ベイビーステップ ハルとナツ (ニャン吉)
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1話

STCはテニスクラブとして強豪で知られている。

そんなテニスクラブだから休日ともなるとたまに県外の強豪テニスクラブから練習試合が入ることがある。

俺は明日は男子で五本の指に入る難波江優と

奈津は女子トップで俺の従妹の清水亜季と

試合をする事になった。

 

そんな試合前日の授業後の下駄箱へ向かいながらの何ら変哲のない会話のはずだった

 

 

「なっちゃん。今日もSTC行くか?明日に備えて休んでもいい事になってるけど。」

「行くよハルちゃん!どうせハルちゃんも行って逞と試合形式の練習をするんでしょ?」

「今日は逞とはやらないぞ。なんなら俺がなっちゃんの相手をしようか?」

と俺が笑いながら奈津に言うと

「ホントに!やったー。・・・それとお願いなんだけど。」

と真剣な顔で俺を見てきた。

「次の試合ね。私は明日なんだ。」

「俺もだけどよ。」

「そうなんだけど。・・・亜季ちゃん対策をしたいんだ。今度こそ勝ちたいんだ。」

「亜季か。」

「うん。」

「従妹の対策か。」

「うん。」

「模倣は出来るがプレイスタイルがだいぶ違うんだけど。」

「わかってるよ。でも・・・今までの大会では同じプレイスタイル従兄妹同士の清水春樹と清水亜季ってなってるでしょ?世間を騙せてるじゃん。」

「まぁいいかな。こういう時は彼女の為に頑張るさ。」

「ありがとう!大好きな彼氏のハルちゃん!さぁ〜大好きなを付けたんだから私にも付けてね〜」

「やだね。」

「言えよーブーブー」

と頬を膨らませて見せる大好きな彼女のなっちゃん。

そもそも恥ずかしくて大好きな・・・なんて付けられるわけねぇよ。

と考えながら俺のとった手段は

身長差20cmあるため腰を少し曲げてなっちゃんの後頭部と腰に手を当てて少し抱くような形にってこっちの方が恥ずかしいけど耳元に顔を持って言って

小さい声で

「愛してるぜ奈津。俺にとっては今までも、そしてこれからも俺の愛する女は奈津だけだ。」

と囁く

 

今、放課後の下駄箱だからすげー恥ずいけどな!

 

囁いて少し力を入れて抱き締めるとなっちゃんも俺を抱き締めてくれる。

 

この安心感はやっぱ、なっちゃんじゃなきゃ味わえない

 

少ししてなっちゃんを少し離して周りを見渡すと

 

真っ赤になったなっちゃんの顔と

 

周りの女子達の

「清水君に抱きしめて貰えるなんていいなー鷹崎さん。」

と男子達の

「リア充滅べ!」

「春樹を殺して俺も死ぬ!」

と物騒な声が聞こえるのだった。

 

side奈津

 

「まぁいいかな。こういう時は彼女の為に頑張るさ。」

「ありがとう!大好きな彼氏のハルちゃん!さぁ〜大好きなを付けたんだから私にも付けてね〜」

「やだね。」

「言えよーブーブー」

と私なりのちょっとした意地悪

ハルちゃんの顔を見ると少し困っているのがわかる。

1番古い幼馴染だからハルちゃんの考えている事はわかる

と思っていたのに

予想を遥かに超えた回答が私の耳元に帰ってきた。

 

身長差があるからハルちゃんは腰を少し曲げて

 

私の頭と腰に優しく手を添えて耳元に顔を近づけると

 

 

「愛してるぜ奈津。俺にとっては今までも、そしてこれからも俺の愛する女は奈津だけだ。」

とハルちゃんは耳元で優しく囁いてくれた

 

あ・あ・あ・アイシテル

 

 

愛し

 

愛して

 

・・・・・・愛してる!

 

ハルちゃんから愛してる!

 

あのハルちゃんが・・・試合中のテンションなら言ってくれそうなセリフを普段は恥ずかしがり屋のハルちゃんが・・・愛してる!

 

ハルちゃん絶対に今、顔が真っ赤だよ!

 

でもそれよりも

 

今は間違いなく不意打ち気味にこんな・・・愛してるを貰った私の方が顔は真っ赤だよね。

 

今、放課後の下駄箱だよ!

 

周りに人がいるんだよ!

 

更にハルちゃんは囁いた後に少し力を入れて私を抱き締めてくれた

 

反射って怖いな、私も抱きしめちゃった

 

学校なのに

 

学校なのに

 

学校なのに

 

凄く恥ずかしいのにこの安心感はやっぱりハルちゃんじゃないとね

 

 

少ししてハルちゃんが私を少し離して周りを見渡すと

 

学校だということを思い出して恥ずかしそうにしているハルちゃんと

 

周りの女子達の

「清水君に抱きしめて貰えるなんていいなー鷹崎さん。」

と男子達の

「リア充滅べ!」

「春樹を殺して俺も死ぬ!」

 

という声がよく聞こえた

 

ここで私の大好きな・・・違うな。

1番愛してる彼氏は凄いんだよ!って皆に自慢したいけど恥ずかしいからいいよね、と思う私がいた。

 

side春樹

 

愛してる。

 

・・・やべー!

なんであんな事を言ってからなっちゃんを抱き締めたんだ!

 

抱き締めたのは照れ隠しの為

 

それはわかってる

 

でも・・・ここでやる必要は無かっただろー!

 

と考えながら俺は奈津が靴を履き替えるのを確認してから奈津の手を掴んでこの雰囲気から逃げるようにSTCに向かうのだった



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2話

STCに着いて練習用のウェアに着替えて自販機の横でペットボトルのスポドリを片手に少し待つとなっちゃんが後ろから

「ハルちゃん!」

と声を掛けてきた。

それを見て俺が

「アップするか。」

と言ってコートに入る。

2人でストレッチを始めるとなっちゃんが

「もうすぐ中学最後の冬だけどまたフロリダに短期留学するの?」

と聴いてきた。

「親父も母さんも説得してあるから行くよ。」

と答えるとなっちゃんは笑顔で

「そう言うと思って私もお父さんとお母さんを説得して許可もらったんだ!」

と言って俺にピースをしてくる。

「これで8年連続の短期留学だな。」

「そうだね。そうちゃんとまた試合したいね。」

「そうだな。また勝ちに行くか。」

と言うとなっちゃんが

「私ね。ハルちゃんとそうちゃんの試合が一番好きなんだ。」

「なんでだ?」

「私にとってもハルちゃんにとってもそうちゃんにとっても大事な幼馴染だしハルちゃんとそうちゃんの試合を見てるとね・・・日本の学生テニスより活き活きして見えるんだよ。なんて言うのかな。・・・心と身体が精一杯楽しんでるみたいな感じ。」

となっちゃんの(心と体が精一杯楽しんでるみたいな感じ)

このセリフにはすごい覚えがあるのだ。

 

初めてそうちゃんと試合をした時は相手にならなかった。

なのに試合をしていくうちに本当にライバルと呼べるようになって去年の大会まで切磋琢磨してきた。

 

そして去年の最後の大会の後そうちゃんは

「フロリダへ行ってプロになる!」

そう言って去年の秋にフロリダへ飛んだ。

そして去年の冬のフロリダの短期留学の時の試合。

今までで1番の試合をした。

フロリダへ飛んで2ヶ月で相当強くなった。

だから俺もそうちゃんに負けない様に練習に食事に気を付けてしっかりとレベルアップしてきた。

 

その結果

日本の学生にライバルと呼べる選手がいなくなった。

 

なっちゃんはそんな時俺に言った。

 

「いつか・・・近い内にハルちゃんとそうちゃんに勝てる人がきっと出てくるよ!」

って俺に言ってくれた。

まだ出て来てないけど。

でもなっちゃんの言葉には何か力がある。それは俺が1番知っている。

近い内にきっと新しいライバルが出てくると。

 

そんな事を考えている間にストレッチを終えてコートの周りのランニングに入る。

 

「ハルちゃん!」

「なんだ?」

「冬のフロリダ。精一杯楽しんで一緒にもっと強くなろうね!ハルちゃんなら近い内にきっと日本だけじゃなくて世界でも1位になれるからさ」

と俺に、俺の大好きななっちゃんの満面の笑みを見せてくれた。



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3話 原作入り

あれから暫くが経ち

いつの間にか高校に入学してから2週間が経っていた。

 

俺のクラスには変わった奴がいる。

 

名前は[丸尾栄一郎]あだ名がエーちゃん

 

授業の最後に出される先生の無茶振りな問題も難なく答えられる勤勉と言うかとにかくおかしい奴。

 

そんな日の昼休み

 

高校ではクラスが別れてしまった彼女のなっちゃんが突然扉を開けてクラスに入って来た。

 

「ハルちゃん!」

 

と言う声掛けに周りのクラスメイトは

「ハルちゃん?」

「誰だよ入って来たの?」

「2組の鷹崎ナツだよ。」

「すっげーかわいいな。」

 

と言う声を聞きながら

 

俺のなっちゃんの元へ向かう。

 

「なっちゃん。流石に教室でハルちゃんは無いよ。」

「えっー!だってハルちゃんはハルちゃんだもん。」

「まぁいいけどさ。で、要件は何?」

「ちょっとー!その態度は彼女に対して酷くない?」

「酷くないよ。それで要件は?」

「そうだった!

お願い!!日本史のノート見せてっ

次小テストらしいの!!」

「まじか!?」

「貸してやりたいけど俺のノートって見ずらいからな。」

と俺がクラスメイトを見渡すと

「なっちゃん。少し待ってて。」

「うん。」

なっちゃんの返事を聞き俺はエーちゃんの元へ行く。

 

「エーちゃん。」

「どうしたの春樹くん。」

「まだ日本史のノートのコピーって残ってる?」

「どうかな。」

そう言ってエーちゃんは机の中と鞄の中を確認してくれたが

「ごめん今まはコピーをきらしてるみたい。」

「そうか。」

とエーちゃんと話していると後ろになっちゃんが来て

「ハルちゃん。この人となんの話しをしてるの?」

「あぁ。紹介するよ。こいつは丸尾栄一郎。一応皆からはエーちゃんって呼ばれてるんだ。それでエーちゃんノートのコピーがあればと思ったんだけどな。」

「エーちゃんノート?」

「はい影山説明。」

「人使いが荒いな春樹。」

「いいだろ。たまには世のため人の為になれ。」

「はいよ。えっとエーちゃんノートってのは細かく書かれすぎていて更に要点が纏められ過ぎているわかり易すぎるキモイノートです。」

「わかり易すぎてキモイノート?ハルちゃんはコピー持ってるの?さっきの反応からして?」

「持ってるよ。」

俺はそう言って机の中にあるエーちゃんノートのコピーが纏めて止められているファイルを取り出してなっちゃんの前に持って行く。

 

「これだよ。俺となっちゃんはテニスで出席出来ない日とかもあるからエーちゃんに毎回貰ってるんだ。」

そう言ってなっちゃんにファイルを手渡すと

「ホントにこのノートを作った人の目の前で言うのもなんだけどキモイね。」

「だろ。でもエーちゃんノートのお陰で勉強も遅れずに済んでるからな。エーちゃんには感謝だよ。」

「そんな事ないよ。春樹くんは元々勉強が出来てるからこのノートを見なくても多分大丈夫だよ。」

「エーちゃん。テニスの試合でもその多分大丈夫を確実に大丈夫にする事が1番大事なんだぞ。」

「ハルちゃんのテニスに多分大丈夫って言葉は入る余地無いもんね。」

「多分ってならないように1ゲームわざと落として相手のデータを集めてるんだから当たり前だ。」

「完璧主義者なのに勘で動く時もあるよねーだ。」

「常に勘で動くなっちゃんには言われたくないな。」

「あーそれを言うなー」

とちょっとしたお巫山戯がクラスの中で起こってしまったのは無かったことにして欲しいけどな。

 

 

でもこの時は思いもしなかった。

このエーちゃんがまさかテニスをしかも俺となっちゃんと同じ強豪STCで始めるとは。



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4話

side丸尾栄一郎

 

お母さんに行くように言われて来てみた南テニスクラブ

 

室内のコートも充実していて雨でもOK

 

確かに週一には丁度いいかもしれないと思っていると

 

鷹崎さんと春樹くんが試合をしていた。

 

それを見てつい大声をあげてしまった。

 

「ん?」

「どうしたなっちゃん?」

「今なんか聞こえなかった?」

「聴こえたな。」

 

 

何故か隠れてしまった。

というかなんでここに鷹崎さんと春樹くんが?

 

「まぁいいや。再開しようぜなっちゃん。」

「やろやろーハルちゃん!今度は左手でお願い。」

「了解!」

 

と聞こえた後また打ち出した音が聞こえた。

 

鷹崎さんもだけど特に春樹くんは今打っている人達の中で1番うまいのが素人でもわかるし俺よりも小さい子達もいる!!

しかもここにいる人達は外の人達よりずっと上手いのがわかる!

レベルが違う。

 

と思っていると

「おい!」

と下から声が聞こえて反射的に

「はい?」

と答えてしまった。

「てめー

他のクラブのスパイだろ」

「スパイ!?

スパイ・・・じゃないよ?」

と伝えると

「じゃー

変質者だな。」

と言って

大きな声で

「コーチィー変なオジサンがいるぅー!!」

「僕はスパイでも変質者でもなければオジサンでもないっ!!」

 

と答えるとこの子がコーチを呼んでいて

ちゃんと誤解を解こうとすると

 

ネットから鷹崎さんと春樹くんが出てきて

2人して驚いたように

「「エーちゃん!?」」

と声を出してコーチの人も

「エーちゃん?」

と聞き直す。

 

春樹くんが場を落ち着かせて

「エーちゃん。一応自己紹介してくれ。」

「大杉高等学校1年丸尾栄一郎です。」

「俺と同じクラスで」

「私の隣のクラスなんだっ」

と言うと小さい子が

「なるほどなっちゃんのストーカーか」

と小さい子が言うとコーチの人が

「コラッユウキくんっ」

と言ってくれて

一応

「ほんっとそんなんじゃありませんから。」

と答えているとコーチの人が確かユウキくんに

「ほらっ打っといで」

と言ってコートへ連れて行ってくれた。

 

そして鷹崎さんが

「それでエーちゃん

今日はどーしたの?」

と聞かれて

「あ、え・・・と

なにか運動を始めようと思ってさ・・・運動不足解消に」

と答えると

春樹くんが

「なんだよそれ」

と笑いだし

鷹崎さんが

「変なのーっ」

と笑いだした。

 

小さい子がコートに戻ったらコーチの人が戻って来て

「テニスに興味があるなら無料体験できるよ?

