もしも、ベストマッチがもっと物騒だったら… (カブトロンガー)
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もしも、ベストマッチがもっと物騒だったら

この作品は作者の捏造ボトルやフォームがあるため、そう言うのが苦手な人は注意です。


やぁ、みんな!俺の名前は桐生戦兎。

空前絶後の天ッッ才!!物理学者にして、地球外生命体 エボルトから地球を守った愛と平和のヒーロー 仮面ライダービルドなんだ。

 

ところで、俺を知ってるならアレも知ってるよな?

そう!《フルボトル》だ!

兎や戦車と言った様々な成分が中に含まれていて、俺が仮面ライダービルドに変身するために必要な超!重要なアイテムなんだ。

 

このアイテムは大きく二種類に分類される。

兎やハリネズミ、ライオンやゴリラ、忍者と言った生物や職業の成分が入った、有機物ボトル。

戦車や消防車、掃除機や宝石、コミックと言った無生物の生物が入った無機物ボトルだ。

この二種類のボトルには最適な組み合わせ、つまり《ベストマッチ》が存在するんだ。

 

兎と戦車、ハリネズミと消防車なんかがそうなんだ。

この組み合わせで変身すると特に強力な力を発揮する事が出来るんだけど…正直、この天ッッッ才物理学者である俺にも何がベストマッチになるか全くは予測がつかないんだ。

あの筋肉バカが第六感(・・・)でベストマッチを探り当てた時は本気でガックりしたよ……。

 

まぁ、何はともあれ、兎に角フルボトルには最適な組み合わせ 《ベストマッチ》が存在する事は分かって貰えたかな?

 

…で、今から君たちに見て貰う世界は俺たちのいる本来の世界とはまた違った世界。

もしも、ベストマッチがもっと物騒だったら(・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・)って世界だ。

つまりはパラレルワールドだ。

 

え?エニグマも無いのにどうやってパラレルワールドの世界を覗けるかって?

……いいんだよ、そういうのは!これは小説なんだから!なんでもありでいいの!

 

それじゃあ、これから本編が始まるから俺はこれで失礼させて貰うとするよ。ciao(チャオ)

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

「うわっ!!」

 

仮面ライダービルド 桐生戦兎はスマッシュの強烈な打撃を受け、大きく吹っ飛ばされた。

2、3回程回転した後、地面に手をついて起き上がるもののダメージは大きく、足元はフラついていた。

 

「…流石にスマッシュ三体を同時に相手するのはキツイな…」

 

「ガォォォォ!!!」

 

「ヒュウゥゥ!!!」

 

「ブゥゥゥ…」

 

そう言う、戦兎の眼の前には3体のスマッシュが凶暴な唸り声を上げていた。

 

パワーに優れたストロングスマッシュ。

飛行能力を有するフライングスマッシュ。

火炎を自在に操るバーンスマッシュ。

 

この3体の突然の奇襲を受けた戦兎は何とか一番安全(・・)なベストマッチフォームであるラビットタンクフォームに変身し、対応したが、数の差に押されて苦戦している。

 

「さて、どうす…うおっ!」

 

戦兎は現状を打開するための作戦を考えようするも、フライングスマッシュの空からの奇襲に思考は阻まれた。

 

「ゥ……!?」

 

続いてストロングスマッシュ。

その丸太のような太腕を振り上げ、鋼鉄をも砕く重いパンチを戦兎と繰り出した。

 

「ぐぁっ!?」

 

その拳を何とかドリルクラッシャーで受け止めるものの、死角から飛んできたバーンスマッシュの火炎球が戦兎に直撃し、再び吹き飛ばされる。

 

再び地につけられたビルドは先ほどにも増して体をフラフラ揺らしながら、再び立ち上がった。

…このままじゃ負ける。戦兎は現状を鑑みて、そう悟った。

 

「……万丈に連絡する隙なんてできないだろうし…しょうがない、ベストマッチを使うか……」

 

戦兎は辺りに可燃性の物体(・・・・・・)が無いことを確認すると、しぶしぶと二本のボトルを取り出した。

 

「……さぁ、実験を始めようか…」

 

戦兎が気が乗らない様な口調でそう言い、ボトルを振ると何処からとも無く科学の方程式が出現した。

それにスマッシュ達がが気を取られている隙にボトルの蓋を前に合わせるといつの間にか空になったドライバーにボトルを装填した。

 

