ご注文は捨て姉ですか(チノver.) (赤山グリテン)
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チノの決意

 皆様、お久しぶりです。
 この作品は、私のリハビリとして頭に浮かんだので、他の作品が止まっているのに、掲載してしまいました。
 マヤの捨て姉(兎のゲームセンター)→まんがきららMAX2017年10月号、メグの捨て姉(もふもふランド)→ハーメルンでの不肖私の処女作「捨て姉(メグver.)」の続編にあたります。
 チノ視点で書いてみました(1人称で書くのも初めてなのです)。
 私自身がストレスフルな状況なため、書き溜めてあるところまでは進みますが、その後はかなり更新は不定期(かつ遅くなる)になると思います。ご了承下さい。
 それでは、お楽しみいただけると幸いです。


 ココアさんはずるいです。マヤさんやメグさんには、異世界のようなところへ一緒に連れて行ってるのに、なんで私だけダメなんですか?

 

 私も、マヤさんのように「兎のゲームセンター」とか、メグさんみたいに「もふもふランド」とか、誰にも知られていない不思議なところに、ココアさん、私も一緒に連れて行ってほしいです。

 

 「どうすれば、ココアさんと一緒に…」

 

 マヤさん、メグさんにその時(捨て姉)のことをよく思い出してもらい、詳しく教えてもらいました。そして私は考えました。結果、ふたつの答えが出ました。

 

 マヤさんメグさんの共通点は、「ココアさんが一度、捨て猫ならぬ『捨て姉』になって古物市(ブロカント)で段ボール箱に入っていること」です。私が何らかの原因で、ココアさんを捨て姉状態にしていること、もう一つは、その後「その古物市での「捨て姉」を拾って、ココアさんと一緒に行動している」ことです。

 

 その二つを再現すれば、私だってココアさんとふたりで、知らない未知の場所へ、一緒に巡ることができる筈です。私は強い確信を持ちました。

 

 そうすれば、善は急げです。早速準備しましょう。お店の仕入れのついでに、資材を調達します。

 

 「段ボール箱はこのくらいの大きさで良かったでしょうか?」

 

 近所の雑貨屋さんが梱包用の段ボール箱を扱ってて良かったです。ダメだったら数キロ離れた、郊外のホームセンターまで買いに行くところでした。ラビット・ハウスには適当な大きさの物が無かったので…

 

 「このくらいがココアさんが入るのに、ちょうどいいですね…」

 

 ココアさんに合わせて、そのお店で最大のサイズのものを購入しました。形は組立前なので箱になってない、平たく四角い形です。でもこれで私はココアさんと…

 

 ハァ、ハァ…

 

 私は息を切らして、雑踏をかき分けて、ラビット・ハウスに戻ります。段ボールは大きくて私は小柄。周りからは平べったい、大きい四角な段ボールから足が生えて、てくてく歩いているようにしか見えないみたいですが、私は気にしません。

 

 「チノや、ワシはやめた方がいいと思うんじゃが…」

 「おじいちゃん、ご心配ありがとうございます。でも、ココアさんと、どうしても行きたいんです」

 「ふーむ、チノがそこまで言うのならのう…ただ、十分気をつけるんじゃぞ。少しでも異変があれば、すぐに引き返すんじゃ」

 「わかりました。おじいちゃん」

 

 頭の上から、おじいちゃんが心配そうに話しかけてきます。大丈夫ですよ、おじいちゃん。マヤさんメグさん、行方不明にならないで、きちんと還ってきてますから。

 

 さて、ラビット・ハウスに着きました。買ってきた段ボールはお店の倉庫に仕舞っておきましょう。私以外絶対に使わないよう、その旨の貼り紙もバッチリです。

 

 夕方、ラビット・ハウス昼の部の仕事が終わり、リゼさんも上がりました。お店は父が出てバータイムに入ってます。

 ココアさんと一緒のお風呂のとき、浴槽の中で私はココアさんに話を切り出します。

 

 「ココアさん、頼みがあるのですが」

 「なーに?、チノちゃん。お姉ちゃんに何でも言ってごらん」

 「ありがとうございます。実は…」

 

