いぶそうあれこれ (量産型ジェイムス)
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ラグネのちお嬢ときどきパリンクロン(最終章)

最終章に似たようなのがあった事にここにきて思い出しました。その時の本の内容とぎりぎり被ってなくてよかったです。

「レヴァン教の聖人ティアラ・フーズヤーズの生誕祭まで後半年近く、しかしそこにはいつもと変わらない日常があったのでした。ひひひっ。」


 舞台は屋根まで届きそうな大きな噴水や高価な教壇や長椅子があるフーズヤーズ大聖堂の大庭、ではなく大聖堂の雑木林の一角で木漏れ日が揺れる綺麗な所。そこに大庭にある長椅子の一つが置いてあって、いくつかの本が積まれている。

 そこには金砂の流れるような髪を揺らす少女が本の隣に座っていた。

 

「ラグネちゃんちょっと来てみてください。」

 

 そう呼んだのは生まれて2年半程しか経っていないラスティアラ・フーズヤーズである。

 目を輝かせ頬が上気し、見るからに興奮しているラスティアラを見てラグネの頬が少し緩む。巡回業務といってもそれほど重要なものでもない、と思って足を止めた。

 

「なにかあったっすか?お嬢?」

 

 長椅子に座るラスティアラの後ろから彼女の持つ本をのぞき込む。

 

 

「この本ね、英雄が面白いのです! 異邦から迷い込んだ少年が苦難を乗り越えながら英雄になるんですが!」

「お嬢は英雄譚なら何でも興奮してるっすけど、この本はそんなにお嬢の琴線に触れたんすか?」

 

 自分の理想通りの返答が来た事にラスティアラの輝く顔がさらに煌めいて言い募る。

 

「この英雄はですね! 強くてお人好しで誰も見捨てられなくて、色々な所で可哀想な女の子を救うですけど、その女の子たちが怖いんです! 振動魔法で盗聴したり、燃やして自分に頼らせようとしたりするんですよ!」

 

「それは怖いっすね…。お嬢は英雄かっこよさも好きっすけど、英雄が困っていたりするのも好きなんっすね。」

 

 基本話す時は敬語であるラスティアラだがラグネをという友人役を二人きりで相手する場面と本人の興奮も相まって敬語も抜けていく。

 

「なにより、その女の子の一人に英雄になりたくて冒険が好きで本が好きでその英雄が困っているのを見るのが大好きな女の子がいて、旅の途中でその女の子と英雄が結ばれる! それでその女の子の頑張りで他の怖い女の子とも結ばれてみんな一緒にこれからも過ごすんだ! まるで私みたいなその子が報われるのを見て私にはできない事をやっているのを見て、この子には幸せになって欲しいなって思ってる!」

 

「……本当にその子はお嬢の夢みたいっすね。最後にハーレムになる所も全部、お嬢が望んだかのような話っす。」

 

 明るいラスティアラの顔と裏腹に少しラグネの顔が暗くなる。半年後に控えた例の儀式を思い出してお嬢が憧れた未来がこないやるせなさに気を落してた。

 そんなラグネの表情を読んでラスティアラは興奮する口調を抑えて言う。〝大丈夫だよ〟という言葉は抑えて。

 

「私はティアラ様になるのを誉れだと思ってます。たとえその気持ちが作りものでも私はそれでいいと思っています。……だってティアラ様はほんとうに私が望む英雄みたいで……だから……気を落とさないでよ……ラグネちゃん。」

 

 ティアラを狂信し、狂気を孕んだ顔になって言う不安定な少女にさらに憂鬱になりかけたラグネだが、最後には確かに本心があった事を察して暗くなった表情を戻す。

 しかしそれでラグネが元にもどったかは別で遠くの空を見るように目を細めて感傷的に口を開いた。

 

「私は一番になる夢も持ってるっす。でも私はこんな風にお嬢とずっとこんな綺麗な日々を過ごせたらなっとも思ってるっすよ。ハインさんやパリンクロンさんやセラさんにホープスさんや総長とやモネさんとも一緒に……。もっとゆっくり世界が回っていて欲しいなって思うっす。」

 

 この笑顔のラグネは逆光が強くてラスティアラには見通せない。前に一度見た事がある。それでも彼女はラグネの心情を彼女なりに読んで言葉を返す。――手を伸ばしてみる。

 

「うん、私もそう思わないとは言いませんけど、それでも私は例の儀式にはでます。……だからこれからもう半年だけど、いっぱい遊ぼうよ、ラグネちゃん。本を読んで感想を言い合ったり、なんならハインさんの許可をとって迷宮に行ってみるのもいいかもしれない。楽しい思い出をたくさん作って、それでティアラ様の七騎士になって活躍してラグネちゃんは一番になる夢を叶える。そんな風になって欲しいかな?」

 

 しっかりとした目でラグネを見据えてそう言う。一方でラグネは悲しい表情、嬉しそうな表情、追いつかれたような表情と顔色を変えて最後に嘆息する。ラスティアラにはそれが不正解のように感じたけれど、ラグネは気を取り直したように振る舞い、それにラスティアラは誤魔化されてあげる。

 

「分かってるっすよ。後半年これまで通りやっていこうって事っすよね。よーしっ、お嬢。今から模擬戦でもするっすか?」

「うん!そうしよっか。よろしくね、ラグネちゃん。」

 

 長椅子から立ち上がった二人に。

 

 

「そうはいかないみたいだがな。」

 

 

――拍手の音が聞こえてくる

 

 

 一瞬背筋が冷える。

 振り返ってみると二人の後ろの方から歩いてきたのは薄笑いを浮かべたパリンクロン・レガシィである。最近隣にハインさんがいる事が多いが今は一人のようだった。

 

「いつも敷地内の見回りで暇そうって事で総長の訓練を受けたりしてるのにその見回りをさぼろうとしてるとは、総長に何か言ってもらった方がいいかもしれないな。」

「げぇっ、すっかり忘れてたっす。……お嬢、模擬戦はまた今度という事でいいっすか?」

「ええ、また今度にしましょうか。私はこのままこの本を読み進めていますね。」

「また色々聞かせてくださいっすねー。じゃあまたっす。」

 

 そういってラグネは大聖堂の森に走って消えていった。ラスティアラは読んでいた途中の本を開き直し、パリンクロンはラスティアラに話しかける事なくまた元来た方向に戻っていく。

 

 

 いつもの日常のようでそうではない。しかしあまりこの大きな流れには影響のない短い一幕は幕を降ろす。




ラグネ相手のお嬢って敬語とタメ口が混ざってそうじゃないですか……。
違和感、矛盾点、不満点等ありましたら感想で言ってください、土下座します。


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リーパーとローウェン(四章・外伝)

守護者IFでの『舞闘大会』の後みたいな……。
「少しづつ守護者同士との生活に慣れてきた『理を盗むもの』。その矢先に少し小さな事件が起こる……。」


「――あぁ、私の『未練』は…もう…………ありがとう……。」

 

「ローウェンっ! ねぇ、ローウェンってば! しっかりしてよ!」

 

 

「な、なにが起きたんだ?」

 

 と、20層に帰ってきたこの層の主であるティーダは困惑していた。守護者(ガーディアン)達が住む、全体的に黒々とした20層の中央で今消えかけている剣を帯びたままでマフラーをつけたローウェンを同じマフラーをつけた大慌てのリーパーがローウェンの肩を揺さぶっている。

 ローウェン達が30層で召喚されてまだ早く、ティーダもいまいち状況が呑み込めない。

 それでも取るべき行動は一つだ。

 

「まあ、とりあえず――魔法《亡失する殉教者(ヴァリブル・ダウン)》、魔法《啓蒙家の再調律(ヴァリブル・リレイ)》。」

「――ぁ、あれ?……っておい! なんて事するんだ、ティーダ! 私は今やっと自分の『未練』を果たそうとしていたのに! また『舞闘大会』の時みたいに邪魔をしてぇっ!」

「だからその時も言っただろう。「私が消えるまで、ローウェンは消えないように。親友との約束だぞ?」って。『闇の理を盗むもの』、ヤクソクヤブラナイ。」

「くっ、確かにそう言ってたけど……。言ってたけど!」

 

 消えるのを妨害され、さらにはあっさりと丸め込まれてしまったローウェンを見てリーパーは「ふいー、よかった。」と安心していた。

 渦波もアルティもアイドも迷宮の外にいて、必死に消えそうになるローウェンを引き留めようと頑張っていたのだろう。心が成長していないリーパーにはローウェンとの別れはきついものもあるに違いない。だから『ローウェンの未練(そんなこと)』よりリーパーを優先するこの選択は正解だった。

 そうティーダは考えた。

 

 

 

 

「ただいまーでいいのかな。慣れないなこういうのは。」

「師匠、そろそろ僕の財布が……。」

 

 そこにやってきたのが渦波とアルティであった。先の『舞踏大会』でのアルティを宥めるための甘味処巡りの3日目をようやく終え、財布を気にする渦波と落ち着いてきたアルティである。

 

 二人の目の前に飛び込んできたのは泣きそうな表情で膝をつくローウェンと「いっえーい!」とハイタッチを交わすリーパーとティーダだった。

 

 渦波は「やっと私は自分の『未練』を……」と割と本気で落ち込みかけているローウェンを見て、いち早く察し傍にいって肩を叩く。

 