《ハリネズミ!火炎放射器!ベストマッチ!》

 

火炎放射器というやけに物騒な道具とハリネズミのボトルが最適な組み合わせである事を知らせるベストマッチの宣言がドライバーからなり、戦兎は一瞬レバーを回す事を躊躇うも、すぐにドライバーを回す。

 

するとドライバーから赤と白のランナーが伸び、火炎放射器ハーフボディとハリネズミハーフボディが形成される。

 

《Are you ready !? 》

 

「……ビルドアップ」

 

《バーニング剣山!!ファイヤーヘッジホッグ!!イェイ !!》

 

二つのハーフボディに挟まれた戦兎はハリネズミの棘による防御力と火炎放射器の焼却力を持ったフォーム ファイアーヘッジホッグへと変身した。

 

「グゥゥゥ!!」

 

「ヒュウゥゥ!!!」

 

「ガォォォ!!」

戦兎の姿が変わった事に気づいたスマッシュ達は唸り声を上げて戦兎へと襲い掛かってくる。

 

「はぁ!!」

 

「ビュウウウウウウ!!!」

 

戦兎が腕に着いた火炎放射器をフライングスマッシュへと向け、火を放つ。

するとフライングスマッシュの体をやすく覆い尽くす程の火柱がフライングスマッシュを焼き尽くし、ついでに直線上にあった木々を直線で軽く100m程灰に変えた。

 

「あっ!?やっちゃった!!」

 

「グゥゥ!!」

 

「ガォォ!!」

 

「あー!もう!うるさい!今それどころじゃ無いんだ!!」

 

拳を振り上げてきたストロングスマッシュとバーンスマッシュの攻撃は突如 凄まじい長さに伸びた右手のハリネズミの針に阻まれる。

 

「はぁ!!」

 

「「グガァォ!!」」

 

戦兎は右足を軸にコマの様に回転すると右手の針を伸縮させ2体のスマッシュを薙ぎ払う。

 

「グゥゥ!!」

ダメージが漁ったのか、殴り飛ばされてからすぐに復活したバーンスマッシュはその自慢の右手に炎を集中させ、直径1mにも達するであろう火球を放った。しかし…

 

「あー、今度は威力を調節して…はぁ!!」

 

火炎放射器ハーフボディより瞬時に放たれた火球の大きさはバーンスマッシュの火球の10倍を軽く凌駕していた。

 

「グゥゥウウウウウウウゥゥ!!!!!!!」

 

そして、両火球は衝突した直後、バーンスマッシュの火球がすぐにかき消え、直線上にいたバーンスマッシュに直撃。

その後、着弾地に発生した凄まじい火柱はあまりの熱量により、地面を一部ガラスに変えながらバーンスマッシの命を確実に断ち、火柱が収まり、後にはガラスとなった事によりピカピカ光る地面の上でウェルダンに焼けたバーンスマッシュが倒れていた。

 

「……あー、やっぱやっちゃったか…」

 

「ピュウ!!」

 

「ん?あ、待て!」

 

戦兎が火炎放射器ハーフボディのあまりの威力にドン引いているとなんとフライングスマッシュは恐れをなしたのか、背を向けて飛び去ろうとし始めたでは無いか。

 

「逃すかよ!!」

 

そう言いながら、今度は何処からとも無く茶色と灰色のボトルを取り出して、振り、蓋を合わせて、ドライバーへと装填した。

 

《ゴリラ!ナイフ!ベストマッチ!!Are you ready !?》

 

「ビルドアップ!!」

《殺戮のデストロイヤー!ゴリラナイフ!!イェイ !》

 

変身が完了し、ビルドはナイフの鋭さとゴリラのパワーを持ったベストマッチフォーム。ゴリラナイフへと変身した。

 

「はぁ!!」

 

戦兎が左のナイフハーフボディの腕をフライングスマッシュへ向けると何処からか数えきれない程のナイフが出現し、一斉にフライングスマッシュへと向かって飛んでいった。

 

「ピュ? ビュガ!ビュビュビュビュビュビュ!!!!!」

 

振り返ったフライングスマッシュはいきなり雨あられと飛んできたナイフ全身のあらゆる場所を切り刻み、突き刺し、ズタズタにした事で、フライングスマッシュは空中で大爆発を起こし、死んだ。

