2度目の本物を目指して (邪セリヌンティウス)
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第1話
読む側から書く側に挑戦する者です。
不備やアドバイス等ありましたら感想のところでお願いします。
俺は本物が欲しかった。
雪ノ下雪乃に憧れを持ち、
由比ヶ浜結衣に優しさを感じた。
そして何より『奉仕部』にあの空間に
居心地の良さを感じた。
俺の2学年はいい事も悪い事も含みで
充実したものだと言えるだろう。
学年が上がってからもそんな日常が続くと
俺は思っていた。
そう、思っていたのだ。
冬が開け新学期と共に暖かい春の日差しが降り注ぐ時期である。
俺や雪ノ下、由比ヶ浜は3年へと一色は2年へと進級した。
だがしかし、今は自分の進級に一喜一憂してる場合ではない。
そう、妹の『比企谷小町』が総武高校に入学する。
妹と一緒に学校まで登校できる、ただその思い一心だった。
この時をどんなに待ち望んだことか…総武二大天使トツカエル、コマチエルの誕生である。アーメン。
さて、そんなことを思いつつもベッドの上で惰眠を貪る俺であるが一色からというか生徒会から入学式の会場設営の準備を手伝って欲しいという依頼が来たため他の在校生よりも早く学校へ行かなければならない。
あぁ、働くというのはどうしてこう無慈悲なのだろうか。やはり働くのは嫌だな。専業主夫最高!
遅刻すると雪ノ下に何を言われるか分からないという思考が脳裏に過ぎった所でようやく体を起こそうとする。
だがこの時俺は2つの違和感に襲われた。
1つ目はほのかに香る薬の匂い。何処かで嗅いだことある匂いが鼻を刺した。言わずもがな病院の匂いだ。
2つ目、この2つ目が問題なのだ。2つ目の違和感は足にあった。俺の足が固定されている。
何を言ってるのかわからないという皆の為にもう1度言うと、
足 が 固 定 さ れ て い る のだ。
いや、言ってる俺自身が何言ってるのか分からなくなってきた。
え?なんで?俺いつの間に骨折したっけ?という思考になりながら目をうっすら開け現状を確認した。
まず目に入ったのはいつも着てる物とは違う、サイズが合わなくなったはずのパジャマ、次に2年前に見慣れてしまった病室。そして、固定された足である。
俺は驚きの余り言葉すら出ず思考も体も固まっていた。
何分、何十分固まっていたのか分からないが
『比企谷さん?起きてますか?』
という看護婦の言葉により思考を再起動させることが出来た。
看護婦による話の中で分かったことが1つあった。
今俺がいるのは俺が元いたと思われる時期より2年前、つまり高1のはじめの時期なのだ。俺の高校ぼっち生活の起源に来てしまった、という事になる。
だがそんな事より今は
【1年間居たあの居心地の良い空間が無くなってしまうのでは】
という考えしかなかった。
2年前に戻ったという事は2年前と同じ経験をするのだろう。ならこの後の展開は容易に予想が出来る。
小町がプリプリと(可愛く)怒りながらお見舞いに来たり今回の事故についての後処理をしたりするのであろう。と、この時の俺は軽い気持ちで考えていた。
冬が過ぎたとはいえ日が暮れるのがまだ早い4月某日、各学校は放課後の時間帯になったと思う。俺はというと……暇だ、暇なのである。
2年前も体験したこの何もすることがなくただただ時間が過ぎていくこの虚無感。流石に2度目は辛い。早く小町来ないかなぁ。小町とお話したいなぁ。お兄ちゃん寂しいなぁと独り言ちっていると病室のドアからトントンという軽くノックされた音が聞こえてくる。その音を聞きすかさず「どうぞ。」と返事をした。
ドアの向こうから現れたのは俺の妹であり天使である小町だった。ふむ、やはり小町は中学生なのか可愛いなフヒッ。なんて思ってると小町の態度に違和感を感じるため小町に声をかけてみようと思う。
「…小町?どうしたんだ?そんな所に立ってて。」
そう問いかけると病室のドアの近くに居た小町がビクッと体を少しはねた後オドオドした様子で
「そ、そっちに行ってもいいの?怒らない?」
と問い掛けてくる。ん?怒る?何故だ?
「…大丈夫だ。怒る理由もないしこっちこいよ。」
そう言った後小町はちょこちょことこちらへ寄ってくる。可愛い。お持ち帰りしたい…おっと、話が逸れてしまう。
「お、お兄ちゃん…怪我大丈夫?」
「…あぁ、怪我は大丈夫だ。数週間入院すれば治るらしい。」
「それなら良かった…。」
ふむ、小町も安心してくれたようだ。しかし気になる事があるな。
「なぁ、小町。ひとつ質問なんだが。」
なに?という小町の言葉を聞き俺は質問する。
「さっき来た時おどおどしてたし怒らないか聞いてきたのは何でだ?」
その質問を聞き小町はえっ?と言った後
「い、いつも話しかける時怒ったり無視したりするから…」
…なんだって?俺が小町を怒ったり無視したりするだと?有り得ない。こんなに可愛い妹を無視するだと?俺はそんなことした覚えないぞ?まさか覚えてないだけで過去に無視した事があったのだろうか…と思考を巡らせてる間に更に小町が
「だって、小町みたいなブサイク、お兄ちゃん嫌いだもんね…」
その一言。たった一言に俺は驚愕を隠せないでいた。
小町がブサイク?ハハハ冗談が過ぎるぞ、エイプリルフールは終わったじゃないか~なんて思ってる場合じゃなかった。
「小町がブサイク?ハハハ冗談が過ぎるぞ、エイプリルフールは終わったじゃないか~」
動揺しすぎたせいか思った事を口にしてしまった俺である。
「じょ、冗談じゃないよ?昨日も夕ご飯の時に話しかけるなって怒られたしその前だってブサイクが話しかけるなって言われたし。」
おいおいおい、誰だよその俺。全然記憶無いし寧ろ小町にそんなこと言わないぞ?そう思っているとふと疑問に思った事を小町に聞いてみた。
「なぁ、小町。もし仮に小町がブサイクっていうなら美人の象徴みたいな人はどんな容姿なんだ?」
もし俺の予測が正しければ2年前へタイムスリップした事並に一大事である。
「はい、お兄ちゃん。この雑誌の表紙に乗ってる人が美人の象徴だよ。」
そう言われ渡された雑誌を覗いてみる。その雑誌には…
とてつもないくらいブサイクな女性がオシャレをして決めポーズなるものをしていた。つまり俺の予測は当たった。いや、当たってしまったのだ。そう、ここは2年前へのタイムスリップに加え
美醜が逆転してしまったパラレルワールドへ飛ばされたのである。
文字数につきましては次話辺りから
徐々に増やせればと思っております。
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第2話
美醜逆転というものは大きくわけて3通りある。
1.男性の美的感覚が反転するもの。
2.女性の美的感覚が反転するもの。
3.男女共美的感覚が反転するもの。
今回は女性の美醜が逆転した結果男女共美的感覚が反転しているため3に該当する。
小町から見せてもらった雑誌や病室に取り付けてあったテレビを見たがどれもこれもブサイクである。美人のお天気お姉さんが一変し汚天気お姉さん(笑)になっていたりテレビのアナウンサーなんか男性陣はいつも見ている顔ぶれなのに女性陣に華がない。なんだこれ罰ゲームか?
