

 

アナスタシアを必ず、皇帝(ツァーリ)にするために。

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ。可愛い寝顔」

 

アナスタシアは寝ている立香に膝枕をして、頭を撫でながら呟いた。あの後、こちら側のサーヴァントに説明などしたり、叛逆軍等が壊滅したりしたが、全て些細なことだ。

 

自分の中で、そう考えるものの立香に無茶な重荷を背負わせていないかと改めて思った。

 

自身のマスターは優しい人だ。だからこそ、今回のことで私だけの味方になってくれると言ってくれたが、普通なら死にゆく人を見捨てることのできない人でもある。

 

きっと他の人をいくら犠牲にしようと、敵であるクリプターを殺すことになっても、立香は復讐鬼となった私についてきてくれる。けれども心の奥底では、立香は罪悪感で縛り付けられる。

 

罪のない人を犠牲にすること、壊れていく私を止められないこと。その全てがのしかかる。立香も共に壊れていく。寄り添ってくれることに嬉しいと思う反面、私のせいで摩耗していく姿を見ていられなくなる。

 

クリプターを逃した時に、次は必ず殺すと私は言った。立香は私がしたいように頑張ると言ってくれた。でも、私の言葉に返答するのに間があった。アナスタシアはこれ以上、立香と一緒にいていいのかと迷いが生まれてしまう。

 

「2人共、部屋にいたのね、立香君はお休み中かー。まあ、もうすぐクリプターとの決戦だしね。休める時に休まないと」

 

部屋のドアが開いて、武蔵が入って来た。彼女とはカルデアでも付き合いがあった。まあ、ほぼカルデアに留まってることはなく、外に出ていたが。

 

「私達2人の空間を邪魔されたくないのだけれど?無粋なのでは、武蔵?」

 

「うんうん、マシュちゃんとの話は終わったからねー。次はこっちかなーって。大丈夫?アナスタシアちゃん、無理してるでしょ」

 

「……そういうところは鋭いのね。恋愛に関しては疎いのに」

 

「そ、それは関係ないのです!とりあえず、私が相談に乗っちゃうよー」

 

「なら、お言葉に甘えるとします」

 

私は立香に聞いたこと、別の自分がカルデア崩壊に関与してること、召喚されてから起きた出来事を話した。

 

「うーん……難しい問題ね。立香君に違和感あると思ったらそれみたいね」

 

「今はこうして落ち着いて話していられますが、あの2人……特にあちらの私を見かけたら、溢れる憎悪が抑えられなくなるのです」

 

「まるで復讐者(アヴェンジャー)ね、それ」

 

「まるで、ではないのでしょう。霊基が変質して来ていることは、自分が1番よく分かってるわ」

 

煮え滾るほどの憎悪。カルデアにも何人か復讐者はいたが、これほどのものを抱えていたのだろう。復讐者の憎悪は、その対象を消しても決して晴れることはない。それがよく分かる感情だった。

 

「こうやって葛藤してるくせに、私は立香が一緒にいてくれることを嬉しく思うのです。既に破綻してるのよ」

 

「いや、それは私が同じ立場に立ったとしても、一緒について来てくれる立香君のことは嬉しく思うかなぁ?なんせ根っからの無法者ですから!まあ、復讐って理由では戦わないけどね!」

 

「それは復讐しようとしている、本人を目の前にして言うことかしら?なんにせよ、次に会ったら最後、殺すか殺されるかの戦いになるでしょう。生かすなんて選択肢はハナからありません」

 

「それで納得できるかは貴方次第よ、アナスタシアちゃん。どちらの選択を選ぶかで、きっと結末は大きく変わる。貴方が納得できる最後を選びなさい」

 

そう言って、お節介なお侍さんは部屋から出て行った。今の私にここまで言うなんて貴方くらいよ。

 

———どちらかを選ぶ……か。私は結局、どうしたいのかしら。

 

 

 

 

 

 

夢を見た。銃で殺され、バラバラにされ、魔眼(ヴィイ)を通じて、兵士達に恨みを抱いた少女(アナスタシア)。その最期は悲しいものだった。

 

視界が暗転する。

 

次に映ったのは、一面が炎で包まれた街。これから一緒に歩んでいく、マスター(立香)との初めての出会い。これまでの特異点での旅路。色々なサーヴァントや、支えてくれたスタッフとの触れ合いはとても心が暖かくなるものだった。

 

いつまでも、この幸せが続きますように。

 

再び、視界が暗転する。

 

なぜ?なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ———。

 

……なぜ皆は、私をそんな目で見るの?マスターは目を逸らすの?別の私は私の大切な者達を奪ったの?