 自分もマヤさん達のように、一緒に未知の新しい場所への冒険に連れて行ってほしいこと、チマメ隊で自分だけ未経験であることを、ココアさんに訴えました。

 

 「うん、いーよ。そう言えば、チノちゃんと行ったことないよね。」

 「ありがとうございます。ココアさん…でも」

 

 ココアさんに、マヤさん達の時のように、私に捨てられて、捨て姉状態で寒空の下、古物市(ブロカント)で段ボール箱に入って待たなければならないこと、そして私が再度それを拾って、一緒に行くことが未知の世界への発動条件であることを話しました。

 

 「チノちゃんの為だもの、それ位余裕余裕。お姉ちゃんに任せなさーい」

 「ココアお姉ちゃん、うれしいです」ダキッ

 「ヴェッ チ、チノちゃん?…」

 

 ココアさんの優しさについ嬉しくなって、浴槽の中で抱きしめてしまいました。

 これから起こるはずのココアさんの労苦に報いるには、これくらいは当然です。

 

 「ココアさんは、年下なら誰でも良いのではなくて、私が一番なんですよね」

 「そうだよ、チノちゃんが一番だよ。私の大切な妹~」ギュッ

 「ありがとうございます!」ポーッ

 

 ココアさんが抱きしめ返してきました。私も夢見心地の中、ココアさんをきつく抱きしめます。

 私がマヤさんメグさんとは違うことを、ココアさんに分かってもらうには、これ位思い切らないと。

 これであの二人に差をつけられたでしょうか。

 千夜さんからのアドバイスは的確です。

 




次は、チノが計画を実行します。

この作品をお読み頂き、誠にありがとうございました。


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冬の或る日(決行日)、チノちゃん捨て姉を拾う

さっそく、チノちゃんが「捨て姉」計画を実行します。

それでは、お楽しみいただけると幸いです。


ーラビット・ハウスにてー

 

 今日はお店は休みです。学校も早く終わったので、これから実行する約束をココアさんとしました。いま、店内でココアさんと二人きりです。父、おじいちゃん(ティッピー)もいません。

 

 「じゃ、じゃあ、私はココアさんをす、捨てます」

 「チ、チノちゃん、どんとこ~い」

 

 改めてやろうとすると、お互い緊張しまくりですね。

 

 「コ、ココアさん、だ、大嫌いです。私に話しかけないでください」

 「今のチノちゃん、かわいいー」

 

 ココアさん、それじゃ捨て姉になりません。

 

 「ココアさん、何でもいいですから、この段ボールを持って、ブロカント(古物市)に行って、そこでこのダン箱に入って、座っててください!」

 「えー なんか変なの~」

 「段ボールはまだ組み立ててないですから、ココアさん、悪いんですけど現地で組み立ててください。ダン箱を止めるためのガムテープはこれです!」

 「チノちゃん、前のときは、組立済のお店のお古使ったんだけど、無いの?」

 「もうココアさんが使い切ってお店の倉庫にはないので、わざわざ私が買って用意したんです!」

 「ふえ~」

 

 話がかみ合わず、またお互い予期せぬ状況だったようです。困りました。

 

 「わかりました。段ボールは私が此処で箱に組み立てます!」

 「わあ、チノちゃんありがとー」

 

 段ボール箱の組立ぐらい、朝飯前です。私が手際よく組み立てていきます。当然きれいなダン箱が組み上がりました。あとは…

 

 「最後に「捨て姉」の貼り紙を、箱の正面に貼るだけです。ココアさん、それは準備してますよね」

 「ごめん。まだなんで、これから作るよ」

 

 白いA3の紙に、太い黒サインペンで「捨て姉」と、ココアさんが書き入れました。それをダン箱に貼り付けて完成です。

 

 「じゃ、ココアさん、いま捨てましたので、ラビット・ハウスから出てください」

 「わ、わかったよチノちゃん」

 「それと、これが使い捨てカイロです。ブロカント(古物市)でその箱に座って待っててください」

 「う、うん」

 「ほかの娘の誘いには、絶対に乗らないでくださいね」

 「だ、大丈夫だよ」

 

 ココアさんは、いそいそと段ボール箱を持って、ラビット・ハウスを後にしました。

 

 

―チノの部屋―

 

 さて、ココアさんはそろそろスタンバイしてくれている頃でしょうか?