ともかく俺は美的感覚の狂った世界で生活しなければいけないらしいが可愛い妹がいるため生活はできるだろう。どれ、最愛の妹に声をかけてみるか。
「なぁ、小町。聞いて欲しいことがある。」
「何、お兄ちゃん?」
「実は俺この世界の住人じゃないみたいなんだ。」
「どうしよう、お兄ちゃんがおかしくなった…先生呼ばなきゃ!」
「まて、早まるな!ナースコールは止めて話を聞いてくれ。」
俺が事故で頭をぶったかもしれないとテンパりナースコールを押そうとしたが寸のところで阻止することに成功した。まじ危ねぇ。
落ち着きを取り戻した小町に事のあらましを話したがそれを小町はあっさり受け入れている様子だった。
「だって、前のお兄ちゃんと比べて優しいし小町のことブサイクって言わないし小町は信じるよ。」
との事だった。ふむ、小町に信じてもらえたのは嬉しいがなんかあっさりしてない?将来詐欺に会わないかお兄ちゃん心配だよ。
「そ、それでお兄ちゃん?」
今度は小町から質問がありそうな顔でこちらを覗いているため「なんだ?」と答える。
「確認なんだけど…お兄ちゃんは小町の事か、可愛いって思ってくれてるって事だよね?」
「…当たり前だろ。俺はお前のお兄ちゃんだぞ。大事な妹を可愛がらないでどうするんだよ。ほんと世界一可愛いぜ小町。あ、今の八幡的にポイント高い。」
などと冗談を交えそう答えると
「うん、ポイント高い、高すぎるよ…えへへ」
と満面の笑みで答えてくれる。あ、あれ~何この気持ち…兄弟なのに妹にときめいちゃっていいの?千葉の兄弟だからいいの?教えて!高坂さん!はぁ小町可愛い…嫁にしたい。
「はぁ小町可愛い…嫁にしたい。」
「ふぇぇ!よ、嫁!?」
おっと、口に出ていたらしい。八幡おっちょこちょいテヘ!…誰得だよ。
「可愛い…嫁…だ、ダメだよお兄ちゃんいくら兄妹で結婚ができるからってそんな…えへへ」
小町さん完全にトリップしてますのん。って、今なんつった?
「おい、小町?この世界は兄妹で結婚出来るのか?」
「え?うん、兄妹で結婚出来るし重婚も認められてるよ?」
パラレルワールドってなんでもありなんだなぁ(遠目)
なるほど、ここは高坂さん家が得をする世界なのか。お幸せに。
それにしても小町と結婚出来てしまうのか。このまま小町√でゴールしても…いや、今はその考えは良しとこう。
その後も小町と他愛のない話をしていた時、トントンと病室のドアを叩く音が聞こえた。本日二回目の来客を告げる音だ。
すると小町が、
「邪魔になるかもだからお花の水取り替えてくるね。」
と言い病室に設置してある水道へと向かった。
その小町の様子を確認した後「どうぞ。」と声をかけると
「失礼します。この度は事故を起こしてしまい大変申し訳ありませんでした。」
と、入って早々深々とお辞儀をし謝罪の旨を告げる女性がいた。
「いえいえ、俺も無事な訳ですしこうやって個室用意してもらったり入院費も払っていただいてるので。それに安全第一で動かしてた車にいきなり飛び込んだ俺も悪い訳ですしお互い様という事で手を打って頂けますでしょうか?」
俺にしては噛まずに対応できたと思う。いやぁ、ほんと緊張して噛む癖は後々治すとしよう。
「そう言ってもらえると助かります。すみません。申し遅れました。」
女性はゆっくりお辞儀していた体を起こしながら言い
「わたくし、」
謝罪していた女性の正体が
「雪ノ下陽乃と言います。」
元いた世界で魔王(八幡名称)として君臨していた雪ノ下陽乃であると認識してしまった。
雪ノ下陽乃。
元いた世界で雪ノ下家の長女そして雪ノ下雪乃の姉である。
頭脳明晰、容姿端麗である完璧超人の彼女は強化外骨格のような外面を常に構えているため何を考えてるか分からず闇が深そうな女性である。
そんな彼女が直接謝りに来たのだ。俺としてもビクビクしていた部分はあったが少し妙なことに気がついた。
(雪ノ下さんの外面が脆い…?)
なぜそんな事を思ったのか俺自身分からないが美醜が逆転しているこの世界だからこそなのかもしれないと推測した。
「あの、雪ノ下さん…」
「えっと、何かな?比企谷くん。」
「貴方無理してませんか?俺でよければ話聞きますよ。」
そう言うと雪ノ下さんは少し驚いた表情をした後暗い顔をしたまま
「じゃあ、お言葉に甘えてお話しようかな。」
と、言ってくるのであった。
雪ノ下さんの話を聞いたが内容はこうだ。
・日本は今重婚が出来るため雪ノ下家での側室とその子供にはそれぞれ役割がある事。
・そして陽乃さんの役割が何かことを起こしてしまった時の謝罪要員である事。
・謝るたびに相手からの特に容姿に関する罵詈雑言を浴びせられている事。
聞けば聞くほど憤りが増していくが雪ノ下さんは
「大丈夫。慣れてるから。」
という一言で終わらせようとしている。だったらあんた…なんでそんな苦しそうな顔で言えるんだよ。
雪ノ下さんとの話も終わり面会終了の時間が迫ってきた。
「それじゃあ、私は帰るね。」
と、椅子から立ち上がる雪ノ下さんを見て思わず
「待ってください。」
と、言ってしまった。雪ノ下さんが「なにかな?」とこちらの話を聞くように振り向く。
「今日初めて関わってあんな話まで聞かせてくれて、でも他人の家族関係にはどうこう言えないですけど。」
「…けど?」
「また何かあったら声をかけてください。そんな苦しそうな顔しないでまた俺に色んな話聞かせてください。貴方の…表が見たいです。」
「言いたいことは分かったけど私みたいな女の表を見たとして何か得でもするの?」
「…いや、美人の表の表情見れる時点で得ですよ。その為に努力しなきゃいけないってなるとまぁ、善処しますとしか言えませんがね。」
「私が美人?そんなまさか嘘も大概に…」
そう雪ノ下さんが言おうとした途端
「嘘じゃありませんよ!小町が保証します!」
いつの間にか隣にいた小町が名乗りを上げていた。いや、小町さんよ。いつからそこにいたんだね?
「別世界から飛んできた?」
小町と俺とで雪ノ下さんに今回の事のあらましを話した。
「なるほど、だからさっき私のことを美人って…とすると…なるほどね。」
何やら、疑問に思っていた部分が全て自己完結により解決したらしい。そして、雪ノ下さんは何か決めたようでこちらに顔を向けてくると、
「また面会の時間に来るから連絡しないとね、という事で連絡先交換しよっか。君面白いよね。退院したらお茶でも行かない?もう、照れちゃってこのこの~ 」
と怒涛の質問マシンガン。ふえぇ助けてこまちぃ!
