ORGA【鉄血のオルフェンズ×ARIA】 (DDD弾血王オルガ・イツカ)
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一章
水の惑星 1


やったぜ。
初投稿。



 

 

 

 長い夢を見ていた気がする。

 果てなく長い旅の夢。

 ある場所を求めて彷徨い続ける夢。

 

 そこにたどり着ければ、きっと──

 

 

 

『当機はまもなく、惑星アクアの大気圏に突入します』

 聞きなれない、機械的な声と台詞が耳に入る。別にそれが煩わしいわけではないのに、 眠りは解けていく。

「おはよう。オルガ」

 聞きなれた、優しくて懐かしい声が聞こえる。それが嬉しくて朧げな世界は確信を持つように鮮明になる。

「おう。ミカ」

 

 ◇

 

「ここは、一体?」

 目覚めたオレの視界には合理化されて無駄のない空間に羅列した座席に座る人々が映った。

 座席の横側にある窓の外は真っ黒でポツポツと小さな明かりが見える。見覚えがある風景だ。

「宇宙船じゃないかな。普通の民間人が乗る。地球から出発したみたい。オレたちはこういうのに乗ったことないよね」

 隣に座る、もう会えないはずの家族が平気な風で言う。そうだ。オレたちはもう会えないはずだ。だってオレたちは──

「ミカ、オレらはどうしてこんなところに……」

「昔オルガが言ってた。死んだあとは天国に行ってそこで皆んなとまた会えるって。その次は生まれ変わって、また会える。オレたちは繋がっているんだって」

 オレとミカは生まれ変わったっていうのか? だけど、姿形は昔のまんまだ。ミカは小柄だけど逞しいやつで黒い髪の毛の男だ。今も記憶にある昔のミカも変わっていない。

 オレも自分の顔は鏡がないことには拝めないが、色黒の肌にノッポな感じはどう見たって昔のオレそのものだ。知っている生まれ変わりとはなんだか違うような気がする。

 ただ、こうして座っているといつもは気になる背中の突起物が無いようだった。

「生まれ変わりかぁ。ホントにあるなんてたまげたなぁ」

「オレも驚いた」

 そう言うミカはクールなままで、そんなに驚いているようには見えない。周りを見て、今の状況を確認しているようだ。

 スゲェよ、ミカは。

「なぁ、ミカ。この宇宙船はどこに向かってるんだ?」

 オレより先にここにいて、今も環境に順応するためにシステムフル稼働のミカなら何かわかったかもしれない。

「ああ、それなら火星だよ。天井から聞こえる声が言ってた」

「火星⁉︎ そりゃ、あの火星か? オレらの故郷の」

「いや、火星は火星なんだけど、ここの火星はオレたちの故郷とは違う火星みたいなんだ」

 違うってどう違うんだ? 火星といったら地球や月以外に人が住めるようになった星でオレたちが生まれたあの赤い星じゃねぇのか?

『みなさまにお知らせいたします。本船はただいま、電離層を抜けました。

 到着までしばしの間、眼下の景色をお楽しみください』

 宇宙船のアナウンスと思われる声がそう告げる。乗客の人々の顔には笑顔が見える。一体、何が起こるというのか。

 程なくしてその現象は起きた。瞬きをしていた束の間に。

 無いのだ。宇宙船の天井も床も壁も。自分らの座る座席以外が取っ払われて、それだけで空を飛んでいる。

「なんだこりゃ! 墜ちる! 墜ちちまう!」

 ビックリ仰天して慌てふためき、思わず目をつむる。ミカの前ではカッコいいオルガ・イツカでいなくちゃいけないのに、みっともねぇ。

「オルガ、大丈夫。天井も床も壁も無くなってない。きっとスクリーンに外の映像が映し出されているか、壁や床が透明になったんだよ」

「なんだよ……」

 驚いているのはオレだけ。ほかのみんなは外の景色を楽しんでいるようで、はしゃぐ声が辺りから聞こえてくる。

 だったらオレも負けてらんねぇ。この瞬間をとことんまで生き抜く。それがオルガ・イツカだ。

 覚悟を決めて目を開く。

 そこには──

 

 ──そこにはどこまでも続く蒼色の空と海が広がっている。

 

 オレの知る火星とは似ても似つかない。

 青と白の世界がそこにはあった。

 

 

 




オレの筆は止まんねぇからよ。


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水の惑星 2

 

 

 

『ようこそ。水の惑星「AQUA(アクア)」へ』

 船内にアナウンスが響く。

 ゆっくり下へと降りていく宇宙船。大パノラマは消えて元の白くて清潔的な空間に戻った。

「アクア? 火星じゃねぇのか?」

「今はアクアって言うんだって。一五◯年前テラフォーミングされて、上とか下の方の氷が溶けて水びたしになったってアナウンスが言ってた」

「へぇ。つうことはやっぱりオレらのいた火星じゃないんだな」

 オレらのいた火星のイメージは赤と黒。青と白のこのアクアとは真逆だ。

 

