日本国召喚 マイカルの日常 (KAIZU)
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マイカル工業新聞社
日本との国交が開設されてから2ヶ月がたった。ムー東部のマイカルで最大の新聞マイカル工業新聞は、日々爆発的に増え続ける情報にてんてこ舞いになっていた。
「これが昨日特別便で届いた、日本のホンダース製の原付です」
「おぉ...」
「これが日本の...」
マイカルでは、現在巨大な事業がいくつも動いている。それは港湾設備に始まり道路整備、製油所建設、果ては区画整理まで、大小100を越える事業が進みつつあるのだ。その開発は地元だけではなく、八菱地所や五井不動産といった巨大企業から、果ては中小の不動産企業まで、多くの日本企業も開発を行っている。
このマイカル工業新聞は、日々増えていく新聞の需要に対応するため、遠方への配達時間の短縮を模索していた。そこで目をつけられたのが、車やバイク、ビジネスジェットまで開発・製造を行っているホンダースの原付だった。
「これはどの程度の性能なんだ?」
「はい、このベンリーは、最大30キログラムまで荷物を積むことができ、一リットルの燃料で53キロメートルも走行することができるそうです。まあ、あくまで舗装された道ですが···」
「おぉ...!」
「我が国の自動車よりも燃費がよいとは!」
「30キロも運べるならずいぶん楽になりますな!」
さて、ここである問題が発生した。ムーでは、自動車の免許制度がない。そもそも自動車の絶対数が少なすぎる上に、自動車は財閥の幹部クラスや軍の高級幹部の長距離移動程度にしか用いられていないためだ。自動車運転に関する学習はムーではできないのである。
もちろんそんなことはやらなくても良いのだが、やはり日本と経済交流が活発になっていく上で、やらない訳にもいかないと考えた。そこでマイカル工業新聞は、
「免許所はひとまず我々マイカル工業新聞が設立して、教官は日本から派遣してもらえませんか?」
とホンダース側に依頼をしたところ、ホンダースはこれを快諾し、グループ企業のレインボースクールから教官を派遣することとなった。
その後3ヶ月で6人の初めての卒業生を送り出したマイカル自動車学校は、後に一般からの入学を解禁して、ムー初の自動車学校となり、全国から自動車の運転免許を取得しようとする市民で溢れたという。ただし、本格的な普通自動車の免許を取得できるようになったのは、三年後のことであった。
さて、6人のうち、原付に乗るのは3人ごとでローテーションすることにし、早速原付での配達を開始した。
「最近マイカル工業新聞って、とても配達早いですね」
「そうですね。朝起きて家の周りの掃除でも、と思ったらもう入ってるんですもの」
「私の家はお昼くらいにやっと届くのだけれど、正直お昼くらいに届いても困るのよね」
「やっぱり早さはマイカル工業新聞が一番ね」
「そうね。うちもマイカル工業新聞にしようかしら」
早朝の配達は、次第に投資家や企業の幹部、主婦の心をつかんでいき、他の新聞からマイカル工業新聞に移行するところが出てきたのだ。
その後「ベンリー」は、マイカル工業新聞の予想通り、遠方への配達時間の短縮を成し遂げ、また原付を利用して新鮮な情報を最も早く伝えてくれる新聞社という評価が固まり、ついにはマイカル工業新聞を東部でもトップの新聞社に押し上げた。書籍、配達事業、ついにはテレビ事業へと進出したマイカル工業新聞の社長は、
「我々は、あの3台のベンリーによって、大きな成長を遂げることができました。我々は当時の役員がたのように新技術を積極的に取り入れ、お客様に迅速かつ正確に情報を伝えていきたいと考えています」
という発言をしている。
この3台の「ベンリー」は、今ではマイカル工業新聞社記念博物館に展示されているという。
今日もマイカルでは、「ベンリー」の後継が新聞を住民へと配達しているのだ。
さて、どうでしたか?こんなのが読みたいという場合は、感想等に書いてもらえるとありがたいです!
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ギーベル金属加工株式会社
取り敢えず書き上げたそばから投稿しますので、下手をするとあと二つくらいは投稿するかもしれません!
マイカルの一角に、マイカルで有名な金属加工会社があった。その技術はムーでもトップクラスで、かのラ・カサミ級戦艦にも多数の部品が使用されるほどであった。しかし、とあることで悩んでいた。
「ギーベル金属加工さん、大変申し訳ないが、今回で取引を終わらせてもらうよ」
「そ、そんな!なぜですか、我が社は納期も品質も全く問題を出していないはずです!」
「日本の製品のほうが頑丈だし、いろいろな種類もあるんだ。値段はちょっと高めだが、耐久性も十分すぎるほどにある。長期的に見て、こちらのほうが費用対効果が良いのですよ」
そう、ギーベル社は日本の企業の進出によって、少しずつ契約が減っていたのだ。もちろん、ギーベル社も新商品を出したり、価格を下げたりと、様々な手を打っているが、限界が迫りつつあった。
「くそっ!いったいどうすりゃいいんだ!なんで日本なんかが来たんだよ!」
コンコン
「失礼します」
「なんだ?今日はもう来客はなかったはずだが?」
「それが、日本の企業の方が来ておりまして」
「日本の企業だぁ?ふざけるな!すぐ追い返せ!」
「わ、わかりました!」
次の日、再び日本人がやって来た。もちろん追い返したが、何故追い返したのに来たのか気になり聞いてこさせると、「日本の企業によると、金属工業でトップクラスの我々に、新たな道具のことについて提案しに来たそうです」ということだった。
道具、道具ねぇ。正直今の道具で満足しているし、問題もない。が、どんな道具なのかは気になるな。
そしてまた次の日。また日本のやつらが来た。今度は取り敢えず話を聞くために来客室に通した。
「で、なんで来たんだ?俺は何度か追い返したが。それでもこっちに聞いてもらいたい話があるってか?」
日本人はひとつ深呼吸をすると、こちらを見た。
「はい、そうです。今回はどうしても聞いて頂きたい提案があり、参らせて頂きました」
「...わかった。話を聞こうじゃないか」
日本人から提案されたのは、金属加工などに必要な機材の部品を一部ギーベル社に製造してもらえないか、ということだった。
「なるほど、現地生産分の部品が追い付かない、と言うことだな?」
「はい、なにぶん日本からは遠いですし、機械を組み立てて運んでも歪んだりするといけませんし、ならば現地で製造の一部と組み立てをやってしまおう、ということになりまして」
一応筋は通ってるし、合理的な判断だろう。日本とムーは短時間で行き来出来るような距離じゃない。
「何をつくる機械なんだ?」
「ネジやボルト、ですね。他にも数種類の...」
「ネジやボルトだと!こっちの会社の製品とかぶるじゃねえか!なんでそんなのの手伝いをしなきゃならねえんだ!」
「待ってください。今回の私どもからの提案はまだ続きがあります」
「続きだと?」
「我々から、製作機械をいくつか、価格を押さえてお譲りいたします」
「いくつか?他にもなんかあるのか?」
「旋盤や、フライス盤、歯切り盤などです」
フライス盤?なんだそりゃ。聞いたことねえな。だが興味がある。
「わかった。そちらの提案に乗る。勿論使い方くらいは教えてくれるんだよな?あと、こちらからも提案がある」
「なんでしょう?」
「その機械の組み立てもうちに任せないか」
なんで自分がこんなことをいったのか、自分でも不思議だった。だが、これは会社を大きくするチャンスだと、商売人としての本能が告げていた。
日本人たちは、一瞬ぽかんとしたあと、感情の読めない顔でこういった。
「持ち帰って検討させていただきます」
数ヵ月後。ギーベル金属加工では、ムーで初めての日本製の金属加工機械が動き出した。電気は太陽光発電と、風力発電でなんとか賄っていた。組み立ても開始して、工場は毎日てんてこ舞いであった。
ギーベル金属加工が日本製の金属加工機械を使いだしたという噂は、瞬く間に広がり、ムーの企業だけでなくムーに進出した日本企業から以前の十倍以上の注文が殺到、設備を拡張して対応したのであった。
そして...
おや、はじめまして。君が私たちの会社の歴史を調べているという大学生だね?私がギーベル重工第20代社長のラタント・ギーベルだ。何?それからどうなったのかって?いきなりだな...。なら、ゆっくり話してあげようじゃないか。良いワインが手にはいったんだ。
日本が来たことで、うまくいった会社もうまくいかなかった会社もあるはずです。
マイカル工業新聞はうまくいきました。
ギーベル金属加工株式会社は、セーフでした。
さて、では次に書くのは...?
ギーベルとかの名前は現実にあるものの順番を変えたりしてます。たぶん社会系の科目好きな人はわかるんじゃないでしょうか?
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ウォルマ商店
私、ウォルマ・レグートが運営する商店は、地元に根差した商品を取り扱う、そこそこ大きな店だ。立地も最高。しかし、最近日本の「E-ON」とか言う店が一キロほど離れたところに店を出したんだ。広い店舗を確保できないから、取り敢えず古い工場を買い取って改装した店だ。
「ウォルマさん、小麦をくれないか」
「はい、わかりました」
しかし、住民たちはまだ自分の店によく足を運んでくれている。
しかしある日のことだ。
「あれ?婆さんそれ、どこで買ったんだ?」
「ん?ああこれかい?E-ONよ、今日だけ安いみたいなの」
婆さんの押す手押し車には、溢れんばかりの生活雑貨や食料が積まれていた。
その日から、客足が減っていったんだ。
翌月には売り上げは2割減り、翌々月にはさらに3割売り上げが減ったのだ。しかし、私は商売を続けた。まだ私の店に来てくれる人はたくさんいたからだ。
しかし現実は残酷だった。私の友人のやっていた店が、日本の企業の傘下に入ったというのだ。友人の店は遠方で生産している品を取り扱っていた。
そこからひとつ、またひとつと個人の商店が日本の企業の傘下に入っていった。
半年がたち、私の店も経営がずいぶん傾いた。すでに大きな倉庫3つのうち2つには商品は入っていない。あと一月もすれば閉店待ったなしだ。
そんなときだ。日本の企業が私に接触してきたのは。
「はじめまして、ウォルマ・レグートさん。私、日本企業のE-ONのムー営業部の仮営業部長、尊田誠ともうします。本日はお願いがあり参らせて頂きました」
「お願いって、あんたらがやるのは買収だろ?今まで知り合いの店を潰してきたのってあんたたちだよな?」
日本企業は圧倒的な技術力と輸送力で、ムー企業からシェアを奪っている。特にここマイカルでは、ムー企業の買収が盛んに行われている。
「いえ、私どもが今回参りましたのは、買収の話ではなく、ウォルマさんをE-ON のムー営業部長へとスカウトしに来たのです」
「私をスカウト、ですか?何故私を?」
今じゃ客もほとんど来ない商店の店主だぞ?
「いえ、実は我々のグループに入った方々からウォルマさんの話を聞きまして」
「あいつらから話...?」
「はい、この周辺一帯の小さな商店は、ウォルマさんの店から独立したり、支援をもらったりしているものがほとんどだと聞きました」
「確かに私が世話をしていたものが多いが、それで?」
「何故、そんなことをなさっていたのですか?ウォルマさんにとっては損でしかないでしょう?」
損しかない、か。日本の連中はわかっていないな、地元に根ざした店の心構えを。
「例えば、そちらの故郷に、店が全然なかったとする。ずっとあるいた先に一軒だけポツンとある。そんな状況をどう思う?」
「それは不便ですね。一軒しかないと少ない種類のものしか変えませんし」
「私はそれが嫌だったのだ。遠くに大きな商店ではなく、すぐ近くで小さくても良いから商店を。そうすればお客の負担も減るし、我々だって一定の顧客を確保できる。地元に根ざした店を。それが私の信条だ」
私の自論を聞くと、日本人は少しうつむいた。
「ウォルマさん、あなたのお話、非常に感動しました」
「なんだ?意味がわからないが?」
「いえ、目が覚めましたよ。顧客のことをまず考える。もっとも大事なことであるはずなのに...」
そういうと、足早に立ち去っていった。
さて、その後だが、実は一度店を畳んだ。さすがに商売を続けていくのは難しかったし、時代の流れはどうしようもないからだ。
しかしその3か月後、日本の大手商社が私に接触してきたのだ。日本の品を販売しないかと言うことだった。その代わり、私の持つ倉庫を2つ貸して欲しいと言うことであった。
私にとってもそれは渡りに船であり、新たな出発点となった。
「では、本日より、ウォルマショップ、エジェイ店を開店いたします」
パチパチパチパチ......
ムーの企業、ウォルマショップ。世界中に支店を持つムーでも随一の巨大企業は、日本のE-ONなどに匹敵する企業へと成長したのであった。地元に根ざした品揃えと対応は、全世界で高い評価を得ているのだった。
なんか倒産するのを書くのは難しいですね。結局ウォルマさんもセーフです。
あと文章の形が似てきてますね。ここらで一捻り欲しいですね...シリーズものとか。
皆さんはどうですか?
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ガダル航空機①
それではどうぞ!
9/16追記
文章内での会社名は略称で、
ANA→All Nippon Airlines
全日空→全日本航空
です。決して現実に存在する会社ではありませんので、ご注意ください。
2019/1/20追記
ANAと全日空が登録商標らしいので、変更しました。
ガダル航空機は、マイカルに研究拠点を新たに構えた企業のひとつである。そんな彼らは、あるものを手に入れたいと考えていた。
ムー アイナンク空港
「これから、日本の飛行機に搭乗し、南部のシマカゴへと飛行する。今回はムーと日本の技術交流のためわざわざ日本本土から来てもらっている。しっかりと見学するように!」
ムーと日本との間に国交が締結されたあと、ムーの要請により日本-ムー間の技術交流が開始された。しかし、ムーの技術者たちが自信満々に用意した品々は、ほとんどが日本では骨董品クラスのものであり、珍しがられることはあったものの、それだけであった。
一方、日本が用意したものは、今現在のムーでは製造しようの無いものばかりであった(それも少し古いタイプの製品ばかりである。ムーは気付かない)。
このガダル航空機はそのなかでもやはり飛行機に着目した。日本の持ち込んだ飛行機は、B-767-300ER。ALNAのものである。
「なんという大きさなんだ!」
「あんなに巨大なエンジン見たこと無いぞ」
「機体表面に鋲うちのあとがない。いったいどうやって製造しているんだ?」
日本の空港のようなボーディングブリッジがないため、仮設の階段を使って機内へとはいる。
「おおっ!なんという広さだ!」
「座席も我々のものより格段に良い」
「内装にかかる金額だけで我々の航空機がつくれてしまえそうだな」
ガダル航空機の社員がムーのものとの違いに驚いていると、
「では、皆さん自由に席へ座ってください。まもなく出発しますよ」
そう言われ、各々が好きな席へ座った。
「皆様こんにちは。本日はスターエアラインズメンバー全日航をご利用頂きありがとうございます。この飛行機は、シマカゴ行き全日航特別便でございます。離陸後、シマカゴまでの飛行時間は3時間50分を予定しております。ただいまの到着地の気候は、晴れ。気温23℃でございます。
当便の機長は橋本。副操縦士は田上。チーフパーサーは川野でございます。客室には四名の乗務員が乗務しています。ご用の際はご遠慮なくお声をおかけくださいませ。
ただいまより、非常用設備についてーーーーー」
「当便はまもなく出発致します。
シートベルトを腰の低い位置でしっかりとおしめください。本日はスターエアラインズメンバー 全日航をご利用頂きありがとうございました」
ゴォーーーーーー
今回はトーイングカーも用意できていないため、駐機スペースから航空機自身で滑走路へと向かう。
「すごい音ですね」
「これがジェットエンジンですか」
飛行機が一度停止する。
「まもなく、離陸します。シートベルトをもう一度お確かめください」
「フム、何度も確認するのだな」
「まあムーの航空機は客でも色々準備があるから、楽で良いな」
少しして、エンジン音が更に大きくなった。
ゴオオオーーーーーー!
