仮面ライダーディエンド vs Yes!プリキュア5GoGo! (新生ブラックジョン)
しおりを挟む
Chapter-1
広大な敷地の中にある建物を見上げた青年の目に、屋根の天辺では不気味な黒鳥の様なシンボルがその翼を広げている。それは西洋館を思わせる佇まいの博物館で、内部には館長自慢のコレクションとなる数々の展示品が並ぶ。だがそこへは入場券を以て立ち入ることは愚か、それどころか外界からの存在は一切歓迎されない。博物館はエターナルと呼ばれる組織の本部として機能していた。館長の意思の下に世界中から価値ある品を収集させ、それを美しいまま永遠に保管することを目的とする。・・・・そして組織はその為に強奪をも省みず、収集活動の妨害となる存在の徹底排除も辞さない。破壊、殺戮を世界にもたらしかねないエターナルは館長が価値あると定めた貴重な品々をどんな手段を以てしても必ず手に入れ、自分の為だけにそれを保管すべく永久に奪い去る盗賊集団だ。
「エターナル。・・・・・・生憎と僕の趣味ではないな」
――――青年・・・海東大樹は不気味な“シンボル”を見詰めて懐に手を伸ばすと、一挺の拳銃・・・ディエンドライバーを取る。銃口を“真っ黒な鳥”へ向け、フックショットを放つことでワイヤーを上手く巻き付ける。トリガーを操作しウインチで屋根まで一気に上り詰めた。到達した彼は更にリュックサックから取り出したロープを垂らして窓がある位置まで降りていく。・・・・とある一室を覗いた大樹は反動を付け、大胆にも勢いよく窓を蹴破った。
仮面ライダーディエンド vs Yes!プリキュア5GoGo! Chapter-1
館に忍び込んだ彼は早速その部屋を物色し始める。一通り目を通し机に向かうと、山積みになった書類らしき紙の束を目にして読み漁った。表紙、内容からエターナルのハンター達による報告書であることが解る。組織が持つリストに従いそこに掲載された品を収集、後に職務内容を報告している。・・・・大樹はある特定の内容に関した物を発見しそれを手に取ると部屋を後にした。――――廊下を行く彼の目に飛び込むのはこれまで集められた数々の貴重な展示品であった。まるで組織の力を誇示する様に様々な“お宝”が壁に埋め込まれたガラスケースに収められている。大樹は感心しながら眺め始めていた。
「噂には聞いていたがこれ程とはね」
「―――貴方・・・」
つい夢中になり過ぎたと後悔して振り向くと、そこには謎の青年に対し明らかな警戒心を抱いた鋭い目付きの女が立っていた。秘書然とした格好の彼女は大樹の姿を見てより語気を強めて尋ねる。
「部外者がそこで何をなさってるのですか」
「っ僕としたことが」
咄嗟にディエンドライバーを構えた大樹の指が引き金を絞り、大型二連銃の銃口が火を吹いた。50口径のエネルギー弾を足下に向けて放ち、相手が怯んだ隙に彼は元来た道を引き返す。
「どきたまえ!」
「うおぉっ?!なっ何だー!」
・・・角を曲がりきった出会い頭に作業着姿の男と遭遇する。大樹はディエンドライバーで威嚇しながらその脇をすり抜け、侵入経路であった部屋に飛び込んだ。その後から僅かな差で女が現れる。
「ブンビーさんっ」
「あっアナコンディさん・・・!!」
「今の男は!何処ですか?!」
一方はエターナルの財宝鑑定士であり、もう一方はハンターであった。前者は侵入者の行方を辿って、そこへ偶然居合わせたブンビーと呼ぶ男に尋ねた。
「己れ!」
大樹は蹴破った窓から既に外へと飛び出し、堂々正面の道を走って行く。アナコンディは荒らされた自室の有り様にグラグラと怒りを沸騰させる。頭髪が蛇の如く揺らめく。
「行きなさい!・・早く!」
「は?・・・・・・・・・えぇっ私?!」
「他に誰が居るんですっ早くなさい!逃げられます!」
出口へ向けて走る大樹、灰色のオーロラの様なカーテンがその目前に迫る。“次元の壁”となるそここそが世界を脱する通路へ繋がる。が、瞬間的に移動してきたブンビーの攻撃が放たれた。・・・大樹は突然地面に打ち込まれた巨大な杭に足を止める。振り向いた先には人間のものから変容した姿のブンビーが居た。彼は赤や黄といった派手な色彩の肉体と化し、頭部は大きな複眼や触角を有したまるで昆虫の様である。―――ブンビーは右腕から杭の様な針を撃った。
「・・・へぇ、それが真の姿って訳か。エターナルも侮れないな」
「っここに忍び込むとは只者じゃないな?何者だ!」
「―――通りすがりの仮面ライダーさ。ま、別に覚えなくても良い」
握っていたディエンドライバーを器用に取り回し、続けて取り出した一枚のカードを銃本体のスロットに差し込むと、大樹は銃身下部に備わるレバーをスムーズに操作する。
〈―KAMEN RIDE―〉
「変身!」
〈―DE・END―〉
高く掲げた銃を天に向け撃つ。・・・・・・・・・三色の人影が青年の体に重なることでアーマーに包み込み、頭上に滞空していた何枚かのプレートは顔面目掛けて降り注いだ。それがスリット状の複眼を備えるマスクを形成し、彼も又戦う為の姿となる。
「なっ何ぃ?!」
「少しだけ相手をしてもいいよ、あんたの力を是非見せてくれ」
―――海東大樹、彼はパラレルワールドを自由に渡り歩く次元戦士・仮面ライダーディエンドに変身した。
「但し」
ディエンドのベルトにある左腰のホルダーにはカードが収まる。そこから一枚取り出すと再びドライバーに装填する。
〈―KAMEN RIDE・・・SASWORD―〉
トリガーが引かれ新たなる存在が解き放たれる。・・・ディエンドの持つ“カメンライド”能力は実体ある幻による同じ仮面ライダーの召喚であり、愕然とするブンビーの目の前に“サソード”が登場した。
「相手は彼だ」
「馬鹿な!?―――なっ何なんだこいつはっ・・・?!」
そんな同様も構わず、仮面ライダーサソードは手にした剣を携え襲い掛かる。サソリをモチーフとする彼の武器“サソードヤイバー”の刀身には猛毒となるポイズンブラッドが滾る。ブンビーは一先ず後方に飛び退いて回避すると、右腕を構えてエネルギー状の細い針を連射した。・・・サソードは数発を剣で叩き落とし、更に回避して接近する。
「どうかな?あんたにお似合いだと思ったんだけど」
ディエンドは両者の戦いを傍観して背を向けた。
「何を!」
「ハァァッ!」
サソードの剣捌きに圧倒されかかるブンビーだったが、サソードヤイバーの一突きをジャンプしかわした彼は敵の背後を取る。蜂の能力を備え背中には羽を持つ。これにより大きく回避した。
「食らえ!」
再び巨大な針が撃たれる、それがサソードの背中を捉えて風穴をあけた。途端爆発が起こってライダーの姿を呑む。ブンビーは敵を撃破した。
「~♪なかなかやるじゃないか。まぁ、ほんの小手調べだけどね」
口笛鳴らし指鉄砲で撃ち抜きながら事実か否か、彼は自らの背後に迫るオーロラの中に姿を消していく。・・・・その様子を窺っていたアナコンディは同じく初めて目の当たりにした仮面ライダーなる存在に内心焦りと苛立ちを覚える。彼女は荒らされた自室へブンビーを呼び戻し新たな指示を下す。
「・・・報告書を取り戻して下さい」
「えっと、あの・・・・・・私がですか?」
「―――ブンビーさん」
「あっいえっ、そうですよね!今私しか居ないんですから・・・」
眼鏡越しに伝わるアナコンディの視線が彼を心底震え上がらせる。
「でっでも、報告書なら又書いて提出すればよろしいんじゃ?」
「そういう問題ではありません。我々の情報が外部に漏れる等ということがあってはならないのです!・・・・・・ブンビーさん、貴方はエターナルを無断で飛び出した上にあろうことかプリキュア側へ寝返ろうとした。・・・・・・ですがこうしてのこのこと戻ってきたのはどうしてでしょうね?」
彼女は全てお見通しと言わん秤にブンビーを更に見詰める。・・・睨まれた蛙として寿命が縮み上がる思いだった。
「これはチャンスです。報告書を取り戻して頂けたらこれまでの失敗の数々、裏切りも全て水に流しましょう。―――ですが、お断りになるならそれでも。・・・貴方次第です」
ブンビーは決断を迫られる。そして彼にとって選択肢は限られていた。
大樹は追っ手を振り切りエターナルを脱出するとその足で新たな場所を訪れた。そこは閑静で広々した湖畔だった。手にした報告書の内容から直ぐ側に建つアクセサリーショップ“ナッツハウス”に彼は向かう。・・・すると丁度、そこへ駆け込んでいく少女の姿を捉える。