「ローウェン……。今日は僕が奢るからおいしいものを食べにいこうよ。」

「ありがとう。お言葉に甘えて今日はごちそうになろう。さすが私の親友(・・)の渦波は優しい……。」

「ああ、親友(・・)の僕が話を聞いてあげるからさ。」

 

 そういう事で親友で似た者同士の二人は20層を出て地上に向かっていった。

 

 

 

 

「アルティのおかげで財布が寂しいと嘆いていたのに、流石は渦波だな。」

「うん。私もそろそろ機嫌を直した方がいいのかもしれない。まあそれは置いといて、リーパー、なんでこんなことに?」

「それがね、おねーちゃん。分からないの……。」

「分からないと。」

「分からないのか。」

 

 不思議そうに首を傾げるリーパーと顔を見合わせるティーダとアルティ。

 

 二十層は濃い闇魔法の痕跡を纏っている。剣を帯び、先程まで中々激しい剣戟をしていたかのようなローウェンの服の乱れ。

 リーパーとローウェンの首には珍しく黒のマフラーをつけている。リーパーのは自身の魔力の構成物だろうが、デザインは同じ、言わばお揃い。

 付け加えるなら彼のそれは渦波とリーパーの合作で昨日渦波が着けていたものともお揃い。

 ここまでくれば自明で確認のつもりでリーパーに問うた二人には意外な反応であった。

 

「よし、ならば今まであった事を順に並べて推理してみようか。」

「教えてくれないの? お兄ちゃんがそういうならやってみるけど……。」

 

 焦らすようなやり方にティーダに視線を向けるアルティだが、それに大丈夫だという視線を返す。

 

「むむむっ……まずはローウェンが20層にきたパーティーと『剣術』を競い合ってて、……子孫みたいな人もいたかな?」

「フェンリル・アレイスもいたのかい?それはすごいな。」「かの『剣聖』ならまだ善戦できてたのかな?」

 

「それで圧勝したローウェンにすごいとか教えて欲しいって言われて、喜んで剣舞を見せてそれでパーティーは帰っていて……。」

「さすがローウェン。つよいつよい。」 「さすがローウェン。ちょろいちょろい。」

 

「その後驚かせてやろうと思って奇襲したら偶々鎌が当たって……。」

「闇魔法はその時か。」 「つまりその時にもう『未れ……なんでもない。続けて。」

 

「なんでかさらにローウェンが喜んで、それでちょうど昨日お兄ちゃんと一緒に作った三人お揃いのマフラーを渡してない事に気付いて……。」

「とどめを指しにいったー。」 「リーパーが成長したんだって思ったんだろうなぁ。」

 

「渡して巻いてあげたら、急に『死者は夢を失い』『屍となって世界を……って言い始めて……。」

「あー。」 「あー。」

 

「さっきから少しづつ減ってた魔力が急にすごく消えていってローウェンが消えかけて……。」

「そこにティーダが帰ってきたと……。」 「んー。リーパー、もうちょっと考えたらわかるよ?考えてみようか。」

 

 

 それを聞いてリーパーは腕組みをして「うーん。」と首をかしげたりクルクルと回ったり、小動物のような動きをしながら長考する。

 ここでアルティはティーダが焦らした理由を理解する。

 

――リーパーかわいい。

 

 ただでさえだれかさんの『理想』を模ったような性格に幼い容姿、『理を盗むもの』の『呪い』もないのにローウェンとの絶妙なすれ違い、その仕草で人を魅了する。

 

 悩み続けるリーパーを鑑賞する二人組ができたのも仕方のない事だろう。

 

 最後には「ねぇー、やっぱり分かんないよー。」と答えをねだるリーパーだったが明日に教えるとティーダが言ったので、渋々アルティと一緒に寝る事にした。この時アルティは顔が思わずにやけてしまいそうになるのを抑えていた。

 ティーダもその場で思い付いたプレゼントの成功に口元を綻ばせ、満足げに闇に消えていった。

 

 

 

 

 そして次の日。

 早く答えを教えてほしくて早起きをしたリーパーは渦波に夜中慰められてやっと気を取り直して戻って来たローウェンと鉢合わせしてしまった。

 

 20層に気まずい雰囲気が流れる。

「……。」

「……。」

 

 しかし意外にも沈黙を破ったのはローウェンの方であった。

 

 

「あの……そのだな、リーパー……。昨日はすまなかった。」

「…え?」

 

唐突な謝罪に驚いたリーパーにローウェンは続ける。

 

「昨日渦波に言われたんだ。もっとリーパーの事を考えてみようって……。それで私は決めたんだ。リーパーが消えるまで私は消えない。少なくとも自分の意思では……。リーパーが消えるなら私も一緒に消える。だから昨日私が消えようとしてしまった事をどうか許してほしい。」

 

「ローウェン……。」

 

 

 昨日の事にローウェンはとても後悔していた。リーパーを置いていってしまう所であったと、まだリーパーに『親友』だと言えていないと。

 だからこそ彼はリーパーが自分の消失を受け入れられるまではこの世界にしがみついていようと決めた。『感応』がこの世界のリーパーが受け入れられるようにはならないと感じた気がして、それで彼は今の言葉を言った。頼りなさげにも『世界』に宣言するようにしっかりと言い切った。

 

 その言葉にリーパーは泣きそうになっていた。

 

「アタシは最初から怒ってないよ……。だから許すも許さないもないんだよ……。でもありがとね……。アタシもローウェンと一緒に……。ローウェンはアタシの……。」

 

 

――『親友』だから。

 

 

 そう言えないのは仕方がない事だった。言うまでもない事で、言わないと伝わらない言葉であった。しかしこれを機会に二人の友情がさらに厚いものとなったのは言うまでもないだろう。

 

 

 結局リーパーはティーダから答えを聞くのも忘れていた。

 『何かの答え(そんなこと)』よりも二人の友情の確認の方が優先する。

 それが『正解』であると考えた。

 

 

 二人はどちらともなく手をだしてこれ以上ない笑顔で握手する。リーパーの『呪い』で触れられなくても、間違いなく握手であった。




「なあ、渦波、アルティ、相談したい事があるんだ。」
「奇遇だね、僕もティーダと師匠に相談したい事があるんだ。」
「私も二人に相談したい事がある。」

 斯様な状況に無粋にも入り込めるものはここにいるはずもなかった。


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好き合う二人はいつだって(最終章)

異世界に行かず渦波が陽滝の問題を解決したとかいう絶対ありえなさそうな世界線となっています。(湖凪ちゃんはすでに死んでます。鵜飼先生の絵のifと分岐は違います。)色々ご了承の上読んでいただけると幸いです。(解釈違いの可能性とか最終章のネタバレとか)
メリークリスマス!!



 サクサクと四つの靴が白く輝いている雪道を進む。太陽が照っていても肌寒いこの時期として普通の格好といえるコートと手袋を身に付けた男女が手を繋いで、白い息を洩らして仲良く歩いている。

 

「なあ、陽滝。一つ聞きたいんだけどさ。」

 

 そう切り出したのは相川陽滝と共に歩いている相川渦波である。その言葉に、何気ない会話の始まりに陽滝は嬉しそうに自分の考えた答えで応じる。

 

「何でしょうか、兄さん。」

「それ。」

 

 なにやら納得のいかないような顔で首を振って不満気に続ける。

 

「僕達ってあの長い兄妹喧嘩の末に仲直りして僕の『呪い』や陽滝の『生まれもった病』を解決したわけで。やっと『二人』になってさ。それからこうして日々を暮らしているのに陽滝はどうして僕に未だに敬語なの?」

「――ふふっ、少し深刻そうな顔をして何を言うのかと思ったら……。どうしてでしょうね。やはりずっと続けてきていたからでしょうか。それに演技をやめてもそれよりも前から私は兄さんに敬語だったはずです。」

 

 どこかの世界でできた妹に親しげに話しているのは知らなくとも、敬語だとまだ少し距離を感じるようだ。兄の言葉の意味を自ら考えて理解した陽滝はそのこどもっぽい不満に呆気にとられた後思わず頬を綻ばせる。

 

「それは確かにそうだったし、その後も僕のせいだから何も言えないけど。陽滝の兄としてはさ。今までの事もかねて、もう少し妹に何かしたいというか、甘えて欲しいというか。」

「――――。」

「陽滝?」

「……ふふふ、そこまで言うなら一つ甘えて差し上げますよ。妹としてっ。」

 

 そう言ってひょいと兄の前に出て、一瞬身を縮ませた陽滝は思いきり渦波の胸に抱きつく。驚いて僅かによろめいたが、しっかり受け止めた渦波は微笑み、妹の長くて綺麗な黒髪を撫でる。

 

「それで陽滝は何をして欲しいのかな?」

「私とキスしてよ、兄さん。」

「――っ。」

 

 意地悪そうにも楽しそうに、とびっきりの笑顔でお願いを伝える。もれなく兄の要望も叶えながら。

 その可愛さに渦波息を呑みながらも先程の微笑みを引き攣らせる。

 

「あ、あの陽滝……。」

「なーに?兄さんあの時世界で『一番』はお前だ! って言ってたのに、その私にキスの一つもできないの?拗ねるよ?」

「いや……あの、そのですね。」

「あれー?兄さんの方こそ敬語になってる。私が止めても兄さんが変わったら意味がないよ。はぁ……、兄さんはやっぱりチキンで中二病。」

「いや、中二病は関係ないし、そもそも違うし。」

 