 

「…あぁ、やっぱり、エグい」

 

「ガォォォ!?ガォォォ!?」

 

「ん?あ、まだ残ってたか。なら…」

 

戦兎が目を向けると、そこには瞬く間に2体のスマッシュを倒してしまったビルドに恐れをなしたのか、立ち竦んでしまっているストロングスマッシュがいた。

戦兎は再び何処からか二本のフルボトル、ライオンフルボトルと工場フルボトルを取り出す。

そして、そのボトルを振ろうとし…やめた。

 

「…やっぱりこんな所で毒ガスなんて使えないよな」

 

ここが市街地よりそう遠く離れてない場所だ。スマッシュにすら致命傷を与える猛毒のガスを大量に生産する能力を持つ工場フルボトルの能力なんてここで使用したら、どんな大惨事になるかは想像に難くなかった。

 

戦兎は二本のフルボトルをしまうと次々とボトルを出してはしまってを繰り返す。

 

「えぇっと、忍者ボトルのベストマッチは地雷…ダメだ、ここじゃ使えない。威力を調整した鷹とガトリングは…あぁ、家に忘れた!!もう!」

 

「ガォォォ!?!?」

 

戦兎がボトルの選択に迷っていると、ストロングスマッシュが奇声とも取れるほどの大きな唸り声を上げて突っ込んできた。

恐怖のあまり錯乱してしまったのだろう。

だが、理性を失った獣程恐ろしいものは無く、ストロングスマッシュが走ってくるスピードは今までで一番のスピードだった。

それこそ、ボトルチェンジの暇もない程の。

 

「あぁ、もう!!」

 

ボトルチェンジを諦めた戦兎はゴリラハーフボディのゴツい腕で器用にレバーを回転させる。

 

《Ready Go !! 》

 

 

ドライバーの音声に合わせて、戦兎がゴリラの腕を地面に叩きつけると、地面から無数のナイフがストロングスマッシュへと突き突き刺さり、その動きを拘束した。

もう、これだけで致命傷にも見えなくはないが、ストロングスマッシュの高い防御力が災いし、この攻撃で死ぬ事は無かった。

 

「ガ…オ…オォ…」

 

「はぁぁ……はぁ!!」

 

そして、戦兎はゴリラの腕に茶色のエネルギー溜め、纏うと、最早虫の息のストロングスマッシュにオーバーキル気味のトドメの一撃を叩き込んだ!!

 

《ボルテック!!フィニッシュ!!イェーイ!!》

 

「はぁあああああ!!!!!」

 

「ガォォォォォォ!!!!!」

 

エネルギーを充填させた事により、ゴリラの右腕、サドンデストロイヤーのパワーが2倍になったパンチがストロングスマッシュへと叩き込まれ、ストロングスマッシュは大爆発を起こし、ビルドの前に敗れ去った。

 

 

 

 

 

戦いが終わり、変身を解除しないまま戦兎は辺りを見渡した。

そこには火炎放射器によって所々が焦げ、ナイフによって所々がズタズタに引き裂かれた地面が残り、まるで戦争でもあった後のような様相を見せていた。

勝つためには仕方なかったとはいえ、この現状はあまりにも酷すぎた。

 

「…なんでベストマッチはこう物騒なんだ…」

 

戦兎はボトルを眺めながらそう呟くと、重い足取りでスマッシュされた人々を救うために歩き出したのだった。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

…どうだった?

見てわかったと思うが、この世界は「もしも、ベストマッチがもっと物騒だったら」って世界だ。

生憎、作者の技量不足でその恐ろしさをあまり感じられなかったかもしれないけれど…ベストマッチの中身がヘンテコで良かったろ?