「さてと、ついたみたいだし、取り敢えず外に出ようぜ。何事も立ち止まってちゃ、進まねぇからよ」

「うん。そうだね」

 そう言ったものの、さっきの透過されたスクリーンだかのせいで、ビビってしばらく動けなかった。

 お先にどうぞと降りる人たちを見送る。乗客はあと数人ほどという頃にやっと足の痙攣が収まった。

 いつのまにか、懐に入っていたパスポートやらなんやらの書類にはしっかりとオレやミカの存在が証明されている。不思議なこともあるものだ。

 この際だから、出るのは最後でいいかと一番後ろに座っていた大柄の乗客を見送り出ることにする。

 その乗客はトレンチコートに帽子を深く被った謎の人物で横にも縦にもデカイ。宇宙船の座席と座席の間の通路を横歩きでギリギリ歩いていく。

 オレとミカの座る座席の横をその人物が通った。

 一瞬だけ目が合う。

 猫のような鋭い眼がこちらを見ていた。

 睨んでいるわけではない。

 あれはどちらかというと微笑んでいるようには見える。

 不思議な人だ。

 

 ◇

 

『マルコポーロ国際宇宙港へようこそ。ネオ・ヴェネツィアに観光のお客様は三番ゲートよりお進みください』

 気を取り直し宇宙船の外へと出る。

 凝り固まった体をほぐしながら案内通りに進んでいく。

「ネオ・ヴェネツィア?」

「昔、地球にあったヴェネツィアっていう街を再現した水上都市なんだって。他にもアクアには昔地球にあった街を再現した場所がいっぱいあるらしいよ。ここは特に観光地として有名らしい」

「地球か。そういえば海といえば地球だよな」

「うん。でもここの地球はマンホームって呼ばれてて、すごく発展しているんだけど、今の地球の海は訳ありらしいんだ」

「そっか。訳ありか。だからみんな海を見て喜んでいたんだな」

 しばらく空港を歩いていると景観が先の宇宙船に準じたものではないことが伺える。それはちょっと変だ。

 オレの知っている火星ではないことはわかったが、宇宙船で地球と火星を行き来できる。しかしオレの記憶では地球と火星を行き来するにはかなり時間がかかる。乗客の様子からしてそこまでの長旅には思えなかった。つまり、ここの技術はオレらの知っている世界よりも進んでいるって事だ。

 それなのになんでこの街は──

 

 どうやら言語に問題はないようで、問題なくオレとミカは空港の出口を見つける。

 ハイテクな自動ドアをくぐり抜けたその先には──

 

 大海と青空のもと。海の上に佇む建物。迷路のように張り巡らされた水路。夢物語の中でしかありえないはずの都市がそこには在った。

 

「なんだコイツは。まるで話に聞いた古代文明じゃねぇか。厄祭戦の前にあったっていう滅んじまった文明の再現なのか?」

 オレたちのいた世界で語り継がれてきた厄祭戦という人類の存亡をかけた機械との戦い。そこで途絶えてしまった人々の暮らし。

 話に聞く古代文明によく似た街がそこにはあった。

「地球暦2303年ってあるけど、オレたちの知ってる暦とは違うね」

「ああ、もしかしたらこの世界では厄祭戦や戦争が無かったからこんなに気の遠くなるほど暦の数字がでかいんだな」

「なんかそれいいね」

「そうだな」

 目の前にある青の世界はまったくの未知だ。これから何が起こるかわからない。だけどそれはオレがこれまで感じてきた不安ではなかった。

「よっしゃ。さっそく街をブラついてみようぜ。百聞はなんとやらだ」

「うん。行こう、オルガ」

 爽やかな潮風と優しい潮騒に見守られてオレたちは駆け出した。

 新天地ネオ・ヴェネツィア。ここでオレとミカの新しい世界が始まる。

 今まで感じなかったこの感覚。

 これはきっと。

 きっとワクワクだ。

 この世界にはある。

 きっとある。

 オレたちの。

 居場所が。

 

 

 

 

 

 



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水先案内人 1

 

 

 

 オレとミカは浮かれていたのかもしれない。まだ見ぬものへの好奇心。この前まで、そんなものにたぶらかされることはついぞなかったから、ただのガキらしく思うがままに見たことのないものを見ようと冒険したくなったのだ。

 それが仇となったのか、それともこの街が別格だったのか。

とどのつまり、オレたちは迷子になっていた。

「オルガ。次はオレどうしたらいい?」

「勘弁してくれよ、ミカ。オレは……」

 わかんねぇ。この街は路地と水路が入り組んでてどこも同じようなんだけど、それでいて違って、好奇心が尽きねぇんだ。ワクワクが止まんねぇんだ。だから行き当たりばったりで、こうして詰まっちまった。今は目的を考えねぇと。後先考えずに突っ込んだらダメだ。