そうこうしてる内にいつの間にか面会終了を知らせるアラームがなり始めた。
「ありゃ、もうそんな時間なの。」
良かった…この状況から開放される。そう思っていた矢先。
「連絡先も交換出来たし、じゃあね!比企谷くん!また明日。」
この人また明日も来るのかよ…まぁ、
「そうですね。また。」
退屈しないしそれはそれで良しとしよう。
文字数については徐々に増やせればと。
はい。
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第3話
不備やアドバイス等ありましたら感想のところでお願いします。
雪ノ下さんとの邂逅があった翌日、やはりというかなんというか雪ノ下さんは突如として面会に来た。
「こんにちは!比企谷くん!元気してた?」
朝一番だというのに元気だなぁ、この人は。
「元気も何も目の腐ったゾンビはこんな朝早くから元気にはなれませんよ。」
無意識のうちに自虐を交えて返してしまう。多少の自虐は愛嬌である。しかし身内以外だと引かれてしまうのがネックだが。
「ふふっ。比企谷くん相変わらず面白いね、でも君はいい目をしてる。何か本質を見分けられるようなとても真っ直ぐな目。」
そう言いながら俺の目を見つめてくる雪ノ下さん。近い近い近いいい匂い。
「あれ?比企谷くん顔赤くなってるよ?お姉さんに惚れちゃった?」
冗談でもそれを言うのはやめてほしい。うっかり惚れそうになる。
「ち、違いますよ。ただちょっと距離が近いというかなんというか」
「え?…あっ。」
漸く気づいたのか茹でタコのように真っ赤になった雪ノ下さんは俺から距離を取る。いや、何その表情可愛過ぎる。勢いで告白して振られるまであるな、やっぱ振られちゃうのかよ。
「いや、何その表情可愛過ぎる。勢いで告白して振られるまであるな、やっぱ振られちゃうのかよ。」
「えっ告白!?そ、そんなまだ会って2日とかなのに…もう比企谷くんったら!」
…思っていた事が声に出てしまったらしい。この癖治さないと後々不味いな、気をつけないと。
「なんかすみません。俺みたいなのからこんな事言われても嫌でしょうに。」
「ううん、違うよ。私こんな見た目だから言われ慣れてなくて、それでちょっとビックリしてただけだから。それにしても~へぇ比企谷くん私に告白したいの?なに?B専?」
落ち着きを取り戻したからってまた即座にからかってくる雪ノ下さん。この性格はどこの世界でも変わらないのかよ、うへぇ…
「別にB専って理由でもないですし昨日話した通りですし美的感覚が他の人と違うって思っていただければそれでいいです。ところで昨日妹さんの話をしてましたがもっと聞いてみたいなと。」
これ以上からかわれ続けるのも体力が持たないと察知した俺は強引かつ合理的な話題の変え方をした。
「え!なになに!雪乃ちゃんの話もっと聞きたいの!?」
1つ分かった事と言われればこちらの雪ノ下さんは表に出す程のシスコンらしい。
「それで5歳の時の雪乃ちゃんはね~」
と雪ノ下さんは小さい頃からの雪ノ下の話を1年刻みで話してくる。
まじか、後10年分聞かなきゃいけないのかこれ。話題転換失敗じゃね?ふえぇ助けてこまえもーん!
悲愴的に思っていると祈りが届いたのか病室の扉がトントンと音を鳴らす。
突然の来客に俺と雪ノ下さんは目を合わせ病室の扉に目を向けた。俺が「どうぞ」と声をかけると扉をノックした人が中に入ってくる。
「し、失礼しまーす」
おどおどしながらもややか細い女性の声で来室を告げた人物は小町の次に聞き覚えのあるごく最近までよく聞いていた声だった。
茶髪に染めていた髪は黒色になっており、右側に付いてたお団子は無く下ろしていて、着崩していた総武校の制服もしっかり着こなしている。これも美醜が逆転した影響なのか元いた世界では考えられない姿の由比ヶ浜結衣がそこにはいた。
「えっと、比企谷…くん、お礼を言いに来るのが遅れてごめんなさい。病院の場所とか調べてたら遅くなっちゃって、でもちゃんとお礼が言いたくて。家の犬を、サブレを助けてくれてありがとうございます。」
由比ヶ浜との邂逅を果たして一言目でやや早口ながらも謝罪とお礼を告げられた。
「いや、遅れたって言ってもそこまで時間経ってないし調べてきてくれたやつに偉く言える口じゃないから。お礼はありがたく受け取っておくわ。だが大事な家族なんだったら今度は首輪とかリードとかちゃんと点検しとけよ?」
伝える事はこれくらいでいいだろう。元いた世界では家に菓子折りだけだったから初めての事で少し動揺したが。
「うん!ホントにありがと!あたしの家族を助けてくれて。」
そう言うと由比ヶ浜は元いた世界と全く変わらない優しくも可愛げのある微笑みをしてくる。なんだよその笑顔可愛すぎんだろ。
「なんだよその笑顔可愛すぎんだろ。」
「か、かかか可愛い!?ふぇ!?」
「ひーきーがーやーくーん?」
どうやら俺のこの癖は治らないらしい神様まじ許さねえ。
皆様台風にはお気をつけてください。
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第4話
不備やアドバイス等ありましたら感想のところでお願いします。
あれから一悶着あったもののなんとか落ち着きを取り戻した雪ノ下さんと由比ヶ浜。雪ノ下さん怖かったな、笑顔なのに恐怖を感じるなんてあれは才能としか考えられない。
落ち着きを取り戻した2人は今回の件について話合うやいなやすっかり仲良しになっていた。今日はこのままお話しながら帰るとか。コミュ力の高さに脱帽した俺がいる。
翌日からというもの大学の空き時間を見つけては面会に来る雪ノ下さんと放課後ほぼ毎日来る小町、由比ヶ浜この3人が揃ってお話する事が多くなった。傍から見ればハーレムと言われるのだろうが何せボッチの俺だ。胃がキリキリしてならない。こんなところあの独神に見られたら…あぁ、くわばらくわばら。
そんな穏やかな日常を過ごしていた数日後雪ノ下さんの一言によってこの日常が崩壊する事になる。
「そういえば比企谷くん。退院後学校の授業大丈夫なの?」
忘れていた。すっかり忘れていた。退院したら学校という社畜育成機関での授業がある事を忘れてしまっていた。八幡ミステイク!
俺が通う総武高校は腐っても進学校であるため授業のスピードが早かったり提出物が多かったりする。元いた世界では入院しながらも(数学以外は)各教科手をつけていた。だが今はどうだろう。このぬるま湯のような環境に落ち着いてしまったせいで勉強という概念を時空の彼方に飛ばしてしまった。某色黒調停者にガンマレイされてしまう。
冗談はさておき数学はおろかほかの教科すら触れていない。いくら元いた世界での知識があるとはいえ勉学を疎かにするのも考えものである。(数学以外は)
よってこの時の俺が行動に起こすことといえば
「すみません…勉強教えてください。」
頭を下げることである。
「へぇ。比企谷くん物覚えはいい方なんだ~」
何分、何十分たったであろうか。俺は今雪ノ下さんに中学3年~高1の範囲の勉強を教わっている。高1だけだと思ったら中学3年の復習もさせる徹底ぶり。流石というかなんというか。
「じゃあ次はここの…って比企谷くん聞いてる?」
おっと、少しぼーっとしていたようだ。
「すみません、少しぼーっとしてました。次はどれやりましょうか」
ふっ、だてに高2までの勉強は終わらせてないんだ。どんな教科でもあっさり復習出来てしまう。さぁ!次の獲物はどいつだ!