 笑顔の兄妹から一転、にこやかに責め立てる陽滝にたじたじの兄であった。兄としてどうなのだろう。

 

「そうねー。兄さんはヘタレでかっこつけの甲斐性なしで優柔不断の女誑かしな口だけ男で期待させるだけさせて放置して酷い事にする生きてるだけで周りが迷惑してる人類の敵で大事な所ばっかり負ける負け犬なのに負けたら女の子の所に逃げる人間のクズだからキスするなんて事できないって妹だから知ってる。」

「そこまでのクズじゃない! そこまでの覚えはないよ! そんな酷い事した記憶はない!」

「兄さんの記憶なんてあてにならないよー。私は今まで何回弄ってたことやら。」

「今は弄ってないだろ! それにどれだけ弄られても根は変わらないから!」

「根は変わらないよね」

「暗に今もそうだって言わないで!」

 

 罵詈雑言を吐いたり涙目で否定しつつも、未だに抱き合ったままの姿勢で見つめ合っている兄妹。なあなあな言葉の交わしながらも想いは通じあっている。

 

「でも兄さん心当たりはあるでしょ。とくに甲斐性なしとか口だけ男とか『人類の敵』とか負け犬とか女の子の所に逃げるクズとか。」

「うっ……。ひ、陽滝に勝てなくて甲斐性なしとか言われても! こ、湖凪ちゃんの所へは別に逃げたわけじゃないし!」

「あったね。心当たり。私とか湖凪姉にも。」

「違うって!」

「じゃあキスしてよ。それで疑いは完璧に払拭されるよ。」

「そんな……。」

 

ここで相川渦波はこの理不尽によって少し拗ねる。

ここで相川陽滝はこの楽しさによって調子に乗る。

 

 二人ともこの言い合いが楽しくて、嬉しいのだから終わりようがない。終わり方は決まりきってはいるけれど。

 そうして続く口論はいよいよ終盤にさしかかる。

 

「……もしかして兄さんは同性愛者なの?」

「えぇ……。なんでそうなるの……。」

「だって『一番』だとまで言ってくれたのにー。こうもつれないなんて、もうそれしかないよ。」

「だから陽滝は妹だし。」

「じゃあ兄さんはそういう事で。」

「いや、その、あの。」

「私は兄さんがどんな兄さんでも大丈夫だから。」

「うぅ……んんっ、分かったよ! 僕は陽滝を愛してるからキスくらい大丈夫に決まってる!」

「……ふぇっ」

 

 想定より遥かに早く折れる兄に普通の女の子のように驚き慌てる。

 『理想の兄』を目指している今の渦波にとって「どんな兄さんでも大丈夫」という言葉は妹に我慢を強いているように感じられたからであったのだが。

 しかしここに四つの思考スキルはなく、調子に乗っていた事を考えれば当然の帰結である……のか?

 

「あぁ、そうだ。大切な家族への愛はいつでもどこでだって示せる。陽滝の言う通り陽滝は僕の『一番』大切な家族で『世界にたった一人の運命の人』だから。」

「いや、兄さんの『一番』の家族は父さんですよ……。何もしてないのに勝手に自分で自分を洗脳しないでください。」

「僕は二度とこの想いの先を間違えたりはしないと誓った。なのに何を迷っていたんだろう。陽滝が甘えてきたんだ。だから僕は全力でそれを叶える。ただそれだけでいいんだ。」

「――《フリーズ》……あっ、氷結魔法はもう『水の力』に……。ど、どうすれば。」

「心配ない。僕が助ける。陽滝の甘え言くらい叶えてみせる。もう二度と『妹を一人にはしない』。」

「あぅ――……ぅぅ……」

 

 不意打ちに陽滝は顔を赤く染めて俯く。

 『詠唱』までして約束してくれる、洗脳してもいない弱くもない渦波は陽滝にとって理想の兄であるのだ。勿論普段の情けない姿もだが。

 さながら『主人公(ヒーロー)』に助けられる『運命の人(ヒロイン)』のようでたまらなく嬉しく感じてしまう。

 だからこそ元からあまりない勇気ある振り絞って顔を上げた。

 自分の知る『運命の人(ヒロイン)』らしく。

 自分らしく。

 

「兄さん、どこからですか?」

「最初からだよ。」

「ふふふ……。」

「あはは……。」

 

 先程の変調は最初から分かってやっていたという事である。向かい合っていた二人は並び直して、またベルの鳴る道を歩き始めた。

 

「あんなかっこいい『詠唱』はもっといい雰囲気の時に取っておいて欲しかったです。」

「ごめん、ちょっとしたプレゼントの気持ちで。」

「そうですかー」

「そんな怒らないで……。」

「怒ってないですよ、つーん。」

「プレゼントありがとう。」

「ふふっ、私だけ貰っても不公平ですから。」

 

 返答に少し間が空いた。

 

「陽滝と敬語をやめて話した時合わないなって思ったんだ。」

「だから強引に戻したんですね。」

「積み重ねもなくこういう話で変えるには……なんというか『足りない』とも思ったよ。」

 

 再び返答に少し間が空く。

 

「私は昔兄さんが嫌いだったのは知ってますよね。」

「当然。」

「期待して失望して嫌いになって、辛くなって苦しくなって止まっている時兄さんに救われて、好きになりました。大好きです。」

「あ、はい。」

「でも嫌いだった時もあって、だから私もこれでいいと思います。どんな時期でも兄さんとの事は止めたくないです。」

「わかった。」

 

 二人の向かう先に一軒家が見えてきた。装飾されたモミの木があって、今夜のプレゼントを準備してそうな父さんと母さんのいる、『みんな一緒』の家。渦波は続ける。

 

「心を折られたり嫌いな時はあったけど、僕も陽滝が大好きだ。愛してる。」

 

 

 終わり方は決まりきっている。

 

 

ーー二人は幸せなキスをして終了。




「ただいまー!」
「ただいまです。」

元気な声がその家に響く。

 がたっとか、がさごそと物音がする。二人が靴を脱いでいると玄関と居間の扉が開いた。

「おかえりだ、渦波。」
「おかえり。」

相川父、相川母が朗らかに二人を出迎えた。相川父が渦波に言う。

「陽滝との散歩は楽しめたか、渦波。後メリークリスマスだ、渦波。」

 息子との距離感も掴み、生来の勝利が全てという考えが変わったこの父はちょっとおかしい。もう少し落ち着けば治りそうだが。本編にもっと出演できないものか.…。

「楽しかったよ。メリークリスマス。」
「なら奨めた甲斐はあったな、渦波。それでこの前買った対戦ゲームしようか、渦波。」
「うん!」

と早々にテレビを陣取り電源をいれていた。

「お母さん、なにか手伝う事ないかな?」
「じゃあ、今からチキンを作ろうとおもってるの。そこのそれ取ってくれない?」
「はーい。」

そう言って台所に向かう陽滝は感傷的に呟く。

「湖凪姉にも見せてあげたかったな……。」

 ふと室内のクリスマスツリーを見るとその下の絨毯が盛り上がっているのに気付いた。
それが何なのかは明らかだ。
しかし中身までは今の陽滝では分からない。
その感覚を陽滝は気に入っていた。

 その中身が二人を考えて喜んでくれるように決めてくれた事と自分達がとても喜ぶ結末を信じていた。


 そう、自分の誕生日である事をすっかり忘れていた陽滝がサプライズに驚き泣いてしまうまで後数時間の事でしたとさ。


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バレンタインアモーレ(九章)

 誰がなんと言おうと投稿時間は二月十四日の五十時です。嘘です。ごめんなさい。遅くかったのと長いです。後世界が謎。


 時はその日の朝。色んな意味で都合のいい平和な世界線。相川渦波ならシュ◼ゲだ、と喜びそうな設定だが、生憎本人は知らない。渦波の《リプレイズ・コネクション》により『元の世界』にやって来ていたのは……

 

「わぁー!! 渦波のいた『元の世界』! 綺麗……うわっマリアちゃん! あれなんだと思う!?」

「……あれがカナミさんの言っていた自動車というものでしょうね。『連合国』にあった『魔石線(ライン)』の上を走る列車と少し似ている気がします。あれより速いみたいですが」

 

 早速家の窓を開け放ち目を輝かせるラスティアラ。話を振られたマリアは落ち着いて答えていたが、僅かな驚きは隠せない。

 あのクウネルでさえ混乱していた異世界なのだからラスティアラのはしゃぎようやマリアの動揺も当然なのかもしれない。ディアブロ・シスは奇妙な感じの家そのものに驚いて固まってしまっていた。混乱が少ないのはスノウ・ウォーカーとリーパーであった。

 

「へー意外と広い部屋だね、スノウお姉ちゃん」

「そうだね。何にもないのに……。カナミ、床のふかふかはなに?」

 

 と、あっさりしている。興味はあるようだが、リーパーは『繋がり』から得た人生経験の多さ、スノウはコルクで僕の千年前について聞いた時のような心境が理由だろう。

 ちなみにスノウにはセルドラがこっちに行く時に使っていた魔法で尻尾とかを隠してもらっている。

 

「カーペットっていって固い床に敷いたりするものなんだよ。」

「へぇ……カナミと約束した異世界に連れていくのがやっと達成できたよ……。えへへ」

 

 そういえばそんな約束もあった。ティティーとの帰り道の途中でそんな話もしていたな、と懐かしく感じる。そしてこれから一年も経ってない事にも驚かされる。

 