やってってみたら?」

と言ってくれたものの

「でも今日は何の準備もしてないので」

と答える。

すると

「ラケット・シューズなんならウェアも貸し出すよ!」

と言われて少し迷うとコーチの人が

 

「迷うぐらいならやってみよっねっ!!」

と押し寄せてきた。

 

それから少ししてウォーミングアップが始まるも途中でバテて倒れてしまった。

 

目が覚めると周りが打ち始めていて

さっきの小さい子が

「ダッセェなお前!」

と言われて何も言い返せなかった。

 

少ししていちゃダメなんだと思って帰ろうとすると春樹くんと鷹崎さんの2人にぶつかった。

正直今1番会いたくなかったペアだった。

 

春樹くんが手を貸してくれて立ち上がると鷹崎さんが

「もう大丈夫?」

と聞いてきたので

「だ・・・大丈夫だよっ」

と答えると

2人は目の前でほっとした様子を見せて

「「よかったぁ」」

と言って鷹崎さんが

「みんなで心配しちゃったよ。」

と言ってくれてそれに続いて春樹くんが

「どこに行くんだ?便所か?」

と聞いてきたから

「そろそろ帰ろうと思ってね。

やらなきゃいけないことあるし」

と答えると鷹崎さんが

「そっか」

の後に春樹くんが

「なんだ?勉強か?」

「え?うんまあね」

と答えた。

そこから少し3人で話していると俺は凄いって言ってくるようになった。

そんな中で鷹崎さんが

「じゃあさエーちゃんは

何してる時が1番楽しいの?」

と聞かれた。

「うーん確かにそう言われると鷹崎さんや春樹くんみたいに夢中になれる趣味はないなぁ」

と答えた。

すると突然俺は吹き飛ばされか感覚があって直ぐに胸ぐらを春樹くんに掴まれているのに気付いた。

いつもは優しい春樹くんの地雷を踏み抜いてしまったらしい。

 

 

side春樹

 

「うーん確かにそう言われると鷹崎さんや春樹くんみたいに夢中になれる趣味はないなぁ」

 

趣味。

 

その言葉を聞いた途端に俺はエーちゃんを押して倒した後直ぐに胸ぐらを掴んでいた。

大声を出すと周りに迷惑になるから出来るだけ小さい声で

 

1度しっかりと息を吐いて

 

「お前には俺達のテニスが趣味に見えるのか?」

「えっ?違うの?」

「てめぇは・・・いや。お前に言っても無駄だな。」

そう言って俺は上着を着て外に走りに行く。

 

そして走ってる間終始あの[趣味]と言われたのが頭に残り続けていた。

 

side奈津

「ねぇエーちゃん。なんでハルちゃんがあんなに怒ったのかわかる?」

と聞くとエーちゃんは首を横に振る。

「ハルちゃんはね。もうプロになるだけの実力があるし世界のランキングにも載ってるから実質プロ選手だね。」

「春樹くんが実質プロ。」

「うん。そうだよ。そして私も一応プロ目指してるからさ。

ハルちゃんの言いたかったことはここにいる人は現実的かどうかは別として皆必死に練習してプロを目指してるって事が言いたかったんだよ。」

私はそう言って最後にエーちゃんに

「私がハルちゃんにフォロー入れとくから心配しないでねぇー」

と言ってハルちゃんとお揃いのジャージを着てハルちゃんが来るのを入口で待つのだった。

 

side丸尾栄一郎

鷹崎さんの言っていた[プロ]

テニスのプロって

テニスで生活していくってことだよな

ずーっとやり続けるってことだよな

[テニスってそんなに楽しいのかな]

俺はそうハッキリと思った。

 

少しするとコーチの人が戻って来て話を聞くと

ここは世界に通用する選手を育てる環境によってプロも多く出している名門のクラブチームらしい。

 

少しして帰る時にもう一度来よう。

そう思ってコーチの人に

「あの・・・体力つけるにはどうしたらいいですか?」

と聞くと

「そうね

とりあえずは走ることじゃないかしら」

と教えてくれた。



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5話

side春樹

ランニングをしていると少し落ち着いてきた。

冷静になるとやっちまったとすごく思う。

1度水分補給と思って自販機の所に向かうと入口の所にペットボトルを持ったなっちゃんがいた。

 

「ハルちゃんがそろそろ1周終わる頃と思ったから飲み物買っといたよ。」

「ありがとう。悪いなさっきは。かっこ悪い所を見せた。」

「いいの。あの怒ったのだってハルちゃんの為じゃなくてSTCの皆の為でしょ?」

「そうだな。去年のライバルがいないと腐っていた時、なっちゃんは俺を近くで言葉でプレーの上達で支えてくれてここの皆だってどんどん上達してくれてここにいる皆でギリギリまで諦めずに最後までプロを目指そう!そう言っていた皆の意思がエーちゃんの[趣味]の一言に留められるのが我慢出来なくてな。」

「うん。」

「正直、あそこであんな事しても意味無いのにな。」

と下を向いていると横からなっちゃんが俺を抱き締めてくれた。

「大丈夫だよ。この事を皆に言ったとしてもきっと何なもならないよ。寧ろここの意志を再確認する為のいい機会にできたと思うよ。」

と俺をなっちゃんなりに慰めてくれた。

「なっちゃんと付き合い始めてから弱い所沢山なっちゃんに見られたな。・・・失望したか?」

「まさか。

去年のハルちゃんの言葉を1つ借りるけど。

愛してる人の弱い所って愛おしく感じるんだよ。

それにそんな事を言ったら私なんてもっと沢山ハルちゃんに弱い所を見せてるもん。中学最後の大会で亜季ちゃんに負けて泣きたくなってる時とか他にも色々泣きたくてもなかなか泣けない時はハルちゃんが私を抱き締めて胸を貸してくれて泣いてたりハルちゃんに怒鳴り散らしたりしたからね。ハルちゃんは私に失望した?」

「もっとなっちゃんの事が知れて嬉しかった。」

「でしょ?」

「そうだな。

それとなっちゃん。1つ頼みがある。

無理を承知で言うからな。」

「うん。」

「答えは直ぐには求めない。

俺達が高校卒業すると共に俺と一緒にフロリダへ移住してくれないか。」

「テニスに専念する為?」

「そうだ。

中学最後の冬の短期留学の時、そうちゃんは俺と本当にギリギリの戦いをした。俺は高校卒業と同時に人生の全てをなっちゃんとテニスだけに使いたいと思ってる。」

「高校卒業と同時にフロリダ。

そこでハルちゃんは人生の全てを私とテニスに。」

「その覚悟だ。」

「人生の全てをってどこまでが全て。」

「なっちゃんと一緒にいない時間は睡眠を覗いてテニス。

それ以外はなっちゃんとの時間に当てるよ。」

「私が高校卒業と共にプロになれるとは限らないんだよ。」

「なら俺が今までの賞金とかこれから稼ぐ賞金でフロリダのテニスクラブへ通わせるよ。もしくは俺の専業主婦?」

「私もプロになりたいからね。今のハルちゃんの話を聞いて決心したよ。私もプロになる。今度は目指すんじゃなくて一緒にプロになる!」

「そうか。俺もなるからな。・・・それと今週の日曜日にそうちゃんが1度実家に帰ってくるそうだ。三浦コーチには話してあるんだがそこで俺はそうちゃんと試合をする事になった。見に来ないか?」

「行く!絶対に見るよ!」

なっちゃんはそう言って俺の腕に抱きついてきた。



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6話

side春樹

日曜日。

そうちゃんが日本に帰ってきていてSTCにも来た。

俺と全力の試合をする為だ。

「久しぶりだな爽児」

「そうだな。春樹」

と言葉を交わすと横からなっちゃんが

「今日は三浦コーチに変わって私が審判やるからね。」

と言っていた。

 

サーブは俺からのスタート。

いきなりツイストサーブを打って俺は爽児からサービスエースを取り

2本目はアンダーのカットサーブをワイドに

上手くサーブが爽児から逃げていきまたもやサービスエース

3本目はセンターにフラットサーブを打つも爽児は難なく追いつき反対に力のあるリターンを返してきた。

でも回転がトップスピンである事を確認すると追いついて直ぐにツバメ返しで点を取りあと1回ポイントを取ればこのゲームは俺の勝ちになる。

油断はしない。

1回は失敗しても言い訳だしコントロール度返しで全力のフラットサーブを打つ。

がギリギリ外れているらしいな。でもそれならと俺はアンダーのカットサーブをワイドギリギリに打つ。

これに追いつき爽児は何とかリターンを返したように見えたがパワーショットが俺の逆をつきポイントを取られてしまう。

そうして俺は思った。

やっぱ爽児を相手に考えながらのテニスだけでは勝てないと。

そう俺の勘が言っていたから1度目を閉じてボールを2回コートにつく。

そこからは試合中の事は殆ど覚えていないがサイコーに楽しかった。それだけは覚えている。

 

side爽児

試合は結局負けちまった。

7ー5

5ー7

9ー7

で春樹の勝ちだ。

あいつサーブもそうだけど技が増えすぎだろ。

やっぱり春樹はこうでなきゃな。

でもやっぱり春樹の1番凄いところは目を閉じてからの型に当てはまらないフォームと組み立てのスタイルだ。

今日は集中しきれていなかったのか時々春樹の言い方だと理性型のプレイが出てきたからそこを攻めて接戦に見せられたけど直感型の時の春樹はどんなフォームでも打ち返しくる。

抜けたと思っても抜けなかったからな。

そもそもなんだよ。ネットでのボレー対決で逆をついたと思ったら手を後ろに伸ばして更に逆をついてくるって。

やっぱり春樹はサイコーだな。

 

side奈津

ハルちゃんとそうちゃんの試合はやっぱり1番私は面白いと思う。

それにしてもそうちゃんがフロリダへ行ってプロになってから実力付けすぎ!

そしてそれに勝っちゃうハルちゃんも凄い!

なんて言うんだろう。私も置いて行かれたくないなって改めて思ったよ。

 

試合が終わってから私はハルちゃんとそうちゃんの間に立って

「2人とも!凄い試合だったよ。お疲れ様!」

って本心から言えた。

そして改めて思う事をあった。

本当はハルちゃんもプロでもう試合に出たいんじゃないかと。

 

side三浦コーチ

 

これが本当に16歳の子達の試合なのだろうか。

そう疑問に思わずにいられなかった。

爽児の最後まで衰えることの無かった速さはスタミナの多さを物語っている。

そして春樹のサーブやリターンは春樹らしい細さと荒々しさがわかる。

2人はこの試合の間にも成長していた。



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7話

side丸尾栄一郎

「あっいたいた!

ハルちゃん!

エーちゃん!」

「!?」

「どうしたんだなっちゃん?」

「森本コーチからエーちゃんに伝言があるのとハルちゃんに逢いたくて来ちゃった。」

と鷹崎さんが春樹くんに言うと周りのクラスメイトが

「春樹にあいたかっただと〜」

「おい!春樹!どういう事だ!」

「皆の鷹崎さんとどういう関係だ!」

と皆して春樹くんに質問する。

 

それに対して春樹くんは一言当たり前の様に答える前に鷹崎さんの元へ行き手を取って

「ちょっとーハルちゃん。どうしたの?」

「もう皆知ってると思ったんだけどな。まだ理解出来ないみたい・・・理解しようとしないみたいだから見せつけようと思ってね。」

と2人が話し終えるといきなり春樹くんが鷹崎さんにキスをした。

それを見て男子達が

「「「「「「「「「「「「「「あー!」」」」」」」」」」」」」」

と叫び女子達が

「「「「「「「「「「「「「「「キャー!!」」」」」」」」」」」」」」」

と大声で叫んだ。

悲鳴のように。

その後すぐに男子達が

「我ら大杉高等学校のアイドル鷹崎さんが」

「テニス馬鹿の春樹と!」

「キスだと!」

「確か鷹崎さんもテニスやってるよな!」

「鷹崎さんはテニスをやってるから春樹が好きなのか!」

「俺も今からテニスを始めるか!」

女子達が

「春樹くんが鷹崎さんにキスしたよ!」

「春樹くんと付き合ってるなんて羨ましいなー」

「確かテニスも凄いんだよ!」

「そうなの!」

「私は春樹くんに手取り足取りテニスを教わりたいかも。」

と言っていた。

 

そしてそれを最後まで聞いていた春樹くんが

「おい男子達。」

と低い声で言うと

影山が「なっなんだよ春樹。」

と答える。

「もしなっちゃんに手を出そうとしたら全力でボディにフラット決めるからな。」

と言うも周りは

「ボディ?」

「フラット?」

とわからないみたいだ。

俺もまだわからないし少し調べてみよう

と思っていると影山が

「春樹。ボディとフラットってなんだ?」

と聞いていた。

ナイス!影山!

と思っていると鷹崎さんが春樹くんに変わって答えていた。

「ボディって言うのわね、相手の身体に目掛けて打つ事だよ。フラットは1番力が入る打球だから凄く痛いね。ちなみにハルちゃんのフラットは日本でのプロ選手を含めても五指に入るって言われてるくらい凄いから余計に痛いと思うよ。」

と答えてくれた。それに男子の中の1人が

「ちなみに春樹のフラットはどのくらい痛いんですか?鷹崎さん。」

と聞いていた。

「ハルちゃんのフラットの最高記録は何キロだっけ?」

「220キロだな。でもコントロールを考えると200キロ位だな。」

と春樹くんは平然と答える。

それに対して男子達は

「200キロってどの位だ?」

「野球でこの速さは無いぞ。」

「新幹線とどっちが速い?」

「新幹線だと思う。」

「でもテニスボールって軽いから案外痛くないんじゃ?」

と言うと春樹くんがカバンからラケットとボールを取り出して

笑顔で、でも明らかに怒りながら

「1発食らってみるか?」

と言っている。

皆は首を横に振ってるけど。

 

気を取り直して

「鷹崎さん。またノートのコピーですか?」

と聞いてみると

「ちがうちがう。森本コーチが、もう一度無料体験に来てもいいって言ってたから。」

「それだけ?」

「あと昨日私が言った事とハルちゃんが怒った事を覚えてる?」

「昨日?