体が椅子に押し付けられる。振動も大きくなり、緊張が高まる。そして、
「おおっ!浮いたぞ!なんという綺麗な離陸だ!」
「離陸の際の揺れもあまり無いですな」
「もうこんなに上昇したのか!」
「離陸速度も相当のものだ!」
数分後、アイナンク市街上空を周回して南へ進路をとった。上空の周回はムーの航空機でもよく行われるため、驚きはなかった。
『ポーン』
「ム?なんの音だ?」
「皆さんシートベルトをはずしていただいて結構です。では少し早いですが、昼食をとりましょうか」
日本側の担当がそう言うと、ガダル航空機の社員たちは少し顔をしかめる。航空機の中ではまともな食事は出てこないし、トイレなんてもってのほかであったため、あまり食事はとらないのが普通であったためだ。
少し時間がたち、乗務員が昼食を運んできた。
一応シリーズものですね。ですが、連続でガダル航空機について投稿はしません。
ガダル
別のやつ
ガダル
また別のやつ
みたいな感じでやります。
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マイカル市民のアルバイト①
そして誤字報告ありがとうございます!ハイペースでかいているので、どうしても見落としてしまいます。誤字があったらドンドン報告を頂けるとありがたいです!
マイカルに日本企業が進出していくにつれて、労働力の不足が表面化してきていた。日本は今空前の経済成長の真っ只中にあり、実質経済成長率は5.44を記録し、いまだに延び続けていた。
そのためわざわざ快適な日本からムーに出張に行きたいという人はおらず、幹部級はまだしも、普通の店員などが圧倒的に不足していた。ムーでも日本の商品は売れに売れていたためである。しかもレジスターなどは電気が来ていないため稼動しておらず、計算機をいくつも用意して対応している始末であった。
とあるコンビニチェーン店の営業部会
「では、今期の売り上げについて報告をお願いします」
「...マイカル駅前店は連日ほとんどの商品が品切です。ついでに言えば店員の体力も連日売り切れです」
「...マイカル北港店も結構な数売れています。店員の体力については駅前とそう変わりませんが」
その後、現在展開している店舗すべてで、店員の体力が限界に近いという結果になっていることがわかった。
「営業部長、正直に言いますとこれ以上限界です。一時間辺りの賃金を1600円くらいにしてますけど、そもそも体力が持ちません」
「うーむ、かといってこれ以上日本から来てくれないだろうしな。商品はコンテナ船で一気に運べるから問題ないが」
会議の全員がどうしたものかと頭を悩ませていると、若手の店主から声が上がった。
「あのー...アルバイトを雇うのはどうでしょう?」
「アルバイト?」
店長たちの視線が集まる。
「ムーの人はそんなに忙しくなさそうですし、アルバイトとして雇えば交代制にできますし、口コミなどで更に消費者の増加が見込めると思うのです」
「「「「それだっ!!!」」」」
そしてムー側に許可をとって、アルバイトの募集が始まったのであった。
2週間後、マイカル西仕事斡旋所
その日も、斡旋所は人でいっぱいだった。副業として、何かしらの仕事をする人たちがほとんどだ。
「計算ができます。でも夜は難しいので、昼に短時間の仕事はありますか?」
「わかりました、少々お待ちください」
受付はそう言っていくつかの紙の束を取り出し、開く。
「テュファさん、こちらなどはいかがでしょう?日本の会社のものです。時間はある程度自由にできますし、夜は入らなくてもいいそうです」
「日本の会社、ですかどういった内容でしょう?」
「商品の陳列や代金の計算などですね。時給は一番いいですよ」
その後いくつか聞いたあと、テュファは日本のコンビニに行ってみることにした。
アルバイトに行ったテュファは日本の労働環境を目の当たりにします。いろんな意味で。
まあ次の話はガダル航空機なので、その次の回か更に後かな...。
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ガダル航空機②
予定通りガダル航空機の回です!
運ばれてきた昼食を見たムー人たちの感想は「航空機のなかでこんなものが食べられるとは」というものだった。
まず目を引くのはその豪華さだ。ムーの機内食も機内に調理機械があるためそこそこ豪華である。しかし、まるで今その場で調理したようなそれが1人3つ、運ばれてきた。調味料のようなものや、飲み物と思われるものもある。
「これはまた素晴らしいな。まるでつくりたてのようだ」
「まさか大がかりな調理設備が備えてあるのか?」
「食器は金属だが、いったいなんの金属なんだ?我が国使われる銀食器ではないし...」
さっそく昼食を食べるムーの人たち。
「味も良いな、美味だ!」
「これは鶏肉か?しっかり味付けもしてあるし、中までちゃんと火が通っている」
ムー人はムーの飛行機の中では味わえないレベルの食事に舌鼓をうったのだった。
「ふぅ、こんなに美味しいものだとは思わなかったな」
「私は特に生ハムがおいしかったですね」
「デザートのシャーベットというのも冷たくて良かったです」
食後のデザートも食べ終えて、一休み。アイナンク空港から飛び立ってまだそんなに時間はたっていないので、ゆっくりと雑談していた。
「そう言えば、今どこを飛んでいるんだ?」
「食事に夢中でしたな」
そう言って各々が窓の外を見てみる。
「これは...」
「なんと美しい。やはりこの星は丸かったのだな」
「薄い雲がずっと遠くにありますね」
窓から見える景色は、天気が良い日を選んだこともあって素晴らしいものであった。ほとんど雲はなく、上空に薄い筋のような雲がある。下にはムー大陸が広がり、遥か彼方に丸い地平線が見えている。
「ムーの航空機ではこの高さまでは上がりませんな」
「そもそもエンジンが持たないな」
そうしてムーの人たちが外を眺めて自国の航空機と比べていると、
「皆さま、この飛行機について今から30分ほどご説明いたします。こちらの近くの席に座っていただけますか」
「この飛行機の中で説明をやるのですか?」
「ええ、そうです」
「この中でやるのか」
「黒板のようなものもないようだが」
いぶかしく思いつつも、とりあえず席につく。
「では、これよりご説明させていただきます」
日本の担当は黒い小さな箱を取り出すと、背後の壁に埋め込まれているガラスのようなものに向かって腕を伸ばした。
「「「!」」」
一瞬で光が点り、ムーの言語で書かれた『ジェット旅客機』というタイトルが映し出される。
「これは一体!?」
「映写機の一種なのか?しかしフィルムなどは見当たらないな!」
「しかも綺麗な絵ですね」
「原理的には魔信が近いのだろうか?」
魔信に似ている部分はあるものの、大きさと精彩さは明らかにこちらが上であった。
「日本の担当者殿、この装置は一体なんですか?魔信に近いようだが...」
「あぁ、これはいわゆるテレビの一種ですね。色々なものを映し出せます。今回はこれを使って説明を行いますので」
そう言って、担当者は冊子を配り始めたのだった。
結局未だに説明に入ってないという。
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閑話 モストバーガー
モストバーガーは、日本発祥のハンバーガーチェーン店である。日本国内でのシェアはマクトナルドについで第2位である。
モストバーガー取締役会
「新世界の新たな顧客をなかなか獲得できんな」
「ウム、マクトナルドはまさにファストフード、早さと手軽さでシェアを伸ばしていますからな」
「ならばこちらもファストフードに転換しては」
「いや、それではつくりたての美味しさを提供できない」
数ヵ月後。マイカル、飲食店街
ムーと日本が国交を開設して間もない頃、モストバーガーの幹部二人がムーにいた。
「第二文明圏の食事はヨーロッパのようなメニューですね」
「ああ、しかしゆっくりした食事だな」
「イタリアなんかはゆっくりだったらしいですよ。ということは昼休みも長いのかもしれませんね」
モストバーガーの幹部の二人は、ムーの食生活はどんなものかを探るために飛行機をいくつも乗り継いでムーに来ていた。ひとえにモストバーガーをひろめるためである。
相手の先をいく。それはビジネスで勝つために必要なことである。
「フム、やはり一番の繁華街は駅前から港へ続く道か...」
「会社が集まるのはそれより一本道を入ったところでしょうね。で、帰りに飲んで鉄道で帰るといったところでしょうか?」
「いや、鉄道は料金が高いだろう。たぶん一番会社が多いのは港の方だろう」
「なんでですか?」
「この時代くらいだと電車通勤ってわけにはいかないからな。会社はどちらかと言えば好き勝手に建ってるだろうな。だが港は問屋とか小売り業者とかが絶対に集まる」
「なるほど、そういうことですか」
そう言って彼らが進む先にあるのはマイカルの西、ごく普通の人々の多いところである。
「先輩、どこにいくんです?こっちはそんなにお客が集まりそうなところはありませんよ?会社とかもなさそうですし」
「一見なにもなさそうな場所に商機を見いだせ。一番重要なのは普通の姿を見ることだ」
「まあそうですが」
砂利道を革靴で歩く。何事も実地調査が大事だ。
「さてついたぞ。この店だ」
「飲食店ですか?」
「ああ、店主は顔が広いんだそうだ」
扉を押して中にはいる。
カラン
「いらっしゃい。席は好きなとこ座ってくれ」
「ファルトンの親父、酒くれ!」
「俺たちは串焼きで」
端の方の空いている席に座ると、まず、店内を見渡す。この店は、昼から客がそこそこ入っているし、店内もあるていどの広さがある。おそらく、この辺りでも大きな店なのだろう。
テーブルは日本のものには劣るが、しっかりとした机だ。椅子も同様だ。
「あんたたち、何にするの?」
エプロンをつけた女性が出てきた。おそらくこの店の看板娘というやつだろう。
「ああ、店主のオススメをいくつか頼むよ。今日港についたばかりでね。ついでに酒を頼む。」
「わかったわ。あんたは?」
「同じでお願いします」
「はーい。お父さん!オススメ2つ!」
「ハイよー」
大きな声で注文を伝えると、厨房の所においてあった酒を別のテーブルに持っていく。
「元気な娘ですね...」
「まあ飲食店の娘はあんな感じになりそうなもんだが?」
「いやそれはそうですけど」
「ほれ、女ばかり見てないで店の内装や雰囲気をよく見ろ!」
「いや見てないですよ」
20分ほどたち、さっきの娘が店主のオススメ料理を運んできた。
「ハイ、今朝とれた鮭の香草焼きと山菜の炒め物。後お酒。ごゆっくりどうぞ」
2人はナイフとフォークを手にとって、料理に手をつけた。
これからは夜投稿になるかも知れないです。だんだん忙しくなってきたので。
ムーに展開する上での日本の苦闘みたいなのも書こうと思いまして。まああくまで閑話ですが。
ちなみにアルバイトの話も日本のやつではないかという感じになるかもしれませんが、あちらはあくまでムーの人がアルバイトする話です。こっちは日本が頑張る話ですね。
9/18追記
ちょっと寝ぼけて書いていたので変なところがありましたので直しました。
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ガダル航空機③
配られた冊子を開いて中を見てみると、この航空機についての簡単な解説がかかれている。それも文字だけではなく、綺麗な色のついた絵までついているのだ。
「この冊子はずいぶん綺麗な装丁ですな」
「この印刷技術も興味深いですよ。説明書やパンフレットに使えば分かりやすいですし」
「では、説明をさせていただきます。この飛行機、ボーインクB-767-300ERは、初飛行が今から30年前でーーー」
その説明の内容は、ムーの技術者たちを驚嘆させ、また渇望させた。こんな航空機が作りたい。また運用し自分達で空を飛ばしてみたい、と。
「それでは、以上で説明を終わりますので、引き続き空の旅をお楽しみください」
ムー南部 シマカゴ飛行場
「...すごかったですなぁ」
「...そうですねぇ」
空港の建物へと向かいつつ、素晴らしい空の旅を思いかえすムーの人たち。
彼らは技術屋として、また運用者として、日本の航空機の素晴らしさを体感したのだった。
数日後。ガダル航空機の面々は本社に戻っていた。
「では、先日の日本の飛行機の視察から得られた考察および性能などを元に、今後我々がいかに動くかを定める。常識とか前例がないなんてのはいいから、忌憚のない意見を聞かせてほしい」
ガダル航空機社長、シューメット・ガダルは周りを見渡す。会議に出ているのは日本の航空機に乗った工作部部長、設計部部長、内装部部長、材料部部長に加え、経理部、監理部、そして取締役などである。
「では、工作部より、報告いたします。まず、日本の飛行機の製造技術は我が国よりも遥かに進んでいると、推測されます」
ざわめきが起こる。世界第二位、そして科学側でトップであるムーを越す技術。今までそんなものは存在しなかった。
「更に、鋲の後がありませんでした。機体表面は非常に滑らかです。そしてあのテレビは理論すらわからない。...あ、後、主翼の端が斜め上に向いて曲がっていましたね。なんのためかよくわかりませんでしたが」
その後いくつか分かったことを報告して、工作部部長は席に座った。
「では次は設計部から報告いたします。設計については、図面が入手できていないので、細かなことは断言できませんが、我々より遥かに進んだ理論によって設計されているのは間違いありません。配線などは機内にないようですからおそらく機体と内装の間。そして与圧がなされています。窓ガラスは特別なガラスなのでしょう。機体は円ではなく楕円ですね」
設計部部長はここまで一息に言うと、一旦報告書から顔をあげた。
「我々としては、技術導入のため、数機程度入手できれば、航空分野のみならずいろいろな産業へと応用できそうなものが多数あると感じました」
そこで社長がスッと手をあげた。
「いろいろな産業と言ったが、具体的には?」
「まず、外装の金属加工技術。船舶や自動車に応用できると思います。ガラスもそうです。更に車輪等は巨大なおそらくゴム製です。また観測機器は学術分野に、内装は宿泊施設や鉄道、一般家庭にも応用できると思います」
「しかし問題があります」
内装部部長が声をあげる。
「我々は現在あのレベルのものを作る技術がありません。あの客席の模様を作るとなると。どれだけの投資が必要になるか。あの機内は温度が快適に保たれていました。明かりもしっかりしたものがありました。内装だけでムーの飛行機を作れそうですよ!」
「しかもほとんどの材料がムーにはないものでしたな。おそらく機体もムーで入手できる金属の数倍の強度がありそうですし、内装などは樹脂のようなものが多用されています」
材料部部長が腕を組み、ため息をつく。
ガダル航空機本社での報告会は結局、夜遅くまで続き、翌日更に今後の事業計画を見直すこととなった。
ガダル航空機の話ですが、予想以上に資料集めが難航しています。これからは定期的にはできない可能性が高いです。本当に申し訳ないです。
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ライナーク建設
ムーの建築技術は、第二文明圏では間違いなくトップであり、また神聖ミリシアル帝国並みと言われていた。
日本と国交を樹立してからしばらくして、日本の企業がマイカルにムーでの拠点を設けだした。単純に東部で最も発達した都市であったからである。
しかし、そこで問題になったのは電力供給であった。日本製品が出回ることで、電気を使う機械が増えたのだ。今のままでは将来的にも電力に不安があるとムー政府が判断。日本側に発電所建設を依頼した。ただし、営業運転開始までは少なくとも4年の歳月が必要と試算された。
それまでは、天候により安定はしないもののある程度の供給が満たせる五菱重工製の大型風力発電を使用する。一機の発電設備(直径95m、2400キロワット級)で1日600-800世帯の電力が賄える。それを5機ずつ4ヶ所設置し、それと同時に変電所の建設、また日本の企業までの電線の整備を行う。
しかし新世界技術流出防止法(以下、新世界技防法)により、発電所周辺は日本の租借地とし、毎年賃貸料を支払うという契約になった。ムーは自国民用の電線を整備することとなった。
マイカル東部海岸地域
ここでは今、ムー初となる20万キロワット級の石炭火力発電所が建設されていた。現在工事は発電所本館の基礎杭を打設する段階であり、まだ10%程度しか進んでいなかった。
建築資材は基本的に日本から持ち込み、生コンクリートや施設周囲の柵はムーで製造していた。
しかし日本のものと違い、ムーの製造した製品は品質が悪かったり、寸法が10cm近く異なっているなど、日本側としては容認できないものばかりであった。
「日本の機械はすごいな。あんな巨大な建設用の機械なんて見たことない」
「建材もでかいな。一体何メートルあるんだろ?」
ライナーク建設は、古くから貴族の館や、市庁舎を建設してきたマイカルでもトップクラスの老舗だ。今まで発展してきたのは、ひとえに新たな技術開発のたわものであった。
しかし、日本が現れた。日本は圧倒的な資本力と技術力で巨大な建築物をあっという間に完成させている。
今ライナーク建設は、火力発電所の付近に鉄道の駅を建設していた。石炭の運搬用だ。それにあわせて、日本企業のオフィスビルが複数建設されている。しかし新しいビルではムー企業は受注できなかった。日本の企業からしてみれば、技術力の劣るムーの企業に依頼する理由がなかった。
ただし、ムー政府は、日本企業に研修生受け入れを義務付けた。日本企業がただ進出してくるだけでは、ムー企業が苦しくなるだけだからだ。
「おいそこ!余計なこと言ってないで手を動かせ!」
「は、はい!」
「すみません!」
日本の建設会社は作業が早い上に丁寧に作る。ライナーク建設の研修生はひとまずコンクリートの作業を行っていた。ムーも一応コンクリートはあるので、それくらいは問題がないと判断されたからだ。もちろん日本人の監督のもと作業を行っている。
「川内さん、これで問題ないですか?」
「ああ、作業もスムーズだった。まあ口は動かしてもいいから手を止めないようにな?」
「「す、すいません...」」
「じゃあ昼飯食べてきな。そろそろ昼休みだ」
現在このビル周辺は人が多く集まっているため、仮仮設の店舗や屋台が多い。中にはプレハブで店舗をたてた企業もある。工事関係者向けのプレハブのホテルや宿舎(短期間で建てられる)も多く建てられている。
「さてオーラン、今日はどうする?」
「んー、俺はなんでもいいや。サーンズは?」
「そうだな。sobaなんてどうだ?日本の名物だそうだ」
名代宇治そばマイカル東店
日本でも有名なそばチェーン店に入った二人は、メニューを見てすぐに選んだ。
「では僕は天玉そばで」
「私は肉宇治そばで」
「かしこまりました。天玉そば1、肉宇治そば1で注文よろしかったでしょうか」
「「大丈夫です」」
しばらくして、湯気をたてながらそばが運ばれてきた。
「お待たせしました、天玉そばのお客様」
「こちらが肉宇治そばになります。ごゆっくりどうぞ」
日本のチェーン店なので、箸を使うが、二人はこの現場に来て二ヶ月たつのですでに慣れていた。
七味をかけて、箸をつける。
ズルズルズル...
