まどほむ百合短編集 (夜嶺)
しおりを挟む

ほむらちゃんの日記

ーあらすじー


ワルプルギスの夜との戦いを前にした私たち四人とほむらちゃんの仲は最悪の状態だった。


なんとかほむらちゃんと他のみんなの関係良くしたい。私がそう考えてた時に偶然にも一冊のノートを見つける。


そのノートには、ほむらちゃんのこれまでの戦いに日々を綴っている、一冊のとても悲しい日記だった。


「ここで待ってなさい、私は少し用事があるから」

 

その長い黒髪がとても似合う美人なほむらちゃんはクールでカッコよくて、勉強やスポーツも凄くできる、まさに絵に描いたような天才とも呼べる女の子。

 

でも今さやかちゃんとマミさん、そして杏子ちゃんとはちょっとだけ仲が悪い。

 

「うん……わかったよ……ほむらちゃん……」

 

誰も私に近寄るなと言わんばかりの冷たくて鋭い目線に少しだけ怖がる私は鹿目まどか、見滝原中学校の二年生。

 

実は私はほむらちゃんの事が好きでいた。

 

それは友達同士の友情という意味じゃなくて、恋愛という意味で。

 

一般的に同性愛とかレズビアンとかで言われる方の気持ちを、ほむらちゃんに抱いていた。

 

(さやかちゃん達と比べると、明らかに違うこの気持ち…………私はほむらちゃんを…………)

 

ほむらちゃんが転校してくる前に、私は夢でほむらちゃんの事を知った。

 

夢の中のほむらちゃんは、とても大きな怪物…………たぶんワルプルギスの夜っていう魔女と一人で戦い続けて、ボロボロに傷だらけになっていった。

 

私はそんなほむらちゃんを見ている事しか出来なくて、何もできないまま夢は終わる。

 

そんな夢を見たときから、私はほむらちゃんに対して特別な気持ちを抱くようになっていたんだと今なら分かった。

 

 

「ほんっと、相変わらず感じ悪いね」

 

少しイライラしているかのような口調で言う、私と同じクラスのさやかちゃん。

 

さやかちゃんはほむらちゃんの事がすごく嫌いみたいで、私にもほむらちゃんとは関わるなって言ってくる。

 

それに名前じゃなくて、転校生っていう呼び方しかしない。

 

 

「ワルプルギスの夜を倒したいという気持ちは本当みたいだけど、でも手の内を全く見せないし……あまり信用できないわね」

 

私やよりも一つ年上のマミさんも、さやかちゃん程じゃないけど、ほむらちゃんの事があまり好きじゃないみたい。

 

ほむらちゃんに対して、いつも警戒するような鋭い目線を送っている。

 

 

「まあ……所詮は利害が一致してるだけの関係だし、そこまで言ってもしょうがないだろ」

 

今までにも似たような経験があったのか、二人に比べて一番ほむらちゃんと友好的に接してくれるのが杏子ちゃん。

 

でも友好的と言っても、あくまでも仕事仲間みたいな感じだった。

 

 

 

(はぁ……もっとほむらちゃんと仲良くしたいな……)

 

多分だけど、一番私がほむらちゃんと仲良しだと思う。

 

あんまり喋る事はないし、むしろ遠ざけられてるような感じだけど……。

 

(でも、みんなほむらちゃんの事を誤解してるよ……ほむらちゃんは絶対に悪い子なんかじゃない……)

 

私はほむらちゃんの事を何も知らないけど、間違いのない一つの確信があった。

 

ほむらちゃんはみんなが思っているような、悪い魔法少女なんかじゃないと。

 

確かにほむらちゃんはいつも怖いし、何を考えているかよく分からないよ。

 

でもほむらちゃんの目を見てれば悪い子じゃないとハッキリ分かった。

 

ほむらちゃんはいつも怖い目をしているように見えるけど、よく見れば凄く悲しそうな目をしてる。

 

すぐに泣き出してしまいそうな、すぐに壊れてしまいそうな悲しくて辛そうな目にしか私には見えなかった。

 

 

「…………これって転校生のメモ帳?」

 

そんな事を私が考えていると、さやかちゃんがタイトルにメモ帳と書いてある一冊のノートだった。

 

「何書いてるのかなーって、これ……」

 

「なあ、これ日記じゃないか?」

 

さやかちゃんがめくってみると、そのページには日付けとか書いてあってメモ帳には見えない。杏子ちゃんの言う通り、普通の日記みたいだった。

 

「別にメモ帳じゃないみたいだし…………せっかくだし読んでみましょうか」

 

(人の日記を勝手に読んでもいいのかな……?)

 

あまり人の日記って読むのは良くなさそうだけど、でも私は指摘する事なく、ほむらちゃんには悪いけど読む事に賛成した。

 

もしかしたら、ほむらちゃんともっと仲良くなるキッカケを作れるかもしれないから。

 

 

『○月△日、今日から新しい学校に転校する事になったけど、ずっと入院ばかりだったから上手く人付き合いできるか心配…………でも心臓病なんかに負けたくないし、せっかく新しい学校に行くんだから頑張りたい!』

 

 

(ほむらちゃんの日記のはずなのに……なんだか凄く違和感がある……)

 

まず第一印象としては、今のほむらちゃんからは考えられないほど明るい内容だった。

 

「……ずいぶん性格が明るいわね」

 

「……今とは大違いだな」

 

でも普段みんなの前では冷たいけど、内心は実は普通の女の子らしい事を考えていたのかもしれない。

 

「なんというか今の転校生にしては別人…………いや埃被ってるし、もしや小学生の頃とか……?」

 

さやかちゃんの言う通り、年数は書いてないけど、日記自体は少し古ぼけてて埃をちょっと被ってたから、もしかしたら性格が変わる前の昔の日記帳かもしれない。

 

 

『○月△日、転校したのはいいけど病弱な身体が原因で走ってもすぐ貧血になっちゃうし……出された問題も全然わからないし……何だか学校が嫌になっちゃうけど、でもこんな私にも優しくしてくれた鹿目さんっていう友達も出来た!…………でももう友達って言っていいのかな?』

 

 

「まどかと同じ名前……って当たり前か。やっぱり間違いなく転校生の日記だよねコレ」

 

「暁美さんって学年トップクラスの学力と聞いていたのだけれど……」

 

「ほむらちゃんは勉強も凄く出来る子です、病気だって思わせないぐらいスポーツも出来てますし……」

 

正直、この日記がほむらちゃんの物なのかも怪しくなってきた。

 

今のほむらちゃんとは正反対の事を、この日記は示しているんだから。

 

 

『○月△日、昨日は魔女って言う怖い生き物と出会った、そして魔法少女とか変な事に巻き込まれたけど鹿目さんが私を守ってくれた!とてもかっこよかった!あと巴さんって言う魔法少女の人と友達になれた!とても嬉しかった!』

 

 

(私が……ほむらちゃんを守った……?それにマミさんといつ友達に……?)

 

 

「いや何で昨日の事を今日書いてんだよ。というか嬉しさのあまり全部箇条書きじゃねーか」

 

杏子ちゃんがツッコミをいれるけど、今はそんな事は私の頭に入ってこない。

 

「暁美さんは何の事を書いてるの…………」

 

この日記に書かれてる内容が私にもマミさんにも理解できなかった。

 

「まるで転校生とは別人、なんか頭が混乱してきた……」

 

今までの日記をまとめるなら、ほむらちゃんは学校では勉強もスポーツも全く出来なくて、しかも私とマミさんが魔女からほむらちゃんも守って、しかもほむらちゃんは魔女の事とかを知らない。

 

 

『○月△日、今日はまた保健室に行った……やっぱり私はドジだよね……せっかく鹿目さんにほむらって名前はかっこいいって言われたのに……』

 

 

だけど、この日記はどう考えても私たちの事を言ってる。別人とかではなさそうだった。

 

 

 

『○月△日……』

 

 

「ん?このページ日付けとんでない?」

 

さやかちゃんのいう通り、日付は一週間ほど飛んでいるようだった。

 

 

 

『○月△日……久しぶりに日記を書くけど、最近はいろいろな事があった……魔女はどんどん出てくるし、鹿目さんと巴さんは毎日魔女を倒してるからとても凄いって思う。もし私も魔法少女になれば、今の弱い自分を変えられるのかな?』

 

(まるで、今の私みたい……でも魔法少女になればって……??)

 

私は勉強もスポーツも秀でてるわけじゃないし、さやかちゃんのように面白い人間でもない。

 

だから魔法少女になったら、それをキッカケに少しずつ今の何もない自分を変えられるかもって思ってたけど、でも今のほむらちゃんは魔法少女で…………何なのこの日記……?

 

 

『○月△日……』

 

 

「日付けが戻ってるな」

 

そのページには転校してきた時の日付けだった。

 

「転校生は、何て書いてあるの?」

 

 

『○月△日、巴さんが死んで、鹿目さんも死んじゃった……せっかくお友達になれたのに……でも私も魔法少女になれた!これでもう一回やり直す。鹿目さんを守るために、今までの自分を変えるんだから』

 

 

「これって……まさか暁美さん時間を戻してたの!?」

 

 

 

「これが転校生の魔法……?」

 

 

『○月△日、今日から私の特訓スタートり私はあまり才能がなくて武器が作れない。出来るのは時間を止めたり時間を戻したりする事だけ……でも鹿目さんと一緒ならきっと頑張れる』

 

 

(もしかして、ほむらちゃんは何回も繰り返してるんじゃ?)

 

私はだんだん不安になる。でもその不安は的中する事になる。

 

 

『○月△日……』

 

 

「また日付けがとんでるな」

 

 

『○月△日、鹿目さんが魔女になった……』

 

 

「確か、このまえ美樹さんのソウルジェムの件でQBが言ってたわね……」

 

私たちはこの間、さやかちゃんのソウルジェムを私が捨ててしまった時に、魔法少女の辛い真実を知ったばかりだった。

 

「さやか、続きは何て書いてあるんだ?」

 

 

『鹿目さんが魔女になった……知らなかった、魔法少女の最後が魔女になるなんて。みんな騙されてる、私が教えてあげないと、そして鹿目さんを今度こそ救うんだ』

 

 

「ほむらちゃんは…………何度も時間を繰り返して…………」

 

 

 

「……とにかく続きを見てみましょう」

 

マミさんの言うとおり、ページをめくる。

 

『○月△日、今日は始めて人の物を盗んだ……美樹さんが戦いやすくするためにも、あまり爆発はやめといた方がいいし、鹿目さんのためにも、手段は選んでおけない……』

 

確か接近戦で戦うさやかちゃんが、爆発物を扱うほむらちゃんに何かの文句を言ってたけ?と思い出しつつもページを急いでめくった。

 

『○月△日、中々魔女の事を信じてもらえない……それどころか仲が悪くなってきてる……仲良くしたいのに、私って何でこんなに下手なんだろ……』

 

「また日付けが戻ってるよ……」

 

そう言いつつ、さやかちゃんはすぐにページをめくる。私たちは次第に日記の内容を見るのが怖くなっていた。

 

『○月△日、今日は今までで一番最悪の日……美樹さんが魔女になった、そして真実を知った巴さんは佐倉さんを殺して、私を殺そうとしたけど、鹿目さんが助けてくれた。三人も仲間を失ってとてもとても最悪だ……』

 

「「…………」」

 

『○月△日、今日はいよいよあの日、ワルプルギスの夜を倒す日だ。』

 

「まさかと思っていたけど、やっぱりこの時間を何度も繰り返していたのね……」

 

マミさんの言うとおり、ほむらちゃんはこの時間を繰り返している。

 

それも一回や二回じゃないらしい。

 

 

 

『○月△日……』

 

「また日付けが元に戻ってる……」

 

(これで三回目、また私死んじゃったんだ……)

 

 

 

『○月△日、また魔女になった……でもあの子は最後にこう言った、馬鹿な私を助けてと……もちろん救ってみせると約束をした……そして分かった、私はあの子の友達じゃないと……あの子の願いを叶えるためにはこんな弱い自分なんていらない…………友達じゃなくていい、私はこれからあの子の願いを叶えるための戦いの道具になる。例え永遠の迷路を彷徨ってでも、必ず約束を果たす……』

 

 

どんどん口調が変わっていく。それだけでなく、日記に書かれてる文章も殴り書きのように荒くなっていた。それはまるで、ほむらちゃんのそれまでの辛さや悲しさを代弁するように。

 

 

『○月△日、私は翌日、今までつけていた眼鏡とリボン捨てた。視力を魔法で治して、三つ編みからロングに変えて、弱い自分を変える…………あの子を救うために、まどかとの約束を叶えるまで何度でも永遠に繰り返す……もうまどかを魔法少女にはさせない……戦うのは私だけでいい……全ての魔女は私が倒す……私はもう人の心を捨てる……全てはまどかのために…………』

 

「次のページから、ワルプルギスとかいろんな魔女の事を書いてるよ……」

 

さやかちゃんが悲しそうに言う。ここで日記は終わってた。

 

「…………アイツ……」

 

杏子ちゃんは何も言えない。一番友好的に接していたと言っても、悪い部分を思うとこはあったみたいだった。

 

「たくさん迷惑をかけてわね…………」

 

マミさんは今にも泣きそうな顔で言う…………でも私自身は…………。

 

「ヒッグ…………うぅ………………」

 

ほむらちゃんを一番苦しめてた私は、もう涙が止まらなかった。

 

私がそんなワガママ言ったから……ほむらちゃんをこの一ヶ月に閉じ込めてしまった……。ほむらちゃんの未来を奪ってしまった。

 

 

「待たせたわね」

 

 