あーあの[プロを目指してる]ってやつ?」

「なっちゃんは俺が走ってる間まだそんな事を話していたのか?」

「あそこでハルちゃんがエーちゃんを張り倒した挙句に胸ぐらを掴んでいたからでしょ。もぉー」

と黒板の前で話していた。

「きっとエーちゃんも、始めてみればわかるようになるから。」

「まぁ始めるなら始めてみればいいけど今から始めてもし[プロを目指す]って決める事があるなら、生活の1部じゃなくて生活のメインにする必要があるけどな。まぁまた無料体験に来いよ。それと昨日は悪かったな。」

「いや。それはこっちが無神経過ぎたから。」

「まぁいいけどさ。なんにせよまた来いよ。歓迎するから。」

そう言って春樹くんはなっちゃんを隣の教室だけど送って行った。



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8話

side春樹

放課後になり教室になっちゃんを迎えに行くと

なんか女子達に囲まれた。

「なにかようなのか?」

と聞くと

「確か清水春樹くんだよね。」

「そうだよ。何か?」

「去年のプロのテニスの大会に出てなかった?」

と聞いてきたのでなっちゃんの方を向くと

ごめんとジェスチャーされた。

仕方ないと思いつつ答える。

「出てたよ。それで?」

と答えると周りで

「やっぱりー」

「春樹くん凄い!プロだよ!プロ。」

と周りから色々聞こえてくる。

俺のクラスメイトよりも俺の事を隣のクラスが知ってるのはどうなんだと思いつつも情報源であろうなっちゃんの方を見る。

するとなっちゃんが

「皆ごめんねーこれから私とハルちゃんはテニスクラブに行かないと行けないからまたね。」

と言って俺の手を掴んで引っ張ってくれた。

 

「すまん。助かった。」

「私も彼氏いるかって聞かれて同級生で去年のプロのテニスの試合に出ててテレビに出てたよって言ったら[それって隣のクラスの清水春樹くんだよね!]って言ってきてさ困ったよ。アハハは。なんかゴメン。」

「気にするなよ。俺はなっちゃんの自慢出来る彼氏になるだけだから。」

「なら私はハルちゃんの自慢の彼女になるね。」

と答えてきた。

「なっちゃんはもう既に自慢の彼女だよ。」

と小声で聞こえないように言ったはずなのになっちゃんには聞こえていてらしく

「ありがとうハルちゃん!」

と言って俺に抱き着いてきた。

 

下駄箱に着くと逞がいた。

一応先輩だけど

呼び捨てだな。

 

「珍しいじゃん逞」

「春樹。俺は一応先輩なんだが?」

「タクマ、それは凄い今更な気がするよー」

と3人で話しながら校門に向かう途中

視線に気付く。

視線の先を見るとエーちゃんがこっちを見てあわあわしていた。

なっちゃんも気付いていたようだ。

すぐに隠れたけど。

 

 

エーちゃんが無料体験に来てから1週間後。

またエーちゃんが来た。

「また来たかエーちゃん。」

「うん。前回はまともに撃てなかったから今回こそわね。」

「そうか。頑張れよ。」

俺はそう言ってなっちゃんの元へ行く。

アップを終えてAコートに入るとエーちゃんが通路で森本コーチといた。

 

side丸尾栄一郎

ラケットの握り方からと思っているとコーチの人に連絡が入り他のコートの見学をしているように言われた。

Aコート?に行くと

春樹くんに鷹崎さんとあの先輩が3人でいた。

 

3人が交代で練習している。

よく見ると鷹崎さんと春樹くんは同じ打ち方をしている。

 

しばらくして

「ナイスサーブタクマ。」

「春樹に言われると世辞に聞こえるな。」

「お世辞じゃないよ。凄いナイスサーブだよ。調子いいじゃんタクマ。」

と話していた。

すると鷹崎さんが俺に気付いて春樹くんの手を掴んで

 

「どうしたんだなっちゃん。」

「エーちゃんが来てるよ。テニスやる事にしたの?」

と聞いてきた。

「えっ・・・あ・・・まだ申し込みはしてないけど」

と逃げ腰で答えた。後ろにいる先輩が怖いんだもんと思っていると

「エーちゃんコーチは?」

と聴いてくると春樹くんが

「タクマ。エーちゃんに威嚇するのはやめろ。」

って言うと鷹崎さんが気付いて

「あっタクマ。」

と言っていた。

 

「まぁいいや。

エーちゃん。一応このでかいヤツの・・・俺と背が変わらねーな。タクマの紹介をするよ。

江川逞。同じ高校の2年だ。

でこのヒョロヒョロが俺と同じクラスのエーちゃんこと丸尾栄一郎だ。

タクマは威嚇をやめろ。

一応俺となっちゃんの友達だ。」

と言うとタクマさんが顔を近付けて

「ふーん、友達ねぇ。」

と言ってきた。

春樹くんが

「エーちゃん。1つ頼みがあるんだけどいいか?」

「何かな?」

「サーブ練習の時だけでいいコートに入ってくれねぇかなぁ

入るだけでも練習になるからさ。打ち返せるなら打ち返してもいいしな。」

とビックリ仰天な事を春樹くんは言い出すのだった。



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9話

side丸尾栄一郎

なんかサーブ?の練習相手になっている。

春樹くんとタクマさんのサーブは速すぎて怖いけど鷹崎さんのサーブは早くないのかな?

と考えていると

鷹崎さんが

「やっぱ構えてる人がいると緊張感が違うねっハルちゃん!タクマ。」

「「そうだな。あれで打ち返してくれれば完璧なんだがな。って真似するなよ!」」

「ハルちゃんとタクマがハモってる珍しい。

次行くよー!」

と言われた。

完璧に利用されてる

と思っていると春樹くんと鷹崎さんが近付いて来て春樹くんが

「打ち方教わったか?」

と聞いてきたので

「教わってないよ」と答えると鷹崎さんが

「グッと構えて

サッと引いて

スパーンだよ。

わかった?

リズムが大切だよ!」

と教えてくれるも曖昧で分からなかったが春樹くんが

「なっちゃんは感覚派だから説明が大雑把なんだよな。

いいか?エーちゃん。

打点・・・打つ所は腰の高さで左足よりちょっと前

これが基本でって1度俺がタクマのサーブを打ち返すから・・・エーちゃんは今、携帯持ってる?」

「待って」

そう言って俺はカバンに携帯を撮りに行くと

春樹くんが俺から携帯を取り何かを設定?している。

「今、カメラを設定したからスローモーションで取れる状態に。これで俺の打ち返す所を撮影してろ。」

と伝えてコートに春樹くんは入った。そして

「タクマーフォア側に軽めの奴を1球と全力1球頼めるか?」

「任せろ。」

とタクマさんが返事をして

鷹崎さんが

「エーちゃん。もうハルちゃんを取り始めて。うーん。少し後ろからの方がいいな。」

と言って鷹崎さんが俺を2人が見える位置に誘導。

「タクマー!いいよー!」

と鷹崎さんが伝えると

タクマさんがボールを上に投げて軽く・・・じゃなくて凄く速いのが飛んできた。

がそれを難なく春樹くんは打ち返す。

そして

「タクマー話が違うぞ。」

「すまん聞いてなかった。」

「あの任せろはなんだったんだよ。」

「気にするな。春樹なら打ち返せる。」

「当たり前なことを言うな。まぁいいや。エーちゃん。今のが速いサーブに対する対処法。次が遅いのが来るはず」

そう言って春樹くんはまた構えると鷹崎さんがまた、

「タクマー!今度は遅いのだからねー!」

と伝えるとさっきと同じようにまたボールを上に投げて今度は軽く打ってきた。

それをしっかりと打ち返してタクマさんの股下を玉が抜けて行く。

それを見て鷹崎さんが

「ハルちゃんなりの仕返しかー」

と言うとタクマさんが

「おい!春樹。舐めた真似してんじゃねえよ。」

とタクマさんが

それに対して春樹くんは

「余りにもタクマが無防備だったからな。ついつい狙っちまったよ。」

と一触即発状態に

なったかと思うとケロッとした顔で春樹くんはこっちに振り向いて

「エーちゃん。少しは参考になったか?」

と聞いてきて

「ハルちゃんはフォアハンドストロークのフォームは綺麗だからね。まぁ1球打ってみなよ。

タクマは危険だからハルちゃんお願い。」

「任せろ。」

と言ってタクマさんの所へ行き

「タクマ。邪魔」

と言ってどかして

「エーちゃん行くぞー」

隣の言って軽くサーブを打ってくれた。

春樹くんの打ち方は、と思い出しながら打ってみる。

すると綺麗に打ち返せた。

それを見て鷹崎さんと春樹くんが拍手してくれて

「今のいい感じだよ!!」

と鷹崎さんが

「悪くねえな。初めてにしてわな。」

と春樹くんが言ってくれて2人が感動している俺に

「「これがフォアハンドストロークだ。/だよ。」」

と教えてくれた。途端にタクマさんがネットの所まで来て

「おい。

もういいだろ。

ココはAコートなんだよ。」

と言われて

コーチに何してるのと言われて

礼を言って謝罪を言って通路へ走って言ったのだった。



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10話

side春樹

「タクマ。そんな言い方しなくてもいいと思うぞ。」

「そうだよタクマ。言い方がキツすぎ。」

と俺となっちゃんはタクマを攻めるも

「アイツの眼が気に食わなかった。そんな事よりやるぞー。」

と誤魔化すようにタクマがまたサーブ練習を始める。

 

そして3日が経ち、俺がなっちゃんと午前中に2人で練習をしてから、午後の練習が始まるまでの間にデートへ行った。

いつものように公園の中を通っていると

「ハルちゃん。髪の毛に葉っぱがついてるよ。」

となっちゃんが言ったので取ってもらおうと腰を曲げると

俺の唇になっちゃんの唇が当たり

「嘘だよハルちゃん。」

と言ってきた所で俺とエーちゃんの視線があってしまった。

 

「なっちゃん。」

「どうしたのハルちゃん?」

「多分エーちゃんに見られたよ」

と伝えると

「・・・・・・ええぇぇえええええ」

と俺が口を掌で抑えたから声は大きくならなかったが叫んでいた。

 

とりあえずエーちゃんはここのコートから出てしまったボールを取りに来ているようだ。

 

コートに入りベンチに

影山・俺・なっちゃん

の順で座ってエーちゃんの壁打ちを見ていた。

「まさかエーちゃんが自主練をするとはな。」

と俺が言うと影山が

「以外だと思うか?」

と聞いてきた。

俺がそれに対して

別に

と応えようとするとなっちゃんが

「エーちゃんなら珍しくも何ともないよ。でも優等生だから休みの日も勉強してるのかと思ってた。」

「確かに。」

と俺となっちゃんが思っていると

「夜はやってるみたいよ。」

と答えていた。

「さすが優等生だな。」

「だよなー。

それより春樹と鷹崎さんはエーちゃんが体験に行ったクラブでテニスずっとやってるの?」

と影山が聞いてくる。

「そうだね。5歳からずっとハルちゃんとやってるよ。最初は家が近かったからハルちゃんのお母さんに送り迎えして貰ったり、私のお母さんにして貰ったりね。」

「小五位からは2人で自転車かバスだな。

影山もテニスやってみたくないか?」

と俺が影山に聞く

それに対して

「確かにエーちゃんもやってるし興味はある。」

と言っていたので[来てみろよ]と言おうと

するとこのタイミングでなっちゃんがエーちゃんのカバンの上に載っていたと1冊のノートを取り出した。

「なにこれ?」

「影山・・・コレってまさか」

「春樹。そのまさかだよ。

エーちゃんノートテニス版」

と聞いて俺となっちゃんはこのノートを開いて凝視した。

するとエーちゃんが取り返そうとやってくるので

「影山。読みたいから時間稼ぎを頼むよ。」

「鷹崎さんの為に時間稼いでやるよ」

と言ってエーちゃんを抑えに入った。

 

ノートを読むと書かれている内容はオレとなっちゃんが教えた内容だった。

「影山・・・ありがとう。それとエーちゃん。

このノートはキモイね。」

「それには私も賛成かな。」

「そもそもこれは基本で試合では動作が遅くなるから使えない技術ばかりだからな。でもエーちゃんはこのノートに書いてある事、全部やろうとしてるんだろ?」

「そうだよ。」

「確かエーちゃん曰く今回の体験の時に完璧なショットが打てたらしいんだよね。まぐれで。」

「だからその時のフォームの正確かつ詳細なデータを知りたいんだ。」

「でもだからって分度器まで持ってくるか?」

とエーちゃんは言って影山が笑うと

「俺もその練習はやってるぞ。イメージトレーニングの1種でプロもやる。」

「ハルちゃんの練習法を少し見せてあげたら。手伝うよ。」

となっちゃんが言ってくれたのでカバンからラケットとボール・・・3脚にビデオカメラを取り出して俺は準備をしている。

 

side鷹崎奈津

「ハルちゃんのこの練習法は手本になるよ。凄く細かいからハルちゃんも。でもエーちゃん見たいに馬鹿みたいに細かくはやらないよ。ちゃんと必要な部分だけやってるから効率が凄くいいんだよ。」

取り言ってるとハルちゃんが準備を終えたらしく

「なっちゃん。よろしく。」

「任せて。」

そう伝えるとハルちゃんがサーブから打ち始めて一通り全てのショットを打つ。

それをベンチに戻ってハルちゃんと2人でハルちゃんのフォームをって・・・

「ハルちゃん。もうスグ夕方の練習が始まるよ。」

「マジだやべ。とりあえずエーちゃん。壁打ちならSTCでも出来るからいつでも来いよ。俺となっちゃんは毎日コートで練習してるから。」

「またね。エーちゃん影山君。」

そう言って手を振るとハルちゃんが手を握ってクラブでまでほぼランニング状態で向かう事になったのだった。



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11話

side丸尾栄一郎

2人を見送りながら手を振ると影山肩を組んできて

「うわっなんだよ影山っ」

「お前、鷹崎さん、好きだろ。」

と言われて取り乱したりして影山に笑われた。

でも俺が頑張って鷹崎さんに告白しても無理だよ。

だって春樹くんには勝てないからね。

それに友達としては好きだけど恋人になりたいかと言われると違う気がするんだよね。

 

side春樹

翌日 日曜日

いつも通りなっちゃんを迎えに行ってSTCに向かうとエーちゃんが既に壁打ちを始めていた。

「早いなエーちゃん。」

「本当だね。たぶん、今日も完璧を求めてやってるんだよ。」

「テニスの完璧ってなんだよ?」

「テニスの女王様に出てくる黒石さんのバイブルテニスじゃないの?」

「バイブルテニス。ねぇ〜。

俺はテニス以外を習った事がないけどスポーツに完璧は存在しないと思うんだよね。」

「私もそう思うかな。でもエーちゃんにはエーちゃんのテニスかあるから好きな様にやらせてあげよう。私達にも私達なりのテニスがあるんだし。」

「まぁそうだな。それにエーちゃんなら難波江よりもいつか強敵になりそうだし。」

と俺が言うとなっちゃんがきょとんとした表情になって

「どうしてそう思うの?」

と聞いてきた。

「エーちゃんのテニスは今は未完成。というか多分今後どれだけ練習しても完成は無い。その証拠はあのノート。完成が無いから俺と難波江同様に全てのステータスを最大値に限りなく近くして弱点を無くそうとするはずだ。でも難波江とは何度も試合をしてわかったことはまだ精神面が弱い事。対してエーちゃんは今の所の精神面は俺やそうちゃんよりも強いと言っていいと思う。」

「でもハルちゃんとそうちゃんが揺らいだ所は見た事が無いよ?」

「それは未だに完全な敗北を知らないからだよ。俺もそうちゃんもプロを除いて今の所はお互いに敵はいないからな。タクマが頑張ればわからないけど、最近のタクマは精神的にやられてんだよ。」

「でもエーちゃんが完全な敗北を知ったらどうなると思ってるの?」

と真面目な顔でなっちゃんは聞いてきた。

「経験の1つ。エーちゃんならそう捉えるよ。」

「そっか。」

 

