花の魔術師がベル君に憑依しました。 (天道詩音)
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花の魔術師がベル君に憑依しました。その1

 

 村を追い出された。

 

 そんな悪いことでも無いと思うんだけどね。

 村の女の子全員に手を出しただけで追い出すなんて酷いんじゃないかな?

 今はオラリオと呼ばれている迷宮都市に向かっている。なんでも、誰も底を見たことが無い深い迷宮を中心に都市が立ち並び、迷宮で魔石を採取して、資源として発展を遂げている都市らしい。

 迷宮にはモンスターが居るらしく、それを倒すことで魔石が手に入るらしい。迷宮を冒険してモンスターを倒してお金を稼ぐ、冒険者と呼ばれる仕事が人気らしい。

 確かに魔物退治でお金を稼げるなんて楽な仕事だよね。私も冒険者をやってみようと思っている。考えるより体を動かす事の方が実は得意なんだ。

 

 今はオラリオに向かう荷馬車の後ろに乗せてもらって、ゆっくりと目的地へ向かっていく。

 時間もあることだし隣に座っている可憐な君に、私の話をしよう。冗談だと思って聞いてくれたらいいよ。荒唐無稽な話だからね。

 

 私は昔、マーリンと呼ばれていた魔術師だったんだ。今のベル・クラネルって名前に変わる前は世界を救う手伝いをした事もあるんだよ。

 今は無くなってしまったけど、私には世界を見通す目があったんだ。その目であの子の旅路を眺めるだけじゃなくて、共に歩めたのは本当に美しい思い出だよ。あの子が世界を救って、私は塔に帰って、世界を眺めるだけの日々に戻ったんだけどね。気が付いた時には何故がこの身体に変わっていたんだ。

 その時の記憶が無いからなんとも言えないけど、世界から排他されたんだろうか?私に干渉できる存在なんてそう多くは無いと思うんだけどね。平行世界どころか別世界に転移させるなんて魔法の範疇も超えてそうだけど、私が知覚出来ない程の上位存在が干渉してきたとか?でも何故?まあ、元の世界には戻れないから、考えても仕方ない事を考えるのは止めようか。

 それでこの世界に飛ばされたのは魂か意識だけだったみたいで、別の身体に憑依してしまったみたいなんだ。その身体の持ち主がベル・クラネルって名前だったのさ。

 

 それからは、ベル・クラネルとして生きてきたんだ。小さな村にただの村人として生まれて、女の子に声を掛けたり、女の子と遊んだり、女の子と夜を共にしたりね。毎日が楽しかったさ。

 結局、村の男達の嫉妬で村を追い出されてしまったけど、楽しい日々だったよ。オラリオには美人が多いって聞いてね、今からすごい楽しみなんだ。世界を見通せないってのも悪くないね。私の目を通して、未知を知っていくのも良い物だよ。

 

 さて、あれがオラリオの門だろうか?長い間、私の話を聞いてくれてありがとう。君は聞き上手だね。それに美人だ。どうだい、この後一緒にお茶でもしないかい?

 止めておく?うん、残念だけどそれも君の選択だ。

 君の辿る道行きに花の祝福があらんことを。なんてね。

 

 それにしても広いな。先に見える塔は雲よりも高く伸びている。かつてのキャメロットよりも巨大な都市のようだ。門で荷馬車から降ろしてもらい、礼をしてから門をくぐると人でごった返した大通りに出た。随分賑わっているね。それに美人も多い。

 取りあえず可愛い子に声を掛けて、ギルドの場所でも聞こうか?近くに居る薄緑色のエルフ耳の女の子に声を掛けるとしよう。

 

「すまない。そこのお姉さんちょっと良いかな?」

「…………私ですか?……何でしょうか?」

「オラリオには初めて来たのだけど、ギルドって建物は何処にあるか教えてくれないかな?」

「……この道を真っ直ぐ進めば、白い大きな建物があります。それがギルドですよ」

「なるほど、簡単にたどり着きそうだね。感謝するよ美人のお姉さん。お礼にお茶でもどうかな?」

「…………仕事中ですので、失礼します。それでは」

「残念だねぇ。でもありがとう。助かったよ」

 冷たそうに見えて、意外と優しそうな女の子だったね。さて、真っ直ぐ進んで行くとしようか。

 

 あれがギルドかな?ギルドは冒険者の登録を行っているらしい。冒険者になるにはファミリアと呼ばれている、下界に降りた神達が人々を集めた組織に入らないといけないルールがある。神は人々に恩恵を与えて、それでモンスターと戦えるようになるらしい。

 この世界には神々が普通に存在しているらしい。すでに神威を感じる美人に何人も会っている。あれが神なんだろうね。いずれ声を掛けるとしよう。美人なら人でも神でも亜人でも誰でも構わないさ。

 

 白い建物に入って、建物内を見渡すと職員の居るカウンターには並んでいる列と空いているとこがある。ふむ、可愛い子の前には長い列。男の前は空いている。どうしようか?

 時間は有限だ。こんな所で時間を無駄にするのは勿体ないね。早く冒険者にならないとお金も尽きてしまうのだから、何処に並ぶかはなんてもう決まっているさ。

 

 もちろん一番長い列に並ぶしか無いでしょう。

 男と話すほど無駄な時間は無いだろう?美人と話して、私が入れるファミリアについて相談しよう。ついでに食事に誘えれば完璧だね。果たして、この一番長い列の先にはどんな美人が待っているのだろうか?先ほど話したお姉さんも中々の美人だったけど、この先の女の子はどうかな?聞こえてくる声から美人なのは分かる。それに年上だろうね。性格は真面目で仕事一筋になりそうなタイプだと予想する。さて、どんな美人かななんて予想していたら次は私の番だ。

 

 前の人が帰って行くと、目の前に現れたのはやはり美人だった。真面目で世話好きそうなお姉さんだろうね。眼鏡もよく似合っているよ。

 