その時、用事も終えたほむらちゃんが戻ってくる。

 

 

「ごめんね……ごめんね……ほむらちゃん…………」

 

「転校生……いやほむら!ほんっとにごめん!」

 

「暁美さん…………今までごめんなさい!私たみち……暁美さんに何て酷い事を……」

 

「ほむら……アンタ苦労してきたんだな……」

 

私たちはすぐさま、ほむらちゃんに同時に謝っていた。

 

何度も繰り返して、何度もボロボロになって、何度も裏切られて…………。

 

それだけの辛い事があったなら、性格なんて悪く変わってしまうに決まってる。ほむらちゃんは性格も自分自身も変わってしまうほど、ずっと戦い続けさせられてたのだから……。

 

 

 

「…………はぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、私たちは今までの冷たい態度を何度も謝ったけどほむらちゃんは別にいいと一言で終わらせた。

 

 

 

 

 

 

 

それからまたしばらく経ち、ワルプルギスの夜は無事に倒せて、もしかしたら昔の性格みたいに少し明るくなるかもって思ってたけど、ほむらちゃんはまだ暗い性格のままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

それからまたまたしばらく経ち、ほむらちゃんが少しずつだけど昔の優しさをに取り戻し、私と恋人になる話しはまた別のお話し。

 

 

 

 

ーENDー




以前に投稿した物を大幅に訂正しました。

そもそも前の時間軸の物は次の時間軸に持っていけないと思うのですが、その辺りの設定は少し曖昧な感じにしてます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

決戦前の小さな願い

ワルプルギスの夜襲来前日、全員生存と鹿目まどか未契約状態。

あまり長くないです。


こんばんわ。私は見滝原中の二年生、鹿目まどかです。

 

今日はほむらちゃん、マミさん、さやかちゃんに杏子ちゃん、そして私の五人でほむらちゃんの家にいます。

 

明日はほむらちゃんの言うワルプルギスの夜って魔女がこの町を襲う日だから、泊まり込みで作戦会議だって。

 

そして私はこの一ヶ月でいろいろな事を知った。

 

魔法少女と魔女、希望と絶望、そして私の魔法少女に対する素質や魔法少女の怖い真実。

 

本当にいろいろな事を私は知ったと思う。

 

中でも・・・

 

「ほむらちゃん、ご飯出来たみたいだよ」

 

私はずっとほむらちゃんが気になっている。

 

ほむらちゃんが転校してくる前に私は夢を見た。

 

町がめちゃくちゃに破壊されていて、たった一人で大きな魔女・・・ワルプルギスの夜と戦うほむらちゃんの夢。

 

「遠慮しておくわ」

 

綺麗な黒髪で憧れる程の冷静な女の子。私はほむらちゃんが気になっていた。

 

これが恋なのかな。

 

さやかちゃんみたいな友達っていう感じじゃない。友達よりも親密に・・・。パパとママみたいなキスとかする関係になりたいって考えてしまう。

 

「でも、みんな待ってるよ?」

 

「私は明日に備えて忙しいの」

 

何かの計算式が書かれた紙を見たり、この町の地図とにらめっこしている。

 

ほむらちゃんは怒ったりもしないで泣いたりもしない。まるで心の無いお人形みたいにからっぽの言葉を喋って、いつも無表情でいた。

 

「貴方だけ行けばいいわ」

 

「だけど・・・」

 

みんなと仲良くしない。うっとおしそうな、道具を扱うような態度でみんなと接している。

 

ただ私に接する態度は違う。ほむらちゃんは私を中心に動いてくれて、私に何かあるとすぐに駆けつけてくれる。

 

「貴方は私に合わせようとせずに自分の事だけを考えていればいい。その権利はある」

 

前にほむらちゃんから自分の戦う理由を聞かせてもらった。

 

未来で私はワルプルギスの夜と戦って死んだらしい。

 

だからほむらちゃんは契約して過去に戻ったけど私が魔女になったり、さやかちゃんが魔女なったのをきっかけにマミさんが錯乱して杏子ちゃんを殺したりしたって聞いた。

 

「きっと未来の私だって・・・そんなこと言わないよ・・・」

 

「貴方の意思なんて関係ない。貴方は私に守られればそれでいいのよ」

 

ほむらちゃんは未来の私と約束したらしい。キュゥべえに騙される前の私を助けてほしいって・・・

 

だからほむらちゃんは永遠に戦い続ける。明日負けても、また時間を巻き戻してほむらちゃんは約束を果たすために戦い続けるんだと思う。

 

つまり私はほむらちゃんを同じ一ヶ月間に閉じ込めて、ほむらちゃんの未来を奪って、ほむらちゃんから幸せを奪った最低な人間。

 

でも私のために戦ってくれてる事を聞いて、私はもっとほむらちゃんが気になり始めた。

 

もう私はほむらちゃんに恋してるんだね・・・

 

「もっと自分を大切にしてよ・・・」

 

私はほむらちゃんに戦いを押し付けた罪悪感と私のために戦ってくれて嬉しいっていう気持ちがあって、矛盾している。

 

だけど、今の私にはどうしようもない。

 

「貴方こそ自分を大切にしなさい。貴方は誰よりも強い素質を持っていて、誰よりも危険が迫っている」

 

「一番危ないのはほむらちゃんだよ・・・。私のわがままでずっと戦わせているんだから・・・」

 

「貴方はわがままじゃない。わがままなのはあの三人よ」

 

ほむらちゃんはこんな時も一切表情を変えずに目線もずっと紙とか地図に向いている。

 

「みんな喧嘩してる時もあったけど、でも今は・・・」

 

マミさんとさやかちゃんは最初、杏子ちゃんと喧嘩していた。中でもさやかちゃんは上条くんや仁美ちゃんの事で魔女になりかけたから大変だった。

 

「誰よりも繊細な心を持っていながら貴方を魔法少女にしようとし、挙げ句の果てに真実を受け止められない巴マミ」

 

「幼馴染みを親友に取られそうだからという下らない理由で、貴方を巻き込み勝手に絶望する美樹さやか」

 

「無駄な同情で冷静な判断が出来ずに貴方を危険な幾度なく目に合わし、さらには美樹さやかの慣れ果てと心中しようとする佐倉杏子」

 

ほむらちゃんの口調が少し変わった。その口調には怒りが込められているのか、まるでみんなを見下しているような感じがする。

 

そして全部私の事を思っていてくれた。

 

「誰一人未来を信じなければ希望すら求めない。救いようもない愚か者よ、あの三人は」

 

ほむらちゃんは冷たく言う。そして私は考えてしまう、ひょっとしたらほむらちゃんをこういう性格にしたのは私なんじゃないかなって。

 

人間とは思えないぐらいほむらちゃんは感情が薄いから考えれば考える程、私のした間違いを思い知らされる。

 

「ほむらちゃん・・・」

 

私はほむらちゃんに言ってあげる言葉が分からない。

 

契約したらほむらちゃんを苦しめてしまうし、契約しなくても私が役が立つ事なんてない。

 

「分かったら行きなさい。巴マミが待ってるわ」

 

「ほむらちゃんも行こう?」

 

やっぱり放って置くわけにはいかない。こんな時にギクシャクしていたら勝てる戦いも勝てなくなる。

 

そのギクシャクを解決するには、みんなと触れ合う事が大切じゃないかな。

 

「言ったはずよ、私は忙しいと」

 

ほむらちゃんはまだ私と目を合わせてくれない。ワルプルギスの夜を倒す事がほむらちゃんの目的みたいだし、もし倒したらほむらちゃんは私の事なんてどうでもよくなるのかなって不安になる。

 

「私を守ってくれるのは嬉しいけど・・・私はほむらちゃんと一緒じゃないと嫌だよ・・・」

 

私は目に涙を浮かべる。

 

守ってもらうんだから、こういうのはわがままかもしれない。

 

わがままなのは分かってるけど自分の気持ちを抑えられない。私はほむらちゃんと一緒にいたいし仲良く話しもしたい。

 

もちろん叶うならキスだって。

 

「貴方には私に代わる友達なんてたくさんいるじゃない」

 

ほむらちゃんは自分自身の事なんてどうでも良さそうだった。今の言葉も全然寂しそうじゃないし、自分を大切にしていない。

 

「でもほむらちゃんは一人しかいないよ・・・」

 

「私は貴方と違う時間を生きている人間。体も普通じゃないなら中身だって普通じゃない」

 

きっとその中身っていうのは自分の性格とか心とか感情の事だと思う。

 

「だから私といくら仲良くしたくても心はすれ違う。貴方と私は一緒にはいられない」

 

違う時間を生きている人間同士は決して仲良くなれないってほむらちゃんは言いたいんだと思う。もしそれが決まりなら、私は嫌だ。

 

だっていくら時間を繰り返していても、ほむらちゃんは私を救おうと思い続けているし、私はいつもほむらちゃんの事を思っている。

 

「時間なんて関係ないよ・・・だって・・・だって・・・」

 

私は目から涙を流す。泣かないように堪えてたけど、もう限界だった。

 

生きている時間は違うかもしれない。だけど私とほむらちゃんは今ここにいるんだから、そんなのは関係ないと思う。ちゃんと触る事も出来るし話す事だって出来るから。

 

「貴方自身のためにも私と関わるべきじゃない」

 

ほむらちゃんはまだ私の方を振り向かない。私が泣いていても関係ないような顔をしてる。

 

「ほむらちゃんは私の事が嫌いなの・・・?」

 

「もちろん好きよ。あの三人とは比べれないぐらいにね」

 

「ならもっと一緒にいようよ・・・」

 

他のみんなよりは好かれているけれど、それは未来の私の事なんじゃないかな?今の時間の私なんてほむらちゃんは興味ないのかな?

 

こういう考えや不安がさらに私の頭をよぎり、それは私が流す涙を増やした。

 

「一緒にいてもその関係はどうせリセットされ、最悪敵にもなりかねない」

 

どんなに仲良くしてても時間を巻き戻せば私はほむらちゃんの事を忘れて、ただの転校生としか認識しなくなる。

 

もし昨日までキスするような関係だったのに明日いきなり赤の他人とか敵になってたら、私だったら辛くて耐えられない。

 

例えただの友達で巻き戻したとしても次の日にはただの他人になってるんだから、ほむらちゃんはそうとう辛い思いをしてる。

 

「私が・・・そんなお願いをしなければ・・・」

 

やっぱり私のお願いはほむらちゃんに悪影響ばっかり。もし未来の私がほむらちゃんの苦労を知ったら、こんなお願いなんてしない。したくない。

 

後先の事を考えず、自分の事しか考えなてないお願いをしたなんて私は後悔し続ける。

 

「もう行きなさい。私と一緒にいても楽しくないわ」

 

私は泣き続けている。だから私を気遣ってくれたのかな?ほむらちゃんはやっぱり私を思って言ってくれる。

 

でも自分を否定し過ぎだよ。私はほむらちゃんと一緒にいればすごく楽しいのに。

 

「・・・ほむらちゃん」

 

さっきほむらちゃんは私と一緒にいても楽しくないって言った。その言葉で私の何かにスイッチが入る。

 

「・・・こっち向いて」

 

私はほむらちゃんの両頬を掴むと強引に私の顔に近づけてキスをさせた。

 

「まどか・・・?」

 

嫌がられるかなって不安だったけど、ほむらちゃんは抵抗しなかった。

 

キスの時間は本の数秒。私にとってはドキドキのし過ぎと恥ずかしい思いですごく長く感じる。

 

「ほむらちゃんは私の初恋の相手なんだよ?それにほむらちゃんと一緒にいるだけで幸せ・・・」

 

私はそう言うとまたほむらちゃんにキスをして、そのまま強引に押し倒した。

 

もう一回スイッチが入ったから自分でもやめられない。このまま嫌がられるまで続けたかった。

 

「貴方・・・」

 

「認めてほしいの、私にはほむらちゃんが必要だって」

 

もしほむらちゃんがいない日々なんて私には辛すぎる。

 

それに私にはほむらちゃんが必要だって事を認めさせれば自分を否定しないだろうし、時間を繰り返した辛さだって・・・きっと忘れられる。

 

「・・・私はワルプルギスの夜を倒さないといけない」

 

ほむらちゃんは私がキスしてもワルプルギスの夜の事だけを考えているみたい。

 

「もっと私たちの事を見てよ・・・今度は必ず大丈夫だから・・・」

 

私も含めてほむらちゃんの目にはみんなが邪魔に写ってると思う。

 

そもそも私が契約するからほむらちゃんは苦労しているし信用されてないかも・・・

 

「そうね。今度こそは必ず平気よ」

 

ずっと見ていて気づいたことがある。

 

ほむらちゃんは私のためなら決して諦めない。例え自分を傷つけて、みんなを利用して嫌われても、ほむらちゃんは諦めない。

 

「ならもっと私たちを・・・私を・・・」

 

ほむらちゃんは希望を求めている。それに私を救えなかったって諦める事は魔女になる事と同じ。

 

だからほむらちゃんには逃げるって選択肢は無い。戦い続けるという選択肢しか無い。いくら戦いたくなくても、いくら逃げたくても、それは死へと繋がる。

 

「貴方を救う。そして貴方は幸せに生きる。それだけよ」

 

きっと今は何を言ってもほむらちゃんには届かない。ワルプルギスの夜を倒してからじゃないと、ほむらちゃんは他の事を考える余裕なんて無いと思う。

 

「ほむらちゃん、私を見て?」

 

私はまたほむらちゃんにキスをする。今度はより強く唇を押し当てた。

 

「んっ・・・」

 

私は貪るようにキスをしている。

 

「ワルプルギスの夜を倒したら、ほむらちゃんは何したい?」

 