そして練習を終えてまたコートの横を通る時に

まだ壁打ちをしているであろう音が聞こえる。

「まさかまだエーちゃんは壁打ちをしているのか?」

「してたとしてもエーちゃんらしいよね。」

と話して横に来ると

エーちゃんはまだ壁打ちをしていた。

フォームも少しは安定してきていた。

 

俺はなっちゃんの手を取ってエーちゃんのいるコートに入りエーちゃんに声をかける。

「エーちゃん。」

と声を掛けると気付いてこっちを見て

「どうしたの春樹君?」

と聞いてきた。

多分これを聞いたら驚くんだろうな。

「俺と軽い試合をやらないか?」

と聞いてみると予想以上の反応が帰って来た。

「春樹くんとし・し・し・試合!無理だよ。俺とやっても春樹君にいい事は何も無いよー」

と慌てて答えてくる。

「俺の為の試合じゃない。エーちゃんの為の試合だ。」

と俺が答えるとなっちゃんが

「なるほど!エーちゃんに足りない経験を積んさせようとしてるわけだ!」

「そういう事。これでも日本でトップレベルだ。いい経験になると思うぜ。そのノートも内容が濃く出来るようにするからな。」

トップレベル俺がエーちゃんに伝えると。

「なら春樹君。よろしくお願いします。」

「おうよ。」

こうしてエーちゃんにとっての初めてのテニスの試合をする事になった。



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12話

side春樹

 

エーちゃんの初めてのテニスの試合は俺のサーブから始まる。

と言うよりまだエーちゃんはサーブが打てないらしい。

 

エーちゃんはセンターにワイドとどちらにも対応出来る場所に意図してかしていないかはわからないが立っている。

 

「エーちゃん。」

「どうしたの春樹君?」

「この試合。俺はエーちゃんの経験になる為に全力でやるから少しでも多くの経験をつめよ。」

「うん!頑張るよ!」

 

とエーちゃんと話していると審判をしているなっちゃんが

「ハルちゃん!エーちゃん!話してないで早く始めて!」

と言われてしまった。

 

エーちゃんが始めて受ける試合のサーブは今後のどの試合よりもリターンが難しいサーブに、したい。

選択肢は3つ。

 

ワイドを大きく使う

アンダーのカットサーブ

 

センターに1番速くリターンが追いつかない

フラットサーブ

 

スライスにのみ力を入れてバウンドした途端にほぼ真横に跳ねる

スライスサーブ改

 

俺が試合中の流れをサーブから変えたい時に使おうと思っているとサーブだ。

 

「行くぞーエーちゃん!」

俺はそう言ってセンターに全力のフラットサーブを打つ。

そのサーブはセンターに決まりエーちゃんも反応してリターンをしようと走り出すが追い付かず金網に当たっていた。

 

「ハルちゃん!ナイスサーブ

・・・・・・15-0」

 

位置に戻って今度はどうするか考える。

エーちゃんにとっての2本目。

あえてリターンをさせて軽いストローク戦にする。

そこから大きく流れを変えよう。

 

威力を落としてエーちゃんの打ち返せる所にサーブを打ち込む。

そこからはしばらくストローク戦が始まる。

10回目が帰ってきた所でドロップショットを打つ。

エーちゃんは反応して打ち返してくる。

「チッ!」

しかも俺のいる所と対角線の所に

たまたまか!

いや。

アイツは俺のいる場所をしっかりと見ていた。

上手く打ち返せたのはまぐれだろうがまぐれだろうが入っている。

俺は全力で走りワンバウンドしたエーちゃんのリターンをロブで打ち返す。

エーちゃんがジャンプしても届かないギリギリの高さで。

 

エーちゃんはジャンプして

・・・いない!俺のロブの落下地点目掛けて一直線で走って行く。

 

その時、俺の勘警報を鳴らした。

これで点を取られてはいけないと。

そして俺に向かって強烈なストロークが帰ってくると。

ここからはエーちゃんの為に直感に任せるのもありだな。

 

ここからのエーちゃんとの試合は圧倒。

試合を終えてスコアを見ると1度もポイントを許していない事がわかる。

この感覚。

そうちゃんとの試合以来だ。

楽しかった。

初心者のエーちゃんがもしかしたら前になっちゃんの言っていた。

「俺とそうちゃんに勝てる相手」

になるのかもしれないな。

俺はそう思うと同時にこれからは1度も負けられないと思った。

 

なっちゃんとの帰り道。

「ハルちゃん、エーちゃんとの試合、楽しそうだったね。」

と俺に笑顔を向けて言ってきた。

「ああ。楽しかった。まさか初心者相手に本気になるとは思わなかった。けどアイツはいつか俺とそうちゃんのいいライバルになるな。」

俺はそう確信してなっちゃんに

「俺は日本でやっていてよかった。あの時そうちゃんとアメリカに行かなくてな。ここでもプロの試合には出られる。」

と俺が言うと

「ハルちゃん!」

と俺に言ってくる。そして笑顔で

「ハルちゃんも頑張ろうね!エーちゃんに負けないくらい!」

「これ以上やれって事だよな。」

「ハルちゃんにはハルちゃんのやり方があるでしょ?」

「そうだな。そうちゃんにもエーちゃんにも負けないさ。これからもな。」

そう言って俺はなっちゃんの手を掴み帰ろうとする。

「ハルちゃん。少し寄って行きたい所があるんだ。」

と言っていたので着いて行くことにした。

 

着いたのは

 

服屋。

 

「ハルちゃん。今度の大会が終わったら久しぶりにデートで1日使おうよ!」

と言ってきた。

「いいな。行こうか。一緒に優勝したらな!」

 

デートの約束とその時になっちゃんが着る服と俺の服を2人で選んで帰ったのだった。



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13話

side春樹

エーちゃんが入会して1ヶ月が経ちDコートまで上がってきた。

かなりキモイ顔をする頻度が上がってきたけどあの時の俺のサーブ予感は間違いなさそうだ。

そんな時エーちゃんが俺とタクマのサーブを除いてタイムを測ってはノートに書いてを繰り返している。

するとタクマが

「なんだよ」

とエーちゃんにイライラしながら聞いている。

「えっ・・・あっ・・・」

と言葉に困っていると

「エーちゃん。一応俺とタクマはサーブ練を終えたんだけど?何かようでもあるのか?」

と聞くとエーちゃんの爆弾発言が飛び出た。

「やっぱりタクマ先輩もプロ目指してるんですか?」

と聞いていた。

タクマはエーちゃんの胸ぐらを掴んで今にも殴り掛かりそうになっていた。

「おい!タクマ。やめろ。」

と俺が言うとタクマが

「てめぇは関係ねえだろ。すっこんでろ!」

「目の前で見せられて俺が止めねえとでと思ってんのか!?」

と俺とタクマが睨み合いながらもエーちゃんを、掴んだまま話さない。

そんな時三浦コーチが

「キ・・・キサマ!なにやってんだ!

聞いているのかタクマ!!」

とタクマを三浦コーチが説教してる時にエーちゃんが

「なんで・・・

なんでそんなに怒るんですか?」

と言われてタクマは頭を書いて腕を交差させて

「やっぱ今のなし。」

と言っていた。それを見て俺は

「ならタクマは出てけ!怒ったりなしって言ったり鬱陶しいんだよ!」

と言うとタクマ

「わーたよ。出てきゃいいんだろ!」

そう言ってコートを出ていった。

その直後にエーちゃんは俺に

「春樹君。なんでタクマ先輩はあんなに怒ったの?」

と聞いてきた。それを聞いて俺も

「おい。お前もいい加減気付け。タクマの代わりに俺がサーブを打ってやる。どうせリターンの練習の為に見に来たんだろ。1箱分だけ打ってやるから終わったらさっさと失せろ。」

と言うと

「ありがとう」

と言ったあとに

「何がいけなかったのかな?」

と言いながらコートに入る。そして

「春樹君。」

「なんだ?」

「もし俺がリターンを出来たらなんでタクマ先輩が怒ったのか教えてくれないかな?」

と聞いてきた。

「ならお前が1つもコート内にリターン出来なかったらこの事には今後一切首を突っ込むな。」

「わかった。」

こうして俺がエーちゃんのリターン練習に付き合う事になった。

 

結果としてコート内にリターンが帰ってくることが遅れてやって来たなっちゃんが一言アドバイスをしてエーちゃんなりに理解をしてからサーブに負けなくなってきた。

が最後まで帰ってくる事はなかった。

 

最後の最後まで俺はフラットサーブしか打たなかったけど多分スライスサーブを最初から打っていたらリターンに成功していたんだろうな。と思いながら練習を終えた。

 

練習後三浦コーチが高校生の選手を集めて大会が近い事と俺となっちゃんが男女の第1シードである事とタクマが第2シードである事を伝えて解散となった。

 

帰りはいつも通りなっちゃんと2人で手を繋いで帰った。

「なっちゃんは今日は珍しく遅かったね。」

「家の方で用事があってね。遅れちゃった。あははははは。

それよりハルちゃん。第1シードおめでとう。」

「それはなっちゃんもだろ。」

「ならお互いにおめでとうだね。」

 

 

 

そして時間が経ち大会初日。

エーちゃんにとっての初公式戦が幕を上げた。



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14話

side丸尾栄一郎

大会が近くなってから俺は諭吉君と話す事があった。

初戦の大林良っていう人のコトを聞いたりシードの事を聞いたりグレードの事を聞いたりと。

とりあえずハッキリとしたのはこのクラブで

男子の序列的に1位は春樹君で女子の序列1位は鷹崎さん。

男子の2位はタクマ先輩で女子の鷹崎さんから下と男子の僕以外のタクマ先輩よりも下は関東レペルのグレード2

自信が無いと思っている時に後ろから

ドーン

と背中を押されて驚いてボールをカゴから出しちゃった。

背中ドーンの犯人は鷹崎さんで後ろで春樹君が、頭を抱えている。そして春樹君は僕の考えを当ててしまう。そんな時2人が

「初めての公式戦が不安なのはしょうがない。特に初戦はな。未だに俺となっちゃんも緊張するしな。」

「そうだよエーちゃん。私もハルちゃんも不安なんだよ。

ハルちゃんじゃないけど1回戦は何がなんでも負けられないしね。凄いプレッシャーがかかるんだよ。

いきなり調子が悪くなるし相手と相性が悪い事なんていくらでもあるから絶対に勝てるなんて保証は無いしね。

でも私にはハルちゃんが着いていてくれる。なんかねハルちゃんが試合の始まりだけでも見てくれるだけで

私は大丈夫!

そう思えるんだ。

私もエーちゃんの気持ちわかるからハルちゃんが空いてたら2人で応援行くね。

それとエーちゃんも私の試合を見に来てね。」

「まぁ案内は任せろ。それと暇だったら試合をする事に見に行ってやる。」

「私もエーちゃんの試合をハルちゃんの試合が終わり次第、見に行くからね。約束ね。」

そう言って鷹崎さんと春樹君は立ち去っていった。

 

 

そして試合当日

神奈川ジュニアテニスサーキット

第1日目

俺の試合は早めに始まる事となった。

春樹君の試合も早めに始まったようだ。

春樹君の方のコートを除くと

 

「おいおい!なんで清水春樹がこんな大会に出てるんだよ!」

「あんなのに勝てるわけねえよ!」

と言う声と

 

鷹崎さん達同じクラブメンバーが

「ハルちゃん!頑張ってー」

「春樹君!攻めてー」

と女子達に声をかけられていた。

 

僕がアップに入ると鷹崎さんがこっちのコートに近づいてきた。

「エーちゃん。なかなかさまになってるじゃん。」

「試合だから一式そろえてみたんだけど」

「似合う似合う。」

「鷹崎さんは春樹君の試合を見なくていいの?15分前に始まったみたいだけど」

「もうすぐに終わるから大丈夫。こっちに来る時はストロークをしていたけど一言伝えるとあと五分で行くって言ってもう不安は無さそうだったしね。」

 

と鷹崎さんが教えてくれると春樹君がやってきた。

「春樹君?試合は?」

「勝ったよ。・・・大林良か。がんばれよ。」

「うん。」

「それじゃあなっちゃん。受け付けに行ってくる。」

「わかったー。カバン預かるね。」

と言って春樹君は受け付けへ走っていった。

 

side春樹

受け付ける報告を終えてエーちゃんの試合を見に行くと諭吉が

「博士ー!久しぶりです!」

「おう。諭吉か。その博士って言うのを辞めてくれないか?」

「ダメですか?・・・なら

教授出てどうですか?」

「博士にしてくれ。」

 

side大林良

 

初戦の相手は丸尾栄一郎。

STCの選手だ。

周りにいる選手は凄いの一言に限る。

「男子学生テニス日本1位の清水春樹

第7シードの深沢諭吉

後ろにいる鷹崎ナツは女子の全国常連

その横にいる槇原真純と横山花も関東の常連

12歳以下第1シードの天才児田島勇樹までいる。

それに第2シードの江川逞」

「良。あのメンツに囲まれてるんだ。丸尾栄一郎はただ者じゃないかもよ。」

「確かに周りのメンバーが凄すぎる。」

「良。がんばれよ。」

 

こうして俺の大会が始まった。

 

 

 



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15話

結果から言おう。

エーちゃんの大敗ではあるが大きな収穫のある試合だった。

いい点はリターン。

問題点はサーブ。

プレイスタイルはシコラー。

こりゃ明日、エーちゃんは筋肉痛だな。

 

と試合直後に考えているとコートから出てきた大林さんが話しかけてきた。

「清水君、だよね。」

と確認するように聞かれて

「そうですよ。」

「丸尾君。・・・彼の練習によく付き合うのかい?」

「原石なんでね。」

「そうか。俺はいつか清水春樹。君にリベンジする。そしてその時は勝たせてもらう。」

「そういう寝言はタクマに勝ってからにしてください。それじゃあ失礼します。午後から彼女・・・鷹崎ナツ除いて試合があるんで。」

俺はそう言って大林さんから離れていった。

 