「じゃあ、数学やろっか。」
「すみません、許してください。数学だけは無理なんです。」
速報。我が牙城あっさり崩れ落ちる。グスン、数学には勝てなかったよぉ…
面会時間終了のアナウンスにより雪ノ下さんの勉強会が終わりを告げた。ほんと数学キツすぎる、何年経とうが数学だけは出来ない…今年も睡眠学習が確定した瞬間である。
「じゃあ、比企谷くん。私は帰るけどまた明日勉強しようね。す・う・が・く!」
物凄いいい顔で明日の死刑宣告をされてしまった俺はどの世界にも魔王はいるのかと悟ってしまった。明日が待ち遠しいや(錯乱)
それからというもの小町や由比ヶ浜が放課後面会に来るのは変わらずその時間に雪ノ下さんとの勉強をする事になった俺は数学という脅威のせいで地獄の日々を送ることになった。正直言うとリハビリより辛い。だが、この地獄を耐え抜いたおかげなのか数学が分かるようになったのだ。分かるといえどまだ高1の序盤なのだがこれでも大きな成長だろう。
そして、暫く日は経ち俺の退院の日になった。
雪ノ下さんプレゼン地獄の勉強会を乗り越えた俺はひと皮もふた皮も剥けていた。もう何も怖くない!ぼっちなのには変わりないがな。
「比企谷くん、退院おめでとう。退院してもお姉さんと仲良くしてね。はいこれ連絡先、いつでも連絡待ってるからね!」
病院の前で待っていた雪ノ下さんに退院を祝われた。余程嬉しかったのか軽くハグまでしてきたのだがそこまで好感度上げるような事があっただろうか。しかし雪ノ下さんは俺が入院してる間毎日来てくれていたし、退屈な日がなかったため感謝こそしている。連絡先まで貰ってしまったしこれからも雪ノ下さんに付き合うとしよう。
「ヒッキー、退院おめでとう!学校でも仲良くしてくれるとあたしは嬉しいかな…あ、ヒッキーとは同じクラスだから!よろしくね!」
雪ノ下さんの隣にいた由比ヶ浜も退院を祝ってくれた。なぜヒッキー呼びになっているかというと入院してる時に俺から呼びやすいように呼んでくれと頼んだ結果少々悩みながらも「じゃあ、ヒッキーで」と決めていた。その後に引きこもりって意味でじゃないからね!と急いで訂正していたのは彼女の愛嬌という事にしておこう。やはりどの世界でも由比ヶ浜結衣は由比ヶ浜結衣なのだ。
「それじゃ、お兄ちゃん。帰ろっか!」
「おう」
こうして小町と一緒に帰路に着く。明日からは休日なため学校に行くのは月曜日からになりそうだが雪ノ下さんのおかげで勉強もそこそこできるようになったし大丈夫だろ。
だが、この時の俺は予想だにしていなかった。まさかあんな事になるなんて……
と、繋げておけば作者のモチベも上がるだろうし読んでくれる方も増えるだろうと思う俺がいる。
偏頭痛が酷いです
皆様季節の変わり目等お気をつけください。
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幕間vol.1
今回は幕間なので気楽な気持ちで。
ご指摘やアドバイス等ありましたら感想のところでお願いします。
俺が退院してから早くも1日経ち今日は日曜日。
いつもならプリティでキュアキュアな美少女戦士を朝から見るため早起きするのだがここで全国のプリティでキュアキュアな美少女戦士を応援する同志に悲報である。予想していただけた方もいると思うがその予想通りだろう。そう、美少女戦士が美少女ではないのだ!あれ?プリティでもないしキュアキュア要素もないこのアニメはなんなのだ?この世界にはプリ○ュアが存在しないのか!?そんな!俺はもう美少女戦士を見れないのか…俺のプ○キュアが……
この時この世界に来て一番の絶望を味わったのである。
こうなってしまうと何もすることが無くなった俺は仕方がなく外出をする事に。ほんとは出たくないけれど。1人で行くのもアレだから小町も誘ってみようと思う。か、勘違いするなよ?これはデートのお誘いではない。家族間交流である。
「小町~今から出掛けようと思うんだが一緒に行かないか?」
俺の一言を聞いた途端小町が飛び上がるようにソファから起き俺の目の前まで移動してきた。この間わずか0.8秒。
「こ、ここ小町も一緒に行っていいの!?」
こんなに驚かれるとは思いもしなかった俺は
「お、おう。俺から誘ってるんだから小町が行きたければ全然…」
いいぞ。と、言い切る前に小町はいつの間にかオシャレをし、あたかも準備万端のような顔をしていた。早すぎて見えなかった、これが異世界なのか。という思いに浸っていると、
「お兄ちゃんとお出かけ…お兄ちゃんから誘ってくれた…ふふっ嬉しいなぁ。」
神様…今まで散々裏切り者なり無慈悲なり思って申し訳ございませんでした。心から反省するとともに私のような者の心からの雄叫びをどうかお聞きください…
神 様 ! 天 使 は 存 在 し た ぞ ぉ !
俺の想いは天高く俺をこの世界に導いた神様に届いたであろう。そう思った。
いや、本当に可愛い!シスコンで良かった!元いた世界の小町も可愛かったがこちらの小町も可愛すぎる。いつもは少しおどおどしてるものの照れた時の顔は予想以上の破壊力。あまりの可愛さに心臓発作を起こすレベル。いや、再入院は笑い話にならない。
俺はこの可愛すぎる小町に対する興奮をおさめると共に俺も出掛ける準備をする事にした。
さて、やって来ました。ららぽーと。俺が出掛けるとなると今のところはサイゼかららぽぐらいである。レパートリーの少なさに我ながら焦りすら感じているが今回は小町と楽しむため大型ショッピングパークへと足を運んだ。一方、その小町はというと俺の腕に抱き着き楽しそうに横を歩いている。うん、可愛い。この世界での唯一の癒しである。
そこからはまずお昼が近かったためフードコートで食事をする事にした。小町がマ○ドナルドのポテトをもきゅもきゅしながら食べる姿はリスのようでとても愛らしかった。
昼飯を取った後は小町の要望で食器を見に行く事に。なんでも仲良くなった記念に俺とお揃いのマグカップが欲しいとか。本当にこの子は…いい子すぎて涙が…親父と母ちゃんが溺愛するのも分かるわ。
昨日退院した後、俺の変わりように驚いた両親だったが事のあらましを全て話し終えるとすんなり納得してくれた。更に小町の容姿についてどう思ってるのか聞いてみると、
「容姿がどうであれ小町は俺達の可愛い一人娘だ。自分らの子供を愛せず親が務まるかよ。」
なるほど、ただの社畜としか思っていなかった親父だが中々カッコいいことを言っている。母ちゃんも親父の言葉に納得したのか力強く頷いていた。しかし親父よ、一人娘じゃないだろうが。目の前に息子いるぞ、忘れんなよ。ともあれこちらの世界の両親もいい人達だった。
いくらか時間が経ち小町がトイレに行きたいとのことで荷物は俺が持ち近くの柱にもたれかかっている。この後も何事も無く時間が過ぎていけばいいなと思った。否、思ってしまった。そうこれがフラグである。綺麗なフラグの立て方ですね。ここテストに出ますよ。
「ちょっと、そこのおにーさん?私達と遊ばなーい?」
綺麗なフラグの回収でしたね。ここもテストに出ます。
なんて頭の中でプチ講座してるさなか俺なんかをナンパしてきたおね、お姉さん?達は今どきのオシャレを体現したような服装にナチュラルメイクをしたような感じである。
「えっあ、あのすみません。人を待ってるので無理です」
特性のコミュ障が働いてしまった為言葉に詰まりながら拒否してしまった。噛まなかっただけポイント高い。
「そんなこと言わずにさぁ、ね?」
「そうそう!お姉さん達と楽しいことしよ?」
いや、小町とデートしてるだけで楽しいのでまじでこの誘い要らないしうざったすぎる。元いた世界でナンパされたことも無くあしらい方も分からなかった俺はこの場をどう乗り切るか考えていると、
「あれ~?比企谷くんじゃん。こんな所でなにしてんの~?」
救世主女神アテナの登場である。
「あ、雪ノ下さん。いや、今妹と買い物に来てましてね。トイレを待ってたらナンパされたというかなんというか。」
「なるほどねぇ。じゃあ私と小町ちゃんと3人で遊びに行こっか」
「おお、それは是非。という事で今回はお断りします。」
その場しのぎには最適な言葉を掛けてきた雪ノ下さん。ほんと頼りになるわこの人そこに痺れる憧れるぅ!