 

 

 そして僕は異世界にやってきた最後の一人に向き合った。

 

「はぁ……はぁ……キリスト、どうして一人でこいつらを引率しようなんて考えたんだ」

「え? いやぁどうしてって言われても……」

「はぁ!? 僕の『悪寒』が急に強まって急いで来てみれば……」

 

 余程急いで走ってきたのか未だに息を整えているライナーに僕は苦笑する。

 

「みんなには自分の身体能力や魔法で暴れないようにきっちり言い含めてるし、こっちの魔力は薄いから大丈夫だって。」

「安心できない……! 絶対に何か起こる……」

 

 心配性のライナーを宥めていると、待ちきれないのかラスティアラがやってきて言う。

 

「ねぇ! 早く外にでようよ! 今日は買い物に行くんだったよね!」

「ひひっ、私はもっと近くで自動車?を見たいなー。一個一個違うみたいだし」

 

 興奮したままのラスティアラと自動車にご執心のリーパーが催促する。その興奮に乗せられたのか僕もわくわくしてきた。

 

「よーしっ行こうか! 目指すは近くにできたらしいショッピングセンター! ここは田舎だから少し歩くけどレベルアップしてる人は問題ないよ。」

 

 完璧な計画だと拳を握る。しかしライナーには白い目で見られ、大雑把な計画を好むラスティアラはもうすでに扉を開けて出ていっていた。

 スノウとリーパーは「わー!」とは言ってくれたがそそくさとラスティアラについていく。

 唯一感心してくれたのは優しいディアだった。

 

「すごいなカナミは! えっと、リヴィングレジェンド号の時に約束した服を買いにいくんだっけか?」

「ディア……! ああ、それを思い出したんだ。約束した時には考えもしなかったけどこっちの世界の服の方が珍しいかなって」

「確かにそうだな。もしかして出会った時の不思議な服もあったりするのか?」

「パーカーならきっとあるよ。ディアにも似合うかもしれない」

「ほんとか!」

 

 嬉しそうな声で跳ねるディアの手を引いて置いていかれないように後を追った。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 道のりは順調であった。時々通る車をリーパーに解説したり、翻訳魔法《ニューリーディング》をかけ、事前準備しておいた携帯電話(スマートフォン)を渡して使い方を教える。自分の魔法と似たような事ができるそれをスノウがしげしげと見ていた。綺麗な山景色にラスティアラが騒ぎ、マリアは電力で光るものに興味を示し、ライナーが色々気になるものを拾ってたりいた。

 

 問題は着いてから、周囲とは雰囲気の違うショッピングセンターに一同が息を呑み、渦波が想像より混雑する入り口に首をかしげながらも足を踏み入れた。

 

 

 ショッピングセンターで外見上非常に目立つ渦波達御一行は立ち尽くしていた。入り口の端に移動した渦波が額に手を当てて空を仰ぐ。

 

「今日がバレンタインだったとは……向こうにいるとこっちの記念日とかの感覚が……クリスマスとかは布教したけど……バレンタインかぁ……」

 

 渦波の記憶を辿る限りチョコを貰ったのは妹からのみで湖凪ちゃんからも死ぬ前に貰う事はなかった。もしいたらどんな風に、でも湖凪ちゃんは……本当の彼女は………

 唐突に遠い目になる渦波を引き戻したのはラスティアラだった。

 

「ねえカナミ、バレンタインってなーに?」

「えっ……」

 

 現実に戻った渦波は咄嗟に誤魔化す方法を考える。この雰囲気で果たしてどこまで誤魔化せるのか、大人しく白状した方がいいのか。そんな思考はすぐに無駄になる。

 

「どうやら“好きな男の子にチョコを渡す”イベントみたいだねー」

「ちょっ、リーパー!」

 

 どこにあったかパンフレットを手に外套姿のリーパーが止める間もなく簡潔に読み上げた。一瞬にしてみんなの目の色が変わる。ライナーがそれみたことかと目線を向けてきた。うるさい。

 

「へーそうなんだーそんなのがあったんだー。ねーマリアちゃん、ちょっと見ていかない?」

「い、いいですね! チョコってのも気になりますし。スノウさんもそれでいいですよね!?」

「わたしもそれでいいかな……?なんかの記念日みたいだし……?」

 

 にわかに浮き足立ってリーパーのパンフレットに集まっていくラスティアラとマリアとスノウ。異世界のイベント、記念日に強い興味を示す。だが、そこに行かない女子が一人。

 

「俺は……パーカーを……渦波が似合うって言ったパーカーを……」

 

 頭を抱えていたディアをライナーが誘導し、提案する。

 

「お前はキリストと行った方がいいと思うぞ。ここで一旦二手に分かれるんだ。チョコを見に行くラスティアラ、スノウ、マリアとリーパー、そして服を見に行くキリストとお前と僕だ。多分だがああいうのは女だけの方がやり易いだろうしな。」

 

「うーむ、ライナーの言う通り女の子だけで回ろうと思うけど、ディアも行こうよ!?チョコをさ」

 

「うわあああどうすればいいんだー!」

 

 さっきよりも頭を抱えて悩むディア。そしてさらっと分かれる案が既定路線になった。置いてきぼりの渦波が口を挟もうとしたが、ちょっと待っとけと言わんばかりの目のライナーが制した。

 

「なんなのかよく分からないチョコと()()()()とパーカーを買いにいくのとどっちがいいのかよく考えろ」

「あっ……あう……」

 

「カナミ、チョコって何?おいしいの?」「甘いお菓子だよ僕は好きかな」

 

 説得を続けるライナーに小声でチョコとはなんぞやちラスティアラが聞く。好きかなという発言にマリアとスノウがにやりした。

 

「……わかった。俺は渦波とパーカーを買うぞ!」

 

 ディアは納得して拳を突き上げる。えー、と口を尖らせるラスティアラも本人が決めた以上強制はできない。ここでやっと話がまとまった。入り口の端によっていたとはいえ集まっていく視線を気にする渦波が確認をとる。

 

「僕とディアとライナーが服を買いに、ラスティアラ、スノウ、マリア、リーパーがチョコを買うでいいのかな?」

「ああ、決まりだ。さあ行こうか」

 

 

 なぜか押してくるライナーに気圧され、ラスティアラとスノウに財布を渡し、念を押して別れた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「なぁ、なんであんなに強引にしたんだ?」

「全員でチョコ見ていくのはどうみても危険だ。男二人に女四人とか男女比で見ても関係を見ても多分戦争になる。周囲の目も痛いだろうしな。女だけの集団の方が絶対安全だ。人数も少ない方がいい」

 

 全然気付かなかった観点だった。色々考えてくれたらしい騎士に感謝する。しかしライナーはいつバレンタインに詳しくなったのだろうか。疑問をよそにライナーは続けた。

 

「そして僕があの常識外れのやつらが何かやらかさないように影から見張っておこうと思うんだがどうだろうか、我が主」

「え? 場所とか分かるの?」

「行く時リーパーのやつと同じパンフレットを拾った。結構詳しく書かれてるしオススメの通りに回るはずだ」

 

 思わず問いかけた質問で疑問は解消された。行き先の見当まで付いてるのなら止める理由もない。強くても女の子なのだからライナーがいれば心強い。

 

「騎士ライナー、僕の代わりにラスティアラ達を守ってほしい」

「了解だ、我が主」

 

 そういって人混みの中に消えていった。

 ディアと僕だけが残された。僕もディアもまったく気付きはしなかったがデートである。

 

「カナミ? パーカーはどこにあるんだ?」

「あっ、三階だった。えっとエスカレーターは……」

 

 

 

 

「それではーチョコレートを湯煎して溶かそうと思います!」

 

 もう一方のチームはチョコレート作り教室に参加していた。スノウは買おうと言ったが、パンフレットおすすめの手作り教室に他の人が惹かれたので多数決で決まった。飛び入り大歓迎のもので、スタッフはその美しい女の子達を喜んで迎いいれた。

 

 

 リーパーが言う。

「湯煎ってなんだろねー?」

 スノウが言う。

「お湯をかけるのかな?」

 マリアが言う。

「溶かせればいいのでは?」

 ラスティアラが言う。

「これがチョコかぁ……」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「カナミ、これ似合うか?」

「おぉ、似合ってる」

「ほんとか!?」

「ほんとだよ。やっぱり白が似合うね、ディアは」

 

 ぱあっと笑顔になるディア。

 試着室で着替えて見せ、それを褒める僕。「お似合いです~」と褒める店員がこういうのもどうでしょう?と別のパーカーを出してくる。

 最初は義手に驚いた店員だが何かと気もセンスも利くようでディアの可憐な一面やボーイッシュな一面を強調するパーカーを見つけてくれる。僕にはセラさんに言われた通り服のセンスはなかったのでとても助かった。

 

「これはどうだ?」

 

 グレーカーキのパーカーのディアがでてくる。光沢感が強いそれもディアに映えている。

 

「いいと思うよ。シンプルなデザインなのもいいと思う」

 

「ベロアパーカーも似合いますねぇ……お客さん可愛いからお姉さんも燃えます!」

 

 正直全部似合っててかわいいと思っているが、ディアや店員さんにしか分からない何かがあるのか話し込んでまた別のものを渡している。

 ふと向こうの四人を心配する。ライナーの心配ぶりを思い出し楽観が少し収まったのか急に不安になっていった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

「あの……お客さん……」

 

