レベル825の少女 (ざらざら)
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空だって飛べる

投稿当初826であったものを825に変更しました。検索したら有名な人がいたので・・・。


タカコタカギキャラクター名jdgwcilawb株主優待アカウント

 

ユグドラシルの最終日。

私はいつものように道端にしゃがみこみ、ご機嫌で薬草を集めていた。

私のキャラクターのレベルは825。薬草採集のクエストをするにはちと高レベルかもしれない。

それでも私はただひたすら薬草を集める。12年間ずっとそうしてきたように。このゲームの主眼は戦闘かもしれないが私は戦闘に余り興味はなかった。薬草を集める邪魔を排除していたらこんなレベルになっていただけなのだ。

先日も、いつも通り薬草を集めていたらPK連中に襲われてムカついたので相手の所属ギルドを滅ぼしたらレベルは上がるわワールドアイテムは転がり込むわでちょっと苦笑気味にウハウハした。

多分、こっちのレベルが下二桁表示だった所為だろうなと思うと気の毒な気がしなくもない。でも、私の大事なマンドラゴラさんを踏み潰したあなたが悪いのですよ?

ところで、何故他のプレイヤーは100レベルでカンストするのに私はカンストしないのか?

それは私のアカウントが株主優待アカウントだから。

ユグドラシルには3種類のアカウントがある。ほぼ全てのユーザーが持つ一般アカウント。

そして運営スタッフがゲーム内のメンテナンス、プレイヤーの誘導や煽動を行う運営アカウント。

最後にごく少数の株主優待アカウントだ。

運営会社の株式をある程度、普通のサラリーマンが300年くらいかけて稼ぐくらい?、持っている株主に送られる。

送られるのは株主相手に一般のアカウントと同じものを贈るわけにも行かないからちょっと優遇されたアカウントになる。

ゲームの中にまでリアルの財産がものをいうのも世知辛い話だが、夏のボーナス突っ込んでガチャを回して他者を蹂躙する人だっているのだから、理不尽の上にはさらなる理不尽が待っているってことなんだろう。

運営会社としては株主は普通、株式を投機目的で持っているだけなのでやりこんで他のプレイヤーの迷惑になったりしないだろうとの目算もあってのことらしい。

そんなわけで短時間お試しプレイを前提に、面倒くさい縛りもなくユーザーに万能感を与える設定の温いアカウントが用意された。

 

いくつか上げるなら、

レベルのカンストが100ではなく999である。

どうせそこまでレベルを上げるとは思わないが他のプレイヤーより限界値が高いという優越感を与えるための配慮だろう。

 

レベルを上げるのに必要な経験値が一般プレイヤーより少ない。

とりあえずさくさくレベルが上がらないと怒りそうだからじゃないかと思う。

 

スキルは全ての種類が最初から実装されている。追加分ももれなく実装される。レベル制限のあるものはレベルに達したら自動的に追加される。

最恵国待遇は上位者が絶対に求めるものだね。

 

加齢しない。

一般アカウントのキャラクターも加齢などしないのだが、加齢しないと明記しているのは優待アカウントだけだ。加齢が気になるお年頃の株主の皆様のお心を慰めようということかもしれない。

 

魔法は一般プレイヤーが10位階、ちょっと頑張って11位階(超位魔法)であるのに対し26位階まで習得できる。

 

という感じであろうか?

 

実際、私は12年間そこそこ戦闘も経験していたが普通のレベルアップ速度で言えばせいぜい100を超えるかどうか位だったと思うが、それが825である。凶悪なことにレベルなりの能力が付与されている。ゲームの操作が得意でない私は勿論、目一杯その恩恵にあずかっている。

戦闘はスキルが勝手にカウンターアタックしてくれるし、アカシックレコードが読めるスキルとやらでこのゲームに関することならだいたい分かる。

そんな便利スキルも自分からは獲得しようとは思わなかっただろうから自動的に付加してくれた運営を「パーフェクトだ、運営」と褒め称えたい。豚に真珠猫に小判宝の持ち腐れ的な何かに近いのだけれども。

そんなスキルであるが私以外の優待アカウントユーザーが色々運営にねじ込んだ所為で最初より結構増えている。

ねじ込んだというのはねじ込まれたほうの主観であって、ねじ込んだ側的には当然のことに気がつかない愚か者に教えを垂れてやった、のかもしれないのだけれど。

とにもかくにもクでソで名高い運営も株主には弱い。激しくバランスブレイカーなものも見受けられた。

特に酷いのはレベル400を超えると取得できる「レベル100以下の存在からの魔法や物理による攻撃でダメージを受けない」というスキルだろう。正式な格好いい名前は知らない。というかルビが小さくて読めない。

例えば、腕は斬れるけど、斬れたという結果は発生しない。何か哲学的な問答に見えるけど凄くゲーム的な何かだ。

それでなくても一方的な戦闘が圧倒的に作業感で満たされ、つまらなくなることうけあいだ。

他人が一生懸命育てたキャラクターや集めたアイテムをゲラゲラ笑いながら踏みにじるのがこの上なく楽しい人もいるのだろうが、余りにも相手が抵抗できないレベルで一方的過ぎてすぐ飽きるらしい。

それにまあ、優待アカウント持ってるような人たちだったらリアル社会でも他人を踏み躙れるだろうしね?ああ、そう考えたらゲームの中だけで我慢しようとする理性と良識の人なのかもしれないな。

結果、元々戦闘を全く楽しんでなかった私以外の優待アカウントプレイヤーはほとんどが数日のおためしプレイで去り、残った数人のプレイヤーもレベル400を超えた辺りで消えていった。

運営もそれを狙ったのかもしれない。

そんな迷惑な人たちはほんの数人であっても居ない方がよいのは間違いないのだから。

そう、ほんの数人。

そんな数人のために魔法を新たに幾つも考え、エフェクトを実装しなくてはならない手間はどれだけのものだろう?最初からやらなきゃいいのにね?

だから12位階以上の魔法は使いどころのない驚くほど役に立たないものか11位階以下の魔法の強化版がほとんどだ。

さいころをいくつか振ったら15が出たので適当に考えた魔法を適当に12~26に割り振ったとかなんとか?

例えば最高レベルの26位階魔法は一つだけで「全消滅(ゼン・ブ・エンド)」という。

余りにも酷い名前だし文字数が少なくてルビも大きく表示されていたので思わず憶えた。

説明文は「実行したキャラクターを含め、全てが消滅します。世界が、全プレイヤーキャラクターが、NPCが、希少アイテムが、弊社の沖縄と長野にあるバックアップサーバのデータごと消滅します。そうなれば多分弊社も倒産して消滅します。絶対に使用しないでください」というメタなものであった。そういわれたら確かに株主は使用できないな、と納得した。というか運営投げやりすぎる。

まあ、実際唱えた人がいないので本当に実装されているかは謎だ。アレだね?多分胸の前で両手をクロスさせ呪文を唱えながら両手を広げて跳ぶのだろうね?

ちなみに私も少し運営に無理を言った。その結果ユグドラシルのその辺に生えてる草は種類が多くディティールに凝っている。うん、運営にしてみればスキル増やせとか魔法増やせといわれるほうがマシだったかもしれない。

 

 

 

さて、そろそろ私に優越感と万能感と視覚と聴覚を与えてくれた愛する世界が終わる。

何ヶ月か前から分かっていた。

サービス終了のお知らせが来てたからね。

実は私は株主ではあるが私が大金を持っているわけではない。父が私名義で株式を購入しこのユグドラシルの世界を与えてくれたのだ。与えてくれた?厄介払いだったのかもしれないとも思うけれど。

 

私は生まれつき視覚聴覚触覚味覚嗅覚がない。触覚は詳しく言うと表在感覚深部覚皮質性感覚もない。内臓感覚も平衡感覚もない。

勿論第六感もない。

私は単なる脳みそというたんぱく質の塊だったわけだ。たぶん四肢もあるんだろうが知覚できないものがついていても意味はない。知覚できないから邪魔でもないのが不幸中の幸いか?

いやいや、不幸なんか感じたことはなかったさ。不幸も幸福も何も存在しない世界にいるのだから。

そういうわけで話すことなどできなかったし、手を振ったところで、手を振っているかどうかすら分からない。で、手を振るってなに?美味しいの?美味しいって何?味覚?味覚って何?ほら、話が全然始まらない。

この医療の発達した世界でも、元々ない感覚を脳に刺激を与えて理解させるのは驚くほど困難だ。

私はずっと自分の存在さえ感知できなかった。脳に直接与えられる刺激で「明るい暗い」、つまり「白と黒」を与えられ、「派手と地味」つまり「赤と青」が与えられ、「速い振動と遅い振動」つまり「高音と低音」が与えられ、じわじわと脳の発育が図られていった。

そして長い間、脳を直接刺激され続けた末に最低限の感覚を最低限備えることができた。

形を知った。文字を知った。つまり言葉を知った。色んな知識をテキストで持った。

しばらくしてこの世界に接続された。頭に感覚器をつけて外に出すよりゲームの中に放り込んでおけ。と思ったのだろう。

最初は白黒赤青しか認識できなかったが少しづつ色数が増えていく。

何か足元に平たい線が延びていてそれが道だと知る。道を前に進むことを歩くと知る。

道端にもやもやするものがあり草を認識する。

最初の半年は道端に這いつくばって草が揺れる様を見ていた。そしてその後の11年は草むしりをしていた。

草が風に揺れる様は飽きなかった。テキストの知識によると風は頬に当たるらしいが分からない。草は匂うらしいが分からない。それでも見ているだけで楽しかったし、手で採取をするとアイテムボックスの中のアイテムが増えるのが痛快だった。自分の意思が世界に影響を与えるのだよ?私は飽きもせずこの世界で万物(主に草)を集め続けたのだ。

楽しかった。愉しかった。たのしかった。楽しいので3バリエーションで言った。

おそらくこの世界にいる限り私の欲求は満たされ続け何の不満もなく老いて死んでいけるだろう。

天才は知らないものを欲せるが凡人は存在しないものを、あると知らないものを欲し求めることはできないからだ。

 

でもまあ、これはいい区切りなのだろう。

今ではリアルの世界で町に出ることもコンクリートの建物を見ることもできるのだ。

・・・できるんだろうかね?単にそういう感じの刺激が脳に刺さった電極から与えられてるだけなのかも知れないね。そうであっても私には判別しかねるので、何の問題もないけど。

介護する皆さんには負担だろうが表に出たいと父に懇請してみよう。存外気安く了承されるかもしれない。

さあ、あと1分だ。

この美しい大空の下で風に揺れる草原を見納めよう。

作られた世界でも現実よりも好きだったよ。

もともと感覚のない私には頬に当たる風がなくとも食べたものが味気なくても、触った胸が柔らかくなくても(自分のものでラッキースケベだからいいよね?)全然構わなかったよ。

空が空の色をしている世界よ、さような・・・

 

その瞬間全身がもみくちゃにされ激しく圧迫され理解できない刺激に苛まれた。

 

痛っ!!

