Sensual Blue (そらかどせきね)
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十七日の夜

蒼ルートの八月十七日の夜のキスシーンから朝になるまでの部分を自分なりに考えた内容です。大体こんな感じで絡み合ってると思います。


 八月十七日の夜。

 今日も俺と蒼は、藍の七影蝶探しのため、山に入っていた。

 そこで、ついに蒼と想いが重なった。

 一回、二回とキスをする。

 三回目は、少し……刺激的だった。

 そして――

 

「…や、優しくお願いします……」

 

 月明かりだけが二人を照らす、静寂の中で蒼の一言が響く。

 それはこの島に来て、蒼と出会い、何度も何度も繰り返されてきた言葉。

 勿論、今までの言葉も、女性に免疫の無い、俺の心を揺さぶってきたが――

 蒼をもう一度抱き締める。

 今度は、抱きしめる腕に、少し力を入れる。

 そうすることで、自分の体全体で、蒼を感じることができる。

 呼吸をすると、女の子特有の甘い香りがした。

 まったくどうして、性別が違うだけなのに、こんなにも、良い匂いがするのだろう。

 肺いっぱいで、蒼の香りを堪能した後、唇を唇に近づける。

 

「ん……っ……」

 

 四回目の口付け。

 まずは優しく、ゆっくりと、それでいて、確かに感じられるように。

 

「っ……ん……ぅ」

 

 何度か角度を変え、蒼の全体を味わう。

 やわらかい朱唇は、触れているだけで気持ち良い。

 こうして繋がっていると、蒼の感情まで流れ込んでくるような気がする。

 永久に、二人で繋がっていたい、とも思った。

 あまりに長い接吻だからか、途中で蒼も考えに気づいたのかも知れない。

 一度離れ、蒼の顔を見る。

 蒼は恍惚に満ちた目をし、さらなる展開を期待している。

 

「つぎ、舌入れてもいい?」

「…うん……」

 

 短いやりとりで許可を得る。

 そっと、唇同士が繋がる。

 今後は舌を伸ばして、蒼の唇を蹂躙する。

 右へ、左へ、上へ、下へ。

 

「っ……ぁ…っ……んっ……」

 

 舌の感触にびっくりしたのだろうか、蒼は口を閉ざしてしまう。

 閉じた口を強引に抉じ開け、侵入をする。

 奥に隠された、蒼の舌を、自らの舌の感覚で探し、捕まえる。

 二つの器官が、ついに交差する。

 それは本来、味覚や発音や嚥下の役割を果たすものだが、

 今このときに限っては、ただ絡ませ合い、愛し合し、求め合う。

 舌同士で行う、性行為が自分自身をたまらなく興奮させる。

 

「っーー! っーー!!!」

 

 分泌されてきた唾液の交換をする。

 蒼の唾液を吸い上げる。

 愛する女性の唾液は、とてつもなく甘く、それが自分の体内に取り込まれていくことで、独占欲が満たされていく。

 先ほどまでのキスとは比べ物にならない、圧倒的な喜びを感じた。

 長い時間をかけた口付けをやめ、ゆっくりと離れる。

 

「っはあ、はあ……」

 

 蒼との唇の間に、夏の空に浮かぶ、銀月の光に照らされた、架け橋が広がった。

 それは星の重力、万が有する引力を受けて、お互いの服に垂れていく。

 

「も、もう……強引なんだから……」

「こういうのも好きだろ?」

「うん……好き……」

 

 少し呼吸を乱しながらも、そう謂いながら、満足そうな表情を魅せる。

 

「触りたいの?」

「バレてましたか」

「あんたの視線とか思考は分かり易すぎるのよ…ほら、触って…」

 

 まずは右手で、想いを込めて触れる。

 掌全体に伝わる暖かくて柔らかい感触。

 今までに触れた、どんなものよりも柔らかい手触りが、服越しでも分かる。

 

「ひゃっ!?」

「蒼? 大丈夫か?」

「うん、平気。ちょっとびっくりしただけだから。もっと、その……好きにして……」

「ああ…」

 

 今度は愛でるように左手も触れる。

 儀礼服の上から蒼の双房の果実に触れる。

 今度は包み込むように。少し力を入れる。

 すると蒼の胸はそれに応え、掌に馴染む。

 

「ああっ…ああっ……」

「っ……んっ……はぁ…」

 

 頂点を探し出す。

 服の上からでも分かるぐらい、そこは既に隆起していた。

 

「……なあ」

「ぅ…うぅ……い、言われなくても分かっているわよ! そりゃ大好きな人に触られたら気持ち良いし、興奮もしますーーーー!」

 

 さて、そろそろ服だけでは我慢が出来ない。

 蒼の胸を直接触れたい。

 その意思を正直に伝える。

 

「あ……うん、ちょ、直接ね……良いわよ…は、恥ずかしいけど……」

 

 蒼の背後に回り、抱きしめる。

 腕は腰の辺りに回す。

 蒼とぴったりとくっ付くような体勢になった。

 後ろからだと、綺麗なうなじが見える。

 舌を這わせてみたくなるが、それはまたあとで機会はいくらでもあるだろう。

 

「う、後ろからなの?」

「後ろから触りたい」

「わ、わかったわ……」

「じゃあ、失礼してっと……」

 

 儀礼服の紐を少し解く、緩んだ襟元から服と肌の間に手を入れる。

 

「ひゃん!?」

 

 まず、指がうまった。

 先ほどからの行為で火照った蒼の体。

 そのやわらかい部分に指がうまっていく。

 

「はうううう、あわわ、わわわあああ……」

 

 自分の意思で優しく触ったはずなのに…。

 気づけば不思議な力に吸い寄せられるようにして、

 蒼のおっぱいに指、そして両手全体がうまっていた。

 

「めっちゃ気持ち良い…世の中の男のほとんどが夢中になるのも頷けるわ……」

「お、男って単純よね……ひゃん!」

 

 そこからさらに自由に揉む、揉みしだく。

 手の動きどおりに変化する、最高だ。

 というか、でかい。蒼のおっぱいでかい。

 

「ちょ、そ、そこはっ! んんっ!」

 

 突起にも触れる。

 生の触感…コリコリしてる。

 人差し指と親指で摘んで弄繰り回す。

 

「あっ、あっ! だめめめめん!!! へんなっ! かんじっ!」

「あああああっ! なんか、きちゃうーー!」

 

 さらに揉む。全体を揉む揉む揉む。

 時折、乳首を摘み刺激を与えるのも加える。

 それを繰り返してしばらく…。

 

「ふあああああああああああああああああんん」

 

 蒼が一際大きい声を上げて脱力した。

 すぐさま胸から手を離し体を支える。

 はぁ、はぁ、と息をする蒼の顔を横から覗き込む。

 口からは涎が垂れ、幸せそうな表情を浮かべていた。

 

「蒼…?」

「…な、なんか一瞬、気持ちよくなりすぎて意識飛んじゃってたわ……」

「もしかしてイった? ってやつ?」

「う、うん そうかも…こんなふうになったの初めて……」

「…すげぇ可愛い声出してたぞ」

「……外じゃ恥ずかしい…」

「室内でならいくらやってもいいと?」

「ふ、二人きりのときなら…お、おっけー…」

 

 体に力の戻った蒼を開放すると、こちらに向きなおし、目線は下の方に向いていた。

 

「あたしばっかり気持ちよくしてもらってもアレだし、そろそろあんたもしてほしいんじゃない?」

「まぁ、うん…」

「ものすっごく大きくなってるのがわかるわよ」

「息子がご迷惑おかけしております…」

 

 蒼はしゃがみ、俺の股間の前に顔を持ってくる。

 上目遣いに見上げて聞いてくる。

 

「…最初は手でいい? まぁその、口でって言うならがんばってみるけど……」

「口でもそのうちお願いしたいけど、最初は手で…」

「お、おっけー……じゃあ、するわよ…ん、しょっと……」

 

 ズボンのジッパー部分に手がかかる。

 

「ここ開ければいいのよね…?」

 

 蒼の手によって、既に限界まで膨張していた欲棒が開放され、

 勢いよく夜の闇の中に飛び出す。

 熱を持っていたが、夏の夜のひんやりした空気が触れ、気持ち良い。

 

「え、うそ…こんなに大きいの……? これがあたしの中に入るの…?」

 

 眼前に勃起しきった逸物を突きつけられ、蒼が少しひるむ。

 

「蒼の中に……」

「あー! あー! さ、最終的にはよ! 今はあたしがあんたを気持ちよくする番なんだから!」

「……じゃ、触るわね…」

 

 蒼のしなやかな右手がゆっくりを肉棒に触れる。

 まずは掌から。

 次に小指、薬指、中指。

 最後に人差し指と親指も。

 途端に下半身を通して体全体に信号が走る。

 今まで経験したことも無い快楽の波が押し寄せる。

 

「くっ…!」

「あ、あれ、痛かった? 男性のこれって敏感って言うけど、そこまでなの?」

「い、いや痛くはない。き、気持ちよくて…」

「そんなに、なんだ……動かしてもへーき?」

 

 首を傾げて蒼は問いかけて来る。

 それに頷くと、ゆっくりと手を動かし始めた。

 指と肉棒とが擦れ、快楽を生み出す…。

 そしてそれを行ってくれているのが、大好きな女の子なんだ…。

 気持ちよくないわけが無い。

 

「くああっ、うわああ すげぇきもち、いい……」

「ふふっ なんだか面白くなってきたわ、そーれ!」

 

 もうコツを掴んできたのか、しこしこと蒼は手で擦るスピードを速める。

 や、やばい。

 体中の血液がペニスに集まっていくのが分かる。

 あまり我慢できそうにもない…。

 

「!?」

「ん…? へー…」

 

 蒼はこちらの表情を見て何かを察したようだ。

 一度手が離れる。

 今度は何をするかと思ったら、人差し指と親指で輪を作り、亀頭から攻めてくる。

 カリ部分を刺激されつつ、さらに余ってた左手も参加してくる。

 左手は竿の根元のほうを担当するようだ。

 

「ここ、気持ちいいんでしょ? バレバレよ?」

「くっ、あああああきもちいいいいい」

 

 得意げな顔をしながら、蒼の両手しこしこが続く。

 自分でするよりも遥かに気持ち良い行為。

 海綿体が刺激され、精液が発射体勢に入る。

 出したい。出したい。

 もう我慢する必要とかはないだろう。

 だって気持ち良いのだから。

 

「蒼っ! で、出る!!!」

「えっ、で、でるの?」

「あああああああああああああっっ!!!」

 

 快楽の波動が全身を駆け巡り、ペニスが脈動して溜まっていた精液を虚空に撃ち出す。

 勢いよく飛び出た精液はそのまま蒼の顔、髪、服に降りかかっていく。

 

「ああああ、くああああ、あああ、はぁ…」

 

 まだ、出る。普段では決して出ないぐらい出る。

 徐々に勢いは収まっていき、そしてとまった。

 別に普段から数えていたわけではないが、過去最長の射精時間だったと思う。

 出し切ると頭が真っ白になり、何も考えられなくなる。

 虚無。

 快楽の後に訪れた虚無は果てしなく、心地よかった。

 

「ねえ…ベトベトなんだけど……」

 

 俺の精液を全身で浴びた蒼は、なんというか白くてエロかった。

 

「それにしても、すごい匂い…変な匂いだけど嫌いじゃない…癖になりそう…」

「またお前はそういうことを言う」

「へっ? あ、ああっ! な、慣れなさいよ! あたしのこと好きなんでしょ!」

「まあ慣れたよ、もう」

「そ、そう……」

「さて、そろそろメインディッシュを味わいたいと思うのですが」

「いよいよ、ね……」

「でもその前に、その、指…とかで慣らさないといけないんだっけ?」

「あ~…うん……もうちょっと、濡れちゃってるけど…」

 

 そう言って蒼は儀礼服の下を恥ずかしげも無く捲る。

 先ほど胸を堪能した際に見たところ上はつけていなかったが、

 下には純白の下着が収まっていた。

 

「なんかお互いこういうことに抵抗がなくなってきたと思う」

「あたしも、今自分で捲くってて思ったわ…前に見られたときは逆に驚かれたわけだけど、今はもう平気そう…っていうか凄いスケベな目してる…」

「今となっては蒼の下着は大好物なものでね、今目に焼き付けているところ」

「はいはい…」

 

 目に焼き付けた蒼の下着は、既に先ほどの行為によってシミがついていた。

 自然と手を伸ばす。

 伸ばした左手は遮られること無く、純白の繊維まで辿り着く。

 まず人差し指で優しく撫でてみる。

 

「…ぁ……っ」

 

 蒼から声が洩れる。

 さらにもう一撫で。

 

「……っ!」

 

 声が洩れるのと同時に蒼の体が震える。

 シミのある部分に人差し指と中指も参加させ、指の腹で指圧する。

 

「……ぅ…やぁ……」

 

 指圧することで蒼の陰唇から、さらなる愛液が分泌されてくる。

 既に下着は衣類の役目を果たさないぐらい濡れていた。

 

「蒼ー…脱がしても?」

「ど、どうぞ…」

 

 ずぶ濡れの下着に両手をかけて、下にずらす。

 その際に蒼のふかふかしたお尻にも触れる。

 蒼はそれにも一瞬、反応するが、無言を貫いた。

 下着はゆっくりとお尻から外れ、太股へ、そして膝へ、そこからは一気に足首まで重力も伴って落下した。

 

「足上げて」

「うん…」

 

 右足、左足と上げて、下着は完全に離れた。

 蒼の下着が手に収まる。

 それはぐっしょりと濡れていて、蒼の興奮の度合いを示していた。

 

「これ、持って帰ってもいいか?」

「ダメに決まってんでしょ!」

 

 即答だった。

 上着を脱ぎ、地面に広げて置く。

 その上に蒼のパンツは汚れないように置いた。

 その光景を二人でみると、これから行われる行為が弥が上にも想像させられる。

 少し乱れた儀礼服を着ている蒼。

 先ほど捲くっていた部分は元に戻り、一見自然な格好に見える。

 だが、たった今下着を脱がしたため、既に蒼を守る布は儀礼服のそれしかない。

 

 左手を服の下から侵入させる。

 そのとき、手の甲に上から何かが垂れてきた。

 それはねっとりとしているもの。

 局部の泉から粘泌された体液だった。

 人差し指で蒼の秘所を撫でる。

 そこはプニプニしていて柔らかかった。

 さらに親指も使い、先ほど乳首にそうしたように秘唇を挟む。

 刺激する。

 

「っつ…くぅ……」

 

「ふぁ…! ぁあっ……!」

 

 刺激するたびに蒼の喘ぎ声が響く。

 嬌声によってさらなる興奮を促してくる。

 我慢できず、人差し指を快楽の宝庫に埋没させていく。

 

「!? 指…入っ…っ……!」

 

 蒼の中は底知れぬ洞窟のようだった。

 指をゆっくりと回転させて周囲の壁を探索する。

 未知なる感触が指先から伝わってくる。

 触れているだけでこちらの意識を奪いそうなほどの極上の快楽。

 この快楽を早く自分自身の分身でも感じてみたかった。

 

「…くっ…ああっ!」

「痛かったか?」

「あ、うん、違うの、痛くはないんだけどちょっとヘンな感じ……嫌じゃ…ない、続けて?」

「おっけー…」

 

 突っ込んでいた指をいったん引き抜き、再度挿入する。

 その際に中指も追加し、二本に増やす。

 十分に解れてきた蒼の膣はそれをすんなりと受け入れて奥へ導く。

 

「んんっ…ぁん…二本…ん…!」

 

「ああああ……そこ…はっ! …はぁ…やん……!」

 

 二本の指で膣口を撫でる様に優しくマッサージをする。

 蒼のアソコはそれに答えるように、またそれ自体が別の生命体のように蠢き反応する。

 蒼のクリトリスを掌で押す。重力を淫豆にかける。

 刺激が強すぎたのか、蒼の体が弓なりに撓る。

 最早十二分に恥液は分泌されている。

 乙女の秘密の泉は決壊し、大洪水となっていた。

 

 蒼の体をやさしく抱き締め、地面に寝かせる。

 改めて蒼の格好を見ると、儀礼服は上も下も腰の辺りまで捲くれていて、

 魅力ある双房の果実と大洪水の股間を晒している。

 そんな蒼を見て、より一層の興奮が訪れる。

 蒼の股を開き、そこに顔を近づける。

 

 舌を這わせる。

 さきほどまで手で刺激していた淫核から溢れる蒼の蜜を啜る。

 

「…ひゃ!? ……そんなところ舐めちゃ恥ずかしい…」

「こんな夜中に外でこんなことしてるのに今更?」

「は、恥ずかしいものは恥ずかしいのよ! ぅ…舐められた…」

「蒼の蜜…凄い甘い…今までは比喩的な表現かと思ってたけど、今舐めて分かった。これ本当に甘い……」

「そんな感想言わなくていい!」

 

 女性経験のなかった俺の常識を次々と破壊していく蒼の魅力。

 ひたすらに蒼のあそこを舐めた。

 舐めるたびに蒼は震え、興奮し、さらなる蜜を俺に供給してくる。

 

「蒼……そろそろ…」

「ん、挿れたいんだ……?」

 

 一度射精したはずの肉棒は蒼により興奮を促され、再び熱を取り戻していた。

 ズボンとパンツを脱ぎ捨て、こちらも下半身を晒す。

 

「蒼の膣内に挿入して気持ち良くなりたい、いい?」

「…きて……」

 

 開放されてた欲棒は、これから訪れる快楽を予感し、ビクンビクンと震えている。

 先端からはカウパー液が滲みでていて、揺れる度に虚空に汁を飛ばす。

 上から蒼に覆い被さるような体勢。

 決して体重はかけず、両手を胸のすぐ横の地面につきバランスを取る。

 肉棒を秘唇に押し当てる。

 亀頭が愛の扉に触れる。

 

「くぅっ!」

 

 あまりの気持ちよさに声が洩れる。

 奥へ、奥へ。少しずつ、少しずつ。

 肉槍を埋めていく。

 襞の部分にこすれて気持ち良い。

 まだ少ししか入っていないのに射精欲が高まってくる…。

 これが全部挿入ったらどうなってしまうのだろう。

 

「…っ…羽依里がはいっ…て…」

「蒼…! 蒼…!」

 

 進めるたびに蒼の膣内が射精を促すように締め付けてくる。

 暴発しないように、ゆっくり、ゆっくり。

 …どれほどの時間をかけたのだろう。

 あるところまでいくと、何か狭い部分に引っ掛かる感触があった。

 これはもしかして……。

 

「ぜ、全部はいった……?」

「…いや、まだだよ、蒼、わかるか? これ…」

「うん、あたしの純潔の証ってやつね……」

「貰うよ……」

「あたしの始めて、貰って、羽依里……」

 

 その言葉を聞いた瞬間に、男の本能が完全に目覚めた。

 一気に肉剣を再奥まで突き刺す。

 根元までぬるぬるの膣内に納まる。

 

「っく、あああああああ!!! ……はあ…はぁ…ぅ…く…」

 

 蒼の絶叫が辺りに響きわたる。

 男には分からない強烈な痛みなのだろう。

 顔は苦悶の様子を見せ、両手はギュっと、拳を作り力を入れている。

 

「羽依…里…おねがい、キス…して…」

「わかった」

「…ぅ…キス……んっ……」

 

 口付けをすると蒼の感情が流れ込んでくるような気がする。

 少しでも蒼の痛みが和らぐように、愛の情をこちらからも送り込む。

 しばらくそうしていると、蒼の表情が落ち着いてきた。

 

「蒼…?」

「…ふぅ…もう大丈夫…まだちょっとじんじんするけど…平気」

「動かしてもいい?」

「うん、あたしで気持ちよくなって…」

 

 膣内に挿入しているだけで内壁の襞が吸い付いてきて、動かさずとも達しそうになる。

 だが、自分だけではだめだ。相手も一緒に気持ち良くなってこその愛を感じあう行為なのだから。

 突き入れていた淫棒を引く。また突き入れる。

 繰り返すことで、さらなる快楽が生まれていく。

 それは楽器のように、淫弦を擦ることで卑猥な音が響いてくる。

 二人で奏でる演奏は、夜の闇の中でひっそりと行われていく。

 始めの内は動く度にまだつらそうにしていた蒼も、徐々に苦痛から快楽へと移っているようだった。

 桃色の唇から、喘ぎ声が紡がれる。

 

「…ぁ……んっ……なに…これ…! 気持ち…いい!」

「蒼…! 蒼…! はあ…はあ…くぅ!」

 

 二人の演奏会に歌が追加される。

 蒼の嬌声はとても心地良い。

 愛する人が上げる喘ぎ声により、耳でも幸せを感じる。

 腰を振る速度が上がってくる。

 摩擦が生まれる度に脳が溶けていく錯覚に陥るぐらいの快楽が走る。

 俺の肉棒と蒼の淫膣が擦れ合う度に、極上の音が鳴る。

 奥まで突くたびに、子宮口と亀頭が接吻をする。

 粘膜が引っ付き離れる卑猥な音がする。

 

 ああ…! もう我慢できない…!!

 

「蒼! 膣内に出すぞ!!!!」

「あああああ! あたし…も! くるうううーー!!」

 

 下半身の分身へ集まった快楽の信号が脳天まで駆け巡る。

 射精が止まらない。射精中も腰を振るのが止まらない。

 出すことで快楽が生まれ、それを元にさらなる射精が行われる。

 その繰り返しを何度も何度も行った。

 

 射精が止まって一呼吸ついた後に、蒼の膣内から肉棒を引き抜いた。

 抜くのと同時に、奥に入りきらなかった精液が、処女血と混ざった状態で漏れ出す。

 俺と蒼が交じり合った証だ…。

 

 脱力した体で同じ体勢を維持するのは難しかったため、蒼のすぐ隣に寝転がる。

 二人で空を見上げながら、事後の一時を堪能した。

 

「…ぅ……はぁ…あ~…あたしヘンになりそう…気持ちよすぎ…これ…」

「めっちゃきもちよかった……」

「おなかの中…羽依里の熱いのでいっぱい……」

「うん、気持ちよすぎてさ…すごいでたとおもう…」

「始めてってさ、すごい痛いだけのものだと思ったの。でもそんなことなかった。最初は、確かに物凄い痛みだったの、自分の中に異物が入ってる、そんな感じ」

「でもね、羽依里がキスしてくれて、幸せな気持ちでいっぱいになって……気付いたら、もう最高の気分だったの……」

「知ってるよ……だって結ばれたんだぜ? 今なら蒼のことはなんだってわかるさ…」

「へー…なんでもわかっちゃうんだ?」

 

 隣の蒼の顔を見なくても表情が分かる。

 この先を期待する目。

 ふと、蒼の手が俺の手に重なる。

 指と指同士を絡ませて手を繋ぐ。

 

 

「月が綺麗ね……」

「なんだよ急に…プロポーズ?」

「それはあんたからしなさい…見たままを言ってみただけよ…」

「月よりも蒼のほうが綺麗だよ…?」

「…なんで疑問系なのよ……」

 

 夏の夜の空気はひんやりとしていて、火照った体を冷やすにはちょうどよかった。

 ただ、あれだけの行為をしたにも関わらず、未だ熱がひかない部分がひとつあった。

 それは虚空に向かってまっすぐとそそり立っていた。

 

「………ねえ……もう一回…」

「蒼……」

 

 臨戦状態のまま、二回戦に突入する。

 俺も、蒼もまだまだ飽き足らない、そんな状態だった。

 蒼を両手で抱きしめる。

 甘い香りを肺いっぱいに嗅ぐ。興奮が満ちてくる。

 蒼から顔が寄せられる。

 

 何度目かの接吻。

 お互いに顔の角度をずらしながら何度も何度も優しく触れるようなキスをする。

 蒼の瞳は幸せそうにこちらの顔を見ていた。

 ゆらゆらと揺れながら、肉棒を蒼の下半身に擦りつけると、それがまた気持ち良い。

 腰辺りに回していた両手をそのままゆっくりと下げ、蒼の桃尻に触れる。

 

「あっ……」

 

 両手のひらでしっかりと掴み、優しく揉みしだく。

 その間も唇同士の触れ合いは止めない。

 立ち上がったことで、元通りに戻っていた儀礼服を再度捲くり上げ、生尻に直接触れる。

 表面はスベスベしていて、服の上から触る以上の幸福を手のひらから伝えてくる。

 腿に近い付け根の部分、そして尻穴に近い部分も軽く撫でる……。

 

「えっ……あ、アブノーマルなのも嫌いってわけじゃないけど……しょ、初日からいきなりなの…?」

「………」

「そこで無言なのやめて……」

「今夜はなんというか普通にいこうかなーっと…蒼がそういうの好きならまた今度の機会にしような」

「………うん」

 

 変な約束をしつつ、俺は蒼の肩に手を添えて、体の向きを回転させようとする。

 蒼はその流れに従って、そのまま百八十度回転し、こちらに背を向けた状態になった。

 

「…? どうするの?」

「そこの木に軽く手をついて」

「…こう?」

「お尻をちょっとこっちに突き出すような格好をして」

「…こんな感じ?」

「おおー……」

 

 木に手をつき、柔尻をこちらに向けている蒼の姿は、完全に男の獣欲を煽るポーズだった。

 

「……このままするのね……」

「そういうこと」

 

 背後から蒼を抱きしめる、というよりは覆いかぶさる。

 魅惑のうなじに顔を埋め、匂いを肺いっぱいに嗅ぐ。

 嗅ぎ終わった後は、すぐに舌を這わせ、うなじ全体を舐めていく。

 

「…っ……」

「蒼……」

「……なに?」

「後ろから挿れるぞ」

「うん……きて……」

 

 服を捲り再度見えた蒼の秘所目掛け、肉棒を進攻させる。

 先ほどからの行為で、既に受け入れ態勢が十二分に整っている。

 入り口に亀頭を押し当てると、その微弱な力だけですぐに内部に引き込まれる。

 そこから先も、ほとんど抵抗はなく、あっという間に洞窟の最奥まで深く刺さった。

 

「……んっっ……きたぁ………でも全然痛くない……うん」

 

 二度目の挿入。

 愛する女の子の膣内にペニスが挿入っている……。

 圧倒的な快楽と幸福が心と体を満たしていく。

 

「動いても?」

「おっけー…」

 

 蒼の腰に両手を添えて掴み、自らの腰を振る。

 振るたびに蒼の尻肉と俺の下半身がぶつかり合い、軽快な音を鳴らす。

 既に一度膣内射精をしているからか、前後運動をしてもそこまでキツくはなく、

 むしろ、潤滑油となってスピードが上がり、気持ち良さが飛躍的速度で高まっていく。

 

「…あっ、んぅ…はぁ……ああん!」

「はぁ…はぁ…蒼! 蒼!」

 

 膣内を肉棒で付く度に、蒼は喘ぎ声を洩らす。

 あまりの気持ち良さに段々脳が麻痺してくる。

 蒼の蜜壷からは既に溜まっていた精液と、愛液と、二度目の先走り汁とが混ざり合ったモノが結合部の隙間から飛び出す。

 

「はぁ…はぁ…カタイの奥まで届いてる! んっ…はぁ…ああっ!」

 

 快楽により極大まで勃起した肉棒は、子宮の入り口まで届いているようだった。

 最奥の壁を亀頭で何度もノックする。

 まだ数分しか経っていないだろうが、既に限界が近い…。

 自分が早漏だとは思いたくない…蒼の膣内が気持ち良すぎるんだ。

 もっとこの極上の快楽を楽しみたい。

 

「んぅーーーーー! 羽依里~~!」

 

 俺を呼ぶ声、蒼は顔をこちらに向けて口付けを要求していた。

 肉棒は蒼の膣内に挿入したまま、前後運動を緩めながら、横を向いている蒼の顔に唇を近づける。

 お互いに結構無理な体勢ではあるが、蒼の唇にキスをする。

 

「ちゅ…ぅ…ん…にへ……」

 

 接吻を続けながらも、腰はゆっくり動かしつつ、その衝撃で揺れている魅惑の乳房を両手で掴む。

 それは重力に従って、勃起した乳首はツンと舌を向いていた。

 唇と胸と膣内すべてで蒼を堪能する。

 俺から、蒼から、幸せ成分がお互いの体を循環していくようだった。

 手のひらで優しく乳頭を摘む。

 

「……ぅ…っ!」

 

 蒼の反応がとても可愛らしい。

 胸に刺激がいくのと同時に、膣に挿入中の肉棒がギュっと締め付けられる感覚がした。

 蒼は意識していないだろうが、この条件反射が自然と射精感を高めていく…。

 幾度と耐えてきたが、蒼の膣による肉棒への愛撫がたまらない。

 もう限界だった。

 頭が真っ白になっていく。

 

「はぁ……はぁ…蒼…! 中に出すぞ!」

「ああああっ! 一番奥に…! 出して!!」

「蒼あああああああ!!」

 

 子宮腔まで突き上げた瞬間、溜まりに溜まっていていた精液を蒼の膣内に吐き出す。

 肉棒が脈打つ度に、自分でも分かるぐらいドロっとした精液を蒼の中に流し込んでいく。

 

「あああああああああ!!!」

「くぅぅぅぅぅ! アツいの中で暴れてるぅ!」

 

 射精は中々止まらない。

 自分の体のどこにこんなに精液があるんだ、と問いたくなるぐらいだ。

 

「あああっ! もうそれ以上は入らないんんんんん!!!」

 

 蒼の体が仰け反る。

 体が少し上に向いたことで、結合部からは大量のネバネバとした精液が漏れ出てきた。

 

「蒼! 気持ち良いよ! 蒼!」

 

 通常の射精とは異なるその射精は、何度も何度も、蒼のお腹の中に欲望を吐き出した。

 最後の一射をしたその瞬間、蒼の体が脱力し、両の手も木から離れる。

 こちらの両手で支えていた体が静かに震え、

 

「んんん―――!!!」

 

 一際大きい声を上げて蒼が絶頂を迎えたようだった。

 俺も賢者タイムに入りつつ、蒼を抱きしめながらも、うなじに顔を埋めて射精後の幸福を味わう。

 性器同士は繋がったまま。

 そのままで、しばらく無言の時間を楽しむ。

 

 しばらくしてから膣から肉棒を引き抜くと、それが栓の役割をしていたのか、許容量の限界を超えていた精液が漏れ出す。

 白くドロドロしたそれは、股の下の地面へと次々に垂れていき、あっという間に精液溜まりとなった。

 

 

「……羽依里……あたし、今すっごく幸せ……」

 

 蒼はこちらに振り返り笑顔で言う。

 

「愛してるよ蒼、これから先もずっと、永遠に、幸せにするから」

「あたしも愛してる……頼むわよ? ぜーったいに、あたしを幸せにし続けなさいよ?」

「ああ……」

「羽依里……んっ……」

 

 蒼から唇を寄せてきて、強引に唇を奪われる。

 やられっぱなしは性に合わないため、反撃をする。

 鳥が互いに啄ばむような接吻。

 情事の後には愛を囁き合った。

 

 二度の性行為を終え、俺と蒼は木を背にして肩をくっつけるようにして休憩していた。

 自分の下半身を確認する。

 既に何度か出しているものの、それでも未だ肉竿の猛りは静まっていなかった。

 先ほどからの行為を思い出すだけで、また興奮してきてしまう…。

 

「呆れるぐらいの持久力ね……まだしたいって言ってるみたい…」

 

「…蒼が嫌ならもうやめておくよ、時間も時間だし……」

「別に嫌ってわけじゃないわ…ただ、その恥ずかしいだけだし…うん」

「それならよかった」

 

 蒼はこちらを一瞥し、下半身の怒張を視界に入れると、やはりまだ恥ずかしいのか、すぐに目を逸らす。

 首の動きに連動して、蒼の乳房が、静かに揺れる。

 新たな興奮の入り口にいる俺の目はそれを自然と追ってしまう。

 まさに本能に身を任せた状態。

 この猛りを鎮めるには、再びの快楽が必要だと感じた。

 それには、蒼の協力が必要不可欠。それにまだ色々試したいこともある…。

 

 と、そんな思考をしてしまう自分の脳に若干の情けなさを感じ、思わず溜息が出る。

 

「はぁ……」

「どうしたの溜息ついちゃって」

「いやー…男って気持ちよければ何でもいいのかなって思って。快楽を得るのが優先になっちゃって、愛は二の次なのかって自問自答してた…」

「ん、そういう考えができるんだから、あんたは優しい人よ…安心しなさい。ちゃんと羽依里があたしの事、愛してくれているって伝わってるから」

「ありがとう蒼、ほんと好きになって良かったって心から思うよ」

「うん、どういたしまして…」

 

 急に真面目な話をされて、それも恥ずかしかったのか、蒼は頬に手を添えて表情を隠す。

 手の力でふわっと沈んだ頬、そこもまたひとつの興奮材料だった。

 

「えっと…蒼さん蒼さん……お願いがあります…」

「大体どんなことをお願いされるかは予想がつくけど…何…?」

「蒼の頬っぺたに……擦りつけたい……です」

「………………うわぁ……」

 

 過去最高のジト目の表情が見れた。

 ドン引きだった!