じゃ、無かったらこんな物騒な事になってたんだからな。

 

この世界には他にも忍者×地雷 ライオン×工場といったどう考えても正義のヒーローが使っちゃダメな能力を持ったフォームもあるからな。

 

まぁ、作者が伝えたかった事はやっぱり平和が一番ってことだな。

 

それじゃ、もうこれ以上書くことも無いからこの小説は終わりだ。

最後まで読んでくれてありがとな。

 

ciao(チャオ)!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ったく、石動があんなヘンテコなボトルばかり生み出さなけりゃ、こんな素晴らしいボトルが生成できたものを…まぁ、いいか。

星を滅ぼすに障害が何も無いのでは面白く無いしな……

 

 




…こうしてみると、石動さんまじグッジョブ。
じゃないと、仮面ライダービルドがアマゾンズよりエグい展開になってたぜ…

2018/10/03
知人からで何故ラビットタンクが一番安全なのか?
という指摘がありましたので、ここに記しますね。

簡単に言えばラビットタンクが「徒手空拳」を基本とし、他の形態より遥かに安全だからです。
この世界ではエボルトが生み出した無機物系ボトルはギロチンフルボトルやミサイルフルボトル、果てはニュークリアボムフルボトル(核爆弾)など、ハーフボディでも扱いに困るようなフルボトルばかり。

…ね?こうしてみるとラビットタンクめちゃくちゃ安全でしょ?

因みに今回出てきたベストマッチも纏めときます。

[ゴリラナイフ]
→ゴリラとナイフのベストマッチ。
ナイフ側のボディにへ無数の刃が生えており、これで敵を切り裂いたり、攻撃してきた敵にダメージを与えながらのガード(しかも鉄でもあるから硬い)も可能。隙が出来た所にゴリラのパンチで仕留める。
ボルテックフィニッシュは本編のパターンの他にサドンデストロイヤーの衝撃波で敵を打ち上げ、敵の360度全てにナイフを出現、突き刺すという某時を止める吸血鬼の様なパターンもある。

[ファイヤーヘッジホッグ]
→火炎放射器とハリネズミのベストマッチ。
本編と名前が変わらないのは別に作者が名前を思いつかなかったからではない。
能力としては遠距離は200m先の敵まで届く1万度の炎で敵を攻撃し、中距離の敵は大きさ数十メートルの火球や炎を纏った棘弾、近距離はハリネズミの針で攻撃する。


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もしも、ベストマッチがもっと物騒だったら〜ハザード編〜

はい、短編で終わるつもりでしたがやはりビルドといえばハザードフォームだろうという作者の作者の完全な独断と偏見と嗜好と勝手により、続きを書きました。
皆様のお声次第では続きもあり得るかも…


は〜い!みんなのアイドル、み〜たんだよ♪

 

 

 

 

 

 

 

 

な〜んてな。やぁ、読者諸君。みんな大好きエボルトだ。

今回も前みたいに戦兎の真似をしてみようと思んだが毎回同じだと飽きるだろ?

だから今回は我が娘 美空の真似でもしてみようかと思ったが……これ、かなり恥ずかしいな。

美空は毎回どこの誰とも知らないドルオタ共にこんな小っ恥ずかしい愛嬌を振りまいてたのか……。ほんと尊敬するぜ、美空には。

 

……しかし、今思えば美空に東都のボトルを浄化させた後で始末してしまえば良かったな。奴の命も最早、風前の灯火だったわけだしな……まぁ、終わった事をグダグダ言っても仕方ねぇか。

 

さて、今回は前話の世界の少し後の時系列だ。

前の話は本編の時系列で言えば万丈がクローズに変身した後くらいだな。あ、統合性なんかはパラレルワールドだから突っ込むなよ?これだけ俺好みのボトルが揃ってる世界なんだ。大筋はだいたい同じではあるだろうが細部は色々違うんだよ。

 

と、まぁ前置きで長々と話したがこれから本編だ。

内容としては21話……そう!記念すべきハザードフォームの初陣の話だ!!いやぁ、あの時の戦兎は面白かった。

自分が万丈を止めるとか言いながら結局、自分が暴走してるんだからな。しかも最後はヒーローにあるまじき行為までしてしまって……全く大爆笑だったぜ。

 

……おっと、話が脱線しかけたな。それじゃあ、ここから本編だ。楽しんで見てくれよな?じゃ、ciao(チャオ)

 

◇◇◇◇

 

強大なエネルギーを秘めたパンドラボックスを巡り、東都と北都の戦争が勃発した。

仮面ライダービルド 桐生戦兎はなんとか戦争を止めようと奮闘するものの、北都の仮面ライダーグリスとその部下である北都三羽鴉は手強く、まるで相手にならない。

彼らに対抗するために桐生はグリスと同一のスクラッシュドライバーを作り出し、右往曲折の末に万丈がドライバーを使用、クローズチャージへと進化を遂げた。

しかし、スクラッシュドライバーは使用を続けら毎に使用者を凶暴化していく最悪のドライバーだった。

それにより次第に戦闘を求める狂戦士とかしていく万丈。

責任を感じた戦兎は苦渋の末、禁断の力に手を伸ばした。

 