 

痛い。痛いのか?痛いんだと思う。これが痛みなのか?分からない。痒い?痒いとかいう高度な感覚が私に分かるのか?どうだろう。熱い?熱いんだろうかこれ?重い?重い?重い!それだっ!(ズビシ)重いのだ!あ、何か鼻の中に入ってきた?口の中に入ってきた?いや、もともと入っていた?目が痛い?目が痛い目が痛い。きっと私は今、目が痛い。

それは生まれて初めて実感した空気圧であり、肌に触れる空気の感覚であり、辺りに漂う空気の匂いであり、味であり、太陽光が空気に乱反射して光り輝く世界だった。

重力が全ての内臓器にかかるのを実感する。重いよ!内臓!やっほーい!あったんだね君達!

思わず本能で顔を手で覆った私は手に何か触れてる違和感と顔になにか触れている違和感を同時に持ち、そしてそれが同調してることに気づいた。

私は顔を触ったのだ。

それが一瞬だったのか1億年だったのかは分からないけれど(多分10.5秒くらい)、感覚の奥から噴出してくる感情の激流に身を任せた私は歓喜の雄たけびを心の中であげながら「もう一生顔からこの手を離さない!」と誓っていた。

それほどまでに生まれて初めての自分の体を触る自分の体を知覚できた経験はエキサイティングだった。

 

まあ、そんなことが出来るわけもなく人の心とは移ろいやすいもので、顔にまとわり付く物の正体が空気であると推測できたし、私に敵意がないと分かったので我に返って、顔から手を離すとおずおずと顔を上げ、辺りを見回したのだけれどね。

道端に立っていた。道だよな?草がない。

後ろは木が沢山ある。森?

道の反対側はでこぼこしながら草がずっと敷き詰められている。向こうの方に山がある。

そこには圧倒的に作りこまれた美しく荒涼とした世界が広がっていた。

何か傾いてるのかな?私。地面が傾斜してる?私の三半規管の次席耳石氏の意見では地面が傾いているらしい。主席耳石氏は語呂が悪いのでいらっしゃらない。

時々わけのわからないことをいうのはテキストを覚えたころからずっと思索に耽り続けているので言葉遊びが好きだからだ。勘弁されよ。

 

ユグドラシルが終わり新型ゲームに移行したのだろうか?

なら父が勝手に新型ゲームをインストールしてくれたのだろう。

私の脳がついに嗅覚と触覚を獲得できたことに感激しつつ、これは一度ログアウトして医療用の感覚器具に付け替えて父にこの喜びを報告しなくてはなるまい。と思い。ログアウトしようとした。

 

出来なかった。

ログアウトする機能が、というかコンソールを出す機能がダウンしてるようだ。もしかしたら「日付が変わるまでに自分でログアウトしてください。そうしないとゲーム内に閉じ込められちゃいますよ?」的なアナウンスがあったのだろうか?

うーん。聞いてなかったなあ。このままだとゲームの筐体に接続してるリアルの体が衰弱死して終わりだ。たぶんそうなる前に、介護の人が来て外から強制ログアウトしてくれると思うけど。

 

・・・そうか!このままでは早晩、この体験は終わってしまうのだ。

こんな不具合を起こしたゲームが行政処分を受けないはずはないし、デバックしたアップデート版が出ても父も流石に早々には投げ込んではくれないだろうから。

 

なら、この世界を出来る限り満喫せねばなるまいて!よし、今の内に遊び倒そう!

 

 

 

株主のごり押しにより雅さに欠けるスキルが幾つも創作され私も自動的に獲得しているのだが、そのうちの一つにリアル社会にあるアイテムがアイテムボックスから無限に出てくる機能。というものがある。

要求した本人は重機関銃で無双したかったようだが流石に運営が武器兵器関係は断固拒否した。

そりゃあ、伝説に聞くナザリック1500人殺しも重機関銃でなぎ払ったら簡単に出来るじゃん。十数秒の躍進突撃の間に一個中隊全滅とかするじゃん?といわれてしまうだろうし、そうなったらナザリックはその日から二百三墳墓と呼ばれてしまうかもしれない。かの高名なアンデッドもみんな死んでしまいますか?(もう死んでいる)

一部オートマトンとかいう山羊に銃器が実装されたという噂も聞いたが真偽のほどは知らない。マトンって羊だっけ?

そのようなわけでかなり出てくるアイテムは限られているのだが、戦闘に使えないものに関しては割とおおらかに実装された。私が使用したのは主に飲食関係。草を採集するクエストの合間に、テーブルセットとパラソルをセッティングし直径5ミリほどの棒状ビスケットに持つ部分2センチ以外をチョコレートでコーティングしたお菓子とティーバックで淹れた紅茶を広大な中世的世界の道端で一人でたしなむのが私はとても好きだった。

極力他のプレイヤーには見つからないようにしていたがたまに見つかることもあり、そのときはにこやかに席に招きお菓子やお茶を振舞ったものだ。

ほとんどの相手は、別れる時に低レベルのポーション渡しておくようにしていたこともあって、初心者救済イベントだと勘違いしたようだよ?

 

さてそのような按配で、この世界で出来うる限りの感覚を楽しむ決心をした私はいそいそとこの世界での初お茶会を開催した。

今日の紅茶はアールグレイ。ちなみに他の名前の紅茶は実装されていない。私にとって紅茶といえばアールグレイなのだ。どんな味かは知らない。多分灰色がかった味なのだろう。

まず、棒状の菓子をつまみ上げ囗元に運ぶ。口をあけこわごわとその中に先端を入れ上下の前歯で挟む。力をわずかに入れると軽やかな破断音ととも分断されて先端が舌の上に落ちた。

初めて私は何かを食べたのだ。

舌の上に乗ったときは正直何も感じなかった。でもじわじわと何かが広がっていく。

これが甘さと苦さかーとテキストでしか得たことのない知識を駆使して知ったかぶる。

なんという幸せだろうか。ついに私は味覚の二大巨頭を同時に制覇するという偉業を成し遂げたのだ。

多分私は今世界で一番尊い。

アールグレイは苦かった!温かかった!温かいのに辛くはないとはこれいかに?

でも、直径5ミリほどの棒状ビスケットに持つ部分2センチ以外をチョコレートでコーティングしたお菓子をぽりぽりと啄ばみつつティーカップを傾ける私はとても優雅に違いない。

ご満悦である。

 

 

 

糞便を漏らした。

ご満悦のまま例のお菓子とアールグレイをエンドレスで摂取し続け陽が暮れ、明けるまでずっと座っていたら何か腹部と肛門辺りがむずむずしてきて、いきなり私の肛門と尿道口の括約筋を押し広げて温かく太い個体と液体が破裂音と共に出て行った。

空を飛ぶかと思った。いや、今のちょっと飛んだだろう?

驚いたが私の無限の知識を検索したら、その正体はすぐに知れた。

大便と小便である。むやみに優しく温かい。あたり一面に大便と小便の自己主張たる臭気が充満した。

座っていた椅子から零れ落ちる黄色い液体茶色い固体。

ついに私は便意を体感し排便を経験したのだ!しかも大と小を同時に!なんという偉大なる経験!大は小を兼ねる!という箴言の真髄に触れた!

ずっとこの快感に浸りこの芳しき空気を吸っていたかったがテキストには「女の子なんだからうんこおしっこはトイレでしなさい。お漏らしは小学生までよね?!」みたいな記述があるゆえこれは他人に見られると恥ずかしい行為と認識し証拠を隠滅することとした。

体と装備品に付いた汚れや匂いを全て消滅させる25位階魔法「風呂要らず(バスレス)」を唱えるだけだけどね。

えいや!と唱えると全身を何か液体のような気体のようなものが撫で回して消えていった。

お尻を触ってみたがぷにぷにする肌触りしか感じなかったしにあの刺激的な香りも消えていた。ちょっとお名残惜しい。

肛門らしき穴に指を少し入れて嗅いでみたら微妙にさっきの臭いがしたので舐めてみたら苦かった。苦い名残に微睡みそうだ。アールグレイ飲み過ぎたかしら?

 

 

 

そうこうしてるうちに、脳が面倒くさくなってきたので対応をとる。

要するに眠いので寝る。

草の生えてない平らなところが寝やすいような気がしたのでそこに大の字になって寝転ぶ。

青い空が見えた。雲が見えた。太陽が・・・っ目が痛い!そして、気持ちよい。太陽の光を直視し続けたところで見えなくなることなどないのだから気にしない。

そんなこんなで、むやみに笑いたくなったので声を出してみた。笑う時は「は」を連続で発声する事は知っている。

「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃはよほへのももも」

・・・

「しゃしゃさしゃしゃはしゃはははばばば」

・・・・

もしかしたら「は」を正確に発音しているが耳が聞き取れていない可能性も否定は出来ないが、意地になって笑う練習をしてるうちに寝た。これが世に名高いNEOCHIである。

 

 

 

笑ったり話したりするうちに10日ほど経つ。

幸いにまだログアウトされていない。空は相変わらず青く美しい。白い雲が漂い流れていく。地球がきれいだったころはこんな風景にあふれていたのだろう。

最近瞬きというものを覚えた。瞬きしないとどんどん目が痛くなってくるのだ。おお目が痛い目が痛いとニヤニヤしていた時にふと目を閉じると驚くくらい一瞬でその痛みがなくなったのだ。目が痛いというのも楽しいが痛みが消えていく快感というのもこれまた超楽しい。テキストさんによると普通は自動的に実行される防御行動らしい。

割と発音は上手くなった気がする。あと便意を催したら穴掘ってそこにすることを憶えた。

24位階に落とし穴を掘る魔法があったのだ。直径120センチくらいの落とし穴にまたがってしゃがむ姿勢での排便はスリリングでセクシィ。是非、紳士諸君にも披露したい。

ついでに23位階の魔法を使って石灰もかけた。これで匂いしない。

余は文明人であられるな。

それはさておき、この道は誰も通らない。獣も通らない。鳥や虫さえいない。それって道?って言うかこのゲーム動物いるのかな?もしかしたらまだベータ版で世界作っただけなんだろうか?