少し歩くとなっちゃんがお昼の軽食をベンチに座って取っていた。

俺がなっちゃんの隣に座るとなっちゃんが

「ハルちゃん来てくれたんだ!」

「この時間がなっちゃんが1番不安に感じる時間だからな。そんな時は俺の試合が終わってれば隣に駆け付けるさ。」

と答えるとなっちゃんは笑顔で俺に

「ありがとう」

そう言って軽食を再び取り始めた。

食べ終わると

「ハルちゃんはさっき大林さんと何を話していたの?」

「俺にリベンジをするんだとさ。」

「そっか。てもハルちゃんなら大丈夫!勝てるよ!」

そう言ってくれた後なっちゃんは昼ご飯を片付けて人目の使い場所へ2人で移動する。そしてら俺は先程のなっちゃんのセリフに答えるように

「当たり前だ。それよりなっちゃん。試合前のやつやるぞ。」

「うん。」

なっちゃんの声を合図に俺はなっちゃんの額に手を当て前髪を少し上にあげて額にキスをする。

少しして長いなっちゃんの額へのキスを終えるとなっちゃんは顔を真っ赤にさせるもどこかスッキリした顔をしていた。

「ありがとうハルちゃん。もう負ける気がしないよ!」

「ならよかった。それと一言。」

「うん。」

「なっちゃんが例えこの試合中にどんなにアウェーになったとしても俺だけはなっちゃんのホームだ。だからなっちゃんは自信を持って試合に出ておいてよ。」

と言うとなっちゃんは

「いつも通りのセリフをありがとうハルちゃん。なんかねこれが無いと心細くなっちゃうよ。」

となっちゃんが言ったので俺はなっちゃんの額を人差し指で小突く

するとなっちゃんは両手で額にを抑えて

「何する・・・」

ここで俺は唇にキスをする。

なっちゃんの不安が今日は強いそうだ。

多分エーちゃんが来てなっちゃんが初めての公式戦のことを思い出したんだ。

「ハルちゃん。」

となっちゃんの少し弱い声。

「なっちゃん。なっちゃんは俺にとってのなんだ。去年の俺が恥ずかしがりながら言ったセリフを思い出せ。」

そう言うとなっちゃんが

「愛してる。・・・ハルちゃんはそう言ってくれた。」

「俺は頑張るハルちゃんを愛してるんだ。

負けて帰ってきたら抱き締めてやる。

勝って帰ってきたら沢山褒めてやる。

さぁもうすぐ試合だ。勝ったらこのままどこかに行こうか。どこに行きたい?」

「ハルちゃんの部屋。」

「そうか。俺の部屋か・・・?俺の部屋?」

「うん。」

「何が試合んだ?」

「勝てたらハルちゃん家に今晩止めて。」

「わかった。俺と親父と母さんを説得するからなっちゃんは外泊の許可を貰ってこいよ。」

と言うと

「任せて!それじゃあ試合に勝ってくる!絶対に見ててね!」

そう言ってなっちゃんは走って試合のコートに向かった。

そして俺は歩いて向かうのだった。



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16話

なっちゃんの試合をするコートに着くと周りが

「あれがSTC鷹崎ナツか?」

「すっげー可愛い」

「しかも強いなんて。」

「噂では清水春樹と付き合ってるみたいだぜ。」

「清水春樹は男の敵。」

「あんなに可愛い鷹崎さんを独り占めするなんで許されない行為だぞ。」

と周りが言ってる間に試合が始まるようだ。

なっちゃんの気合が入った顔。

集中している顔。

試合中の顔が俺は好きだ。

 

side丸尾栄一郎

 

鷹崎さんの試合を見に来ると凄い注目されていた。

私でも不安になる。

鷹崎さんはそう言っていた。

でも試合を見ていると

この前まで不安そうだったのが嘘のように

無敵の鷹崎さんだった。

 

鷹崎さんがコートを出ると真っ先に春樹君の元へ走っていった。

凄い注目されていたのに鷹崎さんは春樹君がいれば大丈夫なんだな。

そう思えるのは凄いなと俺は思った。

 

 

side春樹

 

なっちゃんが試合を圧勝して俺はなっちゃんとの約束通り母さんを説得する。

「母さん。」

「どうしたのハル?」

「今日、なっちゃんが泊まりに来てもいいか?」

「いいけど向こうさんは大丈夫なの?」

「それはよかったなっちゃんが今、説得中。」

「そう。泊まるのはいいけど変な事はしないでね。」

「わかってるよ。なっちゃんの家へ行ってくる。」

俺はそう言って俺はなっちゃんの家へ向かうのだった。

 

 

なっちゃんの家に着いてから家のベルを鳴らすと二階の窓からなっちゃんが顔を出して

「開いてるから入っていきよー」

と言われたから家に入ると

なっちゃんの母親が立っていた。

「いらっしゃいハル君。」

「久しぶりです。えっとなっちゃんから話は聞いてますか?」

「ハルくんの家にお泊りでしょう。勿論いいに決まってるわよ。未来の婿の家に泊まるんだもの。お父さんの説得は任せときなさい。」

と言われたのでホッとすると

「どうせならそのままなっちゃんを頂いてもいいのよ。」

とオバサンが言うとなっちゃんがちょうど階段を降りてきていて

「ちょっとお母さん。何を言ってるの!」

「なんの事かしらねぇ〜」

と微笑ましい母娘喧嘩をしていた。

 

落ち着いてからなっちゃんのカバンを受け取り俺よ家へと向かう。

その間なっちゃんは俺の右腕にいつものように抱きついているのだ。

完成になっちゃんが定位置になりつつあるな。

俺の家に着くと母さんが出迎えていた。

 

「お義母さん。久しぶりー。」

「そうねなっちゃん。久しぶりね。」

「今日と明日はお世話になります。」

「いいのよ。どうせならそのままハルを美味しく頂いてもいいのよ。」

と言われてなっちゃんは顔を真っ赤にしていた。

その後小声で

「ハルちゃんならいいかな。」

と言っていたのが聞こえてしまったのはしょうがないのかな。



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17話

なっちゃんが俺の部屋に泊まりに来た。

 

「ハルちゃんの部屋って昔から余り変化が無いよね。」

「どういう意味だ?」

と聞いた。

するとなっちゃんは

「なんて言うかさ・・・ゲームが好きなんだなって凄い思うよね。あとテニスの大会でのトロフィーも綺麗に並べて置いてあるし。」

と言われた。

その後しばらく静かに2人で肩を合わせているとなっちゃんが

「ハルちゃんのフォームのビデオとか無いの?」

「なんで?」

「ハルちゃんがどんな風に変化してきたのかなと思ったの。」

「俺の変化か。・・・あるけどなっちゃんのフォームも一緒に乗ってるから俺のと言うよりは俺となっちゃんのテニスの成長記録みたいになってるよ。」

「見たい!」

となっちゃんが言うので準備して

テレビで見ながらお互いのフォームの原点を見つめ直すいいキッカケになったなと思っている。

 

ビデオを見終わると母さんが下から

「ハルくん!ナツちゃん!ご飯が出来たわよ!」

と聴こえたので

「なっちゃん。行くか。」

「うん!」

2人で一緒に1階に降りるのだった。

 

下に降りて食卓を見ると今日の試合、お互いに勝ったから

「カツ」

確かに俺もなっちゃんも好きだけども

この山のように盛られているカツはいったい?

「お義母さん。この量は・・・多過ぎないですか?」

となっちゃんが俺より前に聴いてくれた。

「母さん。さすがに多い気がするけど。」

と俺も言うと

「それがそうでも無いのよ。ハルくんは初戦の後は何時もの倍以上の量を食べるのよ。それにナツちゃんも聞いてるわよ。食べる量が増えてい増えているってね。」

「「そうだったのか!/そうだったの!」」

と俺となっちゃんは同時に驚いた。

 

そこは置いておいて結局夕食に出て来た山のようなカツは

俺が6.5

なっちゃんが3

母さんが0.5

で完食してしまった。

 

 

部屋に戻って

「ねぇハルちゃん。」

「どうしたんだ?」

「あんなに食べてハルちゃんは太らないの?」

「そうだな。抜いても全く減らないけど食っても増えないな。俺の適正体重から全く。」

「ブー!なんかそれずるい。私も余り変化しないけど増えるのに。」

「なっちゃんは少し増やしたほうがいいと思うよ。」

「私に太れって言ってるの?ハルちゃんの為に体型に気を使ってるのに」

「それは嬉しいんだけどね・・・少しなっちゃんは細すぎるんだよ。」

「細すぎるの?」

「確かに俺の為に体型を維持してくれるのは嬉しいんだよ。でもね・・・それを考えても少し細すぎる気がするな。」

「そうかな?」

「まぁ冗談だけどね」

「ハルちゃん!流石にこの話題で冗談は無いよ。」

と言って俺の胸を両手でポカポカ可愛いパンチをしてくる

思いっきり抱きしめる。

「なっちゃん。」

「うん。」

「俺の為に何かしてるれるのは嬉しいよ。でもね俺はなっちゃんの笑顔を何時までも見ていたいんだ。なっちゃんの笑顔には何度も救われているからね。」

「うん。」

「俺の2度出たプロの試合。ランクの高くないプロ達の試合とは言え俺とそうちゃんが初めて出るプロの大会。初戦の時、俺は死ぬ程緊張していたんだ。そんな時に観客席を見るとなっちゃんがいて俺にそのなっちゃんの笑顔を見せてくれた。だからなっちゃん。何時までも俺の隣で同じ歩幅で進んでいってほしい。」

と俺が言うと部屋のドアが開いて

「ハルくん。」

「なんだよ母さん。」

「今のセリフはプロポーズ見たいね。

私は将来、2人が結婚するのは賛成よ。ナツちゃんはいい娘だしね。ハルくんが笑顔で救われているのなら賛成する理由はあっても反対の理由は一切無いわ。」

と母さんに熱弁されて横でなっちゃんが

「ありがとうお義母さん。」

と笑顔で答えていた。

母さんはそれを見て

「今から私もナツちゃんの家に行くわね。こんばんは2人で楽しんでねー」

そう言って部屋の前でなっちゃんの家にでんわを掛けて母さんが泊まれるようにして少しして家を出て行った。

「なっちゃん。」

「なにかなハルちゃん?」

「なんか母さんが悪いな。」

「昔から変わらないね。」

「・・・二人きりになったな。」

「うん。」

 

 

ここから先は何がおきたのか控えておこう。

ここのページに書けなくなってしまうからな。

 

ちなみに翌朝の俺達は少し寝不足で少しなっちゃんが痛がっていた。

とだけ伝えておく。



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18話

side丸尾栄一郎

 

初めての試合から3日後

みんなの応援。

そしてベスト8の試合見学のために

 

トーナメント表を見ると

春樹君はさすが第一シード

タクマさんも勝ち進んでるし諭吉くんも勝ち進んでる。

鷹崎さんも春樹君と同じ第一シードなんだと改めて思うよ。

大林君も勝ってる。

鷹崎さんは今、他の女子選手たちと一緒にいる。

鷹崎さんは調子良さそうだな。

 

と思って男子のコートに向かって歩いていると

「アニキー来てたんですね。」

「あっ諭吉くんボールを持っているってことは勝ったんだ!おめでとう」

「ま、一応第七シードですから。でも次からは手強いですね。そろそろ他のシード選手と当たりますし博士とタクマさん、第三シードの荒谷君にかんしていえばまだ1ゲームも落としていないそうです。」

そうなんだ。

「やっぱりすごいな。」

と思っていると春樹君が誰かと一緒にやって来た。

 

「おっす!諭吉。」

「博士!」

「相変わらず諭吉くんは春樹さんのこと博士って呼んでるんですね。勝ちました?」

「おー宮川も。

そっちはなんとかね。」

と諭吉君と話している宮川君?

ひょろ長いな。

「こっちのブロックは進行早くてもうベスト4決めだよ。

次、大林君だから頑張らないと。」

この人大林君とやるんだ。

と思っていると宮川君が

「あ・・・丸尾君でしょ?

大林君と1回戦でやった。」

「凄いシコりだったね後で凄い噂になってたよ。」

どんな噂だ!?

「僕が敵を取ってくるから。」

「おう。頑張れよ宮川。」

「はい。春樹さん。」

「そうだエーちゃん。あいつは第4シード宮川卓也覚えておくといい。」

メモメモメモ

「あいつは中三だからな。

それと2番コートの奥の老け顔。あいつは第2シードの荒谷パワーと速さを兼ね備えているカウンターのベースライナーだ。

あいつのプレースタイルは俺の直感型の時に近いものがある。

そうだろ諭吉。」

「そうですね博士。荒谷寛

はっきり言って野獣ですよ。

種類で言うなら虎ですかね。

ちなみに博士は黒豹ですね。」

「なんだよ俺が黒豹って。まぁいいや。俺の試合がもうすぐだから行くぜ。宮川と大林さんの試合を見るのもいいけど俺の試合も見に来いよ。」

そう言って春樹君は去って行った。

大林君と宮川君の試合は凄い迫力だった。

そんなふうに感じていると諭吉君が

「宮川も荒谷同様にベースライナーですが少しタイプが違います。

あのハードショットで7色のストロークと言われるほど多彩なボールを打ち分けるんです。」

って細かく教えてくれた。

 

試合を少し見ていると諭吉君がまた一言。

「さっき説明したのが神奈川の要注意プレイヤーですね。

僕と大林さんも入れといてくださいよ。

でもなんだかんだ言っても上位3人は少し格が違いますね。

荒谷はまだ上二人と離れていますが下とはレベルが違います。でまたタクマさんと博士でもまたレベルが少し違うんですよね。

まぁこの大会の1番コートが注目ですよ。」

 

と諭吉君に言われて見に行くと春樹君は既にコートの外に来ていた。

「遅かったな諭吉。」

「博士はもう終わったんですか?」

「ああ。」

「相手は神奈川でも強い選手の筈ですが?」

「なっちゃんがいるしプロの大会にも出ているし負ける訳にはいかないからな。タクマの試合でも見に行け。」

と言われてタクマさんの試合を見に行ってノートをとる。

すると後ろから

「勝ってみたいか?」

と言われて後ろを振り向くも

「え!コーチ!?」

「そういう顔をしていたよ。」

と言われて

「ノートを見せてもらってもいいかね。」

「え!?あっハイ!

た・・・ただのメモですよ。面白くも何ともないと思いますけど。」

と言うもコーチは黙々とノートを読み進める。

「楽しかったんです。

負けて

全然歯が立たなくて悔しかったんですけど

眼がいいって言われてそれが試合で実感出来て

そしたらもっと強くなれるかもって

そうなれればきっともっと面白いだろうって」

「キミは確かに眼がいい。

でもそれだけじゃない。」

と言ってくれて俺の事や、ノートのこと沢山コーチは褒めてくれた。そして最後に一言。

「これからの練習次第では春樹は厳しいかもしれん。もうプロの試合にも出ているがまだ学生である為メインがこっちになっているがな

他の神奈川のトップ選手を1年・・・半年・・・いや、もっと早く

キミは彼らより強くなれる!!

かもしれない。

だがこれは冗談で言っているわけではない。ここからはキミ次第なんだ。

春樹が君の事を楽しみだと言っていた意味がやっとわかったよ。

強くなりたいなら明日の朝7時にSTCの1番コートに来なさい。」

コーチにそう言われてもちろん答えは決まっていた。

やってやる!