 いや、だがしかし、そこは男の浪漫。

 目の前に願いを叶えてくれる巫女さんがいるのだから頼みたいじゃない!

 

「だ、ダメ…?」

 

 空門の巫女さんに懇願すると…。

 

「べ、別にダメ…じゃないけど……それで気持ちよくなるの?」

「なる! 絶対なるから!!!」

 

 断言する。

 蒼は疑問を感じているようだが、既に蒼の体であれば、

 もうどんな部分に触れても快楽を得ることができる自信があった。

 

「そうなんだ…頬っぺたかー…」

「お願いします…」

「やるからには全力でやるわよ?」

「え…? あ、うん…」

 

 なぜか妙に意気込む蒼。

 まさか、そこまでの勢いでくるとは思わなかったため若干怯む。

 蒼は地面に静かに座り込み、俺の股間の高さに顔を合わせる。

 顔が肉棒に迫る。

 

 その瞬間、ささやかな風が吹き抜け、蒼の髪が揺れる。

 揺れた前髪の先端が、臨戦態勢に入っている肉棒に一瞬だけ触れる。

 

「!!!!!?」

 

 思わぬ刺激に、肉棒が自分の意思と裏腹に、喜びの舞を踊る。

 

「きゃっ! な、なに…? どうしたの?」

「いま髪が……」

「……男の子も大変なのね……」

 

 制御不能の愚息の失態を、綺麗な瞳で見詰められる。

 やばい…至近距離で見られるだけでも気持ち良い!

 触れてないのに気持ち良いってなんだこれ…蒼はエスパーなのか…?

 

「じゃあ……ご希望通りに頬っぺたで……」

 

 あっという間に蒼の左頬が迫ってくる。

 接触。

 世界中の如何なるクッションよりも柔らかい蒼の皮膚と表情筋の二層が肉棒に優しく触れた。

 

「やば…これ…きもち…いい…!!」

「羽依里の…あっつい…」

 

 我慢できず、こちらからも動き始める。

 当初の予定通りに、蒼の頬に肉棒を擦り付ける。

 摩擦することで起きる快楽は当然のこと、

 本来であれば、そういった用途には使用しない部分で快楽を得る、というこの状況次第に興奮していた。

 

「これ、ほんと気持ちいい…!」

 

 先端からは先走り汁が分泌され、擦り付けを行う度に蒼の頬にマーキングしていく。

 愛する女性への独占欲。

 雄の本能がどんどん刺激され、前後運動が加速する。

 肉棒の側面を擦り付ける。

 カリ部分を擦り付ける。

 亀頭を頬に垂直に立てるように、円を描くように擦り付ける。

 

「わっ…こ、この…暴れて…!」

 

 頬付近で暴走する愚息に蒼はあたふたする。

 その間にも、分泌液が辺りにまで飛び散り、頬だけにならず、

 蒼の鼻、髪、様々な部分を汚す。

 

 好きに動いていると、突然、蒼の手が肉棒を抑え込む。

 抑え込まれた先は頬っぺたの表面。当然のように快楽の電流が走る。

 

「ふふ、捕まえたわ、今度はあたしのほうから動いてあげる」

 

 蒼は左手と左頬を使い、肉棒に頬擦りを始めた。

 それは泣き喚く赤子をあやす様に…。

 ゆったりとした快楽を与えてくる。

 

「くううううっ……」

 

 先ほどまでと打って変わって、ペースダウンした行為だったが、むしろそれが逆に起爆剤となり、射精感を急激に上昇させてくる。

 

「あああああ……そろそろ…やばい……」

「いいこ、いいこ…ほら…出しちゃいなさい…」

 

 巫女の頬擦りは史上最高の快楽を瞬間的に生み出した。

 

「きもちいいいいいいいい!!!!!」

 

 限界まで堪えた肉棒が練りに練った白濁の子種を次々と吐き出す。

 虚空に、蒼の頬に、蒼の髪の毛に。

 

「ま、またこんなに……きゃあ!」

 

 一瞬止まったかと思った射精だが、最後の一塊を吐き出すと、

 それは空中で四散して、トドメと言わんばかりに蒼に降り注いだ。

 

「ねえ……またベトベトなんだけど……」

 

 本日何度目かになる白濁に染まった蒼ができあがっていた。

 やはり、エロい……。

 少しマニアックなプレイをしてしまったが、猛る肉棒の活動は静まらなかった。

 

 射精後の脱力に襲われた俺は、木に背中にして座り込んだ。

 肉棒は曝け出したまま。

 そんな状態を蒼は上から見下ろしている。

 

「まだまだいけそうって感じね…」

「…呆れたか?」

「ん、羽依里がこんなに興奮してくれているのが嬉しいの…」

「さようですか……」

「…えっと…次は何をすればいいの?」

 

 蒼が首を傾げてこちらを見つめてくる。

 

「く、口でしてほしい…です…」

「あー、うん……さっきもしてほしいって言ってたものね…」

「蒼に口で咥えてもらうなんて、言葉にしただけでエロくて興奮する……」

「あたしも人のこと言えないけど、あんたもわりとピンク脳よね……」

 

 座ったまましてもらうため、俺は足を広げて、その間に蒼の体を導いた。

 蒼は乱れていた儀礼服を少し整えつつ、その空間に口での奉仕をするため、内股で座り込む。

 

「じゃあ、お願いします……」

「おっけー……」

 

 蒼は再び勃起した肉棒に両手で包み込むように触れる。

 大切なものを風から守るように、優しく包み込む。

 そして、ゆっくり蒼の顔が、桜色の唇が近づいてくる――

 

「…んっ……」

 

 接吻。

 

 唇が軽く亀頭部分に触れた。

 

「!!!!!????」

 

 亀頭から全身へ快楽の信号が奔り、送信元となった肉棒が制御不能になり激しく震える。

 蒼の突然の亀頭への口付け、という予想外の攻めに急激な射精感に襲われる。

 これから口の中の気持ちよさを堪能してやろう、という前に発射はできない。

 下半身に力を入れてギリギリで踏みとどまる。

 

「え、え? あたし、なんか間違えちゃった……?」

「蒼のエロ知識には感動するよ…最高だ」

 

 下半身丸出し、上を向いた肉棒を曝け出しながらも、親指を立てて素晴らしい事をした、ということを伝える。

 

「ああああああ!! 普通はこんなことしないのね!? そうなのね!?」

「あ、いや、します! します! これが普通だから、おっけー。これからも毎回してほしいなっ!」

「わああああ! ああああ~~! 真夜中に野外で、男の人のモノにキスしちゃう女の子なんてあたしぐらいなんだーーー!」

 

 蒼は間違った知識を得ていたことを嘆いていた!

 肉棒を前に、頭を抱えて悩んでいる女の子も、蒼ぐらいなんじゃないか、と思う。

 

「蒼~…そろそろ、続きしてほしいんだけどー…」

「わかったわよ! します! 舐めますー! ペロペロ舐めますー!」

「おお……」

「…うぅ………」

 

 謎の意気込みをしつつも、恥辱に満たされた顔をしていた。

 すぅ、と一呼吸置いて、肉棒にギリギリまで近づいた蒼の唇から、舌が伸びてきた。

 舌が肉棒に触れる。

 

「んっ…れろ…れろ…ぅ……」

「っ……れろ…ん……」

 

 ザラザラした舌の感触が剛直を通じて伝わってくる。

 猫がミルクを舐めるように、舌の先端部分だけで、小刻みに亀頭部分を舐めてくる。

 ゆっくりとした肉棒への愛撫は、蒼の優しさそのものだった。

 舐められる度に、肉棒も小刻みに震える。

 

「んっ…れろ…っ…ぅ……ど、どう?」

「めっちゃ気持ち良い…そのまま続けて……」

 

 それだけ言うと、蒼は頷き、舌での愛撫を再開する。

 今後は舌をさらに伸ばして、亀頭だけでなく、カリの部分に攻めは移り、そこから裏側のスジ、ガチガチに固まった根元までを丁寧に舐めてくる。

 その所作は初々しさそのもので、とても上手い、とは言えないが、そもそも俺も実際のフェラチオがどういうものなのか、なんて知らないわけで。

 愛する女の子が、こうして自分の肉棒に奉仕してくれていることに、とてつもない愛おしさを感じる。

 

「ちゅぱ……んぅ…れぅ……ちゅ……」

「くっ……蒼……」

「…れろ……なぁに?」

「蒼は本当可愛いなって……」

 

 蒼の頭を右手で撫でる。

 サラサラしている髪は、まとわり付くことなく手のひらに幸福を生み出す。

 

「…れろ………にへっ…」

 

 撫でられて嬉しいのか、蒼の表情がさらに柔らかくなり、慈愛に満ちた様相になる。

 下半身で感じる快楽と、この場の独特の雰囲気が生み出す幸福。

 愛する人同士がそばにいると互いに眠くなる、というのはこういうことなのかもしれない。

 段々と眠気がやってくる。

 

「…羽依里? 眠いの?」

「蒼がこうやって舐めてくれてると凄い幸せでさ…」

「うん」

「眠くなってくる」

「…な、舐めるとかは置いておいて…あたしも、羽依里の傍にいると眠くなる…というか安心できるから、なのかな。いつもの眠さと違う眠さなの」

「……やっぱり、蒼って可愛いよな……」

「えぇ…結論がそれなの…?」

 

 行為の間の些細な会話も、きっと大事なことなんだと思う。

 物理的に気持ちよくなるだけの行為、それも良いのかもしれない。

 だが、愛する人と心を交わす、その上での行為は格別だ。

 そんなやりとりをしながらも、しばらくの間、俺は舌での愛撫を受けていた。

 

「…ぅ…れろ……れろ……羽依里ー…?」

「んー?」

 

 蒼が肉棒に舌を這わせながら上目遣いでこちらに問いかけて来る。

 上目遣いっていいな…。

 

「そろそろ…その、咥え…てみる?」

「あ、うん、どうぞ……」

 

 あまりにゆっくりした時間だったせいか、そもそもの目的を忘れていた。

 蒼の口に咥えてもらって、射精。それが体験したかったことだ。

 もちろん舌での奉仕も格別だったが、口の中はそれ以上だろうと容易に想像できる。

 

「世の中のカップルってのは皆、こういうことしてる…のよね……よしっ…」

「えっと、わかってると思うけど、歯は立てないで…絶対痛いから……」

 

 蒼は頷くと、口を少し開けて、亀頭の先端から内部へ含んでいく。

 

「くぁっ……」

 

 唇の裏側にカリが入った瞬間にまた、強烈な射精感が訪れた。

 そのままするすると、蒼の咥内に肉棒が飲み込まれていく。

 咥内の生暖かさがとても心地よい。さらに、ざらざらした舌の感触も加勢してくる。

 このまま本当に、自分の肉棒が食べられてしまうのではないか、そんなことを思う。

 

「へもほまへ…ふわれれふぁ…」

 

 肉棒を咥えた蒼がモゴモゴと何か言葉を発するが、正確に聞き取れない。

 おそらく”根元まで咥えられない……”と言ってるんだろう。

 というか、喋る際に舌が動いて、気持ち良い、気持ち良すぎる。

 

「あ、蒼……咥えたまま喋られると…やばい…我慢できなくなる……」

「ふぁはんひふぁふてひひんふぁい?」

「ぐっ…それダメ……」

「……ちゅぱ…ゅ…ちゅ……」

 

 快楽の波動に襲われて自分の腰が自然と浮いてしまう。

 そして、我慢できない、と言わんばかりに脳の制御を失い、勝手に腰が動く。

 気づいたときには、蒼の頭を両手で抑えて、自ら腰を振って蒼の咥内を肉棒で犯していた。

 

「!?」

「蒼!? ご、ごめん……」

 

 快楽に意識が奪われて、少し無理なことをしてしまった。

 一旦肉棒を引き抜き、蒼の様子を確認する。

 

「げほっ、げほっ、はぁ、はぁ、だ、大丈夫よ。ちょっとびっくりしただけだから。気持ち良いんじゃ仕方ないわよね」

「ごめん……」

「気にしないの、それに、今そうやって止めてくれたじゃない、あんたが優しい証拠よ」

「あ、ああ…」

「じゃ、続きするけど、その…自分でしたくなっても今回は我慢してね…今はあたしがしてあげるから…」

「おっけ……我慢する」

 

 再度、蒼の口に肉棒が含まれる。

 蒼は俺の腰の後ろの地面辺りに両手をついている。

 つまり、口だけでのフェラチオ。

 無意識にやっているのだろうけど、やはりエロ方面の才能に満ち溢れていると思う…。

 

「…ゅる…ちゅ…れろ…ぅ…」

 

 先ほどからの行為で学んだのか、蒼は桜色の唇で程よい力で肉棒を挟んでくる。

 そして当然、挟まれると強烈な快楽がくる。

 これ…好きかも……。

 肉棒を口に含みつつ蒼は頭を動かして、俺をさらなる快楽の高みへ導いてくる。

 先端からは先走りが飛び出し、蒼の咥内を穢していく。

 このまま、蒼の咥内で射精したい…。

 

「…ちゅる…ちゅぱ……ちぅ…」

「あ、蒼…このまま出しても良い……?」

 

 肉棒を咥えたままの蒼は、ニッコリと笑い、頷いた。

 その笑顔に魅せられた瞬間。

 

「…ちゅぱ……じゅるる……」

 

 射精を促すように肉棒が、蒼の咥内で吸い上げられる。

 ギリギリまで登ってきていた精液が、その吸引を引き金に弾けた。

 蛇口を一気に捻ったときのように、強烈な勢いで蒼の咥内、喉奥へ射精する。

 

「ああっ、くぅあ! まだ出る!」

 

 蒼に精液を搾り取られる。

 放出し終わったあとは腰を引いて、肉棒を蒼の口から引き抜く。

 引き抜いたあと、肉棒はその力を出し切ったのか、ゆっくりとしな垂れていく。

 蒼は、というと、口を両手で押さえて、喉を鳴らしていた。

 

「……んっく……ごくっ……」

「まさか、飲んだ?」

 

 問いかけると蒼は、無言のまま口を大きく開けて見せ、口の中に精液が残っていないことを俺に確認させた。

 

「ヘンな味がしたけど……羽依里があたしで気持ち良くなってくれて出したモノだから……」

「蒼……ありがとう…でも、ほんとにやばいときは吐き出していいんだからな? っていうかそもそも咥内射精をしなけりゃ良いだけなんだけど……」

「あんまり、気にしなくていいわよ、今だけはお互いに気持ち良いことだけ…していたいの…」

「ほんと、蒼って優しくて可愛いよな……」

「ふふっ、まあね?」

 

 蒼の頭を撫でると、蒼は嬉しそうに、微笑んだ。

 その笑顔に、つられてこちらも自然と笑顔になってしまう。

 

 蒼がとてつもなく愛おしい。

 想いを重ねて、体を重ねて。

 今日という一日は二人の未来にとって、とても大事な一日になるだろう。

 

 いつか。

 いつか、思い出す。

 そのときも蒼と二人でこうして笑顔のままでいたい……。

 ………。

 …むしろ朝になった途端に蒼は、自分が真夜中に山の中で何をしていたかと思い出し、その羞恥で顔を真っ赤に染めそうではあるが……。

 

「う~ん、凄い良い雰囲気なのに、あんたの下半身のせいでムードぶち壊しなのよねー……」

 

 自分でも気づいていた。

 あれだけ交じり合って放出したのに、どうやらまだ愚息は満足していないらしい。

 

「俺達らしいっちゃ俺達らしくない?」

「うん……もう一回しよっか……」

 

 どうやら俺と蒼との八月十七日の夜はまだまだ終わりそうになかった。

 

 

 

【十七日の夜 終わり】



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まずはお風呂から

鳥白島の風習では仲良くなった男女は、まずお風呂に一緒に入ると言われている――


ぶっちゃけ蒼みたいな可愛い彼女が居て一年間も自慰を我慢できるわけがないので、きっと羽依里は寝てる蒼をおかずにシてるに決まってます。
ただ横で藍が監視してるかもしれません…。




 

 空門藍が長い眠りから目覚め、代わりに空門蒼が眠りについてから一年。

 

 俺は、夏の終わりに、蒼を目覚めさせることに成功していた。

 

 一年間眠っていた蒼は当然、リハビリの必要があったが、

藍ほど長い眠りではなかったため、そこまでの支障はなかった。

 

 学園は当然ながら留年扱いに。

 

 逆に藍はその学才を十二分に発揮して特別扱いで義務教育課程が終了。

学期の途中からという形であったが、蒼と同じ学園へと編入した。

 

 問題なく一年次をパスし、二年次となっていた。

藍は勉強をする毎日、蒼は週末に鳥白島に戻ってくる俺と一緒にリハビリの毎日を過ごした。

 

 

 

 十一月に入ると秋も終わり、冬が近づき、寒さも増してくる。

 

 金曜日。鳥白島へ渡るため、連絡船の最終便に乗ろうと港まできていた。

 

 船に乗り込む。もう既に何度も何度も、去年から今年にかけて乗ってきた船だった。

 

 当然そこには見知った顔もあり……。

 

 

「今晩は、羽依里さん」

 

「藍か、ギリギリまで本土のほうにいるなんて珍しいな」

 

「勉強を、なるべくしていたいですから。図書館に篭っていたらこんな時間でした」

 

「勉強するのはいいことだが、藍は何か明確な目指してるものがあるのか?」

 

「特にはないですが、将来、蒼ちゃんと羽依里さんを養うために良い仕事には就きたい、

と考えています」

 

「……俺も養われる枠に入ってるんだ…」

 

「私からしたらまだまだ羽依里さんは頼りないですから、その保険です」

 

「そうですか……」

 

 

 淡々と凄いことを言ってるような気がする。

……藍なら本当にやりかねないな。

 

 

「羽依里君、おかえりなさい」

 

「あ、どうも」

 

 

 蒼と藍のお母さんも当然のように一緒の連絡船に乗っていた。

藍とは偶然だったが、この人とはこうして鳥白島に渡るたびに会っている。

話すことはほとんど、蒼と藍についてだった。

 

 

「でも、おかえり、なんて言葉のほうが似合うくらいすっかりもう羽依里君も島の人間よね」

 

「自分でも自然と受け入れてましたけど、確かに…」

 

「さすがは蒼の未来の旦那さん! 式はいつになるのかしら?」

 

「いつかは…と思ってますけど、ま、まだ気が早いですって……!」

 

 やはり蒼と藍の母だけあって、会話はこんな感じでいつも自由だ。

 

 

「は?」

 

「あのー…藍さーん? 怒らないで……どうどう…」

 

「蒼ちゃんとのお付き合いまでは許しましたけど、結婚までは許してませんが?」

 

 

隣で聞いていた藍が怒りをあらわにしていた。

 

 

「結婚も許してください……」

 

「…これから先の羽依里さん次第です」

 

「でも、さっき蒼と俺を養うため~とかなんとか言ってたような…?」

 

「………」

 

 

 ギロリ、とあらためてこちらを見つめる無言の瞳が鋭くなる。

 

 その目やめて、ゾクゾクするから。

 

 そんなやりとりをしているうちに鳥白島の港へと到着。

俺達三人も下船する。桟橋には、空門蒼が待っていた。

 

 

「羽依里~~~!!!」

 

 

 ゆっくりと、こちらに寄ってきて俺に飛びついてくる。

あまりの勢いに受け止め切れず、衝撃を抑えるために蒼を抱きしめながらその場で一回転。

 

 

「っと、急に飛びつくなって! 海に落ちるだろ!」

 

「えへへ~~! 羽依里なら大丈夫だって信じているもの、おかえりなさい、羽依里!」

 

「ただいま、蒼」

 

 

 上目遣いにこちらの顔を見つつ、言葉を交わす。

 

 

「蒼ちゃん。私もいる」

 

「藍もお母さんもおかえり~!」

 

「あらあら、さっそく仲良しなところを見せてくれるわね~」

 

「まあね~~! ほら、羽依里、いこ!」

 

「ぐっ…!」

 

 

 自分ではなく俺が優先されたことに明らかな嫉妬を見せる藍は、

蒼に気づかれないように俺にだけ再び鋭い目線を投げる。

そんな藍に俺は親指を立てて、してやったり、とハンドサインを返す。

 

 

 四人で岐路を歩く。

 

 蒼と蒼のお母さんが並んで楽しそうに家族の会話をしている一方。

その後ろで、藍と俺は言葉を交わさずに並んで歩いていた。

 

 

「羽依里さん」

 

「どうされましたか藍お姉さま」

 

「……いつも通り、『藍』でいいです」

 

「どうしたの藍」

 

「もしかして、今日は蒼ちゃんを抱く予定ですか?」

 

「あー、えっと……その、予定です、ハイ」

 

「そうですか…」

 

 

予想していた言葉が返ってこず、代わりに少し寂しげな口調で言葉が紡がれた。

 

 

「あのー…その……」

 

「………藍?」

 

 

 何か言いたそうにしているが、恥ずかしいのかなんなのか、言葉に詰まっている。

しばらくそのまま歩き、加藤家の前まで到着する。

すると、そのとき隣を歩いていた藍がこちらに身を寄せ、ひっそり声で耳打ちをしてくる。

 

 

「蒼ちゃんも良いですが、いつかは私のことも抱いてくださいね?」

 

 

 その言葉を言った後の藍は珍しく顔を真っ赤にしてそっぽを向いていた。

だ、抱く…? 藍を?

蒼と同じように…?

それって、セッ――

 

 言葉の意味をかみ締めると、こちらまで顔が熱くなってくる。

 

 

「じゃあ、藍、お母さん、また明日ね~」

 

「おやすみ、蒼ちゃん」

 

「おやすみなさい、蒼、羽依里君に迷惑かけちゃだめよ」

 

「かけないわよ! もう~!」

 

「おやすみなさい」

 

 

 四人それぞれ、別れの挨拶をすると、その場には俺と蒼だけが残った。

蒼は俺の右腕を抱きしめ引っ張り、家へと急かす。

 

 

 ”あの夏”鏡子さんは蔵の整理を終え、本土のほうへ考古学を追う為、出て行った。

そうなるとこの家を管理するものが居なくなる、ということで、

週末になると蒼に会うためにやってくる俺が使っていい。そういうことになった。

 

 蒼は蒼で、俺と一緒に過ごすために、週末は自分の家ではなくこちらで寝泊りまでしている。

実のところ、同棲生活のようなものだった。

 

 

「さあさあ、ご飯は出来ているわよー! まずは食べましょう!」

 

「晩飯を用意して、夫の帰りを健気に待っている妻って良いな…」

 

「つ、妻!? で、でも、まだ結婚はしてない…し…うぅ……

で、でもその羽依里と結婚は絶対したいっていうか…一応そのつもりではいるし……」

 

「俺もそのつもりだよ、未来の奥さん」

 

「……ああ~~~もう!!! 

あんたって、わりとキザな台詞を恥ずかしげも無く言うわよね……」

 

 

 俺の恥ずかしい言葉に顔を真っ赤にして恥ずかしがる蒼。

既に慣れた日常の光景だった。

 

 

 

 蒼の作った夕飯を堪能したあと、食器を洗っていると、隣に立つ蒼から、

 

 

「ねえー…? 今日は…その、するのよね?」

 

「うん、蒼も十分日常生活を送れるようになったし…

俺もその…我慢できそうにないです……」

 

「えへへ……あたしも……かなり我慢してた…」

 

 

 そう、今日はリハビリも終わった蒼と一年越しのえっちをする日だ。

この一年間、ずっと我慢してきた。

一年前の夏のあの日、蒼と体を重ね、その快楽を知ってしまった身だ。

並大抵の健常なる男子では成し得なかったことだろう。

ひとえに蒼への想いだけで耐えてきた一年間だった。

だがそれも、今日までだ。

今日、すべて解き放つ。

 

 食後の後片付けも終わり、一息。

ゆっくりと、お茶を飲みながら、帰宅途中の藍の言葉を思い出す。

 

 いつかは私のことも抱いてくださいね……か。

 

 藍にとっては、蒼は何よりも大切な存在。

俺と蒼がそういう関係になるなら、自分も一緒に……というところなんだろう。

一年前の夏、藍が目覚めたあの日のことも思い出す。

 

 あなたとのお付き合いは遠慮したいです、しかし、蒼ちゃんと一緒なら、やぶさかではありません。

 

 そういえば、そんなことも言っていた。

しかも本気だと。もちろん蒼一筋と言った手前、蒼だけを愛するつもりだ。

だが、蒼と藍、双子の仲のことを考えると、そういう未来もあるのかもしれない。

 

 

「羽依里ー? お風呂沸いたけどどうするー? 先に入るー?」

 

 

 深い思考に落ちていると、唐突に蒼の声が響き、現実に意識が戻る。

 

 

「羽依里ー…?」

 

 

 居間に姿を見せた蒼を間髪入れずに抱きしめる。

急に抱きしめられた蒼は、俺の腕の中でもごもごと動く。

 

 

「た、確かに今日は、その、久しぶりにするからって我慢できないのはわかるけど、す、するなら布団で……」

 

「あー…蒼を急に抱きしめたくなっただけだから、まだ大丈夫、

それよりお風呂いこうか」

 

 

 自然な流れで肩を抱き、蒼をお風呂へを誘導する。

何の疑問も抱くことなく廊下を進む蒼だったが、お風呂場の手前まで来て急ブレーキ。

 

 

「って、ちょっと、まったー! なんか、一緒にお風呂に入る流れになってない?」

 

「蒼と一緒にお風呂入りたいなー、入りたいなー、だめ?」

 

「……ぅ…ん、恥ずかしいけど……あんたに『だめ?』って言われると、

断れないっていうか……あ、でもあたしも嫌ってわけじゃないのよ?」

 

「なら一緒に入ろう」

 

「……うん」

 

 

 相変わらず押しに弱い蒼だった。

 

 

 

 一緒に入ることが決まった後、着替えを用意し風呂場へと向かう。

 

 

「先に入ってるね」

 

「うん……お願い。あたしはあとから入るから」

 

 

 二人して脱ぎ合いをするのは恥ずかしかったため、先に俺が風呂場へと入る。

手桶を使い、ほどよい温度のお湯を体にかける。

隅々まで、お湯に慣れさせ、湯船に浸かる……あれ、お湯少ない?

男一人が浸かっても、肩の高さに至らない程度の量。

まあこれならこれでのんびりと入る分にはちょうど良い。

 

 湯船に浸かってしばらくすると。

脱衣所のほうから、かすかな音が聞こえた。

それは布のほうなものと、人間の肌が擦れたときのような音だった。

今現在この家にそんな音を立てる人物は当然一人だけ。

 

 蒼が扉の向こうで服を脱いでいる――

 

 一年前のあの夜のことを思い出す。

蒼の肌。すべすべの頬。極上の柔らかさの胸。しなやかな手の感触。口の中。そして……。

 

 

「お、お待たせ……」

 

 

 扉が開かれた。

 

 蒼が風呂場へと入ってくる。髪は後ろで結ってまとめてあり、普段はなかなか見ない姿だ。

左手で真っ白の無地のタオル持ち、体の正面を隠し、ゆっくりと風呂場のマットへと進んできた。

タオルが小さいのか、蒼の胸が大きいからなのか……横乳が少しタオルからはみ出ている…。

それに気づいた瞬間、こちらの下半身が身震いを起こした。

もうちょっと我慢しててくれ……。

 

 蒼の下半身のほうに目を向けると、股の辺りをギリギリ隠す程度。

ちょっと揺れれば割れ目が見えそう…。

相変わらず俺を魅了する蒼の体だった。

 

 

「………気持ちは分かるけど、食い入るように見るわね……」

 

「初めてのシチュエーションだから、許して…」

 

「しょうがないわね……」

 

 

 特に呆れる様子もなく、蒼も手桶でかけ湯を行う。

無地のタオルにもお湯が降りかかり、肌にピッタリと張り付いていく。

すると、生地が薄っすらと透けて、肌色が浮かんでくる。

 今の蒼なら頼めば、もういくらでも見せてはくれるだろう、

だが、見えないギリギリ、というのはこういう無意識下でしか体験できない貴重なものだ。

 そうこうしているうちに、蒼も湯船に浸かろうとしている。

まずは左足。続けて右足。そしてゆっくりと腰を落として浸かっていく。

大事な部分を隠しているタオルも湯に沈んでいく。

 

 

「……っと…良い湯加減…さすがに二人で入るとちょっと狭いわねー…」

 

 

 気づけば蒼は俺と向かい合うようにして、湯船に浸かっていた。

目の前に蒼の体があった。手を少しでも伸ばせば触れられる距離。

 

 

「蒼ー…ち、近くない?」

 

「しょ、しょーがないでしょー! 狭いんだからー!」

 

 

 蒼の顔はすでに真っ赤だ、入ったばかりのため、のぼせているわけがない。

こちらの顔も熱くなってくる。

やばい、めっちゃ恥ずかしい……。

 

 

「あのさ……」

 

「うん……」

 

「俺達一度は体まで重ねたはずなのに、こういうのはまた別で、

恥ずかしくなっちゃうのな……」

 

「うん……だから言ったじゃない……うわ~~~~」

 

 

 蒼は両手で自分の顔を覆う。

すると、当然手に持っていたタオルは蒼を離れる。

目の前を漂っていたそれを俺は自分の手に収める。

 

 

 蒼の大事なところを隠していたタオルをGETをした!