気づくと、全部食べてしまっていた。
日本の食事は美味しいものが多いが、そばもまた素晴らしい。ピリッと辛い七味とそばの絶妙なバランスが「うまさ」を成り立たせていた。
「いやー、うまかったなぁ」
「ああ、良い味だった。卵を最後に食べるとちょっと温かくなってな」
「今度はそっち食べてみようかな」
時間はまだ残っているが、二人は現場に戻る。わざわざ時間を無駄にする必要はない。早い人はもう作業を再開している。それを見学して、頭に叩き込む。二人はムーの建設技術発展のため、遊んでいる暇などないのだから。
日本企業で研修に励むムーの人。
原作ではあまり語られていないですが、絶対ムー側は法整備しますよね。関税かけたり、技術始動の要請だったり。そうじゃないと本当にムー企業が倒産しまくりですよ。幸いなのはムーは敵対的でないところですね。
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マイカル市民のアルバイト②
テュファは、一般的なムー人である。彼女は今、アルバイトのためマイカル港近くにできた日本のコンビニエンスストアに向かっていた。
「マイカル港の辺りって新しいお店の入る隙間もないくらい競争が激しいって聞いたことあるけど」
マイカル港は東部でもトップクラスの貨物取り扱い量を誇る。そのため会社も多い。さらにその社員たちの需要を満たすため、小売店も多い。
「えーっと、教えてもらった場所はこの辺りだと思うのけど...あれかしら」
駅から港へつづく最も大きな通りのさらに人通りが多いところだ。
その一角に見るからにムーっぽくない店舗があった。原色でデカデカとFamily Martsと書かれている。入り口脇にはのぼりがたっており『ただいまおにぎり2割引』とか、『新商品入荷!』と書かれている。そしてすごい量の人が集まっている。
「なんなのこのお店。日本ではこれが普通なのかしら。でもこれは美味しそうね」
そうして日本の店を眺めていると、看板の色に似たエプロンをつけた黒髪の男性が店の裏から現れた。
「あー、全然客減らねぇ...計算機で一つずつ計算って無理あるだろ」
どうやら店員のようだ。
「あのー、ここって日本のお店ですよね?」
「え?ああ、そうですよ。Family Martsマイカル中央通り店です。お客さんですか?」
どうやら日本の店員は、私を買い物に来たのだと勘違いしてるらしい。
「いえ、私は斡旋所から来たのですけど...」
「君を待っていた!」
「えっ」
いきなり手を握られ、お店につれていかれる。いったいなんなの!?
「いやー、正直に言うとそろそろ限界でね。見たでしょあの人の数」
「え、えぇまぁ」
「君にやってもらいたいことは色々とあるんだけど、まずは商品を並べるのをやってほしいんだ」
男性は傍らの机の引き出しから透明な柔らかいガラスのようなものに入った写真つきの紙(ラミネートされた商品一覧)を私に渡す。
「これは?」
「これはこのお店の中にある商品の一覧だよ。すべての商品の場所と、どんな商品なのかが書かれている」
私は驚いてしまった。ちょっと中を見てみたけれど、種類が普通じゃない。食べ物だけでなく紙や鉛筆、本、服まで販売している。いくつものお店を合わせたような商品の種類だ。
「こんなにたくさんの種類を売っているんですか?」
「そうなんだ。だから商品を並べるのが大変なんだ」
じゃあお手本を見せるから、付いてきて。そういわれてドアを開けた先で見たのはーーーー
『オイ!それは俺が先に目ェつけたんだぞ返しやがれ!』
『ふざけんなこのヤロー!先に取ったもん勝ちだろ!』
ーーー商品の奪い合いが行われている様子だった。
「あのー、いつもこんな状況なんですか?」
「いや、これでも一度につき入店人数20人、1人が購入可能な商品数30個にしてるんだよね。まぁこの制服を着てればすぐに道を開けてくれるよ」
そういいながら奥の商品棚に向かっていく店員さんの様子を見て、私はこの仕事をやっていけるのかなと思うのであった。
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レトイ家具店①
昔は、家具は高い買い物であることが多かった。
マイカル郊外に、平屋の大きな店舗が完成した。日本のインテリア小売業大手のニトルの店舗である。
圧倒的な家具の種類と品質管理、また配送まで行って貰えるとなれば、日本の家具にしない手はない。対立していたムー、特にマイカルの家具屋はしだいに顧客が減っていき、倒産するものもあった。
そんな中、動きを見せずに手堅く家具をつくり続ける家具屋があった。レトイ家具店である。創業から150年近くになる老舗の家具屋であった。もともと高級家具として有名であり、廉価な家具屋とは考え方が少し違った。
「社長、我々の家具を日本に売り込んでみたらどうでしょうか?」
「現時点でそんなことをする必要はないと思うがなぁ」
「あちらはガラスなんかも使ってますから、遅かれ早かれ我々に不利です」
「まぁ、そうだな。しかしそれにはまずは日本の家具店を調査するべきだな」
レトイ家具店は、早々に日本へと売り込めないかを考えていた。レトイ家具店自体、熾烈な競争を乗り越えてきた。相手が日本であろうと、ある程度の利益を得る自信があった。
夏。レトイ家具店の幹部たち5人は、飛行機と船を乗り継いで日本へ到着した。船旅の一部は日本の航路だったので、さまざまな内装を観察したり、サイズをはかったりした。
「あの船もすごかったが、日本の町はもっとすごいな」
「あんな建物どうやって建てるのでしょうかね」
一行が降り立ったのは、福岡市であった。福岡市で降りたのは、東京に行くにはさすがに運賃が高く、無理があったためである。
ひとまず最初に宿を探すことになった。マイカルに展開している日本の旅行代理店で先に予約をしてあったのだ。しかし、それがどこなのかはよくわからなかった。
「ヒーギス、こっちではないかね?」
「いやこっちじゃないですか?」
日本の旅行代理店でもらった地図には印がつけられていたが、そもそも今どこにいるのかが分からなくなっていたのだ。
「取り敢えず誰かに聞いてみよう!」
そう言って販売部門部長セイルは、そこら辺にいたサラリーマンに声をかけた。
「すまんが、この建物はどこにあるのじゃ?」
「え、あー、これはこの通りをまっすぐ進んで.......」
「ここじゃな」
「そのようですな」
10分後、ようやく博多プレジデントホテルへと到着した一行は、一旦休憩をとることになった。
「この家具はどんな木材を使っているのでしょうか?」
「ムーでは見かけない材料だな」
「このソファーの布地も見事なものだ」
「金属も使われているものもありましたが、表面の加工により鏡のようですな」
結局、ホテルの家具に興味が出てしまいあまり休めない一行であった。
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マイカルラジオ局①
ムーには、元々ラジオ局があった。しかし出力が弱く、当時はまだ試験的な運用にとどまっていたのだ。
ムー マイカルラジオ局
「部長、この新聞見てください!」
現在、マイカルでは新聞が流行っていた。地元のマイカル工業新聞が日本の機械を使うようになり、情報を素早く、広範囲に伝えられるようになったのだ。
「どうしたんだ?そんなに騒いで」
「ここ見てくださいよ!」
「『日本の個人ラジオ、ムーに上陸!マイカル駅に民間のラジオ局誕生』ってどういうことだ?日本は個人でラジオ局が作れるのか!?」
「いや、わかんないですよ!昨日届いた新聞に書いてあったんです!」
わらわらとラジオ局の職員が集まってくる。
「なんだ」
「なんかあったか?」
数十分後、ラジオ局会議室
「では、今から会議を始める。議題は日本の個人ラジオについてだ」
「私が報告します。今回、今日の朝刊にて問題の記事が掲載されていました」
記事を開き、机に置く。
「『日本の個人ラジオ、ムーに上陸!マイカル駅に民間のラジオ局誕生!
先日からムーと日本の間の交流が爆発的に増えている。さまざまな店が我が国へと進出してきているが、ついに個人のラジオ放送を持ち込むものが現れた。日本では珍しいができないことではないと言う。今後、ムーでメディアがどのような発展を見せるか注視していきたい』ということですね」
「日本では個人でラジオ局の開設ができるというのか」
「金持ちだけじゃないのか?」
「いや、それなら企業がやればいい話だ」
ラジオ局の幹部がそれぞれに意見をあげる。一方局長は沈黙を守り、腕を組んでなにかを考えている。
「あのー、局長、そろそろ納めてもらえないかと」
「ん?あぁ、すまん。記事について考えていた」
「今の段階で記事について考える事なんてありますか?」
「ウム、日本から来た個人ラジオということだが、一体どんな機材をムーに持ち込んだのかということだ」
「我々のような感じではないでしょうか?」
局長はその答えを聞いてため息が出た。
「我々のようなものでは個人でできないだろう?おそらくもっと小さいもののはずだ」
「なるほど...」
マイカルラジオ局の方針としては、ひとまず個人のラジオ局についての情報を集めていくということで決まった。
そのために、まずは記事を書いたマイカル工業新聞に訪ねてみることにした。
マイカル工業新聞 本社
「お久しぶりです、フィルク殿」
「こちらこそ突然申し訳ありません、トコル殿」
「いえいえ、こちらこそ返事が遅れてしまいまして申し訳ありませんでした」
マイカルラジオ局のフィルクは、会議から三日後にマイカル工業新聞本社に来ていた。
「ところで今日はどのようなご用件でしょうか?」
「実は先日の記事にここマイカルに日本の個人ラジオ局が開設されるというものがありましたので、詳細をお聞きしたいと思いまして」
「あぁ、あの記事ですか!あれはそんなに気にする必要はないと思いますよ?」
「え?」
ティルダは不思議そうな顔でトコルの顔を見る。なぜ気にする必要がないのか?
「実はあの日本人のラジオ局というのは、ミニFMと呼ばれるものらしく、狭い範囲しか放送できないそうです。せいぜい催しなどでしか使えないようですよ」
「そうなのですか?」
フィルクはホッとした。マイカルラジオ局はどうやら安泰のようだ。
「ただ、先はわからないようです」
「え」
「これは記事にはしないでくれとのことだったのですが、実は日本ではクラウドファンディングというものがあるそうで、そこでさらに規模の大きな放送を行うために資金を集めているそうです」
...クラウドファンディングってなんだ?
「申し訳ありませんが、クラウドファンディングとは一体なんなのですか?」
「私にもよくわかりませんでしたが、一般人が事業に対して資金を提供するというものだとか」
「株式とは違うのですか?」
「さぁ?」
その後は特にこれといった情報はなく、フィルクはマイカル工業新聞の本社を辞したのだった。
成功ばっかり書いてきましたが、ラジオ局はちょっと毛色が違う話になりそうです。
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ガダル航空機④
そして、重要な変更があります。
色々と調べてみると、1930年代の旅客機の食事についてですが、結構しっかりしたものが多かったようです。事実上ファーストクラスしかなかったようで、とても豪華だったそうです。これを踏まえて、ガダル航空機②を書き直します。調査不足で本当にすみません。今後もマイカルの日常をよろしくお願いします!