 

それでも私は優雅に一人お茶会をしつつ、道端の草花を眺めていた。

得意なのだよ。ぼ─っとしているのは。世界ぼーっとしてる選手権があったら多分全国を狙えると思うんだ。

ふと気が向いて自分のスキルを最初の何個かを確認してみた。いや、全部は無理。

自分の意思でオンオフできるものってあるんだねえ。

例えばオフにできないのは前に言った100レベル以下の存在からの攻撃ではHPが減らないってやつなど。

これは多分オフにできないのは運営の優待アカウントに対する最後の抵抗だと思う。「この上舐めプなんかさせねえよ!」ってことだろう。これがオフに出来ないせいで飽きた優待アカウントさんは確かにいるのだから親切に見せて毒仕込んでくる運営様は結構お人が悪いと思う。

そんなこんなを調べてるうちに「威圧」がMAXで吹き荒れて、レベルとステイタス表示がダダ漏れになってることに気づいた。ふむ、「威圧」を切ってみた。切れるらしい。レベルステイタス表示を隠蔽してみた。隠蔽できるらしい。

だが何も起こらなかった。

しょうがないので威圧を切った記念にチョコレート菓子ではなくおせんべいと緑茶でのんびりすることにした。

座布団を出すか?とも思ったけど正座が面倒くさいのでテーブルセットはそのままだ。

はー、緑茶に煎餅も良いねえ・・・。

などと和んでいるとぽん、という音がパラソルの上からする。

上を見上げるとパラソルの上に何かが居る。影が見える。とっとっとっと外縁部に向かっている。なんと縁を掴んでこちらを覗き込んだ。

小鳥だーーーーーーーー!

第一生物発見伝!

生きてる生きてる生きてる。生だ。刺身だヤキトリだ。嘘、食べない。

ふー思わず興奮した。全体的に緑だか黒だか分からない感じの鳥がこちらを見て首をかしげている。

思わず興奮して噛り付いたおかきから破片がばらばらとテーブルに落ちる。

と!小鳥がテーブルに移動してきてつつき始めたではありませんか!

トリトリトリ、我餌付けに成功す。

 

さてそんなわけで、鳥と戯れる美少女(注:私)を客観的に観察しようと、ドローンっぽいスキルを発動させたとき重大インシデントが発覚した。

私って今全裸!ちょっと今太閤みたいに言ってみた!

上空から自分を写したら全裸の美少女(私)が微笑みながら小鳥におかきをやってるじゃありませんか!

「馬鹿じゃないの?この美少女(わ)」と思わず鳥に食いついたら逃げられました!

前作だったらどれだけ装備をはずしても全裸にはならなかったので油断したぜ美少女(w)。

そういえば粗相したとき飛びそうになった!パンツはいてたら飛ばない!なるほど道理だ。パンツの役割を理解した。罪深い人類を地面に縛りつけておく枷だったのだな。

しかし、この新作ゲームは法的な意味で振り切ってますね?運営会社の人!それとも経営母体替わったのかな?

まあ、なかなかいい肢体の美少女()さんで満足ですよ。乳首色はf5b199(RGB表示)ですかHAHAHA。

まぁ、アバターだからね!わざわざブサイクにはしないよね!

しかし私はこんな顔してたのかー。お父さんが設定してくれたんでしょうね、リアルの私ではないんだろうな。これきっとユグドラシルデフォルトのアバターだ。

綺麗だけどなんか無機質で思い入れがない感満載です。

そんなわけで慌てて装備を選んだわけですが正直神級な鎧なんか装備する必要もメリットもないので白の軍服っぽい上着に赤のミニスカと白のロングブーツを装備したのです。

ああ、優待アカウント仲間のお兄さんに「鼓笛隊?」と言われた思い出がよみがえります・・・。

違うよ!鼓笛隊も格好いいけどもっと戦うお姉さん的な何かだよ?

21世紀初頭に流行ったボタンが沢山付いてる系だよ!参謀飾緒みたいなのがぶらさがってるよ!

一部レイヤーさんが「隊服」と総称したやつだよ。

 

さておき何とかモザイク修正不可避状況を離脱し、これで誰と遭遇しても運営を呼ばれずに済むという安全地帯に駆け込んだ途端、私のスキルが接近する人の集団を感知したのです。

やっぱり全裸の時は待ってくれてたのかな?新しい運営は親切だ。

 

 

 

 

ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラ

 

「おい、ラキュース。人だ」イビルアイの警告が来た。

「こんな人通りのない裏道に?ついてないわね。それとも村から来たのかしら」

「通行人ではないな。拠点を作り飲食している」

「見張り、というわけね」

「「犯罪結社にしては必要以上の警戒網。面倒。殺そう」」

「迂回路はないかしら?下手に排除して接近がばれたら奇襲が出来なくなるわ」

「無駄だな。既にこちらに気づいているようだ」

「「私たちでも認識できない距離で??」」

「「屈辱。やはり殺そう。行ってくる」」

「このまま気にせずいきゃあいいじゃねえか。八本指だったら殺して埋めちまえばいいだろ」

「ふむ。脳筋だがこの際、それが最善な気もするな」

「何人いるんだ?」

「一人だと思うが、そのひとりが囮で森の中にその一人を見張ってるヤツがいないとも限らんな」

「それはないでしょう」

「「何故?」」

「それならその森の中にイビルアイより探知能力が優れている人物を置くはずよ?そしてあなたより探知能力が優れた人物を一方向に複数動員するのは奇想天外に過ぎるわ」

「そういやそうだな!」

メンバーが賛意を示したので謎の人物に接近することにする。

 

「こんにちは」

美しいのだろう。綺麗なのだろう。だがそれ以上に「整った顔貌」と表現したくなる、仕立ての良い服を着こなす少女が真っ白な円形テーブルに湯気の立つ飲み物と、たぶん茶菓子だろうが何本も黒い棒状のものを立てた透明なグラスを並べ、白い椅子に座って優雅に微笑んでいた。

犯罪組織の巣食う村に程近い人通りもほとんどない小径で。

周りに荷物らしきものはなく、武器も携帯していない。

そして最も不可思議なのは、無人の椅子が5つ置いてあるということだ。

つまり最初から我々が来るのが分かっていた。それで椅子を準備しておいた。

もしくは我々を見つけてから用意した。どこからともなく。

どちらも考えたくない話だ。

「こんにちは、どちら様かしら?」とりあえず話しかけてみる。

「私の名前が聞きたいの?」

「そういうことになるわね。ちなみに私の名前はラキュース」

「私は・・・、本名はダメよね・・・。でもキャラクター名は長いし名乗りたくないし・・・・、えー、こういう時ふんどしとかすき焼きとか名乗ると後で後悔するというし・・・、じゃあピテカントロプス・エ・・・あ、これジャワ原人だ。ちょっと待っ・・・」

「わかったわ、ピテカさん」何か良くわからないことを綺麗な声で呟いているが、本名を名乗るつもりはないようなので強引に遮った。

「いや、待って?」

「「なるほどピテカか」」忍者の双子が援護する。

「だから、待って?」

「ントロプスエは省略させてもらおう」イビルアイの増援が入り、

「待って待って」

「よろしくな!ピテカ」ガガーランが止めを刺した。さすが我がパーティメンバー。

「お茶とお菓子でもいかが?」あ、諦めた。

勝った。勝利の余韻に浸っていると目の前に私の分のお茶とお菓子が差し出された。

・・・・いつの間に用意した?今の今まで自分の分しか並べていなかったはずだ。

「いつの間に用意してくれたのかしら?私たちが5人で来ることも分かっていたの?」

「結構前から女の人4人と・・・・」

ガガーランを男と思っている。見た目に頼っているということは余り詳しい探知は出来ないということ?

「女の吸血鬼さん一人が近づいてくるのは分かっていたよ」

ティアとティナの姿がぶれたかと思うとその少女の後ろに回りこみ首にダガーを押し当てていつでも掻き切れる態勢をとった。

「「お前、何者だ」」と双子が聞く前に、少女はまるで無頓着にお菓子に手を伸ばすために前のめりになり、自分から首をダガーに押し付けていき、そして、白いテーブルに真っ赤な血を散らせた。

「!」

我々5人が息を飲むと、その少女は私の方を向き、先ほど手にとった菓子を口にくわえポキンと折りながら、

「いきなり人に刃物を突きつけるということは貴方達は強盗か追いはぎね?なら、殺しておいた方が世のため人のため?」

そう言った。まるで殺し合いを決意する風でもなく、ごみが落ちているから拾ってゴミ箱へ・・・、といわんばかりの口調で。

「違うの!それは誤解!」

「「そう!お前が動くから切れた」」

「切れた切れていないではなく刃物を向けたことが問題なんじゃないかな?」

首の傷は既に塞がっている。この少女は人間ではないのだろうか?イビルアイの方を伺うが判別できず動揺しているようだ。

「ごめんなさい。私たちは強盗ではなくアダマンタイト級の冒険者蒼の薔薇のメンバーです」

「はー、冒険者ー?確認してもいい?」

「確認?プレートなら・・・」

「確かにラキュース・アルベイン・デイル・アインドラさんは冒険者ってなってるけど・・・。でも、冒険者だって強盗をする人いるよね?」

・・・・何を確認したっ!?