しかし突然の出来事に快く思わない人達もいる訳で。
「ちょっと?私達が最初に声掛けたんだけど?ブスは黙って消えてよ」
「そうよそうよ」
うわ、まだいたのかこの人達。というか面と向かってブスって言う?元いた世界でも面と向かって言う人なんてそうそういなかったしこの世界は過激派多いの?何それ怖い。
「お兄ちゃんおまたせ~ってこの状況なに?」
ひと揉めしてる間に小町がトイレから帰ってきた。待ち人も来たしそろそろお暇しま…
「へぇ、君の待ち人ってこんなブスなのね笑 こんな人達いいから私達と遊ぼ?ね?」
「あの、いい加減にしてもらえませんかね。正直ウザったいですよ。あんたら、人を蔑むだけ蔑んで何様なんすか。」
ある時、とある人から理性の化け物と呼ばれていた。そんな理性の化け物ですら感情に任せてしまう時がある。それが今なのだろうと八幡自身も思っていた。正直自分自身でもビックリするくらい低い声が出てたと思う。
「俺言いましたよね?待ち人もいるし途中から来た雪ノ下さんと3人で遊ぶって。それを無視して自分の意見を主張するなんてどうかしてますよ。それに俺の大切な人達馬鹿にされて黙ってるほど腐ってないんで。」
目は腐ってますけど。
「でもそいつらブスじゃ…」
「いや、あんたらの主観押し付けんなって言ったじゃん…俺はどうも他の人と美的感覚がズレてるらしくてね。あんたらより小町と雪ノ下さんの方が可愛いし美人なんすよ。あんたら風に言うとブスは引っ込んでろって感じです。」
「………」
反論出来なくなったのか、ナンパしてきたお姉さん方は無言でその場を離れた。コミュ障の割によくここまで言えたもんだ。思い出すだけで自分でも驚きを隠せない。
「えっと、比企谷くん?」
「お兄ちゃん…」
おっと、御二方をほっぽいてしまっていた。いけないいけない。
「それじゃ、雪ノ下さんが言ってた通り遊びに行きますか?」
「そうじゃなくて、その…ありがとね?偶にいるのよ。ああやって容姿でマウント取って自分を上に見せる人。それに対していつもなら愛想笑いしか出来なかったんだけど比企谷くんが言ってくれたおかげでなんだかスッキリしちゃった。」
「お兄ちゃん…ありがと。小町もなんか清々しい気持ちになれたよ」
「お、おぅ。それはよかったです。ひゃい」
先程までの威勢は愚か噛み噛みになる俺だった。
その後は小町と雪ノ下さんと一緒にららぽで色んな店を周り服や小物等買っていった。
そして夕時
「比企谷くん、今日はありがとね。凄く楽しかったよ」
「いやまぁ、俺も退屈はしなかったので良かったと思いますよ。」
「お兄ちゃん今捻くれる所じゃないよ…」
そんな話をしてる最中雪ノ下さんから
「明日から学校でしょ?1つお願いがあるんだけどいいかな?」
さっきまでとはうって変わり真面目モードの雪ノ下さん。俺は黙って首を縦に降る。
「知ってると思うけど雪乃ちゃん総武校でさ、容姿も私に似てるから学校生活も心配なの…だからもしよかったらでいいんだけど雪乃ちゃんが困ってるようだったら助けてあげてくれないかな?初対面でも私の名前を出してくれれば少しは信用してくれると思うけどあの子心を少し閉ざし気味で…お願い出来るかな?」
やはりこの世界でも雪ノ下は何かしら過去にあったらしい。この問題は中途半端な覚悟で受けるとかえって悪影響になる。
だがそれがどうした。俺は元いた世界で由比ヶ浜と雪ノ下、そして奉仕部という居場所が何よりも好きだった。この世界に来てまたあの居場所を取り戻したいとすら思っている。そんな俺の想いを邪魔する障害物があるなら効率よく最善の手段でぶち壊す。ただし卑屈な手段はもう使わない。それで悲しむ人を増やしたくないから。
「わかりました。その『依頼』受けます。」
「ふふっ、ありがと。じゃあその『依頼』の前料金ね!」
その言葉と共に俺と雪ノ下さんの顔の距離がどんどん縮まり、気づいた時には頬に残る柔らかな感触と共に雪ノ下さんとの顔の距離が離れていく。え?あ、あれ?これって…
「はわ…はわわわわわわわわ!おおおお兄ちゃんがききききき…」
隣の小町がショート寸前の機械みたいになってるが俺の頭は既にショートしていたためその場を動けずにいた。え?雪ノ下さん何してくれますのん?
「え、あのえっと…」
「じゃあ、任せたよ少年!私も最善を尽くすけど君も頑張ってね。」
そう言い残すや否や雪ノ下さんはその場から走り去っていった。
尚、俺ら兄妹が再起動したのは雪ノ下さんが走り去ってから10分ほど時間が経った辺りである。っべー…まじっべーわぁ。
本編より幕間の方が文字数多いのはお愛嬌という事で許してくれま…せんよね、はい。
次回から学校編です。原作介入となる2年生からの時間軸にはまだまだかかると思います。ですがそれでも読んでいただけると助かります。
更新速度は安定させられるように努力します。(改善するとは言ってない)
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第5話
これがキング・クリムゾンなんですね。勉強になります。
もうすぐ冬ですので風邪やインフルエンザにお気をつけて生活してください。
桜の花びらが散り辺りの景色は緑が増し、春の暖かさが益々感じられるようになった。昨日、雪ノ下さんから依頼の前払いとして貰った接吻が忘れられず現在進行形で未だ脳内でパニックが起きている俺こと比企谷八幡とその隣に壊れた機械のように小刻みに震えてる妹の小町。ハチャメチャでチャラヘッチャラなロマンティックを貰った休日を過ごした俺達だが今日は平日、つまり退院後初の登校日という事になる。元の世界でもこの時期に初登校をしたのは記憶にあるがこの世界と元の世界で幾つか異なる点がある。
1つ目は美醜の価値観が逆転している事。昨日も体験したがあそこまで過激になる人は元いた世界でもそうそう居ない、あれがこの世界の普通となると馴染みづらさはあるだろう。
2つ目は人間関係。元の世界では由比ヶ浜や雪ノ下さんとは2年に上がってから知り合ったが今回は事故にあってすぐ出会いそしてある程度話せる仲までは来てる…はず。そうだと信じてるぞ由比ヶ浜。
3つ目は結婚等による価値観。この世界では重婚や近親間での結婚すら出来てしまう。千葉の兄弟には万々歳なシステムだがこの世界に高坂兄妹が居たら………話がそれてしまった。
これらの異なる点が存在しているがこの世界に来てしまった以上順応して生活しなければならない。まぁ、雪ノ下さんからの依頼もあるし引き受けたからにはやり遂げなくてはな。
これまでの事を振り返ってる内に小町が通う中学の前まで来た。しかし小町はまだ小刻みに震えていた。昨日の事が忘れられないのだろうか、全くピュアだな小町は…
「ほれ、小町学校着いたぞ。というかしっかりしろ」
そう言いながら小町のお凸に軽くチョップするとビクンという効果音が出るくらい驚いた小町は学校の前にいる事に気がついたようだ。
「あ、お兄ちゃん。ありがとね、ちょっとボーッとしちゃってて」
「ま、気にするな。それよりほら、遅刻するから早く行った方いいぞ」
「分かった!じゃあねお兄ちゃん。いってきまーす」
行ってきますという小町の言葉に気をつけてなーと返してから自分も学校へ向かう事に。
無事遅刻しない程度で学校に着いた俺は職員室へ行くことに。やはりというかなんというか総武高校の内装や教室は変わりないな…これなら迷わず職員室に行ける。