 

 

「ちょ、ちょっと! あたしのタオル!」

 

「へへっ、頂いたぜ……こいつは邪魔だからこっちに置いておこう」

 

「~~~~~~~!!!!」

 

 

 俺の後方の風呂のふちにタオルを置いておく。

生まれたままの姿を晒している蒼は、自らの腕で胸と秘所を隠そうとするが、

それはあまり意味を成さず、余計に俺の興奮を煽る結果になった。

 

 

「蒼、反対向いて」

 

「えっ? ………これでいいの?」

 

 

 蒼は一度立ち上がって百八十度回転し、俺に背を向けて再び浸かる。

俺はあらかじめ脚を広げていたので、必然的に脚の間に蒼の体が入る形となる。

浸かったのを確認。後ろから蒼を抱きしめる。

 

 

「ひっ!?」

 

「蒼ー……」

 

 

 距離零。完全に密着する。

腕を後ろから前に回して蒼のお腹を撫でる。

既に固くなっている肉棒を蒼のお尻に擦り付ける。

一年越しの快楽。このまま続けたらこれだけでイってしまいそうだ。

 

 

「…あっ…か、固いの当たってる……」

 

「うん、当ててる」

 

「…気持ち良いの?」

 

「触れてるだけなのに凄い気持ち良いよ、極楽………」

 

 

 続けて、胸にも手を回す。

この一年でさらに育った双房は俺の手に収まりきらない大きさ。

 

 

「……ぁ……んっ……うぅ…」

 

 

 風呂場のためか、蒼の喘ぎ声もよく響く。

島の家は一軒一軒が離れてはいるため、隣に聞こえてしまう、ということはないだろう。

なので、少し力を入れて揉んでみる。

 

 

「ぁ………羽依里の……手……」

 

「俺の手?」

 

 

 さらに揉む。手触りが心地良い。俺の指の形に胸が自由変形をする。

 

 

「……っ……羽依里の手、気持ち……良いの……」

 

「そりゃよかった……ここはどうかな?」

 

「あっ、そ、そこは……ひん!」

 

 

 乳首を軽く摘んでみる。コリコリしている蕾を弄ると、蒼が軽く仰け反り、一瞬腰が浮く。

戻った際の優しい衝撃で肉棒が刺激される。

 

 

「くっぅ……はぁ」

 

 

 そろそろ、限界がくるかもしれない……。

まだ蒼には悟られていないはず。

 

 

「うぅ……コリコリされるとビクってなっちゃう……」

 

「そろそろ湯船から出ようか」

 

「………はっ、ああ、うん! そうね!」

 

 

 蒼も快楽に少しうっとりとしていたようだった。

一緒に湯船から出る。

程よく温まったあとは身を清める時間だ。

 

 

「蒼は髪と体、どっちから洗う?」

 

「いつも髪から洗ってるわ。やっぱり汚れは上から順番に落としていくものでしょ?」

 

「だな。じゃあ、蒼の髪は俺が洗ってやろう」

 

「ええー……あんた、女の子の髪洗えるの?」

 

「当然、初めてなので優しくお願いします」

 

「経験済みだったら、あたしが困るわよ! あと優しくされるのはあたしのほう!」

 

 

 そういって蒼はこちらに背を向けてマットに座る。

一瞬だけ見える桃尻に目を奪われるが今は我慢。

蒼の髪はとても長い。長いだけじゃなくて繊細で近くで見ると、とても綺麗だった。

後ろで纏め上げている髪も、今はすべて下ろされている。

普段と印象の違う蒼だ。ちょっと大人っぽく見える。

 

 

「じゃ~、お願いね~~…」

 

「任せろっ!」

 

 

 シャワーヘッドを片手に持ち、蛇口を回す。

勢い良く、飛び出る温水。手で温度を確かめてみるが、結構熱い。

 

 

「あんまり熱くないほうがいい?」

 

「ん~、そうねー…髪を洗うときは基本ぬるま湯のほうがいいわよ?

あとは、あんたがやりたいようにしてくれればいいわ」

 

「了解」

 

 

 意外にも蒼は俺にすべてを任せる様子だった。

それだけ蒼に信頼されていることに嬉しさを感じる。

調節し、ぬるま湯にする。

 

 蒼の髪を片手で梳きながら、お湯を馴染ませていく。

手に取った髪の毛はとても柔らかい、女の子の髪だった。

男の無骨なそれとは違った儚い脆さを感じる。

蒼の長い髪を、俺の男の手で洗っていく。

これもまた一つの独占欲のようなものだと気付く。

愛する女性の髪を触っていると興奮してくる自分は、

つくづく変態趣味だな、と心の中で思う。

 

 お湯で髪全体を洗った後は、シャンプーを手に取り泡立てて蒼の髪を洗っていく。

 

 

「かゆいところはないかー?」

 

「……羽依里の指がくすぐったい…」

 

「それは我慢してくれよ…」

 

「うん……」

 

 

 白い泡が髪に広がっていく。

なんだか、自分の体液で蒼の髪を穢したみたいで興奮してくる。

 

 

「エロい……」

 

「な、何が?! はっ! だ、ダメよ! 

髪にかけるのはダメ! 匂いついちゃうし……」

 

「以心伝心できているみたいで嬉しいよ」

 

「あ……っ…くぅ……」

 

「髪流すよ」

 

「………おっけー」

 

 

 シャワーのお湯で蒼の髪を流す。

ゆっくり時間をかけて、泡を洗い落としたら、終了だ。

 

 

「ど、どうだった?」

 

「う~んー……洗うのは下手だった、

けど好きな人に洗って貰うのって、すっごい嬉しい……」

 

「これから精進します……」

 

「こ、今後も洗うの?」

 

「蒼が嫌じゃなければ定期的に一緒に入りたいなーって」

 

「……うん、ま、毎日は恥ずかしいけど定期的に、ね」

 

 

 蒼が立ち上がると、そのまま俺の背後に回り、シャワーヘッドを要求してくる。

 

 

「あたしは小さい頃に藍の髪も洗ったことがあるから自信はあるわよ」

 

「蒼の小さい頃か……可愛かったんだろうなあ」

 

「今度、写真みる? 藍のもあるわよ」

 

「ほほう……それは見てみたいな」

 

 

 シャワーヘッドから温水がでてくる。

蒼の細い指が俺の髪を優しく撫でながらも、お湯が降り注いでくる。

指の腹で優しく頭皮をマッサージしてくる。

なるほど、これはくすぐったいが…それよりも…。

 

 

「気持ち良いな、これ」

 

「えっ、男の人ってここでも気持ち良くなるの?!」

 

「蒼、そっちの気持ち良いとはちょっと違うから……」

 

「………~~~!!! ほら、次シャンプー! はい、洗うわよ!」

 

 

 照れ隠しなのか、所作は手早くあっという間に泡で満たされ、そして洗い流される。

 

 

「このまま、体も洗う?」

 

「お願いする」

 

「おっけー…じゃあそこのボディタオル貸して」

 

「おっと、これは渡さないぞ」

 

「…? 渡してくれないと洗えないんだけど」

 

「胸で洗ってください、お願いします」

 

「む、胸で……ってそれ…え、えっちなお店でやるやつじゃない……」

 

「蒼はやっぱり知ってたかー」

 

「あああああああああ!!!!!! し、知らないわよ!!!

おっぱいを使って泡だらけにして気持ち良く洗ってあげるやり方なんて知らないわよ!!!」

 

 

 蒼の知識はどうやら完璧のようだった。

 

 

「それだけ知ってれば十分だからさ、頼むよ? ね?」

 

「それが羽依里のしてほしいことなら頑張ってみる……」

 

 

 数回、ボディソープを手に出す音が聴こえたかと思うと、

不意に背中に柔らかい衝撃が訪れた。

 蒼の巨乳が俺の背中に押し当てられた。

ソープでコーティングされた乳房で蒼に背中を洗って貰う。

 背中に走る柔らかいおっぱい全体の感触と、

乳頭の固い部分のそれぞれが興奮度合いを高めていく。

 

 

「んしょ…んしょ……気持ち良いかしら?」

 

「このお店なら毎日通いたいな………」

 

「………とりあえず今日だけ限定です」

 

 

 精一杯、俺を気持ち良くさせようと努力する蒼が愛おしい。

幸せな気持ちで満ちていき、一旦は静まっていた肉棒も、

背中の感触が来る度に徐々に勃ち上がっていく。

ついに真上を向いた剛直の根元に、

背後からの快楽によって、子種の用意がなされる。

蒼に触れられてもいないのに、先端からは先走り汁が溢れ出していた。

 

 

「ねえ、羽依里~……?」

 

「な、なにー…?」

 

「…あ……」

 

 

 後ろを振り向くと、蒼が背後から覗き込んでいた。

すると当然目に映るのは蒼の巨乳の奉仕にて最大限に勃起した肉棒。

 

 

「大きくなってる……」

 

「はい……気持ち良いので…」

 

「このままだと苦しそうね……一回出しちゃう?」

 

「ああ……」

 

「じゃ、手でするわね……」

 

 

 蒼はそういうと、背後から乳房を押し当てた状態のまま、

後ろから両手を伸ばし俺の肉棒に触れた。

 右手で竿の部分を、左手で玉袋を持ったその手つきは、

一年前のあの夜に試行錯誤した結果なのだろう。

 

 ……それが正解です、蒼さん……。

 

 

「久しぶりね……これ、やっぱり熱い……あのとき見たよりも大きくなってない…?」

 

「一年間我慢させられてたので…爆発寸前です……」

 

「ん、先端からベトベトした汁がでてるわね……

こうすると…うわ~…なんか面白いかも」

 

 

 人差し指と親指で先走りを摘まれる。

そのまま上に持っていくと、ネバネバとした糸が一本引かれる。

蒼はさらにそれを捏ね繰り回す。

 目の前で弄ばれる自分の子種を見る、というのもなかなか変な体験だ。

そしてその間にも、左手の玉袋の優しい愛撫が続く。

蒼の掌の感触がたまらなく気持ち良い。

 

 

「あんまり焦らすのも可哀想だし、一気に射精させてあげる……」

 

 

 ボディソープを手に出し、両手ですり合わせて泡だらけに。

それを俺の肉棒に塗りたくってくる。

 

 

「これで滑りがよくなる筈……」

 

 

 すべてを蒼に任せていた。蒼が全身を使って俺に快楽を与えてくる。

背中で上下する柔らかい胸の感触、突起部分のひっかかり。

 それと連動し、肉棒を包み高速で上下する。右手の感触。

ポンプに空気を送るように、丁寧に玉袋を揉んでくる左手。

 体を洗う、という名目から、ただの性行為に没頭していた。

そしてそんな最高の快楽に長い時間堪えられるはずも無く――

 

 

「蒼……もう我慢できない……全部出したい!!」

 

「いいわよ、出しちゃいなさい……全部…!」

 

「くあああああああっ!!! でるうううーーーー!!!」

 

 

 ダムが決壊するかの如く、肉棒の先端から精液が迸る。

もの凄い勢いで射出されていくそれは浴室の壁に当たり、

あまりの濃度の高さにそのまま張り付いていく。

 

 

「まだ、でてる……」

 

 

 蒼の声がするが俺の体は一時的な脱力状態に陥り、耳に入らない。

射精が止まる最後の瞬間まで蒼の手の愛撫は止まらなかった。

 

 

 

 

「ふぅ………一年間よく我慢できたなあ、これ…気持ち良すぎだろ……」

 

「まだ続ける?」

 

「またまたお願いしたいことがある」

 

「……それは良いんだけど、お風呂、あがったあとも……するのよね?」

 

「うん、今日は朝まで蒼を抱きまくりたい……」

 

「……そっか、また、朝までしちゃうんだ……」

 

「実際は、体力の続く限り、だな、まだあんまり無理させたくはないし」

 

「…とか言う割にはグイグイくるわよね~……」

 

「ははは………」

 

 

 湯船のふちに腰掛ける。

射精したあとの肉棒はそれでも萎えていなくてまだ硬度を保っていた。

蒼の肩に手を回し、開いた足の間に導く。

 

 

「えっとー……くち?」

 

「おっぱいでしてほしいな」

 

「胸で……どうすればいいのか分かんないんだけど良い?」

 

「蒼のしたいようにしてくれればそれで気持ち良いと思うから、頼む」

 

「おっけー……」

 

 

 立て続けのお願いにも蒼はしっかりと応えてくれる。

 一年前には恥ずかしがってたシチュエーションにも慣れたのか、

それ以上に、こうして交わる幸せのほうが大きいのか分からないが、

それでも蒼は優しい瞳で俺の肉棒を見つめ、それに自身の胸を近づける。

 

 

「あっつ……」

 

「うおっ……やわらかっ……」

 

 

 魅惑の乳房が作り出す蒼の谷間に俺の分身が挟まった。

その空間もまた男からしたら未知の領域だった。

胸と胸の間の地肌もスベスベで、周囲を胸の壁で覆われているため、温度も高い。

モノを谷間に挟んだ蒼が、こちらを上目遣いで見上げる。

 

 

「………」

 

「えっと、こうして両手でおっぱいを押し付けてみて」

 

「…あっ……うん」

 

「……はぁ……そしたら上下にしごいてみて……」

 

 

 蒼は頷くと、俺の言われた通りに自身の両手で、肉棒を挟んだ胸を上下に動かす。

柔らかい乳圧は、蒼の優しさそのもので、

膣内や咥内と比べるとそこまでの気持ち良さはない。

 

 ただ、目の前で蒼が俺のモノを胸に挟んで奉仕してくれている……。

その視覚効果は男の本能に興奮を与える材料として十分だった。

 

 蒼の胸の谷間は、赤子の眠る揺り篭のような心地よさだった。

ずっと、ここに居たい、収まって居たい、そんな快楽を与えてくる。

 

 

「んしょ……こうやって、動かす度に羽依里の……熱くなってくる……

こんなに熱かったっけ……」

 

 

 パイズリ奉仕の間にも蒼への経験値が溜まっていく。

自身の胸の使い方を理解してきたのか、左右の乳房を交互に上下にしたり、

手を離して完全に胸だけで刺激を与えてみたり、はたまた――

 

 

「はむっ……れろ……ちゅぱ……んぅ……」

 

「!?!?!?」

 

 

 突然、蒼が胸の先端から納まりきらずに突き出した亀頭部分を

上手に首を傾けて唇で咥えた。

唇のやんわりとした刺激と乳房での愛撫の相乗効果が生まれる。

 

 

「……ん……ほお…? ………ひもひいへほ?」

 

「蒼~…咥えたまま喋られると、ほんと出ちゃうから………」

 

「ほほっはほの、へんふはひはひひゃいははい?」

 

 

 快楽の信号が全身を駆け巡り腰が意図せず浮いてしまう。

すると当然、肉棒も位置を変えて、蒼の咥内深くに沈んでいく。

 根元の玉袋は谷間の中心部に無理やり挟まれた形になる。

精子の製造が急ピッチで行われ、発射の準備が整えられる。

 

 

「はぁ……はぁ……そろそろイきそう……くあっ……」

 

「ちゅぱ……れろ……ぅ……ちゅ……」

 

「あああっ……蒼、両手で胸を寄せといて……」

 

「ん………ずずっ」

 

 

 蒼が胸を寄せるのと同時に、口で一気に吸引を行った。

そんな吸引に、肉棒のダムは再度決壊した。

 俺は腰を引き蒼の口から肉棒の先端を取り出す。

射精する先は当然、蒼の双乳の間。

 

 

「ああああああああ、蒼…! 蒼…!」

 

 

 蒼の谷間を白濁の精液が満たしていく。

たっぷりと射精したあとには、胸の間を真っ白に染めた蒼の姿が目の前にあった。

胸の間をネバネバした精液がゆっくりと垂れている姿はとても官能的で、

射精後も俺を楽しませてくれる。

 

 

「立て続けに出したのに、この量…っていうか、羽依里の精子……すっごく熱い…」

 

「………ふぅ………」

 

「これで満足したかしら?」

 

「俺はひとまずは……だけど……」

 

 

 バスマットに女の子座りで佇んでいる蒼の背後に回り、後ろから秘所へ手を伸ばす。

そこは、幾度かの行為、はたまた、この後への期待もあるのか、濡れだしていた。

 

 

「蒼のここが満足してないんじゃないか?」

 

「ひゃん!?」

 

 

 まずは右手の人差し指で軽く撫でる。

続けて中指と同時に穴の中へ、先端だけ埋没させる。

少し掻き回すだけで、お風呂のお湯、ただの水分ではないことはすぐに分かった。

 

 

「濡れてたんだ……?」

 

「こ、これはさっ…きまで湯船っ…に…浸かってぇ! たからよ!」

 

 

 喋ってる間も指の運動は止めない。

 

 

「でも、こんなにネバネバしてるけど?」

 

「ぅ~~~~………一年前の羽依里が出した分が今になって出てきた…とか」

 

「……さすがにそれは無いと思うよ……」

 

「そうよね……」

 

「こんなにグショグショなら洗ってあげるしかないよな?」

 

「………はい」

 

「じゃあ立って、湯船のフチに手を着いて、お尻こっちに向けて……」

 

「もう~~~……あんただってしたいんじゃない!」

 

「その通り」

 

 

 俺達は、我慢しきれず、お風呂場にて久々に体を繋げることになった。

 

 

 あの夜と同じように、背後から蒼の桃尻を掴み、

魅惑の膣内へ目掛けて、肉棒を突き挿す。

先端部分を通過した段階で、俺の興奮もより一層高まり、肉棒が蒼の膣内で膨張する。

 

 

「あっ……きたぁ………中で大きくなってる……」

 

 

 既に何度も貫いた蒼の膣は、俺の肉棒の帰りを喜び、歓迎してくれる。

奥深くまで、一気に飲み込まれる。

 数秒すると、膣がまるで再会を果たした恋人に抱きつくかのように、締付けてくる。

すぐにでも出てしまいそうだ。

 

 

「くっ……蒼の中やっぱり気持ち良い……」

 

「……んはぁ……あたしも気持ち良い……んんっ!」

 

 

 腰を前後に振り出す。

体と体が接触する度に軽快な音と蒼の喘ぎ声が風呂場に響く。

それと同時に両手でスベスベのお尻の感触も楽しめる。

 

 

「あん……たって…後ろから……すき…よね…あっぅ!」

 

「ああ…そうなのかな……はぁ…良い……」

 

 

 ストロークを速めたり緩めたり、緩急を付けて久々の蒼の膣内を堪能する。

極上の性器は、肉棒に反応して次々と喜びの愛液を生産する。

そしてそれは打ち付ける衝撃によって、辺りに飛び散っていく。

 

 

「蒼~…体は大丈夫か?」

 

「く…はぁ…うん、まだいけう~……んっ!」

 

 

 そう応える蒼は少し疲れているみたいだった。

お風呂場での長時間の行為は蒼の体的にはあまり宜しくないだろう。

とはいえこちらももうしばらくこの状況の蒼を味わっておきたい。

 

 

「んん……ん? 羽依里……?」

 

 

 断続的に発生していた快楽が止んだことに気づいた蒼がこちらを向く。

俺はそのまま体を正面に向かせてあらためて、肉棒を挿入する。

 

 

「こんどはまえからぁ……!」

 

「蒼……持ち上げるから手を回して掴まって」

 

「…えっ、こう?」

 

「よし……いくぞ……」

 

「ちょ、ちょっと……あっ…んん~~!!」

 

 

 今度は所謂、駅弁スタイルで蒼と繋がる。

女の子の体はびっくりするほど軽い。蒼は一年間眠っていたから尚更だった。

それでも重力によって、通常よりも深く刺さった肉棒からは早くも限界、との信号が送られる。

 

 

「これなら…はぁ……蒼はそこそこ……楽だろう?」

 

「うう~…らくだけ…ど…さっきよりも深くて…きちゃう!」

 

「やっぱり、こうやって蒼の可愛い顔を見ながら…のほうが…興奮するなっ!」

 

「ひんっ!!!」

 

 

 一度重心を下げ、一気に突き上げると、蒼がその衝撃で震える。

反射的に蒼の両足が俺の後ろ脚に回される。

放そうにも放せない。蒼に逆に拘束されたような形だ。

脚の締め付けが強くなると、接合部にも余計に刺激が奔る。

 

 

「ああっ…それやば……く……」

 

「……っ…はぁはぁ…も、もう…気持ち良いなら早く出しなさいよ~~!! 

あたしは限界よ!!!」

 

「蒼はさっきから何度かイってたよな……」

 

「…ま、まだイってないわよ! ……こ、これだから童貞は困るわね!」

 

「……俺は蒼に童貞を捧げたはずなんだけどな~…

そもそも今してるこれは何だー…?」

 

「………いま羽依里とエッチしてます…あと何度かイキました…うぅ……」

 

「つぎは一緒にイこうな……っと!」

 

 

 蒼の体を軽く浮かせ、重力と自身による突き上げにより一気に絶頂まで駆け上る。

何十回もの出し入れに、蒼の膣は痙攣し、俺の肉棒も脈動していた。

 

 

「んんー! んんー!」

 

「はぁはぁ、だすぞ蒼!」

 

「はぁ! きてぇ…!」

 

「蒼ーーーーーー!!!」

 

 

 玉袋に再度溜まった白濁が肉棒を通して、蒼の膣内を駆け抜ける。

最奥まで突き刺さったそれは直接子宮の中に注がれていく。

何度目かの膣内射精。一年ぶりの種付け行為。それは最高の快楽だった。

 

 

 

 放出後、蒼はそのまま俺にぐったりと体を預けてくる。

肉棒をゆっくりと引き抜き、バスマットの上に降ろす。

 

 

「ここまでやっといてあれなんだけど、大丈夫?」

 

「ん…らいじょうう……」

 

「えっと、大丈夫じゃなさそうだな…

もう一回体洗って、ちょっと湯船に浸かってからあがろうか」

 

「おっけー…」

 

 

 興奮が治まった後は、特にちょっかいを出すこともなく、

行為によって飛び出た互いの体液を洗い流した。

再度、二人で湯船に浸かる。

 

 

「どうしてまた、この向きなのかしら…?」

 

「このほうがいいから…」

 

「へー……」

 

 

 俺の脚の間に座る蒼を後ろから抱きしめる体勢。

蒼の言うとおり、やっぱり後ろからって好きなのかも。

それか、もしかしたら――

 

 

 好きな人を目の前にドキドキして変な顔をしている自分を見られたくなかったのかも。

 

 ただそれは俺が今抱きしめている蒼にも当てはまりそうで。

 

 

「恋人って良いよね」

 

「何よ急に……」

 

「布団に行った後でたくさん教えてあげるよ」

 

「………うん」

 

 

 表情は見えないけど、蒼の顔はきっと、幸せに満ちていたと思う。

 

 

 

【まずはお風呂から 終わり】



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腕枕をする日

舞台をお布団に移し、えっちスタートです。


 

 

 お風呂場での情事の後、俺は布団の上に居た。

蒼はお風呂上りに髪を乾かしているところだ。

軽く水分補給もして、蒼を待つ。

既に時計は二十二時を回っており、外の闇は深い。

 

 

「おまたせ、羽依里~」

 

「おう」

 

 

 髪を乾かし終わり、真っ白のバスローブを纏った蒼がやってきた。

普段は普通に寝巻きを着ているが、今日に関しては俺のリクエスト。

 豊満な胸元は柔らかいバスローブの生地では抑えきれず、

大きく盛り上がり存在を主張している。

腰には同じく真っ白の紐を蝶々結びで軽く止められているが、

ちょっと引っ張ってしまえば簡単に解けそうだ。

 というか、これからそうするつもりである。

 

 

「いまから、するのよね…」

 

「一応その予定です」

 

「……というか、さっきあんだけだしたのにまだ出せるの…?」

 

「まぁ、その、しているうちに回復するかなーって…」

 

「そういうもんなのね……」

 

「そういうもんだよ。……じゃあお待ちかねの…」

 

「…ぅう……ほんとこういうの好きよね……」

 

 

 俺は蒼を抱きとめて、腰の紐に手をかけた。

結び目は軽く引くだけで、予定通りに解けていく。紐はそのまま重力に従い足元へ落ちた。

 引き抜いた衝撃で、バスローブがはだけていく。

胸の半分辺りまで見えるが頂点の突起にひっかかってギリギリで止まる。

 両肩に手を伸ばして、優しくバスローブを脱がす、それも重力によって畳に落下した。

今目の前にあるのは、蒼の裸体。相変わらずの美しい体だ。

 出会ってから一年が経ち、少し大人っぽくなった蒼。

これから全身を余すことなく堪能させて貰おう。

 

 

「明るいところで見られるの恥ずかしいんだけど……」

 

「ごめんごめん、俺もすぐ脱ぐから……」

 

 

 そう言い、着ていた蒼とお揃いのバスローブを瞬時に脱ぎ去る。

見事な脱ぎっぷりはどこぞのパージ男に並ぶレベルだったと思う。

 

 

「で、電気消して……」

 

 

 俺の股間の逸物を自然と直視した蒼は、顔を赤らめて横を向く。

完全に真っ暗だと見えなくなるので、常夜灯をつける。

鳥白島の夜の闇にはその明かりだけで十分だった。

 

 

「蒼~、こっちきて」

 

 

 先にかけ布団を捲り、寝床に入った俺は蒼を手招く。

二つ敷かれた布団のうち、今日は俺の布団のほうに蒼も入ってきた。

 

 

「お、お邪魔しま~す…」

 

 

 俺の伸ばしていた右手の上から蒼が布団にもぐりこんできたのを確認し、かけ布団を被る。

さっそく我慢できず、蒼を両手で抱きしめる。

蒼もそのつもりだったらしく、顔を寄せて、目を閉じている。

間違いなくキスを要求している顔だ。

俺はそれに対して――

 

 

 蒼の右耳に優しく口付けをした。

 

 

「ふぉあひゃ!?」

 

 

 蒼からかなり変な声が上がった!

 

 

「ななな、なんで耳……」

 

「耳、弱点だって言ってたから試してみたくて、聞いたことも無いような声出したな…」

 

「ちょ、どこで聞いたのよ!? 藍にしか言ったことないはずなんだけど…藍が言ったの!?」

 

「蒼が普通に教えてくれたぞ」

 

「え、あたしがいつ言ったのよ」

 

「話せば長くなるから」

 

「話しなさいよ!」

 

 

 かけ布団を勢いよく捲り、蒼が上半身を起こす。

毛布で胸元を隠すその姿が俺を興奮させることを蒼は分かっていない。

仕方ないので俺も一緒に起き上がる。

 

 

「…あれは一年前の七月三十一日の出来事だった……

蒼と出会ってまだ一週間も経っていない頃の話だ」

 

「そ、そんな前に…?」

 

 

 蒼が神妙な面持ちで、俺の話を聴く体勢になる。

 

 

「そう、今となっては、見慣れたいつもの田舎道で蒼とイナリが寝ていた。

蒼からは”放っておいて”と言われてたので、そのまま何もせず蒼を眺めていたんだ」

 

「………まぁ、そこまでは良いわ、続けなさい」

 

 

こちらをジト目で見る蒼をよそに話を続ける。

 

 

「寝言を言う蒼に気付いた俺は、蒼に話しかけたんだ、

そしたら蒼は半覚醒状態だったからか、質問に素直に答えくれてな」

 

「ど、どんな質問をしたの……?」

 

「”スリーサイズは?”とか”好きな人はいるか?”とか”弱点は?”って色々質問した」

 

「で、そのときに蒼は『耳、弱いかも………』ってすげえ可愛い声で教えてくれたぞ」

 

「教えるなーー!!! 質問するなーー!! うわあああああああ!!!!」

 

 

 自分の失態に気付いた蒼は頭を抱えて布団の上を転がっていた。

胸が左右に弾んでいるのを見て、俺の心も弾んでくる。

 

 

「蒼、そろそろいい?」

 

「耳…弱点…ぅう……まさかスリーサイズまで教えてたなんて……」

 

「蒼~…」

 

 

上から覆いかぶさり蒼に口付けをする。

 

 

「んっぅ……ちゅ……も、もう~……」

 

「始めようぜ」

 

「うん………ちゅ……ぅ……ぷはぁ」

 

 

 ようやく落ち着いた蒼とそのまま何度か触れるだけのキスをする。

鳥同士が啄ばむような接吻を繰り返しながらも、蒼の体を手で弄る。

抱き合いながら、布団の中をもごもごと動く。

 

 

「あたし達って、こうして布団の上でするのって初めてよね…」

 

「まさかの始めてが外だったからな…」

 

「あの時は……なんか、その…勢いだったけど…してる間も、

した後も幸せだったから良かったけど、今思うと凄い大胆なことしちゃってたわね…」

 

「普通のカップルの初めては布団の上、ベッドの上でするんだろうからな……」

 

「普通はそうよね~…」

 

 ゆったりとした会話の中、蒼の髪を撫で、そのまま背中をなぞり、お尻まで到達する。

 このスベスベした肌と弾力のある尻肉の感触がたまらない。

 胸板には蒼の胸が押し付けられて、ぐにゃりと横方向へ潰れ広がっている。

 

 

「ん……えへへ…ちゅ……」

 

 

 会話との途中途中で、唇への愛撫も欠かさない。

なお耳については、蒼への最終手段のためあまり触らないようにしておく。

弱点は弱点のままであってほしい。

 しばらくじゃれあっていると、蒼が急に布団の中にもぐりこんで行く。

大体何をするのかは察したが、されるがままにしておく。

 俺はかけ布団を両手で持ち上げ奥の状況を確認した。

蒼は俺の下半身の辺りまできていて、熱を帯びた肉棒を前にしていた。

 

 暗がりの中でも”いい~?”と一応表情で問いかけて来る辺りが蒼らしい優しさだ。

俺が頷くと、すぐさま蒼による口での奉仕が始まった。

 

 

「はむ……れろ………ちゅぱ…」

 

 

 その快感にすぐに肉棒は起立していくが、射精にはほど遠い。

今日は三発も出しているため、さすがにすぐには出ないだろう。

両手は体を支えるため布団についているので、必然的に口のみでの高等技術が要求される。

 

 

「…ぅ……れろぅ……」

 

 

 裏スジが蒼のザラザラな舌で舐めあげられると、こちらもゾクりとして腰が一瞬浮く。

既にかけ布団からは手を離しているため、蒼は布団の中に完全に隠れて、何をしているかは分からない。

ただただ、蒼による奉仕が続く。

 

 

「れろ……ちゃぷ……ぅ……れろれろれろ」

 

「くあっ!!!」

 

 

 今度は玉袋を舐めてきた。

舌で全体に唾液をコーティングするように舐められ、

終わったかと思えば、今度は生暖かい咥内に玉袋だけが吸い込まれる感覚がする。

 蒼によって精液の製造が促される。

急造の先走りは既に先端部分から滲み出ているようで、

蒼は時折先端に唇をつけて吸い取っていく。

 射精が近いのか自身の肉棒が小刻みに震えているのが分かる。

このままだと自分だけイかされて癪なので、蒼を呼ぶ。

 

 

「蒼、こっちきて~」

 

「…ぅ…れろ…ん~…?」

 

 

 するすると移動してきて布団から蒼がひょっこりと顔を出した。

そしてそれと交代するように今度は俺が少し体の位置をずらし、蒼の胸に吸い付く。

 

 

「羽依里? なにす…きゃっ!」

 

 

 赤子が母親の乳を求めるかのように、先端部分を吸ってみる。

当然まだ母乳は出ないのだけど、それでも甘い味がするのは何故だろう。

 

 

「も、もう~……赤ちゃんみたい…」

 

「赤ちゃんか…欲しいな、蒼はどう思う?」

 

「あたしだって、欲しいわよ、その…羽依里との赤ちゃん…

ただ、まだちょっと早い…というかせめて学校は卒業してから…んっ!」

 

 

 先端の突起を舌で転がしてみる。

もう片方は空いた右手で丁寧にこねくりまわす。

 

 

「まあ当然だな…蒼が卒業するまでは待つし、子作りするなら、

それから先の未来もしっかりと考えないといけないと思う」

 

「うん………未来か~…まだよく分かんないわね……」

 

「今日は蒼の安全日だから、特に考えずまた堪能させて貰うとしましょうか…」

 

「……きて……」

 

 

 蒼は布団に寝転がり、俺はその上から覆い被さるようにして肌を重ねる。

勃起した肉棒を蒼の秘裂の入り口に押し当てる。

 相変わらず蒼は濡れ易いと思う。

先ほどの耳への不意打ちがかなり効いたのか、

お風呂で洗った意味なんて無いぐらいの大洪水だった。

 

 

「見てない状態なのに、よくその場所が分かるわね……」

 

「蒼の体の事ならもう何でも知っていると思う」

 

 

 そして吸い込まれていくように奥まで進んでいく肉棒。

最初にしたときと比べると明らかに入り易くなっていた。

 

 

「ん……もうすっかり慣れちゃったわね…」

 

「するっと入ったよな……」

 

「うん……」

 

 

 挿入してしばらくすると膣内の襞が肉棒に絡みついてくる。

締め付けだけでも十分に気持ちが良い…。

 後は、小刻みに動くだけでも快楽が得られそうだ。

腰をゆっくりと動かしつつ、蒼の唇にキスをする。

 

 

「んぅ……ふわっ……」

 

「蒼の唇、柔らかくてほんとたまらん…」

 

「あんたの唇はちょっと固くて男らしいっていうか…そんな感じ…んっ」

 

 

 途中でもう一度口付け。

さらに、アイコンタクトで合図を取り、互いに舌を伸ばす。

 舌先が軽く触れ合い、絡み合う。激しく、激しく。

連動して下半身の繋がりでも、小刻みに動くことでの快楽が止まることなく二人に幸せを与える。

 蒼の体を抱きしめて、腰を振ること数十回。

そのまま布団に横向きになり、また別の体勢での行為を楽しむ。

 