「あ、貴族かー。お金には困ってなさそうだなー。うん、わかった。殺すのはナシで」

「それは・・・・なにより・・・」話が噛み合ってるようで一方通行過ぎる。

 

その時、急に少女が固まった。

 

 

 

 

ピテカ

 

私は近づいてくる5人のために椅子を用意した。白い木製の綺麗なやつ。私が座ってるのと同じサイズが4つと、大きな戦士の人用が一つ。

NPCだろうか?中の人がいるんだろうか?アカシックレコード見るスキルがあるから見たら簡単に分かるけどそれはマナー違反だと思うし、ゲームをつまらなくさせるだけだから、人や怪しいもの相手には見ないようにしている。プレイヤーキャラクターだと思って一生懸命話しかけてたら実はNPCでしたー!どっちらけー!ってのが楽しいんじゃない!ねえ?いや!見るのが面倒くさいとかではなく!

5人は私の方を怪しいものを見るような目つきで見下ろした後、座った。同じ顔の二人のうちの一人は立ってる。これだけ同じ顔を作るとか難しいからやっぱりNPCだろうか?

それとも仲良しさんが双子プレイをしてるんだろうか?

おっと、名前を聞いてきた。

リーダーっぽい美人さんはラキュースというらしい。ならば名乗り返さねばなるまいよ!

高木貴子。と名乗ってもしょうがないし、このキャラクター名はとても長い。父が「キャラクター名」の欄に私の名前を書き込んでその上それじゃ本名ダダ漏れだと気づいて更になにやらかにやら書き込んで実行した所為で、

「タカコタカギキャラクター名jdgwcilawb株主優待アカウント」という名前になっている。父よ。これ、メールアカウントかパスワードと勘違いしてないか?

真ん中のアルファベット10文字くらいが覚えるのが難しい。なんたって父が適当にキーボードを押しただけの羅列だから意味がない。意味がない文字列というのは本当に憶えられないものだ。

だから今この場でこの世界(ゲーム)における私の名前を決定しよう。

今まで名乗ることなんかなかったけどこの新世界(ゲーム)では相手の名前をキャラクターに重なる文字列ではなく口頭で確認するようだ。何と言うリアリティ!

さてさてそうなるとこれからも名乗る機会があるだろう。うむ、焦るな私。ここで慌ててふんどしとか、すき焼きとか口走ると未来永劫後悔することになるのは歴史が証明している。

歴史。そうかこの前、父からデータを貰った歴史の教科書から小粋な単語を引っ張ってくるか!

ピ・・・ぴ・・・?脳に何かの単語が引っ掛かっているぞ!ピテカントロプス・エ・・・レクトスはジャワ原人の大昔の呼び方じゃないか!チェンジで!

え?ピテカ?いやいやちょっと待とうよ!待とうよ!待ってお願い!まー・・・。

・・・歴史どころか現在今この刹那証明してしまったよん。じゃあピテカで。かわいいよ?かわいいよ・・・。ントロプスエを省略してくれてありがとう。

ホモ・エレクトス・エレクトス(ジャワ原人今)よりかわいいよ。ホモエレエレとは呼ばれるよりいいよ。私はピテカ。今そう決めた。

名前が思わず決まったのはそれはそれで少し嬉しくて、ユグドラシル1のときのノリでティーセットを人数分並べて優雅に「召し上がれ?」と勧めた。

なぜ椅子が5人分あるのか聞かれたので、割と遠くから観えてたよーみたいなことを言ったら双子がダガーを抜いて襲い掛かってきた。敵だったかー。それとも追いはぎかしら?どこにフラグがあったのだろう?避けれないことはないのだけれど双子のレベルでは私にダメージを与えることは出来ないので気にせずお菓子を食べようとしたら白いテーブルに真っ赤な何かが散った。

首筋に感じる何か刺激的な感覚。ぞくりと何かが疼いた。これが痛み。ゲーム開始当初の空気や光から受ける痛みとは全くレベルの違う、首を血管まで刃物で切断される本来なら死に到る傷から来る痛み。

何と言う愉悦。私は今、ホンモノの痛みを感じている。

 

人には色々な感覚があるけれどそれらの多くは生きていくためのセンサーだと思う。

どこかが故障、損傷したら痛い。皮膚炎や寄生虫が付いたら痒い。栄養があるものは甘い。採取した木の実が熟してなかったら酸っぱい。腐ってたら苦い。脳が休息を欲したら眠い。

生命活動に利するものに対する感覚に愉快を感じ、生命活動に脅威を与えるものに対する感覚に不快を感じる。だから普通は痛いは不快。

でも人が色んな食べ物を食べるようになって味覚が複雑化し、酸っぱいや苦いが愉快になり甘いが不快になることもままあるように、生命に脅威を与えないなら、痛覚もまた「不快」と感じる必要はない。

要するに私はこの痛いが嬉しかった。気持ちよかった。愉快だった。興奮した。幸せだった。

テーブルの上に流れる液体は私の血液だった。綺麗、と思った。

だが、双子のダガーが私の首筋から離れる前に既に傷は完治していたけれどこの人たちが私に敵意を持っていることが分かった以上、それなりの反応をする必要がある。

敵の目前で首斬られて身悶えしてるとか敵様に失礼じゃん?

格好良くキメ顔で「殺しておくか、ふっ」みたいなことを呟くとラキュース氏が急に慌てふためいて言い訳を始めた。

冒険者だから強盗じゃないよーって言われてもなー・・・

アカシックレコードで確認したら一発で分かるけどって、・・・観ていいの?

そうか、じゃあ一応チラッと重要部分と犯罪歴だけ見せてね?黒歴史は見ないから。

フルネームとレベルと職業と履歴だけ斜めに観る。

うん強盗でも追いはぎでもないみたい。大金持ちの貴族様かー。凄い人と遭っちゃったな!

「じゃあ殺すのはナシでー・・・・・・・・・・・」

ふとあることに気づきフリーズする。・・・・・・名前の横の欄。プレイヤーの本名とか、NPCとか書いてある欄が・・・無い。

 

自分を観る。

 

タカコタカギキャラクター名jdgwcilawb株主優待アカウント

高木貴子

異世界人

 

私は異世界人。

彼女はプレイヤーでもなくキャラクターでもなくNPCでもなく、特筆することもなく所属する何かもなく彼女を作ったものもない。つまり「自然発生したヒト」。

ここは私にとって異世界であり彼女は原住民、ということ?

ちっぽけな地球という惑星のごく一部を領有する日本という国家の中の大きくも無い民間企業が人様の時空世界に飛ばされたデータに過ぎない私に実体を与え、魔法やスキルを実装できるだろうか?

・・・できるとは思えない。思えるはずがない。

 

だけど、まぁ。

「出来る!出来るのだー!」とりあえず叫んでおこう。

別に私は困らない。というか、都合がいい。

 

 

 

あ、一つ大きく困ることに気が付いた。

つまり気に入らないからと殺したりすると、死んじゃうんだこの人たち・・・。

ゲームなら実際に死ぬわけじゃない。

NPCはお金を払えば復活するし、プレイヤーキャラクターはレベルは下がるが勝手に復活する。レベルがゼロになってロストしたところで別にプレイヤー本人が死ぬわけじゃない。

だがこの世界で誰かを殺すということは本当に死なせるということかもしれないのだ。

ゲームの中の復活魔法か蘇生アイテムのように復活の儀式や魔法や薬品があるのかもしれない。だけど、それらが存在してそれらが間違いなく動作することを確認しない限り、殺すわけには行かないだろう。

私は神ではない。そしてこの持っている力がこの世界で超越する力だとしても私の物ではない。

私が殺されるというのであれば殺すのも許されるであろうが、私はどうやらあまり殺されそうではない。ならなおさら、他者の命の取り扱いには繊細になるべきだ。

そう、思った。

 

 

 

 

ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラ

 

いきなり叫んで再び動き出した少女に少し及び腰になりつつ、意を決して声をかける。

「な、何が出来るのかしら?」

「ぬ?物陰実装じゃ?」

「おい、ヤベーぞ。ラキュース。こいつ話が通じねえ...」

ガガーラン、全面的に同意なのだけれどピテカさんに聞こえるように言わないで?

「ピテカさん。ピテカさん。これだけは教えてもらいたいの。あなたはどこから来てこれからどうするの?八本指の人なの?」

少女は私の方を見て、可愛らしい小首を傾げ、八本指の村の方を指さし、

「あっちから来てこれからは貴女達次第。八本指じゃないよ!二本多いよ!」と言った。

最悪だ。八本で2本多いということは6本...。この娘、六腕だわ。

八本指の中で六腕といえば戦闘の専門家だ。戦って負けるとは思わないが楽に勝てるとも限らない。

そして敵に増援が来れば蒼の薔薇がこの先にある村に目をつけていることがばれる。

ラナーの計画に齟齬をきたすのは間違いない。

「確認だが、あっちというのはここから半時間ほど歩いたところにある八本指の村だな?」イビルアイが確認をとる。

ここで肯定的返事があればそれが開戦の合図となるだろう。、できるだけ損害を少なく、できれば増援を呼ばれることなく、あわよくば生け捕りに・・・。

少し腰を浮かす。私は剣も振るうが純然たる前衛ではない。

先鋒はガガーランに任せて下がるべきだ。というかお茶に誘われてこんなに接近した状況に誘い込まれている意味が分からない。

手を伸ばせば届く所で棒のようなお菓子を数本まとめて齧っているピテカは不機嫌そうに、

「だから私の指は10本ちゃんとあるよ!完全に五体満足だよ!それに来たのは村じゃなくてちゃんとしたアーコロジーだからね!まあ、あっちに歩いてもたどり着くとは思えな・・・。着くかな?」

うーん、戦闘を開始しづらいなんかよくわからない返事が来た。ちゃんとしたあーころじーって何?

「「あーころじー?」」

ナイス双子!

「環境破壊された世界で生き残るために建設された完全環境都市」

残念!ダメだった!さっぱりわからない。

「えーと、あーころじー?あっちに行くとたどり着くのか?」

「わかんない」

「なぜ行かないんだ?帰らないのか?帰りたくないのか?家出でもしてるのか?」ガガーランは世話焼きな性格もあって何故だかピテカの心配を始めている。

そうじゃないでしょう?