二日間に渡った会議の結果、日本の航空機をいくつか輸入できないか、また修理設備を誘致できないかという結論が出た。ただし、それには日本側の定める新世界技術流出防止法が問題であった。
「この新世界技術流出防止法は厄介だな」
「まぁ現状ムーでは部品の製造はほとんど行っていませんからね」
「やっているとしても、日本特別区のなかだけだからな」
「ではやはり航空機の輸入を第一目標としましょう」
「それしかあるまい」
こうして、ガダル航空機は、日本の航空機の輸入を主目的として、事業を進めていくことになった。
―新型航空機研究・取得部―
「さて、これから日本の航空機を取得するという事業が始まる訳だが、まずは日本の航空会社や航空機製造会社についての調査を行う。幸いマイカルにもTUTAYANがあるから、日本の航空機に関する本をあるだけ買い集めるところから始める。金に糸目はつけずに、ありったけ購入する」
ガダル航空機の本社社屋の2階、新たに設けられた部署はさっそく動き出していた。
「部長、質問よろしいでしょうか」
「ああ、なんだ?」
「我々が取得を目指しているという航空機はそもそもどういったものなのでしょうか?実はまだ何も知らされていないもので...」
「それは今から説明する。資料も渡すから、よく読んでくれ」
「わかりました、ありがとうございます」
「他に質問あるかな?」
「よし、では日本の航空機について、簡単に説明をするぞ。全員資料をとってくれ」
全員が1部ずつ取ると、部長であるデュモンは、黒板に『日本の航空機』と書いた。
「では始める。まずは1ページ目を開け。日本の航空機と我々の航空機のスペックだ」
「あの、すみません。この数値は本当なのですか?」
「そう聞きたくなるのもよくわかるが、この数値は日本側の資料に書いてあったものだ」
ここで、簡単に記載されている数値を書いておくと、
B-767-300ER
全長54.9m
全幅47.6m
巡航速度862km/h
航続距離11,305km
とされている。詳細な技術情報は書いていないのだ。
「これはアレですね。我々の方に情報が漏れないようにするための数字でしょうね。こんなに意味のわからない数字になるとは思えないですし...」
「まあそこは調べていけばわかる。そもそも我々に完全な数字を教える義理もないのだからな」
ムーが諸外国にたいして兵器となりうるもののスペックを小さく発表するのは普通のことである。神聖ミリシアル帝国だって、おそらくは行っている。無論地球でも行われているのだから、そうガダル航空機の面々が思っても仕方のないことだ。
「さて、対して我々の航空機だが、大きさもスピードも何もかもが劣っている。まあ爆撃機を改装したものだからな。ただし食事の豪華さだけは匹敵するかもしれないが」
今彼らが日本のものと比較しているのは、ムーでカーヴと呼ばれている機体であった。そのスペックは、
全長16m
全幅20m
巡航速度310km/h
航続距離1200km
であり、世界でもトップクラスの性能である。乗客も10人程度乗せることができた。
「もちろん我々の航空機の性能が悪い訳ではないが、どうしても見劣りしますね」
「まあ日本はそもそもプロペラ機ではなく、ジェット機と呼ばれるものが普及しているようだがな。もちろんプロペラ機もあるにはあるんだが、基本的に島嶼だったり乗客の少ない航路に使われるようだ」
「プロペラがない?いったいどうやって飛んでいるんですか?」
「高温高圧の気流をつくりだしてそれを噴射するとか書いてあるはずだ。詳しくは私にもよくわからないんだ」
そう、今回の技術交流で開示されたのは、せいぜいとても簡単なジェットエンジンの概念と、燃料の原料が石油であること、また航空機の開発が非常に難しく、ローンチカスタマーに発注を先に行っていることなど、巨大航空機を製造する難しさを説明されたのであり、ほとんど最初から資料を探さなければいけないのである。
もう少し進めたかったんですが、ちょうどいいので区切ります。
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マイカルの造船業界①
マイカルに限らず、ムーでは漁業用に使われるのは手漕ぎの船か、大きくても遠洋に出るための中型船であり、現代のような大型船は使用されていなかった。商業用の貨物船や客船も、せいぜい1万トン程度が主であった。
さて、マイカルには、いくつかの造船所がある。そのなかで最も大きな規模であるのはマイカル重工傘下のマイカル造船所である。マイカル造船はムー海軍からの小型艦から主力艦までの発注がおこなわれる。そのつぎに大きなものは、バース製作所造船部である。こちらは総合重電メーカーである。どちらかと言えば中小の漁船や、中型の貨客船など、民間からの発注が主である。
今回は、ムーと日本の交流が始まって約半年後の物語である。
マイカルに日本企業が進出し現地の企業と様々なプロジェクトが立ち上がるなか、造船分野に関しての交流はいまいち進んでいなかった。単純に、施設の見学をしても、技術レベルが離れすぎている上に、機関自体の方式が日本側と全く違う(レシプロ式)のだ。
造船はその国の技術レベルが分かるというのはあながち間違いではない。
そして、日本の造船所側としても技術交流などには苦い思いがあるため、また数年先までぎっしりと埋まっているスケジュールをこなすためにも、そういった技術交流などをやっている暇はなかった。
バース製作所本社取締役会会議室
現在、バース製作所取締役会会議では、造船部についての会議が行われていた。
「そうか、また良い返事は貰えなかったのか」
取締役の一人が大きなため息をつく。彼らにとっては、日本というイレギュラーは、巨大な商売敵であると同時に、マイカル重工に追いつくためのかつてない絶好の機会。なんとしてでも技術支援を取り付けたいと考えていた。
「はい、やはり暇が全くないようです。今日本の造船所はフル稼働で貨物船や客船を造っているみたいです。あと軍艦...日本では護衛艦でしたか。その建造が急ピッチで進んでいます」
「今までに交渉したのはどこだ?」
そう発言したのは、バース製作所の社長兼最高経営責任者(CEO)であるローンズ・バースであった。創業家の一族であり、敏腕な経営者として知られている。
「現在交渉を行ったのは八菱重工業、河崎重工業、墨友重機械工業、今梁造船、大嶋造船所、尾之道造船、新大村造船所などですが、少なくとも今は難しいと断られています」
「フム...他の地方の造船所はどうだった?おそらく今言ったのは日本国内でも大手の造船所だろう?」
「それらはそもそも初期調査すら行っていませんね。そもそもすぐに連絡を取れないので、調査も難しいと思われます」
現在、日本とムーの間を結ぶ長距離通信はムーの民間用には解放されておらず、日本企業はスカパー!JSATが打ち上げた衛星通信用のExBirdを使用しての日本との長距離通信が可能となっている。
そのため調査をする場合には、まず日本の通信代理企業に通信依頼を行い、その後に相手企業と交渉を行うという面倒な手間がかかるようになっている。もちろんムーの企業が一斉に通信依頼を出しているため、待ち時間は数年先まで一杯であった。
ちなみに代理企業はネットカフェの業務用版のようなものである。基本的にNTT傘下となっており、競争は抑えられている(料金の異常値下げを防ぐため)。
「では、中小の造船所でもかまわない。ある程度大きな船舶を建造しているところに片っ端から連絡を取ってくれ」
「わかりました。早急に連絡を取ります。ですが次に通信出来るのは半月後となります」
「よし、それまでに他の日本人から情報を得られないか探ってくれ。それでは二十分休憩のあとマイカル重工の動きについての会議にはいるぞ」
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バース製作所組織図
バース製作所
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機械部 造船部 化学部 インフラ部 金属部
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客船部門 貨物船部門 その他(漁船等)
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「では、十分頭の切り替えもできたと思いますので取締役会会議を再開いたします」
マイカル重工は、バース製作所造船部だけでなく、その他の部門にとっても大きな壁であった。もともとマイカル重工が官製の造船所の払い下げにより設立された企業であり、政府からの発注はマイカル重工が受けていた。
「では私、経営戦略部調査部長ベル・ラッセンが報告いたします。お手元の資料②の造船部調査と書いてある資料の5ページ目をご覧ください。今期の造船部の業績となります。公式に発表されている資料では、売上高は我々の3倍。経常利益は我々の1.5倍です」
ここまで一気に述べると、取締役からポツポツと感想が出てくる。
「やはり政府からの発注が大きいのでしょうな」
「確かに軍艦は単価が大きい。確か今年は駆逐艦の建造を始めたのではなかったか?」
「貨物船も5月に竣工していたはずだ。そのドックを駆逐艦建造に回しているのか」
取締役たちがしばらくして静かになると、続きを述べる。
「では、続けます。日本の造船所との交渉は現在は確認できません。ただ、新型の駆逐艦を建造しているとの情報があります。軍に確認したところ、間違いないようです」
「新型の駆逐艦?どういったものだ?」
「魔導技術を応用し、各所を強化・改良したものということですが、詳細はわかりません」
「魔導技術についてはあちらが有利だからな。おそらく新型の試験運用艦だろうな」
マイカル重工自体、国立の研究所との連携が盛んであり、テスト艦等も建造する。その技術を民間船舶に利用することもあるようだ。
「マイカル重工の今年の建造数は約20隻。我々は7隻となっています」
「それは特に変わらないな。去年から1隻増えたがどこからの発注だ?」
「えー、『マイカル総合海運会社』からの受注です。1万トンクラスのものですね」
「あぁ、新興海運会社だな。数か月前にマイカル商工連盟が出資して設立されたところだな」
「一体どこの航路に...」
「ミリシアル帝国では?」
ローンズCEOは既存航路の増便に使用するのではと考えている役員たちを見た。
「日本航路だろう」
「「「!!!」」」
日本航路。現在日本との商用航路はもっぱら日本の1万トンクラスのコンテナ船が利用している。日本周辺の水深などがよくわかっていないためだ。しかも、日本側は第三文明圏で手一杯であり、ムーには月に10隻程度しか来ない。そのほとんどが、マイカルに来る。
「日本航路ですか...!」
「予測が当たっていれば大きな商機!」
「マイカル総合海運会社が日本航路を独占的に確保すれば、我らも規模が大きくなるな!」
取締役たちが喜ぶなか、ローンズCEOは小さな不安を抱いていた。
なぜ、マイカル総合海運会社は国と密接な関わりのあるマイカル重工ではなく、我々に船を発注したのかと。
マイカルの造船業界に、大きな波乱がもたらされようとしていた。
これは長くなりそうです。造船業界の話は1話当たり3000字を目指して書いていこうと思います!
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マイカル火力発電所
ムーの発電設備は、戦前の日本より少しマシくらいのレベルであったため、ムー政府は火力発電所をはじめとする大型の発電量の大きい発電所を欲していた。
ムー オタハイト エネルギー省内新発電所準備部
このところ、ムー政府は日本の電力会社と発電所建設会社数社に、火力発電所事業についての個別のヒアリングを始めた。一基で数十万キロワットもの発電を行うことのできる発電所など、今までなかったためである。
「我々ムー側としては、まずオタハイトとマイカルに電力供給を行いたいと考えているのです。そのための費用や用地などがどの程度かかるのかをお聞きしたい」
「そうですね、オタハイトとマイカルは結構離れていますから、正直無理にひとつの発電所で、とする必要はないと思います。発電所以外にも変電所や電柱、変圧器なども必要ですから、まずはどこかの都市で試験的に導入するのが良いと思います」
「なるほど。発電方式はどのようなものが良いでしょう?我々は現在火力発電所を運営しておりますが...」
「それなら火力発電所が良いでしょうね。ただし規模が全く違いますし、危険度も遥かに高くなりますので、運営の前に一度日本の電力会社で研修を数年行うべきでしょう。発電所建設には相応の時間がかかりますから、その期間は有効に使うべきです」
他の会社にも聞いてみたものの、似たような回答が帰ってきた。そのため電力需要の大きい都市で試験的に導入が行われることになった。そして臨海にあり、電力需要が大きく、日本企業が多いマイカルに計200万キロワットクラスの天然ガス・LNG火力発電所を建設することが決まった。
マイカル西部
「ーーーそしてこの度、このマイカルに、ムー最大級の火力発電所が建設されることとなりました。今までにないほど大きな発電所であり、大いに、マイカルの発展に寄与するでしょう。マイカルをさらに発展させられるよう、私も、全力で取り組んでいく所存で、ございます」
『マイカル市長の挨拶でした』
現在、建設地では発電所の起工式が行われていた。これほど大きな発電所を建設するのだ。式典をやらないという訳にはいかない。
『続いて、株式会社藤芝様からのーーー』
粛々と式典が進んでいった。
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
さて、一年がたった。すでに地盤改良などの工事を終えて、基礎工事などにうつっている。取水・排水設備や発電所本体の工事も進んでいる。
実は、日本の工事よりもやや早く進んでいる。ムーの魔導技術の活用である。実際に火力発電所の心臓部であるボイラーやタービンには強化がなされる予定であり、稼働年数の増加が予想されていた。
さらに1か月後にはガス導管の工事を開始して煙突の基礎打設が終了した。
タービン建屋用の鉄骨が運び込まれ、たてられていく。放水路ではシールドマシンが穴を掘削しており、順調に進んでいた。
火力発電所が出来ていくなか、その周辺にも工場やガス基地が建設されていた。ガスタンクも建設が順調に進んでおり、発電所とほぼ同じ時期に完成する予定である。
火力発電所の建設手順をなぞってもいいのですが、ただ「1か月後、○○」みたいな感じが続きそうだったので切りました。
北海道電力石狩湾新港発電所を参考にしています。
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閑話:異世界万国博覧会
このお話は、グ帝戦のあと、ある程度復興が進んだ頃...という設定で書いています。
ミーア→ミーリに直しています。すみませんでした。
西暦2025年 大阪、夢洲
瀬戸内海に面するこの人工島では、異世界初の万国博覧会が開かれようとしていた。
「この度、我が国で、世界初の万国博覧会を挙行することとなり、大変喜ばしく思います。まだ戦争の傷も癒えないなかでではありますが、来るべき戦いへ向け、各国が、一致団結して、新たな技術を開発していく。そのための良い関係を築くことができれば、世界にとって、プラスになると、信じております。ここに、大阪万国博覧会の開催を宣言致します」
大阪万博は、異世界史上最大級となる催しであった。テーマは「世界の進歩」である。すべての国の人々がより良い暮らしを送ることができるように、というのが意味であるが、裏の意味としては「来るべき魔帝との戦いに備え、技術の向上を図る」という意味もあった。
内閣府では予想来場者数は4千万人程度予想しており、日本でも史上最大級の催しとなる見通しであった。
会場は夢洲330haのうち240ha。予想来場者数の上昇が予想されため、当初の予定よりも90haほど大きくなっている。会場建設費は2500億円。今回は、各国パビリオンの一部設計・監修も行っている。また、万博割引を政府が発行、日本人・外国人3万人ずつに一律3000円の補助が出る。
また日本までは、ムーが建設した各国の飛行場をいくつか改修して、日本の持つ航空機の離発着に耐えられるようにし、そこから日本へと輸送する。ある種のハブ空港の役割を持たせた。
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
夢洲・万博会場入り口
「さて、やって参りました大阪万博。国内では実に20年ぶり、異世界では初の万国博覧会となりました。すごい人の量です」
万博初日。中央ゲートの前には長い長い列が出来ており、交通機関にまで影響が出る始末であった。
一番人気はやはり日本館である。第三文明圏のさらに向こうに突然現れた超科学文明国家。世界中の国家の注目の的であった。そんな国の最新技術が披露される場にいかないなんてことがあるはずがなかった。
「うーん、この『お餅』は柔らかくてモチモチですね。この『砂糖醤油』がやはり一番美味しいですが『きな粉』も捨てがたい....!」
「美味しいですか?」
「はい!大内田様もどうですか?」
「ではいただきましょうか」
日本館へと続く道には日本の料理やお菓子、キーホルダー等が売られている。日本館は最大7時間待ちなので、この通りに人が集まっている。ちなみにもとの世界の他国のものも売られているが、そちらも日本のお菓子と認識されている。
「あのー、イーネ団長ぉ」
「どうした?具合でも悪いのか?」
現在、イーネは日本にいる。訪問団の一員として派遣されている...というわけではなく、単純に大内田からの万博に行きませんかという誘いを受けたためである。それにミーリは日本駐在員としていたので、イーネに同行しているのだ。
「これ、いつまで並ぶのでしょう?かれこれ4時間半は並んでますよぉ」
「うーんあと1時間くらいじゃないか?それにしてもすごい人の数だな。建国祭でもこんなに多くの人をみたことはない」
「この会場内だけでおよそ30万人くらいでしょうね。日本でも前々から注目されていましたから」
異世界側からすると日本のことが気になっていたわけだが、同様に日本も異世界側のことが気になっていたのだ。異世界グルメ大全なる書籍すらも発売されているほどに。
「おや、前の方で何か騒ぎが起こっていますね」
「喧嘩でしょうか」
実は、危惧されていたことではある。この世界では文明圏の間の溝が深いため、列の並び方や金銭でのトラブルが起きる可能性があると。現在この会場内では、各国の国民が店を営業している。無論そのようなトラブルが起こっても止められるよう、警備員や警察を多数配置している。しかし、トラブルが起きるときは起きてしまうのだ。
「あれは収まりそうにないですね。まわりに警備員もいませんし、少しいってきましょう。お二人はここでお待ちください」
「私もいきましょう!」
「いえ、女性の方の手を煩わせるほどではありませんよ」
そういって大内田陸将は現場に向かった。
「さすが大内田様。なんと良いお人だろうか...」
「団長ー、顔がすごいですよ」
好評だったら続きを書きます。ムーとか、ミ帝とか。
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マイカル日本学校
ムーは、日本からのODAなど、様々なインフラ整備によって飛躍的に発展しつつあった。
しかしムー政府としては、そのインフラ整備を担っているのが日本企業ばかりであるのは問題であった。
現在技術者を派遣して教えてもらうという形となっているが、それではいつまでたっても工事現場のことばかりである。もっと基礎の部分から学ばせたいと考えていた。さらに言えば、科学技術分野全般において、日本の教育を受けさせたいと考えていた。
一方日本政府としても、現在労働力が全く足りておらず、このままでは労働力不足によって国が傾きかねない事態に陥っていた。特に建設・輸送・サービスの3分野において人手が足りておらず、国内の有効求人倍率は3.04を越していた。
そこで両政府間で提案されたのが、日本とムーが共同でマイカルに日本への修学の前段階として、日本で言う高校卒業程度の教育を受けられるようにする施設をつくるということだった。
基本的にはムーでの中等学校以上の教育を受けたものを対象とし、後々には初等・中等教育をも受けられるように、しかし生徒側の負担は少なくすることで、就学率を底上げするという壮大なものであった。ムーではまだ教育を受けるには少なくないお金がかかっていたため、日本側が援助するという形になる。
マイカルに風力発電設備が完成して、一年後。マイカル郊外の平地に、生徒数一学年2000人という巨大な学校ができた。元々の計画では一学年500人程度の予定であったが、ムーからの要請により、一気に四倍まで増えたのだ。
無論マイカルばかりから来る訳ではなく、周辺の都市や村からも優秀な人材が大勢来ていた。入学試験の倍率は13倍まで膨れ上がり、ムー史上最大級の倍率であると報道された。
入学試験とムーでの学校により中等部1~3年、高等部1~3年に分類された生徒たちのなかで、家が遠かったりする学生が選抜され500人が学校付属の寮に入った。
他の学生は、家が近い者は家から通い、家が遠い者は噂を聞き付けてやって来た日本企業やムー企業が運営するワンルームタイプのアパートやマンションを借りた。
キーンコーンカーン...