「・・・」

 

ほむらちゃんは何も答えない。気のせいかな、少し顔が赤くなっている。

 

「私からもう一つのお願い、ワルプルギスの夜を倒したら私やみんなと一緒に仲良くいてほしいの・・・」

 

「・・・・・・」

 

ほむらちゃんは表情は変えないし返事もしないけど、ほむらちゃんが私のお願いをどういう風に考えているのかは分からない。

 

いきなり仲良くなんて無理かもしれないけど、マミさんたちはほむらちゃんと仲良くしたがってるし、きっと大丈夫。

 

「それと・・・私を愛してくれる?」

 

「ええ」

 

今度は返事をしてくれた。それも少しだけど表情が緩んでいた。

 

もう私たちは恋人なのかな、キスとかイケないこともしていいのかな、そういう事を考えてしまうけど、今はほむらちゃんの笑顔が見たい。

 

そのためにも明日ワルプルギスの夜を倒したらたくさん、ほむらちゃんを抱きしめて優しくしてあげたかった。

 

今まで数えるのを諦めるぐらい時間を繰り返した分まで、精一杯ほむらちゃんを愛したい。

 

 

これが私の小さな願いだった。

 

 

 

 

 

 

 

「鹿目さん、やけに遅いと思ったら・・・」

 

「隅に置けないな、まどかも転校生も~」

 

「まあ、こうなるのは前々から分かってたけどな」

 

 

 

 

 

 

 

(今さら言葉にして説くまでもない。暁美ほむら、見届けてあげようじゃないか君の結末を。君の結末は決められているんだよ、君ではこの連鎖は断ち切れない。君のやっている事は無意味なんだ。それなのにまだ彼女を前にして戦い続けるなんて・・・)

 

「わけがわからないよ」

 

 

 

 

ー終ー




何年たっても、やっぱりまどほむまどサイコー


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

時の代償

〜あらすじ〜
何度も繰り返し、ようやくワルプルギスの夜との戦いが終わって、鹿目まどかとの約束を無事に果たせた暁美ほむら。

しかしその代償は大きく、彼女の心にはとても深い傷が残った。

そんなある日、美樹さやか、巴マミ、佐倉杏子、暁美ほむらの関係を良くするため、鹿目まどかはある提案をする。

その提案とは、ワルプルギスの夜を倒した「お祝い」だった。

5年ぐらい前に書いたやつなので、文章おかしくても許して下さい。


ワルプルギスの夜は無事に倒せて、私も契約をせずにすんだ、でもほむらちゃんとさやかちゃんに杏子ちゃんにマミさんとの関係は悪いままだった

 

そして今……

 

 

「えーと、せっかくワルプルギスを倒したんだからみんなでお祝いとかしない……かな?」

 

私はほむらちゃん達の関係を良くするために、みんなでお祝いしようと思いついた

 

 

「まどか、別にそれはいいんだけどさ」

 

「転校生の奴も一緒に?」

 

杏子ちゃんとさやかちゃんは気に入らなそうに言う

 

 

「まあ、私たちに敵意は無いみたいだけど、あまり気は進まないわね」

 

マミさんの言う相手とはほむらちゃんの事だった

 

 

「ほむらちゃんは悪い子じゃなかったんだし、私を守ってくれたんだから、その…………」

 

 

「確かにあいつには助けられた事もあるけどさ、私反対だわ」

 

さやかちゃんは反対と言う

 

「そうね、何をしてくるかわからないもの」

 

「食事に毒をいれるかもな」

 

マミさんも杏子ちゃんほむらちゃんの事を信用していない

 

 

「みんな、どうしてほむらちゃんの事を悪く言うの!」

 

「だって、あいつ信用出来ないよ」

 

「態度だって悪いし」

 

「ワルプルギスの夜も倒したのだから、襲ってくるかもしれないわよ?」

 

「そんな……」

 

みんなほむらちゃんと仲良くなろうとしない……

 

「まどか、転校生のどこが好きなの?」

 

さやかちゃんが不思議そうに聞いてくる

 

 

「ほむらちゃんは……私をずっと守ってくれていたんだもん……自分を犠牲にして守ってくれたんだから……」

 

前に、私にだけほむらちゃんが戦う理由を教えてくれた

 

昔の事、そして自分の全てを犠牲にして、あの一ヶ月の中に閉じ込められても諦めずに救ってくれた事を聞かされた

 

そして私は気付くとほむらちゃんが好きだった

友達としてじゃない、一人の女の子として

 

 

「まあ、彼女も鹿目さんのいるところでは下手な事は出来ないでしょうし、いいわよ。」

 

マミさんは渋々良いと言ってくれた

 

「まどかがそこまでいうなら……」

 

さやかちゃんも渋々良いと言ってくれたみたい

 

「で、あいつはどうなんだ?」

 

杏子ちゃんが指摘する

でも……

 

「大丈夫。私には秘策があるの。」

 

そう、私にはとっておきの秘策があった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピーンポーン……

 

………………

 

 

ピーンポーン……

 

………………

 

 

「いないのか?」

 

「転校生、無視してるんじゃない?」

 

「彼女、そうなの?」

 

「学校じゃあ、私達だけじゃなくてクラスの誰とも喋ってないんですよ。」

 

 

さやかちゃんがマミさんに言っている通り、ほむらちゃんはいつも一人で学校にいる

 

ほむらちゃんと話したい人はいっぱいいると思うけど、でもほむらちゃんの雰囲気は、まるで誰も近づくなという雰囲気で誰も近づけなかった

 

 

「私に任せて。」

 

こういう時のために、私はある秘策を考えてた

 

 

「ほむらちゃんあのね、さやかちゃん達と仲直りしてほしくて、ワルプルギスの夜を倒したお祝いしようと思うの。」

 

「もし出てくれないのなら、契約するよ!」

 

これでほむらちゃんは絶対に出てくると思う

 

 

ガチャ

 

「…………。」

 

私の予想通り、ほむらちゃんは出てくれた

でも、どこかやつれているように見えた

 

 

「ほむらちゃん、あのね……仲直りしてほしいの……」

 

 

「……入りなさい……」

 

私たちはほむらちゃんの家へ入る

ほむらちゃんの家に入るのは始めてだ

 

ーほむらの家ー

 

ほむらちゃんの家のあちこちにワルプルギスについての資料が貼ってあって、他にも壁中にどこかの建物の場所が映されているテレビがあった

 

そして床にはパソコンなどのコードだらけで、足場を確保するのも大変だった

 

 

「…………。」

 

私は改めて思う、ここまでしたのは私が原因だって……

 

 

「それで、お祝いって?」

 

「え……あの……ワルプルギスを倒したから、さやかちゃん達と仲直りしてほしくて」

 

「その三人は気に入らないみたいよ。」

 

「別に気に入らないって事はないけど……」

 

さやかちゃんが言う

 

「というより、いつ私たちの縄張りを奪うつもりかしら?」

 

マミさんが挑発的な口調でいう

 

「私は最初に言ったとおり縄張りに興味は無いわ。まどかが救われた以上、もう貴方たちにも接触はしないから大丈夫よ。」

 

 

だんだん、雰囲気が悪くなってきてる……

 

「みんな!喧嘩はやめて!」

 

せっかく仲直りするのにこれじゃあ逆効果だよ……

 

「大丈夫よ、試しただけだから。」

 

「まあいいさ、お祝いするのか?」

 

「……いいわよ。」

 

「転校生も嫌々じゃない?まどか?」

 

「大丈夫、仲直りするから。」

 

絶対にみんな仲直りする、仲直りしてほむらちゃんに人としての幸せを見つけてほしい

 

「何をするの?」

 

ほむらちゃんは相変わらず、冷たい口調でいう

 

「えーと、今日はみんなでご飯を食べて、お泊りするの。」

 

「泊まり!?」

 

「まどか本気なの!?」

 

杏子ちゃんとさやかちゃんは驚いた表情をする

 

 

「どこに泊まる気かしら?」

 

「ほむらちゃんの家はどう?」

 

「ちょっと待って、いきなり彼女の家に泊まるは……」

 

「ほむらちゃんは悪い子じゃ無いよ……だから大丈夫だよ!」

 

「でもなぁ……」

 

さやかちゃんもマミさんも全然乗り気じゃない

 

「じゃあ、部屋は別々でどうかな?」

 

「それなら別にいいけど……」

 

「そこまでお願いされたら、まあいいか……」

 

「まあいいよ……」

 

杏子ちゃんとさやかちゃんとマミさんも渋々了承してくれた

 

「ほむらちゃんもいい?」

 

「いいわよ……」

 

きっと私がお願いしたから、良いって言ってくれたんだと思う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、晩御飯はどうする?」

 

「マミ、なんか作ってー」

 

「マミさんの手料理美味しいからなー」

 

「まどか、転校生に聞いてきてくれる?」

 

「うん、いいよ」スタスタ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほむらちゃん、今日の夜ご…………ほむらちゃん!!」

 

気付くと、ほむらちゃんは部屋の隅で膝をかかえて震えていた

 

「あ……ああ…………」

 

「ほむらちゃんどうしたの!?ねぇ、大丈夫!?」

 

ほむらちゃんは半泣きになっていて、何かに怯えるようにとても震えていた

 

「……ああ……嫌だ…………」

 

「ほむらちゃん!ほむらちゃん!!」

 

「うぅ……!あああ!!」ガタ

 

「きゃ……!ほむらちゃん!!」

 

「あぁ……うぅ……」

 

ほむらちゃんは私を突き飛ばして棚からカプセルの薬を取り出して、水と一緒に何粒か飲む

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

「ほむらちゃん!!どうしたの!?ねぇ、大丈夫!?」

 

「…………大丈夫よ……」

 

ほむらちゃんはとても苦しそうで、悪夢を見た後のような顔をしてた

 

「ほむらちゃん……どうしたの?魔女の仕業?」

 

「何でもないわ。それより、何?」

 

こうなった時のほむらちゃんは中々言わない

 

「その……今日の夜ご飯は何がいいかなって……」

 

「何でもいいわ。でも、材料は何もないから。」

 

「…………また私のせい?」

 

「え?」

 

「私が……あんなお願いをしたから、いまみたいにほむらちゃんを苦しめたの?」

 

「違うわ、私は自分で選んだ事だから。あなたのせいではないわ。」

 

「ほむらちゃん…………」

 

辛い……

辛い……

辛い……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「転校生の奴どうだった?」

 

「何でもいいって。」

 

「じゃあ、野菜炒めでもいいかしら?」

 

「いいんじゃないか?」

 

「材料は……あるのかしら?」

 

「ほむらちゃんはなにも無いって……」

 

「そういや転校生の奴、昼ごはんはカロリーメイトだけだなー」

 

「おいマジか……」

 

たくさん食べる杏子にとってはカロリーメイト一箱は驚きだったのかとても驚いて?

 

私は逆に胸が痛い…………

 

「さて買いに行きましょうか。」

 

「そうだな。」

 

「行くよ、まどか。」

 

「え?でもほむらちゃんは?」

 

「転校生なんかほっといていいじゃん、いこいこ」

 

「私、一応言ってくる!」タッタッタ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほむらちゃん、私買い出しに行ってくるけど一緒に行く?」

 

「……遠慮しておくわ。」

 

「うん、わかった……ねえ……」

 

「何かしら?」

 

「やっぱり教えてくれないの?」

 

「私は大丈夫よ。」

 

ほむらちゃんをここまでああいう風にしたのはきっと私……

私は、とんでもない事をお願いしちゃった……

 

 

ー帰宅 ほむらの家ー

 

(ほむらちゃん……大丈夫かな?)

 

「ほむらちゃん、今帰ったよー!」

 

「私たちは料理を作ってくるわ。」

 

「はぁーめんどー」

 

「転校生の奴には注意しろよー」

 

マミさんと杏子ちゃんとさやかちゃんは料理を作るために、キッチンへ行った

 

(ほむらちゃん……大丈夫かな?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほむらちゃん、入るね。」コンコン

 

ガチャ

 

「うぅ……」

 

「ほむらちゃん!!」

 

ドアを開けるとほむらちゃんは床にうずくまっていた

 

「あぁ……いや…………いやだ……」

 

「ほむらちゃん!!」

 

「うぅ!」

 

ほむらちゃんはまたあの薬を取り出し、何粒かを水と飲み干す

 

「はぁ……はぁはぁ……」ガク

 

「ほむらちゃん!!大丈夫!?」

 

「……あぁ……」ガクガク

 

ほむらちゃんは床に倒れてしまって、さらにガクガク震えている

 

「ほむらちゃん!ほむらちゃん!!」

 

「うぅ……まど……か…………」

 

「ほむらちゃんどうしたの!?」

 

「だ……じょ……ぶ……」

 

「お願い……言って…………」

 

「もう……大丈夫。」スタスタ

 

ほむらちゃんは少しふらつきながら、机に戻ってパソコンをする

 

「まどか、夜ご飯なら先に食べてていいわ。私はやる事があるから。」

 

「え、でも……」

 

「彼女たちだってその方がいいわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(私はほむらちゃんを苦しめてばかり、きっと私がほむらちゃんを変えてしまったんだ……)

 

(どうして仲良く出来ないのかな……同じ人間なのにどうして……)

 

「鹿目さん、そろそろご飯よ。」

 

「え、あ……はい……」

 

「転校生の奴は?」

 

「今読んでくるよ!」

 

きっと駄目

絶対に一緒に食べるんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほむらちゃん、ご飯だよ。」

 

「後でいいわ。」

 

「駄目、今じゃないと駄目。」

 

「ほら行くよ。」

 

きっとこれでいいんだ

絶対に仲良く出来る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「いただきます」」

 

「…………。」

 

「…………。」

 

「…………。」

 

「…………。」

 

(どうしよう……)

 

みんなずっと無言のままだった

 

 

「えーと、美味しいねほむらちゃん!」

 

「ええ。」

 

「良かったわ、気に入ってもらえて。」

 

マミさんが言うと続いて

 

「美味しいですよ、マミさん。」

 

「あんたも好きなんだな。」

 

さやかちゃんと杏子ちゃんが言う

 

「ええ、好きよ。」

 

(なんとか会話出来てて良かった……)

 

「で、このあとは?」

 

杏子ちゃんが言う

 

「まどかー泊まるの?」

 

「だめ、かな?」

 

「暁美さんがいいのなら……」

 

「別にいいわよ。」

 

「じゃあ、私言ってこないと……」

 

「さやかは大変だなー」

 

「でも、部屋は私とは別ね。」

 

「ええ、わかったわ。」

 

とりあえずなんとかいい方向に向かっているのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれからしばらくして、みんなは家に帰って準備をして、そろそろ寝る頃だ

 

「本当に何もしてこなかったな」

 

杏子ちゃんが言う

 

「でも部屋が別々かー」

 

「いきなり部屋一緒じゃあ、嫌でしょう。」

 

続いてさやかちゃんとマミさんも言う

 

「だけどあいつ、なんか暗かったな。」

 

「今更何だけど、何であそこまでまどかに執着してたのかな?」

 

さやかちゃんが疑問そうに言う

 

「どうしてかしらね?」

 

「まあいいや、そろそろ寝ようぜ。」

 

「「おやすみー」」

 

(ほむらちゃん、大丈夫かな?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ほむらちゃん……)

 

私はいつまでたっても眠れなかった、ほむらちゃんが心配になりこっそりと様子を見に行く事にした

 

 

 

ガチャ……

 

(ほむらちゃん?)