 

「…そういえばさ」

 

「なあに…」

 

「今日、帰り道で藍と話してたんだけど」

 

「ああ、そういえば後ろで何か話してたわね……どんな内容だったの?」

 

「それが…『蒼ちゃんも良いですが、いつか私のことも抱いてくださいね』って言われた」

 

「ええっ!? あ、藍が…? 抱くって、それ、セッ……んっ…ちゅぱ…もう…急にぃ…」

 

 

 口が寂しくなったので、蒼の唇を貪る。

蒼の軽い体を持ち上げ、俺が下、蒼が上になるように体勢を変える。

 体全体で蒼の体重を受け止める。

大きくて柔らかな蒼の胸が、俺の胸板で押し潰され、横に広がるのが分かる。

 ちょっと腰を動かすだけで、官能的な蒼の嬌声が聴こえる。

ただ、ゆったりとした性行為のためか、蒼も俺もまだまだ絶頂へは至らない。

 

 

「これ、痛かったりしないの?」

 

「いや、全然。相変わらず栄養満点なおっぱいが当たってて凄い幸せ」

 

「…そ、そう…それならいいんだけど…藍がそんなこと言ってたのね……」

 

「俺は蒼一筋だぞ?」

 

「分かってるから心配しなくても大丈夫よ…」

 

 

 そういって蒼のほうから唇を寄せてきた。

甘くて柔らかい唇の感触を受け入れていると、段々と眠くなってくる。

島までの移動の疲れなども合わさり、瞼が何度か閉じかかる。

 

 

「羽依里? 眠いの?」

 

「ん~…いつもなら立場は逆のはずなんだけどなあ…今日は先に寝ちゃいそうだ……」

 

「このまま寝ちゃう?」

 

「…それは魅力的な提案だけど、せっかくだから蒼をたっぷり堪能してから寝たい」

 

「………ギリギリ、性欲が勝ってるようね…」

 

 

 接続中の肉棒がまだ暴れ足りないと言わんばかりに、蒼の膣内で脈動している。

さて、ここからどうしたものか、と考えているうちに蒼が上半身を起こす。

 今度は蒼のほうから腰を動かし始めた。俺は一切動かず、蒼にされるがまま、快楽を与えられ続ける。

所謂、騎乗位だ。

 

 

「はあっ……っ…んんっ…ああっん!」

 

 

 自ら動きつつも、その摩擦で喘ぎ声を上げる蒼。

 常夜灯の元、俺の上で跳ねる蒼を見ているだけ、という極上の贅沢を味わう。

そしてそんな快楽を味わい続けていると、段々と眠気が性欲にシフトしていく。

 

 

「…はぁはぁ……蒼……気持ち良いよ……」

 

「…ぅ……これ…あたしも感じちゃってるぅ……」

 

 

 跳ねる蒼の尻肉が俺の下半身にぶつかる度に軽快な音が鳴り響く。

衝撃で玉袋に溜まる精液が刺激されて、先端部から徐々に滲み出ている感じがする。

 

 

「はぁ…はぁ……え、ちょ! んんっー!!」

 

「くっ…気持ち良すぎて腰が動いちゃう……」

 

 リズムに合わせて、こちらも腰を上下に動かす。

蒼の腰が浮いたら突き上げ、下ろし。蒼の腰が落ちてきたら受け止める。

息の合った上下運動に、お互いそろそろ限界を迎えそうだった。

 

 

「蒼、こっち」

 

 

 腕を広げてそのままこちらに倒れるように促す。

蒼は腰を動かすのをやめて、そのまま俺の胸板にゆっくり倒れこんでくる。

それを確認し、蒼を抱きしめる。

 

 

「はぁ……んっ……幸せ……えへへ」

 

 

 抱きしめられ、嬉しいのか、俺の胸に頬っぺたと鼻をグリグリと擦りつけてくる。

それは猫が自分の好きなものに自らの匂いをつけるマーキングのようだった。

そんなことをしなくても、既に俺の体は蒼のものなのだが、これはこれで嬉しさが増す。

 

 

「あっ……あっ……ん! ふぁっ……はいり……急に激し……あん!」

 

「……っつ! 蒼が可愛い行動しすぎるから……はぁはぁ……」

 

「だってっ! 羽依…里のこと好き……っ……なんだもんんっ!」

 

「俺も…っ……蒼のこと大好きだよっ!」

 

「ああっん! はぁ……ぅ……知ってる……わよ…えへへ」

 

「蒼、ちゅーして」

 

「こ、言葉に出されると……なんか恥ずかしいわね…ん……ちゅう」

 

 

キスしてきた蒼に対して待ち構えていたように舌を伸ばして蒼の舌を捕まえる。

 

 

「んっ……んっ! ……れろ……ちゅ……ぷはっ」

 

 

 絡み合う舌。絡み合う性器。

蒼の膣内を肉棒で突き上げるたびに、下半身に熱いものが集中してくるのを感じる。

一年ぶりの彼女との逢瀬は果てしない快楽に包まれていく。

 

 

「可愛いよ蒼、蒼…!」

 

「ん…! 羽依里……もっと突いてぇ! 激しくしていいから…!」

 

「蒼……愛してるよ蒼!」

 

「あたしも………愛してるぅ!」

 

 

 

”あの夏”に出会った女の子、空門蒼。

 

 

今までの記憶が脳裏を過ぎっていく。

 

 

 

「出会った……ときは! 道端で…寝てたよなっ!」

 

「はぁ……うんっ………そこをあんたに…あん! …襲われたのよね……」

 

「…ただ、抱きとめただけだろっ!」

 

「ほ、ほんとにされちゃうと思ったんだからね!」

 

「それは、こんなふうにかなっ!」

 

「あああっん! ち、違うわよ! もっと優しい感じ!」

 

「ほんと蒼は、危なっかしいからなぁ…俺が一生こうしていないとダメだな!」

 

「ず、ずっと、羽依里とえっちしたままなのかしら…あたし」

 

「すげぇ、気持ち良いからおっけー…」

 

「よ、よくないわよ! んっ!」

 

 

 愛液の分泌も限りなく行われて、肉棒を奥に突き入れるだけで、粘着性のある体液の交わる音が鳴る。

もう、頭がおかしくなりそうなぐらい気持ち良かった。

 

眼前に愛する女性がいる。

 

俺の肉棒を膣内に咥え込んでいる。

 

今こうして性行為をしている。

 

それなら後は、射精するだけだった。

 

 

「蒼……!…っ…はぁ…これから…先も…よろしくなっ!」

 

「ずっと……っ……んん……大事にしなさいよ!」

 

「出来る日は……毎日……えっちしたい……」

 

「そ、そんなっに……あたしの体が気持ち良いの…っ」

 

「蒼は体は最高だよ……世界で一番エロい女の子だよ…」

 

「その言葉はいらないし! そもそもあたし以外を知らないでしょ!」

 

「まあな!」

 

「知ってたら……んんっ……困るわよっ!」

 

 

 最初に会ったときから蒼とは妙に息ピッタリだった。

夫婦漫才を見ているかのよう、と言われたこともあった。

俺と蒼はこうして結ばれる運命に最初からいたのかも。

肉棒が極大まで膨張し、射精の準備が整う。

 

 

「ああああああたし……もう……ダメ…! イっちゃいそう……」

 

「蒼……! 蒼………! 俺も! 出すぞ!」

 

「は、は、羽依里と一緒に……! イくうううーー!」

 

「蒼! 愛してるーー!」

 

 

 最奥まで突き上げた瞬間、白濁が先端から迸る。

限界まで練り上げられた精液は蒼の膣内、そして子宮内を満たしていく。

三度も射精したとは思えないその量は止まる事を知らず、その最後の一滴まで蒼の性器に注ぎ込んだ。

 

 

「……はぁはぁ、あ~……蒼の中、気持ち良すぎ……頭おかしくなりそう……」

 

「~~~~~……ぅ……」

 

 

 俺の胸に顔を預けている蒼は、絶頂により軽く意識が飛んでいるようだ。

天井を見上げつつ、こちらも射精後の気だるさを感じながらも、蒼の頭を優しく撫でてあげる。

 

 

「……にへ………」

 

 

 見なくても蒼の口から洩れた言葉で、幸せな表情をしていることが分かる。

そんな蒼の顔を想像すると、俺も自然とニヤけ顔になってしまう。

 

 

「ふふっ……」

 

「ん………なに~……?」

 

「愛してるよ」

 

「あたしも……」

 

 

 しばらく蒼を抱きしめたままでいると、膣内に入れっぱなしだった肉棒が萎えて抜けていった。

抜けていったそれは重力を受け、垂れ下がっている。

今夜はこれ以上は出せそうにない。

 

 

 

 

 事後の独特な雰囲気の中、俺は右腕を伸ばし、蒼に腕枕を提供している。

 

 

「…ああ~…うぅ……ほんとに腕枕される日が来るなんて……」

 

「俺も思ってなかった……」

 

「何で二人とも恥ずかしがってるのよ…」

 

「慣れてないから……」

 

「えっちは沢山したのに…こういう雰囲気はなかなか慣れないわよね……」

 

「これからはこういう時間が何度でもあるんだから、慣れるさ」

 

 

 藍は目覚めた。蒼も目覚めた。

俺と蒼は晴れて恋人となり、いずれ将来をも誓い合う。

これから先の俺達に不安など何も無いだろう。

 

 

「ねえ、羽依里」

 

「なに」

 

「羽依里は卒業後の進路ってどうするかってもう決めてるの?」

 

「う~ん、明確な目標とかは無いけど、蒼のために良い仕事には就きたい、かな。

だからまずは大学進学ってところか」

 

「さらっと、あたしのため~とか言ってくれる辺りは嬉しいわね…」

 

「そりゃ、当然だろう、ずっと蒼とは一緒にいたいし」

 

「うん……」

 

 

 また蒼が顔をこちらに寄せてくる。

軽い接吻。今はそれが心地良い。

蒼の柔らかい唇を味わっていると徐々に眠気が増してくる。

 

 

「蒼は、学校卒業したらどうするんだ?」

 

「あたしは~…駄菓子屋のバイトを続けると思う。最近おばーちゃんの体調もよくないみたいだし…」

 

「あのばーちゃん、前はあんなに元気だったのになあ……」

 

「うん、あたしが代わりに頑張らないと」

 

「駄菓子屋は、鳥白島にとってとても大事なところだもんな…」

 

「それに、あんた的にはあたしに島の外には出てほしくないんでしょ~…?」

 

「蒼は色々と無防備過ぎるからな~~、俺の我侭ではあるけど都会には出したくない」

 

「……まあたしもそれでいいかなって思ってる。空門のお役目もあるし」

 

 

 俺の蒼。俺だけの蒼。無防備すぎて心配な面が多い。

 それに蒼は七影蝶の導き手の役目がある。

その役目は、生涯続くことになるだろう。

 

 

「子供ができたらさ、その子にも七影蝶を導く役目、やってもらうことになるんだよな?」

 

「あたしと羽依里の子供…そうね、これは空門に課せられた役目だから」

 

「「………」」

 

 

 お互いに無言になる。

親が子を産み。その子が結婚し、また子を産む。

 空門は島の祭事を司る家系。

七影蝶は尽きない、役目が終わることもない。

蒼と一緒になるということは、空門の役目を一緒に背負うということだ。

 

 

「とっくの昔に覚悟はできているよ」

 

「ふふ、知ってるわよ。宜しくね、ダーリン?」

 

 

 暗がりの中、蒼の笑顔が見える。

蒼の笑顔はいつも通り”にへっ”となっていて。

 

 

「………」

 

「そこで何も反応してくれないと、あたしだけがバカみたいじゃない~!」

 

「つまり自分については認めると」

 

「あ~~…!! あたしはバカですー! あんたはとってもバカな女の子を好きになったんですー!」

 

「…愛してるよ蒼」

 

 

 再度、口付け。

おやすみの合図だ。

少し時間をかけて、唇の粘膜同士を触れさせあう。

 

 

「…はぅ……ちゅ……ん……あたしもあいしてる…」

 

 

 

もう蒼が眠ることに心配は要らない。

 

だって、起きることが分かっているから。

 

何事にも自由で、夏の晴れ渡った青空のような彼女と、

 

これからも『おはよう』の挨拶を交し合える嬉しさを心に感じ。

 

………。

 

 

 

「もし、蒼が先に起きたら”アレ”をしてほしいな………」

 

「ま、前に言ってた”アレ”…よね?」

 

「そう。してほしいな~…」

 

「わ、分かったわよ! あ! 先に起きて狸寝入りするんじゃないわよ!?」

 

 

 こういうときだけ妙に勘が良い蒼だ。

だが、蒼のことだからこちらが狸寝入りしてても気付かずにやってくれると思う。

………しばらくは、ただただ快楽を求め合う日々でも良いかもしれないな。

 

 

 

 

 

【腕枕をする日 終わり】




これにて鍵点で公開した分は以上です。

次回からは完全初公開の四話、五話…と続いていく予定です。

【予告】

土曜日の朝、下半身に感じる快楽。
最高の目覚めを羽依里は味わう・・・。

四話『朝のお約束』 をお楽しみに!


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朝のお約束

2019年4月20日Key Islandにて頒布しました『Sensual BlueⅡ』に載せた内容となります。
前回の『腕枕をする日』の翌朝となります。


「ん………ちゅ……ちゅぱ……じゅる…ん……」

 

 朝、脳が覚醒するのと同時に下腹部から心地よい快楽が流れ込んできた。

 上体を起こし、かけ布団の中に視線を向けるとそこには、俺の彼女である、空門蒼が脚の間に陣取り、ペニスを口いっぱいに頬張り、一生懸命に口奉仕をしていた。

 昨晩も性行為をした後そのまま一緒に眠ったため、お互い素っ裸だ。

 十一月の朝にしては、暖かい気温な上、布団の中で体を寄せ合っているためか、それほど寒さは感じなかった。

 かけ布団をゆっくりと剥がし、蒼を見つめる。

 

「あ、やっと起きたわね~! おはよう、羽依里」

「お、おはよう」

「どう? お目覚めの気分は? あんたのリクエスト通りでしょ?」

「最高の目覚めでした…」

「寝てるときの羽依里の顔ってば、すっごい可愛いの! 本人は寝てるのに、こっちは元気にピクピクしちゃってね、勝手に暴れまわるから大変だったのよ」

「息子が大変ご迷惑をおかけ致しました…ところで続きをしてほしいのですが…」

「ふふふ……任せなさい!」

 

 今日の蒼はなんだかやけにテンションが高い。

 いつもは俺よりも、ほぼ必ず後から起きる蒼。

 そして起きても寝ぼけていて、足取りも覚束ない蒼。

 そんな蒼とは違い、今日の彼女は瞳をパッチリと開けていて、”してやったり”とでも言うような顔をしていた。

 

「ん~~……ちゅ……」

 

 蒼の口奉仕が再開される。

 朝勃ちした肉棒の血管には血が巡り、脈動しているのを感じる。自分でも熱さを感じるそれが、蒼のぷっくりとした朱唇に挟まれる。

 まだ唇が触れただけなのに、早くも玉袋に集結した白濁達が、発射のときを、今か今かと待ち構えているのが分かる。

 我慢できず、既に先走り汁が漏れ出ているみたいだ。

 蒼が口に剛直を含み始める。

 唇を上下に割り、肉棒がその中へと侵入していく。

 何度も、何度も味わった、蒼の咥内は生暖かく、触れた舌はざらついていて、射精させる、ただそれだけのためだけに、最適な快楽を与えてくる。

 

「ん、ほぉ? へもほまへふわへへはへははひょ?」

(どう? 根元まで咥えてあげたわよ?)

「あぁぁ、気持ち良すぎだよ蒼……」

 

 希望通りに奉仕してくれる蒼に愛おしさを感じ、頭を撫でる。

 女の子の髪は、寝起きだというのに、さらさらで、指で梳くと、柔らかい毛髪が流れるかのように間を抜けていく。

 淫靡な香りの中、髪から漂う美少女の香り。自分の指に、蒼の匂いを染み込ませる、その行為に、酷く興奮する。

 そして、その間にも、昨晩の激しい交わりにより、一段と性の経験を積んだ蒼は、口を窄めたりして、肉棒への快楽の変化を加えてくる。

 咥内全体を使い、内頬の粘膜に肉棒が触れ、俺の肉棒の形に蒼の頬が膨らむ。

 蒼の柔らかな頬の一部が、不自然に隆起する、その光景のなんと背徳的なことか…。

 視覚と触覚の二重攻めにより、精巣では、白濁の弾丸が装填され続けていく。

 

「はぁ…すっげえ気持ち……良い!」

「…ちゅ…ん……にへっ」

 

 ストレートな感想を伝えると、満面の笑みを浮かべて、スピードを上げていく。

 蒼の顔が上下に激しく動き出すと、それに応じて、囚われの愚息が快楽を訴え、さらなる膨張へと繋がっていく。膨張は、猶も止まるところを知らない。

 このまま、行くと……朝っぱらから盛大に爆発しそうである。

 

「蒼、そろそろ…やばい……」

「…ずずっ…ぷはぁ…まだダメよ? これからもっと凄いことしてあげるんだから」

「………?」

 

 俺は、上半身を起こして、両手を後ろにつき、状況を確認する。

 一度、快楽の波が止んだかと思うと、先ほどから目の前で、自由に揺れていた、魅惑の乳房が肉棒に迫り、そっと左右から包み込んだ。

 男の醜い逸物を、女性の柔らかな乳房が抱きしめる。

 胸の谷間は、己の本来の居場所かのような安心感と、肉棒全体に掛かる乳圧、とでも言うのだろうか。

 その圧倒的な質量によって、両手で力を加えずとも、気持ち良さを感じる。

 蒼は、俺の肉棒が胸に収まったのを確認すると、そのまま腰を左右に振り始めた。

 

「蒼? 何を…うおっ!」

 

 腰に連動して当然揺れだす、蒼の乳房。

 そしてそれに挟まれている、肉棒。

 手を使わずに、快楽を与えるその行為は、ハリと弾力、また有る程度の大きさを兼ね備える蒼の胸だからこそできる芸当。

 そもそも、何故こんなやり方を思い付いたのか、それとも、七影蝶の記憶なのか。

 いずれにせよ、俺のために、創意工夫を施してくれる蒼が愛おしい。

 

「これ、どうかしら?」

「す、すごくいい…あぁ…っ!」

「ふふっ……凄い情けない声出してる」

「気持ちよすぎてバカになってくる…」

「さぁて、続けていくわよ…!」

 

 終わったかと思うと、掛け声に合わせて全力のパイズリが始まる。

 左右からの力が加わることで、肉棒全体がミッチリと蒼の乳房に覆われる。

 空気の入る隙間さえなさそうなぐらいの密着。

 互いの体の熱さが、性器を通じて伝わってくる。

 自らの乳をこねくり回すような動きで、肉棒へ快楽が送り込まれる。

 次第に我慢汁が、先端からじわじわと漏れ出て、蒼の胸を穢していく。

 分泌液が潤滑剤の役割を果たしているのか、滑りが良くなり、動きが加速していく。

 

「ぐっ…ああ…」

 

 快楽の電流が走る度に、口から正直な感想が漏れ出る。

 蒼はその言葉を聴くたびに、嬉しそうに笑う。

 

「イキたかったらいつでも、イッていいのよ? 好きなだけ出して…」

 

 無限に続く快楽に、目を閉じて、力を込め、まだ耐える。

 

「くっ…くち……」

「……? こう?」

 

 発した、わずかな言葉を汲み取り、蒼の唇が、谷間に収まりきらずに、はみ出た肉棒の先端に触れる。

 胸と唇の両方に触れられ、俺の我慢はそろそろ限界だった。 

 

「ぐ…っ、はぁ、蒼…で、出る!!」

「…れろ……れろ…ん……ちゅぅ」

 

 快音が鳴り、勢い良く肉棒から蒼の口が一瞬離れる。外気に触れた勃起ペニスに再度、蒼の唇が迫り……。

 

「んちゅ」

 

 亀頭に優しい口付けが落とされた。

 女の子の柔らかい唇が、特に感度の高い部分に触れたことで限界を迎える。

 

「あああああっ、蒼! 蒼! 蒼ー!」

 

 前に一度行った、亀頭へのキスが、効果的であることを覚えていたのか、それは俺の極大まで膨張した肉棒にトドメをさすのには、強烈過ぎる一撃だった。

 起床前からの蒼による献身的なフェラチオで、練られたドロりとした精液が、噴火を迎えた活火山のように、射出口から一気に溢れ出す。

 

「んっ……」

 

 蒼も、射精の気配を感じ取っていたのか、精液が宙に飛び上がる前に、素早く口を被せて受け止めようとする。

 

「くっ、はぁ、はぁーっ……うっ……」

 

 鈴口から、溢れ出るたびに、情けなくも快楽の声も溢れる。

 精液を吐き出してる最中にも、尚も搾り取ろうと、奉仕の動きは止まらない。

 蒼の咥内に、ポンプで送り込むように、次々と、白濁が突入していくが、肉棒全体を覆われているため、一滴も垂れてこない技術に感心する。

 そして、昨晩の性行為の際、何度も何度も発射したというのに、一晩明けただけで夥しい量の精液を分泌できる自分の体に驚く。

 多分それは、世界で一番大切な、愛する女の子からの、愛の籠もった極上の奉仕のおかげなのだろう、と深く感じた。

 蒼の髪を撫でる。

 彼女はそれを、自分へのご褒美であると受け取り、幸せそうな表情を見せる。

 たっぷりと朝の射精を終えた肉棒は、蒼の唇から外れ、ひんやりとする部屋の空気と触れ、その熱を冷ましていく。

 射精後のけだるい感覚に襲われ、少し頭がぼんやりとする。

 蒼はというと、頬っぺたを膨らませつつも、口いっぱいに含んだ俺の分泌液を、少しずつ喉を鳴らして、飲み込んでいるようだった。

 

「蒼、無理しなくても…吐き出して良いんだからなー?」

「んっ……んくぅ……ん……はぁ…ん~……」

 

 ゆっくりと時間をかけ、全て飲み込んだらしく、蒼は口を大きく開き、口の中に精液が残っていないことを、俺に証明する。

 

「えっと…、そのー…えっちなビデオみたいなことまでやるんだ……」

「あっ…あー…これは、その…」

「見て、覚えた?」

「うん……覚えた」

 

 素直に白状する蒼がたまらなく愛おしい。

 間髪いれずに、両手で彼女の体を抱きしめる。

 

「ほんともう…蒼ってば可愛すぎ」

「へ? わ、わわわ…ちょ、あたし、口でしたばっかりよ?」

「大好きな彼女の唇なんだから、どんな状態でもできるよ」

 

 愛を伝える手段、接吻。

 愛する蒼のためなら、たとえ肉棒を咥え、なおかつ、精液を飲み込んだ後でも、何も躊躇うことなく出来る。

 ぷっくりとした桜色の唇に、自身の唇をゆっくりと触れさせる。

 

「んっ、ちゅ…ぅ…ふふ」

「すっげーニヤついてる」

「嬉しいんだから仕方ないでしょ」

 

 そう言って、今度は蒼から唇を寄せてきた。

 自分からするのには、もう十二分に慣れたのだが、いつもは受身に回る彼女からの攻めには、やっぱりまだまだ慣れない。

 どうしても羞恥心が出るというか、なんというか…。

 女の子からのキスは、こちらからするのと違って、感覚器官がフルに働く。

 潤いを帯びた唇。瞳を閉じながら近づく蒼。

 男のそれと違った、柔らかい感触……が、こない?

 

「ふふ、あんたのキス顔、バッチリ見ちゃった」

「くると思って、思わず目を閉じて待ち構えてしまった…」

「いつものお返しよ。んっ…」

 

 不意打ちの不意打ち。言葉の途中で、今度はしっかりと唇を奪われた。

 

「えへへ、朝から幸せすぎて困っちゃう……」

 

 その言葉を境に一瞬の無言、静寂。

 そして、蒼からは、その先を期待するような誘惑の目線。

 その魅力に抗えず、俺は蒼の肩に両手を当て、軽く押す。

 蒼もその力に抵抗する素振りも見せず、ゆっくりと背中から、布団へ倒れこむ。

 上から覆い被さるような体勢となり、至近距離まで顔を近づけ、耳元で囁く。 

 

「…して、いい?」

「…うん…」

 

 普段の元気いっぱいな彼女からは、遠くかけ離れた、途切れるような、か細い声。

 しかし、その声はしっかりと、承諾の意を表していた。

 

 まずは、唇に口付け。

 今度は、触れ合わせるだけでなく、深いとこまで味わおうと舌を伸ばす。

 

「んんんっ……ぅ……」

 

 ディープキスにも慣れてきて、コツを掴んできた気がする。

 蒼の舌を捕縛し、絡ませ合う。

 当然、口同士も繋がっているため、分泌されてきた唾液が、お互いに、入り乱れ、一つに溶け合って、蒼の咥内に流し込まれていく。

 口で楽しんでいる間に、両手は蒼の両肩に触れ、丁寧に撫でていく。

 指先から、第一間接、第二間接と這わせ、そして付け根、掌へと滑らせる。

 男のそれとは違い、柔らかく、なだらかな肩をなぞり終わる。

 

「いやらしい手つきしてる…」

「…今、いやらしい事をしているからな」

「そ、それはそうだけど…んっ…あ、そこ…ぅ…」 

 

 肩を味わったので、次は右手を胸に持っていく。

 赤く火照った双丘は、今日も元気いっぱいで、ハリのある弾力を感じさせてくれる。

 あまり力を入れると、蒼が痛がるだろうことは、容易に想像できる為、なるべく力を抜いて、優しく優しく、掌全体で覆っていく。

 途中、真上にピンと隆起した、蒼の可愛らしい乳首に触れる。

 

「やぁ…あん……いま…敏感になってて…っ…」

 

 他と比べて、圧倒的に感度が高いそこは、指先で軽く触れるだけで、蒼から何度でも聴きたくなる嬌声を上げさせることができる。

 突起を優しく、円を描くように、人差し指の腹で、撫でたり、少し押し込んだり。

 

「んっん……や…ああ…ん…」

 

 俺も布団へ横になり、少し体勢を変える。

 右手は胸を通り過ぎ、さらに下半身へ。お腹の辺りまで進めて、おへそへ触れる。

 絶対にくすぐったいのは分かってるので、ここは軽くいじるだけにしようとしたが…

 

「あんっ……そこ、くすぐった…やぁ……ちょっと…気持ち良いかも…」

「へぇ…ここも気持ち良いんだ?」

「うん…っていうか、あんたにならどこ触られても、気持ち良くなっちゃう…」

「そう言ってくれる蒼は本当に優しいな」

「ど、どういたしまして…」

 

 蒼が、一箇所ごとに、しっかりと反応を示してくれるのがとても嬉しい。

 まだまだ経験が浅く、技術は無い俺達二人だが、その分は愛情で補えば良い。

 お礼に、またひとつ、口付けを贈る。

 

「……っん……はぁ…」

 

 今度は、左手を蒼の首から体の後ろに回し、背中に触れる。

 背中は背中で、やはり滑々な肌で、果てしなく、永遠と触れていたくなるような魅力的な感触を掌に与えてくる。

 滑らせていくと、手と背中で摩擦がおき、快楽の信号をお互いに感じ合う。

 

「……っ!」

 

 背中に走った手が気持ち良いのか、蒼は体を震わせ、仰け反りだす。

 彼女の色々な表情、動き、そういった全てが可愛らしく思う。

 背中に回していた左手は、蒼の桃尻に至り、そのまま手を広げて撫で回す。

 豊満な乳房と、同じぐらい魅力的な蒼の臀部。

 今は見れないが、何処を見ても、生まれたままのその綺麗な肌は、この瞬間、俺に触れられる為だけに存在している。

 右手も加えて、両手で、下半身の果実を掌一杯に感じる。

 少し、力を入れて掴んでみると、目の前の蒼の顔はみるみるうちに、赤らめていき、途中で恥ずかしさを隠すために、接吻を要求してくる。

 

「ちゅ……ん……っふ…」

 

 背面を堪能したので、今度は正面。蒼の秘所に右手を持っていく。

 既にそこは、奉仕の時点から濡れだしていたのか、甘い愛蜜が溢れていて、肉棒をいつでも受け入れる、準備が整っているようだった。

 

「あっ…そこ……やぁ……ん」

 

 愛液を指を掬い、そのまま蒼の顔の前まで持っていき、見せ付ける。

 

「蒼…ほら、こんなに…濡らしてる…」

「ぅぅ……だ、だって……あんたの手が気持ち良いんだもん…仕方ないでしょ…」

 

 俺は愛液を掬った指をそのまま、自分の口まで持っていき、舐める。

 蒼が分泌した蜜は、極上の味わい。粘り気のあるそれは、一度舐めたが最後。

 無限に舐め続けていたくなるほどの、強い依存性があるように感じさせる。

 

「……なんでそんなに美味しそうに舐めれるのよ…もう…」

「愛する彼女が、俺で感じてくれて、出したものなんだから、美味しいに決まってるだろ?」

「あー…あたしと、同意見ってわけね…うん……」

 

 俺と蒼。意外と似た所も多いようで、色々な相性が元から良かったのかもしれない。

 『夫婦は似る』と良く聞くが、まだ、それに至る前段階である俺達は既に、互いに仕草や思考が似通ってきている。

 最近は蒼のエロ単語変換のフィルターにも慣れてきて、確かに、その言葉は、そうなるよな、仕方ない仕方ない、という会話も増えてきた。

 意識を目の前の蒼に戻し、再度、秘所への攻めに移る。

 淫裂を焦らす様に、中指でなぞる。

 

「…っ………!」

 

 蒼はこれに弱いらしく、瞳を力強く閉じ、頬を張って快楽に耐えているみたいだ。

 往復させたり、裂け目の周りの淵をなぞったり、じわりじわりと快楽を与えていく。

 そして、ついに指を蜜壷に沈み込ませていく。

 

「羽依里の指ぁ………入ってきたぁ……」

 

 十分に濡れている姫の花園は、俺の指を簡単に飲み込んでいく。

 中は外気と比べて、温度が高く、生命の鼓動を感じる。

 浸入させた指を中でくねらせ、刺激を与えていく。

 内壁を指の腹で、軽く押し込んで離すの繰り返し。

 蒼の姫蜜で満たされていて、壷に入ったジャムを掻き回しているように感じる。

 膣内に、第二間接辺りまで、埋没させた中指を少し曲げ、ザラザラとした感触の肉壁に何度も何度も、刺激を与えていると、蒼からの嬌声が段々と大きくなる。

 

「……あっぁ! そこ……なんか…他の場所と違って気持ち良い!!」

「なるほど、ここか?」

「あぁ………ぁん! やぁ……! そこばっかり突いちゃだめぇ……」

「でも蒼はすっごい気持ち良さそうな顔をしてるぞ?」

「うぅ~~…絶対焦らされてる………」

「どうして欲しい?」

 

 一旦、指を引き抜くと、蒼の蜜を、たっぷりとその身に纏った中指が現れた。

 そのまま口に持って行き、ひと舐め。蒼の甘い味がする。 

 そして少しずつ、場所を移動して、今度は蒼の脚の間に陣取る。

 俺だって続きは勿論したいけど、やっぱり、それは蒼の口から言ってほしい。

 できればおねだり風に。

 そのほうが男として、彼女に求められているんだな、という実感が湧くからだ。

 というのは、多分、蒼も分かっているので、

 

「ゆ、指じゃなくて………」

「指じゃなくて?」

 

 そのまま言葉を返しつつ、蒼の腰のそばに両手を置き、再起動した肉棒を淫豆に、そっと押し当てる。

 それだけで動作で、入り口は簡単に開き、内部に肉棒を飲み込みそうな勢いだ。

 だが、そこで、一度静止。

 

「…そ、そのぅ……ぅ…お…ち…」

「はっきり言ってくれないと分からないぞ?」

 