 指導員が気付いた時には遅かった。

 

 リーパーは良かった。何かと器用で他の参加者を覗きこみ真似して初めてには中々のものが出来上がりつつあった。

 

 残る三人は三者三様特徴的なチョコが出来上がっていた。

 マリアの焦げた匂いのする黒めのチョコ。

 スノウのお湯を入れたりしてブルーム現象を起こした白っぽいチョコ。

 全く作業が進んでいないラスティアラのチョコ。

 

 リーパー以外は料理は得意と申込書に書いてあったのだ。美人で手のかからなそうな参加者はとても喜ばしいものだった。しかしチョコレートを写真でしか知らないと思わず、他の参加者に気を払っていたのだ。

 明らかに指導員の落ち度であり、うまくいかなかった事をどう攻められるかと戦々恐々とする。

 

 しかし三人は振り向きもせず完成間近の自分のチョコを見て言う。

 

「チョコって焦げた匂いがするんですね。意外です。」

「これがパンフレットにあったホワイトチョコ?うまく白くならないね。難しい」

「あれ?みんなもう完成するの? 早いなー」

 

 指導員の呼びかけには気付かないほど周りを気にしてなかった。異世界の云々より渦波の発言で燃えているからだろう。

 慌てて失敗を隠し指導として話しかけ軌道修正を謀ったが遅すぎた。せめてもの償いとして何とか二人分の体裁は整えたというのだから優秀ではあっただろうに。

 

 

 教室は終了した。多くの参加者は成功し盛況であったが、指導員らの頭はあのチョコを笑って包装している二人と落ち込む一人、渡されて困惑するであろう人への同情で占められていた。

 

 四人が料理教室にありがとうございますと声をかけフロアに出るとライナーに遭遇した。

 

「もう終わったのか……早い」

「あれ? どうしているの?」

 

 ライナーは手を後ろに回し答えた。

 

「い、いや気を回してキリストと二人っきりにしようと思ったのとさっさと合流できるように案内してきたんだ」

「ふーん」

 

 少しトーンの低い、まるで落ち込んでいるかのような声でラスティアラが言った。

 無論ライナーの言葉は嘘である。途中目を離してもいたが、湯煎の時から監視はしていた。彼自身チョコを判定出来るほど詳しくはなかったが。そしてラスティアラ達は「こっちだ」と言って歩き始めたライナーに談笑しながらついていった。

 

 

 

 

 僕は息を呑んでいた。

 

「ぉお、いいと思うよ。かわいい……」

 

 ディアは先程の白のパーカーのシリーズでもっとシンプルで自分よりサイズの大きいものを着ていた。ディアのかわいさがよく顕れてると思う。

 

「よしっ、やったぜ」

「えぇ、やりましたよ! お客さん!」

 

 思わず口に出た感想を聞いたディアと店員さんはとても喜んでいた。ディアと店員さんがハイタッチしている。この数時間ですごく仲良くなったみたいだった。

 

「俺はこれにする! カナミ? いいか?」

「勿論。店員さん、長いことありがとうございます。」

「いえいえ、いいものを見させてもらいました。お買い上げありがとうございます! レジはこちらです。」

 

 レジで支払いを済ませる。またきてくださいねと手を振る店員さんにディアが大きく振り返した。上機嫌のディアを連れて店からでると、ラスティアラ達とライナーと鉢合わせた。

 

「ライナー!?」

「ぴったりだったか。こっちが終わったから連れてきた。ラスティアラがカナミはここにいるってうるさいから来てみたら……ほんとに当たってたとは」

「ほら、ライナーの言ったとこに行かなくてよかったでしょ?()()()()()()()()

「ああ、僕には無駄だったが、お前があってたよ。良かったな」

 

 得意気に言う元気なラスティアラを適当にあしらうライナーに視界の端の『切れ目』の気配を僅かに感じつつ声をかける。

 

「そろそろ世界に気付かれるから急いで帰ろうか」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 こうして僕は今の自分の世界に帰ってきた。特に世界について仲間に説明することはなく。外を見てみればもう日が沈む頃になってしまった。

 

 帰るとラスティアラは早々に走っていってしまった。そしてその場に残ったスノウとマリアから。

 

「カナミ……分かってるとは知ってるけど……バレンタインチョコあげる」

「ありがとう。チョコ作り教室で手作りだったって聞くし、大事に食べるよ」

「えへへ……隠し味も入れてみたし楽しみにしてね。多分ホワイトチョコだと思うよ」

「多分……?」

 

 一抹の不安を抱くが、家族以外から貰った初めてのバレンタインチョコに塗り潰された。

 

 スノウの前にマリアが出てきて、チョコを渡される。

 

「カナミさん、バレンタインチョコです。……本命チョコというのです。」

「うん、ありがとう。」

「初めてで少し焦げてしまいましたが、食べてくれると嬉しいです。」

「勿論味わって食べる。マリアは料理の才能があるんだし、大丈夫だよ」

 

 僕は気持ちのこもったものを貰う感動を感じた。二つのチョコからは二人の想いそのものを受け取ったような重みを感じる。傲慢にももらえるとは思っていたが、改めて貰うと本当に嬉しいものだと思った。

 

「はーい! 次はアタシ! スノウお姉ちゃんとマリアお姉ちゃんとライナーのお兄ちゃんとお兄ちゃんのぶん! はいっ」

 

 リーパーは小さなチョコを作ったようで、包装が二人とは違った。同じ教室だったとは聞いたが、柔軟な対応のある教室なのだろうか。

 

「リーパー、これを作っていたのですか。どうりで包装が違うと思いました」

「ありがと、リーパー。ラスティアラのぶんは?」

「さっき寄り道したときに渡したんだよー」

 

「寄り道って……」

「キ、キリスト! 友チョコというのがあったらしく、僕もさっき買ってきた。これからもよろしく」

 

 遮るように渡されたのは有名なチョコレートだった。あのパンフレットそこまで書いてあったのか。

 

「……そうだったんだ。ありがとう。夕食までの間に食べさせてもらうよ」

 

 僕の納得に安心したらしいライナーは「じゃあ何かあったら呼んでくれ」と去っていった。マリアとスノウにリーパーも仲良く話ながら自分の場所に向かっていった。一瞬仕方ないですね、かわいい、と断片的に聞こえた。が、それは僕の知る限り誰にも該当しない。

 

「俺も……チョコ作ればよかったのかな?」

 

 少し肩を落としたディアの不安げな言葉が耳朶を打った。

 

「そんなことない。パーカーのディアはとってもかわいかった。それがディアからのバレンタインだって」

「それでいいのかな?」

「いいに決まってる。それくらい今日のディアはかわいかった」

 

 自分でも歯の浮く台詞だと思うが、これでいいと考えた。バレンタインにのってないからといってディアが引け目に感じる必要はない。

 

「……次会うときには絶対来てくる。多分夕食だけど、そこでみんなに自慢するから」

「来るときクウネルに見つかるとうるさいと思うから気をつけて」

「ああ、わかった」

 

 ディアはかっこよく笑ってじゃあ、と駆けていった。

 

 

 急に一人になって静かに感じる。

 随分と賑やかだったなと思い返しつつ、チョコを食べるために自分の部屋に戻った。貰った四つのチョコを見てにやつきながら部屋に帰る。が、部屋のすぐ近くに来た時。

 

 

 不意に物音がした。

 

「ーーっ」

 

 振り返ったが、誰もいない。僅かだった物音はもうしない。不審に思いつつ部屋の扉を開けた。

 

 

 机に見覚えのある紙袋が置いてあった。窓が開いていた。見覚えというか今手に持ってる紙袋だった。

 確信をもった僕は机の前に座って貰ったチョコを置いた。

 

 一つ一つ開けてみる。

 

 

 マリアのチョコは器用にも炎のような形で焦げていた。

 スノウのチョコはまんまるで油脂が分離したのか白い。

 リーパーのチョコは四角くて甘そうで小さい。

 ライナーのチョコは板チョコ。

 

 最後の紙袋を開けるとチョコが二つでてきた。一つは色は普通でもぐちゃぐちゃになってしまっていて、もう一つはこの時期に売ってるハート型のチョコだった。

 

 紙袋の中にまだ何かが入っていて、取り出してそこ手紙を読む。

 中身を読んで違和感や仕方ない、かわいい、が少し無理矢理だが繋がった気がした。つい笑ってしまう。

 

 

 

 

みんなの分もハッピーバレンタイン!!