「最後の王様、遂に見つけたんだってー!?」
―――そう言いながら夢原のぞみが慌ただしくナッツハウスにやって来る。そこには既に彼女の仲間が全員集まっていた。
「・・シー!静かにっ」
「え?・・・・・どっどうしたの一体・・・」
「王様の様子が変なんです」
既に集まっている内の1人、春日野うららが心配した様子で答える。
「えぇっ?!」
「だから大声出さないで!」
「―――何よー、くるみだって声が大きいじゃない・・・!」
「ちょっと2人共静かにっ。・・・全く―――」
睨みながら美々野くるみがのぞみに対して声をあげ、更に言い争う両者を夏木りんが嗜める。彼女は2人に呆れてため息をつく。何やら重々しい空気だがことの発端はあるパルミンという精霊が見つかったことだった。それが最後の国王であることが判明したのだが酷く衰弱した様子で、対処の方法が解らない為に一同は困惑していた。
「―――治療に役立ちそうな本はパルミエ王国にも無いナツ・・・」
「他の国王達にも相談してみるココ」
パルミエ王国の2人の国王・・・リスの様な姿のナッツが肩を落としながら言い、更にフェネックの様な姿のココが促す。それに頷いたりんはとある王女から渡されたカードを取り出し、それをローズパクトに右側から差し込んだ。画面が発光し、立体映像的にババロア女王が現れる。
『まぁ!元気だったロロ?わらわも皆のお陰で・・・』
「そんな話は後ロプ!」
彼女の話を遮るペンギンの様な姿の妖精・シロップ。と、ババロア女王も呻きながら横たわる国王を見て事態を把握する。
『モンブラン!』
「ババロア女王、どうしたら良いココ?」
『・・・長い間パルミンの姿で居たせいでかなり体力を消耗してるロロ、回復するには時間が掛かりそうロロ』
「ゆっくり休んでいれば元気になるんですね?」
『そう簡単にはいかないロロ』
うららの言葉にババロア女王は更に表情を険しくした。
『モンブランはこう見えても四つの王国の中では最年長の国王ロロ』
「そうナツ。沢山の知識と経験を持つ長老の様なお方ナツ」
『ここまで弱っていると、きちんと看病する必要があるロロ』
「・・でも、どうすればいいの?」
とりんの言葉に一同が互いの顔を見合わせる。
「かれん」
ミルクが彼女の膝に飛び乗る。
「ミルクの時みたいにモンブラン国王を看病して欲しいミル」
「かれんさん」
のぞみ達も同じ考えの様だ。
「・・・でも、出来るかしら」
彼女は自信無さげに自身へ問い掛ける。今一度モンブランを見て彼女は答えを出す。
「解った。私に出来る全てのことをやってみるわ」
こうしてかれん達による懸命な看病が始まった。かれんはローズパクトを操作してはちみつを探す。各々、りんが自宅の花屋から温室用ヒーター、秋元こまちがお湯入りポット、ミルクはカップにスプーン、のぞみやうららも湯たんぽ等をかれんの下に持ってきた。
「体が弱っている時は兎に角温かくして栄養を採れば、きっと元気になってくれる筈」
医者を目指すかれんにはミルクの看病経験もあり、やり方は心得ていた。カップにお湯を注ぎ、そこにスプーンで蜂蜜を溶かしてかき混ぜる。
「お取り込み中かな」
階段付近でいつの間にか様子を窺っていた大樹は一同の前に姿を見せた。
「・・・あれ、お客さん?」
「まぁそんなとこかな」
「―――あ!少々お待ち下さい!」
のぞみ達は慌ててテーブル上の妖精達を体で覆い隠す。何やら店主の名を呼び始めると、りんとうららが大樹を一階へ向かわせようとする。2人が気を逸らす間に残りの少女らは必死に後ろ手に回す。
「何でもここには素晴らしい品があるってね。きっと僕が欲しい物があると思うんだけど」
「成る程、それでどんな物をお探しなんですか?」
「ローズパクト」
「え」
うららは大樹が発したそれの名に目を丸くして固まる。のぞみ達は苦笑いが消えて呆気に取られた様な表情をする。―――聞き間違いかとりんは思う。
「あの、今・・・・・・・・・」
「―――ローズパクト。・・・ああ、勿論知ってるとも。キュアローズガーデンへの扉を開く為の鍵だ」
「貴方、まさか!」
かれんを始めに少女達の目付きが変わる。その“まさか”は彼女達が持つ正しくローズパクトを狙う敵の組織以外に考えられないからだ。・・・だが、その青年はフンと鼻を鳴らして首を横に振った。
「やめてくれ。あんな連中と一緒にされるのは心外だな」
「何言ってるの。貴方エターナルでしょ」
警戒心を以てこまちが再度問い掛ける。
「違うな。―――さぁ、ローズパクトを渡してくれ。・・・僕もお宝の為なら容赦はしない」
大樹はディエンドライバーを突き付けて要求した。のぞみ達5人はテーブルの前に集まると青年からローズパクトと国王を守ろうと立ち塞がる。外観を五色の蝶が飾る携帯型変身アイテム・キュアモを取り力強く叫ぶ。
『プリキュア・メタモルフォーゼ!!』
眩い光の中で順に姿が変わる。―――夢原のぞみの髪は明るいマゼンダとなって、結わいた部分は輪の形に、更に後ろ髪が伸びる。続き、夏木りんは炎の如く燃え盛る様な色のショートヘアーに変わり、春日野うららはツインテールが“猫耳”を思わせるシニヨンとなってそこから細い毛の束がバネの様にカールして飛び出る。又、秋元こまちはより鮮やかな青緑色でボリュームを増すショートヘアー、水無月かれんは後ろ髪を高く結い上げた青になっていった。服装は制服から薔薇や蝶をモチーフにした戦士のコスチュームとなる。―――伝説の戦士プリキュアが並び立つ。
のぞみは大いなる希望の力、キュアドリームに。
りんは情熱の赤い炎、キュアルージュに。
うららは弾けるレモンの香り、キュアレモネードに。
こまちは安らぎの緑の大地、キュアミントに。
かれんは知性の青き泉、キュアアクアに。
『希望の力と未来の光!華麗に羽ばたく五つの心!―――Yes!プリキュア5!!』
・・・・・・又、妖精ミルクは美々野くるみの姿へ一瞬にして変化すると“ミルキィパレット”を手にして高らかと叫ぶ。
「スカイローズ・トランスレイト!」
彼女は青い薔薇に秘められた神秘の力で変身する。プリキュアでは無いが同じ志を共にする6人目の戦士だった。
「青い薔薇は秘密のしるし!ミルキィローズ!!」
ウェーブがかったツーサイドアップ、髪留めやコスチュームにあしらわれる“奇跡”を花言葉に持つ薔薇。くるみはミルキィローズとなる。・・・・・・大樹はバルコニーを飛び降りて外へ向かう。それをプリキュア達が追い掛けて湖の桟橋に場を移すと大樹がカードを取り出してディエンドライバーに装填する。スライドをポンプアクションして引き伸ばすことで音声が鳴り響く。
〈―KAMEN RIDE―〉
「変身」
〈―DE・END―〉
青年の姿を包み込む装甲、シアン色のボディーと素顔を覆うマスク。大樹が仮面ライダーディエンドとなり、それを見た少女達は目を見開いて驚く。バルコニーから同じく見ていたココとナッツ、シロップらもエターナルのハンターとは別の何かを感じる。ディエンドライバーの銃口が火を吹き、それを皮切りに戦いが始まる。ドリームを始めとした“プリキュア5”が次々に攻撃を繰り出す中をディエンドは驚異のスピードで掻い潜る。勢い付けてターンを決めるとキュアアクアに迫り、得意とする高速移動で急速的に接近していく。拳を打ち、膝を放ち、アクアを押し退けると襲い掛かるキュアミントの飛び蹴りを回避する。続けざまキュアレモネードとキュアルージュの2人がパンチを振り翳し突撃してきた。ディエンドは身を翻しドライバーを構えるとトリガーを引く。放たれたエネルギー弾が爆発を生んで視界を遮り、紛れてディエンドの剛拳が飛び出す。レモネードを捉えて吹き飛ばし、隙を突かれたルージュも蹴りを浴びた。
「レモネード、ルージュ!!」
・・・キュアドリーム、ミルキィローズが加わってディエンドに対する肉弾戦のラッシュを送り込む。だがディエンドもかわすか防御しやり過ごすと、距離を取ってドライバーの銃撃を叩き込んだ。
〈―ATTACK RIDE・・・BLAST―〉
カードを装填して“ディエンド・ブラスト”を発動し、それのホーミング機能が付加された弾を雨霰の如くプリキュア達の頭上から浴びせた。―――しかしミントが咄嗟に作り出した“エメラルドソーサー”、それによるエネルギー状の巨大な円盤がバリアの役割を果たして身を守る。後ろに飛び込んだ仲間達も直撃を免れた。
「確かにやるな。・・・けどこれはどうかな」