「それでは、授業を始めましょう。ゴルヴィ君、挨拶をお願いします」
『起立!気をつけ!礼!』
『お願いします!』
『着席!』
「さて、皆さん、今日は前回の続き、気象の変化についてやっていきますーー」
マイカル日本学校が開校して4年。マイカル郊外には立派な学園都市が出来上がりつつあった。全国から生徒が集まり、そのまま日本により高度な勉強を受けにいく者もいれば、マイカルの企業や日本の現地支社に就職する者も現れた。レベル自体はムーの普通の教育を受けたもの(中等部まで)より高いため重宝された。
そうしてどんどん卒業生も増え、ムー側から初等・中等だけでなく、大学施設もという要望があり、ついにムーでも久しぶりとなる私立の総合大学が設立された。学校設立から12年後のことである。
運営母体は日本の政府傘下に新たに設立された、「海外学校教育推進機構」とムー政府が6対4で出資した「学校法人マイカル日本学校」であり、基本的にはずっとこの体制で運営する。
名称自体は「マイカル産業技術大学」へと改称し、初等・中等・高等部は附属の学校になった。しかし同一敷地内にあった。さらに日本政府が出資しているため、日本の書籍が充実していた。ただし、先端技術関連書籍に指定された6万冊は特別な許可のない場合は閲覧ができなかった。
学生の閲覧が可能になるのは14年後、日本政府が一部先端技術情報開示許可国としてムーを指定した後のことであった。
その後も優秀な人材を世に送り出したマイカル産業技術大学は、日本のトップレベルの大学に匹敵する大学として認められるようになっていった。
ネタが...
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ムーの水道事情①
水処理は、環境を維持する上で非常に重要な施設である。ムーでは環境基準など存在せず、基本的に垂れ流しが普通であった。
これに懸念を示したのが、環境庁である。日本の企業や人がムーへと進出する際、垂れ流しなどが悪影響を与える可能性がある。そういった意見が出たのである。
日本政府によるムーへのODAは、地球でのODA総額の約3割であり、そこから水処理施設の建設費用を出すことになった。
ただ、ムーにおいてはまだ水資源保護の認識が低く、そもそも下水処理とはどういったものなのかを理解していなかったため、日本の水処理施設の見学を行うこととなった。
ムー政府から派遣されたのは、水道局副長官をはじめとする6人である。
「ようこそ日本へ。私、外務省から参りました室岡と申します。皆様の案内を致します。」
「これはご丁寧に。私はムーの農商務副大臣、バローツ・ネロウと申します。本日からどうぞよろしくお願いします」
今回は日本の水処理技術のムーへの輸出へとつながる可能性が高いと、メディアから熱く注目されていた。
「本日はお疲れでしょうから、施設の見学は明日とさせていただいております」
「お気遣い痛み入ります」
バローツは、水処理の重要性がいまいち理解できていなかった。わざわざ莫大な予算をかけてまでやる必要があることなのか?と思っていたのだ。
「それでは本日のご予定です。本日は、我が国の浄水施設をご案内致します」
「浄水施設?いったいどういったところなのでしょうか?」
「川等から汲み上げた水から細菌や寄生虫、有害な物質を取り除くところです」
「ほう...」
「私は当浄水場の浄水部長の来嶋と申します。まず私から、浄浄水場の簡単な説明をさせていただきます」
「よろしくお願いする」
「ではまず、水のろ過の方法についてご説明させていただきます。こちらの冊子をご覧ください」
日本の職員から薄い冊子が開いて手渡される。たった数ページだが、きれいな色で印刷されている。何度か見たことがあるが、さすがの技術だ。それにしても、こうカメラが多くては気が滅入るな。
「ムッ!」
こ、これは!すべてムー語で書かれている!しかも一つずつの文字が非常に整っている!と内心驚きつつ、顔には出さない。印刷くらいは我がムーにもあるのだ。
「まず、浄化するため川や湖沼、貯水池から取水します。取水にはこのような取水ぜきや取水塔を用います。こちらがその写真です」
「結構大きな施設のようですな」
「はい、河川の端から端までです。ですが、この堰から水を取るわけではありません。あくまでも水位を安定させるためのものです」
「なるほど、水の量が減ると大変ですからな」
「そしてそこから取った水はまず沈砂池に送られます。ここではーーー」
そうして、いったん冊子での説明が終わった。どうやら次に外の施設を案内するという。実際に水の処理をしているところを見せてくれるようだ。
「いや、確かに水をきれいにすることは重要ですな。きれいな水のほうが国民の健康的にも良いようです。海に流せば海の幸にも影響が出るとは、いやはや、日本は環境に対しての研究がよくなされていますな」
「いえいえ、まだまだです。今は問題ないように見えて、何年もたつと大きな影響が出てきますからね」
建物を出て、左にある水槽へと向かう。あれが説明のあった砂利などを用いた浄化槽だろうか?
「こちらが、フロック形成池となります。薬品で細かな汚れを固めるところです」
どうやら違ったらしい。ここは砂や砂利などできれいにした水を薬物を使ってさらにきれいにするところのようだ。
「ここで形成されたフロックは、隣の沈殿池で沈殿させます。ちょうどあちらの水槽が清掃で水を抜いているため、いってみましょう」
普段はあまり見ることのない水槽のなかを見ることができるようだ。これは良い。しっかりと参考にさせてもらおう。
「こちらですね。あそこに装置が見えていますね」
「ほう、水槽のなかはこのようになっているですか!」
水槽自体はコンクリートでできており、底には集まったゴミの塊を集める装置がある。さらにそのひとつ前の手順の水槽では薬品と水をしっかりとかき混ぜるための装置がある。どれもずいぶん大きいようだ。
実際に見てみると、技術力の高さやこの施設の建設費の高さなどが伺える。
「ずいぶん大きいですな」
「ええ、この浄化場は1日に最大11億5700万リットルの水を濾過していますから、その分大きな施設が必要なのです。もちろん、水質を保つために検査や清掃も欠かせません」
11億5700万リットルだと!?何という量だ。この規模の施設が複数存在しているといっていたが、東京の一部だけでこれほどの水を必要とするのか!
その後もいくつかの水槽や建物を案内されたが、ただただ日本の巨大さを思い知らされるばかりであった。
その日は、浄水場の見学のみであったため、一行はホテルへと向かった。明日は、下水処理場の見学に向かう事になっていた。
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閑話:異世界の大晦日
冬、雪がしんしんと降るなか、神社やお寺には大勢の人が集まっている。それはたとえ世界を越えたとしても変わる事はなく、毎年のことであった。
ただ、異世界に来てから変わったこともあった。
日本国東京 増上寺 23:00
増上寺では、大勢の人が年越しをすごそうと集まっていた。そのなかにはちらほらと外国の人の姿も見える。もちろん、異世界の外国人だ。基本的には第三文明圏からの観光客のようだ。
そのうち何人かが、境内を歩いていく。ひときわ姿勢がよく綺麗な女性が寒そうに手を擦り合わせている。隣には日本人と思われる体格の良い男性の姿もあり、どうやら異世界カップルだろうか。
その後ろにげんなりした顔の獣人の女性もいる。大使館の要員かもしれない。
「うぅ、寒いですね...」
「申し訳ありません。日本は今冬ですからね。初詣だけにしましょうか?」
「い、いえ!ぜひ除夜の鐘も突いてみたいです!」
異世界カップルのような大内田とイーネは、除夜の鐘を突こうと、増上寺に来ていた。増上寺は鐘を突くために事前に券が必要であるため、大内田が3人分確保していたのだ。
「そういえば大内田様、なぜ日本では除夜の鐘を突くのでしょうか?」
「除夜の鐘は、一般的には煩悩を払うためにというのが知られています」
「煩悩、ですか」
「はい、元々仏教という日本でも大きな宗教での用語ですね。人の心の乱れや汚れのことだと言われています」
「なるほど、一年の終わりにその煩悩を払って新しい一年を迎えようということですね!」
「そのとおりです。さすがですね」
「いえいえ...あれ。それならなぜ人数制限があるのです?みんなが突けば良いのでは?」
「ああ、それは煩悩の数が108と決まっているからですね。」
「煩悩の数が決まっているのですか?」
「そうです。詳しくはないのですが、確か全部で18の煩悩があり、それには2つの種類があり、前世、今世、来世の分をあわせて108ということです」
除夜の鐘について話しつつ、境内を歩く。しばらく歩くと明るい炎が見えてきた。
「大内田様、あれは何を燃やしているのですか?」
「あれは今年のお札やお守りを燃やしているんですよ。来年になったら新しいお札やお守りを買うんです」
一通り参拝したあとは、鐘を突くための列に並ぶ。
「い、いよいよですね。緊張してきました」
「大丈夫ですよ。私たちはお寺の人の指示にしたがって鐘をつくだけですから」
「は、はい!」
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「大内田様!うまくできました!」
「はい、うまくできましたね」
イーネ、大内田、ミーリはいったん在日クワ・トイネ大使館の近くにあるミーリの日本での家にいた。イーネは日本では大使館の手配したホテルに泊まっている(個人的に来ていても貴族令嬢なので)し、大内田としては若い貴族の女性を部屋にいれるなんてできるはずがなかったからである。
結果として、ミーリは一人で暮らすには広いくらいの2LDKを大使館から与えられている。
「では朝まで休んでから初詣にいきましょうか。明治神宮に行こうと思っているのですが、イーネさんとミーリさんはどうでしょう?」
「わたしは問題ありません!」
「隊長は元気ですね...ちょっと寒いですけど大丈夫です」
3人はその後も世間話で盛り上がり、結局眠りについたのは3時ごろであった。
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雪がしんしんと降り積もる。日本が異世界に来たとしても、変わらない景色だ。大晦日の夜、人々はきたる新たな1年が良いものになるように願って、それぞれがそれぞれの過ごし方で年越しを迎える。
遠くで、途絶えることなく鐘の音が聞こえていた。その鐘の音はまるで新しい年の訪れを知らせているようだった。
今年最後の投稿となります。最後はちょっとしんみりした感じを出してみようと書いてみました!明日も投稿できればします。初詣です
それでは皆さん良いお年を!来年もよろしくお願いします!
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フィルムカメラの再興
日本では現在、カメラと言えばデジタルカメラが一般的である。取り扱いも簡単でデータの調整も可能だ。
しかし、ムーでは違う。ムーでは地球でいう1900年代のカメラが主に使用されており、一般の人々にとってはまだまだ敷居の高いものであった。
そこに目をつけたのが、日本のカメラ業界である。新世界技術流出防止法により、少なくともデジタルカメラの輸出は不可能であったため、輸出はフィルムカメラのみとなった。
さて、特に興味を示したのはNICONで、同社が現在販売しているF6シリーズを再生産してムーへの輸出を開始した。
一方で動きが遅れたのがCannonで、設備などの問題ですでに生産を終了しているEOS-1Vをすぐに再生産する訳にはいかなかった。
NICONムー マイカル本社
「F6の販売数は今年だけで2万台の大台にのりましたよ」
「ああ、まさか異国の地でこれだけ売れるとはな」
NICONは、富士フィルムと共同でムーへと進出した。フィルムの生産を行っているのが日本ではもう富士フィルムだけだったからである。
そして、大成功していた。
ムーの市民にとってはまだ少し値段が高いが、ムーで現在使われているガラス乾板を使用したカメラよりは安く、そして専門の業者が現像まで行ってくれるということもあり、爆発的に利用者を増やしていった。
そして、風景を印刷できるということで、やはりカメラに目をつけたのは、報道機関であった。
マイカル工業新聞 新技術部門
この時期、マイカル工業新聞では日本から取り寄せた原付による配達を始めてからしばらくたっており、業績も安定していた。
「このカメラ。報道が大きく変わるでしょう。なにしろ従来のものとは違い軽く、扱いやすく、壊れにくい。どんな現場にも持っていけます」
「そうだな。確かに、大きな変化を生むだろうな」
カメラも、すぐさま購入し試験運用していた。良好な結果となると予想されているため、すでにどう新聞に盛り込んでいくかを考えていた。
「やはり配置の参考は日本の新聞が良いでしょう。あちらは年間4000万部という量の新聞を発行しているのです。やはり洗練されていますよ」
「そうだな、それがいいだろう。魔写よりも性能がいいんだ。これがあれば画像・映像関連は神聖ミリシアル帝国の技術の縛りから抜け出せそうだな」
神聖ミリシアル帝国が輸出している魔写は性能がいいが、ムーでは製造できない。そして輸出に関しても制限がかけられている。
一方日本のフィルムカメラは、すべて科学技術で実現可能であり、ムー側からライセンス生産の話を持ちかけているという情報もある。まあ日本側の新世界技術流出防止法で話は進んでいないというが。
「さて、それじゃさっそく部長に報告してくるとするか。ムーの印刷機じゃきれいに印刷できないからなぁ。そこをどうするかだなぁ」
「もうここまで日本の機械を導入しているんだから、全部日本から輸入した方が効率良さそうですけどね」
「ま、そういうわけにもいかないさ。できるだけ自主開発を進めないとな。幸い日本から書籍は輸入できる」
そう言って部長に報告をするため研究主任は部屋を出ていく。
少し時間がたつと、ムーの民間企業が日本の書籍を頼りにニトロセルロースを使用したフィルムを開発、日本の系列でない現像を行う業者や、企業が自分で部門を立ち上げるところも出てきた。ただ、日本はほとんど関与していなかったため、品質はまだまだ低いものであった。
十数年後、ムーでも国産のフィルムカメラがつくられるようになり、日本とならぶカメラ大国となるのは、また別の話。
フィルムカメラは、異国の地で再び日の目を見たのであった。
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ムーの通貨改革①
ムーは五大国であり、通貨経済が発展している。信用もあり、ムー以外の国であっても、ある程度使用できる。
しかし、それだけに国内外での偽造が後をたたない。ムーの財務省と国家造幣局は常に頭を悩まされてきたのである。
「ならば、日本に技術指導を要請してはどうでしょうか。以前日本の紙幣を見せてもらったとき、前の世界で日本の通貨はトップクラスの技術だったと聞いています」
「フム···。しかしそう簡単に技術指導をしてくれるだろうか?自国の通貨偽造を防ぐ技術だぞ?」
「ですが、日本側としても偽通貨が出回るより良いでしょう」
ひとまず頼んでみることになった。
日本国 財務省 財務大臣執務室
「ムーが偽造防止技術の指導を頼んできた?そりゃまた、どういうこったい?」
連日の激務で目の下に大きな隈をつくった大臣が尋ねる。
「ムーの通貨はまだ技術が日本に比べると未熟で、偽造が多いと聞きます。そのため日本に技術指導を求めてきているようです」
「ふーん、そうかい。わかった、検討しよう」
大臣としては、これからムーとの経済的な繋がりが強くなると予想されているため、通貨の偽造を放っておく訳にはいかない。
現在ムーでは日本と同じように硬貨と紙幣が使用されており、貴金属も使われている硬貨はまだしも、紙幣は基本的にただの紙と少し魔石の粉末を混ぜたインクを使っている程度、ということがわかっている。
一方で、日本の持つ偽造防止技術を他国へと教えることで、日本の通貨が偽造されるということが考えられるため、無条件で教えるわけにもいかない。
「はぁ、ようやく企業進出関連の法案がまとまったというのに、また仕事だな」
はぁ、とため息をつき、再び机に向かった。
ムー 国家造幣局 技術部
「ということで、日本からは『すかし』の技術を特許料を払うことで使用許可してもらえるということになりましたが、代わりに魔石インク関連の技術開示を求められています。後、いっそのこと日本が生産するという提案もされました」
「通貨の生産を他国に!?」
「地球ではよくあることだそうです。ある意味、最も安全だとは思いますが···」
「いや、さすがにそれはまずい。魔石インクの技術なら基本的にただの顔料と同じだ。問題ないだろう。だが日本のことだ、何か別のものにも応用するんだろうがな」
魔石インクは、特定の魔力に応じて魔石の微細な粒子が反応して光る。ムーはその技術を紙幣に使っているが、実は神聖ミリシアル帝国ではある程度普及しているものである。
「よし、魔石インクの技術を開示すると日本側に伝えてくれ。これで日本の技術が入ってくれば、偽造がある程度止まるだろう」
「わかりました」
ある程度交渉がまとまったところで、まずはお互いの通貨がどのように製造されているのかを知るために、両国が使節団を派遣した。
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日本国 広島県 造幣局広島支局
「東京で通貨を作っているものと思っていましたが、違うのですな?」
「はい。現在造幣局の本局は大阪にありますが、そこは現在博物館となっております。硬貨を作っているのは、埼玉支局と広島支局です。このうち、埼玉支局ではプルーフ貨幣という流通目的でない貨幣が製造されています。そして、一般に流通している貨幣を製造しているのが、ここ、広島支局となります」
「なんと。ここの設備だけで日本中の硬貨を賄っているのですか!」
「そうなりますね。ただ、現在は第三文明圏の基軸通貨となりつつあるため、製造ラインがフル稼働しているのです。まあ他にも第三文明圏の各国の通常の通貨も製造していますが」
第三文明圏では、圧倒的な経済力・技術力・軍事力を誇る日本の通貨が最も信用度の高い通貨として広がりつつあった。
そのため、国内の通貨が流出していた。そうなると日本は通貨を発行しないわけにはいかず、地球の時の数倍、発行量を増やしていた。
当然、その原料が日本にあるはずもなく、第三文明圏の各国の鉱山などを開発し、確保していた。
「今年はさらに増産しておりまして、約62億枚を発行しました。昭和49年の56億枚を越えて歴代最多です」
ムーの国家造幣局の硬貨担当技術主任は、開いた口が塞がらなかった。60億枚。なんという量だろうか。そんな量の硬貨を発行するには相当な資金が必要だ。紙幣なら、基本的な材料は紙であるため、なんとかなるだろう。しかし、硬貨は金属。それも相応に高価な金属を使用しているはずだ。
「では、さっそく製造ラインを見ていきましょう」
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同日 東京 国立印刷局東京工場
「本日はどうぞよろしくお願い致します」
「こちらこそ、我々のためにお忙しいなか申し訳ない」
その一方、紙幣担当組は東京の国立印刷局に来ていた。
「大きな工場ですな。ここではどの程度の紙幣が作られているのですか?」
「詳しくは言えませんが、日本では今年は50億枚の紙幣を印刷しています」
「50億枚!経済規模からすると意外に少ないですな」
「いえ、これでも例年よりはるかに多いのです。普通は30億枚程度ですよ。第三文明圏での基軸通貨として使われ始めているので、足りないのですよ」
「なるほど、そういうことですか」
ムーの通貨は、主に第二文明圏の基軸通貨として流通している。その導入は緩やかなものであり、一気に国内の流通通貨が流出するということはなかった。日本ではそれが一気に来ているのだろう。
「ではまず、日本銀行券のことについて、軽くご説明いたします。こちらへどうぞ」
まずは解説をしてくれるようだ。一言一句聞き逃さないようにしなければ!