「お待たせしました。ご用件は何でしょうか?」

「ギルドでファミリアの紹介をしていると聞いて来たのだけど、相談に乗ってくれないかな?」

「ファミリアの紹介ですね。冒険者の経験はありますか?」

「無いね。オラリオに来たのも今日が初めてさ」

「種族はパルゥムですか?」

「いいやヒューマンだよ」

「……ちなみに年齢はいくつかな?」

「今年で14歳になったね」

「……お名前を教えてくれる?」

「ベル・クラネルさ。ベルと呼んで欲しい。お姉さんの名前も教えてくれないかな?」

「エイナ・チュールよ。ねえ、ベル君。冒険者は危ない職業なのは知っているかな?」

「モンスターを倒して魔石を集めてお金を稼ぐのだろう?知っているさ」

 なんだか雲行きが怪しくなってきたかな?お姉さんの性格的に私の見た目で判断をされると冒険者にはさせたく無いだろうね。その優しさは私には不要なんだけど、どうやって説得しようか?

 

「命を失う危険があるのよ。まだ14歳のベル君がわざわざ危ないことをしなくていいのよ」

「いや、早くお金を稼がないと持ち金が尽きそうなんだ。住んでいた村から追い出されたからここで稼ぐしか無いんだよ」

「そう……でも冒険者以外にも働ける場所はあると思うの。それに少しならお金も貸してあげられるわ。だから冒険者は止めておきましょう?」

「心配してくれてありがとう。だが、これでも腕には自信があるんだ。冒険者でやっていける自信はあるよ」

「ならベル君。モンスターと戦ったことはあるの?倒したことはある?」

「…………ドラゴンくらいなら倒したことはある……よ?」

「ダンジョン以外にドラゴンなんて居ないわよ!まったく嘘ついちゃだめよ。やっぱり冒険者は止めましょう……少し待っていてくれるなら、一緒に働けそうな仕事を見つけに行きましょう?」

 この子はとても優しい子なんだろう。それに意思も固そうだ。一旦引いて、自分でファミリアを探した方が早そうだね。

 

「少し考えてみることにするよ。でも、もし冒険者になったらサポートはよろしく頼むよ」

「……分かったわ。もし冒険者になったら絶対私のところに来るのよ。厳しい指導してあげるから、覚悟しておきなさい」

「わかった。楽しみにしておくよ。ではまた、ありがとう」

「ええ、ベル君もがんばってね。何かあったら冒険者とか関係なく相談に来てもいいからね」

 お姉さんに礼をしてからギルドを出る。いつの間にか夕方になっていた。今から入団できるファミリアを何軒か探してみようか。適当にこっちの道を進んでみようか。

 入団するファミリアの神は可愛い子だと尚更いいね。それに美人の団員が多ければ更にいいと思う。主神はともかく、団員は美少女ばかりと噂のロキファミリアに入れればいいんだけれど、どうだろうか?とりあえずロキファミリアを探しながら道中のファミリアに入れるか聞いていこうかな。

 

 何軒かのファミリアに入団できるか聞いてみたけど、直ぐに断られてしまう。見た目が子供なのが問題か。幻術を使って、かつての姿に戻るのもいいけど、これからずっと幻術を掛け続けるのは面倒だからねぇ?このまま入れるところを探すとしようか。

 

 おっと、大通りから外れた所にもファミリアがあったね。ここも入団できるか一応聞いてみよう。ノックをすると少しして、大男が出てきた。まあ、とりあえず聞いてみようか。

 

「すまない。ファミリアに入団したいんだが、どうかな?」

「ここは子供の遊び場じゃねえ!帰れ!」

 おっと。勢いよく扉を閉められてしまった。まあ、中を見た限り男ばかりだったから、入団しなくて正解かもね。

 

「ねえ、君はファミリアを探しているのかい?」

 鈴の音のような可憐な声が聞こえ、振り向くと小柄でも、たわわな二つの果実が実っている、こんな裏路地には似つかわしくない可愛らしい女神がそこにいた。

 

「その通り。ファミリア大募集中さ!」

「なら僕のファミリアに入らないかい?」

「喜んで入らせて貰うよ」

 ノータイムで答える。美人の願いは断れないよね。特に好みの女性の願いなんて断れないだろ?

 

「ほんとうかい!?嘘じゃないよね?もうキャンセルは利かないぞ!」

 不安な予感がするけど、断らないよ……?それになんだか神らしい神よりは、こんな人間らしい神様の方が楽しそうだからね。

 

「ボクの名前はヘスティアさ。君の名前を教えてくれないかな?」

「私の名前はベル・クラネルだよ。ベルと呼んで欲しい」

「ベル君!いい名前じゃないか!これからよろしく頼むぜ!」

 

 こんな路地裏で女神と会うなんて運命的な出会いも悪くないね。

 

「よろしく。ヘスティア」




ダンメモのメンテが長かったので暇潰しに書きました!

今週中には次の話を投稿する予定です!
(21日の17時に予約投稿しました!)

一回見直したんですけど誤字が多かったですね。
もう一回見直したので誤字は減ったと思います!

Q.何故にマーリン異世界転生したの?
A.マーリンもよく分かって無いですが、ニャル様あたりが面白そうだからって転生させたのでは?そもそもアヴァロンに居るマーリンに干渉できる時点で上位の存在なのは確定ですね。


人物紹介
ベル・クラネル(マーリン)
何故が異世界転生させられたマーリンがベル君の体に宿りました。
身体はベル君。中身はマーリン。
FGO完結後のマーリンがこちらに来た感じです。FGO主人公の旅路を見届けた後なので、前の世界に未練はほとんどありません。
ベル君が生まれる前からマーリンが入っていたので、マーリンの身体のようなものです。
村では女の子に手を出しすぎて、追い出されました。マーリンだから仕方ないですね。

荷台の子
面白そうな物語として聞いていました。
お茶はノーサンキュー。名前も無いオリキャラです。でも美人な子。

薄緑の髪の女性
どこのリューさんでしょうか?
だんまちで大好きなキャラなので登場&道案内して貰いました。
このベル君は手を握ることが出来るんでしょうか?