 

 

《ハザードオン!》

 

「俺がお前を止める。この身をかけても!」

 

目の前でハザードスマッシュと化した三羽鴉と戦う万丈。

殴る、蹴るの原始的な方法で三体の敵を圧倒する様はまさに狂戦士。その姿に心を痛めながら戦兎はスタークから渡されたアイテム ハザードトリガーのコネクタをドライバーの空きスロットへと接続した。

 

そして次にラビットとタンクのボトルを装填する。

 

《ラビット!タンク!スーパーベストマッチ!!》

 

普段の音声とは違う、しかしどこかいつもよりも陽気に感じる音声を耳にしながら戦兎はレバーを回転させる。

 

《ガタガタゴットン!ズッダンズダン! ガタガタゴットン!!ズッダンズダン!!》

レバーの回転と同時にドライバーのボルテックチャージャーより鋳型の様な専用フレーム ハザードライドビルダーが前後に出現した。

 

 

Are you ready ?(覚悟は良いか?)

 

「変身」

 

明らかに尋常でない速度でハザードライドビルダーが戦兎をプレス。そして…

 

《アンコントロールスイッチ!ブラックハザード!!ヤベーーイ!!!》

 

黒い煙と共に厄災(ハザードフォーム)が姿を現した。

 

 

 

 

 

 

ハザードフォームの力は圧倒的だった。

ラビットタンクスパークリングでも敵わなかった北都三羽鴉。しかもその強化された姿を全く寄せ付けない。

キャッスルハザードスマッシュを軽々と殴り飛ばし、オウルハザードスマッシュを蹴り飛ばす。

スパークリングとは比較にもならない。まさに禁断を冠するに相応しい強さだった。

 

……しかし、万丈は止まらない。

三羽鴉の一人、青羽を殴り飛ばし、戦争を止めるために北都へと走り出す。

戦兎はそれを止めようと立ちはだかった。

 

 

「俺の邪魔をする奴は誰であろうと容赦しねぇ!!」

 

「目を覚ませ!」

 

万丈の拳が戦兎へと繰り出される。

それを捌きながら暴走する万丈を必死に説得する。

しかし、狂戦士と化した者の耳にはその声は届かない。

咄嗟の前蹴り。それで一旦距離を取ろうとした、その時だった。

 

「うっ、意識が……」

 

戦兎の脳に未知の衝撃が走ったのは。

 

 

視界がグラく。段々と意識が薄くなっていく。

そして戦兎の脳裏に1人の男の声がリフレインした。

 

 

『戦闘が長くなると脳が刺激に耐えられなくなって理性を失う』

 

 

「オラッ!!」

 

ツインブレイカーの射撃。

それによって光弾が頭上のライトが割り、背後の壁が崩す。

何発かの光弾は確実にヒットした。しかしハザードフォームはビクともしない。

 

 

キィッ……キィッ……

 

頭上のランプが音を立てながら揺れる。視界のグラつきが大きくなる。

 

キィッ……キィッ……

頭上のランプが音を立てながら揺れる。段々と意識が希薄になっていく。

 

キィッ……キィッ……

 

『その瞬間、目に映る物全てを破壊する』

 

……厄災が始まる瞬間だった。

 

ハザードフォームは突然走りだした。

その走りに先程の様な迷いはない。

突然豹変した相手にクローズチャージは面食らい、動きを止めてしまった。

 

しかし、ハザードフォームは止まらない。

驚きで動きを止めた相手の鳩尾に容赦のない拳を叩き込んだ。

鈍いうめき声を無視してそのまま鳩尾を支点に万丈の体を持ち上げると左手でその喉を掴み上げた。

 

《マックス!ハザードオン!ガタガタゴットン!ズッダンズダン!》

 

そして空いている手で瞬時にハザードトリガーの上部についているスイッチを押し、レバーを最小限の動きで回した。

瞬間、ハザードフォームの体を万能強化剤 プログレスヴァイパーが覆い尽くし、強化モードであるオーバーフロー状態へと移行させた。

 