ディエンドはドライバーのスライドを戻し、更に二枚のカードを取り出してスロットに差し込んでいく。
〈―KAMEN RIDE・・・KAIXA・CAUCASUS―〉
プリキュア5を相手に召喚され殺気を放つ、仮面ライダーカイザ。・・・一方、ミルキィローズの目の前に現れたのは仮面ライダーコーカサスだった。2人の戦士は自らを実体化した存在に従い動き出す。――――ネクタイを弛めるかの様な仕草から始まり、カイザは専用武器であるカイザブレイガンを構える。コーカサスは手にしていた青い薔薇をローズの足下へ放り投げると突如駆け出す。
「こんなのってアリ!?」
「この人達は一体・・・・・・?!」
ルージュ、レモネードの同様など尻目に容赦なくカイザは攻撃を行う。フォトンブラッドの刃が袈裟懸けに振り上がり、ドリームは切っ先を紙一重にかわす。3人は息を合わせ応戦する。時を同じく、ミントとアクアは1人敵を相手取る仲間の援護に回った。・・・黄金のライダーは軽々相手のパンチを受け止めて押しやる。ローズは尚も肉弾戦を仕掛けて懐に入ろうとする。
〈Clock Up〉
それよりも早くコーカサスがベルトのトレーススイッチに触れ、マスクドライダーシステムに備わった“クロックアップ”を発動した。ローズの攻撃が当たる直前、目にも留まらぬ早さで高速移動し反撃する。
「キャアァァァァァッ!?」
「ローズ!!」
「消えた」
アクアが思うのも無理はない、今のコーカサスを視認すること等不可能に等しい。3人は一ヵ所に固まって互いに背を向け合い、周囲を見回して敵の姿を注意深く追う。・・・・・・・・・・・・ディエンドはこの間にナッツハウスへ近付く。
「来るなロプ!お前になんか渡さないロプ!」
「国王に手を出すなナツ!」
「・・・それはどうでもいい、妖精は黙っていたまえ。―――やはり素晴らしい」
テーブル上にある四角い箱の様な形をしたそれをディエンドが手に取る。と、その瞬間ココが彼の腕に飛び付きローズパクトを渡すまいとしがみつく。
「させないココ!!」
「「ココ!」」
「放せ、無駄なことだ」
だが軽く腕を払うと妖精は意図も容易く振りほどかれてしまう。ココはテーブルへとその身を投げ出された。ナッツとシロップはそこへ咄嗟に滑り込み、間一髪で無事に仲間を受け止める。ディエンドは気にも留めず、悠然とナッツハウスを出る。
「おっお前は!―――あーーー!?」
男がやって来て立ち止まった。そこで出会したのは報告書を取り返すべく出撃したブンビーだった。彼はディエンドを見掛けて声をあげ、次にそれが持つローズパクトを見つけて又叫んだ。
「なっ何でお前がここにっ?!・・・・・・・・・それは、ローズパクト!」
「やぁ、あんた達も狙ってたのは知ってるけど。ご覧の通り僕のが一足早かった。お先に失礼するよ」
「―――待て!・・・・・・報告書なんかもうどうでもいい、そのローズパクトさえ手に入れば私はエターナルに戻れるどころか大出世だ!」
ブンビーは蜂の様な怪人の姿になって飛び掛かる。ディエンドは避けてカードを取り出す。
「―――残念、今は相手してる暇は無い。・・・僕にはね」
「ローズパクトを寄越せ!!」
・・・ディエンドの持つライダーの姿が描かれたカード。ブンビーは本部での戦闘を思い起こす。敵が操る未知の力に目をつけ、咄嗟にエターナルボールを投げ付けた。ボールはカードを捉える。
「何!」
「フフフ、さぁてどうなるかな?」
手元から落ちた“BIRTH”と表記されたライダーカードに不気味な目玉の付いた球体が沈んでいく。暫しの沈黙が訪れ、そして閃光が発せられると“ホシイーナー”と呼ばれる怪物が誕生する。エターナルのハンターは様々な物体等から巨大な僕を作り出してこれを使役する。だが今新たに生まれ出たホシイーナーはこれまでとは異質を極めた。
※Yahoo!ブログでの投稿は終了致しました。現在はAmebaブログにて同作品、並びに他の作品も投稿しております。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
Chapter-2
Chapter-2
カイザはベルトから取り外して変形させたフォンブラスターとカイザブレイガンの二挺でフォトンブラッド光弾を浴びせる。・・・ドリームはその射撃を潜り抜けて懐へのパンチを放つ。命中させ怯んだ所に透かさずルージュが向かう。彼女の足下に炎の球が現れる。
「プリキュア・ファイヤーストライク!!」
強く蹴り飛ばし、必殺の一撃を敵目掛けて見舞った。カイザは爆発に呑まれて消滅する。
「なんとか倒せましたね」
「ローズ達は!?」
「彼処だ!」
・・・・・・・・・クロックアップで高速移動するコーカサスを前に苦戦を強いられていたミント、アクア、ローズ。そこに駆け付けるドリーム達に気付いて注意を促す。
「気をつけて!何処に居るか解らないわ!」
そう叫んだアクアが次の瞬間には宙に浮き、するとローズが漸く停止したコーカサスの姿を捉える。ネモネードに対して呼び掛け、彼女は咄嗟に必殺技を繰り出す。
「プリキュア・プリズムチェーン!!」
幾つもの光の蝶が紡がれて出来た鎖がレモネードの両手から発射され、それがコーカサスを捕縛して拘束する。身動きが取れなくなり、そこへアクアが自らの必殺技をぶつける。水流の弓を作り出し、つがえた渦巻き状の矢を放つ。
「プリキュア・サファイアアロー!!」
それによりコーカサスを一瞬にして貫き通し撃破する。
「皆大丈夫?」
「えぇ、無事よ」
「エターナルの新しいハンターなんでしょうか」
「ねぇ、彼奴は?・・・・・・逃げたのかしら」
ドリーム達3人とミントらが集まる。レモネードの問いに、ローズはライダーを召喚した“彼”の存在が無いことに気づき始める。
「―――ローズパクト!!」
それを受けたルージュの言葉に全員が一斉にナッツハウスへ走る。―――ディエンドは徐々に後退して距離を取る、手には確とローズパクトを持つ。彼の前にはブンビーとホシイーナー。だがライダーカードから作り出された怪物は静止したまま動かない。ディエンドはその時ドライバーを構える。
「どうした?ホシイーナー!」
するとホシイーナーは突然弾かれた様に銃を向け先制攻撃を決めた。ディエンドは再びドライバーを向け、反撃としてエネルギー弾を連射する。・・・そこに来たプリキュア達はブンビーを見つけて立ち止まる。
「ちょっと、どうなってんの?」
「あれ、見て下さい!」
「・・・何、仲間割れ?」
「あぁっ!?ローズパクトだよ!!」
ローズとレモネードが声をあげる。ルージュはディエンドも組織の1人として考え、ドリームはその彼が既にアイテムを奪っていることに気づく。
「・・・兎に角、早くローズパクトを取り返しましょう」
「そうね!」
アクアの言葉にミントら残りが頷く。・・・・・・・・・ホシイーナーは一枚のライダーカードによって召喚される戦士の力を有して生まれた。セルメダルと呼ばれる硬貨の様な物から得る力で変身する“仮面ライダーバース”の姿だった。しかし異常なのは全身10ヵ所に備わったリセクタプルオーブなる器官が全てエターナルボールと化していることだろう、そしてベルトのバックル中央にも不気味な目玉だらけの球体が浮かんでいる。―――“バース・ホシイーナー”は大型銃であるバースバスターからエネルギー弾を撃つ。一方ディエンドは手に入れたローズパクトを守ることに専念し、同時に戦線離脱の為に弾幕を張る。タイミングを見て取り出したカードを使う。
「―――この借りは必ず返す!」
〈―ATTACK RIDE・・・INVISIBLE―〉
その効果“ディエンド・インビジブル”で姿を不可視化させ行方を眩ませる。
「あっ!ローズパクトが?!」
アイテムを手にディエンドはブンビー、そしてプリキュア達の目の前から忽然と姿を消す。バース・ホシイーナーは再び動きを止め、そして唐突にドリームらの方へ静かに体を向ける。複眼・・・Uフラッシャーが赤く光を放つ。
「エターナル!」
「ローズパクトを返して下さい!」
「―――チィッ!こうなったらせめてお前達を倒して・・・!」
バース・ホシイーナーが動く。右腕を翳すと、その箇所に位置したエターナルボールの瞼が見開かれる。
「ホシイーーナーーー!!」
ライダーの専用武装CLAWs―――バース・ホシイーナーは中距離型支援ユニット・クレーンアームを装備し振り回す。ブンビーはその巻き添えを受け、大型の武器から繰り出される強い衝撃に空の彼方へと吹き飛ばされる。叫び声と共に吸い込まれる様に消えていった。