 

「まどか…………」

 

ほむらちゃんはベッドにいながら、うなされていた

 

(ほむらちゃん……)

 

「うっ…………」

 

「ほむらちゃん大丈夫?うなされて……ほむらちゃん!」

 

ほむらちゃんが起きると、またあの状態になった

 

「うぅぅ……ああ!」

 

「あぁ……まどか…………まどか…………まどか!」

 

「ほむらちゃん!大丈夫だよ!!私はここにいるよ!」

 

「まどか!!」

 

「きゃあ!……っ!ほむらちゃん駄目!!」

 

ほむらちゃんはまたさっきと同じ薬を飲もうとする

 

「駄目だよ!薬に頼ったら駄目だよ!!」

 

馬鹿な私でも分かる、あの薬は精神安定剤か何かの薬だと

実際にあの薬を飲んだらほむらちゃんは落ち着いた

 

でも……

 

「薬なんかに頼るのはやめて!!」

 

私はほむらちゃんにしがみついて止める

 

「まど……か」ガク

 

「私はここにいるよ……ずっとほむらちゃんのそばにいるよ……」

 

私とほむらちゃんはしがみついたまま、その場に倒れる

 

「はぁ……はぁ……」

 

「落ち着いた?」

 

「ええ……」

 

落ち着いたみたいで良かった……

 

「ほむらちゃん、何がほむらちゃんを苦しめてるの?教えて。」

 

「…………聞こえるの……」

 

ほむらちゃんはゆっくりと話す

 

「助けて……って……」

 

「助けて?」

 

「私を助けてって毎日聞こえるの……とても苦しんだ声で何回も何回も……」

 

「もしかして……私?」

 

「あなたが……助けてって…………それで私は助けなきゃって…………あなたが苦しんでる……嫌だ……まどか……まどか……!」

 

「ほむらちゃん……薬に頼らないで…………私はもう大丈夫……大丈夫だから……ほむらちゃんも幸せになって……」ギュ

 

私はほむらちゃんを優しく抱きしめる

ほむらちゃんは少し震えてる

 

「まどか……私は…………」

 

「ほむらちゃん、私はほむらちゃんが好き……」

 

「え?」

 

「前に戦う理由を聞かせてくれたでしょ?私ね……あれを聞いてから、ほむらちゃんの事を一人の女の子として好きになったの……」

 

「そう…………まどか、私がどうして戦い続けれたのかわかる?」

 

「私が馬鹿なお願いをしちゃったから……?」

 

「馬鹿なお願いじゃないわ、それに私が戦ってこれたのはあなたが好きだから……」

 

「え……!」

 

「私は、同性を好きになったのよ。繰り返して行く中で私はあなたが好きだった……だからよ。」

 

「じゃ……じゃあ……」

 

ほむらちゃんと私はまさかの両想い?

 

「ええ……好きよまどか……」

 

「やった……両想いだ……」

 

「じゃ、じゃあ!その……キスは?////」

 

「ふふ……」チュ

 

 

「すごい音がしたけど、大丈夫!?」

 

「ねえ、大丈夫なの!!?……あ」

 

「何があったんだ?」

 

 

 

あのあとほむらちゃんが私の幻聴が聞こえる事を話して薬にも頼っている事を話した、それからほむらちゃんの戦ってきた理由も一緒に説明をした

 

三人ともその後はほむらちゃんに一生懸命に謝って、無事に仲直り

 

ほむらちゃんはというと、またさっきみたいな状態になって薬を飲もうとしたけど、私が止めてこれからどうやって直していこうかをみんなで話しあった

 

 

 

 

 

それから一ヶ月後、薬は飲まなくなって幻聴の回数もだいぶは減っているけどまだ聞こえるらしく、ある日、早乙女先生が私のママに心臓病の事を話したみたいで、それを聞いたママはすぐにほむらちゃんの両親と話して私の家で一緒に住む事になった

 

住む理由は心臓病の女子中学生を一人で住ませるのは危ないし、私とほむらちゃんはとても仲がいいから

 

そして一緒に住む事になってから、私とほむらちゃんの仲はますます良くなり、恋人らしい事もいっぱいしたけど、同性愛と言う事はみんなに隠している

 

さやかちゃんやママからはからかわれているから、ひょっとしたらバレているのかも

 

 

 

 

 

ー終ー




基本的に他の話しとは繋がってはいませんが、そこは特に気にしなくても問題ないです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

百合少女まどか♡ほむら

ヤンデレって……なんだっけ……?




 

 

 

 

私はこの学校ですごい物を見た気がする…………。おそらく人生で初めての……。

 

それはちょうど昨日の朝……学校の靴箱で……まあ今日も見れると思うわ……。

 

どうして私かこんなに落ち着いていないのかって言うと、鹿目さんと暁美さんの異常な関係について……。

 

(鹿目さん、今日も来たのね……)

 

早朝、ほとんどの生徒はまだ登校しない。でも私は学校の二年部の靴箱に来ていた。そして少しの間、影で隠れていると鹿目さんが一人でやって来る。

 

コソコソと隠れながら靴箱の方を見ていると鹿目さんが何か靴箱の前でキョロキョロと辺りを見回し怪しい動きを取り、靴箱の中から自分のじゃない他の誰かの上靴を取り出した。

 

「む……ちゃ……ん……」

 

遠くからで声まではハッキリ聞こえないけど、鹿目さんはその取り出した上靴の匂いを必死に嗅ぎはじめる。

 

その上靴が入っていたのは一番端、つまり出席番号が一番早いあ行の人の物。私の考えられる限り、今鹿目さんが嗅いでいるのは暁美さんの上靴としか思えない。

 

(あんなに悦楽な表情を浮かべている鹿目さんなんて見たことない……)

 

別に鹿目さんに限ったことじゃなくて人間のあんな表情は今までに見たことが無かった。今の鹿目さんの表情は楽しいとか嬉しいとかの感情を遥かに超えている。

 

「ゃん…………き……あい……て……る…………」

 

その光景を遠くから見ているため何を言っているのかは分からないけど、口の動きを読んでみると「ほむらちゃん、好き、愛してる」と鹿目さんは言っていた。

 

(好きな人の靴の匂いってそんなに良いのかしら?)

 

私はあまり恋とか分からないから、今鹿目さんのやっていることに理解が出来ない。

 

世の中には同性愛とか靴の匂いとかが好きな人もいるし、恋人が出来たら私も嗅ぎたいって思うのかしら?

 

こうして考えている間も鹿目さんは幸せそうに暁美さんの上靴を嗅いでいる。

 

別に理解は出来なくても引くことはないし二人が同性愛で付き合っていることにも引くことはない。むしろ応援しているわ。

 

(まさか今日もするのかしら……)

 

本当に私が驚いているのはこの後の行動。

 

しばらく見ていると鹿目さんは上靴を元に戻し、代わりに靴箱の中から可愛らしく包装されている手紙や白いシンプルな手紙を数枚取り出した。

 

「しの…………ち……に……ちか……ない…………で……」

 

口の動きからして「私のほむらちゃんに近づかないで」と言っている。鹿目さんはそれらの手紙を一気に破っていき、跡形もないようにグシャグシャに丸めていった。

 

さっきまでの悦楽な表情から一変して今度は憎しみを込めた、鬼のように恐ろしい表情で私も少し寒気がする。

 

(またやったわ……あれって暁美さん宛のラブレター?)

 

その手紙が何なのかは分からないけれど学校中で人気のある暁美さんだから、きっとラブレター……あるいはその人気を妬む嫌がらせの手紙かのどっちかだと思う。

 

実は昨日の朝も同じように暁美さんの上靴の匂いを嗅ぐと鹿目さんは手紙を破いていた。その時の表情も今のように恐ろしい、普段の鹿目さんからは考えられないような表情だった。

 

「……」

 

全ての手紙をグシャグシャにすると鹿目さんは原型をとどめない手紙をゴミ箱に荒っぽく入れて帰っていく。

 

(えっ、まさかこれから待ち合わせ場所に!?)

 

いつも暁美さんと一緒に登校していると聞くけど、今鹿目さん一人しかいない。

 

(本当にこれから……)

 

私の予想が正しければ、鹿目さんはこれから待ち合わせ場所に行って何事もないように暁美さんと登校する。仮に毎朝じゃなくても昨日に引き続きするなら疲れて授業どころではないんじゃないかしら……。

 

 

 

 

 

 

 

「ほむらちゃん、おはよう!!」

 

「おはよう、まどか」

 

あれから少し鹿目さんの後をコソコソと追いかけていたら暁美さん、美樹さん、あと……志筑さんだったかしら?あの三人組が待ち合わせの場所に集まっていた。

 

鹿目さんは暁美さんを見ると可愛らしい笑顔で元気いっぱいに挨拶をして、恋人らしく腕を組んだ。

 

「朝からお熱いことで」

 

「あらさやかさん、微笑ましいことですわ」

 

そんな二人を目の前にして微笑んでいる美樹さんと志筑さん。あの様子だったら、二人がああやって腕を組むのは今日が初めてじゃないみたいね。

 

「ねえほむら、今日の宿題を教えてよ」

 

「別にいいわよ」

 

美樹さんは前に出て来ると両手を合わせて暁美さんにお願いする。

 

「もうさやかちゃん……ほむらちゃんは私だけの人なんだから……」

 

「ま、まどかの後ろに黒い何かが……」

 

ずっと腕を組んでいた鹿目さんは笑いながら冗談っぽく言っていたけど、その雰囲気は凍りついたように暗くて重い。

 

「これぞ愛ですわ……」

 

鹿目さんは笑っているし志筑さんは何故か微笑んでいるし暁美さんは相変わらずの無表情だけど、鹿目さんの雰囲気はどこかおかしい。

 

怒ってもいないし睨んでいるわけでもないのに、何故か今の鹿目さんはおかしいとコソコソ見ていた私にも分かった。

 

「もうこれから暁美まどかって名乗りなさい」

 

「別に鹿目ほむらでもいいわよ」

 

「ええーい!わけわからんわ!このバカップル!」

 

暁美さんの言う冗談?に半ば呆れ顔で美樹さんは言った。

 

ここまでの様子を見る限り鹿目さんは暁美さんを愛しているわね。でも……さっき一瞬だけ雰囲気が冷たくて重くなった。

 

おそらく美樹さんだけは鹿目さんの雰囲気を悟ったらしい。

 

(も、もしかして……あれがヤンデレっていうのかしら?)

 

私はヤンデレについて考えてみる。

 

確かヤンデレは病みとデレが合体したとか何とかってクラスの子が言っていた。でもデレは分かるけれど、鹿目さんの病みは何かしら……?