 意地悪く、繰り返させる。

 蒼は、両手で顔を覆い、ものすごく恥ずかしそうにしながら、

 

「羽依里のおチンチンを、あたしのおマンコに挿れてほしいの!」

「へへっ、そこまで求められちゃ仕方ないなあ」

「んっ…きたぁ……」

 

 前戯で必要以上に解れ、濡れに濡れまくった蒼の膣内は、俺の肉棒を一切の抵抗もなく飲み込んでいく。

 ズブズブと、ゆっくり、ゆっくり、丁寧に、最奥を目指す。

 奥に進むにつれて、側面の壁が肉棒に吸い付くのを感じる。

 先ほどまで上の口で行われていた、咥淫にも勝る吸引力。

 性器を通じて、神経を辿り、蒼の意思が直接、俺の脳を刺激してくる。

 快楽に頭が真っ白になりそうになるも、まだ至るには早いため我慢する。

 

「蒼、痛くない?」

「ん、平気よ」

 

 彼女からは問題なし、との報告。

 昨晩から散々と交わっていたので、激しくするのは体に良くないかもしれない。

 そうでなくても、リハビリが終わったばかりの蒼。

 無理はさせたくないのが本音ではある。

 ただ、そう思いつつも、自分の腰は思考とは裏腹に、ぐんぐんと進軍していき、ついに先端が何か、壁のようなところに押し当たる。

 まだ少し進めそうだが…

 

「ん……そこぉ……赤ちゃんの…」

「いくよ」

「うん」

 

 カチリ、と大事な部品がはまったかのような感触。

 凸と凹が隙間無く組み合わさった感覚。

 一度入ったら出られないように。

 精子を吐き出す際に、確実に着床出来るように。

 カリの部分が出っ張りに引っかかり、簡単には抜けなくなっている。

 人間の体の構造は、生きていく上で理に適った構造をしている、ということか。

 そこは、ただひたすらに暖かく、体の持ち主の蒼でさえ触れたことの無い場所。

 花園の奥地に、蒼の想い人である、俺だけが踏み入れることを許可された。

 

「奥まで届いている……っ」 

 

 肉棒全体に、内部の襞が最適化され張り付き、今、完全に一体化した。

 そのまま、布団に寝転ぶ蒼の肩を抱き、少し首を曲げ角度をつけ、唇を重ねる。

 二人だった存在が一つになる。

 蒼と繋がってる。

 心も、体も。

 実際はほんの数秒、数分だったのかもしれない。

 そのまま動かずに、唇だけ何度も重ねて離れて重ねてを繰り返す。

 唇に触れる度に、目を瞑ってしまう蒼がとても可愛らしい。

 無限に、この温もりを味わっていたかったが、それ以上に、腰を前後運動させて、脳髄を震えさせるような快楽をまた味わいたい。

 我慢はすぐに限界を迎える。

 トン、トン、と軽く腰をグラインドさせて、性器同士を擦り合わせる。

 動かす度に、肉棒を、膣内の襞がくすぐってくる。

 

「んん…はぁ…ちゅ…ぅ…」

 

 絶えず、唇へは会話の代わりに接吻を落とす。

 お互いの唾液と唾液が激しく交錯し、唇と唇の間にかかる、銀の橋。

 『呂』の字だ。

 そして、上の口同士で糸を引く一方で、下の口では、ペニスの先端から、我慢できずに漏れ続けている男汁と、強烈な粘り気のある蒼の秘蜜同士が融合して、一つの名前の無い液体になり、新しい命を産み出す準備を整えるために、双方の性器全体に広がっていく。

 上半身は、俺の胸板で、蒼の柔らかな乳房を軽く押し潰している。

 プニプニのおっぱいは、俺の胸板の形に変形していく。

 まるで何かの生地を押し伸ばしてるかのようだった。

 微弱な擦りあいが続くと、少しずつ、接触する部分がズレてきて…

 

「「…っ!?」」

 

 互いの乳首同士が触れ合うのはどうやら、お互いに物凄く、くすぐったいらしく、

 

「い、いまのはかなりゾクっときたわ……」

「俺もゾクゾクきた……もしかして男もここって感じるのかも…」

「…っはぁ…そしたら今度、舐めてあげよっか? 絶対、気持ち良いわよ?」

「うん……」

 

 行為の最中に変な約束をした。

 そろそろ、ゆっくりした動きにも慣れてきたので、今度は体を起こし、両手を体の横に突いて、激しいストロークの体勢に入る。

 

「ん……激しくされちゃう?」

「ああ、激しくするよ」

「羽依里…あたしの中でいっぱい気持ち良くなって……?」

「蒼っ!」

 

 彼女は常に無意識に最適解を繰り出してくる。

 それが七影蝶の記憶による知識なのか、蒼本人の天性の才能なのか。

 まあ、どちらでもいいか…。

 このような台詞を言われて、性春真っ只中の健全な男子が我慢できる訳ないのだ。

 陳腐な言葉で言い表すなら。

 

「ほんと蒼はエロすぎるよ!!!」

 

 あまりの興奮に自分の声が張る。

 大声は気合の入り様を示す。

 蜜壷に打ち込む自分の腰に全身からエネルギーが集ってくる。

 先程とは打って変わって、部屋中に体同士がぶつかり合う音が鳴り響く。

 人間同士が行うような、優雅な所作ではなく。

 獣のようなセックス。

 蒼と激しい交尾をしている。

 肉と肉が激突し合い、嘶きにも似た音楽が流れる。

 

「あっ…ああっ…あああっ……んんっ!」

「蒼っ! 蒼っ! 蒼っ! くっ…!」

「好き! 好きよ! 羽依里! 大好き! 愛してる!」

「はぁ、はぁ、蒼…! 俺も、愛して…るっ!」

 

 声も途切れ、途切れ。

 一言上げる度に、一突き。

 蒼からは嬌声の合いの手が上がる。

 

「はいり! も、もう、あたし、おかしく、なっちゃう!」

「あお…あぁあお…!」

 

 既に極限まで張り詰めた俺のペニスは、コントロールを失い、脈動し暴走する。

 一番奥に突き挿れ、子宮の壁にぶち当たった瞬間に、最後の鍵が外れた。

 

「だして! なかにだしてぇぇぇ!」

「いくっ! あぁぁあ! いくううう!」

 

 火山の噴火にも負けない白の灼熱が、蒼の子宮に直接注ぎ込まれていく。

 今この瞬間、脳の細胞が幾らか破壊されたであろう。

 それを破壊したのは、俺と蒼が紡いだ『幸せ』と言う名の存在だ。

 頭の中。いや、体中が幸せで満たされていく。

 気を失う最後の瞬間に見たのは、愛する彼女の、頂きを得た笑顔だった。

 

* * * * *

 

「羽依里さ~ん!」

「ポンポポ~ン!」

 

 遠くから声がした。

 どれぐらい意識が離れていたのだろうか。

 ほんの数分か数時間か。

 そういえば、今日は何か大事な約束があったような。

 

「あ、やばい」

 

 急に現実に引き戻される。

 現状を確認。

 何も着ていない。そして布団の上で寝ていた。

 隣には、同じく素っ裸に毛布だけ巻きつけた蒼。まだ寝ている。

 朝から性行為に勤しんでいたことを思い出す。

 さっき、聞こえた声は誰だ?

 考えなくても分かる。藍とイナリだ。

 今日は確か、空門家の皆と一緒に、蒼のために携帯電話を買いに行く予定だった。

 加藤家に泊り込んでいる俺と蒼が、起きているのか確認しにきた、というところか。

 返事が無いのを良いことに、あの姉は、この部屋までやってきそうだった。

 

「お~い、蒼~蒼さんや~」 

 

 瞬時に衣服を纏い、軽く毛布の上から蒼の体を揺する。

 

「んぅ~…んー? 羽依里ぃ…? おはよー…」

「おはよう…って、完全に二度寝だったな」

「うん…そーね…えへへ…お腹の中…暖かぁい…」

 

 蒼は毛布の上から、自分の腹の辺りを手で擦りながら言う。

 

「いっぱい出してもらった後、気持ち良くなり過ぎて、眠くなっちゃってー…」

 

 まだ、夢見心地な蒼。

 しかし、現実はすぐそこまで迫っていた。

 

「羽依里さんと蒼ちゃんー? まだ寝ているんですかー?」

 

 襖の前まで、声の主はやってきていた。

 空門藍。

 蒼の双子の姉だ。

 そしてその姉が、今の状況を目撃したらどうなるか、容易に想像がつく。

 

「蒼! 藍が来てるから! 服きて! 服!」

 

 隣でふやけている蒼に素早く指示を出す。

 

「んぅー…服ぅー? どうせ着たって、あんたに脱がされるから着なーい…」

「お願いだから着て! これ!」

 

 とりあえず下着だけでも…! いや、それだけじゃダメだけど!

 傍に用意していた着替えから、ひらひらのレースで彩られた黒色の下着を掴む。

 男の衣類には存在し得ない、繊細な布の感触。

 少し力を加えただけで、破れてしまいそうな女性の脆さを体現したかのような存在。

 昨日、交わる際に『そ、その…普段は穿かないけど…今日は特別だから…』と、恥ずかしがりながらも、やや得意げに見せつけてきたそれを、今はただ穿いてくれ!と懇願する。

 

「蒼ちゃーん? 開けても良いー?」

「ん~藍~? いいわよ~?」

「え、いや、ダメだからー!」

 

 その叫びも虚しく、襖が横に動き、声の主である藍と、イナリが姿を見せた。

 刹那。

 加藤家に静寂が訪れた。

 藍は、俺達二人を交互に見て、呆れ顔。

 蒼は、やっと脳が正常に動き出したのか、布団を胸元に引き寄せて赤ら顔。

 俺は、握り締めた蒼のおパンツの感触を感じながらも、この場を切り抜ける一手を考える。

 イナリはというと、「昨晩はお楽しみでしたね?」と尻尾で俺にサインを送っている。

 

「今日は本土まで行くので、十時には港に集合でお願いします」

「了解した」

「わ……わ…あー…」

「二人とも、シャワー浴びたほうが良いんじゃないですか、凄い匂いです」

「あ、あたし、シャワー浴びてくるー!」

 

 蒼はまさかの毛布で体を隠したまま、衣服を持ち風呂場へ駆け出した。

 というか、下着は?

 後で持っていってあげよう。

 

「羽依里さん、まさか今の今までヤってたりはしませんよね?」

「ちゃんと寝ました…はい」

「そうですか。にしても凄い匂い…これが男の人の精液の匂いですか?」

「あー…多分そうです…」

「なるほど。理解しました。次にその手に握っている黒い布製品についてですが…」

 

 藍が俺の持つ宝物に気付いてしまった。

 イナリも物不思議そうな顔をしてこちらを見ている。

 今朝は、たっぷりと蒼に搾り取られた。

 そして、今から蒼とは別の意味で、藍にも搾られるようだ。

 

 

【朝のお約束 終わり】



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彼の居ない平日

今のご時勢なら通話料無料でいつまでだってできちゃいますが、Summer Pocketsの時代の携帯電話は通話料金もとんでもない額になるでしょう。


 十二月に入った。

 世間では『師走』なんて言われていて忙しい月らしいが、鳥白島はそうでもない。

 あたしと、あたしを取り巻く環境は、日々平穏。相変わらずゆっくりしていた。

 

 『いつも通り』藍や一学年上になってしまった皆と一緒に学校に行き。

 授業が終わると、特に本土でやることもないので、連絡船に乗り込む。

 

 冬の透き通った、冷たい風が当たる。

 晴れた空には鳥たちが舞っている。

 

 見慣れた風景でしかないため、すぐに見るのをやめて視線を動かす。

 離れたところに、島の方角を向いて、髪を靡かせるしろはが居た。

 

 お互いに学校が終わった後には、本土ですることもないため、大体いつも一緒だ。

 『あの夏休み』以降、しろはは少しだけだが、あたし達と喋ることが増えたと思う。

 明るさを多少ではあるが、取り戻せたのは、羽依里の影響なのかな。

 

 最近は、少しでも時間が空くとすぐに彼のことを考えてしまう。

 

 鷹原羽依里。

 あたしの大好きな、大好きな人。

 

 本土から離れた鳥白島まで、毎週末になると必ず来てくれる。

 それがどれだけ大変なことか…。

 

 往復の交通費だって、学生の身には中々厳しい金額になる。

 それを稼ぐため、平日はアルバイトをしているらしい。

 疲れているはずなのに、島に来たときは、そんな素振りもみせずに、あたしをギュっと抱き締めて、甘い言葉を囁いてくれる。

 

 休日には、よくデートに連れ出してくれる。

 最初の頃は、島内をよく歩き回った。

 慣れ親しんだ島でも、彼と一緒だと何もかもが新鮮な景色になる。

 

 今度の週末には、何をしてくれるだろう。

 またエッチな服を買って、持ってくるかもしれない…。

 お陰さまで、加藤家にあるクローゼットには、外には着て歩けないような露出の激しい服だとか、間違いなくマニアック路線の服等々が収納されている。

 

 このままだといずれ第二の蔵が出来上がってしまうかも。

 加藤のお婆ちゃんの蔵が、素敵な骨董品の山だったのに比べると、中身は全て、羽依里の変態趣味の結晶という違いはあるが。

 まったく、いつも何処で買ってくるのよ…。

 今度、購入元を問い質そう。

 それから、それから……

 

「降りないの?」

 

 ふと、しろはの声が聴こえた。

 現実に戻り、気付けば、既に船は鳥白島に到着していて、声の主は降りていた。 

 

「え? あ、ああー! 降りる! 降りますー!」

「? じゃあね」

 

 ぼんやりと、彼氏のことを考え続けていて、間抜けな姿を見せてしまった…。

 これも全てあいつが悪い。

 あたしの心をこんなにも締め付けてくるあいつが悪い。

 嬉しいけど!

 

 港に降りてそのまま、家に一直線。

 駄菓子屋のバイトもお休み。

 バイトがないと、実はやることが無くて平日はとても暇になる。

 

 うーん、今日は何をしようかな。

 

 家に着いたが、母も父も不在。

 藍は学校の図書館に篭って勉強をしている。

 何の勉強をしているかは知らない、というか教えてくれない。

 藍には藍なりの目標があるらしい。

 そういう目標があること自体が、あたしにとっても嬉しい。

 

 自分の部屋に鞄を置いて、制服のまま傍らのベッドに沈み込む。

 枕に頭を預け、横向きになり、脚を手で抱えて赤子のような体勢に。

 

 瞳を閉じると、視覚情報が遮断されて、他の感覚が鋭くなる。

 平日の島には、音がほとんど存在せず、静寂が漂っている。

 枕の感触は…ふかふかだ。

 自分が安眠できるように、枕の素材や、高さ、柔らかさ、形などは拘っている。

 

 そしてそんな枕からは、自分の匂いと…彼の匂いがする。

 もう、すっかり慣れ親しんだ、男性の匂い。

 男の少し汗臭いこの感じが、あたしは大好きだ。

 

 平日は一緒に居られない今も、こうやって隣に羽依里を感じられる幸せ。

 鼻いっぱいで枕の匂いを嗅ぎ、肺の中で、血液中に酸素として取り込む。

 これって、あたしの中に、羽依里を取り込んでいるってことにならないだろうか。

 なる気がする…。

 えへへ…ふふ。

 

 思考がまどろむ。

 先週は、この部屋で、羽依里に抱いてもらった。

 他に誰もいない、二人きりの一瞬の間にするえっちは、普段と比べて緊張感とスリルが合わさり、余計に興奮した。

 

 この匂いは、そのときにガッツリとついたのかな。

 あのときは、羽依里が下で、あたしが上で、所謂騎乗位だった。

 ベッドのスプリングの跳ね具合も良かったのか、行為を加速させるアクセントになり、すごい気持ち良かった。また、ここでしてみたい。

 

「羽依里…」

 

 口から彼の音が零れる。

 

 最初から、遠距離恋愛になるってことは分かっていた。

 一夏の恋物語で終わらなかったのは、羽依里からの猛烈なアタックがあったから。

 

 今では、あたしを寂しくさせないように、いつも気遣ってくれる。

 それでも、会えない平日にはどうしても寂しくなってしまうのは仕方が無いと思う。

 

「寂しいよ…」

 

 心の底から漏れ出た言の葉。

 会いたい。今は会えない。

 頭の中の記憶を探り、寂しさを紛らわす。

 

 自分の意思とは裏腹に、右手が下半身に伸びる。

 制服のスカートの中に手を潜り込ませ、下着の上から、外陰部に触れる。

 

 女性の性器は男性のそれよりも、若干複雑だ。

 羽依里と始めてえっちしたときも、膣の場所が良く分からない、と言っていたので導いてあげたのを覚えている。

 あの時は、いきなり尿道を攻められそうになったのでびっくりした。

 まあ、最初から何もかも上手だったら、それこそ嫌だったから、安心した。

 

 人差し指で、亀裂を下方向からなぞると、刺激すると一番気持ち良い陰核に当たる。

 

「んっ…」

 

 微弱な快楽の電流が脳に流れ、人間の仕組み上、仕方なく、喘ぎ声が洩れる。

 指の動きは、止まる事を知らず、しかしゆったりと、亀裂を往復する。

 

「はぁー…ん…」

 

 羽依里がたっぷりと実戦で教え込んでくれたから、指の動かし方は、熟知している。

 今まで知識だけだったものが、彼氏との性行為により、次々と経験に変わっていく。

 

 女性の陰核も、意外なことに男の人の陰茎と同じように出来ているらしい。

 形は違えど、皮もあるし、海綿体で出来て、男の人のそれよりも、快感に敏感な場所が集中している分、軽い刺激でも、それこそ、あっという間にイってしまいそうになるほどに気持ち良い。

 

 陰核の周りを焦らすように、撫でる。

 前庭の辺りから、膣を円を描くように、ゆるりと一周。

 本命にあえて触れないことで、自分の脳を騙し騙し、自慰に耽る。

 

 体の奥底からゾクゾクくる快感は、何度目かの行為でもまだ慣れない感覚だ。

 羽依里に会う前にも、何度か自慰に挑戦してみたことはあったが、そのときは何が気持ち良いのか良く分からず、達することもできないまま終わっていた。

 

 付き合ってからは…あっ…。

 

 羽依里と付き合ってから、二人の間で、ルールを決めていたのだ。

 その中の一つに『自慰行為の禁止』があった。

 

 これはそもそも、あたしから言い出したことで、羽依里があたしをオカズに…その…一人でするのはまあ許せなくも無い。

 ただ、週末には必ず本物のあたしが相手してあげられるのだから、そこでたっぷりと気持ち良くなって欲しい。

 その想いから取り決めたルール。

 

 当然、お互いに、ということになったので、あたしにも適用されるのだが…

 

「ぅ…んっ…」

 

 声が洩れ出るのと同時に、下着が湿りだしてきたのを、人差し指の腹で感じる。

 濡れてきてしまった。

 羽依里との約束がある手前、これ以上するのは我慢しないと…。

 

「はぁ……」

 

 強い意志で、性欲をなんとか抑える。

 手は名残惜しむようにしつつも、下半身から戻ってくる。

 良く我慢した! あたし!

 

 自分に打ち勝った後、すぐに思考は次にシフト。

 あたしがこんな想いをしている一方で、羽依里はどうなのだろうか。

 

 ちゃんと我慢してる?

 それとも、我慢できずに一人でしちゃってる?

 

 一つ確かなのは、週末の彼は、毎回、尋常じゃない量の精液を放出していることだ。

 ということは白か…。

 

 そもそも、羽依里ならあたしに正直に打ち明けてきそうなものであるから、つまり、しっかりとルールを守って我慢してくれている、ということだろう。

 ならば、あたしも我慢しなくてはいけない…。

 

 この溜まりに溜まった性欲の発散方法を考えるが、思い付かない。

 何か別のことをして紛らわせるのが得策…うーん。

 ベッドの上を、左右にゴロゴロと転がっていたら、名案が浮かんだ。

 

 傍らに置いてある携帯電話を手に取る。

 そう、携帯電話だ。

 

 技術の発達に伴いさらに小型化し、個人個人で携帯できるようになった。

 最近では、メールやカメラ機能など、通話以外の機能も充実している。

 あたしは、島民の中でも数少ない携帯電話所持者だろう。

 

 先月に、羽依里と藍と、両親と一緒に本土にて携帯電話の契約をした。

 羽依里も、その少し前に携帯電話を買ったらしく、遠距離恋愛で離れていても、連絡が取れるように、と購入を勧められた。

 

 当然、携帯電話のアドレス帳には『鷹原羽依里』の文字が。

 というか、羽依里しか登録されていない。

 

 藍もその際、一緒に、と思っていたが「まだ必要ないから」と一蹴されてしまった。

 その代わりに、ちょっとお高いデジタルカメラを買ってもらっていたが。

 まだ必要ないって何だろう? さらに多機能になったら欲しくなる、ってこと?

 相変わらず、藍は何を考えているのか読めない。

 

 その携帯電話だが、基本はメール、もちろん電話もする。

 毎晩、寝る前に、その日あったことをお互いに報告し合う。

 場所が離れていても、彼の声が聴けるのは大きな安心感を生み出す。

 

 さて、とりあえず、メールを新規作成。

 送信先を設定し、本文を考える。

 どうしよう…。

 

 そもそも彼は平日、学校が終わった後、バイトをしているはずだ。

 今の時間に送っても、返事が来るのは、バイトが終わってからになりそう。

 

 悩むこと数分。

 結局、未だに本文に文字を打ち込めないままでいる。

 

 恋する乙女の悩みは尽きることが無い。

 一旦、携帯を傍に置いて、考えようとしたその瞬間。

 軽快なメロディが鳴り出す。

 

 羽依里からメールが来た!

 

 素早く、メールを開封。

 件名はなし。

 本文は…『今、電話してもいいか?』と。

 あれ? 今日はバイトお休みなのかな。

 

 心の中を占めていた彼からのアプローチに、あたしの気分も盛り上がる。

 即座に返信、『おっけー』とだけ。

 何の用かは分からないが、羽依里の声が聴きたくてウズウズしていたところだ。

 

 メールの送信にかかる時間がもどかしい。

 画面に映る、手紙のイラストが数秒ごとに動いて、通信していることを示している。

 

 送信完了。

 

 今の今でのやりとりのため、もうおそらくすぐ…。

 

 電話が鳴り出した。

 光り輝くディスプレイには『鷹原羽依里』の文字。

 あたしは、心躍る気分で、通話開始のボタンを押す。

 

「羽依里~」

『よっ、蒼。元気にしてたか?』

「げ、元気よ~! 今日はバイトお休みなの?」

『ああ、今日はたまたま休みだった』

「ふ~ん。それで暇だから、あたしの声が聴きたくなっちゃった…とか?」

『大体そんなところ』

「え、そ、そう……そうなんだ、聴きたくなっちゃったんだ…へー」

『うん』

 

 そこで一瞬無言になる。

 

 なんという以心伝心だろう。

 お互いに声が聴きたかっただけとは…嬉しくなる。

 

 耳に当たる羽依里の声、息遣いが心地良い。

 中断していた、陰核弄りも、羽依里の声をオカズに気持ち良くイケそうだ。

 

『蒼はバイト中か?』

「ううん、あたしも今日はバイトなしー。今は自分の部屋に居るわ」

 

 出来ることならこのままずっと電話していたい。

 空いた左手を再びスカートに侵入させながら答える。

 

 電話をしながら自分で慰める行為に、羽依里の声が良いアクセントになる。

 先ほどよりも圧倒的に、気持ち良い。

 声は洩れでていない。羽依里にはバレないはずだ…。

 

『………今、家には蒼しか居ない?』

「…? あたししか居ないけど、どうしたの?」

 

 不思議な問いだ。用はないと思っていたけど、本当は藍に用でもあったのだろうか。

 

『居ないか。よし……』

 

 擬似的に耳を攻められているような、そんな感じ。

 

 左手は人差し指と中指で、亀裂に触れ、そっと筆で字を書くように一本の線を辿る。

 指を進めるたびに、下着と外陰部との間から、淫猥な音を立てて、分泌液が滲む。

 

 大好きな彼氏の声を聴いて、あたしの体の内側も大喜びのようだ。

 一人でしていたときと比べて、濡れだすスピードも速い。

 

『蒼…蒼…』

「んっ…なあに、羽依里」

『今度の週末は、制服着てシたいなぁって』

「汚しちゃダメよ…?」

 

 冬休みまで、まだ二週はある。ここで精子をかけられでもしたら大惨事だ。

 

『かけたりしないように、絶対に中に出すから』

「中出し………」

 

 その単語だけが脳内に響く。

 

『後ろからさ、スカートはそのままで、下着をちょっとずらして、そのまま挿れたい…』

 

 羽依里の陰茎があたしの膣内に入って…。

 

 言葉を真似するように、下着をずらし、人差し指をするっと埋没させる。

 グショグショの内部は、愛液で暖かく迎えてくれた。

 

『俺も制服きてくるからさ、校舎の中で隠れてシてるみたいに…』

 

 勿論、本当に校舎でこっそりするわけにはいかないが、想像だけなら…。

 

『突くたびに、蒼は可愛い声聴かせてくれるんだよな』

「うん、んっ、声でちゃう…」

 

 指を動かす。愛液の海の中を機用に泳ぐようにくねらせて刺激を発生させる。

 

『…蒼、今一人でしてるだろ』

「へ? し、してるわけないでしょ!」

『じゃあ、その指は何なんだ?』

 

 快楽を生み出していた指を、引き抜いて眼前に持っていく。

 ぬめっとした液体に包まれた人差し指は、軽く糸を引いていた。

 

「こ、これは…その…っ!」

 

 今、羽依里は目の前には居ない。

 電話越しなんだから、あたしの指の状態なんて分かる訳が無い。

 

「引っ掛けたわね!!」

『はは、蒼は可愛いなあ。俺の声を聴いてオナニーしちゃってたんだ?』

 

 見事に見抜かれてしまった。

 観念して正直に話す。

 

「だって…週末まで我慢できなくて…」

『それで、それで?』

「あんたの声聴きたいな~って思ったときに電話がかかってるんだもん…」

『可愛い』

「うぅ……仕方ないじゃない…」

『じゃあさ、俺が声で手伝うからさ、続き、しようか』

 

 短く、囁くように、彼は提案してきた。

 それはとても魅力的な提案だった。

 

 羽依里が耳元で優しい言葉を囁きながら自慰が出来る。

 夢のような時間じゃないか。

 

「その、いいの…? 約束…」

『あれは一人でするの禁止、だろ? 二人ですればセーフだよ』

 

 まさか電話越しに性行為をする日がくるとは思わなかった。

 少し屁理屈のようにも聞こえるが、細かいことは良いだろう。

 体の疼きを解消するため、想い人へ了承を伝える。

 

「わかったわ…お願い」

『携帯は耳の近くに置いてみて。それで通話ができるか?』

 

 両手でするってことか。耳の横に携帯を置く。

 向こうからの音はしっかりと届く。

 

「置いたわよ。聴こえる?」

『蒼の可愛い声が聴こえるぜ』

「うん、ありがと」

 

 やたらキザったらしく聴こえる彼の声。

 いつもはカッコいい台詞を言おうとして空回りしてるが、今は問題ないようだ。

 

『さて、俺が指示を出すから、蒼はその通りに、ね? 返事はしなくてもいいから』

「うん…」

 

 全てを彼に委ねる。

 

『今はどんな服着てる?』

「学校から帰ってきて、制服のまま…」

『蒼の学校の制服、いいよなあ。同じ学校に通いたかったよ』

「あたしも、同じこと考えたことある」

『まずはリボンを外してみて』 

 

 可愛い、と評判の真っ黒のリボンを解き、床に置く。

 

『次は制服のボタンを』

 

 やや複雑な構造の冬服のボタンをいくつも外し、前を開く。

 

『ワイシャツは着てるよな? 上のほうだけ開けてみて』

 

 真っ白のシャツも小さなボタンを外して、左右に開き、胸の部分だけ曝け出す。

 あとはブラジャーだけだ。

 

『ちなみに今日のブラはどんなデザイン?』

「薄桃色で、淵に蝶のデザインが入ったやつ…」

『へえ、アレか…』

 

 "アレ"で伝わる程度には、見せ付けた下着だ。

 上にずらすと、反動で胸がぷるん、と揺れる。我ながら誇れるサイズの胸だ。

 

「準備…できたわ、お願い」

 

 寝転がり、制服の胸元だけを開くあたしは、今とても扇情的な姿をしていると思う。

 彼の声が一段と低くなり、雰囲気が出てくる。

 

『両手を胸に持っていって、下から覆い持ち上げるように軽く揉んで見て』

 

 言われたとおりに揉む。

 乳のサイズに対して、小さいあたしの手では、いつものように覆うことは出来ない。

 胸には性感帯は無いはずなのに、彼の声に従ってするだけで、まったく違った。

 

『自分の手じゃなくて、触ってるのは俺の手だと思って』

 

 羽依里の手…。思い出す。その大きさを、堅さを、指の感触を。

 

『力は入れないで、指を小指から順番に、沈ませる感じで』

 

 あたしと比べて、ゴツゴツして大きな指が乳房に圧力をかけてくる。

 段々と、指が埋まるにつれて、乳房が変形する。

 

『こうやって後ろから包むように触るのが好きなんだ』

 

 あたしに触れた羽依里が感想を言う。

 

『今度は、手を交差させて、胸の付け根の辺りを意識して、指先で触ってみて』

 

 手を交差させて…こうかな…。

 脇にも近い、その部位を、指の腹でさりげなく弄る。

 

「…っ! はぁ!」

 

 ここで思わず声が出た。

 

 こんな気持ちよかったのか…自分では全然気付かなかった。

 

『この間してたときに、何処を触ったら蒼が感じるのか見ながらやってたんだ』

「よく、観察してるわね…」

『手の交差を戻して、中指で、脇のラインから、ゆっくりと中心に指を動かして』

 

 指がスーっと乳房を滑っていく。

 

 快楽の虜になってきた脳が、もっと強い刺激が欲しいと、命令を出す。

 乳頭も春を迎えた桜のように、大きく隆起して、その存在を強く主張する。

 

 桜の木の下の乳輪まであと少し――

 

『そこで、ぐるっと円を描くように』

「…ぅぅ………」

 

 焦らされる。脳は本能に従えと指示を出す。

 二つの意志が激しく対立する。

 

『まだ我慢して…』

 

 早く触れたいその気持ちを抑えようとする。

 衝動を別の部分で発散させようと、両足の太腿を擦り合わせて我慢。

 

「んんっ……はぁ…」

『ねえ、蒼…どこを触って欲しいの?』

「おっぱいの…ぁ…真ん中…の…」

 

 ついにいま一番触れたかった頂点に。

 

『ここかな?』

「やぁぁああ! んんー!」

 

 指先が触れた。

 入念な愛撫により高まっていた興奮が、一気に爆発する。

 

 羽依里の触り方はやっぱりえっちだ。

 自分で触っているにもかかわらず、味わったことの無いような快感。

 腰が跳ね上がるほどの衝撃が走った。

 

「はぁ…はぁ…」

『気持ち良かったんだ?』

「うん…気持ち良かった…」

『次はもっと気持ち良くさせてあげるよ』

 

 尚も、羽依里の声は続く。

 

『スカート、捲くって下着が見えるようにしてみて』

「うぅ…こんな格好、恥ずかしいわよ…」

『俺しか見てないから…下はどんなの穿いてるのかな』

「上と同じデザインの…この前、あんたがこっそり頬擦りしてたやつー」

 

 この恥辱の中に、さらに下着の柄を報告するという、恥辱を重ねさせられる。

 しかし、そのやり取りですら、今は性的興奮を加速させる要素でしかなかった。

 

『…下は濡れてる?』

「うん…もう、びしょびしょ…」

『そっか…じゃあ、脱いじゃおうか。左足だけ抜いて、右足には引っ掛けたままで』

「りょーかーい…」

 

 もうすぐ、より気持ちの良いことができる。

 それがどんな卑猥な格好になるのかも考えずに、羽依里の指示通りにする。

 

 愛液でぐっしょりと濡れた下着は、相応の重みを感じる。

 お尻を浮かせて、両手を掛けて一気に、引き抜く。

 太腿と膝を過ぎれば、あとはもう障害物などない。

 解き放たれた薄桃色は、上げた右足からロープウェイのように、膝まで戻る。

 

 これで、あたしの陰部を守る布はなくなった。

 スカートもお腹まで捲くれているため、部屋の空気に直に晒される。

 

「脱いだわ…」

『そしたら、左手はさっきみたいに胸を、右手は下を触ってみようか』

 

 右手を既に大洪水となっている、自分の不可侵領域に持っていく。

 

『割れ目を軽く、押してみて…』

「クリ…触ってもいい?」

『もう少し我慢しようか』

 

 また"焦らし"が入る。

 あたしの体が触って欲しい、と泣いて懇願している。

 

『そのまま、膣内に指を挿れて…』

 

 指があたしの中に飲み込まれていく。

 液体の抵抗を難なく押し返し、ズブズブと、第二間接ぐらいまで進めた。

 

『蒼の気持ち良くなるところは、入ってすぐの脇の部分だよな』

 

 指を少し折り曲げるとそこに、"声"の言う、あたしの快楽の壷があった。

 

 突いてみると、感覚が脳まで伝わってきて、あまりの快楽に瞳も閉じてしまう。

 真っ暗な世界に存在するのは、羽依里の声、羽依里の指、羽依里の手…。

 愛する人に、全身を愛撫される至福の時間が訪れていた。

 

『今日も可愛いよ…蒼』

 

 耳元で囁かれ、後ろから、自慢の乳房を、大きな掌で鷲掴みにされる。

 

 たまには少し乱暴な位のほうが嬉しい。

 あたしは、箱に大事に保管され続けるような宝石などではなく。

 常に身に着けてもらえるような宝石が良い。

 

『乳首とGスポット、同時に攻められるとどうかな?』

 

 勃起した乳首を、左手の人差し指で往復するように激しく触れながら、陰膣に潜り込んでいる、もう一方の中指でピストンする。

 

「ああっ…んっんっ……やぁあ!」

 

 官能的な声。

 これはあたしの声?