エイナさん
世話焼きなお姉さん。
そこらの女神より女神してます。
マーリンならなんて呼ぶんでしょう?
普通にエイナさん?エイナ?
今回はお姉さんでした。
眼鏡姿がよく似合う、年上のお姉さんですね。好きです!

ヘスティア
もちろんヘスティアファミリアに入団ですね!
ロリ巨乳な女神様。
マーリンの好みはアルトリアだと思っていますが、ヘスティアのことも気に入ったようです。
マーリンベル君と一緒に住む処女神の貞操は護れるのだろうか?

ロキ
主神はともかくなんて噂されていて……ドンマイです。
好きなキャラではあるんですよ?
なんだかんだちゃんと神をやってる素晴らしい神さまです。


マーリン視点は難しかったです。マーリンらしくなっていればいいんですけどどうでしょう?
小説を書く練習中なのでコメントを頂けると助かります!
誤字や変な表現など見苦しい点があると思いますが、ご指導や感想などあればよろしくお願いします!
閲覧ありがとうございました!


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花の魔術師がベル君に憑依しました。その2

 

「ここがボク達の愛の巣さ!」

「ずいぶん風情のある教会のようだね……」

 ヘスティアに連れられて、ファミリアの拠点と思われる所にやってきたけど、今にも崩れ落ちそうなこの教会が拠点らしい。チェンジでいいかな?

 

「では私はこれで失礼するよ。またね」

「ちょっ! ちょっと待っておくれよベル君!」

 後ろを向いたところで『ふにゅん』と柔らかな感触が背中に押し付けられた。冗談だったのだけど、役得だね。見たときにも思ったけど、かなりの大きさだよこれは。

 

「もちろん冗談さ。ヘスティアが居るならこんな廃墟でも楽園だよ」

「冗談なんて酷いぞーベル君! これでも地下はちゃんとしてるんだぜ! 取りあえず暗くなってきたし入ろうか?」

 ヘスティアを弄るのも楽しそうだね。弄りがいがありそうでこれからが楽しみだよ。女の子と同じくらい弄るのも好きなんだ。ツインテールを楽しそうに揺らしながら前を歩いているヘスティアについて行く。

 教会の中に入り、階段を降りて扉の鍵を開けて貰い、中に入ると上とは違って人の住める空間があった。

 リビングとキッチン、それに扉が二つある。寝室とトイレかな?確かに地下はちゃんと暮らせそうだね。上の教会は屋根と壁に穴が空いていたからねぇ。

 

「どうだい、なかなかきれいだろ?」

「部屋はそんなに悪くないね。それで他の眷属はどこに居るのかい?」

「け、眷属は君が初めてさ! 光栄だろう……?」

「今日は楽しかったよ。いつか眷属が出来る日が来るさ。じゃあね」

 また背を向けると『たゆんっ』とたわわな感触が感じられた。癖になってしまいそうな幸福感を感じるね。このやり取りにはまってしまいそうだよ。

 

「ベル君行かないでえええ! 眷属なってくれるまで離さないからなー!」

「これも冗談さ! ヘスティアの眷属になるよ。こんな可愛い神様がいるんだ。眷属が私一人でも十分さ」

「あ、ありがとう! でもベル君? なんだか手慣れてないかい?」

「そんなことないさ。それより恩恵を授けて欲しいかな」

 村の女の子全員と遊んだくらいだよ?手慣れてはいないさ。この身体ではね。

 

「そうだね! それじゃあ早速、恩恵を刻むとしようか! ボクにもついに眷属ができるんだ!」

「おめでとう。私も君の初めてになれてうれしいよ」

「ボクもうれしいぜ! 取りあえず、上着を脱いでベッドにうつ伏せになってくれるかい?」

 ベッドに座って上着を脱ぐ。目を両手で塞いでいるけど、隙間から覗いているのが見えているよ。まあ気にしないで上半身裸になり、ベッドにうつ伏せになった。

 

「そ、それじゃあ恩恵を刻んでいくよ。ちょっと熱くなるかも知れないけど我慢してね」

 ヘスティアが私の尻に跨がり、ごそごそ動いている。何をしているのが分からないから少し不安だなぁ。

 神の血で神聖文字を刻むことで、恩恵は授かれるらしい。背中を指でなぞられる。ちょっとくすぐったいな。ヘスティアのお尻の柔らかな感触を楽しみながら待っているとしよう。

 それにしてもヘスティアってなんだかアンバランスな存在だよね。身長は低くて幼く見えるのに、見事に成長している母性の象徴。子供っぽい性格なのに、初めて会った時は女神らしい確かな母性も感じられた。ロリ巨乳な女神様。素晴らしいじゃないか!

 これからの生活は楽しみになってきたよ。それにしても長くないかい?背中をなぞっていた感触はとっくに無くなっているのにどうしたのだろうか?

 

「ヘスティアー? 終わったかい?」

「ベ、ベ、ベル君! なんだいこの魔力のステータスとアビリティーは!? しかも魔法まで使えるじゃないか!」

「取りあえず見せてくれるかい?」

「ほら! すごいじゃないか!」

 どんなステータスになっているか楽しみだねぇ。見てみようか。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

ベル・クラネル

 Lv.1

 力:I0

 耐久:I0

 器用:I0

 敏捷:I0

 魔力:S900

作成:C

耐異常:E

幻術耐性:A

《魔法》

【作成魔術】

・速攻魔法

・任意の魔術を行使

【夢幻】

・任意の対象に発動

・対象に幻術を掛ける

・対象を夢幻に誘う

【英雄作成】

・対象は他者一人のみ

・対象のレベルを限定的に2上昇

《スキル》

【妖精術式】アヴァロン・セレマ

・魔法に魔力を込める毎に魔法の強度が上昇

【花の魔術師】フロース・メイガス

・魔法効果増幅

・幻術効果上昇

・任意で花を咲かす

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 魔力が高いのは、憑依したのが私の魂だからだろうか?夢魔と人間の混血児だった私の魂は半分が幻想種な訳で、魔術回路と関係無く、膨大な魔力が宿っていたから、それがこの肉体に流れ込んだのだと思う。

 作成魔術はおそらく、何かを作る魔術がより使えるようになったのかな?作成と限定されているのが残念だねぇ。

 夢幻は、夢魔の特性が一部現れたのかな?今までは簡単な魔術と幻術は使えていたけど、より高度な幻術が使えるなら便利だね。夢幻に誘うのは眠らせる魔法かな?耐魔力で弾かれるとしても、速攻で眠らせられる魔法は使い勝手がいいね。変な事には使わないよ?