「ダメだよオルガ。オレはまだ止まらない」

 狭い路地裏にミカヅキの声が響く。

「待ってろよ……」

「教えてくれてオルガ」

「待てって言ってんだろぅピギュッ!」

 考え込むオレの胸ぐらを勢いよく掴むミカ。その眼はオレを見ている。いつだってコイツはオレを見ている。

「ここがオレたちの場所なの?」

 あの眼だ。

「そこに着くまでオレは止まらない。止まれない。決めたんだ。あの日に。決まったんだ」

 あの眼が見てるんだ。オレは見られてる。

「ねぇ、何歩歩けばいい? あと何歩歩けばそこに着ける?

 教えてくれてオルガ。オルガ・イツカ」

 胸ぐらを掴む腕にさらに力が入る。ミカヅキの眼は見開いてオレを見つめている。

「連れていってくれるんだろ? オレは次どうすればいいんだ⁉︎」

「離しやがれ!」

 オレを強く掴んだミカを同じくらい強く突き飛ばす。

「ああ、わかったよ。連れてってやるよ! どうせ後戻りはできねぇんだ。連れてきゃいいんだろ⁉︎」

 オレも決めた。

「途中にどんな地獄が待っていようと、おまえを、おまえらを、オレが連れってやるよ!」

 オレはコイツをあそこに連れて行くまで止まれない。コイツの眼に映るオルガ・イツカの背中はいつだって真っ直ぐ進み続けるカッコよくてイキがってなくちゃいけねぇんだ。

 オレの中で再び、何かが壊れだす。心地よい破壊。生まれ変わってもオレのやることは変わんねぇんだ。

「ああ、そうだよ。連れていってくれ。

 次は何歩歩けばいい? どこを歩けばいい? オルガが目指す場所に行けるんだったら、なんだってやってやるよ」

 思わず口が三日月型ににやける。これだ。これが本物の俺たちだ。生まれ変わりとかなんだか知らねぇが、俺たちを止められるものなんてどこにもありはしない。

 行ってやる。

 たどり着いてやる。

 俺たちの居場所に。

 

「行くぞ、ミカ!」

「うん」

 とにかくオレらの新しい拠点を構えないといけない。神様だか仏様だか知らないがオレたちがここにこうしているのはナニかの思し召しに違いねぇ。ここがきっとオレらの居場所なんだ。

 だったらまずはここを知らないといけない。

 この街に詳しいヤツを探し出して聞くしかねぇ。

 水路を辿ってデケェ通りに出るしかない。道は繋がっている。オレとミカのように。どこにいたって。

 細い路地裏を縫うように進み続ける。人気の無い暗い道はどこか懐かしい。

 家と家の隙間に干された洗濯物が昔の故郷を思わせた。

 やがて、明るい太陽の照らす大きな通りへと出た。

 長く大きい運河を挟んで向こう岸にもこちら側と同じように古い建物と細い路地裏に水路が見える。

 この通りはたくさんの街の住民や観光客がごった返しになっている。

「すごい人だな。流石は観光地なだけあるぜ。思えばオレたちは観光なんてしたことなかったんじゃねぇか?」

「うん。そうだね。でも観光ってなにするんだろ」

「……ええとだな。うまい飯を食うとか? 珍しいもの見るとか? じゃねぇか?」

 くそ。観光の仕方もわかりやしねぇ。オレたち宇宙ネズミはそんな贅沢なことした試しがないから。

「見てくれ、オルガ。あそこに見たことない舟がある」

「ん?」

 ミカの指差す方向には細長い舟がある。黒色の舟が多い中、稀に白色で綺麗な装飾が施されたものもある。

 見れば、至る所にその細長い舟が停泊している。それに乗って運河を移動する人もいる。

「この街。細い道や水路ばかりで自動車の一つも見ねぇと思ったら。そうか、この街の人にとってはあの舟が移動手段なんだ」

 物を運ぶ舟。人を運ぶ舟。様々な舟がこの街の水路を行き交っている。

「よし、ミカ。この街の攻略にはあの舟が欠かせないみたいだ。もっと近くに行って見てみようぜ」

「うん。そうしよう」

 オレとミカは大きい運河沿いに停泊している舟に近づき観察を始めた。

 なんの変哲もない、黒い舟。人が四人乗ればぎっしりのサイズだ。それにモーターとかエンジンだとかハイテクなものは一切付いていない。だとするならばこれは人の力だけで動かしているというのだろうか。宇宙船があるような技術の発展した世界で何故なのか。