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーワルプルギスの夜。

 

 

魔法少女の中で最強の魔女と言われる存在で、数日前にこの見滝原市を襲った。

 

暁美さんには誰にも言えない、辛くて悲しい秘密がある。

 

暁美さんの正体……それは鹿目さんを残酷な運命から救うために未来から来た時間遡行者。

 

話しによると、未来で私や鹿目さんはワルプルギスの夜と戦って死んだらしい。暁美さんはその結末を変えるために契約して過去に戻った。

 

だけど運命は残酷で暁美さんには味方しなかった……。

 

何度同じ時間を繰り返しても鹿目さんを救えずに…………それどころか自分が繰り返す度に鹿目さんの素質は強まり、仮に契約して魔女なれば世界は10日もかからず滅ぶらしい。

 

だから魔女になるのを阻止するためにソウルジェムを撃って殺したり、鹿目さんを救うために私たちと敵対することになったりなど、暁美さんには酷すぎる現実が次々と襲いかかった。

 

中でも鹿目さんとはある約束をしたらしい「キュゥべえに騙される前のバカな私を助けてあげてくれないかな……」と。

 

だから引くに引けない状況になった暁美さんはただ一人で孤独に絶望と戦い続けた。

 

どれだけ私たちと良い関係を築き上げても結局はリセットされ、昨日までは友達だったのに、その関係すらもリセットされたから殺し合うようなことにもなったりして……さらに、しょうがないとはいえ大切な人を何度も殺すことになったり……考えただけでも恐ろしい……。

 

そんな中、暁美さんは遂に他人と関わることを諦めた。

 

(鹿目さんは暁美さんに何度も拒絶されたから次第に病んでいったのかしら……)

 

私は今、昼休みに学校の屋上で鹿目さんのことを考えていた。やっぱり鹿目さんと暁美さんの恋愛?が気になってしまう。

 

そもそも私は恋愛なんて良く知らない。だから好きな人をどう想うのかなんて分からないし、そもそもヤンデレ自体あまり知らない。

 

「あれ、マミさん?」

 

背後から声をかけられて振り返って見ると美樹さんがいた。

 

「一人でどうしたの美樹さん?」

 

いつもは鹿目さんたちと一緒にいるのに今日に限って一人なんて珍しいわね。

 

「実は今日ほむらが告られるんですよ。ほらあれ」

 

美樹さんが振り向く方向には鹿目さんと暁美さんが、今朝みたいに腕を組んで待っていた。どうやら暁美さんは告白されるらしい。

 

「えーと……相手は鹿目さんかしら?」

 

「あいつらはもう付き合ってますよ。ただ数日前から猛烈にアタックしてくる男子がいるみたいで」

 

サラッと言ったところを見ると、ずいぶん前から二人は付き合っているらしい。でも暁美さんは美人だから男子からのアタックも……。

 

「それでまどかがすごい怒って……今日その男子に文句を言うんですよ」

 

美樹さんはやれやれと言った表情になる。あの鹿目さんが怒るなんて少し考えにくかった。

 

「お?来た来た」

 

美樹さんの言う先には男子学生がいる。

 

 

 

 

 

 

「ねえ……ほむらちゃんに付きまとうのやめてくれないかな……」

 

私たちが二人を影から見ていると、バシンと大きな音が鳴り響いた。男子学生に対して鹿目さんは思いっきりビンタをしたからだ。

 

「私たちは愛し合っているの…………それを引き裂こうとしないで……」

 

バシン!バシン!と二回大きな音が鳴る。今度は連続で鹿目さんがビンタ。隣で美樹さんが初めてみる幻の「まどビンタ」と声を押し殺して笑って言っていた。

 

(鹿目さんがすごく怖い……)

 

今の鹿目さんは鬼のように恐ろしい邪悪なオーラを纏っている。いつもとは真逆な雰囲気で近づく者、全てを圧倒するような重苦しくて恐ろしい雰囲気。

 

やがて男子学生は半泣きになりながら、その場を逃げた。

 

「ほむらちゃん……これでやっと私たちの愛を邪魔する人はいなくなったね……」

 

今朝よりも数十倍、おかしな雰囲気が増した鹿目さんは暁美さんに抱きついた。

 

「ほむらちゃんは私だけを見てて……あんな人は見なくていいんだよ……」

 

「ほむらちゃん……大好き……」

 

そう鹿目さんは言うと暁美さんと深いキスをした。

 

 

 

 

 

 

「ねえ美樹さん……あれってヤンデレって言うのかしら?」

 

その光景をずっと影から見ていた私は隣で笑っている美樹さんに今の鹿目さんのことを聞いてみる。

 

「うーん、まどかは何か微妙かな……でもほむらはヤバいですよ」

 

「暁美さん?」

 

鹿目さんは微妙らしいけど暁美さんは何かヤバいらしい。

 

「今は言われるがままの状態ですけどほむらはめちゃくちゃ危ない……マジでヤバいヤンデレです……」

 

何か、とてつもなく恐ろしい物を見たかのように美樹さんは青ざめた顔をしているわ。

 

「何か見たの……?」

 

あまりにも青ざめているので私は恐る恐る聞いてみる。きっと何か恐ろしい事があるに違いない。

 

「まどかから聞いた話しなんですけど……どうやら24時間ほむらに監視されているらしくて」

 

「か、監視……それも24時間……」

 

私は驚いた、そんなスパイ映画みたいなことを実際にする人がいるなんて思ってもみなかった。

 

「当の本人は嫌がるどころか喜んでて……あと噂ではほむらに脅されたって人が大勢いるらしいんですよ」

 

「お、脅された……!?」

 

監視の次は脅し、何だかどんどん壮大になっていく。

 

「まどかと親しくしようとする女子とか男子や告白しようとする男子などを主に脅しているらしく、私たち以外の人はまどかに近づかなくて……」

 

「鹿目さん……学校で孤立しないかしら?」

 

「ほむらさえ一緒ならいいって感じですから、孤立しても平気なんじゃないですかね」

 

少しやりすぎのような……というか聞いていて恐ろしくなる。孤立しても暁美さんのそばに居たいって、本当にあの二人は愛し合ってるのね。

 

「暁美さんが鹿目さんを独占したいって気持ちは分かるわ。でも、鹿目さんはどうして暁美さんをああまで独占したいのかしら?」

 

暁美さんにとっての鹿目さんは何度も時間を繰り返す理由だし、自分の全てを賭けてまで救ったのだから分かる。でも鹿目さんは?

 

「元々ほむらへの気持ちが徐々に強くなっていたけど中々伝えられず、ほむらはまどかを遠ざけていたから……そこにワルプルギスにトドメを刺して、ほむらが死にかけたのが決め手になったんじゃないですかね?」

 

私たちだけじゃなくて鹿目さんすらも遠ざけられていた。決して笑顔も見せずに、いつまでも一人で戦って……。

 

そしてワルプルギスの夜と戦った時に暁美さんは自爆した。その結果、ワルプルギスの夜は倒せたんだけど暁美さんは酷い大怪我をして……鹿目さん以外は死ぬだろうって諦めていた。

 

「……あの二人には今度こそ一緒にいてほしいわね」

 

「そうですね」

 

今度こそ離れないように一緒にいてほしい。もう二度と暁美さんや鹿目さんが悲しむ事の無いように私たちも強くならないといけない。

 

やっと暁美さんは幸せな未来に辿り着けたのだから、だからこそ幸せな未来で鹿目さんと一緒に生きていてほしい。

 

…………ちょっと怖いけど。

 

 

 

 

ーENDー




いやヤンデレってなによ…………?

ツッコまないで……


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

長い旅の末に……

さや仁推しです。


「いい天気だね、ほむらちゃん」

 

「……ええ」

 

青い空がどこまでも澄み渡っていた。

 

そんな空の下、私はほむらちゃんと静かな公園で二人っきりでいる。

 

「まどか……足は痺れてない?」

 

「私は大丈夫だから、このままでいいよ」

 

「ありがとう……」

 

ほむらちゃんは私の膝の上に乗っかり、まるで幼い子供のように私の胸に顔を埋めていた。

 

「貴方はいい匂いがする……とても幸せな優しい匂いね……」

 

ワルプルギスの夜が倒されて戦いが終わった時、今まで自分の心を押さえつけてた代償なのか、ほむらちゃんの心は壊れてしまった。

 

「ほむらちゃんもいい匂いがするよ」

 

今のほむらちゃんを例えるなら、母親に甘える小さな子供。

 

私の膝に乗ってきて胸に顔を埋めたと思えば、そのまま何時間も喋らないまま動かなくなったり、たまに喋ったと思えばどこか現実離れした言葉を喋る。

 

「私は心も身体も血で濡れた……汚い人間よ……貴方と一緒にいるなんて本来なら許されないのに……」

 

「それは言わない約束だよ?私はほむらちゃんと一緒に居たいんだからね」

 

それに自分のことを酷く罵倒したりもするし、常に虚ろな目で返事が無い時もあった。

 

「また貴方は泣いてるの……?」

 

「……えっ?」

 

「貴方の悲鳴が……貴方の叫びが…………!」

 

そう言うと、ほむらちゃんは急に身体を素早く起こして私の膝から降りようとする。

 

もし放っておいたら、そこら辺にいる一般人が私を殺そうとする敵と錯覚して無差別に殺し始めるかもしれないから。

 

「ま、待って!私は大丈夫だよ……!!」

 

ほむらちゃんが膝から降りようとするのを私は必死に抱きしめる事で止めようとする。

 

「貴方の声が聞こえる……貴方の助けを呼ぶ声が……」

 

「私は大丈夫……だから……!!」

 

私は暴れるほむらちゃんに必死にしがみつくも、物凄い力で逆に私が押さえつけられそうになる。

 

こうなった時のほむらちゃんは簡単には止められない、だからこういう時は早く安心させなければいけなかった。

 

「……んっ……はぁっ…………」

 

どうすればほむらちゃんが安心するのか、答えは簡単だった。

 

「……私は絶対にほむらちゃんから離れないよ」

 

ほむらちゃんに私の存在を思いっきり知らしめればいい。

 

「んっ……」

 

再び深い口付けをする。

 

私の唇がほむらちゃんの柔らかい唇に触れ合った瞬間、頭が何も働かなくなる。

 

ずっとこのままでいたい、ずっとほむらちゃんとキスをしていたくなった。

 

「あっ、ほむらちゃん!?」

 

でもほむらちゃんの身体から急に力が抜けて、ガクッと私に倒れこんだ。

 

「早く……ほむらちゃんの家に……」

 

おぼつかない足取りになるも、私は何とかほむらちゃんを背中に抱えて歩き出す。

 

正直、こんな状態のほむらちゃんを誰かに見せるわけにはいかなかった。

 

もし見せたらほむらちゃんが変な目で見られる。同情ではなく腫れものを見るかのような醜い目で。

 

それだけは絶対に許せなかった。

 

誰もほむらちゃんの事を理解しようともせず、一方的に軽蔑の目で見るなんて許せない。

 

 

 

 

 

 

 

「…………まどか」

 

「ほむらちゃん!気が付いたんだね!」

 

女の子が住んでるとは思えない、とても殺風景な部屋。

 

「……また迷惑をかけたようね」

 

「迷惑じゃないよ!ほむらちゃんは私のために……」

 

ほむらちゃんは私の為にずっと一人て戦ってきた。

 

みんなに裏切られながら、みんなに傷つけられながら、心も身体もボロボロになりながら私を救ってくれた。

 

でも言い換えれば、私がほむらちゃんを壊してしまったという事になる。

 

私がわがままじゃなければ、ほむらちゃんは傷つく事は無かった。

 

「私の事なんか放っておいたらいいわ、これ以上は貴方を傷つけるだけだから」

 

何かとほむらちゃんは自虐的になる事が多い。

 

「私はほむらちゃんが好きだから……だから好きな人が苦しんでいたら私も苦しいよ……」

 

それに、ずっと戦い続けた代償として、ほむらちゃんは幻覚を見たり幻聴を聞いたりするようにもなっていた。

 

寝ている時でも悪夢を見るらしくて毎日のようにうなされている。

 

「ずっと聞こえるのよ……貴方の悲鳴が……助けてって……」

 

でも不思議と私は弱ってるほむらちゃんを見て、欲情していた。

 

こんなにもほむらちゃんは傷付いてるのに、私は最低な事を……。

 

「……ほむらちゃんは辛いことを溜め込み過ぎてるんだよ」

 

ほむらちゃんが弱ってるのにつけ込んで、私は自分の快楽を満たそうとしていた。

 

私だって、ほむらちゃんにずっと抱きしめられていれば変な気分になったりもする。

 

「一人で何もかも抱え込み過ぎちゃうから、変な物を見たり聞いたりしちゃうと思うの」

 

ゆっくりと私はほむらちゃんの両頬に手を添えた。

 

「だから溜め込んだ物を吐き出そっか……」

 

「まどか……」

 

そのまま私はゆっくりとベッドに倒れこんで、ほむらちゃんに押し倒されているような姿勢になる。

 

「スッキリするまで……私をメチャクチャにしたらいいと思うな……」

 

荒治療かもしれないけど、ほむらちゃんは嫌な事も悲しい事も一人で溜め込んでいるから心が壊れているんだと思う。

 

「私はもう自分を抑えられない……貴方を傷付けるだけだから……」

 

だから何もかも忘れるぐらいに吐き出させれば、きっと少しはよくなるに違いないと思った。

 

「私ね、ほむらちゃんになら何をされても嫌だって思わないの」

 

それに私自身も溜まった欲望を解放したい。

 

「だから……いいよ…………?」

 

「まどか…………」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー私の隣には、何も衣服を纏わないまどかがいる。

 

安らかな寝顔はとても可愛らしく、とても愛しい。

 

「ワルプルギスの夜という鹿目まどかと契約できる最大のチャンスを潰されたし、もう君には負けを認めるよ」

 

そんな時、もはや腐れ縁とも言える存在インキュベーターが現れた。

 

「愚かなものね。最初から負けを認めていれば無駄な時間を使わずに済んだのに」

 

「全く……それはそうと、ワルプルギスの夜との戦いが終わってからの君の行動は理解しがたいね。急におかしな言動をとっていたのは何故だい?」

 

しばらく私の馬鹿みたいな行動を監視していたのか、インキュベーターは言った。

 

「お前たち……いえこの世の誰にも理解できないでしょうね」

 

「つまり?」

 

わざわざ馬鹿みたいな行動を取っていたのは理由がある。誰にも理解されるはずのない、私にしか分からない理由。

 

「この子には私だけを見て私だけの事を考えて生きてほしい。家族や友人のことなど考えず、私だけの為に生きててほしい」

 

そう、私は鹿目まどかという女の子を独り占めにしたかった。

 

その姿は私だけが見て、その声は私だけが聞くのを許される。

 

「言い換えるなら、この子は私だけが独占していたいのよ」

 

他の誰かがまどかに近付くのも許さない。この子はずっと私だけを見ていてほしい。

 

「君は……」

 

「長い戦いの末、私は究極の感情へ辿り着いた。どんな希望よりも遥かに強い力、どんな絶望も勝つ絶対的な力……」

 

「愛よ」

 

「君ほど猟奇的な少女は中々いないね」

 

感情を持たないはずのインキュベーターでも私の愛の異常性を見出している。

 

「簡単だったわ。キチガイな女を演じるだけで、この子は自然と私だけを見てくれるようになるのだから」

 

別に私は自分の愛が正常だと言う気はない。愛なんて感情は人それぞれ違って、それぞれが理解できない愚かな感情なのだから。

 

「やれやれ。人類は……いや君の感情は少し危険すぎる」

 

「何とでも言いなさい」

 

隣で寝ているまどかの頬に手を添える。

 

この子が私のものになるなら、私はどんな手段でも使う。

 

思えば、私はこの子の全てを手に入れる為に戦ってきたのかもしれない。

 

髪の毛一本から爪先までの全てを私だけの物に。

 

「もう貴方は二度と離さない……ずっと私だけのものよ……まどか…………」

 

 

 

 

ーENDー




たまにはいいじゃない、こういうのあっても……!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

暁美ほむらが謎の光と遭遇したようです

ワルプルギスの夜と戦ってる最中に、宇宙じゃないけどウルトラマンダイナの光と出会ったという話です。

続きません。

小説版まどマギ風に書いてみた…………いや、めがほむ出てこないけど。


ーーーーー鹿目まどか。

 

この永遠に繰り返される惨劇を終わらせてくれる唯一の“希望”で、皆を幸せな結末へ導く最後の道しるべ。

 

それが『鹿目まどか』という心優しい女の子です。

 

でも物語はいつも残酷な結末を描きました。

 

ある時は絶望に身を委ね、ある時は理不尽に殺されて。

 

どうしてあの子は辛い悲劇に襲われるのだろう?