「もし歩いて行って帰れたらこの世界が終わっちゃうかもしれないし、ならもう少し満喫しようかなって」

終わっちゃうかー・・・・・。誰か翻訳してくれないかな?何が終わるって?

もうこの子を理解するのはあきらめて、こちらの状況だけ通告して邪魔するなら戦う、しないなら放置する。そうしよう。

「わかったわ、ピテカさん。私たちはあなたが来たという方向にある村を襲撃して焼き払うために来たの。邪魔するならあなたと戦って倒す。しないなら私たちはこのまま立ち去るわ。あなたはどうする?」

「せっかくだから一緒に行くぜ!」

何故・・・・・そうなるの・・・・。

 

村がそろそろ見えるあたりから道を外れ森に入り接近する。先頭はティナ後ろにガガーランとイビルアイ、私とピテカ、最後尾に後方を警戒しながらティア。

できるだけ音をたてないように歩く。双子とイビルアイはほぼ無音。私とガガーランはどうしても少し音を立てるが、遠くまで聞こえるほどの音ではない。

がさ!べき!あ!これマンドラゴラだ!えい!ぎゃーーーーー!あはははははは!

「うるさいだまれ!静かにしろおぉぉぉぉぉぉ!」先刻から器用に仮面の上に青筋を浮かせていたイビルアイが、木の枝を振り回して下草を払いながら時々薬草を採取してるピテカに注意を喚起する。

「えー?イっちゃん。うるさいっていう方がうるさいんだよ?」

「馬鹿言う方が馬鹿みたいに言うな、ばかっ!」

「「なんとイビルアイが突っ込みに回るとは!?」」

「うるさい!私は常にお前らの馬鹿さを是正する(突っ込む)側だろうが!」

ぱし。

イビルアイとガガーランの間に差し出された木の枝の先端に黒くぬるぬる光る鏃の矢が刺さっていた。その矢はまっすぐ私に向いている。

矢が刺さった枝を持っていたピテカは矢が飛来した方を見て呟いた。

「あー見つかっちゃったねー」

「お前が騒ぐからだろうが!」

わざと音を立てて仲間に知らせた?ならなぜ私をかばう?私の拉致が目的?蘇生魔法が目的?まさかおびき寄せられた?

この少女!危け・・・・。

こかん!

ピテカの頭に矢が刺さる。

「ピ!ピテカさん!」

なんていうこと!この子は私を助けてくれたのに逆に疑って無警戒に死なせるだなんて!

「うひょー!あふん!イタイイタイ!しびれるしびれる!毒だコレキタ!ああああもじもじしちゃう!」

「・・・・え?」

ずこん!と矢を自分で抜いたピテカは「いやー痛かった!死ぬかと思った!」とニコニコしている。

「・・・・えーと?」

とりあえずドン引きするか頭の心配をするかどちらかしないといけないのはわかる。

「どん引きだな」そう!イビルアイ!私もそれに一票!

矢に10センチくらい血がついている所を見るとそのくらいは刺さったのだろう。なるほど脳がコンパクトにできているから脳にまで矢が届かなかったのね。

三本目の矢はティナが払い落し、四本目はピテカの首に刺さった。またあふんあふん言ってる。どうしてくれようか?心配するか呆れるかという二択しかないのは辛い。

えーと、貫通しているのだけれど?抜くの手伝いましょうか?

あふんあふんががふんがふんになった。気管に血が入りましたかそうですか。

げふげふしながらこれが血で溺れるってヤツかぁ!とかいってる・・・。

ピテカの首を貫通した矢を力任せに鏃で首の筋肉を引きちぎりながら抜き、私はチームに撤退を指示する。

もう奇襲はできないし、不安材料もできた。ここで襲撃を強行する意味はない。

「あ、そうなの?じゃあ!私は村に行ってみるね!ばいばーい」

ピテカはそういいながら撤退する我々から離れていった。

何故そういう判断になるのかなぜそういう行動をとるのか3文字以内で答えてほしいんだけど。

「「「「知らん」」」」

で、しょうね。

 

・・・・。えーと・・・・。

「わ、私たちの撤退を支援するために囮になってくれたのね!」

「「「「それはない」」」」

ないかー。私もそう思うわ。

何者だったのかしら?彼女。帰ったらラナーに聞いてみよう。

 

 

 

 

ヒルマ・シュグネウス

 

八本指の麻薬畑になるまでは村長が住んでいた比較的大きな小屋でここを統括している手下の報告を待つ。村長?その辺に埋まってるんじゃないかしら?

とりあえずの急報では、襲撃者は5-6人で既に撤退したらしい。その人数であればおそらく冒険者チームで依頼主は金ぴか姫か?

大騒ぎしながら接近してきたのは、威力偵察のためか、陽動か、素人に偽装したか?

なんにせよ麻薬部門のトップである私が黒粉の栽培畑のある村に視察に来ているときに襲撃がある。

偶然のはずはない。

だが偶然でないならほとんど防衛システムのないこの村が襲撃者を撃退できるだろうか?

威力偵察ならもう一当てあってもいい。

陽動ならとっくに本隊が行動してるはずだ。

素人を偽装したのなら逃げ帰ってどうする?とりあえず捕まってからが仕事でしょう。

・・・まさか、本当に素人だった?それはないだろう。

 

村を統括させている手下が報告に来る。

「は?蒼の薔薇だった?」驚いたというよりは信じられない。

「はい。シュグネウス様。以前王都で見かけたものの話によれば間違いないかと」

「どうやって追い払ったの?この村にアダマンタイトのチームを追い払えるだけの戦力があったとは思えないんだけど?」少なくとも私の連れてきた護衛は動いてないはず。

「それが・・・、矢を10本ほど射掛けましたら・・・」

「当たったの?マグレにしても優秀じゃない!」

矢すら避けられないとはアダマンタイト級も噂ほどではないということかしら?

「それで?誰に当たったかわかっているの?毒は塗ってあるんでしょう?アインドラの小娘にだったら爆笑なんだけど?」

「当たったのは蒼薔薇に同行していた娘のようで」

「あら、残念ね。死体は?もしかして蒼薔薇が死体を引きずって逃げた?」

なるほど。同行してたヤツを降り注ぐ矢から守れなくて慌てて逃げたか。無様だな。アインドラ。

「いえ。ここに居ます」

「います?」

大柄な統括役の影から良い仕立ての衣服を纏った小柄な女が出てきた。

なかなか良い娼婦になりそうだ。でもこの際は、

「何故連れてくる?さっさと殺せ」

「死にません」

「・・・・・は?なんだと?」

「その・・・、刺しても斬っても殴っても絞めても死にません。傷は出来ますが直ぐ治ります。関節を極めてもなぜか外れます。縄で縛っても抜けます。」

「何者だ?」

「ピテカでーす」本人が答えた。

「何故死なないの?」

「本人に聞かれても困るけど殺すほうの根性が足りないとしか」

「だそうだけど?」墓が要るな。墓碑は役立たずここに・・・・、うろたえる訳でもなく恐縮するわけでもなく、何か信じられないものを見て人生観が変わったかのように今までに見せたことのない諦観の極みのような顔で統括役は応えた。

「いや、俺たちに言われましても・・・。こんな変な生物は対処しかねます」

そんなに?

 

ふむ?とりあえず、殺せない。ということが有るか無いかは置くとしよう。

正体も後回しでよい。

この子は敵か味方か?

この子は私を殺せるか?

緊急なのはこの二つだ。

こちらから矢を射掛けたにもかかわらず「文句をつけに来た」ということは「まだ」完全な敵ではない。

この子は私を殺せるか?この子を殺せない以上、その気になればいつかはこの子は私を殺す。

つまりこの場でするべきことは八本指と私の名を損なわないようにこの子と和解することだ。後からこの子を殺せると判明したら、そのときに殺せばいい。

なるほどなるほど。

「あなた、うちの若い者から矢を射掛けられたから文句をいいに来た。といってたかしら?」

「その通りなのですよ。お姉さん。あなたがここの責任者?」

「そうよ。あなたがこの村を襲撃しようとしていた冒険者たちと一緒にいたから一味と思ったみたいね?あなた、あの冒険者たちと仲がいいの?」まあ、彼女たちはアダマンタイト級冒険者。表の世界では上から片手で数えられるほどの強者だ。表の人間の憧れの的だろう。さほど仲が良くなくても良いというか。

「うーん良いのかなー?一緒にお茶したけど首狩られそうになったし」

「首を?」意外とスパルタンな関係を構築しているらしい。

「そー、まぁ、殺せそうにもなかったから気にしてないけど」

なんとも痺れる言い草だろう。アダマンタイト級の蒼の薔薇がフル装備で全員揃っているのに、自分を殺せそうにもないと来た!勿体無い。この子は私のものにしよう。

「アダマンタイト級が殺せない。ねえ・・・。気に入ったわ。あなた私の部下におなりなさいな」

「ん~パスかな」

 

気がついたら、左手がピテカの脇に抱え込まれ、外から肘関節を極められ、そのまま上へへし折られた。何の抵抗もないかのようにスムーズに折られた。半ば粉砕された腕の骨が皮膚を突き破って出てきたのが見えた。

「ギャアアアア?」おもわず悲鳴をあげる。あまりの痛みに際限なく叫び声が出る。何故いきなりこんなことになる!?張本人の方を見れば、物珍しそうに私の顔を覗き込む女と目があった。

「そこまで痛いかな?まあ、そろそろ静かにしてくれる?」

「貴様ぁ!こんなことをしておいてぇ」

「いや、痛いだけじゃん。生命に関わるような怪我じゃないよ?大人なんだから我慢しよ?ほら、食べたイチゴが酸っぱかったら「すっぱ!」って思わず言っちゃぅ事もあるけどずっと「すっぱすっぱすっぱぱぱぱ」いうのは子供だけじゃん?」

「うるさい!許さない!殺す殺す殺・・・」

「しょぼい回復(ライトヒーリング)」

腕が光に包まれたかと思うとあれほどの激痛が消え、肘関節は元に戻っていた。ピテカの方を茫然と見やれば、漸く話ができるとばかりに話しだす。

「そうはいうけど私はさっき貴女の部下に16回くらい殴られ、刺され、斬られ、紋められ、焼かれたんだけど?」

「あなた…。何者だよ」

「ピテカだと…」

「名前はもう聞いたわ、職業は?」

「…。」

「親は?」

「…。」

「生国は?」

「あと15回…。殺さない範囲でボコってもいいよね?」

「待って、何について謝っているのか私も分からないけれど、ごめんなさい」

「さっき私を許さない殺すって」

「許す!殺さない!!だか…」

「2回目」

ということで15回破壊され15回直された。治された、ではなく直された。

途中、あまりの痛さに失禁したら「糞尿洩らすのは小学生までですよ?」といわれた。小学生って何?