  

  手作りは完成しなかったから

 

   買ったのも入れてあるよ。

 

 来年こそ手作りで手渡しするからね。

 

 

     Love,Lastiara Whoseyards




「つまりライナーは監視してる時近くの店で買ったんだよね」
「すまない。二手に別れて『悪寒』が収まって気が抜けた時にパンフレットの友チョコを見て……」
「そしてラスティアラは僕と時間を合わせると称して新しいチョコと手紙を書いたと」
「形だけでも整えられなかったのが悔しかったらしい」
「……味はリーパーに次いでおいしかったのに」
「どうした?」
「いやなんでもない」
「何はともあれ何事もなくて良かった」
「いやまだ僕にとっては終わっていないんだ」
「え?バレンタインデーは終わったじゃないか?」


「はぁ……ホワイトデーどうしよっかなぁ……」


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おおきなかぶ(九章)

 いい風だ。

 

 『押し潰すかのような重い鬱屈とした空』ではない、心地よい風がヴィアイシア城の大庭を通り過ぎていく。木々は剪定され、多くの人が行き交う地面からは青々と繁る樹と共に蒼い色の空が見える。

 

 その晴れ晴れとした庭の端で赤い『魔人』が一人で昼食を食べていた。

 『対異邦人ヴィアイシア国連合軍』――通称『南北連合』の代表、ルージュ・ヴィアイシアその人である。

 

 ここ最近、ルージュはクウネル・シュルス・レギア・イングリッドの策謀によりこの大役を押しつけられ非常に多忙であった。

 当初の目標であった『世界の敵』アイカワヒタキがその兄によって打倒されて一ヶ月と少し、その間も復興に忙殺され、ゆっくりとする余裕もなかった。

 

 そして悲しくボッチ飯である。

 

 千年前から伝わる異世界の料理を箸で掻きこむ。風味も何も感じる暇はない。

 ルージュ本人は至ってやる気であり有能だが、各地の不穏な動きは着実に広まっている。その流れは最早決定的だ。

 

 クウネル様がもうすぐ来ると聞くのでそれまでに少しでも改善しなくては、そうルージュは焦っていた。

 

 

 

「……ん?」

 

 不意に何となくだが、雰囲気が変わった気がした。はっきりとした感覚はなく、『勘』でしかなかったけれどルージュは辺りを見回すと

 

 

 ――座っていた。

 

 

 気配も違和感もなく黒い仮面の男が悠然とルージュの隣に腰かけていた。

 

「さすがはルージュちゃんかな? 久しぶりだね」

 

 咄嗟に息を呑み身体を引こうとする。しかしその異常程の存在感と亡霊のような存在感のなさのコントラストと声に記憶が刺激される。

 

「も、もしかして英雄様ですか!? ……どうしてここに」

 

 驚いて大声を出してしまった後、仮面姿で現れた意図を汲み小声で尋ねる。それに相川渦波は微笑んで仮面を取る。

 

「ここならもう少しの間は誰も気付かないから大丈夫だよ」

 

 まるでヴィアイシア城の動きを全て把握してるように断言した。仮面から現れたカナミの顔は目を細めて大庭の空を眺めていた。

 少し鳥肌がたつのを感じながらルージュは臆せず話しかける。

 

「それで英雄様は忙しいでしょうに、どうしてこちらにいらっしゃったのでしょうか?」

「……アイドとティティーの事なんだ」

 

 遠くを見つめているカナミは懐かしそうに返した。

 ルージュは驚いたように問い返す。

 

「先生と……?」

「ああ。少しいいものを見つけたから、ルージュちゃんに見せようと思ってね」

 

 そう言ってカナミは懐から本を出した。薄くて豪華な装丁はないけれど、しっかりとした作り。しかしあまりにも長い年月を経たように擦りきれていた。

 

「ティティーとの帰り道の準備の時に大きな図書館に寄って昔の文献を調べたんだけど、この前調べきれなかった分も改めて確認して。そうしたら見つけたんだ」

 

 カナミは懐かしむように手元の本を見て言うと、それをルージュに渡す。

 未だに驚いた表情を残したルージュはそれでも、両手で受け取り、丁寧に本を開いて薄汚れた頁を読み始める。

 

 

 

 

 昔々、小さな村に赤い蛸のおじいさんとその家族がすんでいました。

 

 

 ある日おじいさんがかぶを植えました。

 

 

「あまーいあまーいかぶになれ。大きな大きなかぶになれ」

 

 そうするとおじいさんの言葉からか、あまい元気のよいとてつもなくおおきいかぶができました。

 

 

 おじいさんはかぶを抜こうとしました。

 

「うんとこしょ、どっこいしょ」

 

 ところがかぶは抜けません。

 

 

 おじいさんはおばあさんを呼んできました。おばあさんがおじいさんを引っ張って、おじいさんがかぶを引っ張って。

 

「うんとこしょ、どっこいしょ」

「うんとこしょ……どっこいしょ」

 

 それでもかぶは抜けません。

 

 

 おばあさんは男の子を呼んできました。

 

 男の子がおばあさんを引っ張って、おばあさんがおじいさんを引っ張って、おじいさんがかぶを引っ張って。

 

「うんとこしょ、どっこいしょ」

「うんとこしょ……どっこいしょ」

「うんとこしょ、どっこいしょ」

 

 まだまだかぶは抜けません。

 

 

 そこで『樹人(ドリアード)』であった男の子は元気な姉を呼んできました。

 

 姉が男の子を引っ張って、男の子がおばあさんを引っ張って、おばあさんがおじいさんを引っ張って、おじいさんがかぶを引っ張って。

 

 

「うんとこしょ、どっこいしょ」

「うんとこしょ……どっこいしょ」

「うんとこしょ、どっこいしょ」

「うんとこしょ!どっこいしょ!」

 

 まだまだまだまだ抜けません。

 

 

 ハーピィであった姉は友達の動物たちをいっぱい呼んできました。

 

 

 ねずみが猫を引っ張って、猫が女の子を引っ張って、女の子が男の子を引っ張って、男の子がおばあさんを引っ張って、おばあさんがおじいさんを引っ張って、おじいさんがかぶを引っ張って。

 

 

「うんとこしょ、どっこいしょ」

「うんとこしょ……どっこいしょ」

「うんとこしょ、どっこいしょ」

「うんとこしょ!どっこいしょ!」

「うんとこしょ、、どっこいしょ」

「うんとこしょ。どっこいしょ」

「うんとこしょ、どっこいしょーー!」

 

 

 

 やっとかぶは抜けました。

 みんなの力のおかげです。

                     ”

 

 

「僕のいた『元の世界』でも似たような話があってね。多分僕がこっちの世界に来る前に書かれたものと分かった時には驚いたよ」

 

 

 ぱたん、と本が閉じられた。神妙な表情で本を見つめていたルージュは顔を上げて言う。

 

「そうなんですか? 確かに私からみても敵国の童話が千年以上も保存されていたなんて嘘みたいな話ですけど」

「でも、ここにあるのは本物だ。誰が書いたかも分からないけど、確かにあの姉弟の事がこの時代に残っていた」

 

 静かな大庭の端に風がふいて木々が揺れていく。

 

 

 「僕は行くよ」沈黙の最後にそう言ってカナミは紫色の扉、《コネクション》で帰っていった。

 あの『大英雄』アイカワカナミ・キリストユーラシア・ヴァルトフーズヤーズ・フォンウォーカー、最近レヴァン教の一部が神とまで崇める人物がいたというのにルージュ以外に気付く人は本当にいなかった。

 

 

 ルージュは手元の古びた本をじっと見つめ、おもむろにそれを懐に入れると、残っていた僅かな昼食をゆっくりと食べきる。

 

 豊かな風味と味に温かい息をついたルージュは勢いをつけて立ち上がり、大庭の中央に駆けていった。

 

 

 




 それから一ヶ月後。


「――それで、クウネル。最近のルージュちゃんの調子はどう?」

「ルージュ様は『南北連合』代表という貧乏くじを引いて以来、ずっと休みなく働いてますねー。慣れない仕事で、ぼっち飯食べたりしていたようですが……あてが他所様とのお付き合いの仕方を教えてあげて、食事の時間も仕事に変えて差し上げましたよ。へっへっへ」

「そっか……。頑張ってるなら、いいんだ」


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星の思い出(最終章)

結構目が滑りそうな長文が多くてすみません。


 何もかもが凍っていた。

 

 極度に発展し、地面すら必要とせず中に浮かんでいた建物や移動手段は『静止』し、白く染まって霜の這う地に落ちている。

 人のようで腕が四本ある昆虫系統から進化したらしき外骨格型の人類も【水の理】の中で動かず、頭部には『魔法の糸』が揺蕩っている。

 

 完全なる勝利であった。この『世界』もまた『魔の毒』の供給源となる。

 

「ようやく終わりましたね、兄さん。」

「ああ、今回はそれほど難しくはなかったけどね」

 

 建物の凍った瓦礫に腰をかけ、背中を預け合う人影が二つ。

 『異邦人』であり『理を盗むもの』、『異世界からの侵略者』である相川兄妹。この世界を凍らせた犯人だ。

 

 全てを吸い込む黒い目、きめ細やかで長く美しく輝く髪。最後の『答え』が分かっても尚『未練』を果たす事なく存在し続ける。立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花、大和撫子の美しさを演じる少女。それが相川陽滝だ。

 

 亡霊のようにぼんやりとした黒目。背中まで伸びた長い黒髪。自分らしさだけを後生大事に抱え続けているのに『たった一人の運命の人』の事は掠れている。妹を愛している『理想』の兄を演じている少年。それが相川渦波だ。

 

 二人は寒さには凍えない手を震わせながら繋いで肩を寄せあって星空を見上げていた。

 沈黙が世界に満ちていた。

 渦波がその沈黙を破って妹に問いかける。

 

「陽滝。あの時何があったんだ。あの幼馴染みの子に、両親に。お前に何が起こってどうしてこうなったんだ?」

 

 数えきれないくらい積み重なってきた兄からのこの問いに陽滝はいつも思考しているのかも分からない奇妙な間をおいて答えている。

 

「兄さんにはもうどうしようもなくて無意味な事です。本当に、あまりにも遅すぎて過ぎ去ってしまって答える事なんてできません」

 