《Ready Go!》

 

凄まじき力を得たハザードフォームの行動は的確にして無慈悲だった。そのまま首を握っていた腕を離すと、重力に従って落ちる体に左手で叩きつける様に殴った。

そして、その体が地面に着く前に更にもう一度左で殴る。

 

《オーバーフロー!!ヤベーーイ!!》

 

すると万丈の体はサッカーボールもかくやという様に弾み、その体が更に浮いて来た所にハザードフォームは左足の蹴りを合わせ、万丈の体を大きく吹き飛ばした。

 

「グアアッッ……あっ、あぁ……」

 

強化剤によって途方も無い強化をされたパンチとキックを食らった万丈は変身が解除され、地面に転がるとあまりの痛みからか患部を抑えそのまま呻き、蹲ってしまった。

 

「……」

 

だが、そんな状態の万丈に対しハザードフォームはひたすらに無音であった。

仲間である万丈への心配の声も、駆け寄ると言った行動も、なにも無い。

ただひたすらに、機械の様にそこに佇む。

 

そして、ややあってその首を右に……敵対していたキャッスル、オウル、スタッグの三体のハザードスマッシュへと向けた。

 

 

 

 

 

 

「「うぁあああ!!!」」

 

キャッスル、オウル、二体が宙を舞い、無様に地面に体を打ち付けた。

そしてそんな二体を嘲笑うかのようにハザードフォームはゆっくりと歩を進めた。

 

「うぉおおお!」

 

ハザードフォームの背後からスタッグハザードスマッシュが斬りかかる。しかし、その攻撃はまるで予測していたかのように避けられ、代わりに痛烈な打撃を胸に食らって大きく吹き飛ばされる結果となった。

 

 

「うぅ……アイツ、バカ強いよ。赤ちゃん」

 

「あぁ、バカ強ェ……このままじゃ確実にやられる」

 

「じゃあ、どうするのさ?」

 

「どうもこうもねぇ。もう少ししたらきっとカシラが来てくれる筈だ。そうなれば百人力。それまで持ちこたえるぞ!」

 

「分かった。青ちゃん!カシラが来るまで頑張って持ちこたえるよ!」

 

「おう!分かった!」

 

言うが早いかオウルハザードスマッシュは特殊能力によって空に飛び上がった。

相手には見た感じ飛行能力の類は確認出来なかったため空から攻撃を加えて地上の味方のサポートをする算段だ。

 

それに呼応したようにキャッスルハザードスマッシュは自慢の頑丈な体を生かした突進を、スタッグハザードスマッシュは二本の剣を振り上げて斬りかかった。

 

だが、ハザードフォームの戦闘力はその上を行く。

 

回し蹴りで突っ込んできた二人のスマッシュを蹴り飛ばすといつの間にか手にしていた二本のボトルをドライバーに装填した。

 

《ハリネズミ!火炎放射器!スーパーベストマッチ!!》

 

即座にハザードライドビルダーがハザードフォームをプレスし、ファイヤーヘッジホッグハザードフォームへとフォームチェンジした。

 

「……」

 

するとハザードフォームはゆっくりとした動作で左手を空中のオウルハザードスマッシュへと向けた。

その奇怪な行動に、オウルハザードスマッシュは空中に浮遊しながら疑問符を浮かべたが、彼のその疑問が氷解する事は無かった。

 

何故なら彼は次の瞬間、蒸発したのだから(・・・・・・・・)

 

 

 

……彼らの目の前で何が起こったのかを理解できた者はこの場には居なかった。

ただ彼らが理解できたのは何かが焼けた焦げ臭さ。そして、突然抉られた山という異常な光景だった。

 

「……何が、起こったんだ……」

 

「あ、ありえねぇ……」

 

種明かししてしまうとハザードフォームのやった事は至極単純な事だった。

ただ自身の左手に宿った火炎放射器の力を使って20000度の炎を放出し、背後の山ごと黄羽を葬っただけの事。

その際に山が横幅にして200m程。縦にして50mほど、奥行きにして500m程蒸発してしまったが、敵の殲滅を優先とするハザードフォームにとっては取るに足らない瑣末事であった。

 

こうしてオウルハザードスマッシュこと黄羽は攻撃を知覚する事なく一瞬にして蒸発した。

 