 男性を誘惑するような、聴くだけで脳が蕩けそうな甘い声を洩らしている。

 "幸せ"が局部から発生し、鼓動する心臓から血管を伝って、体中を疾走する。

 

『そろそろ、イキそう…』

「………はぁはぁ…んんっー!!」

 

 指を掻き回す度に、真っ暗な世界が、白で塗りつぶされていく。

 もう何もかも、がむしゃらだった。

 口は半開きになり、涎が垂れ流れる。

 乳頭をこねくり回す度に、それに連動し、体が激しく揺れる。

 ベッドのスプリングが何かの生き物のように、鳴動する。

 いつの間にか、局部を攻める指は二本に増えており、愛液をシーツに撒き散らす。

 

「はい…り……!」

『蒼……中に出すよ……』

 

 ああ、もうすぐ。

 もうすぐ、凄いのがくる。

 

「イク…イっちゃう…!」

『最後はクリトリスをぎゅっと摘んで…!』

 

 外陰部の花園に咲いた、一厘の花。

 蕾が捲れ、多くの幸せが詰まった花弁を、人差し指と親指で丁寧に挟む。

 

「あ………」

 

 張り詰めていた糸が切れたかのように。

 

 真っ白な幸せの頂に、あたしは登りきり。

 

 そこで意識が途切れた。

 

* * * * *

 

 手に構えたティッシュの束に、精液を吐き出すと、一気に脱力する。

 

 蒼も、自慰行為をしているのだ。

 ルールに則るのであれば、こちらも自慰行為を行ってもよい、という解釈になる。

 

 それにしても、電話越しに聴く、蒼の嬌声は格別だった。

 週末までの間、学校などでも思い出して、大変な事態に陥るかもしれない。

 

 俺は事後処理を終えたが、蒼はどうだろうか。

 ものすごい声を上げたあと、声が聴こえなくなってしまった。

 

 少しすると機械の向こうから、生活音が聴こえた。

 携帯を再度耳にあて、話しかける。

 

「蒼ー…?」

『羽依里さん』

「げ…藍……」

『げ…藍……とはなんですか、人がせっかく後処理をしてあげようというのに』

 

 何故か蒼の携帯電話から、姉である空門藍の声がする。

 

「えーっと…蒼は?」

 

 まずは蒼がどうなっているのか確認だ。

 

『家に帰った途端に、蒼ちゃんの部屋からものすごい声がしたので駆けつけました』

「…」

『部屋に来てみると、なんということでしょう! 制服を最高にエロティックに脱ぎ散らかしながら、幸せそうな顔をして気を失ってる蒼ちゃんがいるじゃありませんか!』

 

 やたら興奮気味に話す藍。

 

『携帯が通話状態で置いてあったので一瞬で悟りました。羽依里さんの仕業だな、と』

 

 良いタイミングで帰ってきてくれて良かったような、良くないような…。

 

「蒼が寂しいって言うからさ…ちょっと、こう、お手伝いを…したまでです…はい」

 

 正直に白状する。この姉には勝てないし逆らえない。

 

『まぁ…いいです。美味しい光景が見れましたし、脳内メモリに焼き付けました』

「さようですか」

『このまま放置しておくのもあれなんで、最低限の後処理だけしておきますね』

「お願いします………」

『あと、通話時間、これ大丈夫ですか?』

 

 ディスプレイを見ると既に、通話時間は三十分を経過していた。

 今月の携帯電話の利用料金が早速大変なことになるかもしれない…。

 

「かなりヤバイです…」

『そうですか。それでは切りますよ』

「おう、サンキュー、藍」

『はい。また週末に』

 

 藍のことだから、後のことは任せられるのは間違いない。

 その点については安心する。

 

 俺は丸めたティッシュの塊を、部屋の片隅にあるゴミ箱に投げ込む。

 蒼とほぼ毎週のように、性行為をするようになってから行った始めての自慰。

 

 彼女の肉体の感触のほうが勝るのは勿論だが、こういうのもたまには良い。

 電話が切れたことを示す音が鳴り、通話時間の経過が止まり、消えた。

 

 画面に残ったのは、今日の日時と、通話時間と、通話相手の名前だった。

 性行為の記録みたいで、少し恥ずかしいな、と思った。

 今度の週末には、今日の感想をたっぷりと訊いてやろう。

 

 

【彼の居ない平日 終わり】



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ラブラブカップルに二十五の質問

【問一 お名前を教えてください】

 

「鷹原羽依里です」

「空門蒼よ…ってこれ何…? えっと…ラブラブカップルに二十五の質問…?」

「今、流行ってるみたいなんだよ、せっかくだし、やってみたいなって」

「否定するつもりは無いけど、『ラブラブカップル』って文字見ると恥ずかしいわね」

「傍から見たら、間違いなくそう見えるんだろうけど、意識すると恥ずかしいよな」

 

「お父さんの書斎のパソコンで何するのかと思ったら、これ?」

「このホームページが見たかったんだよね」

「鳥白島にある家で、パソコン置いてあるのなんて、多分うちぐらいだものね」

「パソコンあるし、娘は携帯電話持ってるし、意外と流行の最先端なんじゃない?」

「なるほどー…確かにそうかも」

「蒼が使いこなせているかは別として、だけど」

「…一言余計よ! ちゃんとメールも電話も使ってるじゃない!」

 

 

【問二 お相手のことは何と呼んでいますか?】

 

「蒼。漢字で書くと一字で、発音すると二文字だな。短いし、呼び易い」

「羽依里、って名前呼びか、あんたって呼んだりもするわね」

「あんたって呼ばれてる彼氏って中々居ない気がするよ」

「え、嫌なら、名前呼びだけにするわよ」

「それが合うっていうか、もう呼ばれ慣れてるし、むしろ心地良い?」

「まぁ確かに、そう呼ぶのが何故かしっくりくるのよねー」

 

「俺の名前ってかなり珍しいと思うけど、どう?」

「珍しいと思うわ。あんたの名前って、特徴ありすぎて覚えやすいのよね」

「どうも、六波羅探題です」

「あー、まだそれ覚えてたのね…あたしは、平将門とか言われたっけ…」

「あの時の歓迎会は本当に嬉しかったよ。女の子と沢山喋ったのも初めてだったし」

「うん、歓迎会提案して正解だったわ」

 

 

【問三 二人の出会いは?】

 

「忘れもしないわ。そうあれは、七月の終わりだったわね」

「道端で女の子が寝てるんだもんな。そりゃびっくりするわ」

「で、邪心が芽生えてあたしを抱きしめにいった、と」

「芽生えてない」

「もし、今同じ状況に遭遇したら?」

「いただきます」

「最初は優しく…ね?」

「当然、家に連れ帰ってからだけどな」

「え、あ…そ、そうよねー!」

「外でそのまま、がご所望ですか」

「………ちょっとしてみたい」

「のみきに見つからないようにするのが大変そうだな」

「となれば、この後、早速作戦会議するわよ」

 

 

【問四 付き合ってからどれぐらい経ちますか?】

 

「あれ、もしかしてまだそんなに経ってない?」

「最初の夏に出会ってから、もう一年半かな」

「羽依里と過ごす時間は濃密で、全部が大事な想い出だからもっと経ってるかと」

「寝てる間はあんまり恋人らしいことできなかったから、まだまだこれから、だよな」

「うん。色々なことをしたいわね。まずは季節毎のイベントかしら」

「クリスマスに、お正月に、節分、バレンタイン…去年しっかりできなかったし」

「まずは、クリスマスね。ケーキ作ってみるから楽しみにしてて」

「彼女の料理スキルが高いって良いこと尽くめだな」

「そんなに褒めても何にも出ないわよ?」

「まぁ出すのは俺のほうだし」

「あんたの頭の中のほうが、より一層ピンク色なんじゃないかしら…」

「この一年で俺も成長したのさ。蒼には負けないぞ」

「いや、そんなことで勝負されても困るんだけど」

 

 

【問五 告白はどちらからしましたか?】

 

「俺からかな?」

「若干曖昧なのよねー…アプローチはあんたからずっとされてたわけだけど」

「夜の山の中で、蒼が想いに応えてくれた、って意味では、やっぱり告白は俺からかな」

「羽依里が想いを向けてくれてなかったら、って思うと、今どうなっていたことやら」

「ってなると、俺の粘り勝ちってところだな」

「うん……ありがとね」

「おいおい、そこで泣きそうになるなよ…泣くなら、ほら」

「羽依里…好きな人の腕の中って暖かいわね」

「しばらくこのまま抱きしめていてやるからさ」

「えへへ…幸せ」

「蒼の柔らかいお胸が堪能できて俺も幸せ」

「良い雰囲気……なんだからっ…もうちょっと…カッコいい言葉選びなさいよ!」

「こんな感じが一番俺達らしいかなーってね」

 

 

【問六 初キスはどこで? どちらから?】

 

「蒼ー…もう、大丈夫か?」

「うん、もう大丈夫よ。次見てみましょうか」

 

「これは…夜の山の中だな。八月十七日の事だ」

「どちらからともなく…だったけど、最初はあんたからしてもらったわね」

「月明かりに照らされた蒼の顔が、幻想的な美しさをしてて、凄い記憶に残ってるよ」

「詩的ね。まぁ確かに、場所も結構ロマンチック…だったのかしら?」

「物語のワンシーン以上に絵になってたと思うぞ」

「あたし達以外に見ている人は、当然居なかったけどね」

「人は居なかったけど、イナリなら居たよな」

「当然でしょ。藍の七影蝶探しをしてたわけだし…あ!」

「見られてたな?」

「~~~ーーー!!」

 

 

【問七 初キスしたときの感想を教えてください。】

 

「ってことは、その後のエッチも全部……あああ!」

「安心してくれ。後でイナリに聞いたら、見てはいなかったらしいから」

「声は聴かれてたってことじゃない……って何であんたも会話できてるのよ!」

「だってイナリのやつ、人の言葉分かってるし、二択で質問したら意思疎通できた」

「考えたわね…」

 

「ところで感想は?」

「そうねー…始めて触れたあんたの唇はちょっと硬くて、記憶に残る感触だったわ」

「とても硬くて気持ち良かった、と」

「なんか別の意味にも取れるような…あんたはどうなのよ?」

「女の子の唇…柔らけー! って内心凄いテンションあがってたよ」

「自分ではあんまり感じないけど、そんなに柔らかいのかしら?」

「キスしてるだけで興奮しちゃう程度には柔らかいです、はい」

 

 

【問八 いま同棲していますか?】

 

「一応、してる、に該当するのかしら、これ?」

「週に約二日だけどな」

「学生カップルで同棲してるってかなり珍しいんじゃない?」

「少なくとも、俺の周りでは俺達しか居ないよ」

「結婚したら、今の生活が毎日に変わるのよね」

「あー…プロポーズはもうちょい待ってて」

「ふふ、楽しみにしてるわ。指輪もね」

 

「そういえば、一緒に暮らしてみて、初めて分かることはたくさんあったわね」

「例えば?」

「あんたの料理の腕が壊滅的なこととか、洗濯物をたたむのが雑なところとか」

「…精進します」

「協力しようとしてくれる姿勢は嬉しいんだけどね…加藤の血の呪いってやつかしら」

【問九 お互いの誕生日にはどんなプレゼントしますか?】

 

「とりあえずサプライズは無しだからね」

「ああ。取り決めた蒼とのルールは守るよ」

「内容も大事だけど、自分のために、必死で悩んでくれてる! ってところも重要ね」

「…コスプレ衣装とかどう?」

「それは毎月のように貰ってる気がしまーす」

「まずい…それ以外だと考え付かないぞ」

「えっと…あんたの頭の中って、あたし以上にピンク色なんじゃないの?」

「彼女に多大な影響を受けました」

 

「最初は常に身に付けられる物か、日常生活で使える物とかが良いかも」

「女の子の喜ぶプレゼント…何を選べば良いんだ…男子校なのが悔やまれる」

「んー、そしたら今度、本土に遊びにいくついでに、一緒に見てまわりましょ」

「デートしつつ、プレゼント選びの勉強だな。楽しみだ」

 

 

【問十 料理はどちらが得意ですか?】

 

「加藤の血の呪縛が…」

「こらー! そこ! 落ち込むなー!」

「俺の料理のレベルは置いといて…蒼が料理上手なのは意外だった」

「なんで、意外なのよ」

「蒼ってなんか、こう、料理でダークマター生み出しそうな雰囲気してるだろ?」

「なんで同意を求めるみたいに言うわけ?」

「え、分かるだろ?」

「いや、自分自身が『あー分かるー! あたしって、鳥白島限定、料理でダークマター生み出しちゃいそうな女子ランキングトップよねー!』とか言うわけないでしょ!」

「…」

「そこで黙るなー! 彼女がボケたんだからツッコミなさいよ!」

「突っ込むって、さすがにここでするのはまずいと思うぞ」

「それぐらい分かってますー! はい、次いくわよ!」

 

 

【問十一 ケンカはしますか?】

 

「まずすること自体想像できないわね」

「確かに」

「ただまあ…あんたのイタズラのせいで、怒鳴ることはそこそこあるような…」

「え、そんなことあったっけ?」

「散々、かき氷をあたしにぶっかけたこと、忘れたとは言わせないわよ」

「うぐっ…まだ覚えてたのか…」

「あんな貴重な体験忘れるわけ無いでしょー!」

「蒼の性癖を捻じ曲げてしまったことについては、申し訳なく思ってる」

「いや、別に曲がってないし!」

「え、でもこの間、勢い良く出しすぎて、髪にかかったときに、喜んでなかった?」

「あれは、羽依里の所有物になったみたいで、気持ちよかったっていうか・・・」

「蒼ってどっちかっていうとマゾ寄りだよな」

「そういう、あんたはサド気味よね。だから相性良いのかも?」

 

 

【問十二 お互いの一番好きなところは?】

 

「中々難しいけど…とにかくあたしのことを一番に考えてくれるところね」

「恋人なんだから、当然じゃない?」

「意外とそうでもないと思うわよ。あんたの優しいところが大好きなの」

「はは、そりゃどうも。これからもたっぷりと優しくしていこうと思うよ」

 

「羽依里はあたしのどこが好き?」

「うーん…髪の毛か、おっぱいか、お尻か…悩むな」

「なんで、体の部位限定なのよ! もっと、こう内面的なところをあげなさいよ!」

「と言われてもな。気付いたら、蒼の事が大好きになってたから実は良く分からない」

「…答え方はちょっとズルい気がするけど、すっごい嬉しいわね…」

「あれ、いま結構良い雰囲気?」

「んー! んーっ!」

「キスをおねだりしてくる蒼すっげー可愛い」

 

 

【問十三 お相手に直して欲しいところは?】

 

「島のあらゆる所で眠ってるところ」

「え、別によくない? 寝るときは必ずイナリが居てくれるし」

「彼氏としては、ものすごーく不安なんです。蒼は自分の美少女具合を理解してない!」

「そ、そう…じゃあ、あんたが隣に居るとき限定っていうのはどうかしら?」

「なるほど。それなら可愛い寝顔が見れるし」

「寝てるあたしにえっちなイタズラできるし」

「そのまま家までお持ち帰りしてお楽しみできるし」

「興奮するシチュエーション待ったなしね」

「ああ! あっ」

「ヤる気、満々ね」

「無防備すぎる蒼が悪いの!」

「まあ、あんたになら何されても、嬉しいから良いんだけどね?」

「そういうところだぞ蒼」

 

 

【問十四 お相手に隠していることは?】

 

「「なし!」」

「二人で決めたルールに『隠し事やサプライズはしない』ってあるものね」

「蒼は、嘘をつくのも、隠し事するのも下手だからそもそも出来ないと思うけど」

「ぅ……これには言い返せないわね」

「まぁほら、隠し事なんて無いほうが良い付き合いできるし」

「それはそうだけど、えっちしてるときも、やけに鋭いのよね…」

「感じてるの我慢して、隠してるつもりなんだろうけど、バレバレだし」

「そんなに分かりやすいのかしら…」

「可愛いから良いんだよ。蒼はそのままでいてくれ」

「もー! すぐ可愛いっていう!」

「だって実際、可愛いし」

「あんたの、その包み隠さず、ストレートに感想を言えるのは、一種の才能だと思うわ」

「ありがとよ」

 

 

【問十五 休みの日、二人きりのときの過ごし方は?】

 

「…イチャイチャラブラブ?」

「大体、その一言で収まりはするわね」

「休みの日、つまり週末は、通い妻…ならぬ通い夫をしているわけですが」

「土日って駄菓子屋のバイトしてることが多いのよね」

「いつも一緒に駄菓子屋にいるよな。ほとんどすることなくてぼーっとしてるけど」

「鳥白島の休日はあれでいいのよ。羽依里と一緒に居られるの嬉しいし」

「バイトがないときは家で、まったり過ごしたり…」

「デートに誘ったりかな?」

「島の外には中々行く機会ないから、デートで連れていってくれるのは楽しいわ」

「今はまだ、港周辺だけどさ、そのうち俺の家にも来てほしいな」

「羽依里の家に…そうね、ご、ご両親にも挨拶にいかないとだし…」

「あー、それはまだちょっと気が早いかな」

「わかってますー! その時がきたら、もっとしっかりした気持ちで行きますー!」

 

 

【問十六 逆に、会えない日はどうしていますか?】

 

「勉強して、バイトして、それで会えない寂しさは紛らわせているが」

「あたしに会えなくて寂しいんだ?」

「やっぱり一日でも会えないと寂しいさ。携帯電話勧めて良かったよ」

 

「蒼の場合は『彼の事を想い過ぎて、我慢できずに…一人でしちゃいます…』かな」

「低い声であたしの真似すんな!」

「この間のアレ、またしようか…電話で」

「それは非常に魅力的な提案だけど、電話代凄いことにならない?」

「今月分まずいかも…もう少し、安くならないかな」

「でも、お陰様で、一応遠距離恋愛なのに、ほとんど寂しくなく過ごせているわね」

「良い時代になったよな。こうしてパソコンでデート先の情報も集められるし」

「この質問集見終わったら、お店の情報調べてみましょ」

「了解した」

 

 

【問十七 お相手の好きな仕草は?】

 

「致す前に、良い雰囲気になったとき、恍惚とこっちを見てくるのとか」

「え、あたしってそんなことしてたの!?」

「大体いつもそうなってるよ。まあ、自分では気付かないのも無理ないかな」

「う…ぅ…ま、まあ、羽依里にしか見せないし…」

「その状態の蒼にはキスしてあげると、意識が戻ってくるんだよな」

「はっ! そういえば、いつも気付いたら、キスされてるような…」

 

「蒼は、俺の好きな仕草って何かある?」

「あるわよー! あ、でも聞いてもひかないでよね?」

「ひかないひかない」

「それじゃあ言うわよ…羽依里、大好き!」

「お、おう…俺も大好きだよ」

「それー! あんたが照れたときに、頬をかく、その仕草が好きなのよね~!」

 

 

【問十八 結婚したら子供はほしいですか?】

 

「欲しいよな?」

「欲しいけど、むしろ結婚する前に、出来そうなんですけど」

「こんなに可愛い彼女が居るんだぜ? しかも平日は御預け。我慢できるわけない」

「…こんなに頻繁にえっちしてるの、あたし達ぐらいなんじゃないかしら…」

 

「定番の質問だけど、男の子が良い? 女の子が良い?」

「そうねー。空門の家としては、やっぱり女の子が欲しいかな」

「御役目を継いで貰う必要もあるからな」

「男の子だったら、それはそれで小さい羽依里みたいになりそうで可愛いかも」

「小さい頃の俺のこと知らないだろ」

「そういえば、まだまだ羽依里の知らないことは沢山あるわね」

「今度、アルバムでも持ってくるよ。ちょっと恥ずかしいけど…」

「お、それは楽しみね!」

 

 

【問十九 理想の新婚生活は?】

 

「理想…理想ね…いまの生活が続けられれば、それが一番かしら」

「結婚しても、あんまり変わらなさそうだよな」

「むしろ、ずっと一緒に居られるようになるから、より一層幸せになっちゃいそうね」

「蒼の手料理も毎日食べれるようになるんだな」

「料理、気に入って貰えてるみたいで嬉しいわ」

 

「新婚生活っていえばあれじゃない?」

「遅くまで働いて疲れ、家に帰るとそこには…!」

「ご飯にする? お風呂にする? それとも…あ・た・し?」

「おお。さすが蒼、完璧だな!」

「これ定番のネタよね!」

「まぁそれされたら、迷わず蒼を頂きにいくけど」

「そうなりますよねー!」

 

 

【問二十 老後はどんな生活をしてそうですか?】

 

「一気に、すっ飛んだわね。あたし達はずっと鳥白島に居るのは間違いないわね」

「朝は、やっぱり蒼のほうが後に起きるから、軽く悪戯したり」

「昼は、二人で駄菓子屋で働いて…いつものベンチに座って一緒に居眠りしたり」

「土日とかは、島を散歩しつつデートしたり」

「夜は、あたしが作った料理を、食べさせあったり」

「一緒にお風呂入ったり」

「今と変わらないな」

「ふふ。そうみたいね」

 

「駄菓子屋で一緒に、羽依里と働くのも素敵かもしれないわ」

「あそこの爺さん婆さんも、傍から見るとラブラブだよな」

「あの二人があたし達の目指すところよ!」

「老後も楽しみだな」

 

 

【問二十一 二人だけの決まりごとや習慣などはありますか?】

 

「必ず一緒にお風呂に入るようにしてるよな」

「最初は恥ずかしかったけど、最近はそこそこ慣れたわ」

「向かいあって湯船に浸かるの、狭くてきついし、必然と抱き抱える形になるんだな」

「暖かいお風呂の中で、肌を密着させて、ゆっくりお喋りするのも好きなのよねー」

「おかげさまで、一回、二人してのぼせたが」

「…あれも良い想い出ってことで」

 

「毎朝のモーニングコールも習慣かな。ほとんど寝ぼけてるけど」

「朝は弱いのよ…仕方ないでしょ」

「…昼も夜も、起き掛けはいつも同じ感じだと思う」

「…ぅ……可愛い彼女の可愛い声が聴けるんだから、良いってことで…!」

「いつか、逆にモーニングコールを蒼にしてほしいな」

「あんたより先に起きるのって、かなり難しいのよね…」

 

 

【問二十二 仲良しの秘訣はなんですか?】

 

「スキンシップをとにかく取ることね」

「ほほう」

「残念だけど、エロ方面の話じゃないわよ?」

「分かってるけど、それも大事だろ?」

「いつまでも、あたしに対して魅力を感じていてくれるのは、確かに大事かも…」

 

「さっきも言ったけど、お風呂での時間も、スキンシップだよな」

「お互いの体を洗い合ったりして、羽依里の体に触れてるとなんだか安心するのよね」

「蒼ってたまに、俺の体をじっと見て惚けてるときあるけど、あれは何なの」

「え、あ、あれはー…羽依里の体って細身だけど、結構、筋肉ついてるでしょ?」

「これでも元水泳部ですから。今でも筋トレはしてるし」

「羽依里の引き締った筋肉、好きなのよね…寝てる間とか、ずっと撫でてたりするし」

「え、そんなことしてたの」

 

 

【問二十三 相手に感じている疑問をぶつけ合ってください!】

 

「変なこと訊くけど、あたし達って、最初の夏に会う前に、会ったことあった?」

「歓迎会のときに話したけど、あの夏が初めて会った時で間違いないと思うよ」

「そうよね…あんたに初めて会った時に、ちょっと懐かしい感じがしたの、ずっと前から知ってるような、何度も何度も、同じ時間を過ごした様な…」

「七影蝶の記憶か?」

「確か、あんたに会う二年ぐらい前のことなの。ほとんど覚えてないんだけどね」

「俺も…俺もそういえば、鳥白島に最初に来たとき、妙な既視感を感じたんだ」

「ふーん。不思議なこともあるものね」

「もしかしたらさ、今ここに居る俺達は、幾千幾万、いや、それ以上の可能性を超えて、結ばれた関係なんじゃないかな」

「七影蝶って、藍のことがあったから、辛い想い出ばっかりだったけど、羽依里とあたしを一本の線で結ばせてくれたのも事実なのよね」

「感謝していいのやら、いけないのやら…厄介な存在だよ、あれは」

 

 

【問二十四 付き合ってから、現在までで一番の想い出を語ってください!】

 

「夏休みの最後、あたしが眠っちゃうときに、おんぶして、歩いてくれてたじゃない」

「ああ。歩いたな。背中の感触は記憶に刻みついてるよ」

「想い出しただけでもニヤけてきちゃうわね…あたし、あの時『ラブラブなカップルみたいよね~』って言ったのよ、覚えてる?」

「しっかりと覚えてるよ。今こうして、本物のラブラブなカップルになっただろ?」

「えへへ~…そうね~…ラブラブ」

 

「俺は逆に、一年経ってから、蒼が眼を開けてくれたときかな…『おはよう』ってさ」

「起きた途端に目の前で、大好きな彼氏が号泣し出すんだから、困っちゃったわよ」

「これまでの人生で一番泣いたな」

「今後は、泣かせるようなことなんて、起きないから安心しなさい」

「頼むよ」

「あー、でもいつか来る、あたしの出産時に、ぼろぼろ泣きそうね」

 

 

【問二十五 それでは最後に恋人への愛を叫んでください!】

 

「愛してるよ蒼。これからもよろしくな。指輪はもうちょい待ってて下さい」

「愛してるわ羽依里。プロポーズ待ってるからね」

「この間みたいに、気絶するまで耳元で、永遠と愛の言葉を囁いてあげようか?」

「~~~! それも嬉しいけど、囁くなー! 叫べって書いてあるでしょー!」

「いやー…ちょっと、恥ずかしくって…そこそこ良い雰囲気ならいけるんだが」

「まあ、それも含めて羽依里なのかも。照れ屋さんなのに、妙にキザなところもあるし」

「大好きな女の子の前だと、自分を格好良くみせたくなるんだにょ」

「噛んだ? 最後の質問なのに、格好良く締めようとして、噛んだ?」

「………」

「格好良くみせたくなるんだにょ…?」

「噛んでにゃいー!」

「ダブルで噛んだ!」

「恥ずか死ぬー!」

 

 羽依里は、そう言いながら、書斎から飛び出していった。

 まったく本当に照れ屋さんなんだから…。

 あ、そういえば、今度行く水族館の情報も調べよう。

 今まで見ていたページは二十五番目の質問を終え、下まで辿り着いている。

 一番下には、どうやらこのサイトの制作者の名前が載っているようだ。

 

 『制作者 元・眠り姫』

 

 姫だからこの質問を考えたのは女性ってことかしら。

 羽依里との仲を改めて感じれたから、とても良い内容だったわね。

 あと『元・眠り姫』ってなんだか身近にいる人物のような…気のせいかな。

 うーん。昔の知識は有っても、最近のハイテクにはついていけないわ…。

 先に羽依里を探しに行こうっと。

 

 

【ラブラブカップルに二十五の質問 終わり】 



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蒼い春の季節

サマポケのビジュアルファンブック表紙イラストの白ワンピース姿の蒼良いですよねっていう短編です。


「これでよし、っと! 蒼、鏡見てみて! どうよ?」

「うん! バッチリね! あんたもあたしの髪の毛弄るの得意になったわね」

「そのポニーテール、いつもと違った印象があって素敵だよ」

「そ、そう? えへへ…ありがと」

 

 ご自慢の長い髪は俺の手によって、後ろで結われ、ポニーテール風になっている。

 

 週末の加藤家。居間には白いワンピースを翻し、可憐な姿を見せる蒼が居た。

 

 薄い生地で全体的に露出が多く、腕を下げていると、肩は剥き出し、そして鎖骨のラインと、滅多に見る機会の無い、腋部分が直視できてしまい、目のやり場に困る。

 また、美乳は服の繊維との戦いを繰り広げ、その圧倒的なまでの量感を主張する。

 胸元は大きく開かれていて、魅惑のブイ字空間が生まれ、顔を埋めたくなるぐらい。

 ピンク色のリボンで結われ、下乳の当たる部分にはレースがひらひらと舞っている。

 

 その場で、くるっと一回転して、全身を余すことなく魅せつけてこられると、朝から我慢していた性欲が滾って、無性に抱きしめたくなってくる。

 

「ちょ! ちょっと! これからお花見に行くんだから、今は我慢しなさいよ!」

 

 訂正。そう思ったときには背後から抱きしめていたらしい。

 

「蒼が美しすぎて我慢できなくて…少しだけ、良いよね?」

 

 後ろから、蒼の性感帯である耳に、囁くように、声を送る。

 音波が鼓膜を震わせ、言葉として脳に伝わっていき数秒。沈黙の時間が流れる。

 

「ほんと性欲強いんだから…相手が務まるのなんて、あたしぐらいなんだからね?」

「ありがとう。俺の相手は蒼しかいないよ」

 

 後ろにある、ソファに二人して沈み込んでいく。

 囁きをそのままに、耳たぶを唇で優しく挟み刺激を発生させる。そこに感覚はほとんど存在しないはずなのに、蒼にはコレが効果的であると分かっている。

 両手は生肩に触れ、体の骨を感じつつ、腋を攻めにいく。

 妙な温もりがあるそこも、男からしてみれば、性器の一つ。指の腹で撫でてみる。

 

「…ひゃ!? そこ…く、くすぐったいの」

「じゃあ、こっちならくすぐったくないかな?」

 

 服の上から豊満な乳房を手で包む。繊維の手触りに加え、胸の弾力が、春の陽気にも似た、心地良い気分へと誘う。そして高揚したのは気分だけでなく、頂点の桜色もまた俺に触れて欲しい、と語りかけてくる。

 焦らすように、頂点のそのほんの少し外れた周辺を指で軌跡を描くと、彼女はその快感に、身を捩れ、両脚を擦り合わして、必死に快楽に耐える行動を見せる。

 

「蒼。こっち向いて」

「…ん…ちゅ……」

 