 

あぁ……私の中にドス黒い感情が湧き上がる。自分が殺された時以上の闇に支配される。悲しみ、憎悪、殺意。溢れるのが止まらない。

 

私の心が、霊基が変質していくのが分かる。もう誰も手を取らないで。こんな醜い私を見ないで。

 

立香が追いかけて来てしまった。私の大切なマスター。もういいの。私は失いたくない。こんな、私といては駄目。

 

それでも立香は手を取ってくれた。私のことを好きだと言ってくれた。差し伸べられた希望に縋り付く。それで立香が壊れていくと知りながら。

 

とても嬉しい。それと同時に悲しい。

 

あぁ、どうか私のことを止めないで(止めて)———。

 

意識はそこで途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

瞼を開けると、目の前にはアナスタシアの顔があった。優しい微笑みでこちらを見ている。頭には柔らかい感触があり、どうやら膝枕をしてくれているようだ。更に頭を撫でてくれているけど、流石に恥ずかしくなり、自身の顔が赤くなるのが分かった。

 

「何してるのさ……」

 

「あら?恋人同士ってこういうことをするものでしょう?寝顔を見れたし、私は満足よ?」

 

「いやぁ、まあ、うん。確かにこういうことはするかもね?」

 

「それはそれとして、魘されていた様だけど、何か悪い夢でも見てたの?」

 

「……本当は何を見てたかは、ナースチャが1番よく分かってるんだよね?ナースチャの夢を見てたよ」

 

「マスターはサーヴァントのことを夢を介して見るとは聞いていたのだけれど、何もこのタイミングじゃなくてもいいとは思ったのですけれど」

 

「それは俺に言われてもなんともできません!……何度も言うけど、俺はナースチャの味方だから。ナースチャが、どんな道を行こうともついてくよ」

 

「ええ、分かってるわ。私もどんなことがあっても、貴方は守りきってみせます」

 

『はいはーい。お二人さんに連絡だよ。もうすぐ首都近辺にシャドウボーダーが近づける限界だ。心身ともに準備しといてねー。…………あと、無茶だけはしないでね。それは私達も望んでいないからさ!』

 

ダヴィンチちゃんが、アナウンスと共に心配をしてくれた。俺とナースチャが、どうなるかは分からない。きっと、その時になるまで。

 

「さあ、マスター行きましょう」

 

「ああ、この異聞帯での最後の闘いだ」

 

 

 

 

 

壊れた歯車は支え合う。

 

動き続けるか、崩壊するか。

 

———それは最後になるまで誰にも分からない。




ギル祭だ!ボックスガチャだ!こんにちは。作者の如月刹那でございます。

この話とは関係ないですが、やっと待ちわびたボックスガチャですよ!これで当カルデアサーヴァント達のスキルレベルが上げられる……。ついでにまた高難易度があるみたいですしね。呼符が欲しいです。

では、今回のお話の解説を。

カドックとアナスタシア、つまりクリプター組は汎人類史アナスタシアがいつ頃からいるのかを知らないという形にさせていただきました。てか実際、多分知らないと思います。あと今回のお話で、薄々勘付いた方もいるかもしれませんが、麻婆臭い方はラスプーチンではあるけど、ラスプーチンではありません。まあ、そんな感じの発言もしてましたし、思い切ってそれっぽい形としました。

次にアナスタシアと藤丸立香について。

アナスタシアは別にカドックと異聞帯アナスタシアを殺すことに躊躇いはありません。あくまでその2人を殺すことによって、藤丸立香という人間が壊れることを恐れています。ただでさえカルデアが他の自分によって壊滅したのに、更に藤丸立香が自分のせいで壊れて、これから歩んでいく先の人生を危惧しております。

藤丸立香は何度も言うように普通の人間です。人が死ぬのを見るのは嫌だし、殺すのも嫌。なるべく見捨てたくもないし、さりとて見捨てる時はその決断を下せる。そして何より大切な人を支えたい。
こんな人間だと私は思っております。この感情がごちゃ混ぜになって、躊躇いを生んでいます。

アナスタシアの意思を尊重したいけど、なるべくなら殺したくはない。だけどそれはアナスタシアを心から支える人がいなくなるのでは?と葛藤しています。恐らく立香が個人の正義の味方化したら前回言った通りになると思いますけどね。

さて、恐らく次で最終回になると思います。結末がどうなるかはご期待ください!ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

質問等あれば、どうぞジャンジャンしてもらって構いません。誤字脱字報告もしてくだされば、すぐに修正させていただきます!

では次回もお楽しみに!


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