カチャカチャという音の発生源が自身である事ににスタッグハザードスマッシュは気づいた。

視線を落とすと手が震えて手持ちの剣が自分の腿に当たって音を立てていたのだ。

その震えは断じて武者震いではない事はスタッグハザードスマッシュ自身が良く分かっていた。

 

……あれは化け物だ。決して相手にしてはならない化け物だ。

スタッグハザードスマッシュは本能で理解した。

黄羽があの相手に一瞬で殺された事に。そして彼我の力量差がいかに絶望的かを。

何より大切な仲間を殺された事に怒りはなかった。あったのはただの恐怖。強者を前にした弱者の恐怖であった。

 

 

「うう……うぁああああああああ!!!」

 

だが、もう一人の仲間であるキャッスルハザードスマッシュはどうやら恐怖よりも仲間を殺された怒りの方が優ったようだ。

……いや、ただ恐怖に飲まれて暴走しただけか?

 

だがそのどちらであろうとハザードフォームには関係はない。

ただ向かってくる敵を、目に付いた敵を殲滅する。

今の彼にはそれのみが、ただ唯一の行動原理なのだから。

 

ハザードフォームは向かってくる敵に向かって大きく両手を広げるとそのまま相手の速度を上回る速度で接近し、敵を抱擁した。

すると抱擁された敵から鋭く痛みの声が上がった。

 

見るとハザードフォームの前半身からは大小短長の針が無数に生え、キャッスルハザードスマッシュの全身を余す事なく刺し貫いていたのだから。

 

そのあまりの激痛から抱擁が解かれても尚キャッスルハザードスマッシュは痛みのあまりのたうちまわる。

 

「……」

 

ハザードフォームは敵を静かに見据えている。

その挙動はあまりに成果がなく、ただただ機械的だ。

《ゴリラ!ナイフ!スーパーベストマッチ!!》

 

再びハザードライドビルダーがビルドをプレスし、ゴリラナイフハザードフォームへとフォームチェンジした。

 

「……」

 

ハザードフォームはやはり無言のまま、叫び声をあげるキャッスルハザードスマッシュを無理矢理起こし、その拳で殴りつける。

すると驚いた事に響いた音は打撃音ではなかった。

上がったのは金属音。そして火花だった。

それもその筈、ハザードフォームの腕には螺旋状にナイフの刃が付いていた。

音の正体はドリルのように高速回転された刃がキャッスルハザードスマッシュの体を削る音だったのだ。

 

ギィィン!!ガキィン!!ギュィン!!

 

ハザードフォームの一撃一撃がキャッスルハザードスマッシュの体を比喩なしに削ってゆく。

それはまさにドリルによって削られていく城壁のような有様でとても見ていられる光景ではなかった。

スタッグハザードスマッシュも腰が抜け、恐怖のあまりハザードフォームから目が離せさえしなければ目を逸らしていたであろう凄惨な光景だった。

 

「あ……………あぁ……」

 

何度目かのパンチ。アッパーによって大きく吹き飛ばされたキャッスルハザードスマッシュは最早虫の息。いつ死んでもおかしくない。

だがハザードフォームは追撃の手を緩めはしない。

 

《マックス!ハザードオン!ガタガタゴットン!ズッダンズダン!

Ready Go! オーバーフロー!ヤベーーイ!!》

 

ビルドは更にレバーを回す。

 

《ガタガタゴットン!ズッダンズダン!Ready Go! ハザードフィニッシュ!!》

 

ハザードフォームは瞬時にレバーから手を離すと高々と振り上げ、そのまま勢いよく振り下ろした。

 

すると今に立ち上がろうとしていたキャッスルハザードスマッシュの周りの地面から長さが均一の刃物が生えた。

そしてトラバサミのように地面がキャッスルハザードスマッシュを挟みこむ……音は無かった。

 

幸いだったのは地面に挟まれる瞬間キャッスルハザードスマッシュこと赤羽の意識は既になく、痛みを感じる事なくあの世へと行けた事だろうか。

 

だが、そんな事などハザードフォームには関係なかった。

一体の獲物を仕留めたのなら次の獲物を探して狩るまで。

ハザードフォームは地面にめり込んだ腕を引き抜くとゆっくりと後ろを振り返った。

 

「ひいっ……」

 