 小振りな唇と自らの唇とを接合させる。慣れたもので、喜ばせる接吻は完璧だ。

 唇の感触を味わいつつも、今度は服と肌との隙間を縫って、両手を侵入させる。

 清楚な印象を漂わせる、白のワンピースの胸元には、俺の手の形が浮かび上がり、現在進行形で卑猥な行為を行っていることを痛感させる。

 

「……ぁ……だめ……ぬれてきちゃってるから……」

 

 俺のためだけに咲いた、満開の桜の感触を両手で堪能していると、先ほど穿いたばかりの下着が水分を含んできたことを告白される。

 

「…まって……脱いじゃうから……」

 

 蒼は一度ソファから立ち上がり、花柄の湿った下着を脱衣する。

 

「今日、お花見行こうって言ってたのに、これじゃ行けそうに無いじゃない…」

 

 そう言いつつも続きを求めるように、再度座り込み、俺の体に体重を預けてくる。

 

「代わりに、こっちをイかせてあげるからさ。お花見は明日にしよっか」

「明日は、ちゃんと我慢しなさいよー?」

「分かった。明日我慢できるように、今日はたっぷりと蒼を堪能しよう」

 

* * * * *

 

 翌日。暖かな日差しに照らされ、俺は自転車の後ろに蒼を乗せ、島を巡っていた。

 背後から腕を回され抱きしめられ、押し当てられている胸の感触を味わいつつも、春の空気を二人で感じていた。

 目的の桜の木は、もうすぐだ。一緒に作ったお弁当も待ち遠しい。

 

「ねー! 羽依里ー!」

「なーに?」

「大ー好きー!」

 

 耳に響く、彼女の声は、新たな季節の到来をはっきりと、確実に、告げていた。 

 

 

【蒼い春の季節 終わり】



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もう一つのプレゼント-赤いリボンのキミ-

羽依里の誕生日のお話です。

【お知らせ】
2019/9/21に開催されますKey Island 2にサークル『空門一門』で参加致します!
全年齢本『Sky Blue』…羽依里x蒼の掲載済みの小説まとめ本(しろはの誕生日も載せます!)
R18本『Sensual BlueⅢ』…これから投稿予定の羽依里x蒼の小説本(+久島鴎は此処に居る)
本でも持っておきたい!という方はぜひよろしくお願いいたします!
Twitter:そらかどせきね@chekinu_


 誕生日の夜。

 家に帰った俺と蒼は『いつも通り』一緒にお風呂に浸かっていた。

 二人で入ると、密着せざるを得ない狭い湯船。

 当然、一糸纏わぬ姿だ。

 足を開き、その間に蒼が座っているような体勢。

 ぬるめの温度のお湯に長時間浸かり、することは当然――

「んっ……やぁ……はぁ……」

 風呂場に響く、彼女の嬌声。

 湯中から、半分だけ覗く、豊満な美乳を男の両手で捏ね繰り回す。

 あまり力を加えないよう、加減しつつも、的確に快楽の壷を突く。

「あっ……っ……んっ………」

 温泉の湯の素を使用しているため、少し粘り気のある湯質。

 手で掬って、胸の上からかけてあげる。

 敏感になっているのか、降り注ぐ白濁の湯が当たるだけで声を上げる。

「ぁ……きもち……っ…いい!」

「こっち向いて」

 蒼が俺の体にもたれ掛かり、顔を向ける。

 すかさず、唇同士を触れ合わせる。

「んっ…」

 最初は、優しいキス。

「………ちゅ…はぁ…ぅ」

 続けてキス。

 艶やかな赤一線を、こちらの唇で挟み込むように捉える。

 蜂が花の蜜を吸うかのように、蒼の咥内へと舌を侵入させていく。

 内部で蠢く蔓は、待っていた、と言わんばかりに、絡み付いてくる。

 奥から分泌されてきた、互いの唾液を交換。

 舌同士が、激しいダンス。

 蒼の瞳がやや閉じる。

 スイッチが入ってきた証拠だ。

「んー……もっとぉ……」

 貪り満足し、唇を離したところに、今度は蒼から、唇が迫る。

「ちゅ……ふ……ん………はぁ」

 またも重なる。

 こちらの領域に入ろうとしてきた、蔓を、門で挟み逆に捉える。

 蔓はそれ以上、先へと進めず、あたふた。

 そんな、舌の動きまでもが、彼女らしくて嬉しくなる。

 今度こそ唇が離れ、そのまま、蒼の首筋を舐める。

 すーっと、一筆書きをするように、首筋から肩のラインをなぞる。

 進む度に、彼女の体が震え、その振動は、臀部にピッタリと押し当てている、愚息にも伝わる。

「…ピクピクしてる」

「だって、蒼のお尻、気持ち良いんだもん」

 臀部の窪みに、綺麗にフィットする肉棒は、素直に快楽に反応を見せ、精液が込み上がってくる。

 自分でコントロールできない猛獣が、早く早くと脳に信号を送り続けてくる。

 その信号を無視し、健康的な肩の曲面を、舌でマーキング。

 円を描くように一舐め。

 反対側の曲面は、右手で支えつつ、愛撫。

 繊細な鍵盤楽器を弾くかのように、小指から順に、肩に触れていく。

 骨格の形までしっかりと感じつつも、掌で何度も何度も擦る。

「そんなに肩が良いのかしら……変態?」

「今更気付いた? 蒼のここ、すっげーエロいよ」

「何処に対しても、同じ感想言うじゃない!」

「全身がエロいってことで」

「ま、まぁ…魅力的に思われていないよりは良いのだけれど…」

 繰り返しの体への接触にて、下半身の自分からは『限界』とのサイン。

 既に、先端からは、先走りが滲み出ていて、おそらく湯の中にも漂っている。

 脳が考えるよりも先に、体が反応。

 尻肉に自身の肉棒を擦りつけようと、腰が自然と動いてしまう。

 極限まで、感度が高まった海綿体と、蒼の中々の大きさ持つお尻とで摩擦。

「……くっ…はぁはぁ」

「ここで出しちゃいたいの?」

 すぐに俺の状況を察した蒼が訊いて来る。

「ダメ?」

「んー…この後、お布団でしたいかなーって思ってたんだけど…?」

「今日は、ほら! 料理、沢山食べたから! 沢山出せると思う!」

「子供みたいに言うわね…」

 ジト目で見られるも、どうするかは任せる、とサイン。

 常々、俺に甘い蒼。

 そんな蒼を甘く頂く。

「ちょっと腰浮かせて」

「うん…」

 蒼の体が少し上がる。

 密着させていた肉棒は、障害物がなくなったことで、ぶるん、と跳ねた。

 そのまま、花園の入り口に、亀頭の狙いを定める。

「挿れるよ?」

「きて…」

 そう言いつつも自ら浮かせた腰を下ろしていく蒼。

 男性器と女性器がキスをする。

 先端が、少しだけ入る。

 膣内は十分に受け入れ態勢が整っているようで、引きずり込まれる感覚すらある。

「あぁー…っ…きたぁ……」

 ずぶずぶ、と襞を掻き分けて突入。

 すぐに射精したくなるも、もう少し快楽を味わってからにしたい。

 寸前まで上がってきたものを押しとどめる。

「……はぁ……全部……入った?」

「ああ…」

 全て飲み込まれ、一息。すぐには動かさない。

 必ず彼女からの合図を待つ。

 腕は、腰と胸にそれぞれ行き着く。

 撫でていると、蒼の口からは、官能的な声が洩れだす。

「……動いて?」

 こちらを見つめる誘惑の眼差し。

 この表情が俺は大好きだ。

 自慢の筋肉を脈動させ、蒼の体を下から突き上げていく。

 最初は優しく、ゆっくり。

「……んっ……ちゅ………っ」

 口付けを交わしつつも、ふにふにのお尻に腰を打ち付けていく。

 ピストン運動の速度は、そこまで速くないものの、先ほどからピッタリと、くっ付いていたのもあって、我慢の限界も近い。

「………はぁ…ぁん………? もう出ちゃいそう?」

「出したい………」 

「…ぁ……急に……っ…激し……」

 一気に快楽の頂点に上るため、速度を上げる。

 そのまま、蒼の腰を持ち上げて、軽く立ち上がる。

 逆向きの『く』の字のような体勢で、膣壷を貪り喰らう。

 結合部から溢れ出る、液体は、二人の体液。

 ぶつかり合う度に、湯船の中では鳴らなかった快音が響く。

「あっ…あっ…あっ…やぁっ………」

「はぁはぁ……はぁ…蒼……くっ…」

 何度も何度も、打ちつけ、気付けば蒼はお風呂の壁に両手をついて、お尻を突き出していた。

 綺麗に撓った、美しい体のライン。

 重力に従いつつも形を保つ、まさに美少女の特権である、美乳をたわわに震わせ。

 その乳房を、下から掬い上げるように、掌全体で掴む。

 その頂点を、それぞれ人差し指で捉え、往復し刺激。

「……やぁ……乳首……そんなに……いじったら…ダメっ…」

「…どうして?」

 曲がった体に沿うように、ぴたりと密着させ、耳元で問い掛ける。

「今日は……っ…あんたの……誕生日……だから…気持ち良くさせて…あげたいの…」

「蒼も一緒にイってくれると嬉しいんだけどなあ」

 その言葉のあとに、耳に向けて、軽く息を吹きかける。

 これが効果抜群だった。

「!?………ぁ……っ!」

 耳から全身に連動したのだろうか。

 蒼の膣が俺の肉棒をギュっと締め上げる。

 熱い抱擁。

 それに耐え切れる訳も無く。

「……っ……出る………!!!」

 肉槍から、灼熱の波動。

 波は治まる事を知らず。

 蒼の子宮に直接、白濁を放ち続けた。

 

 

* * * * *

 

 

「精子、垂れてきちゃってる……」

 自分のお腹をさすりながら、股下から太腿を伝い湯船に白濁が垂れる。

 これが、蒼の膣に放った俺の精子なんだ、と思うと、興奮が舞い戻ってくる。

 一発出したあとの肉棒が、またムクムクと起立し出したのを確認される。

「続きは、お布団で、ね?」

 一旦、シャワーを浴びるのだろう。

 湯船から出る際に、頬にキスされる。

「先に出るの?」

「うん、準備したいから」

「準備?」

「まだ、誕生日は終わってないってことよ、ふふ」

「期待してます」

「よろしい。あんたはもうちょっとゆっくりしてて」

 それだけ言うと、蒼は先に風呂場から出て行った。

 風呂場の床に垂れた精液が、今の行為の激しさを語っていた。

 

 

* * * * *

 

 

「蒼~?」

 風呂上り。

 どうせ、すぐ脱ぐだろうと、バスローブだけ羽織り、蒼を探す。

 既に寝室に居るんだろうか。

 何か準備をする、と言っていたが…。

「こっち~」

 灯りの落ちた二人の寝室には、既に布団に包まっている蒼の姿が。

「電気つけていい?」

「いいわよ」

 部屋に灯りが戻る。

 と、言っても特に変わり映えの無い光景。

「えっと…布団捲ってみて」

「? ああ…」

 そっと、かけ布団を捲る――

「その……誕生日おめでとう、羽依里…あたしが…プレゼントよ?」

 裸体にリボンのランジェリーなのだろうか。

 大きな深紅のリボンが胸を被っている。

 また、下着も同様に深紅のリボン。こちらは左右で結ばれている。

「今、ここで開けてもいいの?」

「と、当然…いいわよ」

 バスローブを脱ぎ捨てて、すぐに臨戦態勢。

 そして器用な事に、全身の至る所に、蝶々結び。

「蒼からのもう一つのプレゼントか~、中身はなんだろうな~」

 とても、わざとらしく、焦らすようにリボンを解いていく。

 まずは足首に巻かれたリボンを少しだけ。

 しゅるり、と軽い音を立てて、解けるリボン。

 この音が、先ほど御預けをくらった、愚息を興奮に導く。

 上から蒼に覆い被さる。

「プレゼント、開けるんじゃなかったの…?」

「それが我慢できなくて、ですね」

 肉棒を太腿に巻かれたリボンにあてがい、肉と布の間に割り込ませていく。

「あぁ…くっ…擦れて…やばいなこれ」

 魅惑の隙間にすっかりと心奪われた俺は、闇雲に腰を振り出す。

「あんたの、あっつ…っ!」

「はぁ…はぁ…気持ち良い…!」

 膨張した肉棒に耐え切れなかったのか、ゆるく結ばれた太腿のリボンは解けていった。

「そこだけじゃ…満足できないでしょ?」

「もっと気持ち良くなりたい…」

「こっちのほうが、気持ち良くなれるわよ?」

 深紅の下着を指でずらし、膣口をみせてくる。

 男を誘惑する為だけに着る、衣類。

 こんなの見せられて我慢できる男がいるだろうか?

 いや、いない!

「俺を興奮させるのがお上手な事で」

「まあね」

 先ほど、挿入していたから、特に前戯など不要だった。

 蒼も、それを望んでいた。

「さっきよりも…、なんか…大きい…!」

 最奥まで駆け抜けていく。

 風呂場で放った体液が、当然まだ残っており、潤滑油の役割と果たす。

 すんなりと、子宮に亀頭の最先端が接吻をした感触。

 そのまま、緩んだ唇を奪う。

「ぁ……ん……ちゅ………ふふ」

 口付けを交わしながらも、腰を振り出す。

 奥へと杭を打ちつけ、引き抜く度に、愛液と精子がかき混ぜられ、泡だった混合物が結合部から飛び出してくる。

 強烈な快楽に脳が麻痺しそうになる。

 内部の襞が肉棒を捉え、射精を促してくる。

「羽依里…手、握って…」

 上体を起こし、左右に置かれた、蒼の手をとる。

 指同士を絡めて、感情を伝え合う。

「暖かい……えへへ」

 美麗な肉体を前の前にし、振動するたびに、胸元のリボンが揺れる。

 幸せな一時。

 蒼の表情も先ほどから緩みっぱなしだ。

 俺達の性行為はいつも、こう。

 緩く、ゆるく、最後には激しく。

 始めて会った時から教え込まれた内容だ。

「あ、あっ…あ~~~~! っ、っ…」

「はぁ…は…」

「もうちょっと、このまま……」

「ああ……」

 リボンに包まれたプレゼントが、次々と嬌声を上げる。

「…あ~…っ! っ……ふあぁっ…」

 ラストスパート。

「そろそろ、イきそう……っ」

「あたしも……もう、頭おかしく…なっちゃう……っ」  

 肉棒から快楽が全身に。

 全ての思考を腰を前後させることだけに集中させる。

 今は他に何も考えられない。

 ただ、気持ち良くなりたい。

 でも、それでも、互いの両手は握り合ったままで。

 没頭しつつも、蒼の心がしっかりと伝わってくる。

 俺の心も蒼に伝わっているだろうか…。

「…っぅ…はぁ……ちゃんと…伝わって…るわよ…」

「よかった……」

 激しい行為の中でも、それだけは忘れない。

「また、中に出していいんだよな!?」

「羽依里の……好きなだけ出して!」

 膣内射精。

 最高の快楽の瞬間が、今訪れる。

「蒼! 蒼ー! 蒼ッ! 出る! ああああーーー!」

「くる! きちゃうううううう!」

 視界がホワイトアウト。

 極限まで膨らんだペニスから、精液が迸る。

 蒼の子宮に直接注ぐ。

 本日二発目であるが、勢いは衰えることなく、むしろ、次々と飛び出していく。

 もしかしたら一瞬だったのかもしれないが、何分も時間が経過したような気がする。 

 布団に寝ている蒼に問い掛ける。

「………はぁはぁ……蒼?」

「……あ……ごめん、頭が幸せすぎて……」

「今日は、最高のプレゼントをありがとう」

「あたしこそ…むしろ、たくさん貰っちゃったかも?」

「それについてですが……」

「うん……」

 当然まだ、シたりない。

 何せ今日は俺の誕生日だからだ。

「もっと味わいたいです…」

「それならプレゼント…最後まで開けたらどう…?」

「そうさせてもらおう」

 一旦肉棒を引き抜き、その下着に顔を近づける。

 左右のリボンを、口で挟み、引っ張る。

 解けた衣類はそのまま、布団の脇へ……。

「これも貰っていいの?」

「え……?」

「記念に」

「あ……っ……」

「蒼………」

 彼女が大好き、と言っていた、俺の優しい笑顔を見せる。

「いいわけあるかーーー! 何処の世界に、えっちしたときの下着を、記念に貰っていく男がいるのよ!」

「ここに」

「………」

 蒼は少し思考し、口を開く。

「先にギブアップしたほうが負け。あんたが勝ったら、あげるわ」

「俺が負けたときは?」

「あたしがときめくような、素敵なデートを所望するわ!」

 中々難しい要求だが、それはそれで、実現したくなる。

 いつまでも、キミと幸せな日々を、と願う。

 まだまだ、女性を楽しませることに慣れていない俺だけど。

 どうか、これから先もよろしくお願いします。

 そんな言葉を心に秘めて、上から再度、覆い被さる。

 結局、勝負なんて関係なしに、日が昇るその時間まで、俺達は互いを求め合った。

 

 

 

【もう一つのプレゼント-赤いリボンのキミ- 終わり】

 



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雨音、止まず-恋人の日-

 夢から覚める。

 どんな夢を見ていたかは覚えていないけれど、幸せな夢だったのは間違いない。

 瞼を開くと、そこは羽依里の腕の中だった。

 大好きな彼の腕の中は暖かい。

 水泳と日々の筋トレにて、存分に鍛えられた筋肉が、私の背中に回されている。

 腕から伝わる温もりが、目覚めたばかりのあたしの体全身を駆け巡り、体温を上げていく。

 

「ん……ぁ……」

「蒼?」

 

 広い胸板に預けていた顔を起こすと、ちょうど首を曲げこちらを見つめる彼と視線が交錯した。

 その眼差しは、朝の優しい日差しみたいで、とても暖かくて眩しくて、つい恥ずかしくなり、また彼の胸に顔を押し付ける。

 そのままぐりぐりと鼻、頬、髪をたっぷりと擦り付けるあたしの姿は、羽依里から見たら甘えたがりの子猫のように映ってるだろう。

 

「…まだ起きてな~い…」

「そうなの」

「うん……」

「外は肌寒いから、もう少し俺の腕の中に居て」

「うん、居る…」

 

 もう起きてるけど、まだこの温もりを味わっていたい。

 寝たふりを続ける。

 外から聴こえてくる音は、今日も雨音。

 六月。梅雨の時期に入ったみたいで、島では連日のように雨が降り続けている。

 外に出かけることもなく、休日はこうしてダラダラと朝を過ごすことが多い。

 

「羽依里の腕の中、あったかい…」

「お互い裸だから余計に体温が伝わってくるんだよね」

「えっ……あー……」

 

 幸せな夢というかなんというか。

 寝る直前まで、激しく致していたことを思い出した。

 そして、なるほど。妙に体が気だるい原因が判明した。

 体の奥底には、未だに彼の精液が留まっている気がする。

 

「昨日はそのまま寝たんだっけ…」

「蒼の乱れる姿、可愛かったよ」

「っ! っー! 思い出させんなー!」

「蒼、可愛い…」

 

 背中に回っている手が、あたしの髪に触れる。

 まるで一本一本に挨拶するかのように、丁寧に優しく撫でられる。

 如何なるときも、あたしのことを考えてくれている大好きな手。

 

「顔見せて」

 

 前髪を掻き分けられ、隠れていた額を露にされる。

 

「な…なにされちゃうの、あたし…」

「こうされちゃうの」

 

 普段は見せないおでこへ、彼の唇の感触。

 過剰なぐらいに体温は上がっていく。

 朝から外は激しい雨、ちょっと肌寒い気温にも関わらず――

 ――あたしと羽依里と、お布団はすっかり夏だった。

 

「お目覚め?」

「はい……」

「キスしてもいい?」

「もうしたじゃない」

「唇にはしてないから」

 

 返事はせず、あたしはそのまま目を瞑り、自らの唇を突き出す。

 数秒待ち、唇が甘い一時に奪われる。

 接吻は続く。

 羽依里の唇で、あたしの唇が広げられるような感覚。

 まさかディープでくるとは。

 挨拶程度の接吻を予想していた唇の奥は、全く出迎えの準備が出来ておらず、生まれたままの姿でいる舌に、羽依里の舌がねっとりと絡みついてくる。

 

「んんっ………ちゅ………れろ………」

 

 恋人の訪問に、嬉々と分泌された唾液が次々と羽依里に掠め取られていく。

 まだまだ、起動しきっていない状態のあたしの脳では、それに一切抵抗できず、なすがまま。

 

「んっ! んっ! っー!」

 

 あたしの舌ごと咥内を連れまわされる。

 羽依里の舌は前歯、奥歯、歯茎、あらゆる所を蹂躙していく。

 

「…………っ」

 

 頬の内側にベロが伸びてくる。粘膜を抉り、削り取るような強い意志。容器に付いたクリームを舐め取るかのように、じっくりと、確実に、僅かでも残さず滑っていく。

 朝のまどろみ、幸せの中、あたしの体が咥内を巡る快楽に震え上がっている。

 

「…っ…はぁ………っぷ」

 

 唇を離すと、あたし達の間に、練りに練られた、唾液と唾液の混合物が、長く脆い銀の糸を引く。 

 

「蒼の口の中、美味しい…」

「……ぁ……ばかぁ……」

 

 短い感想を呟くと、息つく間もなく、再び羽依里の唇が迫ってくる。

 

「ちゅ………ぅ……ん……」

 

 今度は唇を唇で挟まれる。コリコリと何度も何度も挟んだり離したりのキス。

 鷹が激しく餌を啄ばむ。餌はあたしの唇。

 止まる事を知らない攻めに耐え切れなくなり、思わず口を大きく開き、舌を露出してしまう。

 その一瞬の隙を突き、上下の唇に舌が捕らえられる。羽依里の領域にそのまま引っ張られ、奥の羽依里に深く口付けをされる。

 

「…っ!」

 

 ディープディープキス。

 二人の唇の性行為と、さらにその中で行われる、舌同士の性行為はさらに白熱していく。

 あたしの頭はとっくにくらくらしてて、大好きな羽依里に沢山攻められることにドキドキしてる。

 もっとされちゃったらやばいかも…。

 

「はぁ……だめ………」

「何がだめなの?」

「…………っ…やぁ……あ……」

 

 言葉を発する前に塞がれる。

 

「言わなきゃわからないよ?」

「羽依里が言わせ……んっ……ちゅ……ゅる……ぷはっ……」

 

 あたしの体の奥底から、快楽の炎が燃え上がってくる。炎は渦を巻き、火柱となって感覚神経を焼き尽くす。

 もう限界だ。意識をそっと手放してあとは羽依里に任せる。

 

「んんんんーーーーっ!!!」

 

 最後に、言葉にならない叫びをあげて、あたしは暗闇に落ちた。

 

* * * * *

 

 覚醒したらまた羽依里の腕の中だった。

 

「お目覚め?」

「はい……」

「キスしてもいい?」

「繰り返すなーー!!」

「キスだけでイっちゃう蒼可愛かったよ」

 

 頬を撫でられる。その頬は、自分の痴態の影響で真っ赤に染まっているだろう。

 

「と、とりあえず! もう起きましたからー!」

「おはよう、蒼」

「おはよう、羽依里」

 

 あたし達にとっての一番大事な大事な言葉。

 たった四文字に込められた思い出は、とてつもなく膨大だ。

 その言葉を毎日のように交わせる喜び。

 彼が齎してくれた『今』に感謝だ。

 

「今日はバイト?」

「うん。いつも通り午後からだけど、雨降ってるし誰も来ないかもね」

「梅雨だもんなあ」

「羽依里もバイト?」

「同じく午後から、帰りもいつも通りだから、それまで寂しい思いさせちゃうな」

「なんとか我慢するわよ」

「寂しい、ってのは否定しないんだ?」

「うん…」

 

 大好きな人とは常に一緒に居たいぐらい。寂しくないわけがない。

 

「それなら午前中は散歩しようぜ」

「雨降ってるけど、良いの?」

「そういうのも良いじゃん、たまには」

「そうね…いいかも…」

 

 未だに抱きしめられている腕の中。

 ちょっとのサービス精神を発揮し、自慢の乳房をより強く、羽依里の体に押し付ける。

 乳首が肌に食い込んでいくのを感じる。胸の形が、そのまま羽依里の割れた腹筋の形に変形する。

 絶頂に達した後の体は敏感になっていて、これだけでも気持ち良くなってしまうみたい。

 

「お、おお……」

「どうしたのよ?」

「そんなことすると、『我慢』できなくなるよ」

「別に…いいわよ……我慢しなくても。好きなだけ気持ち良くなっていいんだから…」

 

 下半身に手を伸ばし、立派に起立している羽依里の肉棒に触れる。

 

「ぁっ………」

「さっきまでの格好良い羽依里はどこいったのかしら…」

 

 亀頭をぐるりと周回するように、人差し指の腹で撫でてあげるとなんとも言えない情けない声を上げる羽依里。

 先っぽの鈴口からは、既に先走りした体液が滲み出している。

 少し粘り気のあるそれを、親指も使い摘んで引き伸ばすと、これまた綺麗な銀色の糸が引かれる。

 練った体液を肉棒の全体に塗りたくり、コーティング。

 指で輪を作り、最適な刺激を与える為、上下に強弱をつけながら扱く。

 

「あっ……きもち…良い…ぐあぁ……」

「このまま出しちゃう?」

「出しちゃう…」

「いつでも出して…」

 

 その後、当然のように本番まで致したのは言うまでもない。

 

* * * * *

 

 身支度などを済ませた後、玄関にて。

 

「ねえ、本当に傘一本で行くの?」

「相合傘って憧れてたし…」

「確かに今までしたこと無かったけど」

「とりあえず行ってみようぜ」

「はいはい」

 

 戸を開けて外へ。

 羽依里が傘を持ちあたしが雨に濡れない様、頭上をカバーする。

 傘に打ち付ける雨の音。

 隣に立つ羽依里を見ると、傘から殆ど体がはみ出している。

 あたしが大丈夫でも、彼が風邪をひいてしまう。

 

「じゃあ、いきますか…蒼ー?」

「やっぱり傘はそれぞれで差しましょ。あんた、思いっきり濡れちゃってるじゃない」

「でも…」

「『でも…』じゃないー! あんたの体のほうが大事よ!」

 

 相合傘で歩きたかった羽依里の気持ちも分かるが、健康第一だ。

 

「…その優しさが嬉しいよ」

「当然の優しさよ…」

「今度、相合傘用に大きい傘を買うとするかな」

「それがいいわね」

 

 一度、中へ戻りあたしも傘を手に取る。

 

「あらためて、いきますか」

「いきますか、ってそういえば何処へいくの?」

 

 二人で傘をそれぞれ差し、並んで歩き出す。

 

「ん~、特に考えてないけど、せっかくだから、灯台の方とか行ってみる?」

「何処でも良いんだけどね」

 

 二人の傘に降り注ぐ雨。奏でる音楽は軽快なリズムに聴こえる。

 何時、如何なるときも、羽依里と一緒なら楽しめる。

 しとしとと降る雨音は止まず。

 いつも気遣ってくれる彼の優しさがくすぐったい。

 そんな恋人の日だった。

 

 

【雨音、止まず-恋人の日- 終わり】



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ブルーハワイの軌跡

 太陽の日差し。駆け抜ける風。蝉の鳴き声。

 鳥白島に再び夏がやってきた。

 大学生になった俺は既に夏休み。

 同じく、絶賛夏休みを満喫中の蒼と一緒に、日中は駄菓子屋のバイトを手伝っているところだ。

 因みにさっきまで蒼は駄菓子屋の奥で寝てた。

 

「かき氷は100万円よ」

「………」

 

 財布から百円玉を取り出して手渡す。

 

「99万9千900円足りないわよ」

 

 変わらない台詞。

 『あの夏』からちょうど二年。変わったのは俺と蒼の関係、かな。

 

「お約束のネタ、ありがとう」

「どういたしまして。味はどれにする? って、今更訊く必要もないみたいね」

 

 ブルーハワイシロップが入った容器を見つめる。

 蒼に出会わなければ、シロップの味がどれも一緒だなんて、識ることもなかった。

 

「ブルーハワイで」

「了解。いま作るわね」

 

 それ以外選ばないのは、蒼も分かっているのだろう。

 蒼は氷の塊を置き、かき氷器を回し始める。

 氷の削れる音が、涼しさを演出する。

 容器に積もっていく氷たち。

 夏の暑さを吹き飛ばす、圧倒的な『涼』がそこにあった。

 他のお店では味わえないような、まさしく山盛り。

 ブルーハワイシロップの容器を傾け、丁寧に降りかけていく。

 尖った頂点はそのままに。

 螺旋を描くように、慣れた手つきで、均等に青色の軌跡が刻まれていく。

 

「羽依里、店番ありがと。はい、これ。お礼ね」

 

 さらにその線を添うようにして練乳のオプションも追加された。

 

「ありがたくいただくよ」

 

 受け取ろうとした、その時。

 

「あっ…」

「っ…」

 

 かき氷がどっさりと詰まったカップを持つ蒼の指先に、俺の指先が触れた。

 極低温で感覚が鈍った状態でも、びくっと反応する蒼は可愛いな、と思った矢先。

 その僅かな震えにより、かき氷の山が雪崩のように俺のズボンに降りかかった。

 

「つめたっ」

「あ~! 羽依里ごめん! 拭くわね」

 

 蒼は本当に申し訳なさそうな表情をしてハンカチを取り出す。

 

「すぐ乾くから大丈夫だから」

「ううん。ベタつくし拭くわ! 足広げて」

「あ、あぁ…ありがとう」

 

 よく履いている茶色のズボンの股間部分には綺麗なブルーハワイが広がっていた。

 熱せられた衣類にあっという間に染み込み、ちょっと…いや、かなり恥ずかしい見た目になっている。

 蒼はベンチに座る俺の広げた足の間に陣取り、かき氷に濡れたズボンが拭かれていく。

 薄手の繊維越しに感じる蒼のか細い指が、下半身の筋肉を意図せず刺激してくる。

 

「シロップと練乳もかかっちゃってるからベトベトするわね…」

「これ、誰かに見られたら勘違いされそうだな…」

 

 おそらく、反対側から見たら、蒼が俺の股間に顔を埋めているようにしか見えないはずだ。

 そしてここは駄菓子屋の店先。

 何時誰が訪れてもおかしくない状況である。

 さらに、今日の蒼が着ているニットワンピースと、双乳により出来た魅惑の隙間が、この体勢だと見放題である。

 思わず手を突っ込みたくなる衝動に駆られるのと同時に、下半身は親切丁寧にズボンを労わる蒼の指が這い回る。

 不意に触れられた性器が即時起動し、もっと刺激が欲しいと雄叫びを上げ勃ちあがる。

 

「え、ちょ…大きくなってきてる!? あたしのせい?」

「蒼のせいだな…うん」

 

 俺の足の間で思考がフリーズする蒼。

 内心興奮しつつも、俺もこの状況にどうしたらいいか悩んでいると、少し離れたところからかすれた声が聴こえてきた。

 

「二人とも…こ、こんな所でな、なにしてるの…? へ…ヘンタイ?」

 

 絶対に見てはいけない場面を目撃してしまった、そんな表情をしているしろはが居た。

 

「あ、えっと…これはだな」

「やっ、こ…来ないで」

「しろはさん!? 待って! 最後まで話を聞いてくれ!」

 

 しろはが全速力の変なフォームで走り去った後に残ったのは、ズボン越しに多大なる誤解を与えた逸物とシロップの甘い香りだった。

 

* * * * *

 

「それでさ、これどうしよう」

 

 ある程度拭き終わった後。

 それでも未だに鎮まらない肉棒が、服の中で張っていて正直かなり苦しい。 

 

「どうもしないわよ!」

「………蒼」

「な、なによ」

「お願いします!」

 

 下半身を勃起させながらも手を合わせて彼女に頼み込む。

 