 英雄作成。これは私のキングメーカーとしての偉業が形になったものかな?それとも、あの子が世界を救う手伝いをできたことが形になったのだとしたら、まだあの子との絆が繋がっているだと思えて嬉しいねぇ。

 

 後は、妖精術式は形成魔術と組み合わせたら便利そうかな。投影の強度を上げたり、魔術の威力上昇を簡単にできそうだ。花の魔術師は補助系みたいだね。また花を咲かせるのかい?花は好きだから、嬉しいけどね。

 

 

「ベル君は何者なんだい……? ただのヒューマンではあり得ないステータスだよ?」

「私は私だよ。ベル・クラネルとして生を受けて、生きてきた。ただのヒューマンさ!」

「嘘はないみたいだね……」

 神々には嘘を見抜く力があるらしいけど、私は今生の話をしている訳だから、嘘は付いていないからね。

 

「ただ、世界を救う手伝いはしたことはあるけどね!」

「なんで嘘じゃないのぉ!?」

 あははっ、本当に面白い子だね。弄りがいのある女の子なんて最高に大好物だよ!頭を抱えてどうしたんだい?

 

「女の子に嘘はつかないさ!」

「それは嘘って分かったぞ! えぇぇ……ま、まぁ本当だと思い込んでいれば嘘だとしても分からないし……でもステータスが高いのはなんでなんだよぅ……?」

「それについてはいずれ教えるよ。ファミリアとは家族みたいなものなんだろう?」

「そうだね! ボクとベル君は家族さ! ならいずれ教えてくれよ?」

「もちろんだとも!」

 家族と言う言葉で誤魔化せたみたいだね。隠すつもりは無いけれど、長い話になるからまた今度にするとしようか。

 

「なら夜御飯にしようぜ! ジャガ丸くんをたくさん貰ってきたから、ジャガ丸パーティーさ! 今夜は君を寝かさないぜ!」

「いいとも! 今夜と言わず何夜でもお供するさ。でもじゃが丸って言うのはジャガイモのことかい?」

「そうだけど苦手かい? 色々な味があって結構美味しいよ?」

「ちゃんと調理されてるなら好きかな。かつての友が作ったマッシュポテトはポテトを茹でて、握りつぶしただけなんだよね……それって料理だと思うかい?」

「そ、それはただの潰れたポテトなんじゃないかな……?」

「あっははは、そうだろう? それでも皆は不味いって文句を言いつつも食べてたけどね。皆、面白い子ばかりだったよ!」

 円卓の皆と共に食卓を囲んだ日々は楽しかったねぇ。ガウェインの作るマッシュポテトは不評過ぎてアルトリアとアグラヴェインの鉄面皮二人ですら機嫌が悪くなっていたのだから、ある意味すごいよね。

 

「ジャガ丸くんはボクがバイトで調理して、とっても美味しいから、たくさん食べてくれよ?」

「神でもバイトするのかい? ヘスティアは面白いねぇ」

「神様にもお金は必要なんだぜ? 貧乏だから働いているのさ……それよりほら、これがジャガ丸くんさ!」

 紙に包まれたジャガ丸くんを受け取って開けてみると、ジャガイモを衣にまぶして油で揚げた、コロッケみたいな料理が出てきた。掛かっているのはバターかな?

 

「それじゃあ、いただきます!」

「いただきます」

 ジャガ丸くんを食べてみると、作ってから時間は経っているはずなのに、衣がサクッとしていて、中のポテトはホクホクで、優しい甘みがバターの塩味と絶妙にマッチしていて美味しいじゃないか!ガウェイン分かるかい?これがポテト料理なのさ!

 

「美味しいかい? 揚げたてだともっと美味しいから、今度食べに来てくれよ?」

「美味しかったよ。バイトしている神が居るのを観に行くなんて楽しみだね!」

「そっちがメインなのかい!? まあ、バイトの衣装は可愛いからね。ぜひ来てくれよ?」

「もちろんさ!」

 ジャガ丸くんは全部食べ終わった。味が何種類もあったから飽きずに食べられたね。バイト姿のヘスティアもきっと可愛いのだろう。ぜひ観に行かないとね!

 

「もうお腹いっぱいだよー……ベル君は明日から冒険者なんだし、そろそろ寝るかい?」

「そうだね。寝るとしようか」

 ヘスティアは桶に水を入れて、タオルと寝間着を用意している。身体を拭くのかな。私が手伝ってあげようか!

 

「じゃあ、ボクは身体を拭いてくるけど、この部屋を覗いちゃダメだぜ?」

「覗かないさ。堂々と入ることにするよ」

「よけいダメだよ!? とにかく覗くのも入るのもダメだからね!」

「分かったよ。じゃあ私もこちらで身体を拭いておくさ」

 ヘスティアは扉を閉めて、身体を拭きにいった。覗くのも入るのもダメならそれ以外の選択肢で攻めればいい訳だよ!

 つまり、今こそ使えるようになった形成魔術を試す時だね。ヘスティアをこちらに転移させる魔法陣を作ればいいのさ!ヘスティアがこちらに来るのなら問題は無いだろう?では発動するとしようか?きっと素晴らしい肌色が目の前に現れるだろうね。いざ……!