 

どうしてあの子の周りの人々は絶望で終わってしまうのだろう?

 

この疑問が私の中から消える事はありませんでした。

 

鹿目さんの悲しむ結末を変えたい。鹿目さんを幸せにしてあげたい。

 

かつて鹿目さんと交わした一つの約束と共に、私は永遠とも思える時間の中で戦い続けてきました。

 

 

そうーーーーー

 

 

残酷な運命を相手に私は戦い続けてきたのです。

 

 

 

 

 

 

私たちの住む町、見滝原市は酷い惨状でした。建物や木々も無惨に崩壊し、死体の数は山となって積み重なっています。

 

言い換えるなら地獄の世界。

 

「アーハッハッハッハッハッ!!!!!!」

 

そんな光景を嘲笑う一体の怪物がいました。

 

大きなドレスのような服を着て、巨体を逆さまにしながら壊滅した見滝原市を嘲笑っています。

 

「…………」

 

そして、こんな惨劇に立ち向かう一人の黒髪の少女が怪物と対峙していた。

 

「…………」

 

その黒髪の少女である“私”は身体中から血を流しながらも右手に握られた何かのリモコンのスイッチを押します。

 

 

その瞬間、大地が揺れる轟音と共に目の前の怪物を一つの巨大な火柱が包んだのでした。

 

 

「キャッハッハッハッハッ!!!!!!」

 

しかし怪物は巨大な火柱を物ともせずに自分の起こす暴風で、周囲の建物と共に炎を吹き飛ばしてしまいました。

 

「諦めない……今度こそは……」

 

何度も何度も鹿目さんを絶望の淵へ叩き落としてきた怪物『ワルプルギスの夜』を睨み付けながら、私は呟きます。

 

そして戦いは続きました。

 

「っ……」

 

私は自分の魔法で時間を止めると同時に、盾から大量の重火器を取り出し順番に撃って行く。

 

「キャッハッハッハッハッ!!!!!!」

 

大量の重火器でも怪物は倒れません。一つ一つの武器を確実に命中させていけば必ず倒せると信じて私は攻撃を続けます。

 

「アーハッハッハッハッ!!!!!」

 

だけど、おもちゃの人形を扱うように私を攻撃してきました。次から次へと迫り来る攻撃を避けていく。

 

「っ!」

 

そして再び時間を止めてタンクローリーを怪物の近くまで魔法で飛ばし、一個の爆弾と共に時間を解除しました。

 

「アーハッハッハッハッ!!!!!!」

 

再び巨大な爆発が起こりますが、怪物はただ私を馬鹿にしているかのように嘲笑っているだけだったのです。

 

「はっ……!?」

 

気付くと私の後ろには巨大な高層ビルがありました。

 

咄嗟に魔法で時間を止めようとしましたが盾を見ると、もう時間が止められない状態だということが分かります。

 

「っ……」

 

「キャッハッハッハッハッ!!!!!!」

 

そのまま私は複数のビルを叩きつけられて遥か彼方まで飛ばされてしまいました。

 

 

 

 

 

 

 

「まだ負けてない……」

 

身体にのしかかる瓦礫を退かして、私はフラフラと立ち上がります。

 

「うぅ……」

 

でも身体中を走る痛みと疲弊で片膝を突いてしまった。

 

「繰り返す……私はまた繰り返すの……?」

 

ふと盾を見ると、これ以上は時間が止められないということが分かって武器も僅かとなっています。

 

もう勝てるような状態ではないと分かりました。このまま戦っても勝ち目なんてない、だからまた繰り返してしまうの?この惨劇をまた起こしてしまうの?と自問自答を繰り返した。

 

「暁美さんっ!!」

 

そんな自問自答をしていた時、聞き覚えのある声が私の耳に入ります。

 

声の聞こえる方を振り向けば、そこには黄色の衣装を身に纏う少女『巴マミ』が深刻そうな表情で向かっていた。

 

「巴マミ……何しに来たの……」

 

「何しに来たじゃないでしょ…………こんなに酷い怪我をして……」

 

慌てた様子で駆け付けた巴さんは私に手をかざし、黄色の光によってもたらされる治療の魔法を私にかけてくれました。

 

「余計なお世話よ……そんな事より使い魔はどうしたの?」

 

でも私は無理矢理に巴さんの手を跳ね除けて、治療を拒否して言います。

 

「今は貴方の方が大事よ!こんな怪我じゃ“本当”に死ぬわよ!?」

 

魔法少女の身体は普通の人とは少し違います。

 

私たちの“本体”である魂の宝石『ソウルジェム』は自分の命そのもので、このソウルジェムが割れたり砕けたりすれば命を落としますし、100メートル以上の距離を開けると身体はコントロールを失って倒れます。

 

逆に言えば“抜け殻”である身体は、どんなに傷付いても死ぬことはありません。

 

「前に聞いたはずよ……私が戦い続ける理由を……」

 

「貴方が死んだら鹿目さんは…………」

 

しかし流石に魔法少女の身体であっても、身体をバラバラにされたり身体が再起不能にまで傷付けばコントロールを失って結局は二度と起き上がれなくなります。

 

「あの子の意思なんて関係ない……あの子が救われれば……それでいい……」

 

そう言うと私は立ち上がる。目の前を怪物を睨み付けながら。

 

「アーハッハッハッハッハッ!!!!!!!」

 

でも私たちの事なんてお構いなしに怪物は嘲笑いながら攻撃の手を向けてきました。

 

「「…………」」

 

「そんな……使い魔はさっき全部倒したはずなのに……」

 

巴さんは驚きの口調で言いました。

 

それもそのはずです、目の前には何十体という数の魔法少女の姿を模した影の使い魔が現れて私たちに向かって行進していたのですから。

 

「あいつらは何度でも蘇る、だから何度でも倒し続けるのよ……」

 

「駄目よ!そんな怪我じゃ殺されるわ!」

 

既にボロボロの身体で私は絶望の軍勢に立ち向かいます。でも巴さんは私を心配して腕を掴み離してくれません。

 

「あの子を救えるなら……喜んで死んでやるわよ……!」

 

でも私は無理矢理に巴さんを振りほどき、一人で絶望の軍勢に立ち向かいました。

 

「暁美さんっ!?」

 

後ろからは巴さんの悲鳴が聞こえます。

 

もう巴さんも分かっていました、私たちに勝ち目はないと。

 

 

 

 

 

 

 

(諦めるわけにはいかない……あの子の未来の為にも……!)

 

だけど私は戦いを挑みます。ほとんどの火力でも巴さんと“二人きり”で戦っても怪物は倒れる様子はなく、圧倒的な力で攻めてきました。

 

「…………!」

 

そんな私の前に二人の人影が現れます。

 

「…………」

 

一人は黒い影のマントを翻し、正義のヒーローのように剣を構えるも絶望して死んでいった魔法少女『美樹さやか』の影。

 

「…………」

 

もう一人は家族を失い正義を失いながらも、かつての自分のように正義のヒーローを目指した親友と共に死んでいった魔法少女『佐倉杏子』の影。

 

「亡霊め…………」

 

そんな亡霊のように見える二人に向かって舌打ちしながら、私は盾に残っていた機関銃を取り出して撃ちます。

 

「…………」

 

「…………」

 

でも美樹さんの影は目にも止まらぬ速さで弾丸を次々と避け、佐倉さんの影は自身の魔法である幻惑魔法によって本体には命中しませんでした。

 

「「…………」」

 

「くっ……しまった……」

 

諦めずに機関銃を撃ち続ける私の両腕を二人の影は掴み、私は身動きを封じられてしまいます。

 

 

「ティロ・フィナーレ!!」

 

 

でも巴さんの声が聞こえると同時に二人の影は巨大な砲撃によって吹き飛ばされてしまいました。

 

「暁美さん……これ以上はもう……」

 

ふらつく私を支えながら巴さんは弱々しい声で言います。

 

「逃げたければ逃げなさい……こいつらは私が一人で倒す……」

 

目の前には再び何十体という絶望の軍勢がいました。私にも勝てないということは分かっています。

 

「美樹さんも佐倉さんも死んでしまった……なのに貴方まで死んだら鹿目さんの気持ちは…………」

 

「だけど諦めるわけにはいかない……あの子の未来の為にも……」

 

私は再び同じ言葉を呟きます。

 

諦めるということは私にとって『死』を意味します。いつかどこかの世界で鹿目さんは泣きながら私に言いました。

 

“キュゥべえに騙される前の、馬鹿な私を助けて”

 

その言葉は私にとって衝撃的なものでした。弱い自分から生まれ変わり、鹿目さんを助けるという約束を叶えるためにも私はここで挫けるわけにはいかないのです。

 

「アーハッハッハッハッハッ!!!!!!!」

 

「「「………………」」」

 

何十体という絶望の軍勢にボロボロな私たちを嘲笑う怪物。

 

こんな惨劇はいつ終わるのだろう?いつになったら失くしてしまった未来を取り戻せるのだろう?いつ鹿目さんや皆が笑い合える日が来るのかな?

 

「私は諦めない…………」

 

そして、私は走り出しました。

 

きっと今回は惨劇を終わらせれる、あの未来も取り戻せて皆が笑顔になれると信じて。

 

「暁美さんっ…………!」

 

巴さんも銀色の銃を構えながら走り出します。

 

「キャッハッハッハッハッ!!!!!!!」

 

「きゃあ!!」

 

でも怪物の禍々しい光弾に巴さんは直撃してしまい、思いっきり地面へ叩きつけられてしまったのでした。

 

「巴マミ……」

 

いつも仲間を見捨てて来た私は、唯一生き残った仲間が倒れたのを見ても迷わずに進もうとします。

 

「暁美……さん……貴方だけでも……逃げ……て……」

 

だけど巴さんの身体は限界が近付いてきて、苦しそうな声を出しながらも私だけでも逃げるようにと心配していました。

 

「……立ちなさい」

 

いろんな世界で何度も仲間を見捨てた私は、不思議なことに身体が自然と巴さんの方へ駆け付けてしまいます。

 

「暁美さん……何で……」

 

「…………」

 

何で自分でも倒れた仲間を見捨てれなかったのか不思議に思います。こんな自分にもまだ人間らしい感情が残っていた事に戸惑うも、巴さんの身体を起こしてあげました。

 

「アーハッハッハッハッハッ!!!!!!!」

 

でも怪物たちは、すぐそこにまで接近しています。確実に私たちに死が迫っていました。

 

「こんなところで諦めるわけにはいかないのよ…………!」

 

鹿目さんの笑顔が脳裏に浮かびあがり、私は再び決意します。今度こそ鹿目さんを残酷な運命から救ってみせると。

 

 

 

でもその時、“奇跡”が起こりました。

 

 

 

「暁美さん……貴方……身体が……」

 

「えっ…………」

 

巴さんに言われて自分の両手を見てみると、白くて眩い“謎の光”が溢れ出していました。

 

この絶望の惨劇を照らしてくれるように、その光はとても強い輝きを解き放っています。

 

「どういうことなの…………」

 

巴さんは驚きの表情のまま呟くも、私の身体はどんどん溢れ出す光に包まれていった。

 

「私が……私が光になっ……て………………」

 

その言葉を言い終わる前に全身が光に包まれ、私のいた場所に巨大な光の柱が立ち上ります。

 

「「「………………」」」

 

その光は影の魔法少女であった怪物の使い魔たちを蹴散らし、柱は天に届きそうな勢いで膨らみました。

 

「一体何が起こったの…………暁美さんは……?」

 

気が付けば、巴さんの目の前には私を取り込んだ巨大な光の柱が立ち上っています。

 

何十メートルもある光の柱は絶望で覆われる見滝原市を救いに来た“希望”に見え、諦めかけていた巴さんの心を立ち直らせた。

 

 

そして、その光の中から現れたのは…………。

 

 

「…………」

 

 

何十メートルもの身長に赤・青・銀色の体色をした光の巨人が立っていたのです。

 

「アーハッハッハッハッハッ!!!!!!!」

 

突然と現れた光の巨人に興味を持った怪物は巨体を向けながら迫ってきました。

 

「シュワ!!」

 

光の巨人となった私は両腕を十字に組むと同時に怪物へ向けます。

 

「アッハッハッ……ハッ………ハッ………」

 

すると私の両腕から青色の光線が怪物に命中し、怪物は凄まじい勢いで爆散して倒されたのでした。

 

「あのワルプルギスの夜を一撃で……」

 

僅か一分にも満たない早さで怪物を倒した事に巴さんは驚くばかりです。

 

魔法少女が二人がかりでも傷一つ与えられなかった怪物は光の巨人の光線により、呆気なく倒されました。

 

「すごい…………」

 

巴さんは今の私の姿を、絶望で覆われた町を救いにきた希望の光のように見えています。

 

「…………」

 

今日この日、私の長い旅は終わりました。

 

突然と遭遇した謎の光によって。

 

 

ーENDー




…………え?誰かいない?