情けない悲鳴だった。

戦場で戦う兵士が出すものではない。

そして恐怖にかられ、そのまま敵に背を向け、芋虫のように這って逃げようとするなどとてもではないが見れたものではなかった。

だが誰が彼を責められようか。

目の前で仲間が規格外かつ極めて残酷な方法で処刑される光景を見せられ、尚且つその処刑を執行した死神が自分を殺しにゆっくりと歩を進めているなど。

寧ろそんな状況で発狂してしまわない分、スタッグハザードスマッシュの精神は強固であると言えた。

 

《ドラゴン!ニュークリアボム!スーパーベストマッチ!!》

 

だが、やはりハザードフォームはどこまでも機械的で残酷であった。

手持ちのフルボトルの中で最も殺傷力のあるボトルをベルトに装填し、ニュークリアドラゴンハザードフォームへとフォームチェンジするとむんずと逃げようとするスタッグハザードスマッシュの足を掴んだ。

 

そして、全身に力を込めると思い切りスタッグハザードスマッシュを空へと放り投げた。

手持ちの中で最も殺傷力に長ける同時に最も怪力であるフォームによって彼は空高く空高く飛翔する。

 

《マックス!ハザードオン!ガタガタゴットン!ズッダンズダン!Ready Go! オーバーフロー!ヤベーーイ!!》

 

ハザードフォームの全身に眩い程の光が集まり出す。それは全身を覆う強化剤と相まってまるで神のような神々しさを醸し出している。

 

《ガタガタゴットン!ズッダンズダン!ガタガタゴットン!ズッダンズダン! Ready Go!ハザードフィニッシュ!!》

 

しかし、これから放たれる一撃はそんな神々しさとはかけ離れた悍ましい一撃。人間の業の集大成とも言うべき一撃だった。

 

ばっ!と擬音がつきそうな程素早く両の腕を前に突き出す。

掌が向かい合うように左が上、右が下に位置して構えはまる龍の顎。

 

その中央に白と黒の二色の色が混ざり合い、いくつもの核が対衝突を繰り返し、膨大なエネルギーを蓄積させていく。

エネルギーが増すごとにその光弾は輝きを増し、殺傷力を増していく。そのエネルギー量は対個として使うにはいっそあまりにオーバーキルでもあった。しかしハザードフォームは構わずエネルギーを蓄積させる。

 

そして、そのエネルギーが最大にまで高まり、ハザードフォームはそのエネルギーをスタッグハザードスマッシュへと向けて放った。

 

 

エネルギーの光弾はスタッグハザードスマッシュへと迫り……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………世界は白に包まれた。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

どうだった?今回ははここまでだ。

 

……え?この後どうなったかってか?

まぁ、これだけは言っておくがあの光弾のエネルギーは最新の核爆弾の数倍のエネルギーを誇ってるって事と、あの形態のハザードフォームには核関連の攻撃は無効化されるって事だ。

つまりは相当楽しい事になってるって事だな。

 

ワックワクのドッキドキだね!(大竹のぶ代ボイスの声真似)

 

んん!どうだ?結構似てたろ?声の仕事は得意なんだよ!

 

……え?小説だからわかんない?おいおい、そこは嘘でも「うん!上手かったよ!」くらい言えよー。空気読めねぇなぁ。

 

まぁ、良いか。それじゃまた作者の気が向いた際に作られるかもしれない小説で会おう。ciao(チャオ)




どうも。カブトロンガーです。
ここまで読んで頂いてどうもありがとうございました。

この続編は前に書いた小説の中問題点や課題を自分なりに直すために書いた…というのは建前で単に作者がハザードフォーム大好きだから書いたものです。

いやー。ハザードフォームはいいですね。
あの全身黒塗りの装甲から漂う危険な香りとそれに違わぬ強さと暴走は良かった。
ラビラビ、タンタンのせいで出番が無くなりましたが、それでもキードラゴンハザードが登場した時は思わずテンション爆上がりでした。

……個人的にはラビラビ、タンタンは必要なかったと思うんですよね。あれさえなければハザードフォームで新たなフォームが出演する機会がもしかしたらあったわけで。

まぁ、愚痴を言ってもしょうがありません。
これからも何か題材になりそうなものがあれば短編を上げていこうと思います。
そして十分に力がついたの作者が判断したらまた長編に挑戦していこうと思いますので、これからも応援よろしくお願いいたします。


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