職員室に行き担任の先生に事情を話したところ朝のHRでその事について話すと言われ担任の先生について行くことに…この転校してないのに転校初日みたいな感じで紹介されるノリには何年経っても世界越えても苦手である。ふぇぇ…助けて小町ぃぃぃ
朝のHRでの事故紹介もとい自己紹介を済ませ若干の質問攻めにも耐え切った。更に席は由比ヶ浜の隣ということもあり、休んでた分の勉強やノートを写す作業も滞りなく終わり今は昼休みである。
いつもならばベストプレイスへ行き戸塚のテニスする姿を見ながら昼食にするのだが…今は1年、更には部活もまだ本格的に始まってない時期で戸塚もテニスコートにいるか定かではない。さて困ったと思っていた矢先
「ヒッキー!ご飯一緒に食べない?」
と、由比ヶ浜からお声がかかった。
「ん?まぁ…いいぞ」
そう言うや否や机を合わせ始める由比ヶ浜。なんでも、一緒にご飯を食べるのが楽しみだったようだ。
「言い忘れてたけど…あと数人人増えるけどいいかな?」
大所帯にならなければ、と言いながら頷くと呼んでくるとの事で暫く待つことにした。うん、腹減った
おかしい、何故だ…何故なんだ。
「じゃああたしの友達紹介するね!」
なんでこいつらが
「あーし、三浦優美子。よろしく」
「うちは相模南ね。よろしく比企谷くん」
既に仲良くなってる…だと……
投稿感覚はニュータイプになれば週1、気合を入れれば半月に1回、いつもの自分なら月1になると思います。
ご理解とご協力よろしくお願いします。
新しいタイトルの物を書き始めたいと思ったり思わなかったり…
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第6話
物凄く沢山のお気に入り登録そして評価ありがとうございます。こんなに沢山の方に目を通していただけるとは私自身思ってもいませんでした。これからも遅筆ではありますが更新していきたいと思いますのでよろしくお願いします。
余談ですがこの小説の他にもう1つ新しく始めましたのでそちらも覗いていただけるともれなく涙が出る程喜びます、私が。
………き、気まずい。俺は世界線を超えたとしても、今までとは違うやり方をして問題を解消させようと決意しても、コミュ力が高くなる訳ないのに。ふえぇ…誰かこの気まずい雰囲気をどうにかして〜たすけてぷいきゅあ〜。はぁ、元の世界でハグっとするきゃわたんでめちょっくなぷいきゅあ最後まで見れなかったじゃん。ほまれちゃん…ハリーに告白できたかなあ…………と、現実逃避していた時だった。
「あんさぁ…」
「ひゃ、ひゃい!」
「いや、そんな驚かなくても…あーしと南自己紹介したんだしそろそろあんたの名前を知りたいっていうか…ごめん、やっぱこんなブスに教えたくないよね?」
「あーすまん、そうじゃないんだ。少し考え事してた時に話しかけられたからびっくりしただけだ。嫌とかではない」
「そ、そう?なら安心したし…」
やはりと言うべきか前の世界では三浦や相模はクラスでも中心人物だったはずだがこの世界ではそうではないらしい。自らの事をブスとまで蔑むほど。彼女達にとってここは生きづらい世界なのだろう。しかしこの世界から出る方法もこの価値観が逆転することもない。まるで鳥籠の中に入れられた哀れな鳥とでも言うのだろうか。
なんて、感傷に浸ってる場合ではない。今俺が出来る事は…そう!
「お、俺はひきぎゃや…比企谷八幡…だ。よろしく」
自己紹介だ(撃沈)
事故紹介が終わったところで三浦と相模が知り合ったきっかけを聞いたが、どちらも由比ヶ浜経由だったらしくそこから間接的に仲良くなっていったのだとか。由比ヶ浜…この世界でもめっちゃいい子ですやん…後でマックスコーヒー奢ってあげるからな……
「そうか…由比ヶ浜が……」
「ん、結衣には感謝してるし。…あーし小中と虐められてたんだよね。だから高校では下に見られないようにってメイク頑張ったり髪の色変えたりイメチェンして、学校も小中の人が通わない進学校にもした。それでも、何も変わんなかったし。」
「う、うちもそんな感じ。最初は皆に話し合わせて生活してたんだけど気づいたら標的がうちになってて、誰も受験しないような高校選んだらここだったんだ。」
「最初は辺りから陰口が聞こえたりこっち見てニヤニヤしたりほんとに今までと変わりないと思ってたし。」
「うん、でも結衣ちゃんがね。話しかけてくれたんだ。それが嬉しくてずっと話すようになったんだよね。」
「で、いつも通り話してる時に犬を助けてくれた男子の話になって、美的価値観?が人と違うって聞いて少し興味持ったんだ。それであーしたちもあんたと話してみたくなったってわけ。長くなって悪かったし」
「……そうだったのか、言わせるような形になって済まなかった。」
「別にいいし、今こうやってあんたと話せてるから」
そう言うやいなやくしゃっと笑顔を作る三浦に少し見惚れそうになってしまった。前から思ってたけどこいつ笑うといつも以上に可愛いのがズルすぎる。
「ところであんた…いや、これからヒキオって呼ぶわ。ヒキオさ、ほんとにあーしらと話してても何も感じないの?嫌悪感とかない感じ?」
「え?あぁ…これと言って嫌悪感とかそういった感情はないな。むしろ可愛い女の子と話せて役得、みたいな。」
「え。か、かわ…!?やっぱ他の人とズレてるって結衣が言ってたのホントだったんだ…」
「うち、男の子とこんな話してるの初めてかも…なんか感動してる」
三浦の事はある程度分かったけど相模に関してはちょっとまだ調子狂うな。前は結構ツンケンされてたからこんなに普通の女の子されるとこっちが困るというかなんというか。
「まぁ、今回は感動してもいいけど頼むから慣れてくれよな?俺も由比ヶ浜から昼とか誘われたらその、たまになら付き合うからさ」
「ヒ、ヒキオって変なところ優しい感じあるし」
「それある!」
「相模、人のネタを奪うな」
と言った感じに話し始めある程度仲を深めた?ところで由比ヶ浜がおまたせー!と言いながら戻ってきた。それも物凄く笑顔で。こいつ絶対帰ってくるタイミング見計らってただろ。
由比ヶ浜が合流し4人で昼飯を食べそれなりに楽しんでる(はず)所で突然背後から話しかけられた。
「やぁ、ヒキタニくん。ちょっといいかな?」
「……俺の名前はヒキタニじゃなくて『ヒキガヤ』な。何の用だ、『葉山隼人』」
そう、いつの間にか俺の背後を取り、更には話しかけてきた。コミュ力の塊の様な人間、どちらの世界でも相変わらず人気なリア充の王『葉山隼人』
俺は元の世界でのこいつは嫌いだ。俺には出来ない事を難なくやり遂げてしまう。また、みんな仲良くという少し傲慢でとても甘い思考の持ち主。けれどアイツにはアイツなりの信念がある。あっちの世界ではいけ好かない野郎(これでも褒めてる)だったけどこっちではどうなんだろうな。
「で、葉山。いきなり話しかけてきたんだからちゃんと用事があるんだろうな?」
「あぁ、君は入学直後に入院してたって聞いてね。最近復帰出来たわけだしクラスとの親睦を深める意味も込めて一緒にお昼でもどうかなって思ってさ」
「あー、気持ちはありがたいがパスな。先約があるからまた今度にしてくれ」
「先約…かい?」
「……は?見てわからないのか?今4人で飯食ってるだろうが」
「そういうことか、でもこっちに来たらもっと楽しめると思うけど」
「悪いが、大勢で楽しむのは性にあわないんでね。こうやって少ない人数で楽しむ方が俺的にポイント高いんだ。とりあえずほかの日を当たってくれ」