これ、3話くらいかかる分量になりそうです。
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ムーの医療改善①
クワ・トイネの外交団が魔法を使って怪我人を治したことで、日本では医療での魔法導入を、という動きが活発化していた。
しかし、まだ魔法がどんなものかもよくわかっていない上に、そもそも使える人材はいない。また、治験などができるわけもなく、今まで先のばしにしていた。
しかし、ムーという魔法も科学も扱える国が現れたため、その方針はひっくり返ることとなった。
「日本の厚生労働省から参りました。間と申します」
「これはこれは、私、ムーの内務省衛生局のレイキ・リンクと申します」
日本の厚生労働省は、ムーの良いとはいえない衛生環境の改善、医療技術の教授、そして魔導技術の医療への応用研究のために、管轄にある日本赤十字社と、製薬部門として竹田製薬、機器部門としてヲリンパス、医学部門として京都大学と共に、ムー内務省管轄のムー第一国家病院、オタハイト大学と協力して研究を進めていた。
しかし、まずは医療技術の教授を行っていた。技術水準が違いすぎたからである。ムーが魔導技術も使用しているとしても、一番良くて戦後レベルであり、そもそもレントゲンやCT、MRI等の技術はなく、人に流れる魔力で異変のある場所を発見するというやり方であったからだ。
「では、本日はムーでの死亡原因のトップ、感染症についてです」
ムーでの死亡原因は、戦前の日本のような割合となっており、感染症、特に肺炎や結核、胃腸炎が多い。日本人がムーへと仕事に行く際は、予防接種が義務付けられている。
また、地球では根絶されたとされる天然痘もその存在が確認されており、早急な意識改革と対処が求められていた。
「ムーで特に流行っている結核は、日本ではあまり流行っていません。対処が早ければ助かる病気です。日本では普通半年くらいの治療が必要です」
「半年ですか?結構長いですね」
「はい。複数の薬を使って、確実に治します。複数の薬に耐性を持つものもいるので」
「薬に耐性を!」
「以前の世界では、もうずいぶん前から使われている薬にたいして、耐性を持ってしまっているのです」
結核耐性菌は、大きな問題になりつつあり、将来は効く薬がなくなるのではないかとの声もあるほどだ。そして、新たな薬が開発されたとしても、それは高価なものとなる。
「特に結核は、入院する病棟を他の患者さんとは分けています」
「そこまでするのですか?」
「そうです。結核は空気感染が考えられるので、病棟を分け、私たち医療従事者も特殊なマスクを着用します」
結核菌の感染力は強く、院内感染が起こる可能性もあるのだ。実際に起こった例もあるため、日本では十分に管理されている。
「日本からの情報が来る以前、我が国では結核は高山などで治療を行っていましたしね」
「そういえば、結核患者の方たちは普通の病院に移したのですか?」
「ええ、いま仮設のプレハブ病棟で治療しています。まあ、今までに結核で亡くなった方のご遺族からは、ムーの医学界はずいぶん突き上げがあってますが···」
「いえ、仕方のないことです。我々も昔同じようなことがあってますから。今後、正しい治療法で患者を救っていきましょう」
さて、感染症について、魔法を使ってもそれほど症状に変化がないと言われていた。回復力増大や免疫力増大をしても、それほど効果がないという結果がでているからだ。
しかし、それがどういった理由で影響が無いのかがわかっていない。単に意味が無いのか、効いているもののほとんどわからないレベルなのか。
「そもそも、魔法を治療に使うのは、最近では軽度の疾患や慢性疾患を軽減させるくらいにしか使われていないのです。時間のかかる疾患にはコストがかかりすぎて···。感染症は治療が長いというわけではなく、単に効果がわからないという理由から、使用されていませんね。今は投薬のみです」
「感染症に効果がない可能性が高いということはわかりました。ちなみに寄生虫にはどうなのです?サナダ虫とか」
「寄生虫はそもそも魔力で感知しにくいのです。そのため、症状が出てから対処するのです」
「なるほど」
「ただ、人に過剰な魔力を流して、巣くっている寄生虫を殺す、という手段はあります」
「本当ですか」
「ええ、この世界の寄生虫は魔力を持ってますから、過剰に魔力を流すと死滅するのです。寄生虫は目に見えます。研究しやすいので、どんな魔力をどの程度流せばいいのかわかっているのです」
「人にたいしての影響は?」
「あります。ただ、それは数日間魔力酔いになるくらいですよ。後遺症はありません」
「それは素晴らしいですね。日本には魔力を持っている人はいないですし、すぐに使えるようにはなりませんが···」
日本には、実は厄介な寄生虫が多い。あまり知られていないが致死率100%近いものもいる。ただ、症例も少ないため治療法も確立されていないのだ。
「そういえば、流行り病では、日本と似たものもありますな」
「ええ、インフルエンザですね。近年我が国では大きな流行が起こることもあります」
インフルエンザは、いろいろ名称を変えているが、ずいぶん前から存在している。古代エジプトの時代からその存在が知られていたとされる。
つまり、それより前から存在しているのだ。当然、ムーにも存在している。
対処法も確立していないため、重症化しやすい。年間20万人以上が国内外でなくなっているとされる。
「今、日本の工場で増産しています。しかし世界中の人の分はありません。せいぜい第3文明圏と、ムーの分がどうにか確保できるかどうかというところです」
「そうですか···」
「予防接種が出来るかわからない以上、自分でできる予防をするしかありません」
「以前おっしゃっていた手洗いとうがい、それからマスクですな」
「はい、そうですね。やるべきです。ですが、···」
「ええ、効果が薄いかもしれませんね」
ムーでは、浄水等の概念がなく、基本的に井戸が生活水を確保する最大の手段である。その井戸水は汚れているものもあり、清潔とは言えない。
「それは今両国が共同で浄水場等の施設を建設中ですが、今年は間に合わないでしょうね」
会話は続く。まだまだ、日は高い。
自分は医療の知識はないです。そのため今回のはあまり自信がありません。ご了承下さい。
あと、会社の名前とか大学の名前とか、そういうのは適当です。なんとなく収益が大きいとか、最近話題になったとか、そういうので決めただけです。
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空気清浄機
空気清浄機。昨今のインフルエンザの流行や、PM2.5などの大気汚染物質を取り除くことを目的として、発展をしてきた。
そして、ムーでは、この空気清浄機がよくわからない理由で流行っていた。主に上流階級の間で、である。
ムーは、地球でいう産業革命のさなかにある。イギリスの産業革命の様子はずいぶんひどい汚染があったが、幸いこちらでは魔法も発達しているため、そこまでひどくはない。
しかし、空気が悪いのは間違いない。そして、とある会社の幹部が偶然空気清浄機を手にいれたことから、ブームが始まった。
マイカル 竹田製薬マイカル支店
その日、竹田製薬マイカル支店では、進出後初となる現地企業との打ち合わせが行われていた。
「これは何ですか?空気が出ているようですが」
「ああ、これは空気清浄機といって、まあ簡単に言うと空気を綺麗にする機械です。空気中に浮いている小さな物質を取り除くのですよ」
「なんと、そんなものが?」
「まだ使用していないものがいくつかありますので、お譲りしましょうか?ああ、でも電気がないのでしたか」
「いえ、日本からの製品の輸入が始まっていますから、会社には自前の発電機を用意していますから、問題ありません」
「なら、あとで差し上げましょう」
「ありがとうございます」
数日後、クスマ医療薬品の経営戦略部で空気清浄機が稼働を始めた。
「あれ、部長、それはなんですか?」
「ん?ああ、先日日本の大手製薬会社と打ち合わせを行ったのだが、そのときにもらったんだ。空気清浄機といって、空気をきれいにするらしいぞ」
「空気をきれいにですか···。確かに最近空気が汚れてますからね。ラジオでまた喘息患者が増えたって言ってましたし」
実際に、経営戦略部の中でも、所々咳が聞こえている。町中でもそこらじゅうに乾いた咳をしているひとがいる。空気も霞んでおり、あまりいい状態とは言えない。
「まあ、気休め程度かもしれんが、精神的にはいいだろ?」
「確かに無いよりはマシですね」
数日後。
「なんか咳が少なくないですか?」
「やっぱりそう思うか?」
「というかみんな来るの早くなってないですか?空気清浄機も勝手についてますし」
「お前もそう思うか?」
「はい」
空気清浄機を稼働させてから数日が経過し、職場の雰囲気が大分変わっていた。
全体的に仕事を始める時間が早くなり、帰る時間は遅くなっている。咳もほとんどなくなり、静かなものである。
「本当に効果があったとはな」
「確かに、こんなに目に見える効果があるとは思いませんでした。最近はここからでるのが躊躇われるほどですよ」
「いくつか購入するか。予算申請しておかないと···」
「よろしくお願いしますね、部長。ついでに他の部にも教えてみてはどうですか?」
「ウム、それもしておこう」
その後、ムーでは空気清浄機が大流行。最初はムー市民にとって高価であったため、上流階級の間で、一般の経済状況が良くなってからは国全体で流行り始めた。それからは、少しずつムーの空気は綺麗になっていったのである。
ちなみに、空気清浄機大手のSHAPEは、この需要をバネにして自社株を買い戻し、独立を取り戻したという。
非常に遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。これからも忙しいので不安定ですが、今後ともマイカルの日常をよろしくお願いします!
そういえば、マイカルって言う会社があったらしいですね。倒産したらしいですけど。
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限界が迫る建築業界
こんな不定期投稿な作品を読んでくれる人がいるのはとても嬉しいです。ありがとうございます。
日本の企業が様々な国へと進出していくなか、第三文明圏やムーでは次々に日本企業によって高層ビルができつつあった。しかし、材料である鉄やコンクリートの量には限りがある。特に、建築用のものは特殊な合金が多く、生産量も限りがあった。
「え、マジ?」
「はい。1年先まで一杯とのことです」
「···すぐに本部に連絡を。ボルトが確保できなきゃ工事が進められない!」
「わかりました!」
ボルト。あまりピンとこない人がほとんどだろう。建築でそんなにボルトを使うのか?と。
超高層ビルは、だいたい鉄骨を使って建てられる。その鉄骨を繋ぐのに溶接やボルトを使う。しかし、日本でこのボルトを製造しているのは両手で数えられるほどしかない。生産量は合計で一万トン程度で、現在の需要に全く足りていない。
「ボルトが発注できないと工事が始められないな···ちょっと工程表持ってきてくれ」
「どうぞ。着工が遅れるとなると、関係者、特に入居する企業に説明をする必要がありますね。入居を急いでいるみたいですし」
「そりゃそうだろうな。ムー、特にマイカルは今一番勢いのある市場のひとつだ。マイカル証券取引所に八菱UFJ銀行のマイカル支店もできたしな」
八菱UFJ銀行だけではない。三大メガバンクはすでに支店開設の計画を進めつつある。他の地方銀行なども、複数が支店を開設したり、計画をたてている。
つまり、それだけ建物が次々に建設されつつあるということだ。まだ100m級のものはないものの、80m級は建設中である。
ただし、そこで絡んでくるのがボルト不足である。明らかに足りない。ゼネコンなどが建てているものは、ある程度安定して供給を受けていられるが、その他の中小では太刀打ちしようがないのだ。
「そういえば、政府がボルト業者に安定供給を要請したらしいですけど、どうなんですかね」
「いや、無理だろ。休みなしって聞くぞそもそも原材料も高くなってるみたいだし···」
「外国から輸入するのは無理ですしね···」
「もとの世界なら中国やら韓国なんかから輸入してくれば良いだけだが、こっちじゃ使えるボルトは作れないからな。鉄骨も生産を抑えてるみたいだし···」
ボルトがなければ鉄骨なぞあっても邪魔なだけである。そこら辺に積んでおくわけにもいかないので、需要は減る。
そもそも、この一連の問題は、建築の需要が一気に押し寄せたことにある。
簡単にいってしまえば、人手不足である。鉄筋コンクリートで建てる予定だったものが、コンクリート関連の職人が手配できないため、鉄骨に切り替えている。そうなるとボルトが必要だ。
機械は作れば良いが、職人は簡単には育てられない。
経済発展が進むなか、少しずつ問題が起きつつあった。
はい。今回はボルト不足に焦点を当てました。実はちょっと前にニュースになってましたよねこれ。東京オリンピック需要でボルトが不足って感じで。山は越したみたいですけど、こっちに世界だとなかなか洒落にならないんじゃないでしょうか?