計16回の「おしおき」がすむと、

「で、この村って何なの?」

涙とよだれと糞尿にまみれた私を魔法一つできれいにしたピテカはそう聞いた。

…。そのくらい調べてから襲撃する程度の常識は持ってもらいたいと心底思う…。

 

 

 

 

ピテカ

 

遠くに弓兵がいるのはわかった。3人かな?ラキュースに一本飛んできた。

私が騒いでいた所為か気づいてないようなので手に持ってた枝で止める。

その後何本か飛んできた後、私に飛んできたので「刺さるのかなー」と頭で受けたらなんと刺さった。そのときの感情をなんと表現すればいいのだろう?

頭に当たった。こんっ!って感じでそうしたら頭蓋骨に穴が開いた。そこから鉄の塊が進入してくる。私の脳を押し分け切り裂き、筋肉が無いが故に留める力が小さい脳細胞を蹂躙する。その押し広げられる感覚はきっと女が初めて女になる感じなのだろう。矢羽の微細な狂いを感じた矢は箆を・・・竹はないかな?シャフトを反らしつつわずかに回転させていた。鏃の出っぱりが脳のニューロン繊維をひっかけ回転と前進で引きちぎる。

そして十数センチの残虐が終わる。あら残念、脳の半ばで止まるなんてなんと言う意気地なし。でもその後に残る反ったシャフトが戻るゆらぎ。びよよんびよよん。

首を切られたとき以上の悦楽。頭の奥を抉られる痛覚。脳を文字通りかき乱す混乱。その混乱さえもが気持ちよい。

そして多分鏃に塗った薄汚い毒が私の純潔を穢していく。でも穢れない。「ステイタス異常を起こさない」というデジタルな設定があるからして。穢れるのならば嫌悪を感じるのだろうか。いくら毒色に塗りたくっても私のステイタスは「白(異常なし)」ただひたすらピリピリと痺れるだけがとりえの毒よ。適度な刺激をありがとう。そしてわざと脳をかき混ぜるように矢を抜く。「あふ・・・」声が出てしまうのはしょうがない。私はもしかしたら刺戟に超弱い。ああ、毒が消えていく。グズグズになった脳細胞と混ざり合った黒くぬるぬるした液体が脳細胞の再生と共に儚くも消えてゆく。ここは毒素に上から目線で嘯こう。

「おーほっほっほ。あなたの毒性はなかなか致死量でしたけれど、私には及ばなかったですわね!」

その後自分の血に溺れる体験もしつつ楽しげに矢を受けていたら冒険者たちは帰ると言い出した。

何しに来たんだろうこの人たち?と思わなくもないけれど人にはそれぞれ都合というのがあるものだと思い直し手を振って別れる。さらばラキュースまた来るまでは!ラしかあってない!

 

では、私一人で突貫しようではないか諸君。勿論、走るのはだるいから歩くけど。

 

らっきゅん達が目指していた村に近づく。もう尽きたのか矢は飛んでこなくなった。途中からは焦ったのか中らなくなってたし、嫌になっちゃったのかもしれない。

最寄の建物の傍に立つ槍やショートソードで武装してるおじさんたちに声をかける。

「こんにちは!いきなり矢を射掛けてきた件についてー!」

矢を射掛けてくること自体は敵対行動だと思うので、この人たちを敵と認定して攻撃しても良いのだけれど、もしかしたら私に同行してた冒険者に射掛けたもので私に刺さったのは誤射かもしれないからね!5射くらいは誤射OK。

おじさんたちに囲まれた。おおー、おじさん達お風呂入ってませんねー。臭いますよー。

汗の臭い。垢の臭い。呼気と共に吹き付けてくる口内細菌の臭い。股間から漂う饐えた臭い。糞尿のこびり付いた匂いですかねこれ?

色んな臭いがブレンドされて思わずくらくら。もうちょっとスーハーしててもいいかな?

と思ったら私を前後左右から撫でたり小突いたりしながら顔を近づけ、遊ぼうぜ、犯すぞ、服を脱げ、裸見せろ、パンツ匂わせろ、陰毛剃らせろみたいなことを口々に言ってくる。

これはなんだろう?威圧してる?でももうちょっと刺激的に撫でて欲しいかな?ついでにいうと陰毛は生えてないぞ?綺麗なパイパンさんだ。

首を少しかしげて考える。なるほど、脅しかもしれないがこのまま行くとこのおじさん達に輪姦されるかも知れないな。

うーん。性方面での感覚は未経験だけど、どんなものなのだろう?気持ちいいかな?

なんでも破瓜の時の痛みは鼻の穴にスイカを入れるほどだという。マジで!?

この地面は少しぬかるんでいるから地面に押し倒されたら純白のトップは泥に塗れるだろう。引き裂かれ晒された素肌にこのおじさんたちは群がり高濃度の唾液をこすりつけ股を開かせるだろう。そして垢と糞尿とそれに発生した細菌とウィルスにまみれた陰茎を私の性器に挿入してくるだろう。地面に押し付けられた私が見上げる逆光のおじさん達とその向こうに広がる空はどんな気持ちにしてくれるのだろうか?

いやいや、もしかしたら後ろからひざを蹴られ思わず地面に跪いた時に頭を抑えられ四つん這いにさせられてそのままパンツを太ももまで下ろされてドッグスタイルで処女膜破られたりしないだろうか?そして地面を歩くありを見てたら頭を抱えられてもう一人にイラマチオですよ!鼻つままれたらどのくらい待ってから口を開けたら可愛いかな?

うーん。楽しそうだなー。気持ちよさそうだなー。ここで敵じゃないよといってくれたらそれもありだなー。

と、思っていたら首をかしげてニヨニヨしてたのが気に入らなかったのかいきなり後ろからハンマーで殴ってきた。

頭蓋骨後頭部を叩き割る一撃。なるほど鈍器による殴打は当たった瞬間の痛みは余りないのだな。どちらかというと衝撃が強い。

脳髄が半ば圧潰する。だがこの圧潰は生命にとって一瞬たりとも許容できない変形だったのだろう、結果的にはハンマーがへしゃげて吹き飛んだ。

傍目には私が石頭に見えるだろう。お嫁にいけなくなる風評被害な件!

鳩尾に素手の殴打が入る。うん、これはさすがに攻撃力が小さすぎる。素の腹筋ではね返す。あー、手首痛めましたねー。続発するお嫁にいけなくなる風評被害!

おっとおじさん達本気になりましたか?後ろから首に縄がかけられ絞めてきました。

ぐっと言う圧迫感に目がくらみ恍惚とします。おおお、太陽が眩しい。

これはいいですねー!後ろへ引かれ背筋がそっくりかえり口が自然に開き舌が痙攣するように突き出され思わず「げう・・・」とかいう、いい感じのうめき声が出ます。全身の筋肉がひきつって、括約筋が解放した温かい液体がパンツをしみとおって太股を伝ってロングブーツの内へ流れ込んで行きました。足首に辿り着く頃には結構冷えているのですねぇ。

囲んでるおじさん達嬉しそうです。こいつ小便漏らしやがったぜざまあねえな!とか言ってます。もしかしてか弱いアピールに成功ですか?!あーシモのゆるいキャラ認定されますかー。お嫁にいけなくなる風評被害多発中!

首の太さが半分くらいになるんじゃないかと思うくらい紋められたときになんと正面からショートソードの攻撃です!ナイス連携!

そうきたかー!後から首に縄を掛けられ力まかせに引かれているため上半身は男の体側に沿って反ってます。剃ってますじゃないですよ?何度も言うように天然です。そして肋骨の下端から腹が逆カーブを描くあたりにそれは突き立てられたのです。腹筋を破り腹膜を裂き、あー、おしい小腸は自らの本来の弾力で躱しましたね。おっと膵臓にズブリといきました!食べたい!そしてあまり手入れをしていない剣は雑菌と金属片をまきちらします。

ふむふむ、このままでは私の華奢な体を貫通して首を絞めている人に到達しかねませんね?

残念、縊られている最中なので一度は言ってみたい台詞選手権第3位の

「構わないから俺ごと刺し貫けえぇぇ!」が叫べません!まあ、前も後ろも敵っぽいのでちょっと泣ける所かどうか迷いますけど。

と膵臓すら貫通せずに止めるではありませんか!

何故後ろの人ごと貫きませぬ!?この根性なし!童貞!意気地なし!童貞!やる気足らんぞ!童貞!

男性に対する悪口で一番効果的なのが「童貞!」らしいです。本当に童貞ならば大ダメージですし、童貞でなければまず否定しなくては男の股間にかかわるらしいですからね!