 渦波はいつもと同じ返答に黙りこむ。決して怒ったり魔法を使ったりしない。この一瞬の会話だけが一番自分達の本音に近い会話をしているから。『話し合い』が『家族会議』が終わらないように次の言葉を言わない。

 

 陽滝は静かな空気の中、綺麗な星空に揺れていた。世界など軽く超えた膨大で剥き出しの神経からの激痛と脳裏に浮かび続けるあらゆる『答え』に苛まれる頭には、光輝き奇跡ように美しい星空に惹かれていたのだ。

 

 

 

 だから、少しだけ漏れた自分の思いを話した。

 

「だって兄さんは誰の名前も、覚えてはいないのでしょう?」

「ああ。お前以外の家族も幼馴染みも仲間も親友も恋人も、大事な人だったのは微かに感じているよ」

 

 

 悔しそうに渦波は頷いた。そして続けた。

 

「まずは声だった。心と心で向き合って、繋がって、分かり合って、笑い合って、愛し合っていたはずなのに。声を忘れたよ。

 

 次は姿。何度も見て目に焼きついて、絶対に忘れないと思ってて誓ってたのに、時間に押し潰されて時間を戻しても思い出せない。

 

 そして思い出。忘れられないような出来事もいっぱいあって大変だったけど、とても楽しくて面白かったはずなのに、だんだん色褪せて古ぼけて破れて消えた。いくら『読書』しても、もう二度と読めなくなっていた。

 

 最後に名前だよ。これだけは忘れないってずっと頭の中に留めてたはずだったのに。大事な人達の名前を思い返す事もできなくなった。

 

 止めに関係。今はまだ家族や幼馴染みが大事だった事も仲間や親友、恋人が好きだった事も覚えてる。どれだけ忘れても諦めずにこれだけでも覚えていたい、と思ってる。でもきっとこれもいつかは『過去視』でも何も思い出せなくなるんだろうなって考えてしまってるよ」

 

 泣きそうになりながらも涙は流れない。

 

 

「陽滝の勝ちだよ。僕は諦めないけど、でもどうしようもなくお前は強くて僕は弱いんだ」

 

 

 陽滝は渦波の纏う魔力が増えている事に気付いていた。絶望し心に皹が入る事によって増幅される空しい魔力だ。いくら兄が魔力を得ても自分には勝てない事を知ってるから、より一層悲しく思う。

 

 この会話は奇跡だ。

 もう終わり続けてる二人の『演技』が薄れているのはここだけ。次はその本音すらも霞んでしまっているかもしれないのだ。

 

「もしかしたら、私は兄さんが嫌いなのかしれません。でも大好きです」

「僕もそう思う。僕はお前を愛しているけど、大嫌いなのかもしれない」

 

 これが今日の精一杯。きっとそれがこの奇跡で、いつかもう一度希望と奇跡がくるのかもしれないと祈り続けている。

 

 

 会話の間でない沈黙が戻ってきた。渦波は自分から陽滝の方に頭を後ろに寄せる。陽滝はそれを見て自分の後頭部をくっつけた。『一人』だけど一人ではないと言うように。

 そこでふと陽滝は口を開いた。

 

「慰めになるか分かりませんけど、『私の』兄さんは覚えていません。けれど私が覚えています。」

 

 この言い方が正解であると分かって陽滝は言う。これで渦波は一時的に心が安定すると『答え』がでていた。

 

「兄さんの記憶も、思い出も、想いも、大事な人の事も全てを覚えているんです。それこそ『永遠』に覚えていられるんです。私だけは」

 

「そうだろうと思ってたよ。思い出せるのがもう陽滝との記憶だけだからはっきりと分かる。陽滝は本当に世界で一人しかいないような程の『特別』で」

「……そうですね。」

 

 何も分かっていない渦波の無神経な発言に陽滝の顔が曇る。陽滝の心もずっと【静止】しているけれど、他ならぬもう一人の兄からの言葉に傷心したのだ。

 

「えっと……話を戻します。その、だからいつかは兄さんに話します。私の過去視なら全て分かります。でも今の私にはできないんです。――いつかはできるはずなんです。私にはまだ物語の最後の頁が見えていますから」

 

 そう、まだ陽滝には見えている。終わりを迎えられなかった物語の終わりには。

 

【――いや、独りではない。

 その『永遠』の旅に出るのは、二人。

 相川陽滝の隣には、彼女を真の意味で愛してくれる『家族』が常にいてくれた。

 どんなときでも、ずっと。

 ずっとずっとずっと、『永遠』に二人だったから。

 もう畏れるものは、何もなかった――】

 

 あの子がいなくなってもあの頁は変わらなかった。だからまだ終わりに辿り着けると信じている。

 だからあの戦いから陽滝は過程を少しだけ見るようになった。折れていた心は僅かに摩耗していくけど、それと同じだけ救われる事もあった。

 

「それに兄さんは全てを忘れても残っているんです。

 私が言うのもおかしな話ですけど、兄さんは弱いですけどあの異世界で確かに成長したんです。

 兄さんは何があっても前に進み続けられるようになって、どんなに辛い過去が隠されてても囚われて立ち止まりもしなければ置いて行く事もしない。

 自分の本当の願いを間違えない、偽りの幸せなんてない、どんな理不尽な運命でも、決して逃げ出したりしない。兄さんは兄さんだって、全ても失っても忘れてなんていない。

 今の私との旅も今の兄さんだからできているんです。だから兄さんの中にまだ残ってるし、これから忘れてしまう事もないんです」

 

「僕は変われていた……。確かにそうは思っている。これが僕が忘れなかった想いだった」

 

 少しずつ渦波の心が持ち直してくる。妹へのコンプレックスはまだ十分過ぎる程あるからこそ、本当にそうだと思える。

 最初、陽滝が渦波にした洗脳後の劇でやった事と大差はないが、これは嘘なんかじゃない。

 

「兄さん。待ってくれませんか? 私が言えるようになるまで、私と二人でいてくれませんか?」

「そこの僕が嘘であっても?」

 

 渦波が問い返す。

 

「はい。いつか絶対、私が何とかするので。」

「陽滝だけじゃない。僕も何とかする。きっとこういう事は一人じゃできないから。もしそれにふさわしいのが僕じゃない誰かだったとしても、僕は『本気』で陽滝を救ってみせる」

 

 何も覚えていないからこその発言だった。それでも陽滝は救われた。

 

「ありがとうございます、兄さん。ここまで心が動いたのはあの時以来かもしれませんね……ふふっ」

「ははっ……あの時って何なのか。いつか教えてもらう事にするよ。」

 

 思わず笑いが込み上げてきて笑い合う。

 

 

 雪を降らす雲が近づいてきた。

 星空が翳ってきて、もう一つ『約束』が交わされた夜が終わっていく。

 

「実は私と兄さんは前にも約束をしたんです」

「……ごめん。僕には分からない」

「いいんです。私もそれが分かっていますから」

 

 そんな囁きが最後だった。

 

「この旅を始めて、初めて眠くなった気がする。話し合って疲れたのかもしれない」

「私も少し寝たくなりました。私は眠くありませんけどね」

 

 

「おやすみ、陽滝」

「おやすみです、兄さん」

 

 

 

 明日、覚えているのかも分からないけれど幸せな夢を見たような気がした。

 

 

 

 

 




いい七夕を


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幼女事変(六章&外伝)

 最初に幼女渦波を出してくれた方に感謝。これはいい概念だ。


 『迷宮』、その二十層。いつも賑やかなそこは白髪の男性と不定形の黒騎士だけだった。

 

「ついにできた! まさか成功するとは!」

「渦波様がまさかこんな姿になるとは。しかしこれもいいかもしれないですね」

「なっ。アイド、幼い渦波もいいだろ。ノスフィー達がいない間にもう一度できただろ。ローウェンのやつもリーパーに連れてかれたし、帰ってくるまでに戻せば大丈夫だって」

「立派な女性である渦波様の愛らしい幼子姿。……いい」

 

 語り合う二人。思いの外白熱したその会話が途切れる頃、既に完成した幼女渦波はどこにもいなかった。

 

 

 ※

 

 ラグネ・カイクヲラは一人で『連合国』をあてどなく歩いていた。

 

「お嬢……」

 

 ぽつりと小声で漏らす

 フーズヤーズに『聖人』ティアラ・フーズヤーズが『再誕』して暫く経つ。フーズヤーズは益々発展したという。

 

 決して今のティアラに忠誠を誓っていないわけではない。

 決して今の状況が悪いとはいわない。

 決して未だにかつて仕えたラスティアラ・フーズヤーズに拘泥しているわけではない。

 

 しかし、たまにこうして一人で歩きたくなる。

 大聖堂の庭、雑多な街、郊外の草原、迷宮の入り口。

 思い出のある所から行った事もない所まで、淡々と歩いて少しだけかつての主を思い返す。

 それは少しの後悔と贖罪の混じった行為だった。当人でさえそんな意識などなく行われるこの散歩は今回彼女に行くべき道を教える。

 

 

 その日逍遙していたラグネは『守護者(ガーディアン)』たちの遊び場と化した迷宮の入り口でとある幼女を見つけた。

 

 

 黒目黒髪の可愛らしい幼女。子供には大きすぎる黒いローブを身につけて腰のあたりから思いっきり引き摺っている。入り口のすぐそこの水道で、所在なさげにぽつんと立っていた。

 ラグネは目を見開いて呟く。

 

「ママ…………じゃないっすね」

 