そう思った。



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19話

side春樹

朝7時に1番コートに来るようにコーチに言われたから来たけど何の用だか。

と思っているとタクマとあった。

「なんでテメェがいるんだよ。」

「それはこっちのセリフだよ。」

「呼ばれたんだよ。」

「俺もだよ。」

「ちっ行くぞ。」

「言われるまでもねえよ。」

と言いながら行くとコートに三浦コーチとエーちゃんがいた。

「朝から悪いね。二人とも結果はどうだった?まずはタクマ。」

「準決勝で荒谷に

1-6

7-6

7-6

で勝ったよ。決勝はこいつに負けだ。」

「俺は宮川と準決勝で

6-0

6-0

で勝ちで決勝は

6-1

6-0

で勝ちました。」

「そうか。それで2人を呼んだ理由なんだが」

「「結果の報告じゃ無いのか?」」

「もう一試合ずつして貰おうためだ。」

「「誰と?」」

「1人しかいないだろ。」

と言われて俺は

「さぁーなっちゃんでも起こしに帰るか。」

タクマは

「帰る。」

と言って帰ろうとすると三浦コーチが

「後悔しても知らんぞ。

この試合はお前達のためでもあるんだ。」

と言った後も少し言っていた。それを聞いているとタクマが隣で怒っていた。

「コーチ。俺はエーちゃんと割と練習をしているし帰ってもいいか?」

「春樹のデータのアップデートがもしかしたら丸尾君との試合で出来るかもしれん。やってくれ。」

「分かりました。ただし全力でやるんでエーちゃんにポイントが入らないと思っていてください。」

「タクマならまだしも春樹とやってみて点が入る所は想像つかん。」

と言っているとエーちゃんが横で頭を下げて

「お願いします!」

と言っていた。

タクマは舌打ちしながらも

「しゃーねーな、やってみっか。」

と言って2人のウォーミングアップと試合が始まった。

俺はコーチに言ってランニングも兼ねてなっちゃんの家へ走って行って起こしに行く。

「ハルちゃん。おはよう。」

「もう出れるか?」

「うん。なんだって三浦コーチの用は。」

「俺とタクマがエーちゃんと試合をする事。」

と言うと驚いた顔をするなっちゃん。

「それより速く行くぞ。タクマの次は俺なんだ。」

「わかったから待ってよ。ハルちゃん!」

とこうして俺はなっちゃんを連れてコートに戻ってくると

エーちゃんノートをタクマが持ってエーちゃんと話している。

タクマが帰ってたからエーちゃんに話を聞くと

タクマとの距離が今のところ分からないから自分の使える時間を限界まで使ってそれからどうか検討すると伝えたらしい。

エーちゃんらしいが

「タクマとの距離がわからないなら俺との距離はもっとわからないぞ。」

そう言うと

「ハルちゃん。確かにハルちゃんはタクマより強いけど強いのタイプが違うからね。もしかしたらエーちゃんにとってはハルちゃんの方が測りやすいかもしれないよ。」

と言ってくる。

その後にエーちゃんが

「タクマさんと春樹君のタイプが違うってどういう事?」

と聞いてきた。それに対しての答えを言ったのが三浦コーチで

「タクマがサーブ&ボレーヤーで春樹は万能型オールラウンダー。簡単に言うとこんな所だが細かく言うとそこだけじゃない。簡単に言うと春樹のプレースタイルは多重人格だな。」

と言われてエーちゃんは頭がこんがらがっていた。

「仕方が無い、春樹。全部のプレースタイルを丸尾に見せてやれ。」

「マジですか?」

「マジだ。」

「カウンタータイプは頭が特に疲れるんですが。」

「わかっている。」

「直感型はスタミナ消費が凄いんですが。」

「それでも以前の爽児との2時間以上の長期戦を戦い抜いたなら問題無い。」

「はぁー分かりました。という訳でエーちゃん。何時もよりもギアを上げて最短最速で試合を終わらせるから粘れよ。」

と言って1セットの試合が始まったが

15分で終わってしまった。



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20話

sideなっちゃん

少し前のハルちゃんとタクマとの試合以降エーちゃんは私たちAコートに混じって練習に参加していた。

それも毎日。

八月下旬にハルちゃんとのデートも兼ねてエーちゃんが出ているグレード4の試合を見に来たら少しうるさくなったけど気にしない。

まぁエーちゃんはギリギリながら初勝利。

嬉しそうだった。

 

夏休みがおわり二学期に入るとタクマがエーちゃんのクラスでハルちゃんとエーちゃんの3人で話している。なんだろう?

 

side春樹

「お!いたいた。」

「あれどうしたんだ?タクマ。」

「コーチが丸尾を今日の合同練習に誘えってよ。」

「そうか。そりゃ良かったな!・・・」

とエーちゃんに言ったつもりなのだがまだプリントを集めていた。

 

仕方が無いか。

「タクマ。少し待っていてくれ。」

そう言って俺は佐々木さんの所は行き

「悪い佐々木さん。あのヤンキーがエーちゃんに用があるみたいでさ。少し1人でプリントを集めて貰ってもいい?」

「いいけど・・・ヤンキー?」

「ああ。俺とエーちゃんが通ってるテニスクラブの先輩だよ。すまんエーちゃんの用が終わったら直ぐに労働させるから。」

俺はそう言ってエーちゃんを連れてタクマの元へ行った。

「コーチから伝言だ。

今日、STCに宮川と荒谷が来るらしい。「もし一緒にやりたければ早めに来い」だと。以上コーチからだ。」

そう言ってタクマは去って行った。

「とにかく伝えたぞ。」

「ありがとうございます。」

よしこれでエーちゃんをまた労働させられる

そう思ったら

「春樹君は出るの?」

「当たり前だろ。久しぶりに全力を出せるんだ。楽しみだぜ」

と少し笑っていると

「春樹君。悪者の顔になってるよ。」

「そんな事より速く佐々木さんを手伝え。」

伝えて佐々木さんの所へ行くと

「清水君。」

「春樹でいいよ。」

「なら春樹君。」

「なんだ?」

「丸尾君変わった?」

「そうだな。夏休み中は俺とタクマに試合でボコボコにされまくったな。」

「ボコボコに・・・そうなんだ。

春樹君はテニスどの位上手なの?」

と聞かれて前に答えた気もするけどと思いながら

「たまにプロの試合に出て2回優勝する位かな。」

「プ・プ・プ・プロ選手なの!」

「まだ学生だから学生テニスに出ているだけ。世界ランキングにも乗ってるよ。今は確か。」

そう言って携帯で調べると

250位

と出ていた。

「世界ランキング250位だな。」

と言うと佐々木さんは

「は、春樹君って凄いんだね。」

「ずっとテニス1色の生活だったからな。中学の頃は割とテニスの為に学校を休んでたしな。」

「そうなんだ。」

「まぁ今度の大会が近くなったら声を掛けるからエーちゃんの試合を見に行ってあげたら。」

「そうしてみる。」

と答えてきたので耳元で小さな声で。

「佐々木さんってエーちゃんの事、好きでしょ。頑張れよ。応援してるから。」

と伝えると顔を赤くして

「ありがとう。」と言っていた。



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21話

side春樹

放課後

2年になり俺となっちゃんにエーちゃんは同じクラスになった。

「エーちゃん。なんでエーちゃんはいつまでもなっちゃんの事を鷹崎さんって呼ぶんだ?大分可愛そうだぞなっちゃんが。」

と俺がエーちゃんに言うとなっちゃんも

「そうだよエーちゃん。去年から同じクラブの仲間だし今年からは同じクラスなんだもん。なっちゃんかナツって呼んでよ」

「でも春樹君と付き合ってるし大丈夫かな?」

とエーちゃんが俺を見ながら言ってくる。

少し呆れながらも俺は

「大丈夫だ。エーちゃんがなっちゃんって呼んだくらいで俺となっちゃんの関係は変わらないからな。」

と俺も答える。

それに便乗する形でなっちゃんも

「そうだよエーちゃん。もっとフレンドリーにいこうよ。」

と言っている。

それを聞いてエーちゃんは周りの目を気にしながら

「それじゃあ・・・な・・・なっちゃん。

なんか凄い恥ずかしい。」

とエーちゃんは顔を紅くしながら言う。

「そんなに恥ずかしがりながら言われるとムズムズするよ。」

確かに。

「エーちゃん。俺の事もハルでいいぞ。」

と言うとエーちゃんは心底驚いた声で

「えっ!なんて?」

と聞かれてしまった。

そんなにおかしな事を言っただろうか?

と思っていると爽児からメールが来た。

内容は

 

今年の日本での大会の前に

ハルと1度、全力で試合をしたい。

ハルが出ることは知ってるけど

1試合だけ頼む。

 

とメールが来た。

 

爽児とは当たれば2回戦。

三浦コーチに相談だな。

 

と思っているとなっちゃんが俺の携帯を覗いていた。

 

「ハルちゃんはそうちゃんと試合するの?」

となっちゃんは聞いてきた。

「俺はやりたいと思っている。でも本当は大会後が1番なんだよな。」

と答えるとなっちゃんは笑顔で

「きっと大会で当たるよ。お互いに1回勝てば当たるんでしょ?いけるよ。」

と言ってくれた。

「そうだな。・・・エーちゃんを連れて俺とそうちゃんの試合を出来るだけ全部見せてくれないか?」

と俺がなっちゃんに伝えると

「いいの?エーちゃんはいつかライバルになるかもしれないんでしょ?」

と言ってくるので俺はそれに笑顔で答える。

「エーちゃんの今の練習のペースでは脅威にならないから発破を掛けれたらなと思ってな。」

と伝える。

するとエーちゃんは

「春樹君に質問なんだけどなんで俺なの?」

と聞いてくる。

それにどう答えようか迷うが

「エーちゃんの反復練習は地味だけど確実に意味のある練習なんだ。それを何時間も続けられるのはある種の才能だ。エーちゃん自体にテニスの・・・というかスポーツの才能が高いかと言われると謎だけどテニスにおいてはエーちゃんの反復練習は才能が自分より上の相手を倒す事が出来るかもしれないし確実に身に付けることでもしかしたら才能が開花するかもしれない。だから俺も基本の練習には他の応用以上に時間を掛けるし・・・違う。かけないといけないんだよ。」

と俺は真剣に答える。

そして最後に一言。

「俺はエーちゃんノートが凄い脅威に感じるよ。どこまで知られているのか・・・どんな対策をしているのかがまるで読めないからな。」

俺はそう言ってなっちゃんを連れてSTCに向かい始めるのだった。



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22話

side春樹

アップが終わってから荒谷と宮川に声を掛ける。

 

「寛。宮川。ダブルスで試合をしてくれねえか。」

と言うと荒谷が

「ダブルスか。いいな。やろうぜ。まずはダブルスでお前に勝ってやるよ。」

と言われて宮川は

「俺からもお願いします。」

と言って了承を得た。

 

コートに入ると荒谷が

「おい!春樹!」

「どうしたんだ寛?」

「なんでお前のペアが鷹崎なんだ。STC最強ペアを見せるって言ってたろ。」

「最強だろ。二人とも前回の大会は第1シードだ。」

「わかったよ。でも手は抜かねえぞ。」

そう寛が言って試合を始めるも俺の守りを抜けずなっちゃんの女子ならではの攻めを止めきれず

俺となっちゃんの勝ちになった。

「あー!負けた。確かに最強ペアだな。」

「だろ。」

「はい。鷹崎の攻めは男子の方ではやらない攻めでしたし凄いですね。」

「そりゃあ私は荒谷君に比べたら体力も筋力も無いからね。女子の柔らかいテニスで勝つよ。それに失敗してもハルちゃんがカバーしてくれるしね。」

「当たり前だろ。」

といつの間にか2人の空気になっていて荒谷が

「惚気けすぎだ。砂糖を吐きそうだぜ。」

と言って宮川は

「お幸せに、あははは」

 

こうして俺たちの今年は色々あって大会は終わりトレーニングの冬に入っていった。

 

side丸尾栄一郎

 

冬に入ると大会は無くなりトレーニングがメインになった。

春樹君は何時も誰よりも早く来てトレーニングを鷹崎さんと始めている。

内容も凄く濃いと言う事をコーチに聞いた。

がお正月を中心に2週間

春樹君と鷹崎がいない時期があった。なんでもアメリカに短期留学しているようだ。

 

その後、短期留学から帰ってくると春樹君と鷹崎さんはお土産と一緒に凄いレベルアップした姿をコートに見せていた。

コーチが春樹君に本格的にプロとして活動しないかと言っているが学生の内は学生の大会にだけ。夏休み中は海外も出るけど基本は学生の大会に出て今年の日本の大会には出場すると言っていた。

それにしてもそうちゃんって誰なんだろう。

 

鷹崎さんに聞いてみると

一昨年からアメリカでプロ目指して去年からプロとして活動している春樹君のライバル。

ランキングも春樹君と大差ないみたい。

短期留学の時に2回試合をしてまだ負けなかったけどすごい迫力のある試合だったらしい。

そんなプロの大会に今年は出ると春樹君は宣言したんだ。

凄いな。

純粋にそう思った。

 

side春樹

2月に入りメニューを少しずつ試合仕様に変えていった。

春から大会が始まる。

もうすぐプロの大会も始まるからそれに向けて調整もしないといけない。やらないとな。学生テニスの調整とプロの大会への調整はわけが違う。

気合を入れないとな。

 

sideなっちゃん

今年のハルちゃんは今までとは比べ物にならないくらい気合が入ってるな。

コーチにはプロの大会に出ることを宣言してるし凄いな。

私も負けてられない。

そう思って私もハルちゃんのトレーニングに少し参加すると

すぐに追いつけなくなった。

そうちゃんもハルちゃんも私を凄い置いていっちゃったな。そう思えて仕方ないのだった。

 



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23話

side丸尾栄一郎

 

テニスを始めて2度目の夏。

飛躍の刻

 

 

 

side春樹

今日のは大会の都合でなっちゃんの試合は無い。。

が周りからの注目はすごい。

「ハルちゃん。エーちゃんはどこにいるんだろう?」

「たぶん壁打ちでもしてるんだろ。」

そう言って俺はなっちゃんの手を掴んでエーちゃんの使いそうな壁打ち出来る所へ行く。

それにしてもなっちゃんの試合を見る事ができないの大会は初めてだな。

と思っているとコートの近くから

「すげえ安定感だな。」

「ネット上30cmの1点をまったく同じリズムで

それもさっきからずーっとミスんねえ。」

と言っていたので覗いてみるとエーちゃんだった。

「壁打ちだけなら俺も勝てねえな。」

と冗談で言うとなっちゃんが

「ホントに壁打ちの大会があれば優勝だね。」

と笑顔で返してくる。

「なっちゃん。確かにそこの奴らがずーっとって言ってたよな。それはヤバくないか?」

「そうだ!止めないと!」

そう言って俺となっちゃんはコートに入りエーちゃんを止める。

「おはよう春樹君になっちゃん。」

と息を切らしながら言うので俺はエーちゃんにチョップを入れて

「試合前に疲れてどうする。」

と言うと

「でも何かやってないとキンチョーして」

と言うので少し呆れる。

するとなっちゃんが

「壁打ちは完璧なんだから自信持ちなよ。」

と言うので俺も

「どうせまだそこまでたくさんの技を習得した訳じゃないんだ。出来ることをやりゃあ結果は着いてくる。」

と言うもエーちゃんが

「そういわれてもな」

と聞くのが面倒になるので流してるとなっちゃんが

「少しくらい緊張するのは当たり前だよ。

エーちゃん

この大会目指してずーっと頑張ってきたんだから

と言うよりはハルちゃんが図太くなりすぎ。」

「そりゃプロに比べたらプレッシャーも無いからな。」

「そうかもしれないけどー」

と言って俺にポカポカしてくる。

 

今日のエーちゃんの試合。

佐々木さんに伝えたけど来れるか?