 

 

 ……なんてね。これから時間はいくらでもあるのだから、今日は止めておくとしよう。普通に身体を拭いていく。シャワーがあればいいんだけど、流石にこの壊れかけの教会には無いよね。よし拭き終わった。

 

「ベル君入るよー! ベル君も拭き終わっているみたいだね。じゃあ寝ようか? ベル君はベッドとソファーのどっちで寝るかな? それとも一緒にベッドで寝ちゃうかい?」

 寝間着のヘスティアは髪を下ろしていて、大人びて見えた。普段は髪を結っている女の子が髪を下ろすと、どうして色っぽく見えるんだろうね。普段と違うそのギャップがいいんだろうね!

 

「じゃあヘスティア、一緒に寝るとしようか?」

「ほ、本当かい!? ごめんねベル君! 冗談だったのさ!」

 気にせず上着を脱いでいく。慌てて、手をあちゃこちゃ動かしているヘスティアが面白い。くくっ、君は弄られる天才なのかい?

 

「なななんでベル君上着脱いでいるの!?」

「寝る時は何も着ない派なのさ。さあヘスティア寝ようか?」

 ヘスティアの手を引いてベッドの傍にいく。何故か大人しくついてくるから簡単にたどり着いた。

 

「あわわわわ……だ、ダメだぞベル君! ボクは処女神なんだ! そう言うのはNGなの!」

「眠るだけなのにNGは無いだろう? ヘスティアは可愛いねぇ……さあおいで」

 ヘスティアをベッドに座らせた。横に座ってヘスティアを見ると、顔が爆発しそうなくらい真っ赤になっていて、目をぐるぐると回している。

 

「あばばばばば…………きゅぅ……」

「あははっ、気絶してしまったね。流石処女神! さて、私も眠るとしようか。それじゃあ、おやすみヘスティア」

 オラリオに着いて一日目なのに、こんなに楽しいとはね。明日が待ちきれないじゃないか。こんなに楽しませてくれたヘスティアとはこれからも仲良くやっていけそうだね。

 それじゃあ上着を着て、寝るとしよう。さっきのはからかうための冗談さ。気絶したヘスティアに布団を被せて、私もその横で眠るとしよう。ではおやすみなさい。

 

 

 

 んー朝かな。おはよう。ヘスティアはまだ寝てるねぇ。あははっ、変な寝顔じゃないか!

「んぐぐ……ダメだぞベル君ー……」

 どんな夢を見ているんだか。寝てても面白いなぁ。

 取りあえず、キッチンで料理を作ってあげようか?材料があればだけど。卵とパンがあったね、トーストに目玉焼きを載せようか。村人暮らしで料理が上達したからねぇ。一緒に暮らしていたおじいちゃんに毎日作っていたから、それなりの腕だとは思うよ。

 今思えばおじいちゃんって神だったんじゃないかな?微かに感じていた力の正体はヘスティアの神威と似ているからね。理由は分からないけど、モンスターに襲われて死んだって言うのは偽装だろう。またいつか会えるかも知れないのだから嬉しいねぇ。

 

 さてどちらも焼き上がったね。お皿に移してトーストの上に目玉焼きを載せて出来上がりさ!

「んん……美味しそうな匂い……?」

 ヘスティアも起きたみたいだね。寝ぼけているようだし、ちゃんと起こしてあげるとしようか。

 

「おはようヘスティア。よく眠れたかい?」

「んー……? あ、ベル君じゃないか! おはよう!」

「おはよう。トーストを焼いたから一緒に食べよう」

「いい匂いだと思ったらベル君が作ってくれたのかい? ありがとう! さっそく食べるよ!」

 

「いただきます! ベル君のトースト美味しいじゃないか!」

「いただきます。喜んでくれて嬉しいよ」

 二人でテーブルを囲んで、トーストを食べる。ついでに用意した牛乳も飲む。朝の朝食と言えばやはりトーストと牛乳だね。

 

「ベル君はこれからギルドに行くよね? ボクもついて行くから一緒に行こうぜ!」

「分かった。一緒に行くとしよう」

 ヘスティアが居てくれれば、ファミリアに入ったことを簡単に説明出来そうだね。冒険者になったら、ダンジョンに出会いを求めるのもいいかもね。隣で何故か屈伸しているヘスティアに改めてよろしくと言わせて貰おうかな。

 

「ヘスティア。これからも末永くよろしく頼むよ」

「もちろんさ。だからベル君もダンジョンで無理はしちゃダメだぞ! 絶対ここに帰って来てくれよ?」

「こんな可愛い子が待っていてくれるなら帰らないといけないね! じゃあ行くとしようか?」

「行こうぜベル君!」

 

私達の冒険はこれからさ!なんてね。




俺達の戦いはこれからだ!完!嘘ですすみません!
ストーリーは全然進みませんでしたね。
二話目でアイズとの邂逅まで書く予定だったのですが、一夜目が終わっていないのに五千字を超えてしまったので断念しました。

登場人物はヘスティア様とマーリンベル君だけでしたね。
円卓メンバーの友情出演はありましたけど!
ヘスティア様の可愛さと、マーリンのチャラさとクズさが表現できていたら嬉しいです。あと弄られるヘスティア様もありだと思いました!

ステータスについては悩みました。変なところがあれば直していくので、教えて貰えると助かります。
英雄作成はチートですね!英雄作成をアイズにして、偽エクスカリバーを形成魔術で投影、妖精術式で本物に近い領域まで強度を引き上げ、アイズに渡し、エクスカリバーして貰うところまでは妄想しました。担い手じゃない?幻術で誤認させましょう!無理ですかね?
スキルの読み方には触れないでくださいね!あと厨二力が足らず詠唱は断念しました。すみません!


次回更新は今のところ未定です。続いても、今回みたいな感じで、女の子をマーリンベル君が弄っていくお話が続いていくだけですよ!