「いや、でも…」
「…しつこいぞ葉山。どうしてこいつらとの飯の邪魔をしてまで話しかけてくるんだ。要件はさっき断わったはずだろ?聞こえなかったのか?」
少し煽るように葉山に投げかけると当の葉山は唇を噛みながら渋い顔をしてる。いや、本当にどうしたこの世界の葉山。これじゃあ…
「はぁ?何調子に乗ってんの?折角葉山くんが誘ってくれたのに断る訳?そんなブス達なんか放っておいてこっちで楽しもうって言ってんじゃん。」
「そうよ!そんなブス達つまらないわよ!」
葉山が渋い表情をしているのを見たからか取り巻きの女子達が罵倒をしてくる。葉山の取り巻きがブスブス言ってるけど、お前らのその突き出てる頬骨とか頬周りのシミそばかす、更にはそんなボサボサの髪とかそれこそ世間一般でいうブスだろうが。ブーメラン乙。と心の中でだけで言っておく。
すると突然ずっと話を聞いてた三浦が取り巻きの罵倒を遮った。
「あんたらうっさいし、ヒキオ達とお昼食べてるんだから邪魔しないで欲しいし。」
と、若干キレ気味に吠えた。なんか三浦の後ろに炎のようなものが見えるがこれは目の疲れということで置いておく事に。
「大体あーしらが先にヒキオと約束取り付けてたし。あんたらなんで今になって急にヒキオ連れていこうとするんだし」
「別にそんなのどうでもいいじゃない。てか、ヒキオって(笑)ヒキタニくんこんなブスにあだ名付けられて可哀想なんですけど(笑)」
「ヒキオの事何もわかってないくせにそうやって個人の価値観押し付けられてそっちの方が可哀想だし。あんたあーしらにブスだけしか吐けないの?」
「なんですって!あんたみたいなブス存在価値ないのよ!虐められたいの!?」
まずい…何故かヒートアップしてきた。こういう時仲裁したり間を取り持ったりしてくれる話のわかるやつがいてくれるといいんだけど。
「まぁまぁ、2人とも。少しは落ち着いてくれ、な?」
そう葉山が言った途端三浦と取り巻き…(毒島と周りが言ってたから毒島と言うのだろう)の言い合いは収まった。さすが葉山、こういう処理に慣れている。さすがリアじゅ…
「三浦さん、君は毒島ちゃんに謝るべきだ」
……は??今こいつなんて言った?
「おい、葉山。それは違うんじゃないか?元はと言えばそっちが三浦達を悪く言ってきたのが原因だろ?それなのにどうして謝る必要があるんだ」
「それでも、だ。この場を丸く収めるにはこれしか方法がない。君だってそうだろう?」
こいつ、何が『丸く収める』だよ。元の世界で雪ノ下が小学生時代にした事と同じようなことしやがって。この世界の葉山の言い方的にみんな仲良くのみんなの中には恐らく三浦や相模の様な『こちらの世界では一般的に醜いとされている女性』は含まれないのだろう。葉山だけじゃないその取り巻きやクラスの連中もそう思ってる、ということなのだろう。
……ふざけるな。そうやって他者からの悪意やヘイトを集めるのは本来俺がするものだ。美醜の価値観が逆転したとはいえどうしてここまで三浦達が陥れられなきゃいけない。それに葉山、元の世界では確かにお前の事は嫌いだった。それでもアイツには確かな信念があった。だからかもしれないが俺はアイツを根本から嫌いになる事は無かった。だが、この世界に、この世界でなら確信できる。
俺はこの世界の葉山が根本的から大嫌いだ、という事を。
「はぁ……」
俺は周りに聞こえるくらい大きく、そして周囲の目を俺自身に向けるようにする。
Q.目の前で悪意によってヘイトを集めてる人達がいる。その状況をどうやって解消するか。
「毒島…とか言ったな?さっきからしつこいんだよ。お前みたいなブスがいる所には居たくないし興味すらない。とっとと自分の席に帰れ」
A.俺が世界の破壊者になる
おのれディケイドぉぉ……なんてやってる場合じゃなかった。今この場で最善かつ効率のいいやり方を考えた時これしか思い浮かばなかった。すまない、数日前の俺。折角決意したのに俺はこんなやり方しか出来ないんだ。
やはり、人は変わろうとしてもそう簡単には変われないのである。
全国的に寒さが厳しくなってきた頃だと思います。寒暖差の影響で風邪をひかないように充分ご注意ください。
感想や誤字脱字報告は感想欄からよろしくお願いします。返信出来るか分かりませんが頂いた感想は全て読ませて頂いてます。本当にいつもありがとうございます。
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第7話
この小説書き始めておいて胸が苦しいです。
全く、誰がこんなの書いたんだ。(他人事)
先日小説情報を初めて見たのですが沢山のお気に入り、しおりの登録本当にありがとうございます。正直ビックリしました。開いた口が塞がらないってやつです
更には高評価まで付けてくださる方々までいらっしゃいまして、もう嬉しさのあまりタンスの角に小指ぶつけました。
更新期間は長くなるかもしれませんが今後ともよろしくお願いします
前置きはこれくらいにして第7話です。どうぞ
人間は変わろうと意識してすぐ変われるほど出来た生物ではない。今までの習慣や癖、行動パターン等無意識下の内に体が動いたり口が動いたりするものだと俺は思う。しかし誰しも意識すれば自分の行動を制限することが出来る。今回俺はそれが出来なかった。何が世界の破壊者だよ、カッコつけてんじゃねぇアホか俺は。冷静になってねぇだろ。1ヶ月も投稿空いたってのに…って誰に話しかけてんだ。
とりあえずこの教室の空気を変えなければ。
「……は?あ、あんた何言ってんの?」
目の前で驚きを隠せずにいる毒島。当然であろう、今まで自分の事を美人と信じ疑わなかった。そして男子からも美人ともてはやされていたにも関わらず俺という存在に「ブス」と言われたのだから。毒島のこの反応を見る限り周囲からそういった類の話をされた事が無いのだろう。かく言う俺自身知り合いが罵倒されていた光景を見て感情的になってしまった所もある。これは反省点だ。
「あー、悪い。確かにお前にブスとは言ったが顔の話ではないんだ。俺が言いたかったのはその傲慢な性格に関してだ。人間誰しも自分の言うことを正しいと思ってしまう節があるし、ある程度の価値観が他の人と同じだからってその主張も正しいと思い込んでしまう。だからといってその主張を誰かに、それも自分より下だと思ってる相手に押し付けるのは自己中心的、傲慢だと思われてもおかしくないと思うぞ。」
「だ、だからってあんたには関係ないでしょ!?」
「関係ならあるぞ、俺はこいつの知り合いだ。知り合いや友人が悪く言われてると気分が悪くなるもんだろ?違うか?」
「知り合い?ふん、入院しててろくに学校に来なかった癖にそんな奴がすぐ知り合いなんて出来るわけないでしょ?頭大丈夫?」
俺をそう煽りながらずんずんと前に歩いてくる毒島。うわぁ…すげぇ痛い所付いてくるなぁ。でも事実だしなぁ、由比ヶ浜は友達って言い続けられてるから恐らく友達で間違いはないのだが三浦と相模に関しては今日知り合った事になってるし。知り合いにすら到達してないし。
「はぁ?あんたには関係ないでしょ?これからあーしはヒキオと友達になるんだから」
「ウ、ウチも男の子に褒められたの初めてだったし比企谷君と仲良くなりたい」