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アーケードゲームの再興
昭和から平成にかけ、一世を風靡したアーケードゲーム。近年はスマートフォンなどにシェアを奪われてきた。
そんなある日、国内大手のゲームメーカーが、マイカルを訪れた。ムーへゲームを普及させるためだ。日本にとっての新たな市場。まだゲームなどは存在しない。ならば、こちらからゲームを売り込もうということである。
しかし、ムーについた担当者は、すぐにこれは無理だという結論に至った。
「マジかよ。電気、全然通ってないじゃん」
そう。業務用として少しずつ広まりつつあった電気だが、家庭用のものはほとんどなかったのである。せいぜいどこかの社長の家だったり、軍人のなかでも地位が高い人の家だったりが小さな水力発電や、太陽光パネル、個人の風力発電などを行っている程度なのだ。これでは、家庭用ゲームを売るのは不可能である。電池式のゲームなどもはや製造できない。
ムー地域販売戦略会議
今後大きくなっていくであろうムーにおけるゲームの需要。しかし、技術流出防止法により電子機器があまり輸出できる状況ではなかった。一応、手始めにムーの調査を行ったものの、そもそも家庭用電源がない。経営陣は頭を抱えることとなった。
「SOMYや仁天堂もやはり技防法と電源の対応に苦慮しているようですね」
「ああ、2000年代に発売されたものはほぼ壊滅だろうからな。電池で動く本当に大昔のゲーム機しか販売することができない」
「わが社が異世界でついにゲーム機本体の開発へ復帰できる時が来たと思ったのだがな...」
はぁ...。とため息をつく経営陣。
しばらく会議室が静かになる。しばらくたって、一人がぼそりと言った。
「アーケードならいけるのでは...?」
周りの役員たちがバッ!とそちらを向く。行き詰まっていた会議が動き出す。
「そうだ、確かにアーケードなら完全に固定してしまえば技術解析される可能性も低くなるな」
「いっそのことゲームセンターを直営にするのも良いかもしれません。幸い業務用のものは電気も確保できますし...」
「いっそのことインベーダーゲームみたいな簡素なゲームでも収益は上がりそうだな」
議論が白熱する。がしかし、再び一石が投じられる。
「ちょっと待ってください。そういえば廃棄になる筐体が電子部品が取り出されて解析されるって記事が出ていましたね」
「あ?ああ、だがそれは回収業者だろう。そこまでは我々は口を出せん。出来ることと言えば信頼できる業者に任せるくらいだろう」
「しかし、国から突っつかれる可能性があります。そこまでしっかり対策をしているという姿勢を見せるのがよいのでは?」
「まあ、確かにそうかもしれんな。変なところを突っつかれるのも面倒だ」
社長がそう結び、会議は具体的な戦略についてに移る。
こうして、アーケードゲームの事業が再び動き出した。
□ □ □
3か月後。経済産業省による認可も通り、ムーヘとゲームの筐体が運搬され、直営店の開店準備が進んでいた。
直営店が設置されたのは、SERGAムー本部の一階である。最も管理しやすく、筐体の入れ換えも自由に行える。
「店長、こっちの配置はこれで固定していいですよね?」
「ああ、そこは問題ない。固定してくれ」
技術流出防止法により、電子機器を輸出するのはかなり制限がある。スマートフォンは言うに及ばず、インターネット機能のあるガラケー、ゲーム機。要するに2000年以降のものは全滅。それ以前のものもかなり制限がかかっている。ゲームボーイもダメなくらいだ。
しかし、筐体を固定できるアーケードゲームなら、ある程度新しいものも国外へ持ち出すことができた。もちろん、認可が必要だが。
「いよいよ開店か...」
ムー初の直営店の店長になった瀬賀 明夫。本来、アーケード部門はSERGAインタラクティブの管轄だが、暫定措置として親会社であるSERGAホールディングスに出向していた。
「さて、あとは軽くミーティングをして終わりだな」
時刻は午後5時。明日は早めに店に出てもらうので、スタッフはそろそろ帰宅させることになっている。
「じゃあちょっと集まってください!」
瀬賀の声にしたがって、ワラワラとスタッフが集まる。
「では軽く注意点などを話したら、今日は解散します。明日はちょっと早いけど7時半には来てください。では、まずーーー」
□ □ □
翌日。いよいよ開店時間になった。最初に式典が行われる。ムー本部の幹部が参加するそこそこ大きなものだ。ムーの市民に対するアピールを兼ねるため、大々的に行う。
「この度、ゲームセンターがムーヘ進出することが叶いました。皆様に笑顔になってもらう。それこそが我々の使命ではないでしょうか。まずはこのゲームセンターから、始めていきたいと考えておりますーーー」
次に、SERGA、ムーの幹部たちによる店内の見学。お試しでゲームをやってもらい、楽しさを覚えさせる。
「ほう、これはなんですかな?机みたいだが」
「これは新スペースアタックというゲームです。簡単に言えば、上から来る敵を撃ち落とすというものですよ」
「ほう、面白そうだな。一度やってみよう」
VIPによる見学が終わると、いよいよ一般客の時間だ。初日の来店者数は1000人程度と見積もっていたけれど...!
「て、店長!もう入りませんよ!なんかケンカも起きてるみたいだし!」
「こっちは筐体を壊したって報告も!」
予想以上にひどい状況だった。
最初はまだ人が少なく、ある程度余裕があった。ゲームをどうやってやるかわからない人が多いと思われるので、一般客に扮したアルバイトも雇っていた。そのバイトから説明を受け、ムーの人たちはゲーム内容を理解していった。
しかし、問題はそこからだった。昼過ぎからまた増えた。現在の店内のお客さんの数は概算で1700人。ここまで人が増えると、ちらほらと問題がおき始める。例えば、ずっと他人に譲らない人や、無理やりやろうとする人などが出てきた。ほしい商品がとれないから壊して取ったとか、もう意味がわからない。
そして意外だったのが、レースゲームが人気がない。空いているのにあまりやろうとする人はいない。おそらく、車が普及していないせいだろう。同様に戦闘機や戦車も人気がない。たぶん馴染みのない機械ばかりだからだろう。
逆に人気があったのは、ムシキングスなどのトレーディングカードアーケードゲーム。じゃんけんに類するものはムーにもあったし、虫ということで多少知らなくても外国の虫ということでスルーされたらしい。
そんな分析をして、報告書をまとめて本部へ提出した。
結局、初日はとんでもない数のお客さんが来た。対応は大変だったが、大きな自信もついた。すなわちムーでも、日本のゲームが通用するということだ。
これが、後に仁天堂と再び競いあうようになるSERGAの復活の序章となる。
後にSERGAムー取締役へとなった瀬賀は、「全てはあそこから始まった。今のSERGAがあるのは、当時の役員の方々によるアーケードゲームの再興という強烈な一手のお陰だと考えています」と語った。
久しぶりに投稿しました。遅れてしまいすみません。
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鉄道の再興
日本との交流が始まる前、ムーでは自動車はまだかなり高価なものであり、長距離の移動は列車が圧倒的多数を占めていた。
しかし、日本が来てその流れが大きく変わった。モータリゼーションが急速に進んだのである。富裕層はもちろん、中間層もこぞって日本の自動車を買い求め、列車の利用客は大きく減ってしまった。
ムー国立鉄道会社 本部小会議室
「この四半期は乗客が減りっぱなしです。この流れを変えないと赤字からの脱却は難しいですぞ」
「しかし、自動車の方が自分のいきたいところへ直接行くことができるからな。どうしようもない」
「結局、一番の問題は利用客が減っていること。ならば増やす努力をするしかあるまい」
「「「うーむ...」」」
今日もまた、あまり話が進まずに時間が過ぎていく。
ムー国立鉄道会社取締役のルーメン・キブレは、休日にとある路線に乗っていた。わざわざ一番高い一等車に乗る気はなく、二等車でゆったり座っていた。妻と子供は家で過ごすという。まあ、妻が何かを察して送り出してくれたようなものだったが。
ムー国立鉄道会社の本部があるオタハイトから目的地であるマイカルまでは、そこそこ距離があり、基本的にはずっと海岸線近くを通る。この時期のムー東海岸は気象が穏やかで波も荒くない。風光明媚な景観である。
「やあ、すみません。お隣は空いてますか?」
誰かが声をかけてきたようだ。だが知り合いの声ではない。誰だろうか。
「はい。どうぞ」
「では、失礼」
そこにいたのは、髪がきれいに白くなっている高齢な人だった。まあ、私ももうそろそろ老人と言われる年齢だ。親近感を覚えた。服がムーの様式とは違っているので、おそらく日本人だろう。
ムーの鉄道を日本人も使うようになったんだなと少し気分がよくなった。そこでふと思い付いた。この日本人にムーの列車の感想を聞いてみようと。ムー人ばかり気にしていたが、新しい視点がほしい。
「失礼ですが、日本の方ですか?」
「ええ、そうです。ムーには初めて来ましたが、自然豊かでいいですね。日本はもうあまり残っていませんからね」
「はは、そう言ってもらえると何だかむず痒いですね」
「そういえば、あなたはどこに行くのですか?」
「いえ。なんとなく乗ったんですよ。仕事に少し行き詰まってしまって」
「なるほど、それは私もありますよ。こうして一人になりたくなるのです」
「どこの国でも一緒ですね」
「そうですね」
お互いの国にことをまだよく知らなかったこともあり、会話が弾んでしまい、結局ご老人が降りるまで列車のことを聞くことができなかった。
「私はそろそろ降りる駅ですね。とても有意義な時間を過ごせました」
「いえいえ、私こそ日本の方に会ったのは初めてなので良い経験になりました」
「では、またどこかで会えることを願って」
「あ、あの!この列車はどうでしたか!」
ご老人は少し考え、ポケットから一枚の小さな紙を取り出した。
「ご用の際はこちらに連絡を。あなたとは良い仕事が出来そうだ」
そう言い残し、列車からおりていった。
私は客席に再び座り、ご老人から渡された小さな紙を見てみると、水戸海鋭治とかいてあった。誰なのだろうか。いや、誰でも良い。この出会いは私にとって良いものになる。そんな気がした。
ある日のムー経済新聞朝刊の記事
日本の鉄道デザイナー、水戸海鋭治氏のデザインした特急列車「Trevit」が本日からムー国立鉄道会社にて運行開始。式典にはルーメン・キブレ会長も現れ、大きな話題を読んだ。二人は数年前から知り合っておりーーー
たぶん補足あった方がいいと思うので一応。
最後に列車の感想を聞いて名刺を渡したのは、「自分なら改善案を提示できる」と考えているからです。しかし、直接言うのは失礼ですから、名刺を渡した、というわけです。
そしてルーメン取締役は最初は意味がわからなかったですが、他の人に聞いて水戸海氏の考えが理解でき、日本へ依頼をしたというわけです。
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日本へ押し寄せる諜報の波
では、どうぞ。
日本が異世界へと転移して数年がたち、第三文明圏やムーでは日本の会社による重厚長大の産業も育ってきていた。
もちろん新世界の地元企業はかなり少ない。日本以外の国ではそもそも学校が無いに等しいためだ。また他国の住民が日本企業に就職しても、専門知識や資格が皆無なため任せることができるのはせいぜいレジや商品の補充などアルバイトのような仕事内容となってしまっていた。
このような状況であることは各国政府、また日本側にとっても良いことではなかった。結局、日本人の仕事が増える一方だからである。そのため、人材の育成を開始した。ムーにつくられた、マイカル産業技術大学をはじめとする学校がそれである。
こうした努力により、世界全体の識字率が上がり、日本へと留学して来る学生すら出てきた。さらに、日本企業へと就職するものも出てきた。
4月 東京 八菱重工
「すいません相沢さん、これ見て欲しいんですけど」
「ん?どうしたんだ山坂。お前が来るなんて珍しいな」
「まあ、そうなんですけど...ちょっと見て欲しいものがありまして」
山坂は相沢の高校からの後輩である。仲が悪いわけでもなく、適度な距離感を保っている。
ちなみに山坂は防衛航空宇宙セグメント企画管理部統括部リスクマネジメント課に所属している。いわゆる国防、宇宙及び航空機における他企業・組織からの干渉がないか、機密が保たれているかを管理する部門である。
そんな部門の社員が統合経営戦略室へと足を運ぶのはただ事ではない。何かおおきな問題が発生した可能性がある。
そう判断した相沢は机の上の書類をわきにおしやり、山坂のパソコンを置くスペースを確保した。
「よし、話をしよう。見せてくれ」
「はい。これです」
「これは...長船か」
山坂が見せてきたのは長船と呼ばれる長崎造船所の映像だった。ドック内をうつす監視カメラのひとつからのもののようだ。
「では、再生します」
再生される映像。特に何か問題があるようには見えない。夜でも明かりがある程度ついているので視界に困ることもない。
「別におかしなことはないように見えるが?」
「あと少しです」
なんだ、まだなにも起こってないのか。ん?今人が通ったような。
「今の誰だ」
「分からなかったようです。この時間じゃ人もいません。これがわかったのも警備会社による報告によってですね」
「じゃあ誰が入ったんだ」
「...実は、まだ推測なんですが」
いいよどむ。何か言いにくいことなのか?