 

 「なにを着ていこうかな? ココアさんとの大冒険」ワクワク

 

 ココアさんには悪いですが、服はきちんとコーディネートしないと。冒険ですから、それらしい服装にしないとですね。

 あと外は寒いですから、防寒対策ですね。

 

 なんだかんだで、1時間以上かかっちゃいました。

 

 これで準備万端、ブロカントに出発です。

 

 お店を出て、少し歩くと目的地に到着です。

 

 

―ブロカント(古物市)にて―

 

 ガヤガヤ…古物市場は、賑わってます。古いランプに、ぬいぐるみ、そして…

 

 「チノちゃん、遅かったね~待ってたよ~」

 

 いました、捨て姉。捨て猫みたいにダン箱に入ったココアさん、なかなか可愛いです。そして「捨て姉」と書かれた段ボールが、そのキュートさに更に磨きをかけています。

 

 「ココアさん、捨て猫みたいに箱の中に座って、どうしたんですか?」

 「捨てたの、チノちゃんなのに、ひどいー」

 

 まあ、確かに捨てたのは私なのですが。

 

 「私が買います。いくらですか?」

 「もふもふ365回だよ」

 「無料じゃないんですね」

 「今回から有料にしたよー」

 

 うっココアさんは私の足元見てます。そう言われても、買うしかないですね。

 

 「わかりました。もふもふ200回とかにできないんですか」

 「ディスカウントはないよ~いっさい負けないからね~」

 「わかりました。もふもふ365回で買います」

 「えへへ~ 毎度あり~」

 

 ドヤ顔のココアさん、一見得しているように見えますが、最近、ほぼ毎日毎晩ココアさんとはもふもふしているので、よく考えたらぜんぜん意味ないです。

 

 「本当に何してたの~ すっごく寒かったんだから~」

 「ごめんなさいココアさん、デート、じゃなかった、冒険の準備が大変で…」

 「とにかく出発だよー 普段通らない道を進んでみよう~」

 「はい、ココアお姉ちゃん」

 「お姉ちゃんについておいで、チノちゃん」

 「はい」ドキドキ

 

 いつもだったら、ココアさんを制止しているところですが、今回ばかりは新たな体験をしたいので、そのままココアさんについて行きます。

 

 マヤさんのゲームセンター、メグさんのレジャーランド。あとでネットで調べても、現存しないものでした。

 

 私はココアさんとの冒険でどんなことが待っているのでしょう。ああ、胸が高鳴ります。




この後、何が二人を待ち構えているのでしょうか。

このような作品をお読み頂き、誠にありがとうございました。


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チノちゃん、体調をくずす

意気揚々と出発した二人ですが、早速トラブル発生です。

お楽しみいただけると幸いです。

(この後は、更新間隔が開きますのでご了承下さい)


 しばらくココアさんの後をついて歩っていきます。何時も通る道ではないので、新鮮な気分です。

 でも、なんかおかしいんです。急にだるい気分になって、頭も痛くなって…こんな時に、体調が悪くなるなんて。

 

 「チノちゃん、大丈夫?」

 「だ…大丈夫です、ココアさん。このまま行ってください」

 「顔色良くないよ。なんかふらふらしてるし」

 「そんなこと…ない…です…」

 

 わたしの体が左右に揺れます。周りの景色もぐるぐる回り始めました。結局私は道端に倒れそうになったみたいです。するとココアさんがすぐに私を抱きかかえて、がっしりと支えてくれました。

 

 「チノちゃん、残念だけど、今日はこれでやめよう?」

 「はい、悔しいですが…」

 「チノちゃん大事だよ。元気になったら、またその時ね」

 「ココアさん、ありがとうございます」

 

 ココアさんの優しさが私の心を打ちます。

 

 「チノちゃん、ラビット・ハウスまでお姉ちゃんがおんぶするから…」

 

 ココアさんがしゃがんで背中を向けます。私はそれに甘えて寄りかかります。その後立ち上がり、私をおんぶしました。ココアさんとぴったり密着してますが、もふもふとは違う感覚です。