 オレはまた考え込んでいた。突然新しい環境にほっぽりだされたオレは戸惑っていた。

 あるのはワクワクだけではなかったということか。

「あの、どうかしましたか?」

 するといきなり後ろから声をかけられた。振り返ると女の子と白いモチモチポンポンの生き物が立っていた。桃色の髪と眩しい笑顔が特徴の女の子は青いラインの入った白い衣装を着ている。白いモチモチポンポンは彼女とお揃いの白い帽子を被っている。

 ミカは不思議そうに白い生き物を見つめていた。

「ああ、いや。初めて見るこの舟が不思議で見ていたんだ」

 怪しまれないように平然と答えるフリをする。まずは街に溶け込まなくては。

「あれ? もしかしてネオ・ヴェネツィアは初めての方ですか?」

「ああ、そうなんだ。かっこ悪い話しなんだが、迷っちまって」

「そうでしたか。でも大丈夫です。ここで水先案内人(ウンディーネ)をやっているわたしも時々迷っちゃいますから」

「ん? 水先案内人?ってなんすか?」

「はい。水先案内人はこの街の伝統的な観光客専門の(ゴンドラ)の漕ぎ手なんです。わたしはまだまだ半人前なんですけど」

 右手の手袋を掲げて元気に言う女の子。この舟はゴンドラというらしい。そして女の子は観光客をガイドする水先案内人という職業らしい。

 ってことはこの街のことも当然詳しいってわけだ。だったら──

「お嬢さん。頼みがある。

 どうかオレらをガイドしてくれねぇか? この通り、素人でテンでこの街がわからねぇんだ」

「──ごめんなさい!」

 えっ⁉︎

「ご案内したいのは山々なんですけど、規則で半人前は指導員がいないとお客様をお乗せすることはできないんです」

 女の子はすごく申し訳なさそうに謝る。オレらのガラが悪くて嫌で断ったんじゃないってのはちゃんと伝わってくる。この子は優しい人なんだろう。

「気にしないでくれ、お嬢さん。オレたちが考えなしに来ちまったのがまずかったのさ。

 水先案内人のことが知れたし良かったよ。サンキュな」

 ションボリとする女の子。やがて頭の上に電球の灯りがともるように顔を上げて立ち去ろうとするオレらを止めた。

「待ってくださいお兄さん。わたし、いいこと思いつきました」

 

 

 

 



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水先案内人 2

 

 

 

「お客様は乗せられないんですけど、お友達としてなら乗せられるんです」

「えっと、それは……」

 水先案内人の少女はまだ半人前でお客は乗せられないらしい。だが、それを打開する案を思いついたらしい。

 のだが、お友達として乗るっていうのはどういうことなんだ。

「お兄さんたちとわたしはそこで会ったお友達で、お兄さんたちは観光ガイドの聞き手としてわたしの練習を手伝ってくれているということにしていただければ、お乗せできます!」

「……はぁ。だが、待ってくれ、お嬢さん。それだとアンタはオレらをタダ乗せすることになっちまわないか? 修行の身でお金を取って人を乗せられねぇってことはそういうことなんだろ?」

「わたしはぜんぜん構いませんよ。ウェルカムです! ここで会ったのも何かのご縁かもしれませんし。でもわたしはこの通り半人前ですのでご期待には添えないかもしれませんけど……」

「そんなことはねぇ。恩に切ります!」

 オレは深々とお礼をする。この街で初めて出会った人物がこんなに徳の高いお嬢さんだなんてオレらはツいてる。

「いえいえ、そんな大げさな!」

「オレは鉄華団団長オルガ・イツカです。こっちのは三日月・オーガス。どうか、よろしく頼んます!」

「あっ! 申し遅れました。わたしは『ARIA《アリア》カンパニー』の水無灯里《みずなしあかり》と申します。こちらこそお願いします!」

「ぷいにゅ〜」

 すると白い生き物が声を発した。なんだか和んでしまうふんわりボイス。

「こちらは我が社の社長、火星ネコのアリア社長です」

「にゅ!」

「社長でしたか。これはご丁寧にどうも」

 オレはネコが社長だということにそれほど疑問を持たず、ペこりとお辞儀をする。こんなデッカい器の社員を持っている社長さんだ。きっとすげぇ人、もといすげぇ猫に違いねぇ。

 

 ◇

 