「そんなぁぁぁーーーー・・・・・・・・・・・・!?」
・・・・・・ドリームを襲った一撃は地に打ち付けられた。彼女は回避する。バース・ホシイーナーは巻き取ったクレーンを受け止めると走り迫る。6人は一斉に迎え撃ち、矢継ぎ早に飛び掛かった。だが誰1人攻撃を当てられず、かわされた末に反撃され倒れていく。ローズ、ミントは動揺さえ見せ、アクアは仲間達へ呼び掛ける。
「何なのこいつ?!」
「今までのホシイーナーと違うみたい・・・!」
「っ来るわ!」
「ホシイーーナーーー!!」
バースの両足に備わるエターナルボールが開眼し、巨大な“キャタピラレッグ”が装着される。重戦車の如く走行し突撃を仕掛け、手にしたバースバスターを乱れ撃つ。避けたローズはバース・ホシイーナーが方向転換する間にミルキィパレットを取り出して構えた。
「―――邪悪な力を包み込む、薔薇の吹雪を咲かせましょう・・・・・・!・・・ミルキィローズ・ブリザード!!」
必殺技が放たれると無数の青い薔薇の花弁が吹き荒れ、バース・ホシイーナーを捉えて埋め尽くさんと瞬く間に包み込んでいく。
「ホシイーーナーーー!!」
だがその中でホシイーナーが雄叫びをあげて抵抗を見せる。バース・ホシイーナーの胸部へ、砲身・サラマンダーランチャーを備えた“ブレストキャノン”が組上がる。・・・・銃口にエネルギーが収束する。―――ミルキィローズの青い花弁が徐々に剥がれ落ち、そこから赤い閃光が一筋の光として溢れる。ブレストキャノンから発射された強力なビームが必殺技を撃ち破った。爆発を起こしながら花弁を吹き飛ばし、逃れたバース・ホシイーナーは新たなCLAWs・・・“カッターウイング”を背部に装着し上空高くまで逃れる。離脱したライダーはジェット機の様な速さで飛び去る。
「ミルキィローズ・ブリザードが効かないなんて・・・・・・!!」
ドリームはそう言いながら、頭上を悔しげに見上げるローズを見ていた。
のぞみ達は変身を解くとナッツハウスへ一旦戻ってモンブラン国王の看病を再開した。その末に、どうにか僅かながらでも言葉を交わせる程度には回復し始めた王様の様子に一同は表情を緩める。彼女達は話し合いの末に奪われたローズパクトを取り戻すべく手分けしてディエンドを探すことになり、ココとナッツは各々国王の側に残ることを決める。残りのメンバー達は地上から、並びにシロップは小柄な妖精の姿から大きな鳥に変化して空からと二手に分かれ捜索を始めた。・・・地上である街中では、更に6人の少女達が2人一組でローズパクトの行方を追う。だがそもそもディエンドが何処へ消えたのか、行き先の検討すら無い状況下では見つけ出すこと等無謀に近かった。回復の兆しを見せたモンブランだがまだ安心は出来ず、一刻も早くローズパクトの中へ移して安静に休ませなければとのぞみ達はその一心だった。
「参ったわね。何処をどう探せばいいってのよ」
「あーん待ってぇ!・・・・・・・・・そんなに早く走らないでよっ」
「もー!のぞみはっ―――。兎に角急いでローズパクトを取り返さないと・・・・・・!」
・・・・・・・・・・・・・・・彼女らを尻目に、大樹の姿は街のシンボルとなる最も高く聳える時計塔にあった。ローズパクトへの被害が無いか確めていたが、彼は左の脇腹に痛みを感じて表情を歪ませる。彼はお宝を守ろうとする余り自らが傷を負っていた。
「僕としたことが―――」
腰を下ろし一時的にこの場に体を休める。奪われたカードを取り返すまでこの世界を離れる訳にはいかないと大樹は思う。
「ロプ?!」
・・・・空からローズパクトを追って捜索中だったシロップの目に留まったのは、紛れもないあの時ナッツハウスへ現れた青年の姿だった。大樹が時計塔にやって来て暫し経った頃である。シロップは一直線に降りていく。―――すると何かが近づく気配を感じ、大樹が咄嗟にディエンドライバーを握った。次の瞬間、激しい突風が起きて彼は思わず顔を背ける。又直ぐに視線を戻すと、そこには肩からポーチを掛けた1人の少年が立っていた。銃口を向ける大樹を睨む様に見据える。
「・・・やぁ。確か、運び屋の・・・シロップ君、だったかな」
「見つけたぞ、ローズパクトを返せっ」
「断る。・・・なんなら、力ずくで取り返すかい?出来るならね」
「―――お前はエターナルじゃない。向こうで見掛けたこともない、どっから来たんだ」
「君と同じさ、僕も色んな所に行ける。・・・・・・詰まり、少なくとも僕はこの世界の人間じゃない」
答えた様でそうでない曖昧な返事をしながら大樹はそっと立ち上がり、今度は彼が少年・・・シロップから姿を変えた甘井シローを見下ろす。その間も警戒してディエンドライバーは構えたままである。
「・・・あんたもローズパクトが狙いか。流れ者のハンターみたいなもんか」
「ふん、そう思うならお好きに。・・・・・・さて、そろそろ消えるとしようかな」
「待て!・・・・・・ローズパクトは渡さないぞ!」
「止めておけ!・・・君1人に何が出来る。怪我するだけだぞ」
大樹はシローをその場に静止させた、しかし諦める様子は無さそうである。
「国王は弱ってて、その中で休ませないといけないんだ。それに俺達にとっても大事な物だ、キュアローズガーデンへ行く為にも・・・」
「知ってるさ、扉を開く為の鍵。だからこそ渡す訳にはいかない。―――僕もさ。これを君達に返す訳にはいかないな、お宝は失わせないよ」
「お前、一体」
そこに何やら物音が近づく。梯子を上がって来る2人の少女が現れる。
「ここから探せばいいんだよ!ね?」
「そう上手くいくかしら。―――あ、シロップ」
「・・・あれ。・・・・・・あーーー!?貴方は・・・!!」
一番高い場所から町中を見渡してディエンドの姿を探そうと立ち寄ったのぞみと、そんな彼女の後を追って続いたくるみだった。2人は思わぬ形でローズパクトを奪い去った盗人を発見する。
「見つけた!さぁ、ローズパクトを返しなさい!!」
「ふぅ、しつこいなぁゾロゾロと。・・・痛い目に遇わせようか?」
大樹は自身のライダーカードを手にする。合わせて、のぞみとくるみもそれに対して身構える。
「君達は何も解ってない。キュアローズガーデンへはこの僕が近づけさせはしない」
「何ですって?!」
「どういうこと、何故?」
「決まってる。彼処はお宝の価値も解らない様な者が踏み荒らしてはならない聖域なんだ。きっと君達の手には負えない。それに残念ながら僕にも持って帰れないしね。だから、扉は開かせない」
「何を言ってるの?」
「お前、ひょっとしてキュアローズガーデンが何処にあるか知ってるのか?」
「さぁ、どうかな」
すると突然、振り向いたシロップが叫んだ。
「―――何か来る!」
上空から奇襲を仕掛けるべく急速に接近する影が見える。遥か遠くに居たがあっという間に迫り、そいつは背中に備わった翼で攻撃を仕掛けてきた。バース・ホシイーナーは大樹を狙って腕を伸ばす。――――捕まり、瞬く間に連れ去られた大樹はディエンドライバーを向ける。だがバース・ホシイーナーはそれを手で退けさせ、自らの左腕にショベルアームを出現させる。
「あの間抜けもとんでもないことをしてくれたもんだっ・・・!」
バース・ホシイーナーはそこで、掴んでいた大樹の胸ぐらを放した。地面へ真っ逆さまに落下していく―――・・・しかしその最中に彼はディエンドライバーから発射したフックショットで難を逃れる。足を狙って絡めとり、自らが着地すると共に敵を墜落させる。大樹は降りたってドライバーへカードを装填する。
〈―KAMEN RIDE・・・DE・END―〉
「変身!」
装甲を纏い、スリット状のマスクに素顔を覆われ仮面ライダーディエンドとなる。矢継ぎ早、新たなカードを取り出してそれを使う。
〈―KAMEN RIDE・・・PSYGA・NADESHIKO―〉
「飛ぶ奴には丁度良い」
「宇宙ーーー・・・・!キターーー!!」
声をあげ跳び跳ねる青い複眼の戦士が拳を高々と天へ向けて突き上げる。艶やかな女性らしい名を持った、正しく彼女は仮面ライダーなでしこだ。一方、その隣には“帝王”の異名を持つ純白の装甲に身を包む仮面ライダーサイガが現れた。・・・両者はバース・ホシイーナーに対し空中戦を挑む。
「タイマン張らせて貰うぜ♪」
〈Rocket・On〉