 どこからともなくパンの匂いが漂います。あと匂いだけでなく、ココアさんの背中ってだけで私は安心します。

 

 「すみません、ココアさん」

 「大丈夫、心配いらないから。お姉ちゃんにまっかせなさい!」

 

 ああ、なんでこんな時に体調を崩すのでしょう。私って大バカ者です。でも、ココアさんにおんぶしてもらうこともレアですから、返って良かったかもしれません。また直ったらもう一回仕切り直せばいいんですから。

 

 ボワーッ ゆらゆら

 

 さっきから、私の見る景色が陽炎のようにゆらゆらとゆれ、はっきり見えません。

 

 「チノちゃん、さっきから景色がゆらゆらと揺れてるんだけど、私もカゼひいちゃったのかな?」

 「ココアさんもそう見えるんですか?」

 

 不思議な現象が私たちにも起きたのかもしれません。

 しばらくすると、ゆらゆらがおさまり、景色がはっきり見えてきました。

 

 「あれ? ラビット・ハウスの近所に戻って来ちゃった」

 「本当ですね」

 

 いつの間にか、私たちはラビット・ハウスに向かう、水路わきの側道を進んでいました。

 

 ああ、結局振り出しに戻っちゃいましたか。

 何か起こるかと思ったのですが、なにも無かったようです。

 

 次回の冒険に期待です。

 

 でも、しばらく進むうち、妙なことに気がつきました。

 

 「あれ、ここパン屋さんだったはず。いつからレストランになったんだろ?」

 「そうですね。すこし変ですね」

 

 いつもの道、いつもの街並みの筈ですが、少し違和感を覚えます。

 何がそうさせるのでしょうか?

 

 そうこうしているうち、ラビット・ハウスのうさぎの看板が見えてきました。

 そしてお店の中から、二人の男性の大きな声が聞こえてきます。

 

 「おい、タカヒロ、この店にピアノなんか狭くて入らんじゃろ」

 「親父、ジャズを演るなら、ピアノは不可欠なんだよ」

 

 あれ? おじいちゃんと父が、珍しく言い争ってます。

 でも、ウチの店にピアノを買う計画なんて聞いてません。どうしちゃったんでしょうか。

 

 「チノちゃん、ティッピーとタカヒロさんが喧嘩しているね」

 「そうですね、ココアさん」

 

 いままであれだけ酷かった頭痛もなぜだかおさまり、だるかった身体も、いまは嘘のようにもとに戻っています。私はココアさんにお礼を言い、背中から降りました。

 

 「とにかく、喧嘩を止めようよ」

 「そうですね」

 

 なにがあったのかよく分かりませんが、このままでは穏やかではありません。何とかしないと…

 

 「ただいま~」

 

 私は店のドアを開け、ココアさんとラビット・ハウスの中に入りました。すると…

 

 「いらっしゃいませー ラビット・ハウスへようこそ!」

 

 今日のラビット・ハウスは、定休日のはずです。でも、お店は営業中で、目の前の店員さんが明るい声で迎えてくれてます。

 

 お店を出るときドアの外側に掛けてあったはずの休業中「Closed」の看板も、今は無くなってます。

 

 そして、私の目の前に立っているひとはリゼさんではありません。でも私の知っているひとです。でも、こんなことって…

 

 「お客様、2名様でよろしいですか?」

 「えっ ど、どうして…」

 「チノちゃん、今日は定休日のはずだよね。それとなんで知らない店員さんが…」

 

 ココアさんも心配になって私に話しかけてきます。

 私たちを迎えてくれたのは、そう、紛れもなく…

 

 「お、お母さん…」

 「えっ? チノちゃんの?」

 

 その店員さんは続けます。

 

 「2名様でしたら、あちらの窓側の席へどうぞ!」

 「「あ、ありがとうございます」」

 

 私とココアさんは、窓際の4人席に案内され、向かい合わせに着席しました。急にお客として迎えられたので、なんか新鮮です。

 