 かくして、水先案内人の水無灯里姉さんにこの街を案内してもらうことになったオレたちは初めてのゴンドラに揺られていた。

「えー、火星(アクア)の自転周期は地球(マンホーム)とほぼ同じで、一日は24時間なのですが、公転周期は地球の2倍あって、一年が24ヶ月あります」

 灯里姉さんがガイドを始める。

「ああ、それなら知ってるぞ。実はオレらも火星出身なんだ」

「そうだったんですね。てっきり地球からの観光客の方かと思いました」

「ああ、でもオレたちの故郷はここと違って陸地だし、寂れててな。他所のことはさっぱりなんだ」

「それじゃあわたしが奮発してネオ・ヴェネツィアのいいところをお伝えしなくては!」

「にゅ」

「かわいい」

 ミカがアリア社長と戯れている。機会がなかったからわからなかったがミカは動物が好きみたいだ。

「ご存知の通り、火星は一年が24ヶ月です。なので季節の長さも2倍なんです。ということは楽しみも2倍。ウルトラハッピーですっ!」

「季節か。オレらの故郷にはあんまり季節とかなかったからなぁ。よくわかんねぇんだ」

「春夏秋冬、それぞれにいろんな楽しみ方があるんですよ! 春はお花見、夏は花火、秋は紅葉、冬は雪。まだまだ他にもたくさん素敵なことがあるんです!」

 すごく楽しそうに季節のことを教えてくれる灯里姉さん。その笑顔につられて、オレらも笑顔になっちまう。

「今、火星は8月で春の後半戦といったあたりでしょうか。お花見の季節は過ぎちゃいましたけど、ポカポカの陽気は過ごしやすくて、お昼寝にはもってこいの季節ですね〜」

 灯里姉さんがそう言うとオレらもポカポカしてきて眠っちまいそうになる。本当に穏やかな陽気だ。

「……花見か。来年は見てみてぇなぁ」

 そんなことを、ゆったり進む舟の上でぼやいてみる。慣れないはずの緩い時間の流れはオレらに随分としっくり馴染み始めた。

 

 ◇

 

 日が暮れ始めた。

 昼間の青い空の下では青かった海も今では夕陽のオレンジ色に染まっている。この街は時間によっても姿形を変えるんだと灯里姉さんは教えてくれる。

「すっかり世話になっちまったな、灯里姉さん。今日の恩は一生忘れねぇ。いや、死んでも忘れねぇ」

 返せるものも何もないオレらは頭を下げるしかできない。

「いいんですよ団長さん。わたしはネオ・ヴェネツィアの良さがお二人に伝わったのならそれで満足です!」

 両手をぶんぶん振って謙遜する灯里姉さん。

 すげぇよ、灯里姉さんは。こんな見ず知らずのオレらに半日も費やしてくれるなんて。

「なんだか、オレらこの街が気に入っちまいました。どうやらここで一旗揚げることになりそうです」

「そうですか、ならまた会えますね!」

 パァーッと顔を輝かして喜ぶ灯里姉さん。

 そうだ。オレは決めた。オレはこと街で生きる。心の中で鉄のように硬い決心がついた。

 今日、この街を灯里姉さんに案内してもらってわかった。オレらの求めていた場所はここに違いねぇ。

 

「お気をつけて!」

「ぷいにゅ!」

「一息ついたら連絡させてもらいます」

 桟橋から手を振る灯里姉さんとアリア社長にオレらも別れを告げて入り組んだ路地へと身を投じる。

「なぁ、ミカ。おまえはオレについてくるって言うけどよ。おまえ自身、この街はどうなんだよ」

「いいね。好きだ」

 きっぱりと即答するミカ。その言葉とオレを見る目はいつものこいつのものだけど、今のミカには今まではなかったモノがある気がする。

「なら、決まりだな」

 ニヤリと笑いあって、拳を横でカチらせるとオレらは光の灯り出した電灯の下を歩いて行った。

 まずは今日の宿探しといくか。

 

 

 

 



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水先案内人 3

長いけど熱くしたので最後まで読んでくれたらうれしす。


 

 

 

 オレたちの持っている所持金は大したことなくて、どうやら神様仏様は厳しいらしい。こうして、ミカと再会できただけでも幸運で、更に新天地で灯里姉さんとアリア社長なんていう素晴らしい人たちに出会えたのだからそこまで望むのは欲張りなのだろう。しかし、いくらなんでも一晩宿に泊まったら無くなっちまえようなゼニだけ寄越されてもやりくりの仕様がない。

 なんとかこじつけた趣きとやらだけは立派な小さい宿の一室で、たった一つだけの消えかかった電灯をアテにオレはネオ・ヴェネツィアの地図とにらめっこしていた。

「この街ってどこからでも水が見えるね」

 部屋の窓を開けて夜風に当たるミカがそんなことを呟く。家の高さは揃えられていて、どこも同じような建物だらけなのだが、窓から下を除けばすぐそこに運河がある。

「ああ。どこもかしこも水がある。つまりはここで生きてくには水に携わらないといけねぇ」

 オレらの火星は砂と岩の星だった。それと真逆の性質を持つ水と空の惑星アクア。これまでオレらが身につけて来たモンはここじゃまるで役には立たない。

 文字通り、身一つでのスタートになった。

「さて、生きるにはどこだって金は必要だ。そんなもんがつきまとわないことを願っちゃいたが、最低限は必要だ。

 ……仕事だ。仕事を見つけないといけねぇ」

 昼間、灯里姉さんに教えてもらったことと地図からわかることを繋ぎ合わせてこの街の特性を掴もうと考えを巡らせる。

 人々の生活がある以上商売は普通に成り立っていた。街にはもちろんのこと、船の上で営まれたお店も見かけた。だが、いきなり見ず知らずのオレらに構ってくれる灯里姉さんのような人はそうはいねぇはずだ。突然現れた余所モンに、はいどうぞと仕事を分けてくれるとは思えない。