誰か続きを書いてもいいのよ?もうありそうだけど。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

幸せな希望の囀りへ

幾度なく時間を繰り返し残酷な運命と戦い続けた少女、暁美ほむら。

最悪の絶望を前にして彼女が……

見つけ出した答えとはーーー

導き出した結末とはーーー

今ここに……暁美ほむらの物語は終わりを迎えるのであった。

最終話改変、ワルプルギスの夜VS暁美ほむら。

一部設定の捏造あり、ゲーム版要素あり、大袈裟な過剰演出ありです。


幸せな希望の囀りへ

 

 

 

 

 

 

鹿目まどか。

 

あの子はいつだって希望だった。

 

全ての魔法少女……そして私にとっての……

 

たった一つの道しるべで……最後に残された希望……

 

「アーハッハッハッハッ!!!!!」

 

だけど、その希望を絶望に塗り替える存在がいる。そいつは見下すかのように、馬鹿にしてるかのように私の信じていた希望を次々に打ち壊していった。

 

「今度こそ……必ず……」

 

目の前に残酷だけども美しい炎の火柱が立ち上る。一体どれだけの建物が壊れたのかしら。もしかしたら避難所にいた市民もいて死んだかもしれない。

 

「キャハッハッハッハッ!!!!!」

 

でもアイツはただ平然と笑うだけだった。まるで私を嘲笑うかのように。

 

(負けない……!)

 

私は絶望に向かって駆け出す。でも一緒について来てくれる仲間はいない。

 

「アーハッハッハッハッ!!!!!」

 

ある仲間は……本当は一人になるのが寂しいのに、憧れて頼りになる先輩のままでいようとして死んでいった。

 

「っ!!」

 

ある仲間は……町も友も全てを守る正義の味方になろうとして、自らの悲惨な運命と戦って死んでいった。

 

「アーハッハッハッハッ!!!!!」

 

「くっ……」

 

ある仲間は……自分だけの為に戦うと決めたのに優しさを捨てきれず、大切な友と運命を共にして死んでいった。

 

「アーハッハッハッハッ!!!!!キャッハッハッハッハッ!!!!!」

 

大量の爆弾を受けてもアイツは倒れない。「効かない」「無駄だ」と言わんばかりに笑い続ける。

 

「……!」

 

私は時間を止めると同時に盾から、すっかりうち慣れてしまったRPGを大量に取り出し順番に撃って行く。

 

「ウフフ…………キャッハッハッハッハッ!!!!!」

 

同じようにアイツは倒れない。例え今すぐに倒せなくてもダメージを溜めていけば必ず倒せる。一つ一つ、全ての武器を確実に命中させていけば……。

 

「アーハッハッハッハッ!!!!!」

 

人形のオモチャを扱うように私を攻撃してくる。当然私は次々と避けていくが、まるで遊ばれているようだった。

 

「っ!」

 

再び時間を止めてタンクローリーを近くまで飛ばし、起爆装置と共に時間を解除した。

 

「アーハッハッハッハッ!!!!!」

 

「はっ……!?」

 

巨大な爆発が起こるが、アイツはただ馬鹿にしているかのように嘲笑っているだけ。そして気を取られた隙に背後からビルを複数叩きつけられる。

 

 

 

 

 

 

 

(私は……まだ負けない……)

 

ビルを叩きつけられ、私は乱暴に地面へと落下する。アイツと私との力の差は歴然だった。戦闘が始まってから数十分しか経っていないのに既に私はボロボロで武器も半数を使っている。

 

「ウフフ…………アーハッハッハッハッ!!!!!!」

 

私はフラつきながらも懸命に立ち上がる。アイツはボロボロの私を見て笑っているだけだった。数多の世界で私を嘲笑い、大切な人を奪っていった絶望の存在。その絶望を打ち砕くなら、どんな犠牲を払ってでも構わない。

 

(いつもそうやって……笑っていられると思わないで……)

 

私は再び時間を止めて盾から一回り大きなミサイルを取り出し、それをアイツの真上まで運ぶと盾から他のミサイルを数十発ばら撒きながら飛び降りた。

 

時間を解除すると同時に今までで一番大きな爆発が起こり、地獄と思わせる巨大な炎の柱は私もろとも全てを吹き飛ばす。

 

その炎は建物、植物、私、ワルプルギスの夜、全てをその場から吹き飛ばしていった。

 

 

 

 

 

 

 

酷い光景だった。町の半分は焼かれ、建物は崩れ落ち、植物は焼け去った。

 

私の体も満身創痍の状態、傷口はもはや数え切れず多数の火傷を負っていただけではなく時間を止めれるのはあと僅か。

 

「……アハハ…………ウフフ…………アーハッハッハッハッ!!!!!!!!!!」

 

「あと……もう少しで…………」

 

そして流石に今のミサイル群が効いたのか、身に纏うドレスはボロボロのワルプルギスの夜が炎の中で笑っていた。しかし様子がおかしい。

 

「アーハッハッハッハッ!!!!!!!!!!アーハッハッハッハッ!!!!!!!!!!」

 

自分の舞台が思うように進まなかった事に業を煮やしたのか、狂ったかのように笑い叫んでいる。

 

「やっと本気を出したのね……」

 

笑い叫ぶアイツの体は回転をし始めた。逆さまになっていた体が徐々に上へと回転を始め……そして…………。

 

「うっ……!」

 

「キャッハッハッハッハッ!!!!!!!!!」

 

回転が終わると同時に辺りをとても強い暴風が襲う。しっかり踏ん張っていないと体が吹き飛ばされそうで、一般人なら体が引き裂かれるかもしれない。

 

ワルプルギスの夜が元の位置に戻った時こそがアイツの本気、その戦闘力は現実世界をひっくり返すとも言われる。つまり、アイツが本気を出さなければいけないほど追い詰めたということ。

 

「アーハッハッハッハッ!!!!!!!!!!」

 

何か号令をかけるように笑い出したと思ったら、私の目の前で見覚えのある人の形をした四つの何かが形成されていく。

 

「……」

 

黄色の衣装に身を包み華麗な姿を見せる少女、巴マミ。

 

「……」

 

真っ白な白いマントを翻す正義の味方、美樹さやか。

 

「……」

 

赤を基調とした服に勇敢な姿に見える、佐倉杏子。

 

「……」

 

そしてピンクの可愛らしい衣装で、見る者を明るく元気にさせる、全ての魔法少女の希望である鹿目まどか。

 

どこからどう見ても本物の彼女たちにしか見えなくて、とても使い魔には見えない。アイツは私のよく知る者たちを自身の舞台に登場させたらしい。

 

「「「……」」」

 

それだけでは無い。彼女たちを登場させた後、アイツは地平線を埋め尽くすおびただしい数の使い魔を登場させてきた。

 

それは数十体という規模では無く、数千……数万体にも及ぶ使い魔の大群が、ユラユラと揺れ動く炎の中で徐々に接近している。

 

「「「…………」」」

 

「アーハッハッハッハッ!!!!!!!!!!」

 

 

私の目の前には数万体の使い魔、そして今はもういない仲間たちの偽者、それに……大切なあの子の偽者に私を嘲笑い続けるワルプルギスの夜。

 

「これが……これが絶望……」

 

一人VS数万体。

 

力の差が歴然だった。アイツの使い魔は一体一体が通常の魔女に匹敵するのに、それが数万体。さらに偽者とはいえ、おそらく強さもコピーしたと思われるあの四人。

 

でも私はまだ運がいい。幸いにもまどかから感じる魔力はこの時間軸のまどかよりもだいぶ低い。

 

最初ら辺の時間軸と同じぐらいだった。

 

(また強くなってる……)

 

時間を繰り返すたびにまどかが強くなっていったと同じようにワルプルギスの夜も強くなっている。現段階でここまで強くなったのなら、ここで倒せないと後先に倒せるとは…………

 

 

「一人ぼっちにならないで……」

 

 

「っ…………」

 

その声はまどかにそっくりだった。口調も何もかもそっくりで、それが逆に辛い……。

 

「アーハッハッハッハッ!!!!!!!」

 

アイツの笑い声で現実に戻される。しかしその時には遅かった。

 

「シューティングスティンガー!」

 

「編み込み結界!」

 

美樹さやかの持つ剣の刃の部分が射出され、佐倉杏子が作り出した結界の中に吸収されたと思うと、赤い鎖のついた刃が私を目掛けて向かってきた。

 

「こんな技……」

 

私は刃を次々と避けていくが追尾性があるのか、私を追いかけてくる。

 

「行くわよ鹿目さん!」

 

「はい!」

 

 

「「ティロ・デュエット!!」」

 

 

まどかの弓と巴マミの銃から繰り出される合体技が私に目掛けて繰り出された。

 

「……ちっ」

 

私は盾で二人の攻撃を防ぐが他方向から美樹さやかと佐倉杏子の合体技が迫ってきていた。

 

「うっ……!」

 

盾では防ぎ切っても全ての刃は防ぎ切れずに体の数カ所を串刺しにされる。

 

「今だ!」

 

美樹さやかが叫んだと思うと串刺しにしていた剣が一斉に爆発して、私を肉ごと抉った。

 

(うぅ……こんな技……見たこと……)

 

これでコイツラがただのコピーじゃない事が分かった。さっき彼女たちが繰り出した技を私は見た覚えがない。

 

他の時間軸には存在しない技で、見事に連携が取れている。だから彼女たちの攻撃パターンも知り尽くしていても、これでは太刀打ちできない。

 

「はっ!」

 

巴マミが高く跳躍したと思うと彼女の周りに大量の銃が召喚され、それらが一斉に火を吹いた。

 

「……!」

 

私はすぐさま立ち上がり時間を止めてから盾から大型の銃を取り出して、巴マミの銃と対抗するように撃っていく。

 

「……!」

 

弾丸が切れるまで撃ち終えると再び私は跳躍して爆弾をばら撒いて時間を動かす。

 

「っ……」

 

「しまった!」

 

「くそ……!」

 

辺りを爆発が襲い、三人を吹き飛ばす。そして巴マミから撃たれた弾丸が数発私の体を撃ち抜くも私の撃った弾丸が巴マミを数カ所だけ撃ち抜き、彼女を地面に叩きつける。

 

「負けるかぁ!」

 

マントを盾代わりに爆弾を凌いだのか、炎の中から美樹さやかか勢いよく剣を構えて突進してきた。

 

「……」

 

私は再び時間を止めて美樹さやかに近づき、盾から日本刀を取り出し、剣を構えていた右腕を切り落とそうと日本刀を振るいながら時間を動かした。

 

「あうっ……!」

 

時間を動かすと同時に美樹さやかの右腕は私に切り落とされて無様に中を舞い、彼女は滑り込むように地面に叩きつけられた。

 

「おらっ!」

 

「……」

 

途端に、佐倉杏子が槍で突き刺そうと突進してくるが私は日本刀を彼女に向けて投げ、腹部から串刺しにして地面に叩きつけた。

 

「なに……」

 

倒れこむ佐倉杏子を見届けると私の今いる地面が盛り上がるようにして爆発する。

 

「ほむらちゃん……もう一人にならないで……」

 

爆発によって地面に叩きつけられ、振り返ってみると弓を構えたまどかが立っていた。

 

「暁美さん……もう一人で苦しまないで……」

 

体の数カ所から血を流した巴マミが悲しそうな瞳で私を見つめる。

 

「あんたはもう……一人じゃない……」

 

右腕を切られてもなお立ち上がる美樹さやかも悲しそうな瞳で私を見つめていた。

 

「もうあんたにだって……仲間はいる……」

 

腹部に突き刺さった刀を抜く佐倉杏子も悲しそうな瞳で私を見つめている。

 

「亡霊め…………」

 

使い魔なのにそうは見えない彼女たちに向けてそう粒やいた。その悲しそうな瞳も声も私は知っている。

 

いつだって彼女たちは未来を受け止めず希望を信じなかった。なのにいつも仲間を信じては裏切られ、絶望し、まどかを苦しめる。

 

(仲間なんていらない……私はまどかを救えればそれでいい……)

 

「コラテラルエッジ!」

 

美樹さやかが上から剣を振りかざしてくるのを見て、私はなるべく距離を取ろうと避けた。

 

(時間を止めるのは最低限にしましょう……)

 

あまり後がない、一々止めていたのでは肝心のワルプルギスの夜の時に時間を止められない。だからなるべく時間を止めずに戦わなければならなかった。

 

「打突!」

 

剣を避けたが後ろから佐倉杏子が槍で突進してくる。

 

「はぁ!」

 

「……!」

 

私は盾から日本刀を取り出し槍を刀で防ぐが前から美樹さやかが剣で突進してくるのを見て、もう一本の日本刀を取り出し剣を防ぐ。

 

(重い…………はっ……!)