 風貌も雰囲気も、何なら性別も同じだった。ただ身長の一点において、ラグネの母親とは異なっていた。

 奇妙な一致に惹かれて声をかける。

 

「そこのお嬢さん、大丈夫っすか?」

「ふぇぇ……ここどこ……?」

 

 目にうっすら涙を浮かべ、ローブの隙間から肌が見えていた。はっと息を呑んだラグネは「これはいけない」と丁重にその幼女を『大聖堂』に連れていった。

 

 はいそこ、連れ去ったとは言わない。

 

 ※

 

「わぁ! ひろーい!」

「そうっすね。とってもひろいっすよ」

 

 幼女は顔を輝かせて庭を駆けていく。それをラグネはにこやかに眺めていた。どうやら懐いてしまったようで、しきりにラグネの袖を引っ張ってはあちこちを楽しそうに指さす。

 

「ん? ラグネ、その子はどうしたんだ?」

 

 たまたま通りがかったのは『天上の七騎士(セレスティアル・ナイツ)』が第一位、ペルシオナ・クエイガーである。

 

「あ、総長。いやぁ近くで拾ったんすよ」 

「……拾った?」

「かわいいっすよね」

「えっ」

「かわいいっすよね」

「あ、ああ」

「ラグネお姉ちゃんこっち! すごいよ!」

「ほんとっすか! 今行くっすよ」

 

 少し遠くに行っていた幼女が手を振って呼んでいた。ラグネは一瞬だけ幸せそうに目を瞑ると噴水のある奥の方へ走っていった。

 ペルシオナさんはぽつりと「仕事が……」と溢すと元の仕事を片付けるべく、早足で急いだのだった。

 

 ※

 

 噴水を見てきゃっきゃっとはしゃぐ幼女。ローブが揺れ、ずり落ちそうになるがそこはラグネが気付かれないうちに直す。

 

「ラグネ。こ、これは……!」

 

 喜色に溢れる声をあげたのは『天上の七騎士(セレスティアル・ナイツ)』が第四位セラ・レディアントである。

 普通を装っているが僅かに顔はにやけている。それはもう、大興奮であった。

 

「こんな所にあどけない女の子が……! か、かわいい……。ラグネ! この子はどうしたんだ!」

「いやぁ、かわいいっすよね。ママみたいな雰囲気なのにこんなに純粋そうなんすもん」

「いやそうじゃなくて……ママ?」

「かわいくないと言うんです? 先輩」

「そ、そんな事はない! まるで私の『理想』のようにかわいい子だとも!」

「そうっすよねー」

「ラグネお姉ちゃん、ここ高いよー」

 

 幼女は楽しそうに噴水の端によじ登っていた。しかし足を滑らしてしまって噴水の中に吸い込まれそうになる。

 

「っと、危なかったっすね。気を付けてくださいっすよ」

「ごめんなさいラグネお姉ちゃん」

「よし許したっすよ」

 

 笑いながら頭を撫でるラグネと目を閉じて懐く幼女であった。それを周囲から隠すようにセラが近寄る。

 

「いやよく考えたら、この状況を他の人に見つかると変な誤解を――」

 

 

「――何をやってるんですか? セラ」

 

 

 金髪の美丈夫、『天上の七騎士(セレスティアル・ナイツ)』が第二位。ハイン・ヘルヴィルシャインが呆れたように立っていた。

 隣には同じく『天上の七騎士(セレスティアル・ナイツ)』第六位、白髪混じりの長髪を流した壮年の騎士ホープス・ジョークル。同じく第三位、いくつも編んだ髪を垂らし宝石の杖を持つモネ・ヴィンチもいた。

 

「ほら! 触ってたのはラグネなのになんで私なんだ!」

「多分あなたが連れてきたのでしょう。何をやってるんですか?」

「違う! これは……ちょっと」

 

 ついにやってしまったのかと頭に手を当てているハインに慌てて弁解しているが、そこにふたりが有罪判定をくだす。

 

「よく分からない幼い子供とラグネ。そこにセラがいるんだ。この状況で何が起きたか分からない『天上の七騎士(セレスティアル・ナイツ)』はいないね。ははっ」

「私も同感だ。先の総長の慌てぶりもようやく分かった」

「違うんだ! これは……これは!」

 

 その言葉を聞いてホープスはため息をつくと、ちょいと行ってくる、と言うと止める間もなく奥の方に去っていった。

 崩れ落ちるセラに皆が苦笑する、平和な光景だった。昔のような束の間の憩いで。

 だからそれが崩れるのもすぐだった。

 

 

「ハインさん、どうかしましたか? あらまぁかわいいししょ……子供ですね」

 

 金砂の流れるような髪、すらりとした肢体、おおよそ誰が見ても威厳のある美しい姿の人物がいつのまにかこの輪の中に入ってきた。

 ハインは顔を歪めたがすぐに騎士の礼をとり、他の騎士もそれに続いて庭は静まり返った。

 

「これはティアラ(・・・・)様。この子は騎士セラ・レディアントが保護したようで」

「だから改まった礼はいらないって言ってるじゃないですか。でも……へぇ……」

 

 面白そうにしゃがみ幼女の頭を撫でると笑みを溢す。だが肩は少し震えていて込み上げる笑いを堪えていた。

 

「どうかなさいましたか? ティアラ様」

「いえ、面白い子だと思いましてね。……ひひっ、パリンクロンさんが動いていたのはこの子の事のようですね」

「パリンクロンが……本当に何でも見透かしたかのようなやつですね。もう驚きもしませんけど」

 

 固まった表情のハインにティアラは目を伏せて眼前の幼女の観察に戻る。

 

「木の魔法で肉体を闇魔法で精神を弄った形跡がありますね。やはりあの人達ですか」

「んー?」

「それにしても、この私がくらっとくるくらいかわいいのはさすがですね」

「ティアラ様、これは誰かの手が入った子なのですか? そんな事をできるなんて人物はこの『連合国』内では」

 

 

「――ああ、『迷宮』の『守護者(ガーディアン)』だけだ。だから連れてきてやったぞ、ハイン。もしかしたら初めてのやつもいるかもしれないが、こいつが『木の理を盗むもの』アイドだ」

 

 パチパチと拍手して入ってきたのは最後の『天上の七騎士(セレスティアル・ナイツ)』第七位、パリンクロン・レガシィだった。

 そしてその後ろには白髪の眼鏡をかけた男、アイドがいた。

 

「今朝、このアイドから要請を浮けてね。その子を探してたのさ。くくっ、このカナミの……カナミの……兄さん? をさ」

 

 かっこつけて登場したパリンクロンは自分を見て首を傾げる幼女を見ると困惑と笑いを混ぜた顔になってしまう。

 あまりに都合よく現れた最後の騎士が暴いた幼女の正体に周囲の騎士が絶句した。

 その様子にアイドは気まずそうに渦波を呼ぶ。

 

「申し訳ありません。こちらの不手際のせいで迷惑をかけまして。ほら、渦波ちゃん。おいで」

「あ! アイドだー! いたー!」

 

 とことこと渦波は走ってアイドに抱きつく。

 その反応を見たパリンクロンは愉しそうに笑う。

 

「まじかよ……信じていなかったわけじゃないけど、やっぱり面白過ぎるだろ……くくっははは――けどまあ、そんなわけで事態は解決だ。総長の方にも俺から言っといてやる」

 

 解散だ。解散。パリンクロンが言うと他の騎士はアイドにくっつく渦波にそれぞれ手を振って帰っていく。

 そしてハインだけがパリンクロンに向き合った。

 

「パリンクロン、あなたは……」

「ハイン、少し話さないか。ティアラ様の相手はモネにでも頼め」

「心得た」

「ありがとうございます。ええ、今日はゆっくり話し会いましょうか」

 

 ハインの固まっていた顔が少しほぐれる。それを見たパリンクロンが渦波に手を振り去ろうとするティアラに向き直って言う。

 

「構いませんよね、ティアラ様」

「はい、友人同士。語り合うのも良いでしょうね」

 

 ティアラは涼しげに応対する。その黄金の瞳と濁った目はしばらく互いを見つめていたが、先にパリンクロンの方が逸らしてハインと共に歩いていった。

 

 

「――ねぇ、ラグネちゃんはどう思いましたか? 女の子の『次元の理を盗むもの』を見て」

 

 最後に残ったラグネに背中を向けて聞いた。

 

「かわいいなとは思ったっすよ。でもそれだけっすかね」

「そうですか。何か大切な人を見出だしたかのように見えましたけど、私の気のせいのようですね。忘れてください」

 

 そんな風に残すとティアラは大聖堂の中に入っていった。

 

 

 ※

 

「これでよしっと。この一日の疑似記憶いれておいた。自分で自分の記憶を作り上げてもらう『術式』だからノスフィーに迫られても大丈夫なはずだ」

 

「あの狼の騎士の女の子好きにも驚いたものです。まさか見ず知らずの子供を連れ去るとは。まぁこれで渦波様は元に戻りました。後はうまく誤魔化しましょうか」

 

 こうして幼女渦波という存在は行間の闇に葬られたのだった。




 暗い部屋の微かに灯りがあったが、ラグネは椅子に座って呆然としていた。

「ママ……私の……」

「あの子がもし大きかったら……でもあれは『次元の理を盗むもの』……だからおそらくはあのエルトラリューの転校生っすか……」


 異世界迷宮の最深部を目指そう《外伝》迷宮改造編に続く(つもりで書きました)


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