 なら、オレらにはアレしか残ってない。

 

 その時、湿気からか黒ずんだ木の扉をノックする音が聞こえた。

 一体誰だ。オレらを訪ねるような奴はいないはずだが。

 恐る恐る、徐々に、軋む扉を開ける。

 そこには前髪をいじいじしている金髪の男が立っていた。

 

 ◇

 

「会えて嬉しいよ、オルガ団長」

 金髪の男は手のひらで挨拶して平然と部屋に入ってきた。ミカにも目配せして挨拶をするその男。名はマクギリス・ファリド。生前のオレらと因縁のある人物だ。

「要件を聞こうか」

 オレは冷めた風にその金髪の男に問う。なぜ、この男がこのアクアにいるのかは、オレたちの状況を見れば予想はつく。

 そんなことより、オレはこの男がオレらにとっての疫病神だと知っている。

「君たちもここに来るとは。やはり我々は何かの縁で繋がっているのかもな」

 そんな縁はとっとと切ってしまいたいが、オレの中にある、団長として培ってきた商売の勘が何かを訴えている。

「私と君たちが揃ったのなら、やることは一つだろう。

 私と業務提携を結んでほしい。アクアに召され、この街で事業を展開したのはいいが、まだ武器となるようなモノが無くてね」

 んなことだと思ったぜ。過去の結末から見るに断って当然の商談だが、オレらには何せ金をコネもない。だったら、

「オレらみてぇなチンケな組織(二人)にする話じゃねぇなぁ」

 まずはすぐに手を取らずに相手方の動向を探る。

「君たちを過小評価するつもりはない。私は君たちを高く買っているんだ」

「生前にあったことはどうする。おまえはオレらに不利益を生じさせた。オレはおまえを売ろうとした。こんなんで互いにうまくやっていけるとは思えねぇなぁ」

「それなら、お相子ということでお互い水に流すというのはどうだろう」

 表情は崩れていないが、本気だと伝わってくる。こいつはオレらとガチで組みたいんだ。だが、生前あったことに関して言えばオレに非がないわけじゃねぇが、どう考えてもこいつの方が悪い。それを利用する。

「いいだろう。その話乗ろう」

「よかった」

「だが、一つ条件がある」

 マクギリスの顔はむっとなるが、どこか嬉しそうだ。相手は政治の世界で生き抜いてきたプロだ。ハッタリや小細工は簡単には通じねぇ。

「昔の話をほっつくのはオレも好みじゃねぇが、アレを平たく収めるにはやっぱりオレらにあんたがワビとして利益を(もた)らさねぇといけねぇわけだ。

 話を進めるにあたって、まずはそっちの持ちでオレらが一旗揚げたい」

 それは一切こっちから金を出さずにマクギリスにオレらの事業の立ち上げを支援させるという悪質極まりなく、かつ、商業として成り立っていない相談だった。

 オレらは一文無しだ。それがどうすれば組織を作れるのか。昔は親玉をヤって乗っ取ったりしたが今はナシだ。相手にこっちが無一文でここでできるようなことも無い連中だと悟られれば商談は破棄されかねない。ここはオレらがあくまで上の立場にあることを、昔のいざこざを使って見繕うしかない。

「なるほど、たしかにアレは私が招いた結果だろう。だが、話に乗った君たちはその時点で既に何が起ころうと文句は言えないのではないかね?」

 くそ。反撃された。昔のことなんて引っ張り出さずに媚びついておくべきだったか。オレらに信頼を置いているなら無一文と知ってもそれなりのポストを用意してもらえたらかもしれない。

 ダメだ。ここで下がれば、手を切られかねない。それにミカがいる前でかっこ悪いところは見せられねぇ。これから組む相手の下になるつもりなんてオレはない。

「たしかに、オレらはあの時既に平たくなってたかもしれねぇ。たがよ、おまえはオレに言ったよな? オレらに生じる不利益よりも大きいメリットを提示し続けるって。それは果たされたか? いや、果たされなかった。だったらよ。水に流す前にその落とし前をつけるべきじゃねぇのか?」