 

「ティロ・ドッピエッタ!」

 

二人がいきなり飛び退いたと思うと私の頭上から巴マミが銃を連射してくる。

 

「こんな時に……」

 

私は頭上から降り注ぐ弾丸を二本の刀で切り落としていくが、全ては切り落せずに体の数カ所を撃ち抜いた。

 

「ホーミングアロー!」

 

体を撃ち抜かれて怯んだ隙にまどかが矢を数発撃ってくる。

 

「っ!」

 

私は慌てて飛び抜くが、追尾性があるのか矢は私を追いかけてきた。

 

(回避は間に合わない……)

 

そう判断した私は時間を止める。

 

「これで……!」

 

私は高く跳躍すると盾からミサイルを取り出し、地上に向けて放つが…………

 

(しまった……時間が……!)

 

止めていたはずの時間が勝ってに動いた。もう時間切れらしいため、ミサイルが中途半端な位置の空中で爆発することになり、私の体を吹き飛ばした。

 

「キャッハッハッハッハッ!!!!!!!」

 

「「「…………」」」

 

地面に再び叩きつけられた時に迫っていた数万体の使い魔とワルプルギスの夜が私を取り囲む。

 

「くっ……」

 

「「「…………!」」」

 

私は盾から銃を取り出し使い魔たちを撃っていくが数が多すぎるため一行に減る気配はなく、私にしがみついて噛み付いたり引っ掻いたりしていく。

 

「数が多い……!」

 

「アーハッハッハッハッ!!!!!!!!」

 

振り払うようにして使い魔を次々と撃ってはいくが、私の体は抉られていく。そして私を馬鹿にするかのようにしてアイツは笑っていた。

 

「それっ!」

 

「っ……」

 

掻き分けるようにして美樹さやかがあらわれて、私に向かって剣を投げつけるが銃で剣へ撃つ。

 

「なっ……」

 

しかし剣は霧のように消えて弾丸は虚空を通り抜ける。そして次の瞬間、全方位から私は美樹さやかの剣に串刺しにされた。

 

「かかったな!」

 

続いて佐倉杏子が槍を複数投げつけ、私の体をさらに串刺しにしていく。

 

(さっきのは佐倉杏子の幻惑魔法……こっちが本物であれは偽物……)

 

剣が霧のように消えていったのは佐倉杏子の幻惑魔法。このコピー達は本物よりも強い。

 

「ボンバルダメント!」

 

巴マミが巨大な銃の上に乗りながら私に向けて放ち、それは私の胸部を中心に撃ち抜いた。

 

「うっ……」

 

そして暴発するかのように突き刺さっていた剣や槍が爆発して私をさらに抉っていく。辺りには血と肉片が飛び散る。

 

(ソウルジェムを狙ってこない……つまり私はアイツのオモチャにされている……)

 

使い魔と偽者の彼女たちもソウルジェムを狙わず、比較的にダメージの少ない部分を狙っている。アイツは私を散々弄んでから殺す気だということがよく分かった。

 

「シューティングスター!」

 

まどかの最強の必殺技であり、最強の攻撃力を誇る大量の矢が私を目掛けて飛んでくる。

 

「ティロ・フィナーレ!」

 

巨大な戦車にも見えなくないオシャレな装甲車が私に向けて砲塔から弾が放たれた。

 

「エクスカリバー!」

 

巨大であり美しい剣は確実に私を捉えていて、その剣の刃が私に振り下ろされた。

 

「最後の審判!」

 

この技には見覚えがある。佐倉杏子が巨大な槍の上で祈り続け、巨大な槍は私に向かってきている。

 

「「「…………!」」」

 

「ウフフ…………アーハッハッハッハッ!!!!!!!」

 

そして数万の使い魔が一斉に私に攻撃してくる中、ワルプルギスの夜は怪しげな光弾を大量に放ち、大型ビルを複数一気に投げつけてきた。

 

「まずい……」

 

流石にこれだけの攻撃を一度に受けたら体が持たない。しかし時間はもう止められないため、盾で防御するしか無かった。

 

(まだ……まだ私は……)

 

彼女たちの攻撃が私の盾にぶつかり腕が砕けそうになるぐらいの衝撃が襲うが、私は負けられない。あの子を絶望の淵から救うまでは絶対に負けられない。

 

あの子はいつだって諦めなかったように、私だって諦めない。だからそのためにも……今ここで……死ぬわけには……………………

 

 

 

 

 

 

 

『〜〜〜!』

 

それはいつの時間だったのか……巴マミの家に皆が集まっていた。

 

『〜〜〜』

 

巴マミの指導の元、まどかと美樹さやかと佐倉杏子が楽しそうにケーキを作っている。

 

『〜〜〜!』

 

おぼつかない手つきで危なかっしい部分もあるけど楽しそうにケーキを作っているまどか。

 

『〜〜〜!』

 

ケーキ作りに慣れてないまどかに丁寧に優しく指導をしていて、どこか楽しそうなマミ。

 

『〜〜〜!』

 

イチゴやらクリームを準備している最中、コッソリとイチゴをつまみ食いする杏子。

 

『〜〜〜!』

 

つまみ食いをした杏子に気付き、笑いながら注意をするさやか。

 

これは、もう二度と思い出せない遠い過去の記憶。だけどこれだけは思い出せた。この時、彼女たちは幸せだったこと。

 

魔法少女や魔女という事も忘れていられ、みんなが笑っていられる優しい時間。だけどその優しい時間に私は必要とされない。

 

この時にはもう、私はずっと孤独で永遠の迷路から抜け出せれない存在になっていた。

 

自分を騙し続けて、みんなを傷つけて、あの子のために多くの人を傷つけすぎた。だからこの時間に私は必要ない。

 

 

『ほむらちゃん、こっちにおいで』

 

 

(私はもう誰にも必要とされない人間……貴方の運命を救って私は死ぬ……)

 

 

『ほむらちゃん、私たちは友達だよ。これからもずっと』

 

 

(例え貴方を何度も裏切ることになっても……貴方を何度も傷つけても……私は貴方を救う……)

 

「救う」それこそが、この長い長い旅で見つけた答え。

 

何度倒れても私は立ち上がり、貴方を救うために戦い続ける。私は貴方が幸せになるために今も生きている。

 

まどかを救うことが旅の答え、そしてあの子の物語の結末は幸せな形で終わる。なら私は…………

 

 

 

 

 

 

 

「うっ……」

 

気がついた時に町のほとんどは壊滅状態だった。あの総攻撃で私は大きく吹き飛ばされて深いダメージを負ったらしく、正直もう戦える状態ではない。

 

グリーフシードは尽き、体中から出血していて原型をとどめていない体の部位もある。ソウルジェムが割れていないのは奇跡に等しかった。

 

「アーハッハッハッハッ!!!!!!!!」

 

もう戦えないと分かったのかアイツは数万の手下を率いて、地獄を連想させる炎の光景の中で笑い叫んでいる。

 

「「…………」」

 

そして四人の彼女たちは全員、悲しそうな瞳で私を見つめている。

 

「こっちにおいで……ほむらちゃん……」

 

偽者のまどかは相変わらず本物と一緒の優しい声をしている。

 

「私たちは友達だよ……だから……私と一緒に逝こう……楽になろう……?」

 

「本物は……そんなことを言わない……」

 

私は盾に残る武器を全て取り出して、その内一つだけ特に目立っている超大型のミサイルの起爆装置を作動させる。カウントは十秒。

 

「ほむらちゃん……」

 

「暁美さん……」

 

「ほむら……」

 

「ほむら……」

 

彼女たちは亡霊のように呟いてくる。でも私はもう耳を貸す気などない。

 

「ワルプルギスの夜……貴方との旅も……もう終わりよ」

 

この超大型ミサイルはここら一帯を壊滅させるだけの威力を持っている。それに加えて全ての武器も同時に爆発させれば威力はさらに凄まじい物となり、数万体の使い魔も偽者の彼女たちもワルプルギスの夜も全てを灰にする。

 

…………もちろん私も。

 

「一つの命を救うのに代わりの犠牲がいるのなら……私が引き受ける……」

 

残りのカウント五秒。

 

おそらくこれが爆発すれば私は形にも残らず死ぬ。つまりアイツを道連れに出来る。

 

どうせ長くない命、なら最期はこいつを道連れに死んでやる。それでまどかが救えるなら私はそれでいい。

 

残り四秒。

 

(私は最後の希望を護るために……貴方を救うために……この命を焔に変える……)

 

残り三秒。

 

「アーハッハッハッハッ!!!!!!!!」

 

残り二秒。

 

「魔法少女の意地を見せてやる……!」

 

残り一秒。

 

(さようなら……まどか……)

 

そしてカウントが終わる同時に数万体の使い魔、偽者の彼女たち、ワルプルギスの夜、私、全てを焼き尽くしていった。

 

 

 

 

 

 

 

「む……ゃ…………むら……ち……ゃ……」

 

声が聞こえる。それは聞き覚えのある声だった。

 

「ほむらちゃん!ほむらちゃん!!」

 

また私は生きていたらしい。もし神様がいるなら、何で私が生きているのかと問い詰めたくなる。

 

でもアイツの笑い声が聞こえない。それ以前に青空が見える。

 

つまり私はアイツを倒して、まどかを救えた…………やっと私は…………

 

「大丈夫だよ!私……ほむらちゃんがどんな姿になっても、ずっと側にいるから!!」

 

そんな私の感動をそっちのけで、まどかが涙を流しながら叫んでいる。きっと今の私は火傷が酷いのかしら。

 

でもおかしい……

 

痛覚は消していないのに手足の感覚が一切無い。それどころか声が出せない。

 

「ごめんね……ごめんね……私のワガママのせいで……こんな姿にしてしまって……一生介護するから……だから死なないで……!」

 

軽くパニックになっているまどかが泣き叫んでいる。一瞬、感覚神経がやられたのかと思ったけど違うらしい。

 

今の台詞から考えると、あの爆発で両手足は吹き飛んだみたいだった。でも私がまだ肉体をコントロールしているということはソウルジェムは百メートル以内にある。おそろしいほど、私は奇跡的に生きていた。

 

「やだ……やだ……死なないで!!!」

 

感覚はやられても自然と自分の死は分かるものね……少しずつ意識が遠くなっていく……。

 

「せっかく終わったんだよ!人生はこれからが楽しいんだよ!だから……だから……」

 

せめて最後に何か言い遺して死にたい。そう思った私は口を開く。伝わったかどうか分からないけど……

 

『今までありがとう、大好きよ……まどか……』

 

よくありがちな台詞だけど、短くて伝えたいことを伝えるのにはこの台詞が一番だった。

 

「やだ!やだ!嫌だよ…………いやぁぁぁぁ!!!!」

 

これが私の導き出した結末。

 

大切な人が幸せな未来を歩んでいくことが私にとって一番の幸せで、その未来をようやく叶えられたことが嬉しい。

 

幾度なく時間を繰り返して何度も挫けそうになったけど、命を懸けて為すべきこと……その答えはまどかを「救う」ことであって、私の絶望の物語の結末は「まどかに代わる死」だった。

 

希望と絶望がバランスを取りもっているように、この世界に存在する命もバランスを取りもっている。

 

マミもさやかも杏子も生きようと思えば生きられた、だけど代わりに誰かが死ぬ。それはあの子にも言えることで、まどかを救うには誰かが代わりに死ななければならない。

 

だから、こうして私が代わりに死ぬことによって、まどかは生きられる。

 

これが私の旅で見つけ出した答えと導き出した結末で、ようやく……暁美ほむらの絶望の物語は終わりを迎え、鹿目まどかとの約束を果たすことができた。

 

そう…………

 

全てが終わった。

 

 

 

 

 

 

 

私には自慢できることも無いし、勉強も運動も出来ません。

 

でも……こんな私にでも、たくさんの友達が出来ました。

 

『暁美さん、お祝いのケーキが出来たわよ』

 

「巴さん……」

 

いつも頼りになる先輩の巴さん。

 

『頑張った奴にはご褒美をあげないとね』

 

「美樹さん……」

 

私にとって正義の味方の美樹さん。

 

『今までお疲れ、よく頑張ったな』

 

「佐倉さん……」

 

いつも何かと助けてくれる佐倉さん。

 

『ほむらちゃん、私たちはもう友達だよ。これからもずっとね』

 

「鹿目さん……」

 

そして私の……最高の友達になってくれた鹿目さん。

 

「ほむらちゃん……おいで……もうずっと一緒だから……もう絶対に離れ離れにならないから……」

 

「はい!」

 

三つ編みで眼鏡をかけて、どこか危なっかしい走りだけど私は走り出す。

 

 

「ほむらちゃん、おかえり!!」

 

「鹿目さん、ただいま!!」

 

 

そう……

 

 

ーーーー幸せな希望の囀りへ。

 

 

 

 

 

ーENDー




ぶっちゃけ、最終話はこういう系もアリだったんじゃね?と思ってます。

仮面ライダー龍騎みたいに、公式さんも本編のifストーリー作ってくれませんかね。もう一つの物語?そういうのを、もっと増やしてほしいですし、まどかが最後まで契約しないもう一つの最終話とかも見たいですね。

ゲーム……? ?もうある……??
知らない子ですねぇ……


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。