元の世界ではあまり相性が良くなかった2人が意見を一致させている姿に少し驚いていたが、今はそうこうしていられない。目の前で女同士の戦いが始まる前になんとか現状を解消しないと。そこで一か八か毒島の後ろにいた葉山に話し掛けることにした。
「なあ葉山、少し相談なんだが」
「何かな?」
「見ての通り俺は復学したばかりだ。知り合いなんて入院してた時から知り合ってた由比ヶ浜くらいしかいない。それでいて今日は知り合った名残で由比ヶ浜の友人達と昼飯を食べる事になったんだ。お前らとはまたいつかと思ってるから今日のところは引いてくれないか?昼の時間も短くなって来たわけだし。それで手を打ってくれないか?」
「ま、まぁ、ヒキタニくんがそこまで言うならまた今度にしようか。」
「ああ、助かるわ。あと俺は比企谷な」
なんとか葉山との交渉を成立させた。だが今後この世界のコイツと関わっていくことに対してはゴメンだとつくづく思った。
「ちょっと、葉山くん!いいの!?」
おっと、まだ説得しなければいけない人がもう1人いらっしゃった。上位カーストに位置する葉山の意見に疑うこと無く頷いてきた彼女だがここに来て更に声を荒げてきた。そこで俺は毒島にだけ聴こえるように小声で呟いた。
「毒島、今お前が葉山の意見に反対したら葉山は良い顔をしないだろうな。お前が放った反対意見のたった一言で今後葉山との関係が崩れたくなければここは葉山に乗っかった方が賢いと思うぞ?で、どうする?」
「ぐっ………」
渋い顔をする毒島。だが彼女は葉山という存在がこのクラスにいる限りカーストを維持するためか葉山を狙ってるためか知らないが葉山に楯突くことは出来ない。よって…
「わ、分かったわよ。しょうがないから今回だけは見逃してあげるわ。今度またそのブス共と一緒に葉山くんに逆らったらただじゃおかないから。覚悟しなさい」
そう言うと葉山の後を追うように早歩きで元の席に戻る毒島とその一行。今回はなんとか問題事を回避出来たようだ。控えめに言って疲れた。一悶着終えると先程までの思考をまた思い返す。世界の破壊者になるとか豪語した数分前の自分を殴りたくなるほど恥ずかしい。冷静さに欠けてたし次からは気をつけよう。と、思いに浸ってると後ろから声をかけられた。
「ヒ、ヒキオ?その、ありがとね。庇ってくれて」
「いや、お礼はいい。俺の昼飯を妨げられたからその原因を追い払っただけだ。いうなれば俺のために動いた」
「うんうん、ヒッキーは私達のために動いてくれたんだよね!ありがとう!!」
「あの、話聞いてた?俺そんな事言ってないよね?というか由比ヶ浜一言も喋ってなかっただろ。急に出てくるな」
「い、いやー!話すタイミングは伺ってたんだけどね〜中々入れなかったや」
アハハハと軽く笑った由比ヶ浜を見て気が緩んだのか俺と三浦と相模は顔を見合わせ笑った。
その後は何事も無かったかのように昼飯を食べ、昼休みを過した。午後の授業は数学がなかったため眠りにつくことも無く黙々と黒板に向かっていた。
午後の授業も終わり帰りのHRが行われた後、各々の生徒が帰宅の準備をしたり部活に行ったりと行動している。部活、そう部活だ。この世界では奉仕部がどうなっているのか知らないし由比ヶ浜が部活に入ってる可能性もある。その為俺は由比ヶ浜に聞きに行った。
「由比ヶ浜、1つ質問なんだが部活に入ったりしてるか?」
「部活?ううん、入ってないよ?あ、もしかして一緒に部活やらないか…とか?」
「あ、いや。今はまだその予定は無い。勘違いさせて済まなかった。そうか、部活入ってなかったか」
「今はまだってことは今後誘うかもしれないって事でしょ?ヒッキーのお願いなら聞くからいつでも言ってね!」
「お、おう。わかった、帰る邪魔して済まなかった。じゃあな」
「うん!またね!ヒッキー!!」
またね、か。久々に聞いたかもしれないな…とか感傷に浸ってる場合じゃなかった。奉仕部があるかどうかの確認をする為に俺は職員室に向かうことにした。
「やっぱ、確認するなら『生活指導』の先生だよな」
という俺の独り言を教室に置き去りにして
「失礼します。平塚先生に用事があって来ました。平塚先生はいらっしゃいますか」
職員室の扉を開け職員室にいる先生に呼びかけるように話す。と、先生方は俺の探してる人物の方を顔と視線だけで見つめその動きだけでそちらに行けと促してるように見える。いや、せめて声に出して指示してくれよ。何してんだこの先生らは。
「君、私に何か用かな?」
と先生方が目を向ける方から声が聞こえてきたため其方を見る。そこにはいつもの白衣のようなものを纏っている姿はなくレディーススーツを着こなしタイトスカートを身にまとい、左手の薬指には輝く銀色の指輪をした平塚先生の姿があった。
……タイトスカート?指輪?
「で、えっと。君は?」
「ああ、すみません。比企谷八幡と言います。あの、失礼だとは思いますが本当に生徒指導の平塚先生でよろしいですよね?」
「初対面なのに君から何か失礼な思惑を感じたのだが」
「気にしないでください」
「いやしかしd……」
「気にしないでください」
危ない。平塚先生が学校でスカートを履いていて更には結婚しているという事実から目を背けてしまっていたのがバレたのかと思った。元の世界の平塚先生、強く生きてください。
「で、何度も聞くが私に何か用かな?」
「えっと、相談と言いますか質問と言いますか」
「ほう、何かね?」
「この学校にはボランティア部みたいな部活は存在しますか?」
「いや、そのような部は今の所ここでは存在してないな。」
「そう…ですか。まだないんですね」
奉仕部がない、この世界に来たと自覚してから分かってた。分かりきってた筈なのに顧問をしていた平塚先生から言われると心にくるものがある。それだけ俺にとって大切な場所だったんだなと感じさせられた。
「ふむ、君ならなんとかしてくれるかもしれない。私の勘がそう訴えかけてる」
独り言のように呟いていた平塚先生が喋るのをやめ俺の方に顔を向き直した。
そして……
「君に頼みたい事がある。」
「!?」
「君ならできると思っての頼みだ。私の勘が正しければ、の話だがね。受けるかどうかは君次第なのだが。どうかね」
「……わかりました。それが『依頼』と言うのでしたら受けましょう。」
「そうか、助かるよ。私も少々手こずっていてね。力及ばずという感じさ。同年代の君の力を借りたい」
久々に聞いた平塚先生の「頼みたい事」という言葉。この時の俺は奉仕部の活動時のような依頼があると思い内心胸を踊らせていた。
「それで、俺は何をすればいいんですか?」
しかし俺はこの時思いもしなかった。
「とある生徒が登校拒否してしまってね、今は休学扱いにしているんだが君にはその生徒を復学出来るようにサポートして欲しい」
このあと平塚先生から発せられる一言によって
「は、はぁ。で、その生徒の名前って……」
「ああ、言ってなかったね。その生徒は」
俺の体が凍りつくことを、そして
「1年J組、国際教養科」
「雪ノ下雪乃だよ」
これがこの世界で巻き起こるトラブルのプロローグに過ぎないという事を………
高評価
☆9:イージスブルー様、ette様、ビーストⅧ様、かゐと様、Re:ZERO様、榊 影理様、工川ラオコ様
☆8:どこかのシャルロッ党様、モジー様、まさまさまふー様
☆6:神天宮様
皆様高評価ありがとうございました!今後ともよろしくお願いします!
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