「うぅ…まあ、かき氷かけちゃったのはあたしだし、そうさせちゃったのもあたしだし…」

「うんうん」

「で、でもこんなところでしてたら、それこそ他の人に見つかっちゃうと思うし…」

 

 その言葉に閃いた俺は、素早く羽織っている上着を脱ぎ、風に靡かせる。

 

「これで隠しながらならいけそうじゃないか?」

「…本当に大丈夫かしら、これ」

「大丈夫、大丈夫。ほら、ベンチに横になってもらって俺が膝枕する感じで」

 

 蒼もこういうシチュエーションで興奮するタイプなので、内心ワクワクしているだろう。

 

「って…マジで? するの?」

「蒼だって、ちょっと憧れてただろう。今がチャンスだからさ」

「え、チャンス…うん、そうね…うん!」

 

 空門蒼はよく分からない押しにとても弱い。

 本人曰く「羽依里限定よ」との事。ちょっとした独占欲が満たされるそんな蒼の一面。その優しい想いを大事にしていきたいと思う。

 だが、今は快楽だ。

 

「ほら、おいで」

 

 自分の太腿を手で叩いて合図をすると、伝わった力が筋肉と触れ合い振動して、軽快な音が鳴る。

 

「えへへ…」

 

 大好きな匂いが染み付いた枕を見つけた時の子供のような表情を浮かべながら、まずは仰向けで頭を預けてくる。

 後ろで纏めた髪の毛が筋肉に沈んでくると、布越しでも妙にくすぐったさを感じる。

 その蒼の頭に優しく手を添えて、こちら側に振り向かせる。

 布越しに最接近する、女性の唇と男性器。吐き出される生温い二酸化炭素が細かい繊維の間を縫い、勃起している肉棒に当たっているかのように感じる。

 

「目の前で見るとすっごいわね。張ってて痛そう…いま出してあげるわね」

 

 金属の擦れる音。

 何度も行い手馴れた結果の動きでズボンのジッパーを開けれてしまう。

 社会の窓が開かれた瞬間に、待ってましたと言わんばかりの勢いで、ボクサーパンツから、そしてズボンから飛び出る逸物。

 駄菓子屋の軒先、青空の下、圧倒的開放感。

 しかし、それも一瞬のこと。こんな状態を世間に晒していたら、それこそ勘違いどころじゃ済まなくなる。

 いつも着ている通気性に優れた薄手の上着を、今度こそ本当に股間に顔を埋める蒼の頭ごと漆黒で隠す。

 

「まぁ…変な見た目だけど、外からは分からないな。中はどうなの?」

「暗いけど、するのには問題ないわね…すぐ気持ちよくしてあげる」

 

 もぞもぞ、と服に隠れて見えない空間で、蒼の顔が動き、すぐさま亀頭の先端に、唇の熱が触れた感触が発生した。

 

「んっ…」

 

 蒼は口奉仕をする際に、必ず最初に接吻から始める。

 それはきっと、蒼なりの愛の表現手段なんだろう。これがただ気持ちよくするだけの行為ではなく、貴方が好きだからなのよ、と言葉はなくても心に伝わってくる。

 舌の感触。ざらざらとした猫のような舌が大好物に接するが如く、丁寧に一箇所一箇所を確かめるかのように、肉棒を這い始める。

 その光景自体は見えないために、一体次に何処が舐められるのか、どのような刺激がくるのかまったく予想が付かない事が、逆に性感覚を鋭敏にさせる。

 まずは亀頭の円を一周。そのまま傘の裏側の窪みをちろちろ、と焦らすかのように舌の先端だけで攻められる。

 

「……れぅ……ん……ふふっ………ちゅ……ぅ」

 

 黒の向こうから空気を伝ってくる微かな笑い声。悪戯心が勝った子供のようだ。

 今度は、その先っぽが肉棒の裏筋をなぞるように一直線に根元まで降りてくる。

 絶妙な力加減と進行速度に、脊髄反射でゾクゾクと肉棒が震える。

 

「次はどこにしようかしら…」

 

 一旦離れた唇からは、狙いを定めるかのような妖艶な言葉。

 ふぅふぅと、呼吸をする熱ですら昂ぶりを煽り、中々次の快楽が来ないことに訴え始めたのか、体の奥底から先走り液が駆け上がってきて、いち早く滲み漏れてきたのを感じる。

 

「蒼…次をはやく…!?」

「くーださーいなー」

「の、のみきか。いらっしゃい」

「鷹原か。蒼は…寝てるのか?」

「ああ。昨日夜遅かったからさ。いつも通りの昼寝だな」

 

 それっぽい理由を伝えながら、膝枕している蒼の頭を服の上から撫でてあげる。

 

「そうか。じゃあ動けないだろうから、勝手に買わせてもらうぞ」

 

 それだけ言うと、のみきはベンチに座る俺の横を通り抜け、店内へ入り品定めを始める。どうやら今日は純粋に駄菓子を求めて来たようだ。

 のみきの視線がこちらに向いていないことを感じ取ったのだろうか、服で隠れている蒼の舌による攻めが再開される。

 今度は先端だけでなく、舌全体を押し当ててくるような動き。

 そして遂に、唇の入り口を越え、亀頭が呑み込まれた。中はヌメヌメしていて生暖かい粘膜に優しく包み込まれる。

 先ほどよりも鋭くなった感覚が、快楽を的確に捉え、それが声へと変換。

 

「………くぁ……」

 

 我慢できず、洩れ出てしまった。

 

「鷹原? 呻き声が聴こえたが大丈夫か?」

 

 首を斜め後ろに向けると、ちょうどこちらに振り返って見ていた、のみきと視線が合う。

 

「だ、大丈夫。ちょっと暑くてさ、はは、買い物を続けてくれ…」

「熱中症には気をつけるんだぞ。さて…何にしようかな」

 

 股間で繰り広げられている痴態には一切気づかれずに乗り切った。

 上着をちょっとだけめくり、隠れている蒼の顔を覗き込む。

 そこには亀頭を咥えこむ最大級の笑顔があった。 

 俺が見ている目の前で、はむはむと唇による圧が加えられる。

 ぷっくらとした桃色が赤黒い棒を挟む度に、じわっと薄い先走りが飛び出て、咥内の闇へと消えていく。

 

「ぁ………それ、まず…っ!」

 

 挟み閉じた唇が肉棒の根元へとスライドしてくると、あまりの快楽の強さに腰が動きあがってきてしまう。

 

「今日はこの梅の煎餅にしようかと思ったが、あんまり美味しくないのか?」

 

 偶然洩れた言葉を否定と捉えたのか、のみきの駄菓子選びが継続される。

 この体勢だとさすがに根元までは咥えこめないらしく、しかも強く頭を前後させることもできないという状況ではあるが、バレないように蒼に咥えられているというシチュエーションと、生暖かい咥内の温度、そして呼吸の度にねっとりとした頬の粘膜が肉棒に張り付く感触が性興奮を高めていく。

 

「決めた。暑いから棒アイスにしよう」

 

 のみきが店先のアイスケースの蓋を開けて、ソーダ棒アイスを取り出す。

 一度店内に戻り、吊るしてある代金を入れるザルに硬貨を入れ、戻ってきたようだ。

 すると何を思ったのか、その場で袋を開けて、アイスを口にし始めた。

 

「ここで食べるのか」

「ん? だめなのか? 持って帰るとその間に溶けてしまうだろ」

 

 正論を言われてしまうと、返す言葉がまったく出てこない。

 

「あ、いや…そうだな、問題ない…」

 

 下半身では大問題が起きているが何とか平然を保つ。

 

「うむ」

 

 短い言葉で締めると、何故かこちらを向いたまま、のみきが棒アイスにパクりと齧り付く。

 それがあたかも自分の肉棒に触れたかのような錯覚を覚え…いや、実際に俺の肉棒には現在も蒼が齧り付いているのだが。

 のみきの小さい唇からピンク色のこれまた小さい舌が伸び出してきて、アイスの表面を丁寧に舐めていく。

 見えない快楽と、目の前で行われている光景が妙にシンクロしていて、俺の下半身はいよいよ限界が近づいてきたらしい。

 

「蒼と鷹原は仲が良くて羨ましいな。互いを大事にしていることがよく分かる」

 

 絶賛膝枕中の寝たふりをしている蒼と、その頭を服の上から撫でている俺を見て感想を洩らす。が、実際はそうではないのだ…。

 

「そう見えてるなら嬉しい限りだ」

「ああ。これからも蒼を大事にしてやれよ」

「もちろんだっぁ…!」

 

 最近使い始めた歯を食い込ませるテクニックが下半身で遺憾なく発揮された。

 

「おいおい。本当に辛そうだが…」

「くっださいなー! あっ」

 

 そこに加わる陽気な声。既にパージ済みの良一が、通りの向こうから元気に走ってきて、のみきの存在に気づき急ブレーキをかけた。

 

「良い急ブレーキ具合だな。そして服を着ろ」

 

 食べ終わったアイスの棒を最後に一舐めすると、それをゴミ箱に捨て…いつも通りのハイドログラディエーター改を構え。

 

「ま、待ってくれっ! 俺はまだ何もっ!」

「最後に言い残す言葉はそれだけか?」

 

 狙いを良一へと定めるのきみ。

 そして、表で起きている喧騒に驚いたのか、蒼の頭が急に暴れだす。

 前後ではなく、縦横の回転運動が発生し、ギリギリまで粘っていた下半身の獣欲が一気に噴射口めがけて駆け上がってくる。

 

「………はぁっ…っ!」

 

 思わず悶え、表情に力が入ってしまう。

 ベンチに後ろ手をつき、乗せている蒼の頭ごと浮かび上がる俺の腰。

 それを見逃さなかった蒼が、トドメと言わんばかりに口に含んだ肉棒を一気に吸い上げる。

 吸い上げる際に発生する淫猥な音は、銃口を向けられ必死に弁明する良一の大きな声にかき消されて、向こうの二人の耳には届いていないのだろう。

 

「問答無用。喰らえ」

 

 のみきのトリガーを引くタイミングと、俺が達するタイミングが完全に重なる。

 水鉄砲からは冷水が、肉棒からは灼熱の白濁が、それぞれ解き放たれる。

 

「「うあああっぁ!!」」

 

 良一が悲鳴を上げるのと同時に、俺も耐えられず快楽の唸り声を上げる。

 ドクンドクン、と勃起した肉棒から蒼の咥内へ精液が飛び込んでいく。

 夏の暑さと、射精の快感に頭が真っ白に染まっていく。

 いつもの日常を繰り広げる二人の目の前で行う、背徳的な行為。

 普段味わえないシチュエーションから生まれる迸り。

 それを出し切る頃には、俺も、そして冷水を浴びきった良一も、力尽きていた。

 

「これに懲りたら、その手に持っている上着をさっさと着ろ」

 

 のみきの声が頭に響く。

 そうだ、今上着は蒼に被せている。着なくては。

 真っ白になりかけた脳内から信号が走り、被せてある上着を引き剥がそうとし――

 できなかった。

 下半身を見ると、精液を口に含んだ蒼が懸命にそれを飲み込もうと奮闘しつつも、剥がされまいと上着を掴み押さえていた。 

 

「な、なんだ!?」

 

 予想してない方向からの叫び声が聞こえ驚き、こちらに振り返ったのみきが、条件反射でハイドログラディエーター改の銃口を瞬時に俺に合わせてくる。

 

「な、なんでもない…なんでもない…」

 

 あくまで平然を装う。

 その平然の裏では蒼が喉を鳴らし、吐き出した白濁を飲みきってしまったようだ。

 

「蒼が起きたらなるべく早めに帰って休むと良い。きっと疲れているんだろう」 

「そうさせてもらうよ」

「今だっ! 俺は逃げるぞー!」

 

 力尽きていたと思われていた良一が突如立ち上がり、全速力で走り去っていく。

 

「まだ抵抗するのか。待て!」

 

 のきみが後を追って走り去っていく。

 今日はよく人が走る姿を見る日だな、とぼんやりと考える。

 再び二人きりになった駄菓子屋の軒先。もう大丈夫と、判断したのか上着を退けて蒼が陽の下へ顔を出す。汗をたっぷりとかいた肌、精液の匂いが漂う唇。行為の証拠がしっかりと残っていた。

 

「もう…出しすぎよ」

「いつも以上に興奮しちゃってさ」

「羽依里ばっかりずるい…帰ったらたっぷりしてね」

「勿論だとも」

「それなら宜しい」

 

 百円玉と引き換えに味わったのは、圧倒的な背徳感。

 無茶なお願いもしっかり聞き入れてくれる蒼の愛情。

 そして、ズボンにできたブルーハワイの軌跡だった。

 

 

【ブルーハワイの軌跡 終わり】 



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ベッドに蒼い花束を

「じゃあ、蒼ちゃん…とついでに羽依里さん。留守番お願いしますね」

「いってらっしゃい~」

「ついでってなんだ、ついでって」

「無駄だと思いますが、羽目を外し過ぎないように」

「あ、ああ…」

 

 空門家の玄関が開き、藍は外出していった。

 完全に何をするつもりかばれているみたい。

 玄関を閉めて後ろ手に鍵をかける。

 

「さて」

「な、なによ…目線がやらしい…」

 

 今日の蒼は普段と違って、露骨に俺を誘うような大胆にも胸元が開いた白いひらひらのワンピースを着ていた。

 剥き出しの肩と胸元の空間に思わず目線が行ってしまい、蒼に感ずかれる。

 

「そんなエロい服着てるからだよ」

「別にエロくないわよ! 普通でしょ!」

「着てる本人がエロいと何もかもエロくなる?」

「そう言われると確かに…そうなのかしら…」

 

 玄関にある姿見で自分の全体を回って確認しながら、変に納得する。

 いつも通り結われている後ろ髪。宙を舞う毛先から蒼自身の甘い香りがする。

 それと同時にふんわりと翻るワンピースの裾。数学では表現できないほど見事な波の打ち方をしたそれは次第に元通り、服の下の肌を覆っていく。

 

「とりあえずベッドに行こうか」

 

 普段からの筋トレで十分に鍛えられた己の腕を、蒼の背中と太腿にまわしてひょいと抱き上げる。所謂お姫様抱っこの形。

 

「やっぱりこうなっちゃうのね」

「嫌?」

 

 蒼の気持ちを伺う。

 

「大好き」

「俺もだよ」

 

 腕が俺の首に回りがっしりと固定されたところに、顔が近づいてくる。

 応じるように首を右斜め前に傾けると、そこに火照った唇の感触が。

 

「……んぅ…………ぅ」

 

 蒼から唇を求めてくれると、気持ちが一方向ではなく両想いなんだな、と思えるから男子としてはとても嬉しい。

 繋がったままの部分から、にょろにょろと不規則に動くお客さんが訪問してきた。

 快く迎え入れてあげると、俺の舌に絡み付いてきて唾液を吸い取ろうとしてくる。

 ………。

 さすがに長時間この体勢を維持するのはきつい。

 一旦お客さんを舌で押し出して店じまいする。

 

「ふふ」

 

 いたずらっ子の笑顔。あとでたっぷりお仕置きが必要そうだ。

 宮殿の廊下をお姫様を抱えながら歩く。

 目的の部屋を開けてもらうと、隅に置いてある使い込まれたベッドに一直線。

 

「着いたよ」

「ありがとう」

 

 真っ白のワンピースは、蒼という花束を包むための包装紙のように見える。

 乱れた髪の毛は、少しだけ散った花弁。

 最高の飾り場に沈む彼女はやっぱり魅力的で美しかった。

 

「羽依里もきて」

 

 腕を伸ばして求められる。

 俺はそっと上着を脱ぎ捨て、間に潜り込む様に蒼の上から覆いかぶさった。

 唇を突き出して待ち構えているところへ熱を降らせる。

 

「…ちゅ……ぅ………はぁ」

 

 腕で自分を支えて、体重をかけないように。

 それでも自由な手のひらは、都合よく傍にある左右の肩を、鷹だけど鷲づかみ。

 程よく肉感的で、骨の存在を感じられる肩を指の一本一本を這わせてその感触を確認していく。

 

「ん………っ……っちゅ……指の動き、いやらしい…」

 

 半目でじーっと見つめてくる。

 

「蒼の肩いつ触ってもスベスベなんだもん」

「なんだもん、じゃないわよ…もう…ちゅ………ぅ……ぁん」

 

 口付けの途中、中指の腹で肩の峰の部分を摩擦するとついに声が抑えられなくなってきたのか、快音が隙間から洩れ出てくる。

 上体を起こして蒼の足の間に陣取る俺は、ワンピースの腰のラインに手を当てて、すーっと滑るようにその繊維と、下に隠れる花束自体を堪能しつつ上へとのぼる。

 包装紙の途切れ目にある特大の乳房は下半分だけを覆って、上半分の肌色部分はほとんど見えてしまっているではないか。

 

「触るよ」

「うん」

 

 愉しむためにまずは手のひらを大きく開き、上から被せる。

 男の手でやっと覆いつくせるそれは何故か揉む度に大きくなっている気がする。

 ああ、柔らかい。

 少し力を入れると抵抗し弾力が発生する。

 単純な運動を繰り返していると瞼が自然と閉じて、触覚に集中してくる。

 次に、パン生地を捏ね繰り回すように円の動き。

 

「ぁぁ……んっ……んっ……っ」

 

 過程で稀に頂点の突起物を感じると、その瞬間に蒼も喘ぎ反応する。

 その反応が嬉しくて、段々とペースをあげていく。

 

「やぁ………っあ……ん!」

 

 呼応するかのように、薄手の布地をこんもりと押し上げる乳首。

 

「勃ってきたね?」

 

 撫でるのを止め、主張を続ける頂点を人差し指で弾く様に弄ぶ。

 

「布と……ぁん! 擦れ…っ…て……ぁ!」

 

 快楽に染まる顔だけは見られたくないのか、視線から逃れるように左を向く。

 

「蒼の可愛い顔、見せて」

 

 右手はそのまま。左手を蒼の頬にあてて、優しく摩る。

 少し力を入れて逆側に押し返すと、観念したのか顔が動き…今度は右を向いた。

 

「………」

 

 どうしても見せたくないらしい。

 そんな行動でさえ愛おしくて自然と笑みが出てくる。

 蒼の脚の間から一度出て、ベッドの空いたスペースに添うように同じく横たわる。

 大好きな女の子の香り。

 好きになった人の匂いというのは無条件で良い匂いと感じるらしい。

 後頭部で纏められた髪の毛に顔を埋めて、そんな大好きな香りを吸い込む。

 

「何してるのかしら」

「…呼吸」

「あっそ…」

 

 その髪束に手を添えて解きにかかる。

 どうすれば解けるのかはもう何度もやってるため熟知している。

 あっという間に纏まっていた髪が解き放たれた。

 

「髪解いた?」

「興奮するよな」

「そこで同意を求められてもね」

 

 俺の下半身は蒼の香りに誘われるようにして、きついぐらいに起立しだしていた。

 ベルトをさっと抜き取って、窓を開け放ち、勃起した肉棒を取り出す。

 女性が身に付ける高級な布にあてがわれる男の醜い性器。

 膨張した海綿体を蒼の大きな御尻の面に擦るだけで、熱された先走りが線を描く。

 

「擦りつけられてる~!」

「清楚さを感じるワンピース姿の蒼を穢してるって思うだけでやばい」

「あんたが興奮しまくっているっていうのはよーく分かるわ…」

 

 前から腕が伸びてきて、絶賛尻谷を堪能していた肉棒が掴まれる。

 

「手でも気持ちよくしたげる」

 

 こちらを一切見ずに的確に男の感じる部分を攻めてくるのはさすがの経験値。

 裏筋を撫でられ、先にある玉袋を包み込むと、労わるようにふかふか。

 背筋を駆け抜ける快感に耐えながらも、対抗するように体の下に腕をねじ込んで、

先ほどの続き、と胸の頂点に咲く花を人差し指と親指で摘む。

 

「………っ!」

 

 一瞬、体が跳ねた。

 ベッドはその衝撃を優しく吸収して何事もなかったかのような振る舞い。

 

「ふふ…」

「……っはぁ…はぁ……もう…すっごい熱くて硬い…どうするの?」

 

 献身的な手コキで荒々しくも見事に完全勃起した肉棒は圧倒的な熱量。

 白いワンピースの裾を捲り上げて薄桃色のお気に入りの下着を視認すると、下着と尻肉との空間に自身を無理やりに捻じ込んでいく。

 

「きっつ……ぁ……」

「そんなとこに挿れようとするからよ…」

 

 きつい事に変わりは無いが一度挿れてしまえばこちらのもの。

 腰を前後させて、生の肌の感触と下着の布。

 覆い切れなかった先っぽでワンピースの布地までを堪能する。

 生地越に亀頭を指で擦られるといよいよ我慢が聞かなくなってくる。

 

「擦れるの…すっげ気持ち良い…!」

「あたしも……ぁ…中でピクピクしてる!」

 

 胸まで攻める余裕はなく、蒼の体を両手で包み込むように抱き抱えるだけ。

 精液がごりごりと下半身で準備され、競りあがってきているのを感じる。

 

「ぁ……でそう……でる…!」

「え、ちょっ!」

「あー! っぁ!」

 

 快感の頂点の中、下着の内側に白濁をぶちまける――

 

* * * * *

 

「こんなに出して~! どうしようかしら…」

 

 腰を上げてもらい、服の中に手を入れて下着に手をかけて引っ張る。

 ワンピースの中から白濁に染まった元薄桃色が足を伝って抜けてきた。

 濡れた下着にはそれ以外に、蒼自身による染みもあるような気がする。

 

「うん、濡れてるな」

「改めて言わんでよろしい!」

 

 下着を広げて眺めるとぬちゃーっとした粘々した精液がゆっくりと垂れてくる。

 

「こらこら。眺めてないで置きなさい」

 

 これだけベトベトだとすぐに洗ったほうがいい気がするが、床に置いといてと指示されたので、それに従い丁寧に広げて床に置く。

 蒼の部屋の床にも付着する俺の生殖液。行為の生々しさが感じられる。

 

「もっと…したい?」

「最初からそのつもりだったよ」

 

 ベッドに座り、右手を口元に、左手をワンピースの裾にあてて次の行動を少し緊張した面持ちで待っている。

 その緊張を解くように隣に座り、肩の紐に指をかける。

 抵抗など一切無く、俺の動きをそのまま受け入れて外された肩紐は、腕をくぐり抜けて、あっという間に自由の身になった。

 そうなれば、もう後は簡単に捲るだけで現れる蒼の美乳の全体像。

 少し指で突いただけで綺麗にぷるんぷるんと揺れて獣欲を煽ってくる。

 

「何がしたいのよ」

「んー…」

 

 特にいつも行為をするときに決まった順番があるわけではない。

 その時その時の勢いに任せて致している。

 ワンピースの中へ手を潜らせ下半身を弄る。 

 膝、太腿と段々あがっていき、目的の大洪水の花園を見つけた。

 

「やぁ…んん!」

 

 縦に入った亀裂を人差し指で撫でると、蒼はいとも容易く嬌声をあげる。

 もう一度撫でると今度は、ぬちゃっとした指に纏わりつく感触。

 その大元の穴へと指を埋め込んでいく。

 

「ん……っ」

 

 下の唇を攻めるのと同時に上の唇の繋がりも要求する。

 こちらは蒼から顔を寄せてきて触れ合う。

 膣内に進入させた中指でぐるりと内壁を掻き回すとざらざらとした手触りと、粘っこい水音が聴こえてくる。

 

「ぁ……ちゅ………んっ!」

 

 左手で肩を抱いて、唇で押し、再びベッドへと沈み倒す。

 尚も続く唇同士の抱擁と、下半身の粘膜の卑猥な音。

 

「蒼」

「ん…っ…ぁ…なぁに」

「白いワンピース姿、似合ってるよ」

「…っ……もう殆ど脱げちゃってるけどね」

 

 胸は曝け出してあり、下半身も秘所までは見えないが太腿まで捲り上げている。

 

「……そんな姿も似合ってる」

 

 捲りあがったワンピースを手で持ち上げて、頭をその中に突っ込む。

 やってみたかったシチュエーションだ。

 一面に広がる白と肌色の二色世界。

 

「ったくもう…」

 

 お目当ての膣口はすぐ目の前にあった。

 舌を伸ばし溢れ出る甘い蜜を蝶のように吸い取っていく。

 吸い取るたびに奥から蜜が溢れてきてキリがないぐらい。

 蜜穴に舌を丸めて埋没させていく。解れた入り口は簡単に侵入を許してくれる。

 

「……や…ぁ…舌入って……」 

 

 上に下に、縦横無尽に動き回ると段々とヒクヒクと痙攣しだし、声だけでなく動きでも俺を興奮させてくれる。

 さらに深みへ。

 ざらざらの膣壁に先端を擦り付けると、甘い味としょっぱい味が交互に味わえる。

 ずずず、と強烈な音を立てて吸引。

 

「す…いすぎっ…ぁ!」

 

 分泌された唾液と一緒に、愛液を胃にまで飲み込む。

 

「あ………のんで……るぅ…っ!」

 

 最後に仕上げに引き抜いた舌で亀裂を舐めあげる。

 洋服の中からも脱出し、右手の甲で自身の唇を拭うと、キラキラとした跡が。

 

「御馳走様」

「…本当に美味しいのかしら、それ」

「蒼も舐めてみる?」

「自分のは遠慮しておきます~」

 

 今度は蒼が逆に俺の足の間に移動して、顔を埋めてくる。

 先程から散々と主張し続けている肉棒に、ふーっと生温い息が吹き掛けられた。

 それに呼応して、ピクピクと震えてしまうところを見て、蒼がニヤっと笑顔に。

 

「もう本番でもいいけど、ちょっとだけ口でさせて」

「え、ああ…頼む」

 

 自分がしてもらったからお返しを、ということなのだろうか。

 律儀で献身的な蒼の行動に心が踊る。

 

「あたしも我慢できないから、少しだけね…今日は中で出して欲しいから…ちゅ…」

 

 桜色の美しい唇が亀頭の先端へと触れると、反射で先走りが滲み、その唇を穢す。

 それは口で男性に快楽を与えた証拠であり、その男性のものであることの証。

 

「……ん……ぅ……れろ……ちゅぱ………んっ」

 

 器用に上下の唇だけで傘を挟み込むと顔を上下左右に捻り、変化を加えてくる。

 

「……んー……んっ………ぁ」

 

 露出している部分がどんどん少なくなり、肉棒が蒼に咥えられていく。

 

「あー…きもち……いい…」

 

 ふわふわの髪に手を置き撫でて気持ちよさとお礼を伝える。

 

「…にへっ…………」

 

 先っぽが喉の奥に当たる感覚。そこまで咥えてくれるのか。

 さすがに長時間はきついらしく瞬時に引き抜かれ、息を整えている。

 

「あーん………ずっ……じゅ……ぅ…ゅ…じゅる」

 

 首を縦に振りペースアップ。

 あまりの気持ちよさに、自らの腰も動かしたくなる程の衝動に駆られる。

 一切手を使わず口だけで行う奉仕は俺の中の血液を容易に一極に集中させる。

 溢れ出る熱気と強烈な男性臭は、それを直接頬張っている蒼も感じているだろう。

 自由なほうの腕は股間部分に伸びており、自らで慰めている。

 

「ぢゅー…じゅ……ぢゅ」

 

 先程俺がやったのと全く同じ、いや遥かに甘美な性音を立てて、清楚なお嬢さんが肉棒から精液を吸い上げようと奮闘する。

 

「ぁっ…あ……それ…ぁ…でちゃうから!」

 

 腰を左右に振り必死に抵抗するも、蒼はそれに喰らいついて離れようとしない。

 もう限界! と思ったその瞬間には時既に遅し。

 子種を本来放出すべきではない場所に、普段食べ物が咀嚼されているその空間を、みっちりと満たすようにドクドクと精液を吐き出し続ける。

 

「………くはぁ……」

「…んくぅ………ごく……ごく………御馳走様」

 

 「どうよ」と挑戦的な笑顔。そして同じ言葉が返ってくる。

 

「そんな顔していられるのも今のうちだぞ」

「あら、出したばっかりなのに、まだこんなに猛ってるわね…」

 

 射精後も衰えない肉棒は臨戦態勢を継続。まだまだイける。

 その様子を見た蒼も満足げに舌なめずり。

 付着していた精液が綺麗に拭われ、再び桜色が舞う。

 ベッドに倒れこんだ蒼の脚を開かせて、その間に腰を下ろす。

 白いワンピースを下半身が露出するところまで捲り上げて狙いを定める。

 本日何十回目かになる接吻は、亀頭と膣口で行う。

 焦らすようなことはせず、早く快楽を味わいたい。

 互いの求めるものは一緒だった。

 

「ぁ……いつもより…おっきい…!」

 

 肉棒をあっという間に丸呑みしてしまう蒼の貪欲な下の口。

 毎回サイズは同じなのに、男性を興奮させる物言いもすっかり板についてきた。

 とろとろの膣内は主の帰還に歓喜し、襞を震わせ激しく抱擁してくる。

 腰を前後に動かす。最初は優しく。

 

「ぁ…あっ……あっ!」

 

 太い杭を打ちつける度に抑えきれない蒼の可愛い声が耳に届く。

 先端から分泌された先走り液が奥から溢れる愛液と混ざり合って、擦れ合い、引き抜くたびに隙間から漏れ出てくる。

 自身の腰に纏わりつく蒼の両足。絶対に逃がさないという女性の意思。

 ベッドが激しく軋み、スプリングの音が行為の具合を実感させる。

 

「…イ…ぁ…っ……はぁ…ッ!」

 

 唇にもキスして背中を抱え、上体を無理やり起させる。

 結合したまま対面座位に移行。

 下半身の筋肉を全力で稼動させて、蒼の体を打ち上げる。

 

「すご……い……深いっ……!」

 

 突き上げた際の快感と、重力を持って再び肉棒に刺さるときに擦れる快感。

 瞬く間に製造された精液が競りあがってきて、発射のときを待ち構える。

 

「んん…っ……ちゅ……ぅ…」

 

 突き上げる度、ふわりと舞う白い羽。結合部は服のせいで隠れており、それがまた興奮を加速させるスパイスとなりうる。

 上半身を曝け出した天使は快楽で緩みきった唇を開き、接吻を求めてくる。

 

「はいりぃ………すき………ちゅ」

 

 向こうから攻めてくる舌。応じる舌同士でもセックス。

 強めに抱きしめてるせいで胸板に当たる弾力のある乳房も、男の体に密着する。

 交わり一つの存在となった俺たちは言葉とも分からない叫び声を互いに上げ貪る。

 

「んっ……あ……ア……アッ…イク! いっちゃう! イくッ!」

 

 空の門を突き抜けた肉棒が最奥の壁にぶち当たったとき。

 塞き止めていたダムが決壊するかのように。

 蒼の絶頂する声を聴きながら。

 

「アアアァァアァ!」

 

 三度精液が、今度は愛する彼女の子宮へと直接放出されていく。

 途轍もない達成感と虚無感。

 脱力した体は後方へ倒れ、蒼も後から重なるようにして胸板へ倒れてくる。

 

「………」

「………」

 

 唇を合わせるだけのアフター。

 優しく啄むようなバードキス。

 乱れたワンピースの紐を直してあげる。

 

「んー………」

「ねむい?」

「好きな人と一緒に居ると眠くなるのよね」

「このまま寝ちゃおうか」

「うん……ちょっとお昼寝~…」

 

 そのまま横へころん、と転がり俺の腕を枕に仰向けの体勢で瞳を閉じる。

 両手でお腹を摩り、たっぷりと放出した精子を確かめているみたい。

 

「今日もたくさん出せたわね」

「蒼がいっぱい気持ち良くしてくれたからだよ」

 

 俺もそのままの体勢で瞳を閉じる。

 しばらくじーっとしていると隣から穏やかな寝息が聞こえてきた。

 最後にちょっとだけ、と蒼の方に体を起して前髪を空いている手で払う。

 露になったおでこ。

 白いワンピースを纏った空門蒼、という花束に口付けを贈る。

 

「永遠に愛してるよ」

 

【ベッドに蒼い花束を 終わり】



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