読んでいただきありがとうございました!


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花の魔術師がベル君に憑依しました。その3

※お待たせしてすみませんでした。


 

「行こうぜベル君!」

「それじゃあデートに行くとしようか!」

「で、で、デートだってぇ!? そんないきなり!? じゃなくて、ギルドに行くんだろ?」

「男女が二人で出かけるのがデート以外のなんだって言うんだい?」

「た……確かに! わっ、どうしよう……デートなんてしたこと無いよぅ……」

 

 チョロい。じゃなくてヘスティアは純粋でかわいいなぁ。顔を赤くしてチラチラと私を見てくるヘスティアと一緒に教会を出る。

 

「冗談さ。このままギルドに向かっても大丈夫かい?」

「冗談だよね! も、もちろん分かっていたさ! 先にバイト先に向かって店長に少し遅れるって言いたいんだけどいいかな?」

「もちろんさ。では案内を頼むよ」

「おっけー! バイト先はこっちにあるんだ」

 

 ヘスティアと一緒に朝のオラリオを歩く。細い路地裏を通り抜けて大通りにたどり着くと、鎧を着込んでいる冒険者達は私たちとは逆方向の街の中央へと向かっている。

 冒険者も朝からダンジョンに向かうんだね。確かにダンジョンでの滞在時間が長い方が稼ぎが増えるとは思うけどさ、私は朝はゆっくりしたいんだよねぇ。

 

 まあ、貧乏ファリミアに入ってしまった事だし、多少はお金稼ぎを真面目にしないといけないかな?

 

「店長おはよう! ちょっといいかな?」

「ヘスティアちゃんかい? おはよう。どうしたんだい?」

 

 大通りの屋台で立ち止まったヘスティアが挨拶をしている。くくっ、神様が屋台でバイトしてるのかい?でも神様っぽくないヘスティアには似合っているんじゃないかな?ヘスティアちゃん……くくっ!

 

「ボクにもついに眷属が出来たのさ! 紹介するよ。ベル君ー!」

「初めまして美しいマダム。私はベル・クラネル。ヘスティアちゃんの眷属になった冒険者さ!」

「なんでベル君までヘスティアちゃんって呼ぶの!?」

「かわいいヘスティアには似合っていると思ったんだけど、駄目かい? くくっ」

「今笑わなかったかい!? ボクは聞き逃さなかったぞ!」

 

「はははっ面白い眷属ができてよかったねぇヘスティアちゃん。ベル君、ヘスティアちゃんをよろしく頼むよ」

「面倒を見るのは任せて欲しい。問題児の扱い方は心得て居るんだ」

 

 主に円卓の君たちだよ?アルトリアに迷惑を掛けちゃダメだろ?

 『どの口が言うか!』なんて幻聴が聞こえた気がするけど気のせいだろうね。

 

「ボクって問題児なのかい!? ベル君ひどいぞ!」

「それは置いといてマダム。今から冒険者登録をしたいんだけど、ヘスティアが居た方が簡単に登録できそうなんだ。借りていってもいいかい?」

「仕込みはこっちでやっておくから連れて行っていいよ。ヘスティアちゃんは登録が終わったら戻っておいで」

「店長ありがとう! じゃあベル君行こうぜ!」

「ありがとうマダム。ヘスティア、君が迷子にならないように手を繋いであげよう」

 

 手を捕まえたら、ビクッとしてから固まったヘスティアを引っ張ってギルドへ向かって歩く。なんか驚いた顔から、にやけた顔に変わったけど、このヘスティアちゃんは何を考えているのかな?

 

「うへへ……ベル君と手を繋いでるよぅ……デートみたい……じゃなくて! 子供じゃないんだから迷子になんてならないぞ!」

「ヘスティアと離れたくないんだ。このままでいいかい?」

「う、うん……」

 

 チョロい。じゃなくてまた顔を赤くして、しずしずと隣を歩いてくれるヘスティアは可愛いじゃないか。こんなかわいいヘスティアに眷属が出来なかったのが不思議だよねぇ。やっぱり貧乏とボロ教会が原因……今後かわいい子をファミリアに入れるためにも、ちょっと頑張ろうかな?

 

「そういえば、バイトの制服はいつ着るんだい?」

「店長さんの家が屋台のすぐ近くにあるんだ。そこで着替えるのさ」

「ヘスティアは元がかわいいからどんな服でも似合うんだろうね。見れる日を楽しみにしているよ」

「……ベル君ってチャラくないかい? どんだけ女の子と遊んできたのさ!」

「たいして遊んでないさ。まあ村の女の子全員に手を出したら追い出されたけどね」

「それはたいした事だよ! えぇ……嘘ついてないし本当なんだよね……ボクの貞操守れるかな……」

「大丈夫さ。優しくするから」

「優しくされても、無くなっちゃうよね!?」

「…………ふむ、これは伝わると……」

「変な分析しないでくれるかな!? ほらギルドに着いたよ!」

 

 いつの間にか白い豪華な建物が目の前にあった。ギルドまであっという間だったねぇ。さて、冒険者になることをエイナに伝えるとしようか。

 

 前回はエイナに冒険者を諦めた方が……と言われて簡単に引いたのは、心象を悪くしない為だったのさ!美人を攻略するには引くことも重要なのだよ。

 

 ヘスティアと一緒にエイナの前の列に並ぶ。エイナの前には相変わらず結構並んでいるよね。

 

「ベル君、あっちの男の人の前は空いてるよ? ここでいいのかい?」

「当然さ! この列は美人と話すために並んでいる列なんだ。男として並ばない訳にはいかないだろう?」

「むー! ベル君ダメだぞ! ボクが後でたくさん話してあげるからあっちに並ぼうぜ!」

 

 腕をクイクイとヘスティアが引っ張ってくるけど、私は動かない!嫉妬するかわいいヘスティアも見れた事だし、そろそろ誤魔化しておこうか。

 

「ヘスティア。さっきの話も本当だけど、この先に居るエイナには昨日お世話になったんだ。だから冒険者になるならエイナに報告したいんだ。ダメかい……?」

 

 少し目を伏せて、悲しそうにするのがポイントさ!