なでしこの右腕にオレンジ色のロケットモジュールが装備される。巨大なそれからジェット噴射してバース・ホシイーナーに追い付く。更に飛行ユニット・・・フライングアタッカーを用いてサイガは飛行すると共に、フォトンブラッド光弾で追撃する。2人のライダーが次々と攻撃を放ち、そこになでしこの繰り出した渾身の一発が入る。
「ライダーーーロケットパーーンチ!!」
モジュールの勢いから与えられたその技に、寸前に防御したもののバース・ホシイーナーはバランスを崩す。ディエンドは隙を見て透かさず必殺技を叩き込む。
〈―FINAL ATTACK RIDE・・・DE・DE・DE・DEEND!―〉
・・・構えたディエンドライバーからライダーカードを象ったエネルギー状の光の渦の照準が現れ、トリガーを引くことで巨大なビームの一撃が放たれる。召喚されていたなでしこ、サイガも又還元され力の一部と化してカード型エネルギーの力を込めた高威力のディメンションシュートで敵を捉えた。バース・ホシイーナーは直撃を受け爆発と共に落下する。・・・・・・立ち込める煙が晴れるとそこへうつ伏せに倒れていた。ディエンドは少しずつ近づく。
「―――・・・ホォォシイィィナァァーーーーッ!!」
叫びながら、突如としてホシイーナーは起き上がった。そこへ時計塔から駆け付けたのぞみ達が姿を見せる。装甲を纏った怪物は地の底より響かん秤に雄叫びをあげる。・・・バース・ホシイーナーの全身に全てのCLAWsが組上がっていくと、それは“バース・デイ”と呼ばれる重武装形態になる。胸部に備わるブレストキャノンが静かにエネルギーを収束させる。赤いビーム・・・“ブレストキャノンシュート”がディエンドを襲う。
「ウァァァーーーーッ!!」
変身を強制的に解除された彼はディエンドライバーを手放して倒れる。満身創痍の中で再び銃を握ろうと地を這いそれに手を伸ばすが、バース・デイとなったホシイーナーがクレーンアームで飛ばしたドリルアームの先端部に弾き飛ばされる。のぞみはそれを見て駆け寄った。
「のぞみ!」
「―――シロップ、その人をお願い!」
「へ?けどこいつは・・・!」
「お願い!・・・・くるみ!」
「えぇ!」
のぞみの言葉にシローは渋々大樹へと近付く。くるみもホシイーナーを前にミルキィパレットを取り出す。のぞみはキュアモのボタンを順に押した。
「プリキュア・メタモルフォーゼ!」
「スカイローズ・トランスレイト!!」
キュアドリーム、ミルキィローズが戦いを挑む。バース・デイ・ホシイーナーは両足のキャタピラレッグで迫りながらショベルアームを振り翳す。
「シロップ!」
「ココ!」
敵の出現によって、それから発せられた邪悪な気配を感じ取って駆け付けたパルミエ国王の1人だった。彼はシロップやミルクが少年や少女の姿となれる様に、自身も端正な顔立ちをした小々田コージと名乗る好青年の姿で駆け付ける。
「モンブラン国王は?」
「大丈夫、モンブラン国王はナッツが見てるから。・・・・・・ところで、その人は・・・?」
「あの泥棒だよ、それと多分こいつはエターナルじゃない。―――そうだ、まだローズパクト持ってる筈だ。こいつをナッツハウスに連れてくぞ」
「―――確かに、このまま放っとく訳にもいかないな。・・・酷い傷だ、どうして?」
「ホシイーナーにやられたんだよ、今までプリキュア達が戦ってきたのより強いんだ。・・・・・・さ、行くぜ」
シローは巨大な鳥の状態であるシロップの姿に変わり、背中に備わったスペースにコージと気を失った大樹を乗せた。運び屋として様々な積み荷を載せることが出来、そこにのぞみ達を乗せることも度々である。彼はそのまま翼を広げて飛び立つとモンブラン国王とナッツが待つアクセサリーショップへと向かう。ドリームとローズはそれを見届け、2人互いに呼吸を合わせて果敢にバース・デイ・ホシイーナーと戦う。だが敵はCLAWsを活用してことごとく戦士達の攻撃を掻い潜る。地上での砲撃や近接戦闘、空からの突進。又、ドリーム達のパンチやキックにすら耐えうる。・・・加え、ホシイーナーはブレストキャノンからビームでは無い何かを発射してばら蒔く。それはエターナルボールであり、本来セルメダルの破片から生み出される筈の屑ヤミーなる戦闘員を続々と解き放った。全身に包帯を巻いた不気味な動きをするそいつらは顔面の大穴にこちらにもエターナルボールが備わっている。屑ヤミー型ホシイーナーが複数現れて立ちはだかる。
「ホシイーナー!!」
「ちょっ何なの?!増えてるじゃない!」
「・・・・・・!!」
“ミイラ男”の集団がゾンビの様に一斉に動き出した。・・・・・・・・・・・・・・・・・・シロップ達は驚く程早くナッツハウスの前に到着する。と、丁度着陸したところへ店内から夏と呼ばれる人間の姿に変わったナッツが出迎える。
「シロップ!」
「よ。・・・ローズパクト、何とか取り返したぜ」
再びシローに変わり、彼は倒れた拍子に大樹が落としていたそのアイテムを見せた。夏は一安心しつつ、コージが支える男の姿に気づいて目を留める。
「そいつはっ」
「・・・のぞみが助けろってさ。ま、こいつはエターナルとは違うらしいから大丈夫だろ」
「ナッツ、手伝ってくれないか?酷くやられたらしいんだ、一先ず休ませないと」
「・・・仕方無い。解った」
―――二階のソファーに寝かされた大樹は更に数分程して目を覚ました。先ず自分の身に起きたことを思い出し、それから直ぐに懐を探ってそこに入れた筈のローズパクトを確認する。
「ローズパクトなら取り返したからな」
シローがその手に持っているのを見て大樹は舌を打つ。
「あんたが酷く傷ついていたから、だから僕達で連れて来たんだ」
「・・・何故ローズパクトを盗んだ。シロップから聞いた、お前はエターナルじゃないんだってな」
コージ、夏が各々現れ、手には救急箱を持っていた。どうやら既に手当てされているらしく、頬にガーゼが貼ってある。
「・・・決まってるさ、お宝の為。まぁ君達には理解出来ないだろうけど―――」
彼はそう言いつつ立ち上がった。そしてディエンドライバーを取り出して構えた。
「返したまえ。一度しか言わないぞ」
「お前な・・・!」
「シロップ。―――教えてくれ。ローズパクトはあんたにとってそんなに大事な物なのか?」
大樹を睨むシローをコージが止めた。彼は遮る様に質問する。
「正確に言えば、ローズパクトなんてたかが鍵さ。確かにそれも中々良い品だけど、僕が欲しいのはその先にある物・・・」
「・・・・・・キュアローズガーデン」
「ま、そんなとこだ。・・・場所、だね。・・・・・・いや、欲しいと言うより、守らなきゃと思ってね。美しいお宝だから」
「その為にローズパクトを奪ったっていうのか」
夏の言葉に大樹は鼻を鳴らす。
「どうして・・・」
「解らないかな?鍵さえなければ君達は彼処へ行くことは出来ないだろ。・・・ローズパクトを奪えば国王を揃えたところで鍵は完成しない。だからさ」
3人はそれ以上言葉も無かった。まさかエターナルと同じ様にただ奪うことを目的としていた訳ではなく、キュアローズガーデンを自分達から守りたいとそういった理由からだったとは想像もしない。コージ、夏、シローは口をあんぐりさせて固まった。
「―――じゃ、ローズパクトを渡せ。同じ事を二度も言わせるなよ」
「勝手なこと言うな、俺達はキュアローズガーデンに行かなくちゃならないんだ。・・・・・・フローラとの約束なんだ、それに―――」
「約束?」
「それに、そこへ行けば俺の記憶だって・・・・・・・・・」
「シロップ―――」
シロー・・・シロップは同じ妖精でありながらココ達パルミエ王国の住人やその他の国々の者とは違っていた。唯一空を飛ぶことが出来、彼は自分だけが周りと違う孤独の中で自分が何処で生まれたのかそれさえ忘れていた。コージが語ったそれを聞いた大樹は、とある人物の顔が脳裏を過る。・・・“世界の破壊者”と呼ばれ行く先々で人々から憎まれ、過去に関する一切の記憶を失っていた男。その彼は仲間達と先の見えない果てしない旅を続け、同じ仮面ライダーの1人として数々の激闘を経て記憶を取り戻した。・・・・大樹はシローにそんな仲間の姿を重ねる。
「・・けど、シロップは少しずつ思い出しかけているんだ。キュアローズガーデンへ行くことが決定的な手掛かりになるかも知れない」
「のぞみ達は俺にも約束してくれた。一緒に行くって。だから何がなんでもローズパクトは渡せない」
「――――そうか。成る程ね、面白い」