「なんだ、はっきり言え。場合によっては社長案件だぞ」
「その...外国人かと」
「それは新世界側による技術の奪取が目的と思われるということか」
「はい。今回の被害は道具です。現時点で6つ紛失...ということになっていますが、盗まれたのだと思われます」
「警察への連絡はしたのか」
「はい。長崎県警察へ連絡を行ったとのことです」
すでに警察へ連絡をしているのはまあ良い。だが外国人の関与している可能性がある。これは民間の会社では対処できないな。国が動く案件になりそうだ。
「よし、とりあえずこの件は社長にあげる。その後の対応がどうなるのかわからないが、色々と準備はしておけよ」
「は、はい」
山坂は嫌そうな顔をして部屋を出ていった。これから資料をまとめるのだろう。さて、こちらも調査をするとしよう。
1週間後 社長室
「なるほど、長船にな...」
「はい、統合経営戦略室と防衛航空宇宙セグメント企画管理部統括部からの報告です」
現在社長室には重苦しい雰囲気が漂っていた。現在国内の造船所は需要過多で悲鳴をあげている。そんな中でさらに面倒な案件が降ってきたのである。不機嫌にもなるというものだ。
「はぁ、厄介だな。外国人によるものとは」
「日本側の警備体制を知らないので遠慮がありませんね」
報告によればこの一週間に三回も侵入をされている。警備員がいるのにも関わらずである。そして毎回道具がなくなっているが、最近の侵入ではコンテナに使う材料まで盗まれている。
「一応防衛省、検察には伝えてあります。すでに調査を始めているとのことです」
「長船はどうだ。何か新しい発見は?」
「無いようです。前回警察が監視をしていたにも関わらず侵入を許しているのでかなり警戒しているとのことです」
「最悪回線を引っこ抜けば良い電子機器とちがって完全には防ぎようがないからな。はぁ、本当に厄介だ」
後に新世界初の日本企業への諜報活動として記録される事案は、まだ始まったばかりであった。
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カップ麺を輸送せよ!①
今回はシリーズものです。多分3話くらいで終わるとおもいます。
対グラ・バルカス戦が始まった。ムーからすればはじめての科学技術国家との戦争であり、技術的に劣勢な戦いでもあった。
キールセキ東側避難民テント
アルーが陥落してしばらくして、キールセキの郊外には避難民によるテント村が形成された。
最初は空いていた公共の土地に掘っ立て小屋を建てて対処してきたものの、あまりに数が多く、建てるスピードが避難民の数に追いつかなくなったためである。
そのテントは、日本から自衛隊と民間航空会社が提供された民間の在庫をムー軍が空輸、現地の警察や元気な住民と一緒にテントを建てていた。
さて、ここで問題になったのが食べ物であった。数万人もの食事を毎日用意するのは不可能である。すでにキールセキでも食料の買い占めが起こっているため、容易に食材が手に入らない状態に陥っていた。
中央歴1643年6月5日 日新食品マイカル支社 会議室
「本社から我々に日本へ戻れとの指示が来た」
「まあそうでしょう、アルーが攻撃を受けたという報道が流れていますからな。日本政府としては自国民に危害が及ばないようにしたいはずですからな」
「まあ、私たちだって死ぬのは嫌です。守るべき家族がいる。ただ......なにもしないまま帰るってのは性に合いませんよ、支社長」
「まあ、私もこのまま放っておいて帰るのはな。さて、では確認する。いま在庫はどの程度ある」
「現在展開している13種類の商品それぞれに5万食はあると思いますよ。ムーの購買力はかなりのものですから」
3人は顔を見合わせてニヤリと笑う。
「クビ覚悟だな」
「まあ、十分蓄えはありますし、問題ないですよ」
「カミさんに怒られそうですな?」
3人は、動き出す。
☆
「いまあるトラックは20台、最前線まで運ぶわけにはいかないからそこからはムーに任せよう」
「社員にはどう説明する」
当たり前のことだが3人の中では社員を危険にさらさないことが絶対条件となっている。先頃の自動車専用船のこともあり、気が抜けない。
「社員には志願者だけ行ってもらうしかないですな。マイカル行政側にも日本の免許持ってる人がいたはずですからそちらに人員要請するのも良いかもしれません」
早くからマイカルに進出していた自動車教習所は、現在2ヶ所に増え、他の都市にもいくつか設置され、ムーの道路規則の日本化が進んでいる。都市部ではある程度道路整備も進んでいるため、日本車が普通にはしることも可能だ。
ただし、レイフォル側にはまだ整備が届いていない。いわゆるコンクリート道路があるだけである。
「よし、とりあえず自社で用意した20台の車両に積み込む作業を始めよう。時間が惜しい」
現在のトラックは大型3台と中型トラック17台である。単純計算でカップ麺は一箱20個入りで2キロなので
大型トラックは一台につき10トン程度積めるので5000箱10万食分、中型トラック一台につき最大4トン程度積めるので、2000箱積める。4万食分だ。
だがこれでも1ヶ月のうちに消えてしまう数でしかない。水も含めるとさらに短くなる。
そして途中悪路であることを考えると、限界まで積む訳にはいかないのである。
「とりあえずラーメンを優先しよう、軽いし、数が多いからな。余裕があったら飲料も持っていこう」
☆
「というわけで、キールセキに食料品を運んでくれる者を募集したい。これで昇進になるとか、クビになるとかそういう話はない。さらに言えば給料の増額なんてこともない。やってくれる者は今日の昼までに私に申し出てくれ」
既に倉庫ではトラックへの積込が始まっている。マイカル行政への話も既にしており、地元がキールセキ方面の職員が手伝ってくれることになっている。
しかし、それでもまだ10人しか集まらない。キールセキで活動することを考えると、少なくとも30人くらいほしいところだ。
「俺、行きますよ」
ひとりの社員が手を挙げる。若い社員だ。
「私も行きたいです」
そういって次々と手が挙がる。
結局社内で14人集まった。
誰も好き好んで戦場に行きたいわけではない。下手をすれば向かっている途中で攻撃を受けるかもしれないのだ。ただ自分がやれることはやりたいと思っているだけなのだ。
☆
昼過ぎ、社員とマイカル職員たちは日新食品の倉庫へ集まっていた。
「我々は全部で24人しかいない。そしてキールセキまでは約2200km近い距離がある。従って、二人一組で交代で運転をするほかない。つまり動かせるのは12台ということになる」
鉄道は現在、軍の物資、兵隊の輸送を行っており、民間が使うことができない。飛行機はそもそもまだ本格運用が始まっていない。やはり自動車で行くしかなかった。
一応20台に食料品及び飲料を詰め込んだものの、8台分は置いていく。水は多めに持っていくことになり、12台のうち大型3台と中型2台が水、残り中型7台がカップ麺ということになった。
「では出発する!副支社長、留守を頼む!」
「わかった!こっちでもほかの業者に声をかけてみる!」
マイカルから総勢12台のトラックが次々と出ていく。目指すはキールセキだ。
今回は全然調べていません。実際の企業だったらこんなことやらないですよ。
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(閑話)B、AからYへ
日本が転移して4年、日本では航空機の不足が深刻化していた。
すでにあるB社製やA社製のものは古くなる一方であり、リバースエンジニアリングにも時間がかかっている。航空会社はこのままでは稼働できる機体が無くなると危惧していたのである。
しかし、日本では運良く久しぶりの国産機、八菱スペースジェットが開発中であった。
このような状態では一刻も早く八菱にスペースジェットを完成して貰うしかない。日本政策投資銀行、産業革新機構、航空会社そして八菱UFJ銀行は八菱航空機への1兆3000億円規模の融資を行うと発表、航空機開発における本気度を示した。
「そんなこと言ったって人が足りません!アメリカの資料はこっち(本部)でバックアップとってますけど、それでも限界です!人が欲しいんです!」
「金があるのに人が足りないとは。日本の人材の少なさがモロに出てきているな」
「正直中途採用なんてできるほど人材はいませんよ。自動車関連から作業員だけでも引っ張ってくるしかないですよ」
融資を受けた八菱航空機では幹部たちが大騒ぎであった。金をどっさり渡されて、早く作ってくれと言われても困るのである。人がいない。機械も日本では製造していなかったものもある。まずはそれらをどうにかしなければならない。
「八菱重工の方にマザーマシンをリバースエンジニアリングしてくれるところを紹介してもらおう、ただしその間は製造が遅れそうだな」
「今配線の再設計中です。終わったところから試作機に反映させていますが限界があります」
「部品のリバースエンジニアリングは終わりつつあります。国産に切り替えられそうです」
やることはたくさんある。各国への空港整備も進んでいることもあり、すでに以前の数倍の受注を受けている。そのなかには、政府専用機として購入することを決めている国もある。
「よし、急いで次の試験機を完成させるぞ。急いでいても安全には十分に考慮したものを作るんだ」
「まあこんな状況なら国交省もちょっとくらい制限を緩和するかもしれないですね」
ひとりの幹部が呟く。
「そんな気持ちで挑んではダメだ。緩めたら乗客に危険が及ぶかもしれない。命を預かるものを作っているということを忘れるな」
「は、はい。申し訳ありません」
「よし、では今日はここまでとする各自各部署へ方針を伝えてくれ」
精鋭たちが、動き出した。
その後、八菱航空機は世界の標準となった。純粋に技術力と資金力があったためである。
しかしそれに溺れることなく、新しい技術を取り入れ、ニーズを調査して世界最大の四発機、八菱スペースジェットL100を開発して、広大な世界の距離を縮めたのである。
神聖ミリシアル帝国は独自に航空機を製造して一定のシェアを持っているものの、八菱航空機の半分程度であり、今後も首位を守ることができると予測されている。
八菱航空機の躍進は確実ですね。TwitterにはM90ベースのクワ・トイネ公国の政府専用機のイラストをあげています。興味があればご覧ください。
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異世界に広がる感染症
感染症(かんせんしょう、英語: infectious disease)とは、寄生虫・細菌・真菌・ウイルス・異常プリオン等の病原体の感染により、「宿主」に生じる望まれざる反応(病気)の総称。(Wikipediaより)
インフルエンザは、毎年日本を襲う。あまり知られていないものの死者数は多く、一年で日本では一万人、世界では五十万人もの死者が出ているといわれている。
そう、日本が転移してきた時、インフルエンザその他の感染症もついてきたのだ。
マイカル病院 内科
「次の方、どうぞ」
「先生、子供を助けてください!」
その日はなぜか忙しかった。風邪の患者が多いのだ。今までのものとは少し違うような気もするが、まあ、風邪だろう。
ここマイカル病院は日本から医者を招き、診療から薬の処方までを一貫して行うマイカルでは最もおおきな病院だ。そのため現地指導医として、日本人医師が数人勤務している。
毎日夜にミーティングを開き、異常が無いかを確認して、異常があれば即座に対処する。
ただ、今日はあまりにも患者が多いため、私は昼休憩に円藤先生に相談してみることにした。
「円藤先生」
「どうしましたか?ペリン先生」
「なんか風邪の患者が多くないですか?今年は異常ですよ。去年はこんなことなかったのですが」
「うーん、何かあるのでしょうか?いつもはどんな感じですか?」
「いつもは冬も夏もあまり変わらないですよ。ちらほらと来るくらいで...」
「うーん、取り敢えず少し様子を見ましょう。もしかすると新しい感せn、あ」
円藤先生が突然言葉を切った。
「すいません、患者の症状を教えてもらえますか」
「えーと、基本的に高熱、鼻づまりがあって節々が痛いと言っていました」
「ま、まずい」
「え?」
顔を青くした円藤先生は、デスクの上にあった電話を取ると、慌てた声で私にこう言ってきた。
「私の方から日本の領事館へ連絡をするのであなたはマスクとアルコール消毒を。インフルエンザの可能性があります!」
数日後、町はインフルエンザの患者で溢れた。
「日本政府はムーへの緊急支援をします」
最初に動いたのは日本だった。円藤医師からの連絡を受け、急いで薬品をかき集め空輸する体制を整えた。
幸運だったのは、日本でのインフルエンザの流行は例年と比べて小さく、抗ウイルス薬が多少余り気味だったことだ。おかげで企業側に増産を要請したりすることなくスムーズにことを進めることができた。
ムー産業新聞
『今流行っている風邪は日本からのものの可能性』
マイカル工業新聞
『日本政府、迅速な支援を決定。我が国への薬品空輸を準備中』
西部ムー新聞
『医療機関がキャパシティオーバー、町中が患者で溢れる』
マイカルラジオ局
「さて、続きまして勢いが衰える様子のないインフルエンザについてです。先ほど日本政府がムー政府に対して緊急支援を申し入れたと発表がありました。これに対しムー政府は支援の受け入れを決定、空港の受け入れ体制を構築するとのことです。続いてのーー」
ムーでは、日本が原因である、責任を取って補償しろという声と、純粋に支援をありがたいというものだ。
ただ、今回のことを契機に、日本とムーは国際的な医療機関を結成して、さまざまな病気に対処しようという共通認識を得た。
日本にとっては地球にいなかったウイルスや菌類、バクテリアなどは脅威だ。異世界側にとっては、日本にいたものは未知である。
斯くして、ムーで発生したインフルエンザは終息した。しかし、異世界における医学界の発展はようやくスタートラインに着いたばかりなのだった。
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服が足りない!
ムーへの日本企業進出が止まらない中、ついに工場をムーへと建設する動きが出た。
もちろん、新世界技術流出防止法があるため、最新機器は使えないし、最先端の技術を用いる重化学工業は認可すらされなかった。それをやったらどうなるか、地球で痛い目を見ているためだ。
そうなると、自ずと進出が可能な分野は絞られる。
途上国でも生産できて、ある程度人の手が必要で、それでもあまり重要な技術ではない。
そう、軽工業である。日本で軽工業というと、一般的には富岡製糸場などから始まる繊維工業や、それらから作られる洋服産業などと思われがちだが、だいたい間違いではない。
特に、こちらの世界では衣服の質はかなり悪く、日本の格安の服や古着屋の在庫がかなり海外に流出し、日本国内の衣服が枯渇するという訳の分からない状況になりつつあった。
政府としても、企業としてもこの機を逃さず莫大な投資をしてシェアを拡大したいと考えてはいるが、日本国内ではバブル期を超えるレベルで経済が活発化しており、わざわざ安めの給料な衣服工場に来てくれる働き盛りの人間はなかなかいない。
そこで目をつけたのが周辺の親日国家である。が、ここで大きな問題が起きた。周辺の国々は、見ればわかるように家内工業がメインであり、そもそも文明のレベルが違いすぎて機械を扱えない。根気よく教えるなら可能だが、現状少しでも早く操業を開始したい。ではどこなら可能か。近代レベルの国家で日本とはそうそう対立しない国。この条件に当てはまるのは、ムーしかいなかった。
現在一般的に使われているミシンは、1850年に発明されたものであり、三笠と同じような年代に登場している。当然、ムーでは似たものが発明されており、かなり好評を博していた。もちろん、日本のミシンによりかなり売り上げに影響が出ているようではあるが。
閑話休題。
さて、とにかく進出先は見つかった。が、問題はこの先である。ムーからすれば一般の店舗はまだしも、生産拠点である工場を日本が作る規模で建てられてはたまらない。既存の業界が破綻しかねない。という主張のもと、企業連合やカルテルを組んで対抗を始めた。政府の人間も一部反対を唱え始めた。
「現在の状況では工場を建てても下手をすると襲撃とかされかねませんな」
「流石にないと思いたいですが...。こちらとしても数百人単位で雇用を生み出してくれる工場の進出に反対してないんです。反対しているのは特に小さな服屋です。店が潰れると思ってるんでしょう」
「どういうことでしょう?」
「つまり、あなた方が服を作って、店を建てて売ると思ってるんです。ムーでは作った業者から仕入れるというのはまだあまりないですからね」
ムーはようやく産業革命が進んでいる段階にあり、まだ経済的には地域単位の動きがほとんど。日本との接触後、急速に地域間の統合が始まっているものの、人間の考えはそうそう変わらない。
「いっそのこと一般市民に大々的に雇用の募集を出しましょうか。裁縫をやったことがある方を優先すれば、勘違いしてくれるかもしれません」
「あ、私たちを組合か何かと勘違いするということですか」
「そうです。それで実際に働いて貰えば、認識を改めるかもしれません。ここは作るところであって、売るとこではないということを」
そもそも問題になっていたのは、自分の作ったものが売れなくなることで収入がなくなってしまうこと。特に町の服屋程度では潰れるしかない。が、そもそも前提が違う。作ることに特化するという認識を、服屋にわかってもらうことが重要なのだ。逆に、売るときはもはや大店に対抗するのは不可能になるのは目に見えていた。
結局のところ時間の問題であった。偶然日本が来て、早くなったというだけ。国家間ならば優先的に仕事を与えることができるが、完全な民間での話ならば、そんなことは無視されていたはずである。
2年後、無事操業を開始した大手縫製メーカーの工場では、反対していた服屋の半数程度が働き始めた。俺もその1人だ。最初はどうなることかと思っていたが、引っ越してきた者には社宅とかいう家が用意されていて住む場所にも困らない。結局、こっちの方が安定していた。月々の支払いがギリギリになる、なんてこともない。
「あぁ、生きてるなぁ」
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工場ができた小さな町では、たくさん人が引っ越してきたことで駅ができた。店が増え、さらに住宅が増えた。大きな店もでき、便利なところということでさらに人が。
いつのまにか工場が町から姿を消しても、発展を続けていく。やがて、服の街と呼ばれたその町が、デザインの街と呼ばれるようになるのは、また別の話である。
お久しぶりです。KAIZUです。本当に久しぶりにマイカルの日常更新です。久々にこういう感じのもの書くと意外と楽しいですね。最近はなろうの方の作品や3D、ニコニコの漫画ばかりやっていますが、ふと書きたくなりましたw
最近ハマってる3Dはイタリア艦を作っているのですが、実はあれは実験的なもので、どうやって船って作るのかを探ってる状態です。本命は次、ミスリル級戦艦。以前作ったものはカクカクでせいぜい作画参考資料レベルだったので、今回は1/700くらいでも通用するようなディティールを、と考えています。
ついでに言えば、アニメも描いてたんですがあれは一旦ボツになりました。船とか飛行機とか手書きだといつまで経っても終わらないと思ったためですね。
ではまた。
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