 「チノちゃん、あの明るそうな女性が、お母さん?」

 「はい、信じられませんが、亡くなった母です」

 「以前、チノちゃんのお母さんの写真をアルバムで見せてもらったから、そう言われれば…。それと、ティッピーと思った声は、白髭のおじいさんだったね」

 「亡くなった祖父で、ここの先代のマスターです」

 「小さい時、会った気がするけど、記憶がおぼろげではっきりしないよ…何か信じられないよ」

 「そうですか…」 

 

 ココアさん、私だって信じられません。もういないはずの母や祖父を目の前にしているのですから。

 




 とりあえず、ここまではリハビリ代わりに書き溜めてあったので、順調でしたが、このあとはかなり更新は不定期かつ遅くなってしまいます。申し訳ありません。

 このような稚拙な作品をお読み頂き、ありがとうございました。


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チノちゃん、ラビット・ハウスの客となる

リハビリで書いているうち、続きが出来たものを投稿します。

それでは、お楽しみいただけると幸いです。


父もよく見てみると、ちょっと若いです。古ぼけているはずのお店の調度品も、なんか古さより新しさを感じます。

 

 「時間移動(タイムスリップ)したみたいです、ココアさん」

 「私たち、過去のラビット・ハウスに来ちゃったってことかな?」

 「はい。そうでなければ母や祖父が此処にいる理由が説明できません」

 

 遠くでパンパンッと手叩きをする音が聞こえました。母が、言い争ってた父とおじいちゃんに話しかけています。

 

 「はいはい、タカヒロさんもお義父さんもお話しはここでストップ。今来たお客さんに迷惑かけてしまいますよ、この続きはお外でお願いしますね!」

 「お、おお、そ、そうじゃったな。すまなかった。タカヒロ、場所を移した方が良いじゃろう」

 「そうだな。どうせお客は少ないから、任せても大丈夫だろうし。ならば、いつものところで話をつける。あとはスマンが頼む」

 「ありがとうございます。それでは気をつけていってらっしゃい。タカヒロさん、お義父さん…」

 

 母は、言い争っていた祖父と父に、喧嘩は外で続きをするようたしなめ、店内から二人を外へ送り出しました。ようやっと静かな店内に戻りました。

 たしかに、お客の身にしたらうるさいし、迷惑ですよね。母の言うとおりです。

 

 トレーにお冷2つを持って、母が私達のテーブルに近づいてきます。

 もちろん、家族ではなく、お客としての私達にお相手するためですが…

 母は目の前の私が未来の世界のチノであることは、きっと分かってくれないでしょう。

 

 「いらっしゃいませ。お冷です。メニューはこちらです。ご注文がお決まりになりましたら、こちらの(りん)でまたお呼び下さい」

 「それでは、オリジナルブレンドコーヒー2つお願いします」

 「かしこまりました」

 

 祖父と父が出ていったので、サイフォンで母がコーヒーを淹れてます。

 しばらくして、コーヒーが出来たようです。

 

 「お待たせしました、ブレンドコーヒー2つです」

 「ありがとうございます」

 

 お母さんが淹れたコーヒーが飲める日が来るなんて、夢にも思いませんでした。

 カップをテーブルに置いてから、母は私に話しかけてきます。

 

 「あなた、もしかしてチノちゃん?」

 「えっ?」

 

 過去の世界の母に私がチノではないか、と言われて驚きました。ここは正直にお話するしかないですね。

 

 「は、はい、わ、私はチノです。信じてもらえないかも知れないですが、未来から来ました。いま中学3年です」

 「未来から来たチノちゃんね。初めまして。私、願いが叶ったのね~。本当に嬉しい!」

 

 もともと私と違いアグレッシブだった母は、小躍りして喜んでます。なんかココアさんみたいです。

 そして、ココアさんも母に挨拶します。

 

 「初めまして、私がチノちゃんの姉のココアです」

 「ココアさんは私の姉じゃありません。母を混乱させないで下さい」

 「ふえーん、チノちゃんが冷たいよう」

 「あらあら、そうすると、貴女は保登さんところの末っ子ちゃんかな。目の色といい、保登さんとよく似てるわ。もちろん未来から来たことになるのね」

 「お母さんの推理で大正解です。ココアさんは、いま高校2年で、私達の世界では、ラビット・ハウスにホームスティして、私と一緒に住んでます」

 「そうなの…チノがいつもお世話になってます。よろしくね、ココアお姉ちゃん」

 「ふぇっ!? よ、よろしくお願いします」

 