 

「うっ……ごめんよベル君! そんな理由があったならここに並ぼうぜ! ボクもありがとうって言っておくよ!」

「ありがとうヘスティア。優しいヘスティアの眷属になれてうれしいよ」

 

 ……チョロいとは思って無いよ?まあ、騙されないかは心配になってきたけど。ヘスティアが騙されないように私が気をつけてあげるとしようか!

 

「次の方どうぞ……あっベル君ね。おはよう。何か困り事かな?」

「おはようエイナ。結局、私は冒険者になることにしたんだ。こちらが主神のヘスティアさ」

 

 隣に居るヘスティアの背中を押して、エイナの前に出したけど……背中の紐が目に止まる……ヘスティアの胸を支えている紐。この紐を解いたらどうなるんだろうか?これはいつか試すしかないね!

 

「昨日はベル君がお世話になったんだね。ありがとう!」

「……いえいえ。冒険者になるのはベル君が決めたのなら仕方ないわね……ところで、神ヘスティア。貴方の事は存じ上げないんですが、ベル君の他に眷属は居ますか?」

「ベル君が初の眷属さ! かわいいだろう?」

「…………可愛いのは認めますけど……ベル君! なんで他に眷属も居ないファミリアに入っちゃったの!? 一人で冒険するのは危険なのよ? ほとんどの場合はファミリア内でパーティーを組んで、ダンジョンを探索していくの。一応ギルドから紹介はできるけど、他のファミリアの冒険者を受け入れるパーティーなんて、ほとんどないのよ」

「私は小柄で非力に見えるから、どこのファミリアも受け入れてくれなかったのさ。それでも優しいヘスティアが手を差し伸べてくれたんだ。ヘスティアのためにも冒険者になろうと思うのは当然だろう?」

 

「うぅ……ベル君……そんなうれしい事を言ってくれるなんて……ボクはうれしいよ!」

 

 これはヘスティアも嘘だと言わないし、もちろん本心さ。まあ、かわいい子に出会うためって理由もあるけどさ!

 あの裏路地で出会ったヘスティアは本当に女神のように綺麗だったよ。その後に全て台無しになったとしても、親しみやすい人間味のある方が私は好きだからね。どちらにしてもヘスティアの事は気に入っているんだ。

 

「……神ヘスティアもベル君もファミリアを貶めるような事を言ってごめんなさい。よし、なら私がベル君が一人で冒険出来るようにサポートするわ! まずはダンジョンについて知っていきましょう。命を落とさない為にもしっかり勉強してもらうわよ?」

「わかった。でもお手柔らかに頼むよ?」

 

「ダメです。ベル君の為にも妥協は一切しないわ」

「なら私も真剣に勉強するとしようかな?」

 

 知らないことを知っていくのは結構好きなんだ。これは魔術師としての性かもね。

 

「ではベル君は別室に移動しましょう。私が一から教えていくわ」

「わかった。ヘスティアはバイトに戻るかい?」

「うん。エイナとやら、ボクのたった一人の大切な家族なんだ。ベル君をよろしく頼むよ!」

「ええ。私が出来ることは何でもしますから」

「ここまで付いてきてくれてありがとう。ヘスティアもバイトを頑張ってきてくれよ」

「うん! じゃあ行ってくるよ! また後でねベル君!」

 

 ヘスティアに手を振って、受付から出てきたエイナについて行く。

 

「……えっ? 神ヘスティアがバイトしているの? 神様なのに……?」

「はははっ、うちのファミリアは貧乏だからね!」

「笑い事じゃないと思うわよ……」

「まあ、私が冒険者になれば、少しは楽させられるからねぇ。明日くらいには冒険に行けるかい?」

「ダメよ! 最低一週間は勉強してもらわないと、覚えることはたくさんあるのよ?」

 

 エイナは結構スパルタなんだね。私は一応、アルトリアの剣の師匠だったから、英霊並みの強さのモンスターにでも遭遇しない限り死ぬことなんて無いんだろうから……実力を見せられればいいんだけどね。

 まあダンジョンの知識については、興味があるからね。実際に見に行くのは一週間後まで楽しみに待つとしようか。それまでにお金が尽きないといいけど……足りるのかな?まあ、ヘスティアがジャガ丸くんを持って帰ってくれるのを期待するしかないね!

 

 個室に入り、テーブルを挟んで、エイナの正面に座る。

 

「取りあえずベル君は冒険者登録の紙に記入しておいてね。私は本を持ってくるわ」

「ありがとう。書いておくよ」

 

 記入用紙の空白を埋めていく。ファミリア名はヘスティア・ファミリア。私の種族はヒューマン。年齢は14歳。レベルは1。その他情報を書き込んでいく。よし書き終わった。

 

「ベル君……お待たせ……はあ、重かったわ……」

「おかえり。多くないかい……?」

 

 両手で重たそうに、図鑑みたいな大きさの本を十冊くらい持ってきてくれた……これは一週間で覚えられるのかい?知るのは好きだけど、覚えるのは苦手なんだよねぇ。まあやるしかないよね。

 

「あと半分はこれを覚えてからね」

「まだ半分あるのかい!?」

 

 ダンジョンに行くことは可能なのか?