「何」
「この世界にも素晴らしいお宝があったって訳だ。又しても持って帰れそうにないけど。・・・それじゃあ、君達にもう用は無い」
大樹はディエンドライバーを納め、ソファーから立ち上がって階段を降りていった。
「その体で何処へ?」
「取り戻すのさ、僕のお宝をね。・・・・・・運び屋君も何時か自分の“お宝”を取り戻せる様に頑張りたまえ」
「お前、一体何者なんだ?」
その問いに大樹は笑いながら、作った指鉄砲を向けて撃つ素振りをした。
「―――ただいま・・・・・・。あれ、あんたは・・・!」
ローズパクトを見つけられなかったことで落胆しながら帰って来た、夏木りんを始めとしたメンバーがそこに現れた。4人は咄嗟にキュアモを手に身構えた。
「ホシイーナー!!」
ホシイーナー化した屑ヤミーの集団を相手に2人の戦士は奮闘し、ドリームは自らの必殺技をぶつけて一掃する。
「プリキュア・シューティングスター!!」
強烈な体当たりにホシイーナー達はバタバタと倒れて消滅する。ローズも残りを倒しきると、体力を消耗する前に決着をつけるべく動く。だがバース・デイ・ホシイーナーがカッターウイングで飛び上がり、ブレストキャノンの砲身から大量のエターナルボールを街中に向けてばら蒔き始めた。遠くまで飛ばされたボールから更なる屑ヤミーの大群が生成されていく。
「そんな!又っ?!」
「不味いわね、このままじゃ街に居る人達に被害が・・・・・・!!」
「ホシイィィーーナァァーーー!!」
バース・デイ・ホシイーナーが飛び去る。2人は後を追い掛けると共に、別れた仲間との合流を目指す。―――――同じ頃、りんとうらら、こまち、かれんを前にした大樹達の睨み合いが続く中、シローが止めるように間へ割って入った。
「もういいんだ、ローズパクトは取り返した。モンブラン国王も無事だしな」
「一体どういうこと?シロップ」
「それは・・・」
「「何か来る!!」」
同時に叫んだコージと夏に一同が外を見ると、目の前の湖を取り囲む勢いで屑ヤミー・ホシイーナーの集団が出現して迫る。りん達プリキュア、更に大樹も外に向かう。
「これは・・・っ」
「ライダーの力を完全に取り込んで、こんな下らないものを作り出したのか。実に不愉快だ」
絶句するかれんの傍らで大樹が憤慨しながらドライバーとカードを手に取る。
「君達もこいつらをさっさと倒して仲間のところへ行った方がいいな」
「そう言えば、のぞみさんとくるみさんが来てませんね」
「大変!皆!」
こまちの呼び掛けで少女達が変身し、隣では大樹がディエンドとなって並び立つ。
〈―ATTACK RIDE・・・ILLUSION―〉
1人は続けてディエンドライバーに読み込ませたカードの効果で自らの分身を2体生成し“ディエンド・イリュージョン”を発動する。ディエンドは止めの一撃をより強力なものへ変える。
〈―FINAL ATTACK RIDE・・・DE・DE・DE・DEEND!―〉
本体がカードを装填して3人のディエンド達が同時に銃を構えると光の渦状のライダーカードによる照準が出来上がる。“多重ディメンションシュート”の三発の大口径ビームが複数のホシイーナーを纏めて消し去っていく。・・・・・・ところが、敵は又ゾロゾロと何処から途もなく増え始める。
「時間が掛かりそうだ、仕方無い。出血大サービス、かな」
「・・・何か策が?」
彼はライダーカードを三枚取り出して一気に装填した。ディエンドライバーから発せられた音声が新たなライダー達の名を読み上げる。
「まぁ期待したまえ」
〈―KAMEN RIDE・・・ZERONOSE・ACCEL・METEOR―〉
アクアの質問に仮面の下で笑う。3人の仮面ライダーが召喚され、先陣を切って順に敵集団に殴り込む。
「最初に言っておく!俺はかーなーり強い!!」
大剣となるゼロガッシャー・サーベルモードを振り回し、それで屑ヤミーを仮面ライダーゼロノスが切り裂き、
「さぁ、振り切るぜ!」
仮面ライダーアクセルはエンジンブレードで切り掛かり駆け抜ける。更に、
「―――お前達の運命は俺が決める!」
青い発光体が敵の群れに激突しながら落下するとそこから怪鳥音を響かせ仮面ライダーメテオが現れ、彼は星心大輪拳を以て格闘を仕掛けた。・・・ディエンド、キュアルージュ達もそれに続いて走り出す。
「アタァッ!ホワチャァッ!!」
隕石の如く飛来し力強く、かつ素早い打撃の連打を浴びせかけるメテオ。それに続いたルージュは共闘する様に屑ヤミー達を蹴散らす。・・・アクアはアクセルが容赦なく斬撃を喰らわせたところに飛び込んで蹴りを見舞う。又、ゼロノスに襲い来る1体をミントの攻撃が救い、レモネードはディエンドと共に立ち向かった。次第にホシイーナーはその数を減らし尽くす。
「今です!」
プリズムチェーンで巻き取った残りの屑ヤミー・ホシイーナー目掛けてディエンドの集中砲火があり敵集団は全滅する。戦士達は怪鳥の姿で空を飛ぶシロップの背に乗り、バース・デイ・ホシイーナーの気配を追い掛けて上空から街を見下ろす。次第に分厚い雲が日の光を遮り、一同は不穏な空気を肌に感じていた。―――シロップは爆発音と同時に立ち上る煙を目にして急速に近付いていく。・・・・・・地上ではドリームとローズの2人が敵に取り囲まれる形に追い詰められていた。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
Final Chapter Treasure Snipr
ディエンド達はシロップの背から飛び降りると屑ヤミー・ホシイーナーへ攻撃を始める。ドリームとローズはそれを見てフラフラと立ち上がった。
「皆!」
「・・・もう、遅いじゃない」
「すみません!」
レモネードが2人に謝り、そこにルージュとミント、アクアが肩を並べる。ディエンドはドライバーから銃撃して敵の侵攻を食い止めようとエネルギー弾をばら蒔いた。
「諸君、さっさと終わらせようじゃないか」
街中に放たれていたホシイーナーが続々と集まり、戦士達は最後の戦いへと突入していく。立ちはだかる群れを掻き分ける様に、その先に待つ怪物と化したライダーの下に急ぐ。
Final Chapter Treasure Snipr
―――ルージュ、レモネード、ローズが屑ヤミー・ホシイーナーを吹き飛ばし、ミントはエメラルドソーサーで作り上げた円盤を投げつけそれを切り裂いていく。又アクアの放つサファイアアロー・・・水流の矢は複数体を一度に貫き倒す。
〈―ATTACK RIDE・・・BLAST―〉
・・・ディエンドライバーから降り注いだ光弾が更なる数の敵を葬り去り、進路が確保されたことでドリームが一気にバース・デイ・ホシイーナーへ接近して仕掛ける。体当たり・・・“シューティングスター”を今一度繰り出すが相手はそれを受けても尚怯まない。続いてディエンドが素早く近付き、顔を狙ってトリガーを引き絞る。ホシイーナーは僅かに視界を塞がれた。
「今だ!」
彼の声に一早く反応したのはルージュだった、彼女は炎のボールを作り出して力強く蹴り飛ばす。
「プリキュア・ファイヤーストライク!!」
―――命中と同時に爆炎がホシイーナーを包み込んだ。バース・デイの重装甲が音を立てて吹き飛ばされる。・・・だが、CLAWsが全解除されながらもバースは立ち上がって尚も反撃に出る。再び胸部へブレストキャノンのみを出現させ、強力なエネルギーを収束させていく。その間にも作り出された屑ヤミーが群れを成して集まり、三つの巨大な“うねり”と化していった。・・・・・・・・・ディエンドはキャノンの砲身から赤い光が溢れた瞬間に一か八か、バース・ホシイーナーの足下に滑り込むと力の限りディエンドライバーからエネルギー弾を送り込んだ。腹部への一点集中でベルト・・・バースドライバーは激しく被弾し、その瞬間バックル中央に備わったエターナルボールに亀裂が生じた。
「ホシイィ・・・・・・っナァァァ・・・!!」
「っもう一押しか!」
「切りがない!!・・・・・・ナッツ様!」
「ナツ!―――ミルキィローズに力を!!」
・・・合体するかの様に寄り集まって生まれた屑ヤミー・ホシイーナーを前に、ローズが呼ぶとその声にナッツが答えた。国王の力でノートパソコン型アイテム・ミルキィノートが現れると、それはローズが手にしたパレットを手鏡・ミルキィミラーへと変化させる。
「邪悪な力を包み込む、煌めく薔薇を咲かせましょう!ミルキィローズ・メタルブリザード!!」