 

沽券。

 

なかなか良い刺激に満足し激痛に身を任せ快感にぴくんぴくんしてたら縄が首からはずされ、剣が抜かれます。ズリュズリュという擬音を発しながら抜けていくのですが膵臓から剣が抜かれたと同時にそれは復旧しその他の臓器も遅滞なく蹂躙前に戻っていきます。血液量も定数を満たします。その再生のプロセスも温かくじわっと来て快感です。

そして、多分、おじさん達は剣が抜けた瞬間私の肢体が地面に崩れ落ちると予測してたようなので、何事もなかったかのようにそのまま踏みとどまり、

「今のはなかなか見事でしたね!」と賞賛すると全員で狂乱して装備武器を叩きつけてきました。あら大胆で積極的。肉食系。

踏み潰されるのではなく、直立した状態でまるでひき肉にせんばかりの打撃はこの世界に来て初めて知った空気圧を全身で感じた時よりも力強くて素敵でした。特に左大腿骨への斜め後下方からのハンマーによる打撃は骨を砕き関節を砕き筋肉を圧縮し子宮に激しい振動をもたらす良い攻撃で、子宮が破れ膣を通して大量の血液が股間へと放出されました。

エロいと取るかなんだよ生理が来たのかよと取るかは微妙なところです。普通に引く?そうですか残念。

 

そして恍惚とする私におじさん達は「こいつアンデッドか!?」と叫びながら油を掛け火をつけたのです。

全身が燃える。これは凄い体験です。皮膚が広範囲で焼けるというのはこんなにも痛覚を刺激するものだったのですね。更に思わず炎を吸い込み一気に肺細胞が焼き爛れた時など、

筆舌に尽くしがたい爆発的窒息感を味わうことが出来ました。窒息感?まあ、窒息しますがいわゆる死に至らない窒息なので婉曲表現で窒息感としてみました。全身の肌が燃えるくらいで死にゃあせんのです。

残念ながら着ている鼓笛隊のせ・・・ミリタリーっぽい服は耐火性ではなかったので油を吸って私の肌を道連れに燃えていき黒いタールのようなものになり再生した肌にこびりつきます。炎に巻かれたまま目を開けると角膜が消失と生成をあわただしく繰り返し眼球が熱による破裂と再生を繰り返し、網膜に結ぶ像は暗転と炎の輝度の感知を繰り返します。

要するに、

「目がちかちかする!」といいながら手で炎を掻き分けて脱出し、一番えらそうな放火を指示したおじさんの前に立ちます。

「おじさんがここで一番偉い人かな?だったら今の分を全部おじさんに返すけどいいよね?」

まだ燃えてる手でおじさんの首を掴みちょっと力を入れたら村の内部にご招待されました。

なんでも偶然、本当に偉い人が来てるのでそちらに連れて行ってくれるそうです。

・・・いいのかな?それ。

あ、そうそう二着目の鼓笛隊の制服を出しました。

 

 

 

 

ヒルマ・シュグネウス

 

「つまり、こいつらが私を売ったということでいいのかしら?」

統轄役を睨むとしょぼくれてはいるが悪びれた様子もなく頭を下げた。

「別に買ってはいないかな?反撃相手は誰でも良かったので私の報復が転送されたと思って頂ければ~」

「とばっちり?単なるとばっちりで降伏も許されない聞くこともない拷問喰らったっていうの?!」

「間が悪かったね!」

「・・・はぁ、ここは八本指という組織の主要産業のライラという植物の栽培畑よ」

「は?」

「いや、あなたが聞いてきたんでしょう?」

「おお!」ピテカはそうだったとばかりに右手で拳固を作って左の掌をポンと打った。

「で?どうするの?」

「どうする?・・・とは?」

「何をしに来たか知らないけど、此処が何かは分かったんでしょう?」

「確かに!ライラって何?なんであの人たちここに来る気だったの?何故私がこんなところに来てるの?どうしよう!」

「知らないわよ!第一、さっき手下になれっていったら断わったでしょ」

「そういえば!じゃあとりあえず敵対者は皆殺す?」とりあえずじゃないわ!このバカ!

「まって!私はこれから王都へ行くの。一緒に行きましょう!」

あーえーうーんどーしよー?と頭を傾けていたがその気になったらしい。

「じゃあ、お願いだから皆殺しは止めてね?」

・・・・いい人は殺さないそうだ。皆殺し決定じゃないのそれ。

 

 

 

 

ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラ

 

「ピテカさんが八本指に捕まった!?」

「ああ、昨晩例の娼館に連れ込まれたらしい。」

「大変!一刻も早く助けなき…。助けないとダメかな?」

大変とは思ったけれど、なぜか打開策を考える気苦労が無駄に思えてガガーランの方を窺う。

「うーん。奴を捕獲できる相手に勝てるのか?」

本当に捕獲されたのだとしたら無理に決まってる。それとも致命的弱点があったのかしら?

「丸め込まれたのかもしれんな」イビルアイがため息をつきながら面倒くさそうに言う。

「そうでしょうね。置いてきたのは大失敗という事ね」

「敵に回られたらこの国は滅びるんじゃねーか?」

「それはどうかな?彼女の不死身性は目の当たりにしたがどれだけの攻撃力があるかは未知数だ。死なないでその辺をうろうろするだけなら銅像と変わらんさ。第一、不死身といったって毒矢で死なない程度であれば私でも当てはまる。ヤツも人間だ。水に沈めたり油かけて焼いたり頭が潰れるまで鈍器で殴ったら死ぬだろう」

「なるほど、いざとなったらこっそり殺すという手もないではないか」

「「暗殺は悪手」」双子が両手の掌を胸元で見せる。

「「八本指の幹部を全員殺るほうが可能性があるレベル」」

「そんなに?」

「「首元に刃物を近づけても全く意に介さなかった。つまり首を切断されても死なない自信があるということ。それは何らかの「肉体の損傷が生命の危機に繋がらない」技能をもってるという可能性があるということ」」

・・・であるか。

「「そして万が一その可能性が事実だった場合、攻撃力などはどうでもいい」」

「どういうこと?」

「少なくとも鬼リーダーは人間でたやすく死ぬ」

「鬼ボスは毒でも落下でも水没しても死ぬ。相手は死なない。成功するまでトライアル&エラーを繰り返す。いつか殺される」

「ぞっとしないわね」

対策は・・・・、決めた。

「じゃあ、放置ということで」

満場一致を見た。

 

 

 

 

ピテカ

 

王都にはヒルマ・シュグネウスさんの知人の店がたくさんあるらしい。悪のシンジケートなんだろうな。皆殺すか!?・・・まさかね、シュグさんには「いい人は殺さない」なんて言ったけれど、悪人だからといって私が社会からこれを排除しなくてはならないと思うほど私はこの世界の治安に責任を感じていない。更に言うなら私に敵対したからといってこれまた殺さなくてはならないなんてこともないような気がする。実際、シュグさん一派も殺していない。

言ってしまえば不能犯だしね。

殺すっていうのは蘇生が前提でなければ、取り返しがつかないことだから。

別に私は聖人君子じゃないし怒りに我を忘れないと確信できるほど冷静沈着ではない。殺るときは殺っちゃうだろう。

でも私は生まれてからずっと弱者ですらない社会のお荷物だった。親の完璧で不断の庇護と介護と扶養がなければ10数える前に消え失せただろう。10数える概念すら知らぬまま。その程度の社会の塵芥だった。だから自分が強くなったとて、他人の命に介入する能力を得たとて、それでそれらを恣にしていいとは思わないし、することに強い抵抗感を感じる。きっとそんなことをすれば「お前何様?」と自分に冷ややかな目を向ける自分が現れるだろう。だから自分に害を加えない存在に、もしくは害を加えることが出来ない存在に害を加えなくてもいいじゃないか、と思う。肘関節をへし折っても直すから危害ではない。自分で獲得した能力でもないのに、誰かもわからぬ存在から理由や手段すらわからぬまま与えられた力を我が物顔で揮うことに正当性を見いだせるほど私は人生を築いてきていないのだ。

勿論これから、物語などに良く描かれる「守りたい人」などが、ぱぱーん!とファンファーレと共に発生した時にどんな行動を私が取るのかまるで予想が付かない。その人に近づくものは皆殺す!みたいな悋気溢れるキャラにジョブチェンジするかもしれない。

ボッチにそんな人は現れない?・・・・知ってる知ってる。うっさいわ。

 

さてシュグさんは昔娼婦だったらしい。なんでも最高級だったらしい。モテモテだったらしい。ウハウハだったらしい。

なので体験談が聞きたかったり、娼婦に体験入社してみたかったりしたのだが、ちょうど性感を開発したかったんですよ、と彼女に水を向けたら、

「あなたには無理ね」とにべもなく断られた。

でも処女はステイタスだよ!希少価値だよ!高値沸騰だと聞いたよ!といっても、初めては痛いからますます商売でやるのはやめておけという。

痛いのは平気だというと、そういう店もあるけど客層が酷い割に抵抗すると洒落にならないから駄目だという。なんでも女を苛んで犯すのが大好きな変態揃いだという。殴られ首を絞められ性病に罹患させられ最後にはごみのように捨てられるだけらしい。

殴られても傷はすぐ治るし首を絞められても死なないし、性病にかからないからと頑張ると、何か疲れた顔で客を殺さないなら組織の店を紹介しなくもないという。

おうおう!任せろ、今そんな議論を脳内でやってたところ!

「あ、あと同僚のお嬢さんたちに回復魔法かけようか?少々ボコられてもすぐ治るよ?」というとうなだれていたシュグさんが顔を上げて真顔で言った。

「止めてちょうだい。確かに彼女たちは死にたくない、痛いのは嫌と言うわ。でもね、治されたらまた最初からじっくり壊されるのよ。それは終わらない拷問と変らない。コッコドール達は大喜びであなたに商品を直せというでしょうけれど、目の前で死んでいく女が助けてくれと縋ってきても死なせてあげて頂戴。それがあなたをコッコドールの店、王都で最悪の加虐性癖者が集まる店、に紹介する条件よ」

 

 

 

そしてシュグさんに連れられて王都に入る。

なんかあやしい雰囲気の路地裏にやたら頑丈そうな扉の民家があった。ここらしい。

てっきりネオンだらけの城みたいな建物だと思ってたけどこの世界の風俗店はなんか地味だ。

 

「で?なんなのこの子?」・・・この世界にもオカマさんはいるんだな。

コッコドールというこの店のオーナーさんが怪訝な顔をしてシュグさんの方を見る。

なんでも偉い人で、普段は居ないけれど前もって連絡しておいたら、訪ねる頃を見計らって店に出てきてくれたらしい。まじめな働き者だ!犯罪者だけど!