 取りあえず読ませて貰おうかな?興味はあるし勝手に覚えていくと思う。

 

「まずはこの『ダンジョンの歩き方』って本を読んでいきましょう。これ一冊でダンジョンに関する事は一通り勉強出来るわ。私がサポートしている冒険者には最低でもこの本は暗記して貰っているのよ」

「なら私もこの本を暗記したらダンジョンに行かせて貰おうかな」

 

「ダメだよベル君。神ヘスティアにも頼まれちゃったのだから、しっかり勉強して貰うわよ」

「あはは……精一杯頑張るよ」

 

 エイナはすごいにこやかにしてるけど、私の笑いは引きつってないかな……?まあ、エイナの笑顔も見れたことだし、もっと見れるように頑張ろうか。美人の笑顔は私の活力だからね。

 

 エイナに教わりながら『ダンジョンの歩き方』を読んでいく。

 モンスターの基本知識。ダンジョンの基本知識。冒険者の心得。それらをエイナが詳しく解説してくれて、覚えていく。

 エイナの説明は上手くて、綺麗な声をしているから、ずっと聞いていられるし、覚えやすくもなるからありがたいね。美人の教師だと勉強が捗るのは当然だろう?

 

「ベル君聞いてる?」

「もちろんさ。それで魔石を破壊すれば、モンスターは一撃で倒せるらしいけど、どうやって狙えばいいんだい?」

「モンスターの種類によって魔石の位置は決まっているの。だから次に覚えるのは『モンスター大全』って本よ。これを暗記できれば魔石の位置もモンスターの特徴も全て書かれているの。でも全部覚えたとしても、未知のモンスターはまだまだ居るから慢心しちゃダメよ?」

「気をつけるよ」

 

 そんな感じでエイナの補足に私が更に質問をしていくのを続けていって『ダンジョンの歩き方』を読み終わる頃には夜になっていた。

 

「ふう……ベル君って聞き上手だから、一冊読み終わっちゃったね。質問も的確だし、知識に関しては冒険者として十分やっていけそうよ」

「腕にも自信があるから、安心して欲しい!」

「安心できたらいいんだけどね。ベル君はまだ子供なんだから目を離したら……ましてやダンジョンなんかに行くなんて本当に心配なのよ」

 

 昔の容姿だったら問題ないんだろうけどね。今の私は小柄で白い髪に赤い瞳で白いウサギみたいだって、村の女の子たちには言われていたからねぇ。

 

 エイナみたいな子は、目を離したら心配になるような、私が居ないとダメだって思わせるような男がタイプとみた。まさに私がタイプだろう?

 

「まあエイナにせっかく勉強を教えて貰ったんだ。またエイナに会うためにも、ダンジョンに行ってもちゃんと戻ってくるさ!」

「う、うん……しっかり帰って来てね」

 

 エイナは少し顔を赤くしてるけど、口説かれ慣れて無いのかな?それとも意識をしてなかっただけかな。少しは私の事を意識してくれているみたいだね。もちろん私は大歓迎さ!

 

「よ、よし、今日は勉強は終わりだけど、また明日もギルドに来たら一緒に勉強しましょう。まだ覚えないといけない事はたくさんあるのよ」

「ああ、今日はありがとう。でも受付の仕事はしなくていいのかい?」

「大丈夫。新しい冒険者をサポートするのも大事な仕事なんだから。明日も私が教えるから安心してね」

「わかった。エイナは教え方が上手いから、助かるよ」

 

 一人で本を読み進めるのも悪くないけど、エイナみたいな美人が傍に居たら勉強も捗るものだよね。しばらくは退屈しないですみそうだ。

 

「じゃあ今日は帰ることにするよ。また明日もよろしく」

「ええ。気をつけて帰るのよ。路地裏とか夜は危ないから気をつけてね。それじゃあまた明日ね」

 

 エイナに手を振ってから、ギルドを出る。大通りは照明の灯りで照らされているけど、路地裏に入ると暗そうだね。

 大通りに面してる酒場では、楽しそうな笑い声がここまで聞こえてくる。酒場の中に見えるのは鎧を着ている冒険者たちで、楽しそうに酒を飲んでいる。

 

 昼にはダンジョンを探索して、夜には仲間と酒を交わす。うん。悪くないね。私も昼にはダンジョンで出会いを求め、夜には女の子たちと酒を交わす。家ではヘスティアが待っているし、冒険者になったら最高に楽しめそうだね。

 

 今もたぶん帰りを待っているヘスティアのためにも早く帰るとしようか。この道を曲がって、この先を真っ直ぐ行くと……ここだね。ボロい教会が見えればそこが我が家さ。残念ながらね!

 

「ただいまヘスティア」

「ベル君お帰りー! 遅いから心配したんだぞー!」

「これでも勉強が終わったらヘスティアに会うためにまっすぐ帰ってきたんだけど、心配させて悪いね」

 

 取りあえず走って駆け寄ってきた、このかわいいヘスティアの頭でも撫でておくとしようか。ヘスティアは小柄な私よりも更に小柄だから、撫でやすくていいね。黒く艶やかな髪は撫でるとさらさらとしていて何時までも撫でていられそうだ。この触り心地は癖になりそうだね。

 

「うぅ……ベル君恥ずかしいよ……!」

「私は恥ずかしくないから、気にしないでくれ」

「私が気にするよ! もう、おしまい! ほら今日もジャガ丸くんパーティーをしようぜ。店長さんがベル君のためにたくさんくれたんだぜ!」

「うれしいねぇ。今度ありがとうって言っておくよ。じゃあ食べようか」

「うん! 用意してくるから、ベル君は手洗いうがいだぞ!」

「わかったよ」

 

 オラリオに来てまだ二日目だけど、これからも楽しくやっていけそうだ。明日からも、ヘスティアをからかいつつ冒険者になるためにエイナと勉強していくとしようか?




お待たせしました。忘れ去られた頃にこっそりと投下させていただきます。

今回は前半ヘスティア、後半はエイナ回でした。
オラリオに来て二日目が終了しました。

原作はもう少し先ですね。


書いていて思いました。ヘスティアとこのベル君の口調が似ていて書き分けが難しいと。ヘルメスとこのベル君の書き分けってもっと難しい気が……。

読んでいただきありがとうございました。

評価や、お気に入り、感想を投稿していない間にも関わらず、たくさんいただきました。
本当にありがとうございます!


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