と思いながら俺も受け付けに回る。

 

「アニキー博士!おはようございます。」

「おう。諭吉おはよう。」

「博士は相変わらずなっちゃんと一緒なんですね。」

「まぁな。」

「博士。女の子を紹介してくださいよ。」

「なら、緒方に転ばれる覚悟で緒方の彼女を紹介しようか?」

「緒方っていうと博士の師匠以外のもう1人のライバル!」

「まぁそうだな。来年には復帰するらしい。」

「緒方さんが来年に復帰ですか。て確かに腰に病を。」

「リハビリを終えてトレーニングしてるよ。」

「そうですか。良かったですね。」

と諭吉と話していると後ろから宮川がやって来て

「お久しぶりです

丸尾君。春樹さん。」

と言われて丸尾が

「宮川君久しぶり。」

「久しぶりだな宮川。」

と言うと諭吉が

「アニキー今回も出揃いましたね。

第1シードの清水春樹

第2シードの江川逞

第3シードの荒谷寛

第4シードの岩佐博水

第5シード大林良

第6シード宮川卓也

そして僕を含めて神奈川7天王が今年も集まったわけですよ。」

と諭吉が言ったから俺は頭にチョップを入れて

「それを言うなら四天王だ。」

と言うと

「博士。そんな事したら僕が入らないじゃん。」

と言ってきた。

そんな時に荒谷がやって来た。



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24話

side春樹

荒谷が

「よーっ

みなさんお揃いで」

「久しぶりってほどでもないな。寛。」

「そうだな春樹。今年こそは第1シードのお前を倒して俺が神奈川no.1になってやる。」

「それを言うならまずは決勝に上がって来い。そういや今年は準決勝で俺とタクマがやるから寛は決勝に上がるチャンスだな。」

「それは俺が春樹に負ける前提で話してるのか?」

とタクマも突っかかってくる。

「俺に最近勝ったかよ。」

「練習と本番はちげえよ。」

「違うとしても練習で勝てない相手に本番で勝てるとでも。まぁいいや。寛。決勝で待つ。」

俺はそう言ってなっちゃんがもとへ行く。

 

side佐々木

なんか私は凄い場面を見ちゃった?

春樹君と他2人が凄い睨み合っていて、最後は春樹君が

「決勝で待つ。」

そう言って出て行っちゃった。

と思ってると鷹崎さんに話しかけられた。

「佐々木さん。」

「鷹崎さん。春樹君はいいの?」

と聞いちゃった。それに鷹崎さんも答えてくれた。

「今年から試合前にやる事にした儀式があるんだよ。プロの大会も近いから。」

「それを見てみてもいいですか?」

「いいけど邪魔をしちゃダメだよ。」

と言われて人気のないところにあるコートのベンチで座禅を組んでいる春樹君がいた。

「あれはね別にこういう所でやる必要は無いんだって。静かな場所でやりたいみたいだけど。」

「うん。近付ける雰囲気じゃないね。」

と言うも冗談じゃなくて間違えて近付いたら死ぬんじゃないかってくらい凄い迫力を持ってる。だから鷹崎さんも隣のベンチに座っている。

そんな時春樹君が私に向かって

「佐々木さん。エーちゃんの試合を見に行かなくてもいいのか?隣のベンチになっちゃんと座っているのは足音でわかる。」

と言われた。なんで足音でわかるの?そう思いながらも私は丸尾君の試合の応援に向かうのだった。

 

sideなっちゃん

ハルちゃんが私を自分の隣に呼んだので隣に座った。

まだ座禅を組んだままだけど少し緊張が解けるのを感じた。

今は第1段階の緊張をあえて高めるという工程を終えて第2段階の緊張を無くす段階に移ったみたいだ。

足を崩し始めて目を開けて私を見つめるなりいきなり

「やっぱりなっちゃんは綺麗だよね。」

「・・・どうしたのハルちゃん!いきなり。」

いきなり綺麗だと言われれば誰でも慌てるはず。私は悪くないもん。

と思っているとハルちゃんが

「やっぱりなっちゃんがいるだけで負ける気がしない。」

と言っている。

そして私にはその背中に金色のオーラの様なものが見えたのだった。

って違う!

簡単に言うと熱量は十分なのに気持ちはいつも以上に落ち着いてる。

以前にハルちゃんから聞いた

「ゾーン」

の時も私は同じ雰囲気をハルちゃんから感じた。

私も何度かゾーンと思われる状態には覚えがある。

まさかハルちゃんのこの儀式ってゾーンに近い状態を作り上げる為のもの?

と考えていると

「なっちゃん。ヘアゴムを1つ貸して。」

と言われたのでカバンから1つ取り出してハルちゃんに渡す。

するとハルちゃんは後ろ髪を縛りちょっとしたポニーテールみたいになった。

 



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25話

sideなっちゃん

 

ハルちゃんのゾーンに近い状態を作り出すと思われる儀式。

この大会中は常にゾーンに近い状態を維持していた。

そして今回の大会は異例な準決勝で第1シード対第2シードの試合がある。

この試合もあの儀式を行ってから入り相変わらずゾーンに近い状態を作り出している。

ちなみにエーちゃんは荒谷君との準決勝で負けた。

でもいい試合だった。

それよりも今はハルちゃんの試合。

 

集中しているしハルちゃんVS気合十分のタクマ

 

たぶん二人共最高の状態で試合に挑んでいる。

 

三浦コーチも

「今日の試合は凄いことになりそうだな。」

と言っていた。というか横で見てる。

「ナツ。ハルはゾーンに入っているのか?」

と聞かれて

「ハルちゃんは入り方は知ってるそうでしたけど自分の意思では入りきれないってのもあるし言ってました。本人曰くゾーンは大きな扉をこじ開けて深い深い水の中に沈んでいくイメージだそうです。」

「そうか。扉を開けて水の中に沈んでいくイメージか。」

「はい。」

と話しているとハルちゃんがサーブを打とうとしていた。

 

ハルちゃんはセンターに立ちタクマのコートのセンターに最短距離で最速のサーブを打ち込んでいた。

「凄い。タクマが追いつけないなんて。」

「最短距離を最速のフラットサーブか。すごい武器だな。フラットサーブの速さが相手に反応出来る速さならチャンスボールだがエースを取れれば1球で格付けを出来る。」

と三浦コーチが言っている間にハルちゃんが2球目のサーブを最長距離でタクマからエースを奪った。

それを見て三浦コーチが

「ハルはタクマの心を折に来ているのかもしれん。今のはどうやってかわからんがバウンドからして野球と同等レベルのバックスピンを掛けて無理さり得点したんだろう。」

「バックスピンのサーブって普通ならホームランですよね?」

「あの長身とジャンプ力を活かしてより高い所からサーブを打つ事で強引に点を取ってるんだ。バックスピンなら終始のスピードの差が小さい筈だ。」

「ハルちゃんはホントに凄いな。」

「ああ。なんでまだ学生テニスをしているのかが不思議な位にな。」

と三浦コーチも言っている。

「たぶんハルちゃんはタクマに本気になってもらいたいんだよ。そうちゃんとハルちゃんとの才能の差に嘆いていた時のタクマを見ていたハルちゃんは少し辛そうだったから。」

と私が言うも三浦コーチの意見は違った。

「あの3人でタクマが一番勝てないのは練習の差だ。」

とコーチがいう。

「そうだ。この3人の才能は同レベル。だがハルは日々の練習の内容を濃くしているがタクマの練習内容はハルのように濃く無い。その差が試合をするとハッキリ出てくるんだ。爽児の練習内容もハルと同じ位濃いものだったからな。」



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26話

sideなっちゃん

ハルちゃんの3度目のサーブは切れ味鋭いツイストサーブ。

でもタクマはこのツイストサーブを読んでいたのかこれをライジングで打ち返す。

がハルちゃんは既に前に出て来ていてドロップショットの構えに入っている。

その構えに反応してタクマが前進して来たのをハルちゃんは確認してドロップショットの構えのままロブを上げた。

でもタクマはそのロブに対してスマッシュを打つ。

そしてなんとハルちゃんはそのスマッシュに背を向けたのだ。

あの構えは

と私が思うと同時にタクマは舌打ちをする。

そう。スマッシュに背を向けて打てるハルちゃんの技は1つある。

 

ヒグマ落とし

 

ハルちゃんの使うカウンター技の1つでその打球はコートの最後尾にある

ライン上に落ちる。

スマッシュ直後の体制の崩れているタクマには追いつけるはずまもなくそのままハルちゃんの点となる。

 

40-0

 

ここまではハルちゃんの一方的な勝ちゲーム。

と思っていたけどここからの撃ち合いはどんどん激しくなっていく。

 

 

しばらくして試合は2セット目に入り

5-0

でハルちゃん勝っている。

ハルちゃんはゲームは取られていないがポイントは割と取られている。

普通に考えればこれが最終ゲーム。

このまま決着が着くように思えるが

 

私の予想が外れた。

 

なんとタクマがこの試合中でもしかしたら1番速いサーブでハルちゃんからエースを奪った。

この試合中にタクマはハルちゃんから1度もエースを奪えていなかったけどここに来てのエースはたぶんタクマの中で何かが吹っ切れたんだと思う。

 

タクマはエースを奪った次のサーブをワイドにスライスサーブで攻めた。

それにハルちゃんは難なく追い付いてクロスでリターンをする。タクマは少し逆をつかれたようで追いかける。

追い付くも力の無い打球を返す事になる。

でもそれがタクマにとって良かったみたいだ。

ネットに掠ってハルちゃんのコートに落ちている。

ネットに当たる事を予測なんてしょうがない。

ここで連続得点を取ったタクマは3度目も強烈なサーブをハルちゃんに打つ。

3度目のサーブはハルちゃんが難なく打ち返したように思えたがさっきのタクマと同じようにネットに掠って勢いが死んでタクマがネットにそのまま落ちた。

「三浦コーチ。今のはハルちゃんは狙ったんですか?」

と私が聞くとコーチは

「ハルはネットに当てて相手のコートに入れる練習を普段からしている。試合では初めて見るが、さっきの仕返し・・・もあるのかもしれない。」

と三浦コーチは答えてくれた。

ネットに当てて相手のコートに入れる。

私も練習中にたまに起こる事はあるけど狙ったことは無い。

ハルちゃんはそれを狙って出来るようにしていると考えるとやっぱりハルちゃんは凄いんだなと改めて思う。

 

少ししてこのゲームで

40-30

となりハルちゃんがタクマを追い抜いた。

たぶんこれで最後になる。そう思ってみているとタクマがまた・・・さっきよりも更に速いサーブを打っていた。

でもこれにハルちゃんは追いついている。

と思っていると三浦コーチが横で

「ハルはゾーンに入ったかもしれない。」

と言っている。

ゾーンは圧倒的な集中状態でハルちゃんが普段から自由に入れるようにしようとしている状態の事。

このタイミングで入るなんてハルちゃんらしいな。

そう思っている間にハルちゃんはツバメ返しで試合の勝ちを決めていた。



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27話

side春樹

試合終了してなっちゃんというか受け付けで報告を終えるとエーちゃんがやって来て。

「春樹君に質問があるんだ。」

と俺の目を見て言ってきた。

「答えられるものなら答えるよ。」

と言うと何かを決心してエーちゃんは聞いてくる。

「俺がテニスを始める時に春樹君達のテニスを趣味だと言った。今思うと凄い馬鹿なことを聞いたと思う。だけど・・・だからこそとさもう1度聴きたい。

春樹君のそのプロとしてやっていこうという気はどこから来るの?」

と聞いてきた。

それを聞いて俺はエーちゃんは根本的に馬鹿でアルト思った。

多分、この気持ちは俺が説明した所でエーちゃんには理解出来無い。

だからこそ一言。

 

「今度の日本でやるプロの大会に俺が出ることは2年になってすぐに言ったから知ってるな。」

と言うとエーちゃんはうなずいて

「うん。」

と答える。

「その試合を見てからでとこれからの練習内容は中からでも答えは時分で見つけるしかないと思うぜ。俺となっちゃん。プロを目指すという目標は同じでも理由は少し違うからな。」

と俺はエーちゃんに伝えた。

プロを目指す理由は人それぞれ。

同じ様な理由でてる目指す者はいてもその中身まで同じとは限らない。

 

と考えて去ろうとするとエーちゃんが

「もう1ついいかな?」

と聞いてきた。

「なんだ?」

「岩佐君の技術のやり方はわかる?」

と言われて何を言っているのかわからなかった。

俺からするとそこまですごいと思わせる気迫が無いから終始負けるかもという感じはしない。なぜそんな選手のことを?

「技術って何を言ってるんだ?」

と聞くとエーちゃんが

「ほらえーと・・・速い球を遅く返したり遅い球を早く返したり。」

と言われた。

はっきり思うと何を言ってるんだ?