呪文めいた掛け声から銀色の花吹雪が巻き起こり、ホシイーナーのうねりの一つを瞬く間に覆い尽くしていく。薔薇の花弁は一瞬で群れを粉砕する。
「止めだ!」
――――ディエンドはひび割れたエターナルボールを渾身のパンチで砕き割った。・・・バース・ホシイーナーは遂に力尽き倒れる。消滅した怪物が残したライダーカードを拾い上げ、ディエンドは残りの敵を前にプリキュアと立ち向かう。
「メェーーー!!」
「―――メルポ?」
戦いを見守る妖精の下に仲間がやって来る。シロップの運び屋としての相棒・メルポは何かを伝えようとして駆けつけ、ピョンピョンと跳ねて騒ぐ。
「どうしたロプ?」
「メー!メッメッ!」
話を聞いてシロップは頷き、すると2人してディエンドの側へ駆け寄る。
「ディエンド、お前に届け物があるロプ、受け取るロプ」
「僕に?」
メルポが一通の封筒を吐き出すとディエンドはそれを受け取る。表面には彼を示す紋章が描かれており、開けるとその中には二枚の謎のカードが入っていた。ディエンドはこの時、一体それが何を意味しているのか瞬時に理解した。彼は自らのシアンカラーが施された端末・・・ケータッチを早速取り出すと、そこに予め差し込まれていたカードを引き抜いて代わりに新たなカードを挿入した。カードはケータッチの画面に八つの紋章を浮かび上がらせ、ディエンドはその上から指先を滑らかかつ素早く走らせる。
〈―G3・KNIGHT・GARREN・ZERONOS・IXA・ACCEL・BIRTH・METEOR―〉
そして自身の紋章に触れると、最後にベルトのバックルにケータッチを収める。
〈―FINAL KAMEN RIDE DE・END―〉
音声が鳴るとディエンドの頭部へ、彼が最強形態となった姿のカードがクラウンパーツとして備わり、更に胸部装甲には8人の仮面ライダーが描かれたカードがヒストリーオーナメントとなって並んだ。―――仮面ライダーディエンドは電王の世界で入手したケータッチを用いることでコンプリートフォームに強化される。・・・加えて新たな“コンプリートカードセカンド”でコンプリートフォーム・セカンドへと変化していた。
「新しい力。ありがたく使わせて貰うよ」
軽快に飛び出したディエンドはプリキュア達が戦う中に加わってエネルギー弾を撃ち込む。屑ヤミー・ホシイーナーの群れは地面から生える巨大な触手の様に動き出し、ドリーム達を狙って一気にうねりを振り下ろした。咄嗟に反応して一斉に回避するがもう一方のそれが追撃してきてアクアを捉える。仲間達は再び集合して触手の下に潜り込むと下敷きになった彼女を支えた。6人は息を合わせて全身に力を込める。やがて触手は大きく押し返される。
「早速」
ディエンドはそう言ってもう一枚の新しいカードをドライバーに装填した。プリキュア達は彼の後方まで下がる。
〈―ATTACK RIDE・・・TELEVIBAN―〉
それは“ゲキジョウバン”と似た効果を発揮する物であった。・・・・・・・・・ディエンドコンプリートフォーム・セカンドの目の前に、ライダーの召喚能力を持つ彼だからこそ得られたであろうカードによって8人の仮面ライダーが一斉召喚され、更に出現した彼らはケータッチの力で1人、又1人と強化形態へ変貌していく。ヒストリーオーナメント内にある八枚が連動する様に、ライダー達がなる最強フォームの姿を捉えたカードへ同時に目まぐるしく変化を続けていた。カード一枚一枚に秘められたそのライダーの持つ“能力の塊”が1人の仮面ライダーの分身体という姿として具現化していたのである。
〈―G3!・・・KAMEN RIDE X―〉
未確認生命体を越える新たな脅威・・・アンノウンに対抗するべくバージョンアップされた、警視庁・未確認生命体対策班所属となる仮面ライダーG3-X。ケルベロスの名を持つ武器・・・GX-05をバルカンモードとして携える。
〈―KNIGHT!・・・KAMEN RIDE SURVIVE―〉
鏡の中の世界・・・ミラーワールドで戦う13人のライダーの1人―――サバイブ・疾風の力で強化された仮面ライダーナイトサバイブは、左手に備わるシールドから剣を引き抜く。彼はダークバイザーツバイを静かに構えた。
〈―GAAREN!・・・KAMEN RIDE JACK―〉
不死身の生命体アンデッドを封印するべく作られたライダーシステム第1号にして、炎のエネルギーを主軸に戦う銃撃戦士・仮面ライダーギャレン。・・・カテゴリーQとJの力を用いて、ジャックフォームとなった姿である。
〈―ZERONOS!・・・KAMEN RIDE ZERO―〉
「最初に言っておく!・・・錆びても強い!」
新たな赤い“ゼロノスカード”で変化を遂げ、相棒のイマジン・・・デネブがなる“デネビックバスター”を持つ仮面ライダーゼロノスゼロフォーム。
〈―IXA!・・・KAMEN RIDE RISING―〉
「イクサ・爆現!!」
ファンガイアと戦う“素晴らしき青空の会”が開発した新たな力を得て、仮面ライダーイクサはライジングとなる。その両手にはイクサライザー、並びにイクサカリバーが握られている。
〈―AXEL!・・・KAMEN RIDE TRIAL―〉
「―――全て、振り切るぜ!」
風都を悪の手からWと共に守る仮面ライダーアクセルはトライアルメモリの力で強化される。・・・アクセルトライアルがそこに現れる。
〈―BIRTH!・・・KAMEN RIDE DAY―〉
「さて、お仕事お仕事!」
全CLAWsを武装し、セルメダルから得るエネルギーを利用して稼動する仮面ライダーバース・デイ。
〈―METEOR!・・・KAMEN RIDE STORM―〉
強化アイテム・・・新たなスイッチの力で“進化”した姿――――
「仮面ライダーメテオストーム!俺の運命は嵐を呼ぶぜ!!」
“メテオストームシャフト”を武器に戦う宇宙ライダー。・・・現れたライダー達は皆オリジナルの存在が持つ特徴をより色濃く反映していた。―――今ここに、ディエンドコンプリートフォームを含めた9人の平成ライダーが堂々並び立つ。
『ハァァァァァァアッ!!』
ライダー達、プリキュア5、ミルキィローズが屑ヤミー・ホシイーナーを襲う。・・・ルージュの強烈なキックに続き、ギャレンジャックフォームが強化型の“ギャレンラウザー”から発砲、と同時にG3-Xのバルカン、並びにゼロノスゼロフォームのデネビックバスターが銃撃を浴びせる。・・・・片やレモネードとミントがパンチを叩き込むとアクセルトライアルが素早い動きから肉弾戦を仕掛け、ライジングイクサはカリバーから刃を出現させて斬りかかった。一方アクアは自らのサファイアアローとナイトサバイブが放つ光矢・・・ダークアローで“触手”の一部を吹き飛ばした。又、ディエンドコンプリートフォーム・セカンドのドライバーから撃たれるエネルギー弾からドリームとローズ、そしてメテオストームが繋いで3人の攻撃が次々に命中していく。―――召喚されたライダー達は、同じくコンプリートフォームを持つ“仮面ライダーディケイド”が出現させる分身体とは異なって、やはりディエンド自身の特徴からかそれらは彼と動きを共にせず各個が自由に戦闘等を可能としていた。
〈―FINAL FORM RIDE・・・B・B・B・BIRTH!―〉
「痛みは一瞬だ!」
ディエンドがカードを装填して銃撃することで、バース・デイは上半身が捻れていきやがて複雑な変形を始める。それはファイナルフォームライドと呼ばれる、ライダーを兵器へ変形させる力だった。・・・バース・デイは全てのCLAWsを用いて完成する“サソリ”の姿でカッターウイングやショベルアームの鋏を操り、又クレーンアームとドリルアームから構成される尾から虹色のビームを放射状に放って攻撃する。
「プリキュアに力をーーー!!」
ココの叫びで国王が呼ぶ力・・・キュア・フルーレが現れ、ドリームを初めとしてプリキュアの5人は各々の為の剣を手にする。
「クリスタル・フルーレ、希望の光!」
「ファイヤー・フルーレ、情熱の光!」
「シャイニング・フルーレ、弾ける光!」
「プロテクト・フルーレ、安らぎの光!」
「トルネード・フルーレ、知性の光!」
桃、赤、黄、緑、青色の刃を発してそれを交差させる様に掲げる。
「五つの光に!」
「「「「勇気を乗せて!!」」」」
“プリキュア・レインボーローズエクスプロージョン!!”