 母から突然「お姉ちゃん」と言われ、びっくりしたココアさん。でもとてもうれしそうです。

 

 「わーい、チノちゃんのお母さんからお姉ちゃん認定されたよー」

 「ココアさん、良かったですね」

 

 ココアさん、能天気すぎです。私は少し嘲笑をまぜてココアさんに応えました。

 

 お母さんが淹れてくれたコーヒーを飲みながら、3人で会話です。お母さんも私の隣に座りました。

 

 あ、コーヒーの味ですか? お母さんには悪いですが、私のほうが腕は上ですよ。

 って閑話休題でしたね。話は続きます。

 

 「お母さん、ところで何で私が未来から来たチノだって解ったんですか?」

 「それはね、私が願って、魔法をかけたの…未来のチノに会えますようにって。それで現れたのが貴女」

 「お母さんは魔法使いだったんですね」

 「自分の魔法で、おぼろげに自分の子供の未来の姿、幻影は出せるの。だから、チノはすぐわかったわ…でも」

 「でも?」

 「他の友達とかはわからないの。現にココアちゃんだって今来てくれたから解っただけなの」

 「そうなんですね」

 

 魔法って言葉が出たので、俄然ココアさんがその話に興味を示します。

 

 「どうやって、魔法をかけるの?チノちゃんのお母さん」

 「そうね。魔法の言葉(マジック・ワード)を使うわね。『カフェラテ・カフェモカ・カプチーノ』って」

 「なら、私にも出来そう! 私、小さいときから魔法使いになりたかったんだー」

 「そう、ココアちゃんは出来るかも知れないわね。チノだって私の娘だもの、才能あるはずよ」

 「チノちゃん、私、魔法使いになれるかもだって」

 

 ココアさん凄く嬉しそう。確かに魔法使いの才能ありそうです。今回だって、異世界に連れてきてくれたのはココアさんですし。

 

 「お母さん、おじいちゃんとお父さんは、なんで揉めてたんですか?」

 「今度、タカヒロさんがバータイムにジャズをやるので、ピアノをラビット・ハウスに入れたいってタカヒロさんが」

 「お父さんも結構無理をいいますね」

 「タカヒロさんには悪いけど、グランドピアノは勿論、アップライトピアノもこの店には入れるところが無くて、お義父さんの言う通り多分無理だと思うわ」

 「そういえばチノちゃん、今のラビット・ハウスにも、ピアノ無いよね。狭いのと、床に段差があって確かに難しそうだね」

 

 今のラビット・ハウスにもピアノはありません…というか構造上入れるところがないんですね。

 

 「その他にも、簡易PAアンプとスピーカーの設置の仕方とか、配線は表に出ないようにするとか、あの二人、最近しょっちゅうなの」

 「お母さんも大変ですね」

 「お客が来たときは、ああやって外に出てもらっているわ。どっかで飲んで来ているんでしょうけど。もともとは仲はいいので、すぐに解決するわ」

 「チノちゃんのお母さん、苦労が絶えないんですね」

 「でも、全然心配はしてないの」

 「どうしてですか、お母さん?」

 「タカヒロさん、お義父さん、私も、お互い信頼し合っているから…ね」

 

 この時のお母さんの笑顔が、とっても素敵でした。血が繋がってる筈の私には出来ない芸当です。

 




 実は、ラビット・ハウスの店内は伸縮自在で、当初は原作は広く、アニメはコンパクトだったのですが、現在はアニメ版が擦り寄り、アニメはコンパクトな外装でありながら、中は広く4次元状態になっています。
 ここでは、アニメ1期あたりのコンパクトなラビット・ハウスを想定しています。
 あと、チノ母とココア母は原作通り高校時代から付き合いがあって、ココアについても知っていた設定です。チノに「ココア」と名前を出されたので、外見(目の色とか遺伝的要素)と、名前ですぐに解ったことにしてます。

 拙いこの小説をお読み頂き、ありがとうございました。


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