と思った。

「あんなの技術じゃなくて基本だろ?」

「基本?」

「練習を思い出してみろ。」

「練習・・・・・・分からないけど。」

と言われておかしくなった。

「俺は簡単に言うとキャッチボールだよ。」

「それはテニスの練習じゃなよね?」

「だってエーちゃんが練習でわからないんだぜ。どう答えるよ。

一応感覚的にはラケットでキャッチボールだ。」

「ラケットでキャッチボール・・・?」

「多分岩佐さん、どれのことを言っているのかわかったから答えるとあれは未完成だ。真に力を発揮するのは同じフォームで全ての球種を打ち分けられるようになったらあれの完成だ。出来てないなら未完成。」

「同じフォームで全ての球種を打ち分けられるようになったらあれの完成。」

「そうだ。同じフォームで全てだ。」

「春樹君は出来るの?」

「出来るから言ってる。テニスってのは身体能力で勿論だし頭脳も勿論だけど[後の先]を取り続けてジャンケンの[後出し]をし続ければ負けないんだよ。」

と俺が言うとエーちゃんはノートを取り出して何かを書き出した。そしてら

「後の先って何!」

と聞いてきた。

「後の先ってのは要するに相手の動きを理解して変更出来ないところでこっちが変える感じだな。でも実際には無理だからジャンケンの後出しだな。」

と言うとエーちゃんはノートに書いていて

「ありがとう!」

そう言ってどこかへ行くのだった。



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28話

side春樹

俺が本格的に準備を終えて帰ろうとすると寛がやってきたからなっちゃんに少し待ってもらって2人で少し離れた場所へ行く。

「春樹。まずは決勝まで来たんだ今度こそは勝たせてもらうぜ。」

と威嚇する様に言ってくる。

「いいね。タクマとの試合も楽しいけど寛との試合はそれはそれで楽しいんだよな。」

と答えるとお互いに少し笑って寛が

「女子の方は今大会人数が少ないから決勝終わったんだろ?」

「そうだな。なっちゃんは優勝したよ。」

「そうか。」

「だから毎度で悪いが今大会も優勝を譲る訳にはいかないんだ。」

と俺が言うと寛は

「そうか。でもな俺もいつまでも春樹とタクマさんの下の神奈川の3番手なんて地位にいるつもりは無い。春樹がプロで出ていようが関係無い。そのプロを倒して俺も堂々とプロになる。それだけだ。」

と言われて俺は確信した。

寛はエーちゃんとの試合に門を1つこじ開けた。

恐らくは俺の開いた10ある門の6つ目を

タクマも10ある門のうち9つ目まで

爽児は最近10の門を開いた。

でも確信はある。

まだ先がある。

多分一つ一つが才能の壁とかそういう類のものだ。

俺も今年10個目を開いたばかり。

でも寛とやるといつも思う。

「あいつが上手くなるのはあっという間だ。それが今回は精神面の成長がエーちゃんとの試合できたな。」

と独り言を言ってから俺はなっちゃんの所へ戻り

 

「おまたせ。」

となっちゃんに伝えるとなっちゃんが

「待ってないよ。荒谷君。なんだって?」

「宣戦布告。今回は勝つって。」

と俺は少し笑顔を作って言うとなっちゃんが

「ハルちゃん。悪い顔になってるよ。」

と笑顔を見せる。

 

寛との試合

俺はルーティンを終えてコートに入る。

 

sideなっちゃん

 

今日はハルちゃんに強引にエーちゃんを連れて来るように言われていたから連絡を入れたら来ていたよ。

 

荒谷君にハルちゃんの試合。

普通に戦えばハルちゃんは圧勝すると思う。でも昨日の帰り道でハルちゃんは荒谷君はエーちゃんとの試合で成長したって言っていた。

 

と思っていると試合は始まった。

「今日は最初から直感に任せるみたいだよ。」

と思わず声に出していた。

「春樹君の直感のスタイル。」

とエーちゃんもしっかりと見ていた。

 

試合はとにかく激しいものだった。

ハルちゃんはまだ1度もポイントを奪われていないにも関わらずだいぶ走らされている。

しばらくするとハルちゃんの目が変わった。

多分入ったんだ。

第2ゲームの5-0

タクマとの試合と同じタイミングで入ったみたい。

そこからは凄かった。

荒谷君の全サーブをリターンエースでゲームを取りハルちゃんの勝ちが決まった。

 

そして私はエーちゃんに

「ベスト4は表彰されるからエーちゃんもだよ。

ホラッノートは片付けて表彰式の準備しないと」

と言ってエーちゃんの背中を押してからハルちゃんのもとに向かうのだった。

 

 

side丸尾栄一郎

俺がカバンの所へ行くと誰かがいた。

「あっ!

ど・・・どうも。」

と言われた。

な・・・なんだこの人!?

 

人のノートを勝手に!?

と思っていると

「ごめんごめんキミがハルとナツの言ってた[ノートのエーちゃん]君?」

「へ?」

の後、ノートを勝手に見ている人は色々話し出した。

と思ったら携帯が鳴り出して慌てて

コーチによろしくと言われて去っていった。

 

その時聞いた名前は

 

池爽児

 

テニスの雑誌で春樹君と2人で注目されている高校生のプロテニス選手だ。



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29話

side春樹

表彰式を終えてコーチの元に集まるとエーちゃんから

池爽児と言うワードが聞こえた。

それもそうだ。

大会は間近。

俺に送ったメールでも大会前に1度も 試合がしたいと言っていた。

と思っているとなっちゃんが

「ハルちゃん。」

「どうしたのなっちゃん。」

「そうちゃんが帰ってきたね。」

「そうだな。楽しみだ。」

 

となっちゃんと話しているとタクマがエーちゃん達の質問に答えていた。

「ATGオープンだろ。

世界の強豪が集まる日本で唯一の大会で春樹と爽児は華々しくデビューするんだよ。」

とタクマが説明していた。

他のメンバーも驚いていた。

 

その後、俺は全日本ジュニアにはプロの大会次第だとコーチに伝え。家になっちゃんを連れて帰る。

 

そして俺はしばらくSTCで一日を過ごす為に学校を休む事になったのだ。

 

sideなっちゃん

 

「ねえ鷹崎さん。」

「どうしたの佐々木さん」

「最近春樹君を見ないけどどうしたの?」

「来週のATGオープンっていう大会に出るんだよ。」

「ATG?」

と疑問を持たれた。

「簡単に言うと世界のプロの強豪の集まる大会だよ。そこにハルちゃんともう1人の幼馴染が出るんだ。」

と私が佐々木さんに伝えると

「私も見に行きたいけど行ける?」

と聞いてきた。

「いいけどどうして?」

と聞くと

どうも理由はエーちゃんの試合を見に行ってもわからないからわかるようになりたいのと興味を持ってきたからだそうだ。

 

今日のSTCでの練習はハルちゃんが1人でAコートを使って三浦コーチと朝から練習をしていた様だ。

私達が着いた時は休憩前の追い込み。やっていた。

エーちゃんもハルちゃんの練習を見て呆然としていた。

確か。

 

「ねぇエーちゃん。

来週のATGオープン行かない?」

「ATGオープン?」

「ハルちゃんとそうちゃんのデビュー戦だよ。」

「行く!行こう!!」

と反応を聞いて私はまたメールで伝えると言って練習に戻る。

 

 

side春樹

「どうしたハル!もうへばったか!」

と三浦コーチに言われる

「まだまだ!どんどんこいやー」

としんどいながら言うと三浦コーチは笑いながら前後左右に球出しを続ける。

それも10箱連続で。

これが終わったら俺の練習の1つで

コートに紐を均等に並べて100分割を作って咄嗟に三浦コーチの言う番号に打ち込むものだ。

 

こうして時間は過ぎていき体調を万全にしてATGオープン当日に最高の状態を持ってきた。

 

会場に着くと爽児がいた。

「久しぶり爽児。」

「そうだな春樹。」

とお互いに座った状態だ

「今日の試合。

俺と爽児を見になっちゃんは来るぞ。」

と俺が爽児に言うと爽児は

「なら、何がなんでも負けられないな。」

「そうだな。俺も負けられない。そして」

「「2回戦で春樹/爽児に勝つ。」」

とお互いの言葉が被る。

そして2人で拳を合わせて

爽児は試合へ

俺はルーティンをする為に外へ行くと

なっちゃんとエーちゃんに佐々木さんの3人がケバブを食べてるのを見つけた。



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30話

side春樹

3人に合流すると俺はケバブを1つで買って話していた。

どうも佐々木さんはテニスに興味を持ったようだ。

エーちゃんもノートにペンを持っている。

現状の実力ではノートもペンも書いたことも無駄になると思うけど。

そしてなっちゃんからは2人と少し離れた俺のルーティンをしようと思っていた場所で頬にキスを受けて

「ハルちゃん。頑張ってね。応援してる!」

と言われているのだった。

 

なっちゃんがいなくなってから俺は少しあの感触を思い出しながらも座禅を組んで瞑想に入っている

緊張をまずは最大限引き上げる。

この試合中に感じる事になる緊張を全て

全ての場面

雰囲気

点差

組み立て

全てをイメージする。

全て出て来たら

全てを消す。

 

そうしていると爽児が戻って来る。

「勝ったか?」

「勝ったぜ。後は春樹だな。」

と言われて

「俺は負けない。」

そう言ってコートに向かう。

 

コートに着いてアップのラリーを相手と繰り返す。

相手は順位だけなら俺より上。でも負ける気がしなかった。

 

試合を終えると結果は

2-1

6-0

7-5

6-0

という結果になった。

挨拶を終えて控え室に戻ると爽児が

「簡単そうに勝ちやがって!」

と言ってきた。

「簡単じゃねえよ!すげぇ疲れた。でもこれでお前と戦える。」

「そうだな。公式戦では中学以来だな。」

「そうだな。」

「それにしてもハルはすげえよ。」

「なんだよ突然。」

「だってよ。俺はプロになる為にフロリダに言ったのにナツの為に日本に残ったハルは順位も実力もオレより上だ。」

「僅かなさだよ。」

と爽児と話している時

 

sideなっちゃん

「凄かったな2人とも。」

「そうだね。鷹崎さん。」

「俺もそう思う。」

「私はハルちゃんとそうちゃんの試合も見に来るけどどうする?」

「私はもういいかな。でも試合の楽しみ方とかルールは教えてもらったからわかったよ。」

「俺は見に来る。同年代のトップの試合を見たい。」

こうして私とエーちゃんは次の試合を見に来る事が決まった。

 

side丸尾栄一郎

 

同年代2人の試合を見て思った。

テニスでプロを目指したいと。

多分親には反対されると思う。

けどそれでも目指すしたいと初めて思った。

これから色々と調べて父さん達に覚悟を話さないと。

 

そう思って俺は影山にパソコンを借りたりしてプロのなり方やその他色々を勉強した。

 

そして少しして2回戦。

またなっちゃんと試合を見に行くと壁には

 

若干17歳の2人

池爽児VS清水春樹

初戦はお互いにランキング50位台の選手を倒して2回戦に堂々登ってきた。

ここの日本の若き2つの才能が今!ここにぶつかる!

 

と書かれていてその下に勝つと思われる方にシールが貼ってある。

赤いシールが池爽児

青いシールが清水春樹

多分この2人の試合限定なんだろうけどここまでは注目されるのは凄いと思った。



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31話

side春樹

いよいよ爽児との試合だ。

ルーティンは終えた。

他のことも抜かりなし。

なっちゃんも来ている。

ここで俺が負けるのだけは見せられないからな。

 

side爽児

春樹。

俺が今まで練習を含めて追い詰めても1度も勝てなかった相手。

プロになる為にと言ってフロリダに来たけど本当は春樹に勝つ為。

 

side春樹&爽児

 

この試合

負ける訳には行かない!

 

sideなっちゃん

 

私にとっては2人の晴れ舞台。

2人とも応援したい!

「ハルちゃん、そうちゃん。

頑張って。」

私は小さい声でそう呟くだけだった。

 

 

side春樹

 

サーブは爽児から始まる。

いきなりワイドに正確にコントロールされたフラットサーブだ。

スピードもキレもある。

 

追いついて俺は前進して来た爽児の足元にトップスピンを返す。

でも爽児はそのショットに対して1度も止まりライジングで打ち返してくる。

 

「普段の奴ならあれで点を取れるんだけどな。」

と俺は呟いてラケットを左手に持ち替える。

そして高い起動を描くロブを線上目掛けて打ち上げる。

 

それに爽児は届かないと判断して下がりバウンドした所を強烈なフラットショットで返してくる。

でも下がったのならやる事は1つ。

 

勢いを殺したドロップショットしか無い。

 

最後尾にまで下がった爽児は追いつけず先制点は俺に入る。

 

 

15-0

 

爽児の2本目のサーブはセンターからセンターへの最短距離の最速と思われるフラットサーブだ。

 

ある程度読んでいた俺は追いつきそれをスライスで返してからしばらく俺と爽児のストローク対決に入る。

 

そのストロークはパワーもそうだが変化も小さいがかけられている。

でも俺も爽児に同じ様に変化をかけたストロークを返す。

 

しばらくすると爽児がドロップに切り替えた。

爽児のドロップは跳ねる!

そう思って前進するも爽児のドロップは思いのほか跳ねずに俺はギリギリ空振りしてしまう。

 

side丸尾栄一郎

この試合は凄い。

まだお互いに1ポイントずつしか取っていないのに

それにハードショットは囮に使って本命は2人ともドロップ。

この試合、ノート1冊で足りるかな?

 

sideなっちゃん

2人とも凄い。

いや・・・わかっていたけど本当に置いて行かれたんだと思っちゃう。

 

そう思っているけどやっぱりハルちゃんとそうちゃんの試合は凄くみていて面白い。

ハルちゃんのプレイスタイルにそうちゃんのプレイスタイルは恐ろしく相性が悪い。

でもそうちゃんはそれをわかった上でハルちゃんを倒そうと全力を出している。

そしてハルちゃんもそれを分かっているから手を抜かない。

そんな2人の試合だからこそ何回見ても凄いと思える

私はそう思っている。



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32話

side丸尾栄一郎

 

第1セットを

6-4

で春樹君が取り

第2セットに入るとあの二人のストロークは激しい撃ち合いのようで打球の種類が全部違った。

まるで見ている人を魅了するような激しい打ち合い。

 

お互いにコートをいっぱいに使っている為に少しずつ息が乱れてきているのがわかる。

 

10分経つも第2セットの点が入らない。

そしてお互いの距離が徐々に近づいていく。

 

そしてついにボレー戦になった。先に逃げれば簡単に点は取れるけど逃げると今後は逃げて点を取った方は事実上、ボレー戦は負けになる。

だからこそお互いに引けないんだ。

少ししてこのボレー戦が終わりになる。

最後は春樹君が強力なボディを打ち込む事でなんとかラケットに当たった程度の打球はスマッシュには絶好の返球になる。

その打球をスマッシュでクロスへ打つ。

それに爽児君は反応するも届かずに空振りしてしまう。

ここでこのゲームの流れを掴んだ春樹君はそのままゲームを奪う。

 

第2ゲームは逆に爽児の怒涛の攻めに春樹君が少し着いていけずにゲームを取られていた。

 

 

春樹君のサーブゲームでいきなりアンダーのカットサーブを春樹君は見せた。

そのサーブは今まで見てきたものより遥かに鋭く大きく変化をしていた。

そしてこのサーブに爽児君は空振りするしか無かった。

 

2本目はキレのいいツイストサーブ。

また跳ね方が鋭くなっているように感じるのは多分気のせいじゃない。

僕とやる時は手を抜いている訳では無いのはわかるんだけど・・・最善を尽くすのと最高の試合をするのはまた違うものだと言うのを第1セットで学んだからね。

 

 

それより2本目のツイストサーブは爽児君が一歩下がって確実に強打を打ってきた。

でも春樹君はそれを読んでいたのか前進して打球を殺したドロップ。

2点目はあっさりと点が入った。

 

3本目のサーブは初めて見る左でのサーブだ。

右ほど速さは無いけどコントロールは左の方が上みたいだ。

それでも俺よりも速いけど。

 

と思っているとここでなっちゃんが

「ハルちゃん。ここから直感に任せるみたいだよ。」

そう言っていた。

 

左でのサーブが出てから試合の内容がガラリと変わった。

今までは春樹君の計算された上でのプレイだとしたらここからは完全にアドリブのプレイスタイル。

 

フォームもバラバラなのにコントロールが乱れない。

あれだけフォームを大事にしていた春樹君らしくない。

俺はそう思う。

でもこれだけははっきりとわかる。

春樹君はテニスが本当に好きで楽しそうにやっている。



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