―――プリキュア達は五つの薔薇の花を屑ヤミー・ホシイーナーの群れに飛ばす。薔薇は合体して一つの巨大な虹色の花になり、それは宙を舞った末に頭上から落下して敵達を纏めて押し潰した。幾つもあったエターナルボールが全て消滅する。一つの巨大なうねりがプリキュア5の強力な必殺技で倒される。
〈―FINAL ATTACK RIDE・・・DE・DE・DE・DEEND!―〉
装填されたカードでディエンドライバーが音声を発し、G3-Xからメテオストームまでの姿が描かれたエメラルド色のカード型エネルギーが照準を成す。8人のライダー達はエネルギーへは還元されずに各自必殺技をぶつける。コンプリートフォームとして一部動きをシンクロする様だった。・・・G3-Xが“番犬”のもう一つの顔となる最後の形態・・・GXランチャーを組み上げる。
〈〈―FINAL VENT―〉〉
エコー掛かった音声を発するダークバイザーツバイにナイトサバイブの手でカードが装填され、彼の契約モンスターであるダークウイングが姿を変えて飛来する。
〈―BULLET・RAPID・FIRE BURNING SHOT―〉
ギャレンがラウザーに三枚のラウズカードを通し、封印されたアンデッドの力のみを解放していく。・・・ゼロノスはベルトにあるスイッチを押す。
〈Full Chage〉
更にエネルギーチャージしたカードをデネビックバスター本体に装填し、直後にライジングイクサは携帯を変形させた銃・・・イクサライザーのグリップからフエッスルを取り外し、それをイクサベルトへ装填する。それによって読み込ませて最大稼動のエネルギーをライザーの銃口部へと集中させる。
「その命、神に返しなさい!!」
その側を、引き抜いてマキシマムモードとしたトライアルメモリを放り投げながらアクセルトライアルが走り抜けていく。彼は目にも止まらぬ高速移動から連続の蹴りを屑ヤミー・ホシイーナーのうねりに1人叩き込み、爪先の軌道が“T”の字を描く。
〈Cell Burst!〉
「ブレストキャノン・シュート!!」
一方“バース・サソリ”から変形を解いたバース・デイはブレストキャノンを構えており、傍らメテオストームがベルトから取り外した“メテオストームスイッチ”をシャフトに装填した。
〈Limit Break!〉
ストームワインダーを続けて挿し込み、即座に引き抜いて勢いよく回転させたコマ・・・ストームトッパーを解き放つ。
〈Ok!〉
「メテオストームパニッシャー!!」
射出されたそれが敵に向かって飛び、トライアルの必殺技に加わってホシイーナーのうねりを切り刻んだ。アクセルは振り向き様に降ってきたメモリをキャッチする。
〈Trial! Maximum Drive!〉
「9.8秒―――それがお前達の絶望までのタイムだ!」
必殺技マシンガンスパイクが決まり、そこへ立て続けにライダー達の攻撃が続く。・・・ダークウイングはダークレイダーへとサバイブの力で強化され、更にモンスターの姿から大型バイクへ変形する。ナイトサバイブはそれに飛び乗って疾走、フロントカウルよりビームを放って拘束しながら敵の動きを封じる。ナイトの風に靡くマントは車体ごと彼を包み込むと一直線に突撃した。ファイナルベント・疾風断が突き抜け、後に続いて――――空高く舞い上がるギャレンジャックフォームの背に備わる、展開されたオリハルコンウイングは大気中の電気を吸収しエネルギー変換して彼の必殺技を強化する。・・・ラウザーから高速連射される炎の強化弾・バーニングショットをぶつけていく。地上ではG3-Xが発射する、ライダーキックにも匹敵する威力の“GX弾”とゼロノスゼロフォームのバスターノヴァ、イクサライジングのファイナルライジングブラスト、バース・デイ、そしてディエンドコンプリートフォーム・セカンドがライダー達の姿が描かれたカード型エネルギーの力を込めて強化型ディメンションシュートを・・・全ての必殺技を一斉に命中させた。・・・・・・9人のライダー達による必殺技がほぼ同時に注がれ、又してもオーバーキルとして敵集団を駆逐し全滅に追い込んだ。これを見ていたプリキュア達はただただ呆然とする秤である。
漸くホシイーナーが倒されたことで、何時ものことながら街中に及んだ破壊の痕跡は何事も無かった様に全て自然に修復された。ディエンド・・・海東大樹の姿はのぞみ達が気づいた時には既にそこには無く、謎の青年に振り回されて終わった1日をりんとくるみは振り返ってぼやく。一同はナッツハウスへと戻っていった。――――それから翌日のこと。この日も集まったのぞみ達だったのだが、又しても一騒動起きていた。・・・午後のティータイムにと用意されていた筈の菓子が忽然と全て消えてしまっていたのである。少女達にとっては一大事の為散々探す羽目となった。すると、メルポが皆を呼んで一通の封筒を吐き出した。それはのぞみ達に宛てた物らしく、封を開くと一枚のカードらしき物が入っていた。
「・・・あーーー!?」
「ちょっのぞみ、どうしたの?」
「何?・・・・・・早く見せなさいよ」
「・・・あの、これ―――」
のぞみが見せたカードに書かれていた文面をかれんが読み上げる。
「“プリキュア諸君、ローズパクトは君達に譲ることにした。お宝は大切にするように!・・・・・・追伸、美味しいお菓子は手土産代わりに頂いたよ。―――通りすがりの仮面ライダーより”」
『はぁぁぁぁっ?!』
カードの裏面には確り、書名となるディエンドのマークが描かれていた。夏は呆れたようにため息をつく。
「そっそんなぁ~~~!シュークリームも豆大福も全部?!」
「それだけじゃないわよ・・・・・・!セレブ堂のチョコレートも根こそぎじゃない!!」
「―――やれやれ」
嘆くのぞみとくるみを横目に、シローはお手上げと言わん秤に肩をすくめた。
「「返せー!泥棒ーーー!!」」
・・・・・・・・・そんな大樹は菓子の入った袋を手に一件の写真館を訪れていた。彼は忍び込む様にそっと中へ入ると、とある部屋でソファーにふんぞり返る男の目の前に現れる。
「よ。これはほんのつまらないものだけど」
男は手にしていたコーヒーカップを静かにソーサーへ置くとその白い紙袋を受け取ってから大樹へ向かって視線を合わせた。
「どういう風の吹き回しだ?人から物を盗みこそすれ、お前がこんな手土産を」
「いいから素直に受け取りたまえ。口に合うといいけど」
何処か怪訝そうに中身を探る青年に対して大樹はフッと笑う。
「何だよ、どうした」
「いや、別に。ただ―――フフフ」
口にこそしないが心の中で語った。今度の世界にも何物にも変え難い価値を持つ素晴らしいお宝があったのだと。それをこの目に確と焼き付け、そしてまた新たな出会いに期待して次なる旅路に心踊らせていた。
「通りすがりの仮面ライダーだからね。まだこれからも旅は続くさ」
仮面ライダーディエンド vs Yes!プリキュア5GoGo! END
ギャレンジャックフォームに関しては、キングフォームさえ本編に登場していれば・・・・・・。ワイルドカリスと迷ったんですが、まぁこれはこれで良いですかね、もう。
目次 感想へのリンク しおりを挟む