「……ほう」

 考え込むマクギリス。隙ができた。たたみかけるなら今だ。

「それにオレらには投資するだけの価値がある。おまえ、武器になる商売がないって言ってたよなぁ? オレらにはそれがある」

「なんだと。それは一体?」

「聞いて驚け。ずばり水先案内人(ウンディーネ)だ」

 それを聞き、マクギリスは呆気にとられた後、少し考え始め、しばらくすると、くつくつと小さい笑い声をこぼしはじめた。終いには大声で笑いだしたのだ。

「アッハッハッハッハ! フハハハハハハ!」

 笑い終えて、息を整えるとマクギリスをこちらに向き直り言った。

「たしかに盲点だった。うちの従業員は男手ばかりで考えることもなかったよ。水先案内人は女性の職業だからな」

 今、マクギリスが、オレの知識にないことを言ったような。

「わかったよ。君の提案を受諾しよう。資金面についてはこちらが持つ。

 ところでオルガ団長。誰がその水先案内人をやるんだね?」

 ……マクギリスのやつ。オレをおちょくっていやがる。もしかしてこいつはオレがハッタリをかましていることに気づいていたとでもいうのか。

 いいや、まだだ。相手は既にオレの言った条件を飲んじまっている。今はオレの方が圧倒的に有利なんだ。

「そんなもん、見りゃわかるだろう。ここにオレとミカがいる」

 マクギリスは今度こそ正真正銘に呆気にとられた。

「オルガ団長、言っているだろう。水先案内人は女性の職業だと。君たちには十分に協力する。だから、そんなに強情にならなくても構わない。私とて、ここに来た時に持っていた所持金は安い宿に一泊できる程度だった。君たちがこの小さい宿にいることを鑑みれば、君たちの所持金がもう残り僅かなことはわかる。そんな、ハッタリはもうやめにしないか」

 ────。こっちの手札がもぬけの殻だったのはお見通しだったわけか。無いもんは無い。無いもんをあるように見せかけてもダメ。だったら、新しく生み出すまでだ。それにこれはもう決めたことだ。オレたちができることはいつだって挑戦だ。勝負に出る!

「……たしかに、水先案内人は女性が多いし、女性が舟を漕ぐとしたら水先案内人になるだろう。だがよ、オレら男が水先案内人になっちゃいけねぇなんて、どこにも書いちゃいねぇし、誰も言っちゃいねぇ。そんな道理はありゃしねぇんだ。こんなあったかい世界なんだぜ。ダメなんてことは絶対ない!」

 後ろで会話を眺めていたミカがニヤリと笑う。オレのボルテージも上がりだす。

「こりゃ、ガチだ。大マジだ。ハッタリでもなんでもねぇ。

 オレはこの街に来て、ある水先案内人さんに出会って、決めたんだ。あんな風に誰かを笑顔にさせる仕事がしてえって。

 だからオレは、オレらは水先案内人になる!」

 それを聞き、今度は笑い出すでも、呆けるでもなく、マクギリスは真剣な面持ちで右手を前に出して握手を求めてきた。その手には昔握手した時につけていた手袋なんてものはなく、マメだらけの素手だった。見れば服装は豪奢なものでも制服でもなくシャツにサスペンダーとズボンなんていう水夫のような格好だった。こいつがオレらの来訪を知り、ここを訪ねて来た理由が生前のような『力』を求めてではないことはそこから十分に伝わってきた。こいつは一人の人間として、生前のオレと同じく、養うべき仲間たちのためにオレらと組もうとしてここに来たんだ。

「やはり、君たちはおもしろい」

「損はさせねぇ」

 そう言って、オレはマクギリスの手を握り返した。

 その手には彼方ではなく、今ここで、この瞬間を生きる男の熱さがあった。

 

 

 




作品の向上を心がけて時折加筆修正をしています。
常に進化し続ける男。それがオルガ・イツカってヤツだ。


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水先案内人 4

 翌日。

 マクギリスと組むことになったオレとミカは昨日泊まって宿と相違ない程度にくたびれた建物にいた。

「ここは私がアクアに来てからしばらくの間厄介になっていた灯台だ。その昔は灯台としての役割があったが、今は放棄されていてな。格安で資金のなかった私にとっては最初の根城にするにはうってつけだったのだ」

 街の端にある岬の先端に小屋があり、その屋上部分に灯台があった。

「ここは君たちが自由に使うといい」

廃れているものの、マクギリスがしばらく住んでいただけあり、家具家電は揃っていて、住むための最低限の設備は整っていた。

「おう、存分に使わせてもらうぜ。

 それでよ、任せておいたゴンドラ協会への申請はどうなったんだ?」

「そう、急ぐな。と言いたいことだが、ゴンドラ協会の上層部には知己の者がいてな、話はすんなり通ったよ」

「その辺りは相変わらず抜かりないな。まぁ、それが功を奏したわけだ。感謝するぜ」

「まだ、礼を言われるには早い。君たちはここから駆け上がらなくてはいけない。道は険しいぞ」

「わかってる。安心しな大将。舟を漕ぐパワーならそれなりには自信がある」

「確かに君たちの力なら、あっという間に上り詰めるのかもな。しかし、道のりは平坦ではないぞ。最初の関門だが、商業的に活動するには階級制の一番上である、プリマクラスのウンディーネにならなければならない。君たちは見習いだからダブルクラス。手袋を二つ付けた状態からのスタートだ。そこから一つ手袋が外れて半人前のシングルクラス。そして最後に両手の手袋が外れた時にプリマウンディーネになれるのだ。