「従業員志望者よ。ただし奴隷扱いは無理と思うけど」

「私は八本指の奴隷部門長なんだけど・・・?」

「娼館なんだから奴隷でない従業員がいてもいいでしょう」

「働きたいっていうなら構わないけどこの店の接客に平気でいられるとは思わないわねぇ。」おっと期待は高まるばかりです。

「でも一度この店の実態を知った存在を表に出せるわけはないのよ。つ・ま・り、無理とわかって逃げようとしたら・・・」

「殺せないけれど?」シュグさんがもったいぶって話すコッコさんを面倒くさそうに遮る。「殺せないわよ?この子。殺しても死なないから」

「意味がよくわからないんだけどぉ?試してもいいのかしら?」コッコさんが私を睨んだ。

「いや」

「ですって。できれば私の言うことを信じてくれれば助かるわ」

今、小さい声で「お前の命が」言いました?殺しませんよ?へし折っても直しますよ?

「何故嫌なのかしらー?死なないというのが嘘だからぁ?」にやりと口を曲げながらコッコドールさんが・・・、

「コッコドぉぉール!挑発は止めて頂戴!するなら私が帰ってからにして!」

ちょっと殺伐とした雰囲気が漂い始めた途端、いきなりシュグさんが錯乱しました。

あー、PTSD?

「私は連れてきただけ!もう帰る。この子を雇わないならあなたが断って。殺したいなら私が居ないところであなたが殺して!出来るとは思わないけどね!じゃああああああ!ピテカさんさようならっ!」

そう叫んでシュグさんは部下を引き連れて逃げるように出て行った。勿論部下も遅滞なく逃げるように全力で逃げていった。

 

 

 

「・・・・お嬢ちゃん、本当に死なないの?」

「死ぬと思いますよ。死んだことないから分からないけど」

「どうやったら殺せるのかしら?」

「うーん。まずレベルを最低限101まで上げます。出来れば800くらいまで」800だと私よりレベルは低いけど私は能動的に戦闘ができる気がしないので、多分800あれば私は勝てない。いやー、600くらいの人にも負けそうだなー。まぁ、私が全面協力するなら101でも何とかなるだろう。

「レベル?」

「うん、レベル」おや?レベルを知らない?そりゃそうかゲームじゃないものね。えーとこの人のレベルが・・・うん?難度って言うスケールがあるのか。「レベルを3倍したくらい」ってざっくりしてるなあ・・・。

「あー、難度って分かります?コッコさん」

「難度なら分かるわよー。なるほど難度100あればいいのね?ならゼロでも何とかなるかしら?」

「いや、難度とレ・・・」

コッコさんが飛び出していった扉の向こうから彼のの叫び声がかすかに聞こえる。

「誰か六腕に連絡とってゼロに来てもらうように言ってぇぇぇぇ!」

うむ、私の処女を捧げるにふさわしい男性を呼んでくれるようだ。

少し小さめで手足の細い一見女の子のようなブルネットの直毛が肩甲骨まで伸びている華奢な中学生くらいの男子がいいなあ・・・。

贅沢は言わないけど。

声変わりしたのかな?と思うような少し高い声で愛をささやいて私の顔をその鳶色の瞳で覗き込んでくれたらとかいうシーンにあこがれるなあ・・・。

贅沢は言わないけど。

直径5.7センチ、全長17センチの剛直に顔をよせ少し唇に当てるだけでか細い吐息とびくっと揺れる肩で羞恥を表すような繊細な子がいいなあ・・・。

贅沢は言わないけれど。

 

思わず殴り倒しちゃった私ってちょっとおっちょこちょい。

でも正当防衛と思うの。主に私の乙女心的な意味で。

だって禿なの!

だって筋肉なの!

だってだみ声なの!

だっておっさんなの!

殺していいよね!取り返しつかない恋(撲殺系)でもいい!

 

2時間も待たされて妄想妄想で期待値を高めてたのに、コッコさんと一緒に部屋に慌ただしく入ってきたのはおじさんだった。

しかもなんかあきれ返った声で、

「おい、コッコドールよ。まさかこの小娘を殺すためにわざわざ俺様を呼んだのか?」といいながらデコピンを入れてきたら、カチンと来てカウンターで腹筋の一番堅そうなところにぐーぱんした。腹筋引きちぎられ背骨へし折られ壁まで吹き飛んだのは自己責任ということで納得していただきたいです。

ちゃんと腹筋も鍛えておかないとー。

毎日100回くらいはやらないとダメだよ?

もちろん脳波停止する前に回復魔法飛ばしておいたからなしんこでいいよね!?

 

その様と壁のヒビとべっとりついた血痕をみたコッコさんは、

「ちちちちちちちちちちちがうわよ!ゼロったら早とちりね!その子の初めての相手をしてもらおうと呼んだだけで危害を加えろなんて一言も一言も一言も・・・」

はげのおじさんは、

「おおおおおおおおおおおう!そうか!はははは早とちりしちゃったな!」

・・・だよね!

 

 

 

 

コッコドール

 

おおう、ゼロがもしかしてビビってる?私もちょっとパニくったけれどゼロの心がへし折れた音で一気に平静になれたわ。この男が一瞬で格付けされちゃうって何者のかしらん?

「ピテカさんだっけ?ごめんなさいねぇ?あなたの処女膜破るならあなたを傷つけられる程度の力が必要と思ったからこの男を呼んだのだけれど生来のおっちょこちょいであなたを殺せと言われたと勘違いしちゃったみたいなのね?悪かったわぁ」これで、ごまかせるか?ごまかされて頂戴!

「あーそうだったんだー。はげのおじさんおっちょこちょいだねー」

「はげじゃな・・・・・ぐぬぬ」剃ってるのね、わかるわ、わかるわ。女の子のパイパンも天然と剃毛プレイの果てでは価値が違うものね!

「で、どうかしらピテカちゃん?初めての相手はこのはg・・・スキンヘッドで?」

「うーん、見た目14-5歳で華奢で声変わりしてなくて性感帯が敏感でビッグマグナムな美少年がいいなー。あとアナルが処女で色素が沈着してないと花丸」

「居るかよ。私が欲しいわ」

「コッコさん。地が出てる地が出てる」

「あらやだ。ピテカちゃぁん。そういわないでハゲで妥協しない?」ゼロを指差す。

ゼロ・・・ゼロ・・・?聞こえますか?今あなたの心に話しかけています。今は耐えるのです。今は苦しくても、悲しくてもいつか復仇の時は来ます。だから歯の根がへし折れそうな歯軋りは止めるのです。恐いから。

 

 

 

 

ピテカ

 

ということで全身刺青のワイルドなおじさんと個室に入る。

おおおお、SMルームですよSMルーム!でもなんかベッドとか床とかばっちぃなあ・・・。そんなわけで21位階の部屋ごと洗浄魔法ですよ!えいや!

あ、おじさんが溺れてる溺れてる。

 

ぜーぜー言ってるおじさんの背中をさすりながら考えてみた!

とりあえずの目標として全身亀甲縛りで駿河釣りにして全身滅多刺しになりながら三つ穴責めで首絞めフィニッシュしてもらうとして、いきなりフルオプションというのも趣にかけるって言うかご飯食べる時にいきなりメインディッシュから行っちゃう感じでマナーとしてどうなのかとかっていうか楽しいのだろうけれどもっと楽しめるスケジュールを組みたいなあなんて思うわけですよ。

おじさん聞いてます?

 

先日、お宅さまの農場で斬る刺す絞める燃やすのフルコースを食らったわけですがやはりそれなりの経験を積まないと感じ取ることの出来る痛覚というのはある一定レベルまでになってしまうわけですね。閾値があってそれ以上はブレイカーが働いて感じない、みたいな・・・。

それは少々勿体無いだろうと思うのです。

実は私は処女なので性行為の最中の快感や痛覚もそれと同じようなもんじゃないかなと。

おじさん聞いてます?

 

で、経験豊かそうなおじさんの意見を聞きたいわけです。処女の性感ってどんな感じで開発していくのがいいんですかね?

え?そんなの考えたことも無い?女なんか自分の欲望のはけ口に過ぎない?

おじさーん。おじさんちょっとがっつきすぎじゃないですかね?それ。童貞じゃあるまいし。

・・・・もしかして素人童貞だったりします?

え?素人女性もレイプしてる?

わかった!じゃあおじさん和姦童貞ですね?レイプしかしたことがないという。女性の同意を得て愛あるセックスをしたことがないという。え?どどどどどど童貞ちゃうわ?

いやーまあ、童貞は皆そう言いますよ。童貞じゃない人もそういうけど。

私なんか処女でもはっきり自分は処女だって言いますよ!潔いでしょ?

おじさん、人の話は聞きましょうよ!

 

まあ、そんなわけでおじさんの和姦童貞は私が頂くので替わりに私の正真正銘処女はおじさんに進呈しましょう。

なに?女の側のことを考慮しながらセックスしたことがないから良くわからない?

まあ、おじさん、ハゲ筋肉のクセにかわいい!

大丈夫大丈夫。いつもどおり押し倒して顔面殴りながら腕力で足広げて準備できてないおまんまんに突っ込めばよろしいよ?

 

おじさんのパンチくらいどうってことないですし、おじさんのちんちんごときでどうかできるほどヤワでもありませんからせいぜい頑張ってくださいな!

あ!おじさん!泣きながら逃げないでー!

 

・・・解せん。普通美少女()の処女を奪えるって言われたら男って喜ばないの?

 

 

 

さてそんなわけで、ゼロという八本指のおハゲさんは逃げてしまったのでお替りを所望じゃ。

いえ?ハゲ筋肉が好みじゃないからわざと冷たくして追い払ったわけじゃないですよ?コッコさん。デリヘルでチェンジを繰り返す童貞じゃあるまいし。

「でもまあ、アレです」

「何よ?」

「ショタ美形巨砲鬼畜が居たらそれに超したことはない!」

「おらんわ。ある程度の口答えや反撃なら許容するってお客さんが来たら案内するからこの部屋で待っててくれるかしら?」

「チェンジは」

「ナシで」

「あい分かった」

どこの国の言葉よ?とかぶつぶついいながらコッコさんが部屋を出て行くのを見送る。

ではお茶でもしばきながら待ちますかね?

 



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