 この昇格には試験に合格することが必要なる。普通は所属する会社の上司が試験官をしたり修練の指導に当たるのだが、君たちにはそれがいない」

 そうか。ペーペーの俺たちには観光案内するためのノウハウなんてないんだ。いくら腕っ節に自信があっても乗せた人を灯里姉さんみたいに笑顔にしてやることなんてできやしねぇ。

「だが、安心したまえ。そちらの手はずも整えてある。君たちには頼りになる先輩を用意した」

「よう、オルガに三日月。久しぶりだな」

 懐かしくて陽気な声が後ろから聞こえる。

 そこには白いスーツを着た長髪の男と南の島風な出で立ちの女性がいた。

 

 

 ◇

 

 

「名瀬の兄貴とアミダ姐さん!」

「元気そうじゃねぇか、おまえら」

 名瀬の兄貴はオレらの兄貴分でアミダ姐さんは兄貴の嫁さんだ。

 マクギリスと再開して、もしかしてと思っていたが、まさか本当に実現するとは。

「ご無沙汰してます。兄貴に姐さん。すると、頼りになる先輩っていうのは」

「ああ、アタシたちタービンズがアンタたちをみっちりシゴいてやるってわけ」

「彼らタービンズは私がここに着た時には既にこのアクアで水先案内業者として大成していてね。私も何度も世話になった」

「マクギリスの運送会社ギャラルホルンとは持ちつ持たれつの関係でな。それで、おまえたちがネオ・ヴェネツィアに来たって聞いて、駆けつけたのさ」

「恩に着ます!」

「兄弟がこれから一旗あげようってんだ。兄貴として、ただ見てるなんてのはカッコよくない。困ったらなんでも聞け。俺たちはここじゃ長いからな。昔とは勝手は違うがいいところだぜ、ここは」

 頼りになる存在、名瀬の兄貴に再開できたことはオレとしてはとても安心できることだが、それと同時に、この人に甘えてはいけないという思いもあった。オレらはオレらはなんだ。大きすぎる名瀬の兄貴という存在に頼りきってはいけない。一人、それを肝に銘じた。

 

 

 ◇

 

 

 兄貴と姐さんに挨拶を済ませた後、オレとミカ、ついでにマクギリスは灯台小屋を修復する作業を始めた。

 水先案内店として恥ずかしくないものにしなくては兄貴たちにも灯里姉さんたちにも示しがつかねぇ。工作に不慣れなオレだが精一杯取り組む。

「こんな時、ライドが居てくれたら、カッコいい看板を描いてくれたんだけどなぁ……」

「オルガ、こんな感じでいい?」

 一足早く持ち場の作業を終えたミカ。その出来栄えは素人の出来とは思えない。まるで新築のようだ。

「すげぇよ、ミカは」

「凄まじいな、三日月・オーガス」

「別に、普通でしょ」

 

 そんなこんなでようやく作業は終わり、ネオ・ヴェネツィア二日目は夕方に突入した。

「そちらはどうだ、オルガ団長」

「まあまあってとこだな」

 描きあげたのは真っ赤な華。決して散らない鉄の華。

「懐かしいね、そのマーク」

「ああ、オレらにはこれしかねぇ。

オレたちは『鉄華団』だ。昔も今も変わらずにな」

 灯台の屋根にデッカく掲げた赤いマークが夕陽に照らされて、ますます赤く輝く。

「いいものだな。仲間というのは」

 マクギリスが静かに呟く。それがどこか俯瞰的で、納得できない。

「なんだぁ? ここまで来て、おまえだけ抜けがけできると思っているのか、マクギリスよぉ?」

 一瞬だけ呆けて、マクギリスはフンと鼻で笑う。それがこいつ流の親しみの表現だってのはなんとなくわかってきた。

「オレらは仲間だ。家族だ。そんでもってアクアが、ネオ・ヴェネツィアが、鉄華団が家だ。

 ここは帰って来る場所なんだ。オレたちも、アイツらも。きっと来るぜ、他の奴らも。それまで、オレたちでここを守っていかねぇとな。あいつらがこっちに来た時、迷わねぇようにこの灯台で待っててやんねぇと」

「うん、待とう。みんなを」

「まったく、飽きさせないな、鉄華団」

「よっしゃー!全員文句なしでオッケーなら、今日はとことんまでいくぞー! 鉄華団の新たな船出を祝して乾杯といこうぜ!」

 オレたちの新しい旅を歓迎するように火星(アクア)の夕陽は橙色に光り輝く。それは懐かしい、故郷(火星)の